衆議院

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第14号 平成16年4月21日(水曜日)

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平成十六年四月二十一日(水曜日)

    午前十時一分開議

 出席委員

   委員長 衛藤 晟一君

   理事 鴨下 一郎君 理事 北川 知克君

   理事 長勢 甚遠君 理事 宮澤 洋一君

   理事 城島 正光君 理事 三井 辨雄君

   理事 山井 和則君 理事 福島  豊君

      井上 信治君    石崎  岳君

      加藤 勝信君    木村  勉君

      木村 義雄君    左藤  章君

      菅原 一秀君    竹本 直一君

      棚橋 泰文君    中西 一善君

      中山 泰秀君    能勢 和子君

      原田 令嗣君    平田 耕一君

      福井  照君    三ッ林隆志君

      三原 朝彦君    山際大志郎君

      山下 貴史君    吉野 正芳君

      青木  愛君    石毛えい子君

      泉  房穂君    内山  晃君

      大島  敦君    五島 正規君

      園田 康博君    中根 康浩君

      中野  譲君    橋本 清仁君

      樋高  剛君    平岡 秀夫君

      藤田 一枝君    古川 元久君

      増子 輝彦君    水島 広子君

      大口 善徳君    古屋 範子君

      桝屋 敬悟君    山口 富男君

      阿部 知子君

    …………………………………

   議員           古川 元久君

   議員           枝野 幸男君

   議員           五十嵐文彦君

   厚生労働大臣       坂口  力君

   厚生労働副大臣      谷畑  孝君

   厚生労働副大臣      森  英介君

   厚生労働大臣政務官    竹本 直一君

   政府参考人

   (厚生労働省職業安定局高齢・障害者雇用対策部長)  太田 俊明君

   政府参考人

   (厚生労働省年金局長)  吉武 民樹君

   政府参考人

   (社会保険庁運営部長)  薄井 康紀君

   厚生労働委員会専門員   宮武 太郎君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月二十一日

 辞任         補欠選任

  中山 泰秀君     山際大志郎君

  能勢 和子君     山下 貴史君

  小宮山泰子君     中野  譲君

  水島 広子君     石毛えい子君

  桝屋 敬悟君     大口 善徳君

同日

 辞任         補欠選任

  山際大志郎君     中山 泰秀君

  山下 貴史君     能勢 和子君

  石毛えい子君     水島 広子君

  中野  譲君     平岡 秀夫君

  大口 善徳君     桝屋 敬悟君

同日

 辞任         補欠選任

  平岡 秀夫君     小宮山泰子君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 国民年金法等の一部を改正する法律案(内閣提出第三〇号)

 年金積立金管理運用独立行政法人法案(内閣提出第三一号)

 高年齢者等の雇用の安定等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第三二号)

 高齢期等において国民が安心して暮らすことのできる社会を実現するための公的年金制度の抜本的改革を推進する法律案(古川元久君外五名提出、衆法第二七号)


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     ――――◇―――――

衛藤委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、国民年金法等の一部を改正する法律案、年金積立金管理運用独立行政法人法案、高年齢者等の雇用の安定等に関する法律の一部を改正する法律案及び古川元久君外五名提出、高齢期等において国民が安心して暮らすことのできる社会を実現するための公的年金制度の抜本的改革を推進する法律案の各案を議題といたします。

 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 各案審査のため、明二十二日木曜日、参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

衛藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 引き続き、お諮りいたします。

 各案審査のため、本日、政府参考人として厚生労働省職業安定局高齢・障害者雇用対策部長太田俊明君、年金局長吉武民樹君、社会保険庁運営部長薄井康紀君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

衛藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

衛藤委員長 この際、吉武年金局長から発言を求められておりますので、これを許します。吉武年金局長。

吉武政府参考人 四月七日の厚生労働委員会の質疑におきまして、公明党冬柴委員から、一定の前提を置いて民主党案の場合の消費税率の推計を求められたのに対し、いまだ提出されていない民主党案に基づく推計は困難としつつも、一定の前提を置いて政府案に置きかえての答弁を行ったところでありますが、民主党は、基礎年金国庫負担については歳出削減によるという御主張でありますので、私の答弁の中での「それから先ほどの二分の一の一%強を足し合わせますと、」との部分は削除し、また、「六%程度」との部分は、「五%程度」と訂正させていただきたい。

 民主党の案が提出されていない段階でこのような答弁を行ったことはまことに失礼であり、かつ、民主党案に対し誤解を与えたことに対し、陳謝申し上げます。

衛藤委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。福井照君。

福井委員 おはようございます。自由民主党の福井照でございます。

 本日は、高齢期等において国民が安心して暮らすことのできる社会を実現するための公的年金制度の抜本的改革を推進する法律案に対しまして御質問させていただきたいと思います。

 自分で言うのもなんですが、純粋無垢、素直な性格でございますので、一時間たって、多分私は民主党案賛成の行動をとるような、洗脳されているのではないかというふうに思いますので、かんで含めるように教えていただきたいということを最初にお願い申し上げたいと思います。

 まず、近視眼的なことも大事ですけれども、少し引いて、歴史認識、時代認識は共通しているのではないかなということからまず確認をさせていただきたいというふうに思っています。

 年金制度、ここにいらっしゃる方はもう全員よく御存じなんですが、もう一度復習をさせていただきますと、昭和十七年、日本の年金制度が生まれました。そして終戦、つまり国は倒産したということになります。そして昭和二十九年、厚生年金のスタートということになりまして、三十六年に国民年金のスタートということになりまして、そして、今の制度の基本となります昭和六十一年の基礎年金の改革ということで、もちろん、五年ごとに改革改革を重ねてきたわけですけれども、大きく言いまして今の三回の大改革を踏まえて、もう二十年を過ぎて、そして、迫りくる危機、すなわち日本の総人口すら減っていくであろうというその時代を踏まえて、特に年金、医療も介護もそうですけれども、この年金制度を大きく根本から変えなければならないということだと思います。

 もっと引くと、日本の歴史上、総人口が減るというのは今まで三回あったようでございます。縄文時代の後期、そして平安時代の後期、そして江戸時代の後期ということで、いずれも文明の爛熟期。それぞれの文明の爛熟、そうすると、人間はどうしても満足してしまって子供を産む数が減ってしまう、そして総人口が減るということでございます。

 しかし、それは、その次のもっと飛躍する、発展する時代の準備期間でもあるということが、歴史が教えているところであります。縄文から弥生、江戸から明治ということで、最近のケースでは、封建社会から資本主義の社会に大きく飛躍するその直前の何十年、あるいは百年間は人口が減ったということを私たちは経験している。

 そして、下手すると来年ぐらいからもう日本の総人口は減ろうとしている。何十年続くかわかりません。今回の政府案の計算では、このまま減っていくということがもし百年続いても年金制度は持続可能ということで政府案は提出されている。

 しかし、私たちが今、時代認識、歴史認識としてとらえておかなければならないのは、この今の時代は、人口は減る、すなわち、この資本主義のライフスタイルが爛熟をしているということだし、そしてまた、その次の時代、もっと一人一人にとって気持ちのいい、もっと満足のいく、そして社会が平和に仲よくという、その次の日本の骨組みを今つくらなければ次の時代がやってこない。そして、その次の時代は人口がふえるわけで、どんとふえる、そして、日本のまた再生、発展があるということですから。

 何を言っているかというと、一番歯を食いしばって頑張らなければならない時代が来ているということですし、三千年間の日本の歴史の中で四回目ですから、数百年間に一回の危機が今やってきている。そして、数百年分の歯の食いしばりをしなければならないということだというふうに思っています。年金だけ見ても、二十年ぶりの大改革ということだと思いますので。

 そういう意味で、一元化をてこに、抜本的な年金制度の改革ということを、民主党、古川先生初め、民主党案ということで出されたということは非常に高く評価できるというふうに思っています。別に褒め殺ししているわけじゃなくて、本当に心からそう思っているわけであります。もし、その時代認識、歴史認識でコメントがあれば後ほど聞かせていただくとして、そこまでは全く共通しているんだというふうに勝手に思わせていただきたいと思っています。

 そして、これから違うのは、ですから、価値観の重みづけとか物差しの当て方ではないかというふうに思っています。

 我々あるいは政府の今度の案では、何よりも一番大事なのは、日本国という国家への信頼。昭和十七年にできて、国が倒産してしまったというそのトラウマを我が国の年金制度は持っているわけですから、倒産は絶対しない、この日本の国家というのは百年、二百年、未来永劫続くんだ、そして、年金、老後の生活、一人一人の人生を一番大事に思ってくれるんだという、国家への信頼が一番大事だというふうに思っています。多分そこも一緒だと思いますね。そして、この制度も存続する、百年、二百年、未来永劫、制度そのものが破綻しないということも同じように大事、ここも多分一緒だと思いますね。

 ここから違うのは、恐らく助け合いの精神。能力に従って支払って、必要に応じてもらうものはもらう、給付金をいただくという。能力に応じて支払い、必要に応じてもらうという、その助け合いの精神の重みづけが、多分この民主党案と政府案との違いに、最初のバイナリーチョイスがそこなんじゃないかなというような気がしておりますが、その辺は前置きでございます。ちょっと長くなりましたが、質問に移らせていただきます。

 そういう歴史認識、時代認識を踏まえ、そして、価値観の違い、物差しの当て方の違いというのがこの一時間の間ではっきりわかればいいなというふうに思っています。冒頭申し上げましたように、本当に理解したいというのがこの一時間の目的でありますので、シンプルクエスチョンですからシンプルアンサーでお願い申し上げたいと思います。

 先ほど言いました重みづけ、価値観の重要性からいいまして、今回の年金改革の真髄は、給付と負担の関係がどんなものだということを量的に、数字として、金額として、ドル建てじゃなくて円建てで示すということだと思っています。一元化であれ、今のような二階建てであれ、共済と厚生が一元化する、そういう体系の仕組みがどうあっても、この給付と負担のバランスというのが本当にしっかりしたものでないと持続可能ではない。何十年かたったら、大きく、大幅な変更を余儀なくされるということになりますと、これはまさに、一番大事だと思っていた、我々が一番大事な国家への信頼というものがなくなるわけですから、これはもう何をやっているかわからぬ、一番最悪のケースというのがそうなります。国家への信頼が一番大事だと思っているから、その数字、給付と負担との関係を具体的に示すということが大事だというふうに思っています。だけれども、この今までの議論を伺っていますと、どうもよくわからないんです。よくわからないので、だからお伺いしたいということでございます。

 そこで、消費税、今局長が答弁の修正をされましたですけれども、三%の年金目的の消費税というふうにこの民主党の説明書を見ると言われておりますし、一方で、給付水準の五〇%は確保するということは、その数字はあるんですけれども、それは、財政計算によるものなのか、あるいは、そうじゃなくて、今回は基本法だから宣言文だ、プログラムでいえば最初の一行目、これから年金改革しようじゃないか、一緒にやりましょう、国民こぞって議論しましょう、その目標はこうなんだということを示しているのか。いや、目標だけだったら目標でいいんです。それはそれで意味があると思います。けれども、今までの議論を聞いていると、あるいは財政計算をしているかのごとくに受け取れるような御発言もありましたので、どちらなのかということを、ちょっと冒頭、今回の民主党案の制度設計の基本構造についてお伺いしたいと思います。

 その三%とか五〇%とかいう数字がどこまで具体的な計算をされたものなのか、あるいは、この法案はとにかく宣言文なんだということで御主張されるのか、ちょっとそこからお伺いしたいと思います。よろしくお願いします。

古川(元)議員 久しぶりに大変に良識のある御意見をいただいたというふうに、最初に感謝を申し上げたいと思います。

 歴史認識、時代認識、まさに今福井議員が言われたとおりのことじゃないでしょうか。そういう中で、今回のこの年金の抜本改革の議論が国会の中で行われなければならない。そういう、今福井委員が言われたような認識に立てば、とても今回のような政府・与党案として出てくることは、多分なかったんじゃないかと思うんですね。ですから、私は、今のお話を聞いていまして思いましたのは、福井委員のような方が与党の中にも少なからずいらっしゃるはずにもかかわらず、どうしてこういう現行制度の延長線上の、当面の財政対策が中心になっている案が出てしまったのか、そこが極めて私は遺憾なことだというふうに思っております。

 私ども、今福井委員が言われましたように、そうした共通の時代認識をもとにして、では時代に合った年金制度というものはどういうものなのか、そのことについては虚心坦懐に、私どももこれは胸襟を開いてぜひ議論をしたいというふうに考えて、今回の法案というものを提案させていただきました。

 今福井議員から、いろいろな数字が大事だ、年金制度においては負担と給付の関係が大事だというお話がありました。もちろん私どもも、これは非常に大事なことだというふうに思っています。しかし同時に、今福井委員は、その前提として国家に対する信頼というものがなければならないというふうに言われました。今回の年金議論で、まさにそこのところが、私ども民主党と与党の皆さん、政府の皆さんが考えているところとの大きな違いじゃないでしょうか。

 現行の年金制度に対する国民の皆さん方の信頼というものは極めて危機的な状況。年金制度は破綻している、していない、そういう議論がありますけれども、そういう議論が行われるぐらいに、現行の年金制度に対する不信感が募っているわけであります。そういう意味では、先ほど福井委員が言われたような、国に対する、政府に対する信頼が、年金制度に関して言えば、これはもう間違いなく失われている。その失われている制度の中で数字上の負担と給付のバランスをとっても、つじつま合わせをしても、それをもって制度に対する信頼が回復されるとは私は考えておりません。やはり制度に対する信頼を回復する、その制度が信頼されていて、初めて、その制度の中での負担と給付が具体的にどういうものなのかという議論になっていくことだというふうに私は考えております。

 そういう意味では、今回のこの政府案が決まってくる途中の過程を見ておりましても、今回の政府・与党案で、これから十四年間保険料を引き上げて、十四年後に固定されるとなりまして、最終的な保険料率として一八・三%。実は、これは厚生労働省の方からは当初二〇%が出てきたわけであります。それが、経済財政諮問会議などでは一六%という数字が出て、その間でどこにまとまるのかなと思ったら、その大体間のところの、よくある、足して二で割る、そういうような形で一八・三%というものがまとまったのではないかというふうに私どもは考えますけれども、今この負担と給付ということを言いましたら、果たして、そういう年金制度というものについて、従来的な、足して二で割る、そういう政治手法というものが本当にいいのかどうか。やはり、国民にとって必要な年金水準はどうなのか、もう少しそういう理論的な議論をした上で、負担率やあるいはそれに伴う給付というものが決められるべき問題ではないかというふうに思っております。

 そういう意味では、今回の政府・与党から出された案というのは一八・三、これに合うように給付も決めたというふうに言われておりますけれども、まさにそこは国民が信頼するような、そういう数字じゃないのではないかというふうに私どもは考えております。

 確かに、机の上のそろばん勘定では、この年金制度というものは、今政府が提出されたもので、百年間負担と給付がもつのかもしれません。しかし、このそろばん勘定の前提となっている、いろいろな試算となっておりますその数字自身が、先日の本会議で、坂口厚生労働大臣も極めて願望を込めた数字であるということを言っているわけでありまして、そこが崩れると、そもそもこの負担と給付自体も成り立たないということが明らかになっているわけでありますし、そもそも制度に対する信頼がなければ、いかにそろばん勘定としてそれが合っていても、国民感情としては、到底その制度に対しては保険料を支払う気にはならない。そのことが、国民年金の未納、未加入が四割にも及んでいるという現実の事実として明らかになっているのではないでしょうか。

 ですから、私ども民主党は、まず制度に対する信頼をきちんと構築することが必要だということで、今回の法案の中ではそうした新しい年金制度の仕組み、そういうものをきちんとお示しさせていただいて、そして、法案の中では具体的な数値を入れなかったのは、これは先ほど申し上げましたように、政府から出されてある数字自身が、そもそも願望に基づく、そういう数字をベースにして試算されているような、そういうこともございますので、こうした点を含めると、今の段階で責任を持った数字というものを法案の中に盛り込むことは、これはむしろ国民に対して背信行為ではないかということから、私どもは法案の中には入れなかったわけであります。

 私どもが、消費税、大体これから三十年ぐらい三%、そして給付水準五〇%というものの計算を試算として示させていただきましたのは、これは政府が使っている数字を、私どもはそもそもこの政府の数字自体に疑問を持っておりますが、あえてその点で、議論の一番最初のスタート地点として、議論のスタートになるのはそうしたところからスタートさせていただく。

 よく法案を見ていただければわかりますように、最終的なそうした具体的な水準については、これは私ども民主党だけで決める話ではなくて、国民の皆さん方の議論を踏まえて、年金制度改革調査会というものを国会に設置して、その中で議論をして、きちんと客観的なデータも踏まえて、その中で負担と給付、政治的な決着で決まるものではなくて、きちんとしたデータに基づいた、そのもとで、負担と給付のバランスというものを考えて、決めていきたいというふうに考えております。

福井委員 野党の皆さんが、閣僚答弁短く短くとよくおっしゃる気持ちが非常によくわかりました。私も冒頭長かったので、一投目はお許しいたしますけれども、本当にわかりたいという気持ちでのシンプルクエスチョンですから、シンプルアンサーでよろしくお願いしたいと思います。

 ということで、最初の私の問いは、三%あるいは五〇%が、財政計算に基づくものなのか、あるいは宣言文としての意味なのか、その気持ち、そういうふうに目標としてこれから改革していくんだということなのか、どっちかということを聞かせていただいたので、それは後者の方で、今古川先生の方からそういうお答えがございましたというふうに解釈させていただきます。

 それで、もっともっと、まだまだありますので、五十嵐先生の方からも後ほどお答えいただきたいと思いますが。

 同じことなんですけれども、制度設計の基本的な構造ということであと二つお伺いしたいのは、今から五年間議論して、プラス四十年ですから、四十五年後の新制度の姿というのがこの法案あるいはその説明でされているわけですけれども、それに至る四十五年間の道行き、遷移期間、移行期間、移行措置も含めて、給付と負担の関係。保険料と税金と積立金という収入三種類と給付との関係。その移行期間、何十兆円いつごろ要るかという。

 確たる計算はしていないというお答えだったんですけれども。しかし、それにしても、三%、五〇%という具体的な数字を時々は使いながら、かといって目標だけだ、宣言文だけだということなので、まあ優秀な皆さん方が法案を作成されたわけですから、目の子の、ラフリースピーキングという数字は多分お持ちだと思いますので、とにかく、本当にこの法案の中身をわかりたいということで、今申し上げた保険料、税金と積立金を、どういう役割分担で、いつごろ、どういうふうに使うのかということを、遷移期間も含めてちょっと教えていただきたいと思います。

五十嵐議員 お答えいたします。

 結局、政府案というのは、収入が安定しているように見えて実際には、今の日本の問題は、労働、保険料を払う人口がどんどん減っていく、流出していく、国内でも厚生年金から国民年金に移っていってしまう、あるいは中国に労働が移ってしまうというようなことが問題なんですね。ですから、安定しているように見えて、保険料を上げ続けるということは、実は労働人口の流出、あるいは空洞化という問題を促進してしまうということによって、結果的には安定収入ではなくなってしまう、計算が合わなくなってしまう。

 それに比べれば、私どもの消費税というのは安定的な収入なんですね、いわば。安定的な収入ですから、安心感が得られますよ。経済が活性化してくれば、一%分が今二兆四、五千億ですけれども、これは実は三兆円にも四兆円にもなる財源なんです。そこで安定感があるということになるんです。

 私どもは、一方では、枠組みでいいんですよ、実は。枠組みを提示して、そういう枠として持続可能性、サステーナビリティーがある仕組みだということを御説明申し上げているわけで、一方ではこれは確定拠出なんです。ただ、確定拠出ですと、どこまで自分たちはもらえるのかというのはわからない。ということで、目標数値を足しているわけです。それが五〇%は確保しましょうという目標数値、ですから、単なる……(発言する者あり)いやいや、それは試算に基づくものですよ、もちろん。試算に基づく最低目標として私どもはそういう水準を設けさせていただいて、その上でさまざまな政府がお出しになっている範囲内で試算をいたしております。

 二〇〇七年から消費税、目的税としてちょうだいをし始めることになりますから、政府案よりは積立金が早目に積み上がるんです、実は。早目に積み上がります。かなりの額に達します。そして、実は二〇三〇年から二〇四九年にかけて、収支差額というのがマイナス状況が単年度では生じてくるわけですね。その早目に積み上げたものを使ってそれに対処できるようにして、一番底のところでもある程度の積立額は残るようにいたしましょう。そのときに、二〇三九年まではとにかく、三九年になってもゼロにはなりません。一、二年分の積立額が残る、そういう計算を、いろいろなパターンをした上で、三%あれば三十年間安定的にできる。その間に、実は消費税というのはむしろ保険料よりは安定的な収入なんです、先ほども言ったように。ですから、経済の状況によってはむしろ三%減らせるかもしれない、そういうことなんですよ。

 要するに、枠組みさえ決めていれば安定的なことはできる。あとは合意と選択の問題じゃないですか。だから、何も皆さん敵対的に言う必要はないんですよ。考え方がそもそも違うんですから、私どものような考え方になったら、どういう水準を選ぶか、この水準を選んだらこういう負担でいいですね、そういうことを決められるわけですから、一緒に考えていきましょうということでむしろお考えになるべきで、むしろ今のままでいったら、緻密な計算によって百年もつと言っているけれども、実は穴があき通しで、さまざまな、例えば、今中堅企業はどんどん解散をしようとしているわけですよ。年金代行返上しようとしている。その中で、どんどん出て行ってしまう。いわゆる製造業の皆さんは請負に出しちゃうわけですよ、みんな。自分のところの従業員は、悪いけれども国民年金に移ってくれると言って、そして請負に出しちゃうわけですよ。福井先生も地元を歩かれたらそういうところがあると思うんですね。代行返上しようにも代行返上できないという、積み立て不足が一千億円もあるから、それを払わないと返上もできない、解散もできないんだ、こう言って悩んでいる企業がたくさんあるんです。つまり、今のままでいくと、どんどん正規労働者が減ってしまって、結果的に緻密なはずの計算も合わないということを繰り返してきたんですから、今までも。

 それに比べれば、極めて安定的に年金目的の収入を確保できるというのは我々の案だということをお考えいただいて、どうやったらサステーナビリティーのある、そして合理的で負担と給付の水準が合ったものがつくれるか、一緒に考えていこうじゃありませんか。

福井委員 たった二回お答えしていただいただけで、もう三十分くらいたってしまいまして。途中、三兆円、四兆円という数字が今五十嵐先生から出てきましたけれども、それ以外はすべて情緒的なお答えをいただきました。

 我々の方は、あるいは政府の方も、制度設計ですから、感度分析もしなければなりません。それもしていると思いますし、何よりも、そこまでぎりぎりの経済成長それから出生率も前提にしても百年間持続可能だというので、それに達するために、もうそこまで負担を上げてそこまで給付を下げるかという、本当に奥歯が折れるような我慢を国民にしていただくという提案すらしているわけでございます。ですから、制度設計というのは、特に年金の方は、数字が何よりも大事ということなんじゃないかというふうに思っています。

 ちょっと委員長にお許しをいただいて、これは先週から我が党で使わせていただいている、宮澤理事作成の民主党案でないかと思われる説明図でございますが、今五十嵐先生おっしゃったのは、最低保障年金に一〇〇%充てるのではなくて、消費税は、これを上回る場合は積み立てるというふうにおっしゃったんでしょうか。それから、最低保障年金の額がその三%消費税を下回った場合は税率を下げるというふうにおっしゃったんでしょうか。何かその辺が、先ほどの御答弁の中でそういうふうに聞こえたものですから。ちょっと、目的税の税収と最低保障年金の支出との関係を、ごく簡単に御説明いただけますでしょうか。

枝野議員 私どもの案では、新制度が成熟した後は別として、旧制度、現行制度の過去債務をこれからお支払いし続けるわけですね。今受け取っている方、これから、今二十歳になっている人も一部分は旧制度で受け取るわけですから。その部分の、財源が足りない部分にまずは消費税が実は充てられる。皆さんが保険料は値上げで賄おうとしている部分を、我々は消費税三%で賄おうとしている。そして、その過去債務が減っていくにつれて新制度に基づく給付がふえていく。したがって、その消費税は、今度は新たに新制度の最低保障年金の財源になっていく、こういうことを御説明させていただいているわけであります。

 そして、先ほど来、数字の話が繰り返し出てきていますが、我々も計算をさせていただいています。計算の前提になっているのは政府の出してきている数字です。

 そして、我々は、給付の総額はほぼ政府案と同じ水準を維持しよう、したがって、それがほかの財源でどう置きかえられるのかということで、消費税三%。二〇〇七年から積み立てていきますから、それを計画的に早期に切り崩すことによってほぼ同じ金額の支出の財源は賄えるという計算はきちっとした上で、消費税三%。

 それから、モデル世帯で給付水準五〇%程度ということを申し上げておりますが、そもそもこの政府案の数字そのものを我々は信用していません。今ぎりぎりということでおっしゃいましたが、政府案の数字は、例えばGDPが毎年一・七%ずつ上がっていくという計算をしているわけですね。戦後の過去のGDPの数字をごらんいただければすぐわかる話ですが、人口増加率とGDPの上昇率というのはほぼ横並びで来ています。つまり、人口増加率が高いときはGDPの成長率も高い。これが落ちてくるに従って実はGDPの成長率もずっと下がってきて、ゼロとかマイナスになってくる。したがって、こういった過去の経験則からいくと、これから人口が減っていく社会においては、むしろここをマイナスで計算するとか、せめてゼロで計算をしなければぎりぎりの計算とはなっていない。

 しかし、ここをプラス一・七などという、可能性の中では一番高い数字で計算をしているという数字しか今我々前提にできませんから、それを前提にして、成り立つということを申し上げているわけですが、これが成り立たないということでは、政府案も成り立たないということになってしまう、こういう話であります。

 我々は、そこは、こういう無理のある数字でやるのはおかしい、したがって、きちっと前提となる数字についての議論はもう一回しなきゃいけないでしょう、そして、もともとの枠組みとして、どちらがしっかりと長期にわたって成り立つのか、それは今五十嵐議員から御説明したとおりであります。

 以上です。

福井委員 私も技術系でありますので、設計とかあるいは物をつくることに携わっておりましたし、役所におりますときも、制度を設計するということにも携わらせていただきましたが、すべてギブンじゃないんですよね。与件ではなくて、前提としたものを本当に実現するためにどうすればいいかというのも、そういう関数もあるわけですから、それをどう振り分けるか。天から降ってくるような与件をどれとどれにして、もう歯を食いしばってもこれは実現するんだという要素をどれにするかということが制度設計の根本のスタートではないかと思います。

 だから、その辺も民主党案と政府案との違いがあるということだと思いますので。まあ、よくわからないということはよくわかりましたが。

 だから、日本全体の制度設計を一番国民にわかっていただくのが、これは先週も質問させていただいただろうと思いますが、もう一度整理して、この最低保障年金が横軸と平行なところの、だから、折れるところですね、これの縦の年金受給額と、それから現役時代に納めた保険料総額の具体的な額の、それで具体的な額はだからそんなことは言えないとおっしゃるんでしょうから、大体のイメージですね。

 先ほど枝野先生のお話を聞いていると、モデル年金、すなわち現役時代は月収三十六万円ぐらいあった家庭の、夫婦二人で、専業主婦であった、その夫婦二人でもらうのがこの折れるところなのかなと思いながら、モデル年金の方がこの横軸ではどこら辺に存在するのか、そして縦の線、いただく年金の受給額がどれぐらいなのか。この最低保障年金が折れるところと、それからなくなるところ、それぞれ幾らぐらいのイメージなのか。それがわからないと国民に説明のしようがない。地元に帰っても、ミニ集会やっていても、皆さん方に説明のしようがないわけでございまして、ぜひちょっと教えていただきたいと思います。

枝野議員 私どもの考え方では、まず所得比例年金は、これはいわゆる確定拠出的に、そして賦課方式的に数字が出てまいります。そして、私どもは全体として政府案とほぼ同じ給付額総額というところを維持すべきである、給付の水準は政府案以上に下げるべきではないという立場に立っております。

 したがいまして、必然的に、実はモデル年金世帯に限らず、所得比例年金の部分のところでは所得代替率が五〇%には我々の案ではなりません。つまり、この人たちに五〇%を保障するということを申し上げているのは、モデル世帯の方々のところには最低保障年金が下支えをすることによってトータルとして五〇%の所得代替率を、政府の計算のような仕方に基づけばお約束をする制度の枠組みにしている。そして、その全体の額が成り立つのかどうかということについては、給付額総額というのは、政府の試算で出てきている、それと同じだけの財源を我々は基礎年金二分の一までの一般財源からの税の投入と消費税三%で成り立つという計算をさせていただいています。

 問題は、その今おっしゃられた折れ目とか一番右の線のところはどうなるのかということについて、あるいは、では具体的に幾らになるのかということについては、そもそも、政府の方が試算をしている計算自体が、物価上昇率が毎年プラス一%だなどという、最近の例を考えても全く実態と合っていない数字に基づいた試算を我々もせざるを得ないのでしているわけで、しかし、その我々も信用していない数字に基づいたものを国民の皆さんにお約束するというのは無責任で、政府のように、御自身でも成り立つとは思っていないであろう、少なくとも経済をわかっている方にとっては到底成り立ち得ないような数字に基づいた数字を国民の皆さんにお約束して言うような、厚かましいうそをつくことはとてもできませんので、そういった制度の枠組みだけ申し上げているということです。

福井委員 先週に引き続きお答えはいただけませんでしたが、今おっしゃっているようなことをそんたくしますと、この辺にいわゆるモデル年金の層が存在するのかなということは勝手に解釈させていただきましょう。

 しかし、そこから先、この傾きですね、傾き。モデル年金がこの辺にあるか、この辺にあるかは別としまして、いわば日本の屋台骨とでもいいましょうか、これからコミュニティーの親になるような優良知識層、中高所得のサラリーマン層というのは大体この辺に存在するんだと思うんですけれども、このイメージからいくと。そこが折れるわけですね。寝ているわけですね、保険料総額に対してのいただく年金の受給額が。ここでは寝るわけです。これは、自由原理主義ともいうべきアメリカの年金のと逆ですよね。だんだん高所得者になればなるほど寝ていくというのが自由主義。ここでまた上がるわけですね。ここでもっと寝るかと思ったら、そうじゃなくて、こちらが上がっている。

 そうすると、この辺の層の方が、損得でいえば、今の制度でいただく期待の年金額と、それから民主党の案でいく年金額、一体、損得勘定はどうなっているのか、ちょっと教えていただきたいと思います。

古川(元)議員 今、福井委員の方から、損得勘定どうなっているんだというお話がありましたが、私は、今の年金の議論がそういう損得勘定が行われているということがまず問題だと。今の年金制度というものの問題は、実は、公的年金、政府が運営する年金でありながら、損する人と得する人が生まれるような、やはりそういう制度が問題である。

 私たちは、民主党が提案している案は、そういう、損得が国民の間で議論になるような制度ではない、すべての人に公平な制度をつくりましょうと。ですから、私たちは損得で勝負するつもりはなくて、公平か不公平か、その点で政府案と我々をぜひ見ていただきたいと思っております。

 そのことを前提に今のお話を伺いますと、先日、宮澤委員から御質問がありましたが、折れて曲がっているという話がありましたが、所得比例年金のところでは折れ曲がっていないんです。最低保障年金の、これを上に乗せるか下に乗せるかというお話がありましたが、最低保障年金のところは、私たちは基礎的なものという形で下のところに書いておりますけれども、あれを上に乗せれば、所得比例年金のところのこの傾きというものは全く折れ曲がっていなくて、ちゃんと負担に応じた給付が行われる。そういう意味では、それはどの層も同じでありまして、福井議員が御指摘するような、そういう中堅の人たちに冷たいとか、そういう話では全くございません。

福井委員 余りわからなかったですが、ちょっと、次々と進めさせていただきたいと思います。

 我々の方は、まさに今ポイントにありました最初のバイナリーチョイス、完全な公平というのはあり得ない、お金持ちの方には我慢していただく、能力に応じて支払い、そして必要に応じていただくというのが、公的助け合い制度、公的年金の哲学じゃないか、精神じゃないかということで、そこで制度設計が始まるわけですから、そこが違うので結論も違うのは当然かと思います。

 ちょっと細かいかもしれませんが、今のこの図が正しいとすると、上に乗せるか下に乗せるかは別として、現役時代に所得が低くて保険料をほとんど納めなかった、この辺の人で、老後、年金を受給するようになってからたまたま何か収入がある、高額収入があるというような人は、現役のときは払わなかったですから、最低保障年金はもらうわけですね。

 一方、この辺の所得、イメージはいろいろあるんでしょうけれども、月々本当に多額の掛金をお支払いして、だけれども、老後はもう年金しかない、何にもない、本当にもうゼロだという人は最低保障年金はもらえないということだと思うんですけれども、これは素直に、それこそそういうこともあり得るということで理解申し上げてよろしいんでしょうか。

枝野議員 年金という世界の中での公平というものをしっかりと確保しなきゃならないということでは今おっしゃったような仕組みになりますが、ただ、それは、少なくとも最低保障年金に入らない層の方というのは、年金でそれなりの生活、年金だけでもきちっとした生活をしていただけるという層の方だからこそ、税金での最低保障年金は入らないということになりますし、逆に、たまたま現役時代にはほとんど収入がなかったけれども、高齢者になったときに突然多額の収入が入るようになったという方がいらっしゃれば、そこは逆に、所得税とか、それから我々は年金の財源に消費税を充てるということにしておりまして、多額の収入があって多額の消費をされる方はそれなりの負担をしていただくということになりますので、税も含めたトータルの公平さというものはそちらの方で確保するべきであって、年金という世界の中では今のようなことが起こることはそれは避けられないわけで、逆に言うと、政府案のように税金で二分の一を支えるということが、所得のない方も、あるいは、年金がたくさんあってそのほかにもたくさん収入がある方にも全部入るということの不公平感もあるわけで、これは選択の問題だと思っています。

福井委員 ありがとうございました。

 あり得るということで、シンプルアンサー、ありがとうございました。

 だから、そういう議論のために、ラフでもいいから金額を出していただければ議論のベースができるということだと思うんですが、そのベースがないんで、いかんともこれ以上の議論はできません。

 そこで、さっきちょっと枝野先生おっしゃいましたが、五年間の道行きのイメージをもう一回聞かせていただきたいと思います。

 消費税は、さっき、十九年度でしたか、だから、二十年度末まで議論して二十一年度からやるのか。一体、五年間何するのか。その最初の年、そして、消費税、税制改革とあわせて、その五年間の道行きをちょっと教えていただきたいと思います。

枝野議員 我々は、年金本体の枠組み、特に一元化をするということ、それからそれに伴って納税者番号制度の導入、それから社会保険庁と税務署とを一元化して歳入庁にしていくというような準備の話があります。そういったことなどを考えると、一元化そのもののスタートは二〇〇九年であります。ただし、皆さんからも御指摘がありますとおり、確かに、財政的な問題を考えると、そこまで全く何もしないということでは、将来的な財政がより苦しくなりますので、消費税の三%引き上げについては先行して二〇〇七年からスタートをさせるという考え方であります。

福井委員 ありがとうございました。

 ですから、やはり、それこそ、怒られるかもしれませんが、目の子の五年間といいましょうか、緻密にスケジューリングして五年間じゃないことはよく今わからせていただきましたので、ありがとうございました。

 だから、幾ら野党の皆さんがおしかりをされても、我々の方としては、もっと早く、少しでも、一瞬でも早く掛金を上げて給付を下げるという今回の改正に着手すべきだ、時間が大事だということで、主張させていただいているわけですけれども。

 制度改革をおくらせればおくらせるほど、財政が逼迫をする。試算したら、何兆円か、十兆円近くなるかもしれませんが、そういう悪化があっても、どういう理由で今回の一元化を中心とする民主党の案の方が国民全体として得なのか。得する人はだれで、損する人がだれで、その時間的な、時間軸との関係が幾ら考えてもよくわからないんですけれども、この答えはいいです、とりあえず問題提起だけさせていただきましょう。

 この時間ファクターが一番大事なので、今回の政府案があるし、その時間ファクターを無視して、一元化のいいところもいっぱいあるでしょう。しかし、財政が悪化するというマイナスを超えるほどのプラスがどこにあるかという、納得する材料が今のところ私には見当たらないんで、それだけちょっと御指摘を申し上げたいと思います。

 次に、先ほど冒頭でおっしゃいましたけれども、政府案の一八・三%。足して二で割るという議論もあるでしょうけれども、しかし、一八・三%まで上げても、モデル年金で五〇%の給付がぎりぎり、やっと可能になる。一八・三%まで上げてやっとなるというんだけれども、しかし、民主党の案では、一三・五八%を維持したまま五〇%の給付が可能だということをさっきから何回も各先生おっしゃいますけれども、どうもわからないんですね。

 これを聞いてもまた同じ答弁になるかもしれませんが、ちょっと簡単に、だから、政府案の中身がわからないから答えられないと言うかもしれませんが、ちょっと答弁を試みていただきたいと思います。

枝野議員 いいですか。私たちも試算をたくさんしてきたと先ほど申しました。ただし、試算の前提となる数字は、政府の出してきている数字以外に我々データを持ち得ません。少なくとも国民の皆さんにこれでいけますという数字をお出しできませんので、前提となる政府の試算数字と比較をした上で我々の案が成り立つのかどうかということを議論せざるを得ないわけですが、例えば、二〇二五年、これは政府の試算もなされていますが、我々の案では、保険料収入は、確かに、保険料を上げませんので政府案より十兆円強少ない収入になります。

 しかし、その一方で、消費税収入で約九兆円の収入があります。それから、消費税を我々二〇〇七年から上げるんですから、後ろにおくらせるということじゃないです。逆に、早期に消費税で積立金の積み立て効果が上がって、その運用収入が、政府案のような利回りが確保されるのであれば一兆円強あって、つまり、政府案と同じ額の支出のために充てられる財源がイコールで成り立つという計算をちゃんとさせていただいています。

 これが成り立たないんだとすれば、政府案も成り立たないということになりますし、いみじくも今委員がおっしゃられましたとおり、政府案もぎりぎりの数字とおっしゃっているわけで、賃金上昇率であれ、利回りであれ、GDPであれ、何か一つでも今の言っている政府の数字が違ってきたら、政府案は成り立たないということを与党の側の皆さんもお認めになっているということを私は強調しておきたいと思います。

福井委員 政府案の制度設計は安全を見た、安全率もありますし、先ほど言いましたオペレーショナルなファクターは、それを実現するということを国家国民の目標とするというのもまた一つ大事なんだと思っています。

 いずれにしても、今の団塊の世代、払い終わるまでは負担を上げて給付を下げる、次の団塊ジュニアは、二〇五〇年以降この積立金を崩していくという第二波まで考えて、一波は過ごし、そして二波も過ごしという二段立てで政府案は成り立っているわけで、ただ、そこのところは、どうも余り二波目に対して、団塊ジュニアに対してどう対処するのかということについての説明が今なかなか理解が不可能だということだけ申し上げさせていただきたいと思います。

 それと、その次に、本当に根幹中の根幹、精神中、哲学中の哲学ということで、先ほどから古川先生がおっしゃっているように、完全な公平を目指していくんだということで、払った分だけもらう、だから、冒頭から私が申し上げているように、支払い能力に応じて支払って、必要に応じてもらうべき人がもらう、能力に応じて支払い、能力に応じてもらうということとは、公的な年金制度と合わないと思うんですね。

 助け合いというのは、社会全体。だから、さっき損得という言葉はミスリーディングだったかもしれませんが、たくさん払って少なくもらう人も出てこなければ、社会全体として、国家全体として公的年金制度というのはあり得ないわけですからね。

 そこが、だから、根本が違うわけでありまして、完全な比例だったら民間の保険制度でいいわけですので、そこのところが根本的な自己矛盾としてどうしても私自身納得がいかないので、そこら辺のところ、ちょっと古川先生、教えてもらいましょうか。

古川(元)議員 そこのところはまさに福井議員が、どうも時代認識は同じですけれども、根本的なところで御理解をいただいていないのかな。

 私ども先ほどから申し上げておりますように、民主党案は、所得と給付の関係が明確な所得比例年金と、税を財源とする最低保障年金、この二つの組み合わせによって成り立っている公的年金です。所得比例年金の部分については、これは負担と給付の関係を明確にして、そして負担に応じた給付をちゃんとお約束する、その一方で、税を財源とするものについては、これは最低保障年金という形で、所得比例年金である一定額の年金額に達しない人たちを中心に重点的に税を投入していくという形で、公的年金に求められる老後の安定的な生活を行うために必要な基礎的な所得を保障するという役割を果たさせていただこうというものであります。

 今の現行制度は、年金と保険料がいわば水割りのようになっておりまして、高額の年金をもらっている人も低額の人も、同じ税金が投入されているという形になっているわけであります。税の役割として、果たしてそうした高年金の人まで税を投入する必要があるのかどうか。限られた財源の中で必要な人に本当に重点的に手当てを行っていく、やはりそのためには、私どもが考えるように、年金額の少ない人、そうした人を中心に私どもは税を投入すべきであるというふうに考えております。

 また、この所得比例年金、民間の年金と全く同じじゃないかというふうに言われましたが、私どもは、この所得比例年金については、財政方式については基本的に賦課方式というものを考えております。そういう意味では、急激な物価変動、そういったものに対してもきちんと対応ができます。民間の保険ではこうした急激な物価変動というものには対応ができません。

 私ども、そうしたことはあってはならないし、起こってはほしくないというふうには思っておりますけれども、今の膨大な財政赤字というものを考えますと、もし政府がちょっとでも国債管理政策を誤れば、まさに国家破綻というような、国債が紙切れになるというようなことも絶対起きないとは言えない。そういう場合に、民間保険では、これはそうした急激な物価変動のリスクをとることはできない。しかし、賦課方式による所得比例年金であれば、そうしたリスクはきちんとカバーをできる、そういった意味で私どもは民間保険とは全く異なるというふうに考えております。

福井委員 基本的に違うわけですから、その哲学、精神が違うので、結論も違うわけですけれども。

 相当簡単な計算で、どうしてもすとんと納得がいかないのは、先日福島委員からの御質問にもありましたが、今は、二〇〇〇年は現役と高齢者との関係は三・六人対一人なんですね。三・六人で一人を支える。しかし、二〇五〇年とか二〇八〇年になると、一・四人で一人を支えるということになって、それこそラフリースピーキングですね、四十年間納めて二十年間もらうということを考えると、二〇五〇年以降は少なくなるんですね。今は、五〇年ぐらいまでは三・六人とか、二〇二〇年でも二人で一人を支えるということになれば、ちょうど二人で一人を支えると、四十年間と二十年間ですから、そこでバランスになるわけですけれども、それ以降、二〇二〇年以降になりますと、もらう金額が少なくなるので、民主党案で御主張の保険料負担と給付とをできる限り等価というのは非常にミスリーディングであるということは、先週も福島先生がおっしゃったので、私の方からも同じ指摘をさせていただくことにとどめたいと思います。

 最後に、よくぞおっしゃっていただいた納税者番号制度について、ちょっと御質問させていただきたいと思います。

 まるで攻守ところ逆になったような感がいたしますけれども、しかし、思い切って納税者番号制度というふうに御提案をいただいたのはすばらしいことだというふうに思います。しかし一方、取り漏れは絶対ないと古川先生がおっしゃったのが記憶にありますけれども、社会保険庁と国税庁の徴収事務についていろいろ比較しますと、社会保険料は一カ月単位、それから国税は一年単位と、徴収する基本的な考え方がまず違うことと、それから人数も違うんですよね。申告所得税納税者のうち、事業所得者は百九十六万人、約二百万人。一方、国民年金保険料の納付対象者千八百三十六万人、約二千万人。二百万人、二千万人、十倍違うという、その数も違う。

 そしてまた、国民年金保険料の未納も今現在三百二十七万人いらっしゃるそうですけれども、最高で二年間ですから三十二万円ということになる。そういう少額の取り漏れに対してでも事務をしなければならないということとか、社会保険庁では、二十八兆円の保険料を徴収して、四十兆円の給付を御存じのようにしているわけですけれども、その事務費が三千億円ということで、この効率を考えると決して低くない。

 とにかく、国税庁、税務署と社会保険庁を合体して、絶対に取り漏れのないように、税務署だったら何百万人だけれども、統合したものは何千万人を相手に、もう物すごい、低所得者も相手にして、絶対に取り漏れのないように制度を設計していく、そして、それが役所ですから、人員配置、組織論、IT化の詳細に至るまで設計をしなければならないということ、これはちょっと考えただけでもすごい大変なことだと思います。

 スウェーデンの例なんかは余り詳しく知りませんけれども、九百万人という国家国民の総人口で、もともとサラリーマンが多い国ですし、それからコミュニティーベースで所得が捕捉されている。だから、社会保険庁じゃなくて市町村に戻せという議論になるかのごとくのような、そういう社会的な背景もあるということで。

 スウェーデンと日本とは全く違うということで、納税者番号制度の前提としての、先週おっしゃった社会保険庁と国税庁の統合による徴収の一元化について、どういう事務的なイメージをお持ちなのか、ちょっと聞かせていただきたいと思います。

五十嵐議員 ありがとうございます。

 納番制、何か突然出てきたように言われましたが、私ども、実はかなり以前から納番制を主張しています、民主党の主張としては。歳入庁構想も前から主張をしております。

 今の状況を前提にして、課税最低限二百五十万円以下は納税申告しなくていいんだというような状況を前提にしていると、先生のような御懸念があるかと思いますが、ここでは完全に、将来の年金の給付が所得に応じた保険料納入とリンクをしてまいります。むしろ積極的に申告納税が行われて、私は、日本人という国民は、税制度そのものが正直な申告納税を前提としていると思いますけれども、私は、実はかなり正直な納税が積極的にむしろ行われるというふうに思っておりまして、この制度で大幅な課税漏れが起きるというふうには考えておりません。

 そしてまた、徴税の効率性は、まさに徴税のノウハウというのはむしろ国税庁の方がかなり持っておりますから、それは効率的に行えるだろう、こう思って、制度全体の設計として、それほど大きな徴税漏れがあるということは前提にしなくていいだろうというふうに判断しておりますし、歳入庁構想というのは、私は極めて合理的な仕組みだというふうに判断をいたしております。

福井委員 ちょっと時間がなくなってしまいましたですけれども、実は、有料道路でも徴収漏れというのはあるんですよね。社会的捕捉率というのは、一〇〇%ということはあり得ないというのが現場における実感でございます。しかも、一番低いところの最低保障年金のところ、この辺のところから、このゼロ点から、善意を前提とした制度設計というのはこれはなかなか厳しいなというのが、この図を見たときの正直言った私の感想です。

 生活保護は、だからこそ、うるさいと言われても、役所がやり過ぎるところは是正しなければなりませんが、その生活をチェックさせていただいている。役所が、何という名前なのか知りませんけれども、役所の方が、あなたはなるほど保険料を掛ける能力なかったね、今でもないねということを証明しなければならないというには、余りに今の事務に負荷をかけ過ぎるし、そうじゃないんだったら善意を前提とした制度設計になるということで、ここのところはなかなか悩みかなということで悩みを強調させていただいて、そしてまた、この一時間、お伺いしたいもののうち半分も聞けませんでしたけれども、これだけ素直で、これだけ純粋無垢な私でも、民主党案に賛成しましょうというふうにはなかなか洗脳されなかったものですので、またひとつ一緒に勉強させていただきたいと思います。

 時間が来ましたので、以上で終わらせていただきます。ありがとうございました。

衛藤委員長 次に、原田令嗣君。

原田(令)委員 自由民主党の原田令嗣です。

 民主党案に対して御質問を申し上げたいと思います。

 民主党は、みずからの年金改革法案を提出するに当たり、すべての年金を一元化し、不公平感をなくすのだということを繰り返し主張されております。そして、それとともに、透明で持続可能な年金制度をつくると言っておられます。

 この後半の部分は、我々与党も同じように認識を共有しているというふうに思うわけでありますけれども、問題は、どのようにこの年金制度を持続させるかという点であります。国民の年金についての最大の関心は、やはり保険料を幾ら払って年金を幾ら受け取れるのかということだと思います。先ほどは、枠組みだけを示せばよいという御説明もありましたけれども、やはり、給付と負担の関係を数字で明確に示すということが、民主党案のタイトルにもなっております、国民が安心して暮らすことのできる社会を実現するための公的年金制度だと思います。でも、残念ながら、民主党が提出された法案を読む限りでは、数字が入っているのは三カ所だけであります。これでは国民は安心できませんし、透明といっても、余りにも透明過ぎて、透け透けで、中身が全然見えない法案だというふうに思います。

 私は、必ずしも明確に理解できない点を中心に幾つか質問させていただきたいと思います。

 まず、民主党案にはこれは明記されていませんけれども、繰り返し説明で、二〇〇七年から三%程度の年金目的消費税を開始すると説明されておりますけれども、再度御質問させていただきます。年金目的消費税三%で三十年間程度は年金財政は健全な状況を維持できるという説明を繰り返されておりますけれども、いかなる根拠でそのような計算ができるのか、具体的な説明をお願いしたいと思います。

五十嵐議員 繰り返しの御答弁になるかと思いますが、二〇〇七年から三%の消費税を目的税としていただくことになります。そうすると、政府案よりかなり急速に年金の積立金というのは積み上がります。実際に、正確に言うと、二・数%で当初は足りるんですね。したがって、積み上がりが早くなります。しかし、実は二〇三〇年から収支差が出てまいりまして、二〇三五年以降はかなり厳しい収支差額になるわけであります。

 しかし、先ほど枝野提案者から御説明がありましたように、途中の二十年、二十五年といったところでも、余裕を持って先に積み上げていくものですから、かなり余裕を持って支払いをすることができ、当面、三十年間の間は全く御懸念が要らない。これはさまざまなケースを試算しながら、政府の数字がもとでありますけれども、いろいろなパターンを計算し尽くした結果、十分それでいけるということで提案をさせていただいているわけでございます。

原田(令)委員 今の御説明もわかったようなわからないようなところでありますけれども、これから本当に年金財政が大変になるのは団塊ジュニア世代が年金受給者となる二〇五〇年以降からだというふうに私は認識しております。

 民主党のこれまでの御説明では、三十年間は何とか維持できる、二〇五〇年ですか、までは積立金を取り崩しながら何とかやっていくということですけれども、一体、将来に向けた制度の持続性という点では、どのようにお考えになっているのでしょうか。責任ある御答弁をお願いしたいと思います。

枝野議員 私どもは、今申しましたとおり、積立金を消費税をお願いすることによってきちっと積み立てた上で、団塊世代、そして団塊ジュニア世代が給付を受けるピークをにらんで計画的に取り崩す。したがって、政府のように、そのずっと先である百年かけて取り崩すというやり方よりも、積立金の運用と取り崩しの計画性によって、そこを乗り切るための余力は、政府案よりずっと比較的に大きい。

 それからもう一つは、所得比例年金で、基本的にはその部分は賦課方式でお願いをするという新制度を立ち上げることによって、団塊世代についてはもうほとんど新制度は関係ありませんが、団塊ジュニア世代の給付のかなりの部分は新制度に基づいて、これは賦課方式ですから、給付は安定をするという形になっていきます。

 そして、その上で、しかし年金の目的としての最低保障、つまり、所得が中堅から下の方の皆さんに対しては税できちっと補っていくという部分のところをしっかりとやっていくという、そういう……(発言する者あり)ちょっと黙らせてもらえませんか。うるさくてしようがないんですけれども。黙らせてください。黙らせてくれないと答弁にならないわ。黙らせてくれませんか。

衛藤委員長 静かに。御静粛に願います。

枝野議員 黙らせてください。黙らせてください。委員長。答弁できない。黙らせてください。

衛藤委員長 御静粛にお願いします。

 どうぞ、御答弁を。

枝野議員 黙らせてください。まだやっていますよ。黙らせてください。全く話と関係ないことでやり合っていられたんじゃたまらないよ。黙らせてください。答えられない。答えの途中で邪魔になって答えられない。黙らせてください。

衛藤委員長 御静粛に願います。御静粛に願います。

 どうぞ、答弁。

枝野議員 答弁させていただきます。

 そういった形をつくらせていただいておりますので、私どもの方が、五十年先に制度の枠組みとしてその最低保障年金、賦課方式で足りない部分の最低保障を税でということについて、しっかりとした枠組みを出させていただいておりますので、何しろベアゼロが続いている世の中で、賃金がこれから三十年、五十年にわたって毎年二・一%も上がっていくということを前提としている政府案に比べて、圧倒的に長期にわたる信頼性は高いというふうに考えています。

原田(令)委員 ということは、二〇五〇年以降に消費税を上げる可能性も極めて高く考えられるということでありましょうか。

枝野議員 今から四十五年以上先の話であります。それまでの間に、これは政府も、例えばプライマリーバランスをとるとかいろいろおっしゃっております。我々が政権をとらせていただいても、プライマリーバランスをとるということは早期にやらなきゃならない。少なくとも、二〇三〇年、二〇五〇年のころまでにプライマリーバランスがとれていないような財政をやっていたら、それこそ財政は破産をして、超ハイパーインフレが起こって、国は破綻をするということになってしまっている。自民党政権が続いて、そうなっていないことを期待したいと思いますが。そういうことになってしまいますので、プライマリーバランスをきちっととっていかなきゃならない。

 そして、これから三十年、五十年先というのは、残念ながら今よりも人口が大幅に減っていく社会であります。人口が減っていく社会に入っていったときに、財政をどういうふうに使っていくかというのは、これまた新しい、一般財源の使い方として新しい時代に入っていかざるを得ないというふうに思っています。

 従来のように、人口がふえていきますから社会資本整備のところには多額の投資を、せざるを得なかったし、やってきたのが私たちの国でありますけれども、人口が減っていけば、新しい道路をつくっても、そこをだれが歩くのか、走るのかという時代にこれから急速に入っていくわけでありまして、これから三十年、五十年かけて、そもそも財政の一般的な使い方というのは今と大きく変わっているのは当然だろうというふうに思っていますので、そこのところをかみ合わせていけば、消費税を上げないということの方の必要性が高ければ、そうしたインフラ整備の部分のところを大幅に減らすことによって、三十年、四十年、五十年と段階的に一般財源の使い方を変えていくことによって最低保障年金の財源は確保できると思っています。

原田(令)委員 ちょっと、私、余り理解できなかったんでありますけれども、理解できない点がいっぱいありますので、次に質問をさせていただきます。次に、保険料の負担の問題について質問したいと思います。

 自営業者などの方の場合には、現在の厚生年金のように二分の一の事業者負担がありませんので、例えば所得等に、民主党の言い方では一律公平にという言い方になるんでしょうか、そのまま一三・五八という保険料を掛けるのでしょうか。そうすると、現在の負担の一万三千三百円よりかなり重い負担となる場合もあるというふうに思われますけれども、自営業者の方の保険料をどうするのか、これは制度の基本的な部分、根幹部分ですので、改めてその考え方を伺いたいと思います。

古川(元)議員 自営業者の保険料負担につきましては、現行の国民年金におきまして、所得にかかわらず定額でやっている……(発言する者あり)委員長。

衛藤委員長 御静粛に願います。

古川(元)議員 よろしいですか。

 現行の国民年金で所得にかかわらず定額の一万三千三百円。ですから、自営業の人ですと、夫婦いらっしゃいますと二人で二万六千六百円。これが、今の公的年金の加入者の状況等調査によりますと、保険料未納者の約六割が、この保険料率が極めて高くて経済的に支払うのが困難だ、そういう回答があるわけなんですね。それはやはり、今の定額保険料率に問題があるんじゃないか。ですから、私どもは、所得比例という形で所得に応じた、少ない所得の人はそれに応じた少ない負担をしていただくような、そういう制度にしたいというふうに考えております。

 今、自営業者、非常に負担が重くなるんじゃないかというお話がございました。私どもは、この保険料率については、基本的な考え方の一番のベースは、それは被雇用者、雇われている人と、サラリーマンと同じような一律ということを考えられるというふうには思っておりますけれども、ただ、先日も申し上げましたが、現行制度においてもこの被用者における事業者負担の性格が明確でないんですね。これについて政府の説明では、これは被保険者の負担ではなくて企業が制度に基づき負担するものというふうにしております。これが事業者負担の性格だということにかんがえますと、実は、被用者個人の保険料率は今一三・五八だと言っておりますが、実際にはこれは六・七九%、これが負担している分だということも考えられるわけでありまして、そういう考え方をとるとすれば、これは自営業者についてもこの半分というものを、保険料率を適用するということも考え方としてはあるのではないかと思っています。この辺については、この事業主負担部分のあり方というものについてきちんとした議論というものをやはりしていかなきゃいけないんだろうというふうに思っております。

 そしてまた、重くなる、仮にこうした半分の保険料であっても、確かに今よりも保険料が大きくなるという方はいらっしゃると思います。

 しかし、その方は、負担がふえればその負担に応じた給付というものも当然多くなるわけでありまして、負担だけ重くなって給付が少なくなるということではありません。今までの定額の一万三千三百円はなくなって、夫婦であれば二万六千六百円がなくなって、そして夫婦で本当に所得がどれだけあるのか、その所得に応じて定率の負担をしていただいて、その負担に応じてきちんと所得比例年金は給付が行われるという形でありますから、私は、この点については自営業者の皆さんにも御理解をいただけるものというふうに考えております。

原田(令)委員 次に、保険料の基礎となる所得等の範囲について伺いたいと思います。

 自営業者の方の場合には必要経費を除いたものを考えるとの御説明がありましたけれども、必要経費を除いた結果、例えば千円の所得の人にも、学生のわずかなアルバイト収入やお年寄りの年金などにも保険料を求めていくのでしょうか。この辺についてお答えください。

五十嵐議員 基本的には、総収入から必要経費を除いたものに賦課をするということになります。

 ただ、前にも御説明いたしましたけれども、サラリーマンとの負担が、どれが公平かというのは議論のあるところでございますから、それについては、もし我々の案を認めていただければ、与党さんとも協議をした上で、協議をすれば、妥当な線が出てくるかと思います。

 基本的には、先ほども、何回も申しますけれども、総収入から必要経費を引いた部分について賦課すべきだ。(発言する者あり)やじに答える必要はないわけでありますけれども、私ども、その点についても回答しておりまして、所得把握はきちんとできると考えております。

原田(令)委員 さまざまな所得を想定した場合には、やはりその公平な把握というのが非常に重要だというふうに思います。

 先ほども、損得でなく公平が重要だという説明がありましたけれども、それを担保しているのが民主党の場合には納税者番号制度の導入だというふうに思いますけれども、納税者番号制度については、金融性資産にかかわるものだけでなく、商取引にも広げたものを検討すると受け取れるような御説明もありましたけれども、具体的にはどのような納税者番号制度を検討するのか。これは国民にとって極めて関心の高い問題でありますので、具体的にその考え方を伺いたいと思います。

五十嵐議員 納税者番号制度は、御存じのとおり、いろいろな所得、最近は一人の方でもいろんなタイプの所得を得られるようになっております。ただ、ここへ来て、足の速い金融等に源を持つ所得については、二元的所得税論というものも出ておりまして、別途それは切り離して課税をすればいいではないかという話もありまして、我が党の中でも実は二元的所得税論を主張する方がかなり多くなってきているということも事実であります。

 納税者番号制度はさまざまな意味で必要だというふうに思っておりますけれども、その納税者番号制度をこの年金制度にどのように使うかについては、なお緻密な検討がやはり必要だろうというふうに思っています。

 しかし、基本的には年金番号とリンクしたような番号制度をつくることによって、極めて正直な申告というのが行われて、私はむしろ本体の所得税等の把握についてもいい結果をもたらすものだ、こういうふうに思っているわけです。

原田(令)委員 次に、民主党案では保険料の未納問題は生じないと御説明がありました。その点について質問をしたいと思いますが、一元的に税と保険料を徴収するので未納問題は生じないと断言されている理由を、改めて御説明を伺いたいと思います。

古川(元)議員 未納、未加入の問題については、今、国民年金の未納、未加入が問題になっているが、原因はどこにあるか。

 先ほど申し上げましたように、一つには、やはり今の定額の保険料というものが低所得の人にとっては極めて重い負担になっている。

 もう一つは、やはりこれが私は一番の、未納の最大の理由だと思いますけれども、制度に対する不信感が極めて大きい。今の年金制度に保険料を払っても、どうせいつか破綻してしまってもらえないのではないかという、制度に対する不信感があるからこそ払う気にならない。やはりそういう意味では、まずこの未納、未加入の問題を解決するためには、制度に対する信頼を回復することが必要である。

 その制度に対する信頼回復とは、政府・与党のような、現行制度を何とか手直しして、負担と給付の関係だけ現行制度の枠内でバランスをとろうというものではなくて、私どもが考えるような、年金制度を一元化して新しい仕組みをつくっていく、その中で負担と給付の関係が明確な所得比例年金と、そして低年金の人たちを中心に最低限の所得、年金を保障する税による最低保障年金等、そういう新しい制度をつくることによって制度の信頼を回復する。まず、それがこの未納、未加入問題を解決する第一歩だと思っています。

 そうした制度に対する信頼があって、かつ、徴収体制といたしましても、今、社会保険庁とそして国税庁に分かれている、この徴収部門を統合して歳入庁とすることによって、税と保険料、これは役所の側からすれば性格は異なるかもしれませんが、国民の側からすれば全く同じでありますから、そういう意味では、税と保険料、一括して徴収できるような仕組みをつくっていく。

 そして、今回の制度の中では、私どもは、すべての人たちが二十歳になって、自分の所得があるかないか登録、申告さえすれば、それ以降所得がなければ、所得はない学生やあるいは主婦の人は、所得がないという形で申告をすればいいわけであります。それだけで、私どもは、きちんとそうした申告をした人についてはちゃんと最低保障年金も含めた新しい制度を適用していくということになっているわけであります。

 私は、国民がそうした制度に対する信用があって、信頼があって、にもかかわらず、そもそもそうした申告もしないというふうに国民を性悪説で見るのか、それとも、国民がきちんとした制度に対する信頼がまず確保されれば、それで老後に対する保障もされるのであれば、それは何もそんな難しいことをやるわけじゃないです。ちゃんと申告をするというだけであります。ですから、そういうところだけの問題であれば、私どもは、そういった意味では、実質的にこうした未納、未加入という問題は生じないというふうに考えております。(発言する者あり)

衛藤委員長 御静粛に願います。

原田(令)委員 静かにしてください。

 古川委員がおっしゃった制度に対する信頼性というのが私も極めて重要だと思っております。民主党案で見ますと、その制度に対する信頼性を担保しているのは、やはり所得をきちっと把握するという、さっきの納税者番号制度だと思うんですけれども。

 現在、いわゆる税務調査というのをいろいろなところで国税庁を中心にやっておりますが、個人事業者や事業所得者に対して、平成十四年度に実施された、いわゆる税務調査、個人課税部門の実地調査。私が聞いたところでは、調査件数が、約七万件調査した、怪しいと思うところを。そうしたら、六万件を超える申告漏れがあったということなんですね。

 ここにもやはり公平性というのを考えないと制度の信頼は成り立たないと思うんですけれども、今、こうした事実を踏まえていけば、保険料の未納問題は生じない、人間性善説に立って生じないということを古川さんは言っておられますけれども、私は必ずしも納得できないというふうに思います。

 そして、未納が起きた場合にその未納者について最低保障年金を支払うのかという新たな問題も出ますけれども、新制度でも未納者に対しては税財源による最低保障年金を支払うのかどうか、これを明確にお答えいただきたいと思います。

枝野議員 原田先生はいつから野党になられたのかよく知りませんけれども、野党が今のような指摘をして政府を追及するのは非常によくわかるんですね。税をしっかりと捕捉していないと、今の、現行の所得税などの課税が、脱税をしている人が、申告漏れがたくさんあって、今の徴税が非常に不公平ではないか、そういうのをどうするんだというのを野党が政府に対して指摘をされるんならば非常によくわかる話なんでありますが、あなた自身が政府・与党の一員であるにもかかわらず、今我々の徴税システムは不公平でありますと堂々と国民の皆さんに向かっておっしゃられるという、その感覚が私には全く理解できないのであります。

 おっしゃられるとおり、どんな制度をつくったって、一〇〇%ということはあり得ないわけです。どんな法律をつくったって犯罪を犯す人はいるわけですから。問題は、税という仕組みと一緒にすることによって、徴税システムと年金保険料を納めていただくシステムが一体化をするわけですから、まさに年金については、将来の権利を受け取るものとの関係ですから、契約、権利性にかかわってくるところですが、税の部分のところとパッケージで違反になりますから、それは脱税という話のところで、今と同じように脱税する人にはしっかりとしたペナルティーを科すということで、今の年金だけで別にやっていることよりもずっと違反をする人の数は、大幅に、けた違いに減るというのは間違いない。それとも皆さんは、今の、現行の徴税システムでは大変たくさんの人たちが脱税をしていて実は不公平なんだということをお認めになるんでしょうかということであります。

 その上で、それでももちろん世の中には違反をする人がゼロという制度にはなりません。自民党の幹事長が、みずから自分の選挙はがきに公務員の名前を使ったりするような堂々とした違反をされるような国でありますから、残念ながら、違反をする人はゼロにはなりません。そうした人たちには税で補われる最低保障年金についてペナルティーを科すということになるのは当然のことだと思っております。

原田(令)委員 今のお答えでも、ちょっと私が聞き漏らしたのかもしれませんけれども、最終的に未納者は少しは残る可能性はあるというふうに答えられましたね。その方たちには最低保障年金はどうされるんですか。これについてお答えがなかったように思いますけれども。

枝野議員 今ちゃんとお答えさせていただきましたが、そういう方については、それは税で賄われる最低保障年金について未納であった部分について、つまり違法な行為をしていた部分についてペナルティーを科されるのは、これは当然だというふうに申し上げました。

原田(令)委員 今そういう説明がありましたけれども、いずれにしても、年金の目的消費税三%程度で賄えるのかどうかという点、そしてさまざまな所得をすべて公平に把握できるのかという点、そして保険料の未納問題は生じない、基本的にそういうふうに断言されている点、にわかに納得できない部分があります。

 このあたり、民主党の方は、すぐ年金制度改革調査会で議論して決めていくという御説明がありますけれども、まさに制度の根幹部分にかかわる問題でありますので、やはり明確な説明がないと国民がそのよしあしを判断できないのではないかという点を強く指摘しまして、私の質問を終わらせていただきます。

衛藤委員長 大口善徳君。

大口委員 公明党の大口でございます。

 きょう、やっとこうやって審議ができる。本当に国会議員としてこういう審議ができることの喜びを感じさせていただいております。そういう点で、よく民主党さんもこれに応じられたな、どういう理由で応じられたのかわかりませんが、本当によく応じていただいたな、そういうことを感謝しております。

 それで、私はこの民主党の案を見せていただいておりますが、ビラができているんですね、こういうビラ、号外ができております。その中で、私、やはり一般の方々が知りたいことがあります。一般の方は、なかなか民主党の答弁者のように難しい理屈というのはわからないんですね。やはり、そういう点では、わかりやすい表現で私は一般の国民の立場で聞いていきたいと思うんですね。そういう立場でわかりやすく答えていただければなと思います。

 それで、民主党さんの案の中で、例えば被保険者の資格、これは年齢、これがどうなっているのか、あるいは、既裁定者あるいは新規の裁定者の給付水準がどうなっているのか、それから物価賃金スライド、スライド調整、それから支給開始年齢、また遺族年金、障害者年金、子育て家庭の支援、それから現行制度の改革はどうなるのか、五年間という中で。こういうことがこの民主党さんのチラシに書かれていないんですね。だけれども、やはり一般の庶民にとってみればそういうことが知りたいわけですよ。どれぐらい受け取れるのか、将来どれぐらい給付水準があるのかということを、それが一番知りたいところなわけです。

 そういうことで、例えば既裁定あるいは新規の裁定者の給付水準、これを枝野政調会長は、四月七日に、五〇%は維持する、こういうふうにおっしゃったわけでございますけれども、今民主党が出されている書類の中であるいは説明資料の中で、そういう五〇%を維持すると、政調会長がおっしゃったわけですからすごいことです、これは。そういう説明資料やそういうものがあるのかどうか、そして、そういうものを出されないのかどうか、お伺いしたいと思います。

枝野議員 先ほどの御質問の中でもお答えをさせていただきましたけれども、私どもは、政府案の前提となっている数字に基づいて、給付については政府案と基本的に同じ考え方というのはやむを得ないだろう。つまり、五〇%程度、モデル世帯で下げる。そして、我々も財政計算をするに当たって、政府案と同じ財源を確保しよう、そのために何が必要かと、こういう計算をしたわけであります。その結果として、保険料率を上げていくのにかえて、消費税を三%お願いする、二〇〇七年からお願いするというやり方で政府案と同じ財源を確保できるということを、我々の財政計算で成り立っているわけであります。したがいまして、私どもは、政府案が本当にモデル世帯で五〇・二%が維持できるということであるならば我々の計算でも五〇%は維持できる、こういう計算になりますということを申し上げております。

 ただし、この前提となっている数字は、先ほど来申し上げておりますとおり、今、残念ながら、ベア・ゼロの時代が何年も続いたりしている中で、例えば所得が毎年二%程度ずつ上がっていくなどという非常に幻想に満ちた前提に基づいている数字で、政府の仮定計算、財政計算が成り立っております。

 その財政計算そのものの前提を我々は到底信用できないというふうに思っておりますが、残念ながら、それ以外の数字に基づいて我々は財政計算をすることはできませんので、政府案の数字を前提にした同じだけの財源をきちっと確保できるという説明の仕方にしかなりませんが、本当に五〇%を維持できるのかということは、むしろ、政府にお尋ねをいただいた方が正しい答えが出てくるんじゃないかと思っています。

大口委員 ですけれども、一般の方は、五〇%維持ということをおっしゃっているわけですから、五〇%を維持してくれるんだな、こう思っているわけですよね。だから、やはり根拠があるんだろうというふうに受け取るのが僕は普通だと思いますよ。それを、政府の方から数字が出ないからというふうな言いわけは一般の方によくわからないと私は思います。それはいいです、それで。もう時間がないものですから、済みません。

 そうしますと、給付水準についてそうおっしゃるわけですが、民主党の改革推進案ということで、改革案じゃなくて改革推進案ということでございますが、その九条の一項におきましては、これは賦課方式だ、こういうことでございますね。二項におきましては、これは概念上の拠出建て、こういうことでございますね。

 スウェーデンと皆さんの案とはどうなのか、比較はあると思いますが。その中で、スウェーデンの場合は、しっかりと自動収支均衡装置というものを設けておりますし、また概念上の拠出建ての方にも積み立て的なものも用意されているし、あるいは積立金も用意されている。こういうことで、いろいろ仕組みをきちっとされております。そういうことで、結構仕組みが明確になっていて、それで五〇%ちょっとを維持しているわけですよ、スウェーデンのは。ところが、民主党さんのこの九条の一項、二項を見ましても、どうもそこら辺がわからないということでございまして、そこをお伺いしたいと思います。

古川(元)議員 先ほど来我が党の枝野議員からも御説明させていただいておりますように、私ども民主党の新制度というのは、所得比例年金と、そして最低保障年金、この二つから成っているんですね。所得比例年金については、これはみなし確定拠出というような形で、そして、それに税を財源とする最低保障年金を加える。

 先ほど来から枝野議員がお伝えをしておりますように、私どもがベースとする数字というのは、政府が出している数字をベースにして我々も試算をさせていただいておりますから、政府が言うモデル年金、そもそもこのモデル年金というもの自体の概念にも私どもは疑問を持っておりますけれども、あえてそれを使って、それで比較をすれば、これは……(大口委員「仕組みを聞いているんです、仕組みを。だから、それはもういいですから。もう何回も聞いているから。仕組みを」と呼ぶ)いや、ですから、私が言っているんです。ちょっと聞いてください。(大口委員「一項、二項について聞いているんです」と呼ぶ)一項、二項は――五〇%というのは、最低保障年金と所得比例年金を組み合わせた形でちゃんと約束をするということをお伝えしているわけであります。

大口委員 今、枝野政調会長からもいい質問だと言っていただいたものですから、どんなに精緻な仕組みが聞けるかなと思ったんですよ。スウェーデンはこうやって仕組みをつくっているわけですよ。私はそこを聞きたいんです。答えてください。

古川(元)議員 私ども、この一項と二項の話については、マクロの中で見れば、これは、保険料総額、その年に入ってきたもののマクロのところで保険料総額に見合うような形で給付は決めていくと。また、二項のところでは、それぞれの受給者の立場から見ると、その受給者が生涯にわたって払い込んだ保険料総額、それに見合った給付を行うものとしていくと。そういう意味で、この一項と二項というのは、マクロで見た財政の部分と、そしてそれぞれの受給者のところで見たその受給額、そこのところをこの一項、二項でお示しをさせていただいているというものであります。

大口委員 そうすると、自動収支均衡装置というのは考えていないんですか。

古川(元)議員 この一項と二項との間を結ぶものとしてスウェーデンのような形の自動調整の仕組み、何らかの形のことは考えていかなければいけないというふうには思っております。

 ただ、そこにつきましては、これはいろいろな考え方もあろう。政府の案で今出されているようなマクロ経済スライドというようなのも、ある種の、これは多分、大口委員御自身がよく御理解だと思いますけれども、スウェーデンの形をあたかもとったように見せて実はかなり違う、そういう調整の機能を入れようとしているわけであります。

 私どもは、このマクロ経済スライドのような、極端にこれから二十年ぐらいの今の年金受給者に対して負担を重くするような調整というものはいかがかというふうに思っておりますが、そうではなくて、私たちのはスウェーデンの形に見習ったものにするのか、あるいは、この点については、これは給付にも直接影響してくる話であります。そして、それは、私ども所得比例年金にプラスをする最低保障年金、それをどれくらいにするかというところともつながってくる話でありますから、こういう問題につきましては、私ども一党でというわけではなくて、国民的な議論を踏まえた上で、具体的な、そうした詳細の、そういう調整機能については決めさせていただきたいというふうに思っております。

大口委員 ただ、このチラシによりますと、「支払った分に比例して受け取る」というようなことで、支払った分はちゃんともらえますよと。「比例して」と書いてあるところがポイントなのかもしれませんが。そこら辺は正直に、均衡装置というものはやはりまじめに考えて、ここは真剣に出していただきたいな、こういうふうに思っております。

 それで、次に、最低保障年金についてお伺いをしたいと思います。

 最低保障年金が満額支給されるのは、所得等の比例年金の年金額が幾らぐらいまでなのか、これは本当に知りたいところなんです。だって、受け取る側にとってみれば、最低保障年金が満額受け取れるかどうかということは最大の関心事ですよね。それから、全く支給されなくなる人たちというのはどういう所得層なのか。ここがはっきり答弁していただいていないんですね。それで、最低保障年金というのはそもそもどういうふうに考えるのか。最低保障年金の哲学が見えないんですよ、民主党さんの案は。

 要するに……(発言する者あり)いやいや、見えないんですね。それで、哲学と、どこまで最低保障年金が満額受け取れるかどうかという、またその折り目がどうなのかというようなこと、そして、それがゼロになるのかと。哲学とその数字が、これが実はリンクをしているわけなんですね。

 それで、第十条で見ていきますと、二項の方では、「最低保障年金の支給額は、高齢者等がその生活の基礎的な部分に要する費用を賄う」、こういうことで、高齢者等が基礎的な部分、これを保障するために支給するんだ、こうなっている。ところが、一項におきましては、「高齢者等の安定した生活に必要な額に満たない受給権者に対して支給する」、こういうふうになっておるわけです。ですから、非常に所得の低い方について対応するという性格のものなのか、あるいは、モデル年金についても最低保障年金というものを使うとおっしゃっているわけなんで、そこら辺の哲学をちょっとお伺いしたいと思うんです。

    〔委員長退席、宮澤委員長代理着席〕

古川(元)議員 最低保障年金についての哲学は何度も申し上げていると思いますけれども、これは老後の、ここでも書いてありますように、基礎的な生活を賄う部分に要する費用を賄うことができるような額というものを前提に考えていきたいというふうに思っております。

 それで、最低保障年金は、これは我々は、税金で賄うわけでありますね。ここの部分について、今、政府・与党の出している現行の制度では、この税というのが、基礎年金の三分の一、それを増税によって二分の一まで引き上げるというふうに、与党の方、示されておるわけでありますけれども、では、なぜここの部分に税が入ってきているのかというのが、そこの性格というのが非常に不明確なわけでありますね。

 ですから、前から私ども、ここで申し上げておりますように、そうした税の役割として、不明確な今のような、すべての人に、年金額の多い人も少ない人も均一に入れるという、税を投入するというわけではなくて、公的年金の役割というものが、老後の最低限の生活に必要な、そうした基礎的な所得を保障するものであるという性格にかんがみれば、そこの部分に足らないような人たちを中心に重点的に税を投入していくという形で、私どもは、最低保障年金というものを入れさせていただきたい。

 その最低保障年金を入れる水準、そういうことを何度も御質問いただいておりますけれども、私どもは、先ほどから言っておりますけれども、モデル年金、モデル世帯というものを使うこと自体、そもそもこれが現実的ではないと思っておりますが、政府が出しておるのとあえて比較をするためにということで申し上げれば、このモデル年金世帯において、大体、所得代替率で五〇%が確保されるような形で、所得比例年金にプラスする形で最低保障年金を加えさせていただきたい。

 私どもの所得比例年金では、現行の保険料率を前提にいたしますと、それだけでは所得代替率がモデル年金の場合ですと五〇%には行きません。ですから、そこの五〇%を維持するために、その最低保障年金をプラスして、大体、モデル年金においてその五〇%が維持できるような、そういう制度設計をさせていただきたいというふうに申し上げているわけでございます。

大口委員 今中堅のサラリーマン層の方について、あのグラフを見ますと、トータルの額ですよ、額としては、要するに角度がちょっと落ちているんですね、額として……(古川(元)議員「落ちてないよ」と呼ぶ)いやいや、落ちているんじゃないですか。だって、このグラフを見たら、ちゃんと角度が落ちているでしょう。これは、落ちていないというのと、落ちているのと、どういうことかわからないです。あのグラフを見れば落ちていますよ、角度が、真っすぐじゃないですよね。(発言する者あり)いや、真っすぐなんだよと言うが。そうすると、最低保障年金がそこに加わるから、額としては、その分折れた形で受け取るわけですよ、皆さん、額としては、トータルの額としては。所得比例年金だけでいえば、これは比例ですから真っすぐですよ。だけれども、最低保障年金がくっつくわけですから、入ってくるわけだから、額としてはやはり、中堅所得者というか、中堅サラリーマンとか、落ちているんですよ。だから、そういうことで……(発言する者あり)いや、グラフに、そういうふうに見えるわけですね。

 それで、その中で、私は、この最低保障年金が、モデル年金まで投入しますというのは、わかりますよ。モデル年金よりも所得の高い人、どれぐらいまでにこの最低保障年金を加えるのか、モデル年金よりも、そこはどうなんですか。

枝野議員 先ほど来繰り返し申し上げておりますが、私たちは、国民の皆さんに幻想を与えてうそをつくのはよくないというふうに思っておりますので、例えば三十年先、四十年先に今と比べて物価がどう上昇しているのかとか、それから賃金がどう上昇しているのかだなんということについて、幻想に基づいた数字で計算をした数字をお示しをして、それで、ああそうか、それはよかっただなんていう幻想を与えるのは間違っているというふうにそもそも考えております。

 ただ、制度の仕組み方、枠組みの組み方として、私どもが申し上げておりますのは、一つには、先ほど申しましたとおり、政府の言うモデル年金世帯で所得代替率五〇%を確保したいというふうに申し上げて、そのためには、一三・五八%の所得比例年金では、所得代替率、この方々は五〇%になりませんので、最低保障年金が必要であるということを申し上げております。

 そして、その上で、私どもは、給付額の総額はほぼ政府案と同じような形になるように、そのための財源を消費税にお願いをするのか保険料率の値上げでお願いをするのか、ここが政府案との決定的な違いだというふうに申し上げておりますので、ほぼ政府案と同じような形で所得代替率が置かれるような制度設計をする。その結果が、一つの例として、モデル世帯では五〇%になるということを申し上げているのであります。

 したがいまして、所得が上がっていくごとに政府案でも所得代替率は下がっていく計算になっておりまして、そこのところで、どれぐらいのところまで最低保障年金が入ってどれぐらいから入らなくなるのかというのは、まさにその時点における、その時点におけるというか、その時点までに納めてこられた、現役時代の四十年間のトータルの所得分布がどうなっていくかということによってすべて変わってくるということになってきますので、確定的な数字を出すことはやはりこれは国民にうそをつくということになりますが、基本的には、モデル世帯のような中堅層から少し上のところまでは、最低保障年金が入らないと政府案と同じぐらいの所得代替率は確保できませんので、政府案の前提に基づけば、中堅世帯のところには最低保障年金で上乗せをする、こういう結論になるということです。

大口委員 これは、政策決定の問題だと思いますよ。だから、その中堅サラリーマン層またはそれよりも所得の若干上の人に最低保障年金を入れるかどうかということは、これは計算というよりも、民主党さんの方でこういうふうに考えるんだと。だから、それが最低保障年金の性格づけに不可欠なわけでしょう。ですから、そのモデル年金に、入れるということはわかりました。そのモデル年金よりもどれぐらい延びるのかということは、民主党さんで決めていただければいいんじゃないですか、それは。だって、そこら辺は一番皆さん関心のあるところでしょう。最低保障年金が入るのかゼロになるのかと関心のあるところでしょう。だから、そこがはっきりしないというのは、最低保障年金の性格について我々は非常に理解ができないなという感じがするわけです。

 では次に、今回、年金保険料について、概して欧州、ヨーロッパは、我が国よりも年金保険料が高いわけでございます。それはもう委員も御案内のとおりでございまして、例えばドイツ、これは一九・五、事業主負担が九・七五。フランスが一六・四五、事業主負担が九・八。イギリスが二一・八%、これが事業主負担が一一・八。スウェーデンが一八・九一%、事業主負担が一一・九一。こういうことで、今、日本が、これが一三・五八でございますけれども、事業主負担は六・七九なわけですね。それに比べますと、やはりヨーロッパが非常に事業主負担が高い状況になっています。ヨーロッパは高齢化が非常に進んでいますので、これは、年金保険料をもう今既に相当上げなきゃいけない、こういう現実になっているわけです。

 日本の将来につきましても、二〇二五年を見ますと、高齢化率が二八・七%ということで、イタリアが三五・九%ですが、あと、ドイツが二四・六%、フランスが二二・二%、スウェーデンが二五・四%、イギリスが二一・九%ということで、高齢化率がかなり急激に日本もアップしていくわけでございます。

 そういうことで、今事業主負担が六・七九を、今度十四年かけて九・一五にさせていただくわけでございますけれども、それは、今もう既にヨーロッパはその水準を超えている状況になっているわけですね。

 そういうことからいきますと、一三・五八%、この保険料は据え置いて、それを上回る部分は、これは保険料じゃなくて、それをすべて消費税で賄う、こういうふうになりますと、これは、確かに企業は、今中小企業は大変な状況にあることも、よく答弁者の方からもお話があります。ですけれども、これが保険料を据え置いて消費税となりますと、個人だとか家計の方に相当負担がいくわけですね。それはいかがなものなのかと。

 それで、アメリカは、高齢化率が一二・三%で、二〇二五年には一八・五%ですので、アメリカの場合は事業主負担が六・二%ということなわけでありますけれども、そういう点で、日本は欧州と比較するというのがやはりいいのかなと。

 そして、消費税について、逆進性ということは、枝野政調会長が、むしろ保険料の逆進性は高いということをおっしゃった。だけれども、それは、六十二万円以上の七%の部分なんですよね。それより前の部分は、逆進性はやはり消費税の方が高いんです。これはもう、私が言っているわけじゃなくて、いろんな学者がそういうふうに言っております。

 ですから、そういうことを考えますと、逆進性が高い消費税、そして、企業の負担というものではなくて、これが個人と家計にかかってくるということについては、どうも私、理解できないんですね。

 よろしくお願いします。

五十嵐議員 まず私どもの主張をよくお聞きいただきたいと思うんです。私どもは、消費税改革をいたします。インボイスを入れますし。ですから、それによって複数税率をとろうと思えばとることもできますが、私どもは、もう一つ、所得の低い層については、カナダ方式で、一律、一定額を還付するということも視野の中に入れておりまして、それによって低所得層に対する逆進性はかなり大幅に緩和できるというか、逆進性はむしろないという状態にまでできるというふうに思っております。

 我々が、今のままの消費税制度をそのまま維持するのではなくて、消費税改革を徹底的にやって逆進性対策をきちんとやるのだということを、まずお考えいただきたいと思います。

 その上で、保険料と消費税とどちらが個人にとっていいかという問題でございますけれども、私は、日本の置かれる立場、今、中国という巨大労働市場がそばにある、そして日本の国内でも、どんどん厚生年金から国民年金へアウトソーシングされている、雇用形態が正規雇用から派遣労働等に移っているということから見て、雇用を守ろうとすれば、それは消費税で見た方がよほど国民にとってはいいと。

 それから、企業負担になるというけれども、企業負担はしょせん物価という形で転化をされるんです。そういう意味では同じなんですね。一安心だ、企業負担だから個人には何の関係もないんだということには実はならないのであります。

 そういうことで、まず我々が考えているのは、雇用を大切にすることだ。

 十四年十一月に経産省が発表した年金制度改革によると、当初予定された厚生年金の保険料率を二〇%まで引き上げると、失業率は最大一・三%上昇し、雇用は百万人削減される、こういうことになっているわけです。

 今回これを一三・八%への上昇にとどめたとしても、それを比例的にこの数字を使って計算しますと、一%失業率が悪化し、七十五万人の雇用が失われることになります。そちらの方が非常に大きな影響があり、かつ結果として、政府が言っている今の年金制度も維持できなくなるということを私どもは申し上げているわけであります。

    〔宮澤委員長代理退席、委員長着席〕

大口委員 時間がもう来てしまいました。

 もう一つは、年金積立金を二〇五〇年までに使い切ってしまうと、二〇五〇年から実は三人で二人を支える大変な時代が来るというにもかかわらず、保険料は上げない、そして消費税の率もあいまいだ、こういうことですので、そこら辺の危惧も、私、示させていただいて、私の質問とさせていただきます。

 ありがとうございました。

衛藤委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時五分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

衛藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。五島正規君。

五島委員 この委員会、さまざまな経過の中ですが、野党の側からこの中身について本格的な質疑がまだされていない、そういう状況でございます。

 そこで、かなり一般論から入っていきたいと思うわけですが、今日、日本の年金制度は、空洞化している、崩壊の危険性があるというふうにも言われています。事実、それを見ていく中において、現在、国民年金あるいは厚生年金で、未加入というのが大変ふえてまいりました。

 例えば、都道府県別に見ましても、国民年金の納付率、例えば一番低いところで沖縄県の三八・七%しか国民年金の納付者がいない。高いところで富山県あたりの七三%台というところが一番高いという状況でございまして、約半数の自治体において六割を割っているというふうな状況になっています。さらに、市町村別に見てみますと、例えば、鹿児島県の天城町などにおいては国民年金の納付者が三〇%を割っているという状況にございます。

 なぜ、このように納付率が悪くなったのか。当然、この間の経済的な状況もございます。雇用の変動もございます。さらには、現在の年金制度に対して、現役世代が自分たちはもうもらえないかもしれないということで入らないということもあるでしょう。しかし、もう一方で、この年金からの離脱者の数から見てみますと、一つ指摘することができます。

 すなわち、平成十三年度から十四年度の間に非常に納付率が落ちている。例えば、鹿児島県においては一四・六%、宮崎県においては一六・七%、あるいは都道府県別に見ました場合に、先ほど挙げました鹿児島県の天城町、平成十四年度で二九・五%でございますが、平成十三年度は六〇・五%である。すなわち、平成十三年度から十四年度の間において、大きく年金の納付者が落ちている。

 この一つとして、この間において年金の徴収が都道府県から、社会保険庁の職員が厚生労働省の職員、国家公務員としてやられ、社会保険庁が直接収納するという制度に変わった。そのことによって大きく落ちているのではないかというふうに思われるわけでございます。

 もう一つ大きな問題は、この間においていわゆる免除者の数を大幅に、半分に減らしてしまった。免除者から排除された人の納付率は一五%、そういう状況の中で、年金からの締め出しがこの時期に大きく起こった。このことが一つは、現在、国民年金の未納者が大幅にふえた原因ではないかと思うわけでございますが、この点について社会保険庁はどのように認識しておられるのか、お伺いしたいと思います。

薄井政府参考人 お答えを申し上げます。

 平成十四年度の保険料の納付月数自体でございますけれども、これはほぼ前年並みの約一億三千六百二十七万月ということでございますけれども、納付対象の月数、納めるべき月数の方がかなりふえたということもございまして、平成十三年度から平成十四年度にかけましての国民年金の第一号被保険者の保険料納付率でございますが、十三年度が七〇・九%でありましたのが、十四年度は六二・八%、約八・一ポイントの低下ということになっております。

 この納付率の低下の要因でございますけれども、今御指摘ございましたように、平成十四年度に市町村から国へ収納事務が移管された、その際の対応におくれがあったという部分も若干あろうかと思いますし、それから、地域によりまして、特に地方ではございますけれども、地域に根差しました民間の納付組織というものがあったわけでございますが、この活用ができなくなった、こういうことによる影響もあったというふうに考えているところでございます。

 ただ、要因として非常に大きい部分を占めますのは、これも今御指摘ございましたように、平成十四年度に免除制度の改正というのを行いまして、従来の特例免除、個別の事情を見てというところがかなり限定をされまして、基本的には所得をベースとして判断をするというふうに改まりましたものですから、申請全額免除者数というのが前年度に比べましてほぼ半減をいたしているところでございます。このように、免除から外れた方の納付率が低いということがございまして、先ほど申し上げました八・一ポイントの低下のうちの約半分ぐらいは、この免除制度の見直しによる影響というふうに見ているところでございます。

 また、これも御指摘ございましたけれども、厳しい経済情勢の中で、離職等によりまして国民年金の第一号被保険者になられる方がふえている。これらの方の納付状況も相対的に低い、こういう要因も低下要因の一・五割程度、こういうふうに見ているところでございます。

五島委員 納付金額はそれほど落ちていないとおっしゃるわけですが、この間において、いわゆる一号被保険者が厚生年金からどんどんと締め出されて移らざるを得なかった。それが十分に一号被保険者として納付者にならなかったということを考えたら、年金全体として見ていった場合に、間違いなく大変な空洞化をしている。

 しかも、できるだけ影響力を小さく言いたいんでしょうが、例えば、東京都をとってみましても、確かにこの十三年度と十四年度との間に、納付率は、東京都の場合は四・五ポイントしか落ちていません。しかし、もともと東京都は平成十三年度においても国民年金の納付率は六一・八%。それが五七・三%まで落ちている。半数強にまで納付者がいない。あるいは、大阪、京都、兵庫、そうした大都市をとってみましても、軒並み、要するに全国どこ一つとして納付率についてゼロというところがない。一けた、二けたの落ち込みをしているわけでございます。青森に至っては一七・八ポイントも落ちている。

 こうした状況というものがある中において、徴収制度の変更というものが余りにも厚労省の省益を優先した選択の結果ではなかったのか。このことは、大臣、今大臣が医療保険制度の一元化の問題もお話しになっています。例えば、国民保険、これを都道府県に移した場合に保険の徴収率はどうなるのか、落ちないのかという議論もございました。まさにその例がこの年金問題で起こっている。

 これは明らかに、全体的な大きな問題がほかにたくさんありますが、この厚生労働省のとってきたやり方によってこれだけ納付率が落ちたということだろうというふうに思います。後ほど大臣の御意見もお聞きしたいと思います。

 もう一つは、昨日の新聞にも出ておりましたが、新規の法人の厚生年金の加入、二割が未加入という数字が出ています。今、厚生年金の適用事業所数とそれから雇用保険の適用事業所数の推移、これは本来なら同じであってしかるべきだと思うわけですが、どれぐらいの差があるのか。その差は縮小してきているのか、拡大してきているのか。社会保険庁、お答えください。

薄井政府参考人 いつからお答え申し上げるかはございますけれども、例えば平成十年度と平成十四年度で比較をさせていただきます。

 平成十年度の厚生年金保険の適用事業所は百六十九万でございますが、平成十四年度は百六十三万弱ということでございまして、約六万ほど減っております。

 一方で、雇用保険の方でございますが、同じく平成十年度は百九十九万カ所強でございますけれども、平成十四年度は二百二万カ所ということでございます。雇用保険の方も、直近は減っているわけでございますが、平成十年度から十三年度にかけましては若干ふえてきているという状況でございます。

 この厚生年金と雇用保険の適用事業所でございますけれども、これは御案内のとおりでございますが、厚生年金の方の強制適用事業所の方は、法人の事業所で常時従業員を使用するもの、それから、製造、建設等の所定の事業を行います個人の事業所で常時五人以上の従業員を使用するものというのが厚生年金の方の強制適用事業所でございます。一方で、雇用保険の方の強制適用事業所は、基本的には、法人の事業所か個人の事業所か、あるいは事業の種類というものを問わずに労働者を使用する事業所とされているところでございまして、両方完全には一致しないものであるということは御理解をいただきたいと思っております。

五島委員 個人事業所が約倍あるというふうなことを言いたいのかもわかりませんが、今の説明は極めて不親切な説明でございまして、では、法人事業所の中における雇用保険の適用事業所と、それから厚生年金の適用事業所、この差はどうなっているか、お答えください。

薄井政府参考人 法人ということだけでとらまえましてということよりは、先ほど来御説明申し上げておりますように、例えば厚生年金の方でいきますと、雇用保険が適用にならない、役員しかおられないような事業所であるとか、あるいは船舶所有者であるとかというのが、厚生年金の方が逆にプラスになる部分がございます。

 一方で、雇用保険の方しか適用にならないものといたしましては、従業員五人未満の個人事業所であるとか、それから、厚生年金保険の方は一括適用ということで複数の事業所をあわせて一つとして見ている、雇用保険の方はそれが幾つかに、複数でカウントされる、こういった部分、あるいは常用的な使用関係にない従業員しか使用しない法人事業所であるとか、そういう幾つかのものがございます。

 そういうふうな、それぞれのいわゆる重なりの部分の差でこういうふうなものになっていると考えているところでございますが、私どもといたしましても、本来社会保険の適用対象になるにもかかわらず未適用となっている事業所、これにつきましては、定期的に登記簿の閲覧等によりまして把握をする、あるいは、厚生労働省になりましたので、労働保険サイドとのデータ突合というのをやりまして、把握できたものにつきまして、加入勧奨状を送るなり、あるいは社会保険労務士の巡回説明による加入促進、こういうことで取り組んでまいっているところでございます。今後とも努力してまいりたいと考えております。

五島委員 現状の年金制度に対する国民の不信感、その具体的なあらわれとしての年金未加入者あるいは未加入事業所の増加というものに対して、その真実をきちっと把握して、それに対して社会保険庁が評価をできないということでは、これはどうしようもないんだろうと思います。

 今、薄井さんがいろいろおっしゃいましたけれども、私自身もこの問題については何度か経験があります。

 例えば、全国で競輪場や競馬場で働いている人たち、この方々はほとんど建前上は日々雇用の形をとっておりますが、何十年間も同じ仕事をしている。そして、高知県の例でいいますと、二つの場、すなわち競輪場と競馬場を兼務している労働者がたくさんいる。その人たちに対して、厚生年金と雇用保険との適用を長く組合が要求してこられた。雇用保険は、両方足して一月の雇用日数が二十日を超えているということで雇用保険の対象になった。厚生年金の方は、さまざまな理由をつけて、勤務表がそれぞれ同一の場所で一つで管理できなければだめだとかなんとかいう理由を挙げて、これまでも加入を拒否してこられました。

 また、事業所の経営が非常に悪化してきている中において、厚生年金の加入者を国民年金に移していくことについても、企業経営の危機を救うためにはやむを得ないという形で目をつぶってきたというふうな例も、過去においてこの場においても何度か指摘されてきました。

 そういうことも含めて、現実にこの年金制度から離脱してきている人が大変ふえてきた。さらに加えて、今日の雇用の問題です。多くのリストラされた労働者がいます。その方々は、厚生年金の加入から国民年金の加入に押し出されざるを得ない。しかし、そのことによって結果的に無年金者になっている、そういう人たちがふえている。

 加えまして、四百八十万とも、二〇一〇年には五百万になるとも言われておりますフリーターという存在。確かに、みずからの職業を選択することに対する多様性の時代です。そういうフリーターという働き方をする人、そういう形で社会に参加される方の存在、それがいいとか悪いとかいう前に、こうしたフリーターという人たち、常用労働者の平均所得に比べても約三・五分の一ぐらい、そういう状況の中で、このフリーターの人たちは年金に入っていないのが圧倒的に多い。五百万ですよ。約四年分ある。言いかえれば、四十年間の年金の支払わなければいけない人々の約一割にも相当しようかという人がフリーターという形で存在している。

 そういうふうな状況が相まって、一つは、国民の中でこの年金制度はもうもたないのではないかと言われているというふうに思います。

 年金制度の問題については後ほどまた御質問と意見を申し上げますが、こうした状況について、大臣、どうお考えなのか、まずお伺いしたいと思います。

坂口国務大臣 まず、国保の問題でございますが、ここが十三年から十四年にかけまして急激に加入者が減った。それは委員が御指摘のとおりであると私も思っております。国がやるということになりましてから急激に下がった。これは、下げてはならぬと大分言っていたんですけれども、現実問題として下がった。

 考えてみれば、それぞれの県内、地域におきまして、市町村役場の皆さん方が中心になっておやりになっている場合と、そして、国が一律で、それぞれの都道府県の中で一本で把握をしてやっておりますのとは、それはやはりきめの細かさが違いますから、どうしてもこういう結果になってしまう。私は、そうした意味では、この問題は大変失敗だったと思っております。

 しかし、ここをどう回復せしめるかということでありまして、それは、今まで市町村でやられてきたのと同じような形で、それぞれの地域の皆さん方の専門委員をつくって、そして皆さん方にそれぞれの地域を担当していただくということ以外にやはり方法はないんだろうというふうに思っております。そうしたことで、この問題は、今までの過去のさまざまな経緯も踏まえながらやっていく以外にないというふうに思っております。

 それから、フリーターのお話でございましたね。フリーターの数え方はいろいろありまして、我々は、約二百万、こう見ているわけであります。しかし、内閣府あたりは、この二百万に、失業者でありますとかあるいはその他の部分も含めて四百万、こう言っているわけであります、派遣業等も含めてだと思うんです。

 定義の仕方にかなり違いがございますが、フリーターと言われる人の中の約三割ぐらいは普通の、いわゆる正規の人と同じ時間帯を働いておりまして、そして保険等にも入っている人も多い。しかし、七割の人はそうではないという現実があるわけでありまして、これは、現在の経済動向というものが影響していることはもう当然でございますし、経済の今後の動向によって変化をするものというふうに私は思っておりますけれども、それにいたしましても、やはり常用雇用というものをふやしていかなきゃならないことだけは紛れもない事実でございます。それに対して努力をしなければならないというふうに思っております。

 いわゆる試し雇用というふうに言っておりますけれども、皆さん方に何カ月か働いていただいておりましたときに、そこで、その雇用主におかれては、ぜひともひとつ、この人はいい人だということがわかれば、それは常用雇用にしていただくという努力をやはりしていただかなければいけないというふうに思っております。

 そのことが我々としては現在一番急務のことだというふうに思っておりまして、全国のハローワークに対しましてもそうしたことを言っているところでございますし、これから常用雇用をいかに拡大していくか、これは経営者の皆さん方にもお考えをいただかなければならないことでございますので、経営者の皆さん方にもお願いをしていきたいと思っているところでございます。

    〔委員長退席、鴨下委員長代理着席〕

五島委員 大臣が国民年金の徴収問題について問題意識を共有していただいたのは、大変ありがたいと思います。

 問題は、だから、ここで新たに地域の中で徴収する人を雇えばいいじゃないかということではなくて、もう本当に、社会保険庁の職員を再度地方自治体に移していく、そして地方自治体が年金を徴収するということを考えるべきではないかというふうに思います。この問題は、また改めて議論することがあればさせていただきたいと思います。

 問題は、実は、こうした状況の中で、簡単にフリーターやパートの労働者を常用雇用に広げてほしい、そういうふうにお話しになるけれども、今の経済の状況と、そして雇用の状態は随分変わってまいりました。一人の労働者が一つの事業所において、一つでなくてもずっと厚生年金の適用事業所ばかりで仕事をするということをモデルとして考えることはできない時代になってきています。

 そうなってきますと、いかに厚生年金の加入労働者を減らすかということが、企業の経営として、人件費対策としてやはり当然出てくるんだろう。そのことをどう見直していくのかということの議論をやらなければなりません。これは率直に言って、この問題については、政府案にも、そして、残念ながら民主党案の中にも触れていないところです。

 しかし、現実問題として、今、厚生年金の加入者、労使折半という制度がいいのか。それとも、これからパートの労働者や派遣労働者もふえてくるという中において、本人の保険料は本人の所得において払い、事業主の負担すべき保険料については、労災保険のように例えば人件費の何%という形で徴収するという方法も含めて考えていかないと、社会保険料を負担することから逃れた事業主は人件費の六%、七%というものが得をする、そういうふうな制度のままで今の時代にもっていくのかどうか。私は、残念ながらこの問題について年金制度の中で議論していないという状況の中においては、改めて議論すべき大きな課題ではないだろうかというふうに申し上げておきます。

 何よりもこの年金制度の大きな問題は、この年金制度、現状においてどのようなシステムをとろうとも、昭和三十六年から国民年金ができ、皆年金制度ができてまいりました。そして、年金制度というものは、これまで経過した中において、いわゆる賦課方式になってこざるを得なかった。これは、言いかえれば、制度として積立方式をとろうが賦課方式をとろうが、過去の日本というのは、繰り返すインフレに対応して年金制度を守ってきたという形の中では、賦課方式にならざるを得なかったんですね。それは御理解いただけると思います。

 ところが、今、インフレの時代ではなくデフレに入ってまいりました。もう一つは、少子高齢化の時代に入ってまいりました。少子高齢化の時代における年金制度を全く更地に家を建てるような議論をするとするならば、賦課方式はなじみません。言いかえれば、この人口構造の激変に対しては積立方式をとらざるを得ない。

 しかし、過去の制度に対して、それを保障しながら今積み立て方式に切りかえていこうということであれば、少なくとも、現在の年金の積立金に加えて、厚生年金で約四百五十兆、国民年金で約四十兆という巨額なお金が天から落ちてこない限り、この過去債務というのは償却できない。

 とすれば、形態はどういう形をとろうとも、この年金制度というのは運用としては賦課方式をとらざるを得ない。それが少子高齢化ということに最もふさわしくない制度であることをわかりながら、この賦課方式という形で運用せざるを得ないというところに、今日の最大の問題があるのだろうというふうに思っています。

 そこで、この過去債務の四百五十兆円、あるいは国民年金を入れて約五百兆のお金をどう処理するか、どう減らしていくかという、それぞれの知恵を絞っておられるんだと思います。

 そして、政府案では、言葉はマクロ経済モデルだとかなんとかおっしゃっているけれども、年金の給付率、これもまた、モデル年金なんて、もうそんな人おりもしない名前をわざわざ使っているんだけれども、モデル年金であろうと、あるいは単身の男性の年金であろうと、共稼ぎ世帯であろうと、一律に現状の年金の給付水準を約一五%下げる、それを計算のカウントで計算をしている。現在の年金の給付額総額からいいますと、一五%下げるということは、そこにおいて約六兆円ぐらいの金が浮いてくるということなんでしょう。

 そして、もう一方で、年金の保険料の引き上げをやっていく。これは賃金を、何%でしたか、何か二%前後賃金が上がっていくだろうという一つの仮想値の上に立って、年間一兆円ぐらいずつ十四年間で十四兆円ぐらい上げていこうという数字で、そうなれば、現在の水準でいって約二十兆円ふえるという単純な話なんですが、実際に見てみますと、二〇〇五年から二〇二五年の間に、政府の計算でいいますと一三・五八%から一八・三%に保険料は上がってまいります。

 一方、二〇〇五年から二〇二五年の間に、いわゆる、これは政府統計を使っておりますから十五歳から六十五歳という数字ですが、その数字を見ても一七%の人口減があります。したがいまして、この保険の保険料の引き上げが、現在水準に直して約三四・七%の負担の増になったとしても、トータルなその人口の減ということを換算してみますと、トータルで一四%の現在水準における収入増、すなわち、それだけで計算すると約二兆三千億円。

 しかし、その間における六十五歳以上の人口は四三・五%ふえていきます。それを計算して、さらにその六兆円の給付の削減を入れたとしても、二〇二五年の段階において保険財政全体を眺めた場合、現在と全く変わらないんです。現在よりやや悪化しているかもしれない。

 それは、なぜそういうことになるかというと、やはり少子高齢化という問題に対して、これをどうするかということについて十分な議論をなさっていないから。

 確かに、政府は、人口減が一・一四%ぐらいになるだろうということで、推計している合計特殊出生率を一・三九として仮置きの数字で計算しておられます。ところが、その一・三九の出生率を維持するためにどうするのかということについての具体的な政策は全くありません。このことは極めて重要でございます。

 すなわち、賦課方式でやっていくのであれば、この人口問題に対してはどう対応するんだ。マクロ経済モデルでは、一五%の給付を減らすのに、現役世代の人口の減に対して〇・六、高齢者の平均余命の伸びに対して〇・三ポイントという数字を当てていますが、私は、もう長寿化といいますか、平均余命の伸びというのは大体生物学的にいってそれほど大きくこれまでのように伸びていかないんだろうと思っておりますが、現状における少子化の問題というのは、これは非常に変わってくるんだと思っています。

 大臣もこれが変わると大変だというふうに発言されておりますが、ここで私が指摘しておきたいのは、人口問題あるいは出生率の問題というもの、何かたまたま起こってくる数字であって、努力目標ではないかのような議論がされていることです。

 これは、実は少子化社会対策基本法の議論の中でも議論された内容でございますが、一つのモデルの問題でございまして、それはたまたま、そのとおりになるかどうかはわかりません、わかりませんが、モデルとして出されたものとして、二〇〇〇年に人口研から一つのデータがございます。

 このモデルに基づいて計算しますと、保育の機能を社会が五〇%上昇させると、出生率を一・六前後まで上げる効果がある。それに加えて、家賃や教育費の水準を三〇%低下させると、出生率をさらに一・七まで上昇させる効果がある。さらに、それに加えて、出生率の労働力抑制効果、これを弱体化させる、すなわち、女性が結婚してキャリア性が失われたり、仕事の継続ができないということを何とか社会全体として改善するならば、出生率を一・八七と一・九八まで上昇させる効果がある、こういうふうに書いてある。

 この数字のとおりになるかどうかはわかりません。しかし、少なくても南欧を除く欧米諸国、それから、この間急激に進んできているアジアの少子化の問題、これを加え比較して考えた場合に、一定のこうした政策目標というものを立てて、どのような出生率を維持するかということは、これからの厚生労働の行政として非常に大きな課題であると思っている。

 そこのところに裏づけをされていないような中において、いずれの制度をとろうとも、賦課方式という、インフレ、ハイパーインフレでもつくろうというのなら話は別です、そうじゃない限り、賦課方式、人口が減れば間違いなくデフレです。

 今の計算で二〇五〇年の人口で九五%の危険率の中において、人口は一億二千万から八千万、その差四千万になる。一つの国、北朝鮮が二つ、それぐらいの人口が減るか減らないかというこの課題がある。その大きな要素をどうするのかということを政策的に追求せずに、年金制度を安定させられるはずがない、理屈の上で。

 そうだとすれば、この年金議論で、与野党で、何か、早いこと採決せい、百年もつんだなんてでたらめ言っていますし、そんなことをするよりも、やはり雇用の問題、あるいはそういう出生率を改善するための政策、そういうものをきちっとした裏づけの中において議論していかない限りは、この年金問題、本当の意味において決着はつかないのではないか、そのように思うわけですが、その点について大臣の御意見をお伺いしたいと思います。

坂口国務大臣 大変大きい基本的な問題を幾つか御質問いただいたというふうに思っております。かなり認識を共有する面がございますし、御指摘のとおりだというふうに思った点もあります。

 一番最初の、税か保険料かのお話がございました。これは消費税が導入されますときに非常に大激論をしたところでございまして、大きな議論でございました。今御指摘のように、保険料を上げれば企業の方はそれは困るから、これは企業が正規の雇用をだんだん抑えるのではないかという御意見がそのときにもございました。

 しかし、一方、消費税をどんどん上げるということになれば、そうするとそこには消費の抑制が起こる、国内消費の抑制が起こることによって経済に与える影響が大きい、それがはね返って一体どうなるのか、その全体像を見て決めないことには、そこはいけないという議論が繰り返し繰り返しそのときにも行われたわけであります。両方ともそれぞれの一短があるというふうに、私は率直にそう思っております。

 現在消費税に頼っております欧米、特にヨーロッパ諸国が大きな失業率を抱えているというこの現実を見ましたときに、これは消費税だけの結果ではない、私も率直にそう思います、どういう経済をつくり上げて、どういう産業をつくり上げていくかということにも私は関係しているというふうに思いますけれども、そうしたことを考えましたときに、ただ、保険料が若干上がるから、そのことだけで経済に影響を与えるというふうに見るのは、一方的な見方ではないかと私は思っております。そこは議論のあるところでございますから、よく議論をしなければならないところだというふうに思います。

 それから、人口問題のお話でございますが、ここは私も御指摘のとおりというふうに、率直にそう思います。

 この人口が、本会議でも申し上げましたとおり、一・一になって、それから下がらないと仮定をいたしましても、二〇五〇年までに三千五百万人減るわけであります。二〇五〇年から二一〇〇年の間に日本の人口は四千六百万ぐらい減りまして、そして残りが四千六百万ぐらいになってしまう、そういうことでございますから、これは大変な問題でございますので、この少子化対策というのを、これはどうしても最優先課題としてやらなければならない日本の課題である、私も率直にそう思います。

 この少子化対策に、しかし限られた予算の中で何をすれば一番効果があるのかということについては、やはりこれは、一つ一つの政策とそれが与える影響というものについて具体的にチェックをする必要があるというふうに私も思います。

 私も、スウェーデンに参りまして、スウェーデンの勉強をいろいろさせていただきましたが、一つ一つの政策によって、この政策を実現したらこれだけの合計特殊出生率が上がるはずだという数字を出して、そしてやっております。また、それがそういうふうにならなかったら、それはなぜかということの検証をいたしております。日本もぜひそれをやるべきだというふうに思っておりますし、人口問題の中でやはりそういう考え方を導入すべきだということを実は申しているところでございまして、その御指摘は私も素直にそのままお受けをしたいというふうに思っております。

 しかし、それは今後ずっと続けてやらなければならない話でございますから、それができるまで年金をこのままでほうっておいていいかといえば、そうではないわけであります。現在の年金制度は制度として、これは改革を加えていかなければ、一年一年、それは次の世代、若い世代の負担を大きくしていくということになりますから、そこは、年金制度は年金制度として改革を加えながら、やりながら、一方において少子化対策というのを積極的に進めていくということをやらないと私はいけないというふうに思っております。

 それからもう一つ、過去債務の問題にお触れになりました。

 これは大変詳しい数字を挙げてのお話でございましたが、現在の賦課方式というのは、これは常に過去債務を抱える方式だと私は思っております。ゼロになるということはあり得ない方式だというふうに思っております。そうした意味で、この過去債務を今後どのようにしていくかということを、転がしながらその中でだんだんと、少しでもこれは解消をしていくということを行わなければなりませんが、一方においてまた新しい過去債務が発生してくることも事実でございますので、この賦課方式が持っております一つの特徴と申しますか体質と申しますか、そうした面もあるというふうに思います。

 この賦課方式はインフレを前提としてきたのではないかという御指摘でございますが、確かに、過去はインフレを前提にしてきたこともあったかもしれません。しかし、賦課方式でありましても、結局のところは、実質賃金が上がればこれは解消のできる話でございます。一・一ぐらいのところを、以上ということを今立てておりますし、これから人口が減っていきますから、総賃金上昇率でいえば〇・七ぐらいな数字を出しているわけでありまして、そんなに現実離れをした数字ではないと私は思っておりますし、そのぐらいの賃金上昇率はできる経済、産業というものをやはり育成していくということが、そのときそのときの政府に与えられた課題ではないかというふうに私は思います。

 そうした意味で、どういう年金の制度であれ、それを支えるさまざまな政策というのが必要でございますが、そのさまざまな政策の中で一番大きいものが、この実質賃金の問題とそして少子化の問題である。

 実質賃金は、御指摘のように、これから人口が減っていくわけでありますから、労働生産性が上がらないことには実質賃金は上がらないわけでございます。現在G7の中で、日本の労働生産性は最下位のところにある。ここを、この十年間、十五年間の間にそれを少なくとも現在の一五〇%ぐらいにしていかないといけない、プラス成長にならないということでございます。

 そういうことを念頭に置きながら、すべての政策立案をしていくということが求められている、そういう背景があっての年金制度であり、年金制度だけですべてを、それを解決することはでき得ないということは、御指摘のとおりであるというふうに私は思っております。

五島委員 共通してのところと、かなり意見の違うところとあるわけですが、まず、ほうっておくわけにいかない、そのとおりです。

 しかし、二〇二五年、政府の案を、現在政府がお持ちの人口推計、賃金動態、計算してみてください。現状よりも年金財政が改善しているのかといえば、していません。すなわち、問題を二十五年間このまま固定させるために現在の政府の案というのはつくられているというふうにしか受け取れません、財政的にはですよ。その間に、給付については一五%の抑制、そして負担については三五%以上の引き上げということが入ってまいります。

 私はそのことがどうのこうのと言うつもりはないんです、この議論の中で。

 なぜならば、昭和三十六年にできた年金制度です。年金制度というのは、現状の経済状況と給付との間においてタイムラグが約四十年ぐらいあると言われている。高度経済成長政策の幕あけとともに、この皆年金制度が始まったんです。そして、その過程の中において、決してインフレヘッジを大前提としてつくったわけじゃないとしても、この間においてずっとインフレあるいは賃金の上昇が続いてまいりました。その中で賦課方式をとらざるを得なかったという経過はある。それを否定してみたところで、そうせざるを得なかったんだから、そうなんだろうと。

 しかし、今ここへ来て、少子高齢化ということが最大の問題になった場合に、この賦課方式は非常に弱い。

 そうすると、これをどういうふうな形で緩和するんですかという問題があるんだけれども、これについてはまだ、ではこうすることによってどう変えます、天から金が降ってこない限りにおいては、過去債務の処理の問題は、保険料を引き上げるか、それとも税を投入するか、給付を削減するか、三つに一つしかないわけですし、それを併用するしかないんです。

 私は、何も税でやれと言っているわけではない。私は、税でやっても、年金制度を税でやっている国もある、間違いだとは言いません。残念ながら、日本の国においてなぜ年金制度を税にできないか。国民が政府を信用していないからです。国民が政府を本当に信用し、その制度に自信を持っておれば、年金制度も税でやっても構わないでしょう。税を七〇%払っても、その制度に対して信頼感と国民の合意があれば、それはそれでもいいでしょう。しかし、日本という国はそうはなっていない。そうだとすると、この三つをどのように使うかしかないのは、これは事実です。あれはいけない、これはいけないという話ではないでしょう。

 ただ、現状の中において、では、そういうふうなものを使いながら、二〇二五年あるいは二〇五〇年、人口が四千万も減りますと、GDPに直して、消費がGDPの六〇%としますと、人口が四千万減りますと実際上GDPは二五%落ちてくる。人口減を理由としてデフレが進行する可能性もあるわけですよ、今の日本。

 そういう状況を考えた場合に、この年金制度の問題を議論するにしても、なぜこの問題が入り口にならないのか私は不思議だということを申し上げておる。少子化対策の必要性の問題については大臣も合意していただいた。そうであれば、この問題について、百年もちますとかなんとかいう、だれも信用していない、言うている人も信用していないような言葉の投げ合いはやめて、現実的な議論をやるべき時期ではないかというふうに思います。

 そして、もう一つ、大臣がおっしゃいました税と年金との違いについて言えば、逆に政府の方が、あるいは厚労省の方が、税と年金との違いを混同しておられるのではないだろうかと思われます。

 すなわち、税であれば、これはすべての人が一定負担するコストとして強制徴収というものもあり得るでしょう。しかし、保険料という制度において強制徴収をやるんですか、強制徴収が成り立つんなら、それは税でいいんじゃないですかと。少なくとも都道府県によっては三十数%しか年金を納めていないような現状の中において、これを強制徴収というふうなことにやっていった場合に国民の同意を得られるんですかということを考えた場合に、この年金の保険料を徴収するについて、税とは違う以上、強制徴収なんというようなことでできるはずがないじゃないか。

 そうだとすれば、どうしてこの年金制度に対して国民の支持を得られるようにするか。その過程の中に、毛ほどの厚労省の省益を守るためとか、そういうとんでもないことが入っていたり、あるいはあのグリーンピア問題、私はグリーンピア問題についても、厚労省に最大の犯人があったとは思っていません、私個人はですよ。なぜ、土地を買ったりトンカチで保養所をつくったりすることが還元融資事業だったんだろうかとは思います。

 しかし、基本的には一部の政治家や地方の議会が中心になってグリーンピアをつくらせてきたというのは、これは歴史的な事実です。場合によっては、厚労省が抵抗したけれども押し切られたという事実もありました。しかし、仮にそうだったとしても、そうした事業に対して国民の同意をどう得るかという努力をしないままに進めてきたという事実、それはあったと思います。そういうことがあったら、この年金制度というものはもうもたないところまで来ているんだろう。

 そういう意味において、再度お伺いしますが、年金の保険料が未納者が多い、だから強制徴収だという何か短絡的な発言があるわけですが、これは税との関係においてどうお考えなのか、お伺いしたいと思います。

    〔鴨下委員長代理退席、委員長着席〕

坂口国務大臣 税か保険料かというお話から始まりまして、いろいろと御意見をお聞かせいただきました。

 五島委員がお感じになっていることというのは、かなり集約された御意見だというふうに私も思っておりまして、これは、先ほども御指摘になりましたように、政府案であれ民主党案であれ、共通して突き当たる問題を御指摘になっているというふうに私は思っております。

 今、いろいろの年金制度が世の中に出ております。確かに、政府が出しております案を私たちは今御提示申し上げているわけでありますが、これに一番近い案というのは、連合の案が一番近いと私は思っております。ここは接点がかなりあるというふうに思っております。ただし、連合さんの場合には、二〇二五年まで計算をされておりますから、そこから先を一体どうしますかという話が残っている。

 我々の問題といたしましては、先ほども御指摘になりましたように、高齢者の雇用をどうするか、女性の雇用、賃金をどう男性と同じようにしていくかといったような問題をどう解決するかということによって、もう少し、保険のパーセントにも影響を与えてくる。連合の案というのは、ある程度歩み寄る可能性のある案だというふうに私は理解をいたしております。

 そうしたことも念頭に置きながら、税方式と社会保険方式との違いについて言われたわけでございますが、税方式というのは、税金というのは、やはり、社会共通の基盤をつくるというところを税というのは賄うんだと私は思っております。したがいまして、年金制度におきましても、全体共通するところを税で賄うという考え方は正しいのではないかというふうに思っております。保険料につきましては、保険料を納め、納めたその保険料の実績に応じて給付を行うというところに保険料の特徴がある。そうした特徴を持って、それらを組み合わせてやっている。

 大変違うような議論をいたしておりますけれども、例えば民主党さんの場合には、さっき消費税というふうにおっしゃいますが、私は、消費税も入れて、将来は、消費税だけではなくて保険料もまた上げなきゃならないときがくるだろうというふうに思います。我々は、保険料を上げるということを先に言っていますけれども、将来、それじゃ税を上げなくていいかといえば、やはり消費税を上げなきゃならないときがくるだろう。どちらを優先するかの話をしているんだと私は思っております。

 しかし、それらのことを総合的に考えるということは大事なことでございますので、委員の御指摘も十分に踏まえながら、我々も検討をしていかなきゃならないというふうに思っております。

五島委員 大臣は私とは非常に共通の考えを今述べていただきました。まして、政府のこの案を出しておられる大臣の方から、連合案というのは二十五年ぐらいまでならもつかもしれないというお話もございました。私は、どう試算してみても、政府案も二十五年しかもたないだろうと思っています。

 また、二十五年間もつということであれば、この間、民主党が提案しております、院の中に協議会をつくり、十分議論する時間もあるということでございます。何も押しくらまんじゅうすることだけが能じゃない。

 ぜひ理事会の中で、大臣もそうおっしゃっている、また、私も一議員として質問する過程の中においてそういう御答弁をいただいた以上、理事会の中において、こうした問題を含めて、もう一度、理事自身が冷静にこの問題の処理について御検討いただきたいということをまず委員長にお願いしておきたいと思いますが、いかがでしょうか。

衛藤委員長 ただいまの御意見がございました。

 改めて理事会において協議をさせていただきます。

五島委員 この案は閣法でございますから、提案者自身がそうおっしゃっている以上は、それぞれ各党との間に距離があることは当たり前です。しかし、そこを、年金問題という国民共通の課題、その課題をよりよいものにしていくために、与野党ともに努力することは当たり前。ぜひ理事会において議論していただきたいと思います。

 次に、幾つかの問題がございますが、また改めてそうした理事会の結論が出たときに御質問させていただくということにいたしまして、時間があと三十分足らずになってまいりましたので、次の問題を質問させていただきます。

 年金の積立金をどうするかという問題について、いろいろ議論がございます。この点について、二つの点について私は大臣と意見を闘わせたいと思っています。

 一つは、大臣は、年金の積立金は年金の支払いにしか使わないと予算委員会でおっしゃって、それが理想だというふうにおっしゃいました。確かに、多くの若い議員の中に、そうなんだという声があることも事実です。しかし、私は、果たしてそうだろうかというふうに思っています。

 還元融資資金という名前でもって土地を買ったりトンカチに使ってしまった、そしてバブルがはじけたその後のツケが来ている、そうした状況の中で、このような還元融資というようなやり方、もうやめなければいけないというよりも、もっと早くやめていなければならなかった。あるいは、民間でできることをこれでもってやらなくてもいいというふうな話もあるでしょう。

 しかし、実は今、年金制度に対する国民の不信が一番高まっています。その不信というのは、グリーンピアの問題や何かもあるけれども、自分が高齢者になったとき幾らもらえるかわからない年金、この年金を、現役の方々が先輩の人たちに賦課するために年金を払っていく。自分たちへのメリットは六十五歳になるまでないんだという制度の中で、日々の生活が厳しければ保険料を払えないということになることも、これまた理の当然ではないかというふうに思うわけです。

 私は、その点について、年金の積立金をどう使うかということについての議論を一つしてみたいと思っております。

 よく、年金の積立金は安全な運営でなければいけないという議論がございます。安全な運営とは何か。国債だろうとかいう話がございます。しかし、百五十兆ものお金を国債を買ってやっていくとするならば、結局、かつての財投にほうり込んでいたときと同じように、その金は何に使うのという話になることは理の当然。また、国債が安全であるということは、現在の超低金利政策が向こう百年も続くという前提であればそうかもわからないけれども、金利が三%にでも上がれば、年金が後世暴落することは目に見えている。決して安全ではないはずです。だから、安全議論で、年金の積立金の議論をそれだけでしようというのには私は無理があるんだと思っています。

 私は、例えば今百五十兆ある年金、その中のせめて三分の一ぐらいを使って、学生や、大学生や短大生といった、専門学校あるいは大学に行っている、そういう生徒に対する奨学金制度、あるいは、高齢期になって年金だけでは生活が困難になる、あるいはお年をとって急な手術に見舞われたときのいわゆるリバースモーゲージ制度をどう制度として安定させるかということのためにこの五十兆ぐらいの金は使っていく、一挙にではないんですが使っていくということをしたらどうだろうかと。

 例えば、大学生に対して、短大生に対して月十万円の奨学金をやる。四年間で四百八十万、それを四十年間で返してもらう。金利を物価とスライドさせる形でやっていったとして、現実問題として、その物価を、金利を含めた返済金を年金額と同時に徴収する。それを必要経費として認めれば、四百八十万のお金を四十年間で払ったとしても、金利は月千円ぐらいで済む。そういうふうな方法をとることによって、大学生、あるいは一番お金のかかる子育ての時期、そういう世代に対してこの年金制度は非常に役に立つものになる。総額は、三十兆ちょっとの金があれば丸まって運用できるはずです、それだけで。

 しかも、この一月に発表されました、国民金融公庫の学生に対する仕送りの費用の調査がございます。全国平均で、大学生や短大生に対する一年間の学費百四十万円、自宅外通学者に対する仕送り額百四十数万円。一人の子供を大学や短大に送ろうとすれば、東京の方は東京で学校に行かせるからいいかもわかりませんが、私のところのように、高知なんかというのはほとんど県外へ出ます。そうしますと、子供一人を大学や短大に行かせますと、一年間にその費用だけで二百九十万ぐらいかかる。さらには、入学金のコストその他を計算すると、三百万を超すんです。普通のサラリーマン世帯で子供二人を持って、二人を大学に出すとしたら、親は食わずにいないといけない。

 そういう状況を考えた場合に、こういう制度をつくることによって、この年金制度というものは全世代に対して役に立つ制度としてつくることができる。しかも、年金加入ということを条件にし、そして途中においてこの返済が滞った場合、年金額を決定するときに、年金額の決定総額から返済額を差っ引くという制度にすれば、年金額の貸付額を取りはぐれるということがない。

 そういうような制度として、この巨額なお金、もっと言えば、さらにもっとふえていくだろう積立金、これを国民の懐に直接還元させていきながら少子化社会対策の一つに役立てていく、そういうようなことは年金資金の運用において十分考えられるわけでございますが、それでもなお、年金の給付にしか使わない、そのためには国債なりあるいは証券なり、そういうふうな金融商品でしか運用しないというような方法がよりよいとおっしゃるのか、大臣の御意見をお伺いしたいと思います。

坂口国務大臣 後半は森副大臣に御答弁をいただくことになっておりますが、まず最初に、先ほど、かなり私も踏み込みまして、そして五島議員の御主張にお答えをしたつもりでおります。

 今後、どういう場がそれはいいのか。それは国会という場がいいのか、それとも、政府の中に各党代表もお入りをいただいて、労使もお入りをいただいて、そういう場をつくるのがいいのか、あるいはこの委員会でいろいろ御議論をいただくのがいいのか。これからの少子化の問題、それから経済のことも含めて、いろいろの御意見をいただく。今また御指摘をいただきました少子化対策と年金のお話を御議論いただくのも、これは結構なことだというふうに思っております。

 しかし、そうはいいますものの、先ほど申しましたとおり、何とかしかしここは一歩前へ進めておかないことには、現在の年金制度というものをさらっとなくしてしまって、あしたから新しい制度ということはあり得ないわけでありまして、三十年ないし四十年、いずれにしても、改革をするにしても、かけてやっていかなければならないわけでありますから、現在の制度は制度として改革を重ねていかなければならないというふうに私は思っております。

 御提案をさせていただいている私でございますから、現在の制度の問題はもう結構でございますから、どうぞ自由にやってくださいということをお願いしているわけではなくて、現在御提案を申し上げていることは、ひとつどうぞ御議論をいただき、そして御採決をいただいて、そして今後の問題としていろいろの御意見をちょうだいして合意を得ていくということは、それは大変いいことではないかということを申し上げているところでございます。

森副大臣 ただいま大臣から総論的なお答えがございましたけれども、ただいまの五島委員の御質問に具体的にお答えをいたしたいと思います。

 大変建設的で傾聴に値する御意見だったと思います。しかしながら、現在、今の空気が、今までの年金の使い道について大変な御批判をいただいて、戦線を縮小している真っ最中でございますので、幾ら運用の仕方が性格を異にするといっても、やはりある意味で、ブレーキを踏んでアクセルを踏むといったような感じがしないわけでもありません。そんなことで、教育資金貸付制度やリバースモーゲージ制度の創設につきましては、やはり十分な御議論を踏まえて考えていくことが必要であると考えます。

 また、教育資金貸付制度については、見直しの過程にある公的機関の今後の動向や、次世代育成支援対策の展開を踏まえながら、また一方、リバースモーゲージについては、自治体や民間における類似の制度の今後の展開も踏まえながら、それぞれ検討していく必要があると考えております。

五島委員 審議の最中ですから、現実問題として、答弁が行ったり来たりすることはやむを得ないんだろうと思いながらも、特に今、森さんおっしゃいましたけれども、大変批判はあります。

 しかし、一番大事なことは、年金に対する国民の信頼が揺らいできている。そして、年金制度というものがこれだけ大きな将来の過去債務全部を、将来的に計算するならば、六百兆を超す過去債務が生まれてくる。それは、賦課方式でもって何とか転がしていくにしても、現状において約百五十兆の巨額な積立金を持っている。こんなもの、一遍で市場運用できるはずがない。

 そういう中において、どういうふうなことが年金制度の信頼性を増し、あるいは少子化対策にも役に立つかということをやはり考えるべきときなんだということを申し上げて、ここで押し問答していますと時間がありませんので、次に行きます。

 問題は、こうした中で、今回、この年金の運用の問題につきましても、例えば住宅建築に関する借入資金の廃止につきましては、医療福祉機構に委任されることになりました。そして、年金の運用については、現在の年金資金運用基金というふうなところの業務を継承させて、そして何らかの形でやっていくというふうな形になろうとしています。

 ついでにこのことについて申し上げておきますが、現在、年金資金運用の解散とか事業の継承に当たっては、そこで現在働いておられる人に対して、引き続き雇用が継承され、そしてその勤務条件というものについても一定継承されるということが必要であろうし、また、年金積立金管理運用独立行政法人ができるとすれば、今後、資金の規模が膨らんでくる。それから、資金の運用責任がはっきりしてくるということになりますと、果たして、今のこれまでの機能だけでやっていけるのか。そこにはやはり専門職員の育成とか配置という問題も必要なんだろう。その辺についてどうされるのか、お伺いします。

吉武政府参考人 年金積立金管理運用独立行政法人でございますが、先生お話ございましたように、住宅融資、いわゆる転貸融資でございますが、これにつきましては、新規の融資を平成十七年度で終了するという方針でございまして、既存の融資につきまして、その管理を行っていくという形でございます。したがいまして、他の独立行政法人にこの事務を移管するということが第一でございます。

 それから、グリーンピアにつきましても、これは十七年中に廃止をいたしまして、地元の自治体を中心に譲渡をお願いしていくということになろうかというふうに思っております。

 そういう意味で、年金資金の市場運用に専門的に専念をするということになってまいりますが、今先生がおっしゃいました、実際に年金資金運用基金に働いておられる方、特に今、プロパーの方が相当数おられますので、この点につきましては、十八年度の移行までに、そういう方たちの雇用の問題に十分配慮するように検討してまいりたいというふうに思っております。

 一つの手がかりを申し上げますと、現実に、私どもの厚生労働省の職員あるいは社会保険庁の職員が、現時点で申し上げますと、相当、現職出向という形で行っておりますので、全体としての雇用問題を考えますときには、まずプロパーの方の雇用、それからこの方たちの専門性をいかに高めるかということを一番重点に置いて、この移行を検討してまいりたいというふうに思っております。

五島委員 年金全体の問題からいえば、この問題はある意味では枝葉の問題ですが、やはりそこで働いてこられた人たちの問題は大事にしていただきたいと思います。

 最後にといいますか、時間がありませんので絞らざるを得ませんが、高齢者雇用の問題についてお伺いします。

 結論からいえば、六十五歳まで雇用を延長させるということについては結構な話なんですが、この法案は、いかにもつけ焼き刃。労使協約ができ上がったとき云々はいいんですが、それができていないときは就業規則に書け、こうなっているわけですね。そうしますと、六十歳から六十五歳の就労について就業規則に明記するということになりますと、これはどう考えても労働条件になりますね。退職の規定で読みかえるというお話も聞いたわけですが、退職の規定でこの雇用の継続を読みかえるということは、これはとてもできない話だろうと思います。

 もし、就業規則に必須記載事項であるということになれば、これは当然、労政審の中においても、いわゆる労働条件分科会等々の審議がないといけないものでございましょうし、もし仮にこの法律が通ったとした場合に、私は、もう時間がありませんので、一点だけお伺いします。

 就業規則があるにもかかわらず、六十歳で雇用が切られた、継続雇用がされなかったというケースが生まれたとします。その場合は、その労働者は当然、雇用の継続を求めて争いが起こることになるであろう。個別紛争の事案になると思います。この場合の個別紛争の事案は、一体どこが引き受けるわけですか。職安が引き受けるんですか。職安が、個別紛争の中身によって、この個別紛争を引き受けるのか、それとも、この問題は労働基準監督署が引き受けるのか、どちらが引き受けることになるんですか、お答えください。

太田政府参考人 お答え申し上げます。

 継続雇用に関しまして、労使間で個別紛争が起こった場合のケースでございますけれども、労働者からの相談などによりまして、継続雇用制度が導入されていない等の高年齢者雇用安定法改正案に違反する事業主を把握した場合には、ハローワークにおきまして、速やかに実態を調査して、その是正を図ってまいりたいと考えております。例えば、事業主に対する助言、指導、勧告などを行ってまいります。

 それから、さらには、定年後、継続雇用されなかったことにつきまして労働者と事業主の間で紛争が生じたときには、現在、個別労働紛争解決促進法に基づきまして、紛争解決の仕組みが整備されております。具体的には、都道府県労働局長が当事者の求めに応じまして必要な助言または指導等を行って、紛争の迅速かつ適正な解決を図ることとしているところでございます。

五島委員 実態を知っておられる方としては、今の御答弁は納得できません。

 確かに、職安においても、その窓口において指導といいますか、言葉をかけること程度はできるでしょう。しかし、個別紛争としての争いが起こった場合の調停あるいはあっせん、そういうふうなものを含めた機能というものはハローワークや職安において持つわけがないわけで、その場合は、当然、労働基準監督署の方で対応せざるを得ないんだろうと思います。あるいは、そうでなければ裁判ということになるんでしょうが。

 その場合に、この就業規則というものの位置づけが労基法上の課題なのか、そうでないのか、その位置づけはどうなのかということは、大変大きな問題を持ってきます。この法案によるところの就業規則の記載というのは労基法上の問題なんですか。今回、労基法の改正は出しておられない。ということは、労基法の問題ではないということになってきます。しかし、一方で、それでは就業規則で記載しなさいとおっしゃるのであれば、矛盾するんではないですか。

太田政府参考人 お答え申し上げます。

 本法案と労働基準法との関係でございますけれども、まず、労働基準法第八十九条におきまして、就業規則に記載すべき事項が列挙されておりまして、その三号で「退職に関する事項」と規定されております。これは絶対的必要記載事項でございます。この「退職に関する事項」の中には、定年や継続雇用制度も含まれるというふうに解釈されております。

 こういった「退職に関する事項」に含まれる定年や継続雇用制度につきましては、これまでも高齢者雇用対策の一環としまして、高年齢者雇用安定法に基づきましてその引き上げ等を図ってきたところでございます。六十歳定年の定めも、高年齢者雇用安定法に定めがあるものでございます。

 今般の法改正は、六十五歳までの定年の引き上げ、継続雇用制度の導入等を事業主に求めるということでございますので、高年齢者雇用安定法を改正することとしたところでございます。政府としましては、今後とも、この法律に基づきまして、六十五歳までの雇用の確保に向けまして、事業主指導等をしっかりと行ってまいりたいということでございます。

五島委員 ありがとうございます。

 今のおっしゃったお話は、この法案が通った場合に労基法上の根拠を持つんだ、そして六十五歳までの継続雇用もしくは六十五歳までの定年延長というものを記入してもらう、したがって、そこにおいていわゆる雇用問題、年齢を理由とする雇用問題に関する紛争が起こった場合、労基法上に根拠を持つ就業規則違反に事業主がなるんだ、だからそれは、この問題を労働基準監督署の方が対応していいんだということをおっしゃったことになると思います。

 そうであれば、逆に、この問題で労使紛争、個別紛争が起こらない、起こった場合は、事業主によほどの証明がない限りは労基法違反として処理されるという御答弁であったということで理解してよろしゅうございますね。

太田政府参考人 お答え申し上げます。

 具体的に個別紛争が起きたときどうなるかということでございますけれども、先ほどお答え申し上げたとおり、個別労使関係紛争処理法に基づきますスキームがございますので、例えば、主要の労働基準監督署には総合労働コーナーがございますし、ここへ相談に来れば、その法律に基づいて適切な対応をするということでございますし、当然、都道府県労働局でもそういう対応をするということでございます。

 それから、具体的に基準について就業規則に定めがないということでございますと、それは労働基準法違反にもなるということでございます。

五島委員 だから、労基法上の根拠をこれは持つんだとおっしゃったわけです。そして、就業規則に書かれていない場合はもちろんのこと、もし書かれていたにもかかわらず、年齢を理由として解雇が起こったという場合には、相当の理由を事業主は証明しなければいけないということに、労基法上根拠を持つんなら当然なりますね、そういうふうな解釈でよろしゅうございますねということを言ったわけで、よければそれで結構です。

 以上でもって私の質問を終わらせてもらいます。

衛藤委員長 次に、中根康浩君。

中根委員 御指名をいただきました民主党の中根康浩でございます。

 きょうは、前回に引き続きまして、カワグチ技研と、それから選択エージェンシー、この問題について取り上げていきたいと思います。

 前回、カワグチのことが時間がかかり過ぎましたものですから取り上げることができなかったのが「選択」なんですけれども、それが、幸か不幸か、きのうから、御案内のとおり、新しい展開が生じてまいりました。

 まさに、年金という国民の財産に群がる政官業の癒着の構造がここに確かに存在し、少子高齢社会というより以前に、日本の年金制度を痛めつけ、制度の信頼性を損なっている構図がそこにあるわけでありまして、これを取り上げていかないわけにはいかない。今の五島先生のような格調高い質問も必要ですし、これまた、今から申し上げる選択エージェンシーやカワグチ技研の問題もまたきちんと明らかにしていかなければいけない。霞が関が印刷物の山であるということを悪用して、いかがわしい思惑で国民を裏切っている現実、そういう人たちがたくさんいる。そこを正していかなければ年金制度の信頼の回復はあり得ない、そんな思いで、幾つか質問をしてまいりたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。

 まず冒頭、大臣にお伺いいたします。クラブ有情、SAKURA、Clubこちょうか、クラブトパーズ、レストランつまみぐい、遊玄亭、Club嶋、今申し上げました幾つかのお店、一つでも行ったことがおありでしょうか、いかがでしょうか。お尋ねいたします。

坂口国務大臣 全く存じません。

中根委員 どうも、レストランつまみぐいとかいう、何か悪徳官僚の方々が行かれるにふさわしいような名前があるわけなんですけれども、悪徳官僚というものはまさに言葉だけで、そういうものは存在しないと信じていきたいと思っていますけれども、株式会社選択エージェンシーと厚生労働省、社会保険庁との関係、幾つかそれぞれ仕事をしているわけでありますけれども、まず、きょうは年金審議ということでありますので、年金のことを取り上げないと、そのうちまた与党の方々が年金年金と言い出し始めますので、まずやらないといけませんけれども、年金関係で選択エージェンシーがやっている仕事、お聞きしてもいいんですけれども、わかっていますので読み上げます。

 「わかりやすい国民年金Q&A」の購入、平成十一年三月三日、一千二百三十万円、随意契約、「わかりやすい国民年金Q&A」の購入、平成十二年三月三日、一千二百万円、随意契約、「わかりやすい国民年金Q&A」の購入、平成十三年三月二日、一千二百万円、随意契約、国民年金保険料の収納方法変更の周知用チラシの印刷、平成十三年十月十五日、六百九十七万九千四十九円、随意契約、厚生年金保険の総報酬制導入にかかる制度改正内容の周知用チラシの印刷、平成十四年六月二十七日、一千五十九万七千二百三十円、随意契約、厚生年金保険裁定請求用リーフレットの印刷、平成十四年十一月八日、一千二百九十一万七千二百七十二円、随意契約。すべて随意契約。すべて随意契約、財源は保険料。

 このほかに、国立病院特別会計から、平成十年から十四年で一億六千七百一万四千五百八十一円をすべて随意契約で選択エージェンシーは仕事を獲得しています。国民健康保険中央会からも、便利手帳分、十年から十五年度で三億二千七百三十八万円、研修用ビデオ分で二億五千万円、すべて随意契約。

 加えて、十四年度と十五年度で行われた、癒しと安らぎの環境フォーラムというイベントがありました。これは、選択エージェンシーが事務局を務めて、それをいいことに大手製薬会社、三共だとも言われていますけれども、から提供された一億円の協賛金のうち、約六千万円をこの選択エージェンシーが横領しているという疑いを持たれている、このイベントについては、厚生労働省が後援という形で名前を連ねております。

 そして、今回の関東信越厚生局の事件で、選択エージェンシーの営業企画部長杉山容疑者が逮捕されました。関東信越厚生局が、十四年十一月ごろ選択エージェンシーに印刷業務を発注しました。そのことへの見返りとして、職員二人が三百万円のわいろを受け取ったという贈収賄事件であることは御案内のとおりです。

 大臣、このように、社会保険庁や厚労省と深いつながりのある、そして、国民の税金や保険料を使ってたくさんの仕事をして利益を上げている、こういう会社が起こした事件について、そして、こういう会社と今まで厚生労働省、社会保険庁がつき合ってきた、しかも不透明な随意契約という契約で仕事を与えてきたというか、仕事をしてもらってきた、こういったことについて御所見をお伺いしたいと思います。

坂口国務大臣 この選択エージェンシーにかかわります贈収賄で職員が逮捕されたということは、まことに遺憾なことであり、私も責任を感じているところでございます。

 先日来、この選択エージェンシーのことにつきましてはいろいろ御意見ございまして、今、省内でそうした関係をした者がどれだけいるのかということを調査中でございます。厚労省の中、それから社会保険庁、それだけではなくて、今回、国立病院の方の関係が出てまいったわけでございますので、そこまで調査をいたしておりませんでしたが、もう少し範囲を広げて調査をしたいというふうに思っておりまして、責任を明確にしたいと思っているところでございます。

中根委員 これは、最後に申し上げようと思ったシナリオのうちなんですけれども、調査中という言葉が出ましたものですから。調査というのは、既に参議院の方において共産党の井上議員がこの調査を要求していて、まだ時間がかかるという話、そして、先日も、この厚生労働委員会において山口議員がやはり調査の催促をしているにもかかわらずまだ調査中であるという。

 そんなにかかるものなんでしょうかね。どんな調査をしておられるんでしょうか。いつまでにその結果を出してもらえると我々は、国民は思ったらよろしいんでしょうか。

森副大臣 これまでも他の委員会でも御指摘がございまして、株式会社選択エージェンシーとの関係で監修料として報酬を得た者などがいるという話でございますので、今鋭意省内の調査を行っているところでございます。

 また、昨日の逮捕という事態を受けて、今後その対象範囲についても、そういった調査方法を含めてさらに検討いたしまして、これから可及的速やかに調査結果を出したいと考えております。

中根委員 四月じゅうにも、ゴールデンウイーク前にも、議論が十分に尽くされていないにもかかわらず、与党はこの法案を強行採決しようともくろんでいらっしゃるんです。我々には時間がないんです。国民には時間がないんです。早く調査結果を出していただいて、すべてをつまびらかにしていただいて、本当に年金制度が信頼に足るものなのか、あるいは、我々が保険料を納めるその先、預かってもらう厚労省や社会保険庁の方々が信用するに足る人たちなのか、このことをはっきりしてもらわないと、とてもこの法案は強行採決などといって通してもらえるものではない、そんなことを許せるものではないというふうに言わざるを得ませんので、いつまでに、そして今どんな調査をしているか、もう一回お尋ねをいたします。

森副大臣 ただいま一人ずつの聞き取り調査を実施しているところでございます。四月いっぱいに何とか報告をできるように努力をいたしたいと思います。

中根委員 四月いっぱいだともう遅いんですよ。四月二十八日なんという数字も出て、もしかしたら、今週の金曜日かもしれないという話ももともとあるわけでして、今週じゅうにやはりある程度出してもらわないと。これは途中経過でも結構なんです。どこまで調べたか、どういう結果が今出ているか、あと残りが何人なのか、そういったことを、途中経過でいいわけですから、あしたの委員会にでも出してください。いかがですか。

森副大臣 あしたの委員会というのをお約束するのはちょっと御容赦いただきたいのでございますけれども、途中経過を含めまして委員の御要請に沿うように努力いたします。

中根委員 あしたの委員会は御容赦いただきたいということは、まだやっていないということじゃないですか、実は。今からやるから、あしたまでに何人かはできるから、あしたという。むしろ今すぐにでも、もうちょっと待っていますので、途中経過、どこまで調べたか。もしかしたら、後ろの方々だけでもいいですよ、やってくださいよ。

森副大臣 途中経過と申しましても、余りにも中途半端な状態ではやはり公正を欠きますし、それはそれなりに形をつけて、中間を含めまして、委員の御要請に従って御報告いたします。現に調査を進めていることは信じてください。

中根委員 これは、この調査結果のことについての要求は、また最後に申し上げます。ちょっと、順番にやっていかなきゃいけませんので、前へ進めますけれども、これは了解したわけじゃありませんので。

 この今回の事件なんですけれども、また後で取り上げるカワグチ技研、同じ構図なんですね。入札のかわりに分割発注、随意契約、それで入札逃れをしている。同じ疑惑があるんです。だから、きょうは選択とカワグチのことまでどうしても行かなきゃいけない。

 実は、今回の事件やフォーラムで、協賛金横領疑惑のほかにもいろいろな疑惑があるんですね、この関東信越というものの以外にも。厚労省の補助金で制作されたビデオや手帳をめぐって、補助金支給を所管する厚労省保険局に所属する十人以上の職員、だから、先ほど調査中というふうにおっしゃっていただいたのは、年金関係の方のことをおっしゃっていただいているので、今から申し上げるのは、もう既に明らかになっている、あるいは、うわさされている、そういった部分を申し上げるんですけれども。具体的なことを申し上げるんです。

 厚労省保険局に所属する十人以上の職員が監修料として十二年度、十三年度、十四年度に一千万円ずつ計三千万円を受け取っていた、もうこれは明らかだと言われていますね。支払ったのがこれまた選択エージェンシー。選択エージェンシーと国保中央会との取引で、平成十年度から市町村の保健指導に従事する保健師の研修用ビデオや手帳を制作、これらの事業は、国保中央会が選択エージェンシーの提案、企画を採用し、厚労省に補助金申請をし、すべて補助金で賄われている、すなわち税金で賄われているということ。国保中央会を所管する厚労省保険局国民健康保険課の職員が選択エージェンシーから監修を依頼され、同課庶務係長が事業費の約一割を監修料として受け取り、関与した職員に分配したというものです。

 まず、これに関して、選択エージェンシー、すなわち監修料の支払い側の尾尻社長が、売り上げの一割ぐらいの監修料はどこでもそうだと言っています。監修料というのは、お役人の方々というのはそんなにアルバイトをやっていらっしゃって、高給を、高額なアルバイト賃をもらっていらっしゃるということですか。一割というのは当たり前で、普通の相場なんでしょうか。お尋ねをいたします。

森副大臣 ほかの出版社でも、こういった関係の監修だとかいうことについては一割というのが相場というふうに聞いております。

中根委員 これはもちろん勤務時間外とか何かならいいのだという理屈があるのかもしれませんけれども、しかし、そもそも監修料というか、アルバイトをしていること自体が――それで生活していけないんだったら、もっと正々堂々と組合活動を通して賃上げ闘争をすればいいわけで、それは闘争と言ったらあれですけれども、そういう協議をすればいいわけで、それで足りなければ――生活に困るからアルバイトしているんですか。そういう状況なんでしょうか。

 しかも、一割というのは、十万円の一割なら一万円かもしれないですけれども、一千万円とか五千万円とかいう仕事の一割。そういう、完全に歩合制でやっているんでしょうか。もう一度確認します。

森副大臣 どういうことについて監修料を受け取っているかというと、選択エージェンシーからの依頼によって勤務時間外に自宅などで原稿の作成や監修を行っている、その対価として受け取っていたということでございます。

 いろいろな出版社に聞き取りをしたところ、やはりそういった原稿を監修してもらったりあるいは執筆してもらったりというのは、売り上げの一〇%というのは出版界ではあるいは編集界では相場だということで、これはどこにも統一したあれで、これは別に官庁だけじゃなくて、恐らく大学教授なんかも一緒なんでしょうか、ということであります。

中根委員 出版界の常識だからといって、もともと国民の税金で給料をもらっている方々が、一般の国民の方々よりも、常識と言われている出版界よりも、高い倫理性を持って職務に当たらなければいけない人たちが、平気で、アルバイトをして、一割が相場だからといって、アルバイト料をもらう。そんないいお金がもらえたら、昼間は寝ていて、夜早くうちに帰ってアルバイトをした方が得だという話になってしまいますよ。

 だから、こういう監修とかアルバイトとかというのはもう原則的にやめにする、こういった事件、こういった疑惑をきっかけとして、そういうふうに、大臣、なりませんか。

森副大臣 これは、ある意味で世の中に対する厚生労働行政の普及啓発みたいな一助にもなっているわけでございますし、一概に私はそういったことをすることが悪いというふうに思いませんし、また監修料を受け取っていたこと自体をもって問題であるとは考えません。

 しかし、こうしたケースについて国民の誤解を招きかねないようなことがあったとすれば、厚生労働省としては、李下に冠を正さずということでもって、これからの対応を十分に検討していきたいというふうに考えております。

中根委員 李下に冠を正さずというのは、全く清廉潔白な方が、何も後ろめたいことがない方がこれからやっていくことで、もう既にグレーになってしまっている人たちが今さらそんな言葉を言っても、これは全く通用しない、理屈が通らない話でありますから。

 これは、いい方向でいえばそうかもしれません。だけれども、悪い面が実際出ているわけで、悪用する人が実際にいるということなものですから、性善説に立つか性悪説に立つかという話かもしれませんけれども、これはやはり、用心深くやっていくという姿勢が少し答弁の中に聞かれないと、今までどおりでいいんだというような姿勢では、ちょっと何の反省もない、今回の事件についても何ら所見を持っていないというふうに私たちは判断せざるを得ないような、そんな感じがいたしますけれども、もう一度納得できるような御答弁をいただけないでしょうか。

森副大臣 やはりそういう世間常識に照らしておかしいことはやっちゃいけないと思いますし、しかし、先ほども申し上げたように、普及啓発あるいは皆さん方の意識の高揚といった意味で、こういったことがすべて悪事だというふうに考えることはできないと思うんです。ですから、それはやはりそれなりに、是々非々で、モラルを持って対応していくということを周知徹底いたしたいと思います。

中根委員 今の再三にわたる森副大臣の御答弁を伺うと、やはり今度の事件に対して何ら責任感を感じていない、これから将来に向けても何ら姿勢を正していこうとしていない、我々はそういうふうに受けとめておきたいと思います。

 これだけの監修料が支払われていて、平成十五年九月二十九日、国保の中央会で、保健活動のための便利手帳制作委員会打ち合わせという打合会が開かれたということなんですね。

 そこで、その便利手帳に関してなんですけれども、出席者が言っているのは、全く役に立たないというものでもないというふうに評価をしているわけですよ。優秀な方、今森副大臣が言われた、日本で一番優秀な方々が国民の啓発のために巨額の、一割の相場で監修料をもらっていて、全く役に立たないということではないという代物しかできないというこの現実。これは別に答弁は求めませんけれども。

 改めて申し上げますけれども、この便利手帳で監修料を受け取った人の名前と金額、そして所得申告しているかどうか、お尋ねをいたします。

森副大臣 それぞれ所得申告はしております。(発言する者あり)ごめんなさい、そういったことについても今調査中でございます。

中根委員 調査中というのは、年金関係の方も、要するに、この選択エージェンシーの便利手帳関係で疑惑が明らかになってきた、だから年金の方でもやっているんじゃないのということで調査をお願いして、調査中、こういう筋なんですよ。これについてはもうわかっているはずですよ。いかがですか。お願いします。これをちょっと聞いておかないと前に進めないということになりますので。

森副大臣 具体的な氏名につきましては、その職員のプライバシーもございますので、ここで提示することはできません。

中根委員 だけれども、国民に対する啓発だとかいいことを言っていて、一割の相場をもらうのも、これは当然だということを言っていて、申告もしていて、それで、そういう話になると、急にプライバシーということを出してくる。疑惑隠しと言われてもしようがないじゃないですか。これは絶対に明らかにしてください。公務員倫理法とかあって、明らかにするあれがあるんじゃないですか。(発言する者あり)ないという方は、これ、疑惑いいんですか。

森副大臣 少なくとも現状においては、公務員倫理法に違反したということが判明したわけでもございませんので、やはり今の時点においては、プライバシーに抵触することから、ここで氏名を挙げるということはできません。

中根委員 昨年の六月、我が党の長妻議員が課長補佐以上の二万円以上監修料等を受け取った方々のお名前を質問主意書にて明らかにすることを要請いたしました。そのときには、二万円以上受け取った方々のお名前が確かに出てまいりました。私どもその資料も持たせていただいておりますが、そのことと、きょう明らかにできないこととの整合性はいかが御説明されるんでしょうか。

森副大臣 今のところ、そういう公務員倫理法に照らして申告する該当者がおりません。つまり、名前が出てきておりません。つまり、係長以下の人が今回の対象になっております。

中根委員 係長以下に監修料を受け取っていた方が確かにいらっしゃるということで理解して進めていきたいと思います。

 ここに選択エージェンシーの国保中央会分の平成十五年一月分の売上台帳の写しがあります。これは既に、いろいろなところで流布していると言われておりますので、もうお目通しの方も多いかもしれませんけれども、この請求明細の欄に、「監修」「吉田氏他」、二百八十五万六千円、支払い日十一月二十九日と書いてありますけれども、この「吉田氏他」が、その係長以下の、今森副大臣がおっしゃられた方に該当するわけですか。

森副大臣 名前を申し上げないと申し上げたばかりで、ちょっと、若干ひっかかりますけれども、その吉田係長が、庶務係長で、窓口となって仕事を請け負っているということでございます。

中根委員 もうこれは、こういう資料に、売上台帳に名前が明らかになっているわけですから、別に不正なものでなければ明らかにしていただければ、むしろ我々はこういうふうに声を荒げる必要はないわけでありますので、先ほどの年金の方の調査とあわせて、ぜひ次回には必ず出していただくということをお約束していただきたいと思いますけれども。

 続いて、いろいろあるんですけれども、ここに、「企画費」「井上氏」、四百八十六万円、同じく「企画費」「総生」、百六十万円、「企画費」「OJ」、二百六十五万円と記載をされています。もう既に皆さん御案内のとおり、井上さんというのは井上章さん、元古賀誠自民党代議士秘書の井上章さんのことです。総生という会社は、元国土庁長官秘書の谷口道明さんのことであります。OJというのは、選択エージェンシーの尾尻社長が社長を務める個人会社のことを指して、あらわしているわけでございますけれども、そういったことは大臣、副大臣、国保中央会の補助事業として行われたことが、こういった方々に支払われているということは把握しておられるでしょうか。

森副大臣 私どもの所轄内でもありませんし、全く承知をしておりません。

中根委員 それで、元古賀誠さんの秘書の井上章さんとその妻の井上紀久子さんは、選択エージェンシーと営業委託契約をしているんですね。読み上げますと、「株式会社選択エージェンシーと井上章氏は、官公庁の業務について、ともに協力し、株式会社選択エージェンシーの業務拡大を図る。これに基づいて、井上章氏の協力のもとに売上が計上された業務について、官公庁の年度末に各業務の売上、利益一覧を作成し、その利益の二五%を取り分として支払う。 本契約の期間は一年間とする。」ということがあるんです。同じような書類が妻の井上紀久子さんとも交わされている。それから、総生とは、同じ文章なんですけれども、官公庁の年度末に各業務の売上一覧を作成しその利益の四〇%を取り分として支払うというふうに約束されているという営業委託契約書が存在しておりますが、そのことは把握しておられますでしょうか。

森副大臣 全く私どもの関知するところではありません。

中根委員 その結果といたしまして、事実、選択エージェンシーから総生に十五年一月分として、官公庁営業協力費として三百三十六万円、それから選択一月号の広告営業協力費として九万五千五百円が支払われているわけであります。

 こういう、まさに国民の税金を使って行われていることが食い物にされている。本来ならばもっと安くできるものが、こういうふうな形で割高につくられている。これは必ず直していかなきゃいけない。正していかなきゃいけない。もうこういった、どこかでピンはねするような人たちには支払わない、そういう業者には仕事を与えない、そういうふうに約束していただけないでしょうか。

森副大臣 今回の件がもうちょっと司直の手でいろいろ明らかになっていくと思いますし、そういった推移を見守って、反省すべき点がありましたら反省をいたしまして、今後、世間の誤解をあるいはそしりを受けることがないような対応をしてまいりたいと思います。

中根委員 もう一つ、この売上台帳の一番下のところに、一行消されている形跡がある欄があるんです。「企画費」としてある欄が消されています。この保健活動のための便利手帳二〇〇三年度版三万百部分なんですけれども、この売上台帳には四千八十万円と書いてありますが、以前に厚生労働省の方から資料を取り寄せたそれには、この費用が四千二百八十四万円というふうになっています。差額分、これは、最初は消費税分かな、五%分かななんて思いましたけれども、これは消費税はちゃんとほかに計上されているわけで、この五%が本来企画費としてある欄の消されているところに、井上さんや総生と同じように五%がここに支払われていた。ここにどなたか官僚の方が入るんじゃないでしょうか。どんなふうに思われますか。

森副大臣 まことに恐縮ですけれども、全く見当がつきません。

中根委員 こういうことを指摘しているときに、笑ってそんなこと大した問題じゃないと言うような方は、悪徳官僚の側の、悪徳業者の側の味方だというふうに判断せざるを得ないですね。

 この売上台帳、非常に疑問が多いもので、まさに政治家の元秘書と言われる人たちが暗躍して制作費がつり上げられていて、そこから利益がピンはねをされている。こういった構造をしっかりと改めていかなきゃ、とても、保険料を十四年間にわたってずっと引き上げていく、給付を下げていく、国民に痛みを押しつける、こんな法案なんか強行採決やられて通されてたまるものか、国民はみんな思っていますよ。大臣、いかがでしょうか。

坂口国務大臣 選択エージェンシーの問題は、会社自身の問題と、そして厚労省が間接的であれ何であれかかわっている問題と、そこは冷静に分けて考えなきゃいけないと思うんですね。選択エージェンシーが企業のあり方としておやりになっていることを、私たちがとやかく言うことはできません。

 ただ、国から金が出ておりますものが、国保中央会を通じてではありますけれども、国の金が出ているということについて職員がかかわるということは、決して好ましいことではありません。今後、それはやめさせたいというふうに思っております。

 また、先ほどから御提示されておりますさまざまな問題、これからもまた提示されるんだろうと思いますけれども、そうした問題の一番根っこのところにありますのは、随意契約なわけです。この随意契約がそもそもすべてのもとの根っこになっているわけでございますから、どんなささいな問題であれ、すべて公開をして、入札制度にして、随意契約というのは一切これからやめろ、こういうふうに今言っているところでございます。

中根委員 さすがに大臣と議論するのは、本当にいつもやりにくいというふうに皆さんが言っておられるんですけれども、率直に前向きな御答弁をここで初めていただいたわけなんですけれども。

 選択エージェンシーというのは、やっぱりちょっといろいろと疑問に感じざるを得ない会社であって、既に今回逮捕者が出ている、関東信越厚生局で逮捕者が出ている。これはあくまでも、これで終わりではなくて、物事の始まり、入り口であるというふうに慎重に考えていかないと、軽々しく扱っていると本当に国民からしっぺ返しをいただくということになってしまうと思いますので、ここは本当に、推移を見守るだけじゃなくて、積極的に内部調査も早く進める。年金の方も、そういう問題が起こる前に早く、これは正しい、正当で違法ではないと言うんだったらそれでいいのかもしれませんけれども、しかし、こういうことにつながりかねない、そういうことでありますので、やっぱり今大臣おっしゃったように、随意契約というところに問題がある、同じように監修料をもらうというところに問題があるわけで、そういったことを率直にお認めをいただいて、そういう、悪いとは言いませんけれども、やっぱり国民から見たら悪いというふうに言わざるを得ないようなことが起こる、そういったことを正していっていただく、これもひとつきょうはお約束をしていただきたいと思います。

 「選択」の話、時間がもう約半分以上過ぎてしまいましたので、この辺で終わらせていただきますけれども、冒頭申し上げましたレストランつまみぐいというのは、井上章さん、古賀誠元秘書が役人の方を接待していた場所だと言われていますので、皆さん、もしこういうお店に行かれることがありましたら、そういう方々が出入りしていないかしっかりとチェックしていただきますように、どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 次に、カワグチの方に移ります。

 前回に引き続いて、カワグチ技研の問題なんですけれども、私たち、きのう社会保険庁の課長さんにセットしていただきまして、山井理事と二人でカワグチ技研の川崎社長にお目にかかりました。たたき上げの、本当にフォーム印刷、ニチネン企画、そしてカワグチ技研に移って、河口社長から川崎社長にかわった。まさに社会保険庁や厚労省のお仕事一本で生きてきた方。だから、もう社会保険庁や厚生労働省のお役人の方々なんてみんな知っていますよという感じの人だったんですけれども、そういった人とお会いしていろいろとお話を伺わせていただきましたけれども。

 四月十四日の質問において、金銭登録機の導入をなぜ一般競争入札にしないか、カワグチ技研との間で、今大臣がまさにおっしゃられた随意契約にしたのかとお尋ねをいたしました。これに対して森副大臣は、金銭登録機の調達については、社会保険事務局や社会保険事務所において、その収納対策の実施計画及び国民年金推進員の確保状況などが地域ごとに異なっておりますので、全国分をまとめて、具体的な導入個数、時期を選定するのが難しかったため、逐次各社会保険事務局や社会保険事務所において調達したとお答えになっています。

 そこで、改めてお尋ねをいたしますけれども、全国分まとめて購入できないほど、収納対策とか実施計画とか国民年金推進員の確保状況というのはばらばらになっているということなんでしょうか。

森副大臣 全体が把握できるできないという問題よりも、各事業所においてそれなりにそういった設備の調達計画だとかそういう個別の裁量範囲がございますし、また、一括というか、スペックはそろえて注文したわけですけれども、個別に注文しても別にコストが高くなるということもありませんでしたので、やりやすいように各事業所で発注をしたということで、別に、それがばらばらにやったら高くなるとかいうなら一括発注すればいいですけれども、そうでなければ個別の事情に応じて発注するのが私は合理的だと思います。

中根委員 今の森副大臣のお話を裏返せば、じゃ、一括購入しても同じということじゃないですか。何で各事務所ごとにわざわざ随意契約させたんですか。普通は、結果的に同じ価格になったとしても、公明正大にやるには、四億四千万円の仕事なんですから、社会保険庁で一括購入、一括入札にかける、これが本来のやり方じゃないですか。これは前から申し上げておりますように、まさに選択エージェンシーのきのう捕まった話と同じだと言っているんじゃないですか。入札逃れのために分割発注して随意契約させて、それで目くらましして、各社会保険事務所ごとにやったことだから社会保険庁はあずかり知らない、偶然こうなったんだ、あくまでもそういうふうに言い張るんですか。

坂口国務大臣 そこはちょっと違うと思いますね。たとえ地方がやったことであったとしても、それは社会保険庁が全部責任持たなきゃならない問題ですよ。ですから、まとめて随意契約をしようと、地方でそれぞれ随意契約をしようと、それは結果的に社会保険庁の責任で、同じことだと私は思うんです。

 それぞれの地域でいろいろの事情があるということであれば、それぞれで決めてくださいというのは、私は一つの方法だというふうに思っております。ただ、全体が、全部が全部同じところでやったというのはどうかというふうに言われると、私も少しそこはどうかなと思いますけれども、しかし、地方でそれぞれがやるということ自体は、そんなに悪いことではないと思います。

中根委員 前回宿題にしておいて後ほどいただいた資料の中に、「金銭登録機の導入に関する検討の経緯について」という中の「金銭登録機の導入に向けた調査・検討」欄には、「カシオ計算機を除く各社の製品については、ハードとソフトが一体化した商品として販売されている」とあります。しかし、この種の機器はすべて大体そうじゃないですか。ハードとソフトが一体化しているんではないでしょうか。カワグチ技研の金銭登録機は、ほかの機種とどこがどういうふうに違っていて、そして、すぐれていると判断したのか。

 そして、お尋ねですけれども、この金銭登録機は、いわゆる汎用ハンディーターミナルに社会保険庁のソフトを乗せたものじゃないんですか。要するに、ハードは一般的なものであって、ソフトは今回新たに開発したということじゃないでしょうか。ちょっと確認させていただきます。

森副大臣 これは、ハードとソフトが一体化したというのは、例えば、委員、私もこういうザウルスという電子手帳をいつも使っておりますけれども、こういうのは、標準品としてのハードとソフトが一体化した端末なんですね、言うまでもなく。こういったものを専門にやっている大手の会社ではなかなか小回りがきかない。例えば、こういう特殊仕様のものを打ち合わせて、標準的なハードにソフトを乗っける作業というのは、意外にそういう大手じゃできにくいものなんですよ。

 そういう意味で、私は、随意契約というところに若干再考すべき点はあったとしても、今できている、これが御質問の金銭登録機ですけれども、これが大体、恐らく何万、何十万と売れて、これでも五、六万なんですね。これは、特殊仕様で、これも数が非常に限定されているにもかかわらず、これだけの性能のものが十六万でできているというのは、私は、随分安くできているなと、元技術者として思います。

 それは結果論であって、プロセスについては、もちろん委員御指摘のように、反省すべきは反省しなきゃいけませんけれども、そういう意味で、何が言いたいかというと、ハードとソフトが一体化したというのは、いわゆるこういうザウルスだとか、いろいろなメーカーで売っている標準的なパソコンの端末であって、これは、こういう特殊仕様のものは、やはりそういう標準的なものの上にどういう特殊なソフトを乗せるかということにむしろ力点を置いて開発されたもので、これは、さらに申し上げると、委員は全部お調べでございますから釈迦に説法ですけれども、カワグチ技研とフルノシステムズという会社が共同開発したもので、私は、これ自体はなかなかいい機械だなというふうに思います。

中根委員 金銭登録機の導入に向けた検討、調査というものは、提出文書によると、平成十四年六月から始められています。その時点で各メーカーに仕様を告示していれば、ユーザー仕様のソフトが組み込まれた製品を平成十五年三月末までに調達できて、一般競争入札にかけることが時間的にもできたはずだと思っています。

 しかしながら、実際には、前回の質問のときにも明らかになりましたように、仕様書のようなものは平成十五年三月十一日に出されているわけなんですね。実際、きのう川崎社長にお会いしたときにも、平成十四年の年末から必死でソフトをつくり始めたという記憶があるというふうに言っているわけなんですよ。契約もしていないのに、何でカワグチ技研だけがソフトをつくり始めてしまったんでしょうか。

森副大臣 そこら辺のいきさつは、ちょっと細かく私も存じませんけれども、十一月二十二日ですね、カワグチ技研とフルノシステムズからこういうオファーがあったと。十一月二十六日には、明光商会とカシオ計算機からそういうオファーがあった、提案があったということでございますので、何らかの方法で、この辺の会社が、営業活動を通じてこういうもののニーズをキャッチしたということは、あり得ない話ではないと思います。(発言する者あり)

衛藤委員長 では、もう一回、それは、委員から言ってください。

中根委員 今、森副大臣が何らかのという言葉でごまかされた部分を、もう少しというか、すべてを明らかにしてもらわなければなりません。(発言する者あり)

衛藤委員長 速記をとめます。

    〔速記中止〕

衛藤委員長 速記を起こしてください。

 森厚生労働副大臣。

森副大臣 十一月の段階で仕様を打ち合わせて、そのときは、カワグチ技研とカシオの両社とやっておりましたけれども、それからすぐに検討を始めて、二社は……(中根委員「契約に至る事情を」と呼ぶ)それは、契約する前に仕様を検討しなきゃ契約できないじゃないですか。失礼しました、質問者に大変失礼いたしました。

 そういうことで、当然、打ち合わせをした後、仕様に基づいて開発の可能性を検討して、そして納期が間に合うのがこのカワグチ技研であって、明光・カシオグループは、納期が間に合わないということで、見積もりは出したものの撤退したというのが事実経過でございます。

中根委員 平成十五年の三月十一日に、いろんなスペック、仕様を、社会保険庁は、各社会保険事務局や事務所に提示しているんですね。そこにカワグチ技研という名前はない。だけれども、こういうものに対応するものは一体どこで買ったらいいんだろうかと尋ねたら、それはカワグチ技研という会社がありますよというふうに、幾つかの社会保険事務所で私どもお聞きをすることができました。

 三月十一日にそういったものを、仕様を提示しているのに、カワグチ技研は、社長みずからが、その前の年の暮れの、平成十四年の暮れにはこのソフトの開発に四苦八苦していた、そんなふうにきのう話しているんですよ。この辺の時間的なずれといいますか、どういうふうに説明されますか。

森副大臣 委員のお手元には既にこの資料が行っていると思いますけれども、では、念のため、事実経過をきちんとするためにこれを読み上げますと、「平成十四年十一月二十二日頃、株式会社カワグチ技研から、「社会保険庁において携帯端末の導入が検討されていると聞くが詳細を聞きたい」との申し出があった」、このとき、機器製造元の株式会社フルノシステムズを帯同しております。

 「十一月二十六日、株式会社明光商会からも同様の申し出があった」、この際には、機器製造元のカシオ計算機を帯同しております。

 この二社に対しまして、以下のような条件などについて説明するとともに、費用の概算額、つまり見積書の提出を求めました。

 まず、「ハード的要求条件」「片手で操作が可能であり、プリンタと一体型であること。」

 次に、「ソフト的要求条件」「簡便に機能拡張が行え、セキュリティ対策が万全であること」

 三番目に、「必要な業務機能」「被保険者情報の収録や検索等が簡便に行えること」「督励結果の蓄積や現金領収書等の各種帳票の作成が行えること」

 四番目に、「納入期限」、これは、平成十五年三月末までを求めました。

 その結果、「二社のうち株式会社カワグチ技研からは、株式会社フルノシステムズ社製の携帯端末をベースとして上記条件を満たすものを年度内に納入することが可能であるとの説明があった。 一方、株式会社明光商会」、すなわちカシオ計算機株式会社と一体でございますけれども、「からは、一部ハード的な改良とそれに伴うソフト開発が必要なため、年度内の納入は困難であるとの説明があった。 このため、結果的に株式会社カワグチ技研一社だけが、当庁の示した条件を満たすこととなった。」というのが、社会保険庁の事実経過の説明であります。

中根委員 これは、使い勝手が余りにも悪くて、いきなり、納入した途端に、カワグチ技研は八百万円の仕事をもらってバージョンアップしているんですよ。今なお、国民年金推進員の方は余り使っていないと言われている。

 もう一つ使っていないのがある。もう一つ、使っていなくて、全国の社会保険事務局、事務所、自治体に、社会保険庁と一括購入して、一括リース契約しているのが、この炊飯器みたいなもの、これが印刷システムパピアートと言って社会保険事務所に、職員さんにお尋ねをしても、わからない。印刷システムですけれどもと言うと、ああ、あのおかまねと言うわけですね。これは、おかまと言われているらしいんですけれども。これがまた、金銭登録機以上にというか以下にというか、ほとんど使われていない。ほとんど使われていないにもかかわらず、全国に、それぞれの事務所に二台から三台置かれている。それで、一年間に五億二千五百万円の契約をこのカワグチ技研はとっているわけですよ。使われていないから余りメンテもしなくて済んで、非常に楽をしている。金銭登録機と、このパピアート印刷機。

 実は、もう一つむだ遣いがある。徴収業務が、収納業務が、先ほど五島先生も言われたように、自治体から国に移ったとき、年金相談の業務だけはなぜか社会保険庁は自治体に残そう、残してやろうと、何か後ろめたいことがあったのか、思ったらしい。それで、パソコンを二台ずつぐらい買ってあげた。買ってあげたというか買わせた。その費用は交付税で手当てをした。このパソコンも、年金相談には全く使われていない。

 金銭登録機とパピアートと年金相談のために自治体に置いたパソコン二台ずつぐらい。このパソコンはカワグチ技研じゃありませんけれども、こんなむだ遣いばかりしていて、それで、保険料を上げるという、国民に痛みを押しつけるそういう年金法案をまだ通そうというわけですか。ここで断念したらどうですか。このことをやめない限り、大臣、もう一回出直しますと言うべきじゃないでしょうか。

坂口国務大臣 御指摘のお話のように、過去の問題としてはいろいろあることを私も承知をいたしております。過去の問題として、それは反省をすべき点は反省をしていかなければなりません。しかし、だからといって、これからの大きな将来を見ましたときに、その過去のために今後の問題を据え置くというわけにはまいりません。これからの将来の問題は将来の問題として一日も早くここは立場を明確にして、そして決めるべきところは決めていかなければなりません。その過去の問題と、そして将来の大きな問題と同一に扱うことはできないことを申し上げておきたいと思います。(発言する者あり)

中根委員 今、筆頭が言うように、まさに今のことなんですよ。金銭登録機だって、今むだが生じている。パピアートだって、日々リース料が出ている。今の問題、今むだ遣いが行われている問題。

 このおかまと言われているパピアート、社会保険庁が新聞を見て、ああ、これだと思って見つけたというわけなんですよ。それで、カワグチ技研に頼んだ。平成十年に設立されたカワグチ技研が新聞に広告を出した途端、社会保険庁が、その新聞に目を通して、これはすばらしいと思って購入を決めた。リースを決めた。カワグチにとってはいかにも話がうま過ぎるじゃありませんか。

 社会保険庁で一括して購入すれば値引き交渉もできる金銭登録機、それを随意契約でやっている。各社会保険事務所で個別に契約したと言っている。それが偶然、全国カワグチ技研になったと言っている。その随意契約も二百五十万円以上は入札にかけなければいけないという規定があるのに、二百五十万円以上のものだって随意契約している。このおかまも随意契約している。これは違法じゃないですか。今の問題として、この違法性をどう説明するか、お尋ねいたします。

森副大臣 少なくとも違法でないということは申し上げます。

 また、ちょっと話が戻りますけれども、多少お言葉を返すようでございますけれども、パピアートについては、本来非常に使用頻度の少ない帳票類を印刷する装置をつくろうというアイデアでつくられたもので、これは、要するに、したがって、しょっちゅう使うものじゃない。しかし、それを、めったに使わないものを別途各事務所に配送する手間とコストを考えますと、これでも評価をしてみれば、恐らくコストダウンができているんだろうというふうに私は思うんです。

 また、加えて、金銭登録機については、委員も恐らくお調べになったんだと思いますけれども、全国的にいいますと、これはほとんどの事業所、確かに当初は使い勝手の悪いところがありましたけれども、バージョンアップして、今ほとんどのところでは使われているというふうに私は聞き及んでおります。

中根委員 金銭登録機もまだまだ使われていないんですよ。

 パピアートだって、費用対効果と、今いかにも正当的なことを言いましたけれども、絶対にコストに見合っていませんよ。しかも、ほとんど使われていないのに、二台ずつあって、十一台もあったりするところもあるわけですよ。今すぐにでも解約して、コストダウンすべきじゃないですか。

 余りにもカワグチに対してうま過ぎる話が続いているわけですよ。やはりカワグチは社会保険庁の仕事をするためにつくられた会社、だれかが暗躍してこのカワグチに仕事を与えている。同じ構造が、きのうの関東信越厚生局、こういったところでも、わいろでそういう構図があったじゃないですか。監修料としてお役人に、これは明らかにわいろですよ。もうわいろと言うしかない。わいろを払って、監修料という名目のわいろを払って仕事をもらっている。すべてが、国民の大切な年金制度を痛めつけている、信頼を損ねている。ここを直さないと、政府が示している年金改革案なんか、とても国民から信頼されるわけがない。グリーンピアにしてもサンピアにしても同じですよ。国民はここに怒っているんですよ。そこをわからないと、本当にだめですよ。

 それだけ申し上げて、きょうは終わります。ありがとうございました。

衛藤委員長 泉房穂君。

泉(房)委員 民主党の泉房穂です。

 今から三十分間、無年金障害者の救済についての具体的な大臣からの答弁を得るために、質問をさせていただきます。

 まずもって、この場におられる方につきましてお尋ねします。一九九一年までは、学生は任意加入でありました。ここにおられる方は、ほとんどの方が、その一九九一年までに学生であった方だろうと思います。この中で、御自身がその任意加入の時代に年金に加入していた方がおられましたら、手を挙げていただけますか。恐らくおられないと思います。

 一%程度、百人に一人程度の方しか、その当時この年金には入っていませんでした。そういった中で不幸にして事故に遭われた、そういった方が、今回問題となっております学生無年金障害者の方々であります。

 きょうは、傍聴席に多くの無年金障害者の御本人やその御家族の方が来られております。こういった問題は、本当に具体的なイメージを持って考えるべきだと思います。きょうお越しの原告のお一人、原さんという方は、一九六八年、今から三十六年前、御本人が神戸大学の四年生のときに交通事故に遭い、その後、車いす生活を余儀なくされております。その事故に遭われて後、一年後からは、国民年金の保険料も納めているわけであります。しかるに、全く、何らのこういった障害基礎年金等の給付はなされておりません。

 また、もうお一方、猿木さんという方もきょうお見えです。その方は、今から二十六年前、一九七八年のときに、関西学院大学四年生、アメリカンフットボールの選手として活躍しているその試合中に事故に遭い、その後二十六年間、車いす生活を余儀なくされております。その方も、今はちゃんと国民年金の保険料を払っているわけであります。しかるに、全くもって救済がなされていないという状況が続いております。もう二十年、三十年経過している問題であります。

 この点につきましては、この間、国会でも多くの審議がなされ、附帯決議にもなっております。きょう、お手元の方のペーパーにもありますが、附帯決議、十五年前の参議院、十年前の平成六年には衆議院におきまして、無年金障害者の救済を図る、そして、一カ月後の参議院におきましては、その文言に「速やかに」という文言まで入れて、国会として早期救済ということを打ち出していたわけであります。二年前の七月には、坂口大臣みずからが坂口試案を出されまして、この問題に取り組もうとなさいました。

 しかるに、その問題につき具体的な救済がなされないまま、今日に至りました。その結果、地裁におきまして、立法不作為という理由におきます違憲判決まで出されるという状況になっております。控訴の云々につきまして、きょうは問題にいたしません。

 ただ、いずれにいたしましても、救済が必要であるという点におきましては、大臣も認識をともにするところだろうと思います。一枚、お手元の紙をめくっていただければわかります。これは調査室の方でつくっていただいた資料ですけれども、障害基礎年金、例えば一級の方の場合、年間百万円程度と仮定しますと、二十から仮に六十五歳までとしますと、四千五百万程度の給付がなされます。国民年金保険料は、これは払う方でありますから、現行の一万三千三百円でいきましても、同じような年数を計算しますと、単純で五百数十万円になります。プラスマイナスで五千万円の差が出ております。

 十九歳、誕生日前、二十の誕生日前であれば救済が得られる、支給が得られる。しかしながら、誕生日を過ぎた後に交通事故に遭う、またスポーツ事故に遭う、そういった場合にはこんな五千万もの差が生じてしまう。これが果たして公平なのかという問題であります。この点をとらえまして、今回の判決も、余りにも不平等であるという認識のもとに判決がなされたと認識しております。

 そこで、まず大臣に問います。

 大臣自身は、二年前の七月、坂口試案を出されました。その中で、大臣みずから、今の無年金障害者の置かれた状況については看過しがたい、御本人のみならず家族の方も高齢化が著しいと言っておられます。また、生活保護があるにしても、受けておられる方は世帯単位の原則もありまして一割程度、仕事をお持ちの方も二割程度、ほとんどの方が救済を得られないままの状況にあるという認識を述べておられます。そして、すべての無年金障害者に対して救済すべきであるという認識のもとにこの試案を出されたと思います。

 そこで、まず大臣につきまして、このときの、二年前の決意、大臣のその現状認識、無年金障害者の置かれている状況に対する厳しい状況認識、そして救済が早期に必要であるという認識は変わっていないのか、変わったのか。まずその点だけ、短くお答えください。

坂口国務大臣 短くということでございますから。

 そのときの気持ちというのは現在も変わっておりません。そのときの気持ちを持ち続けておりますことを、まず申し上げておきたいと思います。

 もう少し経過を言わせていただくんだったら言わせていただきますが、時間ありませんか。なければ……。

泉(房)委員 また言っていただきますので。

 具体的な救済につきましては、立法不作為ということもありますので、民主党の方の党内手続も今経ておりまして、救済案を今作成中であります。

 参考までに、民主党の案の概要だけ手短に申し上げさせていただきますと、救済の対象は、すべての無年金障害者を対象、視野としつつも、学生、主婦、在日外国人、在外邦人をまずもって救済していく。金額につきましては、障害基礎年金に相当する額を持っていく。そして、今問題提起しました国民年金保険料の免除という仕組みも組み入れていく。そして、具体的な制度、枠組みにつきましては、年金制度の枠組みとしつつも、実際の財源は国庫でもって見ていく。そして、救済時期は、本国会で通れば十月一日施行というような内容にて、現在、党内手続を進めさせていただいております。

 そこで、政府・与党につきましても、新聞報道、また与党合意や坂口談話にありますように、今、救済に向けて取り組む途中だろうと思います。そこで、個々に、具体的に尋ねていきます。

 まず、すべての無年金障害者の救済が必要であるということを前提としつつも、まず、今回の与党合意にあります「学生等」、そして坂口談話にあります「一定範囲の方々」の救済というその範囲であります。

 学生を含むことは当然といたしまして、主婦も同様の状況であろうと思いますので、含むのは当然と私は考えますし、また、在日外国人につきましては、これもこれまでにたくさん議論がありますが、そもそも、入りたくても、一九八二年まで国籍要件があって入れなかったという事情もあります。救済の必要性はなお一層強いと思います。

 そこで、いろいろ、できない理由は聞きたくありません。まず二点だけ聞きます。今回の「一定範囲の方々」の中に、学生のみならず、主婦を含むか否か。また、外国人につきましては、今回、学生、主婦と同時に解決を図るのか、その後速やかに図るという形で時期をずらさざるを得ないのか。お答えください。

坂口国務大臣 これは国会の同意を得なければいけない話でございまして、各党でひとつ御議論をいただいて、そして合意を得るという手続をお願い申し上げたいというふうに思っております。

 私の気持ちといたしましては、もちろん学生の皆さん方は当然でございますが、それから、同じ立場にあります主婦の皆さん、いわゆる掛金をしてもしなくてもいいという時期があった皆さん、これは、同じ扱いをしなければ少し不公平ではないかと私は思っております。その二つまでは、私はどうしても第一歩として入れていただきたいというふうに思っております。

 外国人の問題につきましては、最高裁の判決がありましたりとか、あるいはまたさまざまな要件がございますので、これをどうするかというのはいろいろの御議論のあるところだというふうに思いますので、そこはいろいろ御議論をしていただいた結果によって決定されるものというふうに思っている次第でございます。

泉(房)委員 救済範囲につきまして、今回、まずもって学生、主婦から始めたいというお気持ちは受けとめます。外国人などその他の問題はありますが、時間的制約もありますので次の方に移りますが、続いて、支給の金額であります。

 私といたしましては、また今連絡が入りましたが、民主党の党内手続も経ましたので、民主党としては法案提出の手順はすべて今終えましたが、民主党といたしましては、救済の金額につきましては、障害基礎年金一級、二級それぞれに相当する金額を全額国庫負担で出すという形で提出を予定しております。

 この点、議論があることは重々わかっております。前もって言っておきますが、二つ問題はあります。

 一つは、拠出をしていない方に対して給付をしていいのかという問題であります。

 しかしながら、これは大臣もよくわかっておられると思います。現行法上も、例えば、二十の前に障害になった方につきましては、条文三十条の四によりまして、一円も保険料を払っていなくても満額出ております。また、三十条一項によりまして、二十を若干過ぎていても、今の制度の中では、保険料を納めていなくても満額支給がなされています。また、二〇〇〇年より、学生につきましては猶予期間というものができました。その猶予期間中に障害になられた場合におきましても、保険料を一円も納めていない場合であったとしても、現行法上、ちゃんと満額支給しているわけであります。

 そのことからしまして、いろいろな書面におきまして、拠出なくして給付なしという文言は使われますが、大臣は、この点は本当はよくわかっていると思います。そういった理由は通らないと私は考えます。

 あと、もう一点、そうはいっても、任意加入であって、保険料を納めているのだから、保険料を納めた方と同額にはしづらいという理由づけが確かにあろうかと思います。

 この点につきまして、例えば坂口試案の場合、現行の二十前の方におきます財源が、六割が一般の国庫、四割が保険料、そこからして六割というような基準を示しておられるようでありますが、しかしながら、ここは政策論であります。任意保険を払っている方とのバランスといいましても、だからといって、六割にしなきゃならない理由ではありません。大臣みずからも、政策効果の期待できる内容でなきゃいけないと坂口試案で言っておられます。

 とすれば、すべからく満額、満額でないにしてもそれに近い基準であるべきだと私は考えますが、この支給金額につきまして、大臣のお考えを問います。

坂口国務大臣 ここは、先ほど申しましたように、御議論をしていただいて決定していただくことだというふうに思っております。

 ただ、私が坂口試案を出させていただきましたときにも、さまざまな角度からいろいろのことを検討したわけでございます。また、各省庁に対しましても、可能かどうかのこともいろいろお聞きをいたしました。そのときの印象といたしましては、範囲を拡大すればするほどなかなか実現が難しいなという印象を受けたわけでございます。

 しかし、そのときとは時が変わりまして、各党の中からこうした御意見が出て、そして与野党の中でいろいろ御検討をいただくということになってまいりましたから、環境はかなり変わってきた、好転しているというふうに私も受け取っているわけでございます。

 その額につきましても、年金の保険料をお支払いになっていて、そしてなられた皆さんと、そうでない皆さんと、やはり同じ額にするというのは、そのときもいろいろの角度から検討いたしましたけれども、いささか抵抗がある。しかし、さりとて、少ない額であれば手当としての価値がなくなってしまう。そこのところをどう解決をしていくかということが、そのときにもいろいろ議論になりました。私も、そこで結論を出すことができなかったために、いろいろの数字をそこにお示し申し上げて今後にゆだねた次第でございます。

 そうした経緯がございますので、どうぞひとつ、委員に中心になっていただいて、民主党の方はおまとめをいただいているようでございますから、各党との間の御協議にも加わっていただきまして、そしてよりよい方法で決定をしていただければ私は幸いでございます。

泉(房)委員 確かに、今回につきましては、早期救済を考えますと、政府からの提案という部分が、ある意味、時期的な問題、また財務省を含めての全体の合意が得られるかという問題からして、議員立法という方向性があり得るんだろうということは理解します。

 しかしながら、厚生労働省のトップである坂口大臣みずからのリーダーシップは極めて大きいと思います。その点、今のお答えでは、金額面につきましての思いというものが伝わっておりません。満額は難しいというようなニュアンスは伝わってきておりますが、少なくとも、坂口試案におきます六割を下回るようなことがあってはならないと考えます。そうであれば、坂口試案の二年前から後退になってしまいます。その点、大臣のお考えを再度お聞かせください。

坂口国務大臣 私が余り先に言うのは失礼だというふうに思っておりまして、発言を差し控えさせていただいておりますが、思いといたしましては、今委員がお示しになりましたように、前回私が示しました案以下にならないことを私も期待をいたしているところでございます。

泉(房)委員 今のお答えは、少なくとも六割以上だという答弁だと理解いたします。

 しかしながら、私は、六割でいいと言っているわけではありません。これはまさに、先ほどの事例で申しました、二十の誕生日になったからといって、当時、国民年金に入ろうなんて思う方はほとんどいなかったという状況であります、気づかなかったわけであります。その中で、たまたま交通事故に遭った、たまたまアメリカンフットボールやラグビーの試合中に事故になって障害になった、その方に対しまして、あなたは年金に入っていなかったから、保険料を払っていなかったから少なくて仕方ないですねと果たして言えるのかという視点からいきますと、やはり満額であろうと思います。

 そしてまた、制度論からいきまして、その当時はそうはいったって入っている人がいたんだからと言いますが、それは制度の枠組み自体が、政府・与党の言葉だと、政策移行期であるとか発展過程であるとか、年金制度改革のそういった表現を使われておりますが、いずれにしても、そのときに強制加入にしていればこういった事態は生じなかったわけであります。過去のそういった、しておけばよかったことをしなかった、それを理由にして、だから減らすんだという理由はどうしても納得いきません。改めて、満額、少なくとも満額に近い金額を強く申し入れたいと思います。

 そしてまた、このお金の問題につきましては、先ほど来申しておりますが、支給を受けられないのみならず、国民年金の保険料を払っているわけであります。

 具体的に申しますと、障害になってしまって、後遺症が残ってしまった、一生車いす生活だと言われて、周りから言われて役所の方に行って、障害基礎年金がもらえると思って行ったところ、残念でした、あなたは学生時代に任意加入していませんでしたから出せませんと。そのかわり、かわりと言っては逆なんですが、そのかわり国民年金の保険料をさかのぼって払ってくださいと言われて、払うわけです。

 こんな不合理なことがあるのか。支給を得られないのみならず、国民年金保険料はその後も払い続けている方がたくさんいるわけであります。拠出なくして給付なしと言いますが、ほとんどの方はちゃんと払っている。わずか一年二年、学生時代に払っていなかった、そのことによって全くもって救済が得られないという、本当に不合理であります。

 その点、その国民年金保険料につきまして、民主党の案でいきますと、満額ですから、法定免除として、一円も払わなくてよくなる仕組みができます。しかしながら、坂口大臣の今の答弁のように、幾らかでも少なくなりますと、法定免除という枠組みは難しかろうとは確かに理論的には思います。しかしながら、今のように世帯単位で免除という枠組みだと、どうしても免除を得られません。個人単位で免除を認めるとか、そういった何らかの国民年金保険料を負担しなくていいような、ないしは軽減できるような工夫がなされてしかるべきであろうと私は思いますが、その点、大臣のお考えをお聞かせください。

坂口国務大臣 ここは、無年金障害者の皆さん方の問題のみならず、障害者全体に実はかかわる問題でございます。

 障害年金等をもらっておみえになります方が六十歳なり六十五歳なりになられて、そして年金を受給されるようになりましたときに、今までの障害年金と、それから新しい年金との間の関係をどうするのかということは、今既にやっているわけでございまして、そうした関係があるわけでございますので、そうしたこともにらみながら、今回決めていただきますときに、それは額にもよるというふうに私は思いますが、そのことと、これから掛金をしていただくこととの整合性をどう図っていくかということを、全体でこれは考えていただかなければならない問題だと思います。

 ですから、これは障害者全体にかかわる問題でございますので、そうした意味で、広い意味で御議論をいただければというふうに思っておりますし、私たちもひとつ議論をしたいと思っております。

泉(房)委員 視点についてはわかりますが、大臣の意向といたしましては、障害者全般の問題としても、こういった保険料の負担の軽減などに向けて前向きに検討していくという御意向だと確認したいと思いますが、その点、改めて御答弁をお願いします。

坂口国務大臣 全体の問題でございますから、ここで一概に私がこうしますとまで言えないわけでございますけれども、そうした全体の問題であるという認識は一つお持ちをいただきたいと思いますし、全体の問題としてどうしていくかということを私たちも考えたいということでございます。

泉(房)委員 続いて、救済する場合の制度論であります。

 このあたりも、年金制度の枠内でいくのか、福祉的措置でいくのかというような議論の立て方があるようですが、民主党案によりましても、保険料を回してくるというような立て方はしておりません。全額国庫負担という枠組みであります。この点、老齢年金の場合、確かに拠出と給付の関係の問題もありまして、保険料を払っていない方にという議論は確かにあるのかもしれません。

 しかし、障害年金につきましては、諸外国を見ましても全額国庫負担ということはよくあることであります。日本の場合でも、障害福祉年金の時代におきましても全額国庫負担でやっていたわけでありますので、この点から考えまして、別に福祉的措置だといったとしても、ある意味、年金制度の枠内で取り組むことも可能だろうと思います。

 この点、坂口試案によりますと、坂口大臣みずからが、福祉的措置によるならば対象者は限定できない、すべての救済というふうに言っておられます。しかしながら、今の議論の中では、対象者を限定する方向というような答弁であります。

 これは一見矛盾するかのように思いますし、ただ、ここで矛盾をつきたいと思っているわけではありません。大臣の意向のように、対象者を限定するというのは、与党合意の方にありますように、年金制度改革の発展過程、ないしは、坂口試案によりますと、政策的移行期という表現です。原告や弁護団からいいますと、制度の谷間、制度の欠陥という表現になりますが、いずれにいたしましても、そういったことからして、福祉的要素と年金制度的要素が加味されるわけであります。

 であれば、やはり、金額において、障害基礎年金というものを目安に、目標にしたような金額設定になされるという方向に働くはずでありますし、また、繰り返し述べますが、国民年金保険料の法定免除、申請免除に対する工夫といった意味で、年金制度の枠内、枠内、枠外というよりは、年金制度的要素を十分加味し得ると考えますが、この点、どのようなお考えか、お答えください。

坂口国務大臣 年金というのは、大変かたくなでございますけれども、支払いをした人にこれは給付するという大原則のもとに成り立っているものでございますから、その原則の中で処理をしようと思いますといろいろの難しい問題があって、私もその壁に突き当たって四苦八苦したということでございます。

 おっしゃいますように、じゃ、年金と関係ないのかと言われれば、それは年金に入っていなかったがゆえに起こったことでございますから、関係がないとは言えない、一面において関係はあると私も思っているわけでございます。

 それで、そのときに、私が、政府のたしか法制局だったと思いますけれども、お聞きをしましたときに、それをするんだったら一部だけするというわけにはいきませんよという話だったというふうに記憶をいたしております。そんなことから、やるんだったら、それじゃ、全部やらなければならないんだなということでああいう表現に実はなっているわけでございます。

 しかし、今回、皆さん方がいろいろの御検討をいただいて、与党の方も検討していただいておりますし、民主党の方も、またその他の党もおやりをいただいているかもしれませんが、おやりをいただいていて、そして、つくり上げていこうといいます場合には、先日ももう一度聞き直したところでございますが、そこまでかたくなに言わなくてもいいのではないかという意見もあるようでございますので、そこはいろいろとお話し合いをいただければありがたいというふうに思っている次第でございます。

泉(房)委員 いずれにいたしましても、すべての無年金障害者の救済が必要であるというのは当然の前提であります。

 今回の与党合意、坂口試案、坂口談話という流れの中で、まずもってどこから救済できるかという問題でありますので、その論理的整合性を追求する余りにできないのではなくて、その部分、ある意味、過去の制度的欠陥といいますか、制度的移行期の中でそうした矛盾を、その矛盾を強調していたから、整合性を保てないからしないという発想ではなくて、そこは政治決断だろうと思うわけであります。

 財源論につきましても、民主党の提出予定の案でいきますと、年度ベースで二百四十六億円という形の試算をさせていただいております。もし、今の坂口大臣の学生、主婦限定というようなニュアンスでとりますと、もう少し金額も少なくて済むと思います。また、民主党は満額支給でありますから、その部分が違ってくれば財源論の議論も違ってまいります。

 財源論は確かに難しい議論がありますが、例えば今回の国会で議論されております児童手当につきましたら、今回六歳から九歳にするということでプラス二千億という金額を捻出しておるわけでありまして、やろうと思ってできない話ではなかろうと思います。

 この点、財源論との関係で、たくさんの方を救済しようと思うと金額が少なくなってしまうというような難しい面はあろうかと思いますが、大臣としては、今のように対象者の限定もやむなしというお考えであれば、その分金額につきましてはより充実したということだと思いますが、その点、お考えを再度お願いいたします。

坂口国務大臣 財務省のことまで私が申し上げるわけにはまいりませんので、今後の議論にゆだねたいというふうに思います。

 ただ、与党の方の合意におきましても、この年金改革全体の合意の中でも、速やかに結論を得るということになっておりましたし、そして、何とか今国会中に結論を得たいという御意思のように承っておりますので、ぜひお話し合いを進めていただくことができれば、私も試案を提案させていただきました一人として大変うれしく思う次第でございます。

泉(房)委員 今、大臣の方から今国会中という言葉が出ました。

 ただ、今回は政府提案ではなくて議員立法ということでありますと、与党の自民党、公明党さんの方の動き、これが重要になろうと思います。

 ただ、この点、繰り返しですが、大臣はリーダーシップを発揮すべき立場であります。また、重ねて申し上げますが、二年前に坂口試案まで出して、多くの方、原告の方々、当事者の方々、随分期待をしました。さすが坂口大臣だ、大臣はついにやる気なんだという期待を抱いたわけであります。そういった期待を抱かせた責任もあります。

 また、今回、違憲判決が出た後、原告からたくさん会ってくださいという声にもかかわらず、伝え聞くところによりますと、直接会って聞かなくても気持ちはよくわかっている、この問題はよくわかっているというような中で、原告に会わずして控訴したという経緯もあります。

 そのことからしましても、大臣みずからリーダーシップを発揮して、今会期中の成立に向けて全面的な、最大限の努力をするという言葉ぐらいあってもいいんじゃないか、今傍聴席で聞いておられる原告に対するせめてそれぐらいのメッセージを伝えていただきたいと強く願う次第でありますので、一歩踏み込んだ大臣の御答弁をお願いいたします。

坂口国務大臣 実は私は、大臣になります前からでございますが、長年の間、いわゆる脊損障害の皆さん方とのおつき合いがございまして、地元でございますけれども、長い間その支援活動等も続けてまいりました一人でございます。したがいまして、その皆さん方のお一人お一人がどのような生活をしておみえになるかということにつきましては、かなり詳しく存じているつもりでおります。

 そうしたこともございまして、何とかここに救済ができないのだろうかということを前々から思っていたわけでございまして、そんなことで、私の考え方をまとめさせていただいたという経緯がございます。

 私も国会の皆さん方にお願いをするばかりではございませんで、私自身も一生懸命やるべきところはやらなければいけないと、当然のことながらそう思っております。

泉(房)委員 今回の与党合意、そして坂口談話につきましては、ある意味、期待の持てる面と、もう一面、対象者が限定されるのかという意味で、制度論からいきますとそれぞれ分離できるんでしょうが、障害をお持ちという立場から見れば一緒であります。同じように、例えば車いす生活を余儀なくされる、例えば精神障害、そういった意味で御苦労をされているという、一緒にいる方々のうち、一部の学生、主婦だけまず取り上げて救済するという面につきましては、ある意味、それに入らない在日外国人の方から見ますと、どうしてそちらが先なんだ、自分たちは入りたくても年金制度に入らせてもらえなかった、しかし、一九八二年以降であれば在日外国人の方にもちゃんと障害基礎年金が支給されている。まさにそこの制度、どちらかだけで違う、こんな不合理があるのかという思いはなお一層強いと思います。

 そういった意味で、今回の救済対象がどうなろうとも、すべての無年金障害者の救済に向けて、大臣として、また、大臣が仮に任期が終わったとしても、政治家生命をかけて最後まで取り組むという決意を最後にお聞きしたいと思います。

坂口国務大臣 人の命には限りがありますように役職にも限りがありますから、務めております間、一生懸命にやらせていただくのは当然でございますし、たとえ自由な身になりましても、一緒にまたやらせていただきたいと思っております。

泉(房)委員 本当に、早期救済に向けて大臣のリーダーシップの発揮を強く求めて、私の質問を終わります。ありがとうございました。

衛藤委員長 山口富男君。

山口(富)委員 日本共産党の山口富男です。

 冒頭に、まず坂口大臣に一点確認しておきます。

 先ほど中根委員の方から、選択エージェンシーの問題が出ました。ちょうど一週間前に私はこの問題を取り上げまして、厚生労働省、社会保険庁にかかわる重大な疑惑である、これについての徹底的な調査を求めたんですが、その際に、坂口大臣からは、なお調査するのでもうしばらく待っていただきたいという話でした。きょう、森副大臣の答弁ですと、四月中という話も出たんですけれども、この問題につきましては、私は、厚生労働行政にかかわる重大な疑惑ですから、国会に対してきちんと調査をして報告するというのが、国民の皆さんに対する説明責任をまず果たしたことになると思うんです。

 その点で、大臣から、四月中に必ずこの問題ではきちんとした調査を国会に報告する、当委員会に報告する、この点をもう一度確認しておきたいと思います。

坂口国務大臣 前回でございましたか、御質問がございまして、そして、全体ずっと当たらせております。

 課長補佐以上、すなわち、そういうことにタッチしてはならないということが決まっております課長補佐以上のところはいないということがわかりまして、係長以下のところでそれじゃどうなのか。こちらにいる人、それから遠くへ転勤をしている人、中にはどこかへかわった人というような者もいるものでございますから、そうした人も含めて、そうした担当についておりました局の、あるいは課の人たち、少しさかのぼって、そして調査をしているということでございまして、少しおくれておりまして申しわけございませんが、はっきりさせて御報告を申し上げたいというふうに思います。

 先ほど森副大臣の方から四月中にというふうに御答弁を申し上げましたので、できるだけ詳しくしたいというふうに思っておりますが、新しい問題も起こったりしているものですから、最終までは行かないかもしれませんけれども、できるだけ皆さん方に御報告を申し上げるようにしたいというふうに思っております。

山口(富)委員 できるだけではなく、必ずお願いしたい。よろしいですね。答弁は結構ですが、よろしいですね。――はい、うなずかれましたので、では、必ずお願いいたします。

 私はちょうど一週間前に、公的年金制度の問題につきましては、国民年金も厚生年金もいずれも低額、非常に低い額にとどまっているという問題を、具体的な材料も示しまして、大臣にもその図も見ていただきました。そして、改革というならば、無年金者の問題も含めまして、低額年金の問題、これを改善することが今喫緊の課題になっているという提起をいたしました。

 きょうは、もう一つ大きな問題になっております年金の空洞化にかかわる問題について、これからただしてまいりたいと思うんです。

 それぞれ国民年金、厚生年金の順を追って聞いてまいりたいと思うんですが、まず、国民年金の問題です。

 いわゆるバブルと言われた経済がはじけたのが一九九二年、平成でいいますと四年ですけれども、それから直近の社会保険庁の調査というのが、ちょうど十年後の二〇〇二年の数字が一番新しいですから、一九九二年から二〇〇二年の推移を見ると、国民年金の保険料をめぐって未納者数はどうなっているのか、それからもう一つ、いわゆる納付率、これはどういう変化があるのか、この二つの数字についてまず示していただきたい。

薄井政府参考人 国民年金の納付状況について、二つの観点からのお尋ねがございました。

 まず最初に、納付率の関連でお答えをさせていただきますけれども、当該年度分の国民年金保険料として納付すべき月数のうちで、その年度中に実際に納付された月数の割合を示す納付率、かつては検認率という言葉を使っておりましたけれども、これが、平成四年度が八五・七%でございます。この数字は、昭和六十一年の基礎年金導入後では一番高い数字であったかと思います。そして、この数字が平成十四年度では六二・八%、こういう数字になっているところでございます。

 それから、国民年金のいわゆる未納者についてでございますけれども、これは三年に一回調査をいたしております。そこでの未納者の定義でございますけれども、国民年金第一号被保険者のうちで過去二年間全く保険料を納めておられない方、これは、保険料納付を要さない、いわゆる法定免除とか、こういう方を除く方でございます。

 そういう形で、過去二年間保険料を納めなかった方を未納者と定義いたしまして、国民年金被保険者実態調査で把握をいたしておりますが、最初にこのデータがございますのが、平成八年の調査、時点といたしましては一年度前の平成七年度の数字でございますけれども、百七十二万人という数字でございます。直近の平成十四年の調査、これは平成十三年度時点での調査ということになりますけれども、三百二十七万人が未納者、こういう数字になってございます。

    〔委員長退席、北川委員長代理着席〕

山口(富)委員 そうしますと、納付率で見た場合に、二二・九%マイナスになっている、それから、未納者で見ますと、百五十五万人新たにふえているということになります。

 それで、国民年金の場合は、保険料につきまして未納になった場合、二年を過ぎると時効になるわけですけれども、皆さん方はこれを時効消滅額というふうにどうも呼んでいるようですが、一九九二年から二〇〇二年の十年をとりますと、二年間分は時効になりますから、だったら最初の八年間分で見て、一体この未納額は総額で幾らに上るのか、これを示していただきたい。

薄井政府参考人 国民年金の第一号被保険者が納付すべき保険料につきまして、今御指摘ございましたように、二年間保険料の納付が行われない場合には時効によって徴収が不可能になる、こういうことでございますけれども、平成四年度から平成十二年度までの九年間ということで国民年金保険料をとらまえまして、そのうちで既に時効により徴収が不能となった額のトータルでございますけれども、約五兆四千七百九十六億円、こういう数字になってございます。

山口(富)委員 薄井運営部長は割と淡々と数字を述べられましたけれども、極めて深刻な数字だと思います。これは、納付率の点では二割以上減らしている、未納者の点では百五十数万人新たにふやしてしまっている、そして、その額は何と約五兆五千億に上るという状態です。

 私はこれは、国民年金の空洞化というにとどまらずに、国民皆年金という制度の根本からいきますと、この制度の土台を壊すような、そういう事態が進行しているんじゃないか、こういうふうに考えるのですが、坂口大臣はどういうふうに考えるか、この所見を示していただきたい。

坂口国務大臣 確かに大きい数字でございまして、看過のできないことだというふうに私も思っております。

 この掛金をしていただかない皆さん方の理由というのも、お聞きをいたしますとさまざまでございます。いわゆる所得が少ないがゆえにできないというふうにお答えの皆さんもおみえでございますし、しかし、所得はあるけれども額がわずかだからそんなことを私は将来期待していないというふうに思っておみえになる皆さん方もある、また、自分で生命保険に入っているから僕はいいんだというふうにおっしゃる方もある、さまざまな御意見でございます。

 しかし、委員も御存じのとおり、年金というのは、自分の将来のためであると同時に、現在の高齢者のためにこれは掛金をしていただく、そして御自身のときには次の世代の掛金が戻ってくる、そういう賦課方式になっているわけでございますから、自分の都合で自分はもういいんだということだけでやめるということでは、これは年金制度は成り立たないわけでございますから、そうしたことについては十分に御理解を得なければならないというふうに思っております。

 しかし、一方におきまして、所得が少ないがゆえに入れないという皆さんもおみえでございますから、その皆さん方に対しましては、今まで半額の制度がございましたけれども、もう少し、四段階に段階をいたしまして、その所得に応じて掛金をしていただけるようにするというようなことも今回導入をしているところでございまして、ぜひ皆さん方にお入りをいただけるようにするというふうにしなければならない。

 強制徴収というのがあるわけでございますが、しかし、私は、最初から強制徴収というのがいいかどうか。年金制度というのは、そうしたことではなくて、もう少し年金の制度そのものに理解をしていただいて、そして保険を掛けていただく人の率を上げていくというのが主な道ではないかというふうに私は思っております。

山口(富)委員 大臣からの話は、幾つか問題を整理しながら審議をしなきゃいけないというふうに思うんです。

 まず冒頭にお聞きしたいのは、さまざまな理由があるというふうにおっしゃいましたけれども、少なくとも、社会保険庁が出しております「平成十四年国民年金被保険者実態調査結果の概要」という、これは委員はだれもが持っている調査ですけれども、この中を見ましても、決して理由はさまざまではないんです。

 どういう理由になっているのか。保険料の未納の理由の多くは、「保険料が高く、経済的に支払うのが困難」、これが六四・五%。特に、お子さんの教育費などの負担が重たい四十代の前半では七六・一%の方がこれ。そして四十代後半では七五・二%と、大変高くなっているわけですね。決してさまざまな理由ということで片づけられない問題がここにある。

 しかも、今度の政府案でいきますと、国民年金で、大体これから一年の休みもなしに十三年間連続的に保険料を上げようというわけですから、そして、年間四万三千二百円、御夫妻で八万六千四百円の負担増になる。原因として、うまく納められないという理由が、「保険料が高く、経済的に支払うのが困難」、こういう声が多数になっているときに、しかも、それは社会保険庁の調査を見てもそうなっているときに保険料を上げようというわけですから、これは、私はやはり、一層未納者がふえ、この空洞化の問題では、いわゆる納付率の点でこれは下がっていく、こういう方向に行かざるを得ないと思うんです。

 しかも、委員の皆さんにごらんいただきたいんですが、きょう理事会の了解を得ましてお配りした配付資料の二枚目なんですけれども、これは厚労省がつくった資料なんですが、一体、未納になっている方々の所得状況はどうかという調査なんです。

 そして、「本人を含む世帯の総所得金額」という折れ線グラフがありますけれども、これを見ますと、世帯で月々の、下にならしてある数字は百万単位で数字が出ておりますが、これを月額に直しますと、大体、十六万以下の世帯が三三%、それから二十万以下の世帯が五割なんですね、五〇%。こういう所得の低い方々のところでやはり未納率が高いというのが、これも厚労省がまとめられた、歴然とした姿だと思うんです。

 坂口大臣は、四段階で徴収方法についても考えるというお話がありましたけれども、これはあくまで保険料のいわば納付のやり方を少し変えるだけであって、ここで問題になっている、保険料が高く支払いが困難であるということに応じた対応策じゃないと私は思うんです。しかも、その対応をとりますと、将来的には低額年金という問題がもう一回これは起こってきますから、やはり対応策になっていないというふうに言わざるを得ないと思うんです。

 そこで、詳しくお尋ねしたいのは、一体、今の政府の提案の方向をとっていくと、保険料の収入は上がるのか下がるのか。上がるとすれば、どういう根拠を持って上がると考えるのか。これを示していただきたい。

薄井政府参考人 今、資料の方で、お答えをする前に若干御説明をさせていただきたいと思いますが……(山口(富)委員「結構です、三十分しかないんだから」と呼ぶ)わかりました。

 基本的には、昨年の八月に、厚生労働省としては国民年金特別対策本部というのを設置いたしまして、八〇%の納付率を目標といたしまして取り組むことにいたしているところでございます。

 これにつきましては、まずはやはり理解をしていただくということが重要でございますから、年金教育なり年金広報なりということをきちっとやっていくということが一つであろうかと思っております。自主的に納めていただく。

 その次のステップといたしまして、自主的に納めていただけない方につきましては、これは地道な努力ということになりますけれども、催告状を送る、あるいは電話による納付督励をやる、あるいは戸別訪問をするということで納付督励をしていくというのが二つ目でございます。

 さらに、保険料を納めやすいようにしていくということで、コンビニエンスストアでも納められるようにするというのを今般始めることにいたしたところでございます。

 さらに、ある程度の所得がありながらお納めいただけない方につきましては、強制徴収という取り組みをさせていただいております。

 また、今般の制度改正の中でも、先ほど大臣申し上げましたように、多段階免除であるとか、あるいは保険料を納めることについて理解をいただくためのポイント制の導入であるとか、幾つかの項目を盛り込んでいるところでございまして、こういった制度面の対応も含めまして、目標達成に向けて努力してまいりたい、かように考えているところでございます。

山口(富)委員 五年後をめどに八〇%まで納付率を上げたいというお話だったんですが、私、もう一つ資料を示したいんですけれども、今、厚生年金の側から、いろいろ経済活動がうまくいかない企業などが生まれまして、厚生年金をやめて国民年金の側に移るという方々がふえていらっしゃいます。その方々の中での納付率は一体どれだけか。これも厚生労働省の資料ですけれども、平成でいいますと、十四年度で何と五二・六%なんです。

 つまり、国民年金全体の納付率が、先ほど数字を挙げられましたけれども、六二・八という話だったんですが、実際に今厚生年金側から国民年金に移ってきている人が多くて、そして、その方々は大体五割しか納付できない状態になっている。そういう条件が現実に起こっているのに、よくも五年後に八割にいくでしょうという見通しを立てられると私思うんです。

 先ほど坂口大臣が、強制徴収については疑問の点もあるんだという話がありましたので、少しその点お尋ねしたいんですが、配付させていただきました資料の一枚目をごらんいただきたいと思うんです。これが問題になっております督促状というものなんです。これが納めていない方々に送られるというわけですね。

 この左側の「注意」という事項の二つ目の段落に、こういうふうに書かれております。「指定期限を過ぎて完納しないときは、財産差押の処分をします。」大変強圧的な、これが大臣が言われる強制という意味合いだと私は思うんですけれども、既にことしの一月に五百人の方にこの督促状が送られたと言われます。

 そして、沖縄では、三月十日時点ということですけれども、四十四件この督促状が発行されて、そのうち十件について財産の差し押さえが行われたという報告を受けておりますが、一体これは具体的にどういうケースなんですか、財産差し押さえに至った。

薄井政府参考人 ストレートに最初から差し押さえに至るというわけではございませんで、昨年の秋の時点で、これはある程度所得がある、あるいは資産があると考えられる中で保険料を納めていただけていない方、全国で約一万人弱ということでございますけれども、こういう方々に対しまして、ふだん送っている催告状よりは、やはり納めていただくということを強く訴えました最終催告状というのを送らせていただきました。

 その後、個別にアプローチをさせていただきまして、それらの中には、よくよくお話を聞いてみると、所得がないとかこういう方もおられるわけで、そういう方は外しまして、それからまた、これからお納めをいただくというお約束をいただいた方も外しまして、そういう方でない方につきまして、約五百件の方について督促状を出させていただいたということでございます。

 督促状を受けましてお支払いをいただいた方も当然おられるわけでございまして、そうでない方につきまして、最終的な処分でございます差し押さえに至ることをやっているということでございます。

 全体的な状況につきましては、まだ現在進行形でございますので取りまとめはいたしておりませんけれども、しかるべきタイミングで取りまとめをしたいと考えているところでございます。

山口(富)委員 財産取り押さえとなったら、人生にとっては大変な事態ですよ。それをいまだに何やっているか、取りまとめしていないと。どういうつもりなのか。一人一人の人生をきちんと考えていただきたい。

 私が、この沖縄の事例が、なぜ沖縄でまず強制徴収が始まったのかあれこれ調べてみましたら、結局、納付率が一番低かったんですね、三八・七%。いわば、言葉はきついですけれども、懲罰的に沖縄で強制徴収を始めたとしか考えられない。では、次にどこに行くのか。これに基づけば、次は大阪ですよ。五三・三%。そして次が東京。五七・三%。

 厚生労働省は、こういう強制徴収をいよいよ東京や大阪という大都市でもやろうというお考えなんですか。

坂口国務大臣 先ほどから部長が申し上げましたとおり、それなりの手順を踏んでやっているわけでございます。手順を踏んで、なおかつ理解をしていただけないということには、それは最終的な判断をしなければならないということになると私は思うんです。

 これは、国民としての義務であり、皆お支払いをいただく。それも、経済的にお困りになっているというのならば、それはやむを得ないということもあるでしょう。しかし、払っていただいている方と払っていただいていない方と、カーブを描くと同じようなカーブを描く。非常に経済的に恵まれているにもかかわらずお支払いにならない、そういう方がおみえになる。そういう方に対しましては、催促状を差し上げ、そして、それでも応じていただけないときには厳しい判断を最終的にはしなければならない。

 私が先ほど申し上げましたのには、それなりの手順を踏んで、それぞれの皆さん方の状況というものもよく拝見をして、理解をして決めていかなければならない、最初から税務署が入ってというようなことではいけない、こういうことを申し上げたわけでありまして、手順を踏んでやるのは、それはお許しをいただかないといけないと私は思っております。

    〔北川委員長代理退席、委員長着席〕

山口(富)委員 何事につけ、手順が大事なんです。私は、そういうのを抜きに、やっちゃいけないとか、やるとか、そういう議論をしているんじゃないんです。

 坂口大臣はカーブは大体同じだと言われましたけれども、配付しました資料の二枚目をごらんいただければわかるように、所得水準に応じてカーブは全く違うんです。それを見ていただいて対応しなければ、私は、今の政府の案では、結局、保険料は値上げする、それから強制徴収には取りかかる、財産の差し押さえをする、こういう悪のメカニズムに入ってしまうと。これでは、今でも公的年金制度の土台が揺らいでいるときに、それをつぶすような方向で動いてしまうじゃないか、そのことを指摘しておきたい。

 きょうは、厚生年金についても私は質問しなければいけませんから、この問題は引き続き取り上げてまいりたいと思います。

 次に、厚生年金なんですけれども、年金の空洞化は、国民年金だけではありません、厚生年金でもかなり大きく空洞化が起きております。

 先に私の方で数字を申し上げますと、配付資料の三枚目に、関連する、これから質問する資料が幾つか出てまいりますが、一九九八年度末の被保険者数は、厚生年金で三千三百四十七万人です。これが、二〇〇二年度末で三千百七十万人へと、百七十七万人減っている。

 それで、これまで五年置きに財政再計算をやっていたわけですけれども、三枚目の資料をごらんいただきたいんですが、二〇〇〇年、二〇〇一年、二〇〇二年と見通した数字と実績の数字の食い違いなんですが、大体、年間二百万人以上、見込んだ数に比べて被保険者数は伸びていないという数値がはっきりあらわれています。

 一体この狂いというのはなぜ生じたのか、そして、最大で二百八十六万人の差があるわけですけれども、これだけの差が生まれたことによって保険料の収入でどういう影響が出たのか、これを示していただきたい。

吉武政府参考人 二〇〇〇年度におきます厚生年金の被保険者数につきましては、平成十一年の財政再計算では三千四百三十万人と見込んでいたところでございますが、実績は三千二百二十万人でございまして、二百十万少なくなってきております。これは、やはり最大は、厳しい経済状況のもとで、雇用の面で厳しくなってくるということだろうというふうに思っております。

 実際にデータをごらんいただきますと、例えば、経済成長率が鈍化をいたしまして、その後、雇用なり賃金は遅行指標でございますので、少しおくれて下がってまいりますので、その状況が出てきているということだろうというふうに思っております。基本は経済の状況だろうというふうに思います。

山口(富)委員 これは、基本は単純な経済じゃないんですよ。

 三枚目の表の下の欄をごらんいただきたいんですが、これは今の企業での正規の職員と非正規職員の差を示したものです。

 これを見ますと、一九九七年、平成九年と二〇〇二年、平成十四年を比べているわけですけれども、少し数字を丸めさせてもらいますが、雇用者全体でいきますと、五千四百九十九万六千人から五千四百七十三万三千人へと、マイナス二十六万四千人。正規労働者でいきますと、三千八百五十四万二千人が三千四百五十五万七千人と、マイナス三百九十八万人。

 では、このマイナスの三百九十八万人のかつての正規の雇用の方、先ほど大臣は常用雇用が大事だということをしきりに強調されましたけれども、一体どうなったのか。その多くはパート、アルバイト、派遣社員、契約社員、嘱託になっているんです。パートで八十二万六千人、アルバイトが八十九万三千人、派遣社員が四十六万四千人、契約社員その他で百五十万人、合わせてここで三百六十九万五千二百人いるんです。ですから、正規の職員の雇用だった方々、常用雇用だった方々のほとんどが非正規雇用になった。

 では、何でこういうことになるのか。それは理由ははっきりしていますよね。経済一般じゃなくて、大手の企業、財界、大企業が、リストラ策を発表して正規の職員をできるだけ減らしていく、そして非正規の職員に切りかえていく、そういう政策をとっているからなんです。

 ここで、私、坂口大臣にお尋ねしますけれども、年金制度の問題を考えても、この今の財界、大企業の労働政策の問題の転換を図らないと、年金の現在と将来の安心が図れない、そういう時点に来ているんじゃありませんか。

坂口国務大臣 今お話がございますように、確かに正規の雇用が減ってきていることは事実でありまして、これは現在の経済動向というものが大きく影響していると私も思っております。大きい企業だけではなくて、中小のところでもリストラをされたところがございますが、御指摘の、大きな企業のところで多かったことも、私は率直に認めなきゃならないというふうに思っております。

 企業の皆さん方にも今お願いをしておりますのは、今後、新しい、学校を卒業した人、そうした人もやはり採用していただかなきゃならないし、それから中高年の皆さんにいたしましても、これは非常に技術を持った方でありますから、継続雇用をぜひお願いしたいということを申し上げているところでございます。

 もう一つ総論的なことを申し上げると、企業は一体だれのものかということではないか。働く人々のためであり、そしてまた下請の皆さん方のためのものであり、全体のものであるという御認識をお持ちいただいて、ぜひとも雇用に対しては格段のお力添えをちょうだいしたい、こういうふうに申し上げているところでございます。

山口(富)委員 この問題は、年金の支え手の問題でありますし、働いている方々が現在と将来の年金をどういうふうに受け取るのかという問題にかかわるわけですね。

 では、大臣にお尋ねしますけれども、雇用が大事だというお話なんですが、一体政府は、パート労働者、登録型の派遣労働者、有期の嘱託、それから契約社員、これらの方々の年金の加入状況について、何らかの調査をしているんですか。

吉武政府参考人 ちょっと手元に資料がございませんので、記憶しているところで申し上げますと、パートの方で申し上げますと、厚生年金の被保険者である方は大体三割ぐらいでございます。それから、これは女性の方が主だろうと思いますが、いわゆる第三号被保険者の方が三割ぐらい。それから、一部の方でございますが、これは多分パートであっても収入が相当多い方でございますが、国民年金の第一号被保険者の方がおられまして、全体でいわゆる未加入、未納の状態の方は十数%、そういう状態でございます。

 ですから、六割ぐらいの方は、御本人が厚生年金あるいは第三号という形で、一応、被用者年金の体系に属しておられるという状態でございます。

山口(富)委員 年金問題に詳しい局長の答弁がこの程度ですからね。結局、この分野に大きな問題があるのに、きちんとした調査はないんですよ。

 私は、今度の政府の制度設計というのは、百年といいますけれども、大事なこの厚生年金をめぐって非正規職員の方々が今どういう状態にあるのか、年金の角度からのきちんとした調査さえまともにない。そういうもとで、政府案は保険料を引き上げ、給付の水準を一律一五%下げるんですから、こんなことだったら、公的年金制度のもともとの本質を変えるような、そういう重大な改悪になる、そのことを申し上げて、時間が参りましたから、質問を終わります。答弁は結構、またやりましょう。

吉武政府参考人 数字をちょっと正確に申し上げますと、厚生年金あるいは共済年金にパートの方で加入しておられる方は二八・七%、被扶養配偶者になっている方が三〇・六%、それから国民年金に加入している方が二三・〇%でございまして、いずれにも加入していないという方が一七・五%おられます。

山口(富)委員 時間が経過しましたが、答弁されましたから。

 パートだけじゃないですか。私が聞いたのは、派遣労働者を含めて非正規職員がどうなっているのかを調べてくれと。それはないんですよ。

 そのことだけ申し上げ、質問を終わります。

衛藤委員長 阿部知子君。

阿部委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。

 本日が年金問題に関する審議の本格的なものとして二日目に至っておりますが、私は、きょうの論議を聞きながら、やはり年金の制度改革問題の論議のされ方はその国の民度をあらわすものであるということを強く思っておりました。

 どういうことかというと、せんだって、イラクの人質問題で三人プラス二人の方の無事な解放があったのですが、この後、日本の国内では自己責任論というのがばっこいたしまして、それ一色に塗られているような状況でもあります。私は、年金というのは、一方ではおのおのの人間が生きていく上の自己責任でもありますが、いま一方は、政治の中で、特に我が国の社会に暮らす人たちに政治が何を約束できるか、実は人質問題も同じだったと思いますが、その政治と国民の約束という意味において、きょうの質疑を聞きながら、坂口大臣が一歩前向きな御答弁を下さいましたので、さらにもう一歩突っ込んでみたいと思います。

 何の御答弁であったかというと、民主党の五島委員の御質疑の中で、坂口大臣は、このたび民主党からも対案が出され、あるいは連合からも対案が出されて、やはりこれは年金について国民的論議の一歩踏み込んだものをさらに行う必要があるのではないかというふうに御指摘されたと思います。

 そこで、大臣にしかできない、大臣に今やっていただきたいことで、そうであれば、まず超党派のワーキンググループを大臣が主導してつくっていただきたい。これは今非常に重要であります。

 坂口大臣は先ほど、それはそれとしてとりあえず今回の年金問題を論じてほしいというふうな御趣旨にも受け取れましたが、もちろん今回の年金問題は、私は政府案とは違う案を持っておりますので、それはそれで論じさせていただきますが、実は、年金の改正という問題は一朝一夕に、きょう出してあした結論が出るというものでもありません。

 大臣にも私はせんだってお伝えいたしましたが、実は、一九八六年の年金の大改革に至るその前段階に、年金の審議会の方から一九七七年に建議書というものが出されております。それに基づいていろいろな意見が交わされて、八六年、一階建て部分の基礎年金という枠組みができたわけです。

 私は、この間、本当に今がチャンスだと思います。そういう骨太の論議をしていくために、大臣が政治的なリーダーシップを発揮されて、超党派の、いわば各党のいろいろな意見を持ち寄って本当に、プラス国民の声、ここもまた重要です、公聴会が行われないとすれば、それは絶望に近い政治だと私は思いますが、それはまたさておいて、特に大臣に、冒頭、やはり超党派でワーキンググループを大臣のリーダーシップのもとにつくるという御決意というか、御判断を伺いたいと思います。

坂口国務大臣 年金というのは非常に長い経過を持って今日を迎えているわけであります。長い歴史があって、今日のこの制度ができ上がっております。

 したがいまして、あすから新しい制度、また来年から新しい制度を新しくキャンバスにかくというわけではありません。長い間この現在の年金制度にかかわっておみえになりました皆さんがおみえでございます。現在、既に年金を受けておみえになる皆さんもあるわけでございます。間もなく受けようとする皆さんもおみえでございますから、現在まで続いてまいりましたこの制度を、これを持続しながら、そこで今後の新しい社会の中でどう改革をしていくのかということを、年月をかけてこれは解決をしていく以外にないというふうに私は思っております。

 したがいまして、現在ありますこの制度を最小限、一体どこまで変えたらいいのか、少子高齢社会を迎えるに当たって、現在考え得る改革というのは一体何なのかということに今は思いを一つはいたすべきことだと思っております。それはそれで、これは進めていかなければいけない。過去の問題はいろいろあるでしょう。ありますけれども、未来はさらに大きいわけでありますから、未来に向かってこれは進めなければならない。

 しかし、いろいろの点で、例えば女性と年金の問題等、これから一番大きな議論をしていただかなければならない問題でございます。女性と年金の問題を議論すれば、当然のことながら、この年金制度というものを個人単位でいくのか、それとも厚生年金のように世帯単位のままで進めていくのかといったような問題にも突き当たってくるわけでありますから、それらの問題は大きな問題で、議論をしていただかなければならないということを先ほど五島議員にも申し上げたわけでございます。

 それはひとつ今後各党がお集まりをいただいて、どんな形で御議論をいただくのか。現在もう既に厚生労働省には年金審議会がございますけれども、これは各党の皆さん方に御参加をいただくという形ではありません。この年金につきましては、各党間の議員の皆さん方での一つの検討会のようなものが既にできているというふうにお聞きをいたしておりますけれども、そうしたものを中心にしてこれから議論をしていただくのか、あるいは政府全体としてそこで議論をする場をつくっていくのか、私は議論の仕方というのはいろいろあるというふうに思います。

 それは、各党で合意できることでなければこれはできないわけでございますから、そこは皆さん方のお話し合いによって、どういう話し合いがいいかということは、ひとつお決めをいただく以外にない。私がこうしろということを言うのはまことに僣越であるし、それはそうではないというふうに思っておりますが、そうした何らかの形をつくっていただいて議論を進めていただくということはまことに結構なことだということを申し上げた次第であります。

阿部委員 私が大臣にお願い申し上げたのは、その枠組みをまずつくっていただきたい。それは、現厚生労働大臣である坂口大臣ができる権限であり、またやっていただきたいことだからです。私はやはり、例えばスウェーデンでも、同じように年金の論議、十年近くを経て、その論議の過程でさまざまな価値観の共有や、自分たちの、国民一人一人の周知する年金制度ができましたから、今その判断をしていただく任をぜひとも大臣にお願いしたいという一点であります。これは引き続いて大臣もぜひお考えいただきたいと思います。

 と申しますのも、既に先ほど御紹介しました一九七七年の建議の文章を見ますと、今と全く同じ状況です。膨大な無年金がそこに発生しようとしている、そして一方で、高齢社会はもう予測されていると。一九七七年といえば、今団塊の世代である私たちがまだ二十代の若者で、既にそのころ、高齢社会の問題、あるいは女性の就労の問題、子育てとそして仕事の両立の問題、みんなテーマは上がっておりました。そして、何度も申しますが、極めて深刻であったのは、今のままの制度では膨大に無年金が発生するだろうという危機意識が共有されて、建議となったものです。

 私は、先ほどの山口委員の御質疑、あるいはせんだって私も指摘させていただきましたが、今一番問題であるのは、国民年金部分の空洞化、そして厚生年金も空洞化。国民年金に至っては納付率六二%であるという現実。それらをしっかり見ないと、幾ら今回出されたものが百年の計であると言われても、果たして正しい処方せんになっているのかどうか納得できない。まして、この間、厚生労働省の本来は一番力を発揮してほしい官僚と言われる皆さんの不祥事ばかりをこの場で論じなくてはいけないというのは余りにも悲し過ぎますし、またそうしたことが頻発しているという状況が、極めて深刻な現在の私たちの社会のありようかと思うわけです。

 そこで、この問題はぜひとも、いずれも大臣の見識とリーダーシップにかかわるものですから、厚生労働省にかかわるさまざまな職員の不祥事、きちんとした解決と同時に、何度も申し上げますが、大臣のリーダーシップで超党派の年金のワーキンググループをつくっていただきたいです。

 きょうの私の質疑ですが、皆さんのお手元に配らせていただきましたものは、「国民年金第一号被保険者数の見通しと実績」というものを書かせていただきました。私は先回の質疑で、厚生年金の加入者の見通しと実績というものを配らせていただきました。厚生年金加入者は、平成十一年時の見通しを大幅に下回って年々三百万人以上減り続ける。そしてこちらは国民年金で、平成十一年の見通しというところを見ていただくと、平成の十二、十三、十四と、おのおの一千八百万、一千八百万、一千七百九十万、しかし、実績はおのおの二千百五十万、二千二百十万、二千二百四十万、どんどんふえております。

 財政再計算のときの見通しが、五年前の見通しがこのように大きく崩れている。今回もいろいろな数値を出して財政再計算信じなさいと言われますが、加入者数でもこれくらいずれが出てしまう再計算のあり方を、どうして国民が信じられるのか。まず、この大幅なずれということをどう認識しておられるかについて、年金局長にお伺い申し上げます。

吉武政府参考人 先ほど厚生年金の被保険者について申し上げたことのまさに裏返しだろうというふうに思っております。

 二〇〇〇年度におきます国民年金の第一号被保険者数につきましては、平成十一年の財政再計算では千八百万人というふうに見込んでおりましたが、実績は二千百五十万人でございまして、実績の方が三百五十万人多くなっております。これは、先ほど申しましたとおり、経済状況が非常に厳しい中で、サラリーマンの方の中で、いわゆるサラリーマンから、例えば失業されたり、あるいは御自分で仕事を始められたりということで、一号に移ってこられているということだろうというふうに思っております。

 この事態、ある意味で非常に日本では余り経験したことがないような事態でございまして、国民年金の歴史で申し上げますと、基本的には自営業の方を中心にして形成された保険集団でございますので、平均年齢が逐次上がってくる状態でございましたけれども、この事態を受けまして、国民年金の被保険者の年齢は若干下がってきております。

 それは、先生がおっしゃるようなフリーターの影響などもあるというふうに思っておりますが、そういう非常に大きな経済変動があったということが、先ほど申しましたけれども、ただ、雇用の問題あるいは賃金の問題は少し遅行指標でございますので、経済が非常に厳しくなった後でその影響が出てくるというところがございまして、それが出てきている状態だろうというふうに私どもは認識しております。

阿部委員 今の年金局長の御答弁にもあったように、経験したことのない事態が起きているわけです。だからこそ、本質的、根本的な論議が必要で、これは次の見通しを見ていただきますと、今度の平成十六年度の見通しでは、二〇一〇年、平成二十二年からは減り出す形になっておりますが、果たして、これとて何の保証もございません。保証がない大きな理由は、先ほど山口委員が資料でお示しになったように、常用雇用をどんどん非正規に振り分けている企業の現実があるからです。

 そういたしますと、こういう数値に基づいて、プラス出生率、賃金上昇率あるいは物価上昇率などの数値を幾らぐちゃぐちゃやっても、この加入者数というところに大きく影響する労働の実態、労働のこれからのありよう、さっき坂口大臣は企業にも努力して常用雇用をふやしてほしいと言いましたが、一方で、この間の小泉政権のもとでとられた政策は、よく言えば働き方の多様性という言い方で、しかし、現実にふやしたものはパートや非正規の職員でありました。

 大臣は、本当にこの働き方が今後五年以内に改善されて、この今の厚生年金の減少、国民年金の増加という現実が改善されるとお思いか否か、御所見を伺います。

坂口国務大臣 私は、今後の問題につきましては、いろいろ難しい局面もございますけれども、しかし、これから五年というのはいよいよ労働力人口が減り始めるときでございます。もう来年、再来年ぐらいからぼつぼつ減るのではないかというふうに思っておりますが。二〇〇〇年に比べて二〇一五年ということになりますと、約四百万ぐらい労働力人口が減るわけであります。

 したがいまして、それだけ減りますと、現在、失業者は三百三十万ぐらいでございますから、私はこれから先、中高年、六十歳代の方あるいは女性の労働力というものにかなり頼らざるを得ない時期にこれからだんだん突入をしていくというふうに思っております。それがすべてパート、アルバイトでは私はないと思います。

 国の方も、そこは女性の皆さん方にも高齢者の皆さん方にも働いていただける体制をバックアップしていかなければなりません。総合力でこれは支援をしなければならないというふうに思っておりますけれども、私は、必ずしも悲観材料ばかりではないというふうに思っておりまして、そうしたこれからの状況を踏まえて、国としてはどういう政策展開をするかということを考えるべきときに来ているというふうに思っております。

阿部委員 例えば出生率に関しては、数値が改善した場合、現状維持の場合、低下の場合、おのおの予測を立てられております。しかし、この雇用労働形態の変化ということに関しては、実は財政再計算も全く触れておりません。そして、いい方だけを信じて論議することはとてもできません。私たちは、現実にみんながどんな働き方をしているか、この間、本当に厳しい状態を見ているからです。そして、もしかして、アメリカのようにジョブレスリカバリー、仕事がない、失業者はそのまま、失業率は高どまり、あるいは非正規雇用が高どまりしたまま次の五年を迎えるかもしれません。

 そこで、大臣に、恐縮ですが私の資料の四枚目をお開きいただけますでしょうか。私がここにお示ししたのは、資料五としてございますが、「企業の社会保険料負担と法人税推移」というものをとらせていただきました。社会保険料負担の方は御本人負担がありますので、全体の社会保険料負担として集計されているものを半分に割りました。

 多少正確さは欠きますが、例えば、ここでわかりますことは、二〇〇〇年まで企業の社会保険料負担が大体十兆、二〇〇一年九兆、二〇〇二年十兆。それに比して、法人税の方を見ていただきますと、十一兆、十兆、九兆五千二百億。すなわち二〇〇二年という年は、企業にとりまして、法人税負担よりも社会保障負担が高くなった逆転の年であります。ここに私は、大きな、その後に発生するさまざまな事態が潜んでいるように思います。

 せんだっても、厚生年金の新たに業を起こされた方が、その企業体として二割、厚生年金を持たない、抜け駆けしているという数値が出ましたが、現在、企業にとって、企業はその運営をなるべく軽減するためには、税負担は少ない方がいいでしょう、そして、プラス、社会保険料負担の方が多くなったら、そこをどうやって削減するかというドライブがかかります。ここで生じていることが、厚生年金に加入しないいわゆる脱法行為か、あるいは厚生年金の要らない非正規雇用をふやしていくという、そうしたドライブがこの推移からも私は見てとれると思います。

 もちろん、願わくば景気が回復し、法人税収が上がり、そして社会保険料負担を決してこれ以下にしたいとは思っているわけではありません。もちろん、企業がありとあらゆる勤労者に社会保険料負担をしていくべきと私は思っています。そこで、今回の年金改正案の何が一番問題かというと、社会保険料の負担を増し続けることによってさらに非正規雇用がふえてくるという実態を、この現下に、このような状態であるときに行えば、保険料率アップは必ず、企業とて生き物ですからどこかで自分たちの負担を軽減したくなります、それを歯どめする策が全くないということです。

 私は、社民党の対案として出させていただくものの中に、先ほど五島委員が御指摘でした、ちょうど労災の保険のように総人件費に社会保険料を掛ける、すなわち、使っている人がパートでも正規でも、総賃金に掛けていくという方式を一つは考えております。それからもう一つは、今、とりわけ中小企業にとって負担が強いのであります。そこを考えると、総人件費に掛けた場合には、企業の規模に応じて保険料を変動させることができます。

 この二点について、もともとこの数値をどうごらんになるか。労災保険のように総人件費に社会保障負担を掛ける案はどうか。私はこれを非正規雇用が増加することを歯どめするための策と思っております。そして、今、厳しい中小企業に対して、保険料率を資本金に合わせて調整していく。実はフィンランド方式と申します。この三点について、大臣の御所見を伺います。

坂口国務大臣 具体的な問題は局長から答弁させますが、この資料五を拝見させていただいて、一九九〇年代から法人税がずっと、三七・五〇%から三四%になり三〇%になりと、だんだんと下がってまいりました。下がってきたものですから、法人税の額もしたがいまして下がってきている。一方の保険料は下がらずに、これは持続しているということでございましょう。

 私は、企業もいろいろの負担をしていただかなければならないわけでございますが、それは法人税プラス保険料、全体としてどれだけ御負担をいただくか。その場合には、年金だけではなくて、医療保険もございますし、介護もございますし、雇用保険もございます。そうした保険料と税とでどう御負担をいただくかという総合的なお話になってくるんだろうというふうに思っております。

 その中で、法人税は低い方がいい、そして、ある程度保険料はやむを得ないという行き方も私はあるというふうに思います。また逆に、法人税は出すけれども保険料はある程度で抑えてほしいという行き方もあるだろう。あるいはまた、民主党さんがおっしゃっているように、法人税だとかそういうことではなくて消費税でいこうという御提案も、それはあるだろうというふうに思います。

 私はこの年金制度でいろいろと経済界の皆さん方ともお話をいたしましたが、経済界の皆さんとしては、保険料や法人税はできるだけ低い方がいい、そして消費税で集めてもらうのがいいと。それは御意見は私はそのとおりだというふうに思いますけれども、しかし、その皆さん方の御意見、それから働く皆さん方の御意見も聞かなければいけませんし、そして高齢者の皆さん方の御意見というのも聞いていかなければならない。

 この表から、私は、法人税が下がってきている、しかし、保険料はこれからお願いを申し上げなければならない。今後の問題といたしましても、全体としての整合性をどうするかということだろうというふうに思っております。

阿部委員 私がこの表から指摘したいのは、社会保険料負担のあり方が雇用の形態まで変えてしまうということです。そして、もし大臣がこれから正規雇用をふやした方がいいと思うのであれば、雇用中立的な保険料のあり方、むしろ正規雇用がそのことによって拡充されていくような向きを、ぜひとも御検討いただきたいと思います。

 なお、私はきょう、質問予告のうち、いわゆる国民健康保険の納付状況の悪化を食いとめるための政府案についていろいろ御質疑を予定しておりましたが、時間が切れましたので次回に回させていただきます。

 ありがとうございます。

衛藤委員長 次回は、明二十二日木曜日午前九時十分理事会、午前九時二十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時五十七分散会


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