衆議院

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第11号 平成14年12月11日(水曜日)

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平成十四年十二月十一日(水曜日)
    午前十時三分開議
 出席委員
   委員長 坂井 隆憲君
   理事 熊代 昭彦君 理事 長勢 甚遠君
   理事 野田 聖子君 理事 宮腰 光寛君
   理事 釘宮  磐君 理事 山井 和則君
   理事 福島  豊君 理事 武山百合子君
      岡下 信子君    奥谷  通君
      後藤田正純君    佐藤  勉君
      田村 憲久君    竹下  亘君
      棚橋 泰文君    西川 京子君
      平井 卓也君    松島みどり君
      三ッ林隆志君    宮澤 洋一君
      森  英介君    谷津 義男君
      山本 幸三君    吉田 幸弘君
      吉野 正芳君    渡辺 具能君
      家西  悟君    石毛えい子君
      大島  敦君    鍵田 節哉君
      金田 誠一君    五島 正規君
      今田 保典君    武正 公一君
      土肥 隆一君    三井 辨雄君
      山内  功君    山谷えり子君
      江田 康幸君    桝屋 敬悟君
      佐藤 公治君    小沢 和秋君
      山口 富男君    北川れん子君
      中川 智子君
    …………………………………
   厚生労働大臣       坂口  力君
   厚生労働副大臣      鴨下 一郎君
   厚生労働副大臣      木村 義雄君
   財務大臣政務官      田中 和徳君
   厚生労働大臣政務官    渡辺 具能君
   政府参考人
   (文部科学省大臣官房長) 結城 章夫君
   政府参考人
   (文部科学省高等教育局長
   )            工藤 智規君
   政府参考人
   (厚生労働省大臣官房総括
   審議官)         鈴木 直和君
   政府参考人
   (厚生労働省大臣官房審議
   官)           鶴田 康則君
   政府参考人
   (厚生労働省医政局長)  篠崎 英夫君
   政府参考人
   (厚生労働省健康局長)  高原 亮治君
   政府参考人
   (厚生労働省健康局国立病
   院部長)         冨岡  悟君
   政府参考人
   (厚生労働省雇用均等・児
   童家庭局長)       岩田喜美枝君
   政府参考人
   (厚生労働省社会・援護局
   長)           河村 博江君
   政府参考人
   (厚生労働省社会・援護局
   障害保健福祉部長)    上田  茂君
   政府参考人
   (厚生労働省保険局長)  真野  章君
   政府参考人
   (厚生労働省年金局長)  吉武 民樹君
   政府参考人
   (厚生労働省政策統括官) 水田 邦雄君
   厚生労働委員会専門員   宮武 太郎君
    ―――――――――――――
委員の異動
十一月二十九日
 辞任         補欠選任
  西川 京子君     谷本 龍哉君
同日
 辞任         補欠選任
  谷本 龍哉君     西川 京子君
十二月三日
 辞任         補欠選任
  山口 富男君     藤木 洋子君
同日
 辞任         補欠選任
  藤木 洋子君     山口 富男君
同月四日
 辞任         補欠選任
  鍵田 節哉君     城島 正光君
同日
 辞任         補欠選任
  城島 正光君     鍵田 節哉君
同月十一日
 辞任         補欠選任
  大島  敦君     武正 公一君
  鍵田 節哉君     今田 保典君
  阿部 知子君     北川れん子君
同日
 辞任         補欠選任
  今田 保典君     山内  功君
  武正 公一君     大島  敦君
  北川れん子君     阿部 知子君
同日
 辞任         補欠選任
  山内  功君     山谷えり子君
同日
 辞任         補欠選任
  山谷えり子君     鍵田 節哉君
    ―――――――――――――
十一月二十八日
 十五歳未満の臓器提供を可能にするための臓器移植法改正に関する請願(松宮勲君紹介)(第三二九号)
 同(甘利明君紹介)(第三五〇号)
 同(黄川田徹君紹介)(第三五一号)
 同(北村誠吾君紹介)(第三五二号)
 同(高木毅君紹介)(第三五三号)
 同(中林よし子君紹介)(第三五四号)
 医療改悪実施と社会保障の改悪反対、充実に関する請願(児玉健次君紹介)(第三四七号)
 同(中林よし子君紹介)(第三四八号)
 同(春名直章君紹介)(第三四九号)
 年金・医療・福祉等の制度改革に関する請願(柳本卓治君紹介)(第四六六号)
十二月三日
 社会保障の拡充、将来への安心と生活の安定に関する請願(原陽子君紹介)(第五二七号)
 同(大森猛君紹介)(第六四七号)
 安心して受けられる医療制度の確立に関する請願(児玉健次君紹介)(第六三一号)
 医療改悪の実施中止、年金・生活保護基準などの切り下げ反対に関する請願(小沢和秋君紹介)(第六三二号)
 国民医療及び建設国保組合改善に関する請願(原陽子君紹介)(第六三三号)
 雇用・失業情勢の深刻化に対応するための労働行政体制の整備に関する請願(中川智子君紹介)(第六三四号)
 支援費制度移行に際して視覚障害者の負担軽減並びに援助強化に関する請願(伊吹文明君紹介)(第六三五号)
 社会保険病院・診療所、厚生年金病院の統廃合・売却反対、より一層の充実に関する請願(細野豪志君紹介)(第六三六号)
 総合的難病対策の早期確立に関する請願(宮澤洋一君紹介)(第六三七号)
 乳幼児医療費無料制度の創設に関する請願(大森猛君紹介)(第六三八号)
 保育・学童保育予算の大幅増額に関する請願(小沢和秋君紹介)(第六三九号)
 同(中川智子君紹介)(第六四〇号)
 医療改悪の実施と社会保障の改悪反対、充実に関する請願(大森猛君紹介)(第六四一号)
 同(児玉健次君紹介)(第六四二号)
 物価スライドによる年金引き下げ反対、最低保障年金制度の創設に関する請願(小沢和秋君紹介)(第六四三号)
 十五歳未満の臓器提供を可能にするための臓器移植法改正に関する請願(小沢和秋君紹介)(第六四四号)
 同(谷畑孝君紹介)(第六四五号)
 同(宮澤洋一君紹介)(第六四六号)
同月四日
 社会保障の拡充、将来への安心と生活の安定に関する請願(志位和夫君紹介)(第七一一号)
 同(重野安正君紹介)(第七一二号)
 同(山口富男君紹介)(第七一三号)
 同(春名直章君紹介)(第七七七号)
 国民医療及び建設国保組合改善に関する請願(阿部知子君紹介)(第七一四号)
 同(石井郁子君紹介)(第七一五号)
 同(金子哲夫君紹介)(第七一六号)
 同(木島日出夫君紹介)(第七一七号)
 同(佐々木憲昭君紹介)(第七一八号)
 同(塩川鉄也君紹介)(第七一九号)
 同(春名直章君紹介)(第七二〇号)
 同(日森文尋君紹介)(第七二一号)
 同(矢島恒夫君紹介)(第七二二号)
 同(吉井英勝君紹介)(第七二三号)
 同(植田至紀君紹介)(第七七八号)
 雇用・失業情勢の深刻化に対応するための労働行政体制の整備に関する請願(阿部知子君紹介)(第七二四号)
 同(金子哲夫君紹介)(第七二五号)
 同(三井辨雄君紹介)(第七二六号)
 同(川田悦子君紹介)(第七七九号)
 同(近藤昭一君紹介)(第七八〇号)
 同(水島広子君紹介)(第八二七号)
 保育・学童保育予算の大幅増額に関する請願(家西悟君紹介)(第七二七号)
 同(三井辨雄君紹介)(第七二八号)
 同(川田悦子君紹介)(第七八一号)
 同(川田悦子君紹介)(第八二八号)
 同(水島広子君紹介)(第八二九号)
 在日外国人障害者等の年金保障に関する請願(今野東君紹介)(第七七四号)
 同(近藤昭一君紹介)(第七七五号)
 同(阿部知子君紹介)(第八三〇号)
 同(水島広子君紹介)(第八三一号)
 食品衛生法の抜本的な見直し等に関する請願(工藤堅太郎君紹介)(第七七六号)
 同(菅野哲雄君紹介)(第八三二号)
 医療改悪の実施と社会保障の改悪反対、充実に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第八〇九号)
 同(木島日出夫君紹介)(第八一〇号)
 同(児玉健次君紹介)(第八一一号)
 同(佐々木憲昭君紹介)(第八一二号)
 同(志位和夫君紹介)(第八一三号)
 同(塩川鉄也君紹介)(第八一四号)
 同(中林よし子君紹介)(第八一五号)
 同(春名直章君紹介)(第八一六号)
 同(藤木洋子君紹介)(第八一七号)
 同(松本善明君紹介)(第八一八号)
 同(山口富男君紹介)(第八一九号)
 物価スライドによる年金引き下げ反対、最低保障年金制度の創設に関する請願(大森猛君紹介)(第八二〇号)
 同(木島日出夫君紹介)(第八二一号)
 同(児玉健次君紹介)(第八二二号)
 同(塩川鉄也君紹介)(第八二三号)
 同(瀬古由起子君紹介)(第八二四号)
 同(春名直章君紹介)(第八二五号)
 同(松本善明君紹介)(第八二六号)
同月六日
 社会保障の拡充、将来への安心と生活の安定に関する請願(山口富男君紹介)(第八六〇号)
 同(枝野幸男君紹介)(第九四五号)
 同(田中慶秋君紹介)(第九四六号)
 同(五十嵐文彦君紹介)(第一〇二七号)
 同(枝野幸男君紹介)(第一〇二八号)
 同(五島正規君紹介)(第一〇二九号)
 同(中津川博郷君紹介)(第一〇三〇号)
 国民医療及び建設国保組合改善に関する請願(中西績介君紹介)(第八六一号)
 同(重野安正君紹介)(第九一二号)
 同(大島令子君紹介)(第一〇三一号)
 同(五島正規君紹介)(第一〇三二号)
 雇用・失業情勢の深刻化に対応するための労働行政体制の整備に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第八六二号)
 同(小沢和秋君紹介)(第八六三号)
 同(大森猛君紹介)(第八六四号)
 同(木島日出夫君紹介)(第八六五号)
 同(児玉健次君紹介)(第八六六号)
 同(瀬古由起子君紹介)(第八六七号)
 同(中西績介君紹介)(第八六八号)
 同(春名直章君紹介)(第八六九号)
 同(藤木洋子君紹介)(第八七〇号)
 同(山口富男君紹介)(第八七一号)
 同(吉井英勝君紹介)(第八七二号)
 同(松本善明君紹介)(第九四七号)
 同(鍵田節哉君紹介)(第一〇三三号)
 同(五島正規君紹介)(第一〇三四号)
 保育・学童保育予算の大幅増額に関する請願(山口富男君紹介)(第八七三号)
 在日外国人障害者等の年金保障に関する請願(石毛えい子君紹介)(第八七四号)
 同(山井和則君紹介)(第九一三号)
 同(小沢和秋君紹介)(第一〇三五号)
 同(山口富男君紹介)(第一〇三六号)
 食品衛生法の抜本的な見直し等に関する請願(菅野哲雄君紹介)(第八七五号)
 同(高橋嘉信君紹介)(第八七六号)
 同(達増拓也君紹介)(第八七七号)
 同(菅野哲雄君紹介)(第九一四号)
 同(黄川田徹君紹介)(第九四八号)
 同(松本善明君紹介)(第九四九号)
 緊急の保育課題への対応とよりよい保育制度の構築に関する請願(亀井静香君紹介)(第九〇五号)
 同(自見庄三郎君紹介)(第九〇六号)
 じん肺根絶に関する請願(漆原良夫君紹介)(第九〇七号)
 同(江田康幸君紹介)(第九四二号)
 同(東順治君紹介)(第九四三号)
 十五歳未満の臓器提供を可能にするための臓器移植法改正に関する請願(塩崎恭久君紹介)(第九〇八号)
 同(二階俊博君紹介)(第九〇九号)
 同(松島みどり君紹介)(第九一〇号)
 同(山井和則君紹介)(第九一一号)
 同(江田康幸君紹介)(第九四四号)
 同(今村雅弘君紹介)(第一〇二四号)
 同(川端達夫君紹介)(第一〇二五号)
 同(長勢甚遠君紹介)(第一〇二六号)
 国内で未承認の医薬品に係る保険給付に関する請願(加藤公一君紹介)(第一〇一八号)
 同(五島正規君紹介)(第一〇一九号)
 同(土肥隆一君紹介)(第一〇二〇号)
 同(平井卓也君紹介)(第一〇二一号)
 同(三ッ林隆志君紹介)(第一〇二二号)
 保育制度の改善と充実に関する請願(橋本龍太郎君紹介)(第一〇二三号)
同月九日
 医師卒後研修の改善・充実に関する請願(五島正規君紹介)(第一一五五号)
 同(山井和則君紹介)(第一一五六号)
 同(川田悦子君紹介)(第一二七九号)
 同(三井辨雄君紹介)(第一二八〇号)
 同(阿部知子君紹介)(第一四七二号)
 同(家西悟君紹介)(第一四七三号)
 同(小沢和秋君紹介)(第一四七四号)
 同(金田誠一君紹介)(第一四七五号)
 同(瀬古由起子君紹介)(第一四七六号)
 同(中川智子君紹介)(第一四七七号)
 同(水島広子君紹介)(第一四七八号)
 乳幼児医療費無料制度創設に関する請願(石井郁子君紹介)(第一一五七号)
 同(瀬古由起子君紹介)(第一一五八号)
 同(中林よし子君紹介)(第一一五九号)
 同(藤木洋子君紹介)(第一一六〇号)
 輸入食品の残留農薬等の検査強化、検査員の大幅増員に関する請願(石井郁子君紹介)(第一一六一号)
 同(瀬古由起子君紹介)(第一一六二号)
 同(中林よし子君紹介)(第一一六三号)
 同(藤木洋子君紹介)(第一一六四号)
 物価スライドによる年金引き下げ反対、最低保障年金制度の創設に関する請願(小沢和秋君紹介)(第一一六五号)
 同(山口富男君紹介)(第一一六六号)
 年金・医療・福祉等の制度改革に関する請願(岩屋毅君紹介)(第一一六七号)
 十五歳未満の臓器提供を可能にするための臓器移植法改正に関する請願(岩屋毅君紹介)(第一一六八号)
 同(大島敦君紹介)(第一二七一号)
 同(佐藤公治君紹介)(第一二七二号)
 同(釘宮磐君紹介)(第一四四六号)
 同(西川京子君紹介)(第一四四七号)
 社会保障の拡充、将来への安心と生活の安定に関する請願(上田清司君紹介)(第一一六九号)
 同(玄葉光一郎君紹介)(第一一七〇号)
 同(後藤斎君紹介)(第一一七一号)
 同(吉野正芳君紹介)(第一一七二号)
 同(城島正光君紹介)(第一二七三号)
 同(長妻昭君紹介)(第一二七四号)
 同(阿久津幸彦君紹介)(第一四四八号)
 同(大島敦君紹介)(第一四四九号)
 同(木下厚君紹介)(第一四五〇号)
 同(武正公一君紹介)(第一四五一号)
 同(日森文尋君紹介)(第一四五二号)
 同(保坂展人君紹介)(第一四五三号)
 同(細川律夫君紹介)(第一四五四号)
 同(若松謙維君紹介)(第一四五五号)
 雇用・失業情勢の深刻化に対応するための労働行政体制の整備に関する請願(小沢和秋君紹介)(第一一七三号)
 同(木島日出夫君紹介)(第一一七四号)
 同(大島敦君紹介)(第一二七五号)
 同(塩田晋君紹介)(第一二七六号)
 同(石毛えい子君紹介)(第一四五六号)
 同(小沢和秋君紹介)(第一四五七号)
 同(大幡基夫君紹介)(第一四五八号)
 同(大森猛君紹介)(第一四五九号)
 同(金田誠一君紹介)(第一四六〇号)
 同(釘宮磐君紹介)(第一四六一号)
 同(山口富男君紹介)(第一四六二号)
 国内で未承認の医薬品に係る保険給付に関する請願(棚橋泰文君紹介)(第一一七五号)
 同(山井和則君紹介)(第一一七六号)
 同(家西悟君紹介)(第一四六九号)
 同(田村憲久君紹介)(第一四七〇号)
 同(水島広子君紹介)(第一四七一号)
 在日外国人障害者等の年金保障に関する請願(桝屋敬悟君紹介)(第一二七七号)
 同(枝野幸男君紹介)(第一四六四号)
 同(小沢和秋君紹介)(第一四六五号)
 同(金田誠一君紹介)(第一四六六号)
 同(中川智子君紹介)(第一四六七号)
 同(福島豊君紹介)(第一四六八号)
 食品衛生法の抜本的な見直し等に関する請願(達増拓也君紹介)(第一二七八号)
 介護保険の改善に関する請願(石井郁子君紹介)(第一四三一号)
 同(瀬古由起子君紹介)(第一四三二号)
 同(中林よし子君紹介)(第一四三三号)
 同(藤木洋子君紹介)(第一四三四号)
 社会保障を拡充し、将来への安心と生活の安定に関する請願(小沢鋭仁君紹介)(第一四三五号)
 年金の物価スライドに関する請願(大石正光君紹介)(第一四三六号)
 同(鎌田さゆり君紹介)(第一四三七号)
 不妊治療の保険適用を含む公的補助に関する請願(釘宮磐君紹介)(第一四三八号)
 輸入食料の安全検査に関する請願(中林よし子君紹介)(第一四三九号)
 同(松本善明君紹介)(第一四四〇号)
 医療改悪の実施と社会保障の改悪反対、充実に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第一四四一号)
 同(小沢和秋君紹介)(第一四四二号)
 同(大幡基夫君紹介)(第一四四三号)
 同(木島日出夫君紹介)(第一四四四号)
 同(中林よし子君紹介)(第一四四五号)
 保育・学童保育予算の大幅増額に関する請願(金田誠一君紹介)(第一四六三号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 厚生労働関係の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――
坂井委員長 これより会議を開きます。
 厚生労働関係の基本施策に関する件について調査を進めます。
 この際、お諮りいたします。
 本件調査のため、本日、政府参考人として文部科学省大臣官房長結城章夫君、高等教育局長工藤智規君、厚生労働省大臣官房総括審議官鈴木直和君、大臣官房審議官鶴田康則君、医政局長篠崎英夫君、健康局長高原亮治君、健康局国立病院部長冨岡悟君、雇用均等・児童家庭局長岩田喜美枝君、社会・援護局長河村博江君、社会・援護局障害保健福祉部長上田茂君、保険局長真野章君、年金局長吉武民樹君及び政策統括官水田邦雄君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
坂井委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
坂井委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。野田聖子君。
野田(聖)委員 おはようございます。自由民主党の野田聖子です。
 早速質問を進めていきたいと思いますが、私たちは、日本の国が国民に対してどういう政策を進めているかということを理解するに、さまざまな道具があると思います。それは、一つは法律であったり、それに伴う制度であったりとか。でも、一番わかりやすいバロメーターというのは、一年の予算の中でどれだけその政策に関してお金が使われているかどうか、その比率というか、大きさ、小ささというのが、その国の国に対するあり方、または国民に対するあり方を端的にあらわしているんじゃないかという感じがします。
 各省別の予算というのはしょっちゅう比較されて出てくるわけですけれども、横断的な政策別というかカテゴリー別の予算というのはなかなか目に見えて出てくることがないわけです。そんな中で最近ようやく、この厚生労働委員会の中でも、少子化というのは大変深刻な問題であると大臣みずから何度も御答弁をいただきましたし、このたびは、プラスワンという、少子化対策に向けて頑張ろう、そういうお話があったわけです。
 それでは一体この少子化に対してどれだけ実際に国は打ち込んでいるのかということを予算的に見てみますと、一つの参考になるのが、今度の十五年度の予算に関してですけれども、厚生労働省の方では、重点要求事項ということで、第一番目に少子化対策の推進ということを掲げてあります。その額は一兆円をようやく超えたということで、それは評価するところがあるわけです。
 けれども、考えていただきたいのは、その全体の中で、少子化と高齢化というのは同じような、基本的には同じことなんですね。子供が減ればお年寄りの率がふえるということで、そういう二つのものがあって、では少子化と高齢化とどれだけ国は力を入れているかというのを、お金だけで、予算の規模だけで見ると、実は、少子化というのはようやく一兆円に上ろうとしている。片や高齢化の方は、もう既に数年来、七兆円規模、七兆円を超える規模で施策が進められている。やはり一対七の差というのは、まさに費用対効果、この国の形をつくり上げてきたと思います。お年寄りは、世界でも長寿の、世界で最も長寿の国に生きることになり、片や、日本は世界に類を見ない最も少子化が進んだ国ということになってきたわけです。
 この少子化に対して、正直申し上げて、これまで九千億円台の予算にすぎなかったですし、今回も、ようやく一兆円に乗ったわけですけれども、高齢化、これは厚生省内でのお金ですから、国全体でいうならばもっともっと高齢者に対しての予算というのは各省つけてありますけれども、残念ながら子供に関しての予算というのはほとんどないわけですから、国全体で見ると、予算規模では、高齢化に対してのお金に比べて少子化に対するお金というのは非常に微々たるものであるということが事実として浮かび上がってくるわけです。
 そういう中で、私自身は、もうこれは少子化という言葉をやめて人口問題という言葉に置きかえ、申しわけないけれども、厚生労働省の枠内だけの問題とせず、オール・ジャパンの問題として大きな予算をこの際つけていかなければ、とても少子化のスピードをとめていくのに対応できないんじゃないかという不安を感じております。それにつきまして、今日までの取り組み、または今後の厚生労働省の考え方についてお尋ねしたいと思います。
水田政府参考人 今後の少子化対策の進め方についてのお尋ねでございます。
 これまでも、新エンゼルプランの推進を初めとしまして、まさに子育てと仕事の両立支援を中心にした施策を講じてきたところでありますけれども、先生御指摘のとおり、少子化の一層の進展というものが予測されているところでございまして、こうした少子化の流れを変えるということで、従来の取り組みに加えまして、男性を含めた働き方の見直し、地域における子育ての支援、社会保障における次世代支援、子供の社会性の向上や自立の促進、こういった四つを柱といたしますもう一段の少子化対策の施策を進めようということで、本年九月に少子化対策プラスワンを公表したところでございます。
 現在、対策推進の基本的な枠組みでありますとか、早急に着手すべき課題につきまして、法整備に向けた具体的な検討を、関係府省の協力も得ながら、基盤整備を含め、総合的な対策に全力で取り組んでまいりたいと考えております。
野田(聖)委員 実は、少子化関係閣僚会議というのは、小渕内閣のときに初めて日本でできました。もう五年以上の月日がたっていて何らその効果が、はっきり言えば出生率の低下も食いとめられない。むしろ、大変速い勢いで少子化が進んでいる。残念ながら、もう今の日本には、この少子化を食いとめるために参考になるお手本の国がありません。それだけどの国よりも速いスピードで進んでいるということを自覚しなければなりません。
 ただ、先進国、欧米諸国では、もう既に少子化というのが国力を左右するということで取り組みがある中、一番効果があらわれたと言われるのがフランス型と言われています。
 フランスの場合は、はっきり言いますと、お金をどんどん支給、家族手当ということで支給しているわけですが、これは出生促進型と言われて、本来、出産というのは個人にかかわることなんだけれども、国のことを思ったらやはりやってもらわなきゃいけないという政策の中で取り組んだ結果、数多くの先進国が少子化で苦しんでいる中、フランスでは少子化に歯どめをかけているということがあります。
 ほかの国々を見てみますと、例えば何をやっているかというと、今お話があったような育休の導入とか保育サービスとか、そういうことがあるわけですけれども、では日本は何ができるかということを考えてみたいと思います。
 そこで、もう既にこの委員会でもたびたび、民主党の釘宮委員、そして自民党の岡下委員からもお話がありました、不妊治療について質問させていただきたいと思います。
 これについては大臣もかなり踏み込んだ御答弁をいただいており、実際に今治療に当たられている方にとっては、光明というか、大変ありがたいという気持ちでいるわけですが、その後、どうもプラスワンの中においても検討にとどまっていて、何ら具体的な道が見えてこない、そんなことがあります。
 いろいろお尋ねする前に、厚生労働省の担当者として、この不妊または不妊治療について、どういう認識またはどういう定義で取り組んでいるか、教えてください。
岩田政府参考人 今委員が御指摘になりました少子化対策プラスワン、これはことしの九月の二十日に取りまとめた文書でございますが、その中では、「子どもを持ちたいのに子どもができない場合に不妊治療を受けるケースが多くなっていることを踏まえ、子どもを産みたい方々に対する不妊治療対策の充実と支援の在り方について検討する。」ということで、少子化対策の一環としてこの課題があるということを整理したわけでございます。
 今日では、この規定を受けまして、具体的な対策のあり方について、目下、省内でまさに検討中でございます。
 その検討に当たりまして、不妊の具体的な範囲をあらかじめ定義づけて、その上で検討を行っているということではございませんで、不妊治療全般について、不妊治療対策としてどういう対策、支援のあり方があるかということを検討しているところでございます。
野田(聖)委員 岩田局長を責める気はさらさらないんですが、実は、既に不妊に関しては、このプラスワンの前に取り組んできた新エンゼルプラン、正直申し上げて、この新エンゼルプランでは子供の数はふえなかったという事実があるわけですが、その中の一つに、不妊専門相談センターの整備というのがございます。
 これは、もう既に二十四カ所、三十カ所、三十六カ所、十四年度までには三十六カ所整備をされるということになっていて、十二年度、数年前からそういう場所ができていて、いろいろな相談事に応じたりしているというふうに私は理解しているんですが、今の場合、まだ不妊に関して定義もないし、非常にアバウトな状況にあるというんですけれども、もう既に数年前から不妊センターに寄せられる意見とかさまざまな問題点などで、ある程度のフォーカスはできてきているんじゃないかと思うんです。
 この不妊専門相談センターの役割と、そしてそこで得た成果物、それをどう生かしていこうかについて、ちょっとお話をいただきたいと思います。
岩田政府参考人 不妊に悩む方々に的確な情報を提供し、そして専門的な相談に応じられる体制を地域に整備するということは、重要な課題であるというふうに認識しております。そういうことで、新エンゼルプランにおきましては、平成十六年度の、最終年度ですけれども、それまでに四十七都道府県、すべての都道府県に不妊専門相談センターを整備するという目標を掲げて、今整備を進めているところでございます。
 この事業の中で、地域の中核病院などにおきまして、専門の医師などが、不妊に関する医学的な相談や、その医学的な相談にとどまりませず、不妊による心の悩みの相談なども行うということでやっているところでございます。
 どういう相談がそこに寄せられているかということでございますが、不妊症自体に関する医学的な相談ももちろんございますけれども、例えば、いつまでこの治療を続けるべきかといった先の見えない不妊医療への不安ですとか、夫は続けたいというふうに言っているけれども自分はもうこれでいい、やめたいといったような不妊治療への迷いですとか、あるいは、子供ができないということは嫁として失格であるという夫の両親からの圧力などといった周囲の人間関係ですとか、そういったようなことを広く相談が寄せられているようでございまして、これらに対して、御夫婦の健康状況や御意見などに応じて相談指導を行っているところでございます。
 こうした現場における相談事例につきましては、不妊相談センターで不妊相談を行う専門相談員の質の向上といったような観点から研修を行っているところでございますが、その研修の現場などでそういった相談内容を活用しているということがございます。
 不妊の専門相談センターの全国的な整備を図るということ、そして、そこで行われる不妊に悩む方々からの相談体制といいましょうか、相談の質の向上といいましょうか、そういうことにつきまして、引き続き取り組んでまいりたいというふうに思います。
野田(聖)委員 今の日本の国には、約二十八万五千人の治療を受けている方がいらっしゃると調査でわかっています、推測されています。わかっていることは、現在、夫婦十組のうちの一組が不妊であるというデータもありますし、そして、その中から年間百人の子供が人工授精ないしは体外受精という形で、自然妊娠以外で出産、そして誕生しているという実態もあります。
 ここで私自身の身分を明らかにするならば、実は、私もこの二十八万五千人の一人でありまして、まさに今最前線でこの不妊治療を受けている一人であります。その私自身が実際に経験して感じている問題点というのは、今、不妊センターに上がってきた問題点以外のことの方が多いわけですね。
 一つは、費用の問題。
 これは、ここでもたびたびお話がありましたけれども、一番、究極とまで言いませんけれども、体外受精または顕微授精なんかを受けなければならないときには、一回約四十万近く自費で払わなければならない。そういう費用の問題等々もあります。
 さらに、次に問題なのは、私たち働く女性にとって、仕事との両立です。
 つまり、この治療に関しては、日程が定まらない。自分の体のバイオリズムとともに治療が進みますから、突然会社を休まなきゃいけなかったり、突然仕事に穴をあけなければならない。自分で計画的に有休がとれるような話ではないので、その都度会社の人に迷惑をかけるとか、精神的に休みづらい。結果として仕事をやめなければならない人たちも多いわけです。
 そして三番目には、精神的なストレスです。
 実は、究極の医学を講じて四十万も払っても、できない場合の方が多いわけです。確率は四〇%と言われています。年齢が上がればどんどん低くなります。その中で、ひょっとしたら今回は子供に恵まれたかもしれないと思うと、まただめだったと。そのダウンしたときの精神的なサポートをしていただかなければ、その落ち込みというのは想像を絶するところがありまして、やはりこういうことも分かち合う何かがなければ、先ほど、女性がやめたいというのはそういう部分がすごく大きいのではなかろうかと思っています。
 最後には、偏見です。
 やはり、まだまだ自然妊娠が大多数ですから、そういうことを選ぶ人に対して奇異な目で見られるんじゃないか。ですから、不妊治療を受けていることすら隠したり、またはそういうところでできた子供をあえて隠したり、要するに、周りの子供と違うというふうに子供を色つきで見られたくないというような思いの中で、本当は、出ている数よりももっともっと大勢の人たちが不妊にかかわっているんじゃないかという懸念があります。
 そんな中で、私としては四点、問題点を感じてきましたけれども、やはり何といっても、一般的には一番最初の費用の面が大きな障害になっています。
 数回、多い人で十回ぐらい人工授精並びに体外受精なんかをするときに、お金のある人はやれるんですけれども、普通の若い人たちはある程度、百万円までとか二百万円までとか決めて頑張るんですね、だめだったらあきらめようということで。残念ながら、そういうお金がないからやめるというような実態があります。それを少しはサポートしてあげるべきなんじゃないかというのが、恐らく釘宮委員、そして岡下委員の思いではなかったかと思います。
 その中で、大臣が保険適用という話を不意に出されました。ただ、これについても検討にとどまっていて、本当にどうなるのかが定かではありません。ですから、私がきょう聞きたいのは、保険適用にすると何が問題なのか、そういうことを、もう既にお話が出ている、問題がなければ保険適用とすぐ決まるわけですから、保険適用がなかなか難しいという理由を幾つか教えていただきたいと思います。
真野政府参考人 不妊治療の場合も、一般といいますか、排卵誘発剤などの薬物治療、それから精管機能障害に対する精管形成術、そういうようなものに対しましては保険の適用があります。
 先生御指摘の人工授精それから体外受精でございますが、これにつきまして医療保険から支援を行うという場合の問題点、私どもが考えております主な点は、まず、配偶者間、また場合によっては非配偶者間という問題もございまして、そういう倫理面の課題についても問題があるのではないか。また、プライバシー保護、先ほど先生がおっしゃられましたけれども、プライバシー保護といった実務上の問題も含めてどういうふうに考えていくべきか。
 また、成功率につきましても先生御指摘がありましたが、私どもが承知しております限り、必ずしも成功率が高くない。それから、母体の安全性といった技術の有効性、安全性の問題につきましてもさらに詰める必要がある。そういう意味では、医療提供体制の整備の問題も含めてどういうふうに考えるか。
 それから、大変申し上げにくいことでございますが、医療保険財政下は非常に厳しいということでございまして、財源を要しますこの治療を医療保険から支援するということにつきまして保険者等の理解が得られるかというような、主に三点程度を考えておりまして、現在鋭意検討を進めているところでございます。
野田(聖)委員 今局長が、排卵誘発剤は保険適用だけれども人工授精はだめだと。これがすごく矛盾しているわけですね。なぜ排卵誘発剤を打つかというと、排卵を促して卵をつくるために注射を打つわけですよ。でも、その卵ができて、それを取り出す採卵とか、それにまた受精させる作業がなければ実は不妊治療じゃない。つまり、保険の今やっていることが非常に中途半端になっている。そんな、排卵誘発だけで妊娠できるわけないわけですから。そういうところが、やはり実際に治療を受けている身からすると、おかしなシステムになっているなという感じがあります。
 確かに、保険適用というのは非常に限定的で難しいのは理解できます。さらに、不妊治療の場合はカスタマイズされていますから、野田聖子は野田聖子の不妊治療というのがあり、別の女性は別の女性の不妊の治療のやり方があるので、一律に保険適用というのはなかなかアジャストが難しいのかなと思いつつも、では、保険適用というのは、医療の範囲の中、厚生労働省の範囲の中でやるとして限界があるのであれば、さっき申し上げたように、もとに戻りますけれども、人口問題として考えたときには、それ以外のお金の手だて、患者さんというか、今携わっている人にとってみればお金には色も形もついていない、同じですから、どういう出方にせよ、国が応援しているという姿勢を担保できればいいわけで、保険が無理であれば補助金というやり方もあると思います。
 それにつきましてはいささかの御検討をされているかどうか、ちょっとお尋ねしたいのですが。
岩田政府参考人 不妊治療への経済的な支援を一般財源で行うとすればどういう問題があるかというお尋ねかと思いますが、もちろん一般財源の大変厳しい状況ということをまず冒頭に申し上げないといけないと思います。
 それを申し上げた上で、既に不妊治療の一部は保険適用されているということとの連続性をどういうふうに考えるかという問題ですとか、具体的な仕組みを考えるとすれば、自治体が個人に対して助成を行い、それを国が補助するという仕組みが考えられるというふうに思いますけれども、その場合には自治体の費用負担や事務負担の問題もございますし、また、その結果、自治体ごとの取り組みに格差が生まれるという問題も出てくるというふうに思います。
 またさらには、自治体の窓口に申請をするという手続が必要になってくるわけでございますけれども、身近な自治体の職員に自分が不妊治療を受けているということはやはり知られたくないという声も現実的にはあるのではないか。
 そういうさまざまなレベルの問題があろうかというふうに思っておりますので、検討すべき課題は多いというふうに考えます。
野田(聖)委員 子供というのは、もう既に、個人の所有物ではなくて、日本の国にとっては将来の、厚生労働省がつくり上げてきた社会保障の制度を担保してくれる、そういう人材だと思います。急がば回れではありませんけれども、そういう子供たちが減っていることで今社会保障がぐらついているとするならば、やはり少しでもそういう担い手をつくろうという国の努力というか、そういう人たちに対してのエールを見せることが大事じゃないかなと思うわけですが、どうも日本の話だと小難しいことばかりなんです。
 同様に、海外でも全然できないかどうか。海外では必ずそういうサポートの事例があったと思うんですけれども、それについてちょっと御報告をいただきたいと思います。
岩田政府参考人 平成十三年度に厚生科学研究で調査をやっておりますが、海外における生殖補助医療についての調査でございます。その調査では、不妊治療費への公費による補助事業については調査項目に含めませんでしたので、公費による補助事業についての状況は把握をいたしておりません。
 同調査では、医療保険への適用状況について調査いたしました。
 その結果わかりましたことは、アメリカの一部の州、イギリス、フランス、ドイツ、スウェーデンでは保険適用がなされているということがわかりました。また、アメリカの一部の州やドイツでは、保険適用で認められている生殖補助医療について回数制限を行っているということとか、さらには、アメリカの一部の州やイギリスでは、指定された医療保険でしか保険適用が認められない。そういった幾つかの条件のもとで保険適用をやっている国があるということはわかっております。
野田(聖)委員 ということは、保険適用とか補助金のあり方というのは決して荒唐無稽なアイデアではなくて、努力していただければその道は開けるということを信じているわけですが、どうか、その検討というのは、私も国会議員十年やっているんですけれども、成就したことが少ないんですね。もうだまされないぞみたいなのが私の今の心境でありまして、今本当に国が、小泉総理以下皆さんが少子化は深刻だと思っていらっしゃるんだったら、今申し上げたように、日本は費用対効果が非常にわかりやすい国なんですね。高齢者にお金を注げばそれだけ長寿国になる。その同じだけ、七兆円分の少子化対策をすれば、やはり目をみはるような進歩が出てくるんじゃないかと私は期待しているんです。この国だからこそ、それがあり得ると期待しているんです。
 最後に、鴨下副大臣にお出ましいただきましたので、大臣は積極果敢に取り組むとおっしゃってくださっていますけれども、自民党を代表して副大臣としてお役につかれておりまして、また私も個人的に、鴨下ドクターの指導で今日の私の治療があるわけでありますので、それについては大変な御理解があると期待しております。最後に、この件についての決意の答弁をいただきたいと思います。
鴨下副大臣 先ほどからの議論をいろいろと承っておりまして、野田議員がいかにこの問題についていろいろな意味で深くお考えになって取り組んでいらっしゃるかというようなことを、つくづく感じる次第でございます。
 あとは、先ほどの議論の中で、人口問題としてもとらえるべきではないか、こういうような話がありましたけれども、まさにそのとおりでありまして、実際には、少子化問題というのが、私たちこれから高齢化に向かっていく段階で、日本の国の社会保障を支えるというようなことにおいても非常に重要な問題であります。ですから、できるだけ少子化対策ということについて国を挙げてやっていく、こういうようなことについてはまさしく私も同感でございますし、やるべきだろうというふうに思っております。
 少子化の中で、不妊治療というものももちろん位置づけてあるわけでありますけれども、これが最終的に少子化全体の中でどれほど寄与していくものなのかということについては、これからさまざま議論しないといけないんだろうと思います。
 ただ、全体に、子供をふやすというようなことにおいては、過去に、産めよふやせよ、こういうような話は、これは国がやるべきでないという議論もたくさんあるわけでありますので、それぞれの女性そして御夫婦が、できるだけ、ある意味で気持ちよく、楽しく子育てのできるような環境をつくっていく、こういうようなことが一番重要なことなんだろうというふうに考えまして、一つは、少子化対策プラスワンの話が先ほど出ていましたけれども、その中で、地方公共団体を含めて、家庭ももちろんそうですし、地域それから企業もそうですけれども、そういうようなものを含めて行動計画の策定をしていただくような、そういう法整備もしていこうじゃないか。これは来年に向けてそういう準備を今進めているわけであります。そういうようなことは国としてやらせていただきたい。
 それから、先ほど、個人的にどういうふうに考えるか、こういうような話もございましたけれども、少子化対策に対して不妊治療をどう位置づけるかというような問題については、私は多少、先生の意見に全面的に賛成をするということではありませんけれども、ただ、産みたい方がいて、経済的な理由でなかなか産めない、こういうようなことがあれば、不妊治療に対して国もいろいろな意味で支援をしていくべきだと思います。
 一つは、大臣がおっしゃっていたような出産一時金のようなものをどういうふうに使っていくか、それからもう一つは、先ほど国の中には保険適用をしてやっていっているところがあるという話がありましたけれども、このことも検討に値することだろうと思いますから、先ほど委員会の中からでも、できるということを前提にいかに検討していくべきかというようなお話もありましたので、そういうことも含めて私も頑張ってまいりたい、こういうふうに思っております。
野田(聖)委員 ありがとうございました。
坂井委員長 次に、福島豊君。
福島委員 両副大臣、大変に御苦労さまでございます。本日は、幾つか具体的な課題についてお聞きをしたいと思っております。
 臍帯血移植、そしてまた骨髄移植、私ども公明党として、その推進にこの数年間努力をしてまいりました。とりわけ患者負担を軽減するという観点から、何とか保険適用を拡大したいということを再々申し上げてきたところでございます。
 先日、新聞におきましてこのような報道がありました。骨髄移植に前金制を導入する。骨髄バンクを運営する骨髄移植推進財団が、骨髄移植を受ける患者から負担金を前金で徴収する案を理事会に諮るというようなことが報道されておりました。この前金というのが、具体的な水準として、委員の中から、百万円ぐらいなら前金として許容されるのではないかというような意見が出たというふうにも報道されております。
 百万円といえば大変な高額でございます。骨髄移植が白血病等の患者さんにとってなくてはならない救命のための治療であるとするならば、余りにも大きな負担というものは、その治療の道を閉ざしてしまう。そういうふうにしてはならないと私は思いますけれども、この報道について、どのような状況になっているのか、そしてまた、厚生労働省として、必要な患者が必要な骨髄移植を受けることができるという観点から、どのように指導されるつもりか、お考えをお聞きしたいと思います。
高原政府参考人 骨髄移植のあっせんに係る患者負担金につきましては、平成十三年度末現在で未収金額が約一億一千三百万円となるなど、財団の健全な運営に大きな影響を及ぼしかねない状況となっております。このため、財団において、経費削減等、他の財務体質健全化方策とあわせまして、あらかじめ負担金を預かる前金制の導入について検討しておるということは事実でございまして、前金制の導入について、先月二十六日の理事会で継続審議とされたところであります。
 厚生労働省といたしましては、財団があっせん機関として安定的な運営を確保する必要がある、多額の未収金を抱えることによって、その分を他の患者の負担により穴埋めをしなければならない状況につながりかねない、そういうことから、未収金対策につきまして、法人の中で十分な検討を行っていただくことが必要であると考えております。
 私ども厚生労働省といたしましては、未収金を少なくするための対策は必要であると考えておりますが、その内容については、患者さんに対する負担が過大になり過ぎないよう財団においてよく検討していただきたいと考えておるところでございます。
 また、負担が困難な低所得者の方については、現在でも財団において患者負担金の減免を行っております。さらに、厚生労働省としても、来年度予算概算要求におきまして、財団に対する国庫補助として、低所得者対策に係る経費を要求しているところでございます。
福島委員 来年度の予算の要求の中でいろいろと配慮はいただいているということをお聞きしたわけでございますが、ぜひともその獲得に、予算編成に向けて御努力をいただきたいと思っております。そしてまた、財団の中で検討されていることでございますけれども、所管官庁として適切な御指導を賜りたく思うわけでございます。
 いずれにしましても、骨髄移植というのは、ある意味では政策医療と言ってもよいのだろうというふうに思います。財団があっせん事業を行っておりますけれども、任意で行っているということではない。そもそもの、どういう形で骨髄移植がこの日本の国内で普遍的に利用できるような形にするのか、そのことが出発点の議論としてはあったんだと思います。そして今日のような形になっているわけでございますけれども、国の責任というのは明確に私はあると思います。
 骨髄移植という新しい医療技術というものを適切に国民が利用できるような体制をつくるということについて、国は責任があると思います。そしてまた、その利用に当たっては、患者負担というものはほかの医療と比べて余り過大にならないようにすべきであろうというふうにも思うわけでございます。
 そしてまた、私どもは保険適用ということをずっと求めてまいりました。保険制度、ほかのさまざまな治療がありますけれども、保険治療の中では高額療養費ということがあるわけでございます。家計に対して余りにも過大な負担というのは、家庭崩壊をもたらすようなことがあってはいけないということでそれが設けられているわけでございます。財団があっせん事業をやっておりますけれども、それも医療の一環でございますから、それがなければ医療は実施できないわけですから、ある意味では医療の中に含まれてもいい概念であろうというふうに私は思っております。
 そういう意味で、他の治療と比べて大きな隔たりがないように運営されるように、国としてもぜひともお取り組みをいただきたい、そのように要請をさせていただきたいと思います。
 次に、在外被爆者への被爆者援護法の適用の問題についてお尋ねをしたいと思います。
 十二月の五日、大阪高裁で控訴審の判決が言い渡されたわけでございます。裁判長は、国外に出ることで法の適用対象から外れ、被爆者の地位を失うとする国側の解釈は認められない、「「被爆者はどこにいても被爆者」という事実を直視せざるを得ない」というふうに述べておられます。
 今まで幾つかの裁判がありまして、司法の判断が必ずしも一致していなかったという経緯があるということは私もよく知っております。今回は控訴審に対しての判決でございますから、このことを国は深く受けとめる必要があるというふうに思っております。
 まず、この問題についてお聞きする前に、在外被爆者が現在どのくらいおられて、そしてまたどの程度お年を召されているのか、年齢はどのようになっているのかということについて、把握しておられるところをお教えいただきたいと思います。
高原政府参考人 在外の被爆者の方々の数でございますが、多くの在外被爆者の存在する韓国、北朝鮮、北米、南米の団体から聞き取り調査が行われておりまして、約五千人程度というふうに見込んでおります。
 平均年齢につきましては、日本の被爆者の平均年齢が平成十三年度末で七十・九五歳であることから、おおむねこれと同様の状況であろうというふうに考えております。
福島委員 かなり高齢化をしておられるわけでございます。したがって、判断を先送りするということは、そういった意味からも私は避けるべきであろうというふうに思います。
 この判決の理由ということで幾つか述べられておりますけれども、その中で、被爆者援護法が「社会保障と国家補償双方の性格を併有する特殊な立法である」ということが挙げられております。
 社会保障ということであれば、日本の国内だけに適用するという考え方はそのとおりでございます。しかしながら、司法の立場そのものが、そうではない、特殊な立法だということを明確に申しているわけでございまして、そういう意味で、今回の高裁の判決に対しては、今までの考え方というものを乗り越えた対応をすべきであろうと思っておりますけれども、この高裁の判決に対してどのように国として対応されるつもりか。まだ決定していないというふうには思いますけれども、お尋ねをしたいと思います。
高原政府参考人 判決内容等を引き続き十分検討いたしまして、関係省庁とも御相談いたしまして決めてまいりたいと考えております。
福島委員 そしてまた、関連してでございますけれども、在外被爆者の方の問題について先般も報道がございました。高齢化をしてきているということで、なかなか渡日をして手帳の交付を受けるということが困難になってきつつある。ある意味で、今回のこの高裁の判決を踏まえて、在外被爆者の援助のあり方についても抜本的な見直しをした方がいいのではないか、そのようにも思うわけでございますが、この点についてもお考えをお聞きしたいと思います。
高原政府参考人 在外被爆者に対する支援につきましては、昨年、在外被爆者に関する検討会におきまして、関係者、在外被爆者の方々などからも御意見を伺いながら取りまとめられた報告書を踏まえまして、予算上の事業として六月から実施しているものでございます。
 この在外被爆者に対する支援事業を円滑に実施するために、事業を実施する広島、長崎両県市から現地の団体に対して事業の説明や協力依頼が行われておりますが、事業の初年度ということもありまして、現時点において必ずしも十分な御理解を得るに至っていないというふうに承知しております。
 しかしながら、事業開始から六カ月を経過し、徐々に利用者もふえてまいりました。例えば、十二月十一日現在で、手帳交付渡日支援事業の利用者は三十五人、渡日治療支援事業の利用者は九名、被爆確認証交付事業の利用者は三名、医師等の研修受け入れ事業は十四名という状況となっております。
 今後、在外被爆者支援についてどのような政策を講じていく場合でも、今回の事業による被爆者健康手帳の発行等を通じましてすべての在外被爆者の方を把握することが必要でございますので、引き続き関係者の理解を得て、事業の着実な実施に努めてまいりたいと考えております。
福島委員 時間は限られておりますので、ぜひともよろしくお願いをいたしたいと思います。
 本日は医療に関しての集中審議ということもございますので、医療制度改革について、本年の通常国会で成立をいたしました改正健康保険法の附則に盛り込まれております基本方針の策定にかかわる事項についてお尋ねをしたいと思います。
 九月にいわゆる坂口私案というものが示されたわけでございます。医療保険の一元化、そしてまた新しい高齢者医療制度の創設、そして診療報酬体系の見直し、この三つにかかわる私案が出されたわけでございますが、それから二カ月余りがたつわけでございますけれども、現在の検討状況についてお教えをいただきたいと思います。
真野政府参考人 本年九月末に坂口大臣から私案が公表されました。その後、省内におきまして具体的な内容の詰めを進めておりまして、私ども、近々にも議論のためのたたき台を取りまとめたいというふうに考えております。そのたたき台の公表後、広く関係方面の御意見もお聞きをいたしまして、今年度中に基本方針を策定したいというふうに考えております。
福島委員 一つ一つ具体的にお教えいただきたいんですが、まず、診療報酬体系の見直しということについてはどういう基本的な考え方でたたき台を取りまとめるのかということについて、お聞かせください。
真野政府参考人 診療報酬につきましては、非常に複雑化をしてきているというようなことで御議論がございました。
 これに対しまして、坂口大臣の私案では、診療報酬体系を医療技術の評価と医療機関の運営コストを反映した評価に再編しよう、そして、医療技術につきましては、難易度、時間、技術力などを踏まえました評価を推進するとともに、重症化予防や生活指導を重視しよう、それから、医療機関の運営コストなどに関する調査分析を進めまして、入院医療につきまして、急性期、慢性期に応じました包括化を進めていこう、さらに、患者の視点から情報提供や患者の選択を重視した見直しを進めるという方向が示されております。
 私ども、この坂口大臣の私案をもとにいたしまして、さらに検討を進めているところでございます。
福島委員 るるおっしゃられましたが、一番大切なことは、診療報酬体系、長年にわたっての改定の中で必ずしも医療機関における原価というものを反映させるものではなくなってきている、新たな体系をつくるときにそうした基本的なデータそのものの集積が極めて大切であるというふうに思います。アメリカにおいてDRG・PPSが開発されたときにも膨大なデータをもとに彼らはそれを開発しているわけでございまして、現行の診療報酬体系のスライドでそれを形式的になぞらえるというようなことだけでは決して進まないというふうに思っております。
 また、先般の医療制度改革の中では総額管理制度というものの導入が試みられたと言っていいと思いますけれども、これも大変大きな問題をはらんでいると私は思っています。逆に言いますと、こうした包括化というのはミクロレベルの総額管理制度のような話にならないとも限らないわけでございまして、こうした点についてもどのようにそれを考えるのかということが大切であろうというふうに思っております。
 次に、保険者の再編統合について、どのような検討、基本的な考え方で進められているのかお教えいただきたいと思います。
真野政府参考人 保険者の再編統合でございますが、御案内のとおり、五千を超える保険者が分立をしている状況にございまして、大変小規模な健保組合、市町村国保が存在する一方で、三千六百万人の加入者を抱える政管健保が存在しているということでございまして、これに対応いたしまして、再編統合のためには、保険者の財政基盤の安定、それから保険者としての機能の向上を図るということが重要であるということから、坂口大臣私案におきましては、健保組合につきまして小規模・財政窮迫組合の再編成に資するような規制緩和等の推進、国民健康保険につきましては広域化の推進や事業の共同化の推進、政管健保につきましては都道府県単位の財政運営の導入を目指すということによりまして、都道府県単位を軸とした保険運営を実現していこうということが提示されております。
 現在、その具体的な内容の詰めを急いでいるところでございます。
福島委員 保険者というのは、保険料を徴収して給付する存在でございますけれども、基本的には、どのような保険料を納めていただくのか、所得捕捉の問題が根っこにあるわけでございます。これは、税とも絡んでおりますけれども、医療保険の中だけの話ではない。ですから、そういう横断的な課題について、これは年金もそうですけれども、どうこたえるのかという視点がどこかになければならないと私は思っております。
 次に、新たな高齢者医療制度について、どのような基本的な考え方で検討を進めておられるのかお聞かせいただきたいと思います。
真野政府参考人 高齢者の医療費は国民医療費三十兆円のうちの約三分の一を占めておりまして、今後とも急速に増大が見込まれておりまして、それへの対応というのは非常に大きな課題であるということでございます。
 特に、一人当たり医療費は年齢が高くなるにつれまして上昇しておりまして、六十歳代から急激に上昇をする、そして、少子高齢化という人口構造の変化や産業構造の変化によりまして非常に保険者の年齢構成に大きな差異が生じ、これが保険者の財政力なり保険料負担の差ということになっております。
 いわば、こうした構造的な問題にどう対処するかということを含めまして現在議論をいたしておりまして、坂口大臣の私案では、制度を通じた年齢構成や所得に着目した負担の公平化を図るということでお示しをいただいておりまして、これも踏まえまして私ども今議論を進めているところでございます。
福島委員 いろいろな考え方があるように伺っておりますが、ややもすると、財政調整、要するにファイナンスのあり方に議論が収れんしがちであると思います。より大切なといいますか重要な点は、高齢者の医療の給付のあり方そのものをどう考えるのかということにあるんではないかと私はずっと思ってまいりましたが、介護サービスの給付との整合性ということもありますし、そしてまた多病、併発病が常に存在するというような病態そのものをどうとらえて適切な医療を提供するのかというような視点もあるだろうと思います。こうしたことを総合的に考えませんと、お金だけ伸びていきますという話では済まない部分というのは当然あるんだろうと思います。
 今、るるお話しいただきました。そういったことを踏まえて、またこの委員会で他の委員の方々から質疑があるのではないかというふうに思います。そして、私はもう一点、医療に関しまして、個別、非常に具体的なことをお聞きしたいと思います。
 一つは、お薬の問題ですが、例えば最近、イレッサ、肺がんの治療薬として早期に承認されまして、非常に広範に使われている。死亡事故もあったわけでございますが、そのことは非常に広く使われているということの裏返しではないか。
 こういう話を聞きました。非常に高い薬なんですね、これは。何千円するという薬だ。ただ、ある程度まとまって処方されても、最初に副作用が出て服用を中断せざるを得ないような場合というのがあるわけです。そうしますと、何万円分にも相当する薬を捨てなきゃいけないという話になる。こういうものは本当に患者が負うべきなのだろうかという気がするんですね。
 できれば引き取ってほしいというのが率直な患者サイドの思いでございますけれども、じゃ、一体どこが引き取るのかと、なかなか難しいわけでございますけれども、こうした問題について、何かいい制度が考えられないか。この点についてお聞きをいたしたいと思います。
真野政府参考人 お医者さん方、先生方が医薬品を投与するという場合には、保険診療の場合には療養担当規則上予見することができる必要期間内について投与をされるということでございますので、お医者さんが投薬期間等の設定をする際に医薬品の種類や患者さんの状態等を踏まえて処方が行われるというのが原則でございまして、そういうふうにお願いをいたしております。
 そういう意味では、まず、そういう種類、副作用が想定されるとすれば副作用その他を勘案して、患者さんの状態も踏まえて適正な処方を行っていただくというのがまず第一義ではないかと思っております。
 ただ、今例でお挙げになられたようなケースを、またこれを一律にメーカーに引き取るというのもなかなか実際難しい面があるというふうに思っておりまして、非常に難しい面があって、じゃ、メーカーに引き取ってもらえばいいじゃないかということにはなかなかならないんではないかと思っております。
福島委員 確かに難しいんですね。難しいだろうと思います。
 ただ、普通の品物でしたらそういう話に多分ならないんですよね。医療の世界で、保険給付という形になっている。自己負担もあるわけです、自己負担もふえましたからね。ですから、難しいとばかり言っていられないではないのかなという気も私はするわけでございますが、それ以上申しませんけれども、ぜひそういう実態もあるということをお考えいただきたいというふうに思います。
 それから、時間も残り少なくなってまいりましたので、若干、通告いたしました質問は省略いたしまして、最後に支援費制度の問題についてお聞きをいたしたいと思います。
 現行の支援費制度の準備状況につきまして、簡単にお答えいただきたいと思います。
河村政府参考人 先生御案内のとおり、この障害者福祉サービスにつきましては、利用者の立場に立った制度を構築するということで、行政がサービスを決定する従来の措置制度を改めまして、障害者みずからがサービスを選択しサービス提供事業者と対等の立場で契約をするという、支援費制度という新たな仕組みを来年度より施行する、そちらに移行するということにいたしておりまして、その円滑な施行を確保するために、利用者が適切なサービスを受けられるように相談等の体制を整備する、あるいは施設や事業者の円滑な移行を確保する、市町村等の自治体が必要な事務処理を的確に行うというようなことが不可欠であると思っています。
 このために、厚生労働省としては、制度運営の中心となります自治体の事務を中心に支援をいたしておりまして、事務処理の詳細等について説明するために、全国会議、これはこの四月から九月まで三回ほど開きまして、それから、更生相談所の会議等全国会議、そういったものを含めますとほぼ毎月のように全国会議を開いて周知徹底を図っておりますし、市町村が行います相談、準備等に対しての補助というものも入れまして、さまざまな角度から取り組んでおります。
 各自治体におきましても、本年七月から、サービス提供事業者の指定が進められております。また、この十月からは、支援費の支給決定が順次開始されておるところでございます。
 今後とも、来年四月の支援費制度の円滑な施行に向けまして、最大限努力したいというふうに思っています。
福島委員 先般、きょうされんの全国調査がありまして、これは新聞でも報道されておりますけれども、支援費対象の施設、事業体が一カ所もない市町村が一四・九%に上る。通所型施設を一カ所も設置していない市町村は七三%、グループホームがないのは七三・一%、デイサービスがないのは八六・六%、ショートステイがないのは六〇・九%。ある意味で、地域福祉サービスを提供する基盤がまだ十分ではないというような実態が指摘をされたわけでございます。
 ただ、これは、ないからだめだというふうに私は申し上げるつもりはありません。むしろ、こうした福祉サービスの基盤というものがなかなか進んでこなかったというのは、構造的な課題というのもあるんだろうと思います。こうした支援費制度がスタートすることによって、逆に、サービスの整備というものが求められている。そして、大変大きな、強い力になるのではないかという思いもあるわけでございます。そういう意味で、このサービス体制づくりということについてどう考えておられるのか、これが第一点でございます。
 そしてまた、支援費制度になりますと、従来の措置制度のときのあり方と異なりますので、事業体によっては大変経営が厳しくなるのではないか。特に、例えば障害児の通園事業、デイサービス事業、これは、支援費制度に変わると人数で対応するということになりますから、小規模のところではとてもその人件費が出てこないというような話になって、事業の継続自体が危ぶまれるという指摘もあるわけでございます。
 この点については、予算編成の過程で支援費の基準を決めるに当たって、十分に配慮をしなければいけないと思っておりますが、この二点についてお考えをお聞きしたいと思います。
河村政府参考人 この支援費制度の実施に向けまして、障害者がみずから福祉サービスを選択できるように、その量的あるいは質的な整備を推進するというのは非常に重要な課題であるというふうに考えております。
 こうした観点も踏まえまして、これまで障害者プランに基づきまして、グループホームあるいはホームヘルパーの増員等、障害者の生活を支える基幹的な事業について取り組みを進めてきたところでございますけれども、平成十五年度以降につきましては、近く策定されます予定の新しい障害者プランに基づいて、在宅サービスを中心としたサービス提供体制の基盤整備を一層進めてまいりたいというふうに思っております。
 新しい障害者プランの推進に当たりましては、地域間のサービス水準の不合理な格差が生じないように留意しながら、都道府県の障害者計画等に基づきまして、障害保健福祉圏域を踏まえた基盤整備を図りまして、利用者のニーズに一層応じたサービスの提供に努めてまいりたいというふうに思っております。
 それから、御質問の第二点でございますが、支援費制度に移行するに当たりまして、従来は施設の体制に着目した、利用人数の規模に応じた定額補助の仕組みをとってきた、先生が例示で挙げられました障害児通園事業、デイサービス事業について、小規模なものについてどうするのかというお話でございますが、先生も御指摘されましたように、支援費制度におきましては、利用者へのサービスに通常要する費用に着目して、利用者一人当たりの単価を設定する、サービスの利用回数の増加に応じて運営費が増加するという仕組みに改めるということでございまして、これと同時に、新たに送迎サービス加算等を設けたいというふうに思っていまして、サービスの内容の充実を図るというふうに考えております。
 それから、御指摘のような小規模の通園事業につきましては、その運営に支障が生じないように、関係団体との意見調整、そういったものもやっておるところでございまして、この予算編成過程の中で必要な見直しを図って、十分配慮をしてまいりたいというふうに考えております。
福島委員 以上で質問を終わります。大変ありがとうございました。
坂井委員長 次に、五島正規君。
五島委員 大臣がおくれておられるようですので、副大臣に質問いたします。大臣が言われるであろう意見と違う意見が聞けるのではないかと大変な期待を持ってやらせていただきます。
 まず、医療制度の抜本改革の問題です。
 二〇〇〇年に医療制度の抜本改革をやると小泉さんが約束され、通常国会におきましては、この抜本改革を今年度中に何とかまとめる、それを前提として、結局、財政のつじつま合わせの患者負担増と保険料の引き上げが行われたわけですね。
 この約束の抜本改革が示されなければならない時期が大変近づいてまいりました。しかし、これまでよく厚生省がやられた手法なんですが、医療の基本的な抜本改革を議論しなければいけないときには、往々にして、保険制度そのものをどうするかという非常に大きな問題に逃げ込んで、空中論争といいますか空中戦に持ち込んで、結局何もできない、議論が発散して何もできないということが再々続いてまいりました。どうも今回もそういうことになるのではないかなという心配をいたしています。
 もちろん、医療にかかわる巨大なお金をどのようにファイナンスするかということは極めて大事な問題であるということについては、認識しています。しかしながら、例えば今出ております国保と政管健保の一元化などという問題は、これはさまざまな立場から十分に議論しなければならない問題、そういう問題に焦点を移すのではなくて、いかに良質な医療を効率よく提供できるシステムが提供できるのか、そういう課題について早急な結論を出されるべきだろうというふうに思っています。
 また、特に、これまでの経過の中で、高齢者の医療費のファイナンスのシステムというのは保険全体の問題から先行して結論を出すべきだというふうに考えていますが、その点について、副大臣、どのようにお考えでしょうか。
    〔委員長退席、宮腰委員長代理着席〕
木村副大臣 今回、皆さん方と一緒になってこういう問題をしっかり議論していかなきゃいけない、私はそのように思っているんですが、今の御質問の点で、あえて私の意見を言えというような場面もありましたものですから、言わせていただきます。
 まず、政管健保と国保の一元化の話でございますけれども、これも大変難しい話でございまして、片っ方は市町村が主体、それから片っ方は国が一元化をしているわけであります。そういう中でどういう整合性が図れるのかなというと、ここは、相当議論をして議論をして尽くして、簡単に出てくるのかなというと、そう簡単には出てこないんじゃないか、こう思うわけであります。
 むしろ、私は、今、例えば国保の方の一つの問題点を挙げますと、これは収納の点が非常にこれから問題になってくるのではないか。やはり、幾らいい制度をつくったって、キャッシュフローが入ってこないことにはこれは制度の根幹に影響するわけでありまして、私は、どこが責任を持って保険料を集めてくるか、特に国保においては、今そういう大きな大きな問題点があるのではないか、こういうふうに思えてならないわけです。
 ですから、政管の方からやみくもに今どんどんどんどん国保に移っている人たちがおりますけれども、制度間でどういう調整をしていくかというような問題点ももちろんあるわけでありますけれども、やはり政管と国保の問題点の大きなところは、私は、この収納というところもこれからぜひ議論の一つの対象にしていっていただきたいな、こう思うわけであります。
 それから、こういう議論の前に、先生がおっしゃられました医療の質の向上とか、そういうところはもちろん当然であるわけでございまして、ここはやはり担っていただいている方々が、しっかりと先生と同じような意識を持っていただいて、本当にそれぞれの分野で努力をしていただけるようなことが必要なのかな、こう思えてならないわけであります。
 ファイナンスの問題ですけれども、これは、よく今、では日本の医療費は高いか安いかの問題点もあるんですけれども、私は、今までは、イギリスが一番安くて日本がその次だ、こういうような話がありましたけれども、ブレア政権になりまして、やはり非常にイギリスでも今の医療の問題点が相当大きくクローズアップされてきていまして、相当ブレアさんが力を入れて、今どんどん医療に予算等をつぎ込むようになってまいりました。今のままでいきますと日本を抜く、GNP対比で日本を抜くという場面があるわけでありまして、その中で、では日本が主要先進国の中で一番低い医療費でもって現実賄っているというような場面も出てくるのではないかな、そういうような状況でございます。
 その中で、言ってみれば財源をどこに求めるかというと、これは、例えば恐らく先生は新たな税財源とかいうようなことも考えておられるかどうか、それはわかりませんけれども、そこはなかなか、税財源のところに議論を持っていきますと、これはもうこの一厚生労働委員会だけの話ではなくて、まさに国全体、国会全体で挙げてこれはお考えになっていただくべきものであるわけでございまして、今のシステムの中でどのようにして効率化を図っていく、こういうことも大変大事ではないかな、こう思えてならないわけであります。
 その中で、私はあえて申させていただきますと、個人の負担なんかが非常にふえているんですな。個人の負担なんかがふえている。むしろ低下傾向にあるのは、私は、企業の面はどうもこのごろ、最近負担が少なくなってきているんではないか、そういうふうに思えてならないわけでありまして、これを消費税とかなんとかいうことになりますと、ますますその辺の傾向が加速されてしまうのであるわけでありますので、今までの、大体、国と企業と国民それぞれ、私は、その辺の負担のあり方、それは、今までのところをもう一回、極端に減っているところはやはりある程度もう一遍再検討していく必要があるんではないかな、このような感じでございます。
 どうぞよろしくお願いします。
    〔宮腰委員長代理退席、委員長着席〕
五島委員 どうも、出だしはおもしろくなるかなと思っていたら、大臣がおいでになった途端に話の方向性がえらく違ってきたなという感じがします。それにしても、副大臣、よく副大臣になられてお勉強しておられるなということで感心しました。
 ところで、先ほども申しましたが、保険制度をどうするかという議論の前に、これまで、さまざまな医療の実態を変えていくのについて、我が国は、いわゆる診療報酬でもって実際の医療の実態を変えていくということを厚生省はやってこられた。結果としては、東京都の電話帳に比べてどうか知りませんが、少なくとも高知県の電話帳よりははるかに分厚い診療報酬表ができ上がった。そして、それに基づく出来高医療というものが非常に医療の質を基本的なところでおかしくしているというのはあると思うんですね。
 そういう点を考えた場合に、こうした部分をどういうように変えていくかとかいう問題が、実はこの抜本改革の中において非常に重要な問題だろうというふうに考えています。
 この点については、また後ほど大臣の御見解を聞くとして、大臣おいでになりましたので、少し、大臣がおっしゃっておられます政管健保と国保との都道府県への分割とか一元化の問題についてお伺いしたいと思います。
 まず、政管健保を都道府県に分割した場合に、地方間格差というのは当然非常に大きなものになってくる。大都市と、例えば関東圏とそれから四国と比較しますと、それは非常に大きな格差がついてしまうのは目に見えています。
 そうなってきますと、その間における財政調整をやらなければなりません。そうした政管健保と国保を合併してみたところで、その問題はついて回るわけでございます。まさか都道府県間で、高知県の知事が東京都の知事に東京都で集めたお金を少し高知県へ回してくれと言ったって、うんと言うはずがないでしょう。結局、財政調整という機能が必要になってくる。非常に大きな財政調整をやらなければなりません。その財政調整は、当然政府が担うことになる。
 そうしますと、結果において、もうこれまで言われてきたわけですが、政管健保やあるいは老人医療、保険者機能がないということが一つの問題として大変問題になってきました。全国一本の保険なのか。都道府県といいながら、それは金を集めて給付を出す、そういう事務業務だけをするのか。実態としては、一本の国営保険に国保と政管健保を統合するということと変わらないのではないかというふうにも思えるわけでございます。保険者機能が全くなくなるような形で政府がその財政調整を全部やっていく、そういうふうなことが果たしていいんだろうかというふうな問題点がございます。
 この点について大臣にお伺いしたいわけですが、副大臣の演説を聞きまして時間がなくなりましたので、あわせてこの問題について、老人医療についてもあわせてお聞きしておきます。
 老人医療制度についても、老人保健につきましても、今、いわゆる完全リスク構造調整という議論が出ています。財政の問題だけで言えば、確かに完全リスク構造調整をやれば各保険間の問題というのは解決できるのかもわかりません。しかし、現状において、拠出制度においても各保険者の体力は非常にそがれ、保険者機能としての機能が発揮できないというところから見直しが非常に言われている中において、完全リスク構造調整をやった場合には、これはまた、健保組合その他も含めた、いわゆる国営医療保険にそれを統合するということと一緒なんではないか。
 そうしたことになった場合に、一本の政府が持つ保険、国営の保険の中にすべての保険を統合して、果たしてうまくいくのかという議論にどうしても戻ってこざるを得ないだろうというふうに私は思っています。その点について大臣がどうお考えになっているか。
 そして、さらにつけ加えますと、地域保険である国保が、かつては自営業者、農漁民の保険でございました。現状においては、明らかに、高齢者と、それから昨今特に経済的な弱者あるいは健康弱者がこの国保に押し出されていく。そのことによって、この国保そのものの財政的な体力が非常にますます落ちてきている。もしこのままいくとしたら、国保の財政というのは大変な問題になる、都道府県単位で合併したぐらいでは問題の解決がつかないだろう。しかし、国保制度ができたことによって皆保険制度ができたことを考えた場合に、この国保制度をどう守っていくか、そのことは、すなわち、日本において皆保険制度を守っていくということと同義語だと思います。
 そのことを考えた場合に、大臣の方が被用者保険と保険の一元化とおっしゃっている気持ちはわかる。しかし、実際上はそういう非常に、ではそのかわりに国営保険一本になるようなことが果たして保険制度として正しいのかどうかという問題。
 非常に難問を抱えていると思うわけですが、その点について、細かなことは結構ですが、大臣の医療保険に関する基本的な認識をお伺いしたいと思います。
坂口国務大臣 おくれて参りまして申しわけありません。
 ただいまお話のございました医療保険制度についてでございますが、これは現在厚生省案の取りまとめを急いでいるところでございますので、今最終的なことを申し上げることもできないわけでございますけれども、現在の段階では、私が私案を出しましたりいたしまして、私の個人的な考えの段階だということでお許しをいただきたいというふうに思います。
 医療保険制度をこれからどうしていくかということが最大の課題になっておりまして、統合化をするということ自体に対しても反対をされる方もおみえでございますけれども、しかし、五千に乱立をしている保険者ではいかんともしがたい、何とか統合をしていかなければならないということではおおよその合意は得られるのではないかというふうに私は思っております。
 では、そのときに、国保は国保、そして政管は政管、組合健保は組合健保というふうにそれぞれの、今までの中でそれを統合していくのか、それとも、それらの枠を超えて統合をしていくのかという問題があるというふうに思います。しかし、ここは、地域保険と職域保険というのは、その生い立ち等からいたしまして、一本化というふうに急に進むわけにはなかなかいかないんだろうと私も思っております。いわゆる税制とも絡んでまいります、税の捕捉率とも絡んでくるわけでございますから、そうした問題が解決されない前に地域保険と職域保険を一元化というのは難しいのではないかというふうに思っております。
 そこで、そういたしますと、地域保険におきましては地域保険として、現在の市町村レベルではなくて、できるだけそれは都道府県単位、都道府県単位といいましたときに、東京や大阪は大きくなり過ぎるではないかという話もあるわけでございますけれども、一応そうした都道府県単位にひとつ整理をされることが望ましいのではないかというふうに思っている次第でございます。
 また、政管健保につきましては、これは全国一本になっているわけですから、事務的なことからいいますとこれは一本になっておりますので効率的といえば効率的でございますけれども、しかし、地域間の格差でありますとか、地域的な特色といったものがこれでは出しにくいというような御批判もございまして、そうした意味で、政管健保は政管健保としてやはり都道府県単位ぐらいの大きさにするのがいいのではないかというふうに思っております。現在の段階のところで、その両方を一緒にする、国保と政管健保を一度に一緒にするという考えのところまでは至っておりません。その状況でございます。
 それに、もう一つ加えて、先生の方が御指摘になりました高齢者医療の問題がございます。これが最大の課題だというふうに思っております。
 私が基本的な考え方として出しましたいわゆる年齢によるリスク調整でありますとか、あるいはさらに所得に対する調整までいけるかどうかわかりませんけれども、そうした調整までやるということになってまいりますと、均衡はされるというふうに思いますけれども、しかし、それはそれでまたいろいろの問題も出てくるということがあり得るわけでございます。しかし、少なくとも年齢におけるリスク調整はやらないといけないのではないかというふうに考えているところでございます。
五島委員 大臣のお考え、この場においてかなり明快にお話しになったわけですが、私も、市町村国保について、都道府県単位で統合していくというのはあり得るのだろう、特に財政的に一元化していくというのはあり得るのだろうというふうに思っています。
 それからもう一つは、政管健保の最大の欠点は何かというと、保険者機能がなかったことです。都道府県に分割するという前に、やはり政管健保に保険者機能を持たすべきではないか。地方レベルにおいて労働側の代表と経営側の代表と選んで、そして保険者機能を持たせていく。場合によっては、都道府県単位において、補完するものとして、それぞれ地域のそういう保険状況を監視していく、それをあるいはつくってもいいのではないか、そういうふうなことが先にやられるべきだろうと。
 かつて、ある新聞記者さん、亡くなりましたけれども、国保と政管健保の統合論を言っておられた方がおられました。その時代においては、国保の性格は、地域保険としての体力がまだあったということで、一定の具体性があったと思うんですが、今日、老人医療をどうするかという問題を別個に考えるとすると、この国保というのは、何らかの形で大きな国家的支援をしていかないと、恐らく皆保険制度がつぶれる危険性があるというようにも思っております。
 老人医療の問題につきましても、今の拠出制度というものの連続性以上に、果たしてリスク構造調整というやり方でいいのかどうか。厚生省もかつて、突き抜け方式か独立方式かいろいろ検討されました。今のお話は、恐らくそのミックス型みたいな形で、拠出制度のかわりにリスク構造調整とおっしゃっているのだと思います。そのこと自身は、老人医療だけを見てみると、比較的公平な制度に見えるわけですが、それを実施することによって、もとのそれぞれの被用者保険やそういうふうなもの、そこの保険者機能がなくなってしまうねと。日本みたいな人口は多いけれども狭い国だと、アメリカの一つの州と変わらない、国営保険一本あればいいという考え方もあって不思議じゃないと思うんですが、だけれども、やはり保険者機能というものを強化しない限りは医療の効率化が図れないというのも、これまた一つの事実でございます。
 そういう意味からいうと、その機能を犠牲にして、そして現在の拠出制度をより強めていくというやり方、そのことが果たしていいだろうかというふうにも思います。そういう意味では、ぜひこの点も踏まえた形でのたたき台を、特に老人医療については早いこと厚生省は出していただいて、来年の春までにでもこの場において議論できるような状況をおつくりいただきたいと思います。
 いま一つは、先ほども少し触れましたが、現在の医療で最も解決を急がれている問題というのは、あの膨大で複雑な診療報酬表をもとにした出来高払いの医療、この医療というものは、よくレセプトの公開とかいろいろとおっしゃるわけですけれども、医者が見ても、もう数年間現場を離れているとわからなくなるのが実態でございまして、あの診療報酬表に基づいたあれを患者さんが見られて、どういう医療がどういう思いでやられようとしているのか、それを酌み取れる国民というのはそれほど多くないだろうと思います。
 それは、人間の体というのは一体のものであって、基本的に、患者さんは自分の持っている病気を治してほしい。治すことについてどのような手段をとっているか、きょう、おしっこの検査をしたか、血液の検査をしたか、そういうことが大きな意味を持っているわけではありません。問題は、どのようなプログラムで治療をされ、それによってどのように早く治療ができるか、そして、そのことに要する医療費はどれぐらいかかるのか、そのことが知りたいんだと思います。
 そういうふうな医療の体系に、現在の診療報酬表を軸にした、またこの診療報酬の改定のたびにそれが変わっていき、それで日本の医療を厚生省の思うように、改善と言ってもいいし改悪と言ってもいいんですが、変えていこう、そういう手法というのはもう限界に達しているんだろうというように思います。
 先ほど福島議員からDRG・PPSのお話も出ましたけれども、私は、PPSは後からでいいだろう、しかし、幾つかの重症度別に分けながら、やはり治療の類型化、DRGみたいなもの、例えば一つの疾患、一つの点数ではなくて、重症度別とかそういうふうなものを入れたりしても、やはりDRGのようなものを早いこと日本も取り入れるべきではないか。
 同時に、単にDRGに沿って治療していますということではなくて、そのDRGに基づいて、やはり医療機関が治療するについてはクリティカルパスをきちっとつくっていく、すなわち治療計画をきちっとつくっていく。治療計画のないところで患者さんに対するインフォームド・コンセントというのは、きょうはちょっと血液の検査をします、いいですねというふうなことが果たしてインフォームド・コンセントなのか。やはり大事なことは、どのような治療を行い、どのような検査をしながらその患者さんの治療計画をつくっていくか、その治療計画をお示しし、そのことに患者さんの同意をとるということが私はインフォームド・コンセントだろうと思っているんです。
 そういう意味でいえば、やはりクリティカルパスの作成、そしてDRGの作成というようなことを中心とした医療というものが必要なんだろう。そういうふうな軸があれば、例えば病診連携の問題についても、外来患者は全部診療所に行かなければいけないとか、入院の外来を減らさなければいけないとか、そういう抽象的な問題ではなく、一人の患者さんの治療計画の中において、場合によっては病院でのそういう検査外来とか専門外来も入ってくる、経過観察については診療所の先生と十分連携しながらそこでやってもらう、そういうふうな治療計画を組めるわけですね。だから、病院の枠を超えたそうしたクリティカルパス、そういうふうなものも作成して、そういうふうなものによって診療報酬が支払われていくというシステムを考えるべきではないか。そこのところが、実は医療の抜本改革の一つの大きな切り口になるんだろう、私はかねて考えています。
 その点について大臣、どうお考えか、ちょっとお伺いしたいと思います。
坂口国務大臣 診療報酬につきましては、改正に改正を重ねまして、そして、それをスタートしたときには一つの基準もあったんだと思うんですけれども、それが医療従事者にも見えなくなってきている、ましてや国民の皆さん方から見ていただきますと、全くそれが見えないという状況になっている。
 したがいまして、この診療報酬のあり方についての批判というものがどちらからも、医療側からも、あるいはまた国民の側からも起こってくるといったような事態が続いているというふうに思っておりまして、ここはやはりその基準をもう一度明確にして、そして、なぜこの診療報酬体系がこのようにでき上がっているかということについての御理解を得るようにしないといけない。そこはできる限り単純明快な形にしないといけない。そして、先ほど御指摘になりましたように、あの厚い電話帳のような診療報酬の表はもっと薄いものにしないといけないというふうに、私もそこはそう思っております。
 一方におきましてそういうふうにしていく反面、今、DRGのお話をされましたけれども、そうした診断群別にどうしていくかといったようなこともやっていかないといけない。大変手間のかかる仕事であり、そしてまた年々歳々、新しい論文が発表され、考え方が発表され、技術が発表されということでございますから、それを常に見直しを行っていかなければならないことでございます。非常にこれは人手がかかり、そして大変な作業だというふうに思いますけれども、これはすべて厚生労働省が行うというのではなくて、例えば、それぞれの専門の問題の医学会等にお手伝いをいただいて、それぞれのところでつくり上げていくといったようなこともしていただいて、つくっていかないといけないだろうというふうに思っております。
 そうすることによりまして、一つの診断について、百八十度違うような診断やあるいは治療が各医療機関で行われるということはなくなっていくのではないかというふうに私は思っております。そうした意味で、ぜひ、そうした整理を急ぎたいというふうに思っているところでございます。
 診療報酬全体の問題といたしましては、そうした整理をする中にあって、そしてこの診療報酬を上げ下げすることによって医療の動向を決めるというのは、これは私も間違いだと思っております。診療報酬の中身をさわることによって医療のあり方を操作するということは避けなければならないことだというふうに思っている次第でございます。そこは若干、事務方と意見の違うところかもしれませんけれども、私は少なくともそう思っているところでございます。
 これは、そういうふうにしていかないといろいろの誤解を生むことになると思いますから、それは折り目、切り目が明確になるようにここはして、そして、医療のあり方そのものにつきましては、これは別途、法律をつくるなりあるいは修正をするなり、そうしたことで、やはり方向性というものは折り目、切り目をつけてしていかないといけないだろうというふうに思っている次第でございます。
五島委員 まさに、診療報酬によって医療の質なり、ありようを変えていくということをしてはいけないというその大臣のお言葉、私は全面的に支持したいと思います。
 問題は、DRG等々をつくるについても、今大臣、大変人手も要って難しいんだとおっしゃるんですが、実は、それほど難しい話ではないだろう。DRG、どういうふうに整理していくかというふうなことについては大体わかっている。
 今、国立病院は百四十ありますね、大臣。あるいは社会保険庁の病院、労災病院、そういうふうな国が管理している病院の中における一年間のカルテを整理する。何もそこの病院の職員にさせなくてもいいですよ。今、何か国の経済政策や基本政策まで民間の審議会に丸投げしているわけですから、どうぞ、そういうふうなものは民間の企業でもどこでもお使いになったらいい。
 僕は、大きな病院から療養所ぐらいの機能まで含めた病院が、大方、国の関係で二百ぐらいある、そこのところにおけるデータを整理して、それでたたき台ができないとは思わない。むしろ、それを見てそれぞれの医療界、医学界からは、損する、得するという話も出るかもわからない。しかし、やはり一つのデータがそこから出ていけば、そのデータに基づいて走ってみるしかないわけですね。そういうふうな手続を一つの厚生労働省の意思としてやっていく。そのことによってどういうふうに診療報酬を変えようとしているかということのわかりやすいメッセージをぜひ出していただきたいと思うわけですね。
 私は、これは返事は要りませんが、先日、介護保険の診療報酬について、何か現在の審議会での議論の中間報告を出されて、見させてもらいました。これなんか見ますと、介護までがこれまでの診療報酬と同じようになるのかなと思っています。
 結局、特別養護老人ホームが黒字である。黒字であるのなら、そこのところは民間も参入するんだろうから、そこのところでやらせればいい。しかし一方で、介護報酬の中においてどういうふうな欠点が出てきているのか。かつての老健施設あるいは介護療養型病床がついの住みかになって、ベッドが動かない。本来の目的であった在宅医療と施設介護とのそういう連携というものがほとんど途絶していっている。
 そういうふうなものを、どのように本来の介護保険をつくったときの目的に合わせた形で措置していけばいいかということを考えるべきなんでしょうが、結局、当面の介護保険料がどうなっているかということだけでこれを措置しようとするから、あれを続けていく限りは、介護保険も結局財政的な赤字が大きくなり、社会の中においても有効なそういう本来期待された役割が果たせなくなってしまうのではないかという心配をしています。何となく、診療報酬によるやり方を介護の世界にまで導入しようとしているのではなかろうかという不安すら感じます。きょうはこの点は質問に入れておりませんので、御答弁は要りませんが。
 最後に、いま一点お伺いしたいんですが、今年実施されました診療報酬の改定、そして十月から実施された老人医療制度の改定によりまして、結果としては受診抑制と医療費の削減が大変大きくきいてきています。医師会さんの方は、それでもう一回診療報酬のプラス改定をやってくれというふうな声もあるというふうには聞いておりますが、当初予想されたよりもはるかにきいていることは事実です。そして同時に、一番きいているのはどこかというと、外来の受診件数、受診日数の抑制、それが非常にきいてきています。そのことによって、その患者さんの治療が手おくれになるとか、重症化するという状態にならなければいいわけですが、その点も心配されるところです。
 しかし、いずれにしても、この改定によって、かなり各保険とも大きなそういう支出の抑制がきいてきています。こういうふうな現状をベースに考えますと、来年の四月からは現役世代の保険料が二割から三割に引き上げられるわけですが、昨今の経済状況、別に関係ありませんから比較するわけじゃありませんが、ペイオフでさえ先送りされたということを考えるならば、自民党さんの中にもおっしゃっている方があるようですが、やはりこの間、当面の間、二割から三割の自己負担の引き上げというのは凍結すべきである。そして、凍結することによって、本当に必要な治療はきちっと受けてもらえ、そして不必要に受診回数をふやしていくようなことがチェックできるような制度を考えるべきではないかと思うわけですが、大臣、この点についてはいかがでしょうか。
坂口国務大臣 前国会におきまして、いろいろ御議論をいただいて、そしてその案をつくらせていただいたところでございます。
 負担と給付の問題でございますから、それが対応できるようにならないといけないというふうに思っております。とりわけ、先ほどから議論をしていただいておりますように、高齢者の医療というものが、これは人口動態からいきましてやむを得ないことだというふうに思いますが、どんどんとふえていく、そうした中で給付の方をどのように皆さんに公平にしていくかということになってくるわけであります。
 したがいまして、大変な中ではございますけれども、しかし、国保の皆さんやあるいは職域保険におきましても、外来におきましては家族の方はもう三割をお願いしているわけでございますから、ひとつ御本人につきましてもお願いをしたいということを申し上げたわけでございます。
 現在の診療報酬の状況というものを見ておりますが、四月から改正になりました分につきましては、四、五、六、七、八と、一部八がございましょうか、そのぐらい大体結果が出てきておりますが、二・七%下げていただいた、その値とそんなに大きく違わない範囲の中での下げ幅になっております。十月からの改定につきましては、これはまだ残念ながら結果が出ておりませんで、やはり三カ月ぐらいかかるものでございますから、来年の二月ぐらいにならないと、少なくとも一月末にならないとその結論が出てこないということでございます。
 確かに、そうした経済動向の状況もございまして、抑制がきいているということもございます。ことしの四月、五月のあたりのところでは、まだその三割負担というのは来年からの話でございますから、何らそこは関係ないわけでございますけれども、受診者の数が減っているというのは、それは経済の動向が大きく影響しているのではないかというふうに御指摘になる方もおみえでございます。そこはよく分析しないとわからないところでございますが、そういう状況があることも事実でございます。
 十月からの外来におきます自己負担がどれだけふえて、どう影響しているかということは、よく拝見をしなければなりません。しかし、この前のときにもこれは申し上げたと思うんですが、いわゆる三千円、今まで三千二百円だったわけでございますが、三千円以下のところで、大体八十数%の人は三千円以下。五千円以下といいますと、もう九割方は五千円以下ということになっております。したがいまして、一般の外来におきましてそれほどこのことが大きく影響しているのかどうかということにつきましては、今私は数字を持っておりませんから何とも申し上げられませんけれども、私は、これがそんなに大きな問題にはならないのではないかというふうに思っているところでございます。
 しかし、結果を見まして、そして結果が大変な事態であるということになれば、それはまた、中医協なり、そうしたところで御議論をいただくことになるだろうというふうに思っている次第でございます。
五島委員 日医総研が今回出しました十月のレセプト調査によりますと、この月だけで、入院外、外来における受診抑制が、病院、診療所を入れまして平均四・一五%ぐらい下がっている、特に診療所では四・七%ぐらいが受診抑制になっているという数字が出ています。
 受診抑制になっているかどうかというのは医療機関の経営には影響するんでしょうが、そのことが直ちに患者さんの健康、病状についてどうなるかというのはわかりません。しかし、少なくとも、今のような昨今の経済状況の中で現役世代に対して二割から三割というふうになれば、やはり受診抑制にこれ以上にきいてくるだろう。そのことが、病気を持ちながら働いておられる労働者にとっては非常に危険なことだなという感じがいたします。
 そういう意味で、十月の影響調査がまだ厚生省は手に入れておられないということですが、現状でも八千四百億ですかの医療費の削減が予想されているわけで、さらに十月の影響を考えますと大きなものになるだろうと思います。ぜひこれは大臣、この凍結という問題についても主張をしていただきたいというふうにお願いをしておきます。
 大体、まだ時間はちょっとございますが、以上申し上げましたけれども、いずれにいたしましても、大臣、医療の抜本改革というのは、医療費のファイナンスの仕組みをどうするかというのは、それは十分議論しなければいけません。それはよくわかっている。しかし、基本的に今国民が望んでいるのは、よりいい医療をいかに効率的に提供できる体制を厚生省は出してくれるんだという話だと思うんですね。その話をやはりきちっと詰めていただかないと、保険制度をどうするこうするという話というのは、どうしても国民のニーズからいうと少しずれている話だろうと思います。
 そのことを強く申し上げて、私の質問を終わらせていただきます。
坂井委員長 午後零時四十五分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。
    午前十一時五十二分休憩
     ――――◇―――――
    午後零時四十六分開議
坂井委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。中川智子君。
中川(智)委員 社会民主党・市民連合の中川智子でございます。
 本日は、まず第一番目に、十二月五日、大阪高裁で判決が出されました在韓被爆者の郭貴勲さんの裁判について御質問をいたします。
 これは、郭さん、原告の全面勝訴、非常に明快な判決が出されました。本日は、傍聴席に郭貴勲さん、原告の郭さんが見えております。坂口大臣の一言一言を不自由な耳でしっかり受けとめたい、そんな思いで傍聴席から大臣をしっかりと見ていらっしゃいますので、その思いを受けとめた御答弁を何とぞよろしくお願いいたします。
 まず最初に、本日、資料として委員の皆様方にもお渡しをいたしましたのは、十二月五日の大阪高裁での判決要旨でございます。その判決要旨、たくさんの文言が、判決が書かれておりますが、この中で、明快に勝ったという意味を書かれている部分を少し引用させていただきます。
 「同法に国籍条項を置かなかった以上、適用対象となり得る外国人が日常の生活関係において日本に居住も現在もしないことは通常予想される事態である。したがって、その合理的解釈に当たっても、「被爆者はどこにいても被爆者」という事実を直視せざるを得ないところである。」と判決に書かれております。
 大臣は、やはり十二月五日、この判決を重く受けとめられたと思いますが、この判決をお読みになって、どのような思いを抱かれたでしょうか。お伺いしたいと思います。
坂口国務大臣 五日のこの大阪高裁の判決を受けまして、少しおくれましたけれども、全文を入手いたしましたので、読ませていただきました。
 その中で、私は、一番これは大変だなというふうに思いましたのは、この法律には不備があると書いてあるんですね。現在、先ほどもお読みになりましたように、予測され得ることについて、そのことに対する記述がないと。言ってみれば、欠陥商品だと言われたようなものでございまして、さて、そこを一体今後どうしていくかということが大変大きな問題だというふうに現在思っている次第でございます。
 控訴するとかしないとかという問題を別にいたしまして、法律そのものに不備があるというふうに指摘を受けたことは珍しいと思うわけでありますが、そうした状況を今後一体どうしていくのかといったことを私は問われているというふうに今理解をいたしております。ここは冷静に、客観的に、ひとつ十分な判断をして最終結論を出したいというふうに思っております。
 大阪高裁のこの判決というものを重く受けとめておることは事実でございます。ただし、どうするかということにつきましては、もう少し時間をちょうだいしてじっくりと考えたいというふうに思っております。
中川(智)委員 今、郭さん、傍聴席に座っていらっしゃいますが、七十八歳という御年齢、御高齢でございます。そして、被爆されたその健康障害も抱えながら、裁判のために日本に渡ってくるということをずっと続けて、闘っていらっしゃいました。
 今、大臣が重く受けとめたいとおっしゃいました。私は、ぜひともこの判決を受け入れていただきたい。私は、ハンセン病の裁判のとき、薬害ヤコブ病の問題のとき、この席で大臣に何度もお願いをいたしました。大臣はしっかりと受けとめてくださいました。これが最後のお願いになりますように、本当に最後のお願いにしたい、そんな思いです。この判決を受け入れていただきたいと思います。
 それに関連いたしまして、もう片方の被告であります大阪府の太田房江知事が、大阪高裁判決の「被爆者はどこにいても被爆者」は名言、名文であり、そのとおりだと思うとして、坂口大臣に上告しないでほしい、在外被爆者の権利を守る対策を確立してほしいという要請をしたというふうに報じられておりますが、大臣はこのことはお耳に入っていらっしゃいますでしょうか。
坂口国務大臣 太田知事から直接お電話をちょうだいいたしました。先週でございますけれども、先週の金曜日ではなかったかと思いますが、直接お電話をちょうだいいたしまして、そこで、私個人の意見としては控訴をしないということにしたい、そういうふうに思っておりますと。今後のことについていろいろ国の方で決定がございましたら、ひとつまた御連絡をください、こういうことでございました。
中川(智)委員 私は、本当に大臣を尊敬し、本当に信じております。この三番目に関しましては、大臣はその違いというのがはっきりおわかりだと思いますが、私は、やはりいま一つ大臣に申し上げたいと思って、少し述べさせていただきます。
 坂口大臣が郭さんの第一審判決に対する控訴を決められたとき、その理由として、広島地裁と大阪地裁で同種の裁判において正反対の判決が出されているので高裁の判断を待ちたいとおっしゃいました。
 広島地裁の判決の事案は、韓国の被爆者が韓国で被爆者健康手帳を申請したり手当を申請したりできるようにすべきであったのに、そうしなかったのは違法であるとして国賠訴訟を起こしました。郭さんのケースは、大阪高裁判決にも書かれていますが、本件の争点は、一たん適法、有効に被爆者たる地位を取得した者が、その後、日本に居住も現在もしなくなることによって当然に被爆者たる地位を失うのかどうかという裁判でした。ですから、失わないという結論を見たわけです。
 この広島高裁の判断を待ちたいというふうにおっしゃらないというふうに考えるんですが、判例時報というこの本におきまして、弁護士さんが、専門家が論文を書かれています。広島地裁の判決と、そしてこの控訴理由とした大阪高裁のおのおのの裁判の違いということで書かれていますが、個人が一たん取得した地位が失権するか否かという側面で問題になったわけで、広島地裁の、先ほど私が述べましたその地裁の判決とは事実を異にするというような形で、幾つかの判例の、いわゆる判例時報というところにも載っております。
 大臣に、これはもう釈迦に説法かもしれませんが、いわゆる先ほど申しました広島地裁の、韓国にいて被爆者手帳をとったり申請したりするという裁判と、今回の郭さんの起こした裁判とは違うというふうなお考え、認識はもうお持ちでしょうか。前の控訴理由が成り立たないというふうに私は思いますが、大臣はいかがでしょうか。
坂口国務大臣 違う側面もございますし、それから共通の側面もあるというふうに思います。
 いわゆる日本以外に居住あるいはまた現在される皆さん方に対しましてこの法律が適用になるかどうかというところは、一つ私はやはり共通している部分だというふうに思っております。その中で、郭さんのこの場合には、一度いわゆる県の健康管理手当の資格を取られた、そのことに対してどうかという問題がもう一つあることは承知をいたしておりますし、そのことについて今回の判決も書いているわけであります。ですから、そのことはよく理解をいたしているところでございます。
中川(智)委員 全く違う中身、全くといいますか、違う中身であるということの御認識を持っていただいているということで安心をいたしました。
 いわゆる被爆者援護法の国籍条項の問題であり、例えば、郭さんは、朝、日本に来るまでは被爆者じゃないという取り扱い、そして日本に着くと被爆者になってしまうという、本当に矛盾したことでございます。地球上どこにいても被爆者は被爆者だ、その一つの確立したものを今回得ていただきたいし、今回の判決をしっかり受けとめていただきたい。最後のお願いになるように改めてお願いいたしまして、医療事故の質問に入りたいと思います。
 きょうは、いわゆるリピーター医師の問題につきましてまず最初に質問をさせていただきます。
 リピーター医師と申しますのは、重大な医療ミスや乱脈診療を何度も繰り返す。しかし、民事である場合は医道審にもかからないで、そのような劣悪な医療をして医療ミスを犯した医師が野放し状態になっていて、被害者が拡大されているということがあります。
 医師免許というのは、一回取得したら生涯、よっぽどのことが、医道審で処分というものがない限り取り消されないとか、やはりそういうリピーター医師に対してのチェックシステム、そしてまたそのような事故実態を把握するさまざまなシステムがこの日本にはまだないということで、リピーター医師によるさまざまな被害で苦しんでいらっしゃる方が本当に日々ふえていると言っても過言じゃない状況があります。
 三つの大きな問題といたしましては、仙台の産婦人科医師ですが、三年間に、たった三年間に三件の医療事故を起こしました。これは新聞で報道されましたが、陣痛促進剤の投与方法というのを誤って、そして子供さんも亡くなったということを、何度か繰り返しております。
 また、名古屋の産婦人科のお医者さんなんですが、この方も、母親二人と胎児二人が死亡して、新生児一人に重い障害を与えました。これもやはり陣痛促進剤の過剰投与。そして、出産後、母体の十分な経過観察を怠って、母親が出血多量で死亡したということ。その後にもまた陣痛促進剤の過剰投与で胎児が死亡した。同じ医師が何回も同じような医療ミスを繰り返している。
 この仙台もそうですが、京都も、これもやはり産婦人科のお医者さんなんですが、じんま疹の治療で子供に、女児に、塩化カルシウムの注射を、副作用を防ぐためには原液を三分の一に薄めなければならないのに原液のまま准看護師が誤って注射しまして、心停止になり、その後女児は寝たきりで、完全介護という状態が続いています。このお子さんは一生重い障害を負ったまま生きていかなければならない。その後にもまたこの医師はたくさんの、幾つかの医療ミスを犯しています。誤った医療、確実に誤った医療で、裁判でも全部医師は敗訴しているわけなんですね。
 このようなリピーター医師、そしてまた私が今申しました三件の事案に関しまして、大臣は御存じかどうか、そして御存じならばどのような手段でそれをお知りになったか、お伺いしたいと思います。
坂口国務大臣 今お述べになりました案件を詳しく知っているわけではございません。そういう繰り返しがあったということは聞いておりますけれども、詳しくは今聞いたところでございます。
中川(智)委員 ぜひとも、一つ一つ医療ミスをなくしていくためには、まずはこのリピーター医師というのを何とかするべきだと考えるんです。
 例えば交通事故の場合、重大な交通事故を犯した場合は刑務所に入ります。前科もつきます。そしてまた、ちょっとした接触事故でも警察が間に入り、そしてその免許は、免許取り消しとか、再び研修を行いますとか、お金を払って取り直したり。私も議員になる前は、ちょっと一時停止を怠りましたり、ちょっと標識がよくわからなかったりして一方通行を走ったりしたことがありました。そうしたら、恐ろしいビデオを見せられまして、何時間も何時間も、これでもかこれでもかと。でも、医師の場合は、そういうのは一切ないんですね。もう、保険を払って、裁判でも負けたって、次の日からまた診察をしている。これは看過できない実態なんです。
 私は、医療事故が同じ医師の手によって繰り返されていることを防ぐためにも、医療ミスがあったと疑われる場合に調査権限を持って当事者から事情を聞くなど調査するのは、厚労省の大事な、医療ミスをなくすための施策として重要だと思いますが、これは大臣、いかがお考えでしょうか。
坂口国務大臣 刑事事件の場合と民事の場合と両方ございますが、刑事の場合には比較的結論がわかりやすいし、対応の仕方がしやすいわけでございますが、民事の場合には、民事と一口に言いましてもさまざまなケースがあるんだろうというふうに思います。その中で、どういう人たちに対してそれを今後チェックし、そして見直していくかということ、そうしたことを、一つの基準、基準と申しますか、どういう人に対してどう対応するかということをちょっと明確にやはりしないといけないだろうというふうに思っています。
 そこは、こういったことに対する専門家というのがおみえになるのかどうかわかりませんけれども、法律家や、それから実際に医療に携わっている人で経験をしている人や、あるいはまた民間団体の人も含めてでも結構でございますが、一遍そういう人たちの、こういうふうなときにはこの人たちを、何か教育をやり直すとかいろいろなことがあると思うんですが、そういうことにするという、その辺のところをまずちょっと整理をしなきゃいけないというふうに思っている次第でございます。
中川(智)委員 本当に、大臣がずっと医療事故問題を、この委員会でも何度もいろいろな委員から質問もあり、そして何らかの形で医療事故をなくすための制度をつくっていかなければいけないという大臣のリーダーシップの中で、医療に係る事故事例情報の、これは情報のことですが、まず情報が大事です、医療に係る事故事例情報の取扱いに関する検討部会という中でもたくさんの提言が出ております。
 そして、やはり医道審のあり方ですね。そのことで、十二月十三日でしたか、その医道審議会で民事事件の結果も審査の対象とすることを検討することにしたというふうなことを聞きました。
 民事事件も審査対象としなければならないということは、本当に明らかだと考えるんです。と申しますのは、先ほど大臣、刑事事件とおっしゃいましたが、刑事事件というのは、セクハラとか、飲酒運転で重大な交通事故を起こしたとか、医療事故とは本当に関係のないことが刑事事件で、医師のいわゆる人格なり人間としての裁判、刑事裁判の俎上に上ることであって、このような医療事故は民事がほとんど全部と言っても過言ではない状況があります。
 ですから、やはり民事事件をどう俎上にのせるかということが実に大事で、この医道審議会で民事事件も検討することにしたということを実現していただきたいと思います。そして、少なくとも、リピーター医師に関しては民事事件であってもしっかりと審査すべきルールをつくるべきだと考えています。
 今の大臣の御答弁と似たような形になると思いますが、医道審でこのような意見が出ましたので、ここでまず民事のことも俎上にのせるという方向での御検討をお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。
篠崎政府参考人 先ほど大臣から御答弁ございましたが、現在、医道審議会の分科会、医道分科会と申しますが、そこで行政処分に当たっての基本的な考え方を取りまとめをいただいているところでございますが、前回、九月十七日の審議におきまして、刑事処分を受けた者に限らず、医療事故に係る民事裁判の結果敗訴となった者についても医師免許取り消しなどの行政処分の対象とすべきではないかというような意見も出されました。また一方、具体的な把握の方法、あるいは判断基準の設定などにつきまして多くの課題があるという御意見もございました。
 そこで、明後日、十二月十三日の開催を予定いたしておりますが、御指摘の民事裁判の結果を審査対象とすることについてもさらに議論が深められるものではないかというふうに考えております。
中川(智)委員 では局長、もう一言突っ込んで伺いたいんですが、そんな場合は、まず、民事のことで申し立てなどをする窓口というか、その責任部署というのはどこが考えられるのか。そしてまた、これからの議論を待つとおっしゃいますが、局長として、省として考えるのは、やはり民事事件すべてを対象とするような方向で考えていくべきだというふうなお考えをお持ちかどうか、伺いたいと思います。
篠崎政府参考人 最初の御質問については、今のところは私ども医事課が窓口にならざるを得ないというふうに思っております。
 それから、どのぐらいの範囲、あるいはどういう基準でというのは、まさに、今までやっているわけではございませんので、これからの問題でございますので、医道審議会の議論を見ながら、また私ども事務的にも事務当局として検討を進めているという段階でございまして、今先生が御指摘のように、どこまでというところまでまだ申し上げられる段階には至っておりません。
中川(智)委員 局長、今、医事課というのは何人いらっしゃいますかね、課員。
篠崎政府参考人 ちょっと正確な数字があれでございますが、三十人弱ぐらいのところだと思います。
中川(智)委員 やはり民事も、しっかりこうして一つ一つ、リピーター医師の問題にしても、医療事故をなくすという方向でのシステムをつくり、自治体での窓口というのもやはり当然必要になりますでしょうし、それをもっと強化していくということと、国がしっかり受けて調査をしたり、当事者の話を聞いたりということでは、本当にもっと体制をきっちりしていって、それをやれるような方向で具体的に進めていっていただきたい。これは要望として申し上げておきます。
 先ほど大臣、このような医療事故のさまざまな問題では専門家の御意見を聞いたりというふうにおっしゃいました。私は、いろいろな検討会とか委員会というのは期待をしていつも待っているわけですが、やはりこれは、ずっとなぜこのような問題が放置されてきたか、そして泣き寝入りで大切な家族を失った人たちがつらい思いをしてきたかといいますと、どうしても医療、お医者さんの方がやはり正しいと。そして、加害者説明責任ではなくて、被害者が、裁判を起こすときにもう全部資料を持たなきゃいけない。カルテは改ざんされることが非常に多かった、それも罪にはならない。このような状況が続いてきたからだと思うんです。
 私はやはり、公平中立に、患者の側に立ってこのような医療事故をなくすという方向を示すならば、被害者の方ですとかさまざまな人をきっちり委員の中に入れて、そのような検討会をつくっていただきたいと思います。いかがでしょうか、大臣。
坂口国務大臣 先ほども述べられたような、もう既に検討会も一つできておることは事実でございますし、今までできました検討会では間もなく結論も出るというふうに聞いておるわけでございますが、その検討会のメンバーだけではなくして多くの人の意見をやはり聞いていかなければいけない。その検討会のメンバーに入れるのがいいのか、その検討会が中心になってさまざまな角度の人の意見をお聞きして集約をしていくという形がいいのか、いろいろな形があると思いますから、結論としては、多くの人の意見をどうお聞きするかということになるだろうというふうに思っております。
中川(智)委員 さまざまな医療事故の問題がもう本当に連日のように報道されて、そのたびにやはり、ああもうこれは人災だというふうに私思っております。しかしながら、この委員会で直接、医療事故に遭われた方々、また家族を失った方々の直接の声を聞いたことは一度もございません。やはりこれは、当事者の悲痛な叫びを、委員会として、そしてまた省も受けとめてこの問題に当たらなければならないと考えますので、ぜひとも、医療事故の被害者の方々をこの委員会にお呼びして、参考人として御意見を聴取する場をつくっていただきたいと、これは委員長にお願いしたいと思いますが、いかがでしょう。
坂井委員長 理事会で協議させていただきます。
中川(智)委員 協議して実現するように、委員長もまた特段のお働きをよろしくお願いいたします。
 ちょっと質問が飛びましたけれども、十二月四日でしたか、医療事故で御家族を亡くされた方が大臣に対して要望書を届けられました。埼玉医大事件の被害者古館さん、東京女子医大の平柳さん、そして富士見産婦人科病院での被害者小西さん。この方々は、今まで被害者はそれぞれのところで本当にその悲しみを十字架として背に背負いながら一生を生きていかなきゃいけなかった、本当に一人一人が個別のところでつらかった、悔しいという思いを抱いて生きていっていましたが、力を合わせて、もう二度とこのような悲しいことが起きないように、少なくするようにということで、連携してこれからは医療事故をなくす運動に立ち上がられました。
 大きな要望は三つございます。
 医療記録の改ざん防止や開示を義務化する法律を制定していただきたい。二番目は、カルテを改ざんしたり医療ミスを繰り返すなど重大、悪質な医療上の問題を起こした医師を排除するため、医道審が民事裁判の結果も考慮した行政処分を行うようにお願いします。そのためにも、民事裁判の資料などをもとに国民が医師の行政処分を申し立てる権利を認めていただき、その窓口を設けてください。三つ目に、より開かれた医道審議会にするために、委員の構成の見直しや当該患者、家族から事情説明できる機会や議事録の公開について御配慮を願いたいという、三つの要望書を大臣にお出しいたしました。
 今大臣、目を通していただいておりますけれども、この思いを受けとめていただきたいという被害者たちの声に対しての御見解を伺いたいと思います。
坂口国務大臣 確かにちょうだいをいたしておりますし、私、直接お会いをさせていただくことはできませんでしたけれども、お申し出をいただきましたものは既に私のところに回ってきておりましたし、皆さん方が大変な御苦労をされたこともよく承っているところでございます。皆さん方の御趣旨を十分に尊重して対応していきたいと思っております。
中川(智)委員 そうしたら、この医療ミスのことに対しましてはもう一つ。
 先ほど大臣が、交通事故の免許と医師免許というのは同列にはということをおっしゃいましたが、やはり、医師免許を与えているのは国であります。しかしながら、今は、刑事事件を起こした医師の処分などは法務省や警察にゆだねています。
 厚労省としては、医師免許を与えているということで、免許を与えられた医師が何度もこのように人の命を奪ったり初歩的なミスで重い障害を残したりしている。先ほど研修やらというふうにおっしゃいましたが、大臣御自身は、医師免許を与えている厚生労働省のトップとして、このような問題というのはどのように、一度与えた医師免許というものに対して何かお考えはございますでしょうか。国が与えている免許です。
坂口国務大臣 国が与えている免許であることに変わりはありませんし、そして、医師としての資格にふさわしくない行為をする、そういうことがありましたときには、当然のことながら、その免許はなくなると申しますか、これは返還をしてもらうということに当然なるだろうというふうに思います。
 年間二回ほど、いつも、医道審にかかりました人たちの問題が回ってまいりますけれども、ことしは今までにない多くの人が医師免許を取り消しになったところでございます。その中には医療ミスを犯した人たちも含まれているわけでありまして、これからそうした医療ミスを犯した人たちにつきましてもやはり刑事事件になってくるケースが多いと私は思います。今まで、どちらかといいますと、その昔、医療ミスの場合にはならなかったケースと申しますか、なりにくかったということは確かにあったんだろうというふうに思いますが、最近はそうではございません。かなり各県におきましてもこの問題を真っ正面から取り上げておみえになるというふうに思っております。
中川(智)委員 それでは、ちょっと関連して局長に伺いたいんですが、医療事故などの民事事件のデータとか、今大臣がおっしゃった刑事事件の中での件数とか、処分漏れは十六人とかありましたね、医道審でも処分漏れがあったとか。その辺のデータは全部つかんでいらっしゃいますか。それを、今すぐは無理でしょうが、では、きっちりしたデータをいただきたい。
篠崎政府参考人 今データはございませんけれども、過去の例にさかのぼって民事、刑事の数を調べさせていただきます。
中川(智)委員 民事も、法務省にそれを要求すれば、やはり連携して、なくしていくための厚労省のいわゆるシステムをしっかりつくっていくためには必要だということですと、全部出す、出してくれると思います。法務省と連携して、民事。そして、プライバシーに関しましては結構ですので、件数やどのような医療事故かということ、きめ細かなデータをお待ちしております。
 最後に、BCGの予防接種について伺います。
 結核というのは、全国で本当に発症していないところと、発症率が高いところと、いろいろ地域格差が多いというのは私も今回資料を見ましてびっくりしたんですが、結局、今回は一律という形でワクチンの接種が、いわゆる集団健診の問題とかツ反のことなんですけれども、発生地域が格差が非常にあるのに一律に廃止して、そして全く、乳児などで心配があるところに関しましては、何しろこの国というのはやるときは全国一律なんですね。でも、この結核の発症というのは地域でかなり格差があるというふうに承知しているんですが、高原局長、この点はいかがでしょうか。
高原政府参考人 地域によって罹患率とか有病率とか結核について差があるではないかということは、そのとおりでございます。
 しかし、この差は、小児に一律にスクリーニングを行うということではなくて、現在、小児の結核患者の感染源といたしましては、肉親などの近親者が約七五%ございます。それで、定期健診を一律に廃止しても、患者に接触した人に対する健診を強化するというふうなことで対応できるのじゃないか。ちなみに、現在の結核は、若年者中心から高齢者を中心とした罹患状況となってきております。
 それで一方、健診を行いまして、避けられない問題といたしまして、結核に罹患していなくても結核と診断されてしまう。これは確率的にある程度出るわけでございますが、この場合、不必要な精密検査や予防内服が行われるという問題が指摘されております。
 ちなみに、例えば小学校一年生で大体百二十万人程度の健診が行われるわけでございます。それで、ツベルクリン反応のレベルで強陽性というふうな形で出てくる方が一万人。こういうふうな人たちが大体レントゲンの直接撮影者ということになるわけでございますが、では学校健診で発見された罹患者数というふうなものは、年々一けたの台でございます、全国で。それから、中学一年生もかなり、小学校一年生から六年たった後でも、十三人であるとか十一人であるとか、そういうレベルでございます。
中川(智)委員 時間です。
 坂口大臣、最後のお願いですから、上告しないでください。よろしくお願いします。
 ありがとうございました。
坂井委員長 次に、武正公一君。
武正委員 民主党・無所属クラブ、武正公一でございます。
 今、既に同僚委員からも御指摘がございました医療事故に関してでございます。
 お手元には、委員長、理事のお許しを得て、民主党が昨年六月二十五日に衆議院に提出をいたしました、いわゆる医療事故防止法案にかかわる概要あるいは法案もお手元に配付をさせていただいております。当委員会での審議をぜひともしていただきたいという思いも込めまして、きょうは質疑をさせていただきます。よろしくお願いいたします。
 まず冒頭、これは関係調達府省連絡会議、今政府が進めておりますe―Japan戦略そして電子政府、電子自治体ということで年間約二兆円、情報システムに関連する支出が行われておりますが、既に昨年度から、与党内からも、その使い方に問題あり、いわゆる安値入札がかえってその後随契で額が膨らんでいる様子、お金の使い方、問題があるんじゃないか、あるいはまた、かえって非効率ではないか、こういった指摘があり、前年度の末に関係省庁の担当者が集まり、ガイドラインを策定しております。
 厚労省さん、今いわゆる総合評価の中ではこれまでの除算方式から加算方式への見直しはされておると聞いておりますが、ガイドラインに指摘されておりますような競争入札の促進あるいはJVの活用、中小企業への受注促進、情報システムに関連してですね。政府支出の六割はいわゆる大手四社が独占をしているといった事態も指摘される中で、今この支出負担行為担当官、三百三十二名厚労省さんにはおいでですが、今年度までに、その中でいわゆる十分の六以下の安値入札だということで調査を行ったのはたった一件と聞いております。その内容とその支出負担行為担当官の役職、またその担当官が指定した契約審査委員の三名の肩書についてお答えいただきたいと思います。副大臣ですね。
鴨下副大臣 まず、冒頭の方の先生の御意見については私もほぼ共感しておりまして、特にこれから、e―Japanを含めて、二〇〇五年には日本は世界最先端の電子政府をつくろう、こういうようなことでありますので、それに伴ってさまざまな問題をきちんとしておかなければいけない、こういうような意味では、まさに先生おっしゃるとおりであります。
 特に、言ってみれば安値落札の問題については、これは、落札はしたはいいけれどもその後は随契でというようなことになるとかえって高いものを買ったというようなことにもなりますし、非常にむだが多い、こういうようなことで、先生おっしゃるように、四つの大手ベンダーがひとり占めにしてなかなかそれ以外のところはうまくいかないというようなことで、除算方式から加算方式にしていこうというようなことは今まさに進めている最中でございますし、もうそれはある意味で形としてきちんとできてきたというようなことでございます。
 ただ、先生がおっしゃっている、例えばジョイントベンチャー等の入札について、それから中小企業の例えば調達促進について、こういうようなことでありましたけれども、これも現在のところ、ジョイントベンチャーからの競争参加資格の申し込みは今のところはないわけでありますけれども、個別の入札案件について申し込みがあれば、その責任体制等を留意して、できるだけそういう競争参加機会をつくっていこう、こういうようなことであります。それから中小企業からの調達についても、多少技術力云々というところで問題のあることも乗り越えなければいけませんけれども、厚生省としても、それは中小企業の活用についてきちんとしてまいりたい、こういうふうに考えます。
 それから、その後の、先生御指摘の安値入札の調査についてどうか、このことについては担当の方から答えさせます。
鈴木政府参考人 今御指摘のありました安値入札の問題でございますが、御指摘のように一件ございました。これは国家試験問題の検索システムに関連したものでございます。
 これにつきましては、この調達につきましては、大臣官房会計課長が支出負担行為担当官として行った案件でございます。この場合の審査委員は、大臣官房会計課の監査指導室長、それから同管理室長及び大臣官房統計情報部企画課の情報企画室長でございます。
 調査の結果、最低価格の入札者を落札者とせずに、契約が適切に履行できると判断した次の順位者と契約を締結しております。
武正委員 最初に申し上げておきますが、お答えは政治家の皆さんにお願いをしておりまして、今のような形で多分メモはもう政治家の皆さんに行っていると思うんですね。もし行っていなかったら、ぜひこれからの審議ではそういった形で御協力をいただいて、政治家同士の議論という国会の活性化に御協力をいただきたいというふうに思います。
 さて、今のお話でございますが、要は、同じ課、ほとんど同じ課、あるいは大臣官房でも隣の課の方々がチェックをしているということなんですね。実際に、残り、厚生労働省さんにはたくさんいるんですが、その方々には今言った専門委員は一人も置いていないということも言われております。これはこの後ちょっと聞いてまいります。
 先ほどの安値入札のことをちょっと振り返りますと、厚労省さんでも行政文書ファイル管理システム、九九年十一月、二百十二万円でNECさん受注、これは予算額六千八百四十万だったわけですね、安値入札。翌年の十月、同じシステムの改造を日本IBMさんが随契でやっております。今度は九千三百三十四万円。まさに副大臣が言われたとおりであります。いろいろ指摘を見てみますと、実際は改造というよりも再構築に近い。実際は最初のNECさんうまくいかなかったんだ。もう一回再構築して九千三百三十四万で随契をしている。これがやはり官庁側の管理能力に問題がある、あるいはCIOを置くべきと。
 ただ、今厚労省さん、CIOは官房長さんですよね。本当に官房長さんがこの情報システムに関してCIOとしての役割を果たしているのかどうか。これはやはり厳しく省内でも御検討いただきたいということを申しておきます。
 また、先ほど副大臣からも電子政府化、電子自治体化、お話ありましたが、例えばアクセンチュアの日本の電子政府化の評価は、昨年も、ことしもですか、要は十七位で変わらない。そのときの指摘とすれば、どうしてもサプライサイドの視点が日本のIT化、電子政府化は強いんだ。ユーザーサイドの視点が欠けているよということなんですね。
 厚労省さん、今カルテの電子化進めておられますが、カルテの電子化もサプライサイドの視点が強過ぎやしないか、ユーザーサイドの視点に立つならば、カルテの電子化の目的はカルテなりレセプトの開示であろう。こういったところは、やはりIT化、電子政府、電子自治体化の視点が今の政府は履き違えていると言わざるを得ないのでございます。
 さて、安値入札について先ほどのお話でございますが、厚労省さんには三百三十二名の支出負担行為担当官がおりますが、そのうち財務省予決令の改正で三名の専門員を置いているのは先ほどの三名だけ、つまり残りの三百三十一名には審査委員を置いていない。契約がいわゆる安値入札のときに調査をするという審査委員を置いていないのは問題が多いというふうに思いますし、もともとこの支出負担行為担当官が、十分の六以下の安値入札であっても受注できるかどうかはその担当官に裁量が任されている、受注できなさそうだなと思ったら三名の専門員にこれから指定をして調査させる、これはやはりお手盛りの調査になろうというふうに問題意識を持つんですが、この点、これは副大臣よろしいでしょうか。
鴨下副大臣 厚生省がIT化について多少おくれているんではないか、こういうような御指摘でありまして、私も副大臣になって厚生労働省に入りましてCIOはだれなんだというような話から始めて、先生御指摘のところは、今それぞれのところに訓令しているところであります。
 ただ、今の段階でその契約審査委員の指定についてはなかなか多岐にわたるというようなことで、今のところ適任者を指定することができるよう、それぞれ必要があるときにそういうようなことをする、こういうようなことに今なっているわけでありまして、大臣官房会計課以外の部局には契約審査委員を実際に指定していないというようなところが現実ではあります。
 ただ、安値入札にかかわる調達が生じた場合には、その内容について適切に指定する、こういうようなことにしているわけでありますが、今後さらにそのあたりのところのシステムについては改善を図ってまいりたいというふうに思います。
武正委員 いわゆる同じ課の中にチェックをする三名を指定するというのは、やはりお手盛りの指定に、あるいはお手盛りの調査になり得ると思うんですが、この点はいかがですか。
鴨下副大臣 中に契約担当官がいるのではなかなかそれぞれ相互チェックができないんではないか、こういうふうなことでありますけれども、その人間をある意味でチェックするわけではなくて、契約そのものをというようなことで、ある意味では普遍的な事実をきちんと把握するというようなことでありますし、事後にはそのことについては情報公開をしていこう、こういうようなことでありますので、ただ同じ部署にいるからということだけでは、不適切とは必ずしも言えない部分だろうというふうには思います。
武正委員 それでは、まだこの三百三十一名の担当官には三名の審査委員がいないのですけれども、副大臣から今るる御答弁がありましたが、大臣、よろしいですか。
 何か事があったら指定するというようなお話なんですが、事があってから、じゃ、だれにしようかな、これはやはりリスクマネジメントとしてはいかがなものかと思うのですね。やはり、事前から、もし、それぞれの部署で担当官ごとに、安値入札は結局は、厚労省にとってもあるいは日本政府にとっても、まして国民の血税の使い方にとっても問題が多いということはもう指摘をされているわけでございますので、今のうちから三百三十二名それぞれに審査委員をもう指定する。でき得れば、やはり同じ課ではなくて、隣の課とかいろいろクロスをさせていくことを、特に厚労省さんが率先してやっていただくというのは、先ほどのカルテの電子化等、これからさまざまIT化を進めていくうちで非常に必要なことではないかと考えるのですが、大臣の御所見を伺います。
坂口国務大臣 今副大臣から答弁のあったとおりでございますが、平素からやはり訓練をちゃんとしておくということは大事なことでございまして、また、外側から見て、同じ場所にいるから彼らはなあなあでやっているんじゃないかというふうに言われるようなことがあってはいけませんので、その点はそういうことが言われないように、ふだんからの訓練をやっていきたいと思います。
武正委員 当初、平成九年八月、医療機器の流通に関する調査研究班の医療機器の流通慣行に関する調査報告書も触れようと思っておりましたが、時間の関係で、今回は割愛をしております。
 これはもう言うまでもなく、ペースメーカー、PTCAカテーテル、MRIなどの内外価格差、日本は欧米に比べて三倍高い等の指摘、これは公取さんも調査をされている。こういった問題も、日本の医療費三十兆円、それが有効に使われるためには、やはり入札、受注制度あるいは流通体系、さまざまな発注側と受注側との厳しいチェック関係あるいは競争、これが必要なことを指摘して、次は医療事故防止法案に移らせていただきます。
 お手元の方に、提出をした法案の概要と法案がございます。これで私どもの民主党では、医療事故防止センターというものを設けて、ここが医療事故の調査をすることができるというふうにいたしました。ただ、これは、することができるであって、義務まではいたしませんでした。また、やはりその目的は、原因究明、再発防止であって、犯人捜しではないという視点でございます。
 そこで、まずこれはお伺いをするところでございますが、この一ページに書いてありますが、下から十行目から十五行目ぐらいに書いてありますが、もう厚労省さんから出していただいたように、これは五というところですけれども、安全管理に関する指針は、平成十三年十月で、九五・九%できている。リスクマネジャーも七三・三%で置かれている。安全委員会に至っては九八・九%でつくられている。こういった数字が挙げられておるのでございますが、ことしの東京女子医大の医療事故、カルテ改ざんを含めたこういった隠ぺい体質がやはり組織の中では起きやすいんだということが指摘をされているわけでございまして、後で触れる第三者機関の必要性が今回の東京女子医大の事故からも明らかになってまいります。
 そこで、この医療事故防止センター、要は第三者機関が医療事故報告を求めることができるというような視点、これについてどのようにお考えになるか。あくまでも原因究明、再発防止でございます。
 それからもう一点は、都道府県知事が医療事故防止方針についてその策定状況など立入検査ができるというような形を書かせていただいておりますが、この点、二点について御所見を伺います。
木村副大臣 医療安全対策は医療政策の最重要課題の一つであるということは同じ思いでございます。このため、厚生労働省で本年八月に省令を改正しまして、すべての病院等の管理者に対しまして、安全管理のための指針の整備、事故の院内報告制度の構築、安全管理委員会の設置、今先生がお話しされていた点でございますけれども、安全管理のための職員研修の実施などを義務づけるとともに、その整備状況について医療監視を逐次実施をしているところでございます。
 また、特定機能病院等から冷やり、はっと事例を収集いたしまして、医療事故の要因を解明した上で、防止対策について国民や医療機関に情報提供などを行っているところであり、さらに事故事例の収集や活用等について現在検討を行っているところでございまして、厚生労働省といたしましては、当面、現行法のもとでこれらの対策を総合的に推進をすることによって医療の安全を進めてまいりたい、このように思っております。
武正委員 都道府県では、青森県など、院内感染対策委員会をつくらせたり、院内感染防止対策の内容の確認などをやったり、まあこれは立入検査、院内感染でございますが。あと、仙台の保健所長さんは、医療事故防止対策、あるいはこれについてのやはり医療監視、これが必要だというような提言もしているのですね。
 大臣、いかがでしょうか、私は、医療安全対策検討会議の第一回議事録にも書かれておりますが、第三者機関が医療事故報告を求めることができるようにするのはどうだろうということでございまして、この法案もそういった趣旨で出させていただいております。
 日本医療機能評価機構という団体がございますが、この団体がひとつ今、例えば今年度から医療事故対策についての評価、チェック項目もかなり詳細にふやしておりますし、いわゆる病院評価、厚労省さんも二〇〇六年度までに二千病院というような目標も立てておられるようですが、この日本医療機能評価機構を第三者機関にすべきではないか、することが可能ではないかということについての御所見を伺います。
木村副大臣 先ほど政治家同士の議論ということで、ちょっと私も、考えていることはそんなに違ってないと思うのですが、まさに原因究明であって犯罪捜査ではない。そこは非常に重要なことで、例えばアメリカなんかでも、航空機事故の場合なんか航空機事故調査委員会というのがありまして、そこはどういう取り組みかというと、やはり事故が起こったときに一番原因がわかっているのは事故を起こした当人だ、パイロットとかそういう関係者だということで、そこに免責するんですな。それで、正直に全部しゃべってくれと。正直に全部しゃべることによって、ある意味で免責を与えて、そして一番の肝心な原因究明に取り組んでいる。私は、そこは非常に、なるほど参考になるなといつも感じているのですよ。
 それで、いろいろな機関をつくっても、いろいろな場面があると思います。事故を起こしてしまった人が、うっかりこれをしゃべったら自分は取り調べられたり刑務所に入ったりしなきゃいけないぞとなると、どうしてもそこに肝心なところをしゃべってしまわないような場面が出てくるのではないかなということを考えたときに、どうやってこれからの事故再発の防止のために、おっしゃられたように、原因究明にとことん尽くしていただいて今後の医療の発展とその事故の防止のためにどういう仕組みをつくるかというのは大変大事なところだという感覚は私もそのとおりだと思うので、その辺のことがもう少し具体的になっていけばなというのを強く感じているような次第でございます。
 いずれにいたしましても、本年七月に医療に係る事故事例情報の取扱いに関する検討部会を設置し、検討を行っているところでありまして、できるだけ早いうちに結論を取りまとめて必要な措置をとるべきである、こういうことでございますけれども、私の個人的な考えをあえて議論だということで言わせていただくと、やはりそういう何か、あえて免責を与えてもいいから、本当に正直にしゃべるようなそういうシステムができたらこの辺は相当格段に進歩するのかなというと、どういう機関にするかも大事ですけれども、もっともっと、もう少しその辺に深く食い込むようなことの検討もこれからぜひ行っていただきたいな、また、こちらとしてもしていかなきゃいけないというのを強く感じているような次第であります。
武正委員 私は、日本医療機能評価機構を第三者機関にしてはどうかというふうに聞いているんであって、それについてお答えいただいておりません。
 それに加えて、アメリカの航空事故調査委員会についてはNTSB、それなりに独立した行政委員会としての権限を与えられております。これについては、我が党を初め多くの野党が、政府・与党に対しては、国家行政組織法三条の独立行政委員会設置をと再三再四あらゆる機会を通じて求めているにもかかわらず、それについて政府・与党はいつも行政改革を理由に認めない。ジェー・シー・オー事件もそうでした。
 これなのに、今の副大臣の答弁は納得できないわけでございますが、大臣、いかがでしょうか、日本医療機能評価機構。――いや、大臣にお答えをいただきたいと思いますが。
木村副大臣 今の点で、第三者機関の点を含めて、本年七月に医療に係る事故事例情報の取扱いに関する検討部会を設置いたしまして、検討を行っているところでございます、そして、できるだけ早いうちに結論を取りまとめて必要な措置をとっていきたい、こういうことを考えているところでございますと、これは先ほど答弁をさせていただきました。
武正委員 日本医療機能評価機構について、私はその評価を、それこそ日本医療機能評価機構はどうですかと聞いているんですけれどもね。大臣、いかがでしょうか。
坂口国務大臣 医療事故の問題は、これは特異なものでございますから、この日本医療機能評価機構というのは、これは大変すぐれた機構であるというふうに思っておりますが、この機構に医療事故のことをゆだねるのがいいのかどうか、そこはちょっとよく検討した方がいい。この機構そのものが大変大きな仕事をしておみえになる、これは率直に認めております。医療事故との関係でどうするかということは、少し検討して決めたいと思います。
武正委員 今の医療機能評価機構でございますが、これは厚生労働省が基本財産三億のうち一億を出しております。二〇〇六年までに二千病院の評価を受けさせる、そういった、ある面独立した評価機関ですから、私は、やはり厚労省さんが三億のうち一億を出しているというのは、今大臣は医療事故の調査はまだこれから検討だというふうにおっしゃられましたが、やはりこの評価機関としての独立性を考えたときには、当然、やはり厚労省さんが三分の一というのが果たしていかがなものかなというふうに思うんですが、この点はどうでしょうか。
木村副大臣 いずれにいたしましても、こういう評価は中立的に行われる必要がある、これはもう当然なことでございまして、そのために日本医療機能評価機構の基本財産は、御存じだとは思いますけれども、保健医療に関する公益法人、保険者を代表する団体等から幅広く出資を求めておりまして、あわせて国としても、評価事業の円滑な実施と普及を支援する観点から一定の出資を行っております。
 国の出資は同機構の中立性に影響を及ぼすものではないと考えておりまして、国といたしましては、今後とも国民の医療に対する信頼を確保し、医療の質の一層の向上を図るために、特定の立場に偏することのない中立的な立場に立った医療機能評価の実施、普及を支援してまいりたい、このような考えでおります。
武正委員 先ほど副大臣は、免責も含めて、事故に関して、ある面権限を与えてというような話もされましたので、こういった大事な評価をする機関ですので、厚労省さんが三分の一出資していたから本当に、では中立性が保てるのかといったことは私はやはり意見を異にするんですね。
 これは時間の限りもありますので、次に行かせていただきますが、この医療機能評価機構に関して、補助、診療報酬、これは加算してもいいんじゃないかなというふうに思うんですが、拡大をされているようなんですが、この点についてはいかがでしょうか。
木村副大臣 もう先生は御承知だと思いますけれども、緩和ケアにおきましては、今般の診療報酬改定において、緩和ケア病棟入院料、緩和ケア加算及び外来化学療法加算の算定要件の一つとして、日本医療機能評価機構等が行う医療機能評価を受けていることを位置づけました。つまり、条件としてこの機能の評価を受けているということが入っているわけであります。
 診療報酬においても、医療の質の評価は重要と考えておりますし、御指摘の点も含めまして診療報酬上の適切な評価のあり方についてさらに検討してまいりたいと思います。
武正委員 次は、セラチア菌の院内感染に移らせていただきますが、世田谷区保健所、世田谷区さんからこういった報告書が出ております。
 この報告書を見てまいりましても、これは御存じのように、十二月の末から一月の頭、いわゆる年末年始に疑いがあり、あるいは確定し、そして死亡されたということで、七名の方が亡くなられた事故でございます。ちょうど年末年始にかかっていることでございますが、この報告書の中でも、四十一ページには、十二月一日から十九日が、一晩平均、夜間の救急外来患者六・九人、十九日から三十一日が八・八人、一月一日から十二日までは六・一人。あるいは、一月四日から七日に検査が集中したということでございまして、仮眠もとれないほど激務と多くの看護師が言っているという記載や、あるいは一月四日から七日に検査が集中したときは、一月四日は検査に追われて大変だった、病棟は忙しい上に、検査室からは遅いと言われて追い立てられるようだったというような形が書かれております。
 ただ、こういった、ある面、年末年始の繁忙期、そこで人が実は不足をしているんではないか、人手が足りないといったようなヒアリング、調査結果は載っているんですが、では、今回のことを受けてのまとめの方には、五十六ページ以下でございますが、「I病院に対する院内感染予防の提言」「今後への提言・決意」にはこの人的配置の問題は一切触れられていないんですね、年末年始の繁忙期に人手が足りないということは。これは私はどうしてかなというふうに思うんですね。
 今回は、いわゆる十二月二十六日とそれ以前でヘパロックの解析疫学上オッズ比、二十五日以前は一・七五、それが二十六日以後は二五・六七にはね上がっているといったことも含めて、やはりこの年末年始の繁忙期の人手のなさが、二〇〇一年に既に百ミリリットルから五百ミリリットルにヘパリンロックの溶液を大きくした。その五百ミリリットルの中でセラチア菌が増殖したんではないかという疑いが濃厚というところでございますが、なぜこの人手の不足を挙げないのか、私はここに根本的な原因があるのではないかと考えるんですが、この点、大臣、いかがでしょうか。お答えいただけますか。
坂口国務大臣 世田谷のI病院のことをお挙げになりました。それで、こういう立入検査、これは都道府県がやるものですから、当然のことながら東京都が行っているということでございます。
 東京都が十一年の十二月に実施をしております立入検査、これは、この件とはかかわりなく、ふだんやっている検査でございまして、そこにおきましては人員配置の問題はなかった。ただ、管理関係の項目につきまして、これは幾つかの改善項目をその中に入れているということでございまして、ふだんの人的配置の問題とそれからお正月とかそういった特定の時期に対する人的配置の問題と若干違うのかなというふうには思いますが、この事件によります原因究明の話は、別途、これはそうしたことも全体を含めて、それはやらなきゃいけないのではないかというふうに思います。
武正委員 医療監視のところをちょっと飛ばしたもので、大臣の方もちょっと御混乱されたかもしれませんが、極めて明快にその医療監視の方を言っていただいたので、余計わかりやすくなりました。
 要は、医療監視では人的配置というのを、人がいるかいないか、人数のことをチェックするということで、医療の質についてはチェックができないということや、東京都さんにも行ってきましたが、東京都さんでは、こういったこと、要は、年末の繁忙期に人手が足りないということを今の医療法上指摘できないんだというようなことをいみじくも語っておられます。
 ですから、医療監視は自治事務だと言い切ってしまわないで、既に墨田区そして堺市ということで立て続けに起こり、ことしはまた群馬県でも起きているセラチア菌、これは感染症法の対象外ですね。ですから、軽微なと言われながら、セラチア菌による死亡者が毎年のように起きている。これについて、今の人的なところというのは、やはり厚生労働省が取り組まなければならない医療監視の内容充実といった点だというふうに私は思います。
 そういったことで、このセラチア菌でございますが、もう既に堺市の方でも、これは耳原総合病院というふうにいうんでしょうか、大田副院長は、その後、三億七千三百万の赤字というような形で、病院も患者さんが来なくなってしまった、その中で安全対策に二・八倍を使った、徹底してそのことをやったよというようなことも書いておりますが、こうしてなぜ繰り返されるのか。
 このことについては先ほど医療監視をやっているよというお話でしたが、その中身、ただ人が、施設が整っていればいいという今の限界、これについて、大臣、再度お答えをいただけますでしょうか。改善が、やはり厚生労働省として取り組みがなければ、こういったセラチア菌による死亡事故、院内感染が繰り返されるだろうと考えるんですが、大臣の御所見を伺います。
坂口国務大臣 先ほども若干触れましたが、ふだん行っております監査というものが、ややもいたしますと、事務的な監査と申しますか、そうしたことに偏りがちになりまして、いわゆる技術面での監査というのがややもいたしますと手薄になる可能性がある、私も率直にそう思っております。
 監査に入ります人間、どちらかといえば、そうしたいわゆる技術面での監査をするというような人間が少ないものでございますから、どうしてもそうなるんだろうというふうに思いますし、それはそれでやむを得ない面もあるというふうには思うんですが、やはり、そうした意味では、このセラチア菌のような問題につきましては、ふだんから病院の関係者を集めて、そして、これをどういうふうに取り扱っていくかということの検討会と申しますか、それに対する知見なるものをみんなにわかりやすく話さなければいけないし、そして、取り扱いはどういうふうにしていったらいいかということ、どういうことに注意をしたらいいかということをもっと積極的にやらないといけないんだろうというふうに思っています。
 そういった点で、今までが不十分であったという反省もあるわけでございますので、これからそうした病院の皆さん方にお集まりをいただいて、関係者の皆さん方にこういうケースで今まではセラチア菌の問題が起こっているというお話をして、そして、そういうことがないようにふだんから気をつけていただかないといけないわけでございます。
 先ほどのI病院でございましたか、ここの場合にも、その原因となりました理由はもうわかっているわけでありまして、本来ならば冷凍室か何かに入れておかなきゃならないものを、普通の温度のところに数日間も置いておいたというようなことがあって、それが原因になっておるわけでありますから、そういう教育訓練というものをやはり徹底的にやっていかないといけないというふうに思っております。単なる監査というのではなくて、やはりそういうことをミックスして行っていかないといけないというふうに反省もしておるところでございます。
武正委員 I病院については、先ほども触れたように、なぜ常温で放置をしたのか、あるいは、いわゆるぬれタオルですけれども、布タオルをそのままかえなかったのか。そこでまたセラチア菌が増殖した。これは、私は、やはりすべて人手不足、繁忙期にあっての人手不足だというふうに結論づけなければならない。
 そのことさえも報告書に書けない。これは私はまた繰り返されるというふうに言わざるを得ませんし、その医療監視について、医療監視でできるものではないと言われますが、やはり医療監視で、設備の数じゃなくて、その内容にまで立ち入らなかったら、これは医療監視の意味がないというふうに考えるわけでございます。
 さて、次に、救急医療に移らせていただきますが、間もなく厚生労働省と総務省さんの最終報告が検討会でまとまるようでございます。事前に私も見させていただきましたが、まだまだもっともっと取り組みが必要であろうというふうに考えるわけでございます。
 特に、この中で、消防署と病院のいわゆるメディカルコントロールについて触れているわけですが、どちらかというと、それは、病院側が消防署側、搬送側のメディカルコントロールを全体で行うということであって、私はやはり、搬送した消防署側が搬送後の患者さんの予後の状態を知るといった面での、病院側から消防署側への、搬送者への情報提供が必要ではないかというふうに考えております。
 平成十二年で挙げますと、約四百万人超の搬送者の中で、重症者四十六万四千七百十六人、その方が病院に運ばれて、全体の一割ですね、どういう状況になったのか、重症者ですから。これについては実態を把握されていますか。
 また、今私が言ったように、病院側から搬送後の患者さんの容体を搬送者である消防署側に伝えるということは、搬送時の行為について検討を加えたり、いろいろやはり改善につながるというふうに思うんですが、今、特定医療三行為の拡大についても議論があるわけですから、当然情報提供は義務づけていいんじゃないかと私は思うんですが、二点お伺いいたします。――いやいや、政治家に答えてもらいます。
木村副大臣 これはあくまでも厚生省側の話でございますから、御承知のように、この件に関しましては消防庁側の取り組み……(武正委員「いや、厚生労働省側の考えでいいんです」と呼ぶ)
 御指摘の救急救命士が業務を行うに際しましての病院から消防への情報提供につきましては、各都道府県及び各地域を単位といたしまして、御承知のメディカルコントロール協議会を早急に設置し、この場において救急救命士が行った除細動や気道の確保などについての事後検証を重ねる中で、つまり協議会を開いて、両者がその場において、今おっしゃられた重症者がこうなった、ああなったという事後検証を重ねる中で、医療関係者や消防関係者の情報の共有という目的が達成されるものと考えているわけでございまして、現状におきましては、年内にも予定される検討会の報告書の取りまとめを受け、総務省消防庁と連携いたしまして、医療行政、消防行政の緊密な連絡調整体制の確立に向けた必要な取り組みを進めてまいりたい、このように思っているような次第であります。
武正委員 四十六万四千七百十六人のその後の症状はわからないということで理解をしたいと思います。
 さて、私はやはり義務づけるべきだと思うんですね。これは厚生労働大臣よくわかるように、ドクターとドクターじゃない方々が、私も検討会に出ました、同僚委員と一緒に。やはり、ドクターがしゃべると、なかなかほかの方々はしゃべりにくいという雰囲気があります。だから義務づけないと、やはりあるんですよ、何というんですか、ドクターと搬送者側のそういう位置関係が。私はやはり義務づけるべきだと思います。これは強く申し上げておきます。
 最後になりますが、国立病院・療養所のうち約三割が築三十年ということでございますが、建てかえについてどのような方針で臨まれるのか、また、民間病院がどの程度年数がたっているのか実態把握をされているのかどうか、一点。
 それから、私は、都市整備公団が指摘しているように、躯体保護に有効で省エネに有効な外断熱を病院の建てかえには取り入れるべきと考えますが、二点、御所見をお伺いします。これは大臣、いかがでしょうか。
坂口国務大臣 御案内のとおり、百四十四の国立病院・療養所、これは今独立行政法人にお願いをしている最中でございますが、この百四十四の施設のうちで、三十年以上たっております施設が四十六施設で三二%を占めている。三十年未満が九十八施設で六八%、現在建てかえ中のものも含めてでございますが、あります。
 これは、年齢だけではいかないわけで、年齢は短いけれども非常に悪くなったといったようなものも中にございますので、それらのことを、独立行政法人になりますまでに、引き渡しますときに大体どういう状況かということを、国としても、厚生労働省としてもちゃんと明確にしておかなければいけないというふうに思っておりまして、それらのことの調査も進めていきたいというふうに思っているところでございます。
 それから、改修におきます先ほど先生が言われました断熱材のお話、素人でございますから、どれがいいか悪いかということは私はなかなか言いがたいわけでございますが、外側につける外断熱の使用につきましては、断熱の効果から見て有効であるという意見はよく聞いておるところでございますが、ただ一方、建設コストがかなり高くなるということもあるという面もあるようでございます。
 しかし、効果としては外側にした方がいいという結論が出ているようでございますから、これは今後、そうしたことを申し送りをして、建てかえるときにはそうしたことも、あるいはまた、建てかえができなくても、そうしたことをやることによって、そして一時しのげることができるということであれば、大変それも大事なことだというふうに思っております。
 今後の建てかえ整備につきましては、独立行政法人国立病院機構が経営の健全性を十分に考慮しながら進めていくものというふうに思いますが、ただいまの御意見等も参考にしながらやっていきたいというふうに思っております。
武正委員 もう時間が来ましたので終わりますが、史上最大のミステーク、TBSブリタニカでも、いわゆる内断熱が病院の結露を生み出して、結露が院内感染を引き起こす可能性がある、こういった指摘があります。実際、北海道新聞でも、札幌市立病院で全病棟に結露、これは市議会が指摘、調査、結局は札幌市側が陳謝といった事態も札幌市立病院でありますし、これは産業経済新聞、お茶の水女子大の田中教授、外断熱工法、カビなどの減少に効果、室温安定させ結露を防ぐ、内断熱より外断熱、省エネ性高く躯体伸縮も防止ということで、いわゆる院内感染防止にも役立つということをぜひ大臣には御記憶をいただき、以上で質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
坂井委員長 次に、金田誠一君。
金田(誠)委員 民主党の金田誠一でございます。
 大臣、本題に入る前に、先ほども質問があったと思うわけでございますが、在外被爆者郭さんの件について前段ちょっと質問させていただきたいと思います。
 去る十二月五日、在外被爆者郭貴勲さんに対する被爆者援護法の適用をめぐって争われていた控訴審の判決が大阪高裁で言い渡されたわけでございます。判決理由要旨を読ませていただきました。全面的な原告勝訴、国側の敗訴でございます。判決文の中に、「「被爆者はどこにいても被爆者」という事実を直視せざるを得ない」ここまで明記されたわけでございまして、このことは極めて重いと思うわけでございます。
 もはやこれ以上解決を引き延ばすべきではございません。大臣は早急に、上告を断念する、この決断をされるべきだと思いますが、御所見はいかがでしょうか。
坂口国務大臣 先ほども中川議員にお答えをさせていただいたとおりでございますが、高裁の結果につきましては重く受けとめておることは事実でございます。
 三月ごろに最初出るということで、それを期待していたわけでございますが、少し遅くなりまして、ようやくその結論が出ました。
 それで、先ほども申しましたとおり、いろいろなことが中に書かれておりますが、私として一番、どうするかということで、一番大事だというふうに思ったと申しますか、ある意味では大変ショックを受けたと申しますか、その点は、やはり法案そのものが不備であるというふうに書かれている点でございます。法案の不備を指摘されたものを、一体今後どうしていくかという問題がある。この点につきまして、やはりこの際に考え方をまとめなければならないというふうに思っております。
 そのほか、今おっしゃいましたようなことも書かれておりますし、それから、一審、二審とこうして続けて敗訴したということもございます。
 これらのことを謙虚に、そして冷静に、客観的に判断をして結論を出したいというふうに思っております。
金田(誠)委員 この点は、そう深追いをしようと思って取り上げたわけではございませんが、ただいまの大臣の御答弁を聞きまして、一点だけ確認をさせていただきたいところがございます。
 法案の不備ということを大臣はおっしゃったわけでございます。それは、この判決要旨によりますと「立法者意思について」ということで、「それにもかかわらず、このような点に関する明文規定を置かず、解釈に委ねたというのであるならば、それは立法過程における不備ともいうべきものであり、そこに立法者意思としてとらえるべき積極的意味合いをもたせるのは相当ではない」というのが全文でございます。
 したがって、「立法過程における不備ともいうべきものであり、」というのは、解釈にゆだねたというのであればということの前提つきでございます。しかし、解釈にゆだねたというのではない、「そこに立法者意思としてとらえるべき積極的意味合いをもたせるのは相当ではない」というふうに述べているわけでございますから、大臣が殊さら立法の不備ということを今ここでおっしゃられるのはどういう意味なのか、今理解に苦しんでいるところでございます。
 そういう点から確認をさせていただきたいと思いますが、本来これは、日本国内にいようが外に出ようが被爆者はどこにいても被爆者、こういうことが明記されていれば全く問題ないわけでございますが、それが載っていなかったということでございます。したがって、大臣のおっしゃることは、上告を取り下げるにしても、どこにいても被爆者という意味合いをきちんと踏まえて、場合によってはそういう立場からの法改正も考えるという意味なんでしょうか。
坂口国務大臣 言っていることはそんなに違わないというふうに思っておりますが、この文章を読んでいただきますとわかりますように、「明文規定を置かず、」なんですね、そして「解釈に委ねたというのであるならば、」また点なんですね、「それは立法過程における不備ともいうべきものであり、」こう書いてあるわけでありまして、私は、やはりこの法律の中で、日本の国の中に居住とか現在しない場合には、それはもう当たりませんよということを言うんだったら、そこはちゃんと書いておかなきゃいけない。それは書いていないじゃないかということをこの判決は言っているというふうに私は理解をいたしております。
金田(誠)委員 これはどういうことでしょうか。大臣のおっしゃっていることがよくわからないわけでございますが、「法律の適用やいったん発生した効力の存続要件といった当該立法の目的に関わる基本的な事柄について、専門的・技術的分野の事項でもないのに、これを行政庁の裁量行為に委ねるべき合理的理由も見い出すことはできない。」「にもかかわらず、このような点に関する明文規定を置かず、解釈に委ねたというのであるならば、それは立法過程における不備」ということです。だから、明文規定を置かず解釈にゆだねたということではないということをこの判決要旨は言っているわけです。「そこに立法者意思としてとらえるべき積極的意味合いをもたせるのは相当ではない」ということを言っているわけです。
 したがって、これは立法者が明文規定を置かず解釈にゆだねたということではないんだ、もしそんな解釈をするのであれば立法過程における不備ともいうべきものなんだ、そんなことはないんですよということを言っているわけでしょう、大臣。それは同じ認識だと思うんですが、どうですか。
坂口国務大臣 持っているものは同じだというふうに思いますが、ここに書かれておりますことは、やはりこれは立法過程における不備があるということを言っていると私は思うんですね。それには、いろいろと理由は書いてありますよ。書いてありますけれども、国の方が国の主張をそういうふうにするんだったら、やはりそれはちゃんと書いておくべきだった、こういうことを言っていると思うんです。
金田(誠)委員 だから、本来そうであるならば書いておくべきことなんであって、それを解釈にゆだねたというのであればそれは立法過程における不備ともいうべきものだ、したがって解釈にゆだねたなんてことではないんだ、「被爆者はどこにいても被爆者」と明記しているんじゃないですか。そのことを私は前段申し上げたつもりですが、「被爆者はどこにいても被爆者」、そのことを、きちんとこの判決は原点を踏まえてこういう書きぶりをしている。反語的に書いているわけですよ。それはよろしいですね。
坂口国務大臣 もう少し言わせていただきますならば、この法律が審議をされましたときに、谷さんという政府委員がいろいろと答弁をしている。海外におる人は入りませんよということを言っているとか、あるいは共産党さんから修正案が出て、そしてそれを否決したといったようなことがあって、そうしたことがあるから、海外のことは別なんだということを国の方は言っているわけですけれども、いや、そういうことを言うんだったらそれだけではなくて法律的にもちゃんと書いておくべきだった、こういうことを言っていると私は理解しております。
金田(誠)委員 大臣、そういう話をされますと、大臣は上告するということをおっしゃりたいわけですか。
坂口国務大臣 今はまだ決定をいたしておりません。冷静に判断をしたいと先ほどから言っているとおりでございます。
金田(誠)委員 今判決要旨をひもといて、どこに書いてあったか、にわかに指摘することはできませんけれども、海外において適用されないということは、日本に来て認定をされて、その方が海外に出たら直ちに資格を失うということではないということまで明記されているわけですよ。ほぼ完全に原告の勝訴、国側敗訴でございます。
 そこに今この法案の不備ということをあえて持ち出すとすれば、それは詭弁に近い法解釈を国はここに至ってなおとろうとするということになるんではないか。短いやりとりですから、大臣の真意を私はもしかすると正確につかんでいないかもしれませんが、そういう心配を覚えるわけでございます。
 大臣、そういう心配をぜひさせないようなわかりやすい答弁を最後にいただけませんでしょうか。
坂口国務大臣 先ほど申しましたのは、国の側が今主張をしておることを申し上げたわけで、それを国の側が言うんだったら法律にちゃんと書いておくべきだった、もっとはっきり書いておくべきだった、こういうことになっているということを今申し上げているわけであります。
 したがって、この判決を受けてどのようにするかということにつきましては、冷静に、客観的に判断をさせていただいて結論を出させていただきます。これは謙虚にそう言っているわけでございます。
金田(誠)委員 書いていない以上は、この判決が示したように明快な状況なわけでございますから、ぜひひとつ、そこに書いていない以上は判決に従うということで、しかるべく御決断をいただきたいと思うわけでございます。
 きょうは郭さんも傍聴されているようでございますけれども、私はきのう郭さんに直接お目にかかりまして、お話を伺いました。もしかすると記憶が多少違うかもしれませんが、二十のときに、地元は全羅北道と伺いましたけれども、徴兵をされて日本に来た。それで、広島の最精鋭と言われる陸軍の部隊に配属になって、そこで勤務をして一年程度たったときに被爆をされたということでございます。
 この郭さんが、戦争が終わって故国に帰られる、これは当たり前のことでございます。しかし、日本に来たくて来たわけでもない、そこで被爆をされた、日本兵として被爆をされた、その郭さんを同じ被爆者として我が国が責任を果たす、これもまた当然のことだと思います。郭さんが故国に帰るのも当然であれば、我が国が責任を果たすのもこれまた当然でございます。その当然のことが今日までされてこなかった。大変残念でございますし、私は日本人として非常に恥ずかしい思いでございます。
 大臣も恐らくその思いを共有していただけるものと思うわけでございます。どうぞひとつ早期に上告断念、この問題を解決するということで御決断をいただきますようにお願いを申し上げる次第でございます。
 次に、本題に入らせていただきます。
 きょうは、いわゆる細切れパートと呼ばれる方々の社会保険の適用等について伺いたいと思います。
 いわゆる細切れパートとは、複数の勤務先に同時に勤務するパート労働者で、かけ持ちパートあるいはダブルワーカーなどとも呼ばれているようでございます。
 典型的な細切れパートとしては、大学の専業非常勤講師があろうかと思います。大学の非常勤講師には、分類すれば四つほど類型があるということでございますが、そのうちの一つの専業非常勤講師というものは、大学院の修了者で他に本務がなく、主として非常勤講師の仕事だけで生活している者と定義することができるわけでございます。
 文部科学省によれば、平成十年現在で国公私立大学を通じた非常勤講師の総数は十三万三千八百六十九人、全教員に対する割合は四七・八%、専ら非常勤講師のみを仕事とする専業非常勤講師の人数は国公私立で四万五千六十七人に上るとされております。しかし、この非常勤講師の労働組合の側から言わせますと、この四万五千六十七人のうち、複数大学かけ持ち勤務が多いので実数は二万人前後ではないか、こう言っているところでございます。
 非常勤講師の待遇は信じられないほど劣悪でございまして、歴史的経過から、それで生活するというレベルでは考えられておりません。
 首都圏大学非常勤講師組合によれば、一回の講義を一こまと数えるようでございますが、一こまおおむね九十分で、これを一年間やりますと年収三十万円、その上、多くの大学が非常勤講師の担当を一人四こま以下としているために、一校につき一こまから四こまを担当し、複数校をかけ持ちするという、いわゆる細切れパートにならざるを得ないわけでございます。
 京都・滋賀地区の私立大学非常勤講師組合の調査によれば、専業非常勤講師の七七・三%がかけ持ち勤務、平均二・七校、最高八校で、平均八・五こま、最高二十一こまの講義を担当しております。語学系であれば二十こまもどうにか可能、ぎりぎりいっぱいだと言われておりますが、それ以外であれば十こまが限界であり、これによる年収は三百万円程度にすぎないわけでございます。
 その上、非常勤講師は、一年単位、半年単位の有期雇用のため身分は極端に不安定で、さらに最近では、第二外国語の廃止や縮小、短期大学部や夜間部の廃止、国立大学の再編成などにより、雇いどめなどが広がっている状況でございます。
 そこで、問題の第一でございますが、こうした細切れパートに対する公的年金や健康保険など社会保障を適用することでございます。現行法においても、厚生年金保険法と健康保険法に、複数事業所勤務者の給与合算により標準報酬を算出することがそれぞれ規定されており、適用可能だと考えます。このほか、労災保険、雇用保険等の問題もございます。
 細切れパートの社会保険適用をどうするか、とりわけ典型的な細切れパートである専任非常勤講師の社会保険適用をどうするか、ひとつ明快な御答弁をいただきたいと思います。
木村副大臣 細切れパートの件につきましては、私もこれは非常に前から関心を持っており、また心配しておりまして、先生が今言ったように一こま九十分なんですが、実際は前もっていろいろな準備をしたり、後また答案の採点とかも含めて、結構九十分以外に、準備する時間、事後の時間等が随分かかっておるんですね。だから、実際は九十分以上の大きな時間をそういう非常勤講師の方々は勤めておられるんですが、常勤の人たちはそこは全部見てくれるんですが、非常勤は九十分単位でしか見ないので、先生おっしゃるとおり、まことに私は何とかしてあげたいなという、本当にずばり言って、ずばっと答えたいのでありますけれども、そこで、先生御承知のように、これは仕組みも難しいんですね。それから、実務的にも大変難点があるわけであります。
 いずれにいたしましても、昨今働き方が多様となってきている中で、就業の形態が変わっても被用者にふさわしい保障が受けられるよう、短時間労働者に対する厚生年金等の社会保険の適用を拡大する方向で検討していくことが必要と考えており、平成十六年の年金改革に向けて幅広く議論をしてまいりたい。
 これは私も何とか本当にしたいという気持ちはある、これをお酌み取りいただきますよう、お願いを申し上げる次第であります。
金田(誠)委員 最初のイントロがすばらしいイントロだったものですからかなり期待感を持って聞いておりましたところ、それは副大臣ちょっとつれない御答弁ではないかと思うわけでございます。
 現行法にちゃんとあるわけですよ。私、珍しく法律、条文を読んできまして、第四十五条、同時に二以上の事業所で報酬を受ける被保険者について報酬月額を算定する場合においては、各事業所について、第何条、第何条、第何条の規定によって算出した額の合算額をその者の報酬月額とする、こうなっているわけですよ。
 恐らくどこも政府管掌保険適用だと思いますよ。私学共済とか入れてくれていないと思います。政府管掌保険であれば手っ取り早いんじゃないですか。どこかで四分の二の仕事をした、どこかで四分の一やった、四分の一やった、足したら四分の四、これで正規の雇用者並みの報酬になるわけで、合算して健康保険と厚生年金とつけるというふうに四十五条に書いているんですよ。
 だから、別に広く意見も聞かなくても何にもしなくていいわけです。副大臣がわかったと言えば済む話ですから、一声、現行法で可能と言ってくださいよ。
木村副大臣 わかったと言えるようにこれから一生懸命先生とともに考えてまいりたい、こう思っております。
吉武政府参考人 今先生お尋ねがございました厚生年金保険法第二十四条第二項の規定でございます。
 これは現在の解釈を御説明申し上げますと、健康保険もそうでございますが、被保険者の関係は、適用事業所と常用的使用関係にある方を適用するというふうになってございまして、その使用関係の有無につきましては、労働日数、労働時間等を見まして判断をするということになっています。それで、基本は、労働時間、所定労働日数がおおむね四分の三以上である方を常用的使用関係にあるということで被保険者として適用しておるわけでございます。
 したがいまして、現行の今先生がおっしゃいました二十四条第二項の解釈は、まず被保険者であるということが前提でございまして、被保険者である方が二つの事業所で働いておられる場合にそれを合算するという規定でございます。
 ただ、先ほど副大臣からもお話がございましたように、短時間労働者等の方につきまして、今の四分の三のままの適用基準でいいかどうかということにつきまして、これから十六年の年金制度改革に向けまして検討を行うということになっておりまして、例えばその中で、女性と年金の検討会で少し提案された案で申し上げますと、二分の一以上、あるいは時間数が二分の一以上だけではありませんで、例えば、収入が一つの事業所で六十五万以上の方についても検討したらどうかということでございます。そういう中でどの程度対応できるかということも検討していく必要があるだろうというふうに思っております。
金田(誠)委員 その解釈は間違っていると思うんですね。これは健康保険も厚生年金も同じ適用だと思うんですよ。セットでこれは加入になるわけですから。私は厚生年金保険法の方をちょっと読まないで来まして、健康保険法だけ今見て言っています。だけれども、結局中身は同じことでしょう。
 この健康保険法によれば、今の局長の答弁ですと、どこか一カ所で四分の三以上勤めていないと適用しないんだということなんですよ。しかし、複数で勤めていて、一カ所で四分の三勤めていれば、それはそれだけでもう健康保険も年金もついちゃうわけですよ、一カ所だけで。合算も何もしなくていいわけですよ。わざわざ合算して高い健康保険料を払う人がいますか。年金だったら戻ってくるからというのはあるかもしれませんけれども、健康保険はどれだけ払ったって給付は同じなわけですから。そんなばかな話ないでしょう。
 それで大臣、これはこういう解釈をずっとしているんだそうですよ。それはおかしいんじゃないですか。四分の一ずつ三カ所で働けば四分の三、それでつけなきゃだめですよ、今の制度で四分の三で被保険者になるんだから。今後、年金改正あるいはパートをどうするかということで、それを四分の二にしようとか、金額的にも下げようという話はあります。しかし、それはそれ。現状の合算規定というのは、現状四分の三でつけているのであれば、合算して四分の三になったらつける。政府管掌だもの一カ所で管理できるでしょう。それが現行法ですよ。そうでないと納得できませんね。
吉武政府参考人 繰り返しの話でまことに恐縮でございますが、健康保険法も厚生年金保険法も適用事業所との関係で被保険者という位置づけをさせていただいているわけでございます。
 その適用事業所との関係で、例えば、二つの企業に勤めていただきますと使用関係が二つになります。それぞれの関係について、四分の三以上の方について被保険者とするというルールをやっておりますので、先ほどから何度も申し上げておりますが、二十四条の二項はそういう前提に立った条文だということでございます。そういう解釈に基づいて今実施をいたしております。
 それで、先生のお考えでございますが、例えば、合算をいたしまして四分の三になった方がおられるといたしまして、ある事業所で四分の一、ある事業所で四分の一、ある事業所で四分の一、その場合に、その方にとって合算して四分の三でございますが、事業主との関係で申し上げますと、四分の一の方と同じ使用関係にあるということでございます。そこの点も考えないと、この被用者保険なり被用者年金の関係はなかなか、事業主負担の問題もございますので、解決がしにくいという問題があるというのが背景にあるんだろうと思います。
金田(誠)委員 それはおかしいですよ。それじゃ、四分の三以上を二カ所で勤めていなきゃ合算しない、A事業所で四分の三、B事業所で四分の三、では四分の六になるんですか。八時間労働が十二時間労働になるんですか。労働基準法違反じゃないですか、そんなことしたら。そんなばかなこと言っちゃいけませんよ。
 では、こういう聞き方をしたらどうなります。一カ所四分の三以上でなきゃつけないんだ、健康保険、適用しないんだと。そうしたら、二以上の合算規定で健康保険の標準報酬を徴収しているというのはありますか、それじゃ。一カ所で済むでしょう、それなら、四分の三の一カ所だけで。現実に、A事業所、B事業所、四分の三、四分の三ということで保険料を徴収しているのなんか、ないでしょう。
木村副大臣 この件に関しましては、金田先生も私も非常に共鳴するところがありますので、私もこの件に関しては、先ほど言ったように、平成十六年、議論ではなくて真剣に検討する方向でともにやっていこう、こういうことでいかがでございましょうか。(金田(誠)委員「それはそれでまずわかりました。しかし、私の質問にも答えてください」と呼ぶ)
吉武政府参考人 手元に具体的な数字はあれでございますが、実務は社会保険庁で実施をいたしておりますが、私が承知しております限りでは、こういうケースに当てはまる方がおられます。
 その場合には、両方の賃金を合算いたしまして、それによりましてこの方の標準報酬を設定いたします。標準報酬を設定いたしまして、保険料の徴収につきましては、賃金の生額の案分比率で徴収する、そういう形の取り扱いを行っております。
金田(誠)委員 これで納得したわけではありませんが、次の項目もありますので、進ませていただきたいと思います。
 大臣、ぜひ考えていただきたいんですが、この条項は、四分の一ずつ三カ所で勤めていたら健康保険をつけるということですよ。そういうふうに解釈すれば済む話ですから、ぜひそういう形で早期に御検討いただきたい、これは強く要請をしておきたいと思います。
 では、次の質問に移りますが、こうした細切れパートの場合は、雇用主は国、地方公共団体、民間と異なることが多く、労働法体系も国公法、地公法、民間法制と異なっている場合が多いわけでございます。とりわけ国公法、地公法にはパートの位置づけは不明確であり、にもかかわらず民間法制のパート労働法、労働組合法等は適用されないという状況にございます。
 一般職の職員の給与に関する法律によれば、非常勤職員の給与については、第二十二条二項で、各庁の長は、常勤の職員の給与との均衡を考慮し、予算の範囲内で給与を支給するとされております。
 そこで、文部科学省、おいでだと思いますが、質問をいたします。
 国立大学における専業非常勤講師の給与、諸手当はどのように定められているか、また、常勤の職員の給与との均衡はどのように考慮されているか、お答えいただきたいと思います。
結城政府参考人 国立大学の非常勤講師の給与でございますが、専任あるいは専業であるかどうか、あるいは兼任であるかを問わず、その担当いたします授業の時間数に応じて支払われております。その場合の一時間当たりの単価でございますけれども、その非常勤講師の方が有しております経験年数などに応じて、予算の範囲内においてそれぞれの大学が決定しておるということでございます。
 もう少し具体的に申し上げますと、予算の範囲内で執行しておりますので各国立大学により単価が異なっておりますが、一例として、ある国立大学の場合で申し上げますと、一時間当たりの単価といたしまして、おおむね四千円から八千円程度になっております。その方の経験年数等によって、この範囲で具体的に決まっておるということでございます。
 なお、非常勤講師の給与につきまして、一般職の職員の給与に関する法律第二十二条第二項との関係でございますけれども、この二十二条第二項の趣旨を踏まえまして、その者が常勤講師として採用されたとして、その場合に受けることとなる給与をもとに算出して、予算の範囲内で支給をしているということになっております。
金田(誠)委員 これはそうなんですか、本当に。均衡を考慮してということですが、常勤講師もこれほど低いものなんでしょうか。一こま年間三十万、こんな低い金額で常勤講師は採用されているものですか。
 今、一時間当たり四千円から八千円と言いましたけれども、この四千円から八千円には、木村副大臣おっしゃったように、準備の時間もあれば採点の時間もついて回るわけでして、この四千円から八千円というのが均衡を考慮されているとは到底思えない。本当に、どのように具体的に均衡しているとおっしゃるわけですか。
結城政府参考人 考え方といたしましては、今のように、その非常勤講師の方が常勤講師として採用された場合に受けることになる給与をもとに、その単価を算定しておるわけでございます。
 平成十四年度の予算で申し上げますと、一時間当たりの単価、これは予算上の単価でございますが、四千八百五十円という単価で予算が組まれておるわけでございます。
金田(誠)委員 ここで、数字のことなものですから、今のような説明を受けましても、それで均衡がどうなっているのかというのはよくわかりません。ぜひ具体的にどういう計算で均衡しているとおっしゃるのかわかるような、これこれこういう計算式によって均衡しているのだというようなものを後で提出していただけますか。
結城政府参考人 後ほど資料を届けさせていただきます。
金田(誠)委員 それでは、よろしくお願いをして、次に入ります。
 例えば、二〇〇二年三月にこういうことがあった。横浜国立大学で非常勤講師が雇いどめになった、当局はこの問題で組合との交渉を拒んでいるというふうに聞いております。組合というのは首都圏非常勤講師組合という組合でございますが、雇いどめの問題で交渉を拒むというのは穏やかな話ではございませんが、これは一体どういうことでございましょう。
結城政府参考人 ただいまお尋ねの件につきまして、横浜国立大学に確認をいたしました。
 この非常勤講師の方でございますけれども、横浜国立大学で平成九年に設置されました新設の学科の実験系の科目を、平成十一年度の後期、それから平成十二年度、十三年度の前期、後期、合わせて二年半の間、週一回担当されてきた方でございます。その各年度、毎年度の採用になっておりまして、その非常勤講師の採用時には、その都度任用期間を明示した文書を交付してきております。
 今年度、十四年度からこの非常勤講師の方の新たな採用を行わないことにしたわけでございますが、これは、その新設の学科の整備が十三年度、昨年度をもって完成いたしまして、十四年度以降のカリキュラムの見直しを行いまして、今年度からはこの実験系の科目をすべて常勤の職員で賄う方針になったということでございます。また、横浜国立大学では、この非常勤講師の方に対しまして、本年度採用しないこととする理由などを、昨年の十月以降、先月までの間に九回にわたり直接御説明もしているところでございます。
 なお、この件に関しましては、昨年の十一月二十八日付の要望書が出てきておりまして、都区関連一般労働組合と同組合の大学・専門学校非常勤講師分会、これは通称首都圏大学非常勤講師組合と言っておりますが、それからこの組合員たるこの非常勤講師御本人の三者の連名で、団体交渉を設定してもらいたい旨の要望書が学長あてに出されております。が、その後、先ほど申し上げましたように、御本人とは数次にわたりまして話し合いも行っておりますし、当該非常勤講師以外の組合関係者の方から特段のそれ以降の要望も来ていないというのが現状でございます。
金田(誠)委員 これは団体交渉には応ずるということなんでしょうか。いろいろ説明はありましたけれども、要は、この方が加盟する労働組合から交渉の要求があるわけですから、応ずるか応じないか、応じないとすれば理由は何か、これをお答えいただきたいと思います。
結城政府参考人 応ずる必要はないと思っております。
 国家公務員法第百八条の五第一項におきまして、人事院に登録された職員団体から適法な交渉の申し入れがあった場合においては、当局はその申し入れに応ずべき地位に立つものとされております。昨年十一月に出されました要望書の当該労働組合でございますけれども、この国家公務員法に言う人事院登録職員団体にはなっておりませんので、当局といたしましては、その交渉に応ずる義務はないというふうに考えております。
金田(誠)委員 これは、いわゆる細切れパートの方だと思います。したがって、雇用主が、今横浜国大であれば国でしょうし、どこかの公立の大学にも勤めているかもしれませんし、民間にも勤めているかもしれません。こういうことが当然あり得るわけでございます。
 また、国公法や地公法の体系では、細切れパートのみならず常勤的パートの存在も前提としたような法体系になっておらない。団体交渉などいわゆる職員団体との関係も、いわゆる職員団体、国公法に基づく職員団体ということになっているわけで、いろいろなところをかけ持ちするパートが国公法の枠の職員団体ということでくくられるかというと、これは法的に不備があるんだと思うんですよ。そのことをまた盾にかたくなに交渉を拒否する方もする方だ。これは国公法に基づく職員団体にこの方が入れるわけでもないでしょうから、そういうやはり実態に即した運用というものが私は必要だと思うわけでございます。
 そこで、これは大臣に一つ御提案でございますけれども、パート労働法を含む民間労働法体系、労働組合法なり労働基準法なり、さまざまある民間労働法体系、これについては国や地方公共団体に雇用される者も含めて適用する、者というのは一般の公務員ではなくてパートとかそういう方々、今問題にしている方々、こういう方々も含めて民間の法体系を適用するということを考える時期に来ているんではないか、こう思うわけでございます。こうした考え方に立てば、国公法、地公法の適用は一般職の公務員、いわゆる正規の公務員ですよ、正規の公務員と、議会の議員や審議会の委員など本来の特別職、これに限定したものになる、公務員法の体系は。これが一番すっきりするんではないか。
 そのパートとか嘱託とか非常勤という方々は、かけ持ちもある、民間に行ったりいろいろあるわけですから、これは国公法、地公法で枠を囲うというのはもう現実的にかなり厳しい状況。しゃきっと国の方もやっているのならいいですよ、やられていないわけだから。そういう中では、厚労省として、これは民間の担当だとはいうものの、国や地方公共団体に雇われていてもその体系できちんとそれを囲うという考え方を打ち出して、公務員法制を所管する省庁との協議に私は入るべき時期に来ていると思うんですが、大臣、いかがでございましょう。
坂口国務大臣 このパートの皆さんの話は、参議院におきましても川橋先生から出たわけでございます、四苦八苦して答えたわけでございますが。同じように大学等にお勤めになります皆さんのお話でございました。
 それで、そのパートにかかわります部分、いわゆる大学でいえば、民間の大学の部分につきましては、これはパートの範囲に入ってくると思いますから、これはパートのいわゆるさまざまな角度からの問題を今検討いたしておりますから、その中でどういうふうにしていくか、パートの皆さん方の社会保障というのをどうするかということを今やっているわけでございますから、これはそうした中でもひとつ議論したいと思っております。
 いわゆるどこでとるか、先ほどの話のように、三分の一、三分の一、三分の一というふうに同じように勤めておみえになる人をどうするかというのは困るわけでございますが、どこか一つちょっと半分なら半分勤めて、ほかに半分、半分、こういくのだったら処理しやすいわけでございますけれども、同じようなところにどうするかという問題がございまして、そこはなかなか難しいと思うんですが、これは一遍検討させてください。
 それで、もう一つ大きな話、公務員との話でございますが、これは、現在の我々の方のやっております法律は民間のところを中心にしてやっているわけで、公務員の中のことは一切入ってきていないわけですね。これをまとめて一つの案にするというのは、考え方としてはなるほどそれはあるかもしれませんけれども、これは大変な根っこからの大改革になるわけでありますから、それはそこまで一足飛びに行くのはなかなか難しいと思いますが、今後雇用の形態というのが変わってくるわけでありますから、変わります雇用の形態の中でどう対応していくかということに焦点を当てながらそうした全体のことも考えていきたい、そういうふうに思っております。
金田(誠)委員 大臣、ひとつよろしくお願いをしたいと思います。
 その検討をこれからするにしても、いわゆる細切れパートの実態が把握されていないという状況があると思うわけでございます。この際、厚労省と文部省、協力して、専業非常勤講師を中心とする細切れパート、この実態調査をすべきではないかと思いますが、最後の質問です、いかがでしょう。
工藤政府参考人 先ほど先生お挙げになった数字は、私どもの行ってございます教員統計調査の報告結果でございます。これは調査にお答えいただく大学等の御負担を軽減するために三年に一遍やってございまして、十年の後は昨年度、十三年度に調査して、今集計中でございます。これは今月中にその結果をまとめて公表したいと思いますが、それはまた先生のところへお届け申し上げます。
 そういう数字のほかに、私ども、国立大学や私立大学等の実態について、その非常勤講師の方々のどれぐらいのこま数の分担であるか、どれぐらいの給与実態であるか等については、その都度把握させていただいているところでございます。今後ともその事実関係の把握に努めながら、各大学の適切な対応をお願いしてまいりたいと思います。
岩田政府参考人 厚生労働省の立場から申し上げさせていただきますと、大学の専業非常勤講師だけではなくて、民間企業のパートタイム労働者の中にも一人で複数の事業所をかけ持ちでパートで就労されていらっしゃる方もいるのが現状でございます。そういう現状が十分把握されていないというのは確かでございますので、検討課題であるというふうに思います。
 まず、そういったかけ持ちで就労されているパートタイマーの何が問題かといったようなあたりにまず問題を洗い出した上で、そういう問題意識に沿った現状の把握の仕方が効果的かというふうに思いますので、関係部局とも相談しながら検討してまいりたいと思います。
金田(誠)委員 教員統計調査といいますと、いわゆるかけ持ちパートという観点からこの実態がどうかという、恐らく調査項目にはなかなかなっていないのかなという気もいたしますので、ぜひその辺も今後念頭に入れて、実態が浮き彫りになるような調査をぜひお願いしたいと思います。
 最後に、団体交渉の問題でございますが、国公法に基づく職員団体にこうした細切れパートの方が加入するなんというのは不可能です。その辺は幅を持って、団体交渉という名前がつくかどうかは別にしても、その労働組合の方々含めて、誠意を持ってやはり話し合いをしていただきたい、このことをぜひ文部科学省には強く御要請をいたしまして、時間でございますから終わらせていただきます。どうもありがとうございました。
坂井委員長 次に、佐藤公治君。
佐藤(公)委員 自由党の佐藤公治でございます。大臣もお疲れの御様子ですけれども、あと二時間おつき合い願えればありがたいかと思います。私は、そのうちの四十分をさせていただきますので、よろしくお願い申し上げたいと思います。
 私も広島県出身ということで、このたびの在外被爆者の問題点に関しまして、本当に大臣に率直にお願いでございます。裁判の上告断念をお願いしたい、こんな思いでおります。
 ただ、本当に言えることは、大臣、先ほど金田委員との議論にもございました、不備な点というところ。まさに立法府のあり方、これは与党野党問わず、やはり私たち議員も考え直さなきゃいけない部分がある。まさに法律の提出の仕方、つくり方、そしてまた審議の仕方、賛否の考え方、こういうことも、私たち議員が一人一人もう一度考えさせられるような問題でもあったように思えます。
 そういう中、私は、ただ大臣に断念をお願いしたい、その思いです。いろいろな各新聞、メディアを見てみますと、幾つかには、あとは厚生労働大臣の決断だけということで、一〇〇%厚生労働大臣が握られているというような報道が多くございます。まさに、その厚生労働大臣に、私からもお願いを申し上げたいと思います。
 ただ、そこで一点だけ、厚生労働大臣に、大変答えにくい質問かもしれませんけれども、果たして、原告の郭さんが訴えていることがおかしいのかおかしくないのか、大臣自体は訴えていることはおかしいのだと思われているのか、いや、言われていることはそれはそのとおりだというふうに感じるところがあるのか。その辺のあたり、個人的な、やはり普通の、法律を読み、そして訴えていることを見た場合に、常識論の範疇で考えた場合に大臣はどうお感じになられるのか、そこだけが聞きたいところでございます。よろしくお願いいたします。
坂口国務大臣 佐藤議員と二人で酒でも飲み交わしながら話をするときでございますと、私ももう少し砕けて話をするわけでございますが、ここで立って話をいたしますときにはそんなわけにもまいりません。
 今おっしゃったところは、まさしくそこが問われているところでございまして、郭さんがおっしゃっていることが正しいのかどうかということに対するこの判断、そこが最高裁ではこういう形で示されたわけでございます。裁判所のそういう判断でございますから、そこは謙虚に、私たちもやはり重要だというふうに認識をしながら、お受け取りをさせていただかなければならないというふうに思っております。
 ただ、それに対する、最終我々がどういう判断をするかということにつきましては、私自身の考え方もございますし、それから御相談を申し上げなければならない人たちもあるわけでございますから、軽々には発言はできませんけれども、しかし、そこは誤りなきようにしっかりと判断をしていきたいというふうに思っている次第でございます。
佐藤(公)委員 期待をしておりますので、どうかよろしくお願いを申し上げたいと思います。やはり常識論だと思います。見ておかしければ、おかしいものはおかしいと私は思いますので、これはどうか上告断念を願えればありがたいと思います。
 これが最初に私からの聞きたかったこと、質問でございますけれども、本題に入らせていただきます。
 大臣ともいろいろな話をさせていただく中、本当に将来のあるべき姿、総理の考えまたは小泉内閣の将来のビジョンというものの話し合いを今まで何回かしてきましたけれども、なかなか、平行線の部分があったり、お互い共感、共鳴する部分もあったかと思いますけれども、もう一度いろいろな問題点を一つ一つ考えていくと、やはり大もとに構造的問題点というのがこの日本には多く存在するということに突き当たるところが多くございます。
 そういう中で、よく小泉総理のおっしゃられている構造改革。これは本当に一年何カ月前からずっと小泉総理もおっしゃられ、それが定着しちゃいましたけれども、もう一回、この構造改革、小泉総理もしくは小泉内閣におけます構造改革、聖域なき構造改革とは、一体全体何が柱の軸として構造改革と言われているのかがよく見えない部分がありますが、どうか、大臣の、また内閣におけます聖域なき構造改革の柱となる部分の考え方というのは、どういう部分、またどういう箇所に構造的に問題点があるから変えていかなきゃいけないということになるのか、ここら辺を簡単に御説明を願えればありがたいと思います。
坂口国務大臣 なかなか簡単に言える話ではなさそうでございますが、改革なくして成長なしと総理はおっしゃっておりますし、そしてずっとそうおっしゃっているわけでありまして、これはなかなか根気の要ることだというふうに私も思っております。一言言い放ったことを長く言い続けるというのはなかなか大変な努力だろうというふうに思っている次第でございますが、これは、どう解釈をするかということはそれぞれ皆が違った受けとめ方をしているようにも思います。
 厚生労働省を担当させていただきます私の立場からいたしますと、構造改革というのは、一体何をどう改革をしていったら構造改革になるのか、何をどう改革をしたら雇用が一体ふえるのか、あるいはまた将来の少子化に対する対応ができるのかといったことだと思うんです。
 雇用のことを中心に考えますと、現在の景気動向というものが回復をしていかなければならないことだけは事実でございまして、そこが回復すれば雇用の方にも大きな影響を与えてくるわけでありますが、では、一体全体、どういうふうな改革をしていけばそこが改善をされていくのかといったことを私もずっと考えております。いろいろの、経済白書等が出ますとその内容を拝見したり、さまざまなものを読んだりいたしまして、何が日本に欠けていて、そして何が日本にこれから必要なのかといったことを私もそれなりに整理をしているわけでございます。
 経済白書やその他のものを見ますと、とにかく、一九九〇年代、欧米先進国に比べて日本が低下をしたと申しますか、向こうが上がっているのにこちらが落ちたもの、すなわちそれは何かということを見ていきますと、これは労働生産性が、いわゆる生産率が向こうは上がり、そして日本は生産率が落ちてきているということは非常に大きな問題である。ですから、諸外国と国際的に競争をしていかなきゃならないわけでありますから、労働生産性そしてその伸長率と申しますか、そうした率を上げて、労働生産性の効率を上げていかないといけない。そこが欧米は九〇年代に非常に上向いたけれども、その上昇のペースが日本は落ちてしまったという大きな問題がございます。
 現在、事あるごとに構造改革が言われる中で、その中で、生産性が日本は低い、そして負けている、こういうふうに言われるわけでございますので、そこについて、やはりその成長率を上げていかなければならないということだけは紛れもない事実であるというふうに思っています。
 ただ、そこを上げていきますときに、各企業がリストラを行い雇用者を少なくして、そのかわりに、お勤めになっている皆さん方の労働時間を延長していく、雇用削減、延長労働といった形になってもらっては困る、こう私は思っております。そのことは即少子化にはね返ってくる話でありまして、やはり男性も含めました働き方の問題が少子化にはね返り、そこがまた、それによって少子化がさらに低下をしていきますと、そうするとまたそれが成長率にも、成長率と申しますかGDPにも影響してくるわけでありますから、そこのところを注意しながら日本は生産性を上げていかないといけない。
 ですから、労働のあり方と労働生産性、その二つのことを改善を加えてやっていかないことには日本の経済というものが確立をされていかないというふうに思っておりまして、そこに注意をしていかなければならない。
 したがって、各省庁の予算づけにしろ、政策にしろ、労働生産性の上がるような生産性で、しかもそこで働く人たちの問題に十分な配慮をしてもらうということでなければならないというふうに思っておりまして、他の大臣に対しましても、あるいはまた経済財政諮問会議におきましても、そのことを実は主張しているところでございます。
佐藤(公)委員 大変大臣の思い入れある答弁、ありがとうございます。
 本日は医療関係ということなんですけれども、労働、雇用の方に今ちょっと寄っちゃったかなという気がいたします。
 ただ、私が言いたいことは、これはもう何回も言っていますけれども、やはり将来におけるビジョンとか目的とか目標を明確にし、現状との問題点がどこにあるか、そこを変える意味で構造改革を行っていくという論法で一番最初の議論をいつもいつもしていた。でも、ここがよくわからない。ここがわからない、うまくすり合わせができないんだったら、では、ここの次の段階の構造改革とは何だろうなということの説明をお願いしたかった部分があります。
 ただし、やはり一番、内閣、総理の、国の全体基本というところから、ブレークダウンした状態での生産性とか労働、雇用、失業、労働力というものに関してのお話が今あったかと思うんですけれども、私は、またそのもう一個上の段階の、この国の基本的な構造的問題点は何だろうかなということを、小泉総理、内閣として、また厚生労働大臣がお考えになられているのかなということを聞きたかったことがございます。
 でも、これはもういろいろなところでいろいろな大臣にも私は聞かせていただいているんです。そういう中で、この国のあるべき姿というのは、まさに、まじめに生きる人たちが報われるとか、努力すれば報われる国づくり、そんなところから、官から民へ、中央から地方へ、こんな話での国全体の構造改革を基本として各省庁における構造改革を行っていくというようなお話が多かったと思うんですけれども、そういうことの、そこの部分で大臣がどう思われるかというところを、いかがでしょうか。
坂口国務大臣 そこまで話がいきますと甚だ抽象的、文学的な表現になってしまいまして、なかなか具体的にそこをどう進めていくかということには結びついていかない話になってしまう可能性がございますので、私はできるだけそこの辺のところは余り言わないようにしているわけでございます。言わないようにしていると申しますのは、話がそこになりますと、それはだれも反対のしようはないね、それはそのとおりだねということにはなりますけれども、そこから次への話が、ステップがなかなか進んでいかないということがございますので、私はその辺のところは若干避けているようなことでございます。
 そんな大きなことを私は言う資格もございませんし、なかなかそこまでの見識もございませんけれども、とにかく今、日本が直面をいたしております問題は、グローバル化とそして少子高齢化、もう一つITの問題もございますけれども、私は、やはり最も大きな影響を受けているのは国際化と少子高齢化のこの二つ、同時にその影響を、大きな波をかぶっている。それに対応して、日本の国はどのように改善をしていかなければならないかということを中心に考えていかないといけないというふうに思っている次第でございまして、やはり発想の原点というのはそこからスタートをしたいというふうに私は思っている次第でございます。
    〔委員長退席、宮腰委員長代理着席〕
佐藤(公)委員 まさに大臣が先ほどおっしゃいました、構造改革の、皆さんの思われていることが、おのおの、例えば与党の中でも違うふうに思われていたりするのかなというのを最近強く感じる部分があります。
 こうやって大臣とお話をしている中でも、確かに本当に少子高齢化と国際化ということにおける構造的な問題点というのがあるのも事実だと思います。ですが、現実論の中で、今直近の大きな構造的問題点というのは、まさに規制社会、これはどの大臣もどの副大臣もお答えになられておりました。規制社会というものを、徐々に規制を撤廃していく、緩和していくことによって、やはり官から民への活力の導入ということをおっしゃられてきております。多分、これに関しては大臣も同じ考えをお持ちになられていると思います。
 こういった規制ということに関して、私もいろいろな問題点を勉強させていただき、研究させていただく中で、どうしても突き当たる現実、問題点というのは、やはりそこにおける規制との絡みの中での政治と官僚と業界や団体、言葉はよくないかもしれませんが、政官業の癒着構造というのが今日本の大きな問題点だと私は思っております。
 この問題点を解決していく、変えていかなければやはり構造改革のものがなかなかできないのかなという気がいたしますが、大臣のこの政官業の癒着構造についてのお考えをちょっと聞かせていただければありがたい。
 ただし、私が思うことは、政治と官僚と業界団体、この一つの大きな表現としては連携です。連携。私は、政官業の癒着、この連携というのを全部否定するわけではなくて、戦後この日本をこれだけ裕福にしてくれた、経済成長を遂げたのは政官業の団結だったと思います。この団結と癒着というもの、どこからバランス、その目的というものが変わってきてしまったのか。まさに、癒着というのは、一部の人たちのための政策であり政治になってしまっているのかなというふうに思いますが、この構造をやはり変えなくては日本の本当の構造改革というのはできづらいというふうに思うんですが、大臣はいかがお考えでしょうか。
坂口国務大臣 だんだん医療から遠ざかっていくように思いますが。
 医療の問題を考えていきます場合にも、諸外国と比較をいたしまして、日本は新しい技術、新しい薬、そうしたものをつくり出してきているかといえば、必ずしもそうではありません。そして、どちらかといえば、薬なども、本当に根幹にかかわるような大変な発明と申しますか、新しい薬をつくり出したというようなことは久しく聞かないわけであります。この数年を見ましても、なるほどこれはいい薬をつくったというふうに万人が認めるようなものというのは、一つか、せいぜい挙げても二つぐらいなものしか存在をしないといったようなことを考えますと、日本のあり方というものがそこから問われてくるというふうに思います。
 それでは、日本におきます研究費が少ないかといえば、対GDPで見れば、日本の研究費というのはG7でもトップクラスにあるわけです。
 そこで注意しなければならぬのは、国が全部出しておるわけではなくて、産業界が中心にして出しておって、国の出し分は若干少ないのですけれども、しかし全体で見ればそういうふうに非常に大きい。額は大きいんですが、そこからいいものができてきているかというと、成果から見ると、投入している財政の額と成果とが余り結びついていない。そこが日本にとって今どうするかということが問われているというふうに思っています。
 申し上げたいのは、産官学という言葉がございますけれども、最近は、大学におきますさまざまな研究におきましても、これは官の方も手を差し伸べ、そして産業界もそこに手を差し伸べ、一緒に研究をしていきましょう、そして、成果は、国が取り上げるのではなくて、おやりいただいた大学なり、あるいは産業界にお渡しをしましょうといったようなことで今やっているわけでございます。
 これなども、今までは、大学と産業界とが同じことをするとか、大学が研究するのに産業界から金を出してもらうというようなことは、とんでもない、もってのほかだというので、非常にそういうことに対して排除された時代がずっと続いてきたというふうに思っております。しかし、そんなことを言っていては、日本としては発展をしていない。そこには一つのルールを持って、産官学がそこに協力をしていこうではないかということになって、私は、現在のような形で進められるようになってきたというふうに思います。
 ですから、産官学じゃなくて、先生が今おっしゃったように、産業界と官僚と、そしてもう一つ何ですか……(佐藤(公)委員「政官業」と呼ぶ)政官業。政官業の場合を見ましても、これはルールが明確化されているかどうかということが問題なんだろうと私は思うんですね。そのルールが明確になっていて、そしてそこで行われることであるならば、それは、私は、協力してやっていかないといけないことがあり得るというふうに思っています。
 そのルールの明確化、そして情報を公開するといったようなことがちゃんとできているかどうかが今問われているというふうに私は理解をいたしております。
佐藤(公)委員 どうも、大臣の御性格が出ているのかな、いい方向にいい方向に話が行っちゃって、私は悪い方向に悪い方向に話を持っていこうとするのですけれども、大臣が全部いい方向に持っていっちゃうんです。
 私が言っているのは、政官業の癒着構造。まさにそれは、業界や団体が規制を守り、また口きき行為ということで政治家というものに依頼をする。政治家はそれを持って国会もしくは役所等に働きかけをする。そして役所は、それによって規制というものを、一つの業界団体、口きき行為というものが存在をする。それにおいて業界団体は、選挙というもので、また政治家の皆さん方にお金なり献金なりそして票という形でのことを返していく。また政治家は、官僚においては、天下り先等の官僚の皆さん方にはいい環境づくり、ぬるま湯をつくるような状況をつくり上げていく。こういう悪い構造の政官業の癒着構造というのを私は考えて、大臣にどう思われるのかということを聞いていたのですけれども。
 私が思うこと、その政官業の癒着構造の一つのあらわれにもとれるというふうに思います。ただし、私は今、どこのところが、名前は全部伏せさせていただきます。公益法人が厚生労働省管轄で今幾つあるのでしょうか。そして、そのうちの幾つが、補助金もしくは委託金というものを、国からお金をもらったり預けられているという法人が幾つあるのか。お答えくださいませ。
鈴木政府参考人 今御指摘ありました公益法人の数でございますが、平成十三年十月一日現在の厚生労働省の所管法人数、これは千二百六十七法人でございます。
 それから、そのうち国から補助金あるいは委託費等を受けている公益法人が幾らあるかということでございますが、今申し上げました千二百六十七法人のうちの二百六十六法人でございます。
佐藤(公)委員 では、もう時間も余りありませんので、立て続けに質問だけをさせていただければ。
 このうちの元公務員の方々、理事、監事入れて全部で何人いらっしゃるのか。そしてまた、補助金をいただいている、委託費をいただいているこの二百六十六法人の中で、公務員出身者が何人いるのか、そして現職の議員が何人いるのか。お答えくださいませ。
鈴木政府参考人 先ほど申し上げました全体の千二百六十七のうちの公務員等の数は、ちょっと今手元にないので、後でまた御報告したいと思いますが、二百六十六法人、国から補助金、委託費等を受けている公益法人でございますが、この中の役員のうち、現職の国家公務員の理事が二名、元国家公務員理事が四百三十五名、それから現職の国会議員理事が十六名となっております。
佐藤(公)委員 監事を入れると、元公務員出身者は四百八十八名ですね。五法人における十六人が議員。現職の議員が、国からの補助金や委託金をもらっている公益法人の理事をやられているんですね。それでよろしいですね――ということです。
 大臣、ここから聞いていただきたいんですけれども、おのおの本当にまじめな事業もされているところもあり、必要な公益法人、本当にきちんと団体としてやられているところもありますから、私はあえて名前を伏せさせていただきますが、やはり今この社会状況の中で、政官業の癒着構造、いろいろな問題点が今までも事件としてありました。私は、国からの補助金や委託金を受けている公益法人に関しては、現職の国会議員はやはりなるべきではないんじゃないかなというふうに思います。
 それはまじめにやられている方々もいらっしゃいますので一概に言えない部分があるかと思いますけれども、先ほどお話ししたような政官業の癒着の疑いを感じさせるようなことでこういう部分というのはあり得ると思います。やはり、議員の方々はこういったところからは辞退すべきかと考えますけれども、大臣、いかがでしょうか。
坂口国務大臣 現職の方がおみえになるというのは、僕は今初めて聞いたわけでございますが、これはどういう公益法人なのかといったことも、よく内容も吟味してみないといけないというふうに思いますが、いずれにいたしましても、ルールを明確にして、そしていろいろのことが言われないようにしなきゃならないことだけは御指摘のとおりというふうに思っております。
佐藤(公)委員 独立行政法人の方の審議もいろいろとありました。
 その中でいろいろと私も見させていただく中、公益法人のところまで、これは所管ということでどこまで手が届く、見える、管理できるということがありますけれども、国から補助金や委託費ということであれば、やはり厚生労働省の方でもかなりそのあたりをチェックし、疑いが持たれないようなことでの政治家みずからの線引きということが必要だと私は思います。
 そういう中で、大臣、実はだんだんこれから医療の方に入ってくるんです。もう時間も余りないんですけれども、その公益法人の中で、先ほど武正委員も質問をされておりました、財団法人の日本医療機能評価機構ということで少し聞かせていただければありがたいと思います。
 先ほどもう武正委員が幾つかの点を指摘されたんですけれども、この日本医療機能評価機構というものが今後どういう方向に進んでいくのかということを厚生労働省としてどう考えていられるのか。まさに先ほどおっしゃいました医療事故に関することにおける発展性、または機能を備えるべきだという話もございましたけれども、基本的に、このまま数がどんどんふえていく、評価を受けていくところが多くなっていったらば、とても今の現状では手が足りないと思います。調査機能も含めてやはり人の育成もしていかなくちゃいけないんですけれども、基本的に、どういう方向に拡充、拡大、充実、また分野として広げていくのか、お答え願えればありがたいかと思います。
篠崎政府参考人 先生御指摘のように、この医療評価機構というのは医療機関の評価をする機関でありまして、国民に対する医療機関情報の提供の充実という観点からも極めて重要なものであります。私どもといたしましては、一つでも多くの医療機関が受審を、審査を受けるよう、それを促進する必要があるというふうに考えております。
 将来の方向性の前にちょっと現状も申し上げますと、平成十四年十一月十八日現在でございますが、七百九十七の病院に対して認定を行っております。それから、本年の四月からは、患者の安全の確保に向けた評価項目、そういうものも体系化をすることといたしまして、評価内容の充実を図っております。
 それから、平成十四年度からでありますけれども、評価結果の広告が可能となりましたことを受けまして、この機構においては、個別の医療機関の評価結果をインターネット上で公開するなどの情報提供を進めているところでございます。
 今後、平成十八年度末ぐらいを考えておりますけれども、先生御指摘のように、機構の作業量ということもございますので、十八年度末ごろまでに二千ぐらいの病院の受審を目標といたしておりまして、私どもといたしましても、こういう目標が達成できるように、同機構に対しまして適切な支援などに努めてまいりたいと考えております。
佐藤(公)委員 この日本医療機能評価機構が充実してくる。今の御説明ではちょっと、正直言ってまだもう少し方向性というものが見えない部分がありますが、現状、数がふえるのに対応していこうという御説明だったと思います。
 そういうところで、その評価機能がだんだん定着してくると、この評価機能の定着と、広報というか広告規制ということ、十三年、十四年、これに関して規制のものが緩んだということになりますけれども、広告とか広報に関しての規制をより拡大していく方向にあるのか、また、その辺は今検討中なのか。いかがでしょうか。
篠崎政府参考人 広告の項目につきましては、規制緩和の方向でございます。十三年度末に審議会等で御答申をいただきまして、それまでに比べると大幅な広告の規制緩和が行われたわけでございます。当時の審議会で議論に上ったものは、死亡率以外はすべて広告対象ということにいたしたわけでございます。
佐藤(公)委員 そういう日本医療機能評価機構に、一応、評価の対象領域ということがあるんですけれども、この中をずっと六項目読ませていただく中、目につくのは、やはり情報管理機能の整備と活用、患者の権利と安全の確保。こういう部分でいうと、まさにこれも武正委員が御指摘されていた部分、電子化、電子カルテということが非常に大きなポイントを、大きな柱を占めるのかなという気がいたします。
 その電子カルテのことに少し入らせていただければありがたいんですけれども、電子カルテ、まさにグランドデザインということを十三年の末に考え、公表をしているわけですけれども、実際、このグランドデザインを基本に今進めている段階で、導入している病院は、十三年の七月には全体の七百五十二病院の中で一・一%しかない。そして、その後、国の補助金により導入を図っている施設は百九施設となっているところである。
 そして、グランドデザインの目的、これは中間目標ということで、五年の中間ということで十六年度までには、そして十八年度においては全国の四百床以上の病院の六割以上に普及、全診療所の六割以上に普及、こういう一つの目標を立てているんですけれども、ちょっと、とても時間的に間に合わないのかなという気もする部分もございます。これがおくれているんではないかという指摘に対して、どうお答えになられるのか。
 また、なぜ時間軸で、実際私はもっと早くやっていくべきだということを思うことが一点。そして、ここには一つの目標値として四百床以上の病院、なぜ四百床以上ということでの目標設定なのか。実際それは大きいところからということはわかりますけれども、全体の病院のあり方からいえば、全体の三〇%、それ以下は四百床未満ということで、特に百床前後というところが多いと思います。そういうところに対しての目標を中間目標としてきちんと定めていくのじゃなければ、現実論、なかなかIT化というか電子カルテ化も含めて進まないと思うんですが、いかがお考えでしょうか。
篠崎政府参考人 御指摘のように、電子カルテは、医療事故の防止あるいは診療録の開示等に非常に有力あるいは有効な道具であるというふうに考えておりまして、電子カルテの普及というのは極めて重要だというふうに考えております。
 先生も今御指摘になられましたけれども、私どもとしてはそのグランドデザインというのを発表いたしておりまして、平成十六年度までに全国の二次医療圏ごとに少なくとも一つの施設は電子カルテになるようにというのが、一つございます。それから、もう一つは、もうちょっと時間がかかるのでございますが、十八年度までには全国の四百床以上の病院の六割以上に普及する、そしてまた全診療所の六割以上に普及をしたいということでございます。
 四百床というのをどこでとったのかということでございますが、今申し上げましたように、二次医療圏に少なくとも一つ以上というのは、波及効果を考えましてグランドデザインで述べているわけでございまして、これは、病床が余り関係しているわけではございません。
 四百床以上にしたのは、今、四百床以上の病院でオーダリングシステムというのが導入されておるのは、約六割でございます。つまり、ある程度大きな病院でないとオーダリングシステムというのが入っておりませんので、そういう観点から見まして、現在、四百床以上でオーダリングが入っているのが六割であるので、オーダリングをもうちょっと機能を充実すれば電子カルテの方に向かうのではないか、そういう根拠から、この四百床以上、六割というような数字を出したわけでございます。
 電子カルテ等、こういうIT技術につきましては、普及が加速度的にふえていくということもございますので、私どもとしては、それに必要ないろいろな支援等を今後も継続して行っていきたいと考えております。
佐藤(公)委員 何年か前、IT国会ということで、こういうことを本当に一気にやろうということなのに、なぜかちょっとスピード感がないのかなという気がいたします。
 そして、日本医師会の方でも、ORCAということを推し進めて、レセプトの電子処理システムの基本ベース、そういうことを含めて電子カルテで将来性を持って考えていく部分が、今推進をしてやっていると思います。この日本医師会がやっているORCAに対して、厚生労働省としては、どれぐらいの支援、また考え方をもって今見ているのか、またやろうとしているのか、いかがでしょうか。
篠崎政府参考人 電子カルテにつきましては、病院が大型になればなるほど費用がかかるわけでございます。今御指摘の日本医師会の進めておりますORCAというのは、診療所を対象にしたものでございまして、診療所の場合には、電子カルテといいましてもそれほど大規模なものではないものでございますから、費用の面では、病院に比べればうんとコストは低いということでございます。
 そこで、現在、ORCAの導入を日本医師会が進めておりますけれども、私どもといたしましても、厚生労働省が今推進しております電子カルテの導入、あるいは昨年発表いたしましたグランドデザインなどで、官民の役割分担を明確にして、そういう医師会のやっている事業等と連携をしながら、さらに情報化を確実に推進したいと考えておりますが、具体的なものといたしましては、病名ですとかあるいは治療行為等のスタンダード、標準化をするというのも私どもがやっておりまして、そういうものとこのORCAとが結びついて発展していっていただきたい、また私どもとしてもそういうような方面で御支援を申し上げたいと思っております。
佐藤(公)委員 厚生労働省のこのORCAに対しての姿勢、支援というものが、やはりこれから導入していくに際して非常に多くの方々が注目している一つの部分でございますので、その辺の力強い後押しがあればまた電子化というのも前に進むのかなというふうに思います。
 もう時間がございませんので、最後に、大臣、一言だけ言わせていただいて、終わらせていただきたいと思います。
 本日は、ADHDと高機能自閉症に関してもいろいろと質問したかったんですけれども、今本当に、文科省の方でも、ADHDに関して、私、何回か質問をしてきております。しかし、なかなか役所は、今答申等もいろいろと調査をしている段階でというふうにとまって、時間ばかりたっております。時間がたってばかりいる、その間に子供はどんどん大きくなる、その間に、各地方においての格差によって不幸な状況がたくさん生まれております。
 どうかこの辺を、文部科学省と連携をとって早く手を打っていただくことをお願い申し上げて、私の質問を終わらせていただきたいと思いますが、大臣、ADHDについて何か一言あれば、ぜひ推し進める答弁をお願い申し上げたいと思います。
    〔宮腰委員長代理退席、委員長着席〕
坂口国務大臣 文部科学省とよく相談させていただきまして、取りまとめたいと思います。
佐藤(公)委員 ありがとうございました。
坂井委員長 次に、山口富男君。
山口(富)委員 日本共産党の山口富男です。
 私は、まず、被爆者への支援の問題についてお尋ねしたいと思います。
 きょうの委員会では、十二月五日に大阪高裁で出されました、韓国にお住まいの被爆者の郭貴勲さんへの被爆者援護法が適用されると判断いたしました。判決によりますと、国外に出た被爆者を被爆者援護法の適用対象から外してきた国側の主張を、被爆者援護法とその合理的な解釈に照らして、その主要点においてことごとく退けた内容になっております。
 もともと、被爆者援護法を見ますと、その前文のところでこういうふうに定めております。「国の責任において、原子爆弾の投下の結果として生じた放射能に起因する健康被害が他の戦争被害とは異なる特殊の被害であることにかんがみ、高齢化の進行している被爆者に対する保健、医療及び福祉にわたる総合的な援護対策を講じ」る、そのためのものだと。私は、この立法趣旨からいっても、また今回の判決内容の重大性からいっても、当然政府は上告すべきではないと思います。
 それで、きょう坂口大臣は、繰り返し、この判決について重く受けとめるという答弁をなさっておりますが、重く受けとめるというその中身は一体何なんですか。まず、この点をお尋ねいたします。
坂口国務大臣 重く受けとめるというのは、決して軽くないということでございまして、これはしっかりと受けとめているということでございます。
山口(富)委員 私は、政府がこの判決から重く受けとめる中心点は何かというと、これまで海外に出られた被爆者の方に対して援護法が適用されないとしてきた点に対して、高裁が、それは正しくないというふうに明確に判定したところを中心点として、国はきちんと受けとめる必要があると思うんです。
 それで、今度の問題で私、政府にとって重大なことの一つだと思いますのは、判決が、「「被爆者」が日本に居住も現在もしなくなった場合に、」「同手帳」同手帳というのは被爆者のあの手帳ですけれども、「同手帳の返還を求め得る法文上の根拠はない。」あるいは「同法の適用対象から外れるとか、「被爆者」たる地位を喪失するとかいう旨の明文規定もない。」こういうふうにされたことです。
 これについては、先ほど坂口大臣は不備という点をお話しになりましたけれども、この判決における解釈というのは、明文規定がないことをもって行政上の裁量として別の手を打つようなことをやったとしたら立法過程における不備と言っているだけであって、これは何ら国がやってきたこれまでの施策についてその裏づけになるような話をしているわけじゃないんです。
 さらに、今度の判決では、九四年の被爆者援護法成立後も在外被爆者への健康管理手当などの支給を拒否してきました行政上の根拠たる七四年の旧厚生省の四〇二号通達、これが、「被爆者援護法の合理的な解釈として是認できない部分がある」というふうに明確にされたことだと思うんです。
 では、一体その部分はどこなのかということなんですけれども、これは裁判でも争われましたが、この通達の一番目の第六項に出てきております「同法は」同法はというのは当時の法律ですけれども、「同法は日本国内に居住関係を有する被爆者に対し適用されるものであるので、日本国の領域を越えて居住地を移した被爆者には同法の適用がないものと解されるものであり、」という部分ですね、そして「従つてこの場合にも特別手当は失権の取扱いとなること。」という部分なんです。
 私は、今度の高裁判決を受けまして、政府としては、七四年の四〇二号通達のこの部分については失効とすべきだというふうに考えますが、この点はいかがですか。
坂口国務大臣 具体的な問題をどうするかということについては、根本的な問題をどう決めるかによっておのずから決まってくる問題でありますから、根本のところをどうするかということをまず決めなければいけないというふうに思っております。
山口(富)委員 その根本のところというのは、この高裁判決が地裁に続いて、政府のこれまでとってきた対応について、被爆者援護法の立法趣旨からいってもその合理的解釈からいっても成り立ち得ないものだというふうに明確に認めたわけですから、そこのところをつかんで深く受けとめて、上告をしないでいただきたいと重ねて申し上げたいと思います。
 それで、私、もう一つこの判決で重要だと思いますのは、判決が何回か引用されましたけれども、「「被爆者はどこにいても被爆者」という事実を直視せざるを得ない」、このことだと思うんです。やはり私たちは、これは原告の方の一貫した主張でしたけれども、今日の被爆者問題を考えたときに出発点に置くべき私たちの共通の立場だと思うんです。
 その点で振り返ってみますと、今、日本の被爆者への支援に対していろいろな訴訟が起きたり、随分批判が出ております。ですから、この際ですから、私は、この視点に立って、被爆者の認定の問題も含めまして、今日の被爆者行政のあり方についてどういう問題があるのかよく検討してみる、そこまで踏み込んだ今度の判決の受けとめをぜひ坂口厚生労働大臣にお願いしたいんですが、この点、一言答弁をお願いいたします。
坂口国務大臣 被爆者の問題につきましては、国内の問題もございますし、そして海外にお住まいの皆さん方の問題もあるわけでございます。今回のこの判決で問われておりますのは、海外にお住まいの皆さん方に対してどうするかという話でございます。
 被爆者はどこにいても被爆者だというのは、それはまさしくそのとおりだろうというふうに思いますけれども、しかし、海外におみえになります被爆者と日本の中におみえになります被爆者を、同じように取り扱うか、別に取り扱うかということが今問われているわけでありまして、被爆者たることには間違いがない、それはそのとおりだろうというふうに思っております。
 いずれにいたしましても、この問題、十分に検討いたしまして、結論を出したいと思っております。
山口(富)委員 それでは、この上告の断念と、被爆者援護法の海外の被爆者の方への適用も含めまして十分な検討をなさるということで、次に進みたいと思います。
 私、次に取り上げたいのは、今大きな社会問題になっております小児救急医療をめぐる問題なんです。
 九月のことですけれども、九月四日に岩手県の一関市で、生後八カ月を目前にした乳児が、四十度以上の熱を出して、激しい嘔吐と下痢を繰り返す。ところが、小児科医の不在ということで、満足な医療を受けられずに亡くなるという痛ましい事件が起きました。
 この事件が起きた後、この御両親たちは、もうこれ以上かけがえのない子供の命を失わないためにということで署名運動を始めていらっしゃいます。これがその署名の写しなんです。この署名は何を訴えているかというと、亡くなったお子さんは佐藤頼ちゃんという方ですけれども、頼ちゃんの死をむだにしないということで、厚生労働省へ、小児救急体制の早急な改善と見直し、小児科医不足の根本的な解決策を求める請願をしますという署名内容なんです。
 これについて坂口大臣は、この佐藤頼ちゃんの御両親の声、それから、こういう要望が上がっているということを御存じなんでしょうか。
坂口国務大臣 そこまで私、残念ながら存じ上げておりません。存じ上げておりませんが、やはり、そうしたかわいいお子さんを亡くされた御両親のお話というのはあちらからもこちらからもお聞きをするわけでありまして、大変心を痛めております。
 私も、就任いたしましてから、この小児医療というのは、何とかして早く全国で皆さん方がお受けいただけるような体制にしなければいけないというふうに思いまして、いろいろ検討会もやり、そして地域にもお願いをし、今やっているわけでございます。
 しかし、全体として小児科医が少なくなってきているというようなこともあり、また、今まで小児科医をやっておみえになった皆さん方も、子供の数が減ってきたというようなことで、小児科から内科の方に転換されるというようなことがあったりいたしまして、現実問題として、小児科をおやりいただいている皆さん方の数は少なくなってきているということはやはり紛れもない事実だというふうに私は思います。実際問題、登録をされております数からいきますとそんなに減っていないんですけれども、現実はやはりそうではないと思っております。
 その皆さん方にしかしお願いをして、少なくとも二次医療圏に一カ所ぐらい救急医療に対応できる場所をぜひつくっていただくようにお願いをしているわけでございますが、思ったようになかなか進んできていないということも事実でございます。それで、ここをどう進めていくかということをもう一段考えなければならない時期にやはり来ていると考えているところでございます。
山口(富)委員 初めに、胸を痛める事態があるということをおっしゃいました。私もその点、同感です。
 それで、大臣が話を具体的なところに進めましたので、私も少し具体的にこの問題を考えてみたいんですが、今おっしゃいましたように、小児科医が不足している、まあ人数としてはおりますけれども、実際の対応する者としては不足している。それから、二次医療圏に一つずつ置きたいということもなかなかうまくいっていない、これも事実です。私はこの点は、はっきり申し上げまして、政府が三年計画で打ち出したものがこれだけうまくいっていないというのは、やはり前代未聞の出来事だと思うんです。
 考えてみますと、この小児救急医療をめぐる深刻な事態が起こるという警告は、かなり前からもう既に行われておりました。例えば、ことし開かれた日本医学会で、小児科学会長の柳沢正義さん、今も国立成育医療センターの病院長をなさっているんですかね、この方が、小児医療の不採算性から病院小児科が危機的状況にあり、小児救急医療も破綻に瀕しているというふうにおっしゃっております。これは、各地の自治体からも、全国知事会や市長会からも、本当に悲鳴のように厚生労働省に押し寄せていると思うんです。
 私、その視点に立って、これまでの国がとってきた対応や認識の真剣な自己検討が必要だというふうに調べて感じているんです。
 と申しますのは、振り返ってみますと、九七年の十二月に、救急医療体制基本問題検討会報告書、今日の段階での基本になった文書ですけれども、これが発表されました。この報告書はこういうふうに言っているんですね。我が国の救急医療体制については量的な整備はほぼ達成されつつある一方、一層質的な充実と地域格差の是正が求められるということで、具体的に今後の救急医療体制の基本的なあり方についてまとめたわけです。
 報告書は、今申し上げましたように、量的な整備をほぼ達成されつつあるというふうに評価した上で、小児科については、実は、救急医療体制の個別課題の一つになっちゃったんですね。それで、耳鼻科、眼科、歯科及び精神科等と並んで、休日、夜間の救急医療体制について、初期を支援する二次救急医療体制を充実させることとするというふうにされていたんです。
 これを受けまして、九八年の六月に健康政策局長の通知が出され、医療計画作成指針も出されましたけれども、これを読んでも、結局、小児救急医療体制というのは副次的なものに位置づけとしては置かれているんです。実際には、今、休日夜間救急センターの患者のうち大体半分ぐらいが十五歳以下の方だと言われております。ですから、これは副次的などころか、救急医療を考えた場合には、小児医療の救急体制がどこまでできているのかというのがやはり基本的な事柄だと思うんです。
 その点で、私、大臣にお尋ねしたいんですけれども、この小児救急医療の位置づけについて、これは認識の甘さがあったんじゃないでしょうか。
篠崎政府参考人 ただいま先生が御指摘になられましたように、平成十三年でございますが、国の医療政策上重要な分野として、地域医療計画上記載すべきものということで小児救急を位置づけたわけでございます。以来、医療法三十条の五に基づきまして、医療計画の達成を推進する観点から、いろいろな施策を展開してきたわけでございます。
 まず、平成十一年度からは、二次医療圏単位で当番制により小児救急対応が可能な病院を確保する、いわゆる小児救急医療支援事業を全国的に整備したいということで始めました。しかしながら、なかなかそれがうまくいかないということもございまして、これに加えて、平成十四年度から、二次医療圏単位での体制構築が困難な地域におきましては、複数の二次医療圏ごとに小児救急患者を受け入れる小児救急医療拠点病院というものの整備を進めました。さらに、平成十四年度の診療報酬改定においては、小児救急医療に関する評価を充実する措置を講じてまいりました。
 また、御指摘いろいろございましたが、現時点において、小児科医の地域的な偏在ですとか、あるいは小児救急医療体制の確立に今困難を来している地域がございますので、先般、十一月の二十五日でございますが、初めて各都道府県の小児救急医療の担当課長会議を開催いたしまして、うまくいっている例、そしてうまくいかなかった例等を紹介していただきまして、私どもとして、国、都道府県が連携してこの課題に取り組んでいきたいというふうなことをしたわけでございます。
 今の時点で具体的にどういうことをしてほしいかということを二十五日に申し上げたのは、小児救急医療体制の確立のための協議会の設置、これを急いでやってほしい、そして、それぞれの地域で今申し上げたようなことがないかどうかよく点検をしてほしいということでございます。それから、特に国立、公立、公的病院につきましては、緊急事態でございますので、小児救急医療体制に積極的に参画をしてほしいということをお願いいたしております。
 それからもう一つ、小児科以外のお医者さんも救急医療にタッチしているわけでございますが、その方たちに、今先生御指摘のように、小児の休日、夜間のうちの五〇%は初期の救急ということでございますので、小児科以外の医師に、対応できるような小児科救急のマニュアルを早急に作成して、それを配りたい。それからもう一つ、ITを利用して、小児科でない救急の担当医と専門の救急医との間でそういうネットワークをつくることによって迅速に対応ができるようにしてほしいというようなことを話し合いをいたしました。
 今後とも、このような御意見を伺いながら、国民が安心できる救急医療体制の整備に努めてまいりたいと考えております。
山口(富)委員 今、国としてどういう手を打っているのかという紹介がありました。しかし、私が聞きましたのは、国の認識の中に甘さがあっただろうという点なんです。
 私がなぜこのことを強く申し上げたいのかといいますと、今篠崎医政局長がおっしゃった内容は、大分前から研究者から提案されてきたことなんですよ。
 例えば、今の国立保健医療科学院、旧国立公衆衛生院、ここの田中哲郎さんを主任研究者とする小児救急医療のあり方に関する研究、これは九六年から行われております。これには、科学研究費ですか、補助もついているようですけれども、二〇〇〇年には総括研究報告書も出されている。この中で、お医者さんの不足の問題ですとか、自治体との協議ですとか、診療報酬の問題ですとか、今問題になっていることは、ことごとくと言ってもいいぐらい指摘されているんですね。なかなかの研究成果なんです。
 一方でこういうものがあるのに、医政局長がおっしゃったように、初めて最近担当課長の会議を開いたというわけでしょう。ここに明らかに認識のまずさと対応のおくれがあるんです。
 では、もう少し話を進めたいんですが、今指摘された中で、国立や公立関係の病院についても協力を求めたんだというお話がありました。そこでお尋ねしたいんですけれども、小児救急医療への国立病院・療養所の参加を強化する問題、これは国としての責任にかかわると思うんですけれども、今、国立病院・療養所で、小児救急医療支援事業への参加、それから小児科医の常時当直施設、小児科を含む輪番制の参加施設、これらが一体幾つあるのか、お答え願いたいと思います。
冨岡政府参考人 国立病院・療養所におきます小児救急への参加についてお答え申し上げます。
 本年十月一日現在におきまして、小児科のお医者さんが複数いる病院・療養所は百八でございます。国立がんセンターといった専門の病院は除いてございますが、百八ございます。
 このうち、小児救急支援事業参加病院が十六病院、小児科医師が常時当直している病院が七病院、それから小児科対応病院群輪番体制参加病院といったのは三十一、合わせますと五十四病院が、何らかの形で医療体制に参加するか、または病院独自に小児科医が当直して対応しておりまして、全体の五〇%が対応しているということでございますが、このほかに、小児科医師がオンコール体制を組んでおりまして、連絡によりましてすぐに駆けつけるという体制のところが二十六ございます。
 そういうことで、これを合わせますと四分の三の病院・療養所が小児救急に対応しているということでございます。
山口(富)委員 その他のオンコールを含めて四分の三という認識で事に当たってしまっては、うまくないと思いますよ。冒頭あなたがおっしゃったように、百八あるうちの、参加施設は五十四しかないというところが出発点なんです。
 それでお尋ねしますけれども、今の数字ですと、国立病院の場合には、今御説明いただいたのは五十三の病院のことになるんですが、そのほかにも施設があるはずなんですけれども、一体どうやってこの分野で国立病院としての小児救急への参加を強めていくんですか。どういう計画をお持ちなんですか。
冨岡政府参考人 国立病院・療養所は、専ら政策医療の遂行ということでその機能を果たしております。そういうことで、その機能の内容によりましては小児科の医師がいない病院・療養所もございます。
 小児救急を実施する前提といたしましては、当然のことながら、複数の小児科のお医者さんがいるということがある種の前提になるわけでございますが、地域の実態、要請、それからその病院が持っております医師を中心とする人的資源、こういったことを見ながら、地域の要請に応じて充実を図ってまいりたいと思っております。
山口(富)委員 実情に応じて充実を図ってまいりたいということで、方向性は出ているようです。ただ、具体的な中身になりますと、大変寒々した思いになるようなお話だったと思います。
 それで、今言われた地域の実情に応じてという点にかかわって私はお尋ねしたいんですが、東京の世田谷区に国立成育医療センターがあります。これは、国立大蔵病院と小児病院が統合して三月に発足したわけですけれども、救急のための小児それから小児外科、産科などの二十四時間対応ができるというふうに聞いております。
 それで、同センターがあります世田谷区なんですけれども、今、休日、夜間の診療を実施している施設というのはあるんですけれども、小児科が一切ないんですね。ですから、実際に子供の救急に二十四時間対応できる病院というのは、現実にはこの国立成育医療センターしかない。東京都は、都の事業として休日・全夜間診療事業という体制をとっておりまして、病院間の、医療機関相互の連携強化を図っているんですけれども、実は成育医療センターというのはこの枠組みに入っていないんですね。
 入っていないためにどういうことが起こっているかというと、私も厚生労働省から数字をいただいて驚いたんですけれども、この成育医療センター、これはことしの三月に開設しましたから、三月から九月までしか小児救急患者の取り扱い状況という数字としてはいただけなかったんですが、この間、時間内それから時間外、ただし時間外というのは五時から八時ということらしいんですが、三月から九月にかけて見えられた方が一万一千五百三十一人いらっしゃった。このうち、救急車で来た方は何と六百三十一人だと。圧倒的に自家用車なんです、あるいは自分の力で来ているんです。
 何でこういうことになるかというと、このセンターが、東京都の言う休日・全夜間診療事業体制、こういう枠の中に入っていないからなんです。それで、東京都に聞きましたら、繰り返し国の方に参加をしてほしいという要請を上げているということなんですけれども、先ほどの国立病院部長の話からいっても、地元の要請にこたえるということですから、当然、国は休日、夜間の体制もとって、この東京都の要請にこたえるべきじゃありませんか。
坂口国務大臣 それは御指摘のとおり、他の国立病院も含めまして、国立病院が率先をして小児救急医療をやはりやらなきゃいけないですよ。それをやらないというのは怠慢だと僕は思います。明確にしたいと思います。
山口(富)委員 そのとおりです。ぜひ、怠慢なんですから、そこを改めることを急いでやっていただきたいと思います。
 それで、今坂口大臣からその答弁をいただいたので、私、一つ重ねてお尋ねしておきたいんですが、実は新エンゼルプランの中で、先ほど出ました二次医療圏での小児救急の体制のあり方について、随分詳しい方針が出たわけですね。ところが、ことし九月に発表されましたプラスワン、この中では小児救急医療体制の整備の課題というのはすっかり消えちゃっているんですよ、一言もない。
 この問題というのは、日本の少子化の問題にもかかわるわけですね。ですから当然私は、このプラスワンあるいは今後いろいろこの分野でつくられる計画の中に小児救急医療体制の整備というものが盛られていくべきだし、それについて国としての系統的なフォローアップの体制をとるなどして重点的な施策にすべきだと思うんですけれども、この点について大臣のお考えをお聞かせください。
坂口国務大臣 それはもう入っている。改めて入れませんでしたけれども、小児医療を含めまして、小児の問題万般にわたって含めていかなければならないわけですから、そういうことはもう入っているというふうに御理解ください。
山口(富)委員 では、入っているということで、今後とも厚生労働省のこの分野での仕事を見て、私、この委員会でもいろいろお尋ねしていきたいと思います。
 次にお尋ねしたいのは、ハンセン対策の問題なんです。
 来年度予算は、ハンセン病の違憲国賠訴訟での原告の勝利それから国との和解で二年目の予算になるわけですけれども、当然、ハンセン病問題対策協議会との合意に基づいて、いろいろな要望にこたえて国としての責務を果たそうとしているというふうに思うんですが、そこで、幾つか確認しておきたいんです。
 一つは、入所者の方が大変高齢化しておりますから、特に平均年齢が七十八歳と言われております、そして重症化していると言われております不自由者棟の看護体制の強化、これが一つのかなめになってくると思うんです。
 それで、政府の方も三交代制など十分な看護ができる方向ということは考えているようなんですけれども、私心配しておりますのは、昨年度も、配置職員の問題で、概算要求としては掲げながら、例の総定員ということで、結局二五%頭を押さえつけられるというようなことになっているんですね。今度については決してこういうことが起こらないように、坂口大臣によく見ていただきたいと思うんですが、まずその点、お願いいたします。
坂口国務大臣 昨年も、昨年でしたかね、不自由棟の看護体制の問題につきましては、いろいろと現場からも御議論が出まして、そして、それぞれの施設ごとにいろいろ御意見を伺ったというふうに思っています。
 施設によりまして状況はさまざまなんですね。やはり看護婦さんをふやしてほしいというふうにおっしゃるところもあるし、介護さんでいいというふうにおっしゃるところもあるし、あるいは足りているというふうにおっしゃるところもあるしで、それは中身はいろいろだったというふうに私自身も聞きましたし、そういう報告も受けております。足りないところにつきましては、ちゃんとしていくことが約束でございますから、していかないといけないというふうに思います。
 施設の中の建物の状況もそれぞれ違うわけですね。一つの建物の中で、廊下伝いに行ける、廊下を挟んで両側にそれぞれの居住場所があるといったようなところは比較的楽なんですけれども、一度家の外に出て、そして雨が降っているときは傘を差しながら行かなきゃならないという、一度外に出て動かなきゃならないというようなシステムのところというのは大変だというふうに、私も行きまして聞きました。それはそのとおりだろうと思っております。
 それぞれ違いますので、それぞれのところを十分に聞きながらやっていくようにしたいと思います。
山口(富)委員 やはり坂口大臣は療養所を直接訪ねておられますから、その現場を御存じの発言だと思います。ぜひそういう方向での努力を重ねてお願いしたいと思います。
 もう一つ、今問題になっておりますのは、入所者の方々に肝炎が広がっている、C型肝炎等の肝炎が広がっていることなんですね。
 この問題では、入所者の方々が、来年度インターフェロンの予算が概算で出ているようなんですけれども、それに限らずに、これだけの広がりがあるんだから、肝臓がんの可能性も極めて高い。ですから、その早期発見、肝臓がんの早期発見、早期治療をするために、腹部エコーによるスクリーニング検査、こういうものをきちんとやってほしいという要望をお持ちのようなんですけれども、この点は、具体化はどうなっていますか。
冨岡政府参考人 C型肝炎に関する対応でございますが、インターフェロンの治療費の確保に加えまして、感染者に対しましては的確な健康指導、治療が重要でございますけれども、専門的な対応が必要な入所者に対しましては、近隣の専門病院等への入院委託、それから国立病院・療養所の肝疾患政策医療ネットワークに入っている施設、こういったところは専門施設でございますので、そういったところへの治療の相談等の協力を依頼するということで、専門的な医療に対応してまいりたいと考えているところでございます。
山口(富)委員 それはあれですか、具体的に言いますと、腹部エコーなどを含むスクリーニング検査をやるということなんですか。一言で答えてください。
冨岡政府参考人 患者さんの状況によりまして、必要な方につきましてはそういうことも実施するということでございます。
山口(富)委員 必要な方にとどまらずに、広く見てこれは対応していただきたいと思います。
 もう一つお尋ねしたいんですが、最近、ハンセン病問題対策協議会での確認事項に基づいて、中学生向けのハンセン病事業のパンフレットが作成中であるというふうに聞いておりますが、これは入所者の方々との相談などはきちっとやって進めていることなんですね。
高原政府参考人 平成十三年十二月に締結いたしましたハンセン病問題対策協議会における確認事項において作成することとしている全中学生向けのパンフレットについてでございますが、現在、ハンセン病患者、元患者の方々からの意見も伺いながら、適切に対応しているところでございます。
山口(富)委員 そういう対応をされているということですので、改めてお尋ねしますが、今年度予算で、内閣府の企画ですけれども、「ハンセン病を知っていますか?」というパンフレットがつくられております。このパンフレットに対しては、ハンセン病の施設入所者の方や社会内生活者の方からかなり厳しい批判が寄せられていると聞いていますが、どういう批判が出ていますか。
高原政府参考人 らい予防法廃止までのハンセン病政策の誤りによりまして、ハンセン病患者の方々に苦難と苦痛を与えたところでございまして、政府として深く自覚しているところであり、この認識を政府広報等により広く国民に広報しなければならないと考えております。
 御指摘の小冊子は、国民がハンセン病についての医学的な知識を持つことが重要と考え、政府広報の一環として、財団法人日本広報協会が編集発行したものでありまして、その……(山口(富)委員「もう少し大きい声で」と呼ぶ)御指摘の小冊子は、国民の方々がハンセン病についての主として医学的な知識を持つことが重要であるということで、政府広報の一環といたしまして、財団法人日本広報協会が編集発行したものでありまして、十二月に締結いたしましたハンセン病問題対策協議会における確認事項以前に編集、完成しておったものでございます。
 今後とも、ハンセン病に関しますパンフレット等の作成につきましては、ハンセン病の患者、元患者の方々の意見を踏まえて、適切に対処してまいりたいと考えております。
山口(富)委員 どうも今のあなたの答弁は、私の批判を予防しようとして、二重の予防線を張っていますよ。一つは、ハンセン病問題の基本の合意ができる前の企画だったということ、それからもう一つは、この中身が医学的な知識を国民の皆さんに与えたいというものだったということ。私、これが、二つが二つともおかしい話だと思うんです。
 まず第一の問題でいえば、現実に既に裁判の闘争が行われていて、大体行方が見きわめられた時期ですよ。そういう時期に、患者さんや元患者さんたちと全く相談抜きにやった、これはもう第一の失敗ですよね。ですから、今おっしゃったように、今後はきちんと相談しますとおっしゃったのは、その教訓の一つのあらわれだと思います。
 それからもう一つ、医学的な知識とおっしゃる問題なんですけれども、私、今度この「ハンセン病を知っていますか?」というパンフレットを読んでちょっと驚いたんですけれども、強制隔離、肉親との断絶、それから中絶や断種、強制堕胎など、国策として進めた誤り、これは一切触れていないわけですね。この問題は医学的にも、なぜそういうことが起こったのかというのは、医学政策上大問題なんです。だから、それがあるから政府も、患者さんたちと一緒になって、この問題の根源や、問題が起こらないように国民へ啓蒙を図ろうということを誓い合ったはずなんです。
 私は、その原点に立ち返って、これはもう廃棄すべきだ、利用しないという立場が必要だと思います。
 それで、私が大変心配しているのは、ことし、ハンセン病を正しく理解する週間が行われて、厚生労働省健康局がつくった冊子があるんです。まあ冊子というのは部内資料みたいなものでしょう。その中で、これが広報の一環としていまだに載っているんです。こういう扱いは直ちにやめるべきだ。これはどうですか。
高原政府参考人 らい予防法廃止までのハンセン病政策の誤りによって多大の苦痛や苦難を与えたことにつきまして深く自覚しておるところでございまして、この認識を伝えるということが今後の対策になるんだと思います。(発言する者あり)
山口(富)委員 か細い声で。これを破棄するということでよろしいんですね。
高原政府参考人 内容的に特に誤っている、意図において誤っているというふうなものではないというふうに考えております。(発言する者あり)
山口(富)委員 いや、これは理事会でも協議すべき事柄だと思います。驚くべき答弁です。誤っていないと言うんですから。
 きょうは私、時間が参りましたから、これは越年越しの問題になりますけれども、必ず決着をつけるまでこの問題取り上げたいと思います。
 それで、私……(発言する者あり)坂口大臣、お読みでしょう。どうぞ、年を待たずに。坂口大臣、お願いいたします。
坂口国務大臣 外野の方からいろいろな意見が出るものですから困るわけでございますが。よく検討しますから。(発言する者あり)
坂井委員長 山口君、もう時間が超えましたので。
山口(富)委員 ええ、もう終わります。
 私、きょう、高齢者医療の負担問題の資料を皆さんにお届けしたんですけれども、これはきょう時間がありませんので、次回に持ち越していきたいというふうに思います。
 どうもありがとうございました。
坂井委員長 次に、山井和則君。
山井委員 坂口大臣におかれましては、一日一般質疑、本当にありがとうございます。最後になりますが、五時八分ぐらいまでの間、また四十五分、主に坂口大臣になりますが、どうかよろしくお願いいたします。
 そして、きょうは資料を配付させていただきましたので、この資料、七ページ、見ていただきたい。
 もう一つ、冒頭に、先ほど金田議員、中川議員の質問にもありましたが、民主党としてもう重ねて、在外被爆者の認定をめぐる今回の裁判で、郭さんが十二月五日に大阪高裁で全面勝訴となりました。「被爆者はどこにいても被爆者」ということでありますから、控訴は絶対にしないでいただきたい、このことを民主党としても改めてお願い申し上げたいと思います。
 きょうは医療中心の一般質疑ですが、冒頭に少し、支援費制度についての質問をさせていただきます。余りにも地域でのサービスがおくれているからであります。
 まず一問目、坂口大臣にお伺いします。
 これは、前回もお見せしたグラフでありますけれども、諸外国に比べると、知的障害者の入所者数というのが、日本は施設に入っている方が非常に多いわけですね。それで、欧米ではもう脱施設ということで地域で生活をされているのに、その中で日本だけが施設に入る人が年々ふえているということであります。そういう意味では、これから策定される新障害者プランの中で在宅重視ということをどうやって打ち出していくのか。その大臣の決意をお伺いしたいと思います。
坂口国務大臣 山井議員にはいつもたくさんの質問をしていただいて、感謝をすべきか、恨みを持たれているのか、いつも戸惑うわけでございますが、きょうもまたたくさんの御質問をいただいて、まず感謝を申し上げておきたいと思います。
 障害者プランの問題は、先般、法務委員会で議論をされました精神障害者の問題も同じでございまして、やはり地域で、そしてまた家庭でどう皆さん方を受け取っていくか、あるいはそこで生活をしていただくようにしていくかということが今問われているというふうに思います。
 したがって、一つは、お父さん、お母さんがおみえにならない方もおみえでございましょうから、そうした皆さん方に対する施設というものもつくらなければなりません。そして、病気を持ちながら、しかし障害もある、障害と他の病気と合併しておみえになる方もおありでございまして、そういう皆さん方には医療と福祉が同じになったようなところを用意しなきゃならない。あるいは、もう御家庭で生活をしていただきますときに、相談をする人たちをどうするかといった問題もある。精神障害者の問題と同じように、この障害者全般にわたりましても同様のことが言えるのではないかというふうに思っております。
 精神障害者の問題につきましては、一気にこの際に前進をさせようというふうに思っておりますし、山井議員から社会的入院ゼロ作戦という名前までつけていただいたわけでございますので、一生懸命そこはやりたいというふうに思っておりますが、この全体の障害者の問題もあわせてこれは前進をさせなければなりません。特に来年は、この障害者プラン、基本計画なるものをつくり上げる年になるわけでございますから、これを一つの機会として、ひとつ、地域でその皆さん方をお受けできる体制をどうつくるか、これは大変大きな問題でございますし、またお金もかなりかかる話だというふうに思っております。
 厚生労働省だけの考え方で済むことではございませんので、他の省庁とも十分話をしていかなければなりませんが、必要なものは必要だということで、できる限り早くその体制をつくり上げたいと思っているところでございます。
山井委員 大臣、精神障害者についてこれからどんどん地域で暮らしてもらえるように一気に進めていく、まさにそのような思いでこの知的障害の方々についても施策をぜひとも進めていただきたいと思います。
 それで、予算の関係もあるということですが、例えば、このグラフを見てみても、たくさん施設に入っているのと地域に暮らしているのとどちらが予算がかかるかというと、実は地域に暮らされた方が高くはつかないわけなんですね。そういう意味で、必ずしも在宅はお金がかかるという見方はしていただきたくないと思います。当初はそれは投資にお金がかかるかもしれませんが。
 そして、このことに関して、まさに多くの方々が、この支援費制度導入をきっかけにして、地域で知的障害の方々が暮らせるようにしてほしいという山のような要望が来ております。恐らく私だけじゃなくて国会議員すべての皆さんに来ていると思います。大臣のところにも行っていると思います。
 この二枚目に、そのことを書いた朝日新聞の記事が、「知的障害者「脱施設」へ 生活の足場、地域に」と出ております。
 三ページ目は「入所施設の利用者負担分を地域生活のために回してください」という要望でありまして、これは多くの知的障害関係の団体の方々、また五十五名の研究者の方々からも緊急アピールが出ております。
 ごく簡単に要約して読みますと、「二〇〇三年度から実施される支援費制度では、知的障害の入所施設での日常生活品費が支援費の中に入っているという解釈がなされ、必要経費とはならず、利用者の自己負担が一人あたり約二万円上がります。その結果、国レベルで百億円近くの新たな財源が生まれると言われています。この資金を障害者の地域生活のために回してください。」と。
 続きはぜひ読んでいただきたいんですけれども、このような要望、厚生労働省にも行っていると思いますが、このことについて厚生労働省のお考え、お聞かせ願いたいと思います。
坂口国務大臣 この支援費制度につきましては、多くの皆さん方から御意見をちょうだいしているところでございます。
 利用者本人の前年の収入から必要経費だとか、そうしたことの問題等も正直なところあるわけでございますが、いずれにいたしましても、この障害者の皆さん方が地域でより健全な生活を送っていただけるようにするためにはどうするか、そして、一般障害者の場合にはやはり雇用の問題もあわせて考えていかなければなりませんので、地域の企業に対するお願い等も含めて、これはトータルでひとつ前進をさせなければいけないと思っているところでございます。
 単なる福祉という形ではなくて、多くの皆さん方に、自分たちは福祉として支援をしてもらっているんではないんだ、自分たちはもうちゃんと生活ができるんだというふうに思っていただけるようにしなければならないというふうに思っております。
山井委員 また続けて大臣にお伺いしたいんですが、この九月、大臣が続投されるかどうかというときに、ぜひとも続投をお願いしたいということを小泉首相にも言ったのを私は覚えておりますけれども、その一つの理由は、ハンセン病のことに象徴されるように、本当に人権感覚を持たれた坂口大臣、やはり精神障害者の問題また知的障害者の問題、そういう地域で暮らせる社会づくりのためにやはり坂口大臣が二期続けられた中で、あのときが一つのきっかけで、入院中心あるいは施設中心の医療福祉から地域に大きく変わったなと言ってもらえる大きな仕事をぜひとも坂口大臣にしていただきたいと思います。
 このことに関連して、午前中まさに公明党の福島議員からも質問ありましたように、そういう大臣の思いとは現実は大きくかけ離れておりまして、四ページにございますように、きょうされんが調べたところによりますと、支援費制度がスタートするにもかかわらず、この四ページの毎日新聞の記事ですね、「施設・事業体一つもない」というのが約一五%なんですね。ホームヘルプがない市町村が二〇%、デイサービスは八七%、ショートステイがないところは六一%、グループホーム七三%。
 私、こういう現状とこの支援費制度のパンフレットを見て、その差に愕然としたんです。どう書いてあるか。大臣、この支援費制度のパンフレットには、「支援費制度では、サービス利用者は都道府県知事等が指定した複数のサービス提供事業者・施設の中から自ら選択してサービスを受けることができます。」
 みずから選択してサービスを受け、みずから選択して施設か在宅か選べるというのが支援費制度の理念なのに、実際にはサービスが全然ないわけですね。(発言する者あり)選びようがない。このことについて、もう来年四月に支援費制度、スタートするわけですから、絵にかいたもちになっては困るわけですから、大臣、いかがですか。
坂口国務大臣 褒めてもらうと必ず悪いことがあるわけでございまして、後はだんだん厳しくなるわけでございますが、これはもう病院も施設も同じでございますけれども、医療費の問題等をやりますと、そうすると幾ら保険料を出しても、それを受ける病院もないところが存在するではないか、無医村はどうするんだというお話になるわけであります。これも同じことだというふうに思いますが、施設もないのに選択のしようがないではないかというお話だろうというふうに思います。
 したがいまして、これも、小さな町村もありますからその小さな町村に全部つくるというのもこれはいささか大変だというふうに思いますけれども、ある程度やはり一つの、医療でも一次圏とか二次圏とかいろいろつくっておりますが、そうした一つの地域ごとに必ず一つはできるといったようなことにしていかないと、一つができたのでは選択できないわけで、幾つかできるということにしていかないとこれはいけないんだろうというふうに思っています。
 そうした計画的な対応というものがこれから要求されるというふうに自覚している次第でございます。
山井委員 大臣、その財源の厳しさはもちろんわかるんですけれども、私が言っているのは、パンフレットにはもう書いてあるということなんですね。「自ら選択してサービスを受けることができます。」と。だから、そこはやはり、一回こうやってパンフレットに書いて配ったことは実行してもらわないと困るわけで、例えば、私も地元で障害者の方々との勉強会でこのパンフレットをもとに説明しているんですから。ところが、山井議員の言うたことは全部うそか、全然サービスないじゃないかというようにならないようにしてほしいと思います。
 では、そのために何が問題かというと、要は、一つには、私は単価の問題だと思うんですね。単価が低いからなかなかサービス事業所が手を挙げないというふうに思っております。
 そこで、具体的に、大臣、一つお話ししたいんですけれども、例えば、家事援助は千五百三十円なんです、一時間、ホームヘルプで。家事援助千五百三十円です。これはどこからとってきたかというと、介護保険の家事援助が千五百三十円だったんですね。それと横並びでこの支援費の障害者福祉のホームヘルプサービスも千五百三十円なんですけれども、大臣御存じのように、今回その千五百三十円じゃ介護保険の方は成り立たないということで値上げを決められたわけですね。おとついの厚生労働省の分科会で。
 片や介護の部分では、一時間千五百三十円では安過ぎるから成り立たないといって値上げすると厚生労働省が決めた。ところが、支援費の方では、その古いままの金額でやっていたらそれは赤字というのは介護保険の経営実態調査でもう結果が出ているわけですから、やる事業所が少ないのは当然だと思うんですね。やはり、その辺、単価を上げる必要があると思うんですが、大臣、いかがでしょうか。
坂口国務大臣 介護保険とそれから障害者施設の場合と、これは同じにしますから。
山井委員 そこで言っているでしょう。一緒だったんですけれども、介護保険の方は一時間千五百三十円の単価では安過ぎて多くの事業所が赤字になっているということが厚生労働省の実態調査でわかったわけです。それで今度、来年四月から引き上げるとなったわけです。となると、支援費の方も一緒に引き上げないと、介護の方は引き上げるとなって支援費の方は据え置かれたままでは成り立たないと思います。いかがですか。
坂口国務大臣 ですから、一緒にしますということを言っているわけでございます。
山井委員 ありがとうございます。介護サービスの方でもう採算がとれないとわかったのを、支援費でも同じようにするということがないようにぜひともしていただきたいと思います。
 そこでもう一つ。やはり、これはなぜ採算がとれないかというと、高齢者に比べて障害者のサービスの利用者は約十分の一なわけですから、どうしても、デイサービスにしてもホームヘルプにしても広域化をするわけですね。デイサービスも遠くまで行かないとだめだ。送迎のお金と時間がかかる。ホームヘルパーさんも遠くの人が来る。
 そうしたら、移動時間もかかるということで、やはりこういう広域化ということを考えながら、私は、やはりそういう意味では、近所にたくさんお年寄りがいるというケースよりも、介護保険よりも障害者の支援費の方が、この単価を、実は私は、やはりアップしないと常識的には成り立たない、広域化して、障害者の数は少ないわけですから。その点について、大臣、いかが思われますか。
坂口国務大臣 済みません、もう一遍ちょっと言ってくれませんか。
山井委員 かみ砕いて申しますと、介護保険のサービスを利用している高齢者に比べて、この支援費を利用する対象者というのは十分の一ぐらいなんですね。ということは、デイサービスも障害者を受け入れてくれる施設は少ないし、ホームヘルパーさんも、障害者が利用できるホームヘルパーさんは少ない。そうしたら、移動距離がホームヘルパーさんも長くなる、デイサービスも遠くになる。そうしたら、ある意味で非効率になりますよね。
 ということは、同じレベルで考えたら、介護保険の単価よりも、デイサービスにしろホームヘルプにしろ、支援費の障害者の方が割高になるから、単価、ちょっと高くしないとだめなんじゃないか、そういう質問なんです。
坂口国務大臣 介護の方もそれは地域によって差がつけてあるというふうに思いますから、そういう差があります場合には差がつくようにひとつ検討します。
山井委員 これは、それこそ公明党の福島議員も先ほど、かねてから要望されていた支援費制度のことですので、どうかよろしくお願いいたします。
 では、次に、それとともに、地域で暮らすためには小規模作業所がますます必要であるんですけれども、これに対する支援がやはり非常に少ない。やはり昨年から生まれた小規模通所授産施設も、年間一千百万円という公費では小規模作業所問題の解決にはほど遠いわけですけれども、小規模作業所並びに小規模通所授産施設に対する補助金制度を、現行の通所授産施設に出している公費と同水準にやはり引き上げるべきではないか。このような小規模共同作業所への支援について、いかがでしょうか。
木村副大臣 御質問の、いわゆる小規模作業所は、親の会とか地域の全くのボランティアとか、そういう方々の自主的な活動として展開をされているんですね。障害者の方々にとって非常に身近な活動の場として重要な役割を果たしているということは、これはもう私どものよく認識をしているところでございます。
 こうした作業所は、法律上の施設や事業ではなくて、地域に根差して運営をされているものでありますので、地方単独事業の活用や関係民間団体への助成を通じてその振興を現在図っているところでございます。
 さらに、より安定した経営を確保するために、社会福祉法人の設立要件を緩和することにより、平成十三年度より、法定施設である小規模通所授産施設への移行を進めているところでございます。これは、人数をぐっと減らしまして、より一層設立をしやすくしたわけであります。
 小規模作業所については、今後ともこうした取り組みを進めることにより、その特性に十分に配慮し、規制や助成という政策手段を用いるよりも、むしろ、そのよさを失うことのないような対応をしていく必要があると認識しています。
 つまり、余り予算をつけるということは、助成をするということは、逆にいろいろな規制も伴うわけでありまして、自由にやれる、さっき言ったように、親の会やボランティアが自由にやれるというのも、またそれこそ認可をもらったりなんかすると、今度はがちがちになって、はしの上げ下げまで言われるので、そういうことがない施設があってもいいのではないか。そういう観点も含めまして、できることはしていきたいな、このように思っております。
山井委員 余りにもその格差が大き過ぎるわけですから、ぜひともそれは是正をしてもらいたいと思います。
 次に、医療のことに移りますが、この五ページにありますカルテ開示の問題であります。
 これは坂口大臣に、六月ころに質問で何度か取り上げさせていただきまして、中川議員や私の質問をもとに坂口大臣が、七月の五日に第一回の診療に関する情報提供等の在り方に関する検討会、いわゆるカルテ開示に関する検討会を開いていただいたわけですね。
 最近、東京女子医大の問題でも、医療事故でカルテの改ざんが行われた。また、やはり医療というのは、そもそも患者を中心に、医師と患者との共同作業で行われるべきものであって、そのためには、やはり情報公開、また、インフォームド・コンセントを定着させる基本となるのはカルテの開示である、そういうことで、私たち民主党も、患者の権利法を前国会で提出したところであります。
 そこで、七月五日に一回開かれたきりなんですけれども、大臣、カルテ開示について、検討状況はどうなっていますでしょうか。
木村副大臣 診療に関する情報提供等の在り方に関する検討会は、議員お話しのように、第一回が七月の五日に開催をされたところでございます。第二回目を十二月の二十六日に開催をいたします。
 この間、この検討会の今後の議論に大きな影響を与える個人情報保護法案の審議の推移を見守ったり、地方自治体における診療録の開示の状況など、前回の検討会において事務局に求められた事項について調査を行ってまいりました。
 検討会では、今後、医療現場等の専門家の御意見を伺うとともに、診療情報の提供のあり方について精力的な御議論をお願いしてまいりたいと考えているところでございます。
山井委員 坂口大臣にお伺いしますが、この検討会については、私の資料の五ページにもありますように、日経新聞の調査でも、カルテ開示を八六%が希望していると。八六%が希望しているけれども、カルテ開示を求めた人は七%であって、その理由は頼みにくいということですね。
 その次に、どれぐらいカルテの診療情報の提供がされたかというのが六ページ。
 それで、七ページに、そもそもこの問題は、平成十一年の七月一日の医療審議会の中間報告で、真ん中のあたりに、「患者が診療記録の開示を求めた場合には、原則として診療記録そのものを示していくことが必要である。」ということが書いてあります。その次に「当面の取組み」、「医療従事者の側の自主的な取組みが不可欠」である、一番下、「三年を目途に環境整備を推進する」ということになっております。
 つまり、わかりやすく言えば、このとき法制化の議論がされておったわけですけれども、現場の方から、ちょっと待ってくれ、法制化されなくても、自主的にガイドラインをつくって開示するから待ってくれ、三年間で環境整備をするからということであったわけです。
 ですから、今回の検討会では、この三年間で自主的に開示が十分に進んでいるかどうかということが検討されることになるわけですけれども、大臣、そのように、法制化じゃなくて自主的にやってカルテは十分に開示されているんでしょうか。その現状はいかがですか。
坂口国務大臣 これは、できることならば、自主的に開示されるようになるのが私は望ましいというふうに思っています。
 一つの流れができますと、私は一挙に進むんだというふうに思っておりますから、ここは、検討会も重ねまして、そして、早くそうした議論を終結して、そして現場の皆さん方にできるだけ早く開示をしていただけるような体制になっていけばというふうに希望いたしております。
 それで、どうしても進まないということになれば次のことを考えなければいけないというふうに思いますけれども、できることならば、自主的にやっていただくということが私は望ましいというふうに思っています。
 この検討会も、これは少しおくれて申しわけないんですが、皆さんから、これも検討しろ、あれも検討せい、たくさん言っていただいて、私も安受け合いしたものですから、三十九できたんですよ、検討会が三十九。それで、これはなかなかこなすのが大変になってきて、事務局は、大臣、幾つ引き受けてくれるんだと文句を言っているわけでございますが。
 そんなこともございまして、たくさん引き受け過ぎたということもあって、全部進めていくのが少しおくれたりもいたしておりますけれども、精力的に今後やらせていただきたいと思っております。
山井委員 問題は、三年間、自主的にやってきて、カルテが十分に開示されているかということなんですけれども、それは六ページを見ていただけますでしょうか。
 ここに、平成十二年度の調査報告書の中で、例えば、患者本人によるカルテ閲覧の請求に対しても、原則的に開示、提供しているのは三五・七%しかないわけですね。そして、その次の下の表七、医療者側への不信感を伴った開示請求ということに関しては、本人から開示請求があったら、原則的に開示は二七・六%。また、訴訟が推測される場合というのは一七・一%ですね。
 おまけに、大臣、私がびっくりしたのは、この調査の回答率が二九・四%、三〇%もいっていないんです。逆に、熱心なところがこれに当然回答していると思うんです。
 ということは、これ、やってみても、自主的には進んでいない。例えば、医療者側に不信感を伴った場合には開示しなくていいというのは、おかしくないですか。大臣、このような現状をいかが思われますか、坂口大臣。
坂口国務大臣 いろいろのそういう状況がありますから、自主的にやっていただくように、これは今進めているわけでありまして、自主的に今後進んでいきますように努力したいと思います。
山井委員 いや、まさにそこなんですけれども、こういうデータを見ていると、自主的にはなかなか進んでいない。私の知り合いでも、カルテの開示を請求したけれども拒否されたという例を幾つも聞いているわけですね。病院やお医者さんにとって都合が悪いときには拒否するというのでは、やはりそれではだめなわけであって、それだったら、やはり法制化が必要なのではないかということになってくるんです。
 大臣、このような調査というのは、三年後の見直しで、六月の答弁では、今年度末、来年の三月末にはカルテ開示の法制化についてまた一定の結論を出すということなんですけれども、そういう自主的にきっちりカルテ開示が進んでいるかというちゃんとした調査というのは、そもそもできているんですか。いかがですか、坂口大臣。
坂口国務大臣 今、委員がお配りになりましたのは十二年度の調査だそうでございまして、十三年度の調査というのも今集計しつつあるそうでございますから、それはまたごらんをいただいて、また御質問いただいたらと思います。
山井委員 ちょっと念のために確認しますが、それはいつ明らかになりますか。三月末までにもう答えを出すと言っているんですから。
坂口国務大臣 済みません。私、ちょっと間違えました。十三年度のはもう既に出ておるんだそうです。十四年度のを今やっている、こういうことだそうです。(山井委員「それはいつ出るんですか」と呼ぶ)ですから、来年の三月までにはちゃんとできるんだろうと思います。
山井委員 ちょっと多分今の答弁は違うと思う。もう一回どうぞ。
坂口国務大臣 十三年度のがこの十月ごろに出たんだそうでございます。そうしますと、大体十四年度のも、急ぎますけれども、それ以上のことは、お聞きいただいた中から大体おわかりいただけると思うんです。
山井委員 ということは、その十三年度の結果、まだ私は見せてもらっていないですけれども、見せてもらいますが、それで十分に自主的に開示がやはり進んでいないということになったら、これはやはり法制化が必要だということになりますか。大臣、いかがですか。
坂口国務大臣 ちょっと私もまだ見ておりませんので何とも申せませんが、その状況も踏まえて、そして、でき得る限り自主的にやれるようなことを考えていきたいというふうに思います。
山井委員 これは坂口大臣と通常国会でも議論したことなんですけれども、そもそもなぜ開示できないのかということなんです。
 私、よく覚えておりますけれども、当時、坂口大臣は、いや、がんのケースもあるとか、精神病のことがカルテに書いてあるケースもある、それで患者本人のためだということを答弁でおっしゃったんですけれども、開示しないケースというのはそれだけですか。本人にとって告知の問題で不都合なケースだけですか。病院やお医者さんにとって都合が悪いというので開示しないというケースはないですか。大臣、いかがですか。
坂口国務大臣 それは、個別的なケースはさまざま考えられますから、個別的なケース、どういうふうなのがあるかということを私もここでなかなか言うことはできませんけれども、トータルで見て、そして、これは進んだ、やはりその流れができたというふうに言われるようにしないといけないというふうに思っております。
 したがいまして、先ほどの表を御指摘いただいたように、やはり本人がこれは公開をしてほしいというふうに言われたらそれは公開になるといったような、そういう流れができるということが大事でありまして、そういうふうになるように努力をしたいということを申し上げているわけであります。
山井委員 ここは非常に重要なところなんで改めて聞きたいんですけれども、本人にとって不利益があるから開示しないという話と、病院やお医者さんが開示したら都合が悪いというのとでは百八十度違うわけなんですね。それで、先ほど言いましたように、六ページの資料にありますように、例えば、医療者側に不信感を持った患者本人から、どないなってるんやといって開示請求があったときには、原則的に開示というのは二七%で非常に低いわけですね。
 大臣、そういう、患者のためではなくて、病院やお医者さんにとってちょっと見せにくいなということで開示しないというのは、原則としてこういうのは許されるんですか。
坂口国務大臣 許されるとか許されないということではなくて、ですから、開示をしないという場合にはさまざまな理由があるでしょうということを申し上げているわけで、そのさまざまな理由を乗り越えてやはり開示をしてもらうようにしていかないといけないわけで、それを開示していただけるようにするのに、法律で縛ってしてもらうというのでは、これは主体性がなさ過ぎる。
 ですから、そうではなくて、自主的にそれは開示をしていただけるような体制をどうつくっていくかということが大事、そういう方針で進めていきたいということを申し上げているわけであります。
山井委員 ぜひとも、その十三年度の結果で、こういう不信感を持ったケースでも開示が非常にふえているというデータが出ていることを願っております。もしそうでなかったら、やはり法制化しないとだめだという議論になってくるわけであります。
 では次に、医療全般のことを聞きたかったんですが、ちょっと時間の関係もありますので、特に歯科医療について坂口大臣にお伺いしたいんですが、私は、一般の医療と歯科とは多少、ちょっと違うところがあると思うんですね。
 この十月からの老人の定率一割負担で、歯医者さんも非常にお客さんが減ったということをおっしゃっておられます。それで、どう違うかというと、風邪とか頭が痛かったら、ほっておいて治ったというのでいいんですけれども、歯の場合は、お金が高くなったから行くのをやめておいたといって勝手に治ることはなくて、どんどん虫歯とかは進行していくわけですね。
 そういう意味では、私たち民主党も、歯科医療改革案というのを発表しまして、その中で、歯科医療の中の治療よりも予防に力を入れよう、早目に歯科にかからないと結局は医療費全体が上がっていくんではないかということを提言しております。また、かむことというのはお年寄りにとって特に大切で、そういう歯をしっかりさせることが痴呆予防にも効果があるということが言われているわけです。
 そういう意味では、今、老人の一割定率負担、また、来年四月からの健保本人の三割負担という中で、かえって歯科の医療費も上がっていって問題が大きくなるんではないか。具体的に言うと、八〇二〇運動、八十歳で二十本のいい歯を持とうという運動も、結局はとんざしてしまうんではないかというふうに思うんですが、その点について、坂口大臣、いかがでしょうか。
坂口国務大臣 今お聞きをいただきましたのは、いわゆる受診抑制になるというお話でございますが、これは、医療にいたしましても、歯科にいたしましても、現在の経済動向もございますしいたしますから、すべてが今回のこの法律の改正によるというふうには私は考えておりません。
 いずれにいたしましても、早いうちにかかっていただかなければいけないことだけは事実でございます。ですから、これは国民の意識の問題もあるというふうに思います。早く、安いうちに早くかかるということでなければならないわけでありまして、虫歯等も、中には、ひどい人は、歯があるから虫歯になるので全部抜けばいいんだということを言った人がありますけれども、それではいけないわけでありまして、ぜひそれは早いうちに治すということでなければならないというふうに思いますから、そういうふうに皆さん方に心がけていただくような運動を展開していくということが八〇二〇に結びついてくるんではないかというふうに思っております。
山井委員 まさに坂口大臣おっしゃっているとおりで、そういう早目に歯科にかかってもらうためには、今の定率一割負担や健保本人の三割へのアップというのは逆行しているということを言っているわけでありまして、ぜひとも再考をお願いしたいと思います。
 また、歯科に関して、これも通常国会の引き続きなんですけれども、訪問歯科診療について坂口大臣に質問させてもらったんですけれども、その後も、あれから五カ月たって聞いてみましたら、訪問歯科診療、要件が厳しくなったり制限がきつくなったりして、もう三、四割利用者が減った、あるいは、そんなややこしいことだったらもうやめたといって訪問歯科診療をやめる歯医者さんも出てこられているわけですね。実際、御存じのように、寝たきりのお年寄りにとっては本当に歯というのは大切なわけです、なかなか歯医者さんに来れないわけですから。
 そういう意味で、これはゆゆしき問題で、高齢化時代においては訪問歯科診療というのは推進していくべきところを、逆に今回の診療報酬の改定でどんどんやめさせていっている、やはりこういう問題は、二年後の診療報酬の改定を待たずに何とか改善すべきだと私は思います。
 大臣、いかがでしょうか、歯科の訪問歯科診療について。
坂口国務大臣 そのときにもいろいろ議論をさせていただきました。
 中には、施設等に出かけられて、そしてまとめて何十人もの治療をされる、それで、それを個々にやられたように報告をされるというようなことがあったりして、これは歯科全体の中からも、そういうことは公正を欠くのではないかといったような声もあってこういうことになったというふうに私は理解をいたしておりますが、しかし、中には本当に出かけていってやらなければならない人のあることも事実でございますから、そうしたことにも今後配慮をしていくようにしたいというふうに思います。
 いろいろの診療報酬の問題、やってみて、そしてある意思を持ってやったんだけれどもうまくいかないということも、それは率直に言ってほかにもあるというふうに私は思います。そうした問題は、悪ければやはり正していくということでなければいけないわけで、次の機会にそうした問題は検討したいというふうに思います。
山井委員 坂口大臣がおっしゃる、一部にそういう不正なものがあるというのは、確かにそうかもしれません。しかし、それによって大部分の非常に切実なケースがそのチャンスを、お年寄りが訪問歯科診療を受けるチャンスを奪われていくというのは、結局は時代に逆行しているということを言いたいわけであります。ぜひとも早いうちに改善をしてもらうようにお願いしたいと思います。
 話は精神医療に戻ります。
 坂口大臣は先日、心神喪失医療観察法案の私への答弁で、七万二千人の社会的入院の解消を十年で行うには、七年ぐらいで達成する年次計画が必要と答弁をされました。そのときに、年次計画をつくるということを、対策本部でやるということを言ってくださったわけですけれども、対策本部はいつつくって、いつごろに年次計画を発表するのか、そのことを坂口大臣にお願いします。
坂口国務大臣 年内には対策本部はつくりますから計画が年内という調子にはいかない。もう少しそこは検討を幾つかして、そして本当にそれが実現可能かどうかの案をつくらないと、案はつくったけれどもそれは案だけで進まないじゃないかとまたおしかりを受けることになりますから、そこはしっかりやらせていただきたい。(山井委員「大体何カ月くらい」と呼ぶ)だから、それはできたときに発表させていただくということにしたいと思っておりますので。(山井委員「大体半年ぐらいですか、三カ月ぐらいですか」と呼ぶ)そんなに急がずに、七年でやらなきゃならぬのですから、そんなに長くかかっておりましたら七年でできませんから、七年でできるようにやらせていただきたいと思います。
山井委員 先日の法案審議とちょっとトーンダウンしているんですけれども、そうしたら、大体半年ぐらいで発表していただけますか。もう一回ちょっとお願いします。やはりそれは一年、二年もかかったらだめなわけですから。
坂口国務大臣 それは一年目からスタートしなきゃいけないわけですから、七年計画というのは一年目があるわけでありますから。だから、来年が一年になるということになれば、来年できぬような計画を立てておりましてはいけませんので、そんなにかからないというふうに思っておりますが、しかし、それはちゃんと、本当にできるという案をつくらないと、七年計画はつくったけれども一年目から進まぬじゃないかとまたしかられるようなことがあってはなりませんので、そこはちゃんと踏まえてやりたいというふうに思っておりますから、どうぞひとつそのときまでお許しをいただきたいと思います。
山井委員 再来年の予算のこともありますから、来年の夏までには発表できませんか。ちょっとそこだけ、当たり前のことだと思いますけれども。概算要求とかもいっぱいありますから。
坂口国務大臣 では、概算要求が出ますまでにはまとめたいというふうに思っております。
山井委員 それで、最初から二番目の質問に戻るんですけれども、要は、今回、知的障害者の施設入所の自己負担アップの分を地域福祉に回してほしいという全国からの自発的な、本当に悲願ですね、この支援費導入を機会に、施設中心から在宅重視に変わってほしいという悲願なんですけれども、先ほどの大臣の答弁では、ちょっとその決意があいまいだったような気がするんです。そういう施設の二万円分の自己負担アップの部分をできる限り地域福祉の方に回していく、これは当たり前のことなんですけれども、ぜひともその決意を、全国の方々からの要望が今上がっているわけですから、大臣、一言お願いいたします。
坂口国務大臣 決意はしっかり持っておりますから、大丈夫でございます。
山井委員 またちょっと精神医療のことに戻ります。
 七万二千人の社会復帰ということですが、一つ私が懸念しておりますのは、精神病院の社会的入院の方が七万二千人社会復帰される、しかし、例えば、病棟をかんかんかんと改築して、そこに施設ですと看板をかけて、社会的入院、減りましたと言われたり、あるいは、病院の敷地の中にグループホームをつくって、はい、社会的入院、減りました、社会復帰しましたよと言っても、それはちょっと違うと思うんですね。
 基本的に、社会復帰ということは、隔離された病院の社会から地域に社会復帰することだと思うんですけれども、そこで、これは施設の敷地内ではなくて、地域に社会復帰するということでいいのか。その結果、病棟が七万二千ベッドぐらい減るということでいいのか。その二点、ちょっと確認をさせていただきたいと思います、坂口大臣。
坂口国務大臣 それはやはり、地域にお戻りをいただかないと意味がありませんから、そのように理解をいたしております。しかし、病院が存在するのも一つのその地域でありますから、その病院が存在するところの地域について、どこにつくるかということは、あるいはその病院に近いということだってそれはあり得るというふうに思いますが、そこに入っている人が、それぞれの郷里の、郷里と申しますか、おうちがあります地域にやはりお戻りいただけるようにしなければいけないというふうに思っております。
山井委員 やはり、長年精神病院に入院されていた方が地域に帰られるというのは並大抵のことではないと思いますし、また、病院の関係の方の御苦労も大変だと思うんですね。
 それで、いかにその受け皿をつくっていくかということですが、同じきょうされんの調査によりますと、精神障害者の施設がない自治体が八九%、そういうデータも出ているわけであります。そういう意味では、在宅サービス、また精神障害者の施設、その受け皿が全然まだまだ足りないと思うんですけれども、そのあたり、社会復帰される施設や在宅サービスをどのように整備されていくか、坂口大臣、いかがでしょうか。
坂口国務大臣 それは七カ年計画をつくります中で明らかにしていく以外にないというふうに思いますが、いずれにいたしましても、ほとんどないところからつくり上げていくわけでありますから、これは大変な作業であるというふうに思っております。かなりな決意を持ってやらないとできないことだというふうに思う次第でございます。
山井委員 介護保険でも、介護保険という一つの新しい制度をきっかけに権利性に、介護サービスというのは、今まで割とお恵みだと言われていたのが、権利となっていった。また、この支援費制度をきっかけに、今までの措置から、サービスを選べる、施設にいるも在宅にいるも自己決定できる、また、どんなサービスを利用するかも自己決定できる、今やはり千載一遇のチャンスだと思いますので、この機会によろしくお願いします。
 それとともに、最後になりますが、カルテ開示の問題でありますが、そもそも三年前に、法制化すべきだという意見が大勢だった中で、三年間待ってくれ、自主的にやるからその結果を見てくれということで今日に至っているわけですから、今回また先延ばしということはある意味であり得ないわけですから、その結論を三月末までにしっかりと出していただきたいと思います。
 以上で終わります。
坂井委員長 次回は、来る十三日金曜日午前九時四十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後五時十分散会


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