衆議院

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第22号 平成14年6月21日(金曜日)

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平成十四年六月二十一日(金曜日)
    午前十時開議
 出席委員
   委員長 森  英介君
   理事 鴨下 一郎君 理事 鈴木 俊一君
   理事 長勢 甚遠君 理事 野田 聖子君
   理事 釘宮  磐君 理事 山井 和則君
   理事 福島  豊君
      岡下 信子君    上川 陽子君
      木村 義雄君    北村 誠吾君
      後藤田正純君    佐藤  勉君
      自見庄三郎君    田村 憲久君
      竹下  亘君    竹本 直一君
      棚橋 泰文君    西川 京子君
      林 省之介君    松島みどり君
      三ッ林隆志君    宮澤 洋一君
      谷津 義男君    吉野 正芳君
      家西  悟君    大島  敦君
      加藤 公一君    鍵田 節哉君
      金田 誠一君    五島 正規君
      土肥 隆一君    三井 辨雄君
      水島 広子君    江田 康幸君
      桝屋 敬悟君    野田  毅君
    …………………………………
   内閣総理大臣       小泉純一郎君
   厚生労働大臣       坂口  力君
   厚生労働副大臣      宮路 和明君
   厚生労働大臣政務官    田村 憲久君
   厚生労働委員会専門員   宮武 太郎君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 厚生労働関係の基本施策に関する件(医療制度問題)


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     ――――◇―――――
森委員長 これより会議を開きます。
 開会に先立ち、自由党、日本共産党及び社会民主党・市民連合の各委員に出席を要請いたしましたが、いまだ出席されておりません。やむを得ず議事を進めます。
 厚生労働関係の基本施策に関する件、特に医療制度問題について調査を進めます。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。鴨下一郎君。
鴨下委員 自由民主党の鴨下一郎でございます。
 総理、おはようございます。いろいろと日ごろお疲れなことだろうというふうに思いますが、私、ストレスの医者をやっておりまして、総理がストレスを上手に対処なさっていることを敬服しております。
 ということで、きょうは、医療制度改革の関連法案につきましては、本委員会において、四月の二十四日から審議が始まりまして、足かけ三カ月、実質五十時間を超える審議を積み重ねてまいりました。また、参考人質疑や、私も行ってまいりましたけれども、地方公聴会等も開催されまして、これらを加えますと、計十二日間、実質で六十時間を上回る慎重な深い審議が行われて、去る十四日に可決されたところでございます。
 この間に、当委員会においては、今般の医療制度改革の基本的な考え方や、サラリーマンの三割負担導入を初めとする給付と負担の見直しについて、さらに、将来に向けた抜本改革などについて議論が深められてきたわけでありますけれども、本日は、こうした委員会採決までの議論を踏まえまして、医療制度問題に関する質疑を行う、こういうようなことで総理に御出席をいただいた、こういうふうに了解しております。
 ただ、その中でも、例えば高齢者の自己負担率の問題や、それから被用者、いわゆるサラリーマンの三割負担の導入等につきましては、いろいろなところでいろいろな議論はまだある、こういうふうに承知しているところでありますし、さらに、本年の四月の診療報酬改定につきましては、二・七%の引き下げが行われましたが、実際には、その改定の二・七%を下回るような診療報酬の引き下げがあったんじゃないか、こういうような話もいろいろとあります。そういう中で、健全な医療インフラを維持していく、こういうような大きな観点から見ますと、まだ議論しなきゃいけないことがあるのかなというふうに考えております。
 そして、その中で、社会保障全体の改革について、総理に全体像を伺わせていただきたいと思いますが、先般公表された新しい人口推計からは、我が国はますます少子高齢化が進んでいます。こうした急速な少子高齢化の進展と長引く経済の低迷、そういう中で、社会保障制度を持続可能なものとして国民に不安を抱かせない、こういうことが重要なんだろうと思いますが、こうした不安を解消して、国民の安心の基盤であります社会保障制度を、言ってみれば、これから持続可能なものとしていく上で、私たち政治家に課せられた使命というのは非常に重要だろう、こういうふうに思っております。
 そういうことで、きょうは、まず初めに総理に、これからの社会保障制度改革に関する基本的なお考え方、そして総理の哲学というようなものにつきまして考えをお伺いしたいというふうに思います。どうぞよろしくお願いいたします。
小泉内閣総理大臣 社会保障制度というのは、国民生活の安定を図る上で最も重要な制度だと思っております。特に、我が国の社会保障制度の基本であります医療、年金、介護、この制度というのは、戦後、多くの国民、政治家、皆さんの努力によりまして、先進諸国に引けをとらない制度として発展、定着してきたと思います。
 こういう中で、我が国としても、急速な高齢少子社会が進む中で、この制度を支えるためにはどうしたらいいか、特に社会保障制度というのは、給付を受ける側とその給付を支える負担、この調整が大変大事だと思っております。国民がどの程度の給付を受けたいと思っているか、また、その給付を支える負担というのはどの程度に抑えていくべきか、総合的な視点が私は必要ではないかと思います。
 そういう意味において、多くの国民は、給付はできるだけ大きく、負担はできるだけ軽くというのは偽らざる気持ちだと思っております。それをどうやって理解を求めていくか、これが私は今後、年金にしても医療にしても介護にしても重要なものでないか、その点を、国民の理解と協力を得ながら、安定的に持続可能な社会保障制度として発展させていく必要があると思っております。
鴨下委員 確かに国民は、できるだけ保険料率それから自己負担は少なく、しかし高度な医療を受けたい、こういうようなことで、これは別に医療に限ったことではなく、年金もそうですし、介護もそうですし、あらゆることにおいてそうだろうというふうに思います。
 さらに、社会保障そのものというのは、ある意味で、経済的ないろいろな競争の中で疲れ果てた方々がその最後によりどころにするところでありますので、多少、そういう意味ではほかの論理とは違う、できるだけ手厚いというようなことも重要なことなんだろうというふうに思います。
 さて、今回の医療制度改革の基本的な考え方についてさらにお伺いをいたしますが、我が国の医療制度は、今総理もおっしゃっていましたように、国民皆保険、そして、だれでも、どこでも、どんな医療機関にでもかかれるといういわゆるフリーアクセスの原則を初めとして、さまざまな点で、私も世界に冠たる医療制度だろうというふうに思っております。実際にこれはWHOからも世界第一位の評価を受けるなど、言ってみれば、欧米諸国を超える非常にすぐれた制度であることは私は確信をしております。
 しかしながら、そうはいっても、先ほどのお話のように、負担と給付というような意味においては、非常にこれから少子高齢化が進む、それから、現下の経済の低迷によって、負担をするというようなことがなかなかつらい状況になっているということと、それから、さまざまな医療技術の進歩に伴いまして、言ってみれば、大変高額な医療もそれぞれ入ってきた。こういうような、医療環境を取り巻く状況というのは非常に大きく変化してきた、これに対して、医療制度を将来にわたって安定的に、しかも持続可能な制度に再構築していくというのが総理のお考えだろうというふうに思っております。
 そういうようなことで、医療保険財政が非常に逼迫している中で、改革はある意味で待ったなしであります。責任ある我が党としては、この医療制度をこのまま放置して、制度全体が壊れていくということを看過するわけにはいかないわけでありますから、大変つらい選択でありますけれども、この制度の改革をして、国民にある意味で御負担をお願いしなければいけない、こういうようなことが、今回の健康保険法の改正を含めた医療の全体の改革の流れなんだろうなというふうに思っております。
 そこで、改めて総理にお伺いいたしますが、今回の改革の必要性、特に今申し上げてきた医療そのものの持続可能な制度を維持していく、こういうような趣旨から、その必要性やあるいは今回の改正のねらいについてお考えを賜りたいというふうに思います。
小泉内閣総理大臣 我々学生のころから、社会保障制度といいますと、イギリスの揺りかごから墓場までという、ああいう国になりたいなと。社会保障制度のお手本として、揺りかごから墓場までというのは、これはいい言葉だなと私も思っておりました。そういう社会保障の先進国になりたいと思って日本も努力してきたと思います。
 そのイギリスでも、現在、いろいろ、医療制度のあり方といいますか、改革論が盛んであります。現状では満足できない、先進国から目標とされたイギリスでさえも改革が必要だという状況を見ますと、いつの世でも改革というのは必要だなと思っております。
 わけても、私もイギリスで約二年間生活したことがございますが、そのはるかに日本よりも進んでいたと思われる医療制度でも、実際、病気になったときにどこの病院へ行ったらいいんだろうかと私も調べたことがございます。そうしますと、病院には直接行けないんですね。まず地域の、いわゆる診療所といいますか、開業医といいますか、そこで診てもらって、そこでどこの病院へ行くかということを指定してもらう。
 日本では、それに比べますと、日本の国民は、どこの地域に住んでもお医者さんを選ぶことができます。お医者さんを選ぶことができるし、病院を自由にかえることもできます。まずこのお医者さんに行って、例えば北海道の方が東京の病院に行く、自由であります。この病院は気に食わないなというと、またすぐかえることもできます。こういうことはできませんね、イギリスでは。
 私は、日本よりもイギリスの医療制度の中ですぐれた点もあると思います。同時に、イギリスにはない日本の制度もよさがあると思います。私は、そういう点において、日本の医療制度、これは、お医者さんを自由に選ぶことができる、またかえることができる、これはむしろいい制度ではないかと思っているぐらいなんです。そういういい制度の中でも、中には正さなきゃならない点もあると思います。
 そういう両面を見ながら、負担と給付の問題、それから患者の皆さんが信頼できる病院なりお医者さんに診てもらうような選択の余地を残す、そういう点を考えながら、あるべき医療改革というものを目指すべきではないかと思っております。
鴨下委員 今総理がおっしゃいましたように、私たちも、今の制度を持続可能なものとしてきちんと将来に、言ってみれば安心を届ける、こういうようなことだろうというふうに思います。
 今回の柱の一つであります三割負担につきましても、その統一については非常に自民党の中でもいろいろな議論がありました。特に、私たちも苦悩の結果としてきょうに至っているということは、総理も御理解をいただきたいというふうに思います。
 その中で、今回、国民に負担を申し上げていくわけですけれども、国民に理解をしていただくためには、高齢者医療制度、それから医療保険制度の体系のあり方や全体的な診療報酬のあり方について、私たちは将来に向けてきちんとやるんだ、こういうようなことを国民に向けて申し上げなければいけない立場なんだろうと思いますが、簡単で結構ですから、総理の今後の改革に向けた決意につきまして、お一言いただきたいというふうに思います。
小泉内閣総理大臣 改革のあり方としては、それぞれの分野で多々あると思っております。簡略すれば、主な点からいえば、今言われたような高齢者の医療制度、そして診療報酬のあり方、さらには今保険制度がいろいろ分立しています。これをもっと統合する必要があるんじゃないかという議論もあります。そういう点を含めて、できるだけ効率的な、合理的な医療制度改革ができればなと思っております。
鴨下委員 終わります。
森委員長 次に、福島豊君。
福島委員 総理大臣、本日は、厚生労働委員会の御出席、まことに御苦労さまでございます。
 総理は、厚生大臣もお務めになられまして、医療制度については最も詳しい政治家のお一人であると思っております。
 当委員会での審議におきまして、抜本改革ということが繰り返し指摘をされたわけでございます。しかしながら、この抜本改革というのは一体何を意味するのか、人によっても違いますし、また党によっても違っているんだと思います。
 私自身は、今までさまざまな改革が行われてきた、その一つ一つが抜本改革の一端をなすものである、そういう認識をいたしておりますが、総理自身、抜本改革ということでどのような改革をイメージするのか、そしてまた、そうした改革を通じてこの我が国においてどのような医療を実現しようと考えているのか、この点について答弁を求めたいと思います。
小泉内閣総理大臣 この抜本改革ということについては、すぱっと割り切って、これでいいんだというような、そのような改革というのはなかなか難しいと思っています。
 特に、時代が変われば、十年、二十年たてば、新しい医療技術も入ってまいります、あるいは予期しない病気も出てきます、時代の変遷を見ますと。また、世の中の社会経済情勢も、好景気、不景気があります。そういう点を考えると、この時点で抜本改革だと思っていたのが、何年かたつとまた直さなきゃいけないということを考えますと、一度改革をすればこれが何十年も続くというのは、今の時代を考えますとなかなか難しいのではないか。しかし、現在の時点において、あるべき改革というのは、やはり目標として進めていかなきゃならないと思っています。
 そういう中において、今それぞれの保険者間の間で負担の割合も給付の割合も違う。これをどうして改めていくべきだろうか。
 あるいは、病気にならない人も常に保険料を負担している。その場合、病気になった人に対する負担もできるだけ軽い方がいいというのは、だれでも患者になれば思うことでございますけれども、そうでない健康な方々が保険料を負担してくれるということによってこの医療保険制度というのは成り立っているわけですから、その病気にならない人の、それじゃ、お医者さんにも行かない、病院にも行かない方々の負担というのはどの程度にすべきかということもあります。
 そして、患者さんにしてみれば、お医者さんを信頼したい、どういう病院が信頼できるんだろうか、どこの病院へ行ったらいいんだろうかという情報提供の問題もあります。
 さらには、これからのお医者さんの立場に立てば、診療報酬でも、これだけ苦労して困難な技術を要する手術なり治療なりも、評価が低いのではないかと。診療報酬体系のあり方についても、このような手術がどうして評価が低くて、もっと簡単な手術がどうして診療報酬が高いのかというような議論もございます。
 非常に専門的な問題があります。そういう点については、いろいろ専門家の方々の御意見を聞きながら、現状よりも一歩でも二歩でも進んでいく。そして、今の時点においてあるべき改革というもの、そして、給付の陰には必ずどこかで負担してくれる人がいるんだ、お互いが支え合うんだという気持ちで、これから、偏らない、国民のできるだけ理解と合意を得られるような抜本改革の方策を探るのが政府の責任ではないかと思っております。
福島委員 現在、我が国は、長期にわたる経済の低迷に苦しんでいるわけでございます。その原因の一つとして、個人消費というものが低迷しているということが指摘をされている。
 今回の改正によりまして、保険料の負担は総報酬制のもとで千分の八十二へと引き上げられ、また、窓口の負担も、サラリーマンの場合、二割から三割に引き上げられるわけでございます。医療保険財政の維持のためにはやむを得ない選択である、そのように認識しておりますけれども、平成九年の医療制度改革のときには、景気に対してマイナスの影響を与えたという指摘がなされているわけでございます。
 今回のこの改正が、改革が、我が国の経済に与える影響について、総理大臣はどのように見通しておられるのか、また、それに対してどのように対応していこうと考えておられるのか、お示しをいただきたいと思います。
小泉内閣総理大臣 患者並びに保険料を負担する人々の負担を上げるということは、当事者にとってみれば可処分所得が減るわけですから、それは消費の点においてマイナスの影響があるんじゃないか、現在、景気が低迷している中で、個人消費を喚起するということを考えれば、これはデフレ効果をもたらすという心配もございます。
 しかしながら、他方、厳しい財政状況の中で、そのような国民一般の負担を減らすというと、関係ないと思われますが、税金の負担をふやさなきゃならない。これも考えようによっては、税金の負担をふやすということは、直接患者さんとか保険を負担している方々にとっては自分たちの負担を抑えて公費を投入すればいいじゃないかということでありますけれども、公費というのは結局税金ですね。これは、税金、どうやって調達するんだという、これも負担には変わりないわけです。
 そういうことを考えますと、私は、むしろ経済全体、財政全体を考えて、これから経済活性化の方向の中で医療保険制度というのはどうあるべきかという点を考える必要があるんじゃないか。一部だけ見て、この部分だけ負担が多いから消費に影響があるということでなくて、考えてみれば、経済全体を活性化する中において景気回復、デフレ対策をするということが、ひいては国民全体の経済活性化策になり、これがこれからの日本のあるべき経済活性化策の中で重要ではないか。
 ですから、一部の、患者さんの負担が多くなるからこれはデフレ効果をもたらすという点も私は否定しませんが、むしろ全体の中の視点が大事ではないかと思っております。
福島委員 次に、昨年から、経済財政諮問会議また総合規制改革会議等に、社会保障制度への市場原理の導入に向けてのさまざまな提案がなされております。医療、介護、保育サービス分野への株式会社の参入であるとか、医療保険における民間保険の活用といったような提案でございます。
 こうした提案が日本経済再生の処方せんとして挙げられておりますけれども、私自身は、日本経済の低迷の原因はもっと別なところにあり、こうした処方せんで解決するわけではない、そのように思っておりますし、また、株式会社の医療への参入ということは、日本の医療にとってはマイナスにしかならない、そのように確信をいたしております。
 総理は、このような提案に対してどのように認識しておられるのか、お考えをお聞きしたいと思います。
小泉内閣総理大臣 医療制度というのは、自由市場経済の中でも、一般の経済活動と違って、必ずしもなじまない点もあると思います。特に公共性を重視するということで、一般の経営と比べれば、利益本位というよりも、いかに人間の生命を扱うかということでありますから、必ずしも経済合理性だけで割り切れるものじゃない。
 特に、公費の負担が多いということを考えますと、非常に規制の多い分野であります。税金が使われているという面から見れば、監視という点をとってみても、一つ一つ、監視という、あるいは国民の自由な面と規制の面というものをどう調整するかという問題もありますので、せっかくこれまでかち得てきた医療制度が、競争の分野にさらされるとなると、今まで獲得してきた制度に穴をあけられるということになれば、既存の制度の中がいいと思っている方にとってはある程度既得権が奪われるという点もありますから、その点はなかなか難しい問題ですが、私は、そういう中でも、国民というのは最近多様性を望んでおります。もっとわかりやすく、病院間の競争あるいは情報公開、そういう点を考えますと、規制改革も必要ではないか。
 福祉の分野におきましても、国の関与が強いと言いながらも、むしろ民間の創意工夫を生かす道もあるのではないかという点も必要であります。最近では、民間企業は、利益を追求して公共の福祉を考えないという考えから、むしろ利益を追求しながら公共の利益を考えている企業もたくさん出てきているではないかという考え方からすれば、むしろ、今まで民間の参入を阻んできた規制の面についても、それぞれ考えてもいい時期に来ているのではないかというふうに私は思っております。
福島委員 後段の、さまざまな競争を進める、これは私は反対ではありません。しかし、前段の既得権益であるからという考え方には賛成しかねます。そういうことではなくて、冒頭にも申しましたように、どういう医療を目指すのか、そこのところから翻って物事は考えるべきである、私はそのように思っております。
 時間もありませんので、もう一つお聞きをしたいと思います。
 総理は、三方一両損ということを当初おっしゃられていたわけでございます。医療機関、患者、そして一般の被保険者が負担を分かち合う。昨年の議論を通じて、それだけではなくて、政府自身も真摯に痛みを分かち合うべきであるという議論がなされたというふうに思います。総理も、四方一両損という言葉を述べられたことがあったのではないかと思っております。
 負担を国民に求める以上、政府も、行政の効率化、例えばレセプト請求の効率化、審査の効率化、社会保険庁のあり方の見直し、こういった点についての取り組みをさらに進める必要があると思いますが、総理の御見解をお聞きしたいと思います。
小泉内閣総理大臣 三方一両損という言葉がいいかどうかはわかりませんが、私は、現状の医療制度を改革するという場合においては、医療提供側あるいは診療側、支払い側、それぞれが負担を分かち合うという点からこの言葉を使ったわけでありますが、ひいては、一番プラスになるのは国民全体である。
 ということは、できるだけ給付は厚く負担は薄くという考え方で多くの国民は医療制度の改革をしてほしいと望んでいる気持ちはわかりますが、この、だれでもどこでも、できるだけ負担が軽くお医者さんに診てもらうという現在の国民皆保険制度を維持することができる、しかも、高齢少子社会においても持続可能なこの医療保険制度を維持できるということが私は国民全体の利益にかなうと思っておりますので、現在の医療制度、このままではとてももたない、高齢者がどんどんふえる、若い世代がどんどん減っていくということを考えてみれば、現状では、このまま改革せずに今の制度を維持していくとなるとどれだけ税負担をしていいかわからないということを考えますと、私は、この三方一両損という言葉を使ったのは、結局、国民全体が一番プラスになるんだ、国民全体が利益になるんだという意味で使った言葉であるということを御理解いただければありがたいと思います。
福島委員 時間が過ぎましたので、以上で終わります。ありがとうございました。
森委員長 次に、釘宮磐君。
釘宮委員 小泉総理とこうして議論するのは、私は、くしくも五年前、当時参議院の厚生委員会だったんですが、そこでこの医療保険改革関連で質疑をしたことを思い出すわけであります。
 採決がああいう形で行われて大変残念な結果に終わったわけですが、私どもは、とにかく総理にここできちっと国民に約束をしていただかなきゃならない、そういう思いできょうは審議に参加をさせていただいた次第であります。
 総理、ちょっとお疲れですか。私、声がよく聞き取れないんで、少し元気を出していただきたい。まずそのことを冒頭にお願いをしておきたいと思います。
 まず、医療関連の質問に入る前に、私、ちょっと総理にお聞きをしたいことが幾つかございます。
 まずその一つは、ちょうど去年の今ごろ、まあ、日本は、今はワールドカップで盛り上がっていますが、去年は小泉フィーバーで盛り上がっていました。総理、なぜあなたがあれほど国民を燃えさせるものをつくることができたのか、自己分析していただけませんか。
小泉内閣総理大臣 まず、予想外という面があると思いますね。
 小泉というのは自民党の少数派だ、小泉の意見というのは自民党の多数派は受け入れないだろう、総裁選挙になれば結局国会議員の多寡が勝敗を大きく左右すると。今の自民党の状況を考えると、自民党の主流、多数派は、昨年ですよ、昨年時点で考えれば、国会議員の数で考えれば小泉を支持するグループは圧倒的に少数だ、しかも過去二回負けている、あの程度の票しかとれない、今回も似たり寄ったりじゃないかというのが総裁選立候補時点での大方の予想だったと思います。それが、選挙戦始まっていくうちに、だんだん様子が違ってきたな、事によるとという気持ちがあったと思うんです。
 実際、選挙結果というのは、大方の予想を覆して私が総裁に当選することができた。これが、意外性ですね、いつでも、どんなレースでも、別に競馬のことを言っているわけじゃありませんけれども、本命が入るよりも、ダークホースといいますか、穴が入った方がおもしろいという点があったと思います。まず、予想外だったという点。
 それと、この小泉の少数意見は、結局、総理・総裁になれば多数意見にひっくり返されるんじゃないか、しかしながら、この少数意見がどこまで自民党に通ずるか、そういう期待もあったと思います。
 同時に、自民党、長年政権を担当してきた、飽きがきていた。やはり政権交代というのは日本にも必要じゃないかと。
 私は、改革路線を進めて、この実績を上げることを最優先課題でやってきましたし、今でもその考えに変わりありません。だから、この私の進める改革路線に、私を支持してくれた自民党、与党が支持してくれるということが私の第一優先度であります。しかしながら、あの総裁選挙で掲げた方針をつぶす方に自民党なり与党が回すんだったらば、私は自民党をぶっ壊すと言ったんです。その考えは今でも変わっていないんです。ところが、大方の予想に反して、自民党、与党は、私の少数意見を今や多数派意見として受け入れて協力してくれています。
 無党派層もそうだったと思います。自民党を壊してくれるんじゃないかという期待があったと思うんです。
 しかしながら、現状を見ても、私は、ポピュリズムという批判がありましたけれども、ポピュリズムなんていうことは私の改革路線に一つもないんです。なぜならば、痛みを伴う改革、当面は少しは我慢してくれと言ってなった総理・総裁であります。現に、多くの国民が医療費を二割から三割負担、みんな嫌がるでしょう。大衆迎合、ポピュリズムだったらこんなことしませんよ。
 当時は、道路公団民営化というのは、与党の総裁候補、一人も言いませんでした。できっこないと言いました。第三者機関、国会の同意、民主党も反対したでしょう。ところが、自民党は賛成してくれていますよ。協力してくれるんです。だから、いわゆる、壊す必要ないんですよ、改革路線。
 そういう点から、ああ、壊してくれる、自民党とけんかしてくれるという期待に反して、むしろ、自民党が私に協力してくれるということに対して多くの不満があるんじゃないか。これもやはり熱気が冷めた理由だと思いますが、これから見てくればわかります。
 昨年就任した時点と、私の決意と改革路線は全く変わっていない。むしろ、変わったのは自民党、与党である。現に、総裁の、以前の経緯を見れば、私は当選できないと思われたころ、自民党の多数派も公明党も保守党も、小泉が自民党総裁になることは好ましくないということを公言していたんですから。ところが、いざ総裁になってみれば、今喜んでみんな協力してくれるじゃないですか。
 そういう点が自民党を壊してくれるんじゃないかという期待に反しているから、自民党に妥協したんじゃないか、抵抗勢力に妥協したんじゃないかと言いますが、それは物事をよく見ていない人の批判者の言うことであって、よく見れば、むしろ反対すると思われていた抵抗する勢力も、今は小泉改革に理解を示して協力してくれる。この協力していることに対しておもしろくないと思っている人が随分いるのではないかと私は思っております。
釘宮委員 総理、私は質問をたくさん用意していたのに、あなたが一人でしゃべっちゃって、もう八分もとられちゃったので、以下、簡潔にお願いします。
 それで、私は総理に若干の思い違いがあると思うんです。
 結局、総理がなぜあの選挙で勝って、その後、支持率が勝ったときよりも上がったでしょう。なぜ上がったか。それは約束を果たしたからなんですよ、あなたが。そうでしょう。要するに、組閣についても、派閥均衡はやらない、一内閣一閣僚、国債三十兆円枠の堅持。やはり一つ一つあなたが約束を果たしてきたからなんですよ。
 だけれども、今、支持率がここに来てどんと落ちた。それはなぜか。あなたが約束を果たしてないからですよ。だんだん自分を守りに入った。私も、去年あなたがやっているときに、これは小泉さんは捨て身だなと。今日本の国民は、捨て身の政治家を求めているんですよ。あなたは、今明らかに守りに入っちゃった。それがあなたの支持率の低下につながっている。
 これは鈴木さんの問題への対応もそうですよ。それから、あっせん利得処罰法の問題についても、総理が必ずしも指導力を発揮したとは思えない。また、我々が今提案している、この鈴木問題の中で公共事業を受注した業者はとにかく一年間これを辞退させようじゃないか、これについてだってあなたは一言も言及しないじゃないですか。
 要するに、国民にしてみれば、小泉純一郎という総理が、自分たちの思いを、そこで自民党をぶっ壊してでもやると言ったから、これに対して大変大きな期待を持ったんです。私はこのように思うんです。
 きょうは、道路公団民営化の第三者機関の人事もあるようでありますが、これはやはり国民見ていますよ。
 私は、質問をしようかと思ったけれども、総理が一人でどんどんしゃべるから、もう次に行きます。
 総理、私はちょうど五年前、総理とやりとりの中で、この医療制度抜本改革、これは絶対やる、すごいけんまくであなたは言ったんですよね。しかし今、五年たって、私が同じ議論をここでしているわけです。これは本会議でも私言いました。やはり今回のことについては、当時、一割から二割、そして負担増を国民にお願いした、その見返りに、総理は当時厚生大臣として、必ず抜本改革をやるという約束をしたわけですよ。それがいまだに果たされていない。今度はまた二割から三割だ。国民はそれで納得すると思いますか。これは余りにも国民をばかにしていますよ。
 私は、そういう意味で、ここはひとつ総理に担保を出してもらいたい、国民に対して。この前、私が委員会で坂口大臣に、担保を出せと言ったら、大臣は、私の体でどうでしょうかと言ったんです。では総理、あなたは何を出しますか。
 そして、私はこの際総理にお願いをしておきたいんですが、私の体を担保に出すと言った厚生大臣をよもやかえないでしょうね。組閣がこの後あると言っている。もしこれをかえるようなことがあるとすれば、これは国民に対する背信ですよ。まずそこをきちっと、総理、答えてください。
小泉内閣総理大臣 議員も御存じだと思うんですが、改革をなし遂げるためには国会議員の過半数の支持を得ないと、ただあるべき姿を提示しても法案が成立しませんね。まず国会の中で過半数を得る努力をする。その以前に、与党の中で支持する努力をする。これが政治の中でいろいろ難しい点もあるし、大事な点があると思います。
 私も厚生大臣の経験からして、まず厚生省案を出す、そうなりますと、与党の中でこれを支持する努力、支持される努力、理解を得る努力、これが大変大事であります。そういう中で、やはり一番大事なのは改革についての総理大臣の指導力だな、そう思いました。
 今回、自民党の中でも、今提案しております健保法案につきまして非常に強い抵抗があったのは事実であります。従来だったらば、恐らく党の了解を得ることができなかったでしょう。しかしながら、最終的には大方の議員が理解を示してくれて賛成に回ってくれたからこそ、今こうして審議されておるわけです。
 今回、坂口大臣も決意を新たにいたしまして、この医療抜本改革に向けて献身的な努力をしていただいております。私は、その坂口大臣の決意なり今までの考え方を尊重して、何としてでも抜本改革案に向けてこれから大方の議員の理解、協力、賛成を得て、何としてでも今年度中にあるべき改革の姿を提示してもらってこの改革の歩みを進めていきたい、断固たる決意で臨んでいきたいと思っております。
釘宮委員 質問に答えてくださいよ。
 私が言っているのは、坂口大臣が担保になるわけですよ、総理はどういう担保を出すのかということが一つ。
 坂口大臣が担保になる以上は、大臣がすぐやめちゃったら、これは今年度中に基本方針を出すんでしょう、作業は今から始まるわけですよ。それを今、この法案を通すときに約束した大臣が、この国会が明けたら組閣をやるのかどうかそれは知りませんが、きちっとそれを担保してくれるのかどうか、それを聞いているんです。
小泉内閣総理大臣 担保は、総理なり大臣なりの国会の場で発言していることであります。それを信じる信じないかというのは各人の自由でありますけれども、必ずやるということでありますから、この方針に変わりはありません。
釘宮委員 ほとんどそれでは五年前と全く同じじゃないですか。私は五年前、同じことを当時橋本総理に聞いたんですよ。橋本さんは最後まで答えなかったんですよ。私はそのとき橋本さんにこう言ったんだ、もしこれを、抜本改革をできなかったら、自分は総理をやめるぐらいのことを言ったらどうかと。
 国民にこれだけの負担をお願いしておいて、総理が言った発言がどうだ、そんな発言なんて今まで何遍変わったんですか。だから国民が政治不信をどんどん起こすんじゃないですか。
 私は、総理がきちっとした状況を出すまで、もう質問しませんよ。
小泉内閣総理大臣 国民に負担をお願いすると言ったって、医療費は、これは二割から三割にしなくたって国民は負担を感ずるんですよ。そこを間違えてもらっては困る。
 私は、小泉内閣が続く限り必ずこの改革は進めていくと言うんですから、それが担保です。
釘宮委員 最近の小泉総理は、そういうふうにしてはぐらかすんですよ。だからどんどん支持率が下がっていくんですよ。
 今、与党の中で過半数をとらなきゃならないと。それは、小泉内閣そのものが、自民党をぶっ壊してでもやると言った国民に対する思いをあなたが実現するんであれば、当時我々民主党があれだけあなたが所信表明をやったときも拍手したじゃないですか。それなら、なぜ我々と組むぐらいの、それぐらいの思いを持ってやろうとしなかったんですか。そういう意味では、ほとんどあなたのパフォーマンスだけだということを私はあえて指摘をさせていただきたい。
 そこで、私は、どうしても総理が今のこの担保を差し出さない、自分の言葉がそうだということをあえておっしゃっている、坂口大臣の留任についてもこれも明確になさろうとしない。そういう中で、結局国民が、また政治からだまされた、そういう思いを持つんじゃないか、このように思うんです。
 それで、もう一つ私は総理に、もう時間が余りありませんから、総理、明確に答えていただきたいんですが、総理は今回、二割から三割にサラリーマンの窓口負担を上げる、これが構造改革だ、こういうふうに強弁しておられる。私は、構造改革というのは、むだを省いて、税金を丁寧に使って、この成熟期に入った日本がこれから本当にやっていけるようなシステムに変える、これが構造改革だと思っていますよ。この前、坂口大臣もそういう認識で答弁をいただきました。そうであれば、なぜ二割から三割に上げることが構造改革なのか、そこをちょっと説明してください。
小泉内閣総理大臣 それでは逆にお聞きしたいけれども、民主党が、二割のままにして、どのようにこれからの改革案を出すのか。出していただければ検討しますけれども、私は、じゃ、税金投入するんですか。財政問題もあるんです。それと同時に、医療提供体制、どのように診療報酬体系を変えるのか。
 今回、診療報酬体系、初めてマイナス改定したじゃないですか。非常に抵抗が強い。いわゆる自民党の支持団体である医師会も大反対した。自民党の議員も決起大会に出て、反対反対と、大多数がこれに反対した。その中を、ようやく診療報酬引き下げ、予想外の引き下げに賛成してくれたじゃないですか。
 だから、二割負担だから国民負担がないなんというのは大間違いですよ。税金、どうやって負担するんですか、税金を投入しろということでしょう。じゃ、保険料、健康な病院に行かない人、医者にかからない人の保険料負担を上げるよりも……(釘宮委員「ほとんど質問に答えていないじゃないか」と呼ぶ)質問に答えているんです、これは。(釘宮委員「何がそれが質問の答えだ」と呼ぶ)質問に答えている。二割負担は国民負担じゃないと言っているから、そうじゃない、三割負担が国民負担で二割負担が国民負担じゃないというのは大間違いだと言っているんですよ。
 私は、だから、三割負担に上げても保険料をできるだけ抑える、税金投入を抑える、医療提供機関型の診療報酬体系を改正する、そういう中において全般的に考えようと言っているのであって、三割負担だから国民負担、二割負担に抑えるから国民負担がないなんというのは大変な誤解であるということを言っているんです。
釘宮委員 あなた、全く質問に答えていないんだよ。自分の論理をただ言っているだけじゃないですか。五年間、抜本再改革をやると言って先送ってきて、それをそのままに放置して、今度はまた足りなくなったから、負担を上げてくれ、それは構造改革だ、そんなことが通ると思いますか。それは、あなたがそういうふうに言ったって、国民はそんなものは理解できませんよ。だからみんな反対しているんだ。
 今、今回の四つの重要法案と言われている中で、健保法を一番国民はノーと言っているんですよ。それは、国民は決して、これからの高齢化社会ですから、負担をするのはやむを得ない、そう言っているんですよ。だけれども、約束を果たさないじゃないか、政府が。だから我々は反対するんだと言っているんですよ。そのことがあなたはもう見えなくなっているから支持率が下がるんだ。私は、改めてそのことを強く指摘しておきたいと思う。(発言する者あり)いろいろ言うなよ。
 それじゃ、総理、もう時間がなくなってしまったから、最後に。
 この後、本会議で、この健保法は参議院に行くんでしょう。そして、これは参議院の審議に入るわけですが、参議院の自民党の厚生関係議員、もうこれははっきり言いましょう、医師会の出身の方ですよ。この方は、参議院では修正を必ずやる、こう言っているんですよ。これは医師会の会合で言っているんですね。いいですか。修正の余地はあるんですか。総理、答えてください。
小泉内閣総理大臣 せっかく衆議院で可決された法案であります。このまま修正なしで成立させることを期待し、全力を尽くしたいと思っております。
釘宮委員 私は、この問題を、総理とこういう声を荒げてやるような問題ではない、そういうふうに思っているんですよ。総理も痛いところをつかれたからまた言葉を返す、それではだめだと思うんですよ。
 本当の意味で、やはり国民は今一番不安におののいていますよ、これ。一体どうなるんだ。いつもころころ変わっていく、そして約束したことは果たされない。だから、みんな自分の身は自分で守るしかないといってお金を使わなくなるんでしょう。だから預金だけがふえていくんでしょう、個人消費伸びないんでしょう。そこの原点を忘れてはだめですよ。去年の、あなたへのあの国民の熱い思いというのはそこにあったということを私はぜひ理解していただきたい、思い起こしていただきたい、このように思います。
 それで、最後に、これはもうあえて答弁を求めませんが、答弁してくれるのならお願いしたいのだが、少子化の問題というのは、今大変深刻ですよね。今、保育所の待機児童ゼロ作戦とかいろいろ支援策をやっています。
 私は、年間で今一万二千人の体外受精児が生まれているんだ。これは出生数の一%。これは今、保険適用ありませんから、全部個人負担でやっているんですね。七万人の人が挑戦して、一万二千人の子供ができている。五十万としたって三百五十億ですよ。これで、産みたくても産めない人たちが、子供が授かるわけです。これはぜひ、総理、やってみませんか。総理に、ぜひ。
小泉内閣総理大臣 大変専門的なことでありますが、今の御意見、いろいろ各方面から私も伺っております。検討してみたいと思います。
釘宮委員 どうもありがとうございました。
森委員長 次に、山井和則君。
山井委員 民主党の山井和則です。二十分間で四問質問をさせていただきたいと思います。私も少し早口になるかもしれませんが、小泉総理も、ぜひとも簡潔に前向きな答弁をお願いしたいと思います。
 まず最初に、先週金曜日、この委員会室におきまして強行採決が行われました。今の釘宮議員の質問にもございましたように、この健保法の改正案は四つの重要法案の中でも最も反対意見が世論調査でも高い法案であります。高齢者やサラリーマンの方々の自己負担をアップし、そしてそれによって受診抑制がかかって、本当に手おくれになって命を失う方も出てくるかもしれません。また、戦後最悪のこの不況のときにこういう自己負担増をやるということは、五年前の例を持ち出すまでもなく、ただでさえ今深刻になっている失業者の増加、自殺者の増加、家庭崩壊の増加に私はつながっていくと思います。そういう意味では、今回の法案は断固として私たちは許すわけにはいきませんし、強行採決に強く抗議をいたします。
 しかし、その中で、先ほどの釘宮議員の質問にもありましたが、何が何でも負担増反対と国民が言っているわけじゃないんです。そのためには抜本改革をやってほしい、そして同時に医療の質をアップしてほしい、そういうものが明確に出るならば、すべてが反対ではないということなんですね。それが見えないから、今みんなは反対しているわけです。
 そこで、各論について三つほどお伺いしたいと思います。
 まず、きょう、資料をお配りしておりますが、一番最初は社会的入院の問題であります。医療制度改革の中で、この四月の診療報酬の改定、さまざまな混乱と問題を現場に投げかけております。
 そして、私も、この政治の世界に入った一番大きなきっかけは、病院で、行き場所がなく長期入院しているお年寄りの方々のお世話を私も学生時代にさせてもらう中で、人生の終末がこんなことでいいのか、そういう本当に胸に突き刺さるような思いが一つの原点となって私はこの政治の世界を志しました。
 しかし、今回の改定によって、この図にもございますように、半年以上の長期入院で社会的入院と判定された方は一部特定療養費化されて退院を促進される、このことによってますます行き場所を失うお年寄りがふえてくるんです。
 手元にある資料、そしてこのパネルにもありますように、例えば、この二人のお年寄りは、五年、四年入院して、そして今、特別養護老人ホームに申し込んでおられる、ところが、特別養護老人ホームが満員なために病院で待っておられるわけです。世界じゅう探しても、介護施設があいていないからという理由で病院で待っている、そんな介護施設が不足している国なんて日本だけです。これは本人にとっても、また社会のコストにとってもよくないことは明らかであります。
 そして、何よりも、自宅にも帰れない、あるいは施設も満杯だという中で、たらい回しに遭うことが一番お年寄りにとっては苦しいわけです。今回の診療報酬の改定、長期入院を減らしていくという趣旨には理解できないわけではありませんが、それによってお年寄りがたらい回しに遭って死期が早まることがあっては絶対になりません。
 小泉総理、このことによって、この改定によって、お年寄りがたらい回しに遭わない、介護難民が生まれない、行き場所のなくなる高齢者の患者が出ないということをこの場でお約束いただきたいと思います。――いや、ちょっと、きょうはだめですよ、それは。総理のためにきょう時間をとっているんですから。大臣にはこれ聞いているんですから、今までから。(小泉内閣総理大臣「大臣に先に答弁させますから」と呼ぶ)いや、だめです。それはだめですよ。当たり前じゃないですか、今までからこのことは大臣には聞いているんですから。ちょっと待ってください。何のためにきょうやっているかわからないじゃないですか。
森委員長 坂口厚生労働大臣。
山井委員 ちょっとそれはだめです、それはだめです。そんなのじゃ何のためにやっているかわからないじゃないですか。これは事前通告していますので、この質問は。
小泉内閣総理大臣 大変専門的な領域に入るものですから、今の御意見を……(山井委員「専門的じゃないですよ」と呼ぶ)努めて改善策を講じているわけで、具体的な点については、厚生大臣せっかく出席しているわけですから、厚生大臣に答弁していただいた方がいいなと思いまして……(山井委員「いや、事前通告でこの質問は総理にと言っていますよ」と呼ぶ)言っていますが、それは、だれが答弁するかという点について、私もこうして答弁しているわけです。
 今の御意見、わかりますよ。そういう改善策を今講じているんですから。その具体的な改善策については、厚生大臣がじかに答弁された方がいいでしょう。
森委員長 坂口厚生労働大臣。
山井委員 いや、厚生大臣は結構です。きょうは総理の総括質疑ですから。
森委員長 私の指示に従ってください。
山井委員 それはちょっとおかしいんじゃないですか。事前通告もしていて、時間がないんですから。(発言する者あり)
森委員長 質疑を続行してください。
山井委員 今回の措置によって、たらい回しに遭うお年寄りがなくなるように、介護難民と言われる、病院で介護施設を待っているお年寄りがなくなるようにするということを、小泉総理、お約束ください。
小泉内閣総理大臣 そのような措置をするように、今、改善策を講じ、いろいろ検討しているわけであります。
山井委員 今の答弁を、本当に、お聞きしましても、余りにもいいかげんです。
 苦しい戦争を経て、本当に、日本を支えるために頑張ってこられたお年寄りが、今、痴呆症や寝たきりになって、そして、病院から追い出されて自宅に戻っても、家族が介護できないということで、またどっかに行かれて、ピンポン玉のようにたらい回しになって死期が早まっている例というのが多いわけです。そういうことがなくなるように、小泉総理、坂口大臣、これからも対応していただきたいと思います。
 そして、次の質問に移らせていただきます。
 今回、情報開示の問題が医療制度改革の中でも大きなポイントとなっております。そして、このことに関しては附則の中で述べられております。附則の第二条第六項に、医療情報の開示や評価についてということが言われておりますが、これも、いつまでにやるかということも明確になっておりません。
 そんな中で、日本では今、医療事故において二万人以上の方が亡くなっているというふうに推定をされています。この中で、具体的に私、一つお伺いしたいと思います。
 やはり、今回の三割負担をする前にやることがあると思います。医療のむだな部分をどうやって省いていくか。そのためには、しっかりとレセプトを開示して、そして、患者さんが、どういう医療が幾らお金をかけて自分に行われているのかということをきっちりチェックしていくことが必要です。そのためには明細つきの領収書をもらうという運動も盛んに行われていますが、明細つきの領収書もまだまだ十分もらわれていないんですね。こんな、どんな医療が行われているかという中身もわからないのに負担増だけというのは断じて許せないと思います。
 そこで、具体的に、この資料の二ページを見てください。
 まさに小泉総理が厚生大臣であった五年前に、小泉総理の九七年の予算委員会の答弁で、この新聞記事にもありますように、病院で死んだ子供のレセプトを親が見れない現状は憤慨にたえないという当時の小泉厚生大臣の英断によって、遺族へのレセプト開示になりました。このことに関しては本当にすばらしい英断だと思っております。
 しかし、残念ながら、実際、壁があるんですね。これは、次のページ三にもございますように、開示請求をすると、医療機関の方に、だれだれの御遺族に開示されましたよという報告が行くことになってしまっているんですね。となると、やはり、これがわかってしまうと、医療機関が自分たちの治療が疑われているんじゃないかと、そういうふうな疑心暗鬼にお互いになって関係が壊れる、そういうこともあって御遺族としたらなかなか請求できないんです。
 先日答弁いただいた内閣府の個人情報保護法案の担当の審議官の方も、こういうレセプトを請求したというような御遺族の行動に関しては個人情報である、これを本人の許可なく知らせるのは個人情報保護の観点からも問題があるということを答弁されています。
 そして、小泉総理、これは私、防衛庁のリスト問題と一緒だと思うんですね。要は、防衛庁に情報を請求したら、だれが請求した、どんな身元の人間かというのを一々調べられる、チェックされるとわかったら自由に請求できないです。
 そこで、小泉総理にお願いがあります。五年前の英断に続いて、今ここでやっている、遺族がレセプト開示を請求したらそれが自動的に医療機関に行くというのをなくして、逆に、本人の了解なくしては開示請求したということを医療機関に言ってはならないという通達をぜひとも出していただきたい。そうすれば、もっと自由にレセプトというものが見れると思いますし、それによって、患者さん、御遺族と医療機関との信頼関係が上がっていくし、また、不正診療、過剰診療、そういうことをやられる方は少ないと思いますが、そういうのも減っていくと思うんですね。
 小泉総理のおかげで五年前にレセプトの遺族への開示が実現したわけですから、もう一歩ここで、小泉総理、もうそういうことはこれからしてはならない、遺族の了解なくしてはならないということを、個人情報保護法案を提出されている政府の責任者として、ぜひとも御答弁願いたいと思います。
小泉内閣総理大臣 情報の開示とプライバシーの保護、情報の管理、これを両立させるということは非常に大事だと思っております。特に病名につきましては、家族の間でも、患者本人と家族の場合では違う場合があるわけです。そういう点から考えて、今、委員の指摘される方向で見直すように検討しているところであります。
 特に、遺族へのレセプト開示につきましても、御指摘のような批判もあるものですから、それをどのように具体的に見直していくかということを今検討しているところでありますので、私は、しばらく時間をいただく必要があるのではないか。
 特に、情報開示の点で、親切だと思ったところが、人によっては親切と受け取らない面があるんですね。私は厚生大臣をしたときに思いがけない意見に会ったんですが、それは、年金をもらう方が、年金額を通知してほしい、自分はどの程度年金があるんだということで、厚生省としては親切な気持ちで年金の額を通知していたわけです。ところが、その通知を受ける中で意外と多かった不満は、この年金の通知が家族に見られるのが嫌だ、だから、この年金額が何とかわからないようにしてくれないかという要望が多かったものですから、厚生省としては、年金に、今ではちゃんと、本人しかわからないように、シールを張って、家族でも見れないようにしているんです。
 年金が本人に行った、家族も見たい、そのシールをはがすと二度とこのシールがつかないようになっている。だから、本人しか見ることができないようにしてくれという要望にこたえて、厚生省は、シールを張って、本人しか見られないようにしたんです。
 だから、情報の開示と情報の管理、個人のプライバシーの保護というのは非常に重要だと思っています。今言った、この情報の問題、レセプト開示の問題。御意見を踏まえて、検討して結論を出したいと思っております。
山井委員 今の小泉総理の答弁は逆だと思いますよ。だからこそ、勝手に、開示を請求したという情報を医療機関に本人の了解なく知らせてはならないという結論になるわけですよね、うなずいておられますが。いや、だから、こういうことは、本人の了解なく知らせることはしないという通達を出していただきたいんです。それは小泉総理の今の答弁の趣旨なんですが、小泉総理、ちょっと。
小泉内閣総理大臣 それは私はいいことだと思っております。その方向で検討したいと思います。
山井委員 ありがとうございます。
 そういう本当に質のアップというものをしっかり一つ一つやっていく、そうしないと、自己負担増に対する国民の納得は当然得られないわけです。
 次に、この医療に対する問題点の大きな一つのポイントが、日本の救命率が非常に低いということであります。この質問に移らせていただきたいんですが、資料の次の四ページを見てください。
 お医者さんが乗っているドクターカーというものと、救急救命士が乗っている救急車とでは、こういうふうに心肺停止患者の救命率が非常に違います。これは、この救命効果検証委員会でも、救急救命士が、三点セットと言われる、医師の指示なし除細動や気管内挿管、薬剤投与というものができないからだということが報告書でも明らかになっておりまして、次の五ページにもありますように、諸外国に比べて、日本の救急救命士は多くの研修を、同じぐらいの研修をしているにもかかわらず、ここの下線にありますように、指示なし除細動も薬剤投与も、そして気管内挿管もできておりません。ここに出ておりませんが、韓国でも、もうこのことは日本よりも進んでいるわけです。
 このことに関しては、坂口大臣のリーダーシップのもと、今、検討会で研究をされているわけですけれども、人の命にかかわる問題で、十年間、救急救命士法ができてから、ずっと懸案になって、先延ばしされてきているんですね。ぜひとも、やはりここで小泉総理の英断によって、今回の検討会を契機に早急にこの救急救命士の三点セットの拡大、業務拡大というものをやっていくんだ、そして救えるのに救えない命を減らしていくんだという御決意、小泉総理にこの場で聞かせていただきたいと思います。
小泉内閣総理大臣 救急救命士と医師との関係については、救急救命士を導入する際にも非常に多くの議論が出たところであります。私も承知しております。ようやく救急救命士制度が今定着してきて、多くの患者さんの命を救っている。今御指摘の意見を踏まえまして、この点については、医師免許を持たない救急救命士がこれだけのことをしていいんだろうかという問題もありますが、要は救急患者の命を救う、これが一番大事だと思います。そのためには何が望ましいかということを考えて、今言った点も含めて検討して、適切な、救急患者本位の立場に立って、改善策を講じたいと思います。
山井委員 ちょっと余りにも漠然な答弁だと思います。御存じのように、もう十一年前からこのことは懸案になっているわけです。
 そして、繰り返しになりますが、この五ページにありますように、欧米及び韓国と比べても明らかに日本の救急救命士の方の業務範囲は狭くて、それによって、救えるはずの命が救えていないという面が、この報告書でももう一年以上前に出てきているわけですね。
 はっきり言いまして、何でも検討会に任せるということでは、政治家は私は要らないと思います。やはり本当に医療改革をする気があるんであれば、この十年間も放置されている救急救命士の業務拡大をやはりやっていくんだということを、小泉首相ははっきりと決意を示してもらいたいと思います。そうしないと、何でも検討会に任せていく、検討会ももちろん重要だと思いますが、やはり一歩踏み出すところは賛否両論もある問題なわけですから、坂口大臣のリーダーシップ、そして小泉総理のリーダーシップだと思います。
 小泉総理、やはりもう十一年もある意味ではほったらかしにされている問題なんです。人の命にかかわる、一分一秒を争う問題ですので、小泉総理、ぜひとも前向きな決意を聞かせてください。
小泉内閣総理大臣 よく聞いていただければわかると思うんですが、私が言っているように、救急患者の命を救う、これが大事なんですから、その視点に立って今あるべき改善策を講じている、これが私の決意であり、その方向に沿って、私は着実に進んでいくべきだと思っております。
山井委員 そういう、政治家が責任逃れをして問題を先延ばしにしているから、この問題が十年以上も放置されているんです。坂口大臣はリーダーシップを持って今検討会をやってもらっています。しかし、それがもう十年以上もずっと、こうなっていくわけですね。
 それで、小泉総理、先ほどの釘宮議員の質問にも続きますが、今回の抜本改革、一つの一番重要なポイントは、だれがリーダーシップをとるかということだと思います。私たちは三カ月かけて審議をやってきました。多くの場合、坂口大臣が、抜本改革、こうやっていきたいということを答弁されました。その大臣がかわるということがあったら、全然私たちの審議の意味がなくなるじゃないですか。私も委員会で坂口大臣にこのことを質問しました。そうしたら、小泉総理が決めることだとおっしゃいました。公約を守らないと政治の信頼は崩れます。小泉総理も、就任当時、一内閣一閣僚とおっしゃいました。五年前の医療改革のときに、その後抜本改革が、約束したにもかかわらず、当時の小泉厚生大臣、できなかったのは、厚生大臣をかわったからでしょう。
 一番重要なポイントです。これは譲れません。坂口大臣はやる気満々ですから、どうか、小泉総理、医療制度を抜本改革するという担保を、坂口大臣を留任させるという答弁で示してください。
小泉内閣総理大臣 抜本改革の決意には変わりありません。
山井委員 答えになっていないですよ。本気でやる気なんですか。だれがリーダーシップをするんですか。医療制度の抜本改革の途中でそのリーダーをかえる、そんなことをやっておきながら、本気で医療制度改革をやる気があるとだれが信用するんですか。もっと誠意ある答弁をお願いします。国民が見ていますよ。そんなことも約束できないんですか。
小泉内閣総理大臣 私は、誠意を持って答弁しているつもりですよ。坂口大臣を信用して、抜本改革をやろうという今決意で取り組んでいる。私の内閣も抜本改革を目指している。総理大臣の私が言っているんだから。信用するしないはあなたの勝手ですが、私は抜本改革をやる。
山井委員 小泉総理、今約束してくださいましたね。坂口大臣、信用してくれとおっしゃったということは、坂口大臣とともに抜本改革をやっていくということですね。そういうお約束と受けとめます。どうか、坂口大臣を、私たちの委員会での質疑を生かして抜本改革を、坂口大臣、リーダーシップを持ってやっていってください。それがせめてもの担保であります。
 以上、本当に国民の命と生活がかかわっているこういう重要な法案が強行採決されたことを、非常に私は怒りにたえません。そして、このことによって、失業者、自殺者、家庭崩壊がまたふえていく危険性があります。
 小泉総理に再度申し上げます。どうか、国民の痛み、お年寄りの方々の痛み、患者さんの痛みに本当に心を注いで、これによって泣くことがないように、やはりこの改革案、私は撤回をしていただきたいと思います。
 以上です。ありがとうございました。
森委員長 次に、五島正規君。
五島委員 民主党の五島です。
 時間がございませんので、総理に早速質問をさせていただきたいと思います。
 先ほども指摘がございましたように、九七年の健康保険法の改正に際しましては、当時、総理は厚生大臣をやっておられました。その当時、医療制度の抜本改革は必ず実施する、しかし、健保財政そのものは非常に破綻に瀕している、したがって、この保険給付に関する修正、これを先行したい、そういうふうにおっしゃったと思います。そして、今回もまた全く同じことが言われています。
 問題は、そうした議論がどうだったかということではなくて、前回、五年前のこの健康保険法の質疑に際して、当時、厚生大臣やっておられましたが、厚生省が議会に対してお示しいただきました将来の医療費の推計、二〇〇〇年度には三十八兆円になります、二〇一〇年には六十八兆、二〇二五年には百四十一兆になるというデータでもって議論をいたしました。
 ところが、この制度が実施されて半年後には、厚生省、二〇〇〇年には三十一兆円、二〇一〇年には五十四兆円、二〇二五年には百四兆円と、二〇〇〇年の段階で七兆円、二〇一〇年の段階では十四兆円、二〇二五年の段階では三十七兆円の予測値を下方修正されました。
 そして、実際の経過はどうだったか。二〇〇〇年は医療費総額は二十九兆一千億でございますから、その当時のこの議会において議論された数字から比べますと、約九兆円低い数字でおさまった。今総理は何か診療報酬の改定で今回初めてマイナス改定されたと言われているけれども、この予測値から見ていくならば、明らかに医療費の抑制というものは、厚生省の資料で見る限り、抑制されてきているということになります。
 問題は、そうではないだろう。総理も長年厚生大臣をやってこられた。だから、前回、五年前の質疑のときだって、こんな数字にならないという予測を持ちながら、あるいはそういうデータを持ちながら、あのような健康保険の保険料の抜本改革、制度の抜本改革に先行した保険制度の改革を言われたのではないか。
 今回また、二〇一〇年には四十二兆円、二〇二五年には七十兆円という数字を出しておられる。果たしてこれが信用できるのか。私はその点について、これまでの、この間、厚生省が毎年のように出してこられた数値が全然違っているというところからも、なかなか信用できない、そう言わざるを得ません。
 総理、一体こうしたでたらめな推計をもとにしてこの健康保険の抜本改革をやらなければいけないという理由はどこにあるのか、それをお伺いしたい。
 あわせて、今回の診療報酬の改定。これもまた、厚生族のドンである小泉さんが、どの程度の実質上の引き下げになっているかを御存じないわけはない。二・七%というけれども、平均しても倍以上になっている。そうだとするならば、本当に来年度に医療の抜本改革をするのであれば、少なくてもこの健康保険の三割負担というものは凍結をして、それとセットで検討するということができるだけの財源は十分あるのではないか。それをあえて先行させるというのは、五年前と同じことをまた考えておられるのではないかと思うわけですが、その辺、いかがでしょうか。
小泉内閣総理大臣 その推計値がそのとおりにいくかというのは、経済の変化によって、必ずしもその予想なり推計が当たるとは限らない、これは御指摘のとおりだと思います。それは、国民所得の伸びによっても違うし、あるいは医療費の伸びによっても違う。確かに推計どおりにいくということは、私も断定はできません。
 しかし、もう長年五島議員とは、この委員会の場でも、厚生大臣当時、議論しておりましたし、医療における見識というものは私も敬意を表しておりますし、もっともな御指摘も多いわけでありますが、今回も、診療報酬の引き下げ幅が少ないという議論と、今五島議員指摘したように、むしろ倍以上引き下げているんじゃないかという意見もあるぐらい、見方によってすごい違うわけです。
 とりようによっては、それだけ大きなマイナス改定をしたということ自体、医師会が反発するのも無理もないぐらい大胆なことをやってのけたわけですよね。これはやはり、一つの踏み込めなかった領域に改革の手を入れたということも言えると思うのであります。
 と同時に、私は、三割負担は過重な負担、過重な負担と言われますが、これは、国民健康保険ではもう既に三割負担は実施されているわけでありますし、今回、三割負担を健保でもお願いすることによって、乳幼児の負担も軽くなるというような制度も設けております。
 そういう点からかけて、私は、むしろ、三割負担によって医療費の伸び率が低くなるんだったらば、保険料の負担も下げることができる、あるいは税金の投入も抑えることができる。そういう点を考えれば、もし予想以上の費用の節減合理化が成ったのならば、私はほかのいい点を伸ばす方にも財源が使えるんじゃないかという点もあるわけですので、これは推計の段階で、どの程度の推計が当たるかわかりませんけれども、私はいろいろな、今議員指摘されたような指摘も踏まえて、今後、合理化の中で、あるべき改革というものもどしどし提言していただければ、厚生省としても、また政府としても、積極的に検討することにやぶさかではございません。どしどし建設的な提言をしていただければありがたいと思います。
    〔委員長退席、野田(聖)委員長代理着席〕
五島委員 診療報酬の改定が大幅であったということを問題にしているわけじゃない。問題は、そうした中において、今直ちに七割給付に落とさないと保険財政が破綻するという、その財源的な根拠がおかしいと言っているわけです。
 また、五年前の経験から言うならば、こうした健康保険の給付の変更というところで余裕をつくってしまったら、恐らく小泉内閣といえども、厚生大臣のときにそうでしたから、本当に来年度中に医療の抜本改革するのか。我々野党としては、この五年間の経過から考えると、このことについては私はなかなか信用できない。
 先ほど釘宮議員から大臣の体が担保だと言われましたが、私は大臣の体が担保やと思っていない。まさに皆さん方が担保に出すべきものは、こうした財政そのものが、健康保険法そのものの改定を、抜本改革ができない限り何ともならないという状況で担保を提出してもらわないと、国民は納得できないと思うわけですね。そのことを総理に強く改めて申し上げますし、その点についての御見解もお聞きしたいわけでございます。
 ぜひあわせてお願いいたしますが、ただ、時間がございませんので、もう一問、この問題との関連の中で総理にお伺いしておきたいと思います。
 去る六月の三日、「平成十五年度予算編成の基本的考え方について」と題する資料が、財政制度審議会の財政制度分科会が建議として塩川財務大臣に提出しました。その内容は、まさに昨年議論された内容と全く一緒であり、例えば、老人医療の伸び率管理、あるいは医療費の伸びを経済の伸びと乖離させない、公的医療保険制度の守備範囲の見直しや民間保険の活用の促進といったことが並べられている。
 これは、自民党の中においても議論され、果たして医療というものが、先ほど総理は経済成長と云々とおっしゃったけれども、医療の給付と受給というのは、私は、余り経済成長と関係ない、統制経済そのものの中でやられてきている、そういうものとの間において整合性があるのかという議論がさんざんあったはずです。また、当委員会においても、厚生大臣自身は、必ずしもこの意見にくみしないということもおっしゃってきている。
 この財政制度の審議会のこの建議、これについては小泉総理はどうお考えなのか。また、小泉内閣の中でこの点について合意が得られるのかどうか、その点もあわせてお伺いしたいと思います。
小泉内閣総理大臣 財政制度審議会の意見というものは、これは財政上の観点から意見を財務大臣に具申したものでありまして、今委員が御指摘のとおり、確かに、医療費の伸びというのは経済成長率に関係ないところがある。経済成長が低かろうが、医療費は伸びていく。
 なおかつ、今の人口構造を考えますと、若い人よりもお年寄りの方が、病院に行く回数も多いし、病気にかかる率も多いし、また病名も一種類とは限らない。そういう中でどんどんどんどん高齢者がふえていくということになれば、これは当然、医療費が経済成長に関係なくふえていくという傾向は、私は避けられないと思っております。
 そういう中で、経済全体の中で予算編成をということを考えますと、今の制度を前提にしていきますと、予算全体の膨張には歯どめがかからないという点もあります。ですから、財政制度審議会としては、予算編成、財政全体の状況から考えますと、この老人医療費の伸びの適正化という点から意見を考えたものであって、それとまた、医療制度自身としても考え方があると思います。
 これは、医療の質の向上とか、あるいは本当に医療が必要な人が病院に行けないようでは困る、また、高度の医療を望む方の保険に適用されない部分の医療というものはどうするかとか、いわゆる医療の質の点から考えると、財政上の観点からだけでは論じられない点があるということで、私は、医療の質の向上、そして、この国民皆保険制度が、高齢者はどんどんふえて、保険料を負担してくれる若い世代が減っていく中で、どうして持続可能な制度にするか、そして、財政上の観点、そういうのを総合的に勘案しながら、医療保険制度を今後、給付と負担の均衡を図りながら発展させていくかということが大事であって、今五島委員が指摘されていることについて、私は否定する気は全くありません。
 こういう懸念なり御指摘は、当然、医療関係者として考えられる点は私も理解できますので、そういう点も踏まえながら、あるべき医療改革を考えていくべきではないかと思っております。
五島委員 あわせまして、先ほども御議論があったわけですが、今回の診療報酬の改定の中で、私は、医療の抜本改革という方向と逆行する内容が幾つもあったと思っています。
 とりわけ最大の問題は、いわゆる長期療養患者、六カ月を超える患者さんを社会的入院として大まかに厚生省は認定し、この社会的入院患者さんをそのまま医療の中に温存していくということを決めた、すなわち、公式に社会的入院を認めたということは、私は大変なことだというふうに思っています。特に、六カ月を超える入院患者さん、その方を三月間介護療養型の病床に移せばまたリフレッシュする、一体これはどういうことなのか。しかも、介護療養型に移せばそれでいいのかという問題を全く検討していない。
 例えば、この六月の五日に、私は高知の出身でございますが、高知市が発表した介護保険の事業の現状によりますと、施設サービスの種類別の利用率では、この介護、いわゆる昔の特養の利用率が二四・二%、昔の、中間施設と言いました老健施設、これが一七・六%に対して、医療機関の中に併設されております介護療養型医療施設が五八・二%と、過半数は医療機関の中で介護保険適用病床として温存されています。しかも、そこで給付されている金額、特養は平均で約三十五万円、老健が三十七万六千円であるのに対して、介護療養型は四十九万九千七百円になっています。平均値です。これは医療療養型より高いんですね。
 何をしているんだ、こんなことをしておれば、医療保険制度をどうのこうのという、医療保険制度の改革の方向性どころか、介護保険まで道連れにしてつぶしてしまうんじゃないか。これが、一体、小泉内閣がおっしゃっている、来年には医療制度の抜本改革をすると言いながら、本年度の診療報酬の中でやってしまう。
 私は、そのほかにも幾つもありますよ。仕出し屋弁当をとって飯を食わせれば患者さんから金を取ってもいいけれども、患者食を出したら金を取ってはいけないとか、細かいことはいっぱいあります。そんなことを大臣や総理に言うつもりない。
 だけれども、介護保険制度まで道連れにして、ぐたぐたにしてしまうような診療報酬の改定を、この時期、同時期にやりながら、そして負担の増を、負担の増といいますか、自己負担の増を患者さんに押しつけながら、そして、来年は医療制度の抜本改革をやります、一体、どういうことを考えておられるのか、お伺いしたいと思います。
坂口国務大臣 もう五島議員はよく御存じのことでございますから具体的なことは申し上げませんが、いずれにいたしましても、六カ月たちましたときに、それでもなおかつ病気がある、いわゆる医学的な措置をしなきゃならないというときには、そのまま継続をしていただくことができますけれども、その時点で、もう介護的な要素しか残っていないというときには、御家庭にお帰りをいただくか、あるいはまた施設にお入りをいただく方が望ましいのではないか、こういう基本的な考え方です。
 そして、それが一応三カ月というふうになっておりますけれども、何も、三カ月したらもう一遍また病院へ帰れということを言っているわけではなくて、三カ月という間は、もしもその間にいろいろなことがあっても今までの病気の継続というふうにみなしますよと。今、病院におみえになって、そして老健なら老健に行かれまして、老健でまた悪くなられても、三カ月以内ならこれは今までの病気の継続とみなしていきますよ、しかし、三カ月以上たてば、それは一応新しい病気というふうにみなしてもいいのではないか。そうすれば、患者さんはもう一度また病院に入っていただくことができるという、患者さんの立場を配慮してこれは決めたものでありますから、それは、先生のおっしゃる見方も一つの見方ですけれども、患者さんの立場に立てば、その方が私はいいのではないかというふうに思っております。
五島委員 患者さんの立場に立てばいいんでしょうとおっしゃいます。それはまさに、総理がよくおっしゃっておられるように、給付は大きく負担は少ない方がいいと一般論をおっしゃっているのと同じ。
 その中で、いかにこうした医療や介護の制度が存続できるかということを検討するのが抜本改革のはずです。そのときに、こうした矛盾がありながら、例えばこういう状況の中であれば、もっとどんどん介護療養型病床みたいなものは減らして、特養なり老健をふやしていくという方法だって基本的には考えないといけない。そうしたことも何も考えずに、それが患者さんのためにこういうふうな変質をあえてのんだんですというふうなことを言っていながら、本当にできるんですかということを申し上げている。
 もう時間がございませんので、もう一つ、これは大臣のお答えでも結構ですが、今回、我々はあの採決を非常に問題ありと考えておりますが、まだこれから参議院の方で審議ございますが、健康保険法の改正によって保険給付を七割にするという法律を審議中でございます。
 問題は、なぜこうした給付率を法律で云々しなければいけないのか。例えば、七割の、すなわち自己負担三割と決めたとしても、各保険者が保険者機能をきちっと発揮されて、そのうち三分の一に相当する部分、すなわち一割分については償還払いをするよというふうに各保険者が決めた場合に、それは違法として法律上はどこにも規制されていないはずです。
 厚生省は、法律に規制されていないけれども、この法律ができれば、それぞれの保険者が独自に、いわゆる保険財政を改善しながら給付率を変えていくということについては、いわゆる大臣の権限によってこれまでのように規制していかれるつもりなのかどうか、それをお伺いします。
    〔野田(聖)委員長代理退席、委員長着席〕
坂口国務大臣 ここはこれからの大きな問題だというふうに思いますが、今回は、負担の方の公平を図るということで三割をお願いいたしました。そして、これから先は、負担だけではなくて、各保険者間の給付のやはり均衡というものを考えていかなければならないだろうというふうに思っています。
 今御指摘のように、組合健保、その中でも大きい組合の健保等におきましては、財政が豊かでありますから、付加給付というものもたくさん行われている、高額療養費に対しましての返還も大きい、こういうことになっておりますが、この点につきまして、今すぐここをどう改革するというところまで至っておりませんけれども、将来の保険の統合、一元化に向けて考えましたならば、当然のことながら、ここにつきましてもお互いにここは検討をしていただいて、そして、弱い組合のためにひとつその分は拠出をお願いをするといったことは、これから私は考えていかなければやっていけないことだというふうに思っております。
五島委員 まさに、法律で規制されていないことを厚生省が、老人保健もそうなんですが、独自の判断でもって、そうした負担の公平性という名前でもっていろいろ行動してこられた。そのことは結果的に、保険者の独自の機能というものを育てるのではなくて、厚生省任せという状態になってきている大きな原因だろうと私は思っています。
 と同時に、もしそうしたことについて緩和をするのであれば、例えば病気になった人あるいはリストラに遭った人、そうした経済弱者やあるいは健康弱者、そうした人たちが被用者保険から押し出され、国保にどんどん追い出されていっている、そうした状況をどうするのか。そうしたことを、やはり本来なら、健康保険法の議論を先行するのであれば、そこのところを議論すべきである。
 そういう意味においては、今回の健康保険法の政府提案の案というのは非常に問題ありということを申し上げて、質問を終わります。
森委員長 次に、家西悟君。
 どうぞ着席のままで結構でございますので。
家西委員 それでは、民主党の家西悟です。よろしくお願い申し上げます。
 五年前の四月二十五日に私は厚生委員会でも同じ質問をしましたし、さきに、せんだっても本委員会でも坂口大臣の方にもお尋ね申し上げたわけですけれども、せっかく総理がお越しいただいていますので、もう一度、確認という意味を含めて、総理の方から御答弁いただきたい点があります。
 それは、五年前、当時国保は三割負担、健保が二割負担であることについて、どこに整合性があるのかということについてお尋ねしたときに、五年前は、二割と三割負担という二つの負担の形が公正公平であるというふうに御答弁され、今回は、三割に統一することが公正な給付だと言われています。
 総理、どちらが、どうなんでしょう、正しいと言えるんでしょうか。どちらをまともに受け取ったらいいんですか。
小泉内閣総理大臣 それは、保険制度として違いますからね。現に、組合健保と……(家西委員「いや、そうじゃなくて」と呼ぶ)ちょっと聞いてください。どちらが公正公平かという点につきまして、私は、今の財政状況を考えますと、いずれ三割負担は避けられないのではないか。
 そういう中でこれからの抜本改革を考えていきますと、保険料負担と税金投入、あるいは医療の質の向上を考えると、今回の保険者間の三割負担に統一していくというのも、公平公正の視点として十分理解されるのではないかと私は思っております。
家西委員 いや、総理、そうじゃなくて、当時私は、国保が三割、健保が一割から二割になるけれども、ここに二つの給付ということで、これは公平公正な給付だと言われた、これはおかしいんじゃないか、同じように公正公平というんなら両方が二割であったっていいんじゃないかという意味で質問をしたときに、財政が緊迫している状況の中、給付を、二割の負担へとお願いをしたい、そしてその後に抜本改革を図っていくというような趣旨を御答弁されたと思うんですけれども、違いますか。
小泉内閣総理大臣 それは、当時の財政状況あるいは健保制度の持つ中で、公平公正という観点というのはいろいろな議論があったところということは承知しております。
 私は、今回、保険者の統一ということを考えると、片っ方の保険制度では三割、片っ方の保険制度は一割、二割ということから考えると、これは三割に統一しても、公正ということが、あるいは公平ということが言えるんじゃないか。では、片っ方、それでは高齢者が一割というのは不公平じゃないかという議論が出てきます。しかし、高齢者なりに事情があるわけですね。その点は、公平公正の観点はどこから考えたかということで、一概に一律的に論じられない場合があるということは認めざるを得ません。今の観点からいくと、では高齢者の一割というのは不公平じゃないかという議論も成り立つわけですから。しかしそれは、そういう点から考えればいろいろな議論があるのはわかっています。
 その点は、やはり経済社会情勢、財政状況、医療費のあるべき姿ということを考えながら、総合的に論じられるべきじゃないかと思っております。
家西委員 総理、ですから私は、当時、五年前にそういう給付がいろいろある、だけれども公正公平な給付ということでこれは崩れないようにしていただきたい、そしてやっていくことが大事なんじゃないのかという趣旨で、もう質問をしているわけですよ。
 そして総理は、相互扶助し合うことが大事だということを当時の厚生委員会で力説されたわけですね。だれが負担するんだということを言われて、そうですよと。みんなが負担し合うことによってみんなで助け合おうじゃないか、それが大事なんだと。それは私もよくわかる。
 ただし、こういう負担のあり方ということについては、ばらつきがあるよりもきっちりした方がいいんじゃないですか、それも、しかし、所得やいろいろな環境、状況に応じて段階を設けるというのも一つでしょうと。しかし、今回の二割から三割というのはどうなんでしょうということを言ったときの質問ですよ、これは。
 そして、今回、三割に統合することが公正な給付だと言われることが、前回、五年前の根拠と全然話が違ってきていないですかという意味で御質問をしているわけですよ。どうなんでしょう、総理。
小泉内閣総理大臣 これは、二割に引き下げるという状況ならいいんですが、確かに、二割から三割に引き上げるというのは違うと言えば違うかもしれません。しかし、全体の状況を考えて、給付と負担、この公平を考えれば、私は、今の人口構造、高齢少子社会の構造を見れば、私は、給付だけでなく負担というものも考えれば、三割に引き上げていくというのも公平ということが言えるのではないかと思っております。
家西委員 こればかり言うわけにもいきませんけれども、では、三割負担にしていくことについて、ある意味、先ほどから各委員からも出ていましたけれども、デフレ傾向が促進するというか、そういうことはあり得ないというふうに試算されて今回御提案されたんでしょうか。
 私は、これを三割にするということによって、逆に、病気になる、多少の病気は我慢しようとかいうふうにならないか。そして、変に消費を、病気になったときのことを考えて預貯金をふやしておこう、むだな出費は抑えておこうという国民感情が起こってはこないのかということもある種懸念します。
 この点について、絶対にそういうデフレ傾向を促進さすということはないということを言い切れるんでしょうか。
小泉内閣総理大臣 これは、三割負担になるからデフレ傾向になるということは、私は一概に言えないと思います。現に、国保は三割で負担やっているわけですからね。多くの国民は三割負担をされている。そういう中にあって、私は、二割から三割になるということがデフレ傾向に拍車をかけるというのは、一概には言えないんじゃないかと思っています。
 これは経済全体の中で考えなきゃいけないし、それでは、二割負担に抑えて、病気にならない人の保険料負担を上げる、あるいはそれもしないで税金を投入する、では、国債を増発して、現在の国民の負担を軽くして、後の世代に借金のツケを回そうということが果たして経済の発展につながるかという点も考えなきゃいけない。
 私は、総合的にデフレ対策というのは考えるべきだと思っております。
家西委員 それでは、その国保の先ほど三割負担というお話が出ました。
 せんだってNHKの番組で、「プロジェクトX」という番組を夜中に、再放送だと思いますけれども、やっていました。昭和三十四年、国保法が改正される、そして窓口負担がふえるということになったときに、長野県のとある村で、診療所の問題ということで、健康診断をずっと推進されてきた。そして、そこの村の人たちが、今回改正されることによって、今まで医療費というものは盆暮れにしか払わなかった、それを毎回窓口で支払わなきゃならないというふうになったときに、自分たちはもう負担ができない、だから病院を出ていく、もうあしたからここの病院にはいられないというようなことが当時あったと。そして、健康診断を用いるようにすることによって、そこの地域は逆に医療費が下がったというようなことを「プロジェクトX」でやっていました。
 私は、今回三割負担にするということは、ある意味、そういう現象が起こるんじゃないかと。要するに、三割になるから、今ここで病院に通おうかな、ぐあいが悪いけれども、どうしようかな、いや、でも三割かかるし、やめておこう、我慢しよう、薬屋へ行って薬を飲んでおこう、痛みどめだけにしておこうというふうにしていくうちに重篤化していく。そして、結果として、医療費が逆にかさんでしまう、手術をしなきゃならないというような事態に陥るんじゃないかということを懸念しています。その辺については、総理はどのようにお考えでしょうか。
小泉内閣総理大臣 その点は、私も大事な点だと思っております。というのは、薬を飲めば病気が治る、お医者さんへ行けば病気が治るという以前に、日ごろから健康づくりに国民自身も真剣に考えてもらう必要がある。特に、長野県というのは、よその県に比べれば医療費が少ないにもかかわらず健康者が多い、長齢者が多い。いわゆる長野県を見習えというぐらい、長野県が医療費の負担が少なく、多くの高齢者も含めて活躍しているということを見習えという意見をよく聞きます。
 ですから、一般国民も、病気になればお医者さんへ行けばいいんだ、薬を飲めばいいんだということ以前に、病気にならないような日ごろからの健康づくり、これはやはり国民全体の啓発活動というのも大変大事だと思っています。
 一番いいのは、お医者さんにかからない、病院に行かないけれども、病気になった方々の、患者の負担はおれたちは喜んで払うよと、病院に行かない人も、保険料を負担してくれる人が思うのが一番いいわけです。だから、こういういわゆる国民全体の健康づくりについても、息の長い、先を見通した健康づくりに対する国民運動というのも私は大変重要だと思っています。
 今の御指摘は非常に重要な点であり、今後、医療費が高いから行かないというんじゃなくて、国民の皆さん自身もできるだけ日ごろから病気にならないような予防医療、健康づくりにどうやって取り組むかということについても、国民全体の健康づくり運動というのは大事じゃないかと。
 今回も、医療費負担が三割に上がったとしても、低所得に対する配慮、あるいは、たとえ三割負担といっても、では百万円かかったら三十万円負担するのかというと、そうじゃないでしょう。上限があるでしょう。六万三千六百円から若干上がりましたけれども、一定の上限がありますから、こういう、必ずしも一律に三割じゃない。
 皆さんができるだけ負担できる程度の上限も設けながら、この三割負担制度を導入していこうということでありますので、負担が軽いからどんどんどんどんお医者さんに行こうと、行ってもらっても困るわけですし、できたら、本当はただでだれでも診てもらえるような保険制度が一番いいんですけれども、それはやはり財政制度を考えれば、そういうことも言えないということも考えなければいけないと思っております。
家西委員 時間が余りありませんけれども、私が言いたいのは、確かに予防医療というのは大事です。そして、そういった意味での抜本改革ということも必要だろうし、またしていかなければならないということも、総理の言われるところは私も理解しますし、私もそのとおりだし、そういうふうにしていくべきだと思います。
 しかし、今回、私が今質問しているのは、三割にすることによって、本来、行って医療を受けて早期発見、早期治療できた人がそのチャンスを失うんじゃないか、逆に医療費はかさんでいくんじゃないかと危惧するということを申し上げたわけです。そこはちょっと意味が違うと思いますので。
 それと、あわせて御質問申し上げたいと思います。
 ここに私は、「世界におけるHIV/AIDS流行の最新情報」二〇〇一年十二月、WHOとユニセフの資料があります。せんだって平沼経済産業大臣が、ボツワナの問題で、エイズに対しての差別的な発言をされたということで、この資料をしっかり読ませていただきました。そして、確かに国民の半数近くが感染しているというようなことも書かれています、半数ではありませんけれども、四十数%ですけれども。
 そして、その前段の方にこういうことが書かれています。サハラ以南ですけれども、今後、二〇一〇年にGDPは八%減をする、そして二〇二〇年にはGDPの二〇%を失う国もあるだろう、あくまでもサハラ以南ですけれども。そして、ルワンダで行われた調査ですけれども、平均して医療費が年間、HIVに感染しているということだろうと思うんですけれども、感染していない家庭とかかっている家庭では、年間の医療費が二十倍違うというような状況がある。そして食糧の問題として、農業生産する人たちがぐんと減る、要は感染して亡くなっていくから。ということで、エイズのために労働能力を縮小し、農地を放棄しているところが世界ではふえてきている。そして、タイの農村世帯では農業生産が半減しているというような実態がもう既に起こっていると。
 日本では確かにまだ感染者というのは八千人足らず。これをC型肝炎として置きかえて考えていただきたい。少なくとも百万人、多く試算されている数では五百万人の日本人の方がC肝に感染しているだろうということが、単純に計算をしていくと、これはHIVの話ですけれども、それをC型肝炎に置きかえて日本に当てはめたときに、いずれ日本も将来、C型肝炎から肝硬変、肝がんへと移行する人たちがふえてきたときにどうなるのか。それは生産数も、いろいろな意味での消費が削減される、そして医療費も倍増していく、こういう状況にならないですか。だからこそ、今、対策も必要ではないのかということを総理にあえて聞きたい。
 そして、これは五年前の委員会で、四月二十七日、この日も、先ほど言った議事録にもありますけれども、五年前というか、当選以来、私はC肝の問題をずっと言い続けてきた。私がC肝、C肝、C肝といつも言っていることを総理も御存じでしょう。こういう対策をなぜ政府としてやらないのか。今まさしくやっていかないと日本は沈没していくんじゃないんでしょうか。
 そういうことを、総理、医療改革をあわせてやらないといけない時期に来ているんじゃないでしょうか。どうぞ御答弁いただきたい。
小泉内閣総理大臣 病気になった後の対策も必要でありますが、同時に、病気にならない対策が必要だということは言うまでもありません。
 今御指摘のC型肝炎対策におきましても、常日ごろ議員が熱心に説かれていることは私も承知しております。厚生省としても、現在、政府としてもC型肝炎緊急総合対策に着手したところでありますので、そのような御指摘の点について、病気にならないように、また病気の治療が改善されるように着手したところでありますので、御指摘の点を踏まえながら今後改善策を講じていきたいと思います。
家西委員 時間が来ておりますけれども、ぜひとも、C肝の問題を含めて差別の問題、病気に対しての差別というものがないように政府として取り組んでいただきたい。
 余談ではありますが、昨日、経済産業省の方に抗議を申し上げに行った折に、これは単なるミスだろうと思いますけれども、民主党の鳩山党首、私、枝野議員、そして鈴木議員、そして北橋議員と五人で行きました。五人で行ったわけです。そして大臣室で謝罪要請をした折に、お茶が出ました。私の席にだけはなかった。お茶が出なかった。
 私は当事者だということを言っているから出なかったのか、ただ単に忘れられたのか、これはわかりません。だけれども、これは当事者としたら気分が悪いですよ、はっきり言うて。周りはみんな出ていて私の席にだけはない。こういうようなことのないような政府であっていただきたい。思いますでしょう、皆さん。ぜひとも、そういうふうに政府としてやっていただきたい。注意をしていただきたい。
 総理、最後にそのことだけお答えください。
小泉内閣総理大臣 それはもう礼儀の問題だと私は思いますね。そういうことがあってはならないと思います。恐らくちょっとしたミスだと思うんですが……(家西委員「いや、だから悪くは思っていないです、気分が悪いという話です」と呼ぶ)それはわかります。そういう点はやはり、お客さんに対する接し方、礼儀でありますので、その点は経済産業省のみならず、当然、役所ということでなく、人間として当たり前のことですから、そのようなことがないように、人間としてやはり礼儀といいますか、お客さんに対する対応の仕方というものはよく注意しなければいけないと思っております。
家西委員 ぜひともよろしくお願いします。
 質問を終わります。
森委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後零時八分散会


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