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第4号 平成14年11月7日(木曜日)

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平成十四年十一月七日(木曜日)
    午前九時三十一分開議
 出席委員
   委員長 坂井 隆憲君
   理事 熊代 昭彦君 理事 長勢 甚遠君
   理事 野田 聖子君 理事 宮腰 光寛君
   理事 釘宮  磐君 理事 山井 和則君
   理事 福島  豊君 理事 武山百合子君
      岡下 信子君    奥谷  通君
      後藤田正純君    佐藤  勉君
      田村 憲久君    竹下  亘君
      棚橋 泰文君    西川 京子君
      平井 卓也君    松島みどり君
      三ッ林隆志君    宮澤 洋一君
      森  英介君    谷津 義男君
      山本 幸三君    吉田 幸弘君
      吉野 正芳君    渡辺 具能君
      家西  悟君    石毛えい子君
      大島  敦君    鍵田 節哉君
      金田 誠一君    土肥 隆一君
      三井 辨雄君    水島 広子君
      江田 康幸君    桝屋 敬悟君
      佐藤 公治君    小沢 和秋君
      山口 富男君    阿部 知子君
      中川 智子君    野田  毅君
      川田 悦子君
    …………………………………
   厚生労働大臣政務官    渡辺 具能君
   参考人
   (財団法人全国母子寡婦福
   祉団体協議会会長)   黒武者キミ子君
   参考人
   (明治学院大学社会学部教
   授)
   (ボランティア国際年推進
   協議会代表)       山崎美貴子君
   参考人
   (弁護士)        榊原富士子君
   参考人
   (全国生活と健康を守る会
   連合会事務局次長)    前田美津恵君
   参考人
   (NPO法人しんぐるまざ
   あず・ふぉーらむ理事)  赤石千衣子君
   厚生労働委員会専門員   宮武 太郎君
    ―――――――――――――
委員の異動
十一月七日
 辞任         補欠選任
  加藤 公一君     石毛えい子君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 母子及び寡婦福祉法等の一部を改正する法律案(内閣提出、第百五十四回国会閣法第六六号)


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     ――――◇―――――
坂井委員長 これより会議を開きます。
 第百五十四回国会、内閣提出、母子及び寡婦福祉法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
 本日は、本案審査のため、参考人として、財団法人全国母子寡婦福祉団体協議会会長黒武者キミ子君、明治学院大学社会学部教授・ボランティア国際年推進協議会代表山崎美貴子君、弁護士榊原富士子君、全国生活と健康を守る会連合会事務局次長前田美津恵君、NPO法人しんぐるまざあず・ふぉーらむ理事赤石千衣子君、以上五名の方々に御出席をいただいております。
 この際、参考人の皆様方に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただき、審査の参考にいたしたいと存じます。
 次に、議事の順序について申し上げます。
 最初に、参考人の皆様方から御意見をそれぞれ十分以内でお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。
 なお、発言する際は委員長の許可を受けることとなっております。
 それでは、まず黒武者参考人にお願いいたします。
黒武者参考人 全国母子寡婦福祉団体協議会会長の黒武者でございます。きょうは、法案に賛成する立場から意見を申し上げます。
 私どもの会は、昭和二十五年の十一月に、戦後の混乱と窮乏の中で精神的にも経済的にも極めて困難な状態に置かれていた母子家庭の福祉の向上と生活の安定を目的として、全国未亡人団体協議会として結成いたしました。そして、一昨年、皇后陛下をお迎えして創立五十周年記念大会を開催いたしました。
 この間、時代は大きく変化してまいりました。死別母子世帯が中心であった私どもの会は、今や、離婚や未婚の母の増加によって多くの生別世帯が入会しております。
 また、この間、母子福祉対策も大きく進展して、昭和二十七年には議員立法で母子福祉資金の貸付等に関する法律が制定されたことを初めとして、昭和三十六年の児童扶養手当法の制定、また、昭和三十九年には、ついに結成当初から私どもの念願であった母子福祉法が制定されて、母子福祉施策がこの法律に一本化されることになりました。その後、昭和五十六年に母子福祉法に寡婦が追加されまして母子及び寡婦福祉法となるなど、多くの改善が図られてきました。
 こうした一つ一つを地道に積み上げて今日の母子寡婦福祉施策が築かれてきたわけでございますが、これもひとえに議員の先生方のお力があったればこそと心から感謝申し上げております。
 私どもの会は、現在、各都道府県、政令都市に、五十六団体で三十四万人の会員がおります。各団体がそれぞれ財団法人、社団法人、また社会福祉法人としての認可をいただいており、近年では、NPO法人として立ち上げている地域も出てまいりました。
 各団体は、母子福祉センターを拠点として、行政が母子福祉対策として実施している介護人派遣事業とか、各種の相談事業、また技能習得講習会など多くの委託事業を受託し、また、母子生活支援施設、保育所、児童館、老人福祉施設などの福祉施設の運営も受託して、また、清掃業務の受託、その他、公共施設内での売店の設置など、いろいろな活動をいたしております。
 また、金沢市におきましては、NPO法人としての認可を受けて、訪問介護事業の事業主として事業を展開し、福岡県の大牟田市の母子会では、小中学校の草取りなど清掃事業を受託することから事業を展開したり、母子家庭の方を直接雇用して積極的な事業展開をしているところでございます。
 今、各団体の共通の悩みとして、一つは、若年層の加入をいかに進めるかでございます。母子家庭の多くは、生活を支えるため働きながら子育てをするなど大変な毎日を過ごしており、なかなか加入が進んでおりません。そこで、全国的に若年層の母子家庭による組織を立ち上げて、若い母子家庭の活動力と時間的にやや余裕のある寡婦が協力し合って会の活性化を図ることに取り組んでおるところでございます。
 それからいま一つは、個々の母子家庭の就業のことでございます。都道府県、政令都市、中核都市ごとに受託事業として技能習得講習会を実施しているところでございますが、ホームヘルパーの二級の資格の講習、IT講習などは大変人気が高いのでございますけれども、母子家庭の母の雇用に必ずしも直接結びつかない状況にございます。このため、札幌市の母子寡婦福祉連合会や、大阪府、栃木県、大阪市の母子会などでは、無料職業紹介所の認可を得て直接求職相談に応じ、就職のあっせんを行うなどの活動を開始しているところでございます。
 二十一世紀を迎え、価値観の多様化が進む中、我が国を取り巻く社会情勢は大きく変わりつつございます。少子高齢化や女性の社会進出、離婚の増加など家庭や子供を取り巻く環境や、長引く景気低迷等が母子家庭、寡婦に与える影響は大変厳しいものがございます。
 ことしの三月には、厚生労働省から母子家庭等自立支援対策大綱が示されて、保護から自立への施策が展開されようとしております。
 また、私どもが長年要望してまいりました子育て支援策、就労支援策、養育費の確保、母子寡婦福祉貸付金の拡充などが盛り込まれた母子及び寡婦福祉法等の一部を改正する法律案がこの臨時国会で審議されております。ぜひこの法案を一刻も早く成立させていただきますよう要望いたします。このことにつきましては、先月、十月の二十日に熊本県におきまして全国母子寡婦研修大会を開催して、全国千八百名の参集のもとに特別決議もしたところでございます。
 このような状態の中で、全国母子寡婦福祉団体協議会も大きな節目を迎え、母子寡婦の生活の基盤の充実強化を図るために団体の果たすべき役割を認識し、時代に即応した組織活動の展開を積極的に進めなければならないと感じております。
 母子寡婦福祉の向上及び自立の支援に向けて、今後とも先生方のお力添えを何とぞよろしくお願い申し上げます。
 ありがとうございました。(拍手)
坂井委員長 どうもありがとうございました。
 次に、山崎参考人にお願いいたします。
山崎参考人 山崎美貴子と申します。長いこと、一人親家庭のことを実践と研究の立場から支援をするということをしてまいりました。
 この一年余り、母子家庭施策が大きく見直されておりますが、母子家庭の動向と地域における取り組みにつきまして、少しお話をさせていただきたいと思います。
 母子家庭をめぐる状況についてでございますが、五年ごとに実施しております全国母子世帯等実態調査がございます。平成十年に行いました調査によりますと、母子世帯は九十五万五千世帯でございましたが、前回の平成五年の調査と比較いたしますと、十六万五千世帯、約二割の増加でございます。多分、来年が調査の年度にかかってくると思います。
 五年ごとに実施しておりますこの全国母子世帯等実態調査の様子を見てまいりますと、母子家庭が増加する大きな原因は、先ほどの黒武者参考人からのお話にもありましたように、離婚の増加でございます。母子世帯になった理由を見ますと、離婚が七割を占めて、離婚件数は、明治、大正、昭和、平成とずっと統計を見てまいりましても過去最高を更新し続けております。平成十三年度の離婚の件数は二十九万件、離婚率は人口千対で二・三、一分五十秒の割合に一件という状態に入ってまいりました。未成年の子供さんのいる離婚は、全体の六割で、五九・四%ございます。お母さんが子供の親権者になる場合が、父子家庭よりも母子家庭の方が圧倒的に多く、八割以上、これは平成十一年度の調査ですが、八三・八%でございます。こうした結果、離婚が発生いたしますと、その半数以上が母子家庭になるということになります。
 母子家庭は、お母さんが家計の主たる担い手であると同時に子供の養育を一人で行わなければならない、一馬力で家事、育児そして仕事と、お一人で頑張らなければなりません。仕事と家庭生活を両立するのに伴います困難は大変ございます。後で多分赤石参考人も話されると思います。母子家庭の平均収入が低いことなどから生活基盤が非常に脆弱な状態にあります。
 特に、母子家庭のお母さんは八割以上の方が働いておられますが、いわゆる常用雇用、常用の雇用形態は五割程度、五〇・七%と、常用で働く割合が非常に減ってきております。パートとか臨時のお勤めが多くなっております。私がずっと調査をしております全国母子世帯実態調査でも、前の調査、二年ごとにやっておりますが、七割ぐらいが常用だったのがもう五割を切る状態にまで入ってまいりました。そういう中で、離婚の直後に、生活のためにとりあえず身近で就業しやすいパートや臨時の職場で働かれる、それから、子供さんのそばで働きたいということがいろいろな要因からも影響していると思います。
 母子家庭が自立してまいりますためには、五%を超える失業率が続く厳しい経済雇用情勢の中で、母子家庭のお母さんについての就労対策の一層の安定した充実、これがどうしても求められます。
 母子家庭の経済的な基盤というものは、別れたお父さんから支払われる養育費も重要です。この就労の支援、それから養育費の支援。
 ところが、離婚の際の養育費の支払い状況を見ますと、取り決めているという調査結果は三五%、実際に養育費をもらっている割合は二一%です。前回の調査では一四%でした。欧米諸国では離婚が裁判で決められ、その中で子供の養育あるいは養育費の支払いも決められています。我が国では、離婚が、当事者の協議離婚の割合が高いということもございますが、この取り決めが不十分です。子供に対する養育義務は、離婚しても変わりません。お父さんの責任と役割をやはりきちんとすることが必要だと思います。
 諸外国の状況を見ますと、児童扶養手当に相当する手当は、イギリス、アメリカ型、それからドイツやスウェーデン型のような養育費の立てかえ払いもございますし、養育費が支払えない場合には自治体が最低限度の額をある意味では手当として支給して、親から取り立てる、つまりお父さんの責任というものを明確にするということをして、その親からの取り立て権というものを取得する仕組みができ上がっています。
 我が国の児童扶養手当は、国民皆年金になるときに母子福祉年金の見合いでできたところがございまして、どちらにも属しません。我が国における養育費に対する認識を深めて、子供の幸せのために取り決めをすることがどうしても必要で当たり前な社会になっていく、その社会的な機運というものをつくっていくことが私はとても重要なことと考えます。お父さんの責任、女性だけが、お母さんだけが頑張るというのではなくて、離婚した後も、お父さんはお父さんです、子供にとってお父さんはお父さんです。そこのところをやはりきちんとする制度をつくっていくことが必要と思います。
 母子家庭については、これまでも母子及び寡婦福祉法と児童扶養手当法に基づきまして、相談や生活指導、就労の支援、養育、家庭生活の支援、あるいは施設、住宅関連の支援費、児童扶養手当の支給、母子福祉資金の貸し付け、そのほかのいろいろなことをやってまいりましたが、現在七十六万世帯の方が児童扶養手当を支給されておられます。私は、この制度がお母さんたちにとって本当に必要な制度と思います。ぜひこの制度が存続することを願っております。
 母子家庭については、これまでもいろいろなことがございましたが、やはり戦後、貸付金を中心として実施され、近年においては、離婚や未婚のお母さんの増加によって児童扶養手当を中心として行ってまいりました経済的支援策、これは戦後五十年の歴史を持っておりますが、母子家庭の自立を促進するためには、私は生活全般にわたって自立を支援していく総合的な政策が必要と見ております。
 今度の改正に、私がこの部分を非常に高く評価しております。ぜひこの制度が、こうした生活全般につきましてすぐれた制度になってまいりますように、生活全体の応援ができますように、そして母子家庭の自立促進のためには、生活全般にわたる総合的な展開がぜひ必要と考えております。
 そういう意味では、この母子寡婦福祉対策を見直して、新しい時代の要請に的確に対応した母子家庭等の福祉対策として展開することが必要と存じます。窓口と母子家庭対策の窓口を一緒にして、利用者にとっても便利であり、そして施策の効率化が図れるように対応していくことが求められると思います。
 今回の母子家庭対策の見直しは、これまでの児童扶養手当に大きくウエートがかかっている対策を見直して、子育てや生活面の支援、それから自立、特に就労の支援というもの、それから養育費の確保、児童扶養手当、貸付金というような経済的な支援を総合的に実施しながら、母子家庭の自立を生活全般に向けて、特に父親の養育費の問題などを含めてこれをしっかりしたものにしていただくことを心からお願い申し上げたいと思います。お母さんたちは本当に大変な状態で頑張っておられます。
 母子家庭対策を、離婚後などの生活の激変を一定期間で緩和し自立を促進するという趣旨で、きめの細かい配慮をしてまいりますと思いますが、支給期間と手当の額の関係の問題、特に受給期間が五年を超える場合の手当の一部支給停止をするということが盛り込まれております。母子家庭にとっては、本当に厳しい側面を有しております。ここを慎重にしながら、就労支援、子育て支援、生活支援、あるいは養育費の確保をしっかりと講じていただくために、トータルな母子家庭の自立に役立つことになってほしいと心から念じております。
 八月から、児童扶養手当の支給事務が、都道府県から福祉事務所を設置する市等に移譲されました。これを機会に、母子世帯の自立支援対策が、支給主体である自治体で総合的に展開されること、それから、家庭の事情に応じたきめ細かいものになってまいりますことを心から念じております。
 これまでの児童扶養手当の支給と就労、子育て支援の対策が、必ずしも総合的であったとは言えないのではないかと思います。この事務移譲を機会に、特に市部については、市が母子家庭対策を総合的に進めていくことを心から期待いたします。
 今回の法改正では、身近な地方公共団体で母子家庭の自立支援のための施策を実施することになっておりますが、施策が実を結ぶためには、母子家庭自体の努力もございますが、関係団体あるいは民間団体、さまざまな当事者組織が連携をしながら施策の展開をしていくことが必要と思います。
 そうした意味で、国が母子家庭対策の基本方針を定め、特に地方公共団体が基本的に、その側面に即して、関係者の意思を十分に酌んで自立促進計画を策定しながら、一人親家庭に対して、家事、特に保育サービスにつきましては、これは法定化していただきながら、自立支援事業を計画的に推進することが重要だと考えております。
 どうぞ先生方の御支援を心からお願い申し上げます。ありがとうございました。(拍手)
坂井委員長 どうもありがとうございました。
 次に、榊原参考人にお願いいたします。
榊原参考人 弁護士の榊原と申します。都内で開業しておりまして、日ごろ、八割方、離婚事件を扱っております。また、区役所等の女性センターなどで相談を受けていますが、おおむね自治体の相談の八割方はやはり離婚事件です。
 そんな中から気づいたことと、今回の法案を読ませていただいて気づいた点で、大変時間が短いのでちょっと絞って、法律家から見て気づいた点に絞ってお話をしたいと思います。
 まず、養育費の支払い確保をすると法律案要綱に書いてありまして、これはだれも反対はない、本当にそうしてほしいと思うのですが、各論の方をあけてみますと、大変失礼ですが、心もとない。法律相談を実施する等書いてあるのですが、これでは確保は進まないと思います。
 何で養育費が取り立てられないのかというのをちょっと具体的にお話をしたいのですけれども、取り決めがあったとして、当事者は元夫から、例えば月三万の養育料が払い込まれなくなったとする。そうしますと、少し時間がたっていますと、まず、元夫、しかも仲の悪い夫、特に暴力などがあった夫に電話をすることも不可能です。精神的に不可能です。そして、交渉ができるというような方であったとしても、それは大変つらいものです。また、時間がたっていますと、もとの夫がどこで働いているのかがわからなくなります。
 取り立て手段として民事執行法の強制執行というのがあるわけですけれども、強制執行手続というのは、非常にある意味ではまだ複雑で、弁護士が関与しないとできません。普通の方にはできません。弁護士の立場からいいますと、最も簡単な給料の差し押さえであったとしても、率直なことを申し上げると、一件について五万から十万円いただかないと採算がとれません。
 そうすると、月三万の養育費、統計で見ますと、一世帯平均五万三千円ほど養育費をもらっていて、世帯の人数が三・一六人ですから、一人当たり子供の養育費が二万五千円弱ということになるかと思うのですが、例えば、五万円の養育費を一年ためて六十万円、一年間後にようやく強制執行して採算がとれるという状態になります。
 そして、これをもし弁護士を立てずにするというふうにしようとしますと、手続を教えてさしあげるわけですが、これをのみ込めて自分でできるという方はほんの一部です。たとえ大学を出た方であっても、その手続の説明を受ける段階で拒絶反応が起きますし、一回の説明では理解ができません。
 そして、すべての地裁に執行部というところがあるわけですけれども、ここは裁判所の中でも最も忙しい、書記官の方が大変多忙をきわめている場所でして、私たち弁護士が電話をしたり物を聞くのもためらうというほど親切な場所ではありません。普通の方がとても太刀打ちできる場所ではありません。これをDV法のように、DV法は改正していただいたおかげで、弁護士をつけなくても自分で行って簡単にとれるようになりました。ほとんど無料に近い値段でできます。それでできるようにしていただけるならば、支払い確保と言えるのではないかと思います。
 しかし、給料をもらっている人はまだいいんですが、自由業の人については極めて困難です。もとの夫が自由業であるとして、その収入を差し押さえようとすると、一体今どこのだれと取引をしているのか取引相手を調べて、その債権を差し押さえないといけません。動産執行という家財道具の執行は意味がほとんどありませんし、不動産の執行というのは、またこれは競売は大変です。予納金だけで何十万というお金、五十万以上のお金を積まなければなりません。
 ですから、普通の人にできるのは給料の差し押さえだけなんですが、それが簡単にできるようになっていないということです。
 そしてもう一つ、今回の、今回のといいますか前回の改正で、児童扶養手当を算出する段階で収入の中に養育費を算入するという改正が行われ、この夏にその手続が始まったわけです。
 その中で、非常に混乱が起きました。元夫が払う名目が養育費、教育費という名目で送られているもの、これが養育費である、これは間違いないと思うのですが、仕送り、生活費、自宅のローン、家賃、光熱費、こういったものも養育費に入れるというようになさったと思うんです。しかし、これは家庭裁判所の裁判官も聞けばびっくりすると思います。
 これらは、どう考えても財産分与、離婚後扶養としての財産分与の一環です。離婚後に払うものとしては、養育費、慰謝料、財産分与というふうに三種類があるわけですが、九九%は判決離婚じゃないわけですから、取り決めをするときに、その名目を慰謝料というふうにはっきり書くことはありません。そのように書くと、払う側は払いたくなくなるので、多くは解決金としたり生活の支援としたり、そういうふうにして男性を説得して払っていただくわけです。
 養育費は養育費とはっきり書きます。そこに養育費でないものまで算入されるというようなことになりますと、もらえるはずの児童扶養手当がもらえないという結果になるのではないかと思います。
 その他多々ありますが、養育費を算入するということが、当事者の立場から見ますと、養育費をもらわないならば児童扶養手当がもらえるという制度に見えるわけです。それならば、難しい取り決めをしたり、交渉の難しい相手と取り決めをしたり、あるいは難しい取り立てをしないでゼロにして、そして確実な手当をもらおうというように気持ちは流れると思います。つまり、養育費の取り立ての支援策ではなくて、取り立てをやめる方向に向かわせる現実が起きるのではないかというふうに思います。
 それから、全体なのですが、お母さん方は、一部のお母さんはサボっているかもしれない、それから、たくさんの手当を元夫からもらって安泰した生活を送っていて、その上手当をもらっているかもしれない。しかし、それはごく一部でありまして、多くは年収二百二十九万円という世界なのです。
 その方々は何を望んでいるかというと、本来、手当をもらうことではなくて、働きたい、働いて誇りのある生活をして、自分の収入で生活をして自信を持ちたい、それで一生懸命仕事を探しています。しかし、仕事がないのです。ですから、まず就労支援を充実させていただきたいという点を強くお願いしたいと思います。
 以上です。(拍手)
坂井委員長 どうもありがとうございました。
 次に、前田参考人にお願いいたします。
前田参考人 全国生活と健康を守る会事務局次長をしております前田美津恵といいます。
 全国生活と健康を守る会連合会は、略称、全生連といいます。低所得世帯を中心とする会で、家族ぐるみで入会します。三十二都道府県連、そして十六の直接加盟組織で構成されています。全国で七万世帯の組織です。各市町村ごとに生活と健康を守る会があります。会員は、高齢者や公営住宅に住んでいる方、会社員、自営業、農業、生活保護を受けていらっしゃる方、母子家庭の方も大勢いらっしゃいます。組織によっては、一割以上というところもあります。
 私たちの会は、いろいろな社会保障や福祉、各種費用の負担軽減などさまざまな制度を活用し、かつ、制度の改善をして、必要な人ならだれでも受けられるようにと、国や自治体に向けて運動しています。失業や倒産などによって、または低収入によって非常に落ち込みがちになる中、こうした制度を活用して暮らしを成り立たせ、そして会員同士が家族ぐるみで交流し合う、この中で生きる喜びを見出しています。
 今月の二十日でちょうど創立四十八周年を迎えます。きょうは、母子家庭のお母さんの声を届けたいと思います。よく聞いていただけたらと思います。
 本題に入ります。
 この法案の中の児童扶養手当の一部改正、これが私たちにとって大きな問題で、改悪です。母子家庭の母と子供をどこまで苦しめたら気が済むのかと言いたい思いです。何としても、この法案は取りやめてください。
 問題点の第一は、今も言いましたように、たび重なる制度の改悪で手当の打ち切り、支給停止ということですが、私たちとしては打ち切りです。また、減額をされる。母子家庭は何か悪いことでもしたのでしょうかと訴えたい気持ちでいっぱいです。
 四年前の一九九八年、所得基準が大幅に引き下げられ、六万四千人の方の手当が切られました。この中には、専門職として研修を受けるためにその年は年収が減る、もうそこが確実にわかっていながら、所得基準が百万円も切り下げられたためにその一部支給すら受けられなかった方がいます。児童扶養手当が切られたために、就学援助や自治体が実施している医療費の助成制度などが使えなくなったりして、年間四十六万円も損害を受けたという会員さんもいます。
 ことしの八月からは、政令の改正で、手当を受けている人の、七十万世帯のうち三十三万人、厚生労働省の説明ですけれども、三十三万人が減額になりました。さらにこれを削減しようというのが今回の法案ではないでしょうか。
 第二は、母子家庭の収入が低い中で、児童扶養手当がまさに命綱になっていることです。
 宮城県石巻市の青沼さん、三十三歳の方は、こう訴えています。小学三年生の娘と二人の母子家庭です。厳しい世の中で子供と生きていくため、朝早くから夜遅くまで必死に仕事をしています。しかし、この不況の中で仕事もなく、その上、会社の休みが多いため毎月もらう給料も少なく、そんな状況の中で私たち親子は毎日生きています。子供が風邪を引いても、病院にも連れていってあげることができません。そんな私たち親子にとって、四カ月に一度入る児童扶養手当は命綱とも言える大切なものです。十二月の証書が来るまで、毎日不安でなりません。こう訴えています。
 第三は、なぜ五年を経過したら減額をするのかということです。
 子供は、小学校に入学してから、より一層お金がかかります。一般の世帯でも、専業主婦でいた方がパートに出られるんではないでしょうか。
 以前、手当の支給は義務教育終了まででした。それを十八歳まで、そしてさらに十八歳に達した年度末まで延長させてきました。私たちは、せめて高校卒業までは支給を、子供が社会に巣立つときにこそ役立つ制度にしてくださいと要求してきました。そして、国も、必要だからということで年度末まで延長したのではありませんか。現行維持を強く要望いたします。
 第四は、養育費の問題です。
 養育費は、三割の人が取り決めをしています。けれども、実際に入ってくるのは二割の方ということです。それも、平均で二、三万円です。
 八月からの政令改正で、お母さんへ渡される養育費については所得に算入されました。そして、今度の改正で、子供へ渡されている分についても収入算定するというものです。自立の促進の努力に、就労とあわせてこの養育費の請求も含まれているのでしょうか。法案を読みますと、やはり養育費のことが出され、自立が就労と養育費の二本立てになっているように見えます。
 私たちが各地から寄せられる実態は、心身ともに傷つき、別れることに力尽きて養育費を請求するところまではいかない事例が多いということです。サラ金からの被害、暴力や虐待、シンナーや覚せい剤など、逃げるようにしてシェルターに駆け込む、命からがら逃げてくる人もいます。この人たちに養育費の請求をせよというのでしょうか。
 既に、この八月の現況届の提出の際に、市役所の人から窓口で、子供の父からの援助はないのかとカウンター越しに周りに大勢人がいる中で聞かれました、とても嫌だった、つらかったと言っています。
 また、母子家庭の人が生活保護の申請に行ったときです。これは八月のことですけれども、養育費の算入ということになってからなんですけれども、これまでにはなかった例として、別れた夫より養育費をもらっていないのか、本当のことを言わないと調査しますよとおどしまがいの問い詰めがされています。
 七月に厚生労働省が出した養育費の調査、このことを思い出します。プライバシーを侵害してまで、家計の収支、親や親戚からの金銭的援助、それだけでなく野菜の差し入れまで調査し、前夫からの養育費の有無を調べようとする、こんなひどいことは許せません。
 また、養育費は不安定で、前夫の方も失業したりという状況があります。現時点で、養育費の収入への算入は中止、撤回をしてほしいものです。
 第五は、正当な理由がなくて求職活動その他自立を図るための活動をしなかったとき、手当を停止または減らすということです。
 この中で、求職活動その他自立、「その他」とあります。不況の中で、思うように仕事が見つからないときもあります。その「その他」に養育費があるのではないかという心配もあります。この養育費の請求ができないとき、自立の活動をしなかったということになるのでしょうか。そしてまた、このことはだれが判断するのでしょうか。
 第六、最後の点ですが、政府は、この間、少子化対策に力を入れてまいりました。この少子化対策と逆行するものではないでしょうか。母子家庭の子供も大切な子供です。最善の努力をする、これが政府の責任ではないでしょうか。
 子どもの権利条約との関係で、政府自身が国連に提出しています報告書、この中に次の一文があります。母子家庭の生活の安定と自立の促進に寄与するため、福祉の推進を図ることを目的として児童扶養手当を支給しています。はっきり書いているではありませんか。この改悪で手当の比重がだんだん減っていったならば、削減されたならば、この報告内容は正確なものではなくなってしまいます。
 いろいろ申し上げました。法案の中には、確かに就労支援があります。これは本当に大切なことです。大いにやっていただきたいと思います。また、一般論として、養育費を出していただくようにする、これも本当に大切なことだと思います。だからといって、児童扶養手当を削減していくということにはつながらないのではないかと思います。就労がうまくいき、収入がふえたならば、所得基準があるわけですから、そこで手当の支給はなくなるはずです。
 ぜひ、徹底審議の上で、廃案にされますようお願いいたします。(拍手)
坂井委員長 どうもありがとうございました。
 次に、赤石参考人にお願いいたします。
赤石参考人 NPO法人しんぐるまざあず・ふぉーらむの理事をしております赤石千衣子です。
 しんぐるまざあず・ふぉーらむは、ことし十月にNPO法人として認可されたほやほやの団体でございまして、会員数約八百人、全国の団体です。インターネットによるさまざまな情報の交換とかニュースレターの発行、さらに、夏にはお泊まり合宿をしたり、冬にはクリスマス会をしたり、そういった、子供たちのためのいろいろなプログラム、そして親のためのサポートグループ、子供支援、そしてまた委託事業として就労調査などを行っておりまして、東京、大阪、福岡に拠点を持っております。シングルマザー、母子家庭にとって非常に大切な活動をしていると思っております。
 私は、子供が生まれてから保母として働いておりまして、それから団体の職員をしておりましたが、十三年間児童扶養手当を受給し、息子を育ててまいりました。その息子は、おかげさまで二十一歳となり、昨年、早々と結婚して孫が生まれておりますので、児童扶養手当というのは大変大きな支えとなってきたということを御報告したいと思います。
 きょうは資料をお配りしましたので、母子家庭の実情を知っていただきたいと思って、見ていただきたいと思います。
 最初の家計簿ですが、これは、子供が一歳になってまだ小さい、就労したての方ですが、勤労収入が、学童クラブの非常勤でたったの九万円の収入。そして家賃七万円。手当がなければどうやって食費を出すというのでしょうか。
 次の方は、パートで十四万九千円。その後の、後半の三枚は、子供が大きくなってきて、教育費とか塾の費用とか、あるいは食費がかかる、そういった方たちの家計簿を集めております。
 四枚目を見ていただきたいと思います。この子は中学三年生の男の子なんですが、何としても公立の高校に入らせたいということで、塾の費用、参考書、文具代などで八万円の費用を投資しているわけです。月収十六万円の中でそれだけの費用をかけているということです。
 最後に、九八年の国民生活基礎調査の中で、母子世帯、生活が大変苦しいと答えている方の比率を挙げておきました。母子世帯で生活が苦しいと答えている方が四六%、さらに、やや苦しいと答えた方は三九%で、合わせて八五%の方が生活が苦しいと答えています。これは高齢世帯の約二倍の数字ということになっておりまして、今、子供支援が果たして本当に十分なのかということをうかがわせております。
 こうした中で、今回の改正案が母子家庭の生活の苦しさを果たして和らげるものなのかどうかということを考えますと、私は、総合的に見ると、どうも解消しないのではないかというふうに思っております。
 シングルマザー、母子家庭の就労調査を行っておりますけれども、八九%の母子家庭の母親が働いています。しかし、パートや派遣、それから雇いどめのある契約社員といったことが多いわけです。日本の母子家庭の母親は、先進国の中で一番よく働いている母子家庭です。
 就労の中で、いろいろな経歴を聞いておりますけれども、非常にスキルアップに努力している方が多いということがわかりました。例えば、東京都のAさんですが、五十一歳で、会社が倒産し、その後パソコンの学校に通ってスキルアップをしたことで、派遣会社の給与計算の仕事についているという方がいらっしゃいます。
 この方は、四十歳で夫の会社が倒産、サラ金に追われて離婚した後、六回の転職をしていますが、最初はもちろんパートで給与計算の手伝いをしていた。しかし、その経験を生かして、次に履歴書には給与計算など経理ができると書く、そしてその次には、OJTでパソコンのエクセルを覚える。その次にはパソコンができると履歴書に書くというようなことで、保険会社関係のビル管理会社が倒産した後、ビジネスコンピューティングの会社に就職し、そして今の五十一歳で転職を果たしているんです。非常に努力しても、しかし給料がふえるまでには至っていません。やっと仕事を見つけるために就労支援が幾らか役立ったというのが現状だと思います。
 この方は、高校生と専門学校生がいるので、教育費が月八万かかっているわけです。今の就労支援対策を拝見しまして、予算額とあわせて考えますと、今の職を維持するためのスキルアップには役立つかもしれない。しかし、厚労省がおっしゃっているような給料がアップするところまではいかないのではないかというふうに思うわけです。
 長期の職業訓練、生活費の支給、そういったものがあって、例えば介護福祉士が取れる、あるいは社会保険労務士の資格が取れるというところまでいけば、確かに年収がアップするでしょう。しかし、そこまではとてもいくものではないと思います。
 パートが正社員に転換するという補助金がついておりますが、経営者に聞きますと、三十万円で転換するというのはやはり無理だと。母子家庭は子供が病気だと休むからねというふうに言われてしまいます。
 また、母子家庭の母親は、職業生活をしながら子供と生活しているわけです。この両立に非常に悩んでいる。私も、保母試験を受けるときに、昼間は保育園に預け、夜は友達に預けて保母の試験の勉強をしましたら、三歳の息子はすぐに信号を出しまして、ぜんそくの発作を起こしてくれました。そうしますと、本当に困ってしまうわけでございます。子供の生活やそういった表情を見ながら働いている母子家庭は、ただがむしゃらに働くというわけにはいかないのです。
 また、法案を見させていただきますと、自立という言葉が非常に強調されています。手当をもらうということが、母子家庭が自立していないことなのでしょうか。私は、そうは思いません。手当をもらい、あるいはいろいろな社会資源を活用しながら自分の生活をコントロールしていくことは、自立していることだというふうに思えないでしょうか。手当受給者は自立していないという言葉が、母子家庭への偏見と差別を助長しているのではないか、生活意欲をなくさせているのではないか、こういったことがかえってマイナスに働くのではないかというふうに思っております。
 また、ことし八月から児童扶養手当は百三十万円の年収から削減されました。八千円とか七千円とか手当が削減されたことは、家計簿を見てもおわかりになるかと思います。さらに、五年後に児童扶養手当をもう一度削減するという条文がございます。五年後に本当にこれでどうしたらいいんですか、五年後に死ねというのでしょうか、もう必死に働けるだけ働いています、正社員になれたら支給を停止してくださいというような声が大変多く届いています。国や自治体が母子家庭を雇い入れるような枠は一体どれだけあるというのか、ぜひお示しいただきたいと思っております。
 こういったことから、この五年後の政令による一部支給停止については、母子家庭の平均年収がアップしたとか、生活が苦しいと答えていらっしゃる方が少なくなったとか、ある指標をもって、そういうものがあるまでは凍結していただくか、あるいは私たちの声を聞いていただき、国会の承認があった上で実施していただきたいというふうに思っております。
 また、求職活動の義務化ということが条文の中にございます。受給資格者が、正当な理由がなくて、求職活動そのほか厚生労働省令で定める自立を図るための活動をしなかったときには支給しないというふうにあります。昨日の答弁で、就職活動というのはスキルアップの活動をしているというようなことがございましたけれども、私たちが危惧するのは、これで調査、調書がまたふえるのかということです。やはりこういった調査がふえることで生活意欲をなくす、あるいはまた、うつやドメスティック・バイオレンスのPTSD、あるいは子供が不登校になるなどのことで、求職活動が十分に行えない母親がいるということを忘れてはならないと思います。
 私たちは、自治体に就労支援の、自立支援計画というのが今度策定されるということですが、もちろん、ある意味ではこれに期待と不安を持っているわけです。病児保育に一人親の利用料減免を入れてほしい、あるいは就労講座をしてほしい、母子自立支援員が就労の指導をしてほしいというようなことを考えておりますので、よい意味で監視しつつ、応援しつつ、協力もしながら要望を出していきたいというふうに思っております。
 最後に、時間が延びて済みません、母子家庭の子供にこの法案で未来があるのかということをもう一度考えていただきたいと思います。
 私たちの夏の合宿などではたくさんの子供が集まります。その中には大きい子も小さい子もいますが、楽しく遊んでいるわけです。本が好きな子も、ゲームが好きな子も、のんびりした子も、水泳が得意な子も、スポーツができる子もおります。踊りが好きな子もいます。親たちは、この子たちの未来を開くために、無理をしてもやっていこうと思っています。ぜひ、この子たちに未来を開いていただきたい、そう思っています。
 失礼します。(拍手)
坂井委員長 どうもありがとうございました。
 以上で参考人の方々の御意見の開陳は終わりました。
    ―――――――――――――
坂井委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。後藤田正純君。
後藤田委員 自由民主党の後藤田でございます。
 本日は、お忙しい中、五名の参考人の皆様にお集まりをいただきまして、ありがとうございます。そしてまた、日ごろからは、母子寡婦問題につきまして大変御努力をいただいておりますことをこの場をかりまして改めて御礼を申し上げ、同時に、先ほど来、母子寡婦問題につきましての、政府、行政に対しての貴重な御意見を賜りまして、本当にありがとうございました。
 私も、政府・与党という立場でございますが、きょうお集まりの皆さんの御意見、本当にごもっともだなと思う点が多々ございましたし、現場の御意見を聞かせていただいて、本当に胸痛む思いがしたわけであります。
 今般のいわゆる母子寡婦福祉についての問題でございますが、これは社会保障全般にもかかわってくる問題でございますが、母子寡婦家庭に政府がどういう関与をして助成をするかというのは、いわゆる高齢者福祉などもそうでありまして、息子が年老いた御老人をどうやって面倒を見るかということでございますが、これは社会の環境の変化によって、今までは家族なり社会なりが見ていたものを、これは北欧、ヨーロッパ諸国はそうですが、社会が面倒を見る、社会政策であるということに、かなり昔からすると環境が変化してきたということであります。
 ほかの社会保障制度を見てみますと、公助、互助、自助という三つの助成がございます。公助というのはいわゆる政府から、行政から税金で賄う、そして互助というのは保険制度の中でみんなで助け合う、そして自助というのは自分で努力をする部分という、互助と公助と自助というものが社会政策についてはつきものでございます。
 今回の母子寡婦問題などは互助という面が、これはやはりなかなかやりにくいですね。本当に残念ながら、死別をされたり離婚をされたりするというのは前もって予測不可能でございますから、それを保険にするなんというのは非常におかしな話になってしまうので、そういう意味で、非常に難しい問題がこのテーマにはある。公助と自助しか物理的に、理論的にできないという点があると思います。
 本当にお金が潤沢にあれば、これはもうやるにこしたことはありません。政府に、または日本国に財源があれば、これはもう社会保障制度にどんどん金を使うべきだと思います。しかしながら、ハイエクという方が「隷属への道」ということを書かれたわけですね。いろいろな御意見を聞いていると、国家財政、国が破綻をしてしまうということでございまして、私は逆に、税金をもちろん投入すべきだと思います。先ほどの、最後の赤石さんのお話など、本当に私はもうそのとおりだと思います。国にお金が潤沢にあればどんどんやるべきだと思います、子供の問題、先ほども少子化の問題もお話ありましたけれども。
 ですから、そういう点において逆に皆様方にお伺いしたいのは、これからの税制についてどう考えるか。いわゆる目的税ということにはなり得ないかもしれませんが、これから、今の国民負担、消費税五%でございまして、いわゆる国民負担率というものは約四〇%ですよ。イギリス、アメリカ、ヨーロッパは五五%、六〇%、七〇%という状況の中で、それでいて、我が国は低負担で高福祉をせよ、高社会保障をせよというのもなかなか難しいところがあると思います。今回は、その段階のワンステップとして政府は出してきているという私は認識であります。そのことをお伝えさせていただきたいと思います。
 そしてもう一つは、先ほど来、就労の問題があります。
 これはちょっと質問でございますが、私も就労差別の問題、これは母子寡婦の関係の方々だけではなくて、今こういう不景気の時代、男女差別はなくなったですが、年齢で何歳以下とか、そういうことでございます。就労問題も、子供がいるというだけでなかなか就職できないというような話も聞いたりします。そして同時に、いわゆる母子家庭の方だと仕事をやめないだろう、ですから会社がきつい仕事をどんどん与えるというようなお話を、私も地元の母子寡婦団体の方から聞いたわけでありますけれども、その点、前田さんに、そのことについてちょっと御意見を聞かせていただきたいと思います。
前田参考人 内容としては、税金のことと就労のことでよろしいでしょうか。(後藤田委員「はい」と呼ぶ)
 消費税の五%というのがあります。これは本当に、高額所得者も低所得者にもかかってくるもので、お昼御飯を食べるといっても、人間ですのでそんなに差がない、けれども同じように五%がかかってくる。結局、比率というのは、低所得世帯にとって本当に重い比率になっています。ということで、税金というのが私たち国民を苦しめるものであってはいけないなということがあります。
 そして国民負担率の話が出ました。外国ではもっと負担しているんではないかということです。税金というのは二つの側面があると思います。税金を納める、どういった基準で納めるのか、それと、ではその税金がどう使われるのか、ここが大きな問題だと思います。
 例えば、暮らしの中で衣食住というのがあります。住宅、本当に住宅問題は大変で、公営住宅というのが日本では本当に少ないんです。外国、たしかイギリスでは七割ぐらいだったかなと思うんですけれども、公営住宅が多い。そういうのが、状況が違います。
 あと教育費、これも無償となっていますけれども、たくさんかかります。外国ではそうなっていない。フランスではずっと無償で、大学生には奨学金まで出す、こういうことですので、負担と同時に、どう使われるのか、そこがとても大切なところじゃないかなというふうに思っています。
 就労ですけれども、やはり母子家庭というだけで、よく休まれるということで断られる。同時に、アパートも母子家庭というだけで断られることが多いんです。本当に、どこに行ってもなかなか見つからないというのが実態です。男女差別がなくなったというふうにおっしゃったように聞こえたんですけれども、やはり女性が働きながら、仕事をしながら家庭を維持するというのは大変なことです。今の家事労働を男性がどれくらいやっているかというデータも時々出ますけれども、やはり共働きであっても女性に、多くの方に家事がかかってきています。
 就労するということは、子供を育てながらやるということですので、この点は本当にたくさん、正社員になろうと思っても、やはり子供が熱を出したりすれば休まなくてはいけない、そういうことでなかなか正社員になれない、こういった実情があると思いますし、また、四十代ぐらいになると年齢制限で断られるという例も聞いております。
 大体、以上のように思います。
後藤田委員 ありがとうございました。
 前段の税については、繰り返しますが、やはりそれなりの受益があれば負担も必要であるということは、民主主義、自由主義国家に生まれたわけでございますから、これはもう当然必要なことだと思います。先ほどの御意見を聞きますと、フランスの例、いわゆる教育費等々の問題、ちゃんとした受益を受けられると。これは、その裏返しに負担があるんですね。このことはぜひお考えをいただきたいというふうに思っておりまして、きちっとしたものに使われれば負担もやむなしというお話と理解をさせていただきたいと思っております。
 それと、黒武者さんにお伺いしたいと思うんですが、日ごろ、これは全国組織として、母子寡婦福祉団体協議会ということで御活躍をされております。その中で、触れ合い旅行だとか、いろいろな相談だとかも乗っていただいているということで、非常に好評でございます。
 しかし、一方でこういう意見もあるんですね。ちょっと細かい話かもしれませんが、名称の問題。母子寡婦福祉団体協議会、ちょっと暗いんじゃないかな、ちょっと名前を変えた方がいいんじゃないかなとか、そんな意見もあったり、一方で、何か寡婦の方のお孫さんまで参加したりするというようなことも、これも何かありなのかななんていう、そんな意見もあったり。あと、今現状、百万世帯というふうに言われておりますが、入会されているのが三十三万ぐらいというふうに聞いています、三分の一ぐらい。この三分の二はどうして入らないのかな、どこに問題があるのかな、宣伝が足りないのかな、どうなのかなというような部分について、ちょっと現状の御認識をお伺いしたいと思います。お願いします。
黒武者参考人 おっしゃるとおり、私たちの団体は母子寡婦福祉団体でございます。最初は母子福祉を中心にしていたのでございますけれども、その母子家庭の人が、もう子供が大きくなって寡婦になったので、そこで、母子福祉だけではなくて今度は寡婦のこともということで、議員の先生方にお願いして母子寡婦福祉法という法律が制定されたわけでございます。
 そこで、今、私たちの団体は母子家庭と寡婦で構成されております。ですから、先ほどから出ます児童扶養手当の問題は、母子福祉の、特に離婚された方々の問題でございまして、そして、聞くところによりますと、この児童扶養手当の額が母子寡婦福祉対策の予算の九六%ということをお聞きします中で、先ほどから出ておりますように、母子家庭の方の生活は本当に厳しいのが事実でございます。そのことにも耳を傾けなければなりませんし、また、片や私たちのように子育ての終わった寡婦は、今までは子供さえ育てておけば老後は心配ないという時代でございましたけれども、一生寡婦も自立をしなければならない、老後も自立しなければならない時代でございます。その辺のことを勘案しながら会の運営もしていかなければならないと考えております。
 このたびの児童扶養手当の削減に当たっては、非常に母子家庭の人たちからの厳しい声も届いております。しかし、私たちは、先ほどお話がございましたように、公助だけでなくて自助の努力もしなければならないのではないかと思いまして、私は、やはり今や一人一人がいろいろな母子寡婦福祉の施策を活用して、また、情報を自分からキャッチして自立する時代ではないだろうかということを考えておりますので、それを支援していくのが寡婦の役割ではないかということで取り組んでいるようなことでございます。
 ですから、このたびの法案は、そうしたことに、非常に私たちが今まで念願しておりました就労のこととか、子育てのこととか、養育のことが盛り込まれておりますので、これが成立いたしましたら、それによって私たちもまた活動を展開していきたいと考えております。
 以上でございます。
後藤田委員 大変前向きなすばらしい御意見をいただきまして、まさに、皆様方の活動が公助でもない、自助でもない、その中間的なといいますか、本当に新しい形の支援、組織という、行政コストも最小限で、皆さん方のボランティア、皆様方の自主的な意図によって、国の財政ということも同時に考えていただきながら、本当に前向きな御意見、御活動をしていただいている、その御意見に改めて賛同を申し上げて、私の質問を終わらせていただきたいと思います。
 本日は、ありがとうございました。
坂井委員長 次に、山井和則君。
山井委員 よろしくお願いいたします。
 本日は、参考人の黒武者様、山崎様、榊原様、前田様、赤石様、本当に急な依頼ではなかったかと思いますが、この厚生労働委員会にお越しくださいまして、本当にありがとうございます。特に黒武者様なんかは九州からお越しくださったということで、本当にありがとうございます。また、先ほど、十分という本当に短い時間の中で、皆さんがある意味で人生をかけて、またそういう母子家庭の方々、お母さん方、お子さん方の代弁者として声なき声を訴えてくださったこと、本当に心より御礼申し上げます。
 私も実は、政治に入りましたきっかけがこの母子福祉の問題でありまして、学生時代、母子寮、今、母子生活支援施設と変わっておりますが、そこで四年間ボランティア活動をしておりました。そのときのお母さんの御苦労、また子供たちの御苦労、高校に行きたくてもなかなか行くのが難しいとか、ましてや大学はもっと難しいとか、あるいは母子寮から出てもなかなか仕事が見つからないとか、また、別れた夫との関係、あるいは夫からの暴力とか、そういうさまざまな問題を、私、学生時代、その子供たちに勉強を教えたり、一緒にソフトボールをやったり、ハイキングに連れていったりする中で痛感しまして、それが、私がこういう福祉や政治に取り組むきっかけにもなりました。
 そういう意味では、あれからもう二十年たちましたけれども、改めてその問題がまだまだ深刻であるということを痛感し、何とか国会での審議を通じて、母子家庭の皆さんが安心して暮らせる社会になってほしいなというふうに思います。
 そこで、十五分間お伺いさせていただきますが、まず最初に、榊原参考人にお伺いしたいと思うんです。
 最後のところで、お母さん方の最も大きな願いはやはり就労である、誇りを持って、自信を持って働きたいということをおっしゃっておられました。私もそのとおりだと思いますし、今回のこの法改正の中で就労支援が入っているということは非常に重要なことだと思います。ただ、今のこの非常に厳しい状況の中で、本当にこの法案に入っている就労支援で正社員になれるのか、あるいは十分な仕事につけるのか。
 その点について、榊原参考人の御意見をお伺いしたいと思います。
榊原参考人 就労支援ということですが、この法案の中に入っている就労支援策というのではどうかという御質問なんですが、まだこの法案の中の就労支援策が明確でないので、これで就労が今までより、若干進むことはあるかもしれませんが、本当に手当を返上して働けるほどの就労促進になるというようなものが見えてきていないと思います。
 数日前、テレビでやっておりましたが、母子家庭だけではなくて、パートで働いていて、子供ができたとうっかり言ってしまったために、ただ無理由で解雇されたという報道がありました。そうした偏見を取り除いていく等のすべての対策が必要なのではないかと思います。
山井委員 ありがとうございます。
 この就労支援策が非常に厳しい雇用情勢の中でこの先五年きっちりと実を結ぶことができるのか。そういうことがないと、この手当の一部支給停止というのは非常に問題が多いと思っております。
 次に、山崎参考人さんにお伺いしたいと思います。
 今回、私、一つ心配していますのが、五年後に手当が一部停止になった場合など、かえって生活保護になる方がふえるのではないだろうか。当然、今回の法改正の主な目的は自立支援なわけですよね。ところが、その命綱である手当が五年後に大幅に減ることによって、それだったら、もうあきらめて生活保護を受けた方が安定しているし楽だというふうなことにもなりかねないと思うんですね。
 その点について、山崎参考人、いかが思われますでしょうか。
山崎参考人 お母さんたちの願いというのは、今度の法案にもございますけれども自立支援、保護ではなくて自立支援ということに強いお考えがあると思います。この就労のための支援の施策をどのように持っていくことができるのか。特に、就労の場合につきましては、これから地方自治体に大きな力を発揮していただかなければならないと思いますし、そのための施策を動かしていくためのいろいろな仕組みが必要かというふうに思います。
 特に、母子家庭等就業・自立支援センターというのが設立されるというふうにも伺っておりますし、それから母子寡婦団体の就労のこと、それから情報の提供とか無料職業紹介の提供とかというので、中核都市とか指定都市とかあるいは都道府県にこのセンターと言われるものが八十九カ所ぐらいできるとも伺っています。それから、自立支援給付金というのが始まるというふうになっていますが、三年後のところで助成が行われるということとか、それから母子家庭高等技能訓練手当というのが能力開発の中で進むということも伺っています。
 私、実はボランティアのことをやっているんですが、DVで夫のもとを逃れて、そしてシェルターとか先ほどおっしゃった母子生活支援施設を利用される方の今は八割ぐらいがDV被害者でいらっしゃいます。夫から逃れて逃げてくる方たちの、どうしても就労したいという願いをかなえるためにということで、ある民間の外国の有名な企業ですが、そこの広報部長さんにお願いをしましたらば、今隠れているそういう世帯のために仕組みをつくってくださるということで、それから、これは各新聞社にもお願いして、働いている女性たちが、特にコンピューターの専門家の方たちに入っていただいて、そういうシェルターの中に入っていただいて就労支援をしていくという、数千万になるお金を結果的にいただいたんですが、そのことを今いたしております。
 実際に直接にDV被害あるいはシェルターの方々の中に入って、その女性たちがその現実を支える必要があるということを痛感してくださっています。そのようなやはりさまざまな仕組みをとりながら、就労できる状況を私たちは何としても切り開いていきながら進めていくことが必要かと思います。
 五年後の見直しにつきましては、慎重に、現実を見ながら、まだ政府もどういうふうになるということは決めていないのではないかと思いますけれども、そこを慎重にしながら配慮していくことが必要だということを先生方にもお願い申し上げて、ぜひよい方向に動きますことを心から祈願いたしております。
 ありがとうございました。
山井委員 ありがとうございます。
 今山崎参考人さんがおっしゃいました、五年後のときにその状況を見きわめてもう一回どういうふうな形にするかというのを考えるということは、私は非常に重要なことだと思います。
 今と同じ質問なんですが、榊原参考人、いかがでしょうか。自立支援策というふれ込みの今回のこの法改正が、かえって生活保護の方をふやすという結果になってしまわないでしょうか。
榊原参考人 それは五年後の減額という場合だけではなく、前回、今回の案というのは現実には児童扶養手当減額という結果をもたらしていますので、例えば子供が幼くて就労が、家事、育児との両立が大変であるというときに、必死で働いて月五、六万の収入と手当でやっていくよりは、それで厳しい生活をするよりは、生活保護を受けた方が時間ができて収入も多くなる、そちらを選ぶという、ボーダーの方はいつも絶えずぎりぎりの選択ラインにあると思います。既に本来生活保護を受ける水準でしかない方でこの手当があるから保護を受けないという方がいらっしゃるのですが、それが保護の方にシフトするということは現実に想像されると思います。
山井委員 ありがとうございました。
 赤石参考人さんにも今と同じ質問なんですが、先ほど、非常にこれは命綱であるというお話でしたが、一歩間違うと、命綱に頼るよりはもう生活保護を頼った方がいいんじゃないかというような、そんなことというのはなりますでしょうか。
赤石参考人 母子家庭の平均年収二百二十九万円というのは手当額を含んでおりますので、就労だけでいいますと大体年収百八十万です。ですから、ほとんど半分以上の方は、このまま生活保護を受けられるラインの方たちだということになります。
 実は私も、子供を産んでから一年半余、生活保護を受給しておりました。しかし、生活保護の事務手続は非常に厳しいです。ですから、確かに生活保護ライン以下の方はたくさんふえると思いますが、生活保護を申請に行って、それが受け入れられるとはなかなか思えません。
 例えば、夫はどうしているのかと聞く、養育費の申告をしないのか、養育費をもらってないという証明を持ってきなさい、あるいは親兄弟が扶養しないという証明を持ってきなさい、あるいは、今あなたの所持金幾らか、十万円ありますと言ったら、これが半分になるまで待ってからまた来なさい、いろいろな指導がございます。
 ですから、私は生活保護を受給する方何人も一緒につき合って行っていますが、そう簡単に今できないのではないか。そういう方たちは本当に、だからどこの網からも漏れてしまうということになり、宇都宮で子供が餓死した事件もございましたけれども、非常に悲惨な結果になるのではないかというふうに思います。
 やはり手当ということが、そういった意味では生活保護ライン以下の方たちが頑張る気力を与えている、この手当がそういう意味では生活意欲向上に非常に役立っているということを強調したいと思います。
山井委員 次、黒武者参考人さんにお伺いしたいと思います。
 今回、母子家庭等日常生活支援事業という名前になって、この支援事業が新たに拡充されるということになっているんですが、聞くところによると、なかなかこの事業が利用しづらい、使い勝手が悪いという声を幾つかちょっと聞いたんですが、この母子家庭等日常生活支援事業、母子家庭居宅介護等事業と今まで呼ばれていたわけですけれども、このことについていかが思われますでしょうか。
黒武者参考人 おっしゃるとおり、今、私たちの団体で介護人派遣事業というのをいたしております。これも正直申しまして県によって温度差もございまして、例えば私は鹿児島県でございます、三十年間この仕事にかかわっておりますけれども、本当にこれは大変いい制度でございます。
 だから皆さんが私の県では非常にいいことだといって大変活用しておりますが、これにまたさらに、今度のあれによりますと、今まではその家庭に行ってお世話するということでございましたけれども、またそれを、いろいろな講習をして養育ヘルパーの資格を取った人が自分のうちで預かるとか、そのような方向に、この法案の中で打ち出されておりますので、そうしましたら、よりこれが充実するのではないだろうかと考えるわけでございます。
 ですから、私たちといたしましては、今あるこの既存の制度、これをいかに活用するかということと、そして、さらに前向きにこれを活用することによって、本人はもとより団体としても、そのような方向に行くんじゃないだろうかといって大変期待しているようなことでございます。
 以上でございます。
山井委員 この事業については、急に頭が痛くなったり、風邪を引いたりしたときになかなか使い勝手が悪いという意見も聞いておりますので、そのあたり改善できるように、私もまた働きかけていきたいと思います。
 最後、時間がなくなりましたが、前田参考人にお伺いしたいと思いますが、今回の法案の中で、要は、これは自立支援に本当になるのか。当事者の声としては、もしかしたら、不十分な就労支援よりも、やはり、手当を残してもらった、今までの方がいいという声もあるかと思うんですが、そのあたり、手当か就労支援かという、割とこの法案の根本的なことについて御意見をお伺いしたいと思います。
前田参考人 私の最後に、就労の支援というのは、それは大切なことなのでぜひやっていただきたいというふうに申しました。
 それで、この自立支援と手当とを対立的に見るのではなくて、やはり母子世帯にとって本当に命綱です。ですから、これについて所得基準があって、一定の収入になったら手当が支給されないわけですから、その範囲でやっていったらいいのではないかと。
 それと、先ほども自立ということが言われました。私は、生活保護を受けて自立をする、児童扶養手当を受けて自立をする、心の安定、経済の安定というのは本当に母子世帯にとって大切なことだと思っています。
 以上です。
山井委員 どうも大変ありがとうございました。
 皆様方の御意見を、しっかりこれからも国政の、母子家庭の方々の暮らしの向上のために生かしていきたいと思います。本当にどうもありがとうございました。
坂井委員長 次に、福島豊君。
福島委員 どうもおはようございます。
 参考人の皆様には、大変お忙しい中、また遠方からこの国会の審議のためにお越しいただきましたこと、心より御礼を申し上げる次第でございます。
 そしてまた、本改正案につきまして、さまざまな御意見を先ほどいただきました。私自身、母子家庭対策というものを、経済的支援というものを超えて、その自立支援ということに対して総合的な施策へと転換を図る大変大切な法律だというふうに思っておりますし、その成立に対して万全を期したいと思っております。
 また同時に、やはり経済的支援というものも非常に大切だという御意見は、私はもっともだと思っております。そして、就労支援というのがどれだけ実効性を持つのか、養育費の確保というものがどれだけ実効性を持つのか、こういった御指摘もあったわけでございます。この点については、御指摘というものを十分に踏まえて、今後の施策の展開というものの充実を図っていかなければいけない、そんな思いで伺わせていただいておりました。
 具体的なことについて、参考人の皆様に幾つかお聞きをいたしたいと思っております。
 まず、黒武者参考人にお尋ねをしたいわけでございますが、自立支援ということは就労支援とイコールだというふうに言ってもいいと思いますけれども、母子家庭等就業支援センター事業というものがスタートしたわけでございます。これをさらに充実させていくということが今後の就労支援の一つの大切な柱になると私は思っております。
 この点について、参考人として、今後この事業をこういうふうに育てていったらいいという御要望、御要請がありましたら、ぜひお伺いをいたしたいと思います。
黒武者参考人 母子家庭の人は、先ほど生活保護との関連が出ましたけれども、皆さんがやはり自分で働いて子供を育てたいという願いは変わりません。ですから、どうしても私たちとしてはこの方々の就労ということを考えなけりゃなりません。だから、今までもそういうことを、例えば職業安定所とか、そういう方々との会議を持ちました。
 ところが、いろいろな、例えば訓練校に行くときには、母子家庭を雇ったところには補助が出るとか、また、訓練中のあれを補助するとかございましたけれども、私たちはそう言いましたら、安定所の方では、そうした予算は、母子家庭だけではなくて、老人も身障者も一緒にした予算だ、だからそんなに母子家庭だけできないということもおっしゃいました。
 私は、身体障害者のように、母子家庭にも雇用促進法というのをおつくりいただけないかということも再三申し上げてきました。ところが、身障者は、一たん身障になったら一生変わらない。老人は、みんな年をとって、目に見えている。ところが、母子家庭の人は、例えば母子家庭の人は再婚したら母子家庭でなくなる。だから、そのようなところで母子家庭の雇用促進法というのは大変厳しいということも聞いておりまして、なるほど、そうかなという思いの反面には、やはり、お母さんが一人で子供を育てている、大変なことでございますので、これを何とかしていただきたい。
 私たちとしましても、そこで、先ほど申し上げましたように、先生、大阪府では職業紹介の資格を会が取りまして、会で直接そのような事業をしていらっしゃいますので、だから、今、札幌市、大阪府、大阪市、その辺のところを参考にしまして、各県もそのようにしていったらどうだろうかということを、この前の全国大会のときにも出ましたので、そうしたことで前向きにしていきたいと考えているところでございます。
 以上でございます。
福島委員 ありがとうございます。
 全国に広がるように、私どもも努力をしたいと思っています。
 次に、山崎参考人にお尋ねをしたいわけでございますが、この改正の中で、厚生労働大臣は自立支援に向けて基本方針をつくる、そしてまた各都道府県、そしてまた市でございますけれども、自立促進計画というものをつくるということになっているわけでございます。
 どういう中身がこの中に盛り込まれるかということは非常に大切なことだと思っておりますし、そしてまた、昨日の審議でも、よく、関係団体、そしてまたNPOの皆様方、さまざまな意見というものをしっかりと反映してつくってほしいということを要望いたしましたが、この計画について参考人は、どういうふうな計画をつくるべきか、御意見ございましたら、よろしくお願いいたします。
山崎参考人 自立をするということになりますと、さまざまな側面がございます。経済的な、今黒武者さんがおっしゃいましたような側面もございますし、それからさらに保育の問題とか関係機関との問題とか、それから、DVの問題などを抱えておられて、心にいろいろなPTSD状態を持っておられる方もございます。
 そういう意味では、養育費の支払いについての社会的な機運を醸成していくような問題、養育費の確保の問題もございますし、それから、今おっしゃってくださいましたように、母子家庭の就業支援センター事業のようなものもございます。それらが総合的に自立を支援するような経済支援体制を整備していくということに、いろいろな方法で力をかしていくことが必要ではないかというふうに考えます。
 特に、これからは地方公共団体の中に大きな力が入ってくると思いますが、そこで総合的な自立支援体制を整備するということになっていくのではないかというふうに考えますので、国の基本方針あるいは都道府県を中心とした基本方針、それからそれを総合的に進めていく方針というふうなものを重層的に重ねながらやっていけるような道筋を、やはり政策的にも、あるいは黒武者さんのところのような団体や、あるいはしんぐるまざあず・ふぉーらむ、いろいろな団体が協議しながら、ともにそこのところがつくっていけるような、重層化した方法というものを開発していくことが求められるのではないかというふうに考えます。
福島委員 次に、養育費の確保について、榊原参考人にお尋ねをしたいと思います。
 実は、昨年、大綱をまとめるときに、ここのところはさんざん議論をいたしました。やはり取り立て機関をちゃんとつくらないとだめでしょうというような議論もいたしました。ただ、なかなか、政府としても、現状でできることとできないことというのがあるということで、ガイドラインはつくりましょう、そしてまた、民事執行法の見直しを、これは法務委員会、法務省の方でやっていただくというところで、言ってみれば一歩前進になるのかなということで認めたわけでございますけれども、ただ、昨日の審議でも、どの程度実効性があるのかということについては十分フォローしてほしいということを政府に対して要望いたしました。
 なかなか、直ちに取り立て機関をつくるというようなことも難しいんだろうと私は思うんですが、現実的な課題として、次にどの一歩を踏み出すべきなのかということについて、参考人から御意見があれば伺いたいと思います。
榊原参考人 私から見て簡単なものから申し上げますと、まず、離婚の際の協議離婚届の中に、養育費の合意欄をつくる。これは強制的に書くということではなくて、任意の制度にする。この合意がなければ離婚できないという制度ではないけれども、届け出をしなければという意識をすべての人に持っていただくという方法があります。
 それから、取り立て制度を、外国のようなものを一気にということは大変難しいかと思いますが、例えば裁判所の窓口にそれ専門の受付を一つつくり、そして当事者が資料を持ってくれば親切に書き方を教えてくれるところができるというだけでも違うかと思います。
 また、自治体で相談事業を充実するということであれば、それを一歩進めて、自治体の中にそれをサポートする体制をつくる。当事者にやってみなさいというのは大変で、資料を持ってきて、駆け込んできたら、それを引き受けて調べてやってあげるよという制度であれば駆け込む、敷居が低いところをつくってあげるということが大事なのではないかと思います。
福島委員 ありがとうございます。
 法務省また法務委員会にかかわる事柄もたくさんあります。先生、弁護士のお立場として、いろいろとまた法務省に対して御意見を言っていただければというふうに私は思います。よろしくお願いをいたします。
 次に、赤石参考人にお尋ねしたいわけでございます。
 先ほどの資料を拝見いたしました。この中で、やはり家賃、非常に負担が大きいな、そしてまた教育費の負担がやはり大きいんだな、特に子供さんが大きくなるとそういう負担というものが家計の中で際立って大きくなってきているんだなと思いました。
 大綱を定めるに当たりまして、一つは、住宅対策をしっかりと入れてほしい。母子寡婦の福祉団体の方とお話をしたときにも、特に東京のような都市部では家賃が高くて大変だという話がありまして、強く要請をいたしました。昨日も国交省の方がお越しになられて答弁いたしておりましたけれども、これについても、どの程度使いやすい公営住宅というものが確保できるのかということが非常に大切な柱だと思っています。やはり十万近い家賃を払わなきゃいけない、この一番最初のページの四十二歳の方の場合にはこれは大変大きな負担で、何とかしなきゃいかぬのだろうと思います。
 次に、教育費の問題ですけれども、私ども奨学金の拡充ということをずっとこの数年間与党の立場で言ってきました。来年は入学金も奨学金の対象にしてほしい。概算要求にこれを入れてもらいました。こういう取り組みも一方ではやっております。
 ただ、今回、政令の改正ということで、児童扶養手当の見直しというものが行われた。これも、減額になる方がたくさんおられるということで、何とかそのすき間を埋めてほしいということで、母子寡婦福祉貸付金制度の見直しの一環として特例児童扶養資金というものをつくっていただいた。そして、状況によっては償還そのものも減免してほしいということを申し上げて、それも入れていただきました。
 ただ、保証人の問題とかあって、なかなか貸付金というのが使いにくいという話もありまして、この点について、今回も見直しをいろいろとしておりますけれども、参考人の立場からこうしてほしいという御要望がありましたらおっしゃっていただければと思います。
赤石参考人 御質問、住宅と教育費のことですよね。
 住宅については、都心とか都市部に住んでいる母子家庭は本当に七万円とか九万円とかいう家賃を払っております。都営住宅あるいは県営住宅といったものを申し込むのですが、入れるようになるまでやはり数年かかる。優先入居枠というのはあるんですが、すべてのにはないので、ちょっとパーセントが上がるのですが、当たるには至らないという方がたくさんいらっしゃるということなんです。しかも、県営住宅、予算を削ったりしているところがありますので、新設が減っているということを聞くとやはり非常に不安になっております。
 ですから、確かにどこの都道府県も優先は設けていらっしゃると思います、母子家庭。ただ、それでも七倍とか十倍とかいう倍率ですと、それが半分になったとしてもまだ五倍といったような状況で、なかなか入れないということがあります。
 それから、住宅費と連動していえば、大きな都市に住んでいれば車はなかなか要らないわけです。電車で通勤できますが、地方の方は、逆に、中古でぼろくても車を持っていないことには勤労できないということが足かせになっているというふうに思います。
 それから、奨学金のことですが、確かに家計簿にも借りていらっしゃる方のを入れました。しかし、借りるということはやはり本当にためらいがあるというふうに思います。子供を育て上げるということでは、やはり社会が教育費については保障していくというのが本来望ましい。やはり、子供というのは社会の財産であるということを考えますと、貸付金で教育費を対応するというのがよいことなのだろうかというふうに思います。
 また、いろいろ御配慮いただいていることはわかっておりまして、子供が借りて親が保証人になる、あるいは、払えない、後で返せない場合には減免があるというようなことも聞いております。ただ、どのような場合なのかというのは余りはっきり示されていないので、ぜひそこの面では安心できる制度にしていただけたらというふうに思っています。
 あと、教育費というのは、単に学校や入学金に払うそういったものだけではなく、先ほど言ったように塾の費用もありますれば、子供は大きくなれば、半年に一センチ足の大きさが伸びてしまい高いスニーカーを買いかえなきゃいけないとか、制服も三年間でもう一度買いかえなきゃいけないとか、こういった費用はそういった中には含まれていない。また、お米だけでもすごく一日に炊くのよというような話もございます。
 ですから、私は、児童扶養手当、五年後というのはちょっと本当に現実にそぐわないのではないか、かえって年齢が大きくなった方が生活費がかかるということを強調したいというふうに思っております。
福島委員 時間がなくなりましたので、前田参考人には御質問できませんでしたことをお許しいただきたいと思います。
 本日は、大変ありがとうございました。
坂井委員長 次に、武山百合子君。
武山委員 自由党の武山百合子です。
 きょうは、参考人の皆様本当にありがとうございます。いろいろこれから皆さんにお聞きしたいと思います。
 まず、いわゆる母子家庭の平均収入が約二百二十九万ということで、きのう厚生労働大臣にも聞いたんですけれども、この収入に対して、国からの経済援助ということで、児童扶養手当それから奨学金、公営住宅を借りるとか、それから市町村で児童育成手当というのが出ておりますね。
 一人一人、五人の方に同じ質問なんですけれども、これは上を見れば切りがないし下を見れば本当にいろいろだと思いますけれども、平均収入が二百二十九万ということですけれども、あとどのくらい生活費があったら最低でも家族三人が中流の意識で生活できるのかというその経済的基盤をぜひ聞きたいと思うんですよね。
 国の方は、この法律ができている根幹が、国の哲学、国の目標、国の基本的な考え方で、どのくらいの一カ月の生活費を想定してこの法律ができているのかと聞いても、平均収入が二百二十九万というそこを常に主張しておりました。ですから、皆さんの実際の心の中をぜひ聞きたいと思います。それに対して、どのくらいの金額をやはり国が見るべきかという数値ですね、それをぜひ皆さんに、お一人お一人、黒武者さん、それから山崎さん、榊原さん、前田さん、赤石さんと聞いていきたいと思います。ぜひ発言していただきたいと思います。
黒武者参考人 御承知のように、私たちは全国の世話をいたしておりますので、そのことはその都道府県によって大変温度差がございます。例えば、東京都の方と鹿児島県の地方の方と北海道の方と、大変温度差がございまして、私たちの会といたしましては、そのような細かな調査はできかねております。
 そして、今、児童扶養手当をもらっていらっしゃる方で私たちの会に加入している方が少ないわけでございます。ですから私は申し上げるわけです、本当に、その方々が会に加入して、一緒になって考えて、一緒になっていかなければならないのではないかと。例えば、この会が立ち上がるときには、戦争未亡人の人たちは、自分で、自分のお金で東京に集まって、この会を立ち上げられたわけでございます。ところが、今、児童扶養手当をもらっていらっしゃる方々は、忙しいとかなんとかおっしゃって、なかなか会に加入なさいません。ですけれども、私たちはいろいろなルートでその声を聞くわけでございます。
 だから、おっしゃるようなことは、本当に、児童扶養手当をもらっている方々が自分の生活のことを積み上げて、私たちはかつてそうしたわけでございます。だから、そのようなことをもうちょっと、私たちもですけれども、行政の方も一緒になってしなければならないのではないかと思って、この調査のことは、東京都と地方とは大変違いますので、どれぐらいかかるかということは、私のところでは把握しておりません。
 以上でございます。
山崎参考人 母子家庭のことに御関心を向けていただきまして、大変ありがとうございます。
 国が行っています調査がございますが、この調査は平成十三年現在のところでございますが、それで見ますと、母子世帯の平均の一年間の年収が二百二十九万円と言われています。これは三人世帯でございますね。それに対しまして、一般世帯の平均収入でございますが、その同じ年度の年収が六百五十八万円。つまり、一般の世帯の年収の、これも三人家族で同じ家族人員でございますが、半分以下という現実がございます。このことをやはり私たちは重く受けとめる必要があるのではないか。
 特に、その中で、死別の世帯それから生別の世帯、特に一人親の中でもまた非婚の世帯というふうに、その順番で全体の収入が違ってきている。死別の世帯よりも生別の世帯が厳しい、さらに非婚のお母さんが厳しいという現実で、子供さんを抱えて二百二十九万円ということになりますと、一カ月二十万円に足りません。
 そういう中で、この児童扶養手当はお母さんたちにとってはとても大切なお金でございますので、私は、この制度が何としても存続していただきたいということを申し上げさせていただいて、一般世帯とのこの乖離をやはり目にとめて、政策の動向をお考えいただければというふうに念じます。
 それから、子供さんの年齢とか住む場所とかによって、一カ月平均幾らぐらいがいいかというふうには、ちょっと私も今すぐは申し上げられないのですが、一般世帯とのかかわりの中で、これくらいのところの年収なのだということをお目にとめていただければと思います。
 ありがとうございました。
榊原参考人 それでは、私は、統計などを無視して、非常に率直な、個人の持っている感想で申し上げたいと思います。母子家庭で、子供二人がいて、中流意識が持てる年収というのは、雑駁に五百万ぐらいではないかと思います。
 どこかテレビでやっていたのですが、独身の人が自分が自立して一人で生活をしていけると胸を張って言えるというのが三百万というのを見たことがあります。私も母子家庭で子供二人を育ててきましたが、都内で考えると、最低、普通の家に住めるのが家賃十万円、光熱費と食費等で十五万円、あと、ディズニーランドに年に一回は行って、親子で年に二回は多少の旅行もして、家電製品を時々買いかえてと、こういうふうな程度を考えますと、五百万ぐらいになるのではないかと思います。
前田参考人 今御質問されたような視点での私たちでの討議が具体的にされているわけではございませんので、幾らというふうにはなかなか出にくいかと思います。
 ただ、一つの基準として、生活保護基準ですとか住民税非課税の基準、所得税非課税の基準、最低ラインとしてこういうところがあるのではないかというふうに思っております。
赤石参考人 私もちょっと答えに窮しておりますが、まず申し上げたいのは、年収二百二十九万円というのは、手当あるいは年金を含んだ額です。ですので、賃金などのほかの勤労収入は百七十万円台というふうに認識していただきたいと思います。
 その上で、きょうも母子家庭の方たち、私の仲間が傍聴に来てくださっているんですが、本当にいろいろな家庭があります。私は途中で手当をもらわなくなったんですが、年収三百五十万から四百万の間で暮らしていますけれども、それで十分かというと、なかなか、職業的なもので掛かりも変わりますので、何とも申し上げられないということです。
 あと、やはり教育費というので、どこまでかけるのか。子供が、例えばどんな希望を持つか。例えばデザインをやりたいと言ったら、そこをかなえてやりたいというようなことが、本当に変わってくるので、なかなか答えられない質問かなと今考えておりました。
武山委員 どうもありがとうございます。
 それでは、このたびのこの母子家庭等福祉対策の予算、いろいろ見ておりますと三本柱になっているわけなんですね。この法律が改正されることによりまして、いろいろと皆さんに対して予算を、経済的支援をするということですけれども、この中で、保育所の優先入所ということで、実際に今度の法律で特別の配慮をしなければいけないということになるわけですけれども、実際は保育所は優先的に入所できておるんでしょうか。
 赤石参考人にお聞きしたいと思います。
赤石参考人 これは、通達で既にもう数年前から、もっと前かと思いますが、母子家庭の優先入所というのは全国的に通知が出ております。ですから、ポイントは大変高い。しかし、それでも私の周りでは、例えば東京のど真ん中、渋谷区でいまだに一年間保育所に入所できない方がいます。就職が決まって、今、高い無認可の保育所に預けている方もいます。ゼロ歳児あるいは一歳、二歳ですと入れないということが起こっておりますので、幾ら優先入所があっても待機児童がいる場合には入れない方もいらっしゃるということを申し上げたいです。
武山委員 それでは、全国的にNPO組織があるということですので、優先的に入所をされないような数もわかってくるといいなと思いますので、ぜひそういうところで調査していただけたらと思います。
 それから、生活支援ということで、子育て短期支援事業ということで、ショートステイそれからトワイライトステイという、実際に行われているということですけれども、こういうPRというか、こういうメニューがあるということは、実際に母子家庭の皆さんはよく御存じなんでしょうか。
 赤石さんにお聞きしたいと思います。
赤石参考人 ショートステイにつきましては、これから、来年度から実施すると思いますので、まだ全くあれですし、自治体がこれからどういった施策を本当に自立促進計画の中に入れてくださるのかというのは、これからの取り組みだと思います。
武山委員 実際は行われていると聞いておるんですけれども、聞いておりませんか。お母さんが働きに行っていて、小さい子、乳飲み子を持っていらっしゃる家庭に、いわゆる保母さんですか、介護員というものを派遣して、実際に行われていると聞いておりますけれども、そういうことは聞いておりませんでしょうか。赤石参考人。
赤石参考人 おっしゃっているのが介護人派遣事業でしたら、既にございます。
 それで、先ほど黒武者参考人がお答えになっていたように、全国的にいろいろな差があると思いますけれども、私たちの会員は大変積極的なので、いろいろな形で活用しております。しかし、その地域、例えばある市で、二人私たちの会員がいて積極的に利用すると、それだけで予算オーバーで抑制されるというような結果になっておりまして、これは広報するということはいいのですが、その結果、予算がふえたときにどう対応していただけるかなというふうに思っています。
武山委員 榊原参考人にお尋ねしたいと思います。
 先ほど、養育費の確保ということでお話を聞きましたけれども、やはり弁護士さんに仲裁を頼むというのは、皆さん、弁護士さんに対する、まずお金がかかる、それから身近じゃないということで、なかなか弁護士さんに頼みにくい方もかなりいらっしゃると思うんですよね。しかし、今のところ、いわゆる養育費を払っていただくための手だてとしては、そういうことを考えておるわけですけれども、何かそれ以外のことで考えられますでしょうか。義務としてですね。
榊原参考人 義務としてというのは、当事者の義務としてという御質問ですか。(武山委員「はい」と呼ぶ)
 もともと、親権者である以上、養育費を確保する義務というのは持っていると思うんですが、むしろ別居している配偶者、元配偶者が支払う義務というのを民法の中に明記していただきたいと思いますが。
武山委員 山崎参考人にお聞きしたいと思います。
 今の点で、選択肢が幾つかあった方がいいと思うんですね、養育費をきちっと払うというために。実際はもう本当に、母子家庭の一年間の総収入と、それからお父さんの収入との間に大変な乖離があるわけですね。そのために、ぜひ、何かいいアイデアはないでしょうか。
山崎参考人 各国、今度もちょっとイギリスへ伺わせていただいて、そのようなシステムを聞かせていただくというようなこともさせていただきましたが、やはり養育費の、先ほど弁護士先生もおっしゃいましたけれども、養育費の取り立てに関しますことについての権限をやはり明確にすることが一つ必要ではないか。
 それから、離婚をいたしますときに親権者は決めるんですけれども、そのときに、養育費の支払いをする必要があるということについて、何らかの形でそこに明確にできるような手だてがつくられますと、もう少し、離婚して子供さんの養育費を払わなくても済んでしまうといいますか、そこがそうではないんだということの世論も含めまして、離婚時にきちんと親権と同時に、養育費の支払いをするかどうか、それで、する場合をきちんと義務づけるというような、そこの手続、離婚届の中にそういう項目があったらいいなと思ったりすることもあるのですけれども。
 親権者は決めるところが、書く欄があるんですけれども、そこを明確にして、きちんとお父さんがそこの義務を果たせるような道筋を、そしてその取り立てについて、先ほど先生もおっしゃいましたけれども、その辺のところがほかの国と日本とに違いがあるように思われます。
武山委員 どうもありがとうございました。
 時間が参りました。どうもありがとうございました。
坂井委員長 次に、山口富男君。
山口(富)委員 日本共産党の山口富男でございます。
 きょうは五人の参考人の皆さん、意見の陳述、どうもありがとうございました。皆さんから寄せられました、就労支援や養育費の問題、これをきちんとしたものにしなさい、そういう御要望、それからまた、児童扶養手当については、必要な制度であって、その存続、拡充を求めるという声を深く受けとめました。とりわけ五人の皆さんが、児童扶養手当の削減の方向については非常に厳しい声が全国各地から出ているということをこもごも語られた点は、本当に大事な点だと思います。
 私、まず初めに前田参考人にお尋ねしたいんですが、前田参考人が繰り返し、児童扶養手当の問題で、母子家庭の命綱になっているということをお話しになったんですけれども、その点もう少し詳しく、どういうものを指して命綱と言っているのかお話し願いたいと思います。
前田参考人 私たち、各地から、手当がどんなに大切かというのでいろいろと声を寄せていただいております。北海道の方から寄せられたものをちょっと御紹介したいと思います。四十四歳で、小学二年生の娘さんと、そのおばあちゃまになられる方と暮らしている方です。
 これまで手取り十万円くらいの仕事をしてきましたが、昨年十二月で失業。ことし一月から雇用保険の失業給付をもらいながら求職活動をしていましたが、五月中に給付が切られた後も仕事がありません。児童扶養手当は全額の月額四万二千三百七十円ですが、すべて食費になってしまいます。自分のものはもちろん、子供のものも我慢しなければなりません。母の年金に助けられています。四月から学校が週五日制になって、仕事を探すにも土日が休みのところをと思っていましたが、そうは言っていられなくなりました。
 ということです。不況の中で、失業、それはいつだれに起こるかわかりません。女性の賃金は男性の半分、生活費を得るためにはまさに朝昼夜と働いて、体を壊してしまう、こういう方もいらっしゃいます。
 大阪の方は、この手当をもらって生活されているわけですけれども、大変で、食費を使い過ぎないように食材を一週間ごとに袋に入れて、ふろの水は二日使う、あるいは、水道も電気も節約をする、電話は受信のみというようなやりくりをしています。
 そして、どうしても子供を育てるということとかかわってきます。経済の安定は心の安定と結びつくもので、大阪の、私どもの生活と健康を守る会の中で、母子家庭の集まりがありますと、やはり子育ての悩みがたくさん出されてきます。夜帰ってこないとか、あるいは、なかなか思うようにいかないというようなことがあります。まさに児童扶養手当法の目的にありますように、「児童の福祉の増進を図ること」、これが生きるようにしていただきたいなというふうに思います。
 安定した収入というのは、文字どおり正社員になることだと思いますけれども、長時間労働、または子供が病気したときに休まざるを得ないという状況などを考えますと、とても大変なことでもあると思います。そうしたときに、手当は本当に生活費の一部、命綱であるということが言えるかと思います。
山口(富)委員 引き続き前田さんにお尋ねしますが、その命綱なんですけれども、先ほど前田参考人も赤石参考人も、八月からの減額についてお触れになりました。それで、既にその八月からの減額でどういう影響が出ているのかというものを何かつかんでいらっしゃいますか。
 前田さんにお尋ねしたいと思います。
前田参考人 私どものところに、こういうのが来ましたということでファクスが送られてきました。都内に住むAさん、三十九歳の方なんですけれども、早速この方に、現地の生活と健康を守る会の方を通じて聞いてみました。
 中学一年生と小学校四年生の子供がいる方で、控除後の所得が百二十八万八千四百円。従来ですと全額になるんだと思うんですけれども、手当の支給停止額が六千三百四十円、年間にして七万六千八十円です。この方はこれまで全額でしたけれども、これによって月四万一千三十円になりました。減額通知を見たAさんは、わずかに収入が超えただけなのにごっそり手当を削る仕打ちには口惜しさが込み上げてきたと語っています。この減額された七万六千八十円、どのように使われるはずだったでしょうか。
 多くの母子家庭の方がそうしているように、この方も、手当は通帳の中に入れていざというときに使う、そういうふうな暮らしをしていらっしゃいます。年末、クリスマスあるいは誕生日のお祝いに、日ごろ買ってあげられないものを買う。あるいは、昨年は上の子が中学校に入学したということで、その費用に十万円ほどかかりました。制服、水着、体育着、そしてまた教材ということでいろいろ出ていって、そういったお金になります。
 また、中学校が給食がないということで、就学援助で出ています給食費は出ません。逆に、お弁当で月一万円ぐらいは出費増ということです。食費も本当にかかるということです。そして、洗濯機や冷蔵庫が突然壊れるわけです。これも子供にかかわることですよね。その突然の出費に充てるということができなくなるということで、非常に困っていると同時に怒りいっぱいというところです。
 また、この方は、政府は少子化はまずいということをこの間いろいろ言っているんだけれども、手当を減らして、そして働けと言う。働けば今度は限度額を超えて手当が削られる。何が少子化対策なんでしょうかと非常に怒っていらっしゃるというところです。
山口(富)委員 この減額が母子家庭にとっては大変なやいばになるというお話だったと思うんです。
 続いて、山崎参考人にお尋ねしたいんですが、先ほど、五年後の減額について、これは厳しい側面を有しているという指摘がありました。山崎参考人が考えていらっしゃる厳しい側面というのは、どういうものを指しているんですか。
山崎参考人 子供さんの成長の段階の場面がございますね、発達段階もございますし。それから学費のかかり方、それから病気の場合、それから障害を抱えておられる場合とか、いろいろな条件があるかと思いますので、それらをきちんと議論されながら、減額の幅についてはまだ決定をされていないと思いますけれども、この制度を残していくことが私は一番大切なことだと思いますので、この制度が壊れないように、そのことをやはり念頭に置きながら、しかしお母様たちの現状を無視した形で進まないように、慎重に議論を重ねながら進めていくということが必要ではないかというふうに申し上げました。
山口(富)委員 黒武者参考人にお尋ねしますが、先ほど、十月の大会で決議を上げられたというお話がありました。聞きますと、その大会でもその決議についての批判の声も出たようですが、先ほど、減額については厳しい声が会の方にも法人の方にも届いているというお話でしたけれども、どういう厳しい声が届いているのでしょうか。
 黒武者参考人にお願いします。
黒武者参考人 何年か前に、児童扶養手当というのは所得制限がございまして、一部支給と全額支給と分かれたことがございました。そのときには、一挙にその支給の停止になった方が七万人あったわけでございます。ですから、私たちは、所得が上がってそれが打ち切られるようなことはしないでくださいということをお願いしまして、だから今度緩やかなあれになったと思いますが、所得制限の方は三百万よりも三百七十何万になっていると思います。
 ですから、これが基準になりまして、例えば介護人派遣の場合にも、これを基準にして、これから所得の多い人は有料になる、無料になる。母子家庭の医療制度もそうでございましたけれども、この点は、所得制限が三百万から三百六十万に引き上げられたということはよかったんじゃないかと思っておる。
 でも、今申し上げますように、一人一人の収入につきましては、例えば一万円収入が上がったら、そうしたら二千円の減額ということでありますので、それだけ生活は厳しくなるわけでございます。けれども、私たちの会といたしましては、いろいろ検討いたしまして、先ほどから出ておりますように自助努力、それから自分たちの努力もしまして、そうして、どうしてもこれは難しいということは、また私たちの声として行政にも訴えていかなければならないと思っております。
 ただ、今、困るからといって、まだ、八月から実施されたわけでございます。だから、八月から実施されましたので、本当のあれが出るのは十二月だと思います。今、各市町村でそれが行われております。そのときにはまた皆さんとじっくり話し合いしながら、やはり行政にお願いすることはお願いして、また、私たちも努力することは努力していかなければならないのではないか、このように考えております。
 以上でございます。
山口(富)委員 どうもありがとうございました。またいろいろ十二月の影響など出てきますから、ぜひ教えていただきたいと思います。
 続いて、榊原参考人にお尋ねします。
 先ほど、時間がなかった関係で養育費の問題を中心にお話しなさいましたけれども、一番最後に、就労の支援についてはきちんと充実しなきゃいけないというお話がありました。それは、内容として、今度の方向で榊原参考人がここは問題だと思っているところがあったり、あるいはこれをもっとやった方がいいんだ、そういう提案がおありになるのか。そのあたり、もう少し意見をお聞かせください。
榊原参考人 他の方の方が適切な回答を下さるのではないかと思いますが、一つは、自治体の仕事のあっせんなどをちょっとイメージしますと、まだまだ職が限られる。例えばヘルパー、介護職であったり児童福祉員であったりというのが最初の取っつきやすい紹介先なのですが、専業主婦になられて、突然また社会復帰しなければならないという方の中には、高学歴で、結婚前には大変一流企業にいた、年収も高かったという方もたくさんいます。つまり能力が高い。しかし、たった一年半でも専業主婦に戻って、離婚、もう一回もとに戻るということになりますと、全くかつてのものが役に立たない。私たちはもっと別の仕事をしたいんだ、支援をしてくださっている、とりあえずある仕事ではなくて、もっとスキルアップをして、もとのように働きたいんだというような声を聞きます。
 再就職ができるような、そういった支援をしていただきたいというように思います。
山口(富)委員 どうもありがとうございました。
 赤石参考人にお尋ねします。
 先ほどの意見陳述の際に、この問題が、母子家庭なんだけれども、子供たちの未来にかかわるという、そこのところをきちんと考えてこの法案を考えてくれという提起がありました。その点、最後ちょっと涙ぐまれてもう時間がなかったものですから、中身までお触れになりませんでしたけれども、どういうことを訴えたいのか、少し話していただきたいと思います。
赤石参考人 御質問ありがとうございます。
 この法案を読ませていただいて感じるのは、子供の姿が見えないということだと思います。少子化ということで本当に子供を大切にしようという機運があるのですが、それは両親そろった子供なのかなというふうにも思うのです。
 しかし、私たちが会合で母子家庭の子供たちを見ていると、本当にそれぞれに個性があり、それぞれにいろいろな伸ばしたい点もあるし、いろいろな子供がいるわけです。家計簿ももっとたくさん集めたんですが、例えば書道と華道が好きな子供がいる、習い事をさせたい、しかしそういうのもなかなかできないとか、いろいろな子供たちがいて、可能性がある。しかも、絶対育っていけば社会を担っていくであろうその子供たちにきちんとした教育を受けさせ、育て上げるということがこの制度の中には見えるのだろうかということです。
 就労支援といったときに本当に子供たちが、スキルアップして残業を一生懸命したら子供が寝る前には帰れなくなっちゃった、だから、やはりもとのパートに戻りましたというような方もいらっしゃる。そこの両立をどうするのかというのがなかなか見えないなというふうな感想を持っております。
山口(富)委員 時間が参りましたので。
 どうもありがとうございました。
坂井委員長 次に、中川智子君。
中川(智)委員 中川智子です。きょうは、五人の参考人の方々には、お忙しい中、本当に貴重な御意見をありがとうございました。
 まず最初に伺いたいんですが、時間の関係もございますので、山崎参考人、榊原参考人、赤石参考人に伺います。
 今回のこの改正案の第二条のところに、「児童扶養手当の支給を受けた母は、自ら進んでその自立を図り、家庭の生活の安定と向上に努めなければならない。」と書かれています。私は、一生懸命自立をしている人たちが九〇%近くいらっしゃる、本当にこれは、自立をしたくても経済的な自立が阻まれているこの社会の仕組みというものが問題なのだと思うのですが、やはり何が本当に経済的自立を阻んでいるかというところでの御意見をちょうだいしたいと思います。
山崎参考人 自立の問題というのは、一つだけのことではなくて、特に母子家庭の場合には、働きながら、子育てをしながら、家事をしながらと、しかも両親家庭だったらば二つの収入の口がございますが、母子家庭の場合にはたった一つの口でございますね。そういう状況の中で自立をしていくということになりますと、やはり何としても経済的な安定ということが大きな課題になります。
 その意味では、母子家庭の自立をしていくためには、生計の担い手であるし子育てをしているというところで、先ほど保育のこともございましたけれども、やはり子育てとそれから就労ということが両立するということが条件として一番大きな条件だと思います。子供さんが健やかに育つということを支援することにつながります。そういう意味では、安定した生活を営むためには、この状況を踏まえた子育て支援とやはり両輪の歯車であることが求められるのではないか。
 それから、今度の法案では、母子家庭の生活状況を考慮しながら市町村にできるだけその問題をこれからは投げかけていくということになってまいりました。ここがやはりどうしても、子育て支援の充実も含めて、やはり市町村の役割というもので、先ほど子育ての短期支援のこと、ショートステイとかトワイライトとかございましたが、そうしたことについては地方自治体の役割が大きくなると思います。このことに、地方自治体が、前向きに母子家庭を本当に応援していくという体制をやはり整えていただくということが必要ではないか。そのあたりのことをやはり考慮しながら、経済的な生活の安定ができるということに向かっていくこと。
 それから、日本の場合には、まだまだお父さんの役割をきちんと位置づけることができないという課題がございます。そういう、就労支援と同時に、やはり扶養義務の問題で養育費を支払うのが当然という考え方に持っていく、養育費の確保をしていくということが必要ではないかというふうに考えます。このあたりをやはり根幹にして、今回、生活全般を支援していくということに向けて、いま一歩の前進が図られますように努力がありますことを願っております。
 ありがとうございました。
    〔委員長退席、宮腰委員長代理着席〕
榊原参考人 何が経済的自立を阻むかという質問ですので、ちょっと短くお答えしたいと思います。
 もちろん、不況で男性も就職しにくいということがまずあります。そして、女性であるということで就職先が狭まる、それから、年齢が三十五まで、四十までというふうに区切っている企業が多いです。さらに、子供を持っているということが、二人いたら、子供を持っている方といない方がいたら、持っていない方を採用する、こういう社会です。ですから、最後の最後になるわけです。要するに、母子家庭になるあるいは子供を持つということについて、社会がみんなでそれを支えようというような社会であるという雰囲気づくりといいますか、そういうものが欠けているのだと思います。
 離婚は、その人が悪いから離婚をするという考え方ではやっていけない。どういうふうに考えても離婚はふえていきます。だれしもが人生の途中で負うかもしれないリスクであって、すばらしい伴侶を持っていれば、であるからこそ別の異性が横からとっていってしまうかもしれないわけで、そういうリスクは負っているんだ、母子家庭、父子家庭になるリスクというのは負っていて、そして、それを社会がみんなで支えようよというような意識づくりというのが必要ではないかと思います。
赤石参考人 前のお二人がいろいろお答えくださったので、それ以外のことをお答えしたいと思います。
 やはり賃金が低いということは、女性の賃金が低い、あるいは不安定雇用、パートとか非正規が多いということだと思うんですけれども、今パートの待遇について厚労省が意見を募集しておられるようですけれども、やはりパートの待遇が、被扶養の女性のためにパートがあるという認識だったと思うんですけれども、実際には母子家庭の多くがパートで生計を一人で支えているというような現状があるとすれば、パートに社会保険やその他のものをつけて均等待遇をしていって、パートの賃金を上げていくような社会構造の転換がない限りは、やはり収入はアップにつながらないのではないかというふうに今思っています。
 それが、やはり母子家庭が怠けていることなのだというふうに受け取られるのが大変悔しいところです。
中川(智)委員 それでは、続きまして赤石参考人に伺いたいんですが、五年後に半額を下回らないというもう一つ大きな爆弾というのがあって、それに対する不安というのが非常に母子家庭の皆様には多い、大きいと思われるんですが、この五年後が政令でということになっております。
 先ほど赤石さんは、国会承認を経ていただきたいということをおっしゃいましたが、この五年後の不安に対しての会員の皆様の意見ですとか、赤石さん自身、この五年後に対してきっちりこちらが準備していかなければいけないこと、そのときの意見の聴取の仕方とか、聞かせてください。
赤石参考人 本当に不安の声が強くて、最初に五年打ち切りという案が示されていたときに、先ほども申し上げましたけれども、五年後には死ねということですかというような意見がたくさん来ました。
 今申し上げたいことは、やはり就労支援策というのが示されているとしたら、それがどのように効果があるのかというのを基本的にきちんと数字ではかっていただきたいというふうに思っています。それは年収のアップなのか、正規雇用の率のアップなのか、あるいは生活が苦しいと答えている方が減るということなのか、それは一体どういう数字なのかということを考えていただきながら、きちんと検証できる数字でこの政令改正を導入するということが可能になるのではないかというふうに思っています。そのためには、きちんとした調査をしていただきたい。五年ごとでは足りないのではないかというふうに思っております。
 それと、国会でのきちんとした議論による承認と、母子家庭団体、私どもも含めたさまざまなNPO、あるいは母子家庭の当事者の声の中で決めていただきたいというふうに思っております。
    〔宮腰委員長代理退席、委員長着席〕
中川(智)委員 続きまして、榊原参考人に伺いたいんですが、お仕事の八割、弁護の八割が離婚というふうにおっしゃられました。私も身近で、DVの方で命からがら夫のもとから逃げていくというような離婚ですとか、最近の裁判などの離婚の特徴と言ったらなんですが、裁判を手がけていらして特に感じられること。
 この質問をします私の思いといたしましては、離婚がふえている、そして、それに対する予算がたくさんかかる。安易に離婚しないように、離婚したって社会的な手当ては少ないんだから我慢して結婚生活を続けろみたいなのと、何というのか、もう冷たい、一言で言えば、今赤石さんがおっしゃったように、本当に死ねということなのかと。命綱を断たれるということはこういうことだと思うんですが、でも、離婚をすることによって自分らしい人生を歩むことができる。本当に、そういう人間の生き方と逆行した形での母子家庭いじめだと思うのですが、離婚一般についての榊原さんの印象を聞かせてくださいますか。
榊原参考人 いろいろあるので何を申し上げてよいか、もちろん若年離婚が非常に多いというのはずっとありますし、また熟年離婚もふえている、両方あります。今回問題になるのは、若年の子供がいる離婚ということがこの法案では問題になっているのだと思います。
 最近の傾向といいますか問題として、日本はまだ、どちらが悪いから離婚ができるとかできないという有責主義を引きずっていますので、せっかく調停に来ても、あるいは裁判所に来ても、大人同士の過去の争いに力点が置かれて、子供の養育費をどうしようとか、どうやったら面接が続けられるとか、二人が前向きに、別居するにしても離婚にしても、子供のためにどうしようかという話し合いは前面には出てこないで、最後の最後になります。そういった制度にも根幹に問題があるのではないかと思います。
 また、欧米のように、五年あるいは六年等の別居期間で原則離婚が成立するという制度が、まだ九六年の法務省案が導入されていないわけですけれども、そういったことのメリットも考慮をしていただきたいというふうに思っています。
中川(智)委員 求職活動について伺いたいんですが、赤石参考人にいま一度伺います。
 やはりDVや、そのような、さまざまな、苦しんだあげくの離婚の場合は、心に傷を持つことによって精神的な病を引きずるということもあると思うんですが、求職活動を積極的にしない場合には、その意思がないとみなして、手当の打ち切りとかということも書かれています。その文章に関しては、プライバシーや人権を大事にしながら、やはり、どういうところに気をつけて個人に対する調査、求職活動を積極的にしない、するというところで私も非常に心配があるんですが、そのあたりの御意見を伺いたいと思います。
赤石参考人 本当にドメスティック・バイオレンスを受けた方たちは心に傷を負っています。また、子供たちもその父親からの暴力を受けているケースもありますし、お母さんが暴力を振るわれているのを何年間も見て育っている子供たちもいます。離婚した後、自分の心のケアと一緒に、子供たちのそういった心のケアも親が責任を負わなければいけないわけです。いろいろなことが生じるのです。
 そういった意味で、早く就労をしろと言われても、まず心が落ちついて、毎日町を歩いているだけで、次の曲がり角を曲がったら夫があらわれて暴力を振るわれるのではないかとおびえている、そのおびえから、町を歩いても大丈夫なのだというふうに安心できるようになるまでは、半年や一年といった期間では不十分です。
 そういった意味で、なかなか就労の意欲までいくには時間がかかるということは、母子生活支援施設の寮の方たちは何度もおっしゃっています。本当に、そういった意味で、長い目で見ていただかなければ、求職活動をしていなければ手当を支給しないというようなことでは、なかなかその人の心の安心は得られない。求職活動の義務ということを厳しく対応することは、母子の生活を追い詰めるのではないかというふうに思っております。
中川(智)委員 どうもありがとうございました。皆様に質問できなくて申しわけありませんでした。
坂井委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。
 この際、一言ごあいさつを申し上げます。
 参考人の皆様方におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。
 次回は、明八日金曜日午前九時二十分理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午前十一時五十六分散会


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