衆議院

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第18号 平成16年5月7日(金曜日)

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平成十六年五月七日(金曜日)

    午前十時三分開議

 出席委員

   委員長 衛藤 晟一君

   理事 鴨下 一郎君 理事 北川 知克君

   理事 長勢 甚遠君 理事 宮澤 洋一君

   理事 城島 正光君 理事 三井 辨雄君

   理事 山井 和則君 理事 福島  豊君

      井上 信治君    石崎  岳君

      大野 松茂君    加藤 勝信君

      上川 陽子君    木村  勉君

      木村 義雄君    菅原 一秀君

      竹本 直一君    棚橋 泰文君

      中西 一善君    中山 泰秀君

      能勢 和子君    原田 令嗣君

      平田 耕一君    福井  照君

      三ッ林隆志君    三原 朝彦君

      吉野 正芳君    青木  愛君

      泉  房穂君    内山  晃君

      大島  敦君    岸本  健君

      小宮山泰子君    園田 康博君

      中根 康浩君    西村智奈美君

      橋本 清仁君    樋高  剛君

      藤田 一枝君    古川 元久君

      増子 輝彦君    水島 広子君

      古屋 範子君    桝屋 敬悟君

      山口 富男君    阿部 知子君

    …………………………………

   内閣総理大臣       小泉純一郎君

   厚生労働大臣       坂口  力君

   総務副大臣        山口 俊一君

   文部科学副大臣      原田 義昭君

   厚生労働副大臣      森  英介君

   財務大臣政務官      七条  明君

   厚生労働大臣政務官    竹本 直一君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房総括審議官)         井口 直樹君

   政府参考人

   (厚生労働省医政局長)  岩尾總一郎君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長)    塩田 幸雄君

   政府参考人

   (厚生労働省保険局長)  辻  哲夫君

   政府参考人

   (厚生労働省年金局長)  吉武 民樹君

   政府参考人 

   (社会保険庁運営部長)  薄井 康紀君

   厚生労働委員会専門員   宮武 太郎君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月七日

 辞任         補欠選任

  木村  勉君     大野 松茂君

  橋本 清仁君     岸本  健君

  藤田 一枝君     西村智奈美君

同日

 辞任         補欠選任

  大野 松茂君     木村  勉君

  岸本  健君     橋本 清仁君

  西村智奈美君     藤田 一枝君

    ―――――――――――――

五月七日

 社会保障制度の拡充等に関する請願(山井和則君紹介)(第一七八四号)

 あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律第十九条の改正に関する請願(大野功統君紹介)(第一七八五号)

 同(寺田学君紹介)(第一七八六号)

 同(川上義博君紹介)(第一七九九号)

 同(田村憲久君紹介)(第一八〇〇号)

 同(藤田一枝君紹介)(第一八〇一号)

 同(山本喜代宏君紹介)(第一八〇二号)

 同(阿部知子君紹介)(第一八一一号)

 同(永田寿康君紹介)(第一八一二号)

 同(古川禎久君紹介)(第一八一三号)

 同(阿部知子君紹介)(第一八五一号)

 同(平沼赳夫君紹介)(第一八五二号)

 同(山内おさむ君紹介)(第一八五三号)

 同(阿部知子君紹介)(第一八七一号)

 同(岡島一正君紹介)(第一八七二号)

 同(達増拓也君紹介)(第一八七三号)

 同(平沢勝栄君紹介)(第一八七四号)

 同(鹿野道彦君紹介)(第一八八〇号)

 同(西村真悟君紹介)(第一八八一号)

 同(岡島一正君紹介)(第一八九〇号)

 同(小渕優子君紹介)(第一九四八号)

 骨髄バンク利用にかかる患者負担金への医療保険適用に関する請願(野田聖子君紹介)(第一七八七号)

 臓器移植の普及に関する請願(野田聖子君紹介)(第一七八八号)

 同(藤田一枝君紹介)(第一八〇三号)

 パーキンソン病患者・家族の療養生活の質向上に関する請願(林田彪君紹介)(第一七八九号)

 同(石毛えい子君紹介)(第一八〇四号)

 同(寺田学君紹介)(第一八〇五号)

 同(阿部知子君紹介)(第一八一五号)

 同(高村正彦君紹介)(第一八一六号)

 同(高木美智代君紹介)(第一八一七号)

 同(西村智奈美君紹介)(第一八一八号)

 同(阿部知子君紹介)(第一八五六号)

 同(城島正光君紹介)(第一八五七号)

 同(赤嶺政賢君紹介)(第一八九二号)

 同(石井郁子君紹介)(第一八九三号)

 同(穀田恵二君紹介)(第一八九四号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第一八九五号)

 同(佐藤剛男君紹介)(第一八九六号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第一八九七号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第一八九八号)

 同(山口富男君紹介)(第一八九九号)

 同(吉井英勝君紹介)(第一九〇〇号)

 腎疾患総合対策の早期確立に関する請願(大野功統君紹介)(第一七九〇号)

 同(野田聖子君紹介)(第一七九一号)

 同(藤田一枝君紹介)(第一八〇六号)

 同(阿部知子君紹介)(第一八二〇号)

 同(古川元久君紹介)(第一八二一号)

 同(平沢勝栄君紹介)(第一八七五号)

 同(桝屋敬悟君紹介)(第一九五一号)

 年金制度の改悪反対に関する請願(志位和夫君紹介)(第一七九二号)

 介護・福祉・医療制度の拡充、障害者・家族の費用負担の軽減等に関する請願(藤田一枝君紹介)(第一八〇七号)

 同(山口富男君紹介)(第一九〇二号)

 育児・介護休業法の整備等に関する請願(古川元久君紹介)(第一八一四号)

 同(藤田一枝君紹介)(第一八八二号)

 マッサージ診療報酬の適正な引き上げに関する請願(阿部知子君紹介)(第一八一九号)

 同(藤田一枝君紹介)(第一八八三号)

 同(三井辨雄君紹介)(第一八八四号)

 同(樋高剛君紹介)(第一九五〇号)

 公的年金制度の拡充等に関する請願(阿部知子君紹介)(第一八二二号)

 年金改悪反対に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第一八四二号)

 同(石井郁子君紹介)(第一八四三号)

 同(穀田恵二君紹介)(第一八四四号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第一八四五号)

 同(志位和夫君紹介)(第一八四六号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第一八四七号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第一八四八号)

 同(山口富男君紹介)(第一八四九号)

 同(吉井英勝君紹介)(第一八五〇号)

 年金制度の改悪反対等に関する請願(石毛えい子君紹介)(第一八五四号)

 同(城島正光君紹介)(第一八五五号)

 同(内山晃君紹介)(第一九四九号)

 小規模作業所等成人期障害者施策に関する請願(近藤昭一君紹介)(第一八八七号)

 同(阿久津幸彦君紹介)(第一九五二号)

 同(赤羽一嘉君紹介)(第一九五三号)

 同(五十嵐文彦君紹介)(第一九五四号)

 同(石毛えい子君紹介)(第一九五五号)

 同(泉健太君紹介)(第一九五六号)

 同(宇野治君紹介)(第一九五七号)

 同(内山晃君紹介)(第一九五八号)

 同(漆原良夫君紹介)(第一九五九号)

 同(大口善徳君紹介)(第一九六〇号)

 同(岡本充功君紹介)(第一九六一号)

 同(奥村展三君紹介)(第一九六二号)

 同(嘉数知賢君紹介)(第一九六三号)

 同(梶山弘志君紹介)(第一九六四号)

 同(梶原康弘君紹介)(第一九六五号)

 同(上川陽子君紹介)(第一九六六号)

 同(亀井静香君紹介)(第一九六七号)

 同(河上覃雄君紹介)(第一九六八号)

 同(河村建夫君紹介)(第一九六九号)

 同(菅直人君紹介)(第一九七〇号)

 同(木村義雄君紹介)(第一九七一号)

 同(北橋健治君紹介)(第一九七二号)

 同(北村直人君紹介)(第一九七三号)

 同(玄葉光一郎君紹介)(第一九七四号)

 同(小西理君紹介)(第一九七五号)

 同(小林千代美君紹介)(第一九七六号)

 同(古賀一成君紹介)(第一九七七号)

 同(古賀誠君紹介)(第一九七八号)

 同(高村正彦君紹介)(第一九七九号)

 同(佐藤剛男君紹介)(第一九八〇号)

 同(島田久君紹介)(第一九八一号)

 同(園田康博君紹介)(第一九八二号)

 同(高木美智代君紹介)(第一九八三号)

 同(高木義明君紹介)(第一九八四号)

 同(橘康太郎君紹介)(第一九八五号)

 同(棚橋泰文君紹介)(第一九八六号)

 同(渡海紀三朗君紹介)(第一九八七号)

 同(中井洽君紹介)(第一九八八号)

 同(中山太郎君紹介)(第一九八九号)

 同(長浜博行君紹介)(第一九九〇号)

 同(楢崎欣弥君紹介)(第一九九一号)

 同(西田猛君紹介)(第一九九二号)

 同(西村智奈美君紹介)(第一九九三号)

 同(根本匠君紹介)(第一九九四号)

 同(羽田孜君紹介)(第一九九五号)

 同(葉梨康弘君紹介)(第一九九六号)

 同(橋本清仁君紹介)(第一九九七号)

 同(浜田靖一君紹介)(第一九九八号)

 同(林田彪君紹介)(第一九九九号)

 同(樋高剛君紹介)(第二〇〇〇号)

 同(平井卓也君紹介)(第二〇〇一号)

 同(平岡秀夫君紹介)(第二〇〇二号)

 同(藤田一枝君紹介)(第二〇〇三号)

 同(細川律夫君紹介)(第二〇〇四号)

 同(増子輝彦君紹介)(第二〇〇五号)

 同(増田敏男君紹介)(第二〇〇六号)

 同(桝屋敬悟君紹介)(第二〇〇七号)

 同(松野信夫君紹介)(第二〇〇八号)

 同(松原仁君紹介)(第二〇〇九号)

 同(松本龍君紹介)(第二〇一〇号)

 同(水野賢一君紹介)(第二〇一一号)

 同(武藤嘉文君紹介)(第二〇一二号)

 同(村井仁君紹介)(第二〇一三号)

 同(村田吉隆君紹介)(第二〇一四号)

 同(望月義夫君紹介)(第二〇一五号)

 同(森岡正宏君紹介)(第二〇一六号)

 同(山本喜代宏君紹介)(第二〇一七号)

 同(山本拓君紹介)(第二〇一八号)

 同(渡辺具能君紹介)(第二〇一九号)

 保険料引き上げ・給付削減の年金改革反対等に関する請願(塩川鉄也君紹介)(第一八八八号)

 同(山口富男君紹介)(第一八八九号)

 パートタイム労働法の抜本的改正等に関する請願(石毛えい子君紹介)(第一八九一号)

 育児・介護休業法の改正に関する請願(高橋千鶴子君紹介)(第一九〇一号)

 医療費負担の軽減、年金改悪の中止等に関する請願(小林憲司君紹介)(第一九三四号)

 総合的な肝疾患対策の拡充に関する請願(桝屋敬悟君紹介)(第一九三五号)

 年金改悪と大増税反対、社会保障の拡大に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第一九三六号)

 同(石井郁子君紹介)(第一九三七号)

 同(穀田恵二君紹介)(第一九三八号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第一九三九号)

 同(志位和夫君紹介)(第一九四〇号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第一九四一号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第一九四二号)

 同(山口富男君紹介)(第一九四三号)

 同(吉井英勝君紹介)(第一九四四号)

 乳幼児医療費無料制度の創設に関する請願(石井郁子君紹介)(第一九四五号)

 社会保障制度拡充等に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第一九四六号)

 同(吉井英勝君紹介)(第一九四七号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 厚生労働関係の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――

衛藤委員長 これより会議を開きます。

 厚生労働関係の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として厚生労働省大臣官房総括審議官井口直樹君、医政局長岩尾總一郎君、社会・援護局障害保健福祉部長塩田幸雄君、保険局長辻哲夫君、年金局長吉武民樹君、社会保険庁運営部長薄井康紀君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

衛藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

衛藤委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。水島広子君。

水島委員 民主党の水島広子でございます。

 強行採決後の質疑ということで、キツネにつままれたような、大変奇妙な気持ちで今この場に立たせていただいておりますけれども、とりあえず質問させていただきますので、本日もよろしくお願いいたします。

 そして、質問に先立ちまして、やはり先日の強行採決につきまして心から抗議を申し上げますし、また、強行採決の当日、閣僚の年金保険料の納付実績についての公表、これを、約束を破って強行採決後まで引き延ばしたということの責任は、私は余りにも重いものだと思っております。この点につきましても、改めて強く抗議を申し上げたいと思っております。

 まず、強行採決は大臣の意思ではございませんけれども、内閣の一員といたしまして、約束を破ったということ、このことについて、坂口厚生労働大臣から一言コメントをいただきたいと思います。(発言する者あり)

坂口国務大臣 枝野議員との質疑の中で、皆さんにお願いを申し上げて、そのようにさせていただきますということを申し上げたわけでありまして、閣僚の皆さん方にお願いを申し上げて、そして提出の了解を得たということでございます。

 時期が若干ずれましたことは申しわけなかったというふうに思っておりますが、しかし、皆さん方がそれに沿ってそれぞれ発表していただいたということでは、責任を果たしたというふうに思っております。

水島委員 坂口大臣らしからぬ御答弁でございましたけれども、これは、官房長官みずからが、採決の時期を考えて公表の時期をずらしたというふうにお認めになっていることでございますので、内閣として、本当に真摯に反省していただきたいと思いますし、きちんとした形で責任をおとりいただきたいと思っております。

 また、私、今、まさかそんなやじが飛ぶとはと思っておりましたけれども、自民党席から、菅さんに聞けというやじが飛びました。ここで私が問題にしているのは、今、約束を破ったということを申し上げているのであって、なぜあなたは約束を破ったんですかと言われたときに、あの人はこういうことをしているじゃないかという、全く見当違いのことを言ってくるというその精神構造が、私は非常におかしいと思っております。

 皆さん、子育てされるときに、御自分のお子さんに対して、何で約束を破ったんだ、約束を守りなさいと子育てされると思いますけれども、お子さんに対して、何で約束を破ったんだと言ったときに、だってお父さんはきのうの夜遅く帰ってきたじゃないかなんて言われて、それで済まされるんでしょうか。その点について、今御自身がやじられた内容について、きちんとお考えいただきたいと思っております。

 そしてもう一つ、ちょっと気になっていることでございますけれども、五月三日の朝日新聞を見まして、ちょっと驚きました。これは安倍自民党幹事長がワシントンでコメントされたことでございますけれども、この年金の保険料を払わないということについて、「保険料を払っていない人はもらえない。年金財政上も、その人には出さないからロスにはならない。」と弁護したと書かれております。

 これは、つまり、払わない人はもらえないんだから、その人の勝手だろうという趣旨のことだと思いますけれども、そのことと、一方で強制徴収をしてまで年金保険料を取っているということは矛盾していると思うんですけれども、これはどういうことなんでしょうか、坂口大臣。

坂口国務大臣 幹事長の御発言は幹事長にお聞きをいただきたいというふうに思いますが、それは、一つは、いわゆる年金財政上の問題として損得勘定がそこに生ずるかどうかという話と、それから年金制度としての問題と、分けて考えなきゃいけないんだろうというふうに思います。

 財政再建上の問題としては、払わなかったその分は、その人には年金が出ないですから、それはプラスマイナス、長い目で見ればありませんよという話になるんですけれども、年金制度といたしましては、これは自分のためのみならず、現在の高齢者のために今負担をし、そして自分たちは将来また若い人たちの保険料によって年金を得ることができ得る、そういう制度でありますから、払わなくていいということでは制度としては決してない、そういうことだと思います。

水島委員 坂口大臣のおっしゃるとおり、やはり年金制度というのは世代間の助け合いであって、そのような考え方に基づいて少なくとも運用されているわけでございますから、このような、幹事長のように、払わなければもらえないんだからそれでいいじゃないかというような言い分を、与党の幹事長ともあろう方がこうやって公然とおっしゃるということは、それこそモラルの低下を招きますし、皆さんが、何だ、じゃ、自分のことは自分でやっていこうと、この年金制度そのものが崩壊していく危険性を非常にはらんでいるコメントだと思うんです。

 幹事長のことは幹事長に聞けと今大臣はおっしゃいましたが、これは、与党の中で年金というものについての理解が、幹事長というような方であってもこの程度の理解だ、そのようにこちらは思わざるを得ないわけでございますけれども、これは坂口大臣、やはり年金法案を提出している一人の責任者といたしまして、幹事長に年金制度とはどういうものなのかをきちんと御講義いただけますでしょうか。

坂口国務大臣 多くの皆さん方から選ばれて出てくる皆さん方でありますから、立派な方々ばかりでございまして、私がお一人お一人、一から御講義を申し上げるというような人たちではないわけであります。よく御理解をした上でいろいろの御発言を皆さんはされるんだろうというふうに理解をいたしております。

 したがいまして、幹事長も財政上の問題についてお答えになったのではないかと私は思いますけれども、その前後のやりとりというものは全く抜きにされまして一部分だけがそこで報道されますと、誤解を生むこともあり得るわけでありまして、全体としてどういうことであったのか、その場に私は居合わせておりませんでしたので、それを知ることはできません。

水島委員 そういうことでありましたら、これは幹事長御本人にどういう真意でこのようなコメントをされたのかを伺う必要があると思いますし、また、ここに書かれていることがもし間違いであれば、これはきちんと訂正をしてもらわなければいけないわけでございますので、この発言がひとり歩きしていきますと、年金制度そのものが崩れていく、本当にそういうリスクのある発言だと私は大変問題に感じております。

 ぜひ、この委員会に安倍幹事長を参考人としてお招きして、この発言の真意をただしていただく、そんな機会をつくっていただけますように、これは委員長にお願いを申し上げたいと思います。理事会で諮ってください。

衛藤委員長 理事会で相談をいたします。

水島委員 ぜひお願いいたします。

 また、強行採決前に私が理事会で諮ってくれとお願いいたしました、全議員の年金保険料納付の実績ですとかほかの件もございますので、お忘れではないと思いますけれども、理事会のメンバーの皆様、よろしくお願いいたします。

 さて、法案についての質問に入らせていただきたいと思いますけれども、前回の年金改正後に、二〇〇〇年の七月から女性と年金検討会がつくられまして、袖井孝子座長を初め十六名の有識者の方たちが一年半がかりで「女性自身の貢献がみのる年金制度」と題した意見書をまとめられております。

 ところが、年金分割を除いて、ほとんどすべての論点が先送りされております。忙しい、貴重な方たちに何度も足を運ばせて大変な知的労働をさせているわけですけれども、その労力は一体何だったのだろうかと大変むなしく感じております。

 また、当初は意見の開きが多かった委員たちを、袖井座長が懸命にまとめ上げたということでございます。意見の開きを、強行採決ですとかそのように力ずくで結論に導こうとする暴力的かつ破壊的な国会は、このような努力にこそ見習わなければならないはずだと私は思っておりますけれども、それなのに、女性と年金の問題を一段階先に進めようとした袖井座長の懸命の努力がほとんど報われていないわけでございます。

 これだけの方たちの時間と労力を犠牲にして、また、私たちの税金から謝礼なども払って進めてきた検討会の結論が全くと言っていいくらい生かされていないという現実を、まず大臣はどのようにとらえられていらっしゃいますでしょうか。

坂口国務大臣 いろいろと御議論をいただいたことは決してむだになっていない、これから大いに生かされていくだろうというふうに私は思っております。そこでさまざまな御意見が出されましたし、そして、必ずしもそれは一致した意見ではなくて、さまざまな御意見であったというふうにお聞きをいたしております。しかし、さまざまな御意見でありましたけれども、その中をいろいろとおまとめいただいたことも事実でございます。

 しかし、年金制度というのは、年金だけの問題ではなくて、それを取り巻きますいろいろの問題があるわけで、それらも解決をしなければ一度に前進させることができ得ないということも御理解をいただけると思います。

 そうしたこともございますので、御議論をいただきまして出していただきました成果というものを大事にしながら、今後、やはり年金の制度というもののあり方、それはそのときそのときにいろいろと考えていかなければならないというふうに思っております。

 もう少し前進できればと思った点も私たちもあったわけでございますが、しかし、さまざまな御意見もこれあり、前に進めることができなかった問題もあります。しかし、そのときにしていただきました御議論は大切にしながら行きたいと思っております。

水島委員 この骨抜き、先送りパターンというのは、何か小泉政権に特有のものなのではないかなとこのごろ感じているわけでございますけれども、ちょっと個々のテーマについて伺わせていただきたいと思います。

 まず、第三号被保険者につきまして、今回の改正で手つかずになった、また論点としても指摘されていない理由と、そのことについての大臣の御意見を伺いたいと思います。

坂口国務大臣 この第三号被保険者の問題というのは、基本的には年金の世帯単位か個人単位かの問題だと私は思っております。根っこのところからここをやろうと思うとこの問題に突き当たる、ここをやはりどうするかを検討していかなければならない。そういうことになりますと、現在の第三号被保険者の保険料はだれが支払うのかという問題が出てくる、あるいはまた、男性と女性の賃金格差をどうするのかといったような問題がある。そうした問題もございますので、なかなかそこまで踏み込めなかった、一度にそこまで行かなかったというのが現実でございます。

 内閣府の方で世論調査をしていただきまして、そしてこの三号被保険者の問題の御意見を聞いてもらったわけでございますが、その中で、現行制度のままというのが三一%、そして夫婦間での厚生年金の分割というのが三二%、合計して六三%ということになるわけでありまして、世帯単位での給付と負担という考え方が、お聞きしました世論調査では多かったといった経過もございます。

 しかし、ここはもう少し突っ込んで議論を進めていけば、また別の結果が出てくることもあり得ると私は思っております。もう少しここは議論を重ねていかなければならない問題だというふうに今思っているところでございます。

水島委員 民主党案でも、もちろん、現在の女性の就労率の問題ですとか男女の賃金格差というこの現状を踏まえまして、民主党案というのは本来は個人単位化の年金制度ということになるわけですけれども、その修正、修正個人単位とでも呼ぶんでしょうか、二分二乗方式というものを採用させていただいているわけでございますけれども、当然それも、今大臣がおっしゃいました問題点の一つの解決策としては頭に入れていただいているんでしょうか。

坂口国務大臣 今聞いていただいたのは、二分二乗の話でございますか。(水島委員「はい」と呼ぶ)

 二分二乗方式というのは、これも議論しなきゃいけませんが、私個人は一つの方法だというふうに思っておりまして、理解をしております一人でございます。

水島委員 では、今後いろいろ与野党で御協議いただけるようでございますので、そのときには、この民主党案の中の二分二乗方式というものをぜひ真正面から御検討いただきたいと思っております。

 その前に、先ほど大臣は、第三号の問題というのは、年金が世帯単位であるというそこの部分の問題なんだというふうにおっしゃったわけですけれども、実際に、では、自営業者の方の世帯というのは世帯ではないんでしょうか。それぞれ御夫婦そろって一号、一号ということになっているわけですけれども、第三号の問題というのは世帯の問題ではなくて別の問題なんじゃないかと思うんですけれども、いかがですか。

坂口国務大臣 被用者保険の場合には、これはもう世帯単位になっているわけでありますから、まさしくこの被用者保険の問題として今起こってきているというふうに思います。国民年金は個人単位でありますから、それはそのとおりでございまして、この被用者保険の中で今後どうしていくか。

 とりわけ、今民主党さんが出されているように、一元化の問題等になってまいりますと、そうすると、個人単位の制度と世帯単位の制度を一本化していかなきゃならないわけでありますから、そうした問題をどうするかということが私は基本になってくる。

 ですから、一元化の問題は、この世帯単位か個人単位かという、ここを先に決着をつけなければ前に進まないと私は思っております。

水島委員 済みません、しつこいようなんですけれども、今、今度は、被用者保険が世帯単位だということが問題だとおっしゃったんですけれども、そうなりますと、今度は、共働き夫婦で二号、二号の夫婦というのも当然いるわけです。ですから、被用者保険そのものが世帯単位だ、そういう問題ともまたこの三号の問題というのは違うように思うんですけれども、そこの部分はどのように整理されているんでしょうか。

坂口国務大臣 もちろん、被用者保険の中には、御主人あるいは奥様が働かれて、そしてその配偶者の人が働いておみえにならない、御家庭におみえになるというケースもございますし、双方とも働いておみえになるというケースもあるわけであります。しかし、第三号被保険者といいますのは、被用者保険の中の一つの形として生じていることだけは間違いがないわけでありますから、ここの問題をどうするかということは個人単位か世帯単位かに関係してくるということを私は申し上げたわけであります。

水島委員 そうしますと、大臣は、やはり第三号というもの、今は被用者保険の中での位置づけがあるわけですけれども、これはきちんと見直していかなければいけないというお考えに立たれているんでしょうか。

坂口国務大臣 これを、今後年金制度をどうしていくかということと非常に大きなかかわりを持った問題であるという問題意識を持っているということを申し上げているわけであります。

水島委員 今の御答弁、年金の見直しをしていく上での重要な論点としては御認識になっていらっしゃるという御答弁でございましたので、そうであれば、本当に、今回の附則、パート労働者のことについては附則に辛うじて書いていただいているわけですけれども、せめて、そこに今後の論点として書いていただくくらいのことは必要ではないかと思いますけれども、いかがですか。

坂口国務大臣 そこへ行きますためには、かなり幾つものハードルを越えなければならないわけでありまして、周辺整備をかなりやらないといけないという気がいたします。

 ですから、そこまでは至りませんけれども、今後の年金制度のあり方を考える上では、大きな論点の一つ、私は今後の最大の論点の一つというふうに思っておりますが、それだけに、その周辺の問題もまた多い。それらもあわせて、もしも個人単位なら個人単位にしていくのであれば、一体何をどう解決していったらいいのか、もう少しやはり整理をしなきゃいけませんし、改善をしていく必要もあるというふうに思っております。

水島委員 一つだけ確認させていただきたいんですけれども、この第三号の問題を指摘しますと、ちまたではすぐに、女同士の足の引っ張り合いなどと言われるわけでございます。

 でも、これは女性だけが結婚の状態によって制度が変わるということでございまして、これは、女性がどういう立場に置かれているか、今現在二号なのか三号なのかということを超えて、制度に翻弄されているというような意味では、私は、女性全体が被害者なのであって、違う立場の女性が足を引っ張り合っているという構造ではないと思っているんですけれども、大臣もそのような御理解でよろしいんでしょうか。

坂口国務大臣 そこは、私はそんなに足を引っ張っているとも思っておりませんし、しかしながら、ここが一つに意見が一致しているかと言われれば、なかなか一致もしていない、そういうふうに思っております。

 今回も、配偶者である第二号の被保険者が負担をする保険料については、第三号被保険者が共同して負担したものであるとの基本的な認識を法律上明らかにするということはやっているわけでありまして、そして、離婚の問題等は今回取り上げたということでございます。

 したがって、現在のところは、三号被保険者の立場を認めた上で、認めた上でと申しますか、その存在を認めた上で、どういうふうにそこを位置づけるかということで決着をつけているということでございます。

水島委員 何となくぱっとしない御答弁なんですけれども、意見が一致していないというのは、今提示されている選択肢が限られているからどれか一つに皆さんが満足できないのであって、これは、どんな立場の女性であっても、どういうライフスタイルを選択しようと、中立的に、満足できるような制度をきちんと提示していくということは、当然大臣にやっていただかなければいけない仕事だと思っておりますので、ぜひ民主党案を十分に御参考いただきまして、これはもう早急に御検討いただかなければいけないと思いますし、私は、附則にこの三号の問題をきちんと書き込んでいただきたいというふうに、これは改めてお願いをしたいと思います。

 また、今大臣がおっしゃいましたように、今回、分割という制度が初めて盛り込まれまして、これは私も年金の個人単位化の第一歩としては評価できるわけでございますし、我々の二分二乗方式とも共通する部分は当然ございますので、これは一歩前進というふうに受けとめているわけですけれども、合意なしに年金分割ができるのが、妻が第三号の場合だけというふうに限られてしまった理由は何だったんでしょうか。

森副大臣 今委員が御指摘のとおり、今回の改正では、三号については、二分の一、二分の一ということで、一歩前進という評価をいただいたわけでありますけれども、一方、第三号被保険者期間以外の期間も含めまして、離婚時における厚生年金の分割制度を導入することといたしているわけでございます。

 この分割に際しては、それぞれが保険料負担を行い年金保険料納付記録を得たことを考慮いたしまして、夫婦双方の標準報酬の合計額の二分の一の範囲、つまり、足して二で割った範囲で、夫婦間の協議もしくは裁判所の決定により定めることといたしております。この点についても、私どもは、大きく前進したんじゃないかというふうに考えておるところでございます。

水島委員 ちゃんとお答えいただいていないんですけれども、時間があと五分ということになってきましたので、ぜひここで問題点をきちんと指摘させていただきたいと思っております。

 今回、三号だけでもそうなったんだから前進だということであるようですけれども、分割というのが実際に協議によってできるようになったということは、それはきちんと協議離婚できるような方にとってはよろしいでしょう。でも、実際にDV離婚というものが現にあるわけでございますけれども、DV離婚のときに、暴力を振るった相手に自分の居どころなども知られることなく、きちんと自分の年金権を分割してもらうということができるような仕組みは当然考えていてくださるんでしょうか。これは妻が三号の場合も二号の場合もあると思いますけれども、この点については当然きちんと考えられているんでしょうか。

森副大臣 まず、DVで合意や協議をするような環境にない場合についての御指摘については、必ずしも厚生年金の分割制度だけではなくて、離婚一般の手続を行う上での課題ではないかと考えるものでございます。

 そういった観点から、今回の改正案における離婚時における厚生年金の分割制度においては、分割割合の合意、協議ができない場合には、最終的に裁判所の決定により定めることで解決を図ることといたしております。

 しかしながら、今後、施行に向け、分割制度の細則や運用方法の検討をしていくこととなるわけでございますけれども、その際には、御指摘のような場合の具体的な対応について、司法当局や専門家の意見も聞きまして検討してまいりたいと考えております。

水島委員 これは相当丁寧にその仕組みをつくっていただきませんと、DVについての、例えば市町村の理解というのはまだまだ十分ではございません。

 今、私も地元で相談を受けておりますケースは、家に泊まりに来るような男性に暴力を受けたという方が、なぜかそれをもって事実婚であるというふうに受け取られて、その間の児童扶養手当を返せということを今、市から主張されていて、DVの傷もまだ大きく残っているというのに、おかしなところからお金を返せと言われて、大変苦しんでいらっしゃるわけです。これについて、きちんと私も調べて、必要な対応をぜひ厚生労働省にしていただきたいと思っているわけでございます。

 このように、DVの方が置かれた状況、またどういうことが必要なのかということについて、まだまだ自治体でも理解が足りないですし、そして、御本人もとてもそんなことを、経済的にも苦しい、心の傷も非常に負っている、自分の安全を図らなければいけない、そしてお子さんがいらっしゃる場合には子育てのことも考えなければいけない、そういう中で、例えば、何度も裁判所に通うとか、自分からどこかに申し出て手続を自分で全部しなければいけないとか、そういうことは本当に現実性のない話でございます。

 DVのことについては、これをきちんと決めていく中で、本当に、ある意味ではほとんど自動的にそれが御本人のものとなるような道筋をきちんとつくっていただきたいと思っておりますけれども、これは大臣、お約束をいただけますでしょうか。

坂口国務大臣 そうしたケースは、ケースケース、さまざまあるだろうというふうに思います。そうした場合にどういうふうにするのが一番いいのか、これはよくよく考えてやらないといけないというふうに思いますから、よく検討させていただきたいと思います。

水島委員 よく検討して、DVの被害者の方たちが安心して、また経済的にも満たされるような仕組みを必ずつくっていただきたいと思っております。

 そして最後に、もう時間がなくなってしまったんですが、パート労働者の厚生年金加入の問題というのも非常に重要な問題でございます。女性と年金検討会の意見書に従って、厚生労働省案として、厚生年金加入条件を週二十時間以上に拡大するということをきちんと提案されていたのに、極めてわずかの間にそれが翻ってしまって、そして附則に辛うじてその痕跡がとどまっているというような状況でございます。

 先ほど大臣は、三号の方はまだまだ環境の整備が必要だから附則に書けないというようなことをおっしゃったので、恐らく、パートに関しては、環境の整備がほとんど整いつつあるから附則に書いていただけたのかなと思っておりますけれども、これを週二十時間以上の労働というふうにした場合には、当事者の方たちが懸念されていたことの一つに、事業主は労働時間を週二十時間以内に一方的に変更するのではないかというようなこともございまして、これは歯どめが必要な部分だと思っております。

 この歯どめ策といたしましても、私は、やはりこれは総賃金制にして、きちんと事業主負担というものを考えていかなければ、歯どめ策というのはどこまでいってもイタチごっこになってしまうのではないかと思っております。

 それも含めまして、どのような環境整備をこの附則の規定に従って行っていくのか、そして、この歯どめ策をどのように考えられているのかということを、最後に大臣から御答弁をいただきたいと思います。

坂口国務大臣 整備しなきゃならない点もたくさんありますが、今回、我々は、できれば実現したいというふうに思っていたわけでありますけれども、前回にもどなたかに御答弁申し上げましたとおり、やはり働いている皆さん方から、パート労働をしている皆さん方からの反対が大変たくさん寄せられたということでございます。これは予測しなかったことでございまして、もう少し周辺の、それこそ三号被保険者の問題もありますので、そうしたこととも絡んで決着をしなければならない問題ではないかというふうに私は思った次第でございます。

 しかし、これは前進をさせていくということを決めていることだけは間違いありませんで、それを行いますためにどういうふうに企業の皆さん方にそれを御負担いただくか、そのいただき方について、今御指摘をいただいたのも一つの方法だと私も思います。ただ、御本人からも若干は出していただかなきゃならないということでありますから、それをどうするかといった問題も残るというふうに思っております。

水島委員 ぜひ、御本人に向けては、今払えば厚生年金がもらえるんだということの啓発をきちんとしていただきたいと思いますし、事業主がこれを逆手にとって、パート労働者の労働時間を減らしていくようなことがないような仕組みをきちんと検討していただきたいと思っております。

 また、もう質問は終わりますけれども、先日指摘しましたように、附則の第二条の五〇%という規定につきましては、先日も、極めて人に誤解を与えるものだというふうに指摘しました。実際に、モデル世帯が、受給開始時には五〇%もらえていても、それが時とともに下がっていくというようなこともその後きちんと明らかにされてきているところでございますから、それも含めて、私は、この附則の第二条の五〇%をもらえるのだというところは削除していただくように改めてお願いを申し上げまして、質問を終わらせていただきたいと思います。ありがとうございました。

衛藤委員長 内山晃君。

内山委員 民主党の内山晃でございます。

 前回に引き続きまして、国民年金法の一部を改正する法律案について質問をいたします。本日も実務的な観点からお尋ねをいたしますので、どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 まず初めに、坂口大臣、今回の政府原案、多くの国民に影響のある年金改正案でございます。国民年金、厚生年金、保険料の引き上げが予定されているわけでありますけれども、今国会で、国会議員の年金未納、未加入問題というのがまだ結論が出ていない現状で、なぜ、強行採決までしてこの法案を通す正当な理由というのは一体何でしょうか。ちょっとお尋ねをしたいと思います。

坂口国務大臣 年金に対しましてはさまざまな問題がございます。これは議員あるいは政治家としての年金の問題もあるというふうに思いますが、それだけではなくて、ほかにもたくさんの問題がございます。しかし、それはそれとしながら、一方におきまして、年金というのは、一年一年おくれていけばいくほど若い皆さん方の負担がふえていく、これはもう紛れもない事実でございます。

 したがいまして、そうしたさまざまな問題はありますけれども、しかし、この年金制度というのは、早く決着をして、そして、若い人たちと現在生きている者たちとの間の負担の公平さを保っていかなければいけない、それがこの年金制度に最も求められていることだと私は理解をいたしております。

 そうした意味で、皆さん方にもこの審議をお願い申し上げているわけでありますし、そして、その審議の結果、先日は採決をしていただいたということだと思っております。

内山委員 雇用や経済に大きな影響のある問題なんですね。私たち、この厚生労働委員会だけで本当に決めていい問題なんでしょうか。もっともっと、やはりじっくりとその辺も含めて考えなければならない問題だと私は考えています。

 改正法の本体について、質問を続けたいと思います。今まで全然議論をされておりませんので、このまま通ってしまいますと、衆議院では全く議論されないまま参議院に行ってしまうということになりますので、私も、責任上、やはり専門家としまして質問をさせていただきたいと思います。

 まず、法案にあります、次世代育成支援策として、子供が三歳に達するまで、育児休業の保険料免除制度を提案しております。今、介護によっても仕事を休む人がたくさん出ているわけでありますけれども、このような介護によって休む人たちの保険料の免除制度というのはお考えにならなかったんでしょうか、お尋ねいたします。

坂口国務大臣 育児休業の場合には、確かに免除制度というのをつくっているわけでございまして、前々から、介護休業というものについてもすべきだという御意見があることは事実でございます。

 これは、審議会におきましてもいろいろ御議論をいただきました。その中でも出ましたのは、育児休業というのは、次世代を育成する、次の年金を支えていただく皆さん方を助けるという意味があってここには採用をされている、それと高齢者の介護休業というのはやはり少し違うのではないかという御意見があることも事実でございます。

 今回、これは、年金という立場からこういうふうにいたしました。しかし、ことしはまた介護の問題を御議論いただかなければならない年になりますので、この介護の中でどうするかといったような問題について、また御議論が恐らく出てくるだろうというふうに思っております。介護の立場からの意見というのがあり得るだろうと思っております。そうした議論もよく見定めていきたいというふうに思っている次第でございます。

内山委員 続きまして、国民年金の第三号被保険者についての厚生年金の分割と、離婚時の厚生年金分割案があります。同じような制度に見えるんですけれども、なぜ分けておつくりになっているのか。そしてまた、実施時期が十九年四月と二十年四月でしょうか、その辺の、実施時期の異なる理由というのも教えていただきたいと思います。

坂口国務大臣 離婚時の厚生年金の分割というものと、それから、夫が負担した保険料について、法律上、夫婦が保険料を共同負担したものであるという基本認識の上に立って分割をするというものと、二つここに入れているわけであります。

 離婚時のものにつきましては、夫婦の年金受給額に大きな開きがあって、離婚した場合に女性の高齢期における所得水準が低くなるという問題に対応する、あるいはまた、年金以外の財産について民法上認められている離婚時の財産分与とともに、厚生年金についても分割を行える仕組みを創設する、こういった立場から離婚時のものは考えた。そして、御主人が払っていただいているけれども、しかしそこは結果として夫婦で支えたというふうにみなしていこうという考え方に立って行われる、夫婦間におきます共同負担という基本的な考え方のものと、若干中身が異なるというので、私たち、二つの問題として法に提示をしたわけであります。

 この三号被保険者制度のあり方につきましては、多様な意見がありますので、現行制度における世帯単位での給付と負担の均衡を踏まえながら、できる限り個人単位での給付と負担の関係に向けて制度を見直していこうとする、こういう背景のもとに行っていく。ちょっとうまくなかなか言いにくいんですけれども、そういう背景のもとに、離婚時のものとそれから夫婦の間のものとを区別した、こういうことでございます。

森副大臣 ただいま委員御質問の後段の、実施時期がずれている理由でございますけれども、平成十九年四月実施予定の離婚時における厚生年金の分割制度につきましては、第三号被保険者の夫婦も含むすべての夫婦を対象とし、また、制度実施前の期間も含めて分割を可能とする包括的な制度であること、また、制度実施後の離婚を対象としているため早期実施の要望が強いと考えられることから、できるだけ速やかな実施を図るべきものであると考えております。

 一方、平成二十年四月実施予定の第三号被保険者期間についての厚生年金の分割制度については、離婚分割に伴う諸準備と重なる問題があるほか、第三号被保険者であった者からの申請があれば一律に二分の一の分割を認めることについて、広く国民の理解の徹底を図る必要があることなどから、まずは離婚時における厚生年金の分割制度の速やかな実施を図り、その一年後に実施することといたしたものでございます。

内山委員 年金には少し関係ないかもしれませんけれども、離婚時分割では夫婦それぞれの資産というのはどう考慮するのか。例えば、妻が夫より資産を持っているケースもあると思うんですね。資産がある妻に資産のない夫の年金分割が行くということになりますと、分割される夫が非常に気の毒なように思われますけれども、そういう資産をどういうふうに判断していますでしょうか。

森副大臣 今回の改革案では、第三号被保険者期間以外の期間を含めて離婚時における厚生年金の分割制度を導入することといたしておりますけれども、この制度の対象となる世帯には、夫婦の賃金水準などについて多様なあり方が考えられる共働き世帯や、サラリーマンの夫と自営業の妻の世帯など、委員御指摘のとおり、夫婦それぞれの働き方について多種多様な実情があり、また、離婚時におきましても、年金以外の諸事情もあわせ考慮することが適当な場合があると考えられます。

 このようにさまざまな世帯を対象とした年金分割では、まずは夫婦の合意で適切な分割割合を決めていただくことが適当であることから、夫婦双方の標準報酬の合計額の二分の一の範囲内で、夫婦間の協議もしくは裁判所の決定により定める仕組みといたしております。

 なお、司法手続における分割割合の判断のあり方につきましては、今回の年金法改正案において、保険料納付に対する夫婦それぞれの寄与の程度に応じ分割割合を定めることを原則として、やむを得ない事情がある場合には、補充的に、慰謝的、扶養的要素を考慮することも否定しないといった考え方を基本とした判断基準を設定しておりまして、今後、その具体的な運用につきましては、司法当局も含めて専門家の御意見も伺いながら検討を進めていくことといたしております。

内山委員 要は、資産を考慮しないということですね。

 引き続き、事実婚とか内縁関係の場合に、例えば加給年金とか遺族年金の受給資格は発生するわけですけれども、離婚時分割というのは事実婚はどういう対応になりますでしょうか。

森副大臣 離婚時における厚生年金の分割制度において内縁関係の夫婦はどのように取り扱われるかにつきましては、内縁関係について、婚姻期間に相当する期間をどのように認定するのか、また、法律婚の婚姻期間と内縁関係の連続や重複、複数の内縁関係の重複などがある場合に、それらの中で優先順位を定めて、さらに分割の対象期間まで特定することができるのかなどといった難しい問題がありますことから、内縁関係の特定が可能な第三号被保険者期間として認定されていた期間につきましては分割の対象とする方向で考えておりますが、それ以外の期間については対象とすることは想定しておりません。

内山委員 次に、離婚後分割しました、六十五歳未満、障害年金の事後重症というケースがあるわけです。分割をした後、障害年金に該当する、そういった場合に年金はどうなるのか。障害厚生年金で計算しますと低い年金額になってしまう。一定の年金額を保障するための措置として、二十五年みなしとか最低保障額という整合性があるわけですけれども、低年金者の発生を新たにしてしまう問題が出てくるんじゃないか、こう思うんですが、いかがでしょうか。

森副大臣 今回の改正案における年金分割制度は、夫婦の厚生年金について分割を行う仕組みとなっておりまして、夫婦それぞれが持つ自身の基礎年金の受給権については分割の対象としておりません。また、厚生年金の分割割合については、第三号被保険者期間についての分割制度においては第二号被保険者の標準報酬の二分の一、第三号被保険者期間以外の期間を含む分割制度においては夫婦双方の標準報酬の合計額の二分の一の範囲内とし、一定の限度を設けているところでございます。

 このように、分割を行う場合、厚生年金の最大でも半額を上限としており、また、みずからの基礎年金については分割されることはないものでありまして、厚生年金の受給額はその者の保険料拠出実績に応じて定まるものであり、受給額が低いことだけで分割が不適当というものではないということ、そして、厚生年金の受給額が低い場合であっても、分割を受けるべき者が離婚した場合に分割を受ける必要性は変わらないことなどを考えますと、厚生年金の分割制度によって分割を行う者の老後保障が十分なものでなくなるとは考えておりません。

内山委員 同じような問題なんですけれども、年金分割後、再婚をしまして死亡した。そうすると、配偶者に遺族厚生年金というのが、分割後の報酬比例の四分の三という金額では、極めて少額な遺族年金になってしまうんじゃないかと思うんです。障害年金も同じじゃないですか。六十五歳前に離婚して障害年金に該当するとなると、分割後の期間だけで障害年金を計算するとなると非常に低額になりますよね。遺族年金も、同じ考えでいけば低額になりませんか。

 その辺の、低年金の人たちを多く出してしまうんじゃないかというおそれがあると思うんですけれども、いかがですか。

森副大臣 今回の改正案における厚生年金の分割制度は、離婚等の場合において、第三号被保険者期間についての分割制度にあっては婚姻期間中の第二号被保険者の標準報酬記録を、また、第三号被保険者期間以外の期間を含む分割制度にあっては婚姻期間中の夫婦の標準報酬記録を、それぞれ分割することができることとするものでございます。分割された標準報酬の記録は分割を受けた者の標準報酬記録となることから、分割を行った者の標準報酬は、以降減額されるものとなるものであります。

 したがって、その者がその後再婚して死亡した場合において、再婚相手などに支給される遺族年金の額は分割後の標準報酬をもとに算定されることから、結果として年金分割がなかった場合よりは低額となりますが、分割が行われた後に再婚していることや、遺族年金の額への影響は小さくないとはいえ、年金分割の分割割合は最大でも婚姻期間の双方の合計額の二分の一であり、極端な減額となることはないことなどを考え合わせれば、合理的な仕組みであると考えております。

 以上、遺族年金でございますけれども、障害年金についても同様であります。

内山委員 報酬比例部分の二分の一、要するに、別れた奥さんに対して本人がその二分一の四分の三というのは、極めて低額な金額じゃないですか。これはやはり、離婚というのは今非常に多いわけですから、高齢期の離婚者に対する障害年金や遺族年金の低年金者という新たな問題が出てきますよ。非常に大きな問題になるんじゃないですか。これは考え直さないとまずいと思いますね、この辺。非常に大きな問題になりますよね。半分の四分の三しかもらえないんですから。これは非常に問題があります。

 次のテーマに行きますけれども、同じように、国民年金第三号被保険者の特例届け出というのは、再開を十七年の四月から実施するとありますね。障害基礎年金を受給するための保険料納付要件についても同じ扱いをして、三号未納がなかったものと考えていいんでしょうか。

森副大臣 結論として、三号未納があったらだめでありますけれども、一応念のため申し上げますと、障害基礎年金の支給要件は初診日の前日における保険料納付状況をもとに判断する仕組みとなっており、事後的にこれらの支給要件を満たしても障害基礎年金は支給されません。これは、既に発生した障害という保険事故について事後的な保険料納付などにより給付を認めることは、制度に加入し、あらかじめ所得の喪失に備え、その後の保険事故に対してそれまでの保険料納付等の実績に基づき給付を行う社会保険方式のもとでは困難であることによるものであります。

 このような考え方から、今回の年金改革法案におきましては、過去届け出漏れによって未納期間扱いとなった期間について特例的に届け出を認め、届け出に係る期間を将来に向けて保険料納付済み期間に加算することとし、これはあくまでも将来でございますね、また、今後も本人の責任によらない等やむを得ない事由があれば、将来に向けて保険料納付済み期間に加算する措置を講ずることといたしておりますが、事後的に障害基礎年金の支給要件を満たす場合について、障害基礎年金を支給することとするものではありません。

 なお、この取り扱いは、平成七年度から八年度へかけて行った第三号被保険者の特例届け出の際も、同様の内容となっているものでございます。

内山委員 実質、三号の未納というのは本来あり得ない制度なんですよね。本人の過失がなくて、例えば、パートタイマー、生命保険の外務員に友人から誘われて名前を貸しました。そして、本人が資格を取得したこともわからない、給与ももらわない、健康保険証ももらわない、そういった形で一たんサラリーマンの妻の三号から外れて、そして一、二カ月してそこの生命保険、外務員の会社をやめた、そして再度三号の届け出をしなかったために、こういう未納者というのは非常に多いわけですね。

 実質、特例届けに該当する人たちが大体十四万人いる、こう言われておるわけでありますけれども、この中に、障害年金が三号未納のためにもらえない人というのもかなり含まれているんじゃないですか、納付要件が足りずにということで。そういった人たちの新たな無年金障害者というのが発生になりませんか。これは後ほど泉委員が無年金障害者の件で質問をすると思いますけれども、新たな三号の未納によって無年金障害者が発生する、こういうケースがあるんじゃないんですか。

坂口国務大臣 御指摘のように、理屈の上ではなり得ると私も思うんですね。今回、そうした未納者の問題がありまして、今お話がございましたように、十四万とか十八万とかいろいろの試算がございまして、多くの皆さん方がおみえになるということで、今その皆さん方をとにかく救済をする道をつくろうというので、今回導入したわけでございます。

 しかし、その間に障害者になった人がいないかと言われれば、それはあり得ることでございますから、それは、現実問題としてあるかどうかは別にいたしまして、可能性としてはあり得ると私も思います。

内山委員 この辺もぜひ修正をして、三号未納の障害者の発生がないようにするべきだと私は思います。今後の大きな課題としてお考えをいただきたいと思います。

 次に、非常に実務的なところですけれども、老齢厚生年金定額部分というのがあるわけでありますけれども、この計算、現在、三十七年、月にしますと四百四十四カ月というのが上限なわけですね。この定額部分の上限を平成十七年四月から一月ずつ引き上げていく、こういう改正案が入っているわけであります。

 実質、対象となるのが、ことし六十歳になる昭和十九年の四月二日生まれの人から該当になるわけでありまして、この法律の実施時期が、ことしの十六年の四月ではなく、来年の十七年の四月からの実施ということになりますから、ことし六十歳になる人の、老齢厚生年金を一部繰り上げで前倒しでもらう人たちは、この定額部分が四百四十四カ月、十二カ月ふえていくこの恩恵が全くこうむれない、六十一になるまで。この辺の救済をどういうふうに考えるんでしょうか。お尋ねをしたいと思います。

森副大臣 お答え申し上げます。

 現在、六十歳代前半の老齢厚生年金の定額部分の年金額は、定額単価掛ける被保険者期間、すなわち加入期間で計算しており、定額単価は、加入期間の延びを考慮し、年齢によって逓減していく仕組みとし、加入期間は、四百四十四カ月、すなわち三十七年を上限といたしているところでございます。

 今回の改正においては、六十歳代前半の老齢厚生年金の定額部分、一階部分について、定額単価が減少した世代で老齢基礎年金の額を下回ることが生じないように、額の算定における被保険者期間の四百四十四月の上限を見直すことといたしております。

 この見直しの対象としておりますのは、現行のままでは老齢基礎年金の額を下回ることになる昭和十九年四月二日以後生まれの者であり、この者の定額部分の支給開始年齢である六十二歳に達するのは平成十八年四月であることから、実施を、改正後で最も早い年金額の改定が行われる時期である平成十七年四月としたものでございます。

 なお、繰り上げ請求、現在男性は六十二歳から支給開始のところを六十歳まで繰り上げられるということでありますけれども、繰り上げ請求した場合には、施行日、平成十七年四月までは見直し前の加入期間をもとに年金額が計算されることになりますが、施行日前に繰り上げ請求した方の年金についても、施行日以後は見直し後の加入期間により年金額が計算されるなどからすれば、やむを得ないものと考えております。

内山委員 そうしますと、今の確認をいたしますけれども、六十歳時点で老齢基礎年金の一部繰り上げをした段階で、六十一になりますと、年金額を、十七年の四月以降、再度計算し直したものを出すということでよろしいでしょうか。

森副大臣 そういうことになります。

内山委員 次に、在職老齢年金の仕組みで、一律二割カットというのを、停止することは廃止したわけでありますけれども、高齢者の雇用促進、就労促進を考えるならば、定額部分の年金が支給される特例支給開始年齢まで在職老齢年金の仕組みを実際とめて、全額支給するような方法に改めるべきじゃないか、こう思うんですけれども、大臣、その辺はいかがでしょうか。

坂口国務大臣 この在職老齢年金の問題につきましてもいろいろ御意見がありまして、特に、六十五歳までの皆さん方に一律二割カットというのが、これがいかにも厳し過ぎる、額を別にして二割というのはいかがなものかという御意見が非常に多かった。私もそう思った一人であります。したがいまして、ここは何とかひとつ直そうというので今回改正をさせていただいたわけでございますが、今おっしゃいますように、それだけではなくて、もう少し全体に改正してはどうかという御意見も中にはあるわけであります。

 ただ、ここもいろいろの考え方がございまして、お若い皆さん方との問題、そして、かなりお勤めになっていて多くの所得を得ておみえになる皆さん方に対しては、やはりそこは少し制限をさせていただくということが、若い世代との間のバランスの上でやむを得ないという御意見も、今実は一方においてあるわけでございます。

 そうしたことの中で、今回、こうした中間的な立場をとらせていただいているわけでございますが、いろいろ御意見があることは私たちも十分拝聴していかなきゃいけないというふうに思っております。

内山委員 高齢者の雇用の促進ということになりますと、やはり、有利な年金受給方法なんという、いろいろな雑誌、新聞等で出ておりますけれども、働きながら年金をもらう、年金がカットになるから社会保険に入らない、こういう流れがあるわけですね。ですから、六十一、六十二と、本来の満額の年金が出てくる年齢までは在職年金の支給停止をする、支給そのものをやらないということにした方が、年金加入者、被保険者がふえてくると思うんですよね。六十歳以降年金に加入すると在職老齢年金で支給が停止になるのであれば、年金に加入しないで働こうという選択肢がいっぱいあるわけです。

 ですから、働いても年金はとめませんということをした方が、かえって保険料の収入アップになるのではないか。そして、正々堂々と定年退職まで働ける。今ちょうど定年年齢を定額支給開始年齢まで引き上げますよね、ですから、そういったところまでやはり直した方がいいんじゃないかと実務的には思うんですね。ぜひ、その辺も検討をしていただきたいと思います。

坂口国務大臣 済みません、私、少し委員の御意見を勘違いいたしておりました。そういう御意見もあることをよく踏まえて、今後また検討したいというふうに思います。

内山委員 今、社会保険が、二万社、適用事業所をやめているわけですね。こういった現状、やはり保険料負担がかなり厳しい。今回の政府原案というのはさらに国民年金、厚生年金の保険料の引き上げをもくろんでいるわけでありまして、この現状下というのは、本当に国民に理解できるのか、非常に厳しい批判が多分、絶対出るはずだろうと私は確信を持っています。

 政府原案というのは、地すべりをしているところに新しい柱を使って家を建てるようなものだと私は思います。ぜひ、修正ができるのであれば、保険料の引き上げというのを凍結していただきたい、こう意見を述べまして、質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。

衛藤委員長 次に、中根康浩君。

中根委員 民主党の中根康浩でございます。

 改めて、私の立場でございますので、またかと思われるかもしれませんけれども、疑惑追及的にこの質疑を始めていきたいと思います。

 昨晩、急にこの質問をやることに決まったわけなんですが、その後、いろいろと通告をいたしました。通告をいたしましたが、さらに、もう既に大臣のところには、お耳に届いておる、情報が来ておられると思いますけれども、十時四十分の記者会見で福田官房長官が辞意を表明された。

 まず、大臣、この緊急事態に対してどのように今お感じになっておられるか、率直にお聞かせをいただきたいと思います。

坂口国務大臣 まだ、ここに私ずっと座っておりますので、十分なニュースを聞いておりません。したがいまして、現在コメントを申し上げることはできないわけでございますが、いろいろとこの年金問題につきましては官房長官にも御負担をおかけしたというふうに、率直にそう思っております。

 どういうことになるかということにつきましては、まだ十分にお聞きをいたしておりません。

中根委員 十分な情報がないとはいえ、しかし、想像できるところは、もう明らかに推察ができるんではないでしょうか。

 閣僚の国民年金の納付状況、四月二十三日に坂口大臣が、まさに調べて発表すると答弁をされた、そのこと自体はよかった。四月二十六日の段階で、既に福田官房長官は、この閣僚の納付状況あるいは未納状況、未加入状況、すべてを彼は知っていた。知っていたにもかかわらず、プライバシーの問題だとか個人情報だとかさまざまな言いわけをして、四月二十八日のこの厚生労働委員会での強行採決を、とにかくその採決が行われるまではそのことを明らかにできない、明らかにすべきではないと、いかがわしい考え方を持って隠し通していた。

 そのことのまさに内閣の不誠実さ、国民に対するふまじめさ、さらには、それを隠し通して法案を強行採決しなければならないほど、今提出しているこの法案の中身の質の悪さ、こういったものに対する責任をとったと考えざるを得ないのではないでしょうか。

 やはり、四月二十八日の採決前に、大臣のいろいろな未納があったとしても、すべての事実を明らかに、正々堂々と国民の皆様に発表しておくべきではなかったかと今さらながらに考えざるを得ないと思っています。結局は、国民を欺き切れなかった、国民の声に抗し切れなかった、それがきょうの官房長官の辞意表明ということにつながったと考えざるを得ないと思いますけれども、改めて大臣、いかがでしょうか。

坂口国務大臣 理由につきましては、先ほど申し上げましたとおり、よく存じません。

 ただ、閣僚の年金加入状況につきましては、その前に既に皆さんが閣議後の記者会見でおっしゃっているわけであります。おっしゃっているわけでありますけれども、その中で不十分な点があった、十分にそのときに御存じがなくて、そしてそこで十分な回答のできない人もおみえになった、それは事実であります。ですから、その皆さん方にはお調べをいただいて、そしてもう一度、これは重ねてでございますけれどもお願いを申し上げて、そして発表させていただいたということでありますから、発表していないのではなくて、その前に一度発表はしていたわけであります。

 そうしたことがあって、この二十六日でしたか、迎えたわけでございまして、決して、隠していたとかなんとかということではないというふうに私は思います。

中根委員 その前の中川大臣とか、こちらの方が本当に悪質だと思いますけれども、こういった方々は、発表はされていたかもしれませんが、たまたま明らかになったというような中で、そして、その後の他の四閣僚については、私たちが求めていた、求めていて、そして大臣も約束をされた。大臣は、そのことをよしとしてお認めになった。

 お認めになったにもかかわらず、どこでどう力が働いたかわかりませんけれども、とにかく、覚えていらっしゃると思いますけれども、私たち民主党あるいは社民党の方々、共産党の方々もそうだったかもしれませんけれども、小泉総理出席の四月二十八日のこの委員会で、既に民主党は発表する用意ができている、古川さんがここで資料を手に持ちながら、小泉総理やあるいは坂口大臣に対して、なぜ出せないのか、出せ、出せ、出せ、出せと声高に、切実にここでお訴えをさせていただいていたじゃないですか。そのことを明らかに、鮮明に覚えていらっしゃると思います。

 だから、その場にいた小泉総理もやはり責任を感じてもらわなければならない。福田官房長官が、そういった一連のことに、個人情報だといって隠し通した。隠し通したあげく強行採決をした。強行採決をした、もういいだろうといって発表した。しかし、国民は黙っていなかった。大きな圧力がこの連休中にも恐らくかかっていたんでしょう。同じことは小泉総理にも言えると思います。そしてまた、法案の提出者の内閣全体にも言えると思います。総理の責任、そして内閣の責任、総辞職してでも出直すべきじゃないでしょうか。

 そしてまた、この法案そのものの質の悪さ、国民に対する説明不足、あるいは、理解をどうしてもしてもらえなかったというか、国民の皆様に納得してもらえなかった、だからそこで強行採決という手段で押し通すしかなかった、数の暴力、数の力を駆使するしかなかった、こういった一連のことが、きょうの福田官房長官辞任という事態にすべてつながっているんじゃないでしょうか。

 改めて申し上げます。もう一回この法案は、内閣としては取り下げて、しっかりとしたものにつくり直して、与野党協議の中でやっていくということにもなっているわけなんですから、もう一回法案を出し直す、それぐらいの決意を示してもらわなければ、福田官房長官がやめただけでは、とても内閣全体の、あるいは小泉総理の責任をなおざりにすることはできないと思いますけれども、繰り返すようでありますけれども、改めて大臣、いかがでしょうか。

坂口国務大臣 御質問の御趣旨が十分に理解できませんけれども、とにかく、今回出しましたこの法案につきましては自信を持って出しているわけでありますから、私たちはこの法案をひとつ御審議いただきたい。

 将来の問題につきましては、各党間の合意もありますとおり、今後検討を進めていきましょう。それは年金だけではありません、医療の問題もあり、そして介護の問題もあります。出していただきます国民の皆さん方からすれば、財布は一つでありますから、その中で、保険料では一体何と何をお願いし、そして税では何と何をお願いするか、総体の話になってくるというので、そうした社会保障全体としてお考えをいただきましょうということになったわけでありますから、それはそれで、ひとつ今後皆さんの御協力を得て進めていかなければいけないというふうに思っております。

 しかし、先ほども申しましたとおり、このままほっておけば、お若い皆さん方の負担料が将来どんどんとふえていくことだけは間違いがないわけでありますから、やはり現在の我々の世代も負担すべきは負担をして、そしてそこはお互いに分かち合いを進めていくというこの趣旨は、どうしても一日も早く実現をしなければいけない、そういうふうに思っております。

中根委員 よく大臣は、このままほかっておくと若い人たちの負担が云々と繰り返しおっしゃいますけれども、この年金制度の安定、維持発展のために最も今必要なのは制度そのものに対する信頼の回復であって、それは政治家が、あるいはそこを所管する官庁が、改めて襟を正して信頼を回復する努力をしていく。それは、例えば議員の年金加入状況の正々堂々とした、すべてを明らかにしていくことに始まって、そういったことが明らかにされる、そういったことを誠意を持ってやっていく。そのことが、一日や二日を急ぐよりも、もっとこの制度そのものに対する信頼の回復、ひいてはみんなが保険料をきちんと納めてくれる、納付率が高まる、制度が維持発展できる、そういったことにつながるというふうにお考えになった方がいいのではないでしょうか。

 無理やり、国民の理解が得られないものを、国民の皆様に負担を押しつけるものを、そして今内山議員も言っていました、リストラにつながるものを、景気、経済に対しても悪影響を及ぼすもの、こういった中身の悪いものを、一年や二年、一日や二日、慌ててつくったところで、結局はどこかで破綻をしてしまう、どこかで行き詰まってしまう、こういうことにつながるわけですので、今、改めて原点に立ち返って、制度に対する信用、信頼を回復していく、そのことに全力を傾けるべきであって、そのことを理解した行動が福田官房長官の辞意表明ということである。

 もし、法案がよくて、そして納付状況を明らかにしなかったということにも責任を感じていなくて、そういったことだけであれば、なぜ官房長官はきょうやめることになったんですか。もし、そういった一連のことに何の責任も感じていなくて、正々堂々と胸を張ってやっていけるのであれば、なぜ彼はきょうやめたんですか。

 繰り返しになりますけれども、もう大臣は変わらないとすれば副大臣でも結構です、どうぞ考えを改めてお聞かせください。(発言する者あり)

坂口国務大臣 私の意見は先ほど申し上げたとおりでございますが、今回のこの改正案につきましても、いろいろの御意見を、お手紙等で私も拝見いたしております。

 もちろん反対をされる方もございますが、しかし、よくよく考えてみれば政府が出している案しかないのかなとようやくわかってきたというお手紙も、かなり多いわけであります。(発言する者あり)いやいや、そんなことはありません、これは非常に、最近とみにふえてまいりました。

 初めごろは反対の御意見ばかりだったんですね。しかし、民主党さんも案を出していただき、比較もしてみ、そしていろいろのことを考えてみて、いろいろの方法があるんだろうけれども、しかし、少子高齢社会を迎える中でそれはやむを得ないのかなという御意見が多くなっている。ある人が俳句まで送ってくれまして、「四面楚歌恐れず泳げこいのぼり」、そういう俳句まで送ってくれた人がおりまして、私は、甚だ申しわけないというふうに思っているわけでございます。

 意見は確かにいろいろございます。意見はありますけれども、しかし、今、一歩ここで進める以外にないんだということは、かなり私は理解をされてきているというふうに思っております。

中根委員 大臣のところへは私どもよりもはるかにいろいろなそういうメールとかお手紙が来るんでしょうけれども、もしそういう一部の声を尊重して、あるいは国民の投書とかそういったものを尊重して法案を評価するとするならば、各マスコミが行っているいろいろな世論調査すべて、政府案に対する批判的な声の方が大きいという調査が出ているじゃないですか。(発言する者あり)

 そういったものをなぜ今までの段階で尊重することなくずっと押し通してきて、だんだんだんだんよくなってきたんだなんというふうに、今やじもありましたけれども、だったら、強行採決したということも含めて、改めてもう一回ここでやり直して、もう一回時間をかけてやれば、本当に国民の声が見えてくる、聞こえてくるんじゃないかというふうに思います。

 改めて申し上げますけれども、官房長官がここでその職を辞することになったということは、今までの国民に対するさまざまな不誠実な態度、こういったことに対しての責任をとった、そして法案の悪さに対して抗し切れなかった、こういったことと判断せざるを得ないということを指摘させていただきたいと思います。

 この委員会等が終わりましたら十分な情報が入ろうかと思いますので、控えています後の民主党の質問者がそれぞれまた問いたださせていただくことになろうかと思いますけれども、どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 きょうは「選択」の問題も実はやらなきゃいけなかった。それから、カワグチ技研のことも引き続きやらなきゃいけないんです。「選択」のことは、特に、きょうは本当はやろうと思っていました。カワグチは、実は、この委員会で取り上げさせていただいてから、カワグチ技研という会社そのものが今動いていますので、もう少しその動きを見きわめながら、もう少したったところでやろうと思っていました。

 「選択」も、ちょっときょう取り上げるには時間が多分なくなってきたと思いますので、まず、またかと恐らく与党の方はまたおっしゃると思いますけれども、報道によりますところで、非常に怒りを感じている。

 年金の仕事をしているのが選択エージェンシー。選択エージェンシーが便利手帳。便利手帳を選択エージェンシーに発注したのが国保中央会。国保中央会の理事長をやっていらっしゃるのが、元厚生省の薬務局長を務めたり、あるいは年金の事務の総取締役であった社会保険庁の長官をやっておられた北郷勲夫さんという方だそうですね。

 この北郷勲夫さん、国保中央会の理事長だけではなくて、日本障害者スポーツ協会の会長もやっている。それから、その内部組織でもあるんですけれども、日本パラリンピック委員会の委員長もやっている。

 この日本障害者スポーツ協会というところには、国庫から五千八百万円ほどですか、それから福祉医療機構から一億七千万円ほど入っている。そして、その入っている中からパラリンピック委員会に一千百万円ほどお金が回っている。

 こういった構図の中で、もう本当に、ある意味で欲張りだと思いますね。社会保険庁というか、厚生労働省の中で本当にきわめた人、それがまた天下って、国保中央会の理事長をやったり、いろいろなところの障害者スポーツの関係の会長や委員長をやったりしていらっしゃるんですね。

 この方が、事もあろうに、知的障害者のサッカー大会が行われたとき、その準備をしていたスタッフに対して、足が不自由だった人に対して、これは言ってはいけない言葉なんですけれどもあえて申し上げますが、そんなびっこの人間に一体何の仕事ができるんだというような発言をしておられたり、あるいは、知的障害者のサッカーの練習を見に行って、知的障害者にサッカーなんかできるのかとか、やつらはキーキー声を張り上げて走り回っているんじゃないのか、こんな、まさに聞くにたえない障害者差別の発言をしていらっしゃる。

 こういう方が、障害者スポーツ協会とか日本パラリンピック委員会とか、こういう障害者スポーツの実権を握る立場にある。九月からアテネでパラリンピックが行われます。したがいまして、今、この五月の段階というのは、パラリンピックに出場する選手選考の真っ最中といいますか、大詰めの時期に来ていると言われています。そういった中で、おれに刃向かうと選手として選考しないぞというふうには言ったかどうかわかりませんけれども、そういった暗黙のプレッシャーさえかけるような態度をこの協会の中でとっておられるとも聞いています。

 こういう方が障害者スポーツの中心的なポストについていらっしゃるということに対して、大臣、どのようにお考えでしょうか。

塩田政府参考人 日本障害者スポーツ協会、それから日本パラリンピック委員会、いずれも、障害者スポーツの振興の上で非常に大事な役割を果たしている組織であると考えております。その長たる者は、障害者スポーツの振興の上で重要な役割を果たしていると思われます。

 週刊現代で報道されましたような、仮にそのような発言を会長なり委員長がしたとすれば、まことに残念であり、遺憾なことでありますが、事務局であります財団法人日本スポーツ協会を通じて事実関係を確認しておりますが、北郷氏は、そのような報道されたような発言はしていないとのことでございます。

中根委員 言った言わないというのは、もうこれは水かけ論になりますから余り追及しませんけれども、言った方は大抵覚えていないんですよ、こういうことは。言われた方は心に傷が残るものなんですよね。だから、言われた人、そういうふうな、うわさにしろ、あるとしたら、やはり言ったんじゃないかなというふうに思って謙虚に反省すべきであって、いえ、私はそんなことを言った覚えはないという強弁を言い張るような、そういう姿勢では、本当にそういう重要なポストにつくような資格はないと言わざるを得ない。

 しかも、この人は一九九六年、この人はといいますか、この障害者スポーツ協会の前身である財団法人日本身体障害者スポーツ協会、この当時もこの北郷さんが会長を務めておられたんですけれども、日本船舶振興会、今の日本財団から補助金を二百十六万円不正受給していた。しかしながら、このときも全く責任をとった形跡が見受けられない。そして今に至ってそういう懲りない言動を繰り返している。

 まさに障害者スポーツを食い物にして、そして、自分だけそういういい立場にあればそれで満足している、そういう人柄がここにかいま見えてくるわけなんですけれども、この日本財団に対する補助金の不正受給、こういったことが今に至ってもなお、日本障害者スポーツ協会がいろいろな活動をするのに、この日本財団から本当は改めて寄附をお願いしたい、援助をお願いしたい。にもかかわらず、このときの、一九九六年の不正受給の事件に対して何ら北郷さんが反省の色を示さない、責任をとらない、したがっていまだに尾を引いて、スポーツ協会が十分な活動がしづらいという状況になっている。

 一刻も早くこの北郷さん、疑惑を持たれた限りは、このスポーツ協会の会長とかあるいはパラリンピックの委員長にいなくたって、もう十分仕事をしてきた人、国保中央会の理事長だけでも十分じゃないですか。なぜここに執着をするのか。今すぐにでも、あるいは疑惑を持たれたこと自体に、福田官房長官のように責任をとってやめてもらいたいというふうに思っています。

 この北郷さんなんですけれども、実は、北郷さんの高校、大学の同級生、浅生力さんというんでしょうか、この方が、日本パラリンピック株式会社というものをつくって、アテネのパラリンピックの広告取りを一手に北郷さんから任されているというわけらしいですね。同級生、仲間内だけで障害者スポーツの世界を食い物にしている。

 僕は改めて思いますと、「選択」の話でもカワグチ技研の話でも全部同じですよ。弱い人たち、あるいは国民、私たちの目に見えないところで、本当にいかがわしいことをして自分たちの懐ばかり暖めようとしている。こういう人たちを改めて一掃していかなければ、厚生労働行政、あるいは年金行政もそうです、健康、保健行政もそうです、すべてに対する国民の信頼は回復し得ないと思います。

 その一歩が官房長官の辞任ということであったとするならば、その第二歩はこの北郷さんの障害者スポーツ協会からの引責辞任というか、引退、辞職、こういったことを求めていかなければ、厚生労働行政の信頼回復などあり得ないというふうにお思いになりませんでしょうか。

坂口国務大臣 事実関係がどうなのかということは、私もまだよくわかっておりません。必要ならば、一度、事実関係を確認したいと思います。

中根委員 この国会中にも、石破防衛庁長官が障害者に対してやゆするような発言をしましたよね。日本の自衛隊は自閉症の子供の自閉と書いて自閉隊だと。こういう感覚一つ一つが本当に悲しくなりますよ。これが、国民の暮らしを預かって、そして年金は保険料を上げて給付を下げてと、将来を不安にさせるような法案を提出する資格のある人たちなのかどうか。

 防衛庁長官だって内閣の一員です。この年金法案の提出の責任者の一人でもあるわけなんです。こういったことを簡単に口を滑らす、滑らした後で撤回するとか訂正するとか、もういいかげんにこういうことはやめにして、本当に優しい気持ちになって、温かい気持ちになって、思いやりのある気持ちになって大臣という職務を全うしてもらわないと、与党という立場を全うしてもらわないと、政府の責任を全うしてもらわないと、本当に国民が悲しい、国民の暮らしが痛めつけられる。

 それが年金制度の、少子高齢社会とかいろいろなことを官製プロパガンダで言いますけれども、そういう政治や行政に対する不信感、信頼感の喪失が、あるいは、今までもグリーンピアとかサンピアとか社会保険健康センターとか、そこに天下って高額の給料や退職金をもらう、流用する、中抜きをする、むだ遣いをする。あるいは、監修料といってコスト高にして、そこで保険料や税金をむだ遣いする。そして、官官接待を行ったり、自分たちがおいしいものを食べに行ったり、電車で帰ればいいものをタクシーで帰ったり、そういったことに使っている。

 そういった一つ一つのことを改めていかないと、とてもこの年金法案、繰り返し申し上げますけれども、国民に新たな大きな負担を押しつける、経済に対しても悪影響を及ぼす、雇用に対しても悪影響を及ぼす、こういった法案などとても審議できない、とても国民に理解できない。まずは信頼の回復。

 その一歩が、本当にまた繰り返しで申しわけありませんけれども、福田官房長官がその範を示したではありませんか。総理も、そして厚生労働大臣も、内閣全体が、官房長官一人にその責任を押しつけるんじゃなくて、やはりここは、冷静になって、一歩下がって、国民の声が、気持ちがどこにあるかということをもう一回きちんと見きわめる、そういう時間が、作業が必要ではないでしょうか。いかがでしょうか。

坂口国務大臣 高まるお気持ちはいろいろあるだろうと思いますけれども、しかし、いろいろの立場の意見があるわけでありますから、そこのところを各政党間でもおまとめをいただいて、与野党でもおまとめをいただきまして、一つの合意点というものをつくっていただいたというふうに思っております。

 あとは、その敷かれたレールの上を、今後真剣に議論をしながら前を向いて歩く、過去の問題は解決をしながら、今後の問題は前を向いてしっかりと進めていくということが、現在課せられた最大の任務だと思っております。

中根委員 高まる気持ちは当然じゃないでしょうかね。高まると言っていいのか。

 大体、もっとゆっくりしゃべれとか、そういうふうにやじを飛ばす、そういうこと自体が、そういう感覚が障害者に対して差別的な発言をするということに、そういうことにつながるんですよ、あなたたち。人の、そういう、僕は早口かもしれませんよ、早口かもしれないけれども、これが僕の個性だし、僕のやり方なんですよ。

 そういったことを笑い飛ばして、もっときちんとしゃべれとか、そういうことを言うこと自体が、あなたたちの差別意識のあらわれじゃないですか。そういったことが、こういう悪い法案を出しても平然としていられる神経のなさじゃないですか。だから、こういう、福田官房長官がやめたといったって、高まる気持ちはわかりますけれども、こんなことを言っていられるわけですよ、あなたたちは。

 きょうはこのことだけで時間がなくなってしまいましたので、後の質問者に議論は任せたいと思いますけれども、きょうやろうと思っていたカワグチ技研の話、あるいは選択エージェンシーの話、さらには中医協の問題、まさに厚生労働省あるいは社会保険庁の行政のあり方、政治姿勢、国民の皆様に対する誠意のなさ、こういったものは引き続きお互いに議論を交わしていかなければいけないことだと思っていますので、機会を見つけて時間をつくらせていただきたいと思っております。

 どうぞ、官房長官がおやめになったというこの事態の重大性にかんがみて、改めて厚生労働行政、年金法案のあり方をもう一度、まだまだ衆議院の本会議で議論をされるまでの間には十分な時間があると言えるわけでありますので、どうぞ内閣で真剣に取り組んでいただきますように要望いたしまして、質問を終わらせていただきます。失礼いたしました。

衛藤委員長 泉房穂君。

泉(房)委員 民主党の泉房穂です。

 四月二十一日の質問に続きまして、引き続き無年金障害者の救済に向けて質問をさせていただきます。大臣からの気持ちのこもった、思いのこもった答弁をこの三十分間お聞きしたいと思います。どうしても本国会において無年金障害者の救済を図りたい、そういった気持ちを込めて、きょう改めて質問をさせていただきます。

 前回の四月二十一日の大臣からの答弁によりまして、少なくとも、今回の救済対象に、学生のみならず、主婦の方も含めるべきであろうと。また、金額につきましても、大臣からは、満額についてはいささか抵抗があるけれども、坂口試案の、少なくとも六割を超えるような額になるべきであろうというような方向性、また、本国会中に何とか救済法案をというようなお気持ちは、前回の答弁において私としては受けとめました。しかしながら、それでは不十分であろうと思います。

 改めて私が思いますのは、年金制度というのはまさに助け合いの制度であります。もしものときの、そのときの最低限の生活保障、所得保障をいかにしていくかというような問題であります。本人の問題であれば貯金をしてためておけばいいわけでありまして、そうではなく、相手のこと、自分以外の人にも思いやりを持って助け合っていこうというのがこの年金制度だろうと私は思います。

 一般的には、皆さん、人は年をとるわけですから、高齢になって仕事ができないときに備えてするのが老齢年金でありますから、このあたりにつきましては、一般的な国民からも想像力の働くところであります。しかしながら、障害年金といいますのは、もしものとき、障害になったときにみんなでどう助け合っていくのかという問題でありまして、これも同様に、年金制度の中において非常に重要な位置を占めるわけであります。

 年金というのは、老齢年金のみならず、遺族年金、そしてまたこの障害年金も当然のことながら含んでおるわけであります。この国会、年金の抜本改革という中で審議が行われているのであれば、なおさら、この障害年金について制度の谷間に取り残された方々に対する救済も、本来この改革案の中に含めるべきであろうと私は思いますし、少なくても本国会において何らかの道筋をつけるべきであろうと、本当に強く思うわけでありますが、その点につき、本国会において最低限の道筋をつけるべきであろうということにつきまして、大臣の思いをまずお聞かせください。

    〔委員長退席、北川委員長代理着席〕

坂口国務大臣 無年金障害者の問題につきまして先日も大変熱心に御議論をいただいて、感謝をいたしております。また、民主党がおつくりになりました案もお届けをいただきまして、拝見をさせていただいているところでございます。いずれにいたしましても、各党間で合意をしていただいて、そして国会にひとつ提出をしていただくのが望ましいというふうに思っております。したがいまして、今後お願いを申し上げたいというふうに思っているところでございます。

 いずれにいたしましても、この障害者年金というのも、私が思っておりますよりもたくさん出ているわけですね。現在、四十兆とも四十二兆とも言われております最近の一年間の年金額の中で、障害年金と遺族年金で七、八兆ぐらいあると思います。大変大きな額でございます。もう少し詳しくはちゃんとしますけれども、そのぐらいな額になっていると思います。それは、年金にちゃんとお入りをいただいていた方で障害者になられた方に対して出ているものでございます。したがって、この年金というのが万が一障害になったときに対しても大変大事な問題だということが、それはよくわかるわけでございます。

 しかし、この年金制度の経過の中と申しますか、成熟します過渡期の間に、払っても払わなくてもいいという期間があって、そのときにお入りいただけなかったということについて、そこをどう見るかといういろいろの意見があるわけでございますが、しかし、そこの無年金の障害者の皆さん方をこのまま捨ておいてはいけない、何とか救済をしなきゃいけないということでは、大体合意を得られてきているというふうに私は理解をいたしております。

 したがいまして、私の気持ちといたしましても、ぜひとも合意をしていただいて、そして救済の道をつくっていただきたいし、私も努力をしたいと思っているところでございます。

泉(房)委員 今の大臣の言葉より、合意をして何とか本国会でというようなお言葉だろうと受けとめます。

 民主党としては、もう既に党内手続を経まして、今皆さんにお配りしておりますが、救済法案、具体的な要綱、条項、また経費の見積もりも含めまして、きょうお配りしております。民主党としては、もう既に党内手続を経て、提出できる状況にあります。しかしながら、残念ながら、では民主党のみですぐに救済法案が通るかというと、そうそう容易ではないという客観的状況のもとに、まさに坂口試案を出された大臣みずからイニシアチブをとられて、また、与党合意におきましても、今まさに救済に向けての動きがこれから始まろうという中で、きょうの質疑を通じて、ぜひとも合意に至るような答弁をいただけないかという思いで質問させていただきます。

 民主党案につきましても、既に大臣にお渡ししておりますけれども、大臣の言われるような問題点は、民主党としても重々考えております。実際の年金制度の谷間で起こった方に対する救済の必要性は、全く一致するものであります。大臣御指摘のように、そうはいっても、実際に保険料を払っている方と一緒でいいのかというような問題意識、また財源論の問題など、その点につきましても認識をともにするものであります。民主党案もきっちりそれを踏まえた上で案をつくっているわけであります。

 具体的な救済対象にしましても、本来であればすべての無年金障害者を一気に救済するのが望ましいとは思いますが、今回の民主党案におきましても、学生、主婦、そして在日外国人、在外邦人などをまず救済して、その後、引き続き速やかにすべての無年金障害者という二段階方式をとらせていただいております。

 支給金額につきましては、満額についていささか抵抗があるというような前回の答弁がありましたけれども、この点につきましては、またきょう特に中心的な質疑にしたいと思いますが、要するに、お金を払っていなくても、実際上、二十前の方につきましては満額出しているわけであります。しかしながら、払っていない方につきましては所得制限がありまして、二十以上の年金保険料を納めている方とは違って、個人の所得を見て、所得のある方には給付をしないという形で、そこで区別化を図っているわけであります。

 民主党の案も、まさにそこに着目し、拠出をしていない方に対して給付をするという以上、二十以上の方とは違って、二十前の障害基礎年金同様の処理をするというような形で区別化も図るという工夫もしております。まさにそこの問題意識を共有しながら、いかにして救済を図るかということを考えているわけであります。この点、よく御理解いただきたいと思うわけであります。

 制度論的には、年金制度が福祉的措置かといいますけれども、この点につきましては、民主党案としても、保険料を持ってくるということではなく、全額国庫負担というような枠組みを考えさせていただいております。これは、従前の障害福祉年金のときも全額国庫負担でありました。その中で、できるだけ障害者に対する所得保障を充実化しようという中で、年金保険料もオンして、より厚い、充実を図った給付をしてきたという歴史的経緯があります。民主党案におきましても、その経緯も踏まえた上で、保険料ではなくて全額国庫負担でやろうということも考えているわけであります。

 また、救済時期につきましては、速やかにということは当然でありますが、実務的な問題もあるでしょうから、民主党案としては、この秋、十月一日施行という形で提案させていただこうと思っております。

 経費につきましても、坂口試案につきましては、概算で、民主党案によりますところの四類型でいきますと二万九千人でありますが、実際、各地方自治体で行われている施策に基づいてもう一度調べ直しますと、恐らくもう少し少ないのではなかろうかというような認識を持っております。兵庫県や大阪府などでは、独自に在日外国人の方に対する給付を行っておりますが、その実質につきましては、兵庫県だと、平成十四年度で百二十一名、大阪府も二百名ちょっとであります。全体の外国人の比率でいきますと、約〇・一%程度です。全国の在日外国人の数が百八十五万程度と聞いておりますから、とすると、坂口試案のように五千もいないのではなかろうかと考えております。

 そして、民主党案としましては、少し少な目に見積もりまして、仮に二万人と仮定した場合、年度ベースで百七十億円程度というふうに試算させていただいております。坂口試案によりましても、年度ベースで二百四十六億円であります。確かに大きな金額ではありますけれども、全体の年金制度の枠から考えますれば、決して捻出できない額ではなかろうと考えております。

 このような前提のもとに順次質問させていただきます。

 まずは対象者であります。前回の答弁で、学生のみならず主婦というような答弁をいただいておりますが、私はどうしても、在日外国人につきましては救済の対象に含めるべきであると強く申し上げたいと思います。大臣もよく御存じのとおり、学生、主婦につきましては、確かに任意加入でありましたので、入ろうと思えば、理論的には入れた状況にありました。しかしながら、在日外国人は、一九八二年まで、入りたくても、国籍という一点をもって年金制度から排除されていたという事情があります。入りたくても入れなかった。一九八二年以降に障害になった方については出ているわけであります。一九八二年の前か後ろかのみによってこれほど不公平が生じていいのかと。前も言いましたが、人はだれも障害になるかならないかは選べません。また障害になる時期すらだれも選べないわけであります。一九八二年以前に障害になった方のみ救済されない、一九八二年以降だったら救済される、これは余りにも不公平であろうと私は考えております。

 一九八二年当時の政策判断として、それ以前の方は救済しないというその時点における政策判断があったとしても、その後、人権の国際的保障の中で、できる限り手厚い保障を国籍の違う方にもしていこうという大きな歴史の流れもあります。現時点で改めてその部分を見詰め直して救済していくということも可能だろうと思います。

 人数につきましても、坂口試案でいっても五千人、本当はもう少し少ないだろうと思います。財源論につきましても、それほど大きな支障があるとも思いません。ぜひとも、大臣より、在日外国人も今回の救済対象に含めたいという気持ちのにじみ出るような答弁を期待してよろしくお願いいたします。

    〔北川委員長代理退席、委員長着席〕

坂口国務大臣 私も試案をつくりますときに、さまざまな立場の皆さん方の問題を、いろいろお話もお聞きをいたしましたし、検討もしたわけでございます。確かに、在日外国人の皆さんの問題もあるわけでありまして、昭和五十六年でございましたか、難民条約に加入をいたしましたから、その時点のところで国としても整理をしたわけでございますが、それ以前の皆さん方の問題をどうするかといった問題があるわけであります。これは御議論をいただいて、そしてよくここを整理させていただかなきゃならないわけでありまして、私が出しました試案におきましては、そうした皆さん方を除外しているわけではないわけであります。

 しかし、こうして今回、無年金障害の学生さんを中心にした裁判がございまして、そしてそこから起こってきておる問題でもありますので、学生さんを中心にして、その範囲をどこまで広げるかという問題は確かにあるわけでありますので、ここは各党で合意をしていただくことがいずれにしても大事でございますから、十分御意見をお聞きしていきたいというふうに思っております。

 さっきも申しましたとおり、私が最初出させていただきました案は、すべてそうしたものも含めてどうするかということを考えた次第でございます。

泉(房)委員 大臣のお気持ちとしては、在日外国人も当然のことながら、すべてを救済するというお気持ちの答弁だろうとお聞きします。私も全く同感であります。しかしながら、二段階方式でいくにしても、繰り返しです、任意加入制度下における学生、主婦を救済するのであれば、そもそも制度加入できなかった外国人を救済しないというのは、やはりおかしいと思います。どうしても今回、在日外国人も含めて救済すべきであるということを強く訴えたいと思います。

 時間もありますので、続いて金額の問題であります。ここはどうしてもきょう議論を詰めたいと思います。

 大臣の前回の答弁、やはり保険料を払った方と同額にするにはいささか抵抗があるという答弁でありました。それは確かにそう聞くとそんな気もします。しかしながら、繰り返し申し上げます。二十以前、十九歳で、例えば交通事故に遭って障害を負われた方については保険料なんか払っていません。しかしながら、満額出ているわけであります。今の学生さんにつきましては、特例納付の制度が今あります。今の学生さんのほとんどが特例納付で、学生時代は保険料は納めていません。もし当時こういう制度があれば、恐らく当時の学生さんもそういった特例納付の制度で猶予を受けて保険料を納めなかったと思われます。そうであれば満額出ていたわけであります。まさに制度がその当時と今と違うがゆえに、給付が受けられるか受けられないかという問題になっております。

 そして、拠出をしていなくても、現に二十前ではちゃんと満額出しているんでありますから、拠出なくして給付なしというようなスローガンは実はそうではないんだ、障害年金においては少なくともそうじゃないという現実が今なお当然あるわけであります。その一点をもって一緒にできないというのはおかしいと繰り返し申し述べるとともに、民主党案におきましても、繰り返しですが、拠出をしていない方については所得制限を課すということによって拠出した方との区別化を図っております。ですから、今回の坂口談話や与党合意にあるような、拠出した方との観点というものは、満額にしたとしても含まれると考えております。この点、大臣として、満額ではなくて、それより下げる理由があるのであればお答えください。私はないと思います。

 そしてまた、大臣としてもおわかりだと思いますが、障害者の所得保障は今だって十分じゃないわけであります。今たくさんもらっているわけじゃなくて、今だってその中で、苦しい生活の中をやっているわけであります。それより落とすような理由はない、そういう認識のもとに、障害者の障害福祉年金から障害基礎年金に変わるときに金額を上げたわけであります。なぜ上げたのか。少なくともそれぐらい必要だという認識で上げたわけであります。それをどうして、制度の谷間にある方のみに減額する理由があるのか。それはおかしいと思います。同額であってしかるべきだと私は強く思いますが、その点、大臣の所見を問います。

坂口国務大臣 この問題は、そもそも論のところは、年金の中で考えるべき話なのか、年金と離れて障害者に対して手を差し伸べるべき問題なのか、そこが一番問題になっているわけであります。

 二十歳未満の皆さんの場合には、これはいわゆる障害年金として確かに出ているわけでございますが、ここは未成年者ということで、家族の一員ということで、お父さん、お母さんが年金に入っていただいている、そこのお子さんということで処理をされているというふうに思っております。

 しかし、成年に達した、そしていわゆる支払いをしなければならない義務が生じた時点においてなった人とそこは違うという一線を引いているわけでありまして、ここは、法律というのは御承知のとおり、私が言うまでもなく、あなたの方が専門家でございますが、なかなか厳しいもので、どこかで線を引かなきゃならないわけでございますので、そこは私はやむを得ないことではないかというふうに思っております。

 そうした中で、どの点にそこを落ちつけるかということにつきまして、私は前回、私の思いを若干申し述べたわけでございますけれども、ここはよく御相談を各党でいただきたいというふうに思います。決して、私が私の案を押しつけるという気持ちはございませんし、よく御相談をいただいてここはお決めをいただければいいというふうに思っている次第でございます。

泉(房)委員 もう一回どうしても答弁いただきたいのは、繰り返しですが、障害者の所得保障の見地からすれば、やはり満額が望ましいということは大臣も思われると思います。しかしながら、制度の問題上、拠出した方との何らかの区別がやはり要るだろうという点についても私は認識をともにします。私が言っているのは、そこは二十以上の方の障害基礎年金と今の二十前の方は似ていますが、金額は一緒ですが、所得制限を課すか課さないかで違っています。二十前の方については、当然のことながら保険料を納めていません。今、大臣は親御さんの話をしましたが、親御さんが払っていない方であったとしても、二十前の方には当然出ているわけであります。とした場合に、そこの拠出した方との区別化につきましては、二十前の方にみなすという形で民主党案は考えています。それで十分図れるじゃないかと。そこでバランスが図れる以上、やはり所得保障の充実化の見地からして、他の障害の方と同様に、制度の谷間にあるがゆえに減らされる理由はないと本当に思うわけであります。

 この点について、大臣のお気持ちを再度聞きたいと思います。大臣としたらば、満額が望ましいというお気持ちじゃないかと思いますが、その点お聞かせください。

坂口国務大臣 お気持ちは私も十分わかっているわけでありますけれども、そこまで私がここで申し上げるのは失礼でございますから、申し上げません。いずれにいたしましても、皆さんでよくお話し合いの上、結果を出していただきたいというふうに思っております。

 ただし、額が余り低過ぎて福祉の役割を果たさないようなことでは困るわけでありまして、決めさせていただく以上、あるいは決めていただきます以上、それは福祉としての成り立ち得る額というのはどの辺にあるかということであろうというふうに思っておりまして、皆さん方の御意見を十分に拝聴したいというふうに思っております。

泉(房)委員 押し問答になってもあれですが、私が指摘したいのは、繰り返しです、だれも障害になろうと思ってなる方なんかいません。障害になる時期だってだれも選べないんです。今回の大臣の答弁にある学生さんについても、一九九一年までの方はだめで九一年以降だったらいいとか、例えば二十前の十九歳に交通事故に遭った方は救われるけれども二十一歳になって任意加入していなかった方については額が減らされる、障害になった時期によって金額に差異を設けるということについて、どうしても私は納得いきません。今回の救済法案につきましては、障害基礎年金に所得制限をかけるという形で工夫することによって、金額については満額ということを強く主張したいと思います。

 時間の関係がありますので次に進みます。

 繰り返しですが、今の所得制限については、今の障害基礎年金については個人単位で所得を見ています。生活保護などは世帯単位で見ています。生活保護についての議論についてはきょうはさておき、少なくとも障害者の自立ということから考えたときに、やはり障害基礎年金の二十前にみなしたときの所得制限についても、個人単位、本人によって見ていくのは当然だと思います。民主党案もそういう枠組みをとっております。この点について、大臣としても当然のことながら個人で見ていくというお考えだと思いますが、この点、確認の答弁をお願いいたします。

坂口国務大臣 一定の所得による給付制限を設けるということは、これはやむを得ないというふうに思いますが、しかし、先ほどお話にありましたように、現行の二十歳前の障害基礎年金、これは、支給制限は本人の所得に着目をしたものというふうになっております。したがいまして、やはり本人の所得というものに着目をするということだろうと私も思います。

泉(房)委員 今の大臣答弁を見て、当然のことながら、障害者の自立から考えれば、家族単位で見るんじゃなくて、世帯単位じゃなくて、個人で見ていくというのは当たり前だろうと思います。しかしながら、もう一方の国民年金保険料につきましては、現行上、申請免除については世帯単位で見ています。その結果、無年金の障害者が障害基礎年金を全く受け取れないにもかかわらず、親御さんが一定収入があるということで国民年金の保険料、現行でも一万三千三百円を毎月払っているという、そういった不当な現実があります。

 この点は何らか運用上の工夫によってでも改めないことには、障害を持って働けない、障害基礎年金を受けてしかるべき方が、制度の谷間で受け取れない。おまけに、国民年金保険料をそれこそ満額の一万三千三百円、現行でも毎月払わされているという現実を直視したときに、やはり何らかの工夫が要るだろうと思うわけであります。

 世帯単位じゃなくて、そこも障害者の個人単位で見ていくことによって免除の余地を広げるとか、何らかの工夫をしないと、現行のままだと、障害基礎年金の所得保障を受けられないのに国民年金保険料を老齢年金のために払い続けているというような本当にまさに不当な現実を、本当に怒りすら感じる次第であります。この点、何らかの工夫が要ると思いますが、少なくとも大臣からの何らかの工夫が要るというニュアンスの答弁をいただきたく、よろしくお願いします。

坂口国務大臣 ここはどのぐらいの額にするかということと関係してくる話だというふうに思います。掛金をしていただいて、そして将来年金を受けていただきますときに、これからお出しすることになるであろう額と比較をして、それと比較をして、せっかく掛金をしていただいたのに全然意味がなかったということになるんだったら、何のために掛金をするのかという話になってくるわけです。したがいまして、そこは、掛金の額との見合いの話だというふうに思っております。

泉(房)委員 現時点ですぐに答弁は難しいと思いますが、問題意識としては共有していただきたいと思います。

 続いて、救済時期であります。

 本来であれば、制度の谷間でなければ、さかのぼってでも受けられた話であったと私は思いますので、遡及してでも救済した方が望ましいのかもしれません。しかし、具体的には、財源論の問題もあります。なので民主党案も、残念ながら、早期救済といいつつも、本国会で成立すれば十月一日施行で、それ以後に給付するという枠組みで考えています。少なくとも十月一日、遅くとも来年度の初頭、四月から救済すべきなのは当然だと思いますが、この救済時期について大臣の所見を問います。

坂口国務大臣 法律というのはなかなかさかのぼるのは難しいんですね、御承知のとおり。ですから、ほかの法律でもそうですが、例えば薬害の場合の手当を出します場合にも、できました法律の前にさかのぼるというわけにいかなくて、大変お気の毒なケースもあるわけであります。したがいまして、そうしたことを考えますと、やはり日時を切るということはやむを得ないというふうに思います。

 これは、法案を作成しましたときに、一体いつからにするのかということは、予算を伴いますから、それが途中でできるのか、それとも区切りのいい、例えば十七年なら十七年の四月からにするのか、その辺のところは財政上の問題もございますから、そうしたこととのにらみで決定されるべきものと思っております。

泉(房)委員 大臣のお気持ちとしては、遅くても十七年四月からというようなお気持ちだと受けとめてよろしいでしょうか。

坂口国務大臣 できるだけ速やかに、成立すればそれに従いたいと思っております。

泉(房)委員 最後の質問になりますけれども、前回の質問以降、特に未納問題がきょうの質問でも多く出ております。この未納の問題を考えますときに、これもまさに無年金障害者の問題でもあります。国民年金の四割もの方、若い方は五割の方が入っていないということは、その方がもし交通事故などで障害を負われたときにまさに無年金障害者になるという話であります。

 この話は過去の話ではありません。現在進行形の話であります。CMのあの女優さんがもしCM撮影中に事故に遭って障害になっていたらどうだったのか、大臣のうち、厚生年金から切りかえをしていなかった方が、国会議員の任期の途中に、もし何らかの事情で障害を負われていた場合どうだったのかと考えると、まさに現在進行形の問題なのであって、若い方、今未納問題いろいろ議論されていますが、この問題の解決は当然必要だと私も思いますが、未納問題ということは、まさに無年金障害者を生み出し続けているというような現実だということでもあるわけであります。

 これを考えたときに、無年金障害者の救済、残念ながら今回の民主党案も、一気にすべてという形は、財源論の問題もありまして、そこまでは踏み込んでいません。二段階です。しかしながら、すべての無年金障害者を救済すべきである、未納問題の解決とともにあわせて、未納の方についてもやはり救済すべきだと私は思います。

 また、未納問題につきましては、ここもさまざまな議論があるところでしょうけれども、その本人に、あなた払ってなかったでしょうと言いますけれども、現実的に、制度的な問題もあって、告知も受けていなかったり、最近はしているようですが、過去においては連絡もなかったりして、会社をやめた後そのままになったという方が、会社やめてしばらくのうちに、会社やめた後に交通事故で障害になった方は無年金障害なんです。それに対して、あなたは会社やめてすぐに国民年金に加入していなかったから出ませんよと言えるのかという問題意識であります。

 この点につきまして、大臣としては、当然のことながら、坂口試案でも書いているように、すべての救済だと思いますが、この点、速やかな救済だと民主党案は考えております。この点、大臣の所見を問います。

坂口国務大臣 この問題は、年金の未納問題から生じていることだけは間違いのない事実でございます。したがいまして、未納問題とこの無年金障害者の解決の問題は、言ってみればセットの話であるというふうに私も認識をいたしております。整理の仕方が、年金以外で整理をするとしても、現実問題としてはこれはセットで考えていかなきゃいけないというふうに思っている次第であります。

泉(房)委員 時間が来ましたが、とにかく本国会にて合意をして救済すべきであると考えます。その際には、きょう御説明もしました民主党案ですが、これをもとにぜひとも御検討いただきたいと強く申し添えて、私の質問を終えます。

 ありがとうございました。

衛藤委員長 午後二時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時十分休憩

     ――――◇―――――

    午後二時一分開議

衛藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。増子輝彦君。

増子委員 質問の時間をちょうだいしまして、ありがとうございました。

 しかし、何かちょっと気が抜けたような感じで、十二月の三十一日にクリスマスケーキをもらったような感じでございまして、いま一つぴりっとしないというのが本音でございます。

 しかし、議員年金を含め、日本の年金制度のあり方につきましては、まさに今国民の中では大変な不信感が渦巻いているわけでありますし、国会が果たすべき役割というものも当然あるわけであります。そういう意味では大事な時間でございますので、大臣を中心として、幾つかの点について質問させていただきますので、よろしくお願いをいたしたいと思います。

 まず最初に、坂口大臣、今回、この年金問題の、未納を含めた政治家の多くの事例が出ておりますが、福田官房長官が辞任を表明したということでございますが、これについての大臣の所見をまずお伺いいたしたいと思います。

坂口国務大臣 急なお話で、大変驚いているところでございます。けさ閣議でお会いをしましたときには、いつものようにごあいさつを申し上げていたわけでありまして、全くわからなかったわけでございますが、午前中に御本人が表明をされたということで、大変驚いている次第でございます。

 私は、この年金問題にかかわらず、すべての問題、官房長官にいろいろと御相談をしてまいりましたし、そうした意味で大変残念にも思うわけでございます。もう少し、今後もいろいろの問題で御相談に乗ってほしかった、そんな思いでいるわけでございますが、御意思もかたいようでございますし、態度を明確にされたわけでございますので、今後またひとついろいろのアドバイスをちょうだいできればというふうに思っている次第でございます。

増子委員 まさに政治家が今問われているんだと私は思うんです。自己責任という言葉が、イラクの人質になった三人プラス二人の五人の方々にも実はいろいろな形で浴びせかけられました。私は、むしろ政治家そのものがこの自己責任というものをどのように果たすかということが、国民に対する政治の信頼を取り戻すことも含めて、極めて重要なことだと認識をいたしております。

 そういう観点からすれば、小泉内閣の七人の大臣の方々、あるいは我が党の菅直人代表を初め本当に多くの方々が、この未納問題を含めて、明らかになってきたわけであります。これが一般の国民の皆さんの中では、政治家が、法律をつくる国会議員がそういうことをしているんだから、我々がやらなくて当たり前じゃないかと、そういうものが実は蔓延をしているんですね、そういう気持ちが。この信頼がなければ、私は、年金制度というものはまさに維持できないという状況になっていくと思うんです。自己責任、政治家はみずからの自己責任においてその出処進退を明らかにするということが当然なことだと思っております。今後、この自己責任を果たすことについては、大臣あるいは我が党の菅代表を初め多くの方々がどのような形で決着をつけていくのか、私は、国民の皆さんは注意深く見守っているんだろうというふうに思っているわけであります。

 と同時に、今回、きょうも、これは採決後の委員会でありますから、ある意味では、先ほど申し上げたとおり、ちょっと変則的な形にせよ、この審議をしていかなければなりません。そういう意味で、三党間の合意というものが実はなされたということであります。私は非常に不満なんです、この三党合意の点につきましては。中身につきましても、このあり方についても非常に不満なんです。これは、行政府の厚生大臣として、政党間の合意については何らコメントをする立場ではないというふうにお思いになっているのかもしれませんが、今回の三党間の合意についての坂口厚生労働大臣の所見についてお伺いをいたしたいと思います。

坂口国務大臣 昨日、三党間の合意をしていただきました。内容につきましてはいろいろありますけれども、今後の社会保障全体を見て、その中で、負担としては、保険料で負担をするのか、あるいは税で負担をするのか。税と保険料両方を見ながら、そして社会保障全体を見ながら今後考えていかなければならない。そういうことを年金も含めてより具体的にもう少し検討しようと。その中には民主党が御提案になっている年金の一元化の問題も含まれている、こういう整理であったというふうに思っておりますが、社会保障全体の中で見ていくということ、そしてその制度も、その中でいろいろの角度から検討していくということ、そのことは大変結構なことだというふうに思いますし、私もその議論の行方というものを注目させていただきたいというふうに思っているところでございます。

 しかし、我々この法案を提出させていただいているわけでございます。いずれにいたしましても、年金には負担と給付、この二つがもうどんな制度につきましてもついて回ることは間違いのない事実でございまして、そのことについて一つの将来のあるべき数値を示したということでございますので、これにつきましては御理解をいただきたい、そういうふうに思っている次第でございます。

増子委員 まさに社会保障全体の中でこの年金制度のあり方も考えていかなければならないということは当然のことであると思います。

 きょうのこの限られた時間ですから、細かいことについては質問はさせていただかない予定でおります。全体的に、年金制度のあり方や今回の政府提出の年金制度改革案について、幾つかの点をこれから質問させていただきたいと思っております。

 せっかく、給付率を五〇・二%に維持するという前提で、負担の面やあるいは給付の問題を考えながら今度の年金制度がつくられたということになっておりますが、基本的には、やはり年金制度が維持できるかどうかということが極めて大事な視点だと私は思っているんです。国民年金、厚生年金、共済年金、この三つの制度が間違いなく維持できないという状況になってきていることは、もう大臣初め皆さんがよく御承知のことだと思っております。

 そういう中で、過去何回かこの年金制度改革の五年ごとの見直しという中での審議が行われてきたわけでありますが、過去の年金制度改革に比べまして、私自身は、今回のこの年金制度改革は以前にも増して極めて重要な、まさに将来に向けて本当に年金制度が維持できるということが可能なのかどうかということでは、非常に重要な制度改革の年であり、この審議だと思っておりますが、大臣におきましては、今回の年金制度改革が、これまでの年金制度改革と比較してどのように重要な点を含んでいるか、どのようにやはり将来に向けて重要なのかということについてのお考えをお聞かせいただきたいと思います。

坂口国務大臣 過去の年金改革の議論も、それはそれでまた大変大事であったんだろうというふうに思っております。しかし、少子高齢社会がせっぱ詰まってきた、もう後がない、そういう状況になってきているときの年金改革でありますだけに、今回の年金改革は、そうした背景を持った重い改革であるというふうに思っている次第でございます。それだけに、皆さん方のいろいろの御議論がありますのも、これも当然のことだというふうに思いますし、そうした他の御意見に対しましても謙虚に耳を傾けなければいけないというふうに思っている次第でございます。

 もう一方におきまして、現在、経済状況というのが余りよくない、こういう状況の中でありますだけに、負担の問題をどうするかということが、今までの上り調子と申しますか非常に右肩上がりのときの改正と違った意味で、非常に厳しさというものを、国民の皆さん方もあるいはまた企業の皆さん方も、受け取り方がかなり違うのではないかというふうに思っております。

 しかし、そういう中ではありますけれども、負担と給付というものを考えましたときに、今後ある程度の御負担をいただかなければならない。そのことを申し上げることは大変つらいことでございますけれども、しかし、あえて申し上げることは申し上げて国民の皆さん方に御理解を得なければならない。そういう意味で、今回のこの年金改革というのは非常に重い改革だというふうに理解をしているところでございます。

増子委員 大臣がおっしゃるとおり、非常に重い改革だ。当然、それに合わせた審議の内容というものもなければならないわけであります。質、量とも、まさに大事な審議をしなければいけないというふうに私はずっと思って、実はこの委員会にも出席をさせていただきました。

 しからば、なぜ今回の年金制度改革についてこのような時間で採決をしなければならないのかという問題が当然出てまいるわけであります。今回の質疑時間等を考えましても、まさに重い、年金改革という、今、ある意味では待ったなしの状況があるわけですから、これは徹底的に、もちろん、日本歯科医師会のいわゆる汚職事件も含め、グリーンピアを初め、年金の使われ方も含めて、徹底的にこれは審議をしていくということが必要だと思うんです。

 そういう意味で、なぜ今回このような時間の限られた中で採決をしていかなければいけないのか。私は、もっともっと質疑を本来ならばしていかなければ、大臣のおっしゃるような、重要な、重い年金制度改革だということにはならないんじゃないか。

 国民の皆さんも、この問題については、大変重要だと思いながらも、いま一つぴんとこない。もちろん、国会の審議内容が十分国民の皆さんの中にも伝わっていない。ところが、今回の大臣未納問題を初め、あるいは菅代表の問題あるいはほかのさまざまな政治家の皆さんの未納問題がこれだけ明らかになったことによって、国民はむしろこの年金問題について大変な関心を今回持ったと思うんです。

 国民の皆さんが知りたいことは、この法案の中にもまだまだあるんですね。これは与党の皆さんも、本当にこの審議時間でいいと思っているんですか。選挙区において、皆さん、説明できますか。私はできないと思うんですよ。こんな短時間の中で、本当に、大臣がおっしゃったとおり、重い年金制度改革という中で、いいんでしょうか。

 私は、大臣、今回のこの重い年金制度改革が、こんな短時間の中で、なぜ今回のこの国会で成立を図らなければならないのかということが十分理解できません。なぜ今国会で成立を図らなければならないのか、その見解をお聞きいたしたいと思います。

坂口国務大臣 振り返ってみますと、ことしの初めの予算委員会から、いろいろ意見がありましたけれども、イラクと年金というふうに言われてまいりましたけれども、イラクの問題よりも私は年金の問題の方がうんと多かったというふうに思っております。予算委員会からずっと引き続いてまいっております。

 確かに、この厚生労働委員会におきましてもいろいろのことがございました。民主党さんが新しい法案を出される、そして、それが提案されるまで少し待つべきだという御意見もあったりいたしました。しかし、この委員会におきましても、それぞれ御熱心に議論をしていただいたところでございます。大変大事な問題であることは先ほど申し上げたとおりでございますが、しかし、議論はかなり尽くされてきているというふうに思っております。

 そうした意味で、この年金の改正につきましての採決をさせていただいたところでございますが、これはまだ本会議で採決をしていただかなければなりませんけれども、採決をしていただくということになりますと、今度は参議院でまた同じようにずっと議論をしていただくことになるわけでございます。両院におきまして徹底した御議論をいただいていけば、私は、国民の皆さん方にその全貌を知っていただくことになるのではないかというふうに思っている次第でございます。

増子委員 大臣、決して十分な時間ではないと私は思っております。予算委員会での、確かに、この年金問題についてのいろいろ質疑がございました。しかし、現実にこの厚生労働委員会に付託されてからの時間を見れば、内閣の方から提出された法案の中身を我々が精査する時間も含め、我々には実はなかなかデータが、法案をつくるにしても出されなかった。十分な時間ではない。

 と同時に、今申し上げましたけれども、我々にはデータがなかなか厚生労働省からもいただけなかった。そこは、大臣、大変御立派な方ですから、先日この委員会で、民主党にもデータを全部出させますという御答弁がございました。その後、我が党の理事の皆さんにもそういうデータが出たというふうにもお聞きいたしておりますけれども、やはりこれは十分なものではないだろうと私自身は認識をいたしているわけであります。

 これはこれとして、今回の年金制度改革、まさに重い年金制度改革でありますけれども、これについて改めて一番原則的なことを、大臣、お伺いをしたいと思うんですが。

 年金とは何ぞや、年金は何なんだろう。国民の皆さんが保険料を払って、国民年金ならば四十年払い込んでわずか七十万前後、厚生年金も一般の方々からすれば本当にそれほど十分な金額ではないのかもしれません。

 果たして、年金とは何ぞや。まさに年金の理念というものは、みずからの老後の生活のために確保しなければならない、自分が長い間納めてきた、その老後の保障のためのものであるということも含め、あるいは、相互扶助という形の中で、お互いが助け合って、それぞれ将来の老後においての生活がきちっと守られるというような形のものが本来はあるべきだと思っておるんですけれども、大臣の立場から、あるいは厚生労働省として、今回この審議に当たるに従って、年金とは一体どういうものなのか、そして、年金の一番の理念は、相互扶助ということが大原則としてあるんだろうと思うんですが、相互扶助なのか、あるいは自分の老後の生活をするための最低の、年金という形で、自分のためのものなのか、私は、この辺についての、一番大事な年金の基本的な考え方について、改めて大臣の御見解をお伺いしたいと思います。

坂口国務大臣 非常に単純で、しかし、一番難しい質問ではないかというふうに思いますが、相互扶助の精神、それから自分の老後を支えるもの、両方とも意味合いはもちろん私はあるというふうに思いますけれども、しかし、どちらに重いかといえば、やはり相互扶助という方によりウエートは高いというふうに思っております。したがいまして、現在の高齢者の人のために現在の若者が負担をして支える、そして、現在の若者が高齢者になりましたときに次の世代の人たちに支えてもらう、それが年金でございますから、自分の老後というものももちろんありますけれども、もっと社会性の高いと申しますか、大きな意味でのシステムであります。したがいまして、相互扶助という言葉の方により大きいウエートがあるというふうに思っております。それだけに、国民の皆さん方にも、これは御理解をいただかなければならないことでございます。

 中には、所得が非常に多くあります方でも、自分のことはもういい、心配してもらわなくても自分でやります、こういうふうに言われる方もあるわけでございますが、御自身はあるいはそうかもしれません。中には、年金を全部払い終わった皆さんの中にも、年金はもう要らない、一々もらいに行くのも、あるいは手続をするのも面倒だ、要らない、こう言われる方もあるわけであります。

 それはそうかもしれませんけれども、しかし、年金というのはお互いの相互扶助でありますから、自分だけの問題ではない、だから御参加をいただかなければならないといったことをお願いしなければならない立場でございます。そうした意味で今回この改正案を出させていただいて、そして、お互いの支え合いというところを皆さん方にもこの年金議論の中で御理解をいただければありがたいというふうに思っております。

増子委員 まさに相互扶助だと私も思っているんです。

 ということは、その前提として年金制度に対する信頼というものがなければ、私はそれすらなくなっていってしまうんだろうと。ということは、今、国民年金は四割近くが未納だということになれば、年金そのものに対する信頼がどんどん失われていく。どうせ私たちは積んでももらえないだろう、あるいは、最近の政治家の未納問題を含めて、どうせこんなもの信頼できないんだというような問題が間違いなくその根底にあるんだと私自身は思っているわけであります。

 大臣、今回の国会議員の未納とか未加入の問題として、私は、この大きな要因として、国民年金、厚生年金、共済年金、そして議員年金、この制度が余りにも複雑でわかりにくくて、多分、政治家、国会議員の皆さん初め、地方議員の皆さんも、今五万人の地方議員がいるにもかかわらず、六万人の方々が年金を給付されているという実態もあるわけですが、わかりにくくて非常に面倒だということがあって、意図的に、故意に年金の未加入とか未納というものがあったというふうには、私は性善説をとりますので、そういうことはないだろうと思っているんです。

 こんな複雑な年金制度が、今後百年プランといって、与党、厚生労働省の考え方の中で百年先まで大丈夫だというのは、果たしてこんなことが可能なのかどうか。私は、そんなのあり得ないと思っているんですが。年金制度のあり方について、今後もこんな未加入、未納、こういったものが生じて、まさにどんどん加入者の制度に対する信頼が損なわれていってしまうんではないかと思っているんですが、この件についての御見解はいかがでしょうか。

坂口国務大臣 年金制度、この日本の中で誕生いたしましてからの経緯というものを見てみますと、それぞれの職域において出発をしているもの、そしてそれぞれの地域の年金として出発をしたもの、さまざまあるわけでありまして、そうしたさまざまな年金を我々の先輩の皆さん方ができるだけ一元化をしていこうというので、いわゆる被用者保険、すなわち働く皆さん方の年金につきましてはだんだんと一元化がされてまいりました。旧国鉄あるいは旧専売公社、電電公社あるいは農協といったようなところは統合されてまいりました。あと残っておりますのが国の共済あるいは地方の共済、そうしたものが残っているところまで参ったわけでございます。そうした意味で、こうした問題も今後統合化の方向に向いていくだろう。今まではほとんどの職域年金が行き詰まりを見せて、行き詰まってから厚生年金と統合するという話になったわけでありますけれども、行き詰まってからでは遅過ぎますので、早い段階でこれは一元化をしていく方が望ましいというふうに思っている次第でございます。

 そうした中で、今回、改めてまたいわゆる国民年金との間の問題というのが提起をされているわけでありまして、なかなかここは重い課題を引きずっておりますけれども、今後与野党の中でいろいろと御議論をしていただくものというふうに思っている次第でございます。

 そうした過去からの経緯を振り返ってみますと、それぞれの歴史はありますけれども、方向性としては一つの方向に向かって進んできているというふうに私は理解をいたしております。それだけに、今度はその内容を充実させていかなければなりませんし、先ほどから御指摘をいただいておりますように、国会議員の未納問題を初めといたしまして、全国に未納者がたくさんいる。

 それは、委員も御指摘になりましたように、決して未納にしようというふうに思ってしたという人ばかりではなくて、余りにも制度が複雑であるがゆえに、知らず知らずの間になっていたという人もたくさんあるわけでありまして、そうしたことをどう乗り越えていくかということが喫緊の課題であるというふうに思っている次第でございまして、その皆さん方にぜひひとつ御参加をいただける体制をどう確立していくかということに全力を挙げていかなければならないというふうに思っている次第でございます。

増子委員 今大臣の御答弁の中にも、一元化が避けられないという話がございました。

 まさに私は、今回のこの政府の年金制度改革案、与党の議員の皆さんから言わせれば、リフォームなんだ、リフォームだと盛んにおっしゃるんですね。これは、大臣、リフォームなんという状況では私はないと思うんですね。全く新しい家につくりかえなければ、これはだめだと思うんです。

 大臣、かつて私たち政治改革をともに頑張ってまいりました十年前のことを考えると、政治とお金の関係は、中選挙区制度のままでは決してこれは解消できない、政権交代実現や政治改革をやるにしても中選挙区のままでは大変だ、直らないというようなことを含めて、思い切って、一〇〇%完璧ではありませんが、小選挙区制度を導入しよう、まさに制度を中選挙区から小選挙区制度という仕組みに変えることによって、この政治の改革に一歩でも二歩でも近づこうということで、大臣と一緒に過去頑張ってきた経緯がございます。

 私は、今度の年金制度改革は、まさに今のままの年金制度をリフォームして百年プランというのでは、これは私は行き着かないと思っているんです。思い切って、ここはできるだけ早く、それこそ今国会、次の参議院選挙の後の臨時国会も当然あるんでしょうから、そこにまでまたがった中での一元化ということをきっちりとやっていかなければならないほど、私は今待ったなしの状況だと思うんです。

 今回のこの制度改革の一番の根拠になっております、先ほど大臣もおっしゃっておられましたけれども、高齢少子化という、このところが最大のポイントなわけですが、今回の政府・与党案の中の、合計出生率を一・三九に上げる、これは私は不可能だと思っているんですよ。

 午前中に厚生省の方が質問取りに来られましたけれども、そのときに、あなた何人お子さんを持っていますかと三人の方に聞いた。一人は結婚したばかりでまだゼロです。一人は、一人です。一人は、三人です。こういう実態を見ましても、なかなか、出生率を今の一・三二から一・三九に上げるということについては極めて困難な状況だと私は思っておりますから、ここのところが達成できなければこの制度は当然崩壊せざるを得ない、修正をしなければならないということに至っていくわけであります。

 そこで、一つ細かいことをお聞きしますが、この出生率を一・三九までに引き上げるために具体的に、ここが極めて大事なんです、あやふやじゃだめなんです、数字だけでは。具体的にこの出生率を上げるための施策をどのように考えているかということが第一点。

 時間がなくなってまいりましたので、あわせてもう一点お聞きをいたしますけれども、この年金制度改革の一元化ということについて、先ほど大臣もおっしゃいましたけれども、そう時間はないというような私は受けとめ方をさせていただきましたけれども、では、一元化をするというお考えがあるならば、今回の年金制度をもっともっとやりながら、もうこの国会、次の国会あわせながら、一元化ということにしていかなければならないと私は思っているんですが、与野党合意が今後どういうふうになっていくかわかりませんけれども、一元化についてのある程度の、待ったなしの時期というのはどのぐらいの時期になるのかというお考え。

 そして、最後にもう一つ。これは坂口大臣と森副大臣にお聞きしたいんですが。

 私は、議員年金制度は、これはやはり廃止をして、一般のこの一元化の中に組み入れるべきだと思っておりますが、議員年金制度の考え方について、大臣と副大臣にもその見解をお聞きいたして、私の時間が参りましたので、質問は終わりたいと思います。三点申し上げましたが、よろしくお願いいたします。

坂口国務大臣 たくさん言われたので、忘れよったら言ってください。

 初め、リフォームというお話がございまして、確かに、今までにもうでき上がっているものを改善をしていくわけでありますから、どんな改革の仕方、どんな改善の仕方をするかは別にしまして、それはリフォームだろうと私は思います。民主党さんがお出しになっているのも、それも一つのリフォームの仕方ではないかというふうに思っております。そういうリフォームをしながら、よりよいものにつくり上げていかなければならないというふうに思っております。

 それから、一元化のお話がございました。その一元化は、どういう形の一元化にするかということをこれから御議論をしていただくんだと思うんです。これは、一元化の仕方もいろいろ私はあるというふうに思いますし、自営業者の皆さん方に参加をしていただくときに、その自営業者の皆さん方のこともよくお聞きをして決めなければいけないというふうに思っております。

 それから、合計特殊出生率のお話がございまして、一・三九というのはなかなか難しいんではないかというふうに思われます。しかし、現在、女性だけではなくて男性も含めて、欲しいお子さんの数というのはそんなに少なくはなくて、二・五前後あるわけでございますから、本当に条件が整えばもう少し子供は欲しいというふうに思っておみえになる皆さん方はかなりあるというふうに私は思います。その皆さん方の条件に合う社会をつくることができ得るかどうかということが一番大事なところでありまして、これからの少子化対策として一番そこが大事なところ。

 その中に何があるかという、いろいろそれは具体的なことがあるでしょう。一々挙げることはやめますけれども、私は、一つ、二つ、これをやります、あれをやりますだけでできることではなくて、社会全体の枠組みを、働きやすいような枠組みを、男性も含めて、どうつくり上げていくかという中で、これはもろもろの改革を合計してやっていかないといけないというふうに思っている次第でございます。

 最後に、議員年金につきましての御質問がございましたが、これは国会の方で御議論を今いただいているところでございまして、その結論に従いたいというふうに思っておりますが、個人的な意見を言えというふうに言われるのであれば、私も、年金が、厚生年金ならば厚生年金、共済も一緒になるということならば、この厚生年金に一元化をしていくというのは一つの方法だというふうに思っている次第でございます。

森副大臣 今、大臣から御答弁あったとおりです。

 いずれにしても、国会でお決めになることで、政府の一員である以上、言及することは控えたいと思います。しかも特に個人的な意見を申し述べる場じゃないと思いますから、この際、私の意見は差し控えます。

増子委員 ありがとうございました。

衛藤委員長 山口富男君。

山口(富)委員 日本共産党の山口富男です。

 政府提出の年金法案は、保険料を連続的に値上げするという問題でも、給付水準を引き下げていくという問題でも、長期にわたって国民の皆さんに負担を強いる重大な中身を持った法案です。それだけに私は、この委員会でも、徹底的な審議を求めて、公聴会も開いて国民の皆さんの意見をきちんと聞くべきだという主張をしてまいりました。ところが、つい先日に、一方的に質疑が打ち切られて強行されるという許されない事態が起きたわけですけれども、私は、これまでも厳しく抗議し、衆議院議長にもこの問題での申し入れを行ってまいりました。

 そこに、昨日、三党合意というものが突然発表されました。日本共産党はこれには当然加わっていないわけですけれども、衆議院議長が各党で事態の打開を図れと言われたことに照らしてみましても、国民の暮らしや将来の設計に大きくかかわる問題について三党のみの合意で問題を進めようとする、これは、もともと、各党協議で事態打開の方向を探れといった衆議院議長の要請にも私は反するものだというふうに思うんです。

 そこで、まず、坂口大臣に確認しておきたいんですが、この三党合意には各党の幹事長の名前が入っているわけですけれども、公明党の冬柴さんの署名も入っております。坂口大臣は、この三党合意について、これを尊重する、そういう立場に立つんですか。

坂口国務大臣 各党間でこの年金の議論をしていただき、そして各党の合意を得ていくというのが本筋であることはもちろんでございますが、民主党さんとそして自民党、公明党の三党間におきまして、昨日いろいろと議論が交わされ、そして一つの合意の点が得られたということは、私は大きな前進だというふうに思っております。したがいまして、その結論は尊重させていただきたいというふうに思います。

 共産党さんもそういう合意をするという御意思があるのであれば、それはまたそれでおやりをいただければよろしいのではないかというふうに思います。

山口(富)委員 私どもは、こういう内容の合意にはとても乗れません。

 それで、坂口大臣は、これは大きな前進であり尊重するという答弁をされたわけですけれども、実は私はこの合意書を見て大変驚いたんです。といいますのは、この委員会でも私は随分、坂口大臣と年金改革の問題について議論してまいりました。この文書は冒頭に、「年金制度改革に関し、下記の通り合意する。」というふうになっているんですが、第一番目の項目は「社会保障制度の全般的見直し」なんです。その中身を読みますと、「年金の一元化問題を含む社会保障制度全般の一体的見直しを行い、平成十九年」ですから二〇〇七年ですね、「三月を目途に結論を得て、随時実施を図るものとする。」というふうになっています。

 私は坂口大臣にお伺いしたいんですが、社会保障制度といえば、大体、年金にとどまらずに、介護の問題、生活保護の問題、医療の問題、いろいろな問題が含まれてくるわけですけれども、委員会で全く議論もされていないことが、突如、一体的見直しということで合意の内容にも入ってくる。これは私はおかしいとは思うんですが、坂口大臣の、あなたの理解として、この一体的見直しの中に、医療や介護や、そういう社会保障が全部含まれる、そういう理解をお持ちなんですか。

坂口国務大臣 御承知のように、年金だけではなくて、医療の問題、それから介護の問題、その他雇用保険の問題等々、いろいろ問題がございます。そうした問題がありますが、負担をしていただきます国民の皆さん方から見れば、それは、別々に出すというよりも、一つの財布の中から出ていくわけでありますから、年金の問題を議論する、年金の負担が決まる、また、医療は医療で医療の負担が決まる、介護は介護で決まるということに、ばらばらになっていけば、合計すればそれは大変大きくなってくる可能性もある。

 では、そこのところを社会保障全体の中で、今回は年金が中心でございますけれども、社会保障全体の中で、保険料としてどの部分を一体負担していくのか、そしてどの部分を税で負担していくのか。税の役割、保険料の役割、それらをどう組み合わせていくのか。また自己負担という問題もあるわけでありまして、そうした問題をどう組み合わせていくのかというのが、一つの、社会保障全体を見た形の中で議論をしていくということは、大変大事なことだというふうに思います。

 現在、年金制度の改革の問題について御議論をいただいておりますけれども、もう少し大きな枠の中で全体の議論をしていただくということは、今後の課題として、大きな課題ではないかというふうに思っている次第でございます。そうした中で、税と保険料のあり方、負担のどこを保険料にし、どこを税にするかといった問題がそこでより具体的に議論をされれば、私は大きな前進になるというふうに思っている次第であります。

山口(富)委員 私たちは年金制度について議論してきた。もし大臣がそういう全体的にかかる見直しが必要だと考えるんだったら、法案を提出し直すべきですよ。そういう議論を全くしないで、突然こういう合意でやるというのは、私は立法府の軽視も甚だしいと言わざるを得ないと思うんです。

 しかも、ここには十一日の日に衆議院本会議を通過させる修正案まで入っている。この中身がまた問題なんですね。ちょっと読み上げてみますと、「社会保障制度全般について、税、保険料等の負担と給付の在り方を含め、一体的な見直しを行」うと。これは、どこかで聞いたことがあるんです、この言葉は。

 例えば与党は、昨年の十二月ですけれども、税制大綱の合意の中で、二〇〇七年度をめどに「消費税を含む抜本的税制改革を実現する。」というふうにしてきました。そして民主党案は、きょうは答弁席にいらっしゃいませんけれども、消費税を二〇〇七年度から三%引き上げる、そういうことを提案されている。となりますと、結局、三党合意で言う「社会保障制度全般の一体的見直し」というのは、これはどう考えてみても、消費税の引き上げに道を開くということになるんじゃないですか、坂口大臣。

坂口国務大臣 どうなるかということは、まさしくこれから議論をしていただくわけでありますから、議論の行方というものを見守りたいというふうに思っておりますが、税といいましたときに、それは消費税だけではなくて、もっと違った税もあることは御承知のとおりであります。フランスなども、直接税でありましても、一般社会拠出金といいましたか、そういう社会保障に充てるための直接税といったものをつくったりいたしておりますから、私は、社会保障といえばすぐそれがすべて消費税ということではないんだろうというふうに思いますけれども、それは今後国会の中で、衆議院及び参議院の厚生労働委員会の中に小委員会をつくり、そこで御議論をいただくということになっておりますので、その中には皆さんもお入りをいただくわけでございますから、それぞれの立場でいろいろ御議論をいただいて、それでその結論を得ていただければよろしいのではないかというふうに思っております。

    〔委員長退席、宮澤委員長代理着席〕

山口(富)委員 そうしますと、私、消費税についてもう一点確認させていただきますが、これは国会でも、消費税というものは所得の低い方々に、低所得者、また中小業者さんに大変重い負担になる、逆進性を持つということがしばしば批判され、大きな議論になってまいりました。

 この点について、坂口大臣は、この消費税というものが逆進性を持っているという点は認められるんですね。

坂口国務大臣 税のことを考えますときに、どういう税を組み合わせていくかということなんだろうと思います。もちろん、逆進性のあるものないもの、それはございます。どちらかといえば、消費税というのは、所得の多い人も少ない人も同じように負担をするという側面があることも事実でございます。しかし、先日もここで議論になりましたように、それをより少なくするという努力をしている国もあるわけでございますから、そうした税制のあり方も含めて今御議論をしていただくことになるんだろうというふうに思います。

 保険料の方も、これは、所得のある方もない方も、いずれの場合にもお出しをいただくということになっております。これはしかし、所得に比例してなっておりますので、ある面ではそれほど逆進性が強くないというふうに言う人もありますし、これはとり方によりますけれども、そうした保険料でお納めをいただくか、それともそれは税でお納めをいただく方がいいのかということは、それはあり得ると思うんですね。

 確かに、おっしゃるように、保険料の方は半分企業が負担をしてくれておりますから、その部分がなくなって、消費税の場合には、企業もある程度は負担いたしますけれども、より多く国民の側に負担が来るということは、それはそのとおりであります。そうした問題をどのように考えるかということでありまして、いずれにいたしましても、これは、負担を何によって行うかということなんだろうと思うんですね。だから、負担の仕方、それをまさしく議論していただくのではないかというふうに思っております。

山口(富)委員 大臣が、消費税を導入した場合に国民の側に負担が来るというふうに認識をお持ちなら、私は少なくとも、老後の生活を保障すべき年金に逆進性を持った消費税を絶対に導入すべきじゃない、そういうことを重ねて厳しく申し上げておきたいと思うんです。

 それで、私は前回の質疑の際に、例の百年の安心なるものについて、参考人からだれもそういう発言がなかったということを紹介しました。今度の合意を見ますと、社会保険料のところでこうなっております。社会保険料については、社会保障全体のあり方の検討状況や経済社会情勢の変化などの事情を勘案して、必要に応じ検討を加えていく。こうなりますと、政府案というのはもともと給付と負担のバランス論、私はこれを批判いたしましたけれども、保険料を上げるから給付についても考える、そういう枠組みでした。この社会保険料について、上げるか下げるかはこの文章では判然としませんけれども、少なくとも動かすという方法を検討するということになりましたら、政府が提案してまいりました年金の法案の一番の大もとのところの発想が間違っていた、こういうことになるんじゃないんですか。覆るということになるんじゃないんですか。

坂口国務大臣 我々が主張いたしておりますこの法案そのものは、これはこれとして御審議をいただいて、御理解をいただきたいというふうに思っております。

 先ほどから申し上げておりますように、しかし、社会保障全体で考えましたときに、それは年金、医療、介護その他を含めて、その負担の仕方というものはいろいろあります、それは総合計で見ていくべきものでありますということを合意されているというふうに私には思えます。したがって、そういう角度からこの御検討をいただくということはあり得るというふうに思っておる次第であります。

山口(富)委員 大変苦しい答弁ですね。私としてはこう思いたいということなんでしょう。

 しかし、これはどう見ましても、給付と負担のバランス論の、社会保険料については検討するというわけですから、もともとの提案の、政府の案に問題がある、これ自身が安心ではなかったということを認めた紛れのない文書だと私は思うんです。

 この間、しばしば私はこの委員会で、今、年金制度の改革に手をつけようとすれば、一番問題になっている低額年金、無年金者の問題、年金の空洞化、こういうところに改革の手を伸ばすべきだ、日本共産党はそれをやるためにも最低保障年金の制度に、これは消費税を財源にいたしませんが、当然必要な財源の見直しをやって、歳出と歳入の見直しをやって財源をつくるんですけれども、こういう方向での改革が必要だと、そのことを改めて指摘をいたしまして、時間が参りましたので、本日一回目の質問を終わります。

    〔宮澤委員長代理退席、委員長着席〕

衛藤委員長 阿部知子君。

阿部委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。

 せんだっての四月二十八日、私ども野党の退席した中での与党、自民党、公明党の皆さんによるまず年金法案の採決、そしてその後、どこの場で合意されたか判然としない三党合意なるものが出てまいりまして、一体、国民にとって一番最大の関心事である年金改革の問題で、今、国、政治の側は国民に対して何を語ろうとしているのか、私は極めて危機的な状態にあると思います。与野党の双方に年金の未納問題が存在し、そのことだけをとったとしても国民は非常に失望をしておる。そのさなかに、またその国会の中で与党、野党、三党合意のもとにこういう案を出しましたと言われても、今、きっちりと国民に対して政治が説明すべき責任を果たしていないのではないか、私は一点、冒頭思うわけです。

 先ほどの山口委員の御質疑の中にもありましたが、国会議員の中に年金の未納問題が発生するということは、制度のわかりづらさ、乱立する制度、そして、先ほど大臣もおっしゃられました、都度例えば自分から申請し、受給の際にも自分で申請していかなきゃいけない、さまざまに本当にわかりづらい制度でございます。しかし、この制度を一番わかってもらわなきゃいけない国民に対して、逆に今は、本当にわかり合った上で次の時代の年金を一緒に考えられる、逆の意味で、いい、絶好のチャンスにもなりました。これは、私ども議員が年金の未納問題を起こし、そのことは国民に恥ずべきことではありますが、しかしながら、そのことを本当に次の時代のいわば改革のもととしていくために、私は、今こそここで安易な採決をせずに、ぜひとも公聴会、国民に開かれた公聴会を持って、国民の中にどんな声があるか、このことをまず採決の前段でなすべきである、それこそが政治が国民に真正面から向かい合う姿勢と思います。

 冒頭、坂口大臣に、なぜこの段階で、公聴会もせずに、私は今こそチャンスだと思います、なぜ、あえて採決され、そして、大臣が採決したわけではありませんが、そのような向きになり、また、三党合意という、極めて国民からは見えづらいところで、年金の一番大もとは信頼です、それを根こそぎ刈り取ってしまうような形で事を進めようとするのか。この点について、大臣としてのお考えを伺いたいと思います。

坂口国務大臣 政党間でお決めをいただいたことは、それなりに私たちは尊重をしなきゃいけないというふうに思っております。

 年金制度そのものにつきまして、いろいろ議論のあるところはよく承知をいたしておりますし、いろいろ御議論をいただかなければならないわけでございます。先日も阿部議員は最後までお残りをいただいて、御質問いただけるかなと思って御期待を申し上げておりましたけれども、お声を聞くことができずに大変残念でございました。しかし、阿部議員からは何回も御議論をいただき、そして、大変いい指摘もしていただいているところでございまして、我々も今後参考にしていかなきゃならない点も多いというふうに思っているところでございます。

 三党合意について御批判があるようでございますが、これは政党と政党の間の合意でございますから、いろいろの形で生まれ得るというふうに私は思っております。それは、政党人であります阿部議員も御理解をいただけるのではないかというふうに思います。

 政府といたしましては、そうして与野党で合意をしていただいたことに対しましては、謙虚にそこに対応をしていくというのが筋ではないかというふうに思っている次第でございます。

阿部委員 私は政治家と言われる者になって年月が短うございますが、その中で一番感じますことは、いわゆる政治不信と言われる、政治家のやることがどうしても信頼できないと言われるような不幸な政治の状況。そして、この間、一番その政治不信にさらに輪をかけたのが、今回の年金問題の事のてんまつのように思います。

 そこで、今の大臣の私の質問へのお答え、特に、なぜ公聴会をやっていただけないか。今なら国民は多くの声を上げると思います。それは、きっかけというか、冒頭はもちろん未納の議員に対する批判かもしれません。しかし、その中で、例えば、低年金で暮らせない実際に本当に困った人たちの声や、わかりづらくて、本当にこれはどうなって、自分たちの年金制度と言えるんだろうかというような声など、やはり真摯に耳を傾けてこそ、政治も年金も信なくば立たずです。この信なくば立たずで、二十一世紀の大改革を絶対にやり切れない。

 そして、私は逆に、いつもここで質問させていただくときは、これは坂口大臣であるから骨太な議論ができる。この二十一世紀の冒頭のかじ取りというのは、時代が極めて困難な時代に突入しているがゆえに、だれも負担はいや、給付だけはと言うことはできないわけです。負担し合ってでも社会の中で連帯の芽を育てていくための、本当に大事な二十一世紀の、政治にとっても最大のチャンスであったはずです。その時期がこうやって持たれたこと、私は非常に心外に思いますし、同じことをもう一度聞いても大臣もお答えがしづろうございましょうから私の指摘にとどめさせていただきますが、各委員にもぜひお考えいただきたい。

 例えば、二十八日からの連休の期間、街頭で宣伝いたしましても、やはり国民の声、多く聞こえてまいります。そして、その一つ一つを丹念に拾ってこそ国会の審議は初めて実のあるものになると思いますので、各自、来週、本会議採決というようなことまで予定されているようですが、だれに向けて何を決めるのか、ようようお考えいただきたいと思います。

 もう一点、この年金問題で国会議員の未納問題が発覚いたしましてから、現実に非常に混んだ窓口がございます。社会保険庁の職員たちも今、夜を日に継ぐ仕事量に追われていて、逆に、相談に行かれた、自分がどういう加入状況にあるのかということを聞きに行かれた方も、六時間待ち、七時間待ちという状況にあると思います。

 そして、こうした社会保険庁の業務は、この年金法案が成立しようがしまいが、ぜひここで大臣に方向性を出していただきたいことでございますので、きょうは、この点について質疑をさせていただきます。

 皆さんのお手元の資料の資料一というところを見ていただきたいですが、ここには、いわゆる社会保険庁の職員と国税の職員が、おのおの国民年金と国税の徴収に対しまして職員一人当たりが働くことによって幾ら徴収できるか。例えば、職員一人当たりの徴収額、国税であれば九億、国民年金であれば三億。そして、事務費一円をかけることで幾らを徴収できるか。国税であれば七十三・一円、国民年金であれば十二・三円。

 これは何を意味しているかというと、現在の社会保険庁の国民年金の徴収にかかわる事務費が非常にコスト高になっておるということの一つのデータでございます。私は、このことをもって、別に、社会保険庁の職員が働いておらぬとかそういうことを言いたいのでは決してありません。今度の年金の改正案でも、半額免除あるいは四分の三免除、四分の一免除、いろいろなグレードの免除をつくりました。そのことによって、さらにまた事務職員は仕事量がふえてまいります。

 この委員会でも一つ指摘があった点は、従来のように、地方自治体で国民健康保険と一緒に徴収してはどうかという意見も出されました。大臣はそれに対して、せっかく社会保険庁に移したのだから、しばらくこのままやらせていただきたいというふうな御答弁でございました。しかし、私は、今の年金の窓口相談業務だけでも六時間も七時間も人を待たせて、そしてその混乱の中で、実は一番理解していただきたい一人一人の国民に満足が得られるかというと、現在の陣容ではとてもとても、どんなに社会保険庁の職員が頑張って働いても、やはり本当にわかりづらい制度の中で過重労働にもなってまいります。

 そこで、大臣にきょうお伺いしたいのは、例えば、今後、この国民年金の保険料の徴収は国税と一体化する、そして社会保険庁の主な仕事は、年金について最大限の情報提供や相談業務や、本当に知りたいと思う人に懇切丁寧に、いわば医療ではメディカルソーシャルワーカーという仕事がありますが、その方に合った、例えば介護の受け方、医療の受け方をアドバイスできるような、特殊な分野として社会保険庁の職員をさらにグレードアップしていただきたい。

 年金の徴収も行い、相談も行い、そしてあげくにコストはすごくかかっているという中で、これは政治の先見性において、社会保険庁の業務をどのように考えていくかということにかかわりますので、坂口大臣に御答弁をお願いいたします。

坂口国務大臣 国税と、それからいわゆる社会保険庁の職員を統合してはどうかという意見は前々から実はあるわけです。これは、しかし、社会保険庁の方は医療保険と年金と両方やっておりますので、それを両方取るというのもなかなか難しい話でございます。

 この社会保険庁の方でやっております国民年金の方の仕事は、いわゆる税を集める人に比べますと物すごく数も多いわけですね、社会保険というのはほとんどの人が全部納めているわけでありますから。国民年金なら国民年金に入っている皆さん方の中で、税を納めている人というのはその中の一部でありますし、保険料を集めているのは非常に多くの人を対象にしているといったこともあるわけです。

 そうした違いもございますし、それから、現在のところは、税のように強引に徴収をするということではなくて、説得をして説得をしていく、そういう姿勢をとっているわけでありまして、税の集め方とそれから保険料の集め方と、同じようにやっていくという意見もありますけれども、私は少し違うんではないか、社会保障で出していただく、保険料を出していただくのは、それなりにそれぞれやり方があるのではないかという気がいたしております。しかし、ここを丁寧にやればやるほど効率は悪くなるわけでありますから、そこは、費用対効果ということも十分考えていかなければいけないというふうに私も思っております。

 そうした中でございますので、この徴収の仕方というものにつきましては、これは十分私たちもこれから考えていきたいというふうに思います。全くこの両方を一つにしてしまうという考え方もあれば、そうではなくて一部を共同してやっていくというやり方もあるでしょうし、いろいろのやり方はあるというふうに思います。ここのところは十分検討したいというふうに思っております。

阿部委員 私の質問の本来の趣旨は、より対人サービス、特に説明、その方の年金の状況の説明に社会保険庁の能力を生かしていただきたい。そのために、仕事量をどこかで軽減しないと、やはり現状のマンパワーで本当に国民が多く知りたいと思ったときを賄えないということでもございますので、よろしく御検討をお願いいたします。

 あと、最後になります。一点お願いいたします。

 四月三十日に厚生省が出されたというデータで、いわゆる現役の五〇%の給付をお約束された坂口厚生労働大臣の従来の御意見は、実は給付が始まってから一から十二年しかもたないのではないかというデータを厚生労働省の方でお出しであるというふうに新聞報道がございます。

 この法案の骨格にかかわる部分ですので、給付が五〇%を割ったら、そもそも法案の二条のお約束事がずれてまいりますので、この点について大臣は御存じであるかどうか。もう時間がございませんので、この一点だけお願いいたします。四月三十日の厚生労働省の発表でございます。

坂口国務大臣 私も新聞を拝見して初めて知ったわけでございますが、新聞の方の御要請にこたえて出したそうでございます。

 これは少し私たちが言っておりましたのとは違うわけでありまして、我々が五〇%を維持するというふうに言っておりましたのは、それは、年金を受ける人の、若いときにその人が受け取った平均の手取りの五〇%、こういうことを言っているわけでありまして、あのデータは、そのときそのときの、その時代の働く人たちのモデル平均を言っているわけでありますから、そこのいわゆるとり方が違うというふうに思います。そうした点が違いますので、御理解をいただければと思います。

阿部委員 そうした点の周知も不徹底だと思います。私は、きっちりそうしたことを論議の俎上に上せて、もう一度きちんとやり直していただきたいと思います。

 ありがとうございます。

衛藤委員長 これより内閣総理大臣出席のもと質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。長勢甚遠君。

長勢委員 総理には、三度目になりますか、この委員会においでいただいたわけでございまして、まことにこの法案にかける熱意を感ずるわけでございます。

 年金改革が大変話題になっているわけでございますが、そういう中で、昨日、自民党、公明党、民主党三党によりまして、年金改革に関する三党合意が実現をし、政府提案の年金改革法案が衆議院を通過するという運びとなりました。これにより年金改革が前進をするということは大変喜ばしいことでございますが、これについて総理がどのように評価をなさっておられるか、ぜひ最初にお伺いをいたしたいと思います。

 当委員会においても、四月二日以来約一カ月にわたって審議を進めてきたわけでございます。改革の方向についての議論もありましたけれども、それと同時に、国会議員の年金未納問題など、年金に対するいろいろな国民の不信を招きかねないというような事態も指摘をされてきたわけでございます。

 政府におかれましては、ぜひこの三党合意を踏まえて、年金に対する国民の信頼あるいは安心ということを確保するために、一層年金改革へ全力を挙げていかなければならない、こういうふうに考えるわけでございますが、今回の三党合意に対する評価とこれからの年金改革に対する総理の御決意を改めてお伺いさせていただきます。

小泉内閣総理大臣 昨日、自民党、公明党、民主党との間で年金改革に関する三党合意がなされたということは、特に長年年金問題にかかわってこられました長勢議員にとりましても感慨深いものがあると思っております。また、その間、各方面との、関係者との話し合いにも格別の御尽力を長勢議員にはいただきました。

 それぞれ、多くの国民の関心のある問題、そしてこれからの課題等について、大変詳しい長勢議員ですから、関係各者間のできるだけ理解と協力を得ながら、何とかこの年金改革法案を今国会で成立させたい。同時に、この法案に反対している方々も、この年金制度を将来持続可能なものにしていかなきゃならないという点については共通した認識を持ってあろうという観点から、非常に細かい気配りをしていただいたことに対しまして、まず、私からも長勢議員に御礼を申し上げたいと思います。

 そういうことから、未納問題も含めまして、より多くの方から理解が得られやすいような制度にしていくにはどうしたらいいかということで、今までの制度の統合といいますか一元化といいますか、そういう点も含めて、野党の民主党とも協議をしていこう、そして同時に、この年金問題というのは社会保障制度の中で最も中心的なものである、社会保障制度を論ずる場合には年金だけを論ずるわけにはいかない、やはり医療とか介護とか、社会保障全体の給付と負担との問題も論ずる必要があるのではないかということまで踏み込んで、いろいろ熱心に各党間奔走していただいたことに対しまして、敬意を表したいと思います。

 今後、数々の検討課題はあるとしても、将来にわたって安定した制度とするために、この年金改革法案は先送りできない課題でありまして、今回の改正案はこの課題に正面から取り組んだものであると私も思っています。ぜひとも今国会で成立をお願いしたいと思っております。

 同時に、合意を踏まえまして、今後あるべき制度あるいは一元化に対して、どういう共通した認識を持てるかどうかというものも、今後各党間で真剣に議論をしていただきたいと思っております。

長勢委員 三党合意におきましては、今もお触れになられましたが、年金の一元化を含めた社会保障制度全般の一体的見直しを行うということが明記をされており、それのために法律も修正をし、あるいは当委員会に小委員会を設置するとか政党間の協議会をつくるということが合意をされております。

 今、年金が大変やかましいわけでありますが、これからも介護あるいは医療ということが議論になるわけでありまして、少子高齢化の中で、それぞれ個別にこういう議論をしておると、税や保険料の負担が全体でどうなるのか、また全体としての給付、それに伴う生活がどうなるのかということがわかりにくくなる、こういうことに国民の皆さんは大変な不安を感じつつあるわけであります。それだけに、一体的な見直しをする、そういう中で、その観点から必要な年金改革もさらに進めていくという視点は大変正しいと思います。

 このことは、先般、経団連あるいは連合からもそういうふうに要請のあったところでございますが、これは国会あるいは政党で議論するだけではなくて、当然政府も率先して積極的に検討をしていただきたいと思うわけでございますが、そして、その場合には、広く国民の意見が吸収できるような場を設けて検討されることが望ましい、このように思いますけれども、この社会保障制度全般の一体的見直しに政府として、これから、どういう場で、いつから、どれだけの期間をかけてやろうとなさっておられるのか、総理の御方針をお伺いしたいと思います。

小泉内閣総理大臣 先日も、連休前でしたか、総理官邸に、経団連の奥田会長、そして連合の笹森会長御自身がわざわざお越しくださいまして、私とこれからの社会保障の問題についてお話をいたしました。当然年金の問題も入るわけでありますが、それぞれ個別にお会いいたしました。そのときのお話の中にも、やはりこれから社会保障制度全体について考える必要がある、その際には各方面の意見をぜひとも聞いていただきたいというお話がありました。もちろん、経済界側の意見、あるいは連合からは連合、組合、労働者の立場からの御意見、いろいろあるでしょう、そういう点について、国会議員だけでなくて、我々の意見も十分聞いてくださいというお話がありました。

 私は、奥田会長と笹森会長とは個別に会ったんです。一緒ではなかったんです、個別にお会いしたんですけれども、両者ともに、経団連においても連合においても、私はそれほど違いはなかったと。ともかく、できるだけ、年金にしても医療にしても介護にしても、給付は多いほどがいい、しかしそれを支える側のことも考えなきゃいかぬということから、この給付と負担の問題、お年寄りも若い者も避けて通れない、経済界も労働組合も避けて通れない問題だから、よく議論していけばそんなに対立する問題ではないんじゃないかと私は思っております。

 そういう観点から、今回、自由民主党、公明党、民主党の三党の間で、将来の社会保障の制度全体にわたるこれからの協議の場を設けるということで合意がなされたということは大変いいことだと思っております。

 もとより、今国会においては、まず年金制度の改革法案の成立を期して、そしてその中で、今後いかなる課題を取り上げていくか、また見直すべき点をどう見直していくかということがありますので、三党合意に基づき設置されることとなります与野党による協議会及び両院の厚生労働委員会に設置される小委員会における検討を踏まえて、速やかな対応ができるように私は早急に準備を進めていった方がいいと思っております。

 この年金の論議から発展して、単に年金の一元化だけでなく、社会保障全体に踏み込んだ共通な認識が持てる与野党協議会ができましたならば、建設的な議論をしていってほしいな、政府としてもできるだけの協力をしていきたいと思っております。

長勢委員 総理の御姿勢にみんな期待をいたしておりますので、ぜひ、これからの老後の生活、また社会生活に安心と信頼が持てるように、大いなる健闘を御祈念申し上げまして、質問を終わらさせていただきます。ありがとうございました。

衛藤委員長 福島豊君。

福島委員 公明党の福島豊でございます。

 総理におかれましては、先日に引き続きましての御出席をいただき、まことに御苦労さまでございます。

 昨日、自由民主党、そして公明党、民主党の間で合意がなされたわけであります。これは画期的なことであるというふうに私は思っております。そして、社会保障制度全般にわたってこれを協議していく、ここのところが大切であるというふうに思っております。

 今国会におきましても、年金制度改革法案の是非をめぐってさまざまに、国会におきましては審議拒否ということもありました。バリケードをつくるということもありました。しかしながら、これからの国会というものは果たしてそういうことでいいんだろうか、私は真摯にそのように思いました。そして、社会保障制度改革というものは、与野党を問わず、国民全般の関係のある課題でありますから、継続的に、そしてまた広くさまざまな意見を吸収して、そして国民にとってよりよい制度として仕上げていく。そのためには、こうした合意を得ることができたということは大変高く評価されるべきではないか、そのように思っております。

 大切なことは、社会保障制度改革、介護にしましても医療にしましても、これからの検討をどのように進めていくのか、この点にあるのではないかというふうに思っております。私ども公明党も、その協議会の中で、国民にとって安心していただけるような制度づくりのために全力で頑張ってまいりたい、そのように思っております。

 その上で、今回の合意におきましてはさまざまなことが盛り込まれております。これは、直接的には幹事長を代表とする方々が合意をされたわけでありますけれども、総理から、関連して御所見をいただきたいというふうに思っております。

 一つは、年金の保険料の話であります。「年金保険料については、社会保障全体の在り方の検討状況や経済社会情勢の変化などの事情を勘案して、必要に応じ検討を加えていくこと。」このようにあるわけであります。この点については、先般の参考人の質疑におきましてもさまざまな御意見がありました。

 ただ、しかし、忘れてならないことは、年金の保険料に関しては、さまざまな情勢の中で、年金の受給者がふえていくにもかかわらず、なかなかそれを引き上げることができなかった。そのことが世代間の不公平を拡大してきたという事実もあるわけであります。そういう意味では、今回の改革は、そうした負担の今後のあり方について明確な道筋を示した、そういう側面もあるわけでありまして、ある意味で、短期的な視点にとらわれない、そういう考え方が必要ではないかというふうに私は思っております。

 保険料の負担の今後、そしてまた、それは同時に給付のあり方にも連動してくるわけでありますけれども、この合意について、総理の御所見をお聞きしたいと思います。

小泉内閣総理大臣 与野党により合意された点が、ちょっと読み上げさせていただきますが、「年金保険料については、社会保障全体の在り方の検討状況や経済社会情勢の変化などの事情を勘案して、必要に応じ検討を加えていく」、考えていくと。その検討に当たりましては、政府案にありますように、一八・三%という保険料水準というのは、現行制度において、現時点における今後の経済社会の変化の見通しのもとで適切な給付水準を確保していくために必要な負担である。そのことと、また、給付水準について、今回の改正案では、厚生年金の標準的な年金額の現役の男子被保険者の平均的な賃金に対する割合で見て、五〇%を下限とする旨の規定を置いております。

 ですから、今後の見直しにおいても、この点については十分留意する必要があると私は考えております。

福島委員 引き続きまして、修正案の附則第一項におきましては、「税、保険料等の負担と給付の在り方を含め、一体的な見直しを行いつつ、」ということが規定をされておるわけであります。今国会におきまして激しく議論が交わされた一つのポイントは、年金の財源、これは社会保障全体と言ってもいいかもしれませんけれども、それを、保険料で賄うのか、それとも税で賄うのか、それともその組み合わせでいくのか、こういうことだろうと私は思うんですけれども、そこのところで鋭く意見が分かれたわけであります。

 これは、今後の社会保障制度改革を進めていくに当たりまして骨格となる話でありまして、国民の皆様にも率直な道筋を示さなければいけない、私はそのように思っております。

 総理として、将来の年金制度、そしてまた社会保障制度全体を支える安定した財源の確保のために、どのような組み合わせというものが望ましいのか、このことについて御所見をお聞きいたしたいと思います。

小泉内閣総理大臣 三党で合意された中におきましても、税、保険料等の負担と給付のあり方を含め、一体的な見直しを行うということが盛り込まれております。これは確かに、税と保険料、どのように組み合わせていくかというのは、今後大きな議論になると思います。

 今回も、政府案におきましては、基礎年金の部分において、三分の一から二分の一に段階的に引き上げていこうということについて、消費税は導入しない。民主党は、年金の目的消費税を導入しようという考えを出されました。こういう点、保険料を抑えるかわりに消費税をさらに今の五%に上乗せして、果たして民主党の言うように三%でもつかどうか。試算で言うと、厚生省は、三%はもたない、六%はかかるだろうという試算も出しております。そういう点も含めて、やはり、保険料を抑えるということについては大方の国民はそんなに異論はないと思うんですが、抑えたかわりに、では増税しなきゃならないといった場合に、本当に消費税の引き上げを容認するかどうか。協力してくれるかどうか、これも考えなきゃいけない。

 だから、今後、そういう点も含めて、この年金一元化、あるいは、年金だけでなくて医療と介護を含めた社会保障全体の議論をする場合には、税の問題ということは切り離すことができないと思っています。もちろん、給付をどれだけ受けるかと同時に、では負担をどのくらいにする、税と保険料、税は消費税がいいのかほかの項目がいいのかも含めて、これはよく議論する必要がある。特に、与野党でこれから社会保障協議会を設けるということでありますので、その際に、では年金だけの目的消費税でいいのかという議論と、いや、消費税を導入するんだったらば、介護も医療も一緒に消費税を導入しようじゃないかという議論が必ず出てくると思います。その場合に、ではどこまで消費税を上げることを容認できるか、どこまで給付があるものかという問題が出てきますから、これは非常に多くの国民は関心を持つし、社会保障全体、ますます高齢者がふえて、若い人、いわゆる負担する方々が少なくなってくるという状況においての給付と保険料と税負担の問題、これは大変大事な問題でありますので、その点も含めて、今後、与野党の協議会の場では大いに議論をしていただきたいと思います。

福島委員 総理のおっしゃるとおりに、率直な議論というものをしっかりとしていかなければいけないというふうに私は思っております。

 そして最後に、一元化の問題でありますけれども、国民年金の未納の問題もありました。制度の一元化の最大の課題は、国民年金をどのように考えるのかということであるわけであります。その場合には、しかしながら、一方で、納税者番号制度の導入、これは民主党もおっしゃっておられましたけれども、果たして国民に理解していただけるのかどうかというようなハードルを越えていかなければならない点が多々あるわけであります。しかしながら、空洞化の問題等々も含めて、抜本的な対応というものは必要でありましょう。

 ですから、今回のこの一元化の検討ということにおきましては、現在できることは何なのか、そしてまた、将来国民年金制度を抜本的にもし変えるとすれば、そのハードルとなることは一体どうなのか、そういうふうに具体的に立て分け、そしてまた、必要であれば政治的な決断をするということではないかと私は思いますけれども、この点について、最後に総理の所見をお聞きしたいと思います。

小泉内閣総理大臣 私が、去る三月ですか、年金、将来一元化が望ましいというような発言で物議を醸しましたけれども、この年金一元化の問題は、昨今出てきた問題じゃないんです。もうかなり前から、できれば将来年金一元化が望ましいということで議論してきた問題です。

 その際に、年金という制度は複雑ですから、厚生年金もある、共済年金もある、国民年金もある、そういう中でどのような一元化が望ましいかということを考えますと、それは、国民全部が一定の保険料を負担すればこの程度の年金給付がありますよというわかりやすいような一本の年金制度、いわゆる一元化が、それは頭の上では、考えれば望ましいというのはわかっています。しかし、現実にこれは制度が積み上げられてきたものであります。そして、サラリーマンの皆さんと、国家公務員の皆さんと、それと自営業をやられている方、農業に従事している方、水産業に従事している方、就業形態がそれぞれ違う。その場合、サラリーマンの皆さんは定年がある、自営業者の場合は定年がない。そういう点を考えて、年金、考えれば一元化が望ましいんだけれども、果たしてどの程度の、給料、収入に合わせて保険料を何%なり幾らなり払うかということを考えるだけでも一元化というのは非常に難しいんです。

 そういう点もあるけれども、ともかく、でき得れば年金一元化が望ましいという機運が今出てきておりますので、先ほど申し上げました、税負担と保険料負担と就業形態、総合的に見て、一定の保険料を納めればどういう年金がもらえるかという、一元化の姿はどういうものかという、一元化の考え方についても人によって違います。厚生年金と共済年金の一元化でいいんじゃないか、国民年金はまた新たなものをつくってもいいんじゃないかという方もあります。いやいや、どうせやるなら国民年金も厚生年金も共済年金も一緒にした一元化が望ましいという人もいます。だから、この一元化の共通の認識を持つだけでも一年や二年かかると私は思います。

 そういう点もありますので、今後、与野党の協議会では、そういう点も含めて十分議論をしていただきたいと思います。

福島委員 以上で終わります。ありがとうございました。

衛藤委員長 大島敦君。

大島(敦)委員 民主党の大島敦です。

 きょうは、総務省、文部省、財務省から、各副大臣、政務官の方、当委員会に来ていただきまして、まことにありがとうございます。

 まず冒頭、小泉総理に伺いたいんですけれども、年金問題からは若干離れまして、ここ数日のイラク人の虐待問題について、きのう、そしてきょうの朝と、私もテレビを見ておりまして、目を背けたくなるような映像、こういうことが本当に行われているのかなと疑いを持ってしまうような映像が流れておりまして、そのことにつきまして、小泉総理の御所見、そして米国政府に対する対応等を伺わせていただければ幸いでございます。

小泉内閣総理大臣 イラクにおける捕虜に対する虐待、極めて遺憾であると思っております。

 過去の戦争を見ましても、捕虜に対しては人道的に対応するというのは、国際人道法上においても必要なことであり、各国政府はそのための対処なり処遇なりというものを十分配慮しなければならないと思っております。

 そういう点から考えますと、今回のイラクに対するあの米兵の虐待というのは、米国政府としても極めて真剣に今受けとめておると思います。こういうことがないようなきちんとした規律といいますか人道上の配慮、これについて十分気をつけていかなければならない。

 私は、先月、先々月ですか、松山を訪れまして、日露戦争後の直後、ロシア兵が松山に随分捕虜として収容されていたんですね。そこで当時の、明治時代の日本人の敵国ロシア兵に対する待遇、扱い、これを見て、大変感銘を受けました。国を挙げて敵国ロシアと戦った、そのロシアの兵が捕虜として日本で収監されていく、その捕虜に対して日本人は非常に温かく接したんですね。家族まで呼び寄せる。中には、町の案内もする、温泉にもどうぞ、そういう、戦争とは思えないような、敵国に対する、捕虜に対して処遇をしてきている。いまだにあの松山においてはロシア人墓地がきれいに整備されている。敵国においても、兵は兵、祖国のためを思って戦ったんだろうということで、敬意を持って接しているし、老人クラブなり婦人会なり中学校の生徒がそのロシア人墓地を今でも定期的にきれいに掃除されているんです。

 だから、こういう捕虜に対する扱い方、これはやはり私はきちんと国際法にのっとって人道上配慮して、十分な対応をしなきゃいけない。米国政府も、今回の事件、甚だ遺憾と思っておりますし、イラクにおけるこのようなことがないように強く米国政府にも期待したいと思っております。

大島(敦)委員 小泉首相の御意見はよくわかるんですけれども、今回のイラクの問題というのは、米国とイラクとの間ですと、民族的な対立あるいは宗教上の対立を招くおそれがあると考えておりまして、非常に慎重に扱っていかないと、今後の我が国の自衛隊に対する影響も多いかと思うんです。

 それで、日本国政府として、米国政府に対して、一定のメッセージは小泉首相の方から出しているのかどうかということを伺わせていただければ幸いでございます。

小泉内閣総理大臣 これはもう、イラクに対する開戦前から、常々、私は、ブッシュ大統領を初め、米国政府関係者に申し上げているところであります、国際協調体制が必要であると。そして、開戦後も、アメリカのいわゆる民主主義、安定したイラク人によるイラク人のための政府をイラクにつくるためにも、アメリカの大義と善意を理解してもらうためには、多くの国の協力を求めるべきだ、同時に、国連の関与を強めていくべきだということを何回もいろいろな会談で申し上げてきました。最近ようやくそのような方向に進んできたなと思っておりますし、今月中に暫定政権のメンバーを決めて、六月いっぱいまでにはイラク人の暫定政府がつくれるように、今、国連を中心にどのような働きかけがされるか、各国、国連、米国、それぞれ努力していると思います。

 日本としても、今後、これはアメリカ対イラクではない、国連対イラクではない、イラクの安定した民主的政権をつくるためには世界各国が協力すべきだ、それがまたイラクの復興にとって一番いいんだし、イラク人がまず自分たちの国は自分たちでつくるんだという意欲を持ってもらうような、意欲をかき立てるような環境を整備していくことが必要だ、そういう観点から、日本としても、イラク人が希望と意欲を持って自分たちの国づくりに励むような人道支援、復興支援、できるだけの協力をしていきたいと思っております。

大島(敦)委員 私たち日本は米国政府に対して強く物を言える立場にあると考えております。今、小泉首相がおっしゃられましたとおり、今回は捕虜に対する虐待の問題ですので、強く抗議すべきと考えます。

 そしてもう一つ、今イラクのサマワに派遣されている自衛隊、二十代、非常に若い人たち、かつ極限状態に置かれておりまして、ストレスは非常に高いかと思います。そのことについて、小泉首相として気にされているのか、何らかの手だてを考えていらっしゃるのかどうかというところだけ最後に聞かせてください、この件につきまして。

小泉内閣総理大臣 サマワに赴いて今活動している自衛隊諸君、その努力、御苦労は大変なものだと思います。私もその状況を聞いておりますが、もう暑いさなか、四十度以上の厳しい暑さの中、しかも常に緊張感を強いられる中での活動、食事におきましても、いろいろ栄養面に配慮されているとはいえ、それは限られたものでございます。また、寝床にしても、あるいは体を洗う洗面施設をとってみても、それぞれ日本にいるときのものとは格段に窮屈なものであります。

 そういう中でも、自分たちの任務というものを自覚して、少しでも自衛隊としての活動がイラクの方々から評価され、歓迎されるような人道支援、復興支援をしたいということで努力、活動されている自衛隊諸君に対しては、心から敬意を表さざるを得ないと思っております。

 そういう自衛隊の諸君が支障ない活動ができるように、政府としては全面的な安全確保策あるいは支援策、十分気をつけながら、今後も配慮しつつ対応していきたいと思っております。

大島(敦)委員 今の危惧というのは、前の第二次世界大戦中に従軍されていた大分年配の方から、戦争状態について、特に海外でのあり方について聞いたときに、非常にストレスが高まってきますと、それを維持するということは、非常にこちらの方から気をつけなければいけないと思いますので、そのことをちょっとつけ加えさせていただきます。

 次に、年金の問題に移りたいと思います。

 まず、このことは小泉首相も予想されているとは思うんですけれども、福田長官が今回辞任される予定だと伺っております。そのことにつきまして小泉首相のお考え、そしてまた、先ほどのニュースですと、各大臣とも小泉首相の方から職務に邁進してほしいというような御発言があったということを、各大臣からのコメントとしてニュースが流れております。

 このことについて、前回この厚生労働委員会で、中川大臣、石破長官、麻生大臣がいらっしゃったときにそれぞれの説明を伺いながら、公人でなくて私人であればそのケースはあり得るなと自分も思いました。私人であればあり得る、結構多くの方たちが似たようなケースにあることは多いかと思います。

 それについて、その場での中川大臣の答弁として、罷免権のある総理に自分のその身分というのはゆだねるという御発言がございまして、そのことについて、現在での小泉首相のお考えを伺わせていただければ幸いでございます。

小泉内閣総理大臣 福田長官が辞意を表明され、私は、できれば、今、大変、国会の法案におきましても与野党協議の最中だし、これからこの国会の審議を進めていく上において、各法案成立に向けて全力を尽くし、国民にできるだけの理解と協力を求めていくのがいいのではないかということで、辞意を考え直してくれないかと申し上げたんですが、福田長官、ああいう方ですから、一度口に出すとなかなか言うことを聞いてくれません。けじめは自分でつけたいということで、辞意を固められたわけであります。

 私は、他の方、今御質問になられました中川経済産業大臣の件につきましてのみならず、各閣僚に対しましては、これからの仕事について全力を傾注していただきたい、過去の未納の件があったとしても、今後このようなことがないようによく注意して対応していただきたいということで、辞意を求める気はございません。

 ただ、福田長官の場合には、御本人の決意がかたいものですから、これを翻意させるということは無理だなと思いまして、御本人の意思を尊重いたしました。

大島(敦)委員 公人としての立場ですから、この場でも、前回小泉首相がおいでいただいたときに、大分この問題についてもめました。我が党としても、十分にこの問題は党内でも今議論を進めておりまして、やはり政治家として身は正していかなければいけないなと考えております。

 次に、年金の本質的な議論にも入らなくちゃいけないものですから、そちらの方に移らせていただきます。

 先ほど年金の一元化の話をされておりました。今回、私はこの場での年金の議論を聞いていまして、与党側の方たちの熱意がいまいち伝わってこないところがありまして、自分たちで練り上げた法案というのは愛着を持っているから、どうしても通したいという意思がにじみ出るものなんです。

 私たちも今回、数が少ないものですから、民主党の対案を出させていただいて、その中でも数字がないというお話がございました。数字の方は、私も会社員をやっていましたから、つくろうと思えばつくれますし。ただ、正しい数字を出すということは結構大変なものですから、考え方と大きなポイントが二点。

 一つは、消費税を導入するということと、あと、納税者番号制度を入れるという非常に重いお約束を私たちの政党はこの場でさせていただいております。

 このことは、数字があるなしの議論ではなくて、結構重い議論だと思っておりまして、今回は、与党の方たち、与党の委員の方からも、予算委員会、そして当委員会でも、質問を受けております。このことは、これまでにはなかったことだと思います。我が党の法案に対して、与党の議員がわざわざパネルまでつくっていただいて、民主党のアイデアがこうなっているからどうなんですかということで、同じ目線で年金の議論を組み立てていただいたということは、これまでなかったことだと思います。

 恐らく、私が考えるに、今回の法案というのは、本音としては時限立法なのかなという本音は皆さん持っていらっしゃったのかなと僕は思うんです、時限立法なのかなと。やはり百年とか十年とかいうのではなくて、当座しのがなくてはいけない法案という認識を皆さん持っていらっしゃるのかなということを感じる次第なんです。

 小泉首相が四月の一日に年金の一元化というお話をされました。恐らくそのことも小泉首相の中で、そういう気持ちを理解して、一元化なんだという発言をされたかと思うんです。それを、どういう気持ち、短くちょっと御答弁いただきたいんですけれども、お考えにはなったとしても、半分思いつきで言ったのか、ある程度練った上に言ったのかというところをお聞かせいただければ幸いです。

小泉内閣総理大臣 私が三月に年金一元化発言したときに、突然出たことのように思われる方がいたかもしれません。しかし、平成元年に私が厚生大臣に就任したときから、年金一元化というのは大事な問題だったんですよ。

 その中で、年金一元化の議論をするということは、納税者番号の問題が出てくるんです。それと、各個人の所得、収入を把握しなきゃならない、特に自営業者の。これが実に難しい。一元化賛成だという議論は随分出ます。学者の皆さんは、納税者番号すべきだ、当時は結構野党の方からも、納税者番号導入せよという議論があったんです。ところが、現実に議論すると、この納税者番号を導入することだけでも根強い反対があるんです。

 当時、平成元年は消費税三%が導入された年です。そのときにも、消費税は福祉目的税で導入せよという議論がたくさんあったんです。私は厚生大臣だからよく覚えていますよ。福祉目的税で福祉団体は賛成するのではないかと思っていた。しかし、いざ、この消費税三%の導入をするときに、福祉団体が、消費税を福祉目的税にすることを強く反対しました。

 なぜかというと、三%の導入で福祉関係の予算は賄うことはできない。もし福祉目的税を導入されたらば、これから必ず福祉関係の予算は伸びていく、高齢者はふえていく、だれだってわかる、となると、目的税にされると、福祉を充実させていくと必ず消費税は上がってくる。そして逆に、では消費税を上げるの嫌だというと、福祉の水準は向上しない。だから福祉団体の関係者が、消費税は目的税にしてくれるなといっていろいろ言ってきたことをいまだに覚えています。だから、私は実に消費税の問題については敏感なんです。

 今回も、年金の目的消費税について私は反対なのもそれがあるんです。もし消費税を導入するんだったら、社会保障全体、これを見て、国民の理解と協力を得てやらなきゃならないぞという点がありますから、この年金一元化の問題においても、簡単に言って二つの点、納税者番号を導入できるかどうか、これの理解を求めることができるかどうか、自営業者とサラリーマンと、全く就業形態が違うのをどうやって一元化がされるのか、この方法論、ここでばたっと壁に突き当たるんです。この壁を乗り越えることができるかというのは、まず与野党協議会で私はよく議論をしていただきたいと思います。

大島(敦)委員 今回の我が党内での取りまとめのハードルというのも非常に高いものがありまして、先ほど小泉首相がおっしゃられた納税者番号制度にしても、まだ自分もわだかまりは持っていますよ、本当にいいかどうかというのは。プライバシーの問題、それが将来的には国民背番号制につながっていくおそれもあったり。ですから、いろいろな問題をしっかりと議論しなければいけないなとは思っているんです。それで、私たちは、年金制度の改革調査会というのを別個建てにつくってしっかりとした議論をしようと考えている法案を出したわけなんです。

 その中で、そうしますと、今回、今後の国会あるいは政府の対応として、年金の問題というのは恐らく、私がこの審議にずっと携わって、あるいは発言、そして皆さんの意見を聞きながら、初めてだったと思うんです、国民全体がこれだけ年金に対して関心を持っていただいたのは。年金についてどうしなければいけないか、そういう問題意識を皆さんが持っていただいたというのも今回が初めてだと思うんです。これから本当の年金の議論が恐らく始まるのかなと。

 私は民主党ですから、私たちの案を成案にしていただいて、附則として政府案をつけるのが一番いいかなんということも考えたりもするんですけれども、アイデアは某氏からいただいたんですけれども、そのようなことも考えるわけなんです。

 そのときに、今後の対応として、先ほど小泉首相は労使というお話もされていました。いろいろな団体があります、労使、消費者団体から始まって。やはり今後の社会保障の議論というのは、私たち国会議員が議論すべきテーマだと思っています。地元、いろいろな人たちがいます、お魚屋さんもいれば、中小企業の零細の自営業の方、主婦の方。一番社会の実態を知っているのは私たちだから、私たちがこの年金の議論を進めるべきだと私は考えているわけなんです。

 ですから、今後の議論の進め方の中で、これはちょっと離れる議論なんですけれども、私は、審議会のあり方について、年金改革の議論をするときに、審議会のあり方を見直す必要がある、あるいは審議会を委員会の下に置くような形も必要、これは審議会の形を変える必要もあるかとは思うんですけれども、その点について御所見があれば伺わせてください。

小泉内閣総理大臣 これから設置されるであろう与野党協議会、社会保障全体の協議会において、国会議員が参加するのは当然でありますが、どういう有識者を入れるかという点もまず議論になるのではないか。

 これについて、審議会との関係、与野党協議会に直接民間の、議員でない委員に、随時といいますか、常時参加してもらう方法と、あるいは、協議会は国会議員だけで構成するけれども、参考的な意見として随時有識者の方々に来ていただいて意見を述べてもらう方法と、いろいろあると思います。それは、現行の審議会と新しくこれからできる与野党協議会について、まず開会の前に十分協議していただかなきゃ、この問題は与党だけでやるわけにはいかない、野党も入るわけですから。

 その点は今私から、民間の、国会議員以外は参加させないとか、国会議員だけでやるとかいうことを言うのは、この時点で適切ではないのじゃないか。その点も含めてよく議論していただきたいと。

 私は、その与野党の協議会の結論に従って、政府はできるだけの資料等の協力はしたいと思っております。

大島(敦)委員 残りの時間も少しになりました。

 山口総務副大臣、今回の年金の一元化の中で、いろんな年金の一元化があります、厚生年金と共済年金、そして基礎年金も含めて。その中での国共済のものについて、私が伺っているところですと、地方公務員、国家公務員の方の共済年金について、厚生年金よりも若干上乗せ部分があるという話を聞いていまして、そのことについての御報告、どういうような考え方なのか。

 それに基づいて、小泉首相の方から、そういう国共済と、要は共済年金と厚生年金を一緒にするとき、それは全く同じ条件にするようにするのが正しい方向なのかどうか。

 私は、議員年金については廃止の立場をとっておりまして、私たちの若い世代ですと、議員のあり方も大分変わってきています。特殊な仕事かもしれないけれども、ごく普通の生活をしている一生活人として、議員として、今職務を務めているわけなんです。だから、議員年金、そのあり方も、私は、退職金と扱いが同じであって、十年たたないともらえないし、十年未満でやめると掛金の八割しかもらえない。ですから、それは退職金としてそのままもらえば、そのまま受け取ったりすればいいのかなと思っておりまして、あるいは廃止しちゃっても構わない。その分に、国民年金基金とかあるいは日本版四〇一kとかございますから、そちらの方で議員は手当てすればいいという考え方を持っている人間なんです。

 国会議員の年金制度のあり方が世代間によって徐々に変わってくるように、公務員の年金制度、共済の仕組みについても時代に合わせて変えた方がいいのかなと自分は考えております。その点について、山口総務副大臣の方から御説明と、もちろん個人的な御所見がございましたらそれを披露していただいて、最後に小泉首相の方からお答えいただければ幸いでございます。

山口副大臣 国共済、地共済についてお尋ねがございましたけれども、国共済は財務省の方なんですが、今御質問のいわゆる職域年金部分ということに関しましては、基本的にはよく似たルールでやっておりますので、私の方からお答えをさせていただきたいと思います。

 確かに、厚生年金よりは若干上乗せといいますか、いわゆる職域年金部分というのがあるわけなんですが、私ども、三階部分というふうなことをちょいちょい言っておりますけれども、これに関しましては、もう恐らく先生御案内と思うんですけれども、特に、国家公務員も一緒なんですが、地方公務員の場合には、やはり政治的行為の制限とか、あるいは退職後も続く守秘義務等々、さまざまな制約がございますので、そういったことを踏まえて、実はこの職域年金部分というふうなのを制度上入れさせていただいております。

 中身につきましては、厚生年金相当部分の二〇%、基礎年金も全部含めますと八%強というふうなことで、金額的に申し上げますと、サラリーマンの標準的なケースの場合には、年金額は二十三万四千円ということでありますが、共済年金では二十五万四千円ということで、約二万円の差というふうになっております。

 参考までに、実は今国会でも、地共済と国共済の財政単位を一元化いたしたいというふうなことで法案も予定、準備をさせていただいておりますので、何とぞよろしくお願いをいたしたいと思います。

小泉内閣総理大臣 年金の一元化について難しい点は、国共済についても厚生年金についても、就業形態も、それから企業という観念からも、公務員と民間とは違いますよね。だから、それぞれが有利であろう、不利であろうと言えば、どこでも言えるんです。

 それで今、議員年金のこともお話しされました。議員年金も、十年掛けてもらえるから有利じゃないかと言う人がいます。しかし、国会議員で毎月十万円掛けていると思っている人はそんなにいないんですね。それと、税金が七割入っている、これは不公平だと。やはり市長とか県知事と違うじゃないか、退職金がないという点から考え出されてきた案だと思うんです。

 だからこそ、その制度を一つ一つとってみると、どれも有利な制度、不利な制度、あるわけです。それを一つにしようというのだから、これは考えてみれば、一番わかりやすい制度になるかもしれないけれども、そのためには、今まできめ細かに配慮していた分を大ざっぱにばっさり切らなきゃいけない、一元化というのは。

 日本の年金制度は実にきめ細かい配慮をしていますよ。そういう制度であります。その人によって全部違うから、どうなっているんだという問い合わせは、人によって対応が違ってくるわけですから。こういう点を一元化する際には、今までのかなりきめ細かい配慮をばっさり切らないと一元化できない、わかりやすくできない。そういう点も考えると、この問題は、実に深い、大きな議論になると思っております。

 これは個人的な感想でございます。

大島(敦)委員 どうもありがとうございました。

 最後に、そんなに制度は複雑ではないと思いまして、原則論に従って考えていくと、答えはそんなに難しくはないと思います。今後とも、当委員会で年金の問題、社会保障の問題、議論をしていきたいと思います。

 そして、きょうは原田副大臣と七条政務官には、まことにありがとうございました。改めてお礼を述べさせていただきます。

 ありがとうございました。

衛藤委員長 古川元久君。

古川(元)委員 民主党の古川元久でございます。

 昨日、三党合意がこの年金問題についてなされたわけでありますけれども、この合意は、我が党にとってはまことに苦渋の選択でございました。このまま私どもが一切与党との協議に乗らないという形でいれば、十四年間保険料が上がり続ける、給付が下がり続ける、その法案がそのままの形で、それが固定した形で通ってしまう。それを避けるためには、事実上、今回の合意で、この法案は二〇〇七年三月まで、一元化を含めた結論が出るときまでの暫定的な形、暫定的な法案だという形にしていかなければならない。そのために、私どもも、なかなか国民の皆さん方の理解を得るのは難しいということをわかりながら、あえてこの合意に臨んだわけであります。

 しかし、今回の合意で考えてみますと、総理はこの法案が出てくるときから、一元化が望ましいとか、社会保障制度改革については与野党でやるのがいいとか、法案を出されてからこう言われた。

 私は、この年金の問題については、本院に議席をいただいてからずっと取り組んでまいりましたが、取り組んできた議員の中では、これは与野党を超えてでありますけれども、従来からそういう考え方があったわけであります。そして、スウェーデンの年金改革に見習った、政権交代があっても長い間持続可能な制度は与野党が協調してつくっていかなきゃいけない、そういうスウェーデンの年金の抜本改革に見習ったような抜本改革をやりたいというふうに考えてきました。

 民主党が出した案も、まさにそういう視点にのっとって、私たちだけですべてを決めてしまうというのではなくて、枠組みと基本的な視点を示して、具体的な中身の、与野党を超えた合意が必要なところについては、国会の中で年金制度改革調査会というものを設けて、そこで決めていきましょうということを提案させていただいたわけであります。

 よく考えてみますと、これは本来、与党の側が、こうした法案をつくる以前の段階で、今回我々に呼びかけたような与野党協議の場、与野党を超えたこういう社会保障制度全体の見直し、とりわけ国民の皆さんの不信が高まっている年金制度の抜本的な見直し、そういうものをその段階でやるべきではなかったんでしょうか。それをやらないでいて、与党だけで勝手に法案をつくっておいて、それがイエスかノーかというふうに出してくる。これは、法案を出されてから、その後の総理の一元化発言や、与野党協議の場をつくってやったらいいという発言とは、全くこれは手順、手続に大きな瑕疵がある。

 福田官房長官は、未納の自分の発表の仕方、そういうものに問題があった、それによって混乱を招いた、その責任をとってやめるというふうに発言をされたようでありますけれども、そうであれば、そもそもこうした大きな混乱をこの法案審議で招いたその根本は、総理が自分で一元化や、あるいは与野党協議で抜本改革するのがいいと言いながら、与党だけでこういう中途半端な法案をつくった、そこに責任があるんじゃないかと思いますけれども、総理の所感はいかがですか。

小泉内閣総理大臣 長年、私も国会に籍を置いておりますが、野党の立場に立ちますと、そういう意見もわかります。

 しかし、現実の与野党対決となりますと、まず政府なり与党が案を出さない限り、自分たちは対案を出さないと言うんですね。民主党もそうでしたね。対案を出す、対案を出すと言いながら、なかなか出さない。対案を出す、案を出すということは、ちゃんと決まった数字を出さないと案はできないんです。

 そういう点から、私は、時期はどうなるにせよ、政府がこうしてきちんとした数字を入れた案を出したからこそ、与野党協議が進んできたという面が強いのじゃないかと思います。

 これは、いずれ民主党が政権をとって何か考えますと、野党になった自民党は、やはりまず与党側がはっきりとした案を出してこいということになるかもしれません。案を見てから自分たちはよく考えよう、案を出す前から与野党協議したら、何のための与党と野党なんだという、野党を支持してくれる支持者に批判を浴びる点もあると思うんですね。だからこそ、政権交代を要求して、政府とは違った案を野党だったらつくるといって選挙を戦ってくるわけです。

 そういう点もありますから、今のような穏やかな状況で、案を出す前から与野党協議しようというのは、できたらすればいいんですけれども、なかなかそこまでは乗ってきてくれませんね、野党の皆さんは。だから、今回、こういう政府案が出てきて、かなり対立した議論はあって、しかし、年金というのは、政権交代があって急激に変わって困るのは国民だという共通の認識ができたからこそ、政権交代があったとしてもそれほど大きな激変がない、混乱のない、安定的な年金制度をつくる方がいいのではないかということで、今、与野党共通の認識ができたと思うんです。

 この共通の認識を生かして、よりよい社会保障制度あるいは年金改革案が与野党協議の上で実現できれば、私はそれは好ましい姿だ思っております。

古川(元)委員 与党のくせに懐が小さいですね。私たちが政権をとったときには、当然、年金の抜本改革をやろうというんだったら、法案をつくる前にちゃんとそれは野党である自民党にも呼びかけますよ、公明党さんにも。

 そもそも、今、総理は話をそらしましたけれども、我々は法案をつくる前の段階では何にも相談も受けていないんですよ。与党が勝手につくられたときに、民主党さんの考えはどうですかなんて一言もなかったわけですよ。つくってから、自分たちが出してきてから対案を出せ、そういう言い方ですから、それは、そもそも総理の言われていることというのは私はちょっと間違っているんじゃないかと。

 スウェーデンなどは、別に、法案を与党が出してきてから与野党協議になったわけじゃないんです。法案をつくる前の段階から与野党の協議会をつくってやったわけです。やはりそういうものを今回もともとやるべきだった。今ごろになってこういう形になってきたというのは、これは私は総理の見識というものは疑わざるを得ないんじゃないかというふうに思います。

 そしてまた、今回こういう形で、年金というこの制度の問題だけ見れば、与野党で協議していって、一元化を目指して実現をしていくという意味での一歩前進はあったというふうには私も考えますけれども、しかし、残念ながら、与野党を通じた私ども政治家のいろいろな未納の問題が発覚する中で、国民の皆さん方の今回の合意に対する目は非常に厳しくなっております。やはり、私たち国民すべてに関係する年金の抜本的な見直しを与野党を超えて行っていくというのであれば、その前に、それをやっていく我々自身の信頼をいかに回復するか、そこから始めなければ、私はこれはならないと思う、進まないと思います。

 どんなにいいことを言ったって、自分たちの問題について、今回の問題、残念ながらマスコミなどの報道も、これは、未納の問題にふたをする、そういう談合じゃないかというふうに指摘をされておるわけでありますけれども、そう思われているそこの原因は、私たち議員がきちんと身を正すということをやっていない、やはりそこに原因があるんだと思うんです。

 そういう意味では、私ども民主党は、とにかくこれは全議員公表しよう、年金の保険料の納付状況については、みんな与野党合意して公表しようというふうに訴えかけたわけであります。総理も四月三十日のときには、それもいいんじゃないかというふうに発言されていらっしゃるわけであります。ところが、きのうの協議の中では、与党の側はこれを拒否した。

 私たち民主党は、来週には発表したいと。ほかの野党の皆さんも発表する方向で準備を進めておりますけれども、これでも総理は、与党だけはまとめないでやらない、そういうふうにおっしゃるんですか。いかがですか。

小泉内閣総理大臣 与野党でその点は十分協議していただきたいとかねがね申しているわけであります。

 公表するのもいいことだと思っておりますし、これは全議員の個人情報にかかわる問題でありますので、私は、与野党、十分協議していただきたいということで執行部にも申しておりますし、それは各党のいろいろな国会対策上の問題もあると思います。あるいは、各党、どのような形でみずからの信頼性を高めるかという中での議論でもあると思います。与野党の中で十分協議をしていただきたいと思います。

古川(元)委員 その与野党の協議で、与党が拒否したんです。総理は、同時に自民党総裁でもあるわけですよ。何で指導力を発揮しないんですか。

 国対上の問題もあるというふうに言われましたけれども、先週ここで私が、民主党の側の次の内閣の全員の納付状況は、菅代表の未納もわかっていましたけれども、あえて、これはまとめて出すということを約束したんだから、お互い出しましょう、そういうことを言ったわけでありますけれども、そのとき、まさにきょう辞任した福田官房長官は、法案の審議に影響を与えるといって、国対を理由にして、その発表を、この委員会で強行採決をしたその後におくらせた。

 まさに、こういうことをやっていることが国民の皆さん方の不信を買っているわけでありますよ。そういう国対的な手法でこうした国民の皆さん方の不信を買っている、こういう問題について、与野党協議に任せます、そんな自民党総裁として無責任な態度というのはありますか。これはやはり、総裁としてきちんと公表する方向で指示をするとちゃんと言ってください。

小泉内閣総理大臣 一党の党首でも、言うことを聞く場合と、各党の立場、議員のプライバシーという点に対しては気をつけていかなきゃならないと思っています。政府のトップとして、個人情報という問題についていかに重要かという点も、個人情報の法案が出たときにも私はよく感じております。

 そういう点におきまして、私個人としては公表するのもいいかなと思っておりますが、各党、各国会議員、それぞれ立場があるんでしょう。よく協議していただきたいと思っております。

古川(元)委員 協議していただきたいといっても、与党は拒否したんですよ。個人情報だといいますけれども、議員になって以降の年金の納付状況について、もうこれは個人情報という問題じゃないですよ。

 これはやはり総理が、それは総理がみんな自民党の議員のを社会保険庁に行って聞けというわけじゃないです、それぞれの議員に、自分でちゃんと聞いてきて、それをちゃんと公表するように、それで党としては取りまとめる。我々民主党はそうやっているんです。それを自民党もやるというのは、それは総裁として決めるべきことじゃないですか。いかがですか。

小泉内閣総理大臣 何回も答弁しているようですが、よく協議していただきたいと思います。民主党の主張は主張として展開していただいて結構でございます。

古川(元)委員 そういう無責任なことが、どんなに年金のまじめな議論をしようとしても、国民の皆さん方に我々自身の議論が信用されないということにつながるんだと思うんですよね。それはやはり総理としてきちんとやってもらわなきゃいけない、総裁として。

 では、聞きますけれども、総理御自身のことについては、これは個人情報とはさすがに言われませんよね。聞きますけれども、総理は納めておられたといいますが、厚生大臣のとき、年金は何に加入していらっしゃいましたか。

小泉内閣総理大臣 私は国民年金ですから、調べましたところ、きちんと払っておりました。

古川(元)委員 ちゃんとそこは調べられたんですね。

小泉内閣総理大臣 調べないでいいかげんに答弁することはできません。

古川(元)委員 今まで何か払っている払っていると言うだけで具体的になかったわけでありまして、総理もきちんと、やはりそこは、どういうものに入っていたのかというところは、ほかの閣僚経験者の皆さん方が同じようなことで未納になっているわけでありますから、そこの部分が自分がなかったのであればなかったと、きちんとやはりそこは言っていただきたいと思います。

 そこで、この問題に絡めてちょっと私も聞きたいと思いますけれども、今回いろいろな議員の未納が出てきたその背景には、議員年金の存在があるんじゃないかということが言われております。この議員年金については、国庫負担の率からいっても、やはり到底国民の皆さん方の信用を得られるものではないというふうに考えています。

 そういう意味では、議員の身を正すという意味では、やはりこの議員年金の扱いについて、早急にこれは廃止に向けた動きをしていくべきだ。総理自身も、議員年金の全面廃止は今国会中にやった方がいいということを言われているわけであります。

 この点については、私は、ここで総理に前向きなきちんとした発言をもう一回していただいて、この国会中に議員年金の廃止の問題も、ぜひこの問題もきちんと片をつけたいと思いますが、総理のお考えはいかがですか。

小泉内閣総理大臣 各党が協議して設けられたこの議員互助年金、これについて、各党それぞれ考え方があると思います。この問題については、私は、国民から不公平だと思われているんだったらば、なくしてもいいのではないかという考えを持っております。

 現に、退職金が市長にあるのに、県知事にあるのに国会議員にないということからこういう制度が設けられたんだという話を聞いておりますが、毎月十万円以上保険料を納めて、十年以上納めて、なおかつ六十五歳以上ですか、そして議員をやめた後に受けられるという制度だと聞いております。毎月十万円も納めなきゃならないんだったらなくしてもいいんじゃないかという議員が自民党の中にも結構いるというのを聞きまして、これは大いに各党で協議してくれと。

 これは同時に、税金も負担分が大きいというところでございますが、これも国民の理解が得られるように、普通の厚生年金あるいは国民年金並みの税金投入でいいのではないかという議論がいろいろあります。そういう点も含めて、今回せっかく与野党の協議会ができるわけでありますので、そういう中でもこの議員年金問題を扱って、どういう見直しがいいのか、廃止がいいのか、十分協議していただきたい。

 現に、国会議員の身分に関する問題、国会の中の問題について行政府の長が口を出すなと厳しく今批判を受けているところでございます。国会の中の動きについては、やはり議院それぞれ、各党会派が積み上げてきたものがございます。例えば施政方針演説にしても、同じ演説を衆議院、参議院、二度やる必要はないじゃないか、開会式は一回で終わる、衆参両議員が集まるんだから、施政方針演説も聞くだけなんだから一度に集めて、衆議院でも参議院でもいい、一回で集めてやったらどうかということを言っただけでも、国会のことに口出すなといってしかられているんですから。

 こういう国会の今までの慣例があります。だから、この点については、私は与野党でよく議論していただきたい。

古川(元)委員 総理は、総理の立場と、先ほどから申し上げているように、自民党総裁としての党首という立場があるわけですよね。その政党人としては、では、この議員年金廃止、今国会中に与野党間で片をつけるということには賛成というふうに理解してよろしいですね。

小泉内閣総理大臣 私は賛成です。私は賛成です。しかし、各党各会派の立場がありますから、その意見はよく協議していただきたいと思います。

古川(元)委員 わかりました。ぜひそういう方向で私ども動かせていただきたいと思いますので、総理も自民党総裁としてきちんと党の中をまとめていただくようにお願いを申し上げたいと思います。

 さて、次に、時間が限られておりますからちょっと質問を続けたいと思いますけれども、今回、年金制度に対する国民の不信を取り除くためには、先ほどから申し上げているように、まずやはり、我々自身の議員の未納問題、そういうものにどうきちんと対処していくのか、そういう視点というものを持っていかなきゃいけない。

 そうやって考えていきますと、この議員の未納問題の解決のためには、年金制度、先ほどから総理、一元化には共済年金と厚生年金の一元化というのと、あと国民年金も含めた一元化というのと、二つの一元化の議論があるんだというふうにおっしゃっておられましたけれども、議員のこの明らかになってきた未納問題を解決するためには、国民年金も含めた一元化をしない限りは、こうした問題というのは根本的に制度的に解決されないというふうに思います。

 ですから、そういう意味では、我々が議論する一元化というのは、当然国民年金も含めて一元化を目指していく、そういう理解でよろしいですね。

小泉内閣総理大臣 そういう共通の認識を持つためにも、私は与野党協議会が必要ではないかと思っております。その共通の認識を持って、さて、そこまでに到達するための手続について、方向についても、これまたかんかんがくがくの議論が出てくると思います。そのために、与野党協議会をできるだけ早く設置して、本格的な議論に入った方がいいと思っております。

古川(元)委員 ちょっとそれだと話が違うんじゃないかと思うんですよね。

 これは、一元化というのは当然、我々は、きのうの協議の中でも、国民年金も含めた一元化をやっていくんだと。二〇〇七年までに共済、厚生年金、当然そこには議員年金も含まれますけれども、そこは一元化して、二〇〇九年までには国民年金も一元化をする、そういう考え方を我々は示して、それを受けた上でこの一元化を含めたという話が書いてある、我々はそう理解しています。それは違うんですか。

小泉内閣総理大臣 これは、「年金制度改革に関し、」三党合意、ちょっと正確を期すために読ませていただきます。

 「社会保障制度の全般的見直しについて」「衆議院と参議院の夫々の厚生労働委員会に「年金の一元化問題を含む社会保障制度全般のあり方に関する小委員会」を設置し、年金の一元化問題を含む社会保障制度全般の一体的見直しを行い、平成十九年三月を目途に結論を得て、随時実施を図るものとする。」これが一です。

 この「一にあわせ、与野党により、平成十六年から年金の一元化問題を含めた社会保障制度全般の一体的見直しのための協議会を設置し検討する。」これが二です。

 三が、「年金保険料については、社会保障全体の在り方の検討状況や経済社会情勢の変化などの事情を勘案して、必要に応じ検討を加えていくこと。」これが三です。

 四が、「上記を踏まえ、五月十一日衆・本会議において政府案に別紙の付則を追加する修正を行う。」

 五に、「衆・厚生労働委員会において、年金に関する委員会決議を行う。」というのがこの三党合意であります。

 別紙というのは詳しいから、もう御承知でしょうから、読み上げるのはやめますけれども、この合意に基づいて、与野党が協力してよりよい制度をつくっていただきたい、政府としてもできるだけ協力をさせていただきたいと思います。

古川(元)委員 これは重大なことですよ。この一元化に国民年金も入るのか入らないのか。総理のさっきの認識だと、何か与党の方はこの一元化というのは厚生年金と共済年金だけみたいな、そういう言い方に聞こえていますけれども、国民年金も入るということが確実じゃなければ、これはもう合意は破棄になりますよ。

小泉内閣総理大臣 だから、この年金の一元化というのは当然国民年金も入ってきますよ。だから、与野党協議会で議論して共通の認識を持っていただきたい、それを言っているんです。

古川(元)委員 だったら、これは、一元化というのは当然国民年金も含めた一元化、総理はさっき何か、いや一元化には二つの概念があると。そんなことを言われるから、私はそう聞いたわけなんですよ。やはりそこはちゃんと、一元化といったら、総理が言ったのは国民年金も含めてでしょう。当然、今回の議員の未納の問題を含めたら、国民年金の問題を解決しない限り、基本的な制度的な問題というのは解消されないんです。

 その点からいいますと、今回のこの合意の中にはありませんけれども、国税庁と社会保険庁に徴収機関が分かれている、これもやはり未納、未加入という問題を生んでいる大きな原因になっていると思います。

 私たちも、民主党案では既に、国税庁と社会保険庁を統合して歳入庁を創設する、徴収機関の一元化というものについてもきちんと示しておりますけれども、これもやはりやるべきだと思いますが、総理、いかがですか。

坂口国務大臣 総理に後で答弁していただきますから。

 年金の一元化の問題で、年金をいわゆる一元化してしまったら議員年金を初めとする年金の不払いというのは生じないというのは、それは私は少し違うと思っています。

 これは、いずれにしましても、一元化いたしましても、今度はそうすると、今までよりもたくさん保険料を出さなきゃならない人がたくさん出るわけですから、その皆さん方を皆徴収しなきゃならぬのですから、そこはなかなか大変な作業だということを思っているわけです。

 努力をするということは同じことだというふうに思っております。

小泉内閣総理大臣 社会保険庁と国税庁の統合の話ですが、これも今後議論の対象になると思っております。

 もちろん、社会保険庁の徴収の対象とか方法、これは国税庁と違います。年金なんというのは三十年、四十年ずっと管理していかなきゃなりませんから、これと国税庁の数年、五年ですかね、数年保管しておけばいいかというような、いろいろな難しい問題がありますが、これをそれでは統合するためにはどうしたらいいかというのは、今後与野党の協議会で十分議論していただきたいと思います。

古川(元)委員 これは徴収の問題ですよ。議員の未納の話、税金を払っていなかったという人はいないわけでしょう。税金を払うときに当然社会保険料を引くわけですから、同じところから徴収していれば、そんな徴収漏れとか忘れていましたとか、そういうことはなかったはずじゃないですか。だから、これは徴収体制を一緒にしていれば、税金を払っていて保険料を払わないということは起きなかったわけであって、やはり徴収体制を一元化するということは極めて、今回のこの我々議員が起こした未納問題に対する制度的な対応としては、これは根本的に必要なことだと思いますよ。

 最後に聞きますけれども、総理、これは二〇〇七年三月をめどに議論をしていく、それで結論を得ると。その段階で今回の政府案、当然、内容に変わりがあれば見直すということになりますよね。

小泉内閣総理大臣 その点も、その時点での与野党協議の結論に従うのが筋だと思っております。

古川(元)委員 そういった意味では、今回の政府案はまさに二〇〇七年三月までの暫定措置、そういう意味では、総理はこれを抜本改革だ、坂口大臣は百年安心プランだと言っていたけれども、結局はこれは、我々が主張していたように当面の財政対策、暫定措置だということが明らかになったということを申し上げて、私の質問を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。

衛藤委員長 山口富男君。

山口(富)委員 日本共産党の山口富男です。

 私は、年金問題について総理に質問いたしますのは予算委員会に続いてのことですけれども、年金問題でお聞きしたい点は山ほどあります。しかし、きょうは二十分と時間が限られておりますから、問題を絞って、幾つかの角度から、今度の政府の提案しております年金法案の問題点についてただしてまいりたいと思います。

 まず初めに、今度政府がこの年金法案を提出した際に、与党もそうですけれども、随分、これが百年安心の改革プランだという宣伝をいたしました。ちょうど、しばらく前のことなんですけれども、ここで参考人質疑をやりまして、今総理が着席されている席に日本経団連の矢野参考人がお座りになったんですが、その矢野参考人からも、この百年安心論についてはだれも約束できないことだというふうに私は聞きまして、そういうふうに述べたことを大変印象深く私は聞きました。

 それから、研究者の方は、将来予知能力というのは極めて限られているんだ、百年安心プランにするなんということは政治的なうたい文句だとおっしゃって、国民に開かれたところで議論を十分に尽くし、中身を変えていくことが大事だ、こういうふうに指摘されました。

 ちょうど、それを受けまして、この年金問題については、いろいろなきっかけはありましたけれども、国民的な議論がようやく始まったところだというふうに私は思うんです。ところが、昨日発表されましたこの自民党と公明党、民主党の三党の合意を見ますと、十一日の衆議院本会議で採決というわけですから、私はこれはとんでもないことだというふうに思うんです。

 それで、年金法案については、振り返ってみますと、この厚生労働委員会でも、政府案の抱えている問題点がいろいろな角度からはっきりしてきたと私は思うんです。

 例えば、よく政府はモデル年金、モデル世帯という話をしまして、五割確保ということを言ってきたわけですけれども、そのモデル世帯なるものそのものが、大体統計上探すことが至難のわざだ、いろいろな前提条件をつけた上での一種の架空のモデルだということも認められました。

 それからまた、こういう資料も出されてまいりました。例えば、離職の場合、世帯一人当たりですけれども、四七・五%になる、五割どころじゃないと。女性の単身の場合は四四・七。一時離職の場合は四二%。四十年間共働きの場合、世帯一人当たりだと三九・三。男子の単身だと三六%。三割台、四割台の場合もあるということも示されました。

 しかも今、この年金問題をめぐりましては、低額年金の問題、無年金者の問題が非常に大きな問題になっているわけですけれども、これへのきちんとした対応もされていないということも私は明らかになってきたというふうに思います。

 このように考えますと、結局、政府の提案しておりますこの年金法案というのは、百年安心どころか一カ月ももたなかったというのが、この委員会審議を通じての結論じゃないでしょうか、総理。

    〔委員長退席、北川委員長代理着席〕

小泉内閣総理大臣 私はそうは思いません。この政府案が出てきたからこそ、いろいろ建設的な議論が出てきている。そして、どのような制度に変えようとも、やはり給付と負担、これを具体的な数字を入れない限りは現実的なものにならない。そういう観点から、これから与野党協議会でいろいろ議論がされて成案ができたとしても、政府案の重要性というものは多くの国民に理解されているのではないか。

 年金というものは持続させていかなきゃならない。そして、どのような仕組みを考えようとも、給付を考える際にも、一つのモデル対象というものをつくらないと国民に説明しにくいということから、一定のモデルを出して、このモデルは給付はこうなりますよということ。これが全部に当てはまらないからこの案がなっていないというふうには言えないと思います。年金というのはそれぞれによって額が違うんですから、ある一定を対象にしたモデルを対象にして国民に理解を求めていくというのは、決してごまかしでも何でもない。

 よりわかりやすく説明するのには一つの対象を出して説明する方が理解が得やすいであろうという形で出しているわけですから、私は、今回の政府案が成立して後も、与野党の協議でこれにかわる案が、よりよいものが与野党協議のうちにできていくというんだったら、これまた国民から理解をされるような努力をしていかなきゃならない。

 いずれにおいても、今回政府案を出したからこそ年金の論議が盛り上がってきて、いろいろ複雑な制度の問題、分離をするのではなく一元化していくことが望ましいという議論が出てきたのも、やはり政府案を具体的数字を入れて提出したからこそ、こういう議論が出てきたのではないかと私は前向きにとらえております。

山口(富)委員 総理のお話を私なりに補足させていただければ、これは政府案の問題点が盛り上がってきたんです。一般的に議論が盛り上がってきた、そういうところにとどまっていないんです。しかも、私がモデル世帯論で問題にいたしましたのは、あたかもそれが平均像であるかのような宣伝をなさるから、架空の、本来極めて限られた世帯にもかかわらず平均的なものとして宣伝するから、こういうことの問題点も当委員会ではっきりしたんだということを指摘したんです。

 私は、国民の皆さんのさまざまなアンケート調査を見ましても、一連の世論調査は今度の政府案については反対であるというのが引き続き多数派なんですから、国民の皆さんにとっては、もう結論は私は明瞭に出ているというふうに思います。

 続きまして、ちょうど今給付と負担の問題にお触れになりましたから、財源の問題について話を進めたいと思うんです。

 政府の年金法案というのは、年金保険料については連続的に上げ続けて、いわば高どまりさせる、そして、そのことを一つの条件にしながら、給付の水準については、いろいろな条件があるとしても下げていくという建前をとっております。

 小泉総理は、私の予算委員会の質問の際も、これは給付と負担のバランスの問題なんだというふうに盛んにおっしゃっていたことを私は思い出します。そのときに私が申し上げましたのは、そういう枠で考えるんじゃだめなんだ、例えば、安定的な財源確保のためには、公共事業や軍事費の問題、そこにむだ遣いがあればきちんと正していく、それから大企業にも応分の負担を求めていく、そういう方向での財源論の検討をやらなきゃいけないんだという提案をいたしましたが、残念ながら総理は一顧だにされませんでした。

 では、今度の政府の年金法案はどうなっているかといいますと、提案理由の説明では、社会保障に関する制度全般の見直しのための財源を確保する税制の抜本的な改革というふうに述べています。しかも、昨日の三党合意を見ますと、こういうふうに言っています。「年金の一元化問題を含む社会保障制度全般の一体的見直しを行い、平成十九年」、二〇〇七年ですが、「三月を目途に結論を得て、随時実施を図る」。さらに、修正案というのがもう出ているんですね。これを見ますと、「社会保障制度全般について、税、保険料等の負担と給付の在り方を含め、一体的な見直しを行い」、こういうふうになっています。

 先ほど、総理は、自分は消費税については大変敏感なんだということをお話しになりました。私は、今度の提案というのは、だれがどう考えてみても、結局、社会保障の各分野に財源として消費税を入れていく、そういう道を開いていく、そういう可能性を持った合意じゃないかと思うんですが、この点、敏感な総理、いかがですか。

小泉内閣総理大臣 それは、私がかねがね言っているのは、私の在任中は消費税は引き上げませんと。私の任期は決められている、どんなに長くやっても二年後の九月ですから。二年後の九月までに消費税を上げる環境にないと見ているから、政治家として判断しているわけです。しかし、その後について、私はその後の人の判断まで縛るわけにはいかない。

 当然、今回の与野党協議会の中においても、現在においても民主党は保険料を上げないかわりに年金の目的消費税を導入せよと主張しております。しかし、その中にあっても二年後とは言っていないですよ。だから、そういうことから、これから与野党協議会で民主党が年金目的消費税を導入せよという主張をしてくるでしょう。しかし、今後、自民党の議論の中でそれがどういうふうに展開していくか。来年は介護の見直しもあります、医療保険の見直しもあります、順次。そうすると、果たして消費税というのは年金だけの目的税でいいのかという議論が出てくると私は思いますよ。

 そうすると、この消費税の導入というのはいつごろから導入すればいいのか。また、国民は消費税ということに対してどのような対応を見せるかというのは議論をしていくうちにわかってきますから、そういう国民の動向を見ながら、国民に理解と協力を求めるためにはどういう制度がいいか。消費税を導入するんだったら何%がいいのかというのは、これから与野党協議で話が進んでいくうちに大きな議論になると思っています。

 しかし、私自身、私の任期、二年後の九月までに消費税が導入されるような環境にはない。だから、私の在任中は消費税の問題は当然入ってこない。しかし、議論をするのは大いに結構。議論まで縛る考えは私にはありません。

山口(富)委員 総理が敏感だと言われたんですが、国民生活に対して私は敏感でないと思います。なぜなら、年金の財源に消費税を含ませることについては、アンケート調査を見ましても多数は反対ですよ、今でも。そのことをきちんと見るべきです。

 しかも、与党の昨年十二月の税制大綱の合意では、総理の任期は二〇〇六年九月ということですが、二〇〇七年度をめどに「消費税を含む抜本的税制改革を実現する。」と述べている。民主党案は二〇〇七年から三%という方向だ。私は、やはり、国民生活に敏感であれば、ここに消費税を導入するという道は開かれているということを政治家としては正面から見なければならないと思うんです。

 私自身は、これは総理も御存じのように、随分国会で大激論になりました。やはり庶民の皆さんや中小零細業者の皆さんに重い負担がかかりますから、こういう税の本質は、たとえそれを年金に特定化しても変わらないわけですから、この方向をとるべきじゃない、このことを重ねて私は申し上げておきたいと思うんです。

 続いて、年金保険料について総理にただしたい。

 三党合意では、こういうふうに年金保険料について言っています。これは一番目の項目の第三項ですけれども、「年金保険料については、社会保障全体の在り方の検討状況や経済社会情勢の変化などの事情を勘案して、必要に応じ検討を加えていくこと。」こういうふうになっています。

 結局、この三党合意というのは、保険料について言いますと、いろいろな条件を勘案して年金保険料についてはその上げ下げについて調整するといいますか、検討するという含みを持ったものです。となりますと、政府案では、年金保険料を引き上げて固定化する、そのことを条件にして、私、その五〇%については根拠がないと思っているんですが、さまざまな数値をはじき出しているわけですね。となりますと、これまでの政府側のさまざまな説明そのものが覆っていく、そういう提案になっているんじゃないですか。

    〔北川委員長代理退席、委員長着席〕

坂口国務大臣 税制につきましては、けさ私御答弁を申し上げましたから、屋上屋を重ねることは避けたいというふうに思いますが、保険料につきましても、現在の案は、一八・三〇%まで段階的に上げさせてくださいということをお願いしているわけであります。しかし、三党の合意をしていただきましたのは、社会保障全体を見ながら、今後、税と保険料の問題を考えていきましょう、こういう合意をしていただいているというふうに思います。

 したがって、今後、年金に対して、あるいは医療保険に対して、介護に対して、どういうふうに保険料と税を配分していくかということを考えられる、そうした中で、社会保障全体としてどうしていくかということをお考えいただくということだろうというふうに思っております。その結論というものが出ましたら、それは、先ほど総理がおっしゃいましたとおり、政府も尊重しなければいけないというふうに思っている次第でございます。

山口(富)委員 総理はいかがですか。

小泉内閣総理大臣 その結論が出れば、それに従うのが筋だと思っております。

山口(富)委員 となりますと、年金保険料の上げ下げについては再検討するということなんですね。

坂口国務大臣 そういうことで上げ下げするということを言っているわけではありません。現在お願いをしております制度に従ってお願いをしているわけであります。

 今後の問題として、社会保障全体としての問題として御議論をいただくということは大変大事なことでございますから、そのことに対しまして、私たちも、合意を得ていただければそれは尊重するということにしたいと思っております。

山口(富)委員 時間が限られてきましたから次に進みますけれども、私は、この年金保険料の問題でも、結局、今空洞化が起きている背景には、国民年金の場合は高過ぎると述べていらっしゃる方が大体六割から七割ですから、ここに今、政治の場に身を置く者としてきちんと答えるべき、検討すべき問題があると思うんです。

 年金の問題で私は小泉総理に問いたいんですけれども、それは、厚生年金の空洞化をめぐる問題なんです。

 厚生年金では、今、大企業のリストラや倒産などによって、厚生年金を外れて国民年金への移行が大規模に起きております。政府の資料を見ましても、その方々の納付率というのは平均でいいますとかなり低くて、五割程度だということになっているんです。

 この問題で、結局、どうしてこういうことが起こるのかといいますと、今、厚生年金の加入者である正規職員がかなり減っているわけですね。数字が一九九七年から二〇〇二年でしかとれませんので、ちょっと紹介しますと、大体、正規職員が三百九十八万人減っている。その三百九十八万人の方々は結局、アルバイト、パート、派遣、契約社員、若い人の場合はフリーターなどと呼ばれますけれども、そういう不安定雇用の方に入ってしまっている。これが結局、私は、雇用の流動化の問題が起きて、厚生年金の支え手の問題や、将来にわたってはその方たちが低額年金になってしまうという問題をはらみながら、今事態が動いていると思うんです。

 ここで私が小泉総理に問いたいのは、小泉総理が首相になって、厚生労働省に、まず最初に事務官を呼んで何を言ったのかということなんです。こういうふうに記録されています。二年から三年の期限つきの雇用ができたり、社員の解雇をしやすくしたりすれば、企業はもっと人を雇うことができるとか、終身雇用を、これは常用雇用のことですけれども、前提としている現行制度を見直してもらいたい、こういう指示している。これが結局、雇用の流動化を生んでいる一つの要因になっている、政治的には。私はそういうふうに思うんです。

 この流れに歯どめをかけないと、年金の空洞化の問題では、特に厚生年金を安定したものにすることはできない。はっきり言いまして、小泉総理のそういう政治姿勢そのものが年金空洞化をつくるような方向に作用している、そうじゃありませんか。

小泉内閣総理大臣 共産党というのは意外と保守的なんですね。もっと革新的な政党だと思ったんですけれども。

 現状固定という状況じゃ、今の社会は判断できないんです。世界は大きく変わってきているんです。雇用形態も変わっています。若い人でも、終身雇用よりも、ある企業を自分で見て、自分に合わなかったらかえようという人が実に多くなってきているんです。そういう中で終身雇用、常用雇用にこだわっていると、これは雇用の面においても採用の面においても支障が出る場合があるだろう、もっと柔軟に対応できる方法を考えたらどうかということで、今、短時間採用とか途中採用とか、いわゆるフリーターとかいう方々が出てきている。こういう時代の変化というものもとらえていかなきゃならない。

 今の常用雇用にこだわって、本当に雇用がふえるか。必ずしもそうじゃない。全体を見なきゃならない問題なんです。今のままの終身雇用なり常用雇用にずっとこだわると、企業だって人を雇いにくくなる。企業が今出ている失業者と雇用対策をどうしようかというと、やはり時代に合わせて、企業としても、こういう人なら採用したい、それから失業者の中においても、こういう職種、短時間ならおれはこっちに行こうという人も働きやすいような環境をつくっていかなきゃならないという点も私は考えていかなきゃいけない。

 単に年金だけの問題じゃないんです。時代の変化に合わせて、日本だけの問題じゃない、今の企業というのは世界、国境を越えて活動していますから。そういう点もよく考える必要があるのではないかと私は思っています。

山口(富)委員 私は、総理の現状の認識は間違っていると思いますね。私たちが問題にしているのは国民の暮らしなんです。そして、年金というのは暮らしにかかわりますから、一体どういう労働の形態にあるか、問われるんです。そして、どんな調査を見ましても、やはり正規の職員にしてくれというのが多数派なんですよ。そこのところを見ないで、何が年金の改革か。

 私は、この点では、今、年金の改革をまじめに議論しようとしたら、そういう国民生活にきちんと心を開いて、目を向けて、無年金者の問題、低額年金者の問題、年金の空洞化の問題、こういうところにきちんと改革の手を入れるべきだ、そのことを申し上げ、質問を終わります。

衛藤委員長 阿部知子君。

阿部委員 先ほどのちょうだいいたしました時間に引き続いて、残り二十分を質疑させていただきます。

 私は、先ほど質問が中途半端に終わりましたので、まず、坂口厚生労働大臣にちょうだいいたしました御答弁、先ほどからずうっと考えていて、ますます納得できなくなってまいりましたので、一体、今回の提出の法案は国民に何を約束したものであるのか、小泉総理と坂口大臣にお聞きいたします。

 大臣は、先ほど、いわゆる保険料は年々上げていき一八・三%を上限とするが、しかし、給付は五〇%、この五〇%は、現役世代の五〇%ではなくて現役時代の五〇%であるというふうに御答弁されたかと思いますが、もう一度伺います。この法案は、どのような約束を国民とするのでしょうか。保険料は毎年上がっていく、しかし、給付は何の五〇%をお約束なさいますのでしょうか。

坂口国務大臣 先ほどお答えをいたしましたとおり、保険料の方は一八・三〇、これはもうおわかりいただいたと思います、段階的に引き上げていく。それで、いわゆる給付の方につきましては、それぞれの人がそれぞれの世代、お勤めになっている間に受けられた額の平均的な手取り、その五〇%というふうに申し上げてきたわけでありまして、そういうことで申し上げたわけでございます。

 モデルというのは、確かに一定の条件を設けたモデルでありますから、すべての人がそれに当てはまるわけではありません。例えば、所得の多い人であればパーセントは下がりますし、所得が低い人であればパーセントは上がる、そういう違いはあるわけでございます。しかし、我々がつくりましたモデル、その前提にしましたモデルのもとにしましたものにつきましては五〇・二%というふうに申し上げているわけであります。

阿部委員 同じ質問を小泉総理に伺います。

 この法案は、現役の世代の五〇%を、そのとき六十五歳で給付を受けられる方の現役世代に対しての五〇%を保障するものであるのかどうかです。

小泉内閣総理大臣 一定のモデルのもとでの平均的な賃金、それが五〇%であります。

阿部委員 その御説明も極めてわかりづらいし、そうであれば、法律の解釈がばらばらだと思うのです。坂口大臣は、一生のその方のお受けになった賃金の平均だとおっしゃいました。そのとおりでよろしゅうございますか。そして、大臣がそうであれば、総理はもう一度、何の五〇%でしょうか、はっきり、これは国民への約束ですから、何の五〇%、例えば退職のときの五〇%という考え方もあります。しかし、坂口大臣は、終生の、今までの平均だとおっしゃいました。これは違います、明らかに。おのおの、申しわけありませんが、もう一度明確に、国民にどう御説明なさるか、お答えください。

坂口国務大臣 法案をちょっと読ませていただきますが、「国民年金法による年金たる給付及び厚生年金保険法による年金たる保険給付については、老齢基礎年金の額に二を乗じて得た額と平均的な男子の賃金を平均標準報酬額として計算した老齢厚生年金の額との合算額の男子被保険者の平均的な賃金に対する比率が百分の五十を上回ることとなるような給付水準を将来にわたり確保するものとする」、こういうふうに書いてあるわけであります。

阿部委員 それを、そういうふうに私も法案をさっきからずうっと読み返してみたんですが、わからないんですよね、何を言っているのか。簡単に言えば、現役世代の若い人たちの平均賃金の、若い世代だって二十代から定年間際までの方、いろいろおられます、その方の平均賃金の、手取り賃金の五〇%という意味ですか。それとも、大臣が当初お答えになったのは、逆に、その年金を受け取る人がずうっと働いてきた平均賃金だとおっしゃいました。これはどっちですか。まず、坂口大臣、お願いします。

吉武政府参考人 モデル年金は、今お話にございましたように、現役の男子被保険者の平均賃金、この方が四十年、その平均賃金で保険料を納付したとした場合の給付額、これは、老齢基礎年金と報酬比例年金を足しまして、その平均賃金に対して五割ということでございます。

 先生御案内のとおり、実際の厚生年金の給付を決定する方式は、仮に例えば今五十の方が三十年前に新入社員になられたとき、そのときの初任給というのがございまして、これが当時の標準報酬額でございます。これを全部積み上げを行います。個人別のヒストリーに従ってどういう賃金をもらったかというのを積み上げまして、しかし、その三十年前の初任給の価値は例えば五万とか六万という価値ですから、それをそのまま積み上げたのでは現在の価値がないので、現在の初任給に相当するところで、賃金の再評価という形で現在の賃金水準に上げまして、これで支給をするというのがそれです。

 ですから、大臣がおっしゃいましたのは、現実にお一人お一人受けられる年金の額というのは、御自分の給与に対して保険料を払っていただいているわけですから、その給与の支払い実績に対してきちんと積算をしてお支払いをする。ただ、モデルにつきましては、平均賃金でとっていますから、それは今の平均賃金でありますが、それを考えていただければ、若い方から五十歳、六十歳の方までおられますから、そういう意味では、ずっとライフヒストリーで平均的な賃金を受けた方は大体これに匹敵するということで、そういうモデルを設定してお示しをしているということでございます。ですから、どちらも真実ということでございます。

阿部委員 そういうのを言い逃れというんです。どちらも真実で、その数値は違うことだってあるじゃないですか。現役のときに受け取っていた賃金をずっと物価上昇率とかいろいろなものを掛け合わせて、その個人ヒストリーを凝縮したものと、その時々、現在の世代のいろいろな人たちの賃金を平均したものと、これだけだって国民にはわかりづらいし、ずれができるし、この法律は一体どっちを約束しているんですか。モデルをつくったこのモデルとは違うものを法律にしているのですか。

 それを今みたいにぐちゃぐちゃ言われたら国民はわからないのですから、申しわけありませんが、総理、総理はこの法案によって国民に何を約束されますか、わかりやすく教えてください。

小泉内閣総理大臣 私がわかりやすく言うのは、この年金制度、持続可能なものにしよう、給付と負担をしっかり数字で示していこうと。年金の、収入も、額も、全部個人違うんです。一々、それぞれによって年金の給付額が違ってくる。難しい問題です。

 ですから、一つのモデルの対象をつくって、これについてはこうですよとできるだけわかりやすく説明するのが政治としては理解を得やすい方法ではないかなと。今言ったように、局長が説明してもわかりにくいでしょう、実際に。年金を一々やったら、その人によって全部違ってくるんですから。しかも、四十年間払う。四十年前のときの初任給と、いざもらったときの初任給、額にしたら違ってきますよ、それは。

 そういう点も含めて、数学者の数理計算というのは、私のような頭の悪いのはわからぬ。そういうのを全部専門家はやって計算していくんですから、実に難しいことは事実ですけれども、これは、持続可能な制度にしていかなきゃならぬ、給付と負担というのはこの程度ですよ、税金はこの程度導入しますよ、お互い維持をしていきましょうと。これはやはりわかりやすく説明していかなきゃならぬと思っています。

阿部委員 わかりやすくするためにモデルをつくったわけですよ。しかし、そのモデルで用いた今の人たちの賃金の平均の半分というのと、今局長がお話しになったように、そして坂口大臣が御理解のように、その人の個人歴の中での賃金の平均というのは違うんですよ。こんな違うものを出されたら混乱する、そのことを私が伺っているんです。

 きょう、初めて私は坂口大臣の御理解を理解したんですよ。今までいろいろなものを読んでいて、現役世代の五〇%と随所でおっしゃっているんです。だから私は、いわゆるモデルで出された今の現役の人たちを全部平均して、この人たちは現役だからその半分くらいでいいだろうねというモデル像をお出しでしたから。しかし、今、大臣の御理解で、法案のもととなっているのはそうじゃない、個人歴をずっと平均したものだというわけです。

 これだけでも、この二つがあるだけでも国民にはわかりづらいと思いませんか、総理。

吉武政府参考人 モデルでお示しをしておりますのは、保険料率を一八・三%、そのことによって給付を、どの程度現役に負担をしていただいて、年金受給者の方を設定するということをやっています。したがいまして、現役世代の男子の賃金との対比で、新規裁定のときに五〇%を下限とするということにいたしておる。

 私が御説明申し上げましたのは、それじゃ、お一人お一人の年金額はどうなるかということを申し上げたわけでございまして、年金額の計算方式そのものは、二十のときの月給、それから二十一のときの月給、ずっと積み上げまして、その積み上げたものに対しまして何%の給付をするという形で決まっておるという形です。ですから、お一人お一人の受給をされる年金額は、それぞれの方の若いときからの給与に対する保険料の納付実績に応じて給付されるということでございます。

阿部委員 今の局長の御答弁は当たり前で、自分が納めた保険料に応じて受けるんですから、そんなことは当たり前なんです。しかし、この法律が国民に示したものは何なのかということを私は伺っているのです。

 そこで、大臣の御説明は、この法律が示したものではないわけです。この法律が示したものは、現役の、今の人たちの半分を保障する、そうなっていなければ、これは、この法律自身を見直しますよという法律ではないんですか。

 大臣、もう一度伺います。この法律で約束した五〇%は何の五〇%ですか。

坂口国務大臣 法律に書いてあるのは、その人がもらう段階の、そのときの平均賃金のことを書いてあるわけですけれども、だけれども、それぞれの個々の人がもらう年金額は、その人が若いときからもらってきた賃金の、いわゆる平均賃金手取りと申しますか、その五〇%ということを申し上げたわけであります。

阿部委員 総理、今のを、国民に向けてです、総理はすごくワンフレーズポリティックスの名手ですから、国民に安心だ、信頼だと、この安心、信頼というのはあるようでないんですよ、今政治不信なんですから。そうすると、総理は何を約束されますか。安心、信頼じゃだめです。その言葉はもう聞かない。となると、実際に国民に何をお約束してくれますか、この法律を通過させることで。私たちは通過させるべきでないと思っていますが、総理が国民にじかに語るとしたら、何をもってこの法律はどういうふうにいいんだよと、具体的に、教えてください。

小泉内閣総理大臣 これはやはり、年金というのは生活を支える大きな基本的な部分ですから、これを持続可能なものにしていかなきゃならない。

 同時に、今大体、厚生年金を例にとりますと、二十万円ぐらい、平均的な、今まで払ってきた方が受けております。そうすると、三十代、四十代の人が自分の親に月二十万円を仕送りするのはなかなか難しいでしょうね、ごく一部。しかし、保険料を毎月二万、三万払っていただくことによって、親の世代は二十万円年金をいただいている。こういう制度はなくするわけにいかぬ。

 かつて年金制度がなかったときは、子供が仕送りをしていたんです、自分の給与から。今、月二十万を親に仕送りするという方はもうごく少数、できる方は。だから、毎月の保険料二万か三万程度で自分の親の世代は二十万程度もらっている、こういう制度をお互い考えていこうじゃないかという点を私は国民の皆さんに説明しているんですけれども。

 こういう年金の制度というのは、今一人一人で親に仕送りできないですから、同じ世代全体が親の世代を支えていこう、こういう社会的な意義があるのではないかと私は思っております。

阿部委員 少なくなった子供の数で、一人が二万、三万出して親の世代に二十万、三十万送れたら、こんなパラダイスはありません。しかし、そうじゃないからこそ、今きちんとした論議をしなければ年金制度がもたないといって、これが始まっているんです。

 総理に、先ほどの山口委員とのやりとりを聞きながら、私はぜひともお示ししたいものがあると思います。私が用意した資料の、恐縮ですが、四枚目を見てくださいますでしょうか。先ほど総理は、今の若い人たちは好んで多様な働き方をしているんだ、いいじゃないか、いろいろな生き方があって。私もそう思いたい。しかし、それを保障するための社会保障制度が追っつかないから、今論議をしているわけです。

 資料の六をごらんいただけますでしょうか。四枚目の上の段です。これは「パートタイム労働者として入職する学歴別新規学卒者入職者割合」です。例えば高卒の女子は、平成十四年度は何と三八・六%がパートです。これがついちょっと前においては、昭和六十二年でも結構です、六・六%でした。高校卒業したての女性たちが、今は四割近く全部パートです。

 そして、その下の図、総理にしっかりと見ていただきたいですが、これは短時間雇用者の比率で、明らかに、例えば、平成十五年千二百五十九万人のうち八百六十一万人が女性。女性たちはパートや短期の雇用に圧倒的に今行かざるを得ない。

 その人たちが果たして総理の言うように十分な賃金を得ているかどうかを見ていただくために、恐縮ですが、今度は一枚戻っていただきたいと思います。今この人たちは、無年金か、全く年金に加入しないか、国民年金に加入しておられます。企業がきちんとした厚生年金をつけている場合は残念ながら大変に少ないです、総理も御存じのように。

 そこで、この資料を、今度は五になりますが、上から、「自営業主」「常用雇用」「臨時・パート」「無職」と書いて、これはせんだって坂口大臣に大変お褒めいただいたものですが、一体幾ら収入があるんだろうと。ここで臨時とかパートとなった人たちの収入は年収で二百万円以下が四〇%を占めます。となると、総理、果たしてこの人たちが本当に保険料負担に耐えられるのか。

 今こういう深刻な事態があるからこそ、年金制度は見直さなくちゃいけない。高卒の女の子たちの四割がパートで入り、一千二百万人以上の短時間労働者の八割が女性で、その人たち、パートとか臨時とか言われて、その人たちの賃金を寄せてみると、圧倒的に低賃金である。この現実に対して政治がどうこたえていくか、総理に明確に御答弁いただきたいです。

小泉内閣総理大臣 私が先ほど言ったのは、時代が変わるにつれて就業形態も違ってくる、中にはと言ったんですよ、中には、正規でなくてパートなり短時間を望んでいる人もいる。多くは、やはり正規な状態がそれは多いでしょう。しかし、今の雇用体制を考えれば、やはり現実に雇用体制を考えると、短時間でも労働できるような状況もあっていいのではないか。同時に、フリーターの皆さんにはできるだけ正規の職業につけるような訓練も必要であろう。いろいろな形があっていいのではないか。常に終身雇用、常用形態だけではおさまらない時代に来ているんです。

 そういう点も考えて、多面的な雇用対策を考える必要がある。今のフリーターに関する、あるいは女性のパートタイマーに対する年金に対する考え方も、企業においても、またパートタイマーとして働いている方の考えによってもいろいろです。そういう点をよく考えながら、今後、年金問題も雇用体系も、時代に合った、また働きやすい形態をよく考えなきゃいかぬということを私は申しているわけでございます。

阿部委員 今回の法案は、例えば総理と大臣の間でも理解のずれがあったり、あるいはモデルと法律の間にもずれがあったり、あるいは、最後に総理が簡単におっしゃった、二、三万を保険料で納めて親の世代に二十万、三十万、そんなことありゃしない。ないことだらけを全部国民に提示して、これではうそつき大魔王になってしまいますので、やはりこの年金審議はきっちりと現状を見て、私は、若い人たちのために今きっちりした制度をつくらないと、事が動くのは実際は二十年後だったりするわけです。

 圧倒的に多くの女性たちがパートに高卒でなる、若い人たちも、男子も同じような状態です。このことを、しかし選んでその労働形態だと言えるような社会保障制度をきっちり論議していくために、まず、この法案の成立には反対ですし、十一日の採決というようなことはゆめゆめ行われませんように申し上げて、私の質問を終わります。

衛藤委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時二十二分散会


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