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第22号 平成15年6月6日(金曜日)

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平成十五年六月六日(金曜日)
    午前九時三十分開議
 出席委員
   委員長 中山 成彬君
   理事 熊代 昭彦君 理事 長勢 甚遠君
   理事 野田 聖子君 理事 宮腰 光寛君
   理事 鍵田 節哉君 理事 山井 和則君
   理事 福島  豊君 理事 武山百合子君
      荒巻 隆三君    岡下 信子君
      後藤田正純君    佐藤  勉君
      田村 憲久君    竹下  亘君
      棚橋 泰文君    西川 京子君
      原田 義昭君    平井 卓也君
      松島みどり君    三ッ林隆志君
      宮澤 洋一君    森  英介君
      谷津 義男君    山本 幸三君
      吉田 幸弘君    吉野 正芳君
      渡辺 具能君    家西  悟君
      石毛えい子君    大石 正光君
      大島  敦君    加藤 公一君
      五島 正規君    城島 正光君
      三井 辨雄君    水島 広子君
      江田 康幸君    桝屋 敬悟君
      佐藤 公治君    小沢 和秋君
      大森  猛君    阿部 知子君
      金子 哲夫君    山谷えり子君
      川田 悦子君
    …………………………………
   厚生労働大臣       坂口  力君
   厚生労働副大臣      鴨下 一郎君
   厚生労働大臣政務官    渡辺 具能君
   政府参考人
   (文部科学省初等中等教育
   局長)          矢野 重典君
   政府参考人
   (厚生労働省医政局長)  篠崎 英夫君
   政府参考人
   (厚生労働省雇用均等・児
   童家庭局長)       岩田喜美枝君
   政府参考人
   (厚生労働省保険局長)  真野  章君
   政府参考人
   (厚生労働省年金局長)  吉武 民樹君
   厚生労働委員会専門員   宮武 太郎君
    ―――――――――――――
委員の異動
六月六日
 辞任         補欠選任
  奥谷  通君     原田 義昭君
  渡辺 具能君     荒巻 隆三君
  山口 富男君     大森  猛君
同日
 辞任         補欠選任
  荒巻 隆三君     渡辺 具能君
  原田 義昭君     奥谷  通君
  大森  猛君     山口 富男君
    ―――――――――――――
六月六日
 社会保障の拡充、将来への安心と生活の安定に関する請願(五島正規君紹介)(第二九〇五号)
 同(平沢勝栄君紹介)(第二九〇六号)
 同(佐藤公治君紹介)(第二九三一号)
 同(平沢勝栄君紹介)(第二九三二号)
 腎疾患総合対策の早期確立に関する請願(平沢勝栄君紹介)(第二九〇七号)
 同(佐藤公治君紹介)(第二九三四号)
 あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律の改正に関する請願(五島正規君紹介)(第二九〇八号)
 同(鍵田節哉君紹介)(第二九八九号)
 同(家西悟君紹介)(第三〇四三号)
 小規模作業所等成人期障害者施策に関する請願(伊吹文明君紹介)(第二九〇九号)
 同(金田誠一君紹介)(第二九一〇号)
 同(五島正規君紹介)(第二九一一号)
 同(佐々木憲昭君紹介)(第二九一二号)
 同(佐藤謙一郎君紹介)(第二九一三号)
 同(鈴木恒夫君紹介)(第二九一四号)
 同(東門美津子君紹介)(第二九一五号)
 同(中沢健次君紹介)(第二九一六号)
 同(森英介君紹介)(第二九一七号)
 同(荒井聰君紹介)(第二九三五号)
 同(植竹繁雄君紹介)(第二九三六号)
 同(江田康幸君紹介)(第二九三七号)
 同(江藤隆美君紹介)(第二九三八号)
 同(近藤昭一君紹介)(第二九三九号)
 同(佐藤観樹君紹介)(第二九四〇号)
 同(鮫島宗明君紹介)(第二九四一号)
 同(田野瀬良太郎君紹介)(第二九四二号)
 同(東門美津子君紹介)(第二九四三号)
 同(中沢健次君紹介)(第二九四四号)
 同(東順治君紹介)(第二九四五号)
 同(福井照君紹介)(第二九四六号)
 同(桝屋敬悟君紹介)(第二九四七号)
 同(横光克彦君紹介)(第二九四八号)
 同(川内博史君紹介)(第二九九〇号)
 同(瓦力君紹介)(第二九九一号)
 同(玄葉光一郎君紹介)(第二九九二号)
 同(鮫島宗明君紹介)(第二九九三号)
 同(中川智子君紹介)(第二九九四号)
 同(柳澤伯夫君紹介)(第二九九五号)
 同(阿部知子君紹介)(第三〇四四号)
 同(家西悟君紹介)(第三〇四五号)
 同(岩屋毅君紹介)(第三〇四六号)
 同(玄葉光一郎君紹介)(第三〇四七号)
 同(村上誠一郎君紹介)(第三〇四八号)
 医療改悪を実施前に戻すなど社会保障の充実に関する請願(大島令子君紹介)(第二九一八号)
 同(保坂展人君紹介)(第二九四九号)
 同(山村健君紹介)(第二九五〇号)
 同(川田悦子君紹介)(第二九九六号)
 同(家西悟君紹介)(第三〇四九号)
 同(中村哲治君紹介)(第三〇五〇号)
 同(永田寿康君紹介)(第三〇五一号)
 健保三割負担を二割に戻すなど患者負担の軽減に関する請願(大森猛君紹介)(第二九一九号)
 同(川内博史君紹介)(第二九九七号)
 同(中川智子君紹介)(第二九九八号)
 あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律第十九条の改正に関する請願(近藤昭一君紹介)(第二九三三号)
 総合的な肝疾患対策の拡充に関する請願(川田悦子君紹介)(第二九八二号)
 同(城島正光君紹介)(第二九八三号)
 同(武山百合子君紹介)(第二九八四号)
 同(福島豊君紹介)(第二九八五号)
 同(山口富男君紹介)(第二九八六号)
 同(阿部知子君紹介)(第三〇五二号)
 同(家西悟君紹介)(第三〇五三号)
 同(石毛えい子君紹介)(第三〇五四号)
 同(笹川堯君紹介)(第三〇五五号)
 同(三井辨雄君紹介)(第三〇五六号)
 乳幼児医療費無料制度の創設に関する請願(石井郁子君紹介)(第二九八七号)
 健保三割負担など医療費負担増の見直しに関する請願(玄葉光一郎君紹介)(第二九八八号)
 保険によるよい歯科医療の実現に関する請願(川内博史君紹介)(第二九九九号)
 てんかんを持つ人の医療と福祉の向上に関する請願(阿部知子君紹介)(第三〇三六号)
 同(石毛えい子君紹介)(第三〇三七号)
 同(川田悦子君紹介)(第三〇三八号)
 同(武山百合子君紹介)(第三〇三九号)
 同(福島豊君紹介)(第三〇四〇号)
 同(山口富男君紹介)(第三〇四一号)
 パーキンソン病患者・家族の療養生活の質向上に関する請願(枝野幸男君紹介)(第三〇四二号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 次世代育成支援対策推進法案(内閣提出第一〇九号)
 児童福祉法の一部を改正する法律案(内閣提出第一一〇号)


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     ――――◇―――――
中山委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、次世代育成支援対策推進法案及び児童福祉法の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。
 この際、お諮りいたします。
 両案審査のため、本日、政府参考人として文部科学省初等中等教育局長矢野重典君、厚生労働省医政局長篠崎英夫君、雇用均等・児童家庭局長岩田喜美枝君、保険局長真野章君及び年金局長吉武民樹君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
中山委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
中山委員長 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。西川京子君。
西川(京)委員 おはようございます。自由民主党の西川京子でございます。よろしくお願いいたします。
 昨日、夜のテレビのニュースを見ておりましたら、各局一斉にこの少子化の問題をかなり大きな時間を割いて報道しておりました。そして、我が国の少子化の流れがとまらない、大変深刻な状況であるという認識だったと思いますが、その中で、去年子供が出生した数が百十五万三千八百六十六人と、ピーク時の半数以下だというような報道がございました。
 平成十一年以来、政府は少子化に対する危機感を持ちまして、さまざまな、新エンゼルプランその他、少子化対策の推進の方向性の政策をとってきたと思いますが、なかなかこの流れがとまらないという中で、今まで少子化の原因が、若者たちの晩婚化の問題とか、そういうことが大きな原因のようでしたが、最近になって夫婦間の出生数も落ちてきたというようなことで、急遽、さまざまな少子化に対する新しい政府の試みが出てきたと思います。
 その中で、今回、この次世代育成支援対策推進法案が上程されたわけですが、このことについての私なりの思いというのがございますが、次世代育成という名称にしたこと自体、そしてその中でのこの法案の基本の背骨となるようなもの、その辺についての大臣の御見解を問いたいと思いますが、よろしくお願いいたします。
坂口国務大臣 合計特殊出生率が一・三二という、今までにない数字になりまして、この法案の論議をしていただくちょうどそのときに出たということもございまして、マスコミの方もいろいろ取り上げてくれているところでございます。
 今お話がございましたように、少子化対策という言葉がございますし、それから今回のこの法案の次世代育成支援対策という言葉にしているわけでございますが、少子化対策というふうに言いました場合には、かなり幅広いさまざまな問題が含まれてまいります。大きく言えば、教育論でありますとかあるいは家族問題、国家論、さまざまな経済の問題等々、非常に幅広いことで議論がございます。
 しかし、我々が今回取り上げました次世代育成支援対策というのは、現在生まれております子供たちをどういうふうに支援し、そして育てていくかといったことを中心にしているわけでございます。このことは、現在生まれております子供たちをどう育てていくかということを議論し、そのことをどうするかということを考えることは、広い意味での少子化対策にもなっていくというふうに思っておりますが、まず、現在生まれております子供たちに対してどのようにしていくかということを中心に議論をしていただこうということだというふうに思っております。
西川(京)委員 ありがとうございます。
 私の認識では、この法案は、一つの大きな歴史の流れの中で、今現実に子供を抱えて育児に困っている方々に対する対策もそうでございますけれども、やはり、自分たちの生きている現在というのは祖先、そして長い歴史の中からの自分たちの生があった、そして次の世代にも私たちの生の一つの流れを育成するという大きな流れの中で認識しなければいけないのではないか、そういう思いも入った名称のつけ方ではなかったのかなと私は思っております。
 そういう中で、平成十一年に上程されました少子化社会対策基本法、これが今、内閣委員会の方に出されております。その中で、基本法が今までなかったということで、この次世代育成支援法案と相まって、基本法の方に関しましては、まさに女性の生み育てるという考え方について、大変幅の広い意見が今、物の多様化の中で考えられておりますが、その中での一つの基本法というものをきちんと策定した上で、さらにこの次世代育成支援法案が大きな効果が出てくればいいなと思っておりますので、こういう大きな各省庁間の垣根を取り払った連携の上で、この対策がより効果的なものになっていくことを私も願っております。
 そういう中で、今大臣が、生まれた子供に対する政策とおっしゃいましたけれども、実は、やはりまだまだ若者たちの結婚観というんでしょうか、それが本当に大きく変化してくる中で、結婚の晩婚化あるいは結婚しない若者たちがふえているという現実があると思うんですが、その点についての大臣の、原因なり、その対策なりをちょっとお聞かせいただけたらと思いますけれども。
坂口国務大臣 これは大変難しい問題でありまして、私がなかなか答え切れるかどうかわからないわけでございますが。
 確かに、結婚をしない人がふえていることも事実でありますし、今回のこの統計を見ましても、結婚いたしました組数と申しますか、人数も前年に比べますとかなり減っている。今回発表しました分は二〇〇二年の分でございますから。二〇〇〇年それから二〇〇一年というのは、新世紀ということで合わせて結婚した人も多かったということもあって、影響しているということもあるようでございますけれども。しかし、それにいたしましても減ってきている。そして、離婚率はふえている、こういう状況の中でございます。
 これは、個人の結婚観でありますとかあるいは価値観の変化ということもございましょうし、親から自立して結婚生活を営むことへのためらいといったようなこともあると思いますし、将来の育児やあるいは仕事との両立の負担感というようなものも多分あるんだろうというふうに思います。それから、現在続けております仕事を断念せざるを得ないことへの懸念といったようなことも多分あるんだろうというふうに思っております。
 今挙げましたような理由以外にもあるというふうに思いますが、こうしたことがトータルで、結婚をためらうあるいは結婚をしないということがふえてきているのではないかというふうに思います。
西川(京)委員 ありがとうございます。
 結婚するのは全く個人の自由で、両性の合意のみによって成り立つわけですから、これを心の中に入って政府がああだこうだと言えないという、これは本当に難しい問題だと思います。
 しかし、何らかの社会的な雰囲気、日本という国の中の雰囲気なり周りの施策というのが結局効果をあらわして、若者たちにそういう気持ちを与える、そういうことはできるわけですから、これは皆さんの大きな気持ちをもって少しでもそういう方向にという思いはあります。
 その中で、やはり不況の問題もかなり影響していると思うんですね。若者たちが、フリーター現象というんでしょうか、きちんとした定職につかないというような中での結婚ということに対する大きな見通しが立たないという、そんな問題も多分含まれているんだろうと思います。
 そういう中でのこれからの労働行政の、雇用行政の責任も大きいわけでございますけれども、その中でもう一つ、次も文科省にお伺いしたいと思いますが、若者たちが育つ環境の中で、子供たちと余り接触しないで育ってきているような若者も多いと思います。そういう中で、家族観というものが非常に希薄になっている。
 その中で、私は、中高生たちに、この新しいあれの中で、親になるための出会い、触れ合いということで、保育所や乳幼児健診の場、幼稚園、児童館などを利用して、中高生が乳幼児と触れ合う機会を広げるという、これは大変いい政策だと思うんですね。
 実は、私、以前にテレビのドキュメンタリーをちょっと見ておりましたら、芸能人の若者のグループが幼稚園に行って保育活動を体験するというドキュメンタリーを見ましたけれども、本当に最初のころの彼らのふわふわとした雰囲気の表情から、それが、一日つき合った後、涙を流して自分と子供たちと接した体験を話したんですね。これはもう劇的な効果というんでしょうか、恐らくそういう体験をしてこなかったんだろうと思うんですね、そういう若者たちが。
 四人いたと思いますが、それぞれに担当させて、最後に、その先生が好きな人みんな集まってというので、四人にこの園児たちが分かれるんです。その中で、一人しか来てくれなかった人がいるんですけれども、その若者がその子を抱き締めて、涙ながらに感動した話をしたわけですね。
 これは一つの、ある意味ではテレビ的演出もあるかもしれませんが、これはやはり、かなり私は、この若い中高生の間、一番微妙なころに子供たちとの接触をなるべく多く与えるという、自分の家庭の中ではそういう機会がないわけですので、まさに、子供と接することによって人間は育てられるという教育的意味もあると思いますが、その辺のところをぜひ文科省の方からお願いしたいと思います。
矢野政府参考人 児童生徒が健全に成長していく上で、学校教育の段階から、先生から御指摘がございましたけれども、幼児について学んだりあるいは触れ合ったりすることは大変重要なことでございまして、昨年の四月からスタートいたしました新しい学習指導要領におきましても、例えば小学校の生活科、また中学校の技術・家庭科、さらには高等学校の家庭科や特別活動におきまして、このことを明確に位置づけをいたしておりまして、そうしたことを通じまして、このような活動や指導の充実を図ることといたしているところでございます。
 また、文部科学省におきましては、平成十四年度から豊かな体験活動推進事業という事業を実施しておりまして、この事業におきましては、学校における取り組みの一つとして、幼稚園や保育所への訪問等を初めとする保育体験活動が実施されているところでございまして、先ほど先生が御紹介になりましたようなそうした活動も、こうした中で取り組まれているところでございます。
 さらに、私立高校におきます保育体験の推進を図りますために、高校生が幼稚園等におきまして保育などに関する体験活動に取り組み、子育ての意義などに対する認識を深める等の授業を行っている、そういう都道府県に対して、国として補助をいたしているところでございます。
 今後とも、関係する教科あるいは特別活動における指導や、先ほど御紹介を申し上げましたような事業の実施を通じまして、児童生徒が幼児と触れ合ったり、また幼児と適切にかかわることができるような、そういう機会の充実を図ってまいりたいと考えております。
西川(京)委員 今、局長の方から具体的なお話がございましたが、これは大体全国でどのくらい、何カ所ぐらい行われているんでしょうか。
矢野政府参考人 先ほど御紹介を申し上げました豊かな体験活動推進事業は、全国で百余りの地域で行われております。
西川(京)委員 その体験活動というのは、いろいろな、恐らく、自然体験とかそういうのも含むんだと思うんですね。乳幼児との交流というのに絞りますと何カ所ぐらいですか。
矢野政府参考人 おっしゃいますように、この豊かな体験活動というのは自然体験活動なども含めているわけでございますが、その中で、保育体験活動の例といたしましては、全国で十カ所程度の県におきまして実施されているところでございます。
西川(京)委員 これはもちろん、大変少ないという印象を持ちますけれども、この新しい今回の基本法ができ、そしてこの育成支援法がもし推進されるようなことになった暁には、この体験を、ぜひもっと箇所をふやして、単にモデル校というようなレベルでなく、ぜひぜひいろいろな、新しい土曜日の時間がありますよね、それとか総合学習の機会とか、そういうのをとらまえてふやしていただくように要望しておきます。よろしくお願いいたします。
 これと関連があるかもしれませんが、世代間交流、こういう一つの社会性なり、そして家族というものに対する思いなりを育てるのに、若者たちの乳幼児との体験というのもありましたが、もう一つは、やはり、お年寄りと子供たちとの交流というのも大変大切なことだと思うんです。
 今、特養と保育園を近くにつくるとか、試験的にいろいろな試みがされていると思います。その中で、これはちょっと、うちの町のことで恐縮なんですが、要するに、保育園の保育士さんたちですね、パートの人たちが何人か入っていますが、そのパートの人たちがどうしても、ちょうど子育て中の主婦が多いわけですので、延長保育で時間を長くするのは嫌がると言うといけませんが、できれば少しでも早く帰りたい。これは子育ての中での労働時間の短縮ということでも大事なことなんですが、その中で、バトンタッチとして、一時間ぐらいクロスオーバーさせて、夕方、午後の三時ごろから、もう子育てが終わった、ひとり暮らしのお年寄りの元気な方々を試験的に三、四人雇っております。
 これは、ちょうど御主人を亡くしてひとり暮らしになってしまって、もう毎日に非常に張り合いのなくなった人が一人入っていらっしゃいましたが、本当にうれしかったと。生き生きして、自分がまだ子育てとか社会に役立てるということで、大変パートの料金も、半分ボランティアでして、非常に安目になっておりまして、人件費の削減にもなるんですが、そういう中で、年配の女性たちを保育補助士としてもっと活用してほしい、このことをぜひ私は提案したいんですが、御見解をお願いいたします。
岩田政府参考人 今委員がおっしゃいましたことは、高齢者の生きがい対策にもなりますし、子供たちが高齢者と接して、思いやりの心、年配者を敬う心をはぐくむということでも、大変いいことではないかというふうに思います。
 実は、私どもも、そういうあり方を推進したいというふうに思っておりまして、高齢者を非常勤職員で保育所に雇っていただいた場合に、通常の運営費に対して加算をするという制度を設けております。きょう委員の御質問があるということが昨日わかりましたので、その利用状況を見てみますと、熊本県下の保育所が非常に積極的にそれを利用しておられるということがわかりました。
 そういう補助金制度も活用していただきながら、全国でもっとこういう取り組みが広がれば大変いいことではないかというふうに考えております。
西川(京)委員 核家族化ということで、お年寄りと、子育てする若いお母さんたちとの交流の場所も少なくなる中で、保育園が家庭も兼ねる、おばあちゃんもいて、おじいちゃんもいて、お母さん役の保育士の人もいるという、そんな形のきめ細かな保育行政が実現されたら本当に理想的だと思いますので、ぜひどんどん進めていただきたいと思います。
 その中で、今、仕事と子育ての両立支援ということがずっと言われてまいりまして、待機児童ゼロ作戦などで、都会では保育所の充実が図られてきたわけです。その中で、もう一方は、私は、やはり働き方、特に女性、女性と含めるとまたいろいろ問題があるのかもしれませんが、もちろん男性が育児休暇をとってもいいし、あれなんですが、少なくとも、お母さんたちが夕方なるべく早く帰れる働き方という、それをやはり考えていかなければいけないと思います。
 そういう中で、今、育児休暇をとる率などは、女性の方は大分多くなってきているようですが、男性の方がまだ非常に少ないという現実もありますが、労働時間の短縮というんでしょうか、そういう方向というのはどのくらい具体的に出てきているんでしょうか。わかりましたら、お願いしたいと思います。
鴨下副大臣 先生がおっしゃっているように、仕事と育児を両立させる、こういうようなことのために、重要な観点は、やはり仕事のことも時間的にある程度融通をつけていかなければいけない、こういうふうなことだろうと思います。
 育児・介護休業法におきましても、仕事と子育ての両立支援措置として幾つかございますけれども、例えば、小学校就学前の子を持つ労働者のために、時間外労働及び深夜業の制限、さらに短時間勤務制度、フレックスタイム制の勤務時間短縮等の措置、さらに子供の看護休暇制度の導入の努力義務、こういうようなことをつくりまして、労働者が子育てのための時間を確保しやすくする。こういうようなことの措置が規定されているわけでありまして、これが実際には、さまざまな経済状況だとか今までの慣行等でなかなか思うようにはいかないというのが現実だったわけであります。
 さらに加えて、次世代育成支援対策推進法を今回御審議いただいているわけでありますから、こういうようなことに基づきまして、さらに企業の実情に応じた主体的な取り組みを推進していただく、こういうようなことでございます。
西川(京)委員 先日も、これもテレビのドキュメンタリーでしたが、延長保育とか夜間保育の問題を扱っておりましたが、実は、預けているお母さん自身の方から、これ以上延長保育に子供を置いておくと、子供を預かっているところから子供を手にして、家に帰って子供と話す時間がほとんどない。これ以上保育の延長というのは、預ける側からしても、私は母親として、これ以上ふやすのは、やはり子供に影響がよくないなと思うというような意見が出ていました。
 私自身も、余りに延長保育なり夜間保育なりと保育整備をし過ぎて、実際に母親が子育てとどんどん離れていってしまうような状況というのは賛成しかねるんですね。ですから、できましたら、労働時間、働き方を何とかもうちょっと、母親が子供と接する時間を少しでも多くなるような働き方を考えるという方向にこの育児支援というのがなっていったらうれしいなという気持ちは持っております。
 その中でもう一つ、これはぜひお伺いしたいんですが、実は、今、家庭内暴力とかそういういろいろな問題の中で、各県に婦人相談センターのようなものがありますが、その中で今回、この少子化対策基本法の中にも盛り込まれようとしておりますが、女性が、若年層が主だろうと思いますが、妊娠してしまって、これを親にもなかなか言えない、もちろん学校の先生にも言えない。そういう中で、妊娠葛藤相談という場が日本ではほとんどないということで、これがドイツあたりではかなり整備されていて、結局、妊娠中絶にさっとストレートに行ってしまう人たちが、実はそこに相談して、さまざまなアドバイスをいただいて出産に至るというような経緯がかなり多いことを聞きました。
 そういう中で、今回熊本県で、この相談センターが五月一日に開設されました。女性相談センターという形で開設されております。婦人相談所を女性相談センターに改称し、近年増加傾向にある妊娠葛藤などの相談体制を新たに整えるということで、これは都道府県レベルでは初めてだと思いますが、保護司とか助産師、心理カウンセラーなどが常駐して相談に当たるということで、午前九時から午後五時まで、月曜から金曜などとなっておりますけれども、ぜひこれは、これから各県にふやしていっていただけたらありがたいと思いますが、御見解をお願いいたします。
岩田政府参考人 今委員が紹介してくださいました熊本県の取り組みは、大変注目をいたしております。その推移を見たいというふうに思っております。
 厚生労働省のこれまでの取り組みは、保健所などが中心になりまして、女性の健康相談窓口をつくっていただくことをやっておりました。これもまだ全国で、都道府県、政令市で二十二カ所しか設置されておりませんので、全国的な展開になってはいないんですが、この保健所などで行われております女性健康相談事業の中でも、妊娠や出産の悩みの相談を受けていただいているというふうに考えております。十五年度からは、モデル事業ではありますけれども、まさに今委員がおっしゃいましたようなことに特化した事業をやってみようと考えております。
 それは、思春期クリニックの一環といたしまして、望まない妊娠をしてしまった若い女性たちに、産む産まないの相談、産む場合にこういう支援が受けられるというようなことで、医学的な相談だけではなくて、さまざまな社会的なサポートの仕組みなども説明しながら相談に乗るということを、全国四カ所という限られた箇所ではございますけれども、実験的にモデル事業としてやってみたいというふうに思っております。熊本の取り組みなども参考にしながら、どういう形で全国に広げていけるか、検討してまいりたいと考えます。
    〔委員長退席、宮腰委員長代理着席〕
西川(京)委員 ありがとうございます。前向きなお答えをいただきましてありがとうございました。
 要するに、今、若者の性のモラルが大変乱れているという中で、これは一つの対症療法ではなくて、若者たちにもう少しきちんとしたモラルの指導というか、そういうことの意味もあると思いますので、ぜひその辺のところを加味したいろいろな相談員なりを考えていただけたらありがたいと思います。
 以上で質問を終わります。ありがとうございました。
宮腰委員長代理 次に、江田康幸君。
江田(康)委員 公明党の江田康幸でございます。
 早速質問に入らせていただきたいと思うんですが、昨日発表されました合計特殊出生率は一・三二。これは、一・三三からさらに後退しまして過去最低を記録したということでございます。昨年一月に公表されました将来推計人口におきましても、これまで少子化の要因として指摘されてきました晩婚化、これに加えて夫婦の出生力そのものが低下しているという現象も新たに見られることが今回は指摘されている。少子化の進行はとどまるところを知らない。そういう深刻な状況にあるという中で、きょうは御質問をさせていただきたいと思っております。
 時間がございませんので、焦点を当てて質問をさせていただきますが、我が国の少子化の問題というのは、社会経済におけるいろいろな要因が絡んでいる複合的な問題だと思っております。それだけに、少子化対策は、何か一つの決定的な政策を講じれば大きな効果があるという性格のものではないと思っております。さまざまな角度からいろいろな施策に取り組んでいく総合的な政策展開、これが必要とされる課題であるかと考えております。
 そうした総合性の観点から見ますと、これまでの少子化対策は、どちらかといえばその視点を夫婦や個人に置いた施策、例えば子供を生み育てる人に対する児童手当の支給とか保育サービスの提供、そういうところのみにあったのではないかなという気がするわけです。それで、こうした政策の重要性は、もちろん今後も続けていく必要がございますけれども、さらに加えて、別の視点からの政策展開にも力を入れるべき時期に来ているのではないか、そのように思います。
 具体的には、私きょう強調したいのは、地域の視点を重視した政策の展開、これが一つでございます。我が国で少子化が進んでいるといいましても、日本国じゅうを見ますと、すべての地域で少子化が進んでいるわけではない、ここが非常に大事なことで、例えば、都道府県レベルで見ましたら、沖縄県の出生率は一・八三でございます。福島県それから山形県の出生率は一・六程度です。それと、きょうは熊本県勢が質問を続けておりますが、私も西川先生と同じ熊本県でございますが、この我が熊本県も一・五二でありまして、九州各県も、福岡を除けば、ベストテンに入っているわけであります。また、市町村のレベルでも、出生率が上昇もしくは現状維持となっているところもあるわけです。
 こうした地域の高出生率の要因は、さらに調査分析する必要があるかと私は思いますけれども、私は、その大きな要因には、子育てを、親だけの問題とせずに、親族はもちろん、近隣の住民の皆さんが親の子育てを支援し助け合う力、すなわち地域の子育てに対する支援力の強さがかかわっているのではないかと思うわけでございます。
 その意味で、次世代育成支援対策推進法案の四つの柱のうちの一つは、平成十七年度よりすべての地方公共団体に行動計画を策定してもらうことにありまして、各地方公共団体が行動計画を策定する過程で、当然、保育のみならず、地域の子育て支援に十分注意を払っていくことが必要であると考えます。
 そこで、質問でございますが、このように地域、もっと正確に言えば小地域、ここにおける子育て支援の体制づくりに積極的に取り組む政策が今後非常に重要なのではないかと思います。それについてどのようにお考えか。また、これを推進するための国の行動計画策定指針のその内容と、次世代育成支援対策地域協議会の取り組み、これについてもあわせてお聞きしたいと思います。よろしくお願いします。
岩田政府参考人 今委員がおっしゃいましたように、保育所対策はそれなりの歴史を持って各地域で取り組まれてまいりましたけれども、共働き世帯に限らず、専業主婦世帯も含めて、すべての子育て世帯の子育てを、お住まいに非常に近いレベルでの地域で支援をするという対策の強化が重要だと思っております。
 また、働き方の見直しも、これまでは子育て支援との関係で議論されることが比較的弱かったのではないかというふうに思いますけれども、それも大変重要な課題であるというふうに考えております。
 お尋ねの、国が策定することとなる行動計画策定指針でございますが、そのうち自治体の行動計画策定に係る部分についてですけれども、指針として盛り込みたいというふうに考えておりますことは、例えば、今回の児童福祉法の改正法案の中で各種の地域子育て支援サービスを充実することを位置づけましたけれども、こういった市町村が中心になって実施をし、あるいはコーディネートするような地域子育て支援サービスの充実、それからもちろん、多様な保育サービスの充実という課題も引き続きあろうかというふうに思います。
 また、行政ではなくて、地域における子育て支援のためのさまざまなグループやネットワークがありますので、そういうグループ活動、ネットワークづくりを推進するような政策、その他、子供がその地域で健全に育つような健全育成政策、これらのことについて行動計画策定指針に盛り込みたいというふうに考えております。
 もう一つのお尋ねの次世代育成支援対策地域協議会についてでございますけれども、これはさまざまな形が地域によって工夫されてよろしいのではないかというふうに思っております。
 例えば、地域行動計画の策定や実施について幅広く意見交換をするために、地方公共団体、事業主、福祉関係者、教育関係者など広く集まっていただいて構成をする、そういう形も考えられようかというふうに思いますし、また、特定の領域といいましょうか、特定のテーマに着目をして、事業主あるいはその団体の関係者で協議会をつくる、あるいは子育て支援をやっておられる関係者で協議会をつくるといったようなぐあいに、さまざまな形の地域の協議会が地域のニーズに応じて展開されることを期待しているところでございます。
江田(康)委員 ありがとうございます。
 では、具体的にまいりたいと思います。
 今お聞きいたしましたけれども、一通りの国の行動計画策定指針等が決められているんですが、やはり具体性を持たないとちょっとわかりにくいし、斬新なアイデアを持って、やはり総合対策が非常に重要と。今おっしゃいましたように、働き方の見直し、そして地域における子育て支援、それから社会保障制度における次世代支援、こういう新たな視点が、この法案、それからさきに閣議決定されております当面の取組方針、これに盛り込まれているのは、私は、総合的な政策としては非常に大事な観点をついていらっしゃると思うんです。
 その中で、きょうは、まず地域の子育て支援について、具体的な事例として、市町村の先駆的な取り組みがなされているところがございます、それについて御紹介をさせていただきながら質問をさせていただきたいんですが、地域での子育て支援の取り組み、まだそれほど多くはないですね。しかし、いろいろな工夫をしている市町村がございます。
 例えば、長野県の茅野市、ここで、駅前の空き店舗を市が買い入れて、その一部に子育てを支援する拠点として、茅野市こども館を開いております。このこども館に入っている施設というのは0123広場といって、これは、ゼロ歳から三歳を中心とした就園前の子供と親がいつでも自由に遊べる広場というところがございます。ここで子育ての情報交換とか相談もできるようになっております。土日も開いていて、休みは週に一回だけ、木曜日だけです。相談二十四時間体制。そこが三階なんです。
 そして、その下の二階に、実は非常におもしろい展開、CHUKOらんどチノチノというのをつくっているわけです。中学校生それから高校生、こういう若者が集まって使える多目的広場とかダンス教室とか音楽室、食堂・キッチン、クラフトルームとか、そういうものが備えられているんです。
 この特徴としまして、同じビルの三階に0123広場がある、そしてその一階下にCHUKOらんどチノチノがある。それで、移動が簡単ですから、中高生が小さな子供と遊ぶ機会が非常に多いわけですね、ここで非常によい交流が生まれているわけです。小さい子供は、親よりも年が近い中高生に心ときめいて、親よりも言うことを聞くと。
 それで、中高生の方は、その子供がかわいいと。汚いんじゃないと、最近は汚いということで子育てができない親が育っているということでございますけれども、子供はかわいいんだ、子育ては非常に楽しいんだということを知っていくようになる。こういう非常に相乗効果があるということを聞いております。
 職員数は少ないんですけれども、中高生自身もしくはボランティアで運営しているんですね。ですから、コストもダウンしています。だから、ここの茅野市は低いコストで運営できる、負担が軽いということで、そういうことをやりやすくなっているということですね。
 それともう一つ、横浜市の菊名というところには「びーのびーの」という親子が集まる広場がある。これもゼロ歳から三歳の子供とその親が集まる広場です。
 専業主婦は、やはり二十四時間子供と向き合っていると息が詰まる、そういう中で広場にみんなで集まって日中を過ごす、自然と育児不安を解消していく、こういう効果があるんですが、そこにおじいちゃん、おばあちゃん、ボランティアが参加するんですね。それで、地域での三世代子育て支援が実現した。地域での三世代子育て支援ですね。東京ではもう、単独世帯というかそういうものが多いんですけれども、そういう三世代の子育て支援が実現している。ここもNPO法人が運営主体でございますので、自主的な取り組みです。そして、商店街に設けられていて、地域の活性化にもつながっている。こういうような効果があるんです。
 今まで、こういう子育て支援センターというのは、国の方でも補助金を出して支援をされてまいりました。つどいの広場とか、ファミリー・サポート・センター、地域子育て支援センター。しかし、これは全国の市町村数とかそういうものに比べたら、実施しているところは少ないんですね。これはやはり、地方公共団体が負担する財源の問題が非常に大きいということであるかとも思います。
 今回の次世代育成支援法案では、すべての地方公共団体に行動計画を平成十七年から策定してもらうわけです。地域でのこうした意欲的な取り組みを総合的な政策に着手する、そういう意味で、この法案は大きな意義があると思っております。
 そこで、質問なんですけれども、僕は、今後こうした地域での取り組みが推進されることが少子化対策としては極めて重要じゃないか。積極的な、自主的な取り組みです。ここがやはり重要なんじゃなかろうか。そしてまた、それは東京とか大都市部とかそういうところばかりではなくて、地方でも取り組めること、これが大事なんですが、要は、財源措置を含めてどのように支援していくのか、充実していくのかというところが、私は、その推進、進むかどうかのキーポイントだと思っております。
 それで、地方公共団体だけの財源では負担が大きくて進んでいないのは、今までの施設を見るとそうでございます。
 それで、我々公明党が頑張りましたが、昨年末の税制改正で決定されました配偶者特別控除の廃止、これで、増税分が二千五百億円、約束されたものとしてあるわけです。それで、児童手当等の少子化対策にこれを持っていくんだということで、与党としてはこれを了承したわけでございます。したがって、この約束がございます。この二千五百億円の使途として、この一部を、こういう地域での取り組みを積極的に支える、そういうものに使うことを強く提案したいと思います。
 それで、本法によって、すべての地方公共団体が平成十七年から行動計画ができるわけで、これは画期的なことだと思うんですね。今まで自主的な取り組みとして計画等においても任せられていたのが、この法案の成立によって、十七年から行動計画を策定することになるわけです。そういうタイミングを考えれば、非常に時宜にかなっている。ですから、この二千五百億円、何とかそこからとって、こういう少子化対策、地域子育て支援に持ってきてもらいたいと強く思うんですけれども、どうでしょうか。
岩田政府参考人 茅野市こども館や「びーのびーの」の事例というのは、大変他の地域の参考になる好事例であるというふうに思います。
 また、こうした地域での子育て支援事業の財源の問題でございますけれども、次世代育成支援対策推進法案、これが成立いたしましたら、すべての自治体でニーズ調査をした上で行動計画を策定していただくということでございますので、まずは各自治体でその行動計画を実行するための必要な予算措置を確保していただかないといけないわけでございますし、そういった各自治体の行動計画の積み上がりといいましょうか、全体を見ながら、国も必要な予算を確保したいというふうに考えております。
 ちょうど新エンゼルプランが十六年度で終了いたします。十七年度以降、そういった計画的な取り組みをどういう形でやっていくかということとも、たまたまタイミングとしても重なっているということもございますので、十七年度以降の次世代支援対策推進法案に基づく諸施策の遂行のための財源の確保のあり方については、しっかり検討させていただきたいというふうに思っております。
 十六年度の概算要求につきましては、今委員がおっしゃいました、昨年の年末に、配偶者特別控除の廃止との関係で、与党三党で御議論になり、基本的な方向で合意がされました二千五百億円の使い方でございますが、基本的には、与党三党で、どういう形で使うかということについてしかるべきタイミングで御議論があるのではないかというふうに思いますけれども、委員の御発言は、私の立場からいえば大変ありがたい御発言であるというふうに思っております。
江田(康)委員 そういう意味で申しました。議事録に残して、そして、この配偶者特別控除の廃止によります増税分二千五百億円、やはり少子化対策に有効に使う、その対象はこういうところがあるんだよということをきょうは申し上げたかったわけでございます。今から議論になってまいります。必ず獲得していきたいと思いますので、応援してまいりますので、局長、よろしくお願いします。
 そして、もう一つ質問をしていきます。
 これも財源にかかわる問題でございますが、社会保障制度における次世代育成支援について、もう一つ御質問させていただきたい。
 今、企業とかこういう地方公共団体の行動計画の策定に加えて、国としてさらにやるべきことがある。例えば、三月に閣議決定した当面の取組方針では、これまでの取り組みに加えて、社会保障制度における次世代育成支援というコンセプトを打ち出したことは、大変意義が深く、これまで我が党が主張してきた方向性にも合致しているものであると考えております。
 この当面の取組方針におきましては、一つは、育児休業期間中の保険料低下に対して、これが将来の年金額にそのまま反映されないよう配慮すること、もう一つは、教育に伴う経済負担が大きいことを踏まえた新たな貸付制度を創設すること、この二点について、平成十六年の年金制度改正において検討することが記載されているわけでございます。
 そこで、質問でございますが、もちろん、年金財政は厳しい状況です。そういう中で、その財源を本来的な給付以外に回すことには慎重な配慮が必要であるという意見もございます。十分承知しておりますけれども、子育て家庭への経済的支援が小さいことなどを考えますと、こうした改正には意義があるものと考えます。年金制度におけるこれらの次世代支援につきまして、厚生労働省における検討状況はどうでしょうか。特に、厚生年金の積立金を原資とした新たな奨学金制度、文部科学省がやる奨学金制度ではなくて厚生労働省がやる新たな奨学金制度、これをぜひ実現したいと思うんですが、その取り組み状況はどうでしょうか。
吉武政府参考人 公的年金制度は世代間扶養を基本といたしておりますので、少子化の問題は非常に影響を与えるという形になっております。そういう観点から、次期年金制度改正におきます課題の一つといたしまして、先生がおっしゃったようなことを検討いたしております。
 まず最初の育児期間につきまして、年金制度上、育児に携わる方の将来の給付額ができるだけ低減しないようにということにつきましては、ドイツ、イギリス、フランス、スウェーデン等の国では既にこれを導入いたしておりまして、こういうことも参考にしながら検討を進めているところでございます。
 それから、年金資金を活用した貸付制度でございますが、この点につきましては、一つは、子供さんを育てる際に父親の方の一番お考えになる事項は教育費の負担だという調査がございます。それから、現実の姿を申し上げますと、三十代ぐらいの方では、通常の消費支出のほかに、大きな支出といたしましては、ローンの返済が三万六千円ぐらいございまして、教育費は一万五千円ぐらいでございますが、四十代になられますと、ローンが五万二千円ぐらい、教育費が五万一千円。それから五十代になりますと、ローンが四万二千円ぐらい、教育費が四万四千円という形でございます。特に四十代、五十代の方にとっては教育費の負担というのは非常に大きなことになっています。そういう観点から、年金資金を活用した教育支援についての検討を行っております。
 ただ、この点につきましては、実は、社会保障審議会の年金部会でも、端的に申しますと、二つの御意見がございます。最初の御意見を申し上げますと、年金制度は世代を超えた支え合いでございますので、将来の高齢者世代を支える現役世代といずれなられる次世代を育成するということは、年金制度にとっても本質的に重要な課題である。それから、世代間扶養を基本とする公的年金制度におきまして、保険料を負担していただく次の世代なしには賦課方式の年金制度は存続をし得ませんので、子供を養育する方につきましてはそれだけ年金制度の維持に貢献しているという評価もできますので、そういう点から年金制度上考慮すべきだ。それから、次世代の方は、今後だんだん保険料が引き上がってまいりますので、これを負担していただく世代でもございますので、そういう世代の理解を得るために次世代育成支援という形で負担の還元を行うことも有効だという考えがいわば積極のお考えでございます。
 これに対しまして、先生がおっしゃいますように、年金財政は非常に厳しいので、年金制度としては年金給付に徹すべきであって、それ以外の給付を行う余裕はないというお考えもございますし、むしろ保育サービスあるいは子育て環境の整備等が実効性が高いのではないかという御議論もございます。
 こういう御議論を今審議会で御検討いただいておりまして、さらに御検討いただくとともに、私どもとしてもこの問題については十分検討してまいりたいというふうに思っております。
江田(康)委員 これまで、児童手当、そして育児休業手当、そういうところでの支援、さらに、奨学金のさらなる拡充、こういうような総合支援がなされていかないと、思い切った、大胆な支援をしていかないとやはり少子化は食いとめられない。そこを今後さらに検討を続けていきたいと思うわけでございます。ぜひとも、年金の積立金を原資とした新たな奨学金制度の創設、これは実現していきたいと思うわけでございます。
 きょうは大臣から御答弁をいただけないので、最後に用意しておったものを一つだけ。
 大臣から、少子化対策についてはより大胆に、より本格的に進めないとこれは食いとめられないという発言をしていただいておりますが、一つのアイデアとして、子育て家庭に対して給付を行う児童年金、子育て年金、こういうものを創設していったらどうかということを発言していただいております。この件について大臣のお考えを最後にお聞きして、終わりたいと思います。
坂口国務大臣 少子化対策あるいは次世代の育児をどうしていくかというようなことにつきまして一番大事なことは、やはり働き方というものを、これは男女合わせた働き方をどう改革していくか、どう改善していくか、これが基本であることは論をまたないというふうに思っております。
 それに加えて、社会保障の問題をどうするかということになってまいりますが、だんだんと少子化が進んでまいりまして、将来の保険料を担っていただく皆さん方の数が減っていくということになりますと、これは高齢者にとりましても大変大きな課題になるわけでございますから、年金は高齢者のためにつくったものではございますけれども、しかし、それだけやっていればいいかといえば、そうではなくて、次の子育てのことにもやはり配慮をしていいのではないかというのが私の考え方でございました。
 そうした意味で申し上げたわけでございまして、その使い方につきましてはいろいろあるだろうというふうに思います。先ほどから出ておりますように、保険料を軽減する、あるいはまた教育費を出す、あるいはまた児童手当の問題でありますとか、税制上の優遇措置の問題でありますとか、少しその辺を整理しなければいけないというふうに思いますが、そうしたことも含めて、児童年金といったような形も私は考えられる中の一つではないかというふうに思っている次第でございます。
 あれもこれもというわけにはいかないと思いますが、そうした中で、他の制度も整理しながら、どれをどう選んで、そして充実をしていくかということになるだろうというふうに思います。その辺のところを整理しながら一日も早くそこを決定していくということが、若い皆さん方にとりましても最も大事なことだというふうに思っている次第でございます。
江田(康)委員 ありがとうございました。これからも子育て支援に私も公明党も全力で取り組んでまいりますので、どうぞよろしくお願いします。
 以上でございます。
宮腰委員長代理 次に、山谷えり子君。
山谷委員 保守新党、山谷えり子でございます。
 今大臣は、社会保障のあり方も含めて、児童のサポート、家族のサポートをどうしたらいいかというようなことをおっしゃいましたけれども、日本の社会保障給付費のうち児童、家族関係は全体の三・五%。これは、スウェーデン一〇・五%、ドイツ九%に比べて少ないわけでございます。
 ヨーロッパなどは、年金、医療と児童、それから家族サポートというものを三本柱に充実させてきたわけでございますが、これから政府も、児童手当の見直しとか保険料軽減とかさまざまあるんでしょうけれども、そういう枝葉を何ぼちょっとずつ上げていくかという問題ではなくて、根幹の、何を柱に組み立てていくかというような哲学的なところから、そういうような発想から育児保険というような考え方があってもいいのかもしれません。
 そのような議論の方向、タイムスケジュールはどのようにお考えでございますか。
坂口国務大臣 年金にかかわります問題は、来年、どうしても新しい方向性というのを出していただかなければならないわけでございますから、年金にかかわります分につきましては、ぜひ来年の大きな改革の中で、それはどうするかということを決定するのが一番望ましいというふうに思っている次第でございます。
 そうした年金とのかかわりの問題もございますが、全体としての手当てをどうするか、いわゆる諸外国で言っております家族手当に匹敵するところが非常に日本は弱いと申しますか、少ないわけでございます。
 スウェーデンなどで、前回も私行きましたときにもいろいろ聞いたわけでございますが、いろいろのデータを出しておりまして、そしてまた、どういう政策をすればどれだけ合計特殊出生率を上げることができるかというような計算も随分いろいろやっております。その中で、彼らが言いますのは、やはり家族手当というのが一番効果があるというふうに言うわけでございまして、その辺のところも日本も検討していかなければならないのではないかというふうに思っております。
 そういう意味では、先ほど出ておりますように、保険料を免除するあるいは削減するというようなことも一つの大きな選択肢になってくるというふうに思うわけでございまして、それらのことを早く決めないといけないというふうに考えております。
山谷委員 これまで、労働者としての親を支援する、すなわち育児の社会化という方向ばかりでしたけれども、これからはぜひ、家族支援、保育する親を支援するというような形のバランスをいろいろな形で考えていただきたいというふうに思います。
 次世代育成支援対策推進法「目的」に「次代の社会を担う子どもが健やかに生まれ、」というふうにございますが、日本では今、中絶が三十四万件ぐらい行われております。年間百十五万人生まれるということでございますが、実は、統計に出ない数があって、生まれてくる赤ちゃんと同じくらい中絶が行われているのではないか。戦後、六、七千万人中絶が行われたのではないかというふうに言う人もいます。
 刑法上堕胎罪があって、母体保護法があれども中絶は原則禁止でございますが、厚生労働省の検討委員会の報告をもとに、中学生百三十万人全員に配ろうとした「ラブ&ボディBOOK」という小冊子には、中学生に向けて、「日本では中絶することが許されている。」というふうに書かれております。また、高校の教科書、家庭科の教科書、これは一番採択率の高い教科書でございますが、母体保護法の説明がいろいろ書いてあって、その後に、「しかし、「女性の自己決定権」という考えにもとづく法律にはいたっていない」というふうに書いております。産む産まないは女性が決められるんだというような、非常に傲慢なメッセージが伝わってしまうのではないかというふうに思います。
 若者たちの中絶は今ふえているわけですけれども、若者たちに向けてこのような誤ったメッセージが伝わっているということを大臣は御存じでございましたでしょうか。
坂口国務大臣 いろいろのペーパーもございますし、いろいろの書物も出ておりますから、それぞれにいろいろなことが書かれてあって、それが若い人たちにどのように伝わっているかということは定かでございません。
 しかし、現状というものについて若い人たちもかなり認識はしてきているというふうに思いますね。そして、正しくそれを自分たちで考えて、自分たちでそれを理解しようとする力も若い人たちの中にあるというふうに私は思っております。
 ただ、性というもの、あるいはまた出産というもの、そうしたものについて、余り安易に考えてはいけない、やはりもっと大事にしていかなければならない問題だということも、理念としてはわかっているのではないかというふうに私は思っておりますが、それが現実に自分たちにどう結びつくかということについて、まだ定着をしていないと申しますか、そこまでは至っていない。
 そうしたところを、これから教育の場や、あるいはまた、さまざまな健康上のことをリードする場所等において、若い皆さん方にどのように提供をしていくかということが大事になるだろうというふうに思っております。
 私も、今出ておりますものをすべて見ているわけじゃございませんので、十分にはお答えできませんけれども、いずれにしても、若い皆さん方にそれをよく理解する力をどうつけるかということだろうというふうに思います。
山谷委員 授かった胎児そして赤ちゃんに対する責任、愛情、そうした面でのメッセージがさまざまな場所で伝わるような施策を進めていただきたいというふうに思います。
 ベルリンなどでは妊娠葛藤相談所というのがあって、産もうか産むまいか非常に悩んで相談に行って、一年間で二千百三十九件の中絶が避けられたということもございます。欧米では、教会がそのような葛藤している方たちの相談に乗ったり、励ましになったりしているわけでございますけれども、日本の場合は、胎児を守って、あるいは悩んでいる母親を応援する体制というのが本当に皆無に近いわけです。
 民間で、遠藤周作さんの奥様の遠藤順子さんが、リーダーシップをとって円ブリオ基金というものをつくって、一円玉を集めて、悩んでいらっしゃる方にサポートすることによって七十二人赤ちゃんが産めて、本当によかったというような手紙もたくさんいただいているような運動をしているところもあるわけでございます。
 日本も、出産を望みながらも、それを阻害する諸条件のもとに悩む妊産婦に対する応援、国、地方公共団体の応援、基金制度とか実施機関の設置等々いろいろあると思いますが、このような支援策についてはどのようにお考えでございますか。大臣にお答えいただきたいと思います。
坂口国務大臣 あるいは局長に答弁をしてもらった方が的確かもしれませんけれども、そういう運動をやる場所というのは確かに少ないわけでございますし、そしてまた、そういうことをやっていただいている方も、最近はちょいちょい出てまいりましたが、そんなに多くないことも事実でございます。さらに、宗教上の問題といったようなものも日本はほとんどございませんしいたしますから、やはり、おっしゃるように、本当に支えになるところがほとんどない。
 それでは、そういったところを公の運動としてやっていくのかといえば、今までのところは、それほどここも実ってはいないという状況でございましょう。
 なかなかそこまでは手が回らないということもあるんだろうというふうに思いますが、それぞれの地域におきまして、これからそうした皆さん方のお手伝いをする、そういう皆さん方の御相談に乗るというところをちゃんとつくっていく以外にないだろうと。
 日本の場合には、それが国であれ都道府県であれ、公的なところがやはりサポートを少ししなければいけないんだろうと。国がサポートするというのは、国が何もかもやるというのではなくて、NPOの皆さん方初め、皆さん方にもお手伝いをいただきながら、やはり国としてそうしたこともやっていくということが大事ではないかというふうに思っております。
 リーダーシップをどこかがとらないといけないわけでありますから、やはり少なくともリーダーシップを公的な機関がとるということでなければならない。そのときに、今いろいろの団体があって、そして考え方がそれぞれ違ってということであってもこれは困るわけでございますから、その辺のところの合意をどうするかといったようなことも、まずそういう運動をするときには先にきちんとしておかないといけないのかなというふうに思っている次第でございます。
山谷委員 国、厚労省もぜひ目を向けていただきたいというふうに思います。
 赤ちゃん、そして最も小さな命を守ろうとすること、これは、愛するとは何か、生きるとは何か、人間とは何かということを深く思うことでもございまして、そのような思い、愛情、メッセージが、いじめや児童虐待を減らすことにもつながるというふうに考えております。
 どうもありがとうございました。
    〔宮腰委員長代理退席、委員長着席〕
中山委員長 次に、三井辨雄君。
三井委員 民主党の三井辨雄でございます。
 平成二年に、厚生省は平成元年の合計特殊出生率を一・五七と発表されました。一口に一・五七ショックと言われておりますが、この年を起点に政府が、真剣にというんですか、少子化対策を始めて、早くも十三年たったわけでございます。
 この間、ずっと主な経緯を見てみますと、平成二年に一・五七から始めまして、四年には育児休業等に関する法律が施行されました。その後、平成六年にエンゼルプラン、こういう形で政府はいろいろな取り組みをしてきておられます。しかし、この出生率が、さっき江田議員からもございましたけれども、昨日の厚生労働省の発表によりますと、一・三三だったのが一・三二と過去最低の記録を塗りかえているわけでございます。
 さらに、これは五月二十九日の読売新聞の報道でしょうか、五月十日、十一日と実施した少子化に関する全国世論調査を見ました。その中に、やはり育てやすい社会ではないと見ている人が七六%、そしてまた、少子化は日本の将来にとって深刻な問題だと見る人は七九%、約八割の人がそう見ているわけですね。
 こういうことを考えたときに、私は、やはり心配なのは、先ほどもいろいろな委員からもお話が出ておりますけれども、この十三年間、政府の少子化対策というのは私にとっては何だったのかと。積極的に政策を打ち出しているにもかかわらず出生率が一向に上がらない、むしろどんどん下がっているという、過去最低になったわけでございます。国民は、いろいろな事情がありますけれども、今の日本は子育てしにくい社会だと感じている、こういう結論でいいんじゃないかなと思うんです。
 しかし、厚生労働省が取り組んでまいりました少子化対策について、どのように政策評価を坂口厚生労働大臣はお考えになるのか。また、平成二年に少子化対策ということで一・五七をぶち上げましたときから坂口大臣で十三番目の大臣になられるわけでございますけれども、総括的にお答えをいただきたいと思います。
坂口国務大臣 平成二年に一・五七という数字が出て、そして、いや、これは大変なことになってきたという認識が急に広まったというふうに私も思っております。平成六年にエンゼルプラン、そして平成十一年に新エンゼルプラン、こういうふうに続いてきたわけでございまして、仕事と家庭の両立という点に重点が置かれてきたというふうに思います。
 仕事と家庭の両立という意味におきましては、この間エンゼルプラン、新エンゼルプランで行われてまいりましたことがかなりの効果を発揮しているのであろうというふうに私は思っております。しかし、少子化対策というのは、そういう限られた範囲のことではやはりおさまらない、もっとトータルな、人間の生活全体の問題であって、小さな一つの政策だけでおさまるものではないということを物語っているというふうに私は思っております。
 昨年からでございますけれども、さらに加えまして、これは地域における子育てというものがいかに大事かということがもう一つございますし、それからもう一つは、やはり男性も含めました働き方というものをもっと真剣に考えていかないことにはいけないのではないかといったようなことを新しい政策として掲げて、そして今さらに取り組みを進めようとしているところでございます。
 こうした流れの中で今日を迎えておりますが、先ほども申しましたように、やはりみんなの、みんなと申しますか、特に若い世代の皆さん方の考え方の変化、価値観の多様化ということがあることも事実でございます。昔のように、何はともあれ子育てを最優先するという考え方でなくなってきていることだけは紛れもない事実でございます。
 熱心にお取り組みをいただいております心理学者のお書きになりました本を拝見いたしましても、女性の面接がいろいろございまして、その女性が答えておりますのに、子供を産んでも得なことは何もない、こうお答えになる方がかなり多い。そうか、損得勘定で言われたら、それは得なことはないんだろうなと、私もそう思った。損得というのも、長い目で見た損得ではなくて、その日その日の生活で見た損得勘定という意味だというふうに書いてありましたから、そういう意味ですれば、それは手間暇もかかりますし、大変なことも多いんだろうなというふうには、率直に私もそう思うわけでございます。
 しかし、子育てというのは損得勘定だけではないのではないか、もっと長い目で、人間としての生きる喜びといったものもやはりあるのではないか、若い人が余り一面的に考えて結論を出しているとすれば、それはもう少し幅広く、さまざまな角度から人生というものを考えてほしいな、私はそんなふうに思っている次第でございます。
三井委員 大臣おっしゃいますように、今、子供がいることによって喜びを感じるという方が五六%ぐらいいらっしゃるわけですね、非常に家庭が明るくなったと。そして、四十数%の方は、やはり今後は大変だと。将来を考えたときに、年金の問題、経済状況の問題、そういうことを考えたときに、子供を産む不安というのは、いろいろな角度から考えた場合に、非常にいろいろな要素があると思うんですね。
 そういう中で、今大臣が御答弁されましたように、本当に出生率がどんどん下がっている。このままでいきますと、私、将来、もっと下がっていくんじゃないかという気がするんです。そのために今回の法案を出されているわけですけれども、しかし、私は、この法案を審議する前に、やはりもっと過去の政策の検証あるいは反省をしなければ、また、新たな法律はできたけれども生かされないということの繰り返しでないかと。
 私は、エンゼルプランというのはよく聞きました。しかし、エンゼルプラン、新エンゼルプランという言葉、最近全く聞かなくなったんですね。そういうことを考えても、法案をつくって、各市町村が真剣に取り組むということになれば、これは厚生労働省がもっとしっかり各地方自治体に指示していくということをお願いしたいと思います。
 それで、この法案についてお尋ねしたいんですが、第二章に行動計画がうたわれておりますけれども、第七条で、主務大臣は、自治体、企業における行動計画の策定に関する指針を定めなくてはならないとされております。しかし、この法案を審議中の現在でも、支援対策の実施、内容について、市町村行動計画等の指針となるべきものとするということがあるだけで、指針の具体像は全く示されていないわけでございます。自治体や企業に、行動計画をつくれと、号令するのはいいんです。しかし、この指針ができなければ何の議論にもならない。論点がどこにあるのかということで、この指針を今後どのような形で示されていくのか、お答えいただきたいと思います。
岩田政府参考人 行動計画の策定指針についてでございますが、地方公共団体の行動計画に関する部分については、例えば地域における子育ての支援、母性や乳幼児などの健康の確保、増進、教育環境の整備、良質な住宅及び良質な居住環境の確保、職業生活と家庭生活との両立の推進、こういうことを指針に盛り込んでいきたいというふうに思っております。
 一方、事業主の行動計画に関する部分ですけれども、子育てと職業生活との両立支援のための雇用環境の整備、多様な働き方が可能になるような労働条件の整備、また子育てのバリアフリーなどの取り組みの推進など、これも事業主の行動計画に盛り込むことを検討していただきたいような事柄について、幅広く、できるだけ具体的にお示しをしたいというふうに考えております。
 この法律案が成立いたしましたら、さまざまな関係者の御意見を聞きつつ、また国会での御審議も踏まえまして、大臣告示としてなるべく早く、ことしの夏までには策定をしたいというふうに考えております。
三井委員 今局長から御答弁いただきましたけれども、私はいつも不思議に思うんですけれども、まず法案はつくるけれども、私から言わせれば、もなかの皮だけつくって、あんこの部分は後でつくる、そういうような法案にしか見えないんですね。具体的な指針を示していただいて、夏ごろまでですか、おできになるというのは、やはりその中で検討していくということが必要ではないかなと私は思うんですよね。
 いつもいろいろな法案を見るときに、法案を通した後に具体策が出てくる、こういうことというのは現実にあるのかなということを、実は私も一年生議員としてつくづく思うんですけれども、別世界なのかなと。こういう法案をつくったなら、もなかじゃないですけれども、やはりあんこの部分もきちっと示していくことが大事じゃないでしょうか。そういうことを申し上げたいと思います。
 また、先ほど申し上げましたように、今、国民の八割の方が少子化問題には深刻になってこられていると私は思っております。その改善策となるべきこの法律を、やはり国民に、そして国会で具体的に示して一緒に取り組むというのが政府の役割ではないか、こういうぐあいに私は思っております。そういう意味では、今申し上げましたように、指針をやはりきちっと示していただいて、そして次世代の支援法は、中身のない抽象的な法案と言われないような法案にしていただきたい、こういうぐあいに思うわけでございます。
 それと、自治体それから企業が行動計画をつくっていくわけでございますけれども、一方で、特に地方自治体においては、今日まで地方版のエンゼルプランを策定してきた、実行してきたと思いますけれども、なかなか進んでいないというお話も聞いております、先ほど私も申し上げましたけれども。この地方版エンゼルプランはどの程度策定されてきたのか。過去の施策の検証がなくて新たな計画は立てられないと思いますし、地方版エンゼルプランの策定状況が進んでいないとすれば、その問題点はどこにあるのか、お聞かせいただきたいと思います。
岩田政府参考人 平成十三年四月一日現在の状況ですが、すべての都道府県では策定済みでございます。市町村につきましては、策定済みが千六十三件、策定中が三百九件ということになっております。これは、市、町、村別に見ますと、市の策定率は高いんですけれども、町、村レベルになりますと、策定率が落ちているという状況でございます。
 市町村の取り組みが必ずしも十分ではないという、その原因として考えられますのは、これまで地方版エンゼルプランの策定について、さまざまな機会に要請してまいりましたけれども、策定自体が任意であったということ。また、これまでの地方版エンゼルプランに盛り込まれておりました対策が保育中心であったかというふうに思いますので、例えば、保育については、その地域の供給体制が十分であるといったような町、村では、特に策定をすることの必要性を感じていただくことが難しかったのかなという感じがいたしております。
 今般は、この法律案ですべての自治体に策定が義務づけられるわけでございますから、私どもも、先ほどの委員の御質問にありましたように、自治体に向けて指針を策定したいというふうに思っておりますし、さらには、策定に当たってのマニュアルをつくるとか、行動計画のモデル例をお示しするとか、自治体に御理解を持っていただけるよう、そしてその策定の事務的な負担が少しでも軽減されるよう、自治体を支援してまいりたいというふうに思っております。
三井委員 今御答弁いただきましたように、ここにも策定状況が出ておりますけれども、地方には随分少ないんですね。そういう意味で、やはり地方にも少子化、高齢化が進んで、若い層が少なくなっている。そういうところにも積極的に地方版エンゼルプランというのは推し進めていただきたいということをお願い申し上げたいと思います。
 そこで、厚生労働省内において、既に二回でしょうか、地域行動計画策定指針検討会が開かれておりますけれども、この具体的な内容の検討をしていると聞いておりますが、今御説明ありましたように、この地方版エンゼルプランの成果として、よい部分をぜひ生かしていただいて、そして足りないところを十分補えるような行動計画をつくっていただきたいということをお願い申し上げたいと思います。
 そこで、規制緩和や地方分権の観点から、幼保一元化についてお伺いしたいと思います。
 保育所と幼稚園の制度、施設の一元化の検討が行われておりますけれども、構造改革特区の申請には、全国から申し込みが多数寄せられていると聞いております。私のところにも、北海道の旭川市の郊外でございますけれども、人口七千五百人の東川町から要請がございました。かつて町営の施設として、常設保育所、季節保育所、幼稚園を設置して運営していたわけでございますけれども、施設の老朽化と住民からの三歳児就園、子育て支援センターの整備の要望にこたえるために、施設の共有化の指針に基づいて保育所と幼稚園を合築し、平成十四年の十二月に幼児センターを開設したということでございます。
 この幼児センターでは、家庭環境の違いからくる保育所、幼稚園の区分ではなく、子供に分け隔てのない保育を実施するためにも混合保育を行っていきたいと考えているそうですが、厚生労働省の保育所運営費と文部科学省の普通交付税という国庫補助の二元的な形態から、施設の共有化は認められていても、肝心の運営面での完全な実施ができないという現状にあるということの陳情を受けました。実際にパンフレットを見ますと、これは宮城県でもありましたけれども、「ももんがの家」、こういうパンフレットを出しておりますけれども、これを見ますと、幼児センターという一つの建物の中に、幼稚園部分とそれから保育園部分とそれから町の地域子育て支援センターがここに設置されたわけです。
 職員構成も、それぞれ保育園長、支援センター長、幼稚園長と、それぞれの園長がいるわけですけれども、三歳児からはクラス編制も幼稚園と保育所は別々だ。開園日、保育日数も、幼稚園はおおむね二百日、それから保育所は三百日となっていますけれども、同一施設の中で運営のあり方を別個にしていかなければならない。
 これであれば、混合保育、子供に分け隔てのない保育をしたいという町の考え方があるわけですけれども、自治体の自主性や主体性が生かされないと私は思うわけですけれども、こうした現場の状況をどのように認識されているのか、お尋ねしたいと思います。
岩田政府参考人 保育所と幼稚園は、それぞれ異なるニーズに対応する、異なる目的や機能を持った施設であることは当然でございますけれども、今委員が言われましたように、地域によっては、過疎化、少子化の進展の結果、子供の数が非常に少数になっていて、保育所、幼稚園をそれぞれ別個に設置、運営することが難しいような状況になっている地域もあるというふうに認識をいたしております。
 従来から、文部科学省の方と相談しながら、まず施設の共用化、例えば合築とか併設ですけれども、これを認めてまいりました。またこれに加えまして、先般、こうした事情にある地域については、構造改革特区において、保育所の保育所児と幼稚園の幼稚園児を合同で保育をする。建物の共用化だけではなくて保育そのものを合同で実施することができるという、こういった特区を認めることといたしたところでございます。
 今後、特区の実施状況なども評価しながら、地域の実情に応じて、さらに柔軟で弾力的な運営が必要であるということでしたら、どういう工夫が考えられるのかまた検討してまいりたいというふうに考えております。
三井委員 幼保一元化については、これはいろいろ調べますと、昭和三十年代でございますか、一元化を求める意見があったと聞いておりますけれども、既にもう時代が変わってきておりますし、幼児保育、教育のあり方もまさに変わってきております。今や、まさに幼保一元化は、この東川町の例だけではなくて、この新聞に宮城県の東和町というところでしょうか、ここなんかも取り組んでおられるわけでございますけれども、全国の公私立の幼保連携を進めているケースは、昨年の五月の時点で百七十一件。このうち、同じ施設に同居する合築方式が五十九件、両施設がドッキングした併設が二十九件、同じ敷地内に別の施設を設けるもの八十三件となっているわけですね。
 こうした地方の考え方もさることながら、何よりも幼児センターの主人公である子供たちですよね。自分が幼稚園児なのか保育園児なのかということは、子供たちにとってはどうでもいいことなんですね。そこで楽しければいい。そういうことをやはりぜひ私は考えていただきたい。宮城県のを見ますと、子供たちは、本当に楽しく行ける、本当に楽しいんだと。そこは保育園なのか幼稚園なのかわからないわけですね。そういうことをぜひ、親御さんも安心して育児に励めるような環境を提供することは国や地方自治体の責任でないか、私はこういうぐあいに思っております。このようなケースはますますふえてくると思いますので、厚生労働省も、そして文部科学省もより柔軟な対応をしていただきたいということをお願い申し上げたいと思います。
 一元化というお答えが難しいようであれば、厚生労働省と文部科学省とが連携強化をしながら、今後の具体的な対応をお聞かせいただきたいと思います。
岩田政府参考人 保育所と幼稚園の連携の問題については、本格的には平成十年度から取り組んでおりますけれども、その時期以降、常に厚生労働省、文部科学省、担当課と協議の場が常設されておりまして、そこでいろいろ御相談しながら進めております。例えば今年度は、幼稚園の教諭の免許所有者と保育所の保育士の資格の所有者が、相手の資格を追加的に取得しやすいように、そういったような措置が講じられないかといったようなことをそれぞれで検討しているところでございます。
 先ほど申し上げましたように、特区などで工夫はいたしておりますけれども、さらに地域の実情に応じて弾力的な連携施策が展開できますように、文部科学省と連携してまいりたいと思います。
三井委員 縦割り行政の弊害がむしろここに出ているんでないかなと私は思います。
 特区についてもいろいろございますけれども、私は、ほかの病院特区については反対の方でございますけれども、こういう幼保一元化については、やはりぜひ連携を深めていただきたい。新聞等を見ますと、坂口大臣も、形成外科とあるいは高度医療だけは特区でもいいんでなかろうかという、譲歩しているような新聞報道を見ましたけれども、これを一つの切り口にされまして特区化されていきますので、ぜひここは慎重に大臣には対応していただきたいと思うわけでございます、ちょっと余計なことになりましたが。
 そこで、今回の児童福祉法の改正でございますが、市町村の責務として、すべての家庭に対する子育て支援を地域で行う仕組みを整備するという趣旨でございますけれども、これは私は理解できると思います、ここは。でも、待機児童の解消や家庭での子育てに悩む専業主婦への対応は極めて重要だと思います。
 先般も厚生労働省の方がお見えになって資料をいただきましたが、専業主婦でも子育てに悩みを持っていらっしゃる方は七〇%近くもいらっしゃるんですね。仕事を持っていらっしゃる方も四六、七%いらっしゃる。専業主婦がこのように非常に子育てに悩んでいらっしゃる。これは、今度の法案の中で、中小企業の、支援センターでいろいろ相談されるということでございますけれども、私は、ここにもやはり指針をきちっと示していただいて、きめ細かい対応をしていただくことが必要でないかなと思います。
 そこで、最近、特にこういう経済不況が来ますと、深夜業に働くお母さんがたくさんいらっしゃるわけでございますけれども、こういう雇用失業情勢の中でございますから、今、平成十三年度ですか、女性雇用管理基本調査の結果を見ますと、女性一般労働者に占める深夜業の従事者の割合は一二・七%、大変増加しているわけでございます。八人に一人の方が深夜業についているという報告もあるわけでございますけれども、現状の認可保育所でも一部しか行われておりません夜間保育ですか、トワイライト保育あるいはベビーホテルとか宿泊を行う保育、あるいは、深夜業に働くお母さんにとってはなくてはならない施設であるわけでございますけれども、さらに拡充することが求められているわけですけれども、今後どのような対応をされるのか、お尋ねしたいと思います。
岩田政府参考人 経済活動の二十四時間化と就業形態の多様化の結果だと思いますが、深夜に働く方がふえておられます。これに対して、保育所は、今、委員がおっしゃいましたように、夜間保育所、これは午前十一時から夜十時までを基準として、その前後に延長保育をつけるといったようなタイプですが、これですとか、延長保育、これは十一時間の基準時間の開所時間をまた超えて保育をする延長保育でございますけれども、こういったものについては、新エンゼルプランなどに基づいて拡充を図っていっているところでございます。まだまだニーズに対応できていないというふうに思っております。
 そこで、今回の法案が成立いたしましたら、都道府県、市町村が行動計画を策定していただくことになるわけですけれども、その策定に当たっては、その地域の住民の利用者のニーズをしっかり把握するための調査をしていただきたいというふうに思っております。その調査の一環で延長保育や夜間保育のニーズも把握していただいて、多様な保育ニーズへの対応がそれぞれの地域でさらに進みますよう期待をいたしているところでございます。
三井委員 大体、私は、許可保育所とか無認可という、無許可保育所という言葉自体が余りなじまないんですね。無許可といいますと、何か安心して預けられないんではないだろうか、すべて、無許可営業とかというのがあるように、そういう言葉と混同してしまうんですね。
 特に、お子さんを預かる、そして、ここに、私がいただいた資料の中に、それぞれ許可保育所と無許可保育所の長所短所はございますけれども、特に、許可保育所の場合は時間の問題とかいろいろなことがございます。でも、許可外の保育所というのは、狭苦しいところに閉じ込められてしまっている。
 まさに、私も札幌のすすきのという歓楽街の保育所へ行ってみました。ですけれども、ここを見ますと、本当にかわいそうなぐらい、タコ部屋みたいなところに押し込められているんですね。お母さん方が深夜までお働きになって、一時、二時に迎えに来られる。そして、延長料金も取られ、そしてまた、許可保育所よりも高い、五万から六万取られる。働けど働けど、それでもお母さんは一生懸命生活のために働かなきゃならない。こういうところもやはり実態をきちっと調査していただいて、そして、子供たちが、大臣がおっしゃるように、子供は国家の宝だということでおっしゃるのであれば、やはりこういう深夜業の人もふえていらっしゃるわけですから、ここにもいろいろな手を差し伸べることが必要でないかなと思うわけでございます。
 特に、最近は、レストランですとかあるいはいろいろなサービス業がございますけれども、休日もお働きになっているわけですから。北海道の場合ですと、私も見ていまして本当にかわいそうなのは、一歳、二歳の子をお母さんが吹雪の中、迎えに行くんですね。あの中、またお子さんが寝ていらっしゃるのを抱きかかえて、そしてタクシーに乗って帰られる。ああいうのを見ていますと、本当に何とかしてあげたいなということを実は思うわけでございます。
 最後に、この問題についてどのような対応をしようとされるのかお聞きして、質問を終えたいと思います。
岩田政府参考人 認可外保育所が減らないということは、やはり夜間保育に代表されますように、認可の保育所で十分なそういったニーズに対する対応ができていないということが背景にあるというふうに思います。したがいまして、まず、認可保育所で、必要な地域では延長保育や夜間保育をやっていただくということが基本的には大事ではないかというふうに思っております。そのためにも、先ほど申し上げました自治体の行動計画をそういうニーズを反映させたものにしていただきたいというふうに考えているところでございます。
 また、認可外保育所の中には、良質なものもあるんですけれども、お子さんを預けるのが必ずしも適当ではない環境というのもございます。そこで、前回、平成十三年度の児童福祉法の改正で制度を設けたわけですけれども、認可外保育所については、開設時、そして、その後一年に一回、都道府県に対して状況の報告をしていただくということになっております。そういう形で、都道府県は必要な情報を把握し、ベビーホテルなどには一年に一回以上立入調査をするということもお願いいたしておりますので、そういうことで取り組んでまいりたいというふうに考えております。
三井委員 ぜひよろしくお願い申し上げます。
 これで質問を終わらせていただきます。
中山委員長 次に、山井和則君。
山井委員 三十分の時間でございますが、坂口大臣、途中で参議院の方に抜けられるということで、少し質問の順番が変わるかもしれませんが、坂口大臣に、通告していることをまず最初にさせてもらいたいと思います。
 次世代生活支援ということ、その趣旨は非常にすばらしいわけですが、私は、きょうの三十分の質問の中で、学童保育、特に障害児の受け入れのことと、もう一つは、ある意味で子育てに一番苦労されている母子が暮らしておられます母子生活支援施設のことについて、質問をさせていただきたいと思います。
 これについては、昨年の十一月八日、母子寡婦福祉法のときにも、坂口大臣と鴨下副大臣に質問させていただいたことであります。ちょっとそういう急ぐ事情がありますので、坂口大臣にまずお聞きしていきたいと思うんです。
 まず最初に、障害児の学童保育への受け入れということについてお伺いしたいと思います。
 次世代子育て支援の中で、やはり私は、一番困っておられるのが、障害児の親御さん方あるいは一人親世帯の方々、こういう本当に最もきめ細かな支援が必要な方々をどう支えていけるのかということも今回の法案の重要なポイントだと思います。
 そこで、私は、障害児の親の会の方々に、子育てで今一番御苦労されているのはどういうことですかということを聞きますと、やはり学童保育に受け入れてもらえないという声が非常に強いわけですね。それで、現状では、資料にもあるんですけれども、全国一万二千七百八十二カ所のうち、三千五百十四カ所、約四分の一強しか利用することができない。それで、利用できていない障害児の方々というのは非常に多いわけです。
 私は、これは、親が働きに行くから預かってもらうというそれのみの意味にとどまらず、やはり障害のあるお子さん方と障害のないお子さん方が地域で交流するという意味で、お互いにとって非常に大きな教育効果があるというふうに思っております。
 このことに関しては、厚生労働省さんの御努力で、今まで障害児を四人以上受け入れないと加算がつかなかったのが、二人以上受け入れたら加算がつくというふうに改正されて、私は、これは非常に大きな前進だと思うんです。しかし、現場の声を聞きますと、それは非常にありがたいけれども、まだまだ受け入れてもらえないケースが多いということなんですね。
 そこで、まず坂口大臣に、要望兼お願いしたいことが二つありまして、一つは、やはり、二人以上だったら加算がつくといっても、常識的に考えまして、一人のケースも多いわけですよね。だから、二人まで来たというのは大きな前進だけれども、やはり一人受け入れたら加算をつけるということでないと、実際、なかなか受け入れが進まないのではないかということが一点。
 もう一つは、二人受け入れたら年に七十一万円ぐらい加算がつくということなんですけれども、言葉は悪いですけれども、学童保育をやっておられる方に言わせると、ばかやろうと言いたくなるぐらいの低いお金だと。二人の障害児の方を受け入れたら、やはり二人職員が必要になったりするわけで、これでは到底雇えないという理由で、こういう制度ができても、まだまだ障害児を受け入れられないというケースが多いんですね。
 ですから、一人以上の障害児の受け入れに加算をということと、そもそもこの補助の単価を上げるべきではないか、このことについて、坂口大臣の答弁をお願いいたします。
坂口国務大臣 今、お話にございますように、だんだん前進はさせてはいるんですね。今まで四人だったところを二人にしたことによりまして、いわゆる障害児を受け入れられる場所も飛躍的にふえたことも事実でございます。
 今また、山井議員から、二人にしたんだったら一人もあるじゃないかというお話。確かに、それは一人もあるというふうに思いますが。
 全体に見まして、つけております予算というものが非常に低いことも事実でございますが、これは、それぞれの地域も、都道府県やそれぞれの市町村も、大変でしょうけれどもぜひ頑張ってください、国の方も、非常に厳しい中ですけれども、我々も頑張ってやりますというようなことになっているわけでございます。
 その辺は十分にわかっているわけでございますが、財政上の問題もこれありで、一人でも結構です、額もふやしますということをここでお約束するわけにもなかなかいきませんが、しかし、おっしゃる趣旨は私もよくわかっております。少子化対策ということを進めていきます中には、障害児の皆さん方もおみえになること、これはもう当然でございますし、また、これから障害児の皆さん方を地域でお互いに見ていこうという流れになっていることも事実でございますから、できる限り、その流れに沿って我々も努力をしたいというふうに思いますし、また、それぞれの地方自治体にも御努力をいただく、あるいはまた地域も御努力をいただくということにしなければならないんだろうというふうに思っております。よく受けとめさせていただいて、そして、いろいろと検討させていただきたいと存じます。
山井委員 この続きはまた、鴨下副大臣に後ほど続けたいと思いますが、今、坂口大臣に前向きな御答弁をいただきましたけれども、地方交付税も減らされる中で、自治体任せではなかなか進まないというのが現状なんですね。そういう意味では、障害児を持つ親御さん方の悲鳴だと思いますので、ぜひとも真摯に受けとめていただきたいと思います。
 繰り返しになりますけれども、やはり今までの日本というのは、今文部科学省さんも統合教育ということを進めておられますけれども、余りにも、障害のあるお子さん方を地域から切り離したり、地域の教育現場から切り離していたわけですね。それを統合していくことが必要だと思います。
 次にまた、坂口大臣がおられるうちにお伺いしたいんですが、母子生活支援施設、昔、母子寮と言われていたわけですけれども、虐待を受けたり、あるいは、お子さんを育てる能力がどうしても十分でない、そういう方々が生活しておられるのが母子生活支援施設でありまして、私も学生時代、六年間、この施設でボランティアをしていたわけです。
 これも十一月八日の質問の続きになるんですけれども、そういう中で、障害を持つお母さん、障害を持つお子さんが非常にふえておられるわけです。ある母子生活支援施設では、二十世帯お住まいになっている中で、二十人のお母さんのうち七人が、精神疾患や精神障害、知的障害を持っていられる。それで、三十五人のお子さんのうち十人が、やはり知的障害や身体障害を持っていられる。だからこそ、母子生活支援施設に入居しないと子育てが成り立たないわけなんですよね。
 ところが、問題は、職員の方の数は一緒ですから、そういうハンディキャップのあるお母さんやお子さん方を母子生活支援施設が受け入れることが余りできないわけです。では、今、その結果どうなっているかというと、お母さんが福祉施設へ、お子さんは違う児童福祉施設へといって、離れ離れになるわけです。これはやはり、国際家族年の母子一体という理念に大きく反するわけなんですね。
 やはりお母さんとお子さんが一緒だからこそ子育て支援になると思うんですけれども、このことに関して、障害児者の受け入れに対する加算というものを母子生活支援施設に対して行うべきだと考えますが、坂口大臣、いかがでしょうか。
坂口国務大臣 これは先刻委員も御理解いただいていることかもしれませんけれども、母子のいずれかに障害がある場合、処遇が困難な母子が入所している、一定規模以上、三十世帯以上の施設については、非常勤職員を配置するための加算を設けているということでございます。これも、額の問題もありますから、どこまでやっていけるのかということもあろうかというふうに思いますが、なかなかすべてのことを国ができるという状況にないこともまた事実でございますので、こういうことをやりながら、一つ一つ前進させていかなければならないというふうに思っております。
 それぞれの地域の母子寮等につきましては、地域におきますボランティア活動でありますとか、あるいはNPO等にもお願いを申し上げるといったこともしながら、地方自治体ともどもに手を差し伸べていくということにせざるを得ないんだろうというふうに思っております。
 先ほどから御指摘もありますし、以前にもこの母子寮のお話は何度か御質問をいただきまして、私も聞かせていただいたわけでございまして、こういう御家庭に対して、やはり特別な手を差し伸べるということは大事なことだけは大前提でございますが、さてどこまでできるかということになるんだろうというふうに思っております。今、三十世帯以上おみえになりますところにつきましては、そういうことをやらせていただいているということを御理解いただきたいというふうに思います。
山井委員 その制度をしっかり拡充していただきたいと思います、これからますますそういうケースがふえてくるわけですから。
 それともう一つ、障害のあるお子さん、お母さんではないわけですけれども、やはり少年指導員兼事務員の増員というものが母子生活支援施設に必要だと私は思います。その理由は、要は、最近、DV防止法の関係あるいは児童虐待防止法などの関係で、虐待の被害のお子さん方を抱えたお母さんが母子生活支援施設に入ってくるケースが非常に多いわけです。
 私も学生時代、そのお子さん方と一緒に遊んだり勉強するボランティア活動をしていたんですけれども、痛感するのは、虐待を受けてしまったお子さん方というのは、人をどうしても信じにくくなってしまうとか、人に対しても暴力を振るってしまうとか、これは本当に大変なんです。障害ではありませんけれども、大きな大きな心の傷、人を信じることができない、愛情というものを感じづらい、そういう本当にかわいそうな心の傷を負っていられるわけですね。
 それに対してどう対応するかというと、それはボランティアも必要なんですけれども、やはり指導員の方々ができるだけきめ細かく相談に乗って、またお母さんの相談にも乗って、生活を立て直していくしかないわけです。ところが、最近は、そういう虐待のお子さんや障害のあるお子さんやお母さんもふえている中で、なかなか一人一人のお子さんやお母さんにゆっくりと、じっくりと接することができなくなってしまっているわけです。
 私は、その方々がいずれ母子生活支援施設を出て地域で暮らしていくためにも、母子生活支援施設にいる間に、人間というのは信じることができるんだ、子供は愛される権利があるんだ、人というのは愛し合うものなんだということをしっかりと感じてほしい。そのためには、残念ながら、今の定員では、人員配置では難しいと思うんですが、坂口大臣、指導員の増員ということ、いかがでしょうか。
坂口国務大臣 現在、母子生活支援施設、いわゆる母子が心理療法を必要とする、一定以上の施設でございますが、ここに対しまして八十六カ所分の予算を計上しておるわけでございます。ところが、これは、いろいろ事情があるんでしょうし、あるいはまたこちらのPR不足もあるのかもしれませんが、平成十三年は二十二カ所、平成十四年は三十七カ所でございまして、かなりまだすき間があるということでございます。これは一カ所当たりおおむね二百三十一万五千円ですかね。したがいまして、心理療法を担当している非常勤の職員の人、毎日は雇うことはできませんけれども、週何日間かお見えをいただくということはできるんだろうというふうに思っております。
 こうしたものもやっておりますので、できるだけひとつ御利用をいただくように私たちももう少しPRをしたいというふうに思っておりますが、そうしたことを利用していただきたいというふうに思っている次第でございます。
山井委員 そういう制度ももちろんあるんですけれども、やはり指導員の方の増員というのがぜひとも必要だと私は思いますし、そういうことをしないとしっかりと、母子生活支援施設というのが立ち上がりの施設としてなかなか苦しいんじゃないかというふうに思います。
 坂口大臣、ありがとうございました。
 では、引き続き、鴨下副大臣に質問をさせていただきます。
 先ほどの学童保育のことにちょっと話が戻るんですが、障害児の親の方々の話を聞くと、学童保育に受け入れてもらえないということとともに、四年生以上、中学、高校になった障害児のお子さん方も、やはり障害があるがゆえにひとりでお留守番ができなかったりするわけですね。そういう四年生以上の障害のあるお子さん方の受け入れということ、これも余り進んでいないんですが、そういうこともぜひお願いしたいという要望が強いわけです。
 このことについて、鴨下副大臣にお伺いします。
鴨下副大臣 実際に、例えば四年生以上でも、障害を持っている方々は、なかなか家庭の中でひとりでいるというわけにいかないわけでありますから。
 放課後児童クラブにおける四年生以上の登録児童は、平成十四年には全登録児童数のうち一四・七%が四年生以上になっているわけでありまして、これは年々少しずつふえているわけであります。その中で、障害児と一般児童を合わせたものでありますので、現在のところ障害児がどれだけいらっしゃるかというようなことについては、正確な把握はないのが今のところ現状であります。
 ただ、放課後の児童クラブへの、特に四年生以上の障害児や、一般の児童も含めてですけれども、受け入れにつきましては、平成十三年の十二月に各自治体に対しまして、より積極的に受け入れてください、こういうようなことについては通知は出してあるわけでありますけれども、さらに、それぞれ地域によって多少事情が違うと思いますので、その地域地域の事情に合わせた形で推進していく、こういうようなことをしていきたいというふうに思います。
山井委員 推進していくということなんですけれども、そこでぜひともお願いしたいのは、要は、八万百人、全体の一四%ぐらいが四年生以上なんですけれども、そのうち障害のある方がどれだけかわからないということなんですけれども、ぜひとも一回これは実態を調査してもらって、調査した上で推進していくということにしないとやはり先に進まないと思うんですね。そこで、鴨下副大臣にぜひとも、調査して推進していくということを答弁いただきたいと思うんですが。
鴨下副大臣 先生も正確な数字はある程度は把握なさっているわけでしょうけれども、実際に障害を持っている児童の全体像というのがなかなか今のところ厚生労働省でも把握していない部分がございますので、これは十六年度に調査をするわけでありますけれども、そのときにはきちんと把握できるようにやってまいりたい、こういうふうに考えております。
山井委員 ぜひとも、前倒しをしてでもそういうことを早急にやっていただきたいと思います。
 といいますのは、こういう大きな次世代生活支援という法案が出てきているわけですよね。にもかかわらず、一歩間違うと、そういう障害児の子育てのことというのは、ある意味で網の目からこぼれているじゃないかということではやはりだめだと思います。ノーマライゼーションという理念でも、障害のあるお子さんとないお子さんが一緒に交流して育てる、やはりそれが健全な社会だと思います。
 次に、また母子生活支援施設の話に戻るわけですが、この母子生活支援施設、DV防止法の施行の関係などでどんどん駆け込んでこられる方がふえて、かなり足りなくなっているということを聞いているんですけれども、その現状について、鴨下副大臣、お願いします。
鴨下副大臣 特に児童虐待防止法やDV防止法の施行後は、いろいろな意味で社会的な意識も高まってきたわけでありまして、それに伴ってさまざまな入所に対するニーズ、こういうようなものが顕在化してきている、これは事実だろうというふうに思います。
 今回の入所待機の状況に関する調査というようなことで明確なところは実際には行っていないわけでありますけれども、特に都市部において高い充足率を示すなど、ある意味で、その充足率から見ますと入所ニーズが高くなっているだろうというふうに思います。
 ちなみに、これは全国平均でいいますと、充足率は七六・三%でありますけれども、都市部においては、これは東京だとか指定都市等でありますが、八三・五%、こういうようなことで、特に都市部でそういうような状況があるだろうということは推察されるわけであります。
山井委員 当然これは入れかわりもあるわけなので、その部分の、あいている部分もあるかと思うんですけれども、やはり都市部では、困って相談してもなかなか入れないというケースもあるわけで、その中で厚生労働省さんも、小規模分園型、サテライト型の母子生活支援施設の普及ということに取り組んでいられると聞いているんですね。確かに大きな母子生活支援施設もいいですけれども、やはり小さな、五世帯から九世帯ぐらいのそういうサテライト型もこれからの時代の流れだというふうに思っております。
 しかし、これは今年度でも十六カ所というふうに、非常に少な過ぎると思うんですね。それが証拠に、多くの民間のシェルターがどんどんでき上がっていっているわけですよね。ニーズにちゃんと行政が対応できているんだったらそんなたくさん民間のシェルターもできないわけでありまして、そういう意味ではこの十六カ所をもっとふやすべきではないかということと、そのためには、やはり補助単価、ちょっと低過ぎるんではないかという声も聞きますので、ある意味、しっかりした経営を、経営というか、事業者がやっていける補助単価にすべきだと思うんですが、その二点、鴨下副大臣、お願いします。
鴨下副大臣 民間のシェルターと、それからいわゆる母子生活支援施設のサテライト型施設とのすみ分けというのは、これは先生よく御存じだろうと思いますが、私は、民間は民間の役割というのは極めて重要なものもあると思いますので、それぞれ役割分担をしていただきたいというのが基本的な考えでありますが、ただ、公的な部分でもまだまだ手薄だ、こういうような御指摘であります。
 サテライト型施設そのものにつきましては、特に早期の自立が見込まれる、こういうような方につきまして、できるだけ、ある意味で地域社会にまじって生活をしていただくことによって、特に早く自立をしていただける、こういうような趣旨でありますから、補助額について単価が少ない、こういうようなことでありますけれども、その意義そのものは我々も極めて重要だというふうに思っておりますので、その趣旨に即して推進してまいりたい、こういうふうに考えております。
 また、金銭や時間管理ができないような場合に、勤労意欲に欠けるような方々、さらに、言ってみれば施設内での日常生活ルールを守れないような方々については、そういうサテライト型施設ではなかなか難しい、こういうようなこともありますので、現在の段階でもこういうような方々に対しては本体施設での支援が適切だ、こういうようなことでありますので、十六施設では足りないということもありますけれども、これは本体施設との間の連携をとりながら、さらに冒頭申し上げましたように、民間のシェルターもやはり熱心にやっていらっしゃる方もたくさんおありでありますので、そういう方々の役割を重んじつつやってまいりたい、こういうふうに考えております。
山井委員 高齢者福祉でも同じ流れですけれども、大規模施設から小規模施設へ、そして地域密着へと、やはり大きな施設に住むよりは、アパートを借り上げたりして、できるだけ一般の社会と違わない形の方が当然社会復帰しやすいわけだと思いますので、ぜひとも推進をお願いしたいと思います。
 それともう一つ、母子生活支援施設に関して非常に今問題になっているのが、広域保護、広域入所のことであります。
 これはどういうことをいいますかといいますと、DVを受けてお母さんがお子さんを抱えて逃げ込んでこられるわけですね。それでその逃げ込む先が、例えば私は京都ですけれども、京都で虐待を夫から受けたら、近所の母子生活支援施設には行かないわけですよ。すると、夫はすぐわかるわけですね、あそこに行ったんちゃうかといって。だから、大阪とか滋賀とか、ちょっと離れたところに逃げるのが普通なわけですよね。
 ところが、現在は、いや住民票があるところに戻ってくれということとか、特に生活保護の場合とかは、何でうちに来るんだ、そんな生活保護がふえたら困るから戻ってくれと言われたりして、ごたごたやっている。そのうちに夫につかまってしまったりしたら本末転倒なわけなんですね。
 だから、そういう意味では、広域保護、広域入所というものをスムーズにしていかないとだめだと思います。この点について、鴨下副大臣、お願いします。
鴨下副大臣 実際、先生おっしゃるように、特にDVの加害者の方が、極めて執拗に配偶者の居場所を突きとめて、そして夜だとか何かに不法に施設内に入ってくる、こういうようなことも間々あるようでありますので、先生おっしゃっているように、広域保護、こういうような観点というのはある意味で極めて重要な観点なんだろうというふうに思います。
 これは、従来からも婦人相談所においては、特にその都道府県で解決できないようなケースについては、他の都道府県と連絡をとって広域での受け入れを図ってきた、こういうことはあるわけであります。それを今度は、母子生活支援施設においても、それこそ先生おっしゃっていたようなケースについては、これは所管の区域外に所属する施設への受け入れも活用できるように周知徹底を図ってまいりたい、こういうふうに考えております。
 また、婦人相談所や母子生活支援施設における広域での受け入れを促進していくために、例えば被害者が移動するための旅費、そういうようなことにつきましても必要な予算措置を講じているところでありますので、できるだけ被害をこうむっている方々の立場に立って広域保護というようなことを推進していきたいというふうに思います。
山井委員 これは本当に切実な問題で、私も母子寮でボランティアをしていたときにあったんですけれども、実際、包丁を持った夫が追いかけてくるというケース、あるいは母子寮の外から、酔っぱらったDVをしたお父さんがその母子のいる部屋に向かって石を投げてくる、それで子供が泣いている、そういうケースというのが本当にあるわけですね。
 やはり、そういう意味では、これは本当に、半端な話じゃなくて、母子の命にかかわる問題ですから、しっかりと受けとめていただきたいと思います。
 これは最後の質問になりますが、今回の次世代育成支援法案の中で行動計画策定指針というものが策定されるわけなんですけれども、今、原案を見させていただいて、この中でぜひお願いしたいのが、きょうの質問をしましたように、最も子育てに、ある意味で御苦労され、きめ細かな援助を必要とされているというのが、やはり障害児の御家庭あるいは一人親世帯の支援だと思います。
 ところが、この項目を見ると、そういう視点、障害児ということや一人親世帯の支援という言葉が入っていないんですけれども、ぜひとも行動計画策定指針の中に、障害児の支援、障害児の学童保育への受け入れとか、四年生以上の障害のあるお子さん方の学童保育への受け入れの推進とか、一人親世帯の子育て支援というような項目をしっかり入れてもらったら、特に市町村とかは、やらなあかんなという気になると思うんですね。その点について、鴨下副大臣、お願いいたします。
鴨下副大臣 今まで委員がいろいろとお話しになっていた趣旨というのは、まさにそのことだろうというふうに思います。
 こういう意味で、子育てというのは、単に健常者だけではありません、むしろよりきめ細かい対処をする必要のあるのは、障害を持ったお子さん、それからそのお母さん、お父さん方、保護者の方々だろうというふうに思います。
 こういうような意味で、今回の法案そのものは、社会全体でそういう取り組みをしていこう、こういうようなことでありますので、特に地域における子育て支援のサービスの一環として、学童保育の整備それから充実を進める、こういうようなこと、さらに障害のあるお子さんのいる家庭や一人親家庭など、より子育てに困難な状況を抱える家庭に対しては、御指摘のようにきめ細かい支援を行っていく、こういうようなことが重要だというふうなことは、もちろん十分に考えているところであります。
 これは、市町村や都道府県の行動計画をつくっていただく段階で適切に盛り込んでいただけるように、この指針を定めるときには十分に配慮してまいりたい、かように考えております。
山井委員 時間が来ましたので、終わります。ありがとうございました。
中山委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。
    午前十一時四十二分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時八分開議
中山委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。水島広子君。
水島委員 民主党の水島広子でございます。
 本日、この次世代育成支援対策推進法案、そして児童福祉法の一部改正案に関して質問をしに来たわけでございますけれども、私にとってこの法案は、非常にキツネにつままれたような法案でございまして、何度読んでも、これによって何が変わるんだろうかというのがよくわからない。
 そんな気持ちでやってまいったところ、今、一時八分でございます。これほど与党の方たちも集まりが悪かったということは、やはりこの法案のできにも関係があるのかなと思っているところでございます。それでも時間がもったいないですので、それでは早速、質問に入らせていただきたいと思います。
 まず冒頭に、先日、新聞で大きく報道されました小児医療の問題について一言触れさせていただきたいと思います。
 こちらは朝日新聞でございますけれども、先日、健康であった五歳の男の子、豊田理貴ちゃんが、絞扼性のイレウス、腸閉塞を起こしまして、そして病院には行ったけれども放置をされ、本当に苦しみながらも最後まで我慢強く痛みを耐えながら、本当に半日という短い間で亡くなってしまったというような悲惨な事件が新聞に載っておりました。
 こちらに理貴ちゃんの、本当にかわいらしい、亡くなる前日の写真が載っているわけでございますけれども、私、この記事を読みまして、本当に心臓がとまるような思いがいたしました。私にも五歳の子供がおりまして、とても他人事ではない事件でございます。これこそまさに日本の次世代育成支援の貧困さを象徴した事件のようにも思っておりますけれども、まず、この事件はなぜ起こって、そしてどうすれば防ぐことができたのか。そして、こうやって五歳のお子さん、本当に大切に育ててこられたと思います、その親御さんがこんなことで瞬く間にお子さんを亡くしてしまった、そのことをこれからどのように扱っていくべきだと思われますでしょうか。まず大臣の御意見を伺いたいと思います。
坂口国務大臣 葛飾の東部地域病院というのでしょうか、私も新聞を拝見いたしまして、大変残念な事件だというふうに思った次第でございます。
 この記事を読ませていただいて、私、二つのことがあるというふうに率直にそのときに思った次第です。一つは、患者さんに対する病院あるいは医師の対応の仕方、これは診療以前の問題としての問題だというふうに思いますが、その問題が一つ、そして今度は、診察をした後の診断の適否、これはあるんだろうというふうに思います。
 私も、かつて小児科におりましたときに、小さい男の子が急に泣きじゃくるときには腸閉塞と思えということを言われたことがございまして、先輩の非常にテクニックを心得ている人たちは、夜中でありましても、レントゲン透視をしながらおなかを上から押さえて、嵌頓に達しておりますのを治すと、それで十分手術をせずに治ったというケースを何例か私も見てまいりました。
 したがいまして、心得た小児科医師がおれば、それは最もあり得べき病気でございますし、よく診断ができたのではないかという気もするわけでございます。そうした意味で、多く発生する病気は何か、そのときにはどうすればいいのかという非常に基礎的なことを身につけているかいないかということになるのではないかという気もするわけでございます。
 今後、こうした事故を防いでいきますためには、一つは、患者さんが参りましたときに、その最初の対応の仕方をやはり病院というもの、そしてまた医師というものは気をつけていかなければならないということが一つ。そして診断につきましては、やはり安易に考えるというのではなくて、すべての症状、またお母さんから聞きましたような内容も十分に考慮して対応すれば、こうしたことが繰り返されることなく行えるのではないかというふうに思った次第でございまして、そうしたことをこれから各病院がどのように真剣に取り組んでいくかということになるのであろうというふうに思っている次第でございます。
水島委員 今、大臣はむしろ患者さんの見方という観点からお話をくださったと思うわけですけれども、もちろん私自身も、かなりやぶ医者の方だとは思いますが、おなかの痛い子を見たら、きちんとおなかの聴診はするでしょうし、またレントゲン写真を見て、少なくとも絞扼性イレウスのような所見があったらきっと私でも気がつくのじゃないかなと思いますので、この医師の医師としての資質の問題というのは大きいと思いますし、その医師がどのような医学教育を受けてきたのかということも問題にしなければいけないとは思うのですけれども、私がこの記事を読みまして真っ先に思ったことというのは、小児医療現場における人員の少なさ、そして人員が少ない中でその効果を最大限に発揮していくためには、やはりきちんと相互にチェックしていけるような仕組みがなければいけないと思うわけです。
 この場合も、何度も看護師の方はこの危険性に気がついて医師に診察を求めたけれども、医師は応じなかったというようなこと。だれかが気がついてはいたわけですので、それがきちんと伝達されていないということに非常に大きな問題を感じました。
 また、もしもこのとき当直の小児科医が複数名いれば、一人こんな資質の医者がもしも紛れ込んでいたとしても、もう一人の人が気がついて対応できたのではないかとか、そのように考えてまいりますと、この一件からも、きちんと学んで政策面に反映させなければいけないことというのは本当にたくさんあると思っております。
 こうやって失われた命、五歳になるまで本当に大切に育ててきた、また将来を本当に楽しみにしていたこの親御さんの気持ちを考えますと、これは悪い医者に当たって残念だったねというようなレベルの話ではないと思うのですけれども、改めましてもう一度大臣いかがでしょうか。
坂口国務大臣 先ほども申しましたとおり、患者さんが参りましたときの病院の対応の仕方、もちろん、今御指摘になりましたように、内部の連携の問題もあるというふうに思います。そうした問題をやはりふだんからこういう連携のもとにやるんだということをきちっとしておいて、医師というものはいかなる場合であっても謙虚でなければならないということを私はあの記事を見まして思いました。
 看護師の方がこういうふうな状況ではないかということを言えば、それは、最終的な診断は自分がするにいたしましても、すぐに疑って、そしてすぐに対応するというのがやはり医師としての役割ではないかというふうに思った次第でございます。
 もちろん、人数も多いにこしたことはございませんけれども、いつも人数はたくさんいるわけではありませんし、たとえ少人数でありましても、その連係プレーと、そして的確な対応というものが求められているというふうに思っている次第でございます。
水島委員 まだ少し認識がずれているような気がするのですが、いずれにしましても、この事件、大きく報道されました。これは子育て中の親にとっても本当に衝撃的な事件でございますし、これから安心して自分はこの国で子供を生み育てていけるんだという気持ちには到底なれない、悲しい事件でございます。
 今、全国のいろいろな親たち、あるいはこれから親になろうとしている人たちが、このような記事によってかなり心を傷つけられていると思っておりますので、こんなことが起きたんだから、これをむだにしないために、厚生労働省はきちんとこれを打ち出しましたというようなことがわかるようなメッセージを近いうちに必ず発していただきたいと思っております。
 今回も、この次世代育成支援の項目の中には、小児医療の充実というのが極めて当たり前のように書かれているわけでございます。今まで、いかに小児科の医療の現場が貧困であるか、どれほど苦しい仕事の中で大変なことをやっているか、そのようなことを私もこの委員会の中でも訴えてきたわけでございますけれども、そのようなことにきちんと手当てをしてきていれば、またそれがきちんとしたスピードでできていれば、このような事件は防がれたのではないかと思っておりますので、ぜひ、この医者がおかしかったとか、ここの病院は変だったとか、そのレベルの話ではなく、本当にすべての親が安心して子供を、何かがあっても必ず病院で診てもらえるんだというような、そして病院というのは行けばちゃんと安全な医療を提供してくれるんだというような常識的な安心感が持てるような、そんなメッセージをぜひ厚生労働省から打ち出していただきたいとお願いを申し上げます。
 さて次に、今回の法案について質問をさせていただきます。
 今回の次世代育成支援対策推進法案そして児童福祉法の改正案、これは少子化対策プラスワンに基づくものであると言われておりまして、この少子化対策プラスワンというのがそもそもなぜ出されてきたのかというのを聞きますと、二〇〇二年の一月に出された新しい将来推計人口の中に、少子化の原因は、晩婚化だけではなく、夫婦が持つ子供の数が減った、夫婦の出生力の低下ということが初めて認識されたからだというふうに私は今まで説明を受けました。
 これを最初に聞いたときに、私は非常に意外な気がいたしました。といいますのは、日本の子供の育てにくさということはかねてから指摘されてきたことでもございますし、私も五年前に最初の子供を産みましたけれども、子供を自分自身が産む前から、日本というのは子供が育てにくい国なんだなということを深刻に感じておりました。また、自分が希望している数の子供よりも実際に産む子供の数の方が少ないということもかなり前から指摘をされてきたわけでございまして、現場ではいろいろな方たちが、日本は子供を育てにくい、本当はこれだけ欲しいんだけれども、実際にそれだけ産めないんだということは、多くの人たちが言っていたわけでございますけれども、そのことに関して政府が二〇〇二年の一月に初めて気がついたというのは、ちょっと遅過ぎるのではないかと私は思うんですけれども、これはどういうことなんでしょうか。
坂口国務大臣 産みたいという人数とそれから現実に生まれております人数とに、〇・三ぐらいでございますか、格差があるということは前からわかっていたわけでございますが、結婚をした人たちの間で生まれます人数というもの、その人数が今までよりも減ってきたということが明確にわかったのは、この平成十四年一月の推計人口でございまして、それまでは、統計上は明確な数字が出てこなかったということだろうというふうに思っております。いわゆる産みたい数と実際に生まれている数というものとの差があるということは、前からわかっていたことだというふうに思いますが、統計上きちっと出てきたのはこの時期だということだと思います。
水島委員 済みません、確認をさせていただきたいんですが、そうしますと、今回のこの法案の内容というもの、名称は次世代育成支援対策推進法案ということなんですが、今のお話を伺っていますと、次世代を育成することの困難さは今までわかっていたけれども、実際に数が減ってきて初めてこれに取り組んだというように聞こえたんですが、そうだとすれば、これは子育て支援なんじゃなくて、子供の数をふやすための政策というふうに理解してよろしいんでしょうか。
坂口国務大臣 午前中にもお答えを申し上げたところでございますが、少子化対策と言わずに次世代の育成対策というふうに言っておりますのは、現在生まれておりますお子さん方をどのようにして育てていくか、あるいはまた子供さんがみずから育っていくようにするかというところを取り組むことによって、そして全体としては少子化対策になっていくということを我々は願っているわけでありまして、少子化対策というふうに言いましたときには、非常に範囲も広い範囲のことになりますし、そしてまた、いろいろな考え方もそこには入ってくるわけでございますから、あえて少子化対策というふうに言わずに、次世代育成という言葉を使ったということでございます。
水島委員 またちょっと確認させていただくんですが、今回の法案でしようとしていることは、とにかく、今、次世代を育成することに困難を感じている方たちの困難を減じて、結果として子供の数もふえたらよろしいだろう、そのようなことであって、少子化対策と言った場合には、私もこの前内閣委員会でも言ってきたんですけれども、外国人労働者の問題をどう考えるかとか、あるいは年金制度のあり方をどう考えるかとか、全部あわせて少子化対策ということであると私は思っておりますけれども、そういうようなことを今おっしゃったというふうに理解してよろしいんでしょうか。
坂口国務大臣 そのように理解していただいて結構でございます。
水島委員 確かに、今まで厚生労働省は、少子化対策臨時特例交付金とか少子化対策推進基本方針とか少子化対策プラスワン、少子化対策推進関係閣僚会議等々と、少子化対策という言葉を使ってきたわけでございますけれども、今回あえて次世代育成という表現を使われたということは、私は、それは正しい御見識であると評価をしているところであるわけでございます。
 そうであればあるほど、最初に大臣が御答弁くださいました、実際に子供の数が数として減ってきたことに初めて気がついて今回のこの施策を打ち出してくるというのは、何となくまだ論理矛盾があるように思うんです、明らかな数値として出てきたということでおっしゃるのであれば、ちょっとそこはあえて今追及しないでおきますが。
 もう一つ確認をさせていただきたいんですが、この法案と、現在内閣委員会できょうも審議をされております少子化社会対策基本法案との関係はどのようになっているんでしょうか。こちらの法案の名前は少子化社会対策でございます。これは同じ目的のものなんでしょうか。私は、何か両方の法案を見まして、本当はあちらが次世代育成支援基本法案と呼ぶべきものであって、こちらは行動計画策定法案とでも言うべきではないかなと考えているんですけれども、いかがなんでしょうか。
坂口国務大臣 今、内閣委員会の方に出ております方の法案は、議員の皆さん方が中心になっておつくりをいただきました議員立法として出されたものだというふうに記憶いたしておりますが、こちらの方をつくりましたときと申しますか、かなり前に、いろいろと皆さん、各党がお寄りになって議論をされておつくりになったというふうに思っております。
 私も、最初のころ参加をさせていただいたことがございまして、各党からいろいろの御意見があったというふうに記憶をいたしておりますが、最も基本的なところをやろうということで、あの法案をつくるということが最初進んだように記憶をいたしております。
 最終的な案、私、どういうふうになったかということを十分に存じ上げておりませんけれども、最初のころは、そうしたことであの法案というものをつくるという皆さんの合意のもとに進められたというふうに思っております。
水島委員 済みません、どのようにつくられてきたかという経緯は私もある程度知っているつもりではいるんですけれども、今回、多分時を同じくしてたまたま議論をされているわけでございますが、片や少子化社会対策という名前を冠した法案でございまして、こちらは次世代育成支援ということで、少子化対策という言葉を使わないで、あえて今回は次世代育成支援という言葉を使われたということであるわけですが、その二つの法案が今ほとんど同時に審議をされていて、成立するのであればほとんど同時に成立をしていく。そのような中で、法律となったときに、この二つの法案の関係はどうなんでしょうか。同じ方向を向いて運用されていくものなんでしょうか。
岩田政府参考人 そのとおりだと思います。
 基本法の方は、政策の基本的な理念でありますとかその方向を示すものですけれども、この次世代育成推進法の方は、各自治体あるいは各企業で次世代育成のための具体的な取り組みをする、それを促進するためのいわば体制をつくるための法律というふうに理解しておりますので、相互補完的といいましょうか、整合性がとれているというふうに考えております。
水島委員 先ほど大臣の、少子化対策と言った場合にはもっと広いものを意味するのではないかといった御認識、そして今の基本的な理念をあちらでは定めているというような御説明を両方聞きますと、やはり私、内閣委員会でも申し上げてきたんですけれども、あちらの本当の名称は次世代育成支援基本法案であるべきではないかな、大臣がお考えになっているような、それ以外の少子化対策という要素は入っていないんじゃないかなと思いますので、ぜひこれは議員の皆様にも、その法案の位置づけ、今細かいことを話しているようではあるんですけれども、日本がこの少子化対策というのを、少子化社会対策というものをどう考えるのかというその基本の部分を論じているわけでございますので、ここの点にぜひ皆様にも御関心を持っていただきたいと思っているんですが、今の局長の答弁を伺いましても、本当は向こうが次世代育成支援基本法案で、こちらは行動計画策定法案という名前にしても全く構わないんじゃないかなと今御答弁を伺ったわけでございます。
 もう一つ本質的な点に触れさせていただきますと、今回のこの法案を十年間の時限立法にした理由というのはどうなっているんでしょうか。
岩田政府参考人 少子化対策の進行が極めて深刻な状態にあるというふうに思っておりますので、本当に待ったなしの状況かというふうに考えております。
 そこで、国も地方自治体も企業も、今何ができるかということについて総力を結集していただいて、自治体は住民とよく対話をし、企業は労使でよくお話し合いになって行動計画をつくる、そして集中的に十年間でどこまで行けるかということで取り組もう、こういう枠組みを決めたものでございまして、そういうことで、とりあえず十年間はやってみようということの趣旨でございます。
水島委員 その場合、十年間やってみた効果というのはどういったところでごらんになるんでしょうか。
岩田政府参考人 具体的にどういう形で評価をするかということについては、またそのときにしっかり議論していただければと思いますけれども、今回の法案の中心になっておりますのは、子供を生み育てたいという気持ちを持っておられる方にとって、さまざまな障害が今世の中にありますので、その障害を除去して生み育てやすい社会をつくるということが中心になっていようかというふうに思いますので、そういった目的といいましょうか、それに照らして、現状がどう変わっていくのか、あるいは施策の展開がどこまで推進できたかというようなことで判断するのではないかというふうに思います。
水島委員 ということは、今回の施策を考えるきっかけになったのが、夫婦の出生力の低下ということでございましたので、これは十年後に評価をするときには、この夫婦の出生力が向上するかどうかというようなところをごらんになるというふうに考えてよろしいんでしょうか。
岩田政府参考人 夫婦の出生力の低下というのは、五年に一回人口の将来推計を出しておりますけれども、過去何回か、私どもが少子化の原因であるというふうにその将来推計から理解しておりましたのは、晩婚化、非婚化ということであったわけですが、今回は、もちろん引き続き晩婚化、非婚化の要因は大きいわけでございますけれども、それにつけ加えて、従来は見えなかった、しかしながら一九六〇年代以降に生まれた方の問題として、結婚したカップルの間の出生力が低下しているんではないかという、新しいそういう現象を見て検討したということでございます。特に、夫婦の出生力の低下というのは、やはり子供を生み育てにくい、生み育てる環境が必ずしも十分ではないということの問題をその数字が示しているということではないかということで、今回の検討の端緒になったわけでございます。
 もとより、従来から、少子化対策基本方針ですとか、それに基づいたエンゼルプラン、新エンゼルプランということで次世代支援対策は取り組んできていたということだと思いますけれども、従来の対策にさらにつけ加えてもう一段の対策ということで、従来はどちらかというと保育所対策などが中心だったのにさらに追加をして、すべての御家庭の子育て支援対策をどういうふうに強化するかとか、働き方の問題がどうも子供の育て方の問題と密接であるから、働き方の問題をどういうふうに変えていくか、あるいは子供が大人になる過程、子供の育成過程というのは次の世代の親づくりでもあるという観点から、子供の自立対策という分野も強化をしたいとか、社会保障制度の中で次世代の仕組みをどういう形でビルトインできるかといった、従来、比較的取り組みが弱かった分野にまで広げて対策を講じようということを考えたわけでございます。
水島委員 私は、この晩婚化も非婚化も夫婦の出生力の低下も、みんな同じ線上にある話だろうなと思ってはおりまして、それが今までは晩婚化、非婚化という形でしかデータとしてとらえられなかったのが、いよいよ夫婦の出生力も低下してきた、もういよいよ深刻になってきたというふうにとらえるべきなのかもしれないと思っております。
 いずれにしましても、これを十年の時限立法にしてとりあえずやってみようということなんですが、十年間たって、ある程度子供の数というものがふえてくる、あるいはその低下が頭打ちになってきた、そのようなことになりましたら、次世代育成支援というのは必要がなくなるというふうなお考えなんでしょうか。
岩田政府参考人 冒頭申し上げたかと思いますけれども、この法律のねらいとするところは、子供を生み育てやすい社会づくりをどうしようかということでございます。子供の数の問題だけではございませんで、むしろ子供が育つ社会の質といいましょうか、それを問題にしているということだと思いますので、その時点で、十年後の子供を生み育てる環境の状況がどの程度改善しているかといったことが大変大きな判断の要素の一つになると思います。
水島委員 その場合、十年間ということなんですけれども、これは、十年間やってみて効果が十分でなかったら、また次の十年もやるというものなのか、あるいはこの十年間でとにかく政府を挙げてできるだけのことは全部やろうという意気込みなのか。後者であるのであれば、きちんとした数値目標を掲げて、毎年の達成目標を掲げて十年間やらないと、とても間に合わないと思うんですけれども、どちらなんでしょうか。
岩田政府参考人 先生がおっしゃった後者の方だと思います。
水島委員 ということは、きちんと数値目標を掲げられて、十年間でここまでやるんだというふうに意気込まれていらっしゃるのかなと、ちょっと今それを前提として伺いまして、これから個別の質問に入らせていただきたいと思います。
 ちょっとその前に、もう一つ確認をさせていただきたいんですけれども、今回、こういったものを出してこられるに当たって、これは午前中の審議の中でも多少触れられていたんですけれども、そもそも、今までの政府の次世代育成支援施策の総括というのはどのようにされていらっしゃるのか。例えば、待機児童ゼロ作戦ということを小泉首相がおっしゃって、多くの親たちを喜ばせたわけでございますけれども、あんなのは今どうなっているんでしょうか。
岩田政府参考人 閣議決定をいたしました待機児童ゼロ作戦は、保育所の待機児童を減らすということを目的にいたしまして、具体的には、毎年受け入れ児童を全国で五万人ずつふやしていく、そういう計画でございます。
 十四年度が初年度で、三年間の取り組みということになっております。ですから、十六年度、三年間たった後で最終的に評価をしていただくことかと思いますけれども、始まって一年ちょっとたった時点での今の状況でございますが、一年に五万人受け入れをふやすということについては、ほぼ予定どおり推進できているというふうに思いますし、地方自治体の理解、協力をいただければ、十六年度までそれは実現できるんではないかというふうに見通しを持っております。
 一方、それが具体的に待機児童の減少につながるかどうかということについては、ここはなかなか、さまざまな要素で、確実に待機児童が大幅に減少することになるかどうかということについては、若干言い切れない面もあるというふうに思います。保育所の整備が進めば進むほど、いわば、それまでは潜在的には保育所の利用の要望のあった方がまだ顕在化せず、したがって待機児童のリストには載っていなかったような方、そういう方が保育所の整備に伴って顕在化するということもありますので、このところは、どういうふうにそれを見通して計画を立てるかというのは大変難しいところでございます。
 しかしながら、目に見える形で、やはり保育所は使いやすくなった、利用しやすくなったというような形に近づけることができますように、引き続き十六年度末までの計画を頑張って実施していきたいというふうに思います。
水島委員 本来はそういった説明があって、今までこういった施策を講じて、それに関してはここまで達成されているけれども、この点が不足であることがわかったので、今回はここの部分に新たな施策を講じるとか、そういうふうに最初から御説明をいただきたかったところなんですけれども、今回、本当に最初から将来推計人口の問題が出てきて、これでいよいよ夫婦の出生力が低下したから、だから今まで保育に偏っていた施策を専業主婦家庭にもというような理屈で今まで説明をされてこられていましたので、非常に表面的な印象を受けてまいりましたし、今までの次世代育成支援の施策の総括をきちんといただいて、それを目に見える形にしていただかないと、普通に暮らしている立場の人間には、どんどん日本がよくなってきているから、これからは自分も安心して子供を産めるかなという気持ちにはなかなかさせられないのではないかと思います。
 また、次世代育成支援の必要性について、先ほど将来推計人口のことは御説明をいただきましたけれども、それ以外にどんなデータを持った上で施策を講じていらっしゃるのか、教えていただけますでしょうか。
岩田政府参考人 人口関係のデータはもとよりでございますけれども、それ以外に、子育て中の父親、母親のニーズについてですとか、職場での仕事と子育ての両立のしやすさを助けることができるような制度の普及状況ですとか、例えば晩婚化の理由など、結婚に関する国民の意識がどういうふうになっているかということですとか、先ほども大臣とのお話の中で出ておりましたけれども、理想の数の子供とそれが持てない原因は何だろうかといったような関連するテーマについて、相当数の意識調査、アンケート調査をやっておりますので、それらの調査を丁寧に勉強しながら政策立案をしてきたつもりでございます。
水島委員 私もちょっと事前に少しその資料は見せていただいたんです。あくまでも、現行の制度がどれだけ役に立っているかとか、あるいは厚生労働省側が用意した選択肢に対して答える、それで、その他というようなところがある、そんなものを幾つか見せていただいたんですけれども、例えば現実にいろいろな方とお話をしていますと、本質的にこれはもうだめだと思う瞬間というのは、例えば夫が単身赴任になって、自分が仕事と家庭の両立をしていけなくなるとか、あるいは育児休業はあっても、妊娠中につわりがひどい、あるいは大きなおなかを抱えて満員電車で非常に長距離通勤をして、もうこれはだめだと思ったとか、割と非常に身近なところにいろいろと困難があるわけでございます。
 私が少なくとも事前に見せていただいたデータの中には、そういった夫の単身赴任だとか、そういったことというのは当然選択肢として入っていなくて、何やら大変なのはわかるんだけれども、それが現実のニーズを本当に正確に反映させているのかどうかというものは、ちゃんとある一面はとらえているんだと思いますけれども、これから講ずべき施策の選択肢として本当に必要十分なものなのかというものは、少し疑問を持ちました。
 そういった意味では、本当に当事者本人からの聞き取りをして選択肢もつくっていかなければいけないと思っておりますけれども、そういった選択肢をつくるときに、当事者からの数多くのヒアリングをするですとか、そういったことはされていますでしょうか。
岩田政府参考人 調査の設計をするその具体的な作業の中で、それでは今子育ての中にある方の個別のヒアリングを必ずしているかというと、むしろしていないということの方が一般的かというふうには思います。しかしながら、いろいろな機会をとらえて、まさに子育て中の父親、母親のニーズの把握には努めているところでございます。
 例えば、今回、昨年から少子化対策プラスワンの立案から始まりまして、一連の作業がございました。それに先立って、少子化社会を考える懇談会を大臣が招集されましたけれども、各界の有志を集めると、どうしても五十代、六十代の男性が中心になりがちでございますけれども、これは大臣の御指示でなるべく若い方を、それも女性を入れようということで、三十代、四十代が中心のそういった方たちから意見をちょうだいする機会なども設けて、現に子育て中の方の御意見に耳を傾けるように努力はしているつもりでございます。
水島委員 ぜひその御努力をもっと今まで以上にしていただいて、そして次にこういう意識調査をしたり現状の把握をしたりするときには、その選択肢のつくり方から当事者の意見を踏まえて、今度はもう少し新しいものをつくっていただけますようにお願いを申し上げたいと思います。
 また、次世代育成支援の必要性を示すデータとして、今おっしゃったような観点とはまた別に、どういう状態の親が子供を育てるとどうなるかというようなことが出てくるわけでございますけれども、親がうつであると子供の発育に悪影響が及ぶということは、そういうデータは知られておりますけれども、これは厚生労働省としては御存じでしょうか。
岩田政府参考人 今、社会保障審議会児童部会で、これからの対策のあり方について議論していただいておりますけれども、そこで出てきている大きな論点の一つに、産後のうつの問題がございまして、産後のうつがやはり子供の養育に深刻な問題を投げかけているんではないか。例えば、それが養育放棄になったり、子供としっかりコミュニケーションができないという問題になったり、夫との関係がまずくなって、そういった家族の関係の悪さがまた子供の発育に影響したりという議論がなされておりますので、大変関心を持っているところの一つでございます。
 また、日本そしてアメリカなどでこういった専門家の調査結果もあるようでございまして、私はサマリーしか読んでおりませんけれども、それなりには私どもの局、スタッフ、勉強させていただいております。
水島委員 今おっしゃった産後うつ病という狭い範囲のことだけではなくて、例えば非常に夫婦の関係が貧困になってしまって、その悩みからうつになって、実際にそれが子供に影響を与えていく。私は、ネグレクトと言われる虐待の背後には、多くの場合うつがあるんじゃないかと思っておりますけれども、いずれにしましても、全般的に、親がうつ状態であると、子供に本当に温かく余裕のある関心を向けてあげられなくなるということは、これは症状として仕方のないところもございまして、やはり親をいかにうつ状態にしないかということは非常に重要なことだと思っております。それは、局長が今まで読まれたサマリーからも読み取れることであると思います。
 そういった視点で見ますと、今回厚生労働省がこの法案を出されるに当たって示されているデータで、子育て負担を大きく感じている人が専業主婦家庭では四五・三%もいるということ、これは、四五・三%がみんなうつなのかといえば、そういうことではないとは思いますけれども、負担を大きく感じているということは、うつに関して非常にリスクが高いということになりますので、これが四五・三%、半分近いということは、子供の心の成長を考える上で非常に深刻な事態だと私は思っております。
 このデータによりますと、専業主婦家庭の方が共働き家庭の母親に比べて負担を強く感じているという結果になっているわけですけれども、この理由をどういうふうに考えていらっしゃるでしょうか。
岩田政府参考人 アンケート調査などを分析して、幾つかのことがあると思うんですが、一つ考えられますことは、専業主婦の場合は、二十四時間育児だけに、そしてそれを多くの場合ひとりで向き合っているわけでございますから、それからくる閉塞感といいましょうかストレスといいましょうか、それが一つ原因があるというふうに思います。
 それから二つ目には、専業主婦家庭の場合に、夫と妻の役割分担がはっきりしていて、夫は仕事、育児は妻だけという形になりがちでございまして、夫は夜遅くまで仕事だけをする、育児にかかわらないといったような、父親の育児参加が少ないということからくる負担感、不安というものもあるというふうに思います。
 さらに三つ目として考えられますのは、共働き家庭の場合は、保育所にお子さんを預けるケースが多いというふうに思いますので、朝晩、保育士さん、あるいは同じように子育て中のお父さん、お母さんと話をする機会があるわけですから、そういった人たちから情報を得たりアドバイスをするといったような中で、不安や問題を解決していっている。そういう機会が専業主婦の方には少ない、こういうことが原因ではないかというふうに考えております。
水島委員 今まで、今でもかもしれませんが、多くの方たちがとらわれてきたものに、いわゆる三歳児神話というものがございまして、母親が二十四時間子供のそばにいないと子供の発育に悪影響が及ぶ、大ざっぱに言うとそんなような内容の神話であると思いますけれども、今、このデータを見ても、また局長がおっしゃったことを伺いましても、現実には、三歳児神話によって子供たちが守られているというよりは、三歳児神話がかえって子育てをゆがめてしまっているような、そんな結果が読み取れるのではないかと思います。
 二十四時間親が子のそばにいた方が子供がよく育つ、そういうことが昔は、昔といってもここ最近の短い昔ですけれども、信じられていたものが、今は逆に、二十四時間育児だけをしていると閉塞感がもたらされてしまうとか、あるいは、むしろ保育園で人的交流があった方がいいとか、そういったことで、三歳児神話にとらわれている人ほど子育てに非常に負担がかかっているんじゃないかというようなふうにも思えるわけでございます。
 この三歳児神話そのものは、学説としては否定されていると言っていいと思いますし、先日内閣府の方から有識者懇談会の報告書というのを出していただきましたが、その中でも明らかに否定している。むしろ共働き家庭の方が、そういう意味では育児負担が少ないところもあるというところまで踏み込んで書かれているわけでございますけれども、厚生労働省として、三歳児神話が日本の現状で親たちにどういう影響を与えているのかということをここで改めて総括していただきたいんです。
鴨下副大臣 神話という意味でいいますと、往々にして神話の中には事実も含まれているわけでありますから、先生おっしゃるような点からいいますと、ある意味で、過度に三歳児神話にとらわれるというようなことによって、お母様方が大変なプレッシャーの中で育児をせざるを得ない、こういうようなことは事実なんだろうというふうに思います。
 また、平成十年版の厚生白書においては、こういう記載がございます。「少なくとも合理的な根拠は認められない。」云々、こういうような趣旨の記述はあるわけでありまして、いわゆる誤解も含めてなんですが、三歳まで母親が二十四時間密着して育児をすべしというようなことについては、これはそうではないんだろう、かように思うわけであります。
 ただ、先生もお考えの中にそういうようなことがあるというふうに私は拝察しているわけでありますけれども、例えば育児過程において、生育過程において、ある意味でのアタッチメントの質だとかそれから愛着形成と言われるようなこととか、ある意味で保護者に対しての基本的な信頼関係を形成していく、こういうような意味においては、だれかがメーンになってそのお子さんに接していく、こういうようなことにおいては、私は、三歳児神話ということではないかもわかりませんけれども、反面、極めて重要な点だろうと思っておりますし、さらに、それの多くは、一般的には家庭の中、それから今までの社会通念の中では母親が担ってきたということも事実なんだろう、こういうふうに思っておりまして、先生がおっしゃっているような過度な負担をある意味で母親に与えるというようなことにおいては、これは慎むべきだろうと考えております。
水島委員 今、副大臣がいい話をしてくださいましたので、通告の順番とすっかりひっくり返ってしまって申しわけないんですけれども、ちょっとそれに関連した質問をさせていただきたいと思います。
 今、愛着の重要性ということをおっしゃって、愛着、アタッチメントと言われているものですけれども、その重要性ということで御指摘をくださいましたので、まさにその点からひとつ質問をさせていただきたいと思うんですが、愛着の形成、それも人生の極めて早い時期での愛着の形成の必要性というのは、何も家庭に恵まれた子供だけにあるものではなくて、家庭に恵まれない子供にとっても、愛着というのは人格形成の上で非常に重要なものであるわけでございます。
 現状でそれをもう一度その目から現在のシステム、この児童福祉法の世界を見てみますと、非常に問題を感じますのが、例えば親から引き離されて、それは親を失ったとかあるいは虐待を受けて親から引き離されたでも、何でもその理由はあるわけですけれども、親から引き離されて親との間に愛着関係を築けずに乳児院に入った子供が、二歳くらいになると、現行法上、児童養護施設に措置されるという形になっております。親から引き離されて、乳児院側の努力で、なるべく一対一の養育をしようとしていただいて、やっとある人に懐いてきたかなというところで、今度また全然知らない児童養護施設に移されてしまう。ここで子供は、もう生まれてから二度にわたって、愛着の破綻といいますか、それを経験することになるわけです。生まれてから数年の間に二度も大きな裏切りを体験するということになるわけですけれども、これがどれほど子供の心にとって深刻なダメージを与えるかということは、もう十分に御推察いただけることだと思います。
 子供にとっての愛着の重要性というのをそうやって御答弁くださった以上は、その愛着というものを軸にこの制度をつくりかえる必要があると思うんですけれども、いかがでございましょうか。
鴨下副大臣 私も同感であります。
 そして、特に乳児院の入所児童について、二歳になりますと児童養護施設に移される、こういうようなことで、それこそアタッチメントの質というような意味においては、そこで分断されるわけでありますから、多くは、そういうようなことで傷ついた心というのは、いずれのところでまた本人を苦しめることにもなりかねません。
 そういう意味では、特に乳児の場合は、保健医療面で、言ってみれば手厚い対応が必要である、こういうことはもう言うまでもないわけであります。ただ、現行制度の中ではおっしゃるようなところがあるわけでありますので、この点はぜひ是正していかなければいけないというふうに思っております。
 そして、ある意味で、乳児院の中には例えば看護師さんが必要だとか、児童養護施設とは多少人員配置等が変わるわけでありますけれども、そのことよりも、むしろお子さんがそういう意味で連続的に、ある種信頼関係を持った方に養育してもらう、こういうようなことの方がはるかに重要なことなんだろうと思っておりますので、そのことを含めて制度を見直して、すくすくとお子さんが育てるようなシステムにつくっていきたいと考えております。
水島委員 今、はっきりと、もう制度を変えていただけるという御答弁をいただきまして、これは副大臣の御答弁でございましたが、大臣もそれでよろしいでしょうか。――ここで大臣うなずいていただきましたので、これは本当に早急に変えていただきたいと思います。
 児童虐待防止法の見直しというのは、青少年問題特別委員会で今作業に入っているわけではございますけれども、児童福祉法のここの部分というのは非常に重要な点で、これはこれで厚生労働省が現在の中できちんと変えていただかなければならない部分だと思います。こうしている間にも、乳児院から本当に泣きながら、あるいはもう人間なんて絶対に信頼できないという思いで児童養護施設の方に措置されている子供がいるわけでございますので、これはもう近日中に制度を変えていただけるように、何らかの形で、こういうふうに変わりましたということを示していただけますように、改めてお願いをしたいと思います。
 もちろん、親がちょっと短期間、次の子供を産むとか、何だか短期間、ちゃんと終わりがあるとわかっている子供を乳児院で一時的にケアするというのはいいことだと思いますけれども、やはりこれからもずっとそうやって育っていかなければいけない子供に対して、連続した養育の必要性ということは十分御理解いただけると思いますので、ぜひ現行のおかしな点を本当に早急に改善していただけますようにお願いいたします。
 また、家庭的な養育を重視する、一対一の愛着というものを重視するというような意味では、里親ですとか養子縁組ですとかそういったこと、これは日本ではまだまだ主流ではないシステムでございまして、里親を引き受けてくださる方というのもまだまだ少ないわけでございますけれども、こういったことを活性化させていく必要があると思っておりますけれども、それをどのように進めていけるのか、その施策のお考えについてお聞かせいただきたいと思います。
鴨下副大臣 先ほどからの議論の引き続きになるわけでありますけれども、安定的な愛着形成ができていくような、そういうような保護者、養育者という意味では、里親あるいは養子縁組というのは極めて有効な方法なんだろうというふうに思います。そういう意味におきましては、里親さんもしくは養子縁組を社会的にもっと知っていただかなければいけないわけでありますし、また、現実には、里親になられる方も大変な御苦労があるわけでありますから、そういうような方々のさまざまな活動を支える仕組みもつくらなければいけません。
 今回、平成十四年度から、特に被虐待児等に対する専門里親制度の創設というのが一つございますけれども、それと同時に、児童養護施設等と連携して行う一時的な休息のための援助などを里親に対しましてしていくというような事業をつくってきたわけでありますけれども、厚生労働省の中では、これは本年の五月に、社会保障審議会の児童部会の中に、社会的養護のあり方に関する専門委員会というようなものを設置しまして、里親制度の充実や、それから多くの方々に知っていただく、こういうような目的で、いかに何をするべきか、こういうようなことも検討していくことになっているわけであります。
 先生がおっしゃっているように、里親の方々が、不幸にも保護者等から別れざるを得なかったようなお子さんたちをお引き受けくださって、そしてお育ていただけるようなことを今度は社会が、多くの方々が認知して、重要な役割を演じていただいているんだということを私たちも皆さんにわかっていただくための努力をしてまいりたいというふうに思っております。
水島委員 ぜひそうしていただきたいと思いますし、不妊の問題など、よく国会でこのごろ議論に上がるようになってはきたんですけれども、そういうときの選択肢の一つに養子縁組というものもあるんだというようなことをぜひ御答弁の中などでも意識して触れていただくことで、意識というのはつくられてくるのではないかと思っておりますので、よろしくお願い申し上げます。
 よくこのごろ、何やら国会では中絶に関する議論が、きょうの午前中もですか、少々行われていたようでございますけれども、生まれた子供をちゃんと育てられる環境をつくるということが政治の最大の責任でございますので、中絶がいい悪いという話をする前に、こういった生まれてきた子供たちを、仮にそれが親に恵まれなかった場合であっても、どうやって育てられるかということにぜひ全力を注いでいただきたいと思っております。
 また、今回、この児童福祉法の改正の趣旨で「すべての子育て家庭における児童の養育を支援するため、」ということになっておりまして、このすべての家庭という中で、母子家庭ですとか、あるいは障害児を持つ家庭のことについては午前中の審議の中でも触れられておりました。ここで私がさらに触れたいのは、障害者を親に持つ子供の家庭というのも、このすべての家庭に含まれますでしょうか。
岩田政府参考人 そういう家庭のことも念頭に置いた対策であるべきであると考えます。
水島委員 障害者を親に持つ家庭においては、特にどういう支援を必要だと認識されて整備していこうとされているでしょうか。
 例えば、私自身も相談を受けたことがございますけれども、聴覚障害者の親の方が健聴の子供をお産みになるというケースはかなりございます。そういった場合、子育ての上で本当に特殊な配慮が必要になってくるわけですが、こういった方はどうやって支援してもらえるんでしょうか。
岩田政府参考人 雇用均等・児童家庭局ではない他の部局で所管をしておりますので、事前の通告もございませんでしたので……(水島委員「しました」と呼ぶ)それは申しわけございませんでした。答弁の準備ができておりません。申しわけございません。
水島委員 これはきちんと私は通告していますので……(発言する者あり)与党の筆頭理事がやらせろと言っておりますが、余り御準備いただいていない答弁をいただいてもあれですので、また来週質問させていただくと思いますから、そのときに、きちんとその方御本人に私がお返事できるような答弁を御用意いただきたいと、それは違う部局であってもお願いを申し上げます。
 そして、もう時間がなくなってまいりましたけれども、今回、そうやって今まで要保護児童とか保育に欠ける児童への子育て支援に偏り過ぎていたというようなことも文章に書かれておりますけれども、私も、これはかねてからずっと言っていることなんですが、保育に欠ける条項というものこそ、もうこの際なくすべきではないかと思います。地域における子育て力というものが低下していることは事実ですので、ある意味では、すべての子供が今保育に欠けていると考えてもいいんじゃないかと思っておりますけれども、そんな中で、もうこの縦割り行政から子供たちを解放して、子供の目から見て一日の生活がどうなっているかということを考えなければいけない。
 午前中も幼稚園と保育園の問題というのは少々議論になりましたけれども、私、これは先日、内閣委員会の方に厚生労働政務官の方に来ていただきまして、幼稚園と保育園というこの縦割りから子供を解放して、子供の一日がどうなっているか、ちゃんと安心できる人と落ちついた環境で生活できているかどうかということを考え直さなければいけないのではないかということで質問を申し上げましたところ、余り要領を得ない御答弁をいただきましたので、きょうは大臣からもう一度お答えをいただきたいと思うんですが、くれぐれも、幼稚園は教育で保育園は保育だとか、そういう当たり前の答えをしないでいただきたいんです。
 私は幼稚園に行っておりました。それで、今自分の子供は保育園に行っておりますけれども、そんなに生活が違っているとはどうしても思えませんし、うちの娘も、保育園でお茶も習うし、コンピューターも習うし、体操教室もあると、非常にいい教育を受けてきております。
 小さな子供にとって、これは教育だ、これは保育だというようなものではないという現実ぐらい、大臣も十分御存じだと思った上での御答弁をいただきたいと思います。
坂口国務大臣 そこまで御理解をいただいておりましたら、もう私が答える必要はないというふうに思いますけれども、厚生労働省の方が今までやってまいりましたこの保育というのは、やはり保育に欠ける子ということを中心にしてやってきたわけでありますが、欠けるという意味も、以前と違いまして随分幅広く解釈をして、そして御家庭でいろいろとお仕事をなさっている方も、あるいはまたお仕事を探している方も、すべてを入れて保育に欠けるという中に今入れているわけでございますが、それとは別に、子供を中心にして考えました場合に、保育所というものと幼稚園というものと別々であっていいのかという話があるわけでございまして、それはそれなりの理由があると私も率直に思っているわけでございます。
 それで、できる限り保育所と幼稚園の垣根を取り払おうというので随分努力をしてまいりましたし、千代田区におきましては、ゼロ歳から三歳までは一応形の上では保育園、そして三歳を超えまして小学校に入りますまでは幼稚園、そして小学校という形の上の割り方をしながら、半ば一貫をした教育なり保育をしておみえになるというようなところが出てまいりまして、拝見させていただいても、非常にすばらしい行き方だというふうに思っているわけでございます。そうした行き方もこれから取り入れていくということを私たちも念頭に置いてやっていかなければならないというふうに思っている次第でございます。
水島委員 またぜひ来週も質問させていただきたいと思いますが、最後の大臣の御発言、これはバリアフリーとユニバーサルデザインの考え方に似ていまして、垣根というものを常に想定した上で、それをどうやって行き来を楽にしていこうかという考えではなくて、最初から子供のためにユニバーサルデザインの子供の居場所というものをつくってあげればいいわけですから、何でそうやって自分でつくった垣根にいつまでもとらわれているんだろうかということをいつも私本当に率直に疑問に思っております。大臣のことですからよくおわかりいただけていると思いますので、ぜひ前向きに、自分がつくってしまった心の垣根をなくしていけるように、ぜひ大臣の御努力をいただけますようにお願いを申し上げまして、本日の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
中山委員長 次に、武山百合子君。
武山委員 自由党の武山百合子です。
 今水島議員がいろいろ質問されていた件は、やはり水島議員はお子さんを今現実に育てられているという、ましてや幼稚園に行かれているというお子さんを育てながらの本当に身をもった、体験と経験をともにした質問であったかと思います。
 私は、一世代、二世代上になるかと思いますけれども、もう子供を産み終えて、そして二十代の子供を三人持っておるわけですけれども、ぜひ日本の社会が豊かで、また再び持続発展可能な社会になっていただきたい。それにはやはり子供たちが本当に人間として当たり前のことを、それは結婚をする、そして自然と子供を授かる、そういうふうに私の世代は、私自身は育ってまいったものですから、今その社会の急激な変化といいますか、本当に考えもつかなかった現実にぶち当たっているわけですけれども、最近、結婚式に声がかかるよりもお葬式の方が多いわけですよね。それだけ結婚する人も少なくなっているという現実もあるわけですね。
 それで、私は若い人にぜひ頑張っていただきたい。いろいろなチャンスをやはり我々世代の先輩がつくってあげる、相談に乗ってあげる、またいろいろな状況も、こういうものもあるという先輩としての話もできるかと思って、そういうふうに日々生きてまいっておりますけれども、このたび少子化対策ということで、また次世代育成支援法案という形で法案が出たものですから、この法案の中身についてまずきょうはお聞きしたいと思います。
 平成十一年十二月に少子化対策推進基本方針というのが出ているわけですね。それからその後、いわゆる育児・介護休業法も出ておりますし、いろいろと子育てする家庭を支援する政策というのはもう長いこと打ってこられたと思うんですよね。その中で特に何年か前から、もう十年ぐらい前からでしょうか、エンゼルプランというのも政策の一つとして策定されていたと思うんです。
 これらが、過去がどういうことになって、だからこういう、またそれには弱い、すなわち過去の政策に対して足りない、欠けている分があるからこのたびのこういう推進法案というものをつくったという御説明が、先ほどずっと委員会の審議の中で話が進んできたわけですけれども、平成十一年に出ましたいわゆるこの少子化対策推進基本方針、それからエンゼルプラン、また育児・介護休業法とか、これらのそれぞれ子育てをする環境、それから少子化対策、エンゼルプランというものができてきておりますけれども、なぜまたこのたびこういう推進法案というものが出されなければいけないのか、この辺の経緯をぜひ副大臣からお話しいただきたいと思います。
鴨下副大臣 先生おっしゃっている新エンゼルプランなどを講じてきたにもかかわらず、ある意味で少子化がなかなかとまらない、こういうような現実もどういうふうに考え、なおかつそれを踏まえて今回の法案提出というようなことの趣旨を話せ、こういうようなお話であります。
 今まで次世代育成支援対策、こういうようなことにつきましては、これは始まりのところは平成二年のいわゆる一・五七ショックというようなことで、出生率が極めて急速に低下してきた、こういうようなことで、世の中の皆さんが少子化というようなことの認識が多くなってきたわけでありまして、そういう中で、ある意味で、子供を産みたい人が生み育てやすいような環境整備というようなものに力点を置いて、さまざまな取り組みを行ってきたというところであります。
 具体的には、今先生お触れになったような平成十一年の少子化対策推進関係閣僚会議による少子化対策推進基本方針の決定や、同年に新エンゼルプランの策定それから目標達成に向けた各事業の着実な推進、こういうようなことをさまざまやってまいったわけであります。これらは主に仕事と子育ての両立支援というようなことを中心としているわけでありまして、その典型的なこととしては、例えば保育サービスの充実などにおいて、ある意味で一定の効果を上げてきたということは言えるのではないかと思います。
 ただ、今後さらに少子化が進行する、こういうようなことが見込まれているわけでありまして、もう一段施策を充実していく必要があるだろう、こういうような判断に立ったわけであります。
 このため、これまでは仕事と子育ての両立支援というようなことであったわけでありますけれども、それだけではなかなか十分ではないということで、例えば働き方を見直して、子供を生み育てやすいような働き方とは一体どういうことなんだろうかとか、地域において子育てを支援していただくためにさまざまな工夫が必要であろう、こういうような二点、働き方の見直し、そして地域における子育ての支援、こういうような観点から、これは本年の三月に政府として、当面の取組方針、こういうようなことを関係閣僚会議において決定していただいたわけでありますけれども、それを受けまして今回の二法案を国会に提出した、こういうようなことが経緯でありまして、こういう取り組みを通じまして、先生先ほどおっしゃっていたように、これからの若い方々が、ある意味でお子さんを生み育て、そして健全な社会の中での生活を送っていただくために次世代育成支援対策をする必要があるだろう、こういうようなことが今回の法案の趣旨でございます。
武山委員 きちっと予算をつけてエンゼルプランもされてきたわけですから、一定の効果が見込まれたというのは当たり前のことだと思うんですよね、一定の効果というのは。それはもう半数以上、五〇%以上見込まれたのでしたら一定の効果と言えますけれども、この一定の効果というのは、ゼロよりは効果があったという意味だと思うんですよね。ですから、このたびいろいろと手を打たなければいけないということで推進法案という形になったんだと思うんですよね。言葉にごまかされちゃだめだと思うんですよ。一定の効果なんというのは当たり前のことであって、その一定の効果も、中身を数値であらわしましたら、どの程度が一定の効果かというと、これまた大変な疑問だと思うんですよね。
 それで、私がお話ししたいのは、いわゆる一定の効果、言葉でやはりだまされたくありませんので、一定の効果というのはどのぐらいの効果を言っておるのか、ぜひ説明していただきたいと思います。
坂口国務大臣 なかなか一定の効果というのを数字であらわすことは難しゅうございますけれども、今まで、どちらかといいますと、家庭と仕事の両立をさせるということを中心にしてやってきたというふうに思います。そういう意味で、いわゆる待機児童がたくさんいる。それではいけないというので、待機児童ゼロ作戦というのを打ち出してまいりました。三万人なり三万五千人なりおりました皆さん方を、待機児童をなくしますと、またちゃんと次の三万五千人ばかり新しい人たちが生まれてきているといったことがあって、これはなかなか、今まで考えておりましたように、今足りないのをなくしたらいいというわけではなくて、新しくまた次に必要な人が生まれてくるということを我々も念頭に置かなければならないというので、三年間十五万人ということで今進行させているところでございます。
 その他、それぞれの地域におきましても、きめ細かな問題もやらせていただいておりますが、トータルでいえば、家庭と仕事の両立ということを中心にしてやってきた、その面ではかなり成果を上げてきているというふうに思っている次第でございます。
 ただし、まだ足りないということが起こってきていることは今申し上げたとおりでございます。また、保育園なども、今までのあり方だけではなくて、病気になったときにどうするかといったような問題もございまして、病児保育の問題等も新しく出てまいりましたし、そうしたよりきめ細かな問題がこれから問われているということではないかというふうに思っております。
武山委員 大臣ともう少し本質論を議論したいと思います。
 待機児童の話ですけれども、待機児童、すなわち保育園に入れたい、幼稚園に入れたい、そのもっと前の根底ですね。まず、働きたいという前に、ファッションみたいに外へ出て働きたいという人もいるわけですよね、何も考えずに。
 本当はお父さんとお母さんで育てた方がいいわけですけれども、実際はどちらかが働かなきゃいけない。そうすると、子供を育てるのがだれかということになると、ほぼ大体、女性が、お母さんが見るというのが常識であろうと思います。
 そのお母さんが子育てをするというその子育てがとてもいいことだ、また、子供にいろいろな機会を与えたり、お母さんとのいろいろなスキンシップをして過ごしたり、そういう前提になるものがちゃんとあった上で、それでどうしても働かなきゃいけない経済的な理由、それからいろいろな種々の理由があると思います。
 それで、私たちの世代はもともと、公務員とか看護婦さんとか、今の一般のいわゆる民間企業ではなくて、公の、公的な機関に働いている人は、子育てを両立するのは本当に大変だったわけですね。ところが、今は大変恵まれていて、本当にだれもかれも子供を預けて働けるという環境にはなってきたと思うんです。
 でも、その前提条件となるのが、国は、ある程度どういうことを想定して、前提条件として、待機児童を受け入れようと思っていらっしゃるんでしょうか。
坂口国務大臣 これは、女性がどれだけ職場に進出をされるかという問題、それから家庭のあり方等々、さまざまな問題が絡んでいる話でございますから、一つの物差しで表現することは難しいというふうに思います。
 しかし、現在の社会情勢の中で、働きたいという方がおみえになって、そして保育所が足りないということが起こっていることだけは事実でございます。これはもう揺るがしようのない事実であります。その働きたいというふうに思われるお母さん方が、今おっしゃるように、ファッションのような気持ちで働きたいというふうに思っておみえになるのか、それとも本当に生涯の仕事として働こうというふうに思っておみえになるのかということの判断を我々はなかなかつけにくい、それは難しいというふうに思います。
 したがって、厚生労働省の立場でいいますならば、現在働きたいという強い希望をお持ちになっているお母さん方に対してどうするかということを考えていくのが、やはり私たちの立場ではないかというふうに思っております。それをさかのぼってその原因までということになると、私たちがそこを判断することはなかなか難しいと言わなければならないというふうに思います。
武山委員 それはやはり国として考えるべきだと思うんですよね、哲学ですから。やはり日本の伝統文化を考えた、その上に立った家庭のあり方、そういう中で、本当に働きたいという方に対しては、我が自由党も、子育ての期間はいろいろな、種々多様な環境をつくるべきだ、その後、子育てが終わった後、社会に戻ったら、それはもう義務づけて、仕事ができるように、復帰できるようにというのは我が党も考えております。
 しかし、やはりその前提条件もきちっと哲学としてないことには、そうすると、何しろ働きたいという人に何でもかんでも予算をつけて受け入れるというふうに、では、それで子供がふえるか。少子化対策ですから、もちろん子供をしっかりと育てる環境をつくるということは大事ですけれども、そのためにどうするかということも考えなきゃいけないと思うんですよね。
 ですから、ただ予算をつけているというふうにも、実はこういうふうにして見ますと思えるわけなんですよね。いわゆる哲学がないと、あの手この手で、おんぶにだっこで、国が見ますよ、地方自治体が見ますよ、市町村が見ますよというふうにもこれは一見見えるわけですよ。これは全部予算がつくことだからなんですね。
 ですから、地元は地元でいろいろなことができると思うんですよね。これは地方主権、分権にもなっていないから、国がやはり相変わらず、今までの国が見るんだというふうな上からのお仕着せでもあるわけなんですよ。下からわき上がってきたものじゃないわけなんですよね。ですから、その辺をしっかりと、国がこの二十一世紀の次世代をどうするのかという哲学が見えてこないところに問題があると私は思うんですよね。ですから、今の状態ですと、次世代をただ予算をつけてなるべく国が見る、地方自治体が見る、そういうふうに見えるわけなんですよね。
 ですから、本来はどうあるべきなのかという、そのあるべき姿というものをやはり今の若い人にきちっと示せない我々の世代でもあるかと思うんですよ。ですから、それは、我々、人生の先輩として、やはり我々はこういうふうに考えているというものを示すべきじゃないかと思うんですよ。それでまた、若い人には若い人の、水島委員が質問されたように、現実の問題として、子育てしていながらあるわけですよね。そういうものがあって初めて、総合的に見てどうしたらいいかということになるかと思うんですよね。
 ですから、そこの国のあり方の、また我々先輩たちが若い人に贈るこういう青写真というものもやはりきちっと提示すべきだと思うんです。その辺に対しての見解はどうでしょうか。
鴨下副大臣 今回の法案に盛り込まれている基本理念についてですけれども、これは三条の中で、「次世代育成支援対策は、父母その他の保護者が子育てについての第一義的責任を有する」、こういう基本的な認識というのが、いわばいろいろな、それこそ国会等も含めまして御審議をいただいた結果、こういうような基本理念を盛り込ませていただいたわけでありまして、その基本的な認識のもとに、「家庭その他の場において、子育ての意義についての理解が深められ、かつ、子育てに伴う喜びが実感されるように配慮して行われなければならない。」かような基本理念をうたわせていただいているわけでありまして、言ってみれば、この条文をある意味で御理解いただきたいなというふうに思うわけであります。
武山委員 そうしますと、先ほどの話にちょっと戻りますけれども、新エンゼルプランの欠陥というのは何だったんですか。その辺、反省点というものをぜひ披露していただきたいと思います。
鴨下副大臣 欠陥といいますか、この新エンゼルプランそのものは、これは極めて計画的に、しかも多くの子育ての言ってみればニーズに合わせて機能してきた、こういうような意味では、かなりの御評価をいただけるんだろうというふうに思います。例えば、低年齢児の受け入れを拡大するとか延長保育の推進、さらに休日保育の推進、また多機能保育所等の整備、さまざまな数値目標をつくりまして、大体それに準拠した形でやれてきたわけでありますから、この新エンゼルプランそのものは着実に推進してきたんだろうというふうに思います。
 ただ、先生がおっしゃっているような、例えば、では、それである意味で少子化がとまったのかとか、それから、多くの女性の方が生み育てるというようなことに対してまた積極的な気持ちになっていただけたのかとか、こういうようなことについてはさまざまな議論があるところでありますし、これは先ほどからの御議論の中にもありますように、単純に、子育てのための施設整備、さらに制度を調整していくというようなことにとどまらずに、さらにもっと深い意味でのさまざまな御議論をいただかないといけないところもあると思います。
 ただ、先ほど大臣がお答え申し上げましたように、厚生労働省としては、そういう意味で、では、産めよふやせよというようなことを我々が言う、こういうようなことではないわけでありまして、むしろ、それぞれの方がそれぞれのお考えによって選択をしていただけるような、そういう環境を整備して、そして、ある意味で健全なお子さんがすくすくと育つような、こういう状況をつくろうじゃないか、こういうようなことでございます。
武山委員 選択は個人がするものであって、選択肢を提示するのは国の方の一つであるかと思いますけれども、まず、この少子化というのはもう三十年も前から言われているわけなんですよね。みんなからいろいろな不満が出てきて、それでやっとこういうことを考えたと先ほどおっしゃっていました。もう三十年も前から言われているわけなんですよ、こういう少子化というのは。ですから、その対策が、行政として、国としての対応が非常におくれた、やはり危機管理が足りなかったというところを一つ私は指摘しておきたいと思います。
 それから、副大臣は現実をよくおわかりになっていないようで、今のお話を聞いていますと、エンゼルプランは相当の効果を上げたようなことをおっしゃっておりますけれども、現実は、私が厚生労働省から聞いたお話ですと、市町村の数、千三百余りで実施された、内容も、保育中心で、総合計画の一部であるなど、不十分だったと言われているわけなんですよ。ですから、それに対しては、何か聞いていると、さも成功したような言いっぷりをしていますけれども、現実はやはりそうじゃないんですよね。ですから、少子化と言われているわけなんですよ。
 それで、簡単に、予算をつけたから、こうしたからといって、では結婚して産もうかという気にならないと思うんですよ。私がもし二十代でしたら、では結婚して産もうかという気にならないと思うんですよ。
 ですから、そこが本当に、ああ、やはり結婚しよう、結婚するものがいいものだ、子供をつくる、子供はまた本当に授かり物だ、また、一人一人性格が違いますから、私も、子育てをして、今大きくなってみると、一人一人が違って、子育てというのは楽しかったなと思うわけですよ。そういういい面のものが、若い人につないでいくものがないと、やはり若い人だってそういうものを以心伝心から得るものですから、こういう計画だけをしたから、策定だけをしたからといって産むものじゃないと思うんですよね。ですから、その辺が、やはり少子化対策として、国としては、こういうふうに推進法をつくって予算をつけるしかないのかなと私は思うわけなんですよ。
 このもの自体の問題は、もう古くて新しい言葉なわけですよね、前から言われているわけなんですよね。それに対して、やはりみこしを上げるのが遅かったとしか言いようがないと思うんです。もっと早くいろいろなことを、今の若い人の感性というのは明らかに違うわけですから。私なんか、本当に違うとつくづく日々思っておりますので。
 例えば、児童福祉法の改正法案ということで、厚生労働省からいろいろお話を聞かせていただきました。子育て家庭の現状ということで、子育ての負担が大と感じる人の割合ということで、物すごいわけですよね。片働き家庭の女性というのは、半分近くが子育ての負担が大きいと感じているというわけですよね。それで、子育てに自信がなくなることがよくある、この数値も、専業主婦の人が七〇%も本当に自信がなくなると思っているわけですね。
 私自身も、自分が子育てをして、最初の子供を育てるというのは、一喜一憂しちゃうわけですよ。それで、私は外国暮らしだったものですから、夫婦二人でしか育てられなかったわけです。そうしますと、熱が出たといっては一喜一憂し、転んだといっては一喜一憂し、子育てというのは、初めての子供を育てるときというのは、本当に大変だったということを今でも私は振り返ってみてわかるわけですね。そうすると、そういうときだれに電話をしたりして聞くかというと、やはり両親なんですよね、母なんですよね。母とかおばあちゃんなんですよね。あるいは、地域に親しくしている友人なわけですよね。
 ですから、本当にこういうことが、現実に今の社会はこれだけ、専業主婦が七〇%も子育てに自信がなくなっている、こういうものに対してどう思いますか。厚生労働省の副大臣としてどう思っていますでしょうか。
鴨下副大臣 幾つも難問をいただいているわけでありますけれども、専業主婦に限らず、お子様を持つそれぞれお父さん、お母さんも含めて、子育てに対して極めて大きな負担感を持っているというのは、これは事実だろうというふうに思います。
 特に、これは一つは、戦後といいますかこの数十年の間に、核家族化や都市化が極めて進行してきた。こういうようなことに対して、先生おっしゃっているように、お隣もしくは両親とそれなりのおつき合いがないというようなことから、孤立化を招いてしまうというようなこともあるんだろうと思いますし、地域そのものも、そういう意味で、子育て機能そのものが低下していて、ちょっとしたことを相談する相手もなかなかいない、こういうようなことが一つ大きくあるんだろうと思います。
 もう一つは、やはりお子さん、一人、二人の子供さんをどれだけ健康に、そして立派に育てようかというようなことで、ある意味で、両親にとってはそれがまた大変なプレッシャーになる、こういうようなことから、専業主婦の方も、むしろ子育ての負担感については重く受けとめている、こういうようなことだろうと思います。
 その要因につきましては、これは、専業主婦そのものの生活パターンが、一日お子さんと向き合って生活を送っているというようなこともあるんだろうと思いますし、そのことが自分の自由な時間を持てないということにもつながる。それがいわゆる子育てのストレスになってきて、さらに子育ての責任も、専ら専業主婦の方は子育てを担当するわけでありますので、その責任も母親に集中しがちだ、こういうようなことと、もう一つの原因として、父親がなかなか子育てに今まで参画しない。こういうようなことからさらにそれが助長される、こういうようなことですね。
 それからもう一つは、共働きの女性は、逆に言いますと、保育サービスなどの外部サービスとのアクセスが専業主婦の方と比べると比較的ある。こういうようなことで、子育てに対して特に専業主婦の皆さんが非常に大きなストレスを感じていらっしゃる、こういうようなことを分析しているところであります。
武山委員 もう一つ、やはり家庭の議論をしたいと思います。
 何しろ、子供ができるというのは、家庭を持って初めてできるわけです。一つの日本の家庭のあり方、家庭が原点だと思うんですよね。その家庭の中でのいろいろな営みから、そこに子が生まれ、そして、その中で子育てを通して一つのファミリーとして育っていって、その中で人間としての営みを繰り返していく。その人間としての営みがまた大切なことであるということですけれども、その家庭の中でいろいろなことを学んでいく、それは生まれたときから学んでいく、身につけていく、体験と経験、その中の家庭というものが、今まさに、この次世代支援推進法ですと、すぐ他人に見てもらうようないろいろな環境づくりなわけですね。
 ですから、根本が、家庭というものをやはりきちっと議論すべきだと思うんですよ。家庭がなかったら子供もできないし、その子供が子供を産むわけですから。その子供が子供を産むそのときに、いろいろなことを身につけていない、考えていない、自分で自立していない、いろいろなことが問題なわけですよ。ですから、それが我々先輩として若い人にできることじゃないかと思うんですよ。もう二十ぐらいになってしまった人に今からできることというと、国が今考えていることも一つだと思うんですよね。でも、その前の家族、家庭、こういうものをきっちりとやはり議論して、私、ここが、根本が抜けていると思うんです。この根本なくして少子化対策というのは進まないと思うんですよ。
 ですから、ここの根本の議論が抜けていて、ただ予算をつける、環境づくりをする、いろいろなメニューをそろえても、では産むかといったら、全然そこに、結婚をしようという気も持っていない人が多いわけですから、その前の段階なわけですよ。ですから、幾らこういうものをつけても、例えばこの前にエンゼルプランとか子育てのいろいろなメニューを考えてきているわけですよ。でも、歯どめがかからないわけです。歯どめがかからないということは、土台をきちっと考えて、ある一定のフォーカスを示していないからなんですね。その土台が一番大事なんです。それはお金とかじゃないんです。お金で解決する問題じゃないんですよ。
 ですから、その辺の見解をきちっと厚生省がどう思っているかというのが一番のポイントだと思うんです。その見解についてぜひ聞きたいと思います。
鴨下副大臣 家庭のありようというのを厚生労働省が答弁するというのはなかなか難しいわけでありまして、それこそ、先生おっしゃっているような、ある意味で今までの伝統的な家庭というような観念をお持ちの方の考えもありますし、ある方は例えばシングルマザーで子供を育てたい、こういうようなことをおっしゃっている方もいるわけでありまして、家庭というものに対してのさまざまなイメージ、それからありようというものは、多分、働き方以上に多くの価値観があるんだろうというふうに思います。
 ただ、その中で、先生おっしゃっているような考え方というのは、今の日本の中では比較的普遍的な考え方であろうと私は理解をするわけでありますけれども、ただ、申し上げていますように、さまざまなイメージ、そして考えを持っている方々のための選択肢を提供申し上げるというのが行政の役割でありますので、そういう中で、子育てをいかにしやすく、そしてすくすくとお子さんが育つ環境をつくるか、こういうようなことに尽きるんだろうというふうに思います。
 ただ、今回の法案につきましては、先ほど申し上げましたように、第三条で、子育てに関する一義的な責任が親にある、こういうようなことを書かせていただいているわけでありまして、そういう中で、この国会の御審議の中で、先生のようなお考えも含めて御議論をいただければ幸いでございます。
武山委員 私、今のお話を聞いてがっくりきました、がっかりきました。
 まず、国の厚生労働省がそんな弱腰でどうなるんですか。若い人たちに私たちは何かを残していってあげなきゃいけないんですよ。その普遍的なものというのは、日本人が持っているすばらしいものなんですよ。そういうものをなぜ提示できないんですか。それは、私たちが誇りにできる、世界に誇りにできる、また日本人として誇りにできるものなんです。その柱がしっかりしないために若い人が悩み、若い人はどうしたらいいかわからないわけですよ。
 ですから、悩んでいる人には大いにいろいろな選択肢を提示するのは、やはりとてもいいことだと思います。大いにやらなきゃいけないと思う。しかし、その中には、もっと普遍的なもの、もっと根本がないわけですよ。その根本に対して厚生労働省がそんな弱腰の考えでどうするんですか、今の若い人に。しっかりと私たちがちゃんと明示して、現実はこういうものなんだ、日本のものはこうだったんだ、でもこういうものがちゃんと今からでもつくれるんだというものを示していかなきゃいけないじゃないですか。
 私たち、では何のために生きてきたんですか。若い人が何しろ困っている困っている、では予算だけつけて対応しましょう、それだけでは少子化対策にならないと思いますよ。そのためにみんな知恵を絞って、これだけけんけんがくがくと議論しているんじゃないですか。それを、若い人たちに迎合するようなことばかり言っていたら、国はなくなっちゃいますよ。
 そのことに対してひとつ私は厚生労働大臣にも聞きたいと思います。先に副大臣で結構です。最後に厚生労働大臣にお聞きしたいと思います。
鴨下副大臣 御叱責は大変ありがたくちょうだいをしたいというふうに思っております。
 家庭でいかに子供を育てるかというようなことについては、これは最も基本的なことだろうというふうに思っておりますし、特に、若い方々が子供を生み育て、そして次世代をつくっていく、こういうようなことについて、私たちは、多少人生の先輩としてみんなが考えてやっていかなければいけないんだろうというふうに思っておりまして、学生、中学生、高校生にも育児体験のようなものをしていただく、こういうようなこともするわけでありますし、さらには、さまざまな世代間の交流を通して、特に、今先生がおっしゃっているようなお考えを持っているような方々に中高生が触れれば、ある意味で感動して、そしてそうだなというふうに思って、そういう家庭をつくろう、こういうふうに考えるかもわかりません。
 ですから、それは、この御審議の上でぜひお考えを強調していただけたら幸いでございます。
坂口国務大臣 久しぶりに自由党のお考えを聞いたような気がいたしますが、その時代その時代、私の成長しました時代は時代、武山先生が若きころを送られました時代は時代、現在は現在、それぞれやはり環境が変わってきましたね。経済状況も変わってまいりましたし、それぞれ生き方も変わってまいりました。したがいまして、私たちの生き方のときに、男性が外に出て働き、女性が家を守る、そういう生き方であったから、今もその生き方をやれというわけにはまいりません。現在は現在の人たちの生き方というものがやはりあるだろうというふうに思っております。
 したがって、どういう生き方をしろということを我々の側から押しつけるというのではなくて、現在の皆さん方がどういう生き方を望んでおみえになるかということを中心にしながら、それにこたえるべき政治を行っていくというのがやはり一つの方法でございましょう。私は、そういう意味で、現在の若い皆さん方の生き方というものを尊重しながら、それに対応していくべきだというふうに思っております。
 諸外国を見ましても、子供の数が少ないというのは、二人が、夫婦ともに働いている家庭で少ないかといえば、必ずしもそうではなくて、奥さんが共働きをしておみえになる御家庭の方が、そういう国の方がかえって最近は子供の数もふえてきているというようなこともあるわけでありまして、どういう生き方であったといたしましても、それに対応する政治のあり方というものはやはりあるのだろう、そう思っている次第でございます。
武山委員 この続きは、また次回したいと思います。ありがとうございました。
中山委員長 次に、小沢和秋君。
小沢(和)委員 法案に対する質問に先立って、木村副大臣の柔道整復師の療養費請求適正化問題での介入疑惑で、大臣にお尋ねをいたします。
 私は、先日からこの問題で、昨年十二月十八日に厚生労働省医療課で行われた会議の関係資料を要求し続けてまいりました。一たんは委員会としても提出を要求していただいたんですが、残念なことに一昨日それが取り消されましたので、昨日改めて厚生労働省に提出を要求いたしましたが、拒否をされました。
 当日の会議は、各職員がフリートーキング用に資料をつくったものだから出せないというんですが、そういうことが拒否の理由になるのか。就業時間中に正式に開かれた会議で使用された資料は、すべて公式のものだと思います。まして、その資料に重大な疑惑があると新聞に報じられた以上、行政の適正な執行を監視する立場にある国会議員が要求したら、提出するのが当然じゃないでしょうか。
坂口国務大臣 少子化対策もいろいろでございまして。
 今お話しになりましたことにつきましては、今も先生からもお話がございましたとおり、課内の、担当しております課のさまざまな課題につきましてフリートーキングを行ったものでありまして、政策的な意思決定が行われたものではなかった。最終的にそこで決定されたことを出せと言われるのであれば、それはまた我々も応じなきゃならないということもあるだろうというふうに思いますが、しかし、そうではなくて、いろいろのことを議論する過程の話でございますから、それは、お出しをいたしましても、決定をしたものでありませんから、何らお答えをすることにはならないというふうに思っている次第でございます。
 また、このときの柔道整復師の療養費につきましては、この日の討議の最終段階のところでわずかに議題になったわけでございまして、そのときに、御指摘をいただきますようなそうした発言は、そこに出席をしておりますほとんどの者が、そういうことはなかったというふうに言っているわけでございますので、これはお出しをするわけにはまいりません。
小沢(和)委員 今のお話では、意思決定の過程のものだから出せないというお話ですけれども、私どもは、そういう過程の資料をいただいて、こういういろいろな議論が出ているからけしからぬなどと言おうと思っているわけでは全然ないわけですね。さっきから言っていますように、疑惑を解明する上で、その資料が疑惑を解く重要なかぎになるという報道があっているから、私たちはそれを解明する立場から出してくれと言っているわけです。
 それをそうやって受け入れないということになれば、これはやはり隠しているんだな、出せないんだな、だれもがそう思うんじゃないでしょうか。そういうふうに痛くもない腹を探られる結果になってもいいんでしょうか。
坂口国務大臣 どうお思いになるかは、それは自由でございますけれども、この会議がありました中、その中で議論をされましたことにつきまして私たちも聞いておりますけれども、そういうことはなかったとそこに出席をしております者が言っておりますし、また、そういうフリートーキングをしたことをペーパーに残しているわけではないわけでございますので、そのことについては、ないというふうに、お出しできないというふうに申し上げる以外にないということを言っているわけでございます。
小沢(和)委員 だから、そのペーパーを見てもそういうことは全然書いてありませんというんだったら、出してもらって、私たち、ああ、なるほど、そうですかということになれば、それで済む話ですよ。あくまでそういうふうに言われるから、疑惑は解明できないわけです。
 昨年十二月には、柔道整復師の請求に水増しが多いということが新聞で何回も報じられ、国会でも取り上げられております。そういうさなかに、十二月十八日に開かれた医療課の会議では、柔整の療養費の実態調査が議題になり、一、現行の頻度調査のレベルアップ、だから、もっと頻繁に調査するということだと思うんです。二、各県の柔道整復審査会の実態調査、三、各県の柔道整復師に対する指導監査の実態調査、四、保険者が行う患者実態調査の四項目が説明されたと真野保険局長は参議院厚生労働委員会で答弁しております。
 この説明事項を見ただけでも、厚労省としても、柔整の療養費のこれ以上の膨張をほっておけないと、いろいろな角度から実態調査をしようとしているということがよくわかるんじゃありませんか。そういう議題で自由に話し合えば、この水増し問題にメスを入れられないのは政治的圧力があるからだという話が出ない方が不思議じゃないですか。やはりその席で木村副大臣という名前が出たんじゃないですか。
真野政府参考人 今御指摘がございましたような四項目が説明されたというふうにお答え申し上げましたし、会議の主宰者であります医療課長からもそういうふうに聞いておりますが、当日の会議は、このほかにもいろいろな議題がございました。
 特に、年度内に策定すべき診療報酬体系に関する基本方針、また、新年度から導入を行うことを予定しておりました特定機能病院の包括評価、そういう議題に時間がとられまして、今申し上げた点については、会議終了近くの短時間で報告があったということでございまして、柔道整復師の療養費につきまして、負傷原因を記載させる通知が見送られたという問題が話題になったり、その件が特定の議員の影響で変更されたといったことが話題になったという記憶はないということでございます。
小沢(和)委員 今の局長のお話を伺っても、年度内にやらなければならない幾つかの重要な課題について短時間に議論をしたと。今、あなた二つ挙げられたけれども、では、その三つ目がこの柔道整復の問題だったということですか。そうすると、そういう短時間の中で片づけなきゃならない重要な点だといって挙げられたその三つの中に入っているとすれば、それほど医療課にとってこれは重要な問題だったということを逆に裏書きをしているんじゃないですか。
 私は、きょう資料を配付させていただいているんですが、その一枚目は、既に先日一度出したことのあるものであります。もう一度この資料を見ていただきたいと思って出しました。
 今、医療費全体の伸びが大問題になっておりますが、その全体の伸びをはるかに大きく上回って伸びているのが柔道整復の療養費であります。八五年度を一〇〇として、医療費全体の伸びが一九〇に対し、柔整は二三一です。この伸び率の差は、この表でわかるとおり、九一年度が二一%、九四年度が二六%、九七年度が三四%、二〇〇〇年度が四一%と、どんどん開いていっている。金額で見ると、柔整の療養費は二千七百四十八億円という巨額であります。
 大臣は、ここに今こそ真剣にメスを入れなければならないという問題意識をお持ちですか、大臣。
真野政府参考人 先ほどの件でございますが、二つ例示を挙げましたけれども、そのほかが柔道整復師ということだけではございませんで、そのほかにもさまざまな課題が出ていたということでございます。
 それから、今のお話の、確かに先生御指摘のとおり、昭和六十年を基礎にいたしますとそのとおりでございますが、私ども、いわばこの柔道整復師の適正化といいますか、それに取り組みました平成六年から平成十一年までの国民医療費と柔道整復に係る療養費の伸びを比べますと、ほぼ同様ということでございますので、我々としては、過去とってまいりましたいろいろな適正化の努力を引き続き続けてまいりたいというふうに考えております。
小沢(和)委員 私がこの問題にこだわるのは、木村副大臣など日本柔道整復師会の顧問になっている自民党議員たちの圧力で、柔整の療養費請求の適正化が骨抜きにされ、そのため今もその膨張にストップがかかっていないのではないかと思うからであります。
 私は、先日、柔道整復師連盟からの顧問議員たちへの政治献金の実態について、その一端に触れましたが、きょうは、その後明らかになった九五年から七年間の献金全体を公表いたしたいと思います。
 今、委員各位のお手元に、顧問の議員たちへの献金の一覧表、二ページのものを配付いたしております。これでおわかりのとおり、七年間の献金は、総額で実に六千八百八十三万円にも達しております。トップは橋本元首相、八百二十五万円、二番目は伊吹元労働大臣、六百三十六万円で、木村副大臣は八番目の三百三十五万円となっております。
 この献金の特徴は、衆参の選挙の年に集中していることです。特に、三年前の二〇〇〇年総選挙では二千八百九十九万円もばらまかれており、そのときだけに限れば、木村副大臣は、前回も指摘したとおり、橋本首相とともにトップであります。木村副大臣がいかに最近になって顧問議員たちの中でも重視されるようになったか、急激に政治的影響力を持ってきたかがよくわかると思います。
 大臣にお尋ねしたいと思うんですが、これだけ多くの自民党の有力議員たちが柔道整復師会のためににらみをきかせているために、柔整の療養費適正化が進まず、今も水増しにメスが入らないのではありませんか。
坂口国務大臣 政治献金がどのようになっているか、私は調べたことございませんし、きょうお示しになったものが正しいのかどうかも私は見ておりません。
 しかし、政治献金というのは、それぞれの政治家が正当に受けているものでございましょうし、そのこととこの柔道整復師の現在の状況というものとは関係がございません。
 現在のこの柔道整復師の状況をよく調査いたしまして、そして、もしこれが現実に合っていないというものであるならば、これは是正をすることは当然でありまして、私はそういうふうにしたいというふうに思っている次第でございます。
小沢(和)委員 業界からお金をもらって、その業界のためにいろいろな形で政治家が動く、こういうことが今あっちでもこっちでも問題になっているわけでしょう。これもその一つなんだという点で私は指摘をしてもいるわけであります。
 私のところには、こういう疑惑を裏づける証言が幾つも寄せられております。その一つは、先月まで鍼灸マッサージ師としてある市の接骨院に勤務していた人のものであります。ここにそのメールを持ってまいりました。
 この人は、その接骨院で保険の不正請求や業務外の施術が日常的に行われているのに憤りを感じ、市役所の国保担当者に不正が行われている患者のリストを提出した。そうしたら、担当者が何と言ったかというと、何分こちらには何の権限もないんでね、柔整さんは政治が強いですから、はっはっはと相手にされなかったというんです。この訴えには、正式の柔道整復師は一人だけ、柔道整復師でない者の施術が療養費として保険請求されている。捻挫でもないものを捻挫、打撲でもないものを打撲と偽り、保険請求を行っている。これこそが現在の柔道整復における問題点の最たるもの。柔整療養費申請書の委任も、毎月初回の来院時、白紙の状態で署名させるため、その内容一切を患者側は知り得ないなど、具体的な指摘が数多く書かれております。
 各地からの訴えの内容は、どこもほとんどこれと同じです。全国でこういうことが自民党の顧問議員たちの圧力でまかり通っているとしたら、本当に重大なことではありませんか。改めて、直ちにメスを入れるように要求いたしますが、大臣の明確な答弁を伺いたい。
坂口国務大臣 先ほど申し上げたとおりでございます。
小沢(和)委員 木村副大臣の疑惑と柔道整復師の療養費の不正請求問題については、さらに引き続いて追及をいたします。
 では、次世代育成の支援法に関する質問に入ります。
 よく少子高齢化などと言われるんですが、我が党は、少子化と高齢化は全く意味が違うと思います。高齢化は大変めでたいことでありますが、少子化は、社会の活力を失わせ、日本の未来にかかわる大問題だと思います。主要国の中でも、日本は特に少子化が急速に進んでおります。昨日発表された出生率一・三二には私も本当に驚いております。
 どうしてこういうことになったのか。よく青年の生き方や結婚観が変わったなどと言われますが、今でも大部分の青年は、きちんとしたところに就職して働き、やがて結婚して家庭を持ち、子供を生み育てたいと思っております。
 私は、この青年たちの願いを妨げている決定的な問題は、不況が今日まで十年以上続き、学校を出てもまともな就職ができないということだと思うんです。
 本年三月の大学卒の就職内定者は八三・五%、五年前の九四・五%に比べて一一%も下がっております。高校卒は七四・四%で、五年前の九六・七%より実に二二・三%も下がっております。仕事につけなかった青年たちはフリーターで生きていく以外にない。これでは何年たっても結婚し子供を生み育てることができない。少子化がますます急速に進んでいく原因がここにあるのではないでしょうか。
 少子化をここまで深刻にしたのは、まさに今までの政治の責任ではないかと思いますが、大臣はどうお考えでしょうか。
坂口国務大臣 少子化の原因がいろいろのことで起こっているということは、今朝来議論のあったところでございます。一つ二つの理由で起こっているわけではございません。総合的に、人々の生き方の問題もありますし、あるいはまた、今御指摘のような経済状況ということも私も否定はいたしません。
 しかし、それだけでこの少子化が起こっているというふうには私は考えておりません。もっと総合的な対策というものが今求められているというので、今回この法律を出させていただいたところでございます。
小沢(和)委員 私も、いろいろな原因で起こっておるということを何も否定しているわけじゃないんです。一番重要な問題がこういう経済的な要因、とりわけ学校を出ても働く場所もないというところにあるのじゃないかということを言っているわけであります。
 就職した青年たちが早速直面する問題が長時間過密労働であります。若い男女は仕事に追いまくられて、出会いの機会をつくり恋を語る機会もない、これが晩婚化の大きな原因にもなっております。ようやく結婚しても、毎晩のように夜遅くまで残業では、子供をつくる元気も出てきません。夫婦の出生力が低下するのは当然だと思います。坂口大臣が先日、長時間労働の地域ほど出生率が低い関係にあると言われたので、びっくりして、資料をもらって見たところ、全くそのとおりでありました。
 大臣にお尋ねしたいのは、一昨日まで我々が審議をした労働基準法改正が、少子化にさらに拍車をかけるのではないかということであります。
 有期や派遣の労働者の中には、妊娠とわかった途端に契約期間中でも首にされた者が多いということも話に出ましたし、産休や育休も保障されていないという状況であります。裁量型の労働者は、時間と無関係に仕事をやり上げるまで働かなければならない。常用から非常用への切りかえによる賃金ダウン、不払い労働の拡大による減収とあわせ、労働基準法改正による長時間労働の蔓延は一層の少子化をもたらすものではないか。次世代法が目指すものと労働基準法の改正は全く逆の方を向いているのじゃないでしょうか。
坂口国務大臣 働き方にはいろいろあるということは、昨日までの議論でもあったところでございます。こういう経済状況でございますから、常用雇用がしたくてもなかなかできない、そういう状況があることは私も認めるところでございますが、そういう状況があればこそ、やはりいろいろの生き方、いろいろの働き方というのが大事でありまして、いろいろの働き方によってそのときそのときを乗り越えていくというのが一つの知恵ではないかというふうに思っております。
 したがいまして、働き方を多様化するということは決して逆の方向を向いているわけではない、私はそのように認識をいたしております。
小沢(和)委員 だから、いろいろな働き方があると言うけれども、例えば看護婦さんとして働くこともあろうし学校の先生として働くこともあろうというのなら話はわかるのですけれども、常用労働者の道がどんどん狭くなって、フリーターとかあるいは非常に不安定な仕事しかないというような状況を多様な生き方などと言って肯定することは、私は決してできないというふうに考えます。
 総論ばかりやっていると各論に入れませんから、これぐらいで各論に入りたいと思います。
 まず、第三条の基本理念の問題です。
 条文では、父母などが子育てについて第一義的責任を有するという基本的な認識のもとに、子育ての意義についての理解が深められ、子育ての喜びが実感されるように次世代育成の支援対策を行わねばならないということになっております。まるで、親が子供を育てる直接の責任を持っているという当たり前のことがわからない者がいる、余り国や市町村が子育てを援助すると、ますます無責任になると言っているように思います。
 調査室の資料によりますと、与党の事前審査で、子育ては行政の責務であるとの考え方が社会に広まり、親の育児責任の希薄化につながるのではないかなどというような意見が続出したために、この条文が設けられたというふうに書いてありますが、そのとおりでしょうか。
 ほとんどの親は親としての責任を自覚しているから、皆、子育てに苦労しているんだと思います。それを社会が強力に援助する体制をとってこそ、安心して子供を生み育てられるようになり、少子化の問題も打開できると思うのです。今求められているのは、親としての自覚を持てなどとお説教をすることではなくて、無条件に子育てを援助する体制を強化して、国や社会の方が責任を果たすことではないのでしょうか。
鴨下副大臣 先ほどは武山委員から逆のことをおっしゃられて、私は答弁に窮したわけでありますけれども、今度は小沢委員からは反対の方からおっしゃっていただきました。
 基本的なところをお答えさせていただきますが、本法案に基づきまして推進される子育て支援等の取り組みは、保護者の一義的責任を前提として、これを全うすることを困難にしているさまざまな障害を除去すること、これによって子供が健やかに生まれ育つための環境整備を社会全体で推進しよう、こういうようなことでありまして、こういう趣旨を明確にするというような観点から、基本理念として御指摘の規定を設けたわけであります。
 小沢委員もお考えの中にあるんだろうと思いますが、父母等の保護者が子育てについて第一義的な責任を有することは当然であるわけでありまして、こういう趣旨をそういうような意味で書かせていただいたわけでありまして、これは補足になりますけれども、平成六年に批准された児童の権利に関する条約においても明記されているところでありまして、一義的でありますけれども、さまざまな要因でそれだけではなかなか解決しない部分もあると思いますが、親の責任というのも極めて重要だろうというふうに認識しております。
小沢(和)委員 親が子育てについて第一義的責任を持っているということについては、全く議論の余地がないと思うのです。私は、そういう自明のことを何でこういうふうに事改めてうたうのか、そこに意味があるのじゃないかという意味で先ほど指摘をしたわけであります。
 次の質問ですが、第七条で、国は、市町村、都道府県、一般事業主の次世代育成支援対策の行動計画の大きな方向づけをする策定指針を定めることになっております。
 お尋ねしたいのは、市町村、都道府県の行動計画をつくる場合には、あらかじめ住民の意見を反映させるために必要な措置を講ずるということが書かれておりますのに、国が一番基本になる行動計画策定指針をつくる段階では、そういう手続が定められていないことであります。この全体をつくる段階で国民各層の意見を反映する手続を踏まないはずはないと思うのですが、その点どうお考えでしょうか。
岩田政府参考人 行動計画策定指針を検討するときには、委員がおっしゃいましたように、関係者そして有識者などによって構成されます検討会で御議論をいただくことといたしておりますし、また、指針の案が固まりましたらパブリックコメントに付したいというふうに思っておりまして、広く国民の御意見をちょうだいして策定したいというふうに思います。また、もとより国会での御審議もしっかり踏まえたものにさせていただきたいと考えております。
小沢(和)委員 第十二条で、企業に次世代育成支援の行動計画を立てさせるとしていることは画期的なことだと思います。問題は、そこで働く人々の子育てに実際に役立つものをどうつくらせるかであります。
 検討中の一般事業主行動計画の骨子を見ますと、育児休業をとりやすく職場復帰しやすい環境の整備、家族で過ごす時間の拡大、事業所内保育施設等の整備など、ぜひ実現してほしい項目が並んでおります。そのためには、計画の作成段階でぜひ労使の協議を行わせ、必ず職場の声を反映させること、計画ができ上がった段階で公表させ、それを社会的公約とさせることが重要だと考えますが、政府はどうお考えか。
 法案では、計画を大臣に届けさせ、基準に適合していれば認定し、企業の広告に大臣の認定を受けているとの表示をできるようにするというんですが、そういうことよりも私の提案の方が実効性があるんじゃないかと私は思いますが、いかがですか。
岩田政府参考人 計画の策定自体が直接的にその雇用されている労働者の権利義務に結びつくということはございませんので、就業規則の策定や変更の手続のように労働組合の意見聴取は法律上の義務とはいたしていないところでございます。
 しかしながら、この事業主の行動計画は任意の自発的な計画ではございますけれども、その計画が実効性を上げるためには、まずその職場で働いておられる労働者の方あるいはその代表の労働組合の方の要望や意見をしっかり聞いていただくというのは大変望ましいことであるというふうに思いますので、行動計画を策定するときには、労働者やその代表の方の意見を聞くという手続を踏んでいただきたいというふうに考えております。
 また、個々の企業の行動計画は、企業の人事戦略でもあり、また具体的な労働条件でもございますので、自発的に公表される企業があれば、それはそれでいいというふうに思いますけれども、これを一律に公表自体を義務づけるということはふさわしくないという性格のものではないかというふうに思っているところでございます。
 もちろん、社内の労働者に周知をするということは当然でございますから、でき上がった計画については、社内で周知をしていただくことは望ましいことであるというふうに考えております。
小沢(和)委員 社会的に公表するということがこの計画にふさわしくないというのは、私はもう一つ腑に落ちないんです。社内的には周知をさせるというぐらいだったら、社会的にも公表して、特に大企業などの場合には社会的にも大きな影響力があるわけですから、そういうふうにしてこれを社会的な公約にするということが、実行をする上で大きな担保になると私は思うんですが、いかがでしょう。
岩田政府参考人 企業の戦略としてそういう手法をとられるところもあろうかというふうに思いますけれども、一般的には、これは任意、自発的に企業がその内容についても決定していただくものでございまして、一律にこれを公表するというのは、今般の一般事業主行動計画の性格にはそぐわないというふうに思っております。
小沢(和)委員 そういうことが望ましいというふうにも考えていないんですか。
岩田政府参考人 望ましいというところまではなかなか言い切れないんではないかというふうに思います。それは個々の企業が御判断されることではないかと思います。
小沢(和)委員 企業の行動計画の策定については、昨年九月に発表された少子化対策プラスワンでは、企業は推進委員会の設置や行動計画の策定などの対応が必要とされ、子育て期間における残業時間の縮減、子供が生まれたら父親だれでもが最低五日間の休暇の取得、育児休業取得率、男性一〇%、女性八〇%などの具体的目標が幾つも掲げられておりました。
 しかし、日本経団連から、「企業への行動計画作成・届出の義務づけを通じ、雇用管理に関する一定の目標達成を求めることは、企業に過重な負担を課すものであり、賛成できない。」との意見書を突きつけられ、法案では大幅に後退せざるを得なかったと聞いておりますが、これは事実か。今、私が、企業がつくる計画を公表させたらどうかということについて、局長は非常に消極的な態度を示されたのは、この日本経団連がこういう意見を出したということと関係があるんじゃないかというように私は感ずるんですが、いかがですか。
岩田政府参考人 そういうことはございません。
 例えば、男女の機会均等を推進するための企業の自主的な取り組み、これをポジティブアクションというふうに言っておりますけれども、ポジティブアクションという積極的な行動計画を策定していただくことは大変望ましいことであるということで、そのことを支援いたしておりますけれども、どういう計画を策定したかということを世の中に公表するということは求めておりません。そういうことと非常に似ている性格の、まさに企業が自発的、自主的に決めていただく行動計画であるというふうに思っております。
 この法案の策定の過程で、日本経団連、もちろん日本経団連だけではございませんけれども、関係の使用者団体と意見交換したというプロセスはございまして、その過程で幾つか御意見はちょうだいいたしております。しかしながら、最終的には厚生労働省の方針に関係団体の御理解をちょうだいできた、理解いただいたというふうに思っておりまして、関係団体からの意見で構想が大幅に後退したということはございません。
小沢(和)委員 今、この法案の作成で後退したことはないというように言われましたけれども、私が少子化対策プラスワンということでこういうような具体的な目標が定められているというふうに読み上げたのと、企業に対してこれから行動計画をつくりなさいということで骨子として示されているものの幾つか私が読み上げたものと比較してみるというと、その具体性、内容においてやはり後退が見られるんじゃないかというふうに私は思う。だから、この日経連の意見がこういう形で反映したんじゃないかというふうに感ずるんですが、いかがでしょう。
岩田政府参考人 行動計画の指針はまだ検討の途上でございますから、その全容をお示しできていないのは当然かと思いますけれども、プラスワンで議論したこと、これは社会全体の目標でございますけれども、それを念頭に置いていただいて、個々の企業が、例えば今その企業が導入していない制度であって、新たに導入すべき制度、新たに導入できる制度というのはどういうものがあるかとか、その制度の利用実態を具体的な数値目標を掲げて取り組んでいただくというのは大変重要なこと、望ましいことであるというふうに思いますので、そういう考え方は、行動計画の策定指針、あるいは行動計画をつくっていただくときに参考にしていただくモデル行動計画ですとかマニュアルですとか、さまざまなところで情報提供はしていきたいというふうに考えておりますけれども、基本的には、昨年の秋に策定いたしました少子化対策プラスワン、これは社会全体、こういう社会にしたいという目標でございますので、それを念頭に置いた各企業の行動計画であってほしいというふうに考えております。
小沢(和)委員 社会全体が目指す目標として、さっき私がプラスワンということで読み上げた目標が掲げられている。例えば、子育て期間における残業時間の縮減とか、子供が生まれたら父親だれでもが最低五日間の休暇の取得、育児休業取得率、男性一〇%、女性八〇%、これは全部企業に対してやってくれということでしょう。だから、そうするとこれはいささかも引き下げてはおりませんというのが今の姿勢ですか。
岩田政府参考人 例えば、そのうちの項目、今委員が引用なさいました項目について、どの項目を個々の企業が取り上げてその企業の行動計画に盛り込むかとか、あるいは取り上げた場合に具体的な目標の数値をどうするかということについては、一律に国がこういう目標について必ずこういう数値で盛り込んでほしいというようなことを言うということは考えておりません。
 しかしながら、社会全体としての目標を掲げたわけでございますから、例えば育児休業の取得率を例にとりますと、その職場で育児休業がとりにくいという実態があるということになれば、具体的な目標値を男女別に、その企業の現状の取得率がどうなのか、そして、社会全体の目標はさっき委員がおっしゃいましたように男性一〇%、女性八〇%ですから、それも念頭に置いた上でそれぞれの企業で考えていただく。職場によっては、女性の八〇%というのはもう到達しているというところもあるかもしれませんし、まだまだ一挙に八〇%という目標を達成することが現実的でないというところについては、最初のステップとしてどのくらいの水準の目標を立てるべきかというようなことは議論としてあろうかというふうに考えております。
小沢(和)委員 今、我が国の多くの企業がリストラに必死になり、人減らし、賃下げ、長時間過密労働を働く人々に押しつけております。今回の労働基準法改正を機に、さらに常用が非常用に切りかえられ、不払い残業が広がるだろうと先ほども指摘をいたしました。
 こういう状況の中で、次世代育成支援法をつくろうという厚労省の努力が、さっき日経連のことで言いましたように、猛反発を受けたわけですが、私は、それにひるむなと強いエールを送りたいと思います。厚労省がプラスワンで掲げた目標はどれも当然のものばかりであり、むしろ、こういう目標を実現できる状況を早くつくり出さなければ、今のリストラと景気悪化の悪循環を抜け出すこともできず、少子化にストップをかけることもできないと思います。
 大臣から、プラスワンの目標実現のために取り組む不退転の決意を伺って、きょうは終わりたいと思います。
坂口国務大臣 今いろいろとお話がございましたが、我々もこのプラスワンの政策を積極的に行いまして、そして御期待におこたえをしていきたいというふうに思っております。
小沢(和)委員 終わります。
中山委員長 次に、阿部知子君。
阿部委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。
 私どもの社会にとって何よりの希望であります子供たちのことが、こうやってたくさんの同僚議員の皆さんの熱心な討議によって、あるいはまた大臣、副大臣以下担当省庁の皆さんの知恵を絞って論議されることに、まず冒頭、私は三年間国会に立ったところですが、この今回の質問が一番心からいろいろないい答えを獲得したいなと思うものでありますので、大臣にもくれぐれもさらに前向きの御答弁をお願い申し上げます。
 そして、実は、先週、先々週の労働者派遣法あるいは有期雇用の問題は、先ほどの小沢委員も御指摘ありましたが、多様な働き方という言葉は悪くはないのですが、現実には不安定な雇用で、特に女性たちが産む環境ということにおいては、私は、一歩どころか百歩後退ではないかと案じておるわけです。
 そして、その懸念の上に立ちますと、私の大好きな子供たちがまず生まれ出るには、コウノトリがぽこっと運んでくるわけではなくて、お母さんのおなかから生まれてくるわけですが、そのお母さんの働く環境あるいはお父さんとなる人の働く環境ということが、この次世代育成支援対策推進法案提案理由説明のところに残念ながらちょっと一言触れられていないんじゃないかなと思うので、冒頭、指摘だけさせていただきます。
 冒頭から三行目、「我が国における急速な少子化の進行並びに家庭及び地域を取り巻く環境の変化に伴い、」とございますが、私は、家庭及び地域及び労働を取り巻く環境の変化に伴いと一行入れてほしかったと思いますが、これを大臣に聞いても、先回も聞きましたので、お考えはいろいろでございますと言われてしまうと余り楽しくないので、一応私の指摘にとどめさせていただいて、もっといい答弁がいただけるような問いから始めます。
 まず、これは午前中の江田委員への坂口大臣の御答弁か、あるいは鴨下副大臣であったか、ちょっと失念いたしましたが、今回、配偶者特別控除が廃止されまして、約二千五百億のそのための財源をどのように使うか、少子化対策に使おうか、大変にありがたいことと思いますが、そうではあってもなおさらに、もともと我が国の児童手当、子供が本来子供であることで、この社会に生まれてきたことで保障されるべき根源としての児童手当というのは、ヨーロッパ諸国に比べても破格に、ゼロ一けた違うんじゃないかしらと思うほど破格に少ないと思います。
 もちろん、予算の配分は、大蔵省、今は財務省と厚生労働省のせめぎ合いの中でしかいかないものとも思いますが、でもしかし、ここで大臣、やはりさらなる児童手当そのものの、私は、親がどのような状態であれ、どこに生まれようと、やはり子供は子供その子としてこの社会に生きていくいろいろな権利の保障のまず第一は児童手当であろうと思います。
 今後、あらゆる困難、危険を越えて、この児童手当の拡充に前向きに取り組んでいただけるものと心から期待していますが、まず、その点に関して大臣の御答弁を伺いたいと思います。
坂口国務大臣 まだ決定したわけではございませんけれども、現在、小学校入学前のお子さんに対しまして児童手当が出ておりますが、少なくとも小学校三年生までは延長できるものと思っているところでございます。
阿部委員 財源措置に関しましても、今後恐らく、配偶者特別じゃなくて配偶者控除の方も、やがて、男性と女性がおのおのにさまざまな社会保障を得ながら支え合っていく社会ということをモデルにした場合に、廃止という極端な方向をとるかどうかは別として、何らかの措置も行われようかと思うのです。
 でも、それだけが行われたのでは、やはり現実には非常に、子供を産みたいと思っても現実に産めない多くの若い層も出てくると思いますので、これは大臣がもううなずいていただいたので、そうだと言ったと勝手に思わせていただいて、子供の本当の児童手当そのものの充実に、例えば子育て支援対策何とか費とかやっても、砂に水をまくようなもので、吸収されていく先は本当のその子に届かないということがなかなかあるので、児童手当として充実させていただきたいということを冒頭お願い申し上げて、質問に入らせていただこうと思います。
 今回の法案、二法案ございますが、特に次世代育成対策に関します推進法に関しましては、拝見いたしましたところ、一から三番までは、主に現実にここに生まれてきた子供たちにフォーカスが当たっておりますし、四以降は、そのお子さんの親となられる方たちにフォーカスが当たった取り組みだと思います。もちろん、多少オーバーラップいたしますけれども、本日は一から三について主に伺わせていただき、また次週、四以降をやろうと思います。
 私は、次世代のいろいろな支援対策の中で、いわゆる行動計画をつくって、県も市町村もおのおのに行動計画をつくっていく、それ自身はよろしいことかなとも思いますが、そのためのガイドラインを厚生省としておつくりになるということが書かれております。
 現在、三千市町村のうち、実は、エンゼルプランを初めとして、戦後の長い母子保健行政の中で、それなりの地域の取り組みも含めて、子供たち支援対策ということについて、ある程度行動計画的なものが作成されている市町村も既にあると思いますが、三千市町村を母集団にとったときに、そのような今厚生労働省がガイドラインとしてさらに充実させようと思う、その土台になるような行動計画的なものができている都道府県は一体幾つぐらいおありでしょうか。
岩田政府参考人 都道府県は、四十七全数で地方版のエンゼルプランが策定されております。
 市町村についてですけれども、平成十三年四月一日現在ですが、千三百七十二の自治体で策定されております。
阿部委員 済みません。都道府県と市町村と分けて言うべきでありました。
 都道府県はラフな策定計画で済むと思いますから、現実に生活の場に近い市町村というところでの策定計画ということが非常に現実に重要になってくると思いますが、この三千自治体のうち、既にそれらしい形のあるもの千三百七十二といたした場合に、策定されていないところの特徴と策定されているところの特徴、何か差異はございますでしょうか。
岩田政府参考人 簡単な分析しかできておりませんけれども、今申し上げました数字を市、町、村に分けて状況を見てみますと、市は策定率が約八〇%、町は三六%、村は一七%ということでございまして、自治体の規模によってプランの策定状況が大きく違うのかなというふうに思っております。
阿部委員 私も、実際に、本当に現実に立ち返って考えますれば、今の市町村のサイズによると思うのですね。市八〇%、子供も総体に多うございます。それから、町、村となっていくに従って御高齢者の比率がふえてまいります。一部過疎化あるいは小学校の廃校、そして現実にもう地域に子供がいないというようなところもございます。
 もちろん、一人でもいれば、一人は万人のためにですから、策定計画も重要と思いますが、実は、なべて三千市町村が同じようにこの行動計画というところに重きを置くこと以上に、私は、最低限のインフラ、最低限の整備として、まず子供たちが現実に一番命の危機にさらされているところの、例えばですが、救急医療問題とか、さらにもう少しフォーカスを当てて、そのことがどのように保障されているかというような形で、子供たちの健全な生育ということを今回厚生省にぜひお考えいただきたいと思うのです。
 と申しますのは、これまで私も小児科医で母子保健をやっていましたので思いますが、大体は、母子保健と言われます領域、そして今回の次世代育成支援推進法の中でも、一応ガイドライン的に検討中となっている行動計画策定指針の骨子の中でも、「子どもの健康と安心・安全の確保」「母子保健医療提供体制の整備」という非常に漠たるものですので、これでは、例えば各市町村が、本当にどこに自分たちが最低限殺さないための整備をどうするかというふうに意識化するのが、なかなか仕事も多うございますし、逆に小さい村とかは職員も少のうございますから、大変になってくると思うのです。
 ここで坂口大臣にぜひともまたスーパー前向きな発言をお願いしたいのですが、私は、実は以前に、国の政策医療十二の中に、小児救急医療を新たにお取り入れくださいますように大臣にお願い申し上げて、大臣は、そのようにいたしたいと思いますと非常に達見で御返事をいただきました。そこで私は、このたびはこの行動計画の中に、特に小児の救急医療ということの現実の充実体制、もちろん、ないものはないのでやろうと思ってもできないというのもそうですが、せめて全国のありようを浮かび上がらせるために、行動計画指針の中に、特に小児救急医療についても一行触れていただきたいと思いますが、局長と大臣におのおの御答弁をお願いいたします。
坂口国務大臣 この法案におきまして、市町村でありますとか都道府県が策定いたします行動計画の内容の一分野といたしまして、「母性並びに乳児及び幼児の健康の確保及び増進」というのが掲げられております。もう一度申し上げますと、「母性並びに乳児及び幼児の健康の確保及び増進」というのが掲げられておりまして、これは小児救急医療体制の充実につきましても、市町村でありますとかあるいは都道府県の策定する行動計画に盛り込んでいただきたいというふうに考えているところでございます。
阿部委員 大変ありがとうございます。
 それでは、引き続いて、小児救急医療体制のことでの質疑に移らせていただきます。
 数日前に新聞報道がございましたので、きょう御出席の委員の皆さんも、あるいは坂口大臣も御存じの事例かと思いますが、東京の東部地域病院を受診された豊田理貴ちゃんという五歳の坊やが、朝方の五時前でしたか、病院を受診されて、一回はおなかが痛いということで受診されて、浣腸を受けておうちに帰って、またおなかが痛くなって七時過ぎに病院を受診されて、そして一応、ちょっとトラブルはあったようですが、お医者さんに診てもらって入院をして、しかしながら、午前中いっぱいお医者さんの診察は受けられないで、午後に急変して亡くなられるという事件がございました。
 診断名が腸閉塞、腸が詰まってとなっておりますので、現代の医療で適切に加療すれば、やはり五歳のぴんぴん元気な子が死ぬような病気ではないと私は思います。現代医療は、もうそこまでは一応クリアしていると思いますが、非常に不幸な転帰をとられたわけです。
 そして、この東部地域病院というのは、国が輪番指定で東京都にお願いして、ある程度の補助金を出し、東部地域での輪番に組み入れているところなので、豊田さんのお母さんとしては、ここが行きなさいよと指定された病院でもあり、受診されて入院したのに、診てもらえずに亡くなった。本当に悔やんでも泣いても余りある親御さんの気持ち、それから亡くなった子供の不幸を私は思うわけですが、まず、坂口大臣に冒頭、この出来事、事件についてどのように今お考えであるかを伺います。
坂口国務大臣 けさも少しお話があったところでございますが、私も、この記事を見ましたときに、やはり問題点は二つあるというふうにそのときに思いました。
 一つは、これは病院の患者さんに対する対応の仕方、いわゆる診断以前の問題としてそれが十分であったかどうかということではないかというふうに思います。
 それからもう一つは、そのお子さんを診断して、そして腸閉塞という、どちらかといえばどこにでもある病気を診断ができなかったということに対する問題があるのではないかというふうに思います。一言で腸閉塞と言いましても、種類はいろいろでございますから、一概には言えないかというふうに思いますけれども、レントゲン写真を撮れば、その障害を起こしている上のところにガスがたくさんたまっているとか、いろいろなことがそれだけでもわかるわけでございますし、そんなに難しい話ではなかったのではないかという気がいたしまして、それだけに大変残念に思う次第でございます。
 なれた小児科の先生であれば、十分対応できたはずではなかったかというふうに考えるわけでございますが、しかし、患者さんの症状というのはそれぞれ違うわけでございますから、素人の私が一概にそういうことを申し上げるのは失礼かというふうに思いますけれども、大変残念に思っている次第でございます。
阿部委員 今、大臣の御指摘で、二つ問題があろう、一つは病院の対応、患者さんの訴えに対して、看護婦さんが取り次いだにもかかわらず診察がおくれた、あるいは午前中丸々診察がなかったというような状態、二つ目は診断のレベルあるいは治療のレベルの問題という御指摘をいただきましたが、私が先ほど申しましたように、輪番として、輪番に指定されていれば、利用者はというか患者さんは、地域の方は選ぶこともできないし、とにかくそこに行くしかないわけであります。
 言いようによっては、あるだけいいじゃないかという言い方もあえて言う方もありますが、私は、そう言ってしまったらもともと行政なんか要らないと思うわけで、逆に、こうした実際の診療レベル、患者応対ということも含めて、患者さんたちにとって安心できる医療体制が提供されるために、例えば厚生労働省として次のステップ、何かお考えのことがおありなのかどうか。
 これは、お部屋での質問取りのときは医政局長にお願いすると申しましたが、局長でも大臣でも、今大臣はかなり微に入り細にわたり御答弁いただきましたので、原局サイドとして医政局長がもし御答弁であっても結構であります。
篠崎政府参考人 今回の事件につきましては、病院における事故調査委員会で、大学病院などの医師の第三者を加えて、ただいま大臣から申されましたような事柄ですとか、あるいは診断の妥当性などについての検証が近く行われると聞いておりますので、私どもとしては、監督官庁である東京都から詳しい事実関係等の報告を待って、適切に対応したいというふうに考えております。
 また、ただいま先生から申されましたように、ある意味では、医療の質と申しますか、あるいは医師の質と申しますか、そういうものの確保が重要ではないかという御指摘だろうと思いますけれども、おっしゃるとおりでございまして、これは教育の問題あるいは研修の問題ではないかと思っております。
 私どもといたしましては、地域の小児科医師などを対象として、特に小児救急医療分野の研修を小児医療拠点病院において行っておりまして、地域の小児救急医療の充実に努めております。また、そのための研修のための国庫補助もしているところでございます。また、平成十六年度から新たにスタートいたします医師の臨床研修制度におきましても、小児科の実習を必修といたしておりまして、少なくとも一カ月以上、三カ月を目安として、その研修を必修化するというような方向で検討しているところでございます。
阿部委員 二十五年前に受けました小児科医の教育の知識からすれば、これはいわゆる小児の腸重積といって、腸と腸がはまり込んでそこが腐っていく、小児科医のイロハで、まずこれを診断できなければ怖くて当直できないというような疾患だと思います。大人の方がなられる腸閉塞と違って、子供の腸は非常に入り込みやすいので、小児科医が当直するときに、いわゆる音のないぜんそくとこの腸重積ということは必ず死に直結する危険性があるからというふうに私どもも指導されて医者になったわけです。
 そして、なおこういうふうに患者さんが亡くなっていく現状というのは、本当に日本の社会が、逆に言えば、子供たちのことに向いて後退しているというか、ないがしろにされている。特に、当直のお医者さんも疲れていたのかもしれないけれども、不安な親御さんを待たす、そして午前中に全然診ない、これでは本当に浮かばれまいなと思います。
 医療の質ということについて、今度、聞き及ぶところによりますと、厚生労働省としても、医療安全相談センター、医療安全対策支援センターでしたか、そういうセンターをおつくりになって、相談業務も受け付けるということでありますから、その病院の評判とかいうことは、当然そういうセンターからも相談が寄せられて、上がってくるものと思うのです。そういう地域に、保健所に窓口を持つセンターにもたらされた相談と、それから現実の医療提供とが、どこかでドッキング、情報交換していかないとよくなっていかないと思いますので、これは、医療安全対策支援センターの活動の一部としてまた次回質問させていただきますので、指摘にとどめさせていただきます。
 もう一点、今、局長御答弁の拠点病院の件ですが、私、これも以前から問題にしておりましたが、二次医療圏、大体三十万人を一つの二次医療圏と見て、日本全国三百六十三、二次医療圏に分けて、そこで、その地域で子供が夜必ず入院できるという病院がきっちりあるような体制をつくっていただきたいとお願い申し上げて、私が質問したときは、たしか百二十くらいの整備状況だということを半年ほど前伺いましたが、その後、少しは進捗なさいましたでしょうかというのが一点。
 それから、さっきの篠崎局長の御答弁の中に、地域の小児科医教育のために、拠点病院を中心に小児科医のレベルを再教育していくということもお考えだとおっしゃっておりましたが、それは、医師会とかの動きと連動したものであるのか、それとも直接厚生省が拠点病院にお願い申し上げてやっていくようなプログラムであるのかについてだけお願いします。
篠崎政府参考人 小児救急の対策についてでございますが、数字を申し上げますと、平成十四年度末現在の数字で申し上げますと、拠点病院につきましては六病院十二地区で実施をいたしております。このほかに、前からやっておりました二次医療圏を単位といたしております小児救急医療支援事業につきましては、百地区で体制整備が進んでいるというところでございます。
 それから、今御指摘になりました研修のことにつきましては、これは小児救急医療拠点病院に直接補助をいたしまして、そこで直接研修を行っていただこう、こういうプランでございます。
阿部委員 ありがとうございます。
 一応お伺い申し上げたのは、実は、医師会は加入している方もしていない方もございますし、加入は基本的に任意のものでございますので、柔道整復師の問題でも同じですが、整復師の業界というところを経ないと研修できないというふうにしておくと差別が生じます。もちろん、一つの窓口として医師会なり整復師会の窓口を利用されるということはあっていいかと思いますが、やはりいろいろな、そこで現実に診療している方たちの総体に、区別なく、差別なく行き渡るような教育体制ということをお願い申し上げます。
 引き続いて、今の医療提供体制ということでお伺い申し上げますが、これも先回少し質問予告してございましたが、特に小児救急医療では切実でございますが、大学が臨床研修必修化ということを平成十六年度に行うに当たって、それを理由にした地域病院からの医師の引き揚げが起こっているのではないかという指摘がなされて、厚生労働省の方でも実態調査等々もなさったやに伺っておりますし、また文部省とも連携してこの問題で意見交換がなされたことかと思いますが、これも医政局長でよろしければ御答弁お願いします。
篠崎政府参考人 平成十六年度から実施されます新しい形の臨床研修制度の準備を進める中で、地域の医療機関での医師の確保が困難になるのではないかといったような指摘あるいは懸念をする声が聞こえてきております。
 そこで、四月の十八日でございますけれども、省内の新医師臨床研修制度実施推進本部におきまして、大学病院の関係者そして地域医療の関係者、地域の病院等の院長に集まっていただいた地域医療関係者から御意見を伺ったところでございます。
 いろいろ御意見がございましたけれども、例えば、大学病院の医師数には大きな変化はないので、引き揚げはないのではないかという大学側のお話もありますし、また、地域の病院に医師が行かなくなるのは引き揚げが原因ではなくて、本人の自由意思によるものではないかという側の意見もあります一方、大学病院による医師の引き揚げが始まりつつある、あるいは、新制度に対する大学病院の準備が進むにつれて、今後、その可能性がますます大きくなるのではないかというような意見も聞かれたわけでございます。
 それで、病院団体等の調査によりましても、若干そういう数字が見られるわけでございますので、私どもといたしましては、今後、地方厚生局におきまして、地域の医療関係者を構成員といたします連絡協議会を設置して、地域医療を担う病院における医師の確保を支援したいというふうに思っております。また、文部科学省との連携も密にしておりまして、新しい臨床研修制度の円滑な実施に向けて、その準備に取り組んでいるという状況でございます。
阿部委員 私も、確かに文部科学省からも数値の入ったものをいただきまして、過不足がないんだというお返事でしたが、たった一つだけですが、きょうは、幾つも私のところに寄せられますので、一つだけ事案を御紹介したいと思います。
 ある医療法人T病院というところからいただいたもので、この病院は創立が一九八〇年で、一九八七年には特定医療法人として認可されており、地域の中核病院で百七十三床の急性病院です。一九九七年からは、さらに病院を新築して文字どおりその地域の中核病院となっておりますところですが、一九八九年四月から、ある大学小児科医局より医師を派遣していただき、一九九九年までの十年間でだんだん一人から二人とふやしていただいたところが、二〇〇一年八月からは、指導医が派遣されるという約束があったにもかかわらず、突然二名の引き揚げが起きたということです。
 そのときに大学の医局がこの病院に伝えたところによりますと、一、今後は民間病院には医師を派遣しない、公立病院のみにします、二、T病院の意向はわかったが、これからは医局の人事というのは人事委員会で決めるので何とも答えかねる、三、今のことの繰り返しですが、今後の医局人事はすべて医局内人事委員会で決定します、四、T病院を希望する人がいれば赴任を妨げないということなのでありますが、現実にこれは、この大学病院はもちろん国公立のとある有名病院ですが、やはりかなり現実のところ医局の意向なり、それから、この言い方は極端と思いますが、民間病院には派遣しない、公立病院にしますというような言い方といい、実際には、地域医療病院の重要視というところが、だんだんウエートがなくなっていっているのではないかなと危惧されるわけです。
 そして、現実には、この二名の医師の引き揚げで、この病院は年間約五千万円の減収が現実になった。やはり小児科医がいなければ、三人体制でやっていたところ、一人になりましたから、実際の実診療上の影響も出るし、地域では基幹病院がなくなるということになっていますので、やはり先ほど私がお願い申し上げましたように、行動計画の中できっちり小児医療も見ていただいて、どこがSOSを出しているか、そして、そういうことをトータルに情報収集して、厚生労働省として医師の適正配置ということを再度考えていただきたいと思うのです。
 私がここまで申し上げますのも、実は、医局の問題は、今、どんどん医局はやめましょう、例えば、弘前大学、群馬大学も、医局はなしにしましょうという一方で、それではどこを媒介に医師を紹介していくかというと、有料の職業紹介所が入っている場合が指摘されています。
 札幌医大の例ですが、有料職業紹介所が、これは医師の名義貸しのために自分たちの業を行った。ただし、この有料職業紹介所は無資格であったために問題になっていますが、有資格の有料職業紹介所が、今後は、医師の希望と地域の希望あるいはいろいろをメニューして配置するということも十分起こってきます。そうしました場合に、条件のよいところ、都会、仕事の軽いところ、当然、人はだれでもそうですけれども、なびくと思います。
 でも、医療というのはそうしたことを超えて、ある公共性を持って国が提供していかなきゃいけないというところですので、坂口大臣に、くれぐれも文部科学省との意見交換、それから、もしかして今後医局がなくなっても、紹介業というような形で医師の派遣が行われるかもしれないような現状を踏まえて、厚生労働省としての医療提供体制に取り組んでいく幾つかの御所見を伺いたいと思います。
坂口国務大臣 私は、やはり大学病院、すなわち大学の医学部というところは、地域医療というのは一つの大きな柱だと思うんですね。それは、教育もあるでしょう、研究もあるでしょう、診療もあるでしょう。しかし、それだけではなくて、政策医療やそして地域医療というものがやはり一つの大きな柱でなければならない。そのことを抜きにして大学病院というのはあり得ないと私は思うんです。ところが、今までの大学病院は、ややもいたしますと地域医療ということを忘れてしまって、研究とその大学病院における診療と、そして学生の教育だけに偏ってしまっている。
 私は、地域の病院に医者を出さないというのは大学病院の傲慢だと思いますね。それはやはり厳しく言っていかなければいけないことだというふうに私は思います。また、そういう体制をつくっていくために私たちも考えなければいけない。
 今回のことの端を発しておりますのは、今回の研修医制度におきまして、今まで大学病院にばかり研修医が固まっておりましたので、もう少し地域にも研修医が散らばって、そしていわゆる本当の地域における医療とは何かを研修してもらう、勉強してもらうということが大事だということで、そういうふうにしたわけでございますけれども、何か逆に大学病院からしっぺ返しを食ったような感じになりまして、地域の医師をすべて引き揚げるというような形になってまいりまして、二、三回、大学の先生方ともよく話をしたわけでございますけれども、必要ならばもう少し話をしなければならないのではないかと最近考えているところでございます。
阿部委員 声を上げられない小さな子供たちのためにも、ぜひとも坂口大臣の今の御決意と見識を強く大学にもお伝えいただきまして、本当のいい医療提供体制ができますことをお願い申し上げて、残余の質問は次回に、申しわけありません、予告してありましたが、時間の配分が悪くて足りません。
中山委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後四時八分散会


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