衆議院

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第3号 平成14年11月6日(水曜日)

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平成十四年十一月六日(水曜日)
    午前九時三十分開議
 出席委員
   委員長 坂井 隆憲君
   理事 熊代 昭彦君 理事 長勢 甚遠君
   理事 野田 聖子君 理事 宮腰 光寛君
   理事 釘宮  磐君 理事 山井 和則君
   理事 福島  豊君 理事 武山百合子君
      岩崎 忠夫君    岡下 信子君
      奥谷  通君    後藤田正純君
      佐藤  勉君    田村 憲久君
      高木  毅君    竹下  亘君
      棚橋 泰文君    平井 卓也君
      増原 義剛君    松島みどり君
      三ッ林隆志君    宮澤 洋一君
      森  英介君    谷津 義男君
      山本 幸三君    吉田 幸弘君
      吉野 正芳君    渡辺 具能君
      家西  悟君    大島  敦君
      加藤 公一君    鍵田 節哉君
      金田 誠一君    五島 正規君
      土肥 隆一君    中津川博郷君
      三井 辨雄君    水島 広子君
      白保 台一君    桝屋 敬悟君
      佐藤 公治君    小沢 和秋君
      山口 富男君    阿部 知子君
      中川 智子君    野田  毅君
      川田 悦子君
    …………………………………
   厚生労働大臣       坂口  力君
   文部科学副大臣      河村 建夫君
   厚生労働副大臣      鴨下 一郎君
   厚生労働大臣政務官    渡辺 具能君
   政府参考人
   (法務省民事局長)    房村 精一君
   政府参考人
   (文部科学省大臣官房審議
   官)           木谷 雅人君
   政府参考人
   (厚生労働省職業安定局長
   )            戸苅 利和君
   政府参考人
   (厚生労働省雇用均等・児
   童家庭局長)       岩田喜美枝君
   政府参考人
   (厚生労働省社会・援護局
   長)           河村 博江君
   政府参考人
   (国土交通省住宅局長)  松野  仁君
   厚生労働委員会専門員   宮武 太郎君
    ―――――――――――――
委員の異動
十一月六日
 辞任         補欠選任
  西川 京子君     高木  毅君
  加藤 公一君     中津川博郷君
  江田 康幸君     白保 台一君
同日
 辞任         補欠選任
  高木  毅君     増原 義剛君
  中津川博郷君     加藤 公一君
  白保 台一君     江田 康幸君
同日
 辞任         補欠選任
  増原 義剛君     岩崎 忠夫君
同日
 辞任         補欠選任
  岩崎 忠夫君     西川 京子君
    ―――――――――――――
十一月五日
 じん肺根絶に関する請願(小沢和秋君紹介)(第四号)
 同(児玉健次君紹介)(第五号)
 同(山口富男君紹介)(第六号)
 同(植田至紀君紹介)(第五八号)
 同(原陽子君紹介)(第五九号)
 同(川田悦子君紹介)(第九八号)
 同(東門美津子君紹介)(第九九号)
 同(大島令子君紹介)(第一二四号)
 同(金子哲夫君紹介)(第一三八号)
 医療改悪の実施と社会保障の改悪反対、充実に関する請願(小沢和秋君紹介)(第五五号)
 物価スライドによる年金引き下げ反対、最低保障年金制度の創設に関する請願(松本善明君紹介)(第五六号)
 同(山口富男君紹介)(第五七号)
 医療改悪実施と社会保障の改悪反対、充実に関する請願(藤木洋子君紹介)(第一五三号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 母子及び寡婦福祉法等の一部を改正する法律案(内閣提出、第百五十四回国会閣法第六六号)


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     ――――◇―――――
坂井委員長 これより会議を開きます。
 第百五十四回国会、内閣提出、母子及び寡婦福祉法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
 この際、お諮りいたします。
 本案審査のため、本日、政府参考人として法務省民事局長房村精一君、文部科学省大臣官房審議官木谷雅人君、厚生労働省職業安定局長戸苅利和君、雇用均等・児童家庭局長岩田喜美枝君、社会・援護局長河村博江君及び国土交通省住宅局長松野仁君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
坂井委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
坂井委員長 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。岡下信子君。
岡下委員 おはようございます。自由民主党の岡下信子でございます。
 きょうは、この法案について私に質問の機会を与えていただきまして、本当にありがとうございました。
 私は、四年前に夫に死別をいたしまして、先立たれまして、息子二人を残された正真正銘の母子寡婦家庭でございます。死別であれ離婚であれ、母子家庭の母親の心情は、同じ立場の者といたしましては、痛いほど理解しているつもりでございます。
 子供が幼ければ幼いほど、しっかりその子育てをしていけるのかどうか、あるいは母親一人で就学あるいは進学をさせてやれるのかどうかというような非常に不安定な精神状態があることもしばしばでございます。そういう中で、多少なりとも経済的な裏づけがあるということは、非常に心のよりどころとなっております。しかしながら、この法改正においては、一九九八年の時点で母子家庭が九十五万世帯にもなっておりまして、五年前よりは二割もふえている、激増する離婚で財政が逼迫して、そしてこの法改正で抑制しようということは否めないと思うんです。
 その改正でございますけれども、児童扶養手当の全額支給の限度を年収二百四万八千円から百三十万円に一挙に下げるということは非常に厳し過ぎるのではないかと思いますし、それから、世間一般には、そういう財政負担を軽減させるための法案であるというふうにしか受けとめておられませず、そして、弱い者いじめの感も否めません。
 それで、この法案は、本来、母子家庭の総合的な自立支援を行うことが目的であると思いますけれども、そこのところを大臣にきちんと説明していただきたい、このように思います。よろしくお願いいたします。
坂口国務大臣 具体的な数字等につきましてはまた局長から答弁をさせたいと思いますが、今いろいろ御指摘をいただきましたとおり、母子家庭にとりまして、それが死別であれあるいはまた離婚であれ、その家庭にとりまして一番要求されますことは、自立をどうさせるかということだろうというふうに思います。自立ができるかどうかということが最大の課題になるわけであります。
 今までのさまざまな数字を拝見して感じておりますのは、多くの皆さんが自立はしておみえになるんですけれども、しかし、その内容が十分かといえば、十分ではない。これから先、また今後もふえていくであろう離婚、そのことを考えますと、この皆さん方にやはり自立をしてもらう、その自立を支援する社会システムをつくり上げていくということがいかに大事かということを痛切に感じる次第でございます。
 そうした意味で、子育ての支援策、勤める就労の支援策、養育費の確保策、そして経済的な支援策、これらを総合的に考えて、そして、どちらかといえば、自立を支援するというところにウエートを置いた対策というものが今後必要になるのではないかというふうに考えております。
 また、児童扶養手当制度につきましてもその一環として行うものでありまして、児童の福祉や、自立が困難な者にも配慮を十分にしまして、そして母子家庭の自立が一層促進されますように、またこの制度が、母子家庭が急増し、厳しい財政状況の中におきましても維持できますようにしたいという考え方のもとに、今回この改正を行わせていただく次第でございます。
岩田政府参考人 先生の御質問の中に、児童扶養手当全額支給の基準を年収二百万から百三十万に引き下げたということについての問題が……(岡下委員「二百四万八千円じゃないでしょうか、全額、年収。それを百三十万に下げた。それは違うんですか」と呼ぶ)はい。
 児童扶養手当制度につきましては、ことしの八月に政令改正で行った改正がございまして、従来は、児童扶養手当の金額が、全額で一人月四万二千円程度でございますが、それと部分支給といいまして、それは二万八千円程度でございまして、その二種類ございました。
 この八月、政令改正で実施いたしましたのは、先生御指摘のとおり、全額支給の所得の上限、これは、母一人子一人で、母親が給与所得のケースでございますが、年収二百万程度までの方が全額受給できていたのが、百三十万の水準に引き下げられたというのは御指摘のとおりでございます。
 これは、全体として財政事情が大変厳しい中で、そして母子家庭が増加する中で制度を維持しなければいけないといったような財政事情も一方ではございますが、あわせて、就労による収入が一定水準を超えますと、その就労による収入と手当を合算したトータルの収入が逆に減るという逆転現象が見られるということがございましたので、就労収入がふえるにつれてトータルな収入が必ず増加するようにということで、児童扶養手当の金額を十円刻みでなだらかに、収入がふえるに従って逓減させる、そういう仕組みを導入したものでございます。
岡下委員 今の御説明もさることながら、十円刻みとかそういう、引き下げる、そういうことははっきりと説明されているのかどうか。余り知られていないんじゃないかなと。ただこの法改正によって自分たちの収入、扶養手当が減るということだけしか一般の人たちには受け入れられていないということで、もう少し、この説明というか、そういうことを詳しくやっていただきたいなと思うのが一点でございます。よろしくお願いいたします。
 それから、大臣が先ほど自立支援ということをおっしゃっておりましたけれども、母子家庭の経済の安定のためには、家庭の母親がかなり高収入、安定した職につくことができるように就労支援を行うことが極めて重要であると思うんですけれども、このたびの法改正において、就労支援について、どのような点に重点を置かれていらっしゃるんでしょうか。
鴨下副大臣 今先生おっしゃるように、最終的には、先ほど大臣の答弁の中にもございましたように、自立を促進していくというのは非常に重要なことでございまして、そのためにも、母子家庭の母は生計の主たる担い手でもありますから、母子家庭の経済的な自立を図る上で、就労支援策というのが極めて重要だというようなことを我々も考えております。
 こういうような観点から、就労支援策については、一つは、就労相談の実施ということで、さまざまな相談に乗っていこうということと、それから二番目に、よりよい就業に向けた能力の開発、これはそれぞれ母子家庭のお母さん方にも勉強をしていただかなければいけないわけでありますし、三番目に、母子家庭の母の状況に応じた就業あっせんをして、そして四番目には、所得の増大に結びつくような雇用機会の創出のための支援、こういうようなものを大きな柱に展開をしてまいりたい、このように考えているわけでございます。
岡下委員 ありがとうございます。
 母子家庭の母親というのは就労意欲が非常に高い。就労意欲が高いのは、働かざるを得ないということもあろうかと思うんです。その母親の八割は就労しているんですけれども、本当に、収入というか、一般世帯の収入の三分の一、大体年収で二百三十万円程度にすぎないんですね。
 既に就労している年収が低い母子の母に対して、今先生がおっしゃるような、これは地域との連携もあるんでしょうけれども、カウンセリングとかそういうこともやっていくし、特別な能力をつけさせるということもお考えになっているんでしょうけれども、今、この非常に不況下にあって、まともにお勤めしている男性であってもリストラされる時代でございますが、そういうときに効果のある就労支援策というのは具体的にどのようなものがあるんでしょうか。ちょっとお聞かせいただきたいと思います。
岩田政府参考人 今おっしゃいましたとおり、母子家庭の母はいろいろな意味で就職の困難さを持っております。女性であるということからくる不利、そして、しばらく職業経験が中断していた、あるいは本格的な職業経験を持っていないということからくる不利、そしてもう年齢的にお若くないということからくる不利。お子さんを育てながら仕事をしないといけない、その両立の負担。こういうようなものから、大変難しい問題があるというふうに思います。
 就労支援策といたしましては、こういう困難さを除去するということが大事かというふうに思いますけれども、やはり最も重視したいと思っておりますのは、母子家庭のお母さんたち御自身の職業能力をいかに高めていただいて、高い収入が得られる就業機会にその能力を結びつけていくことができるかということでございます。
 具体的には、都道府県、政令市、中核市に就労自立支援センター事業を創設したいというふうに思っておりまして、ここで、最初の、初期の就業相談から、職業講習、そして実際の職業情報の提供など、一貫した自立支援の事業を実施していただきたいというふうに思っております。
 また、能力開発のための経済的な支援といたしましては、職業能力開発の講座を受講した方に対して自立支援教育訓練給付金制度というものを創設したいと考えておりますし、また、介護福祉士など就職に有利な資格を取得するためには相当の年数がかかるということもありますので、そういった二、三年かけて資格を取得するような場合については特段に手厚い手当てなどもしたいというふうに思っているところでございます。
 こういうようなことを通じて、職業能力開発を中心に、職業相談、情報提供、そして、公共職業安定所と都道府県、あるいは福祉事務所を設置している市などがよく連携をして、自立の支援をしてまいりたいというふうに思っております。
岡下委員 今お答えいただいた中に、かなり、能力を身につけるということは二、三年かかるとおっしゃいましたよね。そうすると、手当の見直しの前に、そういう能力をつけるということが先決問題じゃなかったのかなというふうにも思います。そういうことで、今おっしゃったように、地域の行政とも連携を図りながら、まず能力を身につけて、高収入を得られるような対策を進めていっていただくということは切にお願いをしておきます。
 次に参りますけれども、母子家庭の経済的基盤という意味では、別れた父親、離婚の場合ですけれども、別れた父親から養育費を確保する仕組みづくりが急務であるんじゃないかと思います。
 離婚の際の養育費の支払い状況を見ますと、取り決めている割合が、離婚するときにそういう取り決めている方たちは三五%にすぎない。それで、実際に養育費を受けている方はそのまた二割という、非常に少ないということなのです。例えば離婚する際に、もうとにかく顔を見るのも嫌だわ、お金のことは二の次でというふうな、感情的になってそういう取り決めをしない方も、まず別れることが先決ということで後に尾を引いているというようなこともあると思うんですけれども、欧米では、養育費の取り決めがまず離婚の前提条件で、国によると、一部は国が立てかえをしたり、あるいは取り立ての制度もあると言われております。
 離婚するのは親の勝手でございますけれども、子供にとっては、ひとしく健やかに育つ権利があると思うんですね。養育費支払いに対する親の義務を法律上明確にすべきと考えておりますけれども、この点について、今回の法改正、この改正案にはどのように盛り込まれているんでしょうか、お尋ねいたします。それと、今国会のこの改正案においては、別れた父親からの養育費を確保するためにどのような施策を講じようとお考えになっていらっしゃるのか。これはひとつ大臣にお伺いしたいと思います。
坂口国務大臣 御承知のように、これは民法におきまして、親の扶養義務につきましては定められているところでございますし、離婚などによりまして児童を監護していない親は、その扶養義務に基づいて養育費を支払う義務を負っている、こういうことでございます。
 今回のこの法律におきましてどう書くかということは、非常に大きな問題だったというふうに思っておりますが、結論から申しますと、この改正案におきましては、いわゆる義務規定になっているわけでございます。ここは私もいろいろその過程で意見を言う機会もあったわけでございますが、私なんかの立場からいいますと、それはちゃんと法律に書いたらどうかという気もしたわけでございます。しかし、ここはいろいろ議論のあるところだそうでありまして、やはりここを法律にきちっと明記をするということになると離婚の妨げになるという御意見も強いんだそうでございます。ここは意見の分かれるところだろうというふうに思います。
 そういう全体の意見を考慮しながら今進めているわけでございまして、そして、この法律におきましてはこの措置を行う義務を規定するということにとどめておりますが、しかし、ここをできる限りやはり親に義務を果たしてもらうためにはどういうふうにしたらいいかということは、少しきめ細かくこれから進めていかなければならないというふうに思っております。
 この法律ができましたならば、その後、現状等を十分に見ながら、そして扶養義務の履行確保に向けました施策というものをどう進めていくか。できる限りここはきめ細かく、そしてこれが履行されるようにひとつ努力をしなければならない、そんなふうに思っております。
岡下委員 非常に難しいというふうな大臣のお答えでございましたけれども、義務を規定するということについて、従わなければ支払い命令を出すというような制度も一つ考慮に入れていただければありがたいなというふうに思います。これは一挙にはいかないと思うんですけれども、やはり養育費というものは子供を育てていく上で必ず必要で不可欠なものでございますので、ぜひここのところを法改正のときに十分にお計らいいただきたいなと思います。
 それと、次に参りますが、今回の児童扶養手当法改正案でございますけれども、児童扶養手当の支給開始から五年か、それから離婚等の受給条件に該当したときから七年を経過すると、最大で二分の一まで児童扶養手当を減額することができることになっているというのでありますけれども、なぜこのような措置を導入することとしたのか。そして、働きたくても働けない方が、非常に難しい方もいるんですけれども、そのような人には配慮すべきではないかと思うんです。具体的な減額の割合は政令で定めるとされておりますけれども、この政令は言うたらいつごろ定める予定であるのか。
 具体的にここのところ、ちょっとわかりにくいので、御説明いただけないでしょうか。
鴨下副大臣 今回の改正案では、児童扶養手当制度について、特に離婚直後の一定期間に重点的に給付しようじゃないか、こういうようなことでありまして、離婚等によりまして生活が激変する一定期間についてはできるだけ手厚くしていこう、こういうようなことで母子家庭の自立を推進する制度に改める、こういうことでございます。
 この見直しによりまして、今後増加が予想される、言ってみれば離婚等もふえますから、母子家庭に対して児童扶養手当制度を安定的なものとして、この厳しい財政状況を乗り切っていきたいというようなことも一つ考えるわけであります。
 ただ、具体的には、三歳未満の児童を監護している場合や、障害、疾病を有する場合など、いわゆる自立が困難な母子家庭に十分配慮しなければいけない。さらに、手当の受給期間が五年を超える場合には、それ以後手当の一部について支給を停止する、こういうようなことにはなっております。
 ただ、この措置の減額の具体的な割合は政令でこれから定めるわけでありまして、この政令は法施行後の、一つには、子育て、生活支援策、それから二番目に就労支援策、三に養育費の確保策、四に経済的支援策の進展状況、五に離婚の状況等を踏まえまして、五年後の適用に当たって、言ってみれば十分な時間的余裕を持って制定しようじゃないか、こういうようなことになっておりますし、改正法案において、減額に当たっては少なくとも従前の手当の半額以上は確保する、こういうようなことでございます。
岡下委員 ありがとうございます。
 それで、扶養手当の見直しの施行時期でございますけれども、現在既に受給開始から五年経過している方もいらっしゃると思うんですけれども、今回の改正案が成立しまして来年の四月一日から施行された場合に、このような受給者はいきなり四月一日からそういうふうな、これを施行されるのかという不安があるんですが、そこのところはいかがでしょうか。
岩田政府参考人 五年の受給期間の計算の仕方ですけれども、これは、改正法案が予定どおり平成十五年四月一日から施行になりますと、その時点からカウントを始めるということにいたしておりまして、したがいまして、最初の該当者が出る方は平成十五年の四月から五年経過した平成二十年四月ということになりますので、それまでは減額される該当者は出ないということでございます。
岡下委員 よくわかりましたけれども、このことについては、やはり受給者が、減額されるんじゃないかという不安というか、四月一日から施行されるといきなりそうなるのであるかという不安がつきまとっていると思いますので、このところは受給者に対して詳しい説明といいますか、公開というか広報をしていただきたいな、そのように思います。
 最後になりますけれども、母子家庭は、母親が家計の主たる担い手であると同時に、子供の養育を一人で行わなければならない状況にあります。ですから、母子家庭の自立支援のためには、安心して子供を育てる、それから仕事を両立できるということが非常に重要であると思うんですね。これは母子家庭だけじゃなくて父子家庭、お父さんが子供を育てているということにも共通すると思うんですけれども、今回の見直しにおいて子育て支援策についてどのように充実を図っていくのか。これを最後にお伺いして質問を終わりますけれども、よろしくお願いいたします。
坂口国務大臣 最後のお答えをします前に、先ほど養育費の問題でございますが、ちょっと言い忘れたことがございますのでつけ加えさせていただきますが、養育費取得のための費用の支援につきまして、母子福祉資金の貸付金を充実しまして、いわゆる裁判を行いますようなときの養育費取得のための裁判費用につきましても貸し付けの対象にするといったこともやりたいと思います。
 それから、これは法務省でございますが、法務省におきまして、現在、養育費等少額定期債務の強制執行手続というのがあるんだそうで、その見直しが今検討されておりまして、来年の通常国会に出るということでございます。これらのことも大きく変わるだろうというふうに思っております。
 それから、母子家庭の自立支援の問題でございますが、まさしくここが一番大事なところだというふうに思っておりますし……(岡下委員「子育て支援。先ほどは自立支援」と呼ぶ)子育て支援のお話ですね。
 それで、子育て支援のところにつきましては、市町村に対します保育所の入所に際しましての特別の配慮の義務づけを行う。あるいはまた、働いておみえになる方が残業のこともあると思いますし、また御病気になられたりというようなこともあると思いますので、子供を一時的に預かるショートステイ、あるいはまたトワイライトステイと言われておりますような、そうしたところを充実をする、あるいは優先的にここもお預かりをするようにするといったような、子育て短期支援事業の法定化をしたいというふうに思っております。これは児童福祉法でございますが、そちらの方でやりたいというふうに思っております。
 それから、先ほど言いました、病気等によりまして家事や保育のサービスが必要となった場合に家庭生活支援員を派遣する日常生活支援事業の推進なども行えるように、ここを進めたいというふうに思っております。
 それから、父子家庭の場合にも同様。今度は家庭の問題をどうするかというようなことが大変大事になりますので、そちらの、家事のことにつきましてもお手伝いができるような体制をつくり上げていきたいというふうに思っているところでございます。
 以上のようなことで、考えられるいろいろの問題を整理をいたしまして、そして、子育てに対するバックアップをしていきたいというふうに思っております。
岡下委員 ありがとうございます。
 いずれにいたしましても、すべて弱者の立場に立って、弱者の立場をよく理解した上で、厚生労働省として温かい手を差し伸べてあげていただきたいなと、このように要望いたしまして、質問を終わります。ありがとうございました。
坂井委員長 次に、福島豊君。
福島委員 大臣、副大臣、おはようございます。大変御苦労さまでございます。
 本日から母子寡婦福祉法等改正案の質疑がスタートするわけでございますが、昨年の暮れの予算編成に際しまして、母子家庭対策というものをどういうふうに見直していくのかと、さまざまな議論をさせていただきました。
 先ほど大臣から御説明ありましたように、自立というものが大切である、私もそうだと思います。今までの母子家庭対策というものが、ややもすると児童扶養手当の部分に重点が置かれてきて、必ずしも、子育て支援でありますとか、そしてまた就労支援でありますとか、幅広い施策の分野においてはその充実というものが図られていなかったということを考えますと、総合的な施策の転換を行うことが必要である、私どももそのように思いました。
 その議論の中で、母子家庭のお母さん方の団体の方々、本日も傍聴にお越しになっておられますけれども、さまざまな意見を聞かせていただきました。母子寮も拝見させていただきました。その中で感じましたことは、そうした総合的な施策の転換ということは必要であるけれども、しかしながら、現在の大変厳しい経済状況、そしてまた、いまだ母子家庭の経済状況というものが一般の世帯に比べると低いという事実を直視しながら政策の転換というものを行っていく必要がある、そのように思いましたし、さまざまな話し合いの中でいただいた御要望が一つでも施策に反映するように、私どもとしても全力で努力をさせていただいたと思っております。
 そしてまた今般の改正案でございますけれども、この改正案に盛り込まれております就労支援でありますとかまた子育て支援、養育費の確保といったさまざまな施策が本当に実効性を持って機能していくのかということについて、私自身、見守っていかなければいけないと思っておりますし、この数年間がまさに正念場ではないか、そのような思いもするわけでございます。
 さらにもう一つつけ加えますと、この総合的な施策の転換の中で児童扶養手当制度の見直しというものが行われたわけでございます。その見直しによって影響を受ける家庭がございます。その影響に対して、できる限り激変を緩和するような措置というものも同時にとる必要があるということで、この点についても種々要望をさせていただきました。
 こうしたことを振り返りまして、改めて大臣にお尋ねをいたしたいことは、今般の改正案が目指しているものは何なのか。そして、厚生労働省として、母子家庭施策というものをどういうふうに転換しようとしているのか。お考えをお聞かせいただきたいと思います。
坂口国務大臣 今、福島委員からお話がございましたとおり、母子家庭を取り巻きます環境というのは厳しいものがあることは私もよく承知をいたしております。現状を見ましたときにそこをどう改革していくか、それは、今後の自立をどう支援していくかということに尽きるのではないかと思います。
 離婚をされた方であれ、あるいはまた死別をされた方であれ、共通しておりますのは、後に残された方、特に奥さんの場合が多いわけでございますが、奥さんの場合に、お子さんを持ちながらどう自立をしていくかが最大の課題になるだろうというふうに思っております。そして、現在、収入として得ておみえになります年収を見ましても、普通の御家庭のことを思いますと非常に低いということもあるわけであります。そこに一番の問題点があるわけでありまして、そこをどう改革していくかということをやらなければ、この母子家庭の問題は私は解決しないというふうに思っております。
 したがいまして、五年後、この減額、まあ減額幅とかいろいろなことはこれから決めるわけでございますけれども、所得のある方につきましてはしていくというようなことも起こるわけでございますから、まさしくこの五年間の間にそこをどう改善することができるか、これは厚生労働省に課せられた、あるいは問われている最大の課題だというふうに私は思っております。
 したがいまして、この五年間の間に母子家庭の皆さん方がどのように働いていただけるか、そしてまた、子育てと両立をどういうふうにしていただけるようにするか、そういう社会システムをどう変えていくかということがどこまでできるかが私は問われることになるだろうというふうに思っております。
 したがって、そのことを念頭に置いて、この法律を皆さん方に御審議をお願いするという決意でいる次第でございます。
福島委員 次に、この中に盛り込まれております一つ一つの施策についてお尋ねをしたいと思います。
 まず初めは、就労支援でございます。
 先ほど岡下委員からもありましたように、母子家庭のお母様方は勤労意欲が非常に高く、約八割の方は就業いたしております。しかしながら、約四割の方は、パート就労で収入が低いという厳しい現実に直面しているわけでございます。この就労状況をどう変えていくのか、その点について具体的な対応というものを御説明いただきたいと思います。
 そしてまた、この点については、厚生省と労働省が一緒になりまして福祉施策と雇用施策というものが一体的に運営できるようになった、そのことの一つの見本ではないかというふうに私は思っているわけでございます。そういう意味でも、この就労支援というものがどのように結果を出していくことができるのか、これも厚生労働省としての真価を問われることであろうと思います。よろしくお願いいたします。
鴨下副大臣 委員おっしゃるように、言ってみれば母子家庭において就労をいかに支援していくかというのは非常に重要なことであります。ただ、今現在は、経済情勢それから雇用情勢ともに大変厳しい状況にあるわけでありまして、そういった中で、母子家庭の主たる生計の担い手であります母親がいかにきちんとした就労をし、なおかつその後に高収入を得ていくかというようなことについて、厚生労働省としてどういうふうに支援できるかというようなことであります。
 このような観点から、母子家庭に対する総合的な施策を展開することとしておりまして、特に、子育て支援を行うとともに、母子家庭が就労により経済的に自立できるように、一つは、就業相談の実施、二に、よりよい就業に向けた能力の開発、三に、母子家庭の母の状況に応じた就業あっせん、四に、所得の増大に結びつくよう雇用機会創出のための支援、この四つを柱にしております。
 具体的に申し上げますと、一つは、都道府県、政令市、中核市における就業相談、就業支援講習会の実施、就職情報の提供など一貫した就業支援サービス等を行う母子家庭等就業・自立支援センター事業の創設をしよう、こういうようなことでありますし、さらに、職業能力開発のための講座を受講した場合の自立支援教育訓練給付金制度の創設、さらに、例えば介護福祉士など就職に有利な資格取得を行う場合の経済的支援、こういうようなことを検討しているところであります。
 これによりまして、母子家庭の母の職業能力の向上を図るとともに、的確な就職相談、求人情報の提供、さらに職業あっせんなどにより、母子家庭の母が高収入を得られるような、さらに安定した職につけるような、こういうようなことを推進しまして、経済的に自立を促していこう、こういうことでございます。
福島委員 よろしくお願いいたします。
 次に、養育費の確保の問題でございます。
 実際に養育費をもらっておられる母子家庭というのは大変少ないわけでございます。先ほど岡下委員からも御指摘がございました。この点については、もう少し強い措置がとれないかというふうに私も感じております。しかしながら、さまざまな意見があるということも事実だろうと思います。
 今回の見直しの中で、この養育費の確保についてどのような対応がなされているのかということについてお聞きしたいのと、私は、ぜひこれは、今後の状況というものをしっかりとフォローしていただいて、より強い措置に進むべきかどうかということについても、今後の検討課題としてぜひ念頭に置いて進めていただきたいと思います。御説明をお願いいたします。
岩田政府参考人 民法に直系血族の扶養義務の規定がございまして、これは離婚によっても何ら変わるものではございません。したがって、離婚などで子供を監護していない親の方は、この扶養義務に基づきまして、養育費を支払うという義務をしっかり負っているわけです。問題は、それが確実に履行されていないというところであろうかというふうに思います。
 そういうことで、今回の改正案では、一つは、子供を監護していない方の親については、養育費を支払うという義務を、努力義務ではございますが、母子寡婦福祉法の中で明記したこと。そして、子供を監護する側の親は、相手の、別れた配偶者からこの養育費を確保するように努力してほしいということ。そして、国や地方公共団体は、養育費の支払いというのが一般化するようにさまざまな取り組みを行うべきであるということ。そういうことを規定したわけでございます。
 さらには、今先生御指摘のように、本格的な扶養義務の履行確保のあり方、その仕組みをどうするかということについてはさまざまな観点からの検討が要るかというふうに思いますが、重要な課題である、検討すべきであるということも今回の改正の附則で明記をさせていただいているところでございます。
 法の施行後は、実際に養育費の取り決めが進み、実際の支払いが確保されますように、国や地方公共団体ではさまざまなことをやろうというふうに思っております。まず広報啓発活動、そして、養育費について、様式のモデルですとか標準的な額のガイドライン、そういうものもお示しをしたりしたいというふうに思っております。
 また、法務省において、養育費を念頭に置きました少額定期債権の強制執行手続についての見直しがなされているというのは、先ほどの岡下委員の御質問に対して大臣の方から御答弁があったとおりでございます。
福島委員 次に、子育て支援でございます。
 これは、母子家庭のみならず、父子家庭におきましても大変大切なことでございます。この子育ての支援というものをどれだけ充実させるかが就労支援の実効性が上がるかどうかということの一つのかぎであろう、そのようにも思っているわけでございます。
 今般の見直しの中でどのような対応がなされているのかということについて御説明をいただきたいのと、ぜひまた、今検討しておられます看護休業の話、看護休暇の話でございますけれども、そういった一般的な施策の見直しも本当に必要なんだろうというふうに思っておりますが、両方含め、岩田局長から御説明いただきたいと思います。
岩田政府参考人 今回の改正法案では、市町村に対しまして、保育所に優先入所できるようにということで特別な配慮を義務づけておりましたり、また、親の残業や出張や病気などで子供さんの面倒が見られないというときに児童養護施設などで夜間預かる、あるいは一週間程度預かるといったような、ショートステイ、トワイライトステイと言っておりますが、これを法定化し、予算的にも思い切って拡充をしたいというふうに思っております。
 また、親が病気などのときに子育てが十分にできない、家事ができないといったときには家庭生活支援員を派遣する事業がございますが、これも、日常生活支援事業というふうに事業の名称も変えまして、そして質、量とも拡充をしたいというふうに思っております。
 また、今先生からお尋ねがございましたけれども、子育てとの両立支援の問題は、これ以外にも、働き方の問題でもございますので、育児・介護休業法の中でルールをつくっておりますけれども、さらに両立支援ができるような働き方のルールのこれからのあり方について、子供が病気のときの看護休暇制度の問題なども含めてですけれども、引き続き拡充する方向で、ぜひしっかり検討していきたいというふうに思っております。
福島委員 本質は、やはりパート労働の処遇のあり方というのが大きな課題なんだと思いますね。それは、所得にしましても、そしてまた今おっしゃられたようなさまざまな、子育てと働き方の両立ということで、休業制度があったとしても、なかなかパート労働の方は使いにくいというようなこともあるだろうと私は思うんですね。そういうことも含めて、ぜひ今後の検討課題として、働き方の問題という大きな枠の中で、どうしたら母子家庭のお母さん方が働きやすい、そしてまた収入もふえるというような道があり得るだろうか、そういう面も踏まえてぜひ検討を進めていただきたいなと私は思っております。
 次に、児童扶養手当の見直しについてでございますが、先ほども岡下委員から指摘がございました。受給開始から五年か、離婚等受給要件に該当したときから七年を経過すると、手当の一部を減額できることになっておりますけれども、この措置を導入した趣旨。そしてまた、自立といいましても、中には病気の方もおられます、さまざまな障害を持っておられる場合もあるでしょう。なかなか自立が困難であるという場合も当然あるわけでございます。そうした方々に対して、どのような配慮がなされているのかということについて御説明をいただきたいと思います。
鴨下副大臣 先ほどから議論になっておりますが、今回の改正案では、特に児童扶養手当制度については、離婚等による生活の激変を一定期間できるだけ緩和するというようなことで、言ってみれば、重点的に手厚い手当てをしていこうじゃないか、こういうようなことでありまして、さらにもう一つの観点は、母子家庭の自立を促進する、こういうようなことで制度を改めていこう、こういうことでございます。
 具体的には、先生おっしゃるように、手当受給開始から五年、または離婚などから七年の、いずれかの期間が経過した場合には、手当の一部の支給停止をする、こういうようなことを導入しようということでございます。他方、この一定期間に集中的に就労支援を講ずるとともに、貸付金制度の充実を図ることなどによって、言ってみれば、母子家庭が経済的にも自立できるように促進しようというようなことでございます。
 もう一つは、先生おっしゃっているように、がしかし、そういうようなことでも自立が困難な方々に対してはどうするんだ、こういうことでありますけれども、一つは、例えば三歳未満の児童を監護している場合には十分配慮しなければいけないとか、障害、疾病を有する場合などは自立といってもなかなか難しいことでございますので、この場合には減額措置を適用しないなど、こういうようなことで十分に配慮しながら行っていきたい、こういうことでございます。
福島委員 これは要望でございますけれども、先ほど岡下委員から御質問がありました、減額措置に関しての政令をいつ、どのように定めるのかという御指摘がありました。御答弁は結構でございますけれども、五年間の間に日本の経済がどういうふうになっていくのかわかりません、本当に私は心配をいたしております。景気回復というものがなされて雇用というものがどれだけふえていくのかという五年間のことを考えますと、減額措置というものに関しての政令を定めるときには、そのときの状況、そしてまた施策の進捗状況というものを本当にしっかりと踏まえて、適切な対応というものをぜひ図っていただきたいと私は強く要望をいたしておきます。
 次に、できるだけ激変緩和ということが必要であるということも申しました。
 今回の改正案では、母子家庭に対して低利子または無利子で貸し付ける母子福祉資金貸付金についても充実が図られておりますけれども、その一環として一定の母子福祉資金貸付金について償還を減免する、その世帯の状況によって減免をするという旨の規定が設けられております。
 今回のことしの見直しで児童扶養手当が減額となった過程があるわけでございますけれども、それに対して、特例児童扶養資金というものを貸し付けるという制度も同時に激変緩和ということで設けられております。この資金についても、償還に関して減免ができる、その対象とすべきであると私は思っております。この点についてのお考えが第一点。
 そしてまた、貸付金の見直しということで、児童本人に貸し付けができるというような見直しも同時に行われておりますけれども、その趣旨について御説明をいただきたいと思います。
岩田政府参考人 母子寡婦福祉貸付金の償還の免除でございますが、従来は、死亡ですとか高度障害の場合に、個別ケースごとにその都度、議会の議決で償還の免除ができるということになっておりました。
 今回の改正案では、これに加えまして、母子家庭の経済状況などに応じて弾力的に対応できるように、その都度議決を経ることなく、あらかじめどういう状況であれば免除することができるかといったようなことについて条例で定めていただいて、そして、その条例に基づいて償還未済額の一部を免除できるといったような仕組みにしたいというふうに思っているわけでございます。
 この減免措置の対象となる貸付金の範囲をどうするかということは、法律成立後、政令で定めるわけでございますが、今御指摘になりました特例児童扶養資金については、委員御指摘の方向で対象とするよう検討してまいりたいというふうに思っております。
 また、もう一つの、母子寡婦福祉貸付金の中で児童本人が借りられるようにするという点での改正も今回予定をいたしております。
 従来、母子寡婦資金貸付金の中で、これは金額ベースにしますと九割ぐらいは奨学金関係でございます。関係者のお話を聞きますと、やはり保証人を探し出すのが大変難しいということをよく聞いておりましたので、今回の改正では児童本人にその資金を貸し付けて、母親が保証人になり、そうなることで第三者の保証人は要らないという形で、子供さんが社会人になった後、御自分の責任で返していただくというような貸付金の改正も予定しているところでございます。
福島委員 次に、同じく児童扶養手当の問題でございますが、これまで、離婚後五年を経過すると児童扶養手当の請求ができない、そのような仕組みになっておりました。この点については、大変多くの要望が実はあったわけでございます。
 今回、その規定が廃止されることとなって、私は大変喜んでおりますけれども、その趣旨について御説明をいただきたいと思います。
岩田政府参考人 現行では、離婚などの支給要件に該当してから五年以内に限って児童扶養手当の認定請求ができるということになっております。しかしながら、離婚など支給要件に該当したその時点では、例えば十分な所得があったということで、申請をせずに時間が過ぎた。そうこうしているうちに、こういう景気状況ですから、失業するとか収入が減るということで、請求したいけれどもその時点では五年が経過してしまっていたというようなことが、問題点として指摘されていたところでございます。
 今回は、こういったケースを救済するという観点から、認定請求期限の規定を廃止することといたしております。
福島委員 次に、今回のこの母子家庭施策の見直しの中で、厚生労働大臣が基本方針を定める、また、都道府県、市等の福祉事務所設置自治体は母子家庭及び寡婦自立促進計画を策定することができるようになっているわけでございます。
 この両方の基本方針そしてまた計画、これがどのようにつくられるかということは極めて大切なことだと思っておりますが、この点について、その道筋についてお聞かせいただければと思います。
岩田政府参考人 今回の法案で実施、強化したいと考えております子育て支援、就労支援、そして養育費の確保対策、経済的な支援、これらを関係機関が密接な連携を図りながら実際に効果的に実行できるようにという観点から、国は基本方針を、そして都道府県、市、福祉事務所設置町村については自立促進計画を策定するということにいたしております。
 法案成立後、国といたしましては、なるべく早い時期に基本方針を策定したいというふうに思っておりますし、その基本方針の策定を待って、各自治体でも速やかに策定をしていただきたいというふうに思っております。
 これらの基本方針、自立促進計画の策定に当たりましては、法律改正案の中でも母子福祉団体その他の関係者の意見を反映させるようにということが規定をされておりますので、母子福祉団体やNPOを初めといたしまして、この問題にかかわっておられる方の意見を広く伺って、その上で策定してまいりたいというふうに考えております。
福島委員 さまざまな御意見をしっかりと受けとめて、いい計画をつくっていただきたいと思います。
 そして、それと関連をいたしますけれども、自治体の取り組みが極めて大切だと思っております。特に職業紹介ということに関しましては、都道府県等、職業紹介の事務というものをぜひやりたいという要望も最近は強くなっているようでございます。
 現在、厚生労働省におきましては、職業安定法の見直しの中で、こうした職業紹介事務というものをどの程度広げていくのかという検討がなされていると伺っております。ぜひ、この母子家庭のお母さん方の職業紹介ということに関しても、都道府県が主体的に取り組めるような、そういう見直しを進めていただきたいと思います。お考えをお聞かせいただきたいと思います。
戸苅政府参考人 都道府県の行う職業紹介事業についてでありますが、平成十年に地方分権推進計画が定められまして、これで国と地方公共団体の役割分担、それから国と地方公共団体の連絡のあり方、これを雇用対策についてもはっきりしようということになったわけであります。ここにおきましては、二重行政になるということで、地方公共団体がみずから職業紹介を行うことについては適当でないのじゃないかということでこれまで取り組んでまいっております。
 こうした中で、この十月三十日に地方分権改革推進会議から最終報告が示されまして、ここにおきましては、「高齢者、障害者などを対象とした地域性の強い施策を展開する上で必要な職業紹介については、国と地方の二重行政となることのないよう配慮をしながら、都道府県も一定の役割が担うことができる方向で検討を行い、平成十四年度中に結論を得る。」という指摘がなされておるところであります。
 委員御指摘のとおり、厚生労働省では今、職業安定法の見直し作業を進めております。その中で、これを踏まえまして、地方公共団体が住民に身近な行政施策を実施する上で必要となる職業紹介を行う場合にはその範囲で職業紹介を行えるようにしようという方向で、その具体的な範囲ですとか職業紹介を行う場合の要件、こういったものを現在検討を進めているところでございます。
 御指摘の、母子家庭の母につきまして、地方公共団体がみずからその福祉施策を展開する上で必要だとして職業紹介を行うことにつきましては、先ほど分権推進会議の中にありました高齢者、障害者と並びまして、母子家庭の母についても十分検討してまいりたいというふうに考えております。
福島委員 最後に一言申し上げます。
 先ほど心配だと申しましたのは、日本の経済が心配だというふうに申したわけでございます。今回のこの見直しの中に盛り込まれている施策が心配だというふうに言ったわけでは決してありませんので、誤解のないようにしていただきたいと思っております。
 ただ、そうした厳しい日本の経済情勢であるだけに、今回の見直しの中に盛り込まれた一つ一つの施策というものを本当に実効性あらしめるように全力で厚生労働省には取り組んでいただきたい、このことを要望いたしまして、質問を終わります。大変ありがとうございました。
坂井委員長 次に、三井辨雄君。
三井委員 おはようございます。民主党の三井辨雄でございます。
 昨今の経済状況を考えますと、大変厳しい状況下にあるわけでございます。雇用の問題あるいは企業の倒産、またリストラ等の中で、今まさに母子家庭の皆さんにとって、普通の一般家庭の皆さんでも、この経済環境の中で親一人子一人あるいは二人、こういう中で生き抜くということは大変なことだと私は思っております。
 なぜこの時期に児童扶養手当をこのように見直すのかということを、まず大臣に冒頭にお聞きしたいと思います。
坂口国務大臣 今、三井議員からもお話がございましたとおり、大変厳しい時代を迎えていることは、私も同じように思っている次第でございます。
 今までのような右肩上がりの時代から、少なくとも右肩上がりではない、右肩下がりとまでは申しませんけれども、右肩上がりにはなかなかなりにくい時代を迎えていることだけは間違いがございません。人口がやがて減ってまいりますし、そういたしますと、実質国民所得もそう伸びない、むしろ低下をするという時代を迎えてくるわけでございますから、今後とも、人口動向一つを見ましても、非常に厳しい時代が来るというふうに思わざるを得ません。
 そうした中で、弱い立場、例えば高齢者だとか障害者だとか、あるいは母子家庭の皆さんだとか、あるいは慢性の病気を持った人だとか、そうした人たちをみんな弱いという立場にくくることはできないかもしれません。立派にそこはおやりになっている方もおみえでございますから、すべてが弱い立場とは言えないかもしれませんけれども、総じて言えば、弱い立場にある皆さん方がおみえになるわけであります。
 そうした皆さん方に、ややもいたしますと、今までは財政的な支援というものを中心にして考えてきた、そのことも私は大事ではあるというふうに思っておりますが、しかし、もう少しこの皆さん方をトータルで支援する社会的システム、いわゆる自立を支援する社会的システムへと軸足を移す必要があるのではないかというふうに思っております。
 そうした立場の中から、母子家庭の皆さん方にも、今後も生き抜いていただきますために必要なことは何なのか、この際によく見直しを行って、そして子育ての問題、そしてまたいわゆる職業に対する支援の問題、雇用支援の問題等々含めまして、総合的にこの皆さん方を御支援申し上げていくということが今大事な時期ではないか。厳しい時代であるがゆえに、この皆さん方に早くそうしたシステムをつくっておこたえをしていくことが大変大事ではないかと思っている次第でございます。
三井委員 私のところにも、今回の児童扶養手当につきましては余りにも厳しいんじゃないか、まさにメールあるいは連日ファクスが届いておりますけれども、命綱がぷっつり切られたような思いであるというようなファクスやメールをいただいております。
 今大臣が御答弁されましたように、まさに厳しい環境にある。そして、母子家庭の皆さんにとってはもっと厳しい環境にある。離婚された母子家庭の中には、平均で二人以上のお子さんを抱えていらっしゃるという統計もございます。そういう中で、今お子さん一人を育てるのでさえ大変だ、二人のお子さんを抱えるということは、ここで児童扶養手当を切られるということはまさに本当に命綱を切られる思いだと思うんですね。
 これはやはり私は、五年後の見直しということもおっしゃっていますけれども、今ここで、五年後の見直しだと、先ほど福島議員からもお話ございました、五年後の経済はどうなっているかわからない、あるいは雇用の問題もどうなっているかわからない。銀行の金利じゃないですけれども、固定金利か変動金利なのか、まさにそういう中で、よりよい方に見直すのであればいいですけれども、余りにも具体的なことがなさ過ぎるなという思いを実は私はしております。
 そこで、いろいろな理由の中で離婚され、あるいはシングルマザーになられた、その子供たちはやはり健やかに育つ権利があるわけであります。親には当然養育の義務を果たす責任があるわけでございますから、将来的な給付対象がふえたからといって手当の減額を図る厚生労働省の考え方は本末転倒ではないか、私自身はそう思っているわけでございます。
 まさに、将来の離婚率ももっと高くなるという統計もございます。百万世帯にはなるだろう、あるいは今の予算が平成二十年には四千億までふえる。やはり初めに財政問題ありきというのは、いつも、健保法もそうでしたが、やはりここをもっと、財政ありきじゃなくて、本当に弱者にとって、あるいは負担をする皆さんにとって、よりよい施策をすることが必要でなかろうか、こういうぐあいに私は思うわけでございます。
 きょうは就労支援策と経済的な支援策等について総合的に質問させていただきます。
 まず、今回の改正による母子家庭の自立を支援するための母子家庭の母等の就労対策の考え方について御説明をいただきたいと思います。どのように見直しされるのか、趣旨説明をお願い申し上げます。
岩田政府参考人 母子家庭の母は世帯の主たる家計の維持者でございますから、経済的な自立という課題は大変重要であるというふうに思っております。なかんずく、昨今のような経済情勢、雇用情勢のもとでは、就労支援対策は大変重要であるというふうに考えております。
 今回の改正案の中では、母子家庭の母が経済的に自立できますように、まず一番目としましては、お一人お一人に対するきめの細かい就業相談、これをちゃんとやるということ、そして二番目には、職業能力を高めていただくための講習会、教育訓練の機会をしっかり持っていただくということ、そして三番目には、具体的な求人情報や就職のあっせんをお手伝いするということ、そして最後に、四番目は、しっかりした収入が得られるような雇用機会自体を開発する努力をしていくこと、この四つを柱といたしまして、就労支援対策に取り組んでいくということにいたしているところでございます。
三井委員 今局長が御答弁されましたように、今回四本柱という見直しのメニューをお話しいただきました。現状で考えられる手段をやはり網羅して、就労支援対策を図ることをより一層やるべきだ。また、母子福祉対策の観点から支援策が整備されるという、評価できる点もあると私は思うんです。
 しかし、雇用対策という観点から見ますと、依然として福祉法の中に雇用促進の条文を置くにとどまっているということしか理解できないんですね。雇用法制の一つの課題として、母子家庭を明記するところまで行っていない。高齢者や障害者それぞれの雇用就業に関する特別法の制定の例もございます。
 この後質問するハローワークの職業相談や雇い入れる事業主への助成作業に取り組むのであれば、当然労働行政としての責任が問われていくわけでございますけれども、さらには幅広い意味で、子育ての支援、育児関連、雇用施策とのかかわりも含めて、今後、福祉政策から雇用施策の中でどのように位置づけをしようとしているのか、お伺いしたいと思います。
鴨下副大臣 委員御指摘のように、雇用政策そのものは非常に重要な、言ってみれば柱の一つでございますし、それを推進しろというのは、これはもっともなことでございます。
 ただ、母子家庭の母の場合には、子供を育てながら就労を行わざるを得ない、こういうような、ある意味で特別な事情もございますので、単に雇用政策、そして就労支援だけではなかなかうまくいかない。むしろ、子育て、生活支援、それから経済的支援など総合的な対策を推進していく、こういうような観点が重要なのだろうというふうに思います。
 こういうような観点から、今般の母子及び寡婦福祉法の改正においても、厚生労働大臣が、母子家庭及び寡婦の生活の安定と向上のための措置に関する基本的な方針を定めることとしておりまして、母子家庭等に対する就労支援についても、総合的な、言ってみれば母子家庭等対策の一環として、この方針に基づきまして講じること、こういうようなことでありまして、今回の改正により拡充される同法等に基づき、今後とも、雇用の促進や職業の安定のための施策を生活支援等の施策と一体的かつ総合的に講じていこう、こういうようなことでございます。
三井委員 わかりました。
 続きまして、時間も限られておりますので、次々質問させていただきたいと思います。ハローワークの役割についてお伺いしたいと思います。
 今回の法案では、母子家庭の就業に関するハローワークの役割を明記されておりますが、第二十九条二項としております。現行では母子寡婦福祉法第十九条でも規定がございますが、従来からハローワークが母子家庭の母等の雇用促進に努めてきたという経緯がございます。今回の改正では、具体的にどのような改善をなされるのか。省庁再編で厚生労働省が発足したわけでございますけれども、福祉と雇用の連携強化がより求められている中で、ハローワークにおける母子家庭の支援策のあり方について、今後どのように取り組もうとしているのか、お尋ねしたいと思います。
戸苅政府参考人 母子家庭の母の方につきましては、従来から、手厚い就労のための支援が必要だということで、ハローワークに特別に相談員を配置いたしましたり、あるいは公共職業訓練等を受講する場合の訓練手当を支給したり、それから、母子家庭の母の方を雇い入れた事業主に対しまして特定求職者雇用開発助成金を支給するといった支援を行っております。
 本日御審議いただいております母子及び寡婦福祉法の改正に伴いまして、これらの施策に加えまして、さらに母子家庭の母の方の安定的な就業の促進を図りますために、一つは、母子家庭の母の方を試行的に雇用する事業主に対する奨励金の新設ということで、これまで若年者、それから障害者に限って行っておりましたトライアル雇用制度の対象に新たにしようということを予定しております。
 そのほか、母子寡婦団体が無料職業紹介を行おうとされた場合に、当方のハローワークで持っております求人情報を提供いたしましたり、あるいは、職業紹介、職業相談を行ういろいろな技法等に関する研修を行わせていただいたりというふうなことを考えております。
 さらに、両立支援ハローワークというのがございまして、これは、家庭生活と職業生活の両立を図りながら職業生活を送っていきやすいようにということで特別のサービスを行っているハローワークであります。ここでこれまで求人情報の提供なり職業講習の対象といたしておりましたのは、無業者の方が初めて就職されようという場合を対象に、あるいは再就職しようという場合を対象にしていたのでありますが、母子家庭の母の方につきましては、今パートで働いておられる方が常用雇用に移行を希望するという方についても新たに対象とするといったようなこと、それから、ハローワークの所長によります職業訓練の受講推薦の積極的な実施といったようなことを予定しておるところであります。
 いずれにいたしましても、厚生労働省ということで省庁を統合いたしたわけでありますので、母子自立支援員の方、あるいは児童家庭支援センター、その他母子の福祉の関係の団体、そういったところとハローワークとの連携をさらに緊密なものとしながら、母子家庭の母の方の就労促進に一層実効が上がるように努力をしてまいりたいというふうに考えております。
三井委員 今の答弁については次でお聞きしようと思っていたんですが、ハローワークとのかかわりというのは、私はやはり、情報収集、あるいは雇用とのコーディネートといいましょうか、それからそのノウハウを独自に開発できるということが重要だと思うんですね。
 私もハローワークへ行ってまいりましたけれども、今まさに、母子家庭でなくても、ハローワーク等に行っても本当にたくさんの人が職を求めていらっしゃっている。そういう中で、やはり母子家庭の皆様はある程度優先をしながら、この連携というのはより強化していただきたいということをお願い申し上げたいと思います。
 次に、母子福祉貸付金の充実についてお伺いいたします。
 今まさに母子家庭の自立を支援する経済的支援体制の整備を考えたときに、現在実施されております施策、例えば母子福祉貸付金の制度がありますが、今回の改正においてどのように改善されたのか。また、この制度が実際どのくらい利用されているものか。また、十三種類の資金があります。現在の利用状況についてお聞かせ願いたいと思います。
岩田政府参考人 まず、現在の利用状況から御説明をさせていただきたいと思います。
 平成十三年度の貸付実績ですけれども、貸付金の金額が二百十八億円余になっております。件数では、五万四千件余でございます。十三ある貸付金の中で、大変利用されているものは、多いものから申し上げますと、修学資金が四万件余り、そして就学支度資金が一万一千五百件余り、それらに続きまして、転宅資金、生活資金、これらも相当の件数がございます。
 また、今回の改正案においてこの母子福祉貸付金がどういう形で強化されるかということについてですが、まず一点目は、子供本人に貸し付けることができるようにしたということでございまして、修学資金、就学支度資金などについては、子供が借り、母親が保証人になれば第三者の保証人は不要とするということで、お借りいただきやすくしたということがございます。
 二つ目は、母子福祉団体が事業をするケースがあるわけですけれども、この母子福祉団体の貸し付けの対象となる事業の範囲を拡大したいと考えております。
 三つ目には、ことしの八月の児童扶養手当制度の改正によりまして手当額が減額になった、そういうケースについては、特例児童扶養資金という貸付金制度を始めているわけですけれども、この資金を念頭に置いておるわけですが、償還期日になっても母子家庭の所得の状況がよくならないというのか、悪くなっているというようなケースについては一部免除することができるような、そういう制度についても創設をしたいと考えております。
三井委員 「母子福祉資金貸付制度の概要」を見させていただきました。確かに十三ありますけれども、私も、これを一つ一つ見ても、本当にこれが、例えば母子家庭の皆さんにこの資金をどういうぐあいに貸し付けしていただけるのかということが、これは全部実際に現場では見れるんでしょうかね。これだけのものが小さい字で書いてございますけれども、こういう制度もありますよ、例えば修学資金、あるいは就労、起業に対する資金とか、あるいは自立支援とおっしゃっていますけれども、実際問題として、私は、こういう制度をつくっても、実際に広報活動がもっと足りないんじゃないか。やはり利用者の立場に立った制度をしっかりと私はつくっていただきたい、こういうぐあいに思うところでございます。
 そこで、今回の、今局長から御答弁いただきましたが、この利用状況を見ますと、修学資金、就学支度資金は、確かに私は着眼しているところはすばらしいことだと思います。しかしながら、この貸付金のうちの、昭和二十八年にこの制度を創設されたと聞いておりますが、九〇%近くの利用がありました事業開始資金あるいは事業継続資金は、昨年の十三年度では、九〇%あったものが、たった〇・五%程度の利用しかないんですね。
 当時と現在では当然社会背景も違いましょうし、経済状況も違うと思っておりますが、一つには、やはり制度がわかりづらい。そして、二百八十万程度の貸し付けの限度額とか、ほかの中小企業の融資とさほど変わらない償還期限がたった七年、今、例えば住宅ローンでも二十年とか二十五年とある中で、七年という点が、やはり事業意欲を持った母子家庭のお母さん方にとっては受け入れられなかったのではないかと思うわけでございますけれども。
 こうした点についても、せっかく起業家精神に燃えておられるお母さん方にもっと利用してもらえるような、先ほども申し上げましたように、広報活動なり、こういう制度がありますよということを言っていただきたいと思うんですが、この起業家支援策的な工夫が私は必要だと思うんですが、御答弁をお願いいたします。
岩田政府参考人 今先生がお述べになりましたように、この事業開始資金、事業継続資金は、昭和二十八年にいわば生業資金として生まれまして、その後、昭和三十五年に現行の制度となっております。その後も、限度額の引き上げですとか償還期限の延長などにも取り組みまして、少しずつ改善はしてきているつもりでございます。また特に、平成十二年度には無利子化を図っておりまして、改善の努力に努めてきております。
 今御指摘のとおり、さらにこの制度を活用していただいて、ビジネスをみずから起こしていただくという元気のある母子家庭のお母さんたちの力になりたいというふうに思いますので、制度をよく周知するということについて努めたいというふうに思いますし、また、この貸付金の条件などについても、今後、その充実に努力をしてまいりたいというふうに思います。
三井委員 ぜひ、この部分についてはもっともっと利用をしていただけるような、例えば、サテライト型をおつくりになるようでございますから、サテライトでもすべての相談を受けられる、こういう制度がありますよということをより広報活動していただきたいことをお願い申し上げたいと思います。
 そこで、私も、今、病院あるいは老人保健施設、幼稚園も経営しているわけでございますけれども、その中に、院内保育と称するものを実はことしの十月に完成させました。約一千二百万かかったわけでございますけれども、この補助制度について。
 うちで今十六名お預かりしているわけですけれども、これは、日ごろから大臣おっしゃいますように、私は、少子化対策ということで、非生産性の部分ではありますけれども、やはり十六名のお子さんを預かって、もっとふえていただきたいということで、月五千円をいただいているわけです。当然赤字になるわけでございますけれども。
 今、この制度がいろいろ導入される中で、この院内保育であれ、例えば、これに対する貸付制度というのも私はある程度考慮をしていただきたいなという思いがするわけでございます。母子家庭、特に医療、福祉関係は多いわけでございまして、看護師さんあるいは介護士さんの中でも、より自立しようという人たちが当然いらっしゃるわけでございますけれども、こういう建てかえ資金についても、それなりの、経営者サイドにもある程度補助をしていくというようなこと、あるいは貸し付けしていくというようなことが私は必要ではないかということを実は思うわけでございます。
 そこで、こうした、特に今の貸付制度につきましては、やはり地域事情もございます、保育士も集まらない、あるいは看護師さんも集まらないという地域事情ございますけれども、やはり全国一律でなくて、その辺の緩和策も私はぜひお考えをいただきたい、こういうぐあいに思っております。
 きょうはたまたま身近な例でお話を申し上げましたが、例えば、幼稚園も私はやっておりまして、一人の先生が欠員になりますと、十五人ぐらい来るんですね。その中で一人を採用するということは大変きつうございまして、今回の法案の改定の中に、保育士あるいは看護師、それに対する補助制度もできたようですけれども、しかし、実際問題としては、なかなか経営側では受け入れがたい。受け入れがたいというよりも、むしろ競争率が激しいという状況にあるということを、ぜひ現場の声をしっかりとまた受けとめていただきたいと思うところでございます。
 いずれにしましても、この制度がある以上は、やはりこれから厚生労働省もしっかりと対応していただきたいと思いますし、せっかく仏をつくって魂入らずの法案にならないように、私からもお願い申し上げたいと思います。
 最後に申し上げたいのは、サテライトでございますけれども、今、医療機関でもサテライトというのが非常に普及してきているわけですけれども、今回の質問の中には私はお話ししてございませんけれども、このサテライトというのは具体的にはどういう内容でおやりになるのか、御趣旨をお聞きしたいと思います。
岩田政府参考人 これまでの母子生活支援施設、母子寮というふうに呼ばれていることが多いんですが、これは、どちらかといいますと、大型な施設でございました。
 サテライト型の母子生活支援施設を創設したいということで予算要求をしているところですけれども、従来の施設よりは小型なもので、通常の住宅街にある既存の住宅などを活用していただいて、そこで、五世帯から十世帯ぐらいでしょうか、少ない世帯の方たちにグループホーム的に共同生活していただく。もちろん、そういう生活をお支えしたり自立を支援するための職員も置かなければいけないというふうに思いますけれども、それで母子寮に長く、そこで長期にわたって滞留するということではなくて、早く自立していただけるように、そういう機能を持った施設を考えてまいりたいというふうに思っているところです。
三井委員 今回、質問に当たりまして、さまざまな意見を聞いてまいりました。例えば、これは札幌市の事例でございますが、就学児童の帰宅後の対応であります。今、公的施設とかいろいろ使われる中で、児童会館が今行っているわけですけれども、原則的には小学校三年生までしか預かりませんよ、こういう、まあ札幌市がそうなのかどうかわかりませんけれども。
 例えば、先ほども申し上げましたように、お子さんが二人いらっしゃる。もしかしたら五年生、六年生あるいは中学生もいらっしゃるかもしれない。それで二人を預かりたい。三年生以上になると、これは預かれないということになりますと、お子さんが二人いらっしゃるときに、三年生までは預かるけれども、五年生はだめよ、四年生はだめよということになるわけですね。ですから、もう少し僕はここは流動的に、もっと緩和をするべきではないかなと。これは全国一律かどうかわかりません。
 こういう問題とか、あとは母子、父子家庭の、いわゆる精神的ケアを相談員に受けられるような、先ほどサテライトというのがございましたけれども、もっと親密に、やはり傷ついている、親も傷ついている、お子さんも傷ついている、将来に対する不安もある、こういうケアをきちっと受けられるような私は制度にしていただきたい。先ほど児童支援、自立支援、いろいろございましたけれども、やはり心のケアを相談できる相手である、こうした要望が来ておりますけれども、最後にお尋ねしたいと思います。
岩田政府参考人 放課後児童クラブのお話がございましたけれども、まさに原則は小学校の低学年ということでやっておりますけれども、今おっしゃったようなケースなど、現実に即して弾力的に市町村には対応していただきたいというふうに考えます。
 また、心理的なケアの問題ですけれども、現在では各都道府県が母子相談員を委嘱しまして福祉事務所に配置をし、これらの方々が母子家庭のお母さんの相談相手になるという仕組みをつくっておりますが、こういう方を中心に、本当にその方の立場に立って、感情や経験を分かち合うようなそういう質の高い相談員になっていただきたいというふうに思っております。
三井委員 本来、施策の中心にありますべき子供でありますから、子供は親にとっても宝物でありますし、やはり国にとっても当然宝でありますから、今後、大臣がお考えになりますような、健やかに子供さんが育つような環境をつくってあげたい、そして、少子化対策にもしっかり取り組む施策をぜひ、とり行っていくことを最後にお願い申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。
 ありがとうございました。
坂井委員長 次に、水島広子君。
水島委員 水島広子でございます。
 坂口大臣におかれましては、続投されますということ、本当にお疲れさまでございます。ぜひ、優しい大臣の個性がしっかりと伝わってくるような温かい厚生労働行政に尽力していただければと思っております。
 そして、その最初の法案がこの母子寡婦福祉法等の改正案ということでございます。まさに象徴的な領域だと思いますので、ぜひ大臣の総力を尽くして、母子家庭の方たちが安心して生活していけるような体制づくりに努めていただけますように、それがわかるような審議にしていただけますように、心よりお願い申し上げます。
 まず、法案の審議に先立ちまして、同じく子供が安心して育つ権利ということで、ちょっと別件ではございますけれども、一つ里親のことについてお伺いをしたいと思います。
 去る十一月三日に、私の地元でございます宇都宮で、里親の女性が三歳のお子さんを殴って殺すという痛ましい事件が起こりました。事件についての詳細はもちろんまだわからないわけですけれども、かねてから里親に対するサポート体制の不備を感じていた私から見ますと、ついにこんな事件が起こったというような印象を持っております。
 里親家庭に来る子供はほとんどが精神的な傷を負っております。特に最近は親から虐待されていた子がふえているわけです。初めて安心できる場所を与えられて、赤ちゃん返りをしたり、さまざまな問題行動を起こしたりいたします。かなり独特な行動パターンがそこにあるわけです。専門家による心のケアが必要なことも少なくはありません。それなのに、里親をサポートする体制は余りにも乏しいと思っております。
 まず、現状でのサポート体制はどうなっているのかを教えていただければと思います。
岩田政府参考人 先生御指摘のように、里親をサポートする体制は必ずしも十分でなかったというふうに思っております。
 今年度から取り組んでおりますのは、一つは研修でございます。おっしゃったような心に傷を負った子供たちを引き受けるということですから、専門的な研修も含めて、里親全員が一年に一回は研修を受けられるように、そして二つ目には、里親自身もなれない子育てに疲れるということもありますので、一時期休息できるように、レスパイトケアと言っておりますが、一時期施設に預けるとか、ほかの里親に少し肩がわりしていただくとか、そういったレスパイトケアの制度も導入をしつつございます。
 もちろんですけれども、児童相談所や児童養護施設や地域の主任児童委員などとよくネットワークをつくって、こういう方たちに常に相談に乗っていただけるような相談体制の整備も重要な課題であるというふうに思っております。
水島委員 ようやくその必要性を認識して、これから取り組んでいただけるということでございますけれども、ことしから始められておりますその研修にしましても、これは里親自身が、もちろん専門知識を持つことも重要ですけれども、専門知識があれば一人ですべてやっていけるということはないわけで、常にサポートしてもらえる体制というものが必要だと思っております。
 また、これは一般の子育て支援の枠の中でくくられがちですけれども、やはり虐待を受けた子供たちというのはかなり独特な特徴がありますので、そういったことに対する特別な専門性のある支援体制が必要だと思っております。
 また、精神科医を受診しろと言われても、精神科医を受診してみても、それは専門の精神科医でなければわからない。普通の精神科医は、虐待をされた子供たちに対してどうしたらいいかということをみんなが知っているわけではありませんので、そういうところに相談をして、精神科医に失望をして、もうすべて一人で背負い込んでいくしかないというふうに思い詰めていらっしゃる里親の方にも私も先日お会いいたしました。これは特に地方に行けば行くほど、どこを訪ねたらいいかわからないというようなことは、その傾向は大きくなると思います。私は、きちんとした専門的な、あそこに行けば相談が受けられるというセンターをつくっていくことが必要だと思っておりますので、そのような機能を含めてぜひ前向きに御検討いただければと思っております。
 欧米先進国では、ノーマライゼーションの考え方に基づいて、子供の養育を施設から里親や少人数のグループホームへと積極的に転換をしていると聞いております。子供の虐待の問題を考える上でも、虐待を防止するというようなところにはようやく人々の目が向くようになってはきましたけれども、虐待を受けた子供たちがその後どうなっているのかというところについては、私はまだまだ世論の目は向いていないと思っております。
 その問題を考える上でも、やはり里親が安心して子供を育てられる体制をつくることが重要だと思っております。この点につきまして、大臣のお考えと心意気をお聞かせいただければと思います。
坂口国務大臣 確かに痛ましい事故でありまして、私も先日、ニュースを拝見いたしまして、本当に心の痛む思いがいたしました。
 それで、今局長からも答弁ありましたが、でき得ることは何かということをそのときも考えたわけでございますが、一人の里親だけに任せておくということは大変難しいことですから、それは児童相談所なりあるいは児童委員なり、そうした皆さん方ができるだけ連係プレーをしながらいかなければならないのではないかというふうにそのときも思ったわけでございますけれども、今先生からお話のございますとおり、最近の里親に出るお子さんの方が、今までの里親に出るお子さんよりも中が少し質的に違ってきている面もある。
 いろいろの虐待を受けた、そういう経験のあるお子さんが里親に出るときに、やはりそれなりの心構えといいますか、あるいは教育姿勢といいますか、あるいはその能力といいますか、そうしたものを持ったところに里子として出された場合はいいですけれども、そういうことを全然考えない、ただ子供を預かればいいという形で預かるというようなことになりますとそこに問題が生ずることになるわけでありますので、やはり里親制度の中身につきましても、あるいはまたその能力につきましてもこれから問われてくる時代になりますので、十分その点を配慮しながらやっていきたい。
 ただ、里親が非常に日本は少ないものですから、やはり里親制度そのものもこれから拡大をしていかなければならない。質、量ともにこれは前進をさせなければならない時代に来ている、そんなふうに今も思わせていただいた次第でございます。
水島委員 ここに、私の地元の下野新聞という新聞の記事がございますけれども、この中で、「かわいがるはずの里親が子どもを虐待するなんて」と困惑する市民の声が載っております。私も本当にそう思います。本来かわいがろうと思って引き取った里子を虐待しなければならないほど追い詰められた人。まあこの事件についてはまだ詳しいことはわかりませんけれども、やはりこれは、里親にしましても、また一般の親にいたしましても、子供をかわいがって育てようという気持ちは比較的多くの人が持っているわけですけれども、サポート体制が余りにも不十分なためにどんどん精神的に追い詰められていくというような現状を改善していくということが子育て全般の政策の根底に求められていると思っておりますので、ぜひ、これから進めてまいります法案審議に関しましても、母子家庭のお母さんを追い詰めないような、そういった姿勢での御答弁をいただきたいと思っております。
 それでは、法案の方に入らせていただきます。
 まず、今回の一連の法改正の目的をここで改めて大臣にお伺いしたいと思います。
坂口国務大臣 先ほど三井議員にもお答えをさせていただきましたが、全体といたしまして非常に厳しい時代を迎えております。人口減少時代でございまして、その中で少子高齢化が進んでまいります。そうした中で、高齢者なり、障害者なり、あるいは母子家庭の皆さんなり、慢性の疾病を持った人なり等々、そうした人たちをどのようにこれから守っていくか、もう一度これは問い直されているときが来ているというふうに思っております。
 今までは財政的な支援を中心にして考えてまいりましたけれども、それも私は大事ではあるというふうに思いますが、しかし、それだけではなかなか、弱い立場の皆さん方がこの世の中を生きていくことができない。もう少しトータルな対策というものが必要であり、そしてその皆さん方にはやはり自立をしていただくための支援を全体としてどうつくり上げていくかということが一番大事ではないかというふうに思っている次第でございます。そうした中で生まれました法律でございまして、ぜひともそういう全体の、トータルの中でどうやっていくかということが非常に大事だというふうに思っております。
 先ほどもこの五年間という議論がございましたが、この五年間の間にどうそれを確立できるかということが最大の課題であると思っている次第でございます。
水島委員 基本的にはこの法改正の目的はトータルな自立支援というふうに今伺ったわけでございますけれども、それでは、まず来年度の予算、今概算要求をされているところですが、来年度の予算ではこの児童扶養手当の削減分はそっくりそのまま自立支援施策に振りかえられているのでしょうか。
岩田政府参考人 十五年度の母子家庭関連の予算の概算要求額ですが、トータルではほぼ前年度と同額になっております。この中で就業支援策などにつきましては、前年と比べまして大幅に拡充をしたいということで、対前年比で約二倍強の百三十四億円を自立支援のための予算として要求しているところでございます。
水島委員 それでは、厚生労働省は、来年度の母子家庭の増加をどのくらいと見込まれているのでしょうか。そのうち児童扶養手当受給世帯の増加はどのくらいであると見込まれているのでしょうか。
岩田政府参考人 平成十年に全国母子世帯調査をやりましたが、これは五年ごとに実施をしている調査でございます、九十五万世帯でありました。五年前と比較いたしますと、約二割の増加でございました。
 また、離婚の状況ですけれども、母子家庭の増加の大きな原因がこの離婚の増加にあるわけですけれども、平成十三年の離婚件数は二十九万件となっております。この中で未婚の子供さんがいる離婚が全体の六割、そして、お子さんがいる離婚で母親の方が子供の親権者になるケースが八割ということでありますので、六割掛ける八割ということで、全体の離婚の中で約半数の十五万件が母子家庭となっております。
 また、児童扶養手当の支給状況を見ておりますと、こういった離婚の増加などを反映いたしまして、平成十一年度末には六十六万人、十二年度末には七十一万人、十三年度末には七十六万人ということで、近年約五万人程度増加をいたしております。
 そういう傾向を踏まえて、来年度予算は、人数についてはこういった増加に対応できるように見込んでいるところでございます。
水島委員 増加に対応できるように見込んでいるということなんですが、今のお話を伺いますと、来年も児童扶養手当が必要な母子家庭のお母さんが五万人ぐらいはふえるんじゃないか、このところそういう傾向だということなんですけれども、ところが、母子家庭福祉対策関係予算は、先ほども御答弁いただいたように、今年度も来年度もほぼ全体としては同額ということを要求されているわけです。
 ということは、対象者の増加を考えますと、その分予算が削減されたということになると思いますけれども、なぜ最も弱い立場で本当に苦労されている母子家庭の福祉対策関係予算からまずこうやって削減していかれるんでしょうか。これは大臣に御答弁いただきたいと思います。
坂口国務大臣 これは、先ほど局長から答弁がありましたとおり、額はそういうことでありまして、ことしと来年度、変わっていない。それは、扶養手当等の問題等もあって、そしてその中の値が少し変わったんだというふうに思いますが、これからはだんだんとふえていくだろうというふうに思います。ふやさざるを得ない状況にある。
 離婚がふえるということがいいことか悪いことか、これは考え方によって違うというふうに思いますが、そうした皆さん方の中で、今も話ありましたように、半数はやはり母子家庭として何らかの御支援を申し上げなければいけない立場になられるわけでありますので、それは財政的な問題も含めてでございますけれども、財政的な問題だけではなくて、社会システムそのものをどう変えていくかということが今最も問われているというふうに私は認識している次第でございます。
水島委員 何か誠実な坂口大臣としては、今ちゃんと御答弁いただけなかったような気がするんですけれども、これからはふやすということを御答弁くださって、ことしはふやせなかったということなのかなと思いますけれども、ちょっともう一度、来年度の要求額について、これは大臣としては削減されたつもりなのかそうではないのかというところをちょっとお答えいただけますでしょうか。
坂口国務大臣 ことしはたまたま制度の改正等を行いましたから同額になりましたけれども、これからまた母子家庭がふえていくということを前提にして考えれば、これは当然、総額におきましてはふえざるを得ない状況にあることは事実でございますから、それは自然増にならざるを得ないということだというふうに思います。
水島委員 ということは、ことしはたまたまシステムが変わったので前年度と同額ということにはなるけれども、その内容としては、来年また五万人児童扶養手当が必要な方がふえることを見込んで、十分な予算であるというふうに考えられているということでよろしいんでしょうか。
坂口国務大臣 来年のことは来年考えなきゃなりませんけれども、しかし、来年はそういうことでまたふえるということになれば、それに対応をしなきゃならないということを言っているわけでありまして、ことしの予算は来年使うわけでありますから、いわゆる再来年の話を言っているわけでありまして、来年はことしの予算でいく、そのために組んでいる予算でありますから、ことしの予算で来年はいかざるを得ない、そういうことです。
水島委員 以前にもこのことで大臣に伺っていて、今のように何だか大臣にしては歯切れの悪い答弁が続いたことがございまして、大臣にとって非常に答えにくいところなのかなとそのときも思ったんですけれども、これをやっていても仕方がありませんので先に進ませていただきますが、ということは、金額としては児童扶養手当を支給する場合と同じであっても、自立支援にその金額を使えばもっと効果が上がるというふうに考えての政策転換というふうに、今のを好意的に解釈するとそういうふうに受け取れるわけでございますが、それが実際にどれほど有効な自立支援策になっているのかということは、ちょっときょうの今後の質疑の中でお伺いをしていきたいと思っております。
 その前に、ちょっと、ことしの八月の政令改正についてここで総括をしていただきたいと思っているんですけれども、この八月に政令改正がされまして、児童扶養手当が削減されました。そもそも、今回こうやって母子寡婦福祉法等の改正案が国会できちんと審議されることがわかっていたのに、それに先立って、国会に気がつかれないような形でなぜ八月に政令改正を行ったんでしょうか。大臣にお答えいただきたいと思います。
坂口国務大臣 これは、相前後したことは間違いのない事実でございまして、率直に認めなければいけないというふうに思いますが、ことしの三月に母子家庭等自立支援対策大綱を取りまとめておりまして、予定されておったと申しますか、スケジュールに乗っていたわけでございます。前国会でこの法案を提出をさせていただいたところでございますが、諸般の事情によりまして御審議をいただく期間がなかった、そして、この国会にこの法案はずれ込んだということでございまして、そうした意味では少し前後いたしましたけれども、大勢に影響はないと考えております。
水島委員 おかしい説明だなと思いましたけれども、これが、一連の政策の中での政令改正と今回の法案審議がちょっと前後してしまったという御説明でよろしいんでしょうか。
 そうしますと、この政令を改正するに当たって、厚生労働省は、児童扶養手当の受給額について、五一%の方は変化なし、四六%が減額、三%は増額というふうに説明されていたと記憶しておりますけれども、つまり、多くの人にとっては減額ということであるわけです。この政令改正だけが先行しまして、そして今回、今こうやって法案が国会で審議されているわけですが、これがちゃんと法律として成立することによって自立支援策が充実することとセットでなければこの児童扶養手当の減額ということは語れないはずだと思うんですけれども、法案が国会で審議もされないうちに、それとセットである政令改正だけ先行させるというのは、私はちょっと国会軽視ではないかなと思うんですけれども、いかがなんでしょうか。
岩田政府参考人 母子家庭対策のあり方については昨年度からいろいろ議論してまいりまして、そして、子育て支援、就労支援なども含めた総合的な支援のあり方について、厚生労働省としては本年三月に、母子家庭等自立支援対策大綱という形で、これからの対策のあり方といいましょうか、取り組むべき課題をまとめたところでございます。
 この大綱に沿いまして、十四年度の予算で対応できるもの、あるいは十五年度の概算要求をすべきもの、法律改正が必要なもの、政令改正で対応できるもの、いろいろレベルがございましたけれども、二年にわたりますので時間差があるということは御指摘のとおりですけれども、この大綱に沿って総合的な自立支援に向けての政策のシフトといいましょうか、財源のシフトをしつつ、対策を前進させていきたい、そういうことで、そのうちの一部はことしの八月から政令レベルで対応させていただいたわけでございます。
 もちろん、この政令の改正によります児童扶養手当のあり方は、予算に直結いたしておりますので、平成十四年度の予算審議の中で国会でも幾つか御意見をちょうだいしたところでございます。ですから、国会軽視ということはございませんで、全体の中で対応しているということ、そして予算審議という形ではございましたけれども、国会でもしっかりそれを見ていただいたという経緯がございました。
水島委員 余り納得はできないんですけれども、いずれにしても、自立支援策が充実したから手当を減らすという順番がだれが考えても妥当な順番であるわけですけれども、こうやって政令改正で最初に児童扶養手当だけを削減しておいて、後から法案の審議をするという順番を一つ見ても、どうも今回私たちがこの法改正に関して感じている疑念というものがますます強まるわけでございます。この点はきちんと指摘をしておきたいと思っておりますけれども。
 このときに児童扶養手当の全額支給の年収上限が下げられまして、百三十万円とされたわけですけれども、この百三十万円という金額はどこから出てきたのか、その根拠をお聞きしたいと思います。
岩田政府参考人 二つございまして、一つは、大変限られた財源の中で、ふえ続ける母子家庭に対して、この児童扶養手当制度を制度として安定的に将来に向けて維持できるような仕組みをどういうふうに再構築するかという観点でございました。
 もう一つは、いかに就労促進型の児童扶養手当にしていくかという観点でございまして、従来はこの児童扶養手当の金額が二種類ということでございましたので、所得がある一定水準を超えますと、就労による収入と児童扶養手当と合わせて合算した全体の収入が逆に減少するという逆転現象も見られたところでございます。
 そこで、就労による収入が増加するに従って児童扶養手当の金額をきめ細かく逓減させていって、総収入額がなだらかに増加するように、そういう仕組みに今回改めさせていただいたわけでございます。
 それでは、なぜそのスタート時点が百三十万円かということについてでございますけれども、これは母一人子一人で、この母子家庭の母が給与所得を得ているケースですけれども、百三十万を超えると、所得がふえるに従って手当の金額が逓減するようになっております。これは、母子家庭の平均的な所得水準を考慮いたしまして、それ以下の方には全額支給をいたしまして、それを超える収入のある方については、収入がふえるに従って逓減させていくというふうにしたわけでございます。
 ちなみに、平成十三年度に、この母子家庭対策の見直しのために日本労働研究機構で母子家庭の現状の調査をしてもらいましたけれども、パート、アルバイトで収入を得ている場合の年間の平均の収入が約百三十万程度、そしてこれに手当額、児童扶養手当ですが、満額の場合には五十一万円に年間なりますけれども、それを加えた額、これが百八十万円程度になりますけれども、お子さん一人のケースですけれども、離別した母子家庭の年収の中央値がそのくらいにあるという状況を踏まえまして、この百三十万円という水準を設定したわけでございます。
水島委員 済みません、ちょっと確認させていただきたいんですが、まず、アルバイトの平均年収が百三十万円という、これは、母子家庭ということではなくてアルバイト全般なんでしょうか。また、母子家庭に関しては、この百三十万円というのは中央値というふうに今伺いましたが、その理解で正しいんでしょうか。
岩田政府参考人 先ほど申し上げました十三年度の日本労働研究機構の調査は母子家庭だけを対象とした調査でございますので、この調査によりまして、パート、アルバイトで勤務なさっておられる方の収入の平均値、年収ですが、百三十三万円というふうになっております。
 それと、別の調査を用いて御説明したので御理解がいただきにくかったかもしれませんけれども、全国母子家庭調査という調査がございますが、それによりますと、離別の母子家庭でお子さん一人のケースですけれども、年収が百八十万になっております。これが、さっき申し上げましたパート、アルバイトの年間の百三十万程度の収入と、児童扶養手当、これは年間の金額に直しますと五十一万円になりますけれども、それを足した金額にもまた見合っている。
 そういう二通りの御説明でわかりにくかったかもしれませんが、そういうことで百三十万円という水準にいたしております。
水島委員 済みません、何かくどいようで申しわけないんですが、後者の方の離別母子家庭の百八十万というのは、今は、今度は平均とおっしゃったんですけれども、これは平均値ですか、中央値ですか。
岩田政府参考人 済みません、正確に申し上げますと中央値です。
水島委員 たしか、この平均値はもうちょっと高かったように思うんですけれども、今お持ちでしたら教えていただけますか。
岩田政府参考人 母子家庭全体の年収の平均値は二百二十九万でございますが、先ほど申し上げました数字は、母一人子一人のケースについて、そしてその母子家庭になった事由が離婚であったというケース、そういう代表的なケースについて見たものでございまして、その場合に中央値が百八十万になっております。
水島委員 まだちょっと答弁にずれがあるんですけれども、今ここで申し上げたいのは、平均値と中央値の使い方が随分厚生労働省はばらばらだなと思っているんです。
 例えばことしの二月二十七日の厚生労働委員会で、私は、この児童扶養手当の削減がなぜ五年後なのかという、この五の根拠を大臣に伺いましたら、大臣は、これは母子家庭が児童扶養手当を離脱するまでの期間の平均値だというふうにおっしゃったわけです。今は、今度、パート、アルバイトの収入の方は平均百三十三万円と平均できたわけですが、今度これが離別の母子家庭になると中央値でくるというのは、何かそれは理由があるんでしょうか。
岩田政府参考人 今議論しておりますこの問題については、特段の理由はございませんで、利用している統計の制約から平均値でしかとれないというようなこともありますので、日本労働研究機構の調査結果は平均値でしかとりませんでしたけれども、本来であれば中央値を利用したいというところではございます。
水島委員 私が使っております安い統計ソフトでも、中央値も平均値も両方とも計算できますので、それがどちらかしかできないなんていうデータがあるようだったら、それをこちらでかわりに計算してもいいくらいだと思いますけれども。
 いずれにしても、こういうことを中央値とか平均値とかを基準に決めていらっしゃるということは、つまり、これから母子家庭の全体の貧困度が高まって所得が全体に落ちてくると、またこの児童扶養手当の全額支給の年収の上限も下がってくるということになるんですけれども、そういう理解でいいんでしょうか。
岩田政府参考人 将来の収入の動向あるいは一方では母子家庭のお母さんたちの自立の状況、そのあたりを考えて、将来的にはどういう制度設計にするかということでございますが、自動的に、今申し上げましたような数値に連動して、この百三十万という水準を上げたり下げたりということを機械的にやろうということを考えているわけではございませんで、また状況が変わりましたら総合的に判断をしたいというふうに思います。
水島委員 やはり、かなり苦しい答弁なんじゃないかなと思います。本当に平均値や中央値で決めることが正しいと思われているんだったら、それは、私は、そのときの時代の流れに応じて自動的に変えていくべきだと思います。
 ただ、このことについてはやはり中央値や平均値で考えるべきではないと思うので、そういうふうに自動的に動かすのはおかしいと思うんですけれども、今回そういうことを採用しておきながら、自動的に動かすつもりはない、その状況に応じて考えるというのは、ちょっと余りにも一貫性がないというか、こちらから見て政策の全貌がわからないんですけれども。
岩田政府参考人 母子家庭は生計を維持しないといけないわけですけれども、その生計を維持するに当たって、基本的には御自分の就労による収入があるというふうに思いますし、また、別れた夫から養育費を確実に確保することもあるというふうに思います。
 そういうことで、足りない場合について、いかに国が一般財源の中からそれを支援していくか、そういう総合的な視野の中で支援対策というのは考えるべきであるというふうに思いますので、今回の、ことしの八月の児童扶養手当制度の所得制限の基準のつくり方については今申し上げましたような御説明をいたしましたけれども、それ以外の要素も当然背景としてはあるということはぜひ御理解いただきたいと思います。
水島委員 余り納得はできないんですが、とにかく、これから母子家庭全体の所得が下がったらこの上限も下がるわけではないということだけは確認させていただきたいと思いますし、やはり年収の上限、百三十万円というのはかなり厳しい金額ではございますので、これから伺ってまいります就労支援、本当に実のあるものにしていただかなければいけないと思います。
 もう一つ、この八月の政令改正に当たって、現況届が母子家庭のプライバシーを侵害するおそれについて、私たちは当事者の方たちとともに抗議行動をしました。その結果、米や野菜までもらったことを書かせる家計の収支欄が撤回される通知が出されたわけです。これが撤回されたというのは正しい判断であったと思いますけれども、ところが、この撤回決定が七月末であったため、現況届の八月一日発送に向けて印刷は既に各自治体で終了しておりまして、自治体では混乱が生じました。養育費欄のみで収支欄を削除した用紙に刷り直した自治体、収支欄にバツをつけて発送した自治体、国の撤回に気づかずそのまま送ってしまった自治体と、対応に差が出たわけでございます。
 自治体もこのように国に振り回されたわけですけれども、そんな中で、さらに振り回されて不安を喚起された母子家庭のお母さんたちのことはどうお考えになっているのか。この混乱全体を大臣はどういうふうに総括されているかをここでお聞かせいただきたいと思います。
坂口国務大臣 先生から御質問をいただくまで、私、具体的なことを知りませんで、初めて具体的に聞いたわけでございますが、大変混乱をさせたことは申しわけなかったというふうに率直にそう思っております。
 具体的なことを、国の財源を使います以上、ある程度は御家庭のことにつきましても知らなければいけない、しかしそこを余り聞き過ぎてはそこに弊害が出る、そこは大変難しいところだというふうに思いますけれども、きょう私も聞きまして、最初の案は非常に聞き過ぎているということだろうというふうに思いまして、そこは率直に私たちも認めながら、再度、大阪府等で御提示をいただいたいろいろの案もございまして、そうしたことを参考にさせていただいたということでございます。
水島委員 反省をされているという御答弁でございましたので、ぜひこれを今後の施策にきちんと結びつけていただきたいと思っております。
 それでは、母子寡婦福祉法の改正案についてまずお伺いをいたしますけれども、第十一条で、厚生労働大臣は、母子家庭及び寡婦の生活の安定と向上のための措置に関する基本方針を定めるとございますが、この基本方針には具体的にどういうことが盛り込まれるのでしょうか。
岩田政府参考人 厚生労働大臣が定めることとなる基本方針には、まず母子家庭等の家庭生活や職業生活の動向に関する事項、現状をしっかり正確に把握するということがまず一点目です。そして二つ目には、母子家庭の生活の安定と向上のために講じようとする施策の基本となるべき事項ということで、施策の基本的な方向性ですとか目標を盛り込むことになると思います。また、国と地方公共団体との役割分担、連携などについて、あるいは福祉と雇用の連携について、そういった視点も盛り込みたいというふうに考えております。
 扱う領域は、まさにきょう議論しております総合的な母子家庭対策でございまして、子育て支援、住宅支援、就労支援、養育費の確保対策、児童扶養手当、母子寡婦福祉貸付金などの経済的な支援、そしてその総合的な相談支援、こういったようなことを総合的に盛り込みたいというふうに考えております。
水島委員 第十二条によりますと、基本方針に基づいて都道府県等の母子家庭及び寡婦自立促進計画の策定をする際には、当事者の意見を反映させるということになっているわけですけれども、これは必ず担保されると考えてよいのでしょうかということと、あとは、なぜ、都道府県は当事者の意見を聞かなければならないのに、国は基本方針を定めるときに当事者の意見を聞かなくてよいという仕組みになっているのでしょうか。
岩田政府参考人 改正法案では、都道府県、市などについて、自立促進計画を策定するときには、母子福祉団体その他の関係者の意見を反映させるということが規定されております。母子福祉団体やNPOを初めといたしまして、母子家庭対策に関係しておられる方、広く意見を聞いていただくように地方自治体に対して徹底をしてまいりたいというふうに考えております。
 国が基本方針を策定するときにも、当然、母子福祉団体、その他関係者の意見を広く聞いた上で策定をしたいというふうに考えております。
水島委員 何だかちょっとよく、国は広くその意見を聞くというふうに答弁していただいたと聞こえたんですけれども、よろしかったんでしょうか。なぜそれが条文上には、計画の方には書かれていて基本方針の方には書かれていないのかというのはどうなっているんでしょうか。
岩田政府参考人 精神においては、やはり国が基本方針を策定するときも、母子福祉団体、関係のNPO、広く意見を聞くべきだというふうに思いますし、そういうふうにすることをここでお誓いしたいというふうに思いますが、法律でなぜ国はそのことについて書いていないのかということでございますけれども、国が定める基本方針は、政策のあり方についてのまさに基本的な方向を定めるということ、そして一方、自治体が定める自立促進計画は、具体的にここの地域ではどういうサービスが要るといったような関係者の具体的なニーズをくみ上げてそれを計画に盛り込むということ、そういう、方針と計画は連動するものではありますけれども若干その性格が違うということで、法律上そういうふうに区分けをしているというふうに考えております。
水島委員 余り関係がないような気はするんですけれども。
 何でこういうことを伺っているのかといいますと、やはり、今回のこの法改正、また全体の政策転換ということは、私は、当事者のコンセンサスというのは全く得られていないなということを当事者の方たちとの話し合いの中で感じておりまして、なぜこんな大きなことを決めるときにきちんと当事者の方たちの意見を聞いていただけないんだろうかというふうに感じております。それをこの国会審議の場で、もちろんあしたも参考人の質疑が行われるということでございますけれども、本当に今ごろになって聞いてどこが変えられるんだろうかというのをちょっと疑問に思っております。
 非常に、本当に、ここのところのこの政府の政策について、当事者ともども、私も本当に不満に思っておりますので、ぜひこの気持ちを受けとめていただいて、きちんとした施策にしていっていただければと思っております。
岩田政府参考人 恐縮です、一言だけつけ加えたいと思うんですが、今回の改正案を検討するに当たりましては、私どもとしても精いっぱい関係者の意見は聞いてまいりました。
 全国レベルでもお話を伺いましたし、地方レベル、ブロックレベルなどには職員を派遣いたしまして、そこで関係団体としっかり意見交換をさせていただいたつもりでございます。不十分なことがあったとすればそれは反省しないといけないと思いますけれども、我々としては、時間と気持ちを十分割いて関係者の御意見を聞いて改正案をまとめたつもりでございます。
水島委員 関係者の大部分が児童扶養手当の五年後の一部打ち切りというものを納得しているとは、またそれを望んだとは到底思えないわけですので、恐らく聞き方にむらがあって、自立支援のところはよく聞いたけれども、児童扶養手当の方はもう最初から決まっていた、そのような現状だったのではないかなと今お話を伺って思っております。
 また、このような都道府県の自立促進計画に関しては当事者の意見を反映させていただけるということなんですけれども、こういった計画をつくるときには、メニューを示すだけではなく、計画の達成度を評価する仕組みも一緒に考えなければいけないと思いますけれども、この点はどうでしょうか。
岩田政府参考人 国は国として、厚生労働省も行政評価の仕組みを持っておりますし、地方自治体もそれぞれ行政評価の仕組みを持っておられて、それにのっとって政策の評価を進めていくというふうに思っております。
 都道府県など地方公共団体がつくっていただく自立促進計画については、厚生労働省としても、そこで何が策定され、どういう効果を上げているかということについては大変関心を持つべきことであるというふうに思っておりますので、地方自治体から、その計画の内容に盛り込んだもの、そしてその進捗状況など十分お話を伺う機会をつくって、そういう形で進捗状況の把握をしてまいりたいというふうに考えます。
水島委員 次に、母子家庭の雇用の促進についてお伺いをしたいと思います。
 第二十九条には公共的施設における雇い入れの促進ということが書かれているわけですけれども、これは具体的にはどのようなことでしょうか。
岩田政府参考人 現行の母子寡婦福祉法では、国、地方公共団体が母子家庭の母などの雇用の促進を図るために必要な措置を講ずるように努めるということを規定しておりまして、その例として、職業訓練の実施、そして就職のあっせんが挙げられております。今回の改正案におきましては、それに追加をいたしまして、事業主その他国民一般の理解を高めるということと公共的施設における雇い入れの促進ということを追加したわけでございます。
 事業主その他国民一般の理解を高めるというのは、母子家庭については、例えばお子さんがいらっしゃるので休みがちであるとかというような誤解、偏見が一部にありますので、事業主などに対しまして、母子家庭の雇用促進に向けて広報、啓発活動をやっていきたいということでございます。
 もう一方の公共的施設における雇い入れの促進とは、国や地方自治体や特殊法人などが公共的施設を設置している場合について、そういう施設で母子家庭の母などの雇用促進をすること、またそういうことができるように関係方面に国としては働きかけてまいりたいというふうに考えます。
水島委員 今の御答弁の、母子家庭のお母さんは仕事を休むというような、偏見とおっしゃったんですけれども、これは偏見というより現実的な側面もございまして、ここで必要とされているのは、偏見解消ではなくて、病児保育などの充実ではないかと思っておりますので、ちょっと今の御答弁は少し納得できないところがございました。
 また、こちらが本当に伺いました公共的施設における雇い入れの促進ということなんですけれども、具体的にどういう手段で促進をしていくというふうに考えられているんでしょうか。
岩田政府参考人 それは自治体によってまちまちかと思いますけれども、先ほど議論になりました、自治体が作成いたします自立促進計画の中に例えば盛り込んでいただくというようなことで取り組んでいただきたいというふうに思っております。
 これまでも事例はいろいろございまして、例えば福祉関係施設ですとか、そういうところで採用されている、そのことを促進するような対策をとっておられる自治体もございますので、好事例を収集いたしましてほかの自治体にそういうことを周知するということもこの問題の促進に力になるんではないかというふうに思います。基本的には、それぞれの自治体が計画を立てて、計画の中で盛り込んでいただければというふうに考えております。
水島委員 そうしますと、自治体任せということになるんだと思いますけれども、以前から、国や地方公共団体など公共機関等において母子家庭の母等の一定の雇用率の義務づけですとか、また母子家庭の母に対する事業の優先発注を義務づけるというような議員立法案があるということでございますけれども、この議員立法について大臣はどのようにお考えになっていらっしゃるでしょうか。
坂口国務大臣 十分に存じ上げておりませんが、私もかつて、母子寡婦雇用促進法というのを議員立法で出したことがございまして、かなり前になりますけれども、そうしたことに私も重大な関心を持っております一人でございます。
 現在の問題につきましても、先日も、これは職業安定局でございますけれども、とにかくこの法案が出る以上、まずやはり厚生労働省が一体母子家庭のお母さん方をどういうふうにして雇えるのか、まず自分たちがどうするのかということを一遍明確にして、そして手本を示すべきだということを申しまして、今煮詰めをしてもらっているところでございます。やはり、省庁、国の方はどういうふうにするのかというようなことを示しながら、そして地方に対してもお願いをするということをしなければ実効性が薄いというふうに思っておりまして、まずどういうふうにするかということをやはり示さなければいけないというふうに思っている次第でございます。
水島委員 当然厚生労働省として御検討をいただくのも大変結構でございますけれども、厚生労働省という枠にとどまらずに、やはり公的機関等においての全面的な取り組みが必要ではないかと思いますけれども、今の、そのような母子家庭の母に対する事業の優先発注の義務づけですとか、そういったことを規定した法案を提出したとしたら、大臣は御賛成いただけますでしょうか。
坂口国務大臣 それは法律で決めるべきことなのか、それともこれは行政上行うべきことなのか、その辺の判断はあるというふうに思いますけれども、内容そのものにつきましては、ぜひそういうふうにありたいというふうに思っておりますし、しなければならないと思っている次第でございます。
水島委員 ぜひそのように前向きに取り組んでいただけますようにお願いいたします。
 また、この法律の中で規定されております母子福祉団体なんですけれども、この母子福祉団体にはNPO法人は含まれているでしょうか。
鴨下副大臣 母子寡婦法の第五条に規定されております母子福祉団体の定義の中にNPO団体が含まれるかどうか、こういうようなお話でございますが、母子寡婦福祉法における母子福祉団体とは、社会福祉法人及び公益法人と規定されておりまして、各都道府県、指定都市に一つの団体、こういうようなことでございます。
 したがって、NPO法人は母子寡婦福祉法における母子福祉団体とはされておりませんが、NPO団体が近年非常に増加しておりますし、本事業に対しても非常に御理解のあるNPO団体も多いわけでございますから、そういう中で、母子家庭対策において一定の役割を果たしていただくというようなことを期待しているところであります。
 今回の改正案における都道府県等が実施する子育て支援事業の実施に当たっても、NPO団体の活用について検討してまいりたい、このように考えております。
水島委員 この法律が制定されてから三十九年でございます。その後、NPO法も成立しているわけですから、やはり母子福祉団体についても法改正する必要があるのではないかと私は思っております。それも、特に各都道府県に一つだけを指定するというような形が健全に当事者の声、また当事者の受け皿となっていく仕組みとはとても思えませんので、本当に自由に、活発に、当事者の立場で活動しているNPO法人が母子福祉団体に含まれるように法改正する必要があると思いますけれども、いかがでしょうか。
鴨下副大臣 それぞれ関係の団体もございますので、よく意見を伺わせていただきたい、このように思っております。
水島委員 関係というのは何を意味するのかちょっとよくわかりませんでしたけれども、これは本当に党利党略ではなく、きちんとした、もう健全な市民活動ができるように、この法改正はしっかり前向きに御検討いただきたいと思います。
 今関係の方たちの意見を伺って検討したいという御答弁をいただきましたので、これは近い将来、法改正していただけるのではないかなと期待しておりますので、できましたら、ぜひ今回まとめてお願いできればと思います。
 次に、時間が限られてまいりましたけれども、もう一つ、母子寡婦福祉法に関連いたしまして、今回、母子相談員が母子自立支援員に改まるようでございます。この母子相談員の利用率は約一割というデータがあるわけですけれども、余りにも利用されていないなと思っておりますが、今回、母子自立支援員に改まることを機に、増員を考えられているんでしょうか。また、増員される場合、こういうところにこそ当事者の雇い入れを優先的にすべきだと思いますけれども、そのように考えていらっしゃるでしょうか。
岩田政府参考人 平成十三年度末の母子相談員の総数は千二百二人でございまして、その内訳は、常勤が三百六十七人、非常勤職員が八百三十五人ということでございます。
 母子相談員は、現在は、都道府県、指定都市、中核市に配置されておりますけれども、今回の改正案では、名称を母子自立支援員として改正いたしまして、一つには、その役割を、日常生活の相談に乗るということばかりではなくて、経済的な自立そのものを支援するということもやっていただくということ、そして配置の場所も、さっき申し上げましたような中核市までにとどまっていたのを、福祉事務所を設置している市等にも拡大をするということでございます。
 この母子相談員については、その人件費が交付税で措置されておりますので、地方交付税で増員について対応できるよう総務省の方にお願いしているところでございまして、今後、総務省と十分協議をしてまいりたいというふうに考えているところでございます。
 この母子相談員に母子家庭の母自身を優先雇用するということについてどうかということでございますけれども、母子家庭のお母様の中で、こういう相談にしっかり乗れる、自立支援の支援ができるという方がおられましたら、もちろんそういう方はぜひ母子相談員として活躍していただきたいというふうに考えております。
水島委員 当事者のことは当事者が一番よくわかるわけでございますので、おられましたらというよりも、いらっしゃいますので、ぜひよろしくお願いいたします。
 それから、今回新設されました母子家庭自立支援給付金についてもいろいろ伺いたいんですが、時間が限られておりますので、常用雇用転換奨励金についてちょっとお伺いしたいんです。
 これについては、私も以前この委員会でも質問させていただきましたけれども、三十万円ごときで、母子家庭の母をパート雇用からOJTを実施後に常用雇用に転換するなどということは実現性が低いのではないかという指摘がいろいろなところからされているわけでございますけれども、こうして今回堂々と概算要求されているということは、きちんと利用される見通しが立てられたのでしょうか。
岩田政府参考人 母子家庭のお母さんたちの八五%は就労されておりますけれども、四割はパートや臨時職員として働いておられまして、そういうことが、やはり生活の安定性という観点から見ますと必ずしも十分ではないということだというふうに思います。したがいまして、できるだけ常用雇用といいましょうか、いわゆる正社員で雇用機会を得ていただきたい、そのことを支援したいというふうに思っているところでございます。
 平成十二年の雇用動向調査を見ますと、女性が転職をするときに、パートから常用雇用に転換するというケースも少なからずあるということがわかります。ですから、一般的にそういうことは可能であるわけですけれども、母子家庭についてその転換をさらに促進しようということで、今回、常用雇用転換奨励金を設けたわけです。
 これは、雇う側に、やはりパートとして雇う場合と正社員として雇う場合には期待の水準が大きく違うということが通常でございますので、まず、パートとして雇っていただいて、働きぶりを見て、そしてその間オン・ザ・ジョブ・トレーニングもしていただいて、そして常用雇用に転換していただくというのは、母子家庭のお母さんたちを正社員の機会に結びつけるための一つの有効なやり方ではないかというふうに考えております。
 そういうことで、来年の概算要求にこの奨励金を盛り込ませていただいております。
水島委員 絵にかいたもちになるのではないかといろいろな方が言っているわけでございますけれども、これは、きちんと実行された後に、またその成果を検証させていただきたいと思っております。
 次に、児童扶養手当法の方に行かせていただきます。
 今回、この第二条に「児童扶養手当の支給を受けた母は、自ら進んでその自立を図り、家庭の生活の安定と向上に努めなければならない。」という項目が新たに加わっているわけですけれども、これをあえて加えたのはなぜなんでしょうか。
坂口国務大臣 局長の方が詳しく答えられるかもしれませんが、先生が御指摘になった御趣旨、十分に私ちょっとわかっておりませんけれども、「自ら進んでその自立を図り、」というふうに規定しましたのは、これは、現在の母子寡婦福祉法に設けられております規定と同様の規定を設けたものでございます。もちろん、国の方が自立ということを中心にして努力をしなければならないのは当然でございますが、御自身もやはり自立を図るために御努力をいただかなければならないというふうに思っております。
 さらにつけ加えるとしましたら、国と地方自治体が一体となりまして経済的な支援を行うこの児童扶養手当法と、それから、就業支援策及び子育て支援策、それから国、地方公共団体の責務を規定しております母子寡婦福祉法の両法が一体となって、子育て支援、就業支援、教育費の確保、児童扶養手当も含めました経済的な支援策を講じていかなければならないというふうに思っております。
 その「自ら進んでその自立を図り、」というのは、先ほど申しましたように、やはり御自身もそういう自立を図るということに御努力をいただくというところがなければならないというふうに思いますし、それに対して、これは国としてはこたえていかなければならないということは当然でございます。
水島委員 母子寡婦福祉法と横並びでという御説明は、それはそれでいいんですけれども、そうしますと、今回あえて加わったということは、今までは法の不備だったということなんでしょうか。それとも、母子家庭の母の努力や自立心が足りないので、今回あえて加えてみたということなんでしょうか。
岩田政府参考人 大臣から御答弁がありましたとおり、現行の母子寡婦福祉法に「母子家庭の母及び寡婦は、自らすすんでその自立を図り、家庭生活の安定と向上に努めなければならない。」という自立への努力を規定しております。そして、児童扶養手当の仕組み自体も、従来からもちろん自立を促進するという精神においては変わらないということでございますけれども、今回さらに、母子家庭対策全体を、従来の児童扶養手当という金銭給付を支給するということを中心とした対策から、自立支援の方に重点をさらに置くという対策に見直すということの関係から、この児童扶養手当についても、母子寡婦福祉法と同様に、自立への努力の規定を設けさせていただいたものでございます。
水島委員 第一条の目的というのは変わっていないわけですけれども、今の御答弁だと、何だか政策転換があって法律の趣旨が変わったかのようにも聞こえるんですが、そういうことではないはずだと思うんですけれども。
 先ほど私が伺いましたのは、今回わざわざ加えたのは、別に加えなくてもちゃんと機能していたはずの法律だったんですけれども、わざわざ加えたということは、今までこれが足りなかったというような、法の不備ということなんでしょうか。それとも、わざわざ加えなければならないほど母子家庭の自立心がないというふうに厚生労働省が判断しているということなんでしょうか。
岩田政府参考人 母子家庭対策は、子育て支援ですとか就業支援ですとか、養育費の確保対策などと合わせて、トータルでその自立を促進していくというのが対策全体を通じた基本的な方向であるというふうに思います。そういった考え方に基づきまして、児童扶養手当自体も、自立促進型の児童手当であるべきであるということでございますので、そのことを入念的にといいましょうか、そういうことで、今回、書かせていただいております。
 その考え方は、例えば、あるいはこの後御議論になるのかもしれませんが、受給開始後五年までに自立支援策を集中的にさせていただいて、なるべくその期間に自立をしていただくというような政策をこの児童扶養手当の仕組みの中にも設けたいというふうに思っておりますので、そういうことから、当然のことではありますが、入念的に、今回、書いたわけでございます。
水島委員 まだ答えになっていないんですが、それでは、ちょっと別の聞き方で大臣に伺いたいんです。
 大臣は、母子家庭のお母さんたちが自立心がないから児童扶養手当を必要としているというふうに考えていらっしゃるのか、あるいは、本当に苦労して自立をしようとしているけれども、就労上のハンディですとかいろいろなことがあって児童扶養手当を必要としているというふうに認識していらっしゃるのか、そこだけ、きちんと確認させていただきたいんですけれども。
坂口国務大臣 それは、今御指摘になりました後者の方だと思います。
水島委員 極めて明快にお答えいただけたので、そうであれば、わざわざ、義務として書く必要があるんでしょうか。これはちょっと大臣のお力で、ここの部分を、「自ら進んでその自立を図り、」というところを削除していただくことはできないんでしょうか。
坂口国務大臣 みずから進んでその自立のために努力をするということが、それほど私は問題になるというふうには今考えておりません。そのとおり、そこはそういうふうにぜひしていただきたいというふうに思うわけです。
 当然、国の方もやらなければなりませんし、そして今回そのウエートを、いわゆる財政的な支援というものからもう少しトータルの自立へのことにウエートを移しているわけでございますので、それは、御自身もやはりそうした御努力をいただきたいというのがそんなに問題になるとは私は今思っておりません。
水島委員 例えば、よく、うつ病の人に頑張れと励ましてはいけないと言われます。なぜそう言われるのか。大臣はお医者さんですからよく御存じだと思いますけれども、本人はもう頑張り過ぎて、燃え尽きてうつ病になっているのに、そこにさらに頑張れと声をかけることがその人を追い詰めることもある、そういうことがだんだんと常識になってきているわけです。
 今、既にもう本当に頑張って、限界で暮らしている母子家庭の方たち、私もいろいろな手紙を読ませていただいておりますけれども、こんなに頑張っていて、それでも児童扶養手当をもらって何とか食べていっている方たちがこういうふうに書かれるということは、これが、世間の人、何も知らない人から見たらどう感じるかというと、ああ、やはり離婚しているような母親というのは自立心がないのかな、だから今回、わざわざ法改正でこれが書き加わったのかなという目で見ますので、これは、私は偏見をあおる以外の何物でもないと思いますけれども、大臣はそういうふうにお考えにならないですか。
坂口国務大臣 物は見方でございますから、見る角度によっては、いろいろなとり方も、それはあるだろうというふうに思います。
 母子家庭のほとんどの皆さん方は大変な自立への努力をされていることを私もよく存じております。しかし、どの分野にもそうでない人も中には含まれるわけでありまして、そうしたことを考えましたときに、やはりこうした項目を入れておくということは大変大事なことではないかというふうに私は思います。
 そのことが、決して、現在多くの母子家庭のお母さん方が努力をしておみえにならないということを言っているわけではありません。大変な努力をされているということを十分に承知をした上で、しかし全体としてそうしていかなければならないということを言っているわけでございます。
 どの法律におきましても、ほとんどの人はそんな悪いことをするわけではありませんし、善行を重ねているわけでありますけれども、しかし、一部にそれに反する人がありますと、やはりそのことを書かなければならないということがあるわけであります。今回のこの場合にも、私は、母子家庭のお母さん方のことは十分にわかりながら、しかし、この項目が入っているということが、御努力をいただいているお母さん方の心をそんなに傷つけることではないというふうに私は思います。
水島委員 坂口大臣らしからぬ御答弁だなと思います。今回、わざわざ書き込むわけですから、これが母子寡婦福祉法の中に入っているということまで否定するものではございませんけれども、わざわざ書き込むということ、これが、私は先ほど、偏見をあおる以外の何物でもないと申しました。
 さっき局長が、母子家庭のお母さんは仕事を休むという偏見というふうにおっしゃったときに、私は、それは偏見じゃなくて現実だというふうに申し上げましたけれども、母子家庭のお母さんというのは、児童扶養手当をもらって、余り自立心もなくて、もらうだけもらっているということこそ偏見であって、この偏見を解消していく責任というのは、やはり厚生労働省にもあると思っております。
 こういう法律を改正するときも、一つ一つ、一挙手一投足に注意をしていただいて、偏見を解消していく努力というものが各分野において必要だと思っておりますけれども、大臣はそういうふうにお考えにならないでしょうか。
坂口国務大臣 偏見を除去していくということは大変大事なことでありますし、そうしなければならないというふうに思います。しかし、自立という、ここに書いてありますこのことによって偏見を助長するというふうには私は思わないということを申し上げているわけです。
水島委員 大臣がそうお感じにならないというのが、大臣が本当にそう思っていらっしゃるのかなというのはかなり疑問でございますけれども、そうお感じにならないのはもしかしたら大臣だけかもしれない、そんなふうにも思うわけでございます。
 本当に、こういうところ、きちんと配慮をしていただきたいと思いますし、ここを削除することぐらい、大臣がやれと言えばできるのではないかと思いますので、これはぜひ御検討いただきたいと思っております。
 また、この第二条に対応するような形で、今回、第十四条に、「受給資格者(母に限る。)が、正当な理由がなくて、求職活動その他厚生労働省令で定める自立を図るための活動をしなかつたとき。」というのが入っておりますけれども、ここで言う「求職活動その他厚生労働省令で定める自立を図るための活動」というのは、省令で定められるものは、一体、具体的に何を考えていらっしゃるんでしょうか。
岩田政府参考人 改正法が成立しました後に省令で定めることになりますが、自立を図る活動とは、就職に結びつくような活動でございまして、例えば、就職活動、能力を高めるための職業訓練の受講などを想定しておりますが、具体的な内容についてはさらに検討してまいりたいというふうに思います。
 いずれにいたしましても、十四条の第四号の規定というのは、本人にその能力がありながら、そしてそれが可能でありながら、そういった活動を一切しないといったような、ケースとしては非常にまれであるというふうには思われます。例えば、収入はないけれども資産はあるという、こういう方もこの児童扶養手当を受給されるということもあるわけでございますが、そういった形で、能力もチャンスもあるけれども全く努力をなさらないというような方が仮におられたとすれば、ここに該当するということでございまして、児童扶養手当の全部あるいは一部の支給をとめることがある、そういった制度の仕組みを考えているわけではあります。
水島委員 この活動しなかったときというのは、どうやってチェックされるんでしょうか。
岩田政府参考人 日常的には、必要に応じて母子相談員が相談に乗っておりますし、また一年に一度、児童扶養手当のいわば更新のために、現況届というのを役所に出していただくことになります。これは、いろいろ状況をお話しする、お話を伺う大変いい機会であるというふうに思いますので、そういう中で状況をお伺いしていくということになると思います。
水島委員 現況届のときにということでございますけれども、これはちょっと後ほどまた、まとめて伺いたいと思います。
 先に進ませていただきますけれども、養育費の所得算入割合が八割というふうにされているわけですけれども、この八割という数字の根拠はどうなっているんでしょうか。
岩田政府参考人 養育費を獲得されるために、やはりコストがかかるということもあろうかと思います。最も本格的なケースですと、裁判所で手続をとってということになろうかと思いますけれども、そういう養育費を確保するためのコストということで約二割は差し引いて、その残りを所得として考えたいということでございます。
水島委員 コストが二割というのがどのようなデータに基づいているのか、また詳しく教えていただきたいと思いますけれども、例えば、裁判をしたときの経費が大体このくらいだというふうにも伺いました。ところが、裁判所に足を運ぶことでその日の賃金が失われるわけですので、その裁判の経費だけ、その二割だけというのはちょっとおかしいんじゃないかなというふうにも思っております。ここについても、もっときちんと、どのくらいが経費となるのかということを、今後もきちんと見ていっていただいて、この八割という数値が本当に妥当であるのかどうかは今後チェックしていっていただきたいと思っておりますので、ぜひそのあたりも当事者の声をきちんと反映させていただけますようにお願いいたします。
 さて、この養育費なんですけれども、養育費の強制執行について、法制審の現在の審議状況について、きょう法務省に来ていただいておりますので、簡単に教えていただけますでしょうか。
房村政府参考人 養育費の問題につきましては、強制執行する場合、大体月ごとに決まっておりますので、そうすると、その都度、強制執行の申し立てをしなければいけない、非常に使い勝手が悪いという御指摘がございます。
 そういうことを念頭に置きまして、現在、法務省で担保・執行制度の見直しをしているわけですが、その中で、この養育費の履行確保につきまして、そういう、支払い日がまだ到来していない将来分も含めて、養育費に基づいて、一括して債務者の継続的な給付、例えば給与でございますが、こういったものを差し押さえる。そういたしますと、差し押さえられた給与の月給日が来ますと、その都度、支払いを受けられるということになりますので、そのような制度を実現できないかということで検討しているところでございます。現在、鋭意検討を進めておりまして、来年、平成十五年の通常国会には法案として提出したいと考えているところでございます。
水島委員 それでは、肝心の児童扶養手当の見直しについてお伺いしますけれども、「この措置は、法施行後五年後を目途に適用するものとし、関係政令については、子育てや生活支援策、就労支援策、養育費確保策等の進展及び離婚の状況などを踏まえ、かつ、五年後の適用に当たり十分な時間的余裕をもって制定するものとする。」とございますけれども、この状況の評価というのはどのような基準で行われるつもりでしょうか。
岩田政府参考人 法律施行後の子育てや生活支援策、就労支援策、養育費の確保策、経済的な支援策、こういう政策がどのくらい効果を上げて母子家庭の現状が改善するかということであろうというふうに思います。
 何を具体的な判断基準にするかということについてはこれから検討していきたいというふうに思いますが、例えばですが、母子家庭の収入の状況ですとか、就労の状況、何%のお母さんが働いておられて、そのうちでパートタイマーとフルタイマーがどういう割合になっているかということですとか、何%の方が養育費を別れた夫から確保して、その金額がどのくらいになっているかとか、そういうような状況を見ながら、五年後の削減率については、施行の前の周知期間も要るでしょうから、周知期間を十分とれるようなタイミングで判断をして政令を策定させていただきたいと思っております。
水島委員 そうしますと、全体的な状況を見て削減率を決める、その削減率は一律、一つの削減率というような理解でよろしいんでしょうか。
岩田政府参考人 現在のところは、削減率は一律のものを考えております。
水島委員 このようなことを考えますときには、やはり全体的な視野と同時に、個々のケースに着目する必要もあると思っておりますけれども、個々のケースについてはどのような配慮をしていただけるんでしょうか。
岩田政府参考人 まず、お子さんが小さいときにはなかなか仕事と子育ての両立が大変であるという現状がございますので、例えば、今法律案の中でも明らかにしておりますけれども、お子さんが三歳になるまではこの五年ルールをカウントし始めない、一番小さい、下のお子さんが三歳になったときからこの五年というのを計算を始めるということが一つございます。
 また、状況に応じて、やはりどうしても自立が困難であろうかというふうに思われるケースもあると思いますので、例えばそれは、母子家庭のお母さん御自身が障害があったり、重い病気だったり、あるいはお子さんやお年寄りにそういう問題があったりというような状況であれば考慮する必要があるんではないかというふうに考えておりまして、どういう場合に配慮を要するかということについての基準も、法律の施行後に検討してまいりたいというふうに考えております。
水島委員 そうしますと、個々のケース、きちんと見ていただけるということなんですけれども、先ほどの自立を図るための活動をしていなかったときのチェックですとか、今回の個々の自立困難度のチェックというんでしょうか、こういったことについて、一体どうやって生活状況をチェックしていくのか。大臣が、ことしの現況届の混乱の総括のところで、きちんと聞かなければいけないけれども、細かく聞き過ぎるのもよくないというふうに、大ざっぱな御答弁を先ほどされていたわけでございますけれども、これを、どうやってプライバシーの侵害について歯どめをかけていくのか。
 きちんと情報を収集して、その方に合った配慮をしていくとともに、プライバシーの侵害につながらないように一体何が考えられるのかということを大臣に御答弁いただけますでしょうか。
坂口国務大臣 それはなかなか一口で言いがたい難しい問いかけだというふうに思いますが、はっきりとした数字でわかるもの、例えば養育費ならば養育費をきちんともらっておみえになる、それがちゃんとわかるとか、そうした問題はわかりやすい問題でありますから、自主申告をしていただければそれはわかることだというふうに思います。
 しかし、非常に精神的なものでありますとか、そうしたものはなかなか物差しにはなりにくいわけでありまして、やはり数字できちっと出すことのできるものであればそれは尺度になり得る。ただし、それを調べさせていただきますときに、それを聞くことが甚だプライバシーにかかわるというような問題につきましてはなかなか難しいですから、それは除外をしなければならぬのではないかというふうに思っています。
水島委員 今の自主申告というところなんですけれども、例えばことしの現況届のときも、基本的には自主申告なんですけれども、申告にもしも虚偽の記載があったらということを見つけるために、米や野菜をもらったとか、そんなことまで書かせるんだというような説明を当初厚生労働省の担当の方はされていたわけでございます。自主申告、そういうやり方をとる限り、どうやってその正確さを確保するかというようなことは、必ずこれは役所であれば考えられると思いますので、ある程度プライバシーに配慮するきちんとした歯どめを形としてかけるべきではないかと思っております。
 母子家庭の生活状況を丸裸にするような運用をされてしまいますと、就労意欲、生活意欲、また人間的な誇りが奪われてしまうというような、そんなこともございまして、これは、母子家庭の自立という今回目標とされていることに全く逆行する結果になっていってしまいます。
 何か、このようなチェックをしていくときの歯どめのかけ方について、大臣にお考えがあればお聞かせいただければと思います。
坂口国務大臣 今私が具体的に持っているわけではございません。これからその辺は、いろいろの皆さん方の御意見も聞きながら煮詰めていかなければならない問題だというふうに思っております。
 いずれにいたしましても、トータルでいえば、やはり個々の母子家庭のお母さん方のトータルな支援ができるようにしていかなければならないわけでございますし、とりわけその中で、就業ということ、雇用ということに対して最大限やはり配慮をしていかなきゃならないと思っております。
水島委員 ぜひきちんと御検討をいただきたいと思っております。
 この母子家庭の方たちに対する役所の窓口の対応などの例をいろいろ聞いておりますと、何だかもう、弱者だから何をしてもいいというような、ずかずかと踏み込むような、そんな対応すら聞いているわけでございまして、そういう役所の窓口の対応一つ一つ、それは地方の問題で厚生労働省の問題ではないとおっしゃるのかもしれないけれども、先ほど指摘しましたように、今回の法改正で自立の義務みたいなものを書き込むことによってまたそういう窓口の対応がゆがんでくるのではないか、そういった心配もしております。
 こんな法改正をされるのであれば、せめてその偏見を解消していくために積極的な施策を講じていただかなければ、今の母子家庭の方たちが置かれている状況というのは本当に目に余るものがあるのではないかと思っております。本当に、私のところにもいろいろなお手紙なんかをいただきますけれども、非常に条件の悪い労働をされていて、手取り十一万五千円、毎日重いブロックを動かして、腰は痛いし手首も痛い、これ以上どう働けばよいのか、こういうような方がこれから児童扶養手当を減額されていくということに直面をしていて、今、本当に大きな不安に見舞われているわけでございます。
 また、これは母子家庭の、子育てをしているそのときだけではなくて、今度は逆に、子育てを終えた方たち、五十代後半ぐらいになりまして、子供を育てるために借金もして、もうすべてを使い果たしてしまった女性がちょうど年代としては一番リストラされやすいようなところに来てしまう。そういった方たちの自立について、そういった方たちが安心して年をとれるように、その施策もこの際きちんと強化をしていただきたいと思っております。
 これは本当に全体的な、大切な領域だと思っておりますので、最後に一言だけ大臣の、今回、続投に当たってぜひ温かい施策をと最初に御要望申し上げましたけれども、その温かみが伝わるような一言だけいただいて、質問を終わらせていただきたいと思います。
坂口国務大臣 今回のこの法案を御審議いただだくにつきましていろいろの難しい点があるというふうに思っておりますが、今後、五年間という一つの区切りがあります。この間にやはり一番我々が努力をしなければならないことは、その雇用をいかにして確立していくか、そして、現在一番問題になっているのは何かということをあらゆる角度から見ましたときに、やはり一番問題になるのは、現在の母子家庭の皆さん方の所得というものが非常に低い、このことをどう上げていくか、ここをどう上げるかということが最も大事なことであって、そのことに注目をして、ここを上げるということが、どこまで、目標値というのはなかなか難しいですけれども、ここが上げられる体制をどう確立するかということがこの五年間に課せられた最大の課題であると思っております。
水島委員 ありがとうございました。
坂井委員長 午後二時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。
    午後零時三十六分休憩
     ――――◇―――――
    午後二時一分開議
坂井委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。土肥隆一君。
土肥委員 民主党の土肥隆一でございます。
 私も、水島さんが大体総ざらいしていただきましたから、あとは私の多少読み込みも含めて、考えてみたいところを御質問したいと思います。
 もともと、母子家庭というのは離婚が圧倒的に多いわけです。大体離婚件数の七割八割と、皆さんの、厚生労働省が出した資料に出ております。毎年二十九万件離婚がある。そのうちお子さんがあるのが約六割ということでございます。今、母子世帯は九十五万世帯。離婚はうち七割、死別は二割。そして、母子家庭の八割は就労している。収入からいえば、母子世帯の平均が二百二十九万、一般世帯が六百五十八万、こうなっております。
 そもそも、死別は別にいたしまして、離婚するというのは、男であれ女であれ、父であれ母であれ、その人のやむを得ない決断で決めたことでございます。したがって、母子家庭に対する福祉というのは一体何だろうかということを考えるときに、離婚の理由を問うていったらいろいろございましょうけれども、要するに一緒に暮らしていけないということですから、その後の生活も想定しているはずでございます。しかし実際は、母子家庭というのは主に経済的なハンディキャップが生じてしまうということでございます。
 ですから、福祉と一般的にいいますと、あるいは障害者でありますとか高齢者でありますとかというのは福祉という言葉が当てはまりますけれども、母子家庭の場合の福祉は、福祉ではなくていかに経済的に独立するかということが最大の課題だろうと思うのであります。
 今度、この八月に、百八十一万から三百七十七万という厳しい数字をお出しになったわけでございますけれども、母子世帯の平均収入が二百二十九万だとなっておりますけれども、やはり早く三百万から四百万台の収入が得られるような方法をみんなで応援するというところが一番大事じゃないかと思うのであります。
 そういう視点で見ますと、どうも寡婦母子福祉法というと、何か福祉的なイメージで離婚した母子を見てしまう。私は、母子家庭の八割は就労しているということは、いろいろな形態はあるようで、パートが四割だというふうになっておりますけれども、働く意欲はあるんだろうと思うんですね。また、あると認識していいと思うのであります。
 労働意欲はあるけれども、その労働意欲を酌み取ってくる社会に、子育てをしながら女性が働かなきゃならない社会的なハンディキャップ、これがあるんだということです。
 ですから、今回、子育て、就業支援策だとか、養育費の確保だとか、いろいろな相談員であるとか、メニューを挙げているのは、実は当たり前の話なんで、初めからそうなきゃならない。児童福祉手当を与えておったらそれで済むというふうに考えたところに何かすごい誤解があるんじゃないかと思うのであります。そういうふうな視点で見ますと、法案の中にいろいろとおかしな文言が出てまいります。
 例えば、児童手当法でいいますと、十四条の四号に、先ほどもさんざん議論がありました「自立を図るための活動」、こう言いますね。これは努力しているんです。だけれども、社会的ハンディキャップで自立がなかなかうまくいかない。せめて三百万、四百万の年収を得たいと思っても、それが達成されないことが問題なんであって、そういう社会が問題なんであって、それを、先ほどの、親からもらったネギか大根の量まで書けとか、そういうことを言うこと自体が、そもそもの母子福祉あるいは寡婦も入れてもいいでしょう、この考え方に沿わない。そして、相当なプライバシーを侵してまでも、認定するときに家族の中身に入っていきます。そういうものを拒否したときに、例えば行政手続法などでこういうものは耐えられないと訴えを受けたときに、それでもやるんでしょうか。その辺の、今の認定だとか調査の実態をお知らせいただきたいと思います。
岩田政府参考人 母子家庭対策は就業、自立の努力を促進することにその本旨があるべきであるという御指摘については、そのとおりであるというふうに思っております。
 今先生が御指摘になりました条文は、通常の母子家庭の方を念頭に置いているわけではございませんで、極めて例外的なまれなケースであるというふうに思いますけれども、本人に能力があり、求職活動をしたり能力開発をするための機会があるのに、そういうことを活用せず一切努力をしないような、そういったケースでございますので、これは本当に例外的な事例であるというふうに思っております。
 その状況は、例えば、毎年一回現況調査ということで調査をさせていただきますが、そのときに御本人からお話を伺うといったような形で調査をすることになろうかと思います。御指摘のとおり、プライバシーの侵害にわたることがないように、最低限のお尋ねでないといけないというふうに思いますので、そういったことがないように、関係の自治体には重ねて周知をしたいというふうに思いますし、そういう業務を通じて知り得た情報については、秘密の保持については、地方公務員として当然のことでございますので、そのこともまたさらに徹底をしたいというふうに思っております。
土肥委員 論理のつなぎからいってちょっと飛ばしますが、皆さんの手元には問いの六というふうになっていると思いますが、先ほどの、子供を持つ女性が生きていくための十分な社会的な資源がなくて、あるいは閉ざされて、そして思うような収入が上げられないというわけでありますが、それではどんな仕事があるんですかということがあって、おもしろい事例といったら表現は悪うございますけれども、噴き出したくなるような項目が挙げられます。
 二十五条です、寡婦母子福祉法の二十五条、そこには、母親が物品販売や理容、美容、二十六条では、たばこ販売業の許可。それから、もうちょっと別なところでは、例えば、介護福祉士だとか、ホームヘルパーだとか、幼稚園の先生になったらどうというようなメニューもあるわけでございまして、なぜこんなに、駅の売店だとか、市役所、区役所の売店などにもし出していたら、それは母子家庭のお母さんにやってもらったらどうですかとか、なぜ理容、美容なんでしょうか。なぜたばこ販売業の許可を与えろというのでしょうか。
 私は、どうもこの現代の女性、特に今日のひとり立ちしている女性、一人前の女性、それが仮に離婚し、子供を抱えて、生活的な困窮を覚えながらでも、その人たちは立派に生きているわけでございまして、ただ十分な収入を得る機会がないということでございます。もっと女性に、あるいは、ハローワークに行って探すときもこんなこと聞くんでしょうか。駅の売店はどう、キヨスクの売店はどうとか聞くんでしょうか。
 そうじゃなくて、本当にその人が持っている能力を最大限に生かして、自分で何か事業を起こすとかいうのもいいじゃないですか、あるいは、すごい才能を持って、それがなかなか生かされていない人もいるかもしれない。そういう視点で立たないと、何かかわいそうな女性たちというふうな見方で見る、これは福祉というときにいつも出てくるスティグマなんですね、スティグマ。ですから、こういうことを挙げるのは、そういう働く母親にとっても、これはスティグマとして映らないだろうか。
 そんなふうになぜ法文に一々書かなきゃいけないのか、御答弁をお願いします。
岩田政府参考人 御指摘の条文は、この法律が制定されました昭和三十九年当時からのものでございます。ある意味では、その法律制定当時の我が国の状況、そのときの女性の働く機会のかなり限定された状況、そういうことを反映しているものではないかというふうに思います。
 私も、今の仕事をするようになりまして初めて、この現在の十六条ですが、それを読んだときには、先生とは別の意味で非常に印象を強く持ちまして、当時の政策立案者は本当にこういうレベルのところまで思いを及ぼして雇用機会の創出に努力されたんだなというふうに思っております。現状でも、たばこの売店については数はさほどございませんけれども、公共的な施設での売店や理美容についてはそれなりの雇用の就業機会に引き続きなっておりますので、今回の法律の見直しに当たりましても、この条文は引き続き存続させることといたしたところでございます。
 あわせまして、今先生おっしゃいましたとおり、現代という新しい時代で就業の機会はさまざま広がっておりますし、また母子家庭のお母さんたちの能力も、高い能力をお持ちの方もたくさんおられますので、そういう意味で、新しく改正法の二十九条では、もう少し全般的に雇用の促進をする、そのための職業の相談や教育訓練や就職のあっせんや、それから売店や理美容以外の公的な施設での雇用機会の創出なども広く規定をさせていただきまして、そういう条文に基づいて、さまざまな分野での母子家庭のお母さんたちの活躍ができるように支援をしてまいりたいというふうに思っております。
土肥委員 ベースになった法案が昭和三十九年。昭和三十九年というとどんな時代でしょうか。そして、まさにキャリアウーマンなんというのはいない時代、ちょっと言葉は古いけれども、戦争未亡人なんという人がまだ現役で、壮年でいらっしゃる時代だと思うのであります。それがベースだというんですが、もう少し書きぶりがあっていいんじゃないかなと思いますね。
 こうやって一々挙げると、それは人助けになっているようで、それはそういう職場に入って構わないんですけれども、一々取り上げて、では本当に何人の人が理容、美容の資格を取ることができたのかとか、たばこ販売業、どれだけ母子家庭の母親が就職しているのかとか、一々聞いていったらこれは陳腐なものになる。そういう就労の場もありますけれども、もっと希望を持って、ダイナミックに、子供を抱えながらでも頑張るというふうな、希望の持てるような書き方をしていただかないと、何か私なんか読むと母子家庭に対して気の毒でしようがない。
 最近では、離婚して母子で住むということがそんなに異常には映らなくなったことはとてもいいことだと思うんです。ですから、あとは社会的な認識の変化が伴うでしょうから、やはり母子家庭の母親も元気に、そして社会的な活動でばりばりやっていただく、その結果、収入が上がって、児童扶養手当はもう要りませんというくらいにしなきゃならないわけであります。そういう観点から見ますと、やはり世界大に働く女たち、女性たちの姿がこの福祉法ということで浮かび上がってこないということを非常に残念に思います。
 ですから、先ほど言いましたように、児童扶養手当が幾らついたか、どこでカットされるかとか、五年とか七年とかという議論は切実な問題として残りますけれども、もっと根本的には、この社会を、母親が子供を育てながら生きていく社会とは何なのかということを積極的に打ち出さないと、この法律はいわば後ろ向きの法律なんじゃないかというふうに思うわけであります。
 それで、私はこの第五条の「扶養義務の履行」というところが一番腹が立つところです。別れた男が妻や子供のために扶養義務を放棄する、しないということ、行使しないということ、これはもう社会的にも制裁を加えなきゃいけないんじゃないかと思っておりまして、こういう現状、それから手切れ金というか、離婚のときに渡す金がたしか百万か二百万の間だったと思いますね。それで女性の方ももう顔も見たくないというので手を打つのかもしれませんけれども、この文章は私は非常に不満なんです。
 先ほど法務省の方が来て、民事執行法といいましょうか、法制審議会で強制執行の手続をするということをおっしゃっていますが、ここのところは厚生労働省としてもしっかりと法務省に言っておかなきゃならないと思うのでありますけれども、例えば、「扶養義務を履行するように努めなければならない。」という努力義務ですね。努力義務という、努力して、そしてそれを履行するという、履行するというのも言葉は私どうかなと思うのでありますけれども、もっときつい表現はできなかったのか。なぜこういうふうな努力義務に終わっているのか。例えば、私の案を言うと、男に対して、扶養義務があることを自覚し、責任を負わねばならないぐらい書いたらどうでしょうか。
 答弁をお願いします。
岩田政府参考人 先生のお気持ちは本当によく同感できるところがございます。法律の義務としては既に民法の中に直系親族の扶養義務というのがしっかりありますから、それで法律の義務は別れた夫の方にあるわけです。
 問題は、実際に金銭を定期的にきちっと支払うということができない、その約束をしているのが三五%ぐらいで、実際に払っているのはさらに少なく二〇%というのが現状でございますので、これをまず、扶養義務を必ず履行していただく、そういう社会慣行といいましょうか、社会の一般常識にしていただくことが必要ではないかというふうに思っております。
 今回、こういう規定にいたしましたので、これを受けて、国としましては、社会的な機運の醸成を図ってまいりたいというふうに思っているところでございますが、養育費というのは支払うものであるとか、その養育費の取り決めをするときには、例えばこういうモデル様式でやったらいいとか、こういう金額が参考になりますよといったようなことをガイドラインで示して、そのガイドラインも、例えば児童扶養手当の申請をする窓口に置くとか、離婚の届け出をする市町村の役所の窓口に置くといったようなことで、しっかり周知をしてまいりたいというふうに考えております。
土肥委員 大変結構ですけれども、なぜ法文にそうしないんでしょうか。窓口に置く文書などを勘案して、なぜ努力義務なんですか。そういう法文にしないで、窓口でいろいろな印刷物を置いていても、あるいは離婚届を出すときにそこに置いていても、ちょっと悪く考えれば、男は別れたって養育の義務はないんだ、しなくていいんだ、逃げられるんだというふうなのが社会通念なんですよ。男の通念なんです。それをどうするかということは、今後の母子家庭の保護については非常に重要な問題でしょう。それをきちっと担保してもらわないと、このままずるずるといって、努めなさいなんと言ったって世間の男どもは通じませんよ。どうですか。
岩田政府参考人 この問題は若干法制的なテクニカルな問題で恐縮ですけれども、既に別の法律で法律上の義務として規定してあるものを、また別の法律で別途二度書きするということは適当ではないという技術的な助言がございましたので、そういうことで養育費の支払いの義務とはいたしませんでしたけれども、必ず履行してもらうようにその努力を促す、そのためにさまざまな環境整備を国と地方自治体が取り組むというような法律の体系にしているところでございます。
土肥委員 非常に不満ですね。法律の技術的な問題だと言われると弱いんですけれども、もう少し積極的な、こんな腰の引けたような文章、文案にしないで、せめて法律上はこうなんだよということを盾に取り立てができるくらいの根拠を与えてもらいたいものだと思うのであります。
 離婚届を出すときに別に紙を置いておくのではなくて、離婚届の中に記入することはできないんでしょうか。私、離婚届を出したことがないのでわからないんですけれども、そういうものを、法文を記入しておくとか印刷しておくというようなことはできますか。
岩田政府参考人 それは、私の方の所管ではございませんで、法務省の方で御判断されることだと思いますが、この問題については、今御指摘のように、離婚届の様式にそういう欄を設けるべきではないかという御議論もあるというふうに承知しております。また一方では、そういうことになるとなかなか離婚の自由が制約されるので、そういう選択肢をとらない方がいいというふうに主張される方たちもおられまして、なかなか御意見が一つの方向でまとまっているというような問題ではないというふうに聞いております。
 いずれにいたしましても、この問題、これからどういう形で本格的な仕組みをつくっていくかというのは大きな問題でございますので、この法律の附則でも養育費のあり方については今後検討するということをうたっておりますので、法務省、その他関係方面としっかり勉強していきたいというふうに思います。
土肥委員 ぜひこの法案の審議の中でそういう意見があったということを法務省に詰めて、そして法務省もるる検討してもらって、ぜひともそういう書き加えをしていただきたいと思いますね。
 どうなんですか。不利になる、離婚ができなくなるなんというのは、男がそれを見て、ではやめますと言って、区役所の窓口から離婚をしないと言って帰るんだろうか。やはり離婚に当たっては、そういうものは常識ですね。扶養しない者が扶養手当を出すということは当たり前、扶養費を払うということは当たり前のことなので、それが社会通念であって、今何か離婚してもただで済むような通念は間違っておる、こういうふうに思うわけでございます。その辺をぜひ詰めていただきたいというふうに思っております。
 同じようなことが今法務省との関係でございましたけれども、例えば、離婚した母子が一番困るのは、自分で財産を持っていれば、土地や建物を持っていれば別ですけれども、即座に家の問題になるんですね。家を探すということが大変な苦労のようでございまして、民間住宅を探すときも、公営住宅を探すときも、例えば市営住宅などに通常に申し込んでもなかなか当たらないと。ところが、この法文は二十七条で、「特別の配慮をしなければならない。」と書いてあるんです。
 公営住宅の話になりますと国土交通省の話ですというふうになりがちなんですが、この法文を、二十七条を制定するときに、厚生労働省としてはどんな話し合いを国土交通省として、この法案の実現についてどんな働きかけをしたのか、お伝えください。
岩田政府参考人 今般のこの条文自体は実質的な改正はございませんが、今回の改正に先立ちまして、母子寡婦対策、総合的に、全般的にどうあるべきかということを議論し、その結果、対策の大綱という形でことしの三月、盛り込んでおります。
 その大綱の一つの柱がやはり住宅の問題でございまして、公営住宅の入居に当たっての配慮ですとか、公営住宅が数として足りないということであれば、民間住宅を借り上げていただいて、それを公営住宅にして貸していただくとか、さらには、保証人がなかなか得られないという問題もあるようでございますので、そういった問題にどういうふうに対応するかといったようなことを国土交通省の方に問題提起させていただいております。
 国土交通省もそれなりにお取り組みいただくというふうにお聞きしておりますので、国の基本方針を取りまとめましたり、自治体の自立促進計画をまとめるときには、ぜひ住宅の問題も重要な課題であるということで対応していきたいというふうに思います。
土肥委員 最後に大臣にお願いします。
 つまり、先ほどスティグマという話をしましたけれども、今度、母子自立支援員というのができるんですね。大変これは結構なことだと思いますが、旧法では「身上相談」と書いてあるんですね。この方が支援員というよりは何か身近に感じるんだけれども、今後は、就業からいろいろなもろもろの職業指導、あるいは自立のための貸し付けだとか、もろもろのことをやるんですが、この人たちが、また私が言っているように先ほど言ったようなスティグマを持ってやると、身の上相談に終わると思うんですよ。
 その辺はやはり意識を変えてもらって、何かかわいそうな人を助けに行くんだみたいな、あるいは、単なる身の上相談ではなくて、相当な指導力と経験を持ち、かつ社会的な支援をよく理解している人でないと困る。そもそも認識を改めてもらわなければ困るというのが私の主張なんですが、大臣の御意見はどうでしょうか。
坂口国務大臣 先ほどからいろいろの御意見をお聞きいたしておりまして、私個人的には大体先生と同じような考え方でございまして、本当によく見ているなと思いながら聞かせていただいていたわけでございますが、最後の自立支援員、なるほど言われてみれば名前がどうかなという気は率直に言って私もそう思います。もっと広い範囲で御相談に乗るのはもちろんでございますし、就労にいたしましても、その他の住宅の問題にいたしましても、全体的にトータルで御相談に乗って、皆さん方の生活をバックアップしていくという体制でなければならないというふうに思っておりますし、事実そういうふうにしていきたいというふうに思っております。
 住宅の問題につきましては、国土交通大臣とも一遍よく話をいたしまして、前進するようにしたいと思っております。
土肥委員 もう時間が来ましたから終わりますが、今回の法改正で二十一世紀型の母子福祉になっているかどうかということを根本的に考えないと、これから先、また手当が幾らになった、いつカットするなんという話ではなくて、たとえシングルになっても頑張るという社会を、あるいはそういうバックアップ体制をつくっていかなきゃならないと改めて申し上げまして、私の質問を終わります。
 ありがとうございました。
坂井委員長 次に、中津川博郷君。
中津川委員 民主党の中津川博郷でございます。
 今回の法改正によりまして、児童扶養手当の手当額の算定法が大きく変わった。現行制度では、手当額が全額支給の四万二千三百七十円と一部支給の二万九千三百五十円、大変シンプルで、二段階でわかりやすい。ところが改正案では、一万円から四万二千三百七十円まで十円刻みという、非常に細かく複雑、ややこしくなっているんですね。どういう結果が起きるかというと、母子世帯では手当が減額されるのではないか、これが大変不安になっているわけですね。
 今現在の経済情勢、これはどんなに厳しいかというのは大臣初め皆さんたちもよく御理解されていると思いますが、株価は、いっとき八千円を切るんじゃないか、きのうあたりで九千円ちょっと超えて、またきょうも下がっているというようなことで、全然資産デフレがとまらない、景気が悪い。失業率も五・四%で高どまり。そして、大卒者や高卒者の就職率は十三年度でそれぞれ九二・一%、八六・三%ですか、高卒者に至っては史上最悪である。ことしの求人倍率も〇・五倍で、かつてない低さだ。
 高校生、大学生、こういう人たちの就労支援、自立支援だってまだ十分でもないのに、一番政治を必要としている、経済的に恵まれないこういう母子家庭に不安を与えるような政策を何で今このタイミングにやるのか、これこそワーストタイミングじゃないのかというような率直な疑問を、まず大臣に察していただきたいと思います。
坂口国務大臣 午前中にも若干触れさせていただきましたが、こういう厳しい状況が続いてきたときに、母子家庭にいかなる影響を与えるかということだと思うんです。現状は非常に厳しい状況にございますし、この現状の中でこの経済状況がさらに進んでいくということになれば、さらに私は母子家庭に大きな影響を与えるだろうというふうに思っております。
 先ほども御議論ございましたが、確かに財政的支援をするというのも大事な柱の一つではありますけれども、やはりこれからはそうではなくて、もう少しトータルに、例えば就労支援をどうするかといったようなこと、あるいはまた仕事と家庭が両立をするようにどう手当てをするかといったようなこと、そうしたことも含めまして、やはり母子家庭の皆さん方がより活躍をしていただきやすい社会システムをどう確立するかということが、こういう時期であればこそ私は大事だというふうに思っております。
 厳しい状況であることも十分存じておりますけれども、そのときであればこそ、早く現状を改善して、午前中にもございましたとおり、平均して二百二十九万という現状をいかにして打破していくかということを早く始めないといけないというふうに思っている次第でございます。
中津川委員 きょうは、この改正案自体に関する多くのことは既にもう同僚議員が質疑を終えられておりますので、私は、教育とそれから住宅関連、これに絞ってお尋ねをしたいんです。
 実は、今申し上げましたようなこの大変厳しい経済状況の中で、こういう限られた税金を母子家庭の一助となるように考えているのが児童扶養手当の意味だと思うんですが、こういう児童手当、児童扶養手当、私は東京都出身の議員でありますが、児童育成手当というのもあるんですが、こういうものが本当に必要な人に、必要なところにしっかりと払われているならいいんですが、そうではなくて、この大切な手当というのが、どうも不正にもらっている人というのも結構いるようだという話をよく聞くんですね。
 現代社会では、事実婚というのがあります。実態上は立派な、生活力があってたくましい男性養育者がいるのに児童扶養手当の支給を受けているというような場合があるということですね。そういう場合は、資格がないのに虚偽の申請をしているわけですから、これは言ってみれば税金泥棒、犯罪ですよ。例えば、これは計算しますと大変な額になるんですよ。児童扶養手当ならば年間約五十一万円ですか、十八年間では九百十五万円にもなりますし、児童手当を含めれば一千万円ものお金が不正受給される可能性もある。そういう話を仕事柄よく聞くのでありますが、これは大問題なんですね。
 そこで厚生労働省にお伺いしたいんですが、こういうケースというのはあることを御存じなのか、どのくらいのケース今までそういうのがあったのか、その辺の把握をお聞きしたいと思います。
岩田政府参考人 御指摘のように、この児童扶養手当の場合は、支給要件が離婚ですとか事実婚の解消、あるいは未婚の母になる、こういったようなことが支給要件になるわけですけれども、これらの事情を、例えば偽装離婚するとか、事実婚であるのに独身であるというふうに偽るといったように、こういう事情を偽装するということがあり得るわけです、残念ではございますが。
 そういうことで、私どもも地方自治体に対して、事務指導監査ということで、的確に支給事務がなされているかどうかということを定期的に指導監査もいたしておりますし、また、支給に当たる機関においては、関係機関、関係部局とよく連携をとりながら情報を集めて、不適正な支給の防止に努めていただきたいというふうに思っております。
 私どもの方で把握したものは、例えば平成十二年度についてでございますが、この年度に発生しましたこういった不正受給は、これは単位が延べ月人数、マンマンスですが九千八百五十一、金額として四億強ということでございます。
 いずれにいたしましても、不正があった場合にはもちろん返還させますし、罰則もついておりますので、そういったことがないようにしっかり認定事務をしてもらうよう、市などに対して監査や指導を引き続きやっていきたいというふうに思います。
中津川委員 今、地方に対してしっかりと監査しているということで、具体的な数字ですね、不正受給者、発表されましたけれども、私、各自治体などへの指導監督はどうも甘いと思いますよ。今お答えになったのと、私が受けている感触とはちょっと違いますね。
 生活保護なんかを受ける場合、これは必要以上に細かく調査して、預金通帳を調べたり自宅を訪問したりしてやっていますよね。しかし、このケースの場合は、書類を持っていけばほとんどノーパスである。ちょっと行って、足を運べば、家の大きさを見たり、近所の人に聞いてみれば、どういう暮らしぶりをしているのか一目瞭然なんですが、その辺のところ、都道府県、市区町村の指導というものが、監督というものが不十分だというふうに私は認識しているんですね。
 ぜひ、今おっしゃられたことをより徹底してもらいたい。必要な人に、本当に一生懸命子供を抱えて生きている人に本当に行き渡る制度ですから。犯罪行為ですよ、これ、犯している人は徹底的に取り締まってもらいたいんですよね。
 そして、大臣、こういった事案が発覚した場合、厳正に取り締まる決意があるのかどうか、ひとつ御所見をお聞きしたいです。
坂口国務大臣 こういう国からの支援でありますから、これは厳正にいかなければならないことは事実でございます。
 不正受給に対しましては、受給金額に相当する金額の全部または一部の返還を命じますのは当然でありますが、三年以下の懲役または三十万円以下の罰金に処するものとされております。これは、児童手当法の第十四条、同法の第三十一条、それから児童扶養手当法の二十三条、そして三十五条、そうしたところで定めているところでございます。
中津川委員 今の法律、私も調べてみたら確かにそのとおりでありまして、場合によったら刑法二百四十六条第一項の詐欺罪にも相当する。
 そもそも児童扶養手当というのは、児童が父と生計を同じくしているときは同手当は支給しない、こう書いてあるわけですから、この委員会の審議でこういうのがはっきり出たということを地方の方にくれぐれもひとつ伝達をして、しっかりとやってもらいたい、こんなふうに思います。
 次に、教育の問題なんですが、子を持つ親はもう全部、我が子にはいい教育を受けさせたい、とりわけ一人親家庭の場合は、本当に、自分がどんなに苦労しても教育だけは一人前に身につけさせたいと思うのが人情ですよね。
 そこで、母子家庭への教育資金、この援助策について、まず文部科学省にお伺いしたいのですが、三点ほど申し上げます。
 今年度の事業費総額は五千百六十六億円、政府貸付金が三千六百九十八億円ですか、そして、この毎年の事業費というのはどのように算出しているのか、これは希望者実績からの逆算から出しているのかという点が一点。それから、母子家庭にとって無利子で貸すというのが理想だと思いますが、この無利子貸与というのは、基準を満たしている者全員にこれは貸し付けされているのか。それから三点目は、今年度の事業費を見ますと、無利子貸し付けが七十二億円減らされているんです、これはどういうわけなんですかね、これは来年度はどういう見通しになるか。簡潔にお願いします。
木谷政府参考人 お答え申し上げます。
 まず第一点、毎年の育英奨学事業費の算出方法ということでございますが、この財源につきましては、無利子奨学金については一般会計による政府貸付金と卒業した奨学生からの返還金でございまして、また、有利子奨学金につきましては財政融資資金、日本育英会債券及び返還金となってございます。したがいまして、毎年の育英奨学事業費の規模を決定するに当たりましては、概算要求における一般会計等の政府方針を踏まえた上で、学生数と奨学金希望者のニーズ、さらには学生生活費の変化等、諸般の状況を総合的に勘案して決定をしてきておるところでございます。
 二点目の、無利子奨学金につきまして、基準を満たした者は全員受給できるのかということでございますが、奨学金の採用につきましては、学力及び家計に関する基準を定めまして、これに照らして選考を行っていってございます。
 ただ、予算上の制約もあることから、無利子奨学金について、必ずしも基準を満たしたからといって全員採用することはできないという状況でございますが、無利子奨学金の希望が通らなかった場合には、有利子奨学金を希望する旨、あわせて出願をする併願という制度を設けておるところでございまして、できるだけ学生のニーズにこたえるよう配慮しているところでございます。
 今後とも、無利子、有利子の奨学金事業全体を通じてより多くの学生に奨学金を貸与すべく、充実に努めてまいりたいと考えてございます。
 三点目、平成十四年度予算において無利子奨学金が減額した理由、また、来年度予算はどうなるのかというお尋ねでございますが、平成十四年度予算では、特殊法人に係る歳出削減という政府全体の方針を踏まえまして、一般会計による政府貸付金を財源とする無利子奨学金を減としつつも、より多くの学生を採用できるようにするとの観点から有利子奨学金の方の大幅増を図りまして、事業全体では四百三十四億円増、貸与人員にいたしまして四万五千人増の七十九万八千人の学生生徒に奨学金を貸与することとしております。
 また、来年度の、平成十五年度の概算要求におきましては、「経済財政運営と構造改革に関する基本方針二〇〇二」におきましても奨学金充実の方策が閣議決定されたことから、無利子奨学金の貸与月額について増額を図るほか、無利子、有利子のいずれの貸与人員についても増員を図りまして、合わせて六万九千人の増員、これによりまして平成十五年度は八十六万七千人に奨学金を貸与することができることになると考えております。
 以上でございます。
中津川委員 大分アップするということで少しは安心しましたが、余り有利子じゃなくて、無利子で貸すという方向を大きな柱にしてもらいたいなというふうに要望しておきます。
 そこで、厚生労働省の修学資金貸し付けの中身について同じように質問したいんですが、現在、母子家庭全体は九十五万世帯あって、児童扶養手当を受けている母子家庭、ゼロ歳から十八歳までですね、これが約七十六万世帯ある。そして、お子さんが二十歳未満で、かつ、高校、高等専門学校、短大、大学等に通っている母子家庭は、平成十年で約三十三万世帯。そうすると、当然該当する子供の数は三十五万以上になるんです。
 ここで、お子さんが大学生で二十歳から二十二歳までの母子家庭世帯を含めると、本当に大変な、それ以上の数になるということなんですが、今厚生省で行っております母子寡婦福祉貸付金というのがありますね。これについてお伺いしたいんですが、これは確かに、先ほどの文科省のと違って、いい点はあるんですよ。特別な面倒な条件もないし、学力のあれも余りないし、母親が保証人になって本人が借りると他人の保証人が不必要である。
 ただ、問題なのは、平成十二年度の実績を見ますと、約四万件で、貸付金額がわずか百七十八億円、そのうち政府貸し付けが五十五億円ですか。少ないですね。これでは本当に足らないと思いますね。対象となる世帯は三十三万世帯もあるんですよ。そうすると、実際に貸与を受けているのは一〇%未満ですよね、一〇%にすぎない。文科省の事業費、これは二千二百億円以上、先ほど話がありましたが大変大きな数字で、四十万人以上が無利子のものを利用している。それに比べて余りにもちょっと貧弱じゃないかという気がしてならないんです。
 この母子寡婦福祉貸付事業、これは昭和二十七年に始まったということで伝統はあるんですが、何か今の実態にそぐわないんじゃないかというような気がするんですが、政府のお考えをひとつお聞きしたいと思います。
岩田政府参考人 母子寡婦福祉貸付金制度の中にございます奨学金は、今先生おっしゃいましたように、学力要件を課すということはいたしておりませんし、また、無利子で、そして返済の条件も大変緩やかなものでお貸しをいたしております。
 この財源ですけれども、基本的には償還された財源が基本ですが、貸し付け需要がさらにあるということの場合には、追加財源を国と地方自治体で負担をしているということでございます。
 利用実績は先ほどおっしゃった数字でございますけれども、これは一つには、第三者の保証人を得ないといけないということで、やはりなかなか借りにくかったというお声をたくさん聞きました。
 そういうことで、今回の改正法案の中で、児童本人が借りられて、母親が保証人になれば第三者の保証人は要らないということは、この改正案の成立を待って初めてスタートするわけでございます。そうするとさらに利用者がふえるということも考えられるわけですから、そういったときの貸し付け需要の動向を見ながら、財源の確保には最大限の努力をしてまいりたいというふうに思います。
中津川委員 今改正案の一つの目玉だというふうにおっしゃいまして、そうなってほしいと思うんですが、この制度、実は学校の先生も知らない人、結構多いんですよね。細かい話ですけれども、この制度の使い勝手にも一つの大きな疑問があるんじゃないかというふうに、私、これやっていて感じたんですね。
 修学貸し付け、この申込用紙がどこにあるか、御存じですよね。当然、市役所とか福祉事務所にあるわけですよ。こういう資料はやはり学校に置いておくのがこれは当然だと思いますね。学校に置いて、先生がまず理解をする、そして学生たちも目に触れてそれを利用できるようにする。いかがですか。
岩田政府参考人 これまでは、修学資金貸し付けというのは母親に対してやっておりました。そういうことで、母子家庭のお母さんたちをいろいろな形でサポートする窓口が市役所だったり福祉事務所であるということで、そういったところに関係のパンフレットなどを置いていたわけですが、先ほど申し上げましたように、今般、この改正法案を通していただきますと、子供さん自身が借りられるということになりますので、お子さんが目につきやすい、例えば大学などに置いていただく、学校の先生によくこの制度を知っていただくということは大事かというふうに思いますので、文部科学省の方とも御相談しながら、そういう形でさらに利用しやすいように努めてまいりたいと思います。
中津川委員 ぜひそういう形でやっていただけたらというふうに思います。
 次に、母子家庭の賃貸住宅の入居の厳しさについてお伺いしたいんでありますが、五月十七日の本会議でも私は指摘しましたけれども、母子家庭の賃貸住宅への入居の厳しさというのは大変なんですね。この辺のところを国土交通省、認識されておりますか。
松野政府参考人 お答えいたします。
 母子家庭の居住の安定を図りますことは、議員御指摘のとおり、大変重要な課題と認識しております。
 それから、賃貸住宅、特に民間賃貸住宅入居につきましては、母子家庭の入居につきまして、高齢者や外国人ほどではございませんが、一部に一人親の世帯の入居を敬遠するという場合があるといった居住の実態を勘案しながら、母子家庭の居住の安定を図るための必要な施策を講じてまいる所存でございます。
中津川委員 公営、公団住宅に対する優先入居について御質問したいんですが、一人親世帯の公営住宅、母子世帯向けの優先の枠数を設けたり、それから当選倍率を優遇するなど、公団住宅もそうですけれども、こういういわばポイント制というんですか、こういうのがあるということなんですね。
 ただし、公営住宅が十二年度末累計で二万二千戸、公団住宅の十三年度実績でわずか八百五十戸ですよね。肝心の母子家庭は九十五万世帯もある。本当に、実績としてはもう微々たるものだなという気がしてなりません。この優先入居枠をもっと拡充すべきではないかという点であります。
 住宅というのは、まず離婚して真っ先にこれは必要となるものですよね。自立支援、就業支援、それも結構ですよ。確かにそうですよ。だけれども、住むところがなくて何で自立支援だ、就業支援だってなりますね。九十五万でわずかこれだけの数で、この人たちどこに住んでいるのかなと、私、腕を組んで考えちゃいました。苦労しているんですよ、きっと。いかがですか。
松野政府参考人 お答えいたします。
 公営住宅は、住宅に困窮いたします低額所得者のための賃貸住宅でございまして、入居者の選考に際しましては、高齢者世帯、障害者世帯、多子世帯等、特に住宅困窮度の高い者を対象として、公営住宅の事業主体でございます地方公共団体の判断によって優先的な取り扱いができることとなっております。
 母子家庭につきましても、住宅に困窮する状況がありますことから、従来より、入居者の選考におきましては、このような優先的な取り扱いを行うことができることとなっているところでございます。
 母子世帯向けの優先入居枠の設定等につきましては、事業主体でございます地方公共団体がその地域の住宅事情を勘案して決定するものでございますが、母子世帯の住宅困窮度を踏まえながら、今後とも公営住宅の積極的な活用が図られるよう努めてまいりたいと考えております。
 なお、公団賃貸住宅におきます優遇措置の内容につきましては、募集時におきます当選率を一般の方の十倍の優遇としております。十三年度の優遇措置状況を見ますと、約三万一千戸の募集をしておりますが、約一万六千戸がさまざまな優遇措置の方々、五二%になりますが、という方々の優遇措置を図っております。
 母子家庭につきましても、その当選する割合四六%ということでございまして、一般の方々の当選割合一四%よりもはるかに優遇措置を講じておるところでございます。そして、その効果は大変大きいものと認識しております。
 今後とも母子家庭に対する優遇措置について配慮してまいりたいと考えております。
中津川委員 いや、その効果は大きいじゃなくて、実際、これだけの数字なんですよ。地方に任せるというんじゃなくて、みんないつもそうなんですよ。国土交通省と厚生労働省、そういう支援をやりますよ、地方の方にもしっかりとその辺のところを指導するという答弁がなきゃだめですよ。
 それと、民間住宅における家賃の債務保証、これについて最後にお聞きしたいんです。
 この債務保証ですが、これは全国保証株式会社という民間企業が行っているものだそうですが、これについては、時間がないので仕組みについてはきょうは語りませんけれども、家賃の二倍以上の定期的な収入、これは年金でもいいんですね、含むこと、こういうふうにあるんですね。ところが、離婚直後、家賃の二倍もあるというような人、しかも定職がなきゃだめですから、これはちょっと不可能じゃないですか。貯金があってもだめだというんですね。この辺はちょっと血も涙もないという感じがしますね。これは何らかの緩和が必要じゃないかという点、これ、一点であります。
 それで、これは民間事業者が行っているものであるということで、国家が言うものではないというようなことでまた答弁もあるかもしれませんが、それだったら、離婚直後の一定期間については政府が母子家庭に対して自立促進の何らかのバックアップをする、そういう姿を見せるということが必要だとは考えているんですが、これについても答弁願いたいと思います。
 それから最後なんですが、高齢者に対する家賃債務保証というようなものはこれはあるんですが、こういう民間会社に任せているだけでなく、それで、この実績、保証実績がわずか四千件なんですよ、母子世帯。比べて、もう微々たるの微にもならない、余りにも実績が足らない。繰り返しますが、家賃債務保証というようなものも、国として取り組むことが必要なんじゃないですかね。いかがでしょうか。
松野政府参考人 お答えいたします。
 民間賃貸住宅にかかわります家賃の保証につきましては、近年、複数の民間の債務保証会社、委員のおっしゃいました会社も含めまして、債務保証事業を実施しております。また、その保証内容や収入、年齢、保証等、諸条件につきましては、それぞれの保証会社が市場において設定しているところでございます。その推移を引き続き見守ってまいりたいというふうに考えております。
 また、高齢者のような家賃の債務保証を実施すべきではないかということでございますが、今申し上げましたように、民間の債務保証が市場におきまして供給されております。複数の会社によって、いわば市場においてそういったものが供給されております。
 また、高齢者につきましては、民間賃貸住宅におきまして入居される割合が格段に高いということから、法律に基づく債務保証制度を設けたところでございますが、母子家庭については、そういった入居敬遠が大変著しく大きい割合というようなことではございませんので、民間における債務保証の実施状況を見守ってまいりたいというふうに考えております。
中津川委員 これで質問は終わるんですけれども、どうも住宅局長、冷たいね。もっとやはり、今一番政治を必要としているんですよ、この母子家庭は。国土交通省、むだな公共事業にどのくらい使っているんですか。それと比べればわずかなものじゃないの。それを申し上げまして、質問を終わらせていただきます。
 ありがとうございました。
坂井委員長 次に、武山百合子君。
武山委員 まず、大枠で大臣に聞きたいと思います。
 まず、このたびの法律改正で、児童扶養手当、そしてパート収入なり常用雇用の収入なり、それから文部科学省から奨学金の枠で、それから国土交通省で公営住宅ということで、母子家庭、寡婦家庭の経済的基盤、これはどのくらいの金額を想定してこの母子及び寡婦というものを考えて法律改正をしたんでしょうか。経済的基盤を、どのくらいの金額を頭に想定してこれを考えたのか、ぜひお答えいただきたいと思います。
鴨下副大臣 議員が今御質問の中では、多分、母子家庭もしくは寡婦家庭の一カ月の平均生活費等は一体どのくらいになっているのか、その実態を踏まえて今回の改正に当たっているかどうか、こういうようなお話だろうというふうに思います。
 今、母子家庭の一カ月の平均生活費そのものは統計的にはとっていないわけでありますが、平成十年度の全国母子世帯等実態調査によりますと、母子世帯の平均年収額は二百二十九万円となっております。したがって、一カ月の平均収入にいたしますと約十九万円程度である、こういうことが考えられます。ですから、母子世帯の一カ月の平均生活費も大体そのくらいであろうというようなことであります。
 ちなみに、一般世帯は平均年収が六百五十八万円、こういうようなことになっております。
武山委員 いえ、私の質問は、この法律改正は、母子及び寡婦という家庭の、いわゆる子供二人とお母さんの家庭で、いわゆる法律の基盤、この法律をつくる上に対して、一カ月どのくらいのお金があったら生活できるということを想定してこの法律ができているのかという質問なんです。今お答えいただいたのは平均収入ですね、いわゆる母子家庭の平均収入を聞いたんですが、皆さんが政府・与党としてこの法律を改正するに当たって、どのくらいの金額の一カ月の平均的な経済基盤を目安にして考えたのかという質問なんです。
 一カ月の平均収入の金額を聞いたのではないんです、その金額は私自身わかっているんです。皆さんがこの法律をつくるに当たって、どのくらいの金額がこの家庭に必要かということを想定してつくったのかということ。そうじゃないと、児童扶養手当もどのくらいが必要か、奨学金もどのくらいが必要か、そういう割り振りができないと思うんですよ、骨格自体がきちっと決まっていなかったら。その骨格の全体を、どのくらいの生活基盤を最低限国の方で考えているのかというものがない限りは。ぜひ、その基盤を聞きたいと思います。
坂口国務大臣 今先生が御指摘になりました問題は、これからの自立をどう支援していくかということの中心的な課題だというふうに思います。
 したがいまして、現在、先ほど申しましたように、二百二十九万円という平均値でありますけれども、これをいかにして上げていくか。就労なら就労に対しまして支援をし、そしてまた、生活ならば生活、あるいはまた、お子さんを預けるのならば、それに対してどう支援をしていくか。そのことによって、よりよい職場を求め、そして働けるようなシステムをつくり上げていくということによって、これをどう上げていくかということでございまして、その二百二十九万をどこまで上げるという数字はつくっておりませんけれども、少なくともこれを上げなければならない、そのことが今課せられた最大の課題であるというのが今回のこの法律の基盤になっていると私は思っております。
武山委員 それでは、今のお話ですと、二百二十九万がほぼ基本的な経済的な基盤の上に立ってこの法律ができているというふうに解釈してもよろしいのでしょうか。
坂口国務大臣 いや、それは、現在がそういう数字になっている。しかし、これではいけないので、これを上げていかなければならない。上げていくためには何が必要かということになってくるわけでありまして、そのためには就労支援、あるいはまた、子供さんがあります場合には保育所に、優先順位をつけてそこに入っていただく。先ほど住宅のお話も出ましたけれども、そういうことも大事でございまして、そういうトータルな中で、お母さん方によりよい就労機会を持っていただくというふうにしていくことが大事だということを申し上げているわけでございます。
武山委員 日本は右肩上がりの高度経済成長を遂げまして、今大変な状態でございますけれども、結局、国民の税金をやはりこういう方々にどのような形で、どういう金額をどう支援するか、有効に使ってもらうかということだと思うんですよね。その使ってもらうための国としての最低限の、いわゆるこのくらいの経済的な基盤が必要だということをやはり言えない政府、言えない国というのは、非常に哲学がない、柱がないと言えると思うんですよね。
 ただ平均収入がこれだけという、実際にパートの収入、それから常用雇用の収入、それを足して、平均的にこの人たちの収入がこれだけだというものを基盤に、今こういうふうにこの二百二十九万円ですということを言っているだけのことであって、議論するのに非常にわかりにくいんですよね。そこを何か、哲学がどこにあるのか、基盤がどこにあるのか。
 それでいて、今の平均的な収入をただ上げるということになりますと、私は、児童扶養手当も、それから生活保護も、それから収入も、それぞれのパートや常用雇用ということで収入があり、それから自治体で、児童育成手当というのが個々の自治体で出ているというふうに聞いております。そうしますと、どのくらい、どんな形でどうしたらいいかという目安が数字で出てこないわけなんですよね。
 皆さんの収入の中でやれない、やれないというから、じゃ、これもあれもつけようという発想なのか。ある程度の収入は取れているから、じゃ、もうこれは五年後に少なくしますよという発想なのか。骨格が何なのかということをもう少し突っ込んで聞きたいと思います。どこを視点に置いているのかということ。
坂口国務大臣 同じことを申し上げるような気もいたしますけれども、どこが一番中心かと言われれば、自立支援というところが一番中心であって、今までの財政支援という問題も、これもおろそかにできません、大事です。大事ですが、財政支援だけをしておりましても母子家庭は成り立っていかない。もっと母子家庭が、お子さんの教育にいたしましても、またふだんの生活にいたしましても、そのレベルを上げていただこうとすれば、それはより多くの就労機会が得られて、そしてより適切な就労機会に恵まれて、より多くの賃金が得られるということが大事でございまして、そのことをまずやらなければならない。
 そこの上がり方によって、現在の状況にとどまるのか、あるいはまたそこが失敗をすれば現状よりも下がっていくということだってあるわけでありまして、それではいけないので、現状を上げるように最大限努力をする、その自立支援のシステムをつくり上げていこう、こういうふうに言っているわけでございまして、それによりまして、その結果によって、私は、財政的な支援の値は変わっていくというふうに思います。
 ですから、これから五年間、一つの期間があるわけでございますから、その間に最大限、私たちは、就労機会を中心にしたトータルな支援というものをどう構築していくかということが国に対して課せられている、そのことをどう果たしていくかが一番大事だということを申し上げているわけでございます。
武山委員 そうしますと、政策転換をしたということになるんでしょうか。今まではどうして、いわゆる給付の方だけで自立ということを考えなかったという意味なんですか。それとも政策転換をしたという意味なんでしょうか。そこの辺をきちっと説明していただきたいと思います。
坂口国務大臣 今までも自立支援はしてきたわけでございますが、ウエートはどこにあるかといえば、財政支援のところが中心であったというふうに思います。これからも財政支援をおろそかにはしませんけれども、やはり、就労機会なり、あるいは仕事と育児の両立ができるようにするとかといったようなことにウエートを移していく、自立の方向により移していくということでございますから、変わったのかと言われれば、そこはそういうふうにウエートを置いていきたいということでございますので、ウエートの置き方は変わったというふうに思っております。
武山委員 そうしましたら、やはり変わったということになるかと思います。
 それでは、ウエートが財政支援から自立の方向に変わる。では、なぜ変わったんですか。軸足をなぜ置いたんでしょうか。
坂口国務大臣 これも午前中からいろいろ議論のあったところでございますが、いずれにいたしましても、先ほど先生も御指摘になりましたとおり、経済の状況は、右肩上がりの時代から、少なくとも今までのような右肩上がりの時代ではなくなってまいりました。人口もこれからだんだんと減っていきます。人口減少時代がやってくるわけでありまして、しかもその中は少子高齢社会でございます。そうした中でありますから、全体として厳しい状況が来ることは覚悟しなければならないわけであります。
 そういう時代の中で、どちらかといえば弱い立場、すべてが弱いと言っては失礼でございます、中には立派におやりになっている方もおみえでございますのでそうは言えませんけれども、しかし、トータルで見ればどちらかといえば弱い立場に置かれている皆さん方に対して、この皆さん方がこれからどう生きていただくかということを考えましたときに、やはり自立をしっかりとしていただくということにしなければ、これからのこの社会、よりよく生きていただけないのではないかというふうに思っている次第でありまして、こういう厳しい時代であればこそ、私はそうした転換が一日も早く必要だというふうに思っている次第でございます。
武山委員 経済的基盤の弱い方々には、大いに基盤をしっかりさせるということは、私もぜひ必要だと思うんです。
 ただ、その中身に対して、先ほどお聞きしておりまして、まず、文科省からきょう来ていただいておりますので、児童の学校に対する授業料のいわゆる免除や、あるいは貸付金、奨学金、いろいろな幅広い活用が行われておると思いますけれども、まさにこういう方々には優先的に、上限を設けず、自立した考えと責任を持ってやはり使っていただくというような形で、文部科学省が今どのような状況で母子家庭あるいは寡婦の家庭に対応しておるか。中身の状況と、それから奨学金の枠の上限、どのくらいの金額からどのくらいまでを貸し付けておるのか。
 その辺、先ほども中津川さんがお聞きになっておりましたけれども、上限を聞きたいと思います。
河村副大臣 お答えいたします。
 奨学金は、文科省は日本育英会の奨学金という形で支給をさせていただいておるわけですけれども、いわゆる優秀な学生生徒に、いわゆる奨学の意味、あるいは経済的理由で修学困難な、そういう方々にこれを貸与しているわけです。それから、人材の育成と教育の機会均等という理念に基づいているわけでございますが、当然、経済的な理由、あるいは人材育成も含めて、生活保護家庭、母子家庭、その方々もこの中に入っておるわけでございます。
 育英会では、無利子奨学金とそれから有利子奨学金と二種類を持っておるわけでございまして、まず無利子奨学金の貸与月額でございますが、大学生の場合ですと、学種、通学の形態などにより月額が決まっておるんですが、今おっしゃるように上限、下限的なことを申し上げますと、低い方で月額四万二千円の年額五十万四千円、これが国公立の自宅通学者です。高い方というか、多くもらえる方は、私立の自宅外通学者、下宿等々ですが、年額七十三万二千円、月額は六万一千円となっているわけです。これは大学生であります。
 それから、高等学校が、国公立の自宅通学者が年額二十一万六千円、月額一万八千円から、高い方は私立の自宅外通学者で月額三万五千円の年額四十二万。これが無利子でございます。
 有利子でございますが、有利子奨学金は、在学中は無利子で、卒業後、年三%を上限に、現在〇・三%でやっておりますが、私立大学生の場合を例にいたしますと、これは大学生以上、大学院もそうであります、高等学校にはございませんが、大学生は、私立大学生が、貸与月額が三万、五万、八万、十万、こう分かれておるわけでありますが、年額、低い方は三万だったら三十六万、十万で百二十万、これを学生が選んで、そして自立して後、返還をいただくということになっております。
武山委員 その金額、今詳細に御説明いただきましたけれども、母子家庭に、いわゆる有利子、無利子じゃなくて、スカラシップとして、奨学金として無料で上げるということは考えられないんでしょうか。ちょっと文部科学副大臣にお聞きしたいと思います。
河村副大臣 生活保護といいますか、そういう形でのいわゆる給付ということはこれまでもそれぞれあることは承知しておりますが、いわゆる奨学金として全額丸々そういう方々に差し上げるということは、今の奨学金制度の中にはこれは入っておりません。
 ただ、急に家庭が、今まで通学しておられた方が、保護者が急に亡くなったとか、こういう緊急の場合には、緊急採用奨学金ということで、これもやはり希望があれば貸与するということであります。
 今、文科省が管轄するこの日本育英会も、組織をまた新たに機構改正をいたすわけでございますが、生活保護家庭とか母子家庭等に対して経済的な理由で修学困難にならないように努力するということはこれからも努めていくわけでございますが、これも、自助自立といいますか、そういう形で、当面の困難なことについては支援を申し上げるけれども、自立をしていただいて、後はお返しをいただきたいというのが現時点になっております。
 これまでも、例えば優秀な先生なんかには全額差し上げるような奨学金制度もあったんですが、今それをやめておりまして、むしろ自立をしていただいて、後は返していただく、みんなで広くそれを使っていただくという方向に転換を既にいたしているような状況下にあるわけでございます。
武山委員 別の分野に入るかと思うんですけれども、税制上優遇措置という部分ですね。寄附をした場合に、寄附をした方が優遇措置を受ける。
 これはあくまでも国にどうしても頼らざるを得なくて頼っている部分ですよね、これは結局税金で賄うわけですから。借りたものは返すという自助努力の分野ですけれども。今度は、そこに民間の発想を入れて、本当に優秀で経済的に大変な家庭に対して、一般の民間とかから寄附を受けた、やはりそれを無償で差し上げる、返さなくてもいい、そういうものも選択肢の一つとして、本当に優秀な家庭のお子さんであれば、そういう選択肢というものも考えるべきではないかと思うんですよね。
 なぜかといいますと、今こういう家庭が本当に数が多いので、私はこのたびびっくりしたんです。実際の統計は九十七万件もあり、それで、実際にそこから七十六万件の家庭が本当に何らかの形で給付を受けているということを聞いて、本当にびくりした状態なんですよね。ですから、それだけ困っている家庭が実際にあるわけですから、そういうところには本当に温かく、そういう多種多様なことを考えて。あくまでも税金で給付するということになると、返していただかなきゃというのが、基本的にそこからもう頭は動かないと思うんですよね。
 民間の活力を入れて、寄附をした、寄附をした方には税制上優遇措置をする。その寄附したお金を無償で差し上げる。それは、大変優秀で本当に経済的に窮している、そういう家庭に対してするということも選択肢の一つだと思いますので、ぜひお考えいただきたいと思います。この考えにはいかがでしょうか。
河村副大臣 武山委員御指摘の点は、私もその気持ちというのは理解をするものでございます。ただ、いわゆる文科省の考える育英奨学というのは、まさに、いわゆる奨学の意味を含めて、その返還を通じてやはり学生の自立心とか自己責任、社会への還元という形で成り立っておるものでありますから、そうした教育的な効果の面もありますから、極めて優秀な人たちに給費制でそのまま差し上げたらどうかという意見があるのでありますが、これは育英奨学金全体のあり方にもかかわる問題でございますので、もちろん私はこれは検討してみる価値はあると思いますが、今の現状でいくと、慎重にならざるを得ない状況下にございます。
 ただ、民間の財団とかなんとか、そういうものにあって、寄附を集めて、そういう方々に特別奨学給付する、あるいは県単位が、それぞれの県が持っているとか、そういうものは、いわゆる上げきりのものが中にはあるわけでありまして、私は、そういうものも広く探しながらいくべきかなと。
 おっしゃるように、何らかの形でそういう方々には支援をしてあげたいという気持ちには変わりませんが、事この奨学金ということになりますと、これまでの、今まで考えてきた、積み上げてきた育英会の考え方を根本から変える形のものを入れるということになりますと、これはやはり慎重に考えなきゃいかぬのではないか、このように思います。
武山委員 そうしますと、もう一度お尋ねしますけれども、貸し付けた有利子、無利子に対しても、元本は実際に返ってきておるんですか。
河村副大臣 もちろん、どうしても都合でまだ返ってきてない方もありますが、ほとんどといいますか、九割以上のものはきちっと返ってきているというふうに思っております。私が得たところでは。
武山委員 それでは、実際は、有利子、無利子にしても元本はきちっと、ほとんど、九割が返ってきているということですね。ぜひまた資料を。それだけ返してきているということは、将来にわたって、成長してから何らかの形で経済的余裕ができて返しているという状態ですよね。そういうふうに解釈できますね。
 それから、民間の方でそういうことをするというのは、また民間も選択肢だと思うんですよね。税金でしますと、それは私も、税金の分野では、国民の税金ですのでぜひ返していただきたいというのはありますけれども、寄附をして、民間が、個人が寄附をして、また企業が寄附をして、その寄附したものを集めたものに対して無償で差し上げるという、本当に優秀な人に対してはそういうことも考えていいんじゃないかという、選択肢の一つでお話をいたしました。それはぜひ考えていただきたいと思います。
 それから、文部科学省で、実際に、母子家庭で経済的にもう困って困って困ったという苦情や、授業料の点で本当にもっと支援してくれという苦情や、あるいは相談事や、こういう特例があったとか、そういうお話はありましたでしょうか。
河村副大臣 実は、先ほど無利子奨学金のお話を申し上げましたが、母子家庭の学生生徒は、今、高校、大学、専修学校専門課程も含めて、春の採用の実績では、全体で八万二百十七人の採用者がある中で、そのうちの二一・五%の一万七千二百六十四人が母子家庭の子供たちになっております。
 そういうことで、状況が変化したので授業料の減免をお願いしたいというような申し出等々はあるようでございますが、この奨学金を、困っているので全部ゼロにしてくれという、現時点ではそれはなくて、当面在学中は返さなくていいんですから、大学生であれば就職されてからお返しをいただくということにしておりますので、今これが払えないからという話は、私の知る限りでは聞いていないんでありますけれども。
武山委員 そうしましたら、全体の、母子家庭の、七十六万人ということですけれども、この家庭の児童あるいは高校生、大学生の奨学金を借りている件数というのは、全体の何%が借りているんでしょうか。
河村副大臣 今ちょっと早口で申し上げたからあれだったかもしれませんが、無利子奨学金が、高校、大学、専修学校専門課程で全体で八万二百十七人おられるのでありますが、そのうちの二一・五%の一万七千二百六十四名が母子家庭となっております。ただ、まだその中に、生活保護あるいは寡婦という形での採用ははっきりしておりませんが、母子家庭であることは間違いありません。二一・五%であります。
武山委員 それは先ほど聞いたんですけれども、では、全体はどのくらいいるわけなんですか、奨学金に当たるお子さんを持っている件数は。全体がどのくらいあって八万件というのでしたらわかるんですけれども、ただの八万件だと全体がどのくらいあるのかわからないんですよね。ですから、たくさん借りているのか、五〇%ぐらい借りているのか、それもちょっとわからないんですね、全体像がわからないので。
河村副大臣 今は、母子家庭等については無利子の方を差し上げておるわけで、でありましたから今八万と言いましたが、全体では、貸与人員は今、高校でいいますと十二万六千四百五十一、それから大学で五十五万六千五百五十ございます。これで六十八万になっておりますが、さらに大学の通信教育、大学院、高専、専修学校、これを含めますと、今八十六万七千百七十四名ということになっております。
 少なくとも、私もかねてから、奨学金については必要な方には全部差し上げるということが原則じゃないかと言っておったのでありますが、今や大体大学の、有利子を含めれば、希望された方は奨学金がいただけるという状況下にございます。
武山委員 そうしますと、大体数字を見ますと、ほとんどの方が、高校生、大学生を持っておる母子家庭は、奨学金を有利子、無利子問わず利用しているという現実ですね。はい、ありがとうございました。
 それでは、国土交通省の方にお聞きしたいと思います。
 先ほども公営住宅のお話が出ておりました。この公営住宅というのは、市町村、各自治体で対応しておるということなんですけれども、対応した後、どのくらい公営住宅申し込みがあったか、また、優先的に公営住宅を使えますよというPRですね、それを毎年毎年フォローしていただきたいと思うんですよね。先ほどのお話だと、お話はしてありますというだけで、その後のフォローで、本当にこういうものを利用しているのかどうか。ぜひ利用していただきたいと、ただ言いっ放しで、その後のことが、自治体との連携ですね、厚生労働省それから国土交通省、それから県、市町村、その連携が足りないと思うんですよ、この公営住宅に対して。
 実際に、先ほどお聞きしておりましたら、数が少ないので大変驚きました。実態はいわゆる七十六万件あるんですけれども、公的な住宅を使っている件数というのは今どのくらいなんでしょうか。
松野政府参考人 お答えいたします。
 公営住宅は住宅に困窮する低額所得者のための賃貸住宅でございます。入居者の選考に際しまして、高齢者、障害者、多子世帯等、特に住宅困窮度の高い者を対象として、事業主体でございます地方公共団体の判断により、優先的な取り扱いができることとなっておりますが、母子家庭につきましても、住宅に困窮する状況がありますことから、従来から入居者の選考におきまして、このような優先的な取り扱いを行うことができることとなっております。母子世帯向け公営住宅としてこの優先的な取り扱いをしました戸数は、十二年度末時点で二万二千戸ほど管理しているところでございます。
武山委員 物すごく少ないですよね。七十六万件、母子家庭がある中で、二万二千件ということですけれども、これはやはり国土交通省の努力不足だと思うんですよね。これだけ国民が、こういう方々にやはり何らかの形で手を差し伸べたいというときに、国土交通省の努力不足だと思います。
 ぜひ、県と市町村と連携いたしまして、優先的にやはりそういうところに、先ほど当選率の、申し込みをして確率のお話を非常にいいと言っておりますけれども、この数字を見ていると、絶対いいとは言えないと思いますよ。たかだか七十六万件のうちの二万二千件ですから、一割にも満たないわけですから。ぜひ、先ほど言いましたように、市町村、県、また国との連携をとっていただきたいと思います。その点に対して、見解を聞きたいと思います。
松野政府参考人 委員御指摘の点は、十分私どもも今後考えてまいりたいと思います。公共団体との連携を密にしてまいりたいというふうに考えております。
武山委員 それで、ことしどういう状況でどれだけの数がいわゆる公営住宅に申し込みがあったか、それを、その前に、優先的にそういう方々にどう対応したかということを、来年きちっとその結果を見て、その次の年にもきちっと対応しないとだめなんですよね。ただ通達だけでは、実際は市町村、市町村で、それぞれの考えでやっておるものですから、実際にこれだけの七十六万件という母子家庭があるわけですから、この方々にきちっとそういう対応が、国の対応が隅々までいくように、ぜひフォローしていただきたいと思います。
 先ほどからお話を聞いていますと、何か、しますしますと言っているだけで、では過去は何してたのかなと思うんですよね。ですから、過去があって未来があるわけですから、また現在があり未来があるわけですから、この七十六万件というものに対して二万二千というのは、とても努力した数字だと思えませんので、ぜひきちっとフォローしていただきたいと思います。それで、フォローした結果はやはりぜひ国会に報告していただきたいと思います。
 それから、この制度のPRですね。実際に国民には、こういう制度がどういう仕組みになっているか、それから制度の中身、いろいろな選択肢、こういうものが、行かないと説明を受けられない、それから聞かないとわからない。行く方は、聞くことの内容すらわからない。これは、国としても自治体としても説明責任が不足していると思うんですよね。
 それで、先に、こういう方々に対しては、こういう制度でこういう仕組みになっております、こういうことを申し込めば即対応できますということを、やはり全部テーブルの上に出すべきだと思うんですよ。
 このたび私が実際に厚生労働省にいろいろヒアリングいたしましたけれども、やはり私自身がよくわかっていない部分があるものですから、大体出てくる資料というのはよくわからないんですよね、こちらも。それで、こちらが聞いたことしか答えないわけですよね。そうすると、私自身も全体像がよくわからないわけですよね。もうそれでいいという、今までの密閉的な行政のその体質でずっと今も来ているわけなんですね。ですから、その情報というのはきちっと出していただきたいと思います。それこそそれは国民のための情報なわけですから。ましてや、そういう対象の方には特に出していただきたいと思うんですよね。
 それで、実際は、やはり政党によって、これはもう本当に現実的な問題として、人数の多いところはいろいろな角度から多種多様な質問も出るわけですから、そこからもいろいろ資料が出てくると思いますけれども、でも実際は、細かいいろいろな支援策もそれぞれあるわけですよね。でも、細かい部分というのは聞かないと出てこないわけですから、これはやはり説明責任として、国は国民の税金を使って、そして効率のいい使い方をするということを目標に掲げ、実際にそう行動しているわけですから、それはテーブルに出していただいて、きちっと説明責任をぜひ果たしていただきたいと思います。ほとんどの人が、本当にこういうものが実際にあるのかと、国民の税金を使っていながらわからないんですよね。
 私、このたび、寡婦という言葉自体も、本当に難しい言葉なんだなとびっくりいたしました。こういう言葉自体も、国民全体に本当にわかりやすい言葉で、そしてみずみずしく、印象に残る言葉を使っていただきたいと思います。何十年も同じ言葉で、その時代の背景から生まれた言葉をそのまま使っている。実際はもう本当に社会の環境、経済状況、すべて激変しているわけですよね。本当にこの言葉自体が日常的ではありませんし、そういうことを考えて、法律改正をするときはやはりそういうことも考慮していただきたいと思います。
 ぜひ、言葉や何かに対して、大臣の見解を聞きたいと思います。
坂口国務大臣 いろいろの御説明の問題につきましては、確かに先生おっしゃるように、なかなか、質問をしていただいたことだけしか答えないということはあるのかもしれません。私も小さな政党に属しておりますからわからないではありません。これからは、質問されますこと、されませんこと、一つの法案につきましては、できるだけその中の資料をまとめて御報告をさせていただくようにしたいと思います。
 それから、言葉遣いの問題でございますが、確かに、寡婦といいますと、何とまあ古めかしい言葉かというふうに、私も率直に言ってそう思うわけでございますが、長くずっと続けられてきた言葉でございますので、それなりの意味はあるんだろうというふうに思っておりますけれども。しかし、今の母子家庭の現状をうまく表現した言葉なのかどうか、漢字も難しゅうございますけれども、意味するところもそういうことであったのかどうか、ぼつぼつ考えるときに来ているのではないか、率直に私もそう思う次第でございます。
武山委員 慣例だとか、本当に法律というのは日本の場合は慣例主義にのっとっておりますので、この辺で二十一世紀の土台づくりをするという意味で、やはり大きな、ダイナミックな、まさに変換のときでありますので、一つの選択肢としましては、時限立法のような、また続けていく、三年、五年でそれは一つの法律として消滅して、またそれを、土台を、いいものを残しながらまた次の三年、五年というふうに、時限立法的な発想もこれから必要なのではないかと思います。
 終わります。
坂井委員長 次に、小沢和秋君。
小沢(和)委員 この法案では、母子家庭等の自立の促進を図るため、とりわけ就労支援の強化が重視されております。そこで、まず質問したいのは、我が国の母子家庭の就労状態をどう認識しているのかということであります。
 一九九八年の調査では、就労している母親は八四・九%に達しております。これは、ドイツ、オランダなどの四〇%など、欧米各国に比べると非常に高い数字です。欧米ではよく福祉から就労へというようなことが言われておりますけれども、日本では特別の状況にある母親以外はほとんど働いて自立しようと頑張っている、ここが欧米と違う。高く評価されるべきだと思いますが、いかがでしょうか。
坂口国務大臣 確かに、前回の検査によりますと八四・九%という非常に高い値でありまして、日本の中の母子家庭の母親の皆さん方がいかに自立を目指して頑張っていただいているかということがよくわかる数字だというふうに、率直に私もそう思います。
小沢(和)委員 母子家庭の母親が働いているといっても、その内容には重大な問題があります。
 九八年の調査では、事業主四・九%、常用雇用四三・〇%、臨時、パート三二・六%となっており、臨時、パートの比重が極めて高いのであります。十五年前の一九八三年は、事業主一四・二%、常用五五・一%、臨時、パート七・六%だったから、事業主でマイナス九・三%、常用でマイナス一二・一%、臨時、パートでプラス二五・〇%で、そうすると、事業主と常用が大幅に減り、臨時、パートだけが激増しているわけであります。それだけ母親の就労条件が悪化し、平均収入は二百二十九万円、一般世帯に比べて三分の一にとどまっております。
 ところが、九八年以後さらに雇用情勢が悪化し、失業率は四・一%から五・〇%に上昇し、賃金は年収で実にこの三年間に十八万円も低下しております。母子家庭の母親たちの状態も、そういう中で一層悪化しております。さっきから母親たちの収入が低いということが繰り返して問題になっておりますが、その低い収入がさらにこうして落ち込んでいるのだから深刻だと思うんです。こういう最近の状態を調査しておりますか。
岩田政府参考人 母子家庭だけに着目をした母子世帯等実態調査という大規模な調査がございますが、これは五年に一回実施をいたしておりますので、直近の調査が平成十年、来年、次の調査を予定いたしております。
 今回、制度改正を検討するということもございましたので、昨年、特別に日本労働研究機構というところに委託をいたしまして、実態把握のための調査をいたしました。また、全国の母子寡婦団体や各種のグループの皆様方からいろいろ実情を聞かせていただいたりというようなことを通じて、実態把握に努めたところでございます。
小沢(和)委員 そうすると、私が今問題にしているように、この三、四年の間に全体としての経済情勢がさらに落ち込んできている中で、母親たちの収入もさらに落ち込んでいるはずだと思うんですが、最近の調査結果ではどうなっておりましょうか。
岩田政府参考人 直近の平成十三年の調査は、その前年あるいは数年前との比較ができるような調査ではございませんので、傾向を申し上げることが難しいんですけれども、十三年の調査結果によりますと、仕事を持っておられる母子家庭の母で、仕事からの収入が幾らであったかということについてでございますが、全体の平均では二百四十五万六千円、このうち、正社員、いわゆる正規職員の方は三百四十二万七千円、パート、アルバイトの方が百三十三万三千円というような状況になっております。
 また、母子家庭の団体、グループの方々から直接家計簿をお見せいただいたり、あるいはグループの中での調査結果をお知らせいただいたりいたしておりますが、その中では、収入が伸びない、あるいは減っている、そういうお話も聞かせていただいております。
小沢(和)委員 せっかく調査をするというんだったら、四年前に比べてどうかということを論じられるような同じベースで調査をしなければおかしいんじゃないですか。今どき、平均の収入が二百四十五万円になった、しかも、二百二十九万と比べたらこの三、四年の間に母子家庭の収入は大幅にふえた、そんなことあり得ないわけでしょう。何でこんな妙な調査をしたんですか。
岩田政府参考人 数字が連続しませんのは、もちろん調査時点が違うということと調査対象が違うということがあるわけですけれども、平成十年の調査の二百二十九万円という、これは母子世帯全体の中央値でございます。先ほど申し上げました二百四十五万六千円という数値については、現に就労しておられる、仕事をしておられる有業者に限って、その方が仕事から得られる収入の平均値でございます。
 今回、従来の設計とは違う設計で調査をいたしましたのは、従来の母子家庭の世帯調査は生活全般のオールラウンドな情報を得る、傾向を見るということで設計されておりましたが、今回は、自立支援策ということに重点を置いた制度改革を検討いたしましたので、特に就労の実態、就労の問題に相当ターゲットを絞って、十三年については調査をしたものでございます。調査項目がそういうことで連続をしておらないということでございます。
小沢(和)委員 これ以上は言いませんけれども、せっかく就労の状態を調査する、そうしたら、当然、それによってどういう収入が得られるかという調査をすることになるわけでしょう。そうしたら、前と比較できるような資料にならないと余り意味がないと思うんです。
 私がさっきから言っているように、全体として、この間にさらに収入が一般の勤労者でも落ち込んできている。そうすると、母親はもっと落ち込んでいるんじゃないか。そうすると、その比較がきちんとできないと、これからの政策がこれでいいのかどうかということにかかわってくるわけですよ。だから私はそのことを厳しく言っているわけです。
 それで、数字がそういう最新のものが得られないということなら、四年前のことでさらにお尋ねしますけれども、平均収入が二百二十九万円というんですが、これは児童扶養手当も含んでこういう金額になるというふうに聞いたんですが、そうでしょうか。そうすると、実際の母親たちが働いて得た収入というのはどれぐらいになるんでしょうか。
岩田政府参考人 今おっしゃいました二百二十九万円には、児童扶養手当等が含まれております。
小沢(和)委員 いや、だからもう一つ聞いているわけですよ。それを差し引いて、実際に母親たちが働いて得ている収入というのはどれぐらいあるのか。もう一遍お尋ねします。
岩田政府参考人 手元にあります調査で、平成十年の調査結果をちょっと今見ましたけれども、収入の内訳が見当たりませんので、また後刻御報告させていただきたいと思います。
小沢(和)委員 どうも肝心の数字がないようで、残念ですが。
 そうすると、手当分というのを引くと、今から四年前は、およそこの母親たちの収入というのは一カ月十五万とか六万とか、それぐらいだったんだろうと思うんです。そうすると、月に四万二千三百七十円の手当というのは、生活維持のために絶対必要だったということがよくわかる。母親たちが命綱と言うとおりだと思うんです。
 そこでお尋ねしたいのは、今回の法案は就労支援を強化するというんですが、それによってこんな悲惨な低賃金から本当に抜け出せるのかということであります。
 この法案の土台となった自立支援対策大綱の一連の就労支援策の冒頭に、これまで都道府県が実施してきた就労支援講習会を大幅に拡充するとありますが、これまでどのような職種についてどの程度の規模で講習を行ってきたか、また、何人が受講して何人が実際にそれを生かして就職したか、それを今回はどれだけ拡充するのか、お尋ねをします。
岩田政府参考人 講習会の項目はそれぞれの都道府県で選定をしていただいておりますが、最も多いコースはホームヘルパーの養成コースだというふうに聞いております。それ以外に、ソフト関係、パソコン関係ですね、コンピューター関係の科目も最近ふえているというふうに聞いております。
 講習会については、今回、一つは、やはりしっかりした収入に結びつくような講習科目にすべきではないかということで、講習科目のあり方自体もそれぞれの地域で見直しをしていただきたいというふうに思っております。また、受講できる人数も、従来の規模の二倍以上の人たちが受講できるように、十五年度の概算要求で要求をしているところでございます。
小沢(和)委員 二倍以上というんですけれども、だから、もともとの規模がわからないから、二倍といってもわかりませんね。ちょっと具体的にもう少し、数字で示してください。
岩田政府参考人 事前にちょっと具体的な御質問をいただけていなかったので手元に数字はないんですけれども、約一万人ぐらいの規模で今実施をいたしておりまして、それを二倍以上にふやすと。
 大変大ざっぱな記憶で申しわけございません。
小沢(和)委員 次に、母子家庭高等職業訓練促進費というのがあります。月額十万円程度を介護福祉士などを目指す受講者に一定期間支給するとなっています。介護福祉士というのは一つ例示に挙がっていたようなんですけれども、ほかにもどんな職種を対象に考えているのか、何名くらいに、どれくらいの期間支給するのか、お尋ねをします。
岩田政府参考人 資格は特に限定はございませんけれども、基本的には二年以上資格取得にかかるようなものということで、介護福祉士がその例に出ておりますけれども、保育士その他、二年、三年資格取得に年数がかかるもの、そしてその資格取得が具体的な就業に結びつく可能性が高いもの、そういうものを考えているところでございます。
 どの程度の人数かということについては、今予算要求の途中でございますので、具体的な数字をお示しするのは難しいというふうに思いますけれども、二年、三年かかる研修期間の三分の一くらいの期間の生活費を支援するということで考えているところでございます。
小沢(和)委員 私が担当者に伺ったところでは、例えば看護師などの場合には三年ぐらいかかりますよね。そうしたら、二年間は自分で頑張って行きなさい、そして大体めどがついた人だなと思ったら最後の一年間はこの訓練促進費でお金を出してあげましょう、こういうような制度になっているようなんですけれども、全く余裕がない母子世帯に、二年間自力で行きなさいと。もうそのこと自体が大変な難しい要求じゃないんでしょうか。そういう意味でも、もっと実情に見合うようなものに改善する必要があるんじゃないかと思います。
 それから、何名くらいというのがわからぬようなお話なんですけれども、予算の要求をするからには積算の基礎というのがあるはずじゃないんですか。こういうのは、大体何人ぐらいの規模でこうしたいといって出すのじゃないんですか。
岩田政府参考人 確かに、二年、三年、大変長期にわたる教育訓練を受ける場合は、その間の生活の手当てをどうするのか。仕事をしながら教育訓練を受けられるケースはいいですけれども、それが両立しないような教育訓練を受けなければ資格が取得できないという場合には、その生活費の手当ては大変困難を伴うものであるというのはおっしゃるとおりだと思います。
 一般的には、母子寡婦福祉貸付金の中にそういった教育訓練を受ける期間の生活費の貸付金がございまして、この貸し付けを受けていただいて、少し生活にゆとりが出てくれば返していただくというのがベースにございますので、それにプラスをして、特に今話題になっております高度な職業訓練を受講されるという場合には、そのことをさらに促進するという観点から、通常の貸付金に、プラス、受講期間の三分の一程度ですから、三年かかるところであれば最後の一年分くらいはお返しいただかなくてもいい給付金としてお支払いをしようということでございます。
 人数を申し上げなかったのは、まだそういう意味で概算要求中であるということでございますが、十五年度については、約二千人ということで財務省に今要求をしているところでございます。
小沢(和)委員 母親の状況に応じた就職あっせんのため、ハローワーク、母子寡婦団体、都道府県、市などが職業相談や情報提供を行うとありますが、これまでの焼き直しでなく、抜本的な工夫があるんでしょうか。
岩田政府参考人 就職のあっせんは、基本的にはハローワークにしっかりやっていただくということが重要だというふうに思いますが、特に母子家庭のお母さんについては、通常のハローワークのサービスだけでは必ずしも十分でないということで、今おっしゃいましたように、都道府県、市町村そして母子福祉団体、これらの間で連携をとりながら対策を強化したいというふうに思っております。
 特徴的なのは、今回の改正法の中にも盛り込んでございますが、都道府県が中心になりまして、就職の相談から職業能力開発、さらには具体的な求人情報の提供や就職のあっせん、こういったものを一貫して責任を持ってやれる、そういう体制を都道府県が母子福祉団体と緊密な連携を図りながらとるという新しい仕組みをつくりたいというふうに思っているところでございます。
 また、実際の児童扶養手当の支給事務が福祉事務所設置の市レベルにおりておりますけれども、市と最寄りのハローワークがうまく連携できるようにということで、昨年度からモデル事業を四カ所でやっておりまして、福祉事務所の職員とハローワークの職員が一緒に研修を受けたり情報交換したりということで、連携体制の、今モデルをつくっているところでございます。
 そういう経験を踏まえまして、今後、関係機関の連携を密にしながら、先ほど申し上げました都道府県レベルの一貫した新しい自立支援の仕組みを中核にいたしまして、自立の促進のお手伝いをしていきたいと思っております。
    〔委員長退席、宮腰委員長代理着席〕
小沢(和)委員 一方で、事業主に対する常用雇用転換奨励金が創設され、パートを常用に転換した場合は三十万円程度を支給するとあります。これについては、母子家庭共和国という当事者団体が既に中小企業家の意見を聞いておりますが、三十万円では魅力がない、長期の奨励金なら採用を考えるが、それよりも保育制度を充実して子供の都合で欠勤しなくてよいような支援をしたらどうかなどという意見が多かったというのですが、実際にどの程度の効果があると考えますか。
岩田政府参考人 この常用雇用転換奨励金、母子家庭については、今回、この改正法に基づきまして予算的な手当てがつけば、初めて実施されるものでございますが、きょう、別の御質問にお答えする中でも申し上げましたけれども、やはり母子家庭の収入が低いというのは、パートで働かれるケースが多いということからきているというふうに思います。パートで働かれる方の平均収入は約百三十万です。正社員になれば、女性の正社員の平均収入は三百五、六十万でございますので、ぜひ何とか正社員の就業機会を得ていただきたいということでございます。
 しかしながら、今は正社員、常用雇用の就業機会全体が狭まっておりますし、その中で、企業も、正社員として採用する場合の求める資質といいましょうか、要求水準が大変高いものになっております。そういうことで、最初から常用雇用ということで就職することが難しい場合であっても、まずパートタイマーとして就職してもらって、それで働きぶりを見てもらい、OJTを通じて能力をアップしてもらって、そしてその方を引き続き雇っていただく、しかしながら正社員に転換していただく、こういうことをぜひ促進をしたい。その促進材料となるよう、今回、常用雇用転換奨励金という形で十五年度の概算要求をしているところでございます。
小沢(和)委員 今、就労支援対策の幾つかの項目について伺ってみました。私も、従来より若干は前進するであろうという印象は持ちましたけれども、これで飛躍的に前進するというふうにはちょっと考えにくいんじゃないかと思うのです。
 そこで、大臣にお尋ねしたいと思うのですが、これらの就労支援策全体で、約百万人いる母子世帯の母親たちを何人ぐらい新たに就職させ、臨時、パートからどれぐらい常用化できるというふうに見込んでいるのか。それによって所得水準をどれぐらい高められるというふうにお考えなのか。ここで総括的に、大臣にお尋ねします。
坂口国務大臣 そこは、これからやらないとわかりません。
 これから、全体の就労を、先ほど局長からもありましたとおり、いわゆるパートの人たちを常用にどれだけ上げていけるか、そしてまた常用の皆さん方に対しても、常用できるような環境をどうつくってあげるか、それらのことをこれから一生懸命にやらなければならない。
 そして今、大体、女性で働いておみえになります方の平均値が、現在のところで三百六、七十万のところでございますから、そこまではできるだけ平均値が上がっていくように努力をしなければならない。そのためには、いかにして常用雇用の人たちをふやしていくかということを心がけなければならないということでございますから、そこに焦点を当てて、就労対策、雇用対策というものを進めていきたいと考えております。
小沢(和)委員 就労支援策の効果がこのように漠然としているのに、それと対照的に、この法案では、低所得の母子世帯の命綱である児童扶養手当の大幅削減は極めて明確に打ち出されております。
 第十三条の二で、支給開始から五年たつと「その一部を支給しない。」とし、そのカット額は二分の一を超えない額とすることになっております。しかも、カットできるでなく、例外なしの強行規定になっております。
 この条項は、だれもが五年たてば収入がふえ、この手当を必要としなくなるはずなのに、まだ手当をもらっているのは努力が足りないという、現実を全く無視したような考え方に立った、事実上の罰金ではないかと思いますが、いかがでしょうか。
岩田政府参考人 二つのことを申し上げたいと思うのですけれども、五年後の減額の規定がスタートするのは、改正法律が施行して五年後に初めて該当者が出るということでございますので、私どもも、五年間で、きょういろいろ議論していただいておりますさまざまな就労自立支援策、子育てとの両立支援策、別れた夫からの養育費の確保策、それらを総合的に、関係機関の力もかりて進めたいというふうに思っておりますので、ぜひその間に多くの方が自立をしていただけるように、最大限の努力をしたいというふうに思っております。
 その上で、無条件にこの五年ルールが適用になるということではございませんで、まず、お子さんが小さいうちはなかなか本格的に働くということが難しいケースもありますので、お子さんが三歳になるまでは五年間の年数を数えるのをスタートさせないということにいたしておりますし、どうしても自立できないような事情が、お母様の方にあるケース、あるいはお子さんの方にあるケース、いろいろあると思いますけれども、それはどういうふうにその事情を整理できるかということを検討いたしまして、一定の事情に該当する場合については五年経過後も引き続き従来の金額を支給する。
 そういうことで、きめ細かな配慮をしながら、なるべく自立していただくということで努力していきたいと思っております。
小沢(和)委員 先ほども、母親たちの収入が、不況の深刻化の中で、ここ数年下がり続けているということを指摘いたしました。彼女たちがどんなに頑張っても、一方的にパートの時給を下げられ、仕事がないから来なくてよいなどと言われている状況の中で、なぜ五年たったら半額に引き下げられなければならないのか。こういう状況について、彼女たちに何か責任があるのか。責任は、彼女たちの就労意欲を生かし切れない社会や政治の側にあるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
坂口国務大臣 そこは少し認識が違うと思いますね。
 それは、五年後にそういうふうにできるような体制をつくらなければいけないわけでありまして、この五年間、就労問題を中心にしながら、いかにして手を差し伸べることができるか、全体としての社会システムをどう構築していけるかということにかかってくるわけでありまして、それに見合ってと申しますか、それを眺めながら次の手をどうするかということがそのときに考えられることだというふうに思っております。初めから半分にするということを決めてかかっているわけでは、決してございません。
小沢(和)委員 しかし、五年後に、あなた方がさっきからいろいろやると言っておられる、そういう支援策が功を奏したら、みんな収入がうんとふえる、そうするというと、そもそも所得制限からいって外れてくる仕組みになっているわけですよ。だから、こんなものをつくらなくたって、そっちの方で、ちゃんとあなた方の思うとおりになっていくんじゃないですか、この施策がうまくいったら。その点いかがですか。
坂口国務大臣 それは先ほども局長が答弁をいたしましたとおり、中にはさまざまな条件の方がおみえでございますから、お子さんが小さい方もあるでしょう、御病気の方もあるでしょう、そういうことがなくてもなかなか就業につけないという立場の方もおみえでございましょう。そうした方もあるわけでございますから、そうしたことも十分に配慮をしていかないといけない。
 全部の人が高い能力をお持ちで、そして常用雇用になっていただけるようであれば、それはそれで、それにこしたことはないわけでございますが、努力目標としてはそうでございますけれども、しかし、そう全部が全部というわけには、これは現実問題としていかないんだろうというふうに思っております。そうしたことも考慮に入れながらこれから対策を立てていくということでございます。
小沢(和)委員 今の大臣の説明を伺っても、そういう施策がうまくいけば、母親たちの収入がふえて、所得制限の方から、この手当から外れていくという仕組みになっているんですよ。だから、この制度を改めてつくる必要というのは、今の話では私は証明されたというふうには考えられません。
 次の質問を申し上げたいんですが、かつて児童扶養手当の支給対象は義務教育終了まででありました。それが母親たちの運動で十八歳未満まで引き上げられ、さらに一九九五年には十八歳の年度末まで改善され、現在は子供が高校を卒業するまで保障されております。これにより、母子世帯の子供も高校まで安心して進学できるようになりました。
 それからまだ七年しかたっていないのに、五年たてば例外なく半額に削るとは、これは全く逆で、余りにも整合性がないと思います。これにより、児童扶養手当は、母子家庭の生活の安全と向上を継続的に支える制度から、離婚直後の生活を一時的に支える制度へと大きく後退してしまうのではないかと思いますが、いかがですか。
岩田政府参考人 私ども、今回制度改正を検討するに当たりまして、諸外国の例なども勉強させていただいたんですが、やはり多くの国は離死別の直後の激変の時期の緩和の措置として対応をとっておられます。例えば、アメリカは五年、フランスは一年、ドイツは六年、こういうかなり短期の期間に自立の努力をしていただいて、その後は二本足で立っていただくというのが諸外国の政策でもございます。
 我が国も、母子家庭がふえる中で、そして財政状況の厳しい中で、この制度を安定的に維持するためにはどういう姿がいいだろうかということを考えたときに、やはり離婚などの直後の大変困難な時期、生活が一変する時期、その時期に資源を集中的に投下をして自立支援をし、その結果、早く自立していただく、こういう方向で政策を今回立案させていただいております。
小沢(和)委員 私のところには、この条項だけは絶対認められない、ぜひ撤回させてほしいという要請が何通も届いております。
 その一通、福島市の菅野聖子さんの訴えの一部を紹介したいと思います。
  私は小学六年生の息子と二人暮らしです。
  児童扶養手当の削減と聞き、不安に思っています。
  昨年、子どもが高学年になり、また慢性の病気をもっていることもあり、出費がかさむことになりました。
  子どもの病気で仕事を休まなくてはならないことが多く在りました。会社に少しでも迷惑をかけない為に、熱のある子どもを一人で寝かせて、仕事に行き残業をし、家にもどったら、熱が四十度にもなっていて何度となく涙を流しながら頑張りました。
  会社は不景気になり、仕事が少ない日は突然、「午後は帰りなさい。明日は休みにします。」など収入が激減、当然ボーナスもありません。
  母子家庭になって七年目。今まで自立を図るための努力をしなかったことは一日もありません。他の人たちも同じだと思います。少しでも多く収入を得て、子どもに普通の暮らしをさせるために頑張ってきました。
  別にぜいたくを望んでいるわけではありません。子どもと二人、ほんのささやかな幸福を望んでいるだけなのです。
  私たち親子の命を守ってほしいと思うことは間違いなのでしょうか。
という手紙です。
 我が党も、このような条項を削除し、手当を今後も十八歳の年度末まで全額原則として支給を続けるということを強く要求しておきます。
 この問題は先ほどから議論が集中しております。その中で、政府は、五年後の状況の変化を見て二分の一以内の削減幅をどれぐらいにするか結論を出すという趣旨の答弁をされていると思いますが、これは経済情勢がさらに一段と悪化したような場合には実施を先送りするということもあり得ると理解してよいのでしょうか。
 また、削減することは強行規定になっておりますが、個々の実情に応じた配慮をする旨の答弁も今もありました。これは、強行規定でも運用は弾力的に行う、こういう趣旨だというふうに理解してよろしいんでしょうか。これは大臣に答えていただきたい。
坂口国務大臣 最後のところはそういうことだというふうに理解していただいて結構かと思います。
小沢(和)委員 二つ聞いたんです、二つ。
坂口国務大臣 初めは何でしたかしら。初めの方は何でしたか。
小沢(和)委員 情勢のさらに一段と悪化したような場合には。五年たったらこれをもう実施する、二分の一以内というのはどこら辺で実施するということを決めるけれども、だからそういう言い方なら、実際に非常に困難になってきたらこれは延期するということも起こり得るかと聞いているんです。
    〔宮腰委員長代理退席、委員長着席〕
坂口国務大臣 今そこまで決めるわけにはまいりません。今五年というふうに決めておるわけですから、これから先の状況はいろいろ変化するわけでありますから、それはそれで今後見ていかなければならないというふうに思いますけれども、しかし、現在のところは五年というふうに決めておるわけですから、現在それを変えるということを今言うわけにはまいりません。
小沢(和)委員 それを今言うわけにはいかないと言われたけれども、しかし、そのときの経済情勢など、あるいは母親の収入の改善の状況といったようなことによってはそういうことも含めてやはり検討することが起こるだろう、こういうふうに私には聞こえるんですけれども、そう理解していいでしょうか。
坂口国務大臣 先ほど申し上げたとおりでございますので、そのように御理解ください。
小沢(和)委員 それから、母親たちが不安がっているもう一つの条項というのは、次の第十四条四号なんですね。求職活動その他厚生労働省令で定める自立を図る活動をしなかったとき、その手当の全部または一部を支給しないことができるとあります。
 この規定が悪用されると、どんどん手当をカットされるということになりかねないんじゃないか、こういうような不安の声も私のところにも何通も届いているんです。省令でどのようなケースを定めるのか、この機会に明確にお答えいただきたい。
岩田政府参考人 省令の具体的な内容は今後検討することになりますが、自立を図る活動とは、例えば就職活動あるいは職業訓練の受講、そういったことを今念頭に置いておりますので、さらに具体的な内容については今後検討を進めてまいりたいというふうに思っております。
 いずれにしましても、この規定の趣旨は、本人に能力があり、就職活動の機会や能力開発の機会があるにもかかわらず、そういうものを活用した自立の努力を一切しないという非常にまれなことではあるというふうに思いますが、そういった事例も全然ないとは言い切れませんので、こういう規定を置いているところでございます。
小沢(和)委員 ほぼ時間が来たようですので、これで終わります。
坂井委員長 次に、中川智子君。
中川(智)委員 社会民主党・市民連合の中川智子です。
 引き続きまして坂口大臣に質問できるこの幸せをかみしめながら、頑張りたいと思います。また、鴨下副大臣におかれましても、その優しい御性格で、いい御答弁を期待しております。
 今回のこの法改正ですが、私も、本当に、結婚したときはだれも別れようと思って結婚するわけではありません。やはり一生添い遂げたい、そのような努力もし、懸命に結婚生活を続けてきた人たちがほとんどだと思います。非常に離婚がふえているからということで、その予算にも限度がある、このような財政の大変な折に、やはりこのような形で、法改悪と私は思いますが、される。離婚がふえているならば、それだけ予算をちゃんととって、本当に人間としてきっちりとした暮らしが営めるように、そのセーフティーネットを保障していくのが政治の役割だと思っております。
 私も、東京の事務所の方にも一人シングルマザー、地元の事務所にも一人シングルマザーがおります。特に地元の事務所の大変素敵なスタッフなんですけれども、去年の暮れに離婚しました。本当に彼女の表情が晴れ晴れとして、これでやっと生き生きと生きていけるというような表情をしておりました。でも、それまでに何年も何年も苦しい、本当に別れることへの不安。そして、子供のことを考えて我慢をしてくるんだけれども、最終的には子供のために別れるという方がとても多いというのが現実です。
 毎日毎日、冷たいお父さんとお母さんの関係を見る。ひっきりなしにする夫婦げんか。特に、もう夫婦げんかもせずにメモで、家庭内離婚のような状態の中で、その中で子供たちが生きていく。それは、子供自身の本当に明るい日々の暮らしを奪うことにもなる。それだったら、苦しくてもやはり別れようという選択をする方もとても多いです。
 また、三日前です。私の友人で、ぱたっと連絡が来なくなって、ずっとこの二年間ほど心配しておりました。そうしたらば、DVで、ドメスティック・バイオレンスで、夫の暴力に対して十年余りずっと我慢してきた、でもこのごろはその暴力が子供に向かってしまう、そういう状況の中で逃げるように家を出て、そしてあちこちに助けを求めて、やっとパートで就職ができた。本当に長い戦いの中でやっと離婚が成立したので電話しましたということで、元気な声で電話をかけてきました。
 昨今の離婚というのは、私は今回の法改正を見ますと、離婚がふえている、わがままに、嫌だったら安易に別れるんじゃないか、本当にその後手当なんて余りないんだよ、だからできれば安易に別れることはやめなさいとか、その後の生活がこんなに苦しいということを、何か見せしめのように、今度の裏側というのがかいま見えてしまいます。
 それほどみんな悩み苦しみ、そして戦って、そして、みずからのためと同時に、子供のためにやむなく離婚を選択してしまった人たちにとって、この年収二百二十九万平均、それで必死で生きている。でも、働き先はパートしかない。また、リストラのときには、やはりそのような弱い部分にリストラが、その矛先が向かってしまう。パートの率もこの不況下でふえているというのが現実です。
 そこで私は、まず大臣に第一の質問ですが、不幸な結婚を続けることが幸せかどうか、大臣はどのようにお考えでしょう。
坂口国務大臣 私は、余り答える資格がないように思いますけれども、今のお話を聞いておりますと、結婚しているのが幸せなのか、離婚をした人の方が幸せなのか、よくわからなくなってきたなというふうに思いながら先生の話を聞かせていただいたわけでございますが、それがいいとか悪いとかというのはその人の個人の話でございまして、別れた方がよかったと先ほど先生がおっしゃったように言う女性もあるんでしょうし、できることならば別れずにおりたかったという方もお見えでございましょうし、そこはそれぞれの事情によって異なるというのが答えでございましょうか。
中川(智)委員 大臣の心の声は届かなかったのですが、今のお返事では。
 やはり、別れることがいいか悪いかとかということじゃなくて、本当にみんな苦しんで、やはり子供のためということを考える方が多いんですね。安易な離婚ではない。今のこの社会情勢の中で離婚を選択せざるを得ないという人がこれだけふえている。ですから、やはりそれに対して、甘えるなとか、本当に自立するために八五%の人は就労しているわけですから、そのような見解というのが私はかいま見えるということで質問させていただきました。
 次に、今お手元に資料を配りました。これは家計簿をピックアップいたしまして、三枚ございますが、本当にどれだけ児童扶養手当が命綱かという明らかな生活実態だと思います。
 一枚目、児童扶養手当三万三千円が入って、そして奨学金も入って、十九万九千円。そして、使っている支出は、どうしても、どれだけ切り詰めても二十三万七千円になってしまう。赤字はボーナスで、年三回で約七十万円、一時金で補てんしているという実態です。
 二枚目のペーパーにいたしましても、やはり学校に通わせているときにどれだけお金がかかるか。一番やはり教育資金が今高い。先ほど局長の方から海外の方の例もおっしゃいましたけれども、海外はもっと教育費にも配慮をし、そして就労状況が違いますし、パート労働がこれほど安い賃金に抑えられるということはありません。そして、女性であるからといっての差別もなくしていってのことです。その背景の社会状況が違うのに、安易に海外ではこうだからという、そのような御説明は一切説得力を持ちません。この二枚目のペーパーは、本当に教育費が大変だということが如実にあらわれていると思います。この方は、ことしの七月までは四万二千三百七十円あった児童扶養手当が、七千二百円削減されたということです。
 三枚目のペーパーは、経理員として一生懸命働いていらっしゃる、ここもやはり児童扶養手当、そして児童育成手当が命綱だということが端的にあらわれています。この方の場合は、毎月、この八月から八千円減額がされました。
 これがほとんどの母子家庭の実態です。そのことをどのようにお考えかというふうに思います。この現実に対して私は、この収入で、憲法二十五条、健康で文化的な最低限度の生活が営めるということをクリアしているとお思いかどうかを大臣に伺いたいと思います。
坂口国務大臣 母子家庭の皆さん方の内容もいろいろだろうというふうに思います。特に、常用雇用で働いていられるお母さんの場合には比較的恵まれているんだろうというふうに思いますけれども、やはりパートで働いておみえになるときに、非常につらい思いをしておみえになるのではないかというふうに思います。
 ほかから何らかの収入があっておやりになっている場合も、それは中にはあるんだろうというふうに思いますけれども、中にはそうでない方もおみえになる。さまざまな方がおみえになるのではないかというふうに思っておりまして、その厳しい中でおやりになっている皆さん方に対しては、何らかの形でその人たちにお報いをできるようにしていきたいというふうに思いますし、能力のあってしかしパートで働いておみえになる皆さん方に対しましては、その能力に応じて常用雇用ができるような体制へどう持っていくか、そこを努力しなければこの問題は解決しないというふうに思っております。
中川(智)委員 それでは、今の大臣の御答弁の中で、パート賃金を、法改正してやはり最低賃金を上げていくということは同時にお考えでしょうか。
岩田政府参考人 日本の労働市場で、パートタイム労働者が大変ふえているということ、そしてパートタイム労働者が担っている仕事が基幹化して、やっている仕事のレベルにおいては正社員との差が縮小している場合も出てきているということ、その反面、賃金格差は縮小しないという問題がございます。
 これについては、専門家によって、時間を随分かけていただきまして、パートタイム労働者と通常の労働者の均衡処遇のあり方について、七月に研究会の報告を出していただきました。これをベースに、ことし九月からですが、労働政策審議会の雇用均等分科会という場で、これからのパートタイマーの処遇の改善のあり方、特に正社員との均衡処遇のルールをどういう形でつくっていくかということについて審議を始めていただいております。
中川(智)委員 私は、まずそこの部分の法整備をきっちりして、そして就労支援も、今回のこの問題をやった後で具体的な削減策というのがあることが筋だと思います。全く本末転倒で、まず最初に削減ありきと。
 今の、岩田局長、もう一度御答弁いただきたいんですが、では、具体的な法改正、パート賃金に関して、いつごろになる見通しでしょう。
岩田政府参考人 パートタイム労働の均衡問題について社会的なルールをつくりたいというふうに厚生労働省としては思っておりますが、それをどういう形でいつ法的な改正にするのかというようなことについては、まさに今、公労使、三者構成の審議会で議論が始まったばかりでございますので、今の時点でどういうスケジュールでというようなことは申し上げられないのでお許しいただきたいと思います。
 それから、先ほど減額を先行するというふうにおっしゃいましたけれども、それが実際効果を持つのは五年先でございますので、自立支援策の方はもう今日からスタートしている、十四年度予算でも盛り込めるものは盛り込んでスタートしているところでございますので、この五年間にしっかり自立支援策を先行して、多くの方が少しでも自立していただけるように万全を尽くしたいというふうに思っております。
中川(智)委員 それでは局長、もう一度伺いたいんですが、この八月から政令で児童扶養手当が削減されました。それもかなり大幅な額でございますよね。それに対してはどのように説明されますか。
岩田政府参考人 母子家庭対策全体のあり方を、現金給付だけに頼る対策ではなくて、さまざまなその自立支援も総合的に講ずることによって自立支援を進めていこう、そういう全体的な対策のあり方を、ことしの三月、大綱という形で厚生労働省としてまとめてございます。その大綱に基づいて、十四年度と十五年度、二年間かかるわけですけれども、予算措置でできるものは十四年度から、そして十五年度から新たにやるものもたくさんございますが、政令改正でできるものは既にこの八月にやらせていただき、法律改正が必要なものは今御審議していただいている。そういう全体の対策を二年度にまたがって今実施を御検討していただいている最中であるというふうに御理解いただければと思います。
 八月の政令改正による減額は二つ目的がございまして、一つは、母子家庭がふえていきまして、受給者がふえてまいりますので、なかなか厳しい財政状況の中で、この制度自体を将来に向けて安定させる、維持するということの検討の中で出てきたということが一つございます。
 それからもう一つは、なるべく早く自分の就労による収入で自立をしていただけますよう、従来は、就労による収入がふえても手当との合計金額がある時点で逆転するというのか、収入がふえても手当との総収入で見ると逆に減少するという逆転現象が起こる仕組みになっておりましたので、そういうことがないように、収入がふえるにしたがって手当がきめ細かく逓減をして、そして収入トータルでは増加が続くように、そういう趣旨からも仕組みを見直したものでございます。
中川(智)委員 それでも、減額の一方。朝から晩まで一生懸命働いたって賃金が低い、常用雇用じゃない。そして、さまざまな社会保障もない中で、国民年金なんかを払いながら、ことしの八月、本当に何か火事場泥棒的にぱっと削減されていく。そういうことは就労支援の今回のこの五年をやってからやるべきだ。兵糧攻めにして、もっと働け働け、もっと苦しい生活を強いる、そのような中身になっている。
 そういうことによってどれほどの悲鳴がさまざまな手段によって皆さんから届けられたかということで、一つお手紙を紹介したいと思います。
  わたしは、三人の子持ちで、すでに三人とも成人いたしました。
  三人が無事成人できたのも、児童扶養手当があったからで、とてもありがたく思っています。
  こどもが、十八歳の高校卒業までずっと児童扶養手当を受給していました。十五年間ほど受給しておりましたが、それでも、こども達が大きくなるほどに出費は大きく、母親への負担も大きくなる一方でした。育ち盛りのこども達の食欲を満たすだけでも大変なものでした。
 そして、この子たちは部活動、スポーツが好きで、一生懸命やっていたけれども、合宿の費用は捻出できなかった。どれだけ頑張っても合宿の費用が捻出できなかった。だけれども、高校だけは卒業できた。児童扶養手当がどれだけありがたかったか、命綱だったかというお手紙ですが、
  児童扶養手当を受給できたので、一番大変だった高校時代を乗り切ることができました。受給していましたが、わたしは必死に働いていました。
でも、
 給料は低い。これは努力でどうにかなるものではない、というのが実感です。給料が低いのは母親の責任ではないと思います。社会構造が変わらない限り、児童扶養手当は、ほんとうに必要なのです。
 今までの児童扶養手当でさえ本当に私は足りないと思いますが、具体的に、児童扶養手当、十八歳まであって、これだけの金額があったからやはり助かったという声がたくさん寄せられています。先ほどの御説明の中で、非常に、それを調整するための御答弁がありましたが、まず削減ありきでスタートしたということに対しては強い怒りを覚えております。
 続きまして、母子自立支援員について伺いたいんですが、けさほども御質問がございましたけれども、現在の雇用人数が千二百二人、常勤が三百人くらいということで、具体的な数に関してはお返事がなかったのですが、全部の市町村三千三百、それぐらいはきっちり確保するのかどうかというところと、先ほどは、当事者としてNPO団体なども入れていくということがございましたが、答弁としては少し弱い、一団体ということをおっしゃいましたので、一団体で、何団体かそれに名乗りを上げたときはどうなるのかという不安がございます。NPO法人、名乗りを上げた場合はきっちり入れていくという理解でいいのかどうか。二つ御答弁いただきます。
岩田政府参考人 現行の母子相談員を母子自立支援員という形で拡充したいというふうに思っております。そして、従来は、母子対策というのは主として都道府県レベルでやられておりましたけれども、今般、都道府県も引き続き重要な役割を担いますけれども、福祉事務所が設置されている市、町にその大きな主体としての仕事をおろしていくという構想でございます。したがいまして、今、母子自立支援員の人件費は地方交付税で措置しておりますので、総務省の方にお願いしているところでございますが、すべての福祉事務所がある市に設置していただくように要望しているところでございます。
 それから二番目にお尋ねの母子関係の団体についてでございますが、法律に規定しております公益法人である母子福祉団体でなければできないこととされているのは唯一貸付金の業務だけでございまして、それ以外のさまざまな自立支援のための仕事、あるいは母子相談員といいましょうか、名前が変わった後は母子自立支援員ですけれども、その自立支援員に母子寡婦のお母さん御自身が応募されるということも含めてですが、一切、特定の団体でなければならないということはございませんので、ぜひ多くの母子家庭の方、母子家庭のお母さんたちに母子家庭の自立支援の事業に参画していただきたいというふうに思っております。
中川(智)委員 関連しまして、それは有償で雇用されると思いますが、毎月の賃金はどれほどを見込んでいらっしゃるのか、現在のをそのままなされるのかどうかということが一点と、研修。やはり相談員というのはメンタルな部分もケアしないといけないと思いますし、ジェンダーの視点というのは欠かせません。そして、DVに対してのさまざまなきっちりした認識というのは必要だと思いますが、研修がどれほど充実して、そのような中身で研修されるのかどうかを聞かせてください。
岩田政府参考人 母子相談員の人件費、地方交付税の算定基礎になっているものについてでございますが、非常勤の場合については月十一万円ということで地方交付税の算定基礎にされております。今回はこの算定基礎の額自体の変更はお願いしておりませんで、むしろ、人数をふやして、すべての福祉事務所にこの自立支援員を置いていただけるように、そちらに重点を置いた折衝を総務省とやっているところでございます。
 それからもう一つは、母子自立支援員の質の向上といいましょうか、そのために研修が大変大事であるということだと思います。厚生労働省としても、全国の母子相談員を対象とした研修会をやっておりますし、また、都道府県、市などにも研修に取り組んでいただくよう研修の充実を図ってまいりたいと思います。そのときに、今先生おっしゃいましたように、母子家庭のお母さんたちの中にはDVの被害者もおられますし、女性であることからして自立のさまざまな難しさを抱えておりますので、そういったジェンダーの問題ですとかDVの問題、こういうこともしっかり理解した上で自立支援をしていただくように、そういう内容も含めた研修の充実に努めたいと思います。
中川(智)委員 今回は、民間に雇用の創出をただお願いするばかりではなく、公的な部分での雇用の創出というのをやはり努力していくべきだと思います。今の相談員に関しましても、非常勤で月々十一万円ということになりますと、自立するにはほど遠い金額でございますので、やはり生活していけるだけの賃金をきっちりとお払いして、そしてそこでの自立を図るということもあわせてやっていくべきだということを意見として申し上げておきますし、前向きに検討していただきたいと思います。
 続きまして、やはり一番これが気になる法改正十三条の二の部分で、五年後のことなんですけれども、先ほど坂口大臣のお話の中で、一律ばっさり切るということはないだろうという御答弁がございました。私は、今回びっくりしたのは、母子世帯の調査というのが五年に一度、そしてその公表は約二年先なんですね、二年先。それも、きめ細かな報告ではなくて概要のようなものだ、私の目から見たらそれぐらいのものになっていると思います。
 五年に一回というのは余りに少ない。そして、二年後にその取りまとめが発表されるというのも極めて遅い。ですから、これをもっと短いスパンでやって、そして公表を早くやっていただいてきめ細かな実態調査をみんなに知らせてほしいと思いますが、いかがでしょう。
岩田政府参考人 御指摘はごもっともだというふうに思います。調査の内容、そして調査の頻度、調査の実施から公表までの期間、どれだけ改善できるか検討してまいりたいと思います。
中川(智)委員 よろしくお願いいたします。
 大臣に、先ほどの五年先のことなんですが、これもまた政令にゆだねることになっています。多くの方が一生懸命頑張る、さまざまな今回の支援策で頑張るとは思っていても、どうしようもない状況というのもまた生まれるでしょう。そのときに、政令にゆだねるのではなく、やはりもっとみんなにきっちり見える形。私は国会審議をするべきだと思うのですが、いかがお考えでしょう。
坂口国務大臣 政令にはなっておりますが、国会では当然よく議論をしていただけるものというふうに思っております。皆さんのお声も十分に拝聴しながら、そしてそのときの母子家庭の状況等も十分に勘案して決定をするということにしなければならないというふうに思っております。
中川(智)委員 私も五年先はここにいるかどうかわかりませんので、できればしっかりと、やはりその実態調査、就労支援策の実効を、どれぐらい効果があったのか、それがどう生活にきっちりはね返っているのか、そこを評価して、ただ政令にゆだねるのではなく、政治の責任としてしっかりと御議論いただきたいということを強く要望しておきます。
 続きまして、十四条の求職活動の部分ですが、これも大変に懸念がございます。「受給資格者(母に限る。)が、正当な理由がなくて、求職活動その他厚生労働省令で定める自立を図るための活動をしなかつたとき。」とございます。
 私はDVの方のお話とかいろいろ伺いました。そして、やはり離婚というのは結婚するよりエネルギーが要るんです。私はしたことないんですが、そうらしいんです。本当に、結婚するよりも離婚のとき、小泉総理に聞いていただければ実によくわかると思いますし、私は小泉総理に直接、離婚のときがどれだけ大変だったかというのを伺いました。ここでつまびらかにすることはできませんが、やはり物すごく心に傷を負う、そして精も根も尽き果てる、暮らしが大変。そんなときに、うつ病になったりする方がいらっしゃいます。心の病というのは、外から見てわかりません。
 そして、この十四条の求職活動の部分を余りに事細かに、人権やプライバシーにずかずかと土足で踏み込むようなことは決してしてはならないと思います。ことしのいわゆるごちゃごちゃがあったときに、先ほどの、お米や野菜を実家からもらっているかというようなところもございましたけれども、この部分に関しては、相手に対する配慮、そしてなぜ働けないのかという心の傷などを勘案した形でぜひとも対応していただきたいと思いますが、これは鴨下副大臣に。
鴨下副大臣 御指名いただきまして、ありがとうございます。
 母子家庭のお母さん方は、大半は就労しているわけでありまして、この規定に該当するようなケースは非常に少ないだろうというのが今の考え方であります。
 この規定は、先生がおっしゃるように、外から見えないいろいろな悩みをお抱えになっていて実際には働けていないというようなケースは、これは十分に精査しないといけないわけでありますけれども、今、想定されるものとしては、本人が能力があって求職活動等が可能であるにもかかわらず努力を一切しない場合など、自立を支援しようにも全く意欲がないような極めてまれなケースを想定しているというようなことでございますので、御理解をいただきたいと思います。
中川(智)委員 やはり、今回は、この条項、そのように例外的なものだったら私は削除すべきだと思っておりますし、多くの方々の思いは、一生懸命頑張っているのに本当にむち打つような文言だということで、私は削除を要求したいと思いますが、具体的にこれに対して対処するときに、今の副大臣のそのお取り計らい、配慮をぜひともお願いしたいと思います。
 就業支援、就労支援のところで、やはり高度の技術を身につけるときに、学校に通ったりということでの支援策がございます。三十万円の上限で、そして一部負担。これに関しましても、修了証明書を見せたらそのお金が返ってくるということでございまして、私は、やはりそのお金がつくれない、結構最近いろいろな学校もお金が高くなっております。これは本当に冷たいのではないかと思うんですね。先に負担をして、そして修了証明書は後で持ってきたときにそれによってきっちりカバーするということでいいんじゃないかと思います。
 母子家庭は申請したら先にこれを免除するということにはならないでしょうか、局長。
岩田政府参考人 限られた財源でございますので、本当に母子家庭の自立の支援のために役に立つというケースについて使っていただきたいというふうに思っております。
 単にどこかの訓練を、どこかの学校に行って教育を受けるからというので給付を受けるという運用にはしたくないというふうに思っておりまして、職業相談から始まって、実際に求職活動に至る一連のことについて御相談にあずかりながら、その中で特定の教育訓練を受けていただくというのが、しっかりした就職機会に結びつくと思われるケースについて助成金を使ってやっていただこうと考えております。
 そして、前払いできないかということについても、やはり本当に修了して実績を出してからということはいたし方ないというふうに思いますけれども、あわせて、福祉貸付金の中で訓練受講中の生活の資金はお貸しをいたしておりますので、そういうものも活用していただきながら何とか乗り切っていただきたいと思っております。
中川(智)委員 でも、やはりそのお金が、一時的に出すお金がないから勉強することをあきらめるということは実際出てくるんじゃないでしょうか。局長いかがでしょうか、もう一度。
岩田政府参考人 先ほど申し上げましたように、貸付金制度もございます。貸付金制度は月に、現行では十万、たしか十万四千円程度だったというふうに思いますが、技能習得のためにはその金額を上げて十四万強にしたいということで概算要求もさせていただいております。
 ですから、後でお返しいただくということで大変ではございますけれども、貸付金制度で何とか教育訓練の期間は乗り切っていただくというのが原則でございまして、それにプラス、特定のケースで、この教育訓練を受ければ本当にいい就業機会に結びつくといったようなケースについて、事後ではございますけれども、教育訓練にかかった費用を、その一部を助成するということにいたしております。
中川(智)委員 やはり、そこかしこに何か冷たいものを感じるのですが。わかりました。
 わかりませんが、わかりましたということで、では次に、もう時間がございませんので、もう一度これを確認したいんですが、この七月に現況調査をされたときに、このような文章があった自治体となかった自治体があるようですが、本当にこういうことをなぜ書く必要があるのかという文書が配られました。
 「児童扶養手当の受給者の皆様へ」ということで、「八月から児童扶養手当制度が変わります。」というペーパーがございまして、この最後のところに「ご注意」ということがありまして、このような文章が書かれております。「万が一、偽りの申告など不正な手段で手当を受給した場合については児童扶養手当法に基づき、」ということで、「三年以下の懲役、又は三十万円以下の罰則に処せられることがあります」ということが書かれています。
 私は、本当に何千人、何万人のうちに、先ほど中津川議員がおっしゃいましたような、悪意でこの制度を利用してということはあるでしょうけれども、それはあくまでも例外だと思うんですよ。本当にすべてを疑っていて、このようなおどし文句を書かれることがどれほど、ただでさえ母子家庭の皆さんはさまざまなレッテルを張られて、そして子供を抱えて懸命に生きていこうとするときに、こういうふうに、虚偽の申請をしたら三年以下の懲役とか三十万円の罰金とか、おどし文句をわざわざこれに入れなければいけないという必要性を認めることはできません。
 ほかの手当の受給やそういう書類のときに、このような御注意というのは当たり前のこととしてあるのかどうか、それを伺いたいと思います。
岩田政府参考人 この児童扶養手当は、母子家庭の状態にあるかどうかということですとか、収入が幾らか、そして別れた夫から養育費を幾らもらっているかということについて、原則すべて申告主義でございます。そして、国民の税金である財源を使った手当の支給でございますので、例外的なケースではありますけれども、残念ながら不正な受給は後を絶ちませんので、そういうようなことから、正直に申告をしていただくようにということで注意を促したものであるというふうに思います。
 そして、ほかの書類についてすべて今チェックをしているわけではございませんけれども、何らかの形でこういう形の注意喚起を促しているというのはよくあるというふうに理解しております。
中川(智)委員 今のは、じゃ、その書類を見せてください。ほかのものはどのような表現をしているのか。不正受給などと、病院の不正請求とかあんなのと比べれば、本当にどれだけのお金かと思いますよ。まず疑ってかかる。そして、本当につらい思いをしている人にむち打つように、こんなおどし文句を書く。これは、じゃ、ほかの文書からも外すべきだと思いますよ。ちゃんと見せてください。調べます。
 これで終わります。
坂井委員長 次回は、明七日木曜日午前九時二十分理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後五時一分散会


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