衆議院

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第4号 平成17年10月19日(水曜日)

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平成十七年十月十九日(水曜日)

    午前九時十二分開議

 出席委員

   委員長 鴨下 一郎君

   理事 石崎  岳君 理事 大村 秀章君

   理事 北川 知克君 理事 長勢 甚遠君

   理事 宮澤 洋一君 理事 仙谷 由人君

   理事 山井 和則君 理事 福島  豊君

      新井 悦二君    井上 信治君

      上野賢一郎君    越智 隆雄君

      岡下 信子君    岡本 芳郎君

      加藤 勝信君    上川 陽子君

      川条 志嘉君    木原 誠二君

      木村 義雄君    河野 太郎君

      清水鴻一郎君    菅原 一秀君

      戸井田 徹君    冨岡  勉君

      中山 泰秀君    西川 京子君

      橋本  岳君    林   潤君

      原田 令嗣君    福岡 資麿君

      松浪 健太君    松本 文明君

      松本 洋平君    御法川信英君

      吉野 正芳君    内山  晃君

      菊田真紀子君    五島 正規君

      郡  和子君    園田 康博君

      田名部匡代君    三井 辨雄君

      村井 宗明君    柚木 道義君

      古屋 範子君    桝屋 敬悟君

      笠井  亮君    吉井 英勝君

      阿部 知子君    糸川 正晃君

    …………………………………

   議員           村井 宗明君

   厚生労働大臣       尾辻 秀久君

   厚生労働副大臣      中野  清君

   厚生労働大臣政務官    西川 京子君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房文教施設企画部技術参事官)  舌津 一良君

   政府参考人

   (厚生労働省医政局長)  松谷有希雄君

   政府参考人

   (厚生労働省健康局長)  中島 正治君

   政府参考人

   (厚生労働省医薬食品局長)            福井 和夫君

   政府参考人

   (厚生労働省労働基準局長)            青木  豊君

   政府参考人

   (厚生労働省労働基準局安全衛生部長)       小野  晃君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局長)           中村 秀一君

   政府参考人

   (厚生労働省老健局長)  磯部 文雄君

   政府参考人

   (経済産業省製造産業局次長)           塚本  修君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房官庁営繕部長)        奥田 修一君

   政府参考人

   (国土交通省総合政策局長)            竹歳  誠君

   政府参考人

   (国土交通省住宅局長)  山本繁太郎君

   政府参考人

   (環境省大臣官房審議官) 寺田 達志君

   政府参考人

   (環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部長)   由田 秀人君

   厚生労働委員会専門員   榊原 志俊君

    ―――――――――――――

委員の異動

十月十九日

 辞任         補欠選任

  加藤 勝信君     岡本 芳郎君

  川条 志嘉君     橋本  岳君

  木原 誠二君     越智 隆雄君

  笠井  亮君     吉井 英勝君

同日

 辞任         補欠選任

  越智 隆雄君     松本 洋平君

  岡本 芳郎君     加藤 勝信君

  橋本  岳君     川条 志嘉君

  吉井 英勝君     笠井  亮君

同日

 辞任         補欠選任

  松本 洋平君     松本 文明君

同日

 辞任         補欠選任

  松本 文明君     木原 誠二君

    ―――――――――――――

十月十八日

 障害者の自立の支援及び社会参加の促進のための身体障害者福祉法等の一部を改正する法律案(山井和則君外五名提出、衆法第一〇号)

 障害者自立支援法案(内閣提出第一一号)(参議院送付)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 障害者自立支援法案(内閣提出第一一号)(参議院送付)

 障害者の自立の支援及び社会参加の促進のための身体障害者福祉法等の一部を改正する法律案(山井和則君外五名提出、衆法第一〇号)

 厚生労働関係の基本施策に関する件(アスベスト問題)


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     ――――◇―――――

鴨下委員長 これより会議を開きます。

 厚生労働関係の基本施策に関する件、特にアスベスト問題について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として文部科学省大臣官房文教施設企画部技術参事官舌津一良君、厚生労働省医政局長松谷有希雄君、健康局長中島正治君、医薬食品局長福井和夫君、労働基準局長青木豊君、労働基準局安全衛生部長小野晃君、社会・援護局長中村秀一君、老健局長磯部文雄君、経済産業省製造産業局次長塚本修君、国土交通省大臣官房官庁営繕部長奥田修一君、総合政策局長竹歳誠君、住宅局長山本繁太郎君、環境省大臣官房審議官寺田達志君、大臣官房廃棄物・リサイクル対策部長由田秀人君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

鴨下委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

鴨下委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。井上信治君。

井上(信)委員 おはようございます。自由民主党の井上信治です。

 本日は、アスベスト問題に対する集中審議ということで、七月二十日の日に第一回がこの厚生労働委員会で行われたわけでありますけれども、きょうその二回目が行われること、そしてまた、第一回目に引き続いて質問に立たせていただくことを大変光栄に思っております。これはしっかり取り組んでいかなければいけないという認識であります。

 そして、このアスベストの問題、第一回の七月二十日の日に質問に立たせていただいたこともありまして、その後、選挙のときに地元を回っておりますと、アスベストに対する一般の有権者の方々の御質問、そして不安といったものの声を非常に多く聞きました。とにかくしっかり対策をとってもらわなければ困る、私たちが安心できるようにお願いしたい、そんな切なる声を聞きまして、私も、当選させてもらえばまたしっかり頑張ってやっていきますということを言ってまいったわけであります。

 そして、その後、本当に政府におかれましてもさまざまな検討をしておられるということで、その点については感謝をいたしております。しかし、この問題の大きさということに考えてみれば、すべて十分であるとはやはりまだまだ言えないのではないか。引き続きの御努力をお願いしたいというふうに思っております。

 よく御承知のように、今、アスベスト問題、十年間で既に中皮腫の死亡者だけでも七千名以上を超えた、そして毎年毎年ふえてきている、それも、被害者は、実際に製造作業などに携わっている方だけではなくて、御家族やあるいは周辺住民にも広がっているということで、国民は大変な不安を持っているわけであります。なかなか正確な因果関係が不明であるとか、発症まで三十年、四十年かかるといった、非常にそういう意味では難しい、そんな特性を持っているわけでありますけれども、だからこそ国が、政府がしっかり手を差し伸べて、この救済を図っていかなければいけないという大きな認識を持っております。

 そういったことを踏まえまして、まずは、大臣のこのアスベスト問題に対する現状認識、そしてこれからの取り組みに対する力強い意気込みをお聞かせいただきたいと思います。お願いいたします。

尾辻国務大臣 現在の被害が、がん原性が国際的に認識をされまして、これに着目をいたしましてアスベスト対策が実施される以前の暴露によるものがほとんどであるのでありますけれども、そうはいいましても、現に多くの労働者や御家族そして周辺住民の方々がお亡くなりになり、あるいは中皮腫や肺がんで苦しまれておるということを極めて重く受けとめております。

 今後、今もいろいろお話しいただきましたけれども、引き続き、考え得る対策を進めまして、国民の皆様方の不安解消、被害拡大の防止、被害者をすき間なく救済する仕組みの構築等に全力で取り組んでまいります。

井上(信)委員 ありがとうございます。ぜひ本当に全力で取り組んでいただきたいと思っておるんですけれども、私が思いますに、あらゆる政策において、とにかくこれからしっかりと問題を踏まえて政策を打っていくというときに対して、まず現状の認識というものが大変重要だというふうに思っております。

 そういう意味では、このアスベスト問題、過去からの経緯がありますから、そういう中で行政の責任があったかどうかというのは、これは大変重要な問題だというふうに思います。

 政府の方でも九月の二十九日にアスベスト問題に関する過去の対応の検証ということを発表されました。しかし、そんな中では、やはり行政の不作為があったということはできない、ただし反省すべき点も見られたという、一見するとちょっと中途半端な発言にとどまっているのかなというような思いもいたします。例えば、小泉総理も、八月二十六日の会見では、反省すべき点もある、責任がないとは言えない、そんな御発言もされているということでありますから、本当に責任があったのかなかったのか、行政の不作為ということが言えるかどうか。この点について改めて伺いたいと思います。

尾辻国務大臣 過去の対応についての検証でございますが、今お話しいただきましたように、関係閣僚会合において報告をさせていただきました検証結果では、政府は、それぞれの時点において、例えば石綿の代替化を促進するための行政指導を行うなど、こうしたことを行ってきておりますので、不作為があったとは言えないというふうに考えております。

 ただ、またこれはいつも申し上げておることでありますけれども、昭和四十七年、一九七二年に、WHO、ILO等ががん原性ありということを指摘いたしました。それと、今の平均しての潜伏期間三十八年ということになりますと、一九七二年に三十八年足しますと二〇一〇年でありますから、この辺からのところの中皮腫の患者の皆さんがどういうふうになるかとかいったようなことをしっかり検証して、もう一回検証し直す必要があるというふうに私は申し上げているところでございます。

井上(信)委員 過去の施策に関しましては、やはり何が十分で何が不十分なのかというのはなかなか判断するのは難しいことだというふうには思っております。

 しかし、やはりこういった、被害のおそれが大きい、そして一度被害が生じると、本当に甚大な、そんな被害を生じるという問題に関しては、とにかく、十分ということはあり得ない、なるだけのことをやらなければいけない、そういう目で見たときに、本当に十分であったのかなというのは疑問なしとは言えないというふうに私自身思っております。そうはいっても、なかなか行政として、政府として、過去の不作為、責任を認める、これはまた難しい、そこもわかっているつもりではあります。

 しかし、今までにおいて責任があったから頑張らなければいけないと思うのと、責任はなかったけれども、問題が大変だからこれからもやっていきましょう、これではやはり意気込みの差というものが大きくあるというふうに思っておりますから、とにかく大臣、そしてまたこれに携わる行政の皆様方、少なくとも個人的には、やはり大きな反省をした上でしっかりこれから取り組んでいただきたいな、そんなふうに思っているところであります。

 そしてまた、次に具体的な内容に入らせていただきたいと思います。

 まずは、このアスベスト被害に関しては労災による救済というものが中心だというふうに思っております。過去の被害者を救済していく、これが大変大きな課題だと思っておりますけれども、実際にはなかなか労災認定をしていただけていないということがありますので、この労災の認定というものをもう少し弾力的に、あるいは拡大して認定できないのかなというような思いがあるところであります。

 そして、その我々の思いが届いたのかどうか、きのう、大臣が閣議後の記者会見の中で、労災認定基準を拡大していこう、そして医学的所見ということに関しては問わないでなるべく認定していこうということを発表されたこと、これは大変すばらしいし、歓迎すべきことだというふうに思っております。

 とにかく、この十年間の被害者七千十三人のうち、これは中皮腫だけですけれども、労災認定が四百十九人しかいないというのは、やはり我々国民感情からしますと、おかしいんじゃないか、もっとたくさんいらっしゃるんじゃないか、もっと救えないのか、そんな思いは非常に強くあると思います。ですから、この施策、ぜひ実現をしていただきたいと思います。

 ただ、医学的所見を要件としないというだけではまだまだ十分ではないのかなという思いも持っております。例えば、過去、まだまだ医学的所見が要件とされている中で労災認定をされなかった人、一度認定だめだというような結論が出てしまった人をどうやってこれから救っていくのか。あるいは五年間の時効にかかってしまった方々をどう救っていくのか。同じ労災の中で、同じ条件の救済方法をこういった方々も享受できるように、そんなことを考えていただきたいと思いますけれども、この点についてお聞かせいただきたいと思います。

青木政府参考人 これらのアスベストによります健康被害をこうむられた方々に対する救済ということで、大臣からもお話ありましたように、まずは救済をするということで検討しているところであります。お話にありましたように、労働災害、業務上の災害であれば労災保険による補償ということがございます。それはそれできちんとやっていく。また、迅速にこういったものを処理するということで手続等の見直しなどもやってきておりますので、それはそれできちんとやっていくということで考えております。

 それから、要件の見直しについても若干お触れになりましたけれども、医学的な医証といいますか、そういったものをなくするということではございませんで、中皮腫であるというようなことについてはきちんと診断をしていただかなければいけないと思っておりますし、そういう面ではできるだけ、こういった石綿による健康被害というのが非常に長い潜伏期間によって起こってくるということも踏まえて、さまざまな迅速な手続というものを考えておりますけれども、そういったことで対応したいと思っております。

 また、お話ありました時効などにつきましても、今申し上げましたように、時効制度そのものは、政府のさまざまな制度において法的安定性を確保するということで実施されているわけでありますけれども、しかし、現に苦しんでおられる方を救済するという観点に立って新たな給付を考えようということで、今、委員御指摘になりましたような趣旨で検討しているというところでございます。

井上(信)委員 今お答えいただきましたけれども、きのうの大臣の御発言からすると、少し事務方のお答えはトーンダウンしているんじゃないかなというような気がいたします。

 とにかく、七千人の中で四百人しか労災認定が行われていないということに対してどうお考えなのか。もちろん、これからちょっと後ほど御質問させていただきます新法を御検討だということでありますけれども、この新法の措置と既存の労災の措置ではやはり差があるように思えますから、まずは、大原則の労災で救えるのであれば、私はそちらでやっていくべきだというふうに思っておるんです。ですから、実際には労災認定がなかなか認定してもらえないという現状に対してどうお考えか、ちょっといま一度お答えいただきたいと思います。

青木政府参考人 労災補償につきましては、被災をされた労働者の方々に対する補償保険だということでありますので、できるだけ救済すべきは救済するという立場に立って認定の作業なども行ってまいりましたし、また制度の運用に当たりましても、できるだけ迅速に円滑にその補償がなされるように取り組んでまいりました。

 委員がおっしゃったように、労災できちんと補償ができるというものはまずそれを考えるべきだというのは、そのとおりだと思います。そういったことで取り組んでまいりたいと思います。

 仮に労災でないということでありましても、救済すべきはいわばすき間のない形で救済をしていくということで、新法の検討をしているというところでございます。

井上(信)委員 次に、救済ということの前の段階として、まず健康診断という話があると思うんです。漠然とした不安を抱えている多くの国民の方々、自分は大丈夫なんだろうか、そういうときには、まずは健康診断でチェックをしてもらいたい、これが最初の段階だと思います。

 そして、その健康診断でありますけれども、聞くところによりますと、普通の健診でも自己負担三千円程度、レントゲン以上の健診では一万五千円以上かかるということでありまして、これはやはり国民にとっては大きな負担になるわけであります。ですから、健康診断に対しても何らかの支援をしていただけないのか。例えば、既存の制度でも、老人保健法に基づく健康診断というのがございます。この中に例えばアスベストに関する健康診断というものを含めていただく、そして広く実施をしていただきたいというふうに思っております。この点について、御見解を伺いたいと思います。

磯部政府参考人 老人保健事業につきましては、広く四十歳以上の住民を対象にいたしまして、老後における健康の保持増進を図ることを目的として、健康診査等を実施しているところでございます。

 一方、アスベストによります中皮腫につきましては、アスベストに暴露していない一般住民に発生することは極めてまれということが知られておりまして、一般住民を対象に広く健診を実施することにつきましては、中皮腫の早期発見、早期治療の効果が期待できず、むしろ相対的にはエックス線被曝による健康被害等が懸念されるところでもございます。したがいまして、アスベストによる中皮腫につきまして、一般住民を対象とする老人保健事業の健康診査により対応することはなじまないと考えております。

 ただ、現在、健康診査を含みます健康管理につきまして、外部の専門家に依頼をいたしまして検討していただいておりますが、そこにおきましては、職場等においてアスベストに対して暴露した可能性のある方や事業場周辺の住民の方を対象といたしまして、健康診断等の対策をとることが適当ではないかという方向で検討中というふうに承知しております。

井上(信)委員 繰り返しますけれども、とにかく健康診断というのはまずはスタート地点だと思うんですね。健康診断を心配だと思われる方に広く行き渡るようにやっていくことで、とにかく被害を未然に防いでいく、あるいは早期の治療を行っていくということは大切だと思いますから、ぜひ御検討をいただきたいというふうに思います。

 続きまして、先ほどちょっとお話が出ました、新法による救済制度についてということであります。

 この新法を御検討されているということは非常に大切なこと、すばらしいことだと思っております。国民も大変期待をしています。だからこそ、この期待を裏切ることがないように、やはりしっかりとした救済制度というものを確立していただきたいと思います。現在、検討段階ということでありますから、なかなか中身については定まっていないと思いますけれども、検討段階であるからこそ、我々の願い、要望といったものをこの場をおかりして少し述べさせていただきたいと思っております。

 まずは、これはやはり、今新法を検討して、そして次期通常国会ということになるんだと思いますけれども、もっと言ってしまえば、この国会に出していただきたかったなという思いは実はあります。本当にそれだけ急がなければいけない、それだけ大切な課題だというふうに思っております。次期通常国会にせよ、とにかく一刻も早くお願いしたいと思います。

 そして、まず最も重要なベースとなるものが、どこまで、だれまで対象にしていただくことができるかということになってくると思います。先ほども申し上げたように、既存の労災制度ではどうしても限界があるということで、例えば、従来労災からはなかなか救うことができないと言われている御家族やあるいは周辺住民、そして一人の事業者の方々など、そういった方々に対してもこの救済を広げていただきたいというふうに思っております。

 そして、私が思いますのは、やはりさまざまな制度を整えていく、そして財源の手当てをしていく中で、大体どれぐらいの対象者の方がいて、どれぐらいの方に措置していかなければいけないといったような具体的なイメージがなければ、なかなかこの法案の骨格をつくるということも難しいと思います。ですから、今御検討のこの新法の中で、対象者という方をどういうようなイメージで、そして大体どれぐらいの人数でお考えなのか、まずこの点についてお聞かせいただきたいと思います。

寺田政府参考人 お答えいたします。

 ただいま御質問のございました検討中の新法でございますけれども、これにつきましては、まず既存の法律で救済できない被害者をすき間なく救済するということを基本的な目的としているところでございます。

 したがいまして、さきに、先月二十九日に、関係閣僚会合におきまして、石綿による健康被害の救済に関する基本的枠組みを取りまとめたところでございますけれども、その中では、石綿を原因とする中皮腫、肺がん患者のうち労災補償の対象とならない方々を医学的所見に基づきまして認定を行い、認定された方々とその遺族を救済の対象とするということで、まず対象者のイメージでございますけれども、例えば労働者の家族であったかどうか、あるいは職歴がどうだったか、居住がどこであったのかとか、そういうような要素は問わずにすき間なく救済するということを基本としております。これが対象者のイメージということになろうかと思います。

 なお、御質問の中にございました対象者の数でございますけれども、これについては、制度検討上いろいろな検討はしておりますが、単純な統計的な推測というのは可能かもしれませんけれども、今後さまざまな規制効果の発現等も期待されておるところでございますので、なかなか確たる見通しはつけがたく、ただいま検討中というところでございます。

井上(信)委員 すき間なく救済していくということに国民は大変期待をしていることだと思います。これは大変重要なことですから、ぜひお願いをしたいというふうに思います。

 そして、今御答弁もありましたけれども、やはり今回の新法救済でも医学的所見というものを要求していく。これは当然のことかもしれませんけれども、先ほどの労災の医学的所見の問題とあわせまして、やはり医学的所見というものは余り精緻なものを求めていってしまうと、どうしても対象者が絞られてしまうという問題があると思います。

 今や、中皮腫ということであれば、ほとんど、八割、九割原因はアスベストじゃないかというふうに言われているわけでありますから、この医学的所見についても、きのうの大臣の会見と同じように、新法においても医学的所見の要件の中身というものを考えていただきたいと思っております。この点についてもお聞かせいただきたいと思います。

寺田政府参考人 先ほど御答弁申し上げましたように、新法におきましては、個人の属性等を問わず、まさにアスベストによって罹患されたかどうかということのみをもって認定の要件とするということでございますので、医学的な所見というのは極めて重要なものかと考えております。

 もちろんこれは医学的な問題でもございますので、今後の検討にまつべき部分は甚だ多いわけでございますけれども、ただ、委員御指摘のとおり、対象としております疾病、中皮腫及び肺がんでございますが、委員御指摘のとおり、中皮腫については医学的にもその大多数がアスベスト起因であるというようなことが言われておること、翻って、肺がんは必ずしもそうではないというような差異、あるいは労災制度の運用との均衡というようなことも重要な検討課題であろうかと認識しております。

井上(信)委員 対象者がわかってきますと、次はその対象者の方々に対してどんな措置をしていただけるかということが問題だというふうに思います。

 発表されている中でも、医療費、療養手当あるいは遺族への一時金といったような措置を検討されているということでありますけれども、こういったことになりますと、どうしても労災認定された方々とは大分差があるのではないかなというふうに思っております。

 例えば労災における休業補償であるとかあるいは遺族年金、こういったものは考えておられないということであると思いますけれども、先ほど申し上げたように、基本的には労災が原則だと思います。そして、やはり家族や周辺住民の方々に対してもなるべく労災の適用された方々と同じような救済をしていただきたいというふうに思っておりますけれども、この点の措置についてお考えをお聞かせいただきたいと思います。

寺田政府参考人 お答えいたします。

 今回の制度でございますけれども、アスベスト被害の特質にかんがみ、潜伏期間が平均で三十八年というようなことでございます、こういった中で暴露に係る原因がなかなか特定しがたい、こういう特殊性もありますので、なかなか労災等の既存の制度では救済ができないということでございますので今回の救済というスキームを考えておるわけでございます。

 このため、個別的な因果関係の存在、あるいは補償保険的な制度というのは難しいわけでございますけれども、政府としては、被害者への迅速な対応を図るために、救済という観点から適切な法的措置を講ずべく検討作業を進めているということで御理解いただきたいと思います。

井上(信)委員 すき間なく救済をしていくということで、対象者の数を広げていただくのはいいんですけれども、せっかく広げたのに結局一人一人の患者さんに対して十分な措置ではないということになれば、これは余り意味がないんじゃないか、そんな話にもなりかねないですから、ぜひここは御検討をいただきたいというふうに思います。

 そして、今の話と絡みますけれども、ある意味でこれは一番大事な問題だと思います、では、財源をどうするのかというこの問題が必ず出てくるわけであります。

 先ほど明快なお答えはいただけなかったんですけれども、さまざまな推測といったものが出ておりまして、研究者の方によると今後四十年間で十万人以上の方が被害者として発生する、あるいはまた、環境省の推測ということで報道なされておりましたけれども、中皮腫で五万人、肺がんで三万五千人、そういったような予測も出ております。単純に考えますと、十万人、一人当たり例えば一千万円の補償が必要だということになれば、それだけで一兆円ということになるわけであります。

 ちょうどけさの産経朝刊には、アメリカのコンサル会社の推計といった記事が載っておりました。この推計によりましても、死者の数が八万六千人、そして補償対象が十一万七千人、そして一人頭千三百三十七万円で総計一・六兆円、こういったような予測も出てきております。

 もちろん、このすべての必要とする財源をこの新法で賄うかどうかという話は当然あると思いますけれども、そういった中で、では、どのように負担をしていくのか、これは大きな問題になると思います。現在御検討中だと思いますけれども、私が思いますのは、確かにこれは難しい問題だと思います。

 三十年、四十年前の被害が今発症しているということであれば、その因果関係もなかなかわからない、あるいはもう既に倒産している企業も多い、そんな中でどうやって事業者負担を求めていくのかということでありますけれども、基本的には、これだけ多くの国民的被害が発生し、かつ、これだけ大きな金額が必要ということであれば、やはり広く財源負担というものを求めていかざるを得ないのではないか、そんなふうに思っております。そして、さまざまなアスベスト関連の業界、アスベスト製品の製造業だけではなくて、さまざまな業界にも御負担をお願いしていく。そうした中で、それでも足りないということであれば、やはり公費の負担ということも考えていかなければいけないというふうに思っております。

 御承知と思いますけれども、アメリカでは基金をつくって、そしてその基金において救済を行っていくということをやられている。この基金の規模が千四百億ドルということでありますから、大変大きな額であります。それに比べれば一兆円でも、それでも少ないのかな。だからこそ、しっかりやってもらいたいと思っておりますけれども、この財源の負担の件に関しまして、お考えを伺いたいというふうに思います。

寺田政府参考人 財源についてのお尋ねでございます。

 先ほども申し上げました関係閣僚会議で取りまとめました基本的枠組みにおきましては、石綿による健康被害に関係する事業者に費用負担を求めるということといたしております。また、救済のための基金の創設やその場合の公費負担のあり方についても検討をするということとしておるところでございます。

 政府としては、現在、この基本的枠組みを踏まえまして、関係府省の緊密な協力のもとに新法の検討作業を進めているところでございまして、これらの課題につきましてスピード感を持ちまして検討を進め、次期通常国会のできるだけ早い時期に法案を提出したいと考えているところでございます。

井上(信)委員 検討中ということで、これ以上は難しいと思いますけれども、とにかく、よくあるように財源ありきで、お金がこれしかないからこれだけの措置しかできないといったような本末転倒の議論はやめていただきたいと思います。まず何が必要かで、お金が幾らかかるか、だからこそその負担をどうしていくか、こういったような順序でぜひ御検討をいただきたいというふうに思います。

 続きまして、ちょっと新法から離れまして、過去の被害者を救済するということ、これは大変重要なことでありますけれども、それと同じように大切なのが、これ以上被害者をふやさないということであります。ですから、そういったこれからの措置に関しても、ぜひしっかり措置をとってもらいたいというふうに思っております。

 そして、そういう意味でまず基本となるものが、やはり危険なアスベストというものをまずは禁止していく。全面禁止。まだまだ日本は欧米におくれて全面禁止していないということでありますから、これはとんでもないことだと思っております。平成二十年度までというものを十八年度まで前倒しをしていこう、そんな御検討をされているということでありますけれども、むしろ、なぜ今すぐにでもできないのか、ぜひやってもらいたいというふうに思っております。どうぞお願いしたいと思いますけれども、お考えをお聞かせいただきたいと思います。

青木政府参考人 このアスベストの全面禁止ということについては、現在も使用が許されている石綿含有製品というのは、これは十四年の検討をいたした際に相当絞り込んだわけでありますけれども、主に化学工場でありますとか原発でありますとか、そういうところで、非常に耐酸性でありますとかあるいは耐熱性、そういったものにすぐれている石綿を使っていろいろな装置等が現にやられているということで、いわば代替品がなかなかないというようなことで、代替化の検討をいたしまして、絞り込んで、その当時の調査では、建材等に使われているのがほとんどでありましたから、九八%ほどは原則禁止ということになったわけであります。残されている石綿含有製品についても、そういう意味では、その後、今も業界等からもヒアリングをしながら代替化等を含めまして検討してもらっております。早急に全面禁止を行うことが必要であるというふうに考えております。

 今申し上げましたように、専門の委員にお願いをいたしまして、全面禁止に向けた検討会をこの八月に立ち上げて、ヒアリング等を初めとして検討しております。来年一月までにそういった検討結果をまとめていただきまして、その上で早急に、WTO上の通知でありますとか所要の手続が必要でありますので、そういったことも早急に所要の手続を進めまして、全面禁止を一日も早く実施することとしたいというふうに思っております。

井上(信)委員 アスベストの製品の代替品がないから禁止できないというようなお答えだと思うんですけれども、これはちょっとなかなか納得しがたいのかなというふうに思います。特に、アスベストの危険性というものがもう本当に三十年以上前から指摘をされていた。そして、聞くところによりますと、政府においても七五年から代替化研究はあるということでありますから、三十年研究しているのにまだわからないのか、そういったような思いを持つことだと思います。ですから、これはとにかく一刻も早くやっていただくように、犠牲がこれ以上ふえないように、当たり前のことですけれども、しっかりお願いしたいと思います。

 それから、あと非常に重要なのは、アスベスト製品は建築物に含まれるものが非常に多いということでありまして、その解体作業についてであります。

 この解体については、七月に施行された石綿障害予防規則においても、アスベスト含有についての調査、飛散防止の措置というものを義務づけたということでありますけれども、私も地元でいろいろ話を伺いますと、なかなかこれが本当に政府のお考えどおり、理想どおり実施されていないというのが現状だというような話を伺っております。どうしてもこれらの措置をするということになれば、非常なコストアップになってしまう。そして、解体作業をやるというのは大体普通は零細事業者が多いですから、このコストアップをなかなか吸収できない。それであれば、わかってはいるけれども、ついこの措置をせずにやってしまう、そんなことが横行されているといったような話も聞いております。

 これは大変驚いたんですけれども、政府がやられた調査ですかね、百二十四の事業所を調査したところ、違反している事業所が五十七事業所ある。違反率四六%ということでありますから、これはまさにざるでありまして、何の意味もない。これではだめだというふうに思っております。ですから、解体作業のときのアスベスト飛散防止の措置というものを、しっかり実効性を担保できるような、そんな措置をこれからやっていかなければいけないと思いますけれども、この点についてお聞かせいただきたいと思います。

青木政府参考人 いろいろ規制をしても、それが実際にやられていなければ何の意味もない、おっしゃるとおりだと思います。

 私どもとしては、今お触れになりました調査もそうでありますが、いろいろなきちんとした管理をするというようなことについては、さまざまな手法を用いて、もちろん、業界に対するPR、あるいは労使に対する啓発などもやっておりますが、同時に、個別に事業場に立ち入る、あるいは解体作業現場に立ち入るというようなことをいたしまして、施行がきちんとなされているかどうか、法律上の規制に基づき作業が行われているかどうかを実地に確認する、そして、していない場合には、今お触れになりましたものもそうでありますけれども、それを是正指導する、そして我々としてはそれを完全に直させるということで対処をしてきております。

 今後とも、そういうことで、おっしゃったようなことのないように、適正な管理のもとできちんとした作業が行われるように我々としても対処をしていきたいというふうに思っております。

井上(信)委員 ぜひお願いしたいと思います。

 もう時間が残り少なくなってきましたので、ちょっと申しわけないですけれども、要望だけ申し上げさせてもらいたいというふうに思います。

 このアスベスト問題、本当にここ近年非常に脚光を浴びてきたということで、アスベスト対策に関する人材の育成というものが非常におくれているということであります。これは、本来は三十年以上前から指摘されていた問題で、いまだに人材が育っていない、それはとんでもないことだというふうに思っております。

 しかし、現実には、例えばアスベストの症例を診察できる専門医の方が全国で五十名程度しかいないということで、ここは大変渋滞をしている。あるいはまた、今さまざまな調査というものをそれぞれの自治体なりあるいはそれぞれの国民の方々がやっておりますけれども、この調査の分析、それをする機関というものが余りないということで、そこも非常に待ちの状態である、そして対策がおくれてしまうといったような現状があるというふうに聞いております。ですから、これは本当に早急に、大至急この人材の育成、機関の育成というものをしていただきたいというふうに思っております。

 そしてまた、もう一つありますのは、現在、先ほど申し上げたように、それぞれの各省さんの方で公共団体や国民の方々に調査の依頼を指示していることだと思います。私も、うちの地元でも今さまざまな調査をやっております、あるいはそれに基づいて除去作業というものをやっておりますけれども、これはやはり非常にお金がかかるんですね。除去作業ということになれば数百万、数千万というお金がかかることもあります。ですから、こういったものに対してさまざまな財政支援というものをやはり考えていただきたいと思います。非常に財政の厳しい折ではありますけれども、それにも増して大変重要な問題である、そして、このツケを、負担を自治体やあるいはその建物所有者の方々に転嫁をするのではなくて、公共が責任を持ってやっていかなければいけないというふうに私自身思っているところであります。今さまざまな制度を検討中ということでありますから、本当にこれはしっかりやっていただきたい。

 そして、このアスベストの問題に関しては、国民の大きな期待、心配、不安、そして要望の中で、総理を初めとして関係閣僚の方々がひとしく、これを大きな問題だと認識している、スピード感を持ってすき間なく救済をやっていく、本当に国家的な問題なんだということを表明しておられるわけでありますから、ぜひそのとおり頑張っていただきたいというふうに思っております。

 この問題に関しましては、恐らく、きょう委員会でやられておりますけれども、与野党一致した、そんな思いだというふうに思います。ぜひ、我々のこの思い、そして国民の思いというものを受けとめて、これからしっかりとしたものをつくり上げていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いします。

 どうもありがとうございました。

鴨下委員長 次に、川条志嘉君。

川条委員 自由民主党、大阪二区選出、川条志嘉でございます。

 井上議員は先ほど被害者救済への取り組みについて詳細に聞いておられますので、私の方からは、検討中のアスベスト新法の内容を中心に、一般的な取り組み、スタンス等を伺っていきたいと思っております。

 さて、自分の経験をもとに言うことではありますが、弱者の声というものは、権力にかき消され、幾ら本当のことを叫んでも往々にして届かないものです。しかし、天はすべて見ていて、何かのはずみで声が届くことがある。私は、政治を志すに当たって、弱者の声、市民の声を国会に届けたいと強く思ったものであります。その気持ちは今も変わらず、議員として活動していきたいと思っています。

 また、かつて松下政経塾の尊敬する先輩が講義に来られたときに言われた言葉があります。制度のないところに救われない人がいる、制度ができれば問題はほぼ解決できる。この言葉は、私がこの日本という国の枠組みの中で、国会においてあまねく多くの国民が幸せになるような制度づくりに取り組んでいきたい、こう志を立てたきっかけとなった言葉であります。

 今回のアスベスト問題では、まさにその法律のはざま、あるいは船員、公務員、工員といった職業ごとの制度の違い、縦割り行政の弊害の中で救済を待っておられる人々がたくさんおられるのです。本当に制度のないところに救われない人たちがおられるという状況です。

 現在、アスベスト新法を、こういう法律が検討されているということを聞いておりますが、今もし新法をつくるのであれば、現状の制度では救われない人たち全員を救える制度をつくっていただきたいと思っております。また、私たち議員の方も、要望を出し、そういう法律を一緒につくっていきたいと思っております。

 アスベスト被害は、職歴や居住地域だけでは限定できないという特徴を持っています。

 一つの例ですが、二〇〇五年十月十七日、おとといの産経新聞に掲載された記事なんですが、大阪の泉州、阪南地域では、中小零細企業がアスベスト製造を行っていた、集じん機という名前ばかりの、空中にアスベストをまき散らす扇風機をそれぞれの工場に備えている、周辺住民たちはそれを知らなかった、だれもがもしかしたらあした中皮腫を発症してアスベスト公害の被害者になるという可能性も持っている。このアスベスト問題にはそんな側面もあるということを忘れてはいけないと思います。

 また、実態把握ができていないだけで、現在、厚生労働省が発表しておられる平成十六年の九百五十三人という中皮腫の死者、これよりもアスベスト被害によって亡くなった方ははるかに多いのではないかと思われます。

 そこで、アスベスト被害に対する行政サイドの認識、対策、そして発症者への対応について、これから数点質問させていただきたいと思います。

 まず一つ目、アスベスト被害に対しては、往々にして対応のおくれというものが指摘されています。私自身もそういう認識を持っています。また、アメリカではアスベストによる健康被害の訴訟が一九九〇年代から急増した。推計約三十万件と言われています。今の日本の事態、そしてアスベスト対象の法律の必要性は一九九〇年代から予測できたのではないでしょうか。また、現状への印象はどうでしょうか。厚生労働副大臣、お願いしたいと思います。

中野副大臣 川条議員の御質問にお答えをさせていただきたいと思います。

 行政の認識として、アメリカにおけるアスベストの使用状況それから規制内容、健康被害の状況は我が国と非常に異なっておるほか、一九九〇年代当時は、現在のようにインターネットとかいろいろ諸外国の情報が容易に認識できる情勢でなかったことから、実態については十分承知していなかったものでございます。当時といたしましては、新法の必要性について予測できるような状況ではなかったということを御理解願いたいと思います。

 また、現状の認識といたしましては、現に多くの労働者や家族それから周辺住民の方々がお亡くなりになり、あるいは中皮腫や肺がんで苦しまれていることを重く受けとめておりまして、これらの方の救済について全力を期してまいりたいと考えておるところでございます。

川条委員 ぜひその救済に対して全力を尽くしていただきたいと私からも重ねて御要望申し上げます。

 しかし、やはりアスベスト被害に対する厚生労働省の認識、これはあらゆる面において甘かったのではないかと思います。この認識の甘さと世論の高まりとのギャップは大きいのではないでしょうか。

 例えば、クボタの神崎工場のアスベスト被害が発表されたのが六月二十九日のことでした。ところが、九月二十九日、日本水道新聞、これで発表された案件では、クボタの元社長である現相談役の土橋相談役、この方が九月二十七日に厚生労働大臣表彰を受けることに決定した。最終的にはこの方は辞退されたそうですが、やはり一方でアスベスト問題を抱えているクボタという企業に対して、一方では表彰している、このような事実を世論に対して説明できるのでしょうか。また、過去における政府の対応に対してどういう認識を持っておられるのか、重ねてもう一度お伺いしたいと思います。

中島政府参考人 まず、表彰の件でございますが、水道の普及発展等に顕著な功績のあった方々につきまして、毎年、水道関係功労者として厚生労働大臣表彰を行っているところでございます。

 お尋ねのクボタの相談役の方につきましては、本年の七月、社団法人日本水道工業団体連合会からの推薦を受けまして、審査をした結果、同連合会の会長として水道の発展に貢献されてきた実績などから、九月二十七日に本年度の大臣表彰の対象としたところでございますが、十月七日、御本人から辞退の申し出があったということでございます。

 御指摘の点につきましては真摯に受けとめまして、今後の表彰者の選定に当たりましては、一層慎重を期してまいりたいと考えております。

中野副大臣 今健康局長がお答えしたところでございますけれども、御指摘の問題について、私個人の考えといたしましては、当時の表彰の選定に当たっての認識が甘かったと反省をしております。今局長が御答弁したとおり、この問題について真摯に受けとめまして、今後の表彰の選定に当たっては、慎重を期してまいりたいと考えております。

 また、今お話しのとおり、省全体としての見方が甘いということについてでございますが、厚生労働省といたしましては、アスベストの問題に対する過去の対応について、関係閣僚会合において報告された検証結果にあるとおり、それぞれの時点において、当時の科学的知見に応じて、例えば石綿の代替化等促進のための行政指導など、必要な対応は行ってきたつもりでございますけれども、しかしながら、いろいろ誤解を受けないようにこれからも全力で頑張りますことをお誓いをしたいと思います。

川条委員 ありがとうございます。

 ぜひこれからの適切な対応を心からお願い申し上げたいと思います。

 次に、検討中の新法についてお伺いします。

 アスベスト新法が議題として上がったのはいつごろのことなのでしょうか。また、アスベスト新法では救済の対象範囲と補償内容についてどのように考えておられるのでしょうか。具体的には、疾患の種類、対象者の条件、その補償内容について、まずこれについて教えていただきたい。

 その次に、中皮腫と認定されると、アメリカでは百十万ドル、つまり一億二千万円支払われることになっています。日本でも十分な給付額を確保しての救済が必要だと考えますが、日本の給付内容はどうなのでしょうか。環境省の考え方をお伺いしたいと思います。

寺田政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、新法の検討がいつごろから開始されたのかということでございますけれども、政府全体といたしましては、アスベスト問題にかかわります関係閣僚会議というものを開催しておりまして、八月二十六日に開催されましたこの閣僚会合におきまして、労災補償を受けずに死亡した労働者、家族及び周辺住民の被害への対応については、救済のための新たな法的措置を講ずることとし、次期通常国会への法案の提出を目指し引き続き検討するということとしたところでございまして、政府全体としてはこれが開始だろうというふうに考えております。

 続きまして、その内容についてのお尋ねがございました。

 これにつきましては、九月二十九日に開催されました、ただいま申し上げました関係閣僚会合におきまして、石綿による健康被害の救済に関する基本的枠組みということが現在の政府の方針として示されているところでございます。この概要をかいつまんで御説明いたします。

 まず、対象者及び対象疾病でございますけれども、今度の新法につきましては、まず、石綿による健康被害者をすき間なく救済するということを目的といたしまして、対象疾病としては中皮腫及び肺がんを念頭に置きまして、その罹患者の方々を、職歴等は問わずに、石綿を原因とする疾病であることを証明する医学的所見があることということをもって認定するという方向で検討を進めております。

 また、御質問の中にございました給付の内容並びに水準ということでございます。

 給付の内容につきましては、医療費の支給、自己負担分でございますけれども、さらに療養手当、遺族一時金、葬祭料という四項目につきまして検討を進めることにしておりまして、その給付の水準でございますけれども、これにつきましては、国の他の救済制度とのバランスにも配慮しつつ、今後検討を進めるということになっております。

川条委員 十分な給付がなされること、また、すき間なく被害に遭われた方を救済していただくことを心からお願いしたいと思います。

 次に、救済対象の疾病についてお聞きしたいのですが、アスベスト由来の疾病というのは、中皮腫、肺がんだけではありません。アスベスト肺、いわゆるじん肺、胸水あるいはびまん性胸膜肥厚、円形無気肺等多くのものがあるということです。この中皮腫、肺がん以外の疾病についても周辺住民の不安は増大していると思いますが、一般住民、周辺住民に対しては今後も救済対象として認めていかれるのでしょうか。私はぜひ認めていっていただきたいという要望も込めて環境省にお伺いしたいと思います。

寺田政府参考人 お答えいたします。

 先ほど御答弁申し上げましたけれども、基本的枠組みにおきましては、新たな救済制度の対象疾病を石綿を原因とする中皮腫及び肺がんとしておるところでございます。

 政府といたしましては、まずはこれらの疾病による被害者について、スピード感覚を持ちまして、迅速な救済を図るべく制度の具体化を急ぎたいというふうに考えておるところでございます。

 ただいま御指摘のございました他の疾病でございますけれども、これらについては、例えば極めて高濃度の暴露で発症するものであるとか、あるいは、例えば労災の対象疾病とされたのが平成十五年度であって、いまだにデータ、医学的知見の集積等が不足していると考えざるを得ないところなどということがございますので、今後、それらの点も踏まえて検討してまいりたいと考えております。

川条委員 周辺住民の不安にこたえるためにも、なるべくあまねく多くの方を救済していただくような法案になることを重ねて御要望申し上げ、次の質問に移らせていただきます。本当にありがとうございました。

 次に、特に被害の大きい中皮腫について伺います。

 中皮腫の検査方法としてはCTとかレントゲン撮影といったものが上げられますが、これが有効であると広く世間に認められているところではありますが、希望者すべてに適用すべきという意見がある一方で、検査による放射線の暴露の危険性を指摘する声もあります。厚生労働省としては、現在の知見に基づいてはどのようにすべきと考えておられるのでしょうか。お伺いしたいと思います。

小野政府参考人 お答えいたします。

 今議員御指摘のとおり、CT、レントゲン検査は中皮腫の発見のためには非常に重要な手法ではありますけれども、検査には放射線暴露によります肺がん発症のリスクも一方で伴うという面が確かにございます。

 このため、現在、専門家会議におきまして健康の管理のあり方について検討いただいているところでございますけれども、例えば、検査対象者につきまして、レントゲン検査を実施する前に石綿暴露歴を慎重にまず聴取する、その中で一定の暴露リスクのある方に対してだけレントゲン検査を実施すべきではないか、こういった考え方の議論もこの会議の中でされているところであります。この専門家会議での議論を踏まえまして、今後有効で安全な健診のあり方を検討していきたい、こういうふうに考えております。

川条委員 ぜひ、安全な検査については、国民が一人でも多く受けやすいようにしていただきたい、こう思います。

 また、そのためには、アスベスト新法において検査費用をできるだけ軽減していただきたい、こう考えますが、その点についてはどのような取り扱いになるのでしょうか。環境省の方に伺えればと思います。

寺田政府参考人 健康診断についてのお答えでございますけれども、新制度におきまして健康診断をどう取り扱うかということにつきましては、現時点では他の制度、例えば私どもの所管しております公害健康被害補償法などにおきましても、申請に当たっての資料を作成する費用等はそれぞれ申請者の御負担ということになっておりまして、そういったものと均衡をとる必要があると考えているところでございます。

川条委員 ぜひ、多くの国民を救済するという意味でも検査を受けやすいような制度をつくっていただきたい、こう重ねてお願い申し上げます。

 次に、中皮腫の治療法についてでございますが、欧米では抗がん剤が承認されています。しかし、日本ではその薬は臨床治験段階にとどまっていて、早期の承認が必要と私は考えます。その薬が承認されて一般に使われるのはいつごろになるのでしょうか、また、承認過程を早めるということはできないのでしょうか、さらに、その試験の成績というものは欧米においてどれくらいなのか、この三点について厚生労働省の見解をお伺いしたいと思います。

福井政府参考人 お答え申し上げます。

 後の方の御質問からのお答えになろうかと思いますが、委員御指摘のように、欧米におきましては、悪性胸膜中皮腫の治療薬として、これは一般名でございますけれども、ペメトレキセドが承認をされているところでございます。本剤は、欧米におきまして、抗がん剤、シスプラチンと申しますが、これとの併用ということによりまして使用されているものでございます。

 そこで、お尋ねの欧米における試験成績でございますけれども、米国を中心に実施されました臨床試験におきましては、ただいま申し上げました肺がんなどに使われるこの抗がん剤でございますシスプラチン、これを単独で投与した患者群の平均生存期間が九・三カ月であったのに対しまして、シスプラチンに本剤、ペメトレキセドでございますけれども、これを併用した患者群におきましては十二・一カ月ということで、延長をしたとの試験成績が得られていると承知をいたしておるところでございます。

 一方、このシスプラチンに本剤を併用した患者群におきましては、血液中の白血球の減少、嘔吐、呼吸困難などの点におきまして重篤な副作用が、シスプラチンを単独で投与した患者群と比べて多く見られる結果になっているというぐあいに承知をいたしておるところでございます。

 それから、このペメトレキセドにつきましては、委員お話しのように、国内では未承認の医薬品でございますが、本年一月の第一回、これは私どもの省の検討会議でございますけれども、未承認薬使用問題検討会議におきまして、国内で治験を早急に開始することとされまして、これを受けまして本年三月から治験が開始をされているところでございます。

 この薬剤につきましては、今後、薬事法上の承認申請がなされるというぐあいに考えておりますけれども、臨床試験成績などの提出データに基づきまして、有効性、安全性につきまして迅速に審査をしてまいりたいというぐあいに思っております。

 いつごろ承認される見込みか、こういうお尋ねでございますけれども、申し上げましたように、現在治験中でございまして、承認申請がなされていないということでもございますので、現段階におきまして承認時期を示すのはなかなか困難でございますが、いずれにいたしましても、承認申請がなされた際には迅速に審査をしてまいりたいというぐあいに考えております。

川条委員 ぜひ迅速な対応をお願いしたいと思います。

 もう時間がなくなってまいりましたので、最後の質問に移りたいと思います。

 これから中皮腫の患者というのはますますふえていくと考えられますが、医師の教育プログラムである臨床研修必修プログラムというものがありまして、その中に位置づけることが必要であると私は考えます。その点について、簡単に厚生労働省の見解をお伺いしたいと思います。

鴨下委員長 松谷医政局長、簡潔に。

松谷政府参考人 お答え申し上げます。

 中皮腫を初めアスベスト関連疾患につきまして患者さんが適切な治療を受けることができるように、医師がアスベスト関連の疾患を理解するということは極めて重要であるというふうに思っております。

 御指摘の中皮腫につきましては、現在行われております卒後の臨床研修、必修化されたところでございますが、その到達目標におきまして、経験が求められる疾患、病態としての胸膜、縦隔、横隔膜疾患に含まれておりまして、中皮腫以外の疾患の診断、治療を進める上でも鑑別すべき疾患の一つとして中皮腫についての一定の理解が必要となっているところでございます。

 なお、中皮腫は医師国家試験の出題基準にも位置づけられておりまして、各大学における卒前の医学教育の中でその基本的な内容について学ぶべき事項となっております。

 以上でございます。

川条委員 ありがとうございます。

 アスベスト被害に対しては、厚生労働省初めさまざまな対応のおくれが指摘されていて、私自身もそういう認識を持っております。一日も早く全面禁止を求めるとともに、また、被害者の救済にも全力を尽くしていただきたい、そう御意見、お願い申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

鴨下委員長 次に、古屋範子君。

古屋(範)委員 公明党の古屋範子でございます。

 前回七月のこの委員会におきますアスベスト集中審議に続きまして、本日は、アスベスト問題について、被害の救済と今後の対応策について質問をしてまいります。

 アスベスト対策につきましては、公明党は、七月十二日の対策本部設置以来、視察、また患者、家族の方からの聞き取り調査など精力的に活動を行ってまいりました。さらには、健康被害を受けた対象者の包括的な救済に向けまして、立法措置も視野に万全の対策を講じるよう小泉総理あてに申し入れを行うなど、対策本部の会合を通して関係各省の対策を要請するなど、一貫してアスベスト対策をリードし、被害者の救済に全力を挙げているところでございます。

 現在、アスベスト被害への対応といたしまして、被害者の救済が焦点となってきております。しかし、被害実態に不明な点、例えばどのようにアスベストを吸引したのか、その検証が非常に難しい、そのような難問が山積をしております。

 私は前回の質問の際、各省庁間の垣根を越えて被害者の救済体制の確立をと訴えました。政府も、来年の通常国会に提出する救済新法を検討、先月二十九日にはその基本的な枠組みが決定されたと伺いました。先ほどの質問にもありましたけれども、これに関しまして、被害者救済への大きな道が開かれたと私自身も非常に評価をしているところでございます。

 初めに、新法の検討状況、今後のスケジュールにおきまして、厚生労働省に質問いたします。

青木政府参考人 新法についてでございますけれども、これは主に対象者として、住民それから家族ということに対しまして救済をしよう、そしてまた、あわせて労災補償を受けずに死亡した労働者の特例も設けようということで考えております。そういう意味で、まずは政府の中では環境省が中心となって検討しているところであります。それに労災関係もありますので、厚生労働省もあわせて一緒になって検討しているという状況でございます。

 これらについての給付金を支給しようということでありますので、給付金の内容でありますとか財源でありますとか、あるいは措置の実施主体でありますとか、そういったところを検討しているという状況でございまして、スケジュールは、これはもう明らかにしているところでありますけれども、次期通常国会へ早期の法案提出に向けて頑張りたいということで今検討しておるところでございます。

古屋(範)委員 ただいま御答弁にありましたように、来通常国会、またしっかりとした制度設計、財源の確保、よろしくお願いいたしたいと思います。

 続きまして、この新法でございますが、法案の提出は来年の通常国会、また法案成立後秋からスタートをさせる方針であるようでございますけれども、今急増する患者、この現状を考えますと、遅過ぎるという声もなくはございません。もっと早く立法化をしてほしかったという声も寄せられているわけでございます。この実施時期はできるだけ早く、また救済措置はできるところから早急に手を打つべきであると考えております。被害拡大のおそれが今なお生じていることを認識して対策に取り組む必要があると考えております。

 また、新法の大枠が決まったばかりではありますが、国会での協議を積極的に進め、被害者の救済を急がなければならないと思っております。やはり、アスベスト対策は時間との闘いということになってくると思います。一刻も早い被害者補償と同時に、アスベスト使用の完全なる禁止、建築物からのアスベスト除去という総合的な対策をとることが重要であると考えます。

 居住地またはその職歴にかかわらず、また労災の対象外である家族また地域住民、その被害をすき間なく救済するための法整備、新法が施行されるまで、この間、救済措置が求められているわけでございますけれども、これにつきまして、環境省そして中野副大臣の御所見をお伺いいたします。

中野副大臣 古屋議員の御質問にお答えしたいと思います。

 今お尋ねの件でございますが、業務上石綿に暴露したことによりまして、中皮腫それから肺がん等に罹患し、現在療養中の労働者の方々につきましては、新法を待つまでもなくこれは行ったわけでございますが、既に現行の労災補償給付の対象となっております。

 これらの方に対する労災認定に当たりましては、より一層の充実強化を図ることといたしておりますが、具体的には、例えば事業場を転々としている場合等、石綿暴露の事実の確認が困難な場合には、石綿暴露の蓋然性の高い作業に従事していたとする請求本人の御主張及び厚生年金の被保険者記録等を裏づける資料をもってその事実を認定することとして、その旨を七月二十七日付で全国の労働局に通知したところであります。つまり、今までよりは早くそういう点での認定をしておるわけでございます。

 また、中皮腫の患者が医療機関に通院する場合の交通費に関しましては、当面、その方の通院が医師の紹介による等、当該通院機関でのより専門的な診療が療養上の必要性に基づく適切なものである場合には、これは、いわゆる距離の問題ではなくて、現行の支給基準を満たすものとして取り扱うこととしておりまして、そのことも早急に全国の労働局に通知をする予定でございます。

 今後とも、これらの施策を通じまして、被災労働者の迅速な保護、これに全力で努めてまいりたいと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。

寺田政府参考人 ただいま、既存の制度の枠内での迅速な措置につきましては、厚生労働副大臣から御答弁いただいたところでございます。

 翻って、新しい枠組みにおける救済措置ということになろうかと存じますけれども、新しい枠組みにおける救済措置というためには、相当の検討の時間を要することと考えております。政府といたしましては、一刻も早く周辺住民等の救済を図るべく、ともかくスピード感を持った処理ということを考えておりまして、次期通常国会、それもできるだけ早い時期に法案を提出いたしたいと考えておるところでございます。

古屋(範)委員 ぜひとも、労働者そして患者の側に立ったきめ細やかな救済措置、新法施行までの間、よろしくお願いしたいと思います。

 次に、では、具体的な主な検討事項についてお伺いをしてまいります。

 前回の質問で、私は労災申請の時効の問題に言及いたしました。すなわち、労災請求期間というのが死後五年というふうに決められております。潜伏期間が長く、そもそもアスベストを吸ったという自覚がない、忘れているという患者さんが非常に多い、また職歴と疾患が結びにくい、そのために、労災申請をしないままに既に時効になっておるというケースが相次いでおります。例外規定を設けるなど、被害者救済への対応をお願いしたところでございます。

 その際、青木局長からも、労災保険法により規定されているために、個々人の御事情がある場合であっても、アスベストの疾病についてのみ運用の例外的取り扱いをするのは困難だ、そういう御答弁でございました。

 報道によりますと、全国の支援団体が把握したことし七月以降の相談の中で、約百件が時効であるということが判明したとございました。時効になった方々の救済措置につきまして、現在さらに検討が必要な状況になっていることは間違いございません。

 私も地元横須賀、横須賀市立うわまち病院で三十年間アスベスト関係の治療をされてきた医師にお話を聞きましたけれども、過去の人生を本当に詳細に細かに長い時間かけて聞いていくと、三十年間六十四人の患者さんを診ていて、中皮腫の中では六十二名までがアスベストの暴露を受けていたという調査結果も伺っております。

 さらに、検討されている救済新法では、アスベスト被害の特殊事情で、労災補償の時効になった休業補償また治療費については切り捨てるという方向性が報道で伝えられておりますけれども、治療費も含め、休業補償、家族らに、家計に非常に重くのしかかっているわけでございます。治療や労災認定時の厳しい現状を考え、被害者の要望を最大限尊重して結論を出していただきたいと思いますけれども、この点につきまして、中野副大臣にぜひ前向きな御答弁をお願い申し上げます。

中野副大臣 今お話しの時効によって権利を失った労働者の問題でございますが、これは、七月の審議の時点から大いに前進をしております。現在、九月二十九日の関係閣僚会議の申し合わせ、石綿による健康被害の救済に関する基本的枠組みというものがございまして、これに基づきまして、環境省等とともに検討している新たな法的措置におきまして、今よく皆さん方が新法とおっしゃっておりますが、現行の労災補償に準じた救済措置を講ずることとなっているところでございますので、どうかその点でこれからも御安心いただきながらも御指導を賜りたいと思います。

古屋(範)委員 一歩前進をしているところなのかなというふうには考えますけれども、ぜひ、この時効につきましては、さらなる前進をよろしくお願い申し上げます。

 次に、健康管理手帳制度について御確認を申し上げます。

 前回質問の際も、この件を質問いたしました。健康管理手帳交付の要件が非常に厳しい、必要な人に行き届くよう見直しをすべきと申し上げました。その際も青木局長から、最新の知見に基づいて必要な見直しは重要であり、専門家による調査研究を早急に行い、その結果に基づいて、健康管理手帳制度を含め健康管理のあり方について検討するという御答弁をいただいております。

 来年度予算の概算要求で、過去にアスベスト作業に従事した労働者の健康管理の充実強化といたしまして三・三億円が盛り込まれております。この中で、健康管理手帳の交付要件を見直すことを考えられていると思いますけれども、その検討状況につきまして厚生労働省にお伺いをいたします。

青木政府参考人 健康管理手帳の交付要件は、現在やっておりますものについては、平成七年に健康管理手帳交付対象業務等検討会というので検討していただいて、その報告書を踏まえまして、今、胸部に石綿による一定の所見があることを要件としているわけであります。

 しかし、現在のこういった要件を満たさなくても石綿関連疾患を発症する事例も見られるということもございますし、そういう意味で、最新の知見に基づき必要な見直しは行っていくというのが重要だということは、この前も申し上げましたとおりでございます。

 そういうことから、ことしの八月に既に研究班を立ち上げまして、労働者の胸部レントゲン写真を職業別、職種別に分析して、石綿暴露の指標となる胸膜プラークの有所見率を算出しまして、職業性石綿暴露のリスクについて調査研究をするということで今進めているところでございます。

 今年度中にはこの調査研究結果を取りまとめまして、その結果を踏まえまして、健康管理手帳の交付要件の見直しを含めまして、石綿作業従事者の健康管理のあり方について早急に検討したいというふうに思っております。

古屋(範)委員 今年度中ということでございますけれども、やはり多くの方々のアスベストに関する健康不安というものが広がっておりますし、また、さまざまな健康診断を受けるにつきましても、やはり費用のかかることでございます。ぜひ早急な対策をよろしくお願い申し上げたいというふうに思います。

 次に、労災が認められない工場周辺の住民、従業員の家族についての対応をお伺いしてまいります。

 労働者には労災が適用されるのに対して、現在では、その因果関係が立証されたとしても、周辺住民また家族、その健康被害については労災は当然認められない。治療費を補償するなどの救済制度というものもございません。一部企業におきましては、見舞金というような形で出しているところもございますが、こうした一般住民に対しては、大気汚染等の公害に適用されている公害健康被害の補償等に関する法律、公健法の適用をと要請をしてまいりましたが、現状では難しいというふうに判断をされております。

 そこで、検討されている救済新法では、この労災の適用にならない一般住民等への補償について、対象をどのように認定するのか、また幾ら給付をしていくのか、どのように考えていらっしゃるのか。そしてまた、大気汚染などの公害認定では、指定地域に一定期間住んでいた被害者が対象となっておりますが、アスベストの場合、例えば工場の出入り業者にさえも被害が及ぶようになったケースもありまして、補償対象を工場周辺に限定できないという場合もございます。

 そこで、この新法では、補償の対象地域の範囲を設定しない方向で検討されていると思いますが、この点につきまして環境省の御意見をお伺いいたします。

寺田政府参考人 お答え申し上げます。

 お尋ねの新法でございますけれども、九月二十九日に政府において取りまとめました石綿による健康被害の救済に関する基本的枠組みでございますけれども、まずこれは、基本的には、石綿による健康被害者をすき間なく救済する仕組みということを考えております。また、平均で三十八年という長い潜伏期間のある対象疾患、中皮腫、肺がんを考えておりますので、過去の暴露歴等を詳細に認定をすると申しますか、要件とするということは、すき間なくという観点からいっても、また実務上も甚だ困難なところがあろうかというふうに考えております。したがいまして、対象者の認定に当たりましては、石綿を原因とする疾病であることを証明する医学的所見があることを基本的な認定の要件とするということを考えております。

 なお、ただいま給付の内容についてもお尋ねがございましたけれども、他の救済制度とのバランスにも配慮しつつ、医療費の支給、これは自己負担分ということでございますけれども、その他療養手当、遺族一時金、葬祭料等を検討するということとされておるところでございます。

古屋(範)委員 ぜひ、まさに文字どおりすき間ない、そうしたあらゆるケースを想定しての新法であっていただきたいというふうに考えております。

 次にですけれども、新法では、居住地、職業を問わず、申請を受けて、今医師の知見ということがございました、医師の診断で認定するということでございますけれども、実際、判定をする医師の確保ということが大きな問題ではないかと思っております。アスベストの原因でがん、そのがんについても見たこともない医師がほとんどである、アスベスト被害を正しく診断できる専門医、全国に五十人いるかどうかであると言われております。

 アスベストによる疾患は、中皮腫だけではなくて、肺がんの方が多いとも言われておりますけれども、アスベストが原因なのに、たばこによる肺がんと診断された患者が数多くいるということも考えられます。このように、肺がんについては、その原因がたばこなのかアスベストなのか、またはそれ以外なのか、その見きわめが難しく、経験のない医師では見落とす可能性が大いにあるわけでございます。

 人材育成はこれからと思われますが、これまでの反省を踏まえ、医療従事者にはアスベストによる疾患の理解を深めるための研修などを各地で行う必要があると考えますが、いかがでございましょうか。このアスベストを的確に診断できる医師の確保につきまして、厚生労働省にお伺いいたします。

青木政府参考人 今委員が御指摘になりましたように、アスベストによる中皮腫について専門医という方がなかなか少ないというのは確かだと思います。そういう意味で、まさに、おっしゃったように、研修等々、十分、できることはやっていく必要があるだろうというふうに思っております。

 今、独立行政法人労働者健康福祉機構におきまして、九月一日から、アスベスト関連疾患の診断、治療の中核となる医療機関として、診断、治療体制が整備されています二十二の労災病院にアスベスト疾患センターを設置いたしました。ここでアスベスト関連疾患についての健康相談、診断、治療、それから症例の収集、それから労災指定医療機関等の地域医療機関や産業医、こういった方々の医療関係者からの相談対応ということもやっております。

 国におきましても、アスベスト疾患センターがこのような取り組みを行っているということも踏まえまして、労災病院が有するアスベスト関連疾患に関する医療技術を一般の医療関係者へ広く普及するための研修事業を行うこととしたいというふうに思っております。

古屋(範)委員 ぜひ、アスベスト疾患センターが核となりまして、多くの医師にこうしたアスベスト疾患についての周知徹底をお願いいたしたいと思っております。

 次に、この枠組みの中で検討されておりますアスベスト被害の補償のための給付金の財源確保についてお伺いしてまいります。

 公害への補償の基本的な考え方は、まず原因企業による補償金の負担が原則であります。しかし、このアスベストに関しましては、被害と企業活動との因果関係の立証が難しいため、原因企業を特定しにくい、また既に倒産をした企業への対応など難しい問題があると思っております。また、アスベスト被害の給付金も相当な額になるということが予想されます。その財源確保が大きな問題ではないかと思います。

 その給付額、また国と業者の財源負担をそれぞれどのようにしていくのか、そして、アスベスト被害に関係する事業者に費用負担を求めることはもちろん、関連企業等によるアスベスト基金など、救済のための新たな基金の創設について、ぜひ被害者の立場に立って決めていただきたい、このことをお願い申し上げますけれども、この給付金の財源確保についてどのようにお考えか、環境省にお伺いいたします。

寺田政府参考人 お答えいたします。

 お尋ねのございました給付金の財源でございますけれども、基本的枠組みにおきましては、まず、石綿による健康被害に関係する事業者に費用負担を求めるということとしておりますけれども、また同時に、公費負担のあり方についても検討をするということとされておりまして、現在、関係省庁の緊密な連携のもとに、スピード感を持って検討を進めておるというところでございます。

古屋(範)委員 次に、建築解体現場の点について質問してまいります。

 過去にアスベストを使用した建物、かなり老朽化をいたしまして、二〇一〇年ごろにこの解体ラッシュが来る、その時期を迎えているわけでございますが、この解体建築物からアスベストが飛散するのではないか、このようなことが大きな問題となっております。それによりまして、さらに解体時にアスベストが飛散をするのではないかということが懸念をされております。

 厚生労働省、本年七月に石綿障害予防規則を施行して、湿潤化、また隔離、立入禁止などの具体的な方法を定めるなど、解体者への飛散の防止策をとっておられます。多額の費用がかかるところから、例えば、悪質な建物所有者、解体業者、規則逃れ、またそういうことを知らなかった、そういう規則違反が懸念をされております。

 そこで、厚生労働省は事業主また現場の従業員に研修を行うなど、この徹底を図って、規則を守るよう強く働きかけていく必要があると思っております。そして、必要に応じて強化また見直しに取り組むべきと考えます。この建築物の解体現場からのアスベスト飛散防止についての御見解をお伺いいたします。

青木政府参考人 今お触れになりましたように、アスベストを使用した建築物の解体ラッシュが予想されるということであります。確かに、おっしゃるとおり、その際の石綿の飛散の防止、暴露の防止ということは極めて重要だと思っております。

 今委員も御指摘になりましたように、石綿障害予防規則をことしの七月に施行いたしまして、吹きつけ石綿の除去作業場所を隔離するとか、あるいは保温材等に使われている場合の除去作業時の表示をするとか、あるいは実際に作業する際には湿潤化をして発じんの抑制をするとか、あるいは現実に作業をする労働者の方には防じんマスクを使用するというような暴露防止対策を義務づけております。こういったことについては、当然のことながら、こういったものをよく承知していただくということがまず第一歩でありますので、そういう意味では、業界なり、あるいは私どもの個別の指導なり、そういったところでも十分周知をしていくことが必要だと思いますし、やっていきたいというふうに思っております。

 特に、発じんの大きい吹きつけ石綿の除去作業につきましては、具体的な作業内容について図面等を添えて事前に労働基準監督署長に工事計画を提出させるということになっております。これらの計画に記載された暴露防止対策について厳正に審査を行いまして、必要に応じまして、事業者に対して、工事差しとめ命令とか、あるいは計画変更命令をするということにいたしまして、計画の適正化を図らせるようにするということになっております。また、現実に解体工事が行われている段階においては、現場に立ち入りまして、個別に監督指導等行って厳正に対処しております。

 今後とも、こういったことによりまして、周知、履行確保、そういったことを通じて、暴露防止、健康被害の防止、そういった対策の徹底を図っていきたいというふうに思っております。

古屋(範)委員 先日の厚生労働省、文部科学省のアスベスト使用建物の中間調査取りまとめをお聞きいたしまして私も非常に驚きましたけれども、飛散のおそれのある病院三百四十一カ所、また百四十四の公立小中学校でも飛散のおそれがあるということでございます。

 国民の不安を解消するために、政府、自治体からの丁寧な情報提供、これは不可欠でございます。問い合わせの相談窓口の整備、またアスベストの健康相談を積極的に受け付けるなど、体制を強化すべきであると考えます。

 最後に、一言、中野副大臣の御決意を伺い、質問を終わりにさせていただきます。

中野副大臣 古屋議員、決意ということでございますが、アスベスト対策といたしまして、現在、被害者を救済する仕組みを構築するというようなことはもちろんでございますが、それと一緒に、国民の皆様に安心していただくために、アスベスト製品はできるだけ急いで全面禁止をしたいと考えております。また、工場、倉庫などに加えまして、一般の住宅建材などにもアスベストが多く使われているところでございますから、以前から、今答弁もございましたけれども、解体作業での飛散防止対策を義務づけていたところでございます。

 今後、被害の拡大防止はもとより、相談窓口の設置など、できる限りの努力をいたしまして、国民の不安の解消に向けて厚生労働省挙げて全力で取り組んでまいりたいと思います。

古屋(範)委員 以上で質問を終わりにいたします。ありがとうございました。

鴨下委員長 次に、五島正規君。

五島委員 民主党の五島でございます。

 大臣、大変お疲れでございますが、前回に引き続きましてアスベスト問題について、私の感覚からいえば、大変対策の方針がおくれているというふうに思っております。そういう意味で、またきょうも一時間半、少しお伺いをしていきたいと思っております。

 まず、一番最初に大臣にお伺いしたいのは、この前も少し他の議員にお答えになったわけですが、今日のアスベスト問題の現状、これをどのように認識しておられるのか、そして、今後対応すべき基本課題は何であると考えているのかということについてお伺いしたいわけでございます。

 これは、当然厚生労働省としての立場でのお話が中心になるかと思いますが、基本的に、やはり閣僚会議で御議論のあっておりますように、この問題は省庁縦割りではやっていけません。これまでの問題を複雑にしているのも、やはり日本の省庁縦割りの中においてこういう問題が各省庁ごとにさまざま分かれてきたということも大きく原因していると思っております。

 そういう意味でお伺いしたいわけですが、まず最初に、前回も申し上げましたが、今、アスベストの被害が、日の目を見てきたと言うのはおかしいわけですが、表に出てきた。それは間違いなくクボタの事件を中心としてでございますが、ここで問題になっておる労働者あるいは御家族、工場周辺の住民の方の被害というのは、少なくとも一九七〇年以前のアスベストの暴露によっての被害がその大半であると考えてまず間違いないであろう。

 そして、その時期は日本においてアスベストの輸入がまだピークに達する前でございまして、せいぜい十万トンレベルの国内への輸入の状態でございました。そして、その時期におけるアスベストの製材は、やはり断熱、遮音といったようなものが中心でございました。セメント管で利用されてきたというのは、これは戦後ずっとそうなんですが、余りそれほどアスベストが世の中にあふれている時代ではない、その時期において起こった事件が今日あらわれてきているのがクボタの事件だと思っています。

 しかし、それから後、厳密に言えば六九年ぐらいからですが、日本においてはアスベストの輸入量は急激にふえてまいります。そして、大体九〇年、九一年ぐらいまで、まあ年によって若干のでこぼこはありますが、ほぼ年間三十万トン前後のアスベストの輸入が続いてくる。いわゆるアスベストのピーク時が来るわけでございまして、その時期に輸入されたアスベスト材というのはほとんど九割以上が建材に使われてきたというふうに言われています。

 したがいまして、アスベストの被害というものが今後増加するのか増加しないのかということについて言うとすれば、この七〇年から八〇年にかけて特化則その他において厚生労働省は一定の基準を出してきた。それが今日の水準からいえば非常に甘いと思わざるを得ないわけですが、それが果たして効果を発揮するのかどうか、発揮しないとすれば、日本は向こう三十年間大変なことになる。

 一昨年の産業衛生学会においての数値からいいますと、中皮腫とアスベストが原因の肺がんの総計というのは、やはり少なく見積もって年間二万、多い人は六万という見積もりをしている。今日、国の方は大体中皮腫の発生が年間せいぜい千とかそれぐらいでおさまるという期待を持った数値をおっしゃっているけれども、そのことには余り科学的根拠があるわけではありません。また、最近になってのいろいろな学者の発言を見ましても、中皮腫の発生と肺がんの発生比率というのは、大体中皮腫の二倍ぐらい、少なく見積もる人で一・五倍、多く見積もる人で三倍というふうな数字を言っています。そういうことを考えますと、今後、日本においては大変な被害が出てくるだろうということも予想した対策が必要だと思います。

 そうした状況は共通の事実として恐らく認識できるのだと思うのですが、そうしたことを踏まえた上で、今日、一体現状をどう考えて、今後の基本政策は何とお考えになっているのか、その点、まず大臣のお考えをお伺いしたいと思います。

尾辻国務大臣 アスベスト問題に大変長い間御関心をお持ちで取り組んでこられた五島先生には、先日もいろいろ御指導をいただきましたけれども、きょうもよろしくお願いを申し上げます。

 まず、ただいまの御質問についてお答えをいたします。

 今お話しいただきましたように、非常に多くの方々が被害に遭って亡くなっておりますし、また苦しんでおられる方も極めて多い数おられます。実は、先日、私も被害者の方にもお目にかかりました。大変深刻なお話を承ったところでございます。今後、私どもとしては、引き続き考え得る対策を進めて、国民の皆様方の不安解消、被害拡大の防止、被害者をすき間なく救済する仕組みの構築にスピード感を持って取り組んでいかなければならないと考えております。

 先生のお尋ねの趣旨に必ずしも沿っておるのかなと思いながら、まずお答え申し上げますことは、被害拡大の防止、これはもちろんでありますけれども、まず私どもが今やるべきことは救済に全力を挙げるべき、こういうふうに考えておるということを申し上げるところでございます。

五島委員 救済の問題は当たり前なんですが、現在発生した、そういう被害を受けられた方、お亡くなりになった方、そういう人たちに対する対策をどうするかという問題につきましては、既に前国会、民主党は労災保険法の改正案として、時効を過ぎた人についても労災の認定をしろという法案を出しました。解散によって審議されないまま残念な結果になりましたが、その後の厚労省の対応を見ていますと、大体その方向に行くのかなという状況でございます。

 そういう意味では、現在起こっているそういう問題につきましては早急な対策をとらなければいけないことは当たり前でございますが、やはりこれからの問題を大きく分けますと、これから三十年間、仮に今日現在でアスベストの使用を一切禁止しても、製造を禁止しても、向こう三十年間は間違いなく、四十年近い数字はアスベストの被害が続いていきます。それは製造と、そして製造の過程において御家族や工場の塀を乗り越えて飛び出していったもの、あるいは、アスベスト製材を使った結果、いわゆる公害として広がったアスベストによる被害、そういうものによって続いていくでしょう。したがって、これから向こう三十年、四十年という期間、この被害者の救済と、そして被害者に対する健康管理をどうしていくのか。

 そして、三つ目の問題として、特に中皮腫に対して医学は今まだ適切な治療手段を持っておりません。外国の抗がん剤を使えば平均余命で三カ月ぐらいは延びると言われています。少しでも一日でも早く、せめてそれでも使えるようにしていただきたいと思っておりますが、まだ医学はこの中皮腫に対してどういうふうに勝っていくかという技術開発ができていません。

 あるいは、中皮腫の発生の機序そのものも、アスベストそのものが発がん物質としてなるのか、あるいはアスベストの持っている性格そのものによって、例えばそれにウイルスが関与して中皮腫になっていくのか、あるいはそういう自己免疫的な反応もあってなっていくのか、そこもまだはっきりしていない。

 とすれば、三つ目の大事なことは、この治療、アスベストの病理的状況の解明と治療の開発です。それをどういうふうにしていくのか、これが過去のアスベスト対策に対する厚労省の最大の責任なんです。

 そして、もう一つ大きいことは、大体アスベストの製材を使って、もうそれを廃棄しなければいけない時代に入ってきました。昭和四十年代につくられた建物の中には大量のアスベスト含有建材が入っています。それは決して飛散性、非飛散性という言葉の魔術でもってだませるものではありません。今後、これの処理を一つ間違えますと、今度こそは公害としてこれは広がってまいります。公害だから環境省の問題だというふうな縦割りはもう許されない。

 例えば、厚生労働省は、このアスベストの製品をつくる際、あるいは吹きつけ作業をする際に対する環境基準を持っています。しかし、アスベストを使っている建材を解体するときに、どれだけの繊維が出るか、粉じんが出ていくのか。測定によると、破砕の方法によって随分違います。破砕の方法によっては、非常に高濃度のアスベストの飛散がある。さらには、これをどうするのか。まさか、例えばそこの建物を解体するときに、その現場で減量処理をするということをすれば、周辺にアスベストは飛び散りますね。だからそれはさせられないんでしょう。そうしますと、それをそのまま最終処理場へ持っていって、全部減量しないまま埋め立てるのか、これも現実に合いません。

 恐らく中間処理施設に運んで、そこで処理するのでしょう。では、中間処理施設の中における作業基準はありますか。あるいは、アスベスト廃材を運ぶ際のそういう作業基準をお持ちですか。持っておられませんよね。そういう細かなところをどうしていって公害を防止するのかという問題をやはり労働の面からも厚労省はやっていかなければいけないはずです。公害防止のところの問題はいろいろとありますけれども、これは環境もかかわりますし、この前も環境委員会で質問をさせていただきましたのでこの辺ぐらいにしますが。

 そして、三つ目の大きな問題は、トータルなアスベスト対策に対するコストはどうするんですかという問題です。

 労働者が職場において暴露された結果、それが明確な場合に労災保険を使う、これは現在の法律のシステムにおいて合理性があります。しかし、それ以外の、いわゆるアスベスト作業に従事していないけれどもさまざまなアスベストの環境のもとにおいて吸入した多くの労働者、例えば、鉄骨構造や鉄筋構造の床は鉄板のデッキでつくられていて、その裏側には、後ほどこの辺についても申し上げますが、恐らく一九八八年ぐらいまでは、アスベストの吹きつけ、ないしはアスベスト含有ロックウールの吹きつけをやってきました。そして、その階と階の間の狭いところに配線や配管がされている、そこへ潜り込んで仕事をしたという労働者もたくさんいる。しかし、常時そこで仕事をするわけではありません。そういうふうな環境で仕事をしたという方もあるでしょう。あるいは、アスベストが吹きつけられた小屋の中で、吹きつけ作業ではないさまざまな仕事をしたという方もおられるでしょう。

 私は、飛散性アスベストということを気にしたときに、後ほど経産省にもお伺いしますけれども、一番問題だと思っているのは、いわゆる波形スレートです。波形スレートというのは、去年までノンアスの波形スレートはJISの規格にのりませんでした。それまでは、JIS規格といえば全部アスベストを入れていたわけです。それは新しい間は非飛散性です。ところが、多くは屋根や、そういうところにさらされて、しかも割と経年的な劣化が激しい。

 きょう、多くの議員の皆さん方、皆さん方のお地元にも工場や、あるいは農村へ行けば、農協の出荷場、選果場、農業小屋、作業小屋、ごらんになってください。波板でふいた小屋がたくさんあるはずです。その天井あるいは屋根の部分、見てください。けば立っているように、遠くから見たらまるで芝が生えたようになっている波板を見られたことがあると思います。あれは全部劣化して、アスベストが吹っ飛んでロックウールが立ち上がってなっているんですよ。飛散しているんです。そして、その波板の小屋の中でお仕事している人で、やはり現実にアスベストの疑いを持たれている人がいる。

 さまざまな経過の中でこれだけの時間、日本はアスベストを使ってきました。被害があります。そういう人々に対してどのように補償していくのか。あるいは、先ほども御意見出ておりましたけれども、アスベストを使ってきた、吹きつけてきた、そういうふうな建築基準法どおり建物をつくりました。そしてJISの規格の製品だけで建物を建ててきました。しかし、これはもう危ないですねと言われた。除去しましょう。膨大なお金が要ります。これはユーザーがすべて負担するんですか、それに対してはどう処理するんですかということ。そういうことも含めて考えると、膨大なお金がやはり必要になってきます。

 今、アメリカでは、先ほどもおっしゃっておりましたが、約十五兆円のファンドをつくっています。アメリカは日本の三倍のアスベストを使いました。そして日本より十五年早く使用のピークを迎えました。下手をすると、日本もあと十五年、二十年しますと、アメリカの使用量の三分の一ですから、三分の一、アメリカと同じような水準で補償やそういうものをやっていくとすれば五兆円のファンドが必要になってくるんです。ちょっと考えられないお金ですが、五兆円のファンドが必要になってくる。こういう問題についてどうするのかということを今検討しておかなければいけない時期に入ってきていると思います。その辺についてどうお考えか、お伺いしたいと思います。

尾辻国務大臣 かかって、今お話しいただきましたように、昭和四十七年、一九七二年、私どもがILO、WHOの指摘を受けてそれに対する対応を始めた、その対応がきちっと効果を生んだのかどうか、このことだと思います。

 そのことは、これはまだ答えが出ていないわけでございますから、申し上げておりますように、検証というふうなことでいっても、今後の検証をしっかりまたやらなきゃならないと思っておりますけれども、今先生のお話しいただいた視点、すなわちそれに対する財政的なところでの準備をどうするかということは、また、この答えがどう出てくるか、それにもかかると思いますので、今私どもはそれなりの対応をした、そしてその対応の成果というのは出てくると思っておりますので、今先生が言われているほどの数字にはならないのではないかとは思っております。

 しかし、御指摘のような準備をすることは大変重要なことだと思っておりまして、私どもが今度新法をつくるに当たってもそのことをまず考えなきゃいけないわけでございますので、今後十分なる検討をさせていただく事項だというふうに考えております。きょうの御指摘も、私どもは参考にさせていただかなきゃならぬというふうに考えておるところでございます。

五島委員 期待の問題ではなくて、あるいは予測の問題ではなくて、現実に、日本の場合、例えば、昭和五十三年に石綿による健康障害に関する専門家会議がかなり膨大な報告を出しております。その中で、健康管理その他の問題についても既に言っておりますし、それから、中皮腫登録制ということまで言っているわけです。その時代において既に中皮腫の発生については、石綿繊維の種類にかかわらず、長さと大きさと投与量の間でいわゆるドーズレスポンスが存在する、ただし、それは時間的経過が多いので肺がんほどは明確でないというような話。だから、こうしたものに対しては登録制が必要だというふうな勧告もされています。

 また、中央労災防においても、これと同じ石綿肺合併の肺がんあるいは悪性中皮腫の発生状況ということについて報告がされております。これについては、国立療養所近畿中央病院におられた、じん肺の専門家でございました瀬良先生のデータをもとにして、百二十二名の人のうち二〇%に肺がん発生、そして悪性中皮腫が認められたというふうなことが、これは昭和五十七年のデータですが、昭和五十七年のデータにおいて、既にこれだけの被害者が出ていますよという報告が出ているわけなんです。

 それに伴った措置がどうとられたのかということが問題なんですが、私は、厚生労働省のおとりになった実効のある対応というのは、例の特化則の中でお決めになったことぐらいしかこの時代にはなかったんだろうと。一つは、特化則で一九七二年に制定し、七五年に二千以下にするという改正がされております。したがって、その七二年、七五年のいわゆる特定化学物質障害予防規則、これのことしか現実にはなかった。これは、暴露繊維の問題と排気の問題、作業するときに送気マスクを使いなさいというふうな内容が中心であったと記憶しています。

 問題は、こうした特化則を出されたんですから、一体どれぐらいこの特化則は守られているかどうか、立ち入って調査をされたんでしょうか。私は、そこのところ、こういう規則改正されて規則をやっていって、本当に、これは旧労働省のときなんですが、恨みつらみを言うつもりはないんだけれども、意外と基準だけは、その時代のコンセンサスの中で一番甘い基準でやったとしても、まあほかの学者で言っている人もあるという基準を設けられる。しかし、それが守られているかどうかという点検はほとんどされていない。アスベストの問題もそうだったんじゃないですか。各基準監督署に対して通達されても、当時、各基準監督署で石綿の粉じん中の暴露量を系統的にはかってきた監督署は一体どれだけあったでしょうか。

 もっと言えば、これは送気マスクです。今でこそ送気マスクはかなり軽量化したものがありますが、私はその当時、送気マスクと称するものを、高知になくて、方々尋ね歩いて見に行きました。あれは潜函夫でしたよね、あの時代、あのときの送気マスク。あんなものつけて仕事しているのは見たことがない。それは皆さん方も、まあ皆さん方というか皆さん方の先輩もわかっていた。だけれども、都合上、送気マスクをつけろということにしたのではなかったんですか。実態としては、そんなものつけて仕事していないということを知っておられたんじゃないですか。その辺はどうなんですか、お伺いします。

青木政府参考人 幾つか具体的にお話がございました。

 一つ、例えば除去あるいは運搬、廃棄をする、そういった場合の労働者の作業標準は決めていないではないかというお話でございました。

 確かに、そういったところに着目して、とりわけそこに着目をしているというようなことは特段ないわけでありますが、ただ、それにつきましても、石綿廃棄物が発じんの状態にあるときは石綿取り扱い作業に当たるということでありますので、作業主任者の選任とかあるいは石綿則に基づく規定が適用されるということでございます。

 しかし、今申し上げましたように、この前の改正でも、解体作業がたくさん出てくるということで、解体に着目していろいろな規則をつくったり、あるいは作業周知をしたりということに対しましては、そういうことをしていなかったわけでありますので、そういう具体的な作業手順等を規定するというようなものはありませんので、今後そういったものもマニュアルを作成するなど、検討していきたいというふうに思っております。

 それから、いろいろな補償をする、あるいは救済をするといっても相当の額がかかるではないかということであります。いろいろな対策を講じてきたけれども、それは見方が甘いというお話もございました。

 私どもは、大臣からもお話がございましたように、ほぼ使用量が急増していった時期ということもございますけれども、がん原性が認知されて以来の対策を講じたことによって一定の効果が出てくるだろうというふうに思っております。しかし、これは再三申し上げておりますように、実際にはもう少し、十年たってから実際にそういった検証をきちんとする必要があるだろうというふうに思っております。そういったときに効果が出てくるというふうに思っております。

 しかし、今の状況を見ますと、御指摘になりましたけれども、過去のそういったがん原性に着目する以前の人たちの暴露による健康被害の状況というのが、現にあらわれてきているわけであります。そういった状況からしますと、最近の趨勢にかんがみますと、今後数年間はそういった被害というのが増加してくるのは現実にあると思いますけれども、今ほど申し上げましたように、その後の対策というものに一定の効果があるのではないかというふうに思っているところであります。

 また、送気マスクのお話もございました。これは確かに、吹きつけをする特例として、厳しい管理を条件に作業を認めるということでありまして、私どもとしては、石綿の使用を把握した場合には、そういった作業については暴露防止対策についてきちんと指導するように都道府県労働基準局長に対して指示してきたところであります。そういうことで、把握をした場合には、適切に指導がなされてきたものと考えておるところでございます。

    〔委員長退席、石崎委員長代理着席〕

五島委員 何らかの規則をつくってそれを関係部署に通達し、そして事業主もそれは知っているはずだ、だから守られたはずだ。これは常に官僚の言う言い方なんですね。

 さっき大臣が言われたように、これから検証が必要です。検証の中ではそれが一番大事なんですよ。例えばクボタの問題にしても、あるいはもっと言えば、この間高松でありました、アスベスト管の業者さんの、だれがやったか知らないけれども、大量の海洋投棄の問題とか、それは確かに通達でいえば違法行為なんですよ。だけれども、じゃ、それぞれ基準局がある中で、アスベストを使った製材をやっているところに対して一体どれぐらい指導に入り、そして、そこにおける作業濃度が基準値に合っているかどうかというのはどれぐらいの頻度で調べたんだ。恐らく、一つの事業所に対して毎年一回でも調べているというのはまず少ないんだ、まずやっていないんだと思います。

 業者の方に調べろと言ったかもわからない。そうでなければ、なぜアスベスト作業をした作業服を自宅に持って帰って洗濯するんですか。そんなことをしていたということが今になってわかったんでしょう。もし監督署が入っていたら、これはアスベストに限りません、いわゆる特化則で規定される有害物質が付着している可能性のある作業服を自宅に持って帰る、そんなもの認めていないですよね。だけれども、そこは公然とやられていた。やられていることを監督署が掌握していなかったわけでしょう。

 だから、通達はありました、そして、それは守られているはずですというふうなことを言うから、実際にあの潜函夫のような送気マスクをつけて仕事したことのない人が、そこの現場で働く上において、どうすれば今の技術で暴露せずに済むかと考えれば、ああいうばかげた方針が出てくるんです。実際にあんなもの、潜函夫みたいなのをつけて吹きつけ作業やアスベストの濃厚に暴露されている中で仕事をするといったら、何分間が限度でしょうかね。昔は大変問題があったと思いますよ。

 そんなことを全然考えないままに、何か責任逃れみたいな形で規則だけ出した。そして、その規則があったはずだ、規則を出しているから官僚は悪くない、守らなかった事業主と労働者が悪いんだという立場で過去を点検してみても、何も生まれてこない。

 大臣、この辺、やはり特化則ができて以来のそうした行政の対応のありよう、指導のありよう、その辺も含めて、ぜひ点検の中に入れていただきたい。お願いできますか。

尾辻国務大臣 検証いたします際は、そうした点、十分含めて検証しなきゃいけないというふうに考えております。

五島委員 そこで、現状の認識についての議論はきょうはこれぐらいにしておきまして、いろいろと言いたいことはいっぱいありますが、実は、きょう大臣にぜひお願いをしたいと思っている点がございます。

 今回、現状の中において、民主党としては、アスベスト対策の基本的なスキームをつくる法案をこの国会に提案したいと思っております。これが総合的推進に関する法律案という内容でございまして、我が党としては、本日中にもこれについて法案登録をさせていただきたいと思っております。そして、これはあくまで全体的なものを進めていく上での法案でございます。

 もう一つ、ノンアスベスト社会をつくるということで、「アスベスト対策に関する政策提言・中間とりまとめ」というものをまとめました。これは裏腹な関係でございまして、各論部分をどのような形で実現していくか。これまでの法律や政省令の点検も含めてこれからやっていきたいし、新たな提案もしていきたいということでまとめた内容でございます。

 この我々の主張について、大臣の、あるいは厚労省、あるいはきょうお見えになっておられます経産省あるいは国土交通省の御意見も聞いていきたいと思っております。

 これは実は、経過から言いますと、一九九二年には、我々は、アスベスト製材を規制する、そういう法案を出そうとしました。出そうとしたときの経過から言いますと、実は、その九二年の年末の段階において拘禁四法が同時に上がってまいりまして、自民党さんから、拘禁四法を認めないとアスベスト規制法案を認めないという御意見があり、何かわけのわからない取引するかしないかでもめたあげく、議運において廃案となりました。そして、翌年この法案を出そうとしたときには、きょうもお見えだと思いますが、当時の通産省の窯業建材課の皆さんとアスベスト協会の方々が一緒になって大変な反対運動をされたと覚えています。

 そのようなことが絶対に今回ないようにお願いしたい、一日も早くこの審議をこの国会においてもう始めていただきたいということを最初にお願いした上で、昨日、大臣のお手元にお届けしておきましたので、これについての御意見をお伺いしたいと思います。

 まず、この石綿対策を進めていく上においては、本当に各省庁が入り組んでいます。だから、現在においても閣僚会議を開かざるを得なかった。そういうふうな状態でございますし、それから、過去の縦割りの行政がそれと複雑に絡んだ省益や、それぞれの関連する業界の利益というふうな問題も絡みまして、大変ややこしい問題が常に起こってまいります。

 私たちは、内閣総理大臣を長とするアスベスト対策会議というものを設置すべきだ、そこで一本化した対策ができるような法案が必要だし、そういう仕組みが必要だと考えておりますが、大臣、これはやはり厚生労働省、環境省、それぞれ関係部局ばらばらでやる方がいいのか。このアスベスト問題については、一つ間違えると、大臣と私とでは将来予測についての期待値に若干の差があるかもわかりませんが、やはり将来かなり長期にわたって、コストも含め、行政的には負担の要ることでございます。

 この点について、内閣総理大臣を長とする、そうしたアスベスト対策会議というものをつくるということについてはどういうふうにお考えか、お伺いしたいと思います。

尾辻国務大臣 総理大臣を長とするのがいいのか、あるいは官房長官になるのか、今私どもも関係閣僚会議はつくっておりますけれども、いずれにいたしましても、各省庁の縦割りではなくて、政府を挙げてきっちり取り組まなきゃいけないという認識においては、全く同じように考えております。

五島委員 そして、そこにおいてやらなければいけないことは、現在発症した大変悲惨な患者さん、御家族だけの問題じゃなくて、やはりアスベストによる中皮腫や肺がんの発生におびえている、アスベストに暴露した労働者あるいは御家族、あるいはその危険性のあった一般国民の方々、その方々に対する健康管理あるいは治療、補償といったものを、そこにおいて包括的にやっていくのと同時に、もう一つは、先ほどからも繰り返しておりますが、新たなアスベスト暴露、すなわち解体その他に伴うところの暴露によっての新たな被害を出さない。今からそういうことが十四年、十五年続いて、それからさらに四十年、五十年、六十年後にそういった環境暴露、公害暴露によって新たな被害を出していかない。そういうふうなことを含めても、やはり本当に長期にわたる対策をそこで検討しなければいけないというふうに考えるわけですが、どうでございましょうか。

尾辻国務大臣 まずは、私ども、新法をつくろうといたしております。しかし、これは救済ということでどうするかということでございますが、きょうも先生から御指摘いただいておりますように、今後の解体作業などがあります。そうしたことについて、今後被害を出さないということについてどう取り組むかということについても、これはやはり省庁の縦割りの中ですき間をつくってはまずいわけでございまして、そういうことに対する反省を私どもは常にいたしておるところでございますから、当然そうしたことについても政府一体となって取り組むべきであるというふうに考えております。

五島委員 そして、もう一つ今すぐできることは、やはりアスベストの早期の全面禁止だろうと思うわけですね。私は二〇〇七年までにアスベストは全面禁止すべきだろうと思っております。ただし、ポジティブリストで一部の製品についてのみ、その代替品ができるまで猶予するということはあり得るんだろう。現状において代替化が進んでいないと認められるのは、やはり原発のジョイントとか化学プラントのジョイントとか、ごく一部のものに限定される。それ以外のものについては、これは在庫品も含めて製造、販売、あるいはアスベスト製品の別の部品への使用ですね、例えばブレーキに使用するとかそういうふうなもの、そういうふうなことをすべて禁止するとともに、アスベストはもとより、アスベスト製品そのものの国外からの輸入禁止というものが必要なんだろう。

 もちろん、ポジティブリストとして認める以上は、そのジョイントに必要になる石綿布を特定の厳しい条件下においてつくるということは、それはやむを得ないとしても、基本的にポジティブリストとされたものについても代替化されれば速やかに禁止していく。それ以外のものについてはやはり二〇〇七年までに禁止していくという方向をまずは打ち立てるべきではないかと思うわけですが、いかがでございますか。

尾辻国務大臣 民主党がお出しになりましたノンアスベスト社会をつくるというこの取りまとめ、政策提言でございますけれども、私も見せていただきました。そして、今先生は、ここのアスベストの早期全面禁止というところについてお話をいただいております。

 このことに関して申し上げますと、私どもも全く同じように考えておるというふうに申し上げていいと思います。特に、ポジティブリスト方式ということを言っておられますが、これについても私どももこの方式がいいと考えております。あとはもういつ全面禁止するかでございまして、私どもは平成十八年度中にも全面禁止したいと今考えておるところでございます。

五島委員 十八年までか十八年度中かという若干のずれはありますが、ポジティブリストということでもって全面禁止に踏み切るというところで同意いただけるということは非常にありがたいと思っております。

 次に、非常に厄介な問題で、アスベスト対策の財源の問題なんですね、これをどうするか。これは、やはり国と事業者のファンドでやるしかないんだろうなと私は思っております。現状の、起こってきている被害者についてのみ言えば、極端に言えば労災保険の特例と公健法の若干の見直しでカバーできる程度です。

 しかし、今後の問題を考えた場合は、そうはいかないだろうというふうに思います。本当に労災保険の適用だけで、それの拡大というもので限度なくやっていけるのかどうか。今は労災の時効切れの問題です。しかし、労災の時効切れの問題ではなくて、例えば中皮腫について言えば、先ほどもお答えがあったように、まさに中皮腫というのは、アスベストに関係していないよという立証は非常に例外的な場合、可能である。これは日本ではほとんどないんだろうと思いますが、トルコあたりの鉱物なんかにおいても起こると言われておりますので、そういうふうな例外的な場合を除きますと、中皮腫になれば何らかの形でアスベストと関係しているということを疑われる。疑われるというよりも、そういうふうに診断してもいいんだろうと思います。

 問題は、その場合、アスベストがいわゆる業務遂行性、起因性なのかどうか。これは証明のしようがありません。今ほどアスベストがあふれ返っているときに、全くの正常なこの状態で、ここにいる議員も一日に千本以上のアスベストを吸っていますよね、今、日本では。そういう状況の中においてアスベストの暴露が業務遂行性か起因性かというのは、極めて狭い、アスベスト製材を扱っていたということに限定するのなら、それはいいんですよ。しかし、作業環境においてアスベストに暴露したというところまで広げた途端に、データがないわけですから、どうしようもなくなってくる。本当に労災保険の拡大を続けることによって、これの大半をカバーできるとお考えなのかどうか。

 あるいは公健法。公健法というのは非常に地域限定型ですよね。これは環境省の管轄でしょうから、きょうここで基準局長に聞いてもしようがないのかもわかりませんが、恐らく今のクボタの周辺において起こってきているあのアスベストの地域の被害者は、公健法で見ていくということについて、その前提としては余り矛盾がないんだと思います。

 しかし、それが本当にそういうアスベスト吹きつけで建てられた建物の中で自営業をやっておられた人だとか事務をやっておられた人たちに中皮腫が起こった場合、アスベストの暴露によって起こったということは証明できたとしても、それは断定できたとしても、それが業務の遂行の結果なのかどうかというのは非常に難しい話になるはずですね。そういう意味においては、これは何らかの特別立法をここで設けないとだめなんだろうと思うわけですが、その辺についてはどうお考えでしょうか。

青木政府参考人 今委員が御指摘になったような問題については、おっしゃるとおり大変難しい問題だというふうに思っています。

 労災保険制度は、これはあくまでもお話がありましたように事業主の災害補償ということでありますので、業務遂行性、こういったことによって認定の可否ということになってくるわけであります。その点は、いろいろな状況いろいろな資料をもとに、本来認定されるべきものは認定できるように、運用等でも絶えずいろいろな見直し等をしてきているわけであります。しかし、ここの業務起因性とか遂行性とかそういったものを飛び越えるということは、これはやはり制度上できませんので、そういう意味では、私どもは、そういった業務上の災害については労働災害保険、労災保険でやっていこうと今考えているところであります。

 ただ、そういった点、非常に難しいものにつきまして、今新法で救済をしようと考えておりますものは、一つには、補償法ということでありますと、そういった因果関係をきっちりしていかないと理屈が通りませんのでそういうことでありますが、救済は、そういった被害が現実に出ているということに着目をして救済をしようということでありますから、そういう意味で、労災で補償を受けられないで現に救済を求めておられる方については、いわばすき間のない形で救える者は救っていこうということで、今その新法の内容の検討をしているということでございます。

五島委員 半分正直におっしゃっているんですが、ただ、本当に労災保険の適用というのを法律の建前どおりにやっていけば、これは非常に難しいことになると思うんです。

 というのは、暴露してから三十年、四十年経過していますね。三十年、四十年前に例えばクボタのような、あるいはアスベスト鉱山のような、そういうところで働いていたという少数の労働者については非常に証明しやすいと思います。しかし、例えば若いとき電工屋さんに勤めていて、配線工としてアスベスト吹きつけの天井の中に何回も潜り込んで仕事をしたことがありますよ、しかし、その後そこから独立されて今は左官の仕事をしておられる、そして今はもうそれもやめて隠居している、そういう人が中皮腫になった。どうしますか。例えば、モルタルにもアスベストは入っていました。さまざまな外装材や内装材、床材、アスベストは入っていました。それは自営の業者としてやっていました。そういうケースは無数に出てくると思うんです。

 だから、業務遂行性、起因性に対する因果関係を一切問わないといったとしても、何らかの網がないことにはどうしようもない。それをどうするのかという議論がないままに、まあ労災を使えばいいわとか、労災にならぬ人は何かつかみ金でもいいわとかいうふうな話として聞こえてきます。

 私は、補償の算定の基準として労災保険の方式を使うとおっしゃっているのであれば、アメリカと比べたら恐らく十分の一ぐらいにはなるでしょうが、一つの方法でしょう、現在の法体系の中で合理性を持つ。しかし、そうでないとしたら、一体労災と労災でないとはどう分けるのか。そして、労災でないと判断された人が、就労によってなったのか、あるいは家族の就労によってそれの影響を受けたのか、たまたま住んだところが悪くてそうなったのか、その辺にそういう中皮腫なり肺がんになった人の責務というのはあるのかねと。恐らくそれはないんでしょう。

 そうすると、これへ何らかの形で包括的にどう補償するかという枠組みをつくるしかないのではないかなと思うんですが、大臣、その辺、どうお考えですか。

尾辻国務大臣 今お話しいただいておりますところは、大変難しい判断になる部分だと私どもも考えております。いわば新法をなるべく早く出したいと思い、できたら今国会にというふうに私どもも考えたわけでありますが、どうしても今国会に間に合わなかった大きな理由の一つも、今お話しいただいたようなところの整理がなかなかつかなかったということを正直に申し上げたいと思います。

 したがいまして、この問題、まだ私どもも政府の中で検討いたしておりまして、今後しっかり検討して答えを出さなきゃならない問題だというふうに考えております。

五島委員 我々は、アスベスト被害の救済法案、救済法というもので、ファンドの中でやっていけというふうに言っているわけですが、ぜひ参考にしていただきたいと思います。

 そして、もう一つそれと関連して大事な問題があります。先ほど来少し議論が出ているんですが、中皮腫よりもアスベストに原因するいわゆる原発性の肺がん、腺がんの発生の方が少ないという数字は見たことありません。通常、少なく言っている人で中皮腫の一倍とか一・五倍、多い人は五倍、六倍と言っていますが、大体二倍ぐらいだろうかなというのが常識的、今のコンセンサスだと思います。そして、肺がんの問題については、比較的、十年ぐらいの継続暴露ということでドーズレスポンスがあります。中皮腫の場合は、間欠的であったり短期の大量暴露であったりしても起こってくる。それから、量と質の相関関係がないわけではないんですが、その時間ファクターというものが非常に大きいというふうに言われています。

 そこで、肺がんの問題なんですね。肺がんというのは、別にアスベスト関係なしにでも起こります。それから、厄介な問題として、たばこの問題があります。私もヘビースモーカーです。たばこによる肺がんの発生率の強さというのは八倍から十倍ぐらい、九・何倍と言われているのが普通です。それに対してアスベスト単独による肺がんの発生は五倍ぐらいと言われておりますから、単品比較しますと、アスベストの方が危険度はたばこより少ない。ところが、これが両方関係してきますと、十対五で十五倍というんではなくて、なぜかこの物質に関しては相乗数になります。すなわち、五掛ける十で五十倍になってきます、発がん性の検討、これは一体どうするのかという問題があります。

 禁煙をやはり指導しているというのは、一般的な厚生行政としてよくわかるわけですが、問題は肺がんを発症した人たち。その人たちに対してアスベストの関連をどういうふうに位置づけるか、これはちょっとお伺いしておきたい。

 また、閾値は厚生労働省がかつて考えていたほど高いものではなくて、非常に低いという点からすると、やはりそこで直接従事していなかったとしても、アスベストによる肺がんの発生の可能性はある。アスベスト肺に続発する肺がんのような職業起因性の場合は非常にわかりやすいし、ほとんど悩むことがないんでしょう。だけれども、アスベスト肺とは違って、アスベストの暴露によって肺がんが発生してきた場合どうするんだという問題、この問題はおいておきますというわけにいかないと思いますが、この点、基準局長、どう考えていますか。

青木政府参考人 肺がんの場合は中皮腫よりもさらに難しい問題があるということは、もう委員御指摘のとおりだと思っております。

 肺がんについては、今お話ありましたように、喫煙との関連が大きいというようなこともありまして、石綿以外の原因で発症する例が多数ある、そこは中皮腫と違うというふうに思っております。したがって、現行の労災の認定基準では、特に肺がんについては、原発性肺がんであること、それから石綿を原因として発症したものと推定できること、具体的には、お話に出ましたように、石綿肺の所見でありますとか、あるいは胸膜プラーク、あるいは石綿小体、石綿繊維の存在が一つ。それから、お話にもありました、十年以上の石綿暴露作業従事歴があるということで労災認定をしております。

 今申し上げましたように、現行の労災はそういうことでありますが、これが、るるお話しになりましたように、たばこあるいは環境暴露、職業暴露とは違うそういったものについて、特に、とりわけ周辺住民あるいは家族の対策として今考えているわけでございますので、新法を考えるに当たっては、そこも実は大変難しい、頭を痛めるところの問題であります。

 これは、種々いろいろ検討をしていく中にありましては、もちろんこれは環境省が今中心になってその検討をされているわけでありますが、我々としては、もうそういった労災で既にいろいろやっておりますし、そういう知見もありますので、協力をしながら、知恵を出して、制度的な不平等とか不均衡とかそういうことがなく、なおかつ救済されるべき人たちは救済できるようなものを何とか知恵を出して考えていきたいというふうに思っております。

五島委員 問題点はかなり共通した認識だと思うんですね。だけれども、今、局長の答えの中に答えがあるわけです。

 まずは、石綿に十年以上暴露したような人に対しては、やはりきちっとした手帳を持たせて管理していくということが一つです。

 もう一つは、胸膜プラークや、石綿小体というのは剖検したりなんかしたとき出てきますし、それから、暴露した直後には私どもは石綿小体を見つけたことは何回かありますけれども、たまたまそういうふうな暴露作業をした直後には出てきますが、そうでないときには、気管支鏡を突っ込んでやってみてもなかなか出ません。

 そういう意味では、胸膜の肥厚とかあるいはプラークを見つけたら、これは石綿暴露の証拠です。だからといって、胸膜肥厚がある、プラークがあるからといって肺がんになると限ったものでもありませんし、中皮腫になると限ったものでもない。ただ、石綿に一定量暴露されたという証明になることは間違いない。

 だから、そういう人たちに対しては、やはりきちっとしたそういう管理のシステムの中に入れて、そして、その人たちに禁煙の指導や何かとあわせて、もし肺がんが起こってくれば速やかな治療、あるいはそういうふうな手当てをしていくということは必要なんだろう。まさに健康管理がそこに入ってこないと、その人たちに対しては対応できないわけです。

 だから、そこを抜きにしたまま労災と同じようなことを、いわゆる業務遂行性というものが明確でない人に対しては対応のしようがないという形で中皮腫だけに走っていかれると、アスベストによって被害を受ける人の半分も救えないということになってしまいます。その辺もぜひ必要なことだと私どもは主張しているわけですが、その点について、大臣、どうお考えでしょうか。

尾辻国務大臣 ただいまも、また大変大事なことの御指摘をいただいたと思っております。

 先生お話しのように、そして私も言っておるのでありますけれども、中皮腫に関しては、疑わしきは救済をしようと。きょうも先生ちょっと数字をお触れいただいたような気もいたしますけれども、専門家に言わすと、アスベストによる中皮腫というのは、中皮腫全体の八〇%ぐらいであろう、八割ぐらいであろうと言われておりますけれども、そんなことよりも、もう中皮腫というのはほとんどがアスベストに原因があるというふうなことであるわけですから、八割ということを言葉をかえて言えばそういうことでありますから、もう疑わしきは救済すればいいというふうにすべきであるということを言っております。

 したがって、中皮腫の方はまだそういう対応ができますが、きょう先生、肺がんについてのお話でございました。こうなりますと、本当に大変難しいところがございまして、この辺のことをどうやって今後、私どもは新法という言い方をいたしておりますけれども、新法の中で取り上げていくのか、このことは大変難しいことではありますけれども、きょうの先生のまた御指摘等も、御指導等も踏まえながら、今後しっかりと検討をしたいというふうに考えます。

五島委員 中皮腫については、プラークもない、あるいは胸膜の肥厚もないという状況でも起こり得ます。したがって、石綿に暴露された人たちについて定期的に監視するしかないわけですけれども、肺がんの問題の場合は、やはり石綿に一定期間暴露されて、そして、それだけの暴露をされると今言ったような客観的な所見があるわけですよね。そういうふうな人たちを石綿肺を起こしてくる可能性がある人としてやはりチェックしていく、そのシステムさえつくればいいわけですし、それから、中皮腫と違うことは、肺がんですから、早期に見つけることができればさまざまな治療方法もございます。

 そういう意味では、健康管理によって命を助けることもできる。そういう意味においては非常に大事な問題なので、何か官僚的に、この問題はどの規則に合わせたらどう認定できるかというふうな発想だけでは、これは非常に難しい。だけれども、そういう客観的な暴露というものを一定の労働歴でつかまえるか、身体の所見でつかまえるか、どちらでつかまえても、健康管理にのせていくということによって私はできるんだろうと思っております。その辺をぜひ採用していただきたいというふうに思っております。

 そして、この問題の最後でございますが、やはり先ほども申しましたが、中皮腫の専門家というのは、労災病院を中心として、少ない少ないとおっしゃるわけですが、本当の専門家が日本に五十人もおる。本当におるのかと本音のところ思うんですね。どんな内科でも専門家の専門家というのが、そんなにようけいるはずがない。それで五十人もいる。五十人のところできちっとしたそういう診断、あるいは情報が一元化されれば、とんでもなく医学は進むと思います。だから、すべての症例は、プライバシーの問題その他ありますけれども、そういう専門家のところの検討会議に上げていって、そして治療とその効果なんかの検討をしていくということが一つは大事です。

 それからもう一つは、やはり高齢に達しておられる方が多いわけですね。七十はまず超えておられる方がほとんどだと思います、後で例外の問題は言いますが。そうしますと、中皮腫と診断された途端に、緩和ケア病棟に行きなさいみたいな話になってしまう。それは、やはり医学というものに対する大変な敗北主義だと思っております。

 そういう意味においては、やはり今後間違いなく、少なく見ても千とおっしゃっているし、最高五千とおっしゃっているけれども、私どもは三千は超すようになるわねと思っています、本音のところ。それだけの大量の患者が毎年毎年出ていく。そういうふうな病気に対して、やはりそのピークを迎える前に一定の治療ができる技術の開発が必要だと思うんですね。それをする上においても、やはり中皮腫の登録制度というものは、救済制度と裏腹の関係で早いことやるべきだというふうに思いますが、その辺はどうお考えでしょうか。

尾辻国務大臣 今お話しいただきましたように、そしてまた民主党の御提言の中でも、健康管理として、健康管理手帳制度の見直し、それから中皮腫登録制度の創設ということを言っておられます。私どもも、健康管理手帳制度の見直し、これは当然必要だと考えておりますし、いずれにいたしましても、中皮腫の実態把握を進めることが極めて重要だと考えておるところでございます。

 このために、八月に研究班を立ち上げまして、中皮腫の実態調査や職業別の石綿暴露リスクに関する調査研究を進めておるところでございます。とにかく、こうした研究を進めまして、そしてまたその結果も踏まえて、さらに次なる手を打つべく検討を進めなきゃいかぬというふうに思っておるところでございます。

 私どもも、御指摘のことは極めて重要なことだと考えておりまして、今、これについても努力を進めておるところでございます。

五島委員 それで、そうしたことに対する費用というものが出てまいります、先ほどからも問題になっておりますが。この費用について、それぞれアスベストの被害に対して過去においてかかわった責任の度合いにおいて、その費用を出してもらうということにならざるを得ないのだろうなと私は思っております。

 そうした場合に、よく民間で、アスベストを使った製品をつくった、アスベスト製材をその部品に使った、さまざまなことでアスベストに関連している産業というのは、過去にはたくさんあります。しかし、どこかでやはりこの問題については整理しなければいけないわけですが、やはり最大の問題として、国の責任というのはどうなんだろうか、各省庁すべてがやはり関連したと思います。

 もちろん、環境省のように比較的新しいところはこれからの問題になるかもわかりませんが、例えば厚生労働省についても、さまざまな委託研究や調査書その他で状況はわかっていたけれども、やはり作業環境基準その他を非常に甘く見、そしてそのことが、環境省の大気汚染防止法なんかに対しては非常に甘い基準値を想定させるという意味で足を引っ張ったとか、その基準そのものが本当に守られているかどうかというチェックを怠っていたとかいう意味での責任はあるでしょう。

 あるいは、もっと積極的に、例えば当時の建設省、建築基準法において耐火被覆として使わせました。耐火被覆を求めました。そして、その中には、大半がアスベスト製材で被覆をしたのが昭和五十年前後中心でした。五十年でアスベスト被覆はとめました。とめたことになっています。アスベスト被覆はやめたけれども、アスベスト含有のロックウールの吹きつけをやらせてきました。それも、当初はアスベストの含有二〇%でした。それを五%にしました。というふうな形で、アスベストの濃度は変えてきた。だけれども、アスベスト含有の吹きつけは一九八八年まで、すなわち七〇年から八八年までの期間もやってきました。使わせてきました。

 また、建材についても、いわゆる旧JISの規格の中で、アスベスト含有の製品をJISの規格で使わせてきました。さっきも言いましたけれども、波板のスレートについて、ノンアス材をJISに入れたのは去年です。それまでは、アスベスト含有の波板しかJISの規格品はなかった。

 もちろん、JIS規格品を使わなければいけないということは、ユーザーにとっては一切義務づけられていません。だけれども、日本という国、大工さんや設計士に家を建ててくれと頼んだときに、わざわざJIS製品でないものでつくってくれという人は何人いますか。あるいは、そういう建築屋さんにしても、JISの製品ですから国が安全保証しています、あるいは材質保証していますという観点で使うのが普通です。そうした場合に、アスベストそのものの有害性、危険性、そして、それをボードや屋根材に使っている間においては問わないけれども、処理するときには問題になるということはわかっていた。それを、ノンアスの製材ができても営々と使わせてきた行政の責任はどうなるのか。

 あるいは、今、クボタのところで非常に問題になっています。だけれども、本当に日本でアスベストの被害が出ているのは、クボタのような水道管を使ったところだけだろうかと思っています。実は、もっと危険なのは、断熱材として使われたアスベストを大量に使ったところではなかっただろうかと思っています。

 事実、アメリカやイギリスの例を見ますと、軍の情報は別になっています。日本でもどうなんでしょうか。

 戦車を考えた場合に、あれは暑いところ、イラクへも行きますし、寒いところも行くんでしょう。鉄板に接して、断熱材ないままで走るわけがありません。しかも、外部から大砲で撃たれても、それがすぐに穴があかないように、まあ戦後の戦車というのは随分と改良されておりますが、その衝撃によって火花その他飛んだ場合に火事でもいけば、それは、中に人間と弾薬が一緒に入っています。当然、アスベストで断熱といいますか、充てんされているだろう。

 あるいは、潜水艦。機関砲の騒音を防除するために、アスベストでくるんだはずです。そうでなかったら、潜水艦の役割果たせないだろう、うるさくて。すぐにばれてしまう。

 ありとあらゆるところを考えたら、そういうふうな軍関係を含めて、あるいは大型のそういう機関車とか列車とかあるいは重機類とかいうところに使ってきたはずです。

 そして、そういうふうなものの修理を業者がやってきたのか、あるいは工場の中で特定の人たちがやってきたのかわかりません。しかし、多くの企業の中に自社に工場を持って修理をしていたところがあります。私も運輸会社へ九〇年当時見に行ったことがあります。ブレーキ仕様を変えたり何かするところへ行ったことがあります。大変危険な状態を知っていました。

 そういうところにおいてアスベストの被害が、七〇年代以前の暴露ですから、目立っていないというふうに思われるかもわからぬけれども、意外と、旧国鉄なんかを考えても、その以前の断熱材や防音材としてはアスベストを使ったのではないだろうかと思われています。その辺についても全然情報が出てこないんです。今回我々がアスベスト会議をつくれと言ったのは、本当の意味での情報開示をしてもらわないとこれからの対策の打ちようがないんです。

 きょう経産省と国土交通省の方が来ておられます。もともとお願いしていなかったので大きいことは聞きません。だけれども、今建物を解体するにしてもそれにアスベストが入っているか入っていないかわからないと、aマーク、アスベストマークがあるかどうかだけですと、五%のときもありました、一%のときもありました、時代によって違うんです。これではどうしようもない。

 これは、この間環境委員会でも述べた、香川県に住むある人の投書です。私のところへ来ました。ここは、香川県の仲多度郡の満濃町というところにお住まいの方です。そこには、建設物リサイクル法によって石こうボードが集められて、一日に五、六トン、ボードを粉砕しています。そして、粉砕したボードはセメントにまぜられたり土壌改良材として田畑にまかれています。この石こうボードの中に、調べてみると、非常に少ないんですが、〇・二%のアスベストが入っていました。〇・二%ですから当然ノンアスなんです。だけれども、一日で六トンするということは十二キログラムですよね、十二キログラムのアスベストが粉砕されて、それが土壌改良材としてまかれている。その辺は非常にほこりが多い。しかも、三百メートルと二百五十メートルのところに小学校と幼稚園がある。住民運動も起こっています。そういうことが起こりかねない。

 だから、一体どういう建材にどの程度アスベストが入っているのか、わかる限り、この間のアスベスト協会が出したあのパンフレットで済ますのではなくて、解体業者さんや廃棄物の処理業者さんにもわかるような、そういうふうな情報をやはり公開してほしい。

 そうしてまた、運輸省の方にしても、国鉄の貨車や機関車の解体もやってきたはずです。そして、その人たちが七十歳を超えて被害が出る可能性が多い。過去においてそういうふうな仕事をした人に対して、スパイラルCTを撮って、プラークや胸膜の肥厚がないかどうか、また、既にアスベストの被害と思われる中皮腫その他によってお亡くなりになった方がいないかどうか、特に運輸関係、交通関係、多うございます、その辺について早急に点検してほしい。

 同じことは防衛庁にも、ぜひ大臣からも言って、そういう注意を啓発していただきたい。

 そのことについてお願いしたいと思うわけですが、いかがですか。

尾辻国務大臣 ただいまの御指摘につきましては、閣僚懇談会などにおきまして私からも発言をし、そしてまた、皆さんにそうした努力をしていただきますようにお願いも申し上げ、また、私どもでできることは私どもでやらせていただきたいと存じます。

五島委員 ありがとうございます。

 それでは、ついでに、今お聞きした点について、経産省並びに国土交通省の方からもお伺いしたいと思います。

塚本政府参考人 先生今御指摘のアスベスト製品、特に建材についてのアスベストの含有に対する情報の開示でございますけれども、我々も大変その点重要な点だと思っておりまして、従来から業界団体ないしは企業がそういうことで努力はしているわけですけれども、特に、八月の十二日に、製造産業局の次長名で、事業者団体を通じまして、関係企業に、建材等のアスベストの含有製品の生産実績それから製造期間等につきまして情報開示をするよう指導したというところでございまして、こういう各社の取り組みを踏まえて、さらに必要なことについては、こういう建材関係でございますので国土交通省さんあたりとまたよく御相談しながら、さらにより徹底した情報開示についての対応を進めてまいりたいと思っております。

山本政府参考人 私は、建築基準法を中心に建築行政の分野でこの問題に取り組む責めを負っているわけでございますが、きょう委員会で一時間余りにわたりまして委員のわかりやすいお話を伺いまして、この問題全体についての理解をかなり深めることができたと私自身ありがたく思っております。

 内閣は、各省連携してこの問題に取り組む、すき間のないように取り組むという方針を持っておりますけれども、それぞれ責任分野を持っている者が全体の問題状況を理解した上で、できれば境界分野については積極的に取り組む必要があるという思いを強くしたものでございます。

 私どもは、今、社会資本整備審議会の建築分科会におきまして、アスベスト部会で詳細な御検討をいただいております。きょういただきました視点を大切にして、できるだけ早く結論をいただきまして、基準法の改正も含めまして、的確に、スピーディーに取り組んでいきたいという思いでございます。

五島委員 経産省の方にお願いしますけれども、そういうふうな調査を今始めたということについては評価をしますが、やはり、すべてができるまでということで、いつも一年、二年と時間がかかっておくれることが非常に多うございます。そういう意味においては、やはり期間を切って、その都度データを公表していただきたいと思いますが、お約束いただけますね。

塚本政府参考人 今先生の御質問ですけれども、当省といたしましても、いろいろな今建材関係の情報開示、それから家庭用のいろいろなアスベストを含有したものを当時つくった、そういうものが使用されているということで、そういうことにつきましては、調査を進めて、ある調査のまとまった段階で適宜情報を皆様の方に開示をし、それから、そういう当該企業にも開示をするように逐次そういうことをやらせていただいております。そういうことでアスベスト関係の情報開示を適切に進めていくということで対応したいというふうに考えております。

五島委員 一時間半時間をちょうだいいたしまして議論を進めてまいりました。今回、私たちは、石綿対策の総合的推進に関する法律案、これはそれを進めていく上でのスキームを決めた法律案でございますが、これを衆議院にきょうにも提出したいと思っております。ぜひ、私どもは野党ではございますが、状況によっては政府の側から対案を待つということも必要だろうということで先に出させてもらいました。もしこうした案について基本的に御同意いただけるとすれば、政策提言として出しております、それは各論部分にわたるところでございます。その辺も網羅した形で、ぜひ内閣においても対応していただきたい、そのことを申し上げて、質問を終わります。

石崎委員長代理 次に、村井宗明君。

村井委員 民主党の村井宗明です。

 さて、本日のアスベストの審議でございますが、先ほど五島議員からもありました、私たちはアスベストに対する民主党の法案を提出することにしています。やはり国民の皆さんは今アスベストに関心が非常にあります。当然、国会でも我々が出した法案について議論をすべきだと思います。かつて野党でいろいろな法案を出したときに、この委員会で議論すらしなかったということがあったんですが、当然議論していくべきだ、民主党の法案について、国民の関心の高いアスベストの民主党の法案について議論すべきだと、大臣、思いますよね。どうでしょうか。

尾辻国務大臣 国会の御審議のあり方については、これは委員会でお決めいただくことでありますから、私が何か申し上げるという立場でございませんが、委員会でお決めをいただくべきことというふうに存じます。

村井委員 ありがとうございます。

 ぜひ自民党の皆さんも、審議から逃げずに民主党の法案についてしっかりと議論をしていただければと思います。かつてのような、民主党の法案の審議から逃げる、委員会にすら出さない、そんなばかなことはきっとないものだと私は確信をしておるわけでございます。

 さて、通告どおり、一問だけ障害者の自立支援法についてお話ししたいと思います。安心して暮らせる社会をつくることが私たち政治家の役目です。私も一政治家として、国民の暮らしを一番に考え、当事者の気持ちになって質問をしたいと思います。

 食事、入浴などの介助は、障害者が人間らしく生きるために必要な手段です。その手段に対し負担を強いるということは、生存権の侵害でもあります。

 そこで、まず障害者自立支援法についてお伺いいたします。政府案による障害者自立支援法によると、定率負担について、所得の低い方への軽減策として月額負担上限額を定めています。その上限額の設定に当たっては、住民基本台帳上の世帯の所得を基準としています。その世帯には障害者が含まれ、扶養されている立場にあると考えますが、今現在、扶養されている障害者がどのぐらいであるのかお聞かせください。その上で、その世帯所得を考えたときに、軽減策の対象者となる障害者はどのぐらいになるとお考えでしょうか。大臣、お願いします。

尾辻国務大臣 数字でございますから、局長から答えさせますことをお許しいただきたいと存じます。

中村政府参考人 お答え申し上げます。

 障害者の方が御家族と同一世帯に属しているかどうか、また、属している場合について、税や医療保険の扶養に入っているか否かについては、個人情報でありますことから直接的なデータがありませんで、障害者の属する世帯について、その扶養関係について必ずしもしっかりしたデータがございません。

 また、世帯の所得階層ごとの割合について見ますと、いろいろなデータを組み合わせて推計いたしますと、低い所得の世帯の方が約三割、一般の世帯の方が約七割程度と見込んでいるところでございます。

村井委員 大臣ではなくて局長の方にそのままお尋ねするんですが、低いとみなされる人が三割で、一般とみなされる方が七割という話でした。それは当然、扶養がわからないという前提の上で言っておられたんですが、軽減措置が使われるだろうと予想される方、つまり、扶養になっていたら当然そっちの分の所得もカウントするということだったんですが、当然軽減措置が使われる方が約三割だということで確認してよろしいでしょうか。

中村政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、世帯の関係を見る場合につきましては、軽減措置あるいは負担の上限を考えるときに考えますので、そういった意味では、委員御指摘のとおり、低所得の方のことを想定して考えていただければよろしいのではないかと思います。

村井委員 ちょっとまだはっきりと、もう一回確認します。約三割の方が軽減措置を使うと推定されるという答え、もう一回、それでよろしいでしょうか。はっきりお答えください。

中村政府参考人 お答え申し上げます。

 世帯の特例、今申し上げましたそういった方々がいわばどっちを使おうかとお考えになるということでございますが、具体的にどちらを選ばれるかにつきましては、まさに御自身の御判断によりますので、そこのところのチョイスはまた利用される方の方にあるということでございます。

    〔石崎委員長代理退席、委員長着席〕

村井委員 その上で、結局、人間は合理的な判断をします。お金が得する方で判断をするわけです。つまり、税の扶養などを外す場合、それから保険の扶養を外す場合、そういった分も含めて、どっちが得するかシミュレーションを当然しているはずです。

 軽減措置の支援措置と一生懸命自民党さんが言っておられる。もちろん厚生労働省も言っておられる。それで、当然シミュレーションをやっていないとおかしいわけですが、その辺、今そこまで含めてどういったふうに推計されているかということをしっかりお答えください。もしくは、今答えられませんが、次の障害者自立支援法の集中審議のときまでに大体の推計を出しますという答えでも結構ですので、お答えください。

中村政府参考人 お答え申し上げます。

 今、住民票上同じ世帯におられます方がいて、その方がいわば税の扶養をされている、そういうケースの場合、しかし今度、別世帯とみなすという世帯の特例を行使した場合、どちらが得かということは、当然私ども、低所得の場合ですと負担軽減措置が講じられますので、具体的にそういった場合、今委員から御指摘ございましたように、自立支援法の方で負担が軽減される。そこで負担が軽減される部分と、扶養控除を外したり御自分が独立した世帯になりますと、例えば国民健康保険の保険料をお支払いいただく、その場合のいわば独立しているということに伴うコスト増と比較して、いわば軽減額が大きい場合に、やはり今委員のお言葉のとおり、合理的な選択であればそちらを選ばれるということになると思います。

 当然私ども、シミュレーションしておりまして、例えば知的障害の方で、御両親、給与所得等おありの方が同居されているケースの場合、計算いたしますと、親の方の収入が七百万円程度ですと、扶養控除を外れたり障害者御本人が国保に加入された場合の保険料と軽減措置ととんとん。したがって、それより収入六百万、五百万、四百万の方の場合、軽減額が私どもの一定の計算をいたしますと月一万六千六百円ほどになりますので、障害者の方が親の扶養控除を外れ、また国民健康保険に加入され保険料などをお支払いいただいても、いわば委員のおっしゃる私どもの負担軽減措置が上回りまして、そちらの方を選んでいただくメリットがある、こんなふうになるのではないか。そういった意味のシミュレーションはさせていただいております。

村井委員 本当にそういった七百万円が損益分岐点だというシミュレーションを出しておられるのは結構なんですが、先ほどから話がかみ合っていないんです。

 そのシミュレーションに基づいて、何割の人が合理的な判断をすれば負担軽減、つまり低所得者の軽減策を使うだろうかというシミュレーションも当然やっていないと、この問題についての予算が組めないわけです。一番肝心なこの低所得者への負担配慮と言いながら、結局、どのぐらいの人がそれを使うんですかと言われても、わからないわからない。それじゃ、審議にならないんです。次のこの委員会でこの問題について話すときまでにそういったシミュレーションをして出していただけますかという答えについてのお答えはどうなんでしょうか、何度も言っていますが。その辺、ちゃんと今度ははっきり言ってください。

中村政府参考人 お答え申し上げます。

 予算につきましては、支援費制度のときも、十五年にスタートして以来、いろいろ見込みが違って大変不安定な状況にあり、そういったことを踏まえ、私ども提案させていただいています。

 私どもも、今回の自立支援法に伴いまして、御負担もいただき、またさまざまな軽減措置を講じておりまして、それらにつきましての予算計上もさせていただいておりますので、そういったことについて法案審議の中でもお答えさせていただきたいと考えております。

村井委員 そうしたら、今、法案審議の中でお答えいただくというふうに言いました。次の自立支援法の集中審議のときに皆さんにその資料を公開することはできますね。皆さん何度も聞いておられると思うんですが、出すと言っておられるので、その一番肝心な予算を出しますよね。どうですか。

中村政府参考人 お答え申し上げます。

 私ども、例えば、既に、この自立支援法については十八年四月実施をお願いしておりまして、概算要求でも十八年四月の概算要求をさせていただいておりますので、その概算要求の考え方などについては御説明させていただきたいと思います。

村井委員 何でこんなに肝心なことを全然全然隠し続けるんですか。何でまともに議論しようとしないんですか。本当にこの軽減措置について全くやる気がないというのがだれが見ても明らかじゃないですか。どうですか、自民党の議員の皆さん。余りにもひど過ぎる。全く今私が言ったようなこういったシミュレーションの数字のお金を出す気がないんですか、大臣、どうなんですか。徹底的にその比率、そしてどのぐらいの人がやるかというシミュレーション、概算要求をしていたら当然多少はシミュレーションをやっているはずでしょう。全くないんですか、本当に。そんないいかげんな法案なんですか。それを自民党の皆さんが本当に通そうという気があるんですか。どうですか、大臣、責任持ってお答えください。それとも、徹底的に隠すつもりなのかどうなのか。お答えください。

尾辻国務大臣 今局長よりも、概算要求についてちゃんと考え方を御説明申し上げますと申し上げたところでございます。

村井委員 概算要求について答えるじゃなくて、その中でこの軽減策の対象となる障害者が何割ぐらいなのかを出すのか出さないのかです。大臣、どうなんですか。大臣、責任持ってお答えください、大臣がやれと言えばやれるんですから。

中村政府参考人 先ほどお答え申し上げましたように、世帯の特例を利用するか否かについての御判断は、障害者が家族関係、負担の状況など個別の事情に応じて選択されるものであり、どの程度利用されるかを見込むことは困難であるとお答え申し上げました。

 しかし、多くの方を見込んだ場合でも予算に不足が生じないように私どもなりに考えて十八年度の概算要求も行っておりますし、万一それで足りないようなことになりましても、これは今度義務的負担にもお願いしておりますので、そこは政府として最終的にはきちんと例えば実施主体である市町村や利用者の方に御迷惑かけずにできるということを今度の法案で提案しているということでございますので、そういった点については御理解を賜りたいと思います。

村井委員 少々大声を上げて申しわけございませんでしたが、こんな肝心なことについてこうやってはぐらかし続けること、私は本当にびっくりしてしまいました。今マスコミの人も障害者の人も一番肝心の聞きたいことについてこうやってあやふやな答えを言う。ただ、とりあえず、次のときまでに資料を出すと言っておられるので、どんな詳しいものが出てくるのかをぜひここにお集まりの議員の皆さんでも判断いただきたいと思っています。

 その中で、私ちょっと、せっかくこの話がエキサイトしたので、気になっていたことを言っちゃいます。

 「障害者自立支援法 皆様のご疑問、ご心配にお答えします。」という、厚生労働省障害福祉課が、私がさっきから言っている軽減措置について、大丈夫ですよというチラシを配っておられます。これはこれでいいがです。私、安心しました。軽減措置の件、ずっと心配していたのは、まさか三年間の経過措置じゃないだろうなといってみんな心配していたんです。ところが、この軽減措置に書いてある、大丈夫だ、大丈夫だというだけで、三年間の経過措置と全く書いていなかった。ああ、こんな肝心なことを書いていなかったんだから、当然軽減措置は三年間限定じゃないんだなと思うんですが、大臣、そうですよね。

尾辻国務大臣 法律に今後三年間でいろいろなことをまたきっちり検討しますということを書いておるわけでございますから、すべてのことは、すべてのことといいますより、いろいろまた検討すべきことは三年かけて検討するわけでございまして、今お述べの軽減措置についても、三年後にやめるというふうに書いておるものでもございませんから、これはすべてが検討ということになります。

村井委員 この安心です、安心ですというチラシ、こんなにでかいと文字があって、どこに三年間の経過措置と書いてあるんでしょうか。もしこれをJAROに見せたら訴えられますよ、こんなもの。今度からはきちんと、その軽減措置は三年間の経過措置だというふうに書かれますよね。それとも、今後もそれは隠されますか。大臣、どうですか。

尾辻国務大臣 申し上げましたように、三年でやめますということをどこにでも言っているわけじゃありませんので、そこでも言っていない、こういうことでございます。今後またしっかり検討して、三年後に所得保障の問題だとかなんとかというのを決めていきますということを言っておるわけでありますから、その検討の中のまた一つだというふうに考えております。

村井委員 だとすれば、とりあえずこうやっていますが、三年後にこの軽減措置について検討しますというのを、どうしてそんな肝心なことを書かないんでしょうか。

 例えば、あるマンションを購入したとします。ローンは毎月三万円ですといって十年払いになっていた。確かに三年間は三万円だったんだけれども、今後検討しますといって、いきなり二十万円ずつ毎月取られたら、これは詐欺ですよね。その詐欺まがいのことを平気でやって、三年間の経過措置だなんてどこにも書いていない。もしそんなマンションがあったとしたら、それは詐欺だと思いませんか。大臣、どう思いますか。

尾辻国務大臣 三年でやめるというふうに決めておることを書いていないと詐欺だと思いますけれども、別にそんなことを決めておるわけでも何でもありませんから、こうしますということを書いておるわけでございまして、そしてまた三年後、それぞれまた国会の中でもいろいろな御議論もあろうかと思いますし、そうした御議論を踏まえて新しい形ができる、しかしそれは変わるかもしれないし変わらないかもしれないということでございますので、決して何か特別の意図を持って隠しておるとかというつもりは全くございません。

村井委員 そうしたら、少なくとも三年間はとかとどこかに、こんなにでかいと文字があるんですから、少なくともどこかにないとおかしくないですか。だって、物を買うだけ買わせておいて、後で値段を検討します、そんなばかな話はないと思うんですが、どうですか、大臣。

尾辻国務大臣 法律にしましてもどういう決まりにしましても、その後変わることはよくあることでございまして、それを言いますと、すべての法律にこの法律は変わるかもしれませんと書かなきゃならないんじゃないかなとつい思いながら聞いておったわけでありますが、変えるということをはっきり言っているわけじゃありませんから、こうしますと書くことはごく自然じゃないのかなと私は感じております。

村井委員 この障害者自立支援法はどうしても対決法案なんでお互いエキサイトしてしまいますので、もとのアスベストの方に温和に戻したいと思っています。

 さて、前回の質問時に取り上げた行政の不作為なんですが、大臣は、行政上の権限を行使しないことが行政の不作為だとおっしゃられました。

 そこで、先ほど五島議員からもありました、波板スレートなどは結局代替品の促進も全然できていなかったのではないか、それから、いろいろな規制についても遅かったのではないか、行政上の権限を十分に行使したのかどうかについてお答えください。

尾辻国務大臣 その都度その都度の、その時々の科学的知見といいますか、私どもが持っておりました知識がございます。その知識の中で判断をいたし、対応をしてきた。その対応については適切な対応をしてきたと私どもは判断いたしておるわけでございます。

村井委員 例えば、JIS規制の中に、波板スレート、ノンアスだとJIS規制の中に入らなかったとかいうのも適切な対応だったというふうにお答えなんでしょうか、どうでしょうか。

尾辻国務大臣 縦割りというふうに言われるかもしれませんが、今の問題、私ども所管のことでございませんので、私もよく承知をいたしておりませんし、お答えしかねるところでございます。

村井委員 わかりました。

 さて、今のこういった縦割りで、いろいろなことがほかの省庁に聞いてくれ、ほかの省庁で聞いてくれと言われるんですね。私、今回のこの質問、実はもっとアスベスト、十問ぐらいつくっていたんですが、最後まで行かなさそうなんですけれども、それはいいとしまして、質問しようとしていて、えっと思ったのが、この質問をしようとしたら、ああ、これはこっちに聞いてください、これを聞こうとしたら、これはこっちに聞いてください、こんなことで本当にいいんでしょうか。今度から、では、国土交通省を通告で呼んでください、文科省を通告で呼んでください、次々とパスされるんです。私は、まさにたらい回しが非常にひどい、行政の縦割りの被害が非常に今回すごかったんじゃないかなと思っています。

 そこで、関係省庁による対応、例えば昭和四十七年に環境省の方でアスベストの発がん性についてと近隣住民への暴露について言及した報告書が出されていますが、例えば、厚生労働省なんかにはそういったほかの省庁の情報もきちんと把握しておられたんでしょうか、どうでしょうか。

青木政府参考人 今御指摘になりました環境庁の関係でございますが、これは環境庁の委託研究でございますアスベストの生体影響に関する研究報告でございますが、私ども、昭和五十年に特化則を一部改正をいたしまして、それに合わせまして五十一年に通達を発出いたしました。その参考としてこの環境庁の委託研究の一部を添付するなどして、情報の共有を図っていたというふうに考えております。

村井委員 さて、その縦割りのばらばらさがいかにひどかったのか。きのうなんかも、公共施設、教育関連施設、病院、公共交通施設などいろいろなものについて聞こうとしたら、どんどんどんどん横パスばかりされて、何も聞けない、何も教えてくれない。一般の人が聞きに行ったとしたら、これはどうなるんでしょうか。議員ですらこうやってたらい回しでだれも何も教えてくれない。一般の人がアスベストについて持っている不安、どうやって答えるのかを私は不安に思いました。

 その縦割りの問題があった、これは関係閣僚会議でも反省しておられますが、さて、関係省庁閣僚会議、局長級会議、課長級会議など、縦割りの弊害をなくすためにいろいろなそういった横のつながりの会議をしておられると聞いています。その実施時期や議事内容、情報交換、決定事項などを教えていただければと思います。よろしくお願いします。

青木政府参考人 関係省庁会議の件でございますが、とりわけアスベストのこの問題に関しましては、ことしの七月に問題が大きく報じられて以降、スピード感を持って関係省庁対応する、そのためにも緊密に連携を図る、こういうことでやってきております。七月以降でアスベスト問題に関する関係閣僚会合を三回、それから局長会議を四回、課長会議を十四回開催してまいりました。

 それぞれの会議では、内閣官房を初めといたしまして、環境省、厚生労働省、経済産業省などからそれぞれのレベルで担当者が参集いたしまして、アスベスト問題に関する関係省庁の取り組み状況などについて意見交換を行いました。それから、アスベスト問題への当面の対応、あるいは石綿による健康被害の救済に関する基本的枠組み、政府の過去の対応の検証などについて取りまとめてまいったところでございます。

村井委員 そういった中で、縦割りが今回はひどかったんじゃないかというのがマスコミなどにも言われています。

 その局長級会議、課長級会議などの議事録などは公開されているんでしょうか、どうでしょうか。

青木政府参考人 私も関係局長会議などに出ましたけれども、議事録をまずとっていたかどうか、というのは、これも縦割りと言われるとあれなんですが、これは内閣官房が事務取りまとめということでやっておりましたので、ちょっとそこのところは定かでありません。

 しかし、局長会議とか課長会議もそうだったと思いますが、あるいは、当然のことながら閣僚会合などでも、そういった会議で話し合ったこと、決めたこと、そういったことについてはその都度公表しているというふうに理解をしておりますし、とりわけ関係閣僚会合ではかなり文書できっちりと取りまとめを行っている、そしてそれを公表しているというふうに理解をしております。

村井委員 さて、その中で、そうやって各省庁横断して会議を十分やっておられるという話を今言われた。議事録が、閣僚会議のときはきちんと出ておられたんですが、局長級会議、課長級会議はどうだったのかをちょっとお聞かせ願いたかったんですけれども、何度もそういった話ばかりしているのもなんなので、とりあえず今お伺いしたいのは、そういった省庁間でばらばらで、どこへ何を聞いてもみんなパスされていくという状況の中で、尾辻厚生労働大臣はリーダーシップをとって、どこか一つ確たる窓口をつくって、アスベスト問題に対して対応していこうという御覚悟などをお聞かせいただければと思います。

尾辻国務大臣 それは今政府の中に関係閣僚会議もできておりますから、そして、そうしたこと、政府全体のことというのはやはり官房長官が取りまとめ役でございますから、そうしたところできっちりこのアスベスト問題についても政府全体の取り組み、それからまた、いろいろなお問い合わせに対するお答えというのはしなきゃならないというふうに考えておるところでございます。

村井委員 ぜひ大臣の方にはそういった中でしっかりとリーダーシップをとって、今の縦割り行政、そうじゃない、ここに聞いたら全部の窓口になるんだ、省庁を超えたプロジェクトチームみたいなものをつくって、国民の議論、それから注目の的となっているこのアスベスト問題に取り組んでいただければというふうに思います。

 最後に、青色、茶色のアスベストに対し、白色のアスベストは比較的危険性が低いとしていますが、その根拠、背景などをお聞かせください。どうして白が安全だというふうにおっしゃられたのかをぜひお聞かせください。

青木政府参考人 これは、昭和四十七年のWHOのがん研究機関の評価におきまして、青石綿、クロシドライト、これによる中皮腫の発生のリスクは、茶石綿、アモサイトや白石綿、クリソタイル、これより大きいとされたことが一つでございます。

 また、平成元年のWHO勧告で、青石綿と茶石綿の使用禁止が求められたということから、青石綿、茶石綿に対しまして白石綿が比較的危険性が低いということとしたということでございます。

村井委員 どうもきょうはありがとうございました。前半、障害者自立支援法の関係でちょっとエキサイトした部分があって申しわけなかったんですが、ただ、こうやって一番肝心な資料ですら隠されているというこの状況、自民党の議員の皆さんもぜひ理解してください。野党議員が聞こうがだれが聞こうが、軽減措置について全く数字がわからない、こんなばかな話ないと思うんです。ある程度のものを出すとおっしゃられた。ぜひ、来週出される資料というものをしっかり見つつ、そして、来週からのこの障害者自立支援法、与党案そして野党案、お互いしっかりとこの問題、議論をしていきたいと思います。

 来週からの提出される資料、そしてきちんとした数字に期待を申し上げ、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

鴨下委員長 午後一時三十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時五十一分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時三十四分開議

鴨下委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。吉井英勝君。

吉井委員 日本共産党の吉井英勝でございます。

 七月の当委員会に引き続いて、きょうはアスベスト集中ということで質問をいたします。

 私、先日の石綿による健康被害の救済に関する基本的枠組み案、あれについていろいろな御説明をいただきましたけれども、対象疾病が中皮腫と肺がんという二つになっておりましたので、実は、この問題についても記者会見をされた細田官房長官にこの間、十月十二日の内閣委員会でこの問題について質問をいたしまして、それは、そのとき私が紹介しましたのは、七月にも御紹介しましたけれども、ニチアスという会社のあの死亡された石綿被害者の方の疾病は中皮腫と肺がんだけじゃなくて、じん肺、間質性肺炎、急性呼吸不全、急性肺炎、肺炎・気管支炎、じん肺・肺がんなどであることも紹介し、同時に、二〇〇三年九月十九日の労働基準局長通達では、石綿による疾病として、中皮腫と肺がんのほかに石綿肺、良性石綿胸水、びまん性胸膜肥厚などを労災認定の基準として挙げていらっしゃるということも紹介をして、その上で、アスベスト由来の疾病というのは中皮腫と肺がんの二つだけでなく、これらすべてを対象としてきちんとすき間なく救済していくべきではないかという質問をしたわけです。

 これに対して、細田官房長官の方から、当然ながら病名を限定する必要はないので、アスベスト由来の疾病であるということがはっきりしておれば当然含まれるという答弁をいただいておりまして、ですから、私はこの問題、繰り返しの質問をしても余り意味がありませんから、きょうはこの上に立って、尾辻厚労大臣にまず幾つか、確認的なものも含めて質問をしたいと思います。

 中皮腫と石綿被曝の履歴などの因果関係というのは、これはなかなか明確にするのは難しい場合もありますね。それから、かなり痛い思いをしていただかないときちっと把握することは難しいとか、いろいろありますから、中皮腫の人は全部まず救済する、こういう立場で臨まれるというふうに理解していいのか、ここを伺います。

尾辻国務大臣 今後検討いただく部分はありますけれども、基本的に、私は、もう中皮腫はアスベスト被害だという考え方でいいと思っておりまして、よく、疑わしきは救済すべしという表現で言っておるのはそういう意味でございます。

 細かく言うと医学的にいろいろな、またありますけれども、大きくお答えを申し上げます。

吉井委員 それから、私は大人になってからはまずたばこというのはやめていますから吸っていない方ですけれども、石綿と喫煙との問題は、肺がんの方ですね、これはこの因果関係がどうといっても、二対八なのか三対七なのかとか、なかなか簡単にはわかる話じゃありませんが、石綿にかかわる職業履歴や居住履歴に関係する人の疾病であれば、これは喫煙歴の有無にかかわらず、私のようにたばこをもう長くやめている者は余り関係ないということにしても、あるいはひょっとしたら昔のことがかかわりがあるかもしれませんが、それはおいておくとして、やはりかかわったという履歴があれば、これは喫煙歴の有無にかかわらず中皮腫や肺がんなどの人はすべて救済していく。

 逆に言えば、石綿と関係のある職場にいたこととか、あるいは工場近くに住んでいた人なら、肺がんが、喫煙したかもしれないからといってなかなか決めないということじゃなくて、そういうふうにしてしまうと肺がんの人がなかなか簡単に救われないということもありますから、ここはやはり先ほど中皮腫について大臣がおっしゃったように、大臣の方で、こういう場合についても職業履歴、居住履歴等がはっきりしている場合、そして肺がんということになってくれば対象として、もうその比率がどうだこうだということは別にして考えていくということがやはり大事なんじゃないかと思いますが、これも大臣のお考えを伺っておきます。

寺田政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま職業履歴等々の御質問ございましたけれども、石綿による健康被害の救済に関する基本的枠組みでは、対象となる疾病を、石綿を原因とする疾病であることを証明する医学的所見があることということをもって認定をするということにしております。対象疾病、石綿を原因とする中皮腫及び石綿を原因とする肺がんとしております。

 この制度の考え方というのは、平均三十八年に及びます長い潜伏期間があって発症する病気であるということでございますので、基本的には、どのような職業につかれていたかとか、あるいはどのようなところに居住されていたというような履歴は問わずに、アスベストによって罹患したということが医学的に証明できれば救済するという考え方をとっているところでございます。

吉井委員 先ほどの中皮腫の場合にしても、医学的にということはもちろんあるんですけれども、しかし、かなり痛い思いをしないとわかり切らないという場合、そこはきっちりしないと救われませんということではなかなか大変だというところから大臣の先ほどのお考えも示されておりますので、これは、たばこの方が主たる原因であるとか石綿の方が主たる原因であるとか、そこがはっきりしないから相手にしないというのではなかなか救われません。

 ですから、医学的に石綿とのかかわりがある人で、当然その場合、職業履歴や居住履歴等でちゃんと見ることも、かかわりもわかってくるわけですから、その場合にはたばこ云々にかかわらずきちんと見ていくようにする、こういうことは先ほどの大臣の考え方と私は一致するものだと思うんですが、だから、大臣に伺っていたんです。

尾辻国務大臣 中皮腫に関しては先ほど申し上げたとおりであります。

 ただ、肺がんにつきましては、今先生もお述べになっておられますけれども、喫煙との関連も極めて大きいものがございます。したがいまして、やはり現在の認定基準におきましては、原発性肺がんであるということ、それから石綿を原因として発症したものと推定できること、これが今先生が言っておられる痛い思いという話でもあるんですが、それからおおむね十年以上の石綿暴露作業従事歴があることといったようなことで認定をいたしておるところでございます。

 これをどうするかというのは、いろいろ御議論もあるところでありますが、やはり冒頭申し上げたように、肺がんについてはいろいろな原因が考えられるものですから、アスベストであるということをきっちり突きとめてという対応になることは、今のところこういうやり方でありますし、今後の議論ではあるでしょうけれども、改めてお答え申し上げてもそういうお答えになるところであります。

吉井委員 だから、冒頭申しましたように、厳密な因果関係となると、これは医学的な究明といえども、喫煙によるものが三の割合で石綿が七の割合とか、その逆だとか、それは多分、相当きっちりしたことをやらぬとなかなか難しいと思うんですね。

 それがきちんと解明されないから、当初考えておられた二つの症例のうちの肺がんとはなかなか認めてもらえないとなると、それは救われないことになります。だから、私は、たばこを吸っている人の場合、一〇〇%石綿が原因だということが確認されるまではだめというふうには決めつけないで、石綿によるものとうかがわれる人で、厳密に言えばたばこが主因かもしれないけれども、しかしその人もきちんと救済を図っていくということがやはり大事だと思うんですね。そのことを言っているんです。もう一言で結構です。

尾辻国務大臣 言葉で言いますと、アスベストが何らかの原因になっているということがわかれば、それは当然、救済の対象になるということでございます。

 ただ、それをどう判断するか、現実の判断というのは大変難しい問題もあろうと思いますが、今後、また医学の進歩などで、そしてまた、特に中皮腫に関して言えば、治療法を早く見つけなきゃいかぬ。これはまた研究班も立ち上げて努力もいたしておりますし、そうしたいろいろなことの中で、医学の進歩の中で、今後、これはアスベストが原因だなという診断もつきやすくなるところもあると思いますので、そうした中でこうした問題に対応していかなきゃならないというふうに思っております。やはりアスベストが原因であるということをはっきりさせないとなかなか対応しづらいということは御理解いただきたいと存じます。

吉井委員 私は、そこはもうこれ以上言っても、そこから変わってこないでしょうから。

 やはり石綿の職業履歴、居住履歴、因果関係が認められて、石綿と思われる肺がんとなっている方の場合、たばこを吸っているから、あなたはたばこが原因かもしれないということでやり出すと、これはなかなか救われません。ですから、厳密に一〇〇%ということに至るまで救われないということでは、これはせっかく基本的枠組みを考えられたけれども、だんだん話を聞いているうちにその枠はうんと小さいものになってしまうというのでは意味がありませんから、ここは私の申し上げました趣旨をよく生かしたもので考えていってもらいたいというふうに思います。

 次に、健康管理手帳に関しては参考人の方に伺っておきますが、これを受けた労働者の方は、退職後の治療費等は給付されるわけですが、この場合、石綿専門の医療機関が近くにない場合、たしか通達だったらかなり一定の距離があったかと思うんですが、自宅から四キロ以上とか、遠距離であっても通院費はきちんと支給されるということになってきますね。これを伺っておきます。

青木政府参考人 現在、労災保険におきましては、移送費ということで、災害現場から医療機関への移送でありますとか、転医などに伴う移送ということで一定の給付をしておりますけれども、同時に、今委員がお触れになりましたように、四キロという距離を言っておりますけれども、自宅から医療機関までの距離あるいは医療機関の専門性等について個々に判断して支給の可否の判断をしているところでございます。

吉井委員 それでは、次に、被害者を救済する上で、やはり住民の方たちの健診ですね、つまり、最初は、ひょっとしたらアスベストによってという思いはあっても、なかなかわからないんですね。

 例えば、私にしても、アスベストにかかわる研究もやれば仕事にも携わっておりましたけれども、まさか自分がかかわりがあるとは思っていませんから、よくわからなかったんですね。しかし、エックス線ぐらいですと、これはひょっとして昔肋膜をやって自然に治った跡じゃないかぐらいでも、CTかけたらやはり胸膜肥厚というのはわかるわけですね。胸膜肥厚とわかってきたときに、定期的にきちんと追跡しておかないと、それが広がっていく問題とか、さらに中皮腫その他になっていってもいけませんから、これもきちっとまず管理しなきゃいけないんですが、問題は、多くの方の場合、アスベストの工場周辺に住んでいて今問題になっていらっしゃる方たちは、わからないんですね。

 そうすると、わかってから認定ということであれば、わかるまでの間の救済というのはないんですね。私は、健康診断にしても手術にしても抗がん剤使用にしても、将来、認定されたら手術、抗がん剤使用等はもちろん変わってくるにしても、やはりすき間なく対策ということですから、そうすると、今だったらアスベスト被害者がすべて最初の健診等は負担しなければいけないわけですが、これはやはり国の方でも放置してきている間に被害が広がってきておりますし、既に自治体の方ではこれは各地で取り組んでいるわけですね。

 かつて、十年ほど前になりますが、熊本県の松橋の方では、あそこでは、松橋町のころは約二万数千人、三万人近い町民の方の中で、一万人ぐらいの方の健診を公的に行って、約一千人を超える方が要管理ということで、今、本当はもう少しきちんとした管理をしなきゃいけないと思うんですけれども、とにかくそういう公的にもやっているわけですね。自治体では、尼崎にしろそのほかのところにしろ、鳥栖もこの間そうですが、住民健診に取り組んだりとかしているわけですね。

 私、やはり認定を受けたら後の対策をということだけじゃなしに、今大事なことは、一定の地域について、一億二千万全部という話じゃありませんから、おのずからわかってくるわけですから、それは公的にも住民健診も行って、きちんとそういう段階から被害者の救済に当たっていくというこの取り組みというものを考えていくべきじゃないかと思うんですが、ここは大臣に伺っておきます。

尾辻国務大臣 今お話しいただきましたような、周辺住民の方々含めまして、いろいろな不安も感じておられます。そうした皆さんに対する健康診断をどうするかというのは大変重要な課題の一つだというふうに考えております。大きく不安への対応ということでは、環境省とともに真摯に対応してまいりたいと考えております。

 そうした中で、周辺住民の方々に対する健康診断につきましては、健診の対象でありますとか、効果的な手法というのがどういうものであるか、それから技術的な面での検討も必要でございますので、今、専門家の方々にお集まりをいただきまして、専門的に、そして最新の知見をもって検討していただいておるところでございます。

 専門家の皆さんの御意見をお聞きしますと、いろいろな御意見が出てくるものですから、今、御意見を伺いながら検討いたしておるところでございまして、答えを出したいと考えております。

吉井委員 現段階では検討ということで、しかし、これは本当にやってもらいたいと国民の皆さんが願っていらっしゃることですから、それから、大臣もお聞きになっておられると思いますが、地方自治体の方からもそういう声が出ているときですから、これは本当に真剣に取り組んでいくべきものだというふうに思います。

 そして、この住民健診をやって、さっきの松橋ですと、要管理の方の中でも亡くなられた方とか転出された方とかいらっしゃいますから、昨年度ですと、管理実数で千百五十二名の方とか、転出された方は、実は、私は大阪ですけれども、近いところにおられて、熊本の松橋でお兄さんは中皮腫の疑いで手術された方ですけれども、妹さんの方が大阪へ移ってこられて、それからやはり中皮腫で酸素が欠かせないという暮らしをしておられます。そういう場合、松橋の方で被害を受けたんだけれども何の救済もないというのが現実なんですね。

 ですから、これはやはりきちんと健康調査をやって、そして要管理者が見つかったときには、そのときからは恐らく考えていらっしゃる、この基本的枠組みに基づく法律の中でも何らかのことを考えていかはると思うんですね。そこへ行くまでの間に、まずその段階でも必要なんですよ。

 そして、私は、その健診を受けて一回目は大丈夫でも、私なんかは昔それほどそういう心配はなかったんですけれども、やはりだんだん出てきましたから、異常が見つかれば定期的にフォローすることが大事なんですね。そういうことをやっていくとなると、松橋の方では要管理者としてやっていらっしゃるんですけれども、やはりその場合には、労働者の方の場合は、現役のときは労災があり、退職後は健康管理手帳と。ですから、やはり周辺住民の方たちについても、そういう健康管理手帳の交付を行ってきちんとした対応をしていく。それをやっていかないと、法律を考えてもそれはなかなか生きたものになっていかないと思うんですが、この点についてはどのように進められますか。

寺田政府参考人 お答え申し上げます。

 アスベストに暴露した可能性の高い方たちに対するフォローアップということだろうと思いまして、私どももその重要性は認識しているところでございます。

 環境省におけます検討を申し上げますと、実は、本年七月からアスベストの健康影響に関する検討会という検討会を設けまして、一般環境経由のアスベストによる周辺住民の健康被害に関する調査や検討を進めております。また、先ほど来委員御指摘の尼崎等におけます健診の実態、情報等についても把握に努めているところでございます。

 こうした情報を踏まえましてこれから検討してまいりたいと思いますけれども、健診等ということになりますと、既に幅広く行われております既存の健診制度などとの関係も考えながら、必要性、あり方、実施する場合の費用負担、実施主体等々、いろいろと検討することがあるのではないかと考えているところでございます。

吉井委員 地方自治体含めて、既にもう負担をして進めているんです。国がどういう対応をしていくのかということが今求められているときです。ですから、実際、市民でアスベストによる疾病にかかられた方についても、健康調査だけじゃなくて、そちらについても保険制度その他で地方自治体も本人も負担しているわけですから、問題は、国の方がそれに対してどう取り組んでいくかということです。ただあちこちのデータを集めて検討していますだけでは、今の環境省のお話だけでは、これは皆さんの納得できるような話じゃありませんから、大臣も、政府を挙げてきちんとした対応を早く取り組んでいただきたいというふうに思います。

 そこで、私、この石綿産業というのは、ある意味では、これはもともと国策から始まった面があるなというふうに最近地域の市史などを読んでおりまして感じるんですが、例えば大阪の泉州の石綿工場について調べてみると、これはもう二十年近く前になりますが、一九八七年の二月現在で、泉州九市町村で実は八十三社石綿工場がありました。その内容を見てみると、従業員が一人から五人の零細企業が三十六社で四三%、六人から十人の中小企業が十六社の一九%と、いずれにしてもほとんど九割が二十人以下の零細なところなんです。

 では、それをもう少したどってみれば、どのころからかというふうに関心を持って見ていくと、実は、一九一二年、明治四十五年のことですが、泉南市の信達というところに日本石綿工業というのができたんですが、これが創業二年後にちょうど第一次世界大戦が始まって、事業を拡大する時期に入ってきたんですね。

 特に大きな買い付けといいますか、それは当時の軍艦ですね、艦船の建造、軍備拡張の中で石綿需要がぐっとふえて、陸軍、海軍の事実上の下請工場という形でどんどん大きくなっていったという経過があります。それから、航空会社の下請、これは当時ですと軍事とかかわったものですが、そういう中で青石綿も白石綿も茶石綿もつくられてきたということなどが地域の市史に紹介されております。そういう点では、石綿工業というのは、陸軍、海軍の下請工場から始まって、そして、言ってみれば国策として隆盛をきわめた、そういうのが戦前の最初の始まりでした。

 ですから、そういう点では、国としても、この地域における石綿の被害者、また零細でやっておったものですから、非常に深刻な問題が今だんだん明らかになってきているんです。私も、泉州もそうですし、奈良の王寺の方で聞いたときも、昔は石綿を忙しいときに手でつかみまして手がちくちくしましたとか、綿ぼこりが舞うようにとか、今から考えればなかなか深刻な状況の中で働いていた。

 しかし、それに対して、国として、被害はあったんですけれどもきちんと手を打っていなかったということがありますから、私は、石綿の被害の問題については、やはり国として、今度も国の責任ということも考えて費用負担とかいろいろ考えていかれるようですが、やはり石綿の問題については、国もかかわってこれを始めて大きくしてきたということと、それから、石綿の被害がかなり早い段階でわかっていたのにきちっと対応してこなかったという面で、やはり国としてかなり大きな責任を感じて取り組んでいただくということが必要じゃないかというふうに思いますが、この点について大臣に伺っておきます。

尾辻国務大臣 今私どもが考えておりますのは、アスベストの潜伏期間というのは平均して三十八年というのが私どものデータでございます。いずれにしても、大変長い潜伏期間がある。それをさかのぼりまして、因果関係など言いますと、責任がきっちりどこにあるかとかいう話になりますと、どうしてもそうした因果関係なども言わざるを得なくなってきますから、今考えておりますことは、とにかく非常に深刻な事態であることだけは確かでありますから救済しよう、とにかくまず救済するということを考えておりまして、そのことに、これは政府挙げて、まさにそういう意味では政府の責任で救済をするということにいたすつもりでございます。

吉井委員 私、この点では、国の責任ということを考えていく上では、せんだっても質問主意書の中でも上げておきましたけれども、一九五七年二月四日と一九五八年十一月、半世紀前ですね、石綿被害がうかがわれるということで、大阪の石綿紡織工場等の環境調査を既にやっているんですね。それは七一年に定めた基準からすると五十倍以上の汚染だったという非常にすさまじい状態だったんですが、結局、基準を設けてきちんと対応しようとしていったのはそれから十三年も後のことでした。

 それから、もう一つ、大阪の労災病院の方ですね、これは厚労省管轄ですが、そこの医師の方の論文が一九七一年に既に発表されているんですが、その中でも、一九五六年から一九七一年の三月にかけて石綿肺で労災認定された方が四十五人いたということ、それから、石綿肺に高率な肺がん合併の主因、合併の症状があるんだけれども、その主因は、上皮の異常増殖の部位が多発して、がん発生の組織素因を形成しているという指摘など、もう随分前から実は厚労省の関係する方たち、それは労基署が調べたりとか労災病院の方が既に調べて発表したりしていたのに、この点では、厚労省の、国の対応というのは非常に遅かった、半世紀前からいろいろな取り組みをやりながらおくれてきたということについて、私は、改めて今検討等をやっておられますが、その責任というものをどのように考えていらっしゃるか、その責任に基づいてこれからどうするかというその決意だけ伺って終わりにしたいと思います。

尾辻国務大臣 これはいつもお答え申し上げておることでありますが、四十七年にILO、WHOががん原性を指摘します。それ以前、私どもはやはり粉じん対策として対策を講じてきた。その後、がん原性ありということで対策を講じた。そこのところで大きくターニングポイントとでも申しますか、対策、対応が変わっております。

 したがって、粉じん対策でやっていたときとそれ以降のことで分けて考えなきゃならない。そうなると、先ほどの三十八年の潜伏期間ということを考えますと、検証というのは今後さらにいたしまして、とにかく十年後の検証をきっちりやるべしと私は言っておるところでございまして、その辺で、私どものこれまでしてきました対策、対応が効果があったのかどうかというのを判断したいというふうに考えておるところであります。

吉井委員 要するに、第一次大戦後から、国策もあって石綿工業がどんどん発達して日本の軍備を支えてきたわけです。同時に、戦後の中では、もう半世紀前から厚労省の管轄のところで、労基署にしても労災病院にしても深刻な事態をつかんで調査などをしていたわけですから、それが具体的に禁止措置などをやるのがおくれた、そこはやはり国の責任は重大だということを申し上げて、時間が参りました、質問を終わります。

鴨下委員長 次に、阿部知子君。

阿部(知)委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。

 さきの国会に引き続きまして、この厚生労働委員会で一般質疑、とりわけアスベスト問題でのこういう集中した審議を設けていただきまして、両筆頭プラス委員長にお礼申し上げますとともに、やはり事の重大性、問題の重大性というのは、あるいはまた国民が抱いておる不安というのははかり知れないものがあると思います。

 せんだって、私は、たまたまことしは被爆六十年の年ですので、被爆関係の団体に呼ばれてごあいさつしてまいりましたが、広島、長崎の被害を受けられた方二十万人以上、そして今、このアスベスト問題も、集計の方法いろいろございますが、将来にわたって、さっきの大臣がおっしゃるロングタームをとれば十万とも二十万とも、肺がんを含めていろいろなアスベスト被害が私どもの社会に厳然として存在するであろうということを考えれば、私は、事態は幾ら重く見ても行き過ぎはないだろうというふうに考えるものであります。

 そうした大きな課題を抱えた中で、尾辻大臣がせんだってもNHKの三時間番組に、あれは皆さんと御一緒ではなくて、たしか離れた場所だったと思いますが、お出になられて、そのときに、尼崎で実際に亡くなられたお母さんを持つお嬢さんとか、あるいは闘病中の患者さんに対していろいろお声を聞かれて、またその直後に実際に行かれてお目にかかられて、早速に労災関連の行政の問題を、中皮腫の認定ということに幅を持たせることを含め、それにかかわる通院治療費などについても前向きに検討したいというふうに、日々リアルタイムというか、日々のアクションを起こされていることに心から敬意を表したいと思います。

 私は、きょうの審議を聞きながら、幾つか確認をし、なお提案をさせていただきたいと思うことがございますが、実は先ほど五島委員の御質疑に、経済産業省あるいは国土交通省の方からも、審議官でしょうか、お出ましあそばしていろいろ御答弁でありました。確かに五島先生の御質疑は全般にわたっておりますし、私どもも聞いていてすごく勉強になったと思う気持ちは同じでございますが、しかし、例えば担当の皆さんから、初めて全貌がわかりましたと言われると、やはりまだその程度のもので、この問題が本当に検証されるまで、各省庁おのおのに検証すべきことがあると私は思うのです。

 国土交通省も経済産業省も、それからきょうは出ておりませんが、私がずっと問題にしております石綿の輸入問題は、これは財務省関連でございます。それから、尾辻大臣が頑張ってくださる厚労省関係は、労災の問題、あるいは幅広くさらにさらに問題がある。環境問題もある。こういうことで行政がどう対応してきたかということを検証するに当たって、いわば内輪で会議をしておりますと、検証と申しましても、いただきました文書を見ても、私はどうしてもこれは納得できない、あるいは甘い、緩い、本当かと思うようなところがたくさんございます。

 それだけを言っていてもこの審議が終わってしまいますし、一方で現実に被害に苦しむ方がおられて、その検証の論議に多くを費やすということも望むものではございませんので、大臣には、例えばハンセン病の検証会議のような、あるいは、BSEも外部検討委員会を設けて、果たして農水行政はどうであったかを検証されたわけです。

 私は、これから先、大臣がおっしゃるように、十年、二十年、三十年と見ていくためには、今ここでしっかりした検証ということが、ぜひとも中間点で必要でございますから、そうしたもっと骨太の検証会議、検証作業が行われるような仕組みをお考えいただけまいかと一つは思うわけです。この場でも、ハンセン病の検証会議の方が見えて、私どもも資料もいただき、これは将来にわたる、我が国のこうした伝染病隔離行政の持っていた非常な問題を今後も私たちにある意味で見返るいい教科書となると思うわけです。

 そこで、大臣に一問目は、今までのようなかりそめの検証、まあ、とりあえずの検証と呼んでおきましょうか、それ以上に、やはりきちんとした、これは省庁の外のそれなりの見識のある方々を加えた検証会議の設定というものを、今内閣府で各関連省庁会議でおありでありますが、そういうことと違って、行政サイドと違っておつくりいただけまいかというものを一点目、お願いいたします。

尾辻国務大臣 政府全体で検証をしてまいりました。そして、政府全体としての検証はきっちりやったつもりでありまして、報告書も出しておるところでございます。したがいまして、一遍そういう形はとっております。

 ただ、申し上げておりますように、今後の検証は当然しなきゃならない。特に十年後、きっちりした検証をしなきゃならないと考えておりますから、そうした今後の検証をどうするかということの中で、今お話しいただいたようなことも含めて私は検討するべきことだと思っておりますので、そうしたことを含めて今後の検証の検討はさせていただきたいと存じます。

阿部(知)委員 ぜひ本格的なというか骨太の検証会議をつくっていただきたい。これは、諸外国でも社会を揺るがすような大きな問題に発展しているものでございますし、我が国の各関連省庁にとっても見直すべき点は多いと思います。

 そして、残念なことに、各省庁の担当者は自分の担当された年限の中でおのおのやられるのでしょうけれども、それがどのように長期的に縦横に連携しているかということにおいても、この問題は私は非常に根が深いと思いますので、今の大臣の御答弁を前向きに受けとめさせていただいて、よろしくお願いしたいと思います。

 あと、ただいまの吉井委員もお取り上げでございますが、住民健診ということについて午前中の委員もお取り上げがございました。それに対しての恐らく老健局長のお返事であったかと思いますが、ただ単に、例えば住民健診、レントゲンを一枚撮れば、それによる被曝量の方が心配なのでと、こういう答弁がずっと繰り返されているわけです。

 私は、その答弁を聞きますと、何て健診というものを機械的に考えておられるんだろうと。そういうので健診というんじゃないんだよということをちょっと大臣にもしっかりと御認識いただいて、論議の土壌をつくらせていただきたいと思うんです。

 実は、私は、先国会が終わって今国会が始まるその間に選挙があったわけですが、土井さん、前党首とともに尼崎に行き、住民の皆さんともお目にかかって、いろいろなお話を伺ってまいりました。その中で幾つも印象的な事例がございましたが、例えば、三十五歳の息子さんが、三十五歳で中皮腫で亡くなられておるんですけれども、そのお母様はもう八十お近くて、今肺がんだと言われてというお母様の方にお目にかかったのですが、子供さんがお小さいときにクボタの構内で水道管が並べてある中で遊んでいたと、恐らく幼いころの暴露なんだと思うのですね。そうすると、大臣のおっしゃる平均三十八年、その前にもう亡くなってしまっているわけです。おまけに、実はクボタの工場周辺には小学校もあり、幼稚園もあり、あるいは保育園もあって、そこに子供を通わせていたという方もおられ、当時の子供はもう中供というか、大人も超して中年になっておられるわけです。そういう方々、皆さんが健康不安を抱えておられるわけです。

 私は、大臣が住民とお会いくださった、皆さんの声を聞いてくださったということは、本当に大変ありがたいと思いますし、評価しておりますが、しかしながら、今行政の、特に厚生労働行政あるいは環境省のいろいろな調査の行政の中で、住民調査、わけてもクボタ周辺の住民の皆さんが抱える不安にどうこたえていくかということがいっかな実行されないわけです。

 環境省の方では、この三年間で中皮腫で亡くなった方、この方たちの居住歴や職歴をお調べであるということは存じております。しかし、亡くなってから、あるいは症状が出てから以前に不安を抱え、そして、大臣も御存じだと思いますが、実はクボタ周辺では中皮腫による死亡が四十一人、患者さんが五人の計四十六人、現在はっきりしておりますが、この死亡率たるや全国平均の九・五倍なわけです。

 ある地域にお住まいで、ほかの地域より九・五倍という確率で罹患する、そういう実態の中に暮らしておられる尼崎の皆さんにとっては、例えば健診とはどういうことを言うのかというと、私など小児科ですから、子供さんの発達のおくれがあるということで健診をかけますが、その場合は、すぐレントゲンを撮ろうとか、CTを撮ろうとかじゃないんです。まずお話を聞き、どこでどういうふうに成育されて、どこでどんな問題がありましたかということも健診なんです。これも含めての、そしてその方にレントゲンが必要かCTが必要か、それ以上の検査が必要かというふうに区分けしていくのも医師の力量なんです。それらすべてを含めて健診。健診は住民が安心して日々を生きていただくため、このお話し合いだけで安心される場合もあるわけです、あなたの場合は大丈夫ですよと。そういうことをなぜ早急に手をつけないのか。

 厚生労働省が有識者をお集めになりやっている会議も、医学の専門家を集めてこのたび四回になりますが、その座長をやっておられる森永さんが、既に八月四日の時点で、早急にやるべきだ、これをやっていないのは怠慢と言われても仕方ないと言われて、そして、しかしまだ会議は踊るです。

 本当に住民の、尾辻大臣だって、お一人か二人の声を聞いただけで、ああ、これをやらなきゃいけない、こういう隠れた問題もあったのか、そのときに対策が浮かぶわけです。私は、正直言って、大臣はすごく努力されていると本当に思います、この間のいろいろなところでの御発言を拝聴しながら。しかし、本当にやっていただきたいクボタの周辺住民の住民健康診断、そして、もっと言えば、それは疫学調査にもつながっていきます。

 何だか、先ほどの老健局の御答弁を聞いていると、レントゲンは放射線量が云々で、発がんが云々で、しかし、それは不安を抱えた住民の気持ちを全く逆なでする答弁でしかないのです。このそごを、行き違いを埋めていかない限り、私はいい行政というのはできないと思います。

 大臣は、この専門家会議の冒頭で、国民の立場で住民の不安にこたえてとおっしゃっています。まさしくそのとおりです。そして、過剰なことをやれと言っているのではないのです。聞き取る。それは専門家の耳で聞き取る。状況が分析できます。そこから必要な検査が出ます。

 大臣、どうですか。早急にまずクボタ。クボタはすべての代表になります。ほかにもあります、ニチアス、あるいは埼玉県の行田、曙ブレーキ工業、周辺住民の被害が上げられているところは幾つもあります。でも、まずこのクボタをきっちり、国民にこたえるか、住民にこたえるか、不安にこたえるか、このことがアスベスト行政の私は根幹になると思いますので、大臣のお考えとまた決断をお願いいたします。

尾辻国務大臣 今先生に御指摘いただいて、ああ、たしか私もそう言ったなということを思い出しました。専門家の皆さんがお集まりになったときに、どうぞ、ぜひ我々専門家でない者にわかるような議論をしていただきたいということをお願いしたことを記憶いたしております。ぜひそういう視点で答えを出していただきたいと思い、それを願っておったわけでございますが、その後、四回会議は開かれておりまして、結論が出ていないことも承知をいたしております。

 ただ、その間でどういう発言があったのか、今八月四日にとたしか先生言われたように記憶いたしておりますが、そういう座長の御発言もあったやに今お話を伺いましたので、もう一度私もその辺の皆さんの御発言も改めて調べてみます。そして、今言われるような視点でこの問題を見たときにどうなるのかなということは、私も考えてみて結論を出したいと思います。

 確かに、今まで答えておりますのは、そして私も話を聞いて理解しておりましたことは、もっと広く、うんと周辺住民の皆さんを広くとらえて、そしてどうするのがいいかというような議論で、先ほど来お答えしているような答えがついつい出てきているんだとも思いますので、もっと本当に不安を感じておられる皆さんにどう対応するのかというのは、そういう広く周辺住民をとらえて考えることとはまた別な話だと思いますし、そこのところはどうするのがいいのか、これはもう一回、きょうの先生のお話を伺いまして、私自身がまず考えてみたいと思います。

阿部(知)委員 ありがとうございます。

 子供の例を挙げましたのは、実は、南アフリカで、あそこは主に青石綿を産出しておりましたが、鉱山周辺で、子供がごみの山にいても、その子供が若くして中皮腫になったりしております。あるいは、そこで働いていた子供がなっております。そういうことからすると、やはり子供が大人とは違う機序でより早くに発症する。最近、若年者の発症ということが大変に言われております。私は、こういうこと一つとっても、大臣がおっしゃる三十八年というのを聞く都度、やはりそれは一部である、もっと本当の検証をしてほしいといつも思っておりましたので、よろしくお願い申し上げます。

 あと、現在持っているデータでできることで、私が一つ、本日、午前中の審議を聞きながら御提案したいと思います。老健局長の先ほどの御答弁ともかかわりますが、日本は実は肺がん検診というのをやっておりまして、レントゲンを撮っております。先ほど来問題になる、一枚撮ると発がん性が高まると言われても、肺がん検診では撮るわけです。そして、この肺がん検診のために撮ったレントゲンを分析いたしますと、その地域によっていろいろな頻度が、どの程度今から見た胸膜肥厚があるか、これは全例出るわけではありません、CTのように精密な検査ではないですから。しかしながら、後から見てみて利用できるデータはないかというときに、老人健診で用いた胸部レントゲン写真というのはかなりの情報量を持っていると思います。

 実は、そのことに関しまして、ここには、こんな古びた色になりましたが、私がその昔、一九八一年です、アスベスト問題でいろいろ勉強しておりましたときの朝日新聞の記事に、ここには厚生省の労働科学研究所の海老原先生という先生が、御自身がごらんになった老人健診の際のエックス線直接写真一万枚を分析しまして、都市部等、特に埼玉とか東京とか神奈川ですね、そういうところでのいろいろな胸膜肥厚の所見の出現率を比較されております。これは、その当時、まだ大気汚染の防止策もなく、いわば都市部ほど肥厚斑が多かった時代です。

 しかし、私どもは、今その目で振り返れば、何も一斉に住民健診とやらなくても、これまで厚労省が行政の中でやってきた資料、そこから出てくる財産を用いてこうした検証もできるわけです。そして、このときに、これは厚生省の労働科学研究所ですから厚生省も御存じな、当時は労働省でしょうか、情報は持って、お知りだったんだと思いますが、これだって、その後継承されないわけです。継承も検証もされないわけです。

 私は、そうやって健診やりっ放しというのが一番いけないし、もちろん肺がん検診に役立てたのかもしれません、しかし、今から見れば、そういうふうに活用もできる。あるいは、八一年にそういう指摘があるわけです。このアスベスト問題と我が社会が本当にがっぷり四つに組んでいこうと思えば、私はやれることはいっぱいあるように思います。

 きょう、この問題は質問予告せず、午前中の審議を聞いて思いましたので、大臣でも、あるいは老健局長でも結構です、私の今の指摘についてどのように受けとめていただけるか、御答弁をお願いいたします。

尾辻国務大臣 今先生からまたいろいろな御指摘をいただきました。この御指摘について、私どももいま一度真剣に向き合ってみたい、こういうふうに考えます。

阿部(知)委員 ありがとうございます。

 きょうは、宿題型、提案型でやらせていただきますが、もう一つございます。

 いわゆる健康管理手帳という問題で、きょう、どなたかがお取り上げでございましたが、実は神奈川県では、ちょうどアメリカがアスベスト問題で、これは危険だから禁止しようということを国内的には合意していた一九八〇年代の半ばに、横須賀において空母の修理を、母艦の修理を、危険だからかもしれません、日本でやるということで、横須賀の軍労働者の皆さんがたくさんアスベストに罹患された事件がございます。

 このことに端を発して、実は神奈川ではアスベスト労災問題は非常に勤労者の間の取り組みも熱心なところなのですが、そこで、現実にアスベストとして発症した方以外に、在日の米海軍の横須賀基地に働いたことのおありなOBの方全員に御連絡をとって、その方たちに健康手帳をとっていただくということをやりました。今、全国で健康手帳八百そこそこのうち、三百が神奈川だということですが、それはそうした熱心な取り組み、以前に暴露して今高齢期を迎えつつあるという方々、これはハイリスク群です。そして、現実にそういう方が発症した同じ作業に従事しておられたということで、これは県が積極的に取り組み、また、先ほど言いましたNGO、NPOも頑張って、一緒に支えた取り組みであります。

 午前中の答弁で、例えば各建設現場あるいは製造現場でいろいろ働いていた方についても、これから労災問題も含めてよりよい取り組みができればという御答弁でしたので、この横須賀における横須賀基地にお働きの皆さんの事例を先例として私がきょうお示しいたしますので、そのお働きであった方のOBにも健診をしていただくようなことも指導、そして健康管理手帳を必要であればとっていただく、このことをお考えいただけませんでしょうか。午前中の答弁の方でも結構です。

青木政府参考人 健康管理手帳については、確かにおっしゃるように、前にもたしか御答弁申し上げたと思うんですが、こういった大きな影響があるということからすると、本当に数として適正だろうかという思いもございます。そういう意味で、健康管理手帳の交付要件だとかそういったものも含めて、仕組みをもう少しよりよいものに考え直す必要があるんじゃないか、こういう思いで検討をしようということでございます。

 神奈川については、非常にそういうことで取り組みもあったということも聞いておりますし、お話しのあったようなことも考えながら検討していきたいというふうに思っています。

阿部(知)委員 ぜひよろしくお願い申し上げます。

 この国会では、先ほど来、切れ目のない救済政策がとれるようにということで、新法の御用意もなさっておられるということですが、私はそれに先立って、まず、今までの行政の中でもやれること、やるべきであったことがあるのではないか、もちろん新法で救済される方がおられることは大臣の御英断だと思いますが、それ以前に、やはりみずからを点検してみるということが第一であると思うわけです。

 そこで、今回、新法ができるとすると、その枠組みの一つに入れられると言われている労災補償を受けずに死亡した労働者、とりわけ時効問題ということで、これも大臣が非常に前向きにお取り組みくださって、亡くなってから五年を一日たりともたっていると労災が受けられない、あるいは、発病されて二年を経てしまうと今度は治療のための給付が受けられないなど、現行の労災保険の枠組みというのは非常に制約がございます。

 そこで、一問お伺いいたしますが、この間アスベスト問題で健康不安を抱える方たちにいろいろな相談窓口を開設されたと思います。その中で、こうした時効問題にかかわる事案は一体幾つぐらい相談が寄せられたかについて、まず実態を御答弁願います。

青木政府参考人 石綿に関する相談につきましては、ことしの七月三十日に、労災認定事業場リストを公表いたしまして皆さんに周知をするというふうなことをしたわけであります。それ以降、十月十七日までの件数を把握しております。これですと、全体の相談件数は一万六千四十三件あります。うち、御質問の労災請求の時効関係についての相談は四百五十五件でございました。

 ただ、時効の相談ということでありますけれども、この中には、時効制度一般についての問い合わせも含まれております。今御質問は、具体的に個々の相談者の方が時効にかかっているかどうかというようなお尋ねかと思うんですが、そこまではとれておりません。そういう意味では、すべてがそういうことではございませんが、いわゆる時効ということについての問い合わせというので四百五十五件ということでございます。

阿部(知)委員 四百五十五件、今御答弁のような内容も含めてですが、やはり多い数だと思うんですね。労災認定の中で重要な問題だと私は認識します。

 そこで、大臣にお願いがございますが、この時効問題は五年の死亡のほかに、先ほど申しました、現在生きておられるんですけれども、治療中の方も二年の時効で労災にははまらなくなってまいります。この方の御認識も大臣にはおありかとは思いますが、私はやはりこれは本来労災という枠で、だって労働災害ですから、ただ、四十年とか長い後に出てくるということもありますが、労災のあり方として見直していただけまいか。

 それは、いろいろな、大臣が中皮腫の診断基準を少し緩めることもとおっしゃいました。あるいは、事業所がどこだかわからないから認められていないという例もございました。基本は労災のあり方の充実だというふうに御認識いただいて、時効二年問題についても、鋭意、大臣としてのいろいろなお取り組みをいただけまいか。いかがでしょうか。

尾辻国務大臣 私も、この時効の問題、とにかく解決しなきゃいけないと思いまして、私なりにまた勉強もいたしておるところでございます、させていただいております。

 というのは、時効という考え方、日本の法律の体系の中から時効をなくすとか、時効そのものを外すということは非常に難しいことだというのもよく理解できますし、では、それを乗り越えてどういう答えがあるのかということで、今私どもなりに検討いたしておりますので、恐らくやはり新法の中で新しく救済するという形になるのかな、実は私は今それが一番現実的な対応の方法かなとは思っておるんですけれども、そうしたことを含めてよく検討をさせていただきたいというふうに思います。

阿部(知)委員 ありがとうございます。

 私どもは、冒頭、五島委員もおっしゃいましたように、本当は労災保険法の改正という形が望ましいと思っておりますが、大臣がお考えいただけるということですので、またよろしくお願いいたします。

     ――――◇―――――

鴨下委員長 次に、内閣提出、参議院送付、障害者自立支援法案及び山井和則君外五名提出、障害者の自立の支援及び社会参加の促進のための身体障害者福祉法等の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。

 順次趣旨の説明を聴取いたします。尾辻厚生労働大臣。

    ―――――――――――――

 障害者自立支援法案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

尾辻国務大臣 ただいま議題となりました障害者自立支援法案につきまして、その提案の理由及び内容の概要を御説明申し上げます。

 障害保健福祉施策につきましては、障害者及び障害児の地域における自立した生活を支援することを主題に取り組んでおりますが、現在は身体障害、知的障害、精神障害といった障害種別等によって福祉サービスや公費負担医療の利用の仕組みや内容等が異なっており、これを一元的なものとすることや、その利用者の増加に対応できるよう、制度をより安定的、効率的かつ持続可能なものとすることが求められております。

 これらの課題に対応し、障害者及び障害児がその有する能力及び適性に応じ、自立した日常生活または社会生活を営むことができるよう、必要な障害福祉サービスに係る給付その他の支援を行うことにより、障害者及び障害児の福祉の増進を図り、障害の有無にかかわらず国民が相互に人格と個性を尊重し安心して暮らすことのできる地域社会の実現に寄与するため、障害者自立支援法案を第百六十二回国会に提出しましたが、衆議院の解散に伴い廃案となり、成立を見るに至りませんでした。

 しかしながら、制度をより安定的、効率的かつ持続可能なものとするため、今回の改正を一刻も早く実現する必要があることから、ここにこの法律案を提案し、御審議を願うこととした次第であります。

 以下、この法律案の主な内容につきまして御説明申し上げます。

 第一に、自立支援給付は障害福祉サービス、自立支援医療、補装具の購入などに要する費用の支給とし、当該給付を受けようとする者は、市町村等に申請を行い、その支給決定等を受けることとしております。

 第二に、自立支援給付の額は、障害福祉サービス等に通常要する額の百分の九十を原則としつつ、利用者の負担が多額となる場合等については、家計に与える影響等を考慮して給付割合の引き上げを行う等、負担の軽減措置を講ずることとしております。

 第三に、市町村及び都道府県が行う地域生活支援事業に関することを定めることとしております。

 第四に、市町村及び都道府県は、国の定める基本指針に即して障害福祉サービスや地域生活支援事業等の提供体制の確保に関する計画である障害福祉計画を定めることとしております。

 第五に、自立支援給付に要する費用は、一部都道府県が支弁するものを除き市町村が支弁し、その四分の一を都道府県が、二分の一を国が、それぞれ負担することとしております。

 このほか、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律を初め関係法律について所要の改正を行うこととしております。

 最後に、この法律の施行日は、障害者支援施設に関する事項など一部の事項を除き、平成十八年四月一日としております。

 以上が、この法律案の提案理由及びその内容の概要であります。

 何とぞ、御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。

鴨下委員長 次に、村井宗明君。

    ―――――――――――――

 障害者の自立の支援及び社会参加の促進のための身体障害者福祉法等の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

村井議員 民主党・無所属クラブを代表して、ただいま議題となりました障害者の自立の支援及び社会参加の促進のための身体障害者福祉法等の一部を改正する法律案の提案理由及び概要を御説明申し上げます。

 厚生労働委員会に所属され、志と良心を持つ委員の皆様には、全国の障害者の方々の悲痛な叫びに耳を傾けていただくよう、心の底からのお願いを申し上げます。

 この法案は、民主党にとって前原新代表となってからの対案、第二弾となります。

 私たち民主党は、決して自民党と一緒になって小さな政府競争をしようとしているわけではありません。税金のむだ遣いを徹底的になくすとともに、このような必要な福祉などへの財源はしっかりと充実させる温かい改革が民主党の使命であり、民主党の改革なんです。

 だからこそ、この障害者自立支援・社会参加促進法という対案こそが、民主党の温かい改革のシンボルである対案の本丸です。

 障害者が社会参加をすればするほど高いお金を払わなければならないという政府案。この政府案は、本当に障害者の社会参加をふやすことになるんでしょうか。それとも、障害者の社会参加を減らすことになるんでしょうか。

 政府案では、障害者から一割の定率利用者負担を取ることによって、障害者の自立生活や社会参加にブレーキがかかります。私も、富山県内の多くの障害者施設で話を聞いて回りました。多くの障害者から言われました。おらとこは、もうお金ないから、もう来年から福祉のサービス受けられんちゃ、来年からもう来れんようになるちゃ。そんな障害者の声が全国各地域から聞こえてきます。

 その点、民主党の対案は、政府案と共通する部分はあるものの、障害者の定率利用者負担を求めずに従来の応能負担としています。障害者の自立生活や社会参加がこれまで以上に進むんです。

 そこで、この障害者の自立を支援して社会参加を促すための法律案の主な内容につきまして御説明申し上げます。

 民主党は、障害者の自立生活と社会参加を今まで以上に支援します。

 第一に、現状の支援費制度に精神障害者も加えて一体的に拡充します。

 第二に、居宅生活支援事業、就労支援事業、コミュニケーションや移動に必要な支援事業等の国の財政責任を明確にします。

 第三に、二年をかけて、障害者の方々の声を聞きながら、あらゆる障害を対象とした包括的障害者福祉法の制定を目指します。

 なお、民主党案では、精神通院公費、更生医療、育成医療は存続させます。

 確かに、私たち民主党の対案が主張する障害者福祉を実現するためには、政府案に比べて年間二百七十億円の費用が多くかかります。しかし、それは厚生労働省の総予算二十一兆円とかいう金額の中では、その〇・一三%にすぎないのです。先進国の中で大きく立ちおくれてきた日本の障害者の社会参加を大きく進める。そのために必要な費用です。

 ここには、全国から選ばれた良識ある国会議員の方々が集まっています。ぜひ、自分の地元で障害者の方々の悲痛な叫びに耳を傾けてください。障害者の不安を共有してください。今、障害者が望んでいるのは、定率利用者負担を払うことではなくて、障害者の社会参加を本当に進める法制度なんです。

 ぜひとも、十分な御審議の上、民主党案を可決してくださるようにお願いを申し上げます。審議の際には、つまらない政党の壁や党議拘束などにとらわれることなく、政治家個人の良心で御判断ください。人間が人間らしく生きるために、助けが必要なところに光を当てる、それこそが本当の政治家の姿であると申し上げ、提案理由といたします。

鴨下委員長 以上で両案の趣旨の説明は終わりました。

 次回は、来る二十一日金曜日委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後二時四十五分散会


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