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第2号 平成17年2月23日(水曜日)

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平成十七年二月二十三日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 鴨下 一郎君

   理事 大村 秀章君 理事 北川 知克君

   理事 長勢 甚遠君 理事 宮澤 洋一君

   理事 五島 正規君 理事 三井 辨雄君

   理事 山井 和則君 理事 福島  豊君

      青山  丘君    井上 信治君

      石崎  岳君    上川 陽子君

      木村 義雄君    小西  理君

      菅原 一秀君    中西 一善君

      中山 泰秀君    原田 令嗣君

      福井  照君    三ッ林隆志君

      御法川信英君    宮腰 光寛君

      森岡 正宏君    吉野 正芳君

      渡辺 具能君    石毛えい子君

      泉  健太君    泉  房穂君

      内山  晃君    大島  敦君

      小林千代美君    城島 正光君

      園田 康博君    中根 康浩君

      橋本 清仁君    藤田 一枝君

      水島 広子君    村越 祐民君

      横路 孝弘君    古屋 範子君

      桝屋 敬悟君    高橋千鶴子君

      阿部 知子君

    …………………………………

   厚生労働大臣       尾辻 秀久君

   厚生労働副大臣      衛藤 晟一君

   厚生労働副大臣      西  博義君

   厚生労働大臣政務官    森岡 正宏君

   政府参考人

   (厚生労働省医政局長)  岩尾總一郎君

   政府参考人

   (厚生労働省健康局長)  田中 慶司君

   政府参考人

   (厚生労働省医薬食品局長)            阿曽沼慎司君

   政府参考人

   (厚生労働省医薬食品局食品安全部長)       外口  崇君

   政府参考人

   (厚生労働省労働基準局長)            青木  豊君

   政府参考人

   (厚生労働省職業安定局長)            青木  功君

   政府参考人

   (厚生労働省職業安定局高齢・障害者雇用対策部長) 金子 順一君

   政府参考人

   (厚生労働省雇用均等・児童家庭局長)       伍藤 忠春君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局長)           小島比登志君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長)    塩田 幸雄君

   政府参考人

   (厚生労働省老健局長)  中村 秀一君

   政府参考人

   (厚生労働省保険局長)  水田 邦雄君

   政府参考人

   (厚生労働省政策統括官) 井口 直樹君

   政府参考人

   (社会保険庁長官)    村瀬 清司君

   政府参考人

   (社会保険庁運営部長)  青柳 親房君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房審議官)           和泉 洋人君

   参考人

   (食品安全委員会委員長) 寺田 雅昭君

   厚生労働委員会専門員   榊原 志俊君

    ―――――――――――――

委員の異動

二月二十三日

 辞任         補欠選任

  小林千代美君     村越 祐民君

  山口 富男君     高橋千鶴子君

同日

 辞任         補欠選任

  村越 祐民君     小林千代美君

  高橋千鶴子君     山口 富男君

    ―――――――――――――

二月二十二日

 国の補助金等の整理及び合理化等に伴う国民健康保険法等の一部を改正する法律案(内閣提出第八号)

同月二十三日

 HAM及びHTLV―1ウイルス感染症の対策強化に関する請願(上川陽子君紹介)(第一五四号)

 同(坂本哲志君紹介)(第一五五号)

 同(中根康浩君紹介)(第一五六号)

 同(松下忠洋君紹介)(第一五七号)

 同(三井辨雄君紹介)(第一六六号)

 同(渡辺具能君紹介)(第一六七号)

 同(枝野幸男君紹介)(第一七五号)

 同(橋本清仁君紹介)(第一七六号)

 同(福井照君紹介)(第二三八号)

 同(谷公一君紹介)(第二七〇号)

 同(金田誠一君紹介)(第二九九号)

 保育・学童保育・子育て支援施策の拡充等に関する請願(横光克彦君紹介)(第一五八号)

 同(北川知克君紹介)(第一九六号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第二二九号)

 同(小宮山洋子君紹介)(第二三九号)

 ホームレス対策予算確保に関する請願(吉田泉君紹介)(第一五九号)

 同(井上和雄君紹介)(第一六八号)

 同(田中慶秋君紹介)(第一六九号)

 同(藤田一枝君紹介)(第一七〇号)

 同(池田元久君紹介)(第一七七号)

 同(大谷信盛君紹介)(第一七八号)

 同(橋本清仁君紹介)(第一七九号)

 同(金田誠一君紹介)(第三〇〇号)

 同(辻惠君紹介)(第三〇一号)

 医療費窓口負担の軽減、介護保険の改善に関する請願(武正公一君紹介)(第一六〇号)

 同(松崎哲久君紹介)(第一六一号)

 同(武山百合子君紹介)(第一七一号)

 同(中野譲君紹介)(第一七二号)

 同(枝野幸男君紹介)(第一八〇号)

 同(達増拓也君紹介)(第一九〇号)

 同(原口一博君紹介)(第一九一号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第二三〇号)

 同(小宮山泰子君紹介)(第二四〇号)

 同(篠原孝君紹介)(第二七一号)

 同(島田久君紹介)(第三〇二号)

 同(神風英男君紹介)(第三〇三号)

 同(土井たか子君紹介)(第三〇四号)

 介護保険の見直しに、改善を求めることに関する請願(黄川田徹君紹介)(第一六三号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第二三一号)

 利用者負担の大幅増など介護保険の改悪反対に関する請願(達増拓也君紹介)(第一六四号)

 同(山本喜代宏君紹介)(第一六五号)

 同(篠原孝君紹介)(第二六八号)

 同(山井和則君紹介)(第二六九号)

 最低保障年金制度の創設に関する請願(田中慶秋君紹介)(第一八九号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第二三二号)

 同(山口富男君紹介)(第二三三号)

 同(吉井英勝君紹介)(第二三四号)

 同(赤嶺政賢君紹介)(第三〇五号)

 混合診療の解禁反対、特定療養費制度の拡大反対に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第二一〇号)

 同(石井郁子君紹介)(第二一一号)

 同(穀田恵二君紹介)(第二一二号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第二一三号)

 同(志位和夫君紹介)(第二一四号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第二一五号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第二一六号)

 同(山口富男君紹介)(第二一七号)

 同(吉井英勝君紹介)(第二一八号)

 青年の雇用に関する請願(高橋千鶴子君紹介)(第二一九号)

 同(金田誠一君紹介)(第三〇六号)

 年金法の実施中止に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第二二〇号)

 同(石井郁子君紹介)(第二二一号)

 同(穀田恵二君紹介)(第二二二号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第二二三号)

 同(志位和夫君紹介)(第二二四号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第二二五号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第二二六号)

 同(山口富男君紹介)(第二二七号)

 同(吉井英勝君紹介)(第二二八号)

 利用者負担の大幅増など介護保険改悪反対に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第二五九号)

 同(石井郁子君紹介)(第二六〇号)

 同(穀田恵二君紹介)(第二六一号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第二六二号)

 同(志位和夫君紹介)(第二六三号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第二六四号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第二六五号)

 同(山口富男君紹介)(第二六六号)

 同(吉井英勝君紹介)(第二六七号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 厚生労働関係の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――

鴨下委員長 これより会議を開きます。

 厚生労働関係の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、参考人として食品安全委員会委員長寺田雅昭君の出席を求め、意見を聴取し、また、政府参考人として厚生労働省医政局長岩尾總一郎君、健康局長田中慶司君、医薬食品局長阿曽沼慎司君、医薬食品局食品安全部長外口崇君、労働基準局長青木豊君、職業安定局長青木功君、職業安定局高齢・障害者雇用対策部長金子順一君、雇用均等・児童家庭局長伍藤忠春君、社会・援護局長小島比登志君、社会・援護局障害保健福祉部長塩田幸雄君、老健局長中村秀一君、保険局長水田邦雄君、政策統括官井口直樹君、社会保険庁長官村瀬清司君、社会保険庁運営部長青柳親房君、国土交通省大臣官房審議官和泉洋人君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

鴨下委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

鴨下委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。北川知克君。

北川委員 おはようございます。自由民主党の北川知克でございます。

 早いもので、ちょうど昨年も大臣の所信表明に関しましてトップバッターで質問をさせていただきまして、一年がたちました。昨年の質問でも、ちょうど世の中が、国民の皆さんの関心が社会保障に非常に強いその中で、映画の「半落ち」の話をさせていただきました。ことし、日本の映画のアカデミー賞を作品賞としてとられたということであります。

 いずれにいたしましても、社会保障に関する問題というのが、日本の国、そして国民にとって重要な課題であると思っております。先日の予算委員会におきましても、尾辻厚生労働大臣に、この社会保障に関する基本的な質問をさせていただきました。その中で、日本の国にとっての、日本の国だけではありません、世界各国にとっての社会保障制度とは何か、こういう点について、まず、社会保障制度そのものについてどういうお考えをお持ちであるかということをお聞きできればと思います。よろしくお願いいたします。

尾辻国務大臣 私が最近申しておりますのは、かつて、揺りかごから墓場までという言葉がございました。ただ、最近、お母さんのおなかの中の虐待などもありますから、揺りかごからというよりも、お母さんのおなかの中からと言わなきゃいかぬかなと思ったりもいたしておりますけれども、本当に、まさに全生涯通じて皆さんが尊厳を持って生きていっていただけるように、そういう仕組みをつくる、それが社会保障の仕組みだと思いますということを申しております。そして、国と国民を結ぶ一番大事な制度だ、こういうふうに考えております。

 そういう意味からいいますと、人が日々の生活の中で、また生涯の各段階において遭遇する、疾病、老齢、障害といった個人の責任や自助努力のみでは対応しがたいリスクを社会全体で支え合う仕組みであり、また同時に、個々の国民が心身とも健康で働くことを通じて活力ある社会の構築に寄与するものと考えておるところでございます。

北川委員 ありがとうございます。

 社会保障というのは、国民の生存権を確保する目的として、国家的保障、国が保障し、社会保険や生活保護、社会福祉事業、公衆衛生等々を主な内容として、失業や労働災害、病気、死亡等の事態に備えるという意味合いもあると思いますし、先ほど大臣もおっしゃられました、私も、国家、国が国民との信頼関係を築く上で重要でありますし、統治、国を治めていく上においても重要な機能を果たしていると思っております。

 その中で、この機能の最前線にありました社会保険庁の問題、昨年、さまざまな問題点が出てまいりました。こういう点について、やはり国民の信頼を損なってはならないと思うわけでありまして、まず、この社会保険庁に対する今後の取り組みにつきまして、厚生労働大臣の御所見、そして決意というものをお聞かせ願えればと思います。よろしくお願いいたします。

尾辻国務大臣 社会保険庁につきましては、先般の不祥事案等に関する調査報告、これは、徹底してうみを出せということで調査をいたしまして、その調査報告を出させていただきましたけれども、その中においても申し上げております、組織の構造的問題が明らかになりました。こうした問題を徹底して、国民の皆さんの前におわびもしながら改革に臨んでいかなきゃいかぬ、こういうふうに思っておるところでございます。

 その改革に際しましては、まず、今お話しいただきましたように、国民の信頼を回復すること、これが一番大事なことでありまして、そうでないと年金そのものに対する信頼が回復しませんので、まずこれが一番大事なことである。それから、国民の意向を反映したサービスの向上が図られること。内部統制、よくガバナンスという表現をしますが、このガバナンスが確保されることなど、こうした視点が重要であると考えております。

 そして、今、社会保険庁の組織のあり方につきましては、内閣官房長官のもとに置かれた有識者会議において御議論をいただいております。現行の社会保険庁の存続を前提としない。そして、国民の信頼を回復するためにはどのような組織とすべきかという観点を重視する。そして、その上で新しい組織のグランドデザインを三月中に、間もなくになりますが、整理した上で、まずその整理を三月中にして、それから最終的な取りまとめは五月に行うということを、既にこの有識者会議においても決めていただいております。

 さらに、つい先日でありますが、二月の二十一日にこの有識者会議を開いていただきまして、三月中に取りまとめますグランドデザインを議論する、それに当たってのたたき台として座長メモが既に示されてもおります。こうした皆様方の御意見を集約、調整が進められておりますし、私は、そうしたものも尊重させていただくということをかねて申し上げております。

 その他、いろいろなところでの御議論がありますから、そうした皆様方の御意見を本当に真摯に受けとめて、抜本的といいますか、もう率直に表現しますが、解体的な組織改革を断行してまいります。

北川委員 ありがとうございます。

 我が党でも、今、この社会保険庁の問題に対するプロジェクトチームを立ち上げまして、積極的に取り組みながらも、出すべきうみはすべて出して再出発をするという意気込みで、ぜひ厚生労働大臣もお取り組みをいただきたいと思っております。

 そして、今後の社会保障制度の構築をしていくに当たりまして、私は、日本の国の社会保障制度、昭和二十六年に社会福祉事業法が成立をいたしました。平成十二年の介護保険法が導入をされて、このときに社会福祉法ということで新たな社会福祉の展開がなされておるわけでありますけれども、昭和三十年、日本の一般歳出における社会保障費というものの占める割合が一二・五%でありました。それが、昭和五十年には二四・八%、そして昭和六十年には二九・四%、平成十年には三三・五%、介護保険が導入をされた平成十二年には三五%、昨年が四一・六%、ことしが四三%にも達してきております。

 こういう状況を見たときに、我が国の財政状況の中で、大変厳しい財政状況であります、しかし、この社会保障費というのはだんだんと膨らんできております。少子高齢化、世の中に貢献をしたお年寄りの方々、そしてこれからの世代を背負う子供たち、このような人口構成の中でどのようにこれから社会保障に取り組んでいくのか、重要な課題であります。

 こういう財政状況を踏まえた中で、身の丈に合ったというのでありましょうか、我が国の今の状況に合った社会保障制度というものはどういうものがいいのか、この点について大臣の御所見をお伺いできればと思います。よろしくお願いいたします。

尾辻国務大臣 今お話もいただきましたけれども、いよいよ二〇〇七年から我が国は人口減少社会を迎えます。まさに少子高齢化が進展するわけでございます。そうした中で現行制度を維持しようとすれば、特に現役世代の皆さん方の負担というのは増大が避けられないところでございます。したがいまして、負担は軽く、給付は厚くというわけにはいかない。これは率直に国民の皆様方にそう申し上げ、御理解をいただかなきゃならないと考えております。

 そうした中で、年金と介護等の居住費や食費の給付の重複調整といった給付の効率化や各制度間の重複の調整など、給付の適正化に努めることにより、厳しい財政状況の中にあって、社会保障制度を経済、財政と調和のとれた持続可能なものとして、その機能を十分に発揮できるよう努力してまいりたい、このように考えます。

 今、社会保障全体の見直しを進めていただいておりますから、この中で十分御議論もいただき、また、そうした御議論を尊重させていただきながら私どもも最善の努力をしてまいらなければならない、こう考えております。

北川委員 ありがとうございます。

 先ほど申し上げました数字を見れば、これは一つには、日本が民主主義国家として成熟をしていく中で社会保障が充実をしてきている側面もあろうと思っております。

 戦後六十年を迎えまして、ちょうど節目の年と私は認識をいたしております。今、小泉内閣が、財政諮問会議等々の答申も受けまして、小さい政府へ向かうように感じられる部分も非常に多いわけでありまして、小さい政府に向かうということであれば、地方自治体、国を含んでの行政というものが関与できる範囲というのは狭くなります。それと同時に、自己責任といいますか、個人がみずから考え、みずから行動をしていかなければならない範囲というのが、社会保障だけではないと思いますが、ふえてくると思っております。

 そういう中で、民主主義が成熟をしていく、マニフェスト選挙、よく言われております。マニフェストというものは、その政策を国民の皆さんが選んで、選んだその政権で国民の皆さんが一緒に共同して責任を負っていく、これが真の民主主義という、その一つの手だてとしてマニフェストというものがあろうと認識をいたしております。

 そういう意味におきまして、今回の、小さい政府に向かう、社会保障制度を充実していく中で、国民の皆さん方に理解をしていただく、そして、理解をしていただいて協力をしていただかなければ、しっかりした社会保障制度というものは構築できないのではないかなと私は思っております。社会保障制度を考える上において大事なことは、今ある制度をどのように改革をしていくのか、そして、よりよき制度をどのように構築していくのか。これと同時に、民主主義、国民主権の観点からいっても、国民の皆さんの理解と協力が不可欠であろうと思っております。

 そういう中で、大臣は自立ということを挙げられております。国民の皆さん方へのそのアピールといいますか、そういう努力をこれからどのような方向で、そして具体的にどのような形で取り組んでいかれるのか、この点についてもお聞かせを願えればありがたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

尾辻国務大臣 大きいとか小さいとか、政府をどうするかというのは表現の仕方でもあると思いますので、やや小さくなるにしても、小さくなるにしても、やはり社会保障制度というのは、個人の責任や自助努力では対応しがたいリスクに対して社会全体で支え合う制度でありますから、そして国民の安心、生活の安全を支えるセーフティーネットでありますから、これはどうしても重要な役割を果たす、欠かせないものである、このことだけは踏まえておかなければならない、こういうふうに思います。

 そして、そうでありますけれども、申し上げましたように、急速に少子高齢化が進むわけでございますから、そうした中で、私どもの持っている社会保障制度を持続可能なものにする、安定的なものとする、そして国民の皆さんに将来に対する不安を解消していただくためには、先ほど来申し上げておりますけれども、年金、医療、介護、生活保護、こういった社会保障制度全般について、自助、共助、公助の役割分担、この辺をどうするかというのが今後の大きなまた課題だと思っておりますけれども、そうしたこと、それから税や保険料等の負担、これをどうするか、そして給付のあり方、こんなものを含めて見直しの議論が今進められてもおりますが、私どもも、一体的に改革を進めていくことが重要だと考えておるところでございます。

 現在、政府におきましては、経済界や労働界の皆さんの参加も得て、社会保障の在り方に関する懇談会を立ち上げておりますし、そこでこうしたまさに年金、医療、介護などの社会保障全般について御議論をいただいておるところでございますから、そうした御議論をまた私どもは十分聞かせていただきながら努力をしてまいりたいと考えております。

北川委員 ありがとうございます。

 昨年の年金の議論を見ましても、やはりその制度や意義というものを十分理解していただくことが重要でもありますし、国民の皆さんの立場に立てば、今の保険料や税金等を考えたときに、重税感のある方が多いと思います。

 人の欲望の話で、昨年、私は委員会の質問でも「高瀬舟」の話を出させていただきました。その中で、人は身に病があるとこの病がなかったらと思う、そしてその日々日々の食がないと食べていければいいと思う、万一のときに備える蓄えがないと少しでも蓄えがあったらと思う、蓄えがあってもまたその蓄えがもっと多ければいいと思う、かくのごとく先から先へと考えてみれば、人はどこまでいっても踏みとどまることができるものやらわからない、こういう一節があります。

 人の欲望、いい意味の向上心というものはいいでありましょうけれども、そういう欲望は際限がないわけでありまして、こういう人の気持ちと社会保障制度のかかわりの中で、やはり国民の皆様の方々にまず理解をされること、そして、不平不満ばかりが募っていったときに社会の不安というものが増大していくのではないかなと思っております。

 昨今いろいろな事件や事故も起きておりますけれども、後ほど質問をさせていただきます若い方々のニートの問題、そして、将来ある二十代、十代の若い方々が集団で自殺をしてしまうような、果たしてこういう世の中がどうなのか。日本というものは、私は、世界に対して、みずからを律して、みずからに尊厳を持ちながら、みずからの責任で生きていく中で、世界から信頼をされてきた点も過去にあったであろうと思っております。そういう観点から考えましても、やはり国民の皆様方の理解と協力、そしてよりよき制度が必要ではないかなと思っております。

 そういう思いをいたしながら、今回、介護保険制度が今国会でも審議をされます。そして、我が国が長年の社会保障制度の構築をしてきた基本は、やはりみずからの考えといいますか、みずからがこういう保険で社会保障制度の一部の恩恵を受けている、こういう保険方式を中心にしてきた社会保障制度というのが根幹にあろうと思っております。

 しかし、時代の流れもあります。片やこういう保険方式の中で不公平感も生じてきている現実もありましょうし、後ほどの生活保護でも申し上げますけれども、自分が年金を納めて権利を取得してきた年金受給者の方と、片方では、高齢者が年金を受給できる資格がないけれども生活保護を受けられる、金銭的な差が余りない。こういう点においても、義務を果たしてきて権利を取得したのにそうでない方と同じように扱われる、こういう不満もあるでありましょう。片方では、生活保護の方を放置していれば社会の不安が増大する、国が責任を持って面倒を見ていかなければならない、こういう点もあるわけでありまして、これは後ほど生活保護の点でお聞きをいたしますけれども、さまざまな問題点があろうと思っております。

 いずれにいたしましても、保険でどのように集めていくのか、そして巷間言われております消費税、一番公平な税と言われております。こういう点も視野に入れながら、今後、税でどのように集め、そして保険でどのように集め、そして、みずからが関与をできる、みずからの意思で決定をできる生活設計。そうではなくて、みずからの意思に関係なく襲ってくる病や障害や、そして生まれてくる部分、そして高齢。年は自然にとっていきます。こういう点に関して、税と保険のすみ分けの中で、責任というものを明確にしてきた、していった制度を議論しながら構築していく必要性があろうと思っておりますけれども、この点について厚生労働大臣の御所見をお伺いできればと思います。

尾辻国務大臣 まず、今いろいろお話しいただきました中で、冒頭にお触れいただきました、国民の皆様方の御理解、御協力がなければ社会保障はやっていけないということを申されました。私どもも痛感いたしております。したがいまして、とにかく丁寧に丁寧に御説明申し上げることが大事だと今考えておりますということを、改めて申し上げておきたいと思います。

 そこで、今最後の方でお話しになりましたのは、社会保険方式か税方式かといったようなお話でございました。私どもは、今まで自立自助ということを基本に考えるべきだというふうに言ってまいりました。そして、自助、共助、公助といいますけれども、やはりそうしたものの組み合わせはしなきゃいけませんけれども、まず自助で頑張っていただいてというふうにこれも考えてきました。

 そこで、私は、大臣になりましてから申し上げておりますことの一つに、自立支援ということが大事だというふうにも言ってまいりました。そういう考え方の中でいいますと、私どもがずっととってきました社会保険方式、これはその基本的な考え方の中でやってまいったことでありますから、そういうやり方でまいりました。私の個人的な意見を言えと言われますと、個人的といいますか、私の意見を今言えと言われますと、やはり社会保険方式がまずあるべきだというふうに考えております。そうした中で社会保障が考えられていけばというふうに思いますということだけを申し上げておきます。

北川委員 ありがとうございます。

 時代の流れもあります。基本的な線というものを維持しながら、新たな税も含めながら、こういう財源の確保等々も考えていただかなければならない時代が来ておると思っております。

 それともう一点、このすみ分けの話でありますけれども、三位一体改革の議論も進んでおります。地方と国が社会保障にどのようにかかわっていくのか。最初に申し上げました、国と国民を結ぶ、そして国を統治していく上においても重要な機能を果たしているものでありますから、その機能の中で、医療、介護、年金、生活保護、そして少子化問題、さまざまな問題があります。こういう点について、地方と国の関与の仕方といいますか、すみ分けというものを今後どのように考えておられるのか、この点につきましてもお伺いをできればと思います。よろしくお願いいたします。

尾辻国務大臣 今のお話は、昨年三位一体の改革ということが議論になりましてから、随分議論をさせていただきました。

 特に、地方団体の皆様方の御意見が出てきて、そしてまたそうしたものに対して私どもの案も出させていただいて、すり合わせのための議論を随分させていただいた中で、私どもが申し上げたことは、国と地方の関係は、社会保障でいいますと、私が使いました表現は、オール・オア・ナッシングの関係ではなくて、そこは国が制度をつくりますけれどもサービスを実施していただくのは地方の方でありますから、この関係をうんと協力的なものにして、重層的な形で連携しながらやっていかなければどうにもならない。社会保障というのは、そういう意味で、まさに国と地方が手を携えてやっていくものだというふうに考えますということを随分強調して申し上げましたけれども、そのように考えております。

北川委員 ありがとうございます。

 まだことし一年、十八年度に向けまして三位一体の改革の議論をなされますけれども、この社会保障問題という点について、ぜひ、国がやらなければならない仕事、そして地方にやっていただける仕事、こういう点をしっかりとすみ分けをしていただきたいと思っております。

 続きまして、先ほど申し上げました高齢者の方々の年金の問題。私は、昨年の冒頭の質問でも、百年もつというのはちょっと厚生労働省も言い過ぎではないか、百年先を見据えて、一つの数値を示し安心感を与えて、将来の抜本改革へ向かっていく改正ではないかということを、まず冒頭の質問でも申し上げました。

 いずれにしても、この年金で老後の生活を支える部分、そして先ほど申し上げました高齢者の生活保護の方々、そして年金受給者の方々、そして、定年になっても高齢者になってもまだまだ働きたい、まだまだ世の中のためにも働きたい、そして働かなければ生活を維持できない、こういうたくさんの方々がおられます。こういう方々に対しましての高齢者の雇用の促進、昨年は六十五歳までの定年延長の法案も成立をいたしましたけれども、今後のこういう高齢者の方々への雇用の促進につきまして、厚生労働省の方で結構でございますので、取り組み等についてお聞かせを願えればと思いますので、よろしくお願いいたします。

金子政府参考人 お答え申し上げます。

 今後、労働力人口の減少が見込まれる中で、御指摘いただきましたように、高齢者の方々に社会の支え手としてますます活躍していただくということが大変重要でございます。このため、高齢者雇用対策といたしましては、これも今御指摘がございましたけれども、昨年改正されました高年齢者雇用安定法に基づきまして、六十五歳までの雇用の確保措置が義務づけられたところでございます。今後、年金支給開始年齢の引き上げに合わせまして段階的な導入を図っていくことになっておりますが、こうしたことを的確に実施していくことがわけても重要ではないかと考えております。

 加えまして、中高年齢失業者の方の再就職支援でございますとか、また、定年後などに地域に根差した就業を行いますシルバー人材センター事業といったようなものも行っておるところでございまして、こうしたことを通じまして多様な形で雇用就業が続けられますように取り組みを進めたいと思っておりますし、その結果といたしまして、意欲と能力のある限り、年齢にかかわりなく働き続けることができる社会の実現、これを目指して施策に取り組んでまいりたいと考えております。

北川委員 ありがとうございます。

 次に、今国会の介護予防法案であります、介護保険の改正法案であります。

 今介護予防と言いましたのは、次からお聞きをする介護予防、予防の点について今回介護保険の方でも取り組まれるということでありますけれども、予防というのは、やはりみずから健康管理という点で関与をできる部分であります。この予防という観点にまで介護保険を適用するのはいかがなものかという意見もあります。こういう点について、厚生労働省のお考えをお聞かせ願えればと思いますので、よろしくお願いいたします。

中村政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま先生から御指摘ございましたように、介護保険制度の中で、国民の努力及び義務規定というのは第四条、現行規定でもございまして、おっしゃるとおり、健康の保持増進でございますとかそういったことにつきましては、また、要介護状態になった場合には進んでリハビリテーションを受けるとか、そういった意味では国民の方の御努力をお願いしているところでございます。

 介護保険制度におきましては、ただいま申し上げましたように、高齢者の自立支援の観点から、高齢者の方が要介護状態になることをできる限り予防し、要介護状態になっても状態が悪化しないようにするという予防の考え方に立ちまして、既に保険給付を行っているところでございます。

 しかしながら、施行後五年の状況を見ますと、要支援や要介護一といった軽度の方が要介護認定の該当者の約半数を占めるというような状況になっております一方で、これらの方々につきましては、状態の改善可能性が高いと考えられますにもかかわらず、実際の改善度はそこまで行っていないというようなこともあり、自立支援を目的としている介護保険のあるべき姿から見て、なお改善の余地があると考えております。

 このため、今回の介護保険制度の改正において、現行の軽度の方の要介護者に対します保険給付につきまして、新しい予防給付へ見直すということを提案させていただいておりますが、このことは保険料や税で賄っている給付や事業の範囲を拡大するものではございませんで、介護予防の効果の観点から、むしろ質的な転換を図ろう、こういうふうに考えているところでございます。また、こうした見直しによりまして、結果的に給付の効率化につながるもの、こういうふうに考えている次第でございます。

北川委員 昨年の質問でも、介護保険制度が導入をされて、間口の部分といいますか、要支援、要介護一の方々の人数がふえてきている、これが介護保険の財政にも影響してきている、その中でチェックをきっちりしていただかなければならないということも申し上げました。今回、そういう形で介護予防という点にも踏み込まれるのであれば、しっかりとした、入り口の部分といいますか、精査をしていただかなければならないと思いますので、その点だけを申し述べさせていただきたいと思います。

 次に、少子化対策についてでありますけれども、先ほど申し上げました、後ほどのニートの問題にも関連をいたします。

 要するに、少子化というのは、経済的な影響、それから学校等々教育の問題でも今後不安であるということで、子供を産まない方々がたくさん出てきております。しかし、片方には、戦後、経済状況が大変厳しい中でもたくさんの子供さんが生まれてきた。こういう点を考えれば、一概に経済的な理由等々ではなく、やはり子供を産んで育てていくというのか、産み育てていく喜び、自分の子孫を次の世代等々へ産んでいく、こういう継承という点の意識があろうと思っております。

 そういう点について、まず大臣、私的な考えでも結構でございますので、そういう意識といいますか、子供を産み育てる意識というもの、制度とはまた別にいたしまして、そういう人々の意識が随分変わってきているのかなと。自分たちの世代だけで、まあ、子供が少ないということであれば一人だけに託すのでありましょうけれども、一人でも多く子供をつくるというのは、より多く自分の考えやみずからの血というものを次から次へと残す継承という部分があると思うんです。それが今は、経済的な理由とか社会的な理由の中で少子化になっていっている。一つは意識の問題もあろうと思いますけれども、こういう点について、ちょっと大臣の個人的な見解で結構でございますので、聞かせていただければと思います。

尾辻国務大臣 大変難しい御質問で、どのようにお答えをすればいいのかわかりませんが、今いろいろお話もいただきましたように、今、人の考え方が非常に多様化しておる時代だと思います。よろず考え方が多様化しておる。その中にあって、子供を産むということに対する考え方も相当多様化しているんだろうなというふうに思います。

 そうした中で、私どもとしては少子化対策をしなきゃならないんですが、考えられるいろいろな対策をとるのでありますが、まさにその皆さん方の多様化された考え方の中でどういうふうに環境づくりをしていけばいいのか、難しい問題があるというふうに感じておるところでございます。

北川委員 ありがとうございます。突然の質問で、失礼をいたしました。

 厚生労働省といたしまして、今後の少子化対策として、制度の中でどのように充実をしていかれるのか、対策としてどのような考えをお持ちなのか、この点をお聞かせ願えればと思います。

伍藤政府参考人 今、意識の変化ということを申されましたが、今回、昨年末に、子ども・子育て応援プラン、少子化大綱に基づいてそういったものをつくりましたが、この基本的な考え方も、今先生がおっしゃったような、非常に急激な社会環境の変化でありますとか、子供が若者になる段階で生活体験が非常に減少してきておる、そういったことがいろいろ意識の変化をもたらしているのではないか、こういう基本的な認識を持っているわけであります。そういうことをまず変えていくといいますか、できるだけその体験を補ってあげるというようなことで、いろいろなところで、小中学校、高校時代にいろいろな子供と触れ合う機会をたくさんつくる、こういったこともプランに盛り込んでおりまして、そういう意識の変化ということにどういうふうに対応していくかという視点も盛り込んで、今回この対策を考えているつもりでございます。

 それから、そういう意識を生み出しておる、子供を余り持ちたくないといいますか、持てないという、いろいろな原因があろうかと思いますから、雇用不安といいますか、そういう経済的な問題についても視野を広げて今回取り込む。

 それから、子供をつくってもなかなか子育てしにくいという、保育環境の整備とか、まだまだおくれている分野もありますから、そういう子育て支援サービスの充実を図り、あるいは、子供の安全の確保とか、今いろいろ不安な要素もありますが、そういったことにも目配りをしていろいろ対策を総合的に講じていきたい、そういう視点からプランを作成いたしたところでございます。

北川委員 ありがとうございます。しっかり取り組んでいただきたいと思います。

 そして、先ほど申し上げましたニートの問題でありますけれども、社会問題の一つになっております。この問題につきましても、若い方々が職につかないといいますか、つけない状況もありましょうし、片方におきましては、やはり小さいときから働く意欲、働くとはどういうことかということも教えてもいかなきゃいけないでしょう。

 最初に申し上げました、権利や義務やそういう中での社会保障制度等々、こういう形で、義務教育の中では難しいかもしれませんけれども、社会保障制度というものの根幹にかかわる部分をぜひ、同じ閣内でありますから尾辻厚生労働大臣、中山文部大臣と協議をしていただいて、ゆとり教育の見直しが言われておりますけれども、学校の義務教育の中でこういう働くことや、そして、現場に出て実地教育もされておりますが、しかしもっと掘り下げて、義務教育の中でこういう社会保障という問題について教えていくことの必要性をぜひ協議していただければと思います。

 この点について、大臣、よろしくお願いいたします。

尾辻国務大臣 私どもと文部科学省との連携のところについてのみ、お話を申し上げたいと存じます。

 学校段階からの職業教育を推進する観点から、まず一つには、キャリア探索プログラム、ジュニアインターンシップ等、こういったようなものがあるんですけれども、小中高校生を対象とした職業意識形成支援事業の充実を図ろう、こういうこともいたしております。

 それから、お話しになりましたニート等の若年者の働く意欲の涵養、向上を図る観点から、合宿生活の中で生活訓練、労働体験等を通じて働く自信と意欲を喚起、向上させる、まだこれは仮の名前でありますが、若者自立塾といったようなものを創設しよう。あるいは、ヤングジョブスポットの見直しによる若者たちへの働きかけの強化、経済界、労働界、地域社会、政府等の関係者が一体となって若年者雇用問題についての国民各層の関心を喚起する国民運動の推進、こうしたことをやろうと思っております。

 こうした取り組みによりまして、若い人たちの働く意欲を引き出すとともに、その能力の向上を図り、就業に結びつけてまいりたいと思っておりますが、いろいろなところとの協力、連携をやりながら進めてまいります。

北川委員 ありがとうございます。

 社会保障制度の問題というものは、厚生労働省だけではなく、やはり多岐にわたるものでありますから、十分その点を認識していただいて、協議をしていっていただきたいと思っております。

 もう一点、尊厳死についてお聞きをしようかなと思っておりましたんですけれども、もう時間が参りましたので。

 最初に申し上げましたけれども、社会保障制度というものは国の根幹にかかわる問題であります。今、時代の転換期に当たって、医療、介護、年金、生活保護、そして少子化対策、そして高齢化社会にどのようにかかわっていくのか。税や保険の部分もあります。みずから関与ができる部分、そうでない部分、そして国と地方のかかわり、非常に多岐にわたるものであります。この制度いかんによっては、国の形が変わるのではないか。

 そして、国民の中に不安というものが増大をしていけば、国が果たしてどのようになっていくのか、こういう不安もあるわけでありますから、今国会の中におきまして、今後、与野党を超えて、国会でもこういう社会保障の原点、基本というものをしっかり論議しながら、よりよい制度の構築に向けて取り組んでいかなければならないと思いますし、最初に申し上げました、民主主義の原点である国民の皆様方への理解と協力を求める、こういう点をぜひ厚生労働省に重ねてお願いを申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

鴨下委員長 次に、大村秀章君。

大村委員 おはようございます。自由民主党の大村秀章でございます。

 きょうは、貴重なお時間をいただきまして、社会保障及び社会保障改革につきまして、全般につきまして御質問をさせていただければというふうに思っております。

 その前に、二月に入って風邪を引きまして、ことしの風邪はしつこいのでまだ風邪が抜けておりませんので、ちょっと聞き苦しい点がありましたらお許しをいただきたいというふうに思っております。それからまた、大変はやっておりますので、役所の皆さんも委員の皆さんも、ぜひお気をつけいただきますようにお願いをしたいというふうに思っております。

 まず、社会保障全般について申し上げたいと思います。

 少子高齢化が進展しております。後ほどお聞きしたいと思いますが、そういう中で、国民生活に最も関係の深い医療、介護、年金といった社会保障制度のあり方がまさに問われているということでございます。年をとって働くことができなくなったときの年金、また、病気になったときの健康保険、介護が必要になったときの介護保険、失業したときの雇用保険、言うまでもなく社会保障制度は国民生活になくてはならない制度でありまして、とりわけ日本は、先進各国の中でも最も充実した制度をこれまで関係者の御努力でつくり上げてきたというふうに思うわけでございます。

 しかしながら、これも、経済成長が続いて、そして子供がたくさん生まれるというピラミッド形の人口構造を前提にできておるということでありまして、そういう意味からいきますと、経済の成長がとまり、また子供も生まれなくなったというような今の時代ではもう合わないというふうに言われて何年かたつわけでございます。そういう意味で、新たな時代に対応する社会保障制度をどうしてもつくっていく必要がある。そしてまた、常に不断に社会保障のあり方は見直していかなきゃいけないというふうに思うわけでございます。そういう意味で、これまでの発想を切りかえて、大胆な発想で、そしてもって政治の大きなリーダーシップの中で、とにかくこれをこう変えていく、こういうふうにしていくという決断をしながら、やはり制度を見直していく必要があると思います。

 そのためにも、これも先般の予算委員会、そしてまた、先ほど北川委員からもお話がありました。私もそう思いますが、まさに政治のリーダーシップを発揮するということであれば、やはり我々与党はもちろんでありますが、野党の皆さん、与野党の枠を超えて社会保障制度全般の議論をしていく場をどうしてもこれはつくっていく必要があるというふうに思います。

 そういう意味で、前提となるすべての情報を共有して、考えられるありとあらゆる前提や可能性を踏まえ、たたき台をつくって真剣に議論をする。それも、国会の会期とか期間とか、そういったものに縛られることなく、年間を通じてそれこそ年がら年じゅう、その時々のホットな話題を、データを前提に社会保障を議論する、そういう場をぜひつくっていきたいというふうに思うわけでございますし、そういう中で、折々にその成果を国民の皆様に示していくということが私はどうしても必要だというふうに思うわけでございます。

 民主党の法案は中身がないということを私も再々申し上げておりますが……(発言する者あり)まあまあ、それは、こっちは今質問をしているのであれでありますけれども、あなたとはまた別の場で……(発言する者あり)だから、そういう場をつくろうと言っているんですよ。だって、年金だって数字がないじゃない。一体幾らから最低保障年金が出るか、全然できてないじゃない。テレビ討論でも絶対答えられないんだよ、あなた方は。だから、そういうふまじめなものを出しておいて出したなんて言ってはだめなんだよということを、国会のこの場だと我々は野党には突っ込めないわけだ。だから、国会のこういう場じゃなくて、やはり与野党協議の場でしっかりとやっていく必要があるということを申し上げていきたいというふうに思っております。

 ですから、そういう場をぜひやはりつくっていきたい、そのことをまず冒頭申し上げたいと思います。(発言する者あり)いや、だから、私はこういう議論をしたいんです、はっきり言って。だからやろうと言っているので、それを逃げずにぜひ受けていただきたい、こういうふうに思うわけでございます。

 私はもっと質問したいので、時間が限られておりますので行きますが、社会保障関係全般について申し上げたいと思うんですが、ぜひ簡潔明瞭に御答弁をお願い申し上げたいというふうに思っております。

 まず、社会保障の給付について、ざくっとした御質問を申し上げたいというふうに思っております。

 総額八十六兆円、これは平成十七年度予算ベースでありますけれども、社会保障でありまして、一般会計予算よりも多いわけでございます。それは給付と負担のバランスで成り立っているのは御案内のとおりでございまして、この社会保障給付について、先般、経済財政諮問会議で議論が行われたというふうに聞いております。これは、経済成長と財政再建の両立に向けた歳出歳入一体改革の議論の中で、社会保障給付の伸びを名目GDPの伸び率以内に抑えるというところが一番のポイントであったように見受けられるわけでございます。

 私は、これはこれで一つの考えだというふうに思います。とにかく、活力ある経済と安定した社会保障の両立を図るということは、やはり我々が常に求めていかなければいけない考えだと思うわけであります。

 そういう意味で、高齢化に伴って社会保障の給付がふえる、これは当たり前と言うとちょっと語弊がありますが、やむを得ないというふうに思いますけれども、それがどのくらいふえるかわからない、とにかく青空天井なんですということでは、これはやはり国民の皆さん、また負担する側の御理解も得られないと思うわけでありますし、また、負担がどれだけふえていくかを白紙委任しろと言われても、これはなかなか難しいということもそのとおりだというふうに思います。

 そういう意味で、ある程度の目安とか合理的な目標値というものは、公的な制度でありますから、このような制度としてあって当たり前といいますか、当然だと思います。ただ、それが、予算のある枠を超えたらもうそれはそれ以上給付できないとか、ペナルティーがかかるというようなことでは、これは制度はうまく運営できないというふうにも思います。

 そういう意味で、この点につきましては、高齢化社会の到来ということで、先進各国どこも本当に共通の悩みだというふうに思いますし、各国のいろいろな御議論を聞いていても、どうも妙案というのは出てこないというふうにもお聞きしております。

 そういう意味で、この社会保障給付のあり方、そしてそういった成長率との関係での経済財政諮問会議での御議論、そういったものを踏まえて、これからの日本の社会保障の給付のあり方について大臣のお考えがあれば、ぜひお聞かせいただきたいと思います。

尾辻国務大臣 今お話しいただいたところが、先日の経済財政諮問会議における議論でもございました。既にお述べいただきましたけれども、給付費の伸びを経済規模に合った水準にする、こういう意味で、名目GDPの伸び率を指標として用いることが妥当ではないかといったような御提案がございました。

 そこで私が申し上げたのは、先に伸び率管理ということを社会保障で言いますと、これはいろいろなことで困ったことが生じてきます。

 一つ申し上げたのは、例えば医療費でというふうに申し上げたんですが、限界を超えた利用者負担を求めることになったりもしますから。どうしても、給付費を抑えるということになりますとそんなことにもなります。そうすると、それは粗診粗療や乱診乱療といったようなことにつながるおそれもありますから、やはり先に伸び率管理というのはまずいと思います。

 ただ、これも今先生もお話しいただいておりますように、ただ積み上げ方式でむやみに伸びていけばいい、それを認めてほしいというようなことを私たちも言うつもりはありませんので、しっかり抑制に努める、そして、抑制に努めた結果がこういうことになるでしょうぐらいのことは私どももお示しをしなければ、これは無責任になると思いますから、今そうしたことも考えなきゃいけない、そうしたことを私どもも申し上げながら、議論をしていただきたいというふうに考えておるところでございます。

    〔委員長退席、宮澤委員長代理着席〕

大村委員 もちろんこれからの議論だと思いますけれども、やはりそこはしっかりと議論をしていきたいというふうに思っております。

 次に、社会保障の在り方に関する懇談会で、医療制度改革に伴う医療費の適正化といった問題が議論をされたと聞いております。制度改正等を行わなければ医療費は毎年一兆円ぐらい伸びるという傾向でもございますし、また、これは賃金、所得の伸びを上回る基調でありますから、各医療保険はやはり赤字基調になっているというのはもう事実でございます。

 そうした中で、政府の方は、生活習慣病対策でありますとか医療機能の分化、連携、また平均在院日数の短縮など、いろいろな対策を総合的にやっていくということを言われておる、これはそのとおりだというふうに思います。

 こうした動きに対応して、医療保険制度の改革、これも当然必要だ。これから一年間かけて、来年の通常国会にはそういったものを出してくる、こういうスケジュールにもなっているわけであります。その中で、地域の特性に合わせた取り組み、特に今回は、この国会でも出ますけれども、三位一体改革でも国保の運営について初めて都道府県が参画するということで、私はこれもかねてからそうあるべきだということを申し上げてまいりました。そういったことも一つ大きな一歩だというふうに思いますし、政管健保も、全国一本ではなくて都道府県単位での再編もすべきだということも、私もそのとおりだと思います。

 そういう意味で、この医療保険制度の改革、医療制度改革も、これも待ったなしで進めていかなければいけない課題だと思いますけれども、その点について基本的な考え方をお聞かせいただきたいというふうに思います。

水田政府参考人 ただいま先生御指摘いただきましたとおり、医療保険制度を持続可能なものとするためには、医療費の伸びを適正化するということが不可欠でございます。そのために、構造的な対策として、御指摘のありましたような生活習慣病対策の推進あるいは医療機能の分化、連携、平均在院日数の短縮、こういった取り組みを一体的かつ計画的に行うことが必要であると考えてございます。

 こうした観点も踏まえまして、今回の国保改革におきまして、医療計画あるいは健康増進計画の策定主体である都道府県に、市町村間の財政調整を行う権限の一部を移譲いたしまして、都道府県の役割の強化を図って、国保の広域化と医療費の適正化を進めるとしているところでございます。

 これを改革の第一歩といたしまして、今後、国保、政管、組合健保を通じた、都道府県単位を軸とした保険者の再編統合、それからこれと対になる形で、都道府県を中心とする地域における医療費の適正化等を図ることによりまして、保険者、特に地域保険の基盤、体力を強化いたしまして、高齢者医療制度の創設など医療保険制度改革全体の具体的内容について成案を得ていきたい、このように考えてございます。

大村委員 これも、これから一年ぐらいかけてしっかりと議論をしていかなきゃいけない課題でありまして、とにかく急ぐ課題でありますから、しっかりと議論をしていきたいと思います。

 そういう中で、こういった問題も含めて社会保障全般について、先日の予算委員会で私どもの長勢委員の質問に対しまして、大臣が、社会保障全体の一体的な改革に向けて厚生労働省の中に横断的な部局をつくるように指示をしたというふうに聞いておりますけれども、これは大変結構なことだというふうに思います。政府とか厚生労働省に欠けていたのはまさにそういう視点だというふうに思いますし、そういう意味で、ぜひこれは早く形をつくって、我々としっかりと議論させていただきたいというふうに思います。

 その点についての、具体的に今どういうふうになっているのか、お聞かせいただければと思います。

井口政府参考人 お答え申し上げます。

 一昨日の衆議院の予算委員会の場で大臣から御発言がございましたとおり、社会保障制度の一体的見直しに対応するため、大臣の御指示のもとに、実務的に検討すべき具体的な課題を整理するための部局横断的な検討チームを省内に設置するよう、大臣から御指示をいただいたところでございます。

 現在、その具体的な中身につきましては、検討を行って、整理を行っているところでございます。できるだけ早く立ち上げたいというふうに考えております。

大村委員 とにかく早くつくってもらって、具体的に議論をさせていただきたいというふうに思いますので、よろしくお願いしたいと思います。

 続きまして、少子化対策についてお聞きを申し上げたいというふうに思っております。

 日本の社会保障の問題点として、高齢者対策に偏っているというふうなことがよく言われます。もうちょっと若年層にシフトしていかないと、世代間の不公平感はますます広がってしまう、少子化もとまらないというふうにも言われております。

 この点につきまして、例えば、現状では、社会保障の給付費のどのくらいが高齢者向けで、いわゆる子育ての家庭向けというのはどのくらいなのか、もちろんそれはどういうふうに分類するかということもあると思いますが、ざくっと言って、その点についてちょっとお聞かせいただければと思います。

井口政府参考人 お答え申し上げます。

 社会保障給付費の最新値であります平成十四年度で見た場合ですと、高齢者関係給付費というのは五十八兆四千三百七十九億円、社会保障給付費全体に占める割合が六九・九%となってございます。

 一方、児童・家族関係給付費というのは三兆一千五百十三億円となっておりまして、同じく社会保障給付費に占める割合は三・八%。欧州諸国が八から九%ですので、この比率はやや低いというような状況になってございます。

大村委員 そういうことなんですね。だから、そういう意味で、これはやはりいかがなものかというふうにも言われるわけであります。

 そういったことを踏まえて、昨年六月に政府は少子化対策も決定されて、そして十二月に、その具体的な実施計画ということで、いわゆる子ども・子育て応援プランというのを作成されまして、これは、拝見をいたしまして、何といいますか、微に入り細に入りといいますか、非常によく、ありとあらゆるものに触れて、正直言って、これはよくできていると思いますけれども、逆に言うと、何か総花的でパンチがない。一番後半の部分なんか、バリアフリーの話まで、公共事業のバリアフリーまでこれに突っ込んで、これが少子化対策だ、何かちょっと違うような気がしないでもないんですけれども。

 そういう意味で、これまでと同じようなことをやっていては少子化がとまらないわけですから、もっとパンチのきいた、これはやらなきゃいけないんだというようなことを、ぜひやはりつくっていただきたいというふうに思うんですけれども、この中で、要は、これだけはもう重要なんだ、これだけは目玉なんだというようなことを、どうしてもやらなきゃいけないというものがやはりあると思うんですね。その点についてお聞かせいただければというふうに思います。

伍藤政府参考人 先ほどもお答え申し上げましたように、従来、エンゼルプラン、新エンゼルプランと、保育を中心、あるいは働く女性の両立支援、こういう範囲の対策を講じてまいりましたが、できるだけ幅の広いものにしていこうということで、今回こういう対策をつくったわけでございます。総花的といえば、そういう批判も甘んじて受けなければいけませんが。

 その中でも、今までのそういう保育とか両立支援中心のところからシフトして非常に幅の広いものにした中でも、特に力を入れていかなきゃいかぬと思っておりますのは、やはり働き方、企業のあり方の見直しというところに力点を置いておるつもりでございます。

 これまで具体的な数値目標がなかったところでありますが、企業行動計画、これから、四月から策定いたしますが、こういったものに目標数値を入れる。あるいは育児休業をきちんと、これは権利でありますが就業規則に規定していない企業がまだ四割ぐらいあるわけでありますが、こういうところも一〇〇%に五年間で持っていこう。こういったことを初めとして、やはり日本の企業社会とか働き方の見直し、こういうところに特に力を入れていきたい。目玉と言えるかどうかわかりませんが、そういうつもりで取り組んでまいりたいというふうに考えております。

大村委員 確かに私もそう思っております。やはり国の政策で、もちろん保育事業もまた大変大事なことだと思いますし、働きながら育てるということをどうやっていくか、それはお母さん方も、そしてまた男もそれを応援していかないかぬというのはそのとおりだと思いますが、やはり、それを受け入れる企業、社会、そういったところが、子供を産んで育てるお母さん方、若い女の人を、不利にならないように、サポートできるように、そういう企業、社会のあり方をどうつくっていくか。これは、企業風土とか社会風土にも関係するので一朝一夕ではできないかもしれませんけれども、やはり常に常にそれを言い続けていかなきゃいけないということだというふうに思います。

 そういう意味で、これは日本だけじゃなくて国際的にも、特に東アジア諸国が非常に低くなっているというのは御案内のとおりであります。ただ、一方で、アメリカはいまだ二あるんですね、出生率が二ある。では、それは移民が多いからということでもないんですね。白人でもやはり一・八三という出生率もあるわけでございます。

 これは、いろいろなことが言われています。例えば、女性の労働市場が弾力的だ、一たんやめてもまたすぐ戻れるということとか、また、公的な支えはなくても、例えば大学生なんかがほとんどボランティアみたいな形でベビーシッターをみんなでやるとか、あと、これは我々も耳が痛い話でありますけれども、男が家事、育児に協力的だということとか、いろいろな要因が言われておりますけれども、やはりいいところは見習っていかなきゃいけないというふうに思います。

 さらに、この少子化問題を考える上で今後必要になる視点として、例えば家族の価値、ファミリーバリュー、そういったものをやはりもっともっと高めていく必要があるんじゃないかとか、今申し上げました企業における働き方、これも大事だと思いますし、また、よく、今の国の施策の中で、働きながら子供を育てるお母さん方を応援しようということが、育児の支援が中心だったということも言われていますが、そうじゃなくて、専業主婦もどういうふうに応援していくか、これもやはりまだ不十分じゃないかというふうにも言われております。

 とにかく、次の世代を産んで育てないと、我々のこの日本の社会は完結しない、続いていかないといった価値観をどういうふうに我々が持てるかということじゃないかなというふうに思います。その点はぜひ常に常に、これで終わりじゃなくて、常に常に議論しながら、建設的な議論、対策を積み上げていければというふうに思っております。

 そういう意味で、この少子化対策というのは、まさに国を挙げて、社会を挙げて取り組まなければいけない課題だというふうに思っておりますし、いろいろな指摘がここになってわっと出てきたという感じがありますけれども、この点について、社会保障制度を考える、それから国のあり方を考える上でも、本当に一番大事なポイントだと思いますけれども、大臣のお考えをぜひお聞かせいただきたいと思います。

尾辻国務大臣 既にお答え申し上げましたけれども、この少子化対策、私どもは、最初にエンゼルプランをつくりました。そして続いて新エンゼルプランになり、今、子ども・子育て応援プランになっておるわけでございます。

 この過程を振り返って思いますに、最初のエンゼルプランなどというのは非常にその傾向が顕著だったと思いますけれども、少子化対策イコール保育の充実みたいなところがありまして、何とかまず保育の充実をしようということが主眼になっておりました。

 しかし、そうしたプランでいろいろ私どもも努力をしましたけれども、少子化の歯どめがかからない。やはりこれは、今先生が御指摘いただいたとおりでありまして、国全体で取り組まなければいけない、今、私どもも強くそう感じております。

 そこで、いろいろ施策もつくりましたので、そうしたことが今度は逆に総花的だという御批判にもなるのかなと思いながら今聞いておりましたが、決してそういうふうに御批判いただかないように私どもも取り組んでいかなきゃならない。ただ、私どもも、国全体で、政府全体で、この少子化というのは取り組まなきゃいけない課題だと今思っておるということは、改めて申し上げておきたいと思います。

 そして、強く言っていますことは、今、家族というお話もありましたけれども、そうした家族を含めて社会全体で、子供は社会の宝ですから、育てていくんだという、そして少子化という現実の前に、少ない子供を大事に育てていく、社会全体で育てていく、こういうことが極めて大事なことだというふうに考えております。そうした中で、外国に学ぶべきものはきっちり学びながら、我が国の実情に応じた効果的な施策を講じてまいりたい、こういうふうに考えております。

    〔宮澤委員長代理退席、委員長着席〕

大村委員 今、大臣言われましたように、社会全体で取り組むということで、これはぜひ、先ほどの、社会保障の横断的な組織を省内につくると言われましたね。だから、その中でもやはりこの少子化問題というのはその前提になると思うんですね。これも、一部局に任せるんじゃなくて、ぜひ、そういう中でも一つ大きなポイントとして柱立てをして検討していただきたいというふうに思います。

 次に参ります。次は、介護保険についてちょっとお聞きをしたいと思います。

 介護保険法の改正法案が提出をされました。これは我々政府・与党で真剣に議論をして提出させていただいたものでありますが、ぜひ精力的に審議を進めて、できるだけ早く成立に持っていきたいというふうに思います。

 とにかく国会審議の中でいろいろな論点を十分議論していきたいというふうに思うのでありますが、その中で、先日、六十五歳よりも若い方の末期がん患者を介護保険の対象に加えるという報道がありました。これは、これまでも日本ホスピス協会の皆さんとか、いろいろな方から要請があったものでもありますけれども、この点について、大臣が前向きだという報道もなされております。私もこれはこれで結構なことだと思いますし、大事なことだと思いますが、これを介護保険の議論の中で前向きに進めていければと思うんですが、この点について現状をお聞かせいただければと思います。

中村政府参考人 今お話のありました、四十から六十四歳の末期がんの患者さんについての介護保険の扱いの件でございますが、このお話が起こりましたのは、先般の尊厳死とホスピスを推進する与党議員懇話会において、日本人の死因の第一位であるがんのための在宅で終末期を迎える六十五歳未満の介護保険の被保険者が、ということは四十歳以上の方でございますが、介護保険サービスを利用できるよう、がんを特定疾病に追加することについて議論があり、その関連でいろいろお話が出たものと承知いたしております。

 この問題につきましては、昨年十二月十日に取りまとめられました社会保障審議会介護保険部会の意見におきましても、現行の介護保険制度と他の制度の、制度の谷間にある四十歳以上の末期がんで介護を必要とする方については、介護保険による給付を受けられるように早急に検討すべきではないかという問題提起もなされているところでございます。

 私どもといたしましては、この四十歳以上の末期がんの患者さんの介護保険制度における取り扱いにつきまして、今後、与党からも出たお話でもございますので、関係者の方々と調整しながら対応を検討してまいりたいと考えております。

大村委員 ぜひ前向きに御検討をいただきたいというふうに思います。

 介護保険について、これは実際の法案の審議のときに、またじっくりとさせていただきたいと思いますが、その中で、きょう、一点だけ、確認というか、大臣に答弁をぜひいただきたいというものがございます。

 それは介護保険法の附則の第二条でございまして、前の法律の附則でも、検討の事項ということで附則第二条というのがありましたが、今回も、附則二条に、「政府は、介護保険制度の被保険者及び保険給付を受けられる者の範囲について、社会保障に関する制度全般についての一体的な見直しと併せて検討を行い、その結果に基づいて、平成二十一年度を目途として所要の措置を講ずる」、こう書いてあるわけでございます。

 これは、これまでの政府と我々自民党、与党との議論の積み重ねを踏まえまして、先般、二月の三日、自民党厚生労働部会において私が申し上げ、衛藤副大臣からも明快な御答弁をいただいたわけでございます。障害者の介護の点もこれに含まれて、この点も厚生労働省として誠意を持って誠心誠意検討して、それで早期に結論を得ていく、その旨がこの附則第二条に入っておるんだということを、衛藤副大臣に明快に、二月の三日、御答弁をいただいたわけでありますけれども、その点について、改めて尾辻大臣からも、当然同じことだと思いますが、明快に、力強く御答弁をいただきたいというふうに思います。

尾辻国務大臣 それでは、改めて申し上げます。

 今お話しの被保険者、受給者の範囲ということにつきましては、介護保険制度創設当初から大きな課題でございまして、これもお話しいただきましたけれども、現行介護保険法附則におきましても、被保険者及び保険給付を受けられる者の範囲については、障害者の福祉に係る施策等との整合性に配慮し、施行後五年を目途に検討を加えられるべきものとされておるところでございます。

 このために、この問題につきましては、今回の介護保険制度の見直しにおきましても、主要な論点の一つとして議論が行われてまいりました。そこで、今回、国会に提出をさせていただきました介護保険法等の一部を改正する法律案におきましては、被保険者、受給者の範囲については、社会保障に関する制度全般についての一体的な見直しとあわせて検討を行い、平成二十一年度を目途として所要の措置を講ずるという附則、そういう規定にさせていただいたところでございます。

 この今回の検討条項につきましては、直接、障害者について記述はしておりませんけれども、被保険者、受給者の範囲、こう言っておるわけでございますから、それは、社会保障に関する制度全般についての一体的な見直しとあわせて検討する課題でございますから、検討の具体的な内容として、改めて申し上げますが、障害者の介護を介護保険の対象とすることの検討を含むものと考えております。

大村委員 今、大臣から御答弁をいただきました。

 要は、これは五年前の附則にもそういうふうな話があったわけでありますから、五年間、やはりそういう議論が十分できていなかった、できなかった。また、自民党の中で、我々党内の中での議論も、昨年秋から集中的にやったのでありますけれども、どうもその議論を避ける、避けようとする向きがあったというのを大変残念に私は思っておりまして、この附則が平成二十一年度を目途として、今大臣もしっかりやるということを言われましたので、ぜひこれは精力的に議論をしていただいて、でもって、確かに、負担がふえるということについては、やはり相当な御理解をいただかなきゃいけない。そのためにも、やはり前広に前広に、何か問題はないか、どういうふうにしたらいいのかということを、議論を積み重ねていきたいというふうに思っております。その点はぜひよろしくお願い申し上げたいと思います。

 それから、続きまして、時間が限られておりますので次に行きますが、社会保険庁改革について御質問をさせていただきたいというふうに思います。

 社会保険庁のあり方のお話より前に、その前にまず、これはきのうの朝刊ですね。新聞で出ておりました。特に読売新聞が一面トップでありましたけれども、「社保庁五百二十億削減可能」というちょっとセンセーショナルな見出しでありましたけれども、これは、社会保険庁のオンラインシステムについての刷新可能性調査の最終報告で明らかになった、民間のコンサルタント会社の調査によるもの、こういうことでございました。読売新聞では、巨額の契約にもかかわらず、全体像も業務内容も把握できない、業者への依存を生み出した、同庁のシステムの管理体制の弱さなどといったようなことも報道をされております。

 ただ、私は、こういったことが表に出てくるというのは非常にいいことだというふうに思います。健全な組織とか企業体は、生き延びるためには、とにかく悪いことがあったらいかに早く発見してこれを直していくかということなんですね。だから、そういうことで見れば、これが出てくるというのはいいことだと思うんですけれども、本来、これは民間なら当たり前でございましたけれども、なかなか今まで出てこなかった。

 この旧式システム、レガシーシステムについては、我々もこのあり方を問題にしてきたわけでありますけれども、今回の調査及び調査結果を踏まえて、今後どういうふうに対応されるのか、されようとしておられるのか、この点についてお聞かせをいただきたいというふうに思います。

青柳政府参考人 社会保険庁のオンラインシステムについてのお尋ねでございます。

 まず、今回の報告をいたしました事実関係について簡単に触れさせていただきたいと思いますが、オンラインシステムにつきましては、政府全体のレガシーシステム見直しという流れの中で、外部のコンサルタント会社に委託をして刷新可能性調査を行っているものでございます。報道につきましては、去る二月二十一日に開催いたしました社会保険オンラインシステム刷新可能性調査専門家会議、こういうところにおきまして、この刷新可能性調査の最終報告案を提示させていただきまして、専門家の御意見を伺ったという内容でございます。

 今お尋ねのありました部分につきましては、特にこの最終報告案の中で、システムの刷新案といたしまして、現行のシステム形態を維持しつつハードウエアの集約化を図る漸進型、それから、システムを全面再構築する全面再構築型、この両者のいわば中間的な刷新案としての部分再構築型という三案が示されまして、このうち、仮に全面再構築型を採用した場合には、現行の年間の運用費用と比較をいたしまして、五百二十億円の削減が見込まれるという内容のものでございます。

 一方、この案の実現に際しましては、そのほかに、一千八百四十億円の初期投資と、七年間にわたるシステムの構築期間を要するという点がございますので、この最終報告案におきましても、障壁が高いと考えられるという評価をいただいているところでございます。

 また、最終報告案の中では、ただいま申し上げましたもののほか、データ通信サービス契約の契約解除金、いわゆる残債問題というふうに申しておりますが、この支払いとして、現時点で総額二千十億円というものが必要であるということをお示しいただいているわけでございます。

 これについてどのように対応していくのかというお尋ねにつきましては、今回の刷新可能性調査の結果を踏まえまして、平成十七年度末までに、業務、システムの将来像を見据えた最適化計画というものを策定することとなっております。この中で、競争性あるいは効率性が高まるような見直しによる経費の削減を行うことができるように、十八年度以降、順次実施してまいりたいというふうに考えております。

大村委員 この点については、ほかにも何か、社保庁や厚生労働省から随意契約の相手方に二十人近く天下りしとか、いろいろなことが指摘をされておりまして、やはりこれは引き続き我々しっかりとただしていきたいというふうに思います。ぜひ、これは引き続きやっていきたいと思います。

 次に、社会保険庁のあり方でありますけれども、これは、おととい二十一日に、新しい組織に関する論点、いわゆる座長メモというのが出たというふうに聞いております。それを見ますと、要は、現行の組織を前提にしながら、いわゆる監査機能というんですか、そういったものを充実させていこうということ、そしてまた地方組織を見直していこうということでありまして、それはそれで、それはいかぬとは言いませんけれども、何となしにこれまでの議論の延長線上かなという感じがいたします。

 マスコミ等の論評では、実際の業務は新組織、今の社保庁職員が移って行う見通しだ、単なる看板のかけかえに終わる懸念はなお残るというような指摘もされております。また、二十一日の会議では、人事処遇は民間企業の枠組みが必要だといったような指摘もなされたというふうにも聞いております。また、これはマスコミの指摘でありますけれども、こういった形で社会保険庁を厚生労働省から独立性を強めるということについて、厚労省の中でも反発があるというような報道もあります。

 いまだに何か省益の観点からの議論があるのかなというふうに思うと、何を言っておるんだという気がいたすわけでございまして、この点についてもっともっと突っ込んでお聞きをしたいのでありますが、時間がだんだん来ておりますので、私の考えも申し上げて、長官と大臣のお考えをお聞きしたいというふうに思います。

 今回の座長メモを見まして、改めて私は、社会保険庁の改革の大前提としては、やはり廃止、解体だ、ゼロベースの見直しだ、業務の即時民間開放がやはり必要だということの意を強くしたわけでございます。

 要は、政府の中でのこういう有識者会議だと、結局今までと同じ延長線上でしか物事は考えられぬのかなと。要は、これだけ国民の皆さんの不信感を得ているんですから、今はやはり流れを一たん断ち切って、その上でゼロベースで物をつくっていくということでないと、やはり国民の皆さんの信頼は得られないというふうに思います。

 先ほど大臣が、徹底してうみを出すということとか、解体的な組織改革をすると。解体的ではだめだと思うんですよ、的では。解体的というのはやらないということと一緒じゃないのかなという気がしてならないわけでございます。そういう意味で、言葉がどうのこうのというよりも、実際にどういうふうにこれを変えていくのかということを、やはり一つ一つ、ポイントポイントをピンどめして改革というものを進めていかないといけない、それを国民の皆さんにしっかりと見ていただく、結果を出すということが大事だ、私はこういうふうに思っております。

 そういう意味で、今私が申し上げた考え方は、我が党の同僚議員の中でとにかく賛同者を集めて、執行部にも強く申し入れておりますし、そういう方向で自民党の中の議論を必ずまとめていきたいというふうに思っております。社会保険庁改革について、もう待ったなしだし、とにかく後ろがないというふうに私は思いますけれども、その点について、いや、民間から来られて大変なところに来たなと多分思われておられると思いますけれども、村瀬長官と大臣のお考えをお聞きしたいというふうに思います。

村瀬政府参考人 今の御質問にお答え申し上げたいと思います。

 まず、私の役割でございますけれども、私の役割は、社会保険庁長官としまして組織内改革を徹底することだというふうにまず認識しております。

 したがいまして、何をするかといいますと、組織の抜本的な中からの見直しと業務の見直し、これをまずしっかりやった上で、国民の皆さんからまず信頼を回復ができるかどうか、これに今現在取り組んでいる最中でございます。

 では、具体的にどういうことをやっているか、簡単に触れさせていただきますと、やはり、問題の大きなところへガバナンスが欠如している、これをどうやって強化していくか、それから職員の意識改革をどれだけ徹底できるか、これにかかっているんだろうと思います。

 したがいまして、現在、八十項目の緊急対応プログラムを策定いたしまして、逐次実行しているところでございまして、その中で、国民の皆さんが厳しく見ていただくということで、変わります宣言であるとか、行動規範であるとか、あと、国民の皆さんからのメール、声をいただくだとか、こういう形で今現在進めているところでございます。

 したがいまして、現行組織でまず徹底的に効率化、効果的な仕事のやり方を図っていく、これによって信頼を回復していきたいという形で思っております。

 一方、有識者会議では、新しい組織について現在検討いただいておりますけれども、私自身としましては、その中で出てくる答えに対して、現在の社会保険庁の職員がやらなきゃいかぬ仕事があるのであれば、それは、先ほど申し上げました効果的な仕事をやることにおいてカバーは可能になってくるんだろうというふうに思っております。

 以上でございます。

尾辻国務大臣 まず、先日の社会保険庁の在り方に関する有識者会議の座長私案についてのお話がございました。

 私もその場にいまして、御議論も聞いておりましたし、座長私案も見せていただいたのでありますけれども、先ほどちょっと、マスコミがどういう理解をしたかというようなことについてのお話もございましたが、私はそのように理解はいたしませんでした。

 なぜかといいますと、まずその前に、座長は基本的なことを言っておられるわけであります。再三申し上げておりますけれども、まず座長は、その前に、現行の社会保険庁の存続を前提としないこと、こう明確に言っておられますし、新しい組織のグランドデザインを三月中に整理する、そして五月に取りまとめを行う、こういうふうに言っておられるわけでありますから、この前の座長私案というのは、それに向けての道筋を示された、こういうふうに理解をいたしておるところでございます。

 そして、官房長官のもとで議論をされておるものでございますから、今までのしがらみとかなんとかの中では議論されていない、私はそのように理解をいたしております。

大村委員 ぜひそういう、今のしがらみとか、そういう延長線じゃないところで方向性をつくっていただきたいと思います。引き続き、この社会保険庁のあり方については徹底的に追及して、ただしていきたいというふうに思っております。

 以上で終わります。ありがとうございました。

鴨下委員長 次に、古屋範子君。

古屋(範)委員 公明党の古屋範子でございます。

 本日は、先ほどからの質問にもございましたけれども、現在の政治の最重要課題であります少子社会の問題についてお尋ねをしてまいります。

 国立社会保障・人口問題研究所によりますと、日本の人口は二〇〇六年にピークに達し、その後、二〇〇七年からは減少に転ずると推計されております。出生数が死亡数を下回り、人口減少がいよいよ現実となり、かつて経験したことがない人口減少・高齢社会に突入をしていくわけでございます。

 この少子化対策については、御承知のように、公明党は結党以来、教科書無償配布、また児童手当の拡充、保育所の整備、育児休業法の拡充、奨学金の拡充等々、希望と喜びを持って子育てできる環境整備の推進に全力で取り組んでまいりました。昨今の雨後のタケノコのようにわき上がった少子化対策ブームとはちょっとわけが違う、公明党はいわば少子化対策の元祖であると自負をしております。

 しかしながら、予想していたとはいえ、二十一世紀に入りまして加速度的に訪れた高齢社会に、根本的かつ効果的な対策が打てずにいるというのが現状ではないかと思っております。この問題の深刻さは、大げさではなく、有史以来の危機であります。

 そこで、公明党は、その真価を発揮すべく、少子化対策を政治に取り組む際の重要課題であると位置づけ、この一月、少子社会総合対策本部を立ち上げました。この二月より、総合的な支援策としてのトータルプラン策定に向け、党内論議を開始いたしました。三月中にはグランドデザインとなる骨格をまとめ、それをもとに一年程度をかけ幅広く調査し、また、子供の視点また女性の声を多く取り入れながら、共感を得られるプランをまとめたいと考えております。

 そのために、女性や若者の意見を初め、関係する各種団体、労働界、経済界、有識者からのヒアリング、そして同時に、各地域で直接住民の方々からの声を伺うタウンミーティングなども開きまして、意見を政策に反映していきたいと考え、今、国会議員全五十八名、そして地方議員三千四百四十四名、総力を挙げてこの問題に取り組んでおります。

 厚生労働省初め政府としても、現在まで鋭意少子化対策に取り組んできたわけでありますが、予想をはるかに超える少子化のスピードの前に、なかなか実効性が上がらないのも事実であります。子は国の宝であるとよく言われますが、有名な山上憶良の歌に、

  銀も金も玉も何せむにまされる宝子にしかめやも

という歌がございます。尾辻大臣、少子化対策の重要性にかんがみ、この歌の感想も含めて御所見をお伺いいたします。

尾辻国務大臣 先ほども申し上げましたけれども、私どもも、子供は社会の宝だ、そういうふうに考えております。

 そうした中で、平成十五年の合計特殊出生率が過去最低の一・二九になりますなど、急速な少子化の進行は、年金等の社会保障制度のみならず、我が国の経済社会全般に深刻な影響を与えるものでございまして、少子化対策の推進は極めて重要な課題であると認識をいたしております。このため、これまでも厳しい認識を持ってさまざまな角度から取り組みを進めてまいりましたけれども、残念ながら少子化の流れをとめるに至っていないところでございます。

 こうした状況を生み出しておる要因は何だろうということになりますと、これが難しいんですけれども、一つには、長時間労働の風潮が根強いなど、働き方の見直しに関する取り組みが進んでいないこと、これもきょうも御指摘もいただいたことでございます。あるいはまた、多数の待機児童や家庭内で孤立して育児をしている母親が存在するなど、子育て支援サービスがどこでも十分に行き渡っている状況にはなっていないこと。これは、きょうも再三申し上げておりますように、エンゼルプラン以来、ずっと保育の充実ということを言ってきましたけれども、まだ待機児童もいるといったようなことがございます。それから、若年失業者の増大等、若者が自立して家庭を築くことが難しい状況になっておること。

 こうしたことなど、いろいろな問題が挙げられると考えておりまして、昨年末に策定いたしました新しい子ども・子育て応援プランに基づいて、若者の自立から働き方の見直し、地域のきめ細かな子育て支援など、幅の広い各般にわたる施策を着実に実施して、少子化の流れを変えられるように、申し上げておりますように、社会全体で子供の育ちや子育てをしっかり応援してまいりたいと考えております。

古屋(範)委員 大臣の深い思い、また多角的、総合的な角度からの御見識があるということは今お伺いすることができましたけれども、やはり、少子化へのそうした大臣の思い、また国のトップのそうした強力なメッセージが、まだまだ実感として国民に届いていないのではないかという気がしております。

 今、公明党で全国九百人以上の地方議員がおりますけれども、女性議員、またその周辺にいる人々の意見を今回全部吸い上げてみました。その中でも、一人の子供にお金がかかり過ぎる、子供にかかわる行事も多い、続けて二人目を産むのが大変であるとか、やはり大企業に勤めている人は少ない、ほとんどの子育て中のお母さんは中小に勤務をし、妊娠するたびにパートをやめ、収入を断たれ、大変苦労しているとか、あるいは、これは中学生の意見を聞いてみたものですが、中学生が家庭や子育てにどんなイメージを持っているか。家事をするのが大変そう、子育てをするのが大変そう、時間やお金が自由に使えなくなる、このような意見も寄せられております。

 やはり、子育てに対する負担というものが、若い世代、子供にとってもそれが目に映るといいますか、正直な親たちの世代の実感、負担感というものが若い世代へも伝わってしまう、このような感がするわけでございます。このような観点からも、子供を持つことの負担を軽減していかなければいけないと思うわけでございます。

 今後、さらに少子化対策を抜本的に強化するためには、財源の拡充が欠かせません。現在は、GDPに占める家族給付の割合で見ますと、ヨーロッパ諸国では、イギリス二・二%、フランス二・八%、スウェーデン三・五%と比較して、日本は〇・五%しかありません。また、これも周知の事実でありますが、国内的に見ても、社会保障費全体に占める高齢者関係予算と子育てにかかわる予算を比較しますと、約七〇%対四%という信じられないほどの大きな差があるわけであります。

 政府は、いわゆる子育て応援プランを決定し、総合的な次世代育成支援策を幅広く検討されておりますけれども、この予算措置ができなければ、結局は、先ほどお伺いしました大臣の思いも、子育て応援プランも、絵にかいたもちになってしまうのではないか。大臣はこの現状をどうお考えになるか、少子化対策予算増額の確保についてお伺いをいたします。

尾辻国務大臣 社会保障給付費で見ますと、これは確かに、老人の方は年金や何かが入りますから、極めて大きな数字になるということは確かなのでありますが、それにしても、今お話しになったような数字で比較すると、やはり子供の方に対する予算をもう少しふやさなきゃいかぬのかなというふうには私も感じております。

 そのことを申し上げて申し上げるんですけれども、平成十四年度の社会保障給付費においては、少子高齢化が進む中で、保育所運営費、児童手当などの児童・家族関係給付費が全体の三・八%となっている一方で、年金保険給付、老人保健給付などの高齢者関係給付費は六九・九%となっております。数字をまず申し上げました。

 こうした中で、昨年末に策定いたしました子ども・子育て応援プランにおいては、少子化の流れを社会全体で変えるべく、働き方の見直し等の企業の取り組みや、地域の自主的な活動なども含めた総合的な施策を盛り込んだところであり、まずはこのプランを着実に推進していくことが重要と考えております。

 さらに、子ども・子育て応援プランでは、社会保障給付については、大きな比重を占める高齢者関係給付を見直すことに加えまして、社会全体で次世代の育成を効果的に支援していくため、地域や家族の多様な子育て支援や、児童手当等の経済的支援などの次世代育成支援施策について、総合的かつ効率的な視点に立ってそのあり方を幅広く検討することとしておりまして、現在進められております社会保障制度全般についての一体的な見直し、検討の中で、こうした課題について検討を進めることが重要と考えております。

古屋(範)委員 今、団塊の世代の子供たちが出産年齢に差しかかっている。これを逸しますと、少子化が大きく進んでしまうと思います。やはり、この五年間が勝負の年であると思います。この認識のもとに、効果的に支援していくための予算の確保をぜひともお願いしたいと考えております。

 その中で、出産費用についてお伺いをしてまいります。

 公明党は、出産一時金を二十四万円から三十万円に引き上げることを実現させるなど、粘り強い活動を今続けております。先ほどの全国の女性議員からの声の中にも、例えば、二十歳代のお母さんが子供を五歳まで子育てに専念できるくらいのものを支給する。早い出産を促すため、年齢に応じて支給額を変えてほしい。これは、スウェーデンなどでもスピードプレミアムというような制度もございますけれども、また、出産一時金を、第一子百万、第二子二百万、第三子三百万円を支給してはどうかなど、思い切った提案も寄せられておりますけれども、その中で一番多かったのが、出産費用に対する保険適用をお願いしたいという要望でございました。現在、出産に当たっては、異常分娩しか保険が適用されず、正常分娩のほとんどのお母さんは大変な負担を強いられているわけでございます。

 そこで、出産費用に対する保険適用等、出産に対する支援についてお考えをお伺いいたします。

西副大臣 お答え申し上げます。

 委員御承知のように、出産費用の負担の軽減を図るために、現在も医療保険から、医療機関における分娩料の状況を踏まえて、三十万円の出産一時金を支給しているということは御存じのとおりだと思います。ちなみに、三十万円という設定は、今はもう組織が変わっておりますが、旧国立病院の分娩費のほぼ平均値ということで、平成十四年度のデータでございますが、三十万円ということに設定をしております。

 医療保険制度そのものの性格からして、疾病それからけが等の保険事故に対して給付をするという基本的な性格がございます。そんな中で、正常な出産自体がこの疾病それから負傷等とは異なるということから、保険適用には現在なっていない、こういうことでございます。

 しかし、今お話をいただきましたように、少子高齢化において、大変な課題でもあるということは私自身も認識をしているつもりでございます。この保険適用につきましては、こういった医療保険制度の基本的な性格、それから厳しい保険財政の状況、それから分娩料の状況等を踏まえつつ、平成十八年度に向けた医療制度改革の中で検討をすることといたしております。

古屋(範)委員 ぜひ前向きな御検討をお願い申し上げます。

 次に、内閣府の若年層の意識調査、二〇〇三年度によりますと、理想の子供数を持てない第一の理由は子育てコストの増大であります。国立社会保障・人口問題研究所の出生動向基本調査でも、理想の子供の数を持とうとしない理由として、「子育てや教育にお金がかかりすぎる」がトップになっております。やはり現場のお母さん方からも、塾の費用が非常にかかるとか、もちろん高校、大学の授業料もそうでありますけれども、教育費にお金がかかり過ぎる、この結果からも経済的支援のニーズが最も高いと言うことができます。昔は二人産むのも三人産むのも同じだと言われたようなこともありますけれども、現在は一人ふえるたびに人数分だけ子育て費用が増大していく、これが現実であります。

 子供の健全な成長には社会全体がかかわるため、子供を持つ家庭も持たない家庭も、すべて子供の養育にかかわっていくべきではないかと思います。すなわち子育てを社会全体で支援していく、これによって、育児の負担を軽減する子育ての社会化を大胆に進めていく必要があると考えます。核家族でも三人以上の子供を無理なく育てられる社会の支援を具体的なシステムとして構築できれば、出産意欲回復の力にもなると思います。

 これまで公明党は、一貫して児童手当や奨学金の拡充に取り組んでまいりましたが、子育て家庭への経済的支援の一つとして、この児童手当、奨学金など飛躍的な支給額の拡充が不可欠であると思いますが、これについての御所見をお伺いいたします。

衛藤副大臣 御指摘のとおりでございまして、先ほどからお話がございましたけれども、まさに子供は宝と言われたわけでございますけれども、子供が宝のような社会をどうつくるのかということを物心ともに実現しない限り、極めてやはり難しいのではないか。

 先ほど大村委員からも、総花的で何がポイントですかという御質問がありましたけれども、まさに私は、今このままでは、この五年間が大変重要な時期でございまして、そういう意味で、プランの中には五年間の検討規定も入れているところでありますけれども、これだけで足るのかということをやはりいつも繰り返し問い直して、何とか少子化対策をやり遂げなければいけないと思っております。そういう中で、物心ともに子供は宝という状況をどうつくるのかということは、政治として、政府としてやらなきゃいけないことだというぐあいに思っております。

 そういう中で、子育てや教育に大変お金がかかるということでございまして、御承知のとおり、与党、自公の協議の中で、やっと、この平成十六年度からは児童手当の支給対象を小学校の三年生までに引き上げたところでございます。大変なお金を要したわけでございますけれども、これをやっとやり遂げたところでございまして、今後は、昨年末に策定いたしました子ども・子育て応援プランの中にのっとりまして、もっと社会保障の枠にとらわれることのないように、次世代育成支援の推進を図らなければいけないというふうに思っております。

 このプランの中におきましても、地域や家庭の多様な子育て支援、あるいは児童手当等の経済的支援など、多岐にわたる次世代の育成支援施策について、総合的かつ効率的な視点に立ってあり方を深く検討するというぐあいにしているところでございまして、今委員御指摘のような形での、もっと前向きにお金を投入する形での検討を進めていかなければいけないというぐあいに強く感じているところでございます。どうぞよろしく御協力のほどお願い申し上げます。

古屋(範)委員 ぜひとも児童手当の拡充を実現させてまいりたいというふうに私も考えております。

 私も子供を持つ母親の一人でありますけれども、やはり今の日本は、子を持つ働く者にとって冷たい社会であると言うことができると思います。また、子供を持つ親は損をしてしまう社会、ここから、子供を産み育てることが得をする社会への転換が必要ではないかというふうに考えております。

 このように、現代女性の多様なニーズを反映した子育て社会の体制、仕組みが急務でありますけれども、これに関しまして、最後、大臣に一言御決意をお伺いしたいと思います。

尾辻国務大臣 家庭を築くということがまさに夢であり希望であるような社会にしなきゃいかぬ、そういうふうに考えます。そして、安心と喜びを持って子育てに当たっていけるような、そういう社会にぜひしたいと考えます。

古屋(範)委員 以上で質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

鴨下委員長 次に、福島豊君。

福島委員 大臣、両副大臣、大変に御苦労さまでございます。

 先日の予算委員会に引き続きまして、障害者施策についてお尋ねをいたしたいと思っております。

 先日の予算委員会でも申し上げましたが、この国会に提出をされました障害者自立支援法につきましては、大変大きな障害者施策の転換になるわけであります。その持つ意義、そしてまた制度の抜本的な見直しの意味、こうしたことを踏まえつつも、制度の転換に伴うさまざまな障害者の負担については十分な配慮が行われるべきであるということを申し上げてまいりました。きょうは、引き続き、そうした点について、障害者の当事者団体からも寄せられております声を踏まえてお尋ねをいたしたいと思っております。

 まず一つは、移動支援、ガイドヘルパーでありますけれども、これについてのお尋ねであります。

 今回の見直しにおきましては、この移動支援につきましては、地域生活支援事業、この中に位置づけられているわけであります。支援費制度がスタートいたしましてから、こうしたガイドヘルパーの利用というものが拡大をいたしておるわけであります。しかし、この地域生活支援事業は、厚生労働省が示しております考えでは、市町村の一般財源でこれを行うというところに位置づけられているわけであります。支援費ではなく一般財源に位置づけられるということから、その給付が果たしてこの改革後に適切に確保されるのか、こういう心配があるわけであります。この点についての厚生労働省の御見解をお聞きいたしたいと思います。

西副大臣 お答え申し上げます。

 委員御指摘のように、障害者の外出時の支援、いわゆるガイドヘルパーのことにつきましては、新しい制度では、個々の皆さんに対する給付ではなくて、市町村の地域生活支援事業の中に位置づけるということになっております。

 これによりまして、移動介護につきましては、急な外出が必要となった、こういう場合には即時に適用できる可能性がある。また、これは個々の状況にもよりますが、複数の人たちが一緒に移動することも可能になるであろう、こういうことが考えられております。それから、外出の目的や頻度を踏まえた、地域の実情に応じた効率的な利用ができるであろう、こういうふうなことについても可能ではないかというふうに考えております。

 今回、地域生活支援事業として位置づけるに当たりまして、今までは支援費制度のもとで居宅サービスとして提供されていた、こういう経緯がございます。そして、障害者が自立した社会生活を営む上で大変重要なサービスであるということも十分認識をしております。そんなことを踏まえまして、市町村が必ず実施しなければならない義務的な事業として私どもとしては位置づけておりまして、その費用につきましても、国、都道府県が補助することができる旨の規定を置かせていただいております。今後も必要なサービスが適切に受けられるようになるものというふうに考えております。

 なお、重度の行動障害を有する皆さんについては、これは移動支援、それから身体の介護等を一緒に、パッケージとして給付を今までのサービスメニューの中で受けていただくということにつきましても、制度としてやっていきたいというふうに考えております。

福島委員 先日の予算委員会で、介護については市町村が担っていく、地方分権の考え方が大事だということを申し上げましたが、この障害者施策におきましても今まで以上に地方自治体の果たす役割は大きくなっておりますし、そしてまた同時に、政治の立場でも、地方議会が、みずからの自治体でどのような障害者施策が行われているのか、こういうことについて十分意を払わなければいけない、そのような思いがいたしております。公明党としても、多数の地方議員を擁しております。こうした障害者施策というものが安心して確保できるように、党として全力で頑張っていきたい、そのように思っております。

 二点目は、自立支援医療についてであります。

 従来の更生医療でありますとか育成医療でありますとか、そうした公費によって担われていた医療を、大きく自立支援医療ということで制度の見直しを行うものであります。従来の負担から変わりまして、負担水準が引き上げられるということが起こるわけであります。

 そしてまた、精神医療の精神通院公費制度につきましては、定率負担の見直しが行われますけれども、一方では、それぞれの、例えば都道府県単位でこうした自己負担分についてそれを補助するという仕組みもありますので、実質的には単に定率負担の引き上げということにとどまらない変化が生じるというふうにも言われているわけであります。こうしたことから、治療の中断につながるのではないか、こういう懸念が、障害者の当事者団体のみならず、地方自治体からも寄せられているところであります。

 こうした地方自治体の行っている単独事業も存在するということも踏まえ、適切な負担水準の設定ということがまずは必要であるというふうに思います。この点についての御見解をお聞きしたいということがまず第一点であります。

 そしてまた、この自立支援医療の対象者につきましては、幾つかの分類が行われるわけであります。この中で、重度かつ継続という範囲に含まれる疾病については、現在の厚生労働省の御説明では、精神医療に関しては統合失調症、躁うつ病、そしてまた難治てんかんの三疾病がこの中に含まれているわけでありますけれども、これについても、現場のさまざまな御意見から、よりその対象というものは拡大をされるべきではないか、当然、この重度かつ継続の対象になっていいような状態がほかの疾病であったとしても存在するんではないか、こういう御指摘もあるわけであります。

 この点については範囲の見直しを二年以内に行うという方向も示されておりますけれども、この点につきましても厚生労働省のお考えをお聞きいたしたいと思います。

西副大臣 お答え申し上げます。

 精神の通院の公費関係でございますが、毎年の利用者の増加によりまして、その費用が急増しております。そして、現在の国、地方の財政状況の中で、正直申し上げまして、現行制度を維持するということは非常に厳しい状況でございます。

 一方では、必要な医療を確保しつつ、持続可能な制度というふうにしなければならないということもございまして、更生医療等とあわせて、費用を皆で負担し合う、また支え合う、こういう仕組みに見直していき、そして、その結果、障害者自立支援法ということで、自立支援の医療として位置づけをさせていただくということになっております。

 具体的に申し上げますと、今回の改正では、自立支援医療の対象者につきましては、一部の比較的高額の所得のある方を除き、現在の制度を変更するものではございません。それから、医療費の額と所得に着目した公平な利用者負担の仕組みを基本にしてまいります。特に、低所得者と、重度かつ継続的に医療費負担が生じる者、この項目の中に給付の重点化を図るとともに、無理のない負担水準となるように、所得に応じ毎月の負担上限を設けさせていただくということにつきましても配慮をさせていただきます。

 なお、重度かつ継続の範囲につきましては、先ほどお話がございました、当面、精神の面につきましては、統合失調症、それから狭義の躁うつ病、それから難治性てんかん、この三疾患を対象とすることとしておりますが、重度で継続的に医療費が発生する代表例としては、今この三疾患が、この一つ一つのレベルも、疾患の重度か軽度かという問題もございまして、これでは広過ぎるんではないかという意見も一方ではございますし、これでは余りにも範囲が狭過ぎるんではないか、もっと疾病の数もふやしなさいという、双方の御意見があるというふうに承知をしております。

 そういうことでございますので、今後、実証的な研究結果を踏まえて、対象を早急に明確化していきたい。その期限をおおむね二年ということで考えておりまして、はっきりした段階で随時実施をしていきたい、このように考えているところでございます。

福島委員 しっかりと取り組んでいただきたいと思います。

 そして、次に、所得保障の話であります。

 昨年の臨時国会におきましては、特定障害者に対しての給付法が成立をいたしまして、無年金障害者の問題について一定の前進をかち取ることができたというふうに思っております。障害年金の水準の問題等々もあります。この所得保障について今後どうしていくんだということが、当事者団体からもさまざまに声が寄せられているところであります。昨年の給付法につきましても、今後の検討課題ということも含まれております。こうした点について、厚生労働省としての見解をお聞きいたしたいと思います。

西副大臣 お答え申し上げます。

 委員御指摘のように、障害者の皆さんの所得保障、これは、障害者の地域における自立ということを考えた上で、大変重要な問題だというふうに考えております。

 おかげさまで、昨年秋の臨時国会において、特定障害者に対する特別障害給付金の支給に関する法律を成立させていただいたことは、今後の障害者の所得保障について大きな前進であったというふうに考えております。

 年金制度、それから各種手当などについては、現在の国の財政状況を考えると大変難しい面もありまして、大きく一挙に改善を図るということは大変困難な道であるということを言わざるを得ない面もありますけれども、障害者の所得保障としては、福祉と雇用が連携した就労支援に積極的にこれから取り組ませていただくということによりまして、その適性に応じて障害者が働けるようになっていただく、このことを一つの重要な柱として、今後、障害者施策に取り組んでまいりたいと思っております。

福島委員 障害者の方々が、単に保護されるだけではなく、みずからタックスペイヤーになっていく、これも一つの大きな流れだと思いますし、この国会における障害者施策の大転換の一つの柱は、まさに就労の施策の推進ということだと思います。こうしたことも含め、包括的な取り組みというものをぜひしっかりと進めていただきたい、そのように思います。

 そしてまた、今回のこの障害者自立支援法は、従来の身体、そしてまた知的、精神と、児童も入りますけれども、そうした諸法を束ねる、こういう性格があるわけであります。昨年の臨時国会におきましては、発達障害者支援法というものが成立をいたしました。従来の法体系、障害者の法体系の谷間に置かれていた障害者の方々に対しても支援の手を差し伸べようということが発端であったわけであります。

 今回の自立支援法というのは、ある意味で、既存の法律を前提として、その対象となる方、これを対象とするという考え方になっているわけでありますが、こうした谷間に置かれる障害者の方々の存在ということを考えますと、発達障害の点も含め、より包括的な制度へと将来的には転換をしていく、見直しをしていく、こういうことが要請をされているのではないかというふうに思っております。この点についての厚生労働省の御見解をお聞きいたしたいと思います。

尾辻国務大臣 議員御指摘のように、支援の必要な方がきちんとサービスを受けられる、利用できるようにしていくということが、これがもう一番重要なことでございます。

 今般、国会に提出いたしました障害者自立支援法案により、身体障害、知的障害、精神障害といった障害の種別にかかわらず、一元的に自立支援のためのサービスを提供する仕組みを構築することとしておりまして、とりわけ対策の今までおくれてまいりました精神障害者の福祉が進むものと考えております。

 今回の障害者自立支援法案は、御指摘にもございました普遍的な法律への大きな一歩となるものでございまして、今後とも、支援を必要とする人たちがきちんとサービスを利用できる仕組みについて、幅広く検討をしてまいります。

    〔委員長退席、北川委員長代理着席〕

福島委員 大臣から前向きな御答弁をいただきまして、大変ありがとうございます。ぜひよろしくお願いをいたしたいと思います。

 先ほど、障害者の所得保障と絡んで、就労支援、こういうものと一体で考える必要があるということを申し上げました。障害者の自立と社会参加、これは、障害者基本法の改正において一つの障害者施策の大きな柱として示されたわけであります。そのためには、こうした所得保障と同時に、大切なことは、地域においての生活を支えるための住宅政策、住居の確保、住まいの確保という点ではないかと思います。

 本日は、障害者施策を総合的に考えるという観点から、国土交通省の方にもお越しをいただいております。

 公営住宅に対しての知的障害者の方の単身入居、この点も長らく要請を受けてきたところであります。身体の方は入れるけれども知的の方はなかなか入れない、こういったことについても、公営住宅、公的な役割を果たす住宅であればこそ対応すべきである、こういう考え方であります。この点についてのお考えをお聞きしたい。

 そしてまた、もう一点は、グループホームの活用であります。

 これは、大阪、私の地元でもありますけれども、当事者団体の方がさまざまに努力をして、そして公営住宅の中にグループホームを設置するという取り組みを進めております。ただ、こうした取り組みは、全国でもまだまだ量的には不十分と言わざるを得ないのではないかというふうに思っております。そうした公営住宅のグループホームとしての活用についても、国交省としての考え方をお示しいただければと思います。

和泉政府参考人 お答えします。

 御指摘のとおり、障害者が地域で安心、自立した生活を営むことを支援するため、障害者施策と連携しつつ、住宅政策を推進することは大変重要だと認識しております。

 このため、障害者で住宅に困っている方については、従来から、公営住宅の優先入居を図り、居住の安定に努めております。また、御指摘のとおり、公営住宅においては、障害者に地域での生活の場を提供する方策として、ケア支援が安定、継続して行われるグループホーム事業に公営住宅を提供しております。

 今後、これらの施策の一層の推進を図るとともに、現在、単身入居を認めていない知的障害者と精神障害者について、厚生労働省と連携を図りながら、地域の居住支援サービスの充実など、地域福祉における支援体制の枠組みづくりとあわせまして、単身入居を認めるよう、前向きに検討を進めてまいりたいと考えております。

福島委員 法案の審議は少し先になりますけれども、先般、自民党の八代英太先生が、この国会は、介護保険法の改正もありますけれども、障害者施策に関しての国会ではないか、こういう御指摘もありました。記憶に残っておりますけれども。そういう意味で、障害者施策というものを総合的に十分検討する、そういう国会にしてまいりたいと思っておりますので、厚生労働省としてもよろしくお願いいたしたいと思います。大変ありがとうございました。

北川委員長代理 次に、横路孝弘君。

横路委員 きょうは、年金の問題と、それから仕事と生活の両立といいますか調和というか、二つのテーマについて質問をいたしたいと思いますが、最初にまず、年金問題について御質問をいたしたいと思います。

 この国会が始まった衆議院の本会議で、我が党の岡田代表が、年金問題、年金の一元化を含めてたくさんの問題を抱えているから与野党で協議をしようではないかと言って、幾つかの点について御質問をされ、それに対して小泉総理は、一元化を含めた見直しは必要である、こういう答弁をされたわけであります。

 しかし、先日の衆議院の予算委員会の厚生労働大臣の答弁を聞いていますと、役所の意見を代弁されたのだとは思いますが、何かもう年金問題は終わっちゃったんだ、過去の問題なんだという感じで、私は強く受けとめて議論を聞いておったんですけれども、厚生大臣、どうなんでしょうか。総理大臣が言うように、年金の一元化を含めた見直しは必要であるというようにお考えなのか、いや、もう年金は過去の問題なんだ、見直しの五年に一度のときに必要な手直しをすればそれでいいんだというようにお考えなのか、基本的な大臣のお考えをまずお尋ねしたいと思います。

尾辻国務大臣 予算委員会でも申し上げましたけれども、まず、年金に対する国民の皆さんの信頼がなければ、これは年金の意味がない、そういうふうに考えております。そして、国民の皆さんから年金の信頼を取り戻すといいますか、信頼していただくために、やることがあれば、私はどんなにでも謙虚になるつもりですと申し上げております。そして、先日の予算委員会で答弁をさせていただきましたときも、私は、そうあるべきだと思い、そう思いながら答弁をさせていただいたつもりであります。

 ただ、それがそういうふうに御理解いただけなかったというのは、これは私の不徳のいたすところといいますか、私の意が十分に表現できていなかったんだというふうに思います。

 まずは、そういうふうに考えておりますということを申し上げたいと存じます。

横路委員 信頼を取り戻すためにということをおっしゃいましたが、昨年のあの年金改正で国民の信頼を取り戻すことができたんでしょうか。今、いろいろな世論調査、政府に対する要望とか政治に対する要望というのを世論調査をやりますと、どの調査を見ても、年金などに対する要望というのは非常に強いですよ。これは、信頼があればこんなに要望として上がってくるわけないじゃないですか。やはり、信頼を取り戻すというか信頼を得ることができなかったんでしょう、この間のあの年金改革は。違いますか。

尾辻国務大臣 今申し上げもいたしましたけれども、公的年金制度は世代と世代の支え合い、それで仕組まれておりますから、国民の理解や信頼を得ることが極めて重要であると考えております。

 そして、では、昨年の改正で信頼が得られたのかと言われると、申し上げておりますように、これも信頼が完全に得られたというふうには思いません。

 ただ、その信頼が得られていないこと、これはなぜだというお話になりますと、私は、一つには、私どもがきっちり御説明できていないんだろうと。もう少し年金、公的年金ということについて御説明申し上げなきゃならぬことがあるのではないか、そのことが十分に御説明できていないところに信頼を得ていない大きな理由があるのであろうというふうに考えております。

横路委員 私は、後で、そうではなくて、制度そのものに実は国民が不信感を持ち、不安を持っている大きな理由があるんだということがこれからの質問の主要テーマでございますが、その前に、総理大臣は本会議で、年金一元化を含めた見直しが必要ですということをおっしゃっているわけですね。それは、年金の一元化ばかりじゃなくて、そのほかもやはりいろいろな問題があるから見直しをしましょう、それは必要なんですよという御答弁だったわけですよ。この点は厚生大臣も認められるんですか、認められないんですか。

尾辻国務大臣 総理が、年金の一元化を含めた社会保障全体についての見直し、これに取り組んでいくというふうに答弁をしておられますけれども、これは、私も当然そういうふうにすべきである、こういうふうに考えております。

横路委員 つまり、年金の一元化を含めて、年金制度、正直言っていろいろな問題があるわけですね、国民年金にも厚生年金にも。やはりそういう問題をしっかりとつかまえて議論をしていこう、こういう姿勢はおありになるわけですか。もう一度確認します。

 つまり、年金の一元化を含めた見直しが必要だという総理答弁ですから、今の年金制度、この間改正はしたけれども、やはりいろいろな問題があって、それが私は国民の信頼がないことにつながっていると思いますが、それは横に置くとして、いずれにしても、問題があるから含めて議論をしていきましょうということはよろしいんですね、この総理大臣の答弁は。

尾辻国務大臣 まず、大きく社会保障全体を見直すということが今極めて大事なことだというふうに思っておりますから、それはそのとおりでございます。

 それから、年金の話でございますけれども、もちろん年金の中に、余り細かなことを申し上げてとも思いますけれども、今の附則の中に、パートタイマーの皆さんの厚生年金加入問題をどうするんだ、こうしたことも検討しなきゃいかぬということも書いてあるわけでありますから、そうしたことなど含めて、今後年金の議論が必要なことも当然のことだというふうに考えております。

横路委員 総理の答弁は、まず一つは、国民年金を含めた公的年金制度の一元化については早急に検討する必要があるという答弁なんですね。いろいろな解決しなければいけない課題があるから早急に検討するということなわけですよ。だから、まず一元化については早急に検討する。それから同時に、一元化を含めたほかの点の見直しも必要なものがあればやっていきましょう、こういう姿勢なんですよ。

 この基本的な、これは総理大臣の答弁ですから、厚生労働大臣としては当然それに従ってやるということになると思うんですが、しかし、予算委員会の議論を聞いていますと、ややちょっと、役所の意見が非常に色濃く出てきて、そこら辺のところが、一五%の問題を含めて総理大臣答弁よりもちょっと後退しているんじゃないかなという印象を持ったものですから、今こういう御質問をしているわけでございまして、衆議院の本会議における総理大臣の、いわゆる公的年金制度の一元化は早急に検討していきましょう、それからもう一つ、年金制度を含めた見直し、これは必要である、この点はもちろんよろしいですよね。その上に立ってこれから議論していきたいと思うんですが、よろしゅうございますね。

尾辻国務大臣 政府の一番基本的な方針は総理の指示でございますから、総理の御指示どおりに私どもも政府一体となって進めてまいります。

横路委員 それで、この間の衆議院の予算委員会の中で、大臣もいろいろと議論した最後に、これは大島さんの二月十八日の衆議院予算委員会の一般質疑の中で、最終的には年金全部の一元化ですという御答弁を大臣もされているわけです。最終的には年金全部の一元化ということを大臣も御答弁されたわけでございますが、では、一元化というのはなぜ必要なんだ、大臣はなぜ必要だと思いますか。

 最終的には一元化とおっしゃった。では、一元化とおっしゃったその大臣の一元化というのはなぜ必要なのか。こういうことがあるから一元化は必要なんだという大臣のお考えをお答えいただきたいと思います。

尾辻国務大臣 年金の一元化につきましては、まず、どのように国民一人一人にとって真の信頼と安心につながる制度をつくれるか、それから、どのように制度の運用を国民にとって身近でわかりやすいものへ改善していくかということが大切だと考えておりまして、そうしたものの最終的に行き着く先は年金の全部の一元化ということになる、私はそう考えておりまして、そのことを申し上げたわけでございます。

横路委員 いや、もう少し具体的に、今、年金は国民年金、厚生年金、国家公務員、地方公務員、私学と分かれているわけですね。このばらばら感というのは、国民が信頼していない大きな要素なのです。例えば受ける給付の金額がそれぞれの年金で違うとか、やはりそういうのが不信感のもとになっているわけですね。ですから、一元化するという場合の、民主党はそういうことを議論した上で一元化をベースとした年金案を提出しているわけなんですけれども、大臣としては、今の現行制度、やはりこれは一元化しなきゃいけない、その理由は何ですか。どんなところにあるんですか。

尾辻国務大臣 諸外国などでは、きっちりそれぞれ別々の制度でやっておるような国もあります。しかし、私は、今もお話しになりましたように、例えば官民格差の問題、二階建て部分でそういう表現もされます、そうした格差がある。そういうことというのはやはり不信感につながるから、そういう表現をすればどうなのかなと思いますが、日本の文化といいますか、私たち日本人は余り差がつくことを好まない、みんなが同じようにやっていくというのがいい文化だと思っておりますから、ヨーロッパの幾つかの国がやっているように、職種が違えば違うというような制度で割り切るわけにはいかない、やはり最終的に、みんなで差のない、不公平だと思わないような制度にすることがいいことだというふうに考えておるということでございます。

    〔北川委員長代理退席、委員長着席〕

横路委員 なぜ一元化が必要かということは、国民年金の議論をした後でまた質疑をしたいというふうに思います。

 そこで、国民年金の現状なんですが、先日の衆議院の予算委員会を聞いていてびっくりしたのは、国民年金保険料の未納者が平成十五年度で四百四十四万五千二百四十八人というように、十三年、十四年とふえていっていますね。しかも、会計検査院が作成した国民年金の資料のようですが、保険料の収納額が平成十五年で一兆九千六百二十六億五千五百万、これに対して未納の保険料額が二兆二千九百二十六億、こんなにたくさんあるんですね。しかも、時効によって不納欠損額というのが八千四百七十五億で、この三年間だけでもずっと八千億台が続いている。

 どうしてこういう状況になったんですか。この原因は何なんですか。

西副大臣 平成十五年度末において過去二年間の保険料を全く納付していない人、これが四百四十万。同様の数字を十三年度末から比較すると、御指摘のように、百二十万人増加しているということになります。

 この未納者の現状は大変厳しい状況であるというふうに認識しておりますが、特にこの期間に未納者が増加しているのは、一つは、大きな原因として、十四年度に実施した免除基準をはっきりさせたこと、これによって、十三年度と比べて納付率が大きく低下したということが反映したものであるというふうに考えております。

 しかしながら、近年、低下傾向にあった国民年金の納付率は十五年度で下げどまり、十六年度については、十五年度と比較しても、これを下回ることのない水準でおかげさまで推移をしております。また、今後も行動計画に基づく徹底した収納によって納付率の改善をしていこうということで、その計画を立てておりますことから、近年のようなペースで未納者がふえ続けていくということはないというふうに考えております。

 いずれにいたしましても、未納者の解消は極めて重要な課題であるというふうに考えております。今後も、徹底した収納対策を講ずることによりまして、未納者の解消に全力を挙げて取り組んでまいる所存でございます。

横路委員 これは四百四十五万、未納者ですよね。あと、納めた人といっても、二年間で一カ月納めればこれは納付者になってしまうわけでございますから、実質的には、かなりこれ以上の人々が完全には納めていないという状況にあるわけです。

 先ほどの収納額と未納の保険料額、この数字というのも、私は初めて見ましたけれども、平成十五年で二兆二千九百二十六億もある。こういう事態はどう受けとめておられるんですか。これは大臣、どう受けとめておられますか。衆議院の予算委員会で同僚の長妻議員から質問されていた点です。あのとき、資料をごらんになったと思うんですけれども。

西副大臣 先ほどもお答え申し上げましたように、大変深刻な事態であるというふうに認識をしております。新しく、社会保険庁全体、新長官を迎えて、収納率の向上に向けて計画を立てて、今、回復に全力を尽くしているところでございます。

横路委員 そこで、私は、そういった徴収体制を強化するようなことで解決できる問題じゃない、制度的に問題があると思うんです。

 まず国民年金ですね、国民年金の今の加入者というのを見ますと、自営業の人が二四%ですね。平成十三年の数字ですか、五百十一万、大体二四%。あと、雇用者や非就業者の方がむしろ主体になっているんですね。フルタイムの雇用者とかパートの雇用者、その他アルバイトというような人たちが、例えば、フルタイムの雇用者が二〇%を超え、パートは一二・六%、その他アルバイト七・七というように、雇用者、非就業者が主体になっていっている。それから、失業者も多い。この中に一三%ぐらいあります。それから、年齢の階層を見ますと、若年層が中心になっている。二十代が、この数字で見ると七百十九万ですか、非常に大きなウエートを占めております。

 この国民年金の今の加入者のこういう状況というのは、これは皆さんの資料に基づいてお話ししたわけですが、これは確認できますね。このとおりですね。

西副大臣 おっしゃるとおりでございます。

横路委員 そこで、問題は、国民年金というのは自営業の人を中心にスタートしたわけですね。ですから、自営業の人は定年制はない、ずっと働くことができるから給付の金額もそんなに高くなくてもまあいいだろうということで、厚生年金、そのほかの共済年金に比べたら非常に低い金額ですよね、今、月六万六千円ですから。実際に受け取っている人の平均は五万二千円ぐらいという状況になっているんですね。これも、自営業のそういう状況から出た一つの結論。

 もう一つは、自営業の人は所得把握ができない。これは実は、把握できないなんということはなくて、把握しようと思えば把握する方法はあるんですけれども、まあ、把握できない、したがって定率ではなくて定額なんだと、定額制になったわけですよ。

 ですから、自営業中心の国民年金でスタートしてきて、加入者の構図構図は変わったんだけれども、自営業ということでスタートした、いわば給付金額あるいは定額制というものは今日まで続いているというように私は理解しているんですが、よろしゅうございますか。

西副大臣 確かに、委員おっしゃられますように、過去の歴史的経緯から見て、国民年金加入者の構成は大きく変わってきたということは事実でございます。特に、若年の方、それからニートと言われる皆さん方とか、そういう方が多くなってきて、その負担能力についても、過去とは若干違うのではないかというふうに考えられる部分はございます。

横路委員 保険料の未納者の未納理由というのがあります。これも社会保険庁の調査ですが、やはり、保険料が高く、経済的に支払うのが困難とした人が、平成十四年の調査で六四・五%、これは多分まだまだふえていっていると思います。意外と、年齢が三十代、四十代の人にそういう理由が多いんですね。三十代、四十代の人にそういう理由が多いわけです。私は、定額制というのはやはり逆進性だと思うんです。これは逆進性なんですね。失業して、月一万三千三百円払え、夫婦二人で払えといったら二万六千六百円ですから、これは大変です。

 そこで、きょうは資料を持ってきませんでしたが、前に大臣には、先日の衆議院予算委員会のときにもお出ししていますので、今、日本の労働というのはどうなっているかというと、パート労働が、先日の何か新しい発表ですと、働いている人全体の二六%、平成十五年の調査で二三%ということでした。この人たちの月収はどうかというと、十万円以下が五〇%を超えているんですね。十万から二十万という人が四〇%ぐらい、十万以下が五〇%を超えているわけですよ。

 そうすると、例えば、このパート労働の人が、月十万円で一万三千三百円を負担する、あるいは、年収が百二十万以下だとして、年収での負担が大体十六万です、十五万九千六百円、十六万ですよ。大変大きい負担になるんですね。ですから、やはり払えないという人が出てくるわけですよ。

 それから、フリーターの人たち、政府の調査ですと四百十七万ということですが、あれは十五歳から三十四歳までの、学生と主婦を除いて、定職にはついていない、働いている人も含めて、パートで働いている人は含められますが、四百十七万。もう今それが、三十代、四十代、どんどん年齢は広がっていっています。この人たちの調査を見ると、年収は大体百万前後ですよ、百万前後。この人たちが国民年金を払って、年間で十六万円も払うというと、これはやはり負担が大変ですよね。所得の低い人ほど負担が大きいわけです、国民年金制度、この定額制というのは。

 ですから、ここをやはり変えていかないと、制度的にここを何とか変えていかないと、先ほどの四百五十万、そして、取れない、未納の保険料が一年間で二兆二千九百億、こんな状態が続いていくわけですよ。徴収の体制整備をするとかしないとかということじゃなくて、もともと自営業者のためにスタートした定額制というものは、今、その加入者の構造が変わってしまって、負担に耐えられない低所得の人が、みんなこの国民年金にはまってきているわけですね。ですから、ここは今の年金制度のやはり制度的問題の一つだと私は思いますけれども、大臣、いかがですか。

西副大臣 我が国では、国民皆年金という考え方で、すべての国民の皆さんに対してこの年金制度を適用いたしております。

 先ほど申し上げましたように、ただ、国民年金の第一号被保険者は、先ほど先生御指摘のように、大変多種多様な皆さん方がかけておられるという現状でございます。その結果として、この保険料の賦課の基礎となる所得につきましては、先ほども若干お触れになりましたけれども、私どもとしては、被保険者全員に共通して適正かつ公平に把握することが難しい、こういう問題を抱えておるというふうに認識しております。

 このために、年金制度におきましては、従来より、定額の保険料ということで、しかも、負担能力のない人につきましては、申請に基づいて保険料負担を免除するということも配慮してきているわけでございます。こうした仕組みの中で、できるだけ負担能力に応じて保険料負担を求めてまいりました。しかし、昨年の改正で、さらに、多段階免除の導入、それから単身世帯を中心とした免除基準を見直しもさせていただきました。また、若年者の納付猶予制度を創設いたしまして、保険料を納付しやすい環境をできるだけつくらせていただいたところでございます。

 いずれにいたしましても、国民年金の保険料のあり方につきましては、所得の把握、事業主負担のあり方、それから納税者番号制度など、諸条件をどうするかということ、さまざまな論点と一体で検討されるべきものだというふうに考えております。

横路委員 いや、問題は、徴収というか収納体制の強化だけではしたがって解決しないということを言っているわけです。しかも、この国民年金の問題は実は厚生年金の問題でもあるんですね。

 例えば、基礎年金拠出金による基礎年金の費用負担の方式というのがありますね。拠出金の算定の対象者というのは、厚生年金の場合、二十歳から六十歳までの第二号被保険者に第三号被保険者をプラスするわけでしょう。共済年金も同じです。国民年金の場合は、第一号被保険者から保険料の未納者と免除者を除いた人数が対象になるわけですね。そして、必要額を対象者数で案分して算出しているわけですから、どうなるかといいますと、未納者や免除者がふえますと、厚生年金制度などの方で負担する拠出金の額がふえていくわけでしょう。

 ですから、国民年金ばかりじゃなくて、これは厚生年金に行くわけですね。厚生年金の方はまた、負担が大きくなると、そこで働いている人たちを国民年金の方に追いやるわけですから、ここでまた未納がふえて、そういう悪循環に入っているんですね。だから、その悪循環の一番のもとは何かというと、やはり、国民年金制度のところをちゃんとどう改革するか、改革をしっかりやらなければいけないということなわけです。これはわかりますね、大臣。

西副大臣 公的年金制度の下支えとなります国民年金制度におきましては、負担能力に応じたきめ細かな対応が必要であることはもちろんでございます。今般の制度の改正におきましても、先ほど申し上げましたような種々の施策を講じまして、負担能力に応じた納めやすい環境を整備させていただいたところでございます。

 これらの免除制度の活用、これは、納付率算定の際の分母となる納付対象月数が減少すると同時に、多段階免除で納めやすくなりまして、分子となる納付月数が増加するということから、結果的には納付率の上昇に寄与するというふうに考えております。

 免除制度や納付猶予制度の活用によりまして、これまで未納であった人が納付しやすくなるということは、結果的には将来の年金を確保していただくということが重要であるというふうに考えておりまして、将来無年金となる人が増加しないためにも、今後とも免除制度を的確に活用していきたい、こう考えております。

横路委員 いや、それで問題が解決されるわけじゃないでしょう。つまり、国民年金の空洞化が進んでいくと、それによって厚生年金の方の負担がふえる、サラリーマンのところに負担が集中していくということなんですよ。そういう形になっていますでしょう、この基礎年金のやり方というのは。

 私どもの方は、基礎年金のところは究極的には税で負担すべきだというように考えていますけれども、つまり、国民年金の問題はそれだけにとどまらないで厚生年金の問題になっているんですよということを、この基礎年金の拠出の方式、やり方というところで皆さんに御質問しているわけでして、それについては今お答えがなかったというように思いますが、いずれにしても、国民年金の空洞化が進めば厚生年金に負担が行くというのは、それでよろしゅうございましょう。

尾辻国務大臣 基礎年金部分を一元化といいますか、そこで財政的に全部一元化しておるわけでありますから、国民年金部分がそういう今お話しのような部分が生じると、当然厚生年金からの基礎年金部分への負担が大きくなるというところにおいては、そのとおりでございます。

横路委員 厚生年金の空洞化ということもいろいろと言われているわけでして、この空洞化の実態もしっかり把握をまずしていただきたいということを御答弁いただきたいと思うんです。

 例えば、雇用保険の加入が二百万で厚生年金の加入が百六十万企業だ、そこに四十万企業の差があるとか、適用事業所の解散、休業の全喪届が、最近の数字で七万件ちょっとですか、七万四千件ですか、この休業も偽装があるのではないかというような議論とか、あるいは、民間のアンケート調査では、雇用保険の適用要件に該当しているのに加入していないパートの人が七割にも達しているのではないかということとか、また、資格の取得者と喪失者の五年分をちょっと見てみますと、資格の喪失者の方が二百四十万人ぐらい多いわけですね。

 こういった厚生年金の空洞化というのは、給与所得の関係とかいろいろな議論がありますが、ともかく実態がよくわからないわけですよ。それで、一つは事業所、この加入要件は事業所の方が中心になっていて、加入する本人についての加入要件というのは極めてあいまいなところがあって、それも問題なんですが、いずれにしても、厚生年金の空洞化の実態がどうなっているかということだけは、厚生大臣、しっかりお調べをいただきたいというように思います。いかがですか。

西副大臣 厚生年金の適用事業所につきましては、この数は減少傾向にあることはおっしゃるとおりでございます。これは、現下の厳しい経済情勢を反映して、事業の休止、それから倒産等が増加しているということが結果として考えられると考えております。

 社会保険からの違法な脱退への対応につきましては、平成十五年の十一月に、解散や休業を理由とするいわゆる全喪届、解散届ですが、を受け付ける際に、例えば解散の登記簿謄本の写しの添付を求めるなど、本当に全喪届の要件に合うのかということをきちっと確認していくということにいたしております。違法な脱退の防止をこのような形で防いでいきたいと考えております。

 また、現在、昨年一月から九月までに届けられた全喪届、これは約四万件ございますが、これの総点検を実施しておりまして、調査の結果、不適正な届け出があったということが判明した場合には厳正に対処するということで、徹底的な洗い直しをしているところでございます。

横路委員 ともかく、お答えいただきたいのは、全体として厚生年金の空洞化の実態というのを明らかにする、その努力をしていただきたいと思います。

 今幾つかの事例を挙げましたけれども、それで全部がわかるわけではないわけですね。どうですか、大臣。

尾辻国務大臣 きょうは反論というようなことにできるだけならないようにと思いながら、先日の御批判もいただきましたから、お答えを申し上げたいと存じます。

 今先生お話しになりました、例えば厚生年金の適用事業所と雇用保険の適用事業所については若干扱いが違いますから、数字が違うことはもう御案内の上でのお尋ねでございますから、そうしたことについては申し上げません。

 ただ、そうしたことで若干の数字の違いがあったりもいたしますが、いずれにいたしましても、しっかりした数字を把握した上で年金というのは考えなきゃいけませんので、基本的に数字をきっちりつかまえながらやっていくということについては、そのとおりでございますと申し上げます。

横路委員 昨年の改正について、経済四団体が、抜本改革なき厚生年金保険料の引き上げに反対すると。これは二〇%に対して反対したわけですが、その中で、もし上がった場合にどうするかという調査の結果がありまして、一つは労働形態の転換を検討する、つまり、パートや人材派遣に雇用形態を変えますよというのが七八%。次に、人件費調整を検討する、賞与とか月給とかそういうものを調整しますよと。調整というのは減らすということでしょう。それから、コストを勘案して従業員数の調整を検討すると。数を検討するというのは人を減らすということですね。結局、こういうことをやっているわけです、今現実に。

 例えば、国民年金に二号被保険者から毎年移ってきていますでしょう。二号で今まで入っていたのが今度一号に移るというのは、これは平成十五年で三百二十三万、平成十四年、三百四十万。やはり三百万以上の人が移ってきているわけですよ。現に、経済界はこういうことをやっているわけですね。

 パートの拡大というのは五年後の課題になっていますけれども、もしパートの適用拡大をした場合、企業はどう対応するかというのを見たら、例えば、働いている人たちのチーム編成を変えて、それでもともかく適用にならないようにするんだということを明確に何人もの経営者の人たちが言っているわけですね。厚生年金にはそういう、つまり、働いている人の雇用形態を年金が決めちゃっている。年金なんというのは雇用に対して中立でなければいけないのに、パートにするか正規社員にするかという雇用の形態を年金制度が決めるような今現実になっているわけですね。これは厚生年金の問題点の一つですよ。これはどう考えますか。

西副大臣 今後、急速な少子高齢化の進行が見込まれるわけでございますが、我が国の活力を維持していくためには、女性、高齢者を初め、働く意欲を持つ者が多様な形で働いていただく、そしてその能力を十分に発揮できる社会をつくっていただくということが重要な課題となっております。

 その観点から、短時間労働者への厚生年金適用の拡大につきましては、まず被用者としての短時間労働者の年金の保障を充実させる、それから雇用する側とされる側にいずれも中立的な仕組みをつくっていくということなどから、大変意義のあることだというふうに考えております。

 しかしながら、厚生年金の適用の拡大は、短期的には企業、短時間労働者自身の負担増になるということもありまして、社会経済の状況、それから短時間労働者の就業の実態、さらには企業や雇用への影響なども十分考慮して検討する必要があるというふうに考えております。

 昨年の年金改正におきましても、五年後を目途に総合的な検討を行うということで検討規定が設けられたところでございます。私どもも、引き続き総合的な検討をしてまいりたいと考えております。

横路委員 結局、国民年金をどうするかというと、一つは、定額制といったような制度的な問題、それからやはり若年層の雇用問題、あるいはパートの人々の均等待遇、こういった問題がトータルなんですね。ですから、徴収の体制を強化する、あるいは免除や何かをふやしますよというようなことをやって基本的に問題が解決されるかというと、問題はどんどん悪くなっていくばかりだというように思いますよ。共済年金だって、将来的な人の動向、人数などを見ていますと、これもなかなか経営が大変です。やはり、年金を抜本的に改革しなければいけないというところに来ていると思うんですね。

 それで、私どもの言う抜本改革というのは何かということでありますが、一つは、やはり世代間の受給額の格差で高まる年金への不公平感というのがあります。これは、年金によって全然違うわけですから。共済と厚生年金と国民年金と違いますよね。そういう不公平感というのは、やはり国民の中に非常に強くあります。それは不信感にもつながっていっています。

 それから、正社員とパート、勤労者と自営業者、民間と公務員なども同じですが、ばらばらの制度でそういった不公平感が強まっている。それから、将来本当に年金を受け取ることができるかどうかという若い世代の不満もあります。それから、保険料について、社会保険庁を含めた、不適正な使用への不透明感というのも非常に強くあります。あるいは、働く女性と専業主婦との間でも、相互に不公平感というのがあるわけです。

 ですから、抜本的改革というのは、今国民が持っているさまざまな不公平感、あるいは不信感、不安感、不透明感というものを解消するということが必要なんですね。

 民主党の年金案というのは、もう御承知だと思いますが、所得に応じて保険料を払い、払った保険料に応じて年金の給付を受ける。そして、しかし、所得の少ない人はそれでは年金の給付額が少なくなりますから、やはり高齢者の人が最低生活できる最低保障だけはちゃんと税で負担をしていきましょうという、最低保障年金との組み合わせなんですね。

 これによりますと、まず、一元化によって、職業がどう変わろうと、それによって年金制度を変更する必要がなくなります。先ほどのように、毎年三百万から四百万の人が二号から一号へ、あるいはまた、場合によっては一号から二号に移っている人もいるかもしれません。やはり、そういう問題がまず今の現行の年金制度の中にはあるわけですね。

 それから、制度によって保険料の負担水準と給付の水準が異なるという不公平はなくなります、私どもの考え方でいけば。今はそれがあるわけです。それから、納めた保険料がきちんともらえるかというと、それは自分がどの程度納めたかということもわかりますし、納めた保険料に応じて給付を受けるわけですから、この不安もなくなるわけですね。働く女性と専業主婦との間の不公平感というのもなくなりますし、年金制度によって今左右されている雇用形態というようなことも、雇用に中立的な年金制度になるわけであります。

 それからまた、ばらばらな組織運営、厚生労働省は国民年金、厚生年金ですね、財務省が国家公務員共済、総務省が地方公務員共済、文部科学省が私学共済、こういったばらばらな組織運営をしているのも、これを一本にすることによって効率化が進むわけでありますし、国民年金の負担の逆進性といった点も解消されるわけですし、厚生年金、国民年金の空洞化の問題も解決されるわけですよ、所得に応じて保険料を払えばいいということなんですから。

 ですから、小泉総理が本会議で年金制度の一元化を含めた見直しが必要だということをおっしゃっているのは、これは、我々の案と今の現行制度と比較したらわかるわけです。だから、今、時間を少しいただいて国民年金の議論をしましたけれども、やはり国民年金、自営業者としてスタートしているそのままの形で来ている、中身は変わっちゃった、それに対応していないという、これはやはり制度的な問題だというように思うんですね。

 ですから、そういう問題を出し合って大いに議論して、どういう制度設計が本当にいいのか、国民年金を含めた一元化というのは、既存の年金制度をやめて新しい制度でスタートするということですから、その過渡的なことは、今年金を受けている人とか今まで保険料を払ってきた人とかいろいろおられますから、ここはいろいろな配慮が必要で、そこも十分含めた上で、しかし、なおかつ、本当に将来を考えた場合に、今の国民の持っている不信感というのを解消して行うというためには、やはり年金の一元化というのが大変大事だというように思っております。

 我が党案について、先ほど何か御批判をされた方がおられましたけれども、中身をよく見ていただければ、そういう今のさまざまな不信というものを解消するという意味で、我が党案は大変すばらしい案だと思いますが、しかし、それも含めて議論をして、問題点があればお互いに出し合って議論をする、そして抜本的な改革を実現するということが必要だと思うんですね。

 ぜひ厚生大臣も、そういうことで、年金はもう過去の問題よと言わないで、ひとつ議論に参加していただければというように思いますが、大臣、いかがでしょうか。

尾辻国務大臣 年金を今お話しいただいたような視点で議論することは、私も本当に必要だと思います。ぜひ私も議論に参加をさせていただきたい、こういうふうに思います。

横路委員 では次に、仕事と生活の調和問題。きょうもいろいろと議論されていましたが、ブレア政権が政権をとったときに、仕事と生活の調和ということでやった政策があるわけです。

 イギリスも労働時間が長いんですね。まずとった政策が何かというと、週四十八時間にかなり限定をする。特別にもっと働きたいという人については例外は認めていますが、週四十八時間。そして年次有給休暇は一年間で四週間とる。そして、パート労働はフルタイム労働と同じような働き方をしている人に対しては差別はしないということですね。あと、柔軟な働き方をしたいという人、特に六歳以下の子供、十八歳以下の障害児を持っている親は企業に対して柔軟な働き方の請求権を認めるということで、今、請求して八割以上認められているようであります。

 そして、それをきちんとやるためにどうしたかといいますと、企業には企業の業務計画がありますね、働いている人は働いている人の希望があるわけです。それをコンサルタント会社が行って、企業で働いている人の意見を聞いて、会社の方と調整をする。そのコンサルタントの会社に政府がお金を出すということをやったんですね。そうやって仕事と生活の両立、一日の労働時間、一週間、一年間ということを決めていったわけです。それにあわせて、保育所の整備、育児休業、児童手当というものをワンセットにして行って、これは政策が実現してから三年間で出生率が上がったんですね。そして、労働生産性が上がって、企業の業務成績も上がったという報告がございます。私はこれは一つのやはり考え方だと思うんですね。

 特に、日本の状況の中で一番大事なのはそこだと思うんです。先ほど来議論がありましたように、エンゼルプラン、新エンゼルプランと少子化対策をやってきたけれども、目標は達成したけれども成果はさっぱり上がっていない。やはりそこはもうちょっと見直さなきゃいけないというのは、何が問題かというと、働いている女性の、しかも子育てというところに限定したんですね。そうじゃなくて、やはり社会の中で、仕事をしている人もしていない人もいるわけですが、男性も女性もいるわけで、みんなの働き方、仕事と生活の仕方というものをしっかりしなければ、あるここだけを対応してやってもだめだということを示していて、そのために初めて次世代育成のための企業の行動計画というのがつくられるようになったのは非常にいいことだと思うんですが。

 そこで、質問になるわけですが、まず、イギリスのこういうブレア政権の政策、これは私は非常に参考にすべきだというように思いますけれども、いかがですか。

尾辻国務大臣 私も改めて近年のイギリスの少子化対策の関連施策の展開というものを見ました。一言で申し上げますと、今先生お話しのように、私どもが参考にさせてもらうことが大いにあるというふうに考えております。

横路委員 前に厚生労働白書で発表されていたんですけれども、日本の場合、非常に長時間労働ですね。週六十時間以上労働、つまり週休二日のもとでは一日十二時間以上労働というのは、三十代で二四%ぐらいあるんです。一番長時間労働の長いのが南関東地域なんですね。東京の周辺ですね、神奈川とか千葉とか埼玉とか。そこは通勤にかかっている時間が、男性の場合ですけれども片道で九十分、だから往復三時間がかかっているんですね。一日十二時間以上労働して三時間通勤にかかっていますから、帰る時間がどうなのかというのが出ているのを見ていると、午前零時から午前二時の間に帰っているサラリーマンが二〇%もいるというんですね。ここの出生率は全国で最低なんです。多分労働効率だってそんなに上がっているとは思えません、そういう労働をして通勤に時間をとられていたのでは。

 そこで、やはり問題なのは労働時間ですよ。サービス残業を含めた長時間労働、それから有給休暇もとれないというところが一つは大きな問題であります。

 そこで、今度、次世代の育成策に基づいて一般事業主が行動計画をつくるんですね。これは事業規模によって義務規定と努力規定になっていますけれども。それで、これを見ますと、これに対して何のガイドラインもないわけですよ、何のガイドラインも。ただどうするかというのを報告するだけになっていますね。だから、現状がこうで、これをこう変えるんですという話じゃないわけですよ。こうしますというだけで、現状を肯定したものなのか、現状より前に進んだのか、後ろに向かっていったのかもわからない。非常にあいまいで形だけのもので、これでは意味がないですよ。やはりちゃんとガイドラインを示さないと。特に残業と有給休暇、年休などについてはやはりしっかりとしたガイドラインをつくらなければいけない。これは全くないんですね。大臣、どうしてこんなことになっているんですか。

衛藤副大臣 先ほどお話ございましたように、エンゼルプランにおきましては、どちらかというと保育中心で進めました。それから、新エンゼルプランにおいて、働き方の問題ということに徐々に入りまして、育児休業制度だとかそういうことの充実について、それからまた児童手当等の充実についてということで入ったところでございまして、今回はそういう中で、委員御指摘のとおり、子ども・子育て応援プランという中で、まさに子育てと働き方の問題に入ったところでございます。

 今お話ございましたように、長時間労働の問題等につきましては、なかなかまだ義務規定までなっておりません。これはやはり、企業との関係がございますので、組合とも企業の中においてよく話し合いをしていただきたい、そしてこういう形が望ましいという形でお願いをしているところでございます。

 そういう形で、我々としては、これに罰則を設けるとかなんとかという形はなかなか、恐らく企業においてもとり得ないのだろうと思っておりますので、日本の労働慣行に従った中で、やはり企業内においてよく話を進めて、そういう方向をとってもらいたいという要望をしながら、そこにインセンティブを与えていきたいというふうに思っているところであります。

横路委員 時間短縮の促進法、千八百時間、これはまた法案のときに議論しますが、厚生労働大臣、この千八百時間の内容というのはどういう内容か御存じですか。一年間で千八百時間働くのは、どんな働き方をすると千八百時間なのか。

尾辻国務大臣 まず、一年が三百六十五日ございます。それから、土日が百二日としてそれを引きます。祝祭日を引いて、年次有給休暇を二十日と見て、これを全部引くと二百二十六という数字になりますから、その二百二十六日に法定の労働時間八を掛ける、これが千八百八になる、こういうふうに理解をいたしております。

横路委員 時間短縮のあの法律で、週休二日制度というのが割と定着したんですね。しかし、やはりそこら辺が一つの目標なんですね、休みは休みをとる、法定の労働時間の中で働くということですね。ところが、今度は千八百時間の方も何かあいまいになって外してしまって、あげくの果てにこの次世代の方ではさっぱり具体的な数字がない、こういう状況です。

 数字が一つ入っているのは、こっち、少子化対策の子ども・子育て応援プランの方は、「長時間にわたる時間外労働の是正」、長時間にわたる労働というのは週六十時間以上ですよ、だから一日十二時間以上働いている人、その働いている者一割以上を減少と書いてあるんですね。ささやかなんですね、一割以上減少。どうしてこれは一割なんですか。

 それから、「年次有給休暇の取得促進」、こんなの全部とるのが当たり前ですよね。だからヨーロッパでは取得率なんという考えがないんで、みんな一〇〇%とっています。今四七%を少なくとも五五%以上。五五%というのはこれはどういう根拠で五五なんですか。こういうのは、どうして一〇〇%とるというぐあいに目標をできないんですか。長時間、一日十二時間以上労働を一割以上減少、これで何か子育て支援になるんですか。働き方は何にも変わらぬじゃないですか。どこか変わりますか、それで。

衛藤副大臣 御承知のとおり、最近の傾向につきましては、長時間労働、週六十時間以上労働が、平成十五年には一二・二%というぐあいになっております。過去におきまして、平成十年には一〇・四%というのに比べますと、相当高くなっているのが最近の傾向でございますので、まずこれに歯どめをかけて、逆転攻勢をかけたいというのが正直なところでございます。そういう意味で、とにかく一刻も早く逆転をさせる、そして、過去の、平成十年度ぐらいまでにはとにかく早く戻したいというのが長時間労働に対する考え方でございます。もちろん、委員御指摘のとおり、これがゼロになり、年次休暇も五五よりももっとというぐあいになればいいのでありますけれども、まずはここのところは逆転をしたい。

 そしてまた、年次有給休暇も、平成四、五年には五六・一%の取得率でございましたけれども、平成十五年には、これがずっとこのころから下がっておりまして、四七・四%ということでありますから、何とかこのころに戻したい。まずは逆転をさせたい、歯車を、ずっとふえているという流れを一刻も早く変えて戻したいというのが正直な気持ちでございます。

横路委員 パート労働もそうですよね。指針が出ているわけですが、ここを見ると「パートタイム労働者と通常の労働者との均衡処遇に向けた環境の整備を進める企業の割合が増加する」と。これも、「割合が増加する」というのは、一体どんなことを想定されているのか、これだけじゃよくわかりません。

 しかも、これと先ほどの次世代育成の方の事業主の行動計画というのは、これは関連性あるんですか、ないんですか。関連性を持たすんですか、持たさないんですか。

衛藤副大臣 働き方として、今は女性もうんと働くという時代になってまいりました。そういう中で、私どもとしては、パート労働も多様な働き方の選択としてある、ただ、それが均衡処遇をされなければいけないという形で取り組んでいるところでございます。そのような均衡処遇ということをできるだけとろう、それをいわゆる事業主の方にも、企業にもちゃんとお願いをしながらこれを図っていきたいというぐあいに思っているところでございます。

 そういう中で、各企業に、この行動計画の中に国としてはどういうことをやるかということの事例を示しまして、子育てを行う労働者等の職業生活、家庭生活の両立支援のためにどういうことをするかというようなことについて事例を挙げて、ぜひこれについて御理解をいただき、そして、そういう中で、そういうことをちゃんとやってくれた企業に対しましては認定マーク等も出して、こういうぐあいにうまくやってくれる企業があります、大変すばらしい企業ですと、お互いがそこを認めて、ぜひ皆さん方そういう方向に行ってくれませんでしょうかという形で一つの方向性を出そうとしているのが正直なところでございます。

 それに対して、まだ、いきなり罰則というような形を持ち込むのかどうかということについては疑問があるというぐあいに思っているところでございます。

横路委員 大臣の方にお願いしたいんですが、この行動計画ですね、現状どうなっているかという報告をする規定はどこにもないんですよ。こうしますということだけなんです。結構細かくいろいろ書いてありまして、ただしかし、何を目標にしてどうするかというガイドラインは別にないわけですね。だから、ガイドラインは、私は、先ほどの千八百時間というところを一つのベースにしたガイドラインをちゃんとつくるべきではないかというのが一つであります。

 それから、これと、子ども・子育ての応援プラン、こっちの方と連携ないんですよ。担当しているところも違いますしね。ばらばらにやっているんです。ですから、そこはやはりひとつしっかり調整をしていかなきゃいけない。先ほど、イギリスのブレア政権の政策、やはりトータルにやってあれぐらいのことをやらなければ、日本の今の問題解決、この少子社会というのは改善はできないというように思います。

 何かますます、ホワイトカラーの人に労働基準法の適用を外そうという議論が経済界から出ていますけれども、何かそれに向かって進んでいるような気がしてなりません、今度の時短法の問題にしても、今回のこの企業の行動計画にしても。これは本当に企業の行動計画が前に向かって進むものだということが明らかになるようなことを考えていただきたい。これは、このままでいったら、それぞればらばらに走って、やってみた結果そんなに成果はなかったということに終わると私は思いますよ。

 大臣、最後にちょっと決意を述べていただいて、私の質問を終わります。

尾辻国務大臣 余り細かいことを申し上げてもとは思いますが、千八百時間のこともまず基本でお触れいただいておりますから、申し上げたいと思います。

 私あてに、労働政策審議会から意見をいただいております。その中では、労使双方のお考えとして、「近年の状況の下では従来どおりの目標値として」この千八百時間ということでございますけれども、「用いることは時宜に合わなくなっている。しかしながら、」といってまた両論併記になっておりますから、その辺のところをどういうふうに私どもなりに受け取らせていただいて今後この問題に対応するかということは、十分考えさせていただきたいと思います。

 それから、労働時間と少子化との関係、これは先生御指摘のようないわば相関関係みたいなものがあることは、私どももそうではないかなというふうに感じております。そうした中のイギリスの例に倣うようなことを我々も考えながら、今後の施策を考えさせていただきたいと存じます。

横路委員 終わります。

鴨下委員長 午後零時四十五分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時七分休憩

     ――――◇―――――

    午後零時五十二分開議

鴨下委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。大島敦君。

大島(敦)委員 民主党衆議院議員の大島です。

 午前中の横路委員の質疑に引き続きまして、私、大島も質問をさせていただきます。

 午前中の横路委員の質問の中で、年間の総労働時間のお話がございました。労働時間、地味なテーマなんですけれども結構大切なテーマでして、横路議員がおっしゃっていたとおり、常用労働者の年間の総労働時間は一九九三年から大体二千時間前後で推移をしていまして、決して減っていないわけなんです。この総労働時間がどうして減らないのかというところと、あともう一つは、我が国の労働行政のあり方についても、今転換期に来ているかなと考えております。

 今から数年前に、たしか金融自由化の法案が通ったと思います。そのときに、私、まだビジネスの立場におりまして、困ったなと実感をいたしました。金融自由化の法律が通ることによって、恐らく我が国は非常に乾いた社会になるということが予想できたわけなんです。その延長で今のこの日本の社会ができ上がっているのかなと思っています。

 例えば、私の親が幼稚園をやっていまして、幼稚園の子供たちと一緒に写真を撮ると、一人一人が本当にすばらしい個性的な表情をしているんです。これは一人一人が本当に輝いているんです。これが、三十年たって三十を超しますと、皆さん暗い顔をして会社に通わなくちゃいけないというところが我が国の欠点かなと思っています。働けど働けど豊かにならないわけですよ。年間総労働時間が二千時間、一九九三年からずっと同じで、働けど働けど豊かにならないというのは、社会の構造のあり方に問題があるのかなと思っています。

 これは、予算委員会で私の同僚議員が小泉首相に対して質問をいたしました。要は、上場会社の外国人の持ち株比率が非常に上がっているんじゃないのかなと。

 これは、皆さん多分御承知のとおり、外国人の持ち株比率が上がってきますと、日本の購買形式を全部変えてきたわけなんです。今までですと、子会社とか孫会社とか、非常に配慮をした購買形式をとっていたのに、できるだけ安いところから買うようにしてきたわけなんです。そのことによって、利益は上につけかわっていくわけなんです。これが今の日本の会社、大手さんだけが非常に多くもうかっている、皆さんも御地元に帰ると結構中小企業が大変なのは、そこに原因があるなと思っています。

 しかしながら、一部の会社なんですけれども、日の丸を掲げている会社、まだ日本人の持ち株比率が高い会社においては、製造業なんですけれども、徐々に変えてきています。子会社、孫会社を余りいじめ過ぎると自分たちの技術力がなくなってしまうということ、そのことに気づき始めているんです。ですから、多分、今回の三月末の決算を見てみますと、しっかりとした大手メーカーの会社の子会社は徐々にもうかり始めているかと思います。そういう気づきも、私たち日本人の資本が多いとそういう経営もできるわけなんです。

 ですから、今回、午前中も、そして月曜日も、年金の議論の中で、働き方の問題、パート労働が多い、あるいは非正規雇用がふえている、私は、これはすべて金融自由化に端を発していると思っている人間なんです。ですから、今の、これからの労働行政というのは、今までとは違う視点で自分は見なければいけないなと考えております。今までですと、労使に任せておいて、その合意のもとに労働の働き方を会社の中で決めればよろしいということになってきたかと思うんですけれども、そこのところはもう少し規制を強化する考え方もあるのかなと徐々に考え始めております。

 そうしますと、一問目なんですけれども、これは衛藤厚生労働副大臣にお伺いしたいんですけれども、今の働き方の中で、午前中の横路委員の御発言にもございました、派遣労働が非常にふえているわけなんです。派遣労働が非常にふえていまして、よく皆さん御承知のとおり、二百三十六万人、昨年よりも一〇%もふえているわけなんです。これは、平成八年ですと七十二万人しかいなかったところが、今二百三十六万人までふえてきています。

 この派遣労働について、働く立場としては、労働条件の明示の問題とか、なかなかしっかりと守られていないところもございます。その点につきまして、まず冒頭、衛藤副大臣から、派遣労働に関してどういうような取り組みを我が国はすべきかなというところを伺わせていただければ幸いでございます。

衛藤副大臣 委員お説のとおり、非正規雇用がふえております。その中でも、派遣社員は大変な勢いでふえております。パート、アルバイト、契約、派遣というぐあいに、いろいろな働き方のパターンがふえたことは事実でございまして、そういう意味では、できるだけ正規雇用の方が望ましいと思うのでありますけれども、しかし、働き方の多様化ということを考えますと、やむを得ない流れであろうかとも思います。

 そういう中で、派遣労働者との間にいわゆる差があってはいけない、正規との差があってはいけないということで、その差をできるだけ少なくしようということで今取り組んでいるところでございます。そういう意味で、労働者派遣法の遵守を確保していくということは極めて重要であろうかというふうに思っております。

 そういう中で、まずは派遣労働事業者に対しまして定期的な指導を行う、あるいは、労働者からの申告事案に対しては是正指導を行う等の措置を講じて、厳正な指導監督を徹底してまいりたいというぐあいに思っているところでございます。

 ただ、労働問題、労使の中で、今委員も御指摘のとおり、慣行にだけ任せていいんですかというお話がございましたけれども、非常に難しいところでございまして、どの程度義務化するのかということについては極めて難しい問題があるので、そのことは、今後やはり指導をより徹底していくという形で図っていく、あるいは、いい形でそういうモデル事業をやっていただけるようなところには、やはり認めて表彰していく、そしてそういうものをより広げていくとか、そういう形を我が国としてはとらざるを得ないんではないのかというように考えている次第でございます。

大島(敦)委員 ありがとうございました。

 やはり、今御指摘がございましたかと思うんですけれども、派遣労働あるいは正規労働、請負労働と、いろいろな労働の形が今ふえてきておりまして、そうした中で、同一価値労働同一賃金という原則が徹底されることがまず必要なのかなと。そして、同一価値労働同一賃金で、そして働き方の多様化に応じてそれぞれの方がしっかりとした社会保険、要は、雇用保険、あるいは年金、そして健康保険に皆さんが入るという形が私は望ましいと考えております。ですから、そこのところを今後もしっかりとやっていただくこと、お願いを申し上げます。

 続きまして、三位一体の改革につきまして御質問をさせてください。

 今回の三位一体の改革、特に国民健康保険の財源について、そのうちの七千億円を県の方に渡すというお話だったかと思います。その点について、その七千億円のうち、県が独自に裁量で使えるのが五千億円と聞いております。残りの二千億円というのは、これまでどおり、金額は結構大きい金額なんですけれども、国が市町村にお渡ししていたのを、途中に県が入っても同じ割合で二千億円はお渡しすると。残りの五千億円について、県の方にお渡しをして、どのような使い方をしていくのかな、していただくのかなというのが今議論になっているかと思います。

 その点につきまして、今の政府の考え方を、その五千億円を県にすべて自由裁量で任せてしまうのか、ある程度方針を決めるのか、その点をお聞かせいただければ幸いでございます。

水田政府参考人 お答え申し上げます。

 このたびの三位一体改革に伴います国民健康保険制度の改革で、十八年度以降は御指摘のとおり六千八百五十億円を都道府県に持っていただくということになっております。

 その内訳でございますけれども、一つは、定率の国庫負担。国民健康保険の給付費の財源につきましては、半分は公費、半分は保険料という構成になってございます。

 まず最初の部分は、公費で見ている部分につきまして、現在すべて国で見ている部分につきまして、定率国庫負担を四〇%から三四%、それから財政調整交付金を一〇%から九%に引き下げる、その結果として十八年度以降は七%を持っていただこうというところでございます。これは、財政調整交付金でございますので、まさに県の権限として、市町村に対してこれをどう交付するかという問題はございますけれども、基本的にはこれは県がお決めになるものでございます。

 一方、保険料部分で見る部分につきましても、一部、保険基盤安定制度というものがございまして、そこの、現在国が二分の一、市町村、県がそれぞれ四分の一見ている部分につきまして、県の負担を四分の三にするということでございます。

 これは、ある意味で裁量の余地というのは大変少ないわけでありますけれども、これは先ほど言いました、国保の給付財源を保険料と公費で大体二分の一ずつ持つ、こういう原則があるということで、いろいろ折衝の結果としてこういう分担になったものでございまして、今回の事柄の本質は、公費で持っている五〇%、国が持っていたもののうち七%、来年度で申しますと五%を県の財政調整交付金として、権限移譲それから税源移譲を前提といたしまして、都道府県に負担の導入をお願いしている、こういうことでございます。

大島(敦)委員 この問題については、たびたび予算委員会等でも議論があったかと思います。今回のこの国民健康保険の特に財政調整交付金のあり方について、保険者、要は保険について、多分、来年の国会での大きなテーマだと思っています。どのような健康保険のあり方を国として考えていくのか。もう一つは、ことし議論になる介護保険の問題もございます。介護保険のあり方、その保険者もあるわけなんです。

 そうしますと、今伺っているのは、国民健康保険に関しては県単位でまとめた方がいいじゃないか。あるいは、県が保険者になるのは大変だから、広域の事務組合のようなものをつくって、広域で幾つか束ねていって県で連合体をつくった方がいいのではないか。さまざまな意見があるかと思います。そうしますと、介護保険との問題も出てくるわけなんですけれども、これはちょっと後でもう一回質問させていただきます。

 そうしますと、都道府県の財政調整交付金を、今回ここで仕組みとしてもう入れてしまったんですけれども、入れてしまうと、今後のいろいろな政策の自由度が相当私は狭まってくると思うんです。ひょっとしたら、県を通して都道府県の財政調整交付金を市町村に渡すのが正しいかもしれないし、あるいは、多分、今回このような仕組みをつくらなければ、来年自由にもっといろいろなイメージを膨らませることも可能だったのかなと。事務組合が個々の県の中でできて、そこに対して国が直接財政調整交付金をお渡しするような仕組みだってできたかもしれない。ただ、これをもうセットしてしまったがために、相当来年の保険の議論というのは選択肢が狭まってきているのかなと私は考えているんです。

 ですから、今回の県にどのような権限をお渡ししていくかというのは、本当に思想を持っていかないといけないのかなと。県が保険者としてしっかりやってくれよというんだったら、財政調整交付金の自由度はしっかり担保しなくちゃいけないと思う。ただ、国としてまだいろいろなこと、選択肢を模索したいと考えれば、ここの財政調整交付金のあり方についての自由度は狭めなければいけないかもしれない。その点についてどのような観点から今国が考えているのか、その点、一点お聞かせください。

水田政府参考人 お答えいたします。

 ただいまの御質問は、今回導入いたしました都道府県の調整交付金について、どのようにそれを配分するのかの配分方法についての御質問になろうかと思います。この点につきましては、財政調整を行う都道府県が、県内市町村の意見を十分踏まえながら、その都道府県内の状況に応じて、条例で自主的かつ主体的に決定していただくということであろうと考えております。

 一方で、具体的な財政調整の手法の検討に当たりましては、専門的、技術的な要素が多いというようなことがございますので、厚生労働省といたしましては、地方団体と関係省庁の間で検討の場を設けた上で、そこでの議論を踏まえた上で、いわば参考資料としての配分のガイドラインというものを作成したいというふうに考えてございます。

 なお、この都道府県調整交付金の配分方法は各都道府県に決めていただくものでございまして、このガイドラインには法的拘束力はないわけでございます。現行制度のもとで財政調整交付金を、県の調整交付金を定めたわけでございますので、今御答弁申し上げたような仕方で考えていくということになろうかと思います。

大島(敦)委員 回答としては、ガイドラインをつくるから、後は自由に県の方でやってくれというのはよくわかるんですけれども、やはり今回の三位一体の改革の、思想がないところで仕組みをつくったことが、私としてはちょっと危惧しているところなんです。

 もう一つは、昨年の十一月、全国知事会の方で、三位一体の改革で、多分厚生労働省のここの部分について私たちに渡してくれというお話があったかと思うんです。このことについて、今、尾辻大臣はどうお考えなのか。

 今の時代は非常に厳しい時代でして、物すごい速いスピードでいろいろな考え方とか組織が変わっている時代なんです。ですから、この間も御指摘した社会保険庁のように、組織の解体まで行ってしまうケースだってあるわけなんです。去年の知事会のあのような要望、あの知事会の要望というのは真摯に受けとめて、逆にそれは、国として今までの都道府県に対する行政のあり方とかサービスというのが要らないと言われたことだと思うんですよ。自分も幾つかの案件について個別テーマでお話を伺っていると、なかなか硬直的で、自由な裁量が県にないところもあるんです。

 これまでの国のあり方は、日本全体が均一に発展するという前提に立っていたから、細かいところまで、要は、政治家の裁量、政治家の意見が影響を及ぼさないように、あるいは知事の、独断と言ってはあれなんですけれども、考え方が、政治家ですから、大きく影響を及ぼさないように、全国均一の発展ということでこの交付金の、補助金の制度というのをつくってきたかと思うんです。でも、ここまで日本が豊かになると、去年の十一月の全国知事会がおっしゃっていたことというのは、今までの国が提供しているサービスを変える時代だと思っているんですよ。

 例えば、今手元にある医療施設等設備整備費補助金交付要綱とか、医療施設等施設整備費補助金交付要綱とか、結構細かくたくさんいろいろ、もう本当に細かいところまで書き込まれていて、結構これを運用していくだけでも県とか市町村が大変なのかなと。

 ですから、今後の、今国のやっている行政のあり方について、尾辻大臣は、去年の知事会からの要望を受けながら、やはり変えていかなければいけないのかどうかというところをちょっとお答えください。

尾辻国務大臣 まず、国民健康保険の話、局長からもお答えいたしましたけれども、改めて申し上げておきたいと思いますが、先生お話しのように、十八年度で健康保険の体制というのをしっかりつくり上げたいと思いますけれども、それに向けての第一歩で、まずは今回のことをお願いしたというふうに御理解いただければと思います。その方向に大きく向けての中の一歩だというふうにまず御理解をください。

 それから今度は、三位一体の改革についてのお話でございました。

 地方六団体からいろいろ御提案がございました。再三申し上げておりますが、随分議論させていただきました。そのときに私が地方団体の皆さんに申し上げたのは、こういうことを申し上げたんです。

 皆さんはいろいろなものを一般財源化しろといって御提案いただいている、これを私どもから見て率直に言わせていただくと、いろいろ大きく事業の体系をつくっている、その事業の体系の中からこれが気に入った、これが気に入ったといって、私は積み木論で言ったんですが、積み木をきれいに積んでいる、その中からこの積み木、この積み木といって抜いていかれると全体が崩れてしまいます、だから、よくお互いに話をして、組んである積み木が崩れないように、抜いていいものは抜いていただくし、お互いに話し合いましょうよと。

 もっとそのときに言ったことをこの際ずばり申し上げると、何か、皆さんが抜こうとしておられるのは子供に関することが多いような気がしますと。これは勘ぐって言うとまずいけれども、勘ぐらせていただけば、将来の子供の方の経費というのはどうしても小さくなるからこの際抜いておこう、それで、国の方で、今後ともますます金のかかりそうな方はおまえたちの積み木の中に置いておいてくれ、こう言われているような気もしますと。だから、その辺のところをもう少しお互いに意見をすり合わせをする必要があるんじゃないでしょうかということを六団体の皆さんとの議論の中で私が申し上げたという、そんな思いがしていましたということは、きょうの機会に改めて申し上げたいと思います。そう思っていました、そういう議論をしましたということを申し上げます。

 それから、今のお話の中でもう一つ申し上げますと、先生御指摘のとおりだと一番後段の部分は思っているんです。ですから、我々は、国がよく地方に対してはしの上げおろしまで言うというようなことは、これはまずい、改めなきゃいかぬことだとまさしく思っております。そこで補助金から交付金に変えたということは随分やらせていただきましたので、これはもう中身について、どういうことをするんだとかは申し上げません、ただ、そういう思いの中でやらせていただきましたということだけを申し上げたいと存じます。

大島(敦)委員 今のお話を伺いまして、できるだけ国民健康保険に関しては都道府県の裁量の余地を持たせて、都道府県がしっかり責任を持って、自由があるということは逆に責任もあるということですから、そのような考え方でやってほしいという国の御意向はよく今わかりました。

 それにもう一つ、今度は介護保険なんですけれども、介護保険の保険者と、多分来年議論される国民健康保険の保険者が、ひょっとして違ってくるかもしれないわけですよ。介護保険は市町村が保険者になっていて、それについて見直そうというお話はないかな、多分それについて見直すかどうかの話があって、もう一つは、今気にしているのは税金の関係。特に、今、年金の課税が見直されまして、ことしから所得税、来年から住民税が増額されるものですから、その年金の課税とそして国民健康保険料と、もう一つは介護保険料の影響が結構大きいのかなと思っているんです。

 このことについては昨年の十一月に我が党の辻議員が参議院で質問させていただきまして、それについて、その後どのようなことになっているのか、フォローアップについて伺いたいんですけれども、よろしくお願いいたします。

水田政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、原則論のところはもう繰り返しになろうかと思います。今後の少子高齢化社会におきましては、年齢のいかんにかかわらず、負担能力のある方には相応の負担をお願いする、これは避けて通れないと考えてございます。

 お尋ねの公的年金等控除の見直しの影響についてでございますけれども、まず、介護保険制度に関しましては、平成十八年度までの間に制度全般の見直しを予定しているわけでございまして、保険料につきましては、ただいまの見直しも踏まえ、市町村が被保険者の所得状況に応じてきめ細かな保険料段階を設定するなど、弾力的な設定を可能とすることで、被保険者の負担能力を適切に反映したものとなるように検討しているところであると承知をいたしております。

 また、国民健康保険制度に関しましては、緩和措置を講ずべきかどうかということでございますけれども、負担能力に応じた適切な負担という観点からいたしますと、年金受給者の保険料負担への具体的な影響だけでなく、緩和措置を講ずることによって生じる年金受給者以外の被保険者の保険料負担増についても考慮する必要がある、このような考え方のもとに今後検討いたしたいと考えてございます。

大島(敦)委員 わかりました。

 今、年金受給者の方はこの問題に非常に注目をしておりまして、特に介護保険に関しては、細かく対応をとれるようにしてくれということは、ちょっとそれは市町村に任せられても困るのかなと思っていまして、やはり介護保険を細かく分けるという議論は、こちら、国サイドで準備すべきテーマだとも思うんです。ですから、その辺についても、今回の介護保険法の見直しがございますので、十分議論していきたいなと考えております。

 最後になんですけれども、今お手元に、厚生労働省の方からいろいろたくさんの資料をいただくわけなんです。その資料の中で、「衛生行政報告例の概要」という資料をいただいて、中絶についての件数の資料をたまたま見かけまして、私としてもちょっと驚きだったことがございます。

 それは、私の今手元にある資料の、めくっていただいて一ページ目なんですけれども、平成十五年度でこの件数というのが三十一万九千八百三十一件。これは件数と言っていいのか、人と置きかえた方がいいのかというのは議論のあるところかと思うんですけれども、平成元年が四十六万六千八百七十六件ですから、減ってきているということはいい傾向だと思います。

 もう一つ、一番最後のページを見ていただきますと、実施率というのは、この表の見方としては、右の一番上の実施率の全国平均が一一・二というのは千分の十一・二ということなんです。これは地域によっても相当ばらつきがございます。一番少ないのが山梨県ですか、千分の七・五。多いところですと、鳥取県だったかと思うんですけれども、結構高い件数になっております。千分の十九・三となっております。

 ですから、私は、命を大切にするという観点から非常にいい資料だと思っています。例えばこれの二枚のページをめくっていただきますと、図の七というところですと、平成元年から平成十五年までの推移というのがあるわけなんですよ。時代によっても増減があるわけなんです。これは平成元年のときには総数が多かった、徐々に減ってきた、そしてまた徐々に上がっていくというふうに、時代によっても変化があります。

 ですから、このことというのは、ひとつ国として、どのようなことなのかということはそろそろ分析ということも必要なのかなと。事実をしっかり認識するということ、そして命を大切にするということが私は必要だと思うんです。ですから、その点につきまして、最後に大臣の御所見を伺わせていただければ幸いでございます。

尾辻国務大臣 御指摘の人工妊娠中絶でございますが、ひところは百万件と言っていたころもございましたから、確かにそれに比べれば、今先生もお話しいただきましたように三十二万件でございますし、前年度よりも約一万件減っているということではございます。しかし、まだまだ三十二万件という非常に多い数字でありますし、地域的な差もある、それから年齢的に見ていくと非常に問題になることもある。分析をしなきゃいけないというふうに考えております。

 ただ、非常に事が事なものですから、微妙なことなものですから、分析が難しい、サンプルがとりづらいということも御理解いただきたいと思います。その上で、ほってもおけないことなので、私どもは何か防止ということを考えていきたいというふうに考えております。

大島(敦)委員 ありがとうございました。

鴨下委員長 次に、園田康博君。

園田(康)委員 民主党の園田康博でございます。

 私も、引き続きまして、大臣の所信に対します質問ということで持ち時間をいただいておりますので、行わせていただきたいと思っております。

 その際に、私も実は風邪をちょっと引いておりましたので、少しお聞き苦しい点があろうかと存じますけれども、その点は御容赦をいただきたいと思っております。

 また、きょうは、この委員会室の外では春一番が吹いているということで、春の足音が少しずつ聞こえてきているこの状況の中で、すがすがしい大臣からのお言葉というものもいただければなと同時に思っておりますので、どうかよろしくお願いを申したいと思います。

 私からは、大きく分けて二点。まず最初は、先ほど来少し議論がありますけれども、障害者の自立支援法に対しましての政府の考え方等々も含めて少しお伺いをしていきたい、そのように思っております。

 まず、昨年の十月に今回の障害者の政策にかかわる改革のグランドデザインが提案をされて、四カ月ちょっとでこういった自立支援法という法律が出てきたわけでございますけれども、思い起こしてみますと、支援費制度が導入されて、私も一番最初に実はこの委員会で、私自身の質問の中で取り上げさせていただいたのが、この支援費制度の問題であったわけでございます。その際に、なかなか予算が確保できないという、その当時はまだまだ裁量的な部分でしか予算措置ができていなかったということがあったわけでございますので、なかなかその予算がきちっと確保できなかったというところから、大変皆さん方も御苦労なさってこられたのかなという思いもあります。

 したがって、今回、この裁量的な部分から義務的な部分へときちっと経費を位置づけるという形で持ってこられたのは、私は本当に一歩前進をされたのかなというふうに思っておりますが、しかしながら、社会保障制度全体の流れから考えますと、やはり年金の問題もあります。それから高齢者介護の問題もございます。さらには、今ずっと議論にもなっておりました少子化対策等々もございます。そういった全体の流れの社会保障制度改革の一環として、この障害者政策というものが一体政府の中でどういう位置づけにあるのか、一体どういう位置づけの中でこの障害者政策というものをとらえていらっしゃるのかということを、まず最初に大臣にお伺いしたいと思っております。

 そして、これに関連づけまして、なぜこんなことを聞いていくかと申しますと、私はどうもまだちょっと実は不信感を抱かせていただいております。というのは、後で述べますけれども、介護保険制度とのかかわりも入ってくるわけでございますけれども、すべてに関連してくる話になっていなければいけなかったわけだと私は理解をしているんです。

 つまり、このグランドデザイン、当初出されたときの、その予算措置をではどうしていくかということになっていきますと、そのとき、当時私が説明を受けていたのは、介護保険制度が拡大をいたしますよ、給付に関して拡大をしていきますよ、その際には障害者の政策の中でも活用できるものはそこで活用していきますよ、それによってきちっとこの制度自身の安定的な運営というものを確保していきたいんですよということを最初にまず私自身は聞いていました。ところが、それは、年が明けてふたをあけてみますと、介護保険制度の方は何かわけのわからないというか、さっき介護予防という話が出ておりましたけれども、そちらの方が主目になってしまって、肝心かなめの予算の確保というか、制度の財源的な確保というものが少しトーンダウンをしていったという印象を受けてしまったんです。

 したがって、私自身にとりましては、幾らこの障害者施策が、大臣の所信の中でも述べておられましたけれども、きちっとやっていきますよということをおっしゃっていただいたとしても、本当に果たしてそうなのかということ。

 それから、この二年間の支援費制度のあり方を見ますと、一年目でもう足りなかった、百億円以上足りなかった。そのときに、本当にこの制度大丈夫なんですか、来年度はきちっと予算を確保していただけるんですねと、私はその当時の坂口前厚生労働大臣にも申し上げました。そのときには、来年こそはきちっとことしのようにならないようにいたしますというお答えをいただいて安心して、まあ、し切っていた私もだめだったのかもしれませんけれども、安心しておりましたら、またさらに二百億円以上の予算不足というものになってしまったという状況で、これで二度も裏切られてきているんです。

 今度こそ本当に大丈夫でしょうねということで、こういう質問を最初に、本当にこの障害者施策というものを、ちゃんと厚生労働省の中で、政府の中できちっとした社会保障制度の一環の中の制度として位置づけているんですよということを、私は大臣の口からまずお伺いしたいというふうに考えております。

尾辻国務大臣 障害者施策につきましては、これは、支援の必要な方がきちんとサービスを利用できるようにしていくこと、これが一番重要なことだと考えております。そこで支援費制度にいたしました。そうしましたら、サービスの量が非常に急激に大きくなりまして、これは今お話しいただきましたように、私どももこの増大した支援費を捻出するのにこのところ四苦八苦してまいりました。

 そこで、これもお話しいただきましたけれども、それを義務的経費の中に入れることによってきっちり毎年予算化したい。今度の一番私どもの主眼としたことは、まず支援費を義務的経費に組み込むことでございました。そのことは十七年度予算でできましたから、今後はそういう意味では支援費についてそう大きく心配をすることはないと考えております。

 そして、介護保険との関係でお話がございましたけれども、確かに私どもは、最初、普遍化という言葉を使っておりました、そしてまたそうしたいとも考えておりましたけれども、今提出をさせていただいております介護保険法の改正では、附則の中で検討するということになったところであります。ただ、介護保険の中でやるやらぬは別として、必要な支援費の確保だけはしておりますから、そこのところではきっちりしたサービスをさせていただきますということを申し上げたいと存じます。

園田(康)委員 そうしますと、先ほど一番最初に大臣におっしゃっていただきました、必要なサービスを必要とされる方にはこれをきちっと行っていくんですよということがありました。そうしますと、確かに今回、大変、これは一歩前進であったというのは、いわゆる知的それから身体というところから、またさらに一歩進めて精神の方々にも御利用いただけるようにこの制度が拡充をしていったということは確かに言えるのであろうというふうに考えております。あとは障害児の子供の皆様にもこれが利用可能という形になってきた。

 しかしながら、いまだに、いわゆる発達障害でありますとか、先ほどお話がありました難病特定疾患という方々が、本当に必要とされていらっしゃるわけですけれども、それが今回も残念ながら、いわゆる制度の谷間と言われる方々が置き去りにされてしまったというか、これも実際に検討事項の中には入っておりますけれども、ただ、これも実際のところ、一番最初から、これは支援費のときからもずっと言われている話でありました。もう五年前から言われて、もうずっと以前から言われてきたことだったんですね。ところが、今回もまたこれが先送りをされてしまったという状態になってしまったんです。

 これは、一体この方々は、本当にこの方々も必要とされていらっしゃる方々なんです、一体いつになったらこの方々もちゃんとこの支援費の制度の施策の中に組み込んでいただけるんでしょうか。この道筋をここでしっかりとちょっとつけていただきたいと私は思っているんですが、いかがでしょうか。

塩田政府参考人 支援費制度は、一昨年四月からスタートしまして、支援費の目指す理念に沿って全国各地でサービスがふえたということで、その点は非常によかったと思っておりますが、一方で、先ほども御指摘があった財源の確保の問題という大きな懸案事項も明らかになったということで、今度の改正はそういう支援費制度の問題点を解決するということでありまして、今度の障害者自立支援法は、知的障害、精神障害、身体障害という既存の三つの法律を合わせた福祉サービスの一元化という法律でございます。

 昨年の臨時国会でつくっていただいた発達障害者支援法、あるいは身体障害者手帳などを保持できない難病の方々については、残念ながら今度の法律の制度の対象にならないということでございますが、今度の改正は、介護が必要な人、サービスが必要な人に対して普遍的なサービスが提供できるための第一歩の大きな一歩と考えておりますので、できるだけ早い機会に普遍的な障害者に対する制度が構築できるよう、引き続き努力をしていきたいと考えております。

園田(康)委員 そう言っていつもだまされてしまうというのはちょっと言い過ぎかもしれません、失礼な言い方だったらお許しをいただきたいと思いますが、引き続き検討ということ、それで来てしまっているんですよね。したがって、本来ならば、もう既にずっとこれは議論の対象としてなってきたわけでありますから、ここで入れておかなければ、本当の意味での普遍的な制度としては私は成り立つとは言えないんじゃないかな、そういう思いで今質問をさせていただいているんです。

 したがって、では、今度の改正というのはいつに一体なるんでしょうか。いつになったらこの方々が、今度改正という形になって入るということになるわけですから、本当だったらば、ではこの一年間でけりをつけてしっかりと来年度からはやりますというようなことをやはり言っていただかないと、いつまでたっても不安に置き去りのまま、この方々が、いつになったらやられる、いつになったら入れるの、私たちはいつになったら同じようなサービスを受けられるんですかという不安のままに、またずっとさらに送らざるを得ないという、その人たちの気持ちを考えれば、やはり少し、今回大きな一歩を踏み出したわけですから、ついでにと言ってはなんですけれども、それのもっとサービスを、そういう方々にも目を向けていただくような道筋をやはりあらわしていただきたい。どうですか、もう一度お願いいたします。

塩田政府参考人 障害を持つすべての方が地域で暮らしていくためには、障害の別なく必要なサービスが提供できる体制を目指すということは当然のことだと思います。

 そういう意味で、日本の法制度は、知的、身体、精神、その他というか、制度がばらばらに発展したという経緯がありまして、今回の改正は、その中でもおくれてきた精神障害者の福祉サービスを向上させるという意味では必要な改正だと思っておりますが、引き続きいろいろな方が取り残されていることもまた事実であります。目の前にいろいろな大きな課題が山積しておりますので、一つ一つ解決していきたいと思っておりますし、できるだけ早く普遍的な制度になるよう、最大限の努力をしたいと思っております。

園田(康)委員 恐らく、ここで議論をしていてもそれ以上お答えできないのかなという気はいたしておりますが、ただ、私たちとしては、一刻も早くこういった方々、谷間に置かれた方々をやはり救済していきたいというのは、同じ思いを大臣も持っていらっしゃるというふうに私は考えておりますので、引き続きこれを、本法案が提案をされているわけですが、審議に入るときまでにも、どうかできれば大臣の御決断もその中に盛り込んでいただくように、ちょっとお願いをしておきたいと思っております。

 そしてまた、もう一つ、今回のこの法律の中身でいきますと、いわば当然のようにと言ったらまたこれもちょっと語弊があるかもしれませんが、今までの応能負担から応益負担という形が定率負担の中に導入をされてきたわけでございます。利用者の方々が一割負担、これをお願いするということでございますけれども、その際の理由といたしまして、他の制度との整合性を図らなければいけないのだというようなことをおっしゃっておられるわけでございますけれども、これはどうも私自身にはちょっと納得のいくものではないのですね。

 といいますのは、応益負担というその考え方自身が、まだ私自身の中できちっと腑に落ちていない部分があります。つまり、益を得る、利益を得るという状況を応益負担という、能力ではなくて、何かサービスを受けて利益を得た上で、それに対して見合った部分を払うという考え方だろうというふうに考えているわけなんですけれども、果たして、障害者の方々が受けるサービスというのは、彼らにとっての利益という概念で私はくくっていいものかどうかという大きな疑問を持っているんです。したがって、私のところにも涙ながらにお訴えをしてこられる方々がいらっしゃるわけなんですけれども、障害を持った方々にとってみれば、私たちが受けるサービスというのは利益なんでしょうかという、本当に素朴な質問をいただいたのですね。

 つまり、私はもう幸いに風邪は完治してきておりますから、そんな、今五体満足の状況であるわけでありますけれども、障害を持った方々からすれば、本当に生活をしたい、地域の中で本当に自立をした自分自身の人間たる尊厳を持って暮らしをしたい、だけれどもそれが先天的にもできない、あるいは途中で事故を起こしてしまってそれもできなくなってしまった。できなくなってしまったということは、これはある種、マイナスと言ったらまたこれもちょっと語弊があるかもしれませんが、私に比べれば、要は私がサービスを受ければそれは利益になると思うんです、ゼロからのプラスですから。ところが、彼らにとってみれば、ゼロすらにもなれていない状況を何とか私たちと同じ生活に持っていこうというところの、国の措置といいますかサービスという形でこの制度があるわけですよね。そうすると、サービスの利益という概念というのは、ちょっと私はどうもこの中に納得のできていない部分があるんです。

 なぜ応益負担というものがこの中に導入されることになったのか、あるいは応益負担というものをどういう考えで政府は使っていらっしゃるのか、その点をちょっとお伺いしたいと思います。

塩田政府参考人 一昨年の四月から始まった支援費制度、理念において自己選択と自己決定ということで、非常にすぐれたものであったと思いますが、全国各地でサービスが伸びる一方で、財源の確保が難しく、結果的に財源の問題から必要なサービスが提供できないという事態が懸念されているわけでございます。障害を持つ方がこれから地域で暮らすという意味で、サービスを質の面も量の面も格段に拡充していくことが必要だと思いますけれども、現行の支援費制度のままではそれが確保できないであろうと懸念を持っているところでございます。

 これから伸びていくサービスを質、量ともよくしていくという意味で、関係する関係者、これはサービスを利用される御本人も含めて、みんなで分担し合うということが不可欠であろうと考えているところでございます。

 現行の支援費制度は応能負担ということでありまして、在宅サービスについていえば、実際御本人が負担している事業費に比べて一%程度で、ほとんどの方が低所得者であることは事実でございますけれども、今度導入しようとする制度は、応益負担というもの、厳密に言うと応益負担のものではなくて、応益と応能のミックス、受けたサービスの量と所得の両者を勘案して御負担をしていただこうという制度であると考えております。

 一割負担という、定率は一割になりますけれども、低所得者の方々、生活保護でありますとか市町村民税非課税、そういう方々についてはきめ細かな限度額を設けるといった低所得者対策もしておりますし、グループホームなどで暮らしている方については、一割負担のサービスが、例えば基礎年金だけの場合には実質的に負担がないような仕組みを導入するとか、かなりきめ細かな配慮もする予定にしているところでございます。

 いずれにしても、これからサービスを伸ばしていかなくてはいけないということが至上命題でありまして、そういう場合には市町村の協力も要りますし、納税者の方の御理解も要りますし、そういう意味で、御本人にある程度の御負担をしていただくということは避けて通れない選択であろうと思っております。例えば、サービスがただであれば、それは一見非常にいいことでありますけれども、サービスを提供される側の事業者の質を向上する意味でも、サービスに見合うある程度の対価というものがサービスの質も向上していくと思いますし、量的な拡大をしていく上でも、関係の方、御本人の御負担は避けて通ってはいけないと私は考えております。

園田(康)委員 恐らく、財源的な部分からいえばそういう話になってしまうんだろうというふうに思うんですけれども、考え方として、応益というか、先ほどは応能プラス応益の部分を入れて、そして減免措置をさまざまな部分で入れていくというきめ細かなサービスにしていきたいというふうに考え方はおっしゃって、私も理解はできるんですが、ただ、いきなり一割負担というところに持っていくということになると、果たしてこれは御本人の、当事者の皆さんにとってみれば、たえ得る制度として本当に持続可能になってくるのかなと。本人たちが払えなくなってきてしまったときには、一体どういう措置がその先にあるのかということ。(発言する者あり)

 それから、今ちょっと自立阻害という話も出ましたけれども、今回は利用者本人に自立を支援するというのが本来の法律の趣旨であるわけですよね。すなわち、先ほど申し上げたように、本当に地域で一人の人間として自立をした生活をしていきたい、尊厳ある人間の生活をしていきたい、そういう障害者の皆さんが持っておられる切実な思いをこの中に入れ込んでいかなければいけないということであるならば、当然、利用者本人の負担ということに限定をしていくのが本来の考え方であってしかるべきであろうと私は考えていたんですけれども、残念ながら、この負担の中には、家族まで含めた負担の内容になっている。親兄弟まで負担を同じく、扶養義務を課したような形で制度にさらにまた復活をさせてしまうというところがこの中に入ってきているわけなんですよね。

 そうすると、この法律が導入される本来の意味からいえば、本人に着目をして、この負担を、本人が自立をできるようにできるように、しかし、できない部分については減免措置を行って、少しでも障害者の皆さんが生活できるようにというところに持っていっているにもかかわらず、家族までまた含めてしまうといったら、また家族の扶養義務の中に入ってしまう。せっかく自立をしようとしている当人の方からすれば、また家族の扶養義務に入ってしまって、せっかくこれからやる気を出して、社会の中に自分一人で生きていこうという方々の気持ちを考えれば、この家族も含めた親兄弟までの負担を同一の生計の中に持っていくというのは、私は、筋違いというか、逆戻りになってしまうのではないかという、ここに大変な懸念を持っているんです。

 したがって、これは何とかこの法律ができるまでに、できるというか成立を、私はもっと本当は時間をかけてきちっとこれは審議をしていかなければいけないと思っているんでありますけれども、何とかこれは、制度を見直すという考え方が今の時点であるかどうか、ちょっとお答えをいただきたいと思うんです。

塩田政府参考人 現行の支援費制度の利用者負担は本人または扶養義務者ということでありまして、現行の支援費制度ではまさに扶養義務者に利用料の負担の義務が制度上課せられておりますけれども、今度の障害者自立支援法案では利用料の負担自身は御本人ということにしておりまして、扶養義務者は負担から外れております。

 先ほど来議論がありますように、きめ細かな低所得者対策を講じる上で、世帯の所得全体をどうするかというときに、扶養義務者の所得の扱いをどうするかというのが議論になっているところでございます。

 障害者の自立という観点から、世帯の所得の計算の際に親や兄弟は外してほしいという御要望が障害者の団体の方々あるいは地方自治体の方々から寄せられていることは事実でございます。一方で、民法の扶養義務でありますとか、一般の社会保障制度は、医療保険、介護保険にしろ、実際に生活をともにしている方々については民法の扶養義務と同じような扱いにしておりますので、それとの関係の整合性をどうするかとか、あるいは、一方で税制の扶養控除を受けていて、今度の新しい制度の世帯からは外すといったことが納税者に説明がつくかとかといった、いろいろな難しい問題がございます。

 しかしながら、今度の法案が障害者の自立を目指すという法案でありますので、いろいろな関係者の意見も聞きながら、そういう観点から見て、世帯の扶養義務者の範囲とか扱いをどうしたらいいかについては、関係の方の意見をよく聞いて検討していきたいと思っております。

園田(康)委員 ぜひ、当事者の方々の意見、それから、この審議の過程の中で私たちもしっかりとこの点を指摘させていただきながら、利用者本人の皆さん方が本当にサービスを気持ちよく受けたい、そしてそれによって自立支援をしていきたいというふうに思えるような、そういう制度へと持っていきたいと思っておりますので、ぜひよろしくお願いをしておきたいと思います。

 ちょっと時間がなくなってまいりましたので、幾つかあと質問を用意しておりましたけれども、障害者施策についての最後の質問という形で大臣にもちょっとぜひお願いをしておきたいんですけれども、先ほど話がありました介護保険との関係で、附則の第二条で、いわば二十一年度を目途として所要の措置を講じると。当然、この中には検討措置として障害者も入っているというふうに先ほど明確に御答弁をいただいたわけでございますけれども、ただ、検討に入っているというだけでは、まだ私自身は不安が残っているわけなんです。

 つまり、検討した結果、やはりだめでしたということも今までの例からするとあり得る話でありまして、検討ではなくて、ぜひ大臣、やはりここはもう一歩踏み込んでいただいて、二十一年度を目途に必ず被用者保険の拡大を行っていくんだ、そして、給付を受けられる方の年齢拡大も行っていくんだということをぜひちょっと最後に明言をいただけないか、お願いをしたいと思います。

尾辻国務大臣 先ほどお答え申し上げましたとおりに、今回の検討条項につきましては、障害者の介護を介護保険の対象とすることの検討を含むと考えておりますと申し上げました。

 今、法律でお願いをしております私の立場から申し上げますと、含むものと考えておりますと申し上げるところまででございますけれども、今先ほど申し上げた負担の話だとか、これもここでの、委員会での御議論を踏まえて私どもは答えを出していきたい、先ほどお答え申し上げたとおりでありまして、そのとおり考えておりますし、こうしたこともぜひこの委員会での御議論を賜りますようにお願いを申し上げます。

園田(康)委員 私は今三十七歳、ことし八歳になるわけですけれども、ぜひ私も介護保険料を払いたいんです。払わせてください。したがって、年齢拡大を一刻も早く、こういう民主党の考え方もあるわけですから、ぜひ与党の皆さんも一緒にこの拡大に向けて、やはりこれは社会保障制度全体の、一体の改革という形で進めていくものであるというふうに私は考えておりますので、強くお願いをしておきたいと思っております。

 それから、ちょっと話をかえてといいますか、ちょっと明るい話題にかえたいと思うんですけれども、明るい話題といいましても、これは別に気持ちが明るくなるわけではなくて、色が明るいだけの話でありまして、大臣、これはごらんになられたことはありますでしょうか。ございませんか。では、ちょっと席に。ちょっと見ていただいて。

 今ごらんいただいているのは、いわばMDMAというドラッグ、いわゆる脱法ドラッグと言われるものでございます。大変鮮やかな色がありまして、中には有名ブランドのシャネルですとか、名前を出していいんですかね、カルバン・クラインとか、大変おしゃれな、あるいはメルセデス・ベンツのマークですとか、三菱のマークですとか、そういうマークの入った、いわば一見してちょっとおしゃれな印象を受ける、受けてしまう、誤解を受けるような、そういうドラッグが今ちまたに大変流行しているんです。特に、若年層の若い人たちの中にもどんどんこれが広がっておりまして、大変今ゆゆしき状況にあるんではないかと私は考えているわけでございます。

 したがって、一刻も早く、これは政府全体でも今取り上げてやっていらっしゃるということでありますけれども、私から言わせればまだまだ不十分でありまして、十年前に比べればもう二十倍以上の広がりが、錠剤の摘発量からすればそれだけ多く今出てきてしまっている。特に、インターネットの普及によりまして、あと携帯電話ですとか、本当に気軽に、おしゃれ感覚で、あるいは女性の中ではダイエットの効果があるんだというような、そういう喧伝まで出てきて、はやってしまっているという状況がございます。したがって、若い人たちの間でこの危険性を知らずしてどんどん服用してしまうということに関しては、私は、本当にこれは緊急事態宣言でもして、ぜひ取り組みをいただきたいと思っております。

 大臣、ぜひ、今の現状の認識と、厚生労働省としての対策をいただきたいというふうに考えておりますけれども、どうでしょうか。

尾辻国務大臣 現在、第三次乱用期にある、こういうふうに言われております。第一次乱用期と言われたのが昭和三十年ごろでございますけれども、あのヒロポンという名前を思い起こしますが、ああした時代であります。それから、第二次乱用期というのが昭和六十年ぐらいのところにあるんですけれども、これは暴力団の資金源としての時代であります。それで、申し上げましたように、今、第三次乱用期と言われているんですが、この中に一つ、今まさにおっしゃったとおりに、中高生のファッション感覚による乱用急増なんということが含まれておりまして、これは大変ゆゆしき問題だというふうに考えております。

 厚生労働省としても、徹底的な取り締まりと、今お話しいただきましたように、啓発活動等、これは必要だと思いますから、推進の両面から積極的に取り組んで、青少年の薬物乱用防止対策を推進してまいりたいと考えております。

園田(康)委員 時間が参りましたけれども、あと一点。

 先般、我が党からも視察にちょっと立ち寄らせていただいたわけですが、地方の厚生局の麻薬取締部というところに麻薬取締官がいらっしゃったわけでございまして、本当に、全国で今百九十七名がいらっしゃる。ちょっと間違っていたら申しわけないんですが、二百名弱の方がこの最前線に立って、いろいろ、検査であるとか取り締まりの最前線に立っていらっしゃるわけなんですけれども、まだまだ実は、全国で十一カ所あって、たった二百名しかいらっしゃらないという状況であるわけですから、ぜひこれはもう少し、こういう状況にあるということを非常事態宣言という形で、もっともっと取締官の、取り締まる方々の人数をふやして、もっときめ細かなところにきちっと目が行き届く、そういう体制づくりもあわせてお願いをして、私の質問を終わらせていただきたいと思います。ありがとうございます。

鴨下委員長 次に、城島正光君。

城島委員 民主党の城島でございます。

 きょうは、三つのテーマについて質疑をさせていただきます。

 最初に、自動車運転者の労働時間問題について取り上げさせていただきたいと思います。

 交通運輸業というのは、もう御案内のとおり、今大変厳しい経営環境の中にあります。その環境を受けて、それこそ過酷な労働条件の中にあるのが運転者、それを仕事としている皆さんでありまして、そうした状況にあるからこそ、一言で言うと、今言ったように、過酷な労働条件、働く環境の中にあるがゆえに、本来ではない、安全第一で仕事をされるにもかかわらず、交通事故、しかも重大な事故というのが依然として多発をしているということは、やはり社会的な問題としてもですけれども、看過できないところに来ているのではないかというふうに思っております。

 特に、労働時間の昨今の推移を見ても、交通運輸産業で働く運転者の労働時間、総実労働時間で見てみますと、平成十四年の実績でありますけれども、全産業では千八百三十七時間であるところを、道路貨物の運転労働者は二千百七十八時間、道路旅客運転者の労働時間は二千百五十三時間ということになっておりまして、一般の産業と比べても約三百四十時間ぐらい労働時間も長くなっているという状況にあります。

 交通運輸産業における運転労働者には、昭和四十二年がスタートであるようでありますけれども、自動車運転者の労働時間等の改善告示というのが出されて以降、何度か改正になってきておりまして、現在は平成九年の改正の内容がついているということであります。

 そこで、まずお尋ねしたいわけでありますけれども、この自動車運転者を使用する事業場についての、今申し上げました労働時間の改善告示及び労働基準関係法令に対する違反状況は今どういう状況にあるのか、これについてお尋ねをしたいと思います。

青木(豊)政府参考人 自動車運転者を使用する事業場についての労働基準関係法令の違反状況でありますけれども、トラック関係で申しますと、労働時間の違反状況、五一%の違反状況ということになっております。バス、ハイヤー、その他もろもろを合わせまして、自動車運転者全体でも五一・一%、労働時間の違反状況。全体、労働基準関係法令の違反では、そのほかも含めますと、七七・二%の違反状況ということになっております。

城島委員 その違反状況は、調べてみますと、これは全然減っていないんですね、比率が。大体、今おっしゃいましたように、労働基準関係法令の違反というのが、平成十五年、今おっしゃったように七七%台。これは、平成十三年、十四年を見てみますと、七四・三、七五・二、そして七七・二と上がってきておりますし、同じように、改善基準告示違反というのも、五一・四、五三・一、五五・五%と、これも上がってきているということで、改善というんでしょうか、この違反状況は一向に改善していない、こういうふうに思われるんですけれども、この辺の御見解はいかがですか。

青木(豊)政府参考人 委員御指摘のように、この違反状況については、ほぼ高率で推移してきて、おっしゃるように低減をしていないという状況でございます。

城島委員 毎年、こういったことに対して担当行政として改善指導してきているというような報告を受けているんですけれども、一体、現実的にはどのような改善指導を行ってきているということなんですか。具体的にお聞かせいただきたいと思います。

青木(豊)政府参考人 この改善基準告示も、労使の団体で十分検討してもらい、参考にしてつくった基準でありますし、そういう意味では、その事業主、事業主団体の認識、そういったものが大切だというふうに思っております。

 まずは、基本的には、この改善基準告示、連続運転時間だとか拘束時間だとか休息時間などの基準を定めておるわけでありますけれども、こういったものについて、関係事業主団体を通じましてその周知徹底を図ってきております。

 それからまた、労働基準監督署におきまして把握しましたさまざまな情報をもとにしまして、労働基準法はもとより改善基準告示の遵守について問題があると考えられる事業者に対しましては、個別の監督指導を行って、その遵守の徹底に努めております。

 また、重大、悪質な労働基準関係法令違反については厳正に対処するということで、司法処分を含めて厳正な対処をしてきているという状況でございます。

城島委員 それで成果は上がっていると判断しているんですか。どうでしょうか。

青木(豊)政府参考人 これは、結果として非常に高率で違反が見られるということでありますので、まだまだ私どもとしては、事業主、事業主団体も含めまして、さらに一層努力をしなければいけないというふうに思っております。

 こういう運送事業者については、新規に参入をする事業者数というのが非常に多うございまして、そういう面で我々としても、そういう新しく入ってきた事業主に対しましても十分に周知をするように努めていきたいというふうに思っております。

城島委員 やはり、違反の率というのが下がっていくところをきちっと目標を持って成果が上がるようにしないと、もうずっと、少なくとも比率から見ると減っていない。だから、今までのやり方あるいは今までの内容だけでは改善がしにくいような環境にもなってきているんだと思いますよ。

 最初に申し上げたように、この業界を取り巻く環境というのは物すごく厳しくなってきていますから、やはりそこを、現状の、産業が置かれている、そして運転者の皆さんが置かれている状況がどんどん厳しくなってきているということも含めて、そういう観点を入れた指導あるいは監督ということを、新たな視点を入れてやっていかないと成果は出ないというふうに思いますので、そこをもう一度、それこそ原点に返ってしっかりと対応してほしいと思います。

 それで、そういう観点から一つお尋ねしたいんですけれども、ILO百五十三号条約とか一般的な諸外国の自動車運転者の労働時間管理を見ると、日本がこれは丁寧といえば丁寧なんでしょうけれども、日本のような拘束時間という規制がないんですけれども、この点についてはどういう見解をお持ちなんですか。

青木(豊)政府参考人 拘束時間についての規制ということでございますが、確かに、ILOの百五十三号条約では、拘束時間ではなくて休息時間だとか運転時間について基準を設定しているわけでありますけれども、それを敷衍しています百六十一号勧告というようなものもございまして、それでは、いわば我々で申し上げます拘束時間というようなものも一応の基準にしているということもございますので、そういったことを私どもとしては参考にいたしまして、運転業務というのは労働時間の管理というのが非常に難しい形態でありますし、また、運転時間以外の労働時間というものも多く含むというような特性もございますので、そういったもろもろの、拘束時間も含めまして基準を定めているというところでございます。

城島委員 結局、こういう規制も、まさに運転をする運転者自身の立場に立ってやはりしっかりと、必要によっては見直す必要があるんじゃないかというふうに思うんですね。特に、事故というのは、運転している時間あるいは運転にかかわる時間、これがきちっとそれこそ確保されるというんでしょうか、そういう時間の管理が事故防止のための最大のポイントだろうというふうに思うんですね。

 したがって、そういう運転にかかわる時間の管理を中心とした新しい時間管理規制というのが必要じゃないかという意見も現実的に現場から聞くことはあるんですけれども、その辺についての、新しい時間管理体制を検討する用意があるのかどうか、ぜひそこをお聞かせいただきたいと思います。

青木(豊)政府参考人 今申し上げましたように、運転の労働というのは非常に労働時間管理が難しいということで、さまざまなところでチェックをしたり管理をしたりしていかなければ、また実効を確保することができないだろうというふうに思っております。

 そういう意味で、改善基準告示で拘束時間も含めて今のやり方を決めているというのも、先ほど申し上げましたように、この業界、業務の労働実態といいますかそういったものを熟知した業界の労使が参加をしていただきまして、そこの審議会で十分検討して考えていただいた、そういったことを踏まえて行っているところであります。

 仮に、運転時間とか休息時間だけというようなことで基準を設定していくということになりますと、運転時間を含めてだけではなくて、いわゆる拘束時間が非常に長時間に及ぶおそれもあります。そういうことで、労働条件の確保上問題が生ずるということにもなりかねないということでありますので、今現在のこういった基準、管理のやり方というのが今のところはいいのではないかというふうに思っているところであります。

城島委員 大臣、この問題、実はすごく重要かつ深刻な問題なんですね。ぜひこの違反、それこそ撲滅に向けて、今の状況をしっかり踏まえて取り組んでいただきたいと思いますので、ぜひ大臣の御決意を聞かせていただけますか。

尾辻国務大臣 実はという話をしますが、家内の実家が小さな運送屋をいたしておりました。そのために、私が社長をしていたこともございます。そのころ、朝、出ていくトラックの後ろから、家内の母が、無事に戻ってきてくれといって拝んでいた姿などを思い起こします。そんなことを思いながら今の先生のお話を伺っておりまして、非常によくわかる面を持ちながら聞いておったということをまず申し上げます。

 そこで、労働基準法及び改善基準告示が遵守されるように、事業主はもちろん関係事業主団体等に対しましても周知啓発、指導等に努めて、違反の撲滅に全力で取り組んでまいりたいと考えます。

城島委員 ぜひよろしくお願いしたいと思います。

 それでは、続いて、訪問介護労働者に関する質問に移らせていただきます。

 介護保険制度は、二〇〇〇年の四月にスタートして、ちょうどこの三月で五年たつわけでありますけれども、この間、高齢者数の伸びを上回る勢いで要介護認定者あるいはサービスの利用者が増加してきているわけでありまして、スタートしたときはさまざまな不安を抱えた介護保険制度であったわけでありますけれども、確実に、しかも着実に社会に定着をしてきたかなというふうに思っております。

 今国会ではこの五年後の見直しを含めた論議がこれからされるわけでありますけれども、きょうは、在宅介護を支えるホームヘルパーの方々の問題について絞って質問をさせていただきたいと思います。

 介護保険制度の理念の一つに在宅重視というのが掲げられているわけでありまして、この理念が達成できたのかどうかということがあるわけでありますけれども、社会保障審議会介護保険部会が、昨年七月でしょうか、まとめた報告書の中にはこういう表現になっております。

 在宅サービス利用は量的には急速に拡大をしている、しかし一方で、現状の在宅サービス基盤は必ずしも十分とは言いがたい、こういう表現になっているわけであります。同じこの報告書では、サービスの質を確保するためには、それに携わる人材の質的向上と雇用それから労働条件の改善が不可欠であるというふうにも述べられております。

 さらに、

  質の高い人材の確保・養成のためには、適切な労働条件の確保が不可欠であるが、現行では、介護人材の処遇の水準は概して低い。また、在宅サービスの主たる担い手であるホームヘルパーの実働者数の八割は非常勤であり、登録型ヘルパーが多い。登録型ヘルパーの大半はいわゆる「直行直帰」型であるため、情報共有や技術蓄積が困難でチームとしてのケアが成り立ちにくいことなどが指摘されている。質の高い人材の養成・確保の観点からも雇用管理の在り方について、今後検討していく必要がある。

こういうふうにこの報告書の中では指摘をされているわけであります。

 したがって、そういう観点に立って大臣に質問をさせていただきたいと思います。

 まず第一点目でありますけれども、労働契約というのがしっかりしていないといかぬということでありますが、ホームヘルパーが労働契約を締結する際に使用者が特に留意する事項は何でしょうか。はっきりさせていただきたいと思います。

青木(豊)政府参考人 事業主がホームヘルパーと労働契約を締結する際には、雇い入れ後に労働条件についてその内容をめぐって問題が生じないように、労働基準法第十五条に基づいて、賃金、労働時間その他の労働条件について書面を交付することにより明示しなければならないということになっているところでありまして、特に事業主はまず初めにこれを留意していただきたいというふうに思っております。

城島委員 確認ですけれども、労働基準法第十五条の規定に基づいてということでありますと、賃金、雇用期間、就業場所、従事すべき業務、労働日、始終業時刻、休憩といった労働時間その他の労働条件を明示しなきゃならない、こういうことですね。わかりました。そういうことだという返事だと思います。

 そうしますと、先ほど言ったように、ホームヘルパーの皆さん方は期間の定めのある雇用の場合が多いわけでありますから、その場合は、労働契約の期間の定めの有無、その期間というのを明示しなきゃいかぬと思いますが、いかがですか。

青木(豊)政府参考人 おっしゃるとおりです。期間の定めの有無について明示しなければならないということになっております。

城島委員 その期間も明示しなきゃならぬのですね。はい、という確認をさせていただきました。

 それから、その報告書の中にありましたけれども、ホームヘルパーはいわゆる非常勤のヘルパーが多いというふうに聞いておりますけれども、非常勤はどのような就業、就労形態ということなんでしょうか。

青木(功)政府参考人 ホームヘルパーの方々の雇用形態ですが、ホームヘルパーということで調査したものは実はございません。

 そこで、一番近いものとして、民間団体でございます介護労働安定センターという団体がございますが、そこで平成十五年の暮れに調査をしたところによりますと、いわゆる介護事業所における雇用形態でありますが、正社員が五三・五%、それからいわゆるパートタイマーが二九・二%、それから、仕事があるときに派遣されるいわゆる登録ヘルパーと言われる方々が一六・一%という結果になっております。

城島委員 それでは、労働時間について確認をしたいと思いますけれども、いわゆるホームヘルパーの方々は、高齢者やあるいは障害者の皆さんの自宅に出向いて、入浴とか食事等の介護あるいはその他日常生活上の支援を行う業務に従事するわけでありますけれども、この方々の労働時間管理はどのようになっているのかをお尋ねしたいと思うんです。

 もちろん、サービスを提供している時間は労働時間ということは当然でしょうけれども、事務所から利用される方の自宅へ行く、あるいは、利用される人のところからそのままもう一つ利用される自宅の方へ移動するといういわゆる移動時間、それから業務報告書の作成時間、サービス提供の間の待機時間、研修時間、こういったことについて、これは労働時間として認定していいと思いますけれども、いかがでしょうか。

青木(豊)政府参考人 労働時間というのは、一般的には、使用者の指揮監督のもとにある時間をいうということでございます。具体的には、個々の実態に即して個別に判断するという取り扱いをしております。

 今お話に出てまいりました事業場、集合場所、利用者宅などの相互間の移動時間、これにつきましては、使用者が、業務に従事するために必要な移動を命じ、そしてその時間の自由利用が労働者に保障されていないと認められる場合には、労働時間に該当するものと考えられます。それから、自宅から事業場への移動時間は、一般的には通勤時間に当たるものと考えられます。

 業務報告書の作成でございますが、この時間についても、その作成が業務上義務づけられておりまして、使用者の指揮監督に基づいて文書を作成しているという場合には労働時間に該当するものと考えております。

 さらに、研修時間につきましては、使用者の明示的な指示に基づいて行われる研修である場合は労働時間でありますし、使用者の明示的な指示がなくとも、就業規則上の制裁などの不利益な取り扱いが生ずるとか、あるいは研修内容と業務との関連性が強くて、それに参加しないことによって本人の業務に具体的に支障が生ずる場合でありますとか、実質的に事業者から出席の強制があると認められるような場合には、労働時間に該当するというふうに考えております。

城島委員 その辺をしっかりと徹底していただきたいというふうに思います。

 それから、賃金についてですけれども、今、いわゆる業務報告書のきちんとした作成とか、あるいは仕事に行く移動時間、通勤時間じゃなくて移動時間、あるいは待機時間といったことは基本的には労働時間だという説明をいただいたんですけれども、いわゆるサービスを利用している人からの突然のキャンセル、これはよくあるわけでありますけれども、この突然の利用者からのキャンセルがあった場合の賃金はどういうふうになるんでしょうか。

青木(豊)政府参考人 突然のキャンセルで仕事がなくなったときには休業手当ということになろうかと思いますが、休業手当につきましては、労働基準法第二十六条において、使用者の責めに帰すべき事由による休業の場合におきましては、使用者は労働者に対して、その平均賃金の百分の六十以上を支払わなければならないというふうにされております。

 この使用者の責めに帰すべき事由ということでございますが、これは、事業主の故意過失、または信義則上これと同視すべきものは当然でありますけれども、そのほか、企業の経営者として不可抗力を主張し得ないすべての場合を含むと考えております。

 個々の事案に応じて個別に判断することではございますけれども、お話しになりましたような利用者からキャンセルがあったというような場合については、例えば、個々のケースはいろいろあると思いますけれども、他の利用者宅での勤務の可能性についてしかるべき検討をその事業主が十分に行ったかどうかとか、あるいはそういうことで労働者に代替業務を行わせる可能性を含めて判断して、使用者として最善の努力を尽くしたかどうか、それが認められないような場合には、使用者の責めに帰すべき事由があるということで休業手当の支払いが必要になるというふうに思っております。

 なお、そういう場合でも、始業、終業時刻を繰り上げたり繰り下げたりしまして勤務時間帯を変更したり、あるいは休日の振りかえというようなことによって労働日の変更を行いまして、いわば業務の提供を事業主サイドがしたという場合には、休業手当を支払う必要はないというふうに考えております。

城島委員 そう細かく言われても、原則ですよ、原則としては利用者から突然のという、だからあえてそこに集約したわけですけれども、突然キャンセルになって、それは仕事として行くことができなくなったという場合は、やはりそれは休業手当が支払われる、原則はそうだと理解していいんでしょう。いいんですね。

青木(豊)政府参考人 おっしゃるような場合には、原則そうなることが多いだろうと思います。

城島委員 わかりました。

 しかし、実はここは結構トラブルが多いところなので、こうしたことのルールを正しくきちっと事業者にやはり徹底を図るということが大事じゃないかというふうに思います。それこそ、先ほどの自動車運転者のあれではありませんが、指導監督徹底をこの辺ぜひ図っていただきたい。結構このトラブルが多いというふうに聞いております。

 それから、雇用管理についてお尋ねしたいわけでありますけれども、ますます今後この介護労働者の需要が高まるということは明らかでありまして、ただし、ホームヘルパーの方々の離職率が非常に高いということも現実のようであります。

 ただ、一方で、介護労働者には高度な技術とかあるいは能力が今後ますます求められてくる。そのためには、ホームヘルパーの人材育成ということと労働条件の改善というのは重要な課題であるというふうに考えております。したがって、今後ぜひ、このホームヘルパーに関するモデル賃金の実態といったことも含めた労働条件の実態調査やあるいは改善への指針、あるいは能力開発、能力評価といった点の調査研究がどうしても必要だというふうに思いますが、御見解を承りたいと思います。

    〔委員長退席、北川委員長代理着席〕

尾辻国務大臣 介護というのはマンパワーの世界でありますから、ホームヘルパーに限らず、介護事業所においては人材確保の必要性が極めて高いわけであります。一方で、労働者の定着率が低いなど、雇用管理面の改善を図ることは重要な課題であると考えております。きょう御指摘いただいたとおりだと思っております。

 今後とも、ホームヘルパーの雇用実態の適切な把握に努め、それを踏まえて雇用管理の改善に取り組んでまいりたいと考えます。

城島委員 そうした観点から、能力開発とかあるいはキャリアアップといったための研修、教育、そういった時間が確保できるような環境整備、あるいは一層の財政的支援ということが必要だというふうに思いますが、その辺はいかがでしょうか。

中村政府参考人 先ほど来お話にございますように、ホームヘルパーさんの質の向上は大変重要であると考えております。また、今後、要介護の高齢者の方が重度化したり、かつて痴呆症と呼んでおりましたけれども、改めまして認知症の高齢者の方が増加していく、こういった中で、ますますホームヘルパーさんの養成研修の充実とかそういったことが大事になると思います。

 内容面の整備とともに、カリキュラムや実施方法、働きながら研修をしていただくということでございますので、参加しやすいような環境の整備、また、そういった面で事業者サイドにもさまざまな負担がかかると思いますので、その辺につきましては、適切な運営ができていきますように、我々も検討してまいりたいと思います。

城島委員 ぜひ積極的な検討をお願いしたいと思います。

 次に、安全衛生の問題についてお尋ねしたいと思います。

 ホームヘルパーの皆さんの感染症対策についてでありますけれども、ホームヘルパーの方が利用者の感染症や病歴の情報を与えられていないということも結構多いわけであります。利用者からの感染症がうつってしまったケースもある。自治労の調査報告書にかなり詳細に実は出ているわけでありますけれども、そういうケースがあるという報告があります。

 事業者がホームヘルパーの人に利用者の感染症の情報をきちんと伝えているのかどうか、その実態を行政側としては、きちっとそういうことをやっているかどうかという把握をしているのかどうかということ、あわせて、消毒液とか手袋、マスクの使用、ホームヘルパーに対する研修など感染症対策、それを事業所がきちっと講じているかどうか、そういった実情を把握されているのかどうかをお尋ねしたいと思います。

尾辻国務大臣 訪問介護における感染症対策というのは極めて大事だと思います。これは両方からあると考えます。ホームヘルパーの方が介護する方のところへ行って、そっちからうつるということもありますし、今度は、インフルエンザなんかがはやりますと、ホームヘルパーの方がインフルエンザにかかっていて、つい介護する人にうつすという、この双方向があるものですから、とにかく感染症対策というのは極めて大事だというふうに考えております。

 感染症対策の実施状況について言いますと、平成十四年、十五年度に実施した調査によりますと、約九〇%の訪問介護事業所において、感染症予防マニュアルの作成、感染症予防に関する教育の実施等、感染症対策に関する措置が講じられておるところでございます。

 また、訪問介護サービス事業者に対しては、介護保険法に基づく指定基準において、所属するホームヘルパー等の清潔の保持や健康状態について必要な管理を行うこととされております。

 こうした取り組みがございますので、それらを通じてホームヘルパーの健康に配慮しておるところでございますけれども、職場における感染症対策は重要でございますので、今後とも必要な情報の収集や施策の実施に努めてまいります。

城島委員 それと、健康診断なんですけれども、訪問介護の作業の特性上、これも調査報告によりますと、腰痛を抱える人というのはもう圧倒的に高いんですね。腰痛などを抱えることが多いホームヘルパーについては、一般健診以外に特別な健康診断が必要じゃないかなというふうに思います。感染症についても、最低年二回程度の健診が必要だと思うんですけれども、この健康診断についてどういうふうなお考えがあるんでしょうか。

青木(豊)政府参考人 健康診断については、事業主は労働安全衛生法上、雇い入れ時、それから一年に一回定期健診、そういった健康診断をするように義務づけられているわけでありますけれども、今お話しの感染症についてその回数をふやすというようなことにつきましては、感染症の多くは発熱とかせきなどの自覚症状が見られるものでございますし、健康診断をまつまでもなく、医療機関において早期に治療が開始されるものと考えられます。

 感染症対策としては、むしろ感染を未然に防止するための、お話にも出ましたように、就業時のマスクや手袋の着用等の感染防護措置の徹底が重要だというふうに考えておるところであります。

 私どもとしては、事業者による感染予防対策が適切に実施されるように、必要な指導には努めてまいりたいというふうに思っております。

城島委員 この健診、ぜひしっかりとやれるように対策を打ってほしいというふうに思います。

 それから、労災についてお尋ねしたいんですけれども、ちょっと種類違うんですけれども、今言った、サービス提供中に感染症に罹患したといった場合には労災の適用になるのかということと、それから、介護サービスの提供に起因する腰痛、あるいは訪問先への移動中の事故、この場合は労災の適用になるんでしょうか。

青木(豊)政府参考人 細菌とかウイルスなどの病原体の感染によって起こる疾患にはさまざまなものがございまして、それらは日常生活におけるさまざまな機会においても感染し得るというものでございますので、感染機会というのを明確に特定することがなかなか難しいという場合も多いわけであります。

 しかしながら、お話のような、訪問介護労働者が介護サービス提供中に罹患して、業務によって発症したことが明らかな感染症ということであれば、それは業務上疾病として労災の適用になる、労災認定をすることができるというふうに思っております。

 それから、腰痛でありますとか移動中のお話もございましたけれども、訪問介護労働者に発症した腰痛につきましては、その発症がやはり業務によるものと認められる場合には、例えば業務中に転倒をして、それによって腰痛が発症したとか、あるいは非常に腰の部分に過度な負担がかかるということによって発症したというような場合には、業務上の疾病として労災保険給付の対象となります。

 移動中でありますが、事業場や利用者宅の相互間を移動中に被災したという場合には、その移動というのは通常は事業主の命令に基づく業務と考えられますので、特に私的行為を途中で挟んだとかそういう場合を除いては業務災害として対象になりますし、それから、自宅から利用者宅などに向かう途中とか帰る場合に被災した場合は通勤災害として、それぞれ労災保険給付の対象となるというふうに考えております。

城島委員 こういった今おっしゃったようなケースで労災とか、場合によっては通災の適用にならないようなこともあるというふうに聞いておりますので、この辺も事業者に対しての指導強化を徹底していただきたいと思います。

 この問題の最後でありますけれども、各種保険への適用ということについて問題を指摘させていただきたいと思いますけれども、ホームヘルパーの皆さんの健康保険とか厚生年金といった社会保険の加入率が低いというふうに聞いているわけであります。強制適用対象となる事業所でも相当数加入していないということがうかがわれているようであります。

 介護保険制度の介護報酬で事業を営むのであれば、その介護事業者というのは本来すべて社会保険適用とすべきであるというふうに私は思うわけでありますけれども、こうした実態をまず把握されているのかどうか。また、未適用事業所への適用を徹底すべきだというふうに思いますが、その辺についてはいかがですか。

尾辻国務大臣 社会保険それから労働保険については、その加入状況を職種ごとに把握していないものですから、ホームヘルパーに限ってというその加入状況というのは把握することができません。

 しかし、いずれにいたしましても、社会保険についても労働保険につきましても、ホームヘルパーのみならず、すべての職種の皆さんにその適正な加入手続がなされるよう努める必要がございます。例えば、短時間労働者が多いと見込まれる適用事業所を優先した事業所調査等も行っております。

 また、そもそも事業所そのものが未適用である場合には、その加入指導を徹底しておりまして、引き続き適用促進に努めてまいりたいと考えます。

城島委員 昨年の八月二十七日付で出されております訪問介護労働者の法定労働時間の確保についてというこの通達は、関係者の間では大変評価が高いわけでありますが、この通達をすべての事業者がきちっと守る、そういうことを徹底した指導監督を、先ほど申し上げましたような調査研究とあわせて徹底をしていただきたいということを強くお願いしておきたいと思います。

 それでは、三点目でありますが、資料、配られているかと思いますが、その資料をあわせながら、ちょっと御質問をさせていただきたいと思います。

 さきの国会で成立をしました育児・介護休業法の改正法で、契約社員とかパート社員など期間の定めのある労働者、いわゆる有期雇用者が一定の要件を満たした場合、育児休業の対象となるということになりました。

 そこで、この育児休業と育児休業給付の関係についてお尋ねしたいと思います。

 資料の一ページ目、お目通しをいただきたいと思いますけれども、それでまずお尋ねしたいんですけれども、今度の改正の育児・介護休業法において、三年契約の有期契約の人で更新の可能性がある労働者、これをAさんとします。労働者Aさんは、育児休業の対象となりますか。

伍藤政府参考人 先般の法改正で、こういう方々についても、一年間の雇用の実績があれば対象になるということになりました。

城島委員 それでは、このAさんは、育児休業給付の対象となりますか。

青木(功)政府参考人 育児休業給付の受給要件は、過去二年間に賃金の支払い基礎となった日数が十一日以上ある月が通算して十二月という要件でありますので、今の御質問の場合、基本的に対象となります。

城島委員 次に、五年契約、これで更新可能性なし、契約期間の末日が二歳より後の日である契約を結んでいる労働者Bさん、これは育児休業の対象となりますか。

伍藤政府参考人 先ほどと同様に、雇用実績が一年間あれば対象になります。

城島委員 では、そのBさんには、育児休業給付、これは対象となりますか。

青木(功)政府参考人 育児休業給付は、御案内のように、雇用を継続するための給付といたしまして、出産、育児に伴って離職し失業給付を受けるというかわりに、こういった給付を行って雇用を継続していただく、こういう趣旨でございますので、ただいまお尋ねのようなケースで、五年契約が一回だけで、全く契約が更新される見込みがないと事業主から報告がある、そういう場合には対象になりません。

城島委員 育児休業の休暇はとれても給付の対象にならないという人がいる。通常、大臣、普通は、一般的に考えれば、そういうことは想定しませんよね。

 まして、この三年とか五年の有期というのは、前の国会で、働き方の多様性とか多様な生き方だとか、あるいはできるだけ子供を育てやすくしようというようなことを含めて、そういう観点から提案されてきた中で、我々としては当然、育児休業をとれるのであれば、それは自動的に給付も受けられるだろうというふうに思っていたし、思っている人が圧倒的だと思うんですよ。

 どうですか。大臣だってそう思われていたでしょう。休暇がとれるけれども、育児休業給付がある人と給付がない人が存在する、これは大変問題じゃないでしょうか。大臣どうですか、感想を。

青木(功)政府参考人 大臣から答弁差し上げる前に、考え方について御報告を申し上げたいと思います。

 ただいまも申し上げましたけれども、雇用保険制度は、御案内のとおり、失業者への給付を中心とする制度でございます。そして、この中で、育児休業給付が雇用継続給付として設けられた目的に関しましては、これはもう釈迦に説法でございますが、出産、育児に伴う失業を防ぎ、そしてその後長期間にわたって雇用を継続していただく、こういうことが、御本人にもいい、それから、厳しい状況にございますが、雇用保険制度の財政にとっても寄与するというようなことから設けられたというふうに承知をいたしております。

 そこで今のような対応になりますが、このような意味で、育児休業期間中の給付について全部雇用保険制度において対応するということには制度運営上どうしても限界があるということでありまして、これは、制度運営の担い手でございます労使を初め公益側も加わりました関係審議会においてもこういった趣旨で今回の要件を設定したところでございます。

尾辻国務大臣 考え方は局長からお答えいたしましたけれども、とにかく、まずは育児・介護休業法の改正で、期間雇用者の数が増大するなど働き方が極めて多様化しておることを踏まえまして、これまで育児休業の対象とならなかった期間雇用者についても新たに育児休業の対象とすることにしたものでございます。まずは育児休業をとれるようにしようということでいたしました。

 しかし、それはよかったのでありますけれども、今御指摘いただきましたように、育児休業はとれるんだけれども育児給付の対象にならないところが出てくる、このずれは確かに生じております。そのことはどう思うんだと言われると、やはりこれは、育児休業がとれるんですから、育児給付の対象になる、その方がいいに決まっております。ただ、考え方の中でも申し上げましたけれども、この給付の方が雇用保険から出ておりますので、雇用保険の財政のこと等もありまして、今後検討する課題にはなると思います。

 そういうことで、先般決定されました子ども・子育て応援プランにおきましても、地域や家族の多様な子育て支援、働き方にかかわる施策、児童手当等の経済的支援など多岐にわたる次世代育成支援施策について、総合的かつ効率的な視点に立ってそのあり方等を幅広く検討することとされておりますから、こうした検討の中で、御指摘の点も含めて検討を進めることにしたいと考えております。

城島委員 いや、僕に言わせると、まさに縦割り行政の弊害そのものだと思いますよ。整合性がとれていないわけですね。

 一方の趣旨と一方の趣旨が、それはそれぞれ言い分があって、こうだから、雇用保険から来るからこういうことでこれはだめなんだ、雇用保険の趣旨は継続雇用だと。一方は、次世代支援も含めて。さらに、その前でいけば、五年の雇用契約というのは、そういうことを望む労働者もいるし、事業主の今までの有期雇用が一年のところを五年もという強い要請からきた。これは全然合っていないわけですよ。それぞれの主張どおりのところで全然譲り合っていない。そこにこの問題が生じているんだと思いますよ。労働法制の、労働基準法とかいうことを含めた改正と、それに伴ってくるいろいろな法改正、このまさにミスマッチみたいなことがどうもここで起こっているんじゃないかというふうに私は思いますね。

 これは、今までの流れからすると、双方がそういう主張をしていて、更新の可能性のない五年の契約の人には、休暇はとれても給付が出ないという状況のまま、これは四月から実施ですから、こうなっていくということでしょう。これはやはり認められないと思いますよ。

 これは早急に、もう一回審議会をやり直してでも、そういう人にも給付が出るような手だてをやはり考えなきゃいかぬと思いますけれども、大臣どうですか、これは。

尾辻国務大臣 申し上げましたように、検討課題であることは十分認識をいたしております。

城島委員 いや、これは実施まであと一カ月ちょっとあるわけですから。今の感じで言うと、五年の契約の人、これは多分五年だと契約の更新可能性ありとはなかなかならないと思いますよ、実態からすると。一年だからこそ、あるいはぎりぎり三年ぐらいまでだったらそういうことになっていくでしょう。だから、それは、更新可能性ありというような柔軟な対応というようなことも含めて、やはり何らかのことで、休暇がとれた人はちゃんと給付も出るというふうにこの一カ月ぐらいの中でやるべきじゃないですか、ここは。

青木(功)政府参考人 ただいま更新可能性について先生お触れになりました。それで、私どもは、できるだけ更新して長いこと働いていただきたいというふうに思っています。

 そこで、これも審議会でかなり議論になりましたが、届け出の際に、本当に一〇〇%絶対に更新する見込みがないというような、いわば宣言に等しいものはしようがない、しかし、できるだけ更新の見通しがあるという形で御報告をいただきたいというふうにやりたいと思っています。

城島委員 時間が来ているわけですけれども、その判断をするのは事業主でしょう。事業主でしょう、それは。いわゆる労働側じゃないじゃないですか。

青木(功)政府参考人 実務的な話でございますが、事業主から労働者に関して届け出が出るわけですので、労働者の方もそれを確認するようにします。

北川委員長代理 城島正光君、申し合わせの時間が来ておりますので。

城島委員 それを提出するのはそういうことでしょう。いずれにしても、大臣、これはやはり欠陥だと思いますよ。しかも縦割り行政の弊害が出てきているんだと私は思いますよ。双方のねらいが合致していない、ここは両方トータルの中できちっと整合性を四月までにとるということをぜひお約束いただきたいと思います。ぜひ検討してください。

尾辻国務大臣 申し上げましたように、検討課題であることは認識をいたしております。ただ、育児休業をとっていただく、このことも大変大事なことだと思っておりますので、そうした育児休業をまずとっていただく、そして給付も受けていただくというそこのところのずれについては、また検討させていただきたいと存じます。

城島委員 ぜひ休暇と給付はセットでというふうになるように、強くお願いをしておきたいと思います。

北川委員長代理 次に、五島正規君。

五島委員 かなり私の時間が食い込んでおりますので、きょうは党首討論がございますから、大臣は四十五分ぐらいに出ていただいて結構でございますので、あらかじめ申し上げておきます。あと副大臣が残っていただければ結構ですから、申し上げておきます。

 今、城島議員からの議論もございました、本当に労働の問題というのは社会保障制度全般と一体の問題で切り離せない問題です。今、この社会保障制度の問題やあるいは労働、雇用の問題につきまして、さまざまな審議会やあるいはそういうところにおきまして、非常に経営団体の声が強くなってきています。それをまたさらに経済財政諮問会議や規制改革会議といったような政府がでっち上げられた組織が後押しをしているという状況で、随分と社会保障制度というのは今混乱してきていると私は認識しております。

 そこで、まず、社会保障制度全般に関しての水準について、大臣の御見解を聞いておきたいと思います。

 最近になりまして、またまた潜在的国民負担五〇%論というものが出てまいりました。非常に声高に叫ばれています。言うまでもなく、社会保障全体に対する給付の水準と負担の水準というものは相関的な関係にございます。かつて、日本の経済というよりも、戦後バブルが崩壊するまでの間というのは、日本は世界でも例外的に右肩上がりの経済成長を続けてまいりました。その時代におきましては、国会におきましても、主として社会保障の拡充や必要な措置をする財源は、負担をどうするかという議論よりも、成長の果実の分配論で議論をされてまいりました。ところが、今はその成長の果実の分配でもって社会保障制度を整備していくということが困難な時代になってきていると認識しています。

 そうなりますと、やはり、負担の水準と給付の水準をどうするのかということが重要な課題だと思っています。そのためには、日本という国をどういう社会にするのか、また、日本の社会保障の水準を世界各国と比較してどう見るのかという問題が大事になってくるのだろうというふうに思っています。

 自民党の、小泉さんに言わすと中二階と言われた人たちと時々お話をすることがございます。最近になって、その方々の中にも、負担の抑制論、したがって給付の抑制論というのが随分と出てきているように思います。負担を抑制して給付も抑制する。よほど日本において社会保障制度の整備が進んでいて、それが世界でも突出しているという状態にあるとお考えなのかどうなのか、そうでないとすれば、やはり負担を先行させて考えるのか、社会保障制度そのもの全体のバランスを考えてそれに見合った負担をどうするというふうな議論をすべきなのか、大臣はその点についてまずどうお考えなのか、お伺いしたいと思います。

    〔北川委員長代理退席、委員長着席〕

尾辻国務大臣 かねて経済財政諮問会議で議論をいたしておりますことを改めて申し上げることになります。

 私は、まずは社会保障、今バランスということも言われましたけれども、そうしたこと、これは、給付と負担を考えるに当たりまして、経済、財政のバランス、そういうこともありますし、あるいはまた、世代間や世代内等の公平性の確保、こういったような観点もございます。そうしたさまざまなことを、まさに国民の皆さんにどういう選択をされるかということを問う必要がある。今その時期なんだろうというふうにも思っております。

 そこで、今の財政論的に経済財政諮問会議が提案しているようなことについてどういうふうに思うんだというお尋ねでもあろうと思いますから申し上げるわけでありますけれども、高齢化の進行等の自然増の要因を考慮せずに、考慮すれば必ず社会保障、今少子高齢化の中でどうしても額がふえていくことは避けられないわけでありますから、それを考慮せずに社会保障の給付の伸びを機械的に抑制すれば、管理すれば、必要最低限のサービスの確保が難しくなる、あるいは限界を超えた利用者負担を求めざるを得なくなるといったようなことで、社会的な亀裂が生じると考えております。

 また、財政規律、このことが盛んに言われるわけでありますけれども、この面から国民の負担水準を何らかの形で示すことは、それはそれで重要であるとは考えますけれども、よく国民負担率、特に潜在的負担率まで言うわけでありますけれども、そうしたことについては専門家の間でもさまざまな議論がございます。

 いずれにいたしましても、社会保障全体のあり方、財政的な議論をするに当たっては、その負担の規模のみを論ずるのではなくて、これと表裏一体の関係にあります給付のあり方もあわせて考える必要がございますので、今これもお触れになりましたけれども、いろいろなところでの御議論がありますけれども、そうしたことも踏まえて、国民のまずは合意を得る必要があると考えておるところでございます。

五島委員 何か最初の辺は、私も、ああ、我が意を得たりと聞いておりましたが、最後のところでちょっとわからなくなったんですが、給付の水準というものを軸に考え、そして、その給付の水準を実現するために財政規律の問題や、どのようなシステムがそれを賄うに最も効率的で安定したものなのか、その負担のありようを考えるというのは、これは当然だ。だけれども、あくまでも社会保障の給付の水準を軸にして考えていくのか、それとも負担という形、負担ということになりますと、どうしても現行の制度のもとにおいて負担が目立ってまいりますから、給付の水準よりも負担を軸にして、現行なら現行の負担の水準の中で物を議論していけば、給付の水準を下げざるを得ない。一体どちらを軸にしてやるのかということだと思うわけです。

 私はやはり、給付の水準というものを何段階か議論し示す中で、それによって必要な負担、そしてその負担のありようを議論していくということから始めないと、何か思いつきの言葉とか一つの言葉だけで社会保障問題全体を論じていきますと、私は非常に偏ったものになるのではないかというふうに思っているわけで、その辺についてまた改めて大臣と議論をしたいと思います。

 そこで、まず、社会保障制度の基本であります年金制度の問題に入っていきたいと思います。

 先ほど我が党の横路議員の方からの質問にもお答えいただきましたけれども、昨年の年金制度の改定によって国民の年金制度に対する信頼と支持というものは強まったと考えているのか、それともその信頼は失われてきていると考えているのか。この問題については、私は必ずしも未納率の問題だけで議論するつもりはありません。未納率の問題というのは、現在の制度的な欠点もございます。例えば、非常に失業者がふえてきている、あるいは中小企業の経営が厳しくて政管健保から国保の方に締め出されてきている、そういうふうな問題もあるでしょう。しかし、そういうふうな問題を除去したとしても、今国民が年金制度に対して非常に批判の声を上げていることは事実だと思います。

 一体あの年金改革というのはどうだったのか。本当に政府がおっしゃっているように、昨年やられた改革によって、国民年金でいえば一年間に二百数十円ずつ上がっていくという水準、考えてみれば、一月に二十円ぐらいずつということになると、私はヘビースモーカーですけれども、たばこ代の値上げより少ないですね。にもかかわらず、あそこまで国民は怒っている。これは決して年金保険料が引き上げられたから怒っているというものではないんだろう。

 なぜ国民がここまで年金に対して不信感を持っているのか。ここのところは、年金の社会保険庁問題等々の問題もありますが、やはり基本的に、今の政府の言い方だけでは年金制度はもたないんじゃないか。百年もつというふうに言われました。百年はもたないだろうと先ほどもおっしゃっておりましたけれども、では五十年もつのか。私は五十年ももたないんだろうと思っています。

 それは、さまざまな要因がありますが、変数要因を常に、厚生労働省、社会保障を考える場合は、固定係数にかえてシミュレーションし、それが狂ってくるとうまくいかないからです。そういうふうなことを何ぼ繰り返していても支持というものは得られないのではないかというふうに思うわけです。

 そこで、年金問題について、具体的に大臣に二問お伺いしたいと思うんです。

 大臣は、先ほども、また予算委員会でも、年金の国民年金も含めた将来的な一元化は望ましい、こういうふうにおっしゃいました。我が党もまた、年金の一元化ということを岡田代表を初め主張しています。なぜ年金の一元化が望ましいと大臣はお考えなのか、そこの点をまずお伺いします。

 そして、年金の一元化をするとした場合にさまざまな問題が発生してまいります。先ほども御指摘ございましたが、例えば年金を一元化するためには所得の捕捉云々、これも大事な問題ですが、所得の捕捉だけなんだろうか。例えば、年金を一元化した場合に自営業者と被用者との関係をどういうふうにするのか。基礎年金、国民年金がなくなって本当に一元化した場合に保険料の負担はどういうふうに設定するのか。今以上に被用者が全体に対して拠出をしないともたない制度になりかねないねと。民主党は、そこのところは、現在の基礎年金相当部分は全額税を投入しろというふうに言っているわけです。それであればまだこの辺は一定の整合性はとれるわけですが、大臣もそこのところはおっしゃっていない。

 そうすると、一元化というものを考えた場合に、それがより将来的には望ましいと考えるなら望ましい理由と、一元化をするについてクリアしなければならない問題点は何々があると考えるのか、そこのところをお答えいただきたいと思います。

尾辻国務大臣 まず、今おっしゃったような大きな意味での一元化を進めるということになりますと、幾つかおっしゃいましたけれども、さまざまな問題点が出てくるということはそのとおりでございます。よく言われますように、では自営業者の所得の把握をどうするのか、それから、これもお触れになったと思いますけれども、サラリーマンの方は事業主が半分今は負担しておるわけでありますが、自営業者は自分の分を二倍払うという、その事業主が払ってくれる分を払うのかとか、さまざまな問題が出てくるということは私も承知をいたしております。

 ただ、先日、年金の一元化というのが最終的には望ましいと思っておりますというふうにお答えいたしましたのは、よく言われる、先ほども申し上げましたけれども、官民格差の話だとか、格差がある、あるいは国民の間にいろいろ不公平感が出てくるというのはよくないと思いますし、それから、年金という保険でありますから、保険はスケールが大きい方がやはりよりお互いの助け合いの制度としてうまくいくのだと思いますから、そうしたことを考えて、一元化が好ましいものと思いますというふうにお答えをしたところでございます。

五島委員 スケールが大きければ望ましいというものでもないと思うんですが。

 今大臣も触れられましたように、今、年金問題、社会保障問題で政党間協議をやれやれと私も与党の筆頭から言われますが、本当に年金の一元化の問題を含めて議論するとするならば、この二つの問題をどうするのかということのあらあらの整理が必要だというのは我が党の岡田代表が言うとおりでして、所得の捕捉の問題、あるいは現在の基礎年金に相当する部分を、あえて消費税という言葉を岡田代表は使われたわけですが、税で置きかえるというふうなこと、そういうふうなことを前提にするならばこの一元化議論に一気に進めるだろうけれども、そこのところの整理がついていない段階ではこれは本当に平行線なんだろうなと思いながら、この間の議論を聞いています。

 あわせて、では、それをやれば本当に年金制度に対して国民の信頼と支持が強まるとお考えかどうか、私は大事なところだと思うんです。

 先ほども申しましたが、成長の時代、果実の分配でもって年金制度も含めて保障制度が充実していく時代においては、それは老後に備えた一つのシステムとして国民の支持は得てきた。しかし、その成長の果実の分配ということでなくて、自分の汗によって稼いだお金を将来に向けて払っていかなければだめだという時代、その時代に、本当に四十年後の高齢期に向けて巨額の積み立てをやっていくということに対して国民の支持が得られるのかどうか。もし現役労働者がそんなのは嫌だよと言った途端に、過去債務を抱えた、現在年金受給世代に入っている方々に対しては、現在の積立金では到底足りないわけですから、年金制度は破綻します。そうすると、この年金制度に対する国民の支持を得るためにどういうふうなことがあるかという議論というのが、この間の議論の中でほとんどメーンには座ってこなかったような気がする。

 私は、年金制度というものは、現金給付として出されるのが高齢期であるにしても、この資金の運用というのはさまざまあるだろう。総理は、このお金は今後年金の給付以外に使わないとおっしゃった。年金の給付以外に使わないのではなくて、そのお金をたんす預金するわけではありませんから、結局国債なりなんなり買って、その国債で、それは建設国債であれば相変わらず公共事業に使われるんでしょうし、まさか赤字国債の穴埋めに使うとは言わないでしょうが、そういうふうな形で使われるだけの話。

 そうであれば、私は、少なくとも厚生年金でも約百五十兆円ぐらいの積立金がありますね、このお金で、若い時代、子育ての時代に役立つような制度をつくることができないのか、ぜひそこのところも考えていただきたい。

 例えば、大学、短大あるいは大学院に行っている学生、大体約五十万ぐらいの子供に対して、月間十万円の貸付金、奨学金を出して、大学あるいは大学院を卒業して年金を受給する世代までの間にそれを払い戻してもらう。そして、もし途中で、今の時代ですからその返済が滞る場合もあるでしょう、滞った場合は年金額が決定する段階でその分を差っ引いて年金額の決定をさせてもらいますというやり方をとるとするならば、約四十年間かけて大体現在の積立金の三分の一ぐらいの資金が回転すれば、この制度はできます。月十万円ということは年間百二十万。学生時代という比較的お金のない時代、そして何よりも子育ての中で最も金の要る時代の人々に対して、この年金制度というのは非常に役に立つ制度に変えることができる。そういう全世代が利用できる制度として利用することが現実的に可能だ。

 何も、これは社会保険庁でやれと言っていません。例えば、それはある種の目的の国債にかえてやっていくこともあるでしょう。やり方はこれから議論すればいい。だけれども、年金制度というものを何かトンカチに使うとか、政府の何かの目的に使うというよりも、国民の懐にお貸しして返してもらう、そのかわり、年金には加入しておってくださいねということによって、この年金制度を全世代にとって必要な制度に変えていくということは一つあるでしょう。

 あるいは、どう計算しても将来年金だけで老後生活できない。一方において、日本の経済を考えた場合に、高齢者の持っておられる資産というものを流動化するというのは実は非常に大事な問題であろうと思います。それをするためには、私は建物だけではないと思うんですが、やはりリバースモーゲージみたいなものは日本で確立していかないといけないけれども、このリバースモーゲージをやっていくためには一定の原資が必要だろう。そういうものにこの年金の積立財源を使うというよりも運用する、そうすることによって、年金の給付される以外に自分の資産が公平に流動化できるというふうな制度。

 そういうふうなものを考えていかない限り、すなわち、年金が四十年後にもらえたら幸せね、ただしあなたが払った金だけよという制度にするのか、みんなが協力して年金を積み立てながら全世代にわたって利用できるという制度に変えていくのか、そこのところの議論が実はない限り、私は、国民の信頼、支持というものはなかなか困難であろうと思っております。その点について、大臣の御意見をお伺いしたいと思います。

尾辻国務大臣 今お話しいただきましたような奨学金制度は、若者の自立を促すという観点から貴重な御意見であると考えます。先生の御意見としても伺いましたし、私の極めて尊敬する識者もこういうことを実は言っております。また、リバースモーゲージ制度についてもお触れいただきましたけれども、高齢者がみずから築いた資産を活用して、豊かで自立した生活を過ごすという観点からは大切な視点であると承知をいたします。

 ただ、今の時点でということになりますと、申し上げるまでもないんですが、先生もお話しいただきましたように、年金積立金の一部を活用することについては、年金保険料を財源とした福祉事業に対する厳しい指摘がある中でございますし、年金積立金の活用のあり方として適切かどうかという議論もございますし、また、奨学金制度については、他の公的機関の今後の動向でありますとか、次世代育成支援対策の展開も踏まえながら考えなければいけない、こういうふうに考えます。

 リバースモーゲージにつきましては、自治体や民間における類似の制度の今後の展開も踏まえながら、それぞれ検討していく必要があるというふうに考えております。

五島委員 私の言いたいのは、年金問題の議論というのは、保険料をどうするか、そして給付をどうするかという問題だけでは、今の日本の中において国民の信頼というのを取り戻すのは非常に難しい。また、年金問題をめぐる議論というのは、今私が例に挙げたように、さまざまなサイドから議論する、そのことが国民へのメッセージとして、こういう議論も国会でされるというメッセージを出すことが私は大事なんだろうと思っています。

 国民の多くが、この年金、かけてみても本当にもらえるのというような声すら出てくる。これは何かといえば、政治に対する不信と、それから年金問題をめぐっての議論が余りにもあるところに集約されてしまって、国民にとってしまうと、どうせ今までに比べると給付額は少なくなるんだねというふうな、そういう感覚の中での批判だろうと私は思っています。

 そういう意味では、年金問題の議論というのは、まさに社会保障制度の全般の議論の中でとおっしゃるわけですが、その中の一つの年金問題をとってみても、そうした問題の膨らみというものを考えていかないといけない。それは、何も既存の組織の中でやらなければいけないということではないわけでして、リバースモーゲージにしても、それが広がっていけばいいということに立っていえば、さまざまな議論をそこでまたやれるんだろうというふうに思っています。

 そうした発想の切りかえというものをやっていかないと、社会保障制度全般については、議論をしても、率直に言って実りがあるものになかなかならないのではないかというふうな感じを持っています。

 同じく、医療保険制度の問題についても少し触れさせてもらいます。

 医療費というのは、今後とも国民総医療費はふえ続ける、これは間違いないことです。もちろん、これまでも政府がやってまいりましたように医療費の抑制をするんだとおっしゃるだろうと思います。しかし、これまで政府がやってきたのは、実は、医療費の抑制ではなくて、伸びの抑制でしかなかったわけです。基本的には医療費の伸びの管理とそれから抑制であって、絶対額の抑制というものになるような手段というものは政府はとってきていない。

 事実、それは、今までのやり方の中で、あるいは今後も含めてかもわかりませんが、ほとんど不可能に近い問題だろう。なぜならば、医学そのものが進んでいきますね。高齢化が進んでいきますね。今の時代でいえば簡単な感染症はどんどん克服されていくけれども、しかしそれにかわって新たなさまざまな厄介な病気がふえてきますね。そういうふうな状況の中で、医療費の絶対額が抑制されるということはまずないと考えていいんだろう。そうすると、医療費の絶対額を抑制することが現行において無理な段階において一体どうするのかということは、今日的な大きなテーマである。医療費の絶対額が抑制できるような、そういうすぐれた方法があるのかどうか、あるいは医療費の伸び率の抑制を今まで以上に強化してやっていくのかどうか、そういうふうな話だろうと思います。

 それで、ちょっと大臣にその辺について、一体、これからの医療保険制度だとかさまざまについて、今審議会なんかで議論されていますが、そういう制度の問題、その他の問題を議論する前に、厚生省はちょっとオーバーだなと思いますが、向こう三十五年ぐらい先には医療費総額は約六十兆円ぐらい伸びるというふうな見通しも出しておられますし、これはかなりオーバーな数字だと思いますが、年金の給付増がせいぜいのところ十数兆ということに比べると、医療費の三十兆の伸びというのは非常に大きい。

 その辺について、一体どういう形でこの医療費の問題を、医療費の伸び率を抑制するのか、医療費の絶対額を抑制するのか、どういうふうな形で医療に必要なコストをファイナンスするつもりなのか、ちょっと先にお聞きしておきたいと思います。

尾辻国務大臣 まず申し上げますと、これは先生もおっしゃいましたように、医療費の額が減るということはないと考えます。まず伸び続ける。今、大体一年一兆円ぐらい伸びておりますけれども、こうした伸びはやはり続くものと思います。

 そうしますと、私どもの厚生労働省の試算がそのままきっちり正しいかどうかはまたいろいろ御議論あるかもしれませんが、とにかく、今私どもが、二〇二五年で五十九兆円ぐらい見込まれるんじゃないかということを申しております。その一方で、これは決して私どもはそのことが正しいと言っておるわけではありませんけれども、冒頭にお話しになりました経済財政諮問会議あたりが今どういう言い方をしているかというと、社会保障の伸びというのをGDPの伸びぐらいに抑えるべきであろうというふうな御意見もございます。そういうGDPの伸びということで単純に計算をすると、二〇二五年、三十八兆円ぐらいになると思いますから、まさにこの五十九兆円と三十八兆円の差というあたりが一つの数字として出てくるわけでございます。

 それをどうやって抑えるのだと。これは大変大きな課題でございまして、今私に、おまえに何か案があるかと言われても、直ちにとても、こうしたらそれがうまくいきますということをお答えできるものではございません。ただ、いろいろなことを総合的に考えていかなきゃいかぬのだろうというふうには思います。

 きのうも、中医協をどうするかという有識者の会議を立ち上げました。私は、そこでも、今申し上げたようなこともお話ししながら、今後の診療報酬の改定率、そうしたものも私たちの今後の日本を決める非常に大きな課題になると思いますので、そうしたことも視野に入れて今後の中医協をどうするかということの御議論をいただければ大変ありがたいと思いますということまで申し上げましたけれども、例えて言いますと、そういうようなことも視野に入れながら、今後の医療費ということを私どもは考えていかなきゃいかぬのだというふうに考えております。

五島委員 医療制度というのは、日本の場合は、保険制度で成り立っている社会保障で成っています。どうも経済財政諮問会議や規制改革会議の話を聞いていますと、例えば、この保険という、国民全体から集めている、ファイナンスしているお金で賄う金額に上限をつけて、そこから外してしまえば、医療費が伸びることは知ったことじゃないよ、それでいいんじゃないのという議論をしているように思えるわけですが、では、国民経済全体から見て、それはどちらが利益なのかと。

 私は、日本の医療制度が保険というシステムでファイナンスされていることに対しては、非常に意味があると思っています。特に、これまで感染症の時代から結核の時代、成人病の時代を経過して、この保険制度というのは、やはり日本の経済成長を支えた一つだろう。

 これはもう釈迦に説法ですが、簡単な話で、十人の人が一年間に百万円かかる病気にかかる心配があるときには、十人の人が百万円ずつ自分でお金を蓄えないといけない。一千万円のお金がそこでストックとして備えられないといけないけれども、十人のうち一人の人が百万円のお金が要るだけであれば、十人の人が十万ずつお金を出し合えば、百万円のストックでもって賄える、そういう理屈です。だから、保険制度でやることによって、国民全体として医療に要するストックという部分を小さいものにして、そのお金はほかに使える、運用できるというメリットがあったわけですね。

 ただ、疾病構造が変わりました。もし仮に、十人の人が十人とも百万円かかる病気になってしまうという状況になりますと、保険制度の意味がないわけです。そうなれば、利害者に対する公平性とかなんとか言うんだったら、税でやっても構わない。しかし、疾病というものはやはりそこのリスクの不均衡というものがあるわけで、保険制度のメリットはあります。

 厚生省は、鳴り物入りで患者負担率を引き上げましたけれども、三割に引き上げますと、結局は、本当は経済効率からいうと余りよくないわけで、やはりこれについては、保険制度なら保険制度のメリットを生かせるようなシステムでやらないといけない。それを、今言われているように、混合診療とか自由診療とかいう形になってしまいますと、見かけ上、保険からの支出は減りますけれども、国民医療費が減るわけではありません。それに備えて国民が備えなければいけないストックはふえてしまうわけで、決してプラスにならない。私は、あの人たちは自分たちの商売のために言っているんだろうとしか思っていません。

 そういう意味において、今ここで混合診療を解禁する、自由診療をすることによって保険医療費の支出を減らすという選択をとれば、日本という国はとんでもないことになってしまうだろうということを、まさか大臣はそう思っておられないということを信用しておりますので、私からも申し上げておきたいと思います。

 そうした前提の上に立ってですが、いま一つ、実はこれまでの医療保険制度の議論の中で抜けている点があったのではないか。

 先ほども、大臣は中医協の例を出されました。中医協でやられてきていることは、せいぜいのところ医療費の伸び率の抑制でしかなくて、保険として集まったお金、この医療資金をどのように資金管理すれば効率的な医療ができるのかという立場から、すなわち、ある種のシステムにかかわるところについては、中医協では議論していません。国会でも、厚労省なんかでいろいろやっておられたんですが、前任者の手法をそのまままねしているようなことばかりが続いてまいりました。

 しかし、考えてみれば、医療費の決定というのは、やはり患者さん、すなわち被保険者と、それから保険者と医療担当側と、この三者の中において、合意点でもってシステムが進んでいくんだろうというふうに思います。

 例えば、患者さんと医療提供者との利害だけで考えれば、一致点は、いつでも、どこでも、だれでも最新の医療の技術が提供されることですね、患者と医者だけでいえば。しかし、不一致点は何かというと、患者の側からすれば、提供される医療費が安い、すなわち自己負担が少ない、それで患者の最小限の努力で最大の成果が得られるというふうなことが、医療の側とは不一致の点として出てくるんでしょう。医療の側はそこのところは余りこだわらないとなってくると思います。そうすると、結果はどうなるかというと、出来高払い、フリーアクセス、濃厚検査、濃厚診療、頻回受診というような形になって、非常に多くの医療資源が必要となる医療制度になってこざるを得ません。

 それから、保険者と被保険者との利害でいえば、一致点は、医療コストを安くして保険料を安くして、自己負担を少なくして、国民皆保険制度を維持してくれという点が一致点になるでしょう。しかし、不一致点は、保険者の方は、保険料の引き上げを自由にやらせてくれ、それによる財政の健全化、あるいは医療に対しては、人頭払いとか包括払いとか、ゲートキーピング制によるアクセスの制限、そういうふうなことによって保険の支出を減らしたい。これが患者と保険者との不一致点になるでしょう。

 そうすると、当然のことですが、そこでの合意点は何かというと、では、税の投入によって保険料の引き上げを抑制して、診療報酬や薬価の一点単価の引き下げをして、そして新技術や新薬の保険収載を延期しましょう、こういうふうな措置に終わっていかざるを得ない。

 それから、医者と保険者とのところについていえば、同じようなことになりますが、結局そこのところで出てくるのは、フリーアクセスの制限と原則出来高払いの自己負担増というところで不一致点が生まれてくるということになってくるんだろうと思います。

 そうしたことを考えて見ていきますと、一体どういうふうなシステムでこれをやっていくのかというのは、今までのやり方とは違った管理の仕方を考えざるを得ないのではないか。

 これは多くの学者も言っているわけですし、私自身もそう思うわけですが、治療行為に関しては、医療資金の投入額と成果について必ずしも一致しないものはたくさんあります。

 例えば、救急救命医療であったり、それから急性期の感染症の治療であったり、そういうふうな治療ですね、こんなのは医療費用の投入と医療成果は相関します。逆に言えば、こんなものは、出来高払い制度を完全に堅持しても、私は、成果と相関するものなら医療費からいえば効率のいいシステムだろうと思います。

 しかし、高度医療であったり、がんの治療であったり、リハビリ治療であったり、長期にわたる高血圧や循環器や精神病患者の入院治療なんかについて見れば、これはある一定までは医療費用の投入に非常に相関して成果は伸びていきます。しかし、ある一定以上になると、ちょうど平方根のあれみたいな感じで頭打ちになって、医療成果と相関しない。だから、こういうふうなものは出来高と包括化というものを疾病別に分けていく。

 あるいは、風邪だとか、ノロウイルスだとかなんとかが出ましたけれども、ああいうふうなものは恐らく医療費の投入と治療の成果とは全く関係しない。恐らく、今最近では抗ウイルス剤がいろいろ出ていますけれども、抗ウイルス剤を飲ませて、一日当たりの医療費を、五千円ぐらいかかる薬を飲ますのも、アスピリンを飲ますのも、実際上関係ない。だから、逆に言えば、人頭払いみたいな制度であったとしても、余り変わらないんだろう。

 そういうふうな内容に立ち至った議論ができない限り、これからは有効な医療費用の管理ができないんだろう。これが果たして中医協の中でできるのか。あるいは、厚生労働省がそんなもので、いろいろなエビデンスに基づいてつくりますというけれども、つくったものが保険者からもあるいは医療担当側からも信用されるのか。こういうふうなものまで含めたそういう制度をどこで手をつけるのかという議論をしないと、私は、医療費の伸びというものは有効に管理できないんだろうと。

 何かの原則で、包括か出来高かみたいなもの、それを急性期病院か慢性期病院かというふうな形だけでやれるのかどうか。かつて厚生労働省が言っておられた、一般病院は全部DPCにする、慢性期は全部RUGにする、これもこれまでになかった一つの考え方です。どちらがいいかというのは私どももまだ十分議論しないといけないと思っておりますが、しかし、少なくともこういうふうなものがどこかで、中医協という現在の枠を超えたところで議論できる仕組みをつくらないと、私は効率的な医療費の管理はできないんだろうと思いますが、その点についてどうお考えか、大臣の御意見をお伺いしたいと思います。

西副大臣 済みません、先にちょっと一言申し上げさせていただきます。

 先生の長年の経験に基づいた御見識、わかりやすく御説明をいただきました。

 現行制度におきましては、患者がどの保険者に属しているかにより診療にかかる費用が異なったり、患者や医療機関等に混乱が生じるという弊害、それから、各保険者が全国すべての医療機関と契約を結ぶことが事実上不可能であるということから、保険者にかわって国が一括して医療機関等を指定しているということは御存じのとおりでございます。このために、診療報酬につきましても、厚生労働大臣が全国共通の点数を決めている、こういう仕組みになっております。

 先ほど先生がおっしゃられた、保険者のある意味での努力というものが報われるシステムをつくるべきじゃないかというお話だと思いますが、このことにつきましては、加入する保険者ごとに診療報酬が異なってくるという混乱があるということ、それから、先ほど申し上げましたように、それぞれの契約関係が非常に複雑になるということを踏まえまして、現時点ではなかなかそういう方式は難しいのではないかというふうに考えております。

 なお、DPCにつきましては、初めに平成十五年から大学病院を中心として開始をし、それから、昨年の四月から一部の民間病院についての試行も行ってきたところでございます。今後、DPCの導入の影響を検証しつつ、出来高払いとの組み合わせのもとに、疾病の特性及び重症度を反映した包括的な評価の実施に向けて検討を進めてまいりたい、こう思っております。

五島委員 厚生省は、医療保険も国民健康保険は都道府県単位でまとめたいとおっしゃってきておりますし、政管健保も云々とおっしゃっているわけです。

 確かに、今あるような膨大な数の保険者とそれぞれが契約する。それぞれの保険者が保険者機能を発揮しろといっても、せいぜいのところ、重複診療を見るとか、何か過剰診療をチェックするぐらいのことしかできなくて、今言ったようなことができるとは思えません。だけれども、厚生省も、保険者の単位を強化しようとおっしゃって、整理しようとしているわけですね。とすれば、整理した保険者は一体何をするんですかという話なんですよ。

 だから、そういう意味において、今できていないのはわかっているから言っているわけで、では、強化された保険者はそこまでの自由度を持たすんですか。それとも、今までどおり保険者は、この薬は何点ですよ、この検査をすれば何点ですよという、基本的には出来高の発想のもとで診療報酬の改定によって医療費をコントロールしようとするんですか。診療報酬の改定で医療費がコントロールできた歴史は一年たりともないんです。

 そういうことから考えた場合に、今はちょっととおっしゃるのはわかるけれども、なぜ保険者を統合するのかということを含めて、その辺が行き当たりばったりではないですかということで、私はあえて申し上げています。

尾辻国務大臣 まず冒頭に、誤解されるといけないと思いまして、改めて申し上げたいと思いますけれども、経済財政諮問会議がGDPの伸びに社会保障費の伸びを抑えるべきだと言っておる、そのことで、私はそれは違うということを絶えず言っておりますということだけは改めて申し上げて、ただ、彼らの計算でいくと医療費が二〇二五年に三十八兆円になるんですがということを申し上げたということは、改めて申し上げておきたいと思います。

 それから、今、御自身がお医者さんであり権威である先生のいろんなお話を伺わせていただきました。改めてそのことについて私が何かを申し上げるということもないわけでございますけれども、本当に、改めて、自社さのときにこうした問題の与党協というチームをつくって、先生にも毎日のように御指導いただいたころを思い出しながら、きょうおっしゃることもお聞きをいたしておりました。その中で、改めて私から申し上げるとするならば、国民皆保険だけは、これは守らなきゃいけないという大前提があると思います。それから、患者の立場を守らなきゃいけないということも、またもう一つの大前提だと思います。

 混合診療についてもお触れになりました。もうあえて細かな議論について申し上げるつもりもありません。混合診療の議論の中で、議事録はオープンになっていますから、私がどういう発言をしたかというのはオープンにされておりますので、ごらんいただければおわかりいただけるものでございます。

 そうした中で、あのころ、まさに与党協といったころに随分議論したことの一つが、おっしゃった包括払いでございました。そして、その包括払いも、疾病ごとの包括払いもあるし、先生途中で人頭払いとおっしゃいましたけれども、あれはイギリス型だと思いますけれども、イギリス型のまさに人頭払いというような包括払いもあるし、そうしたことまで踏み込んで考えないと、今後の日本の医療費というのはいろんな課題を持っているという議論をしたことはそのとおりでございますから、改めて、私たちも恐れずにいろんな議論をしなきゃいかぬというふうに思います。

 それから、あのころに一つ私どもが言いましたのは、保険者機能の強化ということも盛んに言いました。その保険者機能の強化ということから今後の国民健康保険だとか政管健保をどう考えるかという視点が大変大事なんだなと改めて思いながら、先生のお話を伺っていたということを申し上げたいと存じます。

五島委員 きょうは一般質疑ですから、大臣のお考え方を聞くということですので、これ以上申しませんけれども、ことしの夏にかけて医療制度の抜本改革があるんだと思います。そのときには、やはり、日本の医療の、あるいは医療保険制度の行く末が国民だれにも見えるような、そういうものにしていただきたい。そして、それに対する国会で審議が始まったときにおいても、それがどういうふうなプロセスでどうなっていくのかと見えるような議論をしていきたいものだということを申し上げておきたいと思います。

 大臣、どうぞ。

 それでは、続けて、副大臣に質問をさせていただきます。

 先ほど、実は城島議員の質問に対して、大臣は、少しやわらかく言うたものの、約束はされなかったんですが。衛藤副大臣、育児休業を与えて、そして、一年間とれますよ、そやけど給与保障はしませんよというふうなことをして、育児休業とれると思いますか。

衛藤副大臣 大臣がいないから、自由にやらせていただきます。

 ただ、お互いに、これは少子化の議論を始めたときに、何とか育児休業制度を生かして、そして手当を出そうじゃないかと。当初二五パーからスタートし、そしてやっと四〇パーになり、その制度を使ったのが雇用保険でございましたから、やはりそこにどうしても制約があるということでございまして、そういう意味では、部分的に穴があくところは出るということについては非常に残念でありますけれども、これはもう、とにかく将来に対する検討課題だ。

 また、四〇%以上のものを出すということは、実は雇用保険ではやはり無理でしょう、多分。今のところでも、普通の失業保険でもこれだけのパーセンテージで、失業保険でも今ほぼ同じぐらいの率になっているわけでありますから。そういう意味では、少子化対策を考える上で、雇用保険を利用するプラスアルファのところを全体的にやはり議論をして、何とかつくり上げていく必要があるというぐあいに思っているところであります。

五島委員 確かに、今中小企業も非常に経営が厳しい、だから、こういうことになると経営側からは非常に抵抗が強い、それはわかるんです。だけれども、制度としてそうした以上は、それが有効でない限りは、逆に国民からいえば政治に対する不信になるわけですよ。もしこれが、本来なら雇用保険で払うのが法の建前、だけれども、それが今の経済状況を反映してどうしても無理だということであれば、そこを穴埋めしてでも何とか措置をする。あなたならできる。あなた、それをやったら、次、大臣になれるんやから、ぜひ頑張ってもらいたい。そこのところを、私は衛藤副大臣を信用しておりますので、ぜひ四月までに実施していただきたいと思います。

 あわせて、労働関係の問題について少しお話をさせていただきたいと思います。

 出生率については幾つかのシミュレーションがあります。昨年も出生率の予測が食い違ったということで大騒動になったわけですが、恐らく、今年度はもとへ戻るなんというようなことはあり得ないんだろうと思います。

 基本的に、日本の出生率を見てみますと、東京の出生率を七、八年かけて追いかけていっているのがずっと一貫した傾向。渋谷の〇・九とか〇・七とかいう数字になるとは思いませんが、日本全体の出生率が一・一一を割って一・〇ぐらいにまでなる可能性は十分考えて、出生率が一・〇になったとしても、やはりそのほかの制度は維持できる、その方策を考えるということは必要なので、そこまで考えれば、給付率を四四%ぐらいまで戻さなければいかぬ、そうなれば大ごとやから考えるのも嫌だといって、頭を抱えて逃げてもしようがないんです。今の厚生労働省を見ていたら、まさに、そこまで考えるのは怖いから、頭を抱えて逃げているとしか思いようがない。それじゃ、逆にその姿は国民の不信が上がるんだと。

 では、どうするのか。保険料の保険料率を引き上げる、そういう単純なあり方だけじゃなしに、もっとやはり総合的に考えなければしようがないんだろう。それは、私は、やはり雇用の問題なんだろうというふうに思っています。

 例えば、今の統計では、十五歳から六十歳未満を生産労働年齢とした数値がいまだにひとり歩きしていますね。生産労働年齢が六十歳なんですかね。今回、介護保険が出てきますと、私は老人ですらなくなって、ここにおられる数人の人を除く人たちが、衛藤さんも含めてが老人で、私はスーパー老人になるそうなんですが、すなわち、老人保健法の対象じゃなくなるわけですよ。老人保健法を卒業するという、とんでもないことになるわけです。

 私は、そこのところをどう考えるのか。六十五歳まで現役で働いてもらう。働いてもらうというのじゃなくて、やはり働くことが当たり前の社会をどうつくるのか、これだろうと思います。もっと明確に言えば、六十五歳までの就労率をせめて七五%以上に上げてしまう。そのことができれば、すなわち、この世代というのは、現在、保険の給付者でもないけれども支え側でもない、その人たちに支え側に回ってもらうことによって、少子化による一時的な落ち込みというのはかなり支えられる。

 年金というのは、基本的に支える側の人口と支えられる側の人口の比率ですから、そこの支える側の人口をふやしていかないとしようがないわけで、それは、私はこの三月五日で六十六になるんですよ。幸いにして今の六十五歳というのは、少なくても、私が大学に入ったのが昭和三十三年です。昭和三十三年の六十五歳の大学の教授というのは、もうぼろぼろだったですよ、正直言って。やはり健康年齢が全然違ってきている。そこのところをやはり認識する必要があると思うんですよ。平均寿命が延びただけではなくて、健康年齢もふえているのです。それに見合った就労政策がとられていないのです。ここのところは、言って、来年から解決する問題ではないけれども、やはり六十五歳までは、病気とかなんとかでない限り、働ける限り働いてもらう、それが可能な社会をどうつくるかを検討せぬ限りは、少子化の問題を後追いしてもしようがないのだろうと思うわけですが、まず、そこの点についてお伺いします。

衛藤副大臣 委員仰せのとおりだと思います。年金問題にしろ、高齢者の就労対策を強化すべきだということでずっと取り組んで……(五島委員「高齢者と言うなよ」と呼ぶ)高齢者じゃない、何と言えばいいのですかね。まずは、まさによく言われておりますけれども、現在の年齢は昔に比べるとやはり七掛けではないのか、これは、健康年齢がまさにそのとおりではないかと思っております。それだけ健康年齢が拡大してきたということは極めて喜ばしいことであったと思いますけれども、同時に、寿命が長くなったということによって、年金会計が大変になってきた。社会保障制度が大変になってきた。それは、支える側の人をできるだけ多く、支えられる人を少なくというのが基本だと思います。

 そういう意味で、就労対策というのは打たなければいけないということで、当初から実はこれは、ゴールドプランや新ゴールドプランを一緒につくらせていただきましたけれども、あるいはエンゼルプランをつくらせていただいたときからの、そしてそのときにちょうど第一次の年金の改正もやらせていただきましたけれども、やってきたことでございまして、もうそのとおりだと思っております。

 そういう意味では、日本の雇用の政策は終身雇用でずっと、給与が年をとればとるだけ上がっていくということについては、やはり働き方の多様という中で、雇用主の方にもそういう大きな負担をかけないでという形で、いろいろな改革が進んできたということについては、長期雇用という形で徐々に基盤ができ上がってきたというぐあいに思っているところでございます。

 そういう意味で、まずは私ども、六十五歳までは働ける、年金の方も二〇二五年までかけて徐々に支給開始年齢を引き上げていくということですから、少なくともそこまで、一刻も早く実現をしてまいりたい。まだ、実質的な雇用はどれぐらいまでかというと、六十三歳から四歳ぐらいに今なっているところでございますけれども、全体的に六十五歳までどう安定していけるかということについて、一刻も早く図っていかなければいけないというように思っております。

 そういう中で、定年を延長するか、それとも、定年を決めないで、元気な間ずっと働いてもらうということにするのか、あるいは継続雇用制度というものを導入するかということになっておるわけでございまして、厚生労働省といたしましても、この三点、とりわけ継続雇用制度導入につきましては、今回、実施義務についてもこの三点についてしたところでございますので、これを何とか、労使協調の上でちゃんと図っていきたいというぐあいに思っているところでございます。

五島委員 昨年、高齢者雇用の法律が通ったわけですね。ああいう法律が通っても、それを実行させるためには、やはり具体的に数値目標というものを掲げて努力していかないといけない。少なくても向こう五年間ぐらいの間に、六十五歳までの雇用が七五%ぐらい達成するような数値目標を厚労省みずからが課して、頑張るぐらいの構えをぜひとっていただきたいと思います。

 時間もあと六分ほどしかありませんので、もう一つだけお聞きしておきます。

 一つは、先ほども女性の労働の問題が出ておりました。少子高齢化であるにもかかわらず、男女とも未婚者がふえ、そして結婚されている方の中でも子供の数が減っているにもかかわらず、女性の労働力率のM型というのは余り変わっていない。どうも女性の労働力率が、放物線にならずにM型になってきているというのは、もちろん子育ての問題は大きい問題です。妊娠、出産、子育てということが一つの大きな弊害になっていることは言うまでもありません。それについてはこれまでも議論してまいりました。もう一つ、やはり日本の社会というのは実は、実態はそうでもないのだけれども、伝統的にやはり男性社会として、女性の労働力をM型にする構造を持っているのではないかと思っています。

 例えば、結婚をされた場合に、夫婦が、男女が働いておられる場合に、夫になる方が仕事をやめて女性の職場の付近に転職したという例は余り聞かない。だけれども、その逆はよくあるのですね。私は医者ですが、女医さんを見ていますと、男の医者よりもよっぽど優秀な女医さんが、結婚するとそこをやめて、だんなの勤めておられるところの付近へ行ってしまうというのは普通にあります。すなわち、結婚などによって、あるいは夫の転勤によって、女性が退職をする、そしてそう容易に仕事が見つからない、キャリア性が維持できないということで、そこで仕事から離れるというケースというのは無視できない数があるのだろうと思います。

 そういう意味では、日本の社会の中の男性社会構造というものをもっと変えていく必要があるのだろう。そうでない限り、非常に優秀な、特に六十歳を超えた女性なんて、男よりよっぽど元気があると私は思うのですね。あの人たちにもっと働いてもらってもいいと思うのだけれども。そういう方々が本当に労働現場に入って、やってもらうということをしていく上においても、もう少しこれまで議論された別の要因についてもきちんと検討する必要はあるんじゃないかと思っているわけですが、副大臣、どうですか。

衛藤副大臣 M字型の解消も、確かに、潜在的に日本社会における男性中心的なところにあるんじゃないかということでありますが、非常に難しい答えになりますけれども、とにかくそういう意味では、まずは、育児休業制度を充実するとかあるいは勤務時間を短縮するとかいう形で、そのカーブを少なくできるように対応できる社会をつくっていきたいということ。それから、やはりどちらかというと転勤とかの場合に女性の方がついていく。そこで、お医者さんのように、その場で技術で仕事を持てる方はいいでしょうけれども、そうでない女性は大変だということでございまして、そのとおりだと思います。

 ただ、そういう形で、労使の話し合いの中で、配慮をするということについて、ぜひしていただきたいということを言うぐらいしか今ないのが実情でございまして、企業の中でそれを義務規定として盛り込むかということになるとこれは無理があるし、さりとて、もうちょっと配慮してくださいよということについてはやはり言いたいというのが正直な気持ちでございまして、そういう配慮をやってもらえるように、企業の方にも理解いただけるように、やはり啓蒙していかなきゃいかぬというように思っているところであります。

五島委員 その点についてももっと議論したいところですが、時間が参りましたので、これで終わります。

鴨下委員長 午後五時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後四時休憩

     ――――◇―――――

    午後五時三分開議

鴨下委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。高橋千鶴子君。

高橋委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 きょうは二つテーマがあるんですけれども、初めに、BSE問題についてお伺いしたいと思います。

 二月十七日の予算委員会で、食品安全委員長と尾辻厚労大臣に、日本の全頭検査見直し問題について質問させていただきました。その際、委員長は、意見集約がぼつぼつできるころではないか、たとえ集約できなかった場合には少数の意見も付記すると答弁をされました。

 実は、あした二十四日、食品安全委員会が開かれます。ここで決めてしまうおつもりなのか、非常に強い危惧を持ちました。

 あえて、もう一度委員長に確認をさせていただきたいと思います。

 食品安全委員会は、昨年十月に厚労省と農水省から、我が国におけるBSE対策にかかわる食品健康影響調査について諮問を受け、十二月にプリオン専門調査会の吉川座長案なるものが提案されました。それに対し、専門委員から意見も多数出され、東大名誉教授の山内先生より新たな骨格の案、スケルトンが出され、あすはこれに基づき討論されることと思っております。

 改めてこの案を見ますと、そもそも報告書作成に当たっては、いわば骨格をどうするのか、そこから議論しようと述べておられます。言ってみれば、報告書としては振り出しに戻ったと同じだと思います。一つ一つの意見をしっかり討議してもらいたいという意見が専門委員の中からも出ていると聞いております。

 委員長、あすで結論を出してしまうというようなゴールを区切るべきではないし、まだその段階ではないと思いますが、いかがでしょうか。

寺田参考人 先生がおっしゃいましたように、私ども、十月十五日に厚生労働省あるいは農林水産省から我が国のBSE対策に対する諮問を受けまして、五回にわたりまして専門委員会で討議をしてまいりました。

 これもただいまおっしゃいましたように、あした午後、第二十回のプリオン専門調査会を開きまして、引き続き、この諮問に対する答申を出すべく議論をするわけでございますが、これは、言われましたとおり、前回合意されました「全体の構成」に基づきまして、あらかじめ各専門委員からいろいろな御意見をいただきまして、それをもとにあす議論をしていく予定でございます。

 いずれにしましても、取りまとめの時期につきましては予断を全く持っているわけではございませんで、それはお答えすることはできませんし、あす決めるとかそういう話ではございません。

 食品安全委員会といたしましては、引き続き、独立性、透明性、それから公正に、しかも科学性を持って議論を深めていきたいと考えております。

 以上でございます。よろしくお願いします。

高橋委員 ありがとうございます。

 予断を持って決めるものではないとおっしゃっていただきましたので、その先については私がこうしろと言うことではありませんので、十分な議論がされて、まとめが決まっているということではないということで、ぜひその十分な議論に御期待をしたいと思っております。

 それで、今度は大臣に伺いたいんですけれども、先日の予算委員会で、厚労省から、国内評価の見直し措置について結果が出た後、米国の輸入再開の問題について改めて諮問、つまりリスク評価をするという答弁でありました。この点をもう少し整理をしたいと思うんです。

 つまり、今やっているのは、国内基準の見直しについての論議でございます。もしこれが仮に見直しがされたとして、その後に来るのは、米国産牛肉輸入によるBSE発生に対するリスク評価であるはずです。飼料規制やSRMの除去など、国内と同等の安全対策がきちんと担保されているのかをまず評価されると思います。その上で、仮に、同等であると評価がされたとしても、月齢判別の方法がきちんと確立できているのか、その点については別個にリスク評価をする必要があると思うんです。つまり二段階ではないのか。

 この点を確認したいと思います。

尾辻国務大臣 今お話しになりましたように、国内のことと米国産牛肉の輸入の再開条件というのは、これはまた別な話でございます。

 そこで、米国産牛肉の輸入再開ということになりますと、その条件については、改めて食品安全委員会に諮問して、科学的な審議結果に基づき私どもも対応をする、こういうことになるわけであります。

高橋委員 ですから、もう少し整理をしたいというのはそこなんです。つまり、国内と米国は別な話、それはもう当然でございます。ただ、米国の話のときに、国内と同等の安全対策が保たれているかというリスク評価と、それを確認した上で、月齢判別が可能なのかということを評価する必要があると言っているんです。

 つまり、月齢判別については、確かに専門家の検討会が評価をすると言いました。アメリカの実験に基づくデータに対してA40という格付であれば、それは二十カ月未満だということを評価したんです。だけれども、A40の枝肉からばらされてくる部分肉については、A40という格付がされて、それもみんな部分肉が二十カ月未満であるかということについては、だれもそれを実証した人はいないんです。だから、その点についても食品安全委員会で別個に評価をしなければならないということです。いかがですか。

尾辻国務大臣 別個にと言われることがよく理解できないところもあるんですが、いずれにいたしましても、私どもはその安全について食品安全委員会に諮問をするわけでございますから、それはすべて食品安全委員会が御判断いただけるものというふうに思っております。

 例えば、御指摘の枝肉の成熟度による月齢の判別方法につきまして言わせていただきますと、牛の月齢の確認方法の一つでありますし、我が国の専門家による検討結果において、米国産牛肉のリスクの程度を考慮して採用するか否かを判断するべきとされたことでございますから、申し上げておりますように、ほかの輸入再開条件と一括して食品安全委員会に諮問する、そしてその答えが出てくる、それが一番適切だと私どもは考えておるところでございます。

高橋委員 最初に、ちょっと意味がなかなかというお話でしたけれども、きょう実はこれに時間をかけている余裕がありませんので、今お話ししたことをリスク評価の中に、同等かということと、月齢がしっかり判別できるのかということも評価をするんだということを確認させていただきたいと思います。次に進みたいので、そこは確認させていただきます。その点でどうしても異議があれば、後でおっしゃってください。

 きょうは、国民健康保険の問題で質問をしたいと思っております。

 三枚組の資料を配付させていただきました。国保加入世帯が全国二千四百四十三万余のうち、昨年六月の調べで滞納世帯数は四百六十万を超え、二割に迫っております。私は、国保加入世帯そのものが全体として所得が低いこと、また、昨今の失業や雇用の不安定化に伴って健康保険から国保へのシフトがふえていることなど、国民の命と暮らしにかかわる深刻な状況がこの国保問題の中に集中してあらわれていると思っております。

 そこで、まず大臣と認識を一致させておきたいと思いますが、国保加入世帯の増加や滞納世帯の増加など、その実態や要因をどう見ているのか、大臣の認識を伺います。

尾辻国務大臣 おっしゃいますように、国保の加入者、被保険者、この皆さんが極めて多様化しておる、そういうことはそのとおりでございます。

 したがいまして、私どもは、そうした皆さんの収納率、これがまた落ちていることも事実でございますから、いろいろな方法で、例えば多段階免除方式というものをつくったりしながら、国保の収納率を上げるということで私どもは努力をいたしておるところでございます。

高橋委員 何といいましょうか、収納率を上げることに努力をされていると。

 その前段として、それだけ、私ちょっと紹介しますけれども、社会保険からの離脱が一年間で五百八万二千人もいる。年々増加をして、被保険者数の一〇%を超えている状態なんですよね。それだけ失業だとかあるいは雇用の不安定化がふえている。深刻な層が国保に集中しているということをどう見るかということを伺ったんです。その一つのあらわれとして、収納率という問題があると思うんです。

 その上で、そういう実態を反映して、やはり大変な実態を、命と暮らしをしっかり守る上で、いわゆる皆保険制度、これが維持されていなければならない、これが前提になければならないというふうに私は思っているんですけれども、大臣、その点で認識が一致できるかどうか伺いたいと思います。

尾辻国務大臣 被保険者全体の相互扶助で成り立つ国民健康保険におきましては、保険料の収納確保は重要な課題でありまして、被保険者間の公平を確保するために、平成十三年四月より、保険料を納期限から一年以上滞納している場合には、災害等の特別な事情があると認められる場合を除き、国保の保険者である市町村は、世帯主に対し、被保険者証の返還を求め、資格証明書を交付することとしたところでございます。

 その際に、市町村におきましては、十分な納付相談、納付指導等に努めるとともに、被保険者が保険料を完納したとき、または滞納額の著しい減少、災害等の特別な事情があると認められる場合には被保険者証を交付するといった配慮を行っておるところでございます。

高橋委員 済みません、全然かみ合っていなくて。

 聞いたことは、この深刻な情勢を受けて、皆保険制度がやはりしっかり維持されることが必要だと思いますが、それでよろしいですかと伺ったんです。

尾辻国務大臣 先生がおっしゃりたいと思うことをいろいろ考えながらお答えしたつもりでありまして、少しそういう意味では先走った答えをしたのかもしれませんが。

 まず、事態が極めて、今の状況、このまま放置できない状況である、我々も何かを考えなきゃいけないということの認識であれば、私どももそのように考えております。

高橋委員 そうなんです、大臣、先を多分いろいろお考えになっていらっしゃるんだと思うんですけれども。

 それでちょっと具体的に伺いますけれども、十三年度から、今おっしゃいましたように国保法の改正で、一年以上の滞納者には資格証明書の義務づけになったわけですよね。私は、このことによって安心して病院にかかることができない状況が広がっている、このように思っております。

 きょうつけた資料の中に、二枚目、資格証明書の交付世帯数並びに短期被保険者証の交付世帯数という一覧を、厚生労働省からいただいた資料をつけておきましたけれども、資格証明書が六・四七%。これは、医療費十割負担、窓口で一たん払わなければならないわけですので、そもそもお金がなくて払えない人が医者代十割を払えるわけがない、したがって医者にかかれないという状態がふえているわけなんですね。

 短期保険証は、期限を区切ってやっている。その期限が、三カ月が大体標準かなと思うんですけれども、一カ月とかそういう世帯もふえているんですね。それが、滞納世帯のうち二二%も、ふえている、なっている。

 このことを厚労省は、当時、資格証や短期保険証の発行は滞納対策として効果あるものだと述べていたわけですけれども、効果を上げたと考えているのかどうか、伺います。

水田政府参考人 先ほど大臣申し上げましたように、国民健康保険制度は相互扶助で成り立っておりますので、被保険者間の公平を確保するために収納率の対策を強化するということが必要でございます。その意味で、さまざま、今御指摘のありました資格証明書でありますとか短期被保険者証を交付することによって、保険料の納付というものを強く求めているわけでございます。

 一方で、収納率の向上ということは、やはり調整交付金の交付にもかかわってくることでございますので、市町村としても懸命に取り組んでいただける、このように考えております。

高橋委員 今のは、要するに、調整交付金を生かして効果があったという意味ですか。

水田政府参考人 さようでございます。

高橋委員 今のはちょっとゆゆしき答弁だと思うんですね。収納率を向上させるためにやってきたと言っておきながら、今、私が出している資料を見てもわかるように、全体としては改善はされていないわけですよね。だけれども効果が上がったということは、何を意味しているのかということなんですよね。

 つまり、資格証明書をやって、言ってみれば国保証の取り上げですよ。そういうことが起きて、医者になかなかかかれなくなって医療費が少なくなったということを言っているのか。これをもって効果が上がったと言うことは非常に問題だ。

 私は、続けて言いたいと思いますが、今、窓口段階でひどい人権侵害が起こっております。今までは、確かに、例えば資格証明書を出すことによって納付相談をやるんだという話をされてきましたけれども、実際には、一方的に資格証明書や短期保険証が送られてくる、そういう状態になっているわけですね。

 私は、地元の青森県の生活と健康を守る会というところが作成した実態実例集があるんですけれども、その中の一つを紹介したいと思うんです。一昨年から資格証明書になったという女性です。夫は自営業、子供が四人います。一番下の子は小三で風邪を引いているのですが、病院に行くのを我慢させています。市役所の窓口に相談に行きましたが、毎月一万や五千円とか払ってもだめで、二十万、三十万といった大きいお金を納めないと普通の保険証は無理だよと言われました。

 これは、この人は納付相談に行っているわけです。そして、納付相談によって決めた額を少しずつ納めているわけです。だけれども、二年間滞納していて、納めているけれどもまだ一年分は残っている。機械的に分けて、保険証は資格証明書でしかだめだと言われている。

 こういう機械的な対応、頑張って納めている人に対してまで機械的に国保証の取り上げはしないということを確認したいんですけれども、いかがですか。

水田政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま先生お示しになりました実態というものを、ちょっと私ども、今、数時間前に大臣の方に御提示になりましたもので、中身についてはよく承知してございませんし、また、個別事例でございますので、やはりよく事情を知ってからでないとお答えは難しいかと思います。

高橋委員 個別の事例をよく考えて、機械的ではないということを私は言っていただきたいんです。

 法改正された当初、この取り扱いについて「ミニQ&A」が出ましたね。その中にこういう文章があります。「特別の事情の有無について、各保険者が直ちに判断がつかず、更に調査を要するような場合において、機械的に被保険者証の返還を求め、資格証明書の交付を行うことは適切ではないことは言うまでもない。」機械的に取り上げてはならないということを言っていると思うんですね。この見解で間違いありませんか。

尾辻国務大臣 今お触れになっておる件でございますけれども、保険料を納期限から一年間経過するまでの間に納付しない場合には、世帯主に対し被保険者証の返還を求め、資格証明書を交付することとされておる、これはこのとおりでございます。

 ただし、納期限から一年間滞納していることをもって機械的に資格証明書を交付するのではなく、保険者が事前に十分な納付相談、納付指導を行うとともに、個々の事例に応じ、事業の休廃止等政令で定める特別な事情があるかどうかについて判断する仕組みとなっており、保険者において適切な運用が行われるように指導しておるところでございます。

 申し上げておりますのは、機械的に資格証明書を交付するものではない、このことを申し上げたところであります。

高橋委員 ありがとうございます。

 機械的に資格証明書を交付するものではない、大臣がこうおっしゃいましたので、今、私、たくさん本当は紹介したいんですけれども、この点が現場では起こっているということをよく見ていただいて、そうではないことを徹底していただきたいと思っております。

 その上で、例えばこういう話があります。納付相談に応じて、約束の額をきちんと払っているのに、あと七万五千円払わなければ資格証明書だと言われた男性。二十五万円全額払え、あなたの言うことは信用できないと言われた女性が、サラ金から借りても払えということですかと聞いたら、あなたに任せると言われました。納付相談どころか、人権無視の取り立て、こうしたことがやられています。

 少なくとも人権無視の取り立てはしない、この点についてもきちんと言っていただけますか。

水田政府参考人 先ほど大臣がお答えいたしましたように、事前に十分な納付相談、納付指導を行うということを求めておりますので、そのような指導をいたしたいと思います。

高橋委員 よろしくお願いしたいと思います。

 これまで述べてきたように、払いたくても払えない人たちがたくさんいます。ただ、その中でも、精いっぱい払おうと努力している人たちもたくさんいます。滞納者がみんな悪質な滞納者であるかのような対応はきっぱりやめて、むしろ、実情に合わせて、必要な医療が受けられるように、資格証や短期保険証のような発行はやめるべきだ、このことは、私、申し述べておきたいと思います。

 そこで、こうした中、三位一体関連で国保制度に、都道府県調整交付金の導入や保険基盤安定制度の都道府県負担割合の変更などが提案されております。

 もう皆さんよく見た資料だと思いますが、一応、構図だけ、一致させる上でつけておきました。確認をいたしますけれども、資料三にあるように、来年度は過渡期ですけれども、十八年度から六千八百五十億円が税源移譲されることになります。この表にあるように、国保給付費における公費の総額、これは変化がないですね。確認させてください。

水田政府参考人 都道府県によります財政調整交付金の七%、来年度は五%でございますけれども、これは、従来国が行っておりました定率国庫負担並びに国の財政調整交付金のところから出しているものでございますので、トータルは変化ございません。

高橋委員 トータルは変化がないということがまず確認されました。

 そうすると、トータルは変化がないわけですから、改革を理由にして保険料が引き上げられるとか、そういうことは基本的にないということが言えると思いますが、その点、いかがでしょうか。

水田政府参考人 国保給付費の五〇%について公費で見るということは変わらないわけでありますので、その点について言えば、保険料については中立の措置だと考えております。

高橋委員 はい、中立だということで。

 それで、今回新たにつくられる七%の都道府県調整交付金によって、都道府県の発言力が強まることになるかと思います。つまりは、保険料や医療費、収納率で市町村の格差を解消するための調整として機能するのではないか。県が、医療費適正化を理由に、市町村の保険料減免、健康事業など、市町村が独自にやっている施策を制限するようなことはしないということが言えるだろうか。この点、いかがですか。

水田政府参考人 基本的に、県の調整交付金は、どのように県が交付するかということにつきましては、これは条例でお決めになることでございます。したがいまして、基本的に、自主的、主体的にお決めになることということになるわけであります。

 ただ、中身として、やはり専門的、技術的なことがありますので、私どもとしては、関係省庁と地方団体の間で検討する場を設け、そこでの議論を踏まえて、いわば参考資料としてのガイドラインというものを作成したい、このように考えております。

高橋委員 そのガイドラインの中身がまだ示されていないので、非常に危惧をしているわけなんです。都道府県でも、皆さん大変な財政の中であります。同時に、国からも医療費の適正化や収納率改善を迫られております。当然、調整が厳しくなるのは予想される事態であります。

 さっき、大臣も真っ先に収納率の改善のお話をされましたけれども、今、二月十五日付で、国保収納率確保緊急プランをつくりましょうという通知が出されております。その中身を見ると、収納嘱託員の採用または増員を図る、滞納処分の実施、一年以上の長期滞納者は財産調査を行うこと、低所得者の被保険者においても財産調査によって多額の預貯金が発見される場合もあるなどなど、夜討ち朝駆けの取り立てはもちろん、あの手この手の対策例が例示をされています。同時に、収納率がアップした自治体には調整交付金減額分の半分を交付するというあめまで用意されております。

 厚労省の資料によれば、減額されている自治体は九百九十九、全体の三割を超えます。総額は、十五年度で二百八十四億円。例えば、大阪市の収納率は八三・九%ですが、〇・〇五%アップできれば十一億円交付しますよ、札幌は八割なので、これが〇・一%アップすると六億円ですよと、こういうふうに具体的な調整交付金の額を示して収納率改善を迫るというふうなことが、今、国が号令をかけているような状態なわけです。

 そうすると、この通達で、逆にまた、機械的にはしないとは言うけれども、改善のために相当頑張らなくちゃいけないということが起きて、またそれが自治体の窓口対応に影響してくるということがないのかということを非常に心配するわけです。

 今回の改革でこれに一層拍車がかかるということは、断じて許されないと思います。そういう中で、国保税据え置き、老人医療費助成など、独自に頑張っている自治体に対して調整交付金を使っての制裁はするべきではないと思いますが、この点、いかがですか。

尾辻国務大臣 調整交付金を使って制裁という表現を使われたでしょうか。私どもがそんなことを考えておるところではございません。まさに、いろいろな事情が市町村によってあるわけでありますから、そこのところを調整するための、まさに交付金でございますので、そのために使われるものでございます。

高橋委員 時間が来たので、あとは要望にしますけれども、要するに、大臣は非常にいい意味でとっていらっしゃるんでしょうけれども、実際には、自治体が頑張っていることに対して、減額をするという形で、実質、制裁がやられてきたんです。だけれども、頑張っていることによって逆に医療費全体を安く上げて、みんなが健康という取り組みをしている自治体だってあるんだ、そこをしっかり見ていただいて、制裁に走るんじゃない、あるいは機械的な対応を迫るような収納対策に走るんじゃないということが言いたかったわけなんです。

 日本は健康寿命ランキングで世界のトップだと言われておりますけれども、その決め手はやはり、皆保険制度であり、現物給付であり、フリーアクセスだ、この三つだということを日本医師会が言っております。このことが今危うくなっているんです。このことをしっかり守っていただきたいということを強く要望して、終わりたいと思います。ありがとうございました。

鴨下委員長 次に、阿部知子君。

阿部委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。

 本日は、与野党のこの委員会の理事並びに委員長の御高配によりまして、私ども社民党に三十分をちょうだいいたしまして、実は、国会の中でいろいろな質疑をやっておりますが、この三十分というまとまったお時間をちょうだいできるのは破格のことでございますので、まずもって、当委員会の公平な運営に厚く御礼を申し上げます。

 そして、きょうは、ちょっとまとまった時間もございますので、せんだっての大臣の所信表明演説と、そして目下国民的課題である社会保障政策、なかんずく医療制度改革ということについて、骨格的な論議をできれば展開させていただければと思いますので、よろしくお願い申し上げます。

 まず、それに先立ちまして、ちょっと喫緊のことで一つだけ取り上げさせていただきます。いわゆる臓器移植問題でございます。

 一九九七年の十月に現在の臓器移植法ができ上がりましてから、七年以上が経過いたしました。一週間ほど前、三十四例目の脳死からの臓器提供例があったということが新聞で報じられておりましたが、大臣の率直な御感想で構いません、七年間で三十四例というこの数については、どのような印象、お考えをお持ちでしょうか。

尾辻国務大臣 臓器移植法が施行されてから、現在で七年余りになるわけでございますが、お話しのように、三十三例の脳死下での臓器提供が行われており、これにより百二十七人の方に移植が行われたところでございます。

 この移植件数をどのように評価するかについては、いろいろ見方もあるでしょうし、また評価がそれぞれあるんでしょうけれども、お尋ねでありますからお答えいたしますと、諸外国の状況と比べると少ない、こういうふうに考えます。

阿部委員 私は、件数の方は、法にのっとって、法の精神がきっちりと尊重されることと、法の取り決めがきちんと守られていくということによって判断されるのだと思います。

 脳死臓器移植という、極めて微妙な、一方の人間の死、そしてそこから臓器をいただいて生存なさる方の生という明暗を分ける技術でございますから、数の寡多はやはり社会の合意のありかにあるように思います。

 そこで、引き続いて伺いますが、実は、この第三十四例目となります症例は、従来であれば、いわゆる臓器提供カードの記載不備として採用されなかった例であるというふうにメディアでは報道されています。これは、移植対策室、健康局長で結構でございますが、どのような事例であったのか、そしてなぜこの間これを採用されたのかについて御答弁をお願いいたします。

田中政府参考人 お答え申し上げます。

 日本臓器移植ネットワークによりますと、三十四例目の脳死判定事例におきます臓器提供意思表示カード、これはこれまでの事例とはちょっと異なりまして、提供したい臓器を選択するところに丸がつけられていなかったということでございます。ただ、カードの番号1、ここには、「私は、脳死の判定に従い、脳死後、移植の為に○で囲んだ臓器を提供します。」という部分なんですが、その番号1に丸がございまして、提供したい臓器の選択肢の「その他」の欄に「すべて」と記入がされていたということでございます。また、署名年月日その他、必要な情報は適切に記入されていたということでございます。

 したがって、この事例におきますカードの記載というのは、臓器移植法が要件としています臓器を提供する意思、それから脳死判定に従う意思、これが十分に表示されている、法的に有効なものであるというふうに考えているところでございます。

阿部委員 従来の判断でははねられていたものが今回採用された背景には、さかのぼって、十月に、たしか厚生労働省の方からお出しになった通達があると思います。

 私は、先ほども申しましたが、一つの法律ができて、その法にのっとって事が運ばれる場合に、厚生省のガイドラインや通達やあるいは省令という形で法の枠が拡大されていくということはやはりあってはならないことと思います。

 ここで一つお伺いしたいですが、その通達の中身は今局長がおっしゃったような事例ですが、実は臓器提供の意思を持ちながら、ドナーカードを持ちながら採用されなかった方は百八名あると聞いております。その中身は記載の不備だけではないと思いますが、提供に至らなかった諸状況について、局長、御存じでしょうか。

田中政府参考人 お答え申し上げます。

 さまざまな事情というのがあると思います。

 今、百八例というのは私どもの把握している数字とちょっと違うんですけれども、百十に関して申し上げますと、例えばカードの番号が丸で囲まれていなくて、臓器を提供する意思それから脳死判定に従う意思が明確でないというふうに判断されたものとか、あるいは提供臓器を丸で囲んでいないことによって、提供したい臓器の種別が明確になっていないというふうにその当時は判断されて、必ずしも移植に至らなかったというふうに理解しているところでございます。

阿部委員 私の手元にありますのは厚生労働省からちょうだいした資料ですから、数値には問題がない。むしろ、局長が御存じないのじゃないかと思いますが、全体で、意思表示カード、シールによる情報の提供は八百二十あり、そのうちにいわゆる臓器提供病院としての資格を持った病院で行われたものが二百四十五、そのカードの発見時とかいろいろなものがございますが、結果的に成立せずというのが百八例ございましたが、実はこの百八例のうちに脳死判定基準を満たさずというものが六十六例ございます。あるいは、心停止直前、蘇生中、生き返ってしまった、こういうのもございます。

 私は、カードの記載の不備も一つの問題ですが、提供に至らなかったということを分析する際に、そこだけを取り上げて、それで通達を出せば、やはりひずみが生じると思います。私のデータは厚生労働省の移植対策室からいただきましたもので、私が勝手に入手したものでもございませんので、次回までにきっちりちょっと御確認をいただきたいと思います。

 引き続いて、大臣にお伺い申し上げます。

 私が案じますのは、やはり立法の趣旨、精神というものは、脳死になった患者さんがきっちりと治療されて、そして本人の意思が瑕疵のないものであり、これは脳死臨調以来の法の骨格でございます。本人意思がきっちりと確認され、きっちりと治療される、治療過程がきっちりと保障されているものであるというふうに厚生労働省としては当然お考えと思いますが、確認のため御答弁をお願いいたします。

尾辻国務大臣 確認をということでございますから、改めて申し上げます。

 臓器提供意思表示カードの取り扱いは、臓器提供に関する本人の真正な意思表示を必要とするという立法趣旨に沿ったものでなければなりません。今回のカードの取り扱いの見直しは、そのような臓器移植法の趣旨を踏まえたものでございます。

 したがいまして、今後ともカードの取り扱いについては法律の立法趣旨を踏まえて適切に対応をしてまいります。

阿部委員 ぜひそのようにお願いいたしたいし、私はもう一点、確実に脳死に至る患者さんが治療を受けることができたかどうかという点も、担当の厚生労働省としては点検していただきたいと思っております。

 私がこのようなことを申しますのは、前回までにも御紹介申し上げたように、人権救済の申し立てが出ていたり、あるいは訴訟をお考え中の家族があったりして、そういう不信が積み重なれば、本来的な提供したいという方の善意も実は担保されないことになってきかねない、これは非常に微妙な医療の一部だと私は思っております。

 そして、重ねてお伺い申し上げます。実は、皆さんの中にどのくらいの方が御存じか、私も調べたことがございませんが、脳死からの臓器提供に当たって、皮膚を切開し、あるいは臓器にメスを入れますと、患者さんの体が動いたり血圧が変動したりいたします。昔は、亡くなっているんだから、動いたり顔がゆがんだりはしないだろうと思っていたのですが、現実に積み重なってまいりますれば、日本の中でも臓器提供の際に患者さんが、ドナーがそうした動きを見せられた。

 そこで、現在では、臓器摘出に至るときには麻酔科の麻酔処置、いわゆる、ドナーに麻酔をかけて、脳死と言われた状態で麻酔をかけて摘出することになっております。

 では、果たしてドナー病院にきっちりと麻酔医が配置されておるか。実は、これは、摘出に至る前の治療においても、脳低温療法やあるいはバルビツールという麻酔薬の高濃度の治療のための療法を行いますにも麻酔医は不可欠です。

 今、厚生省が認めておられる臓器提供病院は必ず麻酔科医の常駐を必須条件としているでしょうか、お教えください。

田中政府参考人 脳死下での臓器提供施設でございますけれども、これは救命医療等の関連分野におきまして高度の医療を行うことができる施設でございます。四つほどカテゴリーがございまして、大学病院、日本救急医学会の指導医指定施設、日本脳神経外科学会の専門医訓練施設、それから最後は救命救急センターということでございまして、そのうち、さらに必要な体制を整えている施設に限って臓器の提供がされているという状況でございます。ですから、これらの施設というのは、当然のことながら手術等に必要な麻酔業務が適切に行われる体制が整っているというふうに考えております。

 なお、平成十六年九月三十日現在、臓器提供施設としての体制を整えているとした施設は二百九十九施設でございまして、現在把握しているところでは、そのうち二百八十八施設において常勤の麻酔科医が勤務しているということを確認しているところでございます。

阿部委員 私はこれは全例であるべきだと思います。なぜなら、例えば、二百九十九のうちのない方の十一個の病院に運ばれた患者さんはどうなるのかということでございます。必ず常駐の麻酔科医を置くということが、治療のプロセスで必要になってまいります。そしてこれは、実は私がこの一週間ほどの間、一生懸命厚生労働省にお願いいたしまして調べていただいた数でございます。

 今、麻酔医は全国的に足りません。その中で、私たちが本当に人権と治療と患者さんの納得とを得ていくためにも、麻酔科医の常勤が必須条件であるというふうに大臣がこれは御判断いただきたいと思いますが、いかがでございましょうか。

尾辻国務大臣 先ほど先生のお話を伺って、ドナーに麻酔をかけるというのは初めて知りました。そして、ああ、やはりそうなのかなと思いました。まずそのことを一つ申し上げます。

 それから、今、麻酔医が非常に不足しているというのはよく言われておる話でありまして、麻酔医をどうやって各病院で確保するか、あるいは麻酔医の方の先生方がどういう形で各病院に行かれるかといういろいろな話も聞かぬわけではございません。

 そうした中で、今のお話でありますけれども、きょう私も初めて聞いた話でございますので、よく皆さんのお話を伺いながら判断させていただきたいと存じます。

阿部委員 臓器提供に際して麻酔が必要なことは、昨今アメリカでも常識になってきております。しかし、私が案じますのは、患者さんというか国民には伝えられていないです。まかり間違えば、麻酔をかけてやらなきゃいけないようなんだったら嫌だな、臓器移植やめようかなと思う方もおられるかもしれません。

 私は、本来的な本人意思の確認とは、すべての情報を国民に伝えた中で選んでいただくことと思いますので、今の大臣の御答弁いただきましたから、実情についてよく把握していただいて、そして何度も申し上げますが、別に臓器を摘出するためだけでなく、脳の蘇生を行いますのに麻酔科医は不可欠です。高度な治療を行おうと思えば思うほど、絶対に必要です。これは、私自身、小児の神経科医としてやってきて、何度麻酔科の先生と連携しながら子供の蘇生を心がけたことか。これは経験からくるところでもあります。

 今、世上では子供からの臓器移植等々も言われておりますが、果たして日本の救急医療は、小児医療は、麻酔科の常駐はと考えますと、私はまず整備すべきはそうした医療提供体制のしっかりとした中身だと思いますので、重ねて大臣にお願い申し上げます。

 引き続いて、社会保障制度改革の方に移らせていただきます。

 先般の質疑で、これは公明党の福島先生がお出しになって、ああ、とてもよくまとまっていると思ったので、きょうはちょっとパクりで使わせていただきますが、三重苦の中の社会保障制度改革とうまいことを言っておられます。財政は悪化、低経済成長だ、少子高齢化、この三つを並べると、経済財政諮問会議のように、だから低成長経済に合わせて少子高齢化も何とかしてくれ、逆に言うと、すごく例は短絡的比喩ですが、うば捨て山、もう御高齢者についてある程度社会が抱えられないからというところに至りかねない。

 しかし、大臣は、先般来のここの質疑の中で、そうした経済の成長と社会保障のレベルを一致させるなんてことは、やはり本末転倒になりかねないから、これはいかがなものかというお考えを披瀝してくださいました。私は、その点はぜひ、人間の命を預かる厚生労働省として、それから、老いも病も、好んで自分が病気になったり老いていったりしようと思う者だけがそうなるんじゃなくて、必然というところもございますので、この三重苦の時代を生き抜くのに、果たしてどういう形が本当に人間的な社会をつくるのかという観点でお考えをいただきたいと思います。

 時間の都合でここはちょっと割愛させていただいて、もう一つ、なかんずくこの社会保障制度の中で一番今御論議が多いのは、医療制度改革であると思います。なぜなら、昨年の盛んだった年金論議が果たして本当の安心を与えたのかというのは、正直言ってみんながううんと思っていると思いますが、あえてそこには触れず、というのは他の委員も触れましたので、私がせんだってあるおばあちゃまとお話しした中身をちょっと紹介させていただきます。

 地方の田舎と言われる部分にお住まいで、年金は三万四千円おもらいです。御自分でお野菜をつくり、お米も少々つくっておられる。だけれども、病気になったら大変だと思う、それから、介護が必要になったら本当にやっていけないと思うと。

 社会保障といろいろ言いますが、年金、医療、介護という中でも、やはり病を得たらという恐怖と、それから、ずっと続く介護になったらという恐怖は一番大きいと私は思います。社会保障の根幹は、安心をいかにメッセージするかということですから、この一番大切な医療ということについて、厚生労働省が最近お出しになっている都道府県別の医療費のこの間の分析を少し使わせていただきながら、お話を進めさせていただこうかと思います。

 皆さんのお手元に、各地方での、皆さんのお住まいの県が、果たして一人当たり老人医療費がお幾らぐらいで、全国ランキングでどこに位置するかという表がございます。各自、御自身の県をごらんになってください。先ほど長勢筆頭には、富山県はちょうど中間くらいだというお話をいたしました。せんだって麻生総務大臣には、断トツ一位は福岡県ですというお話をさせていただきました。

 今、厚生労働省は、医療は今後なるべく各県単位で運営をしてほしいというお考えをお持ちですが、その考えの前提には、医療費の多寡を分析するための手法が私は極めて重要で、目のつけどころというのも重要になってくると思います。

 ここには、ぴんぴんころりの長野県は、そういう言い方は私は好きではないですが、一番老人医療費が少ない長野県が五十九万六千四百八十円。そして、なぜか断トツ一位が福岡県というデータになってございます。

 おのおの、入院医療がどれくらい、外来医療がどのくらい、歯科医療がどのくらい、その他がどれくらいというふうに書かれてございますが、厚生労働省としては、これをお出しになった背景には当然分析もお持ちと思います。この長野県が一番かかっていないということは従来よく言われていますが、福岡が医療費の上で見て老人医療費一位である。実は、一九八三年から断トツ、連続一位かもしれません。このことについてはどういう分析をお持ちでしょうか。

水田政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘のとおり、また今の資料でありましたとおり、医療費には大きな地域格差が見られるところであります。

 さまざまな要因が考えられるわけでありますけれども、大きなものとしては、やはり病床数や医師数などの医療供給体制、それから保健活動の状況、それからもう一つ大きな要素が高齢者の就業状況などの生活状況である、このように思っております。

 こうした観点から福岡県の状況を見ますと、住民一人当たりの病床数、医師数が多い、その一方で、健康診査の受診率が低く、保健師が少ない、ひとり暮らしの高齢者が多いということでございます。それからさらに、高齢者の就業率が低い。こういった特徴が見られるところでございまして、こうしたさまざまな要素が医療費の水準に影響しているものと考えております。

 ちなみに、長野県は、この四つの要素がすべて今の逆でございます。

阿部委員 私が申したいのは、そのくらいであれば常識の範囲内の分析だろうと思うわけです。

 それで、これまでは医療費の高騰は、例えば高齢社会だからだ、高齢化が問題だとされておりましたが、皆さんのお手元の資料を二枚おめくりいただきまして、各地の高齢化率をお示ししてございます。

 上から順番とはなっておりませんで、北から順番ですが、この中で、都道府県別高齢化率で、まず北海道と大阪と福岡に注目していただきたいですが、医療の三横綱、老人医療費が高い三つの県、福岡、大阪、北海道、順番は福岡、北海道、大阪ですが、これらは実は、高齢化率はさして、断トツに高いところではございません。むしろ平均に近い、今、日本の高齢化、平成十二年で一七・三%ですから。

 それからベッド数も、確かに福岡は多うございますが、これがまた、非常に断トツに多いというよりは、実は一九八五年のベッド規制が始まる前から多うございます。結核が多かった、炭鉱の離職者が多かった、疾病構造がそのようになっておる。ベッド数は多少の要因にはなっておろうかと思います。今、働き方、高齢者がぴんぴんで働けるのがいいんだよということをおっしゃっていたので、それは確かに関係がございます。

 二枚目を見ていただきますと、失業率のマッピングがございます。そうすると、これは黒いところが失業率が高いので、大阪、福岡、北海道というふうに失業率が高く出ております。そして、最後に、四枚目を見ていただけるとおわかりかと思いますが、これは一見すると、ああ、失業率のと同じグラフじゃない、同じ地図じゃないのと思っていただけるかと思いますが、今お示しした、大阪と福岡と北海道が高い。これは何の地図か。これは、生活保護の保護率をあらわしたものでございます。

 すなわち、もちろん、御高齢期がよく働けることも大事なことなのですが、それに至る前の、いわゆる若者も働き盛りの人も働くということがきっちり保障されなければ、失業率も高まり、生活保護の保護率も高まってまいります。

 私は、きょう、この場でぜひ各委員に問題提起をさせていただきたいと思っております。皆さんの、代表として選出されておられる各都道府県、果たして医療費の構造はどのようになっておるのか。私は、そうしたことがきっちり論じられて、何が対策されるべきかということがわきまえられて初めて、地方の都道府県に医療の主体を安心してお任せすることができると思います。

 ちなみに、大臣の印象を最後にお聞かせくださいますでしょうか。

尾辻国務大臣 先日来、予算委員会でもいろいろな御指摘をいただいております。特に、私がそうした御指摘の中で印象に残っておりますことは、今、失業率との関連もお話しになりましたけれども、特に、高齢者の方が働いておられるかどうかということと老人医療費との関連というのは、極めて強い相関関係があるということもお示しをいただきました。言われてみればそうだなというふうに感じたところでございます。

 今、いろいろ分析してみる必要があるという先生の御指摘はごもっともでございますから、私どもも、いろいろな分析をしながら、今後の医療費の抑制とか、医療費に対する施策とか、考えていきたいというふうに思います。

阿部委員 県の中でも、また市町村で違います。福岡ですと、田川とか、かつての炭鉱町は失業率も生保の保護率も高い。

 私は、ぜひ、高齢期だけの働き方じゃなくて、壮年期も若者も、これからの労働政策と合体して医療政策をお考えいただきたいということを申し述べて、本日の質疑を終わらせていただきます。ありがとうございました。

鴨下委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後六時二分散会


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