衆議院

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第8号 平成18年3月14日(火曜日)

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平成十八年三月十四日(火曜日)

    午前九時三分開議

 出席委員

   委員長 岸田 文雄君

   理事 鴨下 一郎君 理事 北川 知克君

   理事 谷畑  孝君 理事 寺田  稔君

   理事 園田 康博君 理事 山井 和則君

   理事 福島  豊君

      新井 悦二君    井上 信治君

      石崎  岳君    上野賢一郎君

      加藤 勝信君    川条 志嘉君

      木原 誠二君    木村 義雄君

      清水鴻一郎君    菅原 一秀君

      杉村 太蔵君    関  芳弘君

      高鳥 修一君   戸井田とおる君

      冨岡  勉君    西川 京子君

      林   潤君    原田 令嗣君

      平口  洋君    福岡 資麿君

      松浪 健太君    松本  純君

      御法川信英君    岡本 充功君

      菊田真紀子君    小宮山洋子君

      郡  和子君    田名部匡代君

      西村智奈美君    古川 元久君

      三井 辨雄君    村井 宗明君

      柚木 道義君    上田  勇君

      高木美智代君    高橋千鶴子君

      阿部 知子君    糸川 正晃君

    …………………………………

   厚生労働大臣政務官    西川 京子君

   参考人

   (国立社会保障・人口問題研究所所長)       京極 高宣君

   参考人

   (恵泉女学園大学大学院教授)           大日向雅美君

   参考人

   (学校法人ときわ学園理事長)           中根 康浩君

   参考人

   (社会福祉法人はとのさと福祉会理事長)      増田 百代君

   参考人

   (小金井市議会議員)   漢人 明子君

   厚生労働委員会専門員   榊原 志俊君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月十四日

 辞任         補欠選任

  上野賢一郎君     関  芳弘君

  岡本 充功君     小宮山洋子君

  三井 辨雄君     西村智奈美君

同日

 辞任         補欠選任

  関  芳弘君     上野賢一郎君

  小宮山洋子君     岡本 充功君

  西村智奈美君     三井 辨雄君

    ―――――――――――――

三月十三日

 患者・国民負担増計画の中止に関する請願(達増拓也君紹介)(第六七七号)

 同(赤嶺政賢君紹介)(第八四八号)

 同(石井郁子君紹介)(第八四九号)

 同(笠井亮君紹介)(第八五〇号)

 同(穀田恵二君紹介)(第八五一号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第八五二号)

 同(志位和夫君紹介)(第八五三号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第八五四号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第八五五号)

 同(吉井英勝君紹介)(第八五六号)

 安心で行き届いた医療・介護に関する請願(菊田真紀子君紹介)(第六七八号)

 同(園田康博君紹介)(第七三三号)

 安心して透析を受けられる医療制度改革に関する請願(赤澤亮正君紹介)(第七〇三号)

 同(秋葉賢也君紹介)(第七〇四号)

 同(大前繁雄君紹介)(第七〇五号)

 同(北川知克君紹介)(第七〇六号)

 同(小宮山泰子君紹介)(第七〇七号)

 同(木挽司君紹介)(第七〇八号)

 同(後藤茂之君紹介)(第七〇九号)

 同(郡和子君紹介)(第七一〇号)

 同(園田康博君紹介)(第七一一号)

 同(高井美穂君紹介)(第七一二号)

 同(高木義明君紹介)(第七一三号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第七一四号)

 同(達増拓也君紹介)(第七一五号)

 同(津村啓介君紹介)(第七一六号)

 同(寺田学君紹介)(第七一七号)

 同(寺田稔君紹介)(第七一八号)

 同(土肥隆一君紹介)(第七一九号)

 同(中川正春君紹介)(第七二〇号)

 同(長島昭久君紹介)(第七二一号)

 同(萩原誠司君紹介)(第七二二号)

 同(古川禎久君紹介)(第七二三号)

 同(細川律夫君紹介)(第七二四号)

 同(松浪健太君紹介)(第七二五号)

 同(松本龍君紹介)(第七二六号)

 同(宮下一郎君紹介)(第七二七号)

 同(武藤容治君紹介)(第七二八号)

 同(森山裕君紹介)(第七二九号)

 同(山口壯君紹介)(第七三〇号)

 同(吉田泉君紹介)(第七三一号)

 同(吉田六左エ門君紹介)(第七三二号)

 同(井上義久君紹介)(第七六七号)

 同(吉良州司君紹介)(第七六八号)

 同(北橋健治君紹介)(第七六九号)

 同(穀田恵二君紹介)(第七七〇号)

 同(近藤基彦君紹介)(第七七一号)

 同(近藤洋介君紹介)(第七七二号)

 同(下条みつ君紹介)(第七七三号)

 同(高木陽介君紹介)(第七七四号)

 同(馬淵澄夫君紹介)(第七七五号)

 同(上野賢一郎君紹介)(第七八二号)

 同(江藤拓君紹介)(第七八三号)

 同(太田昭宏君紹介)(第七八四号)

 同(河井克行君紹介)(第七八五号)

 同(黄川田徹君紹介)(第七八六号)

 同(斉藤斗志二君紹介)(第七八七号)

 同(武正公一君紹介)(第七八八号)

 同(羽田孜君紹介)(第七八九号)

 同(三井辨雄君紹介)(第七九〇号)

 同(綿貫民輔君紹介)(第七九一号)

 同(あかま二郎君紹介)(第八〇六号)

 同(斉藤鉄夫君紹介)(第八〇七号)

 同(望月義夫君紹介)(第八〇八号)

 同(山口泰明君紹介)(第八〇九号)

 同(山井和則君紹介)(第八一〇号)

 同(泉健太君紹介)(第八一四号)

 同(糸川正晃君紹介)(第八一五号)

 同(菊田真紀子君紹介)(第八一六号)

 同(玄葉光一郎君紹介)(第八一七号)

 同(水野賢一君紹介)(第八一八号)

 同(村井宗明君紹介)(第八一九号)

 同(山崎拓君紹介)(第八二〇号)

 同(市村浩一郎君紹介)(第八五九号)

 同(前田雄吉君紹介)(第八六〇号)

 医療改悪をやめ最低保障年金制度の実現に関する請願(塩川鉄也君紹介)(第七三四号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第八五八号)

 児童扶養手当の減額率を検討するに当たり配慮を求めることに関する請願(谷川弥一君紹介)(第七六五号)

 じん肺根絶に関する請願(鳩山由紀夫君紹介)(第七六六号)

 無認可保育所への公的助成等に関する請願(三井辨雄君紹介)(第七八一号)

 患者負担増に反対し、保険で安心してかかれる医療に関する請願(山井和則君紹介)(第八〇四号)

 同(石井郁子君紹介)(第八四七号)

 安全で行き届いた医療・介護に関する請願(山井和則君紹介)(第八〇五号)

 保育・学童保育・子育て支援施策の拡充等に関する請願(石井郁子君紹介)(第八五七号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 国の補助金等の整理及び合理化等に伴う児童手当法等の一部を改正する法律案(内閣提出第一七号)

 児童手当法の一部を改正する法律案(小宮山洋子君外四名提出、衆法第九号)


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     ――――◇―――――

岸田委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、国の補助金等の整理及び合理化等に伴う児童手当法等の一部を改正する法律案及び小宮山洋子君外四名提出、児童手当法の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。

 本日は、両案審査のため、参考人として、国立社会保障・人口問題研究所所長京極高宣君、恵泉女学園大学大学院教授大日向雅美君、学校法人ときわ学園理事長中根康浩君、社会福祉法人はとのさと福祉会理事長増田百代君、小金井市議会議員漢人明子君、以上五名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。

 本日は、御多用中にもかかわらず本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただき、審査の参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願いを申し上げます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 最初に、参考人の方々から御意見をそれぞれ十五分以内でお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。

 なお、発言する際は委員長の許可を受けることになっております。また、参考人は委員に対して質疑することができないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。

 それでは、まず京極参考人にお願いをいたします。

京極参考人 おはようございます。

 私、大学の教員を三十年やっていましたので一時間半の話はなれておりますけれども、十五分というと大変難しいので、用意したメモを読み上げる形になりますけれども、よろしくお願いいたします。

 私は、昨年四月に設置された生活保護費及び児童扶養手当に関する関係者協議会のメンバーの一人として、三位一体改革に関する議論に参加してきました。そうした立場から、この法律案に対して意見陳述をさせていただくことになりました。

 まず、この協議会の中心的な課題となった生活保護について、協議会でどのような議論があったかを紹介いたします。

 議員の先生方御承知のとおり、生活保護は国民の最低生活を保障する最後のセーフティーネットとしての機能を果たす制度でございます。したがって、生活保護における国の役割は極めて重要でありますが、他の社会保障制度と同様に、国とともに都道府県や市町村も、それぞれ重層的に支え、役割分担をしていくことが必要です。

 生活保護制度は、被保護者の実情把握や自立のための支援、指導の仕方など、地方自治体ごとの工夫を凝らして行う制度でございますし、また、自立助長に活用できる社会資源やネットワークは地域ごとにさまざまでありますことから、地方自治体の役割は極めて重要で、大きなものがあります。

 厚生労働省から提案されたものは、それぞれの扶助の目的や性質に応じて国と地方の役割を見直すことが必要であるという観点から、扶助ごとに費用負担のあり方の見直し案が出されたものと記憶しております。

 他方、地方団体は、生活保護は国の責任において実施すべきものであり、地方の裁量にゆだねるべきではなく、これまでどおり国が高率の国庫負担をするべきである、社会保障制度全体を見通した議論が必要であり、むしろ制度の運用面での改善を図るべきであるといった意見が強く出されたものと記憶しております。

 私の意見としては、生活保護は我が国の社会保障制度の根幹だが、それを他の保健福祉施策と切り離して特別なものと考えるべきではない、むしろ、他法、他施策を活用して自立支援を促進することが最も重要であり、地方の中でも、特に医療政策あるいは住宅政策、就労支援などを担う都道府県行政との連携は不可欠と考えていました。

 そこで、もう少し都道府県の関与を大きくして、生活保護と他法他施策を一体的、総合的、整合的に動員してこそ地域福祉の充実が図られる、そして、自立助長の支援、被保護からの脱却という生活保護の目的も達成されるのではないかという意見を協議会で述べさせていただきました。

 いずれにしましても、こうした議論を踏まえ、政府・与党で調整し、地方団体とも協議した結果、生活保護については今回は費用負担の見直しを行わないとされ、関係者の意見が一致しなかった中でやむを得ない結論だったのではないか、いや、むしろ将来の見直しにとって、議論の余地を残したことはかえってよかったのではないかと感じております。

 また、協議会では、生活保護と並んで児童扶養手当についての議論が行われました。母子福祉施策について、平成十四年の母子寡婦福祉法等の改正に基づき、児童扶養手当中心の支援から、就労、自立に向けた総合的な支援へと政策の転換を図っているところで、私としましても、児童扶養手当は生活保護のようなナショナルミニマムを保障するものではなく、低所得の母子家庭の総合的支援の一つをなすもので、生活保護とは別途検討すべきと発言させていただきました。

 こうした観点から、厚生労働省から地方の財政負担を拡大する案が協議会において提案され、さらに政府・与党で調整した結果、児童手当と並んで児童扶養手当における地方の負担割合を三分の二に変更することとなったものと伺っております。厚生労働省の提案の方向性に沿った形で結論が得られたことは、妥当な線ではないかと思っております。

 次に、年金国庫負担の引き上げについてでございますけれども、本法律案の中には、基礎年金に関する国庫負担の引き上げもその内容として盛り込まれていますが、これは、さきの平成十六年年金制度改正において、基礎年金国庫負担割合を平成二十一年度までに二分の一に引き上げるとされておりまして、あわせて、そこまで引き上げる道筋が定められたことを受けての措置であったと理解しております。

 なお、平成十六年の年金改正は、制度の持続可能性を高めたものと評価しております。

 ただし、基礎年金国庫負担割合の二分の一への引き上げについて、現時点でその財源が明らかになっていないことは多少なりとも懸念材料となっており、このような巨額の財源を確保するためには、例えば税制改革等について、国民的議論とコンセンサス形成が極めて重要ではないかと思っております。

 さらに、介護施設の見直しについてですが、介護保険制度は、平成十二年四月からの施行で、六年を経て国民の間に広く定着しているものと思っております。

 しかしながら、少子高齢化の一層の進展が見込まれる中で、国民の老後の安心を支える持続可能な制度とするべく、昨年六月、制度全般にわたる改革を行うための法改正が行われたところです。私も社会保障審議会の介護保険部会のメンバーとして検討に参画してまいりました。

 三位一体改革の中で、介護施設の整備については、特別養護老人ホーム等の施設整備を支援する都道府県交付金を廃止し、税源移譲を行うことにしたと伺っております。この点については、第一に、自治体からの強い要望があること、第二に、特別養護老人ホーム等の整備が全国的に一定程度進んできたことなどを踏まえると、時宜を得たものではないかと思っております。また、地域に密着した新たなサービスの整備等を図る市町村交付金について充実を図っていることについても、改革の方向性を一層明確にするものであり、評価したいと思います。

 ところで、特別養護老人ホームなどの運営費となる施設等給付費は、都道府県の負担はわずか一二・五%にすぎません。今回、都道府県が施設整備費の助成権限を持つことにあわせて、施設給付費の負担についての都道府県の責任が強化されることは、適切な整理であったのではないかと思っております。

 これらの改革により、都道府県の権限と責任において、介護保険施設などの計画的な整備と適正な運営が図られることを強く要望しておきます。

 今回の三位一体改革により、公立施設に係る施設整備費が一般財源化されました。障害者施設については、社会福祉法人でも設置が可能であり、実際にも民間を中心に整備が進んでおることから、公立の障害者施設の施設整備費については廃止、移譲の対象とすることとしたものと理解しております。

 なお、今回の三位一体法案とは関係が直接あるわけではありませんが、昨年十月、障害者自立支援法も成立し、第一に、身体障害、知的障害、精神障害といった障害種別にかかわらず一元的にサービスを利用できる仕組みができたこと、第二に、サービス水準の地域格差を是正するため障害福祉計画の策定を義務づけたこと、第三に、利用者負担の見直しや国の財政責任の明確化を通じて制度の安定を図ることなどの改革が行われました。

 これらの改革により、さらに平成二十一年度までの介護保険の見直しと相まって、地域において障害のある方のさまざまな状況に応じた必要なサービスを安定的に利用できる体制が整備されていくものと考えております。

 私は、現在、社会保障・人口問題研究所の所長を務めておりますが、昨年末に国勢調査などの結果が発表され、昨年は人口減少に転じ、いよいよ人口減少社会が到来したことが明らかになりました。これまでも少子化対策としてエンゼルプランや次世代育成支援策などが出されてきましたが、いまだ少子化の流れが変わっていないことから、子育てを社会全体で支えていくということが今日最も重要な課題だと考えています。

 今回の児童手当改正では、第一に、義務教育終了前までに対象が拡大されるとともに、第二に、所得制限を緩和していますが、対象者が四割ほど増加することにより、子育て支援にとっては非常にプラスであると思います。扶養控除は逆進性があり、高所得者には有利であると思いますが、低所得者にはなかなか効果がないという点で、私は児童手当の役割も評価しております。

 ただ、今後の方向として、社会的支援、社会的連帯ということを考えたときに、税金だけでいいのかというと、やはり課題が残る。企業も参加し、あるいは、例えばのことでございますけれども、二十から四十歳までは介護保険料を払っていない階層でありますけれども、そういう階層にも育成保険料みたいなものを取って新しい保険をつくる案も一つの手ではないか。

 このような時代においては、すべての国民が痛みを分かち合って、若い世代が安心して子育てできることが、少子化の流れを多少とも変えることにつながるのではないかと思います。

 以上、参考人としての陳述を述べさせていただきました。ありがとうございました。(拍手)

岸田委員長 ありがとうございました。

 次に、大日向参考人にお願いいたします。

大日向参考人 おはようございます。恵泉女学園大学の大日向雅美です。

 私は、発達心理学の領域で、家族、親子問題を専門としております。

 七〇年代初めのコインロッカーベビー事件をきっかけに、育児不安、育児ストレスについて研究してまいりましたが、子育てをめぐる環境は、この三十年来、一部改善されつつも、親が置かれている状況の厳しさは変わっていないという印象をぬぐい得ません。こうした子育て環境の改善を図るために、三年ほど前から、東京・港区でNPO法人として、地域に根差した子育て家族支援の活動にも携わっております。

 本日は、児童手当の問題にとどまらず、これまでの研究と子育て支援現場における実践に基づきまして、少子化対策に対する意見を述べさせていただきます。

 まず、昨今の急速な少子化傾向に対しまして、一体国は何をしているのだといういら立ちの声がある一方で、いろいろ手を尽くしてきたけれども、何をしても効果が出ない、もう打つべき手はないという悲観論も聞かれます。

 しかし、そもそも少子化問題に人々が気づいたのは、九〇年の一・五七ショックが最初でした。以来、十数年かけて総合的に原因の究明がなされてきた中で、一昨年、少子化社会対策大綱が策定され、そこで打ち出された少子化の流れを変えるための四つの重点課題に即して、子ども・子育て応援プランが出されました。ここで、ようやく施策のメニューがそろったと言えると思います。あとは優先順位をつけて、果敢に実行する段階に至ったと考えております。

 その中で、本日の案件とされている児童手当は、少子化対策の中でも緊急かつ重要な対策と考えられていると存じます。私も、児童手当の拡大につきましては一定の必要性を認めるものでございますが、児童手当は、何のために、だれに対して、いかに支給すべきかをよく検討し、同時並行的に、取り組むべきほかの重要案件への検討をおろそかにすることなく取り組まなければならないと考えております。

 児童手当の支給拡大は、親にとっての子育てコストの軽減が目的とされております。確かに出産、子育て、教育にはお金がかかります。子育てに当たる若い世帯は一般的に収入に余裕がありません。また、昨今は、一人親家庭も増加しています。子育てによって家計が圧迫され、産みたくても産めないという方々がおられますので、その方々を対象とした実質的効果のある経済的支援は、ぜひとも必要と思います。

 そのためには、例えば北大の金子勇氏の言われるように、実質的に経済的支援につながる給付を実現するための財源を確保するには、介護保険に準じた形で、子供の有無にかかわらず、国民全体で子供の育ちを支援しようという合意形成が必要です。

 しかしながら、児童手当に関する議論は、支給年齢や所得制限、金額の引き上げという各論が先行している感が否めません。少子化が日本社会に近い将来及ぼす弊害を憂慮すれば、子供がいるいないにかかわらず、すべての人に共通の重要課題であり、社会全体で子供の育ちを支援しようという合意形成のきっかけにこの児童手当の議論がつながることを期待しております。

 次に、児童手当に代表される現金給付の効果について見ますと、確かに、既に子供のいる家庭や産もうと考えている方々にとっては、一定の支援となり得ると思います。しかし、これから産もうかどうか悩んでいる人、若い世代にとって、それだけでは必ずしもインセンティブにはなり得ないということ、つまり、お金が支給されるから産もうということには必ずしもならないということも申し上げておきたいと思います。

 この点につきまして、児童手当にだけ議論が偏向すると、子育てコストに対する見方が一面的に過ぎると言わざるを得ません。児童手当は、出産、子育てに係る直接的費用の軽減を図るものですが、もう一つの子育てコスト、すなわち、出産、子育てによって失われるコストについても検討する必要があります。

 これを機会費用といいますが、子供を産んで育てるプロセスで、特に女性は働き続けることが難しく退職せざるを得ないことが多いのが現状です。また、復職しても原職や正規職員としてなかなか働けないことから、収入を失うことになります。出産のために退職している女性は七割前後もいます。

 もっとも、子育て期は育児に専念することを望む女性も少なくありませんが、育児が一段落した後の復職を初めとした社会参加の道が依然閉ざされていて、幸い就職できたとしても、パートや派遣などの不安定雇用が大半です。出産や子育て中も仕事をやめずに働き続けた場合と比較いたしますと、生涯賃金で一億数千万の差が出るという試算もあります。

 こうした機会費用の軽減を少子化対策として重要と考えるには、次の二つの理由があるからです。

 まず第一は、若い世代、特に女性や母親のライフスタイル志向に変化が見られ、それにこたえる必要性があります。若い女性たちは結婚、出産に決して否定的ではありません。しかし、同時に仕事も続けたいと考えている女性がふえています。あるいは、子供が小さいときは育児に専念したとしても、その後に復職したいと考えている女性が大半です。また、男性は仕事、女性は家庭という従来の性別役割分業に対して、賛成よりも反対だと考える方は、男性を含めて多くなっています。

 第二に、少子化は労働力の不足につながります。人手不足が日本の経済に与える影響は深刻です。労働力人口の減少を防ぐためにも、女性の労働力活用は不可欠の課題です。

 それでは、機会費用軽減に取り組むための必要な対策として、三点述べさせていただきます。第一は働き方の見直し、第二は保育機能の一層の整備充実、そして第三は地域の育児力向上です。

 まず、第一の働き方の見直しですが、次世代育成支援対策推進法の中で、三百一人以上の雇用労働者のいる企業に対して行動計画策定を求めるなど、既に着手していただいておりますが、行動計画提出が精いっぱいで、具体的な実効性にいかにつなげるかは今後の課題となっています。また、行動計画では、男性の育休取得が注目されていて、それも確かに重要なポイントです。しかし、男性の育児参加を促す要因は、妻が安定した形態で働き、一定の収入があることだという調査結果も報告されております。子育て期の夫婦が無理なく子育てと仕事のバランスがとれる支援策が必要と考えます。

 同時に、中小企業への支援策も急がれます。企業がなぜ子育て支援をしなくてはならないのかといぶかる声も依然として根強いかと思われますが、仕事と子育てがバランスよく保たれる職場環境の整備は、人材確保、生産性向上を含めて、少子高齢社会の二十一世紀に生きる企業にとって優先課題であると、企業トップの意識改革を求めていくことが必要と存じます。

 第二の保育についてですが、保育機能の充実は、子育て期の親、特に女性が安心して働き続けることを支援し、子育ての機会費用を軽減するために重要です。しかしながら、昨今の保育施策をめぐっては、さまざまに心配な動きがあることも率直に申し上げたいと思います。

 すなわち、これまでの少子化対策が就労家庭への支援に偏り過ぎたという反省から、保育所予算の削減が図られ、財政支出の削減論が活発化しています。同時に、多様な働き方をする親のニーズに対応し、あるいは待機児解消という理由のもと、市場原理の導入論も勢いを得つつあります。

 この点につきましては、確かに従来の保育のあり方にも再検討の余地があると思います。しかし、保育は市場原理では論じ切れない要素があります。安易な規制緩和論に走ることなく、子供の最善の利益、発達環境の整備には引き続き最大限の配慮をしていただきたいと願っております。

 子供の今は日本の未来につながります。保育環境の質が低下するようなことになれば、親は安心して働けません。そして産めないという悪循環につながることになりかねません。

 もっとも、乳幼児期の保育は従来型の施設保育にのみ依存することにも限界があり、新たな施策が求められると考えます。それが第三の、地域の育児力の向上です。

 その一例として、今、私どものNPO法人が港区で取り組んでおります子育て・家族支援者養成について御説明させていただきます。

 この事業は、講座を受講して子育て支援者として認定された方に対し、区と連携して、一時保育者として乳幼児を預かっていただき、その活動を有償として保障するものです。子育て支援を通して、女性の社会参加を促し、機会費用の軽減を図ることを目的としております。同時に、施設型保育との相互補完となることも期しております。

 これまでの日本社会は、子育ては大切で、母親がその担い手として最適だという考え方のもとで、小さい子供のいる女性の多くは育児に専念してきました。しかし、子育ての大切な役割を全うした女性の力を活用しようとする発想は乏しかったと言わざるを得ません。子育てが一段落した後の社会参加に道を閉ざしてきたことは前に申し上げたとおりです。その結果、機会費用の増大を招いただけでなく、子育てをしても社会的評価が得られないという思いを女性たちは持たざるを得なかったのです。

 こうした社会の問題が今日の少子化の背景にあるのでありまして、この問題を解決するためには、社会で、地域の皆で子育てをという理念の実現を図るほかありません。

 以上、いろいろ申し上げてまいりましたが、少子化対策として、親の子育てコスト軽減は重要であり、児童手当の充実が求められていると存じます。同時に、現金給付にだけ頼るのではなく、もう一つの子育てコストである機会費用の損失の軽減を図ることも重要と考えます。そして、それが、親の努力を含めて、地域、企業、社会で子供の育ちを支え合う方向につながることを希望いたしまして、私の意見陳述とさせていただきます。

 どうもありがとうございました。(拍手)

岸田委員長 ありがとうございました。

 次に、中根参考人にお願いいたします。

中根参考人 おはようございます。中根康浩と申します。

 学校法人ときわ学園理事長という立場で、本日、意見陳述をさせていただきますことに、感謝を申し上げたいと思います。

 難しいことは申し上げることはできません。きのうの午後に御連絡をいただきまして、全く準備不足のままここに臨んでいるわけなものですから、大したことは申し上げられませんけれども、委員長から忌憚のない御意見をというふうにお許しをいただいたものですから、幼児教育の現場に身を置く者として、今までの先生方のお話と重複する部分もあろうかと思いますけれども、自分なりに意見を申し上げたいと思います。

 本当に急な話だったものですから、慌てて、きのう、ときわ学園が運営をするかおる幼稚園というところに行きまして、ちょうどお迎えの時間で、幼稚園には、お迎えのお母さんたちが待機をするといいますか、集まる部屋がありまして、その部屋に行きましたら、七、八人のお母様方がいらっしゃいましたものですから、実は今、国会で児童手当について審議が行われているんだけれども、児童手当について何か御意見はありますかというふうにお尋ねをしましたところ、余り急な話だったものですから、大したといいますか、御意見を承ることはできないのかなというふうに思っていたんですけれども、予想外に、皆さん大変関心が高くて、貴重な御意見をたくさん承ることができましたものですから、そういったことを御披露しながら進めていきたいと思います。

 また、けさまで、友人等含めていろいろなところに電話をして、児童手当についてどうお考えですかということも聞いてまいりましたので、あわせて紹介をしながら進めていきたいと思います。

 まずは、所得制限をなくしてほしい、これが一番多かったと思います。

 その中には、所得が多くても累進的に税金を支払っている、だから、きちんと納税者に還元をしてもらいたい、その意味で所得制限をなくしてほしいという御意見でした。それから、たまたま残業などを多くして収入が多い年、その年に所得制限にひっかかってしまって、児童手当を受給できなくなった困った年があったということもありました。

 次に、対象年齢について伺いました。

 そうしましたら、お母様方からは、長ければそれにこしたことはない、あるいは、どうせなら中学三年生まで、卒業するまで出してほしい、小学校三年生で区切る理由がわからない、お金がかかるのはむしろ小学校就学前と小学校卒業後である、小学校の時代が一番お金がかからない、こんな御意見を承ったところでございます。

 続きまして、児童手当の額と使い道について聞いてみました。

 五千円程度では家計に紛れてしまい、せっかくもらっても本当に子供のために使ったかどうかわからないから、かえって申しわけないような気がする、おけいこごとや塾の費用にした、塾に行くなといっても、周りのみんなが行っているし、友達づくりという意味でもむしろ行かせるのが親の義務のようなもので、おけいこ代や塾代なども含めて完全に教育費の中に入ると考えている、あるいは、どうせ家計に紛れるのだから、その分減税してもらった方がいい、こんな御意見もありました。

 それから、児童手当と子育て支援あるいは少子化対策との関係について聞いてみました。

 月に五千円や一万円程度では当然少子化対策ということにはなるはずもないし、親は、月々というよりも、むしろ、子供一人を大学まで卒業させる、そこまでにどれぐらいの教育費がかかるか、それが不安である、心配である、ましてや、例えば私立大学に二人や三人同時に通わせるようなことを想像すると気が遠くなるような気がする、児童手当や出産無料化などはありがたいけれども、それで子供一人をということにはとてもならない、こんな御意見がありました。

 それから、引き続きそのことについてなんですけれども、中途半端に児童手当を支給するよりも、むしろ、子育て相談とか学童保育とか少人数学級の推進とか、交通安全、医療、図書館の整備、公園の整備、これは順不同で申し上げておりますけれども、出てきた順番に申し上げておりますが、不妊治療、バリアフリー、障害児教育、治安対策、虐待問題、こういったことにお金をかけるべきではないだろうかという意見もありました。

 それから、子供のおけいこごとはちょうど五千円から一万円ぐらいの、一月当たりですね、範囲に入る、児童手当で潤うのは、実はこういう塾とかおけいこごとの先生たちではないか、こういう御意見もありました。

 それから、その他何でも、児童手当について、そのほか今まで出ていない御意見を聞きたいんだけれどもということで申し上げましたところ出てきたお声が、児童手当を拡充するのはいいけれども、それを、財源をたばこ税で賄うのはちょっとという意見ですね。子供はたばこ程度なのかというお母さんがいらっしゃいました。それから、高齢者に手厚く子供に手薄い、そういう全体の、限られた財源の中でのお金の使い方を見直してみてくれないか。それから、子育てはつらいものではなく楽しくすばらしいものである、でも、報道や政治の話を聞いていると大変だ大変だと聞こえてしまう、だから余計に少子化が進んでしまうのではないか、こんな御意見もありました。

 これは、私ごときが下手な意見陳述をするよりもよほどすごい御意見がお母様たちからお聞きをすることができたと思って今まで御紹介を申し上げたわけで、本当に国民の皆様の洞察力といいますか、わずかこの間、大体二十分ぐらいだったと思うんですね、お子様をお迎えするまでの間。この間に、本当に、急なお問いかけにもかかわらず、こんなすばらしい貴重な御意見を承ることができました。当然、私はこの間、政治的な発言も控えさせていただいて、インタビュアーに徹しさせていただいたのは当然の話であります。

 それから、きょうは配付資料も用意させていただいておりますので、お目通しをいただきながらお聞きをいただければと思います。

 一から二、三、四、五、六と用意させていただきましたが、そのうちの一番、簡単に触れていきたいと思います。これは平成十六年の少子化白書からコピーしてきたものでありますけれども、ごらんになってわかるように、一番右側、二〇〇二年、理想の子供数二・五六人に対して、平均出生児数は二・二三。おわかりのように、子供は欲しいんですね。だけれども、なかなか理想の数までは持つことができない。

 ここに何が必要かということなんですけれども、それが二番にあらわれているわけであります。決して難しいことじゃないし、難しい議論を進める必要もないぐらい、如実にこの小泉内閣のメールマガジン、少子化アンケートというものに明らかにされているわけで、一番右、七〇・一%を占めるものが「子育て世帯に対する経済的支援を充実する」ということであります。具体的にどうするかということはまたこの委員会で御議論をいただければと思いますけれども、こういう国民の気持ちがあるということは、小泉さんに対する、総理大臣に対するメールマガジンでも明らかにされているわけであります。

 それから三番目の資料、内閣府がつくった少子化社会対策に関する子育て女性の意識調査、平成十七年三月版でありますけれども、ここでも同じようなことがあらわれています。一番上、六九・九%を占める御意見が経済的支援、これは児童手当をも含めた経済的支援ということであります。

 それから四番目、平成十七年版の国民生活白書からの抜粋でありますけれども、これも同じことを示唆しております。ここで明らかなのは、わかるのは、ここに書いてあるとおりなんですけれども、理想の子供数が実現できない最も大きな理由は、子育てにお金がかかるということ、一番左の、子育てや教育にお金がかかり過ぎるから子供の数を理想の数まで持つことができない、ここにも国民の気持ちがあらわれております。

 同じようなことが続きますけれども、五番の資料「子どものいない夫婦は子育てに対して負担感を強く抱いている」、これは結構おもしろい資料だと思います。一番左の、多くの割合を占めるものが、子育てに伴う経済的負担が重いからということが子育てに対する不安や悩みの多くを占めているわけなんですけれども、その中でも、子供のいない御家庭の方々がむしろ子育てに対する不安や悩みを持っている。

 これは先ほどお母さんの御意見にもあったように、子育てというのは実はやってみると楽しくてとても充実してすばらしいことなんだ、ところが、そのことを味わう前に、まず第一歩を踏み込むことができない、そこには経済的な不安がある、大学まで卒業させるには何千万円かかるかわからない、こういう負担感が二の足を踏ませることになるということですね。

 今まで示してきたような資料にもあらわれているように、あるいはお母さんたちの御意見にもあらわれているように、経済的な支援を国がしっかりと行っていく、バックアップしていくということが大切だということが国民の気持ち、意思であるということに比べて、六番の資料なんですけれども、世界といいますか国際的な比較、各国に比べて日本は、第一子目、第二子目が五千円、第三子目が一万円ということはまだまだ取り組み方が足りないということをあらわしているのではないでしょうか。

 とりわけ、第一子、第二子が五千円で第三子が一万円と、第三子までなかなか今至らない状況の中で、あるいは今までの申し上げてきましたようなことの中で、第一子、一人目を思い切ってといいますか安心して産んでもらう、そういう政治的なバックアップあるいは社会的環境づくり、これが今最も必要なこと、求められていることではないかというふうに思っております。

 とりあえず、また後ほどの質疑応答の中で意見を陳述する機会があるかもしれませんが、冒頭、私からの意見とさせていただきます。ありがとうございました。

岸田委員長 ありがとうございました。

 次に、増田参考人にお願いいたします。

増田参考人 おはようございます。私は、社会福祉法人はとのさと福祉会の理事長をしております増田百代といいます。どうかよろしくお願いします。

 私は、社会福祉法人の理事長と、あわせて兵庫県保育所運動連絡会の役員として、この間、保育所の現状を調査してまいりました。そして、研究し、よりよい保育を目指して運動もしております。その立場から、三位一体改革、とりわけ国の補助金削減によって兵庫県の保育所で起きている事実について話し、意見陳述をしたいと思いますので、よろしくお願いします。

 まず、公立保育所の民間移管についてです。

 公立保育所の運営費が一般財源化され、四分の一の自治体が何らかの形で保育予算の縮小を余儀なくされました。その顕著なあらわれとして、公立保育所の民間移管が急激に進んでおります。

 神戸、西宮、伊丹など阪神間を初め各自治体は、軒並みに公立保育所の民間移管を提案し、実施をしています。公立保育所を民間移管して、その浮いたお金で子育て支援をするというのです。

 民間移管されるある保育所の保護者は、なぜうちの保育所なのか、子供にどんなメリットがあるのか、民間移管で浮いたお金はどんな子育て支援に使われるのか、市から納得できる説明がないといって反対しています。

 何よりも子供たちが犠牲になっています。四月一日に先生のすべてが変わるだけではなくて、保育所の名前まで変わります。民間移管されたある保育所に一歳半の子供を預けている母親は、子供がストレスから毎日、床におでこを打ちつけて泣くと話していました。

 三月定例市議会に、神戸市公立保育所民間移管反対の請願陳情が四十二通提出されました。保護者を代表して口頭陳述をした二歳の娘を公立保育所に預けているお父さんの発言を一部紹介したいと思います。

  私の子どもは、二か月から保育園のお世話になっています。担任はベテランから男性保育士まで三人おり、子どもの体調、子ども同士のトラブルなどについて、とても丁寧できめ細やかに伝えてくれます。男性保育士の周りにはいつも子どもたちがいてとても慕われており、父親として子育てに参加する励みになります。

  市は「経済的効果」に期待して民間移管するとおっしゃいますが、本当にそれでよいのでしょうか。財政難だから、在宅の子どもたちの子育てをする予算がとれない。公立保育所にお金がかかり過ぎるので、民間移管をすれば一か所五千万円の財政効果がある。それを在宅の子どもたちのための予算にすれば、すべての子どもたちにとって公平だといいます。本当の公平とは、在宅の子どもたちにも、保育所の子どもたちにも、ともに豊かな子育て支援策を講じ、そこに充分な予算を当てることではないでしょうか。

  子どもたちは次の世代の担い手であり、社会の宝です。子どもたちを育てるのは、国や自治体の大きな責任です。市の財政難の原因は、赤字が歴然としている空港の建設をはじめ、無駄な公共事業に市民の税金を湯水のように使ったためです。その財政難のつけを子どもに負わせることはあってはならないことです。充分な予算をとり、児童福祉法第二条に明記された国と自治体の児童育成の責任を果たすべきではないでしょうか。

と訴えました。

 幼い子供たちは、大人の都合による民間移管の理由など理解できるはずがありません。子供たちは人と人との信頼関係の中で育ちます。地域社会に見守られ、子供同士、そして保育士と保護者の信頼関係が子供たちの豊かな発達の土台となります。今行われている民間移管は、この土台を崩すことにつながります。国の責任で公私間格差をなくし保育予算をふやし、公立保育所を充実させ、地域の子育て支援のセンターに発展させることこそ必要と私は考えています。

 次に、三位一体改革に伴い進んでいる規制緩和で起きていることをお話しします。

 神戸市は、西日本で初めて、平成十三年から営利企業の保育所を四カ所認可しました。その一カ所の株式会社ウィシュ・神戸が設置、運営するすくすく保育園は、市内で一番待機児の多い東灘のマンションの一角に設置され、ゼロ歳から就学前の子供を対象に四十五人の保育所としてスタートしました。そのすくすく保育園の廃園が、平成十七年十月二十四日の市議会福祉環境委員会に突然提案されました。

 同園は、十月一日時点において、定員四十五名に対して児童が五十名入所しており、職員も二十一名在籍しています。この議会で明らかになったことは、平成十五年度、市の実地監査において、同園の施設運営、児童処遇及び会計処理上の問題が明らかとなり、市として健全運営に向けた指導を行い、保育内容についてはほぼ問題がない状態になったが、会計処理上の問題については一部是正されたものの解決の見通しが立たず、平成十七年十月十四日に、運営主体である株式会社ウィシュ・神戸が廃止承認申請書を提出し、市としても、会社の経営状態から安定的な保育所運営は困難と判断し、廃止承認を行う意思を決定したというものです。

 この保育園は、給食を前日からつくり置きしたり、遊具やおやつがわずかしかなかったりと、保育内容でさまざまな問題を引き起こしてきました。そのことを指摘した保育士は、配置転換など嫌がらせを受け、雇いどめされました。この過程で組合が結成され、監査も行われ、保育所運営費を企業会計に流用していることが明らかになりました。市は四千九百万円の流用金の返還命令をしました。結果、二千九百万円は返還されましたが、二千万円は返還されないままでの廃園です。

 今の保育制度からすれば、定員以上に子供が入所措置されている保育所で、財政難を理由に廃園などあり得ないことです。同時に、他の園の分園でも、市営住宅の取り壊しを理由に廃園手続がされました。どちらも定員を超える子供たちが入所しています。規制緩和のもとに安易に企業や分園に保育を任せれば、子供たちを無視した廃園が行われ、子供を路頭に迷わすだけではなく、保育士の労働を奪い、保護者が仕事を続けることを困難にします。

 三位一体改革、補助金削減の影響を最も大きく受けている過疎地域の保育所の状況を次にお話ししたいというふうに思います。

 兵庫県の北部では過疎が進んでいます。この保育所はこの子供たちで終わりです、この後は集落に子供は生まれていませんと園長先生が言われました。過疎地域の自治体の多くは公立保育所を運営しています。近年、少子化を理由に廃園、統廃合が続きました。私は山間の小さな町の僻地保育所の廃園について、現地で調査してきました。

 ここでは、五カ所の僻地保育所に五十六人の子供が通っていました。全園が同時に廃園手続されたので、子供たちは町の中の三カ所の民間保育園に振り分けられました。谷合いから路線バスに乗って通うことになりました。保護者は路線バスに幼い子供たちを一人で乗せることに不安を感じ、町に添乗の保育士をつけることを要望しました。町は、路線バスとの提携、添乗保育士の手配など悩みを多く抱えており、担当官は、統廃合しても町の財政は潤うわけではありませんと苦しい実情を話してくれました。公立の保育士たちは、保育士としての専門職の仕事がなくなり、これからの生活に不安を隠し切れない様子でした。

 もう一つの僻地保育所は、三人の子供たちが通っていました。たまたま参観日で、保育士二人とお母さんとでクッキング保育をしてとても楽しそうでした。そのお母さんは、保育園がなくなるのは反対です、でも仕方がないです、老人問題も大切ですが、少子化対策に力を入れないとだめですね、私の子供は来年、三十分バスに揺られて町の民間保育所に通わせなければなりませんと、つらい気持ちを言い残して職場に戻りました。

 また、保育所があったはずの場所でゲートボールをしていたお年寄りたちは、ここには保育所があって、子供たちの声や姿を見るのが生きる励みだったと話してくれました。小さいけれども、子供たちが通っている保育所を残してほしいというのが心からの願いです。

 公立保育所運営費一般財源化や三位一体改革は、このような小さな自治体により大きな負担を強いています。

 一九九五年一月、私たちは阪神・淡路大震災を被災しました。震災が保育中に起きたらと思うと、今でも胸が苦しくなります。たくさんの保育所の子供たちが犠牲になったに違いありません。私は、保育中に震災が起きても子供たちが犠牲にならないためにはどうしたらいいのか、震災後、考え続けてきました。

 被災直後、神戸から子供がいなくなったと感じました。被災後一週間ぐらいたって、子供たちが疎開していったことがわかりました。当時、厚生労働省から通達を出していただき、被災地の子供たちは全国各地の保育所に緊急入所ができ、保育料が無料になりました。また、全壊した保育所の運営費が支払われ、保育士たちは失業することなく復興に当たりました。施設の整備も公的保障のもとに再建されました。しかし、無認可保育所は、地域で認可保育所と同じ役割を果たしていたにもかかわらず、復興のための援助は一切してもらえませんでした。

 また、一番心に残ったのは、公立保育所の建物が地域の避難所になったことです。最低基準に基づく園舎と園庭を確保した保育所は、近隣の家屋が倒壊してもしっかりと残っていました。そして、給食室があり乳幼児の生活の場である保育所は、地域住民にとって優しい避難所の役割を果たしてくれました。

 当時、避難所を訪ねたとき、半壊した家を片づけに行きたいが、子供が家で被災したので、自分の家が怖いと言って家に行きたがらない、せめて保育所で預かってもらえたら片づけができるのにと話されました。

 このような子供の命と生活を保障するためには、最低基準の引き上げが必要です。地方裁量の名目で現行基準の切り下げを認めることは、子供の命と生活を軽視することと言わざるを得ません。OECDの調査でも明らかなように、今、世界的に保育、幼児教育の重要性に対する認識が高まっていると聞きます。日本でも、保育所の敷地面積を三倍ほど、施設面積を二倍ほどに広げ、耐震を強化し、地下シェルターをつくり、園児と職員が一週間保育所で生活できる施設整備がされると私はよいと思います。ヨーロッパ並みの職員配置基準にし、日常は定員の八割の子供を保育し、緊急に備えることこそ大切だというふうに思います。

 少子化とあわせて子育てが困難になっている現在、豊かな子育て文化を蓄積している保育所を最大限活用するためにも、国の責任で認可保育所をふやし、最低基準を引き上げ、保育を必要とする子供たちが豊かな保育を受け、未来の希望として健やかに成長していけるように、児童福祉法にのっとり、国と自治体の責任による公的保障の充実をお願いして、意見陳述を終わります。

 ありがとうございました。(拍手)

岸田委員長 ありがとうございました。

 次に、漢人参考人にお願いいたします。

漢人参考人 意見陳述、最後になりました。東京都小金井市で市議会議員をしております漢人明子と申します。

 私自身、かつて児童扶養手当を受給し、大変助けられた時期がありました。また、議員となる前は保育園で働いていたこともありまして、さまざまな母子家庭の現実にも接してきましたし、また現在も幾つかの母子家庭のネットワークに参加をしています。本日は、児童扶養手当の国庫負担率引き下げに対して、母子家庭の当事者としての立場から、そしてまた三位一体改革に対して、地方自治体議員の立場からの意見を述べさせていただきます。

 まず、二〇〇六年度の三位一体改革についてです。

 三位一体改革とは、地方の実情に応じた事業が自主的、自立的にできるように、地方への国の関与を廃止、縮減し、地方の権限と責任を大幅に拡大するという地方分権を推進する観点で取り組まれたことになっていますが、残念ながら実態は違っていたと思います。

 政府・与党からは、当初から生活保護や児童扶養手当の国庫負担の見直しが上げられてきました。しかし、これらは法定受託事務であり、自治体の裁量権などありません。単なる地方への負担転嫁でしかありません。全国市長会、全国知事会など、地方からは生活保護事務の国への返上も辞さないとの強い姿勢による猛反対があり、生活保護については見送られることになったわけです。

 ところが、児童扶養手当については対象として残ってしまいました。四兆円規模の国庫補助負担金の廃止、縮減という目標数値への数合わせに使われたとしか言いようがありません。

 現在、私の小金井市議会も第一回定例会の真っ最中でして、あすからは予算特別委員会が開かれます。今回、財政課から提出されている資料によりますと、この三年間の三位一体改革による補助金等の影響額としては、この児童扶養手当負担金が一昨年の保育所運営費負担金に次いで大きな金額になっております。

 今回見送られました生活保護は当然ながら、児童扶養手当についても、決してこれは地方が求めたものではないということを申し上げておきたいと思います。

 次に、母子家庭、児童扶養手当の実態について話させていただきます。

 今回の見直しは、母子家庭や児童扶養手当の果たしている役割の実態を無視している、あるいは知らずに進められたのではないかとさえ感じています。

 象徴的なのは、昨年十二月七日の第十四回社会保障の在り方に関する懇談会での川崎二郎厚生労働大臣の発言です。川崎大臣は、児童扶養手当と就業支援について、あめとむちがセットにされた中での児童扶養手当をできるだけ地方と協力し合いながらやってまいりたいと発言されました。これに対しては、この発言撤回と謝罪を求める多くの抗議が寄せられているはずです。

 母子家庭の母親を何だと思っておられるのでしょうか。今の状態では女性の賃金が低過ぎて子供と暮らすには不十分なために、児童扶養手当を受給し、何とか暮らしを支えている母子家庭の現状、実情が全く理解されていません。

 先進国の中でも日本の母子世帯の母親の就労率は一番高く八五%です。日本の母子世帯の母親は怠けているから低収入なのではなく、働いても働いても収入が低いのです。二〇〇四年の国民生活基礎調査によると、一般家庭の平均年収は五百八十万円に対して、母子家庭の平均年収は約三分の一の二百二十五万円しかありません。この格差は年々広がっています。

 幼い子供を抱えて就職することの困難さ。正社員として雇用されることもままならず、パートや派遣としての仕事をかけ持ちしている女性もたくさんいます。しかも、長時間働いても収入は男性就労者より格段に低いのです。時間的にも経済的にも、就職に有利な資格を取る余裕すらないのが現状です。また、残業に追われるような仕事につけば、子供との時間がなくなってしまいます。子供への犯罪もふえる中、見守る必要もあります。何か起これば責められるのは母親です。

 一方、養育費を継続してもらっている人はわずか一七・七%です。児童扶養手当の受給者は生活保護世帯以下の収入の世帯が多いのです。多くの母子世帯は、生活保護以下の収入の中で児童扶養手当を受けて自立しようと懸命に頑張っています。

 そのような中で、月々の児童扶養手当、子供一人で全額支給だとして四万円程度ですけれども、これは月収十数万円に対して大変大きな金額です。まさしく母子家庭が不幸に陥るのを救うセーフティーネットの役割を果たしています。今回の法改正で過重負担となった自治体の窓口審査が厳しくなり、母子家庭の母親を経済的、精神的に追い込んでしまうことにならないか。結果として母子家庭の子供たちへの何らかの負担や被害が起こるのではないかととても心配です。

 次に、ナショナルミニマム、国の責任について述べます。

 児童扶養手当は法定受託事務です。自治体は、国が定めた認定基準、これは全国一律で収入のみが基準となっています、これに当てはめ事実認定を行うのみです。給付も現金給付のみですから、全く裁量の余地はありません。にもかかわらず、地方の負担率を上げて給付制限をさせようというのでしょうか。自治体の財政事情によって窓口対応が変わってくるのでしょうか。

 一月二十一日の琉球新報によりますと、沖縄県の二〇〇五年の児童扶養手当の受給者は過去最多ペースで推移していて、受給率は全国平均の二倍と最も高くなっているようです。ちなみに、二番目に高いのは北海道です。沖縄県母子寡婦福祉連合会事務局長はこの受給率の高さについて、離婚率の高さ、県民所得の低さのほか、配偶者からのDVの多さも背景としてある、夫から逃げるために、養育費をもらわないという事例もある、男性の所得が少なく養育費を払ってもらえない場合も多いと説明しています。

 負担率アップによる自治体の財政負担は深刻です。しかし、それで給付抑制が行われれば、暴力から逃げられなくなる女性や子供たちが確実に生まれ、地方差も含め、格差は一層拡大することになります。あるいは、貧乏人は出ていけという自治体があらわれ、生まれ育った町で暮らすことができなくなるかもしれません。最低生活水準は自治体の財政力にかかわらず保障されるべきものであり、生存にかかわるナショナルミニマムの確保は憲法二十五条で定められた国の責任です。

 また、今回の改定では、児童扶養手当については国の負担率を四分の三から三分の一へと大幅に引き下げています。自治体の裁量権が全くない法定受託事務であるにもかかわらず、国庫負担がたったの三分の一というのも納得できるものではありません。

 またさらに、既に補助金の削減が行われている公立保育所運営費や就学援助などの現場では、サービス水準の引き下げやサービス対象の厳格化が行われているところです。

 次に、今回の法改正のわかりにくさについてです。

 今回の法案のタイトルは、国の補助金等の整理及び合理化等に伴う児童手当法等の一部を改正する法律案というものです。そして、内容的には、児童手当だけではなく、児童扶養手当も含む三位一体改革による国庫負担の見直しなどに加え、児童手当の増額や基礎年金の国庫負担への加算も抱き合わせとなっています。国庫負担の見直しという共通点はありますけれども、法律改正の趣旨、目的は異なるものであり、大変わかりにくく、国民から国への不信感を招くことになるという点も指摘をしておきます。

 また、児童手当については、国庫負担割合を引き下げると同時に、対象、支給率を拡大する見直しも行っています。そしてあわせて、別に児童手当制度の拡充にかかわる地方特例交付金が創設され、実質的に財源保障がされることになります。

 しかし、児童扶養手当については財源保障も不明確なままです。そもそも今回は生活保護のとばっちりとして急遽持ち出されたもので、当事者の意見を聞くなど十分な議論、検討も行われていません。当事者にならなければ制度の意義もわかりにくく、その当事者は意見表明をする余裕もない日々に追われているというのが現状です。このような当事者不在の見直し、法改正がこのまま進められてよいのでしょうか。

 最後に、自立支援を求めるということで述べます。

 この間、児童扶養手当制度は、母子家庭の自立支援、就労支援とセットで大幅に改定されてきました。しかし、この三年間の就労支援はほとんど役に立っていないというのが実態です。

 東京都の母子就業支援センターで職業紹介を受けても、なかなか就職に結びつかないようです。例えば、十八件紹介を受けて面接に結びついたのがたったの三件、しかし面接には、母子家庭の母以外もたくさん来ていて、面接結果は不可、非常勤であってもこのような事例もあります。

 私の住んでいる小金井市では、今年度、母子家庭自立支援給付金として、自立支援教育訓練給付金と高等技能訓練促進費を創設しました。しかし、残念ながら受給者はゼロです。広報はそれなりにしているのに、相談さえもほとんどありません。就労支援メニューのない自治体も多くあります。

 障害者自立支援法も同じですが、自立支援といいながら、国庫負担の削減が目的となっているような中で、本人にのみ努力を求めても限界は明らかだということです。

 そもそも児童扶養手当は、母子家庭の子供たちの生活を保障するための制度です。どのような家庭環境にあろうとも、子供には何の責任もなく、社会には、すべての子供たちが平等に生きる権利を保障し育てる責務があります。少子化対策に躍起になる一方で母子家庭に対するこの冷遇には、母子家庭の子供たちを、社会の未来を担う一員として認めていないのではないかとさえ感じてしまいます。

 社会が男女同一賃金を実現し、幼い子供を預けて働ける保育施設を充実し、資格を取ったり勉強したりする時間や、体を休める休息の十分とれる労働環境を整備することができれば、母子家庭の母親も自立して生活することができます。年金や税制などの社会システムを世帯単位から個人単位へと変えていくことで、性別や障害、家族構成にかかわらず、だれもが真に自立できる社会が実現できるのではないでしょうか。

 また、国として行うべき社会システムの変更やナショナルミニマムの保障と自治体の創意工夫で進めるべき事業を明確にし、直接市民と向き合う自治体の自主性、自立性が向上していくような地方分権の推進を強く求めて、発言を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。(拍手)

岸田委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の方々の御意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

岸田委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。寺田稔君。

寺田(稔)委員 自由民主党の寺田稔でございます。

 本日の参考人の意見陳述に際しまして、参考人の先生方、本当にお忙しい中、ありがとうございます。

 ただし、冒頭、一言どうしても申し上げておかなければならないことがあります。それは今回の民主党の参考人の人選の問題点でございます。

 前衆議院議員で現在も民主党の公認候補、しかも現職の支部長が参考人に出るということとなっているわけでございます。参考人制度を正しく、政治利用のない形で運用をしていく上で、これは一体どういうふうなことなんでしょうか。中根参考人に対しましては、くれぐれも政治的発言のないように、そしてまた、自後、この参考人質疑を決して政治的に利用することのないように強く求めるものでございます。

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 さて、それでは、これより参考人質疑……(発言する者あり)私が質問者です。私がこれから質問をいたします。御清聴してください。

 それでは、これより、私より各参考人に質疑を進めてまいります。

 いよいよ本格的な人口減社会に突入をいたしました。昨年は七千三百名強の人口減少というふうなことで、我が国始まって以来の本格的な人口減少となっているわけでございます。かつても、大正時代は、一億人政策という我が国始まって以来の人口増加政策がとられました。大正時代は、これは、当時のやはり出生率の低下、そしてまた当時の富国強兵に備えなければならないという全く別のファクターによって人口増政策が行われ、当時は幸い出生率も回復をして人口減少には至らなかったわけでございますが、まさに現在は、少子化を伴う本格的な人口減社会でございます。

 そこで、まず冒頭、各参考人にお伺いをするわけでございますが、こうした人口減、とりわけ少子化は一体何が根本的な原因であるか、順次、京極参考人初め各参考人に御質疑をお願いいたします。

京極参考人 少子化の問題は大変奥深い問題でありまして、世間でよくいろいろなことが言われていますけれども、それぞれそれらしい理由があるわけでございます。

 人口学的には、未婚化、晩婚化、晩産化、そして夫婦の出生力の低下ということで説明されていますけれども、それぞれがまた原因がございます。明治維新以降、日本の人口は約三千万から一億二千万に四倍になったわけですけれども、合計特殊出生率、女性が一生の間に産む子供の平均数ですけれども、これが下がっておりまして、それがなぜかというのはなかなか簡単には言えないことでございます。

 ただ、私ども、いろいろ研究しておりまして、例えばヨーロッパ社会におきましても、急速な超少子化の国々、例えばイタリアとかスペインとか、なおドイツが一部入りますけれども、そういう国々と、それから、緩やかな、緩少子化と申しますか、人口置換率といいまして、人口の維持にはちょっと足りないけれども緩やかに子供が減っているという国と、二つございます。

 大きく比較をしてみますと、やはり緩やかな少子化の国々、北欧とかイギリス、フランス等ですけれども、そういう国々におきましては、先ほど参考人の方々もいろいろお話しになりましたけれども、国の対策というものが大変手厚い、保育政策についても児童手当についても、さまざまな子育て支援の施策が手厚いということが言えるかと思います。

 他方、超少子化の国々は、歴史的な経緯もあり、それが不十分であるということが言えるかと思います。また、民族問題等いろいろ関係しておりますので、簡単には言えないのでありますけれども。

 私も、今それをまさに、国の社会保障・人口問題研究所の所長として、責任者でございますので、実態調査その他、エビデンスのある、根拠のあるデータに基づいて、国の方針をより進めるような方向で研究しているところであります。

 少子化は、これがすべてだ、これを解決すればすぐ自動的に少子化が解消されるということはないと思います。ただ、先ほど申しましたヨーロッパの緩少子化の国に少なくとも日本は近づけなくちゃいけないし、子育て支援についてもまだまだ改善する余地があります。御案内のように、社会保障給付の内訳も七割が高齢者関係でございます、四%弱が児童、家庭関係ということでございますので、この辺の改善をこれから大いに先生方に御議論いただきまして図っていただきたいと思っております。

 簡単ですけれども。

大日向参考人 私は、女子大の教員をしております、また女性たちの意識調査も繰り返していますが、若い女性たちは、結婚もしたいし産みたいという意識が非常に強いんですね。でも一方で、働き続けたいとも考えています。そのバランスで非常に悩んで、いざ社会に出て働き始めると、結婚相手に恵まれないとか、就労継続を理解してくれる男性に恵まれないとか、実際に子供を産んで働き続けることができるかどうかということで悩んでおります。

 産みたいけれども、子供はかわいいということはわかっているんだけれども、自分の人生に失うものも大きいというふうに考えている。その失うものというのが、先ほど申しました、ただお金がかかるということだけではなく、同時に自分の人生の生活設計が変更を余儀なくされる、働き続けることができない、それによって失う機会費用が大きいということに、大変ちゅうちょしているということです。

 このあたりをいかに保障していくかということが大事だと思いますが、今、京極先生も御紹介なさいましたヨーロッパ等の例を見まして、今注目されておりますのがフランスです。少子化は先進国共通のある程度の宿命ではありますが、フランスは出生率が回復の兆しを見せています。何が影響しているか、二つあると言われています。

 一つは経済的支援、そしてもう一つは就労継続支援です。そして、この就労継続支援に関しましては、フランスは三年間の育休があるんですが、ほとんどの女性たちは一年で復職するそうです。でも、復職した後、短時間で働けたり、多様な働き方ができる、そして、それができる多様な保育というものが整備されているということです。

 一方、同じヨーロッパでもドイツは一向に出生率が回復しません。経済的支援も充実しているんですが、ドイツの方は、やはり女性は結婚して子供が生まれたら育児に専念すべきだ、そういう分業意識が根強く、復職に関して両立支援、ワーク・アンド・ライフ・バランスの支援が手薄いことが原因ではないかと言われております。

 このあたりも国情や慣行が違いますので、あながちすぐ日本に導入ということはなかなか難しいかと思いますが、先ほど申し上げた、機会費用の軽減をいかに図るかということを経済的支援と同時に検討していただければと思います。

 以上です。

中根参考人 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 私は、最終的には、あくまでも国会、委員会に呼ばれてここに座っているわけであります。だから、冒頭申し上げましたように、そういう政治的な立場とは離れて意見を述べさせていただきますということは申し上げているわけでありまして、その辺はまさにお互いに理解し合って進めないと……

岸田委員長 中根参考人、ぜひ質問にお答えください。お願いします。

中根参考人 はい。そういったことをまず申し上げたいわけでありますけれども。私が前議員という立場だから、そうやって委員の皆様方からもそういった御意見が出るんだろうと思いますけれども、だから甘んじて受けますけれども……

岸田委員長 中根参考人に申し上げます。ぜひ質問にお答えください。

中根参考人 はい。

 今までいろいろな先生がおっしゃられてこられたこととほとんど同じことでありますけれども、まずは子育てに対する機会費用ということは、お母様方にとって、女性にとって大変大切な、重要なポイントであろうというふうに思います。女性の社会参画を推進すると、その一方で少子化が進んでしまうというなかなか難しい問題をどうクリアしていくかということは、やはり政治的にしっかりと議論をして、国会で議論をしていただきたいというふうに思います。

 あるいはまた、地方、先ほど市会議員の先生からもお話がありましたけれども、自治体で上乗せのような形で子育て支援や少子化対策をとる、しかし、せっかく、もしそれが効果が出てお子様が誕生しても、将来的にそれが都市部の方へ移動してしまうというなかなか難しい問題があるということもあろうかというふうに思います。

 あるいは、お母様方の、先ほど私が紹介をさせていただきました声にあらわれているように、現状の少子化対策あるいは子育て支援策で出生率の向上ということにつながっているとはなかなか思えない。

 また、その一方で、しかし、この少子化対策、子育て支援はしっかりやっていかなければならない。子供がいなければ高齢者も支えることはできないというのは当然のことでありますから、何とかしていかなきゃいけない。やはり、政治的なまず意思を、あるいは国政、国会全体で、女性を、あるいは子育てをバックアップしていくというしっかりとした意思表示をする。

 そのためには、具体的には、今まで高齢者の方に偏っていたと言われている予算配分、これも、聖域なきというふうに言われていますけれども、まさに子育てや子供の出生、誕生、こういったものは聖域である、とても大切なことであるということを具体的に予算配分、予算の具体化として示していくというそのことが、国民にとっての安心、また、子供を産むというインセンティブにつながるのではないかというふうに私は考えさせていただいているところでございます。とりわけ一人目対策ですね。子供を持っていない、子育ての経験のない方々に対してどうバックアップをしていくかということがとりわけ大切なことじゃないかというふうに思います。

 冒頭失礼なことを申し上げたかもしれませんけれども、忌憚のない意見をというふうなことも冒頭ありましたものですから、そういったことも含めて意見陳述とさせていただきました。失礼しました。

増田参考人 私は、人類が営々と、営みとして子供を生み育ててきたということに今ストップがかかっているというのは、本当に構造的な、文化的な原因があるというふうに思います。それを鮮明に分析していく必要があるというふうに、それが課題だなというふうに思っています。

 でも、私自身が保育所で若いお母さんたちと会って、何点か思うところがあります。

 それは、赤ちゃんを懐妊して二十まで育てるというのは、長い、二十年もかかって、長期的な営みなんです。その営みに対して見通しが持てるということがとても大事なことだというふうに思います。こういう、はったら立つというふうに喜んで育ててきたのが昔だったと思うんですけれども、今のお母さんたちは大人になっていく我が子の姿を前向きに想像できないでいる、それが現実だなというふうに思っています。

 そのことを保障してあげるのに何点かあるなと思います。

 一つは労働の保障です。共働きをしても生活をきちんとやっていきたいというふうに若い人たちは今思っています。ただ、その生活賃金の見通しが持てないのが今のお母さんとかお父さんの実態です。ことしもらった賃金が来年も保障されるのかなというふうに悩んでいるんですね。その悩みを解消してあげることがまず大事だと思います。子供たちが育っていく過程でこういうお金が要って、こんなふうな生活になってという想像の中に、自分がしっかりと生活ができる労働保障がされているということが大前提になるというふうに私は思っています。

 それから、せっかく産んだ子供たちを虐待して死に至らしめたり、そこまでいかなくても、虐待をするお母さんたちがかなりふえてまいりました。保育所にそうやって緊急に入っているお子さんたちもふえてきています。

 そのことの大きな原因は、子育ての文化が地域で崩壊をしているというふうに私は思います。とても一人のお母さんが二十年間孤独で子育てができるとは思っていません。その人たちをきちんと地域社会とかそういう保育所などで支えていく体制が必要だと思います。

 その体制の中で、今ある社会資源をきちんと活用していくということが非常に重要だというふうに私は思っています。保育所とか学校とか保健所とか児童相談所とか、さまざまな社会資源を持っていますので、それをもう少し公的保障していただいて、発展させて、網の目を小さくしてフォローしていく体制が必要だというふうに思います。

 仲間と一緒に育てていかないと子供を育てる喜びがわいてこないわけです。だから、保育所へ虐待で来られる、ノイローゼで来られるお母さんたちも、本当に、子供たちが一緒に食事をしている、ああこんなふうに一緒に食べるんやな、このくらい量を食べたらちゃんと育つんやなというふうにわかっていくと、笑顔に変わっていって、子供たちを育てるという楽しみを持たれます。

 私は、そうやって子供たちを生み育てることが未来につながっていくということを若い青年たちがしっかりつかみ取ることが、今とても重要だというふうに思っております。

漢人参考人 いろいろあろうかと思いますけれども、三点に絞って意見を言いたいと思います。

 一つは、先日何かのアンケート調査で発表されておりましたけれども、共働き夫婦の第一子がいる家庭で第二子が生まれる確率、割合が高いのは、夫の家事協力度が高い夫婦であるということがありました。それにも見られますように、やはり男女ともに働きながら、自己実現をしながら出産、育児ができるような労働環境が大変重要だというのがまず一点です。

 それから、日本は夫婦別姓もまだままならないような現状なんですけれども、子供の出生率が高い国などを見ますと、家族制度というものがかなり変わってきているというふうに思います。例えば、非嫡出子の差別ですとか、また先ほど述べました母子家庭の子供に対する状況や、障害を持っているお子さんも含めて、さまざまな子供の平等の環境をつくるということも非常に大きいと思っています。

 そしてもう一つは、やはり子育てが、今少子化ということで経験が少なくなるということで不安を解消する場がなくなっているというのが大きいと思いますので、地域で子育てを共有できる、楽しいものだということが感じられるような関係、地域づくりをしていくというのも非常に重要だということで、三点、私としては主に大事だと思っております。

寺田(稔)委員 それぞれ貴重な御意見、ありがとうございました。

 なお、中根参考人の冒頭の発言、慎んでください。聞いたことにちゃんと答えるべきが参考人です。当然です。そのことは私が厳に言ったとおりでございます。きちんとそういうふうな態度を堅持してもらうことが、この参考人制度を政治的利用のない制度として持っていくために重要なことなんです。そのことは十分に認識をしていかなければなりません。私の審議を終えさせていただきます。

岸田委員長 次に、上田勇君。

上田委員 公明党の上田勇でございます。

 きょうは、参考人の先生方には……(発言する者あり)済みません、御静粛にお願いできますか。

岸田委員長 静粛にお願いします。

上田委員 きょうは、参考人の皆様に御出席をいただき、大変貴重な御意見を伺いまして、大変ありがとうございました。

 今、寺田委員の方からもちょっと御指摘があったんですが、私も今伺いまして、中根さん、公認候補者だということで、ちょっとこれは異例なことなので少々びっくりいたしております。(発言する者あり)しかも、ちょっと御発言の中で何か、昨日急に伺ったということでありますけれども、私が承知しているのでは、この参考人質疑、先週もう既に決まっていて、ほかの先生方は全部先週お名前も伺っていたところでございます。そういう意味では、ぜひ、委員長、委員長……(発言する者あり)

岸田委員長 静粛にお願いします。

上田委員 委員長にちょっとお願いしたいんですが、委員長並びに理事の皆様方には、これは中根さんにとっても大変失礼なことでありますし、ましてやほかの参考人の皆様に大変失礼なことでございます。ぜひ……(発言する者あり)だから委員長にお願いしているんですよ、ちゃんと聞いていてくださいよ。私、今、委員長とお願いしたじゃないですか。ちょっと座って、座って。(発言する者あり)

岸田委員長 静粛にお願いいたします。きょうは、参考人の皆様方に大変お忙しい中お越しをいただいて参考人質疑を行っておりますので、ぜひ静粛にその質疑を続けたいと存じます。

 上田君、どうぞ。

上田委員 済みません、申しわけありません。今、ちょっと途中で割り込まれたんですが、私は委員長にちょっとお願いいたしました。そして、委員長並びに理事の皆様方に、こうした、突然きのうになって決めて、準備ができていなかったと。御謙遜もあるんでしょうけれども、そうした発言というのは、中根さんにとっても非常に失礼なことでありますし、またほかの参考人にとってはもっと失礼なことであろうかというふうに思いますので、ぜひ委員長また理事の皆様は……(発言する者あり)特に今の御発言は、大変この委員会の重要さを認識しない不規則発言だというふうに思います。委員会理事会の皆様方には、ぜひ今後は充実した審議ができるような適切な対応をしていただけますよう、委員長によろしくお願いしたいというふうに思います。

岸田委員長 はい、ぜひ理事会において、適切な運営ができるよう、今後とも努力したいと存じます。

上田委員 それでは、内容についてお伺いをさせていただきたいというふうに思います。

 まず、京極先生にお伺いをいたしますが、先生の方から生活保護のあり方について冒頭お話がございました。この生活保護費、平成十八年度の予算でも二兆円を超える、しかも毎年、十八年度でも対前年比で六%ふえるというようなことで、これは財政的には大きな負担になってきているわけであります。

 この原因というのは、もちろんこれは高齢化の進行やあるいは単身世帯が増加しているというような社会的なことだとかあるんだと思いますが、先生も今、この生活保護制度というのはナショナルミニマムとしての社会保障の根幹であるというふうな御意見でございまして、私も全くそのとおりだというふうに考えております。

 ただ、最近、いろいろなところでお話を伺うと、この生活保護制度についての公平感についていろいろと疑問視する声も出てはいます。給付の内容などについて果たしてそれが適切なのかというようなこと、これは実際にその給付を受けられていない方々からはそういうような御意見も伺いますし、また認定の不適切さ、こうしたことについてもいろいろな御指摘があります。

 国と地方の費用負担のあり方について今先生から御意見がありましたけれども、それは考えていかなければいけないことでありますが、そのほかに、この制度設計をより適切なものにしていく、またその執行体制、これも適正化していくためのアドバイスがございましたら、ぜひ御意見を伺いたいというふうに思います。

京極参考人 関係者協議会では、国と地方の財政負担の問題に焦点がありまして、今議員御指摘のように、福祉事務所の執行体制等については余り十分突っ込んだ議論ができていなかったかと思います。

 その中でも、私も指摘いたしましたけれども、例えば現在、社会福祉主事という資格がございます。社会福祉法に載っている資格でございますけれども、この主事は、大学を出た方でありますと厚生大臣の指定した三科目をとればなれる三科目主事というのがございます。大学を出ていない方については現任訓練で主事を取れるということで、これは比較的福祉事務所の職員としては取っている方は多いんですけれども、残念ながら、社会福祉士という国家資格ができましても、それを取った方は福祉事務所にほとんどいらっしゃらないということでありまして、三%でしたか、そういう点でどうなのか。

 それから、もう一つ大きな問題点としては、就労支援と生活保護の給付がなかなか結びついていない。これは、厚生労働省ということで厚生省と労働省が一緒になりましたけれども、就労支援は、ハローワークでやっていまして国家公務員が旧労働省所管のもとでやっている、福祉事務所は、市と区が中心でございまして地方公務員でやっている、この間の連携が非常にないわけでございます。イギリスでは、ことしから就労支援と生活保護の支給を一緒の事務所でやるということで改革が進められておりますけれども、我が国の場合は全くばらばらということも大きな問題ではないかと思っております。なかなか、就労支援について、国としても福祉サイドだけではできないので、やはり労働サイドの改革というのがないともう一つ施策が進んでいかないんじゃないか、福祉事務所体制だけの問題ではないというふうに思っております。

 以上でございます。

上田委員 ありがとうございます。

 また、京極先生、先ほど生活保護の実施に当たって、これは地方自治体も、一番身近なところで責任をやはり共有すべきではないかというお話がございました。

 それについてなんですが、ただ、これは国の負担を、国が定めた基準に沿ってただ負担だけを地方の方に持っていくということになると、適正化のインセンティブが実際にその事業を実施する自治体には働かないのではないのかなという気がいたします。やはり国が、ナショナルミニマムとして一定の部分、これはほとんどの部分になると思うんですが、それを定める。その上で、一定の部分についてはやはり自治体、今いろいろと労働施策との整合性を図っていくなんというお話もございましたけれども、それは、自治体がそれぞれの政策目的あるいは地域事情、そうしたものを考慮して、給付額であるとか事業メニューであるとか、もっと裁量の余地、弾力性を持たせるべきではないのかというふうに思います。

 今後の国と地方の、負担割合だけではなくてそうした実際の施策の内容についての役割についても、御意見があれば伺いたいというふうに思います。

京極参考人 まず、今回は、生活保護に関しましては負担割合は変わらなかったわけでありますが、これは議員の先生方は御存じだと思いますけれども、機関委任事務から法定受託事務に変わったということはかなり大きな変更でありまして、機関委任事務は、いわば国の事務を地方の首長にやっていただくということでありますが、法定受託事務は、国の責任でありますけれども、地方とともに法律に基づいて執行するということでございまして、国の負担割合と法定受託事務については、原則として、財政法その他から見ても直接の関係がありません。例えば、戸籍なんかは、法定受託事務ですけれども市町村がやっております。

 ただ、生活保護は、国の責任が大変大きいので、現在、こういう四分の三という割合になっているということであります。これを今後どうするかということは、やはり国と地方の役割分担をどう考えるかということと関係してきます。

 特に、これは協議会でも問題提起をいたしましたけれども、例えば級地というのが生活保護にはございます。それぞれ市町村ごとに級地があって、生活にお金がかかる地域と比較的かからない地域というのを国が定めているわけでございますけれども、厚生労働大臣が定めているんですが、こういうものはかなり地方に任せていいんじゃないかというのもございます。

 また、日本の生活保護は、先進諸国と比べますと非常にたくさんの扶助に分かれております。八つの扶助があるわけでございまして、世界では日本だけということでございます。例えば、葬祭扶助なんて、お葬式をするときに扶助が出るわけであります。これは、生活保護ができた昭和二十一年、旧生活保護法でございますけれども、そのころは他法他施策優先といっても他法他施策がほとんどない段階で、欧米諸国と比べますとスタートが非常に厳しいスタートでありました。戦後の特殊事情がかなりあったわけで、生活保護ですべての生活が賄える対応としてたくさんの扶助をつくった。欧米諸国では、おおむね一つ、生活扶助を中心とした対応になっているわけでございます。地方自治体がそれに対してさまざまな補完をするというのが多いかと思います。

 そういった点で、果たして扶助についても、これまでどおり戦後の引きずってきた細かな扶助が必要かどうか。むしろ、国と地方の役割分担を考えると、地方で対応した方がより被保護者のためになるんじゃないかというのもあると思いますので、その点の見直しがこれから必要かと思っております。

上田委員 ありがとうございます。

 私も、やはりどうしても生活に身近な部分での社会保障でありますので、できるだけ身近なところに、目の届く地方の関与というのも重要なのではないかというふうに思っております。

 次に、大日向先生にお伺いしたいというふうに思います。

 先生から、お話の中で、これまでの国がやってきた少子化対策、大きく分けると、一つには経済的支援、これは児童手当などでありますね。もう一つは保育事業とか職場雇用関係などの改善といった、そうした子育てをしやすい環境をつくっていくというような二つの大きな柱があるという話がございまして、私も、これはどっちも非常に重要な施策だというふうに思っております。

 ただ、どうしても、これはいずれも、こうした少子化対策、子育て支援というのは、数年のうちに出生率が高くなるとか、すぐに結果の出るような対策ではないのは明らかでありまして、しかも、因果関係とか費用対効果というのが必ずしもわかりやすく明確になるものでもないのではないのかなという気がしておりますが、ただ、これはやはり、社会全体として未来の日本の国に責任を持つという立場から、子育てはともに支え合っていこうということが重要なのではないかというふうに考えております。

 先ほど、先生から、経済的支援、これは必要性はあるんだけれども、例えば出生率向上に対する効果については疑問という趣旨の御発言もございまして、実は私もある意味ではそうだというふうには思いますが、ただ、もう一方で、先生が強調されていました保育の充実や雇用ルールとか職場環境といったような改善だとか、そうした施策の効果についてはちょっと言及はされなかったんですけれども、もし、より広い対象をとった、そういう実証的な研究の成果とかがあれば、短時間で申しわけないんですけれども、少し御紹介いただければと思います。

大日向参考人 先生がおっしゃいますように、少子化は何かをして急速に結果が出るというものではございません。二十数年かかって一・二九まで下がったものの回復は、やはり最低その半分はかかるという覚悟が必要かと思います。その場合に、経済的支援の効果以外に、就労支援あるいは地域支援の効果はいかがというような御質問だったと思いますが、これはなかなかお答えすることが難しいと思います。

 ただ、先ほども御紹介いたしましたように、フランスあるいはイギリス等で出生率が下げどまっている、あるいは多少回復している国は、やはり就労支援がかなり効果を上げているということは実証的に言われております。

 特に、先ほどはフランスの例を御紹介いたしましたが、もう一つ、イギリスの例を御紹介いたします。イギリスはワーク・アンド・ライフ・バランスをブレア政権が果敢に進めておりまして、福祉も大事だけれども、福祉よりも就業政策をという形で両立支援をしております。その結果、働きやすくなり機会費用が少なくなりというようなことが結果的に少子化の回復につながっているのではないかと考えられます。

 この少子化の問題に関して大事なことは、産めよふやせよではないということで、産む自由、産まない自由もきちんと保障した上で、しかし、安心して本当に産みたいと考えている方々が産めるような社会をつくっていくということで考えますと、この就労継続支援の先進国、イギリスやフランスの例に少し見習うものもあるかなというふうに考えております。

上田委員 ありがとうございます。

 私どもも、この少子化対策、今、国の重要な施策として、どういうことをどの程度力を入れてやっていくのが一番いいのかということを考えるときに、実際にはなかなかまとまった研究成果みたいなのがもう一つはっきりしていないという感じも一面いたしておりまして、これから、そういう意味で、政策の優先度やその割合、そうしたものを考えていく中でまたいろいろな御意見を伺いたいというふうに思っております。

 そこで、もう一つ大日向先生にお伺いをいたしますけれども、先生の先ほどの御発言の中で、子育てに実際にかかるコストだけではなくて、機会費用にやはり注目すべきであるという御意見がございました。当然それは、仕事を続けたとしたときに比べたときの逸失利益を換算して、ちょっと数字は忘れましたけれども、先ほど非常に莫大な額だということをおっしゃっておりました。それも、やはりこれから特に女性の方が非常に社会の中で重要な立場で仕事をされる機会がふえているということを考えれば、非常に大きな重要な視点だろうというふうに、私も同感でございます。

 ただ、その考え方でいきますと、ちょっとこれは確認をさせていただきたいのですけれども、やはり所得等の負担能力に応じて、それぞれの方々が得られる機会に応じて自己負担をしたとしても、むしろキャパシティーの方を重視して、より広い保育施設の整備等を進めていくべきだという御意見というふうに伺ってよろしいのでしょうか。もちろん、当然それは負担能力に応じてということになろうかと思いますけれども、先生にその辺、ちょっとクラリファイしていただければと思います。

大日向参考人 確かに、おっしゃるとおり、家族政策対策の給付金は日本は圧倒的に少のうございますね。OECDの中でもかなり最低、フランスは二・九とか、スウェーデンは二・六、それに比べて日本は〇・六というようなことです。それからもう一つ、よく御存じだと思いますが、高齢者給付に比べて、七割対三・八%というこのキャパは本当に少ないです。これをいかにふやしていくかということはとても大事だと思います。

 ただし、高齢者もこれからふえてまいります。私もその仲間に入りまして、高齢者給付をいきなり減らすということも不可能だと思います。そういたしますと、やはり家族政策に充てる財源を新たにつくっていく、そういうようなところも御検討いただければありがたいというふうに考えております。

上田委員 これで時間ですので質問を終わらせていただきますけれども、やはりこの少子化問題、それから、これからの少子高齢社会における社会保障のあり方というのは、国のあり方の中で、国政の課題としても一番重要な問題だと考えております。そういう意味で、きょうはちょっとほかの参考人の先生方には御質問する機会がありませんでしたけれども、各方面、それぞれのお立場でいろいろな御意見があるということは先ほどの御発言を聞いてわかったところでございますので、これからもまたぜひいろいろと貴重な御意見を伺わせていただきながら、国政の中に生かしていきたいというふうに思いますので、どうかよろしくお願いいたします。

 きょうは、大変にありがとうございました。

岸田委員長 次に、小宮山洋子君。

小宮山(洋)委員 民主党の小宮山洋子でございます。

 本日は、参考人の皆様、貴重な御意見をありがとうございました。

 皆様に伺いたいのですが、もちろん、少子化への対応というのは、一つのことだけで子どもを産むようになるわけではございません。ただ、さまざまな調査をとりましても、経済的負担があるから持てないという答えがどの調査でも一番多い答えを示しております。そうした中で、現在の、一人目、二人目五千円、三人目でようやく一万円という額は、諸外国と比べても非常に低い額です。これまでも、この児童手当法はたび重なる改正が行われてまいりましたが、抜本改正がないまま、財源をいろいろなところから見繕ってくるという中で、この額が大幅に改善されることはございませんでした。

 私たちは、社会保障制度全体、そして税制のあり方も含めて、これから少子高齢社会の中で国が何を保障すべきかということを抜本的に見直す必要があると考えておりますが、その点につきまして、各参考人の皆様から御意見を伺いたいと思います。

京極参考人 議員御指摘のように、私も同感でございまして、我が国の、特に子供を抱えている家庭への経済的支援というのは必ずしも十分ではないと思っております。

 以前伺ったことで、この場で御披露していいかどうかわかりませんけれども、劇団四季の浅利慶太さんがある政府の委員会で発言されたことで、私たちの女優さんたちは、子供は欲しいけれども亭主は要らないと言っているということでございます。でも、実際には、母子家庭で子供を育てるのは日本では大変困難だということもございます。

 そういう点で、さまざまな経済的支援それから就労支援というのが車の両輪として必要でございますし、財源的にはもう少し大きくしていくべきだと思いますけれども、現在のこの財政状況の中でどういうやりくりをしたらいいか。特に、所得の面で税制上の配慮というのが扶養家族にあるわけでございますけれども、これをどの程度制限して手当を充実させるかという議論は昔からございまして、なかなか簡単に結論が出ない問題だと思っております。

 特に、今の児童手当につきましては、先ほどいろいろお話があったように、何とか今回、義務教育までということでございますけれども、実際にお金がかかるのは高校生とかその世代でございます。そういった点では、他方で、教育制度のあり方あるいは奨学金のあり方等をすべて児童手当で解決するわけにいきませんので、総合的な対応というのが必要かと思っております。各国の例を見ても、例えばヨーロッパ諸国の中では大学が無料という国がございまして、そういう場合は教育費でお金がかかることはないわけでございますし、国の施策、省をまたがって総合的に対応策を考えていかなくちゃいけない。厚生労働省としては、児童手当とかその他、どうするか。

 私としては、将来的には、もうちょっと国民が、子供のいない成人はすべて子育てに参加するというので、先ほど申し上げたような児童年金とか児童扶養保険とか、わかりませんけれども、そういうようなことを、税金だけですべて賄うのではなくて、企業も国民も負担をしながらやっていく制度ができていかないか、そんなことも考えているところでございます。

大日向参考人 確かに先生がおっしゃいますように、少子化対策、一つ何か決め手があるかというと、なかなか難しゅうございます。その中で、経済的支援というのは必要とされておりますし、わかりやすい、目玉となるものだということは考えております。

 ただ、どこまで支給したら本当に親たちが助かるのかということに関しては、同時に財源の議論というのが欠かせないだろうというふうに考えております。巨大な財源をどこから持ってくるのか、その議論と同時に、もう一方で、子育てをする世代の若い方々は、元気もパワーも力もあります。その方々がその力を社会に生かして、ある程度は自分たちで経済力を確保できるような支援が必要だと思います。

 それからもう一つ、その財源に関しましては、やはり国民全体で未来を支えてくれる子供たちを守っていこう、育てていこうという合意形成がぜひとも必要だと思います。そのためのきっかけにこの児童手当の議論がなっていただければありがたいと申し上げたことは、先ほどと同じでございます。

岸田委員長 済みません、京極参考人からちょっと修正があるそうですが、お願いしていいですか。

京極参考人 済みません、先ほど、義務教育までというふうに申し上げたのはちょっと間違いで、今回は小学校修了までということでございまして、将来的にはそういうふうにどんどん上げていく必要があると思っております。それだけ申し上げます。

中根参考人 私の、ここに存在していること自体を否定されておられる方がたくさんこの委員の中にいらっしゃるようでございますので、そういった方々は聞いていただかなくても結構でございますが、聞いていただく方だけに聞いていただければというふうに思いますけれども、私は……(発言する者あり)余分なことを言うのは委員の皆さんじゃないですか。本当に、来たくなかった、忙しかったんですよ、本当に。だけれども、きのうの午後、どうしてもという話で伺わせていただいたものですから……

岸田委員長 ぜひ質問にお答えください。お願いします。(発言する者あり)

中根参考人 非常識って、僕に言わないでほしいですよね、本当に。そっちの、ここから先の、向こうの問題ですよ、本当に。

 何か切り札になるような子育て支援や少子化対策というものがあるかどうか、本当に難しい問題だと思いますけれども、しかし、先ほどいろいろな資料も示しながらお話を申し上げましたように、児童手当の拡充というものに対する国民の期待が大きいというのも確かであろうと思います。具体的には、対象年齢の拡大あるいは所得制限の撤廃、こういったものが国民から期待をされている。

 そして、そのために財源が必要です。財源をどうするかというのはいろいろなやり方があると思いますので、無駄を削減したり、あるいはまた消費税を活用したりということ、それはいろいろとこれから議論していけばいいと思いますけれども、児童手当の拡充というものに対する国民的な期待の大きさというものは無視できないものがあろうかと思います。

 そしてまた、それぞれ親にも自分の生活がありますので、自分の生活と新たに子供をもうけるということのいろいろな考え方、年金も拡充してほしい、介護保険も充実してほしい、そういったことの中で、子育てにどれぐらい限られた予算、財源を割り振っていくかというのは、やはりしっかりと議論をしていかなきゃいけないことだと思います。

 そして、幼稚園の現場にいる者といたしましては、例えば幼保一元化とか、総合施設とか、認定こども園というような言葉が今出ておりますけれども、いずれにいたしましても、相変わらず問題なのは、厚生労働省と文科省で行政が縦割りになっていること。この行政の一元化を図っていくということも必要なことであろうと思いますし、また、教育の現場において、子育てとかあるいは保育とか、そういったものに対する体験を子供のころから積み上げていくということも必要なことであろうかというふうに思っていますし、先ほどお母様方の声として紹介を申し上げましたように、交通安全であるとか、治安であるとか、医療であるとか、虐待問題であるとか、公園も、いい公園が近くに欲しいとか、そういったさまざまなこともあわせてやっていく。

 本当にお金のかかることばかりでありますけれども、しかし、だからといって、ここを見捨てるわけにはいかない重要な部分、重要な施策であることも間違いないわけでありますので、それをどういうふうに配分していくかというのは、まさに、政治的な発言をしちゃいけないというふうに言われましたけれども、政治的な判断ということにもなろうかというふうに思います。

増田参考人 私は、子どもの権利条約で、子供が権利の主体者ということがはっきり明記されました。それで、子供の権利をきちんと守っていくのは大人社会の責任だというふうに思います。

 今、男女共同参画社会が求められています。すべての女性たちがやはりきちんと自分の思いで働き続ける社会を具体的に実現し、そうして、そのことで多分、市県民税が払えていけるというふうに私は思っています。

 今、労働実態の中から、賃金がきちんと毎年昇給するという若い世代は非常に少なくなってきました。でも、子供にかかるお金は、小さいときからどんどんどんどんたくさんかかっていって、それで、高校生と大学生を持つと経済がパンクするというような状態が庶民の実態だと思います。また、子供の権利の立場から、親の経済状況によって子供たちの受ける教育や保育に差があってはならないというふうに私は思います。

 それで、私は、スウェーデンのように、子供を産んだから家計収入が減になるという家庭経済状態を解消できたらいいなというふうに常日ごろ思っています。そして、共働きをきちんとして、そしてその子供にかかる費用を公費で負担していただくということをお願いしたいと思います。

 とりわけ、保育所の保育料は非常に高くて、二子、三子を産みたいと思っても、ほとんど女性の月の収入が保育料に支払われるというのが現実です。調査をとると、大体、今払っている保育料の半分にしてほしいというのが単純なお母さんたちの願いなんです。そこをきちんと公的に手当てをしていただかないと、子供を産み育てるということは可能にならないというふうに思っております。

漢人参考人 経済支援が重要だということについて、また、税控除というよりも手当という形でどの子供にも平等にという発想自体は支持するものなんですけれども、しかし、今はむしろ、子育てにお金がかかるということが言われ過ぎているのではないかとも思います。

 私自身は、先ほども言いましたけれども、母子家庭で年収二百五十万ぐらいの生活の中でも、お金はかけなくても豊かな子育てというのは関係性の中で実現できたと思っておりますので、それは単にお金、経済援助をするということではない形での、そういったものも伝えていくということも重要だと思っています。

 また、現金を給付するというよりは、必要経費を教育費の無料化とかそういった形で実現していくという方向性の方をむしろ望みたいし、少子化に対しての対策としては、先ほども言いましたが、やはり働き続けながら出産、子育てができるという状況をつくることの方が、多少の現金給付よりは意味があるというふうに思っております。

小宮山(洋)委員 先ほど、中根参考人が幾つか資料をお示しになりましたけれども、一番最初の資料で二・二三という数字がございました。これは今が一・二八というのと非常に差があるわけですよね。

 ですから、子どもを持っている人は二人以上持つということの数字だと思うんですけれども、その辺のことをもう一言、ちょっと中根参考人から補強した御答弁をいただけるでしょうか。

中根参考人 難しいこととか専門的なことはわかりませんけれども、子供を持っている人は二人以上欲しくなる。やはりこれは、子育ての充実感とか、子育ての社会的な意味合いとか意義とか、楽しさとか、そういったものを味わって、体験して、そして子供と一緒に家庭にいるということのすばらしさ、そういったものを体験した人は、さらに一層この家庭を膨らませていきたいといいますか、そういった思いになるんだろうというふうに思います。

 それにしても、まだ理想の子供数には足りない、届かないというところには、経済的な制約といいますか障壁があるのかもしれません。やはり問題意識というか、ここで注目しなければいけないのは、繰り返しになりますけれども、一人目をどのように御家庭でもうけていただくか。もちろん、欲しくても恵まれないという場合もありますので、議論を一くくりにするわけにはいきませんけれども、そういうことを除いた場合に、一人目をまず御家庭で産んでもらう、そのために国がどのような施策を打ち出すことができるか。それは、例えば一人目から児童手当を手厚くするということも一つの方法ではないかというふうには思います。

小宮山(洋)委員 先ほど京極参考人がおっしゃっていただきました義務教育終了までというのは、私どもが出している法案でございますので、応援していただいてありがとうございます。

 京極参考人、大日向参考人の方から育児保険のお話がございました。私たちも検討はしたんですけれども、いろいろメリット、デメリットがございまして、育児保険の場合、今これだけ国民負担がいろいろ言われている中で、子育てが終わった人も子育てをしていない人も、どのようにみんなが公平に払ってくれるのだろうか。そのあたりの、徴収のコストの問題も含めた、保険料の収納率が今低い中でどういう実現性があるかということ。それからまた、保険というのは事故に備えるもので、育児をそういうふうにとらえていいのかということですとか、負担がない人へは給付ができない、そうなるとそこがどうなるのかと、デメリットが非常に多いように私どもは考えているんですが、私の質問時間があと二分半ほどでございますので、京極参考人と大日向参考人から一言ずつ、その点についてお答えいただければと思います。

京極参考人 確かに、保険というのは保険料の徴収で大変問題が起きておりますけれども、社会保険ということで、強制保険という形で、特に被用者の場合、働いている方は自動的に会社で取られるという形で、収納率が高いわけです。自営業者等が、あるいは若い方のフリーターとか、そういう方がなかなか払えないということなので、保険の掛け方その他についてはいろいろ考える必要があると思います。

 消費税で何でもかんでも、打ち出の小づちで上げれば何とかなるということでは決してない、国民がやはり負担をして、そして税金からも補てんをするという合わせわざが日本の社会保障体系では非常にいいんじゃないかと思っております。

大日向参考人 民主党さんの御提案ではたしか一万六千円でしょうか、でも、それを実施すると三兆円近い財源が必要となる、それをどこまで財政的な裏づけがあるのかということについて、若干疑問がございました。

 そのほかに、例えば介護保険は、親がいる、いないにかかわらず、四十歳以上の人がみんな払っている。私たちは子供をみんなで育てるというのであれば、その負担をやはり収入のある年代から上の人たちが分かち合うような、子育て基金のようなことを考えられないかと考えたわけです。

小宮山(洋)委員 時間ですと来ましたが、ストップウオッチを持っておりまして、まだ四十秒ほどございます。

 今の財源のことですが、これはこの後、質疑をしていく中で申し上げますけれども、私たちは、税とそれから税の仕組みの控除のところを見直すことによって、それを今高齢者に比べて薄い子どもたちに充てるという抜本的な考え方をお示ししたいというふうに考えております。

 また、この後、質疑の中でしっかりとその辺は詰めてまいりたいと思います。ありがとうございました。

岸田委員長 次に、高橋千鶴子君。

高橋委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 きょうは、五人の参考人の皆さん、お忙しい中、本委員会に参加をいただきまして、また貴重な御意見をいただきましたこと、お礼を申し上げます。

 まず京極先生にお伺いをしたいのですが、今回の法案は、三位一体の関連で、補助金、負担金が国から地方へ税源を移譲されるなどという中身になっておりまして、児童手当の拡充とともに、国庫負担率の引き下げ、児童扶養手当並びに生活保護や介護、障害者の公立施設整備費など、さまざまなものが含まれているものであります。

 京極先生は、地域福祉について、旧厚生省に勤めておられたときに、地域福祉とは、地域住民の地域住民による地域住民のための福祉であると発言されたことなどをその後の講演の場などで紹介されていると思われます。

 今回の法案のみならず、最近の介護、障害者福祉などにおいても、地域の福祉計画や地域支援ということが非常に大きく期待をされております。ただ、現実には地域格差という問題があって、自主財源力が乏しい地方公共団体ほど介護の需要が高かったりする。そうすると、サービスを必要とされている、しかし、それを上げようとすればするほど保険料にはね返ってくる、値上げをせざるを得ないというふうに矛盾が起きます。

 これは介護だけではなく、全体として、地域に責任と財源を移すということによって、地域の格差がむしろ拡大するということも懸念をされるのではないかと思うんですけれども、この点について先生のお考えを伺いたいと思います。

京極参考人 確かに、例えば旧来の社会福祉制度は、福祉措置制度と申しまして、財源は国と地方で一〇〇%公費でやるという形でございました。それでありますと、確かに地域格差は非常にある面では少ないということが言えますけれども、非常に財政的には乏しい財源で、低い水準で均てん化するということになります。

 介護保険ができて、御案内のように各市町村は非常に活性化いたしまして、介護サービスの充実は近年目をみはるものがございます。もちろん格差はございます、しかし、全体として見ますと高いところでの格差でございまして、それはある程度住民が納得するところで決めることでありますので、高い水準での格差というのは、むしろ住民が決める住民自治の範囲の問題だと思っております。

 全体としては底上げがされたと思っておりますので、今般、ことしの四月からは障害者自立支援法ができます。支援費制度においては税金でやりますけれども、市町村がかなり上乗せをしたりしておりまして、非常に格差が大きかったんですが、これは今回の自立支援法においては格差がなくなる方向で義務的経費化しました。

 保険と税金の問題については、簡単にすべて保険でやれとかすべて税金でやれというふうにはいきませんので、ケース・バイ・ケースで慎重に考えて、介護保険導入に当たっても随分時間をかけてそこまで持っていったわけでありまして、自治体の御理解がなければ実行できなかったということで、また、障害者、難病者を介護保険に入れるかどうかということも今検討している最中でございまして、これも企業の理解、市町村の理解、県の理解、そういうものがないとなかなかできないわけでございます。一概に、保険であれば格差が拡大し、税金であれば格差が縮小するということではないということを申し上げたいと思います。

高橋委員 住民が納得するところでとおっしゃいましたが、それがなかなか現状の中では難しいだろうという問題意識を持って質問させていただきました。これ以上は、政府参考人ではございませんので、伺っておいて、今後の質疑に生かしたいと思います。

 もう一つ、先生が所長をしておられます国立社会保障・人口問題研究所、私たちもよく指標として活用させていただいております。昨年の人口減少のニュースはかなり衝撃的で、少子化対策が今国会においても、また本日の委員会においても重要テーマの一つとなっているのかと思います。

 先ほど来お話があるように、少子化の原因というのは一つではなくて、複合的なものであること。また、それによる対策も当然総合的なものが求められていると思います。よく言われるのが、二十五歳から三十四歳の女性の労働力率が高い国では出生率も高いという相関関係であります。男女の賃金格差ですとか、保育所、育児休業保障などの仕事と家庭の両立という面ではまだまだ諸外国に比べて、先進国でありながらおくれをとっているという問題が現実としてあるのではないかと思います。

 研究所が発表しているデータの中に、若い夫婦が産みたい数と実際に産んでいる数、非常に格差があります。こうしたことも紹介されておりますが、その背景にどんな声があるのか、ぜひ伺いたいと思います。

京極参考人 最後のところ、ちょっと聞こえにくかったんですけれども。

岸田委員長 済みません、では、高橋君、もう一回お願いします。

高橋委員 産みたい数と実際に産んだ数の間に非常に差がありますよね。その背景に、なぜそうなっているのかという声を具体的に伺いたいと思います。

京極参考人 これはまず、産みたい数のアンケートというのはあくまでも意識調査でありまして、希望ですね。これはそれほど戦後大きく変わっていないと思います、先ほど中根参考人から出た資料にございましたように。

 ただ、実際に、では、あなたは自分の経済状況あるいは家庭環境の中でどういうふうに選択しますかという質問をきちっとしますと、やはりどうしても子供の数は減ってきてしまうということであります。

 特に、私も、これはここでしゃべっていいかどうかちょっとわかりませんけれども、例えば、先ほど申し上げましたヨーロッパの超少子化の国は押しなべてカソリックの国でございまして、ローマ法王は中絶反対でございますけれども、各国の法律はみんな変わりまして、中絶が許されるようになったということも関係しておりまして、カソリックの場合は基本的には子供はすべて産むということでありますけれども、我が国においても、産婦人科の先生方のいろいろな調査等から見まして、大体三十万人ほど中絶があると言われています。

 この理由はいろいろあるでしょうけれども、主として経済的理由とか女性の就労継続ができないということでなっていますので、むしろそういう、先ほど私以外の参考人からも多数出ましたように、働きやすい環境があれば選択肢がもうちょっと広がるということだと思います。

 ということで、不十分な答えですけれども。

高橋委員 では、大日向先生に伺いたいと思います。

 先日、たまたま教育テレビで、先生がお出になっていらした子育てのシンポジウム、拝見させていただきました。きょう、直接お話を聞けて大変よかったなと思っております。

 先ほどの京極先生の質問にちょっと関連するんですけれども、やはり経済的支援が必要だ、それが大きな障害になっているということは、るる先ほど来お話しされていたんですけれども、ただ、それが、児童手当、もちろん大事ですけれども、それだけではないだろうと。例えば、医療費や教育費が非常に大きいということなど、経済的支援といったときに、もっとそれ自体もさまざまあるのではないかと思われるんですね。その点について先生がいろいろ御研究されていることを伺いたいと思います。

大日向参考人 先ほども申しましたが、経済的支援は必要です。ただ、それが現金給付だけかというと、必ずしもそうではないというふうに考えます。

 やはり学校教育費の無料化とか保育園の保育料の軽減等さまざまあるかと思いますが、同時に、これは繰り返し申し上げて恐縮でございますが、機会費用の軽減を図って、親たちが自分たちで経済力をある程度持てるような、そういう支援もぜひとも経済的支援のもう一つの大きな柱として御検討いただければと思っております。

高橋委員 ありがとうございます。

 それで、先ほど最初にも紹介いただきましたし、テレビの中でも港区のNPOのお母さん方たちとの取り組みを紹介されていたのを、大変興味深く拝見いたしました。

 やはりお母さん方が、地域の皆さんと交流しながら子育てをして、とても生き生きと交流されているな、子育てに参加しているなということがとても大事だなと思いましたし、また、いろいろ理由を聞かないで一時保育をされているということなども非常に大きいなというふうに考えました。

 ただ、同時に、多分、先生、先ほどの話の中にあったと思いますけれども、そういう地域の力を引き出していく、あるいはNPOなどのいろいろな参加を生かしていくということは大事なことだけれども、それと同時に、先ほど施設型保育との相互補完という表現もされたと思うんですね。やはりそれは、公的な保育所などは厳然としてあって、その中で保育のスペシャリストがさまざまな形でまた地域で支え合っている、そういうことがやはり必要なのかな、そこで地域の子育て力も引き出すプラスの効果になるのかなというふうなことも私は考えているんですけれども、その点についてもう少し詳しくお話しいただければと思います。

大日向参考人 先ほども申しましたが、子供の発達保障というのは非常に大事だと思います。そういう意味で公的な保育保障というのは欠かせないと思います。ただ、その場合の公的というのをどう定義するかということは、時代の流れとともに若干変わっていく可能性があるだろうとも考えております。

 と申しますのは、公的保育はイコール公立保育だけかというと、必ずしもそうではないということもあるだろうと思うんですね。と申しましても、いきなり規制緩和だとか市場原理を導入しまして、財政難だからといって安易に民間委託にしたり、また、その委託先を精査することなく、措置費が低かったらその方がいいということで企業導入ということには、私も危惧の思いを強く持ちます。

 ただ、一方で、民間の保育園がだめかというと、必ずしもそうでもない現実もあるんですね。

 例えばこんな例がありまして、ある東京の区で、公立保育園を廃園して、民間、社会福祉法人だったんですが、そちらに委託するということになったときに、当然のように親たちは立ち上がり、反対運動を起こしました。しかし、民間、社会福祉法人の方に移行したんですが、その後がとても大事だったようです。行政の方とその社会福祉法人の方と親が三者となって、いかに子供の保育環境を整備するかという話し合いを進めた中で、大変すばらしい保育環境を手になさったという話も聞いております。

 そういうことを考えますと、これまで公立保育園が果たしてこられた役割、とても大きいと思います。ただ、今までのままでいいのかというと、そのあたりは、多様な保育ニーズにいかに子供の発達保障を守りつつこたえていくかということで、地域ぐるみ、NPOも含めて、大所高所から検討する、そういう段階に来ているところも否めないかというふうに考えております。

高橋委員 ありがとうございました。

 それで、次に、保育の現場で頑張っていらっしゃる増田さんに伺いたいと思いますけれども、まず、公立保育所の運営費が一般財源化されたために民間への移管が急速に進んでいるというお話だったと思われます。

 これは、今の大日向先生の意見にもあるんですけれども、民営化イコール保育が悪いという意味では決してないと思うんですね。頑張っていらっしゃる方もたくさんいる。しかし、そこにあるその原因というのが、例えば財政的な問題などで保育士さんなどがころころかわるとか、パートが多くなって一貫した保育が行われないなどのさまざまな要因があるんだと思うんです。

 具体的に現場で起こっていることを伺いたいと思います。

増田参考人 私は、公立保育所民間移管反対という立場で三点あります。

 それは一つは、児童福祉法二十四条に自治体の実施義務が明記されています。自治体の長の責任において保育を実施していくわけですから、その実施現場としての公立保育所は必ず必要だというふうに私自身は思っています。これは、機関としてもそういう役割を担っていくべきだと思っています。

 もう一点は、各自治体の理由が、公立保育所を民間移管してお金を浮かすというこの仕組みなんですけれども、この大きな仕組みが保育士の人件費の格差にあります。神戸市でとりますと、大体四百万円ぐらいの公立と民間の格差があります。私たちの知っている民間保育所の保育士は、二十年働いても二十万ちょっとの賃金しかもらっておりません。それはそれでいいということではなくて、きちんと専門職としての保育士の賃金体系が必要だろうというふうに私は思っています。

 私自身も社会福祉法人の経営をしているわけです。精いっぱいいい保育を地域ニーズに応じて打ち出していこうとは思いますが、初任給を十五万円から出発して、少しずつ、三千円ずつ上げていくと、大体十年ぐらいで経営はパンクします。これは今の運営費の仕組みがそうなっているから、収入は一定しか保障されていかないのに、賃金は上がっていくわけです。

 この仕組みの中で、神戸市において、公立保育所の保母さんの平均年齢は四十二歳です。民間保育所の保育士の平均年齢は二十四歳です。もう毎年、一年雇用というのが今通常になってきています。そういう状況の中で、保育という仕事は、きちんと専門性を高めながら、日々子供たちとかかわって、子供の成長、発達を見守っていく仕事ですので、それは人間と人間のかかわりの営みだと私は思っています。その保育士が、毎年三月時期になると、来年の雇用は可能だろうかという不安を抱きながら保育をするというのは、非常な酷な現場だというふうに思っています。そういう現場を少しでも解消するためには、民間移管じゃなくて、公私間格差是正をするのが一番早急な課題だと思っています。

 そして、待機児がたくさんいます。待機児解消で定員以上に子供たちが入れられていますが、実際、現場は、本当に子供たちにきちんとかかわれなくて、もう御飯を食べさせたら寝かさなきゃならない、布団を敷こうというふうに、子供と向かい合う時間がほとんどないというのが現場の状況です。子供たちが、先生あのねと言っても、聞いてあげられない。これは保育士としては非常に苦しい仕事をしていると思います。外に遊びに出ても、たくさんの子供たちがい過ぎて、小さい子供に遠慮して大きい子供たちが精いっぱい遊べない、これが今の保育の現実です。

 子供が人間の土台をつくるゼロ歳から五歳というところを本当に丁寧にどう育てていくか、そこで丁寧に保育士が育てることを親たちが学んで、子供を育てることの意義と楽しさを学ぶというところが、今の日本の大きな課題だと私は思っています。ですから、保育所をぜひ充実させていただきたいというふうに思っています。

高橋委員 ありがとうございます。

 非常に貴重な現場の意見が伺えたと思うんですが、それに対して、今厚労省が考えている対策は、民間保育所で四万五千人の受け入れ児童数の増加を目指すとして、定員の緩和や、特区で一部解禁された給食の外部委託を初め、保育所として必要な機能が規制緩和によって後退する流れがあるのではないか、非常に逆行しているような方向と私自身は考えているんです。

 一言でいいですので、もう一度、増田さんにその点について見解を伺います。

増田参考人 規制緩和の一番最たるのが分園だというふうに私は思っています。さきも報告したように、分園というのは、本園があって分園がつくられて、その分園をつくるに当たっては調理室と施設長を配置しなくていいということになっています。

 今、子供たちにとって食の問題は非常に重要になってきておりまして、アレルギーも含めて、カロリーの摂取量、栄養の摂取量も、本当に子供たちがきちんととれていない現実にあります。今、国の方でも食育ということを具体的にしていただいています。食事というのは、食べるという動物的なことだけじゃなくて、人間的営みとして、食事を素材からつくり食に変えていく、その過程の中で、調理師さんがきちんと調理をする、そして子供たちは、おなかがすいたときににおいがしたり、おいしい香りがする、そういう関係の中で食は賄われていくと思います。そして、保育士がそこを援助して、お友達と一緒に好きなものも嫌いなものも楽しく食べることで子供たちの心や体は育っていくというふうに思っています。

 そういう現場でありながら、調理室の必置義務をなくして規制緩和をして便宜的に待機児解消のために分園をつくるということは、本当に子供たちの発達保障をしていないというふうに思っています。さまざま規制緩和はありますが、細かく子供の目線で見るとこういう問題をたくさん抱えております。だから、私は、きちんと認可保育所をつくっていただいて、そこで最低基準を少なくとも守った保育保障をぜひしていただきたいと思います。

高橋委員 終わります。ありがとうございました。

岸田委員長 次に、阿部知子君。

阿部(知)委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。

 本日は、五人の参考人の皆さんには、子供たちの未来とそして私たちの社会の将来設計のために、前お二方には学際的な分野から、そして残るお三方には現場からの御発言ということで、大変参考になり、またそれを踏まえて質疑をさせていただこうと思います。

 冒頭、京極先生には、介護保険の折にもあるいは自立支援の折にもいろいろ御意見もちょうだいしておりまして、特に先生がかかわっておられた生活保護と児童扶養手当に関する関係者協議会の中でのいろいろな御意見もお述べになっていると思いますが、私はその件に関して二つお伺いをしたいと思います。

 一点目は、先ほど先生がおっしゃいました機関委任事務から法定受託事務になった場合の国の補助のあり方は、必ずしも財源を伴うもの、財政的なものを伴うものではないというお話も少しされたかにお聞きいたしました。

 一方で、これは上田委員もお取り上げですが、生活保護なりなんなりはある程度基準を設けて、全国一律にナショナルミニマム、到達すべき基準を設けながら、しかし、現金給付にかかわるところの財源措置においては国の分担分を下げていく。となりますと、現金給付で余り裁量権のない、ほぼ裁量権のないと言える側面もあると思いますが、そういうものについて、今回の特に児童扶養手当における国の負担分は四分の三から三分の一とかなり急激な減少になっております。これは果たして、先ほど漢人さんのお話にもございましたが、現実にはそれを受けている皆さんには大変に苦しい状況になるのではないかという懸念があるがこれはいかがかということと、逆に、この場合、地方からの逆選択が働きはしまいか。

 どういうことかというと、例えば生活保護や児童扶養手当をお受けになっている方の窓口が狭められることによって、その地域に生活できない、あるいはそういう方の流入が現実には阻止されていく。これを地方からの逆選択、本来は地方を信じたいと思いますが、限られたパイの中でやるときにそういうことが起こりはすまいか。この二点について、お考えをお聞かせいただきたいと思います。

京極参考人 まず、生活保護に関しましては法定受託事務ということでございまして、ただ、その法定受託事務が、財政法上は何分の一国が負担したらいいかとか、十分の十がいいのかということが書かれているわけじゃございませんので、政治的な状況の中で決まっていくということだと思います。

 私は、今回の関係者協議会の結論はこれはこれでよかったというふうに先ほど申し上げました。児童扶養手当に関しましては、これも考え方によってでございますけれども、扶養手当の基準は下げているわけじゃございませんので、受け取る方は全く従来どおり児童扶養手当を受け取るわけでございます。

 窓口は福祉事務所になっておりますので、福祉事務所の対応がどの程度ちゃんとしているかということで国もいろいろ今福祉事務所のあり方について指導しているわけであります。

 ちょっと申し上げにくいんですけれども、かつては県がかなり福祉事務所の所管を持っていたところ、市町村合併で、実際に県が所管しているのは町村に限られまして、給付でいいますと二割程度しか給付しておりません。ただ、県の福祉事務所の方が非常に懇切丁寧という話がありまして、むしろ市の福祉事務所の方が職員配置なんかでもかなりばらばらだ。市と区の福祉事務所の体制は必ずしも全国一律になっていないのであります。むしろ、その市長さんというか首長さんの姿勢によって大分違っている。むしろ、裁量権がかなりあるのではないかというふうに私は思っています。

 国と県と市町村の関係については、確かに割合は国の負担が減りましたけれども、財源をつけた上での移譲でありますので、責任転嫁という言い方もされていましたけれども、児童扶養手当に関しましては、そうではなくて、財源を移譲してその分県と市が負担割合を大きくしたということで、問題はそれをどう実行するかという福祉事務所の体制いかんということでありますので、特に母子家庭に対する対応は必ずしも各福祉事務所十分ではないというふうに伺っています。特に就労支援に関しては、ほとんど福祉事務所はワーカーの力量に任されている、組織的な対応が非常におろそかになっているということも聞いておりますので、この点は今後改善していくべき課題かと思います。

 割合は変わっても中身は変わらないというふうに申し上げさせていただきます。

阿部(知)委員 そうであればいいのですが、先ほど申しましたように、現実にはほとんど裁量権がなく、地方側にとっては、それが財源移譲されても地方の創意と工夫の発揮のしどころがなかなかない形で今回三位一体が全部進行しているのではないか。私自身もそう思いますし、先ほど漢人さんのお話の中でも幾つかの指摘がございましたが、特に、今京極先生が就労支援のことでおっしゃってくださいましたので、私は、今度、漢人さんにお伺いいたしたいのです。

 例えば、このたび厚生省では、母子家庭の母親に対する職業訓練受講機会の提供ということで、無料で職業訓練を受講させるということに六億何がしかの予算をつけました。ところがそれは、先ほど漢人さんがおっしゃったように、地方自治体になるとその窓口を開いても実際に応募してこられる方がいない。川崎大臣のあめとむちの御発言ではありませんが、これをあめと称するならば、あめはあるよと言ったんだけれども、お母さんたちは来てくれない。

 私は、実はここには幾つかの問題があると思うんですね。先ほど京極先生がおっしゃった、地方自治体の福祉現場の職員の例えば数とか経験の不足もありましょうし、でもそれ以上に、私は、実は、こういう母子家庭のお母さんたちがこの無料の訓練を受けるとして、その間の他の収入はどうなっていくのか。これはフリーターの皆さんもそうですが、いろいろな職業訓練を受けるときに、訓練無料でも、その間の生活支援というものが充実しないとなかなか行けない。

 このあたり、現場で、どうしてゼロ回答なの、だれも来ないの、どう改善すればいいのか、これは国の政治の方でどう改善すればいいのか、そのあたりで御意見があったらお願いします。

漢人参考人 御指摘のとおりだと思います。

 幾ら無料で職業訓練が受けられても、その間の生活保障がなければ絵にかいたもちになってしまうということなんですけれども、では、それをどうすればいいのかというのは、ちょっと私も答えはまだ持っておりません。

 ただ、職業訓練校などに行く場合には、試験などありますけれども、ある程度の生活面での給付も受けられるというのは現状でもあるわけですね。本当に必要であるということであれば、やはり生活面での給付も含めてしなければ実現性がないということだというふうに思います。

阿部(知)委員 ありがとうございます。

 それでは、もう一度京極先生にお伺いいたしますが、幾つかのお話の中で、企業参加、社会の財産ですから、こういう子育てということに企業も参加してほしいというような形での御発言がありました。私もそのとおりと思いますが、例えば今回の児童手当の年齢を小学校六年まで上げます場合にも、実は全体のお金の中での企業負担分というのは、割合は低下していっています。全体額は確かにふえましたが、そのどのくらいの部分を企業が負担しておられるかという部分はむしろ減少していっている現実があります。

 例えば、ゼロから三歳未満の財源の構成では、これまでですと事業主拠出金が五七%、そして児童手当全体で見れば事業主は二〇%を負担しておられましたが、今度の政府側の御提案の六年生まで延ばしたとして、その場合の事業主負担は、ゼロから三歳では五四%、全体で見ても一四%。そういたしますと、本来は少子化というのは社会全体で考えていくべきときに、もっと企業にも拠出という形で頑張っていただきたいのに、結果的には割合が下がっている。このあたりは、いろいろな影響力のある先生ですから、お考えとそして今後の改善、やはりもっとこれを変えていくにはどうすればいいかということをお聞かせください。

京極参考人 大変難しい御質問でございますけれども、児童手当の歴史的な経緯がございまして、当初、出発したときは、事業主が十分の七、そして国が十分の一、地方は十分の二という割合でスタートしまして、ところが、サラリーマンの方は比較的年収が高いものですから、所得制限にひっかかりまして、かなり低い方でも一般の自営業者等に比べますと高い。したがって、事業主負担をしても、もらうサラリーマンの方がいないという矛盾が起きたわけです。そのために、あえて所得制限を緩和しまして、事業主として現在の段階で十分の十の特例給付で百七十九億円を継ぎ足したわけであります。

 これはどういう経緯でなったかというと、経済界としても、自分たちの職員の中で所得の低い方が子育てしやすいようにするために、企業としては思い切って出したということでとまりまして、その後は全然ふえていないということであります。その後はほとんど国と地方で分かち合って対応している。今回も、小学校六年までになりましたけれども、所得制限を緩和しました分は、国が三分の一、地方が三分の二ということで、要するにほとんど公費なわけでございます。

 私、将来的に考えますと、企業の御理解というのはなかなか、今社会保障について経済界は大体二つの批判がありまして、一つは企業負担が多過ぎるということで非常に批判をしております。

 実際に平成十四年度の数字で概算いたしますと、企業の負担は、年金保険に関しては約十三兆、医療保険に関しては約七兆、約二十兆負担しております。それと、労働保険、労災保険と雇用保険でございますが、これは約二兆円。約二十二兆円負担しておりまして、児童手当はその中ではわずかなものでございます。

 それから、ちなみに介護保険について申し上げますと、二十からか二十五かいろいろ議論があるところではありますけれども、第三号被保険者をつくる場合、企業は大変負担がこれ以上ふえちゃ困るということを言っておりますけれども、現在の段階では四十歳以上でございますので約五千億円、〇・五兆円。だから、二十二兆円に対して〇・五兆円、児童手当の特例給付は百七十九億円、〇・〇一七九兆円ということでございまして、大変負担が低いわけでございます。だから、相対的に見ますと、社会保障全般の中で企業負担はどうなのかということをやはり改めて議論するべきことかと思います。

 企業負担について、私は、どういう形であれ、しかるべき負担を求めて、また理解を得られるような方向で国民的議論が進むことを願っております。

 それから、将来の問題でございますけれども、やはり保険というのは一つ大きな、税と違いまして――済みません、一つ忘れていました。

 もう一つ、経済界の社会保障に対する批判は、社会保障は大体非常に非効率的である、民間活力が欠けているという批判がございます。

 しかし、これに関しましては、例えば医療保険などをとりますと、アメリカなどはかなり民間の医療保険が多いんですけれども、非常にお金がかかる医療でございまして、日本の社会保険の方が非常に効率的にされているということもありますので、必ずしも経済界の言っていることが、公的な社会保険は非常に非効率的だということは言えないというふうに思っております。

 いずれにいたしましても、今の経済状況、確かに大変厳しいですけれども、経済も好転してくる兆しもあり、経済界も全体として、大きな面で見ますと、デフレから脱却ということもございますので、企業負担については、改めてどういう負担が望ましいか、私は介護保険みたいな形で、従業員の方に対しては企業負担はある程度求めてもいいのではないかと思っております。むしろ、これ以上言うとちょっとあれですけれども、社会保障の中でいろいろ改善しなくちゃいけないことが多々ありますので、特に労働保険のあり方についてはもうちょっと見直していいんじゃないかというふうに思っております。

 以上でございます。

阿部(知)委員 ありがとうございます。

 それでは、中根参考人にお願いいたします。

 実は、私も日曜日に十五人くらいのお母さんたちとお話をして、今度児童手当が小学校が終わるまでになるのよ、どうと聞いたんですね。大体先ほど中根さんが御紹介くださったのと同じで、助かるけれども、額が余り多くないし、お小遣いが、お小遣いというのは子供たちの習い事か何かになるくらいかなという感じでしたね。

 一方で、何に今困っていると言うと、学童保育が満杯状態で、例えば、本当は今小学校が終わるまで預かってくれる、子供たちの放課後時間なんだけれども、ふえちゃったので、もう四年生からは預かれませんよという方がふえている。こうなると、例えば少々の児童手当をその後もらうよりは、学童保育を充実してほしいんだという声が、私はちょっと年上のお母さんたちだったせいかもしれませんが、多かったんですね。

 これは、先ほど来のお話の、要するに現金で幾ら来るというよりも、関連の社会施設整備の問題と、それから学童保育などは、さっき参考人もおっしゃった、要するに、これは文部科学省と雇用均等・児童家庭局と両方が、縦割りではやれないことですよね。このあたり、先ほど縦割りのお話もありましたし、御自身が学校法人をやっておられるということで、子供施策全般について、この改善点、那辺にありや、どこにあるかということを最後にお願いいたします。

中根参考人 冒頭の私の意見をよくお聞き届けいただいて、感謝を申し上げております。

 全く政治的な意図抜きに、お母様方から出てきた意見を、箇条書き的に、羅列的に御報告を申し上げたその中にも、学童保育という言葉もありました。

 学童保育、幼稚園においては、現在預かり保育ということで、本園においても五時までお子様をお預かりをさせていただいておりまして、その需要も大変高うございますけれども、学童保育に対するニーズも高い。そして、学童保育を利用する方が多くて、私どもの地元の岡崎市というところでも、幾つかあるんですけれども、いずれも満杯で、例えば一人当たりの占める面積ということでいうと、本当に一人一平米ぐらいの施設といいますか建物の中で学童保育が行われているという実情があります。

 そういうことを初めとして、子供に対する施策の不十分さというのは、もう至るところで具体的にあらわれていると思います。やはりそれは、予算のつけ方、国からの、あるいは自治体からの、特に自治体なんかの場合は、先ほど来の話もありますようになかなか厳しいものですから、国がしっかりと方向性を示してもらわなくては、あるいは姿勢を示してもらわなくては、やりたくてもできないというところはあろうかと思います。

 その予算が十分つかないということの一つの理由の中に、総合的に一体的に政策が行われない。それは例えば、文科省と厚労省との縦割り、それぞれがそれぞれを主張し合っていて、ばらばらに政策がとり行われているということがある。あるいはまた、そういったことが、例えば学校法人の経営にいたしますと、事務費用の増大、あるいは手間暇の増大ということになって、本来やるべき仕事、時間がそういった分野に割かれてしまうという悩ましい点もあることも、小さな問題ですけれども、あるということもあります。

 子ども家庭省ということを民主党が言っておるようでありますけれども、例えばそういう形で行政の一元化ということを早急にやってもらいたいし、もう自治体においては子供課という名前で先進的に取り組んでおられるところもたくさんありますので、その面では国の方がおくれているというふうに思いますので、時間との闘いだと思って頑張ってやっていただきたいと思います。

 不十分ですが。

阿部(知)委員 大日向参考人とそして増田参考人には時間の制約でお伺いできませんが、審議の中で生かさせていただきます。ありがとうございました。

岸田委員長 次に、糸川正晃君。

糸川委員 国民新党の糸川正晃でございます。

 参考人の皆様におかれましては、本日は御多忙の中、委員会に御参加いただきまして大変貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございました。

 まず、今、少子化という問題が、急速に少子化が進んでおりますことで、大変問題視されております。昨年は、日本の人口が、当初考えられていたよりも二年間早く減少したということがあります。内閣府の平成十七年三月の少子化社会対策に関する子育て女性の意識調査というところでも、例えば、子育て女性の七割が経済的な支援を要望されているという現状で、若い夫婦というのは、これは経済的に大変苦しい状況だ、そういうところから児童手当が必要になってくるのかなというふうに感じているわけでございます。

 まず最初に、京極参考人にお伺いいたしますが、予想より二年早く日本の人口が減少し始めたということについて感想をお聞かせいただけますでしょうか。

京極参考人 御案内のように、私どもの研究所で推計した結果よりも二年早いということでございます。

 昨年、私、社会保障・人口問題研究所の所長になりまして、ことしか来年人口が減るとみんなの前で申し上げたら、所長、それは社会保障・人口問題研究所の数字と違うということを言われまして、確かにそうだなと。立場上、これから、ことしやります推計については、前所長の責任にもできないし、私自身が責任をかぶらなくちゃいけないので慎重にやりたいと思っていますけれども、簡単に申しますと、人口推計というのはあくまでも推計でありまして、特に急激な少子化の予想がなかなかできなかった。長寿化とか死亡率とか、そういうのは大体予測できるんですけれども、子供の数が急速に減るというのが予想以上に厳しかったということでございます。

 もちろん、私どもの研究所でも、一番低い場合はというので、高位と中位と低位という数字を出しまして、中位推計が世間に出回っているんですけれども、低位推計よりは少し現実は高いわけであります。だから、ある幅の中に、ちょうど台風が進んでいきますと、進路の方向の幅の中で動くのと同じように、人口推計もある幅の中で出しておりますけれども、その真ん中の数字よりも低かったということでありまして、少子化の方向は、ことし、去年の数字を発表しますけれども、一・二九を維持できるかどうか。これはもうちょっと下がるんじゃないかということも言われておりまして、かなりいろいろな数値をもって推計をして、先ほど御質問の中にありましたように、子供は何人欲しいかという希望的観測をベースにしちゃいますと誤った数字になっちゃいますので、そういう点で客観的な根拠のある数字をはじいて目安にしたい。

 ただ、私も、昨年末、三位一体改革が終わりまして、川崎大臣とお話しした機会に大臣に申し上げたんですけれども、株とか為替相場のように、来月どうなるかとか来年どうなると一喜一憂することではなくて、やはり中長期的な日本社会の基礎的な構造を決めるのが人口でございますので、大きな方向で人口の推移というものを見守り、それに基づいてまたいろいろな対策を考えていくということだと思っております。そういう点では、ことしは大いに頑張って、きちっとした数字を出したいと思っております。

糸川委員 ありがとうございました。

 人口が減っていくということは、予測できないわけではなくて、これからもまだまだ減っていく傾向にあるということでデータを出されているということでございます。

 これを、ではどういうふうに歯どめをかけるかというのは、もう今の時期しか歯どめはかけられないのかなと。これが、もっともっと人口が減ってきてしまうと、もう幾ら対策をしてもなかなか人口が増加傾向に入らない。そういう中で、今若い世代の人たちに対してできる限りの支援をして、しっかりと子育てをしていただけるような環境を国がつくっていくということが必要になるのかなと。

 そこで、大日向参考人にお伺いいたしますが、今、児童手当とそれからその他の子育て支援対策と、これらをバランスよく施策を充実させていくべきだろうというふうに考えておるわけでございますが、御見解はいかがでしょうか。

大日向参考人 御指摘のとおり、バランスが大切だと思います。先ほどの意見陳述の中でも申し上げましたけれども、児童手当は確かに必要です。でも、児童手当の現金給付にだけ議論が偏ることが、果たしてほかの重要案件がどうなるかということを、慎重に御検討いただければというふうに思います。

糸川委員 もう一問、大日向参考人にお伺いいたしますが、少子化対策を推進するということには、例えば職場における両立支援ですとか、それから働き方の見直しが進むことが重要であるというふうに考えられるわけでございますが、その働き方について、どのような点が問題と考えていらっしゃるか、また、どのように対応していけばよいかというところをお聞かせいただけますでしょうか。

大日向参考人 働き方に関して、男性の問題と女性の問題は別途にあるだろうと思います。

 まず、男性の場合には、男性の育休とか育児参加が言われていますが、現実には育休取得者は〇・五五%。それから、家事、育児時間は、子供のいる三十代の男性たちは平日一日十数分という統計データがございます。これでは余りにも少な過ぎる。男性の家事、育児参加が進まないと家庭の中での夫婦のバランスもとれませんので、もっともっと男性が家庭にかかわれるような働き方を御検討いただければと思います。

 ただ、一方で、男性が家庭参加できるためには、これも先ほど申しましたけれども、経済力が安定していないとだめだということです。パートナーである女性が一定の安定した形態で働き、一定の収入があれば、男性も安定して育児参加ができるというデータがございます。そういう意味では、女性の就労継続支援がぜひとも必要だと思います。

 ただ、そう申しますと、では子供が小さい時期に男性も女性も目いっぱい家庭を顧みることなく働くのかというような、そういう誤解を受けることが時々ございますが、そうではない。それがワーク・アンド・ライフ・バランスだと思います。子育て期の男女、夫婦はやはり残業だとか出張はある程度免除していただく、そのかわり子育てが一段落した四十代から上の人たちが残業や出張をかわるというような職場内のバランスも必要だと思います。そういうことができるために、時短型あるいは裁量型、両方から働き方を検討していくことが企業努力として必要だと思います。

 最後に、先ほど企業の負担金の問題が出てきましたが、企業は、依然として子育て支援がなぜ必要なのかというようなところにとどまっているところもなくはありません。ただ、企業にとって必要なのは、私は子育て支援ではないと思います。次世代育成支援だと。次世代をいかに支援していくかということが、二十一世紀の労働力が少なくなる日本社会にとって、企業にとっても生き残る最大課題だということを、ぜひともトップクラスの方々が考えを変えていただくような御支援がいただければというふうに考えております。

糸川委員 ありがとうございます。

 やはり国もそうやって企業努力を促せるように努力していかなきゃいけないのかなというふうに感じました。

 それでは、参考人の方々全員にお聞きしたいんですが、今回の児童手当の拡充というものが少子化対策として効果があるのか、それからどの程度あるというふうにお考えになられるか、お聞かせいただけますでしょうか。

京極参考人 先ほど申しましたように、対象年齢が広がることにより明らかに経済的支援の枠は広がったわけでございますので、一定程度効果があると思いますけれども、少子化対応ということで、ではどの程度確率的にあるかというと、ちょっとなかなか簡単に答えは出ませんですし、今度は、一定の改善だと思いますけれども、児童手当の所得制限の緩和とかあるいは対象年齢の拡大ということで、そのこと自身の経済的な効果ももちろんございますけれども、そういうふうに国も動いてきたというか、社会全体として子育て支援に目を向け始めたということの方が大きいんじゃないか。

 そして、先ほど大日向先生からも出ましたように、やはりさまざまな就労支援の具体的なあり方、これは旧労働省サイドの対応もありますでしょうし、経済産業省の対応もあるでしょうけれども、やはり日本は企業社会でございますので、企業が変わらないと日本は変わらない面があるわけでございますので、その点では、議員の先生方にまたひとついろいろ研究していただいて、また議論をして国民の世論を喚起していただきたいと思っております。

大日向参考人 子育て期の若い世帯は総体的に収入が低いものですから、経済的支援があれば助かると思います。そして、現にお子さんのいる方あるいは産むことを決めている方々にとっては助かるというふうに思います。ただ、これから社会に出ていこうという若い世代の方々にとって、果たして経済的支援だけで出生率の向上につながるかということは、必ずしも言えないのではないかということがございます。

 むしろ、児童手当の問題は、今京極先生も言われましたが、国を挙げて子育てを支援しているんだというメッセージにつながっていくこと、そして、その財源確保を含めて、国民で、社会全体で子供をいかに守っていくかということを合意形成するきっかけとしては大変大きな契機となると思います。そして、そうして社会全体で子育てを国を挙げて支援しているということが目に見える形でつながったとき、次の世代の方々が子育てに夢を持てる、そんな社会につながっていくことを期待しております。

中根参考人 今までの意見と繰り返しになる部分もありますけれども、経済的支援を求める御家庭が多いというのがいろいろなデータからも明らかになっておりますので、国民の声を反映する政策の一つとして、この児童手当の拡充というものに期待をしたいというふうに思います。

 その中では、やはり国民の声にありましたような、所得制限をさらに一層緩和する、あるいは撤廃をする、あるいはまた、対象年齢も思い切って拡充、拡大をする、金額もふやす、一人目についてとりわけ手厚いものにする、こういったことをぜひともこの委員会審議の中で煮詰めていっていただきたいと思います。そういったことを思い切ってやっていけば、この児童手当の改正というものは、少子化対策のあるいは子育て支援の一つの切り札になり得るものだというふうに思っています。

 いろいろな政策をバランスよくというのは必要でしょうけれども、またそれが総花的になってもいけない、それぞれの政策が打ち消し合うようなことになってもいけない。

 ただ、打ち消し合ったり総花的になったり、あるいは一つ一つのものが十分でないというのは、全体に子供に対するお金のかけ方が我が国は少な過ぎる。その枠を、まずは大枠を広げていくということが、これは先ほどの阿部委員に対する一つの答えになるかもしれませんけれども、お母様方の中には、高齢者の方は手厚くていいね、でも子供に対しては少し冷たいねというところは実感として確かにあろうかと思いますので、ここは、今もお二人の先生からありましたように、国からのメッセージということも含めて、大胆な政策を、大胆なことをやっていくということが切り札になる。中途半端なことをやっていては、いつまでたっても中途半端になるということだろうというふうに私は思います。

増田参考人 私も同じ意見で、今生み育てている方にとっては本当にすてきなプレゼントだなと思います。それはとてもうれしくてありがたいことだなというふうに思いますが、少子化対策となるとまた別の課題がたくさんあると思います。

 自治体をずっと訪ねて、どういう状況か尋ねて回りますと、まず結婚しないという選択肢を持っている人たちが三分の一ぐらいいらっしゃるわけですね。そのうちにやっと結婚されても、子供を産まないという選択をされている人たちは約三分の一ぐらいいらっしゃると思います。やっと残りの三分の一の方たちが生み育てられているわけですけれども、やはり全部の方たちがきちんと生み育てられる環境をつくるということが非常に今少子化ということでは大切だというふうに思います。

 その中で、山間僻地をずっと歩いていきますと、やはり基幹産業がなくて就労が不可能ということが一番大きな課題になってきていますし、都会では、就労はされていますが、この前も、ちゃんとした大きな会社の方ですが自分の小遣いがないとおっしゃる方もいらっしゃいます。それから、夜中過ぎてしかお父さんたちが帰ってこられない中で、非常な孤独な子育てをしているお母さんたちがやはりいるわけですね。本当に苦しみを訴えてこられます。そういうことも含めて解消してあげないと、少子化は打開できないのではないかというふうに思っております。

漢人参考人 今回出されている法案の児童手当について少子化に効果があるかということなんですけれども、私は、これは効果としてはないと思います。

 喜ばれる方は、お小遣いをもらうというような意味では広範にいらっしゃるのかもしれませんけれども、実際の子育ての面では、これはもう紛れてしまう程度の金額ですし、むしろ重点的に、今、格差社会ということで、必要とされているところに充てていくということなど、同じ財源であればさらに有効な使い方があるだろうというふうに思っております。

糸川委員 ありがとうございます。

 私も、ただ単に手当を受けられる人たちをふやすだけではなくて、必要なところに必要なお金が行き渡るようにしていくことが重要なのかなと。恐らく、若い世代の人たちが子供をつくる上で、所得制限七百八十万円なんという人たちは非常に高所得層に入ってくるのかな、そういう方よりも、二百万、三百万しか年収のない方々に対してもう少し厚い保障ができた方がいいのかなというふうに考えるわけでございます。

 もうほとんど時間がございません。私は最後の質問者でございますので、最後に一言ずついただきたいんですが、端的に、本当に一言でいただきたいんですけれども、少子化対策として何に最優先に取り組むべきだというふうにお考えになられるのか。もう一言ずつでお願いいたします。

京極参考人 一言で言えないんです、正直言いますと。

 国民の意識改革ということが一番大きいかなと。つまり、子育ての重要性とか次世代育成の重要性ということを、国民の意識が変わらないとマスコミも変わらないし、もちろん政治家の皆様方も変わらないし、それから行政も変わらないということになるかと思います。

大日向参考人 子育て支援は、親が親としてゆとりを持って暮らせるような社会をつくっていくこと、そのための就労支援、地域力の向上、そして子供の発達保障である保育機能の整備充実、この三点に尽きると思います。

中根参考人 京極先生がおっしゃられたことと重なる部分もありますけれども、効率至上主義、経済至上主義ではなくて、手間暇をかける、お金をかける、そういう少し回りくどいようなことに価値観を置いていくという意識改革はやはり大切だろうと思います。そして、児童手当にやはり一度かけてみるということも、これはやってみる価値はあると思っています、思い切った改正であれば。

増田参考人 私は、子供は手塩にかけて育てるという言葉がありますように、本当に手塩にかけて育てていくべきものだというふうに思っています。自分が保育所という立場にいますので、保育所に来ているお母さんたちは、やはり保育所で本当に初めての赤ちゃんの子育てを学んでいくので、一般のお母さんよりもたくさん産まれます。だから、公的保育制度を充実させていただいて、もっと地域に身近にたくさん保育所をつくっていただいて、いつでもどこでもおいでよと言っていただけるような、そんな保育所をつくっていただくと、少し少子化に役に立つかなというふうには思っております。

漢人参考人 一つと言われれば、労働時間の短縮だと思います。

 ただ、あわせて言えば、一番最初に御質問いただいたこととも同じなんですが、子供たちが皆平等に育っていける環境と、それから子育てを楽しく共有できる地域づくりというのも大事だと思っております。

糸川委員 大変参考になりました。やはり私たちのこの委員会というのが、今この時期が一番大事なのかな、子育ての問題、少子化の問題、今のこの時期が一番大事だと思っておりますので、しっかりとこれからも取り組みたいと思います。

 ありがとうございました。

岸田委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。

 参考人の方々におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表しまして御礼を申し上げます。

 次回は、明十五日水曜日委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時十四分散会


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