衆議院

メインへスキップ



第36号 平成17年7月27日(水曜日)

会議録本文へ
平成十七年七月二十七日(水曜日)

    午前九時三十三分開議

 出席委員

   委員長 鴨下 一郎君

   理事 大村 秀章君 理事 北川 知克君

   理事 長勢 甚遠君 理事 五島 正規君

   理事 三井 辨雄君 理事 山井 和則君

   理事 福島  豊君

      青山  丘君    井上 信治君

      石崎  岳君    奥野 信亮君

      上川 陽子君    木村 義雄君

      小西  理君    河野 太郎君

      左藤  章君    鈴木 淳司君

      高木  毅君    西村 明宏君

      早川 忠孝君    原田 令嗣君

      福井  照君    三ッ林隆志君

      御法川信英君    宮腰 光寛君

      森岡 正宏君    八代 英太君

      渡辺 具能君    石毛えい子君

      泉  健太君    泉  房穂君

      内山  晃君    大島  敦君

      岡本 充功君    小林千代美君

      城島 正光君    園田 康博君

      中根 康浩君    橋本 清仁君

      藤田 一枝君    松崎 哲久君

      三日月大造君    水島 広子君

      横路 孝弘君    米澤  隆君

      高木美智代君    古屋 範子君

      山口 富男君    阿部 知子君

    …………………………………

   厚生労働大臣       尾辻 秀久君

   厚生労働副大臣      西  博義君

   政府参考人

   (内閣府政策統括官)   大田 弘子君

   政府参考人

   (厚生労働省医政局長)  岩尾總一郎君

   政府参考人

   (厚生労働省労働基準局長)            青木  豊君

   政府参考人

   (厚生労働省労働基準局安全衛生部長)       小田 清一君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房審議官)           吉田 岳志君

   政府参考人

   (林野庁森林整備部長)  梶谷 辰哉君

   政府参考人

   (水産庁次長)      中前  明君

   厚生労働委員会専門員   榊原 志俊君

    ―――――――――――――

委員の異動

七月二十七日

 辞任         補欠選任

  木村 義雄君     林  幹雄君

  菅原 一秀君     鈴木 淳司君

  三ッ林隆志君     西村 明宏君

  御法川信英君     奥野 信亮君

  吉野 正芳君     左藤  章君

  園田 康博君     三日月大造君

同日

 辞任         補欠選任

  奥野 信亮君     御法川信英君

  左藤  章君     吉野 正芳君

  鈴木 淳司君     早川 忠孝君

  西村 明宏君     高木  毅君

  三日月大造君     岡本 充功君

同日

 辞任         補欠選任

  高木  毅君     三ッ林隆志君

  早川 忠孝君     菅原 一秀君

  岡本 充功君     松崎 哲久君

同日

 辞任         補欠選任

  松崎 哲久君     園田 康博君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 労働安全衛生法等の一部を改正する法律案(内閣提出第六〇号)


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

鴨下委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、労働安全衛生法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として内閣府政策統括官大田弘子君、厚生労働省医政局長岩尾總一郎君、労働基準局長青木豊君、労働基準局安全衛生部長小田清一君、農林水産省大臣官房審議官吉田岳志君、林野庁森林整備部長梶谷辰哉君、水産庁次長中前明君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

鴨下委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

鴨下委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。御法川信英君。

御法川委員 おはようございます。自由民主党の御法川でございます。

 週末にちょっと風邪を引きまして、お聞き苦しい点もあると存じますけれども、よろしくお願いしたいと思います。

 本日は、労働安全衛生法等の改正ということで質問させていただきますけれども、冒頭、昨今、大変問題になっておりまして、また、先日のこの委員会で集中的な質疑を行いましたアスベスト問題について若干触れさせていただきたいと思います。

 連日、新聞、テレビ等でアスベストに関する問題が続々と報道されておりまして、このことに対する政府の取り組み、本当にこれから大事なことだろうと思っておりますが、先日、二十一日ですか、細田官房長官が、政府の体制に若干の不備があったのではないかということで、早急に対応をとらなければならないということを記者会見で申されておりますし、そのときに、アスベストの被害を受けた方々の補償あるいは支援についても早急に検討していくということがありました。また、先週のこの委員会においても、西副大臣が同じような趣旨の発言をされていたということで、また、小泉首相も同じような発言をしておられるということで、これはもう政府の一日も早い取り組みが望まれている部分でございます。

 その中で、アスベストの完全禁止が二〇〇八年ということで、もうすぐなわけでございますが、ただ、これを禁止するといっても、国がただ禁止するというだけでは問題だと思います。これまでの具体的な禁止に向けてのプランというか、どういう形でやっていくのか、まず、このことからお尋ねをしたいと思います。

青木政府参考人 石綿製品の製造等につきましては、石綿のうち青石綿、茶石綿という極めて有害性の強いものにつきましては、もう既に平成七年に全面禁止をいたしております。また、そのほかのものも平成十五年に原則全面禁止してまいりました。

 その際に検討しました平成十四年の調査によりますと、既に石綿製品の約九八%の製造が禁止をされております。今お話のありました例外的に残っておるものにつきましては、化学プラントあるいは原子力発電所で使用されているジョイントシート、シール材、あるいは耐熱電気絶縁板等に限られております。

 これらの製品は、国の規格に合った代替品の開発だとか、その代替品の安全性等の実証がいまだ完全とは言えないという状況でありましたので、もし製造禁止しまして代替品を使うということになれば、化学プラントからの有害物の液漏れや、あるいは爆発のおそれがあるということで、国民の安全の確保に重大な障害を生じてはいけないということで、このような措置をとってきているわけであります。

 しかし、今お話ありましたように、石綿は非常に重篤な健康被害の原因となり得るものであるということを考えますと、やはりこれについては全面禁止の早急な実施が不可欠だというふうに思っております。

 こういうことで、既に関係団体に対しましては、禁止が猶予されている石綿含有製品の代替化の促進の要請をこの二月にもしておりますし、あるいはまた先週の七月二十一日には、経産省とともに、関係二十団体に対しまして改めて代替化の促進について要請をいたしました。

 そういうことで、実質的に使われないようにしていきたいと思っているわけでありますけれども、法令上の整備ということになりますと、所要の手続、WTOへの通報でありますとか、パブリックコメント、意見聴取でありますとか、法令改正の手続、あるいはそれの周知、これは罰則規定になりますので周知期間も必要であります。ということでありますので、現実にそれが施行されるには若干の時間が必要だと思っております。

 しかし、代替化の促進あるいは代替化の調査検討、そういったことのための専門家による委員会をまず立ち上げまして、これからすぐ、そのための作業を進めているところでございます。できる限り前倒しの対応をしていきたいと思っております。

御法川委員 きのうですか、朝日新聞の報道、今マスコミ各社がいろいろな報道をされているわけですけれども、過去の調査で、全国千七百余りある公共施設、アスベストを使っている公共施設でございますが、これに対してどういう対策をとっているか、これが全くわかっていない施設というのが、兵庫、佐賀、沖縄の三県だけでも五十以上あるということでございまして、また、公共施設でどういう使用実態があるのか、全く把握できていないところというのが十一県二市あったというような報道もなされております。また、北海道の方では、民間施設のアスベスト使用も含めた形でのアスベスト台帳なるものをこれから策定していくということで、今具体的な取り組みに入っているという話も聞いております。

 こういうふうに自治体なりが対応がまだ一貫していない、ばらばらな中で、これは厚労省さんではありませんけれども、国交省の方では、管理責任のある施設については自治体の責任で実態を把握してほしい、そういうことを言っているようでございますが、政府としてはそんなことばかり言っている場合じゃない、早急に全国的な調査をして、現実にアスベストはどのようなぐあいに使われているのかということを調べる必要があると思います。

 いろいろな建物がございます。民間の建物も多いわけでございまして、これは各省庁にまたがる話だと聞いておりますけれども、やはり政府の主導で早く全国的な実態の把握をしなければならないと私は考えますけれども、この件について御所見を伺いたいと思います。

青木政府参考人 石綿につきましては、非常に加工しやすくて、安くて、あるいはその性質においても、耐酸性だとか、耐腐食性だとか、耐熱性だとか、非常にすぐれているということで、広範にいろいろなものに使われてまいりました。ということでありますので、相当広範にいろいろなところでかつては使われたということでございます。したがって、建築物等につきましても、かつて建てたものについてはかなり使われていると考えていいだろうと思っております。

 そういう意味で、これにつきましては、飛散をしないで封じ込めていくことでその危険性を排除するという考え方に立っておりまして、私どもとしても、こういったものの解体作業をするときには、飛散のおそれがありますので、きちんと管理をするということにいたしておるわけであります。

 そのほか、それぞれ各関係省庁の中で、それぞれの所掌のもとで、そういったものの必要な対策を講じているわけでありますけれども、そういう意味では、政府全体で、今関係省庁が集まって、具体的な対策を協力して進めていこうということでやっておるわけであります。

 まず第一に、やはり、おっしゃったように、どういう状況になっているのかというのをそれぞれのところで調査しようじゃないかということで、それぞれの持っている手段、持っている範囲でできるだけ調査をしようということで、いろいろなところで既に結果の発表なども行われているところもありますし、そういうことで進めてまいっているところでありますし、そういう努力は続けていきたいというふうに思っております。

御法川委員 早く実態を把握することがその後の対策にかかわってくる大きなあれだと思いますので、ぜひ急いでやっていただきたいなと思います。

 今、御答弁の中に解体の話が出ましたけれども、まさにこの話をちょっとさせていただきたいと思います。

 今、アスベストが使われている建物の解体について、ちゃんと指針が、指針というかやり方を説明して、こういう形でやらなくてはいけないというルールはもうあるわけでございまして、今後、そういう形でアスベストを使用されている建物は解体されていくのだろうと思いますけれども、昭和三十年あるいは四十年代に建てられた建物がこれからどんどん解体されていくということを考えますと、非常に多い数の建築物がこれに該当してくるということが推測されるのではないかな、そういうふうに思います。

 解体費用の問題、これがこれから多分大きな問題になってくるんだろう。一説では、もしアスベストがない普通の建物の解体費であれば、例えば一平米三千円ぐらいのところが、アスベストが使われているものだと二万円以上にはね上がってしまう、こういう話もありまして、アスベスト対策は必要ですけれども、それにかかる費用、コストというのもこれは莫大なものになるということになると思います。公共物であれば、ある程度それに対する費用を考えることはできるかと思いますが、特にこれは民間なんかの場合に、私が危惧していますのは、特に地方の建物で民間が建てているもの、これを解体しないまま放置されてしまうことなどが出てくると、これは非常に大きな問題になってくるのではないかな、そういうふうに思っております。これはやはり何に起因するかというと、解体コストが高いからそのまま捨ておくんだというような話になってくると思うんです。

 さて、これは、政府がアスベストに対する対策に若干瑕疵があったということをお認めになった以上、こういう解体作業等に対する助成とか、そういうものもこれから考えざるを得ないのではないか、あるいはそういうことがあってもいいのではないかな、そういうことも考えるんですが、この点についていかがでしょうか。

青木政府参考人 石綿を使用した建物の解体作業というのは、その作業の際に、封じ込められていた石綿が飛散するおそれがあるということで、厳格な規制、管理をしてもらうということで、おっしゃったようにその分のコストは当然かかるわけであります。したがって、従来から、そういった解体工事については、発注者に対しまして、施工時の安全衛生の確保に配慮した工期を設定するとか、あるいはそういった配慮した設計を実施するとか、あるいは費用についてもきちんと積算をするということについても指導してきたところであります。

 そういったことで、今後とも、解体業者に過度の負担にならないように、発注者に対する指導も行っていきたいというふうに思っております。

御法川委員 今、具体的に助成という話はできないと思いますけれども、今おっしゃられたように、できるだけこのコストが、例えば解体業者あるいはその発注者の方に一方的にかからないような形の施策をよろしくお願いしたいと思っております。今回のこのアスベストの問題というのは、もちろん人に及ぼした被害も甚大なわけでございますが、これからそういう対策を立てることによって、できるだけこの被害を食いとめていく、そういう姿勢をぜひ見せていただきたいな、そういうふうに思っております。

 それで、時間がもう半分以上過ぎておりますので、安全衛生法の方に若干入らせていただきたいと思います。

 今、労働環境が変わっていく中にあって、特に健康被害、過労死などいろいろな問題が深刻化しているという中で、この労働安全衛生法等の改正ということになったと思いますけれども、この背景と趣旨について、まず簡単に、もう一度御説明いただきたいと思います。

尾辻国務大臣 近年、企業間競争の激化や、それから働き方の多様化に伴いまして、自主的な安全衛生活動の不足に伴う重大な労働災害の発生、それから長時間労働に伴う健康障害の増加でありますとか、子育て世代における生活時間の確保の困難、さらにまた移動に際しての保護の拡充が必要な単身赴任者や複数就業者の増加といった、労働者の生命や生活にかかわる問題が深刻化しておるところでございます。

 こうした中で、人材を基盤とする我が国の持続的発展を実現するためには、健康で安全な働く場を確保することが不可欠であると考えまして、関係審議会の建議も踏まえつつ、労働安全衛生法、労災保険法、労働保険徴収法及び時短促進法の労働条件に関連する四法を一括して改正しようとするものでございます。

御法川委員 ありがとうございます。

 その中で、ちょっと時間がありませんので集中したいと思いますけれども、労働安全衛生法と、あといわゆる時短促進法に関連する話をしたいと思います。

 時短法の方は、今まで年間の労働時間千八百時間ということで数値を明確化してやってきた。今回の改正では、この千八百時間という時間は、やはり労働というのは時間だけではかれないだろう、いろいろな要素もあるだろうということで、取り除くという話がありました。一方で、時間外労働の取り決めの方でございますけれども、こちらは月百時間というところをある一つの目安として、例えば医師、産業医などとの面接指導を義務化するというふうになっております。

 片方では労働時間だけでははかれないという話をしておりながら、もう片方では百時間ということを目安にしている。ちょっとここはどうなんだろうなというところもあるんですけれども、この百時間という部分の根拠についてまず伺いたいと思います。

青木政府参考人 今お話のありました百時間というのは、今回新たに改正法の中で創設することとしております医師による面接指導という仕組みの中で、それを一つの基準として、月残業が百時間というものを持ってきているわけであります。

 今回創設する面接指導というのは、脳・心臓疾患の発症リスクが非常に高いと考えられる者につきまして、健康管理の面からのチェックと指導を行うという趣旨のものでございます。労働政策審議会の建議に沿って、週四十時間を超える労働時間が月百時間を超える者をその対象とすることを予定しているところでございます。

 お尋ねの趣旨は、これはなぜかということでありますが、一つには、月百時間以上の時間外労働を行った上で、一日二十四時間しかありませんので、人間として必要な労働以外の生活時間、六時間が一般的に必要でありますけれども、それを確保しようとすると、睡眠時間はおのずと削って五時間以下にならざるを得ないということであります。

 もう一つには、睡眠時間を六時間から八時間とっている人の場合と比較しまして、睡眠時間が五時間以下になりますと、脳・心臓疾患を発症する危険性が二倍から三倍になるという医学的な知見があるということがありますので、こういったものを踏まえて、このような基準といいますか要件、対象ということにいたしたわけでございます。

御法川委員 この面接指導、まずはその百時間超の人たちの話をしたいと思います。

 これは使用者側の義務ということになっているわけでございますけれども、実施に当たっては労働者側からの申し出ということになっていると思います。これはもちろん会社によっていろいろ違うと思いますけれども、いろいろな労使関係がある中で、なかなか申し出しにくい、頑張っちゃっている、だから過労死になっているという現実があるのではないかなと思いますが、その辺についてどうお考えでしょうか。

青木政府参考人 今回創設する面接指導というのは、過重労働で健康障害が生ずるということを防止しようという制度でございます。

 そういう意味では、こういった措置が必要な労働者が申し出てやるということにしているわけですが、おっしゃるように、確実に申し出ができなければ、そのねらいとするところを全うすることはできないと思います。したがって、事業場でこういった申し出がきちんとできるような体制が整えられるように、申し出様式だとか相談窓口の設定など申し出手続の整備をするとか、あるいは、事業場内における面接指導の実施方法の周知等について、事業場に対しまして私どもとしては指導していきたいというふうに考えております。

 それから、こういった事業場内における健康に関する医学的知識を有する専門家として、産業医という制度があります。一定規模以上でありますけれども、各事業場で産業医を選任してもらうということになっているわけですが、この産業医というのが、事業場の実態もよく知った上で、そういう医学知識を持っているということでありますので、労働者の健康を確保するために必要があると認めるときは、事業者に対しまして勧告をすることができるということになっております。

 したがって、この産業医に対する研修というものを我々はいたしまして、そういう研修の機会を通じて、事業主に対しては面接指導の実施に関して勧告が行えるということ、あるいは労働者に対しては面接指導の申し出を行うよう勧奨できることを、産業医に対しましても十分周知していきたいというようなことを考えておるところでございます。

御法川委員 これはいろいろな角度からの問題が切れると思うんですけれども、今の法案の中では、この百時間超の部分がまず一つ、これは使用者側の義務としております。その次に、六カ月平均で月八十時間の時間外労働の場合には、これは努力義務を課している。また、一カ月四十五時間超の場合も努力義務ということで、何かこの辺がちょっとはっきりしないなという感じがするんです。

 六カ月平均で八十時間の場合も、これは平均をとっているわけでございまして、例えば、ある時期、特に時間外労働が多いというような職種も考えられないわけではない。そういう中で、これはなぜ義務と努力義務というふうに分けなくてはいけないのかな、そういうことを感じているんですけれども、この点についてどうお考えでしょうか。

青木政府参考人 これは、いろいろな労働関係法令の中でも、義務づけあるいは努力義務ということで、そういうように努めるというようなものをいろいろな制度において採用しているところであります。

 先ほど申し上げましたように、月百時間については、明々白々な医学的知見があるということで、それはきっちりしていただかないといけないということで義務づけをいたしておるわけでありますけれども、こういった危険性については、その線を超えたら危険でその線までは安全というわけではないわけでありますので、それまでにはやはり努力をしていく必要があるということで努力義務を課すということにいたしておるわけでございます。労働政策審議会の建議でも、お話がありましたように、月八十時間を超える時間外労働によって労働者自身が健康に不安を感じた者については、これを対象に入れるという考え方を示しているわけであります。

 そのほか、さらに、八十時間にいかないまでにしても、今申し上げましたように、そこで飛躍的に格差があるというわけではありませんので、そういったところにいかないまでも、各個別の事業場でそういったところまでその対象に入れるように、そういったような勧奨というのもしていきたいと思っているところでございます。

御法川委員 今回のこの改正が効果的になされていくためには、やはり、例えば地域産業保健センターでありますとか産業医の方たち、彼らが積極的に労働者の方々に対してこういうものを勧めていくような体制をとる必要があるのだろうなと思っています。

 そういう意味で、先ほどもお答えがありましたけれども、産業医等の方々に対する指導というか育成をしていく必要があると思いますが、この点についてどういうプランがあるか、もしあればお聞かせいただきたいと思います。

青木政府参考人 先ほど申し上げましたように、研修の際に、きちんと、いろいろな配慮をすることを具体的に示していきたいと思いますけれども、それと同時に、産業医の方々に対しましても、面接指導マニュアルをつくって提供するとかいうことも考えております。

 それから、お話に出ました地域産業保健センター、これは全国三百四十七カ所に設置をいたしております。そこに登録医として約三万人ぐらい登録されておりまして、そこでいろいろな相談を受けるという体制でやっております。これはお医者さんに協力をしていただかなきゃいけませんので、郡市の医師会へ委託をして、お願いをしてやっているということであります。

 こういったものについても、もちろん、産業医に対するマニュアルでありますとか、あるいは産業医に対する研修がその効果を持つということだろうと思いますし、それから、相談の窓口、相談頻度、相談開催日時、そういったものについてもこの際充実をして対応していきたいと思います。相談ということであれば、休日や夜間などもできるだけ利用しやすいようにしないと、現実に利用されなければ意味がありませんので、そういったこともしていきたいと思いますし、ただ相談ということで待っているだけではなくて、事業場に対する訪問指導というようなことも考えていくということでやっていくということで、いろいろなことを考えて実質的に効果が上がるようにしていきたいと思っております。

御法川委員 ぜひよろしくお願いしたいと思います。

 最後に、ちょっと時間がないんですけれども、先ほど触れましたけれども、時短促進法の方ですね。千八百時間というこの目標値を改正では特には出さないということですけれども、それであれば、どういう考え方で労働時間の改善を図っていくか、この点について最後にお聞きしたいと思います。

青木政府参考人 千八百時間につきましては、私は非常に成功した手法だったと思います。労働時間を短縮するというのは、事業場における労務管理なりあるいは経営の実態に根差して、密接にかかわる問題でありますので、そう簡単にはなかなか、言っただけでできるわけではありません。相当の、また、意欲というものもなかなか出てこない問題だったろうと思います。

 それをやはり、政府も当然のことながら、労使あわせてやっていこうという機運をつくる、そして、いわば時短とか千八百時間というのが意識として相当定着された、そして、挙げてやっていこうということでやってきたということでは、非常に意味があった、また成果もあったというふうに思っております。

 しかし、それなりの成果はあったと思いますが、最近のいろいろな就業形態の変化などによって、今後そのような一律的なやり方でさらに実効、実績が上がっていくのかなというところは疑問があるというふうに思います。やはりきちんと、もう少し具体的な、あるいは個々のケースに対応したきめ細かな対応をしていかなければ、そういう象徴的な機運の醸成ということで皆が協力して進んできたというのが、今後はなかなか進まないんじゃないかという思いをいたしております。

 今度のは、そういう意味で、労働時間の設定というものを、労使の自主的な設定というのを、適正な設定をしていくことを推進していこうということでこの時短法の改正をお願いしているわけでありまして、きめ細かな、事業場における労使、あるいは産業界における労使のそれぞれの実情に応じて、問題のあるところ、進めるべきところ、そういったところを、進めやすい方法をそれぞれ決めて、考えて進めていく、そういう考え方で今度の労働時間の設定ということでお願いしているところであります。

御法川委員 時間がなくなりましたけれども、今の件ですが、具体的な千八百がなくなったとはいえ、これからの労働環境改善のために、ぜひその具体的な部分を必ず出していただきたいな、そういうふうに思っております。

 これで終わります。ありがとうございました。

鴨下委員長 次に、福島豊君。

福島委員 公明党の福島豊です。大臣には連日大変御苦労さまでございます。

 本日は、労働安全衛生法の改正案ということで、長時間労働の問題を中心に取り上げさせていただきたいと思います。

 近年、自殺者数は、三万人を超える状況が続いております。平成十年は三万二千八百六十三人、平成十三年が三万一千四十二人と一時減少を来しましたけれども、十四年は三万二千百四十三人、十五年は三万四千四百二十七人と、再び増加傾向に転じているわけであります。

 自殺の原因は、遺書を分析すると、健康問題や経済問題、家庭問題など多岐にわたっておりますけれども、近年注目すべきことは、長時間労働がメンタルヘルスの障害をもたらし、自殺につながる事態が起こっているということではないかというふうに思います。特に若年者の自殺、こういうことが起こっていると、全国過労死弁護団連絡会議でもこういった事例が報告されているわけであります。

 こうしたことは、本来であれば、予防すべき、予防できる話であったのではないか。働き過ぎによってメンタルヘルスの障害を来し、自殺に至るようなケースというのは、あってはならないことだろうというふうに私は思っております。労災の認定がなされておりますが、その労災をめぐってさまざまな訴訟が起こったりもしているわけであります。

 近年のそうした動向について、労災の対象となるような事例がどの程度発生しているのか、そしてまた若年者の働き過ぎといったようなことが自殺にどうつながっているのか、政府としてどのように認識しておられるのか、お聞きをいたしたいと思います。

青木政府参考人 最近の労災認定という動向でございますけれども、最近の精神障害等の労災認定の件数というのは年々増加をいたしております。平成十二年三十六件、十三年七十件、平成十四年百件、平成十五年百八件、平成十六年には百三十件ということになっております。このうち、自殺の件数についても増加をいたしておりまして、平成十六年には四十五件と過去最高になっております。

 若年者の長時間労働ということでありますけれども、若年者については特に長時間残業がふえてきているということで認識をいたしておりまして、いわば労働時間の長さの二極化と言われているような、最も長くなっているところについてはまさにそういうことが、若年のところで週六十時間以上の割合というのが多くなっておりますので、私どもとしては、やはり長時間労働というものはできるだけ直していくということが必要だと思っております。

 こういったところは、新しい労働時間設定改善法のもとで我々がいろいろな施策を講じていく上での一つのポイントになるだろうというふうに思っております。

福島委員 過重労働からさまざまなことがスタートする。一つは、メンタルヘルスの障害を通じて自殺といったようなことにつながる場合もあると思います。また、過重労働が脳・心血管疾患、心筋梗塞でありますとかクモ膜下出血でありますとか、こういったものにつながって過労死につながる、こういう二つの経路があるのではないかというふうに思います。

 過重労働の問題については、ただいま参考人から御説明がありましたように、近年増加しているのではないか。近年の調査、例えば総務省の労働力の調査では、週の労働時間が三十五時間未満の者及び六十時間以上の者の全体に占める割合がともに増加する一方で、三十五時間以上六十時間未満の者が減少する、そういう傾向が見られております。特に、三十歳代の男性で週労働時間が六十時間以上の者は、平成十六年では、平成五年に比べて四十七万人も増加し、二百万人になっている。

 ただいま参考人から御説明のあったとおりでございますけれども、二極分化というものが進んでいる。この十年ほどの企業のリストラの流れの中で非正規社員が増加をし、そして減少した正規社員は長時間労働を強いられている、こういう二極分化の構造があるわけであります。大変深刻なことだと私は思います。

 また、国勢調査、これは二〇〇〇年に行われたものでございますけれども、年齢別の週平均労働時間の調査では、二十五歳から三十九歳まで、ちょうど働き盛りのところが四十時間台の後半になっているというような実態が指摘をされているわけであります。

 こういう実態というものを適切に把握して、そしてどのようにこれに対して政策的にかかわっていくのか。また、これは経済界に対しても私は強く主張すべきことだというふうに思っておりますけれども、その実態把握が大切であります。

 厚生労働省では、労働時間等総合実態調査、こういうものを行っているわけであります。これを見て幾つか気づくことを指摘したいと思いますが、四十五時間以下と四十五時間超、こういった区分で分けているわけでありますけれども、事業場の規模が大きくなればなるほど四十五時間超の長時間労働を強いられる労働者の割合がふえている。まさに長時間労働というのは大企業の問題なのではないかということが一つあるのではないかと思います。

 そしてまた、業種ごとにもさまざまな違いがありますけれども、この中で私が大変おもしろいなと思いましたことは、金融広告業、これは四十五時間超のグループを一まとめにすると、わずか六%にしかならないのであります。ワーストスリーは、運輸交通業、教育研究業、貨物取扱業。こういったところは、はるかに高い、二〇%を超える数字になっているんですけれども、金融広告業というのはわずかに六%だ。これは不思議だなと私は実は感じました。

 といいますのは、日本の雑誌であるエコノミスト誌でありますけれども、先日特集を組みまして、「娘、息子の悲惨な職場」という特集を三月に組んでおりまして、どのように日本人の働き方が悪くなっているのかという特集だと。特に、娘、息子でありますから、我々の子供の世代が大変だ、こういう指摘だと思います。

 その中で金融業の話が出ております。「夜遅くまでいるのは勉強だ、と言われ」こんな見出しがついておりますが、「仕事が九時、十時までかかるのは当たり前だ。 「残った仕事は家に持って帰ってやれ」。上司に急かされる。最近では、金融機関に対する労働基準監督署の目が厳しいからだ。その一方で、」この登場人物は剛というんですが「出勤簿に、「勤務時間八時から二十二時」と記入すると、上司が言う。「書き直せ」。そして、「夜遅く、この時間までお前がいるのは勉強のためなんだよ。だから、残業はつけるな」と。」というような実態が、これは囲み記事でありますけれども紹介されている。

 私の身近でも、金融業というのは、私の家内も銀行で働いておりましたので、こんな実態ではないわなというような、すごく実感をするのであります。こういう低い数字がそのまま報告されているというのは、これは基準監督署の調査でありますけれども、実態把握としてはいかがなのかなという気が私はするのであります。

 これはあくまで基準監督署の調査でありますから、一定の限界があるということもそのとおりだと思いますし、先ほども言いましたように、上司が基準監督署が厳しいんだからつけるなと、こういう企業の姿勢こそが私は問われなきゃいけないというふうに思うわけであります。ただ、そういった企業の防衛策みたいなものはあるのかもしれませんけれども、いずれにしても実態を適切に把握する必要があるというようなことを考えるわけでありまして、政府として今後の取り組みについて、お考えをお聞きしたいというふうに思います。

青木政府参考人 統計調査の点であります。

 お話しの労働基準監督署の調査というのは、労働時間等総合実態調査ということでやっているわけでありますけれども、労働基準監督官が事業場を訪問いたしまして、聞き取りチェックをして調査するというやり方をしております。これだけではなくて、ほかの統計調査で見ましても、毎月勤労統計調査などで見ましても、これは常用労働者を五人以上雇用する事業所でありますけれども、金融業については、全産業平均しましても、一般労働者の総実労働時間については大幅に短いわけでありますし、情報サービス・調査、広告業についても若干短くなっているということで、統計調査としては、お話しになりました総合実態調査の結果が統計調査としてそんなに特異な結果であるとは思っておりません。

 しかし、おっしゃいましたように、いろいろな対策を講じたりする上には、実態把握というのは、当然これはまず基本になることであります。業種別の労働時間の動向というのも、お話しになりましたように、私どもとしても今後とも十分精査して把握に努めて、的確ないろいろな行政施策の展開に役立てていきたいというふうに思っております。

福島委員 今回の法改正では、過重労働による過労死や自殺を予防するといったような観点から、長時間労働者に対して産業医が介入する、そういう仕組みを導入することとしたわけであります。

 これは私は大変評価されることだと思いますし、その体制の構築というものをきちっとやっていただきたいし、そしてまた適切な介入というものをしていただきたいというふうに思います。

 先ほど御法川委員の方からも御指摘がありましたように、なぜ百時間かということについては、百時間を超えるとリスクがそこから増大する、こういう御説明が参考人の方からはございました。ただ問題は、リスクというのはそこから急速に、オール・オア・ナッシングというわけではありませんで、百時間の前のところでも、これはあくまで努力義務ということにとどまっているわけでありますけれども、こういうところもどう適切に行うのかということは大変大切だと思います。

 また、特に過労死、心血管疾患、脳血管疾患の場合、どれほど予兆がきちっととらえられるのかということなんだと思います。血圧が上がっているとか、非常にわかりやすいものがあればいいんですけれども、そのあたりは、ですからマニュアルをつくってきちっと対応するということでありますけれども、産業医としても、事業主に対してどのようなことを指導するのか、指示するのか、ここの判断はかなり微妙な話になるんじゃないかというふうに私は思うんですね。

 根拠はどこにあるのか、こういうふうに言われたときに、そういう根拠になるようなものも行政の側が、こういう場合にはこういう指導をすべきであるというようなことをやはりつくっていただく必要があると思いますし、個々の事例に合わせて、事例をいろいろと分析して、それに対して、現場で個々の事例に当たる産業医が適切にその指示ができるようにやらなきゃいけないというふうに私は思います。

 また、例えばうつのような場合で、軽度のうつで、これを見逃したりして自殺につながった、こういう場合は、産業医は一体どういう診断をしていたんだ、どういう判断をしていたんだ、こういうことを問われるようになるわけで、問われることに恐らくなるだろうと私は思うわけでありますけれども、そういう意味では、さまざまな事例に対してどのような介入の指示を行うのかということについては詳細なマニュアルが必要だと私は思いますけれども、このあたりの点について政府の見解をお聞きしたいと思います。

青木政府参考人 面接指導においては、医師は、労働者に直接面談をして、労働者の勤務状況あるいは自覚症状などを聞くことによりまして健康状況を把握して、そしてその労働者に対しまして、休養だとかあるいは睡眠時間を確保しろ、あるいは生活習慣の改善をしろなどと必要な指導を行うということを想定しておりますし、また、面接指導の結果に基づいて、事業者に対しましては、労働時間の短縮あるいは作業の転換など、労働者の健康を保持するために必要な措置について意見を述べるということにしております。そういうことを通じて労働者の健康管理に寄与することとしております。

 具体的なやり方については、マニュアルをつくると先ほども申し上げましたけれども、そういう中でいろいろ研究して、できる限り具体的にわかりやすいものをつくっていきたいというふうに思っております。

福島委員 できるだけそういうバックアップをしっかりしていただきたいと思うんです。というのは、労働時間を短縮しろといっても、本当に長時間労働が求められているような人というのは、現に目の前に仕事があるのでやっているというわけでありますから、なかなか代替がいないというような事態も多分あるんだろうと私は思います。

 そこで、どれだけ有効な介入ができたのかということが問われてくるだろう。こうした体制でやっていくということは大変意義のあることだと思いますけれども、その後、どのような有効な介入ができたのかというようなことについてはきちっとフォローしていく必要があるというふうに思いますし、ぜひとも政府としてもその取り組みを進めていただきたい、そのように思っております。

 次にお尋ねしたいことは、多様な働き方に対して労働者の安全をいかに守っていくのか。この労働安全衛生法の改正の中でも、請負業等についての安全確保のための取り組みが盛り込まれているわけでありますが、特に過重労働という観点からお尋ねをしたいと思います。

 本年三月三十一日に東京地裁において、派遣労働者の過労自殺に対して、企業に対して損害賠償を求める判決が下されました。これは請負なんですけれども、請負であっても実質派遣労働者であるという判断で監督責任が問われた事例であります。派遣労働者への認定は初めてのことであり、大きく報道されておりました。

 多様な働き方が広がる中で、本改正に基づく対応だけではなくて、そうした多様な労働形態の中で過重労働を防ぐための、過重労働による被害から労働者を保護するための措置について引き続き検討を行い、適切に措置される必要があると思いますけれども、大臣のお考えをお聞きいたしたいと思います。

尾辻国務大臣 今お話しいただきましたように、今後は、育児、介護や自己啓発等、個々の労働者の事情でありますとか、またニーズの多様化が進んでいることに対応した労働時間等の設定がますます求められることになるというふうに考えております。

 そこで、今般、全労働者一律の時短を目指す時短促進法について、個々の労働者の生活等に配慮した労働時間や休暇、休日の設定に向けた労使の自主的取り組みを促進する労働時間等設定改善法に改めることを提案させていただいているところでございます。

 この改正法の成立後は、その円滑な施行に努めますとともに、働き方の多様化に伴う労働条件決定の個別化の進展や個別労働関係紛争の増加等に適切に対応するため、労働時間法制でありますとか労働契約法制についての検討も精力的に進めてまいりたいと考えておるところでございます。

福島委員 ぜひ、変化を先取りするような形で取り組みを進めていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

 先ほど申しましたように、「娘、息子の悲惨な職場」、こう言われるような時代になったんだろうなというふうに思います。この十年間というものは、先ほどの多様な働き方ということもありましたけれども、過剰雇用の時代から、企業の競争力を回復させなければいけない、そしてまた、労働分配率も非常に高くなっていたものを見直さなきゃいけないというようなことで、さまざまな取り組みがなされてきたと思います。これは、政府の中においては、経済財政諮問会議を初めとしまして、内閣府の方々がさまざまな形でいろいろな御提案をなされてきたんだというふうに私は思っております。

 十年たって、大分そういう意味では過剰雇用というのは変わったと思いますし、労働分配率も下がってきた。企業の競争力はといいますと、これは上がったんでしょうか、どっちなんでしょうか。

 ただ、私が思いますのは、例えばILOの資料では、週労働時間五十時間以上の労働者の割合は、日本は二八・一%です。アメリカは二〇%、ドイツは五・三%、フランスは五・七%、スウェーデンは一・九%、こういうことになっているわけであります。スウェーデンの企業が競争力が決して低いということはありません、むしろ競争力はあるというふうに言われているんだろうと思います。

 日本の企業の現状は、非正規労働者をふやし、そういう意味では、総賃金をできるだけ抑制し競争力を回復しようとしてきた。気がついてみたら、正規労働者は長時間労働を強いられるような状況になっていた。率直に言って、こういう働き方をしないと、日本の企業というのは競争力を維持できないのか、日本の経済というのは競争力を維持できないのか、その理由は一体どこにあるのか、そこのところなんです。

 先般、内閣府で二十一世紀ビジョンというものを示していただきました。時持ち社会という言葉だったかと思いますけれども、時持ちどころではなくて、追いまくられておる。特に二十代、三十代、若いところにその負担が集中しているわけです。少子化ということを言って、そしてまた、働き方を変えなければいけない、こういうことを言っても、現に二十代、三十代のところがこれだけの過重労働をしていて、少子化に対してどのような対応をするんだ。

 働き方を変えろということはずっと前から言われてきましたけれども、そしてまた時短促進法も一つのシンボルだったと思います、それなりに効果があったというふうに私は思っておりますけれども、いま一度、これからどうしていくのか。当然、企業の競争力、経済の競争力がなければいけませんけれども、そういうことを維持しながらどういう道が描けるのか。

 このあたりについては、御専門でありますから、大田先生の方から御意見をいただければと思います。

大田政府参考人 長時間労働を回避しながら生産性を向上させるということにつきまして、私どもが行っております調査分析からは二つの点が指摘されるかと考えます。

 一つは、生産性を向上させるためには労働の質の確保が重要であるということです。内閣府が行いました企業に対するアンケート調査で、企業の競争力が上がったのか下がったのか、そのときどういう要因が重要であったのかということを尋ねますと、競争力が強くなったケースでも弱くなったケースでも、人材の質の高さ、これがかぎになります開発力、販売力といったものが上位に上げられております。

 それから、二つ目の要因としまして、日本全体で人的資源がどれぐらい生かされるかという問題があるかと考えております。これにつきましては、ことしの経済財政白書で御報告いたしましたけれども、集中調整期間内に人とか資金という日本が持っている資源がどれぐらい効率的に配分されたのかということを見ますと、労働市場におきましても、労働移動が活発になって、より柔軟に人という資源が活用されるようになった、これが生産性の上昇につながっているという分析をしております。

 こうした分析を踏まえますと、生産性向上のためには、人間力の向上を通じた質の高い労働力の確保、それから企業自身がイノベーションをやっていくということ、それから日本経済全体につきましては、多様な人材が有効に活用されるような柔軟な労働市場をつくっていくことが重要だと考えております。これによりまして、労働時間が減少する中でも高い生産性を実現することは可能であるというふうに考えます。

福島委員 とても難しいことをすらすらと言われたのでよくわからなかったんですが、要するに、派遣労働者がふえて企業の人件費が下がって、生産性が上がったということを言いたかったんでしょうか。この間、人材の質がどうなったのか。さっきの銀行の話がありました。遅くまでいるのはおまえの勉強のためだ、こういうことを言っている企業が、人材の質が上がるんでしょうかね。私はそう思いますけれどもね。

 多分、労働力の移動というのは、派遣とかそういうところに入っている人がふえて、移動したんでしょう。移動したんだけれども多分余り幸せじゃないかもしれないなという気もするんですけれども、企業からすれば、人件費が下がりますから、それはそれでよかったな、そういう分析じゃないんですか。違うんですか。

大田政府参考人 労働の質が大事というのは、量を働かせるということではありませんで、競争力が強くなった企業に、何がかぎになったかというと、開発力とか販売力という、人材の質をうまく生かす、生かして力を高める、これが人材の質を生かした企業です。弱くなった原因は何か、これを聞きましても、やはり人材の質を生かし切れなかった、つまり、開発力や販売力が弱くなったと答えているという意味です。

 ですから、人材の質をよりよく生かした企業が生産性を高めるということになります。

福島委員 ですから、質を生かすということと長く働かせればいいんだということと、頭の切りかえをしていただかなきゃいけないということだと思うんですね。ですから、どの程度の比率で質を高めたところがあるのか、私、わかりませんけれども、先ほど紹介したような、長く残っているのはおまえの勉強だというようなことを言っているところが質を高めるような企業だとは到底思えないというふうに私は思うんですね。

 ただ、これは、民のことですから、政府が音頭をとって、こうせいああせいというふうにはなかなか言われないところだと思いますけれども、むしろ、民間企業、経済界の意識の改革というものを、ぜひ経済財政諮問会議なり、しっかりと取り組んでいただきたい、そのようにお願いをいたしたいというふうに思っております。(発言する者あり)

 続きまして、不規則発言がありましたが、石綿の粉じん安全濃度の問題について、時間が限られておりますので、お聞きをいたしたいというふうに思います。

 先日、日経新聞で、石綿の粉じん安全濃度を旧労働省は二十九年間放置をした、ことし四月に変更したということなんですね。ただ、これは、どういう経緯でこういうことになったのかということをきちっと説明していただいておいた方がいいと思うんです。

 私も専門家の方からお話をお聞きしますと、結局、発がん物質というものについて、どういう基準をつくるのかということは科学的にはなかなか難しくて、産業医学界そのものでも発がん性ということに着目して安全基準をつくったのはごく近年の話であって、そうした客観的な数値がありませんと、安全基準を見直すといいましても進まないという話になるんだろうと私は率直に思ったわけでありますけれども、この間の経緯について、きちっと御説明をいただきたいと思います。

小田政府参考人 作業環境中の石綿濃度の規制値につきましては、我が国では、作業環境の良否を判断する基準であります管理濃度として設定されております。

 この管理濃度の設定に当たりましては、日本産業衛生学会あるいは米国産業衛生専門家会議、こういったところにおける勧告値などの最新の医学的知見をもとに、厚生労働省に設置されております労働衛生の専門家から成る管理濃度検討会において検討の上、実施しているところでございます。

 この管理濃度検討会におきましては、昭和五十一年に一リットル当たり二千本ということで決定したところでございますが、その後、平成五年に再度検討いたしまして、このときは改定が必要であるという結論は得られませんでした。さらに、平成十年には米国の産業衛生専門家会議の勧告値、あるいは平成十三年には日本産業衛生学会の勧告値の変更などもございましたので、それを受けまして、平成十四年から検討を行ったところでございます。

 この検討結果に基づきまして、平成十六年の十月に、石綿による肺がんや中皮腫のリスクを考慮しまして、管理濃度を一リットル当たり百五十本へ改定し、この四月から実施したものでございます。

 こういった管理濃度の設定につきましては、例えば、がんによる死亡のリスクを可能な限り低くするということを原則としまして、これは粉じんの発生する場所でありますので、石綿を分離して測定することが一般環境中と比べて難しいものでございますので、そういった測定、分析技術の限界なども考慮の上、定めているものでございます。

 現在の値は、国際的な管理レベルと同レベルというふうなレベルで管理されているものでございます。

福島委員 以上で、時間が終わりましたので質問を終わります。どうもありがとうございました。

鴨下委員長 次に、城島正光君。

城島委員 民主党の城島でございます。

 きょうは四つの法案の改正ということなので、まず時短関係から入らせていただきたいと思います。

 先ほどから御法川先生あるいは福島先生も同じような観点で質問されておりましたけれども、早速、時短問題について、少し本質論を含めて、政府の見解及び大臣の見解をお伺いしたいんです。

 今回の時短促進法改正では、何といってもポイントの一つは、総実労働時間千八百時間をどういうふうに位置づけていくのかということだと思うんですね。ですから、その千八百時間をどういうふうに位置づけるかということについては、まさにこの千八百時間を、先ほど青木局長はそれなりの大きな成果があったと、一言で言えばそういうことでありましたけれども、それは確かにそうだと思うんですが、実際のここ数年間のトレンドで見ると、政府が出されているデータで見ても、労働時間そのものは決して改善はしていない、総実労働時間千八百時間に向けては、逆にこの数年間は労働時間が長くなってきている。

 その要素を大きく見てみますと、所定内労働時間が大体この数年間は横ばいになっていて、時間外労働がふえて、そして、いわゆる有給休暇の消化率がずっと悪くなっている。特に、有給休暇の消化率は五〇%を切っているというのは、どうもここ二十年来、過去をさかのぼるとどうかわかりませんが、いただいたデータからすると、過去ないですね。というようなことを含めて、当初目標とした総実労働時間千八百時間というのはまだまだ道半ばという状況じゃないかというふうに思っているんです。

 そういうことも含めて見て、まず、政府の御見解を聞きたいんですけれども、この労働時間の現状というものをどういうふうにとらえられているのか、そこから御質問したいと思います。

青木政府参考人 労働時間の現状でございますけれども、今まさに委員が御紹介になったとおりだと思います。

 千八百時間を目標に掲げて、この十数年、国全体、国を挙げて、いろいろな関係者挙げて努力をしてきたわけであります。ずっと少なくなってきましたけれども、ここのところ、今御紹介のあったように、下げどまりといいますか、場合によってはやや増加しているという状況であります。

 私が先ほど申し上げましたのは、日本の労働者すべてを平均いたしまして千八百時間でいこうということで大国民運動を展開するという意味では非常に有効な方法だったと思いますけれども、しかし、既にお話にありましたように、労働時間のいわば長さの二極化が生じてきたりいたしましたり、パートやアルバイトで働く方々がふえたりいたしまして、そういった総平均、一色に塗りつぶしたようなやり方というのは、幾ら言っても、今後なかなか実効性あるいは説得性を持たないのではないか。そういう意味で、審議会等でも、時宜に合わなくなってきたというのもそういう意味だというふうに思っております。

 したがって、今御紹介の中でありましたように、やはり今後何に注目してやっていかなければいけないかということを具体的に分析して、私どもも、一つは、やはり所定外労働時間を縮減していくということが一つの道だろうと思いますし、年次有給休暇の取得促進にしても全くおっしゃったとおりでありまして、こういったことを単に今までは年次有給休暇の取得促進ということでいろいろな助成もやりましたけれども、一括してそういうことを進めてきたというやり方を、具体的なやり方を提案したり、あるいはそういったことを進めたりすることによって、もう少し個々にターゲットを絞ってやっていく。

 それから、既にお話に出ましたように、とりわけ長時間労働になっているような層というものについても、そういったことについてどれだけ政府としてやれるかということはありますけれども、労使含めて、そういったところにも具体的な取り組みをやってもらうというようなことだろうというふうに思っております。

城島委員 やはり国全体としての目標がきちっと定まった中で、まさに局長おっしゃるように、きめ細かな、それぞれ労使だとかあるいは地域だとかというところにおいてはそのとおりだと思いますけれども、やはり国全体としての目標というのが明確に定まっていることは絶対必要だと思いますよ。

 なぜかというと、その目標そのものがどういう理念とどういう意味を持っているかということが大事であって、千八百時間には千八百時間なりの大きな哲学とその背景と理念があった。したがって、それなりのインパクトがあったんだと思うんですね。それはちょっと後ほど、私は私なりの千八百時間そして時短についての考え方を申し上げたいと思うんだけれども、少なくともそういう政府、国全体としての理念や哲学をしっかり出した上で、それに基づいてきめ細かな政策、対応が必要だ。そのとき初めてきめ細かな、個々の労使やあるいは地域や業種それぞれの中で、より効果的な、全体の目標に向かっていく上において効果的な施策がつくられ、それが実現していくんだと思うんです。

 だから、それをいきなり、個々きめ細かなという表現は極めてきれいなんだけれども、まさにそれぞれに任せていたのでは、私は、本当に全体として一体どういう方向へ進んでいくかというのがわからない中では、実現性というのは非常に疑わしいというふうに思っているんです。

 そういう点で、ぜひ、今度のこの改正案の中でも、やはり少なくとも総実労働時間短縮をしていくという目標であり、千八百時間という全体としての目標というのは基本として据えておくべきだと思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。

尾辻国務大臣 冒頭お話しになりました現状をどう見るかということ、それからまた、今基本的にどう考えるかということについては、私どもも、先生のおっしゃることと認識は一致しているというふうに思いながらお聞きをいたしておりました。

 そこで、改めてでありますけれども、今後の労働時間対策における目標のあり方については、関係審議会でも、もう御案内のとおりだと思いますけれども、両論ございまして、一つは、目標を掲げること自体に意義が存在し、例えば一般労働者に限って引き続き目標を掲げることが必要であるという御意見、この御意見がございました。それからもう一方に、今後、労働時間が成果に直結しない働き方が一層広がるという展望に立てば数値的な目標は不要であるという御意見、こういう御意見もございまして、両論あったところでございます。

 その両論あった上で、今後の段取りといたしましては、公労使一致して、目標に関して、改正法に基づく指針策定の際に、長時間労働の抑制や年次有給休暇の取得促進等の課題ごとに、その要否や内容を個別に検討していくことが適当とされたところでございます。

 そうしたことを受けまして、今後は、国会でのこうした御論議をいただきながら、改正法の成立後、改めて審議会において御議論をいただきたいと存じておるところでございます。

城島委員 その中で、ぜひ、やはり少なくとも労働時間短縮という目標、そして、今まで掲げていた総実労働時間がフルタイム労働、一般労働者については二千時間を超しているわけですから、まだ当初掲げた目標が達成していないので、少なくとも一般労働者についての総実労働時間千八百というのは掲げ続けてほしいなと強く求めたいと思います。

 それはなぜかというと、私も労働時間短縮問題をずっと現場でやってきたんですけれども、当初は、例の前川レポート以降そうなんですが、なかなか一般的に労働時間短縮というと、代表例でいうと、多くの経営側から、それは怠けることなのかという反応が来たのをよく覚えていますよ。最初のとらえ方はそうだったんです。しかし、今青木局長がおっしゃったように、結論からいうと、そういう認識も変わりながら、やはりこういう社会を目指していこうじゃないかと共有化されたところに、私は、この千八百時間という象徴的な時間短縮の問題が非常に大きく社会を変えてきたという点においては、非常に大きな成果があったと思うし、したがって、ぜひ継続してほしいと思うんです。

 それは何かというと、やはり当時もそうでありましたし、今でもそういう流れの中にあると思うんだけれども、先ほども競争力の問題がありました、企業の競争力、まさに今グローバル化の中でいうと、ますますそういうことが問われている部分があります。

 しかし、もっと大事なことは、企業の競争力もそうですけれども、その前提としてというか、日本社会の再生産能力、代表例では少子化もそうですが、社会全体の、ある面でいうと競争力かもしれないけれども、再生産力というのはずっと低下してきている。少子化がそうであり、治安の悪化がそうであり、教育の荒廃がそうであり、あるいは家庭内暴力を含めていろいろな家族の崩壊も含めてでありますけれども、どんどんやはりそういうことが、社会全体の再生産していく、あるいは活力というものが低下していっている。その最大の要素の一つに、やはり職業人としての労働時間という問題が、すべてではありませんが、極めて重要な問題の一つとしてこの労働時間問題というのはあったんです。今でもあると思います。

 すなわち、個人として見たときに、職業人としての生活があり、家庭人としての生活があり、そして地域社会人としての生活があり、個人としての生活がある。その個人として全体を見たときのバランスが、余りにも職業人としての、企業人としてのところにとられ過ぎている。バランスが崩れているところに、社会全体のバランスも崩れている要因があるというのが一つの本質的なこの問題の中心だったと思います。

 まして、グローバル化していく、あるいは情報化していくという中でいえば、もう一つ、企業人としても自己啓発をしていかなければいかぬ。そのためには、自分で自由に使える時間も必要だ。まさに人材を自分で磨くためにも、そういう面で企業人としても自分の時間が必要だ。まさに企業の競争力強化、人材競争力の観点からもそういう時間が必要になってきている。

 同時に、先ほど言ったように、社会のある面でのひずみ、あるいは社会全体の再生産、活力の低下の一番大きな原因は、家庭機能の低下だと言われていたんですね。私は、今でもそういうのはあると思いますよ。

 まさに家庭でしかできないことがあるわけですね。社会の基本はやはり家庭でありますから、家庭では、まさに人が生まれて、学んで大きく成長して、そこから働きに出て老いを迎えるという、一番基本の単位が家庭である。それに対して、特に職業生活に入った段階において見ると、ほとんど労働時間と通勤時間で大きくとられてしまう、また後の労働安全衛生法にも関連してくるわけですけれども。

 圧倒的に、先ほど言ったように、職業人としての時間にとられ過ぎ、エネルギーをすべてそこに、若い人はほとんどとられることによって、家庭機能の低下の大きな要素になっている。そのことが結果としては社会全体の機能を低下させ、企業の競争力も低下させていっているというところにつながっているということを何とか変えて、全体のバランスを取り戻そうじゃないか、職業人として、家庭人として、地域人として、個人として。そこに千八百というメスを入れるというのは、物すごく大きな意味があったんです。

 だから、それは日本全体の話であり、個々の企業においてもやはりそうしなければいかぬなという認識に経営側、経営者も変わってきたところに、ある面でいうと千八百時間の運動展開と取り組みが大きく成果があったと私は思います。

 残念なことに、その千八百時間というような閣議決定が、どうも調べてみると平成十四年度でなくなった。これは、やはり私は、小泉内閣の労働時間の問題に対する認識というのはほとんどなかったんじゃないかというふうに思わざるを得ないんですよ。千八百とか数字以上に、今概略を言ったんですけれども、そういう背景となっている社会のあり方、あるいは個人としてのあり方、そういったところが背景にあって、それは今まさにもっと重要になってきていると思うんですよ、さらに今でこそ。

 であるがゆえに、やはり、千八百というのは、少なくとも一般労働者については、そういう社会とそういう働き方を目指すんだという意味においてますます重要だと思うので、そういう意味でこれは何としても目標として掲げ続けるべきだというふうに思うんですけれども、いかがでしょうか。

    〔委員長退席、北川委員長代理着席〕

青木政府参考人 千八百時間の意義と効果とについてるるお話がありまして、おっしゃるとおりだというふうに感じてお聞きをいたしていたところであります。

 千八百時間の閣議決定をして政策を進めてきたというのは、一つに、昭和六十年代以降、我が国の内需拡大による貿易不均衡の是正を求める諸外国の声が強まる中で、時短をやはり世界的にきちんと合わせた形で進めていくことが国家的課題となったということも一つあるかとは思います。

 先ほど来申し上げておりますように、国民的な機運をつくって国民運動をするという意味においては、おっしゃるように、確かに、千八百時間というようなわかりやすい、だれしもが納得できる、そういう目標をつくってやっていくというのは大変有効な方法だというふうに思います。

 しかし、お話の中にもありましたように、今後は、例えば下げどまりの状況を見たりいたしましても、あるいは就業形態の多様化の状況を見たり、あるいは労働時間の二極分化の状況を見たりいたしますと、そういったことによってはなかなか実効が上がらないのではないか、あるいは、国民的運動が本当に有効性を持つのかどうかということだろうと思います。お話の中にあったように、個人のさまざまな諸活動、生活における諸活動、あるいは家庭、それと職業生活にかける時間、そういったものの調和といいますか、そういったことがやはりおっしゃったように重要なことだと思います。

 こういうことになりますと、やはり画一的な目標を立ててやるというのはなかなか難しい。個々のさまざまな諸活動は、それぞれ個々の人たちがいろいろなニーズを持ってやる、いろいろな状況の中で求めていくものだというふうに思っております。

 むしろ、今お話に出てきたような個々の生活とのバランス、調和といったものについては、恐らく共通理解を得ることができるだろうと思いますが、それについてさらに具体的な時間数というようなものを掲げてやるというのが本当にいいかどうかというのは、これは審議会でもいろいろ議論はありました。これについては引き続き議論しようということで、もちろん委員がおっしゃったような点からの議論もあって、今後十分議論していきたいというふうに思っておりますけれども、一応、そういう観点から考えているわけであります。

 むしろ、きめ細かないろいろなニーズに応じた対策というもの、あるいは指針というものを、もう少しブレークダウンした形で世の中に提示をしていくということが必要なのではないだろうかというふうに考えているわけでありまして、そういう意味では、政府の計画というようなことよりも、むしろ指針のようなもので示していくというのが今度の考え方でありますけれども、そういうことでやっていきたいということで今回の改正をお願いしているところでございます。

城島委員 やりたいテーマがいっぱいありますので簡潔にお答えいただきたかったんですが、こだわりますけれども、やはりちょっと違うと思うんですね。画一的な目標でそういうことをやっていくと効果が上がらないんじゃないかとおっしゃいましたけれども、そうじゃなくて、上げようとする意思があるかどうかですよ、政府に。やはりそこは、そういう方向へ持っていこうという意思がなければ、それは上がるわけないじゃないですか。

 やはり、こういう国の形にしたいという一環として、職業生活の労働時間という面から見たらこういうふうになってほしいんだ、したいんだというふうに政府が持つということが目標でしょう。その目標へ向かってきめ細かな対応をしていくということであって、どこへ行くのかわからなくてきめ細かなといったってしようがないわけで、その集約した姿を数字であらわすと千八百じゃないですか。そこのところはしっかりとらえていただいて、やはり大臣、そういう意味で、この千八百という意味合いは、単なる数字じゃないわけですから、ぜひ目標を持ってほしいと思いますよ。

 だから、そう言われたからあえて言うと、この労働時間問題というのは、実は物すごく歴史が古いんですよ。とんでもないような話をするかもしれませんが、この問題はギリシャ時代からありまして。有名なアリストテレスは、よく言われたじゃないですか、彼の言う政治学というのは、いわゆるゆとりの政治学と言われたほど、今でいうと労働時間問題ですね。いかに自由な時間をつくるか。政治の最大のテーマというのは、いかに市民にゆとりを与えることができるか、そのゆとりをどう有効に使えるようにするかが政治家の最大の手腕だと言ったわけですね。民主政治の最大のものは、そのゆとりをどう生み出すか、そして使わせるかだと言ったところから、ずっと実はこの労働時間問題というのは歴史があるわけですよ。

 ですから、よく言われるように、オキュペーションの語源もオキュパイド、すなわち、すべてを労働で、労働労働で心が占められてしまう、オキュパイされる、それでオキュペーション。そうすると、要するに、悪を悪とも思わなくなってしまう。労働、過ぎるとですよ、過ぎたら何でも及ばざるがごとしですけれども。だから、そうすると悪いことを悪いと思わなくなる。どこか最近もまた捕まったりしていますけれども、そういう、悪を悪とも思わなくなってしまう。忙し過ぎて心をなくしてしまう。だからビジネスの語源はビジーだと言われているわけですね。

 したがって、人間がだんだん細分化していって心をなくしてしまうから、もう一回、人間が本質を見失わないように、本質を見抜けるような自分を取り戻す、人間全体を取り戻すための日、ホールデー、これはホリデーの語源だと言われているわけですよ。

 だから、人間を取り戻すために、ホリデー、すなわち自分でじっくりと自分を見詰めるとか、自然に親しむとかということを含めて、自己研さんも含めて、そういう時間を持たないと、人間は細分化していって、そういう本質を見失うようになってしまう。そのバランスをとるためにも、労働時間というのは極めて大事だと言われている一つとして先ほど私は言ったわけですけれども、そういうことを含めて、ぜひこの総実労働時間千八百というのを掲げつつ継続されることを強く望みたいと思います。

 次に行かせていただきますが、それでは労働安全衛生法の改正に移らせていただきます。

 先ほども御法川先生の方も質問されておりましたけれども、特に面接指導制度についてお尋ねしたいんです。

 先ほどから御説明されておりましたので、過重労働による脳とか心臓疾患発症、メンタルヘルスとの関連性については、既に、医学的知見としていろいろ厚労省言われているわけですね。

 一点目は、発症前一カ月間ないし六カ月間にわたって一カ月当たりおおむね四十五時間を超えて時間外労働が長くなるほど、業務と発症との関連性が徐々に高まっていく、強まる。発症前一カ月間におおむね百時間または発症前二カ月間ないし六カ月間にわたって一カ月当たりおおむね八十時間を超える時間外労働が認められる場合は、業務と脳・心臓疾患の発症との関連性が強いということを位置づけて、これに該当する労働者に対して産業医等による助言、指導、面接を行うよう、事業者に対し周知、啓発、指導に当たっている。これは、平成十四年度の労働基準局長通知であります。

 これまでのこの指針のもとでは、面接指導制度の実施率が産業医のいる事業所においても約半数しか実施されていないということでありますけれども、今回、法律にこれを明記するということにおいて、どういうような効果を期待しているのか、その意義というのはどういうところにあるのかということをお尋ねしたいと思います。

尾辻国務大臣 まず、ただいまはすばらしいお話、お聞かせいただきましたことに対しまして感謝を申し上げたいと存じます。その上で、ただいまの御質問にお答えを申し上げます。

 今回の面接指導の法制化でございますけれども、近年、過重労働による健康障害や過労自殺が多発するなど、労働者の健康に関する問題が深刻化している状況を踏まえて行うものでございます。これは、先ほど来御答弁申し上げておるところでございます。

 そこで、今回の法制化について申し上げますと、まず一番目として、面接指導について、法律を根拠とした指導を可能とし、その実施率が向上する。二番目として、現行の通達においては、産業医による事業者への助言指導の対象でしかない時間外労働が月四十五時間を超える者についても、努力義務として面接指導に準ずる措置の対象者に含めることができる。三番目として、面接指導の際にメンタルヘルス面のチェックを行わせることにより、職場におけるメンタルヘルス対策の充実強化を図ることが可能となる。四番目に、過重労働対策を衛生委員会等の調査審議事項に追加することにより、労使による自主的な過重労働対策を促進することができる。五番目として、面接指導の実施が広く周知徹底され、労働者に長時間労働に対する健康管理の自覚をより強く促すことができる。今申し上げたような、非常に大きな意義があると考えておるところでございます。

城島委員 そういう中で、平成十五年度に過労死と認定された百五十七名の方がいらっしゃるわけでありますが、そのうち、時間外労働が月百時間以上であった人は実に九割だということですね。したがって、長時間労働と健康というものがいかに密接に関係しているかということをこれでも示しているわけでありますが、実際には、その背後で、恐らく何万とも何十万とも思われる人たちが、長時間労働ゆえ、過労死までに至っていないけれども心身ともに危機的な状況に追い込まれているということが容易に推測できるわけであります。そうした労働者の生命、命や生活にかかわる問題にいかに緊急かつ強力に対応できるかという観点からこの法案というのを吟味していく必要があるというふうに思っております。

 そこで、最初にそういう観点からお尋ねいたしますが、労働基準法上、事業主が時間外労働を管理していない人たちというのは、業種でいうとどういう人たちになるんでしょうか。

青木政府参考人 労働基準法においては、使用者は、労働者に、一日について八時間、週四十時間を超えて労働させてはならないと定められて、原則として労働者の労働時間を管理するという義務を負っているところであります。

 今御質問ありました原則の例外でありますけれども、これは例えば事業や業務の特殊性から、一つには、農業、畜産あるいは水産業に従事する者、あるいは二つには、監督もしくは管理の地位にある者または機密の事務を取り扱う者、あるいは三つ目には、監視または断続的労働に従事する者で使用者が行政官庁の許可を受けたものについては、労働時間、休憩、休日に関する規定の適用が除外をされております。したがって、通常の労働者と同様の労働時間の管理は不要とされているところでございます。

城島委員 ということは、当然ですけれども、では、それ以外の労働者については時間外労働、きちっと事業主が把握をしなきゃいかぬということでいいですよね。

 そうすると、労働安全衛生法上、労働時間に着目したこうした健康確保対策というのは当然重要な視点ですが、まずそれ以前に、労働行政として、まさに賃金不払い残業、最近も多いわけでありますけれども、そうしたものへの厳正な対応あるいは時間外限度基準の遵守といった徹底が必要だというふうに思いますが、この点についてはいかがでしょうか。

尾辻国務大臣 賃金不払い残業は、これは労働基準法に違反をいたします。決してあってはならないものでございます。したがいまして、厚生労働省といたしましては、平成十五年五月に策定いたしました賃金不払い残業解消対策指針等に基づきまして厳正に対処いたしておるところでございます。

 また、健康障害の防止でありますとか生活時間の確保の観点から、労働基準法に基づく時間外労働の限度基準を定めて、労使双方に対する遵守の指導に努めておるところでございます。

 しかしながら、こうした取り組みの一方で、我が国の労働時間法制におきましては、労使協定を届け出れば労働時間を延長できることなどもありまして、企業間競争の激化等に伴いまして、長時間労働に起因する健康障害の増加等の問題が深刻化しておるところでございます。

 こうした状況を踏まえまして、今般の改正において、一定の長時間労働者に対する医師による面接指導を法律上の事業者の義務といたしますとともに、健康への配慮が必要な者に対して必要な措置を行うことを努力義務といたしたところでございます。

城島委員 そういう中で、本改正案において、労働者の時間外労働が月百時間を超えた場合に、事業者は医師の面接指導等必要な対応を講じなければならないというふうに理解してよろしいんですね。

青木政府参考人 過重労働による健康障害を防止するために、月百時間以上の時間外労働を行って疲労の蓄積が認められるという労働者を対象に医師による面接指導の実施を義務づけることとしているわけでありますので、これとともに、事業者は、面接指導の結果に基づいて、必要な措置について医師の意見を聞くということが一つと、それから、その医師の意見を勘案して、必要に応じて労働時間の短縮でありますとかあるいは深夜業の回数の減少などの措置を講ずる、あるいは面接指導の結果に基づく医師の意見を事業場内に設けております衛生委員会や労働時間等設定改善委員会に報告するというような適切な措置を講ずるということ、あるいは三つには、面接指導の結果を記録しておくことなどを義務づけることとしております。

城島委員 面接指導の場合、本人からの申し出というのがこれは必須条件ですか。

青木政府参考人 面接指導を実施するに当たりましては労働者本人からの申し出を要するというふうにしておりますけれども、これは対象労働者の希望と疲労の蓄積の確認のためでございます。したがって、例えば、この改正後の安全衛生法の規定によって、そういった申し出がなくても、健康への配慮が必要なものについては努力義務として必要な措置を講ずることと今回はしておりますので、申し出がない場合であっても事業主は必要な面接指導を行うよう我々としても指導をしていきたいと思っております。

城島委員 ということは、申し出がなくても事業主は配慮するというか面接指導の義務はあるということで解釈していいんですか。

青木政府参考人 法律上の義務づけの一つの手続として申し出をしなさいということにしておりますので、これがないと、義務だと言って強制することはなかなか難しいと思います。

 しかし、一方でまた努力義務として必要な措置を講ずるようにしなければいかぬということに事業主はなっておりますので、我々としては、申し出がなくても必要な面接指導を行うように指導をしていきたいというふうに思っております。

城島委員 やはり、先ほどの時間短縮の問題じゃありませんけれども、時間外労働百時間というのは率直に言って異常ですよね、この時間外労働そのものが。

 現実的に、では、六月、先月に百時間やるとすればどういう勤務実態になるかということを考えれば、先ほども御法川先生もおっしゃっていましたけれども、常識的にはあってはならないぐらいの勤務実態になるというようなことが百時間ですから、これは本当に例外的だ、例外中の例外ということであるべきですよ、べき論として見ると。

 とすると、百時間を超えたところでは、ぜひこれは、本人の申し出があるなしにかかわらず、やはり事業主の責任として、きちっと面接をするとかあるいは配慮をするとかというようなことは義務としてあるんだという時間外労働の時間じゃないでしょうかね、百時間というのは。だから、そういうぐらいの対応が求められると思いますが、もう一度お尋ねします。

青木政府参考人 おっしゃいますように、月百時間の時間外労働といいますのは、そのほかに通常の所定の労働時間があるわけでございますので、二十日とか二十二日で割れば、毎日大変な量の時間外労働をしているということであります。したがって、先ほども申し上げましたように、健康に影響が生ずるということで、今回はその義務づけをして、面接指導の対象とするということにいたしているわけであります。

 しかしながら、私どもが今回お願いしておりますのは、労働政策審議会の建議でも言っておりますが、月百時間を超える時間外労働をしていることと同時に、疲労の蓄積が認められるということを要件といたしているわけであります。

 この疲労の蓄積については、通常、体調の不良だとか気力の減退など、ほかの人には認知しにくい自覚症状としてあらわれるということでありますので、なかなかこの要件に該当するか否かの一義的な判断というのは難しくて、労働者にゆだねざるを得ないということだろうと思います。そういう意味で、やはり労働者本人からの申し出という手続を設けることがいいのではないかと思ったわけでありますし、また、こういった手続をきちんと仕組むということで、逆に面接指導を確実に実施する担保になるのではないかというふうに思っているところでございます。

城島委員 やはり百時間を超えるのは、そんなにいっぱいいては困りますから、本来は、画一的にでも、きちっとそれは申し出があるなしにかかわらずやるべきだと私は思いますよ。そこに本人の申し出ということが前提というか、そこで選別するとやはりおかしいと思いますよ。

 少なくとも、先ほど聞いたように、事業主が時間管理をしているわけですから、圧倒的に多くの人は。百時間を超えたかどうかは事業主及び管理者はわかっているはずですね。とすると、百時間を超えた人に幾ら何でも、例えば申し出があるなしにかかわらずそうやる、あるいは最低限、体調がどうなのかということについて声をかける、配慮をする、ここまではやはり最低限必要じゃないですか。どうですか。

青木政府参考人 おっしゃるように、時間外労働が月百時間を超えるような労働者が申し出をしたときに、それはどうかねと言うような事業主がいるとは思えません。やはり、先ほども申し上げましたように、基本的には、百時間を超えて健康に対する影響が極めてゆゆしいものがあるということでありますので、そこを今回初めて具体的に法律制度の中に仕組んで対応をしようということであります。

 ただ、その際には、やはり疲労の蓄積があってそういう必要があるということを一つの要件といたしているところでございまして、それをいわば確認するすべというのは本人から言っていただかないとなかなかないということだろうと思っておりますし、また、先ほど来申し上げていますように、仮に申し出がなくても、そういった方々については私どもとしては指導をして、きちんと対応ができるようにしていきたいというふうに思っております。(発言する者あり)

城島委員 まさにそのとおりですけれどもね。事業主としての社会的責任をしっかり果たすということをいうと、事業主の義務として、百時間を超えるというところについては、いわゆる申し出とかいうことなしにも、義務としてやはりそこは整備しなきゃいかぬのじゃないかと思いますよ。事業主の社会的責任として。ぜひそこは強く私としては主張させていただきたいですね。

 どう考えても百時間というのはやはり異常ですし、そういうことが本来、もう一つ言えば、またちょっと危機感、危惧感があるんですよ、これは。実は、百時間ということでこういうふうにすること自身において、絶対あっちゃならないことだけれども、これで場合によっては百時間を超しても残業させることができるみたいに事業主が思いかねないわけですよ。

 これも、とんでもないことだけれども、そういうふうにつながりかねないところもあるわけなので、やはりここは義務としてきちっとそういうことを整備する、申し出があるなしにかかわらずというような方向へ持っていくようにやっていただかないと、かえって、百時間だ、八十時間だ、やれるじゃないかみたいなことで錯覚をする、これを悪用する事業主や経営者もいないとも限らないというところを強く指摘させていただきたいというふうに思います。これは本当にぜひお願いしますよ。

 時間があればこれはもっとやりたいんですが、また次回やらせていただきます。

 それからもう一つ、メンタルヘルスに関連したところでありますけれども、私も実は、前に申し上げたように、メンタルヘルスを職場でずっと二十年近くやってきたところからすると、実は、百時間を超えるような過重労働が続く場合、特にまじめな人で、こういうメンタル、特にうつ的になる人が多いわけですけれども、自分からはなかなか言い出せないんですよ、そういう人に限って。まして、自分からは言い出せない、同時に、かといって、家族とか職場を含めて本人の周囲の気づきとか理解がないような場合ですと、症状が悪化していくわけですね。

 ですから、もう一つ、家族の申し出というのを、これはプライバシーを保護するものも含めながら、やはり何らかの形で位置づける。すなわち、家族が気軽に面接指導についての相談というのを事業場とか産業保健スタッフや産業医に受けられる体制を整えるというようなことが必要じゃないかと思うんですが、これはいかがですか。

    〔北川委員長代理退席、委員長着席〕

青木政府参考人 今委員御指摘のとおりだと思います。労働者のメンタルヘルス不調には家族が気づくことが少なくないわけでありますし、そういった家族による気づきというものを端緒として必要な対応をとる、あるいはとれるということは重要なことだというふうに思っております。

 そこで、労働者のメンタルヘルス不調に気づいた家族の方々がこの制度に乗って労働者本人の面接指導を希望する場合には、事業場における措置としましては、もちろん労働者個人のプライバシー保護にも配慮しつつやらなければいけませんけれども、事業場内の産業保健スタッフに対して容易に相談ができるというような仕組みをつくることや、あるいは産業医などに直接相談をするというようなことが労働者本人にとっても重要だと思いますし、こういったことで、新たに示すメンタルヘルスについての指針の中でも、今お話しのような点もいろいろ考えまして、具体的に考えていきたいというふうに思っております。

城島委員 具体的に考えていきたいということでありますので、ぜひ、それこそきめ細かに具体的にやってほしいと思います。

 やはりちょっと気になりますので、百時間を超えるところの申し出を行わなかった人についてもぜひ義務化してほしいというふうに言いましたけれども、それをしてほしいんですが、少なくとも面接指導の対象となるよう、せめて、努力義務規定にするということであれば、省令にはきちんと書き込むことはするんですね。そこだけちょっと確認をしておきたいと思うんですけれども。

青木政府参考人 これらの具体的なやり方については、お話がありましたように、省令以下で規定をしていくということになります。

 先ほど来申し上げていますように、そういった努力義務の範囲の方々、あるいはそこにまでいかなくても必要なものについては、我々としても指導していきたいと思っておりますので、必要な規定を整備いたしまして、その対応に万全を期していきたいというふうに思っております。

城島委員 万全を期すということですから、本当に万全を期していただきたいと思いますね。

 その次に、その努力義務規定に基づく省令についてちょっと確認をさせていただきます。

 六十六条の九、この読み方でありますけれども、これまでの局長通知を踏まえて、労働者の時間外労働が月八十時間を超えた場合、本人の申し出があれば、事業者は医師の面接指導等必要な対応を講じるよう努めなければならない、こういう理解でいいんですね。

青木政府参考人 今度の六十六条の九の新しくできる法律の規定に基づきまして、事業者が、面接指導の対象とならないものにつきましても、健康の配慮が必要な人については面接指導に準じた措置を講ずるよう努めるということになっておりまして、時間外労働が百時間を超えたか否かにかかわらず、事業者に対する指導をして、いろいろな、先ほどお話に出たような労働者も含めて措置の対象になるように指導していきたいというふうに思っております。

城島委員 ということは、月四十五時間を超える場合についてもそういうことだと理解していいんですね。

青木政府参考人 月四十五時間というお話でありましたけれども、これは今、努力義務の対象として、労働政策審議会の建議で言われたものを踏まえて考えているところでありますけれども、その審議会の建議では、八十時間を超える時間外労働について疲労の蓄積が認められる者について対象とするということであります。もう一つは、事業場で定めた基準に該当する労働者も対象にするというふうになっております。

 私どもとしては、事業場において、事業実態あるいは労働実態に応じて、さらに範囲を広げて、その事業場で基準を定めて対象にするということを考えているわけでありますので、今お話ありましたような月四十五時間を超える時間外労働を行った者、これは一方で、労働基準法上のいわば残業の指針のことをお話しになったと思うんですけれども、限度基準の線でありますので、こういった方々についても今のシステムの中で監視をしていきたいというふうに思っております。

城島委員 それでは、その面接指導の対象者について質問をしたいと思うんです。

 最近では、管理監督者であることを理由に、労働時間の管理責任をある面でいうと労働者に転嫁しようという傾向が強まっているというふうに思っていますけれども、管理職の割合は雇用者全体で約三%強というデータがあります。それに対して、脳・心臓疾患で労災補償された方は全体の二〇%弱、精神障害は全体の一四%も占めていて、労働時間管理が行われていない中で、仕事に対してブレーキがかからない、そういう状態に放置されているのではないかという危惧をしているわけであります。

 そうした面でいうと、面接指導制度の対象に裁量労働者と管理監督者も含まれるんでしょうか。

青木政府参考人 管理監督者とかあるいは裁量労働者でありましても、労働安全衛生法上、労働者であれば当然にその適用があるわけでありまして、したがって、面接指導の対象となるというものでございます。

城島委員 では、もう一つ確認させていただきますが、管理監督者の場合は、時間外労働は把握されていないですね、さっき言ったように。したがって、時間外労働の有無にかかわらず、疲労の蓄積を感じた労働者本人が申し出た場合について面接指導の対象となるということでしょうね。なるのか。

 管理監督者が面接指導を申し出た場合、六十六条の八の二項と三項、四項、五項についても適用されるというふうに理解をしていいんでしょうか。

青木政府参考人 管理監督者は労働者でありますけれども、いわば経営側の、経営側といいますか、事業側の立場に立って労働をするということでありますので、先ほど申し上げましたように労働時間の諸規定が適用除外とされているところであります。しかし、今ほど申し上げましたように、労働安全衛生法上、つまり労働者として健康を確保するということは、これは同様に必要なことでありますし、法律上当然のことであります。そういう意味で、時間管理についてされていないということと、この百時間との関係でお話があったと思います。

 これについてはどうするかということでありますけれども、こういった規定の適用除外となっている、時間管理についての適用除外になっている管理監督者につきましては、管理監督者みずからが、時間外労働が百時間を超えて疲労の蓄積があると判断して申し出を行ってもらう、そうした場合に面接指導を実施するというふうにしたいと思っております。

城島委員 百時間を超える、ちょっともう一回言ってください。どういうことですか。時間管理していませんよね、百時間を自分で管理するという意味ですか。

青木政府参考人 今申し上げたのは管理監督者についてでありますけれども、管理監督者は事業主がそういう意味で時間管理をする必要がないわけでありますので、事実上していないと思います。したがって、その人自身がみずから管理をしていただいて、そして疲労の蓄積があると判断して申し出を行ってもらうということを考えているわけでございます。

 それから……(城島委員「何を管理してもらうの」と呼ぶ)いや、実際に労働はいたしているわけでありますので、実際に現実に労働をしているというわけでありますね。そういった者は、自分自身で管理をして、そして疲労の蓄積があってこの適用を受けるという申し出をした場合には、それは面接指導を実施するということで、そういう取り扱いをしたいというふうに考えております。

 裁量労働者について先ほど申し落としてしまいましたけれども、裁量労働者については、事業者は現在でも裁量労働者の労働時間の状況に応じて健康確保措置を講ずることとされております。したがって、労働時間をもとに事業場ごとに取り決めた方法によって時間外労働を算出して、この要件に該当した場合には面接指導をきちんと実施してもらうということになるというふうに思っております。

城島委員 後半部分はわかったんですが、管理監督者については、自分で管理してというのは労働時間をという意味ですか。労働時間を。だったら、管理監督者も時間管理すればいいじゃないですか、そういう仕組みに。どうなんですか。

青木政府参考人 管理監督者について時間管理をしなければいけないということを言っていないのは、その使用者に対してであります。使用者が使用者の責任として労働者の時間管理をするというのは、労働時間の諸規定の適用除外にしておりますので、これはする必要がないわけであります。事業主にとっては時間管理をする必要はないけれども、働いている人自身は、自分で管理をして、そしてこの面接指導の要件であります百時間以上残業をし、それから疲労の蓄積があるということであれば、この規定の適用を受けて、そしてきちんと面接指導を受ける、受けていただきたい、こういうことであります。

城島委員 もう一度確認しますね。管理監督者は、使用者は時間管理する必要ないけれども、本人はする必要があるということですね、この面接制度を受けようと思えば。百時間を超えたということの実績があって疲労の蓄積があって申し出るということですね、どうも聞いていると。管理監督者については自己管理しろということですね、時間外労働を。それでこの規定と同じように、百時間を超えた場合にはそうだ、八十時間のときはこうだ、こういうふうになるということですか。

青木政府参考人 今委員が御質問あったとおりでございます。

城島委員 それはないでしょう、だって自己管理しろというのは。そうしたら、管理者についても時間管理するようにしてよ、本当に。自己管理しろというのはおかしいでしょう、大体。それでなければこの制度を受けられないというのは、それはないんじゃないの、幾ら何でも。もともと使用者が時間管理するあれから対象外、だから聞いたんだけれども、対象外になっていて、今度は、その制度を受けようとしたら、自分で管理しろ、それが条件だと。それで百時間だと。それはちょっと矛盾しているんじゃないですか。

青木政府参考人 百時間を超えて時間外労働をした労働者については、一般に、事業主がきちんと管理をしていただいて、そして面接指導を受けなければいけないということにしているわけでありますが、しかし、事業主は管理監督者については時間管理をしないでいいわけであります。したがって、管理監督者みずからが、百時間を超え疲労の蓄積が認められると該当すると自分で判断していただいて、そして言っていただければ、面接指導に係る申し出があったということで面接指導を実施するということで私どもとしては取り扱いをしていきたいというふうに思っています。(発言する者あり)

城島委員 そういう意味ですか。百時間ということではなくて、管理して、自分でどうも蓄積があると思ったらと。その後半部分が大事なんです。百時間を超えたという、その百時間とか八十とかいうところは、それは規定というか、条件じゃないという意味ですか。はっきりしてくださいよ、これは。

青木政府参考人 先ほども申し上げておりますように、事業者としては時間管理をしないわけでありますので、そういうことで、実質上、百時間につきましては、当該管理監督者自身が言えば、後は疲労の蓄積があったものとしてこの面接指導を受けさせるということだというふうに思っております。

城島委員 何か奥歯に物が挟まったような言い方で、要するに、やはり疲労の蓄積があるという申し出があれば、わかりやすく言うと、それは百時間を超したんだろうと認めるような感じで同じようにやるということですね。わかりました。最初からそう言っていただくと時間がかからなかったんだけれども。

 それでは、時間がかなりないので、もう一つちょっと確認をしたいんですけれども、契約パートとか有期雇用あるいは派遣労働といった、例えば契約期間が短い場合も、この面接指導制度の対象ということでよろしいんですね。確認をします。

青木政府参考人 派遣労働者あるいは有期契約労働者あるいはパート労働者のいずれにつきましても、労働安全衛生法上の労働者であれば、これは適用があります。したがって、御質問のように、要件に該当すれば、当然に面接指導の対象となるものでございます。

城島委員 それでは、ちょっと時間に制約がありますので、面接制度から一たん離れさせていただきます。

 労災保険法改正について質問をさせていただきたいんですけれども、今回の二重就職者について、保険給付の基礎日額の算定についての問題でありますが、これは、従来とは異なって二重就職者に係る給付基礎日額は合算されることになる、これは労働者が被災したことにより喪失した稼得能力を補てんするという観点からは、被災者の従来稼得していた額をできる限り反映することが望まれるからである。資料としてお渡ししたと思いますが、これは昨年の十二月三十日発行のジュリスト増刊号に京都大学の西村健一郎先生がお書きになっている一節であります。

 西村先生といえば、審議会の労働条件分科会の座長としても大活躍された方でありますし、最近では労働契約法制の在り方に関する研究会のメンバーであります。今回の改正案も、実は、当然、西村先生がお書きになったとおりになるのかと思ったら、そうじゃないんですね。これはどう考えても西村先生が指摘されているとおりにすべきだと思いますが、いかがですか。

尾辻国務大臣 今お話しの複数就業者の給付基礎日額のあり方につきましては、お話にもございましたけれども、学識経験者による労災保険制度の在り方に関する研究会の中間取りまとめにおきまして、複数の事業場からの賃金を合算した額を基礎として定めることが適当とされたところでございます。

 しかしながら、審議会におきます検討の中では、この問題は通勤災害のみならず業務災害にもかかわる影響の大きな問題であり、給付の増加に係る負担のあり方など慎重な検討を要すること等の問題点が指摘をされまして、昨年十二月の審議会の建議におきましては、この問題について、複数就業者の賃金等の実態を調査した上で、専門的な検討の場において引き続き検討を行うことが適当であるという考え方が示されておりますので、これを踏まえて対応してまいりたいと考えておるところでございます。

城島委員 ぜひこれは合算する形でやってほしいと思いますね。ぜひそれはこの西村先生の御指摘どおりの方向でやっていただきたいということを強く申し上げておきたいと思います。

 それから、アスベスト問題の労災認定についてちょっと質問と要望をさせていただきます。

 同時に、既にこの厚生労働委員会の理事会等を通じて提示をさせていただいていると思いますけれども、私ども民主党は、アスベストなど長期にわたる潜伏期間が経過した後に症状があらわれる疾病に起因する業務災害に関する労働災害保険給付については、労災保険法の四十二条の時効の規定によって時効が消滅した後も請求を可能とする趣旨の修正案を実は今用意しているところであります。

 これは、この間、各種報道においても指摘されたように、アスベスト被害が明らかになるにつれて、発症原因のほとんどがアスベストとされるがんの中皮腫で死亡した人の労災認定が死後五年という時効の壁に阻まれているというケースが相次いでいるということでありまして、何らかの立法的な解決が必要であるという思いから提起をさせていただくわけであります。

 この労働安全衛生法等の改正案が審議されている中で、私ども国会議員がこの段階でこのアスベスト問題について緊急にできる法的手当てが、私どもが今検討している、近々出させていただく修正案として盛り込まれているというふうに思いますので、これは党派を超えて、超党派でぜひ取り組んでもらいたいものだなというふうに思っていることをまず述べさせていただきたいと思います。

 そこで、現行法制度に関するこれまでの解釈についてちょっと確認をさせていただきたいわけでありますが、三つの条件、すなわち、医学的な証拠によって原発性肺がんまたは悪性中皮腫であることが客観的に裏づけられるという一つの条件。さらに二つ目に、職歴として石綿粉じん吸引の職歴を有することがこれも客観的に裏づけられるという条件。それから三つ目に、本人の認識としてでありますけれども、遺族補償給付の場合は、被災者の遺族において、被災者の病名が原発性肺がんまたは悪性中皮腫であること、及び被災者に石綿粉じん吸引の職歴があることについては認識をしていたが、当該疾病が業務に起因するものであることについての認識がないままに死亡から五年以上が経過した。休業補償給付の場合については、被災者本人において、被災者の病名が原発性肺がんまたは悪性中皮腫であること、及び石綿粉じん吸引の職歴のあることについては認識していたが、当該疾病が業務に起因するものであることについての認識がないまま療養のために休業を開始してから二年以上が経過した。それぞれについてでありますが、こういう三つの条件がそろっている場合、現行法制では、労働基準監督署長が時効であるということを主張というか判断するまでもなく、会計法三十一条によって、労災保険法に基づく遺族補償給付あるいは休業補償給付の請求権は、消滅時効によっていわゆる絶対的に消滅をしている。

 この三条件がそろっている場合に、もしも仮に労働基準監督署長が保険給付の支給決定ということを行えば、この労働基準監督署長はその法律違反の責任を問われ処分の対象ということになるというふうな認識であるんですけれども、この認識は正しいんでしょうか。

青木政府参考人 今委員が御紹介になりました会計法の三十一条では、国に対する権利で、金銭の給付を目的とするものについては、国は時効の利益を放棄することができないということになっております。

 今のお示しになりました例であれば、労災保険の給付の請求権は時効が成立して時効によって消滅していると思われますので、その場合には、今の申し上げました三十一条に該当するということで、その利益を放棄することができないということになります。したがって、国は請求を受けても給付を行うことができないということであります。

 お尋ねの、その際に監督署長が、それでは認定をしてその支給をしたということであるとどうなるかということでありますが、これは会計法の十四条二項で、国は支出負担行為がなければ支出をすることができないとなっておりまして、故意、重過失により支出負担行為なく支出の行為をしたことで国に損害を与えた場合には、予算執行職員は、予算執行職員等の責任に関する法律三条の規定によって弁償の責めに任ぜられるとともに、同法六条の規定によりまして、会計検査院が当該職員の任命権者に対し懲戒処分を要求することができるということになっております。

城島委員 そういうことであるようなんですけれども、そうすると、先ほど言った三つの条件がそろっている場合において、では、厚生労働省の通達によって会計法の適用を免れて保険給付を適法化するとすれば、通達により法律を否定することになるかなというふうにも思われますが、通達によって保険給付を適法化できるのでしょうか。その辺についてお尋ねしたいと思います。

青木政府参考人 労災保険の保険給付の請求権は、今申し上げました会計法三十一条で言っている国に対する金銭の給付を目的とする権利でございますので、時効が成立した場合に、国は利益を放棄することができないということに法律上なっておりますので、こういった法律に定められている消滅時効期間をひっくり返して、行政通達でこれを否定するということはできないというふうに思っております。

城島委員 そういう解釈というか、そういうことだということなので、今、私どもが修正案をやはり考えなければいかぬなということで用意しているのも、今おっしゃったような通達ではだめだということだからだということであります。

 しかし、現行法制度を変更しないで保険給付を適法化することはできないかということについても、現在検討を重ねておりますけれども、現行法下のもとで、三条件がそろっていても保険給付が可能であるということにするには、労災保険法の第四十二条の解釈を変更する必要があるというのが現段階の我々の結論なんです。すなわち、労災保険法第四十二条は、保険給付の消滅時効の期間については、これは定めているんですね、期間については定めていますけれども、この時効の起算点については明文で定められていないんですね、これも資料の方にあると思いますが。

 そこで、解釈を変更するのであれば現行法のもとでも救済が可能となると考えるんですけれども、政府として、この解釈を変えるという見解というか用意はあるんでしょうか。

青木政府参考人 委員が御指摘のように、確かに労災保険法の四十二条では時効によって消滅する期間を明定しておりますが、その始期については、特段、法文上明定しているわけではありません。しかし、これについては労災保険法上の規定がございませんので、一般原則である民法百六十六条一項で、権利を行使することができるときがこの時効の起算点だというふうにしております。

 権利を行使することができるときについては、判例で、一般に権利者が権利行使の可能性を知り得たかどうかを問わず法律上の障害がなくなったときと解されているところでございます。また、法律上の障害がなくなったときというのは、支給事由が発生した時点というふうになっているものでございます。

 したがって、我々行政としましても、この労災保険の遺族給付について、労働者またはその遺族が疾病とか死亡に関して権利行使の可能性を知り得たかどうかという主観的事情にかかわらず支給事由が発生した時点から時効が進行するという解釈、運用をいたしているところでございます。

 したがって、今回の、今お示しになったような事案について、時効の起算点をずらして、休業、死亡等が業務に起因することがわかった時点、認識した時点とすることは困難であるというふうに思っております。

城島委員 困難だということでありますけれども、大臣、ぜひちょっと聞いていただきたいんです。そこで、労働者災害補償保険法のコンメンタールを読みますと、例えば、遺族補償給付を受ける権利については、「労働者が死亡した日の翌日から時効が進行する。」こういうふうになっているんですね。休業補償給付を受ける権利については、「業務上の傷病による療養のため労働することができないために賃金を受けない日ごとに発生し、その日ごとに発生する受給権について、それぞれ、その翌日から時効が進行する。」こうなっているんです。

 そこで、先ほど言ったように、これは三条件そろっている場合ですよ、常に言うのは。三条件がそろっていても保険給付が可能であるという解釈をもし行うとすれば、先ほど言いましたように、時効期間の起算点についての従来の解釈をこういうふうに変更する。

 すなわち、遺族補償給付については、職業病に関する労災保険給付の遺族補償給付の時効の起算点は、死亡した時点ではなく、死亡の業務起因性について遺族が認識した時点であり、遺族が業務起因性について認識していない期間については時効が進行しないという解釈。また同時に、休業補償給付については、職業病に関する労災保険給付の休業補償給付の時効の起算点は、療養のために休業を開始した時点ではなく、疾病の業務起因性について被災者が認識した時点であり、被災者が業務起因性についての認識をしていない期間については時効が進行しないという解釈をとれば対応可能だというふうに思いますが、厚労省は、今ちょっと具体的に申し上げた解釈を行うことについてはやはり否定的ですか、もう一度確認させていただきます。

青木政府参考人 時効制度の趣旨でありますとか公平な運用ということから考えますと、そうやって解釈で、先ほど申し上げました、大審院の判例だったと思いますが、その後ずっと確定的にやっていることについて解釈で変えるということは難しいというふうに思っております。

城島委員 大臣、例えば具体的に今解釈の提起もしたけれども、やはり難しいということですね。

 しかし、状況はもう大臣もよく御存じのとおりですね。どう考えても、少なくとも三条件そろっていて、被災者もあるいはその御遺族もそれについての認識が、当時の、今になってこれだけ一般的になってきていますけれども、その起因性についての知識あるいは情報がなかったという人がいるわけです。現実にいらっしゃるわけですね。今、時効ということでこれを受けられないという方が現実にいらっしゃるわけですね。

 やはり、ここは少なくとも救っていくということが、これはまず救うべきかということでいうと、救うべきだと私は思うんですけれども、まず、その救っていくべきかどうかについては、大臣、どうですか。

尾辻国務大臣 まず、そのお答えで申し上げますと、私もできるだけ救う方向で考えるべきだというふうに思っております。

城島委員 そうすると、救うということでいろいろ我々も検討してきたし、今でも検討しているんですけれども、今あったように、とりあえず法の解釈でどうかということはだめだということでいくと、やはり、法を修正するとか新たな法律をつくるということでなければ救うことはどうもできそうもないなという感じがしているわけですよ。

 そういうことなので、我々はここに、この労災保険法の時効の部分についての、そういう人たちが救えるような修正案というのを提出させていただきたいというふうに思っているんですが、それを救うための法改正、これについて、大臣、いかがでしょうか。

尾辻国務大臣 この問題は、この問題というのはアスベスト問題という意味で申し上げました、政府全体で取り組むべき大変重大な問題だと今認識をいたしております。したがいまして、明後日、金曜日に関係閣僚が集まることになっておりますので、その席でも、私から提案してでもこうした問題をぜひ検討してみたいと考えておりますし、また、今先生お話しのようなことで、国会でも御論議いただくと大変ありがたいというふうに存じます。

城島委員 これは、まさに政治の決断の問題だと思うんですね。このアスベストの問題は、私も今PTの一員としてやっているんですけれども、やはり総合的ないろいろな対策が緊急に必要なテーマだと思いますが、その中でも、一つ一つ早急にこうした問題については対応していくということもクイックリーにやっていかなければいかぬ部分の一つだ、あわせて、全体としての総合政策というのが欠くことはできない非常に深刻な問題だなと思っているところでありまして、そうしたことからすると、特に今言ったような時効の壁に当たって、三条件があるにもかかわらず、その当時の起因性についての認識が残念ながらなかったという人について、やはりこれは政治の責任として救っていくべきだというふうに思います。

 したがって、それが法律の修正でなければならないということであれば、早急に法案を作成し、やはりその人たちに対して一日でも早く救済をしていくということが我々に課せられた使命でもあると思いますので、最初申し上げたように、これはぜひ超党派で本当にやらなければいかぬテーマだと思っています。我々として近いうち、一両日中に具体的に提案をさせていただきたいと思いますので、政府側においても、これに対して一日も早い救済がスタートできるように御検討をいただきたいというふうに思います。よろしくお願いしたいと思いますが、よろしいですか。ぜひお願いしますよ、大臣。改めて、もう一度御決意を聞かせていただきたいと思います。

尾辻国務大臣 申し上げましたように、政府としても、政府を挙げて取り組んでまいりたいと存じます。

城島委員 それでは、ちょっと質問が結構残ったんですけれども、時間が参りましたので、きょうはここまでにして、次回、また残った質問についてもさせていただきたいと思います。

鴨下委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時三分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時六分開議

鴨下委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。内山晃君。

内山委員 民主党の内山晃でございます。

 私は現役開業社会保険労務士なものですから、これから実務的な切り口で質問いたしたいと思います。よろしくお願いいたします。

 まず、就業規則で定めます兼業禁止規定違反と労災給付の関係についてお尋ねをしたいと思います。

 労働者災害補償保険法の改正案で、複数就業者の事業場間の移動と、単身者の赴任先住居と帰省先住居の移動を通勤災害保護の対象とすることは、労働者の通勤災害保護の適用範囲が広がり、就労形態が多様化している現在の状況に大変ふさわしい改正であると評価できると思います。

 そこで、第一の事業場または第二の事業場の就業規則にて兼業禁止規定があり、しかも事業主の承諾を受けていない労働者が通勤途上で被災した場合、兼業禁止規定との関係で労災保険の保険給付が受けられない事態が発生しないか心配をしておりますけれども、厚生労働省はいかがお考えでございましょうか。

青木政府参考人 今回の改正におきましては、就業規則に違反して兼業していた労働者の事業場間の移動につきましても保護の対象としております。

 これは、このような取り扱いを行うこととしている理由といたしましては、就業規則での兼業禁止は民事上の問題であります、そういった民事上の問題を公的保険である労災保険の保険給付に当たって考慮することには問題があるということと、それから、兼業禁止の効力につきまして裁判所による最終的な判断が確定するまでには相当な期間を要する場合が場合によってはあるということで、その判断を待っていたのでは被災労働者や遺族の迅速な保護に支障を来すおそれがあるということなどから、保護の対象としないことは適当ではないと考えたことによるものでございます。

内山委員 改正案の第七条「厚生労働省令で定める就業の場所から」とありますけれども、この定める内容はどんな内容でございましょうか。

青木政府参考人 同じような災害補償制度であります国公災とか、他のそういった災害補償制度でございます。

内山委員 第一の事業場と第二の事業場はそれぞれ労災保険の適用事業場でなければならないんでしょうか、お尋ねをします。

青木政府参考人 これは、第一から第二に移動して、いわば第二の事業場への通勤、移動というふうにみなしますので、第二の事業場は労災保険の適用事業場であることが必要であるということであります。

内山委員 同じように、そうしますと、第一の事業場では事業主である、その事業主が、副業といいますかアルバイト先といいますか第二の事業場の方に向かうということになりますと、労働者として通勤災害保護の対象となるんでしょうか、どうでしょうか。

青木政府参考人 これは労働者としての事業場間の移動ということでありますので、自営の事業主から第二の事業場での労働者として移動するという場合には、これは保護の対象としないということであります。

内山委員 今の話をもっと具体的に説明しなきゃいけないかもしれませんが、例えば、自宅から自分が自営をしている店舗に行きます、そこから第二の事業場の方に労働者として通勤する、その通勤は適用の対象とはならないということでしょうか、もう一度お願いします。

青木政府参考人 今のはちょっとあれでしたが、自宅から自営の事業主の場所へ行って、それから労働者として第二の事業場へ行く、こういう場合でございますね。そういう場合は、先ほど申し上げましたように、第二の事業場へ行く場合の始点が自営としての場所でありますので、それは保護の対象としないということであります。

内山委員 保護の対象とならないということですね。わかりました。

 それでは、大学生のケースで確認をしたいと思うんですけれども、現在、大学生が学校から授業終了後アルバイト先に移動中の災害は通勤災害として認められていません。平成十六年度で大学生、短期大学、四年制を含めまして三百四万人もいるんですけれども、なぜ学生は学校からアルバイト先に移動中の通勤災害は対象とならないんでしょうか、お尋ねをいたします。

青木政府参考人 今のお尋ねは、学校から第二の事業場へ行くという場合の御質問だと思いますが、これはその場合でも学校を第一の事業場として同じように対象としてもいいじゃないか、こういうお尋ねかと思いますが、学校でありますので、これは先ほど来申し上げていますように、第一の事業場で労働者として働いている、そこから第二のところへ複数就業として、複数雇用労働者として行くという場合に保護しようというものでありますので、これは当たらないということでございます。

内山委員 自宅からアルバイト先に向かう通勤であれば通勤災害の適用になる。しかし、学校から授業終了後アルバイト先に向かうのが通勤災害の適用とならない。

 三百四万人も大学生がいます。学校から一たん自宅に戻ってアルバイトに行く学生というのはどれくらいいるでしょうか。私も、学生時代、やはり大変アルバイトをいたしました、学校終了後からアルバイト先に行きました。たまたまそういったところでオートバイ等の事故になって無年金障害者になった学生というのもいるはずです。ここをやはり今回の法改正のように、学生は学校が第一の事業場として考え、学校からアルバイト先に行く事故は第二の事業場に向かうという考えで通勤災害の対象とできないでしょうか。大臣、ここはいかがですか。大臣にお願いします。

青木政府参考人 先ほどの御質問の続きですので、少し補足をさせていただきたいと思います。

 今回の、複数の事業場に雇われている労働者が現にたくさん出てきている、新しい雇用形態として出てきているということで、そういった場合についてもこれまでの通勤災害の保護の対象と同じように考えてはどうかということが出発点であります。

 通勤災害というのは、もともと通勤というのは労働者として労務を提供するというために不可欠なものでありますので、単なる私的行為中に生じた災害とは違うということで、そういう意味で使用者がいわば使用者責任を担保している労災保険の対象としようということで考えているわけであります。そういう意味で、事業主の支配管理下において生じた損害は救おうと。業務災害については、事業主のまさに仕事のもとでやっているところでありますから、個別的責任の範囲であるのがまず大前提でありますけれども。通勤のところも、そういう意味で、事業主群の責任において補償するというのは、事業主全体と見て、社会的に見て保護すべきものではないかということで考えたわけであります。

 さらに、今回お願いしています複数就業者の事業場間の移動というのは、第一の事業場もいわばそういう事業主の管理下のもとにあり、第二の事業場、行った先の第二の事業場はもともとそういう意味での通勤災害の対象としているような事業主の支配下にあるようなところでありますので、拡張して、全体としてこういった通勤災害、ひいては労災保険の対象に入れていいのではないかという考えで今回お願いをしているわけであります。

 しかし、今お話にありましたのは、第一のところが学校とか、それからそれまで御質問なさっていたいろいろな問題については、総体の事業主として考えてもその支配管理下にあるというわけではありませんので、そこまでやると今度は私的な行為中に生じた災害についての差がだんだんなくなってくるということで、そこまでやるのは適当ではないということでそういう仕切りをしているところでございます。

内山委員 学生は学業が仕事なんですよ、学業ですから。ですから、学業のところを第一と見て、第二のアルバイト先、アルバイト先だって大学生は大変貴重な戦力ですから、当然やはり同じように、大学生だからといって通勤災害を適用しないというケースは非常にこれから問題を生じると思います。ぜひその辺を大臣、ひとつ、今後検討するとか前向きのお答えをいただきたいんですけれども。

尾辻国務大臣 お話を伺っておりまして、今後の課題であるというふうに私も思いながらお聞きをいたしておりました。ただ、今回の法律のつくり方、考え方、それから解釈については局長からお答えしたとおりでございます。

内山委員 もう一つ、続きまして、それでは、Aという事業場、第一の事業場を終わりましてボランティア活動を行った、または語学研修に行った、各種専門学校等に行ったとき、これは通勤の逸脱、中断とすべきではないと考えますけれども、いかがでございましょうか。

青木政府参考人 途中でボランティア活動をしたということにつきましては、これは逸脱、中断に関する規定の適用、特例的範囲には含めていないところであります。学校等へ行くというようなもの、そういう教育については、一年以上の課程のものについては逸脱、中断に関する特例的取り扱いの範囲に含めているところでございます。

 今の逸脱または中断の間については、通常の往復の経路を逸脱しまたは中断した場合においては、その間及びその往復は通勤としない。しかし、日常生活上必要な行為であるようなものについては、最小限度であるようなものについては、逸脱または中断の間は無理ですけれども、それ以外のところは通勤とするということにしています。

 今申し上げましたように、ボランティア活動は含めておりませんし、教育についても一年以上の職業的能力の向上に資するようなものについて意味があるということで特例的範囲に含めているところでありますけれども、働き方が多様化しておりまして、おっしゃったように、これからも働きながらボランティアをするというようなことも多く出てまいりましょうし、能力開発のための教育訓練機関へ通うという労働者もふえてくるだろうと思いますので、そういった変化を踏まえて、いろいろな実態も見ながら今後検討を行っていきたいというふうに思います。

内山委員 専門学校の一年というのをぜひもっと緩和をしていただきたいと思います。専門学校に、例えば簿記の資格を取ろうといっても一年以内でありましたり、それから英会話のスクールに行くにしても、一年を超えるということはコースによってはないと思いますので、ぜひそこを今後見直していただきたいと思います。

 それでは、テーマを変えまして、二社勤務者の給付基礎日額の算出についてお尋ねをしたいと思います。

 現行労働者災害補償保険法第八条に「給付基礎日額は、労働基準法第十二条の平均賃金に相当する額」とあります。改正案では、第一の事業場から第二の事業場に移動中に被災した場合、第二の事業場の平均賃金のみで休業給付や障害給付を計算するようですが、なぜ二つの事業場の合計賃金で平均賃金を計算しないのか、まずお尋ねをしたいと思います。

青木政府参考人 この複数就業者の給付基礎日額の問題につきましては、確かに議論のあるところだと思います。審議会における検討の中でも、複数就業者の給付基礎日額、どういうふうに補償のための基礎となる賃金を考えるかということだと思いますが、それについて算定方法の見直しに賛成する意見もございました。

 しかし、一方で、給付基礎日額の算定方法の見直しは、ひとり通勤災害のみならず、ベースになります業務災害の場合にもかかわってくる問題でもございますし、そういう意味では大変基本的な問題にかかわってくる。それから、今委員が御指摘のように、第二だけじゃなくて、両方を合算するというようなことにしますと当然給付が増加するわけであります。そうすると、これは全額事業主の負担する保険料財源でございますので、財源負担のあり方についても当然議論、検討しなければいけないということになってまいります。そういうことで、十分に議論、慎重な検討が必要だということだと思います。

 それからもう一つ、複数就業の事実を把握していない事業主も含めて、いわば災害の発生と無関係な事業主にも賃金の証明をさせたり、そういったような負担が生じてくるというようなこともございまして、そういう指摘もございましたので、見直しを行うべきとの合意までは至りませんでした。

 そういうことで今回お出ししたようなことになっているわけですが、この審議会での建議におきましては、昨年十二月に取りまとめられましたけれども、これにつきましては、複数就業者の賃金等の実態をさらに調査した上で、専門的な検討の場において引き続き検討を行うことが適当というふうにされております。私どもとしては、これを踏まえて検討、対応していきたいと思っております。

内山委員 被災し労務不能になった場合の喪失する稼得能力は複数の事業場から支払われる賃金の合計であるのに対して、補てんされる稼得能力は片方の事業場からの分だけでは、実際生計が成り立たないケースがあります。労災保険料はそれぞれの事業場で支払っているわけでありますから、当然やはり一緒に平均賃金を計算すべきだろうと思います。それからまた、業務災害、通勤災害の区別なく、労働者の稼得能力の補てんは複数の事業場から支払われた賃金の合計で平均賃金を計算し給付基礎日額とすべきであるということをぜひ早急に検討していただきたいと思います。

 それでは、テーマを変えまして、労働安全衛生法の改正につきましてお尋ねをしたいと思います。

 労働安全衛生法改正案第六十六条の八第一項「事業者は、その労働時間の状況その他の事項が労働者の健康の保持を考慮して厚生労働省令で定める要件に該当する労働者に対し、」「医師による面接指導を行わなければならない。」とありますが、厚生労働省令で定める要件というのはどういう要件でありましょうか。

青木政府参考人 これは、月百時間以上の時間外労働を行って疲労の蓄積があると認められる者ということでございます。

内山委員 疲労の蓄積が認められる者とは、だれがどのような基準で判断をするんでしょうか。お願いをいたします。

青木政府参考人 疲労の蓄積については、結局、他からの客観的な状況判断というのは非常に難しゅうございますので、この仕組みの中では労働者本人の申し立てを手続の中に入れ込んでおります。そういったことで判断をしていくということになろうかと思います。

内山委員 同じく改正案第六十六条の九「事業者は、前条第一項の規定により面接指導を行う労働者以外の労働者であつて健康への配慮が必要なものについては、厚生労働省令で定めるところにより、必要な措置を講ずるように努めなければならない。」とありますけれども、必要な措置を講じる対象となる労働者の要件は何でしょうか。

青木政府参考人 長時間労働により疲労の蓄積が認められ、あるいは労働者自身が健康に不安を感じた者ということで考えております。具体的には、月八十時間を超える時間外労働を考えているところでございます。

内山委員 改正案の過重労働・メンタルヘルス対策の充実として、事業者は、一定時間、月百時間を超える時間外労働を行った労働者を対象として医師による面接指導を行わせるとありますが、脳・心疾患の発症に影響を及ぼす業務による過重負荷として、発症前二カ月ないし六カ月にわたり月八十時間を超える時間外労働をした要件を外し、月百時間を超える時間外労働だけに変更した理由というのは何でしょうか。

青木政府参考人 これまで総合対策としてこういった仕組みを考える前にやっていたことでありますが、まさに今お触れになりましたように、二カ月から六カ月で時間外労働が月八十時間を超えた者というものについて特段に産業医の面接による保健指導を指導ベースでやっていたわけであります。今回は、月八十時間超について疲労の蓄積が認められる者については、法律上の努力義務を課しまして、面接指導等必要な措置ということで、保健指導だけでなくそういった措置も講ずるようにしているわけであります。

 実際にこれまでやってきてまいりまして、二ないし六カ月の平均で月八十時間を超えた者というのは、実は実務上大変煩瑣で非常に難しいものでございます。毎月毎月の管理をいつも計算し直すというようなことをやっていかなければいけませんので、実務上は大変手間暇かかるということでありますので、むしろこういったことよりも八十時間ということで、ここはこういった要件で措置をきっちりするということにした方がより実効性が上がるだろうということで考えたものでございます。

内山委員 医師による面接指導を受診する時間に対して、事業主は賃金の支払いを義務づけられているでしょうか。

青木政府参考人 労働安全衛生法に基づく義務、医師による面接指導を受けさせる義務ということ、これは事業者に対して現実にそういうことを行わせるということでございます。それでは、その間の費用といいますかその時間について賃金を出すか、つまりその分を有給でするかということでありますが、これについてはそこまでは事業者の義務としておりませんので、賃金を事業者が負担すべきものでは法律上はないわけであります。しかし、私どもとしては、それは事業者が負担することが望ましいと考えているところでございます。

内山委員 そうすると、この間に関する、面接指導を受けに行っている時間の賃金は払われない可能性もありますね。これをもっと厳しく、有給で対応するように、賃金を支払うように処理はできないものなんでしょうかね。

 それから、長時間労働者等に対する医師による面接指導を行う場合、費用の負担はだれがするのでしょうか。お願いをいたします。

青木政府参考人 長時間労働者等に対する医師による面接指導は、まさに労働安全衛生法に基づく事業者に実施義務があるものでございますので、当然、そのこと自体についての費用は事業者が負担すべきものだというふうに考えております。

内山委員 次に、過重労働による健康障害防止対策についてお尋ねをいたします。

 今回の改正案における面接指導は、平成二十年三月三十一日までの間、産業医選出義務のある常時五十人以上の労働者を使用する事業場のみに適用され、産業医の選出義務がない中小事業場については面接指導を義務化していません。零細で小規模な事業場に働く労働者は、事業場に余剰な人員がいないため年次有給休暇の消化もなかなかできません、長時間労働を余儀なく行っております。このような零細事業場に対してどう健康障害防止対策を指導していくお考えがあるのか、お尋ねをしたいと思います。

青木政府参考人 小規模事業場につきましては、従来から小規模事業場の労働者の健康管理のために、地域産業保健センター、これは監督署のエリアで三百カ所以上ありますけれども、そこで面接指導の窓口を設置しまして、面接指導をそこで実施するなど、その機能強化をして実際に面接指導が行われるようにしたいと思っておりますし、また、その地域産業保健センターについても、事業場からとって利便性が確保されるような工夫も今後してまいりたいというふうに思っております。

 それから、面接指導が適切に行われるようにするため、医師に対する面接指導マニュアルを策定いたしまして、地域産業保健センターの医師等も含めて幅広く研修を実施することといたしておりまして、こういったことで小規模事業場における面接指導の実施の確保ということに万全を期していきたいというふうに思っております。

内山委員 次のテーマに行きます。労災隠しが行われる原因とその認識、また対策等についてお尋ねをしたいと思います。

 労災隠し事案では、総件数に占める割合が建設業が七六・一%と圧倒的に多くて、その労災隠しをする動機は元請への配慮が最も多いという現状があります。労働保険の保険料の徴収等に関する法律の改正案で、有期事業に係る保険料率のメリット増減幅をプラスマイナス三五%から継続事業と同じプラスマイナス四〇%に変更することにより、さらに労災隠しが増加するのではないかと危惧をしておりますけれども、厚生労働省としてその認識と対策についてどう考えているのか、お尋ねをしたいと思います。

青木政府参考人 今委員がお触れになりましたように、我々行政の第一線の機関が労災隠しとして処理した事案を見ますと、労災隠しの原因については、まさにおっしゃったように元請への配慮というのが圧倒的に原因としては多いわけであります。そのほか、さまざま複合的な原因、背景はありますけれども、特に建設業における元請、下請関係ということにおいて、その後の公共工事の受注への影響を懸念するという、下請の元請に対する配慮によるものが多いのだなというふうに思っております。

 しかし、労災隠しというのは、これはそもそもあってはならない犯罪であると思っておりますし、被災労働者の保護、補償という観点からも当然問題があると思っておりますので、労災隠しをなくしていくという対策をきちんと進めていかなければいけないというふうに思っております。特に建設業におけるそういう重層下請構造の特質ということがありますので、そういった実態に着目して対策を打っていく必要があると思っております。

 したがって、我々としては、関係の業界団体それから労働組合の意見を聞く場を設けまして、これまでの労災隠し対策を検証いたしまして、それを踏まえて、さらに労災隠しをしない、あるいはそれを防止する対策を業界団体として積極的に講ずるということができるようなものを考えて、またそういったところに要請をして労災隠しをなくしていくということに努めていきたいというふうに思っております。

内山委員 時間が参りましたので、私の質疑はこれで終わります。ありがとうございました。

鴨下委員長 次に、中根康浩君。

中根委員 民主党の中根康浩でございます。

 三十分の時間をいただきましたので、時短法の改正を中心に質問を展開してまいりたいと思います。

 この時短法の改正なんですけれども、大きな日本の労働政策の大転換というふうに見ることができると思います。その柱は、まずこの法律名からしても、労働時間の短縮というものを法律名からすぱんとそぎ落としていく、そして閣議決定で千八百時間という目標であったものを、この千八百という数字もなくしていく、そして閣議決定を大臣定めという位置づけにして、労働時間等設定改善指針というものをつくっていく、そしてまた、そのほかにいろいろある中で、指定法人の労働時間短縮支援センターというものを廃止していく、こういった大きな柱を持つ時短法の改正ということであります。

 まず、その中で、労働時間の問題についてなんですけれども、労働政策審議会建議、平成十六年十二月十七日に、今後の労働時間対策のあり方についてということで取りまとめられたものの中に、皆様方のお手元に配付をさせていただきました資料の一なんですけれども、年間総実労働時間千八百時間というものが時宜に合わなくなっていると。そして、この文章の中には、今後、労働時間が成果に直結しない働き方が一層広がるという展望に立てば数値的な目標は不要であるという意見があったというように記載をされているわけでございます。

 こういったことに基づいてこの時短法の改正が提案をされているんだろうと思いますけれども、先ほど申し上げましたように、我が国の労働政策の大転換ということの中で、この千八百時間というものがなくなっていくということ、あるいは時短センターが廃止をされていくということや、大臣指針がこれから定められていくというようなこと。千八百時間というものが、午前中の質疑から出ているんですけれども、働き過ぎ、ゆとりがない、そういったものを解決していくために設けられた大きな目標なんですが、これは朝からの質疑の中で、必ずしも解消されたとは言えない、労働時間等は二極分化して、むしろ問題は大変複雑化しているというようにもとれるわけでございます。

 そして、そういった中で提案をされて、今政府の中で検討されているのが、実は既に我が党の大島議員が二〇〇三年の六月に取り上げさせていただいて、かねてから問題視をしているところのホワイトカラーエグゼンプションという、日本経団連が提唱している働き方というものでございます。これにつきましては、簡単に言えば、労働時間規制の適用除外の拡大を目指すというものであって、そして具体的には、将来、平成十九年度あたりを目途として、労働基準法を改正してホワイトカラーエグゼンプションの導入を図る、そのことはある意味、事実上の賃下げ、残業代カット、青天井でどこまでも働かせる、不払い残業合法化、こういうふうにも言える内容であるわけでございます。

 まず、ホワイトカラーエグゼンプションについて、日本経団連がどういう形で提唱しているかということを記したのが、資料の二番目、「二〇〇五年度日本経団連規制改革要望」、内閣に対して提出したものであるわけでございます。

 一枚めくっていただくと、三というところに、十八番「ホワイトカラーエグゼンプション制度の早期導入」ということで、ごらんのとおり太字で記されているわけなんですね。太字で記されているものは、今年度の要望の重点要望項目ということで位置づけられているものでございます。その中に、同じような関連することで、二十一番の「管理監督者に対する割増賃金支払義務の見直し」、二十二番「労働時間に関する規定の適用除外者の範囲拡大」、二十三番「企画業務型裁量労働制に関する対象業務の拡大および手続きの簡素化」、こういったものが日本経団連から提唱をされているわけでございます。

 四番の資料もごらんをいただきますと、日本経団連が提唱しているホワイトカラーエグゼンプションというのは、真ん中あたりを少し読んでみますと、業務と賃金の二要件を設定すると。ホワイトカラーについて、一定の要件のもと労働時間規制の適用を除外するホワイトカラーエグゼンプション制度の新設を提案する、具体的には、業務型裁量労働制の対象業務については、賃金要件にかかわらずホワイトカラーエグゼンプションの対象とする、それ以外の裁量的業務については、対象業務を法令で定める、もしくは労使自治によって拡大できるものとして、その場合に一定の賃金要件を課して、労働者の保護云々というようなことが書いてあるわけでございます。

 新聞記事もいろいろあります。日経テレコンから引っ張ったものなんですけれども、五番の資料、日本経団連は六月の二十二日、ホワイトカラー(事務職)の労働時間規制解除に関する意見書を発表したと。下の方に、経団連の意見では、従来の十九職種は管理職と同様、無条件で対象外とする、そして、年収要件を設けて、年収七百万円以上の高収入層を主体とする、年収四百万円以下の低収入層には規制を残す、こういったことが提唱されているわけでございます。

 六番の資料も続けて御紹介申し上げますと、労働基準法の将来の改正を目指して、二五%の割り増し賃金についても、これを廃止といいますか、そういったことを目標としていくというようなことがここに書かれているわけでございます。

 七番の資料、平成十七年三月二十五日に閣議決定をしたものでありますけれども、規制改革・民間開放推進三カ年計画というものの中にも、八番の資料の「新しい労働者像に応じた制度改革」ということの中に、「事項名」「労働時間規制の適用除外の拡大等(厚生労働省)」、「措置内容」「二〇〇四年八月に改正規則が施行された米国のホワイトカラーエグゼンプション制度を参考」にして云々、そして続いて、「労働時間規制の適用を除外することを検討する。」と。

 この実施予定時期としては、平成十六年度に海外事例の調査をして、平成十七年度に検討するというふうに記載をされておりますので、今年度検討がなされているということであろうと思いますけれども、今、このホワイトカラーエグゼンプションという日本経団連から提唱されている働き方について、厚生労働省内で、どんな対象業務あるいは賃金要件等、検討がなされているか、御明示をいただければと思います。

青木政府参考人 ホワイトカラーエグゼンプションは、今御紹介ありましたように、アメリカで行われているホワイトカラーについての労働時間管理の適用除外ということでありますので、日本の労働法制においても、労働者の新しい働き方として、労働時間の適用除外の問題として考えたらどうかというのが、今委員がるる御指摘になったいろいろな報告だろうというふうに思っております。

 これらについては、私どもとしては、今、労働時間の規制のあり方については、新しい働き方に対応したものとして考えることが必要ではないかということで研究を始めたところというところでございます。これまでさまざま労働関係の法制についても、かつてのこの委員会における附帯決議でありますとか、あるいは新しい働き方に対応するための労働基準法の改正時における附則での検討の要請でありますとかございますので、さまざまな新しい問題に対応して検討しなければいけないということの一環としてこういうことについても検討する。

 もちろん、アメリカ型のホワイトカラーエグゼンプションというのが盛んに言われておりますが、これは、我々の、日本における労働時間制度というのはどういうものかということを考えるに当たっての一つの参考、あるいは議論の対象といいますか、ということだろうというふうに思っております。

中根委員 かなり青木局長の歯切れが悪いような気がしているんですけれども、なぜ歯切れが悪いような気がするかというと、それはやはり働く側の立場ではなくて、本来、働く人たちを守るべき厚生労働省が、日本経団連という経営者側の立場の提唱されたものを厚生労働行政として導入しようとしている、その罪悪感が青木局長の歯切れを悪くしているのではないかというふうに考えさせていただくわけでございます。

 先ほど申し上げましたように、これは、もしこのことを導入すれば、事実上の賃下げではないか、あるいは青天井で働かせることができるような、不払い残業を合法化させるような、そういう内容になるのではないかということで心配がされているわけなんですけれども、こういった心配についてはどのようにお答えになるのでしょうか。検討中だという言葉以外でお答えをいただきたいと思います。

青木政府参考人 私の承知している限りにおきましては、今委員がおっしゃったようなことについては、事業主側といいますか経営側もそういうことまで考えているわけではなくて、むしろ、かなり労働時間にとらわれずに自由に働くということによって、創造的な働き方を確保して、新しい付加価値といいますか、付加価値を高める仕事がしやすくなるのではないか、そういう観点が一つあります。

 現実の労働実態としても、労働時間管理というのは、いわば機械に労働が張りついて仕事をするということで、そこで、機械はいつまででも動きますから、労働時間ということで、人間の生活と調和させるような労働時間規制がなされてきたと思っているわけですけれども、どうも労働はそういうものだけではなくなってきている、そういう認識に立って、より実態、新しい働き方に合った労働時間のあり方あるいは労働時間規制のあり方、そういうものを考えなければいけないということだろうというふうに思っております。

 しかし、おっしゃるように、もしそういうことを仮に意識しないでいろいろな制度を考えますと、中にはそういう心得の違うような人たちがいるかもしれませんので、そういったところはもちろんそんなことにならないように、当然いろいろなことを考えるに当たっては配慮するんだろうと思います。

 これは、そういったこと、もろもろのことについてやはり十分研究する必要があるというふうに思っておりまして、その意味でも時間をかけて研究をしてもらおうということでございます。

中根委員 何となく他人事のような、だろうと思っているとかそういうことではなくて、先ほども指摘させていただきましたように、平成十七年の三月二十五日に閣議決定までして、このアメリカ型のホワイトカラーエグゼンプションを参考にして研究、検討を始めているわけでありますので、これはそういうふうに少し本筋ではないというふうな雰囲気を漂わせようとしておられて、いつの間にか知らず知らずのうちに導入してしまいたいということなのかもしれませんけれども、これは正々堂々と私ども国会にもお示しをいただきながら、また特に、経団連の意見を聞くだけではなくて、当然のことながら働く側の人たちの意見をしっかりと反映しながら検討を加えていっていただきたいと思います。

 突如、あなたはきょうからエグゼンプション、きょうからということはないのかもしれませんが、エグゼンプションですよ、除外ですよということを言われたら、もう残業代も、時間も、何も守られるものがない、得られるものがないというような状況の中で、厳しい環境の中で働くことを余儀なくされるということがあってはいけないというふうに思っています。

 そういった中で、時間だけでははかれない成果主義というものをこの中で検討されているということでもあろうと思いますけれども、成果主義というものは、格好はいいのですが、なかなかその成果というものははかりにくいものであるというのもまた事実であろうというふうに思います。

 厚生労働省として、働くということの中で、労働時間にかわる測定の仕方として、成果というものを適切にはかる手法といいますか基準といいますか、そういったものをお持ち合わせなのか、今何らかの形で検討中なのか、そのあたりはいかがでしょうか。

青木政府参考人 いわゆる成果主義ということは、業績、成果に対応して賃金を決定していこうということだろうと思いますけれども、平成十六年の調査によると、過去三年間に賃金制度の改定を行った企業は三八・四%、その中ではそういった成果主義による賃金制度が広がっている傾向があるということは確かだろうと思います。

 賃金管理については、事業主、あるいは労使、こういったところで個別の事業場においては定めていくわけでありますが、できるだけ労働者にとっても働く意欲が出て働きがいのある、あるいはそれによってきっちりと評価をされて不満が生じないような、そういう賃金制度というのが望ましいわけだろうと思います。そういう意味では、おっしゃったような基準といいますか、そういったものは成果主義にとっては大切なことだと思います。

 しかし、お尋ねの、そういったものを役所の方で、我々の方で何か考えているかということでありますが、それは今考えておりません。どちらかといえば、事業場における労使において十分話し合いをなされながら、いい賃金制度として考えていく、そういう中で決めていっていただきたいな、こういうふうに思っているところでございます。

 ただ、申し上げましたように、やはり成果主義の場合には、きっちりとした評価、公平な評価、納得のいく評価というのがないと、恐らく事業場の中でもうまく機能していかない、ほかの労働者あるいは当該労働者にとっても不満が生じて働く意欲を阻喪するようなことにもなりかねないということであると思います。だから、そういったことはやはり基本的には大切なことだというふうに思っております。

中根委員 局長がおっしゃったとおりの部分もあるんだろうと思います。成果というものは、役所の方で一律に基準を決めてということよりも、まさに個々のケースに対応してその成果というものが見詰められていかなければいけないということなんだろうと思いますけれども、やはり成果というものは、それだけにはかりにくいものである、公平に評価しにくいものであるということは確かだろうと思います。

 成果が正当に評価されないとか、あるいはなかなか成果が上がらない、業績が上がらないといった場合に、ホワイトカラーエグゼンプションでエグゼンプションというふうに言われてしまった人たちが、時間にとらわれないのはいいんだけれども、逆に二十四時間、成果、業績、仕事のことを考えていなければいけない、オンとオフのめり張りがなかなかつけにくい生活に陥ってしまう、そのことでプレッシャーがかかって心の病になったり、あるいは極端にそれがいけば自殺ということになってしまったりすることにもつながりかねないんじゃないかなと、危惧であればいいのですけれども、心配をさせていただくわけであります。

 そういった成果主義が、むしろ二十四時間仕事に束縛をされるというような労働者に対するプレッシャーとか、あるいはそのことが、いわゆる千八百時間というものが目指してきた少子化対策といいますか、そういうものに逆行するのではないか、こういったあたりのことについて、この問題について締めくくりの質問でございますので、大臣、御意見をいただけないでしょうか。

尾辻国務大臣 局長からも申し上げましたけれども、平成十六年の調査によりますと、過去三年間に賃金制度の改定を行った企業というのが三八・四%ありまして、その中では、業績、成果に対応する賃金部分を拡大しているものが多いということでございます。すなわち、今先生が言っておられるような成果主義による賃金制度が広がっている傾向が認められる、これは事実でございます。

 また一方、これも今先生いろいろお述べいただいておりますけれども、職業生活で強いストレス等を感じる労働者の割合が六割を超えているという調査もありまして、労働者を取り巻く職場環境に厳しいものが見られます。これと成果主義を結びつけるのかどうかということもございますけれども、こちらの方は労務管理の全体のあり方が投影されているというふうにも見られます。

 したがって、いろいろ見方はあるわけでございますけれども、いずれにしても、強いストレスを感じておる労働者の割合が六割を超えておるというこのような状況に対応いたしますためには、今回の改正労働安全衛生法を確実に施行することにより、職場におけるメンタルヘルス対策や過重労働による健康障害防止対策の充実を図っていきたいというふうに考えております。

中根委員 ホワイトカラーエグゼンプションというものの導入につきましては、極めて慎重に、しっかりと経営者側だけではなくて労働者側の意見も聞きながら検討を進めていっていただきたいということをお願いさせていただきます。

 この時短法の改正のもう一つの柱である指定法人労働時間短縮支援センターというものの廃止について議論をさせていただきたいと思います。

 一つずつ確認をしていきたいと思いますけれども、この指定法人、全基連に対して労働時間短縮支援センターとして指定されたのが平成五年。平成五年から決算が出ている平成十六年までの間に厚生労働省からこのセンターに対して交付された交付金の総額を教えてください。

青木政府参考人 労働時間短縮支援センターに対しまして平成五年度から平成十六年度までに支出した交付金の累計は、千百六十一億三百六十一万五千円でございます。

中根委員 足し算を局長にお願いしてしまったようなことなんですけれども、資料の十一ページに平成五年から十七年度の予算までを含めたセンターに対する支出額を年度ごとに資料として添付させていただいておりますので、ごらんをいただければと思います。

 それでは、この財源はどちらからになりますか。

青木政府参考人 労働保険特別会計であります。

中根委員 確認を続けていきたいと思いますけれども、この労働時間短縮支援センターというのは、全基連をこのセンターとして指定したということなんですが、厚生労働省からこのセンターが指定されてからいわゆる天下った人たちの状況については、やはり本日の資料に添付をさせていただいておるわけでございます。十六ページにありますのでごらんをいただければと思いますけれども、本当は、本当はというか、恐らくもっと前からずっと継続的に行われているんでしょうけれども、記録があるのが平成十二年からであるということで、平成十二年から十三、十四、十五ということで、こういうふうな天下り実態がある。十六年度については天下りはないということのようでございます。

 何が言いたいかといえば、資料の十二ページに「交付金支出内訳」というものがありまして、管理費として四億九千八百二十七万二千九百五十四円という支出が十六年度なされているわけでございます。この中のやはり大部分は、人件費として四億二千二百万円余りが支出をされているということでございます。

 要するに、これもまた資料なんですけれども、「年間総実労働時間の推移」ということで、十ページ、平成五年に支援センターが指定されたときが千九百九時間、平成十六年度が千八百三十四時間、七十五時間ほど減ったということでありますけれども、もともとこれは趨勢的に減りつつあるということの中での数字である。

 それから、年休の方なんですけれども、一枚さかのぼっていただいて九ページですが、平成五年にセンターが指定されたときが五六・一%の取得率だったのに、平成十六年度は四七・四%に、むしろこれは大幅に下がってしまっている。

 ということで、合計して一千二百億円ほど労働保険特別会計の方から費やしてきた。そして、平成十六年度の一年間だけでも四億九千八百万円の管理費。もしセンターがなければこれは使われなかったお金なのかもしれない。人件費として四億二千二百万円使われている。こういった労働時間短縮支援センターというものをつくって、そこに巨額のお金をかけながら、年休についても労働時間についても、このセンターがあったからこそ成果が上がった、数字があらわれたということがとても胸を張って言えるような状況ではないのではないかというふうに申し上げなければならないような気がいたしておりますけれども、これはいかがでしょうか。

青木政府参考人 労働時間短縮支援センターの仕事というのは、これで労働時間を総合的に短縮していこうということで、いろいろな手を打った中の一つであります。

 年間総実労働時間につきましては、平成五年から平成十六年まで、その成果として七十五時間の短縮が図られました。これだけではありませんけれども、さまざまな要因がございますが、年間総実労働時間千八百時間への取り組みが進んできたということだろうと思っております。

 週四十時間労働制につきましては、平成五年度から平成八年度までに、平成九年四月一日の週四十時間労働制全面適用ということを控えまして、その前に先行して取り組みを行う事業場に対する助成金の支給、六万件ほど行っております。ここで助成金を支給してきたわけでありますけれども、その結果、週四十時間労働制導入事業場の割合というのが、平成五年度二九・二%であったものが平成九年度には七七・八%と大幅に増加をいたしまして、週四十時間労働制への全面移行が円滑に進んだということでございます。

 さらに、その後も、週四十六時間が適用されておりました特例措置対象事業場につきましても、平成十一年度及び十二年度に、平成十三年四月一日に週四十四時間制移行ということでありましたので、その前に先行して取り組みを行う事業場に対する助成金の支給、これも四万件ほどこのセンターから支給をいたしておりますけれども、そういった結果、十二年度には七九・一%が週四十四時間以下になったというようなことでございます。

 その後、平成十三年度からは、年次有給休暇の取得促進でありますとか弾力的な労働時間制度の導入、そういった労働時間制度についての改善を支援する事業を行いまして、平成十六年度までに約六千事業場に対しまして事業場診断あるいは指導サービスをここで実施したわけであります。そういう意味で、年間総実労働時間千八百時間の達成、定着に向けた取り組みをここで支援してきたわけであります。

 労働時間短縮支援センターでは、そのほか啓発でありますとか中小企業事業主に対するもの、あるいは個別中小事業主や中小企業集団への指導、援助などを行いまして、全体としてその目的が達成されるように努めてきているところでございます。こうしたことから、労働時間短縮支援センターの事業は、この間の労働時間短縮に一定の成果を上げてきたものと考えております。

    〔委員長退席、北川委員長代理着席〕

中根委員 もう時間が来ましたので、最後に一言二言申し上げて終わりたいと思います。

 何が言いたいかといえば、この労働時間短縮支援センターというもの、公益法人改革の中で廃止をされていくということなんですけれども、そうではなくて、この十二年間に一千二百億円ほど労働保険からお金が使われたわけであります。そのことの総括をしっかりと行わなければ、これは国民に対する裏切りということになってしまうのかもしれないということで、単に廃止をするからもう役割は終わったんだということではなくて、廃止をするからこそ総括をしっかりしなければならない。

 そして、同じことを、今までセンターでやって、別働隊として、ある意味、恐らく局長さん方からすればきめ細かくやってきたということをおっしゃりたいんだろうと思います。そのきめ細かくやってきた別働隊をなくして、厚生労働省本体で、今まではある意味下がりやすいところをずっとやってきたわけなんですね。それを、今から一番きめ細かくやらなければならない、一番微妙なところをこれから厚生労働省が、センターではない本体としてやっていくのだということであれば、大きなずうたいのものがきめ細かなことをきちんとやっていくことができるかどうかということを私どもは心配させていただいておりますので、そのあたりのところをしっかりと御認識いただいて行政を進めていただかなくてはいけないということ。

 それから、質問時間はありませんので指摘だけさせていただきますけれども、資料の十五として添付させていただきました、平成十六年度に十カ所で行ったシンポジウムとか、あるいは、十三ページにありますけれども、ポスターやリーフレットを、十五万枚、二十万枚、十四万枚、それぞれつくっているわけなんです。こういったものに対する契約のあり方、あるいはもともと十五万枚とか二十万枚とかというものをどういう根拠でつくったのか、あるいはそういったものの使い道。ただ単にお金がついたから、もしくは天下りの受け皿としてのセンターだから無理やり仕事をつくったというような国民からの指摘に答えられるような、正々堂々とした業務内容であってほしいというふうに思います。

 シンポジウムを行ったならば、その参加者はどういった方々が参加をしていて、そのシンポジウムに参加した後、その事業所なりなんなりで、どういう成果として具体的なものとして反映をされていっているかというようなこと。単に、シンポジウムというようなものが、あくまでも手段であって、そのことが目的として存在をするようなことがあってはいけないというようなことで、こういった啓発事業等々を行うのであれば、その後のフォローもきちんと行うということでなければ、もともと国民の大切な税金なり保険料から出されている財源でありますので、許されるものではないということを指摘しながら、本日の質問を終わらせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

北川委員長代理 次に、岡本充功君。

岡本(充)委員 民主党の岡本でございます。

 本日は、私、産業医や医師をしておりました観点からも質問をさせていただきたいと思っておりますし、いろいろ質問の用意をしておりますので、端的なお答えをいただきたいと思っております。

 まずは、労働安全衛生法における胸部エックス線検査等のあり方検討会、こちらの方が六月までに三回開催され、その中で、胸部レントゲン写真の健診での有効性についての評価が検討されております。健診における胸部レントゲン撮影が例えば結核や肺がんの早期発見に有効であるのかどうかということについて検討をしていくということでございますが、私は、大規模な疫学的調査というのが十分まだなされていないやに思うんです。

 それはどういうことかというと、きちっとしたバックグラウンドを整えて、そしてなおかつ、ある程度の実数を集めてその検討をする。特に、このバックグラウンドの中では、今回指摘をさせていただきたいんですけれども、間接撮影をした胸部レントゲン写真をしっかりと読めるような医師を育成する、そういった医師による読影の上での評価、検討、こういったものがなされていくべきだというふうに考えておるわけですが、これについての御見解をまずいただきたいと思います。

小田政府参考人 お尋ねの件は、労働安全衛生法における胸部エックス線検査等のあり方検討会についてのものと思います。

 この検討会は、この四月一日から、結核予防法の改正によりまして、胸部のエックス線検査は、結核予防法上はハイリスクの老人以外の一般住民に対しては基本的にレントゲン検査は行わないということになりまして、労働安全衛生法上、一般健康診査というのを労働者は年に一回受けることになっておりますが、その健康診査の中にエックス線検査という項目が入っておりまして、これが主として結核予防を対象としたものであります。ということから、結核予防法の胸部エックス線検査が廃止になりましたので、果たしてこちらの一般健康診査の胸部エックス線検査をこれまでどおり行っていいかどうか、その意味が、結核予防の意味あるいは肺がん等胸部疾患の発見の意味といったことで意味があるのかどうかということを検討しているものでございます。

 それで、先生お尋ねの、有効性の議論を行う際にはエックス線の読影医の質の向上というのが欠かせない、これは私どももそのように認識しておりまして、これは、エックス線の有効性を高めるために、エックス線技術についての研修会等を日本医師会等々にお願いして実施してきているところでございます。

岡本(充)委員 時間がないので短目にお願いします。

 それで、もう一つこの中で、新聞報道された以上、私は指摘しておかなければいけないと思っているんですが、胸部レントゲンの被曝量について云々という記事が載っておりました。胸部レントゲン、年一回、間接写真を撮る、この被曝量が無視できない、こういった報道がなされている。

 確定的影響と確率的影響というのが放射線被曝には起こり得る影響であります。こういった考え方によれば、それは少量でも確率的影響というのは出てくることが予想されますが、その実、例えば、成田からニューヨークまで飛行機で一回往復したらどれだけ被曝するか。例えばこの被曝量と比較して、胸部エックス線写真一回、どっちが被曝量が多いんですか。そんなに違いますか。

小田政府参考人 お答えいたします。

 私、専門的なことについては余りよくわからないんですが、それほど違いはないのではないかというふうに考えております。

岡本(充)委員 時期にもよりますけれども、宇宙線が降っていますから、皆さん出張されるから御存じでしょうけれども、特に宇宙線が多い北極圏を飛ぶ飛行機、しかも高度は高い、この飛行機に一回乗ったら、胸部レントゲン写真一回撮るよりも多くの被曝を受けるわけなんですよ、事実。ですから、この事実と比較して、一回レントゲン撮るごとにリスクは高まるんだ、こういう話をし出せば、ほかの被曝の現状との比較もしていかなきゃいけないし、多くの国民の皆様方に誤解を生むような内容の討議は余り好ましくないのではないかというふうに思っております。

 この問題、指摘をさせていただいて、ぜひともしっかりとその被曝量についても周知をしていただきたいと思います。

 さらに、もう一つ指摘をさせていただきたいのは、この検討会の中でも委員が指摘をしていますけれども、今後、外国人労働者が日本に開放された場合、日本は確かに結核の発症の頻度は低いですけれども、地域によっては、海外においては結核の発症の頻度の高い国が今なお存在します、こういった国々から来られた方が密室性の高い部屋の中で多くの皆さん方と一緒に仕事した場合、非常な蔓延を引き起こす可能性が結核の場合あり得ます。

 そういった意味で、胸部エックス線写真のあり方というのは、結核の問題についても今後柔軟に見ていくべきですし、そしてまた、肺がんの早期発見という意味においても、その疫学的検討というのは、必ずしも僕は有効だと言っているわけでもないし無効だと言っているわけでもない、しっかりとした検討をしていっていただきたいと思うわけですが、端的にお答えをいただきたいと思います。

小田政府参考人 ただいま御指摘なような点も含めまして、検討をしていただいているところでございます。

 胸部エックス線写真に対する放射線被曝の影響につきましては、そういった発言をした先生の方から、その発言については一部訂正するようなこともございました。ということでございます。

岡本(充)委員 よろしくお願いします。

 さて、話を変えまして、昨今、新聞紙上を大変騒がせておりますアスベストの話に少し移らせていただきたいと思います。

 アスベストの危険性というのをかねてより指摘をされながら、国の不作為ではないかということはこれまでも国会等で議論のあったところでありますけれども、実際にさまざまなデータがある中で、厚生労働省として、残念ながらこのアスベストに対する規制がおくれてきたのではないかという認識は、大臣、改めておありでしょうか、お答えいただけませんか。

尾辻国務大臣 申し上げておりますのは、特にこのところ、いろいろな問題が出てまいりまして、そして、改めて過去のどういう対策を講じたのか、また施策をとってきたかということを調べてみますと、一つ言えますことは、やはり省庁間の連絡が不十分であったということは感じるところでございます。

岡本(充)委員 省庁間の連絡だけではなくて、データとして、大臣、ちょっと今から少しお話ししますけれども、確かに疫学的調査というのは、コーホート研究というのはこれまでにも幾つもなされてきまして、実際に、日本産業衛生学会のアスベストに対する発がん物質の提案理由という中、これは二〇〇〇年に出ているんです。この資料を拝見させていただきますと、既に二〇〇〇年の時点でアスベストの発がんのリスクについて検討がなされていて、そしてその中では、例えば、今回、これに基づいて作業環境濃度の変更がなされたと聞いていますが、石綿の繊維濃度、クリソタイルの場合、〇・一五二七繊維・パー・ミリリットル、この濃度であると、およそ、雑駁に言って千人に一人が将来肺がんないしは悪性中皮腫になる可能性がある、こういうふうに出ているわけですね。

 この統計が出たもととなったデータは一体いつ出ているかといったら、もう既に一九九五年に出ているんですね。さらにさかのぼれば、一九八〇年代にさまざまな研究がなされて論文が出ている一方で、この発がんのリスクについての評価が私は十分省内で検討されてこなかったのではないかという思いすら持つわけなんです。

 ぜひ、こういったデータ、論文が数々出る中で、対応がおくれた、対応が遅くなったという認識を大臣も持っていただきたいと思うんですが、この点についてはいかがお考えでしょうか。

尾辻国務大臣 今、西副大臣を中心にいたしまして、そうしたことも含めて検証する、そしてまた今後についての検討もするというチームで作業をいたしておりますので、ただいまの御指摘のようなことも含めてしっかりと検証してまいりたいと存じております。

岡本(充)委員 そして、今回、作業環境濃度の変更に至りまして、石綿ですね、クリソタイル〇・一五繊維・パー・ミリリットルというのが作業環境濃度の上限というふうになりました。実際には、測定の限界が、〇・一五より下でははかれない、こういう話も聞いてはおりますけれども、実は、〇・一五の濃度だと、今指摘させていただいたとおり、千人に一人は将来発がんをする、つまり、千人いる事業所の中では一人労災で亡くなる、こういう割合になってくるわけでありまして、この状態でもまだ実はかなりリスクは高いという認識を持たざるを得ないと私は思っています。

 また、その一方で、今私たちがいるこの環境で一体どれだけ石綿があるのか、これについてはデータを持ち合わせていないと厚生労働省から教えていただいたわけですけれども、そういう話を聞きましたが、これについては本当にデータを持ち合わせていないんでしょうか。

小田政府参考人 お答えいたします。

 一般環境中のアスベストの濃度等につきましては、これは環境省の方で一般環境中の管理濃度というものを定めておりまして、昨今の報道におきましても、そういった形の検査、調査をするというふうなことが報道されておるというふうに仄聞しております。

岡本(充)委員 今月末に政府が発表する対策の目玉として盛り込むんだという話も聞いています、二百カ所ぐらい調べるんだという話も聞いていますけれども、新聞報道に出ていましたが。

 そもそもから言って、やはりこの一点をとらえても、本来であれば、これはもう一九七九年のデータとして、これはもらった公衆衛生の教科書だとそうですけれども、たばこを吸わない人が石綿暴露なしで将来発がんするリスクを一としてその相対危険度を出すと、たばこを吸わずに石綿暴露をした場合五・一七、たばこを吸って石綿暴露なしが十・八五、そしてたばこも吸っている人でなおかつ石綿暴露のある方は五十三・二四というふうに数字をいただきました。

 つまりは、これだけの危険度が高い発がん物質だということが、危険性が高まるということが、既にこういった多くの文献が出ている中で、対応がおくれてきたということについてはぜひもう一度真剣に考えていただきたいと思います。

 そして、今度、今時効の壁という話が出ておりますけれども、これだけじゃないと思います。今、実際に作業環境濃度の中でいろいろな物質が設定されています。例えばベンゼンだとか有機溶剤も含めていろいろ出ている。例えば、それぞれの濃度が将来発がん物質としてさらに認定が変わってきた場合、危険度が変わってきたとき、改めてそれを見直す、遡及をして何らかの措置をとるということは、私は国として当然真剣に考えるべきことだと思いますし、時効だから、死んでから五年たったからといっても、これで切り捨ててしまうということは、私はあってはならないというふうに思うんですけれども、大臣、ぜひ前向きな御答弁をいただきたいと思います。

尾辻国務大臣 先ほど、時効についての考え方といいますか現行法の解釈については申し上げているところでございます。したがいまして、法律はまた法律でございますので、そうした解釈を変えることが私ども行政の立場では難しいということはお答え申し上げておるところでもございます。

 そうした中で、また今後何ができるかというのは政府全体で考えようということを申し上げておるところでありますし、私もその中の一人でございますから、その中で考えてまいりたいというふうに存じております。

岡本(充)委員 これは、もう一度、くどいようですけれども、石綿だけの問題じゃないんです。ほかの物質を含めても、後からわかることは十分考えられます。特別立法という方法もあるという話も出ていますけれども、手法は私はさまざまとれると思っておりますので、一概に時効の壁ではねつけるということのないような、心ある措置をお願いしたいと思います。

 さて、話はがらっと変わりまして、私は農業、林業、水産業の今の労働衛生環境について多大な関心を持っております。厚生労働省が毎年出しておりますさまざまな数値の中で、例えばこの農業、水産業、林業というのがどのくらい労働災害が発生しているのか、これを出したもの、例えば千人率というものがございます。業種別労働災害発生千人率、こういったデータを皆様方にお配りすればよかったんですが、残念ながら、少しいただいたデータが、もらったときに遅かったものですから、皆様方にお配りすることができなかったことを少しお話をさせていただきますと、この千人率、千人当たりの労働災害発生の状況、こちらを出した数字でありますけれども、例えば、製造業全体で千人当たり三・四二、これは平成十六年です。そして、例えば建設業、ちょっと高そうに思われるかもしれませんが、六・四八。こういった中で、実は農業は十三・五五、林業は百十・五八です。さらに、水産業は二十一・一七。

 ちなみに、前回農林水産委員会でも指摘をさせていただきましたが、一番千人率の低い業種はこの中で何になっているか。それは官公署、〇・〇七であります。官公署で働いている、つまり公務員の皆様方は千人当たり〇・〇七であって、林業で働いている人は百十を超える。千五百倍以上の非常なハイリスクの現状にいるというのがこれで一部推察はできますが、その一方で、実は、残念ながら、災害統計の一つの大きな指標となっています産業別災害率のいわゆる度数率、そしてまた強度率といった数字、こちらの方については、今、農業、水産業は対象になっていませんし、林業については、小規模な事業所がふえてきたという理由で、三十人から九十九人程度の事業所については調べておりますが、それ以外のところについては米印になっています。つまりは評価をする数字が今現状としてないやに私は認識しておるわけなんですけれども、きょうは、農林水産省からも、そして林野庁、水産庁からもそれぞれ政府参考人にお越しいただきました。

 こういった現状の中で、農業、林業、水産業それぞれの分野において、例えば農作業事故、林業労働災害、ちなみに、漁業はその名前すらないやに私は聞いておりますけれども、こういったそれぞれの事故の発生をいかに少なくしていくかというのは、新しい担い手の確保にも大きく寄与すると思う中で、こういう数値を今後つくっていきたい、つくるべきだというお考えをお持ちか、端的に、短くで結構です、あるかないかお答えいただきたいと思います。

梶谷政府参考人 農林水産業全般について、私の方からお答えさせていただきたいと思います。

 農林水産業における労働災害の防止を推進するというためには、農林水産業に係る人的災害について幅広い情報の把握が重要だと思っておりまして、このような観点から情報の収集に努めてまいりたいと思っております。こうして得た情報につきましては、厚生労働省の方から提供依頼があった場合には積極的に対応してまいりたいというふうに考えております。

岡本(充)委員 いや、もう一回お答えいただきたい。部長、ちょっと考えていただきたい。

 数字があって目標があるから数値目標をクリアしていこう、そういうものがあるから頑張っていこう、そういう一面もある中で、今、目標数値となるものがないんです、正直言って。これをつくる意義というのをお感じかお感じじゃないか、そこだけ、では、お答えいただけますか。

梶谷政府参考人 お答えいたします。

 指標という数値につきましては、これは労働災害防止対策を統括している厚生労働省において、労働災害防止のためのルールを効果的なものにするということを念頭に定められているというふうに考えております。しかしながら、こういう指標ということの作成について厚生労働省から協力依頼があった場合には、必要なデータ等については積極的に対応してまいりたい。

 ただ、いろいろな面、幅広く情報収集をして、我々農林水産省として労働災害に対応していくという観点からは、その情報の把握は極めて重要だというふうに考えております。

岡本(充)委員 水産庁はいかがですか。データがない、そしてまた水産庁、農林水産省は、それぞれ労働者じゃないという観点で、つまりは、船主は労働者じゃない、農家は、漁家は労働者じゃない、いわゆる一人親方というか、経営者であるという観点から、こういった労働行政から今切り離されているやに私は思うわけですね。アルバイトで雇った人は別として、多くの漁家、農家の方がどういう厳しい環境で仕事をしているか、この部分について、きちっとした評価をしていく必要性が私はあると思うんですけれども、あるかないか、時間がないので本当に端的にお願いします。

中前政府参考人 先生御指摘のとおり、漁業につきましても、相当いろいろ事故発生が高い産業でございまして、私どもは、大変それにつきましては改善をしていかなければならないというふうなことを考えております。現実に予算等も措置をしまして、例えばライフジャケットとか、そういうようなものもいろいろ普及に努めておるところでございますが、今御指摘の点につきましては、厚生労働省の方で水産業の方からのそういった情報の提供というようなものがあれば、もちろん積極的に対応いたしますし、私どもといたしましても、そういった情報を的確に把握しながら労働災害の減少につながるように水産庁としてもしっかりやっていきたい、こんなふうに考えております。

吉田政府参考人 農作業事故の関連でございますけれども、実は、農作業事故の関連につきましては、厚生労働省の協力も得まして、昭和四十九年から、人口動態調査の結果の活用等を含めまして実態把握に努めておるところでございまして、その結果によりますと、現在、大体年間四百人程度が農作業事故での死亡事故件数というふうに把握しているところでございます。

岡本(充)委員 人数じゃないんですよ。人数だけじゃなくて、人数は人口動態調査で出している。これだって死亡診断書から後ろ向きに調べている話であって、前向きに調べるデータではないんですね。そういう意味でいったら、きちっとしたデータを出して、そして比較をする中で、その取り組みを行っていくためにも数値は必要じゃないかというふうに思うんですけれども、もう一度だけ、農林水産省、必要か必要じゃないか。欲しいと思われるか。

吉田政府参考人 繰り返しになりますが、私どもとしてはその件数をつかんでおりますが、他の業種との比較という意味で、そういう統一的な数字があった方が便利ではないかという意味では、おっしゃる点もあろうかというふうに思います。

岡本(充)委員 それぞれ三つの分野からこういうお答えをいただきまして、それを受けて、どうですか、厚生労働省として。データは出すと農林水産省、それぞれ言われています。そして、あったら活用したいなという声も出ています。

 そういった中で、特にこういう小規模な事業所ほど、これは工場でもそうですけれども、労災が多い中で、今三十人以下については、十分な調査、比較するのは確かに難しい、たくさん事業所もあるから難しいのは事実だけれども、厚生行政として考えたときに、労働者じゃないからといって打ち切るわけではなくて、国民が仕事中にどれだけさまざまな傷害を、もしくは死亡事故を生じているか、それを調べていくという必要性は高いと思うんですけれども、大臣、どうでしょう。新しい数値をちょっと考えてみる、できるかできないかわからないけれども、検討してみる、それぐらいのことは、大臣、お答えいただきたいと思うんですけれども、どうでしょうか。

尾辻国務大臣 労働安全衛生法は労働者の災害を防止することを主目的とする法律でございまして、死傷者千人率等の指標を活用して、災害発生率の高い業種や中小企業を重点対象として労働災害の防止に取り組んでいるところでございます。

 ところで、今、農林水産業などを話題にされたわけでございますけれども、また、一人親方等の労働者性のない者の災害といったようなこともございますけれども、こうしたことにつきましては、労働安全衛生法が対象とするものには該当しない、こういうことでございますので、これらの指標を導入するということについては難しいと考えておりますけれども、このような災害であっても労働災害防止上、参考となる災害については、その防止は労働者の災害防止にも資する、これは当然のことでありますから、私どもも関心を寄せざるを得ないものでありまして、関係機関から情報提供を受けるなどにより、今後の労働災害防止対策の推進のため活用に努めてまいりたいと存じております。

岡本(充)委員 大臣も、その数値をいただければ、その上でそういった新しい指標をつくっていくことには前向きだというふうにとらえてよろしいわけですか。確認です。

尾辻国務大臣 申し上げておりますように、大きく働いている皆さんの災害防止ということに資するということであれば、もちろん私どもも、それは私どものやるべきことでありますから、活用させていただきます。

岡本(充)委員 ぜひ、では、省庁間、縦割りではなくて、今大臣もそう言われました、ぜひ数値を出し合って、いい数値をつくっていただきたい。またこの点については、どうなったか、機会をとらえて御質問させていただきたいと思います。

 そして、最後ですけれども、こういった労働災害防止をする協会、こちらのデータがなかなか出てこなかったんですが、こちらの方の数字をちょっと教えてくれと言ったら、結局、私のところに来たのが、夜の九時にファクスが入りまして、皆さん方にお配りすることができなくて大変残念ですが、労働災害防止協会というのが、中央労働災害防止協会、建設業、陸上貨物運送、そして林業・木材製造業、そして港湾貨物運送事業、それぞれの労働災害防止協会があります。この中に十三人常勤の理事さんがみえますが、それぞれ労働災害防止に努めているんだと言われますけれども、このうち、事実は、十一人、厚生労働省のいわゆる天下りなんですね。そして、平均給与も、およそ一千五百万円ぐらいの給与をもらっています。

 その主な事業の一つは、例えばこういった出版物です。先ほども使わせてもらいましたが、こういった出版物をおよそ三百五十種類も出していると言われます。その印税だけでも十数億円、二十億円弱の収入があるやに、例えば中央労働災害防止協会だけでもあるやに私は報告を聞きましたけれども、基本的に十数億円も毎年何でそんなに印税が入るのかなと思って考えたら、実は、さまざまの冊子、安全衛生年鑑なんか例えば一冊四千円なんですね。恐らくこれをつくって、毎年毎年四千円を買ってもらっているんだ。決して安い本ではありません。

 ここに広告を出しているのはどういうところかというと、安全衛生映像研究所だとか、安全衛生技術試験協会とか、自分たちの仲間内、身内で広告を出して、お金を出して、そしてそれを高い値段で身内に売る、こういうビジネスは、私はある意味、今話題になっている官から官へのお金の流れという指摘をせざるを得ないと思うんですね。

 私は、この協会自体が仕事をしていないと言っているわけじゃない。一生懸命やっていただいている、そういう職員もみえるでしょうが、その実、例えばこの中央労働災害防止協会だけで、常勤理事の年収だけで一億円です。全職員が四百人ぐらいいて、二十億円ぐらいの人件費、そのうちの一億円をわずかに六人です、六人の常勤理事で占めている。これは、まじめに働いているこの協会の職員だって、すべて、そのほとんどの常勤理事は天下りで、そしてその人たちがかなりの割合の給料を取って、そして出版物といえば身内の広告を出している、こういう状況は私は余り好ましくないんじゃないかというふうにまず指摘をさせていただきたい。

 それで、その上でなおかつ、今回、大臣、ぜひこれも考えていただきたいんですけれども、時間がないから余り聞けませんけれども、中央労働災害防止協会の中に、例えば建設業も陸上貨物運送事業も林業・木材製造業も、それから港湾貨物運送事業も、こういった事業もすべて統括して、一つの協会にして、そしてその中で全部やっていけば、これだけ理事の数もたくさんつくらなくてもいいわけです。

 もし、例えば、恐らく言われる話の一つとして、災害が多いからここは特段に別途協会をつくりましたというんなら、では漁業だって必要なんです、では農業だって必要です。労働者じゃないんだと言うけれども、それでも労働者としてカウントしたら確かに災害が起こっている率は高いわけですから、そういう意味でいったら、ハイリスクだから協会をつくっているわけじゃない。それぞれ中央で一括して、例えばその中で部署をつくって検討するということも十分可能だと思うんですけれども、こういった、一つにまとめていく、取りまとめをしていくということについて、大臣は前向きにお考えいただけますでしょうか。

青木政府参考人 ちょっと事実を申し上げたいと思いますけれども、今、書籍販売のことをお取り上げになりましたが、書籍販売に係る収入は、中央労働災害防止協会の場合には約十四・七億円でございます。

 それで、こういった極めて専門的な書籍というのは、中央労働災害防止協会が極めて専門能力が高いということで多くつくっておりますけれども、そのほか民間でも相当つくられておりますし、同様の書籍が民間出版社で一般の書店からも販売をされているということでございます。

 それから、役員の報酬については、これは他の公益的な事業を実施する同規模の法人の役員報酬と同レベルということでございますし、中央労働災害防止協会においては、公労使をメンバーとする参与会、評価委員会をつくりまして、予算、事業、定款等についてチェックをしているという、内部的なチェックもやっているところであります。

 それで、お話のありました業種別の災害防止協会でございますけれども、これは中央労働災害防止協会もそうなんでありますが、事業主が自主的に集まった団体でございます。とりわけ業種別の団体につきましては、業種別の事業主の団体が自主的につくったものでありまして、これはむしろ業界として、自分たちが自主的に労働災害防止を担っているんだという気持ちを非常に強く持っているところでございます。

 なおかつ、それぞれの業界で、自分たちの自主的な活動という意識が非常に強うございますので、なかなかこれは、私どもがどうこう言うような話ではありませんけれども、そういった団体自身でお考えになれば、私どもとしては別にそれを否定する何物でもありませんし、これは業界ごとに、業種ごとに自由に、自由にといいますか、そういう機運があればつくれるという団体でありますので、そういう意気込みが実際の活動には随分といい影響を与えているというふうに思っておるところでございます。

 ですから、いわば、そういったものをまとめるというのは、相当自分たちの気持ちというもの、災害防止にかける情熱というようなものをそぐ結果になるのではないかなと私は心配をしているところであります。

尾辻国務大臣 まず、中央労働災害防止協会について申し上げますと、今局長も言っておりましたけれども、労働安全衛生に関して極めて高い専門性を有するすぐれた組織であると理解をいたしております。

 そしてまた、これまた局長が御説明申し上げておりましたけれども、それぞれ業界の皆さんがおつくりになっておる組織でございまして、代表者も経団連の会長さんでありますし、また、副会長、四人おられますけれども、それぞれ会社を代表する皆さん方であります。そのように業界の皆さんがおつくりになっておられる団体でありますから、私どもが直接何か申し上げられるという立場でもございませんけれども、今御指摘のようなお話も今お聞きをいたしましたから、私なりにはよく聞いてみたいとは思っております。

岡本(充)委員 ありがとうございました。終わります。

北川委員長代理 次に、水島広子君。

水島委員 民主党の水島広子でございます。本日もよろしくお願いいたします。

 まず、法案の質疑そのものに入る前に、やはりどうしても私も伺っていて腑に落ちないので、アスベストについて一問だけ伺いたいと思います。

 先日、西副大臣がきちんと、これは行政の決定的な失敗というふうに御答弁されたということは、大変私たちは頼もしく伺ったところであったわけなんですけれども、それに対して、その翌日でしたでしょうか、事務次官が早速それを否定するようなことをおっしゃり、そしてそれに追い打ちをかけるように、今度は大臣が、その都度厚生労働省としては対策をとってきたと考えているとおっしゃっていまして、問題があったとすれば、それは省庁間の連絡と、先ほどもそのような御答弁であったと思います。

 本当にこれが省庁間の連絡、省庁間の連絡も確かにかなり悪かったと思いますけれども、例えば、きょう午前中、福島委員もお触れになったようですが、新聞にも七月二十一日に載っておりますけれども、旧労働省が作業場での石綿粉じんの濃度を規制する基準値、作業環境評価基準と言われているものですけれども、これを一九七六年から今年四月まで、二十九年間も変更しなかったということが明らかになっているわけで、この基準値のレベルは、WHOが安全の目安とする基準の二百倍。これは本当に驚くことなんです。全くこれは省庁間の連絡という問題ではなく、旧労働省の問題だと私は思います。このこと一つとっても、省庁間の連絡が悪かったとだけおっしゃるのはやはり問題ではないか、大変僣越ながら申し上げますと、尾辻大臣らしくないのではないかと思うわけです。

 薬害エイズの問題も水俣病もそうでございますけれども、何か、官僚というのは間違いを犯さないものなんだという神話にみんながしがみついてしまって、失敗を認められないために、どんどん対応が後手後手になっていく、その間に被害がどんどん広がっていくということが過去の歴史でも繰り返されてきているわけでございます。ここはひとつ政治家として、尾辻大臣も西副大臣としっかりと力を合わせていただいて、官僚も、間違いを犯してほしくはないけれども、時にはやはり結果から見ると間違いを犯している、それに一刻も早く気がついて前向きに対応していくことで、それまで被害に遭われた方たちへの、それがせめてもの気持ちということにもなりますし、また、新たなる被害を、本当にこれはきちんと禁止して対応していかないと、一日一日被害というのは広がっていくわけですから。

 本当にそのことはぜひ、尾辻大臣として、政治家として、官僚は、間違ってほしくはないけれども時には間違って、気がついたら、みんなで力を合わせてまた立て直していこうじゃないか、そのような気概を今回、厚生労働省でしっかりと見せていただきたいと思うんですけれども、一言、御答弁をお願いいたします。

尾辻国務大臣 私も日ごろ、役人、行政が決して間違いを犯さない、そういうことで過去を見てはいけない、そしてまた、言うならばそういうことに立っての言いわけといいますか、そうしたことを言ってはならないということはいつも言っております。今回もそうあるべきだと基本的にまず思っております。したがいまして、きっちりした検証をしようということを今言っておるわけでございます。

 ただ、だからといって、何でもただ謝ればいいというものではないと思っておりまして、説明すべきは説明すべきでありますし、こうしたことでしたということはちゃんと申し上げた上で、改めて検証すべきことは検証し、反省すべきことがあれば反省しなければならぬというふうに思っておるところでございます。

 今幾つかお述べになりました、例えばWHOの基準との違いでございますけれども、これも、申し上げますと、WHOが言っていますのは、自然界にアスベストはありますので、自然界にあるアスベスト、我々が日常生活をしている、子供から大人、お年寄りまで生活している、そうした中で、二十四時間生活している中で、アスベストの濃度というのがどのぐらいであれば危険だというのを示しておるはずでございます。

 私どもが示しておりました濃度の基準というのは、これは、作業をする中で、宇宙服みたいな完全防護した作業服を着て、そして防護マスクもかぶって作業をする、その作業場における濃度がこのぐらいの基準以下でなければ危険だということを言っておるわけでありまして、およそ基準が全く違うものでありますから、これは単純比較はできない基準だというふうに思っております。

 いろいろ申し上げたいことはあるんですが、そのように、御説明すべきは御説明し、私どもはきっちり、改めて過去へさかのぼって検証し、間違いがあれば、それは真摯に反省をするつもりでございます。

水島委員 今の御説明、こちらもいろいろ申し上げたいことはあるんです。例えば、今の大気中の基準だということをおっしゃったわけですが、旧環境庁、現環境省ですけれども、こちらは、大気の方については、八六年にWHOが示した安全基準と同じ基準に八九年にされているということで、きちんと大気の部分については対応はされてきているわけですけれども、ただ実際に、では作業場の基準がそのままでいいのかといえば、これだけ有害性が指摘をされてきている中で、二十九年間も一切変更をしていない。

 ここの新聞に書いてあることが正しいのであれば、基準は石綿以外にベンゼンやアセトンなど九十項目の物質の基準値を定めているので、石綿だけの変更は手続上難しく、時間がかかったと厚労省が説明していると書いてあるんですが、これがもし真実であるとすればそれはとんでもない話であって、今首を皆さん振られているので、真実でないのであれば、きちんとこのあたり、納得できるような御説明を、後ほどで結構ですので、明らかにしていただきたいと思っております。

 この話をやり始めますと、多分一時間、全部持ち時間を使ってしまいそうですので、本日はこの程度にさせていただきたいんですけれども、やはりこちらは、薬害エイズに次いで今度はアスベストかということで、かなりもともと警戒心を持って見てしまうところがございますから、そのような経緯を踏まえて、必要以上に丁寧に御対応をいただきたいと思っております。本当に守るべきなのは人の命と健康ですから、何かフライングをしてしまって、取り返しがつかないものといったらやはり人の命と健康でございますので、ぜひ、疑わしいときは必ず人の命と健康を守るようにという方向にこれからも施策をリードしていただけますように、今回のこの検証の結果を期待してお待ちしたいと思っております。

 ただ、本当に、できたら最初に大臣がおっしゃることとしては、その都度厚生労働省としては対策をとってきたと考えておりますで終わりにしないで、考えておりますが、まだ検討しなければいけないところもあるので現在検討中でございますと言っていただけると大分トーンが違ったのではないかと思いますので、その点は感想でございますので、時間もなくなってまいりましたから、法案の審議の方に入らせていただきたいと思っております。

 これも、私が持っております記者会見のメモに基づいて今申し上げておりますから、いろいろと誤解があるかもしれませんけれども、ぜひ、その点も含めまして、後で、さすが尾辻大臣、きちんと対応してくださったと思えるような成果をきちんと残していただけますよう、そして一刻も早い対応を本当に心よりお願いをいたします。

 さて、今回、労働安全衛生法において初めて職場のメンタルヘルスが法律事項として規定されたということは、一歩前進として評価をしているわけでございますけれども、本当はこちらも待ったなしの深刻な状況にございますので、その事態の深刻さを考えますと、一歩と言わずにもう何歩も前進してほしかったというのが正直なところでございます。また、一歩前進とはいっても、規定されただけで実効性がないということでは困りますので、幾つか気になる点について質問をさせていただきたいと思います。

 まずは、原則的な点について大臣に伺いたいんですけれども、今回の法改正で、産業医の職務はふえているわけでございますし、きちんと規定をされているわけですけれども、その権限の強化や独立性の確保については、結局全く触れられずに終わっているわけでございます。ドイツやフランスでは、産業医の選任、解任に当たっては、事業者と労働者の合意が必要というふうに聞いておりますけれども、我が国の場合、産業医の選任は専ら事業者の権限ということでございまして、そのあり方が産業医の中立性を損なっているという心配があるわけでございますけれども、その点について大臣がどのようにお考えになっているか、お聞かせいただきたいと思います。

尾辻国務大臣 今の御質問にお答え申し上げる前に、先ほどお触れになりましたことについて、一言だけはぜひ申し上げておきたいと思います。

 一部報道などによりますと、ただずっと放置してきた、そして面倒くさいから放置してきたんだというようなことも言われておりますけれども、これも何回も専門家の皆さんに審議をお願いして、専門家の皆さんから、基準濃度を変える必要はないというお答えが出たものですから、結果として変えていない。ただ、何回もその審議をお願いしておるという経緯はございます。

 そうしたことはいずれ私どもも本当に検証したいと思っておりますから、何も言いわけをするための検証という意味じゃなくて、ちゃんと検証したいと思っておりますので、しっかりとお出しをしたいと思いますので、ぜひまたごらんいただいた上での御批判もいただきたいというふうに思っております。

 あえて一言だけ申し上げさせていただきました。

 それで、今の御質問でございますけれども、労働安全衛生法におきましては、産業医が労働者の健康を確保するために必要があると認めますときは、事業者に対し労働者の健康管理等について必要な勧告をすることができ、事業者はこれを尊重しなければならないとされておるところでございます。労働安全衛生規則におきましては、事業者に対して勧告をした産業医に対して、解任その他不利益な取り扱いをしないようにしなければならないというふうにしております。

 従来より、これらの規定により産業医の権限、中立性を担保しているところでございまして、医師はその患者を守ることが使命であることを考えますと、労働者の健康上不利益となるような判断はされないものと考えておりますけれども、今回の改正法の施行に当たりまして、改めて、産業医としての職務が適切に遂行されるよう、事業者の指導等にも努めてまいりたいと考えておるところでございます。

水島委員 きちんとその趣旨が徹底されますように、また事例の検証も含めて、ぜひ実行していただきたいと思っております。

 また、今回、私がまず思いましたのは、そもそも産業医が義務づけられているはずの職場であっても、産業医を置いていないところすらあるという現状であるわけですけれども、そんなところでさらに義務規定をつくっても効果があるんだろうかというのが私の素朴な疑問でございました。つまり、労働基準監督官の数が少な過ぎて、外的なチェックシステムが十分に機能していないと考えられるわけなんですけれども、この点についてはどうしていかれるおつもりでしょうか。これも大臣に伺いたいと思います。

尾辻国務大臣 労働者の安全と健康の確保のため、今回の法改正の内容の適切な施行を図るべく、事業場に対する適切な指導に努めてまいりたいと考えております。

 今、本来置くべきところにというお話もございましたけれども、私どもは、必ず産業医というのは置いてもらわなきゃいけない、これは当然のことでございます。ただ、そうしたところが万が一という場合には、これは当然解消をしなきゃいけないということでございまして、労働基準監督署におきまして監督指導を行っております労働基準監督官については、これまでも必要な増員に努めるなど体制の整備を図ってきたところでございますけれども、さらにその体制を充実させていきたい、そしてそういう中で指導してまいりたいというふうに考えておるところでございます。

水島委員 さらりとお答えいただいてしまったので、本当にちゃんとやっていただけるのかなとちょっと心配なんですけれども。産業医を置くことが義務づけられているのに置いていないところが明らかにかなりの割合あって、何でそういう現実が許されているんだろうかというのは、この分野の専門でない政治家としての本当に素朴な疑問であるわけなんです。

 今の労働基準監督官の数から単純に計算いたしましても、何か問題の事例があったときにそれに対応することはできるかもしれないけれども、常時、全体をチェックして、ちゃんと義務づけられているところに産業医が置かれているんだろうか、そして今回規定されているような義務が果たされているんだろうかということをチェックするにしては、余りにも労働基準監督官の数は少ないんじゃないか。簡単に計算してもそのようになると思いますので、ぜひ、今ちょっとさらりとお答えいただいてしまったんですけれども、この増員ということも含めまして、何とかこの法律が絵にかいたもちにならないように、きちんと対応できるような仕組みをもう一つ考えていただけないかなとは思うんです。

 局長から何か名案があるようですので、端的によろしくお願いします。

青木政府参考人 確かに、労働基準監督官の数は実働ベースでいっても三千人程度でありますし、私ども、安全衛生関係だけではなくて、労働関係法令、労働基準関係法令の施行をきちんとやるということでやっているわけであります。

 適用対象事業場がたしか四百万ぐらいあったかと思いますので、なべて平たくやってしまうと、十年とか二十年に一遍しか事業場に立ち入りできないというような話でございます。ですから、私どもは、いろいろな工夫をしまして、個別に事業場を訪問して指導するというのが基本でありますから、このやり方なども、重点的な対象を決めたり、あるいは、むしろ多くの事業場に集まっていただいて集団指導をするとか、業界を活用するとか、そういうような工夫をしながら、必要な体制が不足している部分についてはやり方を工夫しまして行政を進めていっているところでございます。

 今後とも、そういうことで、大臣からもお答えがありましたように、増員、体制の増強というのはもちろんまず第一義的に考えなくちゃいけませんが、そのほか、それでも足りない部分が出てまいりますので、そういう工夫をしていきたいというふうに思っております。

水島委員 ぜひ成果を上げていただきたいと思いますので、よろしくお願いします。

 また、現在、一つの事業所には実際には多くの方たちが入って仕事をしているという実態がございまして、そういういろいろな働き方の方たちが入っているという中では、時間外労働の把握というのは実は簡単なことではないと思うんです。

 例えば、今回、時間外労働の把握をして面接義務をかけるということは、派遣労働者についても当然対象になるということでございますけれども、派遣労働者の場合には、時間外労働を把握できるのは派遣先だけだけれども、面接義務がかかってくるのは派遣元という関係になっていまして、そこの両者の連携をどのようにしていくのかというところが気になるんです。

 この点は局長の御答弁で結構ですので、お願いいたします。

青木政府参考人 今委員お話しになりましたように、派遣労働者に対する面接指導については、派遣元の事業主が実施義務を負うということになっているわけでありますが、一方、労働時間の把握について、これは派遣先事業主が実際に現場で管理をしているということになりますので、したがって、労働者の派遣法におきまして、派遣先事業主は派遣元事業主に対しまして、派遣就業をした日ごとの始業し、及び終業した時刻並びに休憩した時間を通知しなければならないということに法律上規定をされております。これにより、派遣元事業主は派遣労働者の労働時間の状況を適切に把握するということが可能、こういう制度的な仕掛けになっております。

 こういうことを通じまして、きちんとやっていきたいというふうに思っております。

水島委員 制度上可能となっていても、実際それが運用されるかどうかというところは、今後の御努力ということもあると思いますので、ぜひそこのところはきちんと、よろしくお願いいたします。

 次に、メンタルヘルスに入ってまいります。

 健康情報というのは個人情報の中でも特に機微な情報でございまして、そもそも厳格に保護されるべき性質のものだと思いますけれども、もちろん、一方では、事業者は安全衛生法等で労働者の安全の確保のために必要な措置を講ずる責任を有しておりまして、民事上の安全配慮義務を果たすことを期待されているため、法の許す範囲で、労働者の健康状態や病歴等の個人情報を収集し、職場環境整備等に活用するということになっているわけでございます。その際、当該労働者の健康情報を医師以外にも必要に応じて関係者に対して提供されるということがございまして、これは、本当に気をつけていかないと、労働者のプライバシーの侵害に至ってしまうということもあるわけです。

 特にメンタルヘルスについては、誤解や偏見を招きやすいわけですので、より慎重な対応が必要と考えますけれども、どのような配慮を行うべきであるとお考えになっているか、大臣のお考えをお聞かせいただきたいと思います。

    〔北川委員長代理退席、委員長着席〕

尾辻国務大臣 心の健康の問題は、それ自体への誤解も残っておりまして、心の問題を抱える労働者に対して健康以外の観点から評価をされたりするなどの問題がありますために、メンタルヘルス対策を推進するに当たりましては、プライバシーの保護は非常に重要であると認識をいたしておるところでございます。

 労働者の健康情報の保護につきましては、個人情報保護法に基づき示しております雇用管理に関する個人情報の適正な取り扱いのための指針に定めた措置について、健康情報を取り扱うに当たっての留意事項を示し、この周知、普及を図っているところであります。この中で、診断名、検査値等の生データをそのまま扱うのではなくて、産業医等が適切に加工した上で事業者に提供する等の措置を求めているところでございます。

 こういう表現をいたしますと、先生は御専門でいらっしゃいますから、加工した上でということは、むしろ私以上におわかりいただけると思いますので申し上げませんけれども、そのように考えておるところでございます。

水島委員 今おっしゃっていただいたところは非常に重要な点だと思います。職場で必要とされることというのは、その人がどういう病気であるかというレッテルを張ることではなくて、どういう配慮がそこの職場で必要なのかということだけが必要な情報だと思いますので、今言ってくださいましたように、くれぐれも、診断名、病名がそのまま伝えられるというようなことではなく、どういう配慮が必要なのかという点だけがきちんと事業者側に伝えられるようにというところだけは、指針をおつくりになる上でもこれは徹底をしていただけますように、重ねてお願いをいたします。

 二〇〇四年の九月六日に公表されました労働者の健康情報の保護に関する検討会の報告書には、「メンタルヘルス不調の者への対応にあたって、職場では上司や同僚の理解と協力が必要であるため、産業医・産業看護職・衛生管理者等の産業保健スタッフは、本人の同意を得て、上司やその職場に適切な範囲で情報を提供し、その職場の協力を要請することも必要であると考えられる。」と書いてあるわけでございます。

 この提起は、本人同意という考え方が示されたもので、安全衛生法の中ではかなり意味のあることかなというふうに思ったわけですけれども、この点について、大臣のお考えはいかがでしょうか。

尾辻国務大臣 メンタルヘルスの不調者への対応に当たりましては、産業医等の産業保健スタッフが、原則として本人の同意を得た上で上司やその職場の関係者に適切な範囲で情報を提供し、必要な措置をとっていくことが必要であると認識をいたしております。

 今回の法改正にあわせまして、現行のメンタルヘルス対策に係る指針の見直しを行いまして、労働安全衛生法に基づく指針を示すこととしておりますけれども、この指針の中でプライバシー保護に関して留意すべき点についても記述することとしておりまして、産業医や事業者に対して、この指針の普及を通じてメンタルヘルス対策におけるプライバシー保護について徹底を図りたいと考えております。

水島委員 ぜひ、基本的な理念としてやはりプライバシー保護、本人の同意を得て何かを伝えるということはきちんと理念として徹底させていただきたいとは思うんですけれども、その一方で、気になりますのは、本人同意などという言葉がひとり歩きをしてしまうということでございます。例えば、今回は面接義務についても本人の申し出が要件になっているわけですけれども、本人同意とか本人の申し出という概念がひとり歩きしてしまいますと、自己責任論へと偏ってしまって、本人が同意しなかったから、本人が申し出なかったからということで、事業者の免罪符になってしまうのではないかということも心配であるわけです。

 健康を顧みることなく働かざるを得ない、あるいは不健康がリストラの条件になりかねない職場の現状では、申し出ることのできない労働者も実際には多いと思いますけれども、本人の申し出、本人の同意というところに偏重しないように、そこのところは大臣はきちんとお考えくださっていますでしょうか。

尾辻国務大臣 事業場においては労働者が確実に申し出を行うことができるように事業者を指導するということがまず必要だと思っておりまして、この指導もいたしますけれども、産業医が面接指導を受けさせる必要があると判断した者に対して申し出を勧奨することができることを、面接指導マニュアルで詳細な勧奨の方法等を明示することとしておるところでございます。

 ただ、この申し出が、そういうふうに言いますと、事業者の免罪符になるのではないかという御指摘でございますけれども、今回の改正におきましては、面接指導を行う労働者以外の労働者についても面接指導等必要な措置を実施する努力義務を課していることから、申し出をしなかったことが事業主の免罪符にはならないと考えております。

水島委員 本当にそこの点は、ぜひ、今後いろいろ御指導をしていただく上でもきちんと踏まえていただきたいと思っております。

 ただ、やはり、それを伺ってもなお納得できないのは、午前中の審議からもございますけれども、なぜ百時間以上の時間外労働者に本人の申し出が必要かというところは、どうしても納得できません。

 百時間という時間外労働時間は、睡眠時間が五時間以下になると脳・心臓疾患を発症する危険性が極端に高まるという疫学研究調査報告から導かれたということでございまして、疫学研究に裏づけられているということであれば、本人の申し出は必要のない、ある程度客観的な基準として考えてよいのではないかと思います。一カ月百時間以上というのは、既に過労死し得る時間外労働であって、予防の域を超えているわけでありますから、申し出などと悠長なことを言っている場合ではないと思います。

 そもそも、百時間も時間外労働をしていて、既に心身の健康を損なっているという状況で、本人の申し出を期待するということが、私は発想として間違っているのではないかと思うんです。私も精神科医として過労自殺の意見書を書くなどかかわったことがございますけれども、そういう状況になりますと、本人は仕事に圧倒されてしまって、それ以外のことが全く考えられない状態になりますし、既にうつ病を発症しておりますと、自己否定感や罪悪感なども手伝って、とても当然の権利である面接を希望するなどという前向きな行動がとれるものでもありませんし、また、疲労の蓄積を確認するというんですけれども、疲労の蓄積についても否定するということがあり得るわけでございます。

 そもそも、百時間を超える時間外労働についてこうやって国会で大臣と議論をしているということが明らかに異常な事態であって、もうそんな異常な事態であるわけですから、百時間以上の時間外労働をしている人については、申し出は要らない、必ず面接をして、当然これは健康に既に悪影響を与えている数値なわけですから、即刻何らかの措置を講じていくというような対応が必要だと思いますけれども、百時間以上の時間外労働については申し出という要件を外していただくことはできないんでしょうか。

尾辻国務大臣 けさほど来、このことについては御議論がございます。

 これは労働政策審議会でもいろいろ御意見があったというふうにもお聞きをいたしておりますけれども、この審議会の建議を踏まえますとどうしても、けさから申し上げておりますように、時間外労働が月百時間を超えているということと疲労の蓄積が認められるということを要件として面接指導の対象者とするということになる。そこで私どもはそういうふうに予定をいたしているところでございます。

 そして、その二番目の疲労の蓄積については、通常、体調の不良、気力の減退などほかの人には認知しにくい自覚症状としてあらわれるものでございますから、要件に該当するか否かの一義的な判断については労働者御自身にゆだねざるを得ない、こういうふうに考えておるところでございます。

 いろいろ御意見はございますけれども、メンタル面の情報というのは、個人情報の話も出てまいりましたけれども、やはりどうしても事業主に把握されることを恐れる方がおられるわけでありまして、そういう恐れる方を守るためにもということで、私どもはこの申し出ということが必要だと今考えておるところでございます。

水島委員 百時間以上時間外労働をしている方をつかまえて、事業主に知られることを恐れるかどうかというレベルの話ではなく、もう死ぬか生きるかのところの話でございますので、ここは本当にお考え直しいただく余地があると思います。

 ぜひ、大臣も含めて、委員の皆様方も、こういう過労自殺をする、それだけの長時間労働をされていた方の最期の日々がどんなだったかということのいろいろな克明な記録もございますので、本当にお目通しいただきたいと思います。

 私も本当に、その意見書を書かせていただいて、もうとてもこれは何か小理屈をこね回してどうにかなるような世界の話ではなくて、明らかに間違った状況に突入してしまっているわけであって、その悪循環は自分の力ではとても抜け出ることができません。もうそういう精神状態になってしまっているわけですから、自分で気がついてそこから出ていらっしゃいというのは間違った期待であるということを、もう一度お考え直しいただきたいと思います。

 これはもう強制的に、ある意味では、言葉は悪いですけれども、本当に仕事中毒的な状態にならされてしまっている状態ですから、周りから、こんなに働いてはいけないと言わなければいけないような事態にあるのだということを、ちょっとここのところについては、ぜひこの法案の審議が終わるまでにもう一度きちんと御検討をいただきたいと思いますし、やはりこんなことを悠長に審議の中で話しているということそのものが私は間違っていると思いますので、ぜひそこの点は大臣の御英断を期待させていただきたいと思います。

 そして、地域産業保健センターについて伺いたいんですけれども、二〇〇五年度からメンタルヘルス支援事業が地域産業保健センターの事業の一部として入っているわけでございまして、そのセンターでは働き盛り層のメンタルヘルスケア支援事業が準備中ということでございますけれども、個別の労働者の相談に応じた場合、それを当該の事業者に報告するというふうに考えられているんでしょうか。これは局長に御答弁をお願いします。

青木政府参考人 地域産業保健センターは、原則として産業医の選任義務のない小規模事業場の労働者の健康管理を行うということで、監督署のエリアごとに設置をしております。今年度から、働き盛り層のメンタルヘルスケア事業ということで、そういう事業も始めております。事業場の規模によらず相談を受けるという体制をとっているところでございます。

 メンタルヘルスに関する相談を随時行えるようなさまざまな工夫を凝らして、地域に根差した産業保健の拠点として広く活用されるようにしていきたいと考えております。(水島委員「事業者に報告するかどうかというところを聞いたんですけれども、今、質問に全く答えていないんですが。答えられなかったらちょっと時計をとめていただかないと」と呼ぶ)

水島委員 では、大臣にあわせてお答えいただいてしまいます。局長が何かお答えになりたくないようですので、大臣に伺います。

 今局長が御説明になったように、地域産業保健センターというのは、産業医を選任する義務のない小規模事業所に働く労働者に対して、ある意味では産業医を代替する措置として置かれているものであるわけですから、今回、産業医がメンタルヘルスについて配慮が必要だということがわかったときには事業者にそれを意見するというのと同じような機能を、当然この地域産業保健センターが果たすべきだ、この仕組みから考えてもそうだと思うんですけれども、大臣はそのようにお考えになって、そのようにしていただけますでしょうか。

尾辻国務大臣 今の御質問の意味を改めて私が理解したところで申し上げますけれども、地域産業保健センターの産業医がおります。この産業医というのは、登録をしてはおりますけれども、企業に産業医として雇われているわけではございません。この関係について、地域産業保健センターにおる産業医が、登録されている産業医が企業に対してどういうふうに意見を言えるか、また積極的にかかわり合いを持つべきだという御意見での御質問だと理解をしてよろしゅうございましょうか。(水島委員「はい」と呼ぶ)

 では、そのように理解をさせていただいて、お答え申し上げたいと存じます。

 労働者から相談を受けた地域産業保健センターの医師が、労働者の健康確保のため必要な場合に事業場に対して意見を述べるということは望ましい、当然望ましいと考えております。

 まずは、地域産業保健センターの登録医が産業医として活用されることが期待されるところでございまして、産業医共同選任事業等、あるいは地域産業保健センターによる職場巡回指導等を通じて、小規模事業場でも産業医としての活動の促進が図られるようにしてまいりたいというふうに考えております。

 実は私、先日見てまいりまして、頑張っておられる登録医の方々のお話も伺って、その役割が大きいということは実感をいたしておりますので、ぜひ活動の促進が図られるように私どもも努力したいと考えております。

水島委員 いろいろな施策の中で、どうしても小規模の事業所の方というのは、いつもいろいろな法律の例外規定のところに置かれてしまって、いろいろな恩恵にあずかることができないという仕組みになっているんですけれども、やはりメンタルヘルスのこと、また労働現場での健康の問題というのは、規模の小さいところで働いているからそれでいいんだということでは全くございませんので、産業医を置く義務のないところの代替措置としてこれがあるわけですから、当然、企業の産業医と同じだけの仕事をしていただけるような仕組みにはしていただく必要があると思います。

 ちょっと、きのう、質問取りのときに伺いましたら、本人が希望すれば事業所の方に話しますよということでしたけれども、希望すればではなくて、基本的には話すのがいいけれども同意をしていただけますかというくらいの仕組みにしておいていただいた方が、本来の機能としてきちんとすると思いますので、そこはよろしくお願いいたします。

 また、今大臣は地域産業保健センターの活性化というふうに言ってくださったわけですけれども、私は、メンタルヘルスについては意外とここが核になり得るんじゃないかなと思っておりまして、誤解や偏見を持たせやすいメンタルヘルスというのは制度をつくったからうまくいくというものでもありませんで、あらゆる資源を充実させておくことが現実的な考えだと思います。

 メンタルヘルスの相談をまず自分の企業の産業医にするということがどうしても情報管理の点からも心配だというような人はいると思いますので、まずは、自分の企業に産業医がいるような場合であっても、地域産業保健センターに相談をして、それで、これはやはり職場に言った方がいいという判断があったときに改めてちゃんと企業の産業医に相談できるとか、そういう仕組み、そうやってワンクッション置くという方が気軽に相談できると思うんですけれども、地域産業保健センターをそのように活用されるということは、大臣はいかがでしょうか。

青木政府参考人 ただいま委員がおっしゃったことは、確かにそのとおりだと思います。

 非常に言いにくいとか申し出にくいとか、それから、さすがに事業場内の労務管理との関係で、人事担当にはましてや言いにくいとか、そういうこともあろうと思います。ですから、そういうことを避けて制度的な仕掛けがちゃんと動いていくというためには、今おっしゃったような仕組みも取り入れてやっていくことが大切だというふうに思っております。

水島委員 局長からすっきりした答弁をいただきました。

 大臣も同じお気持ちだと思いますけれども、本当にメンタルヘルスのことというのは、制度があるからどうぞお使いなさいと言って、それで済む問題ではありませんので、これが使いにくい人はこっちがいいですよというように選択肢をたくさん持たせることが幅広くいろいろな問題をくみ上げていくということになると思いますので、今局長からすっきりと答弁をいただきましたので、ぜひそのような経路をきちんと確立していただけますようにお願いいたします。

 そのときには、当然、地域産業保健センターがメンタルヘルスの一つの拠点になっていくという場合であれば、医師以外の職種、例えば保健師の方などの活用を十分に考える必要があると思いますけれども、この点はいかがでしょうか。

青木政府参考人 労働者の健康管理のために保健師とか看護師という方々を雇用しているという事業場も少なくないわけでありますし、産業保健スタッフとして積極的な活動をしてもらえるという期待も持てるというふうに思っています。

 そういう意味では、メンタルヘルス対策に関して、平成十二年に策定した事業場における労働者の心の健康づくりのための指針というのがございまして、そこにおいても、保健師の皆さん方は産業医等と協力しながら労働者のケアについて協力をしてもらう、担ってもらうというようなことも打ち出しております。

 今おっしゃいましたように、さまざまな手段といいますかやり方というもの、あるいは多くのさまざまなスタッフを、ある資源といいますかそういったものを活用していくということは大切だろうと思っております。

 今度、新たに指針を、今回の法律を契機としてまた定めようと思っておりますけれども、引き続きそういった役割の重要性についても示そうと思っておりますし、労働者の健康管理のために保健師等が活用されるように検討していきたいというふうに思っております。

水島委員 ぜひよろしくお願いいたします。

 そして、メンタルヘルスについては、先ほど来申し上げておりますように、本人は申し出られるような精神状態にはないということが多くございます。これは、例えばうつ病の人に治療を勧める困難さを私自身も嫌というほど経験してきたわけですけれども、治療を勧めても応じないような方がメンタルヘルスの不調を自分の職場においてみずから訴え出るということは、症状が軽い場合であっても、また重い場合であっても、それぞれの理由によってやはり難しいと思います。

 それよりも、いろいろな過労自殺の症例などを見ておりましても、やはり気がついておられたのは家族の方であって、家族の方が心配をして申し出るという仕組みが、これも今までも御提案があったわけですけれども、その方がよほど現実的だと思うわけです。やはりメンタルヘルスに限っては、家族の申し出によっても、今、家族が意見を言えばそれによって産業医から何とかみたいに、いろいろややこしいことをおっしゃっているんですけれども、家族が申し出ることで、それが本人の申し出と同じだけの意味を持つというふうにしていただくのが一番現実的だと思うんですけれども、いかがでしょうか。

    〔委員長退席、大村委員長代理着席〕

青木政府参考人 確かに、おっしゃいましたように、家族による気づきだとか家族による申し出とかいうものは非常に意義があると思います、効果もあると思います。しかし、労働安全衛生法上に、法律上義務づけをしている制度の中に、そういった家族についての取り込みというものはなかなか難しいだろうというふうに思っております。したがって、全く法律の中の制度として家族の申し出を本人の申し出とみなすというのはなかなか難しいとは思います。

 しかし、実質的には、そういったことも可能となるようなやり方というのは、別途、指導するなり、それから家族からの申し出のやり方なども研究いたしまして、懸念されるようなことも排除しながらできるようなことを検討してみたいというふうに思っております。

水島委員 もちろん、家族と一口に言ってもいろいろな御家族がいらっしゃるわけですし、本当にそれが御本人にとっての利益と常に一致するかといえば、それは一〇〇%そうではないと言えるのでしょうから、今局長がおっしゃったことというのも全く理解できないわけではないんですけれども、そうはいっても、やはりもう最後の、本当に過労死寸前という状態のときには、御本人というのは、もうそれ以外に道はない、ここから逃れ出るなんということは自分には許されていないという気持ちで突進をしていってしまう。でも御家族は、そんな仕事はやめてくれても、命の方が大切なんだという気持ちでそれを見ている。それが一番典型的なパターンですので、やはりそういうときにどちらが申し出るかということは、現実的にちゃんと考えていただきたいと思うわけでございます。

 そもそも、今回、なぜかメンタルヘルスの問題も一緒に百時間とかそういう中に横並びに入れられてしまっているんですけれども、これは甚だ、ある意味では迷惑な話であって、今回示されている時間外労働の長さというのは、脳・心臓疾患の疫学調査に基づいたものであって、メンタルヘルスとは本来何の関係もないわけです。もちろん、過労自殺を見れば、労働時間が長かった人が多いというのは、それは確かにそうなんですけれども、ではメンタルヘルスについて、ちゃんと脳・心臓疾患と同じような疫学データがあるかといえば、そんなことはございませんので、メンタルヘルスまでこの百時間の制度の横並びにされるということについては、おかしいんじゃないかと当初から思っているわけなんですけれども、ここまで来てしまいましたし、何か新しい制度に入れていただくというのはもちろん結構なことですので、せめてそこで、メンタルヘルスは本来、時間でただ切っていけるような話ではなくて、特別な配慮が必要なんだということは強く打ち出していただきたいと思います。

 その一つの最たる例が、恐らく今の、家族が申し出るという仕組みなんだろうと思いますので、この点は、必ず実効性として、法律でちゃんと横並びで書いたのと同じくらいの効果が担保される、つまり、本人の申し出と同等に家族の申し出が扱われるような効果があらわれるようにするという点について、ちょっと一言大臣から約束をしていただけますでしょうか。

尾辻国務大臣 御指摘のことは極めて大事なことでございますから、今おっしゃった方向で私どもも考えてまいりたいと存じます。

水島委員 ぜひよろしくお願いいたします。

 そして、いろいろなところの資源を充実させておくということの一つになると思いますけれども、現在も職場外の精神科医がメンタルヘルスの問題にかかわっているというケースが一番多いのではないかと思います。今回できます制度の中を見ましても、産業医の面接を受けた人は外部の精神科医を紹介されるというようなことになりまして、本人の治療と職場復帰に向けては、外部の精神科医のかかわりというのはやはり大きいものがあるわけでございます。産業医と精神科医のネットワークということを御提案いただいておりますけれども、これはぜひ充実をさせていただきたいと思っております。

 それに加えまして、ちょっと大臣に、突然問題提起をして申しわけないんですけれども、私もこの領域で精神科医として働いてきたわけですけれども、嘱託医として企業の中にいる場合というのは割とやりやすいんですね。上司と常に連絡がとれてというような形がとりやすいので自分の仕事としてできるんですけれども、外部の精神科医としてかかわると、職場復帰に向けて繰り返し上司と面談をしたりというようなことが必要になるわけで、ここには実はかなりの時間とエネルギーがかかります。この作業は、もちろん診療報酬によってもカバーされておりませんので、現状では全くのボランティアということでやっているわけです。

 ただ、ここの作業を丁寧にやっておくと、その後の職場復帰というのは大変質のよいものになってまいります。もちろん御本人の同意を得てですけれども、きちんと上司の方と繰り返しお会いをして、こういう配慮が必要で、また上司の方もいろいろな質問をお持ちですから、そういうときにはこうしてあげてくださいというようなことを繰り返し連携できるような体制をつくっておくと、御本人もまた安心をして、余り気負わずに職場に戻っていくこともできますし、実際にそうやって成功している例も私自身も経験をしているわけでございますけれども、ただ、これを今、全くのボランティアでということでやっておりますので、意外と面倒くさがられてしまう仕事になっております。

 何とか、外部の精神科医が上司などと相談、面談するというようなコストをどこかしらで負担する仕組みをつくっていただきたい。今、突然のお願いなので、今すぐここから出しますとおっしゃれないと思うんですけれども、ちょっと頭にとめていただいて、前向きに御検討いただけませんでしょうか。

尾辻国務大臣 現場を数多く踏んでこられた先生の思いといいますか、また貴重なお話をお聞きしたと思っております。そして、そのとおりだろうなと思いました。

 ただ、恐らく、これは言うならば自由診療の世界になるのかなと思うわけでありまして、保険適用なんといったらちょっと難しいだろうなと思いながら聞いておりましたけれども、大事なことでありますから、少なくとも私は心にとめておきたいと存じます。

水島委員 多分、診療報酬上どうとかなんとか言い始めると、まず実現しそうもない話だと思いますので、私もすぐハードルが幾つも浮かんできてしまうんですけれども、何らかの助成制度とか何かの仕組みをつくっていただくということは、多分、労働行政の範囲の中で可能なんじゃないかというふうに思っております。

 ぜひこれは、頭のよい厚生労働官僚の皆さんばかりでございますので、大臣を先頭に、ここの部分、意外と、特にこれからこういう制度ができてきますと、ますます、産業医と精神科医の連携というところで、精神科医のエネルギーというのをそこに使うようになってきますし、逆に、そこで喜んで働いてもらえるようにならなければ、また職場に戻っていただくというのが難しくなると思いますので、ぜひこれは前向きに御検討をよろしくお願いいたします。

 とにかく、そうはいいましても、日本の長時間労働というのはやはり異常でございまして、極端な少子化を脱するためにも、子供たちの健康な成長を確保するためにも、働き方を見直すことが必要だとだれもが認識をしているのに、なぜ日本ではできないんでしょうか。

 そんな中、年間総実労働時間千八百時間という枠組みすらなくなると言われてしまうと、多くの人が不安を感じるわけでございます。既に御指摘がございましたように、私も、通常労働者だけでもこの枠組みというのはしっかりと残していくべきだというふうに思っておりますけれども、それと同時に、今回、厚生労働省が多様な働き方をサポートしていくことの方が大切なんだとおっしゃるのであれば、やはりパート労働者の均等待遇というのがまずその大前提となると思っております。また、均等待遇が実現しないとワークシェアリングも進みませんし、働き方を変えるということもいつまでたってもできないということになるわけです。

 できない、できないと言っている間にどんどん過労死、過労自殺はふえて、子供たちはテレビやゲームの前に放置されて、家庭が崩壊をして、子供も生まれないというような状況がこうしている間にも悪化をしているわけでございますので、ぜひ、私たちが昨年の通常国会に提出をした民主党のパート労働者均等待遇確保法案、これがまだつるされたまま審議をされずに現在に至るということなんですけれども、ぜひこれを直ちに、このつるしをおろしていただきまして審議をしていただけますように、与党の皆様に強くお願いをしたいわけですけれども、委員長、理事会で御検討いただけますでしょうか。

大村委員長代理 はい、また協議をいたします。

水島委員 ぜひ理事の皆さんには、この法案のつるしを解いていただきますように、よろしくお願いをいたします。

 最後に、今回の法案そのものではないんですけれども、非常に関連する領域で、ちょっと自殺のことについて残りの時間で伺いたいと思うんです。

 今回、職場のメンタルヘルスに目を向けていただきましたのも、一つのきっかけがこの自殺ということであると思います。

 このたび、厚生労働省のうつ病関連の自殺予防研究が行われるということで、先日、新聞でも大きく取り上げられておりました。私もこの報告書をいただいて拝見させていただきましたけれども、この研究者の先生方というのは、私が直接御指導いただいた方も入っていますし、皆さん大変立派な方たちばかりですので、すばらしい成果を期待しているわけなんです。

 ただ、この研究はこの研究でよろしいんですけれども、厚生労働省として自殺予防というのを総合的に考えるときに、まさかこの研究だけで済まされると思っているわけではないでしょうねということを確認させていただきたいんです。これだけでは全く不十分だと私は思います。

 やはり、今回もうつ病関連の自殺予防研究ということなんですけれども、うつ病に限らず、精神科を受診している患者さんに自殺が多いということはよく知られた事実でございますけれども、そもそも、自殺の背景にうつ病があるというのはどちらかというと高齢者の話であって、今問題になっている壮年期の場合には、むしろアルコールというのがかなりの問題になっておりますし、また、若年層では統合失調症というのがかなり大きな問題だと言われております。また、パニック障害とか社会不安障害、強迫性障害でも自殺の危険率というのは高くなっております。

 これは、ただ、いずれも欧米の報告で、日本にはデータもないので、エビデンスがないということにはなるわけですけれども、日本の自殺既遂例を見ていっても、アルコールの問題というのはやはりかなり大きな問題ではないかというふうに思っております。

 精神疾患よりも、実は失業率、これは相関係数が〇・九、アルコール消費量、これは相関係数が〇・六と、相関が実はそちらの方がずっと高いので、実はそちらに介入をしていく方が効果的であるという可能性もあるわけですけれども、研究をするのであれば、やはり自殺既遂者の方の生前の精神状態や経済状態を詳細に調べて、複合的な視点から研究を積み重ねていくということが大切だと思うわけでございます。

 ちょっとここで一つ伺うんですけれども、アルコールと自殺ということについては、厚生労働省は研究されておりますでしょうか。

西副大臣 今先生から自殺に関する種々のお話をいただきました。

 御存じのように、今おっしゃられたように、厚生労働科学研究で始めるんですが、まさしく、その中で、特定の、実際の地域を選んで、自殺の予防に資するためにどのような介入をしていったらいいのかということを研究していくというのが一つの大きなテーマでございます。

 その中で、御指摘のような種々の原因がきっと上がってくるであろう。飲酒の問題もそうですし、私ども中高年の失業なんかも、テレビなんかで見る限り、そういうことも関連があるというふうに聞いておりますので、そういうさまざまな事例をその研究の中から挙げていっていただこう、こういうふうに思っておりますので、そういうことも十分考慮しながらこれから研究を進めていただこうというふうに思っております。

水島委員 ただ、この研究というのはうつ病関連の自殺予防戦略研究ということで、これは、例えば、私も昔こういう研究の末端なんかにおりましたけれども、研究者というのは、うつ病関連の自殺予防研究と言われれば、当然その枠の中でいろいろと研究を組み立ててこられるわけですので、やはりうつ病関連のとついてしまうと、なかなかそれ以外の、では、アルコールはどうなんだ、失業との関係はどうなんだというのをここの研究の中で自由にやっていただくというのは、またこうなってしまうと難しいんじゃないかと思いますので、きちんと、厚生労働省として、もう少しトータルに全体を組み立てていただいた方がいいんじゃないかと思うんです。

 また、もう既に、うつ病についてはいろいろな研究が地域レベルでもされてきておりまして、少なくとも地方においては地域介入が効果を上げるということは実証済みと言ってよいと思います。それは、うつ病の対策というよりも、地域おこしやコミュニティーづくりが役に立っているというふうに考えられているわけですけれども、地方はもう研究の段階を過ぎて事業の段階に入っているけれども、経済的な制約のためになかなかそれができないというような現状もあるようですので、ぜひ、こういうところにどんと研究費をつけていただくのもいいんですけれども、同時に、そうやって既に地方でそういうレベルに達しているところについては、何か、どんどんそういう既に効果があるとわかっていることを始めていただけるような、そんな体制を考えていただきたいと思っております。

 本当に自殺予防というのは一日を争うことであるわけですし、欧米では精神療法の、うつ病に対する再発予防のエビデンスも出ているんです。これは、認知行動療法や対人関係療法を早く日本の医療現場で保険適用にして普及させてくれということを、私、当選してからずっと申し上げているんですが、もう五年になりますけれども、まだそこまでもいっていない。やらなければいけないことがわかっているのに、それをやらないでいて、今からまた五年間で研究をしますというふうに言われてしまうと、何だかこちらは非常に肩透かしを食ったような気になってしまうわけなんですけれども。

 また、いろいろと現実に私も話を聞いてまいりますと、例えば、現在の自殺の急増、高どまりは、五十代の無職者、離職者の自殺が急増したことが主な要因だからといって、例えば、ハローワークでのアプローチというのが、従来の地域介入でも、またこの研究班の報告書を見ても入っているんです。ところが、患者さんに伺いますと、ハローワークというのは、うつ病などの病気にかかっていることを知られてしまうと失業保険がもらえなくなるので、ハローワークではうつ病というようなことは御法度だ、無理にでも元気に装う必要があるんだというのが患者さんの証言でございますので、こうした制度の整合性の検討も含めまして、また海外で既に得られていること、国内の地域の研究で得られていることも踏まえて、リーダーシップを持ってきちんと自殺予防に取り組んでいただきたいと思っております。

 また、今ずっと話題になっているのは実は壮年男性の自殺が主なんですけれども、実は、日本という国は、もともと女性の自殺率が世界のトップクラスであるという事実は余り知られていない。女性が大変不幸な国というふうに言われているんですけれども、ぜひ、この自殺対策の中で女性が取り残されることがないように、日本の女性の自殺率もせめて国際水準ぐらいに引き下げていただけますように、その点もあわせて、多分、今初めてお聞きになった方が多いんじゃないかと思うんですけれども、私も、恥ずかしいことに、意外と最近まで知りませんでした。

 男性の自殺のことばかり頭にあったんですけれども、ぜひ女性の自殺ということもこの研究の中にきちんと含めていっていただいて、五年後に結果が出るまで何もしないというのではなく、できることを今すぐに手をつけていって、この研究もすばらしいものになればよい、そういった視点で即刻いろいろなことに取り組んでいただきたいとお願いいたしまして、最後に大臣から自殺予防に向けての御決意を一言だけ伺って、終わりにしたいと思います。

尾辻国務大臣 自殺が極めて深刻な問題であるということは、このところまた強く皆さんに言われておることでございます。

 先日、参議院の厚生労働委員会が自殺予防に対する特別な決議もされまして、政府に対して、しっかり取り組めというお話もございました。それを受けて、官房長官のところにチームをつくって対策をとろうと思っておりますから、このことも政府を挙げて頑張ってまいりたいと存じております。

水島委員 本当に、御本人にとってだけでなく、残された御家族の深刻な状況をぜひ皆様も見ていただいて、本当に政府を挙げて取り組んでいただけますように最後にお願いをいたしまして、終わらせていただきます。ありがとうございました。

大村委員長代理 次に、山口富男君。

山口(富)委員 日本共産党の山口富男です。

 今回の労働安全衛生法等の一部を改正する法律案ですけれども、これは、労働安全衛生法、労働者災害補償保険法、労働保険徴収法、労働時間の短縮促進法、こういう、法の目的も、組み込まれた制度も、運用も全く違う法律の一括改正ということになっております。

 尾辻大臣に最初にお伺いしたいんですが、なぜ一括改正するのか、その合理的理由はあるのか、示していただきたいと思います。

尾辻国務大臣 今般の四つの法律の改正は、いずれも、近年の就業形態の多様化を原因として発生しておる問題に対処しようとするものでございます。

 具体的には、まず、構内下請の増加に伴い生産現場における作業間の連携が不十分となり、重大災害を引き起こしておること等に対処するため、建設業だけでなく製造業についても元方事業者に連絡調整等を義務づけるため、労働安全衛生法を改正する、これは四つ言われました労働安全衛生法を改正するという部分でございます。

 これに対しまして、労災保険料率のメリット増減幅において、建設業と製造業を同様に扱うために労働保険徴収法を改正する、さらに、複数就業者や単身赴任者が増加する中で、これらの者に係る通勤災害保護制度の拡充を図るため、労災保険法を改正し、さらに、多様な労働者の個々の生活等に配慮した労働時間の設定を図るため、時短促進法を改正する、この四つの法律それぞれに改正しようということでございます。

 また、労働安全衛生法改正案におきましては、時間外労働が月百時間を超えること等の要件に該当する労働者に対して医師による面接指導を行う義務を事業者に課すこととしておりまして、労働安全衛生法の体系の中に労働時間に着目した制度を導入するという点で、労働時間の設定の改善を目指す時短促進法改正案と関連を有するところでもございます。

 このように、今般の改正法案の内容は趣旨を同じくし、相互に関連し合うものであることから、一体のものとしての御審議をお願いすべく、四法案を一括して国会にお諮りしておるところでございます。

山口(富)委員 冒頭に大臣は、四つの法律のそれぞれについて、いわば法案の趣旨説明をされたようなものですが、前半で一番最初に言われたのは、労働者の生命や生活をめぐる問題の深刻化への対応だということだったと思います。

 今、労働と生活をめぐる問題の深刻化といったら、これほど深刻な時期はないわけですから、もしそれが理由に上がってしまったら、労働法制一括改正法が出てきてもおかしくないような、私ははっきり言って、これは便宜的な理由づけにすぎないと思うんです。この国会というのは憲法上の唯一の立法機関ですから、もし便宜的な提案理由になってまいりますと、これは立法権の侵害ないし形骸化という問題を生みかねないということをまず最初に指摘しておきたいと思うんです。

 それで、もう一問、大臣に重ねてお尋ねしたいんですけれども、きょうの質疑の中でもアスベスト問題が大きな問題になりました。これは労働者だけでなく、近隣住民の方、家族にもかかわる重大な問題になっています。

 これに対して、立法府や行政がどうその責任を果たすのかというのが問われていると思うんですけれども、今度提案されております四つの法律案でいきますと、例えば労働安全衛生法、それから労災法にかかわる問題、これらが今のアスベスト被害の拡大に伴って、やはり必要な法改正をやるべき問題を抱えている、少なくともそういう認識は大臣はお持ちなんですね。そこのところを確認したいと思います。

尾辻国務大臣 そのとおりに考えております。

山口(富)委員 私は、大臣が認められましたように、本来なら、今回提案されている一括の改正法をとりあえず手元に置いても、必要になっている労働安全衛生法等を含めたアスベストにかかわる対応を国会の中できちんと議論すべき時期だ。それがなぜできないかというと、一括しちゃったがために動きがとれないんですよ。これが私は、今度の労働安全衛生法にかかわる四本まとめたやり方が、いざアスベスト問題なんかが起こったときになかなか動きがとれないという、立法のあり方の問題として大きな問題があると考えているんです。

 きょうは、この中から、具体的に労働安全衛生法にかかわる問題を取り上げてまいりたいと思います。

 この改正案を見ますと、結局、健康障害の防止というところに大きな力点が置かれているということは間違いありません。それで、これをアスベスト問題に引き寄せて考えますと、アスベストというのは、吸い込んだ後に、浴びた後に長い潜伏期間を経て発症する。ですから、石綿を扱ったり扱ってきた労働者、またその家族の皆さんや近隣住民の場合、かなり長期間にわたって医学的な健康診査や健康管理が必要になるという問題だと思うんです。

 それで、きょう私は、ここに労働基準局が編集しました「労働衛生のしおり」を持ってまいりました。これは恐らく、私が持っているのは平成十六年版ですけれども、数日中には新しい版が出てまいると思います。

 この中で、特殊健康診断実施状況、これは事業場に健康診断が義務づけられておりますから、その結果が出ておりますが、これを見ますと、これは平成十五年、二〇〇三年ですが、アモサイト、茶石綿ですね、これは健診を実施した事業場が四つ、受診した労働者が三十一名、有所見者数が三名で、九・七%が有所見率だったというふうに記載されています。それから、石綿についていいますと、健診を実施した事業場が二千三十三、労働者が一万八千百五十五、それから有所見者数が百五十六で、〇・九の有所見率だったというふうに記載されています。

 それで、今このアスベスト問題で問題になっておりますのは、直接それを扱っている事業場あるいは扱っていた事業場だけでなくて、使われていたところで浴びた皆さんもいらっしゃるわけですね。そのことを考え、また解体現場の問題が出てきておりますから、そうすると、幾ら何でも二千三十三という事業場の健診数というのは、実態から見て余りに少ないのではないかというふうに思うんですが、青木労働基準局長、この点はどう判断されますか。

    〔大村委員長代理退席、委員長着席〕

青木政府参考人 石綿業務についての特殊健康診断は、石綿等を製造し、または取り扱う業務に常時従事する労働者、それから、石綿を製造し、または取り扱う業務に常時従事したことがある労働者に対して、事業者が実施しなければならないということになっております。健康診断を実施した場合には、事業者は、その旨、その結果を労働基準監督署に報告しなければならないということで、今お話のありました、しおりにある数字がその結果の集計でございます。

 私どもは、事業場へ立ち入り監督をいたしまして、必要な管理等がなされているかということも監督しているわけでありますけれども、そういった際に、特殊健康診断結果の報告義務違反というものも指摘するケースがあります。そういう意味においては、すべての石綿取扱事業場を把握できているわけではないと思っております。

 私どもとしては、石綿を取り扱う業務を行っている事業場に対しまして、この健康診断結果の報告も含めまして、きちんと石綿障害予防規則に基づく措置が行われるように、今後とも指導を徹底していきたいというふうに思っております。

山口(富)委員 そうしますと、局長自身も、事業場で見てまいりますから、現実にはアスベストにかかわるような石綿暴露が生じたとしても、ここには出てこないような事業場があるんだということをお認めになったんだと思うんです。

 でしたら、今後のこの対策として、そういうところまで健康状態をつかめるような方向での立法措置ということは、これは今後の検討課題になるんですか。

青木政府参考人 立法措置でいえば、今の特殊健康診断の義務とそれに対する結果報告の義務、これで制度的には完結をしているんだろうと思います。後は、これを守らない事業主がいるということであります。一〇〇%守っているというわけではありません。私どもの監督実績からいっても、そういったところが見つかります。

 ですから、私どもとしては、こういった今の制度がきちんと守られるように、私どもとしてできる限り監督指導に努めていきたいということでございます。

山口(富)委員 現実にやるべきところが健診をやっていないのは法違反ですから、これを指導監督するのは当たり前です。私が提起したのは、現実にアスベスト被害の中ではその枠の中に入らない事業場が出てきている、ですから、そこを覆うような仕組みを今後考える必要があるということを提起したんです。これは大臣に必ず検討していただきたいというふうに思います。

 それで、きょう、私ここに、今、労働基準監督署に置かれているリーフレットを持ってまいったんですけれども、これは「石綿障害予防規則の概要」というリーフレットです。労働基準局がつくるリーフレットというのは、私はなかなか傑作なものが多いと思っていまして、私自身が、過重労働防止通達なんかは、それを使って国会質問をやったこともあるぐらいなんです。ところが、このリーフレットについていいますと、全くいただけないというふうに思うんです。

 理由は何か。先ほど局長は、難しい言葉で特化則、特定化学物質等障害予防規則、従来これだったんですけれども、この七月に施行された石綿予防規則は、そこから外しまして、新たに施行を始めたんです。それを説明したのがこのリーフレットなんですね。

 ところが、今、石綿をめぐって問題になってくるのは、もちろん解体現場だとか作業場での暴露というのは問題になるわけですけれども、同時に健康管理をどうするかということなわけですね。ですから、この第四十条にはちゃんと健康診断、健康管理という条文があって、三条にわたって詳しく書かれております。

 ところが、このリーフレットにはそれが一切出てまいりません。中身でいいますと、「石綿について」それから「解体等に係る主な対策」「石綿等の除去等に対する規制の体系」「建築物における施工部位の例」「事前調査の考え方」、大変詳しく絵入りで入っておりますが、では、健康診断、健康管理はどうなっているかというと、一番最後のページに、法案を細かい字で抜粋した中にやっと出てくるんですよ。

 私は、これはやはり幾ら何でもやり方がおかしい。労働基準局に聞きましたら、既にこれは八十万発行されているんだそうです。だったら、私は、働いている皆さんに対して、作業場で防ぐということももちろん大事ですけれども、健康管理がそこに合わさらなければ、作業上のさまざまな問題の手順というのは本当に生きてこないんですね。

 そういう意味で、なぜ健康にかかわる問題をきちんとこういうリーフレットに入れないのか。これは直ちに改めるべきだというふうに私は思うんですが、いかがですか。

青木政府参考人 このパンフレットですけれども、これは、ごらんいただきますとあれですが、これから非常に、かつて石綿が相当急激に輸入をされて使われた時代につくられた建物が老朽化して建てかえの時期になってきて、その解体作業がたくさん出てまいりまして、ほうっておけば極めて危険な状態になりかねない、石綿の飛散を何としても防止しなきゃいけない、こういう観点できちんと作業についても規制をし管理をする、そういったことをよく知ってもらわなくちゃいかぬということで、このパンフレットをつくったわけであります。

 お話のように、健康診断については、絵入り、漫画のところ等には出てきていないようでありますけれども、これはこれでまた別途いろいろな方法で、まさにこういうような問題も起きてまいりましたので、周知をするべく、我々としても努力をしているところでありますし、今後とも一層、健康診断等についての呼びかけ、そういったことについても現実にやってきておりますので、進めていきたいというふうに思っております。

山口(富)委員 この七月に厚生省が、「石綿による健康被害への対応について」これは七月八日に発表したプレス発表です。これに基づいて七月十五日に労働基準局長が、「石綿による健康障害防止対策の緊急的な対応について」という通達を出しております。これはかなり関係の業界にも送られているようですけれども、これはどこが一番重視されているかというと、やはり健康管理なんです。健康診断をきちんとやりなさい、それから、必要な場合は健康管理手帳、健管手帳をとりなさいということを詳しく書いております。

 私は、七月に施行された石綿予防規則、これを本当に生かすんだったら、単に解体時の作業だけの説明でなくて、局長もそういう手は打ちましょうという話でしたが、大臣に必ずやっていただきたいのは、健康管理にかかわる問題についてもきちんと労働基準監督署はやるんだぞというのがわかるような宣伝物、リーフレット、これはつくっていただきたい。大臣。

尾辻国務大臣 恐らく今お示しのこれは、「解体等の作業における石綿対策」と書いておりますから、解体作業をするということを主眼にしてつくったものだろうと思いますけれども、今一番大事なことは先生おっしゃっておられることでありますから、今後、そうしたものも早急につくらなきゃいかぬというふうに思っております。

山口(富)委員 私はこれは、厚労省が石綿被害にかかわる健康診断や健康管理についてその真剣さが問われる問題だと思うんです。過去の検証じゃないんです、現実の今の施策の検証だという立場で事に当たっていただきたいと思います。

 さて、具体的に健康診断の問題に入っていきたいんですが、労安法の六十七条です。ここに健康管理手帳制度について定められております。ちょっと読み上げますと、「都道府県労働局長は、がんその他の重度の健康障害を生ずるおそれのある業務で、政令で定めるものに従事していた者のうち、厚生労働省令で定める要件に該当する者に対し、離職の際に又は離職の後に、当該業務に係る健康管理手帳を交付するものとする。」というふうに定めています。

 この健康管理手帳というのは、アスベストの場合大変潜伏期間が長いわけですから、退職しても年二回無料で健康診断を受けられるという点では、アスベストの被害を見ていく上で非常に大事な制度になると私は思うんです。

 青木さんに確認しておきたいんですが、皆さん方は、そういう大事な制度だということを握った上できちんと指導監督に当たられているんですね。

青木政府参考人 当然、第一線はそういうことでやっております。

山口(富)委員 でしたら具体的に示していただきたいんですが、このアスベスト関連で健康管理手帳はどれだけ交付されているのか。それからもう一点、これは直近の数字で示してほしいんですが、その中で、東京労働局管内でこの交付申請は幾つ出され、その交付申請のうち幾つまで認められたのか、この数字を示していただきたいと思います。

青木政府参考人 健康管理手帳の交付数は、平成十六年末現在で、返還された数を引きますが、五百九十二でございます。東京では三ということになっております。

山口(富)委員 この東京労働局管内の三というのは、交付を申請した人のうちどの程度に交付されたんですか。

青木政府参考人 ちょっと今手元に資料がございませんので、わかりません。

山口(富)委員 では、これは後で委員会に出していただきたいと思います。

 それで、今出された数字でも全国で五百九十二名、東京労働局管内では三人であるということです。これも、私、先ほど健康診断を実施している事業所数の問題で取り上げましたけれども、余りにも少ないんじゃないかというふうに率直に思わざるを得ません。このアスベスト対策にとっては非常に重要な意義を持ちます健管手帳の交付がこれだけ少ない、ここは私は、よく吟味してみる問題がここにはあるなというふうに思うんです。

 それで、まず確認しておきたいんですけれども、労働安全衛生規則の五十三条を見ますと、健康管理手帳の交付について幾つか定めております。まず要件として、「両肺野に石綿による不整形陰影があり、又は石綿による胸膜肥厚があること。」胸への異常ですよね、これを要件にすると。そして、この要件に該当する事実を証明する書類とエックス線写真を添付して、本人が労働局に申請するというふうになっています。これは青木さん、間違いないですね、これで。

青木政府参考人 はい、そうでございます。

山口(富)委員 きょう、私はここに一つの報告書を持ってまいったんですが、厚生労働省の研究で、「石綿ばく露労働者に発生した疾病の認定基準に関する検討会報告書」というものです。これは二〇〇三年の八月二十六日にまとめられておりまして、既に認定基準の問題では改正がなされています。

 これは海外のアスベスト問題も分析した非常に貴重な研究の中身だと思うんですが、これを読んでまいりますと、石綿暴露の場合、医学的所見として、胸膜プラーク、先ほど健管手帳の交付の要件として胸膜肥厚があることと言いましたけれども、実際これに当たります。この胸膜プラークというものを検出することが非常に大事だというふうにるる述べております。

 そして、今のエックス線の直接撮影では実はなかなか見つからない、CTによって通常のエックス線撮影の倍見つかっているんだと。そして、見つけることによって、その方が実際に石綿を使った工場で働いていたのか、あるいは近所にあったのか、それから近所に住んでいた方なのか、御家族なのか、そういうことの問診まで詳しくやることが必要になってくるということが書かれています。

 そこで、私がここでお尋ねしたいのは、これは二年前の報告書ですけれども、この中で、CT検査をやって胸膜プラークを検出するということが非常に大事であると強調されているんですけれども、なぜ七月の一日から施行された石綿障害予防規則、いわゆる石綿則、この中では健康診断でCTによる撮影が義務づけられていないのか、これを示してほしい。

青木政府参考人 まずその前に、健康管理手帳なり特殊健康診断のお話をしたいと思いますけれども、かつてそういった石綿作業をやっていたというところで健康診断をやっておりますけれども、これは、石綿の作業については非常に厳しく規制をし管理をしているということもありまして、有所見率といいますか、これは非常に、〇・九%とか一%という状況ということでありますし、それから疾病だというところへいくとさらに少なくなっている、こういう状況でございます。それで、健康管理手帳も、そういう面ではそういった数に比べると少ないかなという感じはいたしますが、そういう面もあるということでございます。

 ただ、おっしゃったように、健康管理手帳の物の考え方については、専門家による調査研究班の中で検討してもらいたいというふうに思っているところでございます。

山口(富)委員 健管手帳の交付が少ないということは、局長も認められましたよ。私が問題にしてきたのは、少ないと同時に、これが現実には、今認められたように、石綿を使ったかどうかという直接的な事業場の問題に見ていくから、これは今後新たな立法措置がより広く見ていけるように、これは考える必要があるということは思っているんです。

 ただ、きょうお聞きしたいのは、七月から施行された石綿則で、これは四十条にあるんですけれども、「健康診断の実施」というところがあって、そこでまずエックス線撮影でやれと。そして、その症状が出たり、医師が認めた場合は、その他の、いわばCTですね、それも含めてやれという二段構えをとっているんですよ。こういうことをやりますと、一番最初の入り口が狭くなっちゃうじゃないか。

 だって、検出率がCTに比べてレントゲンのエックス線の直接撮影は半分だと言われているんだから、これは順序が反対で、やはり事柄がこれだけ重大だとわかった以上、少なくともCTの検査をやるというところまで踏み込まなければ本当の健康対策にならないじゃないか。大臣、そうじゃないでしょうか。

尾辻国務大臣 先ほど局長がお答え申し上げましたように、そうしたことも含めて、今研究班で研究しておるということでございますから、その研究の結果を聞きまして、これは本当に急ぐことだと思っておりますので、急ぎ私どもも対応をしたいと存じます。

山口(富)委員 青木局長にちょっと示していただきたいんですが、今検討するという答弁でしたが、これは必ず検討して実のあるものにしていただきたいんですが、具体的にはどこで検討されているんですか。そして、この検討はいつから始まり、今どの段階にあるんですか。立法府に報告してください。

青木政府参考人 石綿についてこういう非常に問題が大きくなってまいりましたので、至急さまざまな研究をするということで、専門家による研究班を立ち上げる。今メンバーを選定して、八月にも立ち上げて研究をし、至急研究をしてもらうということにしようと思っております。

山口(富)委員 そうすると、現実にはまだ立ち上がっていないわけですね。

 私は、わざわざきょうこの報告書を持ってきましたのは、大臣にもぜひ読んでいただきたいんですが、既に二年前に相当の調査をやっているわけですね。CT検査がこの分野では必要だという提言まであるのに、現実には、これから考え、早ければ八月ということになるわけでしょう。こういう仕事のやり方が、今、行政の仕事のやり方として、これは西副大臣じゃないけれども、決定的な問題になるぞという批判を浴びているものだと思うんです。

 さてもう一つ、私はあわせて述べておきたいのは、健管手帳の問題で、本人の申請ということになっております。これも、運用上は、離職に際して、事業場、会社が代行して申請してもいいということになっているようなんですけれども、私は事実を示していただきたいんですが、この健管手帳の交付が五百九十二あるという話だったんですが、この中で、会社が申請した、代行したのは一体幾つあるのか、これを報告願いたい。

青木政府参考人 そこまで資料を収集しておりませんので、わかりかねます。

山口(富)委員 実は、私が厚労省に問い合わせしたんです。これはやはり本人が申請するのでなくて、いろいろな手続があるから大変なんですよ、これは。写真は持っていけ、書類は用意しろというわけでしょう。これぐらい会社がやって当たり前だと言いましたら、いや、ちゃんと代行できるようになっているんですと言うんですよ。だから、私は、そうなっているというんだったら、実態はどうかと教えてほしいと言ったんだけれども、今局長が言ったように、実態はわかりませんということなんですよ。

 これが尾辻大臣のもとでやっている厚生労働省の石綿行政の実態なんですよ。ここのところから私たちは出発しなければ、今求められているアスベスト対策、本当に必要なものが欠けてしまうというふうに私は言いたいと思うんです。

 ですから、尾辻大臣に、これは法改正も含めまして、やはりそういう状態に追い込んだ会社の社会的責任もあるわけですから、代行できるんじゃなくて、会社がやるべきであるというぐらいの踏み込んだ法改正をやるべきだと思うんですが、いかがですか、大臣。

尾辻国務大臣 今もいろいろな御指摘をいただいております。私、毎日いろいろな話を聞きまして、すぐに指示しなきゃいかぬことはどんどん指示しなきゃいかぬと思って、指示もしておるつもりであります。

 例えて言いますと、製造を禁止したもので在庫品は流通をしているという話がありましたから、即刻流通をとめろというふうに、昨日でしたか一昨日でしたか、もうとにかく何をどこかで言われてもいいから、とりあえずまずとめろと。いろいろなこと、あちこちから何かまた文句を言われるのかもしれぬけれども、とりあえずもうとめてしまえというふうに、とめました。

 ただ、そういうふうに気づくことはやっておりますけれども、今また御指摘いただきながら、足らぬことがいろいろあるんだなと率直に思っております。

 したがいまして、とにかくこういう事態でありますから、人の命にかかわることでありますから、やれることはどんどんやりたいということを改めて申し上げたいと存じます。

山口(富)委員 大臣が足らないことがいろいろあったんだなという認識を最後にお述べになったことは、私は非常に大事な認識だと思います。

 当初の記者会見の中で、その都度厚生労働省として対策はとってきたというふうに述べて、これは先ほど水島委員も批判されましたけれども、これでは足りないんだと。やはり大臣が認められたように、足りなかったところ、それから、文句という言い方はよくありません、いろいろな意見もある、批判もあるということでしょう。そういう事態が現実的にあるということを直視して、私は、過去の検証も行うし、現実の行政の検証も行っていただきたいと思うんです。

 きょうは健康管理問題を中心に取り上げましたけれども、きょう用意した質問はあと半分ぐらい残っているんですが、これは次回以降、引き続きやってまいりたいと思います。

 少なくとも、このアスベスト問題について言いますと、検証すべきは過去の問題だけでなくて、現実であり、これからなんだということを最後に申し上げまして、私の本日の質問を終わりたいと思います。

 一言言われるなら、私も一言言っちゃいますよ。

尾辻国務大臣 私が舌足らずに言って誤解されるといけないなと思ったものですから、あえて言わせていただきました。

 文句というのは、多分今先生が理解されたようなつもりで言ったものじゃありませんで、例えて言いますと、今、どこまで公表できるか、いろいろなものを私ども鋭意検討してとにかくお出ししようと思っております。

 そうしますと、必ず、こういうものを出すと風評被害があるから出してもらっちゃ困るという、企業とか事業場からいろいろ言ってくる。そういうことに絶えず私どももやったりとったりしているものですから、そういう意味で、また文句を言ってこられるだろうなという意味で申し上げたわけでありまして、決して先生が多分御理解なさったような意味で言ったわけじゃありませんということだけはあえて申し上げておきたかったわけであります。

山口(富)委員 大臣がそうおっしゃるから一つだけ申し上げますけれども、私は別に誤解したわけじゃありませんよ。この間の一連の発言が問われているから。だって、これは閣内不統一であり、省内不統一の問題なんだから。しかし、それについて、少なくともきょうは至らない点がやはりまだまだあるなというところまで認められたんだから、そこから議論をやろうじゃないかということを申し上げたわけです。

 以上です。

鴨下委員長 次に、阿部知子君。

阿部委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。

 見渡せば、先ほど来、既に山口委員の御質疑のころから定足数は足りておらず、しかし一方で、無理やり、ないしは解散という風も吹く中で皆さんそれぞれの御用があるという状況も踏まえた上で、しかし、小泉首相の郵政民営化問題にしろ、それを人質にとった解散問題にしろ、国民が最も求める、今本当に不安を払拭してほしいというこのアスベスト問題ということを忘れての国会のありようであれば、やはり私たちは議員として本来的な仕事を果たしていないのではないかという思いを抱きながら、先ほど来、この部屋の中で皆さんの御質疑を承っておりました。

 冒頭、定足数は足りていませんでしょうが、私はあえてきょうここでそれは言いませんで、尾辻大臣にお願いをしたいと思います。

 先回、尾辻大臣が郵政民営化の審議にお出ましでありましたので、西副大臣が誠心誠意対応をしてくださいました。その中で、またいろいろな問題が明らかになり、早急にその中で段取りされるべきことも、先ほど大臣がお触れになりました、在庫の販売はもう即刻禁止すべきだと。これは一歩前進であったと思っております。と同時に、今山口委員の御質疑にありました、このアスベスト問題は、過去であり、現在であり、未来であると。おのおのに課題を抱えていると思います。

 冒頭、恐縮ですが、大臣にまずこの今の山口委員の言い方、過去、現在、未来、大臣にとってはどんな問題が今認識されておられるか、冒頭お願いいたします。

尾辻国務大臣 まず、過去について言いますと、先日先生からも御指摘いただいたといいますか、お触れいただきましたような事柄、どの程度アスベストに対する危険というものを行政として承知していたか、そしてその認識に基づいてきっちり行政としての対応をしてきたか、そういったようなことが過去の問題としてはまず問われておるんだろうというふうに思っております。

 現在のことで言いますと、これだけの深刻な話になっておりますから、差し当たってスピード感を持ってどういうふうに対応できるのか、これがまず問われておるんだろうというふうに思っております。

 それから、将来について言いますと、特に今私が思いますことは、実は昨日もがんセンターの総長ともそのことでもお話をしていて、がんセンターにも大至急このことに取り組んでほしいと言い、がんセンターもとにかくこの研究をまず全力を挙げてやってみますということでございましたけれども、この石綿を原因とするようながんの治療をどうするか、とにかく一日も早く治療の方法を確立してほしいという問題が、将来に向けては特に大きな問題としてあるというふうに私は思っております。

阿部委員 現在の大臣の御認識の中に恐らくおありとは思いますが、あえて私から指摘させていただければ、現在というのは、現在でもここにあるアスベストという、これはなかなか難儀な物質で、自然界からは、どうやって処理し無害化するかということがまだまだ大きな問題であるこのアスベストを拡散させない、拡大させないという問題が大きいと思いますし、将来ということにおいては、今大臣のおっしゃった治療の問題、あるいは、これまでの被害を受けられてこれからも残念ながら発生するであろう、これは二十年、三十年潜伏期ですから、そうした方々の補償の問題。

 そしてもう一つ、これからは、恐らくこれからでなくて八〇年代半ばからだったのでしょうが、環境問題という形に問題が拡大しておる。それは、当初はアスベストにかかわる労働者あるいはさまざまな建設業、造船業というところでの問題が、現在そこにアスベストが使われて、私どもの身の周りにあるがゆえにそのことが環境問題にも転嫁していくという、やはり節目というか、大きな視野を持ち、転換点を見直す気持ちで過去を見なければ、過去をただ単なる誤りとか責任とか、これも大事ですけれども、その限りで小さく小さくまとめていったら、私は本当に将来の大事な行政ができないと思っております。

 その意味で、冒頭申し上げました、大臣に確認ですが、きょう私がお手元にお配りしました、平成十六年十月に製造等が禁止された石綿含有製材の在庫品、これは十七年の三月末です。私は先回の委員会で、これらは駆け込みで売られてしまうではないかということを実は西副大臣に御質疑申し上げて、西副大臣の方からは、即刻全面禁止ということはいかないが検討はしておるということでした。

 それで、昨日のメディア報道、後ろに朝日新聞がつけてございますが、それによれば、即刻全面販売を禁止するという御決断というふうに最初に伺いましたが、確認をさせていただきます。

 これらすべての品目、それでよろしゅうございましょうか。主に、今回問題になったのは、化粧スレートと恐らく繊維強化セメント板のことだったのかもしれません、新聞報道のものは。この窯業系サイディングというのも建物のわきに使われるものだと承っております。これは、今までの規制だと補修ならばいいよという形で、しかし在庫が一掃されてしまうほど使われてしまいました。台風が来た、自然災害だという中で使われたわけですが、しかし、それが使われればその後また何十年と問題をそこに残しますので、今確認していただきたいのは、これらすべて、現段階でそのような処置をお願いしたと、大臣の御英断だと考えてよろしゅうございますか。

尾辻国務大臣 製造を禁止しておりますものが在庫がある、だからその在庫は流通してもいい、それは絶対にまずい、そういうことをしちゃいかぬと思いましたので、即刻そのことを禁止したわけでございます。

 この資料でお示しいただいておりますものは、すなわち、今製造を禁止されておるものでございますから、これは当然、流通はもう禁止をしたということでございます。

阿部委員 そのように厳密にお願いしたいと思います。

 それから、きょう質問通告以外のことで、実は、水島委員並びに福島委員と青木局長並びに大臣の御質疑を承りながら、私が一点確認をしておきたいと思いましたのは、いわゆるアスベストの作業環境における基準値の問題でございます。

 これは、一九七六年当時、厚生省が一番最初の基準をお出しになって、八六年に大気汚染防止法で工場の周辺の大気についての基準が出されました。

 このとき、実は同時に、アメリカにおいては、一リットル中二千本という濃度を一リットル中二百本に低下させました。八六年という年は、住民に被害が出たり、御家族に被害が出たりということが七六年よりもさらに明らかになった年であり、ILOも含めて国際機関も、このアスベストという問題に非常に熱心な取り組みをしたときであります。

 大臣の先ほどの御答弁は、その時々に審議会等にかけてきたので、厚生労働行政としては見直すべきところはあるかもしれないが、逆に言うと、その審議会等々に沿ったものであるというふうな御答弁やにも承りました。

 私は、その当時、審議会でどんな審議があったか、これもまた資料を請求させていただこうと思いますが、やはり重大なのは、実は七六年から八六年までの日本の行政の指導がどのくらい実施されたかということと連動して、八六年段階で我が国が他の諸外国よりも実際にアスベスト被害の発生を多くしていたのかどうかということとあわせ検証しないと、そしてそれを検証できるのは厚生労働省の労災認定のその数でもあります、あるいはやり方でもあります。そこまで立ち至って、踏み込んで総括をしていただかないと、審議会の審議でそうであったからということでは、実は労働者の生命も健康も守られてまいりません。

 大臣には、まず厚生労働省の長でありますから、みずからの行政がどのように労災認定や住民被害の状況を自分たちがデータを集め得ていたのか、そういう点に立ってお考えをいただきたいのです。審議会がこうであったから、これで自分たちの行政は誤りがないというふうなお考えに立つのであれば、実は厚生労働行政はとても矮小化されてしまうと私は思います。

 実際にそういう被災した労働者の労災を認定しながら、同時に、いろいろなそこに寄せられた情報から、果たして濃度管理は十分であったのか、あるいは周辺住民にどうであったのか、そういう主体的な総括をぜひしていただきたいのです。単に数値の基準の落ち度がなかったかだけではありません。私は、数値基準も問題が実はあったと思います。八六年に改正されるべきであったと思います。でも、それのみをここでやりとりしたいとは思っていません。むしろ厚生労働行政として全体でどうであったか、そのことの方がもっと重要で、それは今後につながっていくからです。

 大臣は、先ほど水島委員の御質疑で、現在見直し中であるということもおっしゃいましたので、そのような観点を持って、みずからの行政のあり方として見直していただけるかどうかの御答弁をお願いします。

尾辻国務大臣 決してお言葉を返そうとは思いませんけれども、やはり科学的知見といいますか、専門的なことになりますとどうしても専門家の御意見をお聞きせざるを得ない、そういうことをして私どもの判断をするという面があることだけは改めて御理解もいただきたいと思います。

 したがいまして、アスベストの量がどうだというようなことは専門家にお聞きしないと、何本だとかいうような話になりますと、これは専門家の御意見をお聞きせざるを得ない、そういう御意見をお聞きしながらやってきたということは御理解いただきたいと思います。そうした中でも当然私どもの判断はあるわけでございますから、最終的に私どもが判断したということは、それはまた間違いのないところでございます。

 それと、特に今労災認定のお話がございましたけれども、アスベストの特性で、二十年、三十年たってからの話になりますから、この時点の労災認定というと、二十年、三十年前のことがどうだったかということを見るわけになりますし、そうした見方で労災認定を見て今後のことはまた検証したいということは、先ほど来申し上げておるところでございます。

阿部委員 専門家の見識が大事であることは否定するものではありませんが、現実に私たちはアスベスト被害というのは今までに経験せず、そのとき実際に厚生労働省を窓口として、労災としてそこに現実を見ているわけです。となると、厚生労働省がやはりそのことをどれだけキャッチしていたか。それで私は前回、七六年の通達における家族と住民の問題を上げさせていただきました。

 しかし、残念なことに、例えば二〇〇三年の三月二十四日、共産党の井上美代さんがお出しになった質問主意書の中で、彼女はこのときに家族被曝の問題を取り上げておられます。二〇〇三年三月二十四日、ごめんなさい、お手元には配ってございませんが、それに対する厚生労働省の御答弁の中には、石綿暴露作業従事者の家族についても救済措置が求められるのではないかとする井上美代さんの御質問に対してでございます、「石綿により汚染した作業衣等は二次発じんの原因となることから、このような作業衣等はそれ以外の衣服等から隔離して保管し、かつ、作業衣等に付着した石綿の粉じんが発散しないよう洗濯により除去するとともに、事業場からの持ち出しを行わないよう指導している」というのです。

 しかし、指導していても持ち出されたから家族が被災いたしました。私は、通達行政というものが、これを出したからいいだろうとか、それだったら逆に作文でもできるわけです。実際にどの程度それが守られているか、それから、一リッター中二千本という基準も、どの程度実施され守られているかというところまで見て、そして、同時にそのとき周辺住民の問題も浮かんでくるはずなのです。そういう行政ではなかったのではないかということを言いたいのです。七六年からこの答弁書の出る二〇〇三年まで、作業所は持ち帰らないと指導してあると。しかし、持ち帰ったから、たくさんの家族被曝が出たわけです。

 私は、厚生労働行政、なかんずく生命、安全をつかさどるこの分野において、通達は出せばよい、後は野となれ山となれ、失礼な言い方ですが、それでは命は守られない。大臣にはその目で、これは厚生省がお出しになった答弁書です。私は、その危機感のなさを非常に危ぶみ、今後の行政の危うさとして指摘させていただきました。大臣、いかがですか。

青木政府参考人 危機感を持てということは、確かにおっしゃるとおりだと思います。そういう気持ちできちんと仕事をしていかなければいけないと思います。

 しかし、ちょっと申し上げますと、委員が今御指摘になりましたたくさんの点でございますが、例えば基準濃度の問題につきましても、既に大臣からも御答弁申し上げましたように、八六年とおっしゃっているWHO基準については、これはいわば大気の基準でありまして、一般の人たちが普通の生活をするときに、二十四時間生活をする場合の基準ということであります。この新聞記事も、そういうことでWHO基準の二百倍、こういうふうに出ておりますけれども、私どもがやっている基準というのは作業環境基準ということで、防具を、必要な保護具をしまして、そして八時間、そういったところでの作業の基準であります。

 また、昭和五十一年当時のお話も出てまいりましたけれども、これも前に御答弁したかと思いますが、今、労災認定で出てきております方々は、昭和四十七年のILO、WHOなどでがん原性について世界的に表明をされました以前に暴露された方々が九割でございます。

 ということでありますので、確かに、今後の問題として、労災認定というのは私は重要なファクターだ、おっしゃるとおりだと思いますけれども、それが出てくるのは恐らく後だというふうに思っております。ですから、その後は、四十七年以降、表明されてから、五十年に始まりまして、いろいろな規制をいたしましたので、そういうことで管理ができるというふうに思っております。

 それから……(阿部委員「ちょっと待ってください、では、そこで一回切ってください」と呼ぶ)

阿部委員 それはわかっているんです、大気基準と作業基準が違うことくらい。

 そして、先ほど大臣も、私は逆に、大臣が水島さんの質問を間違えたと思うんですよ。大気基準が変わったとき、アメリカでは作業基準も変わったんです。日本とアメリカでそれまで同じ基準でした。そこで変えたということは、その間、アメリカで疫学調査が実際に進んだんです。労働組合と医師たち、あるいは行政が一緒になって、マウントサイナイ病院の鈴木教授が中心になって、いかに被害が大きいかを調べたんです。日本がそこをすこっと抜けてしまって、作業基準を八六年にも変えなかったんです。そのことがまた二十年、三十年後、これからの労災に出てきます。

 その作業基準を見直す際にもとになるのは、労災がどのくらい出ているか、周辺住民の被害がどうであるかという目を持って事実を見ることなんです。七六年にその芽はあったのです。だからもったいなかったでしょうと言っているんです、疫学調査が一切やられてこなかったこと、事今日に至るまで。それが我が国の大きな禍根になっています。そういう指摘として、青木さんの今の答弁はちょっと趣旨を取り違えていると思いますので。十分あなたのおっしゃることは理解しているつもりです。でも、やはりやるべきことは、これは疫学、どんなふうに広がりを持って、だれがどのようにこのアスベストの被害に遭うかということを全体として調査すべきであったんだと思います。

 そこで、大臣、時間がないので恐縮ですが、過去を未来に生かす方策として、クボタ周辺、今一番住民被害も多いです、労災の亡くなられた方も多い。そこにおいて住民健康診断も含めた疫学調査ということを、もうこれは二十年も三十年もおくれています、でも、私は、遅きに失したといえどもやることが、次の対策に必ず、環境、公害問題にも連動してまいりますので、意味があると思います。

 実は、この点に関しては、西副大臣をリーダーとする厚生省対策チームが立ち上がり、住民健診をやるというようなことも検討しておると出ておりますので、西副大臣の御答弁でも結構です、あるいは尾辻大臣自身のお考えでも結構です、ぜひやっていただきたい。そして、それは住民がどこまで、どの程度この被害に遭っているかという一つの、悲しいけれどもモデルケースになると思います。そういうものを一切、住民被害はずっとずっとずっと言われていた、家族被曝もずっとずっとずっと言われていた、でもやられてこなかったんです。疫学といえば、いや、環境省か、きのうの質問取りでもそうでした、あっちだ、こっちだ、そっちだと。しかし、やってこなかったことがこの病識、病態に対しての認識を非常に誤らせた、対策をおくらせたと私は思っております。もう一度お願いします。副大臣ないし大臣、お願いします。

尾辻国務大臣 石綿による健康被害の中で、最も石綿との関連性が強く、健康被害が増加しておるのが中皮腫でありますことから、私どもとしては、今般、緊急に研究班を立ち上げまして、人口動態調査等を活用いたしまして、中皮腫によって亡くなられた方々の症例について、職業や石綿暴露と中皮腫との関係、治療方法及び治療成績などについて早急に調査研究を行います。十七年度の厚生労働科学特別研究として中皮腫の専門家による研究を行うこととはしておりましたけれども、もう予定を待っておれませんから、たちどころにやることに、これもきょう決めたところでございます。

阿部委員 今大臣の御答弁のは、人口動態統計調査で明らかになった八百七十八人の中皮腫の方の実態、実際、病歴調査でございます。私が今お願いしたのは、クボタ、尼崎です。住民被害が一番今多いと報道されている、労災で亡くなった方も多いというところの住民調査であります。今やっていただくことはとてもいいと思います、でも、私が伺いたかったのはクボタ周辺の住民調査でございます。

 と同時に、大臣、ぜひ住民が大臣にお目にかかりたいと。実は、この問題がここまで顕在化しましたのはことし四月ごろでありましたか、住民の皆さんがお集まりになって、どうしても自分たちのこの体の状態はおかしい、やはり何としてでもこの自分たちが受けた健康被害を明らかにしたいというところから始まっております。個々のばらばらの動きはそれまでもございました。ぜひとも大臣には、この住民の声、あるいは御家族の声を聞いていただきたい。もう問題はそこまで広がってしまいました。

 恐縮ですが、副大臣、住民調査についての、健康調査についての御答弁と、大臣には、要望が上がっているクボタの周辺の住民の皆さんと一度お会いいただくこと、御答弁をお願いいたします。

尾辻国務大臣 二点、私の方からお答え申し上げたいと存じます。

 まず、周辺住民の皆さんの健康調査でございますけれども、これはどういう形でやれるか、今私どもも何とかやりたいと実は思っておりまして、研究もいたしておるところでございます。これも専門の方々の御意見も承っておるんですが、実は専門の方々の御意見もいろいろな御意見がございまして、率直に申し上げますが、余り意味がないんじゃないかという御意見も結構強くあったりもいたしまして、先ほどの御質問の中でも触れられましたことにも関係するんですが、むしろエックス線を受けることのリスクの方が大きいんじゃないかとおっしゃるような専門家も実はおられまして、今私ども、そういう議論をいたしておるところでございますので、そうした御意見も十分踏まえながら答えを出したいというふうに思っておりますということを、まず一問目の御質問にお答え申し上げます。

 二問目は、私はいつでもお会いしたいというふうに思っております。

阿部委員 ありがとうございます。

 前者については、先ほど来私が御紹介させていただきましたアメリカにおける大規模な疫学調査、それは労働組合も参加し、地域住民も参加した上で、協力のもとで実施された過去がございますので、そのあたりもよろしく御検討いただきたい。

 そしてもう一つ、中皮症というのがこれからむしろどんどん出てまいります。そのために、レジスター、登録制度をやっていただきたい。先ほどの人口動態統計は過去のものでございます。これから発生することも含めた登録制度をして、この広がり、だれが、どのように、どこでこれを発症させていくかということについて、これは未来に向けた政策にもなると思いますが、レジスター制度について御答弁をお願いします。

小田政府参考人 委員御指摘のように、アスベストの健康障害を研究していく上では、中皮腫の患者さんの調査というのがどうしても必要なものでございます。現在、私どもでは労災認定の患者さんのデータを把握しております。それから、先ほど来申し上げていると思いますが、調査研究の研究班の方で人口動態のデータを使った症例の集約というものを行うこととしております。

 さらに、御指摘の中皮腫の登録制度につきましては、これは実効性あるいは実施の可能性等について検討する必要があるというふうに考えておりますが、まずは、先ほど申し上げました追跡調査を確実に実施しまして、詳しい死亡原因、死亡者の職種あるいは職歴、健康被害の広がりについて調査してまいりたいというふうに思っております。

阿部委員 これは今後半世紀に及ぶ、恐らく我が国が過去の負債を引きずって半世紀取り組まなきゃいけない課題になりますので、レジスター制度についても即刻、こっちが終わってからこっちなどと言わずにやっていただきたい。

 そして、最後に、学校における子供たちの暴露という問題で、この夏、文部科学省が、八七年段階で学校のアスベストの吹きつけ等々の実態を調べ、報告を出しましたが不十分であったということで、再調査に至ります。実は、国立病院等の病院においても、八六年でしょうか、調査をなさいまして、文部科学省と同じ手法を用いておられたので、当時、アスベストでありながらアスベストとして認識されておらなかったものの使用についてはチェックがされておりません。

 病院というのは命を預かる、そして、そこにいる患者さんは動くこともできない方が多うございます。国立病院のみならず民間病院も含めて公共の施設と思いますので、そうしたところにおけるアスベストの現実、実際はどうなっておるかということについても調査していただきたいですが、時間が過ぎて本当に恐縮ですが、この御答弁だけいただいて終わりにしたいと思います。

岩尾政府参考人 現時点における医療施設の状況について調査が必要かどうかを含め、検討させていただきます。

阿部委員 学校でも必要とされたことで、これは今の答弁なら、次回もう一度やらせていただきます。

 ありがとうございます。

鴨下委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時五十三分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.