衆議院

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第9号 平成16年11月19日(金曜日)

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平成十六年十一月十九日(金曜日)

    午前九時三十二分開議

 出席委員

   委員長 鴨下 一郎君

   理事 大村 秀章君 理事 北川 知克君

   理事 長勢 甚遠君 理事 宮澤 洋一君

   理事 五島 正規君 理事 三井 辨雄君

   理事 山井 和則君 理事 福島  豊君

      青山  丘君    井上 信治君

      石崎  岳君    岡本 芳郎君

      上川 陽子君    小西  理君

      河野 太郎君    菅原 一秀君

      田中 和徳君    中西 一善君

      中山 泰秀君    萩生田光一君

      原田 令嗣君    原田 義昭君

      福井  照君    三ッ林隆志君

      御法川信英君    宮腰 光寛君

      森岡 正宏君    吉野 正芳君

      渡辺 具能君    石毛えい子君

      泉  健太君    内山  晃君

      大出  彰君    大島  敦君

      小林千代美君    小宮山泰子君

      城島 正光君    園田 康博君

      中根 康浩君    橋本 清仁君

      藤田 一枝君    水島 広子君

      横路 孝弘君    米澤  隆君

      古屋 範子君    桝屋 敬悟君

      山口 富男君    阿部 知子君

    …………………………………

   議員           鈴木 俊一君

   議員           長勢 甚遠君

   議員           福島  豊君

   議員           桝屋 敬悟君

   議員           泉  房穂君

   議員           橋本 清仁君

   厚生労働大臣       尾辻 秀久君

   厚生労働大臣政務官    森岡 正宏君

   政府参考人

   (法務省矯正局長)    横田 尤孝君

   政府参考人

   (法務省保護局長)    津田 賛平君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長)    塩田 幸雄君

   政府参考人

   (厚生労働省年金局長)  渡辺 芳樹君

   政府参考人

   (社会保険庁運営部長)  青柳 親房君

   厚生労働委員会専門員   榊原 志俊君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月十九日

 辞任         補欠選任

  上川 陽子君     萩生田光一君

  木村 義雄君     田中 和徳君

  福井  照君     岡本 芳郎君

  渡辺 具能君     原田 義昭君

  横路 孝弘君     大出  彰君

同日

 辞任         補欠選任

  岡本 芳郎君     福井  照君

  田中 和徳君     木村 義雄君

  萩生田光一君     上川 陽子君

  原田 義昭君     渡辺 具能君

  大出  彰君     横路 孝弘君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 特定障害者に対する特別障害給付金の支給に関する法律案(鈴木俊一君外三名提出、第百五十九回国会衆法第五八号)

 無年金障害者に対する障害福祉年金の支給に関する法律案(泉房穂君外二名提出、第百五十九回国会衆法第五二号)


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     ――――◇―――――

鴨下委員長 これより会議を開きます。

 第百五十九回国会、鈴木俊一君外三名提出、特定障害者に対する特別障害給付金の支給に関する法律案及び第百五十九回国会、泉房穂君外二名提出、無年金障害者に対する障害福祉年金の支給に関する法律案の両案を一括して議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、政府参考人として法務省矯正局長横田尤孝君、保護局長津田賛平君、厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長塩田幸雄君、年金局長渡辺芳樹君、社会保険庁運営部長青柳親房君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

鴨下委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

鴨下委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。園田康博君。

園田(康)委員 おはようございます。民主党の園田康博でございます。

 本日も、十七日に引き続きまして、与党から提案をされました特定障害者に対する特別障害給付金の支給に関する法律案並びに民主党提出の無年金障害者に対する障害福祉年金の支給に関する法律案の質問をさせていただきたいと思います。

 きょうは、前回の質問の際になかなか議論が煮詰まらなかったというところも、私個人も思っておりましたので、きょうは少し視点を変えまして、法律的な解釈並びに我が国の理念としての根本的な憲法の理念、その確認をしつつ、今後の議論を深めるために、ひとつ三十分を有効に使っていきたいというふうに思っておるところでございます。

 それでは、質問に移らせていただきたいと思いますが、その前に、先般、十月の二十八日に判決が出ました新潟地裁の判決につきまして、厚生労働省から控訴ということでなされたわけでございますが、それに関して少し質問をさせていただきたいと思います。

 もう一度確認でございますけれども、今回、控訴したということに関して大臣からの談話が出ているわけでございますけれども、その理由からすれば国の法的な責任を認めるわけにはいかないという状況が出てきたわけでございます。そして、学生が任意加入であったということで憲法十四条に明白に違反しているというその判決に対して、そのようなことは不合理とは言えない、当時の判断が不合理とは言えないというようなこともあったわけでございます。

 しかしながら、大臣のお気持ちも踏まえて、少し私、政治家として、我々やはり国民のさまざまな生活に対して責任を負っているということもありますので、今回の談話と同時に、大臣の政治家としてのいわゆる御判断というものもお聞かせをいただければなと思っておりますので、よろしくお願いを申し上げます。

尾辻国務大臣 まず、私どもの考え方を申し上げたいと思います。

 昭和三十六年の創設時から、学生とそれから配偶者については、任意なのか、強制加入なのかということはずっと議論が続きまして、そして、まず、三十六年創設時には、独自の保険料負担ができないということから、任意加入、任意適用としたところでございます。その後、六十年の改正のときに、配偶者については、女性の年金権を確立するという観点もございまして、強制適用の対象にいたしました。

 しかし一方、学生については、当時の議事録を見てみましても、強制適用の対象とするかどうかというのは随分議論がされております。そして、所得のない者に保険料納付義務を負わせるべきではなく、強制適用とした場合はその親に保険料を負担させる結果になる、あるいはまた、強制適用とした上で保険料を免除した場合、学生と同世代で稼得活動に従事し保険料を負担している者との公平を欠くことになる、そうしたような理由で、学生はそのときに従来どおり任意加入としました。その後、平成元年の改正で強制適用にした、もう御案内のとおりであります。

 こういう一連の流れがございますが、一挙に強制適用にしなかったからといって、その時々の政策判断が一概に不合理で、憲法第十四条の定める法のもとの平等に反すると言えるものではない、私どもはそう考えておりまして、今回、上級審の判断を仰ぐところでございます。

 そこで、今、政治家としてどう思うかという御質問もございましたが、今私は厚生労働大臣の立場でございますから、国の考え方を述べさせていただきたいと思いまして、以上のお答えをさせていただきました。

園田(康)委員 おっしゃるとおりだと思います。

 今は、国の立場といいますか政府の立場、厚生労働を所管する省のトップという形で、恐らくそういう答えではないかなという思いがしておったわけでございますけれども、ただ、先例、先例というものに対して、私は縛られるのはいかがなものかなという気がいたしているんですね。

 我々、議院内閣制をしいている、その大きな大きな一つの理念の中には、やはり政治家の中から、国権の最高機関である議員の中から大臣が選ばれるという状況があるわけでございます。

 恐らく、省の考え方とすれば、行政サイドの考え方からすれば、今までの先例を踏襲するというのが一番危険のないやり方であって、そうせざるを得ないというお立場は私も理解はいたします。しかし、それでは一歩も前に進んでいかない。先例の中の範囲でしか物事が判断できないということからすれば、我々政治家が、議員が内閣の中に入っていくということは、ある面、政治的な判断もこの中で行う必要があるんではないか、そういうものが期待された上でのこの議院内閣制ではないのかなという思いがずっと私もしているところでございます。

 さはさりとて、さまざまなお立場がありますので、これから、その内容について若干お伺いをしたいと思います。

 この大臣談話、発表されました大臣の談話の中に、「立法者の立法不作為等をめぐる最高裁判例に照らして」という談話が最初にありました。適当ではない、それに従って適当ではないということでありましたけれども、これは政府参考人の方で結構でございます、立法者の立法不作為等をめぐる最高裁判例というものはどういったものを引用されたのか、お聞かせをいただきたいと思います。

渡辺政府参考人 お答え申し上げます。

 大臣談話の中で今御指摘のくだりがあるわけでございますが、その際に念頭に置いております最高裁判例と申しますのは、一つは、昭和六十年十一月二十一日の最高裁の判決でございます。国会議員の立法活動は、立法内容が憲法の一義的な文言に違反するというような極めて例外的な場合でない限り、国家賠償の対象にならないというふうにした判決でございます。

 もう一つは、昭和五十七年七月七日の最高裁判決でございまして、社会保障立法について広範な立法裁量を認めた判決というものでございます。

 詳細につきましては省略いたしますが、そういうものに照らしまして、今回の地方裁判所の判決はこれらの判例に違背するのではないかという考えを持っておるところでございます。

園田(康)委員 そうしますと、この六十年の十一月二十一日の要旨からいいますと、国会議員の立法行為について、憲法の一義的な文言に違反しているにもかかわらずあえて当該立法を行うというごとき、例外的な場合でない限りという文言がございます。したがって、国会議員が立法者の立場で法律を定律するということに関しては、例外的な場合も十分この中に含まれていると私は理解をしているところでございまして、一線だけを引いて、何かこう先例の中だけの範囲で物事を判断してしまうというのはいかがなものかなという気がいたしております。

 そして、原則として、国会議員というものは、国民全体に対する関係で政治的な責任を我々はまず負っているというのがこの中で判断されているわけでございます。したがって、やはり国民生活に対して政治的な判断というものがこの中で十分あり得るものではないのかなという気がいたしているところでございます。

 そこで、もう一点、その場でお伺いをしたいんですが、これは、一九八三年、やはり在日外国人に対して出た判決がございます。その控訴審の際に上告をしなかったという判決があるわけでございますが、この件につきまして、詳細はどのようになっていましたでしょうか。お伺いをいたしたいと思います。

青柳政府参考人 ただいまお尋ねの件は、日本国籍を有しないことを理由として社会保険庁長官が行いました国民年金の老齢年金、これは基礎年金制度前でございますので旧制度の国民年金でございますが、この老齢年金の裁定請求の却下処分につきまして、その取り消しを求めて提訴された訴えでございました。

 高裁の判決では、この訴えに対しまして、国が認めておりました改正前の国民年金法の国籍要件規定そのものについては違憲ではない、合憲であるということをお認めになりましたが、この事案の原告の方は、既に長期間保険料を拠出し続けて、受給資格期間を満了していた方であったということ、あるいは法律改正によって昭和五十七年一月以降は国籍要件が撤廃されていたというような事情にあること、あるいは既に高齢であり他の保険制度等の利用が困難であること等、特別な事情が考慮されたというふうに私どもも判断をいたしまして、この高裁の判決の結論に従って上告を行わなかったということでございます。

園田(康)委員 そうしますと、今回の新潟あるいは東京地裁の判決に対しても、いわばこの八三年の金訴訟の判断からすれば、当時の制度の枠内では、恐らくこの金訴訟においても、同じ制度で踏襲していけば支払われる可能性はなかったわけですよね、法的な部分からいえば。すなわち、金訴訟においても、これは外国人であったわけですから、当時の制度の枠から外れていた。にもかかわらず、法的な部分で十四条の合憲が認められたということと、それから満額拠出をしていたという理由から、政治的な判断の中で国保の支払いを決定したという過程がここにも見えているのではないのかなと、私はこの訴訟を見て感じたわけでございます。

 したがって、今回のこの学生の無年金障害に対しても、現行の制度では、あるいは当時の制度の中では支払うことができない、あるいは法的な部分で、今回は法的な部分が認められなかったということで違憲という判断が出たわけですけれども、しかしながら、ここはやはりもう一度原点に返りますけれども、政治的な判断という形からすれば、この金訴訟でも既に事例は持ってきているわけなんです。

 すなわち、制度の枠を超えて政治的な判断を行ったということからすれば、今回のこの学生の無年金障害の方に対しても政治的な判断というものができないものであるのか、可能性としてできないものであるかということをもう一度お尋ねをしたいと思うんですが、いかがでしょうか。

青柳政府参考人 私の方から、金訴訟と今回の訴訟の違いの点についてだけ若干補足をさせていただきたいと存じます。

 金訴訟の場合には、先生もただいま御整理をいただきましたように、一つには憲法違反ということのありやなしや、これが大きな違いでございます。それからもう一点は、現実に金さんにおいては、長年にわたりまして、すなわち受給資格要件を満たすまでの長期間にわたって保険料を拠出したという結果があって、その上に当たっての判断ということでありますので、これは言ってみれば信義公平の原則に反するという観点からあえて行われた判断というふうに認識をしておりますので、その点が今回の場合とは違うというふうに私ども考えております。

園田(康)委員 後で、これはもう一度関連をさせて再度質問をしたいと思っているんです。

 確かにわかるんです、政府の方がそういう形で答弁されるのは。すなわち、この金訴訟の場合は、憲法違反ではないという形で認められたというのが大きな一点にはあると思うんです。そして、今回は十四条違反という形で、憲法違反というものが一方で出た。だから、ここの憲法違反を何とか法的な責任という形で認めたくない、認められないという政府のお立場はわかるんです。

 しかし、これは認めない、例えばこれは政府としては、この憲法違反ということに関しては立場としては認められないけれども、しかしながら、先例の中からやはり私たちは、どんどん社会的な情勢が変わってきているということからすれば、その先例を逸脱して、時には政治的な判断をしなければいけないということが私は出てくるんだと思っているんです、出てくるんだと。その例が前回はこの金訴訟で、仮に、拠出をきちっと行っていたということで何とか、対象外ではあったんだけれども、支給という政治的な判断がなされた。

 今回は確かに状況は違いますけれども、例えば憲法違反というものは、政府としてはこれは認められない、しかしながら、学生の福祉的な観念からいえば救済の余地ありということで、それを踏み出して、今回の学生の中で私は判断をしていただければなと、まずここでお願いということでさせていただきたいと思います。

 そして、まだまだ憲法論議、ほかにしたいものでございますので、次に移らせていただきたいと思います。

 今回の与党の皆様方から提出をされましたこの特定障害者に対する法律案、そして民主党が提案をさせていただきましたこの法律案、本当に長きにわたり与党の皆さん、そして民主党も含めて御努力をされてきた、そのことにまず敬意を表させていただきたいと思うわけでございます。

 同時に、やはり気持ちは与党の皆さんも民主党の皆さんも一緒だと思うんですね。そういった制度から外れてしまった方々に救いの手を差し伸べたい、救済をしていきたいというのが、やはり我々政治家が第一に考えてきた理念であったというふうに考えておるわけでございますが、残念ながら今回、前回も御説明がありましたけれども、与党の提案の中身には在日外国人が入っておりませんでした。

 そこで、前回、昭和五十七年の一月一日以前は対象外であったということの御説明であったんですけれども、ほかに何か対象外にした理由というのはございましたでしょうか。それも含めてお答えをいただきたいと思います。

鈴木(俊)議員 今回の与党案の法律において支給対象にした、その一つの線引きと申しますか、一つの考え方でございますので、昨日と繰り返しになりますけれども、もう一度お答えさせていただきたいと思います。

 私どもが対象といたしておりますのは、平成三年三月以前において任意加入であった学生、それから昭和六十一年三月以前において任意加入であった被用者の配偶者、この方々を特別障害給付金の支給の対象としているところでございます。

 これらの方々は、先生も今御指摘がございましたけれども、国民年金発足当時からこの制度の対象でございましたが、ただ、任意加入の対象であって、後に、現在、強制加入の対象に変わっている、こういう経過の中で、任意加入か強制加入かという加入形態の違いによって結果として障害基礎年金等を受給していない、そういう特別な事情が生じた方々でございます。

 先生御指摘の在日外国人の方々でございますが、この方々は、そもそも昭和五十七年一月前は国民年金制度の対象の外にあった方々でありまして、先ほど申し上げました学生や配偶者の方々とは事情が大きく異なる、そういうふうに思っております。

 しかし、一方におきまして、日本国籍を有していない、そういうために障害基礎年金の受給権を有していない障害者の方々がいろいろ御苦労をなされているということも事実であるわけでありまして、こうした方々に対する福祉的措置につきましては、国民年金制度の発展過程において生じた特別な事情を踏まえて、各種施策との整合性等に十分留意をしつつも、今後検討を行う必要がある、そのように考えております。

園田(康)委員 その理由は大変よくわかるところでございますけれども、でしたら、これは政府の方にお伺いをしたいと思うんですが、当時、国民年金法の中から外国人を対象外とした、その根本的な理由は何だったんでしょうか。

渡辺政府参考人 お答え申し上げます。

 昭和五十六年改正前、昭和三十六年にスタートした国民年金制度そのものが、在日の外国人を対象としておりませんでした。その理由は、当時、日本国民に対して年金の保障をするということが急務であるという要請の中で、国民を対象に設けられたということがまず基本でございます。

 そのことは、当時の文書等でいいますと、在日外国人の方々の生活擁護の責任というものは、どこの政府が第一義的にこれを負っているのかという点につきまして、日本国政府が当然に責任を負う立場にはないという考え方で整理されていたということでございます。

 さらに、在日外国人と申しましても、もちろんさまざまなパターンがあるわけでございますので、外国人の方につきましては、日本在住期間が必ずしも安定していない方もいらっしゃる、長期にわたる拠出とそれに伴う給付という国民年金の制度になじみにくいというふうに考えられたものと理解をしております。

園田(康)委員 そうしますと、当時の話においては、確かにまだ制度が安定的でないという部分、それから日本国政府が責任を第一義的には負わなくてもよいということの理由であるならば、今現時点においては、恐らく外国人の方々、もう大分生活も安定されてきている、同時にそれをきちっと把握している、違法に入国をしているというところはまたちょっと別の論点がありますけれども、ただし、もう既に何十年も実績、日本の社会の中で私たちと同じような形で生活をしておられるということからすれば、流れがやはりどんどん変わってきているというのも一つ私は挙げられていくのではないのかなと思うのと同時に、アメリカやイギリス、フランスあるいはイタリア、ドイツ、西ドイツでありますけれども、ここにおいては、一時金をきちっと年金に関しても支給をしているという事例があるんですね、外国人に関しては。同時に、外国人の受給権というものをもう既に認められてきているという世界の流れというものが、潮流としてこの中で出てきているわけなんです。

 そうすれば、我が国においても、この外国人の国籍要件というものをもって、もう既に撤廃をされているということからすれば、もう一つ踏み込んで外国人の方々にも、この支給対象ということが可能性として出てきたのではないか、出てくるのではないかというふうに考えるんですが、その点はいかがでしょうか。

渡辺政府参考人 先ほど、国民年金法ができたときの当時の判断経緯ということについて申し上げましたけれども、その後、先生御指摘のとおり、今は内外人無差別で適用しておるわけでございます。

 なぜそうなったのかということがポイントであると思うわけでございますが、昭和五十七年一月からの国民年金制度の外国人適用拡大ということの原因は、昭和五十五年ごろにインドシナ難民が大量に生じたということなどで、そうした国際情勢を背景として、制度横断的に対応するということが行われました。その一環として、この国民年金法の改正が行われたわけでございます。

 具体的には、難民条約の批准を我が国として迫られていた、そういう要請が強かった、その中で、難民の方の内国民待遇を実現するという政策判断をする際に、同時に、他の在日外国人とのバランスを失することのないように、将来に向けて国民年金の国籍要件を撤廃する、こういう政策判断がなされたものというふうに承知しております。

園田(康)委員 そうですね。政策判断というものがこの中で出てきたわけでございます。

 したがって、この先、我々としては、何とかして政治的な、法的な解釈はさらに私も行っていきたいと思うんですけれども、政策判断というものの中で、やはり一歩踏み出して私は決断をしていただければなと思っているところでございます。

 そこで、その根本的な、少し法的な議論をしたいんですが、あと残り五分ということでございますけれども、まず、社会保障一般に関する立法者の政策判断として、昭和五十七年の七月七日の堀木訴訟というものがございます。それに関して、立法府の広い裁量というものを社会保障に向けて述べられているわけでございますけれども、そもそもこの憲法二十五条の本質、生存権の本質というものをどのようにお考えになっていらっしゃいますでしょうか。

渡辺政府参考人 憲法二十五条に規定いたします生存権につきましては、御指摘のとおり、その法的な権利性について、学説的にも諸説あるというふうには承知しております。

 大きく申しますと、プログラム規定にすぎないので、個々の国民に対して具体的権利を保障したものではないという解釈をする立場、それから、抽象的な権利説、こう言われますけれども、立法その他の必要な措置を講ずることを要求する抽象的権利を国民がこの条項に基づいて有するという考え方を持ち、訴訟によって個別の権利も確保され得るというお立場に立つ方々もいらっしゃいます。政府あるいは厚生労働省として、それら特定の学説のどれがいいかという立場にはないわけでございます。

 特定の学説を採用して施策を進めているというものではございませんが、憲法二十五条の規定の趣旨を踏まえて、各般の社会保障の充実に努めるということが責務であると思っておりますし、今日までの二十五条をめぐるさまざまな最高裁の判例というものを十分に尊重してまいりたいというふうに考えております。

園田(康)委員 そうしますと、今、最後に述べていただきました最高裁の判例ということからすれば、どうしてもプログラム規定説というものを踏襲せざるを得ないというのがお立場だというふうに判断してしまうんですけれども、それでよろしいでしょうか。

渡辺政府参考人 学説のどれに当てはまるかという立場を持っておりませんで、最高裁判例というものを尊重してまいりたいということでございます。

園田(康)委員 はい、わかりました。

 そうすると、我々、我々といいますか、学説からの立場から申し上げますと、いわば堀木訴訟においても、それから朝日訴訟においても、最高裁は、どうしてもプログラム規定説の範囲内で、そういうふうに判決文には書いておりませんけれども、それを引用して、採用して判断をなされているというふうに考えているわけでございます。

 そうしますと、プログラム規定説というのは、御承知のように、政治的な権利として二十五条の生存権を本質としてとらえているんですね。すなわち、ほかの条項と比べると、ほかの条項は、法的な権利として一つ一つ個別的な権利を国民に、あるいは広く自然人に対して認めているという状況があるわけでございますけれども、そうしますと、政治的な権利として二十五条をとらえるというふうにしか私には聞こえないんですね。

 したがって、与党の皆さんも、それから民主党の皆さんも、我々政治家がもし二十五条の生存権の本質ということを解釈していくということであるならば、ぜひ私は、抽象的権利、すなわち法的な権利としてこの二十五条の本質をとらえていただきたいと思うんですが、与党の皆さん、いかがでしょうか。

長勢議員 大変難しい御議論をなさるので、憲法論としての議論に正確にはお答えできないかもしれませんが、いずれにしても、憲法の規定あるいは最高裁の判例というものを遵守しなきゃならないことは当然のことでありますし、我々としても政治家として、長年、年金制度の過程において無年金のままに置いてあられる障害者をいかにするかということを考えてきて、その他のいろいろな均衡等も考えて、今回の提案をさせていただいているところでございます。

園田(康)委員 わかります。したがって、これから一緒にこの中身については協議をさせていただければな、この法律が通った後に、外国人をどうするのかということを法的な中から解釈をして、そして幅広く人権を守るという立場から、我々も一緒に行動をしていきたいというふうに考えておりますので、よろしくお願いをしたいと思います。

 質疑の時間が終了ということでございますので、最後に、外国人の人権について、もう一つマクリーン事件というのがあったわけでございます。したがって、今、地方参政権を外国人に対して認めていこうではないかという動きが一方であるわけでございますので、であるならば、この地方参政権を認めるということで一歩踏み出していこうというのが、今の判例解釈の中から生まれてきた動きではないのかなという気が私はいたしております。

 したがって、この外国人の年金制度の適用に関しても、ぜひ私は、政府も、それから我々は、当然判例の範囲内で考えるということではなくて、時には政治的な政策判断を行って、幅広く国民の将来に向けて人権擁護、そして生活安定というものに寄与していきたいというふうに思っておりますので、どうかその点をよろしくお願い申し上げまして、私の質問を終わらせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

鴨下委員長 次に、中根康浩君。

中根委員 おはようございます。民主党の中根康浩でございます。

 きょうは、無年金障害者の問題について質問をさせていただきますが、まず、与野党の立法者の皆さん、提案者の皆さんに、この間の御苦労に対しまして、心からの敬意を表する次第でございます。

 こういった議論を通じて、よりよい制度、今まで法の、あるいは制度の谷間の中で苦しんでこられた方々にきちんとした政治の光を当てていく、まさに国会としての本分の仕事がきちんと行われる、そういったことを願いながら質問をさせていただきたいと思います。

 まず初めに、こんなことを少しエピソードとしてお話をしたいと思います。

 登場人物は、仮にキヨシ君というふうにいたします。そして、その学校の担任の先生の保田先生という方が出てまいります。キヨシ君は軽度の発達障害児です。日常語は話せますけれども、書くことは苦手で、小学校五年生になった今でも、自分の名前を平仮名でどうにか書ける程度であります。計算は苦手です。専門医の先生は、キヨシ君を単純系と診断しました。発達の困難以外にはこれといってとりたてる病気もなく、言ってみれば、赤ちゃんがそのまま十歳になってしまったという感じであります。

 キヨシ君の担任の保田先生が感心をしたことがあったそうです。生徒たちに、人間がほかの生き物と違う点は何かと質問をしました。生徒たちは口々に、人間だけが二本足で歩きます、人間だけが言葉を使います、人間だけが火を発明し、火を使うことができます、人間だけが本を読みます、生徒たちは人間の長所をこんなふうにずっと挙げていきました。

 答えが一通り出そろったと見計らったとき、先生はさらに答えを促し、こういうふうに言いました。どれも正しい、しかし、もっと大事なことがあるぞ、もう一度よく考えてみようよ。子供たちは、さらにいろいろ発言しました。人間だけがお金を使います、人間だけが時計を持っています、電話を使います、はしで食事をします、鏡を見てお化粧をします。

 保田先生は、キヨシ君が黙っていることに気がついて、キヨシ君、何か意見はないかなというふうに指名しました。キヨシ君、人間がほかの生き物と違う点は何だと思う、キヨシ君は、さっと立ち上がって答えました。人間だけが便所の中でうんこをします。

 教室の子供たちは、みんな爆笑しました。しかし、保田先生ははっとしました。自分が、保田先生がこれから話そうと思っていたことを、キヨシ君は、発達障害のあるキヨシ君はちゃんと言い当てていた。

 保田先生は、子供たちの笑いを制して、こう話しました。キヨシ君の言うとおりだ、人間だけがなぜ人の見ていないところでうんこをするのか、それは人間だけが恥を知っているからだ、恥を知る、これが人間の最大の特徴である。人前でうんこをすることだけが恥ずかしいのではない、人をだます、弱い者をいじめる、目の前に困っている人がいるのに見て見ぬふりをする、自分だけが得をすればよいと思う、そういうのは人間として恥ずかしいことなのだと保田先生は言いました。キヨシ君は、電車の中でおじいちゃんやおばあちゃんに席を譲らないのも恥ずかしいことね、先生、そう言いました、というエピソードであります。何が言いたいかということは、もう既にお察しのことだと思います。

 この無年金障害の法案につきましては、既に我が党からも三井先生あるいは小林議員、そしてまたきょうも、さっきの園田さん、それからこの後の大島先生、内山先生、石毛先生と、そうそうたるメンバーが恐らく鋭く切り込んでいくものと思いますものですから、私は大体が難しいことは言えませんものですから、こんなキヨシ君の話を引きながら、そして、先日、小林千代美議員が再三にわたって指摘しておられた、いわゆる立法者の思い、政治家としての判断、今も園田さんも言っておられましたよね、政治的な判断、こういったことを中心にお尋ねをしていきたいと思います。

 先ほど引用いたしましたキヨシ君の話、保田先生の言葉は、まさに今私たち政治に携わる者がかみしめなければならない。もう一度申し上げますが、目の前に困っている人がいるのに見て見ぬふりをする、そういうのは人間として恥ずかしいことなのだ、こういったことをいつも念頭に置きながら、行政も立法府も日々仕事をしていきたいものだというふうに思います。

 そういった意味では、この無年金障害者の問題、まさに政治として取り組むのにふさわしい、そして、この問題に対してどういう見識を持つかということが、政治家一人一人が試されるまさに試金石であるというふうに思わせていただいております。

 先日の十一月十七日の質疑におきまして、与党案による特別障害給付金というものは福祉的措置であり、福祉の増進であるという説明がされております。小林議員が指摘したように、ならば、なぜすべての無年金障害者を対象としないのか、なぜ依然として差別をして切り捨てようとしているのか。年金ではないとおっしゃるわけですから、拠出であるとか何とかという理屈は関係ないということになるわけでありますので、福祉というならば、すべての対象者を救ってあげる、そういうお考えはどうして与党の皆さんはとってもらえなかったのか。

 これは、今も園田さんが指摘されたことですけれども、三月の東京地裁判決、十月の新潟地裁判決、法のもとの平等を定めた憲法十四条違反と断罪をされたわけであります。法のもとの平等を実現するには、ほかの国民と同じように年金制度で救済をするということが求められているのではないか。私は、憲法の専門家でもありませんし、法律の専門家でもない、何でもありません。だけれども、率直にそういうふうに感じさせていただく。裁判に訴えた方もそういう思いではないか、あるいはそのことに報道で触れた多くの国民も同じような思いではないか、そんなふうに思わせていただいています。そして、そのことを実現することが、我々国会で働かせていただく者の果たすべき責務ではないかというふうに思っています。

 自公案、与党案では、相変わらず法のもとに不平等という事態が残されてしまうということにならないか。今、園田さんが質問をいたしましたけれども、改めてお答えをいただければありがたいと思います。

鈴木(俊)議員 ただいま先生からキヨシ君と保田先生のお話を聞いて、困っている方々に手を差し伸べなければいけない、それは我々政治家として当然のことであると思いますし、今回のこの法律によって、今まで障害を持ちながら無年金であった方々に対して、将来にわたって一定の給付がなされるということは、そういう意味では一つの前進であるのではないか、そのように思っているところでございます。

 今回の法律案でございますけれども、先ほど園田先生の御質問にもお答えをしたところでございますけれども、今回の給付の対象としておりますのは、国民年金制度発足時から制度の対象とされていたものの、任意加入とかあるいは強制加入というような加入形態の違いによって、結果として障害基礎年金等を受給していないという特別な事情が生じた方々を対象として、特別障害給付金を支給するものでございまして、これに対して、在日外国人の方あるいは在外邦人の方は、いずれも、そもそも制度の対象でいらっしゃらなかったという点において事情が異なることから、支給対象としていないものであります。

 当時、国民年金法の適用除外とされた方々が加入したくても加入できなかったという事情は確かにございまして、不平等であるという御指摘はあろうかとは思いますが、今回の特別障害給付金の趣旨に照らせば、このような方々まで直ちに支給対象者の範囲を広げられないことはやむを得ないと思っているところであります。

 しかし、見直し規定も置いておることでございますので、今後、他制度との整合性と申しますか、そういうものを見ながら検討すべきものである、そのように考えております。

中根委員 依然として、与党案においては不平等が解消されないということでありますけれども、幸いにして、民主党がそれにまさるいい案を用意しておりますものですから、午後の採決でこちらの方が当然のごとく可決をされるというふうに思っておりますので、その辺は安心をさせていただいております。

 その民主党案についても若干質問をさせていただきますが、民主党案は、年金制度を準用している部分がかなりあるわけなんですが、しかしながら、年金制度ではないわけなんですね。

 推測なんですけれども、先ほど申し上げましたように、ほかの国民と同じように、隣のうちに住んでいる方と一緒、障害のない人と一緒、同じように年金制度に取り込んでもらう、含めてもらう、そのことが私たちの願いですよというふうにおっしゃっておられるような気がいたしますけれども、今回、民主党案でも財源は国庫で保険料ではないという、そのあたりのところを御説明いただきたいと思います。

橋本(清)議員 民主党案が年金保険料ではなく国庫を財源としていることの理由につきまして、お答えを申し上げます。

 民主党は、障害基礎年金の受給要件及び受給する額につきましては現行の年金制度に準ずるものという点で、年金的要素を持っていると申し上げました。しかし、財源を年金保険料に求めない点におきましては、福祉的要素を含むものでもございます。

 現行の年金制度は、拠出制の保険制度となっております。今回の救済対象であられます方々は、制度的欠陥により結果的に無拠出になってしまった方であり、そして年金制度の原則から外れていることになります。現在の制度を維持しつつ救済を行うためには、こういった拠出に基づく年金保険料を充てずに、財源を全額国庫負担とさせていただくことが適切であると考えております。

中根委員 ありがとうございます。

 十七日の質疑、小林議員とのやりとりの中で、そのときの答弁者の福島先生が、まずはコンセンサスを得られたところから実行するのである、実は与党の中でもすべてにコンセンサスが得られたわけではないというふうに御答弁をされておられました。

 与党の提案者の皆さんにお尋ねをいたしますけれども、与党内でどのように意見が分かれていたのか、どの党が、だれがどのような主張をされておられたのか、お差し支えない可能な範囲でお教えをいただければありがたいと思います。

桝屋議員 まずは、先日のこの委員会の審議で、私、ちょっとどうしても出席できませんでしたので、まずおわびを申し上げたいと思いますが、我が党の福島委員が、コンセンサスが得られたところから、こういう答弁をしたというふうに私も伺っておりまして、今中根先生の方から、だれがどうであったのかということを差し支えない範囲でということでございました。

 コンセンサスが得られていないということはそのとおりでありまして、どの党が、今与党は二党ございますが、どちらがどういうふうに言っているかということ、必ずしもそうではなくて与党全体の中で、きょう朝からずっと議論をされております。

 もともと、この議論のスタートは、私どもの党の坂口さんが試案を発表されて、どうしても四つの穴があいているね、ここをどうしようかということで議論をスタートいたしまして、きょう朝から議論がありますように、年金制度の持っている、年金の根幹にかかわる問題、外国人の扱いであったり、あるいは加入はされているけれども未納である、したがって無年金になっているという方々、そうした方々をも含めて、先ほどの中根先生のお話ではありませんが、ほっておけない、何とかしなきゃという議論があったのは、与党の中の各党同じ思いであります。

 そうはいいながら、やはり制度を、他の方もいらっしゃるわけで影響もありますから、どこまでできるのかということをぎりぎり議論して、全体としてコンセンサスが、これだったら理解いただけるだろうということでまとまったということでございまして、まとまった分については一日も早く法案として成立をしたい、こんな思いでございます。

中根委員 ありがとうございます。

 例えば、地方参政権の問題におきましても、公明党さんは積極的で自民党さんはそうでもないというようなことも伺っております。この無年金のことでも同じようなことがあったのかもしれないなというふうに思わせていただくならば、今の自民党と公明党の連立のあり方、こういったところから、まさに生活者の感覚から見直していって、私どもと協力し合った方がよりよい国がつくれるんじゃないかというふうに、まさにこの無年金障害者の問題がきっかけとなって連立が組みかえが行われたということになれば、国民は大喝采ということになるんじゃないかなというふうに思うわけなんですが、これは荒唐無稽な話ということなんでしょうか。

 御答弁いただけるんですか、ありがとうございます。

桝屋議員 そこまで言われますと、もう一言申し上げたいわけであります。

 このコンセンサスを得るために議論する中で、誤解がないように申し上げておきますと、我が党の中でも意見が大きく分かれました。そして、今、公明党対自民党という御意見でございましたが、自民党の中にも、坂口試案、あのとおりやろうではないかと強く主張される先生ももちろんあったわけでありますし、恐らくこれは民主党の中でも、議論をすると、まあ今回はおまとめになりましたけれども、私は、まとめるに当たってもさまざまな御意見があったのはほとんど同じじゃないかというふうに思わせていただいております。

中根委員 御丁寧な、踏み込んだ御説明をいただきまして、ありがとうございました。

 自民党も公明党もやはり政治家の集まりですので、最終的には良心を信じたいというふうに思っておりますが、なかなか良心を信じ切れない人たちが実はいらっしゃる。政府の中にいらっしゃるんですね。

 障害者を差別して見下している人が、少なくとも去年まではいました。国民年金掛金を払っていない人たちを妖怪扱いしていた人たちがいたのは確かであります。払っていない人にはいろいろな事情があって、制度の欠陥もあった、政治やあるいは行政に怠慢もあった、そういったことをすべて棚に上げて差別をしている。これが、いつでしたか、通常国会の年金審議でも使わせていただきました、またここで使うことになるとは実は思っていませんでしたけれども、これなんですね。

 岐阜の社会保険事務局が作成したこのチラシ。無年金障害者の方は「セビるマン」というふうになっているんですね、これはデビルマンのパロディーですけれども。「ケガで働けなくなり、暮らしに困って友人や親戚にお金をセビってばかりいる妖怪。障害基礎年金のことを知らなかったんだね。」なんて言っていますよね。それから、二十五年ルールで無年金になっちゃった人、「年金は二十五年以上納めなければもらえないことを知らず、年数が足りないのに無理やりもらおうとしている妖怪。」は「無理カベ」ですって。それから、「年をとって働けなくなったというのに、年金に加入してなかったので収入はゼロ。毎日ワンワン泣いてばかりの高齢妖怪。」、「大泣きジジイ」というそうでありますけれども。こういう発想は、すばらしいといいますか、何というか驚愕をする、まさに驚天動地というような感じがいたします。

 これは、坂口大臣にはごらんをいただきました。尾辻大臣にもこれをぜひ、コピーで申しわけありませんが、贈呈いたしますので、ごらんいただければと思います。これについては、もう御答弁は必要ありません。尾辻大臣のような本当に御理解の深い大臣であれば、当然その御答弁も拝察することができるわけでありますので。

 多少の間違いにしても、何かそういったこと、その感覚が、恐らく、前も僕は言いましたけれども、日常的にその社会保険事務局の中で、ああ、デビルマンが来たぞとか、何かそういったことについて電話とかあるいは問い合わせがあったりしたときに、その職員の中で「無理カベ」からの電話だぞとか、デビルマンからの問い合わせだよなんて言ってやりとりをしていたからそういうことになったんじゃないかなというふうに思うわけなんですよね。

 そのとき調べたら、外注してつくったわけじゃないんです。職員がつくったんです、しかも保険料で。そして、そのことがけしからぬということを指摘されて謝罪広告を出したときも、保険料を使っている。保険料を使っているということで、またその話の方に行っちゃうんですけれども、そういったことがあるということもまた指摘をしておかなきゃいけない。

 まさに国民を侮辱し、差別している。差別というのは、人間として尊厳を傷つけ、人を不幸に陥れる実は最も卑劣な行為だと思わせていただいております。人間であるということだけで、それだけで、だれもがひとしく幸福を追求できることが当たり前の社会でなければならない、自分らしく安心して生きていくためには、差別というものをこの地球上からすべて排除していかなきゃいけない、そんなふうに思って、この無年金障害者の問題に取り組ませていただいておるところでございます。

 今審議しているこの法案、与党案では百三十億、野党案では百七十億必要だということであります。福祉的措置といいながら新たな切り捨てを行おうとしている与党の皆さんに申し上げたいんですけれども、例えば、平成十四年度に支払われた議員年金というものがありますね。これは約二十九億円。うち議員からの掛金分はわずか九億円、国庫から二十億円、国庫負担率は七〇%にも及んで、国民から怒りを買っている制度であります。議員年金はそのまま温存したままで、困っているこの無年金障害者の方々に冷たいというのは説明がつかないとお思いになりませんでしょうか。

 厚労省や社保庁は、保険料を湯水のごとく垂れ流していて、本当に困っている人や制度、法の谷間に追いやられている人に手を差し伸べようとしない。

 また、くどいようでありますけれども、少し繰り返します。パピアート二十三億円、金銭登録機四億五千万円、社会保険事務局家賃二十一億円、共同事務センター十五億円、レセプト点検センターの家賃十五億円、グリーンピア三千七百八十億円、十年間の全社連の海外視察五億二千万円、財革法による年金事務費、九八年から〇四年までの六年間で六千三百四十億円、社会保険庁のオンラインに九千三百十一億円、今からどんどん挙げていけば切りがない。この中には、豪華な宿舎あるいは公用車、職員の方々の健康診断料、社会保険大学校のゴルフボール、それからマッサージ器、こういったものもすべて含まれているわけなんですね。

 こういう好き勝手なことにはさんざん、厚生年金法七十九条や国民年金法七十四条、こういった何でも福祉法と言われているもの、あるいはピンはね法と言われている財革法を盾にとってむだ遣い、流用しているのに、なぜ国民の暮らしのために、特に、不運にも置き去りにされてしまっている無年金障害者の方については、財源論ばかりを盾にとって、十分な予算が確保できないからとか、いろいろな理由でこじつけて百三十億円という枠の中に無理やり押し込めようとしている。このあたりのところがどうしても納得できない。

 与党案は福祉的措置というわけでありますので、まさにこういうむだな施設や印刷物をつくるよりも、言ってみれば、例えば、七十九条、七十四条、施設をすることができるという条文を使って年金制度の中に取り込んでいく、そういう発想はなかったものかどうか、お尋ねをしたいと思います。

長勢議員 御質問の御趣旨は、年金法七十九条の規定を使って、その範囲で特別給付金の財源にしたらどうかという御提案といいますか、御意見というか、御質問だろうと思います。

 福祉施設の問題については、前国会でもさんざん御議論があったところであり、政府・与党においても、きちんとした見直しをするという方針をとって、今粛々と進めておるところでございます。

 しかし、今の御提案、御意見につきましては、福祉施設の考え方は、拠出制の年金そのもの、つまり個人に対する給付とは別途の意味で構成されておる制度だと思いますので、保険料の拠出を行っていない方々にこの制度を使ってやるということについては、趣旨とは違うんではないかと思っております。

中根委員 保険料と関係ないところにいっぱいお金が使われているということなんですけれども、今の御意見、これは、まともに答えるような質問じゃないというふうに恐らく長勢先生あたりの大物だと思われておられるでしょうから、その程度の御答弁でいいんですけれども。確かに、年金制度ということでいえば、まだ四百五十兆円も不足をしている過去債務があるということですので、年金本体で取り込んでいくというのは難しいことかもしれませんけれども、それはそれとして。

 次に、与野党ともにお尋ねをいたしますけれども、五分前というのが出て、もうあと三分ぐらいだと思いますので、今からまとめていきます。

 それぞれの案で、まだまだ障害者雇用が促進されていない中で、当事者の方々の安心と自立に寄与する額となっているかどうか。あるいは、違憲判決のことについては先ほどお尋ねしましたので、これは飛ばします。

 それと、与党の方の皆さんにこれはお尋ねしたいんですけれども、対象者数を何人としているか。そして、その前提としている数字にどの程度の信頼性、信憑性を我々は置くことができるか。もしも、その数より対象者が現実には少ないということになれば、財源論はさらに乗り越えやすくなります。例えば、与党の百三十億円という枠内でも、対象者数が少なければ、六割給付ではなくてそれを七割給付にすることができるかもしれない。とりわけ、情報が民主党に比べて入手しやすい与党の皆さんは、正確な対象者数の把握にお努めをいただかなければならないと思っていますけれども、この対象者数、正確に、我々が信頼するに値するものとしてとらえてよろしいのでしょうか。

 先ほどの与野党共通の質問と、今の最後に申し上げました与党の皆さんにお尋ねをするということ、御答弁をいただければと思います。

鈴木(俊)議員 私からは、この法案の前提となっております人数についてお答えをさせていただきたいと思います。

 与党案におきましては、平成八年に行いました身体障害者実態調査に基づく推計を踏まえまして、坂口前大臣の試案にも示されているとおり、平成三年四月の学生に対する強制適用前に国民年金に任意加入せず、その期間中に障害事故の発生した二十以上の学生が約四千人、それから昭和六十一年四月の第三号被保険者制度創設前に国民年金に任意加入せずに、その期間中に障害事故の発生した被用者の配偶者が約二万人程度ではないかと想定をしております。

 これは、先ほど申し上げましたとおり、平成八年に行った身体障害者実態調査に基づくものでございますが、この実態調査は、こうした調査にいたしましては最も広範な実態調査である、そのように承知をしておりまして、このような数字を把握しているところでございます。

中根委員 今の数字のことについて、民主党にもお尋ねしたいと思います。

泉(房)議員 無年金障害者の人数につきまして御答弁申し上げます。

 今答弁がありましたが、平成八年のサンプル調査をもとに今回の坂口試案はできております。また、与党案もそれを前提としております。今の答弁がありましたが、そのときのサンプル調査の人数は、学生については、調査の結果、二人ということでした。そこから四千という数字がはじき出されています。主婦につきましては十四人でありました。そこから二万人がはじき出されています。また、在日外国人は三人でありました。そこから五千人という数字がはじき出されています。

 その坂口試案の後、再度調査をしまして、平成十三年、同様の調査をしております。学生の数は、二人だったものがゼロでした。ゼロでは掛けてもゼロなので、十三年が使えないということで、いまだ八年の数字を使っているのが実態であります。また、主婦につきましては、十四人が七人に減っております。在日外国人につきましても、三人が一人に減っております。すべて十三年の方が数値が減っているわけであります。

 この件につきましては、当事者団体、支援団体などなどから、また調査室、国会図書館などを使いまして随分調査をしましたが、正確な数字は把握できておりません。しかしながら、一般的にその六割から七割程度であろうと推測されますので、民主党案では坂口試案に七割を掛けまして試算いたしております。

 したがいまして、今回の与党案におきまして、在日外国人を入れたといたしましても、支給額は〇・六であります。したがいまして、計算上は、私ども民主党案の試算の百七十億の〇・六、すなわち百二億にて、十分在日外国人に対しても六割支給ができると考えております。

 以上です。

中根委員 最後に、今それぞれの党から御答弁をいただきましたことについては、非常に重要な問題であると思っております。いたずらに水増しをして、いたずらな無用な財源論を振りかざして対象者を狭くする、給付額も低く抑える、こういったことだけはやめていただきたい。

 そのことだけを申し上げまして、若干まだ御答弁いただかなければいけないこともありますけれども、時間がありますし、そして、お忙しい中、答弁のためにお越しいただいた職員さんもたくさんいらっしゃいますけれども、ありがとうございました、申しわけありませんでした。

 以上で終わらせていただきます。失礼いたしました。

鴨下委員長 次に、大島敦君。

大島(敦)委員 それでは、今回の無年金障害者の法案並びに関連事項について質問をさせていただきます。

 特定障害者に対する特別障害給付金の支給に関する法律案について、何点か確認をさせてください。

 同法案の第二条で、「国民年金法の規定による障害基礎年金その他障害を支給事由とする政令で定める給付」について、具体的にどんなものか説明をお願いいたします。

桝屋議員 今大島委員からのお尋ねは、第二条の「国民年金法の規定による障害基礎年金その他障害を支給事由とする政令で定める給付を受ける権利を有していないもの」、この内容は何か、こういうお尋ねであろうと思います。

 特別障害給付金、今回の制度は、先ほどから議論が出ておりますように、年金制度の発展過程において生じた特別な事由に対応する、こういうことでありまして、特例的に福祉的な措置を行う、こういうことでございますが、この第二条、「政令で定める」というのは、六十年改正前の国民年金法による障害年金、それから昭和六十年改正前の厚生年金保険法による障害年金等を受ける権利を有していないということ等ではないか、こう考えております。

 権利を有している人に給付金を支給するということは、当然ながら二重の保障を行うということになるわけであります。いずれにしても、政令で定める内容については、本法律案の趣旨を踏まえて、政府において適切に検討していただきたい、こう考えております。

大島(敦)委員 今回の法案の中で規定されております特別障害給付金は、今御説明いただきました給付の中に含まれておりますでしょうか。

桝屋議員 今、大島委員お尋ねのは特障のお話でございますか。今、私、第二条の考え方を申し上げましたけれども、特別障害者手当いわゆる特障手当と言われているものでありますが、この特別障害者手当につきましては、御案内のとおり障害者の中でもとりわけ、前の福祉手当の制度もありましたけれども、それ以上の重度、重複を有する方々に対して精神的、物質的な特別の負担、この軽減のために一助として支給をするというものでありまして、障害基礎年金との併給が可能であるということでありまして、特別障害者手当については二重の重複支給ということではない、整理がされております。

 そういう意味では、したがって、今回の特別障害給付金は、いわば障害基礎年金を補完する性格を有するということでありますから、特別障害給付金を受給する方が特別障害者手当を受給するということは可能ではないかと考えております。

大島(敦)委員 続きまして、併合調整について具体的に伺いたいんですけれども、例えば、今回対象となります未加入期間中に事故等で片腕を切断されて、その後、もう一本の腕を事故で――次の事例というのは、一番最初、未加入期間、今回の未加入期間に腕を一本切断してしまいましたから、今までは障害年金は出ていないわけです。その後、それじゃ困るなと、それで国民年金に加入をされて、国民年金の加入期間中にもう一本の腕をもしも切断したとして、もう一本切断された場合ですから、一本と考えれば二級だと思うんです、二本と考えれば一級なんですけれども、その場合、一級の障害年金が出るのか、二級のままであるのか、その点についてお答えいただければ幸いでございます。

桝屋議員 ここへ来るまでに考えながら来ておりますが、もう一回確認しますと、今のお尋ねは、まずは未加入の障害がある、これが片腕、それから、もう一回ちゃんと年金の加入中に、納付要件を満たした状態で障害が発生した、初診日にということですね。そういう方については、両方二級二級というケースですか。

 そこはちょっと個別認定の話になりますから、なかなか難しいと思いますが、考え方は、今回の特別障害給付金が今の基礎年金との重複を当然ながらこれは避けるということでありますから、障害年金が給付されている方に重ねて今回の特別給付金をお出しするということはないものだろう、こう思っております。

 ただ、障害の認定が、国民年金の本体部分の年金が何級になるのかというのは、まさにちょっと障害の程度によるんじゃないか、こう思っておるんですが、もうちょっと頭を整理したいと思っております。

大島(敦)委員 恐らくこの場合は、要は、未加入期間中の障害で、その後もう一本の腕を落とした場合、二つ、両腕切断した場合には一級の障害の対象になると私は理解をしておりまして、その場合に、改めて、要は国民年金の加入期間中にもう一本の腕を切断した場合には、過去において、未加入期間中の障害においても合わせて一級という理解でよろしいのかどうか、もう一度お答えください。

桝屋議員 事務方に答えていただいた方が、認定作業でありますからいいかなと思ったりするんですが、考え方としては、国民年金の本体部分の裁定請求をされたときに、既にその方は前の障害とそれから後の障害、両方の障害をお持ちでありますね。したがって、裁定請求の障害の程度というのは当然その両方を合わせた障害と認定されるのではなかろうかと私は思っているんですが、なお、今私の頭の中で、例えば上肢切断のようなケースはそういう整理ができるんだろうと思いますが、例えば疾病等で、初診日で考えて、若干悩むケースがあるのではないかというのは、ちょっと私、今自信を持って答えられませんけれども、そのように考えております。

大島(敦)委員 次の質問に移りたいと思います。

 第十八条に定めます「政令で特別の定め」について、具体的な要件について御説明をしていただきたいと思います。

長勢議員 現在、障害基礎年金の受給権者につきましては国民年金保険料は法定免除となっておるところでございます。これは、障害基礎年金の額は老齢基礎年金よりも高い場合が多いわけでございますので、保険料を負担させて老齢基礎年金を選択できるようにする実益がないということから法定免除とされているものと承知をいたしております。

 しかし、今回の特別障害給付金の受給権者につきましては、支給額を障害基礎年金の六割程度ということにいたしておりますので、可能な場合には、無理のない範囲で保険料を納付していただくことによって、老後において特別障害給付金よりも高額の老齢基礎年金を受給することができるという場合も生じますので、こういうことが可能となりますように、一律に法定免除としないで申請免除という形にしたものでございます。

 したがって、この具体的な申請免除におきましては、特別の世帯主及び配偶者の所得等の審査等々の諸審査を省略して、できる限り自動的に保険料の納付が免除されるような手続にする、そういう内容の政令にしたいというふうに考えております。

大島(敦)委員 もう一度ちょっと確認させていただきたいんですけれども、この十八条で、「政令で特別の定め」に基づき保険料免除を受けた場合に、これは申請免除ですから、将来受け取れる老齢年金の受給額は申請免除の額どおりになるかと思います。もしも満額、できるだけ多く受け取りたいのであれば、経済的な余裕があれば申請免除をしないで老齢年金を支払い、納入し続ければ、満額に近い年金が受け取れると理解するんです。そういう理解でよろしいですか。

    〔委員長退席、北川委員長代理着席〕

長勢議員 おっしゃるとおりであります。

大島(敦)委員 続いて伺います。

 附則の二条の未納、未加入について伺います。附則二条で今後の検討の中に、未納、未加入も含まれますでしょうか。

桝屋議員 附則第二条の「検討」の内容でございますが、もちろん検討の対象というのは本法の対象とされていない無年金の障害者というふうに私ども考えておりますが、ただし、納付義務がありながら保険料を納めなかった者が障害が発生した後に障害給付を受けるということとすると、保険方式をとります我が国の中でどうなのかということがあります。

 まさに先ほどから議論しております制度の根幹ということになるわけでありまして、今大島委員がおっしゃった未納の方に対するこの問題は、なかなか容易な問題ではないだろうというふうに思っております。

大島(敦)委員 ぜひ未納、未加入についてもう一度答弁していただくことが一つと、もう一つは、この附則の二条の中で、「今後検討が加えられるべきもの」とあるんですけれども、具体的なその内容について、あわせて御説明ください。

桝屋議員 この点は野党の提案者の皆さんともずっと議論をしてきたところでありまして、もう一回重ねて申し上げたいと思っておりますが、この第二条の検討の対象は、本法案の対象とされていない無年金の障害者である、全体であるということでございます。ただ、検討に当たりまして、少し先走りましたけれども、なかなか難しい問題があるということもあわせて御理解をいただきたい。

 なお、その他の問題についても何があるのかということをおっしゃいましたが、きょう、朝から議論になっております国籍の問題でありますとか、未納、未加入の方でありますとか、全体を含めて、制度の中で福祉的措置としてどう整理できるのか、引き続き議論を続けたい、このように考えております。

大島(敦)委員 ぜひ未納、未加入についても含めて検討していただくことをお願い申し上げます。

 続きまして、今度は論点が若干変わりまして、やはり年金の未納、未加入問題についていろいろと質問をしていきたいと思います。

 きょうは、法務省さんの方から、あるいは社会保険庁さんの方から政府参考人の方にも来ていただいておりまして、受刑者あるいは出獄されて今保護観察の期間中にある方の、まずは年金の義務について、今、刑務所の中で受刑されている方、そして仮出所され、あるいは仮出獄されている方について、年金の納付の義務についてはどう考えるべきなのか、まず社会保険庁さんの方に確認したいと思うんですけれども、いかがでしょうか。

青柳政府参考人 受刑中の方あるいは保護観察処分期間中の方の年金適用についてのお尋ねがございました。

 刑務所などに収容されている方につきましても、二十歳から六十歳までの間であれば国民年金の被保険者になるということでございますので、保険料の取り扱いにつきましては、一般の被保険者の方と同様に、所得に応じて、経済的に納付が困難な場合には申請による保険料の免除を受けるというような制度になっております。

大島(敦)委員 そうしますと、受刑中の方、刑務所の中に今受刑期間中の方、そして仮出獄されて保護観察処分の方についても、一万三千三百円、あるいは働いていればそれ相応の厚生年金保険料は支払わなければいけない、もしも経済的な余力がなければ、経済的な力がなければ、申請免除をされた方がいいという御発言がございました。

 それでは、今、具体的に受刑者の方が何人ぐらいいて、保護観察期間中の方が何人ぐらいいるのか、その数字について教えていただければ幸いでございます。

横田政府参考人 お答えいたします。

 受刑者ということでお答えしますが、十月三十一日現在の速報値で申し上げますと、六万四千二百八十八人でございます。

津田政府参考人 突然のお尋ねでございますので、一日現在の数字を用意しておりませんけれども、年間の仮釈放数としましては、約一万五千人程度新たに仮釈放になっております。

大島(敦)委員 年間大体一万五千人ですから、合わせると五万人ぐらいの方がいらっしゃるのかなと。そうすると、受刑者の方そして保護観察処分の方、合わせて十万人ぐらいの今のお話をさせていただくわけなんです。

 どういうような取り組みをされているのかなと、まず法務省さんの方に伺いたいんですけれども、受刑者の方あるいは保護観察処分の方に対して、年金の教育、あるいはこういう制度があるよということを伝えているのかどうかについてお答えください。

横田政府参考人 お答えいたします。

 受刑者に対する国民年金制度の周知のことについて申し上げます。

 被収容者に対する国民年金制度に関する指導でございますけれども、これは平成六年に発出した訓令、通達がございます。それによりまして、受刑者が受刑を開始する時期に行う指導というのがありますけれども、そのような際に、公的年金制度の項目がございまして、そこで情報提供しております。

 それから、受刑者の釈放時期が近づいたときにも、そういう釈放前指導というものがございますけれども、その際にも同様の指導をしております。

 さらに、平成十二年に発出した通達、通知がございまして、これでは、被収容者向けに「所内生活のしおり」というのを各施設がつくっておりますけれども、そういう冊子に国民年金制度の概要についての説明を記載しておりまして、そして、それによって一層の周知を図っているということでございます。

大島(敦)委員 これまではいろいろと通達を出されて、入所するとき、あるいは出所されるとき、あるいはその期間中であっても、しおりをつくってそれ相応のいろいろなお知らせをしているというお話なんですけれども、なかなか年金の制度というのは難しい制度でして、私たち議員でも年金制度を理解するには相当勉強しないとわからないわけなんです。

 恐らく、法務省さんの方も、専門家が年金制度についていろいろと説明するのではなくて、こういう制度があるよということで、受刑されている方、仮出獄されている方に伝えているのかなと。たまたま府中刑務所の方から「所内生活の手引」というものをいただいて、それなりには保険料免除制度とか書いてあるんですけれども、これは読んだだけではわからないと思うんです。

 もう一つは、なかなか外の世界とは距離があるものですから、社会保険庁の方に私たちが出向けば、いろいろと社会保険庁の職員の方が、年金制度について、加入状況について教えてくれるんですけれども、なかなかそれも、もともと刑に服しているものですから、間に多分法務省の職員の方が入られて、社会保険庁の方に問い合わせて、法務省の方がその書面を受け取ってまた届けるというふうにすると、わからないと思うんですよ。

 申請免除だって、申請免除についてどういうような効果があるのか。申請免除すれば、将来的に、保険の未納期間がなくなって、ちゃんと将来は保険が受け取れなくなるようなことはありませんとか、あるいは、申請免除していれば、三分の一だけは、税金部分だけは国民年金が受け取れるんですよとか、そういう話というのは僕はなかなかしていないと思う。

 これは、将来、生活保護との関係が出てくるわけですよ。年金が受け取れなければどういうふうになってくるかというと、やはり老後を考えれば僕は生活保護のところに移ってくるおそれがあるのかなと思うんですけれども、大臣、そう思いませんか。

尾辻国務大臣 今おっしゃいますように、年金受給できない者が増加した場合には、それが免除申請手続なんかすればいいんだけれども、それをしていないというようなことで、そうした者が増加すれば、これは生活保護に要する費用が増大する可能性が高まるということは十分考えられます。

大島(敦)委員 そうしますと、そんなに難しいことを言っているわけではなくて、受刑者の方に対して、あるいは保護観察処分の方に対して、申請免除という制度があるから、将来、更生されて社会へ出たときに、自分の老後のことを考えれば、申請免除をしっかりと受けてもらうということが僕は必要だと思うんです。

 この申請免除についての書類、どんな申請免除の書類ですかということを届けていただきました。申請免除の書類、結構細かくて、なかなかこれは一人で書くのは難しいと思うんです。

 この申請免除の書類はどこに届けるかというと、市町村なんですよ、市町村の役場に届けるわけです。恐らく、受刑者の方の住所がどこにあるかというと、多分、生まれ故郷にある方、多いわけなんですよ。そこで、生まれ故郷にあって、なかなかまだ日本の風土の中ですと、今は引っ越して息子はいないとか、なかなか受刑されているということを公にしたくないという風土があって、そうすると、申請のこの書類を、要は地元の、自分の生まれ故郷の市町村役場に出すというのは、意外とおっくうになってしまうと私は考えるわけなんです。

 そうすると、要は申請書については、例えば刑務所の近くにある社会保険事務所の方に直接出せるようにすれば、私は、将来的な生活保護の国の負担というのが減っていくのかなと思うんですけれども、その点につきまして、まずは法務省さんの方から、刑務所についても社会保険庁の方あるいは専門家の社会保険労務士さんの方が来たら喜んで受け入れているということを伺いたいのと、国の方にも、やはり将来の更生された後の人生設計を考えれば、喜んでそちらの方に行って教育訓練をさせていただくというところを伺いたいんですけれども、いかがでしょうか。

横田政府参考人 お答えいたします。

 先ほど委員おっしゃいましたように、国民年金制度、必ずしも刑務所の職員であっても専門的な知識、持っておりませんので、なかなかその説明をしても正確を期しがたい点もあると思いますので、質問があれば、これも今先生おっしゃいましたように、やはり受刑者から社会保険関係の機関に、社会保険事務所等の関係機関に手紙を出して問い合わせるようにという指導をしているところなんです。

 今後とも、社会保険庁等の御協力を得ながら、受刑者が国民年金制度について十分理解できるよう私どももまた指導に努めてまいりたいと考えております。

津田政府参考人 保護観察処分の方についてのお答えを申し上げます。

 保護観察の対象者につきましても、保護観察の実施過程で、観察官あるいは保護司が必要に応じましてこれまでも各種年金制度のことにつきましては情報提供いたしましたり、あるいは助言を行ってきておるところでございますが、具体的に保護観察対象者からは年金の加入等の状況を聞きましたり、あるいは年金の免除申請等の情報を提供したりをしておりますが、場合によりましては社会保険事務所等に相談するようにというような形で促しておるところでございます。

大島(敦)委員 保護司の方は無給なんですよね。保護司の方は国からの、無給で保護観察処分を受けられている方を三人から、多い方だと二十人近く面倒を見ていらっしゃって、結構大変な仕事なんです。ですから、このような年金のことについてもう一言言ってくれというのは私としては非常に心苦しいんですけれども、保護観察司の方は非常にとうとい仕事をしていますから、一言言っていただくことによって将来的に年金の受給権が発生して老後が安定すればなと思うので、よろしくお願いします。

 そうしますと、今度は社会保険庁の方に聞かなくてはいけないんですけれども、社会保険庁の方で、例えばこの免除申請書をどこに出すかという問題があるんですけれども、その点について、これは市町村長を経由して出さなくてはいけないのか、あるいは近くにある社会保険事務所の方に出せれば、直接出された方が私としては事務がスムーズに行えると思うんですけれども、その点について御答弁をお願いいたします。

青柳政府参考人 免除申請の手続、先ほど委員の方からも御指摘ございましたように、現在は必要な申請書を、これは郵便等で結構なんですけれども、住所地の市町村へ届け出をしていただくということになっております。

 私ども、ちょっと社会保険事務所に直接やった場合にどうなるかということについてこれまで検討したことがございませんので、ここでにわかにお答えできません。ただ、そうなったらそうなった場合、危惧いたしますのは、直接何かそういうことで社会保険事務所に届くような書類については、かえってその方が受刑者であるということを社会保険事務所の人間が知るようなことになっても、ぐあいがいいのかどうか、ちょっとにわかに判断がつかないなという危惧はいたしております。

 いずれにいたしましても、ただ、そのことは私どもとしては、今の御指摘にもありましたように、最終的には受刑者の方あるいは保護観察処分対象者の方々につきましても年金権の確保が円滑にいくようにということがこの問題についての考え方の基本であろうと思っておりますので、そういうふうになるようにするためにはどのようなやり方が最もよいかということを、法務省さんともよくよく御相談をしながら、今後改善できる点があれば改善するという形での検討はさせていただきたいと思います。

大島(敦)委員 恐らく、申請免除、申請するだけで、要はその期間が少なくとも未加入期間にはならないわけなんです。未加入期間ではなくて納付済み期間に該当するわけなんです。

 受刑されている方、一年間の方、三年間の方、五年間の方、十年間の方、結構多い、長い期間なわけです。私どもも、多分大臣初め副大臣、皆さんも、よく地元の陳情で、あと半年足らないからというのは結構多いかと思うんですね。本当にこの申請免除をしなかったために年金の受給権が発生しなくて、結構お困りの方が出てくるのかな。あるいは、金額的にも、四十年間勤めれば今六万六千円です、これが一万円でも二万円でも、人によっては非常に高額な金額だと思ってくれるわけなんです。

 ですから、そこのところを、大臣、やはり厚生労働省としてもできるだけスムーズに、例えば、せっかくですから社会保険庁の方がこれを説明してもいいと思うんです。こういう免除申請があるからこれを書いていただければ年金の受給権が発生するし、将来生活保護のお世話にならなくても大丈夫ですよ、生活保護になるおそれが大分減りますよというお話について、ぜひ私としては積極的に取り組まれた方がよろしいかと思うんですけれども、大臣のお考えを伺わせてください。

尾辻国務大臣 お話を伺いながら、なるほどなと本当に思いながらお聞きをいたしておりました。

 先ほど社会保険庁よりお答えいたしましたように、法務省とよく協議をしながら進めていきたい、こういうふうに考えます。

大島(敦)委員 それでは、今時間となりましたので、ここで私の質問を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。

北川委員長代理 次に、内山晃君。

内山委員 民主党の内山晃でございます。

 大臣初め政府委員、与党提案者の皆様には、重複する質問があろうかと思いますけれども、よろしくお願い申し上げます。私も、一日も早い無年金障害者の方々の救済、解消を望む者の一人でございます。早速質問に入らせていただきます。

 大臣、今回、東京、新潟の裁判を受け、国は即刻控訴されておられますけれども、東京、新潟それぞれの控訴の理由をお聞かせいただきたいと思います。

尾辻国務大臣 未加入者年金訴訟における東京地裁及び新潟地裁の判決につきましては、立法不作為等をめぐる最高裁の判例に照らして適当でないと考えておりますが、さらに、拠出制の年金制度に加入しなかった方々に障害年金を支給しなかったことについて国の法的責任を認めておりますこと、また、昭和六十年の改正時に学生を任意加入のままとし、強制加入としなかったことを憲法十四条に明白に違反するものとしておりますけれども、当時、いろいろな議論を踏まえて、学生の保険料負担能力等も含め、総合的な検討を行った上での当時の判断が直ちに不合理とは言えない等の基本的な問題があると考えております。

 これらを総合的に考慮して、控訴もやむを得ないとの結論に至り、上級審の判断を仰ぐこととしたものでございます。

内山委員 そもそも論になりますけれども、従来からの無年金障害者に関する実態調査というのは行っておられましたでしょうか。お尋ねをいたします。

塩田政府参考人 十四年度から十五年度にかけまして障害者の生活実態調査を行ったところでありますけれども、障害年金を受給していない障害者の方の実態の把握については幾つか技術的に難しい点がございます。

 一つは、実際の障害者福祉行政を行っております市町村、都道府県におきまして、障害年金の受給の有無の情報を有していないということが一つ問題点でございます。それから、実態を把握する上で、国と地方公共団体で個人情報をやりとりする必要がございますけれども、個人情報保護の観点から本人の同意が必要ということなど、幾つか調査に技術的な課題があるということでございます。

 そうした観点から、障害年金を受給していない障害者に絞った調査を行うということが大変難しいということで、障害年金を受給していない方も含む一定の範囲内の調査をするということで、無年金障害者の実態調査を悉皆で行うということが大変難しいということをまず御理解いただきたいと思っております。

 その上で、十四年度から十五年度にかけて行いました障害者の生活実態調査ですけれども、一つは、身体障害者につきまして、国立身体障害者リハビリテーションセンターの研修、訓練を卒業した方を対象にして抽出の調査を行いました。それから、精神障害者につきましては、精神障害者のニーズ調査の一環で調査を行ったところでございます。また、身体障害者に関する調査につきましては、前の調査が人数が不十分だという指摘もございましたので、さらに平成十六年度に、特定の四県を対象にしまして同様の調査を実施したところでございます。

 現在の細かい数値は集計中でございますが、こうした調査の中で、障害年金を受給していない方と受給している方を比較いたしますと、所得につきまして、高額の所得の方もいらっしゃいますけれども、年金を受給していない方々の約五割が年収百万円といった低所得層に分布していること、それから、就労の状況としては、年金を受給していない方は年金を受給している方よりも就労している率が高いといった傾向が見られたところでございます。

 今後とも、障害者の生活実態の調査については、機会を見て努力をしてまいりたいと思っているところでございます。

内山委員 今回対象となっておりません在日外国人無年金障害者の方々と、未納、未加入によって無年金障害者になった方々の救済について、この実態調査をすべきではないかと考えているんですけれども、いかがでしょうか。

渡辺政府参考人 未納、未加入者のお話と在日外国人のお話につきまして御質問いただきました。

 前者につきましては、先生御承知のとおり、未納、未加入による年金がない状態ということでございまして、強制加入の対象でありながらその義務を履行なさらなかったという意味において、今回、与党提出法律案で対象としていただいている方々と事情が大きく異なると思っております。また、社会保険方式をとる我が国の年金制度の考え方の中で、未納、未加入問題というのは非常に大きな議論を呼ぶ大事なポイントでございますので、そうした根幹に触れる論点ではないかと思います。

 いずれにせよ、そうした救済措置を今後どう考えるかということにつきましては、在日外国人の方々につきましてもでございますが、今御提案されております附則二条による、本則によって給付の対象とならない障害者の方々についての検討をさらに進めていくという条項のように承知しておりますので、そうした検討の中で、こうした方々の実態についても必要に応じ把握に努めてまいりたいと考えております。

内山委員 附則の二条はまた後ほど質問させていただきますが、六十歳未満の現役被保険者のうち、今後納付しても年金の受給資格期間が二十五年に届かない、こういう方が何か約四十万人いるということだそうですが、社保庁はこのデータを督促名簿から外していたという新聞報道がありましたけれども、この数字、またその事実は確かでしょうか。お尋ねをいたします。

青柳政府参考人 まずは、数字についてお答えを申し上げます。

 会計検査院の調査報告に、今般、約三十九万人という、ただいま委員からお尋ねのありました、六十歳未満の国民年金の一号及び三号の被保険者であって、一定の条件のもとで二十五年の受給資格を満たさない可能性のある者、こういうことを調査した数字が公表されたところでございます。

 しかしながら、この数字について一言申し上げさせていただきますと、一つには、厚生年金保険で二十歳前に入っていた被保険者期間というのがこのデータの中には反映されていないということ、それから、老齢基礎年金の受給資格要件を短縮する昔の厚生年金等の特例措置というのがまだ対象になる方がおられるわけですが、こういう方々が考慮されていないということがございますので、この三十九万人がすべて無年金、またはそのおそれのあるということには必ずしもならないと私ども考えております。

 それから、二つ目のお尋ねでございます督促名簿云々というところでございます。

 私どもは、ただいまのような老齢基礎年金の受給資格要件を満たさないということが明らかになったような方につきましては、強制徴収の対象というふうにはなかなかできないわけでございますが、障害基礎年金あるいは遺族基礎年金については、直近一年間の保険料納付要件を満たしていただければ年金受給に結びつくという可能性がありますことから、保険料納付の案内はきちんと送付をさせていただいております。

 その意味で、本年十月から、未納者に対する催告状にこれまでの加入記録を付記するというような形の情報提供も行うこととさせていただいておりまして、未納者本人にみずからの被保険者記録を認識していただきまして、納付意欲を喚起するということについて新たな取り組みもさせていただいております。

 いずれにいたしましても、今後とも、未納対策を徹底させていただきまして、無年金者の発生防止に全力を尽くさせていただきたいと思います。

内山委員 ただいまの御答弁がありましたけれども、督促名簿からは外していたのではないんでしょうか。お尋ねをします。

青柳政府参考人 督促名簿というのは、法律上の扱いではなくて実務上のことになるかと思いますが、強制徴収の対象とはしないという意味では、その方々に対して、一定の受給資格要件を満たし得る可能性のある方との扱いを変えていたというのは事実でございます。

 ただ、先ほども申し上げましたように、保険料納付の案内は送付させていただいておりますので、加入についてはお勧めをさせていただいているというふうに御理解をいただければと思います。

内山委員 老齢基礎年金は該当しないけれども、障害給付を受けさせるために、そういう保険料納付要件のために、これからも通知をするということでございますね。――はい、わかりました。

 国民年金をもらうための、老齢基礎年金をもらうための受給要件というのは二十五年あるわけでありますけれども、この二十五年に届かない方というのは、やはりかなり多いということであります。さきの委員会でも、私、やはりこの二十五年の要件というのをもう少し緩和をすべきである、諸外国と比べるとハードルが高いというお話を申し上げましたけれども、今、国民年金受給資格が発生しない方に対して、払いました保険料というのは還付をしているんでしょうか。

青柳政府参考人 本来払うべきでないのに誤って払ったような場合には還付をいたしますが、本来払っていただくべき方に払っていただいた保険料については、仮にそれがその後受給資格要件に結びつかない場合であっても、還付はさせていただいておりません。

内山委員 ということは、払い損ということで考えてよろしいんでしょうか。

青柳政府参考人 平たく申し上げればそのようになりますので、その点、先ほども申し上げましたように、本年の十月から、納付の督促をする際にあわせて納付記録をお知らせすることによって、御本人がきちんと自覚をしていただくような手だては講じさせていただいたところでございます。

内山委員 ですから、やはりこういう方が障害者になりますと、また新たに無年金障害者が発生してしまうということは当然あり得るわけでありまして、ですから、今回、こういう方を救済するための法律をつくっているわけであります。今後のそういう人たちをどうするかというのは、やはりこの年金制度自体に非常に大きな欠陥があるんじゃないかな、最低の給付というものは当然税で賄うようなものを、未納、未加入をなくすような制度に一日も早くすべきじゃないかな、こう思う次第であります。

 そして、次の問題に参ります。

 坂口前厚生労働大臣の試案では、今回の与党案でいくと約二万四千人が救済され、減少されるというふうになっていますけれども、無年金者全体と無年金障害者との重なりぐあいというのがよくわからないんですけれども、その辺をお尋ねしたいと思います。

青柳政府参考人 先ほどもお話の出ました四十万人を含むいわゆる無年金者というふうに言われております方々は、通常は、要するに年金の受給資格に結びつかない、すなわち老齢年金を満たさない可能性があるという方々の数をさまざまな条件のもとに計算した際に出てくる数というふうに御認識をいただければと存じます。

 一方、坂口試案によります無年金障害者の数というのは、これとは全く考え方を異にしておりまして、例えば国民年金が強制加入になる前の任意加入であったときに任意加入しないで、期間中に障害事故の発生した学生さんや被用者の被扶養配偶者の方々、あるいは国籍要件の撤廃前に障害事故の発生した外国籍の方々、それから国民年金の強制適用となっていながら障害事故の発生した際に未加入あるいは保険料を未納していた方々というのを、先ほど障害保健部長が申し上げましたように、平成八年の身体障害者実態調査等から推計をしたものでございます。

 これらについては、先ほども申し上げましたように、前者は、老齢年金の無年金者という意味で、被保険者である全期間の納付状況から類推をしたものであるのに対して、後者は、障害事故の発生時点というある一時点における状況により推計をしているものでございますので、要するに、両者の間に重なり合いというか、特段の関係はないものというふうに考えております。

内山委員 続きまして、政府・与党案提案者にお尋ねをしたいと思います。

 特別障害給付金の支給を受けようとするときには、六十五歳に達する前日までにその受給資格及び特別障害給付金の請求をしなければならないと。期日を経過した場合にはどういう扱いをするのでしょうか。お願いいたします。

桝屋議員 お答えいたします。

 今回の第六条になろうかと思いますが、特別障害給付金の支給を受けようとするときは、今委員御指摘のとおり、六十五歳に達する日の前日までに認定請求をしなければならない、こういうことでございます。これは基本的には、基礎年金の老齢給付による所得保障が行われるということを踏まえた措置でございます。

 六十五歳までにやらなくて、それを過ぎたらどうなるのかということでございますが、いずれにしても、特に施行日あたり、そうした事例もあるかと思いまして、その辺の対応については、これはこれから不利益をどう除去するかということについて検討しなければならぬと思いますが、申請手続上不利益にならないように、不利にならように、適切な経過措置を検討の上、政令で定めていただく必要があるのではないかと我々は考えております。

内山委員 ちょっと説明が、質問が間違っていたのかもしれませんけれども、期日を経過したらどうなるかということですから、法第七条に、十五日以内に出しなさいと決めがあるんですけれども、それでよろしいんでしょうか。

    〔北川委員長代理退席、委員長着席〕

渡辺政府参考人 今後、提案者の先生方とよく御相談をしながら、先ほど御答弁のありました政令のあり方につきまして検討していかなければならないと考えておりますが、六十五歳を経過した後一定期間、あるいは六十五歳に到達する施行日前からの申請受け付けというような実務的な経過措置というものも十分検討しなければいけないと考えております。

内山委員 ですから、六十五歳に達する前日までに請求をしなさいと法文に書いてありますね。その第七条では、提出できない場合には十五日以内に、特別なやむを得ない理由があった場合には出していいと書いてあるんじゃないですか。そこを詳しく説明してください。

渡辺政府参考人 済みません。整理がされていなかったようでございますが、もう少し整理して申し上げます。

 先生御指摘のとおりの条文に基づいて、その十五日等々のルールによって運用されるべきであるというのはまず大原則でございます。ちょっと御質問につきまして、踏み込んでちょっと解釈し過ぎた点があったかと思いますが、誕生日が四月一日だった人の場合はどうなるんだろうかとか、いろいろマージナルな事例が発生いたします。そういったところにつきましては、政令をもって、一定の経過措置的な弾力規定というものは、今後実施するに当たって十分考慮しなければいけない、こういうふうに考えておるところでございます。

内山委員 七条に十五日と書いてありますね。この十五日の根拠を教えてください。十五日以内と書いてある根拠です。

渡辺政府参考人 私どもから申し上げるような数字ではございませんのですが、他の法令における類似の場面に関する法令を参酌されたものと私どもは理解しております。例えば、これは児童扶養手当に関する法律におきましても、その第七条におきまして、こうした「その理由がやんだ後十五日以内」という規定が設けられている、こういう立法例もあるところでございます。

内山委員 手元の七条の第二項というところに、十五日以内に請求を云々と書いてあるじゃないですか。きょう、これを採決するんでしょう。こんなことをきちっと明確に答えられなければしようがないじゃないですか。ですから、この十五日の根拠というのは明確に出せないんですか。何で十五日なのか。

長勢議員 今も答弁がありましたが、一般的に災害その他やむを得ない事由によって猶予といいますか特例を設ける場合には、こういう十五日というのが一つの一般的な例であると承知をいたしております。具体的な法律については、今御説明が一点ありましたが、ほかにも多々例があると承知をしております。

内山委員 十五日でいいんですか。十六日じゃだめなんですね。

長勢議員 この法案の策定に当たって、十五か十六か十四かということを正確に議論したわけではございませんが、一般的にこれが通例であると承知をしております。

内山委員 十五日の根拠を今ここで追求していますと持ち時間がなくなってしまいますので、問題を移します。

 来年、十七年四月に施行が予定されているわけでありますけれども、この法第七条によりますと、認定をした日の属する月の翌月から支給をするとありますけれども、認定請求者の施行日、四月一日が六十五歳の誕生日を迎える方の取り扱いはどうされますでしょうか、お尋ねをします。

桝屋議員 済みません。先ほどから十五日のことが明確に答弁できなくて、今のお尋ねと大分頭が勘違いしておりまして、おわびを申し上げたいと思います。

 今お尋ねがございました十七年四月一日がまさに六十五歳の誕生日であるという方については、特別障害給付金の請求月の翌月から支給をされるということでありますから、最も早い申請というのは十七年四月一日申請、その場合は、平成十七年五月分から支給をされるということだろうと思います。

内山委員 民法の計算でいきますと、六十五歳に達するというと、恐らく三月三十一日ということになりますから、本来四月からもらえなければいけないわけでありますけれども、そういう年金との整合性がやはりそこでとれなくなりますね。法施行が四月一日からということでありますから、やむを得ないのかもしれませんけれども、検討の余地は十分あるんじゃないかなと思います。

 同じく第七条にあります給付金の受け取りということでありますけれども、これは当然振り込みかと思いますが、郵便局を含めた金融機関というふうに考えてよろしいんでしょうか。

青柳政府参考人 特別障害給付金の受け取りに関しましては、法案成立後、関係省令等の整備を含めて、今後関係省庁等も含めて検討していくことが必要であろうというふうに考えております。

 現時点で私どもの見通しというか考え方をあえて申し述べさせていただきますと、現行の障害基礎年金の給付につきましては、郵便局及び銀行等すべての金融機関において受け取りが可能となっておりますので、この特別障害給付金についても、受給者の利便性という観点から、同様の取り扱いができるように調整をしてまいりたいというふうに考えております。

内山委員 続きまして、法第二十一条の支給を受ける権利、「五年を経過したときは、時効によって消滅する。」とあります。一体何が時効で消滅するのか、具体的に御説明をいただきたいと思います。

長勢議員 第六条第一項の規定によりまして認定があったにもかかわらず時効がかかるというのはどういう場合かということだと思いますが、めったにないことだろうと思っておりますが、例えば請求者が行方不明になって行く先がわからないということのために支給ができなくなったようなケースが考えられると思っております。

内山委員 先ほどからの質問と前後するかもしれませんが、六十五歳の前日までに請求をしなければならない、その請求手続がおくれて、十五日以内であれば、やむを得ない理由があるということでは認めると。では、十五日を過ぎてしまって提出ができなかったという場合には、この特別障害給付金はもらえないというふうに判断をするんでしょうか。

長勢議員 請求の権利は時効という問題ではございませんので、今おっしゃったとおり、請求期間内に請求がなされない場合には認定を受けることができなくなる、こういうふうに思います。

内山委員 そうすると、やはり法第七条の二項の十五日以内云々というのと時効との関連性、何が時効になってもらえないのかというのがよく理解できないんですけれども。

長勢議員 この時効は、受給権が発生をする、つまり請求をして認定を受けた、その後受給権が発生をするわけですから、その受給権が時効にかかるという意味の規定でございます。

内山委員 年金をもらう権利というのは、六十五歳の誕生日の前日に要するに認定を受けるわけですね。それは届け出がおくれても、十五日をおくれても、例えば一カ月二カ月おくれても、この給付金はもらえるんですか。

桝屋議員 先ほどから第七条の二項のお話がありますが、二項は、特定障害者が災害その他やむを得ない理由によって請求をすることができない、やむを得ない合理的な理由がある、そしてそうした場合において、その理由がなくなって十五日以内に請求をするということでありますから、まさにそれは災害等の特別の事由が、合理的な理由があって、そうした場合に六十五を過ぎても、その事由がなくなった後十五日間は請求できますよ、受け付けましょう、こういう趣旨だろうということでございます。

内山委員 年金に直しますと、年金ですと基本権と支分権という、それぞれ時効があります。この辺の関係と今の時効の関係をちょっとわかりやすく説明していただけませんか。

長勢議員 年金の受給権については、御説明があったとおりであります。この法案は、年金制度の枠内ではない、特別の福祉的措置として構成をいたしておりますので、この給付金の受給権というものは、六十五歳に到達する前に生じた障害について支給しよう、こういうふうに構成をしておるというふうに御理解いただきたいと思います。

内山委員 それでは、ちょっと質問を移します。附則のところに参ります。

 第二条の「障害を支給事由とする年金たる給付を受けられない特定障害者以外の障害者に対する福祉的措置」とありますけれども、特定障害者以外の障害者とはどのようなものか、これは重複すると思いますけれども、もう一度お願いします。

桝屋議員 済みません、遅くなって。

 先ほどの質問でも厳しく指摘を受けた点でございますが、附則第二条の対象の話でありますが、今回対象とされていない無年金の障害者全体ということであります。ただ、先ほどもおしかりを受けましたけれども、社会保険方式をとります我が国において、今回の特例的に福祉的な措置を行うということからいたしますと、相当議論をしなければならない方々もあるということを先ほど申し上げたわけであります。

内山委員 特定障害者の定義について、定義一にあります「任意加入制度の対象者とされていた被用者年金各法の被保険者等の配偶者又は大学等に在籍する生徒若しくは学生で国民年金制度に加入しなかったもの」とありますが、それぞれ学生もサラリーマンの妻も、一たん加入をして未納になっていたとき、これはどのような扱いをしますか。サラリーマンの妻でも任意加入をした、また学生でも一たん加入をしていた、そういった場合、滞納してしまったというケースはよくあると思うんですが、その扱いをどうしますか。

長勢議員 実は大変悩ましい問題でございますが、社会保険制度の基本にかかわる問題だと思って、いろいろ検討いたしました。

 任意加入時代に加入をしていないという人と、加入していた人で未納であった人とをどう区分けするかということでございますが、未納であった方は、義務を果たすということと同時に権利を得るということをみずから選択なさった方でございます、その方が義務を果たさないという状況が未納でございますので、この方々については今回の制度の対象とはしないという扱いで法案を構成いたしております。

内山委員 これはよくあるケースなんです、実際。サラリーマンの妻で、六十一年三月までに、任意加入のときにたまたま住んでいたところから、保険料の徴収、町内会か何かで納付をしていた、転居してしまった後、そこには保険料の徴収に来る方がいなかった、そのまま滞納になってしまった、こういうサラリーマンの妻というのは結構いるんです。

 ですから、そういう一たん善意で任意加入をした者が滞納というのはあり得るんですよ、過失じゃなくて。ここを今回救済の対象としていないというのは、やはり法に非常に落ち度があると私は思うんですけれども、そこはいかがですか。

長勢議員 実態としてそういうことが起こり得ると我々は思っておりますし、また、そのことを釈然としないケースもあろうかと思います。

 ただ、制度の発達過程において、任意加入でありますので、入らなくてもいいや、あるいはそれなりの理解が足りなくて入らなかった人と、選択をした上で、なおかつその義務を、事情はあるでしょうけれども、果たさなかった方とをどういうふうに考えるかということは、社会保険はみんなが義務を果たし合って権利を行使するという制度でありますので、義務を選択し、かつ果たさなかった人を果たした人と同じように扱うということについては、極めて本質的な問題でありますので、この法案では今御説明いたしましたような取り扱いにいたしておるわけでありまして、今後、さらに見直すということがある場合には検討の対象になろうかと思います。

内山委員 時間が来ておりますけれども、長年にわたりまして無年金障害者の救済に取り組んでこられた関係者の皆さん、もちろん当事者の皆様の御苦労に報いるためにも、遅滞ない給付の実現を強く望みまして、質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。

鴨下委員長 次に、石毛えい子君。

石毛委員 民主党の石毛えい子でございます。この国会での無年金障害者の方々の年金権確立を期待して、質問いたします。

 まず最初に、政府委員にお尋ねいたしますけれども、無年金障害者がどのような方々を指すか、対象とするかということに関しまして、坂口試案においては、第四のグループ、国民年金の強制適用の対象となっていながら未加入あるいは保険料未納で無年金障害となった者は、推定九・一万人と報告されています。御存じのとおりです。

 このうち、保険料を納めながら、納付要件に達しなかったために無年金となった障害者は何人ぐらいでしょうか、その人数を。また、納付金額の総計はどれくらいの規模に達するのでしょうか。さらに、保険料を追納して障害年金を受給する方策ということも考えられるわけではありますが、どのようにお考えになっていらっしゃるでしょうか。三点について、簡潔にお答えください。

青柳政府参考人 私の方からは最初にお尋ねがございました二つの点についてお答えを申し上げまして、三番目の点は年金局長の方からお答えをさせていただきたいと存じます。

 まず、最初にお尋ねのございました、直近一年間の未納要件ないしは三分の二の納付要件ということを満たしていないことから障害年金が受け取れない方の人数でございます。

 この点につきましては、大変まことに申しわけございませんが、私ども、言ってみれば、そういう要件に合致していないという方をあえて抜き出してきて取り出すということをいたしておりません。これは、その方々が、御本人が初めからあきらめて裁定請求を出しておられないというようなケースも当然ありましょうし、それから、出してきたんだけれども、あなたはその要件に当たらないからだめですよということの事由を、あえて私ども取り出していないという事情がございまして、今お尋ねのありました、被保険者期間中に障害を負ったけれども、納付要件を満たしていないために障害年金に結びついていない方の数ということは、把握はできておりません。

 したがいまして、二つ目のお尋ね、その方々の払い込んだ保険料の総額が幾らかというお尋ねにつきましても、同様に、数を把握しておらないことから、総額についてもお示しができないという点をお許しいただきたいと存じます。

渡辺政府参考人 三点目のお尋ねにつきましてお答え申し上げます。

 障害基礎年金の支給要件というのは、初診日の前日における保険料納付状況というものがもとになって判断をする仕組みとなっておりまして、事後的にこれらの支給要件を満たしても障害基礎年金は支給されない、こういうのが基本ルールになっているわけでございます。

 強制加入とされながら保険料を納めずに制度に加入しなかった方が、思わず、予想はないんでしょうが、障害という保険事故が発生した後に保険料を事後的に納付すれば年金がもらえるかということになりますと、果たして、社会保険方式というものの根幹的ルールとの兼ね合いで大変悩ましく難しい問題になるのではないかと思っております。いわば、病気やけがをした後で生命保険に加入できるかというようなことにもなりかねませんものですから、やはり私ども、後でさかのぼって納付して障害給付を受けるというのは困難ではないかと考えております。

石毛委員 時間が大変短いので、この問題をめぐって余り追いかけるつもりはないのですが、後半の御答弁に関しましては、生命保険云々、言われましたけれども、生命保険、私的保険と社会保険は違うということだけは申し上げておきたいと思います。

 前半の人数と金額に関してでございますけれども、それは技術的にきちっと明らかにすることが不可能だということでしょうか。

青柳政府参考人 おっしゃるとおりでございます。

石毛委員 それでは、その技術的に不可能だということの中身をまた後ほど御説明いただきたいと思います。

 民主党の同僚委員が、老齢基礎年金についてでございますけれども、保険料を拠出していて支払いを受けることができないでいる方が何人いるかということで、質問主意書で四十万人というふうに明らかにしていただきました。仮に一万円ずつ保険料を納めていたとして、四十億円になると思います。

 払い損かというような表現が先ほど言われておりましたけれども、決して、無年金障害者になられた方が納めた保険料も、累積してみれば、大きな金額にならないということはないというふうに認識いたします。ぜひこの問題は引き続き、無年金障害者の方の中でも、人数たくさんいらっしゃるわけで、現に、この法案が策定されるというニュースが社会に伝えられましたときに、私のところに、あと本当に数カ月で納付要件を満たしたのに、私は受け取れないんです、そういう悲鳴が随分寄せられたということをお伝えしておきまして、引き続き、きちっとこの問題を明らかにしつつ、制度として確かなものにしていただきたいということを要請いたしまして、次に移ります。

 次でございます。与党提出者にお伺いいたします。

 前回の質疑また先ほどからの質疑におきまして、与党提出法案が在日外国人無年金障害者を対象としない理由について、一九八二年一月に国籍条項が撤廃される以前では国民年金制度の対象外であったということを理由に述べられております。

 この国籍条項に関しましてはまたいろいろ議論があるところでございますけれども、きょうはそれはおきまして、御答弁はそうではあるとしましても、しかし、国籍条項撤廃の際に、それまで年金に入りたくても入れなかった在日外国人の方々に救済措置がとられるべきだったのではないでしょうか。

 これもたびたび同僚委員から出されたかと思いますが、沖縄、小笠原復帰時、中国残留帰国者の方々、さらには最近では拉致被害で帰国された方々に、日本政府は柔軟に救済的な特別措置をとってきております。それに比較して、既に定住してこられた、二世、三世の方々になっておられる在日外国人の方に対してさかのぼって救済措置をとらなかったということは、国籍上の差別的取り扱いではないかということを私は認識するわけですけれども、いかがでしょうか。お尋ねいたします。

長勢議員 昭和五十七年の国籍要件を撤廃した際の取り扱いについての違いは何かという御質問でございます。

 沖縄、小笠原復帰時、あるいは中国残留孤児、あるいは今回の拉致被害者等につきましては、日本国籍を有しておりながら、したがって我が国がそれなりの責任を持っておる方々でありながら、施政権が及ばなかったとか、あるいは国外に居住することを余儀なくされたとか、あるいは他国の国家的犯罪によって居住できなくなったという極めて特殊な事情によって年金制度に加入できなかった方々については、その状況に配慮をしなきゃならぬ、こういう判断であったかと思います。

 一方、在日外国人の方々につきましては、条約の要請に基づいて、将来にわたって適用範囲の拡大を行うという性格のものでございましたので、この老齢年金等々につきましても、受給資格期間の短縮等の特例措置は一切講じないということで、当時議論がされたものと承知をいたしております。いろいろ議論もあったことだったろうと思いますが、それなりに合理的な判断であったのではないかと一応思っております。

石毛委員 今、それなりに合理的判断であったと御答弁されましたけれども、先日来答弁の中に言及されておりますように、この国籍条項撤廃の際の取り扱いは将来にわたってということであって、過去には遡及しなかったというふうに答弁されております。ですけれども、将来にわたるか過去にまで遡及するかというのは、これは何も条約上規定されていることでもなくて、まさに政策的、政治的判断であったであろうし、あるというふうに認識をしております。

 これ以上このことは問いませんけれども、一点、与党提出者の方にもう一度確認させていただきたいのですが、長い間日本に在住されてきた外国人の方々が、国籍条項のために入りたくても入れなかった一九八二年一月のこの措置というのは、その外国人の方々の自分の責任によるのではなかったと、ですから、今無年金になっているということは、その外国人の方々の自己の責任でそうなったのではない、このことはお認めいただけますでしょうか。お答えいただきたいと思います。

長勢議員 いろいろなケースもあったかと思いますが、基本的にはそういうことだろうと思います。

石毛委員 自己の責任に帰さない原因を理由にして別の取り扱いがなされる、不平等な扱いがなされるということは差別であるというふうに認識するものでございますが、これは申し上げることだけにとどめさせていただきまして、それではもう一点、質問をしたいと思います。

 今回の与党提出法案の中では、学生、専業主婦の無年金障害者を救済されるという構成になっておりますが、在日外国人を救済するというふうにはなっておりません。これは、先ほど来の一九八二年一月の締結によります難民条約、あるいは国際人権規約の規定しております内外人平等、自国民との同一待遇、この理念あるいは具体的な方策に反すると考えますけれども、いかがでいらっしゃいますでしょうか。

長勢議員 この点は、先回来、再々議論になっておるところでございます。

 先生の御意見もあると思いますが、この法案は、年金制度の枠内の中にありながら、任意加入か強制加入かということによって、しかもそれが任意加入から強制加入制度に発展をしていく過程において、任意加入時代に起きた障害無年金という状態を救済したいというところに視点を置いて構成をいたしましたので、我々としては、制度の枠外にあった方々は今回は対象にしないということで法案を構成させていただいているわけでございます。

 このことがこの条約に違反するというふうには考えておりませんが、しかし、おっしゃるように、いろいろな意見もあり得るわけでありまして、そういうこともありましたので、正直言って、与党内でも議論がありました。今回はこういう法案で提出させていただいておりますが、将来の問題としてさらに検討をしていく必要があろうということで、附則で検討規定を設けて提出をさせていただいているところであります。

石毛委員 その附則第二条の検討に関しましては、また後ほど触れたいと思いますけれども、既に在日外国人無年金障害者の方は四十三歳を超えられる、そういう実情になるかと思います。

 先ほどは国籍条項撤廃の際についてお尋ねをしましたけれども、その撤廃がゆえに無年金になっておられる障害者の方々、在日外国人障害者の方々が二〇〇〇年三月に京都で訴訟を起こしておられます。その訴訟は今進展中でございますけれども、その訴訟の原告団のお一人であります金洙栄さんが、訴訟時の記者会見におきまして、大変厳しい生活実態に触れてこのようなことを述べておられます。それをお聞きください。

 日本人の障害者は障害基礎年金を受けているのに、私たちには何の保障もない。なぜ私たちに生活苦が強いられるのか。在日朝鮮人二世の金洙栄さんは、手話と切れ切れの言葉で訴えた。原告団の団長の方です。京都市内で帯を織る小さな工場を営む。母は日本語が読めない。妻も聴覚障害者。三人とも国民年金を受給できない。母が同業者とのつき合いをし、受注はファクスでする。互いに寄り添って生きてきた。土木作業も、耳が不自由だということで断られてしまって、今は仕事がほとんどない。こういう、これは二〇〇〇年三月の話ですから、そんなに昔の話ではありません。

 無年金の在日外国人の障害者の方、とりわけ、高齢者の方もでございますが障害者の方々、仕事にも結びつかず、年金にも結びつかず、大変苦労をされて苦しい生活をされていらっしゃると拝察をいたします。私の知り合いの方の中にもそうした方々がいらっしゃるということもお伝えしたいと思います。

 そこでですけれども、先ほどは内外人平等につきましてお尋ねいたしましたけれども、一方で、一方でと申しますか、もう一つ、社会保障の権利について内外平等を定めた社会権規約の第二条の方は、すぐに平等を実現するというふうにはいかない場合には、第二条は漸進的に達成すべきということを規定しております。ですから、一九八二年前までさかのぼってということはちょっとおいておきましても、もうずっと二十数年が過ぎてきているわけですから、きちっと対策がとられてしかるべきだというふうに考えるものでございます。

 そこで提出者の長勢委員は附則第二条を先ほど御指摘くださったんだと思いますけれども、その附則第二条の意味を確かなものとして私が受けとめさせていただくためにも、ここでもう一度確認の御答弁をいただけたらと思いますが、何らかの所得保障が必要であるというその御判断は、そう受けとめてよろしいですね。在日外国人無年金の障害者の方に所得給付が必要でないと考えているわけではなくて、必ず何らかの所得給付は必要であるというふうにお考えになっていらっしゃるということ、このことを確認させていただいてよろしいですね。

長勢議員 所得保障という言葉をお使いになると、何か定義がきちっとし過ぎるような気もして、どう答弁していいのかなと迷うわけでございますが、いずれにしても、我々政治家として、悲惨な状況にある方がおられる場合には、何らかの形で救済の方法を考えていくというのが当然の責務であると思っております。

 今回の場合は、年金制度との関連性なり整合性なりの中でこういう形で提案をさせていただいておりますが、所得保障といいますか社会保障、社会福祉、いろいろな形があると思いますが、そういう中でどういうことを考えなければならないかというのは、我々の今後の課題だと思って受けとめております。

石毛委員 ちょっと今微妙な御答弁だったというふうに伺いました。救済として何らかの方法があると思うが、その中で考えていきたいというような御答弁だったやに私は受けとめましたけれども、何らかの方法のうちの一つとして所得を保障する、それは、手当なのかとか、年金なのかとか、いろいろと、私がどれを指して言っているのかと。そこまで私は今は言っておりませんので、所得を必ず保障する、そういうふうに受けとめてよろしいですね。

長勢議員 先生も専門家でいらっしゃいますので答弁も苦慮しておるわけでございますが、その方々の生活上の御苦労に対して何らかの措置を講ずる。今回、先生方からは、我々の今提案しております措置の対象にしたらいいんじゃないか、給付金の対象にしたらいいんじゃないかという御提案もあったわけでございます。そういうことも含めて、今後、いろいろな意見もあるわけでありますので、検討していくべきことだと思っております。

石毛委員 これも、今の私の質問に対する御答弁につきまして、もう一度、確認といいますか、念のためにお尋ねしておきたいということですけれども、先ほど内山委員の質問で、未納、未加入年金者の実態、それから、在日外国人無年金障害者の実態についてきちっと調査をすべきではないか、調べるべきではないかという質問に対して、政府委員の方の方からは、附則第二条に検討ということもあり、その中で考えていきたいというような御答弁がされたというふうに私は伺いましたけれども、首をひねっていらっしゃいますから、それは後で議事録で確認をしていただきたいと思います。

 提出者の方々に、提出者の委員にお聞きしたいと思いますけれども、今、とりわけ在日の無年金障害者の方々が厳しい生活実態に置かれている実情を与党提出者として実態調査できちっとお調べになる、その上で、長勢委員がおっしゃられました、救済としての何らかの方法あるいは所得の方策についても考えていかれるということを今ここでお約束いただけますでしょうか。実態調査を与党委員としてこの委員会が取り組むように進めるということを御答弁いただきたいのですが。

長勢議員 私がお約束をする立場にあるかどうかわかりませんが、今後、検討する手順というものもあろうかと思います。厚生労働省の方で把握しておる実情もさらにじっくり見た上で、必要があればそういうプロセスを経て検討することも必要であろうかと思っております。

石毛委員 その必要があれば検討するというところをもうちょっと明らかにしていただきたいのでございます。

 先ほど、最初の質問に対しまして、長勢委員は、在日外国人の方々は国籍要件がゆえに入りたくても入れなかった、自分の過失によって入らなかったわけではないということはお認めいただきました。そして、厳しい生活実態にあるということも、委員、長い間厚生行政に携わっていらっしゃる大先輩でございますから、当然御存じのことでいらっしゃると思います。

 それを政策的に政治的な判断できちっと立法化していくその必要性を確かなものにしていくためには、私は、附則二条の、後ほど附則二条につきましてもちょっと伺いたいと思いますけれども、この検討事項の中に、例えば、在日の無年金障害者の方の実態調査をこの委員会として、与党の提出者でいらっしゃいますから、お立場は微妙であるということは私も理解いたしますけれども、与党提出者として、理事会に諮るように手だてをして実態を明らかにしていく、そのことをぜひともお約束いただきたいんですけれども、いかがでしょうか。

長勢議員 我々は、この法案を提出しておりますので、現時点では、この法案を成立させていただきたいということが第一希望であります。

 なお、この法案のこの委員会での審議あるいは与党内での検討過程でも今御指摘の問題はあったわけでありますから、検討規定を設けておるところでございますし、検討に早急に入ってもらうように私どもとしても政府に十分要請をしていきたい、このように思っております。

石毛委員 今の検討に早急に入ってもらうようにという委員のお言葉は、大変重要な御意思をお述べいただきましたものとして受け取らせていただきたいと思います。ぜひ、実態調査もきちっとしていただいて、政治的なあるいは政策的な判断として、無年金の在日外国人の障害者の方に対する救済立法をつくっていただきたいと思います。

 このことで質問をしている間に、もう時間がなくなってしまいましたけれども、私は、一九八二年当時、当時の園田大臣が、経過措置の検討も考えられるというふうに言っていたことを思い起こしますと、もう二十数年たってしまっている。この間にたくさん議論がありました。そして、今回の議論です。ぜひとも、先送りしないで、この国会中にでも、私は、無年金の在日外国人の方々、ぜひ救済の対象に加えていただきたい、そのように考えるものでございます。

 最後、残された時間、大変短い時間になりましたけれども、民主党案の中には、対象として在日外国人無年金者を規定しております。その認識の仕方につきまして、簡潔にお述べいただけたらと思います。それで終わりたいと思います。

泉(房)議員 石毛議員にお答えします。

 認識は、石毛議員と全く同じであります。今回の救済対象に在日外国人が入らないのは全く不合理であります。民主党案におきましては、当然のごとく救済をしています。

 また、付加しまして、無年金障害者は、それのみならず、いわゆる未納、未加入と言われる方もおられます。十二万人と坂口試案で言っております。それを前提としても、今回の救済対象、与党では、二万四千、五分の一にすぎません。十二万人全員を対象にすることは当然である、そういった認識のもと、民主党案は作成させていただいております。

 以上です。

石毛委員 少し、もう一分ございますそうですから申し上げたいと思いますけれども、この件に関しましては、昨年の十一月十八日でしたでしょうか、開催されました、日本と韓国との局長級の協議におきましても、韓国の側から、年金を受給できないでいる在日韓国人の方についての年金支給についての要請が出されております。これは外務省から確認をさせていただきました。

 日本の歴史の問題と今の問題、そしてまた、国際的な関係の中でも課題となっているこのことを、ぜひとも早急に解決していただきたいということを申し上げまして、私の質問を終わります。どうもありがとうございました。

鴨下委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時十一分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時三分開議

鴨下委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。山口富男君。

山口(富)委員 日本共産党の山口富男です。

 きょうは、無年金障害者の皆さんの法案の質問に入る前に、まず、私はこの問題での国の姿勢について改めてただしていきたいと思います。

 この無年金障害者、特に学生の無年金障害者の問題では、全国で訴訟が広がっております。三月に東京地裁で判決があり、この十月に新潟地裁で判決がありました。それぞれの中心点で言いますと、東京地裁では、障害に関する保障給付が容易に受け入れられるような立法措置を講じなかったのは憲法第十四条に違反する、新潟地裁は、二十歳以上の学生らとそれ以外の二十歳以上の国民との間で生じた区別は合理的な理由のない差別であり、憲法十四条に違反する、こういう厳しい指摘です。

 特に、この中で、国と私たち国会、立法府の立法不作為が問われたわけですけれども、この立法不作為というのは、ある法律があったりあるいはないことによって主権者である国民の権利が侵害される、そういう明々白々な状態があるときに立法不作為と言われるわけですけれども、今度の場合、紛れもないその実態があったと思います。

 私、新潟の地裁の判決があった後に厚労大臣が出された談話に、それを発表した際の担当部門のメモがついているんですね。それでちょっと驚いたんですけれども、そこのメモにはこう書かれているんですね。未加入者年金訴訟、こういう呼び方なんです。つまり、年金制度があって、そこに未加入だった本人の責任でこうなったんじゃないかというのが、いわば呼称そのものにあらわれているようなものなんです。

 しかし、現実には、前回の質疑で三井理事から質問がありましたように、尾辻大臣自身が学生時代、よく知らなくて入っていなかったという話がありましたけれども、やはり当時、任意の加入でしたから、未加入、そうなったときに、障害を受けたときに障害の給付がないということはほとんどの方も知らなかったと思うんですね。ですから、とても私はこれは未加入者年金訴訟なんという呼び名自体で呼ぶような筋の話じゃないと思うんです。

 それで、新潟地裁の判決を見ますと、強制加入以前の時期に国民年金制度に任意加入せず障害を負った学生たちが、そのために障害年金を受給できないという問題は、非難されるべきでない者が将来にわたり障害年金制度から排除されるという不当な結果だと指摘しているんですけれども、私は、この不当な結果という中身が立法不作為である、つまり権利侵害を受けたというふうに思うんです。

 これから予定されている判決でも、来年の三月には京都、福岡と続いてまいりますけれども、私は大臣に改めてお尋ねしたいのは、無年金障害者の問題が起きた中に、やはり国の責任があった、そして、被害を受けた方々が、障害者の皆さんが解決を繰り返し求めてきたわけですけれども、それに対して、立法府での議論はきょういたしますが、国としての実りある仕事をしなかったという点での責任があるかなしか。この点、まずお尋ねします。

渡辺政府参考人 今回の新潟地裁の判決、先立っての東京地裁の判決の中でさまざまな指摘がなされておりますが、この判決につきまして、国に賠償を求めるという司法判断が最後の結論でございます。だから、政府としても大変重く受けとめておるわけでございます。

 一方、法律的な問題として見ますと、この判決については、立法不作為等をめぐる最高裁判例の内容に照らしまして適当でないという部分もあるなど、基本的な問題があるということで、上級審の判断を仰いでいるわけでございます。

 国としての責任ということについては、立法政策上のその時点その時点でのさまざまな政策判断というものがこれまでも最高裁判例で許容されてきたものというふうに理解をしております。

山口(富)委員 私がこの点を聞きましたのは、立法不作為論を聞きますと国の見解を述べられるでしょうから、無年金障害者の皆さんが解決を求めてきたのに、それに応じた解決の措置をとれなかった、そこに国としての責任があるじゃないかということを聞いているんです。この点は大臣に答えていただきたいんです。

 私が改めてこのことに思いをいたしましたのは、先日、福岡地裁で同様の判決の結審があったんです。そのときに、原告の方が重度の障害者で法廷に立てませんから、お父さんがどうしてもその気持ちを代弁したいということを求めたんですが、裁判所は認めなかったんです。結審した後、傍聴席の最前列にいたお父さんが、聞いてくれということで、事実上の自分の気持ちを訴えたんですね。そのときに私感心しましたのは、裁判官はだれ一人席を立たずに、じっとその訴えを聞いていたというんです、約十分間。

 どういうことを訴えたのかというと、ちょっと読んでみますと、希望に満ちた学生時代に重い障害者となった不幸と、障害基礎年金を受給できない無年金障害者という二重の苦しみを背負っています、自分の責任とは言いがたい状況で息子たちは苦しんでいるんです。私、間近に見てきて、親として本当に心からの発言だったと思うんです。そのときに、こういう例を挙げたんですね。小泉首相が学生時代に未加入だったことについて、何の問題もないと言っている、ところが自分たちは、払っていないのに、さもおまえたちが悪いと言わんばかりの国の対応、矛盾しているんだ、そういうことを訴えているんです。

 この点でも、やはり尾辻大臣、立法不作為については法務省も含めていろいろな見解があるでしょうから、その点はおくとしても、少なくとも、この無年金障害者の皆さんが訴えている現状を打開できなかったという責任は国にあるんじゃないですか。

渡辺政府参考人 簡潔に一点だけ補足させていただきたいと思います。

 年金制度の原則の中でどのようなことができるかということにつきましては、六十年改正での国会での修正による附則検討措置を踏まえて、平成元年の改正の措置を講じさせていただきましたが、さらにそれ以前の任意加入時代に未加入でありました方々についての取り扱いは、年金制度の原則の中でなかなかいい知恵が出せなかったということについて、率直に申し上げたいと思います。

山口(富)委員 では、大臣には次の質問でまとめて答えていただきますから。

 今、率直に、そういう手が打てなかったということについては局長が認められました。

 それで、二〇〇二年に坂口試案が出たときに、この末尾で「無年金障害者の生活実態は推測の域を出ず、速やかに実態調査を実施して、これらの人達への対応を開始しなければならない。」と言いました。その結果生まれたのが、私ここに持ってまいりましたけれども、厚労省が発表しました障害者の生活状況に関する調査結果というものです。

 今、無年金障害者の皆さんがどういう生活状況にあるのかということを知る上で、はっきり申し上げまして、唯一これしかありません。しかも、この調査は、非常に苦労をされて調査されているんですけれども、かなり障害者の皆さんのプライバシーにかかわってきます、職業はどうだとか、収入はどうだとか。それを一人一人、恐らく、ケースワーカーの方を含めまして、信頼関係の中でかなり詳しい回答を得た結果だと思うんです。

 この結果を見てまいりますと、本当に驚くべき生活状況だなというふうに言わざるを得ません。

 例えば、身体障害者の方で、御本人の年収なんですけれども、無年金の場合は、五十万未満の方が三七・九%、それから五十万から百万未満が一二・一%。結局、半数の方が年間を通しても百万未満の収入だということなんですね。

 それから、精神障害者の方ですと、年金のない方は、これはデータの集め方が違いますので本人の年収でなく月額ですが、五千円以下が二一・五%、一万までが三・九、五万までが一七・五、十万以下が二一%、二十万以下が二四・六%。今の私たちの普通の生活、そして収入を考えても、とてもじゃないけれども暮らしていけない実態がここにあると思うんです。

 その結果、何が起こったのかというと、結局、高齢化したお父さん、お母さん、それから兄弟の力をかりなければ日常的な生活を営むことができない、そういう事態に立ち至ったわけですね。

 それで、大臣に二点確認しておきたいんですが、先ほど局長が答弁しましたけれども、一点は、やはりこういう状態に対して、国としてのきちんとした対応策が、はっきり言って少なくとも以前の分についてはとれなかったわけですから、そこについての責任があるのかないのかという点。局長は、いろいろな言い回しはありましたけれども、少なくともあるというふうに私は受けとめました。

 もう一点は、障害者基本法に、すべての障害者は、個人の尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい生活を保障される権利を有すると第三条で定められているんですけれども、一体、今の無年金障害者が置かれている状態というのは、この障害者基本法が定めております基本的な権利が保障された状態と言えるのかどうなのか。

 この二つについて認識を問いたいと思います。

尾辻国務大臣 まず、一点目の御質問でございますけれども、これは、局長も答えましたように、私どもに反省すべき点がある、このことは申し上げたいと存じます。

 それから、二点目でございますけれども、障害者基本法は障害者施策の基本となるものであり、厚生労働省においても、すべての障害者の方が誇りと役割を持って地域で自立した生活を送ることを目指して積極的に取り組まなければならないと考えております。これが基本だと思っております。

山口(富)委員 ですから、大臣、その基本が、この無年金障害者の今の生活状況を見た場合に、果たして権利がきちんと保障された状態にあるのかどうなのか。その点についてはどうお考えですか。

尾辻国務大臣 大変難しい御質問で、あるかないか答えろとおっしゃると、建前でお答えせざるを得ないわけでございまして、私どもとしてはそうなければならないというふうにお答え申し上げたいと存じます。

山口(富)委員 この間の質疑で随分かみ砕いてという話が出ましたから、私の方でかみ砕いて言いますと、なければならないということは、そういう状態にないからなければならないんだということだと思います、建前を脱いでいただきますと。

 私、この厚労省がやりました調査、本当に大事な調査だと思うんです。ぜひ大臣にも読んでいただきたいんですが、これを読んで、一点、本当に悲しい気持ちになったところがあるんです。

 それは、無年金障害者の皆さんに不安や悩みはどこにあるのかと聞いた項目があるんですね。一番どこに不安や悩みがあるかというと、御自分のことじゃないんです。「家族が病気になること」、これは五三・八%。私、わかるんですね。なぜかといいますと、多くの障害者の方は、やはり家族の支えがなければ、生活、収入上も経済的にもやっていけませんから。ですから、一番最初に考えるのは、やはり家族がどうなっちゃうかなということだと。

 私、この一つをとってみても、この障害者基本法に言っている障害者が人間らしくきちんとした生活ができるという権利を保障するというところが、やはり本当に政治に求められている大事な仕事だと思うんです。

 最後に、もう一点、国の対応について聞いておきますが、坂口試案で「無年金障害者は本人はもとより、その扶養者である両親をはじめとする親族等は高齢化が著しく、看過できない事態に立ち至っている。」という認識を表明されたんですけれども、ここでおっしゃっている看過できない事態というのは一体何だったんでしょうか。

塩田政府参考人 障害を持つ方が地域で暮らす上で、御家族がいる間は、御家族が苦労しながら地域で暮らす、いろいろなサポートがあると思いますが、仮に家族が亡くなったとき一人で自立して地域で生活していく上では、いろいろな共助の仕組みが必要だろうと思います。

 例えば、地域でいろいろな働く場を得て自立して働けるような環境整備でありますとか、いろいろなサービスを受けて地域で暮らしていけるような制度づくりとか、そういった制度の必要性を述べられたものと理解をしているところでございます。

山口(富)委員 確かに、指摘されたように、家族のサポートも必要です。社会的なサポートも必要です。それをやっていく上で何よりも必要なのは、政治的、政策的なサポートなんですね。

 国が、はっきり言いまして、この点では十分イニシアチブを発揮できませんでしたから、私たち立法府の責任として、今度二つの法案で対応していこうというわけですけれども、今の事態というのは、司法、判例の分野から立法不作為が問題になっております。それからまた、無年金障害者の皆さんから本当に切実な要求が出されておりますから、それを踏まえて、無年金障害者問題を解決する筋道をつくっていく大事な立法になると思うんです。

 議員立法ですから、きょうの質疑の中でのやりとりで立法趣旨も明確になりますし、また、今回いろいろな措置をとって、その後、残された課題は一体何なのかというところも、やはり出発に当たっては共通の認識にしておく必要があると思うんです。

 そういう立場から、まず与党案について何点かお尋ねしたいと思うんです。

 与党案は、第二条で、特別障害給付金の対象者をいわゆる学生と被用者の配偶者に絞っているわけですけれども、この二類型に限定した理由は何でしょうか。

長勢議員 与党案におきましては、おっしゃるとおり、対象者を学生、被用者の配偶者に限定をいたしております。

 この制度は、繰り返し申し上げておりますが、国民年金制度の発展の過程の中で、つまり任意加入から強制加入に移ってきたという中で、その加入形態の違いによって、結果として障害基礎年金等を受給していない、こういう問題を解決するために議論してきた経過でございます。

 こういう方々について福祉的な措置を講ずるという形で今提案を申し上げておるわけでございますので、当委員会でもるる議論になっております外国人の方々等々、今申し上げました類型に該当しない方は、今回の対象からは外して御提案を申し上げておるということでございます。

山口(富)委員 二つ目にお尋ねしたいんですが、今長勢委員が、在日外国人等を今回の法案では外しているというふうに話されましたけれども、この附則の第二条を見ますと、「障害を支給事由とする年金たる給付を受けられない特定障害者以外の障害者に対する福祉的措置については、」若干外しますが、「今後検討が加えられるべきものとする。」というふうになっております。

 ここでいう、今後検討していくというのは、今回の対応案で事足れりとする立場ではないということで理解してよろしいんでしょうか。

福島議員 附則の二条についてのお尋ねでございますので、お答えさせていただきます。

 附則二条の検討規定に基づく検討の対象は、本法律案の対象となっております平成三年三月以前において任意加入であった学生、また昭和六十一年三月以前において任意加入であった被用者の配偶者以外の、障害基礎年金等を受給することができない、例えば在日外国人の障害者の方々等とすることを想定いたしております。

 今後さらに議論を深めていく必要がある、そのように思っておりますし、結論が今からあるというわけではありませんけれども、真摯に努力をいたしたいと思っております。

山口(富)委員 この附則の第二条にあります「特定障害者以外の障害者」というところに在日外国人等が含まれるということは確認できたと思います。

 それで、次にお尋ねしたいのは第四条なんですけれども、福祉的措置としての給付金なんですが、障害等級一級で五万円、二級で四万円、月額ですけれども、そういうふうになっております。私、先ほど、無年金障害者の皆さんの、身体障害、精神障害の皆さんの年収、月収の問題を申し上げましたけれども、五万、四万という水準で、今の無年金障害者の皆さんの生活状況について、これで十分という認識なのかどうか、この点もお尋ねしておきたいと思います。

桝屋議員 特別障害給付金の金額についてのお尋ねでございますが、現在の無年金障害者の生活状況からいって、本当にこれで十分かということであります。十分かと言われると、決して十分とはもちろん私個人は思っておりません。

 ただ、問題なのは、きょうずっと議論しております福祉的な給付金として制度を考える場合に、これも与党の中で随分議論しましたけれども、では、どういう整理をするのかということでありまして、既に言われております、現在の基礎年金の国庫負担分という線があるではないかと。一級で四万、二級で三万、約四万ぐらいでしょうか、そうした線もある。あるいは、今の福祉的な措置の中で最も高い特別児童扶養手当、一級で五万九百円、二級で三万三千九百円、こういう水準もあるではないかということで、随分議論いたしましたけれども、結果的には、今御指摘がありましたように、一級五万円、二級四万円、一・二五の差でありますけれども、こうした整理に落ちついたわけであります。

 結果的には、確かに基礎年金の水準よりも低くなっておりますけれども、もう一方、やはり年金を受給していない障害者の方と、それから、ちゃんときちっと年金を支払って、制度に乗っかって年金の給付を受けている方との均衡ということも考えますときに、そうした声もあるのも事実でありますから、現在の生活実態は十分考えながらも、福祉の増進に寄与するという観点で、この数字でいいのではないかということに落ちついた次第でございます。

山口(富)委員 十分でないというお答えでしたから、これは改善の余地があるという認識だと思うんです。

 それで、先ほどいろいろ総合的に勘案するという話があったんですけれども、結局、福祉的措置という形をとりますのでそういう問題が生まれてきます。私たちは、年金制度の枠内で最低保障年金を導入する中で解決を図るという立場ですけれども、これは考え方の違いですから、少なくとも今度の法案についていいますと十分でないということは今の答弁で承りました。

 それで、見直しの問題なんですけれども、当面、四万、五万で出発するとしまして、当然、実態に応じて引き上げ等が問題になってくるわけですが、この法案でいきますと、給付金の増額については一体どの条文で見直しが担保されているのか、それを確認しておきたいと思います。

桝屋議員 今の給付水準についてのお尋ねでありますから、この水準の今後の水準をどうするかということ、それを条文はどこで読むかと。

 実は、その条文はないわけでありますけれども、これは当然、他の制度との整合性というものを我々は認識をいたしておりまして、その上で、今種々申し上げたレベルを勘案して五万円、四万円という設定をしたわけでありますので、当然ながら、生活実態というものに対応して、購買力といいましょうか、そうしたものについて物価スライドをしなきゃならぬというふうには理解しておりますが、年金本体ではないということでありますので、物価スライドをさせるということではないかというふうに理解しております。

山口(富)委員 その物価スライドがここ数年全部マイナススライドになっていますから、その点では、私は、増額の方の担保はどこでとるのかという話をしましたので、法文上はどうも明確でないようですけれども、しかし、立法趣旨としてはそのことを含むんだという答弁でしたから、そこは、今後の具体化の中で必ず実態に応じた引き上げの検討というものもやっていただきたいというふうに思います。

 次に、民主党案についてお尋ねしますが、民主党の提案者の立場からいいますと、今度の与党案については、どういう点での改善が必要なのか、あるいは残された課題になっているのか、これはどういうふうにごらんになっていますか。

泉(房)議員 御答弁いたします。

 今回の与党案につきましては、まず、対象者の問題、そして支給金額の問題、ともにまだまだ不十分だと思います。

 この問題は、支援を受ける側から物を見るべきであります。支援を必要としている人に必要な支援を。支援を必要としている方は、無年金障害者だけでも十二万人おられます。今回の与党案につきましては、二万四千人にすぎません。

 また、必要な支援というものは、まさに今の障害基礎年金であります。それが、障害者の所得保障の見地から、現時点での到達点であります。これを六割に減らすという理由はなかろうと思います。不十分だと言わざるを得ません。

山口(富)委員 与党案の提案者にお尋ねしたいんですけれども、今、民主党案の提出者の方からそういう指摘がありました。この点はどのように考えていらっしゃいますか。

桝屋議員 先ほどから委員から給付水準について種々お話がございましたけれども、先ほどから説明しておりますように、他制度との、諸制度との比較考量を行いながら今回の設定をしたわけです。

 性格についての言及もありましたけれども、私どもは、今回はあくまでも特例的な福祉的な措置だ、こう思っておりますから、給付金の性格をすぐに直ちに変えるということはもちろん想定をしておりませんし、あくまでも年金の本体とは別の制度として、しかしながら、年金に起因する問題を何とか解決したいという福祉的な措置をとるわけでありますから、そういう意味では、物価スライドがいかにも適切でないように言われますけれども、これは、やはりそうした福祉的措置としては、物価スライドというのは私は妥当な考えだろうというふうに思っております。

 委員のお気持ちも十分理解をできるわけでありますが、制度は制度として続けていかなきゃならぬ、このように思っております。

山口(富)委員 私は、物価スライドと申し上げましたのは、現実にはここ数年これがマイナススライドになっているから、そのことを念頭に置いて対応しなければいけないということを申し上げたんです。

 さて、今度の与党案につきましては、給付の対象の問題、それから給付金の額の問題も、実態に応じて今後の検討がやはり必要であるということが確認されたと思うんです。

 それで、この法案では、施行が来年の四月一日になっております。常識的に考えまして、新たな取り組みを来年の四月にやろうとすると、これは大変な仕事になるわけですね。私は、今度の仕組みですと、国が対象者の認定と給付金の支給の事務を行うということなんですけれども、市区町村がその申請の最初の窓口になるというふうに伺っています。そうすると、これはいろいろな問題が生まれてくると思うんですね。

 私は市区町村には直接お伺いする機会がなかったんですけれども、社会保険庁の方に尋ねましたら、例えば障害者の年金の問題でも、多少の点字で見られるものもあるようなんですが、特別その対応策は講じていないんだというんです。となりますと、市町村の窓口で、障害を持った方々が新しい制度ができたということで申請に来るということになりますと、当然、初動ですから手厚い対応が必要になってくると思うんです。

 そのためには、私は、障害者団体とも、どういう円滑な事務が必要なのか、それから必要な場合は申請事務の簡便化もやるということも、いろいろな問題が生まれてくると思うんですが、これについては厚労省としてどういう考えを持っているんでしょうか。

青柳政府参考人 今回の手続等についての御懸念が示されたわけでございます。

 ただいまのお尋ねにもございましたが、無年金障害者の方の障害認定事務は、私ども社会保険庁でやらせていただくわけでありますが、これについては、現行の障害基礎年金の認定事務とほぼ同様の仕組みになるということから、基本的には問題はないと考えております。

 それから、市町村の受け付け事務についても障害基礎年金とほぼ同様の取り扱いとなるということに加えまして、市町村に対しましては、事務処理基準等の事務処理要領をきちんと定めて、これにより円滑な事務処理を行っていただけるように、私どもも工夫をしてまいりたいというふうに思っております。

 また、手続についての周知、広報の御懸念もございました。

 特別障害給付金の対象者が、私どもとしては現時点で個別には把握ができない現状でございますので、この給付金の制度そのもの、それから手続についての広報というのを情報提供していくことが極めて重要であるということは、私どもも認識をしておるつもりでございます。

 このため、考えておりますのは、支給要件あるいは申請先等の手続面の周知につきまして、政府広報や社会保険事務所、市町村を通じたいわゆる行政面の周知、広報に加えまして、障害者の方と接することの多い障害担当部門とも連携をいたしまして、相談支援事業等の障害者の福祉サービスの事業所、施設、それからお尋ねにもございました障害者団体の方々、こういった関係者の方にも広く協力を求めて、情報が行き渡るように積極的に取り組んでまいりたいというふうに考えております。

山口(富)委員 最後になりますが、大臣に一点質問いたします。

 大臣は、新潟地裁の判決の際の談話の末尾で、国会での御審議がありますから、「その審議を踏まえ、適切な対応を図っていきたい。」というふうに結ばれています。この二日間審議してきているわけですけれども、私は、この審議を通じまして、立法府の責任として無年金障害者の解決に当たるという立場をとっているわけですけれども、国として、やはり政治的な解決の道を探るべきですから、私は、今、一連の裁判での訴訟で控訴をやっておりますが、この取り下げも含めまして、審議を踏まえた適切な対応を図っていただきたい。この点、答弁をお願いします。

尾辻国務大臣 訴訟につきましては、今後、法務省ともよく相談しながら対応してまいりたいと考えます。

山口(富)委員 時間が参りましたから、終わります。

鴨下委員長 次に、阿部知子君。

阿部委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。

 本日並びに一昨日、この障害者無年金問題に関しまして、二つの議員立法による提案がなされ、審議が進められてまいりました。そして、ただいまの山口委員の御指摘にもございましたように、国民の社会保障行政をつかさどるところの厚生労働省は、この間の新潟地裁判決あるいは東京地裁判決について控訴をなさるということで、逆に、こうした議員立法がここで論議されている一方で、本当の意味で、社会保障行政を担う厚生労働省あるいはその所管の最もの責任者である尾辻大臣が、そもそもこの無年金障害者問題についてどのようにお考えかということを、私は冒頭お尋ねさせていただきたいと思います。

 そして、無年金障害者といわず、尾辻大臣に、まず、国民に対してといいますか我が国に住まいされますすべての皆さんに対して、年金とは何ですかということをわかりやすく大臣の言葉で御説明ください。普通に聞いて、例えば若い人が、それなら自分も入ろうと思えるような言葉でお願いします。

尾辻国務大臣 年金につきましては、突然のお尋ねでありましたので今思いつく言葉でお答えしたいと思いますけれども、国民の皆さんが人生設計をつくられるに当たって一番大切なものの一つ、こういうふうにお答え申し上げます。

阿部委員 なかなかそれでは、若い人たちも含めて、人生設計はいろいろございますから、本当にぴったりフィットで伝わるのかな、どうかなということを私は懸念します。

 例えばですが、あなたがけがをしたり何らかの予期せぬ障害などを持たれたときでもきっちり生活していけるよう、あるいはお年を召されて現実に収入がなくなってもやはりこの社会で一緒に安心して暮らしていけるようなものとして年金制度が考えられていますから、どうかみんなで支えていきましょうというふうに、もう少し踏み込んでぜひここは語っていただきたいのです。

 なぜならば、今、国民の中にアンケートをとりましても、国会に今何を一番期待しておるか、あるいは行政にでもいいです、何を一番期待しておるかというと、年金問題が断トツにニードが高いというか、関心が高いわけです。

 そして一方では、年金の空洞化、この委員会でも追って集中審議がまたなされることと期待しておりますが、やはり今本当に少子高齢社会だからこそ、この社会保障政策、わけても年金が重要議題であると思います。

 そして一方で、無年金という状態を生み出さないこと、あるいは無年金という状態でお暮らしの方たちを何とかその状態から改善させていくこともまた同様に重要だと思います。

 ここで、恐縮ですが、渡辺年金局長に伺います。

 渡辺年金局長の大先輩で、小山進次郎という年金局長がおられます。国民年金制度の発足当時の昭和三十四年に、ここにございます「国民年金法の解説」という御本を書かれてございます。

 現年金局長は、これをお読みになったことがおありでしょうか。

渡辺政府参考人 その本は存じ上げております。

 最近、この半年で読んだことがあるかという記憶の限りでいえば読んではおりませんが、若いころ読ませていただいた記憶のある貴重な本であると理解しております。

阿部委員 私は、この二日間の論議と、特に厚生労働省サイドの答弁の数々を聞きながら、国民年金制度とはどのような理念に基づいてつくられたのであるか、この御本はそれを生き生きとあらわしていると私は思いますので、もし、六カ月前、記憶にないとおっしゃるのでしたら、今からでも遅くはない、ぜひとも大臣も渡辺局長もお読みいただきたいと思います。

 少し皆さんにも御紹介させていただきます。

 「国民年金制度は国民の強い要望が政治の断固たる決断を促し、われわれ行政官のこざかしい思慮や分別を乗り越えて生まれ出た制度である。」私は行政官を小ざかしいとは私の立場であえて言おうとは思いませんが、一つには、政治の決断、断固たる政治の決断、そして国民の強い希望ということです。

 また、「国民皆保険のいまだ完成を見ぬうちにこの制度の実施に踏み切ったことから生ずる若干の無理が、この制度の内容にある程度の物足りなさを残していることは否定できない」。先ほど来の御答弁ですと、国民年金制度の発足当時から云々かんかんであったという御答弁が余りにも多く、この国民年金制度は不十分ながらもとにかく発足したと。その原点というところがあたかも言いわけに使われているように私は思います。

 引き続いて、多少の省略の後、「いかにすれば、国民の要望と政治家の決断がぴったりと合い、かつ、私たち社会保障行政に従事している者も方向としてはかねてから念願していた国民年金制度実現の可能性に、具体的な形を与えることができるか」を求めていくと。

 そして、実は、この本をつくりますときに、二カ月間残業に次ぐ残業で、監修料などもらわずにこの本はできております。本当にこれはすばらしい内容です。その当時、過労で倒れられた方もいるので、私は、そういう賃金のない不払い残業には賛成いたしませんが。

 そして、「国民年金制度が現在生成発展の途上にあることを考え、どの点が問題であり、かつ、どういう方向に解決さるべきか、を許される限り明らかにするに努めた。」すなわち、ここにある問題意識は、現状の欠けたるところをどのように進めていくか。そして、現状の欠けたるところとは、やはり現実にこの国に居住されてさまざまな生活を営む方が、例えば先ほど申しました年金を得られないような状態になった場合にどうするかということも含めて言及してございます。

 章立ても、拠出制によるところを担当された方と、無拠出制。盛んに、拠出していなければ権利がない、だから、与党側提案ですが、これは年金の制度内でなくて福祉的措置なんだと。もともと拠出なければ受給なし的な観点をひたすらおっしゃいますが、既にこの当初の章立てでも、無拠出制ということが分けて書かれる。

 と申しますのは、社会保障制度は、その年金負担料、保険料に耐えられない人をも含めて社会保障していかなければならないんだという強い思いがここにあるからだと思います。そうしたことを前置きさせていただいて、前置きが長くて恐縮ですが、冒頭お伺いいたします。

 まず、我が国に一体どれくらいの無年金者がおられるのか、お答えいただきたいと思います。

青柳政府参考人 無年金者の数についてのお尋ねでございますが、私ども実は承知しておりますのは、一つには、六十五歳以上の方でありまして、社会保険庁で把握をしている保険料の納付済み期間と免除期間を合わせた期間が二十五年に満たない、こういう方について、会計検査院のせんだっての報告の際に把握をした数字がおよそ四十万人ということでございます。

 しかしながら、この人数は、裁定請求をしておられる方や裁定請求を行っていない方が含まれていることや、社会保険庁において把握していない期間等が含まれているというようなさまざまな制約もございまして、正確にこれが直ちに無年金者の数にはならないという制約を技術的には持っております。

 申しわけありません、もうちょっとつけ加えさせていただきます。社会保険庁が保有しております加入者記録は……(阿部委員「もうそれは聞きましたから」と呼ぶ)はい。国籍や学生といった情報がないということや、被用者の配偶者である方の昔の婚姻の記録というものがないというようなことから、無年金者の全貌というものを把握するのには技術的にちょっと制約があるということだけ御理解賜れればと思います。

阿部委員 逆に、この手法で、一つは、先ほど来述べられたいろいろな加入期間をいろいろなところに問い合わせて合算すれば出てくるであろう二十五年を満たす人はここから抜ける。しかし、もともとこの調査の枠内からはなから抜けている人がいるわけですよね。そこを明確にしていただけませんか。

 この調査では、冒頭から、当初から、最初から、そもそも把握されない人たちがいるはずですが、いかがでしょう。

青柳政府参考人 今の議員のお尋ねが、今回問題になっております在日外国人の方々の、例えば老齢や障害の無年金の方々という御趣旨であるとしますれば、先ほどの数はあくまでも老齢年金のいわば受給資格に結びつかない方ということでございますので、今お話の出たような方々が含まれておらないということは事実でございます。

阿部委員 在日の障害者のみならず御高齢者の無年金状態も、今の数の中にははなから含まれておりません。

 そこでお伺いいたしますが、先ほども長勢提出者に対してたしか石毛委員が御質疑でございましたが、実態調査ということについて私も厚生労働省にお伺いしたいです。

 今、社会保険庁のツールではわからない、ない。在日外国人の無年金問題、私は、無年金は障害でも高齢でも発生すると思いますが、この在日外国人の無年金問題について何らかの実態調査は行われたのか、お伺いいたします。

渡辺政府参考人 本日の、ここに至りますこの時点、そして与党におきましてこの関係の御協議なり御検討がなされているこの一年ぐらい、半年ぐらいの間、私ども、在日外国人の方々の無年金者実態調査というものを行った事実はございません。

 先ほど御答弁申し上げましたように、仮に御可決あるというようなことになりますと、検討規定というものもございますので、その検討の中で必要があらば実態について把握の努力をするということを申し上げた次第でございます。

阿部委員 既に厚生労働省に寄せられた資料の中からも、例えば二〇〇三年の七月二十八日に、在日外国人無年金障害者のアンケート調査、四十七名分を、議連、無年金障害者の救済を考える議員連盟で提出してあるはずでございます。お目通しがないとすれば、ぜひお目通しをください。

 それから、いま一つ、各自治体が独自に特別給付金ということを施策で出しておられます。在日外国人障害者に対して六百六自治体、在日の御高齢者に対しては七百四十四自治体が特別給付を行っている。この数は多少は変動すると思います。そして、加えて、国に対しても、きちんとした施策を行うように、例えば、全国知事会、全国市長会、十三都市国民年金主管部会、全国都市国民年金協議会というところも、要望を都度、毎年行っておられると思います。そうした自治体の御協力を仰ぐことによって、自治体は給付金を出しているわけですから、無年金の、この場合は在日外国人そして障害のある方も含めて実態は把握できると思いますが、ここで尾辻大臣に二つお伺いいたします。

 そのような自治体から寄せられた要望、とにかく自治体は特別給付金を出してその方たちを何とかしなくちゃいけないとしておられて、しかし、これは本来的に国の責任もあろうということで要望が出されている。この要望はどのように処理されてきたのか、また、これから大臣として、この間、新たに御就任でございますから、どのように受けとめていかれるのか。

 そして二点目は、そうしたところの御協力を願えば現状把握することは可能であるにもかかわらず、してこなかった、そのことについて、これから大臣の指揮下に実態把握をしていただくことをお約束いただきたいですが、いかがでしょうか。

渡辺政府参考人 先ほど、在日外国人の無年金障害者の方を直接対象とした実態調査というのは最近行っているという事実はないと申し上げました。他方、今先生御指摘のとおり、各自治体がどのような給付金事業、手当事業を行っているか等々については、先ほど障害保健福祉部長が答弁申し上げましたとおり、さまざまに調査をし、承知しているところでございます。

 ちなみに、同様のことでございますが、部長の答弁にもありましたように、直接、手当事業を行っている地方自治体から、障害者の方、またその方の属性等々について国がその情報を聴取する、統計的にいただくということにつきましては、御本人の御同意もないままに行うことは個人情報の不当な活用ということの指摘もございますので、そういう難しい点をどのように回避しながら、検討なり議論の必要に応じた実情把握というものが可能なのか、こういう点を検討してまいりたいと思っております。

阿部委員 御本人の同意をいただくのは当然のことですから、ここでそのような言いわけに使わないでいただきたい。

 私が伺いたいのは、把握しようとする意思があるかどうかであります。そして、そういう意思にのっとって、もちろんプライバシーですから、御協力をいただくわけです。ちなみに、そういうことをおっしゃるなら、今社会保険庁は、沖縄において、その方の収入に至るまで地方自治体に問い合わせることを可とする行政を推し進めておられるわけです。一方ではプライバシーもはがし、一方ではプライバシーを理由になさるのは、隠れた意思があるとしか思えません。実態を把握してこそよい行政ができるとは、何度も言いますが、この大先輩も繰り返し述べておられます。きちんとした厚生労働行政を恥ずることなくやっていただいてこそ、本当にこれから国民が安心できると思います。

 以上は申し添えましたが、大臣に重ねてお伺いいたします。把握なさる意思がおありや否やです。

尾辻国務大臣 実態の把握に努めてまいります。

阿部委員 ありがとうございます。

 先ほど石毛委員のお話にもございましたが、京都で訴訟を起こされている在日外国人無年金者の方のみならず、極めて二重、三重の苦の中に生きております。民族差別もあり、おまけに身体に障害を持つ場合もあり、あるいは御高齢でもあります。早急な調査をお願いしたいと思います。

 そしてもう一方、既に、一九九一年のことでございますが、在日外国人の、特に在日韓国人の法的地位に関する協議ということが日本と韓国の間で開始されて、十二回を経過しております。私がこれを伺いますのは、今回の与党案でも在日外国人の障害者も高齢者も救済されませんので、あらゆる手だてで現実にそこにお困りの方に施策していくための一つの道として、お伺いを申し上げるものです。

 この十二回にわたる会合の中で、韓国側から、無年金状態に放置されている在日韓国人障害者、高齢者に対する救済というのが、計十回にわたって、すなわち十年以上要請されているかと思います。このことについて厚生労働省としては都度どのように対応してこられたでしょうか。

渡辺政府参考人 御指摘の日韓局長級協議でございますが、厚生労働省は出席しておりません。第一回、第六回を除き、同協議においてこの問題が触れられたかという点でございますが、外務省から確認をさせていただきましたところ、そのとおり、その一回、六回を除き、在日韓国人の無年金障害者及び高齢者、あるいは時によりそのいずれかという問題が提起されたと聞いております。

 協議におきましては、先生御承知のとおり、日本側からは、年金の問題は大変痛切な問題であるが、拠出を前提とする年金制度の枠組みの中では、法的な制約もあり、残念ながら御要望に沿うことは難しい旨の当方の立場を韓国側に回答してきているところでございます。

阿部委員 厚生労働省側が出席しておられないということ自身、極めて私は不誠実だと思います。相手方の要求される、例えば文部科学省は、在日の子弟の教育についての問題がかかわりますから、その交渉の場に出席しておられます。もし今の局長の御答弁のとおりであれば、私がきのう外務省から得た情報とは違いますが、ここで真偽のほどを詰めても仕方ありませんので、尾辻大臣にお願い申し上げます。

 これは極めて大切な日韓の今後の信頼関係にもかかわってまいります。そして、懸案とされておりますこの在日外国人の高齢者、障害者問題をきちんと、やはり相手方の要求、現状で我が国の進んだところ、また足らざるところ、そごのなきようお互いが、やはり協議ですから積み重ねでございます、そうした場に厚生労働省としても積極的に臨んでいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

尾辻国務大臣 当然のことでございますから、そのようにいたします。

阿部委員 私は、もし今渡辺局長がおっしゃったような内容であれば、やはり内閣というものの質が問われると思います。今、私どもの国と北朝鮮とは、さまざまに拉致問題で対応をしております。誠実な対応を求めております。そして、誠実でないことを私どもはやはり心外と思い、さらに求め続けていくわけです。これはいずれの二国間においても同じだと思います。ぜひ、恥ずることのないような国としての対応をしていただきたいと思います。

 そして、私はここに、尾辻大臣に、二人の、坂口大臣も含めればお三人になりますが、厚生労働行政にかかわられた諸先達のこの在日外国人の無年金障害者あるいは御高齢者問題に関する発言をあえて紹介させていただきます。

 昭和五十四年四月九日、社会労働委員会で橋本国務大臣であります。当時、いわゆる一九八二年の難民条約の締結に前後いたしまして国際人権規約ということが問題になっており、人権規約は外国人を含むすべての人々に対して社会保障についての権利を認めるという規定と、その実現については漸進的に達成することを規定されておるわけであります。そして続けて、「国際人権規約の趣旨に沿うように努力していくつもりであります。」と結ばれています。

 これは、少しなりとも進歩させていくように努力するというお話でございます。

 それから、同じように昭和五十六年二月二十八日、予算委員会における園田厚生大臣のお話ですが、「韓国から来た人、特にいまのような場合は、不可抗力で本人の責任はないわけでありますが、そこに経過措置というのが出てくるわけであります。」

 これは、先ほど来問題になっている、なぜ経過措置がとられなかったのかということに対して、当初、園田厚生大臣はとるおつもりでありました。「年金法の改正の中でそういう問題は考えていかなければならぬと思うわけであります」と。「内国民と同様の資格を得られた方々に対する」、これは日韓の協定に基づくものですが、「経過措置でありますから、それはなるべく早い時期にいまの御趣旨に従ってやります、」と。なるべく早い時期から二十数年を経過しております。

 きょうの審議も私で最後になりますし、与野党案の、与野党と言ってはおかしいでしょうか、長勢議員の御提案とそして民主党の御提案の大きな差は、この在日外国人障害者、そしてもう一つ言わせていただければ、私は在日外国人御高齢者の問題だと思います。

 前橋本厚生大臣あるいは園田大臣、そして坂口試案というものも、私は一定、これを解決していこうという思いにあふれたものだと思います。残された課題も含めて、最後に尾辻大臣に御決意のほどを伺いますが、この後どのように、この御高齢化を重ねられる在日の韓国、中国あるいは朝鮮の方々、そしてわけても障害をお持ちの方々などにどのような手だてで施策をなさるお考えであるのか、お伺いしたいと思います。

尾辻国務大臣 先ほど韓国との協議についてのお尋ねもございまして、とりあえずお答えいたしましたけれども、改めて、二国間の外国との協議でございますから、その都度さまざまな協議がなされたと思っております。厚生労働省も真摯に取り組んできたものだとは思っております。そしてまた、今後も、先ほど申し上げましたように、当然のことでありますから、きっちりした協議を続けていきたいということを申し上げたところでございます。

 それから、ただいまの御質問でございますけれども、本法案が成立されれば、さまざまな問題はまだ残ることは確かでございますから、附則の検討規定の趣旨を踏まえつつ、今後の対応はきっちりとしてまいりたい、こういうふうに考えております。

阿部委員 大臣には、日韓のお互いの交渉の場、あるいは無年金の在日外国人も含めた障害者の方たちの実態、あるいは無年金の御高齢者の実態調査を先ほどお約束いただきましたので、事態が進展することを心より期待いたします。この方たちは、国籍条件によって社会保険の中の医療保険もお持ちではなかった、あるいは障害者手帳をとると強制送還されるかもしれないという不安も抱えておられた、本当に息苦しい、生きがたい社会の日本だったと思います。重ねてお願いいたします。

 長勢委員にお願いいたします。

 坂口試案においては、「福祉的措置をとるためには立法化が必要であり、法制上からも対象者は無年金障害者をすべて同様にとり扱うことが妥当である」という御意見が述べられております。先ほど来繰り返しになるからということもあえて無視いたしまして、この坂口試案とのずれといいますか、提案者としてのお考えは、坂口試案のここの部分についてはどのようでありましょうか。福祉的措置をとるにはすべての障害者、無年金の問題を一緒に解決しましょうというのが坂口試案でございました。

長勢議員 坂口前大臣の一つの御見識は、我々も検討の過程でるる議論してきたところでございます。

 再三お話をいたしておりますとおり、拠出を前提とする年金制度との均衡、またほかの方々との均衡等々もいろいろ考え、結論的には、年金制度の発展過程において生じた無年金障害者の問題の解決ということで今回の提案をさせていただいておる次第でございます。

 ただ、そういう意味で先生の今の御意見と意見を異にするわけでございますが、そういう議論も与党内でもたくさんあった経過にかんがみまして検討規定を置いた次第でございまして、ぜひ御理解を賜り、今後の検討を進めさせていただきたいと思います。

阿部委員 年金制度そのものがこれからますます国民にも重要な課題になってくるというか、一番関心の高いことでございますから、本日の審議、私も必ずしも今の長勢委員の御意見に賛同するものではございませんが、そしてまた民主党の皆さんには質疑をできなかった非礼をおわびいたしまして、しかし一歩国民年金制度の充実に向けた制度として位置づけられたということを評価いたしまして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございます。

鴨下委員長 ただいま議題となっております両案中、第百五十九回国会、鈴木俊一君外三名提出、特定障害者に対する特別障害給付金の支給に関する法律案について議事を進めます。

 本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

鴨下委員長 この際、本案に対し、大村秀章君外三名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、社会民主党・市民連合の四派共同提案による修正案が提出されております。

 提出者より趣旨の説明を聴取いたします。五島正規君。

    ―――――――――――――

 特定障害者に対する特別障害給付金の支給に関する法律案に対する修正案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

五島委員 ただいま議題となりました特定障害者に対する特別障害給付金の支給に関する法律案に対する修正案につきまして、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党及び社会民主党・市民連合を代表いたしまして、その趣旨を御説明いたします。

 修正の要旨は、附則第二条の検討条項について、「特定障害者以外の障害者」に「日本国籍を有していなかったため障害基礎年金の受給権を有していない障害者」を明記するとともに、「今後検討が加えられ、必要があると認められるときは、その結果に基づいて所要の措置が講ぜられるもの」を加えるものであります。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。(拍手)

鴨下委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。

 この際、本法律案について、国会法第五十七条の三の規定により、内閣の意見を聴取いたします。尾辻厚生労働大臣。

尾辻国務大臣 衆議院議員鈴木俊一君外三名提出の特定障害者に対する特別障害給付金の支給に関する法律案につきましては、政府としては異議はありません。

    ―――――――――――――

鴨下委員長 これより本案及び修正案を一括して討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、順次これを許します。藤田一枝君。

藤田(一)委員 民主党の藤田一枝でございます。

 ただいま議題となりました特定障害者に対する特別障害給付金の支給に関する法律案について討論を行います。

 学生無年金障害者訴訟においては、本年三月の東京地裁判決、十月の新潟地裁判決のいずれにおきましても、原告の主張が認められ、被告である国が敗訴をいたしました。判決は、障害を負った時期によって障害基礎年金が支給されなかったことによる不平等、後の法改正の中で是正しなければならなかった法の欠陥を放置した立法不作為等々の理由により、国の責任を厳しく指摘しています。

 民主党は、東京地裁判決が下される以前から無年金障害者の救済を訴え、また、判決が出た後に、これまでの検討を踏まえ、救済のための手だてを講じる法案を提出いたしました。

 その内容は、判決の対象となった任意加入制度の時期の学生のみならず、同じ理由で無年金状態になっている被扶養者、いわゆる主婦、さらに、国籍要件によって年金制度から排除されていた在日外国人、任意加入さえ認められていなかった在外邦人を対象に、法の欠陥が存在していたことにかんがみ、現行の障害基礎年金と同等の障害福祉年金を支給するとともに、未納、未加入を事由として無年金状態となっている障害者の救済を早急に検討しようとするものであります。

 与党案に比べれば、民主党案がすぐれた内容を持っていることは明らかであり、自負もいたしております。しかし、本日、質疑を終え、採決に臨むに当たり、私たち民主党は、民主党法案の成立だけにこだわるようなことがあれば、無年金障害に苦しむ当事者不在の議論になってしまいかねないという判断から決断をいたしました。

 以下、無年金障害者の救済という視点に立ち、修正案及び与党案に賛成する理由を申し述べます。

 質疑の中でも明らかになったように、与党提出の特定障害者に対する特別障害給付金の支給に関する法律案には、救済の対象者が限定されるなどの問題があります。しかし、先ほど提出された修正案において、今後引き続き在日外国人等の無年金障害者問題を検討し、所要の措置が講ぜられることを明記する旨の修正案が提出されました。

 したがって、さきの東京地裁、新潟地裁で勝訴された原告の方々を含む多くの無年金障害者を早急に救済し、引き続き、修正案に基づき、同じ立場に置かれた在日外国人を初めとした方々を救済していくための道筋をつけるために、そして将来的には民主党が提出した法案の内容を実現させるために、修正案及び与党提出の特定障害者に対する特別障害給付金の支給に関する法律案に賛成することといたします。

 以上申し述べ、私の討論を終わります。ありがとうございました。(拍手)

鴨下委員長 次に、山口富男君。

山口(富)委員 日本共産党の山口富男です。

 特定障害者に対する特別障害給付金の支給に関する法律案並びに修正案について賛成の討論を行います。

 障害者が無年金状態のまま制度の谷間にいつまでも放置されている状態は、急いで解消すべき緊急の課題です。とりわけ、無年金状態が障害者とその家族に厳しい生活を余儀なくしている現状を改善することが強く求められています。無年金障害者と御家族、支援者の皆さんの長年の苦難と真摯な取り組みに思いをはせるとき、無年金障害者問題の解決に取り組むこと、障害者の自立と社会参加を実現する方向で道筋をつけることは、私たち立法府の責任と言わなければなりません。本法案は、その第一歩となるものです。

 また、修正は、必要があると認められるときは、所要の措置を講ずるとして、対象を拡大する方向を示しており、無年金障害者の解消に向けた歩みを前進させるものとして、賛成するものです。

 以上、賛成の討論といたします。(拍手)

鴨下委員長 以上で討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

鴨下委員長 これより採決に入ります。

 第百五十九回国会、鈴木俊一君外三名提出、特定障害者に対する特別障害給付金の支給に関する法律案及びこれに対する修正案について採決いたします。

 まず、大村秀章君外三名提出の修正案について採決いたします。

 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

鴨下委員長 起立総員。よって、本修正案は可決いたしました。

 次に、ただいま可決いたしました修正部分を除く原案について採決いたします。

 これに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

鴨下委員長 起立総員。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

鴨下委員長 この際、本案に対し、北川知克君外四名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、日本共産党、社会民主党・市民連合の五派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者より趣旨の説明を聴取いたします。北川知克君。

北川委員 私は、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、日本共産党及び社会民主党・市民連合を代表いたしまして、本動議について御説明申し上げます。

 案文を朗読して説明にかえさせていただきます。

    特定障害者に対する特別障害給付金の支給に関する法律案に対する附帯決議(案)

  政府は、国民年金制度の発展過程で生じた無年金障害者の福祉の増進を図ることは喫緊の課題であるとの認識の下、次の事項について適切な措置を講ずるべきである。

 一 無年金障害者の生活を支える家族の高齢化等の実情を踏まえ、国民年金制度に加入できなかった在日外国人その他の特定障害者以外の無年金障害者に対する福祉的措置については、本法の附則の規定に基づいて、早急に検討を開始し、必要があると認められるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずること。

 二 国民年金に加入できなかった在日外国人及び在外邦人を含む現在無年金となっている高齢者の社会保障制度における位置付けについても所要の検討を行うこと。

 三 障害者の基礎的な生活の支えとなる特別障害給付金の額については、今後の障害基礎年金等の水準の推移を踏まえて検討すること。

 四 本法の施行に当たっては、申請窓口となる市町村との連携を図りつつ、特別障害給付金の制度についての周知徹底を図るとともに、受給者が障害を有することに配慮して、請求手続の簡便化・迅速化等に努めること。

 五 今後、無年金障害者が発生することがないよう努めること。

以上であります。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。(拍手)

鴨下委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

鴨下委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。

 この際、尾辻厚生労働大臣から発言を求められておりますので、これを許します。尾辻厚生労働大臣。

尾辻国務大臣 ただいま御決議のありました本法案に対する附帯決議につきましては、その趣旨を十分尊重し、努力してまいる所存であります。

    ―――――――――――――

鴨下委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました本案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

鴨下委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

鴨下委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後二時十八分散会


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