衆議院

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第8号 平成17年3月18日(金曜日)

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平成十七年三月十八日(金曜日)

    午前九時一分開議

 出席委員

   委員長 鴨下 一郎君

   理事 大村 秀章君 理事 北川 知克君

   理事 長勢 甚遠君 理事 宮澤 洋一君

   理事 五島 正規君 理事 三井 辨雄君

   理事 山井 和則君 理事 福島  豊君

      青山  丘君    井上 信治君

      石崎  岳君    金子 恭之君

      上川 陽子君    木村 義雄君

      河野 太郎君    近藤 基彦君

      菅原 一秀君    寺田  稔君

      中山 泰秀君    原田 令嗣君

      福井  照君    三ッ林隆志君

      御法川信英君    宮腰 光寛君

      森岡 正宏君    吉野 正芳君

      渡辺 具能君    石毛えい子君

      泉  健太君    泉  房穂君

      内山  晃君    大島  敦君

      小林千代美君    園田 康博君

      永田 寿康君    西村智奈美君

      橋本 清仁君    藤田 一枝君

      水島 広子君    横路 孝弘君

      米澤  隆君    高木美智代君

      古屋 範子君    桝屋 敬悟君

      山口 富男君    阿部 知子君

    …………………………………

   厚生労働大臣       尾辻 秀久君

   厚生労働副大臣      衛藤 晟一君

   厚生労働副大臣      西  博義君

   厚生労働大臣政務官    森岡 正宏君

   政府参考人

   (内閣府政策統括官)   山本信一郎君

   政府参考人

   (厚生労働省医薬食品局長)            阿曽沼慎司君

   政府参考人

   (厚生労働省老健局長)  中村 秀一君

   政府参考人

   (厚生労働省保険局長)  水田 邦雄君

   厚生労働委員会専門員   榊原 志俊君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月十八日

 辞任         補欠選任

  上川 陽子君     近藤 基彦君

  小西  理君     金子 恭之君

  宮腰 光寛君     寺田  稔君

  城島 正光君     永田 寿康君

  中根 康浩君     西村智奈美君

同日

 辞任         補欠選任

  金子 恭之君     小西  理君

  近藤 基彦君     上川 陽子君

  寺田  稔君     宮腰 光寛君

  永田 寿康君     城島 正光君

  西村智奈美君     中根 康浩君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 国の補助金等の整理及び合理化等に伴う国民健康保険法等の一部を改正する法律案(内閣提出第八号)

 介護保険法施行法の一部を改正する法律案(内閣提出第一五号)


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     ――――◇―――――

鴨下委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、国の補助金等の整理及び合理化等に伴う国民健康保険法等の一部を改正する法律案及び介護保険法施行法の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、政府参考人として内閣府政策統括官山本信一郎君、厚生労働省医薬食品局長阿曽沼慎司君、老健局長中村秀一君、保険局長水田邦雄君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

鴨下委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

鴨下委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。園田康博君。

園田(康)委員 おはようございます。民主党の園田康博でございます。

 本日は、三位一体にかかわる国民健康保険法の一部を改正する法案、そして介護保険法施行法の一部を改正する法律案ということで、引き続き審議をさせていただきたいと思っておりますので、どうかよろしくお願いをいたします。

 また、大臣、西副大臣におかれましては、大変お忙しい中、参議院の審議もあろうかと存じますけれども、早朝よりお出ましをいただきまして、まことに恐縮に存じておるところでございます。

 私も、この厚生労働委員会に所属をさせていただきましてから、きょうは第一委員室ということで、所変われば少し前向きな答弁をいただけるのではないかということを期待しながら、きょうは質問に立たせていただいているところでございますので、どうかよろしくお願いをしたいと思っております。

 まず、三位一体の改革にかかわりまして、私が先般大臣にも直接一般質疑のときにお願いをさせていただきました、麻薬取り締まり、薬物対策に対します御所見をということでお話をいただいたわけでございますけれども、この三位一体の改革の中にも、やはり、補助金あるいは負担金の廃止ということの合理化の中に、項目として、麻薬取締員というものに関する費用負担が廃止をされるという状況が出てまいったわけでございます。

 その中に、今いろいろな問題意識といたしまして、大臣ももう何度か、我が党からは三井委員、あるいは山口委員からも御指摘が今回あったわけでございますけれども、昨今の麻薬の状況、広がり、拡大、そういった状況の中で、大変ゆゆしき事態ではないかということで、私も先般の中では、これはやはり、政府として、あるいは大きな、総合的な、各省庁横断的な流れの中でしっかりと取り組んでいただきたい、そして、その取り組みの中においては、いわゆる非常事態宣言ではありませんけれども、若者の乱用急増という状況からすれば、もっとしっかりと取り組んでいただかなければいけないのではないかということで、問題意識として持っていたわけでございます。

 御説明を聞きますと、この麻薬取締員といいますのは、地方の、都道府県の所管でありまして、設置をされているということでございますけれども、それをいわば国からの人件費として肩がわりをしているという状況があるわけでございます。しかしながら、ここでいわゆる補助金をカットしてしまって、その設置根拠も国からなくしてしまうということになると、完全なる地方に対して権限移譲、財源移譲という形になっていくわけでございますけれども、それが本当にしっかりと地域に取り組んでいただけるような形になっていくのかどうかとともに、やはり、この状況をとらえて、国としては今後どのような取り組みをなされていくのかということを、まず対応をお聞きしたいと思います。

尾辻国務大臣 まず、かねて麻薬対策についていろいろ御指導いただいておりますことに対して御礼を申し上げます。

 私どもも、麻薬対策というのは大変大事なことだと思っております。ただ、今回、三位一体の改革の中でこうしたことに関する一部補助金廃止が行われたわけでございますが、これは地方団体の皆さんからの御提言もございましたし、また、私どももそれなりに同化定着をしておる事業だというふうに考えたものですから、申し上げましたように、地方の団体の皆様方の御提言も受け入れて補助金を廃止したものでございます。

 しかし、申し上げましたように、麻薬対策が極めて重要なことだということについては、これは論をまたないところでございます。現在の薬物情勢につきましては、依然といたしまして第三次覚せい剤乱用期にありますし、また、MDMAなど錠剤型合成麻薬の乱用が青少年を中心に拡大をいたしております。特に、若い人たちがファッション感覚でという言葉がございますけれども、こうしたことは本当に憂慮すべき状態だと考えております。ですから、薬物対策、国として極めて重要だと思っておりますということは改めて申し上げたいと存じます。

 そこで、私ども厚生労働省といたしましても、麻薬取締官、これは国の方の人間でございますから、この増員でありますとか、薬物に対する取り締まりの強化、薬物乱用防止キャラバンカーの運用、各種啓発資材の作成など、青少年に対する啓発活動にさまざまに取り組んでおるところでございます。今回の三位一体改革によって薬物対策が、これはもう間違っても後退することがないように、今後とも都道府県と緊密な連携を図り、薬物対策を積極的に推進してまいります。

園田(康)委員 地方と、都道府県と緊密な連携をとりながら積極的に取り組んでいただけるということでございます。

 確かに、大変今ゆゆしき事態であるということの御認識を共通させていただいておりますので、どうか今後とも、幅広く、啓発活動も含めて、これは特に若年層の広がりというのは私は本当に問題があるんだ、心身、あるいはそれが犯罪に、またさらなる二次犯罪というものにつながっていくという事態も出てきているわけでございますので、この点はしっかりと取り組んでいただきたいと思うわけでございます。

 したがって、今回提案をしていただきました資料の中で、「麻薬・覚せい剤等に係る犯罪件数は、ここ二〜三年減少傾向にあるものの、依然として高い水準にあり、」という形でいただいているところでございます。確かに犯罪件数そのものは減少傾向にあるわけでございますが、全体的な広がりといいますか、いわば形を変えて広がってきているというのが現状だと私は思っているんです。しかも、その取引等が大変巧妙になってきたということからすれば、取締官の数というものが、果たして今の状況の中で、ことしは増員をしたというふうに言われているわけでございますけれども、果たして今のこういう形、極めて巧妙になってきた、したがって、これにきちっと対処していくということからすれば、取り締まりの観点からすれば、本当に十分なものであるのかどうかというのが一方で危惧されるわけでございますけれども、その点はどのようにお考えでしょうか。

阿曽沼政府参考人 麻薬取締官のお尋ねでございますけれども、厚生労働省といたしましては、薬物の取り締まり体制を強化するために、過去三年間で取締官を実質二十名増員いたしました。またさらに、来年度、平成十七年度におきまして、実質十三名の増員を予定しておりまして、全体で二百七名という布陣になります。

 ただ、先生おっしゃいましたように、薬物対策におきましては、青少年に対する啓発活動とともに、取り締まりの強化による薬物の供給を遮断するということが大変重要でございますので、厚生労働省といたしましても、今後とも麻薬取締部の体制の強化に十分努めていきたいというふうに考えております。

園田(康)委員 平成十七年度は十三名増員で二百七名ということでございます。

 先般、我が党の三井委員からも御指摘をさせていただきました。民主党といたしましては、今麻薬対策の特別なプロジェクトチームを設置させていただきまして、この問題にはしっかりと取り組んでいこうではないかということで視察をさせていただいたわけでございます。

 地方厚生局の麻薬取締部というものが全国で十一カ所今設置をされているということでございますけれども、全国で二百七名ということでございまして、私どもが視察をさせていただいたところも、なかなかそれがきちっと対処できているのかどうかというのが、すごく疑問に思っているといいますか、危惧をどうしてもしてしまうわけでございます。

 したがいまして、先ほど御答弁をいただきましたとおり、水際の対策もしかり、それから青少年への啓発活動もしかり、そして厚生労働省としては、医薬の部分も含めてしっかりと取り締まりを行っていただきたいということを強く要望させていただきたいというふうに考えております。

 それでは、介護保険法施行法の話題に移っていきたいと思います。

 前回から、山井委員あるいは橋本委員からさまざまな御指摘をさせていただいたわけでございますが、今回の介護保険法施行法の改正に伴いまして、特別養護老人ホームの旧措置入所者に対する軽減措置といたしまして、施行法の十三条の関係でございますけれども、これは五年間に限って低所得者に対する負担軽減措置というものがとられてきたわけでございます。

 さまざまな努力によりまして、十六年の四月の実態調査によりますと、実質、現在はこの対象者が六万八千五百九十七人という形になってきているわけでございますが、この措置だけ軽減措置を五年間またさらに延長するということが今回提案をされてきたわけでございます。

 まず、今後、先般山井委員からも指摘をさせていただいたわけでございますが、五年間負担の軽減措置を延長することによって、予算措置というものをどういった推移で計上していくのか、推計をしていくのかということを御答弁いただきたいと思います。

中村政府参考人 お答え申し上げます。

 平成十七年度予算においては、負担軽減措置を継続することによりまして、給付費額で百六十五億円、国庫負担額で五十四億円と見込んでおりまして、これは介護保険の全体の総給付費の〇・二%程度となっております。これは、平成十二年度から十六年度までとってまいりましたので、五年間の総額は千二百億円、国庫負担額は約四百億円となっております。

 先生お尋ねの、今後どうなるのかということについては、実は大変難しいわけでございますが、まず、これからの見通しをちょっと申し上げさせていただきますと、負担軽減措置の対象者の方、先生、十六年四月現在、約六万八千人という御指摘ございました。平成十二年四月の時点では十六万六千人おられましたので、六万八千人というのは六割減った。平成十二年を一〇〇といたしますと、今日、四一・三、こういうふうになっております。単純に計算いたしますと、この四年間で毎年二万四千人ほどずつ減少してきている。もう一つ、特別養護老人ホームの入所者の平均在所期間、これは統計がございまして、約千四百五十日、約四年ということになります。こういうことを踏まえますと、五年後までには対象者はほとんど解消している、こういうふうに考えております。

 そこで、これからの推計でございますが、予算措置でございますので、毎年度毎年度、その足元までのものを延ばしてやっていく必要がございますけれども、私ども、大胆に推計いたしますと、過去五年間、十二年度から十六年度までの費用の半分以下、半分をかなり下回る水準になるのではないかというふうに思っております。給付費は五百億円程度ではないか、こういうふうに見込んでいるところでございます。

園田(康)委員 ただ、問題意識といたしましては、十二年から十六年までの五年間の予算措置として約一千二百億円という形で御提示をしていただいたわけでございます。約一千二百億円、これを毎年毎年きちっと数字を出してください、どういう形になっているんですかということを少し打ち合わせの中ではお伺いをさせていただいたんですが、全体の中でしっかりとした調査がなされていないというお話であったわけでございます。

 したがって、これから五年間の見通しはどうなるのかといったときにも、確かに難しい問題であるということで、大体、人数がどんどん減ってきて、今もう半分ほどになってきた、そして、五年間で半分ほどになってきたんだから、この後の五年間では恐らくこれも解消されるであろうという御答弁だというふうに私も受けとめさせていただいたんです。しかし、そういう実態をきちっと捕捉していかなければ、何のために五年間延長するのかということが大変疑問に思われるわけですね。そこで、その内容はどういう形になってきたのかということで、橋本委員からも御指摘をさせていただきまして、その年齢構成が一体どのようになっているのかということでお問い合わせをさせていただいたわけでございます。

 また、これも、特養の入所者の、旧措置者の全体の数しか出てこなかったということで、負担軽減措置は、今回はこの負担軽減措置だけをとって五年間延長ということであるならば、対象となる方々のきちっとした推計というものがやはり捕捉をされていなければいけないのではないか、それでなければ、しっかりとした予算措置というものが立たないのではないかなという疑問がわいてくるんですが、その辺はどうでしょうか。

 と同時に、いわゆる全体の年齢構成から、約半分程度以下という御答弁があったと思うんですが、そういう全体の年齢推計から、恐らく対象となる方々は変わらないのではないかということで、厚生労働省としてはそのように判断されたのかということもあわせてお答えをいただきたいと思います。

中村政府参考人 先生から対象者の方の年齢分布についてお尋ねがございました。

 この対象者の方、旧措置入所者ということで、当然、介護保険制度の施行前から特別養護老人ホームに入所されていた方でございますので、入所されてから五年以上経過している。先ほど申し上げましたように、平均的な入所期間は四年程度でございますので、私ども、この特例措置を検討いたしましたときに、当然、特別養護老人ホームの入所者全体の平均よりも高い年齢構成である、こういう認識のもとに今般の負担軽減措置について延長を検討してきたものでございます。

 先般、三月十一日にこの委員会において橋本委員の方から、年齢構成などについてもう少しきちんとできないのかということがございましたので、統計の特別集計をこの間行いましたところ、やはり旧措置入所者につきましては、入所者一般の方の年齢分布に比べますと、例えば九十五歳以上の方は一二・五%おられますけれども、この数値は旧措置以外の方の八・四%に比べると極めて高い。旧措置入所者の方の四分の三は八十歳以上、五六・六%は八十五歳以上でございますので、私ども、年齢構成が高いということは確かではないかと思います。

 先生からお尋ねがありました、負担軽減者のさらなる分布ということも見るべきではないかというお話でございますが、特別集計ではここまでが限界でございましたので、そういった意味では、負担軽減者の分布も全体から推しはかってそういうふうに考えているということではないかというお尋ねがございましたが、それはそのとおりでございます。

園田(康)委員 したがいまして、しっかりとこの中身を今後調査していただきたいということなんです。すなわち、今回、橋本委員から指摘があってようやく特別調査をされたというふうに御答弁をいただいたわけでございますけれども、そういう形で指摘がなければ調査をしない、何となくの状況から延長してしまうということではやはり困るわけでございます。

 先ほど、全体からいくと〇・二%の予算措置だよというお話があったわけですけれども、逆に、こちらから申し上げれば本当にすごい額なんですよ、今までで一千二百億円もかかってきているわけですから。今後、これはやはり国民の税金という意識をきちっと持っていただいて、一円たりともむだに、むだということではないですけれども、明らかに、国民の皆さんにこういう形で使われているんだということをしっかりと御提示できるような、そういう説明を私たちにいただきたいという思いで今質問させていただいたわけでございます。少しずつ、我々から指摘がなされないと調査をしないということでは大変困るわけでございますので、どうかよろしく、その点は強くお願いしておきたいと思っております。

 そしてまた、今回五年間延長されるということでございますけれども、だんだん年齢推計とともに下がってきたという状況から、恐らく五年後には解消されるのではないだろうかという予測のもとに今回のこの法律の改正案が提案をされているということであるわけでございますけれども、今回この法律が通りまして、そして五年間延長されて、五年後にまだこの対象者が残っていらっしゃった場合、必ずすべてゼロになるとは限らないわけでございますので、仮に残った場合、これは私どもといたしましては、できるだけやはり、措置入所されたわけですから、最初の答弁でもありましたけれども、不利益変更された方々に対するこういう形ですよということで政策判断がなされて行われたということでありました。であるならば、五年後、五年間で切るということではなくて、この方々が最後までしっかりと安心して入所の中で暮らしていけるということが本来ならばなくてはならないのではないか。

 したがって、今回とりあえず五年間ということで提案をされたわけですけれども、五年後もしこの方々が残っていた場合の仮定で結構でございますが、さらに再延長ということも想定をされておられるのかどうか、御答弁をいただきたいと思うわけでございます。

西副大臣 お答え申し上げます。

 介護保険法が施行されましたときにこの五年という初めての措置が行われましたが、このときには、旧来からの措置入所者に対する、経済的な実態等を踏まえまして、政策的な判断の上に五年ということになったものでございます。

 今回の見直しに当たっては、先ほども若干答弁がございましたけれども、当該者が入所者のうちの二割をまだ占めていらっしゃる、こういうことの重みを考えまして、これは引き続き経過措置を当初と同様五年ということに決めさせていただいたものでございます。

 この経過措置の延長につきましては、当委員会でも議論がございましたように、施行後に入所した者との均衡の上で厳しい見方も一方ではある、格差が、両者の間で均衡の上で若干の問題がある、こんな議論もございました。そんなことで、この措置は基本的には五年ということで限るということが妥当ではないかというふうに考えております。

 ただ、五年たったらどうなるのか、何人残っていらっしゃるのか、残っていた場合どうするのかということにつきましては、先ほども申し上げましたように、これは政策的な判断という本来の姿に立ち返って、必要があればその段階でまた議論をする、考えていくということでございます。

園田(康)委員 当初は、いわゆる政策的な判断で、措置入所されておられる方々に対してこのような軽減措置、経過措置というものがとられたということでありまして、今回五年間の延長という形をとって、その先については五年後にまた政策判断をするということだというふうに理解をしたんですが、そのいわゆる政策判断というものに対して私は皆さんと少し認識が違うのかもしれません。

 法律を策定する場合に、確かに社会的な事実があって、それがいわゆる立法事実という形で出てくるわけですね。この立法事実に基づいて今度は立法趣旨ができて、そして立法趣旨ができたならば各条文がさまざまな形でつくられてくる。もっと流れを言ってしまえば、そこからさらに細目的なところで政令やら省令、そして規則、運営基準というものがどんどんここの中でつくられてくるわけです。

 先ほどから、私もちょっと危惧をしていますよということを何度も何度も申し上げてきたわけでございますし、いろいろな審議の中の御指摘の中で出てくるのが、やはりこの社会的な事実というものをしっかりととらえていかないと、とらえた上での社会的事実というものが出てこないのではないか。だから、社会的な事実が出てこないのであるならば、政策判断というものも難しくなってくるというか、いわゆる政策判断という大変都合のいい言葉として一方ではとらえられるというか使われてしまいがちなんですけれども、私は、この辺を厳格にきちっと行っていきたいな、調査をしていきたいなというふうに考えているわけでございます。

 したがって、今副大臣も御答弁をいただいたわけでございますけれども、政策判断をきちっとする際には、やはり我々にもしっかりとその事実というものを調査の実態に基づいて御提示をしていただきたいと思うわけでございます。どうかその点をよろしくお願いをしておきたいと思います。

 次の質問に移ります。

 さらに、今回、要介護に該当しない方々、当時は介護認定を受ける際には非該当あるいは要支援という形になってしまいまして、その方々に対しても経過措置というものが行われたわけでございますが、これも解消されたというふうに理解をしていいのかどうか。

 この間、各自治体による適切な指導やあるいは調整の結果、ほとんど、昨年末で百九十一名である、直近の調査では残りあと十四名の方々がまだ調整がついていないという御報告でございましたけれども、この際に、各自治体の調整あるいは指導ということの中に、しっかりとした御本人の同意あるいは家族の理解というものが得られながら進めてこられたのかどうかという点をお伺いしたいと思います。

中村政府参考人 ただいまの先生の御質問の、旧措置入所者のうち、要介護認定に非該当、または該当されても要支援の方、この方は、介護保険の本則の規定から申し上げますと、特別養護老人ホームに入所できない方であったわけでございますが、政策判断のお話がございましたけれども、平成九年十二月に介護保険法を国会で認めていただきましたときに、まさに十二年四月から介護保険法が施行される、そのときに直ちにこれを適用いたしますと十二年四月一日に特別養護老人ホームにおられなくなる方がいる、こういうことから、いわば猶予期間として五年間の猶予措置を講じたところでございます。この間、猶予期間の間により適切な場所に行かれるということでやってまいりまして、先生御指摘のとおり百九十一名の方が残っておられて、そういった方々、六十一名は今後養護老人ホームに行かれる、あるいは軽費老人ホーム、生活支援ハウス等々、また、在宅にお戻りになる方も二十一名ございます。

 その御調整でありますが、当然、これは御本人、当事者の方々の意向を確かめ、無理のない形で実施してきているということで、なお残っておられる方は十四名でございますが、それぞれ養護老人ホーム、軽費老人ホーム、生活支援ハウス、それから在宅へ向けて退所されるよう、あるいは移られるよう、現在調整中のところでございます。

園田(康)委員 現在、残された方々も調整中ということであります。ぜひ、その方々の、御本人が納得といいますか同意を得ていただいた上でしっかりとした対応をしていただきたいと思うわけでございます。

 期限が迫ってきたから、もうこれ以上軽減措置ができないよということから、無理無理というような言い方が正しいかどうかちょっと、正しくないかもしれませんけれども、できるだけその方々の、あるいは介護をされるといいますか、御家族の皆さんの御理解を得ていただきながら進めていただきたいというふうに思うわけでございます。

 したがって、今回、このような入所された方々のこういった軽減措置というものが一方ではなくなっていくわけでございます。そしてさらに、もう一方で、在宅サービス、居宅サービスの利用者負担軽減措置事業といたしましても、低所得者の訪問介護利用についても、やはりこれは年々、法施行後三年間の自己負担を三%、続く二年間は六%という形で、順々に激変緩和措置というものがとられてきたわけでございます。

 その理由の中で、在宅での生活継続、あるいはみずからの判断でサービスを決定できるという理由で負担軽減措置を終了するという御説明でありました。その当時の状況で、いわゆる行政措置という状況でこの方々もこのような状況になったわけでございます。先ほどの旧措置の入所者の方々との関連で、何度も何度もこれも御答弁をお願いしているわけでございますけれども、同じような行政処分、措置という形の中で、一方では軽減措置がそのまま継続、あるいは、一方ではこれでもう終わってしまうんですよということの明確な御答弁をやはりここでいただかないと、在宅、居宅サービスを受けておられる利用者の方々の、これは不公平ではないかというような流れも、御指摘も一方では出てくるわけでございますので、この点をしっかりと御答弁いただきたいと思います。

中村政府参考人 お答え申し上げます。

 在宅と施設で扱いが違うのではないかという御質問でございます。まず、大変形式的な御答弁になるかもしれませんが、そもそもこの問題については、法律的には、介護保険法をつくり、施行法をつくった立法当時に判断がされているということでございます。前の二つ、特別養護老人ホームの負担軽減措置及び特養の継続入所措置につきましては、施行法で、猶予期間を置く、あるいは五年間の負担軽減措置を置くという立法判断がなされ、法的にも経過措置なり負担軽減措置がとられたところでございます。

 一方、在宅の訪問介護の利用者負担、定率負担一割負担の導入につきましては、この段階で施行法でも経過措置を置かず、法律的にはいわば一割負担が適用されるということになっております。

 ただ、この問題につきましては、平成十一年十月の与党からの申し入れもあり、政府の方で五年間予算的に段階的激変緩和措置をとるということで、先生の方から御指摘がありましたように、当初三年三%負担、二年六%負担ということで段階的に負担を引き上げてきておりますので、十七年度から一割負担になる。もともと一割負担は適用されているわけでございますが、予算上、いわば補助を行い激変緩和措置をとった、こういうふうに考えております。

 なお、その背景の理由として何かということは、やはり、特別養護老人ホームに入所するという、いわば全生活の本拠を移された方と、在宅におられてスポット的に訪問介護サービスを使っておられる方と、その方に及ぼす影響度の大きさが違うだろうということが、基本的に施行法の対象にしたかしないかの差になっているというふうに私ども認識しているところでございます。

園田(康)委員 在宅の方々とあるいは施設へ転居をされた方との影響の違いということで、同じ行政処分といいますか、措置入所と措置による在宅でのサービス利用ということの違いであるということで理解をさせていただいたわけでございます。

 この点も、当初から御指摘をさせていただいて御答弁もいただいていたわけでございますけれども、やはり、しっかりと納得のいく形で家族の方あるいはそういう方々に対しての説明というものも同時にあわせて行っていただきたいというふうに思っております。

 そして、低所得者に対するさまざまな軽減措置といいますか、負担をより少なくしていきましょうということで、導入以降いろいろなそういった措置がとられてきたわけでございます。全体の話に少しなっていきますけれども、この介護保険制度の導入以降、介護保険の保険料を払う、あるいは利用料を払うということによって生活保護の対象になってしまうのではないかという方々、こういう方々への対策というものはどのようになされてきたんでしょうか。

中村政府参考人 お答え申し上げます。

 介護保険では、例えば六十五歳以上の方でございますと、所得に応じて保険料を御負担いただく、またサービスを利用されるときには一割の負担をしていただく、そういった制度になっております。

 したがいまして、保険料を負担される、また、たくさんサービスを使われる場合には、高額介護サービス費ということで、一割負担の軽減、月二万四千六百円までを上限としてそれ以上は御負担しなくても済む、こういうような措置が講じられているわけでございますが、低所得者の方については、例えばこの高額介護サービス費なども、一万五千円という限度に引き下げるとか、さまざまな低所得者対策をとっております。

 そういう制度になっておりますので、ある方が、現在生活保護に該当されないけれども、保険料や利用者負担をお払いすることによって、そのことによって生活保護の該当になってしまう、こういうことを私ども境界層該当と呼んでおりますが、そういった場合には、もし、ただいま申し上げました負担軽減措置をとれば生活保護に該当しなくなるようであれば、例えば保険料の負担区分でも、より低い方の保険料負担区分を適用するというような措置をとることによって生活保護に該当しなくても済むような措置をとる、こういう仕組みがございまして、具体的なシステムとしては、福祉事務所の方にそういったことで生活保護になりそうだということを申請した場合にはこの措置が適用されまして、保険料なり利用者負担の軽減が図られるという仕組みをとっております。

園田(康)委員 今御答弁いただきました境界層措置についてなんですけれども、いわゆる低所得者の方で、保険料を払うことによって、あるいは利用料を払うことによって生活保護の対象になってしまうというところに対してのまた手厚い保護である、手厚いというか、そういった方々に救済措置という形がとられているという御答弁でございました。

 その中で一点だけちょっと私が気になったのは、みずからの申告によってこれがとられるということでございまして、やはりこの制度そのものが、なかなかまだちゃんと認知というか周知徹底がされない部分もあるわけでございます。したがって、申請がなされたときには福祉事務所、あるいは介護保険の窓口で、その当該の方々、対象者の方々に、こういう措置がとられるんですよということをしっかりと提示していただきたいと思うわけでございます。

 したがって、今回の介護保険法の本体の審議はまた来週以降行われる予定でありますけれども、この中でもしっかりとこの制度というものを、組み入れてというか組み入れられていますが、しっかりと位置づけをさせていただきたいというふうに考えているわけでございます。

 いわゆる介護保険が導入されたときに、社会的なセーフティーネットという形で導入をされたわけでございます。生活保護というのはその最後のとりでとも言われるものでございますので、介護保険が導入されることによって、ここで本当は救われなければいけないわけでございますので、ここを導入することによって生活保護の対象になるということがないように、どうか現場サイドでもお願いをしておきたいというふうに思います。

 ちょっと時間がだんだん足りなくなってまいりましたので、次の話に移させていただきたいと思います。

 介護保険施設の中で三施設があるわけでございます。そのほかにもあるわけでございますが、きょう取り上げたいのは、介護保険の老人福祉施設と、それから介護老人保健施設、そして介護療養型医療施設、この三つを少し区別させていただきたいと思うわけでございます。

 いわゆる入院治療の必要のない方の家庭復帰のための療養機能を主たる目的として設置された、いわば中間施設という位置づけの介護老人保健施設に関してでありますけれども、これは今現在どういった形で利用されているのかということを実態調査に基づいてちょっとお話しいただきたいと思います。

中村政府参考人 お答え申し上げます。

 老人保健施設でございますが、平成十六年九月に全国で三千百五十四施設ございまして、約二十八万人の方が入所されている、こういう施設でございます。

 平均要介護度は、今介護三施設のお話がございましたけれども、老人保健施設は、在宅復帰を目指すいわばリハビリテーション的な色彩を強くしておりますので、平均要介護度は三・二一ということで、特別養護老人ホーム、三・七三、介護療養型医療施設、四・二五に比べるとやや介護度は低い、こういうことでございます。

 在宅に帰すことを目的といたしておりますので、平均在所日数は、老人保健施設が一番短く、二百三十日、介護療養型医療施設が三百五十九日、約一年、それから介護老人福祉施設が一千四百二十九日、約四年、こういうような状況になっております。

 介護老人保健施設から退所される方の約四割が家庭に復帰されるという施設でございます。これに対して、特別養護老人ホームの在宅に復帰される率は二・七%、介護療養型医療施設は、二割弱の方が在宅に帰られる、そのほか特別養護老人ホームや他の施設に行かれる方が多い、このような状況になっております。

園田(康)委員 平成十五年の、ちょっと古い調査結果でございますけれども、これによりますと、今局長から御答弁いただきましたが、この老健施設に関しては約四割が家庭に復帰をされているということでございます。しかしながら、先ほどの家庭復帰は三九・二%ということでございまして、一方で、逆に三八・五%が医療機関に戻ってしまう、あるいは医療機関に行ってしまうという状況、これもやはり高い水準ではないかというふうに私は読めているわけでございます。

 先ほども御答弁いただきましたように、リハビリテーションシステムを主とした中間施設、いわゆる家庭復帰を目的として設置をされているということからすれば、四割今戻っていらっしゃるからというふうに御答弁いただいたわけでございますけれども、逆に、あと、またさらに四割近くが医療機関に戻ってしまっている、行ってしまっているという状況があるわけでございますので、もっとこの辺の家庭復帰というものをもう少し充実させるべきではないかと思うわけでございますけれども、この辺はいかがお考えでしょうか。

中村政府参考人 お答え申し上げます。

 老人保健施設は、先ほど申し上げましたように、創設当時、いわば医療機関と在宅の中間施設、そういうことで、病院からできるだけ在宅に戻す施設という趣旨で置かれたということで、まさに先生御指摘のとおり、できることであればもっと在宅復帰率を高くするということが一つ課題になっております。

 もう一つ申し上げますと、医療の方でも在宅復帰の必要性が認められておりまして、医療の分野で回復期リハビリテーション病棟というのが整備されるようになってきました。したがって、病院から在宅に帰る場合には、その回復期リハが発達してきましたので、病院から最初に退所されると回復期リハに行って在宅に帰るというような流れができてまいりました。

 そういった中で、状況が変わってまいりましたので、これからの老人保健施設に求められていることは、一つは、当初から、回復期リハビリテーション病棟と同じように、急性期の病院から帰ってこられた方を老健施設で受け、在宅につなぐという役割があると思いますが、高齢者の方は相当重度化しておりますので、むしろこれからの老人保健施設は、維持期のリハビリテーションと申しますか、在宅におられる方が暮らし続けられるように老人保健施設と在宅とを往復するような形の機能もより強化すべきではないか、在宅生活を支援する施設として積極的に位置づけていく必要があるのではないかと思っております。

 いずれにしても、先生おっしゃるように、在宅復帰率を高めるということは老人保健施設の課題でございますので、この点、検討をしてまいりたいと思っております。

園田(康)委員 これは老人保健法ともいろいろ絡んでくる話でございまして、あるいはこれは医療制度全体の話としてとらえていかなければいけないわけでございまして、行ったり来たりというようなことでは、やはり対象となった方々にとってみれば大変つらいといいますか、こちらに移されましたよ、では、あなたはもういいからこちらに帰りなさいよというふうに無理やりなされても、これもやはり困るわけでございます。

 しかしながら、考え方としては、やはり医療制度改革全般の中から在宅医療も充実させていこうというふうに今考えていらっしゃるということでございますけれども、これはやはり受け皿としての地域基盤医療というものをしっかりと充実させようということなのかなというふうに受けとめさせていただいているわけでございますけれども、その点はいかがお考えでしょうか。

西副大臣 お答え申し上げます。

 大変重要な観点だと思っております。

 今回の介護制度の改正におきましても、できる限り住みなれた地域社会でという理念を最大限に充実していきたい、こう思っておりますし、同様に、これは医療におきましても、在宅医療の充実ということは大変重要な課題だというふうに考えております。

 一つは、かかりつけ医のさらなる普及、それから訪問看護の人材の育成、さらには医療と福祉の関係者の連携も大変重要なことだ。また同時に、在宅医療に関する情報をさらに提供していくこともやはり大事なことだ、こんなことを考えているところです。

 現在、平成十八年度に予定している医療供給体制の改革に向けて、このところについても検討しておりまして、こうした在宅医療のための環境づくりを推進するためにいろいろなことを考えております。

 原則として、住民の日常生活の生活圏域の中で、医療に関しましては、まず急性期、それから回復期、さらには在宅の医療に至るまでの切れ目ない連携、また介護サービスも含めまして、切れ目なく提供できるような仕組みが必要だということで、医療計画制度を初めとした見直しをただいま検討しているところでございます。

園田(康)委員 そうしますと、これからさまざまな地域基盤整備というものがなされていかなければいけないわけでございまして、これもやはり来年に向けて制度改革の検討が行われるということでありますけれども、もう少しきちっと、地域の実情、あるいは今の訪問介護の話もそうですけれども、その受け入れ体制、受け皿として地域がどれだけの能力を持っているのかということもしっかりと見ていかないと、これは制度だけつくっても、後はもう地域に全部押しつけ、押しつけという形になりかねないものでありまして、結果的には、医療の、あるいは現場サイドから言わせれば、負担が大きくかかってしまって一人に対してしっかりとしたケアができなくなってきてしまうということにもつながる可能性が出てくるわけでございます。

 したがって、ぜひこの辺もしっかりと見据えながら検討していただければなというふうに考えております。この辺は来年度に向けてまたさらに議論をさせていただきたいと思うわけでございます。

 ちょっともう時間が余りなくなってまいりましたけれども、急ぎます。

 いわゆる在宅と施設の利用者負担の公平などによって、今回の法改正、これは本体の介護保険法の改正にもつながってまいるわけでございますが、施設における居住費、いわゆるホテルコストと言われておりますけれども、これと食費が保険の対象外となって自己負担という形になってくるわけでございます。

 この軽減措置もとられるということではありますけれども、新たな負担という形が出てきているわけでございますが、いわゆる今の現状の中で、ホテルコストのかからない医療療養型の病床への移動というものが、少し問題、課題として指摘をされてきているわけでございますけれども、先般の橋本委員の指摘にもありましたが、これに対する対策というものはどのようにお考えでしょうか。

水田政府参考人 介護保険のホテルコスト、それから食費を保険給付外とすることによりまして、医療保険適用の療養病床に患者が移行するのじゃないかというお尋ねでございますけれども、この点につきましては、制度面からも幾つか検討しなきゃならないことがあろうかと思っております。

 一つは、介護保険適用の療養病床と医療保険適用の療養病床における提供できるサービスの内容、裏腹でございますけれども、入院、入所する患者の状態、それから、医療保険におきます食費、ホテルコストの扱い、これらにつきまして、医療保険制度の安定的な運営の観点それから患者に対する適切なサービス提供の観点から、どのような対応が適切かも幅広く検討していきたいと考えてございます。

 なお、今回の見直しに伴いまして、患者の状態にそぐわない形での病床転換が行われないように、既に都道府県を通じて、安易な病床転換は患者に対する継続的な療養の確保の観点から適当ではない旨、また、介護保険事業計画に定める入所定員総数との関係で、一たん介護療養病床の指定を辞退して医療療養病床へ転換いたしますと、介護療養病床への再指定が困難になるということが予想される旨を周知しているところでございます。

園田(康)委員 済みません。もう一度、最後、都道府県に対してはちゃんと周知をしているというふうに御答弁をしていただいたんですけれども、どういう形で周知をされたんでしょうか。

中村政府参考人 お答え申し上げます。

 介護保険の担当者の全国課長会議を二月に開催いたしまして、その際、国会に提出いたしました改正法案について説明をいたしますとともに、ただいまのような御懸念が指摘されておりますので、今保険局長が御答弁申し上げました事項につきまして、全国の都道府県、政令指定都市、中核市の担当課長に御説明をし、周知方を図っているところでございます。

 都道府県の方は、これを受けまして、管内の関係団体、また管内の市町村の方に伝達をする、こういうような形で情報伝達を図っているところでございます。

    〔委員長退席、宮澤委員長代理着席〕

園田(康)委員 情報伝達といいますか、課長会議の中で説明をされたということでございますけれども、今後、そういったことが起こらないように、しっかりとフォローアップもあわせてしていただきたいと思うわけでございます。

 予防介護の部分に少し触れておきたいと思うわけでございます。

 この制度の改正の趣旨につきましては、大臣からの御答弁をいただこうと思ったわけでございますけれども、ちょっと時間がなくなってまいりましたので、少し簡潔に私からお話を申し上げたいと思います。

 予防重視型システムへの転換といたしまして、今回、新予防給付の創設というものが法改正の中でうたわれているわけでございます。

 現行では、老人保健法の老人保健事業、あるいは市町村の実施がなされている介護予防・地域支え合い事業、これによっていわゆる介護予防サービスというものが行われているわけでございますが、さらには介護保険制度の中では予防給付、介護給付のリハビリテーションというものが行われているわけでございまして、それが今回、新予防給付という形で、もっとここを重点的に行っていこうではないかということでなされるわけでございますが、私の考え、意識といたしましては、現行の要支援に加えて新サービスとしての予防介護の創設という考えというものはできないものでしょうかということなんです。

 つまり、今厚生労働省としては、新サービスとしての予防介護というものを、今の現行の要支援あるいは要介護一の半分といいますか一部を取り込んで新予防給付というものを考えていらっしゃるわけでございますけれども、そうではなくて、今現行に行われているこの予防給付の中の要支援、要支援の部分だけですよ、要支援の部分に、さらにいわゆる新サービスとしての予防介護というものを創設するんだという考えには至らないのかということなんです。

 つまり、今法改正をしようとしていることになれば、今実際に受けられている要介護一の方々のサービスの一部がなくなってしまうのではないかという懸念があるわけなんです。私が今主張させていただいたのは、今の要介護一で受けられているサービスは現行のままに置いておいて、そのさらに外側といいますか、今行われている予防給付の中の部分を充実させていくという考え方ができないのかということなんですが、いかがでしょうか。

中村政府参考人 今度の新予防給付は、軽度の方に対する予防を徹底するという観点から対象者の範囲を見直す、こういうことで、従来、予防給付は要支援の方のみでございましたけれども、要介護一の中で予防に適した方を対象にする、こういうことを提案させていただいております。

 その理由は、まず、要支援の方が六十五万人、要介護の一の方が百三十五万人とおられまして、合わせて二百万人ということで、介護保険で要介護認定に該当された方の半数おられる。それから、要介護になった原因疾患を見ますと、要支援と要介護一の方が、他の類型に比べまして圧倒的にいわゆる主として廃用症候群に関連する原因疾患が多いということ。

 これらに着目いたしまして、私ども、廃用症候群については、適切なサービスを行うことによって生活機能の維持向上、改善が図られる可能性が高いと考えておりますので、その観点から、そういった点に着目しますと、要支援、要介護一を一体的に考えて行う必要があると思いましたので、先生からの御提案でございますが、私どもは要支援及び要介護一の一部の方を対象に新予防給付を組み立てたいと考えております。(発言する者あり)

園田(康)委員 今ちょっと、いろいろ御指摘がありますけれども。

 いわゆる要支援の部分を、問題意識として考えていただきたいわけでございますけれども、今要介護一を受けておられる方々のサービスの中で、いわゆる家事援助、この間から御指摘があるわけでございますが、このサービスは原則的には行わないんだというふうにおっしゃっておられるわけですね。これによってサービスが削られてしまうというのは、先ほどの不利益変更の話ではないですけれども、今まで受けられてきた方々にとってみれば、これも、いわゆる今回の政策判断によって制度が変えられてしまって削られてしまうという状況になってきているわけでございます。

 そういう懸念があるということを私から指摘をさせていただきたいと思うわけでございまして、それを、いわば、今いろいろおっしゃった、さまざまな、むだに使われるというか不正に使われている部分というのもあるのではないかという懸念もあるようでございますけれども、しかしながら、それを必要とされる方々も一方でおられるわけでございまして、それが本当に必要のないサービスであるのかどうかということもきちっとやはり検証していく必要があるわけでございますね。

 したがって、であるならば、今の現行制度の中で、きちっとその内容を運用基準の中で見直しを行えば、このような、いわば削ることを前提と考えた新しい制度というものは、少し私はいかがなものかなというふうに考えているわけでございまして、これは本体の中でまた議論をさせていただきたいと思うわけでございますので、どうかそれまでにも少しお考えをまとめていただきたいと思うわけでございます。

 きょうは、時間が来てしまいましたので、用意しておりました質問を省略させていただいて、以上で私の質問を終わらせていただきます。

宮澤委員長代理 次に、藤田一枝君。

藤田(一)委員 おはようございます。民主党の藤田一枝でございます。

 さまざまな観点から質疑がいろいろと続きましたものですから、問題点は大体出尽くしたのかなという気もいたしておりますけれども、私は、改めて今までの議論を振り返りながら、少し質問をさせていただきたいというふうに思っています。

 まず、国保法等の一部改正法案の問題点について、これまた改めての話になりますけれども、指摘をさせていただきたいというふうに思っています。

 まず、本法案の中に、「国、地方を通じた税制・財政改革の中で、社会保障分野全体における国の負担のあり方を見直す一環」、これは本会議の総理答弁でございますけれども、その一環として、国民年金の国庫負担比率を二分の一に引き上げる趣旨の法律改正というものを一括提案したという、この点でございます。

 やはりこれは大変大きな問題である、私はそのように思っておりますし、補助金改革を中心とした税源移譲をめぐる三位一体改革の議論と、それから税制改正による基礎年金の国庫負担額の加算の問題というのは、次元の違う問題ではないか、こういうふうに思うわけです。三位一体改革が目指すべきところというのは国の負担の見直しということではないはずであって、そうであったらば、三位一体改革というのは国の負担の地方へのツケ回しということになってしまう、このように思っているわけでございます。

 そして、二番目には、本法案が地方六団体の提案に対する対案として出されてきて、地方分権の推進という視点からの国と地方の役割に対する議論ということが大変不十分なままに、補助率の引き下げであるとか、統合補助金化であるとか、交付金化であるとかということが進められたという点、指摘をしなければいけないというふうに思っています。

 大臣も、この間の質疑の中で、数字合わせではないかという話に対して、結果的にそう見えるかもしれないというようなお話もございました。残念ながら、そういう点が否めない、国の関与を結局そういう形で残して、権限を温存したのではないか、こういうふうに言わざるを得ないのではないかというふうに思っています。

 三番目は、本来、医療制度改革の中できちっと論じられるべきはずの国民健康保険制度の改革を、この三位一体改革の中で行った。都道府県財政調整交付金という裁量の余地があるのかないのかわからない、定かではない、中途半端な補助金の一部負担という形で手をつけたということであろうと思います。

 役割から出てきたのではなくて、三位一体の数字から出てきて、県の関与が持ち出されたことへの不信感というのは大変大きいというふうに思いますし、この点は、昨日の参考人の方々も異口同音に指摘をされていた点であろうというふうに思います。その結果として、医療保険制度改革の全体像がこれからどうなっていくのかということが大変わかりにくくなってしまったのではないか。

 この三点について、あえて指摘をさせていただきました。当然、大臣と見解は大きく異なっているだろうというふうには思いますけれども、問題の所在がどこにあるのかということについてはやはりぜひ御認識をいただきたいと思いますが、その点、いかがでしょうか。

尾辻国務大臣 この三位一体の改革の議論が始まりましたときから、地方団体の皆様方ともいろいろな議論をさせていただきました。そしてまた、この審議が始まりまして、各委員の先生方から随分いろいろな御指摘もいただきました。それは、私どもは、それぞれの御指摘、御意見として重く受けとめなきゃいけないというふうに思っております。

 今いろいろおっしゃった中に、国民健康保険、国保の改革の話もございましたけれども、そうした国保の改革というのは、私は第一歩と申し上げておりますし、先生はちょっと違う観点からの今のお話もありましたけれども、いずれにいたしましても、国保改革を進めていかなきゃならないということは確かなことでございまして、そうした改革の議論は今後とも続いていきますから、今回御指摘いただいたようなことというのは、これは私どもはちゃんと受けとめさせていただいて、今後のまた私どもの、対策を求めていく、対応していくというような中でも生かしていかなきゃならぬというふうに思っております。

 先生の御指摘のことについて、それぞれに私どもの考え方もありますけれども、今の先生の御質問はそれを聞こうというお話じゃなくて、先生方の御指摘に対して私がどういうふうに思っているかという御質問であったと思いますから、意を申し上げた答えにさせていただきます。

藤田(一)委員 ありがとうございます。

 見解はいろいろ違っておりますけれども、問題の所在はぜひしっかりと見ていただきたいというふうに思うんです。

 何で私があえてこういうことを指摘させていただいたかと申しますと、今回、一つ一つの問題が、余りにも個別の問題が多くて、もともと三位一体改革というのは何だったのかなということがわからなくなってしまっている、そんな気も実はいたしたからでもございます。

 特に、その中で問題なのが、やはり国民健康保険制度における都道府県負担の導入の問題であろうというふうに思いまして、これは三位一体改革との関連ということを抜きには入り口が見えないわけでありますから、そういった意味で、このことをしっかりともう一度整理をし直す必要があるのではないかなというふうに思うんです。

 そもそも非常に問題は単純でありまして、社会保障審議会の医療保険部会で医療保険制度改革の議論が始まっていた、しかし、まだ議論は十分に積み上がっていなかった、そこに突然、三位一体改革の補助金改革として国保の都道府県負担の一部導入ということが財政調整交付金という形で入ってきたということだと思うんです。極めて流れは簡潔な筋道ではなかったかというふうに私は思うわけでありまして、そういう形で入ってきたから、みんなびっくりして、一体どうなるんだという不信感が出てきて、議論が出てきてしまったということだと思うんですね。

 そういうふうな形で問題を非常に惹起してしまった、いろいろな形でけんけんがくがくやらなければいけなくなってしまった、この状況をつくってしまったというこの現状について、大臣、どのように受けとめられていらっしゃいますか。

尾辻国務大臣 唐突であったという御意見に対してでございます。

 これまでも再三申し上げてまいりましたけれども、私どもは、この議論というのはもうずっと続いてきた議論だというふうに思っておりまして、そしてまた、地方団体の皆さんも入っていただいたいろいろな場で議論を重ねてきたものだというふうに思っております。したがいまして、おっしゃるように、唐突にこのことが出てきたものではないというふうに申し上げたいと思います。

 そして、きのうでございますか、この場で参考人の皆さん方の御意見もいろいろお聞きになったようでございまして、私が聞いておりますところでは、確かに唐突だというお話はあったようでございますけれども、しかし、その答えに対してはいろいろ評価もしていただいておるようでございます。

 そうした大きな流れの中でということをもう一回申し上げておるところでございます。

藤田(一)委員 大臣は唐突ではないというふうにおっしゃっていらっしゃるわけですけれども、だれも国保、国民健康保険制度の改革議論をする必要がないなんということでは全然ないわけですね。しっかりやらなければいけないからこそ、やはり道筋はきちっとつけなければいけないのではないかということであろうと思うんです。

 この間のやりとりの中で、三位一体改革の中で行えば税源移譲が非常に確実になるんだという御答弁があったわけですね。だから、あえて三位一体改革の中でこの問題を持ち出したんだ、こういうお話だったんですけれども、税源移譲が確実になるということであるならば、例えば一方では、部会の中での議論やいろいろな場面の中で、大臣がおっしゃるように、議論をやろうとしてきた、あるいはぽつんぽつんと話が進んでいたというのであれば、なぜ一年待てなかったのかなと私は思うんです。

 つまり、この補助金改革、税源移譲は十七年度、十八年度ですよね。なぜ一年間かけてしっかりと、税源移譲のことも含めて議論をしなかったのか。入り口をもう少し丁寧にしておけば、この先の話というのが、今どこへ向かうのかわからない、いろいろな議論が出ているわけですけれども、ここは整理をされたんだと思うんです。なぜそこがこんなに、まさに唐突、私はやはり唐突だと思いますけれども、みんな寝耳に水だとか、浅野知事はいろいろな言葉をおっしゃっていらっしゃって、二十時の汽車が十六時の汽車になったとかいろいろなお話がありましたけれども、そういう印象をみんな持っている、だれもその印象を否定していないところに今回の大きな問題があると私は思うんです。

 その点、もう少し大臣、きちっと見ていただきたいと思うんですが、いかがですか。

尾辻国務大臣 これも再三申し上げたことでありますけれども、医療保険制度の改革に向けて今私どもはその歩を進めておるわけでございますけれども、そもそもは平成十五年三月に閣議決定をされました基本方針がございますから、その基本方針に基づいて動き出しておるわけでございます。

 したがって、先ほど来申し上げておりますように、関係審議会でもいろいろな議論が行われてまいりましたし、今日まで、これも再三申し上げておりますように、地方の団体の皆さんにも参加をしていただいて議論してきたわけでございますから、決して唐突ではなかったと私どもは思っておるわけでございます。

 もう一回申し上げますけれども、平成十五年三月閣議決定されて、そこからずっと議論してきておりますから、その議論の積み重ねだというふうに思っております。

 そして、十八年度には、私どもは、新しい医療保険制度ということも御提案申し上げようと思っておりますから、そのタイムスケジュールを考えますと、ちょうど三位一体の改革という話が出てきて、これも先生に言っていただいたように、税源移譲ということがあるからと私どもは申し上げておるわけでありますが、そうした機会にまず一歩進めておきたい、進めておくことがいいことだというふうに考えたということでございます。

    〔宮澤委員長代理退席、委員長着席〕

藤田(一)委員 考え方が、基本計画が出ているから、閣議決定されているからいいんだという話にはちょっとやはりならないんではないかなと。この議論というのは非常に大事な議論ですから、やはり丁寧に積み上げていくということが必要であって、あえてやられたということであれば、そんなにインパクトを持っていきなりやらないと動かないことだったのかなというふうにも思ってしまうわけで、決してそうではなかったというふうに思うんですね。もう少し合意形成に丁寧な作業をすべきであったということを、指摘をまず最初にしておきたいというふうに私は思います。

 その上で、もう少し具体的にいろいろとお話をさせていただきたいんですけれども、これは先日大島議員も厳しく指摘をされていましたけれども、今回、やはり三位一体改革を前提にした都道府県負担導入であって、暫定措置なのか恒久的措置なのかという話がいろいろな議論の中でございました。

 今、知事会や市町村会、それぞれにいろいろ懸念をしているわけですけれども、この間の大臣の御答弁というのは、あくまでも医療保険制度改革の具体化に向けた第一歩と考えている、これは恒久的な措置なんだというふうに述べられているわけです。この改革に向けた第一歩の、向けたというぐらいだと暫定という部分も包含するような解釈も成り立つわけですけれども、恒久的措置だということになると、これはもう全然暫定とは違うという話だというふうに思うんですね。

 そういうことになれば、やはりこの問題というのは、今回の都道府県導入というのは、もう三位一体改革云々ということではなくて、国保制度改革の議論としか言いようがないということになるんだと思うんです。その点をやはりはっきりさせておかなければいけない、これから先の議論を整理していくためにも、そこはしっかりとはっきりさせなければいけないというふうに思うんですね。

 何でかといいますと、都道府県の財政調整交付金の問題にしても、当初は、配分に当たってガイドラインを作成するということであって、しかも、現実的にこの調整交付金の弾力的運用というのは今日の国保財政の現状からいけば非常に厳しい、そういった意味では、都道府県の裁量の余地というのは非常に少ないのではないかというふうに思われていたわけです。

 ところが、これがいろいろな説明の中で、都道府県みずからの判断と責任によって都道府県内の市町村間の財政調整を行うことにより地域の実情に応じた保険運営を促進する、これによって国保財政の安定化を図る基盤ができるという答弁が、説明がいろいろ出てきたわけです。これで財政調整交付金の権限をめぐる議論ということがにわかになってきた、出てきた。

 そしてさらに、権限を持って財政調整をやれということになってきているわけですから、それならば、国保制度における都道府県の位置づけということが当然そこで問題になるわけです。これから保険者を都道府県とするのか、それとも都道府県を単位とした広域化でやっていくのか、その先が全然見えないではないか、そのことによって、権限の範囲というものも、あるいは今回の交付金の配分の判断というものも違ってくるではないか、これはずっとこの間指摘があったことなわけですね。非常にそこが、先行きがというか、わからない、不透明なままにこのことがどんどん進められていっているということです。

 しかし一方では、これは、都道府県にとっては、まさに都道府県が保険者になるのかどうかということ、寝耳に水みたいなところもありますけれども、市町村からすれば、大臣も再三言われているように、都道府県の役割ということが非常に重要だ、そのことが入ったということは評価もできるんだ、こういう意見も当然あるわけです。しかし、また同時に、市町村にとって、余り県が市町村と協議もなしに独自の裁量でやってもらっては困るんだという心配もある。

 すべて、議論が全く未成熟のままに動いているから、そういう問題がどんどん出てしまうわけです。本来そこはきちっと押さえた上で、この都道府県負担の導入、財政調整交付金のあり方ということが入ってこなければいけなかったのに、余りにもそれが未成熟なままに議論が進んでしまっている。

 これは、きのう参考人のお一人の方も言っていましたけれども、順序が逆である、手順が違っているということだと思うんです。先に税源移譲額があって、そしてその後に制度の問題が入ってきているということではないかというふうに私は言わざるを得ないんですね。そのことが、そこの大もとが違うから、こういう議論のずれとか、今になってどうなのかということがたくさん出てきている。

 だから、もう一度ぜひ、この順序というものをもとに戻していただきたい。そして、問題を整理してきちっと議論をする。本当に大事なことでありますから、このことをもとに戻さないままに議論を進めても、不信感だけが先行するということだと私は思いますけれども、大臣、その点、いかがでしょうか。

尾辻国務大臣 今、もとに戻すというお話がございました。具体的にどういうふうに言っておられるのか、この後でも御説明いただければ、私もまたそれについてのお答えもできようかと思いますので、そのことはまずお願いをしておきまして、改めて申し上げたいと存じます。

 先ほど来言っております平成十五年三月の閣議決定なんですけれども、ここでどういうふうに言っておるかといいますと、「低所得者を多く抱える市町村国保の保険運営の安定化を図りつつ、財政調整交付金の配分方法の見直しや都道府県の役割の強化を図る。」十五年の三月に明確にこういうふうに言っておりますので、そして、これを前提にしていろいろな議論をしていただいてきたわけでございますから、このたび、こういう形で、この十五年三月の閣議決定で述べられておることを一歩進めた、こういうことでございます。

 したがって、そういう流れの中でやってきたことでございますから、何回も申し上げておりますけれども、決して、唐突であるとか、議論が不十分なままこのことをいきなりやったということではないというふうに考えておるところでございます。そして、これもまた繰り返し繰り返し申し上げておりますけれども、ちょうど税源移譲という話がある、この閣議決定のこうした述べておることとがちょうどかみ合うときだというふうに考えたわけでございます。

藤田(一)委員 もとに戻すというのはなかなか、既にこうやって法案の審議が進んでいますから、これを別々に切り分けて提出し直したらいいなんという話は難しい話だと思いますけれども、気持ちはそういう気持ちはありますね。問題をわかりやすくするという意味においては、三位一体の税源移譲問題はそれでしっかり議論をする、国保制度は国保制度できちっと議論をするということは、私は必要なんじゃないかというふうに思います。

 ただ、今進んできている議論の中では、基本計画があってやってきているからといっても、不信感という言葉をあえて使わないのであれば、要するに、皆さん、これから議論をしようと思っていた、そういうことが基本計画の中にも盛り込まれていろいろ指摘をされてきたから、これからしっかりと議論をしようと思っていたことが、いきなり背中を押されて、さあ急いで今からやりましょうというふうな気分になっていることだけは事実だと思うんですね。そのことがやはり問題なわけですから、そこはきちっと説明をすべきではないでしょうか。

 極端に言えば、三位一体の入り口の、税源移譲の入り口の議論から入ったけれども、これは大臣が言われるように、国保の今回の措置というのは、医療保険制度改革の前倒しの議論なんだ、来年からやると言っていたことを一年早めているんですよと言うなら言うで、はっきり説明をするということが今必要なんだと思うんです。その前提をきちっと押さえないと、これから先まだ、暫定だ、恒久だということが繰り返されてしまうんですね。そこを私は、私どもの気持ちとしては、これは取り下げて出し直すべきだという思いはありますけれども、それはあえておいておいて、そこをきちっと整理をしてもらいたいということでございます。

尾辻国務大臣 先生が議論をやり直すべきだというふうにおっしゃった意味が、大変現実的におっしゃっておられて、もう少し言うと、しっかりもう一回議論を積み上げていくべきだというふうに今おっしゃったと私解釈いたしましたので、そういう意味では、議論をきっちり今後また積み上げていくべきだということについては、私どももそうすべきだと思っておりますということを改めて申し上げたいと思います。

 そこで、恒久的か暫定のものかというお話もございましたけれども、これは、先ほど先生も言っていただきましたように、十八年度に私どもが御提案申し上げるものに向けての第一歩ということでございますから、そういう意味では、今後きっちり固まっていくものの第一歩という意味では、あえて恒久的なものか暫定のものかというふうにお尋ねいただきますと、恒久的なものでありますというふうに申し上げるところでございます。

 そして、さらに申し上げますと、先ほどちょっとお触れになりました財政調整交付金の話でございますけれども、これは、国と都道府県それぞれ役割が、調整交付金の役割の違いもありますけれども、今どういう作業をしているかといいますと、ガイドラインに向けての作業も、都道府県を中心にしていろいろ御検討いただいておるわけでございますから、そうした議論というのは、先生もお話しのように、きっちり今後詰めていくべきでありますし、今詰めていく作業をいたしておりますということでございます。

藤田(一)委員 切りのない話になるんですけれども、そういう意味では、もう前倒しして事が動いているんだったらば、それはそれとしてきちっと説明責任を果たしていただいて、保険者機能をどこに持たせるかということはこれからの話かもしれませんけれども、しかし、都道府県がしっかりとそのことを理解するような説明責任を果たしていただきたい、このように思うところであります。

 今、大臣の方からガイドラインのお話も少し出ましたので、ちょっとこの中身についてもお尋ねをしておきたいと思っているんです。

 この間、ガイドラインは全くの参考ですというお話が繰り返し出てまいりました。参考ですということで、一方で、調整交付金の配分は都道府県の自治事務であって、自主的、主体的に決めるもので、法的拘束力もない。そして、条例で配分方法を決める際の参考資料だという説明も、これは各都道府県の方に行われているわけなんですね。

 しかし、都道府県との検討の場を設けた上で作成するということも繰り返し言われているわけです。参考資料ということであれば、例示をいろいろ示してすればいいのかなと思うんですけれども、そこであえて、都道府県との検討の場を設けた上で作成をしていくということを強調されている。と同時に、これはことしの一月二十六日の医療保険部会で出された資料でありますけれども、そこでの説明資料では、総務省、厚労省と都道府県三者でもって協議をしていく、ガイドラインの作成について協議をしていくということが明記されているわけです。

 この点がどういうふうになっているのか、これはどういう意味合いなのかということについて、少し御説明をいただきたいと思います。

水田政府参考人 お許しを得まして、御答弁させていただきます。

 先生御指摘ありましたとおり、ガイドラインの作成に当たりましては、地方三団体、全国知事会、市長会、町村会と、それから総務、厚生労働両省による検討の場を設けて作成することとしてございます。中心的な存在は全国知事会でございまして、知事会と地方団体の間で策定に向けた調整を行っているという手順で進んでいるわけでございます。

 当然ながら、このガイドライン、参考資料というふうに申し上げましたけれども、国の調整交付金のあり方と都道府県調整交付金のあり方、それぞれの関係をどう考えていくかということは、やはり都道府県が条例を定める際にも必要なことだと思っておりますので、私どもも入った形でお話をさせていただき、ガイドラインをつくっていく、こういうプロセスを経ようと思っているところでございます。

藤田(一)委員 単に参考資料なんですよ、全く自由にやっていただいていいんですよ、何をやってもペナルティーもかけませんよというのがこの間の御答弁なんですけれども、協議はしっかりやると。協議することは大事なことではありますけれども、何となく、やはりそこにいろいろな拘束性だとか、このとおりにやりなさいよという誘導があるのかなというふうに感じるような、誤解があるのではないかなというふうに思います。

 特に、この間、普通調整であるとか特別調整の考え方ということを具体的に例示されているわけですよね。国はこういう形で調整しているけれども平均値しかとれないから、都道府県の場合は市町村格差ということがあるから、その辺もきちっと見ながらこうすべきだというような形で、かなり事細かにいろいろな例示を出してきているわけです。そういうことが非常にまたどうなのかなという感じになってきてしまっていて、都道府県は、さっき言いましたように、将来の県の役割ということがどうなるのかということをとても気にしているわけです。

 ここで一歩踏み込んでいくということが、でも、また保険者の問題というのが違ってくるならば、県が踏み込んだことがどういうふうになるんだろうか、また変更するということになれば、それは非常に不安定なものにしてしまうことにもつながりかねないということで、そういう意味では、県の役割の将来というのがはっきりしないということも含めて大変悩んでいるわけですから、そういうことはぜひ現実をしっかり踏まえていただいて、協議をするに当たっても、やはり県の役割ということをもう一度きちっとさせるということがないと、何だかんだ言っても県は踏み込めないわけですよね。そして例示はいろいろ言われてという話になるので、ますますどうしたらいいかという話になってきているということであります。

 具体的なガイドラインの中身一つ一つは、もう時間も足りませんのでお尋ねしませんけれども、ぜひ現状をしっかり踏まえていただきたいというふうに思います。

 その上で、国保制度の改革についてはもう言わずもがななんですけれども、先ほどから大臣が、唐突ではないんだ、これは閣議決定にのっとって十五年からずっと議論をしてきているんだというふうにあえておっしゃられたものですから、一言だけ触れさせていただきたいと思うんですけれども、今回のこの都道府県負担の導入ということから見ても、導入されたことでいろいろなことが出てきたことからもわかるように、やはり都道府県の役割に関する共通認識というのは十分つくられてはいなかったということだと思うんです。

 それで、保険者機能の問題であるとか、あるいは政管健保との問題であるとか、たくさんの課題があるわけでして、そのことが今回の議論の中からも明らかになっているわけですから、まず大切なことは、制度全体をどういうふうにしていくのか、全体の構想というものをどういうふうに示していくのかということが基本である、そのための議論の道筋をつけなければいけないということだと思うんですね。そこをぜひしっかり踏まえていただきたいと思いますけれども、その点についてのお考えをまずお聞かせいただきたいと思います。

尾辻国務大臣 医療保険制度をしっかり見直して持続可能なものにしていく、この議論を医療保険全体を見据えてきっちりやるべきだという今のお話は、もう私どもも全くそのとおりだと思っております。そして、それぞれ幾つかの制度があるわけでございますから、それをちゃんと組み立てていく、整合性を持たせていくという作業はしっかりさせていただきたいと思います。

 先ほど来のお話の中で、誤解があってはいけないと思うものですから、あえて交付金の話をさせておいていただきたいと思います。

 私どもが今申し上げておりますのは、国の財政調整、これは全国の市町村全体の格差を見ながらやらせていただきます、国がやる部分がありますから。それから今度、都道府県にお願いするのは、都道府県内での格差に着目して調整をしてくださいということをお願いしておるつもりでございます、大きな考え方をまず申し上げます。

 その中でガイドラインという話も出てきますけれども、あくまでも、都道府県に条例をつくっていただいて、条例に基づいてやっていただくわけでありますから、条例は各都道府県ごとにおつくりになるわけでありまして、都道府県のまさに主体的な判断でおやりいただくということになります。決して、よく言われる、今度また私たちが、都道府県の裁量をといいながらはしの上げおろしまで物を言うつもりではないということを申し上げたところでございます。

藤田(一)委員 この調整交付金の問題というのは、やはりどうしても県の責任の問題というか、これから県がどういうふうな役割を果たすかということに尽きてしまうんですね。そこがはっきりしないと、県はやはり踏み込みにくい。条例をつくるにしたって、当然これはそれぞれの地方議会の中で問題になるわけですから、その説明責任を果たさなければいけないということからしても、今ここで議論をこの間ずっとしてきたようなことが、恐らくこれから各県の議会の中で問題になってくるんだろうと思うんですよ。そういう意味で、非常にやりにくいというか踏み込みにくいという悩ましいところに実は来ているということ、それはやはりしっかりと認識をしておいていただきたいということがまず一つなんです。

 それから、そうなってくれば、これからの問題として、この都道府県の財政調整交付金の問題だけではなくて、あるいは、国と県の役割の問題ということからいけば、国の調整交付金の問題もあるわけですよね。この両方の財政調整交付金のあり方についてもしっかりと検討を始めていかなければいけないというところに来ているということで、またもとに戻ってしまうんですけれども、だからこそ、三位一体の税源移譲だなんという話でこれをやってほしくなかったということになるということでございます。

 この辺は本当に堂々めぐりの議論になるものですから、私もきょう質問に立つときに悩んでしまって、もう聞くこともないし、言っても同じなのかなというような思いも実はしながら、しかしめげずに言わなければと思ったところでございますので、そこをしっかりと受けとめていただきたいというふうに思います。

 時間が余りないので先に少し進ませていただきたいんですが、次は、国保の都道府県の負担の問題じゃなくて、今回の法案の中にある交付金化の問題について少しお尋ねをしたいと思っています。

 今回、地域介護・福祉空間整備等交付金というものができたということでありまして、これもいろいろと申し上げたいことはあるんですが、まず、ここに地域再生の視点が今回入ってきたわけですね。それで、まず、この地域再生計画、これは国が認定していくわけなんですけれども、この地域再生計画の認定手続との関係はどういうふうになっていくのか、これはちょっと簡単に御説明いただきたいと思います。

中村政府参考人 地域介護・福祉空間整備等交付金と地域再生との関係についてでございますが、私どもの交付金は、さまざまな趣旨がございますけれども、都道府県や市町村が地域の実情に応じて計画に基づいて福祉、介護基盤の整備を図っていただくということは、ある意味で地域再生に資する制度になるのではないかと思っております。

 私どもの方は、市町村の交付金を交付するに当たって、一定の指標に基づいて計画を評価した上で、評価が高い順に交付していくこととさせていただきたいと思っておりますが、その指標の一つとして、その計画が内閣府による地域再生計画の評価がされているものであれば、それについても私どもの評価の結果に加味させていただきたいというふうに考えております。私ども、そういったことを内閣府の方に対しましても申し上げておりまして、地域再生計画の評価を加味することは、本年二月の地域再生本部決定の地域再生プログラムに盛り込まれているというふうに承知しております。

 なお、この地域再生の方が動き出すのは十八年度からと承知しております。私どものこの交付金制度は十七年度も実施いたしますので、十七年度についてはこの地域再生計画の評価結果を加味するということはないということになると思います。

藤田(一)委員 この地域再生計画の問題も非常にいろいろわかりにくい部分があったんですけれども、内閣府の方でお尋ねをしたときに、地域再生計画のプログラムの中にこの交付金は入っているわけですけれども、厚労省の方が全面的に協力しますよと言ってくれていますというお話を伺ったわけなんですね。

 それで、今、地域再生計画に入っていればポイント加算するというような御説明もあったわけでありますけれども、今年度は、十七年度は時期がずれますから厚労省の交付金という考え方だけということですけれども、十八年度からになったときに、地域再生計画にのせずにこの交付金を申請するところもあるだろうと思うんですね。すべてが地域再生計画にのせて手続してくるということではないというふうに思うんです。

 ところが、地域再生計画に入っている方が優先する、加算をするというふうに、どちらも、内閣府も今の御説明もなっている。そうすると、交付金だってやはり上限があるわけで、来たものを全部オーケーという話にはならないわけですから、そのときには地域再生計画に入っていた方が有利だということになるということですかね。競合したときに、どちらをとるかといったときに、地域再生計画に入っている方が優先される、こういう理解になるんですけれども、それでよろしいんでしょうか。

中村政府参考人 お答え申し上げます。

 例えば、市町村交付金の採択指標として、私どもの方としてどういうことを考えているかということをまず申し上げた方が御理解いただきやすいのではないかと思って、申し上げます。

 まず、高齢者の介護基盤の整備でございますので、当然……(藤田(一)委員「簡単でいいです」と呼ぶ)はい、わかりました。

 六十五歳以上人口とか高齢者の介護ニーズとか、そういう客観的指標がまず私どもの採点基準になります。そのほか政策的加算として、ただいま申し上げました内閣府の地域再生計画の評価結果もございますが、例えば、私どもとしては、高齢者や地域住民の方が参加するコミュニティーづくりを目指したものであることとか、既存社会資源を活用することなどについては加算をしたいと思っておりますし、サービス拠点相互の連携のネットワーク形成をすること、また地域密着型サービスの拠点の整備を中心にすることなど、さまざまな私どもの加算制度がありますので、A計画とB計画、それぞれ出っ張りがあると思いますので、地域再生計画に入っていることだけが決定的に有利というふうになるとは考えておりません。

藤田(一)委員 そうなってくると、これは内閣府にもう一回聞かなきゃいけない話になってくるんですけれども、地域再生推進室、本部ですか、そこの話になると、これはもう各省庁とちゃんと協議をした、そして全面的に協力をしてくれることになっていると。ワンストップですよね。地域再生計画を上げてくる、内閣府がワンストップで受けとめる、そして、それについての評価については各省庁と協議をするけれども、各省庁がノーと言うことは想定していないんだという話なんですよね、協力をしていただけるものとなっているということですから。

 今のお話だと、二つ上がってきた、どっちにするか、いろいろな加算の仕方がある、総合的に判断をして、地域再生計画にのってきたものでない方がもしかしたらいいと判断をすることもあり得るという話なわけで、地域再生計画にのっているからといって決して有利になるものではないというふうに私は受けとめたんですが、それは少し極端な受けとめ方なんでしょうか。

 大臣、そこは、これはやはり非常に重要なことだと思うんですよね。そうでないと、みんな地域再生計画にのせなきゃいけないという話になってきてしまいますよね。

尾辻国務大臣 地域再生計画、再生プログラム、これに御協力申し上げますということは私どもも言っておるわけでありますから、そのとおりであります。

 ただ、今局長がお答え申し上げましたように、では、そこにのっているから一〇〇%私どもが私どもの判断を入れずにそのとおりしますという話では当然ないわけでございまして、私どもの判断はやはりきっちり入れさせていただきますということを今局長は答弁したものでございます。

藤田(一)委員 実は十六日に、私、内閣委員会でこのことを質問させていただいたんですね。そのときには、そういう意味では、非常にとにかく省庁を乗り越えてやっていくんだからという強い決意がそこはあったわけでして、本当はもうちょっとここは細かくやりとりをしたいんですけれども、非常に大事なことだというふうに思うんですね。

 内閣府の方としては、新しき制度としてやろうとしていて、プログラムをずっとつくった。それで、そのプログラムというのは、各地方団体からいろいろと提案募集をしたということですよね。ですから、今回この交付金の問題がプログラムに入ったのも、そういう地方団体から、地方から、補助金の使い勝手、福祉に関するあるいは施設整備に関する補助金の使い勝手をよくしてほしいという提案がたくさんあったわけですよね。だからのったんですよね。それがなければ、あのプログラムにこれはのらないわけですよね、この交付金は。

 全く内閣府とは関係なく、厚労省の今回の税源移譲、三位一体の議論の中での交付金として出てきている話ですよね。でも、あそこのプログラムにのったということは、内閣府が行った提案募集の中からそういうものがあって、そして協議をした結果としてあそこにのせたということですよ。これはそういう説明です。間違いありますか。

中村政府参考人 お答え申し上げます。

 先生のおっしゃることで間違いありません。

 私ども、交付金を構想していましたときに、内閣府の方でも地域再生プログラムをつくる、それで、地方公共団体からヒアリングをした際に最も多かったのが、私ども関連の福祉プロジェクトであったわけです。そこで、私どもは、三位一体の改革の中で、社会福祉施設整備費のあり方についても地方公共団体からも御指摘をいただいているということで、経過としては、まさに私どもと内閣府、内閣とも相談しながら、地域再生プログラムというのはあり得る、その重要な柱として福祉、介護基盤整備の問題があると。

 したがって、私どもは、この法律で制度化するということを考えて提案を申し上げているわけでございますし、地域再生計画と連携してやっていくということについては、まさにそういった意味で、私どももノミネートしていただいているということですから。

 先生は、御自分でもやや極端かもしれませんというお話があって、何か両方の間でぎりぎりなった場合の二者択一が迫られるのではないかという観点から御指摘をいただいておりますが、私ども、そうやって、この私どもの制度が生まれ育ってきた経緯、地域再生本部に地方公共団体の方からたくさん手が挙がり、まさに我々がメーンであったということを考えますと、今、政策的加算で私ども申し上げていますが、まずプロジェクトの採択については問題がないんじゃないかと。私どもは、そういう前提の中で、その際、加算として、地域再生プログラムで評価結果があればそれをさらに反映させていただくということを申し上げているわけでございます。

藤田(一)委員 よくわからないんです、正直言って。ただ、余り細かく聞いている時間はないなと思っているんですけれども。

 やはり、そうであれば、競合したときはどうなのかなということはありますよね。そこは非常に問題があるというふうに思いますし、それから地域再生計画の方も、もちろん、関係行政機関の長の判断ということは当然入っているわけですけれども、そうなってくると、そこで両者がけんけんがくがくになると非常に地域再生計画そのものも崩れるんだろうという心配もありますし、もうちょっときちっとわかりやすく、これは調整をしていただきたいなというふうに思います。

 地域再生計画を通して申請を上げてくるものと、そうじゃないものもやはりあるだろうと思うんですよね。そのときの評価の問題というものが、基準が、ポイント加算の問題だというふうにおっしゃっているんだけれども、地域再生計画がやはり優位に立つだろうというふうに私は内閣府とのやりとりでは思ったわけです。

 ですから、そうであるならば、やはりそれはきちっと説明しておかなければいけないということだと思いますし、そこら辺の整理がまだ十分ではないんじゃないかという印象を率直に持ちましたので、ぜひこれはもうちょっと整理をしていただきたいなというふうに思いますし、各地方自治体への説明のときもきちっとわかりやすくしておいていただきたいというふうに思います。

 ちょっとほかのこと、もう少し交付金の話もしたいので、もし機会があればまた別の機会にこのこともお尋ねをしたいと思いますから、もう少しぜひわかりやすく整理をしていただきたいということをお願いしておきたいと思います。

 それから、問題は、三位一体関連での交付金のあり方の問題でございます。

 交付金というのは自由度を高めるということで、自由度を増すということでは一歩前進というふうに評価できる部分もあるんだろうと思いますけれども、しかし、自治体が策定した計画に基づいて国が判断をしていくというこの手順、国が全体的にコントロールをしていくというこの手順というのはやはり変わっていない。やはり、地方分権の趣旨からしたら、本来であれば一般財源化をするということが筋ではないんだろうかということで、税源移譲の隠れみのになるんじゃないか。これは地域再生計画の議論のところでも、そのことは随分いろいろありましたけれども、全部が交付金化して済むのかということになるわけでして、そういった意味で非常に懸念があるわけです。

 今後、この交付金化ということについて、厚労省としてはずっと続けていくおつもりなのか。今回交付金化をしたこの新たな福祉空間整備等交付金というものも、ずっと交付金化のままなのか、あるいは当然どこかの時点で税源移譲の対象になっていくのか、いろいろなお考えがあると思いますけれども、あるいは新たな、まだ税源移譲していない補助金について今後交付金化という考え方で整理をしようというふうにされているのか、その辺の大臣のお考えをお聞かせください。

尾辻国務大臣 これはもう十分おわかりの上でお聞きをいただいておるわけでございますが、補助金というのは一つ一つの、例えば施設ができる、その施設ができることに対して私どもがこれだけの補助をしますというふうに言ってきた。それを、では、この地域全体で交付金としてお出しをしますから、その地域の裁量でいろいろなことを、大きい施設を一つつくるとか二つつくるとかということではなくて、小さい施設がいっぱいある方がいいというふうに御判断なさればそうしてください、そういう裁量にお任せしますということで交付金化ということをさせていただいたわけでございます。

 今後どうするかというのは、これはそれぞれの個別の事業によって答えは変わってくると思います。これも再三申し上げておりますように、定着、同化したというふうに判断される事業については補助金を廃止して一般財源化ということにもなるわけでございますし、また、そうでないもの、やはりまだ交付金化でやらせてくださいというものもあろうかと思います。

 特に、そうした中で、一つだけ申し上げておきたいことは、施設について言いますと、つくっていただくと今度は運営費をどうするかということがあります。今のところ、運営費が全部国にかかってきます。そこで、その運営費まで私どもは見なきゃいけませんので、その後のことを見なきゃいけませんから、そうするとやはり、地方で施設をおつくりいただくときに、私どもとしては、施設ができるとその後の運営費がかかる、その今後の運営費ということを見ながら判断もせざるを得ないというところがございます。そうした中で、今後それぞれに判断させていただくということになろうかと思います。

藤田(一)委員 判断基準、つまり補助金を税源移譲するのかしないのかとか、あるいは、今の補助金をでは交付金化にするのかどうかとかという、交付金そのものが確かに自由度を高めるというか、ある意味で手続も簡素化するとかいうことは事実としてあるわけですから、交付金全部がだめだなんという話をする気はありませんけれども、やはりこれはステップ・バイ・ステップの話なんだろうというふうに思うんですね。そういう意味で、やはりこの三位一体改革の議論の中で問題になっているのは、どういう判断基準に基づいて税源移譲をするのかしないのか、交付金化するのかしないのか、こういうことなんだろうと思うんです。

 この間、大臣は、事業が同化をしている、定着をしているということについては税源移譲してきたんだというお話だったんですけれども、ずっと一つ一つを見てみますと、果たしてそれで一貫性がとれているのかなというふうに思いたくなるようなことも実は率直に言ってございます。

 公立保育所の問題を前にも議論させていただいたことがありますけれども、民間の保育所の国庫補助負担金というのはずっと温存をされているということもあるわけでして、事業の定着ということからすれば、これはやはりしっかり定着をしているんだと私は思うんですね。

 そういう意味で、一つ一つをあげつらう気はありませんけれども、その辺の判断基準について、もう少しわかりやすくお示しをいただきたいと思います。

西副大臣 お答え申し上げます。

 今回、厚生労働省関係の補助負担金は、地方六団体から提案がありましたのは四十七項目の提案がありました。金額にして九千四百億円ということでございます。これを廃止、税源移譲してください、こういうことでございました。

 もう当然のことですが、社会保障関係の施策というのは、すべてにわたって国と地方がお互い協力し合いながら重層的に役割分担をしていく、こういう形で推進していくことが大変重要だというふうに考えておりまして、そんな意味で、この多くの六団体の提案の中で、例えば養護老人ホームの、これは設備じゃございませんで、運営費の面ですが、こういうことにつきましてはもう長い長い歴史的な経験もございます。そんなことから、地方六団体にこの事務をやっていただこう、いわゆる定着している、同化している、こんなことでございます。

 そのほか、一歳半健診、三歳健診とか、これも各都道府県、ほぼ軒並みきちっとやっていただいている長い長い経験もございますし、そんなことを主にピックアップいたしまして、その件については廃止ないしは税源移譲、こういうことにさせていただいたわけでございます。

 一方で、残す、私どもの方から見て、ぜひとももう少し国のレベルで残して政策的な判断をしたいというものがございまして、これは、一定水準のサービスを地域格差をなくすということにまだ至っていないと判断されている、そういうものでございまして、もう少し国家的な事業としてサービスを継続し、整備をしていきたいということでございます。例えば少子化対策、これは本格的に今力を入れ始めたところでございます。まだ地方の事務として同化定着するには至っていない、こんな判断をして補助負担をしておりまして、廃止、税源移譲というのは今回は難しいのではないかという判断をいたしました。

 しかしながら、こうした補助負担金につきましても、地方六団体の提案を真摯に受けとめて、地方自治体の裁量性、創意工夫の余地を拡大するという観点から、二十三項目、これを十本にまとめたんですが、三千百億円の補助負担金を再編いたしまして、先ほどから御議論の地域介護・福祉空間整備等交付金、それから次世代育成支援対策交付金という形で交付金化、統合補助金化ということにさせていただいたという次第でございます。

藤田(一)委員 時間がなくなってまいりましたので、少し簡潔にお尋ねしてまいりたいと思います。

 今、同化定着の判断の基準とかいろいろとお示しをいただきました。その御説明そのものはわかるわけです。しかし、問題になるのは、その判断を国がやっているということなんですね。国の方が判断をされている。この事業は同化定着している、少子化はこれからの課題なんだから、まだ国に残して国がきちっと政策誘導しなければいけないんだ、こういう形で判断をされているということなんです。

 要するに、問題は、やはり国と地方の役割というもの、役割分担というものをどう整理していくかという議論をしっかりやるということが根本になければいけない。その判断も含めて、今回は地方六団体からは提案がありましたけれども、いつもいつも提案があるのかどうかということもわかりませんし、協議の場も、今回つくられましたけれども十分でないということからすれば、もう一回ここはしっかりと、そういう議論の場というか、協議をすることを考えていかなければいけないんだと思うんですね。

 前に大臣が御答弁なさったんですけれども、補助金は確実な事業の実施に有効な手段だというお話がございました。そして、だけれども、はしの上げおろしまで口を出すのはいかがなものかということで交付金化ということも出てきているんだ、こういう御説明もあったわけです。

 これは、補助金がなぜだめなのかといえば、補助金をまさに有効な手段にしているのは補助金等の適正化法ですね。この話はしませんけれども、適正化法が問題なんです。交付金も適正化法は適用されるわけですよ。そういう意味では、やはりコントロールをしていることに変わりはないんですね。そのことはしっかりと認識をしていただきたいなというふうに私は思うんです。

 新たな政策課題について国が牽引役になるということは否定するものではありませんし、必要だと私も思っています。それをどうやってやるのかということで、従来のような補助金でコントロールするのではなくて、きちっとした形で行政水準を担保していく、こういう仕組みをつくることが今求められていると思うんです。

 前回の臨時国会のときにも私同様の質問をさせていただいたんですけれども、交付金も一つのステップで、その次の目標をしっかり定めなければいけないわけですし、そういうことをどうやって整理していくのかということについて考えるときに来ているだろうと思うんですね。補助金であろうと交付金であろうと、それが、お金があるから事務事業というものがあるのではなくて、地域の住民のニーズというものがあるから事務事業というものができてくるわけです。ここをやはり押さえなければいけないと思うんです。

 そして、それをどう評価していくのか、あるいは、さらにそれに国が考えている政策というものをどういうふうに加味して誘導していくのか、その関係づくりということを、私はもうそろそろ、今までは補助金でよかったんですよ。補助金で一つ一つきちっと網をかけて評価することができたから、違うことをやろうとしたら、それは違うといって補助金カットすればいいだけの話だったわけですけれども、あるいは政省令で縛ることができたわけですけれども、もうそうではないという形になってきているわけですから、そこの仕組みづくりということをやはりきちっとやる。国と地方、つまり厚労省と各自治体というようなことが、政策評価の仕組みづくりということをきちっと住民を基本に据えてやっていくようなことを考えていく、知恵を出し合う、そういう場をつくる必要があるのではないか。

 この三位一体改革で出てきたことは、まさにそのことの堂々めぐりになってきているわけで、やっと六団体と政府との協議の場ができたけれども、その先の見通しも定かじゃないということですから、まずは率先して、私は、こういう具体的に暮らしに密着していく、人々の、国民の命に、健康にかかわる政策を扱っている厚労省こそ、その辺の国と地方の役割の分担、どうやったらいいのかということについて考えていただきたいというふうに思うんですけれども、いかがでしようか。

尾辻国務大臣 お話を伺いながら、地方分権と社会保障、これをどういうふうに整理するかということだと思ってお聞きをいたしておりました。

 そこで、先生が言っておられること、これは、とにかく地方の意見をよく聞きながらやっていくべきだ、特に地域住民の、住民の皆さんのニーズに沿って社会保障を進めていくべき、これももうそのとおりでございます。

 ただ、私ども国の立場からいいますと、全国民に一定水準のサービスを保障するという社会保障の大きな役目がございますから、そうした中で、国全体を見ていなきゃならない。それが判断できるのはまた国しかないわけでございますから、国全体を見られるのは国しかないわけでございますから、その役割をきっちりと果たしながら、今後、本当に、これもいつも申し上げておりますけれども、社会保障というのは国と地方が手を携えないと何もできないものでありますから、きっちりと今後とも連携を深めてまいりたいというふうに考えます。

藤田(一)委員 時間が来ましたので終わりたいと思いますが、一点だけ要望させていただきたいと思います。

 今大臣が、しっかりと手を携えて社会保障の問題もやらなきゃいけないと御答弁いただきました。この三位一体改革の次の問題として、生活保護費と児童扶養手当問題という悩ましい問題が出てきています。この問題についても、制度の議論は大いにやらなければいけないと思っていますので、制度の議論をしっかりやるということを先行していただきたい、今回の国保のように、手順が違うというような話にどうかならないように進めていただきたいということを強く要望して、終わりたいと思います。ありがとうございます。

鴨下委員長 次に、福島豊君。

福島委員 大臣、副大臣、大変御苦労さまでございます。大臣、参議院の方の本会議があるようでございますので、どうぞ御退席なさってください。

 私の方からは、介護保険法施行法の改正案、この委員会におきましても繰り返し議論がなされたところでありますけれども、その基本的な考え方、そして今までの経緯ということについて、きちっと確認をしておきたいというふうに思っております。

 旧措置入所者の負担軽減措置の継続について、その必要性が果たしてあるのか、また、介護保険法施行後の入所者との公平性の確保という観点からも問題があるのではないか、さまざまな指摘がなされたわけであります。本改正案では、軽減措置を五年間延長するという規定になっておりますけれども、その妥当性並びに必要性について、政府の考えを確認したいと思います。

 まず初めにお尋ねをしたいのは、介護保険法の施行に当たりまして、五年前のことでありますけれども、旧措置入所者の負担軽減措置を講じた理由というものはいかがなものでありましょうか。

尾辻国務大臣 介護保険制度の施行前から措置制度のもとで特別養護老人ホームに入所しておられた方は、所得が低く、応益負担導入による利用料の負担が困難な方が相当おられるということが見込まれておりました。それからまた、各方面からの御要望も強かったこともございます。

 こうしたことを踏まえまして、利用者負担について従前の負担額を上回らないようにするとの政策的な判断を行いまして、負担軽減措置が国会の議決を経て、介護保険法施行法で措置されたものでございます。

福島委員 ありがとうございます。

 介護保険法の施行時の入所者は、介護保険法施行後の入所者が本人の選択によって入所するものと異なり、あくまで行政処分として入所したという事実。また、負担のあり方も、介護保険法における定率の応益負担ではなく、扶養義務者の支払い能力に応じて費用を負担する応能負担の考え方であった。こういうことから、施行に当たりまして新たな負担を求めるのが適切かという制度論としての議論、観点、また、現に生活保護受給者や老齢福祉年金受給権者など低所得の者が多いという実態から、負担の増加を招かないような措置を講じたということでありますけれども、これは適切な判断であったというふうに思っております。

 また、当時、旧措置入所者の方々からは、介護保険法の施行によって退所をせざるを得なくなるのではないかという不安の声が多数寄せられておりましたし、そしてまた、国会においてもその必要性が強く指摘されたわけであります。

 平成九年の介護保険法案に対する衆議院の厚生委員会での附帯決議においても、「施行日前に特別養護老人ホームに入所している者については、法施行後も、その処遇が急激に変化することのないよう十分に配慮すること。」このようにされておりますし、そしてまた、参議院の厚生委員会の附帯決議でも、「介護保険法の施行日前に特別養護老人ホームに入所している者については、法施行後も、その処遇が急激に変化することのないよう十分に配慮する」このようにされているわけであります。こうした措置の判断を下したそのときの考え方というものをやはり適切に評価すべきである、そのように思っております。

 本法案では、この負担軽減措置を引き続き継続することとされております。旧措置入所者は平成十六年現在でも十二万七千八百三十四人存在し、実質負担軽減者はその約二分の一の六万八千五百九十七人の多数に上っております。介護保険法施行時に負担軽減措置をなぜ講じたのか、ただいま大臣からも御説明がございましたけれども、その御判断の根拠を踏まえると、その妥当性というもの、必要性というものは現在も失われていない、そのように思っております。また、七万人に達するわけであります。こうした負担軽減を受けている多くの方々の制度改革への不安というものを解消するという観点から、この措置は継続されるべきものである、そのように考えますけれども、軽減措置を継続することとした政府の見解をお尋ねしたいと思います。

尾辻国務大臣 お話しいただきましたように、介護保険制度の施行前から特別養護老人ホームに入所しておられる方のうちに、介護保険法施行法により負担の軽減を受けておられる方というのが、現時点で約六万八千人おられます。これらの方のうち、相当数の方というのは、収入が少なくて、生活保護相当の減免を受けておられる方も多数おられます。さらにまた、過半数の方が八十五歳以上の方でございまして、今後所得水準が上昇するとはとても考えにくいというようなこと。

 こうしたことを踏まえますと、措置を延長しない場合には、施設入所のための費用負担がふえまして、支払いが困難となる方が相当数出てくることも考えられますので、介護保険法施行法の延長により、介護保険制度の施行前から特別養護老人ホームに入所しておられる方に対する負担軽減措置を五年間延長することとしたものでございます。

福島委員 介護保険法案の附帯決議においては、衆参両院、全会一致で負担軽減措置の導入について求めたわけでありますけれども、本法案の負担軽減措置の継続についてはさまざまな指摘がなされております、さまざまな批判がなされていると思います。その中には、払えるんだったら払ってもらったらいいのではないか、そしてまた、要は払えるんだという指摘がありました。

 平成十六年十一月の介護給付費実態調査では、介護保険施設入所者の所得に関する状況について、生活保護受給者、老齢福祉年金受給権者等は、旧措置入所者の三四・八%、そしてまた軽減措置の対象者の六五%を占めており、介護保険施行後の新規入所者の七・一%とは大きな違いがあるわけであります。要は払えるわけですと言い切れない実態がある、これが実態である、そのように考えておりますけれども、政府の見解をお聞きしたいと思います。

西副大臣 お答え申し上げます。

 委員御指摘のように、介護保険制度の施行前から特別養護老人ホームに入所している方のうちに、所得水準が低く、そして生活に困窮していらっしゃる方が現在も多数いらっしゃいます。

 具体的には、先ほどからも種々数字が、大臣からも若干御説明申し上げましたが、負担軽減を講じている人は六万八千人、そのうちに生活保護相当の減免を受けている皆さん、これは四万四千人、つまり年収四十二万、月収相当で三万五千円以下の方でございますが、四万四千人で、対象者の六五%に当たっております。それから、そのうちで、一割負担なしということで、つまり年収三十四万以下、月収で三万弱という方も二万三千人という実態でございます。軽減対象者の三四%がそういう実態であるという状況がございます。

 こうした状況を踏まえますと、軽減措置を延長しない場合には、施設入所のための費用負担がまたふえていくというわけでございまして、さらに支払いが困難になるという方が多数出てくることが考えられます。このために、介護保険法施行法の延長によりまして、制度以前より特別養護老人ホームに入所している方に対する負担軽減措置の延長を行うということが適切であるということを私ども判断いたしまして、今回このようにさせていただいた次第でございます。

福島委員 払えるんだったら払ってもらった方がいいという考え方、これは一面正しい指摘であるというふうにも私は思います。社会保障制度の改革、この考え方の中には、年金の給付と、そしてまた現物給付であるところの介護サービスの給付、こういうものを調整することによって現役世代の負担の軽減を図るということが必要だ、そういう考え方もあるわけであります。問題は、払えるかどうかという問題でありまして、そこのところは実態というものを踏まえて適切に対応する必要があるというふうに思います。

 経過措置を打ち切れば払えなくて老人ホームを退所せねばならない人はいるのか、いるならどれくらいいるのかという指摘もありました。これも確かに、しっかり確認しろ、こういう話はあるんだろうというふうに思いますけれども、退所せざるを得なくなるということでなく、負担の見直しによって生活保護に陥らないようにするということも同時に大切な視点であると思います。

 こうした実態の把握のためには、負担軽減措置を受けている入所者の方々に対して、預貯金など資産の調査を行う必要が出てくるだろうというふうに思います。先ほども指摘しましたが、三四・八%の方が生活保護受給者、老齢福祉年金受給権者等であるわけであります。こうした方々、例えば老齢福祉年金受給権者等の方々に対して、ミーンズテストのようなものを個別にしていって、そしてこの人は負担軽減措置を継続しなかった場合に一体どうなるのか、そういうことをつまびらかにするというのも一つの考え方ではありますけれども、私はやはり、八十歳を超える方が七五%を超えている、こういう実態を踏まえたときに、そこまでするのかというような思いが率直にいたしております。

 そしてまた、今回の介護保険法施行法の改正に当たりましては、介護保険法の施行当時に議論になりました要介護認定の非該当者についての処遇についてどうするかということも検討されたわけであります。介護保険法のもとでの要介護認定では入所の対象とならない非該当者の方が、家族等の事情により市町村の判断で入所している、それに対して経過措置が必要であるということも議論をされました。五年間に限って、引き続き入所している間は要介護者とみなして施設サービスを受けることができるというふうに五年前にしたわけであります。

 本法案では、この経過措置については延長しないという判断を下されたわけでありますけれども、その見解をお聞きいたしたいというふうに思います。

中村政府参考人 お答え申し上げます。

 介護保険法施行前の特別養護老人ホーム入所者で要支援、非該当と判定された方につきましては、直ちに特別養護老人ホーム以外に生活の場を確保することが困難な場合があることを考慮し、五年間の猶予期間を置き、継続入所を認めたものでございます。

 その後、満五年たとうといたしておりますが、本来、これらの非該当または要支援の方々は、特別養護老人ホームに入るということが制度上は介護保険法においては想定されていない方であり、また、こういう軽度の方々につきましては、非該当、要支援の方でございますので、在宅等で生活することが可能であり、またそのことが御本人にとっても望ましいと言えること、平成十四年からは、特別養護老人ホームには要介護度が高いなどの入所の必要性が高い方から優先的に入所していただく仕組みを導入したこと、また、本経過措置の対象者はごくわずかとなり、その方々についても今月末までに今後の受け入れ先の調整を終える予定であることを考慮いたしまして、本経過措置は終了させていただくこととしたものでございます。

福島委員 この五年前の施行のときの経過措置について、二種類あるわけでありますが、対応が違うということについて、要介護認定で該当する入所者に対しては不利益変更を行わず、一方で非該当の入所者については不利益変更をする、不公平じゃないかという御指摘がありました。

 しかし、一般的に言いまして、制度の見直しにおいてあらゆる不利益変更を行わないということは極めて難しいと私は思います。一定の場合には何らかの不利益が生じるということはあるのでありまして、要は、政策判断としてどのような不利益変更であれば許容できるのかできないのか、ここが問われているわけであります。

 非該当の入所者については、政策的には本来在宅で生活をするということが望ましいと私も思います。家族等の事情がある場合には、それに適切に対応し生活の場を確保する、自治体の責任また支援というものが必要であるというふうに思います。

 市町村の入退所計画の作成、また退所後の受け皿となる在宅サービスの整備を通じて、非該当者は平成十三年四月に二千八百人おられたものが、先ほど御説明ありましたように、平成十六年の十二月末には百九十一人、現時点では最終調整が済んでいない方はわずか十四人となっている。これはある意味で、市町村が本来やるべきことをしっかりとやっていただいたということの結果ではないかというふうに思います。

 そうした経過というものを踏まえて、今回、この経過措置を打ち切るということは適切な判断である、そのように考えております。

 そしてまた、今回のこの法改正に当たりまして、五年の時限立法という点について指摘がありました。本来、経過措置を定めるという法律の性格から、当然、時限立法という考え方であるべきである。恒久措置とするというのは、逆にこれは話が逆転しているのではないか、そんなような思いが私は議論を聞いておりましていたしました。

 この点についての政府の見解をお聞きしたいと思います。

中村政府参考人 お答え申し上げます。

 旧措置入所者の負担軽減措置は、この負担軽減措置を定めました介護保険法施行法制定の際、旧措置入所者の経済的実態を踏まえてとられた判断でございまして、五年の経過規定として期間を定め、再三申し上げておりますように、施行法を国会で認めていただいて設けた経過措置であると認識しております。

 今回、見直しに当たっても、私ども、そういった観点から継続が必要かどうか判断を迫られたわけでございます。再三議論になっておりますように、なお該当者が特別養護老人ホーム入所者の二割程度おられることを踏まえ、これらの方々の経済的実態を踏まえ、経過措置を継続することが必要と考えた次第でございますが、他方、今国会でもこの委員会でも御議論ありますように、経過措置の延長について、施行後に入所した方々との均衡、あるいは、それなりの給付費がふえているではないかという厳しい御指摘もあることも踏まえ、この措置は五年に限ることが適当ではないかと考えている次第でございます。

福島委員 委員会ではさまざまな指摘がありました。そうした指摘を踏まえて、五年後どうするんだという質問も先ほどありましたけれども、その時点でまた適切な政策判断をするということが必要だろうというふうに私は思います。

 次に、三位一体改革関連の御質問をさせていただきたいと思います。

 先般の予算委員会での質疑におきましても、社会保障制度の抜本的な改革の中で、地方分権をいかに進めるのかというのは非常に大切な政策の柱であるということを申し上げました。単なる数字合わせに終わってはならないのは言うまでもありません。

 今後の社会保障制度改革は、決して簡単な改革ではないと私は思っております。むしろ、痛みを伴う改革であり、国民の十分な理解を得るためにも、給付と負担の関係の明確化、透明化は不可避であります。逆に、この給付と負担の関係が国民によく理解されてこそ、改革というものが実現をする、そう思います。そのように考えるときに、地方分権を進める、そしてこの負担と給付の関係の透明化、そしてまた国民の理解を進める、同時に進んでいかなければならないというふうに思っております。

 この分権改革では、三位一体改革では、財源が一体どれだけ地方に移譲されるのかということが大きな論点でありますし、繰り返し指摘をされているわけでありますけれども、一国民の立場になりますと、そういう財源がどれだけ移譲されるかということも大切なのでありますが、同時に、財源が移譲された後に、それによって、地方自治体が分権化されたところの社会保障制度をどのようにきちっと運営していくのか、地方自治体のガバナンスの問題をしっかりと議論するということが必要だ。ややもすると、国の統制が外れて地方に行けば、すべてうまくいくような議論がありますけれども、それは余りにも乱暴な議論だというふうに私は思います。

 そして、地方に移ったときに、そこでどういうふうにガバナンスを発揮してもらうのかという理屈がなければならない。例えば医療保険につきましても、国から都道府県に移譲したときに、これはあくまで連携を前提としておりますけれども、じゃ、都道府県でどういうふうな統制が働くのか、そういうことは極めて大切であります。そして、そこにはガバナンスということもありますし、地方の創造性というものもそこで働く、こういう仕組みをどう考えるかということではないかというふうに思います。

 はしの上げおろしまで細かく規定をするのではない、それはそのとおりであります。しかしながら、医療保険について分権改革を進めたときに、医療保険そのもののガバナンスというものが失われて、そして財政破綻の危機に瀕するようなことがあってはならないということも事実であります。そこのところは、この国会におきましても、例えば国保の問題についていろいろな御指摘がありました。これをどう考えていくのか。それは、ガバナンスが失われないように、適切に分権化を進めていかなければならない。

 そしてまた、交付金の話もあります。今まで、例えば施設整備につきましても、個々に細かく参酌基準を決めて、どうするのかとはしの上げおろしまでやってきた。そこのところを地方自治体にしっかり考えてもらう、これは非常に大切なことだと思います。自分たちのところで何が必要なのか、そしてまた、それは、あれも必要、これも必要ということでは、例えば介護保険の財政というものは将来どうなるのか、そこのところもしっかり考えて、いかにコストパフォーマンスのいい整備をするのか、ここで知恵を絞ってもらう、また創造性を出してもらうということだと思うんです。

 ですから、交付金の改革というのはその一つのステップでありまして、例えば、その採択に当たってどのような判断をするのか。一つの、地方自治体がみずから考え、ガバナンスを発揮し、創造性を発揮する、そういうインセンティブを与えるようなルールづくりというものが今国に求められている、これが国と地方の新たな関係になっていくべきである、そんなように思いますけれども、政府の考えをお聞きいたしたいと思います。

西副大臣 お答え申し上げます。

 大変重要な、社会福祉全般にかかわらず、今の三位一体改革、また地方分権、すべてにかかわる一番重要な根幹ではないかと思います。一方では地方分権を推進するという方向がある反面、本当に地方に任せていいのか、もっと国の権限を強化しろ、こういう議論も当委員会の中にもあるのは事実でございまして、これは、ありとあらゆる地方分権の議論の基本の考え方だというふうに理解をしております。

 地方自治体が地域の実情に応じた適切な政策を主体的に立案する、そして、これを責任を持って実施するというのが大変重要な今の課題であって、三位一体改革の趣旨に沿うものであるというふうに考えております。

 先ほど、国保の改革という具体的なお話がございました。都道府県に県内の国保に対する財政調整権限の一部を移譲するということで、都道府県においては、こうした権限の移譲とあわせて、市町村国保の広域化、それから医療費の適正化に主体的に取り組んでいただく、同じ地方公共団体が保険者である国保運営の安定化の責任の一端を今後担っていただきたいという思いを込めて、移譲をさせていただいたところでございます。

 また、福祉分野における交付金制度の導入をいたしました。このことにつきましては、各地域に既にある福祉サービスの基盤の整備状況はそれぞれ違います。また、既存の建物の活用等もこれまた考えていけると思います。このことは、いろいろ勘案して、各事業者への助成の程度をある程度柔軟に各自治体が使っていただく、また、交付金総額の範囲内で、整備量を、少し単価を落として数をふやすとかいう自由度もきくんじゃないか、こういうことで、地域の実情に応じた福祉サービスの整備が容易になるという考えに基づいております。

 各地方公共団体におきましては、従来にも増して主体的に判断をしていただいて、これら拡大された裁量、権限を適切に行使していただくと同時に、責任もまた重く受けとめていただいて、頑張っていただけるものというふうに考えております。

福島委員 何よりも大切なことは、国、地方を通じて、頭の切りかえをしっかり行うということだというふうに思いますし、三位一体改革……(発言する者あり)不規則発言がありましたが、しっかりとやっていただきたいというふうに思います。

 社会保険庁改革についても当委員会で指摘がありましたので、最後にお尋ねをしたいと思います。

 我が国の社会保障制度は社会保険制度を中軸として運営されていることから、社会保険制度を適切に運営できる制度設計というものが必要でありますし、そしてまた、この社会保険制度の適切な運営というものが確保されないと、逆に、社会保障制度に対しての国民の不信を招くことになる。ですから、社会保険庁改革というものは、国民に十分納得していただけるような、そういう結論を出すべきであるというふうに思います。

 ただ、この中で、ややもすると余り議論されていないことは、社会保険制度において最も重要な要素とは何か。それは、被保険者の方からどのように確実に保険料を徴収するのか、ここの仕組みはどうあるべきなのかということではないかと思うんです。年金制度の空洞化といいましても、実はこの徴収の部分の話であります。ここのところがしっかりすれば、社会保険制度もしっかりする、そしてまた社会保障制度に対しての信頼というものが確保される、こういう道筋なんだというふうに私は思います。

 社会保障制度の地方分権化ということは先ほど申しましたけれども、この徴収という問題について考えた場合に、自治体の持つ徴収機能と、社会保険庁の適用また徴収の事務、こういうものとどう連携を図っていくのか、ここのところはもっと議論をしなければいけませんし、そしてまた徴収に当たっても、健康保険、雇用保険の一元的な徴収ということもありましたけれども、そういう一元的な徴収ということについても議論をしっかりしなければいけない。単に組織の形がどうだということも非常に大切でありますけれども、社会保険制度の運営の根幹になる部分、これは、これから三十年、五十年、百年と続いていくわけでありますので、そこのところの議論をぜひともしっかりと深めていただきたいというふうに思いますし、適切な改革をぜひ行っていただきたいと思います。

 先般、日本経団連の代表の方からいろいろとお話をお聞きいたしました。社会保障制度共通の社会保障番号を導入すべきであるとか、住民基本台帳ネットワーク、住民コードとの連携ということを提案しておりました。

 国民年金、国民健康保険の大都市部での徴収率の低下という事態を招いている社会の変化、これは持続的なものだというふうに私は思います。一朝一夕で変わるものではなかなかない。そう考えたときに、より抜本的なシステムの改革、再構築というものが、日本経団連が言うような意見も一つの意見でありますけれども、そういう次元に立って物を考える必要があるのではないかというふうに私は思います。

 今回の社会保険庁の改革の検討に当たりまして、こうした社会保険制度の基礎になる部分、これをどう確保するのかという視点を十分踏まえて、そしてまた、大都市部の社会の変化ということもありますから、新たな発想というものもしっかり取り入れて、新しいビジョンをぜひお示しいただきたい、そのように思いますが、政府の見解をお聞きいたしたいと思います。

西副大臣 お答え申し上げます。

 一点は、徴収という観点が非常に大事だろう、こういうお話、それから、全体的な社会保険庁のあり方について、システムそのものを抜本的に考え直すべきだ、こういう趣旨のお話だったとお伺いしました。

 おっしゃられるように、今後、年金、医療等社会保険制度にかかわる国民の負担が急速に増大していくことは避けられない状況の中で、保険料を確実に徴収をするということは、平等の観点からも、国民の納得、信頼を得る上で大変大事なことだというふうに考えております。将来にわたって社会保険制度を安定的に持続的に運営する上においては、不可欠なことだというふうに考えております。

 このために、国民年金の徴収に関しましては、これまでもいろいろ取り組みを行ってきたんですが、納付率の向上のために自治体との連携が今不可欠だと考えておりまして、昨年十月から、実は市町村からいただいた所得情報の活用を図るということが一点でございます。それから、住民基本台帳のネットワークを活用するということにつきまして、国民健康保険との連携をどうするかということ、これはただいま検討をしている最中でございますが、このことについても取り組んでいきたい、こう思っております。

 また、労働保険との徴収事務の一元化についてもお話がありました。平成十五年十月から社会保険・労働保険徴収事務センターを設置して、滞納処分などの事務を一元化して行っているというところでございます。今後、平成十七年度までに一層の事務処理の効率化を図るために、今対応を検討しているところです。

 社会保険庁の改革に関しましては、官房長官のもとに有識者会議が設置されておりまして、私もその一員に入れていただいておりますが、五月の最終取りまとめというところに焦点を合わせて今議論をしていただいているところです。

 先ほどから委員御指摘のように、国民年金の収納率の向上を実現できる組織ということについても論点の大きな課題として議論をしていただいておりますし、また、労働保険との徴収事務の一元化をさらに進めるということも大変必要な観点でございまして、こうした観点も十分に念頭に置いた上で、さらに議論を進めていただきたいと考えているところでございます。

福島委員 以上で質問を終わります。ありがとうございました。

鴨下委員長 午前十一時五十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十一時三十三分休憩

     ――――◇―――――

    午前十一時五十二分開議

鴨下委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。阿部知子君。

阿部委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。

 大臣を初め各委員の皆様には、御尽力をいただきまして私の質問時間をこのような形で確保していただきましたこと、厚く御礼申し上げます。

 冒頭、私は、まず無年金の学生の障害者の問題で、大臣に二点ほど確認というか御質疑をいたしたいと思います。

 大臣も御承知のように、二〇〇一年の七月に九地裁におきまして、札幌、盛岡、新潟、東京、京都、大阪、岡山、広島、福岡に、いわゆる学生無年金問題で提訴、裁判が起こされまして、三年以上が経過いたしました。

 この間、判決が出ました東京や新潟、あるいはついせんだっての広島地裁でもそうでございますが、昭和六十年以降、いわゆる主婦は、三号被保険者は、御自身は実際の負担をしておられなくても、強制加入でございますから、障害が生じれば障害基礎年金、あるいは、二十前に障害になった方は、当然負担しておられないが、二十以降になれば障害基礎年金という形で給付されるにもかかわらず、そのときにはいわゆる任意の形で、加入するもしないもあなたの自由ですと任された形で、しかし、学生時代にそういう形で任意で加入していなかったことから生じた、障害を負い無年金になった方たちが、実際には、これは国の年金行政をめぐる、そのときに学生も含めて強制加入という形にしておれば当然発生しなかった無年金問題であるとして、そして、実際の負担を言えば、お払いでない二十前の方あるいは主婦の方にも給付されているじゃないかということで、法のもとの平等に反するという形の裁判を起こしておられます。

 私は、おとといでしたか、無年金障害者の議員連盟の会で、年金局長の渡辺さんがお越しになって、また、広島地裁の原告のお母様、お見受けするところ、七十歳を超えておられたでしょうか、そのお母様が来られて、長いお子さんの障害の介護とあわせて裁判を担われる御苦労を涙ながらにお話しになり、その向かい側におられた局長が、しかしながら控訴せざるを得ないと、控訴という言葉を口に出されて、一瞬その場がしいん、しらっとしたという非常につらい場面を経験いたしました。

 大臣にあっては、厚生労働省のトップ、指揮するお立場から、こういう形もやむないという形のコメントも出しておられますが、果たしてこういう無年金の障害者を抱えた御家族の実態というものはつまびらかに御存じであるや否や、冒頭、一点お願いいたします。

尾辻国務大臣 今回の訴訟の原告の方々を含めまして、年金を受給していない障害者の方々やその御家族の大変な御労苦については、十分認識をいたしております。

 しかしながら、今回の判決については、私どもの立場もございますので、控訴することやむなしという判断に至ったところでございます。

阿部委員 裁判と申しますのは、長い年月、本当に苦しい思いをもしかして双方抱えていくものでありますし、私は、その意味でも、年金行政というのは、いかに無年金を生まないかという点に本当に総意を挙げて取り組んでいかないと、また同じような事態が起きるのではないかという不安を特に昨今強くしております。

 と申しますのも、当委員会でも何度も指摘されましたが、社会保険庁の資料によりましても、また会計検査院のこの間の調査によりましても、いわゆる国民年金の一号の被保険者であられて、年金の保険料を二十四カ月以上、丸二年にわたって滞納しておられる方が四百四十万人以上、十九カ月から二十四カ月というのでとりますと五百三十万人となってまいります。

 この間の国会審議が果たしてこの年金の未納状況を改善させたかというと、かえって、逆に、何だ、みんな納めていないんだ、あるいは、年金は信頼できないやという思いすら特に若い世代の中にまいてしまったことの弊害は、私はこれは余りあるものと思っておりますが、今もし、この五百万人近い方々、一応は今は二十になれば強制加入ですから加入されますが、二年以上にわたって納めていなくて、あす交通事故に遭われたとします、そういたしますと、当然、無年金障害者になることと思いますが、無年金障害者予備軍がもしかして五百万人という驚愕すべき事態、このことについては国としてはどう考えておられますでしょうか。

尾辻国務大臣 平成十五年度末におきまして、過去二年間の保険料を全く納付していない人は約四百四十万人でありまして、同様の数字を平成十三年度末から比較いたしますと、約百二十万人増加をしております。

 こうした状況といいますのは、公平性の観点からもゆるがせにできない問題もあり、また、未納期間中に生じた障害などにより、障害年金や遺族年金が受給できなくなることも考えられますことから、最重要課題として未納対策に取り組んでいるところでございます。

 昨年十月からは、未納者本人に御自分の加入記録を認識していただくとともに納付意識を喚起するため、催告状にこれまでの国民年金や厚生年金の加入記録を付記し情報提供を行うなどの取り組みの強化を図ったところでございます。また、負担能力が十分にあると認められる人に対しましては強制徴収を実施していくなど、今後とも未納対策を徹底することによって無年金者の発生防止に全力を尽くしてまいります。

 なお、御指摘の四百四十万人の中には、障害基礎年金の受給要件である免除期間などを含む保険料納付済み期間が加入期間の三分の二以上を満たしている人もおりますから、これらの人すべてが無年金者になるというわけではございません。

阿部委員 確かに大臣の御指摘もございますが、ただ、しかし、だんだんそういう方、今大臣がおっしゃった必ずしもという方が少なくなり、私がやはり案じているのは、例えばNHKの受信料の未払いが七十万人、これは、でも、強制ではないわけで、強制的な加入を旨とするこの国民年金でどんどんどんどん未納者がふえて、そして、若い人ですから当然事故の危険性も高まってという中で、そして、さらに申しませば、昭和六十年段階の三号と言われる主婦たちの年金は、みずからが確かに納付したという形ではなくて、しかし、加入要件を満たしておればそれで障害年金も給付されているという現状でもあるわけですから、保険料が納められていないから給付がなされないという仕組み、このものは、やはり、今の空洞化の現状から見ると考え直していかなければならない。

 できればそれは、保険料方式というのは望ましいかもしれません。しかし、ここまでずこずこに穴があいてしまった現状で、私は、これもまた、行政の放置による無年金障害者を生んだということを後世同じような形で問われるのではないかと非常に案じておるわけです。

 なお、本日はそれを予告しませんでしたから、先ほど大臣がおっしゃったような、全体の加入期間のうちのある程度が納付されていればというような形で救われる方が何人くらいおられるのか、後ほどまた教えていただきたいと思います。

 引き続いて、私の持ち時間の中で、大きな二つのテーマでくくらせて質疑を行わせていただきます。

 一つは、養護老人ホームの問題でございます。

 これも、本日の質疑でも、またこの間の質疑でも何人かの方が御指摘をされましたので、私としてさらに確認という形になりますが、いわゆる特別養護老人ホームができましてから、一般の庶民の気持ちの中から養護老人ホームというのはどのようなところであるのかなということが少し薄れて、今は本当に、特別養護老人ホーム、特別とつく方が主流にはなっておりますが、もともと養護老人ホームは、経済的、家庭的、あるいは虚弱ゆえにおひとり暮らしがままならない方たちが措置によって入っていただくという施設でもあり、現在でも決してその必要性は減少したものでもないと私は思っております。

 この間、厚生労働省が出された研究会等々の報告を見ておりますと、養護老人ホームについて補助金をやめ、これまでのように、実施主体は市町村ですから、そこにお願いするということでありますが、全体の方向性をどういうふうに見ておくのかということにおいて、私は、国はきっちりと認識を確認していかなければいけないんだと思っております。

 きょう、皆さんのお手元に配らせていただきました資料の一枚目は、「養護老人ホームの現状」というところでございますが、ここには、年齢区分七十歳、八十歳代が全体の七割以上を占めておられること、また、収入は、下に示してございますように、ゼロから二十七万円の年収が全体の二二・九%であること、そして、いえば、八十万円以下の方で五〇%、六〇%行ってしまうような収入状況でもございます。

 さて、国の研究会の中での報告を見ますと、この特別養護老人ホームならぬ養護老人ホームの必要性について、多少書き方に二通りあって、これからも継続的に必要だという部分と、しかしながら、ここが高齢者の支えとして、そうしたおひとり暮らしで実は何らかの目配りや気配りが必要な方たちの住まいというか、お暮らしになるところとしての必要性は、だんだん減少しているというふうな書き方もございますが、この点について、担当部局の方のお考え、この間の整理のほどをお願いいたします。

中村政府参考人 お答え申し上げます。

 先生からお話ございました養護老人ホームでございますが、昭和三十八年に老人福祉法ができましたときに、生活保護の養老施設から引き継ぎまして養護老人ホームとなったもので、昭和三十八年当時四万七千人入所されている方がございました。ピークは昭和五十年の七万一千人でございまして、その後、昭和五十年から今日まで七万人を超えることはなく、六万人台で推移してきているということでございます。

 この間、昭和三十八年には六十五歳以上の方は五百八十四万人でございました。平成十五年では二千四百三十一万人ということで、六十五歳以上人口は四倍になったわけでございますが、養護老人ホームは、対象人口が四倍になりましても、ただいま申し上げましたように横ばいに推移してきている。ピークのときには六十五歳以上千人当たり八人が入所されているわけでございますが、今日、千人当たり三人弱、こういう状況でございます。

 そこで、養護老人ホームをどうしていくかということで、先生から御指摘がございました将来像研究会で、地方公共団体の関係者、養護老人ホームを経営されている方、そのほか学識者を入れまして検討したわけですが、先生おっしゃるとおり二つございます。

 一つは、特別養護老人ホームができて、昭和五十四年に特別養護老人ホームの入所者の数が養護老人ホームを上回って以来、特別養護老人ホームは毎年増加して、三十六万人まで来ておりますが、養護老人ホームはその後横ばいであるということで、かなり機能は限定されてきているのではないかという見方が一つございまして、要介護の部分とかそういった方々についてはかなり特別養護老人ホームの方に引き継がれているという見方が一つございます。

 もう一つは、しかしながら、行政関係者も、どうしてもお一人でお暮らしできない方、またさまざまな家族問題を抱えておられる方がありまして、措置施設の必要性は抜くことができないということで、将来像では、今後とも措置の必要があることから、措置施設として養護老人ホームを位置づけていく一方、入所者の方も、養護老人ホームでも心身の状態が要介護状態になり、また重度化しているという問題がございますので、そういった状況を踏まえ、要介護状態にどうやって対応していくかということについて将来像を示したところでございます。

阿部委員 今の局長の数値の御答弁の中に、私は、その数値の都度どんな政策が打たれたかということをきっちり検証しながらこの数値を見ないと、いわゆる数値のごまかしになるんじゃないかなと思うんです。

 と申しますのは、昭和三十八年、確かにこの制度が発足し、そして、実は五十四年には特別養護老人ホームができましたので、比較的ここに、両方にすみ分けると申しましょうか、御老人たちも両方に行くようになりました。

 そこで、五十年をピークとして、五十四年段階では減ってきておりますし、いただいた集計の中でも、五十年が七万一千人とピークだった。五十四年段階で、少し、それまでのふえていた千人当たり八人というピークが減ったのは特別養護老人ホームができたためですし、また、平成十二年の統計がございましたが、そこでまた〇・三を割ってくるように、いわゆる千人当たり三人を割るようになったのは介護保険の登場がございます。

 そして、今、実は、介護保険法施行の次に控える審議の見直しの中で、介護保険施設をどちらかというと要介護度の四や五の重い方にして、そして逆に、軽症の方は施設よりは在宅へという政策が打たれている。今、また変化期でございます。

 私は、そういう政策がとられたときに、当然、要介護の一、二ほどの方あるいは要支援の方は、これは在宅ができれば望ましいですが、その中にも、同じような状態で、目配り、気配り、本当に、一人よりはだれかが、ちょっと危ないよとか、ガスの火も気をつけて消してあげるとか、何らかあればという方は、絶対にこれからふえようとも減らないと思うのです。

 今の御説明だと、千人当たり八人が今千人当たり三人になっているとおっしゃいましたが、この次の私たちが控えている介護保険法の改正の中では、今、介護施設、特別養護老人ホームにお入りの中で、これをどちらかというと重度の方に振り向けていくという施策でございますから、当然、在宅へあるいは軽費の老人ホームへという方がふえてくる。私は、そのあたりも含めて将来像と言わないと、やはり見落としが生じると思います。

 特に、御高齢期の住まいの問題は、国の政治の中でも各省庁が、例えば、公団住宅の中に御高齢者の住まいをどうするかというようなことは国土交通省の管轄でもありましたでしょうし、それから、ずっとどう住まうかという問題で、単に在宅、在宅と言われますが、なかなかそれは、本当の意味で一人で暮らせる状態とそうでないという状態が、私は、ここのところ、非常に絵にかいたもち的に言われていて、その意味で、養護老人ホームの役割をしっかりと、これから国としても、やはり減っている段階がこれから続くのか、それとも、特別養護老人ホームの位置づけの変化によって、養護老人ホームにも当然必要性を抱えた方たちがふえてくるのではないかというところも兼ね合わせて物を見ていかないと、単眼的では事は決着しないように思います。

 あわせて、もう一つ、とても気になりますことは、実は、この養護老人ホームにお入りの方たち、政府からいただいた統計によりましても、身体の障害あるいは精神の障害がおありの方が、精神障害はいただきました資料で一四%となっておりましたが、これから考えますと、後期高齢者がふえてくる中で、やはり私は、私たちの社会がどういう像になるのかということはかなりの程度考えておかなきゃいけない。

 今、一方で、精神疾患も必ずしも減っていない、非常にストレスフルな時代ですし、となりますと、養護老人ホームの見直しというのは、私たちが踏み込む未曾有の高齢社会像の中で、いま少し綿密に疾病像も含めて点検されて、その必要性を重々怠ることのないような施策をしていただきたいと思いますが、この点について大臣のお考えを伺いたいと思います。

中村政府参考人 お答え申し上げます。

 養護老人ホームの入所者のお話で、どういう入所理由かという点について先生の方からお話がございましたが、入所理由で一番大きいのは家庭の事情でございまして、六五・四%、住宅事情が二二・六、経済的事情が二二・二、このような状況になっております。

 そこで、私ども、今先生から御指摘ございましたように、養護老人ホームの担ってきた大きな役割のうち、やはり生活支援ニーズの対応があると考えています。特に、人間関係がうまくいかないとか、基本的な生活習慣が確立していないなど問題を抱えているために、御家族との同居とか地域でのひとり暮らしが困難な高齢者の方は今も存在していると思いますので、引き続き、措置施設としての養護老人ホームの重要性は御指摘のとおりあるということで、私どもも、この養護老人ホームの措置施設としての機能は維持してまいりたいと考えております。

 他方、さまざまな高齢者の方の住まいの問題があるという御指摘もございました。この間、例えば、確かに国土交通省の施策でも、昭和六十年から今日の間、二十万戸ほど公営住宅も整備されておりますし、私どもの政策でも、ケアハウスなりそういったものもございますので、今度の介護保険法の見直しにおいても、介護保険でやっております特定施設もさらに拡大をしてまいりたいと思っております。

 そういうさまざまな政策をとる中で、養護老人ホームの措置施設としての位置づけ、また低所得の高齢者の方の住まいとしての機能ということについては、十分配慮して政策を進めてまいりたいと思います。

阿部委員 私がいただきました将来像の研究会の報告書の中に、低収入でお一人で暮らし、なかなかうまくいかないという方のニーズは減るというふうに書かれておったので、私はあえてこのように質疑させていただくのですが、今は御高齢者でも所得格差が開いておられて、なかなか、これは若者でもそうですが、私たちの社会というのは、今、家族の家庭単位の機能も非常に低下しておりますし、逆に言うと、最後の受け皿としてのいわゆる措置による養護ということはこれからもしっかりとやっていただきたいと思います。

 大臣、済みません、一言お願いします。

尾辻国務大臣 先ほど来お話しになっておられますように、将来像研究会の報告では、養護老人ホームの方向性として、措置施設としての性格を維持しつつ、介護サービスについては、外部の介護保険サービスの利用を認めるほか、契約施設であるケアハウスへ転換し、介護保険法上の特定施設となるという選択肢が示されてはおります。

 しかし、私どもは、これはだからといって養護老人ホームをなくすとかなくなるとかと言っているわけでは全くありませんで、局長もお答えいたしましたように、その重要性というのは認めておるわけでございます。

 そのことをあえて申し上げて、私どもが今後ともお年寄りのケアということに対して十分配慮してまいりますということを申し上げるところでございます。

阿部委員 ぜひよろしくお願いしたいと思います。

 では最後に、いわゆる薬物取り締まりに関すること、特に相談員の人件費が、これまで地方にもともと渡されていたものですが、この負担金形式から、補助金を削減していくというお話にあって、各委員の中から、現在第三期の薬物乱用期じゃないか、これで大丈夫ですかと、簡単に言えばそういう質疑があったと思います。

 私も、諸般のデータをいただきまして、税関、警察庁、あるいは厚生省の麻薬取締部、あるいは入管ですか、それも含めて、いただきましたが、この間の我が国の薬物汚染の拡大状況あるいは押収量の変化についての御答弁をまずお願いいたします。

阿曽沼政府参考人 お答えをいたします。

 最近、MDMAなどの錠剤麻薬の乱用が大変若年層を中心にふえておりまして、押収量に関して申し上げますと、平成十一年には約二万三千錠でございましたけれども、平成十四年には十九万錠、平成十五年には約三十九万錠という形で、御指摘のように大変急増をいたしております。

 それから、薬物事犯の検挙者でございますけれども、大体八割ぐらいが覚せい剤の事犯でございまして、依然として覚せい剤が我が国において最も乱用される薬物となっております。押収量につきましては、ここ数年四百キロ台で推移をしております。

 それから、大麻でございますけれども、これも青少年の間で乱用が拡大しておりまして、平成十五年の押収量が約九百キロ、過去十年間では二番目の押収量というふうになっております。

阿部委員 私がちょっと時間配分を間違って、詰まってまいりましたので、せっかく麻薬関連で見識の深い原局の方にいらしていただいているのですが、あえて踏み込みませんで、特にMDMAに関して、これは錠剤状になっておりまして、非常にファッショナブルでございます。今局長の方からも御答弁ありましたが、平成十五年で三十万、そして、私がせんだって税関からいただきましたものですと昨年で四十九万九千錠、破格の勢いで伸びてきております。私が特に案じますのは、これは注射跡も残しませんし、ぽんと簡単に飲めばいいということで、非常に今、小中高、生徒たちに広がっております。

 こうした施策で、国としては、内閣府のもとに五カ年計画というのを平成十年、十五年とやってこられましたが、十分なMDMA対策、この十五年の報告を見ても、まだこれから警鐘が必要とされるという程度でとどまっておりますが、特にこの間のこの数年、一、二年から非常に急速ですが、ここについての今後の対応を、御答弁お願いいたします。

山本政府参考人 お答えいたします。

 今委員御指摘のように、MDMA等錠剤型合成麻薬の乱用というものが非常に拡大しているということで、これが一番大きな課題であるというぐあいに考えております。今委員御指摘の新五カ年戦略、これは平成十五年七月に決めたものでございますが、この中で、ちょっと四点ほど特にやっております。

 一つは、現状を把握して成分中に規制薬物が含まれている場合は徹底的に取り締まる、それから新たな乱用薬物については情報提供、広報活動を徹底的にやる、それから鑑定方法の研究を進めて、鑑定機材も充実していくということ、それから未指定の物質、これについては麻薬への指定も含めて新たな乱用薬物の規制について検討していく、こういうことを掲げまして、特に若い人たちへの対策が一番重要ということで、有業、無業の青少年も含めまして、それから学校での乱用薬物教室の開催とか、こういったことを文科省、警察庁、厚労省等と連携をして徹底してやっていくということで、今取り組んでいるところでございます。

 しかしながら、まだ残念ながら非常に拡大しているというような状況でございます。

阿部委員 こうしたことは、水際作戦が重要と同時に、子供たちの日常の中でだれかがサポートしながらやっていくということが重要で、ぜひ大臣には、恐縮ですが文科省と御一緒にお取り組みいただきますようお願い申し上げて、ごめんなさい、御答弁の時間をなくしましたが、よろしくお願いいたします。

鴨下委員長 以上で両案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

鴨下委員長 これより討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、順次これを許します。泉健太君。

泉(健)委員 民主党の泉健太です。民主党・無所属クラブを代表いたしまして、ただいま議題となりました政府提出、国の補助金等の整理及び合理化等に伴う国民健康保険法等の一部改正案に対して討論を行います。

 そもそも政府改正法案は、地方分権の理念に基づいた税源の移譲、国庫補助負担金の削減、交付税改革という本来の三位一体改革の名に値しないものです。

 地方分権を達成するのであれば、総理が閣僚懇で発言をしたように昨年八月に出された地方六団体の案を真摯に受けとめ、これをベースに十分な議論を行って補助金等の整理合理化等を図るべきであるにもかかわらず、政府が提出したものは、明らかに地方の意見を無視していると言わざるを得ません。

 地方六団体が、これらの事業は税源移譲さえしてもらえればみずからで計画をつくり取り組むという意思を示し、取りまとめた提案に対し、全く理解も誠意も示さない、厚生労働省による意趣返しとも言える行動ではないでしょうか。

 このような法律案を認めれば、本来目指すべき地方分権の方向性を狂わせてしまうことになります。この観点から、以下、政府法案に反対する理由を申し上げます。

 理由の一つ目は、国民健康保険制度に都道府県財政調整交付金を導入するに当たっても、都道府県の位置づけを全く説明しておらず、今後の国保制度のあり方や本改正案による影響についても示さず、言いかえるならば、今後の医療制度改革との関係調整も行わないままに補助金削減の総額目標を達成するためだけに制度を変更する、まさに帳じり合わせを行っているところです。これには多くの都道府県からも不満の声が上がっております。

 理由の二つ目は、負担金、補助金の交付金化として創設される地域介護・福祉空間整備等交付金、次世代育成支援対策交付金が、ともに使途が限定された交付金であり、依然として事業計画の採択に中央省庁の権限が完全に維持をされていることです。そして、質疑でも明らかになったように、その改革の見通しすらありません。地方の裁量がふえたと説明するのもはばかられる内容です。

 理由の三つ目は、基礎年金国庫負担の引き上げを行う手法の問題です。前々回の年金改革で約束をしたとおり、基礎年金の国庫負担を二分の一に引き上げることは必要ですが、本来の引き上げの財源は新たに国民負担を求めるものではなく、私たち民主党予算案のように現在のむだな予算を削減して行うべきものです。にもかかわらず、政府法案はその財源を安易な定率減税の縮小に求めており、現下の経済情勢判断を誤っているとしか言いようがありません。

 以上、申し上げましたとおり、政府法案の国庫補助金の整理合理化はいずれも認められないものばかりであることから、政府法案に強く反対いたします。

 一方、介護保険法施行法の一部を改正する法律案であります。

 政府は、五年前に介護保険制度が開始されるに当たって行われた、措置制度で特別養護老人ホームに入所した人たちの自己負担がふえないようにする対策を、五年間延長することを提案されています。

 私たちは、その趣旨には理解するものの、措置から契約への転換を図った介護保険の導入後五年を経てもなお措置制度時の入所者にのみ特別な措置を単純に延長することとしてよいのか、これを十分に検証できなかったことは残念と言わざるを得ません。

 先般の審議の際にも、政府に対し、経過措置を終了した場合、その対象となっている人々にどれぐらいの影響が及ぶのか、その影響は他の制度、例えば生活保護制度などによって影響が緩和されることはないのか、経過措置打ち切りによる影響と介護保険本体法の改正案にある自己負担の導入の影響は、いずれが入所者に対して与えるインパクトが大きいのか等々を問い合わせたにもかかわらず、一切の答弁を得ることができませんでした。

 国民の生活に与える影響をできるだけ小さくしようとする、そのことは理解をいたしますが、その際にも、なぜその措置を講じるかについては、実態調査を踏まえた説明が必要であり、政府には、今後同様の措置の延長を図る場合に、十分な説明を行うことを求め、賛成の討論といたします。(拍手)

鴨下委員長 次に、山口富男君。

山口(富)委員 日本共産党を代表して、国の補助金等の整理及び合理化等に伴う国民健康保険法等の一部を改正する法律案に対する反対の討論を行います。

 本法案は、いわゆる三位一体改革の名のもとに、国民健康保険に都道府県負担を導入して国庫負担を引き下げ、各種の国庫負担金などを廃止するものです。

 反対の第一の理由は、国保給付費に対する定率国庫負担を四〇%から三四%に引き下げ、低所得者対策である保険基盤安定制度への国庫負担を廃止するなど、国保制度における国の責任を大きく後退させることです。しかも、都道府県負担の導入に伴う財政調整交付金の交付のあり方は、いまだに定まっておりません。

 今日の国保財政の悪化は、一連の国庫負担引き下げなどに起因しており、その結果、相次ぐ保険料の値上げ、保険料滞納世帯の増大、保険証取り上げなどが急増し、必要とする医療を受けられない事態まで引き起こしています。国保制度では、こうした事態の解決に力を注ぐべきです。

 反対の第二の理由は、一般財源化の対象となっている国庫負担金に、麻薬取締員を初めとして、国と地方公共団体との共同責任という観点から、地方財政法で規定する国が義務的に支出すべき経費が含まれており、この分野での国の責任の後退と形骸化が生まれることです。

 第三に、国民年金法の改正で、定率減税の縮減による増収という、事実上の庶民増税が財源に充てられていることです。基礎年金の財源の手当てで今必要なのは、庶民増税ではなく、道路特定財源の一般財源化や浪費をなくす改革です。

 以上、主な反対理由を述べ、討論といたします。

鴨下委員長 次に、阿部知子君。

阿部委員 私は、社会民主党・市民連合を代表して、ただいま議題となっております国の補助金等の整理及び合理化等に伴う国民健康保険法等の一部を改正する法律案に対し、反対の立場で、また、介護保険法施行法の一部を改正する法律案に対し、賛成の立場から討論を行います。

 今国会の主要なテーマの一つである地方分権推進のための三位一体の改革のもとでの負担金の削減が、果たして真の地方分権に結びつくのか否か、大きな疑義が、医療、教育、農業にかかわる分野で生じております。

 とりわけ、本委員会で、参考人からの意見聴取も含めて審議された国民健康保険にかかわる約五千四百五十億円の税源移譲は、政府、厚生省並びに地方六団体との交渉の経緯から見ても、余りにも唐突であるばかりか、国民医療の最後のとりでである国民健康保険の意義とそれを堅持していくべき国の責任の放棄になりかねない状況を生んでいます。今後、財政調整する役割を担うとされる都道府県や実施主体の市町村の混乱はもちろんのこと、国民にとっても、だれでも、いつでも、どこでも必要な医療が受けられるための財政保障は、高齢社会のかけ声のもとにかき消されかねません。

 定率国庫負担の四〇%から三六%、さらに来年度は三四%への削減は、そのことの端的なあらわれであり、これではボールを投げられた都道府県も、より住民に身近で充実した医療提供体制をしっかりとした基盤の上に築くことがおぼつかなくなります。

 昭和三十六年以来の国民健康保険は、国民皆保険の重要な基盤でありますが、現在それが、高齢化、無職者の増加、給付の増大などで重大な危機にさらされているのですから、きっちりとした国民皆保険のための仕組みをいかに仕切り直すのかの論議と改革がまずあってしかるべきと考えます。

 税源移譲三兆円の帳じり合わせに使われた国保関連の補助金の廃止には反対し、むしろ、地方からの声の積み上げとあわせ、医療制度、医療保険制度の将来像の国会での十分な論議をこそ求めるものです。

 また、介護保険法開始前の介護施設入所者への経過措置のさらなる延長は、この方たちの所得状況も低く、また御高齢化し、介護度も四、五度と極めて重症化している現状を見れば、五年刻みではなく、むしろ、安心して高齢期を過ごしていただけるためにも、本来的にはその方の必要とされる期間とすべきであると考えます。

 本法案は、その意味で極めて不十分であるということを指摘した上で、当面の措置として賛成いたします。

鴨下委員長 以上で討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

鴨下委員長 これより採決に入ります。

 まず、内閣提出、国の補助金等の整理及び合理化等に伴う国民健康保険法等の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

鴨下委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 次に、内閣提出、介護保険法施行法の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

鴨下委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました両案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

鴨下委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

鴨下委員長 次回は、来る二十三日水曜日正午理事会、午後零時十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時三十六分散会


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