衆議院

メインへスキップ



第9号 平成15年4月15日(火曜日)

会議録本文へ
平成十五年四月十五日(火曜日)
    午前九時二分開議
 出席委員
   委員長 中山 成彬君
   理事 熊代 昭彦君 理事 長勢 甚遠君
   理事 野田 聖子君 理事 宮腰 光寛君
   理事 山井 和則君 理事 福島  豊君
   理事 武山百合子君
      浅野 勝人君    岡下 信子君
      金子 恭之君    後藤田正純君
      佐藤  勉君    田村 憲久君
      竹下  亘君    棚橋 泰文君
      西川 京子君    原田 義昭君
      平井 卓也君    松島みどり君
      三ッ林隆志君    宮澤 洋一君
      森  英介君    谷津 義男君
      山本 幸三君    吉田 幸弘君
      吉野 正芳君    渡辺 具能君
      家西  悟君    石毛えい子君
      大石 正光君    大島  敦君
      加藤 公一君    五島 正規君
      城島 正光君    松野 頼久君
      三井 辨雄君    水島 広子君
      江田 康幸君    斉藤 鉄夫君
      佐藤 公治君    小沢 和秋君
      山口 富男君    阿部 知子君
      金子 哲夫君    熊谷  弘君
      川田 悦子君
    …………………………………
   厚生労働大臣       坂口  力君
   厚生労働副大臣      鴨下 一郎君
   厚生労働副大臣      木村 義雄君
   厚生労働大臣政務官    渡辺 具能君
   政府参考人
   (文部科学省大臣官房審議
   官)           金森 越哉君
   政府参考人
   (厚生労働省労働基準局長
   )            松崎  朗君
   政府参考人
   (厚生労働省職業安定局長
   )            戸苅 利和君
   政府参考人
   (厚生労働省職業能力開発
   局長)          坂本由紀子君
   政府参考人
   (厚生労働省社会・援護局
   長)           河村 博江君
   政府参考人
   (社会保険庁次長)    伍藤 忠春君
   厚生労働委員会専門員   宮武 太郎君
    ―――――――――――――
委員の異動
四月十五日
 辞任         補欠選任
  奥谷  通君     原田 義昭君
  松島みどり君     金子 恭之君
  森  英介君     浅野 勝人君
  加藤 公一君     松野 頼久君
  桝屋 敬悟君     斉藤 鉄夫君
  山谷えり子君     熊谷  弘君
同日
 辞任         補欠選任
  浅野 勝人君     森  英介君
  金子 恭之君     松島みどり君
  原田 義昭君     奥谷  通君
  松野 頼久君     加藤 公一君
  斉藤 鉄夫君     桝屋 敬悟君
  熊谷  弘君     山谷えり子君
    ―――――――――――――
四月十一日
 食品衛生法等の一部を改正する法律案(内閣提出第二八号)
 健康増進法の一部を改正する法律案(内閣提出第二九号)
同日
 社会保障の拡充、将来への安心と生活の安定に関する請願(逢沢一郎君紹介)(第一五七三号)
 同(西川太一郎君紹介)(第一六四五号)
 同(林義郎君紹介)(第一六四六号)
 同(阿部知子君紹介)(第一六八五号)
 同(阿部知子君紹介)(第一七〇八号)
 同(加藤公一君紹介)(第一七〇九号)
 同(武藤嘉文君紹介)(第一七一〇号)
 同(山花郁夫君紹介)(第一七一一号)
 パーキンソン病患者・家族の療養生活の質向上に関する請願(菅直人君紹介)(第一五七四号)
 同(石毛えい子君紹介)(第一六四八号)
 同(阿部知子君紹介)(第一六八六号)
 同(川田悦子君紹介)(第一六八七号)
 同(志位和夫君紹介)(第一七一二号)
 健保三割負担など医療費負担増の凍結・見直しに関する請願(小沢和秋君紹介)(第一五七五号)
 同(児玉健次君紹介)(第一五七六号)
 同(土井たか子君紹介)(第一五七七号)
 同(葉山峻君紹介)(第一五七八号)
 同(細野豪志君紹介)(第一五七九号)
 医療改悪実施と社会保障改悪反対、充実に関する請願(小沢和秋君紹介)(第一五八〇号)
 医療改悪の実施反対等に関する請願(山口わか子君紹介)(第一五八一号)
 腎疾患総合対策の早期確立に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第一五八二号)
 同(石田真敏君紹介)(第一五八三号)
 同(江田憲司君紹介)(第一五八四号)
 同(江藤隆美君紹介)(第一五八五号)
 同(遠藤和良君紹介)(第一五八六号)
 同(小沢和秋君紹介)(第一五八七号)
 同(小野晋也君紹介)(第一五八八号)
 同(尾身幸次君紹介)(第一五八九号)
 同(大原一三君紹介)(第一五九〇号)
 同(金子恭之君紹介)(第一五九一号)
 同(上川陽子君紹介)(第一五九二号)
 同(川内博史君紹介)(第一五九三号)
 同(木島日出夫君紹介)(第一五九四号)
 同(小池百合子君紹介)(第一五九五号)
 同(小西理君紹介)(第一五九六号)
 同(児玉健次君紹介)(第一五九七号)
 同(今田保典君紹介)(第一五九八号)
 同(左藤章君紹介)(第一五九九号)
 同(佐々木秀典君紹介)(第一六〇〇号)
 同(佐田玄一郎君紹介)(第一六〇一号)
 同(佐藤勉君紹介)(第一六〇二号)
 同(坂本剛二君紹介)(第一六〇三号)
 同(下地幹郎君紹介)(第一六〇四号)
 同(杉浦正健君紹介)(第一六〇五号)
 同(田中和徳君紹介)(第一六〇六号)
 同(高木毅君紹介)(第一六〇七号)
 同(竹下亘君紹介)(第一六〇八号)
 同(達増拓也君紹介)(第一六〇九号)
 同(土肥隆一君紹介)(第一六一〇号)
 同(中川正春君紹介)(第一六一一号)
 同(中林よし子君紹介)(第一六一二号)
 同(西村眞悟君紹介)(第一六一三号)
 同(原田義昭君紹介)(第一六一四号)
 同(日野市朗君紹介)(第一六一五号)
 同(藤井孝男君紹介)(第一六一六号)
 同(古屋圭司君紹介)(第一六一七号)
 同(細川律夫君紹介)(第一六一八号)
 同(細野豪志君紹介)(第一六一九号)
 同(牧野聖修君紹介)(第一六二〇号)
 同(松下忠洋君紹介)(第一六二一号)
 同(松宮勲君紹介)(第一六二二号)
 同(松本善明君紹介)(第一六二三号)
 同(三井辨雄君紹介)(第一六二四号)
 同(御法川英文君紹介)(第一六二五号)
 同(村井仁君紹介)(第一六二六号)
 同(村上誠一郎君紹介)(第一六二七号)
 同(村田吉隆君紹介)(第一六二八号)
 同(八代英太君紹介)(第一六二九号)
 同(山口俊一君紹介)(第一六三〇号)
 同(横光克彦君紹介)(第一六三一号)
 同(安住淳君紹介)(第一六四九号)
 同(石原健太郎君紹介)(第一六五〇号)
 同(稲葉大和君紹介)(第一六五一号)
 同(臼井日出男君紹介)(第一六五二号)
 同(江田憲司君紹介)(第一六五三号)
 同(遠藤武彦君紹介)(第一六五四号)
 同(岡下信子君紹介)(第一六五五号)
 同(佐々木秀典君紹介)(第一六五六号)
 同(斉藤鉄夫君紹介)(第一六五七号)
 同(自見庄三郎君紹介)(第一六五八号)
 同(七条明君紹介)(第一六五九号)
 同(菅義偉君紹介)(第一六六〇号)
 同(田野瀬良太郎君紹介)(第一六六一号)
 同(高橋嘉信君紹介)(第一六六二号)
 同(津島雄二君紹介)(第一六六三号)
 同(土屋品子君紹介)(第一六六四号)
 同(中川秀直君紹介)(第一六六五号)
 同(中谷元君紹介)(第一六六六号)
 同(萩野浩基君紹介)(第一六六七号)
 同(原口一博君紹介)(第一六六八号)
 同(福井照君紹介)(第一六六九号)
 同(細川律夫君紹介)(第一六七〇号)
 同(堀之内久男君紹介)(第一六七一号)
 同(三井辨雄君紹介)(第一六七二号)
 同(望月義夫君紹介)(第一六七三号)
 同(山口壯君紹介)(第一六七四号)
 同(山口わか子君紹介)(第一六七五号)
 同(吉田幸弘君紹介)(第一六七六号)
 同(江田憲司君紹介)(第一六八九号)
 同(江田康幸君紹介)(第一六九〇号)
 同(金田誠一君紹介)(第一六九一号)
 同(川田悦子君紹介)(第一六九二号)
 同(黄川田徹君紹介)(第一六九三号)
 同(今野東君紹介)(第一六九四号)
 同(重野安正君紹介)(第一六九五号)
 同(高木義明君紹介)(第一六九六号)
 同(棚橋泰文君紹介)(第一六九七号)
 同(中井洽君紹介)(第一六九八号)
 同(三井辨雄君紹介)(第一六九九号)
 同(宮下創平君紹介)(第一七〇〇号)
 同(山谷えり子君紹介)(第一七〇一号)
 同(荒巻隆三君紹介)(第一七一四号)
 同(今村雅弘君紹介)(第一七一五号)
 同(岩屋毅君紹介)(第一七一六号)
 同(穀田恵二君紹介)(第一七一七号)
 同(齋藤淳君紹介)(第一七一八号)
 同(山本公一君紹介)(第一七一九号)
 あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律第十九条の改正に関する請願(山口わか子君紹介)(第一六四七号)
 医療改悪と社会保障改悪反対、充実に関する請願(阿部知子君紹介)(第一六八二号)
 医療改悪と社会保障の改悪反対、充実に関する請願(阿部知子君紹介)(第一六八三号)
 医療費負担増の見直しに関する請願(羽田孜君紹介)(第一六八四号)
 同(羽田孜君紹介)(第一七二〇号)
 パートタイム労働法の実効ある改正に関する請願(阿部知子君紹介)(第一六八八号)
 同(阿部知子君紹介)(第一七一三号)
 健保三割負担など医療費負担増の見直しに関する請願(永田寿康君紹介)(第一七〇六号)
 同(山花郁夫君紹介)(第一七〇七号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 雇用保険法等の一部を改正する法律案(内閣提出第八号)
 雇用保険の財政の安定化及び求職者等に対する能力開発支援のための緊急措置に関する法律案(城島正光君外四名提出、衆法第四号)
 食品衛生法等の一部を改正する法律案(内閣提出第二八号)
 健康増進法の一部を改正する法律案(内閣提出第二九号)


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――
中山委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、雇用保険法等の一部を改正する法律案及び城島正光君外四名提出、雇用保険の財政の安定化及び求職者等に対する能力開発支援のための緊急措置に関する法律案の両案を一括して議題といたします。
 この際、お諮りいたします。
 両案審査のため、本日、政府参考人として厚生労働省労働基準局長松崎朗君、職業安定局長戸苅利和君、職業能力開発局長坂本由紀子君、社会・援護局長河村博江君及び社会保険庁次長伍藤忠春君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
中山委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
中山委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。加藤公一君。
加藤委員 おはようございます。民主党の加藤公一でございます。
 先週の質疑の折になかなか理解し切れなかった部分がございますので、その疑問をまず確認させていただきたいというふうに思っております。
 冒頭、地域雇用受皿事業特別奨励金というこの事業についてお伺いをいたします。
 これは先日も申し上げたんですけれども、親会社がリストラをして、子会社がそのリストラをされた方々を採用しても、この奨励金は支給をされるという制度になっておりますから、心ない経営者がいれば制度を悪用することも可能になってしまうのではないかというお話を申し上げまして、局長から、この点については何らかの方法を検討しなければいけないという御答弁をいただいたんですが、何らかではわかりませんので、具体的にどうやってこの悪用を防止されるおつもりか、その点からまず伺いたいと思います。
戸苅政府参考人 地域雇用受皿事業特別奨励金でありますが、これは、子育てサービス等の地域に密着したサービス事業を行う法人を新たに設立する、それによって非自発的な失業者の方の雇用機会を創出していこうというものでありまして、今御質問のとおり、これが安易なリストラの受け皿になるということを防止する方策を講じる必要はあるだろうというふうに思っております。
 具体的にどうするかということはもう少し検討せぬといかぬと思いますが、先日御質問がございまして、今考えておりますのは、例えば、現在の内容からいいますと、営業譲渡とか企業分割とかアウトソーシングは、これは認めませんよということになっておりますので、リストラを行おうとする分野、同じ事業分野で事業を行うような場合というのはまず対象にならぬだろうというふうに思います。
 そういった意味で、他の事業を行うことによって、リストラ対象事業そのままの事業ではもう雇用の維持は不可能だ、新しい事業に受け皿をつくって、こういうふうな場合には、これは認めることも合理的ではないかというふうに思っております。
 そのあたりの判断をどうするかということについては、今一つ考えておりますのは、当該事業所の過半数組合がある場合は、過半数組合がそれを了としているというか了解しているというふうな場合、組合員の雇用の維持のためにリストラはやらざるを得ないけれども、新たな分野で受け皿事業をつくってそこで雇用が維持される、それならやむを得ないのじゃないか、あるいはそれが必要だということを過半数代表の組合が了解しているというふうな場合であれば、これは我々としても助成することに問題はないんじゃないかというふうに思っています。
 そういった意味で、一つの要件として、過半数組合が、当該リストラ及びその受け皿事業をつくって、そこで新たな雇用機会をつくるということについて了解している場合というふうなことを要件にできないかなというふうなことを今考えております。詳細はさらに詰めたいと思っております。
加藤委員 すべての場合をここで列挙してくださいと言ってもそれは難しいでしょうから、今のは一つの考え方というか一つの基準だと思いますので、それを今後さらに詰められるということであれば、早急にまとめていただいて、ぜひそれを、委員会はもうきょうで終わりますけれども、教えていただきたい、御報告をお願いしたいと思います。
 さらに、この奨励金についてもう一点伺いますが、これが地域貢献事業ということに限定をされているんですけれども、その十分野を見ますと、個人向け、家庭向けサービスというのと、片や企業・団体向けサービスというのがありまして、世の中に存在するビジネスは大抵、このいずれかに含まれるということにほぼなるんじゃないかと思いまして、どういう基準でこの十分野というのを設定されたかというのを少しわかりやすく御説明いただきたいというふうに思います。そうでないと、一体何のためにこの基準をつくったのかということになりますので、まずそこから教えてください。
戸苅政府参考人 地域雇用受皿事業特別奨励金は、先ほど申し上げましたとおり、地域における雇用の受け皿づくりを進めようということでありますが、これにつきましては、雇用創出効果が見込まれる分野、それからかつ地域住民の生活に密着してその向上に資する分野、そういった分野を対象にしようということで設けたものであります。
 具体的に申し上げますと、今後の雇用創出が期待できる分野について経済財政諮問会議が平成十三年の五月にまとめました、ちょっと題名は長いのですが、サービス部門における雇用拡大を戦略とする経済の活性化に関する専門調査会緊急報告というのがございまして、これは一般に五百三十万人雇用創出と言われている分野であります。これにつきまして、雇用拡大余地が大きいサービス分野である、しかも住民の方々の生活の向上につながる分野ということで九分野が示されておりまして、今回の地域雇用受皿事業特別奨励金におきましてはその九分野を踏まえて対象にしているということが一つございます。
 それからもう一つは、前回も御質問ございましたが、地方公共団体の行政分野、これも地域住民の生活に密着し、かつ地域住民のためのサービス等の事業であるということでありますが、これを自治体が民間にアウトソーシングするということによって、雇用の創出効果の大きな事業が見込まれるということもございまして、そういった意味で、地方公共団体からのアウトソーシングについてもこの事業に含むということで、合計十分野ということにいたしたところでございます。
加藤委員 今、地方公共団体からの受注事業ということについても御説明をいただきましたけれども、アウトソーシングをイメージして、それに限定をするということであれば、本来であればそう書いていただいた方がいいんじゃないかなという気がいたします。大くくりな書き方をされますと、この前も御質問いたしましたが、どうも本末転倒ではないかという疑問を与えますので。今の件はそれで了解をしたいと思います。
 次に、雇用保険の高年齢求職者給付金の件について御質問をしたいと思います。
 そもそも雇用保険は、求職者給付の件ですけれども、失業されてしまった方が、その間の生活を安定させて安心して就職活動をして、早期に再就職をしていただくということが目的であろうかと思いますので、そう考えますと、これは給付を減らす方向の話ですから厳しい話にはなるんですが、この高年齢求職者給付金というのは実は必要ないという考え方もあるのではないか。つまりは、年金を受給されている皆さんにとっては、あえてそれに加えて失業給付を手当てしなくてもいいんじゃないかという議論もあるのではないかと思います。
 一方では、現役世代で、例えば住宅ローンがあったりとか子育て中だとかいう、いわゆる家計の経費のかかる世代の皆さんには今回の改正は大変厳しいものになるわけですから、これは、雇用保険の制度全体を見てバランスを考えたときに、高年齢求職者給付金については廃止をするとか、あるいはさらに見直しをするとかいう考えがおありかどうか、大臣の御見解を伺いたいと思います。
坂口国務大臣 今委員がおっしゃいましたことは、総論的には私もそういうことだろうというふうに思っております。
 六十五歳以上の皆さん方の就職というのは、そんなにたくさん就職依頼があるわけではありませんし、また、あったといたしましても非常に多様でございまして、いわゆる勤務日数の問題でありますとか、あるいはまた仕事の内容も非常に多様になっていることも事実でございます。また、御指摘のように、いわゆる年金生活をされる方が非常に多いということも事実でございます。
 しかし、それで何もなくてもいいかといえば、今までよりも日数等を減らしまして、長くて五十日間、今まで七十五日間のを五十日間というふうに短くいたしまして、そして一応その皆さん方に対応しよう、こういうことにいたしております。全体として厳しいときでございますので、高齢者の皆さん方にはそうしたことも御理解をいただきたいというふうに思っている次第でございます。何もなしにするということになってしまいますと、急な変化でまた若干御迷惑をかけるということもございますので、非常に日数等を減らして、そして対応させていただくということにした次第でございます。
加藤委員 もちろん、私からしたって、それはないよりはあった方がいいし、給付されないよりはしていただいた方がいいんですけれども、雇用保険の財政自体が厳しくて、原因はこの前追及をさせていただきましたけれども、現実の問題として雇用保険の財政が厳しくなって、今回、給付金を削減するという状態の中でどうバランスをとるかという議論だと思うんですね。
 これは、雇用保険だけじゃなくて、年金も含めて社会保障全体を見たときに、やはり世帯主で家計を支えていらっしゃる方が失業したときの負担、これが一番厳しいというふうに思いますし、その方々に一番手厚くサポートをするべきだろうというふうに私は思うものですから、それは、ないよりはあった方がいいし、給付していただきたいんですけれども、しかし、全体のバランスを考えたときに、年金も受け取り、なおかつ高年齢求職者給付金も受け取りという方をそのままにしておくよりは、確かに減らしてはいらっしゃいますけれども、そのままにしておくよりは、何も我々の世代のことだけ言うわけじゃありませんけれども、三十代、四十代、今家計が一番厳しい方々を少し手厚くしていただいた方がいいのではないか。
 これは理想からすればかなり厳しい話ではありますけれども、ぎりぎりの線ではそういう選択をした方がいいのではないかというふうに私は思っているわけでありまして、要は、雇用保険で何歳から何歳までを対象にするのかという議論にもなるかと思うんですが、保険財政がこのまま簡単によくなるとは到底思えないわけですから、今後、この高年齢求職者給付金について、今回のさらに先の話ですけれども、廃止も含め検討されるお気持ちがあるやなしや、もう一度だけ大臣に伺いたいと思います。
坂口国務大臣 御趣旨は十分理解するところでありますし、尊重したいというふうに思っております。今後、全体の社会保障の中でも考えていかなければならない問題だというふうに思っている次第でございますので、貴重な御意見として聞かせていただきました。
加藤委員 もちろん御理解いただいたと思いますが、何でもかんでも給付を減らしてくれと言っているわけでは決してありませんで、一番厳しい方々に手厚いサポートをお願いしたいという趣旨で、であればこういう案もあるんじゃないですかということを申し上げておきたいと思います。
 続いて、雇用保険の三事業の方の件についてお話を伺いたいと思うんですが、これは私、従前より問題意識を持っておりまして、本当にこのままでこの三事業はいいんだろうかと常々疑問に思っておりました。
 当然、その中身についても自分なりに研究、勉強はさせていただきましたけれども、いかんせん、お金の流れも複雑でございますし、多種多様な事業をされていて、本当にそれがどの程度の効果を上げているのかということがなかなか私どもでは簡単に把握できません。
 先日の質疑の中でも、副大臣から、政策については常に振り返って評価をして検証するべきだという御発言はあったかと思いますが、まさにそのとおりでありまして、この雇用保険の三事業についても、常にその費用対効果というものを把握していくべきではないかというふうに思っているところであります。
 現状、この雇用保険の三事業について、どの程度その費用対効果について把握をされているのか。もしされているのであれば、御説明をいただきたいというふうに思います。
戸苅政府参考人 雇用保険の三事業につきましては、経済情勢、社会情勢の変化に応じて適宜見直しをし、新たな政策をスクラップ・アンド・ビルドしながら設けているということでございます。
 今回の雇用保険法の改正にあわせまして、本体給付の方も思い切った重点化、効率化、見直しを図ったということとあわせまして、雇用保険の三事業についても、従来から実績の上がっていないもの、それから思ったような効果が出ていないもの、そういったものについては思い切って廃止をし、現在の雇用情勢に沿った新たな事業を追加する等の見直しをしているところであります。
 具体的に申し上げますと、本数も、これまで四十六本あったんですが、それを三十五本に減らす。それから、今御質問のありましたとおり、同じような助成金が多いということで利用者の方に非常にわかりにくいということもありますので、これもなるべく統合して、利用者の方にわかりやすく、かつ積極的に利用していただけるものにということで見直したところであります。
 現在、政策評価ということが非常に大きな課題になっておりますので、雇用保険の三事業については、今後はさらに、必要に応じて利用者の方のアンケート調査を行うなど、いろいろな手法を駆使して、より効果的な政策評価を図るようにしたいというふうに考えています。
加藤委員 三事業の補助金、助成金等の効果というものを資料でちょうだいしたんですが、これだけお金を使ってこういう事業をやって、これだけの効果がありましたというものが数字で報告されているものというのはないんですよね、実際見たら。ほとんど、事業概要が説明してあって、その事業概要の成果が上がったというのが成果のところに書いてあるみたいな、一体これのどこが効果の把握なのかというような資料しかありませんで、それはもちろん、何人これで就職に成功したとか、何人の雇用が生まれたというのが確実につかめない事業もあるとは思いますけれども、しかし、いかんせん、このままでは、年間五千億からのお金を使っている三事業としては、お金の使い方として心もとないと思わざるを得ません。
 そもそも、助成金や補助金が後追い支給になっていて、果たしてどの程度効果があるのかということは疑問視する向きもありますし、私は実はそう思っておりますから、抜本的に一度、今、局長が、アンケートをとってとかいうお話がありましたけれども、ここまで給付を下げて保険料をまた上げなきゃいけないというほど財政の厳しいときでありますから、それは確かに三事業のお金は企業側だけが負担しているとはいっても、その千分の三・五だって決して安い額じゃありませんから、これを改めて費用対効果を検証する、厳しくデータをとって検証するという御意思、あるかないか、大臣に伺いたいと思います。
坂口国務大臣 確かに、雇用三事業はどちらかといいますと失業予防の方に力点が置かれているわけでございますので、なかなかその効果というものについて明確な表現ができにくいというところは、性格上、私もあると思っております。
 しかし、そうはいいますものの、やはり全体として非常に複雑になり過ぎているということも事実でございまして、御利用いただきます皆さん方から見て、簡潔明瞭、わかりやすい体制にしなければなりませんし、その中で効果の少ないものは、これはもうスクラップ・アンド・ビルドで減らしていく、そして、本当に皆さん方に御利用いただけるものだけを残していく、そして、それに対するどれだけの効果があったのかということを明確にしていく、これは当然のことながら大事なことでございますので、そういうふうな大きな方向性でひとつやっていきたいというふうに思います。
加藤委員 ぜひ検証はしていただいて、実際、検証してみたら、これとこれは役に立って、これはだめとかという色分けができれば、役に立っているところだけお金を使えばいい話ですし、私、個人的には、三事業の負担というのは企業側から外して、企業の負担を軽くした方がいいんではないか、合理的なんではないかという気持ちはありますが、検証していただいて有効だということがわかれば、それはそれでいい話でもありますので、ぜひぜひお願いをしたいと思います。
 ちょっと時間が迫っておりますので、では、最後に一つだけ伺いたいと思います。
 三事業にも関係いたしますが、雇用・能力開発機構、今度独法化されますけれども、この業務が見直しをされております中で、平成十三年度にその業務の実績がなかったにもかかわらず、依然廃止をしないということになっているものがあります。
 例えば、勤労者財産形成促進業務ということの中に、財形基金助成金とか財形基金奨励金とか財形共同住宅用住宅資金とかあるんですが、これは私が資料を見ただけですので、何か理由があるのかもしれませんが、実績がなかったのに廃止をしないこととなっている理由、お伺いしたいと思います。
坂口国務大臣 確かに、今おっしゃいました財形基金助成金、それから財形基金奨励金、それから財形共同住宅用住宅資金、これらのものは十三年度なかったわけであります。十四年度もなかったということであります。
 これは、いわゆる皆さん方に御理解をいただくことを怠っていたためになかったものなのか、それとも、そうではなくて、本当にもうこの需要がなくなっているのかということの見定めをしなければならないというふうに思っております。今年度いっぱいだけ猶予をいただいて、本当にもうこれがないものならば、廃止をしたいというふうに思っております。ことし、そうしたことで御意見を伺い、内容につきましてもお示しを申し上げて、しかる後に決断をしたいというふうに思っております。
加藤委員 では、ぜひことし一年の結果を見て御判断いただくということにお願いをしたいと思います。
 終わります。ありがとうございました。
中山委員長 次に、大島敦君。
大島(敦)委員 民主党の大島敦です。
 それでは、雇用保険の加入状況から伺いたいと思います。
 健康保険や厚生年金など社会保険料、雇用保険や労働者災害補償保険など労働保険料の徴収状況と、それぞれの未納率についてお知らせください。
戸苅政府参考人 平成十三年度の状況を申し上げますと、政府管掌健康保険が収納率が九六・九%でございます。未納率はしたがって三・一%でございます。それから、厚生年金が九七・六%、未納率が二・四%です。それから、労働保険が九七・七%、未納率二・三%、こういう状況でございます。
大島(敦)委員 ただいまの数字を伺いますと、収納率についてはそんなに低くなくて、九七%前後ですから、結構悪くない数字だとは認識できるんですけれども、しかしながら、適用事業所でまだこちらの社会保険あるいは労働保険の対象となっていない未申請、未申告の事業所があるかと思うんですけれども、その点の認識についてお知らせください。
戸苅政府参考人 確かに、御質問のとおり、本来社会保険に加入すべき事業所でありながら、あるいは労働者を加入させるべきでありながら、加入していないという状況はなお見られるわけであります。
 一つは、特にパートタイムの方などについては、労働保険あるいは社会保険の保険料負担を、特に本人負担がもったいない、こういう労働者の側の気持ちが一方にある。それから、一方には事業主の側が、やはり社会保険料、労働保険料の負担が経営上かなりの負担になる、こういう認識もあり、労使の利害といいますか思いが一致して適用が進まないという面が一つございます。
 それからもう一つは、最近、ベンチャービジネスですとかというような形でいろいろ新たに起業される方、そういった方について、社会保険あるいは労働保険に加入する必要があるんだというあたりの認識が低い方も少なからず見られる、こういったことが原因かなというふうに思います。
 御指摘のとおり、社会保険料、労働保険料の未納の問題よりも未適用の問題の方が我々にとっては重要な問題だろうというふうに思っております。
大島(敦)委員 そうしますと、未適用の事業所の加入促進についての国の取り組みについてはどうなっているでしょうか。
戸苅政府参考人 まず、労働保険について申し上げますと、労働基準監督署それからハローワークが連携いたしまして、未適用の事業所を的確に把握しようということでやっております。それから、広報等を充実しまして、事業主に自主的な加入を促している。それから、中小零細企業につきましては、労働保険事務組合というのが労働保険ございますが、労働保険事務組合を活用いたしまして適用促進のための事業を行っているということ等々、あらゆる機会をとらえて未手続の解消に努めているところであります。
 それから、もう一つ申し上げますと、雇用保険と厚生年金保険の適用事業所に関するデータを突合するということによって未適用の事業所を的確に把握するというふうなこと、それから、社会保険と労働保険の徴収事務の一元化に関しまして、ことしの十月に社会保険・労働保険徴収事務センターを設けることにいたしておりますが、そこにおきまして、両保険一緒に、社会保険と労働保険と一緒に、納付の督励あるいは差し押さえなどの滞納処分を行う、それから、事業所説明会も両保険についての適用の勧奨を行うというふうなことで、厚生労働省になったということもありますので、社会保険、労働保険、それぞれの分野独自にやるんじゃなくて、両方の分野も突合しながら、効率的、効果的な適用促進に努めたいというふうに考えております。
大島(敦)委員 今、政府の方は、未適用の事業所がどのくらいの割合かというのは統計データとしてお持ちでしょうか。
戸苅政府参考人 これは、事業所の数を事業所センサスで把握するとか、いろいろな把握の仕方もありますが、ただ、労働保険あるいは社会保険、それぞれに当然に適用になる事業所の範囲というのがあるわけですけれども、それと事業所センサスの数字とが必ずしもうまくリンクして数字を試算することが難しいということもあって、正確に今、未適用の事業所の割合はどのくらいだというふうなことをちょっと申し上げられる状況ではないんじゃないかと思います。
大島(敦)委員 企業というのは、開業してから十年経過するまで生き残る企業、十年たったら一人前だと言われておりますから、開業した直後の企業の数を把握することは、今回の徴収について大きな意味を持つかどうかというのは私も考えるところなんですけれども、ただ、三年から五年経過した企業というのは、今後ともしっかりと仕事をしていただける、あるいは企業が存続することが大きく期待されます。
 したがいまして、今政府参考人の方から御答弁ありましたとおり、ここの未適用の事業所について、それは経営者の意識の問題もあるかと思います。経営者としては、特にベンチャー企業の方、会社が間もないところというのは、それどころではないという意識もあるかと思うんですけれども、これは社会に企業が参加する一つのコストでもありますので、そこのところの認識をまず広めていただくことと、あとは加入促進について地道な活動を続けられることをお願い申し上げます。
 その中で、社会保険労務士さんが加入促進に携わっているというお話も聞くんですけれども、その辺についてはどういうふうになっているんでしょうか。
松崎政府参考人 労働保険の加入促進につきましては、先ほど安定局長からもございましたように、いろいろな機会をとらまえてやっております。
 そういった中で、社労士さんの中にも、そういったことで示唆していただいている方もおりますし、また社労士さんの中には事務所で労働保険事務組合というものをお手伝いしていただいている方もおられますので、そういったことでいろいろ御支援いただいているという状況がございます。
大島(敦)委員 今局長の方からお答えのございました労働保険事務組合なんですけれども、今回ペイオフが延期されまして、私も急いでいるわけではないんですけれども、ペイオフが延期されないのであれば今国会の冒頭に質問しようと考えていたことがありまして、銀行がペイオフをされたときに、労働保険事務組合が銀行に預けてある預金というのは保護されるのか保護されないのか、一千万円までなのか、その辺について厚生労働省として調査されたことはございますでしょうか。
松崎政府参考人 御質問の、調査したことがあるかないかに対しましてお答え申し上げれば、端的に言って調査したことはございません。
 ただ、ペイオフにつきましては、今御質問のように延びたことと、それからさらに、十七年の四月からペイオフ実施後におきましても、いわゆる決済用口座につきましては全額保護となっておりますので、そちらへの移行も含めて、今後指導なり助言といったものを、全国労働保険事務組合連合会、そういったところと連携をとりながら進めていくべきじゃないかというふうに考えております。
大島(敦)委員 そうしますと、確認をちょっとしたいんですけれども、もう一度確認のために御答弁ください。
 労働保険事務組合の今の預金、銀行に預けてある労働保険料については、決済口座ということで保護されるという認識、今後とも、ペイオフを銀行がされたとしてもその口座だけは保護される、そういう認識でよろしいでしょうか。
松崎政府参考人 昨年十二月に改正されました預金保険制度におきましては、ただいま申し上げましたように、ペイオフ実施後につきましても、当座預金等利息のつかない口座につきましては全額保護されるということになっておりますので、そちらを利用していただければ全額保護ということになると考えております。
大島(敦)委員 そうしますと、口座を移すという行為が発生するかと思うんですけれども、私も詳しくは伺っていないんですけれども、今の銀行の口座を移しかえるということについても、政府としては柔軟に対応するというお考えでよろしいでしょうか。
松崎政府参考人 繰り返しになりますけれども、ペイオフ実施後におきましてもきちんと保護されるようにということで、利息のつかない決済口座の方へ一括して移していただくということは助言等をしていきたいというふうに考えております。
大島(敦)委員 あともう一つ、特に中小企業などでは、倒産とか解雇に遭遇して初めて雇用保険に未加入であることがわかるケースが多いと聞いております。
 大企業ですとこれは、社会保険、労働保険に入ることは、当然のごとく入っていますから、安心して生活して、倒産、解雇があったときに十分な給付、今の法律で決まっている給付を受けられる。しかしながら、中小零細ですと、従業員としては加入してある前提で会社に勤めていまして、五年とか十年勤めた後に倒産したり解雇があった場合に、そのとき初めて雇用保険に未加入であることがわかるケースが多いと聞いておりますので、資格取得を本人に通知する仕組みの徹底など、被保険者資格の確認を進めることが大切かと思うんですけれども、保護の強化をするためにどのような手だてを政府としては考えられておりますでしょうか。
鴨下副大臣 雇用保険の被保険者資格取得手続については、これは事業主が法第七条の規定によりまして、労働者を雇用した場合には雇用保険の被保険者になったことを公共職業安定所長に届けなければならない、こういうようなことにはなっているわけでありますけれども、ある意味で、先生今おっしゃっているような事案を防止するために、一つは、公共職業安定所において事業主の説明会などさまざまな周知広報をする、こういうようなことでありますし、それから、昨年の九月から、労働者がみずからの雇用保険加入手続がなされているか否かについて直接公共職業安定所に確認のための照会を行い、確認結果について文書回答を得ることができる、こういうような手続を設けたところであります。
 またさらに、今回の法改正にあわせて、事業主が被保険者資格取得手続を行った際に、被保険者に対し被保険者証またはその控えを事業主から交付する仕組みを導入する、こういうことを予定しておりまして、これらを周知徹底していくことが、言ってみれば、御指摘のような事案ができるだけ少なくなる、こういうようなことにつながるのではないか、こういうふうに思っております。
大島(敦)委員 ぜひここのところは、これは働く人、従業員、労働者にとっての権利意識の問題もあるかと思います。自分が社会保険あるいは労働保険に入っていることを確認して勤めるということも大切かと思うんですけれども、そうはいっても、なかなかそこまでの意識が高まってきているとは思えませんので、政府の方からも積極的なアプローチをお願いいたします。
 続きまして、緊急地域雇用創出特別交付金についてお伺いしたいんですけれども、同交付金のこれまでの経緯について御説明してください。
 これは、前回は緊急地域雇用特別交付金であったものが、雇用と特別の間に創出がつきまして、現在は緊急地域雇用創出特別交付金になっているかと思います。この辺、同交付金は年間どのくらい交付されているのか、増額されたのか、そのところについてわかりやすく御説明ください。
戸苅政府参考人 まず、緊急地域雇用特別交付金でございますが、これは平成十一年の補正予算で設けたものでございます。当時、失業率が四%台の後半を毎月〇・一ポイントずつ上がっているというふうな状況の中で、臨時的な雇用就業機会の創出を図ろうということで設けられたものでございます。これについては、平成十三年度末までの緊急措置ということで設けたものでございますが、この事業につきましては、平成十三年度までの予算として二千億円、これを都道府県に交付いたしまして、約三十一万人の新規雇用が創出されたというところでございます。
 その後、平成十三年度に入りまして、失業率が五%に迫るという状況になったということを踏まえ、平成十三年度の第一次補正予算によりまして、緊急地域雇用創出特別交付金事業、これを設けたところでございます。
 この事業につきましては、従前の緊急地域雇用特別交付金事業の要件に加えまして、例えば、事業費に占める人件費割合がおおむね八割以上であること、あるいは失業者の雇い入れ割合がおおむね四分の三以上であること、それから都道府県あるいは市町村に対して国として雇用創出機会の多いと思われる推奨事例案を提示したこと等々が新たな特徴でございます。そういったことによって、従前の交付金事業よりもより雇用創出効果が高くなるようにというふうなことで要件等を追加したものでございます。
 これにつきましては、平成十六年度末までの事業として創設されまして、予算につきましては、三千五百億円を都道府県に交付いたしまして、平成十三年度、これは平成十四年の一月から三月まででございますが、これにつきまして約二万三千人、それから平成十四年度におきましては約十四万人の新規雇用の創出を見込んでいるということでございます。
 それからさらに申し上げますと、昨年の十二月の二十日から、推奨事例の追加、それから、雇用期間六カ月でございますが、それをさらに六カ月更新可能とする事業内容の追加等を行いました。さらに、平成十四年度の補正予算によりまして八百億円の積み増しをし、これについては各都道府県に既に交付をしているということでございます。
 なお、補正予算で行いました際に、従来の事業に加えまして新たに、小規模企業への自治体からの事業委託による雇用創出、これも新たなメニューとして加えたということでございます。
大島(敦)委員 そうしますと、今の数字を足して割ると、毎年大体一千億円から一千五百億円ぐらい、今の足元ですと一千五百億円ぐらいが年間に各地方公共団体に割り当てられている、そういう理解でよろしいでしょうか。
戸苅政府参考人 各都道府県に対します交付の考え方といたしましては、当該都道府県の失業者の数あるいは雇用情勢の悪化の度合い、そういったことを勘案して配しておりまして、労働者の数あるいは失業者の数の多い東京、大阪と、それからそういった数は少ない例えば高知ですとかあるいは鳥取ですとか、そういったところとこれは交付した額にはかなりの差がありますが、四十七で平均しますと今おっしゃったようなことになるのかなと思います。一年間では大体千五百億前後、こういったことだろうと思います。
大島(敦)委員 今の政府参考人の答弁を伺いますと、大枠の方針については政府として決めている、個々の具体的な運用については各都道府県に任せていると理解しているんですけれども、この効果なんです。一千五百億円が年間各都道府県に割り当てられるものですから、具体的な効果についての検証作業というのはどのように行っているんでしょうか。
戸苅政府参考人 交付金事業の各都道府県ごとの実施状況につきましては、年度ごとに事業計画書をあらかじめ提出していただいております。その事業計画が交付金の制度の趣旨あるいは要件に合致しているかどうかということを一つは確認させていただいております。
 それから、あわせまして、事業計画の提出の際にヒアリングも行っておるところでありまして、ヒアリングに当たり、それぞれの県においてより雇用創出効果の大きい事業になるようにというふうなことで、助言あるいは相談等々を行っているということ、それから、その際に、他の自治体においてこういった効果の高い事業をやっているといったような好事例もお示しして、なるべく都道府県ごとに雇用創出のための交付金の事業のレベルが合うようにというふうな働きかけはしているというところであります。
 ただ、いかんせん交付金で各自治体に交付いたすものですから、最終的には自治体の地方自治の本旨がありますので、あとは自治体の判断ということになってしまうということであろうと思います。
大島(敦)委員 私が考えるに、これはたしか六カ月だったと思うんですけれども、緊急避難的に雇用を創出するということと、あと、各労働者、働いている人たちの能力を高めて前向きにお金を使っていくこととは大きく違いがあると思います。
 特に、地方公共団体では、都道府県の自立の問題もありますから、地域特性も踏まえて個々の施策を都道府県が出していく、これもいいことかとは思うんですけれども、国として一定の指針に基づいてお金を各都道府県の方に交付しているわけですから、やはり前向きな使い方が必要だと思います。緊急避難的な措置よりも前向きに、要は生きる交付金の使い方を進めていっていただきたいと思います。
 その点につきまして大臣にお伺いしたいんですけれども、この交付金のあり方について、これは現状と、現状がこれでいいのかどうか、あるいは今後とも進めていくのかどうか、その点について大臣のお考えをお聞かせいただければありがたいんですけれども、いかがでしょうか。
坂口国務大臣 この交付金の状況につきましては、幾つかの考えられる点があるというふうに思っております。
 一つは、やはり国が全国一律で行います雇用対策というものには一つの限界がある。したがって、それぞれの地域でやはり地域に見合った雇用対策というものをやっていただくということの重要性というものが一方であることも実は事実でございまして、その点からいくと、一つのテストケースだったというふうに思っております。
 ただ、地方もそれぞれ今まで自分たちのところで雇用対策ということを手がけた経験が少なかったものでございますから、地域による格差が非常に大きいというふうに思います。非常に効果的にお使いをいただいている、そして交付を受けられた方が次のステップに行けるように非常にうまく考えておみえになる地域もございますし、ただそういう金があるからとにかくまあ使おうという考え方のところもなきにしもあらずという気がいたしております。
 しかし、こういうことを乗り越えて、私は、地域地域に見合った雇用対策というものをやはり今後立てていく方向に向かっていくんだろう、その一つのテストケースではなかったかというふうに考えている次第であります。
 これから先の雇用対策、どちらかといえば、それぞれの地域に見合った雇用対策というものをつくっていただき、国の方がそれに協力をするという方向性の方が、方向性としては私は正しいというふうに思っております。しかし、その中で、今回のこの状況というものが、それが一〇〇%うまくいっているかというふうに言われますと、いろいろ反省点もあるということだ。しかし、方向性としては私はこういう方向に今後行かざるを得ないんではないか、ただし、中身につきましてはいろいろと検討する必要があるということだろうと思っております。
大島(敦)委員 大臣の今の御発言というのは非常に重い御発言だと思います。
 これは、交付金の事業のあり方と、もう一つは今後の雇用対策の組み方の問題。今までの雇用対策の組み方は全国一律でした。しかしながら、交付金事業によって、今試験的に国の中で事業を都道府県ごとに勉強、トライ、挑戦していただいているというお考えだと思います。
 今後とも、交付金事業のあり方について、やはり私は従業員あるいは労働者の自立という観点が必要かと思いますので、費用対効果をしっかりと、政府としてはお金を出していますから、そこのところを検証していただいて、効果的な、有効な使い方ができるようにお願い申し上げて、私の質問を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。
中山委員長 次に、城島正光君。
城島委員 おはようございます。民主党の城島でございます。
 先週に引き続きまして、若干の時間をいただいて質問をさせていただきたいと思います。きょうは時間が、私の持ち時間三十分ということでございますので、簡潔にお答えいただければというふうに思います。
 まず、弾力条項に関する質問をさせていただきたいんですけれども、この失業等給付の収支を見ますと、十四年度末の積立金残高が二千二百三十三億円と、極めて低い水準が見通しとなっております。現在、労働保険徴収法の規定に基づいて、昨年十月から弾力条項を発動して、保険料率を法律上の一・二%から一・四%に引き上げるという状況にあるということでありますが、今回の法案によると、これは私の最初の質疑の中でも質問あるいはポイントとして指摘をさせていただきましたけれども、十五年度及び十六年度につきましては、この労働保険徴収法の附則において、法律上の保険料率を一・四%として、弾力条項の発動によって一・六%に引き上げることも可能としているとなっているわけであります。
 そこで、確認をさせていただきたいのでありますが、現在の状況、この労働保険徴収法に定める弾力条項の発動要件を満たしているということでしょうか。どうでしょうか。
戸苅政府参考人 弾力条項につきましては、今委員御指摘のとおり、その年度の保険料の徴収額と国庫負担額、要するにその年度の総収入額でありますが、それと失業等給付費の差額、これは支出になるわけですけれども、それの差額、それをその年度末の積立金に加減した額、それとその年度の失業等給付費を比べまして、失業等給付費の方が多いという場合には、これは完全に赤字になるわけでありますので、その場合に、赤字というか、積立金を使っても赤字、こういった状況になるわけでありますので、そういった場合に発動できる、こういう仕組みになっております。
 具体的に補正予算ベースで平成十四年度末の状況を申し上げますと、積立金の残高は今御指摘のとおり二千二百三十三億円でありまして、その他補正予算ベースで計算いたしますと、失業等給付費の方がかなり上回るという状況でございまして、そういうことから申し上げますと、弾力条項の発動要件は満たされているということでございます。
城島委員 そこで、発動要件を満たしているということでありますが、この弾力条項は、失業等給付の収支の急激な変動に備えて、厚生労働大臣の職権によって、関係審議会に諮った上で、国会の議決を得ることなく緊急避難的に保険料率を改定する仕組みである、こうなっているわけであります。
 ところが、ここにあるんですけれども、昨年の十二月五日の与党三党合意という文書がありますが、ここでは「雇用保険の給付に支障を生ずるおそれがあるなど保険料率を変更しなければならない財政状況に立ち至ったときは、与党三党幹事長・政調会長に諮り、了解を得た上で、弾力条項に基づき〇・二%の範囲内で増率変更するものとする。」こういうふうになって、与党三党幹事長と政調会長の署名がある。弾力条項の発動要件、今申し上げましたようなこととこの与党三党合意、これは一体どういう位置づけになっているんでしょうか。
坂口国務大臣 弾力条項の発動は、これは法律的なものでございますし、与党の幹事長、政調会長の合意というのは、やはりそうはいうものの安易にやってはいけないよ、こういうことを示しているんだろうというふうに思っております。
 これは、法律の方がそれは優先することは事実だというふうに思いますけれども、しかし、十五、十六年におきましてはこの弾力条項は発動しない、現在のままでやっていくという決意でもって私も臨んでいるところでございます。
 万が一のときには三事業の方から借り入れを行うとかいったようなことも歯どめとしてつくってありますしいたしますので、このままでやっていけるように努力をしなきゃならない。また、これはいずれにいたしましても経済状況にも影響されるわけでありますから、発動しなくてもいいような経済状況をどうつくっていくかということがより大事なことでありまして、そうしたこと等もよくにらみながら、雇用保険をこの二年間の間は上げなくてもいいように、少なくともこの二年間はできるように努力をする、こういうことでやっていきたいというふうに思っている次第でございます。
城島委員 そうすると、この与党三党合意ということは、大臣、もう一度確認ですが、当然のことながら、この弾力条項の発動要件ということは決まっているわけですから、これに基本的には縛られることはない。しかし、これは与党三党の中の話だ、大臣としてはこれはやはりある程度尊重するということでしょうか。この辺、もう少し明確にお答えいただきたいと思います。
坂口国務大臣 尊重することは当然でございますけれども、そういうふうに発動しなくてもいい状況に持っていくということがより大事なことでありまして、我々としてはそういう決意でやっていかなければならないというふうに思っております。
城島委員 もちろん、こういう弾力条項を発動しなくていいような状況に持っていくというのは、失業率の改善とかいうことが中心になっていくと思いますし、今回の政府案ですと、財源というんでしょうか、財政再建というところが私は何度も申し上げているようにかなり中心的でありますから、そのことが結果として弾力条項の発動を、雇用政策の有効性と相まって発動しなくてもいいようになるようになれば一番いいと思いますが、しかし、現段階でも、発動要件そのものは満たしているというかなり厳しい状況にあるわけなんで、そこはやはり大臣おっしゃるような方向になるように最大限努力をしていただくということと、このわけのわからない与党三党合意ということの位置づけをぜひきちっともう少し明確にしておいていただきたいなというふうには思います。
 それで、今の失業情勢等はさらに悪化していくことも考えられるわけでありますが、仮に積立金がかなりなくなって底をついていく、そういう積立金がなくなるというか逼迫するような状況になった場合、雇用安定資金の臨時的使用、早期再就職者支援基金からの借り入れ、今ちょっと論議をさせていただきました弾力条項の発動、こういった手順があるわけでありますが、これは、どういった優先順位でこの繰り入れというんでしょうか、財政的にはやっていくことになるんでしょうか。
戸苅政府参考人 仮に積立金が底をついて、なお給付のために資金が必要であるといった場合には、まず、予備費がございますので、予備費を使用するというのが今の御質問の前にあるのではないかと思っております。大体、予備費が千九百億前後ございます。
 その後は委員の御質問のことになるわけですけれども、まず、同じ会計間ということが原則ではないかと思いますので、予備費を使ってなお不足という場合は、雇用安定資金の臨時的使用ということになろうかと思います。それでもなおまだ不足という場合には早期再就職者支援基金、これは一般会計の基金でございますので、これに余裕金がある場合はそこから借り入れるというのがその次だろうと思います。弾力条項の発動は最後の最後の手だて、こういうふうなことではないかというふうに思っております。
城島委員 今回の法案につきましては、高い失業状況の時代の雇用保険の負担と給付のあり方、あるいは雇用保険三事業と本体の給付との関係、労災保険と雇用保険との関係、あるいは私立学校や公務員への適用の問題等々、私も前回、いろいろな意見があるということを申し上げましたけれども、そうした雇用保険制度の将来的なあり方、このことについて中長期的に論議を重ねていく必要があるというふうに思っておりますが、今回、そうした本質的なこれからの、働き方も含めてでありますけれども、新しい時代の雇用保険制度のあり方という論議が、あるいは将来展望というのが積み残しになっているんではないかということを私は思っているわけであります。
 こうした問題を含めて、雇用保険制度の将来像ということをしっかりと時間をかけて論議していくことが今本当は最も大事なことだというふうに思っておりますが、この辺についての大臣の御見解を承りたいと思います。
坂口国務大臣 将来像につきましての議論も、御指摘のとおり、これはまことに重要な話でございまして、大局的立場からやっていかなければならないし、また、そんなに時間をかけていることはできないので、より急いでやっていかなければならない課題であるというふうにも思っております。
 私学の皆さんのお話等も、これはもう前々からあるわけでございまして、過去を振り返ってみますと、また文献等を見てみますと、昭和四十年代でございますか、ずっといろいろあるようでございます。昨年も、大学の総長先生を初め、有名大学の先生方がずらっとお見えをいただきまして、そして私学は雇用保険の外にしてほしい、こういう御要望があったりいたしますけれども、しかし、ここはやはり全体としてお入りをいただく必要があるのではないかということも申し上げたところでございます。
 幼稚園でございますとか小学校などの私立のところは多く入っていただいておりますが、高校、大学と上に行くに従いまして、入っていただく割合が少なくなってきているということでございます。今、私立の学校につきましても、お入りいただくように努力を重ねているところでございます。
 公務員の問題も、これからの公務員がどうなるかということにもよりますけれども、これも検討課題の一つであると思います。公務員の皆さん方も、いわゆる勤労者としての連帯意識をどうお持ちいただくかということになるのであろうというふうに思いますし、現在のところは法律上これは別途の法律で規定されておりまして、必要のないようになっておりますけれども、しかし、そうしたことが今後いいのかどうかということも、これはやはり検討していかなければならない時期に来ているというふうに思っております。やはり組合等のお考えもよく聞かなければいけないというふうに思いますが、総論といたしましては、そうした方向に今来ているというふうに思っております。
 また、今後の全体としての雇用保険のあり方そのものにつきましても、さらに検討をしていく時期に来ている。といいますのは、この雇用状態というものが現在の一時的な現象なのか、それとも、一時的な現象というよりも、いささか中長期的な形になってくるのかといったようなことの見定め、それから日本の政策といったものも十分考慮に入れて検討しなければならない課題であると思っております。
城島委員 それでは、大臣に何点か確認をさせていただきたいと思います。
 まず、雇用保険財政を改善するためには、先ほども申し上げましたけれども、当然、失業者を減らしていくということが重要であります。そのためには雇用対策を効果的に実施していくことが重要である、当然私はそう考えるわけでありますが、この面についての大臣の積極的な御見解を承りたいというふうに思います。
坂口国務大臣 今後とも、セーフティーネットとしての雇用保険の健全運営の確保に万全を期したいというふうに思っております。また、雇用失業情勢に対応いたしまして、雇用対策の効果的な実施に鋭意努力をしてまいりたいというふうに思います。
城島委員 今回の改正によりまして、再就職が困難な状況に置かれている中高年齢者に、給付額の削減の影響が大きく及ぶことになるということであると思いますが、中高年齢失業者の再就職支援対策に全力で取り組むべきだというふうに思います。大臣の御見解を承ります。
坂口国務大臣 早期再就職専任支援者によりますマンツーマンの就業支援、さらに中高年齢者のトライアル雇用、それから中高年の長期失業者への民間のノウハウを活用した再就職支援等の実施を行い、中高年失業者の再就職支援に全力で取り組んでいきたいというふうに思っております。
 中高年の皆さん方の雇用につきましては、さまざまな障害になります要素がございますので、一つ一つそれを丁寧に取り除いていくという作業が必要だというふうに思っておりますので、そうした努力を重ねていきたいと思っております。
城島委員 その中高年齢層の雇用促進のために、求人年齢制限の緩和への取り組みを強力に進めるべきだというふうに思いますが、大臣の御見解を承りたいと思います。
坂口国務大臣 中高年齢者の雇用促進のために、求人年齢制限の緩和に全力で取り組んでいるところでございます。年齢不問求人の割合を平成十七年度に三〇%にするという目標が達成できない場合には、雇用対策法に基づく大臣指針を見直すこととしたいというふうに思っておりまして、かなり積極的にやらないといけない、そしてそれが達成されないときにはさらに前進をした考え方をしなきゃいけない、そういうふうに思っております。
城島委員 これも私の質問の中で問題提起をさせていただいたところでありますが、確認をさせていただきます。
 求職者給付受給者の責務に関する規定を根拠に失業認定を厳格化するということは私は問題ではないかというふうに主張してまいりましたが、この点、さらには、公共職業安定所等における再就職支援機能の強化というものがどうしても必要だというふうに思っておりますが、これについての御見解を承ります。
    〔委員長退席、宮腰委員長代理着席〕
坂口国務大臣 求職者給付受給者の責務に関する規定についてでありますが、求職者給付受給者が職業能力の開発及び向上を含め誠実かつ熱心に求職活動を行い、職業につくよう努めなければならない旨を法律上確認的に明記したものでありまして、この規定を設けることにより失業認定の厳格化を行おうとするものではありません。この点は明確にしておきたいと思います。
 公共職業安定所におきまして、雇用保険受給者に対する就業支援セミナー、早期再就職専任支援者によりますマンツーマンの就職支援等の実施を通じまして、再就職支援に全力で取り組みたいと考えております。
城島委員 次に、緊急対応型のワークシェアリングによる労使の雇用維持努力を支援するために、緊急対応型ワークシェアリングによる賃金低下期間中の倒産、解雇等による離職の場合に、労働者が不利益をこうむらないよう、運用上の配慮が必要だというふうに考えておりますが、御見解を承ります。
坂口国務大臣 緊急対応型のワークシェアリングによります賃金低下期間中の倒産、解雇等による離職の場合には、一定の要件のもとに、措置前の賃金日額を用いる賃金日額の算定の特例を設けることとしたいというふうに思っております。
    〔宮腰委員長代理退席、委員長着席〕
城島委員 次に、中高年齢失業者等の再就職を支援するため、公共職業訓練等の複数回受講指示の特例が一層有効に活用されるよう運用改善を図ることが必要だ。これは前回の質疑の中でもしつこくこの内容、実態について質問させていただきましたし、大臣の御認識も新たになったかと思いますが、この点についての御見解を承りたいと思います。
坂口国務大臣 前回にも幾つもの御質問をいただいたところでございます。
 公共職業訓練等の複数回受講指示の特例についてでありますが、これが一層有効に活用されて、失業者の再就職促進に資することとなるように取り組みを進めてまいりたいというふうに思います。いろいろ具体的な御指摘もいただいたところでございますので、ここは積極的にやりたいというふうに思っております。
城島委員 ここは特に大臣よろしく、実際そういうことになるように強力に推し進めていただきたいと思います。
 次に、就業促進手当については、受給者の就業意欲を喚起し、できる限り早く希望する職業につくことに資するよう運営に万全を期すべきだというふうに思いますが、これについての大臣の御見解を承ります。
坂口国務大臣 就業促進手当につきましては、すべての受給者に制度の趣旨、内容が正確に理解されるよう周知に万全を期したいというふうに思います。受給者が適切な判断のもとに就業促進手当を活用し、就業意欲を高めて早期の再就職が実現できるようにしてまいりたいというふうに思っております。具体的な対策も検討に入りたいと思います。
城島委員 大臣の御見解の確認の答弁はそういうことにさせていただきます。
 また、基本的な部分についてもう一つ質問をぜひさせていただきたい点があります。それは施行期日の問題であります。
 この法案では五月一日ということになっているわけでありますが、前回の例えば就業促進手当、今もちょっと大臣見解を聞きましたけれども、それの質疑を二回にわたってさせていただきましたけれども、こうした就業促進手当の問題、あるいは今の複数回受講の問題にしても、少なくとも周知期間というものをある程度しっかりとらなければ、実際としての運用というのでしょうか運営がなかなかうまくいかないし、また、受講する人あるいはこれを受ける人からしてもそうであります。したがって、周知期間というものをどういうふうにとらえるのかということがもう一つ、この制度がうまくいくかどうかの一つのポイントだというふうに思います。
 この施行に当たっての周知期間について一体どういうふうにお考えになっているのか、これについてお伺いをしたいというふうに思います。特に、過去の雇用保険法改正に伴って、いわゆる公布とそれから施行期間、実施時期との関係、どういうふうになっているのかもあわせて御説明いただきながら、この辺についてどういうふうにお考えになっているのかを承りたいと思います。
坂口国務大臣 これはなかなか大事な御指摘でございまして、御審議をいただいて、そしてこの法律を成立させていただいたといたしましても、それから先どのようにこの理解を求めていくかということが大事でございまして、非常に時間的には厳しい中でやらなければならない、そういうことは十分理解をいたしているところでございます。我々といたしましては、事業主に対します改正内容の周知徹底というものをさまざまな角度から行っていきたいというふうに思っているところでございますし、急を要するというふうに思っております。
 それから、できる内容は何か。パンフレットの問題だけではなくて、それは説明会等を頻繁に開いて皆さん方に御理解をいただかなければならない。インターネット等を利用するようなことはもちろんでございますけれども、やはりそうした説明会を頻繁に開いていくということが大事でございまして、もう限られた期間内でございますけれども、より積極的にやっていきたいというふうに思っている次第でございます。
 過去の例はちょっと私わかりませんので、事務方から答弁させます。
戸苅政府参考人 過去、それぞれ法改正の内容に応じて成立日と施行日の間が決まっておりますが、過去で割合今回に近い見直しをしたのが昭和五十九年の改正だと思いますが、このときは、成立したのが七月六日で、公布が七月十三日で、施行日が八月一日ということでございます。
城島委員 いずれにしても、今回の論議の中で明らかになったように、今回の改正は内容の変更が非常に多いということでありますし、先ほども確認させていただいたように、運用による徹底を図らなければいかぬ部分も結構ある。さらには、私の方からはあえて申し上げませんでしたけれども、例えば教育訓練給付ということについては、これまでのいわゆる援助は半減される、八〇%が四〇%に半減されるというようなこともあって、受講しようと思っている人からすると、本当に周知がきちっとしないと不意打ちに遭うようなことになっているわけであります。
 そういう点からしても、これは周知徹底を図るということは非常に大事な点がいっぱいあるわけでありまして、そういう点でも、徹底を図るためにも、周知期間というのはしっかりとる必要があるというふうに思います。本来であれば、数カ月ぐらいかかりながら、ハローワークにいる窓口の人についても、あるいは雇用保険の対象者についても、いろいろな観点で、今大臣がおっしゃったようなことを含めて、きちっとした周知徹底を図るということはどうしても必要だというふうに思いますので、この辺も、今回の改正が少しでも失業者の人たちに向いているという部分を入れるためにも、徹底した周知期間に対する対応というものを強く要請して、質疑を終わらせていただきます。
中山委員長 次に、武山百合子君。
武山委員 自由党の武山百合子です。
 早速きょうは、今十五歳から二十四歳の若い人の雇用についてお聞きしておきたいと思います。
 まず、十五歳から二十四歳の若い人の完全失業率、これは大変高いんですね。一〇%を超えると言われております。若い人の雇用問題が大変深刻である、この若い人の雇用問題に対して、厚生労働省は学校教育との連携を打ち出しておるわけですけれども、予算もきちっと措置されておるということですけれども、どの程度の規模でこの予算措置が行われているのか、規模がやはり大変問題だと思いますので、この規模についてまずお聞きしたいと思います。
鴨下副大臣 若年者の雇用対策について、厚生労働省として一体どのようなことをどのような規模でやっているのか、こういうようなお話でありますけれども、一つは、例えば昨年度の補正予算で、ハローワークに未内定者の就職支援に対するジョブサポーターを百人配置しまして、学校との連携のもと、求人開拓やマンツーマンの就職支援の強化を図っている、こういうようなことを行っております。
 また、三月七日には文部科学省と共同で高等学校就職問題検討会議を開催しまして、学校それから経済団体と緊密に連携をして、そして、特に新規高卒者の就職支援に取り組んでいるわけであります。
 また、今後もさらに文部科学省と連携して、特に在学中の早い段階から職業に対する意識を高める、こういうようなことを目的としまして、就職を希望する者が速やかに就職できるように、例えば総合的な学習の時間などを活用したジュニアインターンシップ等による職業体験機会の充実等の施策を実施していく、こういうようなことをしているわけであります。
 また、先生おっしゃっているように、若年の失業者、これに対する対策としましては、一つは、企業に若年者を短期間試行的に雇ってもらい、その後の常用雇用への移行を図る若年者トライアル雇用、さらには、若年失業者に個別指導方式による就職支援を行うヤングワークプラザ等の設置を施策として展開しているわけでありまして、できるだけ、文部科学省とともに、特に在学中から、そしてさらに若年で失業に至った方々に対して、総合的に対策を取り組んでいっているところであります。
    ―――――――――――――
中山委員長 この際、お諮りいたします。
 両案審査のため、本日、政府参考人として文部科学省大臣官房審議官金森越哉君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
中山委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
中山委員長 武山百合子君。
武山委員 それでは、もう少し突っ込んでお聞きしたいと思います。
 ジョブサポーター百人とかということですけれども、例えばこれはどういう形でどう派遣して運用面で使いこなすというか、その辺ちょっともう一回御説明を。例えば、この百人のジョブサポーター、都道府県でしたら各県に二人ずつぐらいかなと思います。そうすると、どんな運用面を考えているのか、例えばという形で御説明いただきたいと思います。
鴨下副大臣 今、先生おっしゃっているように、ジョブサポーターは百人ということでありますけれども、具体的に言いますと、高校へ出張しまして未内定の高校生全員を把握するという作業をいたします。それから、大学生等につきましては、学生職業総合支援センターやそれから学生職業センター等の登録学生のうち未内定の人たちがどのくらいいらっしゃるのか、こういうようなことをまずつかまないといけないわけでありますから、そのことをやりまして、個別就職支援方針の策定をするということが一義的にまず行われるわけでありまして、その後には、職業相談それから職業紹介等への積極的な参画をしていく、こういうようなことであります。
 さらには、就職準備講習の実施、それからあとは求人開拓の積極的な実施というようなことで、特に、例えば十一月末の時点で新規の高卒者に係る求人倍率が一・〇倍を下回る地域には、学卒専任の求人開拓推進員を配置して、一般求人からの振りかえを含めた学卒求人開拓を推進していこう、こういうようなことも含めましてさまざまな施策をやるというようなことが、この未内定者ジョブサポート事業の全体的な概要でございます。
武山委員 そうしますと、例えばある県立高校のA校とします、そこに年間、例えば、恐らく一回しか行けないんじゃないかと思うんですよね。県立高校であれば、例えばやっと一回行く程度で本当にその仕事ができるのかなと思うんですね。ですから、そうなると、やはり高等学校と厚生労働省と文科省の連係プレーというのは非常に大事になると思うんですね。
 恐らく今までもそういうことというのは行われてきたと思うんですよ。今、この場に当たって新しく予算を措置されたということは、余りにも完全失業率が高いということで急遽考えたことだと思うんですね。今までにもそういう連携がされてきたにもかかわらずこういう完全失業率が高い、そのためにこのような新しい発想で打ち出したということなんでしょうけれども、そこで何がミスマッチしているのかなと思うんですよね。何が問題だと思いますか。
鴨下副大臣 さまざまな原因もあると思いますけれども、ミスマッチの多くは、例えば学卒の方々がさまざまな職業等に触れていらっしゃらなくて、そして一体どういうふうな職業が自分にとって適職かというようなことについての意思決定がなかなかできないということも、非常に重要な要因であろうというふうに思います。
 さらに、それぞれ、職業というようなものの内容についてもなかなかわからない、こういうようなこともありまして、多くの人たちにそのミスマッチを解消するためにいろいろな職業に触れていただこうということと、それから、もちろんハローワークを含めまして、さらに先ほど申し上げましたさまざまな施策を通じて、大いにいろいろな職業に触れていただくということが非常に重要なことなんだろうというふうに思っております。
武山委員 そうしますと、確かにおっしゃることは壮大なことで、本当にそれが実施されたらすごいと思うんですよ。でも、実際は、カリキュラムの中で、年間の授業日数の中で、授業時間、どのくらい割いておるんでしょうか。それから、全国での実施校ですね。実際にどの程度の、そういう育成の施策といいますか、そういうものが年間の授業の中でどのくらいとられているのか。
 確かにおっしゃることは壮大で、それが本当に実施されたらすごいと思うんですけれども、実際はそうとれないと思うんですよね。それで、どのくらい年間の授業日数としてとっておるのか、それからもう一つ、そういう全国で実施されている実施校の数、それをぜひ知りたいと思います。
金森政府参考人 お答え申し上げます。
 企業からの求人数が就職を希望する生徒の数を下回ったり、生徒が希望する職種の求人がないといった厳しい状況の中で、多くの学校が求人の開拓や確保のために多大の努力をしているところでございます。最近では、専門高校を中心にインターンシップなどに取り組みましたり、また生徒の職業現場の理解や職業観、勤労観の形成や、企業の高校生に対する理解を深める上で成果を上げている学校もふえていると聞いております。
 実際の指導につきましては、多くの場合、ホームルーム活動などの時間を活用して行っている例が多いと考えておりますけれども、各学校におきましてその状況はさまざまでございまして、私どもといたしまして、それぞれの学校が大変な御努力をいただいているというふうに考えておりますけれども、全体として、何時間の学校がどのくらいといったようなところのデータは調査していないところでございます。
武山委員 そうしますと、先ほど副大臣が説明しましたジョブサポーター百人、この方は、では高等学校に何の時間に行くんですか。
 私、今の質問は、授業時間の時間数を聞いているんですね。例えば、県立高校で、いわゆる職業観というか勤労観というか、そういうものに対する教育をするために年間二時間とるとか三時間とるとか、年間五回とるとか、そういうことを聞いているんですよね、私の質問は。そういう意味で、何もデータがないと言うんでしたら、では、ジョブサポーター百人、どういうふうにして、何のために行くのかなと思うんですよね。それを聞いているんです。
 それから、実施校はどのくらい実施されているのか。現実にやはり運用面できちっとその数字が出てこないことには、ただお題目だけ、理想だけ、言葉だけ走っているというだけではだめだと思うんですよね。予算を措置した以上は、やはり何時間ぐらいを想定して、どのくらいの学校に行くのかという、そこまで青写真を描いて予算というのは立てていると思うんですよね。そこを詳しく私はお聞きしたいんです。
金森政府参考人 お答え申し上げます。
 各学校における取り組みの状況につきましては、それぞれの学校でいろいろな努力や工夫をしているところでございまして、生徒が就職に関する活動に参加するような場合に、学校教育活動の中でどの時間を活用してそれに参加するかということは、学校の状況また生徒の授業の状況などによってさまざまでございます。中には、ホームルームの時間を活用してまとまった活動をするところもございましょうし、また授業が終わった後、放課後の時間を活用したり、また休み時間を活用して学校の外での就職に関する活動に参加するといったケースもあろうかと存じます。
 したがいまして、それぞれの学校で就職に関するいろいろな活動をまとめて何時間というよりは、それぞれの生徒の必要に応じて、さまざまな時間を活用してそれに携わり、また指導しているというのが現状でございます。
武山委員 そうしますと、もう一回審議官に聞きたいんですけれども、それは今までもやっていたことですよね。今度新たに始めたことなんですか、今おっしゃったのは。例えば、先ほど副大臣がおっしゃいました、ジョブサポーター百人をつくった、それで派遣していると。そのためにわざわざそういう時間を設けて、例えば高等学校だったら高等学校にそういう講演をするとか、そういう時間をつくって、一時間こういう人が来て仕事の現場の話をするとか、私、そういうことを想定しておるんですけれども、今のお話だと何にも見えてこないんですね。今までの教育の延長上の就職活動、学校はホームルームの時間や放課後に行ったりという延長だと思うんですよね。
 では、新たに予算をつけてやっている、学校教育と連携してやっているという新たな部分というのはどういう部分なんですか。
金森政府参考人 お答えを申し上げます。
 御指摘のございました新しい形でのいろいろな就職支援につきましては、それぞれの学校でさまざまな工夫をして、必要に応じ、そのための時間を割いて取り組んでいるところだと存じます。
 各学校におきまして、それをどの程度の時間、またどういう形で実施するかということになりますと、それぞれの学校の状況、また生徒の状況などに応じてさまざまな取り組みをしているというのが実情でございまして、私ども、こういったいろいろなこれまでの就職支援に対する取り組み、また最近の取り組み、いろいろな活動が各学校において取り組まれているわけでございますけれども、その状況につきまして、こういったものが何時間という形での十分なデータというのはまだ把握をしていないところでございます。
 ただ、それは、各学校でそれぞれの状況に応じてさまざまな形でそれが活用されているというのは、そういう形で行われているものと考えているところでございます。
武山委員 何かあいまいで、今までの、いわゆる高等学校での就職活動を学校が支援するために、今おっしゃったようなホームルームの時間を使ったり、いわゆる視察をしたり、放課後を使ったりという、その流れとちっとも変わっていないように思うんですけれども、では何が変わったんですか。予算をつけて何が変わったんですか。その違いを説明していただきたい。ちっともわからないんですね。何が変わったんですか。
坂口国務大臣 ジョブサポーターというのは、全部の学校に必要はないんですね。就職が非常にいいところは要らないわけですね。去年、私、ある高等学校に聞きまして、工業高校ですけれども、大変でしょうねと聞きましたら、いや、もう九月には一〇〇%決まりました、そういう学校もあるわけでありまして、そういうところは要らない。また、非常に熱心に就職活動に取り組んでおみえになります先生がおみえになりますようなところは必要ないんですね。
 それで、それは科目にもよると思うんです。高等学校の何科という科目にもよるというふうに思いますし、そして非常に地域にもよりまして、おくれている地域がある。そういう地域のお子さん方に対して、どのような方針で就業活動をしていただいたらいいかといったようなことについて、それは全体お集まりをいただいてお話しすることもあるでしょうし、また具体的に個々に面談をするというようなこともある。また、こうしたことをひとつ皆さん方におっしゃってくださいというようなことを先生方にお話しすることもある。それは、それぞれの地域によって私は違うと思うんですが、特におくれている、多くの未就業の生徒さんを抱えておみえになるようなところに派遣をし、その皆さん方に対していろいろな情報を提供する、そして考え方を説明するといったようなことが大事になってくる。そういうことによって少しでも前進をしていく。
 それから、ジョブサポーターだけではなくて、地域のハローワークの職員がその学校の先生と一緒になって、そしてその地域の企業に出向いていってお願いをするといったようなこともあわせて行うといったようなことではないかと思っております。
武山委員 そうしますと、高等学校の状況に応じてケース・バイ・ケースで違う、いわゆる若年の失業者の多いところに行く、それでケース・バイ・ケースによって、ニーズに応じて対応する、そういうふうな解釈でよろしいんでしょうか。それで、ニーズに応じて、そこのニーズによって予算がつけられている、そういう解釈でよろしいんでしょうか。
坂口国務大臣 おおむねそういうふうに御理解をいただいて結構かと思います。
武山委員 そうしますと、それはどこに頼めばいいんでしょうか、そういう人を、どういう方がどう派遣させてもらえるかというのは。よくわからないんですよね。知る人は知っていて、知らない人は知らない。それは、いわゆる高等学校なり、公の学校なり私立学校なりにちゃんとPRされているのかどうか。その辺、よくわからないので御説明いただきたいと思います。
鴨下副大臣 先ほども申し上げましたように、これは学校教育とハローワークとの連携の中で一番密接にやっているわけでありますので、例えばハローワークにお問い合わせいただければそれは一番早いわけでありますけれども、ただそれだけでなく、学校からもさまざまな情報が出てくるわけでありまして、そういうのを総合して、未内定者の皆さんに、言ってみれば就職にかかわるあらゆる情報が集まるように工夫はしないといけないわけでありますけれども、今先生のお尋ねの問題につきましては、ハローワークにお尋ねいただければ解決できるというふうに思います。
武山委員 そうしますと、今のお話は対症療法ですよね。非常に就職の決まっていない学校に対応する対症療法。やはりいわゆる将来どんな職業につくとか勤労観の育成なんというものは、中学、高校になって突然できるものじゃないわけですね。小さいころからの環境とか教育とか家庭とか社会とかあらゆるものから、自分が将来何になろうかというのは多くの総合的なものから培われていくものだと思います。
 これは、やはり欧米なんか見ていますと、小さいころからそういうチャンス、選択肢があるわけですよね。例えば、スポーツ一つにしても、キャンプに行って、あらゆるスポーツを楽しむとか、陶芸が好きな子だったら、絵をかく、陶芸する。あらゆる選択肢の機会があるわけですよね。
 ですから、学校教育と厚生労働省というのは密接な連係プレーというのは非常に大事だと思うんですよね。今、お話聞いていた若年層の雇用については対症療法で終わっているんですよね、すべて今のお話というのは。ですから、そのお話の中で、対症療法ではなく長期的な展望で、やはり小さいころからの連携が大事だと思います。そういう連携に対して今後どういう青写真を描いていますでしょうか。
鴨下副大臣 先生おっしゃることは非常に重要なことで、例えば、多分、特にアメリカ等では、自分のお小遣いは自分のアルバイトで稼いでというようなことで、近所にそういうようなちょっとした働く場をそれこそ子供のころから味わって、徐々にそういう職業につくというような意識を高めていく、こういうようなことなんだろうと思いますけれども、そういう意味で、日本はなかなかその辺のところが十分にできていない部分があったんだろうという反省には立たないといけないだろうというふうに思っています。
 ただ、今先生おっしゃっているような、言ってみれば対症療法的なことではなくて、中学生、高校生の時代からさまざまな職業を味わい、なおかつそういうようなことをよく知るというようなことは重要でありまして、例えば、厚生労働省の立場でいいますと、学校と連携した中高生の職業体験の推進、こういうような施策を進めておりまして、特に、これは都道府県の労働局が中心になりまして、職業能力開発関係の機関と、それから学校、教育行政機関とが連携して、それぞれの地方の実情に応じて、例えば職業意識の啓発メニュー等を作成して、例えば学校の中の総合的な学習の時間等においてこれらをやっていこう、こういうようなことであります。
 それの一つとして、三月の末にオープンしました、これは奈良県に私のしごと館というのがあるんですけれども、これも、例えば修学旅行のお子さんたちに行っていただいて、そしていろいろな職業に、本当にそのとき短時間でありますけれども触れていただいて、ああ、こういう職業は自分に合っているんだなとか、こういう仕事をしてみたいな、こういうようなことが体験できるような、こういうことをそれぞれの年代に応じて折々にやっていく。これが、先生が言っている、言ってみれば抜本的な、根本的な対策につながるんではないかなというふうに思っております。
 私のしごと館は奈良ではなくて京都でございます。失礼いたしました。
武山委員 その近くは大変いいかもしれませんけれども、やはり地方で個々の自治体にそういう情報があるということが大事だと思うんですよね。奈良までなかなか大勢の人が行けないと思うんですよね。(鴨下副大臣「京都です」と呼ぶ)京都ですか。京都までなかなか行けないと思うんですよね。
 それでは、次に移ります。
 まずそういうお話を聞きましたけれども、相変わらず、高校を卒業はしたけれども就職ができなかったという問題があるわけですよね。高校の進路指導のあり方にもやはり問題があって、ここにもメスを入れていかなければいけないんじゃないかと思うんですね。実際は、この厳しい雇用情勢の中で、就職できないまま卒業していってしまうわけですよね、学校はもう時間で卒業していくわけですから。
 ですから、もう卒業していってしまう、このことに対してやはり問題があるのではないかと思うんです。実際に就職できないまま、時間は三月で卒業するわけですから、もう卒業してしまう、このことにやはり問題はあるのではないかと思うんです。ですから、文科省としてどのように考えているのか。そして、きめ細やかな進路指導のために今後どのような対応をしていくのか、これも一つ押さえておきたいと思います。
金森政府参考人 高等学校におきます進路指導につきましては、生徒がみずからの生き方を考え、将来に対する目的意識を持ち、自分の意思と責任で進路を選択、決定する能力と態度を身につけるよう指導することが重要であると考えております。
 このため、新しい学習指導要領におきましては、就業体験の機会を積極的に設けることや、将来の進路の選択などについてガイダンス機能の充実を図ることを明記したところでございまして、特に高等学校におけるインターンシップにつきましては、学校での学習と職業との関係の理解が深まること、望ましい職業観、勤労観の育成、異世代間コミュニケーション能力の向上など極めて高い教育効果が期待できますことから、積極的にこれを推進しているところでございます。
 また、一方では、高い早期離職率やフリーター志向の高まりなどに見られますように、若者の職業観、勤労観の希薄化も指摘されているところでございまして、昨年十一月から、児童生徒の職業的発達を促すためのキャリア教育のあり方に関しまして総合的な調査研究を行うための協力者会議を発足させたところでございます。
 今後とも、児童生徒が望ましい職業観、勤労観を身につけ、個々の能力、適性に応じて主体的に進路を選択することができますよう、進路指導の充実を図りますとともに、児童生徒の発達段階に応じたキャリア教育の推進に努めてまいりたいと考えているところでございます。
武山委員 そうしますと、やはり就職をしないまま卒業させてしまっているというのも現実ですよね、これは現実にいるわけですから。ですから、卒業してしまったら、もう学校を卒業したということで、一つの区切りということで手が離れてしまうのかもしれませんけれども、やはり学校もきめ細やかな進路指導というものをしていく必要があると思うんですね。ですから、ぷっつり切らないで、その後も一つの責任として果たしていくべきではないかと思います。
 それから、先ほどキャリア教育ということですけれども、これは、最近いっぱい資格を持っている人が、経歴書には、三つ四つは必ず資格を持っているんですね。資格を持っていることは大変いいことですけれども、その後の実務に生かしていくということで、実務の経験が本当に少ないですよね。実際に働いてもらうと、実際には実務がほとんどできていないという状況ですよね。
 ですから、知識や資格を身につけることは大変大事ですけれども、実務に生かしていく必要があるということで、これは仕事の中で身につけていくほかないと思うんですよ。そうすると、若年の雇用を考えるときは、インターンシップ制度というのは非常に大事になってくるわけですね。
 それで、以前、私、文科省で質問したとき、ほとんど少なかったんですよ、大学の方でも高等学校でもインターンシップが行われている学校が。今、どのくらい、数値として何%ぐらい全体の大学の中で行われるようになったか、その辺、インターンシップの利用の実績を御説明いただきたいと思います。
金森政府参考人 お答え申し上げます。
 インターンシップの実施状況でございますが、高等学校の、高校生のインターンシップの実施状況につきましては年々着実に増加をしているところでございまして、平成十三年度では、公立高等学校全体で、全日制でございますが、三八・九%、うち職業学科では六七・八%、総合学科で六九・一%、普通科で二一%の実施率となっているところでございます。平成十二年度は全体で三一・九%でございましたので、それが十三年度には全体として三八・九%というふうに伸びているところでございます。
 今後とも、厚生労働省など関係省庁との連携を図りながら、インターンシップの推進に努めてまいりたいと存じます。
武山委員 普通高校でのインターンシップ、大変少ないと思うんですね。私、大学も聞きたかったんですけれども、それはまた個別に知らせていただきたいと思います。
 若いときにこういうインターンシップというのは体験しておくことが大変大事ですので、高等学校、大学と行って、何年も体験していく中で社会に出るという、やはり若いときからインターンシップというのは導入して経験をするということが大事じゃなかろうかと思いますので、これは非常に少ないというふうに言わざるを得ません。
 大学のインターンシップは、時間が来てしまいましたので、また個別に知らせていただきたいと思います。
 終わります。
中山委員長 次に、小沢和秋君。
小沢(和)委員 政府は、今回の給付削減が、再就職時の賃金より失業中の手当の方が高いという逆転現象をなくし、再就職を促進する措置だと繰り返して説明してまいりました。
 そこで、私は、国会に一番近いハローワーク飯田橋に行き、実情を聞いてみました。それによると、本年一月の東京都内の四十五歳以上に対する求人時の賃金は、下限二十万七千三百五十円、上限二十八万千五百二十二円で、実際に就職するときは大体この下限のあたりで決まっていると言いました。
 給付額が高過ぎると問題になっている失業者は大体この四十五歳以上の人たちだと思いますが、給付額を一挙に五〇%に下げられる層は月額賃金三十六万六千六百円以上で、これまでなら手当額は六〇%で二十一万九千九百六十円でした。これだと求人賃金の下限より約一万円高いわけであります。これを五〇%に下げると、十八万三千三百円になるので、再就職賃金の方が二万円近く高くなります。逆転現象を解消するというのはこういうことかと理解をいたしました。
 しかし、手当の支給額をこのように切り下げたら本当に再就職が進むのか。四十五歳以上のこの層の人たちは、大部分が一家の大黒柱で、住宅ローンの支払いに追われ、子供たちの学費を支払わなければなりません。今後も、少しでも賃金額のよい再就職先を求めて給付期限ぎりぎりまで必死の努力を続けることに変わりはないのではないでしょうか。結局、失業中の手当を下げることは、この人たちの家族を含めて、生活をさらに追い込み、将来への不安を大きくするだけではないんでしょうか。大臣、いかがですか。
鴨下副大臣 現在の基本手当の給付水準と、それから労働市場における再就職時の賃金の手取り額を比較しますと、特に、先生おっしゃっていたことも含めてですが、高賃金層を中心に、基本手当の方が高くなる、こういうような逆転現象が生じていることは事実でございます。
 また、一方、雇用保険制度においては、基本手当の受給中よりも、所定給付日数分の基本手当の受給終了直後から約一カ月ぐらいの間に再就職の時期が集中している、こういうような実態があることは現実でございますが、こういうような方々の中で特に多いのは、やはり基本手当日額が高いほどそういうような傾向が強い、こういうような状況でございます。
 こういうことで、高額の基本手当の存在によって、これは多くの方々は確かに、ぎりぎりまで最も自分にとって適切な就職を探そう、こういうようなことで努力をしていることは間違いないわけでありますが、再就職時期が基本手当日額が高いほどおくれていくというようなことは実態でございますので、こういうようなことを総合的に勘案しまして、基本手当日額と再就職時の賃金との逆転現象を解消する、こういうようなことも含めて、受給者の早期再就職の促進を図るため、高賃金層を中心に賃金日額の上限額を引き下げる、こういうようなことにしたわけでございます。
小沢(和)委員 一家の大黒柱がこれまでの半分以下の低賃金のところに再就職すれば、生活を維持するため、奥さんがパートなどで働かなければならなくなります。子供も、学校どころではなく、アルバイトに精を出すようになる。結局、家族みんなが低賃金労働者になり、労働市場にはますます失業者と低賃金労働者があふれるようになる。こうして日本の労働者全体の賃金水準が劇的に引き下げられることになります。
 その低賃金を活用して大企業も大もうけするようになっても、日本経済全体としてはますます不況が深刻化するだけではないんでしょうか。こういう結果につながる今回の雇用保険の給付削減は、根本的に方向が間違っているんじゃないですか。大臣、答えてください。
坂口国務大臣 基本給付が引き下げになるということと、それから再就職できるときの賃金が上がる下がるという話とは、これは別次元の話だと思っております。したがいまして、雇用保険におきましては、五〇%になる人も中にはあるわけでございます。その人たちが、それでは再就職のときに低い賃金のところしかないかといえば、それはそういうことではない、私はそう思っております。
 ただし、全体の現在の社会の状況、経済の状況から考えますと、かなり賃金というものが今までよりも抑えられてきているということは見逃しようのない事実だ、私も率直にそう思っている次第でございます。
小沢(和)委員 だから、それが日本経済全体には、結局、大局的には不況をさらに深刻化させるような結果にしかならないんじゃないかということを私は言っているわけであります。
 今大臣は、探しようによっては高い賃金の仕事もあるように言われたようですけれども、私がハローワーク飯田橋でいただいた資料で改めて痛感させられたのは、中高年失業者には本当に求人そのものが少ないということであります。
 東京都内では、一般の求人倍率は全体では〇・六七ですが、四十五歳以上は〇・三八、五十五歳以上は〇・二四にすぎません。私が特に言いたいのは、求職者の三分の一が集中しております事務的職業の求人倍率の厳しさであります。事務的職業の求人倍率そのものが平均〇・二七と、全体の半分をはるかに下回るんですが、とりわけ四十五歳以上は〇・〇七で、求人がほとんどないんです。
 逆転現象をなくすとか、この不況の中だから安くても我慢しろとか言っても、求人がなければどうにもなりません。このままでは給付を削減しただけという結果になりますが、政府は、中高年失業者の求人がほとんどないという状態をどう打開するつもりですか。
鴨下副大臣 先生が今数字を挙げておっしゃっていたように、確かに、中高年齢層の有効求人倍率については、平均から比べますと極めて低い水準で推移しているということはおっしゃるとおりでございます。
 このために厚生労働省がやらなければいけないこと、それから言ってみれば政府を挙げて、さらに産業界も含めてやらなければいけないこと、さまざまあると思いますが、厚生労働省としてやるべきこととしましては、早期再就職専任支援員等を含めたマンツーマンの体系的な、そして計画的な再就職支援をしていくというようなこととか、民間の教育訓練機関や大学、大学院、そして求人事業所等を活用した効果的な職業能力の開発をしなければいけない。それから、特に世帯主で再就職の緊急性の高い中高年齢者については、トライアル雇用を通じて早期再就職の促進を図ってまいりたい。さらに、長期にわたって失業している中高年齢者に対しては、民間のノウハウを活用しました就職支援セミナー、カウンセリングの実施等も含めて、求職者同士の経験交流等の支援を行ってまいりたい。さらに求人年齢制限の緩和等も、これは平成十七年には三〇%にしていく。こういうようなことを含めまして総合的にやってまいりたい、こういうふうに考えております。
小沢(和)委員 今、副大臣がメニューを幾つか並べたけれども、その程度のことではこの深刻な状態は打開できないと私は思うんです。
 一方で、パートの求人は都内平均で一・三一、四十五歳以上でも一・二九と、人手不足と言ってもよいような数字であります。全国的にも同じ傾向です。だから政府は、賃金が低くても常用でと考えている失業者を非常用のパート等で働くように誘導しようと考えているのではありませんか。今回の法改正で、非常用にも就業を促進する手当を支給するようにしたねらいというのはこの辺にあるんじゃないんでしょうか。
鴨下副大臣 先生は再三にわたってそういうことをおっしゃいますけれども、そういう意向では全くございません。
 特に今般、多様な就業形態による早期就業を積極的に支援する、こういうようなことで、基本手当の受給資格者が常用雇用以外の就業をした場合にも、その就業した日に基本手当日額の三〇%を支給する、こういう就業促進手当制度を創設したわけであります。
 一般的には、求職活動中に短期間でも就業することによりまして、受給者の労働に対する習慣が維持されて、求職活動への意欲や再就職先への適応力の向上が図れるんではないか、こういうようなことを含めまして、またさらに、この手当の支給を受け就業するか、常用就職し現行の再就職手当の支給を受けるか、さらに就業せずに求職活動を行うかは、これはあくまでも本人の自由なことでありまして、この手当の存在によって、パート就業の押しつけとか誘導とか、こういうようなことが生じるんではないか、こういうような御懸念は当たらないというふうに思っております。
小沢(和)委員 私は、今雇用保険に求められているのは給付の削減などではなく、少しでも失業者に安心感を与えるような制度の改善だと思います。
 今資料としてお手元に配付いたしました「失業給付の国際比較表」は、国会図書館に依頼して、OECDの資料などをまとめてもらったものであります。
 これを見てもわかりますように、失業前と後の収入総額の五年間の比率を示す置きかえ比率は、日本の一二%に対し、ドイツ三〇%、フランス三七%、アメリカ一四%、イギリス一七%となっており、日本が一番低い。失業者の中でどれくらいが給付を受けているかを示す受給率も、日本三二・二%、ドイツ八一%、フランス八五%、アメリカ三七・九%、イギリス六〇%となっており、これも日本が一番低いわけであります。これは今までの給付水準で比較しておりますから、今回の法改正なるものが行われれば、さらに日本は飛び抜けて低くなります。
 こういう先進国間の比較を見ても、今の我が国には雇用保険の改善こそ求められているのではないですか。大臣、どうですか。
鴨下副大臣 個別の事例を挙げて先生は御説明になりましたけれども、一つ一つ比較についてこちらからの答弁をいたしましょうか。(小沢(和)委員「いや、基本的な考え方を聞いている」と呼ぶ)
 全体的に申し上げますと、一つは、失業給付の水準については、特に保険料の水準をあわせて見る必要があるということが第一前提でありまして、我が国の保険料率が、フランス、ドイツと比べると相当低い水準にある、こういうようなこともありますし、さらに社会保障制度の体系全体は国ごとに大きく異なるわけでありまして、諸外国の失業給付制度のみを取り出して我が国の雇用保険制度と比較することは必ずしも適切ではない、こういうふうに考えておりまして、給付期間及び給付率についても、世界の、欧米、特にOECD諸国と比べて遜色のないもの、むしろすぐれている部分も多い、こういうふうに考えております。
小沢(和)委員 私は、一つ一つについて言っているのでなく、そういうのを全体としてまとめて見るというと失業者に対してどれだけのものが保障されているかという置きかえ比率というもので議論をしている。また、受給率、失業者全体の中でどれぐらいがカバーされているか、こういう指標で考えたら日本は最悪だと言っているわけです。
 日本の失業給付が劣悪な主な原因というのは、失業保険の給付期間が短いこと、特に雇用保険の給付期間が切れた後に全く何の給付もないということであります。これに対し、ドイツ、フランス、イギリスでは、手当が切れた後も国の負担で失業扶助が給付されております。その期間は無制限といいますから、次の再就職ができるまで給付されるというわけです。資料の一番下の部分の置きかえ比率、これは奥さんが働いている場合ですけれども、日本が二年目以降の給付ゼロに対し、さきの三カ国ではかなりの額の失業扶助が給付されております。アメリカでも、二年目以降、わずかですけれども給付されております。
 日本も、失業がこれだけ深刻化、長期化している以上、こういう制度を緊急に創設すべきではありませんか。今度こそ大臣、答えてください。いやいや、大臣、答えなさいよ、あなた。これほどの重大な根本的な問題ですよ。
鴨下副大臣 包括的に大臣からお答えいただきますけれども、その前に基本的な考え方だけ申し上げます。
 ヨーロッパで見られるような、失業給付受給者の特に終了した方々に対して、あとはもしくは失業保険の対象とならない方々を対象とする包括的な失業扶助制度を創設する、こういうようなことをおっしゃっているわけでありますけれども、我が国には雇用対策法に基づく職業転換給付金制度や生活保護制度がある、こういうようなことから、先生おっしゃっているような失業扶助制度を創設する、こういうようなことは現在のところ適切ではないというふうに考えております。
小沢(和)委員 何の論証もなしに適切でないと言うようなことは、答弁にも反論にもならないということを私は言っておきたい。
 政府は、失業手当をぎりぎりまで受け、期間終了後一カ月以内に就職する人々に対し、失業者の再就職意欲が低いとかモラルハザードだと盛んに非難するんですが、欧米各国のこういう充実した失業保障と比較しても、およそ日本ではモラルハザードが問題になるような手厚い制度ではないということを申し上げておきたい。
 日本では失業扶助が制度化されておりませんが、そうすると、雇用保険が切れ、全く収入がなくなった失業者の生活をどうやって保障するのか。私は、その場合、日本では生活保護を適用する以外にないと思います。
 今、生活保護適用をふやさないために、門前払いにする多くのハードルが置かれておりまして、その一つに労働能力の活用というものがあります。六十歳以下の五体満足の人には、私の知る限り、これまでほとんど生活保護はこの労働能力の活用ということで適用されてきませんでした。しかし、幾ら働く意欲があっても、中高年者にほとんど求人もない、こういう状況のもとでは、生活保護を適用する以外にこの人々は生きていかれないんじゃないでしょうか。
坂口国務大臣 中高年の皆さん方の雇用が総論として非常に厳しいということは、これは御指摘のとおり、私もそう思っております。したがいまして、この皆さん方のお仕事をどのようにつくり出していくかといったことがございます。
 ミスマッチという言葉がございますが、ミスマッチという言葉の中にはいろいろな要素があって、それは技術的な面でミスマッチということもございましょうし、地域による差もございますし、また、年齢あるいは賃金といったようなこともミスマッチの中の要素に入っているわけでございます。
 したがいまして、中高年の皆さん方に確かにお仕事は少ないわけでございますが、その中高年の皆さん方には、今までおやりをいただいていたそのお仕事と違ったお仕事も視野に入れて、技術的な問題も含めてひとつ検討をしていただきたい。技術的な面を含めてといいますのは、新しい技術を身につけるということも含めてひとつ検討をしてくださいということもお願いをしているわけでございます。
 どうしてもそれで、いろいろおやりをいただいた、しかし全くないといった場合には、これは生活保護の中でお受けをするということにならざるを得ない。しかし、そうはいいますものの、いいところがあれば、それは一日も早くまたお勤めをいただくということになるんだろうというふうに思っております。
小沢(和)委員 今大臣も、いろいろ努力をしてもどうしてもということになった場合には生活保護を適用せざるを得ないというふうに言われましたので、私は今後の運用を見守っておきたいと思います。
 それで、大臣はこれまでの答弁で何回も、日本のように雇用保険の国庫負担率の高い国はないと自慢されたわけですが、それは短い失業手当の給付期間中のことでありまして、失業扶助も対象に入れれば、これを制度化している国の方がどこも日本より国庫負担がずっと多いことは間違いないと思います。こういう国際比較からいっても、また今の日本の失業が政府の不良債権処理加速策によるという責任からも、政府が思い切って国庫負担をふやし、失業者の生活保障を行うのは当然だと思います。
 時間がないので、その点は指摘だけしておき、次の質問をいたしますが、重要なことは、失業者に対し各種の給付という形で所得を保障する政策から一歩進んで、政府や自治体が仕事を保障する政策を推進することであります。その点で、我が党は緊急地域雇用創出特別交付金の拡充を一貫して要求してまいりました。
 この交付金は、二〇〇一年十一月に三年半分として三千五百億円が予算化され、二〇〇二年度補正予算で八百億円が上積みされました。これでは、二〇〇三年度は年間一千四百億円、雇用目標十四万人という程度だと思います。
 雇用保険は年間三兆円近い規模であり、失業者数やその深刻さと比べると、この額は余りにも規模が小さいと思います。今後もさらに拡充すべきではないかというふうに思いますが、いかがですか。
坂口国務大臣 この交付金につきましては賛否両論ございます。非常にいい制度だから存続すべしという御意見もございますし、しかし本格的な雇用に結びついていないではないかという御指摘もあるわけでございます。
 私は、一つのつなぎの役割として大きな役割を果たしているというふうに思っておりますし、それから、先ほども御答弁を申し上げましたが、今までと違って、それぞれの地域で雇用というものを考える一つの契機になるのではないか。これから先の地域雇用というものをそれぞれの地域でお考えをいただくということに結びついていけば、大変有意義だというふうに思っているわけでございます。
 そうした意味で、あと、ことし、そして来年と二年分これはあるわけで、大体千四百億ずつ二年間あるわけでございます。これはこれで、ひとつどれぐらいうまくこれが活用されるかということをじっくりと調査をし、そして、改革すべきところは改革をしていかなければいけないというふうに思っている次第でございます。
小沢(和)委員 この事業は、雇用効果があり、住民生活に役立つ緊急性のある事業であれば、地方自治体の裁量で自由に実施できる点に大きな特徴があります。だから、今、賛否両論があると言われましたけれども、私が聞いている限りでは、どの自治体からも歓迎されて、さらに活用しやすくするための改善が求められております。今年二月には、原則六カ月の雇用期間を更新できる対象事業を拡大するなどの改善も行われました。
 この機会にひとつお伺いをしたいのは、今回の補正で設けられた四百億円の中小企業枠のことであります。もともと交付金事業の委託先は多くが中小企業であるのに、改めていろいろな条件をつけたために、事業主体である都道府県の裁量が縛られ、活用しにくいとの批判があちこちから上がっております。この際、条件の解除などを図るべきではないか。
 時間もありませんから、もう一つこれに関連してお尋ねしますが、今、全国で二五%の自治体が独自の雇用策を推進しております。中でも長野県の産業活性化・雇用創出プランは、今後四年間で二万人の常勤的雇用を新たに創出する、それにつながるよう百十一万人日の短期雇用を創出するという内容になっております。
 注目されるのはその基本的考え方で、旧来型の大型公共事業を中心とした経済雇用対策から脱却し、自律的な、持続可能な産業の成長によって地域社会を活性化し、雇用の維持、創出を図るとし、それを、長野県の産業の特徴である製造業、農業、観光を生かしながら、福祉・医療、環境、教育という三つの成長分野との連携、融合の推進で実現しようとしております。このプランの百十一万人日の短期雇用のうちの約半数は国の特別交付金ですが、県単独にも短期雇用を創出する予算を組んでおります。
 国の今後の取り組みの方向として、交付金事業で短期就労を拡充するだけでなく、この長野県のプランのように、その短期就労を大量の常用雇用創出につないでいこう、こういう総合的雇用対策を国としても積極的に援助していく必要があるのではないかと思います。
 以上二点、お尋ねします。
戸苅政府参考人 まず、平成十四年度の補正予算で組まれました緊急地域雇用創出特別交付金事業のうちの、中小企業の効果的活用というか中小企業への事業の委託という点でございます。
 これにつきましては、考え方として、これまでの交付金は、企業はもとよりなんですけれども、そのほかに、NPOですとかあるいは公益法人ですとか、いろいろな団体に交付をし、資金を出して一時的な雇用機会を創出するということで行っていたわけでありますけれども、今回、中小企業への直接的な発注というのを設けましたのは、最近における厳しい雇用失業情勢の中で、中小企業が雇用の維持に必死に努力されているということに着目いたしまして、中小企業の雇用維持努力を支援する、あわせて雇用創出を図ろう、こういったことで設けたものでございます。
 御指摘のように、対象事業所が五十人未満という小規模企業になっているとか、あるいは売上高が三分の一以上減少しているということがあるではないかというふうな御指摘だろうと思いますが、そういった厳しい経済環境、経営環境の中で必死に雇用の維持を図るところへの支援をし、さらには新規雇用の創出を図っていこうという考え方で対象を絞っているわけであります。
 具体的な要件といたしましては、事業費に占める人件費の割合、これまでの現行型の交付金ではおおむね八割ないし七割、こうなっておりますのを五割ということにしておりますし、それから、全従業者に占める新規雇用の割合も、四分の三以上ないし八五%以上としているところを一割以上、こういうことで緩和をしているところでありまして、我々としては、中小企業、特に小規模企業がいろいろ知恵を絞っていただいて、都道府県、自治体からの事業を受注し、雇用の維持、創出を図っていただければ、こう思っているところでございます。
 それから、長野県の件でございますが、長野県については我々も非常に着目しているところであります。内容を見ますと、今、委員御指摘のとおり、交付金もかなり積極的に活用し、このプランの中で生かされているところでありますが、そのほかにも、国の施策も盛り込んで、それとの連携のもとに、今、雇用創出プランをつくられている、こういうふうに理解しているところであります。
 おっしゃるとおり、自治体がいろいろな工夫を凝らすというのは大変重要なことだろうというふうに思っておりまして、そういった意味で、我々も地域雇用開発促進法によります地域求職活動援助事業等でなるべく自治体に役に立つような施策に努めているところでありまして、今後とも、自治体のいろいろな工夫が生かされるような施策について、大臣も再三答弁されておりますが、大臣の答弁も踏まえて、いろいろ工夫、検討してまいりたいというふうに考えております。
小沢(和)委員 時間も来ましたので、最後にもう一問だけさせていただきたいんですが、仕事を保障して失業者が生活できるようにする制度として、私の地元福岡県の筑豊地域などでは、特定地域開発就労事業が実施されております。旧産炭地の就労困難な中高齢者のために実施されている事業で、今も約二千八百人が就労し、この地域の振興にとって重要な役割を果たしております。
 ところが、この特開事業について、九八年の調査研究報告では、「終息すべき時期を迎えている」とされ、関係者の間で不安が高まっております。少なくとも、この深刻な失業情勢の中でさらに旧産炭地の失業を一層困難にするような措置をとるべきではないと思います。
 むしろ、この際、伺いたいのは、我が党としては、現在のような深刻な失業情勢の中で、緊急の措置として、失業率が三%程度に低下するまで、臨時の就労の場として、必要な地域にこういう特開事業のようなものを積極的に起こしていくべきではないかというふうに思いますが、いかがでしょうか。
戸苅政府参考人 特定地域開発就労事業でございますが、これにつきましては、労働省時代、失業対策事業も行いということで、公的な就労事業を行ってまいったわけであります。その結果、どういうふうになったかと申しますと、事業の非効率あるいは就業者の滞留といった問題が生じたわけでありまして、我々としては、特開就についても同じような問題が生じるおそれがあるというふうに考えておるところであります。
 国の雇用対策としては、そういった経験にかんがみて、やはり民間での雇用、これが基本であるというふうに考えておりまして、非常に厳しい雇用情勢のもとではありますけれども、特定地域開発就労事業を活用するということは適当ではないんじゃないかというふうに考えておるところでございます。
 特開就については、平成十年十二月の調査研究会報告で、「最早終息すべき時期を迎えている」という指摘がなされているところでありまして、その報告を踏まえまして、本年度からは新たな就労者の方の流入を停止しているというところであります。
 この問題については、調査研究会を昨年五月から開催しておりまして、この結果を踏まえて対応していきたいというふうに考えております。
小沢(和)委員 終わります。
中山委員長 次に、金子哲夫君。
金子(哲)委員 社会民主党・市民連合の金子です。
 先日も質問したことを含めて、もう少し答弁をいただきたい点がありますので、質問したいと思います。
 最初に、改めてもう一回確認をしたいんですけれども、今回の雇用保険法の改正が、本来の雇用保険法にうたわれている目的とのかかわりにおいて、基本的に私はその目的を変質させるものではないかというふうな思いを、改めてこのことを問いたいと思うんです。
 雇用保険法第一条は、「雇用保険は、労働者が失業した場合及び労働者について雇用の継続が困難となる事由が生じた場合に必要な給付を行うほか、労働者が自ら職業に関する教育訓練を受けた場合に必要な給付を行うことにより、労働者の生活及び雇用の安定を図るとともに、求職活動を容易にする等その就職を促進し、」こういうふうにうたわれておりまして、つまりは、再就職のための支援をすることと、あわせて労働者の生活安定を図るためにその支給日額というものを決めていくということになっていると思うんです、基本的には。
 先般も質問しましたけれども、今回、再就職先の賃金というものを支給額の算定基準に持ってくるということは、こういう雇用保険の給付額の基本的な考え方と変わった考え方になるのではないかという危惧を持つんですけれども、改めてその点についてお伺いしたいと思います。
坂口国務大臣 そこは今までの考え方と全く変わっておりません。今までの考え方どおりにやっているつもりでございます。
 こういう失業者の多い時代でございますから、いわゆる現在働いておみえになります皆さん方と、それから失業された皆さん方との間の連帯、お互いの助け合いということも重要でございますが、失業された皆さん方の中におきましても、高額所得の皆さんとそうでない皆さん方とおみえになるわけでございますので、そうした皆さん方の中におきましてもお互いに助け合うという仕組みがやはり私は必要だと思っております。
 これは何も雇用対策だけではございませんで、医療の面におきましても、医療保険においてもしかり、ほかの面でも私はそうだというふうに思います。患者の皆さん方であれば患者の皆さん方の中でもやはり助け合う、軽い人は重い人に手を差し伸べるといったことが大事でございます。
 そうした意味で、私は、どちらかといえば、高額の皆さん方にある程度の御辛抱をいただくということは、こうした失業者がふえてきている現状におきましてやむを得ない対策だというふうに思っている次第でございます。
金子(哲)委員 相互に助け合う、扶助し合う、そのことは重要なことだと思うんですけれども、つまり私が申し上げたいのは、この目的の中の、生活安定を目的とするということなんですね。つまり、これまで高い人は高い人なりの生活をしてきているわけです。それに対して、急激に半額という支給額に激減をすることに対しては、生活の安定上からいうと、やはりそれだけの激変になるわけですよね。
 だから、私があえてそのことを申し上げているのは、基本的に、お互いが助け合おう、その精神はそれは大事なことであります。しかし、だからこそ、高い賃金を受け取っていた人たちはもちろん今まで高い掛金を払っているわけですから、それはその後の、失業しても一定期間はある程度安定した生活が保障されるという前提でそういう掛金を、掛け率であれば、基本給が高ければそれだけ高いお金を払っているわけですから、そのことは、その自分たちの生活というものを前提にして失業した時点の生活というものを考えているわけですよね。
 ですから、私が言うのは、激変とかそういうこと、急激に変化をすることに対して、お互いに扶助し合うという気持ちは大事にしながらも、個々の労働者にとっては、激変をしていくことに対して、それが本当の意味での、先ほど私が読み上げた労働者の生活の安定を図るという観点からいうと、新たな再就職先の賃金を言うことによって、そのことが前面に出ることによって、その第一条の目的が損なわれていくのではないかということを私は言っているわけです。
 相互扶助の精神を、高額の人はそれを考えなさいというのは、私はそのことを何も否定しているわけでも何でもなくて、この第一条の精神からどうかということをあえて改めて申し上げているわけで、その点からいうと、幾ら言われたとしても、高額の者は我慢しなさいという理屈は通らないんですよ。
 高額のカーブが同じようなカーブで行くんなら同率だということになりますけれども、それを急激に下げて抑え込んでいくということは、少なくともそこにいらっしゃる人たちにとっての失業状況における生活というのは激変をするということになるんじゃないですか。そのことは、生活安定を目的としたこの雇用保険の第一条の目的を損なうことになるのではないですか。そういう考え方を導入されたんですかどうですかということを私は問うているんです。改めてお聞きします。
戸苅政府参考人 昔の話をしちゃって大変恐縮なんですが、失業保険時代は実は六割給付で、離職前賃金の高い人も低い人も六割給付であったわけであります。これは昭和五十年に雇用保険に改正されまして、その際に六割から八割、こういうことでなされたわけでありまして、そのときの考え方と申しますのは、離職前賃金の高い人については、むしろ早期再就職を促進するという考え方のもとに従来の六割を維持し、それから低賃金層の方については、生活の安定を図るという方によりウエートを置いて、従来の六割給付を八割給付に引き上げた、こういった経緯がある。これは私、若いころ雇用保険法を担当していたものですから、そういうふうに思っております。
 そういった意味では、今の六割から八割という中にも、離職前の高賃金層については再就職の促進という方のウエートがかなり高目に、低賃金層については生活の安定というウエートが高目に出ているということで、今回の改正は、そういった流れに沿って、しかも、先ほど大臣からお話がありましたとおり、再就職賃金の実態も見て、実態に合わせて今回は改正をする、これが基本的な考え方で、基本的な考え方は変わってはいないんじゃないかというふうに今考えております。
金子(哲)委員 今局長は強調されて、高額の人たちは再就職を優先するということをおっしゃっていますけれども、私が言いたいのは、それであっても、六割というものを保障した根拠というのは、それなりにもう一方にある生活安定というものを当然考慮していたから、六割というものが出てきていると思うんですよ。再就職だけを優先したわけではなくて、そういうものも含めて、強調される面は再就職の面かもわからないけれども、生活安定という性格も持っているだけにそこをやったと思うんですよ。だから、低い人はもっと高くしていかなきゃいけないと。
 だから、私が言うのは、それを再就職の賃金を優先して物を考えて五割まで下げるという考え方は、生活安定というところを結局カットしていっているんじゃないですか。では、このままその考え方でいけば、もっと雇用保険会計が厳しくなったらもっと下げるんですか。その点についてはどうですか。
戸苅政府参考人 正直申し上げて、財源が限られている中で、低賃金層と高賃金層に対する給付をどういった水準にするのかというのは、御質問のとおり大変重要な問題で、これをどう決めるかということについては審議会でも随分御議論いただき、その上で五割から八割、こういうことに今回は変えたということでございます。
 再三大臣からも御説明申し上げ、我々も御説明申し上げているところですけれども、やはり離職前賃金の高い方については、所定給付日数丸々もらうまでなかなか就職されない方が多い。しかも、所定給付日数丸々もらった後一カ月以内に就職する方の比率も高い。こういった実態を考えると、やはり我々として、高賃金層の方についての再就職促進という観点から見ますと、再就職賃金と給付のバランスを見るということは、これは必要なのではないかということでありますし、それから今お話しの失業中の生活の安定、これも雇用保険法の大変重要な目的でございます。そういった意味で、両方のバランスをどこでとるかということについて、公労使三者構成の審議会においても、高賃金層については五割というのはやむを得ないのではないかというふうなことになったのではないかというふうに思います。
 今後についてどうするかということについては、我々としては、これも何度も申し上げていますけれども、これまでの失業給付の受給者の動向から見て、五年程度はもつ制度に設計したつもりでおりますので、今どうこうと申し上げられませんが、万が一にも見直すというふうな議論、まあないとは思いますけれども、あった場合にはまた各方面の御意見を聞いてやるということだろうと思います。
金子(哲)委員 それは納得できないですよ。
 つまり、この前も二年間で破綻したわけで、五年間保障されているかどうか。これは景気の動向にもかかわるでしょうけれども、私が言いたいことは、もう一度確認したいんですけれども、少なくとも五割というものは、五〇%というものは、生活の激変緩和も含めて、生活安定としてはもうぎりぎりのところじゃないですか。
 じゃ、そこは、私は今回これだけ切り下げることは反対ですけれども、少なくともこれ以下はあり得ないということは明確にしてほしいんですよ。それを今のようにまた審議会に相談して考えますということではなくて、大臣、先ほど局長も言われたように、生活安定の面もあるわけですから、幾ら高額にもらっていても、何度も申し上げますけれども、それはそれなりの生活をしてきて、四十五歳以上、五十歳の年齢に達して、それから急激な生活変化を起こすことはできないわけですから。それは、徐々に次の再就職も含めて考えなきゃいけないですけれども、再就職するまでの間のどう生活をしていくかという面があるわけです。この五〇%というのはもう最低なんでしょうね。その点、大臣、改めてお聞きします。
坂口国務大臣 それぞれの人の今日までの雇用状況、経済状況、それぞれによって違うというふうに思います。やはり国としてなすべきこと、そしてまた自己責任としてなすべきこと、そうしたことも私はあるというふうに思いますが、確かに五〇%というのは一つの限界であるというふうには私も思います。それ以上に下げるというようなことをしなくてもいいようにどう全体を回復させていくか、経済を回復させる、あるいはまた全体の枠組みをどうつくっていくかということだろうと思いますね。これは雇用保険の中身だけの問題ではなくて、トータルでそうしたことを念頭に置きながらやはりこれからやっていくということになるんだろうというふうに思います。
金子(哲)委員 あえてもう一度お伺いしますけれども、つまり、私はしつこく言いますけれども、この側面、雇用保険法に盛られた、再就職を支援していく、できるだけ早く再就職していただく、そのための支援をしていく、それからその間の生活の安定を図っていくということを考えますと、もう少なくとも五〇%というのはぎりぎりじゃないですか。その点ぐらいはここで明確にしてもらわないと、雇用保険の先行き、どうなるかわからない。再就職先、賃金はどんどんどんどんもっと下がれば、もっと下げることだってあり得るかもわからないというようなことで、ぎりぎり五〇%というのですら大きな問題があると思いますけれども、一〇%も下げて、まだ先行きもわからない。
 もちろん、景気がよくなって失業者が減っていくことが一番ですよ。しかし、それがもしそうならなかった場合には、少なくとも五〇%以下に、もうこれ以上切り下げることはないということぐらいはここで明確にしてほしいと思うんですよ。
戸苅政府参考人 おっしゃるように、五〇%というのはかなりぎりぎりのところに来ているというのは我々も同じ思いでおります。
 そういった意味で、一つは経済情勢、それから雇用情勢ということもありますけれども、雇用保険法の健全な運営というか合理的な運営といいますかに努力して、とにかく五割を割るような支給率を招くことにならないように、雇用対策の面、雇用保険制度の運用で一生懸命努力していきたい、こういうふうに思います。
金子(哲)委員 局長というのはうまく答弁されるものだと今やはり思いましたけれども、いずれにしても、今が五〇%というのは、少なくとも生活安定の面から見るとぎりぎりのところの支給額にまで落ち込んできている、このことはもう明らかだと思いますから、その点は、今後の雇用保険の運用に当たってそういう事態を招来しないようにぜひ強く求めておきたいと思います。
 それで、質問を用意したものの幾つか省略したいと思いますけれども、先回私は、今度の雇用保険法で就業促進手当、先ほども幾つか質問が出ましたけれども、不安定雇用を招来していく状況をつくっていくのではないか。例えば就業促進手当などの例を出しましたし、それから、現実的に今パートとか有期雇用とかがふえているわけですけれども、その際、大臣はこのようにおっしゃったんですね。低い賃金で雇用されても、経過を見て、一年なり一年半なりの人の働きぶりを見て、もっと上げたいというところもたくさんあるというふうに答弁されたんですが、これは一体何を根拠にして、企業が今パートの労働者や有期雇用の労働者を一年か一年半ほど働かせた後はそんなふうにちゃんとするようになっているという数字がどこにあるんでしょうか。それをちょっと示していただけますか。
戸苅政府参考人 一つは、恐らく大臣がお答えになった背景には、ハローワークの求人の状況なんだろうと思います。
 ハローワークの現場の職員の声を聞きますと、採用時は、中小企業も多いということもあって、どういう人かよくわからぬということもあって低目の賃金に抑えておいて、その後、御本人が非常に勤務成績がよかったり、あるいは能力を十分発揮されたりということであれば処遇が改善されるという求人が見られるということはよく聞きますので、そういうことが一つあろうと思います。
 それから、これはちょっとお答えになるかどうかとは思うんですけれども、ちょっと御参考までに申し上げますと、厚生労働省の賃金構造基本調査というのがございます。これで、サンプルが違いますので、人が違えば比較にならぬじゃないかと言われるとそれまでなのですが、参考までに申し上げますと、平成十三年の今の調査で勤続年数別に賃金が出ておりますのでそれを見ますと、例えば勤続年数〇年の通常の労働者の方で、四十歳から四十四歳の方が、勤続一年から二年になりますと賃金が八%上がっている。ですから、年平均四%だろうと思います。その方が、三年から四年になると〇・四%の上がり方、年平均〇・二%だろうと思います。
 四十五歳から四十九歳についても同じようなことで、一ないし二年目で九%、三ないし四年で二・二%というふうなことでありまして、こういった面で、中高年の方については、一年目から、勤め始めて一年ないし二年たつと賃金が上がる、三年、四年で大体安定してくる、こういう傾向がありますので、中高年については統計的にもそういった傾向はあるのかなというふうな気もいたしております。
金子(哲)委員 いろいろなところにいろいろな数字があるものですから、都合よくその数字というのは引用することはできるわけですけれども、私は、もともとこの質問をしたのは、パートの労働者とかそういう不安定雇用がふえるんじゃないか、ある意味でそういうことも促進するような役割を果たしていくんではないか、今回の就業促進手当の、有期雇用やパートなどにも就職した際にも活用するということは、そういう側面を持っているんじゃないかという中で、こういう答弁が出てきたわけですよ。
 では、そういう人たち、つまりパートやそういう人たちは常用雇用に転化されたり、パートの人たちの賃金というのはそんなに高く上がっているんですか。そういう数字が具体的にどれぐらい出ているんですか。一年間雇用された後は常用雇用に転化されているような人がどれぐらいいるんですか。それをちょっと示してください。
戸苅政府参考人 今御質問のような数字はちょっとあるかどうかわかりませんが、今手元にはございません。
 ただ、今申し上げたのは、やはり一年目、最初雇ったときというのは、中小企業は特に求職者についての情報を十分持っているわけではないので慎重に出るだろう、こういうことがあるんじゃないかということで、それが今申し上げたような数字にもあらわれている可能性があるんじゃないか、こう申し上げたわけで、今御質問の、まず非常用というかパートで雇っておいて、その後通常雇用にというのがどの程度というのは、ちょっと統計的には見当たりません。
 ただ、私ども今やっております若年者とそれから障害者についてのトライアル雇用は、ある意味では、最初から常用雇用で雇うということについてちゅうちょのある中小企業主等に、まずトライアル雇用、試行雇用ということで、これは期限つきの雇用でありますが、これで雇っていただいて、うまくいけばそのまま就職する、こういうことであります。
 これについては、障害者と若年者とで常用就職に結びついた比率に若干の差はありますけれども、いずれにしても七割から八割はそのまま常用に結びついているということでありますので、それから推測しますと、今御質問のようなケースというのもそれなりにあるのではないかな、こう思います。正確なところはちょっとわかりません。
金子(哲)委員 今トライアル雇用のお話が出ましたのでお伺いしますけれども、七、八割という、それはもとのベースは幾らですか。このトライアル雇用を利用して就職活動をやられたのは一体何万人いらっしゃるんですか。
戸苅政府参考人 もとのベースは確かに、おっしゃるとおり、一万とか二万とかそういうベースであります。
金子(哲)委員 一万とか二万ですからね。今の雇用状況で、それが七、八割あるからというようなことでこのような答弁をしてもらうというのはちょっと困るわけですよね。いい制度だと思いますよ。いい制度だし、事実七、八割雇用ができるということは、これは活用したらいいと思うんですけれども、しかし、全体の雇用状況を改善していく、また、それがきっちりとした常用雇用につながるような中身まで果たしていないということも一方であるわけで、それをとらまえて、概して大体最初は不安定でも十分いっているというような答弁をしてもらうのは、現状の認識として私は不十分だというふうに思うんです。
 時間がありませんので次の質問をしたいと思いますけれども、再就職の支援ということが非常に重要だと。これは他の委員からも質問が出ておりますし、私ども社民党もこの間訓練の延長等を言ってまいりました。私も何度かこの問題について質問したんですけれども、もう一度改めて聞きますけれども、訓練の延長給付の活用や、それらは再就職にどれぐらいの効果を果たしているんでしょうか。
坂本政府参考人 職業訓練につきましては、公共職業訓練の施設内で行っているものにつきましては六〇%の就職率になっております。民間……(金子(哲)委員「延長給付の話をしている」と呼ぶ)
戸苅政府参考人 申しわけないです。ちょっと私が取り違えたのかもしれません。
 雇用対策臨時特例法で複数回受講の給付の特例を設けたわけでありますが、これにつきまして昨年九月までの数字を見ますと、複数回受講指示は百五十六名、これは前回も御質問があり、非常に少ないじゃないかと言われた数字でありますが、そのうち訓練延長給付の受給を開始した者が百二十一名でございます。
 これらのうちで、現在再就職をして雇用保険の被保険者になっている、これは雇用保険のデータを回して見たものでありますから、場合によると自立されたりあるいは雇用保険未適用の事業所に就職された方もいるかもしれませんが、その方が六十名ということで、百五十六名のうちの六十名ということでありますから、約四割、こういうことでございます。
金子(哲)委員 では、もう一つお伺いしますけれども、労働移動支援助成金制度というのがありますけれども、これはどれぐらい活用されているんでしょうか。
戸苅政府参考人 労働移動支援助成金でありますけれども、ことしの二月末現在の実績を申し上げます。
 離職前に休職というか有給休暇を付与されて求職活動をしたりあるいは教育訓練を受けたりといった場合の求職活動等支援給付金でありますが、これが七千百六十六人、額といたしまして支給決定額が四億六千五百万円余でございます。それから、再就職先で定着のための講習を受けるというのがございます。これが定着講習支援給付金でありますが、これが六百六十七人で六千六百四十万円でございます。それから、アウトプレースメント会社等によりまして再就職した場合の経費を見る再就職支援給付金でございますが、これは九十九名で千六百三十四万円、こういうことになっております。
金子(哲)委員 今、訓練延長給付も含めて二度ほど、二つ御答弁いただいたんですけれども、厚生労働省としてはそれらの数字をどう評価されているんですか。
戸苅政府参考人 まず、複数回受講指示については、これはいろいろな原因があろうと思いますけれども、正直言って、制度を設けたときの目的が全く果たされていないと言わざるを得ないと思います。そういった意味で、我々としては、制度の趣旨が十分生かされるように、現行の制度の仕組みをもう一度点検して抜本的に見直し、実効の上がるようにしていかぬといかぬだろうというふうに思っていまして、これは早速、今回の雇用保険法を通していただきましたならば、その施行とあわせて制度の改善を図りたいというふうに思っております。
 それから、労働移動支援助成金、これも決して十分な状況ではございませんで、これにつきましては、昨年の十二月に、従来は、アウトプレースメント会社を利用したり、あるいは再就職先等で、移動先で定着の講習をしたりというのが、離職の期間が、離職後七日以内に再就職した者に限るということで、やはり現実を考えるとなかなか実態に合っていないということから、離職後三カ月ということで制度を緩和したところでありまして、これによって活用が進むというふうに考えております。
金子(哲)委員 つまり、先ほど雇用保険の話で再就職の活動が重要だという話をされて、給付額まで下げてやる。しかし、今まで再就職支援ということでいろいろな制度をつくられたけれども、ほとんど効力を発していないじゃないですか、効果として。それで、今おっしゃったように、いろいろ制度上の問題もあるけれども、実際にはそういうことをきっちりとそういう事業者やいろいろな人に対して説明できるようなハローワークの体制も十分ないんじゃないですか。
 問題は、そういう体制がしっかりと整っていない、いろいろなものをやるけれども、それを消化するだけの窓口、現場の体制というものが整っていないところに私は大きな原因があると思うんですよ。できるだけいろいろな施策、メニューを用意されて、それをやるというのは十分に大事なことですけれども、肝心なところのマンパワーが不足をしているために、それを十分に活用していくだけの事業者に対する説明もできないし、失業されている皆さん、求職者に対しても説明ができる余裕がないところに、実はそこにも、それだけとは言いません、そこにも非常に大きな原因があるんじゃないか。
 私がそう質問すると、大臣はすぐ、今の人員の問題がネックにあるとおっしゃいますけれども、しかし、根本的にそこで対策を打たない限り、幾ら政策、制度を新たなものを提起してみても、これは、今おっしゃったとおり、十分な活用、役割を果たさないということに結果なっていくわけです。予算をつけてみたって、結局使わない予算を幾らつけてみてもしようがないことなんですよ。それを活用するための体制という本当の現場のところの体制をやはりつくっていかなければ、大臣、いつまでも要員、要員ということだけでこれを避けて、難しいということだけではもうおさまらない状況にある。雇用保険で、一方の側の失業者の皆さんにも痛みをどんどん我慢していただくということであれば、それに対応する政府の体制も、厚生労働省の現場の体制もしっかりとつくっていくことがなければ、こういうふうに幾ら制度をつくってみても、結果、効力を発揮しないということになると思うんですけれども、その点について最後に御質問して、終わりにしたいと思います。
坂口国務大臣 いずれの問題にしましても、これは周知徹底というのは大事でありまして、そこがやはりなければならないことは御指摘のとおりだというふうに思っております。人の配置の問題もあると思いますけれども、私は、その前に、やはりきちんとした周知徹底ができているかどうかということだろうというふうに思います。
 それともう一つは、規制を強化し過ぎていて使えないということがありますから、できる限り、つくりました以上、それに見合って皆さんが御利用いただけるように、規制を余り強めないということが大事だというふうに思っておりまして、そうした見直しをやりたいと思っているところでございます。
金子(哲)委員 もう時間になりましたので終わりますけれども、大臣、その周知する人自身が今問題になっているわけですから、周知しようとしても、ハローワークの窓口が忙し過ぎて、そういう時間的余裕もないところに今大きな問題があるということを改めて指摘して、終わります。ありがとうございました。
中山委員長 以上で両案に対する質疑は終局いたしました。
    ―――――――――――――
中山委員長 この際、城島正光君外四名提出、雇用保険の財政の安定化及び求職者等に対する能力開発支援のための緊急措置に関する法律案について、国会法第五十七条の三の規定により、内閣の意見を聴取いたします。坂口厚生労働大臣。
坂口国務大臣 ただいまの民主党の御提案によります雇用保険の財政の安定化及び求職者等に対する能力開発支援のための緊急措置に関する法律案につきましては、政府としては反対でございます。
    ―――――――――――――
中山委員長 これより両案を一括して討論に入ります。
 討論の申し出がありますので、順次これを許します。宮腰光寛君。
宮腰委員 私は、自由民主党、公明党及び保守新党を代表して、ただいま議題となりました政府提出の雇用保険法等の一部を改正する法律案に賛成の意を表するものであります。
 現在、我が国の経済や産業活動は、世界経済の急激な構造変化が進行する中で長期の停滞を余儀なくされ、雇用情勢も、完全失業率が五%台半ばで高どまりするなど、年々厳しさが増しております。
 こうした状況下で、雇用保険制度においては、受給者の増加や保険料収入の減少等に対処するため、給付の見直し、保険料率の引き上げ等の改正が行われてきましたが、予測を大幅に上回る雇用情勢の悪化等により、財政破綻の危機に直面するに至っています。一日も早く経済を再生し、雇用を改善するための適切な政策運営が強く求められているところでありますが、雇用のセーフティーネットの基本である雇用保険の安定的運営を実現することは、勤労者の安心や社会の安定のために不可欠かつ焦眉の課題であります。
 雇用保険財政の立て直しのためには、まずは、ともすると再就職努力よりも安易な受給に流れている部分、パートタイム労働者の増加など労働市場の変化に対応し切れていない部分などをきちんと見直し、むだのない合理的な給付内容に改めた上で、なお安定的運営のために必要な場合に限り、最小限の料率引き上げが認められるものと考えます。
 今回の政府案は、高賃金層を中心とした基本手当日額と再就職時賃金との逆転現象の解消等による早期再就職の促進のほか、多様な働き方への対応の観点から失業等給付の見直しを行うとともに、再就職の困難な状況に対応した諸給付の重点化を図るものとなっております。加えて、多様な早期就業を促進するための給付の創設や壮年層の基本手当の給付日数の延長を行うなど、厳しい雇用失業情勢を踏まえたきめ細かな目配りがなされ、負担面についても、保険料率を二年間据え置いた上で最大限抑制した引き上げとするなどの配慮がなされており、我々としては高く評価するものであります。
 なお、雇用保険の財政の安定化及び求職者等に対する能力開発支援のための緊急措置に関する法律案は、雇用保険制度自体の見直しを行うことなく、労使の共同連帯による制度に国民の税金を巨額に投入することで財政の安定化を図るなどの内容となっており、到底国民全体の理解を得られるものではないと考えます。
 以上の理由により、私は、政府提出の雇用保険法等の一部を改正する法律案に賛成、雇用保険の財政の安定化及び求職者等に対する能力開発支援のための緊急措置に関する法律案に反対を表明し、私の討論を終わります。(拍手)
中山委員長 次に、大島敦君。
大島(敦)委員 民主党・無所属クラブ、大島敦です。
 私は、民主党提出、雇用保険の財政の安定化及び求職者等に対する能力開発支援のための緊急措置に関する法律案に賛成し、内閣提出、雇用保険法等の一部を改正する法律案に反対する立場から討論を行います。
 二月の完全失業者数三百四十九万人、完全失業率五・二%と、依然として厳しい雇用失業情勢が続いております。新聞の紙面には、リストラ、人員削減の文字が躍り、景気に不透明感が強まる中、自発的に今の勤務先をやめる失業者は減っておりますが、会社の都合でやめるいわゆる非自発的失業者の数は高水準でふえ続けております。国民の将来不安は消えることなく、家計の消費も萎縮したままであります。
 こうした景気も雇用も最悪のタイミングにおいて、失業時のサポート体制を手薄にしようというのが政府提出の雇用保険法等の一部改正案であります。その中身は、求職者の責務といったあるべき失業者像なるものをわざわざ条文に書き込み、附則でごまかしながらも本則で保険料率を値上げし、しかも給付の引き下げを行い、痛みを労働者に押しつけるなど、到底国民の理解を得られるものではありません。
 一方、政府は、訓練延長制度の複数回受講者数百五十六人という惨たんたる数字を根拠に、再就職機能を拡充し、かつ、運用が不明瞭な就業促進手当の創設により早期就業を支援すると豪語しておられます。
 改正の目的が、失業者の生活の安定をサポートし、再就職を支援するというセーフティーネット本来のあるべき方向に目が向いておらず、政府みずからの見通しの甘さと政策判断の誤りを顧みることなく、財政的な観点からのつじつま合わせに終始していることは明らかであります。
 本改正案により、小泉政権の言う改革が極めて小手先にすぎず、二十一世紀の雇用を見据えたセーフティーネットとして極めて不十分であるということを指摘し、私の反対討論を終わりにいたします。
 以上です。(拍手)
中山委員長 次に、武山百合子君。
武山委員 私は、自由党を代表し、政府提出の雇用保険法等の一部を改正する法律案に反対、城島正光君外四名提出の雇用保険の財政の安定化及び求職者等に対する能力開発支援のための緊急措置法案に賛成の討論を行います。
 今、日本経済は、中小零細企業を中心に将来展望を描き切れないでいます。一方、労働者の完全失業率は五%台という高水準で推移し、労働者自身の生活設計も不安に襲われています。
 本来、セーフティーネットとは、突然の不測の事態に襲われ立ち行けないときこそ頼ることができる安全装置であるはずです。雇用保険制度も、働く人たちや企業が少しずつ保険料という負担を出し合うことで、失業という事態に対して、新しい人生設計を自立的に描くことにつなげるための安全装置であるはずです。
 しかし、今回の政府による改正案では、そうしたセーフティーネットの基本に沿うものではなく、労働者の切実な要請にこたえ得るものでもありません。
 以下、政府提出の雇用保険法改正案に反対する理由を申し述べます。
 第一に、今回の見直しは、何の理念もなく財政のつじつま合わせを行っているにすぎないことです。基本手当日額と再就職時賃金の逆転現象の解消や、在職者と失業者給付の均衡を考慮した見直し等、項目の柱はきれいに見えますが、要は現役世代の基本手当を削減することでしかなく、一方で、財政調整で保険料率の引き上げを予告実施するなど、労働者の視点を無視した制度維持でしかありません。
 第二に、これまでの雇用保険財政の使い道の徹底検証をせず、給付の削減と負担増を実施することです。雇用保険事業の一環としてつくられた勤労者福祉施設は、不採算などを理由に投げ売りしているのが現状です。これまでの財政運営に対して、運営側である政府はどのような責任を果たしてきたか。その説明を全く果たさず、赤字財政の回避を労働者に押しつけようとしていると断ぜざるを得ません。
 第三に、根本問題として、小泉経済政策の失敗を顧みない今回の改正案では、労働者へのセーフティーネット機能を果たさないということです。現在の過酷な経済状況と失業者増大に陥ったのは、小泉緊縮経済政策の失敗によるものであります。今回の改正案は、そうした政策そのものの失敗をいわば労働者へのしわ寄せと給付カットという形で緊縮し穴埋めしようというものであり、労働者の安心した将来設計や大胆な雇用環境の変化に対応することはできないと考えます。
 一方、城島正光君外四名提出の雇用保険の財政の安定化及び求職者等に対する能力開発支援のための緊急措置法案につきましては、現在の厳しい経済及び失業状況のもとで社会構造改革を進展するに当たり、増大する失業者の増加や求職のミスマッチを初めとする失業状態の長期化の懸念などに対し、基金を通じた緊急的な雇用保険財政の安定策や職業能力開発支援など、国民の将来不安と直面する失業不安に一定の措置を講じていると評価し、賛成いたします。
 以上、討論を終わります。(拍手)
中山委員長 次に、山口富男君。
山口(富)委員 日本共産党を代表して、雇用保険法等の一部を改正する法律案に反対の討論を行います。
 反対の第一の理由は、失業給付の大幅な削減です。今回の給付額の削減は、賃金月額十二万六千三百円以上の受給者すべてが対象とされ、広範な受給者に影響を及ぼします。とりわけ、給付率の下限を六〇%から五〇%へ引き下げることは、半世紀以上も維持してきた給付率六〇%の水準を大きく割り込み、中高年サラリーマン層の生活の安定を著しく損なうものです。失業の長期化など、失業者の現状に即した対策を考えるなら、給付日数の短縮でなく、延長こそ検討すべきです。
 反対する第二の理由は、保険料率の引き上げです。法案は、雇用保険に係る保険料率を二年後に一・六%へ引き上げ、その後一・八%への引き上げまで可能とするものです。保険料率は、昨年十月、一・四%に引き上げられたばかりであり、被保険者にとって受け入れられるものではありません。
 雇用保険会計の悪化の背景には、未曾有の失業をもたらした政府の失政があります。国庫負担を昨年度より千七十八億円も引き下げておきながら、一方で保険料率の引き上げを決めることは、失政のツケを国民に押しつけることにほかなりません。
 反対する第三の理由は、早期再就職の促進の名のもとに、低賃金、不安定雇用への労働力移動を促進することです。常用雇用への再就職を促進するための手当を常用以外の再就職も促進する手当につくりかえること、また、給付と再就職時賃金の逆転現象の解消を理由とする基本手当の削減を実施することは、基本手当の給付総額の抑制のために失業者を再就職へと追い立てようとするものです。
 こうした政策は、失業者が適職や希望する労働条件に見合った職につくための求職活動の環境を保障しないばかりか、結局、低賃金と不安定雇用を促すものであり、雇用保険制度の重大な変質をもたらす危険があります。
 さらに、本法案は、失業給付のほか、高年齢雇用継続給付、雇用継続給付等の諸手当を含め、総額三千百億円の給付減と三千億円の負担増をもたらすものとなっています。
 最後に、城島正光君外四名提出の雇用保険の財政の安定化及び求職者等に対する能力開発支援のための緊急措置に関する法律案は、必要な給付水準確保のための国の責任にかなうものであり、求職者の能力開発を支援することから、賛成するものです。
 以上、討論を終わります。(拍手)
中山委員長 次に、金子哲夫君。
金子(哲)委員 私は、社会民主党・市民連合を代表し、内閣提出の雇用保険法等の一部を改正する法律案に反対、城島正光委員外四名提出の雇用保険の財政の安定化及び求職者等に対する能力開発支援のための緊急措置に関する法律案に賛成する討論を行います。
 今日の雇用保険制度の財政悪化を招いた主要な原因は、小泉内閣による経済失政によって起きた完全失業者の増大にあることは自明のことであります。その責任を明確にしないまま労働者、失業者に犠牲を転嫁することは、到底容認できません。
 また、深刻な雇用状況は失業の長期化をもたらしており、大幅な給付の削減を行うのではなく、給付期間の延長や給付対象の拡大など抜本的な対策を考えるべきであります。
 特に、基本手当額の削減を行おうとしている対象者が中高年層であり、現状でもリストラの影響を最も受け、失業期間がより長期化していることを考えると、今改正は現状の労働情勢と逆行する中身と言わざるを得ず、セーフティーネットとしての雇用保険制度の意義を損なうものであります。
 特に、雇用保険制度の中核としての基本給付の削減は、再就職時賃金の実勢を持ち込むものであり、失業者が求職活動をする間の生活安定を確保する雇用保険法の第一条にうたわれた基本的な性格を変質させるものであり、到底容認することはできません。それは、さらなる低賃金、不安定雇用労働を促進させることにつながると言えます。
 こうした考え方は、新たに創設された非常用型の就業促進手当にもあらわれています。確かに社会変化によって就業形態も多様化していますが、今回の改正は、有期雇用やパートなど不安定雇用を当然のこととし、それを促進する結果になることは明らかです。生活の安定にとって最も大切なことは雇用の安定ですが、短期雇用の拡大に道を開くことは、不安定雇用を増大させ、国民生活の不安定化を招くことになります。
 本来行政がとるべき雇用政策は、長期雇用を基本とした雇用政策を基本とすべきであり、この理念を堅持すべきであり、雇用保険法等の一部改正案には反対であります。
 雇用保険の財政の安定化及び求職者等に対する能力開発支援のための緊急措置に関する法律案は、厳しい労働情勢に対し、再就職支援活動を強化し、雇用保険制度の安定のため国の責任において緊急財政措置を講ずるものであり、賛成であります。
 以上です。(拍手)
中山委員長 以上で討論は終局いたしました。
    ―――――――――――――
中山委員長 これより採決に入ります。
 まず、城島正光君外四名提出、雇用保険の財政の安定化及び求職者等に対する能力開発支援のための緊急措置に関する法律案について採決いたします。
 本案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
中山委員長 起立少数。よって、本案は否決すべきものと決しました。
 次に、内閣提出、雇用保険法等の一部を改正する法律案について採決いたします。
 本案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
中山委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
    ―――――――――――――
中山委員長 この際、本案に対し、長勢甚遠君外五名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、自由党、社会民主党・市民連合及び保守新党の六派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。
 提出者より趣旨の説明を聴取いたします。大島敦君。
大島(敦)委員 私は、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、自由党、社会民主党・市民連合及び保守新党を代表いたしまして、本動議について御説明申し上げます。
 案文を朗読して説明にかえさせていただきます。
    雇用保険法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
  政府は、次の事項について適切な措置を講ずるよう努めるべきである。
 一 今後とも、セーフティネットとしての雇用保険の健全運営の確保に万全を期するとともに、雇用失業情勢に対応し、雇用対策の効果的な実施に努めること。
 二 雇用保険三事業の各種給付金等について、政策評価を適切に行い、今後とも必要な見直しを行うよう努めるとともに、中小企業の利用に配慮しつつ、不正受給の防止に万全を期すこと。
 三 高年齢者の六十五歳までの継続雇用を実現するため、法改正を含め高齢者雇用対策の抜本的な見直しを行うこと。
 四 パートタイム労働者が意欲を持ってその有する能力を十分発揮できるようにするため、パートタイム労働対策の進展状況、雇用システムの変化等の動きを見つつ、法的整備を含む検討を行うこと。
 五 労働移動の増加等に対応する観点から、失業時の中途払い出しを可能とする等、勤労者の住宅費、教育費等の負担の軽減に資するための勤労者財産形成制度の見直しの検討に努めること。
 六 三十五歳以上六十歳未満の雇用保険受給者であって、雇用保険の加入期間が三年以上の倒産、解雇等による離職者について、一定期間、受講手当の充実を図ること。
 七 雇用保険制度の将来的な在り方の検討については、拙速を避け、十分な時間をかけて行うこととするが、その検討の着手は早急に行うこと。その検討においては、基本手当、高年齢雇用継続給付の給付水準に十分留意すること。
以上であります。
 何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。
中山委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。
 採決いたします。
 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
中山委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。
 この際、坂口厚生労働大臣から発言を求められておりますので、これを許します。坂口厚生労働大臣。
坂口国務大臣 ただいま御決議のありました本法案に対する附帯決議につきましては、その趣旨を十分尊重し、努力してまいる所存でございます。
    ―――――――――――――
中山委員長 お諮りいたします。
 ただいま議決いたしました両案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
中山委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
    〔報告書は附録に掲載〕
     ――――◇―――――
中山委員長 次に、内閣提出、食品衛生法等の一部を改正する法律案及び健康増進法の一部を改正する法律案の両案を議題とし、順次趣旨の説明を聴取いたします。坂口厚生労働大臣。
    ―――――――――――――
 食品衛生法等の一部を改正する法律案
 健康増進法の一部を改正する法律案
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
坂口国務大臣 ただいま議題となりました食品衛生法等の一部を改正する法律案及び健康増進法の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由及び内容の概要を御説明申し上げます。
 まず、食品衛生法等の一部を改正する法律案について申し上げます。
 近年の食品製造技術の高度化、輸入食品の増加等により、国民の食生活を取り巻く環境が著しく変化している中で、BSEの発生や食品中の残留農薬など食品に関するさまざまな問題が生じており、食品の安全性に対する国民の不安や不信が高まっております。こうした状況を踏まえて、政府においては、食品の安全性の確保に関する基本理念の明示、食品健康影響評価を行う食品安全委員会の設置等を内容とする食品安全基本法案を提出しているところでありますが、この食品衛生法等の一部を改正する法律案は、食品安全基本法案と相まって、食品の安全性を確保することにより、国民の健康の保護を図ることを目的として提出した次第であります。
 以下、この法律案の主な内容につきまして御説明申し上げます。
 第一に、国民の健康の保護の観点からの食品衛生法の目的の見直し及び国等の責務の明確化であります。食品衛生法の目的において、国民の健康の保護を図る旨を規定するとともに、食品の安全性の確保を初めとする食品衛生についての国、地方公共団体及び食品等事業者の責務を明確化することとしております。また、国及び地方公共団体が食品衛生に関する施策を実施するに当たっては、国民等へ必要事項等を公表し、及びその意見を聴取しなければならない旨の規定を設けることとしております。
 第二に、食品の規格や基準等に関する規制の見直しであります。残留基準が設定されていない農薬等を一定量以上含む食品の流通等を禁止するとともに、既存添加物についても、万一安全性に問題があった場合にはその使用を禁止できることといたします。また、特殊な方法により摂取する食品等の暫定流通禁止措置を導入することとしております。
 第三に、食品等の監視・検査体制の強化であります。国が定める指針に基づき、都道府県等は国内での食品衛生監視指導計画を、国は輸入食品の監視指導計画を定め、これらの計画で定めるところにより監視指導する仕組みを設けることとしております。また、輸入食品を含めた食品の監視・検査体制の充実を図るため、命令検査を実施する検査機関の登録制の導入、輸入食品等に関し国等が行う検査の登録検査機関への委託規定の創設、命令検査の対象品目の政令指定の廃止及び厚生労働大臣による輸入業者に対する営業禁停止処分規定の創設を行うこととしております。さらに、総合衛生管理製造過程の承認に係る更新制の導入、食品衛生管理者の責務の追加など、営業者等による食品の安全性の確保のための施策についても見直すこととしております。
 第四に、食中毒等飲食に起因する事故への対応の強化であります。大規模、広域な食中毒に関して、緊急を要するときは、厚生労働大臣が都道府県知事等に対し、食中毒の原因の調査及び調査結果の報告を要請できることとすることにより、国民の健康保護のための危機管理体制の強化を図ることとしております。
 第五に、罰則の見直しであります。営業者等による法令遵守を確保するため、表示義務違反等について罰金の額及び懲役刑を引き上げるとともに、法人に対する罰金の額を引き上げる等所要の見直しを行うこととしております。
 第六に、と畜場法及び食鳥処理の事業の規制及び食鳥検査に関する法律の見直しであります。これらの法律においても、食品衛生法と同様に、法の目的に国民の健康の保護を図る旨を規定するとともに、国及び地方公共団体の責務を明確化することとしております。また、BSEの発生等を踏まえ、厚生労働大臣と農林水産大臣との連携に関する規定を設けるなど、所要の改正を行うこととしております。
 次に、健康増進法の一部を改正する法律案について申し上げます。
 近年の国民の健康に対する関心の高まり等を受けて、健康の保持増進に役立つものとして販売される食品が増加しており、これらの食品について虚偽または誇大な広告が行われた場合、これを信じた国民が適切な診療機会を失うなどのおそれがあることから、適切な規制を行うことが求められています。
 このため、今回の改正では、こうした食品についての虚偽または誇大な広告等の表示を取り締まるとともに、特別用途表示の許可に必要な試験の実施主体を拡充することにより、これらの食品を利用する国民の期待にこたえ、もって国民の健康の保持及び増進に資することとしております。
 以下、この法律案の主な内容について御説明申し上げます。
 第一に、健康の保持増進に役立つものとして販売する食品について、虚偽または誇大な広告等の表示を禁止することとしております。
 第二に、特別用途表示の許可に必要な試験の迅速化を図るため、当該試験の実施を独立行政法人国立健康・栄養研究所以外の機関にも認めることとしております。
 最後に、これらの法律の施行期日は、一部の事項を除き、公布の日から起算して三月を超えない範囲内において政令で定める日としております。
 以上、両法案の提案理由及びその内容の概要について御説明申し上げました。
 何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げる次第でございます。
 ありがとうございました。(拍手)
中山委員長 以上で両案の趣旨の説明は終わりました。
 この際、申し上げます。
 内閣提出、食品安全基本法案についての内閣委員会、厚生労働委員会、農林水産委員会の連合審査会は、明十六日水曜日午前九時から開会することとなりましたので、念のため御報告申し上げます。
 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後零時三十分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.