衆議院

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第5号 平成16年11月5日(金曜日)

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平成十六年十一月五日(金曜日)

    午前九時三十四分開議

 出席委員

   委員長 鴨下 一郎君

   理事 大村 秀章君 理事 北川 知克君

   理事 長勢 甚遠君 理事 宮澤 洋一君

   理事 五島 正規君 理事 三井 辨雄君

   理事 山井 和則君 理事 福島  豊君

      青山  丘君    井上 信治君

      石崎  岳君    上川 陽子君

      木村 義雄君    小西  理君

      河野 太郎君    菅原 一秀君

      中西 一善君    中山 泰秀君

      原田 令嗣君    福井  照君

      三ッ林隆志君    御法川信英君

      宮腰 光寛君    森岡 正宏君

      山際大志郎君    吉野 正芳君

      渡辺 具能君    石毛えい子君

      泉  健太君    内山  晃君

      大島  敦君    楠田 大蔵君

      小林千代美君    小宮山泰子君

      城島 正光君    園田 康博君

      寺田  学君    中根 康浩君

      橋本 清仁君    藤田 一枝君

      水島 広子君    横路 孝弘君

      米澤  隆君    和田 隆志君

      古屋 範子君    桝屋 敬悟君

      山口 富男君    阿部 知子君

    …………………………………

   厚生労働大臣       尾辻 秀久君

   厚生労働副大臣      衛藤 晟一君

   厚生労働大臣政務官    森岡 正宏君

   政府参考人

   (内閣府政策統括官)   山本信一郎君

   政府参考人

   (警察庁生活安全局長)  伊藤 哲朗君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           山中 伸一君

   政府参考人

   (文部科学省スポーツ・青少年局スポーツ・青少年総括官)          尾山眞之助君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           岡島 敦子君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房参事官)           瀬上 清貴君

   政府参考人

   (厚生労働省医薬食品局食品安全部長)       外口  崇君

   政府参考人

   (厚生労働省雇用均等・児童家庭局長)       伍藤 忠春君

   厚生労働委員会専門員   榊原 志俊君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月五日

 辞任         補欠選任

  井上 信治君     山際大志郎君

  泉  健太君     楠田 大蔵君

同日

 辞任         補欠選任

  山際大志郎君     井上 信治君

  楠田 大蔵君     寺田  学君

同日

 辞任         補欠選任

  寺田  学君     和田 隆志君

同日

 辞任         補欠選任

  和田 隆志君     泉  健太君

    ―――――――――――――

十一月四日

 医療費負担増の見直しに関する請願(塩川鉄也君紹介)(第一〇号)

 年金制度の改悪反対に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第一一号)

 同(石井郁子君紹介)(第一二号)

 同(穀田恵二君紹介)(第一三号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第一四号)

 同(志位和夫君紹介)(第一五号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第一六号)

 年金法の実施中止に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第一七号)

 同(石井郁子君紹介)(第一八号)

 同(穀田恵二君紹介)(第一九号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第二〇号)

 同(志位和夫君紹介)(第二一号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第二二号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第二三号)

 同(山口富男君紹介)(第二四号)

 同(吉井英勝君紹介)(第二五号)

 同(赤嶺政賢君紹介)(第七五号)

 同(石井郁子君紹介)(第七六号)

 同(穀田恵二君紹介)(第七七号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第七八号)

 同(志位和夫君紹介)(第七九号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第八〇号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第八一号)

 同(山口富男君紹介)(第八二号)

 同(吉井英勝君紹介)(第八三号)

 同(赤嶺政賢君紹介)(第一一八号)

 同(石井郁子君紹介)(第一一九号)

 同(穀田恵二君紹介)(第一二〇号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第一二一号)

 同(志位和夫君紹介)(第一二二号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第一二三号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第一二四号)

 同(山口富男君紹介)(第一二五号)

 同(吉井英勝君紹介)(第一二六号)

 利用者負担の大幅増など介護保険の改悪反対に関する請願(塩川鉄也君紹介)(第二六号)

 同(赤嶺政賢君紹介)(第一二七号)

 同(石井郁子君紹介)(第一二八号)

 同(穀田恵二君紹介)(第一二九号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第一三〇号)

 同(志位和夫君紹介)(第一三一号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第一三二号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第一三三号)

 同(山口富男君紹介)(第一三四号)

 同(吉井英勝君紹介)(第一三五号)

 労働組合法改悪反対に関する請願(照屋寛徳君紹介)(第四一号)

 改革年金法の実施中止、最低保障年金制度の実現に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第五六号)

 同(石井郁子君紹介)(第五七号)

 同(穀田恵二君紹介)(第五八号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第五九号)

 同(志位和夫君紹介)(第六〇号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第六一号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第六二号)

 同(山口富男君紹介)(第六三号)

 同(吉井英勝君紹介)(第六四号)

 社会保障制度の拡充等に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第六五号)

 同(石井郁子君紹介)(第六六号)

 同(穀田恵二君紹介)(第六七号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第六八号)

 同(志位和夫君紹介)(第六九号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第七〇号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第七一号)

 同(山口富男君紹介)(第七二号)

 同(吉井英勝君紹介)(第七三号)

 臓器の移植に関する法律の改正及び臓器移植の普及に関する請願(松本純君紹介)(第七四号)

 あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律第十九条の改正に関する請願(荒井聰君紹介)(第九四号)

 社会保障制度拡充に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第一〇〇号)

 同(石井郁子君紹介)(第一〇一号)

 同(穀田恵二君紹介)(第一〇二号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第一〇三号)

 同(志位和夫君紹介)(第一〇四号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第一〇五号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第一〇六号)

 同(山口富男君紹介)(第一〇七号)

 同(吉井英勝君紹介)(第一〇八号)

 じん肺根絶に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第一〇九号)

 同(石井郁子君紹介)(第一一〇号)

 同(穀田恵二君紹介)(第一一一号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第一一二号)

 同(志位和夫君紹介)(第一一三号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第一一四号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第一一五号)

 同(山口富男君紹介)(第一一六号)

 同(吉井英勝君紹介)(第一一七号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 児童福祉法の一部を改正する法律案(内閣提出、第百五十九回国会閣法第三四号)


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     ――――◇―――――

鴨下委員長 これより会議を開きます。

 第百五十九回国会、内閣提出、児童福祉法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として内閣府政策統括官山本信一郎君、警察庁生活安全局長伊藤哲朗君、文部科学省大臣官房審議官山中伸一君、スポーツ・青少年局スポーツ・青少年総括官尾山眞之助君、厚生労働省大臣官房審議官岡島敦子君、大臣官房参事官瀬上清貴君、医薬食品局食品安全部長外口崇君、雇用均等・児童家庭局長伍藤忠春君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

鴨下委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

鴨下委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。上川陽子君。

上川委員 おはようございます。自由民主党の上川陽子でございます。

 きょうは、尾辻大臣、早朝からありがとうございます。

 さて、児童虐待問題に関します今回の児童福祉法の一部改正ということでございますが、さきの通常国会で成立しました虐待防止法の改正と相互に補完するものである。残念ながら、同時に成立するべきものができなかったということでございまして、児童虐待防止のための制度面の充実強化が喫緊の政治課題ともなっているということから、一日も早い法案の成立と、それに基づく適切な防止策の実施を強く希望するものであります。まず、そのことを、私の決意も込めて申し上げたいというふうに思います。

 私は、青少年の特別委員会にも所属をさせていただいておりまして、ことし二月の大阪の岸和田市の事件の直後に調査に行かせていただきましたし、また、九月の時点で、北海道の方に青少年特別委員会の調査ということで行かせていただきました。

 そうした機会に、いろいろ現場の中で頑張っていらっしゃる皆様のお声の中で大変印象深いことがございまして、虐待を受けた子供の多くが大人に対しての不信感を根強く持っているということでございます。そうした子供たちに対して、現場でまず一番初めに大事なことは、そうしたお子さんたちとの信頼関係をいかにつくるかということ。非常に厳しいケースの場合には、この信頼感をつくるだけでも数年はかかるというケースもあるということでございまして、この虐待問題というのが非常に難しい、また困難な問題であるということを改めて認識する機会がたくさんございました。

 そこで、まず尾辻大臣にお伺いしたいと思いますが、児童虐待の現状と取り組みにつきましての大臣の思い、また取り組みに対しての姿勢、お考えといったことにつきまして、よろしくお願いいたします。

尾辻国務大臣 個々のケースまでよく御存じの委員にお答えいたしますのも今さらながらと思いますが、御質問でございますから、お答えいたしたいと存じます。

 児童虐待への対応につきましては、平成十二年の児童虐待防止法の施行以来、さまざまな施策の推進が図られてまいりましたが、依然といたしまして、虐待に関する相談件数は近年急増いたしておりますし、また、その内容も困難なケースがふえております。また、虐待による死亡という不幸な事件が発生をもいたしております。こうしたことから、社会全体として早急に取り組むべき重要な課題であると認識をいたしておるところでございます。

 こうした児童虐待は、子供の心身の発達や人格の形成に著しい影響を与えますとともに、虐待の世代間連鎖を引き起こすことも指摘されておりますなど、世代を超えて大きな影を落とすものでございまして、発生予防から虐待を受けた子供の自立に至るまで、今、大人に対する不信感というようなお話もございましたけれども、切れ目のない支援体制の確保が急務であると考えておるところでございます。

上川委員 今大臣のお話にもございましたとおり、相談件数というのが非常にふえているということでございます。特に、平成十二年からのデータを見てみましても、年々一・五倍とか一・三倍ということでございまして、平成十五年の時点では二万六千五百七十三件、まだ潜在的にはこの二倍とも三倍とも言われるぐらいの状況になっているんじゃないかというわけでございます。

 ことし三月に発表されました報告によりますと、これは児童虐待死亡事例の検証結果ということでございますが、虐待によって死亡した児童のうち、乳児が三八%と約四割を占めているということでございます。さらに、そのうち、四カ月未満のお子さんが五割を占めているという結果でございます。大変ショッキングな状況であるということでございます。

 今大臣がおっしゃったように、虐待の早期発見と自立支援ということが非常に重要でありますが、とりわけ、早期の発見と早期予防ということについていかに取り組むことができるかどうかということが、勝負どころではないかというふうにも思っております。

 私も育児をした経験から、母子手帳を、出産後も、ゼロ歳児の中でも一カ月健診、三カ月、四カ月健診、六カ月健診、九カ月、十カ月健診、あるいは一歳児になってからも半年ごとに、また三歳児健診と、いろいろな健診を受けた記憶がございまして、今どんなふうに変わっているのか定かではございませんけれども、そうした健診の折々に的確にその早期発見をしていくということが大事ではないかということを改めて、こうした乳幼児の死亡事例、とりわけゼロ歳児の死亡事例が多いという形の結果の中から出てくるわけでございます。

 そういう意味で、この乳幼児健診の機会を早期発見の非常にいいチャンスというふうにとらえていくことが大事ではないかということにつきましてのお考えをお聞かせいただきたいというふうに存じます。

伍藤政府参考人 御指摘のございました乳幼児健診の有効性でございますが、乳幼児健康診査は、親が専門家へ相談をいたします、あるいは専門家からいろいろ支援を受けられるということで、大変重要な機会であるというふうに考えております。

 こういったことから、私どもも、この乳幼児健康診査において、育児不安を抱える親などに対する専門的な心理相談を実施する、こういった観点から、親と子供が参加するグループワークを通じて親子関係を把握できるよう、平成十三年度から、一歳六カ月あるいは三歳児健康診査の場に心理相談員あるいは保育士、こういった方々を配置するような事業を進めておるところでございます。

 こういった取り組みを通じて、この乳幼児健康診査の場の積極的な活用に今後とも取り組んでいきたいというふうに考えております。

上川委員 乳幼児健診のこととのかかわりの中で、私が北海道で視察をさせていただいたときに大変印象深かったことなんですけれども、乳幼児健診に来られない家庭がむしろ虐待の可能性がある、あるいはリスクの可能性があるということでございまして、そうした御家庭を保健師さんたちが訪問をしていくという形で、家庭に入っていく機会。これは昔は、ゼロ歳児のときも、病院から帰ってきて一カ月ぐらいのときに、そのときは保健母さんというんですか、保健士さんが来られていろいろ育児の相談を受けられるということがございましたけれども、家庭の中に他人が入る一番初めの機会ということで、この家庭訪問というのは非常に大事な事業ではないかというふうに思うわけであります。

 それで、今ちょっと局長も御指摘になりましたけれども、乳幼児健診そのものの今の受診状況というのがどういう状況になっているのか、そして、受診していない家庭に対して訪問する事業ということについて、取り組みを始めたばかりということでございますが、この辺の市町村あるいは都道府県の実態につきましてどのような状況を把握していらっしゃるのか、お聞かせいただきたいと思います。

伍藤政府参考人 乳幼児健診の受診率でございますが、平成十四年度の実績で、一歳六カ月健診が九一・七%、それから三歳児健康診査が八八・一%、平均して九〇%前後の高い受診率になっております。

 しかしながら、逆に言いますと、一〇%前後が健診の未受診者ということでございまして、こういう家庭の中に、養育力が不足していたり、子育て支援が必要な家庭がかなり多くいるのではないか、こういう御指摘も受けておりますし、そういう実態があろうかと思いますので、こういった家庭を積極的に把握して支援をしていくということが、虐待防止のために非常に有効な手段だというふうに考えております。

 こういった観点から、今年度予算におきまして、私ども、育児支援家庭訪問事業、一定のメルクマールでそういった家庭を選び出して、行政の側から積極的にアプローチをしていくという事業を始めたところでございますが、関係の市町村において、なかなか、この事業を積極的に普及するというところまではまだ至っておりませんので、私ども、これからさらに力を入れて、こういう事業の拡充に努めていきたいというふうに考えております。

上川委員 今、育児支援家庭訪問事業ということで、ことしも積極的に予算をとるということでございますが、まだ始まったばかりということですが、平成十六年度の実施している市町村数を見ますと、百二十五件ということで、大変厳しい普及状況ということでございます。

 国の想定していた数の一三%という状況だというふうにも調査結果では明らかになっていることでございまして、なかなか普及ができないのは、新しい事業であってまだこれからの取り組みに期待するのか、それとも、このことを実施する上でいろいろ課題や問題が既にもう寄せられているのかどうか、この辺につきまして、よろしくお願いします。

伍藤政府参考人 まだ普及をしていないということについては、幾つか要因が考えられると思いますが、一つは、新しい事業であって、なかなか、私どもは努力しているつもりでありますが、市町村の隅々まで、こういった事業の有効性について、まだ周知がされていないのではないかというふうに反省をしているところでございまして、いろいろな機会を通じて、さらに広報、周知を図っておるというところでございます。

 それからもう一つは、保健師とか保育士を活用して家庭に出かけるということで、いわば市町村で福祉と保健が連携を図りながら施策に取り組む、こういうことでありますので、そういった部門を超える連携といったような難しさもあるのかなというふうに思っております。

 それから、三点目でありますが、市町村といいますか自治体は非常に財政が厳しいということで、関係部局はそういう認識を持っていても、なかなか新規事業が財政当局に取り上げられないというような実情もあろうかと思いまして、そういういろいろな要因が、なかなか施策が進まない背景にあるのではないかというふうに思っております。

上川委員 北海道でも大変この事業については力を入れていくということでございまして、ぜひ成功事例を積極的にPRをしていただきまして、津々浦々、こうした制度が有効に活用できるように、国も積極的に支援していただきたいというふうに思います。

 今、一歳六カ月と三歳児検診ということの中で、受診が九割、その中で一割の未受診の人たちに対して家庭訪問という事業でございますが、特に、先ほど申しましたとおり、ゼロ歳の虐待の死亡件数が非常に多いということで、ゼロ歳児、一歳までの間のさまざまな対応ということについては非常に大事であるというふうに改めて思うわけでありますが、その中で、特に医療機関との連携というのが、特にゼロ歳児の部分につきましては非常に重要ではないかというふうに思っております。

 現在、虐待児童を発見した医療機関は直ちに市町村へ連絡する手続が定められているということでございますけれども、乳幼児検診とか、あるいは病気治療の際に訪問してくる、親子が来るということでありますが、現状、こうした医療機関で児童虐待が発見され、また報告されるケースというのはどのくらいあるのか。ちょっとオープンになかなかデータが探せないものですから、もし把握していらっしゃることがあれば、教えていただきたいというふうに思います。

 また同時に、医療機関から市町村へ報告する制度というのも診療報酬の中にも定められているということでございまして、その周知徹底ということについては、通知等でしていらっしゃるということでございますけれども、非常に大事な点でございますので、この点につきましての現在の取り組みということにつきましてお願いいたしたいと存じます。

伍藤政府参考人 児童虐待の通報件数に占めます医療機関からの通報の割合でございますが、平成十五年度で医療機関から通報のありました件数が千二百三十五件ということで、全体の二万六千五百六十九件のおよそ五%という数字になっております。

 議員御指摘のとおり、医療機関からの通報というのは大変重要なことだというふうに思っておりますので、私どもも、こういった連携を強めるということで積極的に施策を進めておるところでございます。

 一つは、医療機関からの情報提供、こういうものが診療報酬上も評価をされるということになりましたので、こういったことを医療機関や担当の市町村に周知をする、こういうことを今努力しておるところでございますし、それから、市町村における情報の受け付けの窓口を地元の医療機関に周知をしていただく、こういうことも市町村に今お願いをしておるところでございますので、こういったことをさらに積極的に進めていきたいというふうに考えております。

上川委員 そうした情報をお互いに交換したとしても、その後、きちっとその事情に応じて対応していくということが非常に大事だということで、まさに連携というのをしっかり、仕組みの中でも、また意識の面でも、あるいはふだんの日常の活動の中でも徹底していくということが非常に大事だというふうに思いますので、ぜひ、さらなる指導徹底をよろしくお願いしたいというふうに思います。

 今回の児童福祉法の改正では、児童相談に関する体制の充実ということが大きな柱になっております。児童相談に関する各地方自治体の果たすべき役割分担を明確にし、都道府県が運営している児童相談所については専門性を要する機能に特化する、そして一般的な相談業務については市町村レベルに対応をゆだねるということが盛り込まれているわけでございます。

 そこで、まず市町村の役割についてお尋ねをさせていただきたいというふうに思います。

 先ほどの児童虐待の早期発見、発生予防ということで、今の医療機関との連携も含めまして、市町村の窓口、あるいは第一次的な相談機能ということが大変重要で、またその役割が期待されているということでございますが、今回の法改正では、要保護児童の対策地域の協議会を法定化していくということでございますが、そのねらいというのはどういうところにあるのでしょうか。

伍藤政府参考人 虐待にかかわります関係の機関というのは大変多いわけでありまして、こういういろいろな機関がどうやって情報を共有して連携していくかということが、虐待に対応する上での一つのポイントであろうかと思います。そういった観点から、現在、それぞれの市町村におきまして、いろいろなネットワーク、協議会といったようなものができておりますが、今回、それを法定化して位置づけを明確にするということを提案させていただいておるわけでございます。

 今回の改正の中においては、このネットワークの中の運営の中核となる機関を明確にするということで、責任体制を明確化するというのが一つでございます。

 それからもう一つは、このいろいろな関係機関の中には、医療機関でありますとか行政機関などのように、情報を提供することについて、いわゆる公務員の守秘義務とかそれぞれの専門家としての守秘義務がかかるような、そういう職種も含まれておりますので、そういったところからも、こういう一定の法律の要件を満たしたような場合にはそういった要件が阻却されるといいますか、ちゅうちょなくある程度、一定の目的を持って情報が提供できるというふうに法律で明確にするということが必要なわけでありまして、今回、協議会の構成員に守秘義務をかけた上で情報を共有するというようなことを、この法律上も明確にしたところでございます。

 こういったことで、責任体制を明確化し、それから、できるだけ幅広く地域の関係機関が情報を共有していくということを法律上明確にしていこうということで、今回、法律にはっきり位置づけておるというところでございます。

上川委員 その中核となります協議会ということでございますが、今、市町村の虐待防止ネットワーク、地域の中の各機関が連携していく、この状況につきましての平成十六年の六月調査、設置状況の調査ということで、いただいたものがございまして、今現在の設置状況は八四・七%ということでございます。

 この中でも、設置するというのがこれから法定の中でも義務づけられるわけでありますが、設置していない理由の幾つかのものの中に、地域の事情もあろうかと思いますが、コーディネートが非常に難しいと。これも、やはりコーディネートできる力を持っている方が中核となっていなければ、幾ら組織ができたとしてもそれがうまく運用できないということが指摘されているところでございます。

 今ある市町村の虐待防止ネットワークの実態の中で、どのようなところに問題があるのか。さらに普及し、それを充実していくために、今のような協議会の制度を法定化するというのも一つだと思いますが、さらにそれを充実していくための課題とか、それに対する取り組みということにつきましてのお考えをお聞かせいただきたいと存じます。

伍藤政府参考人 市町村のネットワークの今後の課題、問題点でございますが、私どもが調査をしたところによりますと、活動上の困難な点といたしまして幾つかございますが、先ほど委員の御指摘もありましたように、事務局に負担が集中をするとか、予算とか人材の確保が困難とか、それから効果的な運営方法がわからないとか、幾つかいろいろな要因が挙げられております。あるいは、関係機関の協力が得られないでありますとか、スーパーバイザーがいない。

 それぞれいろいろな要因が挙げられておりますので、今後これを法定化して進めていく上で、どういったところに、まずは人材の確保、それから、先ほど言いました責任体制の明確化、そこにおける人材の確保といったことが中心的な課題になろうかと思いますが、そういった地域の実態に応じてこれが有効に機能するように、今申し上げたようなところにも関心を注ぎながら、有効な方策についていろいろ指導していきたいというふうに考えております。

上川委員 今、局長の御指摘のとおり、大変大きな課題もあるということでありますが、大変期待も大きいということでございまして、それが地域地域の実情の中できめ細かく対応できるように、しっかりと指導し、また、そのための予算も含めまして、最大限の努力をしていただきたいというふうに思います。

 次に、今回の改正によりまして、児童相談所の機能が大変高くなるということでございます。要保護性の高い困難なケース、あるいはより高度な相談業務への対応に特化するということでございますし、また同時に、市町村へのアドバイス等も含めまして、その機能というものにつきましては、これまで以上にしっかりと取り組まなければいけないというふうに思うわけでございます。

 今、児童相談所に配置されているスタッフの配置状況というので資料をいただきましたけれども、児童福祉司さんが千八百十三人、これは平成十六年度ということでございますし、またスーパーバイザー、スーパーバイザーというのは教育・訓練・指導担当児童福祉司ということで、このスーパーバイザーの方が百三十二名ということで、全国の相談件数からし、また潜在的にあるというようなものからすると、まだまだ足りないということでございます。

 また、岸和田市の調査でも大変いろいろな相談の分野がありまして、現場では大変幾つもの相談の専門業務、幾つかの分野にまたがる相談を受けていらっしゃるという実態も強く出てきているところでございます。

 地域によっては、支援の基準に満たない児童相談所もあるということで、これも都道府県の比較を見てみますと、非常に厚く配置しているところもあれば、まだまだというところもございます。そうした面で、人員の配置、特に専門性の高い皆さんの配置ということにつきましての考え方と、あるいはこれからの取り組みということについて、よろしくお願いいたします。

伍藤政府参考人 児童相談所は、これから、市町村に一定の事務を担っていただいた上で、できるだけ複雑困難な事例に対応するような専門性を高めていく必要があるわけでございます。

 こういった観点から、平成十四年度に、私ども、国といたしまして、子どもの虹情報研修センター、児童虐待を中心にして、地方の職員あるいは施設の職員の専門的な研修をするという機関を設立いたしまして、先ほど御指摘のありましたようなスーパーバイザーの養成、こういった専門的な研修に今取り組んでおるところでございます。

 それから、今回提案をしておりますこの法律の改正案におきましても、児童福祉司の任用資格について、専門性を確保するという前提でございますが、幅広く人材を登用するという必要性があるのではなかろうか、こういう御議論もございましたので、この登用資格の見直しを図るということを提案しておりますし、それから、新任の児童相談所長、これは、やはり現場で、第一線でそれぞれ的確に判断をしていただく必要があるわけでありますが、こういう新任の児童相談所長に研修を義務づける、こういったことも今回の法案で提案をしておるところでございます。

 こういった総合的な取り組みで、今後とも、児童相談所の職員の専門的な能力の育成に努めていきたいというふうに考えております。

上川委員 今、専門性の向上のための研修というお話まで触れていただいたんですけれども、その前に、児童福祉司も含めましての児童相談所での専門性の高い機能を担うための体制というところにつきまして、今の現状は大変まだ人数的にも少ないということでありますし、また、高いレベルのプログラムを実施するためのさらなる資格というか皆さんも必要となるということでございまして、その点につきましての考え方につきまして、もう一度お聞かせいただきたいと存じます。

伍藤政府参考人 先ほど申し上げましたようないろいろな対策を講じていきたいということが基本でございますし、さらに、先ほど御提案のありましたスーパーバイザー、こういった機能をさらに充実するということも一つ必要でございますので、現在、都道府県において、児童相談所を中心にしたモデル事業を実施して、児童相談所のスーパーバイズ機能の充実を図る、こういったことにも取り組みを始めたところでございます。

 今後とも、先ほどの研修機関の活用とか、あるいはこういったモデル事業といったことを含めて、専門職員の育成と、それから地方における児童虐待対応のスーパーバイズ機能、こういったものの強化に努めていきたいというふうに思っております。

    〔委員長退席、宮澤委員長代理着席〕

上川委員 先ほどの御説明の中に、児童福祉司の任用資格につきましても見直しをするということでありまして、幅広い人材の登用の部分での資格の見直しや、新任の児童相談所長さんへの研修の義務づけということでございますが、児童福祉司さんの任用資格、あるいは幅広い人材登用ということで、保健師さんというような形での登用も考えられているということでございますが、そのあたりにつきましての、具体的にどういう形でお考えになっていらっしゃるのか、お聞かせいただきたく存じます。

伍藤政府参考人 児童福祉司の任用資格を広げるということでございますが、今回の改正の中におきましては、従来、心理学とか一定の科目を修めた者であれば自動的に児童福祉司になれる、こういうことでございましたので、もう少し専門性を高めるという観点から、今回は、こういった方々にも一定の実務経験を必要とするということを求める、こういう改正をいたしたいと思っております。

 それから、虐待そのものが非常に多様な背景を持って生じる、困難な事例が非常に多いということで、いろいろな専門職をやはり活用する必要があるんじゃなかろうかということで、今回は、一定の教育学とか心理学とか事務系の科目を修めて児童福祉司になれる、そういった従来のコースとは別に、一定の実務経験を有する保健師でありますとか、あるいは保育の現場で子供の問題に携わっております保育士、こういった方々も幅広く児童虐待とか児童相談の現場で積極的に役割を果たしていただくということができるんではなかろうか、こういう観点から見直しを図っておるところでございます。

上川委員 非常に困難な、さまざまな家庭環境の中で子供さんがいらっしゃるということで、いろいろなスキルを持った専門の方々がきちっと子供に的確に対応して、また信頼を得た形で、自立していくための支援ということでございますので、この運用につきましてもさらにきちっとウオッチしていただきまして、そこが十全にその機能を担っていただいているかどうか、あるいは、研修につきましてもぜひ充実させていただきたいというふうに思います。

 今御指摘がございました子どもの虹情報研修センターということでございますけれども、これは横浜市に置かれているもので、平成十四年の四月八日に設置されたというふうに伺っております。非常に幅広い研修業務を一手に担っていらっしゃるということで、大変貴重な施設ではないかというふうに思いますし、また、先ほど御指摘がありました児童相談所の所長さんのさらなる研修ということにつきましても、このセンターで担っていらっしゃるということでございます。

 現在の予算の状況と、それから、具体的なプログラムについて、力を入れているところ等につきまして、現状をお聞かせいただきたいと存じます。

伍藤政府参考人 子どもの虹情報研修センターでございますが、年間一億九千万円の補助、これは十分の十補助ということで実施をしていただいております。こういう専門職員の研修、あるいは調査、こういうことは国の責務であるというような観点から、こういった事業に取り組んでおるところでございまして、これを一層充実していきたいというふうに思っております。

 今御指摘のありました新任児童相談所長の研修でありますとか、あるいは情緒障害児の短期治療施設の医師の専門研修でありますとか、児童相談所のスーパーバイザーの研修、心理職員の研修、そういった非常に専門性の高い方々を、この中央のセンターに来ていただいて集中的に研修をする、こういったことで今やっておりますし、末端のそれぞれの職員は、また都道府県あるいは市町村、市あたりで研修をしていただくということで取り組んでおりますので、こういった専門職の研修にこれからも力を入れていきたいというふうに考えております。

上川委員 今、国の大変大事な責務ということで、この子どもの虹情報研修センターがナショナルセンターという役割を大変期待されている、また、それに向けて、予算ということで補助金を出していらっしゃるということでございますが、ぜひ、そうしたナショナルセンターとしての機能がさらに充実するように、こちらについてもよろしくお願いしたいというふうに思います。

 今、局長も御指摘がございましたけれども、地域の現場の中では、こうした極めて専門性の高い、レベルの高い研修プログラムのほかに、現場での経験、並びに、絶えず研修をしながらスキルアップというのが大変重要であるというふうに思います。

 特に、現場の中からは、自分たちの身近なところで研修のプログラムが、手軽にというか、すぐに受けられるような、そうした制度が欲しいというような御要望も強くいただいているところでございまして、今、市町村あるいは都道府県というお話がございましたけれども、こちらにつきましては、すそ野を広く、また同時に、広い人材をレベルアップするという意味でも、ナショナルセンターの専門性の高い機能の強化と、そして同時に、身近なところでの一般研修というところについて、二本立てでやるべきというふうに考えているわけでございます。

 特に都道府県や市町村レベルでの研修ということにつきまして、今、具体的な制度ということで取り組んでいることがございましたら、お聞かせいただきたいというふうに思います。

伍藤政府参考人 先ほども答弁いたしましたとおり、専門性の非常に高い職種につきましては国において一元的に研修をする、そのほかの職員については、都道府県、それから、先ほど市町村と申し上げましたが、現在は都道府県と指定都市がこの児童相談の業務を担っておりますので、都道府県と指定都市において通常の職員の研修を行う、こういう二本立ての体制になっております。

 一般の都道府県や指定都市における研修、これも非常に重要だというふうに思っておりますので、十六年度からは、都道府県、指定都市におきます専門的対応マニュアル、ガイドラインを作成したり、それから、相談対応職員の専門性強化のための研修を実施する、こういったことを国の助成のもとに実施しておるところでございます。

 それから、来年度の予算の要求におきましては、新たに、保健師等の新たな職種の任用資格に対応するための研修の実施、先ほど申し上げましたように、この任用資格を広げるということで、そういったものに対応する研修を実施していただきたいということで、一定の予算の準備をしておるところでございます。

上川委員 先ほど、中央の研修ということで一億九千万という予算の計上を御指摘いただきましたけれども、今おっしゃったような市町村あるいは都道府県レベルの研修、あるいは、平成十七年度につきましては新しいプログラムに対しての予算ということで措置していらっしゃるということでありますが、具体的な予算、どのくらいの規模であるかということにつきまして、お願いいたします。

伍藤政府参考人 児童相談所の機能強化事業といたしまして五億五千八百万円計上しておりますが、この中でいろいろな事業を都道府県、指定都市で選んでいただくということで、これはすべてがこの研修のための費用ではありませんが、内訳はちょっとわかりませんが、こういう児童相談所の機能強化事業というような予算の中で、こういった研修にも対応しておるというところでございます。

上川委員 研修のプログラムのマニュアルの開発、あるいはそれの現場での徹底ということについては、してもしても足りないぐらいの状況であるというふうに思います。予算につきましても、ぜひ都道府県、市町村でそうした予算が積極的に実施できるように、またサポートの方もよろしくお願いしたいというふうに思います。

 さて、先ほど冒頭で申し上げさせていただきましたけれども、虐待を受けたお子さんというのは大人への不信感が非常に高い。一番身近な大人というのは親であるというわけでありまして、問題の根深さということを御指摘させていただきましたけれども、こうしたお子さんが自立していく過程の中で、やはり協調性とかそういう面では非常に厳しいものがあるということで、大きな規模の施設ではなかなか対応ができないというような御指摘も聞かれるわけでございます。

 そういう意味では、もっと小規模な生活環境を準備する必要があるのではないかということで、こうした点につきましても力を入れよう、こういう方向でございますが、現状と今後の取り組みの方針につきまして、お願いいたします。

伍藤政府参考人 虐待を受けた児童等のその後のケアの問題でございますが、御指摘のように、できるだけ家庭的な環境で受け入れて再生を図る、こういったことが必要だろうと思います。そういった観点から、児童が将来の家庭のモデルを経験できるようにする、こういう考え方と、それから、虐待という非常に深刻な事態をくぐり抜けてきた子供に対してよりきめ細かなケアを行う、こういう二重の意味で、今、グループホームのようなケアの小規模化というものを私ども進めておるところでございます。

 具体的には、十六年度予算におきまして、グループホーム型の児童養護施設である地域小規模児童養護施設を四十カ所から百カ所に拡充をするということを今進めておりますし、それから、グループホームはできなくても、既存の養護施設の中で小規模なグループによるケアを行う、施設の中でケアを小規模化していく、こういうことでありますが、そういった単位を最低一カ所は整備する、施設の中に一単位は整備をする、こういうことで必要な職員を配置するような予算を計上しておるところであります。

 こういうグループホーム化でありますとかケアの小規模化といったことについては、今後非常に重要な課題だと考えておりますので、今後とも積極的に進めていきたいというふうに思っております。

上川委員 本来ならば、親子そろって家庭の中で暮らしていく、自立していくという形が望ましいわけでありますけれども、施設ということでございまして、家庭的な環境の中で子供たちが心を開いていくことができるような、そうした取り組みということについては、特に重要というふうに考えます。

 今、四十件から百カ所ということでありまして、だんだんに成果が出てくればさらに広げられるとは思いますけれども、一番初めの、初期の取り組み、あるいはこれから発展する上で、ぜひ初期の取り組みの中の課題とか問題点を十分に参考にしていただきながら、全国の中でもいろいろな地域に合わせたホームづくりということについて、現場の声を十分に聞いていただいて、きめ細かく対応していただきたいというふうに強くお願いするところでございます。

 もう一つの可能性として、里親制度ということにつきましても、今回大変に力を入れようということでございまして、日本の中では里親制度がなかなか普及しないという悩みも実は聞くわけでございます。こうした里親制度を普及させるためには、今どういう課題や問題点というのを認識されていらっしゃって、それを克服すべく、どういう形で対応策を考えていらっしゃるのかということにつきまして、お願いをいたします。

伍藤政府参考人 虐待等を受けた子供を、先ほども施設の小規模化について触れましたが、できるだけ家庭的な環境の中でケアをしていく、それが再生への非常に近道であるということで、里親制度の有効性が見直されておるところでございます。

 私どももこれは大変有意義な制度と思っておりますが、趨勢的には、ずっと戦後一貫して里親の数は減少ぎみでございました。ただ、里親について、この数年、専門里親の制度でありますとか親族里親でありますとか、里親に対するいろいろな支援措置を講じてきておりますが、その成果かどうかわかりませんが、この二、三年には、減少傾向から少し増加傾向に転じたところでありまして、私ども、これを非常に心強く思っておるところでございます。

 平成十六年度におきましても、さらにこういったことをサポートしていくということで、里親をさらに支援する制度を設けたところでございます。里親自身もいろいろやはり、被虐待児童をケアする、それも一人二人と預かっている家庭もございますが、そういった方々の負担を少しでも軽減するという観点から、里親をサポートする方々を定期的に、一週間に一回とか、ヘルパー的に派遣をする事業でありますとか、あるいは、里親がそれぞれの抱えている悩みをお互いに話し合える場、交流の場をつくる、こういったことで、お互いの養育技術の向上とか、悩みのお互いの交換といったようなことを通じてまた新たな意欲を出していただく、こういった事業を十六年度から始めたところでありまして、こういったいろいろなサポートを強めることによって、できるだけ里親の数をふやしていきたいというふうに思っておるところでございます。

上川委員 親子が分離しながら、小規模なグループホームあるいは里親で家庭的な環境で子供たちが立ち直っていく、それをまた周りから支援していくという形、そうしたきめ細かな相互のサポートのし合いということが大事だということでございます。

 本来ならば、子供は親のもとで育つというのが本来の姿だということで、できるだけ親子の再統合のプログラムということについて充実させていくべきだというふうに考えていますが、今回も北海道で視察をさせていただきまして、施設を見させていただきました。いろいろ、親子のグループカウンセリングとか、あるいは家庭、家族の統合のためのさまざまなプログラムが実施されているということでございますし、また、そのための施設ということにつきましても拝見させていただきました。いろいろ試行錯誤の中で、それぞれの子供の状況に応じて、また親の家庭環境の中で努力していらっしゃるということで、大変苦労していらっしゃる現場を見させていただきました。

 こうした施設の整備、あるいは具体的に統合のプログラムを本当にしっかりと開発して、そして、いいものをつくったものを実践していくということが非常に大事だなということを改めて感じたところでございます。

 いろいろ、各都道府県の中、あるいはさまざまな児童養護施設の中でもそうしたことを努力しているわけでございますけれども、こうした取り組みに対しまして具体的な国の支援という形で、先ほどマニュアルをつくるという形のものもございましたけれども、こうした親子の統合プログラムについての、あるいは統合の実践活動に対しての支援という形について、事業の現状と今後の取り組みの考え方ということについて、お聞かせいただきたいと存じます。

伍藤政府参考人 虐待問題の中でも大変難しい、最大の課題でありますが、再統合というところで、もとの家庭にいかに復帰させるかということで、非常に高い技術、あるいは専門性を要する部分でございます。

 現在、養育力の不足している保護者には一般の子育て支援サービスを活用する、こういった方法が一般的でありますが、さらに、社会的に孤立している保護者にはグループでの援助、グループワークと言っておりますが、こういった形でいろいろな支援の手を差し伸べるといったことをやっておりますし、それから、精神障害のある保護者などにつきましては医療機関のあっせんによる治療を提供する。対象のさまざまな形態によっていろいろな支援の仕方も異なるわけであります。

 いずれにしても、そういったことで、親と最終的に再統合して一緒に住んでいただくということのために、どういうふうな親指導を行い、再統合のためのプログラムを準備すべきか。なかなかこれは難しい、統一的なものはまだ開発されておりませんが、それぞれの都道府県あるいは児童相談所で先駆的に取り組まれている事例もございますので、私ども、そういうものを参考に、そういったものを全国にまた紹介するとか、あるいは、国自身が厚生労働研究というような研究費を活用して、いろいろな専門家の方々から幾つか提言をいただいている部分もありますので、そういったことを全国に広めていく、こういったことも今やっておるところでございます。

 今後とも、先ほど言いましたように大変難しい分野であるし、かなりおくれておるところでもございますので、こういった保護者に対する効果的なプログラムの開発について、さらに研究を進めていきたいというふうに考えております。

上川委員 北海道に視察に行かせていただいたときに、天使の園という施設、児童養護施設でございますけれども、行かせていただきまして、大変家庭的な雰囲気の中で、集団で暮らしているわけでありますけれども、先生方も大変きめ細かな、温かい心で御指導なさっている。恐らく全国のどの地域の中でもそうした皆さんが頑張っていらっしゃるというふうに、非常に心強く思って帰ってきたところでございます。

 そうした現場の皆さん、とりわけ親子の統合をできるだけ図りたい、しかし、なかなか親御さんたちが子供の方を見ない、見てくれないという中で、きめ細かな活動をしていらっしゃるということでございますので、先ほど精神的ないろいろなモデルの施設あるいはプログラムを応援していくというお話がございましたが、ぜひそうしたものをもっと注目していただきまして、光を当てていただきまして、いいモデルはすぐに全国の中でも取り入れていただけるような、スピーディーな対応をしていただきたいというふうに強くお願いしたいと存じます。

 先ほど、いろいろな場面の中で予算という形で頑張っていらっしゃるということでございましたけれども、平成十二年に成立した児童虐待防止法、その後も虐待件数、相談件数は引けをとらないぐらい増加しているということでございます。事件が起こるたびにいろいろな対応策に右往左往しながら、大分地に足のついた形で、全体としての底上げが図られてきているなという感じはいたしますけれども、予算的にはまだまだだというふうに私自身は感じているところでございます。

 各自治体の取り組みにつきましても、先ほど来、いろいろなプログラムにつきまして御指摘をさせていただきながら、またその普及状況等についても御報告をしていただいたところでございますが、施設関係、例えば地域の小規模な児童養護施設、これの普及状況を見ましても、まだ五六・七%である。あるいは小規模のグループケアにつきましては六五・〇%、家庭支援専門相談員の数は九割、個別対応の職員八四%ということでございますが、いろいろな事業につきましても、普及状況につきましてはまだまだまちまちであるということでございます。

 今回、こうした予算ということで、今、三位一体改革ということで、この分野につきましてもいろいろ議論がされているところでございますが、今まさに国がリーダーシップをとってしっかり、市町村も巻き込んだ形で、全体的な仕組みづくり、あるいは専門職の皆さんのレベルアップということで、いろいろなプログラム、事業を進めていくということでございますが、三位一体の改革との関連で、児童虐待防止にかかわる予算のあり方につきましての基本的な考え方というのをお聞かせいただきたいというふうに思います。

伍藤政府参考人 児童虐待対策といわゆる三位一体改革との関係でございますが、今回の地方団体の提案によりますと、今議員から御指摘のありました児童虐待あるいは要保護児童対策といった補助金、負担金すべてを廃止するということになっております。

 私どもの考えといたしまして、この分野の取り組みには、今議員からも御指摘のありましたように、非常に大きな都道府県格差あるいは市町村の格差がある。そういったもとで早急な体制づくりを進めていくためには、国の支援が不可欠であるというふうな認識でございます。特に、児童虐待というものは子供の生命、安全にかかわる問題でありますので、それぞれの自治体に任せて自治体の判断でやればいいというようなものではないというふうに私ども考えております。

 それから、一般的に、児童虐待も含めて児童の問題、今回の三位一体では、すべて補助金を廃止すべきだ、地方に任せるべきだという考えで提案がまとめられておりますが、こういった児童の分野につきましては、対策が仮に不足しても、これを監視したり改善する力が非常に働きにくい。これは、地方政治の、何といいますか、いろいろな力関係の中で、児童の分野を代弁する、利害を代弁する方がいないというような観点から、なかなか児童の問題は、隅に追いやられたり、非常に日陰に追いやられておったというのが現状ではないかというふうに思います。

 そういった観点で、児童虐待とか、今起こっておる具体的な問題にどう対応していくかということ。私どもは、国を挙げてやはり取り組んでいく必要がある、それから、地域格差が許されるような問題ではないというふうに基本的に思っておりまして、こういった観点から、今御指摘のありましたような児童虐待のいろいろな補助金につきましても、養護施設等の措置費については従来どおり負担金で維持すべきだ。それから、その他の政策的な補助金につきましては、使い勝手をよくするという面は必要かと思いますので、ある程度統合補助金に整理をして、しかしこれをきちっと児童虐待とか児童の分野に活用していただく、そういう枠組みは守るべきだ。こういう基本的な考え方のもとに、今、私どもの厚生労働省としての提案をさせていただいておるところでございます。

上川委員 大変大きな問題であるというふうに思います。また、もろもろの、予算の執行状況、あるいはこれからさらに充実、支援していかなければいけないという観点からすると、三位一体の改革とのバランスということについては大変難しい判断が要求されるというふうに思いますが、最後に、これからの児童虐待政策に対しての取り組みもあわせて、大臣御自身のお考えをお聞かせいただきたいというふうに存じます。

尾辻国務大臣 冒頭申し上げましたように、児童虐待への対応につきましては、社会全体として早急に取り組むべき重要な課題でございます。でありますからこそ、今般の児童福祉法の改正もお願いしたところでございます。

 そしてまた、ただいままで御答弁申し上げてまいりましたように、平成十六年度予算では前年度の約三・五倍の予算を組みまして、大幅な拡充に努めてまいりました。

 ただ、来年度予算につきましては、三位一体との絡みもございますけれども、私どもは、今局長が御説明申し上げました私どもの代替案を提示しておるところでございますけれども、万全を期したいと考えておるところでございます。

 そして、きょう、先生からさまざまな御指摘もいただきました。こうしたものを参考にさせていただきながら、虐待という重大な権利侵害から子供を守り、子供が心身ともに健全に成長できるよう、最大限、力を尽くしてまいりたいと存じます。

上川委員 今の大臣のお言葉、ぜひぜひよろしくお願いしたいというふうに思います。

 特に、少子社会ということで、これから子供が国の宝という中の、一つの大事なメッセージを、この虐待の子供たちの声の中、発しているというふうに思います。ぜひそうした意味で取り組みを強化していただきたくお願いを申し上げまして、質問を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。

宮澤委員長代理 次に、古屋範子君。

古屋(範)委員 公明党の古屋範子でございます。

 本日は、児童福祉法の一部を改正する法律案につきまして、厚生労働大臣にお伺いをしてまいります。

 公明党の強い主張が随所に反映されました改正児童虐待防止法が十月一日に施行され、一カ月余りが過ぎました。昨年八月、私が衆議院の予定候補者になりましたときに、厚生労働大臣に見直しとまた対策強化を申し入れ、その申し入れを行ったのがまさしくこの児童虐待防止法でございまして、私たちが推進してきたその改正法が実現したことに、大変感慨深いものがございます。

 厚生労働省が本年九月に発表した昨年度の児童虐待相談処理件数は二万六千五百六十九件、前年より二千八百三十一件増加をしております。これは、十年前と比較いたしますと一六・五倍と、増加の一途をたどっているわけでございます。虐待のすそ野が広がっているというふうに考えられます。

 こうした現状を見ますと、改正児童虐待防止法に基づく早期発見や自立支援など、行政の早急な体制整備が求められていることがわかると思います。この改正法は、国と地方自治体の責務として、虐待の発生防止から子供の自立に至るまで、切れ目ない支援を行うことを主眼とするものであり、これまでの待ちの支援から積極的に打って出る支援への転換であり、防止への大きな効果が期待されているところでございます。

 虐待防止策の充実強化を図るためには、児童相談所の充実強化を盛り込んでいる今回の改正案は、さきに施行されている改正児童虐待防止法とあわせて両輪となる大変重要な法律であり、早急に成立させるべきと考えております。

 ここで、改めまして、施行一カ月余りを経過した児童虐待防止に関する尾辻大臣の御所見をお伺いいたします。

尾辻国務大臣 改正されました児童虐待防止法が十月一日から施行されたところでございますけれども、大変残念なことに、施行後におきましても、子供の虐待死など痛ましい事件が後を絶ちません。再三申し上げておりますけれども、児童虐待への対応は、社会全体として早急に取り組むべき極めて重要な課題であると認識をいたしております。そして、こうした児童虐待に対応していきますためには、先生お話しのように、発生予防から虐待を受けた子供の自立に至るまでの、切れ目のない支援体制の確保が急務でございます。

 こうしたことを踏まえまして、これまた今お話し申し上げましたように、今般の児童福祉法の改正をお願いいたしておりますし、さまざまな政府の手を打っておるところではございますけれども、虐待という重大な権利侵害が繰り返されることのないように、私どもはできる限りのことをしていかなければならない、そう考えておるところでございます。

古屋(範)委員 大臣も、大変この問題に関しましては深い御認識をお持ちというふうに伺わせていただきました。

 次に、この虐待予防の強化策として、育児支援家庭訪問事業についてお伺いしてまいります。

 私も今、高校生の子供がおりますけれども、子育て、子供が幼いころ、夫が海外出張が多く、ほとんど二人でいなければいけない、そういう中で、母親が虐待に至るケース、その心理というものもわからなくはないという気がいたしております。多くの周りの友人に支えられて、助けられていたという記憶がございます。

 この育児支援家庭訪問事業、新座市に参りましたときも、そこでも、初めてのお子さんが生まれたときには保健師が家庭訪問するという、大変これは喜ばれているというような地域も見てまいりました。この育児支援家庭訪問事業は、我が公明党がマニフェストに明記するなど強く要望してきたもので、出産後間もない時期や家庭に問題を抱えている親などが対象となります。保健師などが直接出向いて育児支援をすることで、育児不安やストレスを解消し、虐待を事前に食いとめる効果があるというふうに期待されているものでございます。

 これまでの児童虐待防止策は、虐待が起きてしまってからの対応に追われていた。その一方で、予防対策として、親同士が交流するつどいの広場の普及、また、虐待の兆候を見抜くために乳幼児健診に保育士を同席させるなどの取り組みは推進されてまいりました。しかし、健診に来ない、家に引きこもっている、このような家庭には目が届きにくいのが現状でございます。

 こうした健診に来ない家庭も含め、幅広く訪問し、積極的に虐待の予防につなげる。本年度、約二十億円の予算を組んでこの育児支援家庭訪問事業が実施されておりますが、予算化した自治体は百二十五市町村と、当初予想した約一割、大変低い率にとどまっております。各自治体は、財政が苦しい中、数字にあらわれる効果が確認しにくい事業には予算をつけにくいとおっしゃいますが、既に導入し、手ごたえを感じている自治体も少なくありません。

 虐待を事前に食いとめる効果が期待されている本事業の取り組みの現状とともに、さらに広く活用するための啓発や具体策について、どのようにお考えでしょうか。

伍藤政府参考人 育児支援家庭訪問事業につきましては、委員御指摘のとおり、私ども、約千市町村ぐらいで取り組んでいただくという前提で予算を今年度計上いたしましたが、現在、百二十五市町村、実施率で一三%程度にとどまっておるという実情でございます。

 その要因、原因でございますが、先ほども申し上げましたが、自治体の財政難の中で、財政当局にこういった事業の有効性についてなかなか理解が得にくい面があるのではないか。それから、保健と福祉が連携をして取り組むというようなことも必要になってまいりますが、そういったことについての機動性がなかなか確保できない、あるいは人材が確保できないといった面もあるのかなというような気がいたしております。

 いずれにしても、私ども、個別には電話によって各市町村にお願いをするといったことまで今展開をして、この事業、ぜひ取り組んでいただきたいということをお願いしているわけでありますが、今後とも、いろいろな、あらゆる機会をとらえて、こういった事業の有効性について訴えていきたいと思います。

 ただ、今回の法案改正で、市町村が具体的に児童相談、児童の関係の相談業務を担うということが法律的にも明確にされますので、来年度以降、そういった形で、児童相談に市町村が直接対応しなければならないという法的な位置づけができてくれば、今のような任意でやる事業以上に、市町村の自覚も高まってくるのではないかというふうに期待をしておるところでありまして、こういう今回の法律の施行とあわせて、ぜひこれを浸透させていくように努力をしていきたいというふうに思っております。

古屋(範)委員 さまざま努力をされているようでありますけれども、核家族化が進んでおりますし、また、この密室というものに風穴をあける観点からも、ぜひともこの事業、さらなる推進をお願いいたしたいと思います。

 次に、児童福祉法改正案についてお尋ねをしてまいります。

 改正案の第十条一項また二項、十一条、また第十二条では、児童相談に関する体制の充実強化策の中で、人手不足に悩む児童相談所の機能を、虐待など専門性の高い困難事例に重点化し、相談業務を市町村に分担するとしております。

 児童福祉司の不足が叫ばれている今日、育児相談などは市町村が担い、また、児童相談所は虐待など深刻なケースを取り扱う専門機関にする。この体制整備によって、児童相談所の日常的な相談業務の負担が減る分、深刻事例への緊急対応が今より可能になるのではないかということが期待をされております。

 私はこのように理解しており、考え方はそのとおりというふうに思いますが、果たして現場において、改正案に描かれているようなことが現実になっていくのかどうか。私は、児童相談所の人手不足、また過重な仕事量、非常に満杯であるというふうに思いますけれども、仕事量に変化はないのかとの危惧を抱いております。この点について、具体的な御説明をお願い申し上げます。

伍藤政府参考人 今回の法律改正で提案をしております相談体制の役割分担でありますが、児童相談所が現状では非常にパンク状態である、こういうことから、ある程度これを専門的な相談に特化をして、基本的といいますか初歩的な相談、その他援助については市町村に役割を担っていただこうということで始めて、市町村の役割というものを法定化するということで御提案をしておるところでございます。

 こういったことによって、今御指摘のありましたように、体制はそれで本当に大丈夫かという指摘でございますが、これは、児童相談所の体制は今後どうなるのかということと、市町村の体制は大丈夫かという二つの面があろうかと思います。

 市町村につきましては、既にかなりのところでネットワークを組んでいただいて、事実上、もう先行してやっておる市町村も多うございますので、そういったことをモデルにしながら、軽度、初歩的な問題について前さばきをしていただく、こういった任務を市町村にお願いしたいということでございます。しかし、そういったものでも、やはりある程度のスタッフとかある程度の専門性が要求されると思いますので、市町村の体制整備についてはどういったことが望ましいのか、これからよく私どももあわせて検討していきたいと思います。

 それから、児童相談所がこれによって急激に事務量が減るかというと、必ずしもそうでもない。やはり、ふえ続けておる虐待相談とかそういったものにどう対応していくか。それから、市町村に任務を担っていただくとすれば、その市町村をある程度支えたり後方から支援をする、バックアップをしていただく事業も必要になりますから、こういった面で、必ずしも軽減をされるとは限りませんが、とにかく、都道府県と市町村が力を合わせて、あらゆる機関を総動員してこういった問題に対応していこうということで今回提案をしておるわけでありますので、いろいろ推移を見ながら、できるだけそういう体制の整備についても努力をしていきたいというふうに思っております。

    〔宮澤委員長代理退席、委員長着席〕

古屋(範)委員 市町村とそして児童相談所、このネットワーク、また円滑なスタートをお願いしたいというふうに思います。

 次に、二十五条では、児童虐待の早期発見や予防などを目的に、保健、医療、福祉、教育、警察、司法などの諸機関が構成する児童虐待防止ネットワークについて述べられておりますが、現在、六月まで、全市町村の四割でこの設置をされているということが厚生労働省の調査で明らかになっております。

 虐待が判明しながら、各機関の連携がないままに悲惨な事件に発展するということが相次いでおります。このことを考えますと、関係機関の連携強化は大変に重要であり、全自治体への早期設置を目指し、対策を強化すべきと考えます。

 今回の改正案において、ネットワークを要保護児童対策地域協議会として法的に位置づけることにより、一日も早い体制の整備ができることが期待されておりますが、その推進についてお伺いいたします。

伍藤政府参考人 このネットワーク、御指摘のとおり、現在、全市町村の四割程度に設置をされておる、これは任意で、自主的に設置をされておる。非常に有効に機能しておるところもございますし、形だけにとどまっておるところもありまして、精粗さまざまでございます。

 今回、法律でこの設置を法定化するということでございまして、そのねらいは、先ほども御説明申し上げましたが、やはり、中核になる責任ある機関をはっきりさせて、責任ある対応がとれるようにするということと、それから、情報の共有化を図るために、一定の守秘義務のもとに、できるだけ情報をそれぞれほかの機関に提供していただく。

 こういうことをこの法律で可能にするという観点から、これを法定化したわけでありまして、これで多分、今よりさらにドライブがかかって設置が促進されるというふうに思いますが、一応、今四割程度で、都市部はカバーをしてきておるという状況でございますので、これから、まだ虐待とかそういった問題についての認識が必ずしも高くない町村部でありますとか、そういうところにもこういうネットワークを広げていきたいというふうに思っております。

古屋(範)委員 そのように、それぞれの機関が部分的な情報を持っていても、それを合わせることによって一人のお子さんへの虐待というものが明確になってくるというふうに思いますので、さらにこの協議会の推進をよろしくお願い申し上げます。

 次に、虐待防止のかなめとなっております第十三条関係の児童福祉司についてお伺いいたします。

 厚生労働省からいただいた資料によりますと、全国に配置されている児童福祉司の数は、本年五月現在で千八百十三人となっており、国が交付税で予算措置をする人口六万八千人に一人という基準を満たす自治体は、全体の四割となっております。すなわち、全国の都道府県のうち二十八都県が、対策のかなめとなる児童福祉司のこの配置基準を満たしておらず、急増する虐待件数に対応し切れないというのが現状であります。さらに、児童福祉司一人が年百件を超える虐待相談を受け付けるなどの対応に追われ、熱心な人ほど燃え尽きてしまうというのが現状でございます。

 こうした事態に対し、虐待防止のための予算も、今年度百六十六億円と昨年度の三倍以上獲得、また、来年度予算の概算要求でも百七十億円計上するなど、厚生労働省がこの児童虐待防止に熱心に取り組んでいる姿勢は大変評価できると思っております。

 そして、ここ数年、政府は地方交付税の算定基準における児童福祉司の数をふやし、先ほど申し上げましたように、現在では六万八千人に一人となったわけでございます。

 しかし、御存じのように、地方交付税はその使途に拘束力がないために、国が増額しても、自治体の裁量にゆだねられ、児童虐待防止策に生かされないというのが事実でございます。

 例えば、基準の倍以上の手厚い配置をしているのが青森でございます。人口約三万人に一人の割合で児童福祉司がおり、最も少ないのが岐阜県、約十二万人に一人、この格差が四倍となっております。

 国からの交付税に県費を加える県がある一方、交付税を他に回してしまう県がある。こういう事態がなぜ起きるかと申しますと、その原因は、児童福祉法施行令第二条が福祉司の配置基準を人口十万から十三万人に一人と定めている、ここが原因ではないかと思っております。

 そこで私は、この児童福祉司の増員を自治体に義務づけるために、例えば、現在手当てをされている地方交付税の増額分が生かされる数、六万人に一人などに改正すべきであると考えておりますが、いかがでございましょうか。

 児童福祉司の人数不足は、虐待対策に致命的であります。虐待されている子供は自治体を選ぶことはできない。自治体間の格差はなくしていかなければならないと考えますが、大臣の御見解をお伺いいたします。

尾辻国務大臣 このことは、今話題になっておることの一つでございます。

 御指摘いただきましたように、児童福祉司の配置につきましては、児童福祉法施行令におきましては、お話ございましたように、十万人から十三万人に一人という標準になっております。

 一方、このところ児童相談の件数が急増いたしておりますから、国の方でも、地方交付税の方ではどう計算しておるかといいますと、積算基礎人員の増員を図ってきておりまして、これまた今お話しのように六万八千人に一人、こういうふうになっております。

 そうすると、どういう現象が起こるかといいますと、ほとんどの都道府県が、児童福祉法施行令の標準は十万から十三万人に一人でありますから、その標準は上回っておるんですが、六万八千人に一人という地方交付税の方で計算をすると、なかなか、その積算基礎を満たしていない。これもお話がありましたけれども、満たしておる自治体が四〇%にとどまっておる、こういう現象になっております。そこで、今お話しのように、それでは、この児童福祉法施行令の方が緩いわけだからこっちを変えろという御意見があるのは、これは当然だと思っております。

 そこで、私どものこのことに対する今の考え方を述べさせていただきますけれども、児童相談に関する市町村と都道府県の役割分担の明確化などを内容とする、これは今度お願いしておる改正の中身を申し上げたところでありますが、こうした改正案だとか、それからまた、非常に今、市町村合併が大きく進んでおります。そうしたことが児童相談所の業務に及ぼす影響、評価がある程度固まった段階で、その時点で地方の自主的、主体的な判断を尊重する観点も勘案しながら検討していくことが適当であろう、こういうふうに考えておるところでございます。

古屋(範)委員 次に、この児童福祉司の資格要件についてお伺いいたします。

 虐待防止法が制定された平成十二年には児童福祉法も改正され、その際、児童福祉司の資格要件から、養成施設卒業者に準ずる者というあいまいな規定がなくなり、新たに国家資格の社会福祉士が加わり、厳しくなりました。ところが、今回の改正案では、幅広い人材が登用できるようにとして、保健師、看護師、教員、また保育士からも登用されることが可能としております。これは、前回の改正で厳しくした資格を再度緩和しようとするものではないかという懸念の声もございます。

 児童福祉司の任用資格の見直しについては、必要な専門性を確保することが何よりも求められていると思いますけれども、この点についてはいかがでございましょうか。

衛藤副大臣 仰せのとおりでございまして、児童相談に関して専門性を有する職員の確保が急務であるというぐあいに考えております。

 そういう中で、現行制度での任用が認められております、心理学だとか社会学だとか教育学だとか、あるいは医師だとか社会福祉士だとか、そういう専門の学科等を修めて大学を卒業した者について、相談業務に従事した一定の経験を有するものが必要というぐあいにされております。

 そういう中で、実は、それだけではどうしても不足ぎみでございますので、一定の実務経験を有することを前提に、今現場で活躍していただいています保健師、保健婦さんや保護司さん、保育士といった幅広い人材を活用するということを認めるものとしたものでございます。

 経験を有する者をもっと登用していきたいというぐあいに思っておりますので、緩和というよりも、対象者を拡大しましたけれども、専門性はもっと煮詰めていきたいというぐあいに思っておりますので、専門性を低下させるものではないという認識をいたしております。

古屋(範)委員 ぜひそのとおり、専門性の確保をよろしくお願い申し上げます。

 次に、先ほども御質問ございましたけれども、里親制度についてお伺いをしてまいります。

 私も、神奈川県川崎市あゆみの会という里親の会、そこの西川会長にお会いし、また、実際、里親として預かっていらっしゃる方々にもお会いし、お話を聞く機会がございます。やはり、かなり重傷な被虐待児を扱っている場合に、日々そういうお子さんと向き合って、休む間がないといいますか、生活そのものも本当に縛られ、また、なかなか相談するところも少ない、機会が少ないということで、里親の方々も非常に御苦労をされているというのが現状でございます。

 今、本年三月三十一日現在、この専門里親の資格取得者は百六十九人でありますけれども、実際に委託は一割程度ということで、なかなか活用されていないというのが現実ではないかというふうに思っております。

 この里親制度につきまして、もっともっと活用すべきではないかと思いますし、また、このような大変なケースを取り扱っている里親の皆さんの負担というものも軽減すべきではないかというふうに考えております。心に傷を受けたお子さんたちが、普通の家庭環境の中でその心の傷をいやすというのは、大変大事なことではないかというふうに思っておりますけれども、このさらなる充実について、大臣の御所見をお伺いいたします。

尾辻国務大臣 おっしゃるように、里親制度というのは大変有意義な制度であると考えます。

 ただ、ではどのぐらい活用していただいているかといいますと、今私の手元にある数字で申し上げますと、平成十五年で里親として登録していただいている方の数は七千二百八十六人なのでありますが、実際委託された里親の方の数というのは二千十九人。それから、特に専門里親になりますと、これはまだ制度ができて二年しかたっていないということもございますけれども、平成十五年でいいましても、登録しておられる方の数が百四十六人、実際に受託していただいた里親の数は二十人、こういうような数でございます。

 そこで、今御指摘いただきましたように、この里親の皆さん方の負担をできるだけ小さくしてさしあげる、こういう努力はしなきゃならぬと思っておりますので、平成十六年度におきましてどういう施策を講じたかといいますと、里親の養育負担を軽減するために、児童相談所から里親をサポートする者を派遣しその養育を援助する、あるいはまた、里親相互の交流機会を設けていろいろ話し合いをしていただく、情報交換等により里親自身の養育技術の向上を図る、そういったようなことをいたしておるところでございます。

 このようなことをいたしながら、里親制度、せっかくの制度であります、大変有意義な制度でございますから、活用が図られるよう、今後とも努めてまいりたいと考えます。

古屋(範)委員 ちょっと時間の関係で、一問、質問を省かせていただきます。

 最後になりますけれども、小児慢性特定疾患対策の確立についてお伺いをいたします。

 これまで研究事業として行われてきた小児慢性特定疾患治療が、今回の改正で法的にきちんと位置づけられましたが、このことは、患者の皆様に安定的な制度として改善されたと喜ばれているというふうに思います。この改正に伴い、その対象疾患が四百八十八から五百十疾患に見直され、現在精査中と伺っております。

 私は、この五月、先天性魚鱗癬という病気の患者さんにお会いする機会がございました。この疾患は、皮膚が広範囲に乾燥してひび割れができ、表面が魚のうろこ状のように脱落をしていくという病気でございます。かなり御苦労されておりまして、この病名がつくまでもう何年も、何十カ所の病院にも通うですとか、また、やはり外見的な問題ですとか、水を扱っても痛むというようなことで職業にもつけない、大変御苦労されている方々でございます。

 これは十万人から二十万人に一人という頻度ですので、かなりまれな病気でございます。患者の方々は、生まれて二ヶ月たったころから顔が真っ赤な状態で、病名もわからない、風が吹いても痛む、洋服を脱ぎ着するときも痛む、また、運動などをすると、汗をかけないので体温が非常に上がる。それによって、さまざまないじめに遭ったりですとかいう御苦労をされているのが現状でございます。

 厚生労働省におきましては、平成十四年より、難治性疾患克服研究事業といたしまして、稀少難治性皮膚疾患に関する調査研究を行っておりまして、私は、この夏、その研究者の一人でいらっしゃいます旭川医科大学の山本明美先生にもお伺いし、さまざまお話を伺ってまいりました。遺伝ということで、また現在治療法が見つかっていない、患者数もほぼ同じ数で推移をしているというようなお話を伺い、やはり生活がかなり大変なので、そういった支援をお願いしたいというようなお話でございました。

 この魚鱗癬という疾患についても少しずつ研究が進んでいると思いますけれども、できればこの小児慢性特定疾患の対象に、ぜひともこの魚鱗癬という疾患を指定いただければというふうに考えておりますが、御見解をお伺いいたします。

衛藤副大臣 先天性魚鱗癬に関してでございますけれども、御承知のとおり、今、稀少難治性皮膚疾患等に関する研究を行っているところでございます。慢性疾患であることを前提といたしまして、治療方法の確立が強く求められている疾病に関しまして、症状の重さ、もう御承知のとおりでございますけれども、治癒の見通し、それから治療にかかる費用等を総合的に勘案して行うということになっております。

 追加疾患に関しましては、現在精査中でございまして、現段階で確たることを申し上げられないということは残念でございますけれども、ぜひ前向きに検討させていただきたいというふうに考えている次第でございます。

古屋(範)委員 ぜひとも、またさらなる研究の推進をよろしくお願いいたします。

 以上で質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

鴨下委員長 次に、泉健太君。

泉(健)委員 民主党の泉健太です。

 ようやく臨時国会がこうして始まったわけですが、我々としては、早期の臨時国会というのを参議院選挙以降ずっと求めてまいりました。それには、もちろん、幾つか主要な問題についても早急に取り組んでいただきたいという思いがありましたし、国会議員としては国会は開かれて当然という思いの中での臨時国会の要求だったわけです。

 しかしながら、残念ながらなかなか臨時国会が開かれなかったという状況で、我々民主党は、特にこの厚生労働分野に携わる者としては、全国のさまざまな地域、施設を積極的に見に行こうという機会を持たせていただきました。党としては、さまざまな、先日も岡田代表とともに、品川区にあります、ぷりすくーる西五反田という幼保一元統合の施設先進地を見に行かせていただきました。そしてまた、神奈川県で行われております、本当に皆さん、女性の皆さんの助け合いで運営をされている学童クラブ、こういったところにも現場視察に行ってまいりました。

 そこで感じましたのは、やはり、法律あるいは制度、施設、こういったものを幾らつくっても、しっかりとそこに魂を入れていかなければならない、大事ですね、魂を入れなければならないというところを本当に感じたところであります。

 要は、例えば幼稚園であれば、一つ幼稚園という基準を満たそうと思うと、本当にたくさんの建築基準がある。そしてそれを満たそうと思えば、当然莫大な費用がかかってくるわけですね。

 ですから、最近、例えばこの品川区の、ぷりすくーる西五反田でいいますと、公設民営で行われているわけですが、NPOで運営をする。費用の節減のためにNPOの運営、あるいは柔軟な運用のためにNPOでの運営をしているわけです。そうしますと、なかなかこれを、幼稚園でやらないんですかという質問をしても、幼稚園でやろうと思うととんでもない費用がかかってしまうし、カリキュラムがほとんどがちんこちんになっているからなかなか自由度がきかないということで、引き続きNPOでやりたいというお話も聞いてまいりました。

 そしてまた、学童クラブでは、本当に古い民家で、御近所の皆さんの御理解を得ながら、本当に御協力を得ながら、そういった施設を運営されている。時には、大家さんが急に立ち退いてくれと言ったり、あるいは、近所から近所迷惑だという話で立ち退きを迫られるケースもあるというふうに聞いております。

 そういう中で、じゃ、認可保育園をつくろうかという話になっても、ここでまたさまざまな耐火基準、安全基準等々が出てきて、数億円の施設建設費用が必要になってくるという現状を聞くにつれ、本当に必要な、求めているものは何なのかと。

 確かに、国としては、間違いがあっちゃいけないということで安全基準というものは必ず必要だけれども、例えば、我々、普通にこうして今家に住んでいるわけですね。家ももちろん、すぐ地震でつぶれてしまうような家では、これはやはり問題もあるでしょうから、今後、耐震設計も含めてやっていかなければならないと思うんですが、しかし、余りにそのハードルが高ければ、やはり子育てをする環境というのが容易につくることができないという状況があると思います。我々、そういう現場も岡田代表とともに見てまいりました。

 そして、それ以外にも、先日、栃木県小山市の虐待の、まさに、虐待というか、我々からしてみれば、これはもう虐待ももちろんだけれども明らかに殺人事件というような状況の、あの事件の現場にも行って、話を聞いてまいりました。警察署そして児童相談所、そういったところからお話を聞いてきたわけですが、やはり冒頭申しましたように、法律をつくって魂をちゃんと入れて、現場の方々がそこで魂を持って動かなければ物事はなかなか解決していかないということを、ぜひ大臣、副大臣、共通認識ということでお持ちをいただきたいというふうに思っております。

 私は、冒頭の質問には、まずちょっと変わった質問というか、本音というか本心の部分をお伺いしたいということもありまして、先日、大臣には、BSEのことについて、牛肉を食べられますかという話を聞いたわけですが、ベジタリアンの方だということで、そのときは少し肩透かしをいただいたわけです。

 きょうは、まず大臣に、やはりいろいろな虐待問題、こうして国の中で話をしていく分には、たくさん法律も見なければならない、そしていろいろな全国から上がってくる事例も見なければならないという中ではあると思うんですが、大臣にお伺いをしたいのは、大臣のこれまでの御経験の中で、例えばお知り合い、あるいは友人から聞いた話でも結構です、こういった虐待のケースというのをどちらかでお伺いになられたことというのはございますでしょうか。

尾辻国務大臣 私の周りといいますか身近なところといいますか、そうしたところで聞いたこと、見たことはございません。

泉(健)委員 ぜひ、もしよろしければ、被害者というか、それは被害児童かもしれません、あるいは支援をするNPOの方かもしれません、あるいは、以前は虐待をしてしまったけれども今は何とか立ち直っているという親の方かもしれません、そういう当事者の、まさに生の声を聞く機会をぜひ厚生労働省の皆さんにもおつくりいただいて、どこかでそういう機会、していただけないかなというふうに思うわけです。やはり、本当にそういったお話を間近で聞きますと、なぜなのかという疑問から、次第に、ある意味親も被害者だったのかもしれないな、いろいろな新しい視点が見えてきます。

 ぜひ、そういった意味で、現場の声を聞く機会をつくっていただきたいというふうに思いますが、大臣いかがでしょうか。

尾辻国務大臣 冒頭に、あちこちの施設をごらんになったというお話を伺いまして、大変いいことをなさったなと思います。

 私もできるだけ現場は見たいと思っておりますので、今のお話は早速に実行をさせていただきたいと存じます。

泉(健)委員 いや、本当にありがたいお言葉で、これですべてじゃないですが、虐待にかかわる職員の方々や、まさに当事者の方々にも、一つ希望が見えてくるお話だというふうに思います。大変ありがたく思います。

 続いて、副大臣にもきょうはお越しいただいているということで、質問というか、省内の体制というと少しおかしいかもしれませんが、お伺いしたいのは、きょうこうして来ていただいているということで、厚生労働省も部局はさまざまありますし分野も広いと思うんですが、虐待に関するというか、子供政策に関する担当というような形できょうはお越しいただいているというような認識でよろしいんでしょうか、副大臣。

衛藤副大臣 副大臣の場合は具体的な担当はありませんけれども、しかし全体的にやりますけれども、一応、内々に大臣の方から、とりわけ労働や少子化問題、児童の問題等を重点的にやるようにという指示をいただきながら、今やっているところでございます。

泉(健)委員 そこは、ようやくこうして副大臣制ができまして、やはり政治主導で、しっかりとこれから議員立法ももちろんふやしていかなければならない、そして政府内においても政治がしっかりと各地域の声を上げて、そしてそういう国民の声を直接反映させるような政治を行っていこうという中での副大臣制あるいは政務官制だというふうに私は認識しております。

 そういう中で、厚生労働省の方には、ぜひとも、それぞれ担当分野というものを明確にしていただく中で、やはりこういった虐待問題、今、厚生労働省の中でも非常に注目を受けている大変重要な問題でありますので、ぜひともそういった形での担当の副大臣というものを制度としてつくって、制度というか中の体制としておつくりをいただけないかなというふうに思うわけですが、そこに向けて、よろしければ御決意をいただければと思います。

尾辻国務大臣 今、私どものところは副大臣二人でございます。そこで、今副大臣からお答え申し上げましたように、大きく、旧厚生行政、旧労働行政ということで、二人の大臣の担当を決めておるところでございます。

 ただ、それ以上また副大臣の数をふやすというのはちょっとと思いますし、今そういう分担にしておるということだけをお答え申し上げて、またいろいろ御意見をお寄せいただきたいと存じます。

泉(健)委員 ということは、衛藤副大臣は厚生関係の副大臣、もう一方は労働関係ということで、大臣、もう一度お願いします。

衛藤副大臣 一応、副大臣は、先ほど申し上げましたように、具体的にどこということはありませんけれども、大臣からは、旧労働とそれから児童とか少子化問題とか、そういうところに関するものを特に今大変なので重点的にやりなさいということで、御下命をいただいているところでございます。

泉(健)委員 そういった意味で、もし労働プラス少子化問題ということであれば、もう一方の副大臣の担当もあるということだとは思いますけれども、まさに少子化にもかかわってくる話だと思うんですね。子供を育てにくい環境、それが結果的には虐待に結びつくケースもある、そしてまた、こういった御時世だからということで子供を産むことを控える方もたくさんおられる。

 いろいろな副次的な影響というものが出てきているわけですから、省内で、どちらが担当ということがないと言ってしまうと、それこそ、ではどちらもという話になってしまいますので、ぜひとも、主にはどちらの副大臣がされている、あるいは主にはこの政務官が虐待問題についてはされているというような状況をつくっていただきたいと思います。それは可能でございますか。

尾辻国務大臣 先ほど、つい大きなくくりだけを申し上げて、少子化対策、児童の問題も含めて衛藤副大臣にお願いしているということを申し忘れまして、申しわけありませんでした。

 正確に申し上げますと、したがいまして、今私からお願いいたしておりますのは、衛藤副大臣には旧労働行政プラス児童問題ということで担当をお願いいたしておるところでございますから、そこのところだけは明確にいたしているところでございます。

泉(健)委員 そういったことで、衛藤副大臣の方も、もしかしたらもう既にそういった機会を設けられていたのかもしれませんが、大臣同様、現場の方から声を聞く機会をぜひ設けていただきたいというふうに思っております。

 では、実際、具体的な、この児童福祉法の中身について話をさせていただきたいというふうに思います。

 今回、改正点が幾つかあるわけですが、まず私、冒頭申し上げたいのは、児童虐待防止法を、以前、私もさきの通常国会では青少年の特別委員会の方で審議をさせていただきました。あるいは、主務大臣というのが当時の小野大臣だったということもありまして、私も内閣委員会に入っておりましたので、そこでも議論をさせていただいたわけですけれども、この児童虐待防止法と児童福祉法の役割分担をどういうふうに御認識をされているかについて、大臣からの御所見をお伺いしたいと思います。

尾辻国務大臣 まず、今般改正をお願いしております児童福祉法でございますけれども、こちらは、児童福祉全般に関する一般法、こういうふうに認識をいたしております。そこで、今回の改正につきましては、児童虐待防止対策の充実強化を図るため、児童相談所や児童福祉施設に関する体制などの児童福祉に関する基本的事項の見直しをお願いしておるということでございます。今申し上げたことで、児童福祉法に対する、どういうふうに考えておるかということは御理解いただけるだろうと思います。

 一方、今度は児童虐待防止法でございますが、これは、そうした大きな児童福祉の中の児童虐待に着目をいたしました特別法である、こういうふうに認識をいたしておるところでございます。

 いずれにいたしましても、児童虐待防止という観点から見ますと、この二つの法律は車の両輪でございます。一体のものとして児童虐待防止対策を私どもは総合的に推進してまいりたい、こう考えております。

泉(健)委員 全くそのとおりのお話かと思います。

 片一方が一般法であり、片一方が特別法であり、そして車の両輪という表現をなされたと思いますが、私はいい意味で、今児童虐待防止法も改正をなされ、そして各党派の議員の力でこうした形の改正がなされたということで、ある意味、新しいタイヤにかわった時期だというふうに思っております。

 そういう中で、この児童福祉法もタイヤを今かえようというふうにしているわけですけれども、そこでやはりバランスというものもしっかりととっていかなければならないし、バランスのとり方というのは、小さい方のタイヤに合わせるのではなく、やはり大きいタイヤに合わせなければならないと思うんですね。しっかりとカバーできる、せっかく児童虐待防止法がつくった部分というものを有効に生かせるような児童福祉法でなければならない、そういう認識を最初に持っていただきたいというふうに思っております。

 そういうところの観点で考えますと、実は今、児童相談所が大変多忙な業務を抱えていられるのではないのかな。私も幾つも児童相談所を回らせていただきましたが、我々は大体切り口としては、これまで、この数年間は、やはり児童虐待という観点で児童相談所に訪問をするわけですね。しかし、そこには、当たり前のことですが、養護相談もある、保健相談もある、非行相談や育成相談もある。大変さまざまな、たくさんの業務を担っていられる。それで、やはり、実情を聞いてみたら、虐待担当は二人だったり三人だったり、所長が兼任をしていたり、大変厳しい状況で各児童相談所が行っているという状況がございます。

 児童虐待防止法が今こうして改正をされたという中で、児童虐待のウエートが児童相談所の中で随分と大きくなってきているわけです。電話一つとっても、二十四時間のサポートも含めて、今、この児童虐待の問題で児童相談所は本当にごった返しているという状況です。

 そういう中で、これまで児童相談所そのものには、今言ったような幾つもの相談の項目があったわけですけれども、例えば、今もう一方で、この国会では、議員立法で発達障害者支援法というのが審議をされることになっていますね。そうしますと、この発達障害に関してもさまざま相談に乗っていこう、そして発達障害支援センターというところでは、相談に乗り、また判定をし、そして自立を促していくためのプログラムというものも行っていこうという話になっているわけです。

 しかし、現段階の児童相談所における相談の種類及び主な内容というところを見ますと、例えば自閉症相談というのが入っています。あるいは性格行動相談というのが入っている。適性相談、言語発達障害等相談というものが入っております。

 ここら辺の仕切りについて、例えば、今回発達障害者支援法ができるということであって、そしてまた支援センターが各地に配置をされているということから考えると、今後、この児童相談所の業務をこういったところに移していく、そして児童相談所の業務を虐待の方に重点化をしていくというおつもりがあるのかどうか、これについてお伺いをしたいと思います。

尾辻国務大臣 まず、大きくお答えをいたしたいと思います。

 今私どもが考えておりますのは、市町村の福祉事務所が大体最前線に立っていただいておるわけでありますが、福祉事務所がまず対応していただく。いわば一次医療みたいなものかなと思っております。そして、それから深刻な事態が生じておるケースについて児童相談所が扱う。ですから、今の例えで言うと二次医療を引き受けてもらう。こういう大きな役割の中でこの仕組みを考えたいと思っておるところでございます。

 そこまで、大きくはお答えできるんですが、その先の細かな、具体的な話になりましたら、よろしければ局長にでも答えさせますけれども、答えさせた方がよろしいでしょうか。

衛藤副大臣 児童相談所では、先生御指摘のとおり、児童にかかわる自閉症、それから知的障害、発達障害、また生活のいろいろな問題等について相談にあずかっているところでございますけれども、虐待につきましてずっとふえておりますので、児童相談所を全部虐待専門にということではなくて、専門員を補強するということを明確に考えているところでございます。それが今回の体制整備の主たる問題だというように認識をいたしております。

泉(健)委員 いや、そこの部分は非常にありがたい、評価をできるお話だと思うんですが、実は、我々が回った児童相談所どこもそうなんですが、もう机自身もいっぱい、あるいは施設が大変狭いというところがたくさんあるんですね。そういう中で、では、総定員を本当にふやしたいということで予算をつけても、ふやせるかという問題が一方であるわけです。ふやせないところというのもたくさんあるんですね。

 そういうところから考えると、もちろん私は、今こうした虐待問題というのがクローズアップされていますので、あるいは以前であれば、非行の子供たちの相談というのが非常に多かった時代もあったと思うんです。そういう、要は、時代に対応して児童相談所というところが柔軟に組織がえをできるような状況になっていけないのかなというふうに思うわけです。

 今回、例えばその一つの例として発達障害支援センターができるという中で、こういった自閉症関係の子供たちが親とともに相談に行けるような、これは箇所によりますけれども、そういったところもふえてくるということで、例えば、そういう地域においては、そういった相談業務をこちら側に移すという考え方もあっていいと思うんですね。

 要は、その辺の柔軟性を持たせていただければ、あとは地方で何とでもなる話でして、そこはぜひ国の方が、柔軟にやってもいいというようなお話を地方に対してしていただきたいというふうに思うわけです。

 その辺は、例えばほかの問題でいっても、皆さん意外に思われるかもしれませんが、鑑別所、あれは何だか、例えば非行、問題行動を起こした子供たちが行くところだと思っているかもしれませんが、鑑別所によっては、地域に窓口を開いて、子供たちの鑑別をしますよと。鑑別という言葉はもともと何も悪い言葉ではなくして、教育的に、例えばその能力を判断しますよということもできる機能を持っていられるんですね。

 例えばそういう機関もあるという中で、児童相談所がすべてここに盛り込んでいるのは、窓口としては非常に広くていいことではあるけれども、相談所業務としては今いっぱいいっぱいになっているという現状の中で、そういったいろいろな相談業務の切り離しというものも今後御検討いただけるかということについて、いかがでしょうか。

尾辻国務大臣 今のお話を伺いながら思いまして、確かにそういう状況にあるだろうと思います。

 そこで、例えば、保育所の中にも地域子育て支援センターもお願いしております。こういう事態でありますから、もうそうしたものをすべて、今の先生のお言葉をかりると、柔軟に連携してもらって事に当たらないと大変な事態だと思いますから、ぜひそういうことを考えて、また必要な指示はさせていただきたい、こういうふうに思います。

泉(健)委員 本当に大臣の御答弁というのは、私以外の質問のときにも非常に明確で、必ず私の責任で指示をします、私が行いますと。本当に、そういったお言葉をいただけるというのは非常に勇気が出ます。それをしていただけるというふうにももちろん信じて、これからまた質問させていただくわけです。

 もちろん、私たちは、第一義的には、この児童相談所そのものも、また大変古い施設も多いわけですから、その改修にも手を伸ばしていただきたいですし、そういう中で、職員がたくさん入っていけるような環境もつくっていただきたいというふうに思っているわけです。もしそれができないのであれば、とにかく児童相談所がパンクしないようにという心がけを持っていただきたいというふうに思います。

 次に、今回、市町村の役割が法律上明確化されるということと、児童相談所が後方支援に回るということがあるわけです。

 本当は皆さんに大きなパネルでも持ってきてと思ったんですが、私が懸念をするのは、その市町村と児童相談所の連携、情報の共有化、一元化というものが本当になされるような改革でなければならないというふうに思うわけです。

 もちろん、各市町村での窓口で子供たちの相談をしっかり受けとめられるということは大変すばらしいことだというふうに思っておりますが、少しその姿、イメージをお伺いしたいのは、今回、相談業務が市町村になるというふうに考えております。専門的なものは児童相談所というふうにお伺いをしておりますが、先ほど言ったような幾つも項目が分かれている相談の中で、すべての相談についてこれを市町村というふうに扱うのか、それとも、虐待についてだけ、軽いものと重いものみたいな形で割り振りをするという話なのか、そこについてお答えをいただきたいと思います。

衛藤副大臣 現在、児童相談所で扱っておりますのは虐待も含めてでございまして、市町村には、そういう意味では、今まで各地におきましても、障害者に対する療育等においても非常に困っておった部分がございます。より身近な形に、市町村にお願いをしよう、行きやすい、訪問しやすい形をとろうと。

 ですから、できるだけ窓口を広げながら、その情報を早く得ていこう、そして相談に応じながら、そこでどう振り分けるか。都道府県、児童相談所の方はそれを後方支援したり、あるいは重篤な部分はすぐこちらにという形でやらせていただこうというところを意図するものでございますので、先生がおっしゃいますように、とりわけこの連携というものは非常に重要になってくるというぐあいに認識をいたしております。

泉(健)委員 先ほど大臣が、福祉事務所がまず各市町村の窓口だというお話をされましたが、今回、この児童相談に関して市町村にお渡しをしていくというのは、福祉事務所ということでよろしいですか。

衛藤副大臣 市町村はいろいろな形で努力をしてくれるものと思いますが、福祉事務所であったり、あるいは児童家庭課みたいな形であったり、いろいろな町村の窓口がございますので、どういうぐあいにやっていくかということについて、これは協議をさせていただくというぐあいに思っています。市町村の独自性もちゃんと認めていきたいと思っております。

 また、各町村では、そういう窓口もちゃんとしていないところがありますので、それをちゃんとつくってもらえるようにしようというぐあいに検討しております。

泉(健)委員 もう一つ懸念というか思うのは、今回のこの市町村への相談業務、どれだけ移行されるのかというのがいまいちまだはっきりつかめない部分もあるわけですが、それに伴って、児童相談所の体制、配置、こういったものに変更があるという認識でよろしいんでしょうか。

伍藤政府参考人 今回、通告の対象に市町村を加えるということで、通告する国民から見ればどこへ通告してもいいわけでありますから、児童相談所に通告する場合もありますし、それから福祉事務所に通告する場合もある。

 ただ、市町村もその窓口に加わったということで、先ほど言いました虐待も含めて、市町村にまずいろいろな相談が来るということは十分考えられるわけで、その中から、非常に専門性を有するようなもの、難しい、困難な事例については、市町村から児童相談所に送付していただいて児童相談所で扱っていただく、こういうことになるわけで、これが事務的にいって具体的にどういうふうな配分になるかというのは、なかなか現実を踏まえてみないとわからない部分がございますが、できるだけ軽度なものの前さばきは市町村にやっていただく、こういうことでありますから、児童相談所の体制がこれによって相当軽減されるかというと、そういうことはないんだろうと。

 引き続き、やはり困難な事例、虐待相談の多くは児童相談所に送られてくる可能性が高いわけでありますし、それから、市町村でやるそういう前さばきといいますか、最初の段階の対応についても、具体的なやり方等について児童相談所が後方から支援をしたり相談に乗ったり、こういう新たな事務も生じてくるわけでありますから、事務量としては、今回の改正を機に児童相談所がかなり事務量が大幅に軽減されるとか、これによって体制をかなりスリム化してもいい、こういう実態にはないと思います。むしろ、全体として社会的に急増しておる虐待問題に総力を挙げて、市町村も加わっていただいて、何とか対応していくというのが実情ではないかなというふうに、感覚的な表現で申しわけないんですが、そういうふうに思っております。

泉(健)委員 そこをやはり少しはっきりしていただかなければならないのかなと思います。

 先ほど冒頭ありましたように、今回、児童福祉法の改正の審議ですから、虐待防止法ではないわけですね。一般法として児童相談所がいろいろな業務をしている中での、やはりこれをどうするかということについて、我々考えていかなければならないわけです。

 ですから、もちろん虐待においては、児童福祉法にもありますけれども児童相談所に、これは虐待においては重篤も何もないわけです、とにかくもう児童相談所にどこからであろうとも情報を集約して、すぐネットワーク会議なりを開く、ケース会議を開いて虐待問題に対応していかなければならない。これは虐待のケースですね。

 では、その虐待というもののウエートが高くなっている児童相談所には、ほかにもたくさん相談業務がありますよと。その相談業務においては、やはり児童虐待に一生懸命取り組んでいくということも児童相談所にはありますから、では、市町村の方にも移して、児童相談所は虐待の方に重点化をしようというお話だと思うんですね。もちろん、障害の場合や非行の場合でも、重篤な場合においては児童相談所ということになるんでしょうが、その市町村に渡すものはどれぐらいまでなのかがはっきりしていない状況だと思うんです。

 そうなると、市町村が何をつくっていいのか。あるいは、窓口をたくさんつくって、人は配置をたくさんして、お金もかけたけれども、結局、一般市民にとってはどっちに連絡していいかわからないみたいな話になってしまっては困る。あるいは、市町村の方に、では、これまで児童相談所が行っていたように、例えば虐待、あるいはさまざまな相談になった方々の記録カードを残すとしますね。市町村の方に記録カードを残すとする。同じようなカードをまた児童相談所もつくるなんという話になったら、これは業務的には二倍の業務が必要になってきてしまうという話でして、要は、カードが、今まで児童相談所に一つ置いておけばよかったものが、二つになってしまう可能性があるかもしれない。

 そういったことも含めて、ここの部分の相談業務をしっかりと、どのように分けるのかということを我々に明確に提示をしていただいて、そして、その法律がいいのかどうかという話にやはりなってくると思うんですね。

 もし追加で今のお話の中で答弁があればと思いますが、いかがでしょう。

伍藤政府参考人 個別のケースにどう対応するかというのは、なかなかこれは千差万別、難しいことだと思いますが、いずれにせよ、今回、市町村に新たに事務を担っていただくということを法律上明確にするわけでありますから、当然のことながら、御指摘のように、一般的にどの程度の事務を担っていただくのか、あるいはその事務処理の方法をどうすべきかといったことについては、この法律が成立をいたしましたら、私ども、それなりのガイドライン等を作成して、市町村、あるいはそれを支援する児童相談所にも明確に示すように努力していきたいというふうに思っております。

泉(健)委員 我々民主党としては、いつも、例えば省令でとかあるいはガイドラインで、指針でという話になってくるわけですが、どうしてもこういった審議の場ではそれがまだ明確になっていない。実際に現場が動くのは、そういった指針やガイドラインで動くわけですね。我々としては、やはりそこも今後しっかりと見ていかなければならないなというふうに思っておりますので、もし何らかガイドライン等々をつくるという話であれば、それはその過程において、必ずそういった情報を我々にも公開をしていただきたいというふうに思います。

 今回、この件については、実は警察の方、あるいは学校関係ということで文部科学省さんにもお越しをいただいているわけです。

 といいますのも、先日厚生労働省からいただいた虐待の死亡事例のいろいろな調査結果、検証結果というものを見てみますと、もうどこにも、これまで何回も言われてきたような理由が書かれているんですね。連携がうまくいかなかった、こっちの方の認識が甘かったとか体制がどうだこうだ、もうそういうことの繰り返し。当たり前なんです。

 では、やはりこれを現場にも、この改正をすれば、すぐその中身について到達させなければならない。例えば、児童虐待防止法が十月一日からになった。そうしたら、もう即座に、あるいはその以前に現場の警察官や学校の先生にはその中身が伝わって、では対応がこう変わるんだよというのを明確に語っていただけるようにならなければならないというふうに思うわけです。

 そういう中で、今回、この相談業務が市町村にも窓口ができるという中で、改めて確認ですが、警察や学校が虐待を見つけた場合には、これは市町村ではなくて、すぐに児童相談所に通告をするということでよろしいでしょうか。それぞれ、警察、文部省、お願いします。

伊藤政府参考人 今回の児童福祉法の改正案では、児童の福祉に関し市町村が担う役割を法律上明確にするとともに、児童相談所の役割を専門性の高い困難な事例の対応等に重点化しようとするものと承知しているところでございます。

 警察といたしましては、児童虐待を受けたと思われる児童を発見した場合には、このような改正法の趣旨を踏まえ、一般的には、専門性の高い困難な事例の場合は児童相談所に、またそれ以外の場合は市町村に通告することになるものと承知しております。

 なお、改正法案におきましては、市町村等には児童の一時保護の権限は与えられておりませんので、直ちに一時保護をする必要のある児童の通告につきましては、これまでどおり児童相談所に通告することになるものと考えております。

山中政府参考人 文部科学省でございます。

 先生御指摘のとおり、児童虐待の防止に関する法律の一部改正法がさきの通常国会において成立しておりまして、児童虐待を受けたと思われる児童を発見した者、これについては、市町村、都道府県の設置する福祉事務所もしくは児童相談所等の関係機関に通報するということになっておりまして、通常の場合、非常に重大な場合というものにつきましては児童相談所の方に通報することになろうかというふうに思っております。

泉(健)委員 そこの、今回、専門性の高いという言葉が入ったことによって、逆に恐らく現場の方では、ではどれが専門性が高いんだ、当然そういう話は出てくると思うんですね。そこでちゅうちょをする、あるいは何だかこれはこっちの方じゃないだろうみたいな話で、宙ぶらりんになるケースというものが既に予想をされるわけです。

 ですから、そういったことが絶対にないように、改めて、厚生労働省、文部科学省、あるいは警察、そういったところのこの件に関する協議を、この法律の改正に合わせて必ず持っていただきたいというふうに思いますが、大臣、どうですか。

尾辻国務大臣 よく協議をさせていただきます。

泉(健)委員 よくあるような、資料の配付で終わる、あるいはトップレベルだけの会合だけではなく、現場の方でもすり合わせをして、共通認識として、絶対この相談業務で混乱が現場に行かないようにしようというような思いで、三者がよく連携をしていただきたいというふうに思います。

 続いてなんですが、今回はネットワーク会議が市町村で設置が可能ということになってまいりました。このネットワーク会議、既にもうほかの委員からも御指摘があったかもしれませんが、全国で随分多くの自治体がネットワーク会議を持つようになってきております。

 しかし、残念ながら、この前の小山市の事件でいいますと、ネットワーク会議は存在していたんですね。ネットワーク会議は存在していたけれども、要は、あの父親は以前生活のことで児童相談所に相談をしに来たことがあったから、きっと今回も基本的には虐待をしない親だろうという前提で動いていたんですね、児童相談所が。ですから、いわゆる生活相談というか養育相談というか、そういったところから虐待にスイッチを切りかえることができなかったというところが今回の問題なわけです。要は、ネットワーク会議というのは、だれかがスイッチを押さなければ動かない仕組みなんですね。

 これは警察にも言えるかもしれません。では、なぜ、コンビニエンスストアの店員さんがこの子虐待の跡があるぞとわざわざ通報したのに、ネットワーク会議が開かれなかったのか。そこでもし警察にもボタンを押す権限というか機能になっていれば、開かれていたはずなんですね。

 ですから、私は、児童相談所だけがその判断をするということではなく、特に虐待痕なんかを見つけた場合においては、どこからでもボタンを押すようにすべきだ、押せるようにすべきだというふうに思います。

 そういったネットワーク会議をぜひこれからつくっていただきたいと思うわけですが、この中には、調整機関を指定するということが書いてあります。この調整機関というのは具体的にどこを指すのか。例えば、自治体によってそれは自由に決めていいという話なのか、主には児童相談所なのか、主には役所、自治体ということなのかについて、御答弁をお願いしたいと思います。

伍藤政府参考人 地域の協議機関、ネットワークで責任ある中核機関を定めていただくというのが今回の法律改正に盛り込まれているわけでありますが、どういう機関がそういう役割を担うかというのは、それぞれの自治体が判断をしてお決めいただくということで、既に千近くの自治体でこういうネットワークが機能しておりますが、具体的に見ると、保健所が中心になって活動しているようなケースもございますし、あるいは福祉事務所が中心的な役割を果たしておるようなところもありますし、あるいは市町村の普通の市長部局といいますか、通常の機関が中心になっているような場合もございますし、いろいろさまざまでございます。

 それまでの関係とか状況を踏まえて、それぞれ地域で自主的に判断をしていただきたいというふうに考えておるところでございます。

泉(健)委員 もちろん、各地域、児童相談所がないところもありますけれども、ぜひそこの辺も、またガイドラインをつくられるのかもしれませんが、明確に、どこからでもボタンを押せるというのは必ずつくっていただきたいというふうに思いますし、どこが調整機関になるということも含めて、その責任と権限をやはり明らかに書いていただきたいというふうに思います。

 さらには、二十五条の四で、運営の細かなことについてはそれぞれで定めるというふうに書いてあるんですが、これも、先ほど言ったような責任と権限を明確にしていただきたいというふうに思います。

 二十五条の二のところで、「関係機関」というところがあると思います。児童虐待防止法では「民間団体」という記述が書かれているわけですが、この「関係機関」の中には民間団体が入るということで考えてよろしいでしょうか。

伍藤政府参考人 御指摘のとおり、民間団体が含まれるというふうに解釈して結構だと思います。

泉(健)委員 その民間団体というのは、NPO、あるいはこの問題に非常に熱心に取り組んでいる市民団体というものも含むという認識でよろしいでしょうか。

伍藤政府参考人 現に今、既に任意で活動しておるネットワークの中に、そういったいろいろな市民団体といいますか、NPO法人でありますとかいろいろな団体が加入して活動して実績を上げておられる実例もございますので、今後ともそういう形で参加をしていただければというふうに思っております。

泉(健)委員 今回、守秘義務の規定もしっかりと整えられました。そういった意味では、これまでなかなか、特に、民間団体といってもNPOや市民団体、熱心に取り組んでこられた団体がなかなかこういった協議機関に入れないということも聞いております。そういった意味では、今後、守秘義務規定もしっかりとしてきましたので、こういった団体も入っていけるものと私ども解釈しておりますので、その点もぜひまた注目をして、どういうところが構成団体になっているのかという調査を多分されると思うんですね、そういった中での調査結果も、私たち、注目をしているところです。

 もう一つ、政令で定める市にも今回児童相談所を設置できるというふうに書いてあるわけですが、この政令で定める市というのは、今回、簡単に言えば中核市ということで考えてよろしいでしょうか。

衛藤副大臣 中核市も話し合いをやればできるというぐあいに考えております。

泉(健)委員 法律の五十九条の方には、「中核市並びに児童相談所を設置する市として政令で定める市」というのがあるわけですが、これは何か中核市と別なものも定めるものがあるというふうに考えてよろしいんでしょうか。

伍藤政府参考人 今回のこの御提案をしております児童相談所の設置市でありますが、中核市程度の人口規模を有する市を念頭に置きつつ、政令で個別に指定する市に児童相談所の設置を認めるということで、中核市に限らず、同程度の規模であれば児童相談所を設置できる、正確にはそういうことでございます。

泉(健)委員 現在、具体的にそういった申し出は来ていますか。

伍藤政府参考人 全国的に網羅的に調査をしているわけではありませんが、自主的に、そういう申し出といいますか、希望を表明しておる市も一、二聞いております。

泉(健)委員 私、少々不思議に思ったことがあるんですが、中核市といいますと結構県庁所在地なんかも多くて、今、中核市が三十五あるわけですが、調べましたら、児童相談所がない中核市というのは三つしかないんですね。要は、都道府県で、既にその中核市のどこかの地域には児童相談所がもう置いてあるという状況です。

 では、そこからさらに中核市が同じ町の中に児童相談所を置くのかどうかという話になってくるわけですね。これは、行政的に見れば何も問題はない、別なんだからという話になるわけですが、一般の市民、住民にとっては、例えば、幾ら児童虐待に力を入れるといっても二カ所も施設は要らないんじゃないかなんという話になってしまっては、これはおかしな話でして、ここが何とかならないのかなと思うわけです。三十五分の三十二、もう既に中核市の中に児童相談所があるという現状について、これを考えた上で、この中核市というものを今回枠を広げましたという話なのか、そこがちょっと疑問に感じるところです。

 中核市の中で児童相談所がないというのは、横須賀市、新潟市、高槻市ということになっているわけですが、これは例えば、現在中核市にある施設を、では中核市の方に譲り渡して、あるいは金銭で譲渡でも結構です、そして、県としてもう一回ゼロから別な地域につくる、そんなことというのは可能なんでしょうか。

伍藤政府参考人 中核市に限りますと、大体県庁所在地とダブるケースがほとんどでありますから、御指摘のとおり、わかりにくくなるのではないかという御指摘もあろうかと思いますが、現在、都道府県と指定都市で児童相談所を設置して、増大するいろいろな児童相談に対応しておる、こういうことをいかに切り開いていくかということで、一つの道として、今回、指定都市以外の市にも児童相談所を設置する道を開こうということで、こういう規定を置いたわけであります。

 確かに、中核市と県庁所在地がダブってややこしくなるんじゃないかということでありますが、場合によっては、今御指摘のあったような方法で、中核市にある児童相談所を中核市が譲り受けて、それを、中核市の中については中核市みずからが対応する。それから、既存のそれ以外の、今は児童相談所というのは非常に広い地域を担当しておりますから、都道府県の児童相談所はどこかほかのところに移転する、あるいは移転しないでそこで対応も可能かと思いますが、はっきりわかりやすくするためには移転して別のところに置いて、その中核市以外の広い地域を従来どおり担当する。こういった役割分担も可能ではないかと思っておりますし、御指摘のようなことは、方法としては可能かと考えております。

泉(健)委員 とはいえ、県と例えば市で施設をやりとりする、あるいは土地をやりとりするというのは、非常に長期間の調整が必要なんですね。組織改変が両方にも必要になってきます。私の地元でも、衛生関係の、京都府が持っている施設、そして京都市が持っている施設が統合したいという話になったんですが、これもなかなかうまくいかないということで、大変苦労されているという現状があります。

 ここについては、これだけ、せっかく今法律で書いてあるのに、もう現状としてこういった状況になっているわけですから、ここについては、例えば、県あるいは中核市、そういったところに皆さんしっかりと足を踏み入れて、協議をして、どういった形で児童相談所を適正に配置するのがいいのか、どういった管轄地域に区分するのがよいのかということを、積極的にここは調整にまた向かっていただきたいと思います。

 これは、多分、県と市だけではなかなか話がつかないというふうに思いますので、やはり、せっかくできる児童相談所が、あまねく各都道府県の住民の皆さんに利用していただけるような体制というのをつくっていただくために、ここについては要望しておきたいというふうに思います。

 時間もなくなってまいりましたが、問題をちょっと移したいと思います。小児慢性特定疾患についてであります。

 実は、私自身も、小さいころからアトピー性皮膚炎の一患者でもあります。これまで国会の中には少なかったかもしれませんが、やはり、若い世代の国会議員もふえてきたということもありまして、徐々に、患者としての我々世代もこれから社会の中でどんどんいろいろな分野に出ていくという状況ができてくると思います。ある意味、人口の一〇%近くが、アレルギーであったり、あるいはアトピーを持っている、ぜんそくを持っている、そういうような状況もありますから、本当に数千万人の方々がこういった問題に対して注目を持っているというふうに思うわけです。

 今回、厚生労働省さんには事前に、この小児慢性特定疾患の中にアトピー性皮膚炎というのは入るんですかという話をしましたら、いや、それは難しい、入らないというお話をいただきました。

 我々からすれば、アトピー性皮膚炎、重大なケースは何百万も治療費をかけているケース、あるいは、僕も一時期そういう時期がありましたが、学校に行きたくても、とてもじゃないけれども行けない、行きたくない、もうこんなに肌がひどかったら外に出歩けない、だれとも会いたくない、そういう状況になってしまう人たちもたくさんいます。要は、社会生活がすべてそこでストップをしてしまう状況というのがあるんですね。例えばそういったところからも問題が長期化する、治療期間が長期化する。私だって、小学生のころから今の今まで、きのうも病院に行ってきましたけれども、やはりなかなかこれを根治する、完治させるというのが非常に難しい話なわけです。

 そういった中で、この対象に含まれないのかなというお話をしてみましたら、以下の三点の理由から、それは難しいという話になりました。一つは、治療がある程度確立をされているということ、そしてもう一つは、治療費がいわゆるこの小児慢性特定疾患に比べると軽費で済むということ、そしてもう一つが、済みません、もう一つちょっと失念をしてしまいましたが、三つの理由があるというふうにお伺いをしました。

 そういったことで、ああそうなのかと思ったわけですが、しかし、やはりいろいろな患者団体に改めて問い合わせをしてみますと、治療費についての調査では、例えばアトピー・ステロイド情報センターというところに私問い合わせてみましたら、患者の中で、対象者が千五百人ぐらいのアンケートをとったわけですが、百万円以上かかるという方が二百人を超えているというデータも出てきております。一年間の治療費が百万円以上かかるという方が二百人を超えているというデータがあるわけです。

 例えばこういったことから見ても、何とかこういったところに支援を差し伸べていただきたいというふうに思うわけですが、この小児慢性特定疾患にはやはりアトピー性皮膚炎、どんな重い症状であっても含めることは難しいということで、確認の答弁をいただきたいと思います。いかがでしょうか。

尾辻国務大臣 今、お話を伺っておりました。

 しかし、今の時点で答えろと言われますと、既にお述べになりましたように、アトピー性皮膚炎につきましては、治療研究の成果により治療法が進歩するとともに普及していること、また、その治療にかかる医療費の負担が必ずしも大きくないことということから、今回見直します対象疾患に追加することは無理でございます、こうお答えせざるを得ません。

泉(健)委員 その中で、これはレクのときの話なのでどこまで確信を持った話か、あるいは正確な話かという話になるんですが、厚生労働省さんとしては治療モデルというのはある程度確立をされているというふうにお話をいただいたわけですね。

 これについて、確立をされているというのは何を指して言っておられるのかなというふうにして、また私も調べたわけですが、これは、厚生労働省さんが調査研究の委託をされて、そしてその研究をされた研究班が策定をされましたガイドライン、このことについておっしゃられているのかどうか、それについて答弁をいただきたいと思います。

岡島政府参考人 厚生労働省におきましては、アトピー性皮膚炎対策に関しまして、平成四年度から研究班を設置しまして、いろいろ研究を推進しております。その研究成果に基づきまして、アトピー性皮膚炎治療ガイドラインというものを作成しております。

 これによりますと、個々の患者におきまして判断をする必要がございますけれども、「原因・悪化因子の検索・対策、スキンケア、薬物療法を適切に組み合わせて行う。」ということが規定されておりまして、これが基本的な治療法ということで定められているということになります。

泉(健)委員 これは、問い合わせをしたときには、厚生労働省としてはやっていませんというお話が返ってきたのを今でも覚えております。要は、研究班がやっていることだから、ガイドラインは出しているけれども、ホームページもあるけれども、これは厚生労働省からのではなくて九州大学の方にリンクをしていただいたらつながるというようなお話をいただきました。

 厚生労働省として、この取り組みというのは省の取り組みなのか、それとも、やはりあくまで研究班というか、厚生労働省ではないところの取り組みなのかというところが問われているような気がします。ここについては、認識としてはどちらで考えればよろしいんでしょうか。

岡島政府参考人 先生おっしゃられましたように、本ガイドラインは、厚生労働省が行っております厚生労働科学研究の研究費を用いて研究を行いまして、その成果ということでございます。また、その掲載されていますガイドラインにつきましても、ホームページにつきましても、九州大学であるということはおっしゃるとおりでございます。

 ただ、このガイドラインにつきましては、個々の医師が判断するに当たっての基本的な考え方ということで、医学的な判断についてのものでございます。先生が先ほど御質問にございましたように、小児難病指定の基準になるかどうかということは、制度的な判断でまた別のものになるかと思います。

泉(健)委員 いや、その対象になるかという話はもう先ほど終わっている話でして、要は、こういった取り組みをちゃんと厚生労働省としてやっているんですよと。そして、せっかくつくったガイドラインも、厚生労働省はお金を渡しただけだと言われちゃうと、やはり我々患者としては非常に悲しい気分を、これは気分だけじゃないんですが、悲しく思うわけですね。では、国はアレルギー対策は何をやってくれているんだ、お金だけ渡して、その結果をホームページに載せればそれでいいのかという話になるわけですね。決してそうではない、やはり厚生労働省として、ちゃんとお金を渡し、そして皆さんに呼びかけをしているんだと。

 私は、実はこのガイドラインは、二十数年間患者をやっていますが、一回も見たことはもちろんないわけですね。これのたぐいのものも見たことない。聞いてみたら、この患者向けというものは何部つくったかといったら、千部つくったというわけですよ。どういうことだと。まあ、研究結果で一応患者向けにつくってみましたという話ですから、では厚生労働省さんとしては、今後一般に何十万部とつくる上でのまずは第一作ですというのかもしれません。しかし、もう患者はずっと、長年苦労している患者はたくさんいるけれども、一回もこういった治療に関しての国から何か出てきたものというのは見たことない。では、患者を、ある意味、言葉を選ばなければ、ばかにしないでくださいと言いたいんです。

 このお医者さん用はもうちょっと部数が多いわけですけれども、我々だってやはりこういうものを見たいですよ。今、一つ一つ薬の名前まで我々がちゃんと理解をして、そして自分でつける、どれを選ぶかという時代になっているにもかかわらず、医療機関用と患者用を分けて発行し続けるというのは、私は、これは患者の方の逆に治療をまたおくらせることにもなると思うんですね。やはりしっかりと、もう今の時代、こういった医療情報も公開するという意味で、患者の方にも行き渡らせていただきたいというふうに思うわけです。

 今後の、今まではもうしようがない、今後のこのアトピー対策について、今何か考えられていることがあるかどうか、これは大臣、もしお話しできるようであればお願いいたします。

尾辻国務大臣 その件につきまして、今私はまだ何も聞いておりませんけれども、今の先生のお話でございますから、この後よく聞いてみたい、こういうふうに思います。

泉(健)委員 では、それは担当者の方からお願いいたします。

岡島政府参考人 先生がおっしゃられますように、国民に対して正しい情報を適切に提供していくというのは大変大事なことだというふうに思います。

 私どもも、実は、確かにおっしゃられましたように、パンフレットにつきましては千部しかございませんで、これも研究の一環としてでございますので、量としては大変少のうございますけれども、一方で、先ほどの九州大学のホームページではございますが、ホームページで一般の国民の方にも見られるように情報提供しているところでございます。

 また、研究班の主任研究者にお願いをしまして、アレルギー疾患等に関する相談員、保健所の保健師さんなどが中心になりますけれども、その方たちの養成研修会などにおきまして説明をしていただいていまして、地域の相談にも対応できるようにはしているところでございます。また、研究成果そのものは、これも一般の方もごらんになれますけれども、国立保健医療科学院のデータベース、ホームページにも掲載させていただいているところでございます。

 私ども、患者さん方が病気につきまして理解をされていくということが非常に大事なことだというふうに思いますので、努力してまいりたいというふうに思います。

泉(健)委員 最後にお伝えしておきますが、確かにホームページの方は、今二十八万件ほどのアクセスがあって、ある意味、非常によく利用されていると思います。でも、ある意味、やはりそれだけ情報を求めている方々がおられて、ホームページを使える人でもそれだけの数がいるというふうに思っていただきたいと思うんですね。

 使えない方々の中には、たくさん悩んでいる人がいる。どうやったらいいんだということで、民間療法に手を出してしまって高額なお金を取られている、いわゆるアトピービジネスというもので苦しんでいる、二重の苦しみを負っている方々もたくさんいる。そういう状況で、研究をずっと続けてこられたのはよくわかった、しかし、そろそろその還元というものをちゃんとやっていただかなければ、いつまでも我々は路頭に迷わざるを得ないということを、最後にお伝えしておきたいと思います。

 この件についても、ぜひとも省の中で、これは花粉症も含めてになりますが、本当にアレルギーというのは非常にたくさんの方々がおられますので、この問題について、研究成果をそろそろ国としてちゃんと出していただくということについてもお願いをしたいと思います。

 それでは、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

鴨下委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時二分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時三分開議

鴨下委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。水島広子君。

水島委員 民主党の水島広子でございます。

 尾辻大臣、どうぞ、これからよろしくお願いいたします。

 大臣は長い海外放浪歴があると伺っております。私の海外放浪歴はせいぜい一年ですので、大臣の足元にも及びませんけれども、勝手ながら親近感を持たせていただいておりますし、国際的に社会の隅々までごらんになった大臣だからこそ、幅広い視点から柔軟な厚生労働行政をしてくださると期待をしておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 まず、新たに厚生労働大臣になられての虐待問題への大臣の決意を伺いたいと思います。

 現在、日本でこれほど多くの子供たちが虐待されているということは、本当に深刻な問題でございます。虐待されている子供たちにとって取り返しのつかない人権侵害であるというのは言うまでもございませんけれども、日本が子供たちをきちんと育てられない国という意味でも、政治的に大問題でございます。

 虐待を受けた子供たちは、自尊心に深い傷を負いますので、対人関係面でも、またみずからの能力の発揮という面でも大きなハンディを背負ってしまいます。本日の御答弁の中でも、もしかしたら財源を理由に難色を示されるというようなものもあるかもしれません。でも、子供たちをきちんと育てられない結果として、将来どれほどのコストを社会が払わなければならないかということを考えれば、子育て支援、虐待対策は本当に有効な先行投資でございます。家庭の中でも、たとえ経済的に苦しくても、子供たちの生活費や教育費は何とか捻出するものでございます。国レベルで見ても、財源がないということで簡単にあきらめられるテーマではないと思います。まず初めに、この点についての大臣の御決意をお聞かせ願いたいと思います。

尾辻国務大臣 とにかくこの虐待の問題というのは、今大変深刻な状態にあるということを認識いたしております。そして、本当に命を落とせば、もうそのままで、まさに命がなくなるわけでありますし、また、実質、一生を棒に振る、心に傷を負ったままもし生きていくとすると、そういうことにもなります。したがいまして、これはもう何としてでも防がなきゃいけない問題だと思っております。

 それから、私は、かつて少子化対策などのときに、これは攻める側だったから気楽に言えたのかもしれませんが、そもそも子育てというのは金がかかるんでしょう、金かければいいじゃないですかと迫ったこともあります。今は逆の立場なのでそこまで言える立場じゃありませんが、かつてそう迫った立場として、その思いだけは変えずに、またこの厚生労働行政を進めていきたい、こういうふうに思っておるところであります。

 そしてまた、虐待問題は、さっきから申し上げていますように、金は結構このところかけてきたと思いますので、金がないからという話は、これは、余りしないようにしたいというふうに思いますということだけをまず申し上げたいと思います。

水島委員 力強い御決意を伺わせていただきましたので、以後の御答弁に期待をさせていただきたいと思います。

 まず、今回の児童福祉法改正案で、私が昨年六月六日にこの委員会で問題提起をいたしました乳児院と児童養護施設の年齢要件の見直しについて、法改正という形できちんとこたえてくださったことに感謝を申し上げます。本日の質疑でもいろいろな点を提起させていただきますので、また引き続きよろしくお願い申し上げます。

 さて、今回の児童福祉法改正案の一つのポイントとなっておりますのが、入所措置に二年間という期限が設けられたことです。

 確かに、今の日本では、ただ漫然と児童養護施設で長い時期を過ごさなければならない子供が多いというのは大変な問題でございます。私たちも児童虐待防止法を改正する際にこの点を重く認識し、虐待を受けた子供たちが良好な家庭的環境で成長する必要があるということを明記いたしました。

 いつも不思議に思うことですけれども、男女共同参画や選択的夫婦別姓などを議論すると家庭の大切さを主張される方たちが、被虐待児の置かれている状況については必ずしも熱心に取り組まれないのは一体どういうことなんでしょうか。家庭が大切なのはどんな子供にとっても同じですし、虐待によって心身に傷を負い、さらに愛着関係を奪われた子供たちにとっては、ますます家庭的な環境で愛着関係を育てることが重要だと思います。家庭の大切さを憲法改正の論点にしようとすらおっしゃっている方たちがおられるようですけれども、あれだけのエネルギーを持って被虐待児に良好な家庭的環境を保障するために努力してくだされば、事態はとっくに改善しているはずなのにと残念に思っております。

 そうはいっても、知らないことには関心も持てないでしょうから、この審議を通して、もっと多くの皆様がこの領域に関心を持っていただきたいと思っております。

 そして、大臣には、家庭の大切さの議論が出たときには必ず、厚生労働大臣として、被虐待児にも家庭的環境が大切なのだということを言い添えていただきたいと思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。

尾辻国務大臣 今、最後におっしゃったことは、お約束をいたします。

水島委員 ありがとうございます。よろしくお願いいたします。

 さて、法案に戻りますけれども、漫然と施設に入所させておかずに、環境改善のための努力を常にしていくという趣旨であれば、二年という期限をまず設けることは理解できます。ただし、二年という期限だけがひとり歩きしてしまって、二年間何もせずに待てば子供が帰ってくるというふうに親が一方的な期待をするというのが心配です。

 二年目は指導措置の効果や環境調整のチェックポイントであって、二年たてば必ずしも帰すわけではないということを、どうやって親や、また関係者に理解させていくかということが一つの重要なポイントだと思いますけれども、これについてはどのようにしていかれるつもりでしょうか。

伍藤政府参考人 今回の法案の改正の中で、御指摘のとおり、従来、子供を親から引き離して措置をする場合に、その期限がなかったわけでございまして、この点について、いろいろな方面から、司法関与を強めるべきであるとか、期限を設けるべきであるとか、いろいろな御指摘がなされておったところでございます。

 そういった観点から、今回、一応、家庭裁判所の承認を得て児童を親から引き離して施設等に措置をする、そういった場合にも一応期限を二年と区切るということで、そういう改正を提案しているわけでありますが、これは、そういう期限を区切ることによって、保護者にも一定の理解を得られるし、それから定期的に第三者がチェックをする、そういうことも期待できるということから行うわけでありますので、二年を経過すると児童が保護者のもとに必ず戻ってくるということではないわけであります。それは委員御指摘のとおりでありますので、こういった趣旨のことを、私どもこれから、もしこの法律を改正、成立をいたしましたら、児童相談所長会議でありますとか、いろんな各都道府県の担当課長会議等を通じて趣旨を徹底するように努めていきたいというふうに思っております。

水島委員 ぜひそういうふうにしていただきたいですし、本来であれば、法律をつくられるときに、まず二年を期限とするというふうに書き切ってしまうことよりも、そのような定期的なチェックが必要なんだということがもっとわかりやすいような形で法案をつくっていただきたかったとは思いますけれども、いずれにしても、その周知徹底をしっかりとしていただきたいと思っております。

 そして、今度、親元に帰した後のことでございますけれども、親元に帰した後という時期は、特に虐待の再発リスクに注意をしなければならない時期でございます。指導効果があらわれて、もう虐待はしないと決意をしている親であっても、子供が戻ってくるというのは生活上の大きな変化であって、ストレス要因となり得るわけです。虐待というのは精神的、経済的余裕のないところに起こりやすいものでございますので、当然、親元に帰した後の時期というのは、虐待再発のリスクのある時期だというふうに言えると思います。

 親元に子供を帰した後は、そういう意味では特に児童相談所とのかかわりが最も重要な時期となると思いますけれども、実際には、これをきちんと確保していくことが難しいという現実がございます。これをどうやって確保していかれるおつもりでしょうか。

伍藤政府参考人 子供が家庭へ復帰をした場合に、その後のアフターケア、これが非常に重要なことは御指摘のとおりであります。

 こういった観点から、どういう体制で家庭復帰後の子供を見守っていくかということでございますが、今回の法律改正で提案をしておりますのは、地域で要保護児童対策地域協議会、いわゆるネットワークをつくっていただいて、身近なところでいろんな関係者がそういう要保護家庭にアプローチできる、あるいは目を光らせるといいますか、そういう意識を持っていただく、こういうことがまず必要かと思っております。それから、施設を退所するわけでありますが、その施設そのものにも、施設を退所した後も、ぜひ退所後の児童についてどうなっているかという関心を持っていただくといいますか、アフターケア、こういったことを業務としてやっていただきたいということでこれを追加する、そういう法律改正を提案しておるわけであります。

 それから、肝心の児童相談所は、そういうことを踏まえて、児童がどうなっておるか、どういう状況に置かれているかということをきちんと定期的に見守っていくということが大変重要なことでありますから、継続的なかかわりを持つように、持てるように、今後、児童相談所の運営指針などにおきましても、こういう措置解除後の継続的なかかわり、こういったものの重要性について明記をするというような形ではっきりさせ、それを周知徹底を図っていきたいというふうに思っております。

水島委員 現在でも児童相談所の側ではそれが重要であるということを十分認識しながらも、実際にはそこまで手が回っていないというのが現実のようでございますので、周知徹底するだけでは恐らく足りないのだと思います。

 その点も含めてきちんと考えていただきたいんですけれども、そのように児相側からのアプローチを続けていったとしても、実際には途中で、指導のため児相とのかかわりを持たせるための児相に親が来なくなってしまうとか、あるいは指導を途中で断られてしまうとか、そのようなケースが実際にはあるわけでございます。言われたとおりにずっと指導をきちんと受けてくれるような親だったら、もしかしたらそもそも虐待に及ばないのかもしれませんけれども、実際にはその指導が途中で切れてしまって、それをもう一度つなぐだけの人手がないためにそのままになってしまう、そんなケースが多いのではないかと思います。

 虐待が再発すれば、それはもちろん、もう一度、一時保護から入所措置というような手段をとることができるわけですけれども、虐待が再発しているという証拠もない、けれども親が指導措置を受けなくなってしまったと、そのような場合には、法的にそれをきちんと確保する手だてというのが今実際にないわけでございますけれども、これを一体どういうふうに考えていくべきかということなんです。

 私たちの考えとしては、本来は措置解除をするときに条件をつけておいて、例えばきちんと指導を受けるという条件をつけておいて、それが破られる場合には、虐待が明らかに再発している場合でないとしてももう一度家裁の許可を得て入所措置をとるくらいの枠組みが実際には必要ではないかとも思っているわけですけれども、現在、そのような法的な枠組みがない中で、どうやってこれをきちんと確保していくかということについてはどのようにお考えでしょうか。

伍藤政府参考人 現実問題として、個々具体的な事例にどう対応していくか、これが一番児童相談所でも頭を悩まし、また大変難しいところでございます。御指摘のようなケースにどう対応していくか、私どもも明快な方針といいますか、そういうのがあるわけではありませんので、このあたりは、どういうふうに具体的な事例を積み重ねて、ケースワークを積み上げて、どういった方法がいいのか、国レベルでも研究していきたいと思いますし、また現場からのいろんな提案なり具体的な事例というものを集積してみたいというふうに思っております。

 ただ、一般論として、粘り強く保護者指導を受けるということを説得するということがやはり基本でありますが、そうでない場合には、虐待防止法にあります都道府県知事の勧告でありますとか、あるいは、場合によっては児童相談所による立入調査にまで踏み込むというようなことを機動的にどうやって活用するか、こういったことがポイントだろうと思います。

 いずれにしても、そういう、継続的になかなか難しい、保護者を相手にしてどういうふうにしていくかということについては、具体的な手だては限られておりますから、そういったものをいかにうまく駆使して、活用していくかということについて、私どももいろいろ研究をしていきたいというふうに思っております。

水島委員 先ほど私が提案をさせていただいたような枠組みも含めて、ぜひきちんと考えていただきたいと思っているんです。もちろん、現状でも、児童相談所のアプローチが難しくても、例えば母子保健課ですか、のような方たちは、子育て支援としてやってくるのであれば、そんなに警戒しないで受け入れることができるというようなことも当然あるわけでございますので、本当に、使える資源を何でも使っていただきたいと思うんですけれども、そういうやり方を考えていく上でも、やはり子育て支援と虐待対策といわゆる子供の健全育成というのは実は同じことを扱っているのだと私は思っております。

 今まで少年院などの視察を続けてまいりまして、いわゆる非行に及ぶ子供たちで被虐待経験のない子を見つける方が今では難しいというふうに感じております。

 今の日本で、子供たちが、ただ物を与えられて放置されて、大人たちにきちんとかかわってもらっていないということも、広い意味でのネグレクトだと思っております。ですから、子供たちをきちんと育てていく、そういう言葉が好きな方たちに言わせればそれを健全育成と言うようですけれども、いわゆる健全育成というものをしていくためには、まずはどれだけ大人たちが適切な方法で子供たちとかかわっていくかということを考えるのが最優先課題であって、それさえきちんと押さえていけば、子供たちは案外健康に育っていく力を持っていると私は思っております。

 そのときに、そのような意識がないと、健全育成施策だけが現実離れしたゆがんだものになっていってしまって、かえって子供たちにとって有害になり得るというふうにも思っておりますので、全体的な枠組み、今子供たちがどういう環境で育っているのかということへの認識というのはとても重要ですし、健全育成施策と子育て支援と虐待対策というものは常に連携させていく必要があると思っております。この点についての大臣の御認識はいかがでしょうか。

尾辻国務大臣 先ほど御答弁申し上げましたときにも、つい、子育て支援センターということを申し上げました。あのときに私が申し上げたのは、今まさに委員が御指摘になっておられるようなことを頭の中に描いて申し上げたつもりであります。したがいまして、今のお話はまずそのとおりだと思います。

 ただ、では具体的にそうしたものをどうやるんだということになりますと、これは私どもが今から真剣に考えなきゃいかぬ問題だと思いますので、そのことはぜひ今のお話を念頭に入れつつ、全体の何か絵をかいてみたいなと今思っておるところであります。

水島委員 そのような認識を持っていただいている大臣であれば、小泉内閣の一員として、最近どうも健全育成施策というのが何かひとり歩きをしてしまって、現在子供たちが置かれている状況を何も知らない人たちがあれやこれやと理屈をこね回しているような印象を受けておりまして、大変懸念しておりますので、そのような統合的な考えに立って進めていくべきなのだということを、ぜひそれは声を大にして訴えていただきたいと思っております。

 それは、恐らく、子育て、健全育成というようなことになりますと、むしろ厚生労働省の所管ではなくて内閣府だとか、そういう話になってくるのかもしれませんけれども、そういう縦割りのような考え方はもう一切排して、この現場をよく知っていらっしゃる厚生労働大臣として、しっかりとそれはおっしゃっていただきたいと思っております。

 さて、今度は各論になります。

 そのような総合的な施策の中では、本日も、午前中の審議の中でも指摘がありましたけれども、やはり妊婦健診とか乳幼児健診などを虐待防止にもフルに活用すべきであると私は思っております。母子手帳をもらいに行ったときから虐待防止は始まるべきだと思っております。実際にデンマークなどでは、地域のネットワークがきちんとできていて、妊婦健診ですとか、あるいは出産時の病院での様子ですとか、あるいはその後の健診などで、ここはもうサポートが必要だと思うような家庭については、きちんと地域のセンターに引き継がれて、サポートが行われている、そんなふうに昨年も視察で見てまいりました。

 日本では、やるとしたら、まず乳幼児健診に来ない子供たちのフォローをきちんとしていくということだと思っております。それが今日本で一番現実的な形ではないかと思います。既に先進自治体ではそのような取り組みを始めているわけでございますし、厚生労働省としてもそのようなお考えだというふうに先ほど伺ったところでございますけれども、ただ、その来ない家庭に対して実際にそこを訪問するという訪問事業、これは当然夜間や休日も行わなければいけないものだと思いますけれども、この点については、きちんと現実的な体制を考えられていますでしょうか。

伍藤政府参考人 乳児健診等で、受診をしない家庭に積極的に行政の方からアプローチをする、こういう対策が虐待予防のためにも非常に有効であるということで、本年度から、育児支援の家庭訪問事業というようなことも国の補助事業として進めておるところでございますが、自治体の取り組みがいまだしというところでございまして、これを、まず市町村にそういう趣旨を徹底して、普及をしていくということが必要ではないかというふうに思っております。

 それから、本年三月末に、死亡事例を検証した際にも非常に乳児の割合が高かったというようなことも踏まえて、新生児訪問、あるいは健康診査を受診されない方への対応を図るべきだというような通知を発出して、そういった面での取り組みを今求めているところでございまして、自治体にまずこういったことの意識の浸透を図っていきたいというふうに思っております。

水島委員 質問には答えていただいていないんですけれども、意識の浸透を図るとともに、まず実際に、乳幼児健診に行かれないケースというのは、私が住んでいます宇都宮市でも、乳幼児健診の指定日というのは平日になっているんですね。平日ですから、まず連れていくことができないわけです。そうやって、行かれなかったところにもし訪問していただくとしたら、当然、平日の昼間は難しいというような家庭であるわけですので、夜間や休日の対応というのをきちんと考えていただくというのは大原則になると思いますけれども、そのあたりのことは御理解いただいていますでしょうか。

 平日の九時から五時に訪ねてみて、いつ行っても留守で会えないんだということで、どこかでまた子供が放置されるようなことがないように考えてくださっているでしょうか。

伍藤政府参考人 それぞれの自治体でどういう形で取り組んでおるかというのを全体的、網羅的に把握をしておるわけでありませんから一律に申し上げられませんが、そういう工夫をしている自治体もあるんではないかと思いますが、そのあたりの、御指摘のあったようなことについても少し念頭に置いて、この事業の推進に取り組んでいきたいというふうに思っております。

水島委員 ぜひそうしていただきたいと思います。

 それから、先ほど乳幼児健診の受診率が約九割というような御答弁があったかと思うんです。

 例えば、私の例で申しわけないんですけれども、私もそんなわけで子供を乳幼児健診に、二人目の子はなかなか連れていけないんですけれども、そうしましたら、先日宇都宮市からはがきが来まして、乳幼児健診に来なかったのはどういうわけかと、その理由に丸をつけるようなはがきが来ました。私はとりあえず、主治医にやってもらったというところに丸をつけて送り返しましたら、その後何のおとがめもなしで。

 私の場合は、たまたま親しい小児科医の方がいらっしゃるので、実際に診ていただいてはいるんですけれども、これがもし、私がいいかげんに、ただ丸をつけて返しただけだったとしたら、これっきり何もないというのでは、余りにもちょっと不安だなというふうにも感じましたし、先ほどの九割という数字は、もしかしたら、そのように、別の機関でやったというようなことも単に統計的に処理をしての九割なのかもしれないなと思いながら伺っていましたので、そのあたりの実態をもう少しきちんと調べていただければということを希望させていただきたいと思います。

 実際に、乳幼児健診の当日はまだ虐待をするに及んでいなくても、そこで、実際に出かけていって、ついでにいろいろな人と交流して話も伺って、またそれで少し子育ての幅が広がるということもありますので、それは虐待のリスクを低下させるということにもなると思いますので、ぜひこの乳幼児健診については、仕事をしている人にとっても行かれるようなときにきちんと設定をしていただきたいと思います。実は、これは予防接種についてもそうなんですけれども、それができないときの対応というものも、それはきちんと施策として取り組んでいただきたいと思っております。

 そして、支援の連続性という点から考えますと、実はこの虐待施策に関して大きいのは、転居への対応ということでございます。転居先の児童相談所にうまく引き継がれずに、虐待が再発という事例は、報道されているだけでも少なくないわけでございます。もう大丈夫だと思ったなどという弁明がよく述べられていますけれども、転居というのは普通の人にとってもありふれたストレス要因でございますので、虐待再発のリスクが高まるというのは常識的にも考えられるはずだと思います。

 改正虐待防止法で、「関係省庁相互間その他関係機関及び民間団体の間の連携の強化、民間団体の支援その他児童虐待の防止等のために必要な体制の整備に努めなければならない。」というようなところでも、この関係機関の連携強化の一つとして、転居時の引き継ぎというものを含めるということが児童虐待防止法改正時に確認をされたことでございますけれども、残念ながら、この委員会できちんとその確認をする時間がございませんでしたので、ちょっときょうここで改めて、転居時の対応というものも今回の改正虐待防止法においてさらにきちんと法律に盛り込まれて認識が深められたというふうに理解させていただいてよろしいか、その確認だけいただきたいと思います。

伍藤政府参考人 先般の児童虐待防止法の改正によりまして、国及び地方公共団体の責務として、「関係省庁相互間その他関係機関及び民間団体の間の連携の強化、」というのが法律に明記されたところでありますが、その趣旨につきましては、一つは、国の関係省庁、厚生労働省でありますとか警察庁、文部科学省その他の関係省庁間の連携が一つでありますし、それから二つ目は、児童相談所と市町村、福祉事務所あるいはNPO法人、現場、地方におけるそういった関係機関の連携、これが二点目であります。

 そういった横断的な連携ということのほかに、児童が転居したときの自治体相互間の連携ということも当然含まれるというふうに理解をしております。

水島委員 ぜひこれからは、転居が理由で虐待が再発するのを防げなかったという事例が本当に一つもなくなるように、しっかりとこの虐待防止法の改正の趣旨を踏まえてお取り組みをいただきたいと思っております。

 さて、今回の児童福祉法の改正案で、虐待をした親に、児童相談所の指導を受けるよう、家裁が勧告するという仕組みが初めてつくられると聞いて、大変期待をしていたわけでございますけれども、実際の改正案を見てとてもがっかりいたしました。なぜかというと、その勧告が、親に対してではなく都道府県、つまり児童相談所に対してという仕組みになっているからでございます。これは、なぜ親に対しての勧告にしなかったのか、その事情をお知らせいただきたいと思います。

尾辻国務大臣 この辺のところは、関係省庁ともいろいろ調整をしたようでございます。その中で出てきた理屈というのは、まず裁判所があります、児童相談所があります、この間の関係はいわば司法の関係で出てくる。今度は、児童相談所と保護者との間というのは行政の部分であるから、司法の部分と行政の部分だと。

 したがって、司法の家庭裁判所が、司法、行政とくる、ここのところにいきなり、一挙に保護者にまで何か物を言うのはどうだろうかと、どうもこういう理屈の整理になって、こういう形にこの法律がおさまったというふうに聞いております。

水島委員 多分、その関係省庁というのは、一言で言うと法務省なんだと思います。今おっしゃったように、児相が当事者であって、保護者は当事者ではない、何かそういう理屈を法務省の方がどうもおっしゃっているようなんですけれども、これは次回、時間がありましたら、法務省の方にぜひこの委員会に来ていただきたいと思っております。

 実際には、少年審判を見ましても、少年法の改正によって、法律上、保護者への訓戒、指導等ができるようになっているわけです。この場合も保護者というのは決して当事者ではございませんので、そういう仕組みが既に法律上存在しているわけですから、今回の法務省の言い分というのは、私は法律の専門家でなくて申しわけないですけれども、そんな立場から見ても、ちょっとへ理屈ではないかなというふうに思っておりますので、これは次回、質問の時間がとれましたら、また法務省にも伺ってみたいと思っておりますけれども、とりあえず現行の枠組みできょうは質問をさせていただきたいと思います。

 勧告が児童相談所にされるということで、勧告そのものにお墨つきを与えようというのが今回の趣旨ではないかと思います。この場合、指導措置を受けない場合、どうなるかということを考えなければいけないんですが、今回のこの法律の枠組みで考えますと、指導措置を受けない限り、親元に子供は帰されないというふうに解釈をしてよろしいんでしょうか。

伍藤政府参考人 この保護者指導というのは、虐待問題にどう対応していくか、あるいは再統合をどう図っていくかという上で非常に大きな論点でありますから、保護者指導を受けていただくということが非常に重要なファクターでありますが、いろいろな状況を勘案して、子供を親元に帰すかどうかということを最終的に、総合的に判断をするということでありますので、法律上、保護者指導を受けなかったということだけをもって、それのみの理由で必ずこの子供は帰すべきではないという結論に行くようにはなっておりません。それも非常に大きなファクターでありますが、それも含めて総合的に判断をする、法律上の枠組みはそういうふうになっておるというふうに理解しております。

水島委員 保護者指導が必要だということを家庭裁判所も判断するようなケースであって、家庭裁判所が児童相談所に、保護者に指導を受けさせるようにという勧告をしているような枠組みがあってもなお保護者指導を受けようとしない保護者のもとにも、子供が帰されるということがあるんでしょうか、今の御答弁ですと。

伍藤政府参考人 基本的には、そういったことで帰すという判断はしないということが通常であろうと思いますが、全く制度的にそういうのがあり得ないのかというと、それはあり得ないようになっておるという仕組みではないということを申し上げたわけで、現実論としては、保護者指導を行うべきだという勧告を受けたようなケースについて、保護者が指導を受けない、保護者指導は受けないけれども保護者の状態が非常に改善されたということが論理的にはあり得るわけでありますから。そういったことではありますが、実態としては、御指摘のようなケースについては、通常、親元に子供を帰すというような判断にはならないんではないかというふうに考えるところでございます。

水島委員 実は今、大変重要な審議をしておりまして、今回の勧告というものにどれだけの重みを与えるかということが今の御答弁にかかっているわけでございます。

 ここで、そういうケースは親元に帰すことはまずあり得ませんというふうにはっきり言っていただけると、これは、子供を帰してほしい親にとっては、ちゃんと指導を受けなければいけないというインセンティブが働くわけですが、ここで最初から、あり得ないわけでもなくて、あり得るんですけれどもというような答弁をされてしまいますと、何か、親としても、じゃ、そのちょっとしたチャンスをねらってみようかなというような気持ちにもなってしまうかと思うんです。

 ちょっと、もう一度整理して御答弁いただきたいんですけれども。

 そもそも、指導しなくても親が改善するようなケースに対してまで指導を受けることを勧告するということは、確率からいっても、まず非常に低いことだと思っておりますので、指導措置を受けることが家裁によって勧告されるようなケースであって、そして、それを親が拒否して指導措置を受けないという場合には、まず親元に帰されることはないでしょうと、ないでしょうで結構ですので、そういうふうに御答弁いただけますでしょうか。

伍藤政府参考人 家裁によってそういう指導の勧告がなされるというケースでありますから、かなりの問題があるケースであろう、そういう観点からいきますと、御指摘のとおり、基本的には帰すことはないというふうに考えてよろしいかと思います。

水島委員 ありがとうございました。

 そして、今回の枠組みの中ではそのようなことで進めていかれるということなんですけれども、やはり先ほど大臣が答弁してくださったように、裁判所の相手が児童相談所であって、保護者というのはその枠外であるというような、そういう構造が、ちょっと、私はそもそも問題だなと思っております。

 現在、裁判所がこの件にかかわっているポイントというのは親権にありまして、保護者と都道府県の間に入って調整をするという立場に裁判所はとどまっているわけでございます。でも、本来は、子どもの権利条約によっても保障されている子供の権利を守るために司法がもっと機能すべきではないかと私は思いますし、そういう意見をお持ちの方もたくさんいらっしゃるわけです。

 このことについて、当然、裁判所のあり方ですから、厚生労働大臣としての御答弁は難しいかもしれませんけれども、裁判所がもっと子供の権利というものをきちんと守っていくように機能してもよいのではないか、家庭裁判所のもともとの生い立ちから考えましても、そのような機能を、もっと福祉的な機能を担っていってもよいのではないかということを、ちょっと一人の政治家としての御意見をお聞かせいただけますでしょうか。

尾辻国務大臣 児童の保護につきまして、司法がより積極的に役割を果たすべきだという御意見があることは私も承知をいたしております。どちらかというと、私もそうは思いますが、この場でのお答えはそこまでにさせておいていただきたいと思います。

水島委員 私もそう思いますと答えていただきましたので、ありがとうございました。

 実際に、そういう枠組みについて真剣に議論すべきときが来ていると思っております。子供の虐待だけではなくて、DVについてもそうでございますし、高齢者虐待という問題もございます。そのように、司法といわゆる福祉施策の接点といいますか、そのような事例がここのところ本当に問題になっているわけですので、そういう中での司法の位置づけというものを、ぜひそのグランドデザインをきちんと描いていかなければいけないと思っております。私たちもそういう努力をしていきたいと思っておりますけれども、ぜひ大臣の方でもお考えをいただきたいと思っております。

 今回、指導勧告ができるという仕組みになりましたので、そうなりますと、ますます指導の内容の充実というものも問われてくるわけでございます。

 改正虐待防止法第四条でも、児童虐待を行った保護者の指導及び支援のあり方についての調査研究及び検証を行うものとすると規定をさせていただきました。この体制の整備はどうなっているのかということをお伺いしたいわけですけれども、それを伺おうとしましたところ、きのう、今私の手元にあります「子ども・家族への支援・治療をするために 虐待を受けた子どもとその家族と向き合うあなたへ」この冊子を御紹介いただきました。これは児童虐待防止対策支援・治療研究会が編集をしているものでございまして、ことしの六月に発行をされているものでございますので、私が春に、通常国会のときに伺いましたときに、全く予告もしていただけなかったというのは、相変わらず情報の出し惜しみをされているなと思ったんですけれども。きのうこれをいただきまして、ざっと読んでみたんです。大変すばらしい内容だと思います。本当に第一線の方たちが書いておられて、すぐに役に立つような、そんな冊子として仕上がっていると思いますので、私、読んで感動したわけでございます。

 このようなよい冊子ができて、私もきのうまでこの存在を知らなかったわけですけれども、実際に多くの方がまだ、きょうお集まりの議員の皆さんも初めてごらんになる方ばかりじゃないかなと思います。つくったはいいけれども、活用されないというのは本当にもったいないことでございますので、この冊子の活用の仕方をどのようにされているのかということも含めて、またそちらの調査研究及び検証の体制の方は、これはもう法律事項で、この十月一日から施行されている法律に規定されていることでございますので、これらについてお答えをいただきたいと思います。

伍藤政府参考人 この「子ども・家族への支援・治療をするために」この冊子につきましては、初めてこういう形でまとめさせていただきましたので、これを都道府県などの現場にできるだけ周知するように配布していきたいというふうに考えております。

 それから、そのほかの調査研究とか検証、そういった問題についてでありますが、従来から研修につきましては虹センターという国の設置した研修機関があります。ここで研修を進めておりますので、これの充実を図っていきたいと思っておりますし、それから調査研究につきましては、来年度の厚生労働科学研究で包括的に児童虐待におけるいろんな、効果的な早期発見の方法でありますとか子供のケアでありますとか、こういった、残されておる課題につきまして総合的に研究を進めていく、調査研究課題を設定して進めてまいりたいというふうに思っております。

水島委員 日本においても非常に立ちおくれている領域でございますし、こんなものがつくられているとは、私も知りませんでしたし、今まで虐待関係でいろいろな……(発言する者あり)これを知らなかったので、いろいろな虐待関係の、自治体の方もお集まりのようなところに私も講演などで顔を出させていただくと、どこに行っても、大体指導のやり方というのがないんだから、そうやって指導の勧告ばかりつくられても困るんだというような意見の方が現場でかなり多くいらっしゃるわけですので、とてもその周知徹底度というのは足りないと思います。

 またさらに、先ほどおっしゃいました研究につきましても、もちろんここを最終点とすることなく、もっときちんと進めていただきたいと思っております。

 今、同僚議員から希望が出ましたので、これを何部刷ったのかということを教えていただきたいと思います。

伍藤政府参考人 ちょっとこの場では、今何部刷ってあるのかというようなことは答えができませんので、調べてみたいと思います。

水島委員 済みません。今の部分は私自身は通告していなかったので。ぜひ後でお知らせいただきたいと思います。

 そしてこの本を読んでおりましても、中を見ますと、指導と言うけれども、指導してやるんだというような、そういう態度ではなくて、やはり支援する、一緒に取り組んでいくという姿勢がとても重要なんだということがこの本の中にも書かれておりまして、まさに私も同じ気持ちでございます。だからこそ、虐待防止法を改正しますときには、指導ではなくて、指導や支援という形で、支援という言葉も使わせていただいたわけですけれども。

 今回は児童福祉法の改正案の中で一貫して指導という言葉が使われておりますので、それに沿って質問させていただいているわけですけれども、ぜひこのあたりの言葉の使い方についても、もちろん大きなくくりでいけば指導なのかもしれませんけれども、実際にやっている作業、また実際に親たちが必要としているものというのは、どちらかというと支援であって、虐待がどういうところに起こるかといえば、先ほども申しましたけれども、経済的な余裕がなくなったり精神的な余裕がなくなったり、そういうところに起こってくるものに対して厳しく指導していたら、ますます余裕がなくなってしまいますので、かえってそれは逆効果であるということを、多分厚生労働省の皆様は御認識だと思いますけれども、それはこんな言葉の使い方一つにもあらわれてくるところでございますので、ぜひその辺、これから言葉の使い方をもう少し慎重に考えていただきたいと思いますし、支援という色彩をもっと強く出していただきたいと思います。

 もちろん、私は虐待をする親をかばうつもりは全くございません。子供にとっては、人権侵害であるということは間違いがないですし、そういう点では加害者であるわけですけれども。

 その点は、子供と分離して、子供の安全を図るという点で、きちんと対処するとともに、じゃ、実際に加害者はどういう人なんだということを見ていきますと、往々にして支援が必要な人であるという場合の方が多いわけでございますから、ぜひそのあたり、法律の用語につきましても、これに基づいて次のいろいろなものがつくられていくわけですから、一度慎重に見直しをしていただきたいと思っております。

 さて、今回の児童福祉法の改正で、児童福祉についての相談の一義的な窓口が市町村に移されるという大改正が行われるわけで、これについては既に質問されている方もいますけれども、私から見ても、大変懸念すべき改正点の一つだと思っております。現在の市町村の状態では、とてもこの役割を担えないだろうと思っておりますし、多くの人が、市町村の方も含めてそのようにおっしゃっているわけでございます。

 窓口は身近なところで、そして難しい問題は後方でという考え方は確かに合理的な考え方だと思います。でも、この考え方をとる場合には、窓口に専門家を置く必要があります。この問題は一体どこで対応すべきなのかというのを判断するのは、まさに専門家でなければできない仕事であるわけです。医療においても、ホームドクターと専門的な医療機関ということで役割分担を進めるという考えに私も賛成ですけれども、その場合、ホームドクターに問われる資質としては、これが一体どの程度の医療を必要とするものなのかという、その仕分けですよね、その専門的知識が必要となるわけで、虐待についても全く同じふうに考えなければいけないと思っております。

 九月に大変悲惨な児童虐待殺人事件が栃木県の小山市で起こりまして、民主党でも、私たち早速現地調査を行わせていただきました。

 この事件はまさに窓口の判断の誤りが致命的だったわけでございます。虐待ケースとしてとらえていれば、あるいは虐待の可能性を少しでも念頭に置いて臨んでいただいていれば、その後の対応はがらりと違ったものになったでしょうし、最悪の事態も防げたと思います。あのような初動ミスが児童相談所でも起こり得る。小山の事件を扱った栃木県の県南児童相談所というのは決して素人の児童相談所ではございませんでしたので、そのような児童相談所でもあのような初動ミスが起こり得るという現実に直面をいたしまして、私は瞬間的にこの児童福祉法改正案のことを思い出しまして、背筋が寒くなる思いがしたわけでございます。

 今回の改正をする大前提となるのは、やはり市町村の窓口の専門性をどう確保するかということだと思います。まず、このような改正を提案された厚生労働省としての考え方と、その取り組みの方針を、これは大臣にお答えいただきたいと思います。

尾辻国務大臣 冒頭にお話しいただいたものですから、つい私からもお話ししたくなったんですが、御尊父とは参議院の委員会でも随分いろんな議論をさせていただきました。そのころに、今のお話で申し上げると、総合診療科などというのが必要なときになったんじゃないですかねなどという話をさせていただいたことを思い出しました。

 そんなことを申し上げて、今の御質問に対してお答え申し上げたいと思います。

 各市町村におきまして児童虐待に対応するための体制を整えていくということは、もう今のお話のとおりに大変重要なことだと考えておりまして、国といたしましても、今年度予算におきまして虐待の未然防止の観点から、みずからは訴え出ない、過重な育児負担のある家庭を訪問し、育児支援を行う事業を創設するとともに、市町村の保健師について、虐待予防を担うことも念頭に、平成十三年度から十六年度までに、全国で千三百人の増員が行われるよう地方財政措置が講じられるなど、その充実に努めてまいったところでございます。今申し上げておりますのは、保健師に大きな期待をしたいということを申し上げておるわけでございます。

 市町村において、児童相談を担当する職員や保健師の増員など、所要の交付税要望を今私どもも行っておるところでありまして、ぜひこの要望が実現するように努力して、今の窓口でまずはきっちり対応できるという体制を整えたいというふうに考えておるところでございます。

水島委員 今回の改正の中でも、児童相談所の所長さんに研修が義務づけられるですとか、やはり児童相談所そのものの専門性を高めるということも一つの大きな課題であるわけで、今までその枠組みにそういう形で入っていなかった市町村が、ある意味ではそれ以上の専門性をこのたび要求されるということになるわけですので、これはちょっとやそっとの対応では間に合わないのではないかというふうに思っております。

 これは、私たちは、市町村にまずは児童福祉司を必置するぐらいのところから始めなければ、こんな改正はできないんじゃないかというふうにも考えて、今まで主張をしてきたわけでございますけれども、実際にこの法改正がされて動き始めたときに、窓口ミスというものが今までよりもふえるようなことがあったら、法律なんて変えなければよかったということになりますので、その点については、どんなに慎重に対応しても慎重過ぎることはないと思います。

 もう少し、それならば安心というような何か御答弁が考えられれば、まあ、きょうのところの御答弁はそのようなところだと思うんですけれども、まだ審議は続いておりますので、できましたら、この審議が終わるまでの間に、そういうことだったらこちらも安心して今回の改正に踏み切れるというような、もう少し取っかかりをいただきたいというふうに思っておりますけれども。

 ちょっとここで、その先を読んで心配をしまして質問させていただきたいんですが、これは、法改正された場合でも、虐待について児童相談所に直接通告するということももちろん認められるんでしょうか。

伍藤政府参考人 当然、児童相談所にも通告をできますし、現在でも、児童相談所と、それから、社会福祉事務所にも通告をできるよ、こういう体制になっている。それにさらに市町村が加わる、こういう重層的になるということでございます。

水島委員 そして、基本的には、虐待については児童相談所が責任をとるという形になりますでしょうか。その点を確認させていただきたいと思います。

 窓口が市町村で、虐待など難しい事例については児童相談所でというふうに説明を伺っておりますが、虐待というのは基本的に全部難しいケースですので、虐待はすべて児童相談所で責任をとっていただくというふうに理解をしてよろしいでしょうか。何か事件が起こったときに、児童相談所の方が出てきて、いや、これは市町村のせいですなんというふうに言いわけをするのを、もう絶対に聞きたくないと思うんですけれども、その点、ちょっと大臣にこれはきちんと御確認をいただきたいと思います。

尾辻国務大臣 おっしゃるとおりに、もう虐待というのは深刻な事態でありますから、そうなると、今私どもが御説明申し上げておるところでは、当然児童相談所の役割になる、このことはもうはっきりしていると思いますから、そのことを別にここで否定するものでも何でもございません。

 それから、先ほどのお答えにもう一つだけつけ加えさせていただきますと、市町村の相談援助に関するガイドラインを私どもつくろうということは先ほど来御説明申し上げておりますから、今の先生の御指摘などを踏まえたガイドラインにさせていただきたい、こういうふうにお答え申し上げておきます。

水島委員 恐らく、市町村の体制が整備されていく、またそこで人がきちんと確保されて、その質が一定レベルに達していくまでにはある程度時間がかかるというのは、普通に考えても当たり前のことだと思いますので、今度法改正されたから、これは市町村だ、これは児童相談所だということで、そのすき間に落ち込むようなケースが出ないように、しっかりと軌道に、いつ乗るのかわかりませんけれども、軌道にしっかりと乗っていくまで、これは市町村合併のこともありますので、本当に軌道に乗るには、私、かなり時間がかかると思うんですけれども、それまでは、児童相談所がやはり今までどおりの役割を果たしていくということ、当然、窓口としての役割を果たすということも重要だと思いますので、その点については、法律が変わったからさっと手を引くというようなことがないように、しっかりと御指導いただきたいと思っております。

 そして、今おっしゃった市町村のガイドラインにも関連してくると思うんですけれども、私も、今回小山の事件を見てまいりまして、最初の認識が間違った背景には、警察と児童相談所の連携の悪さももちろんございましたけれども、虐待を把握するためのアセスメントツールの不備がやはり気になりました。

 児童福祉司個人の経験と勘だけを頼りに虐待を見つけるような段階はもう超えなければならないと思っております。もちろん、最後のところでは経験と勘というのは常に重要な要素になるわけですけれども、少なくとも基本的なレベルでは、だれがやっても一定水準が確保されるようなツールをつくる必要があると思っております。どんなケースの相談を受ける場合でも、面接において聞くべき事項、注意すべき事項をきちんとリストアップして、虐待の可能性をまずは検討するということが、これは虐待相談という形で受けたものでなくても、どんなケースでも子供に関するものであればまず虐待の可能性を除外する、そういう作業が必要になると思っております。

 厚生労働省でもこのアセスメントツールをつくる準備を進めているというふうに聞いておりますけれども、いつまでにどんなものをつくろうとされているのかをお答えいただきたいと思います。

伍藤政府参考人 さまざまなケースに児童相談所がどういうふうに対応していくかということで、それをある程度マニュアル化する、こういうことが必要でありますが、そういった観点から、本年の二月に専門家による研究会を設置いたしまして、御指摘のようなアセスメントツールといいますか、そういったものについての検討を今進めておるところでございます。

 内容については、例えば、相談を受け付けた段階で、相談援助の方向性とかあるいは初期対応などを検討する際に必要な基本情報をどういうふうに確認をして集めるか、こういった評価の指標を集める、あるいは子供の年齢等に応じて、適切な相談援助の方針を決定する際に必要な基本情報はどういう形でどういうふうに整理するか、こういった幾つかのアプローチを試みておるところでありますが、こういったものをきちっと評価して、その整理をして、それで、それぞれの児童相談所で使えるように、こういうふうな体制に持っていきたいと思っております。

 具体的には、これらの指標について、本年度中にできれば作成をしたいということで、今研究会の作業を進めておるところでございます。

水島委員 今、それぞれの児童相談所で使えるようにというふうにおっしゃったんですが、これは、窓口が市町村になりますと、市町村でも使えるようにというふうに考えていいんでしょうか。

伍藤政府参考人 児童相談所以外にも、御指摘のような市町村でありますとか、あるいは場合によっては児童福祉司の関係施設等でもそういったものを活用できる、そういうふうにしていきたいというふうに思っております。

水島委員 活用できるというよりは、実際に最初の受け入れ段階で虐待の可能性というのをチェックするためのガイドラインであるとも思いますので、必ず市町村では、受けたときにはそれに基づいてチェックをするというような形で体制をつくっていただかなければならないと思いますので、よろしくお願いいたします。

 さて、小山の事件でもう一つ思いましたことは、児童相談所の第三者評価をどうするかということでございました。処遇会議という相談所内の検討会議はございますけれども、基本的に、児童相談所というのは閉じた場でございます。ですけれども、小山の事件のように、児童相談所そのものが間違ったとらえ方をして対応を進めている場合には、大きな事件にでも発展しない限り、それが修正されるチャンスというものがございません。そして、今回の事件のように、そのときには既に手おくれになっているということが多いのが現実です。チェックをするには専門家の目が必要でございます。小山の事件でも、加害者を父親が力で抑えるというようなところに児童相談所が期待をして、子供を返してしまっているわけですけれども、暴力をもって暴力を抑えるという構造がどれほど危険なものかは専門家であればだれでもわかることだと思います。

 そのような観点をもって、児童相談所のやっていることをチェックしていくための仕組みというのをどのように今考えられますでしょうか。

衛藤副大臣 現在においては、私どもとしては、職員の専門性確保のための取り組み、業務の方法等について、実情を把握することが重要というぐあいに考えております。厚生労働省職員及び外部有識者をすべての都道府県それから政令都市に派遣して、ヒアリングを行いたいというぐあいに考えております。

 なお、ふだんの中におきましては、モデル事業等を導入しまして、外部の方々の意見がもっともっと反映できるように、いろいろな形で相談ができるようにという体制整備を急いでいるところでございます。

水島委員 今現在でも、自治体で児童相談所がみずからそのケースをかけて議論する、そのような協議会というか審議会というか、そういうものはあるようですけれども。

 実際に、小山の事件のように、事件化するまで児童相談所側に問題意識がなかったというようなケースは、そういう仕組みではどうしても救済されないわけですので、専門家が中に入って、定期的に児童相談所の抱えているケースについてきちんと評価するとか、あるいは、最初に受け入れて、その処遇を決定する段階で、もっと外部の専門家の目を入れるとか、何かそういう形の仕組みが必要だと思っております。

 私も、今これといって、こういう仕組みをすぐつくってくれというアイデアを持っているわけではないんですけれども、今申し上げたような方向に沿って少し御検討いただきたいと思います。こちらでもまた考えさせていただきたいと思っております。

 時間がなくなってきましたので、多分次の質問ぐらいまでしかできないんですけれども、ことしの二月に、厚生労働省は虐待による死亡事例の検証を初めてしてくださいました。前から、検証してくれしてくれと言い続けてきましたので、やっとやってくださったというので、ちょっと遅かったという気はするけれども、何もやらないよりは、とにかくやっていただくというのはいいことでございますので、遅かったけれども、よくやってくださったというふうに評価をしております。

 死亡事例の検証をしていただいて、そしてそれを全国の自治体に周知をしていたはずなのに、今回の小山の事件をなぞってみますと、その検証の中の、児童相談所がかかわっていた例というところに挙げられているその要件がかなり当てはまっている、つまり、その検証例をなぞるような事件が実際に小山でまた起こってしまったわけでございます。これは、まさにその検証、そしてその周知徹底作業というものが生かされていなかったということになるわけですけれども、この点については、今後、どういうふうに改善されていかれますでしょうか。

衛藤副大臣 そのとおりでございまして、早速現地に厚生労働省の方からも行きまして、派遣をして、そのことをちゃんと調べたところでございます。

 そういう状況の中で、社会保障審議会児童部会のもとに児童虐待等要保護事例の検証に関する専門委員会を設置いたしまして、専門的、多角的な観点から、児童虐待の死亡事例などの重大事案の検証を行うということをまず第一点目としてやりたいと思っております。

 それから、先ほど申し上げましたように、全国の児童相談所の実情を把握するために訪問調査を行います。

 それから、初期段階の情報収集とその評価のための指針を、専門家の意見を得つつ作成し、周知徹底したいというぐあいに思っているところでございます。

水島委員 周知徹底ができていなかったのをどう改善するかということを質問したので、ちょっと今のは御答弁に余りなっていなかったように思うんです。

 時間がなくなってしまいましたので、ちょっとその点は本当に――周知徹底といっても、ぱっと書類を送っただけで、それが自分のところの問題なんだ、自分のところでも起こり得ることなんだという意識を持っていただくということが周知徹底の際の重要なことでございますので、この点については、きちんと改善されたということがわかるような何かお取り組みを考えていただきたいということをお願い申し上げたいと思います。

 通告をしていた質問も全然終わっておりませんし、また、小児慢性特定疾患についても質問をさせていただきたいところもございますので、また来週時間をぜひいただきたいと思っておりますが、この領域、本当に幾ら質問しても、し足りないくらいにまだまだ取り組みが必要な領域でございますので、ぜひこの審議を通して、また、審議が終わった後も、大臣にはしっかりとした御認識を持ってお取り組みいただけますようにお願い申し上げまして、質問とさせていただきます。ありがとうございました。

鴨下委員長 次に、小宮山泰子君。

小宮山(泰)委員 民主党の小宮山泰子でございます。初めて尾辻大臣の方に質問させていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 まず、児童福祉法の一部を改正する法律案への質問の前に、先日、我が党の泉委員のBSEに関する質疑を聞いていて疑問に感じたことがございましたので、これに関連いたしまして、ちょっと質問させていただきたいと思います。こちらの方に関しては、特定疾患などで輸血の問題等もございますので、あながちこの法案から離れる質問ではないと思っております。

 大臣はさきの質問において「私どもの立場は国民の食品の安全を守る立場でありますから、この点」、この場合はBSE協議、「において譲るつもりは全くございません。絶えずそのことを申しておるつもりでありまして、日米交渉の場でも、一切そのことにおいて譲るつもりもございません。」このような趣旨の答弁をしておられました。また、外口政府参考人も「今後、食品安全委員会の中で月齢の見直し等されておりますけれども、日本に入ってくるものについては国内と同等の安全性が確保されているものでなければいけない、こういう認識で協議をしてきた」と答弁がございました。

 ここで、私は一つ疑問が生じました。それは献血についてでございます。

 ところで大臣は、献血はされたことがございますでしょうか。

尾辻国務大臣 何回もあります。

小宮山(泰)委員 二十二、四、六、七名で、ちょっと与党の方、大分少な目でございますけれども、委員の皆様は、献血は経験はございますでしょうか。三分の一、半分、半分ぐらいでしょうか。御協力ありがとうございます。

 全員ではないですけれども、多くの方が献血の経験があるということですが、献血をする際に問診票に記入をされると思います。その最後に、献血を遠慮していただく方についての記述があるかと思うんですが、その中には、風邪薬を飲んでいる方とか、また、エイズの可能性がある方とか、そういった項目もあります。そのほかには、最近は渡航歴、正確には欧州十カ国、英国、アイルランド、イタリア、オランダ、スイス、スペイン、ドイツ、フランス、ベルギー、ポルトガルに、昭和五十五年、一九八〇年一月から今日に至るまで、通算六カ月以上の滞在、居住歴がある方は、安全が確認されるまでの間、献血を御遠慮いただいていますとあります。

 何の安全が確認されるまでかと申しますと、英国を中心に発生した変異型クロイツフェルト・ヤコブ病について、輸血による伝播に関して未知の部分が多い一方、牛海綿状脳症、BSEとの関連も強く指摘されていることが解明されるまで安全が確認されないと、遠慮をいただくことであります。

 これは、厚生労働省の指示により、大体二〇〇〇年から指導で実施されていることだと思いますけれども、この通知が意味するところは、BSEなどが発生した地域の牛肉を食べたことにより、対象者は安全な輸血ができないというように解釈できますが、そういった認識でもよろしいんでしょうか。

外口政府参考人 お答え申し上げます。

 輸血用血液製剤の献血制限についてでございますけれども、これは、委員御指摘のように、欧州の方でのBSE、そしてそれに基づく変異型クロイツフェルト・ヤコブ病の患者さんの発生等によりまして、そして動物実験の結果で、血液を経て感染するリスクというものが、これが否定できないものでございます。そういったことから、輸血用血液のリスクを低減するために行っておるものでございます。そして、それは、一つは、献血をする際に献血をしていただける方自体をテストするということが、これが今の技術でできないということもございますので、まあ念のためということでこういうことをお願いしているわけでございます。

小宮山(泰)委員 かなり大ざっぱな表現になってしまいますけれども、疑わしい牛肉を食べた可能性のある人間の血というのは、疑わしい牛肉を食べたかもしれない、それが悪影響を与えるかもしれないということで、献血は実際上厳しく制限されているのですから、疑わしい牛肉をましてや輸入することはありませんということにつながっていくんじゃないでしょうか。

 先日の答弁にもございますけれども、国民の食品の安全を守る立場、その中には、将来に対して安心というものも厚生労働省のやはり一番の大きな柱だとは思いますが、疑わしい牛肉を食べた方の血よりも、疑わしいかもしれないけれども月齢がまた下がって発症検査ができないような疑わしい牛肉を食べる、そちらの方がこれから……(発言する者あり)わかりづらいんですよね。

 疑わしい牛肉をやはり輸入しないということ、まずその点に関しまして、ぜひ大臣の御決意も聞かせていただければと思います。

尾辻国務大臣 今のお話を伺いながら、わかりづらいというお話もあったんですが、正直言って、私も、どう整理するのかなと思いながら聞いておりました。何か、私自身が頭の整理ができないんです。

 ただ、血液の場合はもうとにかく検査する方法がない、だから、検査してみて危ない血液ならやめてくださいとか言えるのならいいんでしょうが、とにかく方法がないので、とりあえず、検査する方法がないから献血をやめてくださいというお願いをしておる、これは一つの事実としてあります。

 それから、今申し上げているのは、国内と同等の安全基準で、もし輸入するならば、これもまだ輸入を決めたわけではありません、協議中でありますが、輸入するとするならば同等の安全基準、同じように安全を図ってやるという、そのことはそのことで、私の頭の中では整理できているんですが、どうも、どういうふうに先生の御質問にお答えすればいいのかなと思っておりまして、とりあえずそう申し上げます。

小宮山(泰)委員 これは一九八〇年以降ということで、牛は今度そういう意味では処理をするからということで月齢二十カ月というような規定に下げたいと言って交渉がされているとは存じておりますけれども、既に最初の方の方であれば二十年以上たってもこの案件に関しては解決がされていないということになるかと思います。

 また私自身も、イギリス留学に十代のころに行っておりまして、実際、献血が現在はできておりませんが、二〇〇〇年までの間は献血ができておりました。二十回以上献血をしておりまして、ではその間十数年の間に献血された血、これがもし何かあって、だれかに被害を及ぼしていたら、どうしたらいいんだろうという不安もございますし、申しわけなくも思います。

 日赤の方から厚生省に出している書類の中にも、献血できないことによって、やはりこうやって、狂牛病と当時は言われておりましたこのBSEの問題が、後々まで私たちの健康や、生活の中での献血、場合によっては輸血ができないという、ある意味で普通ではない状態に置かれるということは、一種の不安をかき立てるものでもございます。

 そして、私もそうですが、献血後に献血制限者の対象であったということを知ることも本当に苦痛でもありますし、何よりも、二十年以上たっても献血をできないという、そういった異常な事態がずっと続いているというその不安、こういったものがいつまで続くのか、それが解明されることはあるのか。厚生省の中に今後、こういう食品からくる不安、まさに今私たち日本のこの輸入牛肉というものに対する不安、私たち献血ができなくなっている者は、それが現実となってきているわけですから、その点に関しての展望等ありましたら、改めて大臣の御答弁をお願いしたいと思います。

尾辻国務大臣 先ほど、献血したことがあると申し上げましたが、随分前の話でありまして、今の二十回というお話を聞いて、二十回やると何か特別にくれましたね、あんなのをもらったことを思い出したりしながら聞いていたんですが。

 最近献血したことがございませんでしたので、今の先生御指摘の部分については、正直言って知りませんでした。御質問があるということで、これまた極めて正直に言うと、けさこの話を聞いて、ああそうなのかなと思っておったわけであります。

 そこで、今のお話でありますけれども、今後どういうふうにするかというのはよく考えてみたいと思いますが、絶えず科学というのは進歩するわけでありますから、やがてそういうきっちりした科学的な解決もなされるだろうと思いますし、当面どうするかというようなことも、今のお話を伺っていると、それはそのお立場の方からするといろいろお思いのこともあるわけでありますから、そんなことを含めて、もう一回検討はさせていただきます。

小宮山(泰)委員 ぜひ検討していただきたいと思います。

 これは食品と人間の体というものがつながっているという一つの例だと思いますし、やはりこういったことを国がしっかりと研究をし、調査をし、そして解決をするということが、食品の安全や、日本人や日本国にいる方々に日本という国は安全な国なんだと思う、安心感を与える一つの例だと思いますので、また、さらに協議も持っていただきたいなと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

 それでは、児童福祉法の関係に移らせていただきます。

 今回の児童福祉改正法の柱といたしまして、私が考えるところでは、やはり改正法第十条で市町村が担う役割を明確にし、第二十五条で、児童虐待対策のネットワークとして、要保護児童対策地域協議会を置くことができるというところにあると理解しております。私は、市町村の虐待防止ネットワークが実際に機能するためには何が必要かという視点で質問をさせていただきたいと思っています。

 例えば、岸和田や小山の事件、また連日のように報道される虐待に関する事件が後を絶ちません。虐待件数も増加の一途をたどっておりますし、また、児童虐待の現状を、大臣自身、現在どう理解されているか、基本的な認識について、まずお伺いさせていただきたいと思いますので、端的にお答えいただければと思います。

    〔委員長退席、北川委員長代理着席〕

尾辻国務大臣 今お話しいただきました虐待防止ネットワークでございますが、こうした関係機関が当該児童等に関する情報や考え方を共有し、適切な連携のもとで対応していくことが重要である、こういうふうに認識いたしております。

小宮山(泰)委員 ありがとうございます。

 適切な対応が取り組まれるということは本当に必要なことだと思いますが、法律はつくったけれども、また始動はしたけれども、実際にはネットワークが機能しないということを大変心配しております。

 というのは、厚生労働省の虐待防止対策室がことし六月にまとめております、児童虐待防止を目的とする市町村のネットワーク設置状況という調査結果を見てみますと、ネットワークは全国市町村の約四割、市における設置率は六七%、指定都市はなんと一〇〇%設置しているという調査結果がございます。しかし、その中の困難な点というアンケートの項目を見ますと、効果的運営方法がわからないという答えが、千二百四十三件中四百三十七件もあります。また、専門相談員など、スーパーバイザーがいないという答えも、二番目で、四百二十件もあります。

 ネットワークはあるけれども、運用の仕方がわからない、そう言っている方が実際に多いというアンケートがこの六月に出ているわけですので、この児童虐待防止ネットワークの現状というものに関し大臣はどのように御理解されているのか、御見解を伺わせていただきたいと思います。

伍藤政府参考人 今各市町村で約千近いネットワークができておりますが、午前中も答弁をさせていただきましたが、非常にうまく機能しておるところもございますし、御指摘のように、形だけできておるけれどもなかなかうまく機能していない、こういうところもあります。千差万別でございまして、うまくいっていない要因としては、今御指摘のあったように、スーパーバイザーがいないとか効果的な運営方法がわからない、あるいは予算とか人材の確保が困難である、こういった幾つかの要因が指摘されておるわけでありますから、それぞれ自治体によっていろんな事情があろうかと思いますが、私どもとしては、どういった形で取り組んでいったらいいかということを今回の法改正を機にもう一度点検をして、うまくいっている事例等の要因をえぐり出して、そういったことを参考までにお知らせするとか、あるいは今回の法律改正の趣旨、情報は必ず守られるので、関係機関にぜひいろんな情報を出していただきたい、こういう趣旨の徹底といったことをあわせてやっていきたいというふうに思っております。

尾辻国務大臣 実態は今お答えしたとおりだろうと思います。

 その中で、御指摘にありましたけれども、効果的な運営方法がわからないというところが三五%あるというのは、つくったはいいが、どうするのという話でありますから、それはどう考えてもまずいと思います。何とかしなきゃいけないところだと考えます。

小宮山(泰)委員 ぜひ何とかしていただきたいと思います。

 今伍藤局長さんの方からあった話ですけれども、本来であれば、この法案は、十月一日から施行されていてもおかしくなかった法案だと思っております。今もう十一月になっておりますので、その点に関しては、やはり準備が遅いのではないか。これからえぐり出すというのもいかがなものなのか。

 というのは、このネットワーク、厚労省が主導して二〇〇〇年ぐらいからずっとやっていることで、それをさらに格上げしたという形になっておりますので、ちょっとその辺は危機感が薄いのではないかということを指摘させていただきたいと思います。

 さらになんですけれども、児童福祉司など、適切な人員配置について、だんだん時間が押しておりますが、次に聞かせていただきます。

 さきに引用した調査によりましても、三千百二十三市町村のうち、児童虐待防止ネットワークを設置している件数千二百四十三カ所、計画中三百六カ所を加えると約千五百カ所、ほぼ半数がネットワークができているということは先ほど答弁でもあったとおりだとは思いますが、児童福祉司として働いている方は全国でわずか千八百人。先ほど水島委員の方からもありましたとおり、民主党の考えでは、児童福祉司などはきちんと全国に置くということをしなければ、やはりネットワークは機能しないのではないかという考えでございます。この点で、厚生労働省に確かな展望があるのかということをぜひ伺わせていただきたいと思います。

 自治体に対してですけれども、児童虐待死亡事例の検証と今後の虐待防止対策についてという調査報告によりますと、児童虐待防止法施行直前の平成十一年度における地方交付税上の標準団体の児童福祉司は十六人。平成十五年度には二十三人まで増員されたとのことですけれども、実際には交付税の基準を下回る配置にとどまっている自治体が平成十五年五月の時点で五五%に上っていると指摘されています。「児童相談所は各自治体の機関であり、その体制整備については自治体の判断ではあるが、交付税はあくまで基準であり、地域における子供のおかれた状況をふまえ、適切な人員配置が必要である」とありますが、適切な人員配置を確保するために厚労省はどのようにそれを実現されていくおつもりなのか。その方針はあるのか。伺いたいと思います。

 埼玉県、私も県議会議員をしておりましたけれども、来年度予算編成に関して政府への要望としては、児童虐待の増加で児童養護施設に入所する児童がふえてきて、きめ細かな対応をするためには、児童養護施設など児童福祉施設の職員配置の基準を改善してほしいという要望を提出しております。恐らくこのような要望というのは、特に大都市部においては共通の問題ではないかと思いますが、この点に関しても御見解を伺わせていただきたいと思います。

伍藤政府参考人 自治体の体制をどうするかということで、国と地方公共団体の役割分担といいますか、その基本的な考え方にかかわる問題でありますから、それほど簡単な問題ではございませんが、私どもは、この児童福祉とか児童相談の問題に対応するために、先ほど御指摘のありましたように、地方交付税上の措置ということで、人員配置を手厚くするように総務省にお願いして、ここ数年、随分これは昔に比べれば引き上げてきたつもりでございます。

 なお、急増する児童相談件数とかそういうものに比べると少ないのではないかと言われれば、そのとおりでございますが、現実に、地方公共団体、特に都道府県の組織の中で、こういった児童の分野にどれだけの人員と予算を割いていただくかということは、これは今まさに三位一体というようなことで、地方は地方でというようなことを言われておりますが、こういった問題とも関連いたしますので、大変難しい問題でありますが、私ども、これからもこういう分野の重要性、あるいは需要が、ニーズが急増しておるという実情をよく訴えて、自治体の理解を得るように努力していきたいというふうに思っております。

    〔北川委員長代理退席、委員長着席〕

小宮山(泰)委員 自治体に関しましては、やはりまだまだ人員等、また財源の問題等あるというのも理解はできますし、交付税の分に関しましては、厚生労働省としては、基準よりも多く、毎年予算を少しずつではありますけれども、伸ばしていただいているということ、それはやはりこの児童福祉司というものが必要であるからだというふうに思っております。大臣も副大臣も、今大きくうなずいていただいておりますけれども。

 残念ながら、そういった中において、先ほど指摘させていただきましたが、交付税は結局増額分というのがほかに流用されているのではないか。先ほどの答弁にもあったとおり、自治体によって格差があるということはありますけれども、やはりこれは、基準と実際の交付税の基準というものですか、そちらの方の格差というものがあるからこそ、こういった流用するしかないような自治体というものも出てくるのではないかという気もいたします。

 やはり福祉司の配置基準というものを、これから要件を緩和していくというか、そういったことによって、確実にこの交付税というものが児童福祉司に地域でも使われ、そして、多くの命を救い、相談を受けることができる。そういったことをしていかなければいけないんだと思いますが、改めてその点に関しまして、今後のことについて御所見を伺わせていただけないでしょうか。

衛藤副大臣 仰せのとおりでございまして、ただ、今、市町村の合併等を控えてきたり、やっと法施行にこぎつけたところでございますので、市町村とも相談の上どうしてもやはりこの政令上の基準について見直す必要があるというぐあいに考えておりますので、慎重に、ちゃんとこれは検討していきたいというふうに思っておるところでございます。

小宮山(泰)委員 ぜひよろしくお願いいたします。

 やはりこの問題に関しては、国も挙げて、児童虐待、こういった事件が起こらないようにする、そういった覚悟というものが必要だと思いますし、それをあらわすものがやはりこの法案だと思いますので、ぜひ実効性のある御検討もよろしくお願いいたします。

 それでは、児童虐待対策では、厚生労働省のほか、文部科学省、法務省、警察庁など、それぞれが取り組んでいらっしゃいます。総務省もありますし、警察庁や法務省などもパンフレットなどをつくって、人権の問題やいろいろな角度から防止をする、そして受け皿になるようなことを、リーフレットなどをつくっています。

 しかし、それでも今、漏れてしまって、やはり悲惨な事件につながるという事例も起きているかと思います。これは一つには、各行政の縦割り行政というものがやはりどうしてもあらわれてしまっているのが現状ではないのかと思っております。

 その結果、内閣には青少年育成推進本部が置かれておりますけれども、青少年育成大綱も昨年作成されて、児童虐待についても記述がございます。重点項目にもなったかと思います。各省庁を束ねて、そしてさらにこの問題について取り組まれていくということにつきまして、関係の政府機関の横の連携というものも、こうなってきますと大変重要なことだと思っております。特に、法案改正後の内閣の取り組みについてぜひ御説明を簡単にお願いいたします。

山本政府参考人 お答えいたします。

 今、委員御指摘のとおり、児童虐待の対応につきましては、地方の現場におきましても、都道府県、市町村、それから国の機関もそうでございますが、多くの機関が関係をしております。したがいまして、それをバックアップ、リードする、中央省庁でも多くの省庁が関係をするということで、現在、厚生労働省を中心に各般の努力をいただいておるところでございます。

 今、委員御指摘のように、私ども内閣府といたしましては、青少年施策の総合調整を行うという立場でございます。昨年末には大綱もつくり、この中に児童虐待につきましてもしっかり盛り込みをさせていただいたところでございます。

 大綱が策定された後におきましても、例えばこの本部の下に置かれております推進課長会議というものがございますが、この四月の会議では、児童虐待問題を取り上げて、関係省庁、協議をしたところでございます。また、先般、先月の二十五日でございますけれども、青少年育成担当大臣が主宰します関係五閣僚から成る副本部長会議を開きまして、この虐待問題も取り上げ、関係省庁、一層連携を密にして推進していくということを確認したところでございます。

 これからも内閣府といたしましては、児童虐待防止法、これは先般改正されましたけれども、その改正も踏まえ、関係省庁と連携を密にしながら、その防止、対応に向けた施策の推進に全力を挙げてまいりたい、こういうぐあいに考えております。

小宮山(泰)委員 今の答弁ですと随分やっているような雰囲気が出ているんですけれども、実際には、企画立案並びに総合調整に関する事務をつかさどるといったことでありまして、所掌事務の中において、十四番目の事項に青少年の健全な育成に関する事項がありますけれども、関連して、企画立案並びに総合調整、そういった意味では実績はあるんでしょうか。

山本政府参考人 それぞれの法律及びそれに基づきます事業につきましては、それぞれの所管省庁が実施をしていくということでございます。私どもはそれを総合調整するという立場でございまして、直近のものとしましては、先ほどちょっと申し上げましたけれども、昨年末に、青少年の育成という立場から、大綱、政府全体の指針を定めるというものを策定いたしたところでございます。

 それから、それに基づいて、関係省庁、多くの省庁でやっていただいていることが効果を上げることが必要でございます。したがいまして、その情報交換を密にして、それぞれの省庁のやっている施策をお互い理解をして、地方の現場までそれが届くように努力をしていく、そういう意味で努力をさせていただいているつもりでございます。

小宮山(泰)委員 本当に、会議や連絡調整だけでは現場の事件というものは直りません。やはり各省庁が気合いを持って、この問題を解決していくんだという思いがなければいけないと思います。

 ちょっとこれは厚生大臣、突然ではございますけれども、関係省庁とかNPOも参加しております児童虐待防止協議会、開催されていると思いますが、年一回、大体たった二時間の関係者会議になっているかと思います。かなりいろいろな虐待防止関係の実績のあるNPO団体も参加されております。こういったいい会議というのはもっともっと拡充をしていかなければいけないと思いますけれども、こういったところを、例えば内閣府の中に男女共同参画局というようなものがあります、どんどん格上げされてありますけれども、同じように児童虐待防止ということも内閣に格上げするというような、そういった提案はされるおつもりはありますでしょうか。

尾辻国務大臣 先日、こうした子供たち、あるいは青少年の育成ということで、関係の三閣僚が集まりまして、その席で、今おっしゃったこととほとんど同じようなことを私が言いました。もう少し、せっかく集まるのなら、時々思い出したように集まるんじゃなくて、ちゃんときっちり集まって、そしてきっちり話をして答えを出してやらなきゃ、今まさにおっしゃったように、私がそのときそのとおり表現したと思うんですが、時々思い出したように集まるだけじゃ余り意味ないんじゃないだろうかということを言いました。ですから、そういう意味で、同じ認識を持っておるということを申し上げたいと思います。

小宮山(泰)委員 今、少子高齢化です。生まれ出たお子さんたちが順調に育つという意味におきまして、ぜひ頑張っていただきたいと思います。

 最後になりますけれども、私、この厚生労働委員会へ来ますと、四月十六日の年金法案のときに、衆議院、しかも自民党の国対副委員長であります佐藤勉代議士から受けた暴力によって、むち打ち、本当に痛い思いを、負傷までいたしました。

 最初のころ、私、この委員会室に来るちょうど出入り口の、本当に乱闘とか何もないようなところでいきなり床にたたきつけられましたので、ただ私はそこに立っていたというか座っていたというか、何もしないままに、突然としていきなり床にたたきつけられて怖い思いをいたしましたので、正直この委員会前とか委員会室へ入るというのも、また本人を本会議場やすれ違う中で見るというのは、大変な、突然何が起こるかわからない、暴力を振るわれるかもしれない、そういう恐怖感が非常に来ますし、傷も痛むということもございました。

 幸いにしまして、私の場合は大人でもありますので、弁護士を通じ対応すること、そしてその弁護士を通じてですけれども、佐藤勉代議士から謝罪文、平成十六年四月十六日、国会内において、私はあなたに対し有形力を行使して負傷させてしまったことにつき謝罪の意を表するものでありますという謝罪文を、すぐにその事実については認めてこられましたので、いただきました。

 やはりこういったことができたから、ある意味でつらい、痛い思いというものも乗り越えようとしておりますが、子供に至ってはそういったこともできない。ましてや、親子であったり、同居人の方であれば、自分の生活を見てもらう、そういう意味ではすがるしかない、ある意味で本当に大変な中を生き抜かなければいけない。言うことを聞かなければいけない。しかし、暴力を振るわれ、命の危険もある。そういった人が全国に今、声なき声として恐らくあるんだと思います。

 ぜひ、この法案、本来であれば、私自身一つ聞きたかったのは、何で年金法案の前に通さなかったのか。十月一日から施行の予定だったはずなのに、これがこれだけ遅くなったこと、国会の責任において、これからはやはり実効性がある法案を通していかなければいけないということ、この点に関しても、まだまだこれからもやはり引き続き議論していかなければいけないということを最後に指摘させていただきまして、私の質問とさせていただきます。

 ありがとうございました。

鴨下委員長 次に、山井和則君。

山井委員 尾辻大臣、そして衛藤副大臣、よろしくお願いいたします。

 私もこの厚生労働委員会に入って五年になりますが、なぜ私がこういう議員を志したのかといいますと、私は学生時代に、母子生活支援施設という、親からの虐待あるいは夫からのDVで、お母さんや子供が虐待を受けて駆け込んでくるシェルターで、ずっとボランティアをしておりました。その中で、子供が受けた心の傷、最も愛を受ける対象であるはずの親から虐待を受けた子供の本当に苦しい姿、そしてまた、その施設を出てからもなかなか就労するということも難しい、進学も、なかなか大学までは行けない、金銭的にも非常に貧しい。そういう中で、非常に素朴な話でありますが、そういう小学生の子供たちの声というのを政治家はちゃんと代弁してくれるのかなということを大学時代に私は思いまして、そんな中で、私も政治に関心を持って、議員に至ることになりました。

 そういう中で、この児童福祉法の改正、まさに国民的な深刻な問題であります児童虐待をどう減らすことができるかということは、非常に重要な問題であると思います。そういう立場に立って質問をさせていただきたいと思います。

 その後、私、福祉の調査で、尾辻大臣は世界各国をずっと回られたようですが、私も一年間かけて、イギリス、アメリカ、デンマーク、スウェーデン、シンガポールの老人ホームに一カ月ずつと、バングラデシュの児童養護施設に一カ月、泊まり込んでボランティアをさせてもらいました。

 そんな中で、きょうの質問にも関連するんですが、私は世界を回りながら、世界の中の日本の福祉ということをずっと研究をしておりました。そこで痛感したことが二つ三つありました。残念ながら、日本は非常に福祉がおくれているということ。その理由はなぜかなというと、一つは、やはり日本はある意味で家族がしっかりしていた面がありまして、何でも家族任せになっていた、その点で公的福祉がおくれていたということ。それと、やはり政治家が福祉に関心が低かったのではないかということ。それともう一点は、日本人の悪いところは、そういう難しい問題が起こると、一カ所の大きな施設に閉じ込めて、町外れに収容してしまう。障害者、お年寄り。また、この児童虐待に関しても、大きな施設に一カ所に集めてしまう。そういうあしき傾向があるなということを思っております。きょうはそういう観点からも質問をさせていただきたいと思います。

 まず最初に、小山市の児童殺人事件にも関連したことで、提案を込めて大臣にお伺いしたいと思います。

 小山市の児童虐待、あのときも、発見したのはコンビニの店員さんでしたよね。すごいあざをつくってコンビニに来たということで、警察に通報になって、そこからスタートしたわけですけれども、残念ながら、児童相談所も十分力になってもらえずに、子供が亡くなってしまったという悲しい事件になりました。

 それに続いて、例えば、十月上旬に、ある意味で似たような事件がありまして、これは、ある容疑者の近くのコンビニエンスストアで、長女が一人でいるのを不審に思ったコンビニの店員が、十月十二日、豊平署に通報して、警察が長女から事情を聞いたところ、お兄ちゃんに殴られたと話したと。札幌なんですが、この四歳のお子さんは、空腹に耐えかねてコンビニを訪ねたらしい、現金は持っていなかった。

 私は、この記事を見たときに、本当に涙が出そうになった。親から虐待された、家で安心していられない、おなかがすく、お金はないけれどもコンビニに行った。普通の商店だったら、お金を持っていなかったら追い返されるかもしれない。それで、お金はないけれども、やはり暖かいところ、いろいろな商品がある、食べたいお菓子がある、親は買ってくれない、そんな中で、この四歳の女の子がコンビニに行った。この気持ちというのは、私は、やはり大人も真剣に考えないとだめだと思うんですよね。

 もう一つ、似たような事件がありました。ネグレクトのケース。これも五歳の女の子です。どうして発見されたか。五歳の女の子がお金を持ってコンビニにお使いに来ているのを何度も店員に目撃されている。それで、五歳のその女の子は、虐待というか、ネグレクトの虐待なんですけれども、台風の日も、傘を差して一人でコンビニにお使いに来ているのを目撃されているということなんですね。それで、親はアルコールが好きで、お金を使いまくり、暴力団との関係もあり、虐待を受けていたということで、また、お母さんに対してDVもあったということなんですね。

 そこで、話は飛躍するかもしれないんですが、私、こういう記事を読んで、ちょっと思いつきなんですが、この虐待の発見、もちろん、保育所やお医者さんやいろいろなところで発見されるけれども、地域のコミュニティーがなくなってきた中で、私は、コンビニというのは虐待されている子供が行く場所になりつつあるんじゃないかなと思うんですね。

 どんな田舎でも、最近はコンビニがあります。虐待された子供は、もちろん、外に出してもらえない虐待されている子供はだめですけれども、外に出られたら、やはり暖かいところ、お菓子のあるところ、おなかがすいた子供は、コンビニにお金を持たずに行くわけですね。あるいは、親からのお使いで行くケースもあるわけです。

 そこで、私の提案なんですが、全国のコンビニは大手のチェーン店ですから、こういうコンビニの店員が発見したというケースが最近相次いでいるわけですから、厚生労働省さんからここに頼んでもらって、一つは、例えばポスターを張ってもらう。児童虐待防止のSOSとか、困っていることがあったら言ってください、そういう啓発のポスターを張る。

 もう一つは、ああいうところは当然アルバイトの方がほとんどなんですけれども、そこの店員さんに、もし、買いに来られたお子さんが万引きをしたり――やはり虐待されている子供は、御存じのように、お菓子を買ってもらえなくて万引きしちゃうケースもあります。あるいは、お使いに来た子供にあざがある、うろうろ来ているけれどもお金を持っていない、どう考えてもがりがりにやせている、どう考えても服が汚い、あるいは服が臭いとか、こんなこと言ったら失礼かもしれませんけれども、そういう子供たちは、もちろん商店にもいろいろなところにも行くと思いますけれども、かなりの確率でコンビニに行くケースというのも多いと思うんですよね。だから、厚生労働省さんから、コンビニだったらチェーン店で、大体系列で、上からお願いすればいくように思うんですけれども、店員さん方に、もちろんこれは通報の義務なんか全くありませんけれども、もしそういうのを見られたら、警察か児童相談所にぜひ通報してほしいということを流されたら、私は、未然にあるいは早期に発見されるケースというのはやはりあるんじゃないかと思うんですよね。

 はっきり言って突拍子もない提案かもしれませんが、私は、これで五人でも十人でも救われたらいいと思うし、また、こういうことが広まって、虐待されている子供に児童相談所や警察に行けといっても敷居が高いわけですけれども、コンビニのお兄ちゃんとかお姉ちゃんにSOSを発したら、もしかしたら助けてもらえるかもしれないと言えば、子供の駆け込み寺としてのコンビニの役割というのもあるかもしれないと思うんです。今、ATMとか、大人にとって便利なということでコンビニは利用されているけれども、こういう虐待されている子供の駆け込み寺というようなことになったら、民間ですけれども、私はすごい効果的だと思うんです。

 ちょっと突拍子もない提案ですが、尾辻大臣、いかがでしょうか。

尾辻国務大臣 委員のお気持ちが私にもうつってしまっていますので、逆にこんな調子でお答えさせていただきたいと思います。

 今のお話を伺いまして、ああ、私も年をとって、もう頭が古くなったんだなと思いながら聞いておりました。そうだ、やはりいろいろな発想をしてみなきゃいかぬのだな、こう思います。そうしますと、また古い頭だとついつい、向こうもお店だから何と言うんだろうかなとか、余計なことを思ってしまうわけでございますが、関係業界の皆さんともいろいろ御相談しながら、どんなことが可能なのか真剣に考えてみたいと思います。

山井委員 今月、児童虐待防止推進月間ということで、十一月一カ月、キャンペーンとかやってくださっているんですね。これはこれでありがたいんですけれども、ぜひとも、急な話かもしれませんが、今申し上げたように、コンビニというものを何とか有効利用できないか。そして、そこを一つの児童虐待の早期発見あるいは未然防止の拠点に、行政から民間に頼むのはちょっと都合のいい話かもしれないんですけれども、理解なり賛同してくださる会社も当然あると思うんですね。これは国民的な課題なわけですから、そういうことをぜひとも前向きに御検討いただければと思います。

 次に、国際的な児童虐待の比較ということに入りたいと思います。

 これについては、時間も余りありませんので、質問通告をしていたんですが、もう私から言わせてもらいますと、国際的な比較、ちょっとこの二枚目の資料を見ていただきたいと思います。

 それで、この上から五つ目に、「(児童福祉司)の専門性」というところがあります。大臣と副大臣に渡した資料にだけは蛍光ペンで、赤でラインマーカーがしてあります。それで、答弁をいただこうと思ったんですが、この児童虐待についての国際比較、厚生労働省さんにも以前からお願いしていろいろ調べてもらったんですけれども、そこで、五つぐらい私は違いが言えると思うんですね。

 一つは、外国は日本よりも司法の関与が強いということ。それと、二つ目は、きょうも議論になっておりますが、児童福祉司の数が日本は少ない。裏返せば、児童福祉司が一人当たり担当している件数が非常に多過ぎるということ。それと、三つ目は、その児童福祉司の専門性が低いということ。この三つですね。司法の関与が外国は強い、それで専門性が高い、ソーシャルワーカーはもっと数多くでやっている、この三つです。

 それとともに、あと、虐待された子供の行き先としては、日本は大規模な施設。ところが、欧米では、これは以前の委員会でもやったんですけれども、大規模な施設というのはほとんどないんです。大臣、副大臣、ここが重要なんですね。私たちは当たり前のように児童養護施設、五十人、百人という前提で考えていますけれども、欧米ではこんなことをやっている国はないんです、ほとんど。もう短期です。

 では、欧米ではどうなっているかというと、きょうも議論で出ていましたけれども、里親がメーンで、それでない人はグループホーム、小規模な五、六人の家なんですよね。ここは大事なんで、繰り返し言いますが、大きな施設で五年も十年も十五年も施設に入っていてもらうということは、本来は非常に子供にとってはよくないことなのかもしれないということが重要だと思います。

 ここで、こういう諸外国と日本との違いを踏まえた上で衛藤副大臣にお伺いしたいんですけれども、今回、児童福祉司の任用の見直しで、保育士、看護師、教師、保健師とか、非常に幅広く児童福祉司に任用できるようにするということなんですが、私はやはり、繰り返しますが、日本では児童福祉司の専門性が低いから今回の小山市の事件も起こったんじゃないかと言われている中で、こういう保育士、看護師とかいろいろな方に広げるのは、逆行しているのではないかというふうに思うんですね。

 世界の国で、日本以外で、保育士、看護師、教師、保健師の方々がそういうソーシャルワーカーになっている国というのは、はっきり言って、私調べたけれども、ほかにないんですよ。日本だけなんですね。この点、私は、逆行しているんじゃないか。やはり、しっかりソーシャルワーカーという資格のある人を養成すべきではないかというふうに思いますが、衛藤副大臣、いかがでしょうか。

衛藤副大臣 各国での相当な違いが正直言ってあるというぐあいに思っています。先ほどの里親の件にいたしましても、そういう状況だと思います。日本もやっと里親も下げどまりをしてきたというところでございまして、それを何とか充実していきたいというふうに思っています。

 また、先ほどお話がございましたように、大きな施設で囲い込むというのは、福祉全般から見て、今もうはっきりと見直しの時代に入っている。お話しのように、家庭的な雰囲気の中でそれができるようにということを、福祉全般の中でもこれを急がなければいけないというふうに思っております。

 また、専門性の問題でございますけれども、確かに私もそのとおりだというふうに思います。ただ、まだなかなかそこまで育成ができていないという実情の中で、とにかく初期段階においてどれだけ相談ができるのか、どれだけきめ細かくできるのかということになってくると、今まで実務に当たってきた保健師さん等に研修を受けていただきながら、実務経験のある方にお願いをして窓口を広げていくという作業がどうしてもやはり片一方で必要だと思っています。そういう中で専門性をどう高めていくかということは、同時に、研修等を通ずるとか、あるいはそういう育成機関を我が国ももっと大事にしていくとかいうようなことをしながらやらなければいけないことだというぐあいに認識をいたしております。

 同じ認識でございますが、今すぐそういうことはできないというところは、各市町村がそれができないということは、極めて大きな問題だというぐあいに認識しているところでございます。

山井委員 ぜひともこれは専門性を高めていかないとだめですし、やはり、なし崩し的に逆に専門性を薄れさせることにもなりかねないわけですから、研修の充実や、根本的にはこの任用見直しということはなくすべきではないかと私は考えております。

 次に、里親のことなんですが、これも衛藤副大臣にお伺いしたいんですが、午前中からこの里親の充実に関してはもう何度も質問や答弁がありましたので、現状についてはもう結構です。衛藤副大臣にもう一つだけお伺いしたいと思います。

 これは、私の資料にありますが、これ、一〇%という目標を出されているんですね、この三ページ目、見てください。里親委託率一〇%にということで、目標で出ております。ところが、ここにも書いてありますように、一〇%ということなんですが、主要国の里親委託率は三〇%から九〇%なんですね。やはり、目標が一〇%というのは余りにも低過ぎる、目標にしては。言うたら悪いけれども、今現在が七%ですから、このまま頑張ればできるぐらいの数字でありまして、繰り返しますが、今までの大規模施設中心から里親や小規模グループホームに大転換をしないとだめな時期に来ていると思うんです。このことについて、やはり、この一〇%をもっと早く達成するとか、パーセンテージを上げるとかすべきだと私は思いますが、このことについて、衛藤副大臣、どう思われますか。

衛藤副大臣 そのとおりでございまして、先ほど申し上げたとおりでございます。

 里親制度につきまして、何とか充実を図っていくことができればというぐあいに思っておりますが、昭和三十年ぐらいから比較をしますと、やはり半減しているというところが実情でございます。そのために、平成十四年にいろいろな制度改正をしたところでございますけれども、これをさらに、平成十六年度からは、この里親に対する支援事業を始めたところでございまして、それをまずは充実していきながら、サポートするために派遣をするだとか、あるいは情報交換するとかいうようなことをやりながら、里親の充実をやっていきたいというふうに思っています。さらにもっと必要なことがあれば検討しなければいけないというぐあいに認識をしております。

山井委員 児童相談所に専門職員を置いて里親を支援する体制をしっかりつくるとか、そういうバックアップ体制がないとだめだと思いますので、その充実をしてほしいと思います。

 そこで、尾辻大臣にお伺いしたいんですが、児童養護施設、さっきから、虐待されたお子さん方が入っていて、これでいいのかということをお聞きしているんですけれども、尾辻大臣は、児童養護施設、現場に行かれたことがあるでしょうか。あるいは、最近、グループホームや児童養護施設に行かれたことがあるか。行かれたことがあるとしたら、その感想はいかがか。お答えください。

尾辻国務大臣 最近はございませんが、私、かつて県議会に籍を置いておりましたので、そのころに何カ所か行かせてもらいました。

 いろいろな意味で大変だなと思ったのが印象でございます。

山井委員 いろいろな意味で大変だなということ、まあいいです、わかりました。そのいろいろな意味で大変だという言葉で、もう時間がないですので理解しました。

 要は、大人数で生活している。それと、言ったら悪いけれども、かなり老朽化しているところがある。それでまた、大部屋。考えてもみてください。虐待された子供が入ってくるわけですよね。ところが、入ってきたら、そこでまたいじめられる、怖いお兄さんがいるかもしれない。あるいは、最近私の行った施設でも聞いたのは、五人部屋でゆっくりしていたところに、虐待されて非常に落ちつかない子供が一人入ってきたら、その子供が暴れるせいで、その部屋全体の子供が全部が落ちつかなくなってしまったというようなこともあるわけですね。

 それで、そういう児童養護施設も今満員であるケースが多いんですけれども、尾辻大臣、グループホームがふえていないわけですよ。今までは四十カ所で、これではだめだということで、鳴り物入りの予算でことし百カ所になったのに、聞くところによると、まだ六十七カ所ぐらいしかめどが立っていない。私は本当は千カ所ぐらい必要だと思っているぐらいなんですけれどもね。

 なぜふえないのか、どうふやしていこうと考えているのか、尾辻大臣、いかがですか。

衛藤副大臣 正直言って、なかなか計画どおりにふえていないところでございます。それに対する、ふやすための措置を一生懸命講じているところでございますけれども、この法改正に伴って何とかふえてくれるということを、私ども、逆に、期待しているところでございます。とりわけ、今回は体制づくりを行うということが主たる法改正の目的でございますので、そのことについて今後とも頑張っていきたいと思っております。

 小規模グループホームということが大規模な施設に比べてはるかに有利であるということについて、子供たちにとって非常にいい状況である、そちらの方がいい環境であるということについて認識をしているところでございます。そういう意味で、まだまだ追いついていっていないということを、頑張っていきたいと思っております。御承知のとおり、十六年度予算におきまして百カ所を目標にしておっても、まだ達成できていないということを非常に残念に思っているところでございます。

山井委員 このグループホームの問題、私だけじゃなくて多くの委員が今までから指摘してきて、鳴り物入りの目玉でやったら、数がふえない。正直言って、私はちょっとお粗末だと思うんですよね。私が質問したときは、いや、もうことしは百ですけれども、その後ふやしていきますという話だったわけですよ。ところが、ふたをあけてみると、百にも達していない。

 それで、私の資料の中で、最後のページにもありますが、左の方に書いてありますけれども、例えばアメリカだったら、六十万人の子供が里親で、十万人がグループホームと書いてあります。

 それで、最後の右のところを見ると、児童福祉施設の後からの就労自立支援の調査というのがあるわけですね。ここを見ていると、百四十二人のうち、一年後就労を続けているというのが五四%、七十七人。児童福祉施設を出てからの就職で、一年後続けているというのが七十七人で、もうそのときにはやめてしまったという方が六十一人、四三%ですね。かつ、六カ月以内に四十八人、七九%がやめてしまっている。つまり、一言で言えば、児童養護施設を出て仕事についても、またすぐに仕事をやめてしまっているという現状があるわけですね。

 私、グループホーム、五カ所ぐらい行かせてもらいましたが、そこで言われているのは、施設の職員の方がおっしゃるのは、もう一〇〇%、子供にとっては大きな施設よりも絶対グループホームの方がいいということを断言しておられるわけです、グループホームをやっておられる方は。例えば、自立心が育つ、社会性が育つ、経済観念も育つ。そういうふうな、やっぱりグループホームの方がいいという声が非常に強いわけですね。

 では、何が問題なのかというと、一つには、人件費の補助しか出ていなくて家賃補助が出ていないんですね。やはり、一軒借り上げるときの家賃の部分のお金が出ない。東京都なんかは、何か、単独で出しているらしいですけれども。本気でグループホームをふやすなら、私は、人件費の部分と、措置費だけじゃなくて、家賃の部分も出すべきじゃないか、これが一つの提案。

 もう一つの提案は、今、老朽化している施設が多いわけです。ところが、五十人の施設を改築しようとしたら、また五十人の新しい施設をつくらないとだめなんです。ところが、今出ているのは、もうこれからはグループホームの時代で、グループホームの方がいいというのはわかっているし、子供も喜ぶから、五十人の施設を五人のグループホーム十カ所にしたいという要望を持っている方々が多いわけですよ、改築を機に。いいアイデアじゃないですか、これからの時代。ところが、今の厚生労働省の基準では、いや、それはだめだと。五十人の大きな施設は、建てかえるときは五十人だ、中をユニットとかグループに分けなさいという。これは余りにもしゃくし定規だと私は思うんですよね。

 衛藤副大臣、尾辻大臣でも、どっちでも答えていただければ、このことについて、こういうグループホームがもっとふえるようにすべきだと思いますが、いかがでしょうか。

尾辻国務大臣 冒頭に、日本の福祉について三点述べられました。

 最初に、家族に頼り過ぎたんじゃないだろうか。まさに私もそう思います。そして、それが一番端的にあらわれていたのが介護であって、やっと介護保険を五年前につくることができました。

 二番目に、政治家の関心が薄かったんじゃないかというお話をなさいました。私は反省しなきゃいかぬところだと思っています。

 そして今、三点目の、大きな施設に入れりゃいいという、どうもそういう私どもの考え方に過ちがあったんじゃないだろうかというお話に触れて今のお話をしておられます。これもそのとおりだと思います。

 そして、細々申し上げませんが、最初のコンビニの話じゃありませんけれども、私ども、今までの考え方で、その中で考えるんじゃなくて、本当に頭を切りかえて柔軟にいろいろ発想し、いいと思うことをやらなきゃいかぬと思いますので、そうした中で、こうした今の委員のお話も我々は受けとめて今後検討しなきゃいかぬな、本当にそう思っていますということを申し上げたいと存じます。

山井委員 チルドレンファーストといいますか、やっぱり子供の意向が第一だと思うわけですね。ただでさえ虐待を受けている子供たちが、やっぱり居心地のいいところにいられて当然だと思います。

 そこで、もう一つ大臣にお伺いしたいんですが、やはりこれは特に中学校、高校生は個室の方がいいと思うんですね。私も直接話を聞きましたが、親のことで悩んでいる、就職のこと、進路のことで悩んでいる。ところが、やっぱり二人部屋、四人部屋だと落ちつかないというのがあるんです。

 ところが、御存じのように、特別養護老人ホーム、老人福祉は今もう全部個室になっていっているわけなんです。例えば、痴呆性高齢者のグループホームは全国で五千カ所あるんですよ。虐待されている子供のグループホームは全国でまだ四十カ所とか、けたが二けた違うわけです。

 ここで、こういう虐待を受けた子供たちの施設も個室をふやすべきだと思いますが、尾辻大臣、いかがでしょうか。

尾辻国務大臣 それはもうおっしゃるとおりだと思います。

 それで、言いわけするわけじゃないんですが、さっき、どうしてそうなるんだということで、私も私なりに聞いてきたんですが、せめて努力は続けてきたという意味で申し上げるんですが、昭和二十三年が必要な面積。昭和三十年が一三・二平米、昭和五十一年が一九・七平米と、だんだんだんだんふやしてきて、平成十二年で二五・九平米までふえてきております。ずっと努力は続けてきていますから、さらにもっと続けて、今二人部屋まで来ていますから、二人部屋までのところまでは何とか来ているようですし、その二人部屋の中でも、何か、できるだけ仕切りをつくってとか、努力はしているようでありますから、もう少し時間をかしてくださいということだけを申し上げたいと存じます。

山井委員 先ほど尾辻大臣が、以前訪問した養護施設、なかなか大変だと思ったというのは、多分、老朽化のこととか一人当たりの面積が狭いということだと思うんですよね。ほかでもない、虐待されて一番傷ついている子供なわけですから、普通より居心地のいい場所にいられて私は当然だと思うわけです。

 それで、最後の質問になりますが、そんな中で、結局この三位一体改革になってくるわけですね。そういう中で、こういう虐待の予算とか、児童福祉司をもっとしっかりと配置せねばならないという中でこういう予算が一般財源化されるというのは、非常に私は逆行していると思っております。

 加えてもう一つ言いますと、公立の保育所の補助金が一般財源化されて、先日藤田議員も質問されましたが、半数ぐらいが保育料が値上げになってしまった。そういう中で、やはり民間、私立の保育所の補助金の一般財源化も私は問題があるというふうに反対をしたいと思っております。この点について、三位一体改革のこと、それと私立保育所の補助金のこと、この二つについて、答弁をお願いいたします。

尾辻国務大臣 あるいは、どこかで怒られることになるかもしれないと覚悟して、先日、地方団体の皆さんと私が話をしたときに、地方団体の皆さんに申し上げたことをそのまま申し上げたいと思います。

 まず申し上げたのは、社会保障というのは、国と地方が手を携えないとやれないでしょう、そういったようなことは申し上げました。

 そうした中で、率直に、皆さん方の御提案を私の例えで言わせてください。それは、私たちは一生懸命いろいろな積み木を積んでいるつもりです。そのところに来て、これが気に入った、これが気に入ったといって勝手に積み木を持っていかれると、この山は崩れ、この山は変形してしまってどうにもならなくなります。しかも、皆さん方は、何か気に入ったと持っていかれるのは、まず言えることは、子供の関係のものを全部持っていこうとしておられる、それで、老人のものは全部おまえたちやれと言って、積み木の積んだ方に残しておられる。まあ、勘ぐって言えば、年寄りはまだ今後どんどんふえて金がかかるだろうから、金かかる方はおまえたちがやれ、子供ならだんだん減っていって金がかからなくなるから、おれたちがとるといって積み木を持っていかれても、それは困りますねと、実はそんな話をしました。そうしましたら、どういう理由だったか知りませんが、向こうから、そっくりそのままその言葉をおまえに返すと言われてしまったんですが。

 本当に、申し上げたように、どこかで、こんな発言するとまた怒られることになるかもしれませんが、率直に私がそう申し上げたということを申し上げて、お答えにさせていただきたいと思います。

山井委員 以上で、質問を終わります。

鴨下委員長 次に、山口富男君。

山口(富)委員 日本共産党の山口富男です。

 児童福祉法の一部改正案につきまして、きょうは児童相談にかかわる体制の充実の問題を中心にお尋ねしたいと思います。

 今回の法改正の中心点の一つは、児童相談に関する市町村などの業務の規定を整備したこと、それから地方公共団体に対して、要保護児童対策地域協議会、いわゆるネットワークとか協議会と言われますけれども、これを設置することができるというふうにしたことだと思うんです。

 私は、問題に対して早期に対応する、それから発生を予防するという立場からいきますと、間口を広げ、対応の幅を広げるというのは賛成なんです。問題になりますのは、そういう新しい構えで臨むときに、どうやったらその新しい構えが本当の力を持つのか、そこのところをよく見きわめて、政治が力を尽くすことだと思うんですね。

 最初に確認しておきたいんですけれども、これは市町村の問題で、ここが第一義的な対応ということになってきますと、体制の問題や職員の技量や配置の問題が非常に大事になってくるわけですが、これは、国が地方任せにしないで、よくつかんで、支援の体制を必ずとるという立場だなということを確認しておきたいと思います。

伍藤政府参考人 今回、市町村に児童相談の一定の役割を担っていただくというふうに考えておりますので、これをどうやって支援していくかということは非常に重要な課題だというふうに思っております。市町村におけるそういう相談体制の整備が円滑に進むよう、児童相談所が市町村を支援するモデル事業をまず実施したいというふうに考えておりますし、それから、中核的な機能、役割を果たしていただきます保健師でございますが、これについては、今までも毎年増員を図ってまいりましたが、来年度も所要の交付税要望を行っているところでありますし、それからさらに、市町村の相談援助に関するガイドラインを作成して周知を図っていく、こういういろいろな観点から、市町村の体制強化に向けた支援を怠りのないようにやっていきたいというふうに思っておるところでございます。

山口(富)委員 次に、ネットワーク、協議会にかかわる問題なんですが、この問題を考えるときに参考になるのが、ついせんだって厚生労働省が発表いたしました、先ほども紹介ありましたけれども、「児童虐待防止を目的とする市町村域でのネットワークの設置状況調査の結果について」というものです。

 これを見ますと、これ自体は児童虐待防止の機能を持つネットワークの方ですけれども、今度考えられている協議会はもう少し対応の幅が広がっていくわけですが、それにしても、現在の設置状況は、市町村数で見ると、大体全国で四割という結果が出ています。

 厚生労働省に聞きたいんですけれども、今度の法改正に伴う新たな協議会につきましては、どの程度の設置が今後進むと見ているのか、どういう見通しなのか、それを示していただきたい。

伍藤政府参考人 市町村のネットワーク、現在は、御指摘のように、設置率四割、特に都市部を中心に設置がなされてきておるということでございますが、今回、これを明確な法的な根拠を持ったものに位置づけるということでございまして、その役割とか機能についても明確化されるわけでありますから、設置が進んでいくんじゃないかと思っております。

 平成十二年度に二百五十九市町村でありましたのが、この四年間で千二百四十三市町村まで、今急激にふえておる。市町村の理解も、こういった問題に対する取り組みの必要性ということについての理解も急速に進んでおるというふうに思いますので、今後、法律化して、市町村の事務であるということを明確に位置づけることによって、これがさらに格段に進んでいくものというふうに期待をしておるところでございます。

山口(富)委員 その格段に進んでいくという中身をもう少し示してくれと言っているんです。

伍藤政府参考人 具体的に、何年間でどこまで進むかということは、予測はなかなか難しいわけでございますが、可能な限り、市町村の事務を遂行するために、こういう、ネットワークといいますか、協議会が有効であるということでありますので、それを十分認識していただくように、私どもも、今までの実例等の紹介をしながら周知に努めていきたい、そういうことによって、ぜひこの整備が進むように取り組んでいきたいというふうに考えております。

山口(富)委員 今局長が言われましたように、先行きについては、はっきり言いますと、今いろいろな問題がありますから、そう明確じゃないんです。

 それで、この厚労省の調査を見ますと、活動上の困難点として、現在ある協議会は、効果的な運営方法がわからない、スーパーバイザー、指導的な立場の人がいないという回答が多いわけですけれども、同時に、今後の機能充実のための課題となると、これは、効果的な会議運営に加えて、児童相談所と関係機関の役割の明確化が必要だという答えも出ているんですね、結果が。厚労省はこれだけの調査をやっているんですから、調査をやった以上、これに見合う対応策を考える責任がある。

 それで、厚労省の方は、こうした結果も踏まえまして、協議会の機能を充実化させるという点で、どういう手だてをとるつもりなのか。先ほどからの答弁を聞いておりますと、全国にある、いろいろうまくいっている実例などを知らせていけばいいというような答弁が繰り返されているんですけれども、それにとどまらないで、どういう手を打つのか、私は示していただきたい。

伍藤政府参考人 市町村でやっていただきます事業についてのガイドラインを策定したいと思っておりますので、その中で、各地で行われております好事例等を取り上げて、これをモデル的に示す、そういったことも有効な方法だろうと思います。

 先ほどほかの委員の御質問にも答えましたが、どれか、こういう方法が唯一効果的だということじゃなくて、各地で今非常に効果を上げている取り組みも、児童相談所あるいは福祉事務所が中核的な役割を果たしたり、保健所が中核的な役割を果たしたり、いろいろな形態がございますので、それぞれ、市町村の実情に応じてこういう工夫をしていただきたい、そういう観点から、そういう自主性を尊重するような形で、私ども、事例を紹介する等の、あるいは市町村の事務のガイドラインを示す、そういった間接的な方法で、できるだけバックアップをしていきたいというふうに思っております。

山口(富)委員 大臣に答弁願いたいんですが、そのバックアップの体制をとる際に、私はやはり、かぎは児童相談所だと思うんですね。

 市町村が対応するという問題をとってみましても、今は非行の問題があり、障害相談があり、育成や親の養育問題があり、さまざまな、本当に広い問題への対応を迫られるわけですね。そうすると、今、日本の体制のもとでは、福祉事務所もやっておりますが、児童相談所が一番の経験を積み、技量を持っているわけです。ですから、今度の法改正に伴って、市町村がやり、また協議会もつくれるわけですけれども、同時にそれを本当に動かそうとすると、児童相談所の役割、それから体制の強化が絶対に欠かせないと思うんですが、大臣にはそういう認識を持ってこの問題でのバックアップ、支援の体制を必ずとっていただきたい。答弁願います。

尾辻国務大臣 今のお話は、もう全くそのとおりだと思います。

 私は、いろいろなことを言っておりますが、一つ、これは間違いなくいいことだなと思っておりますのは、この十一月から年度内かけて、各児童相談所を一つずつ訪問して、調査して歩くと言っていますから、そのときにいろいろな話を聞かなきゃいけませんし、ネットワーク一つをとりましても、今みたいな、こんな調査結果では本当にまずいわけでありますから、いろいろな話を聞いてくる、そしてまた、今みたいな話もしっかり伝える、このことをぜひやらなきゃいかぬなと今思っているところでございます。

山口(富)委員 では次に、具体的に、児童相談所の問題について、幾つかお尋ねしたいんですけれども。

 今度の法改正の案で、十二条の三の第三項なんですが、所長というのは児童相談所の所長ですけれども、「所長は、厚生労働大臣が定める基準に適合する研修を受けなければならない。」というふうに定められています。これについて、先ほどから局長の方が、繰り返し、この研修は新任の所長だという答弁をされています。しかし、これはどう読んでも、どこにも新任とは書いてありません。

 今度の法改正というのは、市町村の仕事の問題でも、協議会設置でも、そして児童相談所の役割の問題でも、いわば児童虐待という新たな事態のもとでこういう法改正をやるわけですから、この研修の部分を新任の所長などと読み込んでもらったら絶対にまずい。これは、新任の所長じゃなくて、大体、児童相談所といっても、今ある数が少ないんですから、少なくとも今の到達点に立って、全員の所長がここにある研修を受けるという提案なんだなということを確認しておきたいと思います。

伍藤政府参考人 児童相談所長の研修でございますが、所長として随分経験を持って長くやっておる方、こういう方々は、既にリーダーシップを発揮されて、現場に習熟されておることだろうと思いますので、現実の問題として、私どもが念頭に置いておりますのは、初めて児童相談所長になられるような方、あるいは、児童相談所を経験したけれども、しばらく別のポジションにいて、新しく所長として見えられた方、まずはこういう方々に、児童相談所の現状あるいは児童相談の現状というものをよく認識していただいて、いろいろな難しい問題にリーダーシップを発揮していただく、こういうことがまず必要じゃないかというふうに思っております。では、そのほかの、既に何年もやっている所長が受けられないのかといえば、任意で受けていただくことも可能でありますが、まずはぜひとも研修を受けていただき能力を高めていただきたいと私どもが思っておる方々は、そういう方々でございます。

山口(富)委員 全くまずい答弁ですよ。だって、任意で受けられるんじゃないんだ。この提案は「受けなければならない。」なんだから。大臣、これは提案者なんですから、もちろん、いろいろな段取りの中で、まず新任の方というのは、私はあり得ることだと思います。しかし、これは法改正の精神からいって、たとえ経験を積んだ所長さんであっても、今度の新しい到達点に立っての改正なんですから、当然計画的に全員に受けていただくということでよろしいですね。

尾辻国務大臣 今局長がお答えいたしましたように、今までの人の中には随分経験を積んだ人もいるでしょうし、例えば、おられるかどうかわかりませんが、例えばドクターがおられるとか、いろいろなことがあるんだろうなと思います。

 そうした人もいるからということでお答えしておりまして、あと、法律の運用の話だと思いますから、運用は間違いないようにさせていただきたい、こういうふうにお答え申し上げます。

山口(富)委員 それでは、もう一点確認しておきたいんですけれども、きょうの質疑の中で、児童福祉司の任用資格が広がる問題について、法改正に伴って広がるという話を盛んに局長がされるんですが、この改正の法文上、一体どこからそういう話が出てくるのか示していただきたい。

伍藤政府参考人 法律上は出てまいりませんが、省令でそういうふうに広げるというようなことを考えております。

山口(富)委員 それが正しい答弁なんです。

 私、これはあいまいにしちゃいけないと思うんですね。法改正に伴ってと言われるけれども、現実には省令の改正なんです。

 それで、確認しておきたいんですが、省令の改正として今念頭に置いている、新たに広げる分野というのはどういう職種の皆さんなのか、示していただきたい。

    〔委員長退席、北川委員長代理着席〕

伍藤政府参考人 現在、具体的に考えておりますのは、保健師でありますとか保育士でありますが、最終的にどのような形にするか、例えば教員でありますとか看護師でありますとか、まだ可能性としては幾つかあると思いますが、省令を策定する段階までに、よく検討して、詰めてまいりたいというふうに思っております。

山口(富)委員 きょうは児童福祉司の皆さんの専門性ということが随分議論になったわけですけれども、今挙がったところでいきますと、保健師さん、保育士さん、教員という名前が挙がったわけですけれども、実際に、これまで経験を積まれたこういう方々が児童福祉司として仕事をやろうとすると、やはりそこには一定の落差があるわけですね。そこから、来年度の概算要求に、国の方で任用資格取得に伴う研修を実施したいという提案が、当然のこととして出てきたと私は思うんです。

 となりますと、省令となると、私たち立法府からいきますと、当然ここでの議論を踏まえた省令になるわけですけれども、一体どういう研修の内容を用意しているのか。これは、職種を広げるというんですから、ぜひ示していただきたいと思います。

伍藤政府参考人 任用資格を広げるということに伴って、こういったことも踏まえまして、任用資格取得のために必要な研修を十七年度予算で要求をしているところでございますが、基本的には、そういった方々のケースワーク技術といいますか対人的な援助技術、こういったものの向上のために必要な研修を実施する、こういう観点から国として都道府県を支援していく、こういう予算を要求しているところでございます。

山口(富)委員 これはぜひ、予算だけでなくて、その研修の中身について、この法案の質疑の内容も踏まえた、きちんとしたものにしていただきたいと私は思うんです。

 それで、きょうも栃木県の小山市の事例が挙がりましたけれども、私ども日本共産党の議員団も調査に行きまして、私自身は東京都の児童相談所でいろいろ聞き取りをやってまいりました。やはり、現場へ行ってみますと、人手が足りない、それから、相談件数に対応するのが大変になっているという話が随分出てまいります。

 それで、きょうは、厚労省に示していただきたいんですけれども、昨年度、全国の児童相談所が処理した児童虐待相談処理件数、これがどれだけあるのか、そして、これは十年前の一九九三年と比べて、一体どの程度伸びているのか、示していただきたいと思います。

伍藤政府参考人 二〇〇三年の児童虐待相談件数でありますが、二万六千五百六十九件ということでございます。十年前の一九九三年の件数は千六百十一件ということでございまして、伸び率にして十六・五倍、こういう状況でございます。

山口(富)委員 では、もう一つ数字を尋ねますが、児童福祉司の数なんですけれども、同じく昨年と十年前の一九九三年を比べてどの程度の変化があるのか、示していただきたい。

伍藤政府参考人 一九九三年の児童福祉司の数は千百十七人でございまして、二〇〇三年、これが千七百三十三人ということでございまして、一・六倍の伸び率でございます。

山口(富)委員 大臣、今数字が示されましたが、対応している相談件数がこの十年で十六・五倍、それに応ずる人数の方は一・六倍程度だ。私、これが、今児童相談所を訪ねますと、人手が足りない、相談の対応をするのも手いっぱいで大変だという声になってくる、いわば裏づけのある数字だと思うんです、実体のある。

 それで、今度の法改正で確かに市町村が対応を始めますけれども、そうだとしても、今私が取り上げた数字というのは、児童虐待にかかわる相談の件数なんです。ですから、そういうものは主に児童相談所の方も仕事としてやりますよということになっておりますから、とても今度の法改正だけで児童相談所の今の仕事の体制のしんどさが帳消しになるようなものじゃないと思うんです。

 では、児童福祉司の体制をどういうふうに強めていくのかということなんですけれども、配置なんですが、交付税の基準、これを下回る児童福祉司の配置にとどまっている自治体数はどれだけあるのか、割合で結構ですから、示してください。

伍藤政府参考人 今年度におきます地方交付税の積算基礎の上での配置でありますが、人口六万八千人に一人、こういう配置基準が地方交付税上の配置基準ということでございます。この基準を満たしている自治体は四〇%、満たしていないところが六〇%という状況でございます。

山口(富)委員 六割の自治体が満たしていないというわけですが、なぜこういう結果にとどまっているのか。これは厚生労働省としてはどういうお考えですか。

伍藤政府参考人 私どもとしては、この交付税上の措置は、非常に厳しい中でありますが、総務省と交渉して毎年ふやしてまいりました。それから、こういうものの必要性についても、あらゆる機会を通じて都道府県等に周知し、お願いをしておるところでございます。

 なぜふえないか。これは、地方公共団体においてどういう判断をされるか。先ほど言いましたように、人員と金をどの分野に割くかということの最終判断は、都道府県知事あるいは都道府県が行うことでございますが、先ほどほかの委員の御質問にもお答えしましたが、大変こういうところに率先して取り組んでいる都道府県とそうでない都道府県の格差が非常に大きいという実情にありまして、こういう子供の、児童の問題、特に虐待の問題にもう少し認識を持っていただく必要がある自治体がまだかなり多いのではないかというふうに思っております。

 私どもは、そういった点を、特に都道府県の比較というような、こういう形でもいろいろな機会に示しながら関係の部局にその周知をし、しかも、都道府県の中で、特に知事あるいは財政部局にこれを認識してもらいたいということで、いろいろな機会を通じて今お願いをしておるところでございます。

山口(富)委員 私は、この問題は、地方の判断や政治の責任に帰せない問題があると思うんです。

 それで、これは大事な点ですから大臣に答弁願いますが、いわば二重基準があるんですね。交付金の方は確かに六万八千人に一人という基準になっている。これがなかなか、金額としては出ているんだけれども、地方行政の分野では実っていないという話がありました。

 ところが、もう一つ基準があるんです。これは、児童福祉法施行令の第七条の三にあるんですけれども、人口おおむね十万から十三万人に一人という児童福祉司の配置基準があるわけですね。これが四十年以上にわたってそのまま放置されている。これは、現場サイドからはここに一番の問題ありというのが繰り返し意見として上がっています。

 例えば、私もお会いしてきたんですけれども、全国児童相談所長会というのがあります。ここの会長をされている方が飯山さんといって東京都の所長さんですけれども、昨年と今年度、毎年厚労省に要望を上げているんです。

 例えば、昨年度の要望でもこういうふうに言っています。「児童虐待に的確に対処するためには児童相談所の体制整備は不可欠です。」、「次のような改善を求めます。」と言って、第一項が、「「児童福祉法施行令第七条の三」の児童福祉司の配置基準を改正すること(人口十万人から十三万人に一人を人口五万人に一人)。」にしてほしい。私はこれは、実際に子供たちと対応している第一線の人たちからの要望として、軽々に聞き逃すわけにいかない要望だと思うんです。

 これが、私がお聞きしたところによりますと、かなり前から毎年出ているというんですね。ですから、今度の法改正に当たりまして、児童福祉司の全国的な配置を進めていくためには、もちろん今の交付金の問題もありますけれども、私はまず、国の配置基準、この施行令の部分を改善する、最低でも所長会が求めている五万人に一人、私はこれでも基準としては低いと思いますけれども、少なくともここに直ちに持っていくぐらいの意気込みで法改正に真剣に取り組んでいただきたい。これは大事なことですので、これまでのことも全部大事なことですけれども、法律にかかわりますから、大臣、答弁お願いします。

尾辻国務大臣 ただいまの御質問は、きょう何人かの先生に御質問いただきました。

 きょう私がお答えしましたのは、今般の児童福祉法の改正案や、現在進展しつつある市町村合併などが児童相談所の業務に及ぼす影響や評価がある程度固まった段階で、その時点での地方の自主的、主体的な判断を尊重する観点も勘案しながら検討していくことが適当であると考えております、こうお答えを申し上げてまいりました。

山口(富)委員 そのある程度固まった段階というのは、どのぐらいを見ているんですか。

尾辻国務大臣 今、直ちに時期を申し上げるわけにはいきませんけれども、しかし、きょうの先生方のいろいろな御議論がありますから、そのことは十分踏まえながら時期も判断させていただきたい、こういうふうに考えます。

山口(富)委員 先ほど、山井議員の資料にもありましたが、この配置基準というのは、国際的に見ますと、とにかく、けた違いに低いんですね。ですから、私はやはり、ある程度の時期を見てというか動きを見てということにとどめないで、今度の法改正でせっかく新しい動きをつくるわけですから、この時期に、このときに改正すべきだ、大臣はその政治判断をすべきだと思うんですが、重ねてこの点はもう一回答弁願います。

尾辻国務大臣 十分承りましたと答えさせていただきます。

山口(富)委員 きょうはもう少し質問を予定していたんですが、少し押し詰まってきたので、もう一点お尋ねしておきますけれども、児童福祉司以外の配置の基準の問題なんです。

 それで、私たちが児童相談所に参りますと、相談員の方や心理判定員、今呼び名はいろいろ検討されているようですけれども、いろいろな職員の方がいらっしゃいますが、どうもきちんとした配置の基準がないようなんです。これは現状はどうなっていますか。

伍藤政府参考人 児童相談所の体制につきましては、中核となる児童福祉司についてはこういった統一的な配置基準というのが定められておりますが、そのほかの職員については特段そういった統一的な基準は定められておりません。

 そういった中で、実情に応じて今までも、心理療法の担当職員でありますとか、各種の職員の配置を、毎年予算要求しながら増員をしてきたところでございます。

山口(富)委員 これは確かに予算要求してきたのは知っています。

 それで、相談所を訪ねましても、やはりお子さんが来たときに、その心理状態などを一定期間、相談に乗ったり判断する期間が要るんですね。その方たちはなかなか苦労して仕事をしているんです。ところが、児童福祉司でも配置基準が低いわけですけれども、そこの明確な基準がない、これは私は大問題だと思うんですね。

 大臣に、この点については必ず配置基準の問題、他の職員の問題についても現状を調べて検討するというお約束をしていただきたいと思います。

尾辻国務大臣 何しろ全体人員の話でございますので、なかなか私も調子よくお答えするわけにもいきませんが、私の判断だけでどうにもならない面を持ちますからそんなに軽々に調子よくも言いませんが、しかし、検討だけはしっかりさせていただきますということだけを申し上げます。

山口(富)委員 その点はぜひよろしくお願いします。

 もう一つ、児童相談所なんですが、その設置なんですけれども、児童相談所運営指針によりますと、人口五十万人に最低一カ所置くということになっていますが、この基準は全国でクリアされているんですか。

伍藤政府参考人 各都道府県、指定都市ごとの人口を児童相談所の箇所数で割りますと、一カ所あたりの管轄人口が五十万人未満の自治体が十七、残りの四十三の自治体が五十万人以上というふうになっております。

山口(富)委員 いわば職員の児童福祉司の方も基準にいかないし、低い基準にもいかないし、そして児童相談所そのものが、とにかく今の話では四十三が基準にいかないというわけですから、私は、これは今政治がきちんと目を向けるべき現実がここにあると思うんです、改善すべき。

 尾辻大臣に最後にもう一回質問して、時間が参りましたので終わりますけれども、今、地方との関係で三位一体改革が問題になっております。今の小泉内閣の方針というのは、特に福祉、教育の分野での国庫補助負担金の縮減や廃止ということが含まれておりますから、これは私ども反対ですけれども、同時に、児童虐待にかかわるような分野というのは、やっと始まったところなんですから、当然国が責任を負うべき分野だと思うんです。その点では、財政措置も含めて国としてきちんとした対応を児童虐待問題等で行っていくということを確認、答弁願いたいと思います。

尾辻国務大臣 年金のことを申し上げるまでもなく、とにかく少子化対策というのはまず大きな国の柱だと思っております。そうした中での、とにかく子供たちの施策というのは国が責任を持たなきゃいけないということを申し上げたわけであります。

 もちろん、その中に虐待のことも含まれるわけでありまして、今私が申し上げていますのは、そうしたことを含めて、とにかく子供たちのことに関して、少子化、国の将来どうするんだということに関しては国の大きな責任である、これを避けて通るわけにはいかないと思っておりますということを申し上げたところであります。

山口(富)委員 年金問題では意見が違いますけれども、子供たちのための施策は国の責任としてきちんと進めるという点では、再度その旨要望しておきたいと思います。

 終わります。

北川委員長代理 次に、阿部知子君。

阿部委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。

 子供たちが殺されない、そして健やかに成長していける社会にするために、長時間の皆さんの審議、本当に御苦労さまです。

 私は、実は、この法案の審議を控えまして、武蔵野学院と申しまして、皆さんの御記憶にある事件とすれば、長崎で四歳の坊やが中学生の少年に突き落とされた事件の加害者となっております少年が送致されております国の児童自立支援施設、これは男の子たちのための施設で、昔は感化院と申しましたけれども、家庭的環境のもとで子供たちの心をもう一度はぐくんで、この社会に復帰してもらうための施設の見学と、いま一つ、女の子たちが同じように事件の加害者になったときに送致されますきぬ川学院というところを見学させていただきました。

 たまたま私の見せていただく数日前には、佐世保で女の子同士が殺傷事件の加害者と被害者となって十二歳の女の子が亡くなるという事件の加害者の方の女の子が送致されたり、あるいは、東京の大久保でございました、やはりこれも五歳の坊やを中学生の女の子が突き落としてしまった事件の加害者の少女が送致されてくるなどがあって、大変お忙しいさなか、施設の院長初め職員の皆さんにも協力、本当によくしていただいて、見せていただきました。

 先ほどの尾辻大臣の言葉を使えば、こういう二つの国の持っている児童自立支援施設で、おまけに、かぎがかかって、いっときは強制措置もできるような施設というのは、非常に高度なセンター病院的なところと思いますのですが、今度そこから児童を、二年ほどお預かりして、それも、とても家庭的な環境、擬似的にお父さんとお母さんにかわるような御夫妻がいて、十人くらいの非行少年とか加害少年をケアする、その約二年間を経てまた地域にお返しするのですが、さて、地域にお返しする場合に、どこを窓口とするかというと、きょう皆さんのたくさんの論議になっております児童相談所が窓口になるということです。

 しかしながら、児童相談所は、一方で虐待を受けた子供たちのケアにも、日本の社会福祉士の皆さんは二百人以上をケースとして抱えておられますから、そこに、例えば加害少女あるいは加害少年で、復帰してまた社会で生きていきたいという子供たちの地域で生きていくための支援というものまでを抱え込むと、本当に仕事量としては想像もつかないというか、現実にはお手上げ状態になるというような状況も承ってまいりました。

 私があともう一つ、この国立の児童自立支援施設で指摘された点で非常に印象に残りますのは、入所児童の八割が被虐待、いわゆる虐待経験、普通の養護施設ですと、今、虐待経験は五割と言われていますが、国のセンター化された、非常に、言葉は悪いですが、通常の施設では持て余す子供たちが行くところは、逆に被虐待児が多いと。結局、受けた心の傷、人間を信頼できない、まして家庭経験というものも本当にないというような子供たちが、実は被虐待児であるという二重、三重構造の中に、きょうこの問題の審議にかかっております。

 私は、そうしたことを考えましても、まず、皆さんが御指摘になりました児童相談所自身の今回大きな改編の時期に当たっておりますし、どういうものとして位置づけて、どの程度充実させてやっていくのかというのは、非常に重要な時期に差しかかっておると思います。

 最後の山口委員の御質疑の中で、昭和二十三年に厚生省から通知された、五十万人に一カ所の児童相談所という基準もむしろ満たしていないところが多い、先ほどの伍藤さんの御答弁でありました。

 では、もう本当に端的に伺いまして、これから厚生労働省として、この時代、複雑に入り組んだ子供たちの状況、家庭状況、子供たちの手助けの骨格になる、中核になる児童相談所を幾つぐらいを目標に設置していこうとするのか、そのために、現状の通知等々、五十万人に一カ所という通知がほとんどもう意味をなしていないような状態をどのように変えていこうと思っておられるのか。

 今回、政令都市にもということでしたが、これもどなたかの委員の御質疑でありましたが、既にそこには一カ所設けられていたりする場合もあって、これは綿密に検討してみないと、何カ所くらいを目標に、そしてそのためにどうしていったらいいかというのが、答えが出ないと思うのですが、まず伍藤さんの方からの御答弁でも結構です、お願いします。

    〔北川委員長代理退席、委員長着席〕

伍藤政府参考人 児童相談所の設置数でございますが、昭和六十二年に、いわゆる地方に対する国の技術的助言というような形で、児童相談所の設置数は、人口五十万人に一カ所程度が必要であり、各都道府県の実情に応じて設置することが適当である、こういう趣旨の助言をしておるところでございます。

 そういった形で児童相談所を設置しておりますが、今回の法改正で、市町村に児童相談の一部の事務を担っていただくことになりますので、こういったことによる事務処理量の変化、あるいは、先ほども質問がありましたが、障害児の問題にどう対応していくか、児童相談所の役割も、これからまた、いろいろな形で変化をしていくと思いますので、そういう変動要因も踏まえながら、児童相談所の適正な配置ということに都道府県で取り組んでいただきたいと思います。

 今回の法改正では、やはり相談所を設置し運営していくような実力といいますか、財政的な、人的なそういう能力があるものとして、一応今は都道府県、指定都市に置かれておりますが、これを中核市レベルまで広げられるように、まず枠組みをつくったらどうかということで御提案をしておるわけでありまして、各地における児童相談というか、児童虐待とか、そういったものの実情を踏まえて、都道府県あるいは指定都市、さらには中核市において、どういった体制で取り組むことが適当か、積極的に検討していただきたいというふうに思っておるところでございます。

阿部委員 五十万人に一カ所という基準が六十二年という御答弁でしたので、それにのっとって私の先ほどのは訂正させていただきますが、そうだとしても、特に虐待問題がこのような形で社会的に大きな問題として浮上したのはこの十年。児童虐待防止法などをもう絶対につくらなきゃいけないんだというふうに認識されたこの数年、やはり際立って格段に児童虐待のケースはふえております、すそ野が広がるし、問題が複雑化するしということで。その中で私たちは今現在審議をしておるわけです。

 今の御答弁中、とても気になりますのは、事務処理量が、今度地方にネットワーク等々ができる中で軽減されるやもしれないというふうな感覚がもし厚生労働省側におありであるのであれば、私はそれは大きな見当違いだと思います。

 きょう、各委員が御指摘の、もう随所にありましたが、児童虐待という問題は、やはりかなりの専門性と緊急介入と、そして本当に苦しい決断を幾つも重ねていくような現場でございます。それゆえに、厚生労働省の基本方針としては、例えば現状の受け皿が中核市くらいしかできないとしても、やはりこれは、何度も尾辻大臣の言葉を拝借して恐縮ですが、二次医療の、要するに、一次を受ける二次がなければ一次もやれないわけです。必ずや充実させていかなくてはいけないという強い方向性で進んでいただかないと、やはり、きょうこれだけ遅い時間皆さんが審議を尽くしている意味が本当の意味で出てこないし、また、厚生労働省としても予算のいわば分捕りの大変な中でも、私たちみんな総意でこのことの充実を求めて、それこそ超党派だと思います、子供のために頑張ろうとしているやさきですから、恐縮ですが、尾辻大臣には、その二次医療のセンターにも匹敵する、今医療の方でもこの二次医療センターが危うくなっているのですが、必ずや十分に厚生労働省として、それから増加する一途の虐待のある種のセンターですから、それ以外にさっき私が言ったような業務も加わっているわけです。そういう中で、もっと数の上でも充実させていくという方向性についての決意を一言お願いします。

尾辻国務大臣 重要性につきましてはおっしゃるとおりでございます。ただ、地方にお願いする部分でもございますので、私どもとしては、そういう立場でございますから、まさにお願いをしていきたい、こういうふうに考えます。

阿部委員 もちろん、新しいものの設置には、建物にかかわる費用とか人件費においても地方自治体の持ち分というのがありますので、確かに一方的にはいかないと思いますが、しかし、先ほど来の尾辻大臣の御答弁で、やはりこれは国がリーダーシップをとって、今のところ、もう本当にそういうことをしなくてもよくなれば、それで私もうれしいけれども、現状、やはり子供のことはだんだん後送りになって、そして予算を削られるときは先からという現状をずっとこれまで見てまいりましたので、ぜひ強い決意で臨んでいただきたいと思います。

 それと、児童福祉司の数の配置のことは、皆さん何人もの方が御質疑で、また大臣も御答弁でありましたので、私はその中で、いわゆる質と育成にかかわりますところで少し、これは予告してございませんが、お伺いしたいと思います。

 私は、今度の法案改正を見て、一体この児童相談にかかわる児童福祉司の方たちの質を、本当は、専門的に上げていく、諸外国ではソーシャルワーカーがやっていらっしゃいますようなものに上げていきたい。しかしながら、現状ではとても、数も、ソーシャルワーカーの目当てもないから、とりあえず、変な言い方ですが、いろいろすそ野をふやして暫定的に、もうそうしなきゃ間に合わないから、先ほどの教育分野や保健師さんや、いろいろな人の配置もそこに入れ込んで考えようという、暫定的な、移行期のアイデアかなと思って拝聴しておりますが、しかし、その移行期というふうに見たとしても、私には、これはどうするんだろうという疑義があるところがございます。

 このいただきました中で、児童福祉司の任用資格の見直しは、これは法律ではなくて運用で行われるそうでありますが、厚生労働省令で定める施設において一年以上福祉に関する相談等の業務に従事した者でなければならないものとする、これは、現状の社会福祉士をどこかで一年研修して、専門性を高めていこうということだと思いますが、果たしてそうした研修先というのは、まず、十分に数があるのか、受け入れられるのか。結局、研修は無給ではできませんから、賃金の問題も生じてきますが、果たしてこれはどのようなイメージで一年間の相談業務の研修をやった者を採用していこうというふうにおっしゃっているのか。これは伍藤さんかと思います、お願いします。

伍藤政府参考人 児童虐待というのは、大変いろいろな背景を持って複雑な要因のケースが多いわけでありまして、今回の考え方は、そういったものに対応できる人材を幅広く登用して、しかも現場経験を積んでいただいて、いろいろなケースワークに当たっていただこう、こういう考え方で考えているところでございます。

 具体的に、研修の施設というところでは、保健所でありますとか、児童相談所でありますとか、あるいは各種の児童関係の施設、こういったところで一定の研修を積んでいただくということが必要かなと考えておりますし、そういった方々を、一定期間研修を受けていただくし、それから、そのほかの座学の研修についてもいろいろ準備を考えたいというふうに思っております。

阿部委員 何だか鶏と卵の転がし合いをやっているようで、例えば、おっしゃったような、児相とか保健所とか施設でそういう経験を積んだ人をまた児相に持ってくるとおっしゃいますが、この施設が、あるいは保健所が、あるいは児相がそういう人を雇うためにはお金が要るわけです。その人たちは研修をする。ただで研修をするわけにまいりませんから、そういうところの具体的な保証、算段あってこういうふうに書いておられるのか。私は、やはりその点が非常に計画倒れというか、本当のところこれでいくんだろうかという思いをぬぐい得ません。

 次週までで結構ですから、私はまた来週質問に立たせていただきますので、具体的にどこで何人くらいどう養成して、この足りない児童相談所への人の配置を、一年どこかで予備的に勉強した人をそこに配置できるのかの具体的なアクションプログラムをお示しください。そうでなければ、こんなものは文章に書いただけで、意味を生じてこないと思います。

 そして、私は、今、児童相談所に児童福祉司として入っておられる方が、一般行政職の方もそこにお助けいただかなきゃいけないほど人手不足であるという物理的な側面と同時に、先ほどどなたかの委員が御指摘になりましたが、やはり司法の関与がより明確でないと、全部の判断を児童福祉司が担わされるわけです。親との関係、本当に抜き差しならないような修羅場、それを全部背負う心理的な不安とケースの多さとの中で、やはりどうあっても、例えば今後ソーシャルワーカーのような人の養成を国として挙げて、本当に国として挙げて考えていくという形にしないと、先ほどの一次、二次、二次のセンターだといっても、機能もできないし、継続してそこに若い人が来てくれないと思います。

 私は、実は、先ほどの見学に行った武蔵野学院の中で、ここの中に二十五名の児童自立支援の研修をするためのいわば教育機関が併設されていることを初めて知りました。私自身、子供にかかわっていたけれども、一体、子供たちのための支援のスキルを磨いたり、そして、本当にそのことをやりたいというときに自分が自信を持ってやっていけるように学習できる場はどこであるのかということは、ずっと疑問に思っておりました。

 私が描く一つの解決策は、先ほど言ったソーシャルワーカー、これは国家資格ですから、そのような方たちにもっともっとこの道に入っていただくということと同時に、この国立武蔵野学院内の研修施設の充実ということを、研修施設を充実するとは、すなわちそこの指導教官側も充実することでございますし、そのことによって、現在毎年二十五名がそこに学び、あるいは児童相談所からの一時研修でもそこに行きというふうにしておられるそうです。

 これも予告していなくて恐縮ですが、きょう、私は、予告したのはみんな聞かれてしまいましたので、急遽考えてお願いする次第ですが、これはまだ尾辻大臣も御存じがない仕組みかなと勝手に私も推察いたしまして、ぜひ、日本の国の財産、とにかく八十年子供の自立支援をやってきた、そこで同時に研修をしながら、今度は自分がまたそういうスタッフとして育っていく、ああ、こういう仕組みがあったのかと思いましたから、現在よりさらに充実させていくということを御検討いただきたいと思います。これもお願いで、予告なしですので、ここまでで終わらせていただきます。よろしくお願いいたします。

 あともう一点、伍藤さんにお願いいたします。

 私は、先ほど、この間いわゆる児童虐待の死亡事例の検証の中で三十八人が乳幼児であったという御報告を上川委員が御質疑されましたことに関連して伺いたいのですが、この三十八人については、例えば三カ月健診、保健所で行います健診を受診していたかいなかったか、そのようなことをお調べになったことがあるでしょうか。

伍藤政府参考人 今私どもが把握しておる数字の中では、御指摘のありましたようなところまでは数字としては把握できておらないということでございます。

阿部委員 私は小児科医で、今を去ること二十年前、川崎市の保健所でも、いわゆる子供の乳幼児健診にかかわっておりまして、当時私は、保健婦さんと一緒になって、やはり今ちょうど伍藤さんがおっしゃったように、三カ月健診を受診されない家庭は必ず保健婦さんにおうちに行っていただく。必ず家庭には御事情があって、例えば親御さんが精神的障害がおありになる、場合によっては結核等の感染症が発見される、あるいはお母さんが引きこもっておられるとかが見つかりますので、当時、かなり熱心に保健所活動をやった自分自身の記憶がございます。

 しかし、その後、国の行政的な取り組みは、そうした保健所の訪問活動というものを逆に引き揚げる形で今日に至り、そしてまた、ここに至って、先ほど何回か御答弁の中に出てまいりましたが、保健師さんも随所にこの児童虐待防止ネットワークに活用させながらとおっしゃいますが、やはりこれは厚生労働省としての一貫した行政的な見直し、すなわち、赤ちゃんがこの世に生まれてくるというところ、おなかに赤ちゃんができる、そして出産されるという、その早期の出発点のところで今きっちり把握してフォローしてさしあげることが非常に緊喫になっていると思います。

 私は、地域にこれが一つおろされるということは身近でいいと思いますが、それに当たってもいろいろな地域の事情があるからという形で厚生労働省が逆に言うと一歩も二歩も引いているという印象の中で、しかしながら厚生労働行政としては、私は、みずからやってきた行政の見直しをぜひやっていただきたい。私が一緒に働いていた保健婦さんたちが随分そのことは、もう業務量がふえて、デスクワークがふえて、もう訪問に行けないのよ先生ということを私は何度も何度も聞きました。川崎という地域は決して豊かではない地域で、やはり来てくれない患者さんというか親御さんの方が多くありました。

 その点についても、今後保健活動を見直すとおっしゃった中で、児童家庭局だからという言い方もあるかもしれません、これは厚生省の省庁内でも、全体の業務の流れ、どう移行してきたかという見直しが必要と思いますので、もし御答弁いただければ、伍藤さんにお願いします。

伍藤政府参考人 市町村の現場におきます保健活動、特に保健師さんの活動というのは、虐待問題においても大変重要な役割を果たしておりますし、保健活動の中におけるそういうウエートが年々高まっておるというふうに思っております。

 そういう観点から、今、厚生労働省としても、保健師の増員に全体として取り組んでおりますが、その一つの大きな要因としてこういう児童の問題、虐待問題等への対応、こういう視点も強く主張して交付税措置等の要求を今してきておるところでございますので、そういう幅広い活躍をしていただくという観点から、今後とも保健師の充実に努めてまいりたいと思います。

 それから、補足でありますが、先ほど任用資格の関係で、児童福祉司の新たに任用資格を広げる保健師あるいは保育士等の研修の場というふうに申し上げましたが、研修というよりも、正確には実務経験ということで、正規の職員として一定の、先ほども申し上げました保健所でありますとか各種の児童施設でありますとか、そういうところで正規職員として働いた経験をカウントして登用する、こういう趣旨でございまして、臨時的にそこで研修を積むということではないので、念のために補足させていただきます。

阿部委員 十分理解しているつもりです。それゆえにこそそれだけの人件費があるのかと。これは市町村側が出さなくちゃいけなくなってきますから。そういうお尋ねでもあります。では、それだけの補助を出されるのかという問いでもあります。

 最後に、私は、来週は子供の慢性特定疾患についてお尋ねさせていただきますが、今回の委員会と直接には関係ございませんが、先ほど山井さんがコンビニに児童虐待防止のための何らかの役割を担っていただこうという御提案をされて、尾辻大臣もいいことだとおっしゃっておられましたので、ちょっとコンビニに関係することで、実は臓器移植のドナーカードでございます。

 これは、今コンビニに置かれておりまして、とてもコンベニエントなのですが、コンベニエントであるがゆえに、例えば道に落ちていたり、いろいろな問題も惹起しているように思います。

 きょう私は二点お伺いしたいのですが、一点目は、まず、数日前の日経新聞に、日本で行われた脳死臓器移植三十一例のうちの数えて二十二例目の御家族から、いわゆる脳死に至る治療過程が、十分に治療を尽くされなかったのではないかというふうに裁判が起こされたという報道がございました。

 私は、この方は臓器は提供しておられるのですけれども、臓器移植法というのは、やはり十分に脳死に至るまでを治療されて、救命措置が尽くされてという前提のもとに成り立っている法律ですので、こういう訴えが起こされているということは、これは既に厚生労働省も検証会議をやって検証がお済みでありますが、やはりもう一度きっちりと検証してみていただきたいというのが一点です。やはり信頼性にかかわってまいりますから。

 それといま一点、こういう臓器提供のドナーカードにいろいろな不備があっても、例えば、丸のつけてある場所がちょっと足りなかったり、期日が書いていなかったりしてもドナーの意思として認めようというふうな厚生省の審議会の中での御意見もあり、今週から多分パブリックコメントを求めておられるんだと思いますが、これも臓器移植法の本来の精神にのっとれば、やはり、きっちりその意思が確認されて、しかるべく臓器を提供していただくという原点から余りに遠く逸脱しますと、結局、御本人意思を外してもいいのではないかというふうなところにまでいきかねませんので、一例、今回訴訟になったケースの検証と、このドナーカードをめぐる取り扱いは法本来の趣旨を大きく損ねることがないようお願いしたいという二点を大臣にお伺いして、終わらせていただきます。

瀬上政府参考人 二十二例目の臓器移植法に基づく脳死判定事例につきまして、臓器提供者の遺族により、病院の診療行為に問題があったとして、病院に対しまして損害賠償請求が提訴されたということは存じております。

 この件につきましては、現在情報を得ている範囲では、臓器提供者の遺族と臓器提供施設との間の問題であると考えております。厚生労働省といたしましても、今後の動向を見守ってまいりたいと考えております。

 また、ドナーカードの問題でございますが、臓器移植法が要件としております臓器提供を行う意思及び脳死判定に従う意思を表示するためのものでありますので、その取り扱いにつきましては、臓器提供に関する本人の真正な意思表示を必要とするという立法趣旨を踏まえたものでなければならないということは、論をまつものではございません。

 今回のカードに関する法律家五名によります作業班及び臓器移植委員会の報告によりますと、形式的なカードの記載不備によって臓器提供の意思が生かされなかった事例の取り扱いについて、単にカードの形式面にのみとらわれた判断をすべきではない、本人が生前に有していた臓器提供に関する意思を正確に把握することが重要とされたものでございます。法の趣旨を踏まえたものと考えております。

 こうした報告を受けまして、現在、先生御指摘のとおり、ホームページの上で、広く一般の方々からの御意見の募集を行って、いただいております。寄せられます意見を参考にしながら、今後、具体的な運用のあり方について考えてまいりたいと存じます。

阿部委員 十分慎重にお願いいたします。

 終わらせていただきます。

鴨下委員長 次回は、来る十日水曜日午前十時二十分理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時十五分散会


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