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第5号 平成14年11月8日(金曜日)

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平成十四年十一月八日(金曜日)
    午前九時三十一分開議
 出席委員
   委員長 坂井 隆憲君
   理事 熊代 昭彦君 理事 長勢 甚遠君
   理事 野田 聖子君 理事 宮腰 光寛君
   理事 釘宮  磐君 理事 山井 和則君
   理事 福島  豊君 理事 武山百合子君
      岡下 信子君    奥谷  通君
      金子 恭之君    後藤田正純君
      佐藤  勉君    田村 憲久君
      竹下  亘君    棚橋 泰文君
      西川 京子君    平井 卓也君
      松島みどり君    三ッ林隆志君
      水野 賢一君    宮澤 洋一君
      森  英介君    山口 泰明君
      山本 幸三君    吉田 幸弘君
      吉野 正芳君    渡辺 具能君
      家西  悟君    石毛えい子君
      大島  敦君    鍵田 節哉君
      金田 誠一君    五島 正規君
      城島 正光君    土肥 隆一君
      三井 辨雄君    水島 広子君
      江田 康幸君    桝屋 敬悟君
      佐藤 公治君    小沢 和秋君
      山口 富男君    阿部 知子君
      中川 智子君    松浪健四郎君
      川田 悦子君
    …………………………………
   厚生労働大臣       坂口  力君
   厚生労働副大臣      鴨下 一郎君
   厚生労働大臣政務官    渡辺 具能君
   政府参考人
   (法務省民事局長)    房村 精一君
   政府参考人
   (厚生労働省雇用均等・児
   童家庭局長)       岩田喜美枝君
   政府参考人
   (厚生労働省社会・援護局
   長)           河村 博江君
   政府参考人
   (国土交通省大臣官房審議
   官)           小神 正志君
   厚生労働委員会専門員   宮武 太郎君
    ―――――――――――――
委員の異動
十一月八日
 辞任         補欠選任
  奥谷  通君     金子 恭之君
  棚橋 泰文君     山口 泰明君
  谷津 義男君     水野 賢一君
  石毛えい子君     城島 正光君
  野田  毅君     松浪健四郎君
同日
 辞任         補欠選任
  金子 恭之君     奥谷  通君
  水野 賢一君     谷津 義男君
  山口 泰明君     棚橋 泰文君
  城島 正光君     石毛えい子君
  松浪健四郎君     野田  毅君
   ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 母子及び寡婦福祉法等の一部を改正する法律案(内閣提出、第百五十四回国会閣法第六六号)


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     ――――◇―――――
坂井委員長 これより会議を開きます。
 第百五十四回国会、内閣提出、母子及び寡婦福祉法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
 この際、お諮りいたします。
 本案審査のため、本日、政府参考人として法務省民事局長房村精一君、厚生労働省雇用均等・児童家庭局長岩田喜美枝君、社会・援護局長河村博江君及び国土交通省大臣官房審議官小神正志君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
坂井委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
坂井委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。金田誠一君。
金田(誠)委員 おはようございます。民主党の金田誠一でございます。
 まず第一点目でございますが、児童扶養手当の削減についてお尋ねをしたいと思います。
 この件につきましては、法改正に先立って政令が改正されまして、この八月から児童扶養手当が削減されているところでございます。これによる削減額は、国費ベース、事業費ベースで、平成十四年度、十五年度、それぞれどのような金額になりますでしょうか。お答えいただきたいと思います。
岩田政府参考人 平成十四年八月の所得制限などの見直しによりまして児童扶養手当の削減が行われますが、その金額は、平成十四年度の予算においては、年度途中からの削減でございますので、国費ベースでは約百二十億円、地方負担を含めた事業費ベースでは約百六十億円となります。
 平成十五年度概算要求におきましては、この削減が平年度化いたしますので、国費ベースでは約三百六十億円、事業費ベースでは約四百八十億円と見込んでいるところでございます。
 また、一方では、受給者が毎年四、五万人ずつ増加をしているということがございますので、それを見込んだ児童扶養手当の予算の要求ということにいたしておりまして、平成十五年度では二千五百五十億の要求をいたしておりまして、前年比で八十数億の減ということになっております。
 その八十数億の減といった削減分につきましては、自立支援策のための予算に優先的に充てる、このような予算要求にさせていただいております。
金田(誠)委員 先般来の審議の中でも、母子世帯、大変厳しい状況に置かれているということが明らかになっていると思うわけでございますが、こういう中で、児童扶養手当を総額で削減するという政策判断は一体どういうことなのか、何度お聞きしても理解に苦しむわけでございます。
 改めて、どういうお考えでこの四百八十億もの金額を削減されたのか、いま一度お聞かせいただきたいと思うんです。
岩田政府参考人 十五年度の概算要求におきましては、母子家庭対策トータルでは前年度とほぼ同額でございまして、削減はいたしておりません。先ほど申し上げましたように、受給者が毎年四、五万人ずつふえていくという状況でございますので、このままでは児童扶養手当の、国としての手当てをすべき予算額が毎年約二百億円ふえ続けるということになりまして、厳しい財政事情の中では制度の維持自体が難しくなるというふうに考えたところでございます。
 このため、今回の八月の児童扶養手当制度の見直しは、自立支援策を強化するという観点から、母子家庭などに対します子育て、生活支援策ですとか、就労支援策、養育費の確保策なども含めまして、総合的に母子家庭を支援する、そういう対策として見直そうということでございます。
 具体的な八月の児童扶養手当制度の改正、これ自体につきましては、働いたことによって得られる収入がふえた場合に、その就労によって得られた収入と児童扶養手当の合計である総収入が常に増加をするように、収入がふえるに従って手当額をきめ細かく逓減させていく、そういう仕組みにいたしまして、児童扶養手当自体も自立促進型になるよう改正したものでございます。
金田(誠)委員 要するに、全体の予算を圧縮したいという考え方ですよね。トータル予算の中でこういうところに、私は、ほかは削れるところはたくさんあると思うんですけれども、こういうところだけは、本当に自立支援策なりが功を奏して、その結果としてこの手当の受給者が少なくなる、こういうことを目指すべきものであって、それを、自立支援策はこれからやりますよという中で、手当の金額だけを最初に削るということは全く論外の話だ、理解しかねるということを申し上げておきたいと思います。
 さらに、この今回の法改正によって、手当の受給期間が原則五年を超える場合の減額措置が導入されることになるわけでございますが、現行どおり子供が十八歳に達するまで支給するということを継続すれば、どういう問題が起こりますでしょうか。
 この自立支援策が功を奏して、五年でなくても、四年でも三年でも、手当なしで子供さんを養育できるという状況になれば、それは話は別でございますけれども、そうならないものについても五年で打ち切る、もうどう考えても理解しかねるわけでございます。現行どおり十八歳になるまで支給するということに、どういう問題がございますか。
岩田政府参考人 今回の法律案におきまして、児童扶養手当制度を、離婚などによります生活の激変の時期を一定期間緩和しまして、その間に自立支援のためのさまざまな施策を講じて、なるべく早期に自立をしていただこうという考え方から制度を見直したものでございます。この見直しがなければ、将来に向けてさらにふえ続けることが予想される母子家庭に対しまして、この給付制度を安定的なものとして維持することが大変難しくなるというふうに考えております。
 五年間を経過した後の逓減につきましては、お子様が小さいときの年数はカウントしないとか、御本人が障害や病気を持っておられるということで自立したくてもできないような状況にある場合は、十分配慮したいというふうに思っております。
 また、お子さんが高校生などになって教育費の負担が大変な時期に切られるのは、あるいは額が逓減されるのは困るというお声も聞きますので、今般は、母子福祉貸付金の中におきまして奨学金関係の貸付金を充実し、また、第三者の保証人がなくても、子供さんの名義で借りて、お母さんが保証人になれば借りられるということで、その奨学金も活用していただきながら教育費には対応していただこうということでございます。
 そういったさまざまな配慮を丁寧にやりながら、五年間に自立の対策を集中して、自立を促進していこう、こういう考え方に基づいた制度改革でございます。
金田(誠)委員 要するに金の問題ということでございまして、こういう制度は、金があるからやるとか、ないから切るとか、そういう問題ではないだろう。厚生労働省、しっかりしていただきたいと思うわけでございます。
 そこで大臣にお伺いをいたしますが、児童扶養手当を受給しながら一生懸命皆さん頑張っておられる。それでも、五年たって、児童扶養手当の受給限度の範囲、百三十万まで、あるいはそこから三百六十五万までというのがあるわけですが、こういう中で、受給資格のある方、一生懸命頑張っても五年間でこういう所得しか得られない方々、こういう場合であっても、この政令で定めるところにより、その一部を支給しないということになるんでしょうか。いかがでしょう。
坂口国務大臣 この法律を決めるに当たりまして、実は私も随分悩んだわけでございます。
 しかし、よくよく考えてみますと、母子家庭のお母さん方が働いておみえになって、そしてその所得が平均して二百二十九万というところに最大の問題がある。これは何とかしないといけない。
 中身をもう少し見ると、常勤をしておみえになる皆さん方は三百万を超える。女性の平均であります三百五、六十万に近いそういう値になっておりますが、やはりパートの方が多い。そして、パートの方が多いがゆえに全体として二百二十九万という値になっているということを知りまして、これはやはり、一番必要なことは、母子家庭の皆さん方に何を一番になすべきかといえば、そこのところを解決する努力をすることが一番大事ではないかというふうに思った次第であります。
 そういう意味で、厚生労働省、この五年間でそこをやらなければ、おこたえするようにやらなければいけないわけでありまして、大変大きな責任をしょい込んだというふうに私は思っております。
 だから、この五年間の間にいかにそこを政策を展開し、そして、皆さん方とよくお話し合いをして、そして、すべてとはいきませんけれども、多くの皆さん方が常勤をしていただけるような体制をどうつくり上げていくかということにすべてはかかってくる。もしそれに失敗をするようなことがあれば、五年後に予定はいたしておりますけれども、そう予定をしたからといって、そのままいけるかどうかわからなくなってくる。ですから、その責任はこの五年間にかかっているというふうに自覚をしている次第でございます。
金田(誠)委員 大臣のお人柄でございますから、この決断には相当お悩みになったんではないかなということはよくわかるわけでございます。しかし、大臣は大変責任を背負い込んだとおっしゃいますが、私はこういうやり方では成功しないというふうに思います。
 このやり方は、北風と太陽に例えれば、北風のやり方でございます。五年間で切るぞとおどかしをかければ、今までまじめに仕事を探してこなかった者も探すだろうという判断なんですね。その根底には、母子家庭は十分な努力をしていないという判断がある。まさに新保守主義の物の考え方、竹中平蔵流の物の考え方でございます。
 私は坂口大臣がそういうお考えに立っているとは到底思えません。したがってお悩みになったというふうに思いますが、北風を吹かせれば旅人はマントを脱ぐというのは間違いです。ますますマントをかたくするだけ、今度は生活保護に頼らざるを得ないということに追い込んでいく。逆の効果を生むと私は思います。北風ではなくて太陽を照り輝かせることが坂口大臣らしいやり方だ、こう思うわけでございまして、五年先、成功しないということをまず私は申し上げておきたいと思います。
 その上で、五年先のことを今からコンクリートにする必要は全くないわけでございますから、きちんと見直していくということを担保すべきだと思います。
 今までの御答弁の中でもそれらしき感じは受けとめてはいるわけでございますが、きちんと担保するという方策を考えられませんか。附則にきちんとその旨つけ加えられるとか、いろいろ考えられると思うんですが、いかがでしょう。
坂口国務大臣 今回の改正案におきましては、児童扶養手当制度を、離婚などによる生活の激変を一定期間で緩和をして自立を促進する制度に改めるという観点から見直すことにしているものでありまして、前回にもお答えを申し上げましたが、三歳未満のお子さんがありますとか、あるいはお母さんが病気がちでありますとか、あるいはまたお子さんが病気がちでありますとか、いろいろな環境の皆さん方がおみえでございましょう。そうした皆さん方に対しましては、例外規定と申しますか、すべて当てはめないことにしていくというふうにしているわけでありまして、北風と南風の話がございましたが、決して北風を私たち吹かそうとしているわけではありませんで、総合的な自立政策というのは、むしろ見方によりましては温かい政策であって、この政策こそ最初になければならなかった。財政的な支援をすればそれでよしというふうにしてきた今までの考え方に私は間違いがあったと思っております。
 自立ということを考えましたときに、これからすべての分野でそうでございますが、これは障害者の問題であれ高齢者の問題であれ同じでございますけれども、すべてそうした人たちを弱者というとらえ方をするのではなくて、その人たちに自立の機会をいかに与えるかという、その人たちを通常の皆さん方と同じようにするためにどうするかというところに最大の問題がある。私は、そこにこそこれからの政治は日の目を当てていかなければならないというふうに思っておりまして、そういう意味で、今回の改正も、一見今までの手当を減額するということがありますから何となく後退をさせるように見えますけれども、トータルで見れば決してそうではない、この人たちを真剣に支えようとしているというふうに私は理解をいたしております。
 委員の御主張は理解しながら、私の思っておりますことを述べた次第でございます。
金田(誠)委員 大臣、病気だとか障害だとか、そういう事情に着目していろいろ配慮もするということをおっしゃったわけでございますが、児童扶養手当そのものは、母子世帯というハンディに着目した制度なわけですよ。障害がなくても病気でなくても元気でも、女性が一人で子供を育てていくというのがどれほど大変なことかというところに着目した制度であるわけですから、五年間で手当を当てにしないでやっていける状況ができればいいですけれども、できなければ母子世帯ということで援助をしていく。この制度の趣旨を曲げるということはどうなんですか。それを今やろうとしているわけですよ。
 それも五年先のこと、五年間考える期間があるわけでございますから、よくよく検討していただいて、障害がなくても母子世帯という中で、一生懸命職を探しても、今正規職員がどんどんパートにされている時代でしょう。そういう時代ですよ。そういう中で五年間たってもパートのまま、それだけでは生活できないという方はまだまだ残ると思いますよ。そういう方々にこの手当を切るなんというのはとんでもない話だ。
 今の段階からコンクリートにせずに、大臣、努力をするということはもちろんしていただかなければなりませんが、きちんとした見直しを考えていただきたいと強く要請をしておきたいと思います。
 次に、母子世帯等の実態把握について、大きな二点目として伺いたいと思います。
 今回のような実態とかけ離れた考えが打ち出されてくるのも、母子世帯等の実態がきちんと把握されていないということによると思います。
 平成十年度「全国母子世帯等調査結果の概要」という資料がございますけれども、その表十四に「平成九年の年間収入状況」というのがありまして、それによれば、大臣も先ほどおっしゃった二百二十九万、平均収入になっているわけでございます。ところが、この金額には、生活保護法に基づく給付、児童扶養手当等の社会保障給付、就労収入、別れた配偶者からの養育費、親からの仕送り、家賃地代など、すべての収入の額が含まれているわけでございます。
 この中で、就労収入だけに限ってみれば、平均収入、どういう金額になりますでしょうか。
岩田政府参考人 平成十年度の全国母子世帯等調査の調査票におきましては、収入の内訳を区分して把握できるような設計になっておりませんでした。
 したがいまして、御指摘の二百二十九万円が児童扶養手当と就労収入から構成されていることが典型的なケースかというふうに思いますけれども、その場合の就労収入は、児童扶養手当が年間五十一万円でございますから、約百八十万円程度と推計をされます。
 また、全国の母子世帯調査を補完する意味で、昨年、日本労働研究機構に調査を委託しまして、母子世帯の母の就業支援に関する調査ということを実施いたしました。それによりますと、現に仕事をしている方に限っての平均収入でございますけれども、年間二百四十五万六千円という結果になっております。
金田(誠)委員 生活保護の給付、これまで含めて収入にカウントするということで、何の意味があるのかという気がいたしますよね。きちんと母子世帯の収入の実態をとらえるには、就労収入を中心として、本当に自分の力でどれだけ収入を得ることができるのか、それを把握した上で、児童扶養手当はどう設計すべきか、生活保護というのはどういう役割を果たしているのかというものがなければ、実態の把握が困難だ。
 二百二十九万というのは、変な話、架空の数字と言わざるを得ないと思うわけでございまして、今後の調査の中では、この辺、きっちりとわかるような調査をしていただきたい。これは御要望申し上げておきたいと思います。
 だんだん時間がなくなりましたので、ちょっと中間飛ばします。
 同じ資料の表の六の一、これによると、「母の就業状況」というものがありまして、事業主、常用雇用、臨時・パート、その他というのがある、さらに不就業の世帯も出ているわけでございます。この全体の平均収入が二百二十九万と、生活保護費も入れての話ですが、されているわけでございます。
 それで伺いたいのは、それぞれの就業状況、事業主、常用雇用、臨時・パート、その他、不就業、それぞれの就業状況ごとの平均賃金、これについてどうなっているか、数字を教えていただきたいと思います。
岩田政府参考人 全国母子世帯調査結果概要で先生が御指摘になっている調査項目についてですが、今お尋ねの就労の状況別の平均収入というのが集計できておりません。
 先ほど申し上げました十三年度の日本労働研究機構によります調査によりますと、勤労収入は平均で二百四十五万六千円でございました。そのうち、正社員で働いている方については三百四十二万七千円、パート、アルバイトで働いておられる方は百三十三万三千円、その他の非正規で働いている方が二百九万八千円、自営業をやっておられる方が二百六十四万三千円ということになっております。
金田(誠)委員 今のは第何表に出ているんですか。
岩田政府参考人 実は全国母子世帯調査は五年に一回の調査であって、間隔が五年間開いているということもございますし、それから、今先生がまさに御質問いただいておりますような就業別の詳細な状況が把握できるような設計になっておりませんでした。
 そういうことで、今回の改正の検討に当たりまして、昨年、日本労働研究機構に特別に、臨時に調査を委託いたしまして、調査をいたしたものでございます。先ほど申し上げました数字は、その日本労働研究機構の調査結果でございますので、先生のお手元にあります調査ではございません。
金田(誠)委員 この全国母子家庭等調査というのがいただいている資料なんですけれども、これは五年に一回ということのようでございますが、次回、いつ行われるのか。その際、私が今指摘したように、あるいはまた上級学校への進学率なども出ていないわけでございますけれども、そうした母子家庭の実態がもっときちんと浮き彫りになるような調査にすべきだと思うわけでございます。
 いつやるのか、調査内容の見直しがあるのか。そして、次に五年後がまた予定されているわけでございますね、減額が。これに向けても、その直前にもきちんと調査ができるような、そんなことを考えていただきたいと思いますが、どうでしょうか。
岩田政府参考人 全国母子世帯調査は五年ごとのローテーションで過去からやってまいっておりますけれども、次回は来年、平成十五年度でございます。
 平成十五年度の調査を設計するに当たりましては、今まさに先生が御指摘になりましたような項目も含めて、母子世帯の状況を深く掘り下げた分析ができるように調査項目の検討もしたいというふうに思っております。
 また、これは五年に一回の調査でございまして、指定統計という大がかりな調査でございますので、これの間隔を変更するというのは、検討してみたいと思いますけれども、なかなか難しいかもしれません。そういった場合については、また別途、臨時の、特別の調査をこの間に何回かやって、今回の自立支援策の効果など、しっかり測定していけるような調査を考えていきたいと思います。
金田(誠)委員 調査を前倒しすることもさることながら、手当の減額というのを後ろ倒しするというのが本来いいのではないかなと思ったりしておりますが。いずれにしても、実施に当たっては、きちんとした調査、納得のいく形。調査すれば、そういうことをやるなんていう状況にはなるわけがない、私はこう思いますので、ぜひひとつ、その辺御検討いただきたいと思います。
 最後の質問になります。新保守主義の誤った考え方についてということでございます。
 東京大学の神野直彦先生、この本でございますが、「痛みだけの改革 幸せになる改革」という本でございます。
 その中で先生は、小泉内閣が進めてきた新古典派、新保守主義による構造改革の基本的な方向というものを批判して、次のように述べておられます。「ここには、これまでの社会が行き詰っているのは努力もせず知恵も出さない人が十分に生活が保障されているからで、そのためにモラル・ハザードが起き、努力を怠らず知恵を出す人がやる気を失っているからだという現状認識があります。 そして、これでは経済が活性化しないので、知恵を出し努力した人だけが報われる社会をつくろうとすれば、経済は活性化するはずだという予測があるのです。」
 昨年、ことしと出されたいわゆる骨太の方針なるものは、まさにこの神野先生が指摘するとおりのものであり、これに基づいて今回児童扶養手当の削減が行われ、法改正が提案されていると思うわけでございます。しかし、その結果はどうなるか。神野先生は次のように述べておられます。「よく考えればわかることなのですが、勝つのはすでに強くなっている者」「これまでの構造において強い者がさらに強い者になれる社会をつくる。」ということだ、こう指摘をされていますが、まさにそのとおりだと思うわけでございます。
 大臣がこうした弱肉強食の社会を目指しているとは考えにくいわけでございますが、御所見があればお聞かせをいただきたいと思います。
坂口国務大臣 学者というのはいろいろなことを言うものでございますし、さまざまな議論があることはよく承知をいたしております。
 しかし、今我々が一番考えなければならないのは、母子家庭ならば母子家庭のお母さん方が一般の社会の中で格差がある、格差が生まれている、その格差とは一体何なのか、一番解消しなければならないのは私はそこだと思っております。
 この格差を解消することによって、いわゆる格差を解消するということは、一般の皆さん方と同じレベルに立っていただく、同じ出発点に立っていただくということでございますから、それから先は御努力いただくかいただかないかによって違いが生じるだろう、しかし、スタートラインのところで格差があるということはいけない。この格差の是正の社会的なシステムを改革していくことが一番課せられた問題であって、そこに私たちはこれから努力をしていかなければならないと考えております。
金田(誠)委員 その格差を是正する最低の保障が児童扶養手当だと思うわけでございまして、それさえも外そうあるいは圧縮しようということについてはぜひお考えをいただきたいと申し上げまして、時間が参りましたので質問を終わります。
坂井委員長 次に、山井和則君。
山井委員 一時間質問をさせていただきたいと思います。特に、坂口大臣に質問する点も多いんですが、どうかよろしくお願いいたします。
 きょうは、私、この母子寡婦福祉法の改正について質問できますこと、非常に万感胸に迫るものがあります。
 というのは、多少個人的なことになりますが、大学時代、私はバイオの研究をしておりまして、酵母菌の研究をしておったんですが、その私が福祉や政治に関心を持ったきっかけが、学生時代、六年間母子寮でボランティア活動をしておりました。それまで全く福祉には関心を持っておりませんでしたけれども、そこで私が感じたのは、今は母子生活支援施設という名前になっておりますが、そこが駆け込み寺なわけなんですね。
 京都駅から電話があって、今から行ってかくまってもらえますかと言って、子供さんを二人連れて逃げ込んでこられるお母さん。DVの御主人から殴られて顔にあざをつくって、あるいは肋骨にひびを入れて、子供を抱えて駆け込んでこられるお母さん。また、その母子寮で出されたボンカレーを食べて、こんな白い温かい御飯を食べるのは一週間ぶりですと言って涙を流されるお母さん。また、当時、京都の高校進学率は九八%ぐらいでしたけれども、その二%、なかなか高校に行けないという状態がその母子寮のお子さん方にもありました。
 私は、その母子寮でボランティアをするまでは福祉には関心がなかったわけですけれども、そういう本当にお母さんと子供が不幸と幸せのはざまで必死になって自立に向かって生きていられる、そういう姿を見て、こういう問題を何とかしたいなということを切に感じました。それで私は、化学の研究の道から、福祉や政治に関心を持つようになったわけです。
 そういう意味では、まさに今回の法案というのは、そういう命綱である児童扶養手当を減額するということも含んだ非常に問題点の多いものだと思っております。
 また、もう一つ私ごとになりますが、私の妻も小学校のときに父親を亡くしました。今回国会でこういう法案の審議をしているんだと言ったら、それはとんでもない、私はこの児童扶養手当があったから大学まで行くことができたんだということを言っておりました。
 母子世帯九十五万世帯、そして大体そのお子さん方は約二百万人とも言われておりますけれども、その子供たちはこの場に来ることはできません。そういう意味で、そういうお母さん方、またこの法案の影響で人生や進学、そういうものがある意味で悪くなりかねないお子さん方の声を私は代弁させていただきたいというふうに思っております。
 それで、冒頭少しだけ、この母子家庭の自立支援の前に、同じ自立支援ですが、障害者の自立支援について坂口大臣にお聞きしたいと思います。
 来年四月から支援費制度が導入される予定です。私も勉強会を仲間とやったりしましたが、どういう制度なのかさっぱりわからないと。この支援費制度、いいですか悪いですかと私が聞いても、それ以前に、どんな制度なのかがよくわからないという声が非常に強いわけです。具体的な姿が見えない。サービスがふえるのか。選べると言うけれども、実際、サービスがふえなかったら選べないじゃないか。自己負担がふえるだけではないか。そういう心配を多く持っておられます。
 実際、支援費制度になって何が具体的によくなるのか。坂口大臣、お聞かせください。
坂口国務大臣 障害者の支援費制度の導入に向けまして、現在さまざまな問題の詰めを行っているところでございます。
 障害者福祉サービスにつきましては、これは、利用者の立場に立ちました制度を構築するために、行政がサービスを決定する従来の措置制度を改めまして、障害者みずからがサービスを選択するいわゆる支援費制度という新しい仕組みへ来年度から移行させたい、こういう考え方でございます。
 今もお話がございましたとおり、選択ができるようになるというふうに言いましても、その選択の幅がなければ何も選択できないではないかというふうに言われますのはそのとおりでございまして、したがいまして、利用者みずからがサービス提供事業者を自由に選択できるようにいたしますためには、その選択を広げていかなければなりません。
 利用者がサービス提供事業者との対等の関係に立ちましてサービス提供を受けることができるようにしますためには、どういう幅を広げていけばいいか。現在までも既にさまざまな仕組みがありますけれども、現在までの仕組みだけでいいのか、さらにこれからその中間的なものですとか新しい質のものをつくっていくのか、そうしたことも含めてこれは考えていかなければならないわけでございますが、現在までありますさまざまな選択肢というものを一層これはふやしていく、ふやさなければ選択できないわけでありますから、そこを行っていきたいというふうに思っております。
 ただこれも、もうかなり選択のできる地域もあるわけでございますが、地域差もかなりあるわけでありまして、そのことをこれは解消していかなければならないというふうに思っております。
山井委員 まさに今、地域間格差ということもおっしゃいましたが、それも開きつつあります。
 きょう、資料を三ページお配りさせてもらいました。
 その一ページ目にありますように、基盤整備計画についても、全国平均で、計画がないという都道府県が二五%、四つに一つもあるわけですね。また、私の知り合いの視覚障害の友達からもメールが来ましたが、説明会が今まで一回しかない、自分は仕事があって行けなかった、困ったからテープを聞いたけれども、そのテープを聞いてもよくわからない。実際、説明する方が未定という言葉を連発されているというわけですね。
 本来、福祉をよくするはずの支援費制度であるはずですのに、逆にそれが不安を与えているという現状があるわけです。そういう意味では、基盤整備のバックアップ、地域間格差が開かないように、さらにこういう説明会や広報の周知というのをお願いしたいと思います。これは要望にとどめさせていただきますが。
 もう一点、坂口大臣にこの支援費制度についてお伺いしたいと思います。
 二ページ目のこの資料を見てください。
 これは、私が本当に尊敬するジャーナリストであり研究者である大阪大学の大熊由紀子教授からいただいた資料であります。ここに、日本の障害者福祉の問題点がこの一枚のグラフに象徴されていると思います。大臣、副大臣、これを見てください。
 七〇年代、日本は知的障害者の入所数が少なかった。それで八〇年代、ふやしていったわけですね。ところが、そのころにはもう施設入所というよりも地域福祉だということで世界の流れは転換していた。ところが、日本だけが逆行していったわけです。そういう意味では、坂口大臣にお伺いしたいのですが、この支援費制度において、今までの施設に余りにも偏り過ぎていた福祉を地域に移行させていく、そういう方向性を持っておられるのか。
 ここに本もありますけれども、「グループホームからの出発(たびだち)」という本や「ふつうの場所でふつうの暮らしを コロニー雲仙の挑戦」という本もありますが、こういうふうに、やはり地域で暮らす時代にしていくその後押しが支援費制度だということでないとだめだと思いますが、坂口大臣、いかがでしょうか。
坂口国務大臣 それは御指摘のとおりだと私も思っておりますし、今般もそういうふうにしたいと思っております。やはり、いわゆる施設入所というのが何か金科玉条のように言われた時代があったわけでありますけれども、そうではなくて、家庭に戻り、地域に戻っていただいて生活をしていただける、そういう体制をつくり上げていかなければならないわけであります。
 したがいまして、施設におきましても一定の計画を立てていただいて、そして、地域に帰っていただけるように、あるいはまた家庭に帰っていただけるようにする。そうしたことをおやりいただくときには特別にバックアップをしていくとか、そうしたこともやりたいというふうに思っておりまして、地域あるいはまた、地域という言葉が即在宅ということではないかもしれませんけれども、しかしできる限り在宅で、そして生活をしていただけるような環境というものを整えていかなければならない。
 そのときにやはり大事なことは、これは財政的な問題ではなくて、やはり障害者に対する国民の理解というものも大事でありまして、その理解がなければ、なかなかそこは実現できない難しい問題もあるというふうに思っております。やはり、国民が障害者に対する正しい認識を持って、そして、やはり支えなければならないという気持ちをみんなが持つということが大事でありまして、その辺の啓蒙ということも大事だというふうに思っております。
山井委員 今、地域の受け皿、意識ということもありましたが、まさにこのグラフを見ていると、日本にはそういうものも欧米に比べて少ないのかという気もしますけれども、そのことを啓蒙していくこと、そのこと自体も行政の重要な仕事でありますので、ある意味では、その地域の理解がないというのが言いわけにならないように、何としても方向転換をしていただきたいと思いますし、介護保険と違いまして、やはり予算が十分についていない。老人福祉、介護保険の場合は予算もかなりふえたわけですね。そういう意味では、選べるということが絵にかいたもちにならないように、しっかりと予算的な裏づけもこれからしていっていただきたいと思います。
 それでは、母子の問題に移らせていただきます。
 今回、母子家庭の方々の話を聞いてみますと、この法改正というのは逆に自立に逆行するのではないか、要は、手当の減額によって生活保護がふえるのではないかという懸念がふえております。
 本来、児童扶養手当をもらいながらも自立している方の方が生活保護の方よりも楽でないとおかしいわけですね。しかし、今回の改正で、もし五年後に手当も大幅に減額をされたとしたら、逆に、生活保護でない方の方が苦しくなりかねない。そういうふうな逆転現象であるわけで、そもそも生活保護は最後の手段であるわけですから、そういう意味では、自立している方が苦しくなって生活保護の方がまだましだということにならないようにせねばならないと思いますが、この点、坂口大臣、いかがでしょうか。
坂口国務大臣 それも御指摘のとおりというふうに思います。そうあってはならない。
 先ほどからお話ございますように、いわゆる母子家庭という立場によって起こるハンディキャップ、そこをどうなくしていくかということが一番大事でございまして、それを取り除くことによって、そして母子家庭のお母さん方が自由に働いていただく、あるいは子育てもしていただけるという状況が起こるわけでありますから、そこをやらなければ、今おっしゃいましたように、生活保護にならざるを得ないというようなことも起こってくるわけでございます。
 先ほどから議論になっておりますように、年間所得二百二十九万というのは、いかにしろそれは低過ぎる、そこは日本の社会の中のシステムがそのハンディキャップを克服していないというふうに私は理解をいたしております。一番政治が力を入れなければならないのは、格差のあります、ハンディキャップのありますそのシステムをどう変えるかというところに最大の課題があると思っている次第でございます。
山井委員 昨年末の調査によりますと、母子世帯の人々の収入は三年前より減って、失業率も、三年前の九%から一四%に母子世帯の中でふえている。その中では、八七%の方が生活意欲をなくしたりすることがあると答えられて、二六%の方、何と四人に一人のお母さんが死にたいと考えたこともあるという、こういう本当に厳しいデータも出ております。そういう意味では、生活保護も受けられない、また本当にぎりぎりの児童扶養手当さえ削られるということにならないようにしていただきたいと思います。
 そこで、今回は、この法改正の趣旨は、手当を削って就労支援へと、ある意味で方向性としたらなるほどなと思える部分がないでもありません。しかし問題は、この就労支援が本当に実効力を持つかということなんです。
 実際、NPOの団体の方々の話を聞くと、最近はもう研修会ばかり行って仕事が見つからないお母さんがふえている、あるいは、資格を取って、資格をいっぱい取って仕事が見つからないお母さんもふえている、そういうことを聞いております。ですから、今回の就労支援策によって、結果的にはなかなか、スキルアップや、あるいは正職員になれない、あるいは職につけないというふうなことでは、結局はやはり手当を削られただけになったということになってしまうわけです。
 そのような意味では、就労支援は、国や地方団体などの公的機関等において、母子家庭のお母さん方に対する一定の雇用率の義務づけや、母子福祉団体等に対する事業の優先発注の義務づけなども決めて、公的責任で考えていく必要があると思いますが、そのあたり、実効性のある就労支援策ということで具体的にいかがお考えでしょうか。
坂口国務大臣 お母さん方のお仕事が少なくなってきている、現在の経済状況を考えますとそれは事実だろうというふうに私も思います。先ほど出ました障害者の雇用の問題も大変悪くなってきております。これはトータルでその辺のところは考えなければならない。とりわけ、格差のある立場の皆さん方に対して、それをまず保護するということが大事だろうというふうに思っております。
 したがいまして、現在、トータルで申しますと、リストラ等が行われますとその企業の株価が上がるといったような状況がございます。しかし、それは証券の話でございまして、そのことをもって、同じような考え方で施策を国が行っては、あるいはまた地方自治体が行ってはならないというふうに思っておりまして、もう少しやはり雇用を重視した社会をつくり上げていかなければならないわけでありますから、その中で、この母子寡婦の問題もどのように位置づけていくかということをやらなければならない。
 そういう意味で、先日も申しましたけれども、省庁におきましても、あるいはまた地方自治体におきましても、率先してやはり雇い入れをしていくということが必要だというふうに思っておりますので、厚生労働省に対しましても、各省庁に先駆けて厚生労働省がその手本を示すということが大事だということを先日来言っているところでございます。
 厚生労働省と申しましても、これは本省だけの話ではありませんで、全国にたくさんの厚生労働省関係の職場というのはあるわけでございますから、そうしたところにできる限り雇用が可能になるようにしなければならないというふうに思っている次第でございます。
山井委員 今、やはり公が率先してという御答弁をいただきましたが、私も、先日ある母子家庭の方々の勉強会に参加したんですが、その中でも、もう本当にここ一、二年でばたばたと首を切られておられます。それで、やはり安定して残っているのは公的雇用の方なんですね。
 だから、そういう意味では、公的な機関が率先するということで、ぜひともお願いしたいですし、今大臣の御答弁の中に、リストラという言葉がありました。確かにそうです。企業はリストラができる。しかし、日本の社会が母子家庭の方々をリストラするということはあってはならないことなんですね。ですから、先ほど金田議員の中でも、北風ではなくて南風と。やはり母子家庭の方々との格差を狭めるような、そういう政治をしていかねばならない。
 次に、国土交通省の審議官の方にお伺いします。
 また高齢者の住宅支援策についてで、公営住宅についてはもう附帯決議に入っておりますのでお聞きしませんが、高齢者の住宅支援策と似たようなことがこの母子家庭の方にもできないか。つまり、高齢者居住法に基づく高齢者居住支援センターによる家賃債務保証と同様の制度を母子家庭にも創設すべきじゃないか。
 実際、母子家庭の方々は、なかなか保証人もいないということで、民間の住宅が借りられない、そういうふうなことがあるわけです。これについて、国土交通省さんは、民間の債務保証会社やそういうところでできるということをおっしゃっているわけですが、実際、現場からは保証人がいなくて借りられないという悲鳴が上がっているわけです。
 そのあたり、繰り返しになりますが、高齢者の住宅支援策と同様の家賃債務保証の制度を母子家庭にも創設すべきではないかという点について、答弁をお願いします。
小神政府参考人 今先生からお尋ねのございました高齢者の方々に対する債務保証の制度、これは昨年から高齢者居住法に基づきまして実施いたしております。それに対しまして、母子世帯に対する債務保証について同じような仕組みでやれないかというお尋ねでございますけれども、今委員も御指摘ありましたように、民間の保証会社で債務保証ということを実施しております。これにつきましても、その実績は着実に今増加、ふえてきているというような実態もございます。
 こういった状態を踏まえて、私どもといたしましては、公営住宅の優先入居の制度の活用状況も勘案しながら、これから必要な策についても検討をしてまいりたい、かように考えております。
山井委員 民間会社による家賃債務保証も伸びてきているということなんですが、実際には、子供がいるからとか所得が少ないからとか、保証人がないからということで、いろいろな理由で、その民間の会社でもいろいろな制限、条件があるわけで、はじかれているケースが多いわけですね。
 そのあたりで、ぜひともこれは御検討いただきたいんですが、民間会社での家賃債務保証が母子家庭についてもふえているということですけれども、ただ、まだまだ足りないと思いますので、もう一歩、やはり足りないという現状であればそのことも検討するということを、もう一歩踏み込んで御答弁願えないでしょうか。これは非常に重要な点ですので。
小神政府参考人 今もお答え申し上げましたように、母子世帯の方々に対する居住の安定、これについては非常に重要な課題だというふうに私どもも認識しております。
 そういった認識のもとに、公営住宅の優先入居とかいろいろな手当てが行われているところでございますけれども、今の民間の賃貸住宅についての家賃の保証システム、これを高齢者の方々と同様にという御指摘でございますけれども、実際には、今先生からもお話ありましたけれども、民間の家主の方々が、いろいろな方々を事実上敬遠している。高齢者の方々ですとか障害者の方々とかあるいは多子世帯の方々とか、そういった方々を敬遠する傾向にございます。特に敬遠する率が高いのは高齢者の方々でございまして、特にひとりの高齢者というのが一番多いかと思います。
 それに比べますと、母子世帯につきましては、高齢者の方々と比較いたしてみますと、民間の調査でございますけれども、十分の一ぐらいの状態にはございます。高齢者を敬遠する率が十倍ぐらい高いというような実態もあります。
 もちろん、そういった実態があるからもうやらなくてもいいということを私ども考えているわけではありませんで、そういった実態も踏まえながら、かつ今申し上げましたように公営住宅の入居の状況等も見ながら、今後検討してまいりたいと考えております。
山井委員 離婚直後、あるいはDVの被害に遭ったりして逃げ出してきた、そういうふうな直後というのは、お金もありませんし、本当に安心して住める場所を探すのは非常に難しいことですので、ぜひとも御検討いただきたいと思います。
 それでは次、坂口大臣にお伺いしたいと思いますが、児童扶養手当の申請のときや、あるいは減額するのかどうかという、その個々に対する五年後の見直しのときの調査、そこで、窓口で、窓口ハラスメントと言われる被害に遭っているお母さん方が非常に多いんです。そこのプライバシーの尊重のことについてお伺いしたいんです。
 どういうことがあるかというと、養育費をもらっていたら受給できないというふうに誤って答えた窓口とか、あんたみたいな未婚の母は受けられないというふうなことを言われた事例。あるいは、レポート用紙三枚に離婚した経緯を書いて持ってこいと言われたケースとか、なぜ離婚したのか、あんたの辛抱が足らぬかったんやないかというふうに窓口で説教されたケースですとか。やはり、本当に命綱を求めて窓口に行かれる方に対して、こういうふうな対応というのは非常に問題が多いと思います。逆に、人権侵害とも言えると思います。
 このような点について、はっきり言って、窓口の人一人一人は離婚に対する考え方あるいは家族に対する考え方はいろいろあろうかと思いますが、そんなところで説教をされたり、ねちねちと根掘り葉掘り聞かれても、やはりそれは大きな心理的な圧迫になるわけで、もちろん不正受給は防がねばなりません。しかし、今言いましたような余りにも行き過ぎているケースが多いわけですから、窓口でも法律に準拠した対応をすべきであって、プライバシーに最大限に配慮すべきだと思いますが、坂口大臣いかがでしょうか。
坂口国務大臣 きのうも、中津川先生からでしたか、不正請求もかなりあって、それはそれできちっとやらなければならないというお話がございました。それはそれでやらなければならないというふうに思いますが、今お話がありますようなそんな行き過ぎたことをお聞きするということも、またこれは母子家庭に対して甚だ失礼なことでございまして、そうしたことのないようにやはりしていかなければなりません。
 それは、地方自治体の担当者の皆さん方にも我々の方もそれは言わなきゃいけないのかもしれませんけれども、そこは、国がそういうことを言うとかどうとかということの前に、やはり公務員として、国民の皆さん、そして地域の市町村の皆さん方に接する心構えとして持っていただかなければならない問題だというふうに思っております。
 最近、この問題に限らず、やはり窓口におけるそうした心ない言葉というのが大変大きな問題になっております。それは医療の現場におきましても同じことでございまして、そうしたことが堂々と語られるというようなことは非常に大きな傷をその人に与えることになるわけでございますし、しかし、必要な聞くべきことは聞かなければならない、そこのところをよくわきまえてやるように、私たちもそれは申しますけれども、そこはしかし公務員としての自覚の問題でもあるというふうに思っております。
山井委員 そういうひどい対応によって、受けられるはずの児童扶養手当を受けられなかった、それによって本当にもう家庭的にも崩壊してしまったというケースが起こらないようにぜひともお願いしたいと思います。
 それに関連して、坂口大臣にもう一つお伺いしたいんですけれども、今回の条文の十四条の中に、受給者が、正当な理由がなくて、求職活動そのほか厚生労働省令で定める自立を図るための活動をしなかったときには支給しないという条項があるわけなんですけれども、これについて、やはり削除すべきではないか。
 というのは、これはどのようにして調査を行うのか、それで、母子家庭の生活状況を丸裸にするような運用によって、勤労意欲、生活意欲、人間的な誇りを奪いかねないというふうに思うわけですが、この求職活動の条項、これについて削除ということ、いかがでしょうか。もしかしたら事前に言っていなかったかもしれませんが、御見解をお聞かせ願いたいと思います。
鴨下副大臣 事前に伺っていなかったものですけれども、十四条のことにつきましては、昨日もお答えしましたように、特別な、まれなケースとして、就職活動等、それからスキルアップのための講習会等も含めて、そういう努力をなされていないような方について、特別まれな場合だけ考えるというようなことでありまして、一般的にはそういうようなことはできるだけないように努めるということでございます。
山井委員 まさにまれなケースという御答弁でしたけれども、ぜひともそうしていただかないと、頑張っているのか頑張っているのかということで問い詰めることは、逆に自立心を引き立たせることにはならないわけですね。だから、そういう意味では、まさにこれは母子家庭を励ますための手当なわけですから、その手当をもらう、あるいはその減額のときの対応で、そういう母子家庭が働く意欲や生きる意欲を失うことがあってはならないと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。
 次に、坂口大臣に、母子支援施設についてお伺いしたいと思います。
 これはまさに私が学生時代ボランティアをしていたところでありまして、私のライフワークであるんですが、現在、母子支援施設が二百四十六あります。地方都市ではニーズが減っている母子生活支援施設もありますが、逆に都市部では、DVの被害者もふえて、非常に数が足りないということもあります。これについて、ふやすべきだと思いますが、いかがでしょうか。
 また、それと、サテライト生活支援施設というのが来年度予算の中で十六カ所入っていますが、これもそういうニーズの高まりにおいては十六カ所では少ないと思います。これももっとふやすべきではないかと思いますが、大臣の御見解をお願いします。
坂口国務大臣 母子生活支援施設といいますのは、今さらもう申し上げるまでもありませんけれども、母子家庭のお母さんやそのお子さんを入所させて、これらを保護するということにあるわけでありまして、自立を促進するためにその生活を支援することを目的としているわけです。
 サテライト型の母子生活支援施設は、離婚等によりまして一時的に生活上の困難を抱える母子世帯を対象に、既存の住宅施設等を活用いたしまして、通常の地域生活が可能になるようにすることを目的としたいわゆるグループホームでございます。
 これは、こうした問題も地域格差は多分あるんだろうと思いますし、今お話ございましたように、やはり地方の方は余っていると申しますか、あいている。しかし、人口過密地帯におきましては、やはり足りないというところも率直に言ってあるわけでございます。そうした格差をできるだけなくしていくということが大事でございまして、そうした意味で、我々も努めたいというふうに思っておりますが、しかし、財源の制限もありますので、一遍にというわけにはまいりませんけれども、できるだけ足らないところを中心にして早く格差をなくしていくようにしたいというふうに思っております。
山井委員 足りないところを中心に格差をなくすということですが、私、母子寮でボランティアをしていて痛感したんですが、やはりDVの被害の方とか、本当に深刻なんですね。例えば、暴力を振るう夫が追いかけてくるからといって、名札もはっきり言って偽名になっている。酒に酔っぱらった夫が子供に会わせろといってどなり込んでくる。あるいは、子供が住んでいる部屋に、母子生活支援施設の外から、別れた夫が石を投げ込んでくる。
 私は一番ショックを受けましたのは、暴力を振るう夫が包丁を持ってやってきた、子供に会わせろと言ってきた。それで、そこの職員さんが、こんなもの、家に行かれたら大変なことになるということで立ちはだかって、女性職員さんがその夫を押しとどめた。その瞬間、刺されたわけですね。それでも、これじゃ大変だということで、血を流しながらも、その女性職員さんは電話をして、お父ちゃんがどなり込んでくるで、絶対戸をあけたらあかんで、殺されるでといって守っている。そういう、本当にこれは大変な世界。本当に駆け込み寺として重要な位置づけで、それが今都市部で不足しているわけです。
 今、格差を、足りないところを埋めていくということですが、DV防止法によってそういう問題が本当に顕在化して、安心して子供と一緒に住める場所がないという女性が多いわけです。女性一人だったらどこでも逃げられるんです。子供を抱えているから逃げられないんですよね。
 そういう点に関して、どうでしょうか、母子生活支援施設、都市部で足りないところはふやす方向で検討するとか、そういう御答弁、いかがでしょうか。
坂口国務大臣 先ほども申しましたとおり、足りないところにつきましてはこれはもうふやしていかなければなりませんので、それは十分に配慮したいと思っております。
山井委員 ありがとうございます。
 それで、この母子生活支援施設、私も過去二十年間接しておりますけれども、変わってきております。最近の傾向は、障害者がふえてきているんですね。例えば、私の知り合いのある施設では、二十世帯入っていて、その二十世帯の中、親が知的障害者がお二人、子供が知的障害者が四人、そして親が精神疾患を患っている方が二人、子供が精神疾患を患っている方が三人。要は、ほぼ半分が親なりお子さんが知的障害や精神疾患に苦しんでいる。ところが、こういう方は普通の方よりも当然ある意味でお世話に手がかかるということで、母子生活支援施設ではそういう方を受け切れないという部分もあります。
 では、なぜこういうことになるのかというと、一般の施設に行くと、子供は知的障害だから預かってもらっても、お母さんと子供が離れ離れになってしまうわけですね。お母さんが知的障害で障害者の施設に入っちゃったら、子供がまず養護施設に行かないとだめだ。これは国際家族年のモットーでもあります母子一体という原則に反するわけですね、離れ離れになったら。
 そういう意味では、これからは、ダブルハンディキャップという障害のある母子の方々をどうするのかというのも現に重要な課題になってきていますが、障害者の加算というものを母子生活支援施設に検討するということ、坂口大臣、いかがでしょうか。それがないがゆえに、なかなかそれは受けられないというケースがあるわけですね。そのあたり、いかがでしょうか。
坂口国務大臣 最近、障害者の皆さん方も結婚をされて、そして立派におやりになるケースもふえてきておりますし、普通の生活ができる状況になってきたということは、ある意味ではこれは非常に前進してきたというふうに思っております。しかし、その皆さん方の生活が全部うまくいくかといえば、今御指摘になりましたようなことも当然のことながら生まれてくるわけでございますので、これは母子家庭の問題と障害者の問題と両面にわたる問題でございます。
 これを母子寡婦の範疇でとらえていくのか、それとも障害者の来年やりますその中で適切に対応をしていくのか。ややもいたしますとその谷間になる可能性がありますから、谷間にならないように、双方それをどういうふうにしていくかということをよく連携して、そうした人のためにも配慮していくということをしていきたいと思っております。
山井委員 まさにこれは縦割り行政のはざまで、それは障害福祉課の問題だとかということで、どうしても立ちおくれがちですので、よろしくお願いしたいと思います。
 私、ショックを受けましたのは、学生時代ボランティアをして、当時二十二ぐらいでしたけれども、二十のお母さんが、私より年下のお母さんが赤ちゃんを抱いて入所してこられました。そのお母さんは知的障害の方でした。なぜこういうことになったのかということで聞いてみたら、言ったらなんですけれども、悪い男にだまされたわけですね。それで妊娠したのがわかったら男が逃げちゃった。お母さんは知的障害、子供が生まれてきた、育てられないわけなんですね。やはりこういうケースも本当に実際あるわけですので、この障害者加算のことをぜひとも御検討いただきたいと思います。
 次に、鴨下副大臣にお伺いしたいと思います。
 今回、母子家庭等日常支援事業というものの充実というのがまたうたわれておりますが、現状は、悲しいかな、余り普及していないんですね、御存じだと思いますが。年間一万四千三百件しか使われていない。これは全国ですから、九十五万人母子世帯がいて一万四千三百件ですから、使っていられる人数でいうと、もうほとんど利用されていないと言えるぐらい残念ながら少ないんじゃないか。
 もちろん母子寡婦福祉団体の方々は精いっぱい頑張っておられると思うんですが、いろいろな規制の中で、なかなか努力にもかかわらずふえていないんだとは思うんですが、その理由は、用途が決まっているとか、使い勝手が悪い、風邪や熱で急に利用したいと思ってもだめで、本当にしんどいときに頼めないとか、そういうこともあるんです。
 今回、母子家庭等日常支援事業というふうに名前も変えて普及されるに当たって、従来の団体であった母子寡婦福祉団体だけではなく、今はもう介護保険に関係した介護事業者というのは町の至るところにあるわけで、近所だったら使いやすいという声が非常にやはり強いわけですね。そういうところのホームヘルパーも利用できるようにすべきではないかと思いますが、鴨下副大臣、いかがでしょうか。
鴨下副大臣 ただいまお話がありましたように、これからはより使い勝手のいい制度としてやっていこうじゃないか、こういうような方向ではあります。
 日常生活支援事業そのものは、母子家庭のお母さんが例えば病気になったとか、それから、さまざまな就業支援の講習会等で勉強に行く、こういうようなときに一時的に保育等のサービスをしていこう、こういうようなことでございますけれども、先生おっしゃるように、今まではこれを事業として都道府県がやっていたわけでありますけれども、今回の見直しとして、より身近に利用できやすいようにということで、市町村を補助対象としてやっていこうじゃないか、こういうようなことでございます。
 またさらに、本事業を積極的に実施していくために、保育については、例えば保育を行ってくれている人、ヘルパーさんだとかそういうところの自宅、もしくは母親が就業支援等の講習会に行っているときはその講習会場、そういうところでも実施できるように検討しようじゃないか、こういうようなことでございます。
 さらに、これについては地域の母子寡婦福祉団体に委託してやっていただいているわけでありますけれども、それに加えまして、先生がおっしゃっているように、NPO団体もしくは介護保険の事業者についても活用が図られるように努力してまいりたい、このように考えます。
山井委員 ありがとうございます。それによって本当に使い勝手のいい制度になっていくと思います。
 母子世帯の方々の平均収入は、一般世帯の三分の一、二百三十万円。それを唯一補うのが児童扶養手当でありまして、それを切ればますます格差は広がっていく、進学にも響くということであります。
 ある母子生活支援施設の方に聞いたんですけれども、過去の高校生の進学について聞いたら、やはり私立はほとんど行けないということ。そして、例えば京都になりますけれども、公立はなかなか難しい面もあったりして、逆に公立に行けなかったら私学に行くという選択肢があるんですけれども、母子生活支援施設の子供はお金がないからそこにも行けない、だから最近では半数ぐらいの高校生が定時制に通っているということもあります。
 そういう意味では、今回の制度改革というのは、お母さんのみならず、昨日赤石参考人さんもおっしゃっておられましたけれども、子供の未来、子供の進学というものに非常に影響を及ぼされる。例えば、本当に所得の低い家庭の子供が医学部に行きたいとか弁護士になりたいとかそう思ったときに、ますますそういう夢も遠ざかってしまうのではないかと思います。
 そういう中で坂口大臣にお伺いしたいんですが、一番重要な、先ほど金田議員からも質問がありました児童扶養手当の一部支給停止のことなんですが、児童扶養手当を支給開始から五年後に一部支給停止をするということ自体に重大な問題意識を私は持っておりまして、五年後の一部停止という部分を法案から削除すべきだと私は思います。なぜ削除しないのか、できないのか、明らかにしてください。
坂口国務大臣 五年後の一部支給停止は、現行のシステムのままでありますならば、離婚の増大等により支給者が累増することになりまして、給付制度全体を不安定なものとしかねない状況にあることにかんがみまして、自立を一層促すことが制度の本旨であることから行うものであります。このことをぜひ御了解いただきたいと存じます。
 先ほどからも述べておりますように、やはり自立をいかにして支援するか、そして格差をいかになくしていくか。母子家庭のお母さん方をすべて弱者という形でとらえるのは私はどうかというふうに思っておりますが、そうではなくて、やはりその格差をなくして、そして堂々と生きていただけるような体制をどうつくり上げていくかということが大事でありまして、そのことに重大な責任を持った法律であると思っている次第でございます。
山井委員 削除ができないということであるならば、減額率がどうなっているということが母子家庭にとって極めて重大な影響を与えることになります。
 私としては、政令で定めることになる減額率については、母子家庭の就労支援策がどのように実効を上げているか、あるいは就労することによる母子家庭の所得の変化、さらには養育費の確保の状況がどのようになっているのかということ抜きでは決定できないと考えます。ついては、関係国会議員を含め、実際に影響が出る関係者からあらかじめ十分に意見を聞き、それを反映できるようにすることが不可欠であると考えますが、いかがでしょうか。
坂口国務大臣 五年後の一部支給停止にかかわります具体的な減額率を定める政令は、法施行後における子育て、生活支援策、就労支援策、それから養育費の確保策、経済的支援策の進展状況及び離婚の状況などを十分踏まえて制定したいと考えております。また、その際には、先生の御指摘も踏まえつつ、NPO法人を含む母子福祉団体など、幅広い関係者の意見を十分お伺いすることにしたいと考えております。
山井委員 ぜひとも五年後の見直しのときに、国会での議論、また母子福祉団体、NPO団体の方も含めて、あらかじめ幅広い意見を聞いた上で、その上で減額をどうするのかということを再度議論していただきたいと思います。実際、ますます今より不況になって、失業率も上がって、またはパートの方々の賃金も上がっていないかもしれません。そのあたり、本当に五年後のことはわからないわけですから、慎重に、十分に関係者の声を聞いて決めていただきたいと思います。
 次に、坂口大臣、養育費のことについてお伺いしたいと思います。
 昨日、榊原弁護士さん、参考人からも話がありましたが、養育費の八割を所得にみなすということであります。これについては、養育費の取り立ての意欲をそぐのではないかと思います。
 特に、私が直接接したことがありますDV被害者のお母さん方は、もう一日も早く離婚をしたい、夫と話をするのも怖い、そういう方々も非常に多いわけです。そういう方々からもこれからは養育費をきっちり取り立てようという流れになっているわけですが、その養育費の八割が所得にみなされるのならば、それだったらもう、ただでさえ夫と話をするの嫌なんだから、養育費の取り立てや取り決めをするのをやめておこうということになりかねないと思うんですね。
 そういう意味では、養育費を払うのが当然という今の流れに、養育費の八割を所得にみなすというのは逆行していると思います。ゼロがいいとは思いませんが、八割ではなく半分とか、そういうやり方もあるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
坂口国務大臣 養育費の問題を私たちも議論をいたしましたが、法律でこの養育費の問題もう少し厳しくしてはどうかという意見も一方であったわけでございますけれども、しかし、今もお話ございましたように、養育費を法的に決めるということになりますと、それを義務にしてしまいますと、かえって離婚ができにくくなってしまうというような御意見も一方でございまして、私たちもここは、法律をつくりますときに非常に悩んだところでございます。
 そういうさまざまな環境を踏まえまして、しかし、養育費というのはどうしてもやはり、別れましても、離婚をしましても、男性に責任のある問題だというふうに思っております。逆の場合もあるかもしれませんけれども、しかし、ほとんどの場合には男性だというふうに思いますが、男性がそれは支払う義務がある。だから、できるだけこれを担保していくというふうにしなければいけない。担保したら、それを全体の中に入れてしまうのであれば、かえって、もらっても同じことになるではないかという御議論も確かにありますけれども、しかし、基本はやはりそういうふうにしていただくということにしないといけない。
 全部を見るというのはあれですから八割にしたわけでございますが、八割がいいかどうかという議論がまた出るわけでございますけれども、一応こういうふうに現在のところ決めさせていただいたということでございまして、我々も、御意見は十分にお聞かせをいただきながら、今後のこともまた考えていきたいと思っております。
山井委員 ありがとうございます。これを八割でやってみて、それで、やはりこれが養育費取り立ての逆に抑制効果になってしまったということだったら、ぜひとも早急に見直していただきたいと思います。
 ちょっと最初の支援費の質問に戻らせていただきます。
 市町村の支援費制度についての説明会の開催とか周知徹底、また基盤整備の計画、市町村の格差をなくす、こういうことについて、先ほど要望でとどめましたが、これは事前通告しておりますので御答弁あるかと思いますので、その点についていかがでしょうか。坂口大臣、お願いいたします。
坂口国務大臣 この支援費につきましては大変重要でございますので、ここは都道府県あるいは市町村ともよく相談をいたしまして、我々も十分に対応できるようにしていきたいというふうに思っております。具体的な問題につきましてはこれから煮詰めなければならないところもございますけれども、御趣旨に添うようにしたいと思っております。
山井委員 ぜひともお願いしたいと思います。
 介護保険の導入のときに比べて、こんなことを言ったら怒られるかもしれませんが、厚生労働省のPR活動というか、こういういい部分になるんだというようなこともきっちりわかっておりませんし、やはり支援費制度が入ってよくなったということにならないと入れる理由が全くないわけですから、負担増だけが残ったということには絶対にならないようにしていただきたいと思います。
 それで次に、国土交通省の小神審議官にもう一度お伺いしたいんです。
 この資料の中にもありますように、今、公営住宅、母子世帯の方が一六・六%なんですね。持ち家が二六・六%。ほかの年収二百万円未満の方々の持ち家の四二・九%に比べても、持ち家は非常に比率は低いという、こういう厳しい状況が出ているわけです。
 先ほどの答弁の中で、公営住宅への優先入居というか、そういうことについても進めていきたいということだったんですが、具体的なことをお聞きしますが、今、一六・六%なんですよね。これを今後上げようと考えておられるわけですね。そのことを御答弁お願いしたいと思います。
小神政府参考人 公営住宅の入居の仕組みでございますけれども、これは法律で、一般に公募するということになっています。ところが、母子世帯でございますとか、あるいは先ほどもちょっと触れましたけれども、高齢者の方々、障害者の方々、こういった方々については住宅の困窮する状況が非常に高いということで、優先入居というような取り扱いをしております。
 これにつきましては、事業主体、管理主体でございます地方公共団体の判断によりまして、特別の枠をつくるとか、あるいは倍率を非常に高めるとか、そういったやり方がございます。そういったことで、低所得者の方々の中でも、一般の方々よりも母子家庭の方々については非常に高い優先度合いで対応しております。
 これにつきまして、それぞれの事業主体、管理主体の公共団体の判断もございますけれども、先ほども申し上げましたように、母子世帯の方々についての居住の安定というのは非常に重要だという認識を持っておりますので、今後とも、地方公共団体とも連携を図りながら、この優先入居の制度について積極的に活用を図っていきたいというふうに考えております。
 具体的に、率をどのぐらいに持っていくかというところにつきましては、地方公共団体の判断ということもありますので、私どもとしても、母子世帯の方々が公営住宅に優先入居できちっと対応できる、全員の方々というのはもちろんなかなか、ストックの数もありますので難しいかもしれませんけれども、公共団体と連携を図りながら推進してまいりたいと考えております。
山井委員 ぜひともこの一六・六%がアップするようにお願いしたいと思います。
 また坂口大臣に一つ質問を戻らせていただきますが、先ほどサテライト型の生活支援施設を十六カ所、来年度やっていくということだったんですが、全国で十六カ所というと、今DVの被害も出ている中で、非常に少ないということが一つ。
 それと、母子生活支援施設は、それこそ晩も職員さんもいるわけですから、DVのケースとか夫が追いかけてくるケースとかに対応できるわけですけれども、サテライト型の場合は、どっちかというと軽微な形でないと、昼間しかスタッフがいないわけですからね。先ほど言ったような、どなり込んできたケースとか、対応しようがないわけですから、そういう意味では、サテライト型をふやしたからといって、母子生活支援施設をふやさなくてもいいということにはならないと思います。
 そういう意味で、そういうことも指摘しておきたいんですが、サテライト生活支援施設、十六カ所ということですが、今後もっとふやしていくという、そのようなサテライト生活支援施設に対するお考えをお聞かせ願いたいと思います。
坂口国務大臣 母子世帯の方々の環境もいろいろでございます。したがいまして、サテライト型のところが適している方もおみえでございましょうし、そうではなくて、やはり共同生活をしていただく、先ほどおっしゃったように、夫からの暴力を防がなければならないというような立場の人たちもおみえでございましょう。サテライト型はサテライト型でふやしまして、それに適する人にそこに入っていただく、そして、そうでない人に対しましては共同で生活をしていただくような場所に入っていただくといったようなことにしていかなければいけないというふうに思っております。
 トータルで足りないという地域は確かにあるわけでございますから、そのところにつきましては、これからも十分配慮をしていきたいというふうに思っております。
山井委員 私、スウェーデンに二年間留学しておりましたが、そのときに、福祉国家とは何かという議論で、シングルマザーが安心して子供を育てていける社会、それが福祉国家だということをあるスウェーデンの女性から聞いたことがあります。そういう意味では、この日本という国で今の不況の直撃を受けているのは母子家庭の方々であります。
 昨日、参考人質疑がありました。坂口大臣、私は思うのですけれども、本来なら、九十五万人の母子世帯ということで、お母さんだけじゃなくて、本当だったらそこにお子さんも参考人に呼ぶべきだと私は思うんですね。お母さん以上に子供の方がこの法案の改正によって人生が変わる可能性があるわけですから。しかし、子供さんたちは参考人にも来られない、選挙にも行けない、いわんや政治献金もできない。
 私が政治を志した一つの原点は、六年間母子寮でボランティアする中で、結局、組織や献金で政治が動いている、あるいは、ここを見渡してもほとんど、残念ながら、男性の国会議員あるいは男性の厚生労働省の役人さんが多い。岩田局長さんなんかはすばらしいと思いますが。そういう中でどうしても、子供を抱えて生き延びるというお母さんの気持ちというのがなかなか政策に反映されない。そういう意味では、何としてもこの今回の法改正において子供が苦しまないようにしていただきたいと思います。
 今回、傍聴に来られない、あるいはこういう質問を聞くことができない二百万人にも及ぶ子供たちの未来がこの法改正にかかっているんだということを思っていただいて、ぜひとも坂口大臣にはこれからもいい形の母子家庭支援の政策を進めていただきたいと思います。
 以上で終わります。ありがとうございました。
坂井委員長 次に、武山百合子君。
武山委員 自由党の武山百合子です。
 きのう、おととい、きょうと三日目の集中審議になるわけですけれども、ずっと議論を聞いておりまして、きょう坂口大臣から、所得のいわゆる格差のハンディキャップをどう克服していくかという、まさにそのとおりだと思うんですけれども、では、どう克服していくかの内容でずっと議論が続いてきたわけです。
 自由党がこの法案に対して反対の理由の一つは、やはり、ゼロよりは一歩前進の法案であるけれども、もうダイナミズムに変わらないと。そこの部分に対して私たちは、きょうこれから聞く内容でいろいろ議論をしていきたいと思います。
 例えばアメリカでは、日本とアメリカは全然違いますけれども、貧富の格差を克服するために、例えば低所得者、母子家庭、そういうものは、駅のすぐそばに、物すごい便利なところに低所得者用の住宅があるんですね。その住宅に優先的にもちろん低所得者の人は入れる。それから、教育費の方はほとんど、地方分権の中で固定資産税が学校に行くものですから、いわゆる日本のように小中学校で学費がかからない。かかるのは何かと言いますと、一つだけ、昼食のランチだけなんですよね。高等学校まで義務教育なものですから、高等学校まで教育費はほとんどかからないんですよね。
 あそこは移民の国ですから貧富の差が大変多くて、そういう弱者に対して、それから低所得者に対して、母子家庭に対して、ダイナミズムな、大きな、本当にわっとお金を優先的につけてそういう人たちに頑張っていただきたい、そういう意味で、実態はなっておるわけです。
 このたびの法律の中身を見ますと、相変わらずもうちょぼちょぼの、本当に思い切って母子家庭が誇りと意欲を持って生きていこうかというと、やはりあの手この手でたががはめられている。それが実情だと思います。
 先ほどのお話なんですけれども、五年後の児童扶養手当の一部停止ということで、我が党もここに対して非常に反対の意見が多かったんですけれども、五年後も今と所得が変わらないという可能性、あると思うんですよね。今このような経済状態で、そしてもちろんスキルアップするためのいろいろな就労支援というのは、それはないよりはあった方がいい。しかし、実際は、就職をして、そこで経験と体験を通してスキルアップというのはかなりできると思うんですよ。ただコンピューターがいろいろできるというだけでは、また就職したその先々で状況が違うわけですから。しかし、やらないよりはやった方がいい。
 ですから、この五年後の一部停止というのは、もしかしたら所得が上がらないかもしれない、上がるかもしれない。では、上がらなかった場合はどうなるんでしょうか。やはり、上がらなかった場合はこのまま児童扶養手当というのはずっと、その家庭の所得が低かった場合は今までどおり経済的支援をするという意味に解釈してもよろしいんでしょうか。
坂口国務大臣 五年先の経済の状況等を予測することもなかなか難しいわけでございますが、しかし、国全体から申しますと、これから五年後ということになりますと労働力人口も次第に減少の過程に入っていくという状況でございまして、よほど日本の経済が頑張らなければ現在よりも拡大をしにくい環境ができてくることは、これはもう紛れもない事実だというふうに思っております。
 そうした中で、先ほどから申しておりますように、母子家庭の皆さん方の特に就職だというふうに思うんですが、そこをどう回復させるかということが最大の課題である。住宅の問題もございましょう、教育の問題もございましょう、いろいろありますけれども、一番基本になりますのは、やはりお母さん方にどう就労していただけるかということにかかってくるわけでありまして、その状況が現在よりも悪くなっているというようなことでありましたならば、五年後の問題というのは、それはそのときに考えざるを得ないということだというふうに私は思います。
 そうならないようにするためにどうしていくかということで、私たちは大きな責任をしょっているというふうに思っているわけでございます。
武山委員 先ほど公営住宅のお話が出ましたけれども、きのう参考人の方々のお話の中に、母子家庭、障害者、低所得者の方々に優先的に公営住宅に入れるようにはなっているけれども、実際はなっていない部分もあると。先ほど国交省からのお話で、一般公募である、だからそこに、優先的にはするけれども、そこで倍率の話が出ておりましたけれども、入れなかったというのが実態なんだろうと思いますけれども。
 今回の法律改正で、では今までとはどう違うのかということですね。この方々に特別優先的に何か変わったことをするのかどうか。そこをちょっとはっきりお聞きしたいと思います。
坂口国務大臣 国土交通省の方はお帰りになりましたので、私からお答えを申せざるを得ませんが、民間の場合には、民間のいろいろのお考えがありますから、なかなか難しい面もあるというふうに思いますけれども、公的な住宅の中で、どういうふうにやはり母子家庭の皆さん方にお入りをいただけるようにしていくかということが大事だというふうに思っております。
 ここのところにつきましては、国土交通大臣とも私はゆっくり一度話を詰めたいというふうに思っておりますが、ぜひ、公的な建物におきましては、優先的な度合いを今までよりももっと上げられるようにしたいというふうに思っております。
 ただ、民間の場合には、すべて従わせるというわけにはなかなかまいりませんで、子供がありますとなかなか許可してもらえないというようなことも、先ほどもありましたけれども、現実問題としてはあるわけでございます。私の娘たちを見ておりましても、子供があるものですから、そういたしますと、そこの民間のところでは、どこへもなかなか入りにくい。子供が大きくなってからもう一度来てくださいということを言われたりするわけでありまして。そうした民間をなかなか積極的に動かすというわけには、民間の事情がありますからいきにくいと思いますから、やはり公的なところで極力皆さん方におこたえをするようにしなければいけないと思っております。
武山委員 国民の税金で公営住宅というのはほとんど建てられておるものですから、やはりこういう所得の格差のあるいわゆる母子家庭、低所得者、障害者というのは、公営住宅の場合、優先的に入れるというふうに一般的に国民は思っております。私も思っておりました。しかし、きのう参考人の皆さんから、やはり入れないということがあちらこちらであるということを聞いておるものですから、ぜひそれを担保していただきたいと思います。
 これは国民の税金でつくっておるわけですから、一般公募とはいえ、ここに優先順位としてするというのは政治の力でできるはずだと思うんですよね。ですから、ここはぜひ担保していただきたいと思います。
 それから、一般の民間の住宅で、やはり五〇%以上が民間の住宅をいわゆる賃貸しておるわけですね。その場合、礼金、敷金をなしとか、あるいは住宅を持ってお貸しいただいている家主さんに所得控除をするとか、そういう手当てを、民間の活力も使っていかないと、これはやはり国だけでは財源の限界があるわけですから、そういうこともいわゆる政策の一つとして、選択肢の一つじゃないかと思いますけれども、それはいかがでしょうか。
 母子世帯、低所得者、障害者がいわゆる優先的に入れるということの担保と、それから、民間の賃貸の住宅に対する礼金や敷金の、家主の所得控除、そういうことをぜひ政策の一つと考えていただきたいということに対する見解はいかがでしょうか。
坂口国務大臣 御趣旨は十分理解できるわけでございますが、すべて厚生労働省の中で決められる話でもないものでございますから、それは、先ほど申しましたように、国土交通省とよく相談をさせていただいて、あるいはまた財務省等との話にもなってまいりますから、そうしたことをそこはよく御相談をさせていただいて民間の場合には進めさせていただく以外にないというふうに思っております。
武山委員 この法律の主体的な所管は厚生労働省ですので、ぜひそこは主導権を握ってやっていただきたいと思います。
 今まで、各省庁との調整で常に先送り先送り、それで実態は、実際に今までもこういうことをみんな叫んでいたわけですよね、でもほとんど変わりがなかった。このたび法改正で言われても、相変わらず調整しないといけない。やはり先送りじゃないかという国民の印象はぬぐえないわけですよね。ですから、そこをきちっと、今調整を、お話をしていただけるということですから、ぜひお話をして、そのお話の内容も、前に向かってのお話をしていただきたいと思います。
 それから、いろいろこの議論を聞いてまいりますと、母子家庭の経済的基盤の一つに、養育費の問題で、やはり余り払われていないのが実態だということがよくわかりました。
 それで、きのう、参考人の皆さんの中に弁護士さんがお見えになっておりまして、養育費をいただくためにいわゆる弁護士さんが中に入る場合、経費がかかる、それから手続が簡単ではないというお話を聞きました。どんな手続で、どのような形でこれを議論したのか。弁護士さんが入った場合の養育費の手続の経緯をぜひお知らせいただきたい、お話しいただきたいと思います。
鴨下副大臣 今の御質問の中の弁護士さんがどうあるべきかというような話につきましては、厚生省というよりはむしろ法務省の話でありますので、なかなかこちらからお答えをすることはできないわけでありますけれども、もし、養育費確保策についての先生のお考えといいますか、言ってみれば確保策についてどのように充実を図るべきかというような趣旨でございましたらお答えできますが、いかがでしょうか。
武山委員 厚生労働省がこの法律の主管なのに、わからないということ自体がおかしいと思うんですよね。これだけ皆さんが質問して、養育費全般の話から細かい話から出ているのに、これは法務省だ、こっちは国交省だといって相変わらず、いわゆるこの二十一世紀になって、省庁を再編して、そして改革していこうというときに、相変わらず国交省の問題だ、法務省の問題だといって、主管の厚生労働省がアウトラインやそれこそポイントだけでもわかってないというのはおかしいと思うんですよね。
 ですから、そのポイントも議論に入っていなかったんでしょうか。
鴨下副大臣 法務省の中では、今現在、養育費等の少額定期債務の強制執行手続についての見直しが検討されている、こういうようなことは聞いておりますし、この検討を踏まえて次期通常国会に関連法案が提出される、こういうような旨は承っております。
武山委員 でも、これだけ、三日間審議をずっと通してきて、この養育費の問題は、責任と義務がお父さんの方にあるのにもかかわらず、実際に払われている家庭が非常に少ないということで、これはポイントの一つだと思うんですよね。これに対してやはり国も力を入れていかなきゃいけないし、また行政も力を入れていくべきことであろうと思うんですよね。それに対して何か厚生労働省がお答えできないというのは、何を頼りにして国民は生きていけばいいわけですか。
 ですから、国民にとって、いわゆる申請に行ったときに、ああ、この問題はこちらの省ですよ、この問題はこちらの課ですよといって、一番国民不在なんですよね。ですから、こういう場合、母子不在になっているわけですよ。この法律自体が、そういうふうにして答えられないというのは、母子不在だと思うんですよね。
 今、ポイントは、やはり国に頼るんじゃなくて、あと経済的基盤を母子家庭にするにはどうしたらいいかということで欠けている部分というのは、養育費の部分なんですよね。家族の一員であったお父さんが、そこで離婚という形をとって、そして経済的基盤が母子家庭に一番欠けているわけですから、それに対して、お父さんからの養育費をやはりきちっと出せるような形に議論の中身も進んでいかなきゃいけないんだと思います。
 ぜひ、坂口厚生大臣にお話しいただきたいと思います。
坂口国務大臣 養育費の問題は大切な問題だというふうに私たちも思っております。しかしここを、法律で決定的に払うことを義務づけるということになってしまいますと、先ほど申しましたように、一方におきまして、そういうことになってしまうと別れたいんだけれども本当に別れられないというケースが生じてくる、だからそこはひとつ十分に配慮をしてほしいという、これは現場からのそういう強いお声が実はあるわけでございまして、先ほどのように、とにかく何よりもかよりも早く別れたい、そういう立場の皆さん方も多いわけでございます。
 したがいまして、そこはひとつ、男性に対しまして、夫でありますその人に対しまして、父親である人に対しまして、やはり責任は十分に持ってもらわなければいけない。だから、責任を果たしてもらいたいということは、それは言わなきゃならないと思うんですけれども、法的にそこを縛るということはなかなか難しい面がある。しかし、難しい面はありますが、いわゆる離婚をされました後、やはり夫であった方、父親であった方に対して、養育義務があります、あなた方もここはちゃんとしてもらわなければならないということを声高く言わなければいけないというふうに思っておりまして、そこを私たちは、どういう形にすれば最もそれが望ましい形になるかということを検討してきたところでございますし、今それこそ法務省ともこれは突き合わせまして、そしていろいろ議論をしているところでございます。
 非常に微妙なところでございまして、初めから厳しくはいけないし、しかし、さりとてここはちゃんとしなければならないし、大変難しい場所でありますが、私たちは、そういう意味で、できる限り養育費を出していただける体制をどう確立していくかということに全力を挙げたいというふうに思っております。
武山委員 法的な部分のお話だったんですけれども、二人の間での離婚というのは二人の責任であるわけですね。それで、母子家庭になってしまった、その母子の方に経済的基盤の責任がのしかかって、それでお父さんの側の責任というものが、非常に責任に対する国の姿勢がやはり弱腰だと思います。
 片や国が面倒を見て、母子家庭には児童扶養手当という形、またいろいろな、地方自治体も児童育成手当というものを出したり、公営住宅やら、これから就労のスキルアップのためのいろいろな支援を考えておるわけですけれども、お父さんの側の責任というものに対して、何もそこにないわけですね。実際に実態を、実際の責任と本当にいろいろな部分での損害を受けているのは母子家庭なわけですよ。お父さんに対する義務と責任の部分で、非常に国は弱腰だと思うんですよ。
 きのう、参考人の方の中に大学の教授がいらして、いろいろな、養育費の件で私が質問したときに、離婚をしたときに離婚届を出す、そのときに何らかの形で養育費の件を書き込めないかとか、それからいろいろと住民票が移ったりしてお父さんがどこにいるかわからないとか、追跡できないとか、いろいろお話も聞きました。しかし、それは男性の方の義務と責任という意味で、そこは何らかの形で国が関与できる部分ではなかろうかと思うんですね。
 法律的な部分でもありますけれども、いわゆる離婚したときの、その書類ですね、そこの一部分に書くこともできるんじゃないかという、その辺の議論はどうなっておりますでしょうか。
坂口国務大臣 日本の場合には、御存じのように協議離婚がほとんどでございます。諸外国のように裁判によって行うという形ではなくて、協議離婚がほとんどでございます。したがいまして、日本の場合には、そこに弁護士さん等が入り込んでくるというケースは比較的少ないわけでございまして、それであればちゃんと、協議だからお互いにできるのではないかという意見もあるわけでございます。
 私も、初めは、そこはかなり強く言っていいのではないかというふうに思っておりましたけれども、現場の声をいろいろお聞きをすると、そうではなかった。そこががんじがらめになってしまうとかえって離婚ができにくいというようなお話もございまして、それよりも早く離婚をしたいというような気持ちの強い方も多いというようなお話があったわけでございます。
 今、用紙の問題等もございまして、用紙の様式を変えるというようなことは、これはでき得ることでございますから、そこに工夫ができないかどうかといったようなことにつきましては、これもここで我々の方で決める話ではなくて、また縦割りだというふうに言われますけれども、法務省でこれは決めていただかなきゃならない問題でございますので、そこは一応話をしたいというふうに思っております。
武山委員 本当に縦割りの弊害だと思います。そこの部分で、あの手この手でやはりやれることはやるということなんだと思うんですね。それで、主導権は、やはり厚生労働省の法律ですので、それはやるべきだと思います。
 それから、養育費を取りにくいということですけれども、でも実際の所得格差というのは、そこでお父さんの方が断然所得は多いわけですよね。所得が多いにもかかわらず責任を果たしていない、そこの部分はやはり関与すべきことだと思うんですよ。それでなければ、結局、公的な資金でこれからもどんどん出さざるを得ないような状態になっておるわけですよね。ですから、公的な資金で出していかなければいけない部分をどうしても締めていかざるを得ない状態なわけですから、私はここで、やはり養育費というところで、きちっと男性から。実態は、お母さんたちからは、もうそれだったら、いろいろな感情がもつれて、それよりも自分が早くすっきりして出直したいということのようですけれども、私は別の側面で、やはりお父さんの責任というものもはっきり果たす。その責任を果たすためには、国が、母子家庭に対する支援をしていくと同時に、お父さんの側にもきちっと言う。お父さんの感情論だけではだめだと思うんですよね、それは両輪でやっていくべきことではなかろうかということで私はお話しいたしました。
 ですから、これはぜひ法務省と話し合っていただきたいと思います。
 それから、様式の中で、いろいろな工夫があると思うんですよね。ぜひそこはしていただきたいと思います。それに対しての見解をぜひお聞きしたいと思います。
鴨下副大臣 先生おっしゃるように、厚生労働省としても大いに関与していこうというようなことはそのとおりでございます。
 既に、民法上では親は子供の面倒を見なければいけないということは規定されているわけでありますから、離婚等によって児童を監護していない親は、この扶養義務に基づいて、養育費を支払う、こういうような義務を負っているというのは事実なんです。
 ところが、今回の改正案では、この民法上の扶養義務を前提としつつも、先生おっしゃるように、母子寡婦福祉法に、児童を監護しない親の養育費支払い努力義務を決めるとか、二つに、児童を監護する親の養育費確保努力義務、それから国及び地方公共団体の養育費確保のための必要な措置を行う義務、こういうようなものをこの法律で決めているわけでありますから、先生おっしゃるような趣旨がここに反映されているというようなことでございます。
 さらに、この法施行後は、養育費についての取り決めを促進するという観点から、国及び地方公共団体においては積極的な広報啓発活動をしなさいとか、養育費取り決め促進のため、国において養育費に関するガイドラインを作成して、養育費取得手続等に関する情報提供を促進しなければいけないというような、こういうようなことを規定しているわけでありまして、国はそういうような形で関与をしていこう、こういうようなことでございます。
武山委員 義務というのは国民全体が果たす最も大事なことであろうことなのに、実際は言葉だけ躍っていて、実態が非常に浅く、薄く、本当に無責任な時代になってしまったと風潮として今言われているわけですよね。それで、相変わらず言葉だけで言っておるように私は感じ取れます。
 それから、省庁の縦割りですね。相変わらず省庁の縦割りで連係プレーがよくできていない。公営住宅に対しても、また奨学金に対しても、国の方ではきちっとした額が出ていても、それが県に行って市町村に行った場合、連携がほとんどできていなくて、相変わらず実態を聞くと、なかなかそういうふうには運用されていませんという、これはやはり欠陥だと思うんですよね。
 それで、今まで主に経済的基盤に視点を置いて、今度自立の方に視点を置いてきた。それにはやはり、経済的基盤に置いてきた根拠というものはきちっと数字を把握していないといけないと思うんですよね。
 厚生労働省のヒアリングの中で、プライバシーがあって聞けない部分もありますと。でも、これだけ実態がわからないというのは、やはりプライバシーがどうのこうのよりも、きちっと実態を把握しないときちっと手当も支給できないと思うんですよね、奨学金も。そこで、プライバシーだと言われて、片や児童扶養手当は欲しい、そういう部分もあると思うんですよね。
 ですから、きちっと実態調査をしていただいて、縦割りの弊害を、きちっと協力体制を組んでやっていただきたいと思います。
 終わります。
坂井委員長 次に、小沢和秋君。
小沢(和)委員 一昨日の質問で、私は、一九九八年の母子世帯の母親の平均収入が児童扶養手当を入れてもわずか二百二十九万円にすぎず、手当が文字どおり命綱になっていること、その後の四年間に不況がさらに深刻になり、失業率が史上最悪となり、賃金も落ち込む中で、母親たちの就労も一層困難になり、収入も減少していることを指摘いたしました。
 ところが、政府は現状を無視して、母親たちが努力すれば五年後には経済的に自立可能とし、そうならない者には懲罰的に手当を半分に減らそうとしております。私が、政府の援助でどれくらいの数の母親たちがきちんとした収入のある仕事につけるようになるかと見通しを聞いたのに対し、大臣は、やってみないとわからないと甚だ無責任な答弁でありました。
 こういういいかげんな就労援助で、手当の半額カットだけは確実に強行しようというやり方には、怒りを禁じ得ません。きょうは、この議論を引き続いて質問を続行させていただきます。
 昨日の参考人の発言では、与党推薦の参考人も含め、全員から、扶養手当のおかげで母子世帯の生活が成り立っている、五年後の削減は慎重にという意見が出されたのが印象的でありましたが、本年八月、政府は、母親たちの必死の反対運動を押し切って、手当の所得制限や引き下げを強行いたしました。
 そもそも、この改悪は今審議している法案と一体のものだったはずであります。ところが、この法案がさきの通常国会で継続審議となったため、この部分だけ先に強行したのではありませんか。国会審議で結論が出るまで実施を先送りするのが当然だったと思います。
 一昨日の答弁を聞いておりますと、八月から改悪をする予算を組んでいたのでやむを得なかったという弁解だったようですが、政府の理屈からしても、来年度から就労支援などを抜本的に強化するというのであれば、その結果を見て、少なくとも来年四月、法施行と同時に手当の見直しをするというのでなければ整合性がありません。余りにも国会軽視だったのではないかと思いますが、いかがですか。
岩田政府参考人 このたびの母子家庭対策の見直しは、昨年度から各方面の御意見をちょうだいしながら進めてまいりました。そして、金銭的な現金給付だけではなくて、子育て支援、就労支援、養育費の確保対策、これらを総合的に実施をする対策の全体像はどうあるべきかということについて、本年三月に母子家庭等自立支援対策大綱という形で厚生労働省として取りまとめました。
 これを今実施に移しつつあるわけでございますが、一部、十四年度の予算で既に自立支援策を盛り込んでいるもの、十五年度の概算要求で今要求中のもの、そして今年度中に政令等で実施できるもの、国会の御審議を待たなければ実現できない法律改正、さまざまなレベルのものがございますが、これらを、平成十四年度と十五年度にかけて、二年間でこの大綱を実現に今移しつつあるわけでございます。
 八月の政令改正に当たりましても、私どもも全国会議を招集いたしましたり、担当者を全国各地に派遣いたしまして、全国の母子福祉団体の方々ですとか関係のNPOの皆様方と意見交換を重ねてまいりました。また、十四年度予算に盛り込んだ制度改正でございましたので、予算として国会でも十分に御審議をいただいたと思っております。
 この児童扶養手当の今回の八月から実施しております改正については、さきの通常国会で、予算委員会を初めとして、六回ほど具体的に御審議をいただいておりますので、国会を軽視した、無視したということは全くございません。
小沢(和)委員 今いろいろ手続をしてきたとか、国会では予算委員会などで審議をしてきたとか言われるけれども、この委員会でこの法案はかかっていないわけですよ。それなのに八月にやったというのは、私は国会軽視のそしりは免れないと思うんです。
 一昨日の答弁では、母子家庭の年収の中央値が百八十万円だからということですけれども、最低をこういうふうに切り下げた論拠には私は到底なり得ないと思うんです。
 問題は、それで最低生活ができるかどうかということではないかと思うんですが、母子世帯は母親と子供二人が普通だといいますが、そういう三人家族の生活保護費は年間幾らなのかをお尋ねします。
河村政府参考人 平成十四年度におきますモデル的な母子世帯の生活保護基準、母子三人世帯でございます。私どものモデルとしては、三十歳の母親と九歳の子供と四歳の子供ということでやりますと、一級地の一番高いところで、世帯当たりの最低生活費は二十万五千九百四十円、三級地、一番低いところで十六万一千三百三十円ということになっております。
小沢(和)委員 ほかに住宅扶助とか教育扶助などを合わせれば、二十六万円余りになるはずです。これは私が厚生労働省に試算をしてもらった結果ですから、間違いないと思います。だから、年間でいえば約三百万円を超すということになります。
 生活保護というのは、この金額以下では人間らしいまともな生活ができないから、そこまでは最低生活費として政府、厚生労働省が保障している水準ではありませんか。その同じ厚生労働省が、それよりはるかに低い百八十万円以上の収入があれば手当額のカットを始めるというのは、私は理屈に合わないんじゃないかと思いますが、いかがですか。
岩田政府参考人 それは、生活保護と、この児童扶養手当制度の、制度の目的や仕組みが異なるということからだと思います。
 生活保護制度は資産調査がございます。児童扶養手当にはそれはございません。生活保護の方は、資産調査があったり、稼得能力、働く能力があるかどうかといったようなことなど、あらゆる面から調査をした上でのことであるというふうに思います。
 一方、児童扶養手当については、この手当だけですべての生活を賄うというような趣旨になっているわけではございませんで、基本的には、母子家庭のお母さんたちの就労による収入、あるいは別れたもとの配偶者からの養育費などで本来は生計を賄っていただくということであろうかと思いますが、それでは十分でない場合が少なからずございますので、母子家庭の安定と自立の促進に寄与するということを目的としてこの児童扶養手当は払われている、そういうことでございますので、金額的に連動していないというのは、そういった制度の目的や仕組みの違いからきているものでございます。
小沢(和)委員 今、制度や目的が違う、資産調査などを厳格にやるというようなお話がありましたけれども、そうはいっても、この生活保護費というのは、さっきから言っているように、これがなければ最低の人間らしい暮らしができない水準だということになっているわけでしょう。だから、それと余りにもかけ離れた百八十万円という、この年収からもう上になったらカットを始めてよい、つまり余裕がそれだけ出てくるというような判断がどこから生まれるのか。今の説明は全く説明になっていないと思うんですが、いかがですか。
岩田政府参考人 確かに百八十万の年収ではなかなか厳しいものがあるというのは、そのとおりであるとは思います。この百八十万というのはお子さんがお一人のケースでございますので、お二人ということになるとまた別の数字になろうかと思いますが、母一人、子一人で、母親が勤労収入を得ている場合についてでございます。
 ですから、みずからの収入と児童扶養手当、それからもとの夫からの子供に対する養育費、そして場合によっては実家その他親族からの援助、そういうような中から、大変苦しいということだとは思いますけれども、一生懸命やりくりをして生計を維持していただいているものというふうに思っております。
小沢(和)委員 この機会に確認しておきますけれども、この生活保護費を見ると、母子世帯の大部分は保護費以下の収入しかないということになると思うんです。精いっぱい働いてなおこの程度の収入しかないということでありますから、申請すればこの人々は当然保護を受けられるということになると思いますが、いかがですか。
河村政府参考人 生活保護制度というのは、生活に困窮する方が、その資産あるいは稼働能力あるいはその他あらゆるものを活用してもなお最低限度の生活が維持できない場合に適用されるものでございまして、児童扶養手当受給世帯に対する生活保護の適用に当たりましても一般世帯に対する保護の要件と同様なわけでございまして、所得の額のみでもちろん判断できないわけでございます。
 私が先ほどお答えしたのは住宅扶助の一般基準を入れての数字でございますが、先生からの御指摘では月額六万円の住宅家賃がかかる場合の数字を示せということで言われましたのでそういう数字をお示ししたわけでございますけれども、自宅をお持ちの方も当然おられるわけでございますし、貯金もある、あるいは親族からの援助も期待できる、そういったあらゆるものを活用した上でなお最低限度の生活が維持できない場合には、生活保護の適用をしておるということでございます。
小沢(和)委員 いや、だから、母子世帯の大部分はそれに該当するんでしょうと聞いているんですよ。申請があったら、それは該当していれば当然その生活保護を受給させるわけでしょう。
河村政府参考人 申し上げたかったのは、所得水準のみで判断できないということを申し上げただけでございまして、保護の要件に当てはまる者であれば、申請すれば生活保護の受給は可能でございます。
小沢(和)委員 それだけ言ってくれればいいんです。
 私のところには、父子世帯の父親から、なぜ低所得の父子家庭にはこの手当を支給しないのかという訴えも来ております。父子世帯でも、困窮しているところには手当を支給するのは当然ではないかと思いますが、大臣、いかがですか。
坂口国務大臣 これも平成十年度の、少し古いですが、全国母子世帯等の調査によりますと、母子家庭の平均年収が、先ほどから出ておるように二百二十九万円であるのに対しまして、父子家庭の場合には四百二十二万円と二倍近くになっております。
 調査におきましても、父子家庭の場合におきましては、一番困るのは家計ではなくて家事であるという御指摘がございます。そうしたことに対してどう対応をしていくかということが私たちにとっては大事なことだというふうに思っておりまして、今すぐに父子家庭の皆さんも母子家庭と同じようにということは、現在のところ考えておりません。
小沢(和)委員 しかし、父子世帯でも困っている人たちに対しては、私は、そういうようなことを当然考えるべきだということを改めて申し上げておきます。
 来年度の概算要求では、児童扶養手当は二千五百四十九億九千九百万円になっております。これは今年度より八十七億四千五百万円減額です。先ほどの説明では、今回の手当削減で三百六十億円減るが、一方で新たに受給する者の増加四、五万人分を見込んだ数字とのことであります。他方で、母子家庭への自立支援対策を強化するための新規施策分としては三十三・八億円計上しておりますが、これを差し引きすると、自立支援対策を大いに強化すると言っていながら、来年度は大幅な減額要求になっております。今後の手当額の二分の一削減が実施されれば、さらに大幅減になっていくと思います。
 結局、今回の法改正というのは、今の財政危機を母子家庭にしわ寄せするために児童扶養手当を大幅に削ろうとして、それを自立支援対策などで飾り立てているというだけのことではないんでしょうか。
岩田政府参考人 限られた財源の中で、やらなければならないことが二つございます。一つは、母子家庭が年々非常な人数でふえていること、この人たちを支援しないといけないということがございます。それからもう一つは、金銭給付、児童扶養手当という金銭給付だけではなくて、本当に自立を支援するためのさまざまなサービスですね。育児支援であったり就職支援であったり、そういうサービスを充実させるためのまた予算が必要であること。こういうような中にあって、先生が今議論なさっておられることしの八月の制度改正はいたしたわけでございます。
 したがいまして、人数がふえた分、この方たちにもお支払いする。そして自立支援対策、先生は三十数億とおっしゃいましたが、それ以外に貸付金も原資追加を、五十億以上だったと思いますが、やることといたしておりますので、そういったものも含めると、自立支援対策は八十数億かと思います。そういったようなこと、トータルでは、来年度の概算予算は、今年度とほぼ同額で概算要求をいたしております。
小沢(和)委員 今ちょっと反論したい点もありますけれども、時間がなくなってきたから、養育費の問題もお尋ねをしておきたいと思います。
 離婚して母親が子供を引き取っても父親にも扶養義務があることは、民法で一般論としてははっきりしております。欧米では裁判で離婚するのが一般的であり、その際、養育費の額や支払い方法についても明確にされ、その履行を保障する公的機構も確立しております。
 ところが、我が国では協議離婚が九割に達しているため、養育費について取り決めをしているケースはわずかに三五%、実際に現在ももらっているのは二一%にすぎません。その結果、子育ての経済的負担は、一般的に父親より所得のはるかに低い母親の側に一方的に押しつけられております。
 このような不公平を抜本的に改善することは緊急の課題だと思います。しかし、今回の法改正では、第五条一項で父親にも扶養義務を果たす努力を求めておりますが、その父親に扶養義務を果たさせる保障は、二項で母親に努力を求めるにとどまっております。これで今の不公平な状態の改善が進むのか。
 昨日、前田参考人は、心身ともに傷つき、別れることに力尽きて、養育費を請求できるところまでいかない母親が多いと述べ、暴力や虐待、シンナーや覚せい剤など、逃げるようにしてシェルターに駆け込む、命からがら逃げてくる人もいます、この人たちに養育費の請求をせよというのでしょうかと訴えました。このような規定を設けることは、こういう母親たちをさらに苦しめるだけではありませんか。
岩田政府参考人 先生がおっしゃいましたように、養育費は二割しか払われておりませんから、これを何としてでももっとしっかり、別れた、離婚した後には養育費を払うということが通常であるという状況に持っていくべきであるというふうに思います。そして、今回の改正法では、そのために努力する主体を三つ規定しております。
 一つは、別れた夫自身の責任ですね。それから二つ目は、母親が夫からしっかり養育費を取ってほしいという、その責任。そして三つ目には、ここが大変大事かと思いますが、国や地方公共団体が、養育費の確保ができるように、先ほど大臣、副大臣も何度も答弁されましたけれども、さまざまな啓発活動、ガイドラインの策定、窓口での相談、そういったことをやっていこうということでございます。
 母親にこういう義務を課すのは過酷ではないかという御意見につきましては、無理もないというケースが多いというふうには思います。
 平成十年の全国母子世帯等調査によりますと、なぜ養育費の取り決めをしなかったのですかという調査項目があるんですが、その中で、取り決めの交渉がまとまらなかった、これは一一%で、残念ですけれども、いたし方ないというふうに思います。六割の方は、相手に支払う意思や能力がないと思ったということで、交渉されなかったわけです。この中の一定割合の方は交渉していただけるんではないかというふうに思っております。
 さらに、取り決めの交渉が煩わしいとか、養育費を請求できるということがあるとは思わなかったとか、子供を引き取った方が養育費をすべて負担するものと思っていたといったように、十分情報が届いていなかったので養育費の仕組みのことがよくわからなかったという方も一割強おられますので、そういう方には丁寧に情報を届けないといけないというふうに思った次第でございます。そういう趣旨からの母親の養育費確保の努力義務の規定です。
小沢(和)委員 もっと母親にも取り決めの交渉をしてほしかったというような今お話あるんですけれども、さっきも言いましたように、暴力や虐待、シンナーや覚せい剤など、逃げるようにしてシェルターに駆け込む、命からがら逃げてくる人もいる、こういう人もかなりいるということは、さっきからの議論の中でもしょっちゅう出てくるわけです。こういう人たちにそういうことを期待するのは余りにも酷だと思うんです。
 こういう政府の姿勢が、もう早速、第一線の行政にも反映してきております。同じ前田参考人の昨日の発言の中で、手当の切り下げが行われた八月以後、役所に現況届を提出に行った母親が、別れた夫から養育費をもらっていないか、本当のことを言わないと調査しますよなどとおどしまがいの問い詰めをされるようなことが起こっていると述べております。
 今後、父親から養育費を出させなさい、出させ切らないのは母親の努力不足だとされて、十四条四号の、自立を図るための活動をしなかったなどと、児童扶養手当の支給を停止、減額する理由とすることなど絶対あってはならないと思うんですが、そういうことは考えていないとここで明言していただきたい。
岩田政府参考人 法律の十四条の第四号の規定は、本人に能力があるにもかかわらず、そしてそういう機会があるにもかかわらず、就職活動をなさらない、あるいは職業能力開発のための教育訓練を全く受けるお気持ちがないといったような、非常にまれなケースを念頭に置いております。
 今御指摘のような、別れた夫に対して養育費の支払いのための働きかけをしなかったということをもって、このケースに該当して手当を停止するということは考えておりません。
小沢(和)委員 国や地方自治体は、別れた父親に扶養義務を果たすよう、広報その他適切な措置を講ずる努力を求められているだけであります。具体的には国や自治体はどういうことをするのか。今回の改正で、これまでとは大きく変わってくるのか。
 欧米並みにきちんと父親が養育費を負担していれば、少なくとも母子世帯の経済的苦しみは大幅に解消され、児童扶養手当がここまで膨張することもなかったと思うんです。なぜもっと、別れた父親に扶養義務を果たさせるために、政府自身が真剣に取り組まなかったのか、この点をお尋ねしたいと思います。
坂口国務大臣 これは何度かお答えをしたところでございますし、我々もこれから努力をしていきたいというふうに思っているわけでございます。
 しかし、最初から義務というわけにはいきにくい状況があったということも先ほど述べたとおりでございますが、昨日も法務省の方からもお話がございましたように、少額定期給付債務の履行確保のための民事執行制度の改正を現在検討されておりまして、通常国会にこれが提出されるということでもございますし、民事におきましてはもう既に決まっていることでございますから、それらのことを念頭に入れて、できるだけそれは実現をするように我々は努力をしたい、こういうふうに思っているわけでございます。
小沢(和)委員 欧米各国の例を見ますと、裁判所などが養育費を決定し、それを行政機関などが母親に立てかえ払いし、その分を父親から徴収するという仕組みがつくられているところが多いわけであります。我が国では、父親から養育費を取り立てる法的手続も複雑で、今のままでは困窮している母親が到底利用できる状況ではありません。一方で、サラ金業者はごく簡単に差し押さえしたりできるんですから、全く不公平だと思います。
 こういう養育費の決定、立てかえ払いなどの仕組みを日本でも至急確立すべきだと思います。今の大臣の答弁でも、強制執行の手続の簡素化は次の国会に出す予定との答弁でありますけれども、全体として、養育費の決定や立てかえ払いも含めて、仕組みを確立するために、法務省と打ち合わせすべきじゃないか、この点、いかがでしょうか。
岩田政府参考人 先生が今おっしゃいましたような諸外国の仕組みについて、いろいろ勉強させていただいております。
 そしてこの問題は、日本の場合は裁判所が関与しない離婚が圧倒的に多いということが、諸外国と違う点でございます。そのこととも裏腹の関係があるんですが、養育費の支払いの実態が極めてまだ少ないというようなことでございますので、これを一挙に、欧米の制度をそのまま導入すればうまく回るということでもないように思います。
 そこで、今回の法律の附則の六条というところに規定しているんですけれども、「母子家庭等の児童の親の当該児童についての扶養義務の履行を確保するための施策の在り方について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。」ということで、附則にそういう形で規定させていただきまして、今後の検討課題としてしっかり検討してまいりたいと思います。
小沢(和)委員 これを最後にしたいと思うんですが、以上の質問の結論として、母子家庭が安心して生活し、子育てができるようになるためには、生活支援や就労支援の抜本的強化、養育費確保の公的体制の確立などが先決であり、これを抜きに児童扶養手当の打ち切りや減額の法制化を図る本法案は、母子家庭の母親と子供たちを苦しめるだけだと言わざるを得ないんですが、大臣の見解を伺って、終わります。
坂口国務大臣 もう既に何度か述べたとおりでございまして、今回のこの法律改正は、母子家庭の皆さん方に対しまして、いかにして格差をなくしていくか、そこに重点が置かれているわけでありまして、そして、この母子家庭のお母さんを初めとして、皆さん方に対して、総合的に、どうバックアップをしていくかということでございますので、そこに力点を置いた施策というものを今後展開をしていきたい、そういうふうに思っております。
小沢(和)委員 終わります。
坂井委員長 次に、中川智子君。
中川(智)委員 社会民主党・市民連合の中川智子です。
 今回のこの改正案、審議や、また参考人の方々の御意見を伺うにつけ、いかに弱い者いじめであるか、本当に必死で働き、一生懸命子供を育てている母子家庭を直撃する、そのような中身であるかということがわかってまいりました。
 私は、一昨日、これは小さなことかもしれないけれども、本当にこういう文章を見て涙が出てきたということで、この児扶手当を受給する際の届け出の中に書かれてある文章のことをお話しいたしました。
 一昨日の質問に対して、きょう、これに対してどのように変えていただくかという具体的な御答弁を岩田局長にいただきたいのですが、受給する際の文章の中に「ご注意」と書かれていて、万が一、偽りの申告など不正な手段で受給した場合は、具体的に、三年以下の懲役または三十万円以下の罰金云々と書かれていまして、局長は、他の手当の申請用紙等にもこのような言葉が使われている、そのようにお答えになりました。
 それで、資料をちょうだいしたいということで、手元に参りましたけれども、雇用保険や介護保険の受給のさまざまな申請用紙を見ましても、介護保険の場合は、最後に、「不正にこの証を使用した者は、刑法により詐欺罪として懲役の処分を受けます。」とか、ほとんどその文言が多いんですね。その一言、一行が書かれています。国民健康保険証の場合も、「不正にこの証を使用した者は、刑法により詐欺罪として懲役の処分を受けます。」
 母子家庭に対しての児童扶養手当の申請には、具体的に、三年以下の懲役または三十万円以下の罰金と、どう見ましてもおどし文句としかとらえられない。これを見る人たちがどんな思いでこの文章を読むのかというようなところまで配慮がされていない。どれだけの人が傷つくか、また、これによって、また体をすくませながら生きていかなければいけないかと思うのですね。これを、ほかの手当の申請などと同じように一行程度のものに変えていただきたいと思いますが、御答弁をお願いします。
岩田政府参考人 児童扶養手当は、申請に基づいて支給をいたしますので、正確に申請していただくということが大変大事なことであるわけでございます。一昨日も委員会で御議論がありましたけれども、本当に必要な方に給付するということからも、不正な受給はあってはいけないというふうに思っております。
 このような観点から、児童扶養手当の現況届の裏側に、今先生がお読みになったような注意書きを設けているものでございますが、先生からの二度の御指摘もございましたし、注意書きの表現については、受給者への心理的な影響なども考えて、今先生が御指摘されたような方向で改正したいと思います。
中川(智)委員 よろしくお願いいたします。
 続きまして、就労支援に関しまして質問をさせていただきたいと思います。
 今回の就労支援、どれほどの実効性が上がるかということに関しましては、さまざまな施策を検討されているようですが、なかなか見えません。この不況下の中で、実際に、正規雇用に移るよりも、パートに移る方が多いという現実があります。就労支援の具体策として、具体的な数値目標、いわゆる障害者の方たちの障害者雇用促進法に関しましてはきっちりとした数値目標が掲げられましたが、今回、具体的な数値目標はあるでしょうか。
岩田政府参考人 今回、法律を成立させていただきましたら、その暁には、国は、母子家庭対策について、雇用対策も含めて基本方針を速やかに策定し、また、都道府県、市などにおかれては、自立促進計画を策定いただくということにしております。その中で、就労についても、基本的な方向や具体的な施策を盛り込むということにいたしております。
 そこに何を盛り込むかということは、これから考えることでございまして、具体的な数値目標を盛り込むということを排除しているわけではございませんけれども、現実問題としてはなかなか難しいこともあるのではないかなというふうに思っております。
 民間企業でいかに雇用を促進するか、なかんずく正社員と言われているような雇用を促進するか、そして、みずからビジネスを起こしたいという方については、そのことをいかに支援するかということが大事かというふうに思います。それを補完する意味で、国や地方公共団体がみずから母子家庭のお母さんを雇い入れするとか、あるいは、事業を母子福祉団体、NPOなどに発注をして、そこで事業を起こしていただくことによって雇用を吸収するといったような、そのことについても、それを念頭に置いた法律の条文を新たに設けているところでございます。
 雇用不安がある中で、確かに経済的に困窮している方たちの雇用対策が大変なわけでございますけれども、母子家庭だけをその中で優先雇用として法律で義務づけるというのは難しいかというふうに思いますが、それ以外のものについては国も自治体も、計画に基づいて、関係機関挙げて雇用の促進に取り組みたいというふうに思います。
 また、中には、母子家庭のお母さんたちは非常によく頑張られるので、そのことを評価して積極的に採用するという企業も具体的に私も知っておりますけれども、そういう具体的ないい事例というのはよく集めて、それを公表し、ほかの企業、ほかの自治体の参考にしていただくといったようなことはやっていきたいというふうに思います。
中川(智)委員 今の局長の御答弁の中で、いい事例、積極的に雇用をする、そのような民間企業などに対して、公表するとかということをおっしゃいましたが、もう少し具体的に、その企業の企業名を何か広報的な手段を使って公表するとかということを考えていらっしゃるのかどうか。自治体などは、やはり国できっちりとそのような具体策でおろしてくれれば非常にそれを奨励しやすいということを声としては伺っておりますが、もう少し詳しくお願いします。
岩田政府参考人 今回の対策の中で、都道府県レベルで、一貫した雇用支援の、就業促進のための仕組みを設けるということを念頭に置いております。職業相談から教育訓練に始まりまして、実際の職業のあっせんまでお世話をする、そういう仕組みを各都道府県レベルでつくっていただきたいというふうに思っているわけですが、その中で、就職促進のための人員も配置いたしまして、この人たちが地域の企業を回って求人を掘り起こしてくる、求人開拓してくるというようなことまでやってもらいたいというふうに思っております。
 そういう中からいい事例というのが把握できるんではないかというふうに思いますが、今先生がおっしゃいました点については、国が基本方針を定めるときに地方の計画の指針になるようなことを定めるというふうになっておりますから、例えばこの基本方針の中で、好事例の収集、提供、公表というようなことを書ければ、自治体がそういう問題意識を持って計画をつくってくれますので、そういったことも含めて検討してみたいと思います。
中川(智)委員 現実には、母子家庭のお母さんが就職活動をする際に、母子家庭であるということを隠すと。母子家庭であるということを就職活動で言いますと、かえってそれがマイナス要因になってしまうので、隠して就職活動をする方も多いという現実があります。
 例えば、母子家庭であるがゆえに就職を拒否したり、そのようなことがあった場合の対策というのは考えていらっしゃるでしょうか。
岩田政府参考人 子供があるということを理由として雇用の上で差別をするということは、具体的な法条文が例えば男女雇用機会均等法の中にあるわけではございませんし、育児休業等の法律の中にあるわけではございませんけれども、やはりあってはならないことだと思いますので、地方労働局雇用均等室の方に御相談いただければ、個別の事案ごとに企業の方にお願いしてまいりたいと思います。
中川(智)委員 やはりそういう企業に対しては、そういう企業も公表したり、いわゆる厳罰に処するみたいな形で法整備というのも考えていくべきだと思っておりますが、これに関しては、そのようなことがないように、母子家庭であるということを隠して就職活動をするような現実をクリアしていくために御努力をお願いしたいと思います。
 続きまして、窓口。
 いわゆる申請をするときに市町村の窓口に行って児童扶養手当の受給申請をするわけですけれども、先日の御質問の中で、やはり、不正受給、私も不正受給はあってはならないと思います、でも、まず疑ってかかると。そのようなたくさんの苦情なり、たくさんの困ったことで悔しい思いをした、二次被害みたいな形で、窓口で傷つくことが大変多いんですね。ホームページに書かれていますのは、とても窓口でつらい思いをした、本当に、涙を流すまでいじめられるというようなこともあるやに聞いています。
 一つには、今回のこの法改正がなされました後に関しましては、その市町村の窓口対応に対して、まず不正受給をしようとしているんじゃないかというような態度はやめていただき、相手の立場に立って話をきっちり聞いてあげるというような対応がとても大事だと思うのですが、そのような市町村に対してのこのあたりの啓蒙というのは今後なされていく予定でしょうか。
坂口国務大臣 この問題にお答えをします前に、先ほどの、各企業に対します、もっと徹底してやるべきではないか、それから、障害者と同じように目標値を設定してやるべきではないかというお話がございまして、気持ちは私たちも十分にわかるわけでございますが、一昨日もどなたかに申し上げましたけれども、私、まだ国会議員になりましてからそれほど日のたたないときでございましたけれども、議員立法で母子寡婦雇用基本法案というのをつくりまして提出をしたことがございます。
 そのときに、法律的に、いかに母子寡婦の場合に障害者の場合と違って難しいかということを、法制局と何度か何度かやる中で、本当に四苦八苦した経験がございます。それはなぜかと申しますと、母子家庭の場合には、途中で母子家庭でなくなることがあるわけでございます。障害者の場合にはずっと障害者で続いていくということでございますが、母子家庭の場合には、そうでなくなることがあって、そのときに一体どうするのかといったようなことがございまして、非常に、基本法をつくりましたけれども、なかなか障害者の場合と同じようにはいかなかったという経緯がございます。
 それで、さて扶養手当の問題でございますが、不正受給というものが、見つかっておりますだけでも四億円ほどございまして、そうしたこともなくしていかなければならない、一昨日も議論であったところでございます。しかし一方におきましては、それが行き過ぎて、先ほど御指摘を受けたように、やはり母子家庭のお母さん方の心の中に痛みとして、あるいはまたそれが一つの心の傷として残るようなことがあってはならない、そこは十分に気をつけてやっていかなければならないというふうに思っております。
 申請者の立場に立った適切な対応を心がけるように、都道府県や市町村に対しましても指導を強化してまいりたいと思います。
中川(智)委員 どうぞよろしくお願いいたします。
 ただでさえ傷つき、本当に、先に対する、将来に対する不安を持っていらっしゃる方々が、わらをもすがる思いで窓口にいらっしゃるということを考えていただきたいと思います。
 続きまして、修学資金について質問いたしますけれども、東大の合格者の親の平均年収というのは一千万を超えるというふうに統計的に出ております。最近は、親が金持ちでなければ東大に入れないというふうな状況になっておりまして、また、これが現実だと思うのですね。やはり、塾とか家庭教師とか、そういうふうなお金をかけていかなければ、いい学校に、いわゆる優秀だと言われる学校に入れないという現実があります。
 今回、この母子家庭のための修学資金というのは、学校法人という人格をきっちり持っていなければその修学資金が借りられないということになっていますが、やはり、大学に、ストレートで志望校に入れるわけではありませんで、予備校などはこの修学資金の貸し付けの対象になっているのかどうか。私はぜひともこれは予備校までも含んで柔軟に対応すべきだと思っております。いかがでしょう。
岩田政府参考人 限られた財源で、教育費のうちのどこまでを貸し付けの対象にするのかという問題かと思います。
 現行では、修学資金の貸付対象は、学校教育法に規定されております高等学校、大学、高等専門学校または専修学校、こういうところに就学させるための授業料や書籍代や交通費などの資金としてお貸しをしております。
 したがいまして、今お話がございました予備校などについて、確かに教育費として多額の負担になっているという現状はあると思いますけれども、すぐにはこれを対象とするというわけにはなかなか難しいのではないかというふうに思います。育英会の奨学金もたしか対象となさっていなかったのではないかというふうに思いますので、育英会の動きなども見ながら、また将来、検討をしてまいりたいと思います。
中川(智)委員 ぜひとも、これは貸し付けであって、将来その子が成人して社会人になった折には返していくお金です。また、昨今の教育事情というのが本当に変わってきておりますし、例えば、先ほどの質問でもございましたけれども、どうしても将来こういう職業につきたいから一生懸命勉強して私学に行きたいというときに、最近は、一般家庭でもさまざまなリストラやお給料がどんどん減らされている現実の中で、大学は国立に行ってね、国立以外は、私学だったらとてもじゃないけれどもお金がないからねというプレッシャーもあります。
 そこで、行きたくないけれどもこの高校にしか経済的な事情で行けなかった、そういうことによって、高校中退が非常にふえています。高校を中退した後、一定の所得がある家庭に関しましては留学とかいろいろな手はずというのが整えられるかもわかりませんけれども、この宙ぶらりんになった状況、高校中退の子供、そしてまた浪人をしたときの予備校に対して、この貸し付けというのは有効に生かすべきだと思いますが、坂口大臣、このところはどのようにお考えでしょうか。岩田局長の御答弁は、ちょっと私自身、余りにも子供たちに対してかわいそう過ぎるんじゃないかと思いますが。
坂口国務大臣 基本的には、局長から答弁を申し上げたとおりでございます。
 大学もいろいろでございますし、東大でなければ人生でないというわけではないと私は思っております。その能力のある方は、それは行っていただいて、そして立派に成長していただいていいわけでございますが、しかし、それだけが人生ではない。それぞれのやはり地域でそれぞれのやはり大学があるわけでございますから、その後、本人が努力をしていただくことによって、また飛躍はでき得るというふうに思っております。
 したがいまして、予備校に通われることもあるでしょう、あるいは一年間浪人をして御家庭で勉強をされる方もあるでしょう。それは大変苦しい時代だというふうに思います。私もかつて浪人をしたことがございますので、よくわかっております。それはやはり苦しいことでございますけれども、しかし、そのときが一番人間、人生の中で伸びるときでもございますし、その努力をどうしていただくかということにかかるわけでございまして、過酷な環境であればあるほど、そのときに伸びる、私は自分の人生の経験からいきましてもそう思っております。
中川(智)委員 いえ、私は東大だけが人生じゃないと、それはもちろん思っておりますし、大臣のように、それをばねにして生きていける人生もございましょう。でも、やはり、そのことによって夢を絶たれてしまう、お金がない、子供の責任ではないのに経済的な事由によって夢が壊されてしまうことはあってはならない。子供に罪はないし、また、教育費が今非常に高い。子供にお金をかけない、教育費がすごくかかるゆえに少子化現象、大きな理由になっていると私は思います。子供を二人、三人、産みたいけれども、何しろ教育にお金がかかるものねというのは、当たり前の日常会話の一つの大きな声になっています。
 お金がないことによって夢を壊してはならない、子供には罪がない。だから柔軟に、予備校であっても、その途中の、挫折しかけるときに何か国の支援というものが必要ではないかということを言ったわけです。今後の、現実を見極めての柔軟な対応を検討していただきたいと心からお願いしたいと思います。
 時間がございませんが、最後のもう一つ前、養育費につきまして、二点、簡潔に御答弁をお願いしたいと思います。
 大綱に出されました中に、養育費のガイドラインというのが作成されているということを聞きますが、このガイドラインはいつごろできるのかということで質問がたくさん来ております。何でもかんでも時間がかかる、そして公表にもまた時間がかかるということですので、ガイドラインはいつごろできるか、そして公表の予定はいつごろかということを一点。
 そして、これは法務省の方に伺いたいのですが、やはり養育費を確保するための申請手続というのはとても素人では難しいというのが、昨日の榊原参考人の御意見にもございました。裁判所なりそういう相談窓口に行ったらば気楽に書き方などを教えてもらえるということが、やはり養育費に対する橋渡しとしては非常に大事なところだと思います。
 では、最初に鴨下副大臣。
鴨下副大臣 端的に答弁申し上げます。
 確かに、養育費の取り決め率が全体の三五%、そして取得率は全体の約二割ということで、なかなか難しいというようなことでありますから、そういう意味で、厚生労働省としても、裁判手続を含めた養育費取得のための方法や養育費の額などについて、実際的な養育費の取り決めや取得に際して参考になるようなガイドラインをつくっていこう、こういうようなところを今検討しているところでありまして、このガイドラインについては、今回の法律案が施行される予定の平成十五年の四月までの間に、これはさまざまな関係省庁との協議の上でありますけれども、策定していきたい、このように考えています。
房村政府参考人 養育費を取り立てるために手続が非常に煩雑ではないかという御指摘でございます。
 一般的に、養育費につきましては、家庭裁判所において家事審判あるいは家事調停、こういうような形でその額が確定されまして、調停、審判が成立いたしますと、これはもう判決や何かと同じような債務名義となって、強制執行ができることとなっております。
 家庭裁判所は特に、身近に利用しやすくするということを念頭に置いてつくられた裁判所でございますので、窓口での相談とか、あるいは手続についても、専門家である弁護士の方を頼まなくても利用しやすいようにという配慮でできておりまして、現実に弁護士さん等に頼まずに利用されている方々も非常に多いわけでございます。
 そういうことで、裁判所としては、この養育費についてできるだけ利用しやすくということを念頭に置いてやっておるわけでございますが、御指摘のようにまだ使いにくいという声があるとすれば、そういう点についてさらに今後も裁判所としても配慮をしていただくようにこちらからもお伝えしますし、また、制度の面で何か検討すべき余地があるか考えてみたいと思っております。
中川(智)委員 それでは、最後に一点。
 これは提案なんですが、私どものスタッフで杉山章子さんという方が、十月三日の朝日新聞の「私の視点」というところで一つの提言を出しました。それは、ゼロ歳から義務教育が終わるまでに、このように児童扶養手当ということで扶養義務のある親にお金を渡す部分とまた別に、子供に直接、子供手当というのを渡していってはどうかということです。この新聞には子供年金というふうに書いていますが、子供年金でも子供手当でもいいと思うんですね。
 高齢者や障害者、いわゆる弱者に対してさまざまな施策を講じることは大変重要だと思うのですが、高齢者のためには社会保障として、日本は高齢者関係給付の費用としては約五十兆円財政支出をしております。しかし、子供に対して、子供の扶養に対しての国の施策としましては、二・五兆円です。五十兆円と二・五兆円。私は、やはり子供にもっと光を当てた形での現金給付というのを将来検討していく時期に来ていると思います。
 少年法の問題のときに、子供たち、いわゆる少年院に入った子供たちとか、いろいろ話を聞きましたが、小学校の五年、六年、中学ぐらいに親からの虐待を日々受けていて、家を出たい、どこかで親から離れて自分で生きていきたいけれども、ひとりでは就職もできない年齢です。それが、自分自身の名義で月に本当に五千円でも一万円でもあれば、それをもって何か次につなげていくことができたんじゃないかと思うという話を昨年聞く機会がありました。
 ぜひとも、坂口大臣には、この提案の新聞記事を後ほどお届けいたしますので、子供の手当、子供に直接渡せる手当の創設を御検討いただきたい。あわせてお願いして、最後に大臣の一言を伺って、質問を終わります。
坂口国務大臣 私は児童手当を提案しました張本人でございますが、児童手当を提案しましたときに、ばらまきだというので大変な批判を受けたことも事実でございます。しかし、それはそうといたしまして、新聞記事も拝見をさせていただきました。
 厚生労働省としましては、少子化の流れを変えますために、九月に少子化対策プラスワンをまとめたところでございまして、あらゆる検討を行っているところでございます。
 次期年金制度改正に向けた議論を進めているところでございますが、社会保障における次世代支援をどのように図っていくか、また、世代間の扶養を基本にしている年金制度において、少子化をどのように受けとめ、どのように対応していくかにつきましても、今後十分に検討を進めていきたいと考えているところでございます。
中川(智)委員 どうもありがとうございました。
坂井委員長 以上で本案に対する質疑は終局いたしました。
    ―――――――――――――
坂井委員長 これより討論に入ります。
 討論の申し出がありますので、これを許します。山口富男君。
山口(富)委員 私は、日本共産党を代表して、母子及び寡婦福祉法等の一部改正案に反対の討論を行います。
 本改正案は、今年度予算で実施された児童扶養手当の所得制限の大幅切り下げ、寡婦控除の除外などの改悪をさらに進めるものです。
 反対の第一の理由は、児童扶養手当の支給を、これまでは十八歳の年度末までであったものを支給五年後には半額に削減できるなど、支給削減が強化されることです。
 母子家庭の母親の九割は就労しています。しかし、平均年収は二百二十九万円にとどまり、これは一般世帯の三分の一程度です。その七割が受給している児童扶養手当は、まさに母子家庭にとってなくてはならない命の綱となっています。この手当の支給を削減することは、男女賃金格差や劣悪なパート労働を初めとした厳しい諸条件の中で必死に生きようとしている母子家庭の現実を顧みない、無慈悲な仕打ちであると断ぜざるを得ません。参考人質疑において、多くの参考人がこの点に触れたのも当然であります。五年後の削減措置を撤回し、十八歳の年度末までの支給を保障するよう、強く求めるものです。
 第二の理由は、母子家庭に対する十分な自立支援策がとられないまま、自立自助を押しつけていることです。
 本法案では、国や自治体による就労支援や夜間保育の拡充などの自立支援策がとられますが、母子家庭の母親が直面している厳しい社会経済環境を改善するのに十分ではありません。しかも、就労事業では、支援できるという行政の努力義務規定にとどまっており、どこまで実効性が担保されるか、甚だ疑問であります。さらに、就労支援策の効果について、やってみないとわからないという答弁は極めて無責任と言わざるを得ません。
 第三の理由は、養育費を履行させるための努力義務を、事実上、母子家庭の親に押しつけていることです。
 親の扶養義務や養育費の支払い義務を明記することは当然です。しかし、父親の養育費の支払いを養育する母親の努力に任すことは、必要以上に母親の負担を大きくするものです。養育費の支払い義務が履行されない場合の救済などの制度的保障こそが必要であります。
 最後に、本改正案が、すべての母子家庭児童の健やかな成長に必要な条件整備と、母親の健康で文化的な生活を保障するという、本来の児童扶養手当の性格を大きく変質させるものであることを厳しく指摘して、反対討論といたします。(拍手)
坂井委員長 以上で討論は終局いたしました。
    ―――――――――――――
坂井委員長 これより採決に入ります。
 第百五十四回国会、内閣提出、母子及び寡婦福祉法等の一部を改正する法律案について採決いたします。
 本案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
坂井委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
    ―――――――――――――
坂井委員長 この際、本案に対し、熊代昭彦君外三名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党及び保守党の四派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。
 提出者より趣旨の説明を聴取いたします。山井和則君。
山井委員 私は、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党及び保守党を代表いたしまして、本動議について御説明申し上げます。
 案文を朗読して説明にかえさせていただきます。
    母子及び寡婦福祉法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
  政府は、次の事項について、適切な措置を講ずるべきである。
 一 国は、母子家庭が経済的自立を図れるよう、母子家庭の母の職業能力の開発及び母子家庭の母の状況に応じた就業あっせん等の就労支援を就職に結びつくよう効果的に進めるとともに、母子家庭の母に対する雇用の場の創出に努めること。
 二 国は、母子家庭等の児童に対する扶養義務の履行を確保するため、養育費支払い等に関する広報・啓発活動の促進や養育費に関するガイドラインの策定等必要な措置を講ずるよう努めるとともに、扶養義務の履行を確保する施策の在り方について引き続き検討すること。また、現在、民事執行制度の見直しが検討されているが、養育費等少額定期債務の問題については、母子家庭の実情を踏まえ、少ない回数の手続きで将来発生する債務の差し押さえが行えるよう配慮すること。
 三 国は、児童扶養手当の受給期間が五年を超える場合の手当の一部支給停止に係る政令を定めるに当たっては、改正法施行後における子育て・生活支援策、就労支援策、養育費確保策、経済的支援策等の進展状況及び離婚の状況などを十分踏まえて制定すること。その際には母子福祉団体など幅広く関係者の意見を十分聞くこと。また、児童扶養手当の所得制限については、今後とも社会経済情勢や母子家庭の状況等を勘案しながら、適切に設定すること。
 四 国は、地方公共団体と連携を図りつつ母子世帯に対する公営住宅の優先入居を推進するなど、公営住宅の積極的な活用が図られるよう努めること。また、賃貸住宅に入居する場合の家賃保証について、民間の家賃保証サービスの活用を推進するとともに、このような民間事業者による取り組み状況等を踏まえ必要な施策について検討すること。
以上であります。
 何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。(拍手)
坂井委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。
 採決いたします。
 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
坂井委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。
 この際、坂口厚生労働大臣から発言を求められておりますので、これを許します。坂口厚生労働大臣。
坂口国務大臣 ただいま御決議のありました本法案に対する附帯決議につきましては、その趣旨を十分尊重いたしまして、努力してまいる所存でございます。
 ありがとうございました。
    ―――――――――――――
坂井委員長 お諮りいたします。
 ただいま議決いたしました本案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
坂井委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
    〔報告書は附録に掲載〕
    ―――――――――――――
坂井委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後零時四十一分散会


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