衆議院

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第26号 平成17年6月8日(水曜日)

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平成十七年六月八日(水曜日)

    午前九時三十二分開議

 出席委員

   委員長 鴨下 一郎君

   理事 大村 秀章君 理事 北川 知克君

   理事 長勢 甚遠君 理事 宮澤 洋一君

   理事 五島 正規君 理事 三井 辨雄君

   理事 山井 和則君 理事 福島  豊君

      青山  丘君    井上 信治君

      石崎  岳君    宇野  治君

      江崎洋一郎君    上川 陽子君

      木村 義雄君    小西  理君

      河野 太郎君    坂本 哲志君

      菅原 一秀君    高木  毅君

      谷川 弥一君    津島 恭一君

      中山 泰秀君    西川 京子君

      原田 令嗣君    福井  照君

      三ッ林隆志君    御法川信英君

      宮腰 光寛君    宮下 一郎君

      森岡 正宏君    渡辺 具能君

      石毛えい子君    泉  健太君

      泉  房穂君    内山  晃君

      大島  敦君    小泉 俊明君

      小林千代美君    城島 正光君

      園田 康博君    中根 康浩君

      橋本 清仁君    藤田 一枝君

      水島 広子君    横路 孝弘君

      米澤  隆君    高木美智代君

      古屋 範子君    山口 富男君

      阿部 知子君

    …………………………………

   厚生労働大臣       尾辻 秀久君

   厚生労働副大臣      衛藤 晟一君

   厚生労働副大臣      西  博義君

   厚生労働大臣政務官    森岡 正宏君

   厚生労働大臣政務官    藤井 基之君

   政府参考人

   (法務省大臣官房司法法制部長)          倉吉  敬君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房総括審議官)         福井 和夫君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房統計情報部長)        鳥生  隆君

   政府参考人

   (厚生労働省健康局長)  田中 慶司君

   政府参考人

   (厚生労働省労働基準局長)            青木  豊君

   政府参考人

   (厚生労働省労働基準局安全衛生部長)       小田 清一君

   政府参考人

   (厚生労働省職業安定局長)            青木  功君

   政府参考人

   (厚生労働省職業安定局高齢・障害者雇用対策部長) 金子 順一君

   政府参考人

   (厚生労働省職業能力開発局長)          上村 隆史君

   政府参考人

   (厚生労働省年金局長)  渡辺 芳樹君

   政府参考人

   (厚生労働省政策統括官) 井口 直樹君

   政府参考人

   (社会保険庁次長)    小林 和弘君

   参考人

   (日本弁護士連合会ADR(裁判外紛争処理)センター事務局長)       及川 健二君

   参考人

   (日本労働組合総連合会雇用法制対策局長)     長谷川裕子君

   参考人

   (全国社会保険労務士会連合会会長)        大槻 哲也君

   厚生労働委員会専門員   榊原 志俊君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月八日

 辞任         補欠選任

  井上 信治君     宇野  治君

  木村 義雄君     江崎洋一郎君

  中山 泰秀君     宮下 一郎君

  原田 令嗣君     津島 恭一君

  福井  照君     高木  毅君

  御法川信英君     坂本 哲志君

  大島  敦君     小泉 俊明君

同日

 辞任         補欠選任

  宇野  治君     井上 信治君

  江崎洋一郎君     木村 義雄君

  坂本 哲志君     御法川信英君

  高木  毅君     福井  照君

  津島 恭一君     原田 令嗣君

  宮下 一郎君     中山 泰秀君

  小泉 俊明君     大島  敦君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 障害者の雇用の促進等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第三六号)

 社会保険労務士法の一部を改正する法律案(内閣提出第六一号)(参議院送付)

 社会保障に関する日本国政府とフランス共和国政府との間の協定の実施に伴う厚生年金保険法等の特例等に関する法律案(内閣提出第六三号)(参議院送付)

 社会保障に関する日本国とベルギー王国との間の協定の実施に伴う厚生年金保険法等の特例等に関する法律案(内閣提出第六四号)(参議院送付)

 独立行政法人年金・健康保険福祉施設整理機構法案(内閣提出第六二号)(参議院送付)


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     ――――◇―――――

鴨下委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、障害者の雇用の促進等に関する法律の一部を改正する法律案、内閣提出、参議院送付、社会保険労務士法の一部を改正する法律案、社会保障に関する日本国政府とフランス共和国政府との間の協定の実施に伴う厚生年金保険法等の特例等に関する法律案及び社会保障に関する日本国とベルギー王国との間の協定の実施に伴う厚生年金保険法等の特例等に関する法律案の各案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 各案審査のため、本日、参考人として日本弁護士連合会ADR(裁判外紛争処理)センター事務局長及川健二君、全国社会保険労務士会連合会会長大槻哲也君、日本労働組合総連合会雇用法制対策局長長谷川裕子君の出席を求め、意見を聴取し、また、政府参考人として法務省大臣官房司法法制部長倉吉敬君、厚生労働省大臣官房総括審議官福井和夫君、大臣官房統計情報部長鳥生隆君、健康局長田中慶司君、労働基準局長青木豊君、労働基準局安全衛生部長小田清一君、職業安定局長青木功君、職業安定局高齢・障害者雇用対策部長金子順一君、職業能力開発局長上村隆史君、年金局長渡辺芳樹君、政策統括官井口直樹君、社会保険庁次長小林和弘君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

鴨下委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

鴨下委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。大島敦君。

大島(敦)委員 民主党の大島です。

 まず、社会保険労務士法の一部を改正する法律案について質問をしていきたいと思います。

 まず、今回の社会保険労務士法の一部を改正する法律案で、社会保険労務士さんが、今までとは違いまして広範な個別労使紛争について代理をするということになるかと思います。この点について政府としてどのようにお考えなのか、まず御説明していただければ助かります。

青木(豊)政府参考人 今般法律改正をお願いしております社会保険労務士法でございますけれども、労働環境あるいは雇用就業形態、そういったものが変化してまいりまして、個別の労働関係に関する紛争というのが大変多くなってきたわけであります。これまで、私どもとしても、これらに対しまして行政的なシステムも設けたりいたしまして、相談を中心にさまざまな施策を講じてきて対応してきているところであります。

 また、一方では、司法制度改革ということで、弁護士さんの周辺といいますか、隣接法律関係専門士の方々に対しましても、さまざまな事件についていわば少し担ってもらおうというような議論の流れから、社会保険労務士の方だけではありませんが、弁理士さんとかあるいは司法書士さんとか、いろいろなそういう弁護士業務に隣接する業務のところについて少し担っていこうという議論の中で、こういった代理業務を拡大するということでお願いをしているわけでございます。こういうことによりまして、労使における紛争について迅速かつ円滑な解決が図られることになるものというふうに考えておるところでございます。

大島(敦)委員 ありがとうございます。

 個別労働関係紛争解決促進法が成立をして、働き方も大きく今変わっておりまして、今局長が御答弁されたとおり、個別労働関係のいろいろな紛争事も多くなっている、その中で、社会保険労務士の皆さんに裁判外の紛争解決手続の代理権を付与するということは、時代にかなっているかと思います。

 しかしながら、社会保険労務士の皆さんはしっかりとお仕事されておりますけれども、新しい仕事が付与されるわけですから、その点について、どのように仕事をしていただくのか、その資格要件はどうなのかということについて、まずお尋ねをさせてください。

 まず、能力の担保措置なんですけれども、今までの社会保険労務士さんが、今回の新しい裁判外紛争解決手続の代理権を付与される、その社会保険労務士さんの能力としてはどのようなものが担保されるべきか、どのようにお考えなのか、その点を御答弁いただければ幸いです。

青木(豊)政府参考人 社会保険労務士は国家資格ということで、試験を通って資格が付与されているところでございます。その仕事の中身は、労働保険、社会保険の申請等の手続の事務を行う、それから労務管理についての相談などを行うということになっているわけであります。

 今委員が御指摘のような、今審議をお願いしています新しい仕事につきましては、それにさらに、やはり個別労働関係紛争でありますので、さまざまな民事的な争いといいますか主張、そういったものがなされるわけでございますし、多くの個別労働関係紛争でも、迅速に解決をして、信頼関係に基づく労使関係というのが永続的に続いていくというようなことが大切であるというふうに思っておりますので、そういった点の能力をつける必要があるんだろうと思っております。

 それからまた、そういう意味で、紛争を解決するという観点からいきますと、かなり具体的な、お互いの主張でありますとかあるいは事情なども十分議論をし、勘案をするということでありますので、そういったことがきちんとできるようなことを考えておるところでございます。ということで、具体的には、能力担保措置を講じた上で新しい代理業務を認めるという法案の内容でお願いをしているわけであります。

 能力担保措置につきましては、現在、全国社会保険労務士会連合会で、学識経験者とか弁護士さんとかあるいは社会保険労務士を構成員とする検討会を設置しまして、検討してもらっているところであります。

 先般、四月二十日に中間報告が取りまとめられまして、その研修内容として、具体的に、例えば社会保険労務士の権限及び倫理、あるいは憲法、民法を初めとする労働契約、労働条件関係法令あるいは民事訴訟法などの紛争解決手続代理業務に関連する基礎的な法的な知識、あるいは個別労働関係紛争に関する裁判例のケーススタディー、あるいは申し立て書とか答弁書による主張、反論、あるいは、実際に交渉をして和解をするわけでありますから、そういった交渉、和解などの紛争解決手続に関する知識、能力の四つが示されました。

 こういったものが必要だということで、これらについて研修をし、今、試験をしていこうということにいたしているわけでございます。

大島(敦)委員 研修と試験が行われるということなんですけれども、研修が行われてから試験をされるのか、あるいは今の内容につきまして試験を設けてから研修を行うのか、その点についてお聞かせいただければ幸いです。

青木(豊)政府参考人 これは、今申し上げましたような能力を担保するということで、研修をきっちりとしていただきまして、その研修でのいわば修了試験というような形で試験を考えているということでございます。

大島(敦)委員 研修を受けるに当たっての資格要件、例えば社会保険労務士として何年間か勤務すれば研修を受ける資格があるのか、あるいは希望すれば、すべての社会保険労務士さんが研修を受けられるのか、その点については御検討をされていらっしゃるのでしょうか。

青木(豊)政府参考人 今のところ、今委員が御指摘のような特別の条件を付すというようなことは考えておりません。希望すれば、研修を受けていただいて、きちんと能力をつけていただいて、それの実証のための試験を修了試験ということでしてもらう、こういうことを考えております。

大島(敦)委員 これから、今回の社会保険労務士法の改正案が通るとすれば、研修及び試験が行われると思うんですけれども、具体的に、政府としてはいつごろこの新しい資格を付与していくのか、その点についてお聞かせください。

青木(豊)政府参考人 十八年度から始まるわけでありますので、早急に対応しなくちゃいけないということでありますので、まず、試験、研修については十八年度に年二回ほど行うというようなことを考えております。

大島(敦)委員 社会保険労務士さんも徐々に新しく資格を取られる方もふえてきているかと思います。

 平成十八年度から行われるとして、最初何人ぐらいの方に今回の新しい資格を付与していくのか、その点についてお考えがあるのか、あるいはそれは社会保険労務士会の皆さんにお任せしているのか。答えづらいとは思うんですけれども、やはり資格制度というのは最初間口を広げて狭めていくのか、最初しっかりとした少人数でそれから徐々にふやしていくのか、いろいろなお考えがあるかと思うんですけれども、その点について政府の考えを聞かせていただければ幸いです。

青木(豊)政府参考人 まだ具体的な規模等については検討しているというわけではありませんけれども、同様の、弁護士周辺の隣接法律関係の専門士、司法書士あるいは弁理士のそれぞれの代理業務に関しましての必要とされる研修を参考に見てみますと、例えば司法書士の場合には、これは社労士とほぼ同規模でありますけれども、大体四千名とか五千名とかいうレベルだろうと思います。一回四千名弱というような感じだと思います。また、非常に規模は小さいですけれども、弁理士さんであれば、大体八百名から九百名というような規模でやっているようであります。

 これから私どもとしては検討したいというふうに思っております。

大島(敦)委員 今の数字の四千名、それから八百名という数字は、多分全国で資格を持っていらっしゃる数字なのか、ちょっとその数字について根拠を教えていただければありがたいんですけれども。

青木(豊)政府参考人 司法書士でありますれば、第一回に、平成十五年に実施されました研修では、受講者の数が三千七百九十四名ということであります。二回、三回、四回とやりまして、四回は大分少なくなってきておりますけれども、そういうような状況であります。それから、弁理士では、これも受講者数は平成十五年度が八百五十名、平成十六年度も八百十五名、こういうような状況でございます。

大島(敦)委員 ちなみに、受験者数とその合格者数というのが結構気になる点でして、要は、新しい資格を付与された社会保険労務士として仕事をされる方がどのくらい必要であるのかというのは、多分皆さんの方がよく存じていると思うんです。

 今、個別労使紛争が非常にふえている中で、どういうところで何件ぐらいあって、五千人という規模だと非常に多いなとか、千人とかあるいは五百人とか、その辺の感覚的なものがあるかと思うんですけれども、その点については、要は、司法書士さんですか、四千人受けてどのくらい合格しているのか僕はわかりませんけれども、同程度と考えているのか、あるいはそれよりももう少し多いのかなとか、その辺についてはいかがでしょうか。

青木(豊)政府参考人 これは、実際にそういう試験というものをしてみないと、一定の範囲、割合を設定して合格かどうかということをやるわけではないわけでありますので、難しいんですが、やはり他の例というのが参考になるのではないかというふうには思っております。

 それで、司法書士の場合には、第一回目、平成十五年のときは七八・九%でありました。だんだん下がってきて、第三回が六九・九%というような状況であります。それから、弁理士の場合には、平成十五年度が六八・八%で、平成十六年度は六三・二%ということで、まあ六割から八割ぐらいの間ということだろうというふうに思っております。

大島(敦)委員 合格率としては比較的高い合格率かなと認識をさせていただきました。

 そうしますと、これから、社会保険労務士さんの仕事を見ても、先ほどから述べております個別労使紛争について新しい仕事が発生するとともに、新しい、専門性を持った社会保険労務士さんも多く誕生してくるのかなという期待もしているところなんです。

 そうしますと、先ほどの資格を取るための研修及び試験の中で、伺いたいのは、今、例えば労働者派遣法という法律がありまして、今の働き方ですと、派遣労働をされている方が非常に多いかと思うんです。これまでの労働法の体系の中と、やはり現状に合った知識あるいは経験、能力というのも必要かと思うんですけれども、その点についてどのようにお考えなのか、どのように身につけていただくのか、その点についてお聞かせいただければと思います。

青木(豊)政府参考人 今委員御指摘になりました派遣法の関係でありますけれども、これは、紛争解決手続をしていくという中では、やはりそういった関係の知識というのは必要だというふうに私どもも思っておりまして、先ほど申し上げましたような連合会における検討でも、労働契約、労働条件関係法令というものが必要だというふうに言っていますので、その中の一つとして派遣法の話も検討が進められるというふうに考えております。

 私どもとしては、専門的に少し検討していただきまして、ことしの秋ごろに最終的な検討結果が出るだろうと思いますので、それを受けまして、そういった研修、試験の内容というものを省令で規定していきたいというふうに思っております。

大島(敦)委員 今の派遣法に関しては、私も相談を受けるケースが多くて、派遣法の内容あるいは実務について詳しい方がそれほど多くないなという認識を持っているんです。ですから、その点についても、多分、気づかれて勉強される社会保険労務士さんも多いかと思うんですけれども、注目していただければなというお願いをさせていただきます。

 次に、もう一つは、社会保険労務士さん、弁護士さんもお医者さんもそうなんですけれども、いい方もいれば、悪い方もいるかと思うんです。弁護士会ですと綱紀委員会があって、ある程度、弁護士さんとしてしっかりと仕事をしてもらう、そこから逸脱した方については資格を剥奪していくというシステムがあると聞いております。その点について、社会保険労務士さんの、これから新しい代理業務が発生するものですから、その辺の綱紀のあり方、社会保険労務士さんの仕事のあり方についてどのようにしていくのか、政府の考えをお聞かせください。

青木(豊)政府参考人 今般の法改正に伴って代理業務が拡大をするということでありますので、全国社会保険労務士会連合会において設ける予定であります綱紀委員会、これで、社会保険労務士が不当に労使関係を損なったり、あるいは、社会保険労務士の倫理をきちんと保持するというようなことのために、悪質な社会保険労務士についてはこの綱紀委員会を通じて厚生労働大臣に懲戒事由の通知をしてもらう、そしてそれを受けて、厳正に、必要な場合には懲戒処分を行うなどして、きちんと対応していきたいというふうに思っているところであります。

大島(敦)委員 続きまして、綱紀委員会、これは恐らく社会保険労務士会の自治に任せるということだと思うんです。その綱紀委員会のメンバーについて、委員の構成についてどのようなお考えがあるのか、お聞かせください。

青木(豊)政府参考人 綱紀委員会でありますので、会員である社会保険労務士の懲戒事由等についての調査審議を行うということでありますので、当然のことながら、連合会のいわば内部の人たち、社労士の人たち、それと同時に、部外者の評価、有識者の評価というのも必要だろうというふうに思っております。そういうことで、労使を代表する人、これは労使関係の紛争処理をやりますので、そういった人にも入ってもらうということが大変いいのではないかというふうに思っているところでございます。

大島(敦)委員 今局長が答弁されたとおり、まずは社会保険労務士会の皆さん、そして、恐らく弁護士さんも入られるのかな、プラス、やはり労使の関係ですから、労働者側と使用者側のそれぞれの代表が入って公正な判断が行われることが大切だと考えております。

 もう一つなんですけれども、今回、ADR機関を新しく認定されていくかと思うんです。ADR機関を政府の方で、新しく厚生労働大臣が指定する団体として、「個別労働関係紛争の民間紛争解決手続の業務を公正かつ適確に行うことができると認められる団体として厚生労働大臣が指定する」ということになっておりまして、このような団体としてどのような団体を想定されているのか、あるいは中立性についてどうお考えなのか、どうやってその中立性を担保していくのか、その点について政府のお考えがございましたら、お答えいただければ幸いです。

青木(豊)政府参考人 済みません、ちょっと、もう一度お願いします。

大島(敦)委員 済みません。今の質問というのは、多分その中にはないのかもしれないです。

 一般的な質問のお答えの仕方でいいと思うんですけれども、今回の厚生労働大臣が指定する団体、ADRの紛争の解決手続として指定する団体があって、これまでも恐らく何回も議論されてきたかと思うんです、どうやってその中立性を確保していくのか。その中立性の確保の問題について政府のお考えを聞かせていただければなと思いますので、基本的な事項ですので、よろしくお願いします。

青木(豊)政府参考人 主宰をする、指定する団体につきましては、今、個別の労使関係紛争についていろいろな相談を行っている機関がたくさんございます。もちろん行政でも、先ほど申し上げましたように、私どもとしても、施策の一つとして労働局にそういったシステムを設けたりしているわけでありますが、民間においても、多くは、こういったことに関連をする専門的な人たちがおられる団体においてかなりの成果を上げている、実績を上げているというふうに思っております。したがって、こういったところが基本的には対象になるんだろうというふうに思っております。

 したがって、今、もちろん、具体的な名前を上げれば、例えば社労士会自身もやっていますし、それから全国労働基準関係団体連合会というようなところもやっております。こういったところが手を挙げてくるかどうかというのはまたちょっと別問題でありますが、そういったところが一つ考えられるということであります。

 それで、手を挙げてきた際にどこにやってもらうかということについては、法務大臣の認証によってADR法による実施団体があるわけでありますが、まず、そういったものを受けた者の中からやろうというふうに考えております。したがって、さまざまな具体的な手続とかが法務大臣の認証基準の中でございますので、そういったところで一つ担保をしていこうというふうに考えております。

 それからもう一つは、きちんとこの社労士法上の要請であります個別労働関係紛争についての紛争解決手続に参画できる、主宰できる、そういう団体を基準の中に入れて、そこをしっかりと見て決めていきたい。その際に、外形的に手続等がきちんとなされているかどうかというようなことを決めていきたいと思っておりますし、それからもう一つは、今申し上げましたように、そういう実績のあるところが出てくるのでありましょうから、そういった実績なども十分勘案してこの施行に当たっていきたいというふうに思っております。

大島(敦)委員 今回の社労士法の改正ですと、今度は条文のところなんですけれども、第二十三条で、これまでは労働争議の不介入規定がございました。この労働争議の不介入規定が今回は削除されることになっておりまして、そのことについて誤解を生むおそれもあるのかなとは思うんですけれども、どのようなお考えで削除をされたのか、御説明いただければ幸いです。

青木(豊)政府参考人 労働争議不介入規定につきましては、これは、当初その規定が設けられた趣旨というのは、その当時に大変労働争議が頻発、多発をしておりまして、こういった労務管理というようなことについて国家資格を持って専門性を持っている人たちがそういうものに介入をして悪影響を与えないようにということで設けられたわけであります。

 その後、労働争議も、御承知のように、多発していたのが急激に少なくなりまして、それ自身少なくなったということもありますし、それからまた、社会保険労務士法で今度は、労使の紛争についてそれぞれ代理をして迅速、円滑に、適正に解決をしていく、いわばその役割を担ってもらうという改正をお願いしているわけでありますので、社会保険労務士に対する労働争議不介入というのは、これは社会保険労務士だけに特に規定されているんですが、いわばそういった懸念のような規定というのとは相入れない考え方に立っているということでありますので、今般、禁止規定の削除をお願いしているわけであります。

 今般の代理業務を拡充するに当たりましては、今ほどお話がありましたように、能力担保措置を設けるとか、あるいは、不適正なことがあればきちんと正すことができる綱紀委員会のシステムなどを設けるとか、そういうような担保措置を講じていることによって適切にやってもらうという形がいい形ではないかということで、削除をお願いしているということであります。

大島(敦)委員 社会保険労務士さんのお仕事をされる相手、パートナーは経営者の方が多いかと思うんです。これまでですと、社内における諸手続、これは社会保険あるいは労働保険の諸手続をされておりました。ですから、逆に、労働者側の立場に立ってお仕事をされてきた方が全体として少ないのかなという懸念も聞くところなんです。その点について、社会保険労務士さんの中立性について懸念があるものですから、その懸念についてどのように払拭あるいはお考えなのか、その点について聞かせてください。

青木(豊)政府参考人 委員御指摘のように、確かに、いろいろな労働保険、社会保険に関する、あるいは労働関係に関する申請書類についての事務の代行をするというのが大きな業務の一つであります。したがって、おっしゃったように、事業主のサイドに立って仕事をするということが多いかと思います。

 しかし、実は、社会保険労務士が行うことができる代理は、既に都道府県労働局などで一部実現されているわけであります。この実績を見ますと、都道府県労働局における紛争解決手続の中であっせん代理を社会保険労務士の方がなさっているわけでありますが、これを見ると、平成十五年四月から行われていますが、全国でことしの一月まで累計百七十三件ということで、個別労働関係紛争については一応実績を持ってきております。そのうち、使用者側の代理が累計で九十七件、労働者側の代理が累計で五十八件ということになっておりますので、確かに使用者側が多いわけでありますが、圧倒的に使用者側の代理として機能しているということではないだろうと思っております。

 それにしても、御指摘のように職務の中立公正性が当然求められるということでありますので、きちんと中立公正性が確保される、それを阻害されることのないように、現在既に、例えば、現行法上、都道府県労働局がやっています個別労働関係促進法に基づく個別労働関係紛争について、あっせん委員に指名された社会保険労務士はその事件についてはあっせん代理を行うことはできないというようなことで現行法上も規定をされて、一定のそういう担保措置はなされているというふうに思っております。

 民間型ADRについては今回の法律でお願いするわけでありますが、これについても、先ほど申し上げましたように、法務大臣が認証した者の中でやってもらうというふうに考えておりますので、その認証の基準でも、利害関係を有するような場合にはそれを排除するというようなことになっておりますので、そういう意味で、公正性、中立性を確保しているというふうに考えております。

大島(敦)委員 ありがとうございました。

 今回の社会保険労務士法の改正案が通りまして、新しく資格を付与される社会保険労務士さんは新しい仕事に取り組まれると思います。恐らくは、先ほどから述べております個別労使紛争の使用者側につく方と、あと労側につく方も非常に多くなってくるかと思います。その専門性を生かしながら、多分いい仕事をこれからされると思いますので、ぜひ今後とも、特に研修及び試験について公平性が確保されて、今の新しい働き方、新しいというのか、今ふえてきている働き方に対して対応できるような能力をつけていただくことをお願い申し上げまして、まずは社会保険労務士に関連する質問を終わらせていただきます。

 続きまして、今回の障害者の雇用の促進等に関する法律の一部を改正する法律案につきまして質問をさせてください。

 今回の障害者の雇用対策の強化として、結構難しいのかな、非常に大きな取り組みをしていかなくてはいけないのかなと考えております。

 まず、突然大臣に振って申しわけないんですけれども、副大臣でも結構なんですけれども、障害者の雇用が、特に法定雇用率ですか、余りなかなか達成していないという現状がございます。今般も新しく数字が出たかと思いますので、その点も踏まえまして、障害者雇用について具体的に、これから質問させていただくんですけれども、手短に問題の重要性についてお考えを聞かせてください。

衛藤副大臣 障害者が社会の中で働くということは、健常者と一緒に働けるということは、それは非常に重要な課題であると思っております。今、法定雇用率が、一・四六になっておりますけれども、一・八を目指して民間ではお願いをしているわけでございますけれども、まだまだ達成していないということでございます。そういう状況の中で、何とかこれを引き上げるという形をやっていきたいというぐあいに思っています。

 これは改めまして、我が厚生労働省といたしましても、厚生省、労働省は一体となるようになりました。そういう中で、やはり、ばらばらでやってきたものが今度は一体的にやれるのではないのか、まさに障害者の共生と自立という基本的な使命に従えば、日常生活や社会生活の自立と同様に、就業においても、頑張れる人、希望する方はうんとやれるというような体制をつくることが必要だというぐあいに思っておりますので、今回のこのような改正に踏み切った次第でございます。

大島(敦)委員 今回の法改正の中で、精神障害者に対する雇用対策の強化の点、そして在宅就業障害者に対する支援の問題、もう一つが障害者福祉施策との有機的な連携となっておりまして、今副大臣が述べられたのは、今までの労働省行政と厚生省が所管している障害者福祉の施策をドッキングさせていく方向なのかなと考えております。

 皆さんのお考えを聞かせていただく中で、なかなかこれは、お考えはよくわかるんですけれども、実効力を伴うためには結構高いハードルがあるのかな、結構御苦労されるのかなという実感を持っておりまして、その点につきまして質問をさせてください。

 これまでですと、例えば福祉の領域ですと、現行ですとさまざまな施設がございます。それは、重症の心身障害者児の施設であったり、あるいは身体障害者の療養施設だったり、更生施設だったり、授産施設だったり、小規模通所授産施設だったり、福祉工場だったり、精神障害者生活訓練施設であったり、あるいは精神障害者地域生活支援センターだったり、さまざまな施設の枠組みがございます。

 今回ですと、これを五年かけてそれぞれ機能別に分けていくという施策を国としては立てられておりまして、療養介護とか生活介護、自立訓練であったり、あと就労移行支援、就労継続支援、あと地域活動支援センターというふうに機能別に分けていくということに皆さんは取り組まれるということで、今回法案を出されていると思います。

 この考え方というのは、施設にいらっしゃるあるいは施設に通所されている方に対して、働くということ、今までだと、自然に働きたいという気持ちで恐らく求職活動をされていらっしゃったのかなと。もう一歩踏み込んで、施設にいらっしゃる方に対して、働いてほしいとか、働く気があるんですかとか、働いた方がいいですよとか、そういう働きかけをしていくのかどうか、その点についてちょっとお聞かせください。

西副大臣 お答え申し上げます。

 委員御指摘のように、今まではなかなか、自立、障害者の皆様が働くということに対して十分施設の側が援助できなかった側面は私はあると思います。具体的な就労に移行するための条件が整っていなかったという感じが、各所拝見しまして、もう少しやはり障害者の働きたいという気持ちに沿った施設が多くならなければ、そういう意味ではもう少し高度にならなければいけないなという気がしておりまして、障害者が地域で自立して働くためには、福祉の施策においてももっともっと充実した支援をしていくということが必要だと思います。

 このたび、先生が御指摘いただきましたように、企業等で働く意欲のある障害者の人たちを対象にして、一般就労に向けた訓練それから職場実習等を行っていくいわゆる就労移行支援というものを新しく立ち上げることにいたしました。これは、より効果的な支援を行うという考え方から、一人一人の利用者に対してその適性に合わせた就労支援のプログラムをつくりまして、そしてそのプログラムの効果を継続的に評価しながら、お一人お一人の自立のために責任者を配置して社会に送り出していこう、こういうことでございます。

 今後、福祉と雇用の関係者ネットワークを構築する中で、こうした事業を活用しながら、障害者の自立の支援のために積極的に推進をしていきたいというふうに考えているところでございます。

大島(敦)委員 恐らく、大臣及び副大臣の皆さんも、授産施設あるいは小規模作業所等も視察をされているかと思うんです。これは、結構自分も見学をさせていただいて、並大抵の努力じゃなかなか一般就労の方には向かわないのかなという実感を持っておりまして、相当のバックアップをしていかないと、受け入れる企業にとっても必要ですし、あるいは送り出す各施設あるいは学校にとっても必要かと思うんです。人的な資源に負うところが非常に多いと思っていまして、その点について、これまでですとジョブコーチですか、会社の中で障害者の方を雇用したときにいろいろと仕事の援助をされる方を設けるというお話は非常にいいことだと思います。

 ただ、そのジョブコーチはどんな方がいいかなと考えると、御承知のとおり、あと二年後には団塊の世代が多くリタイアされまして、その中で、現業系のお仕事で、あるいは作業長さんあるいはその現場のトップとして、個々の職場の皆さんの個性とか能力をうまく引き出しながら、経験を積まれた方が多くいると私は思うんです。その中で何人かが多分ジョブコーチとしてふさわしい仕事をできる方かなと。多分、この人たちでしかできないと思うんです、これは。

 働くということは、皆さんが御承知のとおり、規律の問題もありますし、あるいは整理整とんの問題もありますし、そういう問題も含めてコーチングを、しっかりと指導しなくちゃいけない。

 そのような人的な資源について、今までですと、ジョブコーチの皆さんは会社側ですよと。送り出す施設側にも、ジョブコーチと言うのはふさわしくないかもしれないけれども、私が今述べたような要件、能力を持っていらっしゃる方も、恐らくそこに常駐させるのは小規模のところもあるから難しいと思うんですけれども、派遣するなりして、ある程度福祉の面と、もう一つは働くという面から、両方から能力を引き出して仕事をしていただくようにしていかないといけないなと思うんですけれども、その点についての具体的なお考えがあったらお聞かせください。

衛藤副大臣 委員御指摘のとおりでございまして、先日、ちょっと私は国立の棕櫚亭というところに行かせていただきました。NPOでスタートされて、ちょうどその中心になられている方はハローワークにも若いころずっと行かれていたということでございまして、そしてまた、そういう意味では、専門的ないろいろな技能に関する知識も、それから職業能力開発についての知識も持たれているというところです。

 私どもは今まで、委員御指摘のとおり、どちらかというと、やはり福祉的就労をメーンに考えていましたけれども、一般的就労ということを可能ならしめるというか、そこまでやるということは、本当にそういう意味で人材の育成、配置ということは極めて重要だなというぐあいに思いました。そういう中で、私どもも、この作業所を機能に応じて見直していくとか、あるいは個別支援に関するプログラムの作成や継続的な評価を行う責任者を配置するとか、そういう人的な問題は非常に重要だなということをつくづく感じた次第でございます。

 そういう意味で、この雇用施策におきましても、施設の職員に対しての就労支援ノウハウを提供するためにアドバイザーの派遣等を考えるとか、そういうような、今までまさにいろいろなノウハウを持っている方々について、具体的に各施設に対してバックアップができるというような形を考えなければいけない、今御指摘のとおりだというぐあいに思っています。また、就労支援にかかわる知識やノウハウを付与するための研修等も今後やっていかなければいけないというように思っております。

 そういう意味で、ジョブコーチ事業というものを、職場適応のための支援を行えるという形をちゃんとやっていく、そして、その中でジョブコーチ助成金というものをつくって、福祉施設や企業の人材をジョブコーチとして育成して活用していくということをやりたいというぐあいに、今御指摘のとおり、思っている次第でございます。

大島(敦)委員 恐らくここ五年間は試行錯誤をしながら、本当にうまくいくのかどうかも含めて、検討されていくかと思うんです。

 その中で、今回の政府の政策の中で地域障害者就労支援事業というのがございます。この地域障害者就労支援事業というのは、ハローワークが中心となって、福祉施設と連携をとりながら就労に向けての取り組みをされるということなんです。

 この中で、ハローワークと福祉施設、そして支援関係者専門機関としてさまざまな障害団体あるいは福祉事務所等が入って、もちろん職業訓練校もあるんですけれども、メンバーとしてなっているんですけれども、やはり障害者の方の就労を考えると、地域における企業あるいは経済団体の方も最初からメンバーとして加えた方が、恐らく今度は、受け入れ企業側の理屈なり、あるいは受け入れ企業側の問題意識というのも持ってくると思うんです。その点についてお考え、経営者団体等も含めた方がいいのかについて、ちょっと御答弁いただければありがたいんですけれども。

金子政府参考人 お答え申し上げます。

 地域障害者就労支援事業についてのお尋ねでございますが、この事業につきましては、ハローワークが福祉施設等と連携いたしまして、障害者就労支援チームというのを設けることにしております。こういったチームを設けまして、いわばケアマネジメント的な手法も入れて、それぞれの求職者の方に対して就職に向けた準備から職場定着まで一貫した支援を行おうというものでございます。

 その支援メニューの一つといたしまして、企業との連携によりまして、福祉施設等での訓練と事業所での実習を組み合わせたような就労支援も取り入れることとしております。こういった就労支援を行う場合のチームのメンバーにつきましては、今議員御指摘がございましたように、企業、実習先の事業所に参加していただくというのは当然必要でございます。こういったことで、ケース・バイ・ケースにはなろうかと思いますが、企業の方にも御参画をいただくということが当然に出てくるものだと思っております。

 また、こういった事業を通じまして、地域の中で地域に密着したネットワークをつくっていくということが大変大事だろうと考えております。そうしたことで、地元の経営者団体の理解と協力が必要でございますので、さまざまな機会にこれらの事業を周知いたしまして、また協力も求めていきたいというふうに思っております。

大島(敦)委員 大臣、今回のハローワークが中心となっての取り組みなんですけれども、全国で十カ所から始めるということなんですけれども、十カ所だとちょっと少な過ぎるのかなと思っておりまして、まずは十カ所で始めてみて、うまくいきそうだったらほかにふやしていく、モデル的にやるのか、あるいは、これはできるだけ今回の十カ所をしっかりと定着させながら、将来多くしていくのか。その点についてのお考えを伺わせてください。

尾辻国務大臣 お話しのように、今回モデル的に十カ所行います。これは十カ所でありますから、できるだけさまざまなタイプのモデルケースがつくれるように、都市の規模でありますとか地域における就労支援の取り組み状況等を考慮して選定をいたしました。例えば、渋谷みたいな大きな町、それからまた島根の浜田市といったような比較的小さな町というようなことで、それぞれのまずはモデル事業を行っておるところでございます。

 そうした中におきまして、本事業におきましては、福祉施設等と連携した障害者就労支援チームの設置、それから同チームによる個別の障害者に応じた支援計画の作成、また同計画に基づく就職に向けた準備から職場定着までの一貫した支援を中心に、関係機関と連携して支援ノウハウの蓄積をまず図ろうとしておるところでございます。

 このような事業の成果を普及、展開することにより、雇用と福祉の連携の強化を通じて福祉的就労から一般雇用への流れを促進し、障害者の雇用促進に努めてまいりたいというふうに考えておるところでございます。

大島(敦)委員 ありがとうございます。その結果も私も注目をしていきたいと考えております。

 続きまして、今回は障害者の方々に対して、仕事をしていただくという、国は多分積極的に働きかけていく方向なのかなと思っています。法定雇用率の算出の仕方というのがございまして、その法定雇用率の算出の仕方ですと、分子の部分があって、そこには要は障害者の失業者数が分子の部分に入っているわけですよ。今の一・八の求め方も、身体とか知的常用労働者とその失業者数が分子になっておりまして、その分子の部分の失業者数が、恐らく働く気持ちがふえてくると分子の部分もふえてきますから、一・八の法定雇用率が将来的には二・〇とか二・三とかふえてくることも十分にあり得るのかなと。

 そのときに、今の法定雇用率の一・八を、将来的に、法定雇用率を求める数式によって二・三とかふえてきた場合に、上限を決めるのか、働く人たちがふえてくるんだからやはり一・八からふえてくればそれは守らなければいけないという方向に、上限は決めないのか、その点についてちょっと確認したいんです。

金子政府参考人 法定雇用率についてのお尋ねでございます。

 今議員から御指摘がございましたように、法定雇用率につきましては、分母に常用労働者と失業者の総数を持ってまいりまして、分子に障害者である常用労働者と障害者である失業者の総数、こういう割合で算出いたしまして、この割合を基準にして決めるというふうに、これは法律で明示をされているわけでございます。

 現在設定されております一・八%の法定雇用率でございますが、今後、例えば精神障害者の義務化といったようなことを展望したときに、障害者の法定雇用率の見直しということが当然出てくるということだろうと思っております。これにつきましては、法律に基づきまして、この率を基準にして適切に定めていくことが基本だろうと思います。

 ちなみに、現在の一・八%という数字につきましても、これを設定しますときに必要な調査を実施いたしまして、その時点での最新の数字を使ってこの率を算定することにしております。そういったこれまでとってきております法律に基づきます手続、こういったものは今後とも同じような形で当然やっていかなければならないというふうに考えております。

 こうした考え方に立ちまして、法律の規定に基づきまして適切な雇用率を設定していきたいと思っております。

大島(敦)委員 きょうは、まことにありがとうございました。ここで質問の方は終わらせていただきます。

 やはり、特に今御指摘させていただきました障害者の労働施策と福祉の施策、特に、障害者の皆さんが一般雇用に向かうというのは、本当に細かくケアをしながら働きかけていかないと難しいと思いますし、必要ないものをまたアクセルを踏んでもいけないのかなと思っていまして、まだまだなのかなと思っております、これは個人的な感想なんですけれども。

 ですから、ぜひ今後とも取り組んでいただいて、できるだけ法定雇用率の一・八に近づけてくれるようお願い申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

鴨下委員長 次に、長勢甚遠君。

長勢委員 おはようございます。

 最初に、社会保険労務士法について御質問申し上げます。

 今回の社会保険労務士に係る紛争解決手続代理業務の拡大ということは、個別労働関係紛争の簡易かつ迅速な解決を促進するためにも、まことに時宜にかなったものであると思っております。この制度が適切に実施されることが必要でございますので、そのためには、今回の法律案において措置されております代理業務に係る研修と試験が適正に実施されることが必須の条件であります。

 厚生労働省として、この研修及び試験の適正性を確保するためにどのような措置を講じておられるのか、ぜひしっかりやってもらいたいと思いますが、御答弁をお願いします。

衛藤副大臣 ただいまの担保能力確保の措置につきましては、研修そして試験の方法、内容等の詳細については、現在、全国社会保険労務士会連合会において、学識経験者それから弁護士及び社会保険労務士を構成員とする検討会を設置いたしまして、依頼者の権利利益を保護する観点等専門的な見地から検討を進めているところでございます。

 この検討会におきまして、四月二十日に開催されました第四回会合においては今後の検討方向を示す中間報告を取りまとめたところでございますが、ことしの秋ごろには最終報告を取りまとめる予定になっておりますので、行政といたしましては、この報告を受けまして、研修及び試験の内容を省令で定めたいというように思っております。

 さらに、試験については、紛争解決手続代理業務について学識経験を有する者から試験委員を選任いたしまして試験問題の作成等を行わせるというものでありますけれども、一般的には、大学教授や弁護士等の実務家から選任することになるのではないかというぐあいに考えている次第でございます。

長勢委員 言うまでもなく、今回の改正は司法制度改革の一環として行われたものでございます。社会保険労務士の方々が大変御苦労されておるわけですが、こういう新しい分野においても社会の信頼が得られ、また関連の司法関係の方々あるいは労働組合の方々等々の信頼が得られるようなものになるように、能力をきちんと担保していただいてしっかり仕事をしてもらえるように、ぜひ御指導をお願いいたしたいと思います。

 この法案とも関連をいたしますが、今、雇用情勢も大分緩和をしてまいりました。大体、のど元を過ぎれば熱さを忘れるということで、最近この雇用問題というのが割と大きく取り上げられなくなっておりますが、逆に、こういうときこそ、私は、職業相談、紹介体制というものをきちんと再編して今後に備えていくべきだと思っております。

 ハローワークの業務を見ていますと、私が労働省におりましたころとはさま変わりなくらいサービス精神に徹して、大変な御苦労をされておられる。私は敬意を表しておりますし、また、それ相応の成果も上がっておる。外国の同様の機関に比べて格段に成果が上がっておるわけでありまして、職員の皆さんには敬意を表しております。

 にもかかわらず、どういうわけか知りませんが、安定所はろくなものでないという声がそこらじゅうにありまして、特に、人をネタに金もうけをしようというグループの方々が、規制改革とか民営化と称してこういうハローワークの全国ネットを破壊しようという陰謀がたくらまれているということに対して、私は非常に危機感を持っております。こういうことは、個別の企業というか人の利害に根差したような批判にはめげることなく、ぜひ一層紹介体制の充実に努めていただきたい。こういうことをやっていると職員の士気が落ちる、ネットワークが壊れる、私は非常に心配をしておるわけであります。

 しかし、本来こういうことに頑張るべき役所の方は唯々諾々とこういう間違った風潮に従う傾向があるようでございまして、昨今、そういうことが目に余るものがあります。私は、副大臣、ぜひこういうことについては断固闘って日本の紹介体制を守っていただきたい、そしてまた、より改善をしていただきたいと思います。幾つか不愉快なことがありますので、改革と称してわけのわからぬことをしているというのが幾つかありますので御指摘を申し上げて、御意見も伺いたいと思います。

 一つは、ジョブカフェというのが最近大変はやりで、新聞などでもこういうのがいいことをしているしていると言われておりますが、この実態は何なんだろうということをぜひお知りおきいただきたいなと思うんです。

 若干知っていることを申し上げますと、県の事業とされておって民間などに委託をされている、しかし、委託といって、ではどういうところに委託されているかというと、ほとんど同じ企業に委託をされておる。しかも、その内容は何なんだと。本当に日本の雇用政策に合ったことをやっているのかどうか、いささか疑わしいものがある。全く金もうけのためだけではないのかという心配もある。

 これは私の誤解もあるかもしれませんが、この点についてどうお考えになるか。少なくとも、安定所をこういう業務から排除しようという雰囲気の中でこのジョブカフェなるものの一部の人たちの動きがある。こういうことで本当にいいのかということについて、ひとつ副大臣の御認識を伺いたいと思います。

衛藤副大臣 規制緩和と言われる動きの中で、民間にすれば全部よくなるとか、そういうことはやはりおかしい部分もたくさんあるということは私どもも認識をしなければいけないというように思います。官であろうが民であろうが、やはり問題は、みんなのため、公というか、その思想がちゃんといつもなければいけないんだというぐあいに思っています。

 そういう中で、仰せのとおり、全国のジョブカフェは都道府県が主体的にやっているわけでございますけれども、都道府県が適切と判断した経済団体や公益法人等の民間団体が運営に当たっています。そして、当該団体に対しまして、企業説明会やセミナー等の実施等の就職支援に資する事業を委託しているところでございますけれども、仰せのとおり、ジョブカフェ事業について若者の立場に立った取り組みを促進したいということでやっているわけでありますけれども、厚生労働省としても単なる金もうけの道具になってはいけないということを強く考えている次第でございます。

 平成十六年度の実績を見ますと、百万人の方々が利用し、計五万三千人が就職に結びつくなどして、全体としては就職支援として一定の成果を上げているのではないかというぐあいに思っていますけれども、この事業の趣旨について常に適切な評価、金もうけの道具にならないようにやっていかなければいけないというように思っている次第でございます。

 それから、さらに追加でございますけれども、ただいま委員御指摘ございましたように、職業安定事業等につきましても、私もいろいろなところをずっと見てまいりましたけれども、本当に昔とさま変わり、そして、本当にきめ細かく、行き届いた配慮をし努力されているということを、大分この機会に見させていただきまして感じたところでございます。引き続き、これだけ我が国において徹底したきめ細かなサービスをやっている、これをもっとよりダイナミックにやっていく必要があるのじゃないのかというぐあいに感じている次第でございます。

長勢委員 ジョブカフェについてはもう少しきちんとお調べをいただきたいと思います。特に安定所というか、紹介等はどういう形になっているのか。ただ形式だけ整えて、数字はおっしゃったようなことかもしれませんが、実態はどうなっているのか、私はもう少し精査する必要があると思っております。

 この事業も含めて、地方事務官制度が廃止されたことから、都道府県あるいは市町村が、従来の安定所との、ハローワークとの、労働行政との連携がなくなった。あの廃止は間違いだったと私は思っていますが、そういう中でこの雇用問題について都道府県、市町村が地方分権と称してみずから独自にやらなきゃならない、こういう動きが強まっておって、厚生労働省も唯々諾々とそれに従っているというのが現下の形勢であります。ジョブカフェもその一つであると思います。また、市町村などでは独自に無料職業紹介所を開設して、ハローワークに頼らないでみずからやるんだ、こういう動きが見られる。これは全く金と人員のむだであります。

 地方分権はもちろん尊重しなきゃなりませんが、全国ネットでやるべき職業紹介、相談体制というのはハローワークを中心にして、その中に市町村や都道府県も協力をする、そのネットの中で一緒にやっていくという体制であるべきであって、ハローワークは相手にしない、自分からやらなきゃならぬ、こういう発想は少しおかしいと私は思いますので、その点について副大臣の御見解を伺います。

衛藤副大臣 ただ、私もずっと見させていただいた中で、今まで、どちらかというと、労働行政につきましては都道府県、市町村の方も国任せというところがあったと思います。

 そういう意味で、都道府県や市町村も自分の地域の雇用について一緒に興味を持って責任を持とうというぐあいにしていることについては、委員御指摘のとおり、評価はされると思いますけれども、せっかく今までこのネットワークをつくってきたわけでございますので、そのネットワークと一緒になってやらない限り、ばらばらにやったところで全く意味がない。仰せのとおりでございまして、ハローワークにいたしましてもそういう形の体制をとるように頑張っていかなければいけないというぐあいに思っています。

 そういう意味では、ハローワークでは、全国的な体系のもとで、さまざまな求職者の希望や特性に応じた適切な支援を提供するということを原則として考えてやっていきたいというように思っております。そして、そういう中で、それぞれの求職者に対しまして個別的かつ総合的な就職支援を実施していくことが肝要であるというように考えています。担当制を導入するとか、あるいは早期再就職の意欲や必要性の高い方に対してマンツーマンの就職支援を行う早期再就職専任支援員を配置するなど、体制の整備にも努めているところでもございます。

 今後、地方公共団体の協力も得ながら、職業紹介の一層の充実に努めてまいりたいというぐあいに思っています。これをばらばらではなく、一体的に、市町村とも地方自治体とも協力の上進めていくということをやらなきゃいけないと思っておりますので、そういう方向でもっと指導を強めていくということをやらせていただきたいと思っています。

長勢委員 すべて同じというわけでもないでしょうが、市町村、県がハローワークとの連携と称して下請のようにこき使おうとする風潮が見られたり、あるいは、ハローワークを相手にせず、おれの方が上なんだと言っているところがあったりというのは非常に日本の行政をゆがめると思いますので、そういうことにも配慮をしていただきたいと思います。

 そうはいっても、今副大臣も御評価いただいて感謝を申し上げますが、安定所の職員があれだけ一生懸命やっているのをやはり評価されないというのは、本省というか、また政治の責任でもあると思うんですね。今、安定所へ行きますと、たくさん人が来ている。しかし、その人たちが、来ておられる方々が安定所で相談を受けるということになっているのかというと、そんなにたくさんの人、すべての人が相談を受けに来ているとは思えない。また、求人側も、安定所から紹介されても、意欲や能力が全くない人が紹介されてくることがある、多いということについていろいろな不満を聞きます。つまり、それは制度的にもやはり欠陥があるんじゃないかということを私は思っております。

 今もお話しになりましたが、安定所に、正直言うと、どこかいいところはないかと見に来るだけの人、あるいは失業給付をもらいにだけ来る人、こういう人たちで窓口がごった返しておるわけであります。周りは駐車場の問題でみんな迷惑をしている。私は、こういう方々は、その方々についてのサービスを念入りにやる必要はない方々なのではないか。ちょっと言い過ぎの面はありますが、やはり短時間に用を片してもらえればいいのであって、むしろ必要なのは、積極的に就職をしたいという方々に対して、個別に、相談から就職に至るまで一貫してマンツーマンで紹介、相談できる体制をつくっていくことだと思います。

 今副大臣もおっしゃって、努力をしていただいているのはよくわかりますが、今、失業者というか求職者に対する体制はこういう紹介と失業保険制度の両輪でやっているわけですが、今までは就職困難度ということで、例えば年齢等々形式的な基準で体系が組み立てられております。しかし、これからはむしろ就職の積極度によって失業保険制度も紹介体制も再編をすべきではないか。

 そうすると、一人一人に対して総合的に個別的にやるとなると、大変な場所と人が要ります。定員削減の中でハローワークの方々は大変苦労されているわけですから、そんなに都道府県や市町村もやりたいというのであれば、都道府県や市町村に土地やあるいは人を出してもらって、そういう一体的な中で人を確保し場所も確保して、総合的な個別的な相談、紹介体制を構築していくということを構想してもらいたいと私は思っておるのでございますが、ぜひひとつ御見解を伺いたいと思います。

衛藤副大臣 ハローワークは、本来、今おっしゃいましたように個別、総合的な就職支援を実施していくことが望ましい。まさに、いろいろな失業保険給付のためだとかそういうことだけに利用される方ではなくて、本気で就労についての信念のある方、熱意のある方、そしてまた、その能力に応じてもっともっときめ細かく、個別に行き届くことが必要だというぐあいに認識をいたしております。

 そういう意味でも、私どもも、担当制を導入するとか、あるいは早期再就職の意欲の高い方、必要度の高い方に対しましてマンツーマンの就職支援を行う早期再就職専任支援員を配置するなど、体制の整備にも努めているところでございます。そういう形で、今見直しのお話がございましたけれども、私どもといたしましても、個別、総合的な就職支援につきましての体制について、改めて御指摘のような方向でもっと検討を進めてまいりたいというぐあいに思っています。

長勢委員 私は、体制は相当本格的に構想を練ってやらないと、今進めてはいただいておるんでしょうけれども、財務省の枠の中で何人かずつ相談員をふやすという程度では、それはなかなか体制ができないから、逆に安定所の方が混乱するとか職員の方にも負担がふえるということにもなりかねませんので、少しきちんと対応できるように構想も練っていただきたいと思います。これは少し大ごとの話かもしれませんが、私は、失業保険の給付体系もぜひ積極度に合わせたものに、給付日数なりなんなり大胆に改革を目指してもらった方がいいのではないか、そういうことが両輪相まって安定所の再編ということになっていくのではないかと思いますので、その点も御検討いただければ大変ありがたいと思います。

 ただ、職業についての感覚と考え方というのは、最近の若い方々と我々というかそれなりの人たちと大変差異が生じておりまして、特にニート、フリーターというのが最近話題になっておるわけでございます。少子化、人口減少社会を迎えてこれは社会的にも大変損失なわけでございますが、どうも文部科学省だとか、あるいは経産省だとか、あるいは厚生労働省等でこの問題を議論されておりますが、ニートという方々について、何か就職できない人で、これをどうかしてあげなきゃならぬというふうにとらえておられるような印象もあるんですけれども、私は、例えを言うとちょっとまずいんですけれども、どう言ったらいいんでしょうか、本来、ある種の組織の中におることについて拒否的な感覚の方々、そういう意味では自由人と言ってもいいんでしょうけれども。

 そういう方々だったのかそうなったのかわかりませんが、そういう方々であるとすれば、これは職業講習をやるだとか能力開発をやるだとかという話ではないんじゃないか。むしろ、そういう職業講習を受けようとか能力開発を受けようとかという以前の、そのこと自体が、意欲があるないどころでなくて、そういうことがわからないというか、そういう方々に近い人たちなのではないか。そういう意味では自由人でありまして、かわいそうな人というよりもそういう生き方を選んでいる人という評価もできる、そういう人もおられるんだろうと思うのですね。

 そういう意味で、私は、従来の雇用政策だとか文教政策だとかという範疇とは少し違う人たちというとらえ方をしないと何も効果が出てこないことになるんじゃないかと思いますが、恐らくそういうことも含めて今対策を講じておられると思いますが、どういうふうにお考えでしょうか。

衛藤副大臣 仰せのとおりでございまして、ニートの方々は、働く意欲がないニートの方々が多いわけでございます。

 そういう意味で、ニートの定義の中に、働く、あるいは学習する、訓練する、そのいずれも受けていないという方でございますから、そういう方に、ある意味では自由人という表現をされましたけれども、まず働くことや教育や訓練を受けることがやはりいいことなんだなという認識をしていただくところから始める。もともと働きたいという方が、これをどう就労の面でマッチングさせるのかということの前の段階の状況だというぐあいに思います。そういう意味では、私どもは、やはりニート対策というのは今までの職業紹介という形だけではいけない部分があるんだというぐあいに認識いたしております。

 そういうこともございますので、私どもも、若者の自立塾という形で集まっていただきまして就労に結びつけていきたい。そしてまた、そのためにも、既成の、さあ集まってくださいよというだけでは集まっていただけない、いろいろな方を通じて積極的に参加していただくために働きかけが必要であるというぐあいに認識をいたしております。ですから、自治体の広報誌だとか、PTAだとか、あるいは友人、知人、あるいは親とかいう形からもアプローチをしていかなければ、みずから最初はその意思を持っていないわけでありますから、それを、働こうあるいは働いてみようかという意思をどう起こさせるかというところが一番の入り口ではないのかというぐあいに認識をいたしております。

長勢委員 やはりこういう問題は、何よりも、対象者の枠に入ってきていただく、そういう人をどうやって集めるか、来てもらうかというところが一番難しいんだろうと思うんですね。正直言って、我々は、朝起きたら飯を食って、歯を磨いて、何時までに会社へ来るということがそんなに違和感はないわけですけれども、ある種、そうだけとも言えないんでしょうけれども、若干ホームレスの方と似たようなところがあって、生活そのもののリズムが一般社会に適合していないといえばしていない。悪いという意味じゃありませんけれども、そういうことがあるのだとすれば、その方々を適合さすというのは大変難しいと私は思います。

 しょせん、組織の中で生活することを極端に言うと拒否する人とそうでない人ですから、今NPOの話をされましたけれども、NPOの方々も比較的組織となじまない方々の場合が多いわけで、むしろそういうことよりも、私はたくさん知っているわけではありませんが、こういうニートの方々に呼びかけて、信頼を持っておられるグループもほかにもたくさんあるわけで、ぜひそういうことも頭に入れて、こういう方への対策というものはこれから大事だと思いますので、ぜひよろしくお願いをいたします。

 時間が来ましたので、これで終わらせていただきます。ありがとうございました。

鴨下委員長 次に、五島正規君。

五島委員 民主党の五島でございます。

 本日は、私の質疑に対しまして、日本弁護士会の及川事務局長、そして社労士会の大槻会長、また連合の長谷川雇用法制対策局長に参考人としておいでいただきました。心から感謝を申し上げます。

 それでは、早速でございますが、質問に入らせていただきます。

 今回の法案につきましては、実は、国の法律でありながら、やはりその実態についてはきょうおいでいただきました各団体がどういうふうにこれについてお取り組みになるかということが一番大事な問題だと考えておりますので、副大臣、基準局長と同じく、参考人の方に対しても質疑を続けていきたいというふうに思っております。

 今、厚生省が参考資料として出された内容を見ましても、個別労働紛争解決制度の運用状況というものを見ましても、例えば、総合労働の相談件数というのは八十二万ある、そして民事上の個別労働の紛争相談件数が十六万、それから労働局長の助言制度に対する申し出の件数は五千二百、そして紛争調整委員会であっせん制度の申請を受け付けたのは六千と、八十二万の中であっせん申請を受け付けたのはわずか六千しかございません。

 そして、現実にその相談、助言やあっせんをやられたのを都道府県別で見ますと、例えば、相談、助言という申し出があって紛争処理にかかわったところというのを都道府県別に見ますと、福島県の百六十三件、あるいは徳島県の百十六件、高知県の九十二件といったところが非常に大きいわけで、ほとんどの都道府県の労働委員会においてこうした問題は受け付けられておりません。

 なぜこのような格差があるのかということは非常に問題があるところだろうというふうに思っています。本来であればもっと大都市においての方がこうした問題は多いはずだと思うわけですが、現状の問題としてみますと、そういうふうな数字が出てまいります。

 個別労働紛争の処理についての法案、ちょうど四年前にこの委員会においても議論をいたしました。そして、私も、そのとき民主党の担当としてこの問題に取り組んできた経過があるわけですが、その当時から、労働委員会のもとにおける個別紛争処理のシステムというものは果たしてこれでいいのかということは大変議論になったところでございます。そして、昨年、ADRの法律との関係において、これの処理の関係については周辺のところに拡大される、処理のあっせんのところが拡大されるということになったわけでございますが、そのことによって、本当にこうした処理が迅速に、かつ、言いかえれば労働者側にとって納得いく形で進んでいるのかどうか、そこが一番大きな問題だろうというふうに思います。

 従来は、こうしたあっせんの場、あるいは相談の場というのは、地方の労働局の中のADR機構といいますか、そこにおいて処理することになっていた。それが、今申し上げましたように、膨大な数の個別紛争の発生に対して、そこまで行っている件数が余りにも少ないし、処理されている数も少ない。これは本当に、このADR機関の数が少ないからそうは行っていないのか、それとも、そこまで行くまでに当事者によって全部解決しているからそうなっているのか、その辺は基準局、どうお考えなのか、まずお伺いしたいと思います。

青木(豊)政府参考人 明確な調査をしたわけではありませんので、正確なお答えになるかどうかわかりませんが、一般的に言えば、まさに今委員御指摘のように、極めて軽微な事件で、話せばわかるというようなこともございますでしょうし、非常に複雑な問題になって、あるいはこじれたような問題になっている場合もありましょうから、そういった案件の性格上、まずいろいろな多段階にわたるシステムを使っていくのには、おのずとそのような、ヒエラルキーといいますか、数が少なくなっていくということだろうと思います。それからもう一つは、都道府県労働局が行う個別労働紛争のシステムができてからのことを考えますと、そういうものができたということで、だんだん認知をされてふえていくということもあろうかと思います。

 そういう意味では、いろいろな相談に対する対応でありますとか、紛争解決のシステムでありますとか、そういうものについてのPRだとかあるいは評価だとか、そういったものが深まっていっているかどうかということも、また一つ要因といいますか問題だろうというふうに思っております。

五島委員 今、パート労働であったりあるいは派遣労働であったり、こうした個別紛争になるようなケースというのは、実は私どもの周りを見渡しても客観的にふえているのは事実ですし、また今後、例えば万一ホワイトカラーエグゼンプションなんかが導入された場合に、恐らく、従来であればいわゆる労働組合との間の係争になるような事件であったとしても、そういう人たちが本当に労働組合に所属しているかどうかという問題を考えた場合に、こうした個別紛争処理として対応せざるを得ないような係争は減少しないんだろうなというふうに思います。

 それだけに、客観的に非常に公正なこういうADR機構というものがふえていくことについては、それ自身は必要なんだろうなと思うわけですが、問題は、そこにおける公平で公正な調停というふうなものがどう担保されるかという問題でございます。

 今回、この法律によって、社会保険労務士さんに対して特定社会保険労務士という形での新たな資格を与えて、そしてそういうADR機関に属してあっせん、調整もできるというふうにした。また、従来、社会保険労務士法の中にございましたいわゆる労使紛争に対する不介入の規定というふうなものを削除するということになったわけでございます。

 こういうふうな形でもって、社会保険労務士さんに、ADRとしての事業、あるいは労使紛争に対しても一定の参加の枠の拡大というものが認められようとしているわけですが、まず最初に、この流れについて、後ほど社労士会の会長さんにはさらに詳しくお聞きしますが、まず日弁連あるいは連合の方から、どのようにこの法律の改正に対して評価しておられるか、お伺いしたいと思います。

及川参考人 日本弁護士連合会の及川でございます。

 今回の法案につきまして、一つは、ADR手続代理を弁護士以外の法律専門職に認めることにつきましては慎重に考えるべきだというのが日弁連の基本的な考え方でございます。

 一つは、ADR手続代理という場合の代理ということでございますけれども、代理人の行為というものは、その結果が直接本人に帰属する法的効果を持つということでございます。つまり、代理人だけの判断で依頼者本人の権利義務を処分してしまうという効果が生ずるわけでございます。

 そうでありますので、代理人には、依頼者の主張について法律上の争点を的確に把握し、これを法律的に構成する能力、最終段階である裁判の帰趨をも見通した判断を行う能力、相手方の主張や手続実施者の釈明に対して適切な答弁、反論を行い、主張と証拠の関係、主張、立証について的確に判断する能力が求められているというふうに考えております。

 社会保険労務士さんの方では、本来的には紛争解決を業務とするのではなく、そのため、紛争解決業務に必須である民法、また労働契約に関する労働法関係、民事訴訟法、これについての知識は制度上要求されてございません。ADR手続代理を付与する前提といたしまして、研修及び試験を課すということも今回の法案の中身になっておりますけれども、その研修及び試験の内容は現在まだ明確になってございません。

 平成十三年に成立しました個別労働関係紛争解決促進法により、都道府県労働局のあっせん制度が設けられ、その後、十四年の社会保険労務士法の改正によって、社会保険労務士さんにあっせん代理業務を行うことが認められました。しかし、この場合のあっせん代理とは、私が申し述べました民法上の代理とは異なるものでございます。しかも、同改正は平成十五年四月一日から施行されたばかりであり、いまだその実績があるとは言いがたいと考えております。

 また、業務の公平性についても若干懸念を持ってございます。社会保険労務士さんは、使用者から労働社会保険諸法令に関する申請などの委託業務を受けることがその主な業務でございます。このように、実際上、使用者側の代理をすることが多いと予想される状況で、広くADR手続代理を社会保険労務士さんに認めることは、労使一方の当事者である使用者側の便宜だけを図ろうとするものとの批判を免れない危惧がございます。仮に、個別ADR事件で社会保険労務士さんが労働者を代理することになる場合、使用者側から独立性を守り、代理人として労働者側の利益を代弁して公正な代理業務を行えるかどうかについては、若干の懸念があるところでございます。

 しかしながら、今回の法案は、社会保険労務士さんに一定のADR代理権を認めております。民間紛争解決手続について、例えば解雇、退職、雇いどめ等の効力を争う事案は、紛争の価額が六十万を超えるものとして、弁護士との共同受任が必要と理解されております。また、ADR機関への申し立てを行わないで行ういわゆる相対交渉、これもできないというふうに理解されてございます。現行の社会保険労務士法二十三条及び二条一項三号括弧書きが削除されても、労働争議の団体交渉において一方当事者の代理になることはできないと解されてはおります。

 日弁連としましては、本法案におけるADR代理権は十分な研修を修了し、かつ試験に合格することが条件とされていること、このような利用者のための制度が適切に機能することを注意深く見守っていきたいというふうに考えてございます。

 簡単ですが、以上でございます。

    〔委員長退席、北川委員長代理着席〕

長谷川参考人 連合の雇用法制局長の長谷川です。きょうは参考人として呼んでいただきまして、ありがとうございます。

 今般の社会保険労務士法の改正に関する私どもの考え方を述べたいというふうに思います。

 そもそも社会保険労務士の業務ですけれども、これは社会保険労務士法第二条に記載されておりますように、労働社会保険諸法に基づく申請及び帳簿書類の作成、それから申請書類の提出代行、申請等についての事務代行、紛争調整委員会における個別労働関係紛争のあっせん代理、そして労務管理その他労働及び社会保険に関する事項についての相談、指導というふうに記載されております。それから、今回の改正で削除する提案がされています二十三条で、労働争議に介入することは禁止されております。

 今般の社会保険労務士法の改正案でありますが、この改正案は司法制度改革の推進に基づいて行われまして、大体四点の改正案が提起されております。

 一つは、個別労働紛争について都道府県労働委員会が行うあっせん手続の代理、男女雇用機会均等法に基づいて都道府県労働局が行う調停手続の代理、個別労働紛争について厚生労働大臣が行う裁判外紛争解決手続の代理が追加されて、社会保険労務士の業務が拡大されるということであります。また、裁判外紛争解決手続の代理業務に必要な学識及び実務能力に関する研修を行うことも提起されております。さらに、二十三条で規定している社会保険労務士の労働争議介入禁止を削除するというものでありまして、これらは、社会保険労務士の業務が大幅に拡大されるというふうに私どもは受けとめております。

 私は、社会保険労務士の方々には、きょう参考人で来ているような方などのように大変立派な方々も大勢いますが、社会保険労務士を層として見た場合に、労働問題の専門家と果たして言えるのかどうかということについては若干疑問を持っております。むしろ、私が今後申し上げます疑問だとか懸念を払拭していただきまして、この法案の改正に当たっては慎重な審議をお願いしたいということと、不十分な点についてはぜひ補強するようなことを要請したいというふうに思います。

 まず、社会保険労務士の方々は、よく労働相談を実施しているということを言っております。事実、いろいろな事例も示されておりますが、社会保険労務士の方々の労働相談、とりわけ労働者側からの労働の相談の経験は浅いというふうに思っております。どちらかと申しますと、使用者、特に中小企業主の方の相談だと思っております。労働側からの相談というのは件数としては少ないのではないかと考えております。

 また、社会保険労務士の方々は中小企業での就業規則の作成も行っておりまして、そのことをもって、非常に労働法を熟知している専門家だという意見をよくお聞きいたします。私は、先ほども申しましたように、非常に個人的には、個々に見たときには大変立派な優秀な方もいらっしゃいますけれども、全体に社会保険労務士の層として見た場合には、どちらかというと、労働問題の専門家というよりは社会保険の専門家と言った方が当たっているのではないかというふうに思っております。

 それはなぜかといいますと、社会保険労務士の資格の取得においては、民法だとか民事訴訟法の知識だとか、個別労働紛争の重要な判断基準の多くを占める労働判例などについては知識は全く問われていないからであります。そういう意味では、非常に社会保険に関しては専門家だというふうに思っております。

 それと、私ども労働者や労働組合が最も危惧しているのは、社会保険労務士の方々は、事業主からの依頼により、社会保険の事務や労務管理その他労働に関する事項の相談、指導業務を専ら事業主に対して行っているのであります。社会保険労務士の経営基盤は完全に事業主にあるということが言えると思います。その社会保険労務士の方々が、中立公正な立場で、労働者の代理人として労働者の利益のために誠実に業務遂行できるかどうかということについては、疑問を持っているところですし、懸念をしているところであります。

 例えば、具体的に解雇事例でありますけれども、解雇された労働者に対して、社会保険労務士の方々が、労働者の権利を守るために使用者に対して、職場復帰させた方がいい、この解雇はおかしいから職場で就労させた方がいいと果たして言うかといいますと、多くの事例を見ておりますと、まあ中小企業の経営も大変なんだからと、そういうことが多いというふうにもお聞きしております。

 また、社会保険労務士の方々は就業規則の作成をやっておりますけれども、いろいろなところで書いた就業規則に対する見解などで、判例動向などを無視したような解釈を記載したようなものなども出回っておりまして、職場では混乱しているというようなことも私どもは聞いております。

 したがって、社会保険労務士の方が個別労使紛争解決を代理人で行うに当たっては、法律実務家としての資質そして能力が十分に担保される、そういうことが必要であると考えております。憲法、民法、民事訴訟法、労働法、それから申し立てとか答弁書の作成の実務、それから弁論技術、和解案の作成、労働判例研究、事例研究などの民事訴訟法実務について十分な研修を義務づけることが必要であると考えております。また、代理人としての倫理に関する事項についての研修も必要であります。その上で、必要な能力を修得したかどうかを判定するために厳格な試験を実施することが必要であるというふうに考えております。

 私どもは、具体的には、今回の法案内容を審議するときにぜひ何点かを盛り込んでいただきたいと思っている項があります。一つは法律に盛り込む事項と、それから社会保険労務士会会則に明記すること、この二つが必要であるというふうに考えております。

 第一点は、社会保険労務士が民間認証ADRにおける個別労働紛争の代理業務を行うに当たっては、代理人となるにふさわしい研修、先ほど私が述べた内容でありますけれども、きちんと明記すべきであると考えております。また、研修時間もたっぷりととっていただきたいと思います。既に司法書士会が特別研修を実施していますので、これらは非常に参考になるというふうに思っております。

 第二点は、労働紛争不介入を規定する現行二十三条の削除に当たっては、これらの二十三条が出てきた背景などを考慮いたしまして、社会保険労務士連合会会則に、正常な労働関係を損なう行為の禁止をきちっと明記することが必要であるというふうに考えております。

 三点目は、不当労働行為を行った社会保険労務士に対する懲戒手続を利用者が活用できる制度とすることであります。具体的には、社会保険労務士会に苦情処理窓口を設置して、悪質な事例については労働者が苦情を持ち込めるようにすることであります。

 また、社会保険労務士会連合会に綱紀委員会を設置して、不当労働行為や悪質な事例については綱紀委員会で懲罰処分を実行することであります。綱紀委員会が身内をかばう委員会とならないように、労働者を含む第三者を委員に加えることなども必要であると考えております。既に日本弁護士会の綱紀、懲戒委員会は、身内主義というふうに批判され、現在では再審査制度を設けて第三者のみで行っているというふうに聞いております。ぜひこれらの制度を参考にしていただきたいと思います。

 最後に、個別労働紛争の主な内容は、解雇だとか雇いどめだとか、労働条件の切り下げ、セクハラ、いじめ解雇など、労働者にとっては生活に直結するような内容であります。特定社会保険労務士がこのような紛争解決の一方当事者の代理となるわけでありますから、そのためには、研修や試験は当然でありますが、社会保険労務士倫理の確立も重要でありますので、そのための研修もぜひ何らかの形で明記するようなことを記載していただきたいと思いまして、私の意見としたいと思います。

 ありがとうございました。

五島委員 ありがとうございました。

 それで、今、日弁連、連合とも共通しておっしゃっている内容というのは、一つは、社会保険労務士さんが特定社会保険労務士として仕事をするに当たってどういうふうな研修をするのかという質の担保の問題が一つ。それからもう一つは、いわゆるあっせんに当たっての中立性の確保の問題についての御指摘が中心であったというふうに思います。

 そこで、基準局とそれから社会保険労務士会の方にお伺いするわけですが、これは試験は社会保険労務士会に委任されて試験されることになるんだと思いますが、この社会保険労務士さんに対する、特定社会保険労務士事業、特にADR事業をするに当たっての能力の担保をどういう形でもって考えておられるのか。今、連合からは数々の要求が出ましたけれども、試験項目は、当然これは厚生労働省の所管する資格試験になるんだと思いますが、その試験はどのような内容を考えているのか。

 それから、研修というものについての御指摘もあったわけでございます。研修は省令で定めるとなっているわけですが、研修については省令で定めるのか定めないのか。

 そして、さらに、そうした社会保険労務士さんに特定社会保険労務士としての資格を与えるに当たっての一連の手続といいますか、試験やそういうものについては労政審への報告をされるのかどうか。

 その辺をまず基準局長にお伺いし、続いて社会保険労務士さんの方から、この試験の問題、担保の問題についてどうお考えか、会としての御意見をお伺いしたいと思います。

青木(豊)政府参考人 お答えいたします。

 試験の内容と研修をどうするのかという話と労政審ということだったと思います。

 試験につきましては、先ほど来申し上げていますように、きちんとした能力担保措置をした上でこういった業務をするということであります。その担保措置でありますが、そのための研修をきちんといたしまして、いわばその修了試験という形で行うということであります。いわば研修の成果というか定着の確認をするということだろうというふうに思っております。そういう意味では、この試験についても、きちんと試験委員などを定めて適正かつしっかりした試験にする。

 研修内容は、先ほども申し上げましたように、実際にはこれから決めるわけでありますけれども、いずれにしても、先ほど参考人の方からもありましたように、社労士の倫理だとかあるいは権限だとかいうこととあわせて法律的な基礎的な知識というものは広範に必要でありますので、そういったこともやっていくということでありますので、そういったものをきちんと把握できるものにしたいというふうに思います。

 それから研修も、そういう意味では、今社労士会連合会の検討会で能力担保措置として検討していただいているわけでありますので、その専門家の方々の検討結果が秋に出ると思いますが、そういったものを踏まえながら、私どもとしてはそれを参考にして省令できちんと規定をしたいというふうに思っております。

 それから、労働政策審議会への報告というようなことでございますが、これにつきましては、確かに今回の法律改正の中では極めて大切なことである、重要な事項であるとは思っております。しかし、社会保険労務士法は労働政策審議会の調査審議事項とされておりませんので、その内容を労働政策審議会に報告することはただいま考えておりません。しかし、規制の設定というようなことにも係るものでありますので、パブリックコメントには付していきたいというふうに思っております。

大槻参考人 全国社会保険労務士会連合会会長の大槻でございます。よろしくお願いいたします。

 ただいま、能力担保あるいは研修ということについて連合会としてはどのような考えであるかという御質問でございますが、今回の社会保険労務士法の改正によりまして特定社会保険労務士に認められるというのは、個別労働関係紛争に係る裁判外紛争解決手続の代理、いわゆるADR代理でございます。したがいまして、当然のことながら訴訟代理ではございません。

 我々としましては、従来の社会保険労務士本来の実務経験あるいは能力に加えまして、個別労働関係紛争の解決に必要とする能力を高めていくためにも、現在、日本弁護士連合会から御推薦をいただいております弁護士さん三名、及び労働法、民法を専門とされている大学教授三名、及び社会保険労務士の方から二名、計八名による社会保険労務士裁判外紛争解決手続代理業務能力担保措置検討会を設置し検討しておるところでございます。なお、この検討会には、法務省及び厚生労働省から担当官にオブザーバーとして御出席もしていただいております。

 以上でございます。

五島委員 何か基準局長は、きちんと、しっかりという言葉しか出てきませんでした。そして、今社労士会の方のお話を聞いてわかったわけですが、結局、その担保のための研修その他については社労士会自身が、もちろん当然いろいろな団体と協力しながらでしょうが、その内容を決めて研修をしていくというお話のように承りました。

 そうしますと、基準局としては、この資格を与えるに当たって、例えば事細かに何についての研修が必要であるとか、そういうふうな内容としてはお決めにならないということでようございますか。

青木(豊)政府参考人 ちょっと先ほど申し上げませんでしたが、省令で定めるといった内容ですけれども、例えば研修の科目でありますとか時間でありますとか、あるいは場合によっては研修のやり方、そういった具体的な研修の中身、そういったものを省令で定めていきたいというふうに思っております。

 それに当たりましては、先ほど来話がありますように、他の士業においても、先行して、いわば訴訟代理でありますとかそういう場合の能力付与のための研修がございますので、そういったものも十分参考になると思っておりますし、今まさに社労士会連合会の方で検討している内容、専門家にお願いをして検討していただいているということでありますので、そういった結果も踏まえて、十分参考にして、私どもとして省令の中できちんと書いていきたいというふうに思っております。

五島委員 今お話しのように、確かに厚生労働省として一定の内容について省令か政令かで定めるということですが、基本的にこういうふうな資格について国がどこまで決めていくのか、当事者が専門団体として決めていくのがいいのかというのは非常に問題のあるところであると思います。

 しかし、これは間違いなく、ADRという言葉にもあらわされるように、やはり裁判外とはいえ紛争の周辺の問題であるという意味においては、これについては、もちろん厚生労働省は所管官庁ですから厚生労働省の指導が必要でしょうが、弁護士会との関係、あるいは後ほどもちょっとお伺いしますが、日常的な社労士さんの仕事というのは中小企業の経営者に嘱託で雇われたりなんかして仕事をしておられることが多いわけで、そういう意味においては、ADRとして機能する場合に、社労士さんの仕事が経営側にしかメリットがないような制度では困るわけで、やはり研修その他についても労働者の側からの御意見も聞いていただきたい。

 特に私は、先ほどのお話を聞いてきても、今の時代の中において、派遣労働法であってみたり、そういうふうな分野での紛争が非常にふえてきている、そういうふうなものについてもぜひしっかりと研修をしていただきたいというふうに思います。

 そこでもう一点、話を進めますが、先ほども御指摘ございましたけれども、紛争処理の手続の代理であるということはわかった上で、では中立性というものは求められるのか求められないのかという問題です。

 中立性についてあいまいであるならば、これは大変な問題で、そうでなくても今膨大にふえてきている個別紛争処理が、経営の側から起こってきている紛争処理はほとんどないので、やはり労働の側から起こってきている。それに対して、経営の側にしかメリットがない制度では困るわけです。そういう意味では、この中立性の担保というものをどのようにお考えになっているのか。

 日ごろの日常の業務としては中小企業がユーザーであることは当然のことで、これは先ほども連合の長谷川さんが言われましたけれども、社会保険事務の専門家としてそういう仕事をしておられるわけですが、これが個別紛争処理の問題ということになってきますと、かなり性格が変わってくる。そこにおいてはやはり中立性の確保というものが何らかの形で担保されないといけないと思うわけですが、この点について社労士会はどういうふうにお考えでしょうか。

大槻参考人 お答えさせていただきます。

 社会保険労務士は、顧問先事業所より報酬を受けて、社会保険労務士法第一条の目的に沿った業務をやっておるわけでございます。その目的の中には、事業の健全な発達と労働者の福祉の向上に資することが社会保険労務士の使命である、このようになっておるわけでございます。

 御承知かと思いますけれども、総務省の事業所・企業統計調査によりますと、六百三十五万社、そのうち九九・五%が従業員規模三百人未満の中小企業である、さらに、そのうち九一・二%が従業員規模二十人未満、いわゆる小零細企業である、こういう結果がございますけれども、私どもとしましては、そういった中小零細企業の方々とのかかわりが非常に深いわけでございます。かといって、事業主の方の言い分ばかりを聞いて、そこに働く従業員、そしてその家族の人たちのことに配慮しないというようなことをしておりますと、その企業の発展はあり得ないというふうに考えておるところでございます。

 したがいまして、私どもは、常に労使双方の間に立って公正な立場で健全な労使関係を築くことが、社会保険労務士法第一条の二にうたわれております社会保険労務士の職責であるというふうにも思っております。

 今回の社会保険労務士法の改正が成立いたしましたら、先ほどお話のありました能力担保措置研修の中でもそのことが求められると思いますし、今後とも、あらゆる機会をとらえまして、社会保険労務士の職業倫理についても指導を行ってまいりたい、このように考えております。

五島委員 確かに建前的には、労働者の方の生活の状態や言い分を聞かずに解決できない、そのとおりです。しかしながら、日常業務において、中小企業をユーザーとしてお仕事をしておられるという状況の中において、特定社会保険労務士の仕事というものが、それとは違った形での中立性が何らかの形で担保されないと、単に社会保険労務士としての仕事の中における一定の規制の問題と、それからADRに従事する場合のあれとはおのずから違うだろうと。

 その辺について基準局はどうお考えなのか、お伺いしたいと思います。

青木(豊)政府参考人 確かに、委員御指摘のように、ふだんの業務といいますか、社会保険労務士さんが仕事をするというのは、多くは、やはり社会保険あるいは労働に関する申請手続等の事務代行というのが大きなウエートを占めているだろうと思います。したがって、そういった申請等を行うのはやはり事業主が圧倒的に多いわけですので、ウエートとしては、ふだんの仕事、業務とおっしゃいましたが、ふだんは事業主のために仕事をするということも多いかと思います。

 しかし、社会保険労務士につきましては、都道府県労働局における個別労働関係紛争解決手続について、一部でありますが、既に実績があるわけでありまして、そういったものを見ますと、平成十五年四月からことしの一月まででありますけれども、あっせん代理をした件数が全数で百七十三件でありますが、労働者側の代理というのが五十八件、使用者側の代理というのが九十七件ということになっております。圧倒的に事業主側に立った仕事をしているということではないだろうというふうに思っております。

 したがって、この個別労働関係紛争というのは、労使ともに、もちろん、いろいろな相談等のことについては圧倒的に労働者サイドの相談というのが多いわけでありますけれども、こういった紛争解決システムに乗ってくるのは、これまでの実績としてはそういうような状況だというふうに思っております。

 しかし、そうはいいましても、おっしゃいましたように、中立性、とりわけADRについては、紛争を迅速、円滑、簡易に解決しようというものでありますから、これが紛争を生むようなことであってはならないわけでありまして、そういう意味では、やはり信頼される者としてきちんと、代理業務なり、あるいは仲裁者になる場合にありましても、中立公正性というものは当然必要だというふうに思っております。

 現行法上、社会保険労務士は、国または地方公共団体の公務員として職務上取り扱った事件につきましてはその業務を行ってはならないということにされております。例えば、個別労働関係紛争解決促進法に基づく紛争調整委員会等のあっせん委員に指名された社会保険労務士は、その当該指名された事件についてはあっせん代理を行うことはできないということになっております。そういう意味では、中立公正性を阻害することがないようにという配慮が現行法でも既に規定をされているというふうに思っております。

 また、今のは行政型でありますけれども、民間型のADRにつきましては、ADR法に基づいて、手続実施者が紛争の当事者と利害関係を有する場合には、当該手続実施者を排除するための方法を定めていることを法務大臣の認証基準としております。そういったことでやはり中立公正性の担保を考えているということだろうと思っております。

 こういうことでありますので、御趣旨を踏まえて、十分に、全国社会保険労務士会連合会を通じて、それぞれの制度の必要な、要求されていることについては周知をしっかりとしてまいりたいというふうに思っております。

五島委員 現在、地方労働局にあるADRに所属して仕事しておられる社労士さんに対しての規制と同じようなことが、今回新たに実施されます民間のADRに対しても基本的には当てはまるというふうにおっしゃったということですね。そういうふうに了解します。

 そこで、そういうふうな状況の中で、当然のことでございますが、非常に、悪く考えれば、さまざまな問題が起こるわけですよ。

 例えば、一つの社会保険労務士事務所の中で複数の社会保険労務士さんがおられて、そして、一方がADRに属しておられて一方は違うということもあり得るわけなんです。そういうふうに思いますから、不当な行為を行う場合というものが万一起こり得ないとは限らない。

 そういうふうなことを考えますと、こうした資格の試験を社労士会が行い、そして社労士会が認定して資格を与えていくという制度であれば、当然、懲戒についても、社労士会がみずから、どういう場合にはこの資格を剥奪するかということをきちっと決めて、綱紀、懲戒委員会のようなものをおつくりになって、そして、処理できるようなことが当然社会的に求められると思うわけですが、その辺についてはどういうふうにお考えか、社労士会の御意見をお伺いします。

大槻参考人 いやしくも社会保険労務士は国家資格者でございます。不当な労働行為、そういったことにかかわるということそのものが許されるべきではない、こういうふうに思っております。

 しかし、極めて少ないとはいえ、法令に違反したりあるいは倫理にもとる者もいることは事実でございます。今回の社会保険労務士法改正にあわせまして、全国社会保険労務士会連合会及び都道府県社会保険労務士会の会則を改正いたしまして、双方の会則に、適正な労使関係を損なう行為の禁止の規定を入れるとともに、適正な労使関係を損なう行為に対応するため、連合会に綱紀委員会及び苦情処理相談窓口を、また都道府県会に苦情処理相談窓口を設置する、そういった規定を入れることといたしております。

 連合会におきます綱紀委員会には、労働者及び使用者を代表される方並びに弁護士先生などから委員を委嘱することといたしておりますので、これらの規定により厳正に対応していける、このように考えております。また、いきたいと思っております。

 なお、綱紀委員会では、社会保険労務士法第二十五条の三の二の規定に基づきまして、社会保険労務士が適正な労使関係を損なう行為を行ったと認められるときは、厚生労働大臣に通知することといたしております。

五島委員 ありがとうございました。

 それで、この問題でもう一つお伺いしておきたいんですが、今回のあれでは、六十万円以下の金額については社会保険労務士さんの方でこのADRのあれをやっていける、六十万を超えると弁護士さんとの共同受託である、こういうふうになっておりまして、六十万という金額が出てきています。私は、この六十万という金額が余りよく理解できない、何か別の制度をそのまま援用しているだけなのではないかなという気がするわけですね。

 というのは、私は別に弁護士さんたちを批判するつもりもないし社労士さんを批判するつもりもないんだけれども、現実問題として、個別紛争処理で上がってくる金額というのは、やはり五、六十万ぐらいから二百万ぐらいの金額が多いわけですよ。これは、社労士さんのところへ持っていけば六十万までしか扱ってくれないけれども、日常的に中小企業の中でやっておられるので話は早くつきそうだと言われると、もうええわ、六十万で我慢するから早う片つけてという人がやはり今多いと思うんですよ、労働者。もちろん共同受託を選んでもらえばいいわけですが、世間の常識として、弁護士さんに相談すれば何ぼ金要るの、やはり大変な金取られるんじゃないのというのが、これもまた、今、市民が感じている一つの感覚なんです。

 そういう意味でいうと、受託金額というものを六十万でやったことは、非常に安いお金で労働者を了解させる方法に使われては大変だというふうに思うわけです。やはり何もかも弁護士抜きにしてADRの機能を社労士さんがやってもいいということにもならないだろうけれども、その辺の問題についてどうお考えか、社労士会並びに日弁連の御意見をお聞きしたいと思います。

    〔北川委員長代理退席、委員長着席〕

及川参考人 耳の痛い御質問でございまして、じくじたる思いで今御質問をお聞きしておりました。

 確かに、すべての訴額の事件に弁護士が対応できているのか、利用者は弁護士を利用できるのかという懸念があることは、日弁連としても重々真摯に受けとめてございます。

 ただ、日弁連としましては、そのためには、一つは、金額が安くても利用できるための公設事務所、これを大幅に全国に展開して、利用者を受け入れる。また、少額事件の場合には、むしろ弁護士さんをつけなくても、弁護士会が主宰する、もしくはそれと類似の団体が主宰するADR機関に来ていただければ、手続主宰者が後見的にこれを処理して、むしろ弁護士さんがいなくても適正に処理しますよという制度を今後大きく設けていきたいというふうに考えてございます。

 確かに、先生がおっしゃいましたとおり、弁護士さんはお金がかかるという一部の、一部というよりも全体かもしれませんけれども、御意見があることは重々承知しておりますので、弁護士会としても、お金がなければ相手にしない、そういう態度をとる気持ちは絶対ございませんので、公設事務所の拡大とかそういうことを図って、国民もしくは利用者の権利を守っていきたいというふうに考えてございます。

大槻参考人 社会保険労務士会としましては、六十万という制限については非常に残念なことである、こう思っております。

 と申しますのは、先生が御指摘のとおり、六十万円という限度があると、簡単にその枠でとにかく解決してしまおう、安く解決するんじゃないか、こういう懸念を持たされる。しかし、我々としては、金額が大きければいいということじゃございませんけれども、そういう意味では、民間型ADR機関で扱うのは六十万円未満、そういうことになっていますが、行政型ADR機関に行きますと金額に制限がないということでございますので、その辺はやむを得ないのかな、こういうふうに思っております。

 報酬につきましては、社会保険労務士の業務は、先ほど来御指摘がございましたように、労働・社会保険の書類の作成、手続、それから労務管理に関する相談等、主に中小零細企業が対象でございます。そういった事業所さんから多額の報酬を得るということはそもそも考えられないということでございますので、今度、新たにADR機関としてやる場合におきましても、その費用は国民の皆さんが利用しやすい形に持っていかなければ、こう思っております。

五島委員 ありがとうございました。やはりこの問題は、非常に現実の問題としては大きな問題だ。

 今お話があったように、官民のADRについては六十万ということになっていないわけですね。民間ADRは六十万。私は、そこに工夫のしようがあるんだろうと。民間のADRに持ち込まれて、そのケースがやはり六十万というのは余りにも不当に抑え過ぎるというふうな場合は、民間のADRがいわゆる官民、労働局に設置されたADRと相談しながら処理をしていくとか、あるいは、基準局の方が、各地方局の中にやはり弁護士さんを嘱託なりなんなりで登録していただいて、そして、そこの官の関与によって、利用者の負担が余りふえないような形で受託がより速やかにできるような方法を考えていかないと、私は今一番心配しているのは、現行においてこの機関を使うと、平均して労働者の要求額は三分の一に削られるなということなんです。そして、ホワイトカラーエグゼンプションが起こってきて、そこで起こってきた問題になってくると五分の一にまで削られることになるんじゃなかろうかという心配なんです。そんなことは基準局だって気づいているはずです。

 そういう意味においては、もし民間型のADRも含めてより効率よく利用していく、より速やかに問題の解決を処理していこうとするならば、各地において、労働局に設置されたADRと民間のADRとの有機的な連携、あるいは、それに加えて、社労士会とそれぞれの地域の弁護士会との間のネットワークというものをきちっと組んで、そういうふうなことが結果として、直ちに労働者に不利益にならないような仕組みをぜひ考えていただきたいと思うわけですが、基準局長、いかがでしょうか。

青木(豊)政府参考人 この個別労働関係紛争は非常にたくさん、相談ベースでいうと多くあるわけでして、そして、先ほど申し上げましたように、さまざまな深刻度があると思っています。そういう意味では、こういった問題、紛争の解決のためにいろいろなチャンネルができ上がっているということは大変大切なことだと思います。個別の相談ベースのものもあれば、あるいはこういった紛争解決システムが行政型だけでなく民間型でもやられていくという方向は大変いいことだというふうに思っております。

 ただいま委員が御指摘になりましたお話というのは、それとまさに方向は同じだと思います。さまざまな社会にある制度、システムが、それぞればらばらに動いていくのではなくて、有機的に連携ができればさらにもっと効果のあるものにもなるでしょうし、そういう意味では、連携といっても具体的なやり方というのはなかなか難しいかもしれませんが、ぜひ研究させていただいて、何とかいい方向に持っていくということで考えてみたいというふうに思っております。

五島委員 一時間十分の時間をもらったんですが、あと十分ほどしか時間がなくなりましたので、次の大きな問題に移りたいと思います。

 今回、いわゆる二十三条問題、労働争議不介入という規定が削除されることになりました。これが削除されたことによって一体どういうふうなことができるようになったのか、具体的にお教えいただきたい。基準局長。

青木(豊)政府参考人 二十三条は、社会保険労務士の労働争議不介入の規定、介入禁止規定でありますが、これが削除されるということになりますと、社会保険労務士は、仮に争議行為が発生して、あるいはまた発生するおそれがある、そういう状態において、当事者の一方の行う争議行為の対策の検討でありますとか、その決定等に参与するような相談、あるいは指導業務を行うことができることとなります。

 しかし、当事者の一方を代表して相手方との折衝に当たる、あるいは当事者の間に立って交渉の妥結のためにあっせん等の関与をなすことについて、これらにつきまして業として報酬を得て行うことは、また弁護士法七十二条に抵触することになりますので、その部分については、この削除があっても引き続き行うことはできないというものだと考えております。

五島委員 経営側が社労士さんに対して紛争が起こった場合に相談することはいいですよということですね。しかし、労使交渉そのものの一方の代理人にはなれませんということをおっしゃっているわけですね。

 その場合に、例えば団体交渉その他の席上に社労士さんが出席をして、そして、経営側なり、労働側に雇われることがあるかどうかわかりませんが、労働側と一緒になって交渉の席に臨み、いろいろアドバイスをしていくということは認められるんですか。

青木(豊)政府参考人 現行法の二十三条で禁止されております行為というのは、一つは、争議行為中の場合であるということであります。もう一つは、その行為が労働争議に影響を与えるものである、この二つの要件を充足した場合であります。

 したがって、まず、労使交渉といいますか団体交渉といいますか、いわゆる団体交渉ではなくて通常の交渉といいましても、それが労使間の平和時において交渉をしているというようなものについては、現行法においても当事者となって交渉するというのは差し支えないというふうに考えております。

 しかし、労働争議行為中の場合におきましては、現行法の二十三条を削除した後も、業として報酬を受けて、当事者の代理人となるとかあるいは交渉の妥結のためにあっせん等の関与をなすことについては、相変わらず行うことはできないというふうに考えられますので、そういう場合の団体交渉に使用者と同席しまして、使用者を助けて団体交渉を代理するというのは、社労士業務には含まれないというふうに考えております。

五島委員 そうしますと、団体交渉は社労士の業務に含まれないという話ですが、平和時の団体交渉なら含まれるわけですか。もう一回、そこだけ簡単にお答えください。

青木(豊)政府参考人 現行法におきましても、労使間の平和時において交渉するというのは、委任を受けて当事者となって交渉するのであれば差し支えないというふうに考えております。

五島委員 平和時と紛争時と一体どこで区別をつけるのか、私にはわからないので、一番それを日常的に切った張ったやっておられる連合の長谷川さん、一体、平和時と紛争時と言われて、労働組合としてわかりますか、教えてください。

長谷川参考人 先生の御質問ですが、非常に難しいと思いますね。

 平和時に、労働組合が要求書を提出して使用者と交渉している。例えば賃金を引き上げるという交渉をしている。平和時に交渉しているけれども、それがだんだん、交渉がスムーズに解決すれば、それは平和裏に解決したということになりますけれども、賃金交渉がうまくいかなくなってきたときに、労働組合はやはりストライキを構えたりとか、そういうことをするわけですね。そういう意味では、平和時と平和時じゃないところの境目は非常にグレーだというふうに思っております。

五島委員 そのとおりだろうと思うんですね。私は、ストライキになれば平和時じゃないというのは子供でもわかるので、いいわけですよ。だけれども、例えば交渉について労働組合がどのように要求して会議をやってもゼロ回答が続くという状態の場合に、平和時というのかどうか。逆に、事業主の側からいえば、きょうも交渉した、解決していないからあしたもやってくれということを穏やかに、しかしまじめに連日の交渉を求められたとき、それは平和時なのか、紛争時なのか。

 だから、紛争時というのは、例えば地労委に上がってしまったとか、ストライキに入っているときとかいうのはわかるわけですけれども、そこのところを少しきちっと整理しておかないと、僕は混乱の原因になると思うんです。その辺は、例えば今回、この二十三条の削除を受けて、そこのところがある意味においては一部解禁になる、社労士会はどういうふうに理解しておられますか。

大槻参考人 そもそも、労使関係というのは労働条件を対等の立場で決定する、団体交渉というのはその集団的解決の一つの方法だと思います。団体交渉が積み上げられていって、妥結、いわゆる対等な立場で決まった、こういうことになろうかと思います。したがいまして、団体交渉が平和時であるとか平和時でないとかというよりも、集団的労使関係を円滑に解決する一つの方法である。

 したがいまして、社会保険労務士としましては、従来、二十三条の解釈は、労働関係調整法の七条に争議行為というのがございますが、いわゆるストライキ、そういったところへ関与したりすることは禁止されておりました。そういう意味では、そのことがなくなったということでございまして、私ども社会保険労務士の本来業務は労務管理でございます。労務管理の中には労使関係管理をきちっとやることも入っておりますので、従来の業務をそのまま遂行していくというふうに理解しておりますので、とにかく、火に油を注ぐようなことのないように今後もやっていきたい、こう思っております。

五島委員 時間が参りましたので、これで基本的には終わりたいと思いますが、今、大槻会長おっしゃったように、社会保険労務士さんの仕事は基本的には労務管理である。その労務管理を専門としてやっておられた方が今度は個別紛争処理の調整の事業もやられる、こういう話なんですね。

 代理業務にとどまらずに調整機能まで持つということになりますと、調整機関における調整あるいは仲裁、あっせんについては、おのずからやはり労働者の側に対してより有利な結果になるような一定の手だてがないと、僕は公平性は担保できないんだろうというふうに思っています。その辺は、社労士会の方も十分に御理解されていると思います。

 そういう意味では、そうした問題を含めて、やはり内部的な研修項目あるいは懲戒規定等々をぜひきちっと整備して、そして、これは何だというふうに労働者の側から言われないように、まずは配慮していただきたいと思います。

 また、おいでいただきまして、十分御意見をお話ししていただけなかったんですが、弁護士会の方につきましても、やはりこれだけ、相談件数だけで八十万を超えるような個別紛争、これが減る見通しはないわけですよ。こういうふうなものを全部裁判に持っていく、あるいは労働参審制をつくると言ってみても、これは何らかの形でADRの機構を活用しないと、労使ともに困るというのはもうはっきりしているわけです。

 そういう意味では、このADR機構に対して専門家の立場においてどう関与していくのかということについてぜひ真剣に御検討いただきたい、そのことをお願い申し上げまして、私の質問を終わります。

鴨下委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時十五分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時八分開議

鴨下委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。内山晃君。

内山委員 民主党の内山晃でございます。

 社会保険労務士法の一部改正の本題に入る前に、一点、尾辻大臣に確認をさせていただきたいことがございます。

 六月一日に二〇〇四年度の合計特殊出生率が出てまいりました。十六年改正法の制度設計の基礎となります一・三二というのが二年連続して下回ってしまいました。郵政民営化よりも少子化対策が急務ではなかろうかとは思うんですが、やはり安心できる社会保障制度、これはもう全力で取り組まなければならない大変な大きな問題だと思います。

 一・二八九、この出生率につきまして、大臣の御所見をいただきたいと思います。

尾辻国務大臣 合計特殊出生率は、近年、低下傾向にございます。先日発表させていただきました平成十六年の合計特殊出生率も、四捨五入すると平成十五年と同率の一・二九になりました。ただ、正確に申し上げますと、一・二八八という数字でございますので、平成十五年から若干下がっておる、こういうことでございます。

 ただ、同じく一・二九という数字は示しましたけれども、これをもって合計特殊出生率が下げどまったとまでは判断できないと私どもも考えております。

 ただ、母親が二十九歳以下の出生率は引き続き低下しておるわけでございますが、三十から三十四歳の年齢のところでは上昇に転じておりますし、また、三十五歳以上はこのところ上昇いたしておりますので、今後、出生率が回復するというか少し上がってくるということでの明るい兆しも見られるというふうには思っております。

 ただ、今先生言われましたように、昨年の年金改正見直しをお願いいたしましたときに、私どもは中位で一・三二というふうに見ておりました。基本的にはそれが計算の基礎になっておるわけでありますから、下位は一・二五で見ておりますけれども、中位は確かに一・三二という数字で、これが基礎になっておるわけでございまして、今後、出生率を上げるという、少子化対策というのは我が国にとって極めて重要な政策であり、私どもも全力を挙げて取り組んでいかなきゃならないことだというふうに考えております。

内山委員 一・二八九、この出生率を、今いろいろ政策が出ておりますけれども、この数字を見て、特に何か改めて重点項目として行っていこうということはございますでしょうか。

尾辻国務大臣 これは、ずっと私は申し上げてきたんですが、一・五七ショック以来、私どもも少子化対策に取り組んでまいりました。最初にエンゼルプランをつくりました。次に、新エンゼルプランをつくって、今、三つ目のプランになっておるわけであります。

 当初はどうしても、エンゼルプラン、新エンゼルプランのころは、少子化対策がもうそのまま保育の充実というようなことがございまして、保育を充実させて少子化対策というふうに思ってまいりましたけれども、そういうものでなかなか少子化に歯どめがかかるものではない、少子化対策はできるものではないということで、今、もっと大きく少子化対策を考えなきゃいけないというふうにして、今の子ども・子育て応援プランというのをつくっておるわけでございます。

 今度の数字を見ましても、それでもまだ下げどまらない面がありますから、もっと大きくといいますか、本当に政府挙げて、口先だけでなくて政府挙げて取り組まなければならない、そういう数字を突きつけられたというふうに考えております。

内山委員 それでは、本題に入りたいと思います。

 今回の社会保険労務士法の一部改正案は、社会保険労務士制度を発展させる大きな一つのステップで、中小零細企業の事業主並びに労働者とその家族の労働福祉の向上に大変寄与するものと私も考えています。

 大臣も御存じのとおり、私も現役開業の社会保険労務士でございます。先ほど午前中、五島議員の質問の中にも、連合の皆さんやいろいろ参考人の方がお話をされておりました。くしくも大槻会長と同じく、社会保険労務士というのは健全な労使関係がなければ企業の発展はない、そういう立場にやはりおりますので、十分御認識をしておいていただきたいと思います。

 今回の改正の中で、実はすべて手放しで喜べるというところばかりではありません。その点を幾つか指摘していきたいと思います。

 改正前、従来の社会保険労務士はあっせん手続の代理ができたものが、今回の改正では、特定社会保険労務士の資格を得ないと今まで行えたものができなくなってきた。このあっせん手続の代理ができなくなってしまった。

 少なくとも、今までできたものができなくなるという点では、どうも職業選択の自由とか、憲法の部分に一部抵触をするんじゃないか、こんな声も出ているんですけれども、今まで、社会保険労務士があっせん代理案について和解契約の締結まで代理人として携わりたいといった場合、弁護士法の七十二条、非常に厚い壁がございました。和解は認められておりませんでした。今回の改正で、特定社会保険労務士の資格を得れば、紛争総額六十万円まで少額訴訟の紛争手続の代理が単独でできるわけです。

 さきに述べましたように、特定社会保険労務士の資格を得なければ、今までできたあっせん代理の手続ができなくなるという今回の法改正は、明らかに、今までできたものが資格を取得しなければできなくなるというものでありますので、何で今までできたものをできなくしてしまったんだろう、なぜあっせん代理手続を特定社会保険労務士でなければできないようにしてしまったのか、その具体的な理由をお聞かせいただきたい。

尾辻国務大臣 今お話しの、今回、特定社会保険労務士という資格をつくって、そしてその特定社会保険労務士が行えることになったあっせん代理業務についてでございますけれども、今お話しのように、これまで社会保険労務士が行えた都道府県労働局のあっせん代理にとどまりませんで、民間型ADR等の紛争解決機関のあっせん代理までも含んでおりますし、また代理できる範囲も、紛争解決手続の開始から終了に至るまでの間の和解の交渉でありますとか、紛争解決手続で成立した合意に基づく和解契約の締結まで拡大されているということでございます。

 すなわち、拡大されたその業務について、領域が拡大されたあっせん代理業務が適正に遂行されるためには、その任に当たる者が必要な能力を有すること、またそれを裏返しに言いますと、能力を有する者にしかその任に当たれないような措置を講ずることが効果的であると判断したところでございます。

 このような観点から、能力担保措置が講じられた特定社会保険労務士に限って、領域が拡大された、そのまさに拡大されたあっせん代理業務を行えるようにした、こういうことでございます。

内山委員 特定社会保険労務士にすべて希望するとは限らないわけでありまして、ですから、希望しない普通の社会保険労務士が、今までできていたあっせん代理業務というのができなくなる、これはなぜかということなんです。

青木(豊)政府参考人 今回の能力担保措置が講じられる者に限って、特定社会保険労務士ということで限って従来のものも含めて業務としてできるということにいたしましたのは、依頼者の権利や利益を保護する観点も考慮したり、あるいは統一的かつ客観的な基準をもって対処する必要があると考えたからであります。

 実際、さまざまな裁判外の紛争解決手続の実務に現に携わっておられる方もいらっしゃると思いますし、相応の能力を有すると思われる社会保険労務士がいるということも承知をしておりますけれども、そういった方々についても、研修を受けて、修了試験を受けていただくというようなことで対処をしていただきたいというふうに考えているところでございます。

内山委員 ですから、特定社会保険労務士にすべての社会保険労務士がなるとは限らないわけです。特定社会保険労務士を希望しない社会保険労務士が、今までできていたあっせん代理ができなくなる。なぜできなくなるようにしたのか、その理由を聞きたいんです。

青木(豊)政府参考人 新しく代理業務をできるようになる特定社会保険労務士、代理業務の範囲が拡大をするわけですけれども、そうしますと、もし仮に二本立てということになりますと、御質問のような制度をもし仮に考えるとすると、あっせん代理業務については、いわば二つあって、従来の非常に狭い範囲だけ認められる代理業務というものと、今回法改正で拡充した部分まで含めて、和解の交渉から実際に合意を得て和解の契約の締結をするという一連の代理業務という二つのパターンが出てきてしまうわけであります。そういう意味では大変制度が複雑になりまして、労使の関係者間での混乱でありますとか、その仕切りでありますとか、そういったことが懸念をされるわけで、社労士にとってもわかりにくいというような問題があろうかと思います。

 しかし、そうはいっても、一方で、それが極めて個別紛争の解決に有効であるということであれば、またそれはそれで考えることもあり得ると思いますけれども、特に、とりわけ個別労働関係紛争で、いわば和解に向けて迅速な処理をするということを考えますと、やはり期日だけで交渉をするというのではなくて、少しく広範に一連の和解交渉をして、事案の決着までずっとできるというようなシステムにしていく方が迅速、円滑な解決にもなるのではないか。そういったものを両々相考えまして、こういうことに相なっているということだと思っております。

内山委員 そういう選択肢があってもしかるべきだろうと思うんです。

 特定社会保険労務士の試験にどのくらい試験を受けられるか、見込み、ございますよね。

青木(豊)政府参考人 これは、試験がどの程度手を挙げてくるか、研修をどの程度手を挙げてくるかということもあると思いますけれども、先行いたします司法書士の制度におきましては、登録者数もほぼ同規模でありますので、そこを参考にして考えると、五千程度ではないかなというふうに思っております。

内山委員 社会保険労務士は、今二万八千いるわけですよ。では、それ以外の社会保険労務士は一体どうするんですか。あっせん代理が、その中でもやはりやっていた人もいるわけですよね。その人ができなくなるじゃないですか。二通りがあっても、それは選択肢によって、希望すれば特定社会保険労務士になって、希望しない人は従来のままでいいじゃないですか。

 これを即、今回、社会保険労務士法の改正はきょう一日の審議しかないので、少ししつこく詰めていますけれども、ぜひここは省令でできるのであれば考えてほしいんですけれども、もう一回答弁をお願いします。

青木(豊)政府参考人 先ほど大まかに五千と言いましたけれども、司法書士の訴訟代理についての研修について言いますと、三回やっている間に、当初は四千名弱、次は四千四百名ぐらい受験して、三回目三千三百名ということで、またその認定率もだんだん下がってきているわけであります。毎回毎回、一回こっきりでこの社労士の場合についても研修や試験が終わるわけではありませんので、そういう希望する社会保険労務士の皆さん方は、そういったことでチャンスとしては可能であると思います。

 ただ、おのずと、全員がやるわけではなくて、そういう中でこういった下がっていくような状況を先行する司法書士なんかで見ますと、それを制度的に狭めているということではないというふうに思っております。そういう意味では、社会保険労務士の皆さん方の選択で研修、試験を受けていただくということはいいのかなというふうに思っております。

 それから、そもそも社会保険労務士の皆さんが、全員がこういった代理というのをやるかどうかということもまたあろうかと思います。午前中までに申し上げましたように、労働保険、社会保険、あるいは労働関係に関する提出書類等の提出代行、事務代行をやるというのも大きな社会保険労務士の仕事でございますので、そういったことだけをやっているという方々もいらっしゃるわけでありますので、そういう制度的な門戸をいわば開いた形にして、できるだけ希望のある方はそういうところに入っていただくということだろうというふうに思っております。

内山委員 答弁になっていないんですよ。特定社会保険労務士になる人は職域拡大でそれを希望して受けるわけですけれども、でも希望しないで、あっせん代理をやりたいというそのままの人がいるわけですから、そこの余地を残しておいてほしいということなんです。やはり選択肢でそれをできるようにしておかないと、より上の部分をつくったからみんなそこに押し込みますよ、でも、そこに押し込まれたくない人だっているわけです。現状でそのままがいいという人もいるわけですから。より、あっせん代理以上のものをやりたいというのであれば、特定社会保険労務士の資格を取ればいい。

 ですから、ぜひそこはきちっと十九年の四月までに考えてほしいんです。大臣、どうですか、これは。希望しない人だってたくさんいるんですよ。大臣の答弁を。

尾辻国務大臣 今、私も御質問を聞きながら事務方を呼んで聞いておったわけでございますけれども、どうも、あっせん業というのを広げてしまった、広げると、従来の部分と広がった部分とあるんですが、これは一体としてやはり考えざるを得ないというような、今私が理解しておりますところではそうなる。

 そうすると、やはりこの全体をだれがやれるのかというので、切り離して、従来部分を、そこの部分だけはこっちの人もやれますよというその法律の仕組みが弁護士法との絡みや何かでうまくいかないと今私は理解しておりまして、そういう御説明を申し上げるところでございますけれども、先生のおっしゃることも今お聞きをいたしておりましたので、また整理してお答え申し上げたいと存じます。

内山委員 今大臣がおっしゃいました、その広がった部分の業務をやる人が特定社会保険労務士という方でいいんです。ですから、広がらなかった従来のものをそのまま普通の社会保険労務士ができるように置いておいてもらえれば、何ら問題がないだろうと思うんです。

青木(豊)政府参考人 先ほども申し上げましたように、委員御指摘のような制度ということは、制度をつくる際には考えられないことはないとはもちろん思いますけれども、いわば社会保険労務士が代理をできる範囲というものについて二種類のものが併存するという形になるわけです。

 一方、この個別労働関係紛争について、和解を目指して紛争解決をしていこうというときに、現行のシステムだけを希望する社会保険労務士さんがどれだけいらっしゃるのかというのは、甚だ私自身疑問を持つところであります。実際には、紛争解決をするために代理人としてゆだねられたというときに、今現在は紛争解決機関が裁判のように期日を開いて話を聞く。そのときに決着するところもあるでしょうし、次のときに決着するときもあるでしょうが、大体軽い事件はそのときに決着をする。そうすると、決着したときは、私は代理ではありませんと言って引き下がらざるを得ない、次のときに御本人を呼んでまいりますというようなやり方をせざるを得ないわけであります。

 それで、今度拡充をすることによってそういうのが一遍にできるということになるわけでありまして、いわば現在の制約された代理の範囲内では、そういうことで一生懸命仕事をなさっている社会保険労務士さんは、むしろ切歯扼腕といいますか、ここまである程度やってどうして最後のところができないのかとか、あるいは、もう少しうまくやるためには期日外でも交渉をやらせてもらえたらいいのになというのが普通ではないか。期日のときだけ出ていって代理だけやりたいと言い続けるという社労士さんが、本当にそういうニーズがあるのかなと。

 そういうような、仮に制度としてあって、制度が併存して複雑になるのでこれをいろいろ周知して混乱を避けるということを努力いたしましても、そういうこととの見合いでどれだけのメリットがあるのかなというのが正直なところでございます。

内山委員 こればかりやっていられないんですけれども、最後に。

 一本化しなくても、名称で特定か特定じゃないかを分けるんですから、しかも、そこで現場に立ち会って、自分で特定にならなければと思えば再度そこからやればいいのであって、何も今のあるものを消して全部上に持っていくということはしなくてもいいでしょうということを私は申し上げたいんです。これは省令でしっかりその辺ができるようにぜひしておいていただきたいんです。一部の者以外に、たくさんの者がいるかどうか、青木さん、わからないでしょう。でも実際に、人数が多い少ないにかかわらずそういう余地を残して、移行期間なんですから、ぜひ考えてもらいたい、こう思います。

 さて、参院先議で粛々と審議されております、日にちの関係で最初から出口ありきで審議されておりまして、修正事項も試験内容もこれから決められるということです。

 そこで、入り口の部分で非常に実務的な質問をこれから幾つかしたいと思います。午前中の質問とダブることもあるかと思いますけれども、御了承いただきたいと思います。

 試験に際し、紛争解決手続代理業務の試験は、厚生労働大臣が毎年一回行うと条文に明記されております。試験問題はだれがつくるのでしょうか。

青木(豊)政府参考人 改正案による改正後の社会保険労務士法十三条の四におきまして、「厚生労働大臣は、連合会に紛争解決手続代理業務試験の実施に関する事務を行わせることができる。」と規定しております。試験の実施に係る事務は、全国社会保険労務士会連合会に行わせることといたしているわけであります。

 その際、試験問題の作成について、だれがするのかという御質問でございましたが、紛争解決手続代理業務について学識経験を有する者から試験委員を選任して行わせるということになっているわけでありますが、一般的には、大学教授でありますとか弁護士などの実務家から選任することとなるというふうに考えております。

内山委員 実際には社会保険労務士会連合会が試験事務を行うということです。

 では、なぜ厚生労働省で自前でやらないんですか。ここをお尋ねしたいんです。

青木(豊)政府参考人 今でも社会保険労務士の資格を与えるために社会保険労務士の試験というのをやっているわけでありますけれども、これも社会保険労務士会連合会にやってもらっているということであります。

 そういう意味で、社労士の資格というものが現実的に付与されるチェックを果たしているということもありまして、社会保険労務士会連合会でやるということにしたところであります。

内山委員 本試験が連合会でやっているから、では特定社会保険労務士の試験もということですけれども、なぜ自前でやらないのかと聞いているんですよ。

青木(豊)政府参考人 国でやるというのも、おっしゃるように一つの選択ではあろうと思います。

 しかし、行政事務の簡素化等の観点から、従来から試験事務とか講習事務については民間団体への委託というようなこともやってきているわけでありますし、今申し上げましたように、現実の社会保険労務士試験については、いわば社会保険労務士関係のスタートラインの試験になるわけですけれども、それについては現に社会保険労務士会にやってもらっている、こういうこともありまして、国は社会保険労務士会連合会にやってもらうというシステムをとることにしているところでございます。

内山委員 結論が出ないので、次の質問に行きます。

 次に、能力担保の研修期間ですけれども、例えば、司法書士であれば百時間以上、弁理士であれば四十五時間以上のようでありますけれども、社会保険労務士はどのぐらいの時間を考えているのか。社会保険労務士の場合にはADRなんですよね。紛争処理代理で、司法書士のように裁判所で訴訟代理を行うわけじゃありませんので、司法書士が百時間とか弁理士が四十五時間とかというのは、それとは比較にならないんじゃないかと思うんですが、具体的に、どういう科目を何時間、どのぐらい勉強するのかということを教えてください。

青木(豊)政府参考人 この研修は今般の代理業務の範囲を拡大するに当たっては必須のことで、大変重要なことだというふうに思っております。そういう意味では、どんな科目をどのぐらいやるのかというのが大変大切だというふうに思っております。

 それについては専門家を交えて連合会の方で検討してもらっているわけでありますけれども、基本的には、社会保険労務士の資格を与えるに当たって必要とされている知識、能力とは別の、民事的な紛争解決をするために必要な基礎的な能力、基本的な能力というものを求めようというものであります。

 したがって、法的知識としては憲法でありますとか民法でありますとかいうもの、あるいは労働契約とか労働条件に関することでありますとか労使関係、それから、そもそもこういった紛争解決手続そのものについての理解も進めてもらいたいということで、個別労働関係紛争解決制度として民事訴訟法でありますとか労働審判法などの関連制度についても研修をするということであります。

 時間についてでございますが、これも今社労士会連合会の中の検討会で専門家の方々に議論していただいているわけであります。その結果が秋に出ますので、それを参考にしながらきちんと決めていきたいとは思っておりますが、御指摘ありました、司法書士あるいは弁理士等においても既に同様の代理制度についての研修がありますので、そういったものももちろん先行制度として参考になります。御指摘のように、違いのあるところも十分勘案しながら考えていくということだろうと思います。

 ちなみに、そうするというわけではありませんが、司法書士の簡易訴訟代理は百時間、弁理士の特定侵害訴訟に係る研修は四十五時間でありますが、これは一つの参考として考えていきたいというふうに思っております。

内山委員 参考としても、社会保険労務士は紛争処理代理、裁判外、ADRなんですよね。他の士業は訴訟代理じゃないですか。だから、比べ物にならないと思うんですよ。そこら辺も十分、恐らく検討会でもやられているんだろうと思いますけれども、一つは百だから、一つは四十五だから、では真ん中なんというそんな安易なところで決められる問題ではないと思いますので、じっくりと十分やっていただきたいと思います。

 それから、どんな試験になるんですか。その試験についてお尋ねをしたいと思います。

青木(豊)政府参考人 試験の内容もこれから決めるということでありますけれども、一応、先ほど申し上げましたように、社労士会連合会の中に置かれている専門家による検討会の中間報告が四月に出ました。

 それで、今は途中段階の検討でありますけれども、一応この検討の方向としては、例えば中央発信型の講義、中央から発信して講義をする、あるいは各地域で集合してゼミナールのような形式でやる、あるいはさらに少人数でグループ研修をするというようなものが考えられまして、それらの組み合わせで実施をするというようなことが考えられておりますし、基礎的な法的知識については講義の方法でやる、あるいは、社労士の倫理でありますとか権限の範囲でありますとか、そういったことについてはゼミナールの形式だとかグループ研修でやるというようなことが考えられているということであります。

 そういったことで、これから十分な検討をいただいた上で、私どもとしても、それを参考にして、本当に実務的な能力が付与されるような研修内容を規定していきたいというふうに思っております。

内山委員 もう少し聞きますけれども、今、全国社会保険労務士会連合会が第一ステージ、第二ステージという研修をしているわけでありますけれども、この研修を受けていない人は試験を受ける資格がないんでしょうか。第一ステージ、第二ステージを受けていない人は試験を受ける資格となりませんか。

青木(豊)政府参考人 今委員が御指摘になりました第一ステージ等々の研修というのは、全国社会保険労務士会連合会が、自分たちがいわば発意をしまして、既に自主的に研修というものを司法研修と呼んで実施いたしております。それを見ますと、憲法だとか民商法、労使関係法とか民事訴訟法を四十八時間、大学教授や弁護士などを講師としてやったり、あるいは労働契約法理だとか裁判外紛争解決手続、あるいは申し立て、答弁、そういったものの実務なども三十時間やっているというようなところであります。

 これについてどうするかというか、どういう評価をするかというのはこれから検討を十分したいというふうに思いますけれども、少なくとも、この研修とは関係なく、この研修を受けていなければだめだということではなくて、今まさに決めようとしている研修をきちんと受けた上で試験を受けていただく、そういうシステムでありますので、これを受けていなければだめだということにはならないというふうに思っております。

内山委員 特定社会保険労務士の試験に合格しなかった場合もあるかもしれません。そうしますと、再度試験を受けるときに研修はもう一回やり直すのかどうか、それをお尋ねします。

青木(豊)政府参考人 今度の社労士法の十三条の三の第一項において、「紛争解決手続代理業務試験は、紛争解決手続代理業務を行うのに必要な学識及び実務能力に関する研修であつて厚生労働省令で定めるものを修了した社会保険労務士に対し、」「厚生労働大臣が行う。」と規定しているわけでございますので、研修を修了した者についてその試験を実施するということであります。再度研修を受講しなければならない、そういうふうな規定ぶりということではないというふうに思っております。

内山委員 安心いたしました。

 今回の改正法によりまして、特定社会保険労務士という、この特定という名称がなぜついたのか、やはり非常に疑問を感じるんです。名は体をあらわす、例えばADR社会保険労務士という名称でもいいんじゃないか、こう思うんですけれども、その特定とつけた理由をお聞かせいただきたいんです。

青木(豊)政府参考人 この名称を考えるときには、随分といろいろ考えたわけであります。しかし、結局できるだけ簡単にといいますか、短くするのがいいのかなということが一つあります。

 社会保険労務士の中で、研修を修了して試験に合格し、その旨の登録への付記を受けた特定の者に限って新しい紛争解決手続代理業務を行うというものでありますので、当該付記を受けた特定の者を指し示すということで、特定社会保険労務士と称するのが適当ではないかなということでこのようにいたしました。

内山委員 さきの参議院先議で政府参考人は、社会保険労務士は行政型ADRで実績があり、民間型ADRでも、相当程度に軽微な事件について単独受任で代理を行うと答弁されておられます。この軽微な事件とはどのような事件を指すのか、教えていただきたいと思います。

青木(豊)政府参考人 民間型ADR、今度そこに代理権を拡大するということでありますが、紛争の目的の価額が六十万円以下のものを社会保険労務士による単独受任が可能ということとしております。

 具体的にはどんなものかということでありますが、例えば、パート労働者が一方的に勤務日数を減らされて賃金が減少するというようなことになったために減少分の賃金補償を請求するケースでありますとか、あるいは、出向、配置転換に伴う減少分の賃金の補償を請求するケースでありますとか、あるいはまた、職員からいじめや嫌がらせを受けて会社を休業せざるを得ないということで会社に対し精神的、肉体的苦痛に対する慰謝料の支払いを請求するケースなどは、六十万円以下のものが出てくるのではないかというふうに思っております。

内山委員 午前中も出ていましたけれども、なぜ、紛争価額が民事訴訟法第三百六十八条第一項の六十万円まで社会保険労務士が単独で和解手続までできて、六十万円を超えるものについては弁護士の共同受任が必要なのか、その根拠をお尋ねしたいんです。

青木(豊)政府参考人 この六十万円の基準に関しては、今回の代理権の範囲、代理業務の範囲を拡大するに当たりまして前提の議論となっておりました司法制度改革推進本部での議論がございました。昨年十一月二十六日にこの改革推進本部の決定がなされまして、それを踏まえたものということで、六十万円の基準ということにしているわけであります。

 社会保険労務士のADRに関する代理の実績というものを見てみますと、相当程度に軽微な事件であれば、簡易、迅速で低廉な紛争解決を求めている当事者のニーズに対応して、弁護士との共同受任ではなくて単独受任ということを認めることが適当だと。

 では、その相当程度軽微な事件の水準についてはどうなんだということでは、これも少額訴訟手続と同様の水準としよう、それが適当であるということから、その司法制度改革推進本部の決定に至ったというふうに考えております。

 六十万円を超えるような事件、案件につきましては、民間型ADRの運営等において、行政型ADR、これは制限があるわけでありませんので、行政型ADRと同等の公正性や適格性が確保されないおそれがあるのではないか。あるいは、能力担保措置を講じた上で、こういった代理業務の範囲を拡大するということにしているわけであります。先ほど来御質問のあります研修、試験ということでありますけれども、そういった担保措置のみで非常に高度な法律的な能力が確保できるのかどうかというようなことも勘案しまして、そういう場合にはやはり弁護士の助言等が確保され得るように共同受任が必要とされたというふうに考えております。

内山委員 資料をお配りしておりますけれども、ADRとは直接関係ありません。司法統計年報による平成十五年度全簡易裁判所における少額訴訟既済事件の種類別弁護士等の選任状況というところがあります。この資料の下の段のところに、実際に弁護士がついたそれぞれの事件について、割合でいいますと、本人が訴訟の割合、九七、九七。ほとんど弁護士がついていないんです、この少額訴訟といいますか。

 これは午前中、五島議員の方からも出ておりましたけれども、私はかねがね、司法書士、税理士、弁理士などはその専門の業務にかかわる代理を行っているのに、なぜ社会保険労務士という専門家がその専門分野の業務で依頼者にかわって代理ができないのかということが、非常に不思議でした。それが今回の法改正で、紛争価額が少額訴訟とはいえ、和解訴訟の手続が単独でできるようになったことは非常に喜ばしいことだ、こう思っております。

 しかし、先ほどから言っておりましたとおり、特定社会保険労務士の資格を取らなければ今までできたあっせん代理もできないという仕組みがありますので、試験を受ければ少額訴訟の和解訴訟の紛争手続が単独でできる、しかし、試験を受けなければあっせん代理もできない。これでは何か、社会保険労務士を二階に上げておいてはしごを外すようなことじゃなかろうかと。依頼者は、せっかく社会保険労務士に細かい事情を説明し、苦労して手続をしてもらったとしても、和解の段階になりますと、自分で契約を締結するか弁護士に新たな費用を払って依頼するしかない。国民の利便性を無視した法律制度としか言いようがないような状況でありました。

 そこで、法務省の方がきょうお見えになっていますから、弁護士法の七十二条について触れたいと思います。

 おわかりになる範囲のデータで結構でございます。個別労働紛争に精通した弁護士さんというのは一体全国でどのくらいいるのか、お示しをいただきたいと思います。

倉吉政府参考人 実は、弁護士の登録及び監督は、弁護士会及び日弁連が行っております。法務省は弁護士の監督を行っておりません。

 また、弁護士には医師の専門医制度のような専門認定制度もございませんので、法務省においては、個別労働関係紛争に精通した弁護士がどの程度いるのかというのは把握していないところであります。

内山委員 今回の改正で新たに社会保険労務士に認める業務は、弁護士法第七十二条とはどのような関係に立つのでしょうか、お願いいたします。

倉吉政府参考人 御指摘の今新たに設けられる規定、これは弁護士法七十二条ただし書きの「他の法律」に当たります。したがって、同条の例外ということになります。

内山委員 弁護士法七十二条のただし書きの「他の法律」と認めないものについては、同条の例外として認めないかのような規定があります。

 これは、社会保険労務士法と他の隣接法律専門職種の業法よりも弁護士法の方が上位の規範として位置づけていることになり、不当ではないかと思うんですが、いかがですか。

倉吉政府参考人 弁護士法も、それから社会保険労務士法等の他の隣接法律専門職種の業法も、いずれも法律でございます。上位規範、下位規範の関係にはございません。

 ただ、法律専門事務の取り扱いにつきまして弁護士法七十二条が一般的に弁護士以外の者による取り扱いを禁じておりますので、他の法律専門職種の業法に弁護士法七十二条の特別法となる部分が出てくる、ただそれだけにすぎない、そういう関係でございます。

 弁護士法七十二条が「他の法律」と規定しておりますのは、このような一般法、特別法の関係が存するということを確認的に示したものでございまして、弁護士法が今御指摘の他の法律よりも上位の規範であるというようなことはございません。

内山委員 現行の社会保険労務士法のもとでは、社会保険労務士があっせん代理の業務を行った後に和解契約の締結を代理して行うことは、社会保険労務士の業務範囲外とされています。

 このような和解契約の締結の代理を無報酬で行うことは、弁護士法の第七十二条に違反するのでしょうか。

倉吉政府参考人 弁護士法七十二条は、報酬を得る目的、それがあることを要件としておりますので、御指摘のような和解契約の締結の代理を無報酬で行うということは、七十二条には違反いたしません。

内山委員 それでは、本法案の改正後の社会保険労務士法のもとで、社会保険労務士が弁護士と共同受任せずに単独で、目的の価額が六十万円を超える個別労働関係紛争、いわゆる民間ADR手続において当事者を代理することにおいても、社会保険労務士が無報酬でこれを行う場合、同じく弁護士法第七十二条に違反しないでしょうか。

倉吉政府参考人 先ほどの答弁と同様でございまして、御指摘のような代理行為を無報酬で行うということであれば、七十二条に違反するということはございません。

内山委員 これに関しまして、弁護士法の第七十二条の規制範囲について、いろいろあるのでしょうけれども、わかりやすく簡潔に御説明をいただきたいんですが。

倉吉政府参考人 七十二条の要件を説明しろという御趣旨だと思います。

 まず、七十二条には、報酬を得る目的と、それから業としてという要件を掲げております。したがいまして、無償で行う場合はまず七十二条違反にはならない。それから、反復継続して行う事実とか、反復継続して行うという意思がない場合には業としてということになりませんので、これも当たらないということになります。

 また、弁護士法七十二条が規制しておりますのは、法律事務の取り扱いすべてではありません。若干条文を援用いたしますが、「訴訟事件、非訟事件及び審査請求、異議申立て、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して」となっておりまして、これについて法律事務を取り扱うこととされております。

 この「一般の法律事件」につきましては、いわゆる事件性があるということが必要と解されまして、事件性のない法律事務を取り扱うことは同条に違反しないと解釈しております。

 なお、この事件性とは、文献によりますと例えばこのように書かれておりまして、今読み上げました列挙されている訴訟事件その他の具体的例示に準ずる程度に法律上の権利義務に関して争いがあり、あるいは疑義を有するものであること、言いかえれば、事件というにふさわしい程度に争いが成熟したものであるということとされております。

内山委員 ADRの活性化のためにも、これから将来に向けて、弁護士法第七十二条の規制範囲をさらに変更し、見直していく必要があろうかと考えています。最後にいかがでしょうか。

倉吉政府参考人 御指摘、ごもっともだと思っております。

 弁護士法七十二条は、国民の利益の保護や法律秩序の維持のための規定であります。現在においても、なおこれは合理性、妥当性があるものと私ども考えておりますけれども、これまでも、社会のニーズや国民の法意識の変化等に伴いまして、弁護士法以外の法律において、この七十二条の趣旨を損なわないような形で、今回と同じような例外規定が設けられてきたところでございます。ただいま御審議いただいている社会保険労務士に対するADR代理権の付与も、同様の例外規定を設けようとしているものだと考えております。

 今後も、法務省といたしましては、社会のニーズ、国民の法意識の変化、それから弁護士や隣接法律専門職種の皆さんの活動状況等を踏まえまして、各方面の意見を聞きながら、七十二条の規制の対象となる範囲、対応のあり方や、これらに関する予測可能性の確保といったことについても適切に検討してまいりたいと思っております。

内山委員 国家資格の社会保険労務士にもう一度、特定社会保険労務士という試験を受けさせる。研修を修了して、例えば一定期間、開業登録しているような社会保険労務士に、特定社会保険労務士としての何か利便的な、特別な取り扱いというのはできないものだろうか。研修を修了して、一定期間、例えば五年ぐらいとか登録している人たちに対して試験を免除するとか、そういったことができないだろうか。

 また、厚生労働大臣から、都道府県の紛争調整委員会委員、こういった方もやはり任命されて活躍しているわけでありますけれども、こういうあっせん委員に就任している社会保険労務士についても試験を免除するような、こういった特別な取り扱いをするようなことは何かお考えはございませんでしょうか。

 この二点、あわせてお願いします。

青木(豊)政府参考人 今回の改正は、個別の労働関係紛争の解決を進めていくために、迅速な解決ということで、極めて労使関係に精通をしているような社会保険労務士さんに民事的な新たな能力をつけていただいて、そして代理をして迅速処理に資していただきたい、こういう趣旨でございます。

 したがって、最終目的は紛争を円滑、迅速に解決するということでありますので、紛争もいろいろなレベルがあるとは思いますけれども、やはりしっかりした能力、しっかりした知識、そういった解決のための特別の見識というものを持っていただく必要があるというふうに思っているわけでございます。したがって、研修をし、研修の修了試験をするということを一つの担保としてお願いするということにいたしているわけでございます。

 社会保険労務士として長く仕事をされてきた中には、個別にはもちろん能力のある方もいらっしゃるかもしれませんけれども、基本的には、申請書類の事務手続代行でありますとか、あるいは労務管理というようなことでありますので、紛争解決手続に入っていくものの、何といいますかOJTというのはなかなかされていないのが普通ではないかなというふうに思っております。そういう意味で、やはり御質問のような場合であっても、新たに特別の紛争解決手続の代理が行えるような能力をつけていただくための研修、試験を受けていただくということは必要だというふうに思っております。

内山委員 社労士法の二十三条の件で、一点お尋ねをしたいと思います。

 労働争議不介入規定の削除によりまして、できることとできないことがあろうかと思います。特定社会保険労務士としてできることと、それ以外の社会保険労務士としてできること、この違いがございますでしょうか。

青木(豊)政府参考人 労働争議不介入の禁止規定、今度削除されるわけでありますけれども、それについては特段、社会保険労務士、特定社会保険労務士を別義に取り扱っているわけではありませんので、これは差はないということになろうと思います。

内山委員 では、確認ですけれども、二十三条の削除がありまして、特定社会保険労務士でない社会保険労務士が、この削除によりまして、当事者の一方の行う労働争議の対策の検討、決定等に参与すること、これはやはり特定の社会保険労務士でなくてもできるということで考えていていいわけでしょうか。

青木(豊)政府参考人 労働争議不介入規定の削除というのは、まさにそこに意味があるのだろうと思います。特定であってもなくても、争議行為の対策の検討、決定等に参与するような相談、指導業務を行うことができることとなるというものでございます。

内山委員 試験に合格しなければ、十九年の四月以降、いろいろ仕事ができなくなるわけでありますけれども、例えば、現在受け持っているあっせん代理権の経過規定というのは何年ぐらい、あろうかと思うんですが、教えてください。

青木(豊)政府参考人 今、委員の御質問は、附則二条の経過措置のことだと思いますが、それは、現にその時点で受け持った事件について、施行後についても従前の例によるだったと思いますが、そういう規定ぶりでできるということになっている。したがって、それが終わるまではできるということでございます。

内山委員 先ほどの一番最初の話に戻しますけれども、すべての社会保険労務士が、今回新たに特定社会保険労務士になれるとは限らないんです、大臣。ですから、そこをぜひ、あっせん代理がそのままできますように、何か検討していただいて、省令でぜひ、十九年の四月までに肉づけをする中に盛り込んでいただきたいと思うんですが、大臣、どうでしょうか。大臣にぜひ最後に。

青木(豊)政府参考人 先ほど来申し上げておりますように、委員のお考えも一つだろうと思いますけれども、この能力担保措置をきちんとやっていただくというのが必須だというふうに思っております。これは、そういう意味で、法律上そういう要請をしている、今回御提案しております法律の中でそういう要請になっているということでありますので、省令でそれを書くということはできないというふうに思っております。

尾辻国務大臣 今お答え申し上げましたとおり、私もその問題は大変難しい問題だと理解をいたしておりまして、やれることなら、検討しますとか頑張ってみますとか申し上げますが、率直に申し上げて、大変厳しい、難しい問題だと私も理解をいたしております。

内山委員 私も社会保険労務士なものですから、特定社会保険労務士を受けてみたいなと思うんですが、恐らく受からないだろう。

 そして、波及効果といいますか、社会保険労務士として、通常何ら可もなく不可もなく労務管理をやっている。そこに、特定社会保険労務士とそうでない社会保険労務士がいたときに、顧問先はどちらの社会保険労務士の先生を選ぶだろうか。あっせん代理なんかをやらない先生方にとっても、この問題というのはやはり非常に捨ておけない問題でございます。自分がやるやらないにかかわらず、そういう流れというのが非常に、年配の力のある先生でもそういう資格を取っていかないとやれないというものが、今、業界の健全な動きに何か水を差すようなことがあるのではなかろうかと、私自身としても心配をしております。

 これは、青木局長にはできないとばっさり切られてしまいましたけれども、ぜひ何とか考え直していただきたいと、私はしつこくこれからも食い下がってまいりたいと思います。御支援のほどお願いします。

 時間が来ましたので、これで終了いたします。ありがとうございました。

鴨下委員長 次に、橋本清仁君。

橋本(清)委員 民主党の橋本清仁です。

 きょうは、社会保険労務士法の一部を改正する法律案について質問をさせていただきたいと思います。

 けれども、こちらを見渡してみると、余りにも与党の方々の数が少な過ぎるのではないかと思うんですけれども。とまってしまいますよね。(発言する者あり)呼んでください。

鴨下委員長 それでは、速記をとめてください。

    〔速記中止〕

鴨下委員長 速記を起こしてください。

 質疑を続行してください。橋本君。

橋本(清)委員 また改めまして、民主党の橋本清仁です。

 本日は、社会保険労務士法の一部を改正する法律案につき質問をさせていただきます。

 地元におきましても大変お世話になっておりまして、労働・社会保険関係の専門家、人の採用から退職、そして年金、介護、人に関するエキスパートである社会保険労務士の皆さん、今回この社会保険労務士法の一部を改正する法律案において業務の範囲を広げるということで、大臣にお伺いしたいのは、この法案を提出するに至った経過、特に今までのあっせん代理の実績などを踏まえた上でお答えいただければと思います。

尾辻国務大臣 社会保険労務士につきましては、労務管理その他労働に関する事項についての専門家として事業場における個別労働関係紛争の未然防止に努めていただいておりますし、また、都道府県労働局の紛争調整委員会におけるあっせん代理を行っていただくなど、事業場における個別労働関係紛争の防止や解決に貢献していただいてまいったところでございます。

 この都道府県労働局の紛争調整委員会におけるあっせん代理は、平成十四年の社会保険労務士法の改正により、平成十五年四月一日より社会保険労務士がその業務として行えることとなったものでございますけれども、同日から本年一月末までに百七十三件の代理がなされておるところでございます。このような実績を踏まえまして、昨年十一月二十六日の司法制度改革推進本部決定におきまして、社会保険労務士について、個別労働関係紛争に係る裁判外紛争解決手続の代理業務の拡大を図る旨等の決定がなされたところでございます。

 厚生労働省といたしましては、この本部決定に基づきまして、増加する個別労働関係紛争について迅速かつ適正に解決するために、社会保険労務士が持っておられる専門性及び経験を活用することとして、ADRに関する代理業務の拡大を図ることとしたものでございます。

橋本(清)委員 ありがとうございます。

 それで、この法案が提出されるに当たり、紛争解決手続代理業務を行うことについて幾つかの問題点が指摘されております。紛争解決業務の専門性ということで、例えば、民法や民事訴訟法等は社会保険労務士の試験科目となっておらず、その知識は現在のところ担保されていないとか、女性に対する差別的扱いという労働問題の中でも難しい紛争であることから十分な知識と配慮を要するものであり、当該調停手続の代理業務を行わせるべきではないといったような意見がありますけれども、このような意見に対して連合会の方ではどのような対応をとっておられるのかということをお答えいただきたいんですけれども。

青木(豊)政府参考人 連合会の方においては、能力担保措置検討会、これは有識者の方々、専門家の方々で検討していただいているところでありますが、そういったものを設置して取り組んでいるということであります。

橋本(清)委員 そういったものと、あと司法研修、第一ステージ、第二ステージ、そういったものも取り組んでおられる。憲法、民法を中心とする五科目四十八時間の司法研修第一ステージ、そして、実務能力の取得に主眼を置いた七科目三十時間の司法研修などがあるということを伺っています。

 それで、この第一ステージ、第二ステージを受講を修了なさった数をそれぞれお答えいただきたいと思います。

青木(豊)政府参考人 連合会が実施している、司法研修と呼んでいるようでありますけれども、これは、自主的に連合会の方で、委員から御紹介ありましたように、社会保険労務士の法律的な能力の向上を図ろうということで始めているものであります。その第一ステージは、憲法、民商法、労使関係法及び民事訴訟法など、法律的な基本的な広範な知識を付与する。第二ステージは、労働契約法理でありますとか裁判外紛争解決手続、それから申し立て、答弁の実務などを内容としまして実施をしているところであります。

 これまでに、法律的な知識に関する第一ステージについては約五千人、第二ステージについては約三千六百人の社会保険労務士がこの研修を受けて修了をしているというふうに聞いております。

橋本(清)委員 今までもこういう司法研修という形で社会保険労務士の方々はさまざま努力なさってきたということで、また、これは別の問題として、代理権付与についての能力担保研修についてどのような検討が進んでおるのかということを伺いたいと思います。

青木(豊)政府参考人 紛争解決手続代理業務に必要な能力担保措置については、全国社会保険労務士会連合会で、学識経験者とかあるいは弁護士、それから社会保険労務士の方々にお願いをして検討会を設置して、もう既にことしの一月から検討を始めて、去る四月二十日に中間報告が取りまとめられました。

 その中で、研修内容として、社会保険労務士の権限及び倫理、それから、憲法、民法を初めとして労働契約、労働条件関係法令あるいは民事訴訟法など紛争解決手続代理業務に関連する基礎的な法的知識、それから、個別労働関係紛争に関する裁判例のケーススタディー、それから、申し立て書、答弁書による主張、反論あるいは交渉、和解など紛争解決手続に関する知識と能力という四つの事項が研修内容として示されました。

 試験については、これは紛争解決手続を行うために必要な学識と実務能力を適正に判断できるよう、その試験内容、方式を検討するというふうになっておるところでございます。

橋本(清)委員 そういったところで、代理権付与についての能力担保研修、そして試験の方もお答えいただいたんですけれども、私ちょっと疑問に思うのは、この第一ステージ、第二ステージを終わられた方々と、代理権の付与についての能力担保研修をお受けになる方々との、第一ステージ、第二ステージを受けたことによるメリットみたいなことというのは何かあるんですか。

青木(豊)政府参考人 第一ステージ、第二ステージということで連合会側も既に実施している司法研修でありますが、これは、先ほども申し上げましたように、社会保険労務士のいわば法律的な能力を高めようということで自主的に連合会が始められたものであります。しかし、そのねらいとするところが、紛争解決の実務的な能力を高めることを意図として始められた、設定されているということで、その行っている研修の中身でありますとかそういうのを拝見しますと、今般の能力担保措置で求められている事項に非常に関係が深い、共通性が相当あるのではないかと思われます。

 能力担保措置の内容については、現在、社会保険労務士会連合会の中の検討会でどうしようかということで検討し、中間報告も出て、秋までにきちんと最終報告をまとめるということでありますので、これからということでありますが、この第一ステージ、第二ステージについての評価をどうするのかということは一つ考えなきゃいけない問題であろう。秋に出て、私どもが研修内容はこうだというふうに決めるときには、その中身とこの第一ステージ、第二ステージの中身というものも精査をして、どう評価できるのか、評価できないのか、そういうことを検討する必要があるだろうというふうに思っております。

橋本(清)委員 これからお決めになる、精査するべき課題であるというお答えをいただきましたけれども、地元の社会保険労務士の先生方に伺いますと、やはり皆さんお忙しくていらっしゃって、なかなかこういった研修を受ける時間もないというお話も数々伺っております。そして、実際に、この司法研修の第一ステージ、第二ステージ、第二ステージまでその方は行かなかったんですけれども、第一ステージを受けている途中でなかなか仕事の都合がつけられなかったということで、行くことができない方がいらっしゃる。

 それで、また後でほかにも質問させていただきますけれども、日程や開催場所についてどのような基準で決めているのかということをお答えいただければと思います。

青木(豊)政府参考人 第一ステージ、第二ステージのお話でございましょうか。これについては、これまで十三年度から十六年度において四回開催されているようでありまして、第一回は平成十三年十一月から翌年の六月にかけて十都市十二会場で開催をされ、二回、三回、四回もそれぞれ複数の都市で複数の会場で開催をされているということであります。

 この講義時間といいますか研修時間も、五科目合計四十八時間ということであります。実施例などを見ますと、例えば第四回の東京会場でありますと、六月二十六日から七月十八日にかけて、実質八日程度ということで、かなり期間的には圧縮してやっているのではないかなというふうに思っています。

橋本(清)委員 今お答えいただきましたけれども、第四回東京会場における資料、私もこれはいただいております。それで、日程を見ますと、六月二十六日土曜日、六月二十七日日曜日、これが最初ですね。七月三日、七月四日、これも土日です。そして、次は七月五日月曜日、七月十六日金曜日となって、その次、七月十七日土曜日、七月十八日日曜日。土日、土日、月金、土日、これは、実際にお受けになった方々からしてみると、仕事をやっている上ではかなりきつい日程であるということを伺っているんですけれども、こういった日程について、きちんとそういった配慮をなさっているんでしょうか。

青木(豊)政府参考人 確かに、この日程を見ますと、土日中心で、週末中心でできるだけ配慮をしているようには見えますけれども、月曜とか金曜とか、土日の両側にかかっているということもあって、土日中心で配慮をしているのではないかなということであろうかと思いますけれども、連合会としても一定の配慮をしているのではないかなと。

 ただ、これは司法研修、今やっている第一ステージの話でありますけれども、今度の能力担保措置で研修をし試験をするに当たっては、今委員が御指摘のような、実質的に、実際に仕事をなさっている社会保険労務士の方々がなかなか受けられないような研修では今回法改正をお願いしている意味はありませんので、私どもとしては、いろいろな形をとることは可能かと思いますけれども、やり方などを工夫したり、日程なんかもできるだけ配慮できるようなものを考えていきたいというふうに思っております。

橋本(清)委員 これからの研修と試験の分野について御配慮いただけるというお答えだったと思います。

 先ほどちょっと内山先生のお話の中にもありましたけれども、従来のあっせん代理ができなくなる方がこの法案ができることによって発生するということがある一方で、現実にこういうあっせん代理を今やっていらっしゃる方というのは、本当に現場で、脂の乗り切ったというかきちんと働いていらっしゃる方なわけですよ。そういった中であっせん代理ができなくなる。

 それで、この試験制度が非常に受けにくい。第二ステージなんか見てみたらひどいですよ。月、火、水、月、火。どういう日程の組み方をしているんだろうと思いますけれども。こういうことで、さっき、今までのあっせん代理だけやりたい人がいるかどうか疑問ということをおっしゃっていましたけれども、結局、受けたくても受けられないという状況が生じてくるわけですよ。

 そういった中で従来のあっせん代理ができなくなるというのは非常に問題だと思うんですけれども、その点についてお答えいただきたいと思います。

青木(豊)政府参考人 今委員御指摘のことは、全くおっしゃるとおりだと思います。したがって、きちんとこういった制度をつくって、最終目的は紛争解決の迅速、円滑な処理でありますので、せっかくつくって用意をしようという制度に実質道を閉ざすようなことになるのは、これはとんでもない話だというふうに思います。

 そういう意味で、きめ細かに配慮をしなければいけないなと、今委員のお話を聞きながら思ったところであります。できるだけ実質的にきちんと受けられるような形も考えていきたいというふうに思っております。

橋本(清)委員 ありがとうございます。誠意あるお答えをいただいてありがとうございます。

 こういったところで、この研修を受けようと思っていらっしゃる社会保険労務士の方々というのは、実際に何人ぐらいいらっしゃるんでしょうか。予定で構いません。

青木(豊)政府参考人 これについては実際に調査をしたわけではありませんので、どのぐらいかというのは今手元に確たる数字があるわけではありませんが、同様の登録士の規模を持つ司法書士などから見ると、これは全くの感じでありますけれども、当面五千ぐらいはあるのではないかなというふうに思っております。

 これは実際に実施をするに当たって、研修だとか試験だとかするときに、ニーズがたくさんあって受けられないというようなことがないようにしなければいけませんので、そこら辺もよく考えながら、実際の施行を考えていきたいというふうに思っております。

橋本(清)委員 配慮をしてということで質問の先回りをして、ありがたいんですけれども、一応司法書士の事例を見てみても、大体全国で三千人程度がキャパシティーじゃないかなと思うんですけれども、先ほどおっしゃったところで五千人という人数が出てきた。そういった中で、この五千人を一度に受けさせるわけにはいかない。その場合、二つに分けるということも考えられるでしょうけれども、この場合、どういった基準をもって二つに分けるんでしょうか。

青木(豊)政府参考人 とにかくこの制度が始まって円滑に進むためには、まず、急いでこの研修を実施しなければいけないというふうに思います。先行する例などを見ますと年一遍というようなこともあるわけですけれども、十八年度は年二回は実施することとして、できるだけ体制を整えていきたいというふうに思っております。

橋本(清)委員 二回に分けるとおっしゃっていましたけれども、お答えいただきたいのは、どういうふうに二回に、それをお答えになるのは難しいとしても、二回に分けることによる不公平というのはどのようにして解消なさるおつもりか。

青木(豊)政府参考人 二回については、基本的には手を挙げてもらうということだろうというふうに思っていますけれども、地域で分けるのか日程で選んでもらうようにするのか、そういうことだろうと思うのですけれども。

 ちょっと御指摘になりました不公平ということでありますが、それは、例えば日程でありますとかそういうことでの不公平ということであるとすれば、あらかじめ提示をして、さあ、どうぞと、手を挙げてもらうというやり方が、御本人の、皆さん方の便宜に一番合うのかなと思います。もし研修だとか試験の中身が、違う時期にやって不公平だということであれば、それはそういうことのないように、基準だとか試験委員だとかそういうものできちんと水準等の公平性は担保していきたいというふうに思っております。

橋本(清)委員 それでは次に、試験のことについてお伺いしたいと思います。

 能力担保研修後の紛争解決手続代理業務試験、これはどこが実施するのかということについてお答えいただきたい。

青木(豊)政府参考人 試験につきましては、今般の改正後の社会保険労務士法第十三条の四で「厚生労働大臣は、連合会に紛争解決手続代理業務試験の実施に関する事務を行わせることができる。」というふうに規定をされておりますので、試験の実施に係る事務は全国社会保険労務士会連合会に行わせたいというふうに思っております。

橋本(清)委員 それでは、この試験問題の作成、配点、そして合格点についてはどのように決めるのかということを、また、どなたが決定するのかということについてもお伺いしたいと思います。

青木(豊)政府参考人 今申し上げましたように、この試験の実施に関する事務は全国社会保険労務士会連合会にしてもらおうということでありますけれども、試験問題の作成につきましては、紛争解決手続代理業務について学識経験を有する人たちの中から試験委員を選任して行わせることとなります。一般的には、大学教授や弁護士等の実務家から選任するということになると思います。

 合格点とか合格者の決定というようなことでございますが、これにつきましては、試験事務を全国社会保険労務士会連合会に行わせるというふうにしたとしましても、その試験は国家試験としての性格が変わるというものではありませんので、厚生労働大臣が最終責任を持つというものであります。そういうことからいいまして、合格点の決定、合格者の決定、そういったことに関する事務は、今行われている社会保険労務士試験と同様に国が行うことになるというものでございます。

橋本(清)委員 ちなみに、社会保険労務士の方々の合格水準というのは今どのぐらいなんですか。

青木(豊)政府参考人 ちょっと今、手元に数字が出てきませんが、記憶では九%台の合格率だったというふうに思います。

橋本(清)委員 それでは、この特定社会保険労務士の試験の合格率は大体どのぐらいの水準にしようと考えていらっしゃるんでしょうか。

青木(豊)政府参考人 その前に、社会保険労務士試験の方の正確な数字は、合格率九・四%でございます。

 それで、この研修に係る代理業務に関する試験につきましては、これは純粋な社労士の資格を付与する試験ではなくて、研修をしまして、研修で能力を付与する、それの修了試験のような性格であるわけです。したがって、合格率は高くなるだろうというふうに思います。

 ちなみに、先行いたしております、先行制度であります司法書士の訴訟代理では、第一回目が七八・九%、第二回目が七六・九%、第三回目が六九・九%ということでありますし、弁理士の侵害訴訟代理では、平成十五年度が六八・八%、平成十六年度では六三・二%ということになっております。

 一定の水準を、合格率といいますかそういったものを決めてそういう試験を実施するものではないわけでありますので、必ずしもこれが参考になるというわけではありませんが、実態としては、先行するものはそんなような認定率ということになっております。

橋本(清)委員 せっかくこういった代理権が社会保険労務士の方々に与えられたのであるから、厚生労働省としても、国民の信頼を裏切ることのないように、十分な時間と充実した内容の研修をしていただいて、そしてきちんとした研修のもとに十分な能力担保措置と試験を行っていただければと思いますけれども、大臣、これからの社会保険労務士の方々の試験に対するものとして、先ほどのあっせん代理ができなくなる人に対する配慮なんかも含めて、最後にお話をいただければと思います。

尾辻国務大臣 このたびの紛争解決手続の代理権付与ということでございますけれども、これに当たりましては、信頼性の高い能力担保措置を講ずることが必要でございます。繰り返しそのことを申し上げておるところでございます。

 このためには、研修、試験の内容について、現在、全国社会保険労務士会連合会において、学識経験者及び弁護士も構成員とした検討会を設置して検討を行っておるところでございますので、今お話しのように、公正性もきっちり担保した答えが、最終報告がことしの秋に取りまとめられることが予定されておりますので、この報告を受けてその内容をまた定めたいと考えております。

 お話しのように、御指摘のこともありましたし、基本的に公正性を担保する必要があるというお話もございました。そうした先生方の御指摘を踏まえながら、また私どももそのように努力してまいります。

橋本(清)委員 終わります。

鴨下委員長 次に、中根康浩君。

中根委員 民主党の中根康浩でございます。

 お昼下がりの豊かなひとときということでございますけれども、九十分、きょう、時間をいただきましたので、しっかりと丁寧に行っていきたいというふうに思っております。

 まず初めに、法案の審議の質問の前に、我が国の国益に関する重大な問題につきまして、確認を進めてまいりたいと思っております。

 それは、本委員会の委員で、いつも御一緒させていただいてもおりますし、実は、私、個人的なことを申し上げますと、宿舎が一緒でございまして、朝、こちらの方に来るときに結構バスの中で御一緒させていただく間柄でございますものですから、非常に申し上げにくいところもありますけれども、いろいろな失礼な言葉遣いというか、申し上げると思いますけれども、国会審議ということで割り切っていただいて、ぜひとも誠実な御答弁を賜りますように、よろしくお願いを申し上げたいと思います。

 森岡厚生労働大臣政務官の御発言について、確認をしながら質問を進めてまいりたいと思います。

 申し上げるまでもなく、本日、取り上げさせていただきますのは、五月二十六日の自民党代議士会における森岡政務官の御発言でございます。

 自民党の代議士会というのは、やはりこの国の、長年にわたって政権を担当してきた、政府を構成してきた与党、その与党の衆議院議員が集まる会ということでございますので、これは半ば以上に公的な場所であったり時間であったりすることであろうというふうに周りの人間はやはり思っていると思います。そこでの御発言というのは、やはり軽いものではない、重いものに必然的にならざるを得ないということだろうと思います。

 したがって、この御発言があろうとなかろうと、マスコミさん、テレビはそこに入っていたということでありましょうし、たまたま入っていたその中に、森岡政務官の、いろいろと今から御質問させていただきます内容の御発言が出てきて、そのことがさまざまな波紋を呼んでいるということだろうというふうに思います。

 そういう、ある意味で公的な場所におきまして発言された重大な内容につきまして、政務官、申しわけありませんけれども、御面倒さまですけれども、この場で、五月二十六日の自民党代議士会でどのような発言をなさったか、もう一度、確認の意味で御教示いただけないでしょうか。

森岡大臣政務官 お答えをさせていただきたいと思います。

 私も、毎日のように、宿舎が一緒で、バスの中でも一緒になる中根先生からこういう御質問を受けるということを、本当に御縁だなというふうに思わせていただいているところでございます。

 きょうは、厚生労働委員会という公の場であり、そして私も厚生労働大臣政務官という立場でこうして答弁席に立たせていただいているわけでございまして、私が先日、自由民主党の代議士会の中で申し上げた、党内のだれもが自由に、自由民主党所属の国会議員がしゃべれる場でございます。そこで私が申し上げたものであるということをまず御確認をしておいていただきたいというふうに思いますし、本来ならば、私はここで、こんな公式の場で政務官としてお答えするのはいかがかなというふうにも思いながら、しかし、中根先生が率直に、誠実なお答えを、こうおっしゃっているものですから、私も率直にお話をさせていただきたいなという思いも持っているわけでございます。

 のっけから私ごとを申し上げて恐縮ですが、中根先生がまだ十八のころだったと思います。昭和五十五年に私は法務大臣の秘書官をやっておりました。そのときに、時の法務大臣が社会党の代議士さんから、自主憲法について、あなたはどう思うか、個人的意見でもいいからということで問われました。そして、その答えが、たとえ同じものであってもつくりかえることができるならば望ましいことだ、こう法務大臣は答えたわけでございました。

 ところが、朝その会議で答えて、午後になったら法務大臣罷免という声が社会党の方から上がってきまして、大変な混乱になったことを覚えているわけでございます。四半世紀前のことでございます。

 今、憲法改正の問題、また憲法論議、これを国会の中でしゃべって悪いと思っている人いるでしょうか。総理大臣みずから、憲法は遵守するけれども、しかし憲法改正についての議論は大いに結構じゃないか、こうおっしゃっていますし、与野党を問わず、また国民の間でも三分の二の人たちが憲法改正やるべきだという思いになっておられる時代でございます。

 そういうふうに、私はいろんな問題、特に国家の基本にかかわるような問題、大事な問題、時代とともに変わってくるものだと思います。ところが、私は残念に思うのは、国会の体質そのものが余り変わっていないなというふうに思うわけでございます。

 中根先生のように、春秋に富んだ政治家でいらっしゃるわけでございますから、こういう面から大いに議論すること、結構じゃないか、閣内不一致だとかいうようなことにとらわれずに、もっともっと、閣内でも、そして与野党内でも、国会では大いに議論すればいいじゃないか。そして、閣内不一致というならば、いろんな議論がなされた上で内閣総理大臣が、おれはこの方針でいくんだ、私はこうやっていきたいと思うと、その方針に従って、大臣や副大臣、政務官がそれに従っていく、総理の方針が出たら、それに従っていくということが私は正しい行き方だと思いますし、一から十まで何でも、総理大臣が考えておられることに違うようなことを言ったら、それは閣内不一致だということでわっと騒ぎ立てるようなマスコミの一部でありますとか、野党の皆さん方の中にもそういう人たちがいらっしゃいますけれども、私は、それはいかがなものか。やはり、政治改革ということを考えると、自由に国会の中では議論できるような場にしてもらいたいものだなというふうに思っていることをまず申し上げておきたいと思います。

 そして、今お尋ねのことでございますが、資料としても私のホームページを配っていただいておるようでございますので、そのとおりでございまして、五月二十六日の私の自由民主党の代議士会で発言した内容でございますが、私は、小泉総理に靖国神社にぜひお参りしてもらいたい、世界平和を願い、そして日本は決して戦争をしたいと思っているんじゃないんだという誓いを、不戦の誓いを立てたいと思って総理大臣が靖国神社にお参りしたいと思っておられるものを支援していくのが当たり前じゃないか、それなのに、どうもこのごろ我が党内でもそういう動きになっていないじゃないかという思いでお話をさせていただいたわけでございます。

 小泉総理の靖国神社参拝をめぐって中国がA級戦犯合祀を問題にしております、これに対する与党幹部の態度はいかがなものか、中国の気にさわっているから、何とかして靖国神社とA級戦犯を切り離したいという対応しかしていないように見えますと。

 そもそも、A級戦犯といいますけれども、日本が占領下にあったとき、勝者である連合国軍が国際法違反の軍事裁判で敗戦国日本を裁いたものですよ、戦争というものは、してはならないものだけれども、どうしても話し合いで決着しないときは、国際法で認められた一つの政治形態であります、日本は、経済封鎖されて、やむなく戦争せざるを得ない状態に追い詰められて、国際法のルールにのっとって戦争をしたんじゃありませんか、勝った方が正義で、負けた方が悪ということではありませんよと。

 独立回復後は、国会でも全会一致で、それこそ共産党から社会党の人たちまで全部賛成をして名誉回復を図って、そしてA級戦犯と言われた人たちの遺族にも恩給が支給されるようになりました、A級戦犯の中には、絞首刑になった人も禁錮刑になった人もいましたけれども、皆、罪を償いました、後に、重光葵さんなどのように大臣になった人も、賀屋興宣さんもそうでしたね、大臣になった人もいらっしゃいましたし、岸信介さんのように総理大臣になった人もいらっしゃいました、A級戦犯は、もはや罪人じゃありませんと。

 日本は、中国にも韓国にも何度も何度も謝ってきました、戦後六十年間、平和主義を貫いて、一度も戦争しないでやってきましたし、経済援助もしてきました、中国や韓国にこびて、A級戦犯の分祀や新たな追悼施設建設を目指すのではなく、東京裁判は国際法上違法であったということを全世界に向かって主張すべきでありますということを私は申し上げたことを正直に御報告させていただきたいと思います。これは事実でございますので、御報告しておきます。

中根委員 正々堂々とありのままを御開陳いただきまして、ありがとうございます。

 私どもの民主党の国対が森岡厚生労働政務官の発言についてまとめたものを読み上げさせていただきますと、森岡正宏厚生労働政務官が二十六日の自民党代議士会で靖国問題に関して行った発言要旨は次のとおりである。

  小泉純一郎首相が毎年靖国神社にお参りしているのはいいことだ。靖国問題で、中国に気遣いをして、A級戦犯がいかにも悪い存在だという処理をされている。これは残念だ。

  A、B、C級戦犯は、いずれも極東国際軍事裁判(いわゆる東京裁判)で決められた。平和、人道に対する罪だとか、勝手に占領軍がこしらえてつくった本当に一方的な裁判だ。

  戦争は一つの政治形態だ。(日本は)国際法で定められたルールに乗っかって戦争をした。勝った方が正義で、負けた方が悪だということはない。お互い兵隊同士が殺し合いをする。これはルールにのっとってやっている。それでもって謝罪しなければならないということはない。

  A級戦犯の遺族には年金をもらっていただいている。日本国内ではもう、その人たちは罪人ではない。自民党外交が、靖国神社にA級戦犯が祭られていることが悪いかのごとく言ってしまう片付け方は、後世に大変禍根を残す。

ということが要約でございますが、大体これでいいということで、うなずいておられますけれども。

 今、森岡政務官がおっしゃっていただいたこと、この発言の要旨の中に、例えば、きょうはたまたま傍聴席に学生諸君もいらっしゃいますけれども、戦争は、お互いに兵隊同士が殺し合いをする、これはルールにのっとってやっていると。これは、戦争を肯定することは、やはりどこまでいってもできない。戦争を美化したり、あるいは肯定したりすることは、やはり許されないということで貫いていかなければ、平和というものはなかなか守りにくい、そういうふうに考えるべきじゃないでしょうか。いかがでしょうか。

森岡大臣政務官 お答えをさせていただきたいと思います。

 私は、戦争を美化するとか、また好戦的な考え方を持っているとか、全く違うわけでございまして、平和を希求するということは何よりも大事だ、世界平和を希求することが私たち政治家に課せられた仕事だと思っております。

 しかしながら、近代におきましては、たしか一九〇七年だったと思いますが、ハーグ陸戦法規とか、ジュネーブ条約に見られますように、どうしても、国と国との間で利害が衝突いたしまして、平和的手段では紛争を解決できないという場合には、戦争という手段に訴えざるを得ない、しかし、その戦争をする場合には、こういうルールでもってやりなさいよという法律が定められているわけでございまして、それには、例えば一般住民とか非戦闘員を攻撃したり殺傷してはならない、また軍事目標とされるもの以外の民間の建物などを壊してはいけない、不必要な苦痛を与える残虐な兵器を使ってはならないとか、捕虜を虐待してはならないとか、そういう定めがあるわけでございます。

 私は、決して戦争を奨励しているわけではありません。だけれども、どうしても戦争をしなければならない場合、例えば湾岸戦争であるとかイラク戦争であるとかいろいろ起こっておりますけれども、これは、話し合いでどうしても解決しなかった場合に戦争になっているわけじゃございませんでしょうか。私は、何も戦争がいいことだとか、また侵略戦争を美化しているとか、すぐにそういうことをおっしゃる人がいらっしゃるんですが、全く違いますということを申し上げたいと思うわけでございます。

中根委員 太平洋戦争、第二次世界大戦、あるいは中国における戦争、ルールにのっとって行われたとお考えでしょうか。イラクの戦争、大変な虐殺や、あるいは強姦、略奪、ルールにのっとって行われる戦争なんてあり得るんでしょうか、この世の中に。私は、森岡政務官が内心、心情をどんなふうに思っておられようと、それは自由だと思っております。しかしながら、表に出す、外に出す言葉や言動については、やはり政府の一員である政務官としての抑制的な部分が、自重された部分がなければいけないというふうに思っています。

 代議士会は自由に発言できる場所だとおっしゃいました。したがって、本心が出たということでありましょうけれども、やむを得ない戦争というものというのが本当にあるのかどうか、やむなく戦争を行ったというふうにおっしゃられましたけれども、やむを得ない、本当にぎりぎりの努力をしたかどうか、それをだれが判断することができるか。それを森岡政務官が判断することができる立場にあるのかどうか。

 そして、東京裁判というものは違法なものであるというふうに森岡政務官はおっしゃいますけれども、政府としては、これは受け入れて、そしてサンフランシスコ条約に調印して、国連に加盟して、日本は国際社会に復帰を果たした、それが政府の公式な統一された見解ではないでしょうか。

 A級戦犯も、森岡政務官は、罪人であると、訴えたいというふうにおっしゃいますけれども、六月二日の我が党の岡田代表の小泉総理に対する質問の中で、総理は、A級戦犯は罪人であるというふうにはっきりとおっしゃったわけでございます。

 あるいは、何度も謝っているというふうにおっしゃいますけれども、これは、例えば罪を憎んで人を憎まず、そういう言葉を履き違えておられるのと同じように、加害者の側が、何度も何度も謝ったからそれでいいじゃないかという筋合いのものでもないと思いますし、ましてや、経済援助を行っているから免罪符になるというものでもないというふうに申し上げなければならないと思います。

 五月二十六日の森岡政務官の発言は、今までの確認からいたしましても、決して、言葉のあやとか、あるいは失言とか言葉足らずとか誤解とか、そういうものではなくて、まさに御自身のホームページ上でも御開陳されておられます、あるいはきょうこの場でもはっきりとお述べになられましたように、まさに確信犯的な御発言であるというふうに言わざるを得ないと思っております。

 森岡政務官自身のコメントに従って、配付をいたしました資料に従って確認を進めていきたいと思います。

 森岡政務官、ホームページ上でもはっきりとおっしゃっておられるわけでございますので、これはまさに政治家としての信条でこういったホームページの掲載等も行っておられると思います。

 まず、この「「A級戦犯」をめぐる私の発言の真意と波紋」と題された文章で確認をしていきたいというふうに思いますけれども、「戦争はどうしても話し合いで決着しないとき、国際法で認められた一つの政治形態」、これは今も御発言をされました。「日本は経済封鎖され、やむなく戦争せざるを得ない状態に追い詰められ国際法のルールにのっとって戦争をしました。」というところなんですけれども、やはり気になります。

 この文章の中においては、やはり国内外で戦争の犠牲になった人々や、そういう人たちに対する思い、あるいは靖国神社に祭られていない民間人の犠牲者への思い、そして、戦争は決して起こしてはならない、平和を守る厳しい姿勢というものが、この文章からはなかなか感じ取りにくいと思うのは私だけではないというふうに思います。

 政府の一員として、絶対に平和を守り抜く、戦争は起こさない、かつての戦争に対する厳しい反省の気持ち、そういったものが欠如していると指摘されても仕方がないと思いますけれども、今衛藤副大臣は答える必要はないというふうにおっしゃっておられますが、答える必要がないなら答えなくても結構です。いかがでしょうか。政治家としての信念で今まで発言をしてこられた森岡政務官ですから、今やはり正々堂々とお答えになることがあるのではないでしょうか。いかがでしょうか。

鴨下委員長 衛藤厚生労働副大臣。(中根委員「厚生労働副大臣にはお尋ねしていないんです」と呼ぶ)

衛藤副大臣 今、ちょうど私のお話が出ましたから。

 どうぞ、当初からございましたように、今の初めには、個人的なところでということを森岡政務官も言われたわけでございまして、そういう中で個人の見解をということでしたけれども、政務官としてということであれば、これ以上答える必要はないと思いますので、そう思います。

 それから、解釈をめぐっていろいろあるでしょうから、私もそれなりのことはいろいろありますけれども、ここでは恐らく言うべきことではないでしょうから。それを、今までの答弁資料から何から、かつての国会での資料から何から、どういう形で。

 ただ、あえて言っておきますけれども、一つだけ、我が国の憲法においては、いわゆる国際紛争解決の手段としての戦争を放棄しているということは間違いのない事実でございます。それは憲法によってみんなが守ろうとしていることでもございます。ですから、そういう精神はみんな持っておるものというぐあいに確信をいたしております。もうそれだけ申し上げておきます。

 あとは、副大臣としてあるいは政務官として云々ということで答弁すべきことではないと思いますので、もし必要があれば、どうぞ別のところで御議論をよろしくお願いします。

 以上です。(中根委員「それは全然副大臣には求めておりませんので」と呼ぶ)

森岡大臣政務官 中根先生、いろいろなことを先ほど来おっしゃいました。私に確信犯であるとかいろいろなことをおっしゃいましたけれども、何度も申し上げておりますように、自由民主党というのは自由に物が言えるところなんです。そして、自由民主党の党内の会議だったんです。そこへたまたまマスコミが入ってきたから報道したまでの話でございます。

 そして、私のホームページも、これは私個人のホームページでございます。厚生労働省のホームページに私のこういう見解を載っけたら問題だと思いますけれども、私個人の、政治家としての個人のホームページでございます。これについて一々、間違っているじゃないか、ああじゃないか、こういうふうにおっしゃられるのは、ちょっと私は域を出ているんじゃないかなというふうに思いますし、今衛藤副大臣が御心配くださいましたように、当委員会は法案を審議しているわけでございまして、こういう外交とか、また戦争の総括とか、こういう問題につきましては、この場はちょっとふさわしくないんじゃないかな。

 余りにもいろいろなことをおっしゃいましたけれども、私は、先ほど申し上げましたように、先日しゃべりましたこと、事実を率直に御報告申し上げたわけでございますから、これぐらいでおいていただいたらいかがでございましょうか。

中根委員 だんだんと、ちょっと気合いが入ってまいりました。

 これは、今の衛藤副大臣や森岡政務官のそういう姿勢では、まともな政府がまともに法律を提案してきていると思えない。

 今森岡政務官、党内の発言だとおっしゃる。あるいは個人のホームページ上のことだとおっしゃる。しかし、森岡政務官は、それは個人のホームページであろうと、これはだれが見てもいい、どんな方に見られてもいい、だれに判断されてもいい、そういう正々堂々とした思いでホームページを開設しておられるのだというふうに思います。我々だってそういう思いで、だれがどういうふうに読むかということは、全くホームページ、インターネット上のことなんてわからない。

 だから、責任を持てることしか書けないわけでありますので、ホームページというのは、やはりある程度公的なものであるというか、責任が伴うものであるというふうに思うのが当然のことではないでしょうか。党内の発言だとおっしゃいますけれども、党内であろうと、やはり政務官というお立場であるということは変わりのない事実であるわけでございますので、そのあたりのところはなかなか切り離して考えにくい。政務官である森岡正宏衆議院議員というふうに当然国民は思われるのではないでしょうか。

 このコメントの中で、東京裁判について触れられている部分があります。先ほども申し上げましたように、六月二日の衆議院予算委員会で、小泉総理は民主党の岡田代表の質問に答弁して、極東国際軍事裁判、東京裁判で有罪とされたA級戦犯について戦争犯罪人であるという認識をしていると述べたということについて、森岡政務官はこのコメントの中で、「「東京裁判は国際法上違法であった」と世界に向って主張すべきです」と強いお訴えをされておるわけでございます。小泉総理が何と言おうと、A級戦犯は罪人ではない、東京裁判は受け入れることはできないということを森岡政務官はおっしゃっておられるわけでございます。

 日本は、今申し上げましたように、東京裁判を受け入れて、サンフランシスコ講和条約に調印して、国連に加盟し、国際社会に復帰した、これは覆すことができない事実であるというふうに言わざるを得ないと思います。明らかに政府としての小泉総理の見解と、森岡政務官の見解は異なるのではないでしょうか。これは閣内不一致という言葉で表現してもよろしいですね。

森岡大臣政務官 私は、先ほど来お話が出ているように、政務官として答える必要はないわけでございますけれども、しかし、閣内不一致だという指摘を受けると私は困るわけでございまして、先日、予算委員会で、私は小泉内閣の中で政務官として総理の方針に従ってまいりますということを何度も何度も申し上げているわけでございます。

 そして、総理がA級戦犯についてお答えになった、極東国際軍事裁判所において平和に対する罪等を犯したとして有罪判決を受けたことは事実であるとおっしゃった。それはそのとおりだと思いますよ。私もそれは率直に認めるわけでございます。それは事実ですから、事実は事実として認めているわけでございます。何も閣内不一致じゃないわけでございまして、もうこの議論、これぐらいにしていただけませんでしょうか。

中根委員 認めているとか、あるいは不一致ではないというふうにおっしゃったり、小泉総理に従っていくとおっしゃいながら、事実、ホームページにこういうように、東京裁判は国際法上違法であった、A級戦犯の分祀、新たな追悼施設の建設を目指すのではなくて、東京裁判は国際法上違法であったと世界に向かって主張すべきですというふうにおっしゃっているということの間に矛盾があるのではないかと申し上げているわけでございます。

 国会議員が一人一人それぞれ思想信条を持つことは、先ほども申し上げましたように、それは自然なことであろうと思いますけれども、繰り返し申し上げますが、森岡政務官は政府の一員としての厚生労働大臣政務官というお立場であるということは国民だれもが認めているところであるわけでございます。政府の一員としての自覚というものをやはりしっかりと御認識をいただいて、言いたいことはたくさんあるんでしょうけれども、少なくとも政務官というお立場であるうちは自重しなければならないということもある。

 一方でそれに従っているとおっしゃいながら、一方で、やはり個人のホームページということであろうと思いますけれども、まさに個人のホームページだからこそ、その本心、本音、本当のところが出てきているわけでありまして、ホームページ上でのそういう発言をなさっておられるわけでございまして、ここに一定の抑制的な部分がなかなか見出しにくい。政務官としてのお立場をわきまえていないのではないかというふうに思われても仕方がないかなというふうに言わざるを得ません。

 政府の見解と異なることが言いたければ、やはりこれは政務官をやめて思い切り自由な発言をなさればいいということにだれもが思うのではないでしょうか。一体、これからもA級戦犯は罪人ではないというふうにおっしゃること、東京裁判は受け入れることができないということをおっしゃるということと、政務官を続けていくということ、どちらを御選択なさるんでしょうか。

森岡大臣政務官 先ほど私申し上げましたように、私は小泉政権の中で厚生労働大臣政務官ということで、尾辻大臣の御指導のもとに、一生懸命厚生労働行政とつき合っているわけでございまして、一生懸命こういう面で勉強もさせていただいているところでございます。今御質問のようなことを余り深くこの厚生労働委員会でこれ以上やられることはいかがかなと。私も政務官としてここに立たせていただいているわけでございますから、中根先生、あなたも春秋に富んだ本当に将来ある政治家ですから、やはりこの国会のあり方ということについても思いをはせながら、ただ国対から言われているからということだけで御質問なされるようなことはもうおやめになったらどうかなというふうに思いますので、どうぞひとつよろしくお願いいたします。

中根委員 春秋に富んでいるとお認めをいただければありがたいんですけれども、こういうふうな質疑をすると私の春秋は摘み取られてしまうということでしょうか。それは森岡政務官によって摘み取られてしまうということになるんでしょうか。あるいはどなたかが。私にも今までいろいろと、国会での発言についていろいろなところからメールやお手紙で脅迫状みたいなもの、あなたの次の選挙ではとんでもないことになるぞとか、政治活動をできなくするぞ、いろいろなことを言われてだんだんなれてきましたので、多少のことでは驚かなくなっていますが、僕の春秋はどうなるんでしょうか。――これはまた、しっかりとした御回答ができましたら、個人的にお教えいただければと思いますけれども。

 ここまでのところでやはり尾辻大臣に伺っておかなければならないと思います。任命権者は当然総理ということになりましょうが、尾辻大臣のもとで職務をしておられる政務官の御発言あるいはきょうのさまざまな御答弁、御回答ということでございますけれども、森岡政務官、政府の一員として、厚生労働政務官としてこれからも仕事を続けていくにふさわしいお方であると、尾辻大臣も自信を持ってはっきりと明言することができるでしょうか。いかがでしょうか。

尾辻国務大臣 今お話しいただいておるようなことにつきましては、六月二日の衆議院の予算委員会におきましても、それから本日もそうでございますが、政務官自身が、あくまでも小泉政権の中で総理の指示に従ってこれからも行動してまいります、こういうふうに繰り返し答弁をしておるところでございます。

 したがいまして、私も、その言葉どおりにしっかり頑張ってもらいたいというふうに考えます。

中根委員 まだ終わりません。続けます。森岡政務官のコメントに従って続けてまいります。

 このホームページにある下の方、1の一の下の方、「わが党の武部幹事長らの訪中こそ、なぜ、いま必要だったのか。行くべきではなかったと思います。私は当時の軍国主義を正当化しようとしているのではありません。A級戦犯の何たるかを論じないで、ただ、おわび行脚を続けているいまの与党幹部の姿勢は将来に禍根を残します」という御発言をされたというふうに書いておられます。

 武部幹事長率いる自民党はA級戦犯の何たるかを論じないでおわび行脚をただただ続けている、それで外交を行っている、そういうことでしょうか。――答えないですね。

 それでは、まとめて後で全部答えていただきましょう。

 このホームページの最後のところ、この日の午後、細田官房長官の記者会見で私の発言が話題の一つになったと聞き、ニュースを見ましたが、政府の一員として話したのではないでしょう、個人の見解でしょうと話してくださいましたと。

 細田官房長官は、何とか穏便に事を済ませよう、こういう配慮を、気遣っておられるわけでございますけれども、森岡政務官は次のように続けております。「お気遣いはありがたいと思いましたが、極東国際軍事裁判やA級戦犯についてしっかりした見解が示されなかったことには、正直いって失望しました。靖国神社にまつられている二百四十六万柱の英霊が泣いているに違いありません。」

 やはり閣内不一致じゃないでしょうか。政府は、小泉内閣は極東軍事裁判やA級戦犯についてしっかりした見解を示していないと森岡政務官はおっしゃっておられるわけでございます。小泉総理のもとで働く、今尾辻大臣も、そうに違いない、そういうふうにお墨つきを与えていただいたにもかかわらず、やはりこういうふうに、小泉総理あるいは政府の統一見解に対して、それと異なることを政務官はあくまでも主張しようと、そういう姿勢を崩しておられないような気がいたします。

 ここはお答えになりたくなければならなくてもいいんですけれども、政務官はホームページの中で、まさに男の中の男のような感じで、正々堂々と政治活動を続けていきたい、信なくば立たずというふうにおっしゃっておられるわけでございまして、ここは逃げるのではなくて、はっきりと御意見をお述べいただければというふうに思いますけれども。――お答えにならない。

 だけれども、何で衛藤副大臣が、答えるな、答えるなと言うんですか。これはどういうルールに基づいてやっているんですか。

森岡大臣政務官 先ほど来私が申し上げておるとおりでございまして、私はここへ政務官として立たせていただいているところでございます。きょうは法案審議をしているわけでございますから、この話はもうこれぐらいにしていただきたいものだと思います。どうかよろしくお願いいたします。

中根委員 「靖国神社にまつられている二百四十六万柱の英霊が泣いているに違いありません。」ということなんですけれども、英霊は、まさに日本の平和と繁栄あるいは家族を守るために犠牲になった、国益を守るために命をかけた。その英霊が命をかけた国益というものを、森岡政務官はみずからの言葉で損ねようとしているのではないでしょうか。英霊は、むしろ森岡政務官の言葉に泣いているのではないでしょうか。小泉総理も個人的な信念を貫こうとして、国益や国際協調を損ないかねない、そういう言動を続けておられるわけでございますけれども、それに輪をかけて、森岡政務官のこの言動ということになってまいります。

 お配りをいたしました資料の2、3、4、それぞれ、こういうところに出すまでもなく、毎日のようにこの関連の新聞報道等がなされていて、どれをピックアップしたらいいかわからないぐらいなんですけれども、とりあえず目についたものを資料配付させていただきました。

 2の下の方に、「「強い憤慨」 中国外務省」とありますよね。森岡政務官の発言について、「国際正義と人類の良識に対する公然とした挑戦だ」として、強い憤慨を表明する談話を中国は発表しているわけでございます。

 そして、そのことが日本のまさに国益である国連の安全保障理事会入りというものの大きな阻害要因になっている、というよりも、小泉総理や森岡政務官のこういった発言を中国にうまく利用されてしまっている、そういうふうに思えるわけでございます。そういったところが我が国の国益をまさに損ねている、少なくともこういった議論に森岡政務官の発言が影響を与えていると考えても間違いではないのではないでしょうか。

 アジア諸国は、日本が過去の歴史を反省し、軍国主義と決別した国になっているかどうかを最も注意深く見守っているはずではないでしょうか。本当の平和国家となった確信ができたときに、アジア諸国はむしろ日本の安全保障常任理事国入りを歓迎してくださるのではないでしょうか。

 しかし、今の状況は、小泉総理の靖国神社参拝やあるいは歴史教科書の問題、日本が本当に過去を清算したかどうか、まだまだアジア諸国にはその確信が持たれていない。そういう非常に微妙で繊細な時期に、やはりいかにも不用意で、そして思いやりのない森岡政務官の発言であったと思われても仕方がないというふうに御指摘を申し上げておきたいと思います。

 あくまでも御答弁の拒否の姿勢を貫いておられますので続けてまいりたいと思いますけれども、お配りをしております資料の5、厚生労働省が行っている中国に関する戦後処理事業であります。さまざまなことが行われているわけであります。

 一つ例をとりますと、一番下の中国東北地区友好訪中団、いわゆる慰霊巡拝。遺骨収集については外交ルートを通じ中国政府に申し入れを行っているが認められていない、こういう事実もあるわけで、森岡政務官あるいは小泉総理のさまざまな発言が厚生労働行政にも悪影響を来しているというふうに思われても、それもまた一つの理由になっている、将来に向けて支障になるというふうに我々は心配をさせていただいている。そういったことについて、尾辻大臣、政務官がお答えになりませんので、お答えいただけないでしょうか。

尾辻国務大臣 事実だけを申し上げますと、ここに書いてあるとおりでございます。

 慰霊巡拝は昭和五十五年に初めて行われておりまして、その後、毎年実施をいたしております。

 一方、遺骨収集については、再三遺骨収集をさせてほしいということを申し入れておりますけれども、いまだに認められていないということでございます。この遺骨収集をさせてほしいということを言っておりますのは、もう随分長い歴史がありますというか、もう随分長いこと言い続けてきていて、いまだに認められていないということでございます。

 事実だけを申し上げたいと存じます。

中根委員 そういう国民が切望しておる厚生労働行政、こういったものに対しても支障を来すということはやはり間違いないことである。

 森岡政務官に最後にもう一回だけ確認をしておきたいと思います。

 五月二十六日の自民党代議士会、私はその前後の状況を知りませんので、もしかしたら誤った解釈をしているのかもしれません。しかし、そのとき、このような発言をして、政務官はその代議士会において何をどういうふうにしようと思って発言をされたのでしょうか。私どもが何か会議とかで発言をするときには、自分の意見を述べるときには、私はこういう意見を持っている、できればそれを聞いている人たちに同調してもらって、そして、ひいてはそれがその党の政策、あるいは自民党でいえば、与党なわけですから政府の政策として反映をしてもらいたい、そういう思いで私どもは発言をしたりするわけでありますけれども、政務官はそのとき何を思って、どのようにしたいというふうに思って代議士会において発言をなされたのでしょうか。

森岡大臣政務官 先ほど申し上げたとおりでございまして、私は小泉総理に靖国神社にお参りをしてもらいたいという思いで発言をさせていただいたわけでございます。二百四十六万柱の英霊が泣いているというのはそういうことでございまして、国家のために命をささげた人に国を代表する人間が敬意を払えないような国になってしまったらこの国は滅んでしまう、そういう思いで私は申し上げたわけでございまして、総理が靖国神社に引き続いてお参りをしてもらいたい、これがこの国の礎にとって大変大事なことだという思いを持っているから申し上げたところでございます。

中根委員 その気持ちはわからないわけではありません。しかし、今非常に微妙な状況に、国連安保理入り、あるいはそれ以前に、中国や韓国との友好関係を再構築していかなければならないときに、政務官がその国益を、日本にとって大切な問題を差しおいて、何が何でも総理に靖国神社に参拝をしてもらいたい。それも一つの大切なことだと思いますけれども、その国連の問題、あるいは中国との友好関係、韓国との信頼関係、そういったものよりもさらに優先して靖国の参拝の方が何よりもやらなければならないということなのでしょうか。

 気持ちは参拝をしたくても、それは全体の国益のために参拝をしない、心の中で手を合わせる、そういう選択も、過去、歴代の総理大臣は行ってきたりもしたわけであります。何が何でもという政務官のその御提案は、少し全体を見ていないのではないか、そういうふうにも思えるわけでございますけれども、いかがでしょうか。

    〔委員長退席、宮澤委員長代理着席〕

森岡大臣政務官 中根先生と私は、国益というものについての考え方が違うように思います。

 国益ということについて、今の国益というものを考えるのか、それとも中長期的に国益というものを考えていくのかどうかということを見ながら外交を進めていかなければならないという考え方でおるわけでございまして、中国の今の姿勢を見ておりましたら、私たち日本の自由で民主的な国家とは違うわけでございまして、共産主義の一党独裁の国でございます。その国とは根本が違うわけでございます。その国とつき合っていくのに、私は、今の国益だけを考えておったのではこの日本の将来を誤るんじゃないか、そういう思いで、総理に靖国神社にはぜひことしもお参りをしてもらいたい、そういう考えでいるところでございます。

中根委員 一党独裁である中国とはまともにはつき合えないというふうではないですか。(森岡大臣政務官「そんなことは言っていません」と呼ぶ)そんなことは言っていない、そういうふうに聞こえたような気がするんですけれども。

 最後に、今議論になっている、ホームページにもそのことについての見解は記されておりますけれども、改めてお伺いをいたします。

 靖国神社におけるA級戦犯の分祀について、そしてもう一つ、無宗教の国立の追悼施設の建設、こういったものについて、政務官のお考えを御開陳いただければと思いますが、いかがでしょうか。

森岡大臣政務官 これも個人的な見解をということで聞いていただいているんだと理解しながらお話をさせていただきたいと思いますが、私は、中国という国は、先ほど言いましたように共産主義の国でございます、宗教というものの存在を認めていない国じゃないかなというふうに思います。霊魂とか魂とかいう概念を持ち合わせていないんじゃないかなと思います。

 私は、そういう意味で、分祀論、分祀と分霊とどう違うのかということさえ共産主義の国ではわからないんじゃないかなというふうにも思いますし、また、新しい追悼施設をつくるんだという案もございますけれども、御遺骨もない、魂もない、そして無宗教だというような施設、果たして、今靖国神社という本当に日本人の心に厚く厚く残っているこの靖国神社の存在をのけて、そして新しい追悼施設をつくるということがいかがなものかという考えを私は持っておるわけでございまして、しかし、政府がこうやろう、今の小泉内閣でこうやろうというふうに方針が決まったら、私はそれに従ってまいる、そういうつもりでおります。

中根委員 政府がこうやろうと方針が決まったらと。その、こうやろうという方針を決める一員が森岡政務官のお立場ではないんでしょうか。したがって、個人的なというふうにお断りをされましたけれども、そういうふうなお考えをお持ちであるならば、政府に対してこれからそういう御発言を、御提案をされていくということだろうと理解をさせていただきます。

 中国は日本の宗教のことについてわからない、日本は中国の共産主義についてわからない。お互いにわからない、わからないと言っていては、外交関係が成り立たないじゃないですか。わからない、わからないと決めつけないで、わかり合おうとするところが、やはり社会であるし、外交努力というものであるのではないか。この辺が私とあなたと違う、国益について考えが違うということであれば、もうこれ以上の議論は全部すれ違いになってしまうのかもしれませんけれども。

 最後に、私は、政務官にお目にかかるとき、森岡衆議院議員であると同時に森岡厚生労働大臣政務官、森岡衆議院議員、これを切り離して考えることはやはりできない。だれもが、政務官であるときは政務官である森岡さんだというふうに思っているし、そして、そういう立場にあるときに、いつも、これは個人的な意見です、これは個人的な意見です、これも個人的な意見ですということで注釈をつければ何でも個人的な意見を述べることができるということであっては、一体そのお立場というのは何なんだろうというふうに思えてしまうわけであります。

 やはりここは、自分は切り離しているつもりでも相手はそうとっていないかもしれない、そういう少し一歩下がった謙虚なお気持ちになって責任ある立場を全うしていただかなくては、ポストが欲しい、ポストが欲しいということを皆さんおっしゃるわけですので、ポストが欲しい、その欲しいポストについたら少し我慢しなきゃいけないところもあるのではないかというふうに感想を申し上げさせていただいて、次の項目に移りたいと思いますけれども……(森岡大臣政務官「委員長」と呼ぶ)政務官からありますので……(森岡大臣政務官「一言だけしゃべらせて」と呼ぶ)ぜひお願いします。

宮澤委員長代理 どうぞ、質問を続けてください。

中根委員 ぜひ御発言いただきたいと……(発言する者あり)あれ、また副大臣がとめたんですか。今、手を挙げて御本人が御発言されたいと。自由にできるのが自民党のいいところだとおっしゃったじゃないですか。

宮澤委員長代理 質問を続けてください、中根先生。

中根委員 では、今のことについて、森岡政務官の御感想をお聞かせください。

森岡大臣政務官 私は、この厚生労働大臣政務官という仕事に恋々としてお答えをしているというふうに理解してもらったら困るわけでございます。一生懸命厚生労働省の仕事と取り組んでいるわけでございます。

 しかし、この問題に、今厚生労働委員会が開かれているその場で、中根先生が答えろとおっしゃるから、私は本来ならば答える必要はないと思うんですよ。ところが、あえて個人的な見解をとおっしゃるから答えているわけでございます。ですから、そのことを御理解いただきたいと思います。

 以上です。

中根委員 最後、勇気を持って御発言いただいたことについては感謝を申し上げたいと思いますけれども。

 繰り返し申し上げますけれども、個人的だと断れば何でも言えるということではちょっとないんじゃないかなとやはり思うわけなんですね。みんな、そのお立場に対する敬意を払っておりますので……(森岡大臣政務官「それじゃ、質問しなきゃいいじゃない」と呼ぶ)政務官も三時から御予定があるからというようなことも事前にお聞きをしておりますので、また最後に挑発的な言葉を言われると、何となくそのまま引き下がるわけにいかないような気持ちになってしまいますので、これからも、政務官の言動についてはしっかりとウオッチを続けていきたい。ぜひ、これからもホームページ上には率直な御意見の御開陳をお続けいただきたいというふうに思うわけであります。

 以上で、この件については、きょうはひとまずここまでにいたします。ありがとうございました。

 本題というんでしょうか、今のがきょうの本題だったんですけれども、次の事項に移りたいと思います。

 社会保険労務士法の改正について。

 ADR関係については、もう既に同僚の議員、内山議員、橋本議員、五島先生、それぞれお触れになったところでございますので、私は、この社会保険労務士法について少し気になるところについて質問を行っていきたいと思います。

 それは、いわゆる社会保険労務士法における欠格条項と思われるところでございます。

 資料の6をお目通しをいただきたいと思います。これは単純に法律のコピーを添付したものでございますけれども、その社会保険労務士法第十四条の七第二号、現行法でも、それからこれは平成十八年の一月一日付で改正をされるわけでございますが、その改正後も同様に引き続き温存されていく条文がこの十四条の七第二号、「心身の故障により社会保険労務士の業務を行うことができない者」これは社会保険労務士の登録を受けることができない。それから十四条の九第二号、「登録の取消し」という項目でございますけれども、ここにも「十四条の七第二号に規定する者に該当する」すなわち「心身の故障により」という欠格条項なるものが記されているわけでございます。

 まず、心身の故障というのはどういうものであるか、一度ここで確認をしておきたいと思います。お願いします。

青木(豊)政府参考人 心身の故障、十四条の七の第二号、十四条の九の第二号で言っておりますところについての御質問でございます。

 これは、ここで言っています心身の故障とは、肉体的または精神的な障害のために、社会保険労務士の使命を果たしつつ適正な社会保険労務士の業務を行うことが難しい、できない、そういう状態を指すものでございます。これにより、専門的業務を行えなくて依頼主に不利益をもたらすおそれがあるということで、そういう依頼主保護のためにこういう規定があるというものでございます。

中根委員 それは、例えばどんな状態、心や体がどういう状態になったとき、そういう適正に行うことができない心身の故障状態になるということでしょうか。例えばどんな例があるか、教えてください。

青木(豊)政府参考人 例えば具体的にというのは大変難しい御質問でございまして、実は、これによりまして社会保険労務士の登録が拒否されたという事案もありませんし、具体的な例を挙げることは困難でございます。業務を行うに当たりまして、必要な判断能力が失われた場合が考えられるというところでございます。

中根委員 この二つの条項は欠格条項という範疇に入るものだと思います。欠格条項というものは、障害を持つことを理由に職業から門前払いをされる、排除されるものです。まさに、障害を持つ人、この条文でいえば心身の故障を持つ人への差別となっているのは確かでありまして、政府は欠格条項の見直しをやはり早急に行うべきであると御提案を申し上げなければなりません。政令や省令で定めるという形で欠格条項を残してもいけません。就業規則で欠格条項的なものを残してもいけません。

 もう既に、例えば社会保険労務士になるにはその前段で、先ほど九・四%と言われましたけれども、厳しい資格試験があるわけでございます。あえて法律の中にこういう欠格条項を盛り込まなくても、例えば心身に故障があっても、適切な補助する人やサポーターやあるいは機具、道具、そういったものを活用することによって仕事ができる可能性もあるわけでございます。心身の故障、これは恐らく障害という言葉で言いかえることができるでしょう。イコール、できない、あるいは危険であるとか、そういった形で排除、差別をする社会であってはいけない、そのように指摘をしておきたいというふうに思います。

 業務ができるかどうかは、やはり障害の有無とは別問題だというふうに考えていただかなくてはいけない。今、障害者自立支援法という法案の審議も行われていますけれども、政府が自立を言葉にするとき、こういう欠格条項を残していて、二重三重にハードルが課せられている、ここに、社会参加とか自立とかいう言葉と大きく矛盾するところがあるのではないかというふうにも感じられてなりません。

 大臣、この欠格条項の存在と自立支援あるいは参加ということをどのようにお考えか、ぜひとも御意見をお聞かせいただければと思います。

青木(豊)政府参考人 大臣がお答えになる前に一言申し上げたいと思います。

 ここで言っています、法十四条の七の二号、十四条の九の二号で言っておりますのは、心身の故障があれば登録を抹消するとか取り消すとか、そういう話ではなくて、心身の故障により社会保険労務士の業務を行うことができない者については登録抹消だ、こういうことを言っているわけでありまして、一律に心身の故障があるからだめなんだ、そういう意味での欠格条項ではないということを一言あえて申し上げさせていただきたいと思います。

尾辻国務大臣 今局長もお答え申し上げましたけれども、まず基本的に差別があってはならない、これは先生のおっしゃるとおりでございまして、そのようにしなきゃいけない。それは社会の仕組みもそうでありますけれども、私たちみんながそう思って世の中をつくっていかなきゃいけない、こういうふうに思っております。基本的にまずそう思います。

 それから、欠格条項についても、かつていろいろな法律の中に欠格条項があって、今日もあるわけでありますけれども、そうしたものの見直しもずっと進めてきたと理解をいたしております。

 今具体的に御指摘のところについては、解釈は今局長がお答え申し上げたとおりだろうと思いますが、また、その他の法律の欠格条項など見比べてみる必要もあろうかというふうに思いますし、それぞれの解釈もあろうかと思いますので、そうした作業は進めさせていただきたいと存じます。

中根委員 局長がおっしゃったように、障害の有無とか心身の故障というか、そういうものとはやはり関係なくて、こんな規定がなくたってできる人はできるし、できない人はできないわけでありまして、社会保険労務士の試験に合格した人に対して、とりわけ事後の取り消しなんか、要するに、この規定が対象になった人は今までないということも今御答弁をいただいたものですから、こういう、差別につながりかねない、そういった誤解を与えかねない規定はぜひ次の改正時に削除をしていただければというふうにお願い、御提案を申し上げておきたいと思います。

 それから、今大臣がいろいろと見直しを進めていきたいというふうにおっしゃっていただいたものですから、ここで、急な話でございますけれども、お願いをさせていただきたいと思います。

 厚生労働省関係だけで結構でございますので、いわゆる障害者にかかわる欠格条項がどれぐらい存在するか、少し時間がかかっても結構でございますので、当委員会にお示しをいただくことはできないでしょうか。委員長、お取り計らいいただけないでしょうか。

宮澤委員長代理 理事会で協議いたします。

中根委員 では、ぜひよろしくお願いを申し上げます。

 続きまして、障害者雇用に関連してお尋ねをしていきたいと思います。

 やはり障害者雇用における差別と疑わしい最低賃金の適用除外についてお尋ねをしていきたいと思います。その地域で生きていくために最低額の賃金を保障するのが最低賃金法、そして労働者の生存権を守るのがこの法律である、そういう理解のもとに進めていきたいと思います。

 資料の7を御参照いただければと思いますけれども、なぜ、最低賃金法の第八条、「精神又は身体の障害により著しく労働能力の低い者」とあえて明記をする中で最低賃金法の適用除外をしているか、そこにどんな合理的な理由があるかをお示しいただきたいと思います。

青木(豊)政府参考人 まず、お尋ねの点でございますけれども、精神または身体の障害により著しく労働能力の低い労働者について適用除外にしているということであります。これは、一般の労働者に適用される最低賃金をそのままこういった方々に適用することといたしますと、こういった方々の雇用の機会を奪って、かえってその労働者にとって不利な結果を招くということになることから、適用除外を認めているものでございます。

中根委員 何となく納得できるような、できないようなといいますか、雇用の不利になるから適用除外をされる、いいのかなという感じがしますけれども、ちょっとすぐにうまい言葉が、適切な言葉が思い浮かびませんので、少し考えさせていただければと思います。

 考えているうちにほかの質問をいたしますけれども、例えば平成十六年度においてどれぐらいの申請が出されて、どれほどが許可されたり、不許可になったりということをお尋ねしたいと思います。

 これは事前にお尋ねをして、資料の8にあるわけなんですけれども、例えば平成十六年だと、精神の障害により著しく労働能力の低い者として適用除外として許可をされた人が三千三百十八人、身体の障害により適用除外とされた人が二百四十三人ということなんです。これは適用除外されたまさに数字があらわれているわけなんですけれども、これは申請数はどれぐらいで、そして適用除外率というものがどれぐらいになるか、お示しをいただきたいと思います。

青木(豊)政府参考人 申請数と許可の率でございますが、平成十四年は三千六百三十一件の申請がございました。九八・九%を許可いたしております。それから、平成十五年は三千七百三十一件の申請がございました。九六・三%許可をいたしております。平成十六年は三千六百三十四件の申請がございました。これに対しまして九八・〇%許可をしているところでございます。

中根委員 これは、適切に手続が行われ、そして適切に調査をしたり適切な判断が行われた結果ということならば仕方のないことなのかもしれませんけれども、企業から申請が出されたものについては、ほとんど適用除外が認められているということになる、そういう数字が今あらわされたわけでございます。この適用除外にかかわる必要な手続、あるいはだれがどんな調査を行い、どんなことを考慮に入れながら許可、不許可を決定するのかということについてお示しをいただければと思います。

青木(豊)政府参考人 この最低賃金の適用除外の許可についてでございますが、これは、その許可を受けようとする使用者は、許可申請書を、その事業場所在地を管轄します労働基準監督署長を経由いたしまして、都道府県労働局長に提出しなければならないということになっております。

 それで、その後でございますが、障害者に対する最低賃金の適用除外というのは、最低賃金法八条に基づきまして、精神または身体の障害により著しく労働能力が低い者について許可するということとなっておりますので、その許可に当たりましては、申請に係る者の精神または身体の障害の有無及びその程度を身体障害者手帳あるいは療育手帳等の客観的資料で確認いたしまして、なおかつ労働能率の把握のための実地調査を行います。そして、その障害が従事しようとする業務の遂行に直接支障を与えることが明白な場合に限り許可をしているところでございます。

 その許可の率が高いわけでありますけれども、これは、障害者に対する最低賃金の適用除外許可の申請があった場合には、今申し上げましたように、必ず実態調査をいたします。実態を調査いたしまして、支払おうとする賃金額の最低賃金額に対する割合が低過ぎて許可するには不適切と判断されるような場合には、支払おうとする賃金額を引き上げた上でまた申請するよう指導するなどしております。そういうことから許可の割合が高くなっているものと考えております。

中根委員 先ほど最初の質問において、適用除外がなければかえって障害者の雇用に不利になるということのお話もあったわけでございますけれども、これは、不許可にした場合に、この当該障害者の方々は雇用されない、そういう現実にも直面をしている、そういうこともあるということでしょうか。

 それからもう一つ、障害の有無あるいは程度、そういったことを判断基準にするというふうに今おっしゃいましたけれども、障害があっても、あるいは程度が重くても、例えばその会社が、サポーターをつけたり、ジョブコーチをつけたり、あるいはさまざまな職場環境を整えたりすれば、いわゆる合理的な配慮をきちんと行えば、障害の程度とか障害の有無とかということにかかわりなく仕事ができる環境、その可能性も当然あるわけでありまして、障害の程度、その有無、あるいは能率の実地調査、ここに含まれているならばいいのですけれども、機械的に判断をされずに、総合的に周りの環境、人間関係、職場環境、そういったものを本当に丁寧にきちんと精査をして許可、不許可を下しているか、少し不安な面があるのですけれども、この不安を解消してくださる答弁をいただけるでしょうか。

    〔宮澤委員長代理退席、大村委員長代理着席〕

青木(豊)政府参考人 まず最初の最低賃金が身体障害者等々の方々の雇用の阻害になっていることに直面しているかということでありますけれども、これは、直接にそういった事案を聞いたことはないのでありますが、この制度が設けられた趣旨がそういうことであるということであります。

 それで、こういう許可をするに当たっては、私どもは、労働能力といいますか、そういったことを判断して、少なくともそれに応じた賃金は払うようにということで許可をするしないということをやっているわけでありますけれども、確かに、今委員が御指摘のように、環境だとかそういったことも配慮してやるというのも一つの考え方かもしれません。

 ただ、いわば私どもの賃金の水準というのが、そういう意味では、労働能力に応じて決めたという、いわば一つの基準をつくっているわけでありまして、仮にそれ以上のそういう労働環境の整備などをすることを勘案するということであると、一面では障害者の雇用環境の整備に随分と刺激や誘導になるという面もあるかもしれませんけれども、逆にやはり許可を受けられずに雇用そのものが断念されるという場合もかえって出てくるのではないかと思っているところであります。この最低賃金の適用除外制度が障害者の雇用の機会を奪って障害者に不利な結果を招くことを避けるという趣旨で設けられていることから、そういったものにはなかなかそぐわないのじゃないかなというふうに思っております。

中根委員 ということになると、今でさえ法定雇用率がなかなか達成をされない、適用除外があるから雇用の促進につながっている、適用除外をもしなくしたら、法定雇用率などとんでもない、障害者雇用というものはなお一層厳しい状況になる、そういう考え方は間違っていますか。

金子政府参考人 最低賃金制度の運用ということにつきましては今労働基準局長から答弁がございましたけれども、雇用対策をしております立場から少し御説明をさせていただきたいと思います。

 障害者の雇用を進めるために、やはり最低賃金というのは基本的にはこれを超えた形で雇用していただくというのが当然大切なわけでございます。現に多くの障害者の方が、雇用されている場合には、この最低賃金の適用除外といったようなことは行われていないわけでございまして、数としては非常に限られたものだろうと思っております。

 こういった最低賃金制度を障害者雇用の観点からどう見るかということなんですが、障害者の置かれている一人一人の御事情の中で、例えば、労働安全衛生や社会・労働保険が整備されている、こういったことを特に重視されるといったようなケースでは、そういった最低賃金の適用除外をすることによって雇用の機会の確保ができる、こういうような効用といったようなものもあるのだろうと思います。

 また、例えば、なかなかすぐに就職するということは難しいといったような場合に、当初、こういった形で適用除外を受けて雇用の機会を得る、その中で、当該仕事に習熟することによって今度はその適用除外を外すというようなことで、キャリアアップの機会の入り口を与えるといったようなことも可能性としてはあるのだろうと思いますし、そういった個々の障害者の実情に即した中で、こういったものが、ある種、いろいろな選択肢の一つとして活用されているというふうに理解をしております。

 いずれにいたしましても、やはり障害者の雇用を積極的に進めていくために、さまざまな雇用支援策でありますとか、企業に対する指導というのをきちんとやっていくということがあくまでも基本だろうと思っております。最低労働条件の例外許可ということでございますので、労働基準局の方におきましてもこの許可には厳格な運用がなされているものと我々としても承知をしているところでございます。

    〔大村委員長代理退席、委員長着席〕

中根委員 実情はそうなのかもしれませんけれども、やはりこの八条の除外規定につきましては、腑に落ちない、納得できない部分がある。それはやはり、精神あるいは身体の障害により著しく労働能力の低い者、障害を持った方々は一律に労働能力が低い者として決めつけられている、そこに何か釈然としない部分があるんだろうと思います。やはり社会の側が合理的な配慮を行い、環境を整備すれば、十分その能力を発揮できる障害者の方もたくさんいらっしゃるわけでございますので、この除外規定というものは相当厳格に、緻密に運用されなければ単なる障害者差別ということになってしまうという懸念をぬぐい去ることはできない、そのことを申し添えておきたいと思います。

 一方で、これは事実関係をまず把握しておきたいんですけれども、障害者を雇用している使用者は雇用助成金を受け取ることができる、そういうわけなんですが、この除外規定を適用された使用者、企業も雇用助成金を受け取ることはできるんでしょうか。

金子政府参考人 障害者の雇用を促進いたしますために各般の助成金を支給しているわけでございますが、例えば納付金制度に関します助成金でございますと、施設の改善整備をするために必要な助成をするとか、あるいは介助者を配置するために助成をする、こういったような助成制度を設けているわけでございますが、こうした助成金につきましては、雇われている方が最低賃金の適用除外を受けているかどうかということにかかわりなく、その費用はやはりかかるわけでございます。こういった経済的負担に着目して支給をするというのが助成金制度の趣旨でございますので、障害者を雇い入れる際にはひとしく、同じようにそういった費用が発生することから、最低賃金の適用除外を受けている場合におきましても助成金が支給をされているものでございます。

中根委員 それはやはり何かちょっと釈然としないというのが今の事実じゃないかなというふうに思うんですけれども、首をかしげたくなる感じがします。助成金を受けて職場環境を整備して、障害をお持ちの方々が働きやすくなる、能力を発揮しやすくなる、そのために助成金を受けるわけで、その受けた助成金を文字どおり目的どおり使えば、一方で最低賃金法の適用除外ということは必要なくなってしまう。両方とも、最低賃金法の適用除外を受けながら雇用助成金を受け取るということは……(発言する者あり)二重利得、そう、そういう感じがいたします。

 こういう仕組みが、今までもさまざまあったんですけれども、あえて申し上げますが、水戸のアカス紙器事件のような助成金の詐取事件とか、あるいはひどい虐待事件を生み出す温床になっているかもしれないというふうに思いをいたす必要があるとは思わないでしょうか。いかがでしょうか。

金子政府参考人 先ほども御答弁申し上げたわけでございますが、障害者の方の雇い入れということについては、最低賃金ということの適用除外をすることによって、障害者の方の中にはそういったことで安定した雇用を得られるということを優先されるという方もおられるわけで、基本はあくまでも最低賃金以上の賃金をお支払いいただくということで雇用を進めていくことでございます。

 納付金制度における適用ということでございますが、先ほど申し上げましたのは、最低賃金の適用を受けている方を制度的には排除はしていないということで申し上げているわけで、実際にどれだけ最低賃金の適用除外を受けている方に着目してこういった助成が行われているかというのは、私ども調べたことがちょっとございませんのでわかりませんが、基本的には、そういった場合にも、障害者の方が現実に、何らかの施設の改善でありますとか、例えば視覚障害者の方が介助者を必要とするといったようなケースについて、やはりこれは適用の対象にしていくことが適当だろうと思っております。

 ただ、先ほど二重利得といったようなお話もございました。助成金制度の適切な運用という観点から、今申し上げたようなことで不都合があるのかどうかというのはもう少し検討してみる必要があると思いますが、私どもとしては、障害者の雇用が何よりも進むということを第一に考えてこういった制度設計にしているわけでございます。

 それから、先ほど不正受給といったような事件のお話もございました。まことにあってはならないことでございますし、我々としても、適切に助成金が支給され、活用していただけるように、そこはきちんとした対応をしていかなければいけないと思っております。

中根委員 時間がなくなってしまいましたので、最後に一問だけお尋ねさせてください。

 この平成十六年の厚生労働省労働基準局長通達の第2の1の(3)、「最下層の能力者より労働能率が低い割合に対応する金額を減じた額を下回ってはならない」、こういう規定があるわけなんです。そもそも、最下層の能力者というものを定めること自体が難しいと思うんですけれども、この「低い割合に対応する金額を減じた額を下回ってはならない」ということで、資料の9に示していただきました「八〇%以上一〇〇%未満」「五〇%以上八〇%未満」「五〇%未満」とありますけれども、日本においては五〇%未満の方も結構いらっしゃるわけです。そして、資料の10をごらんいただきますと、減額措置を採用している国でも、フランスは一〇%から二〇%、ポルトガルは五〇%までというように下限が設定されているわけでありますが、日本には下限の設定がないということなんです。

 この辺のところは見直す必要性をお感じになりませんでしょうか。最後にこのことだけお答えをいただいたら終わりたいと思います。

青木(豊)政府参考人 障害者に対します最低賃金の適用除外は、精神または身体の障害により著しく労働能力の低い労働者について、その労働能力に応じて最低賃金額より低い額の賃金の支払いを認めるという制度でございます。したがって、今まで申し上げましたように、適用除外の許可に当たっては、申請された個々の労働者の労働能力に応じて支払い賃金額を定めて許可をしているということでございます。

 お尋ねの支払い賃金額の下限については、障害の態様がさまざまあります中で、社会復帰や社会参加までも視野に置いて、個々の実情に即した実践的な対応ができるようにするためには、一律の下限というのは定めない方がいいということで定めていないところでございます。

 今後とも、そういう状況を見ながら運用をしていきたいというふうに考えております。

中根委員 ありがとうございます。

 最後に。申請があった会社に調査に行ったとき、その会社の中のだれかを最低の能力の人というふうにまず決めて、それから障害者の方について、その最低の能力の人に対して何%かというふうに決めてという調査をされるということだと思うんですけれども、だれか、最低の能力の方だと決められる人もどうかと思うんですが、本当にそういう緻密な調査を、厳正な調査を行っているかどうか。何かまだまだ、本当にやっているのかなというふうに思っちゃうんですけれども、その辺のところは、障害者の方々の生存権というものをきちんと見定める中で、最低賃金法というものの趣旨にのっとって運用していただけますようにお願いを申し上げまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

鴨下委員長 次に、山口富男君。

山口(富)委員 日本共産党の山口富男です。

 昨日、この部屋で、障害者自立支援法についての参考人質疑を行いました。六人の方から意見表明を受けたんですけれども、市町村からは、施設整備と専門的人材の確保について実質的に困難であるという意見があったり、新たな財政負担に耐えていくことは至難のわざだという不安が表明されました。

 それからまた、施設の方や障害者団体の方からは、応益負担については、これはやはり福祉制度になじまないという指摘があり、認定区分の問題でも、精神障害者がこれでは特性が把握できない。しかも、重い方ほど負担が重くなるという仕組みになっていますから、これはとても重度の方々のニーズに沿った支援が得られにくくなるということだったんです。これらは、私は、障害者自立支援法の骨格にかかわる深刻な批判と不安の表明だと思います。

 振り返ってみますと、この審議に入ったときに私がこの問題を指摘しましたら、尾辻大臣は、まだ理解されていないから、よく説明もし理解も受けたいんだということを答弁されましたけれども、この間のいろいろな質疑の中で、結局、昨日の参考人質疑にもありますように、不安が、また批判が広がっているというのが現状じゃありませんか。

尾辻国務大臣 これは繰り返し申し上げてまいりましたけれども、今回の障害者自立支援法案につきましては、私どもは全体として障害者施策を大きく前進させるものと考えております。一方で、大きな改革でもございますので、今そういう部分についてお話しになったんだと思いますけれども、利用者負担や支給決定のあり方などを中心としてどのような影響があるか懸念されている障害者の方がいらっしゃることは事実でございます。

 そこで、この法案の意義とこうした懸念に対してできるだけ御説明をしなきゃいけない、また御理解もいただかなきゃいけないと思いましたので、この委員会の審議が始まってからこの一カ月の間にも、私自身も施設などを訪問いたしました。何カ所も訪問いたしました。そして、障害者の方々と直接お話を伺ったり、あるいは職員の皆も、週末などに関係者への説明や意見交換会などを行う、こうしたことを通じまして、さまざまな御意見や御要望を改めて承ってまいりましたし、また、私どもの考え方について御説明を申し上げてきたところでございます。

 そうしたことをやりましたということは改めて申し上げますけれども、ただ、今先生御指摘のように、いまだ十分な御理解がいただけているともまた思いませんので、私どもとしては引き続きこうした努力を続けていきたいと考えております。

山口(富)委員 異議と懸念があるということはお認めになりました。それからまた、十分な理解が得られていないということも認められました。これは問題の出発点として非常に大事なことだと思うんです。

 尾辻大臣に限らず、私も随分皆さんとお会いして意見を求めてまいりました。例えば、最近寄せられた意見ですと、こういう御意見があります。今回の応益負担には絶対反対です、息子が重度の知的障害者です、一カ月の賃金は千八百円、その中で、これからの法案によると、一万何がし、またそれ以上の自己負担を強いるのでしょうか、障害者の生存権を脅かすものです、もっと障害者の生活実態を見てください。

 それからまた、自立支援法案を国会で討議する前に、障害者の日常をまず体験学習してみてください、月六万か八万円程度の収入の生活を実感してみてください、人間として最低限の生活を営むのが益を受けるぜいたくなことなのかどうか、どうぞ、何も知らないままで討議しないでください。私は、本当に引き続く批判は深刻だと思うんです。

 もう予定された会期の中ではこの法案は成立する見込みはありません。ですから、この際、この法案については出し直し、撤回して再検討する、そういうことを大臣として私は決断すべき時期だというふうに思います。このことは言ってもこれ以上議論は進まないでしょうから、このことをきょうは私はまず冒頭に尾辻大臣に求めておきたいと思います。

 さて、先ほどから森岡政務官の発言の問題がありまして、私は、これは厚生労働行政の基本にかかわる問題と考えますので、これから取り上げたいと思うんです。

 尾辻大臣は、五月二十七日の記者会見で、森岡政務官の発言内容につきまして、この発言内容は先ほど御自身がここでその大要をお述べになりましたけれども、こういうふうに言われました。「政府の見解とは異なっておる」というふうに述べられています。

 そこでお尋ねしますが、森岡政務官の発言のどこがどのように政府の見解と異なるのか、示してください。

尾辻国務大臣 今お述べになりました私の発言でございますけれども、正確にはこのように申しております。

  このことに関しましては、昨日総理も官房長官も既にコメントしておられます。即ち、発言内容は政府の、特に東京裁判に関する見解とは異なる面が多い。また代議士会という場での発言、一代議士としての発言であるから、申し上げたように政府の見解とは異なっておるものであるけれども、特にまた問題にするものでもないというコメントでございます。私もそのコメントに付け加えるものはございません。

正確にはこう言っております。ただ、官房長官のそのコメントを引用しておるわけでございますから、私も同じ趣旨を申したという意味では、今先生がおっしゃったことを否定するものでもございません。

 そこで、ここで政府の見解とは異なるという部分でございますけれども、私は、官房長官の言われた意味というのは、極東国際軍事裁判所の裁判を受諾しているという部分だと理解をいたしておりまして、私もそう理解してこのコメントを引用いたしたところでございます。

山口(富)委員 私が大臣の記者会見のものをそのまま引用しませんでしたのは、これは、森岡政務官の名前自体が間違っているんですよ、厚労省のホームページは。それで私は多少不安になりまして、あえて関連部分だけの紹介にしたんです。

 今のお話ですと、森岡政務官の東京裁判にかかわる認識は政府と違う、間違っている、そういうことなんですね。

尾辻国務大臣 この極東国際軍事裁判所の裁判を受諾していないというふうにもし言っておられるならば、それは政府の見解とは違う、こういうことでございます。

山口(富)委員 あの東京裁判は、日本の戦前の侵略戦争に対して、それが当時の国際法から見ましても違法な、無法なものだったということを判定いたしました。そしてそれは、戦後の世界の中で、国際紛争にかかわる問題で武力行使や威嚇はやらない、これは戦争の違法化と言われますけれども、そういう流れをつくった非常に大事な到達点でした。ですから、これを否定するということは、政府の見解と食い違うだけでなくて、日本と戦後の世界の出発点と食い違ってしまうと思うんですね。

 それともう一点お尋ねしたいんですけれども、同じ記者会見で大臣はこういうふうに言っています。「厚生労働省所管の事項とでも言いますか、直接関係することに関する発言があれば私も本人からよく聞くとかということもしなきゃいかんと思いますが、そういうことでもありません」と。では、果たして、森岡政務官の発言は厚生労働行政の所管事項と関係がないのか。私は、ここには吟味すべき重大な問題があると思うんですね。

 それで、厚生労働省の設置法があります。これは、大体厚生労働省で仕事をされる方は必ず読むべき筋のものですけれども、その第三条に、厚生労働省の任務が二つ掲げられています。一項めは、社会保障、福祉にかかわる問題、それから、労働省とくっついた関係で労働問題がありますけれども。そして二項めに次のように書かれております。「厚生労働省は、前項のほか、引揚援護、戦傷病者、戦没者遺族、未帰還者留守家族等の援護及び旧陸海軍の残務の整理を行うことを任務とする。」そして、第四条には、所掌事務としてこれらがそのままつけ加わっております。

 なぜこういうことになるかというと、これは東京裁判やポツダム宣言ともかかわりますが、やはり戦後、当時の厚生省が仕事を始めたときに一番問題になったのは、いわゆる戦争にかかわる一連の事態の処理だったわけですね。それは、大臣自身が遺骨の問題を初めとして今でもその努力をされているのは、私自身よく知っています。しかし、問題になってくるのは、そういう仕事を進めていくときに、あの戦争をいわば準備し、東京裁判で罪に問われた方々のあの認識を持てずして、どうして厚生労働行政の二つの仕事のうちの一つの大事な仕事ができるのかということなんです。

 先ほど森岡政務官は、私は驚いたんですけれども、A級戦犯にかかわりまして、御遺族の方に年金などが支給されている、そのことをとって、日本共産党も含めまして、何か戦犯の名誉回復をやったかのような発言をしましたけれども、これは全く話が違って、御遺族に年金をお渡しするということと御当人の戦争責任の問題というのは全く違う問題なんですね。それさえわからないというところに、私は、今度の森岡政務官の発言が、このままでは厚生労働行政が、その職責にたえないじゃないかというふうに考えるんです。

 大臣は、この記者会見を見ますと、厚生労働行政とは直接関係する発言じゃないというふうに言っていますが、これは直接関係するんじゃないですか、そして厚生労働省の政務官の職責と両立しない認識じゃないんですか。

尾辻国務大臣 まず、厚生労働省の仕事に大きく二つあるというお話でございますが、これは、私は、社会保障を広義に解釈するときと狭義に解釈するときの解釈の違いや何かでそういう書き方になっているんだというふうに理解をいたしております。

 それはそれといたしまして、私が記者会見で申し上げましたときの私の思いというのは、頭の中に極東国際軍事裁判の解釈の問題がございましたから、まさにそれは外交政策だと思っておりまして、外交政策にかかわることは厚生労働省の仕事でないというふうに思いながら、そういうふうに発言をしたところでございます。

山口(富)委員 これは単純に外交政策というふうにくくるだけにとどまらない問題があります。なぜかといいますと、東京裁判自身がポツダム宣言から出発しているんですね。

 そして、ポツダム宣言は、その第九項で、厚生労働省の仕事にかかわって次のように述べております。「日本国軍隊ハ完全ニ武装ヲ解除セラレタル後各自ノ家庭ニ復帰シ平和的且生産的ノ生活ヲ営ムノ機会ヲ得シメラルベシ」と。だから皆さん方は一連の帰還の仕事をやられたんです。そして未帰還者にかかわる仕事もやられたわけです。

 そういう仕事をするときに、その政務官なり政府というのは、あの戦争に対して、侵略戦争に対してきちんとした認識を持たなければ、だって、中国との関係あるいはアジアとの関係でも、この間のフィリピンの報道もありましたけれども、ずっと続いているわけですよ。あの戦争に対するきちんとした認識を持たずして、どうして厚生労働省の行政ができるんですか。

尾辻国務大臣 森岡政務官の発言をそういうふうに解釈すれば、先生のおっしゃるようなことにもなるかなというふうに思います。

 あれはいわば、先ほどの御質問も、まさにそういう日中関係とかということで御質問いただいておったようでありますけれども、やはり外交にかかわる問題だと私は理解をして申し上げましたし、そう思っておりまして、今の厚生労働省の仕事に何か直接影響が出るものではない。

 また、繰り返し御本人も言っておられますように、政務官としての発言じゃない、小泉内閣の一員としてちゃんと指示に従って仕事をするというふうに言っておるわけでございますから、その考え方をそのまま申し上げたところでございます。

山口(富)委員 私は、個人的発言かどうかを問題にしているんじゃありません。この発言の持つ質が、外交的な関係にもかかわるし、厚生労働行政の基本にもかかわるんだと。

 例えば、最近だって韓国の皆さんの遺骨の返還が問題になるわけでしょう。そうなったら、単純にこれは外務省の仕事ですよと言えるはずがないじゃないですか。フィリピンの問題だって、情報が最初に来たのは厚生労働省なんだから。そして外務省と相談して対応しようとしたわけでしょう。

 私は、今度の問題というのは、尾辻大臣は政務官に対する監督責任があるわけだから、御自身の問題としてもう一度よく吟味していただきたい。そのことを重ねて求めて、次の本日の主題に移りたいと思います。

 まず、社会保険労務士法なんですが、これは、個別労働紛争もふえておりますから、それに見合った必要な改正だと私は思うんです。

 一点、確認しておきたいんですが、社会保険労務士の皆さんのいわば対応力の向上というのは大変大事になります。それで、法案は研修と試験の実施ということを規定しているわけです。そして、既に検討会が設けられ、四月に中間報告が出ている、最終的には秋の段階で決めるという話がありましたが、この研修や試験で、必要な学識や実務能力の問題、職場の職業倫理の問題、さまざまあると思いますが、どういう点を重視されているのか。それからまた、この法改正が実際に移されたときに、この中身についても引き続き検証しながら改善していくという仕組みがあるのか。そこのところを示していただきたいと思います。

青木(豊)政府参考人 今般の改正で社会保険労務士の代理業務が拡充するということであります。それの必須といいますか前提として、やはりきちんとしたそれなりの能力を持っていただくということがあるわけでございます。

 お尋ねの、何を重点に、どんなことをやるのか、こういうことでございますが、委員が御指摘になりましたような中間報告の中でも、四点、研修内容として上げております。

 一つは、社会保険労務士の権限及び倫理、こういったこと、それからもう一つは、憲法、民法を初めとしまして、労働契約、労働条件関係法令や民事訴訟法などの紛争解決手続代理業務に関連する基礎的な法的な知識、それから三つ目が、個別労働関係紛争に関する裁判例のケーススタディー、それから四つ目が、申し立て書あるいは答弁書による主張、それに対する反論、あるいは交渉とか和解などの紛争解決手続に関する知識と能力の四つの事項が示されました。試験については、こういったものをきちんと研修で付与されているかどうかということを見るということであります。

 したがって、こういう四つのことが示されておりますので、あるいは最終報告でもう少し具体的になるかもしれませんけれども、そういったものも参考にしながら、私どもとして決めていきたいというふうに思っております。

 それから、一たん決めたものを実際の施行を踏まえながら問題点をチェックしてより適切なものに改善していくのかどうか、そういうことを考えているのかということでございますが、まさにこれは今回の、紛争解決のためのいわば道具として、ひとつこういったところにも社会保険労務士が活躍してもらって、実質的に紛争解決に資そうというものでありますから、本当に適切にやってもらって、法の趣旨のとおりの成果を上げてもらいたい、こう思うわけであります。そういう意味では、おっしゃったような不断の努力というものは当然必要だというふうに思っております。

    〔委員長退席、北川委員長代理着席〕

山口(富)委員 これは新しい制度であり、その実施状況、それをよく見ながら、必要な改善、求められれば手を打っていくということで仕事をしていただきたいと思います。

 次に、障害者雇用促進法の一部改正案について、何点かただしたいと思うんです。

 まず、今回の改正案で、在宅就業支援団体の登録が始まります。発注企業と在宅障害者を結ぶものとして必要なものだと思うんですが、ここで問題になって懸念されているのは、在宅就業支援団体が、ごく一般的に使われる言葉で言えば、みずからのもうけを上げるために中間搾取やピンはねという事態が生まれないかというのが懸念なんですね。

 それで、確認しておきたいんですけれども、この在宅就業支援団体の登録拒否要件の拡大、追加、こういうことを検討するのか、それから具体的にはどうした防止策をとるのかということを示しておいていただきたいと思います。

金子政府参考人 今般の改正法案におきまして新たに在宅就業の仕組みを導入するということでございますが、議員御指摘がございましたように、当委員会におきましても、この在宅就業支援団体につきまして幾つかの御懸念といったようなものも御指摘をいただいているところでございます。

 私どもといたしましては、法案にございますように、在宅就業支援団体については事業実績や業務の実施体制の要件に合致したもののみを登録するということ、あるいは登録に当たってきちっと立ち入りの調査をするということ。あるいは、業務の運営に関しましては、これも法律に基づきまして省令で業務運営基準を決めることになっておりますが、こちらの運営基準の中で、企業と在宅就業支援団体の契約に関すること、あるいは在宅就業障害者と在宅就業支援団体の契約に関すること、こういったことの中で、在宅就業支援団体の手数料が過大にならないようなものも決めて、適切な対応をしていきたいというふうに考えているところでございます。

 さらにその先の措置といたしましては、命令違反等は必要な業務改善命令も発することができるようになっておりますので、こうした制度の仕組みに沿って適切な運営を図ってまいりたい、このように考えております。

山口(富)委員 次に、障害者雇用の問題で、民間の企業に課せられる雇用率の問題なんですけれども、多少時間が押し迫ってきたので、まず一問目、直接大臣にお尋ねしますけれども、一・八%と。ところが、一番直近の六・一調査を見ますと、達成していない企業の割合ですね、一般の民間企業で五八・三ということになっています。これを規模別で見ますと、千人以上のいわゆる大企業と言われるところが七〇・六%、七割、法定雇用率が未達成だという現状があります。私は、この間、参考人質疑で日本経団連の方にこの問題を聞きましたら、実際なかなか進まないんだという話が出ておりました。

 大臣にお尋ねしたいのは、これだけ障害者問題が大きな社会問題になり、そして社会を挙げて雇用の問題に取り組もうとしているときに、一番社会的責任が経済的な分野では大きいはずの大企業のところでなかなか事態が変わらない。一体、大臣の立場から見て、七割を超える大企業が障害者の法定雇用率については未達成だというところに何か合理的な理由があるんでしょうか、これでいいという。この点、お答えください。

尾辻国務大臣 合理的な理由があるかというお尋ねになりますと非常にお答えしづらくなるんですが、今おっしゃったように、未達成企業の割合を企業規模で見ますと、確かに千人以上のところが七〇・六%という高い割合になっております。ただ、一方、実雇用率を見ますと、非常に大きな企業が、すなわち千人以上の企業が一・六%と、全体の平均も上回っている。こういう数字もございます。

 このどっちで見るかなんですが、一つ言えることは、完全に達成はしていない、したがって未達成というふうに言われておるけれども、ある程度の雇用はちゃんとしておる、こういう今の数字の見方だと私は思っておりまして、そういう意味では、多くの大企業において障害者の雇用が一定程度進んでおる、こういうふうに見ていいんだというふうに考えております。

 ただ、先生の御指摘のような数字もあるわけでございまして、そこが今後の課題だというふうに思っておりますけれども、企業の社会的責任に対する意識も高まっておりますから、こうした取り組みは進むものと私どもも期待をいたしておりまして、今後とも、こうした雇用支援には取り組んでまいりたいと考えております。

山口(富)委員 皆さん方は、法定雇用率で問題を見ているんじゃないんですか。それは確かに、私が紹介した六・一調査で実雇用率の問題もありますよ。しかし、現実に、もう法定化されて二十九年でしょう。二十九年たって、社会的責任を担うべき大企業の七割が未達成だ。そこのところをきちんと見てくれと言っているのに、一定は前進しているんじゃないかという認識では、これは大臣として困るんですよ。

 もう一度確認いたしますが、一体、こういう状態に、正当に合理化できるような合理的な理由というのはあるんですか。ないわけでしょう。

尾辻国務大臣 合理的な理由があるかないかと突き詰めてお聞きになりますと、ありませんと答えざるを得ません。

山口(富)委員 理由はないわけですね。

 そこで、私は、今必要になっているのは、大企業が今コスト削減等を掲げて、リストラもやります、そしてその上に外部委託もやりますから、パートがふえ、派遣労働者、それから業務委託、さまざまなそういう問題が生まれてまいります。そうしますと、例えばパートの場合ですと、常用労働者の数に算定されるかというと、いろんな条件があって、多くは算定されません。そうすると、雇用率そのものでいくと、常用雇用が現実には減っているわけですから、数字上は雇用率が改善しているという一種のマジックが起きてしまうんですね。私は、ここには大企業の労務政策に対応した障害者の雇用の改善をするためのやはり大きな課題があると思うんです。そういう認識は大臣はお持ちですか。

尾辻国務大臣 同じ雇用といっても、常用雇用労働者をふやさなきゃいけない、そういう認識においては、私もそのように認識をいたしております。

山口(富)委員 それで、これは青木局長に答えてもらうんですかね。

 常用雇用者のカウントの問題なんですが、一つは、パートの問題は、先ほど言いましたように、いろんな条件がくっついております。

 それから、派遣の場合、特に登録型の場合は、五十六人以下の会社の場合は法定雇用義務自体、それ自体がないわけですね。これは確認しておきたいと思います。

金子政府参考人 雇用率の、雇用義務制度の対象になっておりますのは、今議員御指摘のように、従業員五十六人以上の企業ということでございます。

山口(富)委員 それからもう一つ確認しておきますが、派遣労働者の場合で、私ちょっと先ほど申し上げましたけれども、これは実態としてどういうふうになっているんですか。

金子政府参考人 派遣労働者への適用の関係でございます。

 これは一般型と特定という二つの派遣の形態があるわけでございますが、かいつまんで申し上げますと、いずれの場合にも雇用率制度の対象となるのは、その労働者の雇用主でございます派遣元企業で雇用率の方にカウントされるということでございまして、派遣先においてではございません。

山口(富)委員 大臣、先ほど私は、今の大企業の労務政策とのかかわりで障害者の雇用をふやすための努力、どうやってやるかという話をしましたけれども、今局長からも答弁がありましたが、登録派遣労働者の場合でも、それから業務請負の場合でも、常用労働者ということになると、極めておかしな仕組みになってきていると思うんです。

 先ほど、検討はしたいという話は大臣から答弁がありましたけれども、これは具体的な検討を今後直ちに始めるというふうに考えてよろしいんですね。

尾辻国務大臣 改めて申し上げますけれども、実雇用率の算定に当たりましては、常用雇用労働者を対象としております、これが基本でございます。

 先ほど申し上げましたけれども、先生には御意見もあるところでありますが、企業規模千人以上の大企業においては近年その実雇用率が毎年上昇しておるということでございます。そうした中で、就業形態が多様化する中でございますので、それぞれの雇用の取り組みも私どもは進めておるところでございます。

 今後とも、こうした企業の取り組みを促進しながら、引き続き、雇用率達成指導や雇用支援に取り組んでまいりたいと考えております。

山口(富)委員 では、大臣、私が提案しました、今の大企業の労務政策に対応した、雇用率が障害者分野で上がるように、その努力は尽くすということでよろしいんですね、確認して。

尾辻国務大臣 申し上げておりますように、その努力をすることは私どもの務めだと考えております。

山口(富)委員 終わります。

北川委員長代理 次に、阿部知子君。

阿部委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。

 本日は、まず冒頭、先ほどの中根委員と森岡政務官のお話を伺いながら、あるいは山口委員と尾辻大臣の応答を伺いながら、私は、一点、尾辻大臣に確認をさせていただきたいと思います。

 中根委員の御質問の中にもございましたが、日本が中国に対してさまざまに行っている戦後の事業の中で、特に重大であり、なおかつ進捗しておらないのが、中国での遺骨収集問題であると思います。私は、大臣が、とりわけ遺骨収集ということは御自身も率先してやってこられて、そして、さきの千鳥ケ淵のことしの三百体の納骨の折にも、雨の中みずからお出ましでありましたし、その心意気の深さにおいて、他のどの方にも劣ることはないと思っております。しかしながら、私は、やはり本当に多くの御遺骨、お一人でも多く帰っていただくための、私どもが政治として最後にやらなきゃいけないしんばり棒、最後の最後は中国ではないかと実は思っております。

 遺骨収集ということは、相手国の理解がないと、そして、これからの時代を、過去をきちんと確認し合って未来に生きていくための本当の友情がないと、とてもかないません。中国に関しては、遺骨収集のイの字もなかなか言い出せない状況にあります。そういう中であるからこそ、先ほど森岡政務官のお答えは、体制が違う、考えが違う、それで終わっていればいいのであれば、私は政治は要らないんだと思います。

 私どもが戦後を生きて、そして亡くなられた方々の、本当に命の上に私たちが生きていると思えばこそ、その御遺骨お一つでも多くお連れ帰したい、その思いは、特に中国とのどんな外交関係を築き、そしてきちんと帰っていただくか。私は、よく英霊という言葉が使われますが、まずその前に、肉体を持って人がいたんだ、その体をちゃんとお迎えして、この土地に、ふるさとに帰してあげたい、これが第一の願いであります。

 その意味では、大臣のお立場、政務官をかばわなきゃいけない大臣というお立場も理解いたしますが、私は、さっきのような森岡政務官のお答えでは、とても中国との交渉の前面には立てられない、あんなことを言っちゃったら、成るものも成らないと思います。その意味で、先ほど来何人かの委員が、そのお仕事をやっていただくに際して適任ではないのではないかということを申されたんだと思います。何も、個々人の、個人の思いをそこだけで云々したのではなくて、厚生行政としての大きな障壁になるということだと思います。

 大臣は、今後どんな御指導をなさっていかれるのか、その中身について一言お願い申し上げます。

尾辻国務大臣 まず、中国の遺骨収集についてお話しになりましたので、私からもまた申し上げておきたいと存じます。

 中国における遺骨収集、私どもも随分遺骨収集をやらせてほしいということを言ってきました。しかし、中国側が、一言で言うと国民感情ありで、決して認めてくれていないということがずっと続いております。

 したがいまして、私もまずこれを何とかしたいと思いまして、本当に、まだ私が私自身を青年と呼べるころでありますから随分昔でありますが、青年同士で話し合って、少しでも理解してもらってということをずっと努力した時代もございます。しかし、いろいろやってみましたけれども、結局今日までそれは実現していない。今、私があえてこういう話を申し上げるのは、大変難しい話だということをまず申し上げたいと思います。

 そして、引き続き努力をしなきゃいけない、そういう努力の中で、では厚生労働省としてどういう仕事をするかということでございますけれども、森岡政務官も、小泉内閣の一員として指示に従ってやるということを繰り返し言っておるところでありますから、私は、その言葉どおりにしっかりやってもらいたいと。もしまた、こういう仕事に直接ということになるのかどうかわかりませんけれども、そういう場面においても、しっかりとした私どもの思いというのがきっちり伝わるような仕事をしてほしいというふうに考えておるところでございます。

阿部委員 厚生労働行政の大切な部分を担うお役でございます、政務官というのは。その方の発言が外国にどう受け取られ、本当に薄氷を踏む思いで尾辻大臣もずっと努力してこられた、だけれども打開しない、だけれどもあきらめないと。このとても微妙な、しかしあきらめたらそのときに全部が終わっていくような問題であると私は思います。その辺の重みをやはり政治家たるものは重々認識して、発言についても私は慎重たるべきと思いますので、その点についてはきっちりとした御指導をいただきたいと思います。

 引き続いて、きょうはまず、本題に入ります前に、日本脳炎の予防接種問題を取り上げさせていただきたいと思います。

 ちょうど夏場を控えまして、日本全国で日本脳炎の予防接種、そろそろ取りかかろうかなと、例えば各小児科のクリニックあるいは内科の先生方もやって、準備していたやさきに、五月三十日の日でございました、突然厚生労働省の方から、この日本脳炎の予防接種については中止勧告、やめた方がいいという勧告が出されました。これを受け取りました親御さんたちあるいは現場の医師たちは、一体なぜ、何が起こっていてどうしてこうなったんだろうということが伝えられないままに、方針だけがぼんと出されました。

 このことについて、私は実は、予防接種については、「国は、」十分に国民に、「国民が正しい理解の下に予防接種を受けるよう、」、正しい理解のもとに、「予防接種に関する知識の普及を図るものとする。」という予防接種法第十九条にももとっていると思います。正しい知識のもとに、十分に知識の普及を得て、そして選ぶわけでございますが、この日本脳炎の取り扱いについては青天のへきれきに近い中止勧告でございました。

 一体どうしてこういうことが起こるのか、まず、日本脳炎の予防接種について、危険性があるならあると、その前にあらかじめ言われておればまだ違います。方針だけぼんと投げられて、そして、果たしてそれで国民が本当に選べるのか。そのことを表明した記事が、「受ける 受けない どっちが安心」という記事が、これは朝日新聞でございますが、六月の七日に出ています。しかし、受ける、受けない、どっちが安心を決めるにも、そのもとになる情報が国民にはありません。

 この事態に対して、一体、この厚生労働行政の中で予防接種行政を取り扱う部局にお伺いしたいと思いますが、まず、日本脳炎のワクチンにさまざまな副反応、副作用があり、そして中には、今回直接のきっかけになったのは、中学三年の女の子が、昨年に予防接種を受けたその直後にある種の脳炎になりまして、それが重篤で後遺症を残しておるという事例が発覚して以降でございますが、こうした副作用情報をどういうふうに厚生省は入手され、それを国民にどうフィードバック、あるいは予防接種にかかわる医師たちにどう伝えてきたかについて、実務サイドからお願いいたします。

田中政府参考人 御説明申し上げます。

 今回の日本脳炎ワクチンの積極的勧奨の差し控えでございますけれども、これは、現行の日本脳炎ワクチンの接種と、それから極めて重症のADEMというものとの因果関係が認定されたという事実を踏まえまして、より慎重を期して総合的に判断したものでございます。

 先生御指摘のとおり、医薬品・医療機器等安全性情報、あるいは予防接種の副反応情報、こういうものにつきましては、都道府県等自治体、日本医師会、報道機関等を通じまして公表し、情報提供に努めているところでございますけれども、今後とも、十分説明して、またそういう措置をとった状況についてはよく知識の普及啓発ということで努力していきたいと思っております。

 また、予防接種による副反応についての状況でございますけれども、これは予防接種後副反応報告制度というのがございまして、予防接種により起こった事象につきまして、因果関係の有無にかかわらず幅広く情報を収集して、そして評価し、その安全性の確保に努める、そして、その情報については年に二回公表するというようなシステムをとっているところでございます。

    〔北川委員長代理退席、委員長着席〕

阿部委員 そういう抽象的なことを聞いているんじゃなくて、ばらばらの情報が垂れ流されて、本当は何が問題で、この予防接種の危険性とメリットが何かということを厚生労働省は一貫して伝えていないんですよ。

 例えば、この「安全性情報」という雑誌に、二〇〇五年のこれは五月です、さきに問題になった例であるかどうかはわかりませんが、二例、ここには日本脳炎による予防接種の副反応の報告があります。これ以前には、この「安全性情報」には載せられていたんですか、どうでしょう。

田中政府参考人 御説明申し上げます。

 たまたま同じ時期に医薬品・医療機器等安全性情報というのが出されまして、そして、使用上の注意の改定等につきまして、厚生労働省がその情報を公表したということでございます。

 日本脳炎ワクチンに関する使用上の注意に関してでございますけれども、過去、昭和四十九年と平成七年と平成十七年、今回ですね、三回ほど日本脳炎ワクチンに関する使用上の注意の改定等の情報提供というのがされているところでございます。

阿部委員 どうしてちゃんとわかるように言ってくれないんですか。

 実は、これは、医薬品メーカー、日本脳炎ワクチンをつくっているメーカーが、こんな副反応報告があるよと厚生労働省に出していたんですよ。しかし、それは、厚生労働省としては、きちんとした形で公表せずにずっと放置してきたんですよ、対応も決めず。だからこそ現場は混乱しているんですね。

 ある程度副反応のことが伝えられ、そしてどんな危険性があるか。例えば平成十五年度は既に五例の、急性散在性脳炎というのですが、日本脳炎を接種して急性散在性脳炎として健康被害に認定された患者さんが五例あるんですよ。五例のうち三例は十五歳、第三期の日本脳炎の予防接種の患者さんだった。今回も、平成十七年度のこの例も中学生ですよね。そして、どうもこの三期目、中学生くらいになると、いろいろ副反応も強く起こるようだ。もちろん子供、小さい子にも起こっているんですよ。そして、裏では、裏ではと言っては失礼ですが、厚生省の部局内では検討会も開いて、第三期については要らないかもしれないという検討会まで開いているんですよ。

 これは、全部情報を隠した上で、一部のところで検討会を開いて勝手に方針をやっている。そうなると、現場からの声も十分上がらない、副反応についても周知徹底されない、そして方針だけがどんとやってきて混乱する、こういうのが繰り返されているのが予防接種行政だと思うんです。

 ワクチン、特に日本脳炎ワクチンはネズミの脳を使ってつくりますから、やはりいろいろな、今、BSEを初めとして脳組織の問題というのがあるわけですよ。そういう異物の脳を使ってつくるワクチンの持つ問題性というのも一方であるわけです。ワクチン行政が一〇〇%パーフェクトであれとは言いませんが、少なくとも薬品メーカーから寄せられた情報を国民にフィードバックするその仕組み、そして厚生労働省として何を検討しておるかをきっちりと伝えていく仕組み、この二つがなければ、今後どんな変更が行われても、いつもいつも受け手は正しい情報に基づいて選ぶことができないわけです。

 大臣にお伺いいたします。これは年間四百万人が受ける予防接種で、今現場は大混乱です。一体何があったの、どうしたの、どうして。そして、医師の方も不安になります。打っていいんだろうか、それともやはり。

 実は、日本脳炎というのは一九九四年に定期接種という方式に変わりましたが、そのころから患者発生は毎年一けたなんです。四人とか二人とか。それに比べて副反応が五人とか毎年起きるわけです。一体、メリット、デメリット、てんびんにかけたらどっちがいいのか。こういうことも、私は今回直に部屋に呼んでデータを出してもらって、でもまだ全部出ていません、つまびらかに。少しは知るところとなりました。予防接種行政のあり方が余分に混乱だけを生むことは私は望みませんが、しかし、今回は本当に象徴的です。薬のメーカーがこんなに予防接種の副反応を上げているのに、どうして厚生労働省が対応されませんかということがきっかけになっております。

 もう一度、厚生労働省の中で、ワクチンの、特に予防接種行政のあり方を一度は見直していただきたいと思いますが、すごく大きな質問で恐縮です。ほかにも同じようなワクチンの問題があるので、きょうはとりあえず、他の質問もありますので、一問、この特に日本脳炎について、並びに関連の予防接種行政について、改めてちょっと点検をしてみるということについて御所見を賜りたいと思います。

尾辻国務大臣 この件について私が受けておりました報告は、現行の日本脳炎ワクチン接種と極めて重症の副反応との因果関係が今度認定されたということでございまして、認定がされたので直ちにというふうに理解をして私は聞いておりましたけれども、慎重を期して総合的に、積極的勧奨の差し控え、ワクチンの差し控えを判断した、こういうふうに聞いておりました。

 今先生のお話を伺いながら、改めてそこに至ることをもう一回よく聞いてみなきゃいかぬなと思いながら聞いておったわけでございますが、今回のことに限らず、ワクチンをどうするかという大きな課題についてのお話でもございますし、また、この新聞を改めて読みましても、それぞれの場所で混乱も起こっておるようでございますから、そうしたことにならないように、今後どうするかということは改めてよく検討をしてみて、そしてまた、皆さんにとって必要な情報というのは絶えず私どももお知らせをするという努力は当然のこととしてしなきゃいかぬというふうに考えます。

阿部委員 重ねて申し上げますが、定期接種になりました一九九四年から二〇〇三年までをとりましても、日本脳炎の全国の患者さん発生数は四十人から五十人の間。これは厚生省のデータベースで見たところです。それに比べて、ADEM、急性散在性脳炎、それは軽いものから重いものも含めて確定したものが十三例、疑わしいものが五例、すなわち十八例。五十人くらいの患者さんしか発生しない、片っ方は二十人近くの副作用が起きるとなると、果たして本当にこれが継続されてよいのかどうか。

 そして、特に日本脳炎というものの抗体価、みんなが、国民のどれくらいが抗体価を持っているかという基礎調査も一九八一年になされ、続いて二〇〇〇年になされ、予防接種をしてもしなくても、ある年齢以上で非常に高率になっております。八〇%。不顕性感染といいますが、かかって抗体をお持ちの方も多いわけです。

 もちろん国際化時代で、東南アジアの国々で日本脳炎が発生することもあります。だから国際的な目で見ることも必要ですが、私は、日本脳炎を続けるか続けないべきか、あるいはワクチンをどうするか、改良をどうするかということも含めて、根本から見直していただきたい。それと同時に、きちんと国民に情報が伝わって、選べる形にしていただきたいと、この件についてはお願い申し上げておきます。

 引き続いて、きょうの議題になっております件について、特に障害者雇用問題についてお伺いをいたします。

 私はきょうは重度障害者の介助等の補助金についてのお伺いをしたいと思っておりますが、障害者の皆さんがこの間大変に国会にも何度もお出ましくださいまして、そのいわゆる活動ということをめぐっては、私は、この二十年、目を見張るものがあると思います。さまざまな意思を御自身できちんとまとめられて提案をされておられる姿には本当に頭が下がる思いがいたしますが、しかし一方、雇用ということについてはまだまだなかなか進捗が遅いということは、もう各委員から御指摘のことでございます。

 とりわけ、きょう取り上げます重度障害者介助等助成金と申しますのは、障害者雇用率未達成の企業から納付金をいただきまして、それを重度の障害者を雇っておられる企業に助成金として出す仕組みになっておりますが、最長で十年という期限の定まったものでございます。

 大臣にはまず私の資料の二枚目を見ていただきたいですが、この納付金の納付状況を一覧にしたものが、平成六年から平成十五年までずっと資料をいただきました。平成六年で二百六十一億、平成十五年で二百四十一億。制度が始まりましてから法定雇用率の未達成というところで納付金をいただき、平成十一年度からはいわゆる知的障害者の法定雇用率問題も加味されましたので未達成企業が少しふえたということもありますが、ずっと二百億以上なんですね。

 本来、この制度をつくったときに、達成していなければ納付金をいただく、これはある種罰則ですね。こちらで雇っていただいたら助成金を出す、これは報奨ですね。あめとむちと言っては失礼ですが、強いインセンティブを働かせて始まった制度であるにもかかわらず、今もって納付金がある意味では減らないということは、達成されない障害者雇用の現状があると思うわけです。

 一点目はこの件についてどうお考えかということと、二点目は、本来これは厚生労働行政がきっちり指導すれば減っていくものであります。この財源がなくなってもなお、重度の、例えばお目が見えない、あるいは四肢障害である方が、働き続けたい、ヒューマンサポートを得て働き続けたいと思っておられる方はたくさんおられるわけです。そうすると、そういう方たちの働きたい思い、尾辻さんのおっしゃるタックスペイヤーになりたい思い、そういうものを国はどうやって支えていかれようとなさいますか。二点お願い申し上げます。

尾辻国務大臣 まず、今お述べになっておられます障害者雇用納付金制度につきましては、これはお話しいただきましたように、雇用率未達成企業からの納付金の徴収、雇用率達成企業への調整金の支給を通じて障害者雇用に伴う経済的負担の調整などを図ることで、障害者雇用の促進に役割を果たしてもらおうということで始まった制度でございますし、また、今日役割は果たしておる、こういうふうには思っております。

 しかし、お話しのように、現状においては実雇用率が横ばい傾向にあるものですから、雇用率未達成企業も少なくないことから、議員御指摘のとおりに、納付金徴収が二百億円を超える水準で推移している状況となっておる。これは御指摘のとおりでございまして、そのとおりの事実でございますということをまずお答え申し上げたいと存じます。

 そして、二点目の御質問でございますけれども、やや抽象的にお答えすることになりますけれども、こうした二百億円というお金がゼロになることが望ましいことでございまして、私どももそうなるべく努力を続けたいと思いますし、ただ、このお金があるからやるという話ではございませんので、引き続きまた必要なことは当然のこととして私どもは続けていきますということを改めて申し上げたいと存じます。

阿部委員 ぜひそうしていただきたいと思うんです。本当は、毎年毎年二百何十億が企業から入ってくるということは、やはりいいことではないわけです。これはゼロに限りなく近づいてほしい。

 しかしながら、今大臣にお示しした二ページ目を見ていただきますと、下に各年度末における剰余金累計、要するに累積で四百四十億もこれは残ってきておるわけです。企業からいただいて、こっちで助成して使うんだけれども、はっきり言って使い方がまだ不十分というか、そこまで障害者雇用が進んでいないので使い切れてもいない。納付金も減らない、使う方も十分にその趣旨を生かして使い切れていないという現状があって、問題は二重三重に累積していると私は思うんです。

 しかしながら、大臣がおっしゃったように、たとえこういうお金がなくなっても、この精神は生かして、きっちりと障害のある方にヒューマンサポートを提供してお仕事をしていただくんだという政治の強い意思はやはり大臣に持ち続けていただきたい。これは財務省と交渉してでもとってこなきゃいけないことになりますので、そこは今前向きな御答弁でしたので、ありがたいと思います。

 それからもう一点伺いたいのは、これは最長十年ということになっておるんですね。

 しかしながら、大臣もお気づきのように、例えばお目のお悪い方が職場に入って仕事をやる、仕事の中で重要な役割を担う、あるいは脊椎損傷で車いすでお仕事に行く、そこでそれなりの役割を担う。だけれども、十年たったら目がぱちっとあいて見えるわけでもなく、足がすたすたと歩けるわけでもないわけであります。この最長十年という期限が来た場合に、これもまた厚生労働省としては、そこで終わらせない、やはり働き続けていただくためにありとあらゆる手だてをとる、策を考える。この点についての明確な御答弁も。

 今非常に、実は十年目に近くなる方もおられて、どうなっちゃうんだろうと。例えば、私の書類を読んでいただく。全部の書類が点字で来るわけではありませんから、書かれたものを読んでいただいて、御自身が仕事をなさるということもあるわけです。これは、期限を限ったのは、恐らく納付金が十年たったらなくなるだろうとあったんだと思いますが、しかし、その制度の持続性はきちんと保証しますという御答弁をもう一つお願いいたします。

尾辻国務大臣 最長十年、その十年ということは各助成金の中でもまさにまた最長になっておるわけでございますけれども、しかし、それはそれといたしまして、今お話しのような実情がございます。

 そうしたものを踏まえまして、助成金制度の考え方に立って、どのような対応が考えられるか、前向きに検討してまいります。

阿部委員 絶対に切らないでいただきたいと思います。

 残余の法案については、社会保険労務士法案も皆さん十分に御質疑いただきましたし、あと、残るベルギーとフランスについては、これは一つだけ社会保険の事務についてのお願いですが、実は今、例えばアメリカとの同じような締結がされてもなお、社会保険庁の実務サイドには聞きに行っても、十月に施行されなければ説明はできませんという答えしか返ってまいりません。

 各国と結ぶのは容易ですが、そのことを社会保険庁の事務の中にどのように周知徹底させるか、これはぜひとも厚生労働省として、今はまだ社会保険庁は厚生労働行政の中でございますから、徹底させていただきたいということをお願い申し上げて、質問を終わらせていただきます。

鴨下委員長 以上で各案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

鴨下委員長 ただいま議題となっております各案中、まず、内閣提出、障害者の雇用の促進等に関する法律の一部を改正する法律案について議事を進めます。

 この際、本案に対し、宮澤洋一君外四名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、日本共産党、社会民主党・市民連合の五派共同提案による修正案が提出されております。

 提出者より趣旨の説明を聴取いたします。城島正光君。

    ―――――――――――――

 障害者の雇用の促進等に関する法律の一部を改正する法律案に対する修正案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

城島委員 ただいま議題となりました障害者の雇用の促進等に関する法律の一部を改正する法律案に対する修正案につきまして、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、日本共産党及び社会民主党・市民連合を代表いたしまして、提案理由を説明いたします。

 本改正案におきまして、在宅就業障害者に対する支援を行う団体として厚生労働大臣の登録を受けた法人である在宅就業支援団体は、障害者と発注元事業主とのコーディネート機能を果たすだけでなく、双方のセーフティーネットとして欠くことのできない存在となることが期待されております。

 すなわち、在宅就業支援団体による企業からの仕事の開拓、受注、ビジネスマナーや生活面も含めた障害者の育成支援、就業後の定着支援といったきめ細かいノウハウや創意工夫の蓄積などが在宅就業の機会の拡大にとって大きなかぎを握っており、そうした観点からすれば、在宅就業支援団体は障害者からも企業からも社会からも信頼され、実績を積んでいることが不可欠であります。

 そこで、私どもは、在宅就業支援団体の育成に努め、在宅就業支援団体の適正な業務の運営を確保するため、厚生労働大臣への登録に際して、職業安定法や労働者派遣法等、他の労働法制に準じて登録の拒否要件をさらに拡大し、厳正な審査を行うことが必要であると考えました。

 以下、その内容を御説明いたします。

 第一に、この法律またはこの法律に基づく命令に違反したことのみならず、労働に関する法律の規定であって政令で定めるものまたは出入国管理及び難民認定法に規定する不法就労助長罪に係る規定により、罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、または執行を受けることがなくなった日から、原案の二年ではなく五年を経過しない法人について、在宅就業支援団体の登録を受けることができないものとしております。

 第二に、在宅就業支援団体の登録を取り消された場合、その取り消しの日から、原案の二年ではなく五年を経過しない法人について、登録を受けることができないものとしております。

 第三に、役員のうちに、禁錮以上の刑に処せられ、またはこの法律の規定その他労働に関する法律の規定であって政令で定めるもの、もしくは暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律の規定により、もしくは刑法に規定する傷害罪、暴行罪等の罪、暴力行為等処罰に関する法律の罪、もしくは出入国管理及び難民認定法に規定する不法就労助長罪を犯したことにより、罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、または執行を受けることがなくなった日から起算して五年を経過しない者のある法人について、在宅就業支援団体の登録を受けることができないものとしております。

 以上が、本修正案の提案理由及びその内容の概要であります。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。

 以上です。

鴨下委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

鴨下委員長 これより本案及び修正案を一括して討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 内閣提出、障害者の雇用の促進等に関する法律の一部を改正する法律案及びこれに対する修正案について採決いたします。

 まず、宮澤洋一君外四名提出の修正案について採決いたします。

 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

鴨下委員長 起立総員。よって、本修正案は可決いたしました。

 次に、ただいま可決いたしました修正部分を除く原案について採決いたします。

 これに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

鴨下委員長 起立総員。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

鴨下委員長 この際、本案に対し、宮澤洋一君外四名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、日本共産党、社会民主党・市民連合の五派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者より趣旨の説明を聴取いたします。福島豊君。

福島委員 私は、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、日本共産党及び社会民主党・市民連合を代表いたしまして、本動議について御説明申し上げます。

 案文を朗読して説明にかえさせていただきます。

    障害者の雇用の促進等に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  政府は、本法の施行に当たり、次の事項について、適切な措置を講ずるべきである。

 一 附則第二条に規定する検討は、平成二十一年度末までに結果が得られるよう関係審議会において行うものとすること。また、その際、雇用義務の対象に精神障害者を加えることも含めて検討を行うものとすること。

 二 精神障害者を実雇用率に算定するに当たって、雇用率の達成指導を引き続き厳正に行うとともに、精神障害者保健福祉手帳の取得強要及び申し出の強要など本人の意に反した雇用率制度の適用等が行われないよう、プライバシーに配慮した対象者の把握・確認の在り方について、必要な措置を講ずること。また、従来、各企業において取り組まれているメンタルヘルス対策が後退することのないよう、周知及び指導を徹底すること。

 三 精神障害者の雇用環境の整備を図るため、障害者本人及び企業に対する支援策の充実を図るとともに、公共職業安定所、地域障害者職業センター等の支援機関における相談・支援体制の整備に努めること。

 四 在宅就業支援団体の育成に努めるとともに、在宅就業支援団体の適正な業務の運営を確保するため、その登録に当たって登録要件への適合等を厳正に審査するとともに、登録後においても、業務運営基準の遵守等を徹底するための厳正な監督指導を実施するものとすること。

 五 障害者の職場定着を着実に進めるため、職場適応援助者(ジョブコーチ)に関する助成金の新設に当たって、企業において障害者雇用の経験を有する人材を活用する等により、質を確保しつつ必要な数の職場適応援助者の確保に努めること。

 六 派遣労働者としての障害者の雇用について、障害者雇用の促進を図る観点からその実情を含め検討を加え、その結果に基づいて、必要な措置を講ずるものとすること。

 七 障害者の働く場の一層の創出を図るため、企業内で職務を整理して仕事を分かち合うこと、工業団地や商店街のような地域において、障害者を多数雇用する企業に仕事を出し合うこと等を通じて、企業が企業内外における障害者の働く場の創出に取り組むことを推進すること。

 八 企業名及びその雇用率の公表を前提とした指導を強化し、雇用率制度の厳正な運用を図るとともに、そのための体制整備に努めること。特に都道府県等の教育委員会の実雇用率は、依然として法定雇用率を大きく下回る水準にとどまっており、作成した採用計画の着実な実施等、障害者の採用拡大に向けてなお一層の取組を進めるよう必要な措置を講ずること。

以上であります。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。

鴨下委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

鴨下委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付すことに決しました。

 この際、尾辻厚生労働大臣から発言を求められておりますので、これを許します。尾辻厚生労働大臣。

尾辻国務大臣 ただいま御決議のありました本法案に対する附帯決議につきましては、その趣旨を十分尊重し、努力してまいる所存でございます。

    ―――――――――――――

鴨下委員長 次に、内閣提出、参議院送付、社会保険労務士法の一部を改正する法律案について議事を進めます。

 これより討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 内閣提出、参議院送付、社会保険労務士法の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

鴨下委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

鴨下委員長 この際、本案に対し、北川知克君外四名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、日本共産党、社会民主党・市民連合の五派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者より趣旨の説明を聴取いたします。北川知克君。

北川委員 私は、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、日本共産党及び社会民主党・市民連合を代表いたしまして、本動議について御説明申し上げます。

 案文を朗読して説明にかえさせていただきます。

    社会保険労務士法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  政府は、本法の施行に当たり、次の事項について適切な措置を講ずるべきである。

 一 個別労働関係紛争の件数が急激に増加している現状にかんがみ、紛争をもたらしている諸要因の解消を図るべく、あらゆる政策努力を尽くすこと。

 二 個別労働関係紛争に関する民間紛争解決手続の業務を公正かつ適確に行うことができると認められる団体を指定するに当たっては、当該団体の状況につき適切な審査を行うとともに、指定後も公正かつ適正な業務が行われているか、把握すること。

 三 社会保険労務士による裁判外紛争解決手続の代理業務等の運用に当たっては、利用者の利益や利便性を第一に考え、関係諸機関の連携協力体制の整備のため万全を期すこと。

 四 特定社会保険労務士が人事労務管理に係る専門的知見・能力を活用しつつ、個別労働関係紛争における代理人として紛争解決手続を担うことができるよう、紛争解決手続代理業務に係る研修及び試験については、必要な知識、実務能力、職業倫理が担保されるようその内容の適正性維持と一層の充実のため万全を期すこと。

 五 紛争解決手続代理業務試験委員には、紛争解決手続代理業務に関して学識経験を有する者を必ず含めるよう、指導すること。

 六 特定社会保険労務士の業務内容及び代理可能な範囲については、広報等その周知徹底に努め、国民に誤解を与えたり、混乱、不利益をもたらすことのないよう万全を期すこと。

 七 労働争議への介入を禁止する規定の削除が、正常な労使関係を損なうことがないよう、社会保険労務士会及び全国社会保険労務士会連合会を通じて指導すること。

 八 労働争議への介入を禁止する規定の削除に伴い社会保険労務士の業務が変更される範囲について、国民が正しく理解できるよう、広報等その周知を徹底すること。

 九 社会保険労務士の業務範囲の拡大に伴い、全国社会保険労務士会連合会において、綱紀委員会や苦情処理相談窓口の設置など、国民からの信頼に十分応え得る体制整備が図られるよう指導すること。

以上であります。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。

鴨下委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

鴨下委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付すことに決しました。

 この際、尾辻厚生労働大臣から発言を求められておりますので、これを許します。尾辻厚生労働大臣。

尾辻国務大臣 ただいま御決議のありました本法案に対する附帯決議につきましては、その趣旨を十分尊重し、努力してまいる所存であります。

    ―――――――――――――

鴨下委員長 次に、内閣提出、参議院送付、社会保障に関する日本国政府とフランス共和国政府との間の協定の実施に伴う厚生年金保険法等の特例等に関する法律案及び社会保障に関する日本国とベルギー王国との間の協定の実施に伴う厚生年金保険法等の特例等に関する法律案の両案について議事を進めます。

 これより討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 まず、内閣提出、参議院送付、社会保障に関する日本国政府とフランス共和国政府との間の協定の実施に伴う厚生年金保険法等の特例等に関する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

鴨下委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおりに可決すべきものと決しました。

 次に、内閣提出、参議院送付、社会保障に関する日本国とベルギー王国との間の協定の実施に伴う厚生年金保険法等の特例等に関する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

鴨下委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました各案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

鴨下委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

     ――――◇―――――

鴨下委員長 次に、内閣提出、参議院送付、独立行政法人年金・健康保険福祉施設整理機構法案を議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。尾辻厚生労働大臣。

    ―――――――――――――

 独立行政法人年金・健康保険福祉施設整理機構法案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

尾辻国務大臣 ただいま議題となりました独立行政法人年金・健康保険福祉施設整理機構法案につきまして、その提案の理由及び内容の概要を御説明申し上げます。

 国においては、これまで、厚生年金保険法、国民年金法等に基づき、年金福祉施設等を設置してまいりましたが、厳しい年金財政の状況及び社会経済状況の変化等を踏まえ、その整理合理化を進めることとしております。

 このため、五年間に限って年金福祉施設等の譲渡等の業務を行う非公務員型の独立行政法人年金・健康保険福祉施設整理機構を設置するため、この法律案を提出した次第であります。

 以下、この法律案の主な内容につきまして御説明申し上げます。

 第一に、独立行政法人年金・健康保険福祉施設整理機構は、年金福祉施設等の譲渡または廃止の業務を行うことにより、年金福祉施設等の整理を図り、もって厚生年金保険事業等の適切な財政運営に資することを目的としております。

 第二に、法人の資本金は、全額政府出資とし、その額は、法人が国から承継する財産の額としております。

 第三に、役員として、理事長、監事及び理事を置き、その定数等を定めることとしております。

 なお、法人は、成立の日から起算して五年を経過した日に解散することとしております。

 最後に、法人の設立については、平成十七年十月一日を予定しておりますが、その準備に要する期間を考慮して、この法律の施行期日は、一部の事項を除き、公布の日としております。

 以上が、この法律案の提案理由及びその内容の概要であります。

 何とぞ、御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。

鴨下委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。

 次回は、来る十日金曜日午前九時二十分理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時四十分散会


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