衆議院

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第10号 平成15年4月18日(金曜日)

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平成十五年四月十八日(金曜日)
    午後一時六分開議
 出席委員
   委員長 中山 成彬君
   理事 熊代 昭彦君 理事 長勢 甚遠君
   理事 野田 聖子君 理事 宮腰 光寛君
   理事 鍵田 節哉君 理事 山井 和則君
   理事 福島  豊君 理事 武山百合子君
      小渕 優子君    岡下 信子君
      木村 太郎君    佐藤  勉君
      田村 憲久君    滝   実君
      竹下  亘君    棚橋 泰文君
      西川 京子君    原田 義昭君
      平井 卓也君    松島みどり君
      三ッ林隆志君    宮澤 洋一君
      森  英介君    谷津 義男君
      山本 幸三君    吉田 幸弘君
      吉野 正芳君    渡辺 具能君
      家西  悟君    石毛えい子君
      大石 正光君    大島  敦君
      加藤 公一君    五島 正規君
      城島 正光君    三井 辨雄君
      水島 広子君    江田 康幸君
      佐藤 公治君    小沢 和秋君
      山口 富男君    阿部 知子君
      金子 哲夫君    山谷えり子君
      川田 悦子君
    …………………………………
   厚生労働大臣       坂口  力君
   厚生労働副大臣      木村 義雄君
   厚生労働大臣政務官    渡辺 具能君
   政府参考人
   (厚生労働省健康局長)  高原 亮治君
   政府参考人
   (厚生労働省医薬局食品保
   健部長)         遠藤  明君
   厚生労働委員会専門員   宮武 太郎君
    ―――――――――――――
委員の異動
四月十六日
 辞任         補欠選任
  後藤田正純君     倉田 雅年君
  棚橋 泰文君     河野 太郎君
  吉野 正芳君     山本 明彦君
同日
 辞任         補欠選任
  倉田 雅年君     後藤田正純君
  河野 太郎君     棚橋 泰文君
  山本 明彦君     吉野 正芳君
同月十八日
 辞任         補欠選任
  奥谷  通君     原田 義昭君
  後藤田正純君     小渕 優子君
  田村 憲久君     滝   実君
  棚橋 泰文君     木村 太郎君
同日
 辞任         補欠選任
  小渕 優子君     後藤田正純君
  木村 太郎君     棚橋 泰文君
  滝   実君     田村 憲久君
  原田 義昭君     奥谷  通君
    ―――――――――――――
四月十七日
 最低保障年金制度の創設等に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第一七三七号)
 妊産婦健診や不妊治療、リンパ浮腫治療への保険適用に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第一七三八号)
 同(松本善明君紹介)(第一七三九号)
 社会保障の拡充、将来への安心と生活の安定に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第一七四〇号)
 同(中野寛成君紹介)(第一七四一号)
 同(山口富男君紹介)(第一七八八号)
 労働法制の改悪反対に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第一七四二号)
 同(小沢和秋君紹介)(第一七四三号)
 同(大幡基夫君紹介)(第一七四四号)
 同(木島日出夫君紹介)(第一七四五号)
 同(児玉健次君紹介)(第一七四六号)
 同(穀田恵二君紹介)(第一七四七号)
 同(佐々木憲昭君紹介)(第一七四八号)
 同(塩川鉄也君紹介)(第一七四九号)
 同(瀬古由起子君紹介)(第一七五〇号)
 同(中林よし子君紹介)(第一七五一号)
 同(春名直章君紹介)(第一七五二号)
 同(藤木洋子君紹介)(第一七五三号)
 同(松本善明君紹介)(第一七五四号)
 同(矢島恒夫君紹介)(第一七五五号)
 同(山口富男君紹介)(第一七五六号)
 腎疾患総合対策の早期確立に関する請願(岩永峯一君紹介)(第一七五七号)
 同(鍵田節哉君紹介)(第一七五八号)
 同(佐藤敬夫君紹介)(第一七五九号)
 同(城島正光君紹介)(第一七六〇号)
 同(田村憲久君紹介)(第一七六一号)
 同(山井和則君紹介)(第一七六二号)
 同(大石正光君紹介)(第一七九〇号)
 同(金子哲夫君紹介)(第一七九一号)
 同(志位和夫君紹介)(第一七九二号)
 同(武山百合子君紹介)(第一七九三号)
 同(前原誠司君紹介)(第一七九四号)
 同(山口富男君紹介)(第一七九五号)
 同(塩崎恭久君紹介)(第一八七六号)
 同(高市早苗君紹介)(第一八七七号)
 パーキンソン病患者・家族の療養生活の質向上に関する請願(石川要三君紹介)(第一七八九号)
 同(川田悦子君紹介)(第一八一七号)
 同(手塚仁雄君紹介)(第一八一八号)
 同(菅直人君紹介)(第一八七四号)
 同(松島みどり君紹介)(第一八七五号)
 健保三割負担など医療費負担増の見直しに関する請願(吉田公一君紹介)(第一八一九号)
 障害者の介護・福祉制度の利用における親・家族負担の撤廃に関する請願(阿部知子君紹介)(第一八七三号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 食品衛生法等の一部を改正する法律案(内閣提出第二八号)
 健康増進法の一部を改正する法律案(内閣提出第二九号)


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     ――――◇―――――
中山委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、食品衛生法等の一部を改正する法律案及び健康増進法の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。
 この際、お諮りいたします。
 両案審査のため、本日、政府参考人として厚生労働省健康局長高原亮治君及び医薬局食品保健部長遠藤明君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
中山委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
中山委員長 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。五島正規君。
五島委員 民主党の五島でございます。
 食品衛生法、健康増進法の一部を改正する法律案、本日から質疑が開始されるわけですが、私は、この法案は、今の時期、極めて重要な法案だろうというふうに思っています。
 食品衛生の問題を考えた場合に、我が国の従来からありましたその地域地域の中においての食の扱い方、加工等において起こってくる食中毒の予防の体制、もう一つは、食品の原料あるいは食品加工の段階において入ってくる、さまざまな健康阻害物質による障害の問題、さらには、食品が近代的な工場において大量生産され、大量に流通することによって非常に広域的に起こってくる食品中毒事件等があったと思います。
 とりわけ思い出されるのは、例えば森永砒素ミルク事件の場合は、工場においてミルクを製造するときに、広範囲にその原乳が集められ、そして酸化してしまう。したがって、ミルクを製造する段階においては、その酸性を中和してやらないとカゼインが溶けない。だから、たしか燐酸ナトリウムあるいは燐酸カルシウムを使って中和をしていた、その燐酸カルシウムの中に砒素が入っていて起こった事件。そして、つくられた工場は徳島でしたが、結果においては西日本全体に広がったという事件であったと考えています。
 また、カネミライスオイルの問題につきましても、米ぬかからとった油、それを分離する過程の中において、ラジエーターに通すときに、その中に入っていたPCBが混入し、結果において、それがわかった段階では、製品は全国に流通してしまったという事件であったと思います。
 そして、そうした状況というのは、例えば雪印乳業事件につきましても、低脂肪牛乳に使われたそうした原材料、それを処理する過程の中において大腸菌が混入していた。しかし、それがわかった段階では、既にかなり広範囲にそれが出荷されてしまった後であったというふうなことにおいて、非常に共通性があると思います。
 そこで、そうした認識のもとで、今日問題になっております食品衛生上の問題についてお伺いしたいわけでございます。
 さまざまな健康阻害要因が含まれているかどうかということについては、例えば農薬であったり食品添加物、そうしたものについては厳しい取り締まりをし、それを食料品に使用させないという形でもってその管理体制が進んでいけばよいわけでございますが、さまざまなアクシデントによって、もしそういうふうに工場でつくられる食料品に対し食中毒を発生させるような原因が生まれた、それはどの時点でどう早く把握をしてどのように措置をとるか。それがおくれれば、今日の流通の状況からいえば瞬く間に全国に広がってしまう。
 ところが、現在、そうした食品中毒の事件というのは、基本的にはそれぞれの地方自治体が主たる責任を持つわけでございまして、具体的にはそれぞれの県や政令市の保健所あるいはそれぞれの都道府県の衛生研究所といったようなところでもってそれを把握する。そして、そこから始まって疫学調査をし、原因と感染経路を押さえて対策を立てるというシステムになっているわけでございまして、今日のそうしたものの製造の工程、そしてそれの流通の過程から見ますと、どうもそこには合わない、もっと言えば高知弁で間尺に合わぬという状況になっているんだろう。この辺のシステムをどのようにお考えなのか、まずお伺いしたいと思います。
坂口国務大臣 今お話しをいただきましたように、健康阻害要因というのはさまざまなものがあるんだろうというふうに思います。今お挙げになりました食中毒の問題もございますし、それから、全く予想しがたい、森永ミルクの問題でございますとかカネミ油問題でありますとか、そうした問題の原因などが含まれているというふうに思っております。
 そうした問題が起こりましたときに早く解決するのは、これはもう県と国、それが情報を早く共有することができるかどうか、早くそのことを把握できるかどうかにかかっている。その内容が本当に大変な問題であるかどうかということの見きわめということも大事でございますけれども、やはり県なら県だけで見ているというときにそれが非常に遅くなることもございますし、また国だけが情報を知っておりましてもこれまた遅くなることもあり得る。やはり地域に密着した都道府県とそして国とが情報を早く共有してそれに対策を打つということがそもそも一番大事ではないかというふうに思っておりまして、今回の法案におきましても、保健所長から都道府県知事を通じて迅速に厚生大臣にその報告をすることを義務づけた。これは今まで義務づけにはなっていなかったわけでございますが、ここは一歩前進と申しますか、厳しくしたというふうに思っております。
 それから、緊急を要する場合には、厚生労働大臣が関係都道府県知事に対しまして食中毒調査の実施を初めとしてさまざまな調査の実施を要請することができるということにいたしました。
 これらの問題も、結局のところは早く情報を共有するということに尽きる、それに対して早く対策を立てるということに尽きるんだろうというふうに思っておりまして、そうした情報が一刻も早く共有できる対応、そして民間からもまたこういう情報があるということを早く上げていただく、上げていただくといいますか、都道府県にそういう情報があればすぐ出してもらう、あるいはまた厚生省にも知らせていただく。こういうインターネットの時代でございますから、早くそういう情報を与えていただくということが大事ではないかというふうに思っている次第でございます。
五島委員 こうした話は、坂口大臣もまだ現役の医師であった時代に、森永砒素ミルク事件、あるいはその十年後の調査といったようなことがございまして、そうしたときからそうした問題点というのは指摘されてきているわけですが、やはり体制としては、依然としてこれだけの時間がかかって変わっていないというのが現状だと思います。
 その上に加えまして、今日、従来考えられなかったようなさまざまな新たな食中毒の原因物質が生まれてまいっています。記憶に新しいところでは、感染性プリオンによるBSEの問題、これは結果において外国において報告されたわけですが、そうしたものが報告されるまでは、医学界においてもそうしたものが起こってくるとは夢にもだれも思わなかった。そうした食中毒の原因になるものというのは突然ふえてきているのは事実です。
 ここで、ちょっともう一つお伺いしたいんですが、今、WHOを中心として非常に大きな話題に上ってきていますSARS、これは重症急性の呼吸器症候群となっていますし、今その原因病原体としてはコロナウイルスということで、WHOもほぼ認めたということになっています。
 コロナウイルスというのは、人間に対してはこれまでも上気道感染、だから呼吸器障害を起こすことは不思議でない、だからマスクが飛ぶように売れているというのが現状でございます。
 ところが、このコロナウイルスというのは種類がございまして、御承知のようにペットであったり、ネズミであったり、あるいは豚や牛といったようなものについていえば、伝染性の下痢、消化器症状を起こすウイルスとして知られています。
 そして、最近の報道によりますと、人へのコロナウイルスそのものの感染が香港ではゴキブリやマウスにも見られたとか、あるいはきょうの報道では、水や水蒸気を通じてそれが感染したのではないかというような報道までございます。言いかえれば、呼吸器感染とは言えないねと。もしネズミやゴキブリ、水というものを通じて感染したということであれば、人間だけではなくて動物のコロナウイルスと同じように経口感染もあり得るのかなというふうなことが容易に想定されるわけです。
 特に、動物のコロナウイルスの場合は非常に変性しやすいという特徴から、そうしたものがもし人体への病原体になっているとすれば、このSARSそのものを防止するためには、食品衛生上の対策がとられないと、今のように呼吸器感染だけを判定したのではだめだということになってくるかもしれない。これまでの医学の常識とは非常に変わったような、新たなそういう感染症がふえてきている。これは大臣も認識しておられると思うんですが。
 そうしたものに対して、じゃ、それはどこが対応するのか。SARSとしての対応は、今感染研センターも含めて、医療センターも含めて、WHOその他のもとにおいて研究しているわけですが、万一、今言われているように、これが呼吸器感染だけではないよとなった場合、果たして対応はどういうふうにすればいいのか。その辺についてどうお考えなのかも。
 これはとっぴな話でなくて、やはりBSEの問題もそうでした、あるいはO157だって、基本的には牛の腸内にしかいない細菌が人に感染してきたわけですから、従来余り考えられなかったものが人体に感染し、それが流行するという事態がここ数回大きな食中毒事件として起こっているわけですから、その辺についてどうお考か、お伺いしたいと思います。
高原政府参考人 SARSでございますが、現在の知見では、委員も御指摘のように、ほとんどの場合、飛沫感染や接触感染、経気道感染で説明できるという事例が多いわけでございますが、それのみでは説明が困難なものも確かにあるわけでございます。
 御指摘のとおり、昨日、香港衛生当局は、香港のマンションにおけるSARSの集団発生の疫学調査の報告を行っておりますが、これは、三分の二の患者さんの中から下痢が見られ、その下痢便の中にコロナウイルスがあった、これが、下水や、それから手から手、ないしは共通のエレベーター、そういうふうなもので拡大した可能性があるということが報告されております。
 WHOは、四月十一日付で、いわゆる積み出された物や動物との接触が人のSARSへの感染につながったという疫学的証拠はないということは言っておりますが、ただいま先生の御指摘並びに香港衛生当局の報告も踏まえて、幅広の対策を考えてまいりたいと考えております。
五島委員 この話はこれ以上やりませんけれども、一言言わせていただければ、今問題になっているSARSというものが、人のいわゆる上気道感染を起こしていくコロナウイルスの毒性を強化したものと見るのか、動物由来のコロナウイルスが人に感染したと見るかということについてはまだWHOも物を言っていないわけで、そして経過からいうと、どうも、こういう激しい、変性するものということからすると、いわゆる常在菌として、常在ウイルスとしてある、人に感染のコロナウイルスじゃなくて、変性を起こしやすい動物由来性のウイルスである可能性は非常に高い。
 そうなれば、そういうものは経口感染でもって感染していくということはこれまでも知られているわけですから、そのあたりについても、高原局長、余りWHOがそうは言っていないから大丈夫だろうみたいな話をされるのではなくて、やはりそうなったときを考えて、こうした新たなウイルスによって、それが食料品等を通じて感染する、そういうふうな、ある種、食中毒として呼吸器症状が起こってくることがあり得るという前提のもとでの防疫体制をどうするか、予防体制をどうするか、これはぜひ省を挙げて考えておいていただきたいということを申し上げておきたいと思います。
 次に、もう一つ大事な問題ですが、先ほども申しましたが、今多くの食料品は、大規模な工場において製品、半製品として出荷されます。そして、それが直接消費者の手元に届いていくわけでございます。その食料品の材料に対するチェック体制というのは、十分か不十分かは別として、農薬の規制、添加物の規制等々においてチェックされていく。
 もう一つは、その製造過程の問題については、例えばHACCP等々の導入によって、できるだけ食中毒事件が起こらないような体制をとろうとしていっているわけです。ところが、そうしたHACCPを導入してみたところで、例の雪印乳業事件のように、ああいう事件は起こってしまいます。
 あの事件については、わかりやすく、廃棄された、すなわち使用がされなかった古い牛乳を再度リサイクルしたことがけしからぬのだというところで世論は落ちついているようですが、厳密に言えば、それをリサイクルしたことが問題なのではなくて、あそこの製造過程の中において大腸菌が、黄色ブドウ状球菌でしたか、が大量に繁殖している、そのことがチェックされず、そのまま工場が稼働してしまったことによってあの事件は起こっているわけですね。
 今そうした食品加工の工程全体を、正常に稼働しているかどうかをどのような形でチェックするか。従来であれば、例えば食堂やあるいは旅館なんかにおいては衛生基準があって、保健所が行って清潔にされているかどうかというチェックで済んだわけです。しかし、こうした工場の中において工業的につくられている食料品に対して、衛生管理上本当に問題点なくそれが稼働しているかどうか、そのチェックをするというためには、やはり衛生工学その他の専門家が入って、その工場そのもののシステムを理解した上で点検をしないとできないものだろうと思われます。
 そういう意味においては、雪印の事件については、雪印という企業に対する責任の追及と、原料乳にそういうものは使わないということだけでお茶を濁されているのであって、本当にああした事件を二度と繰り返さないための監視のシステムができ上がったかといえば、でき上がってはおりません。そこに私は非常に不安感を持っています。
 今、多くの製造業においては、ISO9000とかそういうふうなものが導入され、年に一回のチェックを受けます。食品工業においてもきちっと全工場のシステムについてチェックできるシステムを確立する必要がある、そのように思うわけですが、その点についてはどうお考えでしょうか。
遠藤政府参考人 いわゆるHACCP承認制度の承認審査及び監視につきましては、雪印食中毒事件発生直後の平成十二年八月から、食品衛生やシステム工学に関する専門家により構成された評価検討会を開催しており、承認審査に当たる地方厚生局の職員も当該検討会に出席して、監視技術の高度化を図っているところでございます。
 また、地方自治体の食品衛生監視員に対しても、HACCPの考え方に基づきまして、監視指導技術の高度化を図るため、毎年、厚生労働省による講習会を開催しているところでございます。
 今後とも、そういった食品製造技術の高度化に適切に対応してまいりたいと考えております。
 また、ISO9000の問題を取り上げられましたが、更新時以外の行政の監視体制ということにつきましても、地方厚生局の食品衛生監視員の人員の強化を図りまして、今年度十九名から二十九名に増員をして、毎年立入検査を実施することが可能な体制を整備しているところでございます。
 今後、改正法に盛り込まれました監視指導計画なども通じまして、適切な対応を図ってまいりたいと考えております。
五島委員 十九名や二十名の監視員で、今のように非常に大量な食品が製造されている中においてはせいぜいHACCPの認証のときにどうするかぐらいの議論であって、それがどのように衛生的に、あるいは機械工学的に異常なく稼働しているかどうかの監視ができるはずがないのはわかって答えておられるのだろうと思います。
 要するに、厚生労働省なり地方自治体がそこまでを本当に責任を持ってやることができないのなら、私は、次善の策か最善の策かは別として、例えば認証機関のようなものをきちっと幾つか民間でつくらせて、そこの認証を受けさせるというふうなことをしてでもやはり安全の体制を確保していく、その認証機関に対する監視の基準を厚生労働省はつくっていくということが必要ではないかというふうに思うわけですが、そういうお考えはございませんか。
遠藤政府参考人 この食品衛生法に基づきますHACCPの承認制度は、法令で定めております一律の製造または加工の基準の適用除外を認めるという効果が生じておりますので、その監督を民間機関にゆだねるということは適切でないと考えております。
 先ほども申し上げましたように、この承認制度の運用の強化を図るために全国七カ所の地方厚生局の食品衛生監視員により承認審査並びに承認後の検査を実施し、その強化を図ってまいりたいと考えております。
五島委員 十分なチェックができる能力がないままに、官がすべて仕切ってしまうんだ、実務も官が仕切ってしまうんだというふうなやり方のもとにおいて、もしそうした新たな同じような食中毒事件が起これば、当然国の責任が問われるということになるだろうと思います。
 次に申し上げたいわけですが、先ほども申し上げましたが、さまざまな原因物質によって、あるいは病原体によって食中毒というものは起こってまいります。その病原体あるいは原因物質を速やかに同定して、そしてその原因を明らかにし、それによって起こってくるであろう感染経路あるいは治療対策、そうしたものに対する対策をとる必要がございます。
 原因が不明なままで大規模に起こってきた、あるいは非常に特異的に起こってきたそうした中毒事件の場合、そうした原因物質の究明や病原体の確定をするための検査機関が必要なわけですが、これがどれぐらいあるのか。
 よく言われておりますが、まず保健所がやる、保健所に協力して衛研にそのサンプルが持っていかれる。だけれども、そのサンプルが、結論が出てみても合意されず、大学やそのほかのところに持っていかれるということが多うございます。結果において、先ほど申し上げましたが、今のような流通のスピードの中においては、いち早く対策をとるという、この時間の問題について、大変後手後手に回るということがよく見られました。
 そういう意味では、日本も、かつて食品衛生法ができた時代に比べまして、物を動かしていくスピードが随分と進んでいる。そういう意味においては、全国の中で四カ所、五カ所指定して、万一そういうような事件が起こった場合には、サンプルをすぐ複数の、数カ所の研究所に送り、そしてそこにおいて結論を出していく、そういうふうな手法が必要だろうと思うんです。今、これは国、これは地方、地方でなければ国が直接にというやり方をしている限り、なかなかうまくいかないんだろうと思います。
 幾つかの公衛研や衛研、あるいは大学等の研究機関や国の研究所、そういうふうなところを挙げていきますと、それぞれが疑われる原因物質を対象として、数カ所の権威のある検査ができる研究施設も日本にないわけではありません。恐らく、私は高知ですから、サンプルを高知の衛研で検査した後、それでは不十分だというので大阪の府衛研に送る。大阪の府衛研に送るんなら、東京へも神奈川へも九州へも同時に送っても、同時に研究に着手できるんだと思います。
 そういう意味においては、同時に数カ所のそういう研究機関にサンプルを送って、直ちにその原因物質の同定、そしてそれに対する治療というものの対策が立てられるようなシステムを確立する必要がある。そのためには、各地方自治体に対して、どういうふうなものについてはどこの研究所が専門であるというふうなことが直ちにわかるシステムが保健所の末端まで届いている必要があるだろうと思うわけです。そういうふうなシステムを構築されるお考えはございませんか。
坂口国務大臣 お話しのように、その研究所というのはそんなにたくさんあるわけではございません。都道府県の地方衛生研究所というのは七十六カ所でございますし、保健所を全部入れましても五百七十六カ所でございます。国の機関ということではさらに少ないわけでありますから、それぞれ研究所も特徴もあるでしょうし、さまざまな問題に十分対応できるところもあればそうでないところもある、御指摘のとおりだろうというふうに思っております。中心的なものにつきましては、それぞれの都道府県が対応できる研究所を持つことが大事でございますけれども、これも、そうはいいましても、現実問題としてはなかなかそうもならない。これは、ただ設備がどうかというだけの問題ではなくて、人の問題も存在するというふうに思います。
 したがいまして、今お話しいただきましたように、専門性というものを持ったそれぞれの研究所というものがあって、そして、こういう問題についてはどこどこの研究所が専門だということがすぐわかる一覧表があって、こういう時代でございますから、そういう研究所の一、二のところに、複数のところに検体を送って、すぐに検査をしてもらうというようなことができる体制というのがやはり必要だというふうに思っている次第でございます。
 国の方も、研究所がそんなに多くありませんから、これは都道府県の衛生研究所とタイアップをしていかなければなりませんし、中には民間でもすぐれた研究所をお持ちのところもございますから、そうしたところにも御協力をいただいて、そして、中毒の問題なら、いわゆる重金属の中毒だったらここ、そのほかの細菌による食中毒だったらここというふうに、それぞれの専門性を持った研究所の内容というものがわかるようにする必要があるというのは御指摘のとおりというふうに思っております。
 したがいまして、そうしたことがわかるように、ぱっと一覧表を見て、それがすぐに連絡ができるように、そういう体制をぜひともつくり上げていきたいと思う次第でございます。
五島委員 大臣は割と御理解いただいているように思うわけですが、きのうも、これの質問をとりに来られた方に、一体全国でどれぐらいの研究所と言った途端にガスクロという言葉が出てきましたので、もう話を聞くのをやめました。
 現実問題として、例えば遺伝子的操作ができるような研究所、あるいはごく微量のもののチェックができる衛生研究所、すべてできるようなところはあるわけではないのであって、今大臣が言われたように、重金属の問題、あるいは新たな農薬等の問題、あるいは病原体の問題、そういう専門のところでそれを広くやっていくということが大事だと思います。
 国と都道府県がやらなければいけないということをおっしゃるわけですが、例えば、物質の問題において、測定という技術について言うと、一番困難性の大きいダイオキシンなんか、これはほとんどが民間で測定をしているわけですね。ダイオキシンの測定ができるところが、ほかの、重金属の測定ができないわけがないわけでして。だから、そういう意味においては、日本でそういうものが測定できる機関はたくさんある。だけれども、そういうものは県の施設でまずやるべきであって、そうでなければ国に相談して国の施設を利用してと、そういうふうな固定観念の中で、対応が大変おくれていることが少なくないと思われます。
 そういう意味では、今回食品衛生法を改正されるのを契機に、ともかくスピーディーにこうした病原体あるいは原因物質の究明が、全国的に、同時に、しかも複数のところにおいてできるというシステムをぜひ確立していただきたいというふうに思います。
 次に、本法案と非常に関連があるといいますか、むしろそちらがメーンといいますか、食品安全基本法につきまして、本日の委員会におきまして、与野党において修正合意がなったようでございます。
 それによりますと、第四条において、農林水産物の生産から食品の販売に至る国内外における一連の食品供給の行程においてあらゆる要素が食品の安全性に影響を及ぼすおそれがあることにかんがみ、食品の安全性の確保は、このために必要な措置が食品供給行程の各段階において適切に講じられることにより、行われなければならない、こういうふうに修正されるというふうに聞いております。この国内外におけるという文言が入ったというのは、これまでの厚生労働省がやってきた食品衛生行政からいうと大きく一歩踏み出してしまうのではないかというふうに考えるわけです。
 従来は、我が国において、食料品あるいは食料材料等については、いわゆる輸入されたものを水際において検疫という形でもってチェック体制をかけてきました。ところが、今回のこの中身から見ますと、国内外における一連の食品の供給の行程ということであれば、外国における製造行程、流通行程、そういうふうなものを含めて、我が国の食品衛生行政の中において監視をしなさいということにも受けとめられるわけでございまして、かなりこの修正というのは大きな影響を持つんだろうというふうに考えます。
 この修正に伴って、従来のいわゆる検疫体制から始まってきた食品衛生行政がどのように変わっていくのか、お伺いしたいと思います。
遠藤政府参考人 国外における食品供給行程における安全性確保という観点でございますけれども、私ども、一つは、内外無差別というふうな考え方で、輸入品につきましても国内と同水準の衛生水準の確保がなされるようにということでこれまでも努力をしてきているところでございまして、先生も御指摘のように、検疫所における輸入食品に関する安全性の確認といったふうなことをやってきているわけでございます。
 また、生産段階におきましては、例えば食肉でありますとかフグ、生食用カキなどにつきましては、原産国におきまして、我が国と同等以上の基準に基づき、衛生的に処理されたことなどを証明する輸出国政府機関が発行した書類の添付を義務づけるというふうなこと、それからまた、農薬、動物用医薬品の残留などの問題が発生した特定の国の特定の食品につきましては、必要に応じ、当該輸出国との二国間協議等を通じて、輸出国政府における残留防止対策、あるいは検査結果についての証明書の添付を求めてきているところでございます。
 さらに、今回の食品衛生法改正におきまして、輸入業者は、みずからの責任において、輸入食品の安全性を確保するため、知識、技術の習得、自主検査の実施などを講ずべき責務を有することを明記いたしますとともに、違反があった場合には輸入業者に対する営業の禁停止を国においても実施できることとし、法違反時の罰則を強化するというふうなことを御提案申し上げているところでございます。
 今後、御指摘の食品安全基本法案の規定の趣旨も踏まえまして、輸入業者を通じまして、輸出国における輸出前検査の推進を含め、輸出国における安全性確保対策の一層の推進を図るとともに、輸入食品の違反発見時につきましては、輸入業者に対して営業禁停止処分の発動も含め厳しく対応するとともに、特定の食品について違反が反復して認められる場合には、包括的輸入禁止規定に基づく輸入禁止措置……(五島委員「それはわかった」と呼ぶ)
五島委員 それは、食品安全基本法が修正される前からの厚生労働省の態度ですね、従来からの。
 私が聞いているのは、この基本法は、与野党において、国内外におけるということで、国内、国外に差別を設けず、すなわち、そこで輸入という行為があったから最終流通業者あるいは最終の前の流通業者である輸入業者に責任をかけて、そこから始まるのではなく、材料からすべてのところについて食品の安全のための監視が入っていくということに変わった。そのことに伴って、食品衛生を担当しておられる厚生労働省の部局としてはどういうふうに変わるんですかということを聞いているわけで、今おっしゃっているのは、別にこんな修正がなくたってやるといったことですね。どう変わるんですか、これは。修正されたことによって影響はない、関係ないということですか。
遠藤政府参考人 先生も御指摘のように、内外無差別という観点で、まさに国内、国外の食品供給行程での安全性の確保を図っていくということで、例えば午前中の内閣委員会でも話題に出ておりましたけれども、HACCPの制度について、国内的にさらに国内業者の体制が整っていくというふうな場合に、新たな規制を設けていくというふうなことになれば、輸出国側においても同様のことを考えていくというふうなこともあるだろうということを申し上げておりますけれども、今後とも食品の安全確保のために努力をしていく所存でございます。
五島委員 結論的には、これが入ったことによって、国内外問わず、我が国の安全基準、食品衛生の管理基準というものが、我が国に入ってくる食品に対しては製造過程から貫徹されないといけないということになるわけですね。それが外国のところにおける分についてまで影響されてくるということになってきますと、ここで、では我が国自身が、あるいはそれぞれの国が、WTOの基準、特に今農薬等の問題につきまして、各国がWTOの基準とは違った基準をお持ちになっております。その辺の整理をしていかないと、非常に国際的には混乱するんだろう。だからといって、コーデックスの基準をすべて全く問題ありませんよということで導入できるかといえば、なかなかそうもいかないというふうなところについて、そういうところには影響がない問題としてお考えなのか、そうしたところも含めた問題として、今後取り上げていかざるを得ない問題とお考えなのか、ひとつそこの点だけを簡単にお答えください。
遠藤政府参考人 今、農薬についてお話がございました。
 コーデックス基準が設定をされております農薬は百三十ございますけれども、我が国ではこのうち八十二が、現在は残留基準が定められているということで、今回の改正法におきまして、いわゆるポジティブリスト制を導入しようということで考えているわけでございます。
 このような方策は、国外で使用された農薬が残留する食品が輸入されないようにしていこうというふうなこと、国内では使用されていないけれども国外では使用されている農薬というふうなものにも対応するのだというふうな考え方でございまして、先生が御指摘の、食品安全基本法第四条の修正の趣旨に十分沿ったものだと考えております。
五島委員 確かに今回、農薬問題についてもポジティブリスト化したことについては、私は非常によかったことだろうと思っております。
 問題は、我が国が国内外と言った以上、ポジティブリスト化する以上は、そのことが我が国の輸入業者あるいは相手国の生産者に対して、こういうふうな形でポジティブリストしている、だから、その範囲を守ってもらえない限り我が国に輸出はしてもらっては困ります、輸出させませんというふうなことをやはりきちっと伝えていく、そのシステムをぜひ確立していただきたいと思います。
 無理して委員会を開いた割には出席者が少ないので、勢い質問もだらだらといかざるを得ないわけですが、最後になりますが、健康増進法の問題についてお伺いしたいと思います。
 健康増進法の中で、いわゆる広告規制の問題があるわけですね。広告規制という形で物事がうまくとらえられるか。実は今、健康食品と称するものの中には随分といろいろなものがございます。そうしたものが広告の形態で出されている。
 例えば雑誌の記事、あるいは一見、学会誌じゃないんですが、学術誌を装ったような雑誌としてそういう記事が載せられる、そして、それが列車の中づり広告や何かでぶらぶらとたくさん出されている、そういうふうな形が非常にふえてきました。あるいはタクシーの後ろに乗ったら、そういうふうなものの宣伝のチラシが入っています。決して商品の宣伝ではありませんという雑誌がある、こういうことが書いてあるということの紹介です。これは、形の上では明らかに作文であったとしても、一つの文章なんですね、これを規制するというのは表現の自由との間に非常に問題があるんだろうと思います。とはいいながら、そのことが現実的に罪悪を与えているのも事実です。
 ひどい例は、厚生省も犠牲者になられましたが、ある雑誌に、学術雑誌に載っていたデータ、全く別につくられたデータがあたかも一緒のデータであるようにつけ加えられた、そして、結果的に言えばデータの改ざんですね、そういうふうなもので載って、何々はがんに効くとか、これをやれば美人になるとか、やせるとか、いっぱいそういうものを出している。それは規制の対象になりません。この問題についてどのようにお考えなのか。表現の自由との関係で非常に難しいことはわかるけれども、これがやはり、一番国民に対して誤解を与えているというふうに思われるわけですが、どうお考えか、お伺いしたいと思います。
木村副大臣 五島先生御指摘のように、健康雑誌も含めまして、今さまざまな出版物にそういう記事が見られるわけでございまして、そういう中にありまして、先生御指摘の点が私も強く感じられているところでございます。もちろん表現の自由というものがあり、事前検閲ということはできないわけでございますけれども、しかし、これは明らかに広告と言ってもいいようなものまで散見されるのも事実でございます。
 そういうために、今般の改正によりまして、健康の保持増進効果に関する虚偽または誇大な広告に対して、勧告、命令、罰則という段階的な措置をとることができるようにしたわけでございます。先ほど言ったように、最初から検閲というようなわけではもちろんありませんけれども、こうした規定を徐々に活用していきまして、実効がある措置ができるように取り組んでいかなければいけないな、このように思っているような次第でございます。
五島委員 広告は規制するんですよね。ところが、ある健康雑誌の中に、これを食えばがんにはならない、データをとりました、それを食べている人たちにがんは発生しなかった、あるいは、そのほとんどが代替医療に近いものなんですが、それを食べたことによってがんが消えました、そういう記事が出ます。その記事を広告の一部として紹介するということはよくあることです。これは取り締まれますか。
木村副大臣 ですから、先ほどお話をさせていただきましたように、直ちにこれが、こういう記事を出してはいけないとか、そういうところにはいかないわけでございますけれども、その辺の因果関係を、これは広告と似たようなものではないかというようなことも含めまして、まず、今回の法律によりまして勧告ができるわけですね。これは広告の類似行為だとか、そういうことで勧告ができるわけでありまして、その次には、こういうものは出すなとか、あるいは撤去しろとか命令ができる。その命令に違反した場合は罰則ということもできるわけでございますから、こういう手段を徐々に活用していきまして、先生がおっしゃるような問題点が起きないようにこれから努めていく必要があるのではないかな、私自身はそのように感じているような次第でございます。
五島委員 勧告ができてから先の話はよくわかりました。一体どこで勧告するかという問題なんですね。そこが、一体どこで勧告するかがわからないということでは今の状態は変わらないんだろうと思います。
 学会誌等であれば、その出されている記事あるいは原稿の正当性については、レフェリーもあるでしょうし、あるいは学会誌における反論もできる。しかし、一般雑誌等におけるそうしたものというのは、そういうふうなこともできない。そうした中で、どう考えても科学的、医学的でない記事というのが大はんらんしている。それに対しては、商品もいろいろ出てきている以上は、厚生省としても、いや、それは違いますよとは言えない。そうすると、結果として野放しであって、広告規制と言われているわけですが、別の方法でこれが野放しのまま続くのではなかろうかというふうに心配しております。
 副大臣にこの点についてお答えいただけるということを聞いておりまして、副大臣なら踏み込んで大胆な発言があるだろうと思って期待しましたら、意外と常識的な御発言でございますので若干がっかりしておりますが、そのことを申し上げておきたいと思います。
 最後に、一言、大臣にお伺いしたいと思いますが、やはり、食品安全の問題というのは、従来からあったサルモネラの中毒であったり、あるいはビブリオ菌なんかによる中毒であったり、そういうものも依然として非常に人の命、健康とも関係の大きい問題でございますし、そういう意味においては、私は、保健所や地方衛研の役割がなくなったと思ってはいません。非常に大事だというふうに思っています。
 しかし、同時に、今の時代において、保健所の機能は、やはりそういう管轄地域の中における情報収集の精査的役割というのは大きくなってきているんだろう。そこがすべてを処理するということではなくて、情報をいち早くつかんで、そしてその問題解決のための道筋をきれいにつけていく役割、そういう役割が今保健所などに期待されているんだろう。
 そういうふうなところをやはりきちっと整理しないと、先ほどから申しておりますが、ここまで工業化し、しかも流通が大規模になり、そして原因物質が多様化し、これまで想像もしなかったような原因物質によって多くの食中毒が起こってくるという状況の中では、対応し切れないだろう。そういう意味では、そうしたものに対応できるシステムを、官とか民とか言わずに、国民の安全が確保できるためのシステムというものをどうつくるのかということについてお考えいただきたいと思います。
 最後でございますが、もし大臣の方でこの点について何か御意見がございましたらお伺いして、質問を終わりたいと思います。
坂口国務大臣 きょう、初めからずうっとお話しいただいています内容を聞いておりまして、確かに私たちの健康を取り巻いております環境というのは多種多様になってきたことは、もう間違いありません。健康に関係する品種と申しますか、さまざまな要因というのがございますし、それから、国内だけではなくて、これが国外からも及んできている。国内外、そして、さまざまな食品に対する添加物から、あるいは細菌から、重金属から、いろいろなものがある。それらを一つのところで整理をし、一つの県の中ですべてを明快に処理するということもなかなか難しい状況になってきているということは、私もそのとおりというふうに思っております。
 したがいまして、国を挙げて、それぞれの分担を行いながら、それぞれの特徴を生かしながら、そうした国内外から押し寄せてまいります食品の問題にどのように対応していくかということのいわゆるコントロール、どこがそれをちゃんとやっていくかということを決めることが大事だというふうに思います。したがいまして、もし最終的に厚生労働省が責任をとってそれをやっていくというのであるならば、やはり各地域におけるそうした情報というものを的確に把握できるような体制をふだんからつくっておくということが大事だというふうに思います。
 それから、人の問題もございますけれども、人が多ければいいという問題ではなくて、そういうシステムができ上がっているかどうかということが非常に問われるだろうというふうに思っておりますので、そのようなことを十分これから考えていきたいというふうに思います。
五島委員 終わります。
中山委員長 次に、武山百合子君。
武山委員 自由党の武山百合子です。
 きょうは、統一地方選のさなか、金曜日ということで皆さんおうちに帰りたいところを、自民党の、政権与党の御希望で、ぜひこの法案を審議したいということで、我々ももちろん協力してこの委員会が開かれておるわけですけれども、皆さんやはり本当のところは帰りたいわけですよね。それはもう事実そのとおりだと思うんですよね。こんな忙しいときに、みんな帰りたいというときに無理やり開いたって、欠席するのは当たり前だと思うんですよ。私もその欠席したい一人なんですけれども、実際に本音のところは。ですから、やるからにはやはり協力して出席していただきたいと思います。お互いに議論を深めて、そのための委員会なわけですから。
 定足数、今最低限は二十三ですけれども、それは、いろいろな事情で、危機管理で突発的なことが起こったときは二十三で仕方ありませんけれども、今、現実は突発的なことは起こっていないわけですよね。ですから、四十五が定数なわけですから、少なくとも最低の二十三以上、やはり相当の数が出席している、そういう委員会であるべきだと思うんですよね。ですから、それをやはり協力してするということが第一なものですから、これは一言冒頭に言わせていただきます。
 それでは、早速質問の方に入りたいと思います。
 このたび、食品衛生法、それから健康増進法の一部改正ということですけれども、この目的のところを見ますと、食品の安全の確保、それから国民の健康の保護を図るという二つの大きな目的があるわけですけれども、私は、食品の安全の確保なんというのは当然、当たり前のことだと思うんですね。国民の健康の保護を図る、これもやはり、もう当たり前のことだと思うんですよね。全体に対する奉仕、政府として当たり前のことがなぜ今回改正だということなのでしょうか。この二つがなぜ今回改正なのかという本質のところをお聞きしたいと思います。
木村副大臣 武山先生の御質問でございますから、私も、これは個人的な思いでございますけれども、今までこの部分は公衆衛生という観点で書かれていたわけでございます。公衆衛生の観点というのは、非常に幅の広い、万民という観点と、あるいは地域とか、そういう、どちらかというと集団的な感覚があるわけでございますけれども、今回、やはりそれ以上に、国民とか食の安全とかというのは、個人個人、それぞれの方々、国民の皆さん一人一人に重点を置いた観点というのがこれから非常に重要視されてくる、そこが今回大いに変わったところではないかなと、私自身はそのように思っているようなわけでございます。どちらかというと、集団的な、何というんですか、そういうような観点じゃなくて、もうこれからは国民一人一人の皆さん方の安全を大事に大事に、また丁寧に取り組んでいく必要があるんだ、こういう意味が込められているのではないか、こう思えてならないわけでございます。
武山委員 食品を食べているのは個人個人なわけですよね。一人一人が食べているわけです、家庭であり、個人であり、集団である。なぜ今までは公衆衛生だけだったんでしょうか。それで、なぜ急遽個人に変わったんでしょうか。そこのきちっとした説明をぜひお聞きしたいと思います。
木村副大臣 これは、厚生行政というより、どちらかというと公衆衛生的というか、国民の皆さん方の考え方によるんでしょうけれども、戦前の日本というものは国家が中心的な感覚があった。国家という観点からの、公衆衛生的な要素が強かったのではないかな、こう思うわけでありますけれども、やはり戦後の日本というのは、非常に個々人を大変大事にする、家庭とか個人とかを大事にするわけでございますので、私は、そういう意味から、今回の改正にはそういうような戦後の日本人の考え方の流れが大いにあったのではないかな、こういうように思っておるような次第でございます。
 そういう意味から考えますと、今回の改正というのはまことに時流に合ったものである。人によっては、それは遅きに失したと言う方もあるかもしれませんけれども、そういうようなところが私は背景である、このように思っているような次第であります。
武山委員 今のお話を聞いていますと、戦前の考えがあって、戦後、こういうようないわゆる国民のニーズにこたえたということですけれども、もう本当に戦後五十八年、憲法がつくられて五十六年もたっているわけですよね。ですから、それはもう遅きに失した、遅かったということが言えると思うんですね。それも反省することだと思うんです。
 これはもう当たり前のことであって、欧米諸国ではもうとっくにこういうことを、常に危機管理で公衆衛生も行われ、食品の安全の確保も行われ、国民の健康の保護も本当に行政が、遠い遠い、もう数十年も前に欧米では――二、三十年おくれていると思いますね。ですから、この当たり前じゃないかということがなぜこれだけおくれたのか、なぜ当たり前になっていなかったのか、そのなぜのところをぜひこの質問に対しての最後に一つお聞きしたいと思います。
木村副大臣 まず技術的な問題も一つのことを言えるのではないかな、こう思えてならないわけでございまして、やはり昨今はバイオとか、いろいろな問題がありまして技術が向上しまして、個人の生命とか安全というのをより一層重視する時代になってきたのではないかな、こう思えてならないのであります。
 それから、仕組み的には、よく言われるわけでありますけれども、それぞれの日本の行政のいろいろな問題点もなきにしもあらずだったのではないかな、こういうこともよく御指摘をされるところでございまして、今回はそういう意味で、例えば農林省と厚生省のそれぞれリスクを管理する役所の上に評価する機関をつくったとか、そういう場面もあるわけでございますから、そういうようなことが今の回答である、私はこのように思えてならないわけでございます。
武山委員 食中毒だとか、食品の安全性にかかわる欠陥というのは本当に今までたくさん出てまいりました。私も、生まれてこの方、ずっと過去を振り返ってみましても、何回もありました。でも、その都度、安全性は本当に確保しなければいけないいけないと言われつつ、ほとんど改正というものは、ちょろちょろの、本当に半歩ぐらいしか改正されてなかったと思うんですよね。本当に国民のことを思って、危機管理を思って改正してきたかというと、私はほとんど皆無に近かったと思います。ですから、起こったときに常にきちっと見直ししておく、それが最も大事だと思うんですよね。
 そのときはもうだんまりを決め込んで、調整がつかないからといって、ずうっとこんなふうな状態になってきて、やっとこのたび。
 O157から始まって、BSE問題、中国産の冷凍ホウレンソウ問題、雪印の問題、もう本当に大変な経済的な打撃から、それは雇用不安にも陥り、倒産から解雇へと、ずっとこの流れというのは続いているわけですよね。国民も、幾ら政府によい批判をしても変えてくれない。国民はもう本当に疲れ果てているわけですよね。ですから私は、この改正においても、決して五歩も十歩も改正されたと思っておりません。たかだか半歩か一歩だという、まだ危機管理が足りないと思います。これだけは指摘しておきたいと思います。
 それから、法改正に手をつけるとき、国の姿勢というのは常に後手後手なんですね。常に最低の、一番最後の最後を行って、国民の意識がここまで高まらないと、国民の意識がここまで理解されないとといって、常に最低の、国民から見ますと常に一番最後を行っているというのが政府の対応なんですよね。これに対しての責任はどういうふうに反省しておりますでしょうか。
坂口国務大臣 食品衛生の問題にとどまりませず、いろいろの問題同じでございますが、さまざまな出来事が起こりますとそれに対応するために法改正が起こるというのが通常でございまして、それはそれなりに意味のあることだというふうに思っております。
 今回のこの改正も、昨年のBSEの問題でございますとか、あるいは中国から輸入されますホウレンソウ等の問題がございまして、国民の皆さん方からやはり省庁の縦割りではいけないという御指摘があって、そうしたことを踏まえての今回の法改正になっているわけでございます。
 それは国民の皆さん方からの強い期待でもあり、こういう改正が行われたということは、それは一つの大きな意義があることだというふうに思っておりますが、なぜもっと早くしなかったかという御指摘に対しましては、それは、先生の御指摘を私たちもそのとおりというふうに思わざるを得ない側面もございます。
 先ほどからの公衆衛生の話にいたしましても、前々から、「国民の健康」という言葉をじかに、もっとわかりやすく入れてくれというお話は確かにあったわけでございますが、「公衆衛生の向上」という言葉の中にはそういう健康の問題は含まれている、こういう判断で来たように思います。確かに、「公衆衛生の向上」というふうに言えば、幅広い概念でございますからすべてを含んでいることは事実ではあったというふうに思いますけれども、「国民の健康」という的確な表現になったということは、私は、それなりにはっきりとした意思表示ができたというふうに思っている次第でございます。
武山委員 はっきりとした意思表示をできるようになったということですけれども、それでは、今まで大規模、広域な食中毒の発生のときにできなかったんですか。今回大臣による調査の要請等ができるようになったということですけれども、今まではどういう状態だったんですか。
坂口国務大臣 今までも食中毒等が起こりましたときには的確にやってこれたというふうに思いますけれども、いわゆる表現上の問題として、「公衆衛生の向上」という言葉で余り明確でないという御指摘があったことは事実でございます。特に生協等の皆さん方から、「公衆衛生の向上」という言葉では明確でない、もう少しはっきりとした「健康」という言葉が欲しい、そういう御要請があったことも事実でございまして、今回のこの大改正と申しますか、政府を挙げての改正の中でやはりこの問題も取り入れた、こういうことでございます。
 したがいまして、今まで起こっておりました食中毒でありますとかそうした個々の問題のケースにつきましては、今までもそれなりに対応をしてきたというふうに思っております。
武山委員 今の話ですけれども、食中毒等飲食に起因する事故への対応の強化、大改正ということですけれども、では、前と今度はどう大きく変わったんですか、そこの部分は。
坂口国務大臣 今回の大きな改正といいますのは、それはこの法律にとどまらず、内閣府の中に基本法ができて、そして、いわゆるリスク管理としての厚生労働省、農林水産省、あるいは環境省も入るのかもしれません、それぞれのリスク管理をするところが明確になって、厚生労働省だけで対応できない問題は、すぐさま環境省なりあるいは農林水産省なり、それぞれ御相談を申し上げて、そして対応を迅速に行う、今までの縦割りだと言われた弊害を取り除く、そういう意味で、中心的な役割を内閣府にしていただく、ここが変わったと言えばはっきり変わったところでありまして、これから内閣全体で、こういう健康に関する問題が起こりましたときには取り組んでいくというところが変わったところだろうというふうに思います。
武山委員 まず、食品衛生法と健康増進法の見直しの全体像としましては、私が得ている情報では、いわゆる規格、基準の見直し、それから監視、検査体制の強化、それから食中毒等飲食に起因する事故への対応の強化、それから罰則の強化ということで、四本柱になっているわけですね、これが今回の法改正だというふうにいただいておるのですけれども。
 その中で、私が先ほどから何回も質問している内容は、大きな柱の一つに「大規模・広域な食中毒の発生時等の厚生労働大臣による調査の要請等」と書いてあるわけなんですよ。それから「保健所長による調査及び報告」と。これは対応の強化ということで。当たり前のことじゃないかと私は思っているわけなんですね。当たり前のことがなぜまたこういうふうにして資料として出てきて、これが何が大改正なのかということを質問しておるわけなんです。ですから、これが何が今までと大きく変わったのかという、変わった点をぜひわかりやすく説明していただきたいと思います。
坂口国務大臣 先ほども五島議員にお答えをしたところでございますが、私が先ほど申し上げましたのは、全体の総枠のお話を申し上げたわけで、この法律の中で申し上げれば、保健所長から都道府県知事を通じて、何かそういう情報があれば迅速に厚生労働大臣に報告をしていただく義務がつけられた。今までも報告をしていただくようになっておりましたけれども、いわゆる義務規定がなかったということでございましょう。
 それから、厚生労働大臣の方が何かの情報を得ましたときには、都道府県に対しましてその情報を緊急に上げていただくように、期限を定めて報告を要請するといったことができるようになっております。
 これらのことが、折り目切り目を明確にした、義務づけた、こういうことでございまして、そうしたことを中心にしながら、これからやっていくということでございます。
武山委員 義務づけたか義務づけないかが大変大きな法改正だという今のお話ですけれども、義務づけたとしても義務づけなくても、例えば食品の安全性、これはいわゆる大規模、広範な食中毒の発生であれば、大変重要な事柄ですよね。食中毒というのは生死にかかわることですよね。義務づけたか義務づけないか、それが大きな改正だということですけれども、義務づけなくても義務づけても、どっちにしてもその立場の人はやるべきことじゃないんですか。保健所長さんそれから厚生労働大臣のところではやるべきことなんじゃないですか。義務づけたり義務づけなかったりで、なぜそれが大改正になるんですか。
坂口国務大臣 これも先ほど議論の出たところでございますが、非常に内外からのさまざまなものが日本に入ってくる。あるいはまた、健康に害をする種類といったものも広範になってきている。ですから、一つの保健所、一つの都道府県で起こりましたことは、その一つの県にとどまらない、全国的な規模でそれは起こる可能性がある。そうした広がりをこのごろの食品は持っているということでございます。
 過去におきましては、それぞれの地域においてその地域の保健所が対応して、それだけで済んでいた。現在もそういう問題もございます。例えば、食中毒などでどこかのホテルで出たというような問題は、もうそこだけでおさまる話でございますけれども、そうでない話もあるわけでございますから、そうした点を踏まえて的確に義務づけるということが今回の特徴でございますし、それは非常に大きな変化だ、これからの健康管理にとりまして大変大きな前進だというふうに私は思っております。
武山委員 他の法律でも言えることなんですけれども、義務づけるか努力義務で終わるかということがあるわけですけれども、義務づけないとやらない国民に日本人はなってしまったということですよね。国家公務員、地方公務員は全体に奉仕する立場の人ですよね。保健所長さんとか地方公共団体に所属している県の職員、市町村の職員というのはもともと全体に奉仕する。義務づけようが義務づけまいが、仕事として全体に奉仕するという前提条件があるわけですから。それに義務づけという言葉がついたことが大変に大きな改革だと言う。
 本当に義務づけという言葉をつけなければ前に進まない、危機管理がみんな持てない、そういう国民性に成り下がってしまったのかということで、私は非常にがっかり、残念至極。日本人のそういう徳性がそこまで低下してしまったかと思うんです。義務づけてすることと義務づけないということがそれだけ大きな問題なんでしょうか。それをぜひ聞きたいと思います。
木村副大臣 今先生、日本人の問題というような話がありましたけれども、例えば、さっき五島先生から、中国も含めて東南アジアのSARSの話が出ました。例えばあの問題は、どうも中国の広東省で起こったらしいんですけれども、実際には、そこが発表されなかったんですね。それで、香港でどんどんどんどんと被害が拡大していって、そこがなぜだということになって、どうも原因はお隣の広東省らしいと、こういうことになったわけであります。
 中国は、中国の保健省みたいなところがだんだんに数字を発表してきましたけれども、それがどうも実態に合わないんじゃないかと、こういう話があったんですが、今度はよく調べたら、中国の保健省が管轄している病院だけじゃなくて、いわゆる軍の病院に入院している人がたくさんいた。ところが、そこは解放軍と保健省と役所が全然違うわけでありますので、軍の方の病院に入院している人たちの数字が発表されていない。ですから、言ってみれば、非常に小さな形でしか発表がされてなかったという例もあって、今ようやくこの辺の数字を合わせていかなきゃいけないといって、WHOが非常にそこを強く勧告している現状があるわけでありますけれども、そういう問題点というのは決して日本の国だけではないわけでございます。
 日本の国は、今回まさに危機管理の一つとして、こういう大規模、広範な食中毒の場合には、厚生省がある意味で相当主体的に関与することができるようになった。今までは、どちらかというと、流れが地方分権地方分権で、地方に任そうという流れがこういう健康や衛生の面でもあったことは事実なんですね。それが今回初めて、こういう意味で、国の危機管理というような側面を大いに取り入れた形で大規模、広域な食中毒の発生時に厚生労働大臣による指示を入れたのは、私はそれなりの意義があるものだ、このように思っている次第であります。
武山委員 もちろん、政権与党側がつくった法案ですから意義がないなんて言えないと思うんですよね。それは意義があるのは当たり前だと思うんです。自分たちでつくったわけですから、当然それは言うと思うんですね。
 そして、中国のお話ですけれども、失礼ですけれども、中国とはまた視点の次元が全然違うと思うんですよね。また教育の事情も、また国柄も全然違うと思うんですよね。ましてや共産主義の国だったわけですから。何しろ視点が我々と全然比べ物にならないと思うんですよ。
 日本人はもともとこういう危機管理というのはおのずから持っていたものなんですよ。日本人というのはそれだけすばらしい民族なんですよ。それがいつの間にか、こういうふうにして義務づけにならないとやらない、努力だったら何もしなくてもいい、そういう発想になってしまったわけです。
 それで、今聞いたように、保健所長さんも、こういう義務づけがないと報告も調査もしない、上にも上げて来ない、横のつながりもしない。全体の奉仕者として、やはりそれは国がしっかりとそういう指導監督というのはせざるを得ないと思うんですよね、地方主権になっていないわけですから。地方主権になって、地方が本当に権限と財源を持ってやっていたら、それはそれで責任がそこにあるわけですから。責任の所在というものを、どこかということをつけておかなきゃいけないと思うんですよ。
 そうなりますと、ではだれが責任を負いますか、責任の所在はだれになりますか、そういう義務規定をつけたわけですけれども。では、事が起こったら、責任はだれがとるんでしょうか。
坂口国務大臣 先生が御指摘になっていることは、私は、若干違うというふうに思いながらお聞きをしているわけでございます。それは、一口で言えば、今までと現在あるいはこれからとは、我々を取り巻きます環境が変わってきた、いわゆる食品というものに対する環境が変わってきたということが大きな背景としてあると思うんです。
 過去におきましては、それはそれぞれの地域の保健所長さんがおやりになって、そしてそれぞれの地域でおさまっておりましたものが、いろいろの分野で一つの地方ではおさまらなくなってきた、そういう環境の変化というものがある。したがいまして、それぞれの地域で起こりました問題を、やはり国が一つの義務づけを行って、そしていわゆる情報をお互いに共有していかなければいけない、そういう時代になってきたということだろうと思っております。
 したがいまして、情報を共有するという意味からいきまして、地方が得ました情報は義務としてやはり国の方に上げてくださいよということを申し上げているわけでございます。そうした情報をお互いに持ちながらやっていくということになって、そして最終的な総指揮をやはり国がとるということになれば、それは国の責任ということになってくるだろうと私は思います。
武山委員 環境が大きく変わったということは、それはもう当然だと思います。ここ数十年、環境は急激に変化しました。輸入もどんどん、輸出も本当にどんどんされているわけですから。特に、食品の輸入というのはもう一挙にふえたわけですよね。一挙にふえたということは、国内の自給率がまた一挙に下がったと同時に、同じようにふえていっているわけですよね。ですから、大きな激変というのはここ何年も続いておると思います。それに対して、たまたま大きな問題にクローズアップされなかったというだけで、小さな問題というのは、農薬の残留の問題だとか、誇大広告だとか、中身と表示が違うだとか、本当にいろいろな問題はあったと思うんですね。
 それは、大きな激変というのはそのとおりだと思います。もう大変な大きな激変だと思います。輸入もふえた、輸出もふえた、輸入の方がふえて、外国からの製品がふえた、これに対するいろいろな問題が生じたということで、このように変えなきゃいけないということもわかります。でも、これは、ここ一、二年のことじゃないわけですね。自給率がどんどん下がっていくにつれて、外国からの食品、加工食品、食料品というのはどんどんふえてきているわけです。ですから、なぜそうなったのかとやはり思いますよね。
 今までにこういう小さな問題、大きな問題、あったと思うんですよ。今大臣がおっしゃったように、広範囲のコミュニケーション、当然だと思います。当然、縦も横も、みんな広範囲に情報は共有しなきゃいけませんし、責任もとらなきゃいけないと思います。それだけの政府としての大変な責任があるわけです、法律を決めているのはやはり政府なわけですから。ですから、縦の、横の情報の共有、もう縦も横も、あらゆるところからの情報というのは大事だと思うんですよね。
 ですから、今おっしゃったようなことがなぜ今ごろになってというふうに思うわけですよね。とっくに今までにこういうことを、事が起こったときに、そこで常に改正してくるべきだと思うんです。なぜここで大改正をしなきゃいけないか。この大改正という意味がやはりよくわからないんですね。それは恐らく、今までやってこなかったから、ここでやらなきゃいけないなということなんだと思うんですね。その辺が、なぜここで大改正なんでしょうか。大改正という、もう一つ、お聞きしたいと思います。
木村副大臣 なぜこの時期かというのをたびたび先生が御指摘されていますけれども、これは、今先生や大臣がお話しされておりますとおり、昔は食品の供給というのはどちらかというと地域内で完結する要素が非常に多かったと思うんですね。ところが、だんだん、農家とか何かのそういう方々が農業から、工業や商業、その他の方に転移していった。そこでだんだん自給率の低下等が起こり、また海外への依存度がふえてきたわけであります。
 そうなりますと、例えば食品のある製品、これが伝播する可能性が、今まではその地域の中で完結していたものが、その地域を越えて、ある意味では日本国じゅうに一斉に配送されるようになった。いわゆる大量生産、大量消費が、工業製品だけじゃなくて食料品でも随分出てきたわけでございます。それが、最初はスナック菓子等の言ってみれば包装的なものから、だんだん、日常食べる総菜的なものまで大量生産、また大量消費されるようになってきた。それがだんだん積み重ねられてきて、そういう、先生が御指摘のような、これこそが本当に環境の変化でございますけれども、一つのものの影響が、あるいは一社の業者の影響が日本じゅうを覆うようになってきたのではないかと、私は、その点が一番大きなところで、そういうのに法律の整備がおくれていたのは事実であるわけでございます。
 それは、今まではどちらかというと、こういう食品行政が地方に非常に重点が置かれていた。しかし、これからはそうじゃなくて、オール・ジャパンで、輸出入もあるわけでございますから、特に輸入の件もあるわけでございますから、オール・ジャパンでこれをとらなければいけない体制が改めてここで必要とされてきた結果として今回の改正につながった、こういうように思えてならない次第であります。
坂口国務大臣 もう今副大臣から答弁があったとおりでございますが、具体的な問題としましては、やはりインターネット等で諸外国からいろいろの食品が日本の中に入ってくる。それは、健康食品でありましたり、さまざまでございますが、そうしたことは、長くとりましてもこの数年ではなかったかと思います。
 とりわけ、中国その他からいろいろの健康食品のものが入って、それによって健康障害が起こるといったことは、少なくとも、今までは個々の人がそういったものをとってということは余りなかった。それが、そういう時代になってきたというのは、私は大きな変化だというふうに思っておりますし、それからまた、日本の国の中で、家庭でいろいろなものをつくるということよりも、スーパー等で、でき上がった副食物等をたくさん買うようになってきたというのも、大体この十年ぐらいの間の大きな変化ではないかというふうに思います。
 そうした状況の変化というものがあって、その変化に対応できるような体制をつくるということがやはり大事だ、こういうふうに思っております。
武山委員 それでは、時間もなくなってまいりましたので、もう一つ。
 今回の法改正で、国民の意見の聴取ということで、リスクコミュニケーションと言われておりますけれども、リスクコミュニケーションの明確化ということでありますけれども、今までも国民の意見というのは常に出されていたと思うんですよね。国民の意見でもあり消費者の意見でもあり、いろいろな形でいわゆる国民の意見というのは聞かれていたはずだと思いますけれども、なぜ改めて今回の法改正で「国民の意見」と入れたんでしょうか。
木村副大臣 先生御指摘のように、今までも国民の意見というのはたくさん出されていたわけでございます。
 今回、ある意味で法律によってリスクコミュニケーションというのを規定させていただいたわけでございます。そして、この中で具体的に何を行うかというと、特にリスクコミュニケーションの中心に位置づけましたのは、消費者の方々と政府との意見の交換のための懇談会を年に四回開く、そして、食品の安全に関するシンポジウム等も年二回開くとか、こういうことで、その他、こういうリスクコミュニケーションを合計年八回、懇談会を開催するということをはっきり回数まで定めて決めまして、言ってみれば、今まではどちらかというと片側通行になりやすかったのを、初めてここで両者がひざを突き合わせてというか、しっかりとした、文字どおりのコミュニケーションを行うような場を設定した、こういうことでございまして、今まではどちらかというと一方通行になりがちだったのを、初めてこれが双方向が実現をした、こういうことが言えるのではないかと思っております。
武山委員 では、もう一度副大臣に。
 では、どうして今まで一方通行だったんですか。
木村副大臣 やはりそこは、これからは国民の皆さんとの直接の対話を必要とする。どちらかというと、今までは、国は都道府県だけを相手にしている、都道府県はそれぞれ市町村を相手にしている。末端の基礎的な自治体であります市町村が一番国民の皆さんとの接点であったわけでありますけれども、しかし、これからは、先ほど大臣がおっしゃった、インターネット等の活用も出てきて、だんだんだんだん国の行政自身が、やはり国民の声をじかに聞くべきだという意識改革が国の行政の中にも行われてきたんじゃないか、こういうふうに私は思えてならないわけであります。ここは、多くの国会議員の皆さん方も同じことが言えるわけでありますけれども、やはり我々自身がもっともっと国民の皆さんの声をじかに聞く必要を一番感じているわけであります。
 やっとようやく国の行政機関も、国民の皆さんにじかに対応しようという意識が出てきたのが大変大きいのではないか、私はこれは非常にいい方向であると。国は県だけ相手にしていればいいとか、県は市町村だけ、こういうようなことではなくて、国が直接国民の皆さんと接点を持つことの新しい意義があるのではないか、こう思えてならない次第であります。
武山委員 国民の代表であります国会議員が国民と常にコミュニケーションして、そのコミュニケーションを国民の代表である国会議員が国会に持ってきて、立法府でこのように議論するということなんですけれども。
 今まではそういう国民の意見を聞いていなかったということで、今度改めて行政がそれを行うということで、回数も決まったということ。前は何もそういうことはなかったということですけれども、それが大きな今回の改正だということで、それでは、そのお話の内容はどのように生かすのでしょうか。
木村副大臣 これはもちろん、その中身を聞かさせていただいて、それを行政に反映するのは当然のことでございまして、ここはそれぞれ、リスクを管理する厚生省として、それを施策に反映していく、当然のことであろうと思っております。
武山委員 国民は実は一番心配しているんです、聞くだけじゃないか、ガス抜きじゃないか、ただ聞くだけじゃないかと。それを、よい意見だ、これは取り入れようとか、どこでだれがどう判断して取り入れていくんですか。
木村副大臣 それは、先生が今もおっしゃったように、国民の代表たる国会議員が、このような懇談会を開催したのを国会議員としてウオッチさせていただいて、担当の役所であります厚生省が十分なことができなければ、国会議員としてそれぞれこの委員会の場で取り上げるなりなんなり、いろいろな方法が考えられると思えてならない次第でございまして、まさに国民の代表として国会議員がそれぞれ、こういう場面でも十分に両者の意見を聞いて実現をしていく努力をするのが私は最善の方法だと思えてならないわけであります。
武山委員 今おっしゃったことは当たり前のことで、今までやっていたことであって、ちっともかわりばえしていないと思います。だから、まやかしじゃないかと思うわけですよ。このように、今まで一方的だったものが、パフォーマンスで、ただ席を設けるだけだ、国民はそう思っているわけなんですね。お言葉を返すようですけれども、今副大臣のおっしゃったことは当たり前のことであって、日々そんなことをしているわけであって、ちっとも大改正にはなっていないと思うんですよね。
 この議論はまた来週いたしますけれども、その意味は何なのか。ただ、おぜん立ては格好いいですよ、リスクコミュニケーションなんて言って、今までやっていなかったから。でも、それは今までもずうっと、意見というのはみんな国民の声と言っていたんですよ。でも、ほとんど国民の声に耳を傾けないで、もう明治以来の、きょうもお話があったように、戦前の公衆衛生で来たわけですよ。なぜ、そういうふうにして国民の声を聞かないで今までしてきたのか。やっといろいろな問題が出てきて、大きな社会の激変でこういうふうになったということですけれども、この議論は来週深めたいと思います。
 終わります。
中山委員長 次に、小沢和秋君。
小沢(和)委員 今回の食品衛生法改正は、一昨年来のBSE問題や偽装表示問題など、国民を深刻な不安に陥れた食の安全について、ある程度の前進的方向を含んでおり、賛成できるものであります。特に、これまでなかった残留農薬のポジティブリスト制の導入や、総合衛生管理製造過程、いわゆるHACCP承認への更新制の導入、つまり定期的検査の導入は、我が党が昨年四月参議院に提出した食品衛生法改正案で提案していたものであり、評価できると思います。
 しかし、現在、我が国の食料自給率は四〇%まで下がり、国民が消費する食品の六〇%を輸入に頼るようになっているのに、安全性を担保する検疫の仕組みと実態が全くお粗末きわまる状況にあることが極めて重大な問題だと思います。まず、きょうはそこに焦点を当てて質問をいたします。
 昨年も、中国から輸入されたホウレンソウの残留農薬が大問題になり、通常国会終了間際に議員立法で危険な食品の輸入を包括的に禁止できる法改正を行いました。まず、この法改正を生かして、その後どのようにこの問題を処理したのか、ごく簡潔に御報告をいただきたいと思います。
遠藤政府参考人 昨年の議員立法により創設をされました改正食品衛生法第四条の三に基づきまして、その後、中国政府との協議を七月から十月まで四回実施をしたところでございます。
 この間の協議を通じまして、中国側より日本に輸出される冷凍ホウレンソウについての残留農薬対策案が提出をされまして、日本向けホウレンソウについてクロルピリホスの使用を禁止する、生産企業に対し、残留農薬検査室の設置、加工前検査の奨励等の農薬管理の強化を指導する、地方検験局に登録された生産企業及び圃場で生産されたもののみ輸出可能とするなどの対策を講じ、さらに、中国政府の検査に合格したもののみの輸出を認めるというふうなことに中国側はしたところでございます。
 さらに、中国側では、平成十四年八月十二日以前に生産された在庫の冷凍ホウレンソウについては、生産企業にクロルピリホスの不使用を確認させ、不使用の確認がされたものについて中国政府の検査を行い、合格したものについて輸出を認める。
 こういった対策が中国側において講じられましたことを私どもとしても確認に参りまして、去る二月二十六日に輸入自粛要請を解除したところでございまして、現在、中国政府の衛生証明書の添付された冷凍ホウレンソウについて、検査命令に基づく厳格な輸入時検査を実施し、違反がないことを確認した上で輸入を再開しているという状況にございます。
小沢(和)委員 今回の法改正では、このホウレンソウ問題の教訓も取り入れたのだと思いますが、輸入食品の監視・検査体制の整備を打ち出し、その一つとして、命令検査の対象食品等の政令指定の廃止を掲げております。違反の可能性の大きいものに対して機動的に検査を命令できることにするもので、これも評価できると思います。
 これに関連してお尋ねしたいのは、今もしばしば発生するO157食中毒事件の問題であります。
 この間発生した病原性大腸菌O157による食中毒事件の多くが、カナダやアメリカからの輸入牛肉を介しての感染でありました。ここ数年国会でも問題になり、一昨年五月十七日には我が党の中林よし子議員が農林水産委員会で取り上げました。一昨年三月から四月にかけて一都六県で計二百四名の患者を出した食中毒事件も、O157に汚染されたアメリカからの輸入牛肉を使ったハムが原因でした。中林議員は、こうした事件の背景に、二〇〇〇年度に厚生労働省が輸入牛肉のモニタリング検査計画をきちんと立てず、結局わずか五十八件しか検査を行わなかったことがあるということを指摘いたしまして、当時の食品保健部長は、反省する点はあると述べております。
 そこでお伺いしたいんですが、輸入牛肉のO157汚染に対する検疫は、今回の法改正で機動的に検査を命ずる対象として考えておられるかどうか。
遠藤政府参考人 命令検査の対象にはなり得ます。現在のところ、過去にO157が検出された加工所のものにつきましては命令検査の対象にしているということで、今後とも十分注意をしてまいりたいと思っております。
小沢(和)委員 厚生労働省が反省する点はあると述べた後も、昨年七月には私の地元である福岡市城南区の保育園で、感染者百十二名、入院二十名のO157食中毒事件が起きております。それに前後して、栃木県宇都宮市では老人保健施設で、感染者百三十九名、死者八名を出す史上最悪の事件が起きております。
 このように死亡者が出る可能性の高い法定伝染病の病原菌O157は、検疫に万全を期するのが当然なのに、反省すると発言した後もこのようなことを繰り返しているのは、結局その後もモニタリング検査でしか対応してこなかったからではないのか。これでは、幾ら検査件数をふやしても、結果が出たころには汚染牛肉が市場に出回り、食中毒事件が発生してしまいます。
 今回の法改正を機に、O157汚染の心配がなくなるまで輸入牛肉を命令検査の対象にするなどの措置をとるべきではありませんか。
木村副大臣 先ほども部長がお話し申し上げたんですが、輸入時における牛肉のO157の検査につきましては、年間計画に基づきまして、検疫所において、ひき肉を含む牛肉全般を対象に、平成十四年において三百六十二件のモニタリング検査を行っておりまして、すべてこれは陰性でございました。
 また、特に食中毒のリスクの高いひき肉については、モニタリング検査に加え、過去O157の検出された加工所については従来よりも命令検査を行っておりまして、昨年検出された事例はなかったわけでございます。
 今後とも、輸入時の検査の充実強化を図り、輸入牛肉の安全の確保に努めたいとは思っておるような次第でございますけれども、命令検査とすべきではないかということについては、以上でございます。
小沢(和)委員 私が特におかしいと思うのは、病原菌に汚染された牛肉について、O157が検出されても加熱加工すれば容易に死滅するとして、レトルト食品の素材などとしての流通を認めていることであります。
 厚生労働省の言う七十五度C、一分という基準で加熱加工することが確実に実施されないこともあり得るわけで、事故を未然に防ぐためには焼却廃棄処分にすべきではないんでしょうか。加熱加工すればO157は容易に死滅するなどといったら、どんな病原菌でも加熱加工すれば大抵死滅するわけですから、O157に限らず、病原菌汚染食品は何でも、人の健康を損なうおそれのある食品に該当しないということになってしまうのではないでしょうか。そんな無責任な姿勢が、雪印牛乳の事件など、大きな被害を出した食中毒事件の背景にあります。
 雪印の事件も、加熱すれば大丈夫というのが間違いのもとでした。加熱して菌は死んでも、あのときは毒素が残留したわけであります。毒物についての知見がなかったというのが当時の厚生労働省の言いわけでしたが、人の生命にかかわる食中毒事件をこんないいかげんな法解釈で繰り返してはならないと思います。
 O157は、健康な牛の腸内に存在し、牛肉そのものの表面には一定の割合で汚染されるからゼロにできないとも厚生労働省は中林議員に答弁しておりますが、だからこそ検疫とその後の措置を厳密にし、何よりも消費者の安全を第一にすべきではないでしょうか。
 改めて、O157については命令検査の対象にすべきだし、発見された汚染牛肉はBSEのときと同様に焼却廃棄処分にすることを提案しますが、今度は大臣にぜひ答えていただきたい。大臣、いかがですか。
坂口国務大臣 肉製品などを見ました場合には、これは肉そのものの問題もございましょうし、それをどういう調理を行うか、その後の取り扱いによってもこれは非常に違ってくるわけでございます。
 先ほどからお話ございますように、O157というのは、どこにでもあると言うと少し言い過ぎでございますけれども、自然界に存在をするものでございますから、これを完全に取り除くのはなかなか至難のわざでございますけれども、諸外国から輸入されますものにつきましては、それによって起こるということが明確になった場合には、それらの輸入につきまして、より的確に検査をしていかなければならないというふうに思っております。
 しかし、それだけではなくて、その検査をすればそれで十分かといえば、そこにもし仮にO157の菌がわずかであっても存在するということになったときに、その調理方法等によってそれが増殖するということは考え得るわけでございますので、ただそれを検査してマイナスだったからいいというだけではなくて、その調理方法等について国民の皆さん方に十分御理解を得るということが大事ではないかというふうに思っている次第でございます。
小沢(和)委員 O157一つとっても明らかなように、輸入食品の安全を確保するかぎは水際での検疫体制であります。しかし、実際とられているのは、先ほど来指摘しておりますように、検査結果が出る前に市場に出回ることを認めるモニタリング検査であり、これでは食の安全を保障し、国民の健康を守ることはできません。
 モニタリング検査でも、違反が見つかれば命令検査を行い、輸入をストップする道は開けているようにはなっているわけですが、実際にそこまで行った例が果たして何件あるのか。こうなることが目に見えていたから、我が党は、一九九五年の食品衛生法改悪による国の水際での検疫体制の放棄に反対をしたわけであります。
 その後も食品の輸入増加が続いております。輸入届け出件数で見ても、九五年に百五万二千件であったものが、二〇〇一年には百六十万七千件と約一・五三倍に増加しております。しかし、この間のモニタリング検査数は六万一千件から四万五千件に、率にして五・八%から二・八%へと大きく後退しております。監視の目さえ行き届かなくなっている、これが実態だと思いますが、大臣、こうなっている原因は何ですか。
木村副大臣 先生御指摘のとおり、検査率自体は、違反状況等を反映して、これは毎年上下をしているわけでございますが、近年は、航空貨物の増加や消費者の需要に応じた食品輸入の小口化等を背景といたしまして、輸入件数が非常に増大をしてきているわけでございまして、それに伴い、確かに、十年前の五・九%に対しまして、平成十四年の検査率自体は三・九%になっているところでございます。
 しかしながら、ここ十年で百三名の食品衛生監視員を増員するなど、検疫所の機能の強化に努めているところでございますし、また、輸入食品の検査のうち検疫所が実施しているモニタリング検査につきましては、近年の検査ニーズの増加を踏まえまして、多種の農薬を一括して分析する一斉分析法の導入や遺伝子組み換え食品の検知などの検査項目の増加を図り、質の向上に努めているところでございます。
 さらに、平成十五年度におきましては、食品衛生監視員を十五名増員いたしまして、モニタリング件数を約二万件ふやしまして七万三千件とすることとしておりまして、今後とも輸入食品の検査体制の充実を図ってまいりたい、このように思っているような次第でございます。
小沢(和)委員 私が原因は何かとお尋ねしたら、もう対策まで全部今しゃべられましたけれども、しかし、原因の一番大きなものは貨物の小口化などに伴って件数がめちゃくちゃにふえたからだというようなことというのは、私は納得できません。
 私は、率が下がってきている一番の原因というのは、全国三十二カ所の検疫所に配置されている食品衛生監視員の不足以外には考えられないと思うんです。輸入件数は一・五三倍になったわけですが、この同じ六年間に、監視員は何名から何名に、何倍にふえたんでしょうか。
遠藤政府参考人 一九九五年から二〇〇一年までの六年間に、検疫所の食品衛生監視員数は二百九名から二百六十四名となっておりまして、五十五名の増員、一・二六倍でございます。
小沢(和)委員 だから、貨物の方が一・五三倍に対して人員の増が一・二六倍、このギャップがやはり大きな問題なのではないんでしょうか。
 私は、第一線の検疫所では、人員不足にもかかわらず、本当にぎりぎりの努力をしていると思うんです。
 一昨日、私は秘書に横浜検疫所の検査センターに実情調査に行ってもらいました。そこでは、食品衛生監視員がことし二名増員され、検疫所そのものに十二名、検査センターに三十四名が配置されておりました。
 ここでの二〇〇一年度の輸入届け出数量は十六万七千百四十一件、四百三十二万六千三百七十一トン、検査数量は九千九百八十一件、二十三万八千三十八トンに上っております。ここで見つかった同年度の違反は百四十五件、六百六トンで、全国の違反の一五%になりますが、ここの検査センターはさらに、関東、北信越より北の検疫所から持ち込まれるサンプル検査も行っており、毎日百数十のサンプルが送られてきていると聞きました。この結果、監視員は大変な長時間過密労働に追われております。私が検疫所業務管理室からいただいた昨年度の超過勤務実績によれば、横浜検疫所では、一人一月十七・二時間に上っております。
 しかし、このデータは予算の範囲内で超過勤務を命じられた時間であり、実際には勤務は、早くて午後七時、遅くて十時過ぎまで続き、平均して八時退勤、定時の五時に帰れることなどまずないとのことでありました。つまり、毎日三時間の残業は当たり前で、結局、予算を超えた分はサービス残業になっているということであります。一月の労働日が二十日程度とすると、実に六十時間以上の残業時間ということになります。
 全国的にも、昨年度の管理職を除いた食品衛生監視員二百二十五名の超過勤務の平均時間数は月当たり十一・九時間となっており、どこの検疫所や検査センターでも押しなべて、横浜検査センターと同じくサービス残業が常態化しているという話です。これだけサービス残業を含めて頑張っても、検査率が低下している。
 大臣、これでも、食の安全には何も問題ない、月六十時間の残業はやむを得ないというふうにお考えですか。
坂口国務大臣 職員の皆さんには大変に御苦労をかけておることを存じておりますし、少ない人数の中で懸命に御努力をしていただいているというふうに私も思っている次第でございます。
 今お話ございましたとおり、外国から多くの食品が入ってくる、あるいはまた食材が入ってくる。それは、量もふえてまいりましたけれども、量よりも品種、種類がふえてくる。先ほど副大臣からありましたように、量のふえ方よりも種類のふえ方が非常に多いというようなこともありまして、小口化が非常に多いというようなこともございまして、より多くの検査がやはり必要になってきているということも事実でございます。
 これらの問題を解決いたしますのに、サンプリングをいたしまして検査をしていただく以外にないのが現状でございますが、正規の皆さん方に加えまして、臨時と申しますか、できる限り、過去にお勤めをいただいて、そして現在OBになっておみえになる皆さん方等にもお手伝いをいただいて、そして切り抜けているというのが現状でございます。
 与えられた職員の中で与えられた仕事を我々はやらなければならないわけでございまして、大変厳しい中ではございますけれども、できる限り現場の皆さん方の御要望にも応じていきたいと考えているところでございます。
小沢(和)委員 特に、サービス残業が前提になって行われる検疫体制などというのは、もう体制の名に値しないと思うんです。監視員たちは、目の前に片づけるべき仕事が山積みし、食の安全を守らなければならないという使命感から、おのずとサービス残業せざるを得ない。現場の人たちのそういう奮闘はまことに貴重ではありますけれども、それでよしとするのは厚生労働行政を預かる長がとるべき姿勢ではないと思います。
 まして、間違いがあってはならない食の安全の最前線であるのに、そこを守る労働者が日常的に疲労こんぱいしているというのは大変危険な状態と言わなくてはなりません。サービス残業は犯罪というのが厚生労働省の公式見解のはずではないでしょうか。直ちに実態を調査し、改善を図っていただきたいが、重ねて大臣の見解を伺いたい。
坂口国務大臣 さまざまな仕事がありますことも事実でございます。そうした中で、できる限り、職員の皆さん方がおやりをいただいておりました内容につきましても、民間に委託をしておやりいただけるところは民間委託を行いまして、そして、そのおやりをいただいております仕事量を減らしたり、あるいはまた機械化をいたしまして減らしたりということを今取り入れているわけでございまして、今後も鋭意努力を続けていきたい、そういうふうに思っております。
小沢(和)委員 私が特にお尋ねしたいのは、大臣は、厚生労働大臣として、今までサービス残業を根絶しようということで、もう通達も出したり、いろいろ取り組んでこられている立場でもあるわけです。そのおひざ元でこういうようなサービス残業がやられているということは、これはゆゆしいことじゃないかと思うんです。
 だから、少なくとも、サービス残業を直ちになくすように調査もし、手だても打っていただくということは、これはここで約束していただきたいと思いますが、重ねてお尋ねします。
坂口国務大臣 サービス残業というのは、監視員のみならず国会におきましても、全体の職員にあるわけでございまして、できる限りなくしていかなければならないというふうに私も思っているわけでございます。ただしかし、現状から申し上げますと、いかにそれを少なくしたいというふうに思いましても、そうならない環境にあることも事実でございまして、それらのことをどのように整理していくかというのが私に課せられた仕事だというふうに思っております。
 厚生労働省ですから労働の問題もやっておるわけでありまして、民間の企業に対しましてはサービス残業をなくするように言っている立場でございますから、当然のことながら、厚生労働省の関係の職員につきましてもそうした体制がとれるように私たちも努力をしていかなければならない。しかし、限られた人数、それをなかなかふやすというわけにもいかない。そこは、知恵を働かせていく以外にないと思っている次第でございます。
小沢(和)委員 どうもまだあいまいですね。あなたは、サービス残業をなくすということを積極的に指導している立場なんですよね。そのおひざ元でサービス残業があってはならないということは、これは自明のことだと思うんです。
 私は、大臣は恐らくそういうことがあるというのは御存じになって今まで来たと思うから、だから、ここでそういうことを改めてこうやってお知らせしますから、すぐ調査をして、少なくとも、サービス残業そのものをなくしていくために直ちに取り組んでいくという姿勢をここで明確に示していただきたいんです。
坂口国務大臣 今までからそのことはもう承知をしているわけでありまして、だから、それをいかにしてなくしていくかということに今までから取り組んでいるわけでありまして、今後も取り組みたいということを言っているわけであります。
小沢(和)委員 どうもそれでは私は納得できないんですけれども、さらに努力をしていただくというふうに言われているから、しばらくそのことを見守りたいと思います。
 事はサービス残業だけではないと思うんです。検疫所ごとに見ると、監視員が一人しか配置されていないところが昨年度で八カ所もあります。千歳空港、羽田、四日市、広島、広島空港、境、鹿児島で、全国の四分の一になります。こういうところでも輸入食品届け出件数は急増しております。九六年から〇一年で見た場合、千歳空港が二・三二倍、広島が二・二四倍、境が三・二四倍と全国平均を大きく上回る増加率であります。これらの検疫所では、輸入業者の申請前の事前相談業務からサンプル採取等、事務、実務の多様な業務が、一人しか配置されていない監視員の肩に重くのしかかっております。重要かつ多忙な業務をたった一人の監視員に対応させるというのでは、年休を取得することはおろか病気にさえなれないわけであります。
 こんなことでは、私が不十分と指摘しているモニタリング検査ですら完全に行うことがおぼつかなくなるのではないでしょうか。せめて、すべての検疫所で複数以上の配置が行われるべきではないでしょうか。
木村副大臣 今先生の御指摘の点でございますが、全国で二百八十三名の食品衛生監視員につきましては、食品等輸入届け出件数及び試験検査の業務の量に応じて配置が行われているわけであります。
 例えば成田空港では、監視員が三十名、件数が二十七万件余でございまして、一人で大体九千件ぐらいを持っている計算になるわけでございますけれども、一人のところでは、極端なところ、年間で百三十件のところや三百件余のところがあるわけでございます。
 やはりこれは、基本的には件数や業務量に応じて人員配置を行うのは当然のことでございますが、結果的に、届け出件数が少なく、かつ、試験検査部門を有さない官署におきましては一名の配置となっているわけでございますけれども、一時的な業務量の増大や職員の事故の際には、他部門からの食品衛生監視員の資格を有する者の応援や、近隣検疫所の応援によりまして現在対処しているところでございます。
 今後とも、輸入食品の届け出件数や輸入業者の利便性を考慮しつつ、業務量に応じた適切な人員配置に努めてまいりたい、このように思っているような次第でございます。
小沢(和)委員 全国の検疫所でサービス残業が日常化し、その四分の一の検疫所で監視員そのものがたった一人しか配置されていない。これで、今回の法改正によって食品等の監視・検査体制を強化すると言っても、国民はなかなか信用できないと思います。
 大臣は、一昨日の連合審査での我が党の中林委員に対する答弁で、モニタリング検査の件数をこれまでの年間五万件から今年度は七万件にふやしていくというふうに述べられました。しかし、そのための人員配置が十五名増の二百八十三名では、余りにも少な過ぎると思います。年度途中からでも、届け出件数増とサービス残業を含む月六十時間残業というむちゃくちゃな労働条件の改善に必要な大幅要員増の手を今から打っていっていただきたいと思うんですが、その点、大臣はどうお考えですか。
坂口国務大臣 要員の増につきましては、今までからも努力をしてきたところでございまして、これからもさらに努力をしたいと考えております。
小沢(和)委員 だから、それは年度途中からでも、今からでもそういう努力をやっていただきたいという気持ちで私は言っておりますので、その点を酌んで対応していただきたい。
 今回の改正案の中で一つ不安に思うことがあります。それは、命令検査を受ける際には、現行では、輸入業者が自分で厚生労働大臣が指定した検査機関を選定して検査を受け、報告するようになっておりますが、この指定検査機関制度を、民間会社も参入できる登録検査機関制度に変更するという問題であります。現在、全国で八十以上の公益法人が指定検査機関とされておりますが、なぜここに民間会社が参入できるようにするのか。
 同様の改正は、今回一緒に審議しております健康増進法改正案にも、登録試験機関の導入ということで盛り込まれております。こちらは、特別用途食品の表示認可にかかわる栄養成分調査を行う機関に登録制度を導入し、従来から試験を独占的に行ってきた独立行政法人国立健康・栄養研究所以外でも試験が行えるようにするものであります。こちらも民間会社が参入できるようにするんですが、どうしてこういう改正をする必要があるのか、お尋ねをします。
遠藤政府参考人 近年の輸入食品の増加や多様化等に伴い、違反の蓋然性の高い食品について、指定検査機関の検査に合格しなければ輸入を認めない命令検査の件数が増加をしているところでございまして、指定検査機関の数は、公益法人であることを求めてきたこと等によりふえておらず、また、地域によっては、指定検査機関が不足したため検査が停滞した事例も発生したところでございます。
 また、同様に、違反の蓋然性が低い食品について検疫所が必要に応じて行うモニタリング検査の件数についても増加をしており、さらに、今後、輸入食品の増加により、検査ニーズの拡大が予想されるところでございまして、このような中、輸入食品等の安全性を確保する体制の充実を図るため、公益法人要件を撤廃し、指定制度を登録制度に改めるものでございます。
小沢(和)委員 検査、監視という最も公正性が求められる業務については、国の行政が直接責任を持つのが当然だと思います。仮にその業務の一部を民間機関に委託するにしても、かなめの部分は行政が握って放さないということが重要であります。
 今回、食品衛生法及び健康増進法改正で持ち込まれる検査試験機関への民間会社参入は、検疫、検査、監視体制の強化のためなどではなくて、昨年から政府が進めている公益法人改革にかかわって出てきたものではないのでしょうか。
 昨年三月の公益法人に対する行政の関与の在り方の改革実施計画では、官民の役割分担及び規制改革の観点から見直しを行い、廃止するものを除き、事業者の自己確認、自主保安を基本とする制度に移行することを基本原則とする。それが国際ルールや消費者保護等の観点から必ずしも適当でないときは、法令等に明示された一定の要件を備え、かつ、行政の裁量の余地のない形で国より登録された公正中立な第三者機関により実施することとするとあり、登録機関の導入をうたっております。
 しかし、公正中立な第三者機関といいながら、営利を目的とする民間会社が登録機関になれる制度を食品衛生分野に導入することは全く納得できません。こういう措置をとっても、輸入業者と民間会社の検査機関が癒着したり、検査業務が営利のためにゆがめられたりするおそれは全くないのか。
 登録について、この法案では、大臣が認証する基準として、親会社でない、受検業者の会社の職員、役員を兼務する者が役員の二分の一以上を占めてはならないなどと決めており、だから民間会社でも大丈夫だというんですが、せめて、利害関係のある企業の職員、役員が役員兼務をしてはならないとか、株式所有してはならないくらいの厳しいハードルを設けるべきではありませんか。
坂口国務大臣 今回の改正では、民間の登録検査機関が不公正な検査をすることを防止しますために、親会社が検査に関係する食品営業者である検査機関を排除いたしております。食品関係事業者からの中立性に関する要件として取り組んでいるところでございます。検査の技術的な適正性を担保する機械設備でありますとか人員、それから試験の信頼性確保のための業務管理体制についての要件、これらのことが整うことが定められております。
 厚生労働省といたしましては、これらの要件が遵守されますように、登録申請時とか更新時における厳格な審査でありますとか定期的な立入検査の実施などで、登録検査機関に対する適切な監督を実施するということにいたしております。それから、事後の検証を可能とするために、検査の検体を一定期間、一年というふうにしておりますが、保存することを義務づけております。さらに、検査が適正でない場合におきましては、改善命令をかけて、違反した場合には登録を取り消すなどの措置を講じたいというふうに思っております。
小沢(和)委員 これに関してもう一つ問題だと思いますのは、民間会社の参入で検疫所の検査業務との間でコスト競争という問題が生じないかということであります。私が説明を受けた際、民間参入によりコスト低減効果があるという話も出ました。しかし、コスト競争と食品の安全を保障するための検疫、検査は両立しないと思います。
 私は、少なくとも、新たに参入してくる民間会社の登録検査機関と検疫所のコスト競争などが問題になるような状況をつくり出してはならないと思います。まして、五万件から七万件にモニタリング検査件数を引き上げるために、食品衛生監視員を増員したりするよりもモニタリングにも民間検査機関を入れる方が安上がりと判断して、検疫や検査は国の行政が直接責任を持つという大原則を崩すようなことがあっては絶対ならないと思いますが、大臣のお考えはいかがでしょう。
坂口国務大臣 指定制度が登録制度に改められますことは御指摘のとおりでございます。検査手数料につきましては、経営努力の中で適正な価格が確定されることを希望いたしておりますが、検査の質が確保されるよう、この部分は引き続き認可制とすることといたしております。もう一度申し上げますと、検査の質が確保されるよう、引き続きここは認可制とすることといたしております。
 また、検査が適正に行われるように、登録検査機関に対する適切な監督を実施し、また、事後の検証を可能にするために、先ほども申しましたように、検査の検体を一定期間保存させることを義務づけるといったようなことも行っております。さらに、検査が適正でない場合には改善命令をかけるということは、先ほど申し上げたとおりでございます。
 このような登録検査機関の活用によりまして、今後予想される輸入食品の増加等によります検査命令やモニタリング検査の増加に対応いたしまして、輸入食品の検査体制が一層充実されるように努力をしたいと考えているところでございます。
小沢(和)委員 終わろうと思ったんですけれども、私の質問の趣旨とちょっと答弁が違ったように思うんです。私が一番聞きたかったのは、モニタリング検査にも民間検査機関を導入するようなことがあってはいかぬと思うがどうでしょう、こう言ったんです。
坂口国務大臣 そこは、モニタリング検査におきましても一部民間が入ってくることはありますけれども、検査の質が確保されるようにここは認可制度にしていく、こういうことを先ほど申し上げたところでございます。
小沢(和)委員 あとはこの次にやります。
中山委員長 次に、阿部知子君。
阿部委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。皆さんも、極めてお忙しい時間、遅くまで御苦労さまでございます。あと四十分弱ですが、よろしくお願い申し上げます。
 私は、食品安全基本法の制定と食品衛生法の抜本的な改正ということがうたわれております今回の改正に当たって、冒頭、坂口大臣に、これは先ほど自由党の武山委員もお聞きでありましたが、何が最も根本的な改正であるのかという点をお尋ね申し上げたいと思っております。
 と申しますのも、森永の砒素ミルク事件あるいはカネミ油症事件、これらは実は両方とも私が学生時代に起きたことで、最近、坂口大臣の御尽力でカネミ油症の問題はダイオキシン問題としてかなり解決の緒についておりますが、相次いで、この間の雪印牛乳あるいはBSE問題、そしてそれをさかのぼって忘れることのできない水俣病問題など、私たちの口に入るものから私たちの健康を害する出来事というのは非常に幅広い広がりを持っておって、そこにおける国民の健康の安全ということは、かなり広範な視野に立ち、体系的なものを考えていかないといい改正ができないのではないかと思っておるのですが、まず冒頭、大臣に、今回どのような点が一番改正の中心軸であると御認識であるか、お願いいたします。
坂口国務大臣 先ほどから議論がございますとおり、我々の健康にかかわりますものは、今まで考えていなかったような分野に及んできているわけでございます。その都度、今まで本当に考えられなかったことだというようなことで、新しい事態にいつもこれは直面をしてまいりました。これからもそうした危険性というのは多分あるんだろうというふうに思っております。それは、厚生労働省としての中で解決のできる問題もございますし、物によりましては、これは環境省が中心になって処理をしていただかなければならないものもある、あるいは農林水産省がおやりをいただかなければならないものもあろうかと思います。
 今まで、そうしたことが起こりますごとに、縦割り行政という言われ方をいたしまして、そしてスムーズにそのことが、情報の共有でありますとか、あるいはまたそれに対する対応が手おくれになったりということがあった。そこを今度は総合的に政府一体としてとらえて、そして、各省庁がそうした縦割りの中で行うということではなく、すぐに連携ができるように、情報もそして行動もともに連携ができるような体制をつくり上げよう、ここが一番大きな点であったというふうに思っております。
阿部委員 ただいまの大臣の御答弁の中にもございましたが、思いもかけないことが起こるのは、例えばカネミ油症や森永の砒素ミルクのようにいろいろなものが混入してくる、あるいはBSEのように既知の感染症ではない未知の感染症がそこに発生する、そしてもう一つの大きな点は、環境要因が極めて現代社会大きくなっているように思うのです。
 私は、この法案の骨格、内閣に預けられたところの安全基本法と、厚生労働省の食品衛生法の改正という中に、いわゆる環境省というものが関与する、あるいはあずかる部分の組み込まれ方が果たしてこれで十分であるのかという点を続いて質疑させていただきたいかと思います。
 そして、そのことに入る前に、これも大臣に一点、今後のことに非常にかかわってまいりますので、御認識を伺いたい。
 質問通告していないのですが、実は、今回のアメリカのイラク攻撃で劣化ウラン弾というものが使用されました。これはかつての湾岸戦争時も使用されましたが、貫通力を強めるために非常にかたくしなきゃいけないということで、ウランがその場合に非常にかたいということで選ばれておりますが、同時に、地中に残った場合は重金属としての汚染をもたらす可能性が非常に強いと思われます。
 これは、今後の我が国の国際貢献ということにもかかわってまいりますが、実は、戦禍で非常にいろいろなことが中途半端のままに、例えばWHO等も調査に入っておりましたが、それも中断されておりますし、実際に起こる被害、今後の長きにわたる被害等々について、環境要因を通じて、例えばそれが地中にしみ込んでトマトのような野菜の中にも入ってくるようなこともあるわけで、もちろん我が国のことではないといっても、やはりいつでも可能性はあることでございますので、この劣化ウラン弾問題、大臣としての御認識と、あるいは、今後我が国が何らかの貢献をできる、特に疫学面でのことに関して、お考えがあれば、冒頭、これもお願いいたします。
坂口国務大臣 国内問題も大事でございますが、ただ国内問題だけではなくて、国際的にもやはり日本は健康管理あるいはまた環境の保全のために貢献をしていかなければならない、また、日本ができ得る最も得意とする分野ではないかというふうに思っております。
 したがいまして、イラク等でもしも必要なことがあるならば、日本のそれに対する研究者あるいはまた知識を持つ人がそれに対応するということも、それはあり得るだろうというふうに思っております。
 私、兵器のことは余り詳しくないものですから、どうなるかということはよくわかりませんけれども、重金属等の問題で、日本の中にも重金属の研究者というのはかなり多くおみえでございますしいたしますから、もし重金属の問題等で国際貢献ができるということであるならば、それは日本の国の中でも協力をしていただける方がおみえになるのではないかというふうに私は思っております。
阿部委員 貴重な御答弁をありがとうございます。
 引き続いて、重金属問題では、やはり我が国の戦後の最大の重金属の汚染である水俣病問題、これは、チッソの水俣工場が海に流した重金属である水銀が魚に行き、それが魚を食することで人体に影響を及ぼしてまいりました。
 果たして、今後このような、原因は重金属ですが、それが食べ物を介して何かの健康被害を起こした場合は、この食品衛生法というもののあずかる範囲のこととして考えてよいものかどうか、これも一点お願いいたします。
坂口国務大臣 重金属が食品を通じて影響を与えるということになれば、これは食品衛生法の中で考え得ることだというふうに思っております。したがいまして、これからそうしたことがあれば、それはこの法律の中で対応していかなければならないというふうに思います。
阿部委員 恐縮ですが、一九五七年二月の二十六日に熊本大学が、もともとこれは、熊本大学の研究班が一九五六年に魚介類による重金属類の中毒だという報告を出しましてから、その当時からもう既に食品衛生法の適用が必要ではないかという論議を上げてございましたが、当時の認識がそのようでなかったのかどうか、私もこれは論議の分かれるところと思いますが、先ほどの森永の砒素ミルクは食品衛生法の適用を受けましたが、この水俣水銀中毒は食品衛生法として扱われてまいっておらなかったわけです。
 私は、そのことが逆に、食品中毒として、食中毒として認識されれば、即に摂取を禁止するなり広がりを防ぐことができたのではないかと非常に残念に思っておりまして、横からのお耳はちょっとやめていただきまして、大臣に、これはやはり真摯な私の問いですから、雑音を入れないで大臣から御答弁をいただきたい。
 今のお答えですと、やはりそういうものも食べ物から入ったら、これは食の安全をめぐる食品衛生の問題と考えてよいというお答えでしたので、その点をお願いいたします。
坂口国務大臣 水俣病の問題につきましては、私ちょっと、過去にさかのぼって細かくはわかっておりませんが、少なくとも、これからそうした問題が起こりましたときには、この法律の中で処理ができるものというふうに思っております。
 過去の水俣病の水銀の問題、当時から環境庁を中心にしておやりをいただき、現在の環境省が中心になっておやりをいただいてきたというふうに思っておりますが、しかし、これは健康にかかわることでありますから、当時の厚生省も深くかかわってきたことだというふうに思っております。
 法律上、どの法律の中で今まで処理していたかということまで私ちょっと存じませんけれども、少なくとも今後は、そうした重金属が、食品を通じてそれが健康に被害を与えるということになれば、それはこの法律によって取り扱われるものというふうに理解をいたしております。
阿部委員 私は、あえて言えば、さかのぼってでも起きた出来事は、人間はみんな環境の中に、生態系の中に生きておるわけです。めぐりめぐって生態の連鎖の中で魚や貝を摂取して、人間を食う人はおりませんので、最終蓄積物が人間になってくるわけです。今、ダイオキシン問題でも同じことでして、焼却したダイオキシンが、川、海、そこの貝に行き、魚に行き、また人間へとめぐってまいりますので、実は、今回もし改正が行われますとすれば、そして今まで不十分ないしはある場合には排除してきたことがあるとすると、根本的な考え方において、生態系、環境系というものを広く視野に入れて食の安全を守る、国民を守るという見識が必要と思われますが、そのような御答弁と考えてよろしいでしょうか。
坂口国務大臣 非常に微妙なところでございますが、先ほど出ましたカネミ油事件の問題等は、これはダイオキシンであるということが次第にわかってまいりました。最初はPCBによるものだということになっていたわけでございますが、PCDF、いわゆるダイオキシンの範疇に入るものだということがわかってまいりまして、この問題は厚生労働省の中で現在も取り扱っているわけでございますから、過去の問題でございましても、我々の健康に関することであれば、どの法律の中で取り扱っているかは私もそこまで明確に今わかりませんけれども、やはり取り組んでいかなければならない問題だというふうに思っている次第でございます。
阿部委員 何が大きく違ってくるかと申しますと、食品衛生法で取り扱われて、広い範囲で設けた食中毒という概念に立ちますと、即座にその製品ないしは何か原因物質の排除、禁止ということに向かうわけです。ところが、その認識がないと、原因がわかるまで、わかるまで、わかるまでと先延ばしされて、その間に被害が増大してまいります。
 私は、今回の改正にもしも大きな意味があるとすれば、迅速な対応ということをうたっておられて、それは、問題の原因がたとえ今後追求されるものであったとしても、何らかの危機的異常シグナルが起きた場合にすぐにそこで対処する、摂取を禁止する、このことをやはり確認するというか、そうした法体系にするという点が非常に大きいと思うのです。
 原因がわかるまでと先延ばされたのが実は水俣病であり、実はカネミ油症においても、三十何年たってやっと原因物質はこうだということがわかって、少しずつ解消されておりますけれども、やはり迅速な対応とは、敵が見えなくても、何かということは定かでなくても、とりあえず対処する、そこでとめる。そのために、あえて食中毒という言葉を使う。中毒であれば、即座に原因物質を除去しなきゃいけませんから、そういう認識に立つものと思いますが、坂口大臣にあっては、今回の改正点、先ほど都道府県の方にも緊急に対応を促すということでございましたが、今後について、そういう対応がなされるというふうに考えてよろしゅうございますか。
坂口国務大臣 それは、そのように理解をしていただいてよろしいと思います。
 水俣病のことにつきましては、後ろへ聞けばわかるのかもしれませんけれども、後ろには今聞くなという話でございますから、後で一度しっかりと聞いて、そして後でまた御報告を申し上げたいと思います。
阿部委員 この件につきましては、次回、金子哲夫の方も質疑いたしますので、大臣も勉強してくださいまして、でも、私が一点言いたいのは、本当に、ここで異変が生じたとあったら、とにかくとめていただきたい。その迅速さがないと、怪しいもの、あるいは犯人がわかるまでほっておいたら、汚染は果てしなく広がってしまうということが、この間の我が国の行政が学んだ何よりの負の財産と申しますか経験であったと思います。それが今回の食品衛生法の改正でも、予防原則を旨とするというところにつながってくると思うのです。国民の健康を守るために予防的視点に立ってという一文がございますから、坂口大臣が今回改正の中で一番お考えくださったのはその点ではないかというふうに思っております。
 では、次の話題に移らせていただきますが、いわゆるBSE問題です。
 我が国では、牛の発病は見ましたが、人についてはいまだ発病例は明らかではない。しかしながら、これで万全というわけでもなかろうかと思いますが、現在のところ、どのような人に対しての対策がとられておるか、これについてもお願い申し上げます。
高原政府参考人 BSEに罹患した牛から人に感染いたしましたいわゆる変異型クロイツフェルト・ヤコブ病症例でございますが、これは、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律に基づく四類感染症に指定いたしまして、診断した医師は七日以内に保健所に届け、またそれが都道府県に行く。それでまた、これは委員御指摘のとおり、日本でまだ発病していない病気でございますので、いろいろ診断の方に不確かな点というのが、これは悪い意味ではなくて、慎重を期す必要もあるわけでございますので、厚生労働科学研究事業のプリオン病及び遅発性ウイルス研究班による調査及びサーベイランス委員会による判定を行いまして、正確に把握するということにしております。
 診断につきましても、専門医のいない医療機関を受診した場合であっても正確な判断がなされるように、少なくとも各都道府県に一名の専門医をあらかじめ指定しておりまして、医療機関からの相談に応じることのできる体制を整備し、症例の確実な把握に努めておるところでございます。
阿部委員 今の高原局長の御答弁は、クロイツフェルト・ヤコブ病として発症してきたものの中から、人畜共通感染症のBSEからきたものと思われるものを出てきた患者さんの中から拾っていくという手法で、いわば後方視的といいますか、事が起きちゃってからそこから見つけていこうという手法にとどまっておりますし、現状においてはとどまらざるを得ない。なぜならば、人にこのBSEが感染していく機序といいますか、どうしてというのはまだ世界的にもよくわかっておらないわけです。
 ただし、今後、これは私の方からもお願いしたい件ですが、私自身が小児科医として非常に案じておりますのは、赤ちゃんのおしりから入れる座薬などに使われる基質の中にも牛脂が入っておりますし、予防接種のワクチンの中のゼラチンにも牛脂が関係したものがございまして、現在は禁止されているとしても、これはもう既にあったものはわからないという部分がございますので、アンテナを世界的に高くしまして、これはイギリスで発症していてもなおかつわかっていないわけですから、ゆめゆめ怠ることなく、本当に情報網をきっちりされて、前方視的な研究、要するに、データが出てきた場合に、発症する以前の段階でリスクのものを検索していくようなこともやっていただきたいと思います。極めて今後の問題になってくるように思います。
 そして、次の質問にまた移らせていただきますが、先ほど坂口大臣がカネミ油症のことをお話しくださいました。これはもう本当に大臣のおかげで、ダイオキシン類の汚染だとやっと認められたということになり、随分前進はしたわけですが、実は、鶏の飼料に与えられたダーク油の段階で鶏に異変が起きており、その段階でチェックが入っておれば人間には生じなかったと思うのです。
 BSEもそうですが、動物にサインが出て、それをどこかで適切にブロックすれば、人間には来ない。そうしたことから、今回、農水省と連動してという形にはなるんだと思いますが、これもまた大臣も御存じと思いますが、近年サルモネラの新種の感染症が多うございまして、これは卵とかの中から出てまいるものでございますが、一九九八年でしたでしょうか、百十数万羽以上輸入される鶏のひよこ、そこにおいてもこのサルモネラの菌の一種が発見されて、これは逆に、人間のサルモネラ中毒からひよこが禁止された。普通は、動物の方に異変が出て、人間の方にブロックがかかるのですが、このごろにあっては、人間の方に症状が出て、その原因がサルモネラとわかって輸入の鶏がチェックされる。こうなりますと、人体における感染症と、それから家畜ないしは食肉用の動物に関する感染症のところの情報の交換なり極めて密接なネットワークがないと、今後には対処し切れないと思います。
 特に、このサルモネラも、鶏の場合、家畜伝染病に指定されたのですけれども、何度も言いますが、人間がわかってから鶏が指定されたと、後手なわけですね。この辺を今後、後手にならないための何らかのこの改正の中での前向きなことがあったのかどうか、これは原局サイドでお願いいたします。
遠藤政府参考人 BSE検討会の報告でも触れられておりますように、農水省と厚労省との間のいわば縦割りの弊害というふうなことが言われておりまして、今回の法律改正の中に、例えば、と畜場法及び食鳥検査法におきまして、地方公共団体の責務として、家畜等の生産の実態や獣畜等の疾病の発生状況を踏まえた施策の実施に努めることを規定するとともに、生産段階における規制法であります家畜伝染病予防法に基づく疾病が屠畜検査等の対象疾病である旨を法律上明記し、地方公共団体の現場における畜産部局との連携を一層強化することとしております。
 さらに、国レベルにおきまして、畜産物の生産段階の規制との一層の連携を図る観点から、家畜伝染病予防法及び飼料安全法と同様に、厚生労働大臣と農林水産大臣との連携協力を規定することとしており、具体的な内容として、生産段階での疾病の発生状況や診断技術、生産技術の状況、検査の結果等についての緊密な情報交換、また共通する分野での研究協力等を考えているところでございまして、両省の間でしっかりと連携をとってまいりたいと考えております。
阿部委員 言葉で言えばそういう答弁なんだと思うのですが、何度も言いましたが、サルモネラ菌の場合は、人間が先に発症して、そしてたどっていくと輸入鶏の問題が出てくる。これが多剤耐性のサルモネラ菌なんですね。要するに、抗生物質が余り効かない。こうなってまいりますと、実は、家畜伝染病予防法、こっちばかりでしっかりやっていても、思わぬ落とし穴があって、人間の方から家畜もわかってくる。今回のSARSという、五島先生がさっき聞かれていましたが、その件も同じ広がりを持つかもしれませんので、今後、この委員会ができて、今後の業績がどうであるかにもかかわってまいると思いますから、実績でお示しいただけますように、また今後の質問の楽しみにとっておこうかと思います。
 引き続いて、同じように口から入る、しかし食べ物ではない、が、健康被害を及ぼすというものの中に、子供のおもちゃがございます。
 実はこれは、坂口大臣のお名前で去年の八月に改正がなされたのですけれども、食品衛生法の改正として、子供のおもちゃに使われている可塑剤、子供のおもちゃをやわらかくするためのフタル酸類も、子供がしがしがしがとかんでいるうちに、食べ物ではないけれども、体に入って害を起こすというので、実は去年の八月にフタル酸類の二品目について禁止を入れていただきまして、ことしの八月から実施されるわけです。
 今回の法改正の中で、さらに前向きに考えますと、今回の法改正の中の四条の二という中に、これは通常の食品に関してでございますが、危険性、人体に害を及ぼすおそれがあると確認されたものについて、審議会にかけてそれを中止していくという四条の二にさらに四項目が加わって、その意味では予防原則に少し近づいていっていると思うのですが、いわゆるおもちゃ類にもこの食品の四条の二の部分を準用していただきたいのです。そうすると、これからさまざまな危険が混入してくる場合もあり、今回の二つの可塑剤以外のものが使われた場合でも、危険性が予知、疑わしい場合は準用されて中止されていきますので、現在は適用されておらない四条の二をおもちゃ類についても適用していただきたい、子供は口に入れるのですから。
 この件について御答弁をお願いします。
坂口国務大臣 きょうは、それぞれ個性豊かな皆さん方からずっと質問を続けていただいておるものですから、頭の中が混乱してまいりまして、BSEやらサルモネラやらおもちゃやらということになって、頭がもう混乱してまいりまして、申しわけありません。
 それで、おもちゃの件につきましては、二種類の添加物を用いました塩化ビニール樹脂製のおもちゃにつきましては、御指摘いただきましたとおり、禁止をしたわけでございますが、これは既にもう昨年の八月に行っております。
 おもちゃにつきましては、このように法の第二十九条によって準用されます七条第一項の規定に基づいて、公衆衛生の見地から、必要な規格基準を設定することによりまして、健康被害が発生していなくても流通禁止の措置は可能でございまして、予防的観点に立って、その安全を十分に確保できるものというふうに考えております。
 御指摘の法第四条の二はいわゆる健康食品についての規定でありまして、健康食品は新しいものが次々と出てくるような状況にあるのに対しまして、おもちゃに使用される合成樹脂というのは化学産業の広範囲な用途の中で利用されるものでありますので、ここは若干区別をして考えております。
 しかし、おもちゃのことにつきましては、先ほど申しました法第七条第一項の規定に基づきまして、予防的観点に立って、安全性を十分に確保できる、こう考えております。
阿部委員 大臣も御指摘のように、既に食品衛生法の中でも幾つかの項目はおもちゃについても準用されておるのです。今大臣がおっしゃったように、四条の二は新開発食品の販売禁止というところで、安全性の確証がないものを含む食品を販売することができないという項目ですが、これをおもちゃに準用していただきたい理由は、先ほど申しました二種類の可塑剤は禁止されておりますが、そうすると違う可塑剤の方が使われてまいりまして、むしろこれらの安全性が確保されておらない物質であるということもございますので、それを逐一ポジティブリスト的にこれこれこれとやっていくのも、たんびの法改正になってまいりますし、準用項目を一つふやしていただくだけでありますから、きょうたくさんの質問をしましたので、混乱をさせまして恐縮ですが、また次回、ちょっと整理をしましてお尋ねをいたしますから、お考えをいただきまして、よろしくお願い申し上げます。
 時間の最後をいただきまして、この次、まだ食品衛生法の審議がございますので、それ以外のことで一つだけ、ちょっと私が最近気になっておりますことですので、これも大臣並びに関係の局にお願いいたしますが、いわゆる医師の名義貸し問題でございます。
 北海道の札幌医大、そして、一番百何十名の名義貸しが発覚したのは札幌医大なのですが、そのほかにも、北大、旭川大学、名義を貸している相手も、国立の療養所とかあるいは二百何十床という比較的大きな病院。そこに医者が働いておらぬのに名義を貸して、それなりの診療報酬を保険請求したりして、北海道の社会保険庁からも不正請求だというような指摘が起きておる。
 では、これは一番医療過疎、医者の少ない北海道だけの問題かというと、おっとどっこいでございまして、例えば弘前医大や群馬大学では、医者を派遣するかわりにリベートをもらう、ないしは医局の収入にしてしまう。それから、先回私がお尋ねいたしましたが、研修医をアルバイトとして派遣してもらわないと成り立たないような病院がある。
 それからもう一つ、今まで地域病院に派遣されていた医者を引き揚げている病院がもう二〇%くらいある。今度、臨床研修の指定に伴いまして、大学に医師を呼び戻さないと教育ができない。
 私は、臨床研修の義務化というのは極めて重要な、医療の根本改革になる前向きなことととらえておりますが、逆に、今指摘したような名義貸し、リベート取り、あるいは研修医のアルバイト等々、実態を見ておりますと、ここはやはり早急に、全体像について、派遣労働の問題にもかかわりますので、厚生労働省として実態調査をしていただきたい。
 名義貸しは、北海道については随分、三つの医大で明らかになりましたが、実は全国的に行われており、水面下の問題になっておると思うのです。これは、それがいいことか悪いことかという倫理の問題以上に、そういう形にしないと地域医療がやっていけない実態があるのかもしれないので、一体どのくらいそうした名義貸しが現実に行われているのか。あるいは、もう一つの方は、リベートを取って医局が人を送るということですが、これとて、逆に、医師がいないからそこをどうにかお願いしますというところで成り立つ。三点目のアルバイト医療に関しても、全く人手不足の問題を研修医が労働力として補うということになっております。
 当座、アルバイト診療の問題と医師の引き揚げの問題は、木村副大臣がもうおいでじゃないですが、副大臣の担当下に今調査はしておられますので、名義貸しの実態について、ぜひとも全国の実態を坂口大臣の御見識で実態調査していただきたいと思いますが、いかがでありましょうか。
坂口国務大臣 この名義貸しの問題は、大変残念な出来事でございますが、昔からなかったかといえば、それはあった話でございます。
 この実態を調査するのは、これは厚生労働省がするのか、あるいは文部科学省がするのか、ちょっとその辺のところは私も今わかりませんけれども、私の方でこれはやらなければならないことであれば、私の方で全国レベルで調査をしたいというふうに思っております。ましてや、今回、国立の病院が二人の人を対象にしていたということでございますから、国立病院としてそういうふうな例がほかにないかどうかというようなことも調べたいというふうに思っております。
 それで、いずれにいたしましても、これは毎年八千人ぐらいの医師が卒業しているわけですね。我々のときには三千人しかいなかったわけでありますから、八千人というのは大変な数だと思うんですが、その皆さんが毎年卒業して、それは一体どこへ行ってしまうんでしょうね。それだけ出てくればかなりあふれてくるような気がしますけれども、しかし、足りない。
 例えば、東北の皆さん、この前もお見えになりまして、東北あたりも全然足りないと言っておみえになる。そうしますと、その皆さんが一体どこにいるのかということにもなりますし、私はこれは、大学は文部科学省の問題ですから、文部科学省でやっていただかなきゃいけないというふうに思いますが、大学のいわゆる附属病院の姿勢にもよる、大学の姿勢にもよると私は思っております。
 大学というところは、教育と研究と診療と三つやっておりますが、もう一つ重要な問題は地域医療だと思う。だけれども、大学には、残念ながら、昔から地域医療という考え方というのは少なかったわけであります。非常に乏しいというふうに思います。
 ですから、せっかく派遣をいたしましても、その派遣をした先でその医師がなれましたころに、三カ月なり半年でなれると、すぐ大学が、研究のことを中心にして考えるものですから、その人を引き揚げてしまうというようなケースが間々ございまして、地域医療のひんしゅくを非常に買っていたというようなことがあります。だから、その辺のところを、やはり大学のあり方を考えていただかないと、私、この問題はなかなか解決のできない問題であるという気もいたします。
 いずれにいたしましても、我が省の中でやらなければならないことは着実にやりたいと思います。
阿部委員 名義を貸している方は大学でも、借りている方は四十六の実際の医療機関が借りておるわけで、大臣もおっしゃったように、厚生省と文部科学省とやはり双方で調査していただきたい。
 そして、それは懲罰のためだけではなくて、実際の診療機関がどのように人的なスタッフの中で行われておるかという実態調査と、それと一言申しますれば、やはり都市部に、各道府県の中でも都市に集中して、周辺が少なくなるという現象を生んでおりますので、それは次週に審議させていただきますことになる医療の体制の問題でもありますので、重ねて大臣にはよろしくお願い申し上げます。
 私の質問を終わらせていただきます。
中山委員長 次回は、来る二十三日水曜日に委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後四時七分散会


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