衆議院

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第12号 平成15年5月7日(水曜日)

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平成十五年五月七日(水曜日)
    午前九時二分開議
 出席委員
   委員長 中山 成彬君
   理事 熊代 昭彦君 理事 長勢 甚遠君
   理事 野田 聖子君 理事 宮腰 光寛君
   理事 鍵田 節哉君 理事 山井 和則君
   理事 福島  豊君 理事 武山百合子君
      岩倉 博文君    岡下 信子君
      佐藤  勉君    田村 憲久君
      竹下  亘君    棚橋 泰文君
      西川 京子君    原田 義昭君
      平井 卓也君    松島みどり君
      三ッ林隆志君    宮澤 洋一君
      森  英介君    谷津 義男君
      山本 幸三君    吉田 幸弘君
      吉野 正芳君    渡辺 具能君
      家西  悟君    石毛えい子君
      大石 正光君    大島  敦君
      大谷 信盛君    加藤 公一君
      五島 正規君    今野  東君
      城島 正光君    三井 辨雄君
      水島 広子君    江田 康幸君
      桝屋 敬悟君    佐藤 公治君
      小沢 和秋君    山口 富男君
      阿部 知子君    金子 哲夫君
      山谷えり子君    川田 悦子君
    …………………………………
   厚生労働大臣       坂口  力君
   文部科学副大臣      河村 建夫君
   文部科学副大臣      渡海紀三朗君
   厚生労働副大臣      鴨下 一郎君
   厚生労働副大臣      木村 義雄君
   厚生労働大臣政務官    渡辺 具能君
   厚生労働大臣政務官    森田 次夫君
   政府参考人
   (防衛庁防衛参事官)   松谷有希雄君
   政府参考人
   (文部科学省高等教育局長
   )            遠藤純一郎君
   政府参考人
   (文部科学省スポーツ・青
   少年局スポーツ・青少年総
   括官)          高杉 重夫君
   政府参考人
   (厚生労働省医政局長)  篠崎 英夫君
   政府参考人
   (厚生労働省健康局長)  高原 亮治君
   政府参考人
   (厚生労働省医薬局食品保
   健部長)         遠藤  明君
   政府参考人
   (厚生労働省職業安定局長
   )            戸苅 利和君
   政府参考人
   (厚生労働省保険局長)  真野  章君
   政府参考人
   (農林水産省大臣官房参事
   官)           岡島 敦子君
   厚生労働委員会専門員   宮武 太郎君
    ―――――――――――――
委員の異動
五月七日
 辞任         補欠選任
  奥谷  通君     原田 義昭君
  後藤田正純君     岩倉 博文君
  石毛えい子君     大谷 信盛君
  三井 辨雄君     今野  東君
同日
 辞任         補欠選任
  岩倉 博文君     後藤田正純君
  原田 義昭君     奥谷  通君
  大谷 信盛君     石毛えい子君
  今野  東君     三井 辨雄君
    ―――――――――――――
五月六日
 労働基準法の一部を改正する法律案(内閣提出第七七号)
同月七日
 社会保障の拡充、将来への安心と生活の安定に関する請願(小沢鋭仁君紹介)(第一八九五号)
 同(五島正規君紹介)(第一八九六号)
 同(馳浩君紹介)(第一八九七号)
 同(河村たかし君紹介)(第一九二一号)
 同(永井英慈君紹介)(第一九四四号)
 同(長妻昭君紹介)(第一九五三号)
 同(土肥隆一君紹介)(第一九九八号)
 同(海江田万里君紹介)(第二〇一一号)
 同(鍵田節哉君紹介)(第二〇一二号)
 同(井上喜一君紹介)(第二〇三二号)
 あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律第十九条の改正に関する請願(小沢鋭仁君紹介)(第一八九八号)
 同(高木義明君紹介)(第二〇二三号)
 同(井上喜一君紹介)(第二〇三三号)
 同(牧野聖修君紹介)(第二〇三四号)
 腎疾患総合対策の早期確立に関する請願(相沢英之君紹介)(第一八九九号)
 同(大畠章宏君紹介)(第一九〇〇号)
 同(五島正規君紹介)(第一九〇一号)
 同(森英介君紹介)(第一九二九号)
 同(筒井信隆君紹介)(第一九四六号)
 同(熊代昭彦君紹介)(第一九八〇号)
 同(仙谷由人君紹介)(第一九八一号)
 同(藤井裕久君紹介)(第一九八二号)
 同(水島広子君紹介)(第一九八三号)
 同(菅野哲雄君紹介)(第二〇二四号)
 障害者の介護・福祉制度の利用における親・家族負担の撤廃に関する請願(五島正規君紹介)(第一九〇二号)
 同(石毛えい子君紹介)(第一九三四号)
 同(川田悦子君紹介)(第一九三五号)
 同(家西悟君紹介)(第一九四八号)
 同(金子哲夫君紹介)(第一九五四号)
 同(城島正光君紹介)(第一九六三号)
 同(水島広子君紹介)(第一九八四号)
 同(鍵田節哉君紹介)(第二〇一三号)
 被用者保険の負担引き下げに関する請願(大森猛君紹介)(第一九一九号)
 同(佐々木憲昭君紹介)(第一九二〇号)
 保育・学童保育予算の大幅増額に関する請願(佐々木憲昭君紹介)(第一九二二号)
 パーキンソン病患者・家族の療養生活の質向上に関する請願(石毛えい子君紹介)(第一九二三号)
 同(不破哲三君紹介)(第一九二四号)
 同(石毛えい子君紹介)(第一九四五号)
 同(河野太郎君紹介)(第一九六二号)
 同(鹿野道彦君紹介)(第一九七八号)
 同(山花郁夫君紹介)(第一九七九号)
 同(塩川正十郎君紹介)(第一九九九号)
 労働法制の改悪反対に関する請願(石井郁子君紹介)(第一九二五号)
 同(志位和夫君紹介)(第一九二六号)
 同(不破哲三君紹介)(第一九二七号)
 同(吉井英勝君紹介)(第一九二八号)
 最低保障年金制度の創設等に関する請願(小沢和秋君紹介)(第一九三〇号)
 同(木島日出夫君紹介)(第一九三一号)
 同(穀田恵二君紹介)(第一九三二号)
 同(佐々木憲昭君紹介)(第一九三三号)
 健保三割負担など医療費負担増の見直しに関する請願(筒井信隆君紹介)(第一九四七号)
 健保本人三割負担を実施前に戻すなど社会保障制度の拡充に関する請願(金子哲夫君紹介)(第一九五二号)
 健康保険の医療費本人三割負担見直し等に関する請願(重野安正君紹介)(第一九七七号)
は本委員会に付託された。
四月二十四日
 腎疾患総合対策の早期確立に関する請願(第一六二五号)は「御法川英文君紹介」を「萩野浩基君紹介」に訂正された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 食品衛生法等の一部を改正する法律案(内閣提出第二八号)
 健康増進法の一部を改正する法律案(内閣提出第二九号)
 職業安定法及び労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第七八号)
 厚生労働関係の基本施策に関する件(医療問題)


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     ――――◇―――――
中山委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、食品衛生法等の一部を改正する法律案及び健康増進法の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。
 この際、お諮りいたします。
 両案審査のため、本日、政府参考人として厚生労働省医薬局食品保健部長遠藤明君及び農林水産省大臣官房参事官岡島敦子君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
中山委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
中山委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山井和則君。
山井委員 民主党の山井和則です。
 それでは、食品衛生法の改正法案について質問をさせていただきます。
 まず、今回最も重要なポイントというのは、いかに消費者の方々の声を食品衛生というものに反映させるかということでありまして、法律の目的として「国民の健康の保護」ということが入ったというのは非常に重要なことだと思います。
 先日の我が党の三井議員への答弁の中でも、現在、薬事・食品衛生審議会の食品衛生分科会では、正委員に二人入っているということが答弁でありました。その資料がこれなんですが、坂口大臣、木村副大臣、見ていただきたいと思います。このリストですね。ここで、消費者の代表というのが現在二人入っているわけですが、やはりこれをもっとふやすべきではないでしょうか。
 それと、坂口大臣、これを見ていただいて驚かれると思うんですが、正委員の中で、そもそも女性がこの消費者代表のたった二人なんですね。やはりこういう食品の衛生、食の安全ということに関して、正直言いまして、どちらかというと女性の方の方が関心が高いという現実があると思うんです。にもかかわらず、ずらずらっと男性が残っていて、消費者代表以外は女性がいない。やはりこれも、常識的に考えて、バランスを欠いているんではないかというふうに思うんですね。研究者やほかの関係者の中でも、もう少しやはり女性をふやすべきではないのかというふうなことを思います。
 その意味で、消費者代表が二人では少な過ぎる、もっとふやすべきではないかということと、これは、女性の方を半々ぐらいまでするとか、やはりそういうことがないと、消費者感覚に沿った分科会というものにならないんではないかと思うわけです。そのあたり、坂口大臣、非常に重要な点だと思うんです、消費者の声をいかに反映させるかという意味で。坂口大臣の御答弁をお願いいたします。
坂口国務大臣 確かに、今拝見しますと、男性が多いことだけは間違いがございません。
 ただ、この委員会、これは十三名ということになっておりまして、限られた人数でやっているものですから、その中に消費者の代表お二人にお入りいただいた。そのほかの部分、例えば毒性学でありますとか細菌学でありますとか薬学でありますとか、あるいはまた医学でありますとか、それぞれの専門分野の人たちに一人ずつずっと入っていただいているものですから、そういたしますと、消費者の皆さんお二人お入りいただくのがなかなか、とりかねてとった二つのポジションでございます。
 こういうことでございますので、御趣旨はわかりますけれども、お二人いただければ、消費者の代表としての御発言をいただけるのではないかというふうに今のところ思っております。
 ほかの皆さん、それぞれの専門分野の方なものですから、それぞれの専門の立場でのそれぞれの御発言をいただくということで構成をされております。この専門の皆さん方の中に女性の方がたくさんおみえになれば、もう少し女性の人数をふやすことができるんでしょうけれども、現在のところ、こういう陣容にならざるを得ないということでございます。
 しかし、すべての審議会だとか研究会だとかいうところに女性をふやしていかなきゃならないことだけはもうよくわかっておりますので、これからできる限りそうした専門家の中でも女性の皆さん方にお入りをいただけるように、これは気をつけていかなければならないというふうに思っている次第でございます。
山井委員 消費者の代表が二人ということなんですけれども、消費者の代表が入るだけではやはり不完全なわけで、もっともっと大きくなっていくことが必要なわけですので、今の女性をふやすということとともに、この二人を三人にふやしていく、そういう方向でぜひともこの食品衛生法の改正を機に御検討をいただきたいというふうに思います。
 次の質問に移らせていただきます。
 リスクコミュニケーションの一環として、施策の実施や実施状況の公表、意見交換会の開催や、規格基準の設定時にパブリックコメントなどの方法で意見を求めることは当然として、日常的に国民そして消費者の方々からの意見収集や、国民や消費者の方々からの質問に対する回答をする仕組みも必要と思われるわけです。そのことについて、我が党の石毛議員の質問に対して坂口大臣は、定期的に行うコミュニケーションの場をつくっていくということを言われておりますが、もうちょっと具体的に、随時、意見や質問を受け付ける窓口をきちんと設け、意見に対する対応の経過やQアンドAなどの状況も随時公開していくことが必要ではないかというふうに思います。
 このような定期的に行うコミュニケーションの場ということについてもうちょっと具体的に、坂口大臣、御答弁をいただければと思います。
坂口国務大臣 前回、石毛議員のときにお答え申し上げましたが、大体年八回程度、定期的な消費者との会談を持ちたいというふうに思っております。そのほかのときにも、これは随時、何か事情が発生いたしましたときにはまた会談をするということはあり得るわけでございますけれども、定期的に年八回やっておれば、大体その中で、少なくとも二カ月に一遍以上回ってくるわけでございますから、そこでお話をいただくので、平素存在します問題はお話し合いをいただける。緊急の問題につきましては、別途またそういうようなときには考えていきたいというふうに思っております。
 そうした会談はできる限りオープンにこれはやっていきたいというふうに思っておりますから、そうした会談の内容というものは即刻マスコミにも報道されるでございましょうし、そういうふうな雰囲気の中でやっていきたいというふうに思っている次第でございます。
 その中で出ました問題、お話を聞くだけでは何にもなりませんので、そこで傾聴に値すべき御意見がございましたら、それに対してどうしていくかという対策を立てていかなければならないというふうに思っております。傾聴に値するお話ございましたときには、できるだけ早くそれを実現するように努力をしたいと思っているところでございます。
山井委員 ぜひとも、こういうリスクコミュニケーションの一環としての情報公開ということをしっかりとお願いしたいと思います。
 ほかにも質問はいろいろあるんですが、ちょっと順番を変えまして、時間も限りがありますので、木村副大臣にお伺いしたいと思います。
 今回の審議の中で、数名の議員が、やはり食品衛生を監視する人員をふやすということを要望しているわけであります。国の検疫所の人員、また都道府県の人員ということですが、今までは非常に、国に関しても、十五名ですか、今年度ふやしてきているというような答弁があるんですが、今後きっちりさらにそれをふやしていく。やはり輸入食品もどんどんこれから急増しているわけですし、また、都道府県でやることに関しても、国が調整あるいは一括してやれば効率的にできる部分もあるかと思うんですが、そういうふうな、これは来年度予算にも絡んでくることなんですが、人員をどのようにふやしていくのか。まず、きっちりとその予算的な裏づけもつくっていってほしいと思いますが、そのあたりについて、安全監視のための人員配置についてお願いしたいと思います。
木村副大臣 山井先生の御質問でございますけれども、国の食品衛生監視員につきましては、平成十五年度におきまして、輸入食品の監視体制の強化のために検疫所において二百八十三名、それから、HACCP承認施設の監視等のために地方厚生局におきまして二十九名が配置されているところでございます。
 また、全国の都道府県等におきましては、平成十三年度におきまして、保健所を中心として七千四百人の食品衛生監視員が配置されておるわけでございまして、うち約三千三百人が、日常的に食品衛生法に基づく監視や指導の業務に当たっているところでございます。
 今回の食品衛生法の改正案におきまして、国の示す指針に基づきまして、国及び都道府県等が食品衛生監視指導計画を策定し、重点的かつ効率的に監視指導を実施する仕組みとすることとしておりまして、指針や計画の策定を通じまして、国及び都道府県等における必要な監視体制を確保してまいりたいと考えているところでございます。
 食品衛生監視員は食の安全確保のため第一線で尽力をしておりまして、今後とも、国民の健康の保護を図る観点から、国及び都道府県等におきまして、食品の監視体制の一層の充実強化に努めてまいりたい、このようなつもりでございます。
山井委員 これはやはり、きめ細かいこういう監視のためには人手がどうしても必要ですので、ぜひともこの増員をまた来年度よろしくお願いしたいと思います。
 それでは、少し変わるんですが、ペットボトルのお茶の表示についてお伺いしたいと思います。
 非常に具体的な話なんですが、最近、ペットボトルのお茶というのは非常に広く飲まれております。それで、実は、このお茶というものに関しては、原産地表示というものが最近議論をされております。にもかかわらず、ペットボトルに関しては原産国すら表示されていない。いろいろ聞いてみると、日本産だけではないんじゃないか、中国のお茶も多いんじゃないかとか、ベトナムのお茶も多いのではないかというようなことをうわさでは聞いておりますが、もちろんだれも、表示されていないから、原産地以前に原産国すらわかっていないわけであります。やはり食の安全という立場からも、一般のお茶が原産地表示まで非常に厳しくやっているわけですから、せめて原産国表示ぐらいペットボトルのお茶にもすべきではないかというふうに思います。
 このことについては、担当が農林水産省だということなので来ていただいておりますが、そのことについて、ペットボトルのお茶の原産国表示、やはり義務づけるべきではないかということについて御答弁をお願いいたします。
岡島政府参考人 ただいまお尋ねのペットボトルの原産国表示につきましては、ペットボトルは、お茶の葉は国産かあるいは輸入かはちょっとわかりませんけれども、国内で加工しましてペットボトルに詰めておりますので、加工地は日本ということになりますので、特段、原産国表示というのは必要なくなります。
 また、ペットボトルのお茶の葉の表示につきましては、原料原産地表示の問題になるかと思います。原料原産地表示につきましては、これまで個別品目ごとに検討を進めてきておりまして、これまで農産物漬物など八品目につきまして表示を義務づけているところでございます。
 ただ、どういったものについて原料原産地表示をするかということにつきまして、ちょっとわかりにくいという御指摘もございますので、現在、農林水産省と厚生労働省の関係審議会の共同会議であります食品の表示に関する共同会議の場におきまして、どのようなものにつきまして原料原産地表示をするべきかという品目の選定ルールなどにつきまして御検討いただいているところでございます。
 私ども、消費者にわかりやすい、商品選択に資するわかりやすい表示を進めるということで表示を進めていきたいと思っておりますので、この表示の共同会議の検討なども踏まえまして対応していきたいと考えているところでございます。
山井委員 ちょっともう一度お聞きしたいんです。
 まさにそのわかりやすい商品表示ということなんですけれども、日本で加工されたからもう原産国の表示は要らないんだというのは、やはりちょっと、今の食品衛生とか表示を明確にしていくという、消費者の選択ということからすると納得がいかないんですけれども、いかがでしょうか。
岡島政府参考人 これは、先生の御指摘、どういうものかというか、原料がどこで生産されたのかということも含めて消費者の方が知りたいという御要望があることは承知しておりますので、そういうことにつきまして、原料のお茶の葉がどこでつくられたものかということを表示する必要があるかどうかということも含めて、表示の共同会議の場で検討していただいているところでございます。
山井委員 ほか、食品添加物の質問とか残っているんですが、もう時間が来ましたので、これで終わらせていただきます。ありがとうございました。
中山委員長 次に、武山百合子君。
武山委員 自由党の武山百合子です。
 きょう最後の質疑に入りますけれども、厚生労働委員会の食品衛生法、健康増進法ということですけれども、今までずっと議論してまいりましたけれども、まず、今まで議論した中で欠けている部分が大変たくさんありまして、その欠けている部分、議論されてこなかった部分について、私は、きょう総括という意味で御質問したいと思います。
 まず、表示の義務ですね。これは、今いわゆる食べ物のアレルギーを持つ子供の数が非常に多く、アレルギー表示というのがすべての食品に義務づけられたということですけれども、これは義務づけられた意義というのは大変大きいと思うんですね。ところが、必ずしもすべてが科学的に検証されているとは言えていないわけですね、数が膨大なものですから。
 それで、たまたま二月初め、イオンの自社ブランドの商品の中に卵白が検出されたというこれは事件になっておりましたけれども、これは、委託契約していたプリマハムがイオンに出した、卵白使用ということを記載しなかったということなんですね。
 いわゆる物質名、これは、アレルギーの表示ということで、この中に物質の名前は表示されているわけですけれども、いわゆる含有量というんですか、卵白の量がどのくらいこの中で使用されているかという、すなわち、どのくらいこの中で量が使われているかといういわゆる含有量というのは表示されていないわけですね。物質の名前は、こういう物質が入っていますよと表示はされておりますけれども、その一つの物質の量がどれだけ使われているかというのは、細かい質問ですけれども、表示されていない。
 ということで、いわゆるアレルギーの問題は非常に繊細な、本当に少量でもアレルギー体質の人はそれなりに出てくるわけですよね。ですから、こういう問題もあるわけで、いわゆる摂取可能な食品でも、これは大丈夫だという食品でも、言ってみれば生まれてすぐからアレルギー体質というのは出てくるわけですから、不安になって食べられないという例もあるわけですね。
 ですから、運用面で今までいろいろと議論はされてきましたけれども、もっと国民の立場に立って、いわゆる物質名は表示されていますけれども、この中の量がどのくらい入っているのか。特に卵白なんというのは、非常にアレルギーの体質を多く生んでいるわけですね。ですから、こういう問題をやはりもっと国民の立場に立って、含有量も表示された方がいいのではないかと思いますけれども、これはどのように解釈しておりますでしょうか。
 物質の名前は出ているんですね。でも、どのくらい入っているかという量は入っていないんですよね。ですから、この点はアレルギー表示ということで義務づけられたすなわち効果というのは大きいと思うんですね。ところが、今度は中身の細かい部分で、どのくらいの量が入っているかという、そこの問題なんですね。ですから、物質名は表示されたけれども、量がどのくらい入っているか、この問題をやはり一つ指摘しておきたいと思います。
坂口国務大臣 アレルギーの問題は、最近特に指摘されるようになってまいりました。学校給食等におきましても、これまではそんなに食べるものにアレルギーのお子さんというのはなかったわけでございますが、最近非常にふえてきているわけでございます。
 食物アレルギーにつきましては、特に重篤な症状を引き起こすこともありますことから、平成十三年の四月からでございますが、卵、牛乳、小麦、そば、落花生、この五品目を含みます食品はその旨の表示を義務づけることとし、また大豆ですとかエビなどのその他十九品目につきましては、これらに準ずるものとして表示を奨励している、こういうことでございます。
 アレルギーを起こすお子さん、お子さんだけではなくてこれは大人もそうでございますが、アレルギーを起こしますときには、全くの微量でありましてもそれは起こしますので、含まれているということがあれば、それはお上がりをいただかないようにしなければいけないわけでございまして、いろいろの意味で量というものも大事ではございますけれども、アレルギーということを考えますと、表示をするということがまず大事ではないかというふうに思っております。
 どの食品であれ、その食品が使います素材、そうした素材につきましてもこれが入っているかどうかということをやはりちゃんと書かないと、製品をつくりますときには使っていないんですけれども、そのときに使います素材の中に入っているということもあるわけでございますので、そうしたことも十分加味していただいて、まず表示をしていただくということに重点を置いているというのが現状でございます。
 しかし、今後、御指摘のように、それがどれだけ入っているかということもやはり明示した方がいいということになってくるのかもしれません。これから検討したいというふうに思いますが、現在のところは、入っているということを漏れなく表示するということがまず大事というふうに思っている次第でございます。
武山委員 漏れなく表示をするということ、大変一歩前進だと思うんですけれども、それから同時に、今私が指摘しましたように、いわゆる摂取可能な食品でも不安になって食べられないという例もありますので、国はやはり同時並行でそういうこともぜひ考えて行動できるわけですから、一つのことだけではなく二つ同時にもできるわけですから、それはもっと運用を政府が国民の立場に立ってやっていただきたいと思います。これは一つ指摘しておきたいと思います。
 それから、いろいろ議論されてまいりましたけれども、リスク管理と予防原則ということで、この予防原則の適用に関するガイドライン、これは日本では予防原則の適用というガイドラインはまだ作成されていないんですよね。ですから、この食品衛生の予防原則の適用に関するガイドラインというものを将来やはり本当に、将来といいましても何年も先もじゃなくて、早急にこのガイドラインは作成すべきじゃないかと思いますけれども、いかがでしょうか。
坂口国務大臣 その点も御指摘のとおりだというふうに思っております。
 ただ、何をもって予防原則とするかということもなかなか難しい問題でございまして、よく検討をさせていただかなければいけないというふうに思っております。これがあれば確実に何かが起こるという問題、これは当然でございますけれども、それ以外のものでも可能性のあるものもあるわけでございますから、予防原則というものをしっかりと踏まえてやっていきたいというふうに思います。
 それから、予防原則という言葉がいいのかどうかということにつきましても現在検討をしてもらっておりまして、必要性のあるものをどうするかという名前の方がいいのかもしれませんし、もう少し国民の皆さん方から見ていただいてわかりやすい言葉で表現することができればといったようなことも考えているところでございます。
武山委員 ぜひ早急に、議論ばかりするのは日本の国はお得意で大好きなものですから、ただそれだけでやめてしまっては何もならないわけで、今最もやらなければいけないのは、早急に答えを出して、答えというのはもう十分いっぱい出ているんですよね。あとは選択と集中だと思うんですよね。それをどうやるかというだけのことであって、やはり議論すればいいというだけではだめだと思いますので、今大臣がおっしゃいましたように、予防原則という言葉がいいのかどうかもぜひ議論していただいて、日本語のすばらしいみずみずしいわかりやすい、本当に長ったらしくて何を言っているのかわからないというのが法律の名前なものですから、ぜひそこをわかりやすいみずみずしい後世にも残るような言葉をぜひ選んでいただいて、きちっとしたガイドラインを早急に示していただきたいと思います。食品衛生ということで命にかかわることなものですから、ぜひここは早急にやっていただきたいと思います。
 それから、健康増進法について少し聞きたいと思います。
 この健康増進法の特定保健用食品ということなんですけれども、これは許可制で、いわゆる認可を受けてこの食品を売るわけですけれども、これは一回許可を得たらずうっと売れるんでしょうか。それとも、見直しが何年後という、再申請し直すんでしょうか。
 やはりこれだけ、特定保健用食品承認品目一覧を見ますと、本当にすごい数が認可されておるんですね。それで、これを見ていますと、新しいニュービジネスとして参入している企業というのはどのくらいあるのかなと見ますと、ほとんどないんですね。ほとんど大手が占めている。インスタントラーメンからあらゆるところまで、いわゆる健康補給食品といいますか特定保健用食品といいますか、こういう一覧表が、物すごい数の膨大な企業が認可を受けておるわけですけれども、この認可というのは、一度受けたらずうっと物が売れるというふうに解釈してよろしいんでしょうか。
坂口国務大臣 もう少し調べてから御答弁を本当は申し上げなきゃなりませんが、一遍受けたらいいことになっているようでございます。
 特定健康用食品の許可品目数というのは大変、もう年々歳々ぐっとふえてきておりまして、大変な数に上っております。一遍認可をすればそれでいいことになっておりますが、しかし、これだけたくさんになってきて、そうしてそれが中間で変えられることなくそのままずっとつくられているのかどうかというようなことについては、将来は少し、抜き打ち的にちょっとチェックをすることをやらないといけないのかなというふうに思いますが、現在のところはそういう体制にございません。
 しかし、今までに比べましてかなりたくさん、特にこの数年間、大変な勢いでふえてきていることは事実でございます。
武山委員 そこを、今大臣もお話しされましたように、これでいいのかなという部分を国民は抱いておるわけですよね。それで、認可を受けたらずっとつくれるというふうに、今までの日本の社会の経済構造の部分ですよね、そこの部分は。特に、健康増進、食品衛生にかかわるわけですから、これはやはり期間を区切って再申請し直すとか、あるいはその後の問題ですね。何か問題を起こした後に、入り口はある程度緩和しても事後のチェックが厳しい、そういう部分で、どちらかに軸足をきちっと置いて点検し直すというのは大事なことだと思うんですね、すべて口に入るわけですから。
 カップラーメンから何から何まで、ここに全部一覧表に出ておりまして、これを見ましたら大変莫大な量なわけですね。あくまでもずっとそのまま製造を続けるということは、今大臣もお話ししたように、中身が時代とともに変わっていくはずなんですよね。ですから、その辺も考慮に入れて見直しをするということが非常に大事だと思います。
 これは、見直し期間というのは出ておるんでしょうか。
木村副大臣 期間は別段定めがなくて、違反があったときには取り消すということになっているようでございます。
武山委員 そうしますと、前の議論に戻るわけですけれども、ずっとそのまま、一度認可を受けたらずっとつくり続けるということになると思うんですよね。ですから、そこが今までの日本の法律のつくり方であって、やはり見直しをしていくということが食品の衛生上、それから健康増進法、非常に大事だと思うんですよね。それが今までの法律のつくり方と変わらないと思うんですよね。
 ですから、これは、見直し条項というのは、やはり申請をし直すとか中身の成分をもう一度届け出制にするとか何かしないと、これでいいのかなと思うのは、だれもが思うと思うんですよね。ですから、その点についてもう一度答弁をしていただいて、終わりにしたいと思います。
坂口国務大臣 中身を変えますときには、これは届け出をしてもらうことになっているというふうに思いますが、届け出をせずに変えられていることがあるとぐあいが悪いわけでありまして、しかも、そのことによって健康を害するようなことが起こるということになれば大変でございますから、そうしたことがないようにまず指導を徹底するということが大事。
 そして、先ほどからお話が出ておりますように、そうはいいますものの、一度届けていただいて、変更がない限りそのままずっとなっているということでありますと、時にはやはりチェック期間をつくって働かすということも大事だというふうに思っておりますから、そうしたことも検討したいと思います。
武山委員 終わります。
中山委員長 次に、小沢和秋君。
小沢(和)委員 これまで私は、輸入食品の検査機関を今回の法改正で登録制にし、民間の検査機関にもこの検査に参入する道を開くことは、検査の信頼性を落とす危険があると繰り返して指摘をしてまいりました。ところが、その後、公益法人に限って指定している今の仕組みでも安心できないことを示す事件が実際に起こっていることがわかりました。
 それは、社団法人日本油料検定協会綜合分析センターがサイクラミン酸を検出せずと報告したため輸入を認められた中国産「しょうゆ味すいかの種」をたまたま東京都立衛生研究所が収去して分析したところ、サイクラミン酸を一キログラム当たり二・一グラムも検出したため、本年二月に回収を命じられたという事件であります。
 まず、この事件にどう対応したか、今後処分も含めて再発をどう防止するか、お尋ねをします。
遠藤(明)政府参考人 本年二月、東京都の国内流通品の検査において、中国産「しょうゆ味すいかの種」から違法添加物のサイクラミン酸が検出をされました。
 当該品につきましては、輸入者が食品衛生法に基づく指定検査機関である社団法人日本油料検定協会に委託して実施した検査結果では、サイクラミン酸不検出であり、同協会が適正に検査を行っていなかった疑いが持たれたことから、各検疫所に対し、同協会が発行したすべての検査成績書の受け入れを中止するよう指示するとともに、同協会に対し、食品衛生法に係る検査を中止するよう指示をいたしました。
 また、同協会の二カ所の検査施設に立入検査を実施いたしましたが、サイクラミン酸検査につきまして、昨年十一月以降、公定法による検査ではなく、評価が不十分な独自法で検査を実施していたこと、他の検査項目についても一部適正な検査が行われていない事例があったことなどの問題点が明らかになりました。
 これを受けまして、三月十七日付で同協会に対し、現在実施している検査法については原則として公定法により実施し、変更する際には事前に十分な評価を行うこと、内部チェック体制を見直すこと、改善されるまでの間は食品衛生法に基づく検査の受託を見合わせることなどを内容とした、食品衛生法に基づく指定基準への適合措置命令を行ったところでございます。
 これに対し、同協会より四月二十八日付で改善計画書が提出をされ、厚生労働省としては、今後、改善報告書が提出された段階で調査を行い、基準への適合状況を確認し、検査受託の再開の可否を判断することとしております。
 なお、同協会では、昨年十一月よりサイクラミン酸の検査を行っておりますけれども、そのすべての検査結果の確認のため、横浜及び神戸検疫所輸入食品・検疫検査センターで再検査を実施し、そのほかの違反品はなかったことを確認したところでございます。
小沢(和)委員 指定検査機関に輸入食品の検査を依頼するのは問題があるというケースであります。現に、今回の中国産種実加工品は、輸入の届け出があるたびに全部自主検査をさせるようにしていたものであります。そういう重大な検査対象なのに、同協会の綜合分析センターが検査方法を一部簡略化したために、サイクラミン酸の検出ができなかったわけであります。
 簡略化したというのは、はっきり言えば手抜きをしたということではないのでしょうか。その背景には、処理能力を超えた検査の受託があったとも聞いております。その結果、また輸入食品の安全性に対する信頼を傷つける事件を引き起こしたのだから、責任重大であります。
 この後始末のために、国は改めてその時期に同センターが行った検査六百七十件の再検査を行い、うち三件でサイクラミン酸を検出したと聞いております。公益法人でも仕事を引き受け過ぎてこういう検査の手抜きを行い、事故を起こしたとすれば、まして、営利企業である検査会社がもうけのためもっと無理をするということは十分にあり得るのではないでしょうか。大臣は、こういう事故が現実に起こっていても、民間の検査会社に委託先を広げることに何の不安もないとお考えでしょうか。
坂口国務大臣 社団法人でもこういうことが起こった、大変残念なことだというふうに思っておりますし、やはり検査というものの重要性というものをよく認識してもらわなければならないというふうに思っております。
 これは、健康にかかわること、人命にかかわることでございますから、しっかりと検査をやっていただかなきゃならないわけでございますが、民間になったら民間の方がそれはずさんかといえば、決してそんなことはないというふうに私は思っております。検査というものの重要性、やはりこれが、人命にかかわる重大な社会的責任を負った仕事を自分たちがするのだということを念頭に置いておやりいただくということであれば、民間であれ公益法人であれ社団法人であれ、私は、ちゃんと仕事はしていただくものだというふうに思っております。
 ただ、この問題も先ほどの問題と同じでございまして、時にはダブルチェックをするといったようなことがやはり必要ではないかと思います。医療関係者の中におきましても、検査をあちこちにお出しになっているところがございますが、そういう医療機関におきましても、時には二カ所に同じ検体を出して、そして間違いがないかどうかのチェックをしておみえになります。そうしたことがやはり大事なことでありまして、ふだん見ている症状と検査との違いがある、何となく違うんではないかというふうに思われたときには、特にそうしたことをおやりになっているように思います。
 国の方といたしましても、そういう検査をどの機関であれお願いしているわけでございますが、しかし、お願いをしつつも、検査方法等で違いが出てくるというふうなことになるといけませんから、時にそうしたダブルチェックもして、そうして誤りがないようにしていくということが大事ではないかというふうに思っている次第でございます。
小沢(和)委員 私が特に言いたかったのは、民間の検査会社ということになればどうしても、営利のために少しでも受託件数をふやそうということで、検査そのものに無理をするというような問題が新たに起こってくるのではないかということであります。その点、今後ぜひお考えいただきたい。
 次の質問に移りますが、多くの消費者は、少しでも安全な食品を求め、その選択に役立つ情報として食品に記載されている表示内容を重視しております。ところが、その信頼を決定的に裏切ったのが、輸入牛肉を国産と偽った偽装表示事件などであります。表示までうそだったら消費者は何を信頼して食品を選択したらよいのか。今回の改正で、このような偽装表示に対して、罰金額の大幅引き上げだけでなく、懲役刑の最高を六カ月から二年に引き上げたことは当然だと思います。
 この機会に、表示について三点お尋ねをいたしたい。
 第一に、今は品質保証期限や賞味期限しか書いてありませんが、製造年月日の表示を復活させるべきではないか。このことは消費者の強い声になっており、私も何回か直接聞いたことがありますが、どうお考えか。
 第二に、輸入食品については、現地での出荷日を表示させるべきではないか。アメリカのように輸出する側から見ると、出荷してから船で一カ月もかけて日本に送り、それから店頭に並べると、出荷日などを表示すること自体が売れ行きに響くと考えるかもしれませんが、日本の消費者にしてみれば、出荷してから大分たっている、栄養価が落ちているのではないかなどと判断する重要な情報にもなるわけであります。アメリカに気兼ねせずに、日本の消費者の立場で出荷日の表示を決断すべきだと思いますが、いかがでしょうか。
 第三に、遺伝子組み換え食品の表示についてであります。この関係で一番の問題は、大豆油やしょうゆ、コーン油など、食品中に組み換え遺伝子やそれがつくるたんぱく質が残らないものは表示義務が外されていることであります。そのために、米国産の大豆やトウモロコシの九割が表示義務を免れております。これについても、消費者にしてみれば、たとえその食品の中に組み換え遺伝子やたんぱく質が残っていなくても、原材料がそれであったということはきちんと表示してほしいというのが要求ではないでしょうか。この機会にそういう表示に改める考えはないか。
 以上、三点をお尋ねします。
木村副大臣 まず、食品の表示の件でございますが、食品の日付表示につきましては、昨年八月の食品の表示制度に関する懇談会の中間取りまとめにおきまして、製造年月日について、現行制度のもとでも任意で表示することは可能である旨の指摘があったわけでございます。
 また一方で、平成七年に製造年月日にかわるものといたしまして期限表示が導入された経緯等を十分踏まえ、製造年月日表示については慎重であるべきとの意見もあったわけでございます。また輸入食品につきましても、製造年月日または輸入年月日の表示を義務づけていたものを、同様の理由で、平成七年から期限表示に変更したところでございます。
 このように、製造年月日を義務づけることにつきましては慎重な意見が多いと認識しているところでございますけれども、これらの点を含めまして、食品表示のあり方につきましては、今後とも、農林水産省と連携を行っている食品表示に関する共同会議におきまして、有識者や消費者の意見を踏まえつつ幅広く検討してまいりたい、このように思っているところでございます。
 それから、遺伝子組み換え食品の件でございますが、御指摘のとおり、大豆油やしょうゆ等のように、製造、加工の過程で組み換えDNA及びたんぱく質が除去、分解され、これらを検知できない遺伝子組み換え食品を原材料とした加工食品につきましては、原料段階で遺伝子組み換え農産物を使用しているか否か技術的な検証が困難であるために、義務表示の対象としていないところでございます。
 遺伝子組み換え食品の義務表示対象品目につきましては、遺伝子検出技術の向上、国際的議論の推移等をこれから見るとともに、関係者の意見を聞きつつ、適宜見直しを行うこととしているところでございます。
小沢(和)委員 最後に、消費者代表の食品関係各種審議機関への参加についてお尋ねをします。
 今回の法改正では、国などが基準を設定する場合、監視指導指針等を定めようとする場合、食品衛生に関する施策の実施状況を公表した場合などには、広く国民または住民の意見を求めることを規定しております。私はこのことを大いに評価いたします。
 しかし、食品安全基本法の論議の中では、今回新たに創設される食品安全委員会への消費者代表の参加について、政府は、専門家で構成した方がよいとの理由で、否定的な態度に終始いたしました。私は、食品衛生関係の審議機関への消費者代表参加についても同じ姿勢であってはならないと考えます。
 先ほどの同僚議員への答弁で大臣は、今後、消費者代表をふやしていく、専門分野を代表する委員にも積極的に女性を登用していくとの考え方を示されたと理解いたしましたが、それに間違いありませんか。
坂口国務大臣 先ほど、十三名の中で二名の消費者にお入りいただいたわけでございます。足らないではないかという御指摘もございますけれども、二名にふえたということは格段の進歩だというふうに理解をしているわけでございまして、大変な進歩だというふうに思っておりますから、十分にそのお二人の方に御意見をまず言っていただく。全体の人数をどれだけでもふやしていけばいいというのですと、もっとそれはふやせるわけでございますが、一応十三名という全体の枠が決まっているわけでございますので、各分野の専門家もお入りをいただくということが大事でございますので、お二人でまずはスタートをさせていただきたいというふうに思っております。
 女性の問題につきましては、今後また委員の入れかえ等が行われますときに、女性で専門家もたくさんおみえでございましょうから、そうした皆さん方にもお入りをいただくように努力したいと思う次第でございます。
小沢(和)委員 終わります。
中山委員長 次に、金子哲夫君。
金子(哲)委員 社会民主党・市民連合の金子です。
 食品衛生法と食中毒の関係について少しお伺いをしたいと思います。
 食品衛生法が適用される場合の原因についてですけれども、例えば病因物質、細菌とかウイルスとかの問題と、そしてその原因になっている食品とが想定されるわけですけれども、食品衛生法が適用される場合の原因とは一体何を基本的には考えておられるか、ちょっとお伺いしたいと思います。
遠藤(明)政府参考人 食中毒の原因ということでございますけれども、今先生おっしゃいました病因物質そのものもございますし、またそれを運んだ食品というものも、両方あるものと思います。
金子(哲)委員 基本的に、食品衛生法を適用する場合の原因としてはどちらが重点的なんですか。
遠藤(明)政府参考人 食品そのものが変質をして食中毒の原因となったというふうなことになれば食品ということになりますし、食品の中に何か原因物質がまじって、それが食中毒を起こすということになればその原因物質ということになると思います。
金子(哲)委員 ここの問題をしつこくやるわけじゃないですけれども、基本的には、この食品衛生法というのは、食品という言葉がついているように、食品に起因するということが、食品を摂取するということが基本的な考え方なんでしょう。その結果としては病因物質というものを特定していかなきゃいけないですけれども、最初に初動としては原因食品があるということが前提じゃないですか。
遠藤(明)政府参考人 失礼をいたしました。
 食品衛生法は、そもそも、飲食に起因する衛生上の危害の発生を防止するため必要な規制措置を講ずるということで制定をされているものでございまして、人が健康被害を受け、その原因が食品であるということが客観的に認められる場合には、食品衛生法で扱っていくということになります。
金子(哲)委員 つまりは原因食品ということでいいわけですね。
 そうしますと、次にお伺いしたいんですけれども、食品衛生法の第四条二号が適用される場合、つまりは販売などの禁止がされる場合ですね、こういうときには、今食品が原因だということになっておりますけれども、その病因物質まで特定をしなければその四条二号というのは適用できないんですか。そこはどうですか。
遠藤(明)政府参考人 四条二号でございますけれども、「有毒な、若しくは有害な物質が含まれ、若しくは附着し、又はこれらの疑いがあるもの。」の販売等を禁止しているという規定でございまして、この場合には、病因物質が全く特定できない段階ではこの規定を適用することは困難であると思います。
 しかしながら、疫学的調査あるいは食品の試験分析などの科学的調査によりまして、健康被害の原因が相当程度の蓋然性で特定の食品に含まれる病因物質であるということが推定される段階においては、病因物質が完全に特定をできていなくても、四条二号が適用されることはあり得るものと考えております。
金子(哲)委員 つまりは、今答弁にあったように、病因物質が特定できなくても、その食品によってそういう中毒事件等が発生をしたということであれば、四条二号は適用されるということですね。
遠藤(明)政府参考人 いろいろな条件があろうかと思いますけれども、相当程度の蓋然性で病因物質が推定をできるという段階であれば適用できるということでございます。
金子(哲)委員 病因物質が推定できなかったらとめないんですか。明らかにその食品を食べてそういう症状が発生しているということが明らかになっているのに、病因の物質が何か、ある程度蓋然性がはっきりしなきゃとめないということだったら、蔓延していくんじゃないですか。
遠藤(明)政府参考人 まず、食中毒またはその疑いがあるという場合には、保健所を中心に原因究明のための調査をするということ、それから、危害拡大防止のために必要な場合には、原因と疑われる食品の販売、使用等の禁停止などの行政指導を行ってきているところでございます。
金子(哲)委員 次にもう一つお伺いしたいんですけれども、食品衛生法上の第四条二号が適用される場合には、原因食品というのは、その原因になった食品というのはすべてが汚染されていなければならないということ、そういう確証が必要とされているでしょうか。その点、お伺いしたいと思います。
遠藤(明)政府参考人 すべてがどうかということでございますけれども、現在の食品衛生法第四条二号におきましては、有毒または有害な物質が含まれ、付着しているもの、またはその疑いがあるものというふうなことで範囲が広がっておりまして、その観点からは、必ずしもすべてで確認をされなくても適用できる場合がございます。
金子(哲)委員 今お読みになったところの「疑いがある」というところは、改正でそれが挿入されたと思いますけれども、しかし、一九五五年の森永砒素ミルク事件のときには、岡山県は、砒素ということが特定できない時点でも、森永ミルクが危険だということで販売停止の指令を出して回収を図ったわけですよね。つまり、この措置をとったとき、岡山県は、病因物質が砒素だとわかっていたわけではないんだけれども、原因食品がわかっていたために、これ以上放置すれば死者とか被害者が広がるということで、原因食品が全部汚染されているかどうか確証はとれていないけれども、これを停止したわけですね。
 ということは、これはもう以前から、食品衛生法上はそういう考え方に基づいてそういう措置がとられたと考えていますが、それでいいですか。
遠藤(明)政府参考人 先ほど四条二号の適用についてお問い合わせがございましたので、四条二号についての考え方を申し上げましたけれども、一般に食中毒が起こりましたときの対応といたしましては、先生今御指摘のように、疑わしい段階で対応をとっていくということでございます。
金子(哲)委員 それじゃ、ちょっとお伺いしたいんですけれども、水俣病は、これは食中毒事件と考えていいですか。大臣にちょっと。
坂口国務大臣 これはやはり食中毒だと思います。
金子(哲)委員 そうしますと、この食品衛生法、先ほど来論議している考え方に立ちながら対処しなきゃならなかったわけですよね。
 ところで、水俣の隣の出水市の保健所の所長が当時、一九五九年の八月十八日に水俣湾産の魚介類の販売禁止通告を出しておりますけれども、それはどういう根拠法に基づいて出されたでしょうか。
遠藤(明)政府参考人 御指摘の件につきましては、鹿児島県に照会をいたしましたところ、当時、出水保健所が水俣湾産の魚介類の販売禁止の通告を行ったという事実関係が確認できませんでした。
 当時、鹿児島県としては、水俣近海における漁業の操業自粛について、関係する漁業協同組合等と協議をし、指導を行ったということでございます。この指導の法的根拠については、現在においては明確に確認をできておりません。
金子(哲)委員 ということは、この五九年の保健所の所長の販売禁止通告というのはあったかなかったかわからないということなんですか。
遠藤(明)政府参考人 確認できておりません。
金子(哲)委員 それじゃ、次にお伺いしたいと思いますけれども、今大臣は水俣病は食中毒事件だということを明確に御答弁いただいたわけですけれども、この水俣病が水俣湾の魚介類を摂取して起こる病気だ、つまり食中毒事件だということはどの時点で認識されたでしょうか。
遠藤(明)政府参考人 当時、厚生省では、事件を探知した昭和三十一年から、厚生科学研究費補助金事業におきまして、水俣病の原因究明に関する調査研究を行ってまいりました。昭和三十二年九月には、水俣湾産の魚介類を摂取することが原因不明の中枢神経系疾患を発症するおそれがあるために、熊本県に対して当該魚介類を摂取しないよう指導をしたところでございます。
 さらに、当時の食品衛生調査会に水俣食中毒特別部会を設置し、原因について慎重に審議いただいた結果、昭和三十四年十一月十二日、水俣病は、水俣湾及びその周辺に生息する魚介類を多量に摂取することによって起こる主として中枢神経系統の障害される中毒性疾患であり、その主因をなすものはある種の有機水銀であるとの結論を得たところでございます。
金子(哲)委員 つまりは、今お話にありましたけれども、三十一年からこういうことが起こっているということを事実を確認され、そして、厚生省も研究をされておりますけれども、地元の熊本大学とかいろいろなところで研究が進んで、少なくとも、今答弁でおっしゃったことでいえば、一九五七年、昭和三十二年の九月には厚生省はこれは食中毒事件という認識を持っていたわけですよね。
 ところが、今おっしゃったこと、同年、昭和三十二年、一九五七年の七月の二十四日に熊本県は水俣奇病対策連絡会で水俣湾へ食品衛生法適用を決定したわけですね。そして、八月の十六日に熊本県の衛生部長が厚生省の公衆衛生局へ照会を出しているわけです。それに対して、九月の十一日に厚生省は回答をして、今答弁があったように、第一項には、今お読みになったとおり、「今後とも摂食されないように指導されたい。」ということを指摘されておりますけれども、ところが、第二項で、「然し、水俣湾内特定地域の魚介類のすべてが有毒化しているという明らかな根拠が認められないので、」いいですか、「すべてが有毒化しているという明らかな根拠が認められないので、該特定地域にて漁獲された魚介類のすべてに対し食品衛生法第四条第二号を適用することは出来ないものと考える。」
 先ほど答弁でおっしゃったように、すべてのものが汚染されているという確認がとれなくても、ある程度そういうことがあったということは、その第一項で、先ほど申し上げました「今後とも摂食されないように指導されたい。」という項から考えると、当然そういうものが危険だということは察知をしていた。ところが、「すべてが」「すべてが」ですよ、「有毒化しているという明らかな根拠が認められないので、」「第四条第二号を適用することは出来ない」、こうなったわけですね。
 これは、今説明をいただいた、食中毒として認識がわかった時点から、適切な処理が、この九月の十一日、なぜ「すべてが有毒化している」「すべてが」というようなことが、水俣湾にいた魚介類すべてを有毒化するなんという調査ができっこもないことを根拠にして、食品衛生法第四条二号、熊本県は適用したいと考えたけれども、厚生省の回答で、適用することはできないという通達を出しているわけですね。これはちょっと明らかな間違いじゃないですか。
遠藤(明)政府参考人 四条の二号でございますが、先ほど来申し上げておりますように、昭和四十七年の改正で「疑いがある」という部分が入りました。したがいまして、それ以前の法律におきましては、当時の解釈は正しかったものと考えております。
 四条二号はそもそも何を規定しているかといいますと、四条が規定をしているところは、例えば二号に定めてありますような有毒、有害な物質が含まれているような場合に、これを販売したり採取をしたり云々してはならないという規定を定めているものでございまして、行政がこれを措置するというふうな規定ではございません。
金子(哲)委員 時間になりましたので、最後に質問しておきますけれども、先ほど私は森永の砒素ミルク中毒事件のお話をしました。これは一九五五年、昭和三十年なんですよ。いいですか。この水俣病が発生する以前に、先ほども申し上げましたように、すべてのミルク缶が汚染されているという確認がとれないけれども、販売回収を指示して拡大を防いだわけですよ。すべてのミルク缶が汚染されているという事実は実際上はなかったわけですね。
 ところが、今回の水俣病に関しては、今私が読み上げた九月十一日の厚生省の回答では、二項で、魚介類のすべてが有毒化しているという明らかな根拠が認められないから食品衛生法を適用できない。そのときに適用して販売を禁止しておれば、少なくとも、自分で採取をして摂取をした人は続いたかもわからないけれども、販売によっていることは防ぐことが可能だったわけですよ。その措置をあえて、熊本県は食品衛生法を適用して何とかして被害の拡大を防ぎたいとしたのに対して、厚生省がそれを阻止したんじゃないですか。最後に答弁してください。
遠藤(明)政府参考人 食品衛生法四条の規定は、先ほども申し上げましたように、行政側の措置義務を定めたものではなくて、販売者側に、有毒物質等を含んだものを販売してはならないというふうな規定を設けたものでございますので、その点に関しては行政側が措置をするというものではないということが一点と、もう一つは、内容的には、先ほど申し上げましたように、四条の二号の当時の解釈としては先ほど申し上げたようなことであったということでございます。
金子(哲)委員 時間になりましたので終わりますが、では、そういうものを販売していても行政は指導もしない、販売禁止もしないわけですか。そんなばかな話ないでしょう。
 いいですか。では言っておきますけれども、いいですね、そういうことを最後ひとつ答弁してください。そんな、法律に記載されていることを全然行政が指導もできない、何のこともできないなんということがあるんですか。
遠藤(明)政府参考人 法律の適用関係はともかくといたしまして、国民の健康を保護するために必要な措置を講じてまいります。
金子(哲)委員 終わります。
中山委員長 以上で両案に対する質疑は終局いたしました。
    ―――――――――――――
中山委員長 これより討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。
 まず、内閣提出、食品衛生法等の一部を改正する法律案について採決いたします。
 本案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
中山委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
 次に、内閣提出、健康増進法の一部を改正する法律案について採決いたします。
 本案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
中山委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
    ―――――――――――――
中山委員長 この際、両案に対し、熊代昭彦君外四名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、自由党及び保守新党の五派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。
 提出者より趣旨の説明を聴取いたします。武山百合子君。
武山委員 私は、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、自由党及び保守新党を代表いたしまして、本動議について御説明申し上げます。
 案文を朗読して説明にかえさせていただきます。
    食品衛生法等の一部を改正する法律案及び健康増進法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
  政府は、次の事項について、適切な措置を講ずべきである。
 一 輸入食品等の検査に当たっては、検疫所の食品衛生監視員の配置や人員等の充実・強化を図り、検査の実施に遺漏のないように実施すること。
 二 食品衛生法の運用に当たって、飲食料品の取扱い、加工に係る安全確保の規制等については、事業者の意見も踏まえ、事業活動規制について、適宜検証・改廃を行い、効率的で実効性のある食品類の安全確保に向けた運用を図ること。
 三 食品の安全確保のための施策の策定に当たっては、消費者の立場に立って、リスクコミュニケーションを通じて消費者の意見を十分に反映させることを検討するとともに、政策立案過程において、消費者としての意思及び意見を表明し討議する場を確保するなど、消費者である国民の意見が十分に反映できる政策決定過程の確保を図ること。
以上であります。
 何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。
中山委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。
 採決いたします。
 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
中山委員長 起立総員。よって、両案に対し附帯決議を付することに決しました。
 この際、坂口厚生労働大臣から発言を求められておりますので、これを許します。坂口厚生労働大臣。
坂口国務大臣 ただいまの御決議につきましては、その趣旨を十分尊重し、努力してまいる所存でございます。
 ありがとうございました。(拍手)
    ―――――――――――――
中山委員長 お諮りいたします。
 ただいま議決いたしました両案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
中山委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
    〔報告書は附録に掲載〕
     ――――◇―――――
中山委員長 次に、内閣提出、職業安定法及び労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。
 趣旨の説明を聴取いたします。坂口厚生労働大臣。
    ―――――――――――――
 職業安定法及び労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律の一部を改正する法律案
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
坂口国務大臣 ただいま議題となりました職業安定法及び労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。
 厳しい雇用失業情勢や働き方の多様化等が進む中で、労働力需給のミスマッチを解消し、多様なニーズにこたえていくためには、公共及び民間の労働力需給調整機関が、それぞれの特性を生かし、労働市場においてより積極的な役割を果たしていくことが必要であります。
 このため、職業紹介事業や労働者派遣事業が、労働力需給の迅速、円滑かつ的確な結合を促進することができるよう、求職者の保護や派遣労働者の雇用の安定等に配慮しつつ、これらの事業に係る制度の整備等の措置を講ずることとし、この法律案を提出した次第であります。
 以下、この法律案の主な内容について御説明申し上げます。
 第一は、職業安定法の一部改正であります。
 まず、無料職業紹介事業について、地方公共団体が住民の福祉の増進、産業経済の発展等に資する施策に附帯して行う場合及び特別の法律により設立された一定の法人がその構成員を対象として行う場合には、届け出制により実施することができることとしております。
 次に、職業紹介事業の許可等の手続について、事業所単位から事業主単位に簡素化することとしております。
 このほか、兼業禁止の廃止や委託募集の許可制の見直し等を行うこととしております。
 第二は、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律の一部改正であります。
 まず、派遣期間について、その上限を一年から三年に延長し、一年を超える派遣期間とする場合には、派遣先はその事業所の過半数を代表する労働者等に通知し、意見を聞くものとしております。
 また、派遣先が期間の制限を超えて派遣労働者を使用しようとする場合及び期間に制限がない業務に三年を超えて同一の労働者を受け入れている場合において新しく労働者を雇い入れようとするときには、その派遣労働者に対し、雇用契約の申し込みをしなければならないこととしております。
 次に、物の製造の業務について、労働者派遣事業を行うことができることとし、この法律の施行後三年間は、派遣期間の上限を一年とすることとしております。
 このほか、紹介予定派遣について派遣労働者の就業条件の整備等を行うとともに、労働者派遣事業の許可等の手続について事業所単位から事業主単位に簡素化すること等としております。
 最後に、この法律は、公布の日から起算して九月を超えない範囲内において政令で定める日から施行することとしております。
 以上が、この法律案の提案理由及びその内容の概要であります。
 何とぞ、御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
中山委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。
     ――――◇―――――
中山委員長 次に、厚生労働関係の基本施策に関する件、特に医療問題について調査を進めます。
 この際、お諮りいたします。
 本件調査のため、本日、政府参考人として防衛庁防衛参事官松谷有希雄君、文部科学省高等教育局長遠藤純一郎君、スポーツ・青少年局スポーツ・青少年総括官高杉重夫君、厚生労働省医政局長篠崎英夫君、健康局長高原亮治君及び保険局長真野章君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
中山委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
中山委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。江田康幸君。
江田(康)委員 公明党の江田康幸でございます。
 本日は、短い時間ではございますが、個々の課題、アレルギー対策、SARS等について、またテロ対策等について御質問をさせていただきたいと思っております。
 まず、公明党では、党内にアレルギー対策プロジェクトを設置いたしまして、長年にわたってアレルギー疾患の総合対策について政府と連携し、これを強力に推進してきたところでございます。本日は、平成十三年四月に我々が提言いたしましたアレルギー制圧十カ年戦略をもとに、このアレルギー疾患の総合対策として重要な点について質問並びに提言をさせていただきたいと思っております。
 まず最初の課題は、研究開発体制の強化と治療法の開発についてということでございます。
 皆さん御存じのように、アレルギー、これは、国民の三人に一人に上っておりまして、国民病とも言われておりますが、そのアレルギー性疾患に対しまして、根本治療薬そして根本療法は全くないというのが現状でございます。したがって、これは国の責任であって、その開発を急ぐ必要がある、そのように思うわけでございます。
 現在、臨床研究の拠点としまして、国立相模原病院の臨床研究センターがございます。この臨床研究センターは、国立病院等のネットワークにおける多施設共同研究や医薬品の治験の中心となるほか、アレルギー、リューマチ等に関する病態の解明、先端的診断、治療技術の開発を担っていると承知しております。
 これまでの研究実績につきまして、どのような評価が行われているか。また、ずばり聞きますけれども、今後五年から十年にかけて根本治療薬の開発は可能なのか。以上についてお伺いいたします。
高原政府参考人 委員御指摘のとおり、臨床研究機能の一層の推進を図るために、アレルギーに関しましては、平成十二年十月に、国立相模原病院に臨床研究センターを開設いたしました。
 このことによりまして、国立病院等のネットワークにおける多施設共同研究、医薬品の治験の中心となることが期待されておりまして、アレルギー疾患に関する病態解明、先端的診断、治療技術の開発等を行っております。
 このような結果、簡便にして正確な食物アレルギー診断法を確立し、食物負荷試験の全国ネットワークを構築する、気管支ぜんそくのアレルゲン確定のためのスクリーニング検査を過去四十年にわたり二万件以上実施し、ぜんそく患者診療の基礎的情報として医療関係者へ提供するなど、特に臨床に直結した成果が上がっているところであり、その実績につきましては、各方面から一定の評価がなされていると承知しております。
 お尋ねの、五年もしくは十年で根本的な治療法が開発できるかということでございますが、まだアレルギーのメカニズムについてはすべてが十分明らかになっていないこともございまして、根本治療薬の開発につきまして、現段階において今後の見通しをはっきり申し上げるのは困難であると考えております。
 しかしながら、今後とも、新規治療薬や治療法の確立を目指し、研究機関や関係学会と有機的な連携を推進いたしまして、研究開発体制の一層の充実に努めてまいりたいと考えております。
江田(康)委員 今申されましたように、今後五年から十年でこの研究成果から根本治療薬が出るかというと、それは予測はつかないという、やや厳しい状況であるなというのを私思った次第でございます。私も、長年、アレルギーの治療薬に関しては研究を進めておりまして、なかなか画期的な新薬が出ないなというのが実感としてわかっておりますので。
 さらにお聞きいたしますが、臨床研究の拠点は相模原病院であった、それと、このアレルギー疾患対策の基礎研究の拠点と申しますと、これは恐らく本年十月ごろには完成するであろう理化学研究所の免疫・アレルギー科学総合研究センター、これは文部科学省所管のセンターでございます。平成十四年と十五年の合計百四・六億円の予算で完成いたします。そのうち研究費は七十三・六億円であり、三領域、十九チーム、百五十三名の陣容でございます。
 基礎研究として大きな成果が期待されるわけでございますが、一方では、根本治療薬の開発までつながるのかどうか、これは先ほどの御答弁とも関連して、私は心配でございます。根本治療薬や根本療法の開発に結びつく研究となるかどうかは、臨床との連携が欠かせないと思われます。アレルギー制圧十カ年戦略でも、国立相模原病院の臨床研究センターとの連携を実現すべしと我々公明党は言ってまいりました。この件について両省の考えをお聞きしたいと思います。
 基礎研究の成果が根本治療薬や根本療法の開発に結びつくためには、臨床との橋渡しをするトランスレーショナルリサーチという、このプログラムが非常に重要であります。神戸市の医療産業都市構想は、その先端を走っております。公明党の厚生労働部会でも視察をしてまいりましたけれども、再生医療の基礎研究を担う理化研の発生・再生科学総合研究センターの研究成果を、そこに隣接している神戸市の先端医療センターがこのトランスレーショナルリサーチを担っております。さらに、その成果を治験に反映する臨床研究情報センターや、ベンチャー並びに企業の実用化を支援する起業化支援施設、これらが併設されているわけでございます。これにより、骨、皮膚、神経細胞を自由につくって患者に移植していく再生医療というのが実用化へ向けて急速に進むというふうに私は思います。
 免疫・アレルギー科学総合研究センターもこれに倣って進むべきだと私は思うのでございますが、そうでなければ、アレルギー治療薬の開発までは、私のこれまでの経験からいってもなかなかつながらない。基礎研究の成果が出て、そしてそれを本にまとめられて、そしてそれがどこかの本棚に埋もれる、そういうような、これまであったような、基礎研究、また臨床研究もそうですが、そのような、実用化に結びつかない、国民の皆さんのアレルギーの悩みを解消できないというようなことになっていかないかということを非常に心配するわけでこのような質問をしているわけです。
 それで、国立相模原病院の臨床研究センターとの連携に加えまして、トランスレーショナルリサーチや実用化への支援施設の展開等について、これをどのように両省考えられているか、神戸の医療産業都市構想のように横浜の理化研に集積していく、そういうような大胆な構想はないのか、そこのところをお聞きしたいと思います。
渡海副大臣 先生御指摘いただきました神戸は、私も先日視察をさせていただきまして、私は兵庫県でもございますので、全く御意見はそのとおりだと思っております。
 そしてまた、基礎研究というのは非常に幅広い分野をカバーいたしておりまして、しかし、それを大きく二つに分けてみると、一つは、やはり学術的に、知の探求といいますか、真理の探求といいますか、そういったことが中心になる学術の世界、もう一つは、やはりちゃんとしたロードマップをかいて、先生が今言われたような成果を目指してそれをつくり上げていくための基礎研究、こう言えると思います。
 この理化学研究所が行っておりますさまざまな研究は、どちらかというと後者が多いわけでございまして、従来特殊法人、今独立行政法人化したわけでありますが、そういった意味においても、今先生の御指摘のトランスレーショナルリサーチ、また、それから以降の新薬の開発等が行われる、この戦略がなければいけないというふうに考えております。
 相模原のセンターは、もちろん連携を視野に今調整を進めておりますし、各種国立大学、また、これは国立に限らずさまざまな大学の病院の連携等も現在検討中でございますし、そこから先の、またいろいろな、TLOとよく言われておりますような産業化の問題も含めた新薬開発、こういったことについても、さまざまな可能性を視野に入れながら今後積極的に進めてまいりたいと思っております。
 ただ、これは私見も入りますが、神戸というのは一つの場所に大変集積をしています。しかし、これはやはり地域的な問題、それから、従来あるものを使うというよりも、一気に固めた、新たにつくったという性格がございますから、そういったあたりは、今IT時代でもありますし、神戸との連携というのも、アレルギー、これは臨床になって免疫の問題が出てきましたら、私の方はむしろ素人でございますが、先生の方がプロだと思いますが、当然このアレルギーセンターからのデータがむしろ向こうの役に立ってくるというふうな連携もありますので、できるだけ資源を有効活用しながら、積極的に新薬開発とか治療に結びつくような体制を整えてまいりたいというふうに考えているところでございます。
坂口国務大臣 お答えをします前に、先生は、論文を提出されて、このたび工学博士の称号をおとりになったということでございまして、心からお祝いを申し上げたいと存じます。
 さて、今のお話でございますが、今文部科学省の方からお話もございましたとおり、研究と臨床とやはりタイアップをしてやっていかなきゃならない。これは医学の分野だけにかかわりませず、日本の研究というのは、研究は研究、そして現実は現実というふうにどうも分離されておりまして、企業等もたくさんの研究をされるんですけれども、その七割はお蔵の中で眠っているというふうに言われております。したがいまして、その研究されましたことが実用化されるように、研究と実用をどう結びつけるかということが、これは日本全体に課せられた最大の課題であるというふうに思っております。
 そこができて初めて日本の新しい産業が起こるわけでございますが、医学の分野もこれは例外ではございません。文部科学省の方でおつくりをいただきましたこの立派な研究所の成果というものを、年に二回ぐらいは臨床の方の先生方にもお聞きをいただき、また、臨床の方で手がけて効果が上がっていることにつきまして研究者の皆さん方にもまたお聞きをいただいて、そして、研究と臨床の方とのタイアップがスムーズに進んでいくようにしなければならないというふうに思っているわけでございまして、研究所ができましたことは今後大変大きな力になるだろうというふうに思っておりますので、その両機関の連携というものを密にするように、これは文部科学省とも十分に御相談をさせていただきたいと思っているところでございます。
江田(康)委員 今、両省の方から、大臣等からお答えいただきましたけれども、私も、実用化に結びつくかどうかというのは、基礎とその応用、そこの連携をどうするか、これが永遠の課題ではあると思っております。ぜひとも、縦割りはあるのかないのかわかりませんけれども、縦割りを乗り越えて、今、相模原病院との連携も理研の方はとっていくと申されましたし、ロードマップをつくって、開発から逆算して基礎研究を行っていくというか、そういうような御努力をしていただくという御答弁であったかと思います。ぜひとも連携を密にしていただきまして、進めていただきたいと思っております。
 通常、医薬品というのは万に一つぐらいしか臨床試験に行かないわけですね。そして、臨床試験に行ったとしても、七年から十年ぐらいかけて、そしてフェーズ3で落ちるというような薬剤もこれまでいっぱいございます。したがって、本格的な臨床試験に入る前の早期に有効な薬剤が実用できるのかどうか、そこを早く見きわめて、効率のいい進め方ができるように体制をしっかりと整えていっていただきたい、そのようにお願いを申し上げて、次の質問に入らせていただきます。
 もう一つの課題でございますけれども、これは情報提供と相談指導、教育体制の充実ということであります。
 アレルギー疾患というのは、例えば相談した医者もしくは専門家、そういう方々がアレルギーに詳しくなければ、またよく御存じなければ、その症状をさらに悪化させて厄介なことになってしまうという免疫関連の疾患でございます。それで、アレルギー疾患の治療におきましては、今もやられておりますけれども、医学的に乏しい特殊療法とか民間療法など、症状を悪化させてしまうケースが今申し上げましたように非常に多い。正しい情報の提供が重要な課題でございます。
 気管支ぜんそく、アトピー性皮膚炎、それから花粉症、リューマチ、この四疾患につきましては、都道府県の保健師等を対象に四疾患指導員の養成研修が進んできております。これまでの養成研修の成果について、これはどのように評価できるかをお伺いしたい。
 また、以前より、児童を中心に食物アレルギーが非常にふえているんですね。この食物アレルギーを含めた今までの四疾患から五疾患、この五疾患相談員の養成を、我々もアレルギー制圧十カ年戦略の中でも強く主張してまいりました。今回、十五年度の予算に反映されてそれが実現したところであるということでございます。
 今後、各都道府県はもとより、私は、全市町村の保健所にまで配置されるべき重要な相談員であると思っております。今後の計画についてはどのように考えておられるかお伺いしたいと思います。
高原政府参考人 アレルギー疾患につきましては、御指摘のとおり、正しい情報を適切に提供するということが極めて重要であると考えておりまして、平成十三年度より、お話にもございました、都道府県の保健師等を対象といたしました四疾患相談員養成研修会を実施しております。さらに、十四年度から、これもお話にございましたけれども、非常に要望が強うございました食物アレルギー、これを追加して、講義を加えております。
 それから、数でございますが、十三年度は都道府県から各一名、都合四十七名でございましたが、指定都市、中核市、保健所政令市、それから特別区、こういうところも保健師を配置しておりまして、これを拡大いたしまして、百二十七名の受講者ということでやってまいりたいというふうに考えております。
江田(康)委員 ぜひ、アレルギーを悪化させないためには相談員の方々が身近におるということが非常に大事でございまして、自治体の主要なところにはそういう相談員の方々が網羅されるように、よろしく目標達成に向かって努力をしていただきたいと思います。もっと多くてもいいんじゃないかなということを、三千の市町村が今度の市町村合併で千になるのかどうかわかりませんけれども、少なくとも広域自治体に一カ所以上の相談できるところがあって、そこに相談員が配置されている、そういうように思います。
 もう一つ、この食物アレルギーは子供に多いわけですね。大人になってくると、ある程度治ってくる。しかし、最近は治らない方々もいらっしゃる。環境の影響というのも非常に大きいのがこの免疫系疾患、アレルギーでございます。
 学校給食におけるアレルギー含有食品の情報提供や代替食の提供についても、我々は強く主張してきたところでございました。食物アレルギーの生徒の献立からその食物を除いたり、代替食を提供したり、家庭からの弁当持参を認めるなど、個々の生徒に応じた措置がとられるようになってきております。十五年度予算では、教職員による指導事例集の作成にも反映されました。食物アレルギーや偏食等の指導には、教職員、養護教員、それから学校栄養職員、父兄の連携協力が欠かせないところでございます。
 これは文部科学省にお尋ねいたしますが、最近文部科学省では、学校栄養職員、これは栄養士さんですね、これを教壇に立たせて、そして生徒、父兄への食育指導を行うと発表されております。この制度化へ向けての取り組みについて、ぜひ伺いたいと思っております。よろしくお願いいたします。
高杉政府参考人 先生御指摘の、学校における食物アレルギーを持つ児童生徒への対応につきましては、今先生の御指摘がございましたように、教師、養護教諭、学校栄養職員、保護者、これが連携をして対応していくということが必要でございます。
 ただ、最近、子供の食に関する状況というのは、アレルギーということだけではなくて、朝食欠食等子供たちの食生活の乱れ、そういうものを背景といたしまして、小学校低学年から食に関する正しい知識の確保や望ましい食習慣を身につけさせることが重要となってきておるわけでございます。
 そのために、去る二月十三日、食に関する指導の充実のための取組体制の整備に関する調査研究協力者会議から、いわゆる栄養教諭制度など栄養にかかわる職員に係る新たな制度の創設について御提言をいただきました。この報告書において、いわゆる栄養教諭の役割の一つとして、食物アレルギーなどに対する指導を含めて、児童生徒への個別指導というのが掲げられております。今後、学級担任、養護教諭と連携をしながら個別指導を進めていくことが必要とされております。
 このために、私どもといたしましては、この報告を踏まえまして、これが新たな制度の創設にかかわるものであるということから、今後、中央教育審議会においてさらに専門的かつ具体的な検討を行っていただくことにしておるわけでございます。
 今後とも、子供たちが望ましい食習慣や栄養のバランスのとれた食生活を形成し、将来にわたって健康な生活を送ることができるよう、学校における食に関する指導体制の充実に努めてまいりたいと思っております。
江田(康)委員 これは今、国会でも、食の安全、安心を確立するために、食品安全基本法から、その関係法律の整備が進んでいるところでございまして、きょうの午前中の質問でも食品衛生法の改正が審議されたところでございます。
 一方で、アレルギー対策また食物アレルギーという面についても、食育というのは非常に大事でございまして、アレルギーの原因の一つとしてそういう食事環境の変化というのも非常に注目されておりますので、学校における食育指導ですね、ぜひとも大きく進めていただきたい。協力しますので、よろしくお願いを申し上げます。
 それと最後に、時間になってまいりましたけれども、SARSの件について最後に御質問させていただきます。
 これはぜひともお聞きしたいなと思っているんですが、WHOは四月の十六日にSARSの原因を新種のコロナウイルスと特定しまして、SARSウイルスと名づけたわけでございますが、このSARS、もちろん皆さん御存じのように重症急性呼吸器症候群の略でございますが、このSARSウイルスが分離されて、シークエンスも決定されております。これは今まで私が見る限りにおきましては異例の速さであって、国際的な協力の成果であろうと思っております。
 SARSの診断方法として、感染の指標である抗体を測定するエリサ法や免疫蛍光抗体法、ウイルスの遺伝子を検出するPCR法、こういうものが確立されてまいっておりまして少し安心しているんですが、ところが、このどの検査方法をとっても感度が悪いとか、非特異というか特異性が低いというか、そういうそれぞれの欠点等があるようでございます、限界があるようでございます。今後の検討も非常に大事と。
 それで、従来のコロナウイルスは、抗原性によりまして四種類の血清型に分けられるんですね。ヒトの病原ウイルスとしては一群と二群というのが知られておりますけれども、このシークエンス解析により、SARSウイルスはいずれにも属さない新種のようでございます。
 最近、香港の研究チームが患者十一人のSARSウイルスを調べた、その結果、遺伝情報の異なる四種のウイルスが、またこれは別の四種なんですけれども、その四種のウイルスが見つかったと報告しているようです。私もまだ論文を読んでいませんので、詳細はわかりませんけれども。
 これらのことから、SARSウイルスは突然変異のスピードが非常に速くて、今後の診断法や予防治療薬の開発が困難である可能性が示唆されるわけです。従来のコロナウイルスに対しましては、対症療法のみで、これもワクチンはございません。
 これらの困難な状況が幾つかありますけれども、そういうことに対しまして、厚生労働省として、どのような国内研究体制の整備、それから国際協力体制、今回WHOを中心として共同研究体制の中に入っていかれましたけれども、そして成果を出されていますけれども、そういう国際協力についてもどのようにされていくのか、ここら辺について、ぜひとも御専門である大臣のお考えもお聞きしておきたいと思います。よろしくお願いします。
坂口国務大臣 SARSの問題につきましては、これは各国協調体制で早急にその原因究明に当たらなければならないというふうに思っております。とりわけ、アジアで発生いたしました病気でございますので、WHO全体としても取り組んでおりますが、アジア諸国も緊急な問題として各国が協力体制をしきまして、防疫、そして研究、そして臨床、それぞれの分野で意見交換をし、そして一日も早い体制を確立していきたいというふうに思っております。
 今のところいろいろの情報が寄せられておりますけれども、今お話がございましたとおり、コロナビールスというのはどうもだんだんと変化をしていくということが言われておりまして、エイズウイルスのときにもそうしたことが言われたわけでございますが、そうした変化が続いていくということになると、なかなかその本体をつかみにくい、そしてそのワクチン等の製造もなかなか難しいといったようなことになってくる可能性がございますが、いずれにいたしましても、そうした状況というものを、これも臨床面からと、そして研究面からと、双方にらみ合わせまして、そしてWHOで全体を取り仕切りをしてもらって決定をしていきたいというふうに思っているところでございます。
 日本も国立の研究機関並びにそれぞれの国際医療センター等でこうした問題に取り組んでいるところでございますし、かつまた大学におかれましても非常な努力をされているというふうにお聞きをしているところでございます。
 そうした意見を極力集約をして、そして、早く本質は何かを見定めるということが大事でございますので、研究者がそれぞれ持っておりますデータを早期に提供し合うということが大事でございます。研究でございますから、お互いにそれをある程度まとめて研究論文にしないとぐあいが悪いといったような過去の例はございますけれども、そんなことを言っている段階ではございませんので、研究されましたものは早期にひとつ提出をしていただいて、しかし、そのことについてはその人がちゃんとおやりになったことだということを守るというようなことも大事でございますから、みんなでその辺のところのルールをつくりながら早く解決に向けて努力をしたいというふうに思っております。
 とりわけ中国に対する支援をどうするかということでございますが、中国の方からはまだ具体的に要請は来ておりませんが、現在のところ、お聞きをする限りにおきましては、救急車でありますとか体温計でありますとか、あるいはまた防護服でありますとか、そうした物品を中心にして支援をしてほしいという声がどうも多いようでございます。人の受け入れということはまだ慎重なような気もいたします。もう少し外務省とも御相談をさせていただいて、そして、中国における拡大を一日も早く防止をするために日本がどんなお役に立つことができるのか、真剣に考えたいと思っているところでございます。
江田(康)委員 ありがとうございました。
 時間でございますので終わりますけれども、今大臣答弁ありました、このSARSに関しては、ある程度の地域では終息に向かう、恐らくそうでしょう。ただ、中国は、発生源となっております。そこにおいては、感染者がまだ増加している。そうなると、中国にこのSARSウイルスは残る可能性があるわけで、これを撲滅しようと思えばワクチンが必要なんですが、そのワクチンがなかなかできない。こういうような非常なジレンマがあるわけで、これが、中国に残ったSARSウイルスが何かの契機で発展途上国、アフリカとか中南米とかそういうところに移動していくと、これは非常に大変なことになる。日本みたいに医療が進んでいない国でSARSが、感染が拡大すると、これは爆発的に拡大していくことになる。
 そういうようなことから、我々はワクチン開発等においても、日本の高い技術で国際貢献を果たしていくということが非常に大事だと思いますし、今大臣が申されましたところは非常に大事なところで、研究者のデータを共有しながら人類の英知を結集して、そして今までに見られなかったスピードでこれに対応していく、そういう人的な支援も中国に対しては今後あり得るかなという思いがしますので、ぜひとも検討をいただくようによろしくお願い申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
中山委員長 次に、五島正規君。
五島委員 私は、去る三月二十八日に閣議決定されました、健康保険法の附則による医療保険制度の体系及び診療報酬体系に関する基本方針、及び四月の三十日に厚労省がまとめられた医療提供体制の改革のビジョン案、この二つを中心に少し御意見を聞きたいと思っております。
 まず、医療保険制度体系及び診療報酬体系に関する基本方針についてお伺いしていきますが、この中で医療保険制度の一元化というのを盛んにおっしゃっています。
 医療保険制度は、いわゆる健保とか共済保険など、所得比例型の保険料を設定して、そして労使でそれを負担しているという保険と、国保のごとく、応益応能負担というもの、保険料のありようとしては大きく分けて二種類あるわけですが、その中においても、労使の負担の割合については企業間に非常に格差がございます。聞くところによりますと、NHKあたりは、使の方の負担が約八割、労の方は二割という、そこで働く労働者にとっては非常に軽減されたところもあるようです。しかも、政管健保あるいは国保に対しては公費の投入もあるわけですが、これにも格差がございます。
 そういう意味では、医療保険の一元化というのは、給付の一元化だけを指しておられるのか、それともこうした保険そのものの成り立ち、その問題も含めた問題を指しておられるのか、まずそこをお伺いしたいと思います。
坂口国務大臣 医療保険の一元化という問題は叫ばれて久しいわけでございますが、なかなか今日までそれがまとまってまいりませんでした。三十数年ぶりに一つのまとまりへの動きが始まったということではないかというふうに思っております。
 今お話がございましたとおり、職域保険と地域保険と大きく分けて二つがございますし、職域保険の中もそれぞれさまざまでございます。そうした保険を統合化していくためには、前提条件としてやはりやらなければならないことがたくさんあるだろうというふうに思っておりますが、まず、当面の課題といたしましては、職域保険は職域保険としての一元化を目指していく、そして地域保険は地域保険としての一元化を目指していく。そうした流れをつくる中で、将来的に税制の面での所得把握の問題がきちっと整理をされて、所得把握がちゃんとできるという段階になりましたときには、私はこの職域保険と地域保険のさらに一元化の方向に進むこともあり得る、また、その方が給付と負担の公平性という面からいいのではないかというふうに思っておりますが、現在のところ、まず、それぞれ職域保険、地域保険におきまして統合化を目指していく、そしてその統合化はできる限り都道府県を一つの単位としながら行っていくという当面の目安をつくって、そして進んでいきたい、かように考えているところでございます。
五島委員 当面職域保険と地域保険とそれぞれ一元化していく、そこは、賛否は別として、イメージとしてはわかります。
 さらに、その先について大臣は、その上で所得の捕捉を完全に実施することを前提に地域保険と職域保険とを一元化したいとおっしゃっているわけです。その場合の一元化というのは、当然保険料の設定等々も一元化しないと一元化したことにならないであろう。それは具体的にどういうイメージのもとでおっしゃっているのか。地域保険と職域保険とが、それぞれ二つに分かれた保険として存続した上で共同作業のようなものをおっしゃっているのか、保険として一元化していくということなのか。もし保険として一元化するということであれば、当然それに必要な保険料の拠出のシステムというものも一元化するということになるんだろうと思いますが、それが一体どういうイメージなのか、まだ具体的に大臣の口から聞いたことがございません。ぜひその点についてお伺いしたいと思います。
坂口国務大臣 その辺のところは、これから国会の中の御議論、あるいはまた政府の中での議論、そうしたものを踏まえていかなければならないというふうに思います。
 いずれにいたしましても、一本化ではなくて一元化という言葉を使わせていただいているところにはその辺の幅の広さがあるわけでございまして、一本にしてしまうということも、たとえ都道府県単位にいたしましても、競争原理が働きにくくなるという側面もこれは否定することができ得ません。したがいまして、いずれにいたしましても、競争原理がやはり働くように少ししておかないといけないということが大事だと思います。
 例えば、保険料にいたしましても、それぞれの地域で、例えば年齢構成、あるいはまた所得構成もあるかもしれませんが、それらのことを一元化した上においてもなおかつ地域によって医療費の少ないところ多いところというのが出てくるわけでありますから、そうした面で、多くの医療費を使うところにおきましては保険料は高くなる、医療費が少ないところは保険料が低くなるということが私は起こっていいのであろうというふうに思っております。
 そうしたことは、しかし、その前提としまして、年齢構成が大きく違うというようなことになりますとそれは当然結果が違うわけでございますから、まず年齢構成なり所得構成なりの均一化を図った上でのことであろうというふうに思いますが、そうしたことを行いながら、やはりそれぞれの地域で健康管理というものを積極的に進めていただくという、その競争原理というものが働くようにしなければいけない、そんなふうに思っている次第でございます。
五島委員 お話を聞いてもやはりわからないわけですね。一本化と一元化と違うというのはよくわかります。しかし、その一元化と言われている内容として、今おっしゃっている話を聞いてみますと、地域保険と、それから、被用者保険といいますか、職域保険と二本立て。将来的にはそれを一元化する。一元化するについては、年齢、所得構造の違いが地域においてある、だからその間の調整をしなければならない。
 その間の調整をするということは、国全体として、例えば公費の負担に格差をつけるとか、あるいは資金を一元的にまとめた上でそれぞれ分配していくという、いわば一本化した医療保険制度の調整を国がやるというふうな話になってくるのかなと。そうじゃなくて、一元化というものを地域に限定し、一方で、地域によって保険料の格差があってもいいとおっしゃるわけですから、それはそれぞれの地域の中において保険料を含めた一つの保険としてまとめていくというお話をおっしゃっているのか。お話を聞いても、この二つ、どちら側を追求しようとしているのか。これは基本方針である以上は、その方向性は一体どちらなのかということがはっきりしないと基本方針にならないと思うんですね。そこのところは一体どうお考えなのか。ぜひお伺いしたいと思いますが、時間もありませんので、あわせてほかの問題も聞いておきます。
 国保についても、今、国保には、いわゆる保険料として、国保料として徴収しているところと、国保税として徴収しているところがございます。税として徴収しているところと保険料として徴収しているところでは徴収率にも差が生じて当たり前だろうと思います。そして、国保もまた都道府県単位で一元化するとおっしゃっているわけですが、これは一体、保険料として一元化するのか、税として一元化するのか、あるいは都道府県単位でそれを自由に任すのか、そこのところが全くわかりません。
 また、将来的に国保を一元化する場合に、例えば県単位のような形で新たな保険者をつくり、それにゆだねるのか。現在の国保連合会のような組織を利用して、その役割を拡大して共同事業やそういうふうなものをふやし、都道府県内における財政調整を一定程度行いながらそれをやっていくのか。もちろん、こういうふうなことになっていくとすれば、特に新たな保険者をつくるということになれば市町村長会や知事会の了解が必要だと思いますが、その辺はどうなっているのか。この点についてもあわせてお答えいただきたいと思います。
坂口国務大臣 いずれも難しい、大きな問題ばかりでございます。
 前半のお話は、私も先生が御指摘になっていることを十分に理解しているわけではないのかもしれませんけれども、例えば国保は五〇%国費が導入されている。それから政管健保は一三%導入をされている。これはそのままにしていくのかということをおっしゃっているのであれば、国保の五〇%というのは、使用者側が出します分は国保はないわけでありますから、国が負担をしている。これはこのままでいかなければならない。そして、職域保険が一元化をされていきます場合に、それでは国庫負担の一三%のところをふやしたり減らしたりして調整をするのか、それともそれ以外の部分でするのかということであれば、私は両方あるというふうに思いますけれども、その中の、まずは国からの負担分のところで調整をするというのが一義的にはいいのではないかというふうに思っております。そして、お互いに調整をしながら行く。これが私たちの望んでいるところでございますけれども、これはやはり健保連の皆さん方の御理解もいただかなければなりませんし、あるいはまた医療従事者の御理解もいただかなければならない。
 こうした問題につきましても、それぞれの代表の皆さん方にお集まりをいただいて、そして、ぜひその具体的なあり方についていろいろと御議論をいただく、私たちの考え方も示しながら御議論をいただきたいというふうに思っているところでございます。
 後半のお話につきましては、これも大きな問題であろうというふうに思っております。
 保険料と保険税との問題につきまして、国保の中の約九割が保険税で行い、そして約一割が保険料でやっている。結果を見ますと、大体両方とも同じような結果が出ておりまして、税で取っているから徴収率が非常によくなっているということでもないという現実があるわけでございます。したがいまして、医療保険としてやります以上、今後、統合化をしていきますときには保険料としてお願いをしてはどうだろうかというふうに我々としては思っているところでございます。
 それぞれが都道府県単位に、東京や大阪のように大きいところをどうするかの問題はございますけれども、一応都道府県単位で保険者をつくっていただく。できれば都道府県で保険者になっていただくことを私たち希望いたしておりましたけれども、知事会等の反対が非常に多いということもございまして、この辺を今後どうおさめるかということでございます。
 ここが非常に、どうしても都道府県の知事会が我々で受けることはできないというふうにおっしゃっていただくのであれば、いわゆる公的な法人をつくっていただいて、そして市町村と都道府県とがお入りをいただいて保険者を形成していただくということをやらざるを得ないだろう、選択はその二つに一つだというふうに理解をしているわけでございます。
 これから、市町村の代表あるいは都道府県の代表等にもお入りをいただきましてもうこの五月中にスタートしたいというふうに思っておりますが、今後のこの進め方というものについて御議論をいただきたい、そして、そこで私たちも考え方を述べたいというふうに思っているところでございます。
五島委員 被用者保険と地域保険との問題が、大臣が言われているように、政管健保の一三%の分配ということだけで、ここまで人口の比率あるいは年齢格差というものが都市間において起こってきているときに果たしてうまくいくのかどうかという疑問はありますが、いずれにしても、そこのところはまだ大臣のお話も明確な基本方針というところまで行っていないというふうに受け取りました。
 そして、国保の問題についてはかなり具体的にお話しいただいたわけですが、県単位で新たな保険者をつくる、もしくは新たな公的法人をつくるとおっしゃるわけですが、そうであれば、現在、都道府県単位で国保連合会というのがあります。これは、各市町村、保険者が入って、連合会で支払い業務、審査業務を中心にやっているわけですが、これに県もお入りになって、そこを中心にやられたらいいんじゃないかと思うわけですが、やはり新たな公的法人をつくる必要があるのかどうか疑問に思うところです。
 そしてもう一つ、大臣のお話の中で常に出てこないわけですが、共済保険がございますね。国あるいは地方自治体、学校等々で共済保険があります。これについてはどうお考えなのか。どのように医療保険制度の改革の体系の中でお考えなのか、お伺いしたいと思います。
坂口国務大臣 最初に御指摘いただきました都道府県の保険者の問題につきましては、現在ありますものを活用するということもそれはあるだろう。それを発展させるということはあるだろう。しかし、そこには県が入っていないものですから、県が入っていただくということが必須の条件ではないかというふうに私は思っております。
 それから、共済保険の問題でございますが、職域保険というふうにいいました場合に、これは共済も入ってくるわけだと私は思います。共済は共済としてなかなか力をお持ちでございますし、我々は我々で行くという思いも正直言って強いのではないかというふうに私は思っておりますが、医療保険を統合化していくということであるならば、やはり共済保険もお入りをいただかなければならないだろうというふうに思います。
 職域保険の中で見ますと、政管健保にお入りの皆さんが年間所得で見ると一番少ないわけでございますし、そして組合健保、共済組合というふうになるに従いまして年間所得というのは高くなっている。この辺のところは職域保険として、統合化を前提にいわゆる所得調整等もやらせていただくということがやはり必要になってくるのではないかというふうに思っている次第でございます。
 その後、それをどう一元化するかという問題が生じてくる。年齢の調整それから所得調整といったものを行って、そしてその後、なおかつそれを一本にするのか、それとも、そういう調整さえすればある程度の保険はつくっておいてもいいのかという問題が残ると思います。しかし、幾つもに分散をしておりますと、それに対する事務費というのはそれだけ拡大をするわけでありますから、私は、できる限り統合化をしていくということの方がいろいろなところに事務費を出さずに済む、医療財政そのものを健全化させるというふうに思っている次第でございます。
五島委員 次に、政管健保を当面都道府県に分割するということをお述べになっています。政管健保を都道府県単位に分割する場合、保険者はだれになるのか。この分割するという意味が、現在の政管健保のように、国が一元的に、責任を持っているか国の責任という名前でもって全く保険者機能を放棄しているかは別として、建前として国が一元的に管理する、そのもとにおいて、都道府県単位でそれぞれの財政、あるいは医療の提供、保険の給付の状況についてチェックをしていくということをおっしゃっているのか。
 将来的には統合しようというわけですから、都道府県単位で分割する、そしてそれに対して、先ほども大臣が言われたように、例えば一三%の公費の投入等々、国としては所得状況やあるいは年齢構成等に応じた形で配分するというふうにお考えだとすると、この政管健保を都道府県に分割する場合には、新たな保険者を都道府県単位におつくりになるということであると考えてよろしゅうございますでしょうか。もしそうであればどういう形でこの保険者をおつくりになるのか、それについてお伺いしたいと思います。
坂口国務大臣 政管健保を都道府県単位にいたしましたときに、まず、財政運営は都道府県単位で行うというところまでは決まっております。都道府県単位で財政運営は行う。そのときに、財政運営は都道府県単位で行いますけれども、政管健保そのものを分割するかどうかという問題がございまして、この問題はまだ決着がついておりません。そこまで一足飛びにはなかなかいきにくいだろう。財政調整も、政管健保の中の財政調整みたいなものもあるだろうというふうに思っておりますが、財政運営そのものは都道府県単位ということでございます。
 そこまでいくのならば都道府県単位にもう割ってしまってはどうかという意見があることも事実でございますし、私個人の意見を言わせていただきましたら、ここまで来たらもうそうしたらどうかと私は思うわけでございます。これはなかなか役所の中でもいろいろ意見のあるところでございまして、これはそう簡単に私が言うわけにもいかないということでございまして、ここはこれから議論を重ねていかなければならないというふうに思っているところでございます。
 保険料率の設定を行う仕組み、あわせて国庫補助の配分方法の見直しについても、これは今後検討をしていかなければいけないというふうに思っているところでございます。
五島委員 非常に正直な御答弁であれですが、健保組合に対しては、分割しろ、だけれども健保の反対が強いよとおっしゃっておりながら、御自分のところが管轄している政管健保については役所の中でも合意がとれない。これじゃ基本方針といいながら、なかなか、絵にかいたもちになりますねということを申し上げて、次に行きます。
 高齢者医療制度について、基本案では別建ての社会連帯的な保険料ということが述べられています。これは、現役世代からは、現役世代が持つそれぞれの保険料とは別に、高齢者医療保険を新たに徴収するということを意味しているのか、それとも、それぞれの保険から、いわゆる年齢構成や所得構成に応じた形で、現在の拠出に近い形としてこれをつくろうというふうにお考えなのか、その点まずお伺いしたいと思います。
真野政府参考人 今回の基本方針におきまして、後期高齢者の新たな制度のうちの費用負担につきましては、国保及び被用者保険からの支援も含めて賄うというふうに考えております。
 現行の老健制度におきましては、高齢者医療の負担分が具体的でないという御指摘もございます。そういう反省に立ちまして、先生御指摘のように、国保または被用者保険の一般の保険料負担とは区分した形で負担を求めるということを考えているものでございます。
五島委員 その問題は非常に大事な問題なんですね。
 では、端的にお伺いしますが、それぞれの現役世代の保険料とは別個に老人保健について保険料の負担を求めるということは、各保険を通じて、所得に応じてなのかあるいは一律なのか別として、保険料を取るということになるんだろうと思います。そして、その場合、いわゆる現役世代の保険とは別個とおっしゃいますから、事業主の負担というのはどうなるのか。例えば、健保組合に入っている人たちが健保組合の中からその保険料を払うということでなくて、別個に徴収するということになるとすれば、じゃ、その老人保健については、これは事業主の保険の負担はどうなるのか。それについてよくわかりません。
 また、現実の医療費総額の三分の一を超える老人医療、それを、結果として、公費を五〇%、そして老人そのものの保険料負担を大体一割ぐらいと想定されておりますから、保険給付の約四割、これを現役世代に負担を求めるということは、私は一つの考え方と思いますが、それが別建ての保険として徴収するということになった場合の仕組みがもう少し明確に説明されないと納得できるものでないと思うんですね。一体どういうふうにお考えなのか、そこをお伺いしたいと思います。
真野政府参考人 先生おっしゃいますように、四割ぐらいの部分だといたしましても、次世代といいますか若い世代からの負担をお願いしたいというふうに考えておりますが、それはやはり、表現といたしましては、社会連帯的な保険料ということでお願いをしたい。御質問のありました事業主負担という面で考えますと、一般的な保険料と同様に、事業主の御負担も私どもはお願いをしたい。
 それは、次世代がさきの世代を支える、そういう一種の社会連帯的な仕組みの中に入っていただくということを考えているわけでございまして、保険の負担の仕掛けそのものについては、現在の医療保険の保険料負担の仕掛けを活用したいというふうに考えております。
五島委員 それでは、頭割りでいくかそれとも所得割でいくかは別として、現在の保険料からの拠出とどう違うんですかね。
 確かに、老人保健に対して、公費の負担が五〇%になり、そして老人世代が一割を負担しなければならないとなれば、現役世代の負担の額そのものが少なくなるというのはわかります。しかし、それは結果において、保険から拠出していくということと、すなわちその分だけを保険料の中から出していくことと一緒なのであって、それは別建ての計算ということにはならないのではないかというふうに思うわけですが、それはどういうことなのでしょうか。
 そして、同時に、この後期高齢者の医療保険の保険者はだれになるのか。すなわち、拠出制度にするとしたら、一体これはどうするのか。介護保険の場合は市町村が保険者になっています。今おっしゃっている高齢者医療制度については、それぞれの、公費、それから本人の負担、そして保険料からの拠出という形でいけば、現在の介護保険と同じような仕組みをおっしゃっているようにしか聞こえません。
 そうしますと、この保険者というのは、市町村になるのですか。それとも、これはまた新たな保険者をつくるのか。それとも、これは一律に、日本全体として、政管健保と同じようなものをもう一回つくろうということなのか。その辺は、まさかそんなばかなことを考えておられないと思いますが、どうなんでしょうか。
真野政府参考人 後者の後期高齢者の保険者についての考え方でございますが、新たな制度の保険者につきましては、後期高齢者の地域を基盤とした生活実態や、安定的な保険運営の確保、保険者の再編統合の進展の状況等を考慮するということを基本方針としてお示しをいたしておりまして、私どもといたしましては、再編統合をされました国民健康保険がこれを担っていただくのが最も適当であると考えておりますが、これにつきましては関係地方団体とさらに詰めを行いたいというふうに思っております。
 したがいまして、そういう別建ての保険制度になりました保険に対しまして、若年の保険制度の方から支援をする。拠出金の世界は、現在、先生御承知のとおり、市町村がこの事務を行っておりますけれども、保険者としての性格は持っておりません。これに対しまして、私ども考えております新たな後期高齢者の制度は、そういう保険者機能を持った仕掛けを考える、それに対して現役世代から支援をするというようなことを考えておるわけでございます。
五島委員 今、お話を聞きますと、何となく、この医療保険制度の抜本改革はまず国保の一元化が一番最初なので、それから高齢者の問題もそれにあわせてやっていくというふうに聞こえます。そしてまた、それが、県というところに一つの単位を置きたいということになりますと、高齢者からの保険料の徴収を含めた、それは、県が責任を持つということになるのかな。市町村にその責任を持たせて、そして県でそれをやっていくということができるのであれば、介護保険もそれができるはず。
 そういう意味においては、果たして高齢者からの保険料の徴収、あるいは国保の保険料の徴収、県がその徴収の義務というものを持ち得るのかどうか。県が持てない、市町村にその責任を持たすけれどもその運用は県がやっていくんだということで、知事会と市町村長会との間が話がつくとは、私は到底思えない。何か、その辺ではかなり、閣議決定までされた割には具体性のない話なんだなという感じがいたします。
 時間がありませんので、きょうここで押し問答してみても、ここのところはもう少し役所の方でこれの具体化に向けてそれぞれの話を煮詰めていただいて、またお知らせいただきたいと思います。
 次に、診療報酬体系についてお伺いしたいのです。
 今回のビジョンの方にも書かれておりますが、急性期と慢性期の二本立て。頭の中では非常にわかりがいい話です。私もそれを全面的に否定するつもりはありません。ただ、疾病というのは、そう簡単に割り切れないというケースがたくさんございます。
 例えば腎透析というのをとってみます。軽症の腎透析の患者さんはほとんどが通院でやっておられる。重症化した場合は入院で腎透析される人がいます。当然、経過が長くなりますから、主として慢性期の、いわゆる療養型病床で治療されているケースが多い。腎透析に必要な医薬品の給付については、例外的に医療療養型の包括点数の外にその点数をつけています。それはそれでいいわけですが、ところが、今日、腎透析に入る患者さんの中で、糖尿病からの腎透析というのが非常にふえています。そして、一般の、いわゆる腎疾患から腎透析に入られた方に比べて、糖尿病から腎透析に入られた方は非常に予後が悪い、これも周知の事実です。そして、糖尿病から腎透析に入られた方の多くが、例えば血行障害等を起こして足を切断しなければいけない、あるいは目がだめになる、さまざまな合併症を持って入院されます。その辺についてはよく御承知のとおりだと思います。
 そこでお伺いしたいのですが、糖尿病に原因して腎障害を起こして透析している患者さん、その患者さんに対する糖尿病の治療あるいは血行を改善するためのプロスタグランジンE1剤、例えば一般名でいえばアルプロスタジルのような、そういうふうな動脈閉塞性の疾患に対する治療薬、非常に高い薬ですが、そういうふうなものをこれまでは使っていた。ところが、この腎透析の患者さんたちが、長期になるという形でいわゆる長期療養病棟に移された途端に、この保険の給付というのは、何か都道府県によって社会保険の場合はばらばらのようですが、原則的には、法律どおり読めば、給付されない。だから、糖尿病で腎障害を受けて重症化して入院した患者さんについては、透析の治療は受けられるけれども、もし糖尿病のそういう治療をやるとすれば、月に十万円以上の医療費というものを請求できないということで、非常に問題が起こっております。
 こうしたケースというのは、今、私はたまたま糖尿病の問題を例にとったわけですが、必ず疾患の中にはあり得る。これは大臣、よく御理解いただけると思います。そういうケースをどういうふうにお考えでしょうか、お伺いします。
真野政府参考人 そういう具体的なケースにつきまして今ちょっと調べておりますので、また後ほど御答弁をいたしますが、今回私どもの基本方針でお示しをいたしましたのは、急性期と慢性期、いわば典型的なそういうケースに対しまして、疾病の特性、重症度を反映した包括評価、急性期の入院についてはそういう評価を行おう、また慢性期につきましても、その病態、ADL、看護の必要度に応じた包括評価を進めるという、いわば典型的なケースを想定をしたことを申し上げているわけでございまして、個々の、先生御指摘のように、同一の疾病であっても症状が大きく異なるわけですから、そういう状態に対して、患者が必要とする診療の特性に応じた対応が可能になる。一方的に切り分けて切り捨てるということではなくて、そういう診療の特性に応じた対応ができるように考える必要がある、それはそういうふうに思っております。
五島委員 今の答弁は極めて不誠実ですよ。
 こういうふうなものを急性期と慢性期に分けるということについては、私も一般論として理解すると言っている。
 ただ、今例にとった問題ですが、糖尿病からの腎透析の患者が一年間に一万人ぐらいふえているわけでしょう。そのことはこれまでもこの委員会で再々私は言ってきたはずです。特に、今回の健康保険制度の改悪の中で、結局、糖尿病の早期受診率、完全受診率、前回の診療報酬の改定のときにも三割も落ちてしまった。それがさらに落ちてしまえば重症化する、その危険性があるじゃないかということを指摘したはずなんです。そして、現実に糖尿病の非常に重症化した形でもって透析患者が年に一万人もふえていっている。そうしたケースについて、まだ検討していませんと言うに等しいようなその答弁。新しい理念でもって医療の提供体制を慢性期と急性期とに分けていく、そのことはいいですよ。ただ、その場合、そのことによって必要な医療が受けられないというのが、例外ではなく、かなりあるじゃないか、それに対してどう対応するかというのを、全然対応していないですね、まだ。そのことが問題なんですよ。
 提供医療も含めて、制度はいじくっていただいて結構です、必要な制度の改革はしていかないといけない。だけれども、そのことによって、国民に当然の権利としてある医療を受ける権利、あるいは治療を受ける権利、そういうふうなものが損なわれることがないかどうか。
 今私も申しましたが、例えば血行障害が非常に強い、次から次へと手足を切っていかないといけない、そういう糖尿病患者さん。その患者さんが入院せざるを得ない。長期にわたるから当然療養型病床に入られる。透析は受けられる。その人に対して、これはある大きな都市の中で呼ばれて、私も言われたことですが、プロスタグランジンE1剤、週に三回ぐらい使うとすれば当然十数万かかります。この金が請求できないから、何としてもそういう重症化した患者さんを受け取りたくない。外来であればできるけれども、そういう患者さんを外来にほうり出すわけにいかない。そういう悩みがいっぱいあって、厚生省にも言っていると言っている、返事がないと言っている。改革の過程の中でそういうふうな犠牲が出ても仕方がないと。しかもこれは一年間に一万人の単位ですよ。
 さらには、今回の医療費の自己負担増によって、多くの病院が、四月の中旬まではそれほどにも思わなかった、しかし、四月の中旬になって、時間は短いんですが、急激に生活習慣病、とりわけ、はっきり申し上げて糖尿病あるいは狭心症、高血圧、そうした患者さんの受診行動が落ちてしまった。糖尿病の薬を一週間分出したら、その薬でもって、日に三回飲めと言ったんだけれども、日に二回にして、そして受診の回数を減少させておる。こういうふうなことが起こるだろうということは、あの健康保険法の改正のときにも私は申し上げました。実際起こっている。きのうもそのことについてお伺いしました。朝日新聞なんかでもそのことは新聞に書いているけれども、厚生省は、まだ一月たっていないんだからそんな調査はしていないといって澄ましておられる。
 人の健康の問題。将来どうなるかという問題。そういう事態が起こってきているとすれば、それに直ちに対応することをせずに、半年後、一年後になってから調査すればいいと。その間に症状というのはどんどんと悪化するわけでしょう。その辺、どうお考えなのか。基本的な問題です、お伺いします。
坂口国務大臣 今回の診療報酬改定は、基本的な問題といたしましては、その基準を明確化していく。慢性、急性のお話もございましたけれども、あわせて、それらの問題を考えますときに、一つは、今お話がございましたように、いわゆる予防的な考え方というものをやはりその中の一つの柱に導入していかなければならない。いわゆる重症化を予防するためには、一体どうするか。したがいまして、例えば糖尿病ならば糖尿病で、最初おかかりになりますときに、糖尿病の検査というのはそんなに難しいわけではありませんから、それに対して、生活習慣病をどうしていかなければならないかということを十分にその人に説明するということが必要なわけです。
 今までの医療は、どちらかといえば検査あるいは投薬、そうしたことに対しましては保険点数がかなりついておりましたけれども、その人たちの生活指導といったようなことに対して考慮されていたかといえば、私は十分でなかったのではないかというふうに思っております。したがいまして、重症化をさせない、そのために保険点数の配分というものは一つなければならない。
 それから、よく言いますように、時間軸、そしてそのときの重症度、軽症度、いわゆる病気の重い軽いといったこともその中に入ってくる。そして、病院、診療所におけるコストというものも考えなければならない。そうしたものの組み合わせによって考えていくという、その中の一つには、重症化予防ということを入れてあるわけであります。
 本当は、重症化予防というよりも疾病予防のところで対策を立てるというのが一番望ましいことだというふうに思いますが、そこまで広げてしまいますと、なかなか医療保険の中の医療財源の問題もございますから、その初期の段階でどう防ぐかということに対する対応が大事だというふうに思っておりまして、そのことを今回の中には盛り込みたいというふうに思っております。
 今御指摘になりました糖尿病から腎臓障害を起こしてくるという皆さん方、これはその初期の段階で生活指導が十分になされて、十分にこれを守ることができれば、その人は腎障害を起こさずに済む可能性は十分にあるわけでありますから、そうしたことに対する配慮を十分にしていく。中には痛風を起こして、痛風から腎障害になる人もあるわけでありまして、その痛風に対してどう対応するかということも大事でございます。
 腎障害のことを考えて一番大事なことは、糖尿病からなる人をどう減らすかということが、数からいきましても一番多いことは御指摘のとおり。そして、その糖尿病の皆さん方に対しては、御本人も含めて、やらなければならないことは十分にわかってはいるけれども、なかなかそれが守れないという現実もまたあるわけでありまして、そこをやはり守ってもらうように、その患者さんの意識改革が大事、意識改革をさせるための診療というものに対して評価をすることが大事というふうに思っている次第でございまして、それらのことも念頭に入れながら今後の診療報酬体系の見直しを行っていきたいというふうに思っております。
 医療従事者の皆さん方からすれば、我々は診療報酬の高の上下によって動いているわけではない、こうおっしゃいますし、私もそれを信じたいと思いますけれども、結果から見ればやはり診療報酬によって医療行為というものがかなり左右されていることもまた事実でございます。そうしたことを考えて我々は診療報酬の問題を考えていかなければならないというふうに思っている次第でございます。
五島委員 大臣がおっしゃるように、疾病の予防あるいは生活習慣病の進行防止、そこに力を置いていかなければいけない、それはそのとおりで、全く異存はありません。
 ただ、問題は、そういうふうなことがあったとしても、既に中等度、あるいは極めて重症になって、治療を受けなければ命を維持できないというところまで来ている患者さんがたくさんいるのも事実。そこのところをえいやあっと切って、しようがないよと、予防が大事ですというふうな形になってはいないかということを申し上げているわけです。
 診療報酬の中で、そうした予防に医師の能力を注いでもらうということは非常に大事だ、そのことについて言っているわけではなくて、むしろ、そうしたことを理念に置いて、そこのところに先行してしまった結果として、現実そこにおられる患者さんたちに犠牲がいっているじゃないかということを申し上げています。
 また、その問題についていえば、例えば糖尿病の患者さん、痛風の患者さん。自分の健康上の知識不足によってその疾病のコントロールができないというよりも、今の生活の中においてそのコントロールが非常に困難になっているという状況もあり、それは、医療機関の中において一度二度説明すれば解決がつくというものではない。この体制をどうするかという問題等もあわせて検討しなければいけない問題であるというふうに思います。
 いずれにいたしましても、先ほど申し上げましたように、膨大な糖尿病からの腎透析の患者さんたちが現実に、その病気の本体である糖尿病やあるいは血管性の疾患、それを治療できない制度をつくられて、放置されている、これに対して保健局の方で早急な対策をとっていただきたい、そのことを申し上げて、次に行きます。
 次に、医療提供体制の改革ビジョン案ですが、これもまた、今申し上げたことと非常に似ております。
 書かれている内容については、私は九割ぐらい、そうなればいいなという思いは持ちます。だけれども、これに要するコストは一体どれぐらい要るんですか。そして、このコストはどこから捻出するんですか。そうでなくても医療保険制度の財政が悪い中で、これまでもやってこなかったそうしたシステムやあるいはハードに関する費用を診療報酬でもって措置をするなんというようなばかげたことはないと思います。そうかといって、民間病院も含めて、そうしたものに対して補助金でもって処理していく、それも、今の国の厳しい財政状況の中ではなかなかできない話だ。何か、絵にかいたもちが、もちというよりも、絵にかいただんごぐらいがここに書かれているなというふうな感じがしてなりません。この費用を一体どこから捻出するのか、お伺いしたいと思います。
 私は、あわせてお聞きしておきたいと思うんですが、電子カルテなどの情報産業と医療を強引に結びつけようという意図があるなというふうに感じます。
 高知には今、県と市が統合した病院をPFI形式でつくっている、そこの病院のコンピューターの中に電子カルテも含めてやろうとしています。九年間にわたって、メンテナンス料とリース料で年間五億円ずつ費用が要るというふうに言われています。年間五億円といったら、クラークその他を雇うとしたら約百人分の雇用ができます。
 こういうふうな、そういうコンピューターの導入というもの、これは医療とは関係ないですね。医療を支える環境には大きく影響しますが、治療とか診断とか、そういうものに関係ない。そういうふうなものを一生懸命宣伝しておられる。一体この費用はどこから出るんですか。今の診療報酬の中で、年間五億円のコンピューターに使える金というものが、出る余裕があるわけがない。
 では、電子カルテみたいなものは要らないと言っているのか。そうではありません。こんなものは、例えばコンピューターのソフトなんというのは、しょっぱなが一番高くて、二回目はその約半額とか七掛けぐらい、三回目になってくると三分の一ぐらいというふうに、急激に安くなっていくのが常識です。そうだとすると、それぞれの規模の病院にふさわしい、統一した、一般的な電子カルテの開発を行うことが先じゃないですか。
 今レセコンというのが急激に普及しました。これはまさに、共通ソフトのような形でもって急激に普及したから、ほとんどの医療機関がレセプト請求をコンピューター化したんです。そういうふうなことをせずに、あるいは業者間の競争の中で、そこへ手を出すのが嫌で、医療機関にそれを押しつけよう、そんなもので、電子カルテを含めたITとの結合なんてできるはずがない。
 その点についてどうお考えなのか、二点、お伺いします。
篠崎政府参考人 それでは、御質問の提供ビジョンのコストのこと、それから電子カルテのこと、あわせて御答弁をさせていただきます。
 このビジョンの案の中にも書かれておりますように、ここに掲げてございますいろいろな取り組みにつきましては、例えば法令改正によるもの、あるいは公的補助によるもの、公的融資によるもの、税制による支援、あるいは診療報酬などによる経済的な評価によるもの、また関係団体との共同した取り組みなどを通じて行うものなど、多種でございます。
 中には、例えば広告規制の緩和をしていくというようなものについては、特段の費用が要るものでもないものもございますし、また、費用がかかるものといたしましても、国の支出が伴うもの、あるいは地方などの支出によるもの、また関係業界などの投資によりなされるもの、そしてまた、今後の投資もございますけれども、これまでの投資により今後において大いにその成果が得られるようなもの等もございまして、なかなか、どれぐらいのコストがかかるのかということについてお答えするのが難しいところではございますけれども、例えば予算ベースでお示しするなどの方法もあるかと思いますが、今後の検討課題とさせていただきたいというふうに思っております。
 いずれにいたしましても、今回のビジョン案につきましては、国会における御議論も踏まえまして、医療提供体制の将来像の実現に向けて一歩一歩努力を重ねてまいりたい、このように考えております。
 それから、電子カルテのお話でございますけれども、確かに非常に費用がかかっておる状況でございます。これには、先生御指摘のように、統一的なものをつくれという御指摘もございますけれども、むしろ、電子カルテのソフトウエアの共通化を図っていくとか、あるいは導入、維持コストを低減させるためには、従来から行っておりますけれども、医療用語ですとか、あるいは導入いたしますコードの標準化などの基盤整備を国として進めていくことも大変重要ではないかというふうに考えております。
 今後とも、電子カルテの汎用性あるいは互換性が確保され、コストの低減が図られますように、医療情報関連の学会あるいは産業界に働きかけをしていきたい、このように考えております。
五島委員 コストをどうするのかという問題は、大きな問題ですからこれからも続くので、そこのところはおいておくとして、今の電子カルテの問題ですが、その答弁は大変問題があります。
 というのは、電子カルテの問題というのは、一つはセキュリティーの問題が非常に大事です。患者さんの個々の情報がそこにはすべてある、それが改ざんでもされると大変なことになる、そうした問題が一つ。
 もう一つは、同時に、この電子カルテそのものが、いわゆる根拠のある医療をきちっとやっていく上において重要な資料になっていく、また、患者に対する医療情報を公開していく上においても非常に重要なものであるということを考えた場合、今局長が言われたことは、それに必要な基礎的な整備、その厚生省がまず果たさなければいけないことを果たさないままに、民間に対してIT化IT化、電子カルテ電子カルテやりなさいと言っているんじゃないですか。だから、むだなコストが非常にかかるんです。
 かつてのレインボープランの失敗を厚生省は持っていたけれども、そこまでおっしゃるのなら、厚生省の中でそうしたシステムの開発、ソフトウエアの開発を責任持っておやりになったらどうですか。そして何千枚、何万枚と売ればそれこそ一挙に単価は百分の一ぐらいに下がります、このもの。コンピューターの機械そのもの、ハード部分そのものは非常に安くなっている。問題はほとんどソフトの方です。それが安全でなおかつ効率的で、しかも使いやすい。そういうふうなソフトの開発を厚生省がやったらいい。こんなものは改革のビジョンといって書かれる前に、こういうふうなソフトが開発できます、こういうふうなソフトが開発できました、どうぞ各医療機関お使いくださいという状況をつくられたら、ほっておいたって今のレセプトコンピューターと同じように普及します。
 それをしないで、やれ、やれと言っておれば、税金でもって成り立っている病院だけが公費の導入、税の導入によってやっているというだけのこと。地域医療にとってはほとんど役に立たない、そのことを申し上げておきたいと思います。
 何か反論があればお聞きします。
坂口国務大臣 反論ということでもございませんけれども、電子カルテ等、規制改革等からも急がれているところでございます。
 しかし、今御指摘になりますように、そんなに簡単にできるわけじゃありませんし、財政的な問題もあるわけでございます。また、そのソフトをどうつくり上げていくか。先ほど局長からも答弁ありましたとおり、これは各医療機関で別々の名前やあるいは導入の仕方をしておりましては意味がないわけでありますから、一律にしなければならないわけで、そうした作業も必要でございます。
 しかも、今お話しございましたように、個人情報の問題もあるわけでございまして、総合的にこれらをつくり上げていかなければなりませんので、十六年度中に六〇%まで、こう言われておるわけでございますが、なかなかそうはまいりません。二〇%ぐらい進めばいい方だというふうに思っておりますが、そのぐらいこの問題はちょっと時間をかけながら積み上げていかないと、私はいろいろの間違いを起こすこともあり得るというふうに思います。
 ただ、規制改革だけでこの問題を論じられては困ると私も思っておりまして、決まったことをなぜやらぬかといって私しかられているわけでございますが、少々しかられても手順を踏んでやりたい、こういうふうに思っております。
五島委員 大臣のその御答弁を聞いて、少しは安心しました。その姿勢は貫いていただきたいと思います。
 特に、六〇%が、まあ二〇%ぐらいしかいかぬだろうと。私はそうだろうと思いますし、それらのほとんどが公的病院だろうと思います。そのお金はほとんど税金でいくんだろうなと思います。むだなことだとも思います。やはりそれをやるのであれば、五百床以上の病院あるいは二百床から五百床ぐらいの病院、小病院、それと地域の診療所とが連係して使えるようなシステム、そういうふうなものを競争で各メーカーに厚生省がつくらす、そして厚生省の方も、一定の水準に達しているものに対しては、厚生労働省御推奨でもいいから売れるようにしてやると、メーカーはやりますよ、必死になって。大きなあれですもの。
 だけれども、そうでなくて、今のように個々の医療機関と契約して、あそこの県立病院には四十億円、あそこの病院には五億円と、同じものが何でそんなに違うのかわからぬけれども、個々の契約によって入っているという状況の中では、なかなかそんなものは進まない、むしろ妙なうわさだけが立ってくるということになりかねません。
 その辺について、ぜひ大臣の御決断、規制をやれ、あるいはIT化をやれと言われていることに対しては、IT化をやるについて、全国の医療機関に使えるようなソフトをつくらす、そのためにやはり国の予算として四、五十億円ぐらいの金を出せという話をされた方が私ははるかに進むというふうに思います。
 次の問題に移りたいと思います。
 実は、きょう大臣の方から提案がございました職安法、派遣事業法の改正案、この中では、病院あるいは診療所などの医療機関への医療専門職の派遣は認められないということになっております。しかし、四月二十五日、医療分野における規制改革に関する検討会で、医療従事者の派遣問題についての論議をスタートさせておられます。
 厚労省は、将来医療機関への医療専門職の派遣労働を解禁する、そのために、今回は間に合わなかったけれども、しばらく時間差でおくらせているということなのか。こういうふうな要求があるけれども、これはやはり解禁すべきではない、だから、検討委員会でいろいろ議論するけれども、時間稼ぎをしながら、何としてもこれをつぶそうという思いでやっておられるのか。お伺いしたいと思います。
坂口国務大臣 四月の二十五日につくりましたこの検討会は、これからのいわゆる規制改革、それもいわゆる患者の側から、国民の側から見た医療の規制改革とは一体何かということを御議論いただきたいというふうに思っております。
 今まで、医療の株式会社化でありますとか混合診療でありますとか、どちらかといえば生産者ベースからの規制改革の話が出ているわけでありまして、私は、これは少し違うのではないかというふうに思っております。声高におっしゃる方がございまして、そして何が何でもこの際にやらすんだといってえらい大きな声で言っておみえになる方がございますけれども、ここは毅然として受けないというつもりでおります。
 私は、それはやはり違うと思うんですね。国民の皆さん方に、それによって医療の質を高めるとか、そういうプラスになる面があるのならばそれはいいというふうに思いますが、株式会社化をいたしましても、それは医療費が増大するだけでございます。それを知りながら認めていくということは甚だ無責任であると私は思っている次第であります。
 そうした問題が起こっておりますので、我々の側というよりも、これは国民の側から見た規制改革とは一体どんなことがあるのか、多くの皆さん方が医療に対してどういう規制改革を行えばいいというふうに思っておみえになるのか、そこを御議論いただいて、そして、期間は短いですけれども、六月末にはまた次の問題が出てまいりますので、規制改革なんかの問題が出てまいりますので、それまでに、やはり国民の側から見た、患者の側から見た規制改革とはこういうことがあり得る、こういうことこそすべきであるというお話をそこに出していただきたいというふうに思っている次第でございます。
 その中の一つには、派遣の問題も確かにある。派遣の問題につきましては半歩踏み出していることも事実でございまして、この派遣の問題につきましては、特に看護師さん等の派遣の問題が、これは何とかならないだろうかというふうに私個人も実は思っております。しかし、看護協会等からは非常な反発を受けております。
 しかし、現場から見ますと、例えば産休ならば産休でお休みになりますときに、それにかわるべき人が本当は欲しいわけであります。そうすると、看護師さんを一人雇えば、そのお休みになった産休の方が再び復帰されます場合には一人ふえるということになりますので、それもなかなかできにくいといったような状況があるわけでございますので、そこは派遣業の中で何とかできないか。
 ただし、この派遣業というのは、どういう人を差し向けるかということについてその選択権はないということになっておりますから、病院には病院の一つの考え方があり、そしてその考え方に合った人を雇っているわけでありますので、そこのところは少し条件の緩和をして、その医療機関が自分のところの考え方、医療にマッチした人を雇っていただくということは可能なように何とかできないだろうか、その辺のところを議論してもらいたいというふうに思っている次第でございます。
五島委員 この問題について、病院の経営側、あるいはそこで働いている医療従事者の立場、さまざまなところでいろいろな意見があると思います。しかし、厚生労働省にぜひともきちっとしておいていただきたいと思いますのは、やはり、派遣ということがなされることによって患者さんにとってより有利なのかどうなのか。それは大臣が言われたよりよい医療という問題と結びついてくると思います。そこの観点が貫徹されていない限りは非常に問題が起こってくるだろうというふうに思います。そういう意味では、ぜひその観点を貫いていただきたいというふうに思います。
 とはいえ、今大臣も指摘されたように、世の中の雇用関係というのは、実は法律よりも先行している部分が随分とございます。また、これまでなあなあで来たけれども、どうももうつじつまが合わなくなってきたというふうな問題もたくさんございます。
 例えば医局制度の問題。これまで、医局がやっているのは何なんだ、あれは職業あっせんだというふうに厚労省はおっしゃってきました。だけれども、この三月の十日ですかに全国の自治体病院協議会が三日間の調査でまとめられた調査によりますと、例の研修医制度の変更に伴って四分の一の病院が医局から引き揚げに遭っている。これは自治体病院でもそうです。民間病院は軒並みです。それも医局への返還ではないですよね。ある日突然、そこの病院から隣の病院に移りなさいと医局の命令。医局の医師の派遣と言われているものを、もし厚労省がこれまでどおり職業あっせんという建前で通すとするならば、なぜ自治体病院の二五%で、制度が変わるからということで、こうした医師の異動、引き揚げというものが起こったのか。職業あっせん機関が一たんあっせんした医師、それを動かす権利というのはない。これはまさに職業供給事業をやっているんです。
 直接の経理を医局はとっていない。多くの場合はそれは委任経理でそれぞれの大学の研究費として出していることが多いんでしょう。しかし、間違いなくこれは職業あっせんという範囲を超えている存在として医局がある。この医局の存在、こういう行為というのが法的にどういうふうな形で容認されるのか。大学病院から給料をもらっているわけでもない。
 医師に対するそういうふうなものが起こってきている。これについて一体どう位置づけるのか。これは明らかに職業紹介ではなくて労働者派遣事業あるいは供給事業をやっているということになるし、供給事業をやっているとすれば明らかな違法行為であると言わざるを得ないと思うんですが、それについてどうお考えなのか、お伺いしたいと思います。
 また、時間がありませんのであわせてお聞きしておきますが、医局の一方的な判断で医師が引き揚げられた場合、それによって医療機関あるいは患者さんが損害をこうむった場合、その損害の賠償責任というのは医局側に生じるのか。あるいは、多くの医局が、派遣する場合は二年周期とか一年周期、三年周期という形の契約になっているはずです。その期限の途中で異動した場合に、当然厚生省は、有期労働との関係で、期限満了以前にその雇用を終了した場合に、終了を申し出た方は損害賠償しろと言っているわけですから、その医師なり医局なりが損害賠償の責任を負わないといけないはずです。それについてはどうお考えなのか、お伺いします。
坂口国務大臣 この問題は加藤先生からいろいろと御指摘を受けまして、かなり私は整理はされてきているというふうに思っております。
 私は、医局が何かという問題は大変大きな問題だ。ただ、大学の中の問題ではなくて、日本の医療界全般に与える影響の大きな話だというふうに思っています。法的にどうかというと、医局というのは法的な存在ではないというのが実態だというふうに思いますけれども、法的な存在ではないけれども法的な存在以上に大きな力を発揮しているというふうに思います。医局を解散されるところが最近あちこちから出てまいりまして、大変結構なことだというふうに思っております。
 医局が存在をするということであるならば、それは、医療と教育と研究と今三本柱で考えておみえになるわけでありますが、どちらかといいますと研究中心に回っている。私は、もう一つの大きな柱は、大学病院にとりまして地域医療というものをどう見るかという問題がある。ただし、この地域医療を無視して回っているような気が私はいたします。したがって、ようやく地域でその先生が根づいて、地域の人々からも信頼をされ始めたころに引き揚げさせる。それがその教授が目指しております研究のいわゆる成果をどうするかといったことにやはり結びついている。そうした行き方はやはりまず改めていかなきゃならない。
 それから、派遣業だとか、そうした労働関係の問題を考えます前に、やはり医局そのものの考え方、いわゆる医学教育の中で一番大事にしなければならないものは何かということを、やはり意識改革が私は求められていると思っているところでございます。
 その上で、この医局というものが存在をして、法的にはないかもしれませんけれども、この医局というものが存在をして、そして、その中でどこどこの病院へという話があるときには、やはり医師の自由意思というものが十分に尊重されるということが大前提でありまして、その自由意思が尊重されないということになると、これは大変大きな、法的にも過ちを犯しているというふうに言わざるを得ないというふうに思っております。
 各大学への調査等をいたしました。その結果を見ますと、どの大学も皆、自由意思を尊重していますというふうになっておりますけれども、それは私は、現実は少し違うのではないかというふうに思っております。
 私などがおりましたころと現在とは、皆の考え方も変わってきておりますし、若い人たちの考え方も変わってきていますから、同じだとは思いませんけれども、しかし最近、今お話しになりましたように、研修制度をやろうとすれば次から次へと引き揚げるというような事態が起こってくる。それは、その大学の命令に皆が従っているということでありますから、そうしたことが行われているということは、やはり個人の意思よりも、大学の権威と申しますか、教授の権威というものがかなりまだ強く働いていると思わざるを得ません。
 別に、権威なしにしてしまえと私は申しませんけれども、やはり地域医療というものを尊重する大学病院に変化をしてほしい、そういうふうに思う次第でございます。
五島委員 時間になりましたが、法治国家である日本で法を超えた存在だと言われたのでは仕方ないんですが、いずれにいたしましても、これまでの医局の説明というのは、大臣おっしゃったように、最近は本人の意向を聞いて、単にあっせんしているだけだということで通ってきた。だけれども、今回の異動というのはそうではない。しかも、これが、大学病院に医師がいなくなるから、大学病院に採用するから帰ってこいと言って、本人が了解したというふうな異動じゃないんですね。各医療機関を、Aの病院からBの病院へ、Bの病院からDの病院へというふうな形の異動が一斉に行われて、中には全く、御家族すら知らない間に、もう来週から赴任しないといけないというような話も聞こえてきます。すなわち、昔、大臣が医局におられたころ、あの時代と余り変わっていない制度というのが今でも温存されているということが、私は今回見えたと思うんですね。
 そういう意味では、この医局制度というものが法を超えた存在というようなことではなくて、やはり何らかの形でこの医局のありようというものを現行の法律の中できちっと位置づけ直す、そして、それに伴った形の責任をとれる体制にさせる、そのことが大事じゃないかと思いますので、そのことを申し上げて、時間が参りましたので私の質問を終わります。
中山委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。
    午後零時十三分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時三分開議
中山委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。(山井委員「これは定足に達しているんですか」と呼ぶ)筆頭がオーケーと言いました。筆頭がオーケーと言ったんだから、いいでしょう。
 山井和則君。
山井委員 医療についての一般質疑ということですが、冒頭に、この四月から始まりました障害者の支援費について少しだけ質問をさせていただきたいと思います。
 まず冒頭、坂口大臣にお伺いをしたいと思います。
 四月から支援費制度が導入をされました。御存じのように、ことしの一月、二月には、この支援費制度に対する不安から、当事者の方々の批判の大きな運動というのが起こったわけですけれども、それを経ての四月からの導入でありました。そして、その際、坂口大臣も、この支援費制度で、ホームヘルプサービス上限問題というのがありましたけれども、これはあくまでも国庫補助基準であって、これが上限になることはないということをお約束をされたわけですね。
 ところが、例えばきょうお配りした資料の六ページ目を、ちょっと字が小さいんですけれども、朝日新聞の記事でありますが、見ていただきたいんですが、福祉先進都市として知られる町田市でも、一日二十時間まで認められていた利用が十五時間になったり、一人当たりの時間も二時間から七時間減ったということで、今、集団で異議申し立てということになっております。
 また、例えば福島県の郡山市でも月に二十五時間が上限というように、ある意味で坂口大臣の上限にはならないという発言とは別に、こういうふうなサービスの上限がどんどんできていっているわけであります。
 例えば、千葉県の市川市では、知的障害者の方のホームヘルプは、二百数十人が申請されたわけですけれども、国の国庫補助基準は二十五時間なんですけれども、それどころではなく、月六時間が上限ということになっているわけです。
 これは、必要なサービスを選んで障害者が利用できるという支援費の理念と非常に大きくずれてしまっているというふうに思うわけです。支援費制度は必要なサービスが使えるということではなかったのか、このことについて、坂口大臣のお約束と違うのではないかということと、どのように指導しているのかということをお伺いしたいと思います。
坂口国務大臣 支援費制度につきましては、いろいろとことしの初めにも御議論をいただいたところでございまして、そのときにも申しましたとおり、補助金の交付基準であって、それ以外のものではないということを申し上げたとおりでございます。
 これは市町村にお任せをするわけでありますから、それぞれ市町村でプランをお立ていただいておやりをいただくということになりますので、これは多分一律ではないんだろうというふうに思っております。
 ただ、今回の見直しによりまして、今まで行われていたものが引き下げられるということのないようにというので、そのことは各市町村にお約束を申し上げたところでございます。
 したがいまして、財政的な支援につきましても、昨年行われていたものにつきましては、別途それはそのとおり出させていただきますということを申し上げているところでありまして、私は、財政的な問題でそういうことが起こっているとは思いません。
 したがって、その市独自の考え方として、全体の障害者に対してどういう支援をしていくかというお考えのもとにおやりをいただいているのではないかというふうに思っておりますが、必要ならば、昨年おやりになっていた、いわゆる障害者に対する非常に手厚いところは今後も継続のできるように予算確保をしてあるということを申し上げることはあってもいいというふうに思っております。
山井委員 一月末から二月にかけてあれだけもめて、その中で、サービスの上限にはならないということを、厚生労働省さんそして坂口大臣、お約束されたわけですね。にもかかわらず、四月になると、いとも簡単に、そこらじゅうの市町村で上限が設定されているということは、やはりこれは約束が違うんじゃないか、話が違うんじゃないかということに当然なるわけですね。
 厚生労働省さんの約束というのはそんなに軽いのかということになってきかねないんですけれども、坂口大臣、支援費制度がスタートして一カ月で、こういう現状が実際もうそこらじゅうにあるわけなんですけれども、これをどういうふうにしていかれますか。
坂口国務大臣 市町村にお任せをした以上、市町村が主体的にお考えをいただくことだというふうに思っておりますが、我々が申し上げた趣旨が理解がされていなくて、そして現在、この四月からそういうようなことが行われているというふうに仮定をすれば、それは趣旨徹底がされていないということでありますから、我々は趣旨徹底をしなければならないというふうに思います。
 しかし、厚生労働省が市町村に申し上げていることを十分理解した上で、我が町はこういう方針でいきますというふうにお決めをいただくならば、それは市町村がそういうふうにお決めをいただくわけでありますから、やむを得ないことだというふうに思わざるを得ません。
 我々の言っていることが理解をされていないのならば、理解がされるように趣旨徹底をしたいというふうに思います。
山井委員 当然そのことは、どういうふうに支援費制度の理念を、理念は必要なサービスを本人が選んでその地域で受けられるというのが理念なんですから、理念と市町村の現実が違うわけですよね。それはやはり厚生労働省に、そこはきっちりと指導をリーダーシップを持ってやってもらわないと、私たちはそういう理念でやりましたけれども現実は違いました、あとは市町村にお任せしますということではやはり済まないと思いますので、このことは始まったばかりの制度でありますけれども、ぜひともその理念どおりにいくようにしていただきたいと思います。
 この支援費制度の大きな目的の一つは、地域で、選んだところで生活ができるということであります。そのことに関して、前回の質問の中で、この「もう施設には帰らない」という知的障害者の当事者の方二十一人の肉声をつづった本、グループホームなどで地域に暮らしたいという本を坂口大臣にお渡しをさせていただいたんですけれども、一言で結構ですが、この本を読んでいただいたと思うんですけれども、御感想はいかがでしょうか。
坂口国務大臣 前回ちょうだいをいたしまして、正直言って全部はよう読みませんでしたけれども、前半は読ませていただきました。
 それぞれ障害者の皆さん方が、地域において御苦労をしながら、しかし自立を自分たちでしようと一生懸命おみえになっている、そういう印象を強く受けたわけでありまして、やはり自立をしようという気持ちが最も大事だな、自立を支援していくということが一番大事だということを感じた次第でございます。
山井委員 お忙しい中、読んでいただいてどうもありがとうございます。
 ただ、今、自立の気持ちが大事だとおっしゃったんですが、確かにそれはそうでしょうけれども、それとともに、やはりそれをサポートするサービスが必要なわけですね。例えば、先ほどの市川市のように月に六時間のホームヘルプが上限と言われると、施設から在宅で暮らすことというのはやはり非常に困難なわけですね。
 その自立の気持ちをサポートする具体的なサービス、グループホーム、デイサービス、共同作業所、生活支援のコーディネーター事業、そういうものをセットでぜひともやっていただきたいと思うんです。
 そのようなことを当事者の方も含めて議論する検討会をこれからスタートさせるということをお約束になられていると思うんですが、このことについてまとめてお伺いします。
 この検討会はいつスタートするのか。そして、私は今までから質問の中で、当事者、特に知的障害者の当事者を政策決定の場に入れるというのは国際的な流れでもありますので、知的障害者を入れてほしい、それとともに、今重要になっている地域生活支援事業のコーディネーター、相談員の方も入れるべきであるということを申し上げてきましたが、この点について大臣の御答弁をお願いしたいと思います。
坂口国務大臣 今月中にスタートさせたいというふうに思っております。二十日前後にはでき上がるのではないかというふうに思っておりますが、障害者の皆さん方もその中にお入りをいただく、それから施設の皆さん方もお入りをいただく、第三者的な立場の方もお入りをいただく、三者構成で構成をしたい、そういうふうに思っておる次第でございます。
山井委員 ありがとうございます。
 私が急ぎますのは、来年度概算要求のこともありますから、ぜひとも早くからスタートをしていただきたい。今のお話では、五月二十日ごろにはスタートするんではないかということでした。
 しかし、そのメンバーのことなんですが、今までから申し上げていることですが、知的障害者の当事者本人と、今問題になっている、地域で生活するためにはいろいろなサービスをコーディネートしてもらえる相談員、コーディネーターが必要なんですが、ぜひともそのお二方を入れてほしいということなんです。これについてはいかがでしょうか。
坂口国務大臣 先ほど申しましたように、障害者の団体の代表の皆さん、そうした皆さんにお入りいただくことにしております。それから、事業者というふうに申しましたけれども、いわゆる相談支援、在宅サービス関係者、この皆さん方にもお入りをいただきたい。大体、七名、七名、七名ぐらいなことでお願いをしたいというふうに思っているところでございます。
山井委員 ありがとうございます。
 この本にも書いてありますように、身体障害者の方のニーズと知的障害者の方のニーズはやはり違いますので、ぜひとも知的障害者の当事者の方に入っていただきたいというふうに改めて要望をいたします。
 次に、木村副大臣にお伺いしたいんですが、今後この支援費がどうなっていくかということで、やはり、今回なぜ各地でサービスに上限が設定されているかというと、支援費制度によって、いい意味でニーズが掘り起こされて、自分たちも地域で暮らそう、いろいろなサービスを利用しようという思いがわき出てきているわけですね。そうすると、財源が足りないということになってきます。
 正直言いまして、新障害者プランのグループホームやホームヘルプやいろいろなサービスの目標も少ないですし、また、昨年末に一般財源化されました地域コーディネーター、生活支援事業も非常に先行きが、めどが立たないわけですけれども、このような財源、今後のめどをどのようにしていこうと考えていられますか。
木村副大臣 御指摘の障害者のホームヘルプサービス等の在宅サービスにつきましては、障害者の地域生活を支える重要な事業でございます。そのため、支援費制度の施行状況を踏まえながら、新しい障害者プランに基づき必要な予算の確保に努めてまいりたい、このように思っているような次第でございます。
 また、相談支援事業につきましては、今般、一般財源化に伴いまして、所要の地方財政措置が講じられているところではございますが、相談支援の重要性にかんがみまして、厚生労働省といたしましては、相談支援体制の質的な向上につきまして、特別モデル事業等を活用して支援をしてまいりたい、このように思っております。
山井委員 ぜひとも、その相談支援事業についても、また、来年度の概算要求の中で補助金制度にきっちり戻すべきだと私は思いますし、それが全国津々浦々、すべての自治体で受けられるようにしてほしいと思います。
 そこでなんですが、私の聞いておりますところでは、来年ぐらいまでは支援費制度も財源のめどが立つ、ただし、それ以降、どんどん地域で障害者の方々が生活をしたいということになったら市町村も財政が苦しいということを多くの自治体関係者がおっしゃっておられます。
 そこで一つ提案なんですが、例えば、御存じのように、二〇〇〇年に介護保険が導入されて、介護保険に関する介護サービスは急速にふえております。その急速にふえている介護サービス、例えば、私がたびたび質問しております痴呆性高齢者のグループホームも急速にふえております。その一方では、支援費制度に関する障害者のサービスというのが残念ながら遅々として進んでいないという現状にあります。ここはやはり、支援費制度は財源確保の難しさというものがこれからますますネックになってくると私は思います。
 そこで、二十以上の方の介護保険制度の保険料を納入する人をふやすというタイミングに合わせて、介護保険と支援費制度をドッキングさせる。高齢者のサービスはどんどんふえるけれども、障害者サービスは遅々としてふえないというのでは、これははっきり言って障害者差別にもなりかねないわけですから、そういう財源確保の観点から統合を検討すべきではないか。
 もちろん、高齢者のニーズと障害者の方のニーズは全然違いますから、そのことは修正せねばなりませんけれども、基本的な形として、そういう統合ということを選択肢の一つとして検討すべき時期にもう来ているのではないかと私は思うんですが、坂口大臣、いかがでしょうか。
坂口国務大臣 介護保険の方は五年後見直しということになっておりまして、再来年、平成十七年には見直しをどうするかということを考えなければならないわけでございます。
 それまで、ことしを入れまして三年あるわけでございますが、この障害者の問題につきまして、今後どういうふうに考えていくかということは大変大事な問題でございますし、介護保険が誕生いたしますときにも、障害者の問題も同じにやってはどうかという意見がかなり多かったというふうに記憶をいたしております。しかし、一番中心の障害者の団体の皆さん方が、一緒に介護保険の中に入ることに反対をされたというふうに私は今記憶をいたしております。
 今後それがどうなるのか。皆さん方も、あのときはそういうふうに言ったけれども、しかし、今後のことを考えると、介護保険の中に一緒にしてもらうのがいいというふうに思われるのかどうかということも、一つ大きな要素になってくるというふうに思います。
 しかし、全国津々浦々で障害者に対します介護が行き届いてまいりますと、かなり財政的に厳しくなってまいりますことは、御指摘のとおり、私もそう思うわけであります。したがいまして、将来、介護保険と同じにやっていくという考え方も一つの大きな選択肢であるというふうに私も思っている次第でございます。選択肢の一つでございますが、そのときに、今おっしゃいましたようないわゆる保険年齢の問題等も、多分それは大きな問題になるでしょうし、しかし、それはどれを選ぶかということによるわけでございます。したがいまして、現在のところは、選択肢の一つとしてあるということに私も自覚をしている、その程度にとどめさせていただきたいと思います。
山井委員 今、障害者の当事者団体の方々の反対意見が強いんではないかということですけれども、確かに反対の団体の方々もいらっしゃいますけれども、やはり財源のことを考えると統合する必要があるんではないかという団体の方もまた多いわけでして、そのあたりは、今の高齢者の介護サービスをそのまま障害者に当てはめるというんじゃなくて、障害者のためのサービス、またケアマネジメントを考えるということをきっちりすれば理解は私は得られると思いますので、ぜひとも前向きに、具体的に検討していただければと思っております。
 それでは、医療のことについて、カルテ開示の法制化についてお伺いしたいと思います。
 きょうお配りしました資料、一ページ目を見ていただきたいと思います。三年前に、三年間様子を見るということで法制化を見送ったわけです。そこで、三年たった現状、昨年末にも私、質問しましたが、坂口大臣から、平成十四年の結果が出てくるから、それを見た上でまた議論しましょうということで先送りになって、きょうの質問になったわけですけれども、日常的診療情報の提供を「行っている」が六四%、カルテ開示の申請があった場合「実施している」が八八・六%ということなんですが、続きまして三ページ目を見てもらいますと、私、一番気になっているのは、この回答率が二五%なんですね、この調査のそもそもの回答率が二五%。四つの病院に対して一つの病院しかそもそも回答していない。まあ、常識的に考えて、熱心に取り組んでいる病院が回答しないとは考えにくいわけで、回答していないところは余り熱心じゃないんだと考えるのが普通だと思うんですね。そう考えてみると、三ページ目、グラフをつくりますと、七五%は回答もしないほど意識も低いというふうに考えたら、実際、カルテ開示の請求があった場合にカルテ開示を実施しているということできっちり返答が返ってきたのは、調査したところのたった五分の一程度、二二%にすぎないわけです。
 ここで坂口大臣にお伺いしたいんですが、三年間、自主的な取り組みで、ガイドラインで、指針でやってみるということだったんですけれども、この現状を坂口大臣、どう思われますでしょうか。
坂口国務大臣 今回の平成十三年度のカルテ等の医療情報の提供のための支援事業の調査結果は、今お話しありましたように、全体として八八・六%、これがカルテ開示を実施している病院でございますけれども、お話しのように、回答率二五%ということでございますから、この辺をどう見るかという問題がございます。
 もう一つほかに、平成十二年と十四年に日本看護協会が行いました患者への診療情報提供に関する調査、それから病院における看護職員需給状況調査、これがございまして、それを見ますと、患者の請求に基づく診療記録の開示に関します規定がある病院は、平成十二年では三六・四%でありましたものが、平成十四年には四九・二%というふうに、大体半分ぐらいになってきているということがございます。
 それから、診療録管理に関する調査というのが、東京都の病院協会が行ったものがございますが、これによりますと、患者、家族からの求めがあった場合にカルテを開示している病院は、平成十年には七五%でありましたが、平成十三年には約八〇%に伸びている、こういう結果もあるわけでありまして、それぞれかなり数字は違いますけれども、最近いずれにしても伸びてきていることだけは間違いない、それがどのぐらいのパーセントになっているかはばらつきがある、こういうことだろうというふうに理解をいたしております。
 いずれにいたしましても、八〇%以上のところが現実にあるということならば、それはかなり進んできたなということでございますが、現在の段階ではそこまでも言い切れないところがございますので、もう少し他の調査等も見ながら判断をしたいというふうに思いますが、いずれにいたしましても、一層開示が進むように努力をしなければならないと思っているところでございます。
山井委員 今カルテ開示がそれほど進んでいるとはなかなか言えないというような正直な御答弁もありましたけれども、三年前の、自主的にするから様子を見ようという話にしては、一歩は前進しているけれども、やはり法制化しないと一〇〇%開示にならない。それに、どうしても見せてくれといって、いろいろ、ある意味で信頼関係が壊れたときに、逆に理由も言われずに見せないということですから、本当に見たいときに見せてもらえない。やはり、こういうことでは、本当の意味でのカルテ開示、患者の権利ということにはならないと思うんですね。
 そこで木村副大臣にお伺いしたいんですが、この検討会、今までの議事録も読ませてもらったんですが、要は、六回目の時点までは法制化に賛成の方と反対の方が意見を闘わしておられたわけですけれども、七回目の時点で、ある意味でなぜか事務局の方の判断でガイドラインというたたき台が出てきたわけですね。これはどう理解したらいいんですかね。賛否両論あって、ガイドラインでいこうということは事実上法制化見送りということなんですけれども、この判断はなぜ、だれが下されたんでしょうか。
木村副大臣 カルテ等の診療情報につきましては、現在国会で審議中の個人情報保護法案が成立し施行されれば、医療機関は、患者本人から求めがあった場合には原則として開示をする義務を負うことになるわけでございます。
 ただし、遺族によるカルテ開示の問題など、個人情報保護法の対象とならない部分もあることから、検討会におきましては、そういった部分につきましても、個別法によって対応するためには法制化が必要であるといった意見や、法制化によって強制するよりもまず医療提供者の自主的な取り組みを促進すべきであるといった意見があり、法制化については意見が分かれているところと聞いているわけでございます。
 しかしながら、患者に対しまして診療情報を積極的に開示していくべきであるという基本的な方向性については一致した意見となっておるわけでございます。
 こうしたことを踏まえまして、検討会におきましては、まだ意思決定には至っておりませんが、速やかに診療情報の提供を促進し、また遺族への開示など個人情報保護法案の対象外になっている分野についても対応していくため、まずはガイドラインを策定することによって診療情報の提供を進めることが重要であるとの方向で議論されていると聞いておりまして、今後報告書の取りまとめに向けた議論をお願いすることとしているところではございます。
 なお、御指摘のガイドラインは、第六回検討会におきまして、事務局から、それまでの議論を整理しつつ、その後の議論に資するように論点整理の中でガイドラインの骨子案として提示をしたものでございます。
山井委員 そもそも、経緯を振り返ってみますと、三年、正確に言うと四年前の検討会で法制化の方向が出され、その後、審議会の中で、これは自主的な取り組みで三年間様子を見てみようということになったわけですね。それでも実際にはやはり開示されていないケースというのが非常に多い。その理由もオープンにされていないケースも多い。そういう中で、やはりこれは法制化をする時期に来ていると私は思うんですね。そうしないと、ガイドラインでは実効力もありませんし、また、やはり個別の法律をしっかりつくらないと、カルテの中身そのものを向上させていくことにもつながりにくいと思います。
 そこで、今回衆議院で可決した個人情報保護法の中で、この附帯決議で、ここに書いてあるわけですね。五番目、「医療、金融・信用、情報通信等、国民から高いレベルでの個人情報の保護が求められている分野について、特に適正な取扱いの厳格な実施を確保する必要がある個人情報を保護するための個別法を早急に検討すること。」というふうになっております。
 坂口大臣、こういうふうに今回の個人情報保護法案でも医療がトップに来て、こういう「個別法を早急に検討すること。」というふうになっているわけです。これを受けて厚生労働省としては法制化の検討をするはずのところが、またガイドラインと後戻りしているんですね。坂口大臣、これをどう受けとめられますか、この附帯決議。これは重いと思いますよ。
坂口国務大臣 個人情報保護法案が通った暁におきまして、今後これをどうしていくかという問題が起こるだろうというふうに思いますが、医療の個人情報というのは、このカルテの問題だけではなくて、多方面にわたるだろうというふうに思っております。
 そうした問題を法的に処理していくことが望ましいという御意見が出たということを私もお聞きしているところでございまして、そうした御意見も十分に考慮しながら、今後私たちも考えていきたいというふうに思っております。
山井委員 聞いていると、結局、四年前の検討会の法制化の方向というところから逆に、時代に逆行するようにトーンダウンしてきているわけなんですね。やはり実効力を持たすためには法制化が必要だと思いますので、ぜひともそういう方向性で検討会でも議論をしていただきたいと思います。
 引き続きまして、そのことにも多少は関係するんですけれども、木村副大臣の医療事故に対する発言についてお伺いしたいと思います。
 これは、先日、阿部知子議員もこの委員会で取り上げられましたが、どういう発言かといいますと、司法改革も行われていまして、弁護士がどんどん養成されようとしています、つまり、アメリカのように、医療をネタにして稼いでやろうという非常におかしな人たちがこれからどんどんふえてくる、これは非常に問題のある発言ですが、あえて言わせていただきますというような発言。これに対して、例えば、東京女子医大病院の心臓手術ミスで次女を亡くした平柳利明さんは、医療側のみに立った発言は副大臣としてあってはならないと、抗議の文書を提出された、そして、記者会見では、医療被害者の実態を全くわかっていない、どれだけの人がこの発言に悲しみ、苦しんでいるのか、ほかの被害者とともに副大臣の辞職を求めていきたいということを語られたわけであります。
 私は、この問題はまさに本質的な問題だと思うんですね。木村副大臣、そのことの責任というか、そのことをどう考えておられますか。
木村副大臣 先般もお話を申し上げたのでございますけれども、やはり医療とは、患者と医師の方々との信頼関係、これが基本的に行われるべきものでございまして、このような観点から、医師の臨床研修を必修化して、患者を全人的に理解することができる医師の育成を図ることが必要であると考えておるわけでございまして、患者の皆さん方のつらさや痛みというものをやはり人間として理解できる医師の養成というのが非常に重要である、こういうことを私は言わせていただいたわけでございます。
 一方、昨今のアメリカにおきましては、医療をめぐる訴訟というのが非常に頻発しておりますし、医療現場も萎縮をして防衛的――萎縮医療、防衛医療と言われていますが、になっているわけでございまして、これらのことが検査や医賠責保険料の増大に結びつき、医療費が増嵩する理由の一つにもなっているということが大きな問題として言われているわけでございます。
 我が国におきましては、先ほど申し上げた観点に立った新たな臨床研修を進めることでこのような問題を解決することができる、こういうふうに考えておるところでございまして、まずやはり医師と患者の皆さんとの信頼関係をぜひ築いていただきたいなと、こういうふうに思っているところでございます。
 それで、議員御指摘の、去る四月の十八日に開催をされました臨床研修制度と地域医療に関する懇談会における私の発言でございますけれども、今述べましたように、アメリカの医療に関連して伝えられていることを引用しながら臨床研修の重要性を述べたものでございまして、新しい臨床研修は、医師の個人の技術の向上ということを超えて、患者と医師との望ましい信頼関係をつくることの重要性を身につける場である、このように考えているところでございます。両者の信頼関係をより深めることができれば、訴訟の頻発というのもいささかでも防ぐことができるのではないかなと考えているところでございます。
 そして、不幸にも医療事故が起こり、訴訟を提起されている患者や家族の方々の置かれた状況や心情について十分に理解しているからこそ、このようなことをより一層理解できる医師を育てる臨床研修の重要性について発言をしたものでございまして、また、現在の我が国の司法の状況につき問題があるという発言をしているものでもございませんし、以上のことから、このような、今のような発言についての本当の意味というものをぜひ委員、御理解いただければなと、このように思っているような次第でございます。
山井委員 本当の意味とか、そういう問題じゃないでしょう。医療をネタに稼ぐおかしな人がふえるということを言っているわけじゃないですか。今の発言でも、おわびの一言もないじゃないですか。信頼関係信頼関係とおっしゃいますが、医療事故の被害者の方と副大臣の信頼関係はどうなるんですか。こういう発言をした副大臣を信用できますか。やはり自分の立場をわきまえてほしいと思うんです。一議員を超えて、副大臣なんですから。厚生労働行政のナンバーツーですよ。その方がこういう発言をするということが、どれだけ多くの医療事故の被害者の方、またその方々の権利のために闘っておられる弁護士の方々に憤りと悲しみを与えるのか。
 そして、医療サイドに立ち過ぎているんでないかという批判が出ているわけですね。それで、新聞報道でもありますけれども、一九九五年から二〇〇一年までの七年間に、医療団体の政治団体から一億六千万円の献金を受け取っておられるということ。そして、このカルテ開示の検討会でも反対している医療団体、三つありますけれども、そこからも献金を受け取っている。そういう団体から多額の献金を受けている人が、またこういうまさにそのサイドに立った発言をしてしまう、それで副大臣というものが務まると思われますか。木村副大臣、いかがですか。
木村副大臣 まず、献金につきましては、これは法にのっとって適正に処理しているところでございます。
 それから、先ほどお話がありました被害者のお一人でございます平柳さんとも、先般もお話をさせていただきました。それぞれ、やはりお互いに信頼関係をつくるということが非常に大事であるということを私もお話をさせていただきまして、これからも平柳さんとコンタクトをとらせていただいて、より一層その信頼関係の構築に努めていこうといって、お話し合いをさせていただいたところでございます。
山井委員 こういう被害者の方々というのは、裁判をしたくて裁判をしているわけじゃないわけですよね。カルテ開示をしてくれと言ってもカルテを開示してもらえなかったり、そういうことで、やむにやまれぬ思いで訴訟をされているわけです。
 次にお伺いしたいんですが、またそのほかの新聞報道にありましたが、整骨院の保険請求適正化について、一九九七年に木村副大臣が、適正化はよくないというふうなことを厚生労働省の担当者に言われて、そのことによってその適正化が見送られたということであります。そのことについて、この報道のとおりでしょうか。
木村副大臣 私が、当時、厚生省に何らかの働きかけを行いまして、行政の方針を変更させたという事実はございません。したがって、御指摘の政治献金も、あくまでも一般的な政治献金として受け取ったものでございます。
山井委員 今、働きかけはないということで、否定されたわけですけれども、ということは、毎日新聞のこの報道も、日本経済新聞社の報道も間違いであると否定されるわけですか。
木村副大臣 毎日新聞社の報道につきましては、今、訴訟を準備しているところでございます。
山井委員 間違っているから訴訟をされるんでしょうが、どういう点で間違っているということですか。
木村副大臣 それは訴訟のことにつながりますものですから、この場では控えさせていただきたいなと思っております。
山井委員 働きかけを否定されたわけですけれども、この記事によりますと、内部文書によると、木村副大臣は、「九七年十月二十四日、同省の担当者が通知内容を説明した際、「この案を通すのはだめだ」と反対した。担当者は「(業界と)よく相談しながら進めさせてもらいたい」と理解を求めたが、「この案を押し通すと、社団は分裂する。会長の立場も危ない」「とにかくよろしく頼む。」」と言って、通知案の撤回を求めた。こういう内部文書があるとここに書いてあるんですけれども、こういう事実はないということですか。――いや、木村副大臣に。当事者ですので、もう当事者からお答えいただきます。
木村副大臣 全く身に覚えのないところでございます。
山井委員 それで、実は、この内部文書を見せていただきたいということで、きのう私、質問通告のときにお願いしたら、そういう文書はないということだったんですが、坂口大臣、この文書、ないというのか、まあ、言葉は悪いですけれども隠したのか。これ、あるとここに出ているわけですよね。これ、ないということなんですけれども、これを出していただきたいんですが、坂口大臣、いかがですか。
坂口国務大臣 そういう新聞記事が出ましたので、私の方も調べましたところ、全くそういう内部文書はないということでございます。そこに書いてありますのが、それが厚生労働省の中の内部の文書という意味なのか、他の団体の内部文書ということなのかよくわかりませんけれども、少なくとも、厚生労働省の中にはそうしたものはない、当時の担当者にも確かめましたけれども、ないということでございます。
山井委員 でも、そうしたら、これはもしあったら大変なことになりますよ。というのは、この日経新聞にも、取材に対して、厚生省の担当者は、「「複数の国会議員に説明し、業界の反発が強いという意見が強かったのも一因だった」と説明する。」ということですから、当時、複数の国会議員に説明したとか、そういう資料がやはり残っているわけですよね、何らかの資料が。
 それに、毎日新聞のこの記事にも載っていますように、適正化する前の、五番目までが入ったより厳しい適正化の、このコピーもあるわけですよね。これが、厳しい条項が削られて弱い条項になったわけなんですけれども、要は、この両方の条項が残っているということは、なぜそこが削られたのかという経過説明の資料もあって当然なんですよね。
 坂口大臣、本当にないんですか。
坂口国務大臣 その問題が、その当時議論になったことは確かなようでございます。
 いわゆる整骨院の皆さん方が出されるものの中に、関節の数が非常に、あちらもこちらも傷害を受けているということを出されている、五つも六つもの関節がやられているというようななにがあったというようなことで、果たして本当にそんなに多くの関節が傷害を受けているのであろうかといったような疑問があったというようなことでありまして、そこをどういうふうに対処していくか。一々チェックをするのか、それとも、たくさんあっても、そんなのはもう見ない、見ないといいますか、幾つ以上はもうそれは勘定に入れない、いわゆる丸めていこうという意見等があって、もう四カ所以上は、それはあってももう、おやりいただくのは結構だけれども、四カ所以上は認めないということに決定をしたというのが当時のいきさつであるというふうに聞いております。
 したがいまして、それを決めるにつきましては、業界の皆さん方にも多分いろいろと御相談をしたと思います。あるいはまた、国会内におきましても、いろいろの皆さん方にも御相談をしたということは、それはあるだろうというふうに思っておりますけれども、それによってどうこうということではなくて、全体として、そういうことから決定をしたということであるというふうに私は思っている次第でございます。
 先ほども申しましたように、だれだれに相談をして、そして、こういうふうに決めたというような内部文書はございません。
 例えば、現在もいろいろの法案がございまして、法案を決めますときに、あるいは医療制度改革のときに、医療制度につきましていろいろの先生方に御相談を申し上げたりしているところでございますが、しかし、そうしたものが一々全部、だれだれにいつ幾日御相談を申し上げてこうだったというところまでは記録には多分残っていないと私は思います。
山井委員 私はあるように思うんですが、ぜひ、大臣、もう一回、念のため調査するということをちょっと御答弁いただきたいんですが。これは薬害エイズの問題と同じような話になりますよ。
坂口国務大臣 当時の担当者に聞きましても、そういうことは一切ないと。なぜそういうふうなことが出たのかわからない、こういうふうに言っておりますから、私はないものと思っております。
山井委員 再調査はもうしないんですか。
坂口国務大臣 ほかの人もそういうものを持っているかどうかということは、それは聞くことはやぶさかではございませんけれども、その当時の担当者が持っていないものをほかの分野の人が持っているということは、私はあり得ないというふうに思っている次第でございます。
山井委員 ぜひとも、改めて探していただきたいと思います。
 木村副大臣、働きかけそのものを否定されたわけなんですけれども、働きかけをやはりやっていたというようなことにはならないですか。本当に大丈夫ですか、働きかけしていないということを答弁して、木村副大臣。
木村副大臣 先ほどの答弁のとおりでございます。
山井委員 それで、香川県の接骨師会の山田会長のコメントが日本経済新聞に載っております。「指導の見送りで働いてもらったお礼の献金だった。会員にも説明した上で献金した」ということで、働きかけをしてもらったお礼というふうに会長がもう話しているんですよね。木村副大臣、いかがですか。
木村副大臣 御指摘の政治献金も、役所への働きかけの見返りということではなくて、あくまでも一般的な政治献金として受け取ったものでございます。
山井委員 私、調べたんですけれども、十二月二十五日なんですね。十二月二十五日というのは、この接骨師会が献金するいつもの時期とは違うんです。香川県の自民党の国会議員さんというのは全員顧問になっておられますから献金されているわけなんですけれども、このときに、十二月二十五日に献金を受けているのは、木村副大臣お一人なんですね。これはやはり明らかに、このコメントで言っているように、指導を延ばしてもらった謝礼というふうに理解できないですか。なぜ、十二月二十五日に木村副大臣にだけ献金が行っているわけですか。
木村副大臣 なぜと言われてもよくわかりませんけれども、先ほど答弁のとおりでございます。
山井委員 昨日、質問通告をさせていただいたんですけれども、副大臣就任以降、どのような医療系の団体から、いつ、献金を受けられたかということについてお答えいただきたいと思います。
木村副大臣 御指摘の政治献金につきましては、医療関係団体からのものも含めまして、政治資金規正法等の法令の規定に従い、適正に処理しているところでございます。
山井委員 医療関係団体から幾ら受けたかということをお答えいただけますか。
木村副大臣 今申し上げましたように、適正に処理をしているところでございます。
山井委員 答えになってないんですけれども。医療系団体から受けておられるんですか、イエスなんですか、ノーなんですか。
木村副大臣 医療関係団体からの献金は、適正に処理をしているところでございます。
山井委員 ということは、受け取っているということですね。
 坂口大臣、一年半前の十一月七日の私の質問で、たしか、診療報酬の改定前になると医療系の団体からたくさん献金が行く、やはりそれで診療報酬が左右されているかのような誤解を招くのはよくないということを私が申し上げたときに、坂口大臣は、いわゆる医療系団体の「政治連盟からの献金につきましては、少なくとも私は、この大臣に就任中はどんな形であれ受けないということを決定しているところでございます。」ということをおっしゃっておられるわけです。ところが、今の副大臣の答弁を聞いて、副大臣は受けておられるということなんですが。
 それで、なぜなのかということに関しては、坂口大臣、こうおっしゃっているんですね。
  厚生労働行政というものをお預かりして、そしてこれを担当させていただくということになれば、それはやはり、国民の皆さん方からごらんをいただいて、偏りのない、中立公正な行政にしていかなければならない。そのためには、やはり李下に冠を正さずで、いろいろなところからいただくということは、それは、たとえ自分の気持ちの中でそうではなかったとしても、そういうふうに理解をされる可能性がある。したがって、慎まなければならないというふうに思っている次第でございます。
というふうに、坂口大臣は、十一月、一年半前に答弁をしておられます。
 坂口大臣、こういう副大臣の問題発言、そして、副大臣になってからもそういう団体から献金を受け取っている。それはやはり、患者さんのサイドではない側に立っているんではないかという疑念を持たれている。坂口大臣、こういう現状に対して、いかが思われますか。
 これは、正直言いまして、私は、厚生労働行政全体、この厚生労働委員会全体に対する国民の信頼が著しく低下する問題だと思います。やはり副大臣も在任中はそういう献金を慎むとか、そういうことも必要ではないかと思いますが、坂口大臣、いかがですか。
坂口国務大臣 昨年、たしか御質問を受けたとき、どのような表現の仕方をしたかは忘れましたけれども、今言っていただいたようなことを申し上げたというふうに記憶をいたしております。
 それは医療制度改革をやっている真っ最中の話でございますし、医療制度改革をやっております真っ最中に、医療機関から私が献金を受けるというようなことがあっては、これはやはり、いろいろのことを国民の皆さん方から思われてもやむを得ないということを申し上げたつもりでございます。
 しかし、政治家それぞれの立場がございますし、大臣と副大臣という立場の違いもございますし、それぞれが政治信念に基づいてやっていくというのが政治家それぞれに一つ課せられた生き方だというふうに私は思っておりますから、私は私としての生き方をいたしておりますが、それを他の人にも強要するというものではないだろうというふうに思います。それぞれの政治家がそれぞれの立場でお考えをいただいて、そして、いかなる事態であっても国民のために公平な立場を貫けるという信念のもとにおやりをいただいているだろうというふうに私は思っております。
 私は、気が弱いせいもありまして、そういうことをしていろいろ思われてはいけないということを私は思うもので、それが先に立つものでございますから、そういうことを申し上げたというふうに思っている次第でございます。
山井委員 坂口大臣らしくもない、非常に後退した御発言で、失望をいたしました。
 役割の違いもあるということは、大臣は責任が重いけれども、副大臣はそれほど重くないから、ちょっとぐらいそういう団体から献金を受け取ってもいいということなんでしょうか。
 私は、大臣が一年半前に私の質問に対して答弁されましたように、やはり国民からの誤解を招かない、それだけの高い倫理規範というものが大臣、副大臣には必要とされると思います。
 木村副大臣、そのあたり、副大臣在任中は献金を自粛するとか、そういうふうなことのお考え、お聞かせください。
木村副大臣 政治献金は政治家の活動として法律上認められているものでございまして、私は、政治資金規正法に基づき適正に処理をしているところでございます。
山井委員 そういうふうな答弁しか返ってこないから、こういうふうにいろいろな疑念を受けるわけですね。
 私は、大臣と副大臣というものは、個人としての政治家というものと、政府の代表として答弁する、判断をする、そういう立場をやはり峻別していただきたいと思います。そういう意味では、ぜひとも、大臣、副大臣というお立場の方は、そういういわゆる業界団体の政治団体からの献金は、少なくとも在任中は自粛する、それで国民からの誤解を招かないようにするという倫理規範が私は必要なんではないか。そういうことをきっちりやっていかないと、今回のような暴言、失言、またカルテ開示の法制化の先送りも含めて、やはり国民からの信頼というのがどんどん失墜をしていくと思います。
 最後に、坂口大臣に改めてお伺いしたいと思います。
 こういうふうなより高い倫理規範というものを大臣、副大臣はきっちりつくっていくべきではないか、それが、国民の信頼、また患者さんの信頼、また医療機関の方々からの信頼も得ることになるんではないかということに関して、坂口大臣の御意見をお伺いしたいと思います。
 そして、木村副大臣の御意見も最後にお伺いいたします。
坂口国務大臣 倫理規範を明確にしていかなければならないというのは、御指摘のとおりだというふうに思っております。
 したがいまして、現在進めております厚生行政の中で、国民の皆さん方から見ていただいて、一方的な、各種団体のためにやっているというふうに思われるようなことがあってはならないというふうに思っている次第でございます。そうしたことを念頭に置いて、これから、さまざまな問題がございますけれども、毅然としてやり抜いていきたいというふうに思う次第でございます。
 それぞれの団体から見れば、非常に厳しい内容もあるわけでございまして、おしかりを受けることも、今までも多かったし、これからも多いだろうというふうに覚悟をいたしているところでございます。いかにそういうおしかりを受けようと、百年の計に立ち、そして、国民の皆さん方から見て最も適切だと思う道を選びたいというふうに考えている次第でございます。
木村副大臣 私も、副大臣といたしまして、国務大臣、副大臣及び大臣政務官規範に基づきまして、国民全体の奉仕者として、公共の利益のため、職務を遂行しておるところでございまして、政治献金の有無にかかわりませず、一部の利益のために影響力を行使したことは断じてなく、今後ともあり得ない、このように思っているところでございます。
山井委員 質問を終わらせていただきます。
中山委員長 次に、家西悟君。
 御発言は着席のままで結構でございます。
家西委員 民主党・無所属クラブの家西悟です。
 まず最初に、医療特区について質問をさせていただきます。
 医療分野への株式会社参入は保険対象外の自由診療に限って認めるということで決着されたというふうに伺っておりますが、これまで坂口大臣は、経済的な要因によって医療の裁量がされることについては危惧されるとされ、患者に対するメリットが疑問であると言われて、株式会社の参入については反対の立場をとっておられましたが、このことについては私自身も非常に心配しているわけですけれども、まず具体的にお伺いをしていきたいと思います。
 本年の二月二十七日の坂口大臣の発言で、株式会社を参入をさせる総理の決断について、心の底から納得しているわけではないが、総理の決断である以上お受けすると発言されています。つまり、仕方ないけれども閣僚として協力するということでしょうか。今もこのお気持ちは変わりはないんでしょうか、お尋ね申し上げます。
坂口国務大臣 今お話がありましたように、株式会社を医療制度の中に導入するということによって国民的にそれで本当にプラスが生まれてくるだろうか、規制改革というふうに言われておりますが、株式会社にすることによって多くの国民が医療の質を高めることができるだろうか、そんなことを考えましたときに、私は、株式会社の導入によってプラスの面は生まれないというふうに考えております一人でございます。
 したがいまして、小泉総理に対しましても率直に私の気持ちを述べたところでございます。とりわけ、公的な医療保険制度というものを崩すことになる、それはどうしても避けなければならないということを申し上げたところでございます。
 総理の最終的な決断は、私どものそうした意見を反映させて、公的な医療保険を外したところで、自由診療のところだけ認めよう、こういうことに決断をされたわけでありまして、我々の心配をしておりますこと、そのことについては十分反映されたというふうに思っている次第でございます。
家西委員 それでは、もう一段踏み込んでお尋ねしたいと思うんですけれども、自由診療というのは非常に幅が広いんではないか。最新医療、まだ保険適用外の医療行為というものは自由診療に当たるんでしょうか。例えば歯科診療でいいますと、前歯の差し歯においては自由診療で行ったりもできる、また保険適用もあるというふうに段階がありますけれども、どこまでの枠を自由診療と認めていくおつもりなんでしょうか。これは非常に際限ない話ではないのかなと思えてなりません。
 それから、今後の医療として考えたときに、再生医療というものが期待をされるわけですけれども、こういうものも現時点では保険適用は認めておいでにならない。これも、そういうところで認めるというふうになっていけば、どんどんそっちへ行ってしまう。金のある人、所得、収入のある人、そういう人たちはそういうような最新医療を受けることができるけれども、そうでない人たちはその診療を受けられない。また、現状でいいますと生体肝移植も保険適用外ですので、こういうような人たちはこういうところへ行けばできる、しかしそうでない人たちはできないという現状がありますよね。それがもっともっと拡大していくんじゃないか。私は、日本の医療保険制度というものが根幹から崩れていくんではないかというふうにも思えてなりませんけれども、その辺はいかにお考えでしょうか、大臣。
坂口国務大臣 例えば歯科におきまして、一部に保険を適用し一部は自由診療を行うというところはたくさんあります。しかし、そういうところは、診療報酬でやるところは医療法人で、自由診療のところは株式会社というわけにはいかないわけで、両方おやりになるところは、それはたとえ一部であろうと公的医療保険を使っておみえになるわけでありますから、そういうところは入らない。したがいまして、自由診療というのは、その言葉の示しますとおり、公的な医療保険の適用のないところというふうに理解をしていただいていいのではないか。私もそういうふうに理解をいたしております。診療報酬の適用になれば、そこは株式会社の範囲から外れるというふうに理解をいたしております。
家西委員 ということは、完全に自由診療でない限りは認められない、一部でも保険診療が重なっているようなものは認めないと理解してよろしいんでしょうか。
坂口国務大臣 そのように理解をいたしております。
家西委員 ありがとうございました。
 私はなぜこういうことを心配するのかと申しますと、一例を挙げますと、一九八三年当時、米国で血液製剤が非加熱から加熱へかわった当時、まあ日本の保険とは全然違うわけですけれども、アメリカの民間保険の関係で、所得の高い人ほどいい保険を掛けることができる、そのためにより安全と言われる加熱製剤への切りかえができ、そうでない人たちは、安全であるという血液製剤があるのにもかかわらず、非加熱の血液製剤を使用しなければならなかったというような話も聞いているわけです。このようなことがあってはならないというふうに思うから、この特区については非常に心配をしています。
 それと同時に、もうかる医療しかやらないというふうになっていくんではないか。すなわち、差益の大きい診療しかやらないというふうになっていくんではないか。それは、株式ということを考えたときに、株主への配当、株式会社の役員としての責務は株主に対して配当を出さなきゃならない、利益を一円でも上げなければならないということになってくるから当然そういうことが起こるであろうということを考えたときに、医療特区というものは非常に危険性をはらんでいるし、また医療の格差というものを発生させるんではないかという危惧をしてまいりました。
 しかし、今お聞きをすると、自由診療であると。あくまでも自由診療、完全に自由診療であって、例えば風邪であろうと何であろうと、この人は自由診療でというふうになれば、それはそれでいいわけですよね、保険を使わないわけですから。それに一千万円かけようが幾らかけようが、それは自由だというふうな話かなというふうに理解をしました。それで間違いないでしょうか。
坂口国務大臣 ちょっと、今おっしゃった趣旨、十分に理解できなかったわけでございますが、先ほど申しましたとおり、自由診療しか行わない医療機関、ここを対象とするということでございまして、保険を適用することはやらない医療機関というふうに理解をいたしております。
家西委員 では、もう一度具体的にお聞きしたい。それはどんな診療、治療また疾病を対象とされるんでしょうか。
篠崎政府参考人 今先生からいろいろ御指摘をいただきましたけれども、株式会社の医療参入につきましては、御指摘の点も含めてさまざまな懸念が指摘されているところでございます。六月中に成案を得てということになっておりますので、今後、各方面の御意見も聞きながら、慎重に検討を進めていきたいと考えております。
家西委員 俗に言う透析なんかがその対象になるのかなと。透析なんかはよくもうかるとか、いろいろな話がありますよね。そういうのを自由診療として認めていくのかなというふうにも思う部分と、これも費用の問題等々でなかなか難しいんだろうとは思いますけれども。
 しかし、どの範囲までが自由診療となるのかなというのが非常に見えない、わからない。六月中には答申を出されるということですので、そのときを待ってまた御質問したいと思いますけれども、同じ疾患でありながら、片や治る、片や治らないというようなことにならないような診療体制だけはつくっていただきたいな、守っていただきたいなという思いをお伝え申し上げたいと思います。
 それでは、続きましてSARSの問題について御質問をさせていただきたいと思うんですけれども、五月七日付の世界での感染者数は六千七百二十七名、死者は四百七十八名になったというふうにWHOは報告をしているわけですけれども、日本には今の時点では疑い例はあるけれども、SARSの患者は発生はないというふうにお聞きしていますけれども、これは事実でしょうか。
坂口国務大臣 そのように理解をしていただいてよろしいかと思います。全国の医療機関から、いわゆる疑い例、可能性例というものは日々報告をされているわけでございますが、それらの例はすべて抗生物質がよく効いたといったようなことがございまして、すべて疑い例そして可能性例から排除されて、それは一般の病気であったということになっているわけでございます。
 これは、週刊誌等で、隠しているのではないかというような記事が出ていたりいたしますけれども、日本の国の中でそうしたことができるわけがないわけでありますし、どこかで発生をすれば必ずそれは我々も発表をいたしますし、そして、その周辺の皆さん方にもこれは御注意をいただかなければならないわけでありますから、そうしなければその周辺に広がるわけでありまして、もし隠すようなことがあれば重大な結果をもたらすことは当然でございます。全くそういうことはございません。
家西委員 週刊誌が出ていたということは、私は今初耳です。しかし、その疑念というものは私も持っています、持っていました。
 なぜならば、HIV、エイズ感染者に関して、一九八五年当時、第一号患者、血友病Bの患者に対して、これはHIV、エイズではないというふうに報告され、日本には患者はいないと当時言われていました。そして、第一号はニューヨーク在住で日本へ帰ってきた同性愛者の方だというふうに言われ、数年後に、第一号は血友病のB患者であったというふうに言われたわけです。こういうようなことがあるんではないかというふうに疑念を抱かれても仕方がないんじゃないか。過去においてそういうことを実際にやられたのは、何を隠そう日本の厚生省じゃないですか。私は、そういうふうに疑いを持たれるのは当たり前じゃないのかというふうに思います。
 ぜひとも、今大臣にそこまで強く御発言いただいたわけですから、ないものと信じますけれども、後になってそういうことがないことを祈りたいなというふうにも思います。
 それでは、続けて次の質問をさせていただきます。
 四月二十五日現在で、各都道府県の行動計画について、約四割の自治体がまだ作成していないというふうな報道がなされていましたけれども、現時点においてどのような状況になっているんでしょうか。御説明いただけますでしょうか。
高原政府参考人 まず、その行動計画についてでございますが、昨日までにすべての都道府県において策定を終了しております。
 それから、大臣の答弁の中の、詳細に申し上げますと、疑い例が累計で四十六件ございます。そのうち、疑いがほぼ完全に否定された件数が四十三件。それで、専門委員会の審査予定件数が三件ございます。御案内のように、疑い例というのは可能性例に比べて軽いレベルでございますし、これも私どもが聞いている限りにおきまして、五月三日に二例、これは二例とも症状は軽快、経過観察中、五月六日一例、症状は軽快、経過観察中、この三例につきましては、精密に申し上げますと完全に委員会で否定はされておりませんが、可能性は極めて薄いというふうに考えております。
家西委員 極めて低いということで、今の時点では特定はしていない、特定した患者はいないけれども、極めて少ないというふうにとらえていいんだろうと思います。
 それでは、四月二十六日の報道で、京都版におきまして、京都府知事は、厚生労働省の態度を、方針を示さず地方に丸投げと批判をし、都道府県に行動計画の作成を示すだけで、国として指針を何ら示さないというような批判をした、そしてそれを申し入れをしたというような報道記事がありました。これについていかがお考えなんでしょうか、この京都府知事の批判について。
坂口国務大臣 京都府知事がどういうことをおっしゃったのかということはよくわかりません。
 いわゆるアクションプログラムというものを各都道府県でぜひつくっていただきたい、それは、もし仮に患者が発生をしたということを仮定いたしました場合に、その人たちをどのように搬送するか、そしてどこの病院へ連れていくか、そしてその患者さんの周辺の皆さん方に対してどういう手を打つかといったようなことについて、マニュアルを示しながら、それぞれの地域でひとつお考えをいただきたいということを申し上げたわけであります。
 基本を示しながら、それぞれの地域に見合ったようにそれは対応をしていただかざるを得ないわけでございます。京都ならば京都において、いわゆる陰圧式の病院がどことどこに存在をする、その病院に対してどういうお願いをするといったようなことは、それぞれの地域でなければわからないことでありますから、わかっておりますことにつきまして、基本的なことにつきましては国が示し、そして、それぞれの地域でおやりをいただくことは地域にお願いをしなければならない、私は当然のことだというふうに思っております。
 したがいまして、それぞれの地域でやるということを指して丸投げだというふうにおっしゃったのなら、それは少し違うんではないでしょうか。それぞれの地方においてお願いをしなければならない問題もありますよということを私は率直に申し上げたいと思います。
家西委員 そのようにおっしゃいますけれども、感染症予防医療法の第十一条だと思うのですけれども、「厚生労働大臣は、感染症のうち、特に総合的に予防のための施策を推進する必要があるものとして厚生省令で定めるものについて、当該感染症に係る原因の究明、発生の予防及びまん延防止、医療の提供、研究開発の推進、国際的な連携その他当該感染症に応じた予防の総合的な推進を図るための指針を作成し、公表するものとする。」という、具体的にここまで書いておいでです。今の時点で厚生省の、多分二十六日の時点でこの指針が出ていないということで、京都府知事は批判をされたんではないかなというふうに私は推測します。その点はいかがでしょうか。
坂口国務大臣 指針という形になっているいないは別にいたしまして、かなり具体的に私たちは示しているつもりでございます。
 各都道府県におきます陰圧のベッドにつきましても、初めは一けたしかないぐらい大変な少ないベッド数でございましたけれども、各都道府県にお願いをいたしまして、現在では五百ベッドを上回っているわけでございまして、非常に多くのベッド数の整備をしていただいたというふうに思っております。
 そうしたこともお願いを申し上げ、また搬送途中においてはどういうふうにしなければならないかというようなこともお示しを申し上げ、また関係者にお集まりをいただいての講習等も行ったりもいたしているところでございまして、国内におきます予防体制につきましては、着々と行っているところでございます。
家西委員 私は先ほど言いましたように、この指針、十一条に該当するのではないかということ、指針を作成し公表するというものがないからということと具体的に申し上げたわけですけれども、指針ではなくていろいろなものを出してきているというふうに大臣はおっしゃいますので、そうなのかなと。
 しかし、十一条にはちゃんと「作成し、公表するものとする。」と、具体的にそこまで書いているわけですから、それは早く出さないと法に反しているのではないかなというふうにも思います。
 それともう一点、各都道府県がいろいろおっしゃるのは、やはり、ベッドも先ほど言われましたけれども、それと患者の搬送に関して、救急車の問題。アイソレーターと言われるカプセル型のストレッチャーというか担架というのか知りませんけれども、この問題について、一台五百万とも五百二十万円とも言われていますし、そして、特殊救急車においては二千万円からする、こういう予算措置を各都道府県でやれとおっしゃるのかということも含めて、言われているのではないのか。何か予算的措置は国としてお考えにならないのかということは、いかがでしょうか。
高原政府参考人 感染症法に基づきます都道府県等に対する予算措置でございますが、患者移送等の保健所業務に係る費用につきましては、国二分の一、都道府県二分の一という形で、二分の一の国庫補助を行っております。
 それから、SARS患者を感染症法に基づく新感染症として扱った場合の医療費でございますが、これは、国費が四分の三、都道府県が四分の一で、四分の三の補助を行っております。
 それから、防護服とかゴーグル等々の、委員御質問のような医療提供に必要な備品の購入費でございますが、これは、国二分の一、都道府県二分の一を補助対象としてきたところでございます。
 また、今回のSARSへの対応を踏まえまして、新たに患者移送用陰圧装置及び感染症病室簡易陰圧装置を補助対象に追加することとしたものでございまして、移送用自動車につきましては、各自治体ごとに一台を原則とはしておりますが、各自治体の実情に応じて複数台数の補助も認める方針でございます。
坂口国務大臣 先ほどの指針の問題でございますけれども、もう一つは、病気の実態というものがもう少しわからないものですから。
 大体、指針は、病気の状況というのがわかって、この病気に対してはどういう手を打つかということを出すわけでありますので、指針という名前では現在出せる状況にない、こういうことでございます。
家西委員 そうおっしゃっていただくと非常にわかりよいので、まだ国内で発生しているわけではないので、そこがわからない、それと感染源の特定もできていないということで、そのように指針という形ではなかなか出しにくいというふうにおっしゃるのなら、これは理解ができます。
 時間が残り少なくなりました。あわせてお尋ねしたい点が幾つかあります。
 一つは、マンパワーの問題です。
 一つ例を挙げるとするならば、東京の国際医療センターのACCと呼吸器内科が連帯しておやりになるというふうに伺っております。しかし、既存のHIV診療はいかになるのでしょうか。もし国内で発生した場合、国際医療センターのACC、エイズ治療開発センターのスタッフがそこへ行ってしまうと、既存の診療はいかになるのでしょうか。そういうような問題が起こってくる。人的に補充するというようなこともお考えいただけるんでしょうか。
 それと同時に、クアラルンプールでしたか、大臣が行かれたのは。クアラルンプールでの会議で、まず第一例が発生した場合の情報の公開、そして情報収集、そういったものが非常に大事であるというような趣旨のことを記者会見でお述べになられたように記憶をしておりますけれども、私もこれは非常に情報公開が必要ではないか、そして情報収集をしながらやっていくことが大事ではないかというふうに考えているわけですけれども、それが感染症の蔓延を防止し、予防していく最大の力になるのではないかということを考えているわけです。
 そして、人権の問題というものも、ここは非常に悩ましい問題かもしれませんけれども、考えていただかないといけない。とかく、こういった問題が起こると、社会防衛が先行し、人権というものはないがしろ、後回しにされてしまう。こういったことがあってはならないというふうに思います。
 そのためにも、私は、経験者であるHIV感染者やハンセン病の人たちの意見をしっかり聞きながら蔓延防止のための施策をとっていただきたい。そして、そうすることが予防につながっていくのではないか、蔓延を防止していくことにつながっていくのではないかというふうに期待をしております。その点について大臣、いかがお考えでしょうか。お尋ね申し上げます。
坂口国務大臣 幾つかのお話がございまして、一つは、国内で発生したときにどこで治療を受けるのかということでございますが、いわゆる四十七都道府県それぞれに陰圧の病室が完成をいたしておりますので、それぞれの都道府県のそうした病院にまずお入りをいただくということだろうというふうに思っております。
 その病院のスタッフの状況にもよりますけれども、もし人手が少ないというようなことがありました場合には、国立病院等、他の病院からそこにお手伝いに行くという体制をとっております。
 そうはいいますものの、例えば大阪の泉佐野病院でございますか、こうしたところには、関空も近いということがあるわけでございますけれども、心配をされて多くの皆さんが押しかけておみえになる、中には夜間にもお見えになるといったようなことで、四月も後半だけで七十名ぐらいの方がお見えになったということをお聞きいたしております。皆さん方も非常に関心が高く、そして積極的に診察を受けるということをしていただいているというふうに思っているところでございます。人手不足が起こっているということもあるわけでございますが、そこをどうするかというようなことも考えているところでございます。
 それから、クアラルンプールで申しましたとおり、いずれにいたしましても、病人さんにとりましても初期の段階の治療が大事でございますが、発生を抑制するという意味からいたしましても、一番最初、スタートのところの人が出ましたときに早く手を打つということが大事でございますので、そういうふうにしたいと思っております。
 人権問題につきましても、クアラルンプールでも、やはり人権も十分に考えていかなければならないということを私も主張したところでございまして、その辺も十分に配慮していきたいというふうに考えているところでございます。
家西委員 時間が来ましたけれども、私は情報公開が非常に必要だと思っています。
 それとあわせて、薬害C型肝炎の問題で、フィブリノゲンの七千四医療機関名の公表を私は求めたい。求めていますけれども、それに対して厚労は拒否をされました。これも感染症法で言う四類に入っているわけです、ウイルス性肝炎。蔓延防止のためにもこの情報公開をすべきと思います。最後に、大臣いかがでしょうか。それだけお聞きして、私の質問を終わります。
坂口国務大臣 C型肝炎、B型肝炎の問題は、これは特定の病院で特定の血液製剤を使った人だけに出ているわけではございません。もっと幅広く、戦後からこちらに手術をお受けになったような皆さん方も含めて、これは考えなければならない問題でございます。したがって、特定の病院だけを発表いたしましても、私は意味は余り大きくないと。
 それよりも、全国的に、今まで手術をお受けになりました方、あるいはまたいろいろの血液疾患等の皆さん方であれば、可能性としてはあるわけでございますから、その皆さん方にできるだけ多く、予防と申しますか、健康診断をお受けいただくということが大事ということでございまして、積極的に健康診断を進めていきたいというふうに思っているところでございます。
家西委員 終わりますけれども、最後に大臣、ウイルス性肝炎というものは四類ですよ、新感染症法でいう。そして、国民の生命を考えるならば、やはり病院名ぐらいは公表していいんじゃないですか。それだけを申し上げて、終わります。
中山委員長 次に、武山百合子君。
武山委員 自由党の武山百合子です。きょうは一般質疑ということで、私は臓器移植を中心にお聞きしたいと思います。
 新聞の中で、特に生体肝移植、この提供した死亡者の記事が大変大きく取り上げられました。国内の生体肝移植は、脳死移植がなかなか実現しない中、重い肝臓病に苦しむ子供たちを助けたいとの理念で始まったわけでございます。今回事故を起こした京都大学は、二千三百例に上る生体肝移植のうち九百例を占める、本当に最も多い実績を持つ国内外の牽引役でもあったと言われております。この件に関して、今後の政府の対応をまず大臣からお聞かせいただきたいと思います。
坂口国務大臣 京都大学の例として、先日、これは新聞で私も拝見したところでございますが、大変残念な例でございまして、せっかく肝移植をされて、そして提供されたお母さんの方がお亡くなりになったというお話を聞いているところでございます。
 どういう状況であったかということをつまびらかに存じておりませんけれども、京都は大変実績も多いし、そして今までそうした失敗例もなかったといったようなことでございますので、そうした意味では大変先進的な大学病院であり医療機関であるというふうに思っている次第でございます。
 どういう状況であったかということも、一度よくお聞きをしたいというふうに思っております。これは大学病院でございますから、管轄といたしましては文部科学省でございますけれども、我々もその状況というのはよくお聞きをして将来に備えたいというふうに思っている次第でございます。
武山委員 本当に数日前のことで、きのうできょうでというのは大変難しい、事故防止のための具体的なものは何かあるかといいましてもなかなか難しいかと思いますけれども、今のお話につけ加えて、何か今まで臓器移植問題に関してはずっと議論されてきておるものですから、今まで脳死というものをきちっと決めて、その判定の結果、移植ということになっておるわけですけれども、このように生体肝移植というのは、提供者の死亡というのは初めてだったわけです。
 今後の事故防止のためには、きのうできょうということは大変難しいですけれども、具体的にと聞きましても答えられないかもしれませんけれども、何かぴんときたものがありますでしょうか、大臣は。ぜひその辺をお聞かせいただきたいと思います。
坂口国務大臣 そこはお許しをいただきたいと思いますが、私も専門家ではございませんし、率直に言って、そこまではよくわかりません。何が原因でお亡くなりになったのかということは私も承知をいたしておりません。
 したがいまして、そこは一度よく勉強させていただいて、そして、その原因をやはり大学病院自身がどのようにお考えになっているかということをお聞きして我々も勉強をしたい、そういうふうに思っております。
武山委員 次回の一般質問のときにはぜひこの続きもやりたいと思いますので、ぜひその辺も詰めておいていただきたいと思います。
 それでは次に入りますけれども、まず根本的に、提供者の健康な体にメスを入れるというような大変危険な手術なわけですね。これは、もうやむなく行われているというのが現状でございます。脳死移植が進んでいないということがこの理由なんですけれども、臓器移植が、法案が上がりまして、実際に法律どおり行われるようになりましてまさに五年半たつわけですけれども、この期間に脳死という数が大変少なく、進んでいないというのも現状なわけですよね。
 この進んでいないという理由に対して、実際には脳死移植というものが法律としてできておりますけれども、このはざまで実際は進んでいない。しかし、こういうことが起きるというこの原因が、やはり進んでいないということに問題の根本はあるわけなんですね、脳死移植というものが進んでいないというところに。もう五年もたってこういう問題が起こった、すなわちこの状況に対して、厚生労働省としては臓器移植に対してどんな方向で進めていくのか、今のままで進めていくのか、その辺の見解を聞きたいと思います。
坂口国務大臣 臓器移植の問題は、党派を超えましてそれぞれ賛成の立場、反対の立場がございまして、この法律ができますときには議員立法で提出をされまして、そしてそれぞれが党の立場を超えて賛否を明らかにして決めたというような経過をたどった法律でございます。そういう意味では、この法律は、今までできました法律の中でも最も珍しい形ででき上がった法律でございます。
 脳死を人の死とするかどうかという最も根幹にかかわりますところにつきましても、意見の分かれるところでございます。私のような立場でございますと、脳死は人の死だ、こういうふうに思うわけでございますが、しかし、そうではないとおっしゃる方もあるような実態でございますから、国民的な合意というものが完全に得られた状況かどうかということは、もう少し時間がたたないといけないのかもしれないというふうに思っております。
 しかし、五年を経過したわけでございまして、この五年間の間にドナーとして登録をしていただいた方も大変ふえてきていることも事実でございますから、その皆さん方との問題をこれからどうしていくかということも含めまして、さまざまな角度からこれから議論をしていかなければならないというふうに思っております。
 いずれにいたしましても、この問題は余り急ぎましてもこれはいけないわけでありまして、しっかりと議論を重ねながら、これからどうするかをお互いに決めていかなければならないというふうに思っている次第でございます。
武山委員 大臣からの今のお話を聞きますと、余り急いでもだめだということですけれども、でも、現実には本当に、十五歳未満の子供に関しては臓器の提供の意思が認められていないというのが今本当に現実なんですよね。それでそのまま来ておるわけですけれども、それでは、片や仕方なく死を待たないといけないということにもなるかと思うんですよね。片や、そういうところに意見をきちっと表明しないことによって、亡くなっても仕方ない、それで海外に行かざるを得ない、それもしようがない、そういうふうに考えられる節もあるわけですよね。ですから、その辺はどういうふうにしてその溝を埋めていくのか。
 やはり一九九七年に、五年半前この臓器移植法が施行されて、相変わらず移植の医療が定着しているようには見えないというふうに思っているわけです。アメリカでは年間二万人の人が移植手術で救われているんですよね。ですから、このことは、移植が特別なことではないということも、海外では、ある国では一般の医療行為として定着しているわけですけれども、日本ではそれは違う。せいぜい二百人程度。日本では年間二百人程度、うち心臓死からの腎臓移植が百二十四例だということで、全盛期の四割程度だということで、本当に二百人程度の人しか助かっていないというのが現実なんですね。
 ですから、この現実を本当に、拙速ではいけない、ではどうするのか。仕方ない、あきらめてくれという意味なんでしょうか。その辺はっきりしていただきたいと思います。完璧に、ほぼ全員の国民が理解してからこれを進めていく、それは不可能な話だと思います。ですから、その溝はどう埋めていかれるおつもりなのか、その辺の認識をぜひお示しいただきたいと思います。
木村副大臣 先生御指摘のお気持ちもよく理解できるわけでございますけれども、一方で、この臓器移植に関しましてはさまざまな議論がございます。
 御承知のように、国会におきましても、この場合は我が党におきましても党議拘束を外し、それぞれの党におきましてもいろいろな考え方があったわけでございまして、そういう中をああいう形で、議員立法という形で法案が成立をした。
 これからやはり一歩一歩、今先生がおっしゃったようないろいろなさまざまな溝があろうと思います。例えばカードの問題とか、あるいは十五歳以下の問題とか判定の問題とか、本当に問題は多岐にわたるわけでございますけれども、これは今大臣が申し上げましたように拙速を避けてやはり一つ一つ、一歩一歩固めていく以外にはないのではないかな、そう思えてならないような次第でございます。
武山委員 そうしますと、では、とうとい命を失っても仕方がないというふうにもとれるんですけれども、そういう意味にもとれてもよろしいんでしょうか。
木村副大臣 先生御指摘のところはまさにそのとおりでございまして、まさに脳死は人の死かどうかという、その辺からこの議論が大きく始まったわけでございまして、脳死が、本当に生存がこれから可能になるんだろうか、あるいは、いや、そのまま死に行ってしまうんだろうか、そういうところから大きくこの議論がスタートしたわけでございます。
 ですから、そのことを考えますと、これは、私は素人でございますから、本当にその辺の箴言的な意味は十分になかなか理解できないところもございますけれども、やはりそれぞれの方々におきましてもいろいろなさまざまな議論がある、慎重にしていかなければいけないところではないかな、こう思えてならない次第でございます。
武山委員 国の責任としては、それは非常に無責任だと思いますよ。脳死は人の死として、あのとき賛成が過半数を得てそれでスタートしたわけですから、脳死はもう人の死として認められたわけですよ。そこまで認めていない人に今そこまで説明しろという段階は、もうとっくに過ぎたんですよ。
 ですから、そこから、人の死として認めて臓器移植が行われる段階になっているわけです。それはもう敢然と過半数を得て、国会で国民の代表である者が人の死として認めたわけですよ。それを、過半数じゃない、いわゆる半数いかなかった人、人の死と認めなかった人にまでまた説明もして何もしてというのは、そこには大変、努力はしちゃいけないということはないですけれども、人の死として認めて、それで移植をする方々に対する努力というのに軸足を置いておくべきだと思いますけれども、そうじゃないでしょうか。それをいまもう一度副大臣にお答え願いたいと思います。
    〔委員長退席、宮腰委員長代理着席〕
木村副大臣 先生がおっしゃるとおり、確かに国会では多数決で決まったわけでございます。しかし、国民の皆様の中には、これはそれぞれの国民の皆さんお一人お一人がどのように受けとめているか、そういうことがやはり大変重要なことでございまして、そこで、例えば提供していただく方には本人の意思確認というようなプロセスがつけ加えられているわけでございまして、こういうこと一つをとってみても、なかなかこの点、国民の皆さんがすべてウエルカムであるというようなところまでは、まだまだ日本の国民の皆さんの理解が進んでいないのではないかな、こう思えてならないわけでございます。
 この点は、これからも地道な努力の中から国民の皆さん方の理解を深め、先生がおっしゃったようなことが十分できるような方々がもっとたくさん出てきて、そしてこの協力体制ができてくれば、諸外国に引けをとらないような体制が徐々にでき上がっていくのではないかな、そのように思えてならない次第でございます。
武山委員 これは、いわゆる政府が出した法律ではありません。今大臣が冒頭に説明なさったように、いわゆる議員立法で出てきたものですけれども、今のお話ですと、過半数を得た法律というのはいっぱいあるわけですよ。力ずくでも過半数を得て、行け行けどんどんで強行して採決した、そういう法案だってあるわけですよ。
 ですから、それはそれで結果的にはそういうことになったわけですから、国民の代表である国会で決めたことですから、過半数をとった法律というのはどんどん行われるわけですよ。これだって過半数をとったわけですよ。過半数をとったわけですから、過半数をとったことに対しての責任というのは国会が持つべきだと思いますよ。ですから、国会がそれを進めていくということが順当だと思います。
 ですから、そこで今お話しのように、それでは子供の移植はどうするか、臓器提供のいわゆるドナーカードはどうするか、そういうものに今軸足が移っているわけですよ。ですから、過半数に満たなかった人の部分というのは、今そういう暇はないと思いますよ、実際にもう亡くなってしまうわけですから。
 ですから、移植をどう正確な判定をして、本当にきちっとした移植制度に育てていくかということを今軸足の方に置いたと思います。ですから、過半数に満たなかった人の、脳死を人の死かどうかという議論はもう一つクリアしているわけですよ。ですから、今は、一つは、過半数を得た、脳死は人の死として認めた。それでは、人の死として認めたけれども、実際は移植が進んでいない。そして、脳死を人の死として出てこない。それで、このたびの、数日前の五月五日の京都大学の例は、脳死を人の死として出てこないから、お母さんの一部を移植したということですよね。
 ですから、生きている者の健康な体にメスをつけるというのは大変なことなわけですね。それは国民ほぼわかっていると思いますよ。できればそういう元気な体に、リスクが物すごい多いわけですから、メスをつけたくないわけですよ。ですから、そこを、脳死は人の死として認めたら、それを提供していく、その提供されたものを移植していくというのがこの法律の趣旨なわけですよね。
 ですから、今おっしゃったような軸足じゃないと思います。私、その軸足は違うと思います、副大臣の軸足は。
木村副大臣 脳死は直ちに人の死とするということに、これは単純にアプリオリにいかないわけでございまして、脳死の判定につきましては、本人の書面による意思の表示、自分の意思の表示でございますね、それからプラス、遺族の承諾がある場合に限って脳死を人の死とする、こういう前提条件がつけられているわけでございます。
 ですから、今言ったような本人の書面による意思表示と遺族の承諾というこの二つの関門をクリアして初めて脳死は人の死でございまして、単なる脳死イコール人の死というようなところにストレートにいかないという現実に今度の法律の中身があるわけでございまして、これはやはり相当国民の皆様の意識が広がっていかない限り、直ちに欧米のような、広範な臓器移植が行われるようになるには、もう少しやはりこの辺の理解が深まっていかないとならないのではないかな、そういうことで先生に申し上げたわけでございます。
武山委員 副大臣、私、百も承知でそれは質問しているんです。今おっしゃったことは百も承知で質問しているんです。それは当たり前のことです。そういうふうにみんなで決めたわけじゃないですか。そんなの当たり前のことなんです。当たり前のことをきちっと進めていくということなんですよね。当たり前のことなんです、それは。
 ですから、では、なぜ脳死が少ないのか。きちっと判定をして、それで親族の同意をきちっと得る、それは当たり前のことなんです。そこまで大変なことをやってきたわけですよ。それはもう、今おっしゃったことなんて百も承知で私は質問しているんです。ですから、その上に立って進めていかなきゃいけないということなんですね。
 それでは、先ほど議論はあれですけれども、いわゆる十五歳未満の子供に対して、これは現実に行われていないわけですよね。子供の、いわゆる十五歳未満の脳死というのは認められていないわけですよ。みんな海外に行って、本当に大変な思いをして、一億以上のお金を国民から集めて、大変な思いをして行っているんです。
 そういう思いに対して、どうそういう人たちに対して説得するんでしょうか。どうぞ集めて行ってくださいということなんでしょうか。それに対して国から援助があるわけじゃないし、他国には他国で、もう移植を待っている人もいるわけですよね。そこに入り込むわけです。そういう中途半端な厚生労働省の対応ではだめなんですよ。それに対してどう説明するんでしょうか。
木村副大臣 先生も十分御理解をいただいていることでございますけれども、我が国の臓器移植法におきましては、脳死下での臓器提供に際しまして、提供者本人の意思を尊重するとされているところでございます。このため、先生が御指摘の十五歳未満の方々からの臓器提供につきましては、法案審議のときの国会における議論を踏まえまして、民法上、遺言が可能となる年齢も考慮して、運用上認められていないところでございます。
 その結果、体の小さな子供への心臓等の移植を国内で実施することは困難な状況になっているわけでございますが、この問題につきましては、脳死下での臓器移植に際しまして、本人の意思表示の必要性をどこまで厳格に考えるかという制度の根幹にかかわるものでございまして、さまざまに見解が分かれていることから、実情を十分に踏まえた国民的な議論が行われるべきものと考えているところでございます。
 法案の成立時におきましても、議員一人一人の判断にゆだねる形で採決が行われたという経緯もあることから、今後、国会を初めとした各界での御議論を踏まえて対応をしてまいりたい、このように思っているような次第でございます。
武山委員 もう臓器を提供したくない人はいいんですよ、したくないというんですから。したい人が現実にいるわけですよ。もう脳死は人の死だと理解して、それで、これを提供したい。健康であれば、交通事故で亡くなったり、ましてや若くして亡くなった場合、もし自分の家族の一部の臓器がどなたか困っている子供なり大人なりに行くことによって、またそこでよみがえる。これはそういう方々を対象にした法律なんです。したくない人は、別にそれはもう論外なんですよね。ですから、臓器を提供したいという人を対象にしてやっているわけなんです。
 ですから、各界各層で大いに議論はしてもらって結構ですけれども、全然わからない人まで議論してもらう必要はないわけですよ。そんな時間をかけている暇はないわけですよ、日々刻々と子供は亡くなっているわけですから。
 ですから、移植医療推進という室があるわけですよね、臓器移植対策室に。この臓器移植対策室では何を、どんなことをしているんでしょうか。
坂口国務大臣 臓器移植対策室におきましては、臓器移植に関するより効果的な普及啓蒙を行う。あるいはまた、臓器提供者の意思の取り扱いに関する論点を整理する。あるいはまた、臓器提供に際しまして、本人の提供の意思を生かすためにどういうふうにするか、すなわちカードの取り扱いについて。あるいはまた、その中で、臓器提供施設は今のままでよいか、もう少しふやす必要はないか。それから、効果的、安定的、効率的なあっせんの確保、いわゆるコーディネーター業務について考えていくことはないか。それから、費用負担につきまして、現在のままでいいか、もう少し考えられないか。それから、組織移植であるとか細胞移植につきまして、公平公正なあっせんの確保についてどうするかといったようなこと、こうしたことを今議論しているということでございます。
武山委員 本当に、書いたものを読まなきゃわからないような状態なわけですよね。悲しいかな、人間の命は地球よりも重いと言いながら、書いたものを読まないとわからないような現状なわけですよね。
 本当に、大変な思いをして、日本の法律に阻まれて、手術が不可能で、幾つもの困難を乗り越えて海外に渡って移植手術を待とうとしている人たちを政府はただ傍観するだけだと思うんですよね。何もしないのかとやはり国民は怒るわけですよ、その関係者は。
 それでは、海外に移植を希望するしかないということにやはり考えざるを得ないわけですけれども、政府はただそういう方々を傍観するだけのように私は見えますけれども、今、国民の貴重な税金を使って、本当に移植医療、救われる人を現実的に、本当に物すごいたくさんいるんですよね、今、厚生労働省がもたもたしている間に、移植でしか助からない病気で苦しんでいる人たちが。
 例を挙げてみます。まず、人工透析を受けて命をつないでいる腎臓病の人、二十二万人もいるんですよ。年一万人のペースでふえ続けているんです。そして、この人たちの健康保険料、年間一兆円に達する勢いで医療費がふえているんですね。そして、この透析の治療、本当に時間を費やして、週二回とか三回とか行っているわけですね。もしこの人たちに本当に質の高い人生を生かしてあげたいというならば、やはり移植しかないわけですよ。ですから、これは脳死からの移植がふえないと救えないわけなんです。
 こういういわゆる透析患者がどんどんふえているわけなんですけれども、それでは、こういう方々はただ透析するだけでいいという発想なんでしょうか。こういう方々も移植を待っているわけなんですね。ひどい状態で待っているわけなんですよ。透析しながらも、移植ができないで亡くなっていく方も物すごい多いんですね。
 ですから、こういうものに対して、相変わらず先ほどのような答えであったら、希望も夢もなくなっちゃうじゃないですか。そこはやはり国の厚生労働行政として、国民に希望や夢を与える、そういう最も国民の安全と生命を守ると百万遍日々繰り返して言っているわけですから、本当に移植を進める、脳死の判定をきちっとやって進める、これをどう進めたらいいかということをもっと具体的に、数値目標も決めて進めていくことが大事だと思いますけれども、こういうことでもう仕方ないということで進めるということなんでしょうか。その辺は、ぜひもっと具体的な答えを聞きたいと思います。
坂口国務大臣 最初にも申しましたとおり、これは議員立法としてでき上がったものでございます。したがいまして、昨年あたりから、議員間で、もう一度考え直そうというので、いろいろの議論が出ていることも事実でございまして、お子さんの問題につきましても、この際に考えようというので、多くの議員の皆さんがお集まりになりまして、議論をしていただいているところでもございます。そうしたことを踏まえて、これから取り組んでいくということになるだろうというふうに考えております。
 確かに、海外に多くの皆さん方が出かけられるということもあるわけでございまして、それでは、海外では人の臓器をもらっていいけれども、日本の国の臓器はもらったらだめなのかというような議論も起こるわけでありまして、そうしたことも我々も十分に考えていかなければならないというふうに思っております。
 しかし、この臓器移植ということに対して国民的な合意というものが十分に得られているかどうかということになりますと、これはなかなか、日本人の物の考え方にもよりますけれども、そう簡単でもないというふうに思います。
 例えば、亡くなった皆さん方の解剖をすること一つをとりましても、なかなか御家族からいい返事をいただけない。亡くなった場合には、もう少し多くの人の解剖を行って、そして、どこに原因があったかを明らかにして、これからの医療に役立てたいというふうに大学病院等は思うわけでございますが、しかし、それもなかなか進まないというような日本の実情、すなわち、人の体にメスを入れるということに対する抵抗というのが非常に強いというふうに思っております。
 したがいまして、脳死は人の死というふうにもう確定をしたといたしましても、まだ、機械であれ、それによって呼吸をさせている状況の中で、その人の体にさらにメスを入れて、そして提供をするということに御家族が非常に強い抵抗を示されるということも、これはあり得るわけでありまして、その辺に対する御理解も得ながら前に進まないといけない問題だというふうに思っております。
 現在も、もう既にこれは扉を開かれているわけでありますから、多くの皆さん方が御参加をいただけるということになれば、さらにもっと進めるということでございます。
 問題は、お子さんの問題をどうするか、ここはまだ閉ざされたままでございますので、どうするかということでございましょう。このお子さんの問題につきましても、一番最初のときにも大変な議論でございましたけれども、そのときの世間全体の動きといたしましても、お子さんの場合には、それは外すべきだという御意見が非常に圧倒的に多かったといったようなことから、外されたというふうに記憶をいたしております。
 そうしたことも含めて、国民的な動向も十分に考慮に入れてやっていかないといけない問題だというふうに思っている次第でございます。
武山委員 先日、厚生労働省に、移植が必要な患者数を問い合わせたところ、把握していないということなんですよね。臓器移植を必要としている患者の実数、これをぜひ教えていただきたいと思います。臓器移植ネットワークに登録している人数じゃないんですね、実際に移植が必要な人の数をぜひ教えていただきたいと思います。
 こういう把握もしていないということは、厚生労働省自身が積極的にかかわっていないというふうにもとられるんですね。社会の現実はそうであるけれども、厚生労働省はそういう数は把握しているというんであれば、それは一生懸命やっているということはわかりますけれども、数も把握していないということになりますと、では何をやっているのかということになるかと思うんですね。ですから、実際に必要な、すなわち、移植が必要だ、移植しか助からないという人の数は把握していますでしょうか。
木村副大臣 登録の実数は把握してございます。
武山委員 ですから、そこなんですね。登録している人数ではなくて、実際にもう移植しか助からないという人がいるかと思うんですよ。ですから、登録と実際に助からないという人の数は違うと思うんですよ、知らない人もいますし。そういうのがきちっと、病院からかどこからか、そういうデータが出てこないとわからないわけですよ。ぜひそういう数も把握した上で対応していただきたいと思います。
 それで、移植が必要な小さな子供たちの数がどれだけあるのかということもきちっと、登録されているかされていないかじゃなくて、実際に本当に移植をしなければもう亡くなってしまうという、どれだけの数が移植を必要としているか、それは登録されているかされていないかということの問題じゃないと思うんですね。この数は、ぜひ厚生省が把握していただきたいと思います。
 それで、最後になりますけれども、まず、もし厚生労働大臣の坂口大臣のお子さんが心臓移植しか助からない病気とわかったら、ぜひ知らせていただきたいと思います。日本で静かに死を待ちますか、それとも海外に活路を求めますか、やはり最後にこれは質問したいと思います。そのお答えをいただいて、終わりにいたします。
坂口国務大臣 娘がどう判断するかでございまして、私の意思ではなくて、本人の意思に従いたいと思います。
武山委員 いえ、その娘というか子供、息子というか、自分の意思で確認できないお子さんを持った場合という質問です。そういう場合、親が決めなきゃいけないと思うんですよ、そのお答えを。それはもう二十になりましたら娘の意思かと思いますけれども、子供の、十五歳未満の場合はやはり親の意思だと思います。その質問に対してのお答えです。
 以上です。ぜひ答えだけいただきたいと思います。
宮腰委員長代理 もう時間は終わっておりますよ。
武山委員 その一つだけぜひお答えいただきたいと思います。
坂口国務大臣 病状にもよると思いますしいたしますから、一概に言えないというふうに思いますが、もうそれ以外に助かる道はないということになれば、それは親の気持ちとして、どなたかやはり提供してくれる人があればというふうに思うのは心情だと私も思っております。
武山委員 終わります。
宮腰委員長代理 次に、小沢和秋君。
小沢(和)委員 四月三十日付の毎日新聞に、木村義雄厚生労働副大臣が、九七年当時、整骨院、接骨院の保険請求適正化についての厚生省の指導を業界からの働きかけで見送らせたと報道されております。先ほどの同僚議員の質問に続いて、私もこの問題で若干お尋ねをいたします。
 その記事によると、当時の厚生省が整骨院、接骨院の治療の診療報酬請求に負傷の原因を具体的に詳しく記載するよう指導する通知の原案を作成し、九七年十月二十四日に省の担当者が政務次官経験者である木村議員に説明したところ、同議員がこの案を通すのはだめだと反対し、とにかくよろしく頼むと通知案の撤回を求めたとされております。記事には、このときに担当者が示したという当時の厚生省の通知原案が写真で示されております。
 私は昨日、この記事に掲載された通知原案と実際に出した通知の両方を示してほしいと厚労省に要望したところ、ここにある二つの文書をいただきました。どちらも「柔道整復師の施術に係る療養費の算定基準の実施上の留意事項の一部改正について(通知)」となっております。原案には「五、」があって、そこに負傷の原因、発生状況を記載するように指示している部分が実際の通知では削られております。
 この二つの文書を比較すれば、毎日の報道どおりの経緯でこの部分が削られたのではないかと思いますが、まず保険局長、いかがですか。
真野政府参考人 柔道整復等に係ります療養費につきましては、平成九年四月十七日付の通知によりまして算定基準を明確化したところでございますが、同年十二月一日付でその通知の一部を改正いたしております。その間、関係団体との調整を行っておりまして、関係団体との調整の結果、そういうふうになったということでございます。
小沢(和)委員 今局長は関係団体との調整の結果とだけ言われたんですが、先ほどの大臣の答弁では、要するに、業界の意見も聞き、複数の議員にも説明したが、いろいろな意見があったのでこの通知を出すのを見送った、私はそういう説明だったというふうに理解をしております。この答弁で、原案ができた段階で少なくとも何人かの議員に説明し、意見を聞いたということははっきりしたわけであります。
 大臣にお尋ねしますが、この議員の中には木村議員は含まれておりますか。
坂口国務大臣 私が申し上げましたのは、法案等をつくりますときに、あるいはまた一つのことを決定いたしますときに、それは関係団体の折衝もいたしますけれども、やはり国会の先生方の御意見も聞くということが、これは常時行われていることだということを申し上げたわけでありまして、そういう意味からいえば、恐らくその当時も、私はそのときおりませんから全くわかりませんけれども、多分、関係の業界にもいろいろお話をしたし、国会の先生方にもいろいろとお話を伺っただろう。それは多くの皆さん方の御意見を多分伺っているというふうに私は想像をいたします。それ以上のことは私にはわかりません。
小沢(和)委員 では、局長にお尋ねします。
 今の大臣のお話では、一般論としてだけれども、こういうような場合には担当者が議員のところを回ると言われたんですが、当時回りましたか。そして、回ったとすればその中に木村議員はおりましたか。おったとすればどういう意見を述べましたか。
真野政府参考人 説明先、説明状況につきましては不詳でございまして、事実関係についてははっきりいたしておりません。私どもとしては、当時の担当者その他にもお聞きをいたしましたけれども、どういうところに説明をし、どういう状況であったかということについてははっきりしないということでございます。
小沢(和)委員 それはもうまことに奇怪な話ですね。大体そういうようなものはみんな記録で残っているものですよ。
 だから私、その次の問題でお尋ねをしますが、さらに本日付の毎日新聞には、保険請求適正化の指導の見送りについて、厚生省が内部的にはその段階で指導見送りを決めていたのに、保険者側からのなぜ負傷原因を書かせないのかとの疑問の声をかわすため、対外的には引き続き検討を続けていることに口裏を合わせたとの報道がされております。報道は、内部文書の内容を紹介し、「十一月二十一日、社団会長と手打ち式終了。負傷原因(の指導)を除き、十二月一日通知。国会議員には社団で対応する」と、その間の経過を赤裸々に報じております。この内部文書について毎日新聞が厚労省医療課に問い合わせをしたところ、公式の文書の内容ではないのでコメントは差し控えたいと述べたといいます。
 これは、そういう内部文書があることは認めた上で、公式ではないからコメントできない、こういうふうに言ったんじゃないんですか。
真野政府参考人 先ほど大臣からもお答え申し上げましたように、そういう内部文書は、私ども、調査をいたしましたけれども、存在はないということを確認いたしております。
小沢(和)委員 だから、これもまことに奇怪な話だということですね。
 鈴木宗男議員のときには、一つ一つ、外務省などが鈴木議員のところに足を運んで説明して、どういうやりとりが行われたかというその経過の詳細が文書として残っておったわけです。私は、そういう記録をつくるのが省庁の普通のやり方ではないかと思うのですが、お尋ねしますが、厚労省にはこういうような事務の処理のやり方というのは一切ないんですか。
真野政府参考人 先ほど来大臣が申し上げておりますように、事案によりまして、もちろんいろいろな方面に御説明をし、御意見をお伺いいたします。それにつきまして、文書で上司に報告しなければならないという場合もございますし、それはケースごとであります。
 ただ、今回御指摘のような報道されたような文書については、私ども、調査の結果、それは存在していないということでございます。
小沢(和)委員 厚生省はかつて、あれはエイズの文書でしたか、ないないと言っておったのが結局出てきたという前科があるわけですよ。だから私、これも必ずあるんじゃないかというふうににらんでいるわけですが、大臣に重ねてお尋ねをしますが、そもそもそういう内部文書は探してもなかったということを大臣も言われたのですが、もしこれが後になって探して出てきたら、大臣はどういう責任をとりますか。
坂口国務大臣 当時の担当者がないというふうに言います以上、私もそれ以上探しようがないわけでありまして、私は、そういう文書が新聞に出たものですから、では新聞に出るというのは一体どういうことなのか、そういう文書をだれかが持っているのかと言ったら、いや、一切ないということでございますから、私はないというふうに判断する以外にありません。
小沢(和)委員 私は、それらしい文書じゃないかと思うのを実を言うと見せられたことがあるんですよ。だから私、あるんじゃないかというふうに言っているんです。だから、この問題についてはもう一度調査をして、次回の委員会でもいいですから、ひとつお答えをいただきたいということです。
 次の質問ですけれども、毎日新聞などの報道で重大なのは、木村議員が厚生省に通すのはだめだとこの通知案を撤回させた直後の九七年十二月二十五日に、香川県接骨師政治連盟から五十万円の献金を受け取っているというふうに報じられております。これは、木村議員の資金管理団体である国際政経研究会の資金報告書にもそのとおり記載されております。この献金について、四月三十日付の日本経済新聞夕刊記事では、香川県接骨師会の会長が「指導の見送りで働いてもらったお礼の献金だった。会員にも説明した上で献金した」との報道を載せております。これも木村副大臣がこの問題で働きかけたことの有力な証言ではないかと思うんです。
 きょうは幸い副大臣お見えですから、当時実際にそういうような原案を持ってあなたのところに説明に来たということがあったのかなかったのか、あったとすれば、あなたはそのときどういう意見を述べられたのか、御本人に直接もう一度聞きます。
木村副大臣 身に覚えのないことでございます。
小沢(和)委員 身に覚えがないというのは、もう一度お尋ねしますけれども、そういう原案を持って部屋を訪ねてみえたということ自体がなかったんですか。それとも、あったことはあったけれども、あなたがこういう発言をしたということはなかったという意味で身に覚えがないのか、どっちですか。
木村副大臣 原案を見たこともございません。
小沢(和)委員 これはやがてどちらが正しかったかということは明らかになるだろうということは私は申し上げておきたいと思います。
 先ほどから木村副大臣は、政治資金はすべて適切に処理している、つまり、もらっているがちゃんと届け出ている、こういう趣旨のことを言っておられますけれども、それが何かの便宜を図った見返りであれば受託収賄になることがあり得るというのが、昨年の鈴木宗男議員の事件以来明白になっていることだということを私、この機会に指摘をしておきたいと思います。
 木村議員の資金管理団体の収支報告を見ますと、九七年以降に整骨、接骨関係団体からの献金が始まったことを確認できます。九五、九六年までは、この業界から木村議員に対する政治献金やパーティー券の購入は全くありませんでした。ところが、九七年に香川県接骨師政治連盟が行った五十万円の献金を皮切りに、翌年から業界団体からの献金やパーティー券購入が始まっております。九八年には、栃木県柔道整復師政治連盟から三十五万円の献金がされ、日本柔道整復師連盟が三十万円のパーティー券を購入しております。
 二〇〇〇年には日本柔道整復師連盟が三百万円もの巨額の献金をしております。この献金についてはもう一つ重大な問題があります。献金の日時が六月二十日。二〇〇〇年六月二十日といえば、我々が洗礼を受けた衆議院選挙の投票直前だったということであり、このこと自体が公職選挙法違反の疑い濃厚と言うことができると思います。
 そして、おかしなことに、翌年には業界団体からの献金やパーティー券購入はぱったりと途絶えております。もし柔道整復師連盟が木村議員の政治的立場や識見を支持して献金したのであれば、その後も続かなければ理に合わないんじゃないでしょうか。ある時期にだけ特定の業界団体から巨額の献金が集中したということになれば、その献金は木村議員が何らかの特定の貢献をその時期に行ったことに対する見返り、今回は保険請求適正化の指導を見送らせたお礼というふうにこの一連の献金を考えるのが自然じゃないかと思いますが、もう一度お尋ねします。
木村副大臣 御指摘の政治献金も、役所への働きかけの見返りということではなく、あくまでも一般的な政治献金として受け取ったものでございまして、適正に処理をしてございます。
小沢(和)委員 木村議員の場合には、この柔道整復師連盟等からの献金にとどまりません。毎日新聞の記事にもあるとおり、日本医師連盟や日本薬業政治連盟、製薬産業政治連盟等の医療関係団体から、九五年から〇一年までの六年間に計一億六千万円もの巨額の資金提供を献金とパーティー券購入の形で受けております。こうした献金によって業界団体と結びついた政治家が政務次官や副大臣という行政の責任ある地位についていることは、国民の生命や健康を守るための許認可行政を数多く行っている厚生労働行政をゆがめることにならないか、今回の事例はその一つではないかと思いますが、大臣はどうお考えでしょうか。大臣、どうお考えですか。
坂口国務大臣 先ほども申し上げましたとおり、大臣であります私はやはりその重責というものを痛感いたしておりまして、とりわけ昨年来の医療制度改革、積極的に進めた間でございますから、私は、医療全体の献金は受けない、こういう信念でやっているところでございます。それぞれが信念を持って政治に対応しているわけでございますから、木村大臣は木村大臣としての信念を持って対応をしておみえになるということだろうというふうに思っております。
小沢(和)委員 木村副大臣は、司法改革に関連しても、アメリカのような医療をネタにして稼いでやろうという非常におかしな人たちがふえてくると、弁護士を侮辱するような発言をしたとも報じられております。これも先ほど指摘をされました。これらのことが事実なら、木村議員は少なくとも厚生労働副大臣という地位にふさわしくないと私は考えます。
 きょうは時間の関係でこの程度にしますが、まだまだ問題が解明されたとは言えません。厚生労働行政に対する国民の信頼にかかわる問題でありますから、本委員会として事実を徹底的に究明すべきであります。この問題についての集中審議を委員長にお願いしておきます。いかがですか。
宮腰委員長代理 委員長は今ちょっと席を外しておりまして、委員長に報告はしておきます。
小沢(和)委員 では、次の問題に移ります。
 次に、私が本委員会で昨年再三取り上げました自宅療養中のALS患者の問題でお尋ねをします。
 多くの患者の家族は長年の介護で疲れ切っております。患者団体も、訪問看護体制を充実させてほしいと切実な声を上げております。
 特に私は、ALS患者を介護するヘルパーがたんを吸引できるようにしなければ介護保険の活用が実際上できないことを再三本委員会で指摘し、その改善を求めてまいりました。先日の新聞報道では、ようやく、看護師等によるALS患者の在宅療養支援に関する分科会が政府に対し、ヘルパーのたん吸引を認める方向で意見を出したと聞いております。自宅療養中のALS患者と家族たちは、一日も早くこれが実施されるように待ち望んでおりますが、これまでの検討結果と実施の見通しについてお尋ねをいたします。
篠崎政府参考人 御指摘の検討会、二月の三日に第一回の会を持ちまして以来、月に二回以上の頻度で開催をしてまいりまして、直近の四月の二十二日に第七回の会をいたしました。
 その時点での話でございますけれども、たんの吸引行為が医療行為であるということを前提として、そして、医師及び訪問看護師により実施されること、これが原則ということといたしました上で、患者家族が現実にたんの吸引行為を行っておりますし、その負担が過重となっている、そういう現状にかんがみまして、一定の条件のもとで家族以外の者がたんの吸引を行うことも、特例的な当面の措置としてやむを得ないのではないかというような大筋の方向で議論が収れんされているところでございます。
 最終的な報告書の取りまとめは次回五月十三日を予定いたしておりますけれども、そこで取りまとめられる報告書を踏まえまして、適切に対処していきたいと考えております。
小沢(和)委員 次に、三月末に発表された医療抜本改革案についてお尋ねをします。
 一番注目された高齢者の医療制度は、六十五歳以上をその対象とするが、特に七十五歳以上を後期高齢者医療保険とすることとし、ここに公費負担五割を集中することが最大の目玉になっております。
 これまで老人保健制度では、七十歳以上に対し三割の公費負担を行っていたことから見れば、七十五歳以上への公費五割はかなり思い切った改善のように思われます。しかし、国保全体に対する国庫負担は、削減されたとはいえ、今でも給付費の五割を出しております。後期高齢者保険で公費五割とすれば、医療費総額に対しては四割強にしかなりません。むしろ、鳴り物入りで新設する後期高齢者保険の方が国保全体より国庫負担率が低いということになりはしませんか。
 現に、昨年十二月厚労省が発表した試案Bでは、国庫負担が四千億円減ることになっております。少なくとも公費五割でなく国の負担五割としなければ、大騒ぎしたが国庫負担は減っていたというおかしな結果になるんじゃないでしょうか。
坂口国務大臣 これは、今後の高齢者の増加等を考えますと、その額がどれだけになるかということでございまして、ただ単にパーセントではいかないところだというふうに思います。高齢化がさらに進んでいきますから、いわゆる国庫負担というものはだんだんこれからふえていくということだけは間違いがないというふうに思っております。
 ただ、今御指摘になりましたように、公費負担はいわゆる給付費の五割ということでございまして、患者負担を医療費の、例えばでございますが、例えば一割というふうにいたしますと、医療費ベースでは四五%というふうに言われましたけれども、そういう計算になるだろうというふうに思っております。したがいまして、公費負担は給付費の五割ということを我々は申しているところでございます。
小沢(和)委員 だから、私が言いたいのは、もっと国が、絶対額で今後ふえるのは、これはもう当然そう思うんですが、パーセントでも思い切って出す決断をしなければ、今の医療の関係のいろいろな矛盾は解決できないという気持ちを込めて言ったわけであります。
 次の質問ですけれども、後期高齢者の保険ではっきりしておりますのは、七十五歳以上の被保険者全員から保険料を徴収することであります。昨年の厚労省の試案につけられている試算Bによりますと、七十五歳以上一人当たり年間八・七万円の保険料となっております。現行制度では一人当たり年間六・二万円になっているので、二・四万円の負担増となります。
 一方、この四月から年金額は史上初めて引き下げられております。どうしてこのように後期高齢者の負担を大幅にふやすことが現役世代との均衡を考慮した適切な保険料負担と言えるんでしょうか。
坂口国務大臣 その辺のところをどうするかは、これから検討を重ねたいというふうに思っております。まだ二、三年かけてこれは検討するわけでございまして、今のところ、そこは決まっているわけではございません。これからひとつその辺を決めていきたいというふうに思っておりますが、いずれにいたしましても、お若い皆さん方にどれだけ負担をしてもらうかということがあるわけでありまして、後期高齢者だけではなくて、前期高齢者の方にもこれは御負担をいただかなければならないわけでございます、お若い世代に。
 六十五歳から七十四歳未満の前期高齢者のところと七十五歳以上の後期高齢者のところを比較いたしますと、やはり前期高齢者の方が人数も多くなりまして、一人当たりの医療費は後期高齢者の方が高いんですけれども、前期高齢者の方が低いんですけれども、しかし、七十五歳以上のところは人数がだんだん減っていくものですから、前期高齢者のところの方がさらに額としては多くかかるということでございまして、これに対しましても、お若い皆さん方の御支持をお願い申し上げなければならないということでございます。
 したがって、お若い皆さん方にこれからいろいろ御負担をいただくということになりますと、やはり高齢者の皆さん方も応分の御負担はいただかないことにはこれはならないだろう、お若い人にだけ御負担をかけるというわけにはいかないだろうというふうに思っているところでございます。その辺の割合をどうするかということをこれから決めていかなければならないというふうに思っている次第でございます。
小沢(和)委員 今、これまでは被扶養者として保険料を徴収されなかった人を含め、七十五歳以上の被保険者全員が新たに保険料を徴収されることになると指摘をしましたが、七十五歳未満の被扶養者はどうなるか。六十五歳以上七十五歳未満の高齢者は、今後も従来どおり国保や被用者保険に加入するわけですが、各保険者間での医療費の負担調整などの対象になります。このようなことを口実に、六十五歳以上の被扶養者からも保険料を新たに徴収することになるのではないでしょうか。
 今回の案が実現すると、新たに保険料を取られる人が相当ふえるというふうに思いますが、どれぐらいふえるんでしょうか。
坂口国務大臣 どれぐらいふえるかは、これから検討しなきゃならない問題でございまして、今明らかに言うことはできません。
 ただ、若年者がだんだんと減って、高齢者がどんどんとふえていくわけであります。そして、高齢者の医療費が若い人の四倍から五倍あるということでございますから、全体の医療費が膨らんでいることだけは事実でございます。それをどのようにしてお互いに負担し合うかという話でありまして、お若い皆さん方の保険料を少なくし、高齢者の負担もまた少なくしということになれば、それは国庫負担から出す以外にない。国庫負担から出すということになれば、税金でお願いをする以外にない。
 いずれにいたしましても、国民の皆さん方にお願いをしなければならないことになるわけでありますから、そこは保険料としてどうお互いに賄うか。税は税としながらも、保険料は保険料としてどうそこを賄っていくかということに最大の知恵を絞らなければならないというふうに思っている次第でございます。
小沢(和)委員 私が直接お尋ねしたのは、被用者保険に加入している人の扶養家族ですね。その人たちは、これまではいわゆる保険料の徴収の対象にならなかった。それが、七十五歳以上の後期高齢者の保険については支払うようになるというんですが、では、六十五歳から七十五歳までの被雇用者の扶養家族だった人はどうなるか、それもお金を取るようになるんじゃないんですかということを聞いたんですが、その点はどうでしょう。
坂口国務大臣 それはわかってお聞きになっていると思いますが、やはり応分の御負担をいただかなければならない。若い人にみんな出してほしいというわけにはいかないだろう。
 だから、応分の負担と言っておりますのは、高齢者といえども高額所得者もいるわけでありますから、その皆さん方には応分の御負担をいただかなければならないというふうに思っているわけであります。そうしませんと、お若い皆さん方がみんな負担をしなきゃならないということになるわけでありまして、やはり高齢者といえども、所得のあります以上は負担をする。私などももうすぐその年齢になるわけでありまして、これはやはり所得があれば負担をするということを当然だというふうに思っております。小沢議員もよく似たお年だというふうに思いますから、応分の御負担はやはりいただかなければならない、そういうふうに思っております。
小沢(和)委員 後期高齢者保険には、公費五割のほか、国保及び被用者保険から別建ての社会連帯的な保険料分が支援費用として入ってくるわけであります。これが四割を占めます。かねてから、若年層が多い被用者保険から、近年の高齢者医療費の増大で、若年者自身の医療費以上に高齢者医療への援助額の方が大きくなっていると不満が高まっておりました。新しい制度に切りかえられれば負担額は下がるのかどうか。
 また、医療費の財政調整は六十五歳以上七十五歳未満でも行われるわけであります。今私は、七十五歳以上に対する若年層からの援助額は減るかと聞いたんですが、六十五歳以上七十五歳未満の財政調整に要する額を加えた負担全体でも軽減になるかどうか。この点、いかがでしょうか。
坂口国務大臣 その辺よく計算をしなければいけないというふうに思います。
 六十五歳から七十五歳未満、この前期高齢者の場合には、被用者保険におきましても、いわゆる共済保険の人もおりますし、それからいわゆる大きい企業の健保の方もおみえでございますし、政管健保の方もおみえになる。それぞれの保険によりまして財政調整等を行いましたときに、プラスになるところもあるしマイナスになるところもある。その辺はそれぞれの立場によって違いますから、そこはよく検討しなければ、一概には少し言えないというふうに思っております。
小沢(和)委員 まだ具体的な試算も何にもないものですから、答弁の方も大変つかみどころがないような話なんですけれども、結局、今回提案された後期高齢者保険というのは、七十五歳以上の高齢者の大幅な負担増ということだけはっきりしているが、あとは国庫負担や被用者保険の若干の負担減になるかどうかという程度の負担調整策にすぎない。これが医療保険制度全体の抜本改革の目玉ということには到底私はなり得ないのではないかと思います。
 我が党としては、一番生活の苦しい高齢者に新たな重い負担を押しつけながら、国は少しでも負担を免れようというような案を評価することはできません。
 全体としては小幅な財政調整案に終わるために、後期高齢者保険は初めから苦しい運営になることが予想される。そのため、いまだに、この保険をだれが運営するか、引受先がなく、見通しも立っていないというふうに聞いておりますが、この保険者の見通しについてはいかがでしょうか。
坂口国務大臣 現状のままで置いておけばもっと苦しくなることだけは間違いがありません。したがいまして、今回の改正を行うことによって、これからの苦しさを少なくするという面では大いに役立つと思いますし、目玉であると思っているところでございます。
 いわゆる七十五歳以上の後期高齢者医療の保険者をどうするかという問題につきましては、これは都道府県にお願いをするか、あるいは市町村と都道府県とが両方入っていただいた公的な法人をつくってそこにお願いをするか、二つに一つだというふうに思っておりまして、これから都道府県知事さん、あるいはまた市町村長さんの代表もお入りをいただいて、そして早期に決着をつけたいと思っているところでございます。
小沢(和)委員 今回はこの医療改革案の後期高齢者保険の新設のところだけで終わりましたが、今後の機会を得て、また保険者の再編統合などをお尋ねしたいと思います。
 終わります。
宮腰委員長代理 次に、阿部知子君。
阿部委員 委員長の代行を初めとして皆さんには、長時間の審議、御苦労さまでございます。そして、坂口厚生労働大臣初め木村副大臣も、多種多様な質疑が行われる中、ずっと御在席で御苦労さまでございます。
 だがしかし、申しわけございませんが、定足数を足りておりません。きょうは朝方から食品衛生法の審議、そして現在、医療問題一般、そしてこれからまだ労働者派遣法に入ろうか、こんなにてんこ盛りの審議状況は無理でございますので、一回時間をとめていただきたいと思います、定足数が足りるまで。よろしくお願いします。
宮腰委員長代理 速記をとめてください。
    〔速記中止〕
宮腰委員長代理 速記を起こしてください。
 阿部知子君。
阿部委員 では、まず第一問目、SARSの問題に関して、今朝来、家西委員並びに江田委員がお取り上げでございますが、再度坂口厚生労働大臣にお伺い申し上げます。
 大臣には、せんだってのASEANプラス3への御出席で、東南アジア諸国での担当保健大臣の各位とのお互いの意思の確認、あるいは今後のWHOのいろいろな調査研究体制の中での協力ということを話し合ってこられて、それが大きな一つの成果と思いますが、いま一点、せんだってもお尋ね申し上げました中国との個別のといいますか二国間協力関係と申しますか、このことについてさらにもう少し話を進めさせていただきたいと思います。
 先ほどの、たしか江田委員とのお話の中だったと思いますが、中国政府の担当者から首相の方に何らかの協力要請があり、そのことで坂口厚生労働大臣と小泉首相がお話をなさいまして、主にはマスクとかガウンとか物資の支援面についてはある程度協力体制をしこうということが話されたが、人的な交流、研究体制あるいは臨床の治療法についてのさまざまな確立あるいは予防体制についてのいろいろな知識の交換ということまでについては、なかなか具体的な申し出ということも把握できないし、そこにおいてはまだ進んでおらないというお話ではありました。
 しかしながら、坂口大臣、せんだってから極めて前向きにこの問題をお取り組みくださいまして、実はせんだって、四月二十八日から四月三十日までの間、私どもの社会民主党の党首土井たか子以下六名が中国に出向きまして、じかに、今度新たに主席になられた胡錦濤主席、そしてついせんだってまで国連大使であったトウカセン氏、トウカセン国務委員と今おなりですが、については非常に親日家でありますし、日本の大使館にも在籍したことがおありで、なおかつ国連機関にもおられたということで、このSARSということに関しての日中間の交流、支援体制について、ある程度の具体的なお申し入れが土井党首の方にございました。
 そのことを踏まえて、土井たか子名で坂口厚生大臣に要望書を提出しているかと存じますが、大臣はお目通しでありましょうか。これが一問目です。
    〔宮腰委員長代理退席、委員長着席〕
坂口国務大臣 五月の二日の日でございましたか、土井委員長のお部屋にお邪魔をさせていただきまして、そして内容をちょうだいいたしました。そしてそのときに、中国に行かれまして、そして向こうの主席を初め皆さん方からお聞きになりましたお話もお伺いをさせていただいたところでございます。特に、その中には阿部議員も同行されて、そして整然とした御意見を述べられたというふうに土井党首からお聞きをしたところでございます。
阿部委員 わざわざ党首室までお越しいただいた由にてありがとうございます。そこで恐らく我が党の土井党首が申し上げたことと思いますが、私どもが伺いまして、二つの点にわたって具体的な提案をいただきました。
 一点目は、先ほど申しましたトウカセン国務委員からでございますが、現在の中国のSARSという問題が、特に都市部から農村部に人口の流動に伴って拡大する懸念もこれまた多く、やはり予防医学の面、疫学の面、治療の面で日本の先見的な知識あるいは研究体制について支援を仰げればというお話でございました。
 この点に関しまして、やはり外交というのは人と人という側面がございますから、ぜひとも坂口厚生大臣に御尽力いただきまして、直接に中国の首脳部の方、そして今回、保健大臣が副首相という形でおなりでございますので、私は、これは日本にとって顔の見える国際貢献の非常に大きな転換点になると思うのです。
 これまで日本は空港をつくったり、あるいは今回もガウンやマスクという形の物資では、やはり十分に日本の持っている潜在能力や、あるいは科学知識における先見性をアジアの地域に活用していくきっかけがなかなか出ないと思うのです。
 これは、坂口大臣が疫学も御専門でありますし、ぜひとも向こうの指導部の方と、再度土井たか子を御利用いただきましてでも結構でございますから、御連絡をおとりいただきまして、具体的な研究体制の協力について、あるいは治療体制、実は広東省には二名の国立医療センターの医師がかつて派遣されまして、非常に効果を上げております。また、香港には疫学関係の医師が日本から派遣されて、これもウイルスの同定等に効果を上げております。ぜひとも、北京、今非常にまだまだ燃え盛っておると言われる地域でありますが、やはりここで日本が活躍できるということは、私は今後にとっても非常に意味が多いと思いますので、その点の御検討、御答弁をもう一回お願いいたします。
坂口国務大臣 中国の問題につきましては、私たちも非常に心配をいたしております。とりわけ、都市部だけではなくて地方にこれがどう波及をするかということも非常に心配をいたしております。
 WHOの事務局長にもお会いをいたしましたけれども、やはりWHOの事務局長さんもそのことを非常に心配いたしておりました。医療施設の少ない地方にこれが広がってしまったら手がつけられなくなるのではないか、今のうちに何とか処置をしないといけないと、強い決意を持っておみえになりました。
 それで、私も中国の副代表ともお話をいたしまして、お手伝いすることがあれば一緒にやらせてくださいということを申し上げたわけでございます。こちらでも、こちらの駐日大使にもお会いをいたしまして、そしてそのことを申し上げたわけでございますが、大使からも、ありがとう、しかしこの病気をおさめる自信と能力があります、こういうお話でございまして、みずから積極的に、人的支援をしてほしいというお言葉までなかなかいかなかったわけでございます。ASEANの会議におきましても副大臣に同じことを申し上げたんですけれども、ありがとうございますというお礼は何度か言っていただきましたけれども、具体的なお話がなかった。
 しかし、その後官邸の方に、やはり協力をお願いしたいというお話が正式に来たようでございます。それで、取り急いでその内容について、外務省も含めて、今問い合わせをしているところでございます。現在のところは、午前中にも申しましたとおり、マスクでありますとかあるいは体温計でありますとか、あるいは部屋に入りますときに着ます予防着と申しますか、一遍一遍捨ててしまわなければならないものですから足りない、救急車等も含めて、そうした物の支援をしてほしいというお話は来ておりますが、人の問題につきましては現在のところまだ来ていないということだそうであります。
 私は、やはり地方にこれを広めないためにも、どこかで予防線を張らないといけない、波防堤をつくらないといけないというふうに思うわけでありまして、中国の中でそういうことが足りているのかいないのか、人的な支援が必要なのではないかというふうに私は思っておりますけれども、そこに対するお答えは今のところまだ来ていない。こちらとしては、そういう御要望があれば私たちも御支援をさせてもらいたいということを申し上げているところでございますけれども、今のところ来ていない。そこのところを一体どうするかということが今後残された問題でございます。
 向こうで治療をするというわけには、向こうの立場もございますし、なかなかいけないのだろうというふうに思いますが、しかし、予防的なことだとか研究を同じにやるとか、そうしたことはできるわけでありますので、ぜひそうしたことでお役に立てばというふうに思っておりますし、積極的に申し上げているわけでございますが、しかし、余りこちらが積極的に申し上げて、かえって向こうに何か威圧的にとられてもいけないわけでありまして、なかなか気位の高い国でございますから、向こうの立場をよく理解してこちらも申し上げなければならないというふうに思っている次第でございます。そうした中で協力することがあればぜひやらせていただきたい。
 これは決して対岸の火事ではありませんで、中国で大きく拡大をすれば、必ず日本にその飛び火があるわけでございますから、対岸の火事ではなくて、やはり共同の問題として解決をしていくという心構えで我々もいかなければならないというふうに思っている次第でございます。
阿部委員 ただいま大臣も御指摘のごとく、実は、現在の小泉政権になりましてから、向こうの胡錦濤主席と小泉首相もまだお会いではございませんし、川口外務大臣も、実際には会見を申し入れられても成就しておらないわけです。やはりもちろん向こうにもプライドがあり、大国意識もある中で、しかしながら、やはり刻一刻何としてでも蔓延を防止しなきゃいけないというもう一方の重大事がある中で、坂口大臣のお人柄と御見識で一つの外交の道を開いていただくというのも、私は、日本にとっても非常に意味があり、なおかつ本当に全世界のSARS体制にとっても非常に重要だと思います。
 なお、常に坂口大臣にあれもこれもと申し上げて恐縮ですが、しかしながら、ここは一肌も二肌も脱いでいただくしかないものと考えておりますので、引き続き、かつ早急にお願いいたします。
 さらにもう一点、実は阿南大使、北京におられます大使にも会ってまいりまして、今厚生省からはお一人、外務省に厚生労働省から出向する形でお人が行ってられますが、お名前を言うと小宮山さんと申されますが、この方がお仕事上、非常に邦人保護とか邦人への情報提供で手いっぱいであるということと、それからもう一つは、医務官ではございませんので、向こうの衛生官との話し合いの中で、多少なりとも、もうちょっと情報を引っ張り出したいと思っても、なかなかもうちょっとというところがいかない。阿南大使も、御承知のように毅然とした方ですから、だから厚生省に送れとおっしゃったわけではないですが、現実には、そこにもう少し医師関係の厚生労働省の方がおられれば、もっともっと中国からの情報の入手と、それから邦人保護ということにその情報を返せるであろうというお話を、これは私も党首もじかに伺ってまいりました。
 そこで、もう一点は、厚生労働省内から現在中国の大使館に派遣しておられる方の補充、もう少し多面的に、例えば、片っ方は医務官、片一方は厚生労働行政に見識のある方とかいう組み合わせで力を発揮していただくようなことは御検討いただけまいか、これを二点目の質問でお願いいたします。
坂口国務大臣 一度そこは検討させていただきたいというふうに思いますが、同じことをWHOの方も言っておりまして、もう少しというところが聞かせてもらえないということを言っておりました。
 それで、国際医療センターの医師は、邦人が非常に不安がっておみえになるということで、中国に二人派遣をいたしまして、邦人の皆さん方に対しましては、この病気の状況、そしてどういう予防策をしたらいいかといったようなことについてずっと回ってもらって、それでようやく落ちついていただいたというようなことがあるわけでございますが、中国の住民の皆さん方の問題としてそこに入り込んでということにはなっていないわけでございまして、これは今お話ございましたとおり、邦人の方中心にどうするかという問題と、それから中国の皆さん方のお手伝いをするのにどうするかといった問題もございますので、そこは外務省とよく相談いたしまして、必要ならば人を送り込むということもしたいというふうに思っております。
阿部委員 ぜひともそのようなことを早急にお願いしたいと思います。
 実は、日本企業にお勤めの皆さんも、私は北京に行ったときにお会いはできなかったのです。会うことが感染の機会をつくるかもしれないというので、電話で何人かの方とお話し申し上げましたが、在留邦人の方も決して不安がとれたというわけではなくて、その大きな根源が、情報が中国政府からどこまで得られているかということにおいて一歩歯がゆいと、正直なところおっしゃっておられました。それには、先ほど申しました多少なりとも医務官としての知識のおありの方が厚生省から派遣されておれば、より多様な情報収集となると思いますので、これは部局内で検討できることですので、よろしくお願いしたいと思います。
 引き続いて、MMR問題、予防接種問題についてお伺いいたしますが、MMRの予防接種禍、残念なことに控訴という形で、厚生労働省がさらに大阪地裁の判決を承服せず控訴なさっておりますが、その一方で、こういうワクチンの予防接種禍について、広く事故防止のための検討を推進していくことという通達が三月十一日付で出ております。予防接種の引き続く事故防止について、今厚生労働省内のお取り組みをまず一点お願いいたします。これは事務方で結構でございます。
高原政府参考人 予防接種の事故については、あってはならないことでございまして、防止全般についてマニュアルの作成を現在関係学会と協議しながら進めているところでございます。事故防止のための作業フローチャートや確認チェックリストの作成、また過去の事例の検討というふうなものを盛り込む予定でございます。
 事故防止マニュアルの作成に当たりましては、関係学会、有識者、さらには予防接種健康被害者、そういうふうな方々の御意見を十分拝聴いたしまして、どういうところに事故が起こりやすいのか、どういうことをやれば防げるのか、そういうことを明らかにするということで現在事務的に詰めておりまして、それをまた有識者に見ていただくということを考えております。
阿部委員 昨日私が部屋で伺いましたところ、小児科学会にお願いして、ある程度の予防接種の事故防止のガイドラインはおつくりである、それから有識者にも御意見を伺うということでもあり、今高原局長の方からは、予防接種の被害に遭われた方たちの御意見も伺っていこうというお話でした。
 実は、MMRのワクチンも、期限切れのワクチンが使用されているということの指摘は被害者から上がってまいりました。残念ながら、接種しているサイドから気がついたものではございません。
 きょうのいろいろな審議の中で、坂口厚生労働大臣が、例えば医療の規制緩和という問題においても、利用者側、患者さんの望む、市民の望む規制緩和というのは何かと考えなくちゃいけないという御答弁でありましたが、私は、予防接種問題も同じように、実際には、子供に予防接種を受けさせて安全かどうか悩むお母さんたちの声、あるいは受けてしまったことで障害を負って非常に悩んでいる、苦しんでいる、あるいは取り返しのつかないことをしたと思っておられる親御さんたちの声というのもぜひとも教訓として生かしていただきたいと思うのですが、これは大臣に確認ですが、今高原局長がおっしゃったように、この予防接種禍問題においても、これから患者さんの声、被害者の声を聞く場を、ガイドライン並びに今後成案を見るまでの間に設けていただくということの確認を一点お願いいたします。
坂口国務大臣 これから予防接種の問題を考えていかなければならないわけでございまして、その中で、やはり被害に遭われた皆さん方、不幸にして副作用のあった皆さん方のお声というものもこれはお聞きをしていかなければならないというふうに思っております。そうした中で、より副作用の少ないワクチンをどういうふうにつくっていくか、最大の課題でございますので、そこをしっかりと見詰めていきたいというふうに思っております。
阿部委員 実は、予防接種は子供自身が判断するのではなくて、その子を育てている親が判断して受けさせております。それゆえに、何か事故が起きたとき、親は自分のせいでという思いを非常に強く抱くものであります。いわゆるインフォームド・コンセントのあり方についても、親御さんたちに十分意見を聞く。この間のインフォームド・コンセントですと、親御さんにどちらかというとリスク判断をしなさいと投げられた場合が非常に多くて、そのことによって、最終的にはもちろん親御さんが判断するにしろ、判断しがたいところのものを投げられている場合もございますので、これはぜひとも今の大臣の御答弁のように、ワクチンの安全性と同時に、それを受けるサイドの患者さんの声も聞いていただきたいと思います。
 同様に、患者の声、利用者の声ということで、いわゆる医療提供体制の改革ビジョン案についてお伺いを申し上げます。
 これは、担当が木村副大臣、本部長の坂口厚生労働大臣から木村副大臣が任命されておられますので、主に木村副大臣にお伺い申し上げます。
 まず第一点は、木村副大臣が、三月八日の日に設置されましたこの医療制度改革のさまざまな推進本部、実務のリーダー、本部長代理ということに任命されました。
 先ほど来政治献金のお話も出ておりますが、医療制度改革と申しますのは、やはり現在非常に重要なところに来ている折でございます。これまでの政治資金管理は、副大臣になられる前のこともおありでしょうし、それ時々の管理をなさってきたという御答弁でしたから、そのように一応承っておりますが、この重大な任につかれて、今後でございます。
 やはり私は、例えば関係する医師会や薬剤師会あるいはさまざまな医療関連団体から献金があれば、それは、副大臣の意思に、あるいはお考えにかかわらずさまざまな憶測を呼び、きょうも実はそのために、審議は同じように二重、三重にその問題が審議時間に正直言って食い込んでおりました。
 私は、坂口大臣がおっしゃる李下に冠を正さずというお言葉は、やはり一つの責任あるポジションにつかれたときの見識と承っておりますが、三月八日医療制度改革推進本部の本部長代理という大任を担われた副大臣が、今後、関係する業界団体からの政治献金についてお受け取りにならないという方向で、お役中、検討することはいかがお考えでしょうか。
木村副大臣 先ほどの山井先生の御質問にもお答えをさせていただいたわけでございますけれども、政治献金は政治家の活動として法律上認められているものでございまして、私は、政治資金規正法に基づき適正に処理をしているところでございます。
 副大臣といたしまして、国務大臣、副大臣及び大臣政務官規範に基づきまして、国民全体の奉仕者として公共の利益のための職務を遂行しており、政治献金の有無にかかわらず、一部の利益のために影響力を行使したことは断じてなく、今後ともあり得ません。
阿部委員 それは主観だと思うんですね。そのことがどのように客観的に映ってしまうか、あるいは憶測されてしまうかということも含めて対処していただかなければならない立場におありではないかという指摘をさせていただきました。
 そして、このことは次回もまた審議に食い込むこととなると思いますが、他の委員も含めて御質疑と思いますので、私はもう一点、ぜひとも、任命された医療制度改革推進本部のあり方について、木村副大臣に見解を伺いたいことがございます。
 実は、医療提供体制改革のビジョン案というものが私どもの部屋に三十日付で配られておりまして、私も目を通させていただきましたが、担当部局にお伺いいたしまして、このビジョン案はどういう過程で作成されて、例えばどのようなヒアリング等々を経てここに案として御提示でありますかと伺いましたところ、そのヒアリングを受けた団体は、いわゆる業界団体でございます日本医師会、歯科医師会、薬剤師会、日本病院薬剤師会、日本看護協会以下で、これは医療提供サイドのヒアリングだけなのであります。
 先ほど坂口厚生労働大臣の御答弁にございましたように、これまでの規制改革、規制緩和においても、医療を提供する側のヒアリングはあったけれども、これからは、患者さんが望む規制緩和とは何なんだという、視点を全く逆転して見ないと物事は見えてこないということを、きょう大臣は非常にいい御答弁をしてくださったと思いますが、せめてこういうビジョン案というものが部屋に配られます前に、ヒアリングにおいて、各患者団体あるいはこの間問題になっております被害者団体、なぜならば、今、医療は信なくば立たずという時代になって、安心、安全というものがぶっ飛んでいる時代でございます。そして、安心、安全の対象はだれかというと患者さんでございます。
 そこで、やはりこういう案を作成される場合にも、今後、厚生労働行政の中で、あらかじめきちんと患者さんたちの声も聞かれた上でたたき台をつくられるような風土を心がけていただきたいと思いますが、この点についていかがでしょうか。
木村副大臣 いつもながら先生に大変適切な御指導を賜りまして、まことにありがとうございます。医療も政治も信なくば立たずであります。
 それで、先ほどの関係団体のヒアリングでございますけれども、医療提供体制側だけではなくて、例えば日本経済団体連合会とか日本労働組合連合会とか、そういう医療提供体制側だけでない方々からのヒアリングも行っているところでございますし、先生御指摘の医療提供体制の改革ビジョン案を取りまとめるに当たりましては、昨年八月に医療提供体制の改革の基本的方向について中間的に取りまとめ、公表した際に行ったパブリックコメントというものを行っておりますし、医療提供体制の改革ビジョン案を取りまとめるに当たって行った新聞社の論説委員等を含めた有識者からのヒアリング等を行っておりまして、それを通じまして、国民各層の幅広い御意見を伺ってきたところでございます。
 そして、いずれにいたしましても、国会における御議論やさまざまな立場からの御意見を今後も踏まえながら、適宜見直しを行ってまいりたい、このように思っているような次第でございます。
阿部委員 骨子の一番目が「患者の視点の尊重」でございますから、その主体である患者さんをまず第一に思い描いていただきたいと思います。
 引き続いて、私は、このビジョン案を見ましたときに、これが果たしてどれほど医療の現実というものを把握しておるのか、極めて不安に思うものです。
 どういうことかと申しますと、せんだって来、いわゆる医師の名義貸し問題、あるいは大学病院が医師を引き揚げる、あるいはアルバイト診療、大学病院におられる医師のアルバイト診療問題等々が新聞紙上をにぎわしておりますが、まず一点目、きょうは文部科学省にもお越しいただいておりますので、いわゆる医師の名義貸し問題、北海道で極めて顕著になりましたが、札幌医大、これは道立でございますが、このほかにも、国立の北海道大学十七人、旭川医大三名という形で、文部科学省の管轄下にある大学附属病院が医師の名義貸しをいたしておりました。
 名義借りをした方は医療法違反でございますが、果たして名義貸しという行為は文部科学省としてどのように考えられ、または処罰、処遇の対象と思っておられるのか。あるいは、こういう事態が北海道だけのことだとお思いなのか、その点について副大臣の御見解を伺いたいと思います。
河村副大臣 委員御指摘のように、現実に北海道大学あるいは旭川医科大学で名義貸しの事実があったことが確認をされたわけでございまして、道立札幌医科大学で、最初に北海道保健福祉部の方で調査をして出たということで、立入検査の結果そうなったわけでございます。
 医師は実態の勤務がないのにやったということでありまして、その結果、不正請求につながるようなことも起きるわけでありまして、服務上、倫理上、極めて大きな問題であると私も考えておりまして、このようなことがほかの国立大学で行われてはならないわけでございますので、今後関係者が名義貸しに関与することのないように早速指導をいたしたところでございまして、このことについては周知徹底を図ってまいりたい、こう思っておりますが、今回については、その実態をさらに調査しなきゃなりません。その上に立って、服務上どういう問題があるのか、これをきちっと対応して、責任のとり方等々については検討してまいりたい、このように思っております。
阿部委員 実態を把握するというお話で、ではどうやって実態を把握しているのですかといって私のところに持ってきていただいたのが「「名義貸し」問題に係る北海道大学及び旭川医科大学の調査状況について」という二枚の紙でした。これは、各医師や大学院生に、あなたは名義貸しをしていますかと聞くアンケートです。実は、みずから名義貸しをしていると答える場合もあるし、答えられない状況にある方もいろいろございます。
 やはり、物事の実態を把握するのに、その把握方法が適切かどうかということが一番肝要と思いますが、ここでちょっと厚生省サイドにも私はお願いがございます。
 実は、北海道でのさまざまな医師の名義貸しが明らかになりましたのは、医療監視並びにレセプトのチェックをしてまいりまして、架空診療という厚生省サイドのあずかる部分での状況を突き合わせた結果、名義貸しが二百七名とか二百八名とか露見いたしました。
 そこで、今後、厚生省が各都道府県に指導して行っておられます医療監視の中で、医師の名義貸し、架空診療について重点指導項目、チェック項目にしていただけるよう、厚生労働部局でのお考えを伺いたいと思います。これは、時間の関係で恐縮ですが大臣にお願いいたします。
坂口国務大臣 厚生労働省といたしましても、引き続きこれは全国的な問題として検討したいというふうに思っております。
 名義借りというのは悪いということはどの病院もわかっているわけですね。貸す方はどうだったか知りませんけれども、借りるという方はこれはもう違法行為であるということをみんなわかっている。わかっているものですから、なかなかわからないようにしているんだろうと思うんです。例えば職員名簿ですとか出勤簿だとか、そうしたことはわからないように私はしているんではないかというふうに思います。全国的な問題としてこれは調査するようにしたいというふうに思います。
阿部委員 実は、特にこれは文部科学省へのお願いですが、貸す方もやはり問題意識が薄いと思うんですね。おまけに、実は大学院生の身分不安定を解消するために、借り手が借りたいと言っていないのに貸すことを押しつけて、そして社会保険をつけている場合も実態としてございます。これは、厚生労働省側と文部科学省側がきちんとテーブルを突き合わせて密にコンタクトをおとりいただいて、ぜひともこの実態、私は、どちらかというと、一つは医師の人手不足で借りている実態、それから逆に、人手不足がなくてもそこから派遣してほしい、継続のゆえに名義借りをして、社会保険も全部自分たちが担ってでも、それを担保にして医師派遣をほかにもらうという実態も、これは私が昨日部屋で聞いた中で明らかになりましたので、今後、恐縮ですが、最後に文部副大臣にお願いいたしますが、厚生労働省と協力して事の調査に当たるという決意のほどを一言お願いいたします。
河村副大臣 委員御指摘のございましたように、また大臣からも御答弁ありましたように、貸す側、そして借りる側、両方がございます。したがいまして、これは我が省としても両方からの調査ということが必要でございますので、厚生労働省側ともしっかり打ち合わせをし、突き合わせをしながら効果的な調査方法をつくってまいりたい、このように思っておりまして、正確な実態把握をやってまいりたい、このように考えておるところであります。
阿部委員 残余はまた次回お願いいたします。ありがとうございます。
     ――――◇―――――
中山委員長 次に、内閣提出、職業安定法及び労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。
 この際、お諮りいたします。
 本案審査のため、本日、政府参考人として厚生労働省職業安定局長戸苅利和君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
中山委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
中山委員長 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。棚橋泰文君。
棚橋委員 自由民主党の棚橋泰文でございます。
 私は、職業安定法及び労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、限られた時間の中で、本質的なことについて少しそれぞれ伺いたいと思っています。
 まず、この改正案につきましては大変いろいろと深い議論がなされておりますことは、もう御列席の委員の皆様方、あるいは皆様方御承知のとおりでございます。大変厳しい経済情勢の中で、そしてまた特に働く者の立場からしても、いろいろな形での雇用を求めてくる、こういったものに対応したものが今回の改正案ではないかと思いますが、一方で、特にこの改正案が、我が国がある意味では世界に誇る終身雇用という慣行、特に働く者が非常に安心して安定した中でその能力を発揮することができる、こういった制度に対しても逆にマイナス面を生じるのではないかというような、二つの本質的な議論の中での改正案の提出ではないかと思います。
 そこで、まず最初に坂口厚生労働大臣にお伺いをしたいのは、改めて本改正案の趣旨につきまして、特に大変厳しい経済情勢の中で、またその働き方についても多様なニーズを求める働く立場の者がふえてこられた中で、本改正案がどういうものを目指し、どういうニーズの中で提出をされたのか、あるいは本改正案の成立とともに、現在の厳しい経済情勢の中での失業情勢、これに対してどういう効果が期待されるのか、その点につきまして、大臣の決意とともに、まず本改正案の本質について御説明いただければありがとうございます。
坂口国務大臣 現在の非常に厳しい雇用情勢の中でどう改善をすることが一番大事なのか、我々もいろいろと検討をしてきたところでございます。
 その中で、やはり職業のミスマッチというものが非常に多く存在をして、このミスマッチもいろいろでございます。地域別のミスマッチもございますし、年齢によるミスマッチもございますし、あるいは所得に対するミスマッチもございます。技術的なものに対するミスマッチもある。たくさんございますが、それらをどう克服していくかということが、少ない求人をどう生かすかということにとって大変大事なことでございます。
 そうした中で、中央の政府がどういう雇用政策を出すかということだけではなくて、それぞれの都道府県ないし地方の市町村におきましても、やはりその地域に見合った雇用というものを考えていただく必要がある。そうした意味で、一つは、地方公共団体が雇用問題を手がけていただいて、そしてハローワーク的なお仕事をしていただけるようにする、また、民間企業におきましても、より積極的に行っていただけるようにする、こうしたことが大事ではないか。あるいはまた、地方の例えば商工会議所でありますとか農協でありますとか商工会でありますとか、そうしたところも雇用問題にお取り組みをいただけるようにしようということが一つの大きな柱でございます。
 これらの問題と国がやります問題と相まって、そしてこのミスマッチをできるだけ解消し、新しい雇用をどうつくり出していくかということに共同歩調で進むことができればというふうに思っております。
 それからもう一つは、物の製造の業務への労働者派遣を可能にするということをしたわけでございまして、これは今までから大変反対もございました。しかし、現実を見てみますと、いわゆる労働者派遣という形ではございませんけれども、企業の中に一つのグループが入り込んで、そして、あたかもその企業の一部であるかのごとく働いておみえになるというようなケース、例えば自動車産業等におきましては、多くのグループがその中に入り込んでお仕事をなすっているというようなケースもあるわけでございまして、形を変えた形で行われているというようなこともございますので、今回、この労働者派遣を可能にするということによりまして、その一端を私たちは明確にした形で、明らかな形にした形で、そして、労働者の皆さん方にも安心して働いていただけるようになるのではないかというふうに思っている次第でございます。
 もう一つは、その派遣の派遣期間の問題でございまして、今までは一年ということに限定をいたしておりましたが、三年というふうに延長をさせていただきました。このことに対しましても、プラス面、マイナス面が指摘をされるわけでございますが、延長することによって、働く皆さん方にとりましても十分な能力を身につけていただくとか、あるいはまた、その企業の将来性についての方向性を見出していただくというようなことで、プラスの面もあるのではないかというふうに思っている次第でございます。
 これらのことを提案させていただきまして、そして、ここで起こってまいりますマイナス面につきましては、できるだけ私たちも指針等をつくって、そして働く皆さん方にマイナスにならないようにしていきたい、こういうふうに思っているところでございます。
棚橋委員 坂口大臣、どうもありがとうございました。
 まさに今大臣のお話にございましたように、本法案は、ある意味では時代のニーズにのっとった、雇用のミスマッチという情勢の中で、あるいは多様な働き方を求める労働者がふえている中でのニーズにのっとった側面があるということは、私も高く評価すべきだと思っております。
 ただ、今まさに大臣のお話にもございましたように、マイナス面がある。そして、そのマイナス面の本質というか一番懸念されているのが、常用雇用の代替になるんではないかという点ではないかと私は思っております。
 今大臣のお話にもございましたように、物の製造の業務に関しても派遣労働を可能にする、また、現在までは一年に限られていた派遣期間を三年まで可能にするということは、働き方の多様性という観点からするとこれはプラスの側面もあるでしょうが、何といいましても、我が国は終身雇用という慣行の中で、ある意味では非常に安定した労使慣行を築いております。
 特に、判例法を中心に解雇に関しては大変厳格なルールが運用されている中で、働く者の立場から一番懸念されるのは、これはやはりこの法律の改正案が常用雇用の代替に労働者派遣を使うというようなこと、あるいは、解雇法制をくぐるために労働者派遣を使うというようなことになるんではないかということが、多分働く者の立場からすると一番私は心配されているんではないかと思いますし、その点の懸念をきちんと晴らし、また、その点に対してきちんとした対策をとっていかなければいけないと思います。
 そこで、この点についてどのようにお考えか、また、どのように対応されるのか、その点について厚生労働省からお答えをいただきたいと思います。
鴨下副大臣 先生おっしゃるように、その問題は非常に重要な問題でありますし、言ってみれば、先ほど大臣が答弁しましたように、ある意味でプラス面、マイナス面、それをきちんと我々はコントロールしなければいけないわけでありまして、多様な働き方を求めつつ、さらに、先生おっしゃるように、今まで日本の従来の雇用慣行で、長期でキャリアアップをして、そしてそれなりに自分の腕にさまざま技能をつけていく、こういうようなことからいえば、多少の懸念はあるということは先生おっしゃるとおりであります。
 ただ、労働者派遣法におきましては、現在も労働者派遣事業制度を臨時的そして一時的な労働力の需給調整に関する対策、こういうふうに位置づけているわけでありまして、これに基づいて、派遣期間については制限を設け、さらに再度派遣を受け入れる場合には最低三カ月は空白期間を置かなければならない、こういうようなことで、現在においても、ある意味で常用雇用の代替にならないような必要な措置は講じているところであります。
 これについては、改正法案においても、労働者派遣事業制度の位置づけや、これに基づき派遣期間を一定期間に制限することは変更はしているわけではないわけでありますし、また、三年の延長に当たっては、派遣先はその労働者の代表者の意見を聞いて派遣期間を決めることとしていることから、言ってみれば、常用労働者を代替させるための直接の手段として労働者派遣を利用することには一定の制限が設けられている、こういうようなことであります。
 したがって、常用労働者に適用される解雇に関するさまざまなルールによる制約を免れるために労働者派遣が利用されることはない、こういうふうな考えで今回の改正に当たっているわけでございます。
棚橋委員 どうもありがとうございました。
 今、鴨下副大臣から、今回の法案によって、特に派遣労働が常用雇用の代替にされないような法律上の枠組みについては改めて御説明いただきました。
 ただ、とはいえ、これは働く者の立場からすると、やはり大変不安が残るものではないかと思います。特に、物の製造に関する業務に関してもこれを認めるわけでございますし、また、派遣期間が三年ということになれば、例えばこういう厳しい経済情勢の中で、比較的代替性がある職種なんかについては、とりあえず三年雇っておいて、そこでやめてもらう、またそれは別の方にかわってもらうというようなことで、結局、本来ならば、我が国の法制からいうと、終身雇用、あるいは解雇に関してはきちんとした制限の中で、判例等に照らして、解雇四原則の制限の中でしか解雇できないというものをかいくぐるような動きというのがやはり出てくるのではないか。このことに対する不安感とかあるいは不信感というものをぬぐわないと、この法律の改正というのは、やはりどうしても働く者の側からはなかなか理解されないのではないかということを私は一番懸念しております。
 そこで、改めてもう一度今の点について、より詳しく、厚生労働省の指導のあり方、あるいはケース・バイ・ケースにおいてこういう対応をするというような法の現実の施行における体制について、担当局長からもう少し御説明をいただきたい。そうすれば、また少しはこの法案についての懸念も払拭されるのではないかと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
戸苅政府参考人 御審議いただいております改正法案、先ほど副大臣からお話しのとおり、これまでどおり労働者派遣については、臨時的、一時的な労働力需給調整のための制度であるという位置づけを維持しまして、その上での改正ということでございます。
 したがって、派遣期間、最大三年ということでありますけれども、派遣先が派遣期間を決定する場合に、あくまでも臨時的、一時的な労働力の受け入れという中で、どのくらいの期間が必要なのかということを判断いただく、その際に労働者の過半数代表の意見を聞いて決定する、こういうことで、派遣を受け入れる期間、可能期間をまず定めてもらうということにいたしております。
 その上で、その期間を超えてしまうというふうな場合には労働者派遣を行わないようにという担保をとろうということでありまして、その期間はまず派遣先が派遣会社に通知するということになっていまして、通知された方の派遣会社は、三年以内で派遣可能期間として定めた日を超えた場合はもう派遣を行いませんよという通知を派遣先にしてもらうということにしております。
 これは、余り早くやっちゃいますと、またそれを忘れてしまうということもまずいということで、定めた派遣期間の一カ月前から、あるいはその派遣の期間の前日までの間に、必ず派遣会社の方から当該日以降は派遣を行いませんという通知をしてもらおうということにしております。
 さらに、派遣先が期間を超えて派遣労働者を使うというふうなことを考えた場合には、当該派遣労働者に雇用契約の申し込みをしてもらう、これを義務づけようということでありまして、そういった意味で、あらかじめ定めた派遣期間を超えることのないように、あるいは超えた場合にはその派遣労働者の常用雇用への移行が図られるようにということで、今申し上げたような義務づけをしようということでありまして、そういったことで、このあたりがきちんと担保されるように適切な指導を行うということによりまして、常用雇用の代替が促されることのないように適切に対応していきたい、こういうふうに考えております。
棚橋委員 どうもありがとうございました。
 本法案がやはり一番懸念されるのは、今お話をいただきましたように、常用雇用の代替に派遣労働が使われるんではないかという懸念ではないかと思います。また、現実にそういう動きをされる方も残念ながら想定されると思います。
 そこで、この法案がきちんと、多様な働き方を求める我が国の現状のニーズあるいは失業情勢の中で、雇用のミスマッチを解消するためにプラス面を十分に発揮するためには、まさに今局長から御答弁いただいたような形で、さらにそれを深めて、常用雇用の代替にならないように、あくまで派遣労働と常用雇用を一線を画し、そして常用雇用の代替としてこの法案が使われることのないような法の施行あるいは指導、こういったものをきちんとやっていただかなければなりませんし、また、その点について、きょうから始まりました当委員会における質疑の中で、誠意ある御答弁をいただきながら明らかにしていただきたいと思います。
 最後にもう一点だけ。今回、最初に坂口厚生労働大臣からもお話がありましたように、物の製造の業務に関しても派遣労働を可能にいたしました。ニーズというものもある程度わかるわけですが、改めてもう一度その点について詳しく御説明をいただきたいと思います。
 と申しますのは、やはり製造業というものは、我が国のある意味では経済、産業の根幹をなすわけでございますし、また、物の製造に関する業務の中で比較的代替性が高いものも多い。その中でこの派遣労働を可能にすることが、やはりこれは常用雇用の代替になるのではないかという大きな懸念があると思います。そこで、ニーズとともに、できれば改めてそういうことがないような形にする仕組みについて御説明をいただければありがたいと思いますので、最後の質問になりましたが、よろしくお願いいたします。
鴨下副大臣 先生、先ほどから御懸念の点で、言ってみれば常用雇用の代替になるんではないか、こういうようなことの最もある意味で御懸念なさっているところは物の製造のことなんだろうというふうに思います。
 物の製造の業務につきましては、労働者派遣の対象業務がネガティブリスト化された平成十一年の改正の際に、物の製造の業務に従事する労働者の皆さんの数が、あるいは雇用労働者に占める割合が大変大きい、こういうようなことを考慮して、激変緩和というような意味から、当分の間適用除外にする、こういうようなことになっていたわけでありますけれども、昨今の言ってみれば多様な働き方のニーズ、それから経済産業構造の転換や国際社会の中でのさまざまな競争、こういうような中で、日々変動する業務量に対して、労働力の需給に迅速かつ的確に対応するというようなニーズもあるわけでありまして、そういうような製造業においての高まっているニーズを受けての、物の製造の業務を派遣の対象に緩和していこうじゃないか、こういうような趣旨でございます。
棚橋委員 ありがとうございました。
 これで私の質問を終わらせていただきますが、ぜひ本法案について一番の懸念である常用雇用の代替に使われるのではないかという懸念をきちんと払拭するような形での当委員会での審議、並びに、この法案が成立した場合にはきちんとした施行をお願いいたしまして、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
中山委員長 次に、福島豊君。
福島委員 大臣、副大臣、長時間にわたりまして御苦労さまでございます。
 労働形態の多様化ということは、日本だけではなくヨーロッパにおいても幅広く見られることでございます。規制緩和の一つの流れの中で、そしてまた雇用形態の多様化ということが進められるということは、ある意味でメリットと同時にデメリットのある話だろうと思いますが、このデメリットの部分というのにどういうふうに対応していくのか。
 ヨーロッパ、EUにおきましては、こういうことが言われているようでございます。アダプタビリティーということが概念として提示をされている。労働形態の多様化というものは不可避だとしつつも、多様な形態で就業する者にとって良好な条件を確保することを目指すんだと。規制緩和によってフレキシビリティーは高まるわけでございますけれども、一方では、良好な就業機会となるようにセキュリティーを確保する、フレキシビリティーとセキュリティー、これを両輪として進めていく、これがEUの政策動向であるというふうに伺っております。
 ですから、日本におきましても、労働形態の多様化を目指すさまざまな規制緩和の中で、一方でセキュリティーというものをどう確保していくのか、このことが同時に論じられる必要があるだろうと思っております。そのことをまず申し上げまして、本法案の具体的な中身につきまして確認をさせていただきたいと思っております。
 派遣期間の制限が今改正におきましては三年に延ばされるわけでございます。これにつきましては、実際に派遣労働に携わっておられる労働者の方々も、一年というのでは余りにも短くて、技能の習得ということを考えた場合にはもう少し長い方がいい、そしてまた、技能を習得したと思ったら一年という期限が来てしまって、習得したものが十分に使えないというような要望というのも現場にはあったというように伺っておりますけれども、これを三年に延ばす理由、これについて政府のお考えをまずお聞きしたいと思います。
戸苅政府参考人 派遣期間でございますが、これにつきましては、平成十一年に派遣法の改正をいたしまして、その際、派遣の対象業務について、従来、それまでは専門的な知識、技能、技術等を要する二十六業務だけに限っておったのでありますが、それをネガティブリスト化したということでございます。その際、ネガティブリスト化した業務につきましては、常用雇用との調和という観点から、一律に一年間の期間制限を設けて今日に至っているということでございます。
 その後、今申し上げました二十六業務以外の業務についても労働者派遣が相当程度定着してきているというふうに我々は考えておりますし、それから、業務の実態を見ましても、臨時的、一時的であるとはいえ、その業務の処理に一年を超える期間必要だというケースも少なからず見られるというのが実情だろうというふうに思います。
 今委員からお話のありました派遣労働者の意見ということで申し上げますと、去年の六月に派遣制度の見直しのための全国的な実態調査を行いました。それで、派遣労働者の意見といたしまして、派遣期間の制限を延長すべしという意見、それから派遣期間の制限は撤廃すべしという意見、両方合わせて三割ございました。これについては、わからないとかいう意見も三割ありまして、そういう意味では、有効なといいますか、意見をきちんと回答していただいた派遣労働者ということで考えますと、恐らく半数近くは今申し上げたような意見なんだろう、こういうふうに思うわけであります。逆に、現行のままでいい、あるいはもっと短くすべしというのは一七%ということであります。
 そういった派遣労働者のニーズもあるというあたりを考慮いたしまして、臨時的、一時的な業務の需給調整ということで、どの程度がそうなると適当なのかということでありますが、景気のワンサイクルを超えて派遣をずっと続けるということになったときに、やはり臨時的、一時的かということも疑問もあるということで、景気のワンサイクルよりもちょっと短目の三年ということで、三年にさせていただいた、こういうことでございます。
福島委員 次に、この期間を延ばすわけでございますけれども、この期間制限というものが果たしてきちっと守られているかどうかということが大切な点なんだろうと思います。
 派遣先が派遣労働者に雇い入れの申し込みをするという新しい仕組みを導入するわけでございますけれども、そういったことも行わずに派遣労働者を使用し続けるようなケースがないとは限らぬわけでございます。そうしたことについて罰則もないではないかというような指摘もありますけれども、こうした期間制限というものをきちっと守らせるためにどのような取り組みをするお考えか、御確認をしたいと思います。
坂口国務大臣 今お話ございましたとおり、派遣の期間というのをきちっと守らせるということは大変大事なことでございます。そのために、幾つかのことを決めております。それは、違反を未然に防止するためにこういうことはやらなければならないということを決めているわけでありまして、一つは、一年を超えて三年までの期間を派遣期間として定めます場合には、その旨のいわゆる派遣元事業主への通知義務というのを派遣先に課する。すなわち、AからBに派遣をしておりますときには、Bの方からAの方へ通知義務を課する、こういうことでございます。
 それからもう一つは、期間制限に抵触する日の派遣労働者への明示、何月幾日が派遣労働者としての限度ですよということ、それから、その日以降は労働者派遣を行わない旨の派遣先でありますとか派遣労働者への事前通知義務を派遣元事業主に課する、これが二番目。
 もう一つは、派遣先が派遣期間の制限を超えて派遣労働者を使用しようとする場合には、派遣労働者への雇用契約の申し込みの義務を派遣先に課する。こうしたことをちゃんとさせるということが大事だというふうに思っております。
 このほか、期間制限でありますとか雇用契約の申し込み義務に違反をしている派遣先に対する勧告でありますとかあるいは公表を行うとか、そうしたことを厳格に運用することによりまして、関係者に派遣期間の制限の遵守を徹底させていきたいというふうに思っているところでございます。この辺のところ、もしこれでうまくいかないということになれば、さらに厳格にしていきたいというふうに思っているところでございます。
福島委員 よろしくお願いいたします。
 先ほど申しましたように、今回の改正では雇用の申し込み義務が創設されたわけでございます。期間制限がある場合と期間制限がない場合の二種類の申し込み義務がありますけれども、それぞれの趣旨また内容についてお尋ねをしたいと思います。
 この雇用の申し込み義務ということにつきましては、派遣労働から常用雇用への転換ということを図るという観点からいいましても大変大切な取り組みだと思っております。そして、現下の失業率が非常に高い、就労が厳しい、そういう状況の中でこういう仕組みを盛り込んだということは大変評価されるべきだと思っておりますが、御答弁をお聞きしたいと思います。
鴨下副大臣 今先生御指摘のように、極めて重要な論点だろうというふうに考えております。
 今回の改正法案におきましては、一つは、派遣期間の制限のある業務に派遣先が派遣期間の制限を超えて派遣労働者を使用する場合、それからもう一つは、派遣期間の制限のない業務に三年を超えて同一の派遣労働者を受け入れている派遣先が新たに労働者を雇い入れようとする、こういうような場合につきましては、派遣先は当該派遣労働者に対して雇用契約の申し込みをしなければならない、こういうようなことにしておりまして、先生おっしゃるように、二種類の雇用契約申し込み義務規定を設けている、こういうようなことであります。
 前者の申し込み義務は、派遣先に派遣労働者に対する雇用契約の申し込みをさせることによって、期間制限に違反する労働者派遣を未然に防止する、こういうようなことと、派遣労働者との雇用関係を明確に整理することによりまして当該派遣労働者の雇用の安定を図ろう、こういうようなことが一つであります。
 また、後者の申し込み義務につきましては、現実に同一業務に長期間言ってみれば継続就業している、こういうような派遣労働者の方につきましては、当該派遣先において必要な、ある意味で業務遂行能力を有しているというようなことが考えられるわけでありますので、派遣先が新たに労働者を雇い入れようという場合には、まずは当該派遣労働者に対して雇用契約の申し込みをする、こういうようなことによって、派遣労働者の希望に応じて派遣先に直接雇用される機会をより多く確保していこう、こういうような二つの趣旨を持っているというようなことでございます。
福島委員 これに関連しましては、ドイツの派遣制度にはみなし雇用制度というものがございますけれども、これを日本でも導入すべきではないかという意見もあるわけでございます。ドイツの労働法制とまた日本の労働法制というのは異なっているわけでございますから、直ちに導入するということができるかどうかということが論じられるべきだろうと思っておりますが、この点についての御見解をお聞きしたいと思います。
戸苅政府参考人 確かに、ヨーロッパではみなし雇用制度がございます。これは、一定の要件を満たした場合には、その当事者の意思にかかわりなく派遣先と派遣労働者の間に雇用契約が成立する、こういう仕組みであります。
 我が国の場合、それをどうするかということで考えますと、一つは、派遣労働者自身が、派遣労働をやめて常用雇用になりたいと考えている労働者ばかりではないということ、それから、雇われる場合に、今までちょうど派遣されていた企業に本当に就職したいと思っているかどうかというようなこと等がありまして、当事者の意思というものにかかわりなく、当事者の意思を法律で否定する形で雇用関係を設定してしまう、こういうことになるんじゃないかというふうに思われまして、そういった中で、一方では企業にも採用の自由が認められているわけでありますから、そのあたりを考え合わせますと、今の段階でそういった強制的な雇用関係、雇用契約の成立をさせるというだけの法律的な合理性といいますか、そういったものが一つあるかどうかということがあるのではないかというふうに思いますし、それからもう一つは、労働条件を考えますと、強制的に雇用契約、雇用関係が成立するといったときに、労働条件をどういうふうに決めたらいいのかということになるのではないかと思います。
 ヨーロッパの場合は、御案内のとおり、産業別あるいは職業別に労働協約で労働条件が決まっているということで、どこで働こうと同じような労働条件であるという労働市場の状況がございますので、これも可能になっているのだろうと思うんですが、日本の場合は、企業ごとの労働条件あるいは働く形態ごとの労働条件等々さまざまでございますので、今の段階でみなし雇用制度を導入するということになりますと、やはり慎重に対応せざるを得ないのかな、こういうふうに思っております。
福島委員 この派遣労働は、近年大幅に拡大をしているわけでございます。派遣業界の売り上げは、十三年度には、平成六年度の九千三百十九億円に比較して、二倍の一兆九千四百六十二億円に達しているわけでございます。
 先ほど申しましたように、フレキシビリティーが増すということはプラスの側面だというふうにも言えるわけでございますけれども、一方では、例えば三月十六日付の産経新聞で報道されておりますように、「“使い捨て”人材派遣」、これは大きな見出しで書かれておりました。
 派遣労働において、契約途中の解雇や賃金不払いなどさまざまな問題が起こっていて、派遣労働ネットワーク、NPOでございますけれども、昨年の夏に行った電話相談では二百四十件もの相談が寄せられた、こういうことが報道されているわけでございます。また労働条件も、職場では過酷な勤務指示が出されて、派遣会社側が黙認する場合も目立つというような指摘もございました。
 日本人材派遣業界では、倫理問題研究委員会を設置して自主的な取り組みを進めておりますけれども、こうした事例に対しては当局としても適切な対応が必要ではないかというふうに思います。この派遣労働に関しましての指導監督体制は、職業安定局そしてまた職業安定部、公共職業安定所が指導監督をすることになっておりますけれども、むしろ基準監督署の方が労働基準行政との連携を図って適切な管理監督をすべきではないかという指摘もあるわけでございます。
 先ほど申しましたように、フレキシビリティーと同時にセキュリティーを確保することが大切だという考え方があるわけでございまして、こうした派遣労働の拡大において労働者のセキュリティーを確保するために、政府として今後どう取り組むのか、お考えをお聞きしたいと思います。
戸苅政府参考人 確かに、労働者派遣という形は、雇い主と派遣労働者を使用する使用者が分離しているという特殊な形態でありまして、そういった意味で、先生御指摘のとおり、派遣労働者のセキュリティーをいかに確保していくかということは大変重要な課題になっているわけであります。
 統計的に申し上げますと、これは去年の六月に今回の制度改正のために行った実態調査でございますが、例えば、月当たりの勤務日数は平均十九・五日、それから一日の勤務時間は平均七・五時間ということで、常用労働者の月当たりの勤務日数が平均十九・九日、一日の勤務時間が平均七・七時間、こういうふうに比べますと、それほど大差のない働き方になっているんだろうというふうに思います。
 賃金につきましては、派遣労働者の一時間当たりの平均賃金は千二百五十三円です。パートタイマーの一時間当たりの平均賃金は九百十四円ですから、かなり高い水準になっている。これは、専門性を持っている方が多いということだろうと思います。
 平均的な労働条件は今申し上げたようなことでありますが、ただ、派遣労働者の方々の我々への要望あるいは派遣先への要望、こういったものを見ますと、やはり派遣先が非常に問題がある、あるいは派遣会社にも問題がある、そういった問題のあるところに取り締まりを強化してほしい、こういう意見は確かに見られるところでございます。そういったことで、とにかく我々としては、やはり労働者派遣契約に基づきまして業務を行い、労働条件が、就業条件が決まっているわけでありますので、これをきちんと守っていただくということが基本だろうというふうに思っています。
 そういった意味で、これの違反について派遣労働者の方から申告があり、あるいは相談があるといった場合に、それに的確に対応して、きちんと是正をさせるということが重要なんだろうというふうに思います。そういった意味で、都道府県の労働局あるいは第一線機関を通じまして、派遣労働者の方からの申告、相談、あるいはいろいろな機会をとらえての、派遣法違反あるいは派遣契約違反、そういったものがあった場合には、その是正に向けまして厳正な指導をしていきたい、こういうふうに考えています。
福島委員 時間も残り少ないので、あと一問だけお聞きをいたします。
 これは職業安定法関係の話でございますが、今般の改正では、地方公共団体に無料職業紹介事業を認めることとしたわけでございます。これは、全国知事会でも大変強い要望がありまして、そういった要望も踏まえて盛り込まれた内容だと考えております。
 現下の大変失業率が高どまりをしている中にありまして、それぞれの地方公共団体において、その地方の実情を踏まえたこうした事業に取り組みたいという要望が強いのだと思っておりますけれども、どのような事業が実施されることになるのか、その展望につきまして御見解を最後にお聞きしたいと思います。
坂口国務大臣 現在の雇用情勢を見ておりますと、やはり地域による格差というのが非常に大きくなってきておりますし、そしていわゆる失業率も地域によってうんと違っております。また、内容も違っているということもございます。いわゆる国からの一本の雇用政策だけでは立ち行かない、そういう事態だというふうに思っております。
 したがいまして、今般、地方からも非常に要望の強かったことでございますが、それぞれの都道府県等でも十分に活用していただく、そしてその地域に見合った雇用対策というものを考えていただくということで、非常にこれは今後プラスになるのではないかというふうに思っております。
 先ほど申しましたように、商工会でありますとかあるいは農協等にも、これはそれぞれの自分たちの範囲の中と申しますか、会員の皆さん方の問題を手がけていただくこともでき得るということにいたしまして、総合的に雇用対策というものを確立していきたいというふうに思う次第でございます。
福島委員 以上で終わります。ありがとうございました。
中山委員長 次に、山谷えり子君。
山谷委員 保守新党、山谷えり子でございます。
 労働者派遣法の改正法案を中心に質問いたします。
 一点目は、紹介予定派遣の問題でございます。
 紹介予定派遣は、アメリカではテンプ・ツー・パームとかテンプ・ツー・ハイヤー、テンポラリー・ツー・ハイヤーというような形で広く普及しているものでございまして、直接雇用に大いに結びついているようでございますけれども、日本では平成十二年十二月にやっと導入されたわけでございます。
 私といたしましては、雇用に結びつくことが前提になっている紹介予定派遣は、新卒者や若年者の雇用を確保する手段としては大変よいものと評価しておりまして、本来であればもっと早く導入すべきであったとも考えられますけれども、もともとこの制度はどうして認められていなかったのか、また、どういう背景でこれが我が国に導入されたのか、お聞きしたいと思います。
戸苅政府参考人 労働者派遣法は昭和六十一年に制定されたわけであります。
 制定されました当時は、労働者派遣という形態が、派遣労働者を雇っている事業主と派遣労働者を業務上の指揮命令をして使用する事業主とが分離しているという特殊な形態であるということで、雇用主としての派遣元、派遣会社でありますが、派遣会社の責任をどうやってきちんと果たさせていくかというのが大きな課題でありました。
 そういった中で、職業紹介と労働者派遣、これが一体のものとして行われるということについて、そういったことをやることが、派遣元事業主、派遣会社でありますけれども、派遣会社の雇用主としての責任が十分全うされずにあいまいなものになってしまうんじゃないかということで、審議会等でも理解が得られなかった、あるいは国会でもコンセンサスが得られなかった、こういうことで、しばらくそういった状態が続いていたということであろうと思います。
 先ほどお話しのとおり、アメリカではテンプ・ツー・パームということで、とにかく臨時的、一時的な働き方から恒常的な働き方へという手段として紹介予定派遣が広く行われていたわけであります。現在でも、派遣労働者の三割ぐらいは、派遣という形を経由して派遣先に採用されている、こういう実態があるわけで、我々も、こういった実態を十分踏まえ検討を進めてきたわけであります。
 具体的には、法制定から十数年たちました前回の法改正の際に、委員御指摘のとおり、非常に就職環境の厳しい若年者等の円滑な、あるいは有効な求人求職の結合といいますか就職の実現に紹介予定派遣が役に立つということ、それから、十数年たって派遣が非常に定着してきて、派遣元事業主の雇用主としての責務のあり方、こういったものが広く認識されてきた、こういったことがあったということで、平成十二年の十二月以降、これを一定のルールのもとで認めようということで今日に至っている、こういうことでございます。
山谷委員 現在、失業者の約半分ぐらいが若年層でございます。また、大卒で就職する方たちが六割ぐらいということで、就職した方たちも三人に一人が三年以内にやめる。非常に若年層の働き方も変化してきているわけでございます。
 大手派遣会社のパソナとかテンプスタッフによりますと、派遣期間終了後、七、八割のスタッフが正社員として採用されているということでございますし、この形を使うのは、新卒者対転職者、一対二の割合で、二十代後半の若手の社員が多いということで、これは不安定雇用の拡大になるのではないかという懸念も確かにあるわけでございますけれども、やはり現状が非常に変わってきているということでございますので、今後とも、実態を見詰め続けながら、このような正社員へ道を開く、適性を見きわめるための紹介予定派遣の充実というのも考えていかなければならないというふうに思っております。
 現行の紹介予定派遣は、当然、労働者派遣法からくる派遣のルールの中で運用されているものです。しかしながら、このルールの中には、紹介予定派遣が本来ねらいとしている直接雇用の促進にとって阻害要因になっている、あるいは、言葉をかえれば、使い勝手の悪いものになっていると指摘されているものがあります。例えば、労働者派遣を行う前の事前面接ができないことや、労働者派遣期間中の内定行為の禁止が挙げられると思います。
 こうした要因を取り除いて改正法案に紹介予定派遣を位置づけることは画期的なことでございますが、この点、今回、紹介予定派遣を法律上明確に位置づけるねらいはどのようなものか、今回の改正で紹介予定派遣はどのようによくなっていくか、大臣の御見解を伺いたいと思います。
坂口国務大臣 紹介予定派遣の問題をお聞きいただきましたが、アメリカにおきましても、派遣先によります直接雇用を促進するといったような報告がございます。派遣された皆さんが、その派遣先におきまして直接雇用に、いわゆる常用雇用に変わっていくということが非常に多かったという報告でございます。
 それからもう一つは、昨年六月に実施をいたしました実態調査におきましても、希望する派遣労働者の多くが、紹介予定派遣について、就職先の仕事が自分に合っているかどうかということがはっきりとわかる、そういう積極的な評価がなされているところでございます。
 こうしたことから、今回の見直しにおきましては、紹介予定派遣を、派遣労働者の直接雇用を促進して、そして一層有効に機能させるために、紹介予定派遣に関するルールを法律において新たに規定したところでございます。紹介予定派遣にかかわります派遣労働者の就業条件の整備を図りまして、派遣労働者の派遣就業開始前の面接あるいは採用内定等を可能にしているところでございます。このようなことを行うことによりまして、よりスムーズに派遣先を決定することができるものというふうに考えているところでございます。
山谷委員 続きまして、育児、介護休業の代替要員の派遣の問題について伺いたいと思います。
 我が国においては少子化が急速に進行しておりまして、一人の女性が一生の間に産む平均子供数である合計特殊出生率は一・三三、過去最低を記録しております。こうした中、子供を産み育てやすい職場環境づくりは大きな課題であり、育児休業の代替要員の確保も一つの問題でございます。また、高齢化の進展に伴いまして、介護休業の代替要員の確保も重要でございます。
 生活者の視点に立った労働政策が大切だというふうに考えておりますが、今回の制度見直しでは、育児休業や介護休業の代替要員の派遣について改善がございますけれども、この改善の内容、また、改善していく中で、経営者側あるいは働く側、さまざまな意見交換があったと思いますが、そのようなことを御紹介いただきたいと思います。
戸苅政府参考人 育児休業、それからそれに先立つ、あるいはその後にとります産前産後休業、それからさらに、それよりも先立ち、あるいはそれよりも後になるという休業、それぞれを通算しまして二年を超えない期間内に限って、先ほど来議論になっております現行の一年の期間制限の適用をしない、こういう運用を今までいたしております。
 今回の改正におきましては、少子高齢化の一層の進展ということを踏まえまして、通算して二年という制限を撤廃いたしまして、より長期間の育児休業などを取得できるように、取得した労働者の代替要員、これについても派遣をできるようにというふうにいたしたわけであります。
 これは、もともと、たとえ育児休業あるいは産前産後休業、それからそれに先立ち、あるいはそれに後続する休業を取得されている労働者の方の代替要員といえども、余り長期にわたると派遣期間の制限の抜け道になってしまうんじゃないかという意見が実はかなりございまして、そういったことから、先ほど申し上げましたように通算二年というふうなことであったわけでありますが、今回は、少子高齢化の進展という中で、やはり安心して企業も育児休業等を付与できるようにというふうな観点、さらに、法律の育児休業以上の、企業による育児休業がより充実するようにというふうなことから、代替要員の派遣についての期間の制限を撤廃いたすことにして、これは反対はなかったということだろうと思います。
 それから、現在、介護休業の代替要員の派遣については派遣期間の制限がありますけれども、これにつきましても、少子高齢化への対応ということで、この制限を適用しないということに今回いたしたい、こう考えております。
山谷委員 最後に、これまでの委員会でも出ましたが、製造業の派遣の解禁の問題についてお聞きします。
 まず、現在、製造業は、当分の間、労働者派遣ができないということになっていますが、なぜこれまで認めてこなかったのでしょうか。
戸苅政府参考人 平成十一年に派遣法の改正をいたしました。その際に対象業務のネガティブリスト化を行ったわけでありますけれども、製造業の直接生産工程につきましては、我が国の雇用労働者の方に占める製造業で働く労働者の方の割合が非常に大きい、それから、労働条件の決定に与える影響も非常に大きいというふうなことを考慮いたしまして、法律上、法の本則ではネガティブリスト化ということにいたしたのでありますが、法の附則におきまして、激変緩和の観点から、当分の間、厚生労働省令で、物の製造業務を行ってはいかぬということにいたしまして、労働者派遣の対象業務としてこなかった、こういうことであります。
山谷委員 今のお話を聞きますと、経過的な位置づけであったようでございますが、現在、我が国の製造業は従来経験したことのないような激しい国際競争に直面しており、国内における生産拠点を縮小、閉鎖したりする動きも見られるところでございます。こうした中、あらゆる手段を使い、我が国の製造業の競争力を高めていくということは、我が国の国策と位置づけるべきではないかと思います。そうしますと、この労働者派遣法の改正内容も、製造業の労働力需要に迅速的確に対応し、競争力を高めていくというのをねらいとしていると考えられ、製造業務への労働者派遣の解禁は高く評価できます。
 本当に製造分野のアウトソーシング市場拡大ということで、厚労省のアンケート調査でも、平成十四年の調査で、派遣を実施したいというのが七割、ビジネスチャンスの拡大につながるというふうに考えられているわけでございますが、心配なのは、製造現場での構内下請の問題でございます。
 労働者派遣が禁止されていたこともあるのでしょうけれども、製造現場では、請負と称して実態は違法な労働者派遣が行われる偽装請負が横行しています。労働者派遣であれば派遣先が責任を持つべき職場の安全衛生が、請負だからといってなおざりにされるおそれがあり、働く人の命や健康にかかわる大きな問題になりかねません。
 そこで大臣、この偽装請負の問題について、製造業の派遣の解禁を受け今後どのように対処していこうとお考えか、御見解をお伺いしたいと思います。
坂口国務大臣 今お話がございましたように、確かに、現在までの製造業を見ますと、いわゆる偽装請負というのがかなりあるのではないかというふうに危惧をしてきたところでございます。偽装でなくとも、正式の請負業というのは非常に多いわけでございます。製造業の中で、さまざまな請負業者がその中に入り込んでいく。
 請負業でありますから、本当は請負業の社長さんの命令に従って仕事をしなければならないわけでございますが、そうではなくて、請負先の社長命令によって動いているというようなケースもなきにしもあらずでございます。これは、今も御指摘がありましたように、今まで派遣業というものを禁止してきたということもあって、そういう形になってきた。言ってみれば、代替措置というようなことにもとられかねないわけでございます。
 今後、派遣業は派遣業として明確に位置づけ、そして請負業は請負業として明確に位置づける、そういう割り振りというものが非常に大事だというふうに思っております。今までのように、どちらかというと非常にあいまいになっていた、そこをはっきりとさせなければいけないというふうに思う次第でございまして、こうした点がうまく製造業の中に取り入れられていることを期待いたしているわけでございます。しかし、うまくいかないというようなことがもし起こるといたしましたならば、それに対して適切な手を速やかに打たなければいけない、そういうことも考えているところでございます。
山谷委員 派遣と請負の区分明確化を徹底していくということでございますけれども、去年の十一月、山梨の労働基準監督署では講習会を開いて、受け入れ企業側の正しい認識、啓蒙活動などをしているわけでございますけれども、場合によっては臨検指導とかいろいろあると思いますけれども、これからの問題ではございますけれども、具体的に例えば定期的な実態調査、具体的な何か指導というようなものをもし今の時点で考えておられましたらお教えいただきたいと思います。
戸苅政府参考人 物の製造の業務に派遣を導入するということになったときに問題点は二つありまして、一つは今委員おっしゃったとおり、請負と派遣、これがきちんと区分していかないと、偽装請負という格好で、何のために派遣を新たに導入したのかという意義がなくなってしまうということでありまして、そのあたりをどうやってきちんと適正化のための指導をしていくかということであります。
 こうなると、かなり職員の専門性を高めていく必要があるんじゃないか、こういうふうに思っていまして、そういった意味で、現在ハローワークでも指導を行っていますけれども、これをむしろ都道府県の労働局レベルに引き上げまして、そこに派遣の指導監督のための専門的な職員を集中してきちんと指導していくということを一つ考えぬといかぬだろうと思います。
 それからもう一つは、やはり製造業に派遣を導入するとなりますと、安全衛生の問題というのも大きな問題になるんじゃないかと思います。そういった意味で、労働基準行政と職業安定行政の連携強化を図っていくということが重要だろうというふうに思います。
 あわせて、先生おっしゃるとおり、派遣の現場がきちんと行われるようにという意味では、派遣先それから派遣労働者、そういった方々に派遣と請負の違いというものをきちんと理解していただくということも重要でありまして、そのあたりも手抜かりのないようにきちんとやっていきたいというふうに思っております。
山谷委員 本当に激しい国際競争の時代、また産業構造もさまざまな中で、時代に合った働き方、それからチャレンジシステムやスピリットをどうつくっていくか、それと同時に雇用の安定、充実した働き方、職場を求めていくという非常に難しい課題ではありますけれども、今回の法改正がその方向に向かって一歩前進していくということを望みまして、質問を終わらせていただきたいと思います。
中山委員長 次回は、来る九日金曜日に委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後五時二十六分散会


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