衆議院

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第20号 平成18年5月10日(水曜日)

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平成十八年五月十日(水曜日)

    午前九時三十一分開議

 出席委員

   委員長 岸田 文雄君

   理事 大村 秀章君 理事 鴨下 一郎君

   理事 北川 知克君 理事 谷畑  孝君

   理事 寺田  稔君 理事 園田 康博君

   理事 山井 和則君 理事 福島  豊君

      阿部 俊子君    新井 悦二君

      井上 信治君    伊藤 忠彦君

      飯島 夕雁君    石崎  岳君

      上野賢一郎君    小野 次郎君

      小渕 優子君    大前 繁雄君

      奥野 信亮君    加藤 勝信君

      川条 志嘉君    木原 誠二君

      木村 義雄君    木挽  司君

      柴山 昌彦君    菅原 一秀君

      杉村 太蔵君    高鳥 修一君

      戸井田とおる君    冨岡  勉君

      永岡 桂子君    丹羽 秀樹君

      西川 京子君    林   潤君

      原田 令嗣君    平口  洋君

      福岡 資麿君    福田 良彦君

      松浪 健太君    松本  純君

      御法川信英君    矢野 隆司君

      山本ともひろ君    小川 淳也君

      岡本 充功君    後藤  斎君

      郡  和子君    篠原  孝君

      仙谷 由人君    田名部匡代君

      古川 元久君    三井 辨雄君

      村井 宗明君    柚木 道義君

      横山 北斗君    上田  勇君

      高木美智代君    高橋千鶴子君

      阿部 知子君    糸川 正晃君

    …………………………………

   厚生労働大臣       川崎 二郎君

   厚生労働副大臣      赤松 正雄君

   厚生労働大臣政務官    西川 京子君

   政府参考人

   (総務省大臣官房審議官) 大谷 泰夫君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           磯田 文雄君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房技術総括審議官)       外口  崇君

   政府参考人

   (厚生労働省医政局長)  松谷有希雄君

   政府参考人

   (厚生労働省健康局長)  中島 正治君

   政府参考人

   (厚生労働省医薬食品局長)            福井 和夫君

   政府参考人

   (厚生労働省労働基準局長)            青木  豊君

   政府参考人

   (厚生労働省老健局長)  磯部 文雄君

   政府参考人

   (厚生労働省保険局長)  水田 邦雄君

   政府参考人

   (社会保険庁運営部長)  青柳 親房君

   厚生労働委員会専門員   榊原 志俊君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月十日

 辞任         補欠選任

  加藤 勝信君     小渕 優子君

  木原 誠二君     小野 次郎君

  清水鴻一郎君     伊藤 忠彦君

  菅原 一秀君     大前 繁雄君

  杉村 太蔵君     飯島 夕雁君

  高鳥 修一君     木挽  司君

  菊田真紀子君     横山 北斗君

  村井 宗明君     篠原  孝君

同日

 辞任         補欠選任

  伊藤 忠彦君     山本ともひろ君

  飯島 夕雁君     杉村 太蔵君

  小野 次郎君     矢野 隆司君

  小渕 優子君     加藤 勝信君

  大前 繁雄君     柴山 昌彦君

  木挽  司君     永岡 桂子君

  篠原  孝君     村井 宗明君

  横山 北斗君     後藤  斎君

同日

 辞任         補欠選任

  柴山 昌彦君     奥野 信亮君

  永岡 桂子君     福田 良彦君

  矢野 隆司君     木原 誠二君

  山本ともひろ君    阿部 俊子君

  後藤  斎君     小川 淳也君

同日

 辞任         補欠選任

  阿部 俊子君     丹羽 秀樹君

  奥野 信亮君     菅原 一秀君

  福田 良彦君     高鳥 修一君

  小川 淳也君     菊田真紀子君

同日

 辞任         補欠選任

  丹羽 秀樹君     清水鴻一郎君

    ―――――――――――――

五月八日

 介護療養病床の全廃、医療療養病床の大幅削減に反対し、療養・介護の環境及びサービスの整備・拡充を求めることに関する請願(高橋千鶴子君紹介)(第一八七三号)

 患者負担増の中止を求めることに関する請願(神風英男君紹介)(第一八七四号)

 同(武正公一君紹介)(第一九三〇号)

 サービス利用の制限や負担増など介護保険に関する請願(佐々木憲昭君紹介)(第一八七五号)

 国民皆保険制度堅持等に関する請願(塩川鉄也君紹介)(第一八七六号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第一八七七号)

 患者負担増計画の中止と保険で安心してかかれる医療を求めることに関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第一八七八号)

 同(牧義夫君紹介)(第一八七九号)

 同(松本剛明君紹介)(第一八八〇号)

 同(松本龍君紹介)(第一八八一号)

 同(鈴木克昌君紹介)(第一九四四号)

 同(達増拓也君紹介)(第一九四五号)

 同(市村浩一郎君紹介)(第一九八〇号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第一九八一号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第一九八二号)

 男女雇用機会均等法等の改正を求めることに関する請願(石井郁子君紹介)(第一八八二号)

 同(柚木道義君紹介)(第一八八三号)

 パートタイム労働者の均等待遇実現に関する請願(穀田恵二君紹介)(第一八八四号)

 無免許マッサージから国民を守る法改正に関する請願(柚木道義君紹介)(第一八八五号)

 同(土井亨君紹介)(第一九二四号)

 同(西川公也君紹介)(第一九二五号)

 同(野呂田芳成君紹介)(第一九二六号)

 同(鉢呂吉雄君紹介)(第一九二七号)

 同(森山眞弓君紹介)(第一九二八号)

 同(冨岡勉君紹介)(第一九四六号)

 同(中野正志君紹介)(第一九四七号)

 同(藤野真紀子君紹介)(第一九四八号)

 同(伊藤忠彦君紹介)(第一九八三号)

 同(石井啓一君紹介)(第一九八四号)

 同(石田真敏君紹介)(第一九八五号)

 同(小野寺五典君紹介)(第一九八六号)

 同(大前繁雄君紹介)(第一九八七号)

 同(奥村展三君紹介)(第一九八八号)

 同(菅野哲雄君紹介)(第一九八九号)

 同(三井辨雄君紹介)(第一九九〇号)

 患者負担増に反対し、保険で安心してかかれる医療を求めることに関する請願(石井郁子君紹介)(第一八八六号)

 腎疾患総合対策の早期確立に関する請願(平岡秀夫君紹介)(第一八八七号)

 同(平口洋君紹介)(第一九二九号)

 障害者の福祉・医療サービスの利用に対する応益負担の中止に関する請願(柚木道義君紹介)(第一八八八号)

 患者負担増計画の中止と保険で安心してかかれる医療に関する請願(石井郁子君紹介)(第一八八九号)

 同(笠井亮君紹介)(第一八九〇号)

 同(穀田恵二君紹介)(第一八九一号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第一八九二号)

 同(志位和夫君紹介)(第一八九三号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第一八九四号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第一八九五号)

 同(吉井英勝君紹介)(第一八九六号)

 同(菅野哲雄君紹介)(第一九九一号)

 同(達増拓也君紹介)(第一九九二号)

 助産所と自宅における出産の安全性の確保と支援に関する請願(土肥隆一君紹介)(第一八九七号)

 同(阿部知子君紹介)(第一九四九号)

 はり、きゅう治療の健康保険適用の拡大を求めることに関する請願(谷畑孝君紹介)(第一八九八号)

 同(阿部知子君紹介)(第一九五〇号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第一九九三号)

 すぐれた医療制度を守り拡充を求めることに関する請願(山井和則君紹介)(第一九二一号)

 患者負担増に反対し、保険で安心してかかれる医療に関する請願(北橋健治君紹介)(第一九二二号)

 同(山口壯君紹介)(第一九二三号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第一九七九号)

 社会保障制度改正の抜本的見直しに関する請願(江藤拓君紹介)(第一九七七号)

 臓器の移植に関する法律の改正に関する請願(奥村展三君紹介)(第一九七八号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 健康保険法等の一部を改正する法律案(内閣提出第三七号)

 良質な医療を提供する体制の確立を図るための医療法等の一部を改正する法律案(内閣提出第三八号)

 小児医療提供体制の確保等のために緊急に講ずべき施策の推進に関する法律案(小宮山洋子君外四名提出、衆法第一七号)

 医療を受ける者の尊厳の保持及び自己決定に資する医療情報の提供、相談支援及び医療事故等の原因究明の促進等に関する法律案(園田康博君外三名提出、衆法第一八号)

 派遣委員からの報告聴取


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     ――――◇―――――

岸田委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、健康保険法等の一部を改正する法律案、良質な医療を提供する体制の確立を図るための医療法等の一部を改正する法律案、小宮山洋子君外四名提出、小児医療提供体制の確保等のために緊急に講ずべき施策の推進に関する法律案及び園田康博君外三名提出、医療を受ける者の尊厳の保持及び自己決定に資する医療情報の提供、相談支援及び医療事故等の原因究明の促進等に関する法律案の各案を議題といたします。

 この際、各案審査のため、去る八日、福岡県及び福島県に委員を派遣いたしましたので、派遣委員からそれぞれ報告を聴取いたします。

 まず、第一班の福岡県の派遣委員を代表いたしまして、便宜私からその概要の御報告を申し上げます。

 派遣委員は、団長として私、岸田文雄と、理事北川知克君、園田康博君、委員加藤勝信君、冨岡勉君、福岡資麿君、古川元久君、高木美智代君、阿部知子君、糸川正晃君の十名であります。

 なお、現地において、原田義昭議員及び武田良太議員が参加されました。

 会議は、去る八日、福岡市内のグランド・ハイアット・福岡において開催し、まず、私から派遣委員及び意見陳述者の紹介等を行った後、全国町村会長山本文男君、福岡県医師会会長横倉義武君、国家公務員共済組合連合会熊本中央病院長岩永勝義君、医療法人相生会宮田病院病院長中山眞一君、福岡大学大学院非常勤講師(医学博士)浦江明憲君、宗像久能病院医師久能治子君の六名の方から意見を聴取いたしました。

 その意見内容につきまして、簡単に申し上げます。

 山本君からは、皆保険体制を維持するため、医療の質の確保を前提とした医療費の適正化が必要であり、生活習慣病対策や療養病床の再編成を推進しつつも、保健師の配置や地域の受け入れ体制整備への支援が必要であるとともに、市町村国保の財政の安定化策が講じられた政府の制度改革案を評価する旨の意見が述べられました。

 横倉君からは、療養病床の再編成に当たって、医療機関への支援や病状が急変するおそれがある高齢者への適切な医療の確保など、医療現場で混乱が生じないような制度の運営が必要である旨の意見が述べられました。

 岩永君からは、効率的な医療提供体制の構築に向けて、政府のこれまでの取り組みの基本的な方向性を評価しつつも、さらなる取り組みとして、かかりつけ医の機能強化、都道府県を単位とした広域的な取り組み、公的医療機関の見直しが必要である旨の意見が述べられました。

 中山君からは、療養病床の再編成に当たり、介護難民が生じないよう、高齢者の実情に応じた行政における支援が必要であり、また、終末期医療に係る勤務医の負担軽減に向けて有床診療所を活用していくことが必要である旨の意見が述べられました。

 浦江君からは、医療保険財政の悪化を原因とした医療制度改革に対しては多面的に考えていく必要があり、長期的なビジョンの明示、疾病予防への保険適用と検証に必要なデータ提供の義務化、医療機関に関する情報公開の基盤整備が必要である旨の意見が述べられました。

 久能君からは、医療過誤問題の解消に向けて、カルテの改ざん防止の徹底、裁判外紛争解決手続の活用、鑑定医の充実及び医師の労働環境の改善が必要である旨の意見が述べられました。

 意見の陳述が行われた後、各委員から、臨床研修の必修化が医師の偏在問題に与えている影響とその対応策、地域医療の連携体制を推進していくための具体的方策、都道府県知事の権限強化によって地域医療の危機的状況が改善される見通しの有無、療養病床の再編成に当たっての医療現場における対処方針、在宅医療の推進に向けての医療側の取り組みのあり方等について質疑が行われました。

 なお、会議の内容の詳細は、速記により記録した会議録によって御承知願いたいと存じます。

 以上をもって第一班の報告を終わりますが、今回の会議の開催につきましては、多数の関係者の御協力により極めて円滑に行うことができ、深く感謝の意を表する次第であります。

 以上、御報告申し上げます。

 次に、第二班の報告を鴨下一郎君にお願いいたします。

鴨下委員 第二班の派遣委員を代表いたしまして、私からその概要を御報告申し上げます。

 派遣委員は、団長として私、鴨下一郎と、理事山井和則君、福島豊君、委員新井悦二君、木原誠二君、林潤君、平口洋君、郡和子君、仙谷由人君、高橋千鶴子君の十名であります。

 会議は、去る八日、福島市内のウェディングエルティにおいて開催し、まず、私から派遣委員及び意見陳述者の紹介等を行った後、福島県町村会長菅野典雄君、福島県医師会副会長高谷雄三君、東北大学大学院医学系研究科教授岡村州博君、福島県産婦人科医会会長幡研一君、仙台市立病院救命救急センター副センター長村田祐二君、国見町長佐藤力君の六名の方から意見を聴取いたしました。

 その意見内容につきまして、簡単に申し上げます。

 菅野君からは、国民健康保険財政については、医療費の増大により市町村の一般財源からの繰り入れを行うなど厳しい状況にあることから、生活習慣病対策を着実に進め医療費を抑制していくことが必要であり、そのための国の財政支援が必要である旨の意見が述べられました。

 高谷君からは、政府が転換を進めてきた介護療養型医療施設を廃止することは拙速であり、受け入れ先のない患者が発生することが懸念されるため、実態等を踏まえた慎重な議論が必要である旨の意見が述べられました。

 岡村君からは、過酷な勤務状況にある女性医師を支援するため、保育所等の優先的な確保などの育児環境の整備が必要である旨の意見が述べられました。

 幡君からは、若手の産婦人科医が減少するなど、周産期医療提供体制の崩壊が危惧されるため、周産期医療施設の集約化を図るとともに、産婦人科医の無過失補償制度の創設が必要である旨の意見が述べられました。

 村田君からは、小児救急医療を充実させるためには勤務医の職場環境の整備を図るとともに、診療報酬の増加分を勤務医に配分するような工夫を行った上で、医療資源を有効利用できるような集約化を含めた医療提供体制づくりが必要である旨の意見が述べられました。

 佐藤君からは、公立病院における医師の確保が困難になっていること、医療費抑制という観点からの医療制度改革は、地方自治体にとっては住民の健康悪化、医療費の増大、自治体病院の経営悪化という悪循環に陥る懸念がある旨の意見が述べられました。

 意見の陳述が行われた後、各委員から、小児科、産科等の医師不足対策として国が優先して取り組むべき対策のあり方、新しい臨床研修制度の導入に伴い、大学の医局にかわる僻地等への医師の派遣システムのあり方、小児科、産科の厳しい労働環境を改善するために二交代制等を導入する必要性、小児救急システムの広域化、集約化の問題点等について質疑が行われました。

 なお、会議の内容の詳細は、速記により記録した会議録によって御承知願いたいと存じますので、本委員会議録に参考として掲載されますようお取り計らいをお願い申し上げます。

 以上をもって第二班の報告を終わりますが、今回の会議の開催につきましては、多数の関係者の御協力により極めて円滑に行うことができ、深く感謝の意を表する次第であります。

 以上、御報告申し上げます。

岸田委員長 以上で派遣委員からの報告聴取は終わりました。

 お諮りいたします。

 ただいま報告のありました第一班及び第二班の現地における会議の記録は、本日の会議録に参照掲載することに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

岸田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔会議の記録は本号(その二)に掲載〕

    ―――――――――――――

岸田委員長 引き続き、お諮りいたします。

 各案審査のため、本日、政府参考人として総務省大臣官房審議官大谷泰夫君、文部科学省大臣官房審議官磯田文雄君、厚生労働省大臣官房技術総括審議官外口崇君、医政局長松谷有希雄君、健康局長中島正治君、医薬食品局長福井和夫君、労働基準局長青木豊君、老健局長磯部文雄君、保険局長水田邦雄君、社会保険庁運営部長青柳親房君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

岸田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

岸田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。大村秀章君。

大村委員 委員の皆さん、おはようございます。

 自由民主党の大村秀章でございます。

 貴重な時間を二十分いただきましたので、その中で、今回の医療改革二法案につきまして質問させていただきたいと存じます。

 その前に、今、委員長そして鴨下理事からも御報告がありましたが、一昨日の地方公聴会におきまして、関係の委員の先生方、そしてまた意見陳述された先生方におかれましては、本当にお疲れさまでございました。今お話がありましたように、大変和やかな雰囲気の中で、円滑に、そして建設的な議論が深められたというふうにお伺いをしております。そういう意味で、この医療改革の中身につきましても大分理解が深まってきたのかな、もうそろそろ大分進んできたかなという感じがするきょうこのときに、質問をさせていただきたいというふうに思っております。

 早速入らせていただきたいと思います。

 私、二月の一般質疑でも申し上げましたが、健康で長生きしたいというのはやはり国民の大きな願いだと思います。それをかなえていくのが我々政治の大きな役割だというふうに思います。まさにそういう意味で、国民の健康を守る、病気になったときに健康へ戻すという意味で、医療というのは国民すべての共通的な財産、まさに公共財の一番最たるものだというふうに思います。ですから、医療を国民あまねく提供していく、そのことが大事だ、そのことをかなえていくのが我々政治の役割だというふうに思います。

 今回の医療制度改革も、昨年十二月に我々政府・与党で決めました医療制度改革大綱の中で、ここに書いてあります「国民の医療に対する安心・信頼を確保し、質の高い医療サービスが適切に提供される医療提供体制」をつくっていくんだということを冒頭にうたっておりますけれども、そのことを具体化、具現化していくのが今回の医療改革法だというふうに思うわけでございます。

 私は、今回の医療制度改革の改革法を取りまとめた者の一人といたしまして、ぜひこれは、もう大分審議は深まってきたと思いますので、できるだけ早く成立をさせていただいて、その後に、これを踏まえて、これを受けて、ここの医療制度改革の方向にあるように、国民すべての皆さんに安心していただける質の高い医療を国民あまねく提供していく体制をしっかりつくっていくということに取り組んでいく必要があるというふうに思っております。

 そのことをまず申し上げていきたいと思いますし、引き続き、今回の改革をさらにフォローしてそういった体制をつくっていく、そのことに取り組んでいくことを申し上げていきたいというふうに思っております。

 その際に、きょうお聞きしたいのは、課題は一点に絞ってお聞きしたいと思いますが、医師の確保の問題についてお伺いをしたいというふうに思っております。医療提供体制の確保、安定した医療提供を確保するという意味で、今医師不足ということが言われております。

 そこで、まず大臣にお聞きしたいのは、この医師不足の問題、医師の確保の問題については、二つあると思います。一つは地域的な偏在の問題、それから診療科目ごとの偏りの問題ということがあると思います。ですから、まず地域的な偏在についてどういうふうに対応していくのかということについてお聞きしたいと思います。

 ただ、これは特効薬があるわけではないと思います。今までは、どうも大学の医局に医師の派遣を大分寄りかかっていて、医局の力へ頼っていたという嫌いがあると思います。それがだんだん時代の流れとともにグリップが弱くなってきた。そういうところに、どうも二年前、臨床研修制度を導入したことがさらに拍車をかけたということも言われております。ですから、大学の医局に頼るのではなくて、やはり地域でもっと考えていくということが必要だと思います。

 そういう意味では、今回の医療改革の中に、医療計画を拡充強化して、選択と集中ではありませんけれども、医療機能を集約し、分化し、そしてまた一方で連携をさせていくということは、この方向にも資するものじゃないのかなというふうにも思います。

 また、今回の医療改革の中で、医療対策協議会を法定化するということも大きな前進だと思います。ただ、これは県に任せるのではなくて、国もしっかりバックアップしていかなきゃいけないと思います。

 ですから、そういう意味で、そういったことを踏まえて、大臣の基本的なお考えをお伺いしたいというふうに思います。

川崎国務大臣 御指摘いただきました、まず都道府県を中心とした医療対策協議会、四十七都道府県中四十五都道府県で設置をしていただいております。行政、市町村、医師会、中核病院、医科大学、それから住民代表も入っていただいておるところもございます。そうした形で設置される中で、医療制度全体、そして地域における医療というものをどうしていくか、いろいろ御検討いただいているところでございます。それを法律的に今回位置づけさせていただき、医師確保のための重要な役割を果たしていただきたい、このように考えております。

 御指摘いただきましたように、まず、医師全体の総数として地域的な差、最近のはやりの言葉を使えば格差というものがございます。東北の一部地域、関東の東京を除く一部地域、それから我々の東海地域、ここが全体的に二百を切っております、十万人に対して二百を切っておりますので、この地域が、全体数としては足りないという問題が生じております。

 これは特に東北の例で、答弁で申し上げておりますとおり、大学六年生出ますと、半分以上の方が東京にお戻りになってしまう。せっかく地域の国立大学でしっかり人を養成しながら、六年を卒業すると大都会へ出ていってしまう。こうしたものをどう解消していくのか。そういう意味では、この協議会の中で、大学側の方々も入っている、県の代表も入っている、医師会の人も入っている、どうあるべきかというのをもう少し詰めてもらわなきゃならぬだろう。

 一方で、国側でいけば、我々と文科省と総務省がこの問題についてどうするかということはかなり詰めていかなければならないだろう。地域枠という問題なり、奨学金の問題なりというものを詰めていって、やはり地域で養成した学生が地域の医療の担い手になっていただけるような方向性を目指していかなければならないだろう。そういった意味でも、この協議会が果たす役割は大きいと思います。

 もう一つは、今度は県の中の偏在、過疎の問題等へ、どうするか。

 それで、今御指摘いただきましたように、例えば北海道でございますと、この新しい研修医制度が始まる前は、北海道で受けられている研修医は二百八十八名でございましたけれども、十六年度は三百二十八名、四十名ほどふえているんです。しかしながら、大学の医局で研修を受けられている方は減っております。言われるとおり、医局ではもうコントロールできない、地域全体で取り組んでいかなければ、北海道全体の医療というものを見通せないという時代になっています。したがって、ここもやはり協議会が果たす役割が大きいだろう、こう思っております。

 もう一つ、次は、診療科目による偏在問題。それは、やはり集約化というものを進めていただかなければならない。

 そんなことを上げていきますと、各地域におきます医療対策協議会が役割を果たしていただけるように、やはり私どももしっかりフォローアップをしていかなければならないだろう。あわせて、文科省と総務省とも連携をしながらやってまいりたい、このように考えております。

大村委員 ありがとうございます。ぜひ、国としても、しっかりとその協議会を通じて、そして県も通じてバックアップをしていただきたいと思います。

 そして、これに関連して、医療法人制度改革についても一点だけ、簡潔にお伺いいたします。

 今回の医療法人制度改革の中で、地域の救急医療とか小児、周産期医療、これをやっていく担い手として、社会医療法人というのを新たに位置づけていくということになっております。これは、公立病院だけではなくて、やはり民間病院としての地域の拠点病院として、これをしっかりそういう救急医療、小児、周産期をやっていくということで位置づけていくということで、これはやはり意義があると思います。

 ですから、こういう医師確保の問題、これに対応する意味でも意義深いと思うんですが、この点についても局長の方からちょっと御答弁をいただきたいと思います。簡潔にお願いします。

松谷政府参考人 社会医療法人につきましては、今御指摘の小児救急医療や周産期医療など、地域において確保の必要性が特に高い医療として都道府県の医療計画に記載されたものを、民間の非営利の医療法人であっても積極的に担うことができるように位置づけることとして、今回の改正案の中で設けました新たな法人制度でございます。

 このため、従来、自治体病院などの公的な医療機関が主として担ってまいりました小児救急医療や周産期医療等につきましても、今後、社会医療法人が積極的に担っていただきまして、地域の拠点として、他の医療機関との連携を通じて医師偏在問題にも貢献していただけることを期待しているところでございます。

大村委員 私も地元で、地元だけじゃないです、いろいろな地域の民間病院の拠点病院で、本当に意欲を持って、我々はこういった救急中心にやっていきたいという方はたくさん、お話を聞きます。ですから、そういう意欲のある民間病院、地域の拠点病院をしっかり位置づけて、そしてこの医療政策の中でバックアップをしていくということをぜひぜひ引き続きお願いしたいというふうに思っております。

 時間がどんどん行ってしまいましたので、次に参ります。

 先ほど大臣から、最後に診療科目の偏在についても、集約化ということを言われました。これはぜひこの集約化を、今回の医療制度改革の中でしっかり位置づけて、進めていくということもお願いしたいというふうに思います。

 そこで、そういう制度のあり方、そしてまたいろいろな機能の分化、連携、こうしたものを進めていく上においても、それを誘導していく、後押しという意味で、医療政策を進めていく上において、診療報酬の体系というのは大変重要だというふうに思います。制度的な対応はもちろん必要なんですけれども、これを財源的に裏打ちしていくのがこの診療報酬でございまして、今回の医療制度改革の中では、大綱にもありますように、小児、周産期、麻酔などの救急医療に重点的に配分をしていくんだ、重点的に配慮をしていくんだということを位置づけております。

 それを位置づけた上で、年明けの一月、二月にかけて中医協で、もちろん我々も十分、私も十分意見を申し上げました。非効率なところ、時代に合わなくなったところは合理化をしながら、そして必要なところ、こういった小児、救急、周産期などにめり張りをつけて配分していくべきだということを申し上げて、苦しい、厳しい状況の中ではありますけれども、そういった配分が私はできておるのではないかなというふうに思います。

 今回の診療報酬改定を、こういった医師確保の問題に対応するという意味でどういうふうに評価したらいいのか。これは、ぜひそれを指導された大臣の御見解をお伺いしたいというふうに思います。

川崎国務大臣 医療全体の方針をどう位置づけていくかという中で、給付が二十八兆円、そういう意味では、診療報酬二十八兆円の枠組みの中でやらせていただいている。国の予算ということになりますと、随分一般財源化を地方にいたしてまいりましたので、現実、一千億ぐらいの予算手段であろう。

 この一千億というものは、これですべてをリードするというわけには当然いかない。足らざる部分にこの一千億の部分でなるべく補助をする。しかし、基本は、大村委員の御主張のとおり、二十八兆円の診療報酬の中できちっとした位置づけをしていくべきだろう。そういう意味では、小児科、産科、麻酔科、救急医療等について今回させていただきました。しかし、まだ足らざるという御批判もいろいろいただいております。

 そういう意味では、今後の方向性もそうですよということをはっきりしていくことが大事だろうと思います。今後の診療報酬というものも、やはり流れ全体としてその方向に行きますよということをあえて申し上げておきたい、こう思います。

大村委員 この点について、詳細なことはあれでございますが、今回の診療報酬の中では、例えばコンタクトレンズの検査料、そればかり集中的にやっているところはマルメにしてやっていく。ただ、そういうレセプトが七割以上のところで線を引いて、一般の眼科の先生方にはそういったことは余り影響がないようにしていくといった配慮もさせていただいているというふうに思います。

 そしてまた、入院の食事の見直しだとか検査料の見直し、いろいろな診療報酬の中で出していただいて、それを小児科、産科、麻酔科、そして在宅医療、それからIT化といったところにめり張りをつけて出していく。そういう意味では、こういうめり張りをつけた診療報酬の改定というのは、今回、大変厳しい状況、苦しい状況の中では、めり張りをつけてやってきたのかなというふうに私は思っております。

 ですから、これを引き続き、こうした診療報酬の改定、見直しの中で地道にやはりやっていかなきゃいけない。制度の改定をやれば、何か法律をつくって文章をつくれば、何か全部現場が、実態が解決するなんということはあり得ないわけでありますから、やはりそういう地道な積み重ねをこれからもやっていくことが必要なんだなということをぜひ申し上げたいと思います。

 そして、そういう意味で、今回の改定を踏まえて、次は、この改定をどういうふうにフォローしていくのかということだろうというふうに思っております。そこで、今回の診療報酬改定をやはり検証し、分析し、フォローしていくということが必要だと思います。ですから、小児科、産科、麻酔科、こういった必要な救急のところにちゃんと行っているかどうかということをフォローしていただくことも必要だと思いますし、一方で、今回、この改定について自分自身も携わった者の一人として、医療機関の経営にやはり相当な影響があるんじゃないか。この数値以上に、やはり心理的な影響といいますか、どうも数字以上に大きいぞというような声も時々聞かれます。

 また、例えば歯科についていいますと、マイナス一・五%ということで、医科、歯科、薬剤の調剤とか、一・五、一・五、〇・六ということで枠はつくったということでありますけれども、どうもそれよりも大きいぞというような懸念する声も時々聞かれます。

 例えば、今回、指導管理料というようなことをいろいろ配慮させていただいたんですけれども、どうもその手続がいろいろ煩瑣で、それが実際の収入にうまく結びつかないんじゃないか。だとすると、そっちに配分してもらったけれども、どうもそれが実入りにつながらないというふうになると、どうも数字以上に大きなマイナスじゃないかといったことを懸念する声があるのも事実だと思います。ですから、そういったものにはやはりきちっとこたえていかなきゃいけないというふうに思うんです。

 ですから、私は、もう一度申し上げますが、今回の診療報酬改定は、非常にいろいろな制約条件のある中で、苦労して、めり張りをつけてつくり上げたというふうに思っております。これは、現段階でいろいろな状況を見ればやむを得ないと思いますし、やはり評価する部分はあるというふうに思っておりますが、それがどうも、当初の思いとか設定とか予想を超えて、いろいろな意味での影響、反響が違うところに行ってしまうということであるとすると、これはやはりそのままにしておくわけにはいかないというふうに思うんです。

 ですから、今回しっかりと配慮して重点化してつけたところへの影響、それから、今回少しいろいろ合理化させていただいたところの影響などなど、医科も歯科も含めて、薬剤の調剤も含めて、そういったところもやはりしっかり一回フォローをしていかなきゃいけないと思います。これをできるだけ早く検証して、必要であれば、その方向とか枠組みを変えるということじゃなくて、その枠組みの中で必要な調整だとか修正といったものは私はあってもいいんじゃないかというふうに思うんです。

 ですから、そういう意味で、今回の診療報酬改定を踏まえた上での検証、分析、フォローアップ、これをぜひやっていただきたいと思うんですけれども、この点についてはいかがでございましょう。簡潔にお答えいただきたいと思います。

水田政府参考人 診療報酬改定の結果の検証についてでございますけれども、中央社会保険医療協議会、中医協の公益委員と専門委員で構成されます診療報酬改定結果検証部会というものが設けられてございます。平成十八年度改定の結果につきましても、四月に会合を開催したところでございまして、今後、検証作業を進めていくということにしてございます。

 具体的には、まず診療報酬改定全体の検証ということがございます。それから、個々の診療報酬改定が企図した効果を上げているかどうか、こういった観点からの検証。それから、診療報酬改定に係る基本方針、これは社会保障審議会から示されたわけでありますけれども、そういう方針に沿った改定が行われたかどうか、こういった観点から検証を進めることとしてございます。

 この結果につきましては、国民にわかりやすい形で公表することとしてございますが、さらに、その後の改定に係ります議論につなげていくことにしたい、このように考えてございます。

大村委員 いずれにいたしましても、日本の医療制度の背骨、骨格というのは、この診療報酬の体系だというふうに思います。さまざまな医療政策の方向をつくっていく、裏打ちしていくのもこの診療報酬だというふうに思います。

 したがいまして、自分自身もこうした体系のあり方とか改定に責任を持って対応してきた者の一人といたしまして、引き続きこれをフォローして、そして支えていく、そういう責任があるというふうに思っておりますので、引き続きしっかりこれはチェックしてフォローしていきたいというふうに思います。そのつもりでぜひ対応していただきたいというふうに思いますが、最後に、大臣、その点についての御見解があれば、一言だけお伺いしたいと思います。

川崎国務大臣 三%を超えるマイナス改定の中で、つけるべきところにつけたい、したがって、そこをプラスにいたしましたので、他の部分についてそれ以上のマイナスになっているというところは当然生じてきている、そういう意味では大変つらい改定をさせていただいたことは事実でございます。その結果というのをしっかり検証しながら次の体制を整えていかなければならない。大村委員の御指摘のとおり、常に現場を見ながらやってまいりたいと考えております。

大村委員 そういうことでよろしくお願いします。

 以上、終わります。ありがとうございました。

岸田委員長 次に、飯島夕雁君。

飯島委員 自由民主党の飯島夕雁でございます。

 本日は、質問の時間を与えていただき、本当にありがとうございます。御礼申し上げます。

 さて、本日は、限られた時間ですので、政府、厚生労働省提案の療養型病床群の廃止案に絞っての質問をさせていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

 私もかつて現場で働いていましたのでよくわかるのですが、お年寄りの医療にはケアの視点がとても大切です。虚弱なお年寄りのケアの手を抜けば、それだけで病気になってしまうという実態を見てまいりました。そうした現実を踏まえて介護保険法が生まれ、その中に、ケアを大切にして、それとあわせて医療を行うという趣旨で、いわゆる療養型病床群、介護療養型医療施設があったと思うのです。

 今般、療養病床の再編ということで、介護療養型医療施設は廃止され、療養病床は医療保険ベッドだけになるわけですが、この廃止のために利用者の行き場がなくなってしまうということがあってはならない、また、そのための手だてを講じなければならないと考えています。

 介護保険、附則がつくこととなりましたが、これは、今後六年間をかけて、介護療養型医療施設を利用している患者さんの受け皿として、医療保険ベッドや特別養護老人ホーム、老人保健施設などの今ある施設だけでなく、現実の患者さんに必要な医療やケアについて検討をし、それにふさわしい医療、看護、介護、リハビリ、ソーシャルワークなどを適切に配置した施設をつくる、残す用意があるという意味だと理解しておりますが、それでよろしいか。いま一度、大臣にお伺いしたいと思います。

川崎国務大臣 今回の療養病床の再編に当たりましては、入院している利用者の方々の追い出しにつながらないようにすることが大前提であり、その上で、患者の状態に応じた施設の機能分担を推進することとしております。

 療養病床については、医療の必要度の高い患者を受け入れるものに限定し、医療保険で対応させていただきます。医療の必要性の低い患者については、より居住環境のよい老健施設等の介護施設、居住系サービスまたは在宅で受けとめること、このような考え方で今回御審議をいただいているところでございます。

 そして、法案の附則の中で、入所者の状態に応じてふさわしいサービスを提供する観点から、老人保健施設等の基本的なあり方や入所者に対する医療のあり方等について検討を行う、二番目として、地域における適切な保健医療サービス及び福祉サービスの提供体制の整備の支援に努める、こう書かれております。

 今後、地方自治体の皆さん方の御意見、また、実際に運営されております皆さん方の御意見を聞きながら、必要な支援を進めてまいりたいと考えております。

飯島委員 ありがとうございます。

 ぜひ、現実の患者さんに必要な医療やケアについての検討を行っていただきまして、六年という期間はある意味では大変短いと思います、ぜひ早い段階で、具体的内容を検討し、お示しくださいますようにお願いしたいと思います。

 引き続き、大臣にお尋ねいたします。

 これまで介護保険の療養病床では、お年寄りの自立、尊厳を守るという視点から、利用者をベッドや車いすに縛る身体拘束は禁止するという規定がございました。身体拘束がどうして禁止されたかといいますと、お年寄りは、縛られてしまうとすぐに床ずれができ、脱水を起こし、肺炎を起こすという状態になりまして、衰弱しながら死んでしまうという傾向が多分にございます。介護者の介護軽減のための安易な理由で、過去、何万、何十万という方が抑制に苦しめられて、とても惨めな状態で死んでいかれました。それがこの国の老人病院の歴史でもあります。介護保険では、その現実を踏まえて、身体拘束を禁止いたしました。

 厚生省の今回の改定の際の説明によりますと、医療保険ベッドでも介護保険ベッドでも同じような患者さんが入院しているとの説明でございました。今後、現在ある療養病床はすべて医療保険が適用されることになるわけですが、それらの説明からも、医療保険療養ベッドにも不必要な身体拘束は当然禁止されるべきと考えますが、いかがでしょうか。

川崎国務大臣 指定介護療養型医療施設の指定基準におきまして、サービスの提供に当たっては、当該入院患者または他の入院患者等の生命または身体を保護するため緊急やむを得ない場合を除き、身体拘束その他入院患者の行動を制限する行為は行ってはならないとする考え方でございます。病院などの医療機関においても共通するものであると考えております。

 その上で、医療機関における対応を考える際には、医療機関の役割は急性期の対応を含めた適切な医療を提供することが基本であることを踏まえ、それぞれの施設の性格や役割を考慮しつつ検討を行う必要があると考えております。

 なお、財団法人日本医療機能評価機構による医療機能評価においても、安全確保のための身体拘束を行うことは、これは否定しているわけではありません。これは診療を行う場合にやむを得ない場合はあるだろうと感じております。これを行う場合に、その適用基準や手順を明確にしているか、十分な説明を行い同意を得ているか、患者の状態を適切に観察しているかどうか、こうしたものを評価基準としながら判断をさせていただいているところでございます。

飯島委員 ありがとうございました。

 今のは介護保険下においても例外規定が設けられていることであり、同じ内容であると認識しております。

 ただし、今回については、療養病床、介護保険下における患者さんが医療保険ベッドに移るということで、患者さん自体には変わりはないわけでございますので、その辺につきましては、高齢者に抑制をするということは、非常に体力を消耗する原因ともなることでありますので、緊急やむを得ない個々の場合というのはもちろんあると思いますけれども、原則は禁止という形にしておかないと、やはり病院側の都合による身体拘束がどんどんふえてしまうのではないかという懸念が感じられます。ぜひ、その辺も考慮した上で、個々の状態に合わせた身体拘束の例外規定というものを設けていただきたいと思います。

 続きまして、リハビリテーションスタッフやソーシャルワーカーの位置づけについてお尋ねしたいと思います。

 今回の医療保険では、リハビリテーションの方に大きなメスが入っております。算定上限日数が決められているため、例えば、脳血管疾患では発症から百八十日しか点数がつかない。療養病床に入ってくる方は、大体それ以上の時間を経てから転院されてくる方が多いでしょうから、その人たちにはリハビリテーションをしても点数がつかないという話がございます。

 また、医療区分二の内容で、リハビリテーションが必要な疾患が発症してから三十日以内の患者以外は医療区分一となるとされているとも聞いております。

 高齢者におけるリハビリテーションは、回復期のリハとは異なりまして、維持期のリハビリテーションであることが多く、また、目覚ましい回復が見込めなくとも、例えば硬縮を予防するといった例を挙げただけでも、長い目で継続的にリハビリテーションを行うことが必要だというのは御承知のとおりかと思います。

 また、今回の案においては、医療が必要なときには医療保険、介護だけでよくなれば介護保険に、そしてまた在宅へ行けるならば在宅へということで、目まぐるしく保険や医療やサービスが変化し、その都度調整が必要となってくることが予測されております。これらの状況に、患者さんや御家族の方、そういった方々が混乱することなくサービス活用をきちんとできるようにするには、現在のケアマネジャー制度だけでなく、病院内におけるソーシャルワーカー、MSWの存在は非常に重要なものと考えております。

 しかしながら、療養病床を医療の必要度が高い高齢者の病床と位置づけている一方で、これらリハビリテーションスタッフやソーシャルワーカーの配置を義務づけてはおられません。維持期や終末期のリハビリについては、一般病床のそれとは別枠で考えて点数をつけること、また、個人的には最低でも五十人に一人ぐらいリハやソーシャルワーカーのスタッフの配置が必要なのではないかと考えますが、いかがでしょうか。

松谷政府参考人 リハビリテーションスタッフについての問いだと思いますけれども、高齢者医療におきましては、多くの職種の方が連携して患者さんに対して適切なケアを提供するということが望ましい、言うまでもないことでございます。したがいまして、各医療機関におきまして、必要な医療従事者が適切に確保されていることが重要であると考えております。

 医療法に基づく人員配置標準は、すべての医療機関が遵守すべき規制の一つでございます。例えば、療養病床に入院する患者さんがそれぞれどの程度のリハビリテーションを必要とするかといった、提供される医療の内容を標準化して規制の基準として数値を定めるということは難しい問題であると考えてございますけれども、今申し上げましたように、適切なケアを提供する上で、チームを組んで医療を提供するわけでございますので、当然それは大切なことだということでございます。

 医療法の人員配置標準におきましても、例えば、病床のPT、OTにつきましては、病院の実情に応じた適当数ということとして定めているところでございます。

 一方で、リハビリテーションなどの高齢者に対する医療は多職種連携のもとで適切に提供されるよう、病院等に対しまして経済的なインセンティブを与えるということは、良質な医療を提供する体制を構築していく上で必要と考えてございまして、このような観点から、診療報酬上、リハビリテーション医療の評価におきまして、理学療法士や作業療法士、PT、OTといいますが、この配置を求めているところでございます。

飯島委員 ソーシャルワーカーについての位置づけはいかがでしょうか。

松谷政府参考人 病院の提供につきまして、これは、高齢者の医療だけではなくて、急性期の医療等につきましても、ソーシャルワーカーの配置というのは、その場面場面において大変大事なことだと思っております。

 医療法の規制は衛生規制でございますので、ソーシャルワーカーのことまでは規定してございませんけれども、各病院の医療の内容に応じて医療のケースワークを担当される職員を配置している病院が多いというふうに認識してございます。

 また、その資格の問題等につきましても、いろいろそれを行っている方について議論があるというふうに承知してございますけれども、例えば、精神科等、非常に特殊、特殊というか専門のケースワークが必要な方については、PSWといったような方の制度が制度化されているところでございます。

飯島委員 御答弁の中で、診療報酬の中である程度は評価をしていって、そこで必要であるというような御見解かと今理解したんですけれども、そういうことでありましたら、医師や看護師の、何対何というふうに規定をされておりますように、リハビリテーションスタッフ、ソーシャルワーカーにつきましても、必要なものについて診療報酬としてきちんと評価していくんだということであれば、やはり文章の中での明言化をぜひとも行っていただきまして、そういった中でリハビリテーションスタッフの適正な配置を。

 それから、今申し上げましたのは、急性期も含むソーシャルワークでなくて、今回の療養病床が一般医療保険の中に入るということでのソーシャルワーカーの位置づけについて御質問したのであります。これは、在宅というものをまず基本に据えていきたいという政府案、厚生省案の中で、在宅復帰に当たって入院期間中の状況、病院中はどういう状況であったかという、連携をしっかりとるために、病院内の医療ソーシャルワーカーの必要性が多いのではないかということから質問いたしました。

水田政府参考人 現在の診療報酬体系の中では、ソーシャルワーカーの位置づけ、これははっきり明示的にはしてございません。病院全体の経営の中で、さまざま見るべき分野をどういうふうに見ていくかということで対応していただいているわけでございます。

 ただいま御指摘のような点につきましては、さらに在宅医療とのつなぎをどうするかという観点で、今回、退院時の在宅医療とのつなぎの点を評価することといたしましたけれども、その中で全体的に、個々に細分化して見るのではなくて、全体として医療施設としての機能を評価していくという中でとらえるべき問題かと思いますけれども、なお実態について関係学会等、現場の声もよく聞いてみたいと思います。

飯島委員 ぜひ現場の実態を踏まえまして、御検討をよろしくお願いいたします。

 それでは次なんですけれども、終末期医療、高度認知症の患者さんに対する状況についてお尋ねいたします。

 これまで療養型病床群に入院していた高齢者の中で、老人ホームや老人保健施設がとかく敬遠するケースとして、終末期のお年寄り、これは病状変化が激しいということで、なかなか受け入れがありませんでした。また、高度認知症の患者さん等が上げられると思います。療養病床の削減に伴い、今後、ターミナルケアや重度認知症の患者さんに対する医療やケアについて、その受け皿となるものをどのように確保していくお考えでありましょうか、お尋ねしたいと思います。

 また、今回の案においては、在宅でのケアや終末期のみとりを希望する方への道を広く広げていこうという案が示されていますが、在宅サービスが十分に手が届かない、サービスがない過疎地や僻地についてはどのような見解をお持ちか、あわせてお尋ねしたいと思います。

磯部政府参考人 御指摘の在宅におけるターミナルケアにつきましては、今回、介護保険において、昨年の介護保険法の改正によりまして、認知症の高齢者の方々が住みなれた地域で生活を続けることができますように、地域密着型サービスを創設するということとしております。

 それから、四月からの介護報酬改定におきましては、特別養護老人ホームにおける入所者の重度化やターミナルケアへの取り組みにつきまして、介護報酬上の評価を始めております。

 また、認知症高齢者グループホームにおきます医療連携体制につきましても評価することを新たに設けまして、こうしたことによりまして、在宅における、あるいは施設におけるターミナルケアの一層の取り組みを図っているところでございます。

飯島委員 重度認知症の患者さんについては、まず、食事、排せつ、清潔、アクティビティーなどの基本的なケアを中心としまして、それを行った上で医療にかかわる。その際も、最低限の向精神薬の処方やその副作用のチェックなどが非常に大切であり、一般の精神病院の対応とは異なるものと考えています。性質は全く異なるものと思います。

 また、終末期医療においても、最後まで患者さんの尊厳が保たれ、家族もその死をきちんと受け入れることができるように、丁寧に寄り添うことが不可欠であり、治療して治すことが目的である一般病院とはおのずと病院や施設の役割は異なってくると考えます。

 こうした背景をぜひ踏まえた上で、今後六年間の経過措置もございますので、高齢者医療にふさわしい施設とはどういうものかということをさらに検討し、提供体制の整備をお願いしたいと思います。

 引き続きまして、医療療養病床の人員配置についてお尋ねしたいと思います。

 重度で変化や動きのある患者さんを集めるのであれば、まず、医師は二十四時間常時一病棟に一人張りつけが必要なのではないかと考えます。また、看護二十対一、介護二十対一で、医療区分二や三の人が八割以上いる病棟を真っ当に運営するということは、現段階で非常に困難ではないかと考えます。今であっても、医療保険の療養病床には実質配置二十五対一、二十対一という配置基準があるわけですけれども、これは、患者さん百人に対して看護、介護スタッフが合わせて四十五人いたというわけです。それで、医療区分一の人が六から七割を占めているような病院でさえケアが十分にいかないという現場がたくさん存在していたのが現実でございます。

 今度の改定では、そのスタッフ数を患者百人に対して五十人にしますよということだと思いますが、たった五人の増員で、医療区分二、三の方がほとんどの病棟をまともにできるわけがない、人員配置が余りに少な過ぎるのではないか、これでは、現場のまともな治療やケアができずに、患者さんは悲惨な状態になってしまうのではないかということが予測されますが、これについてはどのようにお考えでしょうか。

水田政府参考人 現行の療養病棟入院基本料についてでございますけれども、現行の配置基準で、看護職員五対一、看護補助職員五対一以上の配置というものを算定要件としておりますので、改定後の入院基本料におきましてもこれを算定要件とすることとしてございます。

 ただ、お話にもありましたとおり、医療区分二または三に該当する患者さんが多い病棟、具体的には八割以上を入院させている病棟につきましては、看護職員四対一、看護補助職員四対一以上の配置を求めるところでございます。

 これは、御指摘がありましたとおり、医療の必要性が高い患者を多く入院させた場合にはより手厚い医療が必要となる、こういう観点から、このような人員配置を求めることとしたものでございます。

 この基準といいますのは、療養病棟入院基本料を算定するに際しての最低限満たすべき基準でございまして、医療現場におきましては、必要に応じて人員をさらに配置する等の措置が講じられておりまして、こういった現実的な対応も含めまして、十分に対応していけるもの、このように考えてございます。

 それからもう一つ、患者さんの病態ということでございますけれども、今回の医療区分を設定するに当たりましては、平成十五年五月から二年間かけて調査をいたしまして、約九十の病院、七千人の慢性入院患者、それから三千五百人につきましてはタイムスタディーを行ったわけでございますけれども、その患者の病態を見ますと、やはり、療養病床に入院されている高齢者の方々につきましては、概して安定的な、医療の必要性に関していえば安定しているということがありましたので、これを踏まえて全体を考えているわけでございます。

飯島委員 さまざまなところからデータをとられているという御説明をいただいているのですが、現場に即した状況を考えたときに、医療現場では、やはり二、三の医療区分の方が八割もいてはとても難しい、あるいは、二、三の方に手をとられて残された医療区分一の方が、より介護が手薄になり、一の状態の方が悪化するのではないかという懸念も持たれております。

 その辺のところも踏まえまして、そういった声もございますので、ぜひこの六年間の間にさまざまな状況を実態把握をしていただきまして、本当に適切な人員配置をさらに深めていただけるよう、またチーム医療が高齢者ケアについては必要でございますので、先ほどのPT、ソーシャルワーカーも含め、医師、看護、介護の基準、それプラス人員ということもぜひ念頭に置いてまた考えていただけたらなと思います。

 時間の方も迫ってまいりましたようなので、質問の方は終えますが、今回の療養型病床群の廃止が提案されて以降、施設を利用されている方々からは、今後どうしたらいいのかという不安の声、それからまた施設従事者からは、このままでは医療、介護難民が続出するのではないかといった危惧がたくさん寄せられております。しかしながら、少子高齢化社会、超長寿社会というものを迎え、日増しに医療費が増大するという中で、この医療費をどうしていくかというのは重大なテーマでありまして、今回の改革はそうした観点から深く切り込んだものというふうに信頼をしております。

 二十年間も続いたこれまでの悲しい老人病院の歴史は、決して繰り返されることがあってはならないというふうに強く思っております。本当に今までの老人病院は悲惨な状況でございました。そのために、介護療養病床群が削減されて、一新して、新たなきちんとしたケアと医療が受けられる施設になる、この突破口になっていただけるように、この医療改革を機に、本当にお年寄りが安心して暮らしていける在宅や施設の、それから我が国の理想のあり方、そして仕組みの構築を実現していただけますように心から期待しまして、質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

岸田委員長 次に、福島豊君。

福島委員 大臣、副大臣、大変御苦労さまでございます。

 本日は、この委員会で繰り返し取り上げられてきました医師不足の問題についてお聞きをしたいと思っております。

 お手元にお配りしました資料、「小児救急医療問題のプロセス」ということで、総数としての小児科医は増加しているけれども問題は偏在だ、これは、厚生科学研究で小児医療の問題を取り上げてこられた田中先生の御著作をベースに私の意見を交えてつくったものでありまして、病院から診療所へというシフト、また地域から都市へというシフト、医療現場から家庭へというシフト、こういう三つのシフトというのがあるんじゃないか。ほかにもいろいろな要素は考えられると思うんですけれども、こうしたことが偏在をもたらしているんじゃないかというふうに理解をいたしております。

 一つは、病院から診療所へのシフトというのは、継続的な医療費の抑制政策、また小児科の診療報酬評価の相対的な低さ、こういったことが、病院の経営状態の悪化並びに小児科病棟の採算性の悪さ、これは端的に言うと赤字ですね。そうした状況が、小児科病床の閉鎖また小児科勤務医の削減ということをもたらしてきた。結果として、小児科医の過重労働が強化される、勤務医を継続することが困難になる、また希望がないということから開業にシフトするということが一つの流れかなというふうに私は思っております。

 二つ目は、地方から都市へということでありますけれども、臨床研修制度が開始をした。都市部の研修病院、これは大学病院ではなくて一般の公的な病院等に研修医が集中をした。人手不足に陥った、特に地方の大学病院の医局への医師の引き揚げが起こってきた。大学医局の医師派遣機能の不全が起こり、そして地方の中小病院の小児科の勤務医が減少した。結果として過重労働が悪化をし、さらに医師のシフトまた開業の促進ということが起こってきた。

 三番目は、医療現場から家庭へということで、小児科の女性医師の増加がある。小児科医師の勤務条件の悪さ、そしてまた女性医師の子育てと仕事の両立の困難さ、再就職プログラムの未整備、こういったことが、休職中の女性医師の増加、また小児科へ復職しない女性医師の増加というものをもたらしているんだろう。

 極めて複合的な要素でこういう現象が起こってきている。これは小児科だけの話ではなくて、内科においてすらこういう現象が起きつつあるんだろうと私は思っております。これを構造的にどうするかということが問われていると思いますし、今回のこの医療制度改革というのは、医療保険をトータルとしてどうするか、そしてまた医療提供体制をトータルとしてどうするか、大きく前進する内容を持っておりますし、早急にこれは成立させる必要がある。その上で、今後、五年後、十年後を見据えてどういうふうにこの問題に取り組んでいくのかということが大切だというふうに思っております。

 まず、研修制度の問題でありますけれども、臨床研修制度の開始によって、研修医が都市部の総合的な医療機関へ集中している。そのことが、地方の医科大学の附属病院での医師不足、また連鎖的に僻地の中小病院からの医師の引き揚げにつながっているというふうに思います。

 地方公聴会でも、東北大学の先生から御指摘がありました。大学医局の医師派遣機能というものは、今後もう期待をしないでほしいという話がありました。医師の適正配置を促すためには、今まで医局が担ってきたこの機能をどういうふうに代替するのかということは、これは非常に大事な問題だというふうに私は思っております。

 先ほども大臣の答弁で、医療対策協議会、これをどう活用していくのかという話がありました。協議をするのは大事なんでありますけれども、医師をどういうふうにして配置するか、人事の話になるわけですね、ここのところをどういうふうに組み立てるかということが出てくるんだろうというふうに思います。

 また、臨床研修も、後期臨床研修をどういうふうに組み立てるか、これも地方公聴会で東北大学の先生から御指摘がありました。僻地の中小病院の勤務というようなものをその中に組み込んではどうか、こういう話もあると思います。ですから、臨床研修制度がスタートして、これは長年の課題であったことを解決したんだと私は思います。その上で、今後、医師の適正配置を進めるためのマッチングをどう進めていくのか、そのシステムをどうつくるか、後期の臨床研修をどうするか、こういうことについて総体的に検討していただきたい、このように思いますけれども、大臣の御見解をお聞きしたいと思います。

川崎国務大臣 今、小児科医の例をとって現実的な問題のお話をいただきました。私も、現実的に各地域でやっている話を聞かせていただいております。

 北海道では、医療対策協議会、道を中心にしながら、今言われましたように、大学の医局でお医者さんを派遣するという制度はもう無理だねという認識の中で、一方で、先ほど申し上げましたように、北海道は、十五年度が二百八十八名でありました研修医が三百二十八名、実数的にはふえている。北海道の内には新しいお医者さんになろうとする人たちが四十名ほどふえているというのが実態でございますので、そうした方々をどう適所に配置をしていくかということであろうと思います。

 その中で、知事さんから今回御提案いただいたのは、開業される前に、一度、こういう急性期の医療なり過疎地域ということで、医療をそういう現場でしていただいて開業してもらったらどうだろうか。また、研修のスキームの中に入れることはできないか、こういう御議論もいただきました。しかし、現実問題としては、今回それを提案するところまで煮詰まらなかったことは事実であります。

 しかし、一方で、この議論、今福島委員から御指摘がありましたように、そうした地域へ医師をどうやって派遣をしていくかということになると、本人の職業選択の自由はあるけれども、一方で、多少強制機能というものを持たないとできないのではないか。それは今まで医局が果たしてきたけれども、医局がそれを果たせない状況になっていったときに、この対策協議会だけで果たし得るのか、こういう御下問を今いただいておるんだと思います。その辺は、まさにこの法律が通りました後、大きな課題として議論をしていかなければならないこと。同じ認識を持たせていただいております。(発言する者あり)

福島委員 いろいろと不規則発言がございますけれども。

 今回の医療法の改正は極めて大きな改正であることは間違いがありません。その上で、今まで医局制度というものが、ある意味では真正面から取り上げられてこなかったんだと私は思います。そしてまた、それが日本の医療提供体制の底支えをしてきたことも事実なんですね。それをどう変えるか。これは、臨床研修がスタートしてある程度時間がたってどうなるかということを見ないと、議論が本当はできないんです。

 ですから、今回の法案に入れろという話もありますけれども、それは私は無理だと思います。その上でどうするかという話だと思います。今、余り演説していると質問ができなくなってしまうんですけれども。

 結局、医師のライフコースというのをどう考えるかという問題なんですね。開業に当たって地方勤務を義務づける。これは、逆に言いますと、一種のペナルティーみたいな話なんですよ。そうではなくて、自分の医師としての一生の中で、そういう地方勤務も位置づけられ、そしてそれが何らかのメリットでまた戻ってくる、こういうものが描き出されてこないと、はあそうですか、わかりましたという話にはなかなかならないんだと思いますよ。だから、トータルとして考えなきゃいけないと私は思っております。これはもうちょっと後で文科省にもお聞きしたいんですが。

 まず、当面は、勤務条件が医師の引き揚げによって悪化している。事実だと思います。過重労働が起こっている。そのことがまた開業へというシフトを促している。悪循環になっているわけですね。ですから、早急に地方の中小病院、これは小児科だけではなくて、統合集約化というようなことは、勤務状況を改善するためにも必要だというふうに思います。

 また、公的病院間だけではなくて、公的病院とまた民間病院との連携ということも当然あると思いますし、現にその取り組みをどう進めているのか、また、これからどうしていくのか。この点についてお答えいただきたいと思います。

松谷政府参考人 御指摘の、医師の過重労働といった勤務条件を改善するためにも、病院における機能、役割を明確化して、病院の統合集約化等の見直しを行っていくということが大事だと思っております。

 そのため、昨年末に各都道府県に対して、その集約化、重点化の検討を早急に行って、具体的対策を講じることを要請したところでございますけれども、今御指摘のとおり、今後、公的病院はもとより、民間の医療機関にも協力を求めて、集約化のスピードを速めていかなければならないというふうに考えてございます。

 公民の統合も含めた取り組みにつきましては、公的病院とそれから民間病院の統合など、民間も含めた開設主体の異なる再編成への適用を可能とするため、現在、その施策についてのパブリックコメント、意見募集を行っているところでございます。これらの取り組みによりまして、集約化、重点化が促進されて、本来の目的でございます、質が高く、効率的な医療サービスの提供とともに、医師の過重労働の解消に寄与するというふうに考えている次第でございます。

 以上のような施策をさらに進めていきたいと考えております。

福島委員 続いて、先ほど申し上げました医師の派遣機能といいますか、適正配置機能といったらいいんでしょうか、これをどう再構築していくか。これは厚生労働省だけではできないんですね。一つは文部科学省、大学の医学部を所管しておるところがどうするかということをしっかりと考えていただかなきゃいけない。それが一つあると思います。また、もう一つは総務省ですね。これは、地方自治体立の病院、たくさんあります、これをどういうふうな形で今後やっていくのかということももう一つあるわけですね。

 私の思いつきで恐縮なんですけれども、例えば、地方独立行政法人というものがつくれるようになりました。結構自由度があるんだと私は思います。そういうところに県立病院、そしてまた同じ県内の公的病院、例えば市立病院、また町立病院、こういうものをまとめて一つの固まりにする、プールにする。そういう大きなものを臨床研修が終わった後の医師の受け皿として魅力のあるものにする。そういう中で医師を派遣していく。そうすると中で回りますから。

 そこで、もう一つ言えば、大学も、医学部にやはり臨床教授をつくる制度というものをきちっとつくっていただきたい。臨床教授といいますか、そういうコースの中で、教授職につくような、教職につくようなプロセスも要るんじゃないかと私は思うんです。それは、ですから、文科省も総務省も厚生労働省も含め、それぞれができませんということじゃなくて、知恵を持ち合って、どういう医師のライフコースを新しくつくるのか、こういうことが問われているんだと思います。

 文科省そしてまた総務省、きょうお越しでございますので、それぞれ御見解をお聞きしたいと思います。

磯田政府参考人 お答え申し上げます。

 大学病院は、地域の中核的な医療機関としての役割が求められておりまして、その一環として、医師の派遣ということがこれまで機能としてあったわけでございますが、御指摘のような状況の中で、結果として地域医療に影響を与えているという面もあるということを認識しております。

 三省で協力をしながら、医師確保の総合対策に取り組んでいるところでございますが、文部科学省といたしましては、今御指摘のようなさまざまな議論というものを十分高めていく必要があろうと考えておりまして、十七年度から地域医療等社会的ニーズに対応した質の高い医療人養成推進プログラムということを立ち上げまして、国公私立大学が地域医療を担う特色あるすぐれた取り組み、これを支援しているわけでございますが、そのような中で、さまざまな御議論を重ね、あるいは御助言をいただきながら方策を立ててまいりたいと考えております。

 また、先ほど御指摘がございました臨床教授という名称でございますが、法人化後の国立大学におきましては、そのような名称を活用するということによって、臨床の強化、あるいは責任を持って、自信を持って業務に携われる、そういう試みもしているところでございます。

大谷政府参考人 お答え申し上げます。

 地方独立行政法人は、地方公共団体とは別に、その法人格として、公共上の見地から実施が必要な事業を効率的かつ効果的に行わせることを目的として地方公共団体が設立する法人であります。病院事業につきましても、平成十八年四月現在、全国において三法人が設立、スタートをしているところであります。

 この長所といたしましては、地方公共団体が主体的に設立できまして、役員の任免であるとか中期計画の認可等、設立者の意向を反映させることができる、あるいは業務内容の変化等に対応した職員配置、職員数等の柔軟な変更が可能、こういったメリットが上げられるところでございます。御提案にありましたように、地域における医師不足に対処するため、このような制度を活用しまして病院の再編あるいはネットワーク化を促すということも一つの有効な方策として真剣に検討すべきものと考えております。

 また、これとは別でありますけれども、今国会に提出させていただいております地方自治法の一部改正の中に、従来であれば他の地方公共団体に職員を派遣した場合には派遣元の団体が退職手当を全額負担するということになっておりますが、これを改めまして、医師の派遣などで一定の要件を満たす場合には関係団体の協議により派遣先団体がその一部を負担することができる、こういった改正もお願いしておるところでございます。これによりまして、都道府県が地域における医師不足に対処するために一定の医師をプールして採用しまして市町村へ派遣するということが容易になる、こういった効果も見込んでおるところであります。

 総務省といたしましては、こうした制度改正の周知を図り、あるいは今般の医療制度改正に盛り込まれた都道府県の調整機能の発揮に期待しながら、厚生労働省とも連携いたしまして、医療提供体制の見直しについて各地方公共団体における積極的な取り組みを促してまいりたいと考えております。

福島委員 よろしくお願いいたします。

 次にお尋ねをしたいことは、診療報酬の問題です。診療科ごとに診療報酬の評価はそれぞれやはり格差というのがある。小児医療に関して言えば、小児の医療にかかわる薬剤費にしましてもそれほどたくさん使うわけでもありませんし、そしてまた季節変動も当然ありますから、やはり採算が悪いというのは事実で、端的に言うと赤字だということだと思います。

 ただ、これはこの国会でいろいろと議論されておりますけれども、厚生労働省も今まで放置してきたわけではなくて、私も何年も前からこれはやはり小児医療の評価を改善すべきだということを言い続けてまいりましたし、そのたびごとに、改定ごとに前進をしてきているということも事実だと思います。このあたりの経緯について少し御説明いただければと思います。

水田政府参考人 小児医療に係ります診療報酬上の評価についてでございますけれども、これまで、入院医療につきましては、平成十二年度に小児医療の特性を踏まえた入院料といたしまして小児入院医療管理料を新設いたしました。その後も拡充を図ってきているところでございます。外来医療につきましては、小児科外来診療料あるいは乳幼児加算の引き上げを行ったほか、平成十四年度に地域連携小児夜間・休日診療料というものを新設いたしまして、その後も拡充を図ってきているところでございます。

 平成十八年度、今回の改定におきましては、先ほどもお話ございましたとおり、小児医療を重点領域と位置づけまして、小児入院医療管理料の引き上げ、地域連携小児夜間・休日診療料の充実、小児診療における深夜加算の充実、こういった措置を講じたところでございます。

福島委員 このように逐次改善をしてきていただいている。事実だと思います。ただ、先ほども大臣から御説明ありましたように、今回も重点的に配分していただいた、その結果として、小児医療、病院におきまして病棟の採算性がどう変わったか、これはぜひまたフォローしていただきたいというふうに私は思っております。

 限られた財源の中でやりくりしているということは間違いがありませんので、診療報酬だけですべてをカバーできるわけではないと思います。田中先生も指摘しておりましたけれども、病院にとって小児科という診療科目を持つ、入院病棟を持つということが大きなメリットになるようなことをやはり考えてあげないといけない。また、私も病院で勤務しておりましたから、おまえのところは何でこんなに点数が低いんだとすぐ言われるわけでありまして、小児科の先生は大変だろうなと私は思います。

 かといって、患者をふやすわけにもいかぬわけですから、そう考えますと、小児医療というものが病院の総体の中できちっと評価されるようなこと、例えば、先ほど社会医療法人という話もありましたけれども、そういったようなツールもあるだろうと思います。税制の面の考え方もあるだろうと思いますし、そういった支援策をぜひとも考えていただきたいと思いますが、政府の見解をお聞きしたいと思います。

松谷政府参考人 小児医療に対する理解というのはこの議論を通じて大分深まってきている、国民の中でもそれなりの理解を得てきているというふうに思っておりますけれども、今、診療報酬の面だけではなくて、例えば、国の小児救急医療についての補助であるとか、あるいはその整備に対する助成であるとか、あるいは今先生御指摘の社会医療法人に公的な役割を担っていただくといったような仕組みの創成であるとか、いろいろな面から小児医療を担っているそれぞれの主体、あるいはお医者さん、こういうものを支援していきたいと考えております。

福島委員 もう時間がなくなりました。最後に一問だけお願いします。

 女性医師の問題ですね。これは大臣にぜひお尋ねしたいんですが、子育てと仕事の両立は困難だと先日の参考人の意見陳述の中にもありました。本当に大変な思いをしながら仕事をしていただいている。育児休業取得もほとんど難しい、院内保育も十分ではない、まして子供が病気になったときに自分は休めない、別の先生に診てもらわなきゃいけない、また、一たんリタイアした後、再就職プログラムというのもなかなかない。こういうことをやはりトータルで取り組みをぜひ進めていただいて、少子化対策ということにも通じる話でありますし、ぜひまとまった総合的な対策をしていただきたい、そう思いますけれども、大臣の御見解をお聞きします。

川崎国務大臣 今、国家試験に合格される女性医師の数は三分の一になりましたけれども、その内容を見ますと、今回研修を終えられて産婦人科に進まれる七〇%を超えた方々は女性医師でございます。したがって、周産期医療の問題を議論していきますと、今言われた女性の医師の働き場、そして働く環境というものをしっかりつくり上げていかないと周産期医療の改善につながっていかない、これは間違いない事実だろうと思います。

 その他の治療科でも女性の医師が特に多いところ、そういったものを見てみましたときに、やはり総合的な対策をしっかり打たなきゃならぬだろう。女性医師バンクの創設、また医療現場への復帰を希望する女性医師に対する再就業のための講習会等をさせていただいておりますけれども、こんな方策を、やはり実施状況を踏まえながら総合的な対応を打たなきゃならない、そういった思いでおりますし、また各県がどのような状況になっているかということも一つ一つの県を検証しながら見ていかなきゃならぬ、このように思っております。

福島委員 終わります。ありがとうございました。

岸田委員長 次に、郡和子君。

郡委員 民主党の郡和子でございます。

 連休明けの月曜日、福岡そして福島で地方公聴会が開かれました。私は福島の地方公聴会に参加をさせていただきました。政府・与党の招かれた公述人の皆様方も、今回政府が提案されております医療制度改革法案に対して、さまざまな危惧や、また不安や御要望を続出させておられました。

 私は次の日の報道を大変楽しみにしておりました。何というふうに書かれているんだろうと思いまして、新聞を見てみまして大変驚きました。きのうの朝刊でございますけれども、ああ、こういうからくりであったのかと。政府が出している法案の目玉の一つでありますメタボリックシンドロームについての厚労省の発表でございました。そういうからくりがあったからこそ、地方の声というのも現場の声というのもかき消されて、大勢の方々に知り得ないものになるんだなと。厚労省の皆様方はさぞかし胸をなでおろされたのかもしれません。

 私は田舎の、仙台のマスコミの出身でございますけれども、報道の、マスコミのあり方にも大変疑問を持ちました。きょうはジャーナリストの方々もこの傍聴席においでかと思いますけれども、政府の発表をそのまま報じるのであれば、これは政府の御用機関でございます。反対の視点を持つ、これこそがジャーナリストに求められている根源的な姿勢だろうと思っております。

 私は、きょうは、このメタボリックシンドロームの虚構性について御質問をさせていただきます。

 今回の医療制度改革ですけれども、生活習慣病対策によって、二〇二五年の推計医療費五十六兆円、この数字に対してもいろいろございますが、そのうちの二兆円は削減できるというふうにおっしゃっております。これは、糖尿病ですとか高血圧症の現在の通院患者数、脳血管疾患や虚血性心疾患の現在の患者数などから推計したものであるとして、きのう、この表をちょうだいいたしました。これによりますと、糖尿病の患者さんおよそ二百万人、高血圧症の患者さんおよそ五百万人。何とまあ大ざっぱな数字による計算であるのか。これを振りかざして大きな改革だと言っていること自体がまずもっておかしい。

 五月九日、全国紙の朝刊で各紙一面トップで報道されました。きのうのことであります。それによりますと、平成十六年度の国民健康・栄養調査の結果によれば、四十歳から七十四歳の男性の二人に一人、そしてまた女性の五人に一人が、生活習慣病対策の柱とされますメタボリックシンドローム、内臓脂肪症候群が強く疑われる者、または予備軍と考えられるということでございました。さぞかし、きのうは各地でこの話題で盛り上がったのではないかと思います。

 質問させていただきますが、男性の二人に一人、女性の五人に一人とは大変すさまじい数でございます。これらの方々すべてに保健指導を行ったり、また、発症した方々に対して薬物治療を行うといたしましたらば、大変なコストになるかと思われます。二兆円を削減するということでございますけれども、この中にはもちろんこれは含まれてはおりません。大臣、これは一体どういうふうにお考えになりますでしょうか。まずもって伺わせていただきます。

川崎国務大臣 まず、マスコミの名誉のために申し上げておきますけれども、我々が画策して書かせたような御発言をされましたけれども、それぞれの情報をマスコミは判断して書かれる。我々与党からいいますと、なかなか我々の言うとおり書かないで、逆に書かれているのが実態でありますから、マスコミ出身者の皆さん方からそのようなお話が出るとは、私はちょっと、厚生省とはそれほど力のある役所かな、こう思わざるを得ません。

 今回の医療制度改革では、医療保険者に対して、メタボリックシンドローム、内臓脂肪症候群に着目した健診を実施するとともに、薬に頼るのではなく、適度な運動習慣やバランスのとれた食生活習慣など、個々人の行動変容をもたらすことができるような保健指導を実施することを義務づけるとしております。

 健診、保健指導の実施に当たっては、現在の取り組み状況も踏まえて、実現可能な目標を設定する必要があることから、当初の段階においてすべての被保険者、被扶養者に対しその健診、保健指導を実施することを想定せず、その後、医療保険者における体制整備を図りつつ、徐々に実施率を引き上げていく。実際、平成二十年度で六〇%、平成二十七年度で八〇%というような数値目標を上げさせていただいているところでございます。

 また、今回の新しい保健事業の取り組みは、糖尿病や高血圧症などの発症を予防することに加え、脳卒中や心筋梗塞などへの重症化を予防することをねらいとするものであります。

 そういう意味では、健診のコスト、実施率六〇%の場合に約一千六百億。ただし、これは全部保険で出るわけではありません。仕事をしておられる、お勤めになっている方々は会社の負担ということになりますから、これは全部ではないということは御理解を賜りたい。一千六百億かかります。一方で、最終的には医療費が適正化されていくことになるだろう。

 そういう意味では、予防というものは、初期投資としては確かにコストはかかるであろう、しかし、それは五年後、十年後に必ずリターンで返ってくる、こういう思想の中でやらせていただいているところでございます。

郡委員 大臣からるる御答弁がございましたけれども、これは日経メディカルのことしの二月号でございます。ここに、二木日本福祉大学教授が「「健診で医療費抑制」への疑問」という論文を書かれております。よくお読みいただきたいと思います。

 メタボリックシンドローム、この内臓脂肪症候群に関しまして、もう少し詳しくお話を伺いたいと思います。

 生活習慣病対策にこの概念を導入して、この診断基準に当てはまる患者及び患者予備軍を健康診断で早期に発見することが生活習慣病対策の柱となっているわけですけれども、この診断基準と政策に導入された理由、これを簡単に御説明ください。

中島政府参考人 ただいま御指摘のメタボリックシンドロームでございますが、我が国におけますメタボリックシンドロームについての定義、それからまた診断基準につきましては、日本内科学会、日本糖尿病学会など関連いたします八つの学会から構成されるところでありますメタボリックシンドローム診断基準検討委員会というものがございまして、ここで議論されまして、平成十七年の四月に取りまとめられ、発表されたというものでございます。この診断基準におきましては、内臓脂肪の蓄積というものを基本といたしまして、高血圧、高血糖、そして脂質の異常といううち、その二項目以上を満たす場合をメタボリックシンドロームということで定めているものでございます。

 今回の医療制度改革におけます生活習慣病対策につきましては、平成十六年の十月以降、厚生科学審議会地域保健健康増進栄養部会におきまして、これまでの生活習慣病対策の現状と課題、そして今後の方向性につきまして御審議をいただいて、平成十七年九月に取りまとめられましたこの部会の中間取りまとめの中で、メタボリックシンドローム、内臓脂肪症候群と言っておりますが、の考え方には、肥満者の多くが、糖尿病、高血圧等の複数の危険因子をあわせ持っているということ、それから、危険因子が重なるほど心疾患、脳血管疾患を発症する危険性が増大をするということ、これらの川上といいますか上流の原因として内臓脂肪の過剰な蓄積があるというようなことから、運動習慣の徹底と食習慣の改善、これらを中心とした生活習慣の改善によりまして内臓脂肪を減少することで高血糖、高血圧、高脂血症といった危険因子が改善をするという根拠があるということで、この疾患概念に着目をして生活習慣病対策の充実強化を図ることとしたものでございます。

郡委員 議論させていただきたい項目がたくさんございますので、短く御答弁願います。

 今お話ありました九月の十五日に発表されました厚生科学審議会の地域保健健康増進栄養部会、「今後の生活習慣病対策の推進について(中間とりまとめ)」では、

 運動習慣の徹底と食生活の改善を中心とした生活習慣の改善により内臓脂肪を減少させることで高血糖、高血圧、高脂血といった危険因子のすべてが改善することといった科学的根拠を踏まえれば、今後、メタボリックシンドロームの考え方を取り入れた生活習慣病対策を推進し、国民や関係者の「予防」の重要性に対する理解の促進を図っていくことが有効と考えられる。

というふうにされているわけなんです。

 ここで言う危険因子のすべてが改善するという科学的根拠、これについて御説明ください。

中島政府参考人 これにつきましては、このメタボリックシンドロームについて、これまで長いこと世界じゅうで研究が進められてきております。そういう中において、それぞれの、糖尿病なら糖尿病、それから高脂血症なら高脂血症ということで、いろいろな取り組みが行われてきたわけですけれども、そういうものの集積として今回の結果が得られているわけです。

 理論的には、欧米でも、糖尿病の、いわゆるインシュリン感受性といいますけれども、細胞のインシュリンに対する作用、こういったものの低下が一つ問題になっておるということ。それから、その一つの原因として、内臓脂肪というものが非常に大きな役割を占めていることが最近になって研究の結果わかってきたということを踏まえ、実際に現場でのデータも踏まえた上でこういったことになっているということでございます。

郡委員 今御説明いただきましたけれども、それは、危険因子のすべてが改善されるということの科学的な根拠、エビデンスにはちっともなっていないということをここで重ねて申し上げさせていただきたいと思います。

 私、きょう配付させていただきました資料一、これは私の事務所でつくらせていただきました、メタボリックシンドロームの「欧米の権威ある学会の声明文と、日本の政策立案のギャップ」。実はここに、欧米の権威ある学会が、その後ろに英字のものが二枚挟まっているかと思うんですけれども、メタボリックシンドロームを基準とすることによって疾患の発症を減らすというエビデンスはないという、欧米の権威ある学会が発表したものでございます。

 これは、そしてまた日本の資料と対比したものなんですけれども、メタボリックシンドロームにはさまざまな定義があって、疾患概念、診断基準として確立しておらず、臨床的な価値は定まっていない、それから、過去の追跡データベースから、メタボリックシンドロームに該当する人としない人で死亡率は変わらないということが、このアメリカとヨーロッパの権威ある学会が共同で出した声明に載っております。

 日本の八学会がメタボリックシンドロームの国際的な診断基準を日本向けにアレンジして発表したのは二〇〇五年の四月のことでございますが、その同じ九月に、アメリカとヨーロッパの最も権威ある学会、米国糖尿病協会と欧州糖尿病研究協会で、このメタボリックシンドロームについては批判的に吟味すべきときであると、共同声明を権威ある雑誌に発表しております。

 この声明では、今申しましたように、定義は不正確であって、心血管疾患のリスクマーカーとしての十分なエビデンスはない、マーカーとしての価値も疑わしいというふうに明確に主張されているわけです。この欧米の権威ある学会の共同声明を生活習慣病対策に関する審議会や検討会で討論したのかどうか、検討したのかどうか。また、この共同声明を、これは日本の学会は日本版でアレンジしているものですから、それを厚生省は御存じになっているのか、そして知っていて検討会に出さなかったのかどうか、お尋ねしたいと思います。

中島政府参考人 ただいま御指摘の点でございますが、まず日本独自の診断基準というものをつくりました関係八学会については、この高血圧、高血糖等の複数のリスクによって心血管等の発症リスクが高まるという診断基準の基本的な考え方については、世界的に共通認識されているものというふうに理解しております。(郡委員「違いますよ」と呼ぶ)まだこれからがございます。

 メタボリックシンドロームの具体的な診断基準につきましては、御指摘のようにWHOや各国において若干異なっている面がございます。そしてまた、アメリカの糖尿病学会、そしてヨーロッパの糖尿病研究会が平成十七年九月に発表した共同論文というものについても承知を申し上げております。

 ただ、この中で指摘されておりますことは、メタボリックシンドロームそのものを否定するということではなくて、この診断基準の使われ方ですね、定義自体がやや団体によって異なっていて、幅広く使われているということがございまして、その因果関係も含めて、さらにその部分については検討する必要があるということが一つと、それからまた、このメタボリックシンドロームであるかないかということによって、過剰な診断、治療をしたり、あるいは過小な、基準を一個満たさないから治療しなくてもいいんだというようなことにならないように……(郡委員「質問に答えてください。検討会で検討したんですか」と呼ぶ)

 検討会そのものでは、この論文について議論したということは承知しておりませんが、先生方との意見交換はさせていただいておりまして、そのような見解をいただいております。

 以上でございます。

郡委員 質問したことに的確にお答えいただきたいと思います。

 検討会で、これほど、黙殺できるような、黙っておられるような共同声明ではありません。ちょっとやそっとのものではないんです。

 また、日本でも、「医学のあゆみ」、ついこの間、四月一日に出たばかりでございますけれども、メタボリックシンドロームの特集でございます。これにも、「診断基準をめぐる問題点」ということで、東京大学の原一雄さんがこう述べておられます。「これまでのところ心血管疾患を十分に予知することのできるメタボリックシンドロームの診断基準は得られていない。新しい診断基準も日本人の心血管疾患の予測には有効ではなかったことが示されている。」こういうものがあって、検討会でも全く議論していないというのは一体何なんでしょうか。大変問題だと思っております。

 こういう重要な声明を全く議論しない、なぜなのかということについて引き続き追及をさせていただきたいと思います。

 これは、薬害エイズの問題でもそうであります。海外の重要な情報というのを日本の専門家が無視したことによって、あれは甚大な被害を及ぼしたものでございます。権威のある専門家が、患者の命よりも製薬会社の利益を重んじたことで薬害エイズの被害は広がったわけでございます。記憶に新しいことではございませんでしょうか。ここは大変構造的な問題があるというふうに私は思っております。厚労省がこの共同声明のことを知っていて検討会に出さなかったとしたら、これは薬害エイズと全く同じ、構造的な欠陥であると言わざるを得ないと思います。

 さらにお手元の資料、英文のものですけれども、ごらんいただきたいと思います。これはEMBOレポートという文献でございます。製薬会社とそのパートナーである医学専門家が新しい病気をつくり出して、病気でない人まで病気にしてしまう。そして、メタボリックシンドロームという概念は、製薬会社が利益を上げるための道具とされ、医療費は増大するというふうに批判をしております。

 こちらの本もちょっと御紹介させていただきましょう。これは全米で話題になった本でございます。「ビッグ・ファーマ」。ニューイングランドの医学雑誌の前編集長がまとめたものでございまして、日本でも和訳されて出ております。「巨大製薬会社が支配する医学界。そこにもたらされる巨額の収益。事実に基づいた明確な分析で隠された実態に迫る。」大変おもしろい本でございます。病気でない人も病気にされて、そのために製薬会社が新しい薬をつくり、そして薬をその患者さん、患者ではないのに患者とされた人たちに売られていくということであります。

 こういったように、メタボリックシンドロームという概念は製薬会社が薬を売るために都合よく使われるという批判、これは欧米のメディアでは数多く出ております。こういった問題は、それでは審議会や検討会でお話しされたのでしょうか。お尋ねいたします。どうぞお答えください。

中島政府参考人 ただいま御指摘いただいた点でございますけれども、まさにそういった点を先ほどの論文は指摘しておるわけでございまして、メタボリックシンドロームという概念があたかも一つの病気であるかのように扱われて、それをもとに治療するということについての警鐘を鳴らしているというふうに理解しております。

 そこで、我が国の検討会ではどうかということでございますが、そういったことから、今回のメタボリックシンドロームの考え方におきましても、先ほども大臣が御説明させていただきましたように、まず運動、そして食事等の生活習慣から直していこうということを高らかにうたっているというのが我が国の考え方でございます。また、その因果関係につきましては、欧米のデータを使うということではなくて、我が国独自のエビデンスをもとに、関係学会において議論され、つくられたというのが我が国の考え方でございます。

郡委員 ですから、そのエビデンスが全く根拠のないものだということはあらかじめ申し上げました。そして、今御説明にありましたように、厚生労働省からいただいている資料、皆さんにもお配りしておりますけれども、「一に運動 二に食事 しっかり禁煙 最後にクスリ」というキャッチフレーズでございます。これは、きのうの新聞の各紙にも、こういうキャッチフレーズで厚労省は皆さんに注意してくれと呼びかけているのだというふうに報じられました。大変私はびっくりいたしました。大変びっくりいたしました。

 これも一部しか現物がありませんものですから、皆様のところにコピーをさせていただきました。「メタボリックシンドロームに注意しましょう」というものでございます。どこが出しているかといいますと、グラクソ・スミスクライン株式会社、大手の製薬会社であります。

 読ませていただきます。「先生に「尿酸値が少し高めですね」と言われたあなた。 「まだ薬を飲むほどではない」と安心していませんか?」そして、中をめくってみますと、厚労省のキャッチフレーズと全く同じでございます。「一に運動、二に食事、しっかり禁煙、最後にクスリ」。そして、その最後の薬の名前までここにちゃんと載っております。びっくりいたしました。尿酸生成抑制薬というんですか、ザイロリック。それから、酸性尿の改善には、尿アルカリ化薬ウラリットなどを服用します。そして御丁寧にここにおなか回りの数字をちゃんとはかって、何月何日、チェックしましょうということなんですけれども、それだけではございません。(発言する者あり)はい、申し上げます。

 実は、このグラクソ・スミスクライン株式会社のお薬のパンフレットですよ、これの監修に、大阪大学名誉教授、財団法人住友病院院長松澤佑次氏の名前がトップにございます。この松澤佑次先生、大変権威のある先生というふうに伺っております。きのうの新聞にもメタボリックシンドロームについてさまざまなコメントをお載せでいらっしゃいました。テレビの報道でも取材に答えておられました。大変驚きませんでしょうか。そういう方が、グラクソ・スミスクラインが主催するセミナーでも御講演をなさっております。

 こうした専門家の方々が、こういった製薬会社からパンフレットの監修の謝礼ですとか、それからセミナーでの講演料、幾らもらっているのかは存じ上げませんけれども、検討会で欧米の共同声明について全く議論しようとしないというのは、どういうことですか。この松澤先生もメンバーの中に入っておられるはずですよ。これにお答えいただきたいと思います。

中島政府参考人 まず、松澤先生初め専門の先生方につきましては、それぞれの専門分野をお持ちで、現実に診療をやっておられるというお立場から、いろいろな機会で御説明をされるということで、これは専門的な立場からいたし方のないことであるというふうに考えております。

 それで……(発言する者あり)そうではありますが、実際に、国民、患者さんの中には……(郡委員「そこまではひもつきだということですね」と呼ぶ)いえいえ、私が申し上げたかったのは、運動それから食生活といって、最後に薬が出てくるのがいかぬというふうに言われたので、そういうことではなくて、やはり薬でなければ治せない患者さんもおられる。そういう方に対する治療がおくれると、これはこれでまた大きな問題であるということで、そういうものが入っているということでありますし、また、その松澤先生の監修されたパンフレットにもそのような趣旨で書かれているのかなというふうに推測をしたということでございます。

 それからまた、欧米のペーパーが今回の中で議論されなかった云々につきましては、これは、中間まとめがされた後に出てきたペーパーということもございますので、その前段階においては議論がされていないということだというふうに理解しております。(郡委員「やり直さなくちゃいけません」と呼ぶ)やり直す必要があるかどうかについては、先生方と意見交換をしておりますが、今のところまだ特にその必要があるという御意見はいただいておりません。

郡委員 それはそうですよ。そういうふうに製薬会社と深いつながりをお持ちの先生がいらっしゃるわけですから、やり直そうとはやはりおっしゃらないと思いますよ。それはだれが考えても、ああ、そうだろうなというふうにうなずくしかないわけですよ。そこを厚労省はしっかりしなくちゃいけないわけじゃないですか。

 最近では、肥満症の治療薬がまたアメリカで間もなく承認されるというようなニュースが入ってきております。これは、アメリカの大手の製薬会社が、日本で新しく患者、患者予備軍とされる人たちが大勢いるということで、舌なめずりして待っているわけですよ。これは、どういうことなんでしょう。

 これは、与党の委員の方々もぜひ真剣にこの御議論をお聞きいただきたいと思っております。地域……(発言する者あり)そうです。地域保健健康増進栄養部会の中間まとめでは、さらに驚くようなことが書かれてございます。フィットネス業界などの産業界を通じて、運動不足を解消すべきなんですね。運動不足を解消すべき、フィットネスクラブなどを利用してですよ。こういうような厚労省の政策というのは、国民の健康不安をあおるだけで、そしてまた、本来は散歩の時間をふやすだけで運動不足が解消されるという人たちを、会費の高いフィットネスクラブに誘導して、電車の広告、またコンビニエンスストアの宣伝で、効果が確実でないやせ薬やサプリメントを買わされる、こういうことにつながるんじゃないですか。ついこの間もやせ薬を飲んで甚大な被害もあったわけですよ。

 こうしたメタボリックシンドローム予備軍に対する産業界によるマーケティング戦略、これをどういうふうにコントロールなさるおつもりなのでしょうか。

中島政府参考人 ただいま御指摘の、まず薬の問題でございますけれども、薬の問題につきましては、先ほどから申し上げておりますように、現に最後の手段であるということで、まず運動、食事、そして禁煙というものをきちっとやった上で、本来必要な人にだけ薬を使おうというのがまさに今回の趣旨だということで御理解をいただきたいと思います。

 それからまた、運動それから食事につきましても、確かに散歩だけでよくなる方もおられますけれども、もうちょっとやりたいという人もありますし、やる必要があるという人もあります。そういう場合には、フィットネスクラブという資源も活用するということも有効ではないかという趣旨で書かれているものというふうに理解しております。

郡委員 いろいろガイドラインや何かをおつくりになるというふうにきのう厚労省の方々がお話をされていましたよ。でも、そういうふうなシステムをつくっても、これは、営利企業は、営利企業の論理で動いていくわけですから、お金をもうけて株主の方々に支えられて企業活動をやっていくわけですから、お金をもうけるのは当然のことだと思います。だから、そういうような動きが出てくるのは当然なんだと思いますよ。

 私が問題にしたいのは、行政や審議会あるいは検討会の委員になっている専門家たちが、こうした企業マーケティングの戦略に対して批判的な精神が全く欠落している。その証拠が、欧米の権威ある学会の声明文を審議会や検討会で一切検討していないということではありませんか。これでは、本当に行政のかけ声によって、私たちは余分なお金をフィットネスクラブだったりやせ薬のためだったりに出費しなくちゃいけません。政府が削減目標とする医療費の中には、これは計算されないわけです。つまり、批判的な精神を欠いた政府や専門家の皆さんたちの愚かな政策のツケを、私たち国民が支払わされることになるんじゃないでしょうか。最新のエビデンスを検討会や審議会で吟味することさえできないような専門家は、検討会の委員としてはふさわしくないと思います。

 欧米では、政策決定にかかわる重要な委員会の委員は、製薬会社からもらっている講演料あるいは顧問料などによる利益相反の申告をさせるということが、これは当たり前のことになっております。こうした製薬会社との関係に全く無頓着に検討委員を選ぶということは甚大な問題があるんじゃないかというふうに思います。

 今、イギリスの国会では、製薬会社が医学研究者に与える影響についてというリポートが提出されて問題になっております。欧米の医学雑誌やメディアでは、連日この製薬会社と医学研究者の利益相反の関係が問題にされているわけです。御存じでしょうか。

中島政府参考人 欧米におきましても、また我が国におきましても、この利益相反の問題については以前から取り上げられているということは、私どもよく存じ上げております。

 しかしながら、それぞれの専門分野におけます専門家というのは無限におられるわけではございませんので、やはり、そういった方が貴重な情報を適切な場で提供していただくということも一方で必要ではないかというふうに考えてございます。

郡委員 ですから、利益相反はしっかりと食いとめなくちゃいけないという立場におられるわけですよ。本当にびっくりいたします。私、一年生の議員ですけれども、本当に残念に残念に思うことが多くて、憤りでもう頭が本当にかっかかっかしておりますよ。こういうような土台をつくっているところがずたずたである、そういう上につくられた政策であるならば、これは一からやり直していただきたい。

 また、健康診断によって、これを義務づける、そして医学的なデータを蓄積するために研究に回すのだということもおっしゃっていますけれども、その医学研究の利用についても重大な問題があることを指摘させていただきます。

 新聞資料を入れさせていただきました。これは読売新聞の去年の三月二十四日、提供DNA、別研究に流用していたと。大阪の国立循環器病センターですけれども、健康診断を受けた市民の血液を集めまして、研究終了後に血液は保存するけれども、遺伝子サンプルは廃棄すると市民に説明文書を出して約束をしておりました。しかしながら、その市民に無断で保管をし、別の遺伝子解析に利用する新たな計画を立てたというものでございます。

 この国立循環器病センター集団検診部というところが出した説明同意書というのも一緒に加えさせていただきました。項目の八をごらんください。「遺伝子解析終了後の遺伝子サンプルの取り扱い方針 あなたの遺伝子サンプルは本研究計画の終了後廃棄します。」と、ちゃんと明確に書かれているわけなんですけれども、なぜかとっておかれたわけでございます。

 そして、循環器病センターの倫理委員会では、この新たな計画を承認いたしました。承認する倫理委員会も倫理委員会だなと思いますけれども。この国循では、二〇〇〇年にも同じような問題が起きております。健診でとった血液を無断で遺伝子解析していたことが発覚して問題になりました。

 ここで、大臣に一般論として伺わせていただきたいと思います。

 少なくとも、同意説明文書に遺伝子サンプルは廃棄すると書かれていたのであれば、当然、研究終了後廃棄されるべきだと思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。

川崎国務大臣 約束があって、それに違う行動が行われるというときは、当然その個人個人の了解がなければしてはならない、これは当たり前のことであろうと思います。

郡委員 そうですよね。

 こういったような医学研究というのが大変重要であるということは、私も、そしてここにおられる委員の皆様も、そして厚生労働省の皆さんも同じ思いであろうと思います。

 しかし、その研究というのは、健診を受ける私たち市民や医療を受ける患者、また医師、そして研究者の間の信頼関係というのが成り立ちませんと、これはうまくいきません。こういうことでたびたび信頼を覆すようなことになりますと、こういう医学研究も進まないことになります。私は、じゃ、これに参加しようと言わないじゃないですか。すぐ捨てると言われたものが、まだまだ黙ってとっているわけですから。次に何に使われるのかもわからない。そういう状況の中で医学研究が進んでいくとは思えません。医学研究を信頼関係のもとに推進していくためにも、罰則のない指針ではなくて法律でしっかりとしたルールをつくって、そして研究を進めていくべきではないかと考えております。

 このメタボリックシンドロームだけではございませんで、次は混合診療についてお尋ねをさせていただきたいと思います。

 いわゆる混合診療問題について、平成十六年の末に出されました厚労省と規制改革会議の混合診療問題基本合意に沿って健康保険法が改正されるということが提案されているわけですけれども、未承認薬、すなわち米独仏で承認されている薬を日本の患者が使えないという問題に対して、特定療養費制度というのを変えて、治験の促進というのが図られているわけですけれども、この制度改正とそれから治験の促進策について、これも簡単に御説明をお願いいたします。

水田政府参考人 お答えいたします。

 ただいま委員が言われました平成十六年十二月に、厚生労働大臣と規制改革担当大臣の間で、いわゆる混合診療の問題についての基本合意ができたわけでございます。

 これは、保険診療と保険外診療のあり方について、これを見直しまして、安全面に十分配慮しながら、保険導入前であっても、保険診療との併用によりまして、患者が新しい医療技術による治療を早期に少ない負担で利用するということを可能としたものでございます。従来も、特定療養費制度を通じてこうしたことは可能であったわけでありますけれども、それを整理したわけでございます。

 具体的に、今回の改革法案におきまして、ただいま申し上げました特定療養費制度につきまして、将来的な保険導入のための評価を行うものであるかどうかという観点から見直しまして、高度な医療技術、それから、ただいま御指摘ありました治験中の医薬品など、保険導入のための評価を行う評価療養、それから、いわゆる差額ベッドなどの患者の選択にゆだねられた保険導入を前提としない選定療養とに再構成いたしまして、こうした療養に関する入院料等に関しましては、保険外併用療養費というふうに法律上位置づけまして、保険給付を行うこととしたわけでございます。

 国内未承認薬、薬に関して申し上げますと、米英独仏で新たに承認されたお薬につきまして、これを定期的に検証して、必要なものについては確実な治験の実施につなげるということでございまして、制度的に切れ目なく保険診療との併用が可能な体制を確立するということを目的としたものでございまして、そのための会議を昨年一月に、未承認薬使用問題検討会議というものを設置いたしまして、患者の要望のある薬の治験というものを促進しているわけでございます。

郡委員 国立大学などが混合診療の解禁というのを唱えているわけですけれども、そういう中で、これも本を持ってまいりました、京都大学医学部の福島雅典教授が「現代」の去年の二月号に「混合診療で「医療詐欺社会」となるか?」という論文をお書きになっておられます。ここで心配されている医療詐欺社会、この論文が発表されましたそのすぐ後でございます、その医療詐欺が行われた実例の一つが、週刊朝日、去年の十月七日号に報じられております。「神奈川県立がんセンター「混合診療」隠しで怪しい経理 治療費は医師の口座に…」、こういうものでございます。

 この神奈川県立がんセンターで行われた治療というのはどういうものであったかといいますと、活性化自己リンパ球移入療法、いわゆるリンパ球療法と呼ばれるもののようでございます。これは、免疫療法の一種のようでありますけれども、効果の定かでない方法でございます。これに多額の治療費を費やした患者さんの遺族が匿名でメディアに告発したものでございました。

 患者さんが使った治療費の総額は百九十万円だそうです。効果が確立していないという説明も受けておりませんでした。遺族の娘さんは、亡くなったお母さんを、百九十万円あればそのお金で最期のときを有意義に過ごさせてあげたかった、旅行に連れていってあげたかったというふうに語っておられます。

 その後の神奈川県立がんセンターの調査によりますと、この治療法を受けた患者さんというのは七十七人。当初は医薬品の会社からサンプルが支給されていたそうですけれども、途中で支給がなくなりまして、七十七人中の十二人の患者さんが医薬品の代金、実費請求されたということでございます。

 この後、県の社会保険事務局がカルテなどの資料の調査に入って、本当に混合診療なのかどうか確定することになったわけなんですけれども、半年たった現在でもその調査結果は出ておりません。患者、遺族が申し立てたことによって、患者の権利オンブズマンでもこれについて調査を行っております。現在得られている証拠からは、混合診療であるとする調査報告書を先月、四月の十五日に発表しております。このような詐欺医療、福島先生が書いておられた詐欺医療に等しいような混合診療が、実は多くの医療機関で行われているというふうに私ども聞いております。

 厚労省としては、こういうような報告があった場合、どういうふうに対応されているでしょうか。

水田政府参考人 まず、ただいま委員が御指摘になりました神奈川県立がんセンターの件でございますが、委員がおっしゃいました活性化自己リンパ球移入療法でございますけれども、これは実は高度先進医療として認められているわけでありますが、個別に承認を受けた医療機関についてのみ認められているものでございます。実は、神奈川県立がんセンターにつきましては、この承認を受けずに行っていたという疑いのある事案でございまして、現在、事実関係を調査しているところでございます。

 したがいまして、今度の御指摘の件ということは、混合診療という問題以前に、制度上明らかに承認を受けて行わなきゃならない治療を承認を受けずに行っていた疑いがあるという特殊な事例でございまして、一概に混合診療が常態化しているということにはつながらないものだと思っております。

郡委員 ですから、そういうところを野放しにしておいていいんですかというふうに聞いているわけです。このほかにも、だれが聞いてもよくわかるような一流の病院において日常的にこの混合診療が行われているということを聞いております。

 しかも、ここで大変重要なことは、これらの医療機関で混合診療を実際にやっておられる方、あるいは行われることを許している医療機関の責任者が、厚労省のこうした問題と深くかかわっている検討会あるいはさまざまな委員会のメンバーになっているという事実でございます。どう考えたらよろしいんでしょうか。

 先ほど、メタボリックシンドロームのところでも申し上げました。さまざまな政策を立案するその土台になっているところで、どういう方々がどういう議論をなさっているのか、どういうバックボーンをお持ちの方なのか。なぜ、ちゃんとしたルールをつくって、そういう人を委員にしないようなシステムづくりというのをできないんですか。これらが本当に混合診療であるかどうかというのは、社会保険事務局が調査しない限りは確定しないということでありましょう。

 では、もし仮に、混合診療であると判定されたといたしましたらば、そのような医療機関で混合診療を行っている人や医療機関において責任を担う立場にある方が、政府の厚労省の混合診療と関係の深い委員会の委員になっているということが判明したらば、その委員を取りかえていただけますでしょうか。それは取りかえるのが当然だと思いますが、いかがですか。

川崎国務大臣 今、仮定の仮定の話をしていただいているんですけれども、先ほどの議論とは違って、不正という事実があって、その不正にかかわった人が厚生労働省の何らかの委員をしているということになれば、当然やめてもらいます。

郡委員 私の事務所でもさまざまな書類、手元にございます。これは、なお今後調査をさせていただきたいと考えております。

 前に述べました福島教授の「混合診療で「医療詐欺社会」となるか?」という論文でございますけれども、この福島先生は、英米独仏で標準治療となっているような抗がん剤であれば、わざわざ治験を実施しなくても承認すべきであるし、逆にまた、海外にもエビデンスがないようなそういうような実験的な治療について、これは逆に野放しで実施されるということがないように、被験者保護法という法律を定めて、つまり患者を保護するための法律を制定してきちんと規制すべきだと述べておられます。

 福島教授は、GCPという医薬品の承認申請を目的としているがために余りにもハードルの高い規制ではなくて、患者の権利と安全を守りながらも医学研究を推進していくことができるようなルールというのをつくるべきだ、被験者保護法として制定するべきじゃありませんかということを意見書におまとめになって、医薬食品局の治験のあり方に関する検討会にも提出されております。

 これは、アメリカでもヨーロッパでもそうです。未承認の薬剤など、実験的に治療をする場合、これは被験者保護法ですとか臨床試験についての法律によってしっかりと管理されているんですね。そして、データが公的に蓄積されていくようなそういう仕組みがあるんですね。それによって、わざわざ治験を実施しなくても、患者が薬剤を使った経験がエビデンスとしてしっかりと蓄積されて、それによって薬の承認が早められるというのが欧米の標準スタイルであります。

 日本はいかがでしょうか。被験者にとっては、これは臨床研究であっても、治験であっても区別は一切つきません。区別つかないものです。承認申請を目的とする治験だけを厳しく規制するんじゃなくて、もっと緩やかなルールで一律に被験者保護法で規制するという制度設計が、私はやはり欧米に倣って必要ではないかというふうに考えております。そういうルールをつくることによって日本の医薬品メーカーも世界に誇れるとてもいい薬を開発していけるものだ、そういうふうに信じております。これについては、大臣、いかがでございましょう。

川崎国務大臣 大学の教授の不正が行われているのではないかという御指摘については、私どもも注目をしなきゃならぬだろうと思います。

 しかし一方で、治験をしないで、アメリカで許可されているから日本で使えというのは、随分乱暴な議論をされる人だなと。前にも申し上げた薬害に遭われた方々の団体の皆さん方から、薬の許可というものについては慎重にあらなければならない。また、岡本議員からも、この間さまざまな議論をいたしました。

 しかし、治験というものはやはりきちっとやった上でやっていかなきゃならぬ、その効率化というものをどうやるかということについてはいろいろ議論しなきゃならぬということは事実だろう。

 一方で、治験を同意なしに行われてしまうという危険性について御指摘をいただきました。そういうことがあってはならない。まさに、法に照らして問題があればやはりきちっとした処断をしていかなきゃならぬだろう、このように理解をいたします。

郡委員 ですから、日本での薬の承認というのには大変時間がかかるわけです。それによって、個人輸入をされたりしている方々、わらをもつかむような思いでいろいろな薬を試されたいというような思いを持っておられる方、そういう方々がおられるわけですよ。

 それに対して、対応できるような国としての責任を果たす義務がやはりあるんだと思います。また一方で、今大臣おっしゃられましたように、患者の権利、被験者の権利というものをしっかりと担保するためにも、そういうルールづくりが必要ではないかということを申し上げたのでございます。

 医薬食品局の治験のあり方に関する検討会でも、被験者の権利を保護する制度を検討する作業班を設置してほしいというふうに何度も何度も意見が出ているというのを拝見させていただきました。そして、ほとんどの委員の方々はそれに賛同しておられます。ところが、被験者保護のための作業班というかそういったものはいつまでたってもつくられませんで、治験の促進を目的とする治験を含む臨床研究基盤の整備に係る専門作業班というのが医政局に早々と設置をされたわけでございます。

 きのう厚労省の方に、被験者の権利を守るというためにも、被験者保護のための作業班というのはつくれないものなのでしょうかねというのをお伺いさせていただきました。そうしましたらば、厚労省にはその権限がないというふうなことをおっしゃられました。これは、それぞれの検討会等の座長、会長なりの意向で決めるというような御返答でございました。

 そこでまた、この検討会の座長は池田康夫先生でいらっしゃいます。臨床研究基盤整備推進研究事業という、研究推進のための研究事業の助成金をもらうことになったのだそうですね。これでは、それは研究の推進にばかり議論が行くのは当然のことでしょう。優先順位がこの検討会の中でもつけられているんですねというふうに、きのう厚労省の方で、もう零時を回っておりました、夜中でしたけれども、お答えになりました。まさに優先順位が決まっているわけですよ、助成金をもらっているわけですから。

 患者の利益、ここは何も、この方々には何もないんでしょう。つまり、利益に一番遠いところに患者、国民がいるわけでございまして、これはまたそういうからくりなのかと大変落胆をし、そしてまた改めて怒りが込み上げてまいりました。なぜこういうことばかりなのでしょう。あんまりです。

 この治験のあり方検討会では、IRBと呼ばれます治験審査委員会を、これまで認めてこなかったんですけれども、NPOでも設置できるようにするという制度改正がされました。この四月一日、省令改正が通知されております。この議論の過程で、二〇〇五年七月二十八日、厚労省の黒川達夫大臣官房審議官が、検討会におきましてこの問題が一度も議論されていない段階で、規制改革・民間開放推進本部の有識者会議のヒアリングでNPOによるIRBの設立を認めるとする回答を行ったということが、資料の最後にまとめました、日刊薬業というこの業界紙に報じられております。

 NPOでIRBを設置するということについて、治験のあり方検討会というのがありながら、そこで議論もしないうちに審議官がそうしていいんだというふうに認める発言をする。事務局たる厚労省が先に見解を述べられているわけですけれども、なぜこうした重大な見解を検討会の場で議論する前にこういうところでお述べになられたのでしょうか。お尋ねをいたします。

赤松副大臣 厚生労働省としましては、今おっしゃった去年の七月二十八日の会議で、黒川担当審議官が発言をする、一つの方向性を述べたわけですけれども、突然に彼がそういう形で述べたというわけではなくて、当然のことながらそれ以前の段階として、治験の一層の推進を図るためには、一定の質が確保された治験審査委員会をより柔軟に設置できるように、一定の要件を満たすNPO法人を念頭に治験審査委員会の設置主体の範囲を拡大することが適当だ、こんなふうな考えを厚生労働省としては持っていたわけでございます。その考えを持っていて、そして、治験のあり方に関する検討会を開くに当たりまして一つの方向性として説明をした。

 それを受けてというよりも、そういう発言をしたということがあって、今度は、それで決まりというわけでは当然ありませんでして、公開の上で、その治験のあり方に関する検討会の公開の場で四回にわたって、その是非を含めて御議論をさまざまな角度からいただきました。

 その結果、委員御指摘のように、本年一月に一定の要件を満たすNPO法人も治験審査委員会の設置者となれることとするとともに、その一定の要件の具体的な内容について御提言をいただいた、こういうことでございまして、本件につきましては、繰り返しになりますけれども、公開の場で十分な御議論をいただいた上で実施をしたものであって、特に問題はないと考えているところでございます。

郡委員 今副大臣、御答弁いただきましたけれども、この検討会の中では反対の御意見をお持ちの方々もおられたようでございますが、黒川審議官が先にこういうような御発言をされたことによって誘導されたのではないかというふうに私は大変疑念を持っております。

 そしてまた、さまざまなところで、IRB、大変重要な機関なわけですけれども、NPO、これは特定の企業や医療機関の関係者の役員が三分の一を超えないという基準はあるようですけれども、三分の一を超えなければ全員企業の人間であってもいいのかどうかという大きな問題もございます。

 私、何を言いたいかといいますと、これもまた欧米の例でございますけれども、企業の人間ばかりが集まって設立したIRBで、専門性は高いと一見思われるかもしれませんけれども、その企業の誘導、企業に利益を還元する、そういうような都合のいいような審査結果ばかりを出すという結果がございます。これらを称して、IRBショッピングというふうに呼ばれているそうでございます。

 こういった大変重要な問題も、この検討会の中で、少なくとも黒川審議官は、こういうことでいいのかねというふうにだれかメンバーに御相談されたのかどうか、あるいはまたこういう発言をしてしまったということは御報告されたのかどうか、その辺を重ねて伺わせてください。

福井政府参考人 黒川審議官がそういう説明を構造改革特区の関係の会議においてした、こういうことでございますが、このこと自体を治験のあり方検討会の場において御説明をしたということはないというぐあいに今考えております。

郡委員 わかりました。

 時間が参りました。しかし、私、本当に悲しい思いで、怒りの思いでいっぱいで質問をさせていただきました。薬害エイズの問題の反省もない。これはずっと綿々と続いていることであります。

 水俣病の五十年ということもございましたけれども、あれも、一企業の起こしたことではございますが、それを放置していた、私たちの命や暮らしを優先的に考えてこなかった政府の不作為でございます。薬害エイズしかり、そしてまた耐震偽装だって同じことですよ。何でもかんでも民に流していいというものでもないということ、このIRB、NPOということで本当にやっていけるのかどうか、これからここでまた重大な問題が出たときに、政府、厚労省はどういうふうな責任をとるのか、あるいは責任のとらせ方をするのか。また時間があるときにお尋ねしたいと思います。

 質問を終わります。

岸田委員長 次に、田名部匡代君。

田名部委員 民主党の田名部匡代でございます。

 前回も一時間質問させていただきました。きょうは何について伺おうかなといろいろ考えまして、前回は青森県のその実態というものを必死の思いで訴えさせていただきましたので、きょうは最低限の医療体制をどうやったら整えていけるのか、少しでもそういう前向きな議論ができるようにというふうに考えてきたんですが、実は、さっき郡議員の質問を伺っていて、何だか基本的なこと自体がデータも含めてきちんとしていないのに、その上に成り立つこの質問をすることに意味があるのかなというような思いがいたしました。

 本当に国民のことを考えるのであれば、やはりそれは与野党関係なく、やり直すべきところは時間をかけてやり直してもいいんじゃないのかなというふうに思いながらも、この三十分、短い時間ですから、そういう何か残念な思いを持ちながら、それでも質問をさせていただきたいと思います。

 一度は青森県の実情を踏まえ、訴えさせていただきました。前回のその一時間の質問というものは、何も青森県だけの問題としてではなくて、全国の中には、やはり生まれた地域によってそういう大きな格差があるんだ、ぜひそういったことにも目を向けて考えていただきたい、そういう思いでの質問でありました。

 これまでの質疑でもありましたように、医療に関しては地域の抱える問題も多く、特に何度も言われている医師不足の解消というのは、大変難しい課題であるわけであります。それを、先ほども申し上げましたが、何とか今回の改革で少しでも改善をして、医療格差のない社会にしていくことが私たちに課せられた責任なのだろう、そう思っています。

 言うまでもなく、一つ一つの問題に対して丁寧な議論を積み重ねていくことが大切でありまして、そうすることでこの改革を、今後の日本の医療制度、医療現場、そして我々国民にとってよりよい改革にしたいなというふうに思っています。

 そこで、今回は、先ほどの郡議員の大きな大変重要な質問に比べれば、細かい話になるのかもしれませんけれども、医師不足とか救急体制について、大きく分けて三つの点に関して質問したいと思います。

 まず、一点目でありますけれども、ドクターヘリに関してですが、救急医療体制の強化としてドクターヘリの導入促進というものがあります。これは集約化を進める上でも、また医師不足といった観点からいっても、僻地や過疎地にとっては、特にその搬送時間の短縮、そして早期の救命措置が行われるという点で導入が期待されるものであります。

 しかし、そのドクターヘリの導入は、現在、当初導入予定の約半数しか満たしておりません。これは、導入しても毎年一億円以上の費用負担が必要になるということから、予算的にも厳しいということが大きな要因となり、本来は導入したくてもできずにいることが考えられるのかなというふうに思います。

 そうした中、現在、防災ヘリを活用して救急患者の搬送に利用している自治体がふえていることは、大臣も御承知のことだと思います。もちろん、そこには医師が一緒に乗りまして、搬送中に救命措置が行われる、そういう体制が理想的なわけでありますけれども、先ほど申し上げたように、自治体の財政的な要因と合わせて、やはりここでも医師不足という問題が、医師不足が理由でこの事業が進んでいかないということもあろうかと思います。つまり、救急医療に精通した医師を多数確保する必要があるため、その同乗する医師を確保できないわけであります。

 また青森の話で恐縮ですが、実際、青森もその一つです。そこで、我が青森県は、本年度からフライトナース体制を整備促進する、そういう取り組みを始めました。御存じかもしれません。お配りした資料の一枚目に説明の図を用意しました。医師のかわりに看護師が同乗して、医師の指示のもと、必要な措置を行うというものであります。これを今、防災ヘリと県警のヘリを活用して行う予定となっています。実現すれば、全国初の試みになるということであります。

 つまり、こうあるべきという体制をすぐに整備することは難しくても、少しでもそれに近い体制を整備することは可能であり、自治体の実情に合わせて、まずはできることから実施し、救命率を高めることが重要である、そして、それを国も支援していく、そういう体制をとることが大事なのではないかなというふうに考えます。

 そこで、大臣にお考えをお伺いしたいのですが、現在はドクターヘリ導入支援事業に対する助成が行われているわけですが、ドクターヘリに限らず、今申し上げたようなフライトナース事業、こういったことを国でも推進して、それも含めた助成等の支援をした方が自治体も救急医療体制の強化をしやすい、つまり、最低限の体制をドクターヘリ導入に比べれば早くにつくることができるのではないかと思うわけですが、いかがお考えでしょうか。

川崎国務大臣 今の御質問、二つの切り口があると思います。

 一つは、ヘリコプターの活用。ドクターヘリが十点満点だとしたら、例えば防災用のヘリコプター、また海上保安庁とか自衛隊の協力を得る、こういうものが八点とか七点とか、こういう体制になるでしょう。一方で、お医者さんを乗せなくても、救急救命士、看護師さんが乗っていただいて応急手当てを行う、それによって搬送する、これが制度的には六、七点という話になるかもしれません。

 しかし、すべて十点のドクターヘリで四十七都道府県を全部カバーすべきか。経済的な問題も考えながら、やはり今青森県でもお考えいただいているとおり、看護師さんというものに乗っていただいて、防災ヘリを使いながらやっていこう、こういう事業を推進していくということについても、私は正直言っていいことであろうと思います。

 いろいろな形でヘリコプターを活用した救急救命体制というものができ上がっていくということになりますれば、前にも御質問いただいたことがありますけれども、それ自体を診療報酬の中に加えていくことはできないのかというところが一番大きな課題だろうと。

 というのは、先ほどから申し上げているとおり、予算としては一千億ぐらいの枠組みしかない。診療報酬は二十八兆という大きな枠組みの中でやっておりますので、そういった意味では、すべての県がヘリコプターを活用できる体制になったときに、この問題はやはりしっかり我々は議論しなければならないんではなかろうかな。これは一つの切り口です。

 もう一つは、看護師さんというものがより医療の高度化、専門化に対応するために、高度な知識、技術を有する看護師を養成していく、すなわち現状の看護師さんをもう少しレベルアップするということをやっていく必要があるのではないか。

 そういう意味では、二つの側面、ヘリコプターの活用、より高い技術を持った看護師さんの育成、この二つの切り口で私ども、青森県の事業をしっかり見詰めてまいりたいし、でき得れば援助させていただくようなことを検討してまいりたい、このように思います。

田名部委員 ありがとうございました。

 前回も僻地医療計画について、何十年も同じ計画内容でということをお話ししたわけですけれども、その中にも、例えば搬送時に、僻地、離島で診療に従事する医師がヘリコプターに同乗すると当該地域が無医地区になることから、患者受け入れ医療機関の医師がヘリコプターに同乗する必要があるということが書いてあります。これも、今申し上げたような看護師が同乗することによって、より一層体制が強化されていくのかなというふうに思います。

 こういった対策についても、今回の政府案のままで救急体制の整備が進んでいくのか、まあ、進まないとは言いませんけれども。しかしながら、長年、地域医療の体制が整っていないところが進まずに来たことを考えると、こういったことでは、今の政府案のままでは進んでいかないのかなと。

 これまで政府が計画をしてきた僻地対策や救急体制の整備などが思うように進んでいないことを、自治体のせいにするのではなくて、政府の計画内容自体に問題がないのか、見直すべきところがあるのではないかという視点で考えなくてはならないと思いますし、このドクターヘリの導入が進まないことについても、予算はつけているんだけれども手を挙げるところがないんだよなというような話ではなく、当然どこの自治体でも導入できるならしているわけですから、多くの命を救うために、まずは、どういう支援内容にすれば最低限の体制がつくれるのかということをぜひ考えていただきたい。

 今、大臣からも御答弁いただきましたけれども、今申し上げた青森県が取り組もうとしているフライトナース、これは看護師の養成、充実、そして事業に対しての国の措置というものを早急に打ち出していただきたいなというふうに思います。

 次に、女性医師バンクについてでありますけれども、まず初めに、この事業は医師不足解消のための事業と考えているのか、それとも離職また休職中の女性医師の再就業を支援するための事業と考えているのか、お答えいただけますか。

松谷政府参考人 女性医師バンクでございますが、今先生御指摘の二点、両面あろうかと思っております。

 医師の中で女性の占める割合はふえてきております。そのライフスタイルに沿った形での働き方、その環境を整えるという施策の一環という意味もございますし、一方で、女性医師を有効に活用するということから、医師の偏在等に対する対応にもなる、両面の意味があるというふうに考えております。

田名部委員 この女性医師バンクについても、何度か担当の課の方から御説明を伺ったのですけれども、今もおっしゃっていたような再就業支援と考えても、また医師不足の解消という点から考えても、ちゃんと議論されたのかなという感想を持っているわけです。つまり、業務の内容と効率双方のことを考えても、どうも効果的ではない、効率的ではないんじゃないかというふうに私は思っています。

 何でかと申し上げますと、既に、ドクターバンク、退職医師の再就業支援、これは僻地医療を志す医師等への求人情報ということが主な内容だそうですが、自治体病院、診療所の医師求人求職支援、さらには、ことし四月から日本小児科学会が試験的ではありますけれども、子育てで休業中の女性医師向けに小児科医バンク制度を実施したところであります。

 担当の方から御説明を伺ったところ、それぞれ扱う内容が違うというようなお答えだったわけですけれども、私からいたしますと、それが女性であるとか僻地希望だとかまた定年の方だとかそのぐらいの違いはあったとしても、内容自体がそんなに違うとは思えないわけです。

 改めてそこに対して、別にこの事業自体が悪いとか無駄だということではないけれども、しかし、有効に予算を使おうと考えるのであれば、新たにシステムをつくってコンピューターを導入して、そこに人件費をかけるというようなことをしなくても、現在実施している公的団体があるわけですから、逆に必要な予算を渡してやってもらうということも考えられるのではないか。その方が業務とか予算のことを両面考えても効率的なのではないかというふうに思います。

 これだけではなくて、もう御存じだと思いますが、民間でもやっているドクターバンクもありまして、いつも、民間でできることは民間にとおっしゃっているわけですから、その民間も活用できるのかどうかということを含めて、そこがうまくいっているのであれば任せていくということも一つあるのかなというふうに思うわけです。

 そこで、まず大臣にお伺いしたいんですけれども、このドクターバンク、再就業支援というものが、今話したように、同じような事業がいろいろあるわけです。改めて予算をかけて別に立ち上げるということが本当に効率的なのか。一緒に立ち上げる、事業をばらばらにではなくて、今までばらばらに行っていたものを一つにまとめて行うということも考えられると思うんですが、そうではなくて、やはり別に女性医師バンクというものをやるべきだというふうにお考えであるならば、それはどういう理由からなのかということを教えていただけますか。

川崎国務大臣 まず、現状認識でございますけれども、医師総数に占める女性の率は今一五%ぐらいだと思います。しかし一方で、近年、国家試験に合格される医師数に対する女性の割合は三分の一、また、先ほど御答弁申し上げましたように、その中でも産婦人科を望まれる医師数、その中に占める女性の率はもう七割を超える、こういう時代を迎えております。

 一方で、同じような切り口でハローワークというのがあります。これはまず、最低限の国のセーフティーネットとしてハローワークをやる。しかし、一方で、例えばサラリーマンで四十、五十、かなりの能力の高い人たちに対する就職あっせん、これは民間もやっています。こういう部分は、ある意味では切り分けてやろうということでハローワークでもやっている。マザーズハローワークというのもつくらせていただいている。青少年だけを対象にやらせてもらっている。

 そういう意味では、政策というものを進めていくときに、一つは、一本化して全部やれば効率的じゃないかという議論と、今お話がありましたように、民間もやる、また最低線のものは国がやると同時に、他の分野を特化してやっていくということも必要であろう。

 そういった意味からしまして、今回の試みは、今の医師数の中に女性医師が一五%でありますけれども、今後の流れを見ますと、三分の一を占める時代が間違いなくやってまいります。診療科目によってはもう女性が五〇%を超す時代になります。そういう意味では、やはり女性医師バンクというものをきちっと立ち上げて、そのニーズというものをしっかり掌握しながら、一方で医療側も変わってもらわないと、女性の医師というものが仕事をしやすい環境もつくっていかなきゃならぬ。

 そういう意味では、ハローワークというのは必ずしも受け身だけではなくて、事業所に行って事情を聞いて、それなら正規社員の雇用にしてくださいよ、こういう活動までハローワークはやっています。同じように、この女性医師バンク自体が女性の雇用というものに対してもう少し積極的に物を言いながら、地域の医療体制というものが変わっていく、そういうものも志していかなければならないのではなかろうかな。

 そういう意味では、今回は特化してやらせていただきたい、このように思っております。

田名部委員 少なくとも、各団体が行っている支援制度ときちんとした連携をとって議論をして実態を把握しながら進めるべきだと思うんですけれども、そういったことが行われたのかなというふうに思って伺ったところ、お話からはそうではなかったんです。

 例えば、各都道府県医師会が実施しているドクターバンクでありますが、役所の方にどのぐらいの医師がそこに登録をされていてどのぐらいそこから派遣、あっせんされているのかということをお伺いしても、それは把握されていませんでしたし、民間の医師バンクもあるんですけれども、そこでは一体どういう状況になっているのか、そこでもどのぐらいのドクターが登録されてどういう形であっせんされているんですかということを伺ったんですけれども、民間ですから詳しいことは伺えなかった。でも、何かもっと調べればわかるかもしれないというような、そんな状態、お話だったわけです。

 さらに、離職後僻地勤務を志す人のさっき申し上げた事業と女性医師バンクというのは別なわけですけれども、女性医師で僻地勤務を志す人はと伺ったところ、それは僻地バンクの方に登録というか、そっちにという話だったんですけれども、こんなふうにばらばらにやっていることが、利用者サイドからしても非効率でありますし、無駄なのかなというふうに私は思うんですね。

 先ほど申し上げたように、制度が悪いというわけではなくて、せっかく制度を立ち上げて支援をしようと思うのであれば、とりあえず休業中の女性医師がいるから、女性のお医者さんがふえてきたからやってみようかというような漠然としたものではなくて、ちゃんと把握した上で、どうしたらよりいい対策、支援策になるのかということを、実施している公的団体とも連携を図って行っていくべきなのかなというふうに思っております。

 今の段階で休職中、この女性医師バンクを立ち上げたときに、登録されるだろうと予想される女性医師は何人ぐらいいらっしゃるのでしょうか。

松谷政府参考人 女性医師バンクにつきましては、今年度の事業ということで、先ほど先生、どのくらい議論があったのかということですけれども、昨年の三省庁連絡協議会の議論を踏まえて、昨年の八月の医師確保総合対策の一環として、一つの施策として出されたものでございます。

 今御指摘のとおり、都道府県医師会が運営しているドクターバンク、十数件だったと思いますけれども、実績でも百二十二人の求職紹介の人数があるとか、僻地のネットワークであるとか、あるいは自治体病院等、いろいろなセクターがやっておられることは存じておりますし、それらの考慮の上での議論だというふうに伺っております。

 それらが、先生御指摘のとおり、相互に連携をしてやっていくということが、複層的にやっていくということが大事ではないかと思っております。各都道府県で、先ほどの議論でもございましたけれども、その地域での大学の医局の、ある意味ではドクターの配分機能というのが衰えてきている、変わってきている。そういう時代を踏まえて、新しく県の中で、医療対策協議会を中心にドクターの配置についての調整ということをやるのがこれからの時代だと思っておりますけれども、その中でこれらを調整していくということになろうかと思います。

 今御指摘の女性医師バンク、どのくらいの登録が見込まれるのかということでございますが、まだスタートはこれからでございますので、正確な数字を今申し上げる段階にはないと思っております。

田名部委員 私が伺ったところ、この数字が合っているかどうかはわかりませんけれども、登録が予想される女性医師の数が五百九十名程度であろうというふうに伺いました。ただ、登録をしていない、回答をしていない女性医師もいるので、実数はもっとふえるかもしれないということでありました。

 先ほどの僻地を志す医師に対する支援事業、昨年一年間実施して、それを希望した方はどのぐらいですかと伺ったら、十一名ということでありました。何度も申し上げるようでありますが、一緒の窓口で支援体制をつくっても全く問題ないのかなと。この女性医師バンクでは、今回一億二千万ぐらいの予算がつくことになっておりますけれども、機械とか新たにシステムを立ち上げることにお金を使うよりも、もうちょっと、女性医師が子育てをしながら働ける環境整備にお金を使う方が大事なんじゃないかなというふうに思うわけです。

 やはりもう一度、日本小児科学会が実施しているところにそのまま、そのままというか必要な予算を渡して試験的にやっていただくだとか、また、各都道府県医師会の方がそれぞれの地域の実態を把握しているんだとすれば、やはりそういうところにお願いをするだとか、そういうことを含めた議論が必要なのかなと。

 皆さんからしたら、一億円程度の金額というのはもしかすると微々たる金額だと思っているのかもしれませんけれども、国民の税金を使っているわけですから、国民にきちんと還元されるような計画を立ててぜひ実行をしてもらいたい、そのように思います。

 三十分というのはこんなに早いのかな、最初のころは三十分質問するだけでも大変緊張して、早く時間が過ぎないかなと思っていましたが。

 この女性医師バンク、先ほどおっしゃっておられた医師バンクが、深刻である過疎地域また僻地の医師不足解消につながるというふうにお考えでしょうか。

松谷政府参考人 女性医師バンク単独ではもちろん足りないと思います。いろいろな施策を総合して、バンクにつきましても、今御指摘のとおり、女性医師バンクだけではなくて既存のものもございます。それらを総合して推進していくことが、その解消につながるものと考えております。

田名部委員 さっき大臣の方からも、答弁の中にちらっとお話がありましたけれども、これはもっと工夫をしていかないと難しいのかなと。どこでもやっている、民間でもやっているような同じような内容でこの事業を立ち上げて実施していっても、別に国が、これだけ一億円の予算をかけてやることはないんじゃないかというふうに思うんですね。つまり、公的事業として、公的機関だからこそできる、公的機関にしかできないやり方というものをぜひ優秀な皆様方で知恵を絞って考えていただきたいなと。

 例えば、こういうやり方ができるかどうかということはわからないんですけれども、今のシステムだと、さっきのハローワークみたいに、お互いが、募集する方も働きたい人も登録をして、それがネット上でいわゆる張りつけられて派遣されるだとか仕事が決まるというようなシステムになっているわけですけれども、そうではなくて、やはり医師免許を持っている人たち全員を登録するとか、休職中の人たちがどのぐらいいるかというものをきちんと把握した上で、やはり国として、僻地とか過疎地に対して何とかそこで仕事をしてもらえないだろうかというような働きかけをしていくことが、公的機関としてあるべきあり方なのかなというふうに私は思っております。

 先ほども申し上げましたけれども、ぜひ医者のいないところが最低限医師数を確保していけるような、医師不足対策でもあるとおっしゃるのであれば、やはりそういうことを、中身をもっともっと深く議論をして決めていただきたい、そのように思っております。

 大臣、この仕組みに関しても、さっき答弁でもおっしゃっておられましたが、ぜひ大臣の方からも、もっといろいろな工夫をしてやってほしいと、担当の課の方に御指示を出していただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。

川崎国務大臣 県にあります医療対策協議会、知事のリーダーシップのもとで医師会や大学やそれぞれの機関が入っていく、その一つの連携の中に女性医師バンクというものをきちっと位置づけて、その連携の中でやりませんと、確かに、また新たなものを一つつくりましたねという話で終わってしまいます。言われるとおり、全体の仕組みの中で動いていくようにしていかなければならない。

 もう一方、先ほどから申し上げておりますとおり、これから毎年三千人、四千人の医師はふえますけれども、女性のウエートがどんどんどんどんふえるわけですから、医療現場を女性が働ける環境に変えていかないと、今のような体制ではだめですよということは、やはりはっきり物を言わないと進んでいかないな、それを言い得る立場は、やはり知事さん等にお願いをしていかなきゃならない、こう思っております。

田名部委員 もうだんだんに時間が参りました。御質問というよりは、思うことを申し上げさせていただきたいのですが、小児救急体制だとか地域の救急体制だとか、なかなか進んでこなくて、地域は本当に危機的なというか、崩壊寸前の状況にあるわけであります。ですから、できるだけ底上げをするというか、いいところがもっとよくなるという前に、やはり全国の各自治体の最低限の体制が整っていないところに重点的に目を向けて、国で施策を考えていただきたい、そのように思っております。

 先日、我が党の仙谷議員が、法律が通ればそれでいいのか、国民は医療保険財政が破綻状態にあることも、自分たちの住む地域医療が危機的状況にあることも何にもわかっていない、だからこそ、国民に、この国の医療制度がどうなっているのか、どういう問題があるのか、そしてどうすべきなのかを我々がしっかりここで審議をして、メッセージとして伝えるべきだというお話をされました。そして最後に、この程度の審議で本当にいいのか、このままでいいはずはないんですよ、もっと本当に国民の立場をちゃんと代表して質疑をされたらいかがでしょうか、そういったことを与党の皆様に訴えました。

 与党の皆様だけではなく、私自身、その言葉に大変な重みを感じながら伺っておりました。そういった姿勢で審議に臨むことこそが私たち政治家としての使命であり、課せられた責任なんだろうというふうに思います。

 こんなことは改めて言われるべきことではないはずでありまして、ごく当たり前の政治家としてのやるべきことなんだろう。それなのに、仙谷議員からああいう訴えをされなければならなかった、そういうことをどういう思いで訴えられたのかなと考えたときに、そこには本当に、与野党問わず、互いに本気で国民のための議論を、審議をしようじゃないかという切実な思いがあったであろう、私はそう受けとめました。

 ぜひその言葉をいま一度ここにいる委員全員でかみしめて、強行採決というような政府の都合が優先される行動とならないよう、大事な審議の最中にそんな情けないことが行われないように信じて、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

岸田委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時二十三分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時二分開議

岸田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。古川元久君。

古川(元)委員 民主党の古川元久でございます。

 過日、といいましても二月なんですが、ここにいらっしゃる鴨下委員や福島委員と一緒に、日本医療政策機構が主催する医療制度改革に関するシンポジウムに参加をさせていただきましたが、そのときに、この日本医療政策機構が、千十一人の方から回収できた世論調査を行ったという結果の発表がありました。

 その中で、皆さん方への資料一、二にその要旨がつけてありますけれども、その世論調査によりますと、国民の六割が現在の医療制度に不満である。しかし、その不満の中身というのは、診療とか診断とか治療等の技術の質というよりも、むしろ、制度決定への市民参加の度合いとか制度決定プロセスの公正さ、そういうところに対する不満である。

 ですから、国民の医療に対する不満というのは、医療制度、これは私も議員になってから医療の問題に取り組むようになりましたが、なかなか、専門家の方々の議論というのは、専門用語が飛び交って非常にわかりにくいわけでありますから、ともするとそういう専門家の人たちだけで事が決められてしまう。

 そういうところは、この国会の中でもそういう議論が行われているような節があるかと思いますが、やはり医療というのは、国民にとって自分たちの健康や命にかかわるものでありますから、国民にとってわかりやすい議論をしていかなければいけない。そして、国民が、その政策決定の過程に参加をしている、自分たちで自分たちの医療制度を決めているんだ、やはりそういう感覚が持てるような制度にしていかなければいけないんじゃないかなというふうに思うわけであります。

 その視点から、今回法案の中に提案をされております中医協の改革の話、いろいろな問題があって今度改革をされるわけでありますけれども、今回の改革の中では、支払い側、診療側の委員、それぞれ一つずつ減らして、その分公益委員を二人ふやしたということになっているわけであります。公益委員の数をふやしたことは、私は評価に値すると思いますけれども、しかし、それでもまだ支払い側、診療側の方が多いわけですね。本来、この世論調査の結果などを考えると、もっと公益委員の数をふやすべきではないか。しかも、その中に市民や患者の代表と言われるような人を入れるべきではないか。

 先日、私の質疑の中で、この医療契約、その場合の患者と病院側、自己負担の三割部分については、従来医師会などは、これは本来保険者に支払ってもらうべきものをかわって病院側が患者からもらっているんだと。ですから、本来は、保険者が病院側に対して十割給付をするという、そして病院の側が患者に対して現物給付という形で医療サービスを提供する、そういう契約関係だというふうに認識をしていたようなんですが、この前の答弁で、そうではないと。あくまで七割の部分についてだけ保険契約というものが存在をしているんだということになったわけですね。

 となりますと、三割の部分は、患者あるいは患者になる可能性のある国民、市民は、直接そこの部分についてはみずから医療機関に対して支払う義務がある。

 ということは、この診療報酬を決めるに当たっては、当然今の支払い側だけでは十分ではなくて、市民や患者もこの中に含めていかなければいけないんじゃないかと思うんですが、今回の改革では、そういった意味での市民や患者の声が十分反映されているというふうには言えないと思うんですが、大臣、どうですか、御認識は。

川崎国務大臣 今回の改革で、支払い側委員七名、診療側七名、公益委員六名、二十名の構成とさせてもらいました。

 これを決める過程においても、さまざまな議論がありましたのは御承知のとおりでございます。しかし、やはり、公益委員の人数をふやして、できるだけ中立的な立場で最終的に物を言って裁いてもらおう、こうした仕組みをつくらせていただいた。

 一方で、支払い側というのをどう見るかということになろうと思うんです。それは、ある意味では国民であり、また、健康保険組合等である。そういう意味では、私は、支払い側というものには国民サイドの意見というものも当然強く入っていなければならないだろうと思います。

 また、診療側については、今までの開業医中心という形から病院という位置づけもしていかなきゃならぬだろう。

 そういった中で今回の改正をさせていただいて、また、支払い側委員の中にも明らかに、まさに古川委員からいえば国民側に立った人たちも入ってきているのも事実でございますので、そういった意味では、今回の改正はそうした意味も含めて出させていただいた。何とか御理解を賜りたい、このように思っております。

古川(元)委員 理解してくれという大臣の気持ちはわかりますけれども、やはり十分とはとても言えないんじゃないかと思うんですね。これで十分だと思いますか。これはもっと市民や患者をやはりこの中に入れるべきではないか。

 専門家というのはもちろん大事でありますけれども、しかし、さっきも申し上げたように、この前の局長の答弁で、三割部分、つまり、公的医療の中のかかる費用の三割は直接患者、国民が負担する、そういう法律関係になっているのであれば、やはり、公益委員、保険者という立場じゃない、一般の市民や患者のそういう意見というものがもっと中医協の中に反映される、そういう人選を行うべきであるし、そういう委員構成にすべきだと思いますが、いかがですか。

川崎国務大臣 公益委員の選び方について、専門家を入れるべきだ、できるだけ医療を受けている人たちを入れるべきだ、この議論であろうと思いますけれども、そういった意味も含めて公益委員を選ばせていただいておると思っております。

 もっと一般の市民を入れるべきだという御意見は御意見として聞かせていただきますけれども、今回はこういう形で出させていただいたということで、御理解をお願いしたい。

古川(元)委員 今回はということは、次また改革をされて、市民や患者の代表がもっと入るような方向で改革をされるということ、そういうことだというふうに認識してよろしいですか。

川崎国務大臣 今申し上げたように、支払い側と公益委員という中に、一般の市民が入るべきだという声はあるだろうということは認識いたしております。

古川(元)委員 それでは、先ほど言われた、理解してほしいということを理解できませんよね。

 最初に申し上げたように、これは、患者の声や市民の声がやはり反映されていないということが医療制度に対する不満の大きな要因を占めている、そういう世論調査の結果などを踏まえれば、そうした方向でこうした患者や市民の代表というものをもっと入れていくべきだと、入れていく方向で検討する、それくらい、大臣、言えないんですか。

川崎国務大臣 古川委員の御指摘は御指摘でございます。ただ、私どもは、いろいろな議論の中でこうした形で今回提案をさせていただいたと申し上げております。

 しかし一方で、もう少し市民を入れる方法があるかというのは私も頭の中に置きますと申し上げました。また一方で、中医協がこれから議論を進めていく中で、市民の皆さん方の声を聞く方法、これをもう少し検討しろということも一つの議論としてあると思っておりますので、そういったプロセスも気をつけてまいりたいと思います。

古川(元)委員 そういう大臣やあるいは政府の認識が、今医療現場で起きている、そして国民の皆さんが不安に思っている、このままでは一体病気になったときあるいは子供ができたとき、どこに駆け込んだらいいのか、そういう医療現場の、そのまさに先端の悲鳴というのがやはり聞こえてこないんじゃないかと思うんですよね。

 その辺が、ここのこれまでの議論の中で、どれだけ世の中そしてマスコミも含め、医師不足やあるいは病院の経営状況が悪くなる、多くの現場の問題が出ているにもかかわらず、それに対して、どうも何か、この法案が通ったらそういう問題というのが何ら解決するわけでもないのに、とにかく法案を通せばいいというような、全く国民の声に耳を傾けていない、そういう姿勢が私は見えるんじゃないかと思います。それではますます、やはり医療制度に対する不満というもの、そして不信というものは拡大せざるを得ないということをまず申し上げたいと思います。

 その上で、今回の法案を見ますと、かなり医療費の抑制策を含め多くの施策を都道府県に指導力を期待しているという形で法案の構成がされているというふうに思いますが、そういう認識でよろしいでしょうか。

水田政府参考人 今回の法案におきましては、医療費の適正化ということは一つ大きなテーマでございまして、その中で、国とともに都道府県においても医療費適正化計画を担っていただく。それは医療計画、介護保険事業計画、健康増進計画等々をあわせながら医療費適正化計画を組んでいただきたいということで、都道府県の役割には大きく期待をしているところでございます。

古川(元)委員 期待をするのはいいんですが、今の都道府県が置かれている状況、そして、これまで都道府県が取り組んできた医療環境をめぐるそういう動きを見ていますと、現実問題として、本当に期待をしてその期待にこたえられるような、そういう状況になっているという認識がありますか、大臣。どうですか。

川崎国務大臣 先ほども医療対策協議会、県を中心としながら各団体に入っていただいて、また市町村も入っていただいて議論をする場というのを四十七都道府県中四十五おつくりいただいた。その中に古川議員が今指摘された患者側の代表も入っていただくというような動きが中で出てきておる。そして、あと二県残されておりますけれども、もう一県も、もうすぐ四十六の数になりそうでございます。

 そういった意味では、医療サービスという部門を担う国が根幹をつくりながら、実質の医療サービスという面について、県がその責任を担いながらしっかりやっていこうという機運は当然私は生まれておる、このように考えております。

古川(元)委員 機運は生まれているかもしれません。そしてまた、協議会もできているかもしれません。しかし、実際にワークしているのか、そして本当にワークするのか。そこのところを、とにかく、前も予算委員会のときに大臣と検診の話をしましたら、それはやはり地方でやってもらわないとと。やってもらわないといけない、そういう大臣の気持ちや期待はわかりますけれども、ただやってもらわないといけないねと言うだけでは、それは希望的願望にすぎないんじゃないか。実際に本当にそれがやれるような状況なのか、そしてうまくワークしているのか。きょうはそのことを、自治体病院改革を例にしてちょっと議論をさせていただきたいと思っています。

 まず、全国いろいろなところに自治体病院があるわけでありますけれども、この自治体病院が日本の医療の中で果たすべき役割を大臣はどのように認識しておられますか。

川崎国務大臣 自治体病院の現状でございますけれども、一般的な民間の医療機関のみでは十分に提供されることが困難でかつ住民に必要な医療に関して提供することにより、地域における医療の確保に貢献してきたと、自治体病院のまず位置づけをさせていただいております。

 今回の医療法改正においては、小児救急医療、僻地医療等の確保が難しい状況も踏まえ、自治体病院を含む公的医療機関について、都道府県が定めた施策に協力すべき旨の規定を盛り込んだところであり、引き続き、地域において一定の役割を担っていただきたいと考えております。

 一方で、民間で十分担える医療はできる限り民間にゆだねるとともに、自治体病院においては相互に機能分担や連携、合理化を一層推進していただくことが必要である、このように考えております。

古川(元)委員 踏み出さないようにということで、一言一句、大臣にしては珍しく想定問答をそのままお読みになられましたけれども、そこの公的病院、自治体病院は、普通の民間サービスではなかなか提供できないようなサービスや本当にそこの住民にとって必要な医療サービスを、今の自治体病院がきちんと提供できているというふうな御認識はありますか。

松谷政府参考人 自治体病院と申しましても、都道府県立あるいは組合立、市町村立、いろいろ、またその提供している内容も、救急医療あるいは精神医療といったようにさまざまでございますので、一概には申し上げられませんけれども、例えば財政状況でいいますと、自治体病院の約九割が赤字だというふうに聞いておりまして、開設主体である地方自治体からの繰り入れを受けるなど、財政的に大変厳しい状況であることは認識してございます。

 こうした状況の中にあっても、小児救急医療や僻地医療など地域において必要な医療を確保することは大事なことだということで、自治体病院においても相互に機能分担や連携、合理化を一層推進しながら、一定の役割を担っていくということで努力されているというふうに思っております。

 今般の医療改革の中でも、これを援助するとともに、これまで自治体病院が担ってきた役割を民間の医療法人にも積極的に担っていただく仕組みを盛り込んだところでございます。

古川(元)委員 さっきから期待するとか努力するとか、私が聞いているのは、現状、本当にその役割を果たしているというふうに認識しているかどうかということなんです。

 資料の三枚目を見てください。これは、愛知県の新城市というところの新城市民病院がことしの三月末に全戸に新聞折り込みチラシでこういうビラを入れたんですね。

 「緊急お知らせ 市民病院医療体制の再建が成るまでの緊急期間内は、救急医療、時間外診療・時間外救急医療を次のように対応させていただきます。」という中で、「時間外診療・時間外救急医療 対応困難」「時間外の救急外来患者様への対応ができません。」と。上を見ると、平日時間内の救急医療に関しても「「産婦人科」「精神科」の患者様は診療できません。」こういう状況なんですよ。

 努力はしているという認識はあるかもしれないけれども、私が聞いているのは、公的病院、自治体病院がちゃんと期待されている役割を現実果たしているかどうかということなんです。どうですか、そこは。

松谷政府参考人 自治体病院が果たすべき役割は大変重いものがあると思います。大変厳しい財政状況の中でそれぞれの自治体病院、自治体が努力しているというふうに考えておりますけれども、おっしゃるとおり、いろいろな面で一〇〇%それが達成できているかといえば、達成できていないところももちろんあろうかと思っております。

 なお、新城市民病院につきましては、個別の御相談等もございましたけれども、立地条件が豊橋まで車で三十分というような条件ということで、今このような対応をとりつつあるということは伺っております。

古川(元)委員 では、一〇〇%対応できていないと言ったらどれくらい対応できているんですか。九〇%ですか、八〇%ですか。一体それは、ではどれくらい対応できていると認識があるんですか。

松谷政府参考人 医療の状況は、冒頭申し上げましたように、自治体病院といいましても、設置主体、あるいはその提供している医療の内容、あるいは地域の状況等それぞれ違いますので、一元的に何%というような数字を申し上げる状況ではございませんけれども、それぞれ努力している中で、自治体病院に求められている機能というものを果たそうとそれぞれ努力されているというふうに認識しております。

古川(元)委員 では、点数が難しいんだったら今の状況は合格点ですか、厚労省から見て、これで大丈夫だ、十分合格点は満たしているというふうな。大体、そもそも自治体病院の機能を果たしているかどうか、厚労省はきちんと把握していますか、どうですか。

松谷政府参考人 自治体病院、地域の中で単独でやっているわけではございませんで、それぞれの機能を分担しながらその機能を果たしているというふうに考えております。

 もちろん、いろいろな厳しい条件、無限に資源があるわけではありませんから、その限られた資源の中でやっているということだと思っております。

古川(元)委員 きのうも、私もいろいろレクで、隣に座っていらっしゃる、きのうお話を聞きましたけれども、実はその実態をほとんどの人が余り把握していないんですね、厚労省は。大体、新聞紙上に出てくる、産科がなくなった小児科がいなくなった、これは大臣、ほとんど自治体病院が多いんですね。そういう状況、表に出てくるのだけ見たって、その求められている役割を果たしているとはとても言えないんじゃないかと思うんですね。

 それくらいの認識を持っていないと、十分果たしている、よく頑張っている、そういう厚労省の認識では、政府がそういう認識では、とても自治体病院の改革や再編、ネットワーク化なんて進まないと思いますよ。そういう認識でいいですか。大臣、どうですか。

川崎国務大臣 確かに、例えば私のところは市民病院、市立病院が多いわけでございますけれども、集約化という県の提案に対して十分沿いかねていることも事実だろう。

 例えば私の地域で申し上げますと、小児の救急医療、これは三重大側の提案で、私のところは当時約六万と八万の市でございまして、今合併して十万の市と八万の市になりましたけれども、その両方に小児の救急体制、二十四時間体制をつくるのは無理だ、一カ所に集約してくれという提案があった、県の方もそうしたリードをとった。しかし、残念ながら地域の了解を得られないという中で、救急というものを除いて一人ずつの小児科体制をとっている。やはり集約化を図ることが必要だ、なかなかそこが地域住民の皆さん方の理解を得られないまま小児科体制が続いているということは事実でございます。

 これは事実をお話し申し上げた。そういった観点から、もう少し県がリーダーシップをとりながら集約化を図らなきゃならないという認識は私も感じております。

古川(元)委員 これは、もっとやはり危機感を持っていただかないといけないと思うんですね。公立病院、自治体病院が、大臣がさっき想定問答を読まれたような、最初に出てきたような求められている役割を果たせないような状況になってしまっている。

 今崩壊しつつある医療現場の体制、医療提供体制を立て直すためには、まずやはりそこのところから、特に今も言われたように、大臣、都道府県がもっとリーダーシップをとってと言うんだったら、自分が運営主体なわけでしょう、その自治体病院からまず手をつけて、しっかりその地域において求められる役割を果たせるようにさせなきゃ、ちっとも、そんなものいつまでたったって、役割が果たせないどころかどんどん今の現場での矛盾というのは拡大していきますよ。

 平成十七年八月十一日、地域医療に関する関係省庁連絡会議の医師確保総合対策の中で、「自治体病院の再編・ネットワーク化の推進」というものがあって、「自治体病院が、相互の連携、機能分担及び病床の合理化を一層推進し、その再編等医療提供体制を抜本的に見直す取組を、地方財政措置等により支援し、推進する。」と。それを受けて、自治体病院の再編等への取り組みに対する措置というのが平成十七年度からとられています。その中で、病床削減が行われた場合における地方財政措置ということで、自治体病院の医療提供体制の見直しにより病床の実質的な削減が行われた場合、削減後五年程度、当該削減病床数を有するものとして普通交付税措置を講ずるというような地方財政措置がとられているんですね。

 しかし、ここでやられている再編、ネットワーク化のための病床削減、本当に進んでいるのか。総務省に調べてもらいました。実は、総務省、ちゃんとこの数字もとっていなかったんですね。調べてくれと言ったらようやく調べたわけなんですけれども、これが四、五、六ページにあります。

 この削減病床数を見ると、これはお金がついているんですよ、財政措置。大臣、その資料をよく見てくださいね、四、五、六と。これは削減病床数、一けたのもたくさんあるんですね。よく頑張って百以上減らしているところもありますが、多くが一けたか二けた。といっても、本当に、十とか二十行くようなものはほとんどない。全部で二千三百九十一床です。全病床数は二十三万八千四百八十九床です。これは一%ですよ、進んでいるのは。

 これでは進んでいないんじゃないかと言ったら、いや、ベッド数が小さい病院もありますからと言われたので、では削減病床数一けたのところだけ上げて病床数がどれだけあるか出してくださいと言ったら、それが六ページです。五百三十五床あって一つしか減らしていない、二百九十四床あって一つしか減らしていない。一体これはどういうことなんですかね。ここで言っている医療提供体制の見直しによった病床の削減は行われたと言えるんでしょうか。

 この中で、茨城の友部病院というんですか、ここなんかも五百八十六床あって削減病床数は三床だけなんですね。ここの病床利用率というのはどれくらいか、大臣御存じですか、五五・八%なんですよ。ほとんど半分使われていない状況の中で、それで三つ減らしてお金をもらっている、よくまあこれで。

 ここの総務省のには、財政措置は病床の実質的な削減と認められないものは除くと書いてあるんですけれども、どう見たって、一けたしか減らしていないようなところで努力をして、再編、ネットワーク化へ向けての措置として病床が減らされたというふうには思えないんですけれども、これはどのように認識しておられますか。

大谷政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま御指摘のありましたように、平成十七年度から、自治体病院の再編合理化のために病床を削減した場合においても、五年間は従前の病床数により普通交付税の算定を行うということにしておりまして、平成十五年度実績ということであれば、先ほど御指摘のとおり、二千四百床余りの病床数に対し、これを削減がなかったものとして算定を行ったところでございます。

 病床削減数は、これは平成十五年度の実績でございまして、再編や合理化で減らしたものではない、いわゆる再編やネットワーク化ではなくて一般的な合理化で減らしたものも含まれていることは御指摘のとおりであります。

 今回の措置は、おっしゃるように、動機として自治体病院の再編あるいはネットワーク化、このインセンティブとして働くことを期待して設けたものでありますが、一方、標準的な経費に要する一般財源措置であるという普通交付税の性格上、再編の効果そのものを個別に査定するといったやり方はなかなか難しいということで、一部合理化されたような病床も含めて、一律に削減数として合理化努力を評価したということでございます。

古川(元)委員 個別は無理かもしれませんけれども、一しか減っていないのを、こんなものは別に個別に理由を聞かなくても、一つしか減っていないようなものまで財政措置をつけるというのは、では一体、病床の実質的な削減と認められないものは除く、この除かれる場合というのはどんな場合なんですか、教えてください。

大谷政府参考人 個別の例を承知しているわけではありませんけれども、例えば転床であるとか病床の改築等の移転とか、そういったものはあろうかと思いますが、一でも減については、従来どおり合理化として財政措置を続けたということは事実でございます。

古川(元)委員 それは、さっき審議官言われたでしょう、個別にチェックできないと言ったけれども、改築によるものかどうかというのは、それはチェックしなきゃできないじゃないですか。そうしたら、ここの、病床の実質的な削減と認められないものは除くというこの規定は、何の意味もない。とにかく減ればつける、そういう措置だという認識でよろしいということですか。

大谷政府参考人 個別の具体例を現在まだ把握しておりませんので申し上げられませんけれども、実質的に単なる減ではないというものがあれば、それは申請する側で評価して病床数をカウントしてもらうことになると思いますが、現在の制度としては、県の保有している公的病院の現在保有数を申請いただいた数字について、一律の交付税措置を行うという形で行っております。

古川(元)委員 これは、審議官、こんな状況がわかっても調べないの。それは出してくるのを信じるんですか。一つしか減らせなかったのに、堂々とお金をもらう申請をする。

 こういうことをやっているんだったら、こういう都道府県や市町村に再編やネットワーク、合理化なんてどうして期待できるのですか。大臣、そう思いませんか、これは。そういう気持ちであっては、一体そのお金はどこから出ているんですか。国民の税金でしょう。

 明らかに、どう考えたって、一つや二つしか、しかもさっき申し上げたような例でいえば、病床がフルに利用されていて、その中で合理化して減らしました、何とか努力して一減らしましたというならわかりますよ。これを全部一回調べていただければいいと思いますけれども、例えば、さっき言ったように、五百八十六床あって病床利用率が五五・八%で、ほとんど半分遊んでいるところで、三つ減らしてその分のお金をもらう、こんなのおかしくないですか、どうですか。

大谷政府参考人 数が一とか三とか、そういう数字がどうかについては一概には申せませんけれども、削減を行ってその直後に、削減した後、国からの財政措置も減るということであれば、収入も減る一方で国からの措置も減るということで、その一時的なショックを緩和しているわけでありますけれども、五年間の時間が過ぎればそれは消滅するということで、一時的な、移行に伴う削減に伴う緩和措置でありますから、当面、一とか三とか、確かにその枠は小さいかもしれませんけれども、その努力についてもとの形で数字で評価していく、これは現在の交付税制度の措置としてはそういう形になるわけでございます。

古川(元)委員 これというのは、さっきも言った医師確保総合対策、その中の自治体病院の再編、ネットワーク化を推進するための措置として入れられたわけでしょう。やっているわけでしょう。こんな状況で、一体いつ再編やネットワーク化が進むのですか。こんな状況で一体、本当にいつになったら自治体病院がちゃんと求められている役割を果たせると思うんですか。

 そういうことしかできないような今の状況の中で、今回の法律の中では、都道府県知事とかが病床の削減命令を公的病院等に対して出せるという権限を与えましたよね。自分が経営主体である自治体病院においてこのていたらくですよ。どうしてほかの病院に対して、自分が経営者でもないところに対して命令ができると思えますか、大臣。

 大臣が別の公的病院の院長さんであって、自治体病院は病床数を全然減らさない、一つ減らしたらそれだけ総務省に申請してお金をもらっている、その知事から、おたく減らせと言われたときに、黙って、はいそうですかといって受けますか、これ。どうですか、大臣。どう思いますか。

川崎国務大臣 言われるとおり、例えば、私どもでいえば国立病院機構、それから厚生年金、社会保険病院、労災病院、こういうものの集約化を進めなければならない、これをきちっとやらないで単に言えるか、こういう話と一緒であろうと思います。

 県からいえば、先ほど私は市民病院の例を出した、市民病院を、県がきちっとしなさいよと言ってもなかなかできなかったという例を申し上げた。しかし、県が最初に手をつけるべきは県立病院が先であろうという委員の御指摘は、それは間違いないだろうと思いますし、私どもも、厚生年金や社会保険病院、こういう問題の整理についてしっかりやっていかなきゃならぬな、このように思っております。

古川(元)委員 そういう視点で、普通、大臣、そう考えるんですよね。やはり、まず隗より始めよですから。都道府県知事がリーダーシップを発揮しようとなったら、まず足元の自分のところからちゃんとやらないといけない。しかし、どうもそういうのが余り進んでいないように見えるんですよね、この自治体病院の再編、ネットワーク化の推進というのは。

 ちょっときょうは一つ例を出したいと思いますけれども、資料の、次の七、八を見てください。これは、山形の市立酒田病院と県立日本海病院の統合の話なんです。

 これは、大臣が言われた、市がなかなかやらないのを県がやはり指導しなきゃいけないねという話がありましたけれども、ここは市の方が積極的に、もう病院も二キロで近いし、機能も重なっているから統合しようといって提案したんですよ。そうしたら、県の方が、いや、待ってくれと。ちょっとそれは余りやる気がないんだ、外部監査の結果にまってくれといって先延ばししているんです。

 市の方は、この古い市立の酒田病院は、経営状況は非常にいいわけです。しかし、耐震性がないというので、地震が来たら崩れちゃうかもしれない、だから、早く建て直しをしたい。しかし、建て直しをするに当たって、どうせだったら、この近くの県立日本海病院と再編統合して、そして機能分化をして、その新しい機能に合ったような病院を建て直したいと思っているのに、県の側はずるずると後ろに下がっている。このままだと、もう市立酒田病院は仕方ないから今のままで建て直しをやらなきゃいけないかもしれない。

 これなんかは、本来はもっと県が、市から言ってくれたら、それはそのとおりだねと。よっぽどこの県立日本海病院が経営がいいならいいですよ。この県立日本海病院というのはひどい赤字なんですね、設立以来。そういう状況にあるにもかかわらず、市からいい提案が来たのに後ずさりしている。これをどう思いますか、大臣。

川崎国務大臣 これは加藤紘一さんの地元ですから、私も二、三回応援に行ったことがあります。多少土地カンはありますけれども、この新聞で伝えられるようなことが事実ならば、県はもう少し積極的に取り組むべきだなという思いはします。

 しかし、事実関係は、この新聞紙上しか私知りませんので、これは県の方に私どもの方から問い合わせしながら、事実関係は調べてみます。

古川(元)委員 これは総務省の方はどう認識しているのですか。

大谷政府参考人 お答え申し上げます。

 新聞報道で私どもも承知したところでありますけれども、まだ団体から直接相談を受けているわけではございませんけれども、これは一義的に、よく話し合っていただいて、私どもも相談を受ければ調整に協力することはやぶさかではございません。

古川(元)委員 でも、これは本来、今回の法改正でも、一番リーダーシップをとらなきゃいけない都道府県が後ろ向きなんですよね。

 こういう状況が、これは山形の例ですけれども、ほかのところでもあったらどうなりますか、大臣。やろうという、せっかく前向きな病院とか前向きな市町村とかがあっても、県が一番、自分のところの県立病院の改革も進まない、そして、せっかくいい提案があっても、それをちょっと待ってくれと言っている。

 こんなことだから、最初に大臣に聞いたように、本当に都道府県に期待していいんですか、それで本当に今の医療の現場の状況、問題は解決されるんですか。期待する、希望するのはいいですけれども、現実的にはそれはうまくワークしないんじゃないですか、そのことを私は聞きたいんですね。そういう視点で、もうちょっとこの酒田の話に絡めて申し上げますと、県の方は、外部監査の結果が出てそれで判断したいというふうに、私から言うと逃げているんだなと思うんですね。

 それで、外部監査については、自治体の外部監査制度が始まって、全国いろいろなところで外部監査は行われています。この自治体病院についての監査もいろいろなところで行われているわけなんですけれども、これは総務省の方に聞きたいと思いますが、自治体病院監査に限ってでいいですが、この外部監査、十分うまく機能しているというふうに認識しておられますか。

大谷政府参考人 お答え申し上げます。

 外部監査制度と申しますのは、地方公共団体の監査機能の独立性、専門性を一層充実するための制度として、地方公共団体の組織に属さない、外部の専門的な知識を有する者による監査を導入しようとしたものでございます。これは平成十年の施行から七年余り経過しておりまして、総務省によりましても適宜その実態把握等を行っているところでありますが、現行制度は、外部の専門家の知見を通じて地方公共団体の事務の効率化、不正の防止等に一定の役割を果たしているものと認識しております。

 外部監査の対象となる事業でありますけれども、外部監査人がみずから定めることとなっておりまして、これまでの実績を見てみますと、病院事業も監査対象になったものが多いところでございまして、監査結果を見ますと、そのほとんどにおいて経営効率化に関する厳しくまた有用な指摘がなされているというふうに承知しております。

 その効果でありますけれども、自治体病院において経営改善は当然喫緊の課題でありますから、外部監査制度を含めて、こういった指摘について内部で真剣な検討が行われ、対応されるべきものというふうに考えております。

古川(元)委員 厳しく有用な指摘がなされているという御答弁があったんですけれども、資料の九、十を見てください。これは、全国市民オンブズマンが外部監査の結果を評価した、全国市民オンブズマン連絡会議の外部監査の通信簿というところからちょっととらせていただいたんですけれども、十ページを見ていただいた方がいいかな。

 外部監査を受けた県で県立病院の業績はよくなっているのか。3を見ていただくと、外部監査が入っても業績と改善度が悪化、ほとんどの県が該当するがワースト順に示すとあります。つい先日私も行ってきましたけれども、公聴会が行われた福岡も外部監査は入っているんですけれども、むしろ経営は悪くなっているんですね。大臣の出身の三重県は、外部監査を入れなくても業績、改善度はすばらしいのです。そういう意味では、知事が立派なのかもしれません。

 外部監査は大体一千万から二千万ぐらいのお金をかけているんですね。お金をかけて外部監査やって、やったところの県がよくなっていない、やっていないところの方がよくなっていて、関係なくもともと業績がいいとか、一体これは何のために監査しているのかなと。

 それで、ちょっと外部監査の報告とか、その結果県とかは何をやったのか、措置をとったのかというのを資料を持ってきてもらいました。大部な量でうちも見るのに苦労したんですけれども、総務省さんとか厚労省さんとか、ちゃんと見ているのかなと思うんですが。

 先ほど審議官が言われたように、確かに結構いい指摘はしているんですよ。福岡へ行ったときにも、公述人の方が、いや、福岡の県立病院の経営がよくならないのはみんな公務員で人件費が高いからですと町村会長さんがおっしゃったんですが、外部監査で必ず言われているのが、公営企業法の全適をしろ、そういうことをやれば人件費も相当節約ができるという指摘はされているんですよね。多くのところでそういう指摘がちゃんとされているんです。

 しかし、それに伴って都道府県とかで、あるいは政令指定都市ですか、とられた措置の中で、ちゃんとそういう指摘を受けてそういうことをやりました、検討していますとかいうところは、私が見た限りでは一つもないんです。唯一盛岡市だけは、経営の形態とかそういうものについて検討委員会を設けて検討することにしましたと。その分では、検討はしたというだけ一歩踏み出したという意味では、外部監査の効果はあるのかなと思いますが、ほかのところは、原料の仕入れがどうかとか、そういう細かいところについては措置をしました、措置をしましたと報告があるんですが、根本的な、経営形態とかそういうことに対しては、指摘があっても何の措置がされましたという報告もないんです。

 こういう事実をちゃんと総務省は、また厚労省は把握していましたか、どうですか。

大谷政府参考人 病院の監査に対する指摘につきまして、今御指摘いただきましたみたいに一件一件を私の方で把握していたかといえば、そうではなかったかというふうには思います。

 一方で、先ほどの、監査がされていたから病院経営がいいのかということになりますと、実際には、やはり優秀な病院事業管理者がいたりするせいで、病院の経営に取り組んで非常に改善したという例が多々あります。このあたり、監査なり、あるいは監査を受けなくとも病院経営の改善をぜひやっていただきたいということで、近時、各県にもお願いしているところであります。

 例えば、一昨年には、地方公営企業の経営の総点検ということで各県に事業の洗いざらいの見直し、あるいは昨年は、集中改革プランということで見直してほしい、そういう経営についての改善をあわせてお願いしているということで御理解いただきたいと思います。

松谷政府参考人 自治体病院は、約九割が赤字であるなど財政的に厳しい状況でありながら、地域にとって必要不可欠な医療機関であるという認識のもとで、抜本的なあり方の検討が先送りされているといったような例もあるというふうに認識しております。

 今御指摘の外部監査の指摘事項などについて、一つ一つ厚生労働省が入手しているわけではございませんけれども、厚生労働省として、マクロでございますけれども、病院の経営状況のデータ等につきましては総務省とも情報の交流をするなどして連携を深めて、今般の医療制度改革の見直し等による地域医療のあり方の検討を通じまして、今御指摘のやるべきところについてはさらにやるように努めていきたいと思っております。

古川(元)委員 ちょっと私、さっきの審議官の答弁に対して申し上げますけれども、監査のあるなしにかかわらず病院の改革をしなきゃいけないんだ、やるようにと指示したんだったら、では、こんなにお金をかけて監査するのはもうやめたらどうですか。一千万も二千万も、税金でしょう。しかも、立派な報告書はあっても、細かいところだけつまみ食いして、本質的な問題はネグレクトしている。それをチェックしてもこなければ、そしてチェックするような仕組みにもなっていない。

 一体何のためにこれは監査をやっているのか。監査をして外の人に見てもらいましたと。PDCA、プラン・ドゥー・チェック・アクションでしょう。何のための監査なんですか、これは。きちんと監査結果が反映されないんだったら、もうこんな外部監査で病院の監査なんてしてもらうのはやめてもらって、総務省が指示してちゃんとやらせるのは、もちろんやらせたらいいじゃないですか、そうしたら。どうですか。

大谷政府参考人 お答え申し上げます。

 この監査制度が平成十年に導入されたときの経緯といいますのは、やはり内部だけの監査ではいろいろな不正事例等があって、適正な執行と、一方で確かに効率的な運営という両面がございましたので、効率的な運営について意見をもっと取り入れて病院が取り組まなければならない、これは事実でありますが、一方でそういう執行の適正を期すといった面の役割もございますので、この監査については必要な役割は依然としてあるというふうに理解しております。

古川(元)委員 では、その監査で指摘されたことをきちんとやっていない、そういうことについては今後どうやってチェックして、そしてどうやって担保していくんですか。

大谷政府参考人 現在、集中改革プランの実施状況について各自治体ごとのヒアリングを行っているところでありますが、そういう経営努力について、個々の自治体について監査結果も踏まえて検討していくということは続けたいと思います。

古川(元)委員 厚労省も、これは医療の立場から見たら、せっかく出してもらった監査でしょう。この医療の話になると、総務省と厚労省さん、総務省は、いや、そこは医療の話ですから厚労省です、厚労省さんに聞くと、いや、それは地方の話だから総務省さん。物すごく、医療がこんなにうまくいっていないのは、お互いの役所の間で、一体どこまで手を出していったらいいのか、そしてどこまで責任を持ったらいいのか、役割分担といいますけれども、実際にはお互いが両方とも何か少し距離を置いて、その中でどんどんと医療のひずみが広がっているという状況にあるんじゃないかと私は思いますが、これは結果をちゃんとこれから生かしていきますか。

松谷政府参考人 せっかくの監査のデータ等でございますので、これは経営の今後のあり方について生かしていくべきものと考えております。

 総務省と厚生労働省の間は比較的近い関係にございまして、それぞれ連携をして、間があくのではなくてむしろ重なるような連携で引き続きやっていきたいと思っております。

古川(元)委員 私が昔いた財務省とよりはもっと距離は近いのかもしれませんが。

 大臣、きょうの議論を聞いていていただいてわかると思うんですが、どうも、都道府県、都道府県という言葉がこの法律を見ていると幾つも出てくるし、都道府県の指導力、都道府県がリーダーシップを発揮してという話はよく出てくるんですけれども、こういう現実を一つ一つ見ていくと、本当にこれで任せてやれるのかなと。

 今、医療現場の置かれている状況を見たら、この自治体病院の再編、ネットワーク化を初めとする問題については、もう少しやはり国が責任を持って指示することとかそういうこともやっていかないと、医師確保対策をやっても、病床一つ減らしたのでお金をもらってそれで喜んでいて、それこそ何年かかってやろうかというような、そういう状況では、これはいつまでたっても医師確保なんてできないと思いますけれども、大臣、この状況の中で、本当にこれで都道府県に任せて大丈夫だと。もう少し厚労省、ちゃんとやるというふうに御答弁いただけませんか。

川崎国務大臣 この間、富山県の知事が私に陳情にお見えになりました。尊厳死問題、きちっと国がやってくれということで御陳情に来られた。一方、当然そういう機会でございますから、富山県の医療情勢を聞かせていただいた。私がリーダーシップをとって四つの地域に再編いたします、こういう明言をされて知事さんはお帰りになりました。やはりこういう会話が私どもの間で頻繁に行われるようにならなきゃならない。国に対する注文を知事さんがつけていただく、私どもも医療行政問題全体について知事さんと意見交換をする、そういう中で一つ一つの個別の問題として解決していきませんと、私はできないような気がいたします。

 例えば青森の話でありますれば、いろいろ御議論いただきましたから、なるべく打ち返すようにしております。どう考えても、弘前大学で百名のお医者さんを養成しながら、六年終わると同時に五十名が東京に行ってしまうという現状は、これは何とか変えなきゃいけないですねと。こういう話を具体的に文部大臣ともいたします。また、知事さんともしていかなきゃならぬ。そういった中で、きちっとやっていかなきゃならぬなと。

 それからもう一つは、三省間のネットワークで、やはりもう少しこの医療分野にわたりましては、文部省、総務省、人事交流をお互い活発にしながらやっていかなきゃならぬ、こういう認識をいたしております。

古川(元)委員 時間になりましたので終わります。ありがとうございました。

岸田委員長 次に、山井和則君。

山井委員 これから五十分間にわたりまして、川崎大臣、赤松副大臣に質問をさせていただきます。よろしくお願いを申し上げます。

 一昨日、福島県で地方公聴会を行わせていただきました。その中でも、医師不足の問題、また勤務医の労働基準法違反とも言える過重労働の問題、そのことによって、このままでは、若手医師も集まらず、小児科や産婦人科、救急医療は崩壊する、そういう危機的な声を聞かせていただきました。そんな中で、きょうの私の五十分間の質問では、主に医師不足問題と小児科、産科などの勤務医の労働条件の改善について議論をしていきたいと思っております。

 このことについては、アメリカのワシントン・ポスト紙でも、日本では出産に新たな苦悩が出ている、アメリカでも取り上げられております。

 きょうも朝から議論を聞いておりましたが、福島議員、大村議員からも、診療報酬の改定、また医師不足の問題、このことについて産科、小児科対策をどうするかという議論が出ておりました。またその中でも、とにかくこの法案を通して、その後フォローをしていこう、そういう声も与党からございました。私は、これはやはり極めて無責任であると思っております。まさにこの医療制度改革の一つの大きな核心が、今全国で危機的な状況にある小児科、産科、救急医療、麻酔科や外科、本当に言い出せば切りがありませんが、そういう医療崩壊、そして医師、特に勤務医の不足問題、やはりこの問題をどうしていくのか、このことに方向性を出さずしてはこの審議というのは終われないと思います。

 きょう、資料をお配りしておりますので、お目通しいただければと思います。

 そんな中で、今の古川議員の質疑でもありましたけれども、今回の法案の中で、都道府県に任せていくという方向性が出ております。しかし、都道府県の力では財源も権限も全く足りない。私も多くの都道府県の関係者に聞きましたが、このままでは本当に大変なことになるという声を聞いております。

 例えばこの連休中の報道でも、「「当直診療 綱渡り」 激務に疲れ退職開業」「医師不足 悪循環」。昨年一月以降、二十四道府県の六十三病院で輪番制がもうできなくなってしまったという記事であります。また、二ページ目を見ますと、産婦人科医の減少のグラフ。そして、北海道大学の調査として、何と当直は年に百二十三回、当直明けに休みがとれる病院はゼロ、当直日の朝から翌日夕方まで連続三十時間以上の勤務を三日ごとにこなさねばならない、こういう現状。

 厚生大臣でもあり、また労働大臣でもあられるわけですから、こういう問題を本当にどうしていくのか。

 産科、小児科、救急医療の現場のこの崩壊現象の中には、余りにも過酷な労働基準法違反の現状があります。また次のページを見ていただきますと、採算が成り立たないということで病院の小児科が二二%減り、また小児救急でも、二日連続、三十二時間連続勤務というものが続いております。そして、もう一枚だけ今説明をいたしますと、四ページ目にございますように、これは今回厚生労働省が二十七の小児救急拠点病院をお調べになったわけですけれども、ここでも非常に過酷な労働条件というのが出てきております。

 このことに関しては後ほども述べますし、先ほども与党の議員の方々もおっしゃっておられましたが、女性の医師が、小児科では、若い人では四割以上、また産婦人科では三分の二に達している。やはり女性医師の方々がどうやって働いていけるか、このことは、医療現場だけではありませんけれども、日本社会というものが働く女性をどう支えていくのか、まさにそのおくれというものが今のこの小児科、産婦人科の危機的な状況にも如実にあらわれているわけであります。

 そこで、また二〇〇二年には岩手県でお子さんの病院たらい回し死亡事件というのも起こりました。そのときにも多くの署名で、こういうたらい回し事件が起こらないように小児救急の整備をしてほしいということで、厚生労働省にも要望に行かれたわけです。こういう過酷な労働条件で、また勤務医が足りない。その結果、こういう十分な医療が受けられなくて亡くなってしまう赤ん坊やお子さんも出てきている。まさに危機的な状況であります。

 そこで、まず川崎大臣にお伺いをしたいと思います。

 このような小児医療、産科医療を初めとする夜間当直体制が中心となっている救急医療の現場の現状認識として、労働基準法を遵守していると認識しておられますか。

川崎国務大臣 労働基準監督署において、平成十五年度から十六年度にかけて個別に監督を行った五百九十六の医療機関のうち、四百三十の機関において何らかの労働基準関係法令違反が認められているところでございます。医療機関すべてにおいて労働基準関係法令が遵守されているとは言えない状況にございます。

山井委員 そのことは、先月も、私、国会で質問をさせていただきました。まさにその指導した四百数十の病院が、その結果、指導によってちゃんと労基法に適合するようになったかどうか、その結果もまだ出ていないということを先日の私の質疑で答弁もいただいております。調査をやったけれども、それが改善されたかどうかも把握できていない。いつまでに把握するのかと聞いても、努力をしているからいつまでとは答弁できないと、先月は赤松副大臣は答弁をされました。

 しかし、公聴会の声を聞いても、例えば福島公聴会の村田参考人はこうおっしゃっているわけですね。

 小児科の救急医療に当たっていますが、最近、深夜帯、十二時から翌日の朝までの時間が非常に増加しております。そして、深夜帯勤務の当直の医師が燃え尽きてしまってやめてしまう、そこの当直勤務の補てんに難渋しているのが現状です。当然、当直をしても翌日は通常の勤務です。御存じの方がほとんどだと思うんですけれども、その理解がない方もいらっしゃるのでぜひ言ってくれと言われたんですけれども、もう僕たち、三十二時間勤務あるいはそれ以上の連続勤務が続いています、人の命を預かる職種で、これはまさに異例、異常な状況です。

 まさに、悲鳴が今医療現場に満ち満ちているわけであります。

 そこで、まさに大臣も、労基法を守っているとは答弁は今できなかったわけなんですけれども、ではこの現状をどうするかということですが、やはり小児科、産科を初めとするこういう小児救急医療の現状、前回の質問でも川崎大臣から、月平均八十、百時間を超える、過労死ラインを超えている労働実態というのは、人の命を預かる仕事として好ましい状態とは言えないという明確な答弁もいただいております。

 提案させていただきますが、早急にやはり労働基準監督署が立入調査をして、勤務医の労働時間の把握、そして時間外労働にはちゃんとそれに対する賃金を払う、そういう調査、指導をすべきだと考えますが、大臣、いかがでしょうか。

川崎国務大臣 労働基準監督署において、小児科、産婦人科、救急病院を含め医療機関で働いている方々の相談など、さまざまな情報を精査しつつあります。一方で、法律違反のおそれのある事業場を選別し、個別に監督を行い、今御指摘のありました割り増し賃金の支払いを初めとして、問題が認められた場合に必要な指導を行ってまいりたい。そういった意味では、一つ一つを説得しながらやっていかなければならないというように考えております。

山井委員 大臣、確認しますが、そういう意味では、労基署に指導を徹底させるということでよろしいですか。

川崎国務大臣 これは、先日からお話をいただき、そして私どもも個別に一つ一つの事案について解決を目指して努力をしたい、こう申し上げたとおりでございます。

山井委員 そこで、問題なんですが、実は、そのことはもう今まで再三国会でも問題になり、また厚生労働省もやられていることでもあるんですね。私の資料にありますように、まさに川崎大臣答弁されたように、二〇〇二年には七千の医療機関対象に調査、過酷な当直医、実態調査を二〇〇二年にして、そして次の七ページにありますように、まさに五百の病院にメスを入れて過酷勤務改善へ、労基局と。平成十六年、やっているじゃないですか。大臣、やったはずなんですよ。

 やったはずなのに、今なぜ全国の小児科、産科、救急医療現場で、二日連続の三十二時間から三十六時間の連続勤務や過労状態で、多くのお医者さんがもう続けられないということでどんどん開業医に流れていく。やっているのになぜこういう問題が今でもあるんですか。大臣、いかがですか。

川崎国務大臣 根本的な解決策のためには、先ほども議論をいただきましたけれども、集約化を進めていかなければならないという方向性でありますけれども、また、それもおしかりいただきましたように、そのスピードが遅いということは事実だろうと思います。しかし、私どもとしては、やはり地域の事情はいろいろございますけれども、集約化へ向けて知事さん等のリーダーシップ、我々もしっかり協力をしていかなければならない、このように考えております。

山井委員 大臣、やはりこれは、労基法違反、そういう違法状態が常態化してしまっているんですよ。川崎大臣は医療の責任者であると同時に、日本のまさに労働者の労働状況を守る責任者なんですよ。医師の方々、医療従事者も労働者であるわけですから。これが放置されているということは、本当に情けない、恥ずかしいことだというふうに自覚をしてもらわねばなりませんし、今までのやり方でやっては不十分だということを認識してもらわねばなりません。

 そして、実は、こういうことを言うと病院の経営者の方々から、当直の時間をきっちり把握して割り増し賃金をきっちり払ったら、もうそれは経営が成り立たない、小児救急返上させてもらいます、救急やめます、そういう声も出てきているんです。ですから、大臣、これはセットでやらないとだめです。厳格に時間外の労働時間を把握して割り増し賃金を払う。同時に、そのことによって、もう産科や小児科や救急は不採算だからやめるという病院が出ないように、そこに診療報酬なり補助金の形でちゃんと担保する。

 それと、もう一つ言うならば、根本的にはお医者さんが足りないから回らないのじゃないのという現状があるわけですよ。やはりそういう財政的な手当ても、きっちり労基法を守る、病院が損をしない手だてをしっかりする。そしてまた、そのことが、医師が不足だからやりたくてもできない、そうならないような状況をつくっていく。大臣、その方向性を目指すということでよろしいですか。

川崎国務大臣 議論の中で一つ違うと思うんですね。要は、集約化を図らなければならない。ですから、この病院で今やっていた、この病院でやっていた、しかし、両方をセットで守るという方向づけをするのかということになると、そこは知事さんのリーダーシップで集約化の方向を出してくださいというお願いをしています。

 一方で、そうした集約化がなされたときに、国は、まず診療報酬できちっと方向づけはしなきゃなりませんね。それは、午前中の御質疑にもお答えいたしましたように、診療報酬のパイは二十八兆というパイでございます。しかしながら、我々の政策経費としては一千億もない政策経費でございますから、そこで箇所づけをしてどんどんやれというのは正直言って限界があることは事実。

 一方で、今までの政治の流れは、ある程度いったものについては、なるべく行政経費は、地方にサービス経費はもう移譲していくべきだ、税源移譲というものをやってきた今日までの流れでございますから、この個別の予算だけはまた厚生労働省が枠を獲得してやれということについては、なかなか無理な話だろう、このように私は思っております。

 したがって、診療報酬で全体的な方向づけをしていく、しかし一方で、先ほどから申し上げる集約化というものをされているところには、できるだけの予算的な措置をするように優先的にやっていかなければならない、このように思います。

山井委員 まさにそうおっしゃると思って、この資料もお配りしたんですが、五ページ、我が党の小児医療緊急推進法案のポイントというのがあります。まさにその資料の一番下に書いてあります。やはり診療報酬だけでは限界がある、そんな小手先のことではだめなんですよ。きょうの午前中も、診療報酬で夜間の産科や小児救急を手当てしたと言ったけれども、現場の声を大臣は聞かれたことはありますか。全く不十分だという声が満ち満ちているわけですね。診療報酬を上げると自己負担も当然アップするわけです。

 そういう意味では、やはり一般財源からお金を投入していく、そして勤務医、こういう救急の現場を救うということしか選択肢はないんです。それを選択しないとするのであれば、今、都道府県にやってもらうということですが、それは、そういうことを言いながら医療崩壊を放置することになってしまいます。

 そして、大臣が集約化とおっしゃることが私一つ非常に気になっているんですが、大臣、実際の例で、参考人の方もおっしゃっておられましたが、集約化することによってその病院にますます患者さんが集まって、労働条件がますます悪化したというケースもあるんですね。ですから、労働条件が悪いから集約化します、それだけでは一つの答えにならないんです。

 そこで、次の質問ですが、やはり労働大臣として、夜間の救急に関しては、小児科、産科、一般の救急も含めて実際に仮眠もとれないケースに関しては、当直じゃなくて夜勤でやっていく、三交代制あるいは二交代制にしていく。あるいは、欧米で法制化されているように、一週間の医師の労働時間を六十時間以内に制限する。やはり、集約化とおっしゃるのも結構ですけれども、集約化してどういう労働条件を勤務医の方々に保障するのかという目標を、労働大臣である川崎大臣は示す責任があると思います。大臣、いかがですか。

川崎国務大臣 医療現場をどうしていくかという議論をしていく中で、規制の方を強めろと。規制を強めた結果、小児医療というものがよくなるという議論展開をされていますけれども、私はそうは思いません。私はそう思いません。あなたはその議論をされているけれども、私はそうは思わない。

 やはり一つ一つの個別のケースを、集約化という方向でなり、そしてあの表でも出ましたように、また委員の御要求で出しましたとおり、やはり十人程度の医師が集約されたところについては、ある意味での労働条件も守られていることは事実でございます。

 一方で、委員が御心配いただくように、より集約化されたときに患者数がふえるんじゃないか、こういうお話をいただきました。そこはもう一つの議論だろうと思うんです。一次ケアというものを全部その集約された病院でやらなければならないのかということになると、必ずしもそうではないだろう。

 一次ケアというものをどこで担っていくか、そして本当に救急的に必要なものをどこに集約させてやるかという議論を、やはり各地域各地域で、私ども知事さんと一緒になって考えていかなきゃならぬ。そこはぜひ御理解を賜りたい。

山井委員 大臣、私が質問したのは、夜勤や交代制、あるいは一週間の労働時間を六十時間に制限する、そういう目標というものをやはりきっちり厚労省が労働省として示す必要があるのではないかという質問をしたんです。規制じゃないんです。これは、夜勤や交代制にするということは労基法を守れということを言っているんですから、それを規制だと言ってそれを締めつけるのはおかしいと言ったら、今のこの過重労働を是認することになりますよ。

 やはり、どういう労働条件が勤務医にとって好ましいのかということを労働大臣である川崎大臣にここで言ってもらわないと、全国の勤務医の方、あるいは産科、小児科、救急を目指そうとしている若いお医者さん、あるいはその御家族、また、そういう人たちにかかろうとしている家族も安心できないんじゃないですか。

 大臣、どういう労働条件を、すぐにとは言いませんが、目指すのですか、厚生省としては。

川崎国務大臣 今、すぐにでないと言われましたから、まさにそのとおりですね。将来的な目標としてしっかりしなきゃならぬ。

 また、我々も、労働基準監督署や現場を通じながら、指導しながらやってきている。そして、それが実行されるようにしていかなきゃならない。それはもう一緒です、共通のその目標を持って進む。

 そして、それが一〇〇%今実行できて、かつ、それが守られないところは医療停止にするかということになると、そこまでは私どもは踏み切れない。したがって、現場というものでしっかり話し合いをしていこう、こう申し上げているんです。(山井委員「目標は」と呼ぶ)今言われたとおり、将来の目標だというのなら、私も同意をいたします。

山井委員 これは大事なことなので改めて確認したいと思いますが、将来の目標としては、やはり夜間の宿直のところは、三交代あるいは二交代の交代制、あるいはきっちり夜勤としていく。そして、週六十時間以内ぐらいの労働を厚生労働省としても勤務医に対して目指すということでよろしいですか。

川崎国務大臣 将来の方向性としては、そういう方向を目指さなきゃならぬということは意見の一致でございます。

山井委員 もう一言聞きます。

 将来、大体何年後ぐらいを考えられますか。

川崎国務大臣 ですから、医療体制をきちっと仕上げるということも大事だろうし、病院によってはすぐ実行できるところもある。だから、どんどん指導しますよ、指導はしていく。

 しかし、現実問題として、全部のところをいつまでにやれるかということについては、私もまだそこまで詳細承知しておりません。しっかり掌握したら自分の考え方を述べたいと思うけれども、今の時点で何年と言われると、私もかなり踏み込んだ発言をしていますので、どうぞ御理解賜りたいと思います。

山井委員 今回の法案の中で、医療費適正化計画とかいろいろな年次計画があります。それも一面必要な面はあるかもしれませんけれども、やはり五年後には、今言ったような、夜間は救急においては夜勤体制あるいは交代体制にしていく、あるいは週六十時間以内の労働にしていく。すぐにはできないけれども五年後には、厚生労働省が先頭を切って、勤務医の方々、あるいはそういう救急にかかる患者の方々がいい医療を受けられるためにもそれを目指します。やはりそういうことをまさに法案に入れていく、そういう法案にしないと、自己負担のアップとかそういうことだけではだめなんです。

 関連して次に行きますが、では、今回、小児救急拠点の二十七病院については実態調査をしましたが、同様に産婦人科の勤務医や一般の救急病院についても実態調査をすべきではないですか。

赤松副大臣 今、山井委員御指摘のように、小児救急医療拠点病院につきましては既に調査を行いました。

 今お尋ねの、産婦人科あるいは一般の救急病院についてでございますが、まず、産科医療につきましては、小児救急医療のように受診行動の特性が医師の勤務状況に強く影響を与えるものとは言えないで、むしろ、産科の医師が減少する中で各地域において産科医師を広く薄く配置することによって、個々の医師の勤務状況は影響を受けているものと考えております。

 そのために、産科医療の確保という観点からは、各都道府県を中心に、先ほど来、山井委員また大臣とのやりとりがありますように、産婦人科医療については、地域におけるニーズの状況や各病院における医師の配置などについての分析を行って、集約化の必要性などその機能のあり方を検討して、具体的対策を実施していくということがまず大事だろう、こんなふうに考えております。

 また、一般の救急医療につきましては、既に救命救急センターにおける常勤医師数や昼夜別勤務医師数等の調査を行い、医療の質の評価を定期的に実施しているところでありまして、これを通じて適正な救急医療の確保を図っている、こういうところでございまして、今、小児救急医療拠点病院と同じように二つの分野における労働実態の調査を行う必要は、現時点においてはない、こんなふうに考えております。

山井委員 要は、これはお医者さんの数とか調べるだけじゃだめなんですよ。今回の拠点調査でもわかったのは、二十七病院中二つの病院しか宿直時間中の労働時間の把握もできていないということなんですよ。そういうことを調べないと、何人体制でやっているか、それだけ調べても労働実態は全然わからないわけです。ですから、この調査もぜひお願いしたいと思います。

 それで、先ほど川崎大臣から、余り強く労働条件のことを言って、それに従わない病院はすぐ停止にするというわけにはいかないということをおっしゃいました。

 私も繰り返して言いますが、別に病院の経営を、首を絞めるためにこういう質問をしているわけではなくて、やはり当たり前の労働条件を確保する、そしてそのいい労働条件をとれる病院がちゃんと黒字でやっていける、そういう体制をつくっていかないとだめですし、そのためには、やはり突き詰めていけば、お医者さんが足りない。お金の問題よりもお医者さんが足りないという声を現地では聞くわけですね、交代勤務にしたいけれどもお医者さんがいないじゃないのと。

 そこで、川崎大臣にお伺いします。きょうの資料にもありますが、医師は足りているのか足りていないのかということですね。九ページを見てもらいますと、医師は足りているのか、先日の質問で、大臣は足りていますとおっしゃっていました。

 それで、四月二十五日に医政局に書面で質問しました。では、小児科医師は足りているのですか、産婦人科医師は足りているのですかと聞くと、不足感があることは承知しているという回答。なお、医師の診療科ごとの必要数については、これまで計算したことがないという答弁だったんですよね。

 そこで、大臣にお伺いしますが、改めて聞きます。医師は今足りているのですか、これが一つ目の質問。同時に、小児科の勤務医は足りているのですか、産婦人科の勤務医は足りているのですか。いかがですか。

川崎国務大臣 医師数については、何回もお答え申し上げています。今二十六万ぐらい、十年後に大体三十万ぐらいの医師数になるだろう、そういった意味では、全体の流れの中ではまず足りていると考えていいんだろう、こういう認識を何回も申し上げております。

 一方で、小児科医でございますけれども、平成六年が一万三千三百四十六人、平成十六年が一万四千六百七十七人。小児人口は平成六年で二千四十一万人。ですから、一万三千三百四十六人でありますと六・五人ということになります、小児一万人当たりの小児科医師数。それが十六年で八・三ですから、そういう意味では、着実に小児科医の数はふえてきている、こういう認識をいたしております。

 一方で、これを勤務医と開業医に分けられるかということになると、そこのしっかりした数字が、今小児科医の勤務医が八千三百九十三人でございます。したがって、約六千人が開業医ということになるであろうと思います。

 そういった意味で、基本的な認識はどうだといえば、小児科医に関しては、ある程度の数はいるんだろう、こう思っています。先ほどから言っている集約化。それから、一部の地域、これは前から申し上げておりますとおり、東北とか関東の一部、それから私どもの東海ブロック。京都は多くていいですよね、正直申し上げて。私どもの東海ブロックについては少ない。

 したがって、全体の医師数が少のうございますので、その中で、多分、産科も小児科も少し数が足りないのではなかろうか。地域の偏在があるということは、私ども、認識いたしております。それは、大学教育の問題から始まりまして、さまざまな問題をやはり詰めていかなければならないだろうという思いをいたしております。

 それから、産科につきましては、ちょっと状況が違うという認識を私はいたしております。産科については、平成六年、一万一千三十九人、平成十六年、一万百六十三人、若干減っております。ただ、出生数が百二十三万人から百十一万人に下がっておりますので、出生千人当たりからしますと、八・九人が九・一人の医師になっているということで、若干ふえていることになっておりますけれども、現実は、産科を標榜されているけれども婦人科という形に変わってしまっているのではないだろうか。これは医療事故の問題、それから二十四時間の体制の問題、それから女性医師のウエートがふえてきている、こういう問題があるだろう。したがって、これも、一つは集約化をしていかなきゃならない。

 それから、小児科の場合は診療報酬で手当てをすることができる。また、先ほどから申し上げている方向性として、今後の改定でも、小児科の救急についてはつけていくという方向で方向性を示していったらいいだろう。しかし、産科の問題につきましては、正直言って、分娩費用につきましては診療報酬ではございませんので、どういう形でそこへ手当てをしていくべきかという問題は、また違う切り口を考えなければならないだろう、こういう認識をしております。

 いずれにせよ、小児科、産科の問題について、私どももしっかり議論をしながらやっていかなきゃならぬということは感じているところでございます。

山井委員 今、過去から何人ふえたとか、今何人いるとか、そういう議論がありましたが、やはりこれは、ここ数年で一人の患者さんにかかる時間というのもすごく長くなっています、インフォームド・コンセントのことなど。また、例えば小児救急では、夜間に来るお子さんも非常にふえております。そういう意味では、やはりお子さんの数が減っているからお医者さんの数はそれほど多くなくていいということは言えなくなっているわけなんですよね。

 ですから、そういう意味では、次の質問に移りますが、これは先日、柚木議員からもお尋ねがあったことなんですけれども、今、医師の需給検討会をやっておられます。昨年の二月二十五日からされております。

 正直言いまして、きょうの議論を聞いていても、もはや医師全体が足りているか足りていないかというのは大きな問題じゃない。要は、産婦人科、小児科、あるいは麻酔科、外科、もっと言えば、福島議員からも話がありましたが、開業医じゃなくて勤務医が足りているのか、また青森にその方がいるのか、そういう診療科ごと、あるいは勤務医がどれぐらいいるのか、またどれぐらい必要なのかということを議論していかないと、トータルの医師が足りていますよ足りていませんよという議論をしていても、もう政策は議論できないということが明らかになったと思います。

 そこで、今のこの検討会、もうすぐ報告書が出るそうですが、要望があります。やはり、小児科、産婦人科等の診療科別の必要数、それと今の数、必要数と今の数を出すべきだと考えます。また同時に、開業医と勤務医に分けても、必要数と現状の数を。やはり開業医のことと勤務医の問題は別ですから、はっきり言いまして、小児科や産科の問題では、開業医をどんどんふやしても今の問題の解決にはつながらない部分があるわけですね。

 そして、あわせて要望しますが、それとともに、やはり女医さんが、小児科の若手の四割、産婦人科の三分の二以上となっています。そういう意味では、育児・出産休暇をとっている女医さんのことを、ちゃんととっている分をカウントするとか、先ほど申し上げた、やはり、当直で三十六時間連続勤務とかじゃなくて、交代制で、あるいは週に上限六十時間以内ぐらいという、労働基準法をある程度守れるという前提での必要数というものを出さないと、今の過重労働の人で人数を言いますと言っても、問題の解決にならないんですね。

 たくさん質問しましたが、診療科別、開業医と勤務医に分けて、そして必要数と不足数、そして女性医師のそういう休業の部分を見越して、また労働基準法に準拠するという前提で、こういう形で需給の数値を出さないとこれからの政策論議のもとにはなり得ないと考えますが、大臣、いかがですか。

川崎国務大臣 これはもう、一回御答弁したことでございますけれども、前回の医師需給の推計においては、医師全体の供給量と医療需要について、それぞれ上位、中位及び下位の三つの推計を行い、検討してもらいました。

 新たな医師需給の検討会、ここにおいて、なかなか難しいですよと私は前提を置きましたけれども、診療科別の必要数について、本当に出すことができるかどうか、それも含めて検討してほしいと。

 あわせて、今、勤務医と開業医の数も出してくれと、なかなか難しい御質問をいただきましたけれども、検討させることですから、それもできるかどうかやらせてみましょう。

 ただ、例えば、小児科医の問題一つ考えましても、先ほどもお答え申し上げたように、一次医療というものを全部救急でやるのかというところをしていきませんと、そういう意味では、小児科の開業医もこの中に少し加わっていただかなけりゃならない、いや、本当に小児科医だけなのか、ホームドクターを持って、最寄りの内科医に相談してもいいはずじゃないかという切り口もしっかりさせなきゃならない。

 実は、この間、私、子育てを支援している女性グループと懇談しまして、そのときに八〇〇〇番の話をしましたら、こうしたリーダー的な立場の人もだれも知らなかった。私、正直言って、びっくりしたんです。シャープ八〇〇〇番、知らないと。

 残念ながら、やはり、制度をつくりながら、まだ身が入っていないということも事実だろうと思います。八〇〇〇番の問題なり、地域の医師によるネットワーク、一次医療ネットワーク、救急医療ネットワーク、そして真に必要な二次医療としてのまさに救急体制、そういうものを数的にどう考えながら、今、山井議員の質問にどう答えられるか、検討はさせてみます。

山井委員 私が何を言いたいかというと、やはりこれ、地域間、診療科間、また開業医と勤務医間の偏在が問題になっているわけですよね。そこが問題の本質であるとわかった以上は、そこまでのデータを出さないと議論ができない。まさに川崎大臣おっしゃったように、この必要数と不足数の議論をしていくと、では、集約化も含めてどれぐらいの勤務医が必要なんだ、どれぐらいの勤務医になれば先ほど言った交代制や夜勤が組めるのか、そのことを厚生労働省が自分たちでやはりプランを立てないとだめなんですよ。

 今までは大学の医局がコントロールしていたということもあって、厚生労働省がそこまで出張らなくても、ある程度自然に何とか成り立っていたところがあったんですね。ところが、研修医制度も始まって、また大学の独立法人化の影響も受けて、それだけではコントロールができなくなってきた。そうなると、都道府県にただ任せるだけでは、先ほど古川議員からも話がありましたが、これはやはりきっちりコントロール、調整できないんですよ。

 そこをやはり厚生省が、どれだけ必要数があるのか、そして、将来、少子化のこの時代において、産科や小児科の医療を、一次、二次、三次、どうやっていくのかというプラン、計画をまず出さないと、今のこの法案だけではますます医療崩壊、お産難民、小児科難民、介護難民がふえていくだけです。ですから、そのことをぜひともお願いしたいと思います。

 次に、一昨日、公聴会でも大きな議論になりました、福島県立大野病院事件についてお伺いをしたいと思います。

 このことについては、きょうも新聞記事を載せさせていただきました。十二ページにあります。妊婦の方がお亡くなりになられまして、もうこのことに関しては心よりお悔やみを申し上げたいと思います。と同時に、このことは、全国の産婦人科医のみならず医師の方々に大きな衝撃を与えておりまして、仙谷議員初めこの委員会でも多くの方々が取り上げておられます。これについて、前回、無過失補償制度が必要だという質問をしまして、厚労省からも、検討するという答弁でございましたが、やはりこれは訴訟の問題が一つの非常に大きな問題となっております。

 そこで、きょうは、公聴会でも出たんですが、異状死の定義が不明確である、やはりこのことをはっきりしてもらわないと現場としては安心して医療ができないし、もっと言えば、難しい患者の方々を排除することにも、一歩間違うとなりかねないという深刻な問題になっております。

 この異状死の定義、どう考えているのか、厚生省いかがですか。

赤松副大臣 異状死の定義を明確にせよという御主張があることは十分承知をいたしておりますが、医師法第二十一条では、医師は、死体または妊娠四カ月以上の死産児を検案して異状があると認めたときは、二十四時間以内に所轄警察署に届けなければならないとされております。

 ここで言う異状とは、法医学的な異状とされておりますが、具体的にどのような死が異状死に該当するかについては、個々の状況に応じて個別に判断される必要があるため、死体を検案した医師が個別に判断している、こういう状況であります。

 なお、異状死の届け出の判断基準をお示しすることにつきましては、異状死は個々の状況に応じて個別に判断されるべきものであり、一律に基準を示すことは困難である、また、仮に一定の考え方で届け出対象となる異状死の範囲を限定した場合、その範囲に含まれるか否かの判断を行う必要があるが、その判断の公正さをどのように担保するかといった問題があり、委員十分御承知だと思いますが、現時点では困難であると考えているわけであります。

 ただ、一方で、医療事故等につきましては、警察ではなく第三者機関に届け出る仕組みが必要だ、こういう声も強く寄せられておりまして、諸外国では、一つは、警察に届け出が行われた上で、別の者が死因の調査等に当たる事例、あるいはまた、警察とは別の行政機関に対して届け出が行われて、その行政機関が死因調査等を行う、こういった事例があると承知をいたしております。

 死因究明制度の検討を行うためには、その体制の確保のあり方や中立性、公平性の確保の方法、異状死の届け出との関係など、課題の整理が必要であり、昨年より実施しております診療行為と関連した死亡の調査分析モデル事業の実施状況を踏まえ、死因究明制度についての検討を進めてまいりたい、こんなふうに考えているところでございます。

山井委員 このことに関しては、本当に、やはり安心して子供を産める国にしていかねばならない、そのためにもきっちりと党派を超えて取り組んでいかねばならないと思いますし、医療後進国であるアメリカのワシントン・ポスト紙に、日本ではお産で悩んでいると書かれるような情けないことにならないように、きっちりとこれは取り組んでいかねばならないと思っております。

 そして、次に、医療費適正化計画についてお伺いします。

 これもきょうの質問の流れの中なんですが、要は、入院日数を減らす、それで医療費を削減する、それだけでは余りにも乱暴過ぎる。ですから、国の基本方針の中に、入院日数が短くて退院させた人がすぐにまた再入院していないか、また、それによって医師や看護師やコメディカルの方々の労働条件が悪化していないか、何よりも患者の方々の満足度が下がっていないか、そういうこともやはりセットで判定基準にしないと、ただ早くほうり出せばいいのか、それだと安かろう悪かろうになって現場は大混乱しかねないわけですが、この点についていかがでしょうか。

赤松副大臣 山井委員の御指摘は、医療費適正化計画の中の一つの指標として、今おっしゃったような再入院率やあるいは患者の満足度、こういったものを入れるべきじゃないのか、こういう御提起だろうと思います。ただ、医療費適正化計画そのものについての指標は、午前中話題になりましたようなメタボリックシンドロームの有病者、予備軍の減少率とか、平均在院日数の短縮日数とか、言ってみればこういった指標が目標になる、こういうことでありますけれども、今御指摘の再入院率や患者満足度については、医療費適正化計画とは直接的には関係がないということで、医療費適正化計画における目標にしようとする考えはありません。

 ただ、医療費適正化計画が連携を図ることとされている医療計画の中におきましては、医療の質の向上を図るために、事業ごとの機能分化や連携によって地域の医療需要に即した医療提供体制を構築して、その結果について評価することにしておりまして、地域の状況を反映する指標の選定に当たっては、今後国が示すもの以外に、各自治体で独自に選定するものもあると認識をいたしております。

 そういった意味では、都道府県が策定する医療計画においては、今御指摘のようなそういう情報を住民、患者に公表することによって、その質を高めていくということが重要な場面が出てくる、こんなふうに考えております。

山井委員 医療費の過大な伸びをある程度抑えることはもちろんこれは必要ではありますけれども、そのことが患者さんの医療の質を低下させるということになったらこれは本末転倒でありますので、そこはきっちりとチェックをしていただきたいと思います。

 それに関連して、やはりこの入院日数短縮で、一番、ある意味で直接被害をこうむるのは看護師さんやコメディカルの方々と言われております。実際、十五ページに資料を載せましたが、新人看護師の九・三%、十一人に一人が一年以内に離職をしている。これは看護師学校、養成所百四十校分の人が一年間にやめてしまっている。なぜやめているのかというと、ここの資料にもありますように、専門的な知識、技術が不足しているが七七%、医療事故が不安であるが七〇%、また、看護基礎教育終了時点の能力と現場の能力のギャップがあるということが八割というふうになっております。

 そこで、簡単に申し上げますが、やはりこれは看護師の基礎教育を三年から四年に延長すべきではないか。もう一つは、卒後臨床研修を看護師の方々にも制度化すべきではないかと考えます。いかがですか。

川崎国務大臣 御指摘いただいた看護師の問題、方向性としては十分その方向を考えなきゃならないと思っております。

 医療の高度化等、近年の医療を取り巻く環境の変化に伴い、医療従事者の資質の向上が強く求められており、看護師についてもその資質の向上を図っていくことが重要であると認識しております。

 そこで、看護師の養成のあり方については、国民の看護ニーズに的確に応じられるよう、看護基礎教育のさらなる充実を図ることを目的として、本年三月より、看護基礎教育の充実に関する検討会を開催し、検討をいたしております。

 また、看護師の資質を確保し、向上させるためには、新人看護職員に対する研修について何らかの制度化をすることが必要であるとの検討会での報告を踏まえ、今後、その制度のあり方、実施に際しての課題等について検討を始めたいと考えております。

山井委員 きょうはどうしても勤務医の方々の話中心になりましたが、勤務医の方々だけじゃなく、看護師の方々そしてコメディカルの皆さんが、本当にこれは現場で必死になって、不十分な労働条件の中、頑張っておられるわけであって、やはりまずその方々がやめるのを防がないと、ただでさえ人手不足が、もっと不足をしてしまうということがあると思います。

 それでは次に、ちょっと違った質問ですが、最後のページにありますように、今回の政府案、高齢者の自己負担アップでありますが、では実際、次の三つの点で幾ら高齢者全体の自己負担がふえるのか、御答弁願いたいと思います。

 まず一番目。現役並み所得の高齢者の定率負担の見直しで幾ら年間ふえるのか。また、七十歳代前半の定率負担の見直し、一割から二割へで幾らふえるのか。そしてまた、高齢者の療養型病床における食費、居住費負担の見直しで幾らふえるのか。御答弁願います。

赤松副大臣 今回の制度改正によりまして、患者負担の見直しを行わなかった場合と比べまして、患者負担の影響はそれぞれ、平成二十年度で、御指摘第一点、現役並み所得がある高齢者の患者負担の二割から三割への引き上げ等は約一千百億円、二つ目の、七十歳から七十四歳までの高齢者の患者負担の一割から二割への引き上げは約一千二百億円、療養病床に入院する高齢者の食費、居住費の負担の見直しは約二百億円の増加を見込んでおります。

山井委員 このことだけじゃなくて、介護保険料も値上げになり、年金も引き下げになる、そういうダブル、トリプルパンチがずっと小泉政権下で続いているわけであります。その中でまたこの引き上げ。そしてまた、片や、米軍再編には二兆、三兆円のお金を簡単に出すということで、私は、明らかにこれはおかしいと思っております。

 では、川崎大臣、次の質問に移りますが、きょうの議論をまとめてみると、やはり医師不足問題、もちろんその医師不足の中身は、偏在の問題、診療科の問題、地方の問題ありますが、先ほどの古川議員の質問にもありましたが、やはりこれは都道府県に任せるだけではなくて、まさに、これこそ国がリーダーシップをとらねばならないと思います。

 今、お産難民、小児科難民、介護難民、そして、こういう医療崩壊。また、ある医師の方の話をかりれば、立ち去り型サボタージュ、逃散。もう過重な労働条件だからやってられない、開業医の方に流れてしまう、一人抜ければ残された人の労働条件はもっときつくなるからもっと逃げてしまう。この流れを食いとめることは都道府県に任せてできることではないと思います。

 ブレア首相は、サッチャー政権下十数年の医療費抑制政策の中で、まさにそういう医療崩壊の危機に瀕したときに、五年間で一・五倍に医療費をふやす、これによってGDP当たりの医療費は日本はイギリスに抜かれました。そして、かつ、医師を一万人ふやすということを目標に掲げて今取り組んでおられます。

 川崎大臣、やはりこれは、すべての医師をふやせとは言いませんが、小児科の勤務医、救急の勤務医、産科の勤務医とか、ピンポイントで勤務医をやはりふやしていく。そして、ふやす前提としては、いい労働条件でないと定着しないし、若い医師の方々も目指さないわけですから、そこには、最初の議論にもつながりますが、診療報酬だけではなくてやはり一般財源からも投入していく。

 そういう、国家として子供の医療をしっかり守っていくんだ、子育て支援と、まさに国家的な取り組みと国会挙げて言っているときに、現場を見てみたら、お産ができない、子供が病気になったらたらい回しになって亡くなってしまう、そんな現状をほっておくのか。今問われているのは、国として医療を守るのか、医療現場を国として守るのか、厚生労働大臣として守るのかという意思が問われていると思います。

 そのことについて、やはりこれは財源を集中投入していくべきだと私は考えますが、大臣、いかがでしょうか。

川崎国務大臣 そこは多分、民主党さんと私どもの考え方の基本的な違いであろうと思います。

 診療報酬というものを基本にしながら、各県がそれぞれ計画を立てていただくというのは、例えば小児科のお医者さんが足りないといいましても、東京と東北地域と私どもの東海地域とは、また実情が違います。それぞれの県で、本当に、小児医療に従事する人、産婦人科に従事する人がどういう形で必要なのか、これをきちっと積み上げていきませんと、国全体で産婦人科医が何人いればいいという話だけではうまくいかないというのは、ずっと議論を通してやってきたことでありますから、そういう意味では、やはり各県のお考えをまとめていただいた中の積み上げにしていかなければならないだろう、このように思います。

 一方で、科目ごとに私どもが目的を持ってふやすことができるかとなるとこれはなかなか難しい、正直申し上げて。

 したがって、言われるとおり、待遇とか診療報酬とかそういうところでインセンティブをしいていかなければならない。民主党さんはそこへ税をたくさん使えとおっしゃるけれども、私どもは、今そうしたような議論についてはなかなか難しい、このように感じております。

山井委員 これは、やはり、子供の未来にどれだけ国としてお金をつぎ込むかという大きな選択の問題、決断の問題です。与党はそこにはお金は使いたくない。それだったらそれで結構です。私たち民主党は、チルドレンファーストということで、そういう子供に関しては最大限サポートしていきたいと考えております。

 また、そのために、小児科の方々、産婦人科の方々、現場の方々の声を聞いてみると、出産のサポートをしたい、あるいはかわいい子供の命を救いたい、そういう志を持って多くの若い人が最初は志望されるらしいんですね。しかし、余りにも過酷な、先ほど言ったような三十六時間徹夜の勤務が月に何日もある、そして、月の平均の時間外労働が百時間、百五十時間。そういう中で、もともと持っていたそういう気持ちだけではもう続けられなくなる。やはりそれを、そういう志ある医療現場の方々を支える、また、ひいてはそのことによって患者を支える、それこそが私は政治の最大の役割だと思っております。

 その意味では、医療崩壊、そして、この医師不足の現状にこの期に及んでも十分な財源を投資しようとしないという与党、政府の今回の政府案に強い怒りを表明して、私の質問を終わります。

岸田委員長 次に、園田康博君。

園田(康)委員 民主党の園田でございます。引き続きまして、私からも、医療法等あるいは健保法の法案に関して質問をさせていただきたいと思います。

 そして、大臣、私、一問目で大臣に質問通告をさせていただいておりますドクターヘリに関連して、先ほどから気になることがありますので、質問通告はしておりませんけれども、いわゆる病院の集約化についてちょっと御答弁をいただきたいと思うんです。

 つまり、大臣は先ほど、根本的な解決としては集約化でないといけないんだというお話をされたわけなんですね。実際のところ、その集約化によって、先ほど来議論になっております医師の労働条件の多少の緩和もできるでしょうし、あるいは医師不足の偏在、診療科の偏在あるいは地域の偏在、そういった部分も、ある面、これを解消することに寄与するかもしれません。

 それは確かに、厚生労働省の皆さんが研究をされ、そして、その中から一つ導き出した答えであろうというふうに私も理解はいたしましたけれども、しかしながらでございます。ここからが問題なんですが、私の問題意識、この集約化をすることによって一体どういうことが起きるのかというところまできちっと皆さん方は念頭に置いておられるでしょうかということなんです。

 何でもかんでもいいから集約化をしよう、それによって今の問題点がすべて解消されるんだ、これによって根本的な問題まですべて解決されるんだというところに答えの帰着を求めてしまうと、そこから先が何も進まないということが起きやしないかと私は心配しているんです。

 何を言わんとしているか。すなわち、集約化をすることによって、当然のごとく大臣のお地元の部分でもそうですし、あるいは、私が資料で添付させていただいた朝日新聞の五月五日の記事でありますけれども、これは広島県で起きた事例でありますが、いわば集約化によって地域のお医者さんがいなくなってしまった、集まってしまって。集約化を進めようとしていることによって、一時間近くかけて車に乗って病院まで行かなければならなくなってしまった。

 さらには、これは三重県でもそうですね。集約化を促している、それによって地域の病院がなくなってしまい、あるいは、医師を派遣する大学にとってもそれを引き払う形になってしまった。そこで、尾鷲市民の不安、地域から産科の医者がいなくなってしまう、車で四十分の紀南病院まで行かなければいけない。

 本来ならば、地域の病院で診ることができたにもかかわらず、それが集約化によって、距離の遠いところまで行かなければならない事態も生じてしまうんだというところまできちっと念頭に置いて、この集約化という言葉を大臣がおっしゃっておられるのかどうか、そして、集約化することによって、どうなるのか、一体どういう形にしていこうとしているのか、そのことを最初に、恐縮ですが、大臣、御答弁をいただきたいと思います。

川崎国務大臣 私の地元の例が出ましたので詳しく申し上げますと、三万ぐらいの市が二つ並んでおります。それぞれにたしか市民病院か県立病院があったんだと思います。そして、そこに産婦人科医がそれぞれいらっしゃった。複数いらっしゃったようです。しかし、現実問題として一人一人の体制になってしまった。そこで、三重大学の方で、どっちかに集約しないと福島みたいなケースが起きる、したがって、片っ方に集約をしたんです。そうしたら、片っ方がいなくなった。したがって、高額をはたいて私の地元からお医者さんを誘致した、こういう案件でございます。

 そこはやはり、実は集約化の中で一番難しい議論であって、地元住民の理解を得ながら、言われるとおり、こういうケースになりますよ、しかしながら、医療の安心、安全というものを確保することから考えたら、医師が二人以上集結していないと危ない、この三重大学の考え方がうまく伝わらなかった。現実は一人でやっているわけですから、その連れてきた方は。片っ方はもう二人集約されているんです。そこで当然差がついてきます。場合によっては、医療現場でいろいろな問題が出るかもしれません、一人の医師で全部引き受けるという話になると。

 そういうことで、やはりそこは地元住民の理解を得ながらやっていかなければならない話なんだろう。十分そこの理解が進まないままでいったものですから、多分市長さんは突き上げられて、そして高額を出したという結果になった。

 したがって、そこはスピードを速くしろと言われても、やはりある程度時間をかけながら理解を求めながら進めていかなければならない。ただし、それは、先ほどから言っていますように、二十四時間体制の救急医療という部分は集約化しろと。かかりつけのお医者さん、開業医の皆さん方はもちろんいらっしゃるという前提の中でこの議論をさせていただいているわけでございます。

 私どもの小児科のうち、これは私の住んでいる地域ですけれども、小児科医さんはたくさんいらっしゃるんです。救急の市民病院に両方置いてほしいという地域の声、しかしながら一方で、救急の小児科医療は集約をしないと危ないよという一つの議論、その中で、これは説得し切れませんでしたから、両方に一人ずつのお医者さんを置いているという状態が続いている。これは、逆に集約化がうまくいかなかった。これは二つともうまくいったとは言い切れませんけれども。しかしながら、そういうことをやはり説得しながらやっていかなければならないのが我々の仕事ですね、知事さんの仕事ですね、市長さんの仕事ですねということは私どももしっかり言っていかなければならないんだろう。

 ですから、集約化によって、安心、安全にはなるけれども、言われるとおり、二十分で行けたところが四十分かかるようになる。そこは住民の皆さん方に御理解をいただけるような努力をしないと、全体の医師数というのは、それではあしたからふえますかといったら、ふえる話ではありませんから。あしたからふえる話ではありません。いや、全体の議論の中で、将来に向かってもう少し医師の養成をふやせという議論もあるかもしれません。しかし、その議論を取り入れたとしても、医師自体がふえるのは時間がかかることは事実でございますから、今なせることというのは、やはり集約化の方向を住民の皆さん方に理解を求めていきたい、こう考えております。

園田(康)委員 住民の方の理解を得るのは当然でしょう。そうでなければいけないわけでありますけれども、かといって、地域の医者がいなくなってもいいというようなことではないと思うんですね。

 だからこそ、大臣、集約化によって、確かに医療の安心、安全、そして患者の方に納得をしていただける医療、この提供体制というのは我々も一緒に当然のごとくやらなければいけないという意識を持って法案を提出させていただいておりましたけれども、しかし、大臣、その後のことをちゃんとフォローアップできていますかということなんです。

 つまり、集約化をすることによって穴があいてしまうところもどうしても出てきますよね、大臣もお認めいただいたように。二十分で行けたところが四十分かかってしまう、あるいは一時間かかってしまうことになる。そうなったときに、それに対する理解だけしてください、してくださいと言っても、現に一時間やそこらぐらいかかってしまうときだってあるんですね。

 この広島の例でいくと、私もこの現場は見ておりませんけれども、中国山地の山合いを一時間弱、車で走らないとその病院まで行けなかったという事実で、途中でお産をしてしまった、そういう事実が現にあるんですよ。では、このセーフティーネットを一体どうやって考えるんですかということなんです。

 集約化をするのはいいんです。やっていかなければいけないと思います。私もそれは認めましょう。認めますけれども、それと同時に、穴があいてしまう部分に対してセーフティーネットを張ることを最初からやはり同時に考えておかなければいけなかったんじゃないですか、政府としては。それをやらずして、あるいは考えずして、とにかく集約化だけすれば、今の提供体制は何とか、批判を浴びていることに対する何らかの形をつくることはできるでしょう。

 確かに、あしたからすぐに医者がふえるとも思っていませんし、しかしながら、これから戦略的に歯どめをかけていく方法であるとか、あるいは、小児科であるとか産科であるとか、そういったところに投下をしていくことも一方では考えていかなければいけませんが、それによってすぐにふえていくとは、だれもそこまで御無体なことは言っておりません。

 したがって、今、穴があいてしまうところにどうやってセーフティーネットを張るかということをちゃんと考えてくださっているんですかということなんです。

川崎国務大臣 私の地域のケースでいえば、先ほど申し上げたように、連なっている両市でございますから、住民の理解が得られれば、二十分のところは四十分になる、しかし医師二人が常駐するスタイルになる。それと、一人一人分散させておくのとどちらがいいか、これは本当に三重大の専門家が随分検討されたようです。しかし、やはり集約化した方がいいという結論の中で持っていった。しかし、現実はできませんでしたから、三人の体制になっているというのは事実だろうと思います。

 さあ、それでは、一人置いたことがセーフティーネットになるかどうかという議論は、また詰めていかなきゃならぬことですね。一人置いたことによって、それがセーフティーネットになるのか。そういう意味では、医療の質の問題で、何をもってセーフティーネットか、どこまでセーフティーネットをしかなきゃならぬかということになろうかと思います。もちろん、その市が無医村になるという話ではありません。開業医もいらっしゃると思います。それは違う。また内科医もいらっしゃる。そういう体制の中で、もちろん市民病院もあるんですよ、当然あるんです。しかし、産科ということについては集約化をしたということで何とか理解を得ていかなきゃならぬ。

 一方で、一時間、二時間かかっちゃうんだというところについてまで無理して集約化できるかとなれば、もう委員が御心配されるような話だろうと思います。そこはどうするか。定期的に派遣をしていくのか、あるところへ派遣をしていくのか、そんなことも考えていかなきゃならぬだろうと思いますけれども、それは個々の課題でございますので、まさに私どもだけで判断するというよりも、前々から申し上げているとおり、地域の事情を知る知事さんや、また市長さんの意見を聞きながら集約化というものを考えていかなきゃならぬだろうと思いますし、私どもがいろいろ言いましても、何といったって県が地域の事情をしっかり掌握しながらやっていくということになろうと思います。

園田(康)委員 恐らく地域事情によって、いろいろ事情があるんだろうと思います。

 そこで、私も、これが打ち出の小づちであるとか、すべてセーフティーネット、では、おまえはどう考えているんだと言われると、これによって劇的な解決策というのは私自身も持っておりません。ただ、その一つのツールとして、前回も大臣にも少し最後の方に申し上げさせていただいて、きょうも午前中、田名部議員からもありました、ヘリコプター等を利用した救急医療の搬送体制、それを使うことによって、この地理的な部分のデメリットを劇的に私は解消することも一つできるものであるというふうに考えているんですね。

 前回の私の質問で、このドクターヘリ、先ほど大臣も、ドクターヘリというものは、ヘリコプターを活用した救急医療体制の中では十点満点で例えれば十であろう、それから、他のヘリコプターを利用したものであるならば、そこに医師が同乗する、そういったものは七、八であろうというようなお話をいただきました。そうです。私の目指しているものとしては、やはりドイツ型のタイプを目指しているわけであります。ヘリコプターが全国的に展開をし、五十キロ圏内で一台、しかもそれは十五分で飛んでいけるという体制をとっておりますから、どこにいても十五分で行って、医者が乗って、そして現場に行き、さらにはそこから初期の医療体制を整えながら病院に搬送するということができる体制が整えられておりますよね。そういった形を最終的には目指したい。

 当初、ドクターヘリの促進事業に関しては、厚労省もその有用性を認めていただいて、あるいは大臣も先般の発言では有用性を認めていただいて、そして、できればこれを行っていきたい。しかしながら、それに基づく、いわば補助金あるいはそういった予算がきちっとした形でついていないところが僕は今のこの促進事業がなかなか遅々として進まない原因の一つではないかというふうに考えているわけなんですね。

 したがって、有用性は、これは大切ですね、大切ですねと一方では言っておきながら、それがきちっとした形で配備をされていない部分に関しても、ではどうやってこれを配備していこうというふうに考えていくのか。それは、では地域で考えてくださいとおっしゃるかもしれない。

 しかし、私も何度も大臣と三位一体の改革の論議をこの場でもやらせていただいておりますけれども、地域でできないことは国でやるしかしようがないんですよ、今の段階では。市ができないことは県がやる、県ができないことは国がやる、今の時点でですよ。今の時点でそういう財源的な形の裏づけの担保がない限りにおいては、国がしっかりとした財政措置を行って、そういう体制を整えるように、地域に対して、あるいは県に対して、あるいはそれをもっと大きくしたブロック単位でもいいですよ、そういうところに対して、こういう体制をとってはいかがですかということをちゃんと絵面をかいて、ビジョンを描いて厚労省がお示しをするということを考えていただけないものでしょうか。どのように考えていらっしゃいますか。

    〔委員長退席、北川委員長代理着席〕

川崎国務大臣 今、ドクターヘリとして十機が運航されております。私の県でいえば、三重県と和歌山県と奈良県、共同運航という形になっている。したがって、そういうものを加えると、十五県ぐらいが今カバーされているんだろうと思います。そこへ加えて、例えば先ほど議論しました青森のように、防災ヘリを使ってやろう、こういう提案もある。長崎のように、海保の協力を得ながら離島対策をきちっとやろうという地域もある。

 ですから、そこを全部今きちっと精査しろと言っております。どのぐらいのところで、要は、常にそういう体制にあるのか、知事か何かが命令したときだけがそういう体制にあるのか、常にそういう体制をしけているところはどのぐらいありますかと。

 次に、知事の命令ならば、多分すべての県が知事の命令ならやるんでしょう、そこまでいっているのではなかろうかなと思うんです。それをもう少し高めるということをどう考えていくか。

 そうすると、補助金を用意するだけでいいかというと、補助金を用意していても自己負担がありますから、なかなかついてこない。そこをどうするんだということになると、最後は、全体がネットワークができ得れば、一定地域のためじゃなくなれば、診療報酬というものの体系の中に入れられないかということを十分検討しなきゃならぬだろう。

 というのは、この議論をしていきますといつも救急車の問題になって、救急車は入っていませんよね、医療体系の中に入っていません。それは各地域が持っていますので、その中で総務省を中心に地域で苦労してもらっておるわけでございますけれども、しかし、過疎医療なり救急医療という切り口をしたときに、このドクターヘリの経費というものが診療報酬体系の中にきちっと位置づけられないだろうかというのは実はこれからの議論だろうと思うんです。今まではできないと答えてきました。私は、正直言って、もう少し掘り下げてみたい、このように思っております。

園田(康)委員 そうしますと、大臣、確かに将来的にはそういう方針をお示しをしていただいているんですけれども、そういうネットワークができたときにということをおっしゃっているわけですね。そのネットワークをつくるためにも、今の補助金、例えば、今、国二分の一、県二分の一という形になっています。それをもう一度、国が三分の二に引き上げて、これを国の施策としてきちっと進めていくというようなことも考えていかなければいけない。

 今現に、補助金制度の中で基準額、一機当たり一億七千万円で基準額を設定しておられますね。これのうち、一億四千万円が運航費にかかっていて、あとの三千万円が医師確保等の部分に使われている額になっております。

 でも、医師を確保するのも恐らく大変だろうし、あるいはその施設整備をするのも大変だろうし、運航するのも大変だろう。ここの部分をもう少しきちっと、運航費なんかも今地域では赤字を覚悟でやっているわけなんですよ、現に導入してやっているところも。それでも、先ほどの医者の使命感ではありませんけれども、この体制が一番、僻地であるとか、あるいは山間部、あるいは集約化によっていなくなってしまったそういう医師不足のところに対しても有益だということで、その地域、都道府県は頑張ってやっているんですね。そういう部分に対して国がもっと手を差し伸べるということも真剣に私は考えてほしいというふうに思うわけであります。

 したがって、先ほど我が党と政府とでは小児医療に関して少し見解が違うであろうという大臣からのお言葉でありましたけれども、我々としては、ここの今の現状において、これだけの介護難民を生んでしまう、あるいは小児難民、あるいは産科難民を生んでしまう、お産難民を生んでしまう、そういう状況になっているときには、やはり国がこれは緊急事態という形できちっとした施策を打ち出していくべきである、投下をしていくべきであると考えたからこそ、今回の民主党の法案提出というところに至っているわけなんですね。

 その中には、当然のごとく、このヘリコプターの配備のこともきちっとうたわせていただいているわけであります。その点をきちっとこれからもう一度御認識をしていただいた上で、そういう施策をさらに考えていただきたいというふうに思うわけであります。

 きょうはほかに大きな観点から少しお話をさせていただきたいと思っておりますので、次の質問に移ります。

 ごめんなさい、ちょっと質問の順番を変えます。先に政府管掌健康保険の公法人化の問題についてお伺いをしたいと思います。お配りをしました資料でございますが、五ページ、資料五と書かれた部分であります。

 いわゆる「社会保険庁改革の在り方」におきまして、ここでは今の社会保険庁を廃止して解体し、国民の信頼を得ることのできる新体制を設立するという形になっております。今これは医療制度の改革の話をしているわけでありますから、いわゆるこの社会保険庁の見直しの施策については、これがいわば終わった後なのか、あるいは一つ置いてかはわかりませんけれども、この後に控えている法律の一つであるわけでありますね。

 したがって、この「社会保険庁改革の在り方」の中で、いわゆるねんきん事業機構というものがこの中で書かれるわけでありますが、このねんきん事業機構に係るもので、いわゆる医療制度に係るところにおいては、政管健保の徴収事務をこのねんきん事業機構が行うという形になっているわけなんですね。この「社会保険庁改革の在り方」の中ではそういう提案をされている。

 ということは、この政府が出してきている今回の政府案の健保法の改正が仮にこのまま通ったとするならば、その後にこの改革案が出てきて、法案が成立したならば、ねんきん事業機構というものが政管健保の徴収事務を行うという形になるものだろうというふうに理解をするわけであります。

 いわばこの政管健保については、今まで社会保険庁がやっていたわけでありますけれども、国とは今回切り離した全国単位の公法人を保険者として、まず全国健康保険協会を設立いたしますね。それがこのねんきん事業機構の上にある全国健康保険協会と言われるものでありますが、この全国健康保険協会がいわゆる財政運営については都道府県ごとで行って、保険料も設定をする、ここの部分において、全国一律であったこの政府管掌健康保険の保険料率が、それぞれの県ごとによって、人口あるいは保険形態によって保険料率が変わってくるわけなんですね。

 まず、その辺に少し私は懸念を持っているわけであります。さあ、果たしてこの中において、人口構成や所得の格差、今言われているその所得の格差というものが、これは政府は格差ではなくて差異だとおっしゃっておるわけでありますけれども、保険者の努力によってどうしても是正ができないものにおいては財政調整を行うというふうに法律の中では規定していますね。この財政調整とは、内容はどういったことをやろうとしているんですか。

水田政府参考人 お答えいたします。

 ただいま委員から御指摘ありましたとおり、全国健康保険協会におきましては、都道府県単位の財政運営を基本とする。都道府県ごとに地域の医療費の水準を反映した保険料率を設定することとしてございます。

 ただ、お話ありましたとおり、人口構成あるいは所得の差異を単純に保険料率に反映させますと、高齢化が進んでいる地域につきましては医療費が高いということがございます。また、所得水準の低い地域におきましては保険料収入が少なくなってしまう……(園田(康)委員「簡潔に」と呼ぶ)はい。

 こういった保険者の努力で対応できない部分につきまして、都道府県間で財政調整を行うこととしているわけでありますけれども、具体的に申しますと、人口構成が全国並み、平均的な人口構成になっていること、あるいは所得につきましても全国平均であるというものを一つ基準といたしまして、各地域ごとにその標準的な、言ってみますと所要保険料というものを計算いたします。それと現実との比較をいたしまして、高齢化が進んだ都道府県や所得の低い都道府県につきましては調整額を受け取る、それから年齢構成の若い都道府県あるいは所得の高い都道府県につきましては調整額を拠出するということで、法人全体としての財政調整を行うということを考えているわけでございます。

園田(康)委員 そうすると、基準額を設けて、その上限と下限を設けて、そこである一定よりも上のものからはこれを徴収してくる、それを下限のところに持ってくるということでよろしいんですか。そういう意味ですか。そうではない。

水田政府参考人 保険料率に上下限を設けるということではございませんで、平均的な所得、平均的な人口構成を基準にして、それと現実の姿の差異の部分を、それを拠出したり拠出を受けたりするということで、ある幅を持ったものではございません。

 ただ、ちょっとわかりにくいかもしれませんけれども、今回の措置をとることによって急激に保険料負担が上がる地域につきましては、これは経過措置として上限を設けて、上限と申しますか、負担調整をしていこうという経過措置はございますけれども、全般といたしましては、そういった保険料のゾーンを設けるというような発想はございません。

園田(康)委員 そうしますと、その基準額というものを決めるのが、恐らくこの中央にある運営委員会というところで決められるものかなと私は理解をしているわけでありますけれども、ここに、組織としては「運営委員会を置く。」というふうにあるわけで、まず、事業主が三名、被保険者が三名、学識経験者が三名。この構成メンバーというものは、どういう方々の代表者が任命されると考えてよろしいんでしょうか。

 すなわち、この政府管掌健康保険の場合は、事業主といってもさまざまな業種があって、あるいは被保険者といってもさまざまな被保険者の方々がいらっしゃるわけでありますけれども、その中から三名を代表して選んで中に入れ込むということからすると、多少私はこの選任も難しいのではないかと。これは恐らく大臣が任命することになるわけでありますけれども、そうですね、大臣が任命するんですよね。違いましたか。ごめんなさい、それも含めて、だれが任命し、そしてどういった方々がこの運営委員会の中に入るのか、これを少し簡潔に御答弁願います。

水田政府参考人 ただいま委員御指摘のとおり、運営委員会の構成メンバーにつきましては、関係事業主三名、被保険者三名、学識経験者三名を厚生労働大臣が任命するということになってございます。

 事業主及び被保険者の委員につきましては、各支部で評議員として健康保険事業の運営に参画されている方など、事業主、被保険者の代表としてふさわしい方を選任するということでございまして、言ってみますと、支部の段階の評議会と中央の運営委員会で、ツーステップで選任するということを考えているわけでございます。

 それで、もう少し先までお答えをいたしますと、この全国健康保険協会、それでは評議員はどうするのかということでございますけれども……(園田(康)委員「支部ですね、各地域の」と呼ぶ)はい、各都道府県ごとに設けられる支部でございますね。それは支部長が委嘱をするわけでありますけれども、また具体的な人数についても定款で方針を決めることとなるわけでありますが、評議員のうち事業主につきましては、地域における中小企業関係の経済団体から推薦を得るということを考えてございます。

 他方、被保険者につきましては、これは中小企業の方々でございますので、必ずしも、どういうふうに選ぶかと、今委員御指摘のとおりの悩みがございまして、一つには、健康保険に関する広報でありますとか保健事業、それからモニター、こういった事業に協力していただいている被保険者につきまして、健康保険委員という形で委嘱をいたしまして、この中から選任するという方法、それからもう一つは公募による方法ということを検討してございます。

 それから、評議会、運営委員会ともに学識経験者ということでございますけれども、それぞれ、これにつきましては必要な学識経験を有する方を評議会では支部長が委嘱する、それから運営委員会につきましては厚生労働大臣が任命する、このようなことを考えているところでございます。

園田(康)委員 まだちょっと内容が詰め切れていないようでありますけれども、これは恐らくこの法案の後、詳細なことは政令で決めていくという形になっていくんだろうと私は理解をしております。

 ただ、この運営委員会の部分に関しては、これは大臣の任命でよかったんですよね、大臣が任命するという形になっているわけでありまして、この任命についても、公募の中からという形もあり得るのかなというふうには思っておりますけれども、もっといわば被保険者であるとか、そちらの声が反映されるという部分も考えていかなければいけませんし、いわば、今現在において、ただ単に政管健保だけではなくて幅広い住民代表というような形もこの中にこれから入れていく必要があるのではないか、声も反映していく必要があるのではないかと私は思っているんですが、その点はこれから内容を詰めていく段階で考えていただきたいと思うわけであります。

 それから、この全国健康保険協会の財政運営の安定を図っていかなければいけないという形になっているわけでありますけれども、ここにおいて準備金を用意するというふうに規定されているわけでありますが、まず準備金の用途と、それからどのぐらいの額をこの中で積み上げていかなければいけないのかということをどのような目安で考えていらっしゃいますか。御答弁ください。

水田政府参考人 この全国健康保険協会におきまして、医療費あるいは保険料収入の変動に備えまして一定の準備金を積み立てることとしてございます。

 その規模でございますけれども、これは健康保険組合の準備金の取り扱い、あるいは保険料収入と保険給付に期間のずれがあるということを考慮いたしまして、おおむね給付費等の一カ月分程度を想定してございまして、この積み立てが円滑に行われるよう、段階的に積み立てていくということを考えているわけでございます。

 保険給付一カ月分に相当する額といたしましては、大体五千六百億円ぐらいかなというふうに考えてございます。(発言する者あり)

園田(康)委員 五千六百億円だそうです。一カ月分ですね。

 ただ、今の政管健保の事業安定資金、ここの場でいくと、十六年度末でこれは一千三百億円しかないわけなんですけれども、これが念頭にあるわけでは全然ないわけですよね。そうしますと、恐らく十三年度か十四年度末、ここの部分の水準で物事を考えるということで給付の一カ月分、これをきちっとこの中でとられるということでありますから、それはきちっとこれから明確にしておいていただきたいというふうに思うわけであります。

 それから、この全国健康保険協会の設立に係る措置といたしまして、要は、健康保険事業に関して国が保有している資産と負債、これは両方、政令で定めるものを除き協会が継承するというふうに法律上なっておりますね。第五条でしたでしょうか。この現在想定されている政令で定めるもの、つまり、それが除かれるわけですから、ここの部分は、新たな協会が設立されたらそこに継承されていくという資産と負債について、今どのようなものを想定されていますか。

青柳政府参考人 ただいまお尋ねございましたように、全国健康保険協会は、健康保険事業に関しまして国が有する権利及び義務のうち、資産及び負債というふうに法律上は書いておりますが、政令で定めるものを除いたものを承継するということでございます。

 具体的に例示を申し上げますと、例えば継承を想定しているものの例示として挙げますと、保険給付に係る未収金でありますとかあるいはシステムのソフトウエアといったものが資産として想定されます。また、負債といたしましては、逆に保険給付に係る未払い金でありますとか、事業運営安定資金、先ほど委員の方からお尋ねがございました積立金という形で現在持っているお金。

 それから、承継を現時点で想定していないものといたしましては、一番大きなものが、昭和四十八年の健康保険改正あるいは五十九年のいわゆる日雇い健保を廃止したとき、それぞれに生じましたいわゆる棚上げしております累積債務、これは負債でございますが、これは承継をしないというふうなことで考えております。

園田(康)委員 そうすると、特別会計の中で貸借対照表を見ると、これは負債で一兆四千八百億がこの中で計上されているわけですが、これはつまり協会はその負債として継承していかないということでいいんですね。

青柳政府参考人 最終的にどのようなものを継承するかは、先ほどお尋ねの中にございましたけれども、政令で具体的内容を定めるということでございますが、現時点におきまして、今お尋ねのございました政府管掌健康保険の累積債務一兆四千七百九十二億円につきましては、承継することは想定しておりません。それから、保険料で償還することも考えておりません。

 しからばどういう取り扱いをするのかということに問題はなろうかと思います。

 議員も御存じのように、現時点におきましては、本来一般会計で繰り入れをすべきものについて、一般会計の財政上の厳しさを踏まえまして財政融資資金から借り入れを行い、そのいわば元本が膨らまないようにということで、利子相当の全額は一般会計から繰り入れをするという形で補てんをして毎年度の予算を乗り切っておるわけでございますが、これらの累積債務の取り扱いにつきましては、いずれにいたしましても、今後財政当局とよく協議をして対応してまいりたいと考えております。

園田(康)委員 ということを言い続けて一体何年かかっているんでしょうか。

 保険料から借金の返済には充てないというところはいいんでしょうけれども、一般会計からこれをきちっと税で返していかなければ、借金は借金として返していかなければいけないというところまではいいんですけれども、後は、恐らく財務省がうんと言ってくれないというところの苦しい胸のうちなのかなという気はいたしますけれども、その辺は、今先ほど運営部長くしくもおっしゃったけれども、棚上げ債務としてそのまま置いていくんだというふうに平気でおっしゃる。つまり、このままほうっておいてもいいという感覚でいらっしゃるんですよね。そういうわけじゃないですよね。これもやはりきちっとした、借金として返すべきときには返していかなければいけない。

 そうなったときに、もう一つ、これは後で時間があれば触れますけれども、いわゆる厚生年金の特別会計の、あそこの一兆五千億の福祉事業に使っているお金、この特別会計も、これも返さなければいけないものである。少しやりくりが特別会計の中で複雑になり過ぎてしまっている部分はあるというふうに私は思っております。これは問題提起だけにしておきます。

 それから、次の質問に移りますけれども、今回の五条の第二項で、この協会が管掌する健康保険事業の業務のうち、被保険者の資格の取得及び喪失の確認、それから標準報酬月額及び賞与額の決定並びに保険料の徴収並びにこれらに附帯する業務は、社会保険庁長官が行うという形でありますから、先ほど資料の五で提示をさせていただいた図でいきますと、上にある全国健康保険協会、これはいわゆる保険料の決定あるいは適用をやり、そして下のねんきん事業機構と言われる、今の社会保険庁ですよね、これが恐らくくらがえというか衣がえしてこのねんきん事業機構というものになるんだろうというふうに思うわけでありますが、このすみ分けについてちょっとお伺いをしたいんです。

 まず、協会とこのねんきん事業機構と言われる、年金といってもこれは平仮名で「ねんきん」と書かれているわけですが、大臣はこうした方が親しみやすいというふうに言っておられるわけでありますけれども、私は決してそんなものにはだまされるものじゃありませんが、この協会とねんきん事業機構、この位置関係というか法的な関係というものは一体どういう形で行うんでしょうか。すなわち、このねんきん事業機構が行う徴収事務というものは本来この全国健康保険協会が行うものであって、それをこのねんきん事業機構が請け負って徴収業務を行うという形であるのか、いやそうではないということであるのか。その辺は法定上どういう形で想定されたんでしょうか。

青柳政府参考人 現在、法律におきましては、社会保険庁が適用、徴収、保険給付などの健康保険事業の全般的な業務を行っているというところでございますが、今回の改正におきましては、このうち保険料率の設定あるいは給付等を国から切り離しをいたしまして、全国健康保険協会が行うこととし、適用、徴収の業務は引き続き国において行うということにしたものでありまして、いわば機能分担。したがいまして、業務の委託とかそういう関係ではないというふうに御理解をいただければと思います。

園田(康)委員 そうしますと、どうして徴収事務、つまり、ねんきん事業機構という形をとっていらっしゃるわけですよね。そうすると、ねんきん事業機構という形のネーミングですから、これは当然のごとく、私は、年金業務にかかわるものをこの場でやって、この全国健康保険協会は今社会保険庁の中でやっている政府管掌健康保険、この業務を行うものであるというふうに理解をしたんですけれども、そうではないということなんですか。

青柳政府参考人 改正後の健康保険法におきます保険者は、あくまでも全国健康保険協会というふうに整理をしております。

 しかしながら、適用、徴収の業務につきましては、現実に、現在もそうでありますけれども、厚生年金と政府管掌健康保険は同じ適用事業所に対して、被保険者もこれはほぼ重なっておるということがあるわけでございますので、あえてこれを分離いたしますと、いわば二重に人員、経費が必要になってくるという不効率が生じる。したがいまして、まずは現実的に厚年、健保を一体として適用し、これを運用することが被保険者あるいは事業主にとっても負担の軽減になりますし、効率という観点からも適切ではなかろうかと。

 しからば、国が法律上いわばその業務を分担するという形で今回法定化をさせていただいているということでございます。

園田(康)委員 その辺が多分きのうも私も議論をさせていただいたんですけれども、レクに来ていただいた方と。

 今運営部長がおっしゃるには、適用と徴収業務、これは今一体で社会保険庁の中でやっていらっしゃるわけですね。したがって、それを分担するというものは非効率になる。

 したがって、なぜかわからないけれども、そこからが私は理解ができないんですが、今回、機構見直しの中において、ねんきん事業機構の中では、業務分担として、徴収業務の方はそれは政府管掌の健保もそれから年金業務もやるということを言っているわけなんですよ。一方、保険料の設定と適用の部分だけは新しい健康保険協会の方に振り分けるという形をとっていらっしゃるわけなんですけれども、だったら、二つに分けてやることが非効率的というのであるならば、この全国健康保険協会というものも一体的に運営すればいいじゃないですか。

青柳政府参考人 私の説明が不十分で誤解があれば大変恐縮でございますが、適用と徴収はいわば仕事の流れとしては一体のものでございますので、適用、徴収業務はねんきん事業機構において一体的に行わせていただいております。したがいまして、給付に係るもの、それから保険料率の設定、これが全国健康保険協会の方で行われる仕事ということになります。

 これをなぜ一体的に行わないのかということは、まさに今回提案させていただいております医療改革法のいわば本質に係るところでございまして、医療保険については、各都道府県単位ごとにこれをいわば分割してその財政収支を、運営することにより、より効率的な機能が発揮できるであろうということがこの背景にあるわけでございますので、これを年金とは分け、その都道府県単位ごとの運営が可能になるような形をとるということをさせていただいているということにつき、御理解をいただきたいと存じます。

園田(康)委員 私はもう少しその辺の法的な位置づけが明確になっていないもので、あと残り時間が少なくなってきたので次の質問に関連して移りますけれども、ちょっと今の点はペンディングさせていただきます。

 では、百歩譲って、法的な部分で適用、徴収業務についてはねんきん事業機構が行うというふうにやっているわけなんですけれども、具体的にどういう人員がどういう形で業務を行うんでしょうか。

青柳政府参考人 まず、具体的な事務につきましては、流れを申し上げますと、保険料を納入していただくための告知書を事業主の方に発送して、保険料をきちんと徴収する。そして、二番目の段階として、納期内に保険料の納付がなされないような事業所が仮に生じた場合には、督促状を発出いたしまして、必要に応じて職員が事業所に対して納付指導を行う。さらに、最終的には、保険料の納付が期待できないような事業所に対しましては、財産の差し押さえ等の滞納処分を行うというような形で仕事というのが流れとして流れるわけでございます。

 なお、どのような人員がというお尋ねにつきまして、例えば、現時点で、この健保、厚年の徴収、適用に当たっている人員規模を申し上げれば、定員で三千七百名規模でこの仕事を行わせていただいておりますということをつけ加えさせていただきます。(園田(康)委員「窓口は」と呼ぶ)窓口は、現在の社会保険事務所が、これは名前を少し新しいねんきん事業機構に即したような形で、しかも国民に親しみやすいような名前をいずれ公募させていただきたいと思っておりますが、この窓口においてこの仕事をさせていただくということでございます。

園田(康)委員 その際に、事務費、経費がかかるわけでありますけれども、ねんきん事業機構がその保険料を徴収してきます。そうすると、そこに事務費が発生するという形で、ねんきん事業機構が政管健保の保険料から事務費を取って、その残りのものをこの保険協会の方に渡すというふうに法律上なっているんですけれども、この理解でよろしいでしょうか。

 なおかつ、それでよければ、この事務費用が一体幾らになるのか。つまり、ねんきん事業機構が一体幾らの事務費を徴収するという形になるんでしょうか。

青柳政府参考人 二つお尋ねがございました。

 まず最初のお尋ねにつきましては、正確に申し上げれば、適用、徴収に係る事務費の中には、国庫負担が一部されるということが予定されておりますので、この部分を除きまして、徴収した保険料から事務費相当分を控除したものをねんきん事業機構が健康保険協会に交付をするという仕組みになるわけでございます。

 それから、その場合に、どういういわば案分になるのか、こういうお尋ねがございました。金額につきましては、現在、実は政府管掌健康保険の事務費、これは国庫負担ベースで申しますと一千三十四億円というのが厚生年金と政管健保合わせての職員の人件費及び内部管理事務費の経費として使われておるものでございますけれども、これは、どういう形に今後なるかということについては、具体的には各年度の予算の中できちんと決めていかなければならないというふうに考えておりますけれども、その意味では、予算の範囲内で負担するということで、財政当局とよく協議をして決めていきたいと考えております。

園田(康)委員 そうしますと、今の政府管掌健康保険の国庫負担額が一千三十四億円ですね、これが事務費の約八四%、全体の八四%を占めているわけですね、今の国庫負担。つまり、保険料負担額は二百二億円で、国庫負担額が一千三十四億円、今の現状の組織の中においては八〇%以上を国庫負担で占めている、ここまではいいですよね。

 では、今度新しいねんきん事業機構になったときには、これを、私の懸念です、全く間違っていたら申しわけないんだけれども、今回のこのねんきん事業機構においては、どのぐらいの割合の国庫負担がこの事務費の中に入っていくというふうに思われていますか、試算されていますか。

青柳政府参考人 私の説明がちょっと不十分であったかもしれませんので、まず、実際に厚生保険特別会計の業務勘定においてどういう金の流れになっているかを簡単に申し上げさせていただきます。

 十八年度の厚生保険特別会計の業務勘定、ここにおきますいわば業務取扱費としては、人件費と事務費を合わせたものがトータルで千五百九十億円になっております。そのうち、先ほど申し上げたように、一般会計が約一千三十四億円ということで、それ以外にいわば各勘定から保険料が一部投入されている。先ほど先生がお尋ねの中でおっしゃったように、健康勘定からは二百億のお金が入っておりますが、それ以外に厚生年金の方の年金勘定から三百億を超えるお金が入って、全体でこの人件費、事務費が賄われているという形が現在の姿でございます。

 したがいまして、将来の姿を考えるときに整理をしなければならない問題が二つありまして、まず一つは、国庫負担と保険料の関係をどう整理するかという問題、それからもう一つは、現在いわば一体で行われております厚生年金と政管健保、これは主体が国ということですので特に区別する必要はこれまでございませんでしたけれども、今後は、いわば国とそれから全国健康保険協会に分かれるということになりますので、その案分をどうするかということも考えなければいけない。

 したがいまして、以上の二点をどのようにするかということについては、具体に予算を定める際に、きちんと整理をしていきたいというふうに考えております。

園田(康)委員 これは、恐らく今後のねんきん事業機構の法案の中ででももう少し詳しく審議をさせていただきたいと思うわけでありますが、このわけのわからないというか、そういう案分を用いて、何か健康保険の、組合健保の方から、人件費の事務費というものが流用されるんじゃないかという私は懸念を持っている。したがって、今後のこの健康保険法の改正案の中においても、しっかりと詰めさせていただきたいというふうに思っておりますので、よろしくお願いを申し上げて、質疑時間が終了いたしましたので、質問を終わりたいと思います。

北川委員長代理 次に、高橋千鶴子君。

高橋委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 大臣が、本日の委員会の冒頭の質疑の中で、東北は全体数で医師不足だと述べられました。この間、医師が足りている足りていないという議論が盛んにされてきたわけですが、東北においてはどう見ても不足している、そういう認識を述べられたのかと思っております。その東北の議員の一人として、きょうは、医師、地域医療問題について伺いたいと思います。

 私が初めて国政選挙というものに挑戦したのが十五年前なんですけれども、当時、青森県内は六十七の市町村がございまして、その市町村を少しずつ歩き始めたときに、どこへ行っても首長さんが訴えられることは、自治体病院の問題、地域医療の確保、医師不足、そして介護保険、そういう問題でありました。住民と身近に接していて、住民の実態がよくわかっている首長さんだからこそ、そうした医療、福祉の問題で心を痛めていらっしゃる、悩んでいらっしゃる、そういう思いでおりました。

 下北半島の首からちょっと上のところに大畑という小さな町がありましたが、そこで救急救命士を同乗させる高規格救急車、今では当たり前になっておりますが、それを初めて導入したというので、消防署を訪ねて中に入れてもらいまして、中の設備を説明していただいたことがございます。そのときに消防士さんが、どこに住んでいても、住んでいる地域によって命の重みに差があってはならない、そうおっしゃったことが大変心に響きまして、私は、今でもその言葉をしっかり胸に抱いて、地域医療を守れということをこの間心にとめて頑張ってきたつもりであります。

 今回、医師の需給に関する検討会が回を重ねているわけですが、当時も、全国的には医師は足りているということは十分承知しておりました。しかし、この青森県においては、東北においては、全国で最も充足率が悪い、不足している、そのことはもうだれもがわかっていた。そのときに、当時の検討会では、医学部の定員を一〇%削減し、とにかく将来の医師余りを抑制しよう、そういう議論がずっとされていたんだ、改めてそのことに大きなギャップを感じます。

 そこで、まず伺いますが、この間、昭和五十八年に人口十万人対百五十人の医師を達成して以来、昭和六十一年、平成六年、平成十年と検討会を重ねてきましたが、今回の検討会に当たっては、やはり、これまでの医師過剰という表現から、現場では不足感という評価に変わったかと思っております。その評価が変化した理由をまずどのように考えているのか伺います。

    〔北川委員長代理退席、委員長着席〕

松谷政府参考人 今行われております医師の需給に関する検討会でございますけれども、これは、先生おっしゃるとおり、若干、前二回ないし三回の検討とはその性質を異にしてございまして、御存じのとおり、厚生労働省、文部科学省及び総務省の三省で構成いたします地域医療に関する関係省庁連絡会議におきまして、医師の養成、就業の実態等を総合的に勘案して医師の需給の見通しの見直しを行うということとされたことから、平成十七年二月二十五日からこの検討会を開催しているという経緯でございます。

高橋委員 もう少し具体的に述べられるのかなと思ったんですが、第二回の検討会の中で、長谷川委員が、評価が変わったというか論調変化の理由ということで資料を提出しておりまして、高齢化の問題ですとか女性医師の増加の問題ですとか労働基準法の問題、こうしたことを取り上げていらっしゃいますので、そこを拝見しますと、国の政策にかかわる部分と、自然にふえているのだから高齢化は当然だとか、そういう中でいろいろ条件はあるだろうと。問題は、それをどのように今後取りまとめられるであろう最終報告に盛り込むのかということが聞きたいなと思っているわけです。

 第一回の検討会の中では、既に、今の医療の現状をあらわすということにすると、これは不足である、こういう意見も明確に出されていると思います。

 そういうのも含めながら、年度末にまとめるとした見通しがことしの夏までずれ込んだ背景、それは考慮する条件がいろいろふえたということがあるかと思いますが、なぜずれ込んだのか、まずその理由について伺います。

松谷政府参考人 この検討会は、今申し上げましたように昨年二月に立ち上がったところでございますけれども、現在までに十二回開催をいたしまして、検討を行ってまいりました。

 この間、第四回から第八回、昨年の夏までの検討会におきましては、喫緊の課題でございます特定の地域、診療科における医師の偏在解消に資するための施策について、最終報告書を待たずに中間報告書として優先的に取りまとめるということから、その検討が行われたわけでございます。

 その後の本検討会における検討の中で、複数の委員から、医師の勤務の状況を詳しく調査して把握する必要があると指摘されたことから、勤務状況に関する調査を企画いたしまして、昨年十二月から本年一月にかけて実際にこの調査を実施し、この調査の集計、分析を鋭意行っているということ、それから、需給の見通しの作成のモデルのあり方につきましてもいろいろ議論がございまして、この検討を行っているということから、これらのために相当の期間が必要となってございます。

 できるだけ精力的に今検討していただいてございますが、八月ごろまでには取りまとめを行っていきたいというふうに考えてございますが、今の審議の中でまた別の要素等についてもいろいろ御議論がございます。そこらについても、また検討会にお諮りをしなければならないということでございます。

高橋委員 今説明に、医師の勤務の状況というお話があったと思うんですね。きょうも先ほど来医師の過重勤務の問題が出されておりまして、まさに労基法違反の実態があるんだということが随分指摘されてきたことが、検討会の議論の中にも当然反映をされて、どっちが先かはあれですけれども、反映をされて調査もされた。

 問題は、その調査を踏まえまして、労基法を満たすための医師の配置はどうあるべきか、この点についても報告に盛り込みますか。

松谷政府参考人 需給の見通しの作成のモデルのあり方についての議論についてだというふうに思いますけれども、今先生が御指摘したようなこともそのモデルのあり方の一つの要素かと思いますが、今の検討会における議論では、医師の勤務状況に関する調査の結果、あるいは、女性医師の働き方が変化してきてございます、これらなどの医師のライフスタイル、それから患者さんの受診率等の動向などを踏まえまして、御議論をいただくという状況でございます。

高橋委員 本来ならば、やはり、この委員会の中で、この医療の審議をしていく中で、どういう見通しが盛られるのかということが示されなければならないわけですね。それが示されるのかどうかもわからないというのではいけないわけであって、多様な要素がある、それが延びた、延びた以上はそれをしっかり盛り込むんだと。私は、やはり現場の声は、労基法いきなりは、言われてもそれはそもそも体制がないんだよという声が出てくるのは当然であります。

 でも、当然、そうなったのだとすれば、国がそれに見合うだけの必要な医師はこのくらいなんだという立場に立たなければだめなんです。そのことをしっかり盛り込んでいただけますか。

松谷政府参考人 医師の勤務状況の調査がされてございますが、これは、厳密に申し上げますと、いわゆる労基法を守っているかどうかということがその調査から直ちにわかるかといいますと、病院に行った時間から病院から出た時間というような調査になってございますので、その間の勤務状況が確実にこの調査でわかるわけではない。

 いろいろな制約条件等もございますけれども、各委員の御議論、今の先生の御指摘も踏まえて、また進めていきたいと思っています。

高橋委員 調査から労基法違反が直ちにわかるかどうかではなくて、労基法を満たすためにはどれだけ必要なのか、そのことをしっかり盛り込んでほしいということであります。医療改革の法案が通ってしまって、ベッドを削るんだ、だからその分、その後医師は足りますよ、看護師は足りますよ、そういう議論をされては困るんです。そのことをはっきり申し上げたいと思います。

 次に、臨床研修が義務化されて、大学で医師を引き揚げてしまうという問題がこの間ずっと言われてきたわけですが、同時に、大学にも人材は当然必要であって、それが今、地域の臨床研修指定病院の中でも受け皿となっているということですよね。平成十六年度で指定病院は二千百六十八施設登録されていると聞いております。

 テレビでも紹介されているように、岩手県など地域によって魅力ある臨床研修の取り組みも始まっているやに聞いております。ここを通して医師確保の道も開けるのではないか。

 しかし、一方では、指定もとれない地方の病院、そもそも医師が不足してそれどころじゃないよという病院は、これまでは大学にお願いをしていたわけですが、大学はもう全く融通がきかない状態になっている。この状態が硬直化すれば医師偏在をさらに進めることになると思いますが、いかがでしょうか。

松谷政府参考人 病院における医師の派遣が受けにくくなった、大学からの医師の派遣を受けにくくなったというような問題につきましては、今先生御指摘のように、臨床研修の必修化という要素もあろうかと思いますけれども、そのほかにも、平成十五年当時のいわゆる名義貸し問題の顕在化、あるいは平成十六年度からの国立大学の法人化、若手医師の意識の変化など、いろいろな要素が作用した結果だというふうに考えてございます。

 医師の確保につきましては、大学病院からの医師の派遣をある意味では待っていたというような病院の中には、こういった事情によってなかなか以前より難しくなってきた病院があるというふうに考えてございますけれども、逆に、例えば臨床研修あるいはその後の医師のトレーニングという中で、そのためのプログラムをきちんと整備し指導体制を魅力あるものにしているような病院については、医師がむしろ詰めかけているというような状況も一方にあるという状況にございます。いずれにしても、地域における医師の確保は、地域の医療提供体制の構築にとって大事なことでございますので、都道府県がその地域の実情を考えながら進めていくということが重要だと思っております。

 東北地方は、もともと医育機関が我が国全体のバランスを見ますと西の方に多かったということから、全体に総数として少ないということでございますけれども、臨床研修の施行後を見ますと、研修医につきましては、実は青森県は若干前より減っているんですけれども、東北全体についてはむしろふえている県の方が多い、東京、大阪が減っているというような状況と比べますと、東北全体につきましては、研修医はむしろ東北の方に来ているというふうな状況になってございます。

高橋委員 いろいろおっしゃいましたけれども、要するに、工夫をして臨床研修医を呼び込むことができるところはいいけれども、そうじゃないところは硬直化しちゃいますよ、道が閉ざされますよということを指摘したんです。これは、先ほど来お話ししているように、県が協議会を立ち上げて、そこで一定融通をつけられるようにという提案が今度の法案だと思うんですね。だけれども、やはり全体としてこまが足りない、そういう中で、あっちもこっちも不足しているのに何とかせい、県で考えろというだけでは無理なんだよということ、これ以上話すとまたさっきの議論の蒸し返しになりますから指摘して、次に行きます。

 それで、地域医療の問題で総務省にぜひ伺いたいと思うんですけれども、先ほどの議論とはちょっと逆になるかと思うんですが、平成十五年十月一日の資料で、自治体病院は、全国九千百二十二の病院中、一一・九%の千八十一病院あります。三百床以上の大規模病院が二五・二%、そのことから見ても、地域の医療を担っている大きな役割を果たしているということは否定できないことかなと思っているんです。ただ、昨今、経営悪化あるいは医師不足が非常に大きな問題になっております。

 そこで、先ほど古川委員が提出された資料、私は自治体名をちょっとはばかるので提出しなかったんですけれども、同じものを広げてしまいましたので、その問題ですね。総務省が、自治体病院の再編統合などにより病床削減が行われた場合に、五年間当該の削減病床数をあるものとして交付税措置をするということが昨年度からやられている。これは、実績ですね、さっきベッド数が出ましたけれども、このベッド数に幾ら掛けて幾らの額になりますか、正確に教えてください。

大谷政府参考人 お答え申し上げます。

 今、お話のありました財政措置でありますけれども、五年間、従前の病床数による普通交付税の算定を行う特例ということでございまして、これは平成十五年度の実績により十七年度からスタートしたわけでありますが、全国で二千四百床余りの病床数を対象に削減がなかったものとして算定を行って、実質の交付税の増額分としては十二億円を計上しているところでございます。

高橋委員 私は、このお金の出し方が納得できません。十二億円ですね。しかも、これは削減されたベッドがあるものとして交付税措置するわけですよね。形のないものにお金を出す、そういう意味ですね。

大谷政府参考人 あるものとみなして財政措置をするということはそのとおりでございますが、結局、再編、ネットワーク化して統廃合したときに、ベッド数が減る、当面の収入が減る、それから財政措置も減るということでは、統合するときのいわば動機に水を差すということで、立ち上がりの時期についてはその統合メリットについて財政的にも応援していこう、こういう趣旨のものでございます。

高橋委員 当面の収入が減るといっても、もともと赤字だからベッドを削ると言っているのに、そこを削ったものに対して、なきものに対して五年間も交付税措置をする、五十一万も。これはどう考えてもおかしい。民間の病院から見たら納得いかないと思うんですね。この間、療養病床の問題などでも話題になりましたけれども、はしごを外された、借金をして病院の改築をしたけれども、今になってだめだと言われて、また新たな借金を組まなきゃいけない。そういうことを言われている一方で、なきものにするのにお金を使う。これはどう考えても理屈が合わないと思うんです。

 だったら、それが再編、ネットワークのために必要なことだというのであれば、そのために不便をこうむる地域住民の足の確保とか、そういうのに使うというのならわかりますが、せめてそういう縛りを、例えば一定の条件をつけるとか、そういう考えはございますか。

大谷政府参考人 お答え申し上げます。

 この地方財政上の措置と申しますのは、一般財源の中にそういう評価を行うということでございますから、地方自治体の判断において、その一般財源をそういうために活用されるということについて、それをとどめるものではございません。

高橋委員 本来であれば、財政の運営というのは、なくすだけのものではなく、新たなものを建設するためにはお金は使うけれども、なくすためのものには使えない、これは財務省からさんざん我々が言われてきたことでありますので、その論理がなぜここでは生きないのかなと思うんです。逆に言うと、必要以上に削減をして必要以上にお金をもらうことだってできるのか。どうですか。

大谷政府参考人 必要以上に削減という意味については若干お答えがしにくいわけでありますけれども、統合再編を行って、いわば過剰になっているあるいは効率化する部分について、それを、当面、財政収支が、ただでさえ病床が減って病院の収入が減る、なおかつ財政的な支援も減るということで、それではやはり地方公共団体のインセンティブが下がる、そういうことにならないように、当面はそこを担保して、しかし五年間のうちにはそれは撤収していくということで、ある意味で呼び水でありますから、この統合再編についてはやはりバックアップになっているのではないか、そういうふうに考えております。

高橋委員 私は、これが逆に、呼び水がきき過ぎて、実はさっきの数字は、二千三百九十一床ですか、これはまだネットワーク構想が始まってからの数字ではございませんので、これからもっと出てくるかもしれないわけですよね、逆に呼び水がきき過ぎて。私は、過度にそれが進むことに恐れをなして、本当にそれでいいのかという立場で質問をしております。

 確かに、自治体病院はほとんどが赤字であります。しかし、そういう中で、地域に必要な医療、だからこそ不採算の分野でも担ってくる、不採算の地域であっても担っている、そういう役割を果たしてきたと思います。先ほど、ベッドの回転率が悪いじゃないか、そういう指摘もございました。それは医師がいないからなんです。そういう悪循環になっている。そのことをやはりしっかり見ていただきたいと思うんです。

 私も、福島の地方公聴会に参りました。全国紙には残念ながらほとんど取り上げていただかなかったのですが、地元紙には大きく取り上げられました。福島民友は一面に「過重労働の改善訴え 医師集約化「慎重に」 地方実情へ配慮求める」ということで、見出しがまさに特徴をとらえておりますし、福島民報「医師不足実情訴え」ということで、あるいは、福島民友の別な面には「苦境を浮き彫り」ということで、陳述人の意見を紹介しています。そういう実態でした。

 これは、福島は、確かに県立大野病院の産婦人科の事件の問題があってこの地域を選んだという経緯があったのですが、大野病院だけではないんだ、産科はほとんど一人病院なんだ、一人医の体制なんだ、さらにそれに、引き揚げて四月からはいなくなっちゃった、そういう状況も紹介されましたし、一カ月のうち、お産は三十人までですよと制限をしているところだとか、あるいは、総合病院でありながら、今の体制では受けられなくて、地域の産院に紹介せざるを得ない、そういう深刻な実態が出されたと思っております。

 その中で、医師会の副会長の高谷先生が、原稿に書いたのだけれども、本番ではカットされた部分が私非常に大事だと思って、ちょっと紹介をしたいと思うのですが、大野病院の問題に関連して、外科だとか産科だとかいろいろな形で撤退をする状況が生まれている中で、これを「医師の集約化で切り抜けようとすれば、残された地区の医師不在に更に拍車をかけ、その科を受診するために遠距離通院を余儀なくされています。路線バスも赤字で廃止になり、鉄道に乗るにも何十分も歩かなきゃなんネー、吉幾三の俺らの村には何にもネーというのが地方の実情です。」これは読んでほしかったのですが、私は、これは福島の話だけではなくて、東北全体で、全国にもいろいろ起きているのですが、そういう状態になっているんですね。

 公共交通がずたずたにされて、合併で過疎化が進み、そして、そういう中でこの医師不足の問題が起こっている。だから、今後の集約化の問題をやるに当たっても、当たってもというか、私は集約化はいちずに賛成はしませんけれども、こういう地方の実情をしっかり加味する必要があると思っておりますが、この点では大臣に見解を伺いたいと思います。

川崎国務大臣 福島県立大野病院の件で、現実に地元の方々から御陳情いただきました。集約化を進めている中で、一人の医師の現場でこうした事故が起きてしまった、まことに残念であるというのが冒頭のお話でございました。そういう意味では、こうした現場にいられる先生方も、やはり全体的な集約化へ向いて動いていかなきゃならない、そして、福島県もそうした形で動いておられるという認識を私にも示していただいたのかな、こう考えております。

 しかし一方で、地域の皆さん方の御理解も得ながら進めなきゃならないことでありますから、先ほど御批判いただいたように、スピードが遅いと言われておりますけれども、やはり地域の理解を得ながら進めていくこともまた大事だろう、このように思っております。

高橋委員 そこで、地域医療の確保が問われる中で、では、国ができることは何だろうかという話でありますけれども、まず協議会の問題は、実際、責任を持つのは県であります。大臣がよくおっしゃる大学の地域枠の問題、これは文科省であります。しかし、厚労省が責任を持てる分野として国立病院機構や厚労省所管の病院、こうしたものがあると思いますが、これらが実は地域医療の大事なネットワークの中から一抜けしている、そういう状況ではないかと。やはり、一方では、地域医療が大変だ、医師確保が大変だと言われているときに、これはいかがなものかと思っているのであります。

 資料の中に国立病院機構の廃止、統合の状況を紹介させていただきました。あと二つまだ残っているようでありますが、六十一年の計画で七十四、見直し計画十三、全体で八十七の統合や移譲または廃止による減がやられてきました。これは国立病院だけの話であります。

 そういう中で、では、今話題となっている小児科や産科の常勤医師が減っているのではないか、この点ではいかがですか。

松谷政府参考人 旧国立病院、今の国立病院機構の常勤医師でございますが、本年一月一日現在でいいますと、産婦人科の医師は二百十三名、小児科の医師は四百四十四名という状況でございます。

 なお、ちなみに、東北地方でいいますと、産婦人科医師が十二名、小児科医師が三十名でございます。

 増減は、その時々にございますので、ちょっと前の時点での数字がございませんけれども、一年前と比べますと、産婦人科は十名ほど減っております。小児科は全く変わっていないというような状況でございます。

 東北地方はいずれも変わっていないという状況でございます。

高橋委員 ですから、今、半年間のデータしか実はいただけなかったんです。その前の数を比較したいと言いましたら、もう国立病院でなくなっているのでデータがないと。非常にそういうところもいかがなものかなと思うんですね。しかし、その半年間であっても十人も減っているという状況なんです。

 私は、二年前の三月の予算委員会の分科会で、ちょうど独法化が始まる直前にこの問題を質問させていただきましたけれども、例えば盛岡病院が常勤の医師がいなくなるじゃないかということに対して、非常に心を痛めているという答弁をいただきましたが、現在、非常勤しかいなくて外来しかやれない、そういう状況になっている。ですから、国として果たせる役割、せめてここだけでも地域医療から一抜けはしない、そのことはできるのではないですか。大臣、伺います。

川崎国務大臣 これは、先ほど古川委員との議論をいたしました。市町村の自治体病院に対してきちっとした対応、集約化の問題を議論するときに、県立、県がまずきちっとしなければできないじゃないか、県に私どもが言う限り、私どもが厚生年金、社会保険また労災病院等、それから国立病院機構、こうした問題について率先してきちっとした集約化を図っていかなきゃならない、これをしないで何で県に言えるんだ、こういう議論がございました。まさに、我々のところからきちっとやるべきものはやっていかなきゃならないというスタンスで集約化をさせていただいているところでございます。

高橋委員 きちっとやるべきものをやるというその中身が地域医療の中でどれだけの役割を果たしていくのか、そういう立場に立てるのかということがやはり問われているのかなと思っております。

 非常に残り時間が少なくなりましたので、総務省と厚労省に同じことを確認させていただきたいと思います。

 自治体病院の統合再編に当たっては、あるいは労災病院や今後問題になってくる社会保険病院、厚生年金病院においても、やはり、地域の中で医療計画の中にしっかり組み込まれているわけですね。だから、そこが抜けるともう位置づけられないという声が上がっています。そういうときに、きちんと住民との合意を得て、そこを大事にするということでお約束いただけるでしょうか。

大谷政府参考人 平成十六年の十一月に報告されました地域医療の確保と自治体病院のあり方に関する検討会、この報告の中におきましても、自治体病院の再編、ネットワーク化はあくまでも住民の方々のための計画であり、住民が最も興味、関心を持つのは地域における医療のあり方であり、計画策定に当たっては、丁寧な住民説明を繰り返し行うことが必要である、こう提言されているところでございまして、総務省といたしましても、この点に十分留意しながら、再編、ネットワーク化を積極的に進めるよう要請してまいりたいと考えております。

松谷政府参考人 旧国立病院、国立病院機構の病院につきましては、御存じのとおり、再編統合をこれまでも進めてきたところでございますけれども、計画的な整備ということをあわせてやっているところでございます。

 そのほか、関係の労災病院、あるいは社会保険病院、厚生年金病院等につきましても、特に社会保険関係については、その再編が今計画されているところでございますし、労災病院についても計画があるわけでございます。これらは、地元の関係者と協議しながら一つ一つ進めていくという状況にございます。

高橋委員 地域住民の声をしっかり受けとめていただきますように要望して、終わります。ありがとうございました。

岸田委員長 次に、阿部知子君。

阿部(知)委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。

 本日も、午前と午後にわたりまして、各委員からいろいろな問題の指摘がございましたけれども、どのお話をとりましても、果たして、これから地域で生きていくための基盤としての医療はきちんと提供されるんだろうかどうかということが、この審議のありようとは、全く解決を見ないままに、もう審議が半分くらいこれで来たんでしょうか。私は、この間の審議というものが、逆に、本当に元気になれない、本当にこれで国民のための、私どもが目指す医療制度改革の何がしかを、答えを出しているんだろうかと思うときに、非常にむなしい気持ちになるものであります。

 しかし、そうはいっても、投げ捨てるわけにはいかないので、きょう、幾つかの点で大臣に、これは質問予告外のことで恐縮ですが、きょうの審議を承りながら、私は、やはり、そうはいっても、困難な中にやれることはあるし、やらなきゃいけないことはあるという意味で、大臣というお立場にある川崎厚生労働大臣に、ぜひお願いがございます。

 一点目は、先ほど来、山井委員と川崎大臣のお話の中にもございましたが、医師は不足しているのか、あるいは足りているのか、これはどなたも問題になさいました。数は、確かに、今二十六万、やがて三十万、足りておるだろうという大臣のお話でありました。ただし、偏在はあるかもしれない。ここまでは、もう繰り返し同じでございます。

 ところで、大臣は、この厚生労働委員会の審議の中で参考人をお呼びして意見を伺いましたが、その中で、実は私の恩師に当たりますけれども、鴨下参考人の意見陳述をお読みになったでしょうか。お願いします。

川崎国務大臣 詳細は読んでおりません。

阿部(知)委員 私はぜひ読んでいただきたいんです。何も私の恩師だからではありません。鴨下先生は、社会保障審議会医療部会の部会長としても、お取りまとめの重要なお立場にあります。

 あの場で鴨下先生がおっしゃったことは、毎年、医師は確かに八千人卒業していく。しかし、うち四千人内外は大学院大学に最近は進むようになっているという指摘でありました。実際の労働力として臨床現場にどのくらいの医師がいるのか、このことが見えないままずっとこの論議が続けられたら、私は、不幸な行き違いの結果、今回の審議によって、何か、あたかも集約化され改善されるかのような幻想のもとに、もう私たち医療現場はやっていられない、つぶれちゃうという悲鳴に近いものを感じるわけです。

 大臣、ここで一つお約束いただきたい。参考人です。せっかく来ていただきました。私は、よく、小児科医時代に、教授からもっと研究しなさいということも言われました。でも、あの場で私の教授がおっしゃったことは、今、研究分野に向かう医師と実際の臨床現場に向かう医師、数の中で比べてみれば、臨床分野に向かう医師が少なくなってきている。私は、この十年余りの実態を御指摘くださったんだと思うんです。これもまた実態です。しかし、どなたも、厚労省のだれもです、このことを御存じないです。当然ながら現場は不足します。その本当の切実な臨場感なくして私はこんな審議は意味がないとすら言わせていただきたいが、大臣、もう一度お願いします。お読みいただけますか。

川崎国務大臣 後で読ませていただきますけれども、一方で、大学院大学に行かれるから、臨床医師として働いていないというお話でしょうか。

 正直申し上げて、この二年間の研修を受けられた方々がどういう方向に行かれるかということは、我々ウオッチしております。現実に、一人一人の方々から回答を得て、医療現場で働かれているということは私どもつかんでいるんですけれども、それとは違う数字が出ておる、こういうお話でしょうか。

阿部(知)委員 もちろん、この臨床研修の義務化が始まる以前に、普通にまだ義務化されない前でも、みんな大学で研修をしたりしておりました。大体二年間ほど研修した後、今度は大学院大学に行くという流れができました。五年内外の年限を大学院大学に行く中で、実際の臨床、第一線病院からは引き揚げました。その方たちは大学院で研究をなさいます。時々は診療をなさいます。私は臨床現場にいて、このときから医師は少なくなりました。臨床を一生懸命頑張って、どんどん少なくなる人数で頑張ってやってきたのが小児科のこの十年です。

 今の私のが大臣へのお答えになったかどうか。私はこれで答えたつもりです。大学院大学というものに行く間、実際の臨床の第一線の病院の常勤医は務めることができないのです。数があっても労働力としてはないのです。このことをよく文部科学省と、私はこれまでに何回も大臣に、文科省ときっちりと話をしてくれと申しました。この中で実態を把握していただきたいが、いかがでしょうか。

川崎国務大臣 正直、いろいろな議論をいただいてきて初めて聞く話でございますので、私なりに調べてみます。

 大学院大学へ、臨床研修を終えて、また大学へ戻られて、東大ですと百人の定員が、大学院ですと百七十ぐらいの定員になりますか、そこへ戻ってきている。したがって、正直申し上げて、せっかく神奈川県や埼玉県で研修を積まれた人たちがまた東大の大学院に吸収されちゃっているな、こういう感じはあります。しかし、それが逆に二年、三年たてばまた現場に戻るのではないかという理解を私はしていたものですから、それが戻らないとなるとこれはなかなかの議論になりますから、よく詰めてみます。

阿部(知)委員 もちろん、戻る方も戻らない方もありますが、その年限が大臣がお考えなほど短期的なものではございません。その中で、もちろん、生涯を研究者として生きる方もおありです。それはそれで道でございますから。

 ただ、あの場で鴨下参考人がおっしゃったのは、日本の医学教育は医師臨床教育としての徹底がなかったのではないかという御指摘でした。それに関連して、この大学院大学のお話も出てまいりました。

 アメリカ等々では、実践を最大重視した、いわゆる医師としての臨床教育が、総計、医学部教育八年でございますが、その全般にわたって行われます。その後も実践的な臨床医として巣立っていかれ、専門医を取る機構になっています。今、もし日本が数だけで過不足を論じているのであれば、ここに大きなエアポケットができているということも勘案していただきたいと思います。

 あわせて、私は、集約化の問題で、今、集約化した場合に、同時に二つのことをなすべきだと思います。

 お産は安全でなければなりません。そのために集約化しようというのは、過渡期的にやむにやまれぬ処置だと思います。しかし、そのために患者さんは、おなかの大きいお母さんは遠い産院に行かねばなりません。そのために何ができるか。

 私は、アメリカで留学していた病院の周りには、非常に安いお金で泊まれる宿泊施設がございました。すなわち、分娩日、予定日近くになったらそこに移動して住まえる。ホテルはとても高くてその受け皿にはなれません。ただでも若い世代はお金がありません。しかし、雪道を二時間、三時間、場合によっては吹雪で閉ざされるかもしれない。お産は一瞬で暗転します。本当に途中で、タクシーの中で生まれちゃうことだってあると思います。

 もし、やむを得なく集約化なさるのであれば、すべて、どこの場でその待機の時間をきっちりと安心と安全で保障できるかです。これは厚労省だけでできない施策であれば、国土交通省ともきちんと御相談いただきたい。たかが分娩に当たる手当が三十万から三十五万にふえた五万だけでは、とても、いつ予定が来るか、陣痛が始まってから行って間に合うのは、せいぜいが初産、初めてのお産でしょう。本当に危険で、私はお母さんたちがもうお産をするということが怖くなっちゃう実情が非常にわかるような気がします。

 大臣、集約化に伴ってその近辺の宿泊施設、例えば小児病院では、親御さんが付き添うときにかりそめにそこに宿泊できるようなゲストハウスを設けています。そういう方式をとってでも、私はあくまでも集約化は過渡的と申します。しかし、本当に患者の立場に立ち、本当に産む身になって考えたときに、今のような集約化をされたのではお産はできないです。大臣、いかがですか、これは私の一つの提案です。

川崎国務大臣 安価なホテルを提供したらどうだという一つの切り口の御提案をいただいたわけでございますけれども、確かに、過疎地域に産科というものがなくなって、都市部へ出てお産をしなきゃならない、それに対応する費用というものをどうしていったらいいのか、こういう切り口で御質問をいただいたんだろうと思います。

 確かに、集約化するときにどうしていったらいいか。先ほど議論が出ておりましたけれども、交付税が、もしくは一般財源という形で交付税化される、その中で県や市町村が交通費を出したらどうだ、こういう御提案もありました。そういったものも踏まえて、何ができるかよく議論してみたいと思います。

阿部(知)委員 申しわけありませんが、交通費を出すくらいでは途中で生まれてしまうことがあるのですから、本当にリアルに考えていただきたいんです。

 産めやふやせやと少子化対策の旗を振っても、ばんそうこうにもなりはしないと私はいつも言っています。なぜなら、産む身の不安、親になる側の女性たちの、あるいはお父さんになる若い世代の不安にちっとも絡み合わないからです、今の国の政策は。ぜひ大臣、私が一例を挙げたのは、小児科のゲストハウスというような、親御さんたちが重症の子に付き添うために近くに、例えば長野の小児病院等々にはございます。ごらんになって、そうしたことをつくれるだけの措置をしていただきたいと思います。

 もう一つ早急にお取り上げいただきたい施策があります。

 小児科医や産婦人科医、特に産婦人科医は、このままでは幾ら、申しわけありませんが、労働条件を多少よくしていただいたとて、私は、この間のがたがたがたと減ってきた医師の数は回復しないと思います。我が国は、果たしてそれでいいのか、子供が生まれない社会でいいのかというと、だれも違うとおっしゃると思います。

 では、どうすればいいのか。これも参考人の鴨下先生の御提案でしたが、大学の医学部に必ず周産期センターを設ける、ここで小児科医師と産婦人科医となる人たちが相互に情報を交換しながらお産に接する。これは、今手をつけたって、大臣がおわかりのように六年余がかかるかもしれません。でも、六年よりはもっと早いでしょうね。やらなければ生まれません、医師が、赤ちゃんがじゃありません。もう今お産を経験できる医師たちも少なくなりました。集約化すればするほどそうです。教育の根本から見直さないとこれは手だてがないんだということを、私は何度もこの委員会の冒頭で申し上げました。

 たまたま鴨下参考人の御提案が、大学に周産期センターをきちんと設けていくという御提案でした。これもあわせて文科省と早急に検討していただきたいと私は思いますが、いかがでしょうか。

川崎国務大臣 こうした議論を煮詰めながら、私自身も産婦人科の方々とゆっくり議論をしてみたい、こう思っております。皆さん方からいろいろな御提言もいただきましたので、それも踏まえた上で、何が実効性あるかということは議論したい。鴨下先生、すばらしい先生でしょうけれども、一人だけの御意見ではなく、いろいろな人たちの御意見を聞きながら詰めてまいりたい。

 また、体制的には、文科省とはやはりもう少し突っ込んだ議論をお互いにしなきゃならないな、こう思っております。大学の教育のあり方から始まって病院のあり方、今病院のあり方を御提言いただいたわけですけれども、そういったものを踏まえて突っ込んだ議論をしたい。

 また、つい最近も、放課後児童クラブのことで文科省と合意を得ました。あれは多分、あのときも御提言いただいたんだと思うんですけれども、早くやれということでございました。来年中に全国でできるようにしたいということで、お互い合意ができました。

 より一層文科省と議論しながらやってまいりたい、このように思っております。

阿部(知)委員 もうこれだけ多くの委員がお取り上げで、各地で悲鳴が上がっていることですから、時間が勝負です。今本当に、少子化は私どもが考えている以上に深刻な、この社会の未来がなくなる、あるいは地域で生きられなくなる、地域、本当に地方分権していこうというときに、そこに命が生まれない、これほど深刻な課題はないんだと私は思います。

 そこには恐らく党派の別もなく、ただ命の問題があるだけですから、先ほど、鴨下先生以外にもよい意見があるだろうから広く求めてみるとおっしゃいました。それも大臣の見識の一つと思いますが、私は、ここでお呼びした参考人がせっかくそれだけのお話をしてくださった、それを生かせない委員会であれば、何のために、ただ形式のために来ていただいたのかと悲しくもなるものであります。ぜひいろいろないい御意見、ほかの参考人もございました。大臣にはお目通しいただきたいと思います。

 本来のきょうの私の質問に入らせていただきますが、私は、この医療制度改革が今、子供、生まれる、出生という方に一つのフォーカスが当たると同時に、逆に御高齢者にとっては、高齢者バッシング、本当にこの社会に、これまで戦争も含めた御苦労をいろいろな形でしてくださってきた、その御高齢者に何と冷たいやりようかと憤りすら覚えます。

 実は、これも私の大学の教授で大内力さんという方が、自分たちはこの国に二度死ねと言われた気がする、一度目は戦争、二度目はこの医療制度改革だというふうにおっしゃいました。それほどにです。

 この意味するもの、短期的には、とにかく高齢者の窓口負担を上げて病院に来ないようにしましょう。中期的には、在院日数を短縮して、行き場もないままにたたき出されるかもしれない御高齢者の不安。長期的には、何のエビデンスもない、メタボリックシンドロームを振り回して地方に過重な負担をぶん投げていく。私は、こんなためにこの貴重な時間が費やされているかと思うと、本当に悲しいものがあります。

 大臣に伺いたいと思います。

 この間、厚生労働省に何度も部屋にお越しいただきましたが、医療費の高騰要因、医療費はなぜ高くなっていくのかということで、いつもいつも、年寄りが多くなって医療費を食って金食い虫で、だから何とかせにゃならぬというお話でした。本当でしょうか。

川崎国務大臣 七十五歳以上の医療費を取り上げたときに、今約四割ぐらいを占めておるんだろうと思います。しかし一方で、我々が七十五歳以上の年を迎えたときには、今の千二百万から二千万になる、やはり五割を超す時代になるということはやむを得ないんだと私は思います。ですから、高齢化の中で医療費がかかるようになるという事実を、私は否定するということは無理だろうと思います。

 そういう意味では、高齢化による影響、それから医療の高度化等のいわゆる自然増による影響、これはあると思います。いろいろな要件がございますけれども、一番大きなものは何かと言われれば、我々の世代が高齢というものを迎える、そのときには大変大きな負担を若者にしてもらわなきゃならぬことになる。そのことについて今から少しずつ適正化をしていかなきゃならぬ、こういう感覚でおります。

阿部(知)委員 私は、高齢化は一つの要因である、これはだれしも否定できません。

 しかし、医療費がなぜ上がっていくのかということを分析するときに、今大臣も、これは私も昨日厚労省に申し上げましたから、医療の高度化、技術革新によってもまた医療費は増大していきます。

 しかしながら、実は、高齢化も技術革新もそれをよしとして、例えば長寿をことほげる、あるいは高度化した医療によって生命が長らえる、必要な治療が受けられる、このことによって国民はそこにお金をかけてもよしとするわけでございます。ここの委員会の論議が、メディアの取り上げ方が低調だ、あるいは偏っている等々の御指摘、午前中にありましたが、それ以上に、一体、今何を国民合意しなきゃいけないのかが国民に伝えられていないところの不幸が私はあるように思います。

 大臣のお手元に、きょう準備させていただいた一枚目です。「五百万円以上高額レセプト件数の年次推移」というのがございます。

 医療現場におりますと、月に一千万以上を実際には医療給付されているような高額レセプトというのが上がってまいります。これも、だから悪いとかではありません。実際に、そうしたものを私たち医療者は目にするわけです。その件数がどんなふうに推移しているか、厚労省はデータをお持ちかどうかということで私がお尋ねしました。

 ここには、月に一千万円以上のレセプトが、平成七年度で三十八件、平成十六年度では八十九件。毎月です、一千万円以上のレセプトが現状、十六年度では八十九ございます。大臣、これをよくごらんいただきたいんです。これは、実は健康保険組合連合会のものでございます。基本的に勤労者世帯かそのお子さんのお使いになっている高額な医療費のレセプトでございます。五百万円から一千万円のものも、平成七年度では千五百四十七件から現状で二千三百七十三件ございます。

 実は、これだけを見ても、この間恐らく治療は濃厚になり、高額になっているんです。これが一方の技術革新の一つの証左だと私は思うんです。

 まず大臣に、これはどうごらんになりますか。

川崎国務大臣 全体像としましては、今申し上げたように、過去十五年程度の推移を見ますと、医療の高度化等の自然増約二、三%で推移しております。

 一方で、お示しいただきました資料でも、高額のレセプトは年々ふえてきているということは間違いない事実だろう、それは私どもも承知しております。

阿部(知)委員 承知しておられるということでありましたが、果たして高額医療費が医療給付費の一体どのパーセントを占めているのかというデータをお出しいただきたいと私は厚労省にお願いしました。恐らく、お返事がまだいただけていないのか、ないのかだと思いますが、ちなみに、武蔵野市の医師会でお出しである集計を見ると、レセプトの統計の上位一〇%の患者さんが総医療費の六割をお使いです。上位一%の患者さんが医療費の二六%をお使いです。高額医療費が、医療給付費の四分の一を一%の患者さんが使っています。

 これも、だから悪いではありません。だったら高額医療費ということについてどんな合意をとっていくのか、私は、これがなくして御高齢者ばかりが、あたかも医療費の高騰要因のように言われるこの審議のむなしさを、逆に厚労省はなぜデータすらとろうとしないのか。これは、今私の見たのはホームページで見つけた医師会の集計であります。本当に、一%のために四分の一を給付している。それでもいいかもしれません。でも、その内容は何であり、国民が合意すべきことだと思います。大臣、いかがでしょう。

川崎国務大臣 高齢化による影響も大体二%弱、それから医療の高度化の自然増が二、三%、こういう理解をしております。

 一方で、高度化というものを否定するかといったら、これはだれも否定しない話でありますので、そこも織り込みながら医療というものを考えていかなきゃならぬだろう。一方で、高齢化プラス、高齢化するところの人口が急激にこれからふえてしまうということも事実ですから、今の一・八、一・九、この数字を明らかに超えてしまう時代が来るだろう、高齢化による影響ですね、我々の数が多いですから。ですから、そういったものを両方あわせながら議論をしていかなきゃならぬだろう、このように思います。

阿部(知)委員 大臣も御承知のように、この間高齢者の医療費の伸びはほとんど動きがございません。もちろん累次の改革によって抑制されているということもあります。私は、せめて実態を把握して、何が高騰要因なのか、それを国民はよしとするのかどうかということがわかる論議をすべきだと思います。

 もう一つ、きょうはずっと取り上げたくて後送りになっていましたリハビリの問題を最後に一つだけ取り上げさせていただきます。

 大臣も御存じだと思いますが、免疫学者で多田富雄さんという方がおられます。非常に世界的にもすぐれた免疫学者ですが、四年前に脳梗塞を患われて、現在も言語障害が残られて、いわゆる構音障害と言った方がいいんでしょうか、あるいは半身麻痺も残られて、リハビリ中であります。

 この多田富雄さんが四月の八日の朝日新聞に投稿をなさいました。これからは脳梗塞によるリハビリは百八十日を過ぎたらもう医療給付の対象ではないということが決まった、これは自分にとっては死の宣告である、簡略に言えばそのような内容でした。

 今、医療現場では同じような声が多くの患者さんから上がっています。また、PT、OTを病院に雇い、その患者さんたちのサービスをしていた病院サイドも混乱しております。厚労省は、これをみんな介護保険のデイケア等々で、通所リハビリで行いなさいということです。となると、患者さんは、自分の高血圧や糖尿病のためには医療機関に行き、わざわざリハビリのためには別途、交通費もかけてデイケアに通わなければなりません。時間も無駄、お金も無駄、これは本人にとってです。そして、プラス、本当にこれが必要な方へのリハビリ制限になってくるのではないか。

 この現場に起きている混乱と不安と是正策について、実務サイドでも結構です、お答えください。

水田政府参考人 お答えいたします。

 今回の診療報酬改定におきまして、リハビリテーションの体系を疾患別に再編成する中におきまして、重点評価ということが一つキーワードでございまして、一日当たりの算定単位数の上限を緩和するということで、発症後早期のリハビリテーションは評価をする。一方で、長期にわたって効果の明らかでないリハビリテーションが行われているという指摘があることから、疾患の特性に応じた標準的な治療期間を踏まえまして、今委員御指摘のありました、疾患ごとに算定日数の上限を設けたところでございます。

 ただ、この算定日数上限の適用に当たりましては、失語症でありますとか高次脳機能障害、こういった疾患でございまして、リハビリテーションを継続することによって状態の改善が期待できると医学的に判断される場合には、算定日数の上限の適用を除外しているということでございます。

 御指摘の脳血管疾患についてでございますけれども、神経障害による麻痺及び後遺症につきましても算定日数上限の適用除外としてございまして、例えば広範囲の脳梗塞の場合など、これが今申しました神経障害による麻痺及び後遺症を来して、リハビリテーションを継続することにより状態の改善が期待できると医学的に判断されるものであれば、算定日数の上限の適用除外となるものと考えてございます。

 ただ、これが維持期のリハビリテーションということになりますと、これは委員御指摘のとおり、介護保険の要介護認定を受けて通所リハビリを受けていただく、こういう介護保険との役割分担ということも念頭に置いて整理をさせていただいたものでございます。

 ただ、もう一点、委員御指摘のありました、基礎疾患についての治療があるじゃないかということでありますが、通所リハビリは病院、診療所等で行われるわけでありますので、その場合には、医療の部分につきましては医療保険で、通所リハビリにつきましては介護保険で、事業所になっていれば給付を受けることができる、このように考えてございます。

阿部(知)委員 私が言いたいのは、非常に机上の空論で、一人の人間をこっちが医療部分、介護部分と切って扱うことの非人間性ですよ。それから、維持期といったって、やらなきゃ能力は落ちていくんです。こんなことは医学の常識でもあります。

 こういう形で、本当に多くの脳梗塞の後遺症の患者さんが不安と戸惑いと、もう死ぬような苦しみを負っています。大臣には、この点についてもぜひもう一度、もし新聞もお目通しいただければと思いますし、善後策をもっともっと綿密に検討していただきたいということをお願い申し上げて、本日の質問にいたします。

 ありがとうございました。

岸田委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時四十一分散会

     ――――◇―――――

  〔本号(その一)参照〕

    ―――――――――――――

   派遣委員の福岡県における意見聴取に関する記録

一、期日

   平成十八年五月八日(月)

二、場所

   グランド・ハイアット・福岡

三、意見を聴取した問題

   健康保険法等の一部を改正する法律案(内閣提出)、良質な医療を提供する体制の確立を図るための医療法等の一部を改正する法律案(内閣提出)、小児医療提供体制の確保等のために緊急に講ずべき施策の推進に関する法律案(小宮山洋子君外四名提出)及び医療を受ける者の尊厳の保持及び自己決定に資する医療情報の提供、相談支援及び医療事故等の原因究明の促進等に関する法律案(園田康博君外三名提出)について

四、出席者

 (1) 派遣委員

    座長 岸田 文雄君

       加藤 勝信君   北川 知克君

       冨岡  勉君   福岡 資麿君

       園田 康博君   古川 元久君

       高木美智代君   阿部 知子君

       糸川 正晃君

 (2) 現地参加議員

       原田 義昭君   武田 良太君

 (3) 意見陳述者

    全国町村会長      山本 文男君

    福岡県医師会会長    横倉 義武君

    国家公務員共済組合連合会熊本中央病院長    岩永 勝義君

    医療法人相生会宮田病院病院長         中山 眞一君

    福岡大学大学院非常勤講師(医学博士)     浦江 明憲君

    宗像久能病院医師    久能 治子君

 (4) その他の出席者

    厚生労働委員会専門員  榊原 志俊君

    厚生労働省大臣官房審議官           岡島 敦子君

    厚生労働省保険局長   水田 邦雄君

     ――――◇―――――

    午後一時開議

岸田座長 これより会議を開きます。

 私は、衆議院厚生労働委員長を務めております岸田文雄でございます。

 私がこの会議の座長を務めさせていただきますので、どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 この際、派遣委員団を代表いたしまして一言ごあいさつを申し上げます。

 皆様方御承知のとおり、当委員会では、内閣提出の健康保険法等の一部を改正する法律案、良質な医療を提供する体制の確立を図るための医療法等の一部を改正する法律案、小宮山洋子君外四名提出の小児医療提供体制の確保等のために緊急に講ずべき施策の推進に関する法律案及び園田康博君外三名提出の医療を受ける者の尊厳の保持及び自己決定に資する医療情報の提供、相談支援及び医療事故等の原因究明の促進等に関する法律案の各案の審査を進めているところでございます。

 本日は、国民各界各層の皆様方から幅広い御意見を承るため、当福岡市においてこのような会議を催しているところでございます。

 御意見をお述べいただく皆様方におかれましては、御多用中にもかかわらず御出席いただきまして、まことにありがとうございます。どうか忌憚のない御意見をお述べいただきますようよろしくお願いを申し上げます。

 それでは、まず、この会議の運営につきまして御説明申し上げます。

 会議の議事は、すべて衆議院における委員会議事規則及び手続に準拠して行い、議事の整理、秩序の保持等は、座長であります私が行うことといたします。発言される方は、その都度座長の許可を得て発言していただきますようお願いいたします。

 なお、御意見をお述べいただく皆様方は、委員に対しての質疑ができないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願います。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 最初に、意見陳述者の皆様方から御意見をそれぞれ十分程度でお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。

 なお、御発言は着席のままで結構でございます。

 次に、派遣委員を御紹介申し上げます。

 自由民主党の北川知克君、加藤勝信君、冨岡勉君、福岡資麿君、民主党・無所属クラブの園田康博君、古川元久君、公明党の高木美智代君、社会民主党・市民連合の阿部知子君、国民新党・日本・無所属の会の糸川正晃君、以上でございます。

 なお、現地参加議員として、自由民主党の原田義昭君、無所属の武田良太君が参加されております。

 次に、本日御意見をお述べいただく方々を御紹介いたします。

 全国町村会長山本文男君、福岡県医師会会長横倉義武君、国家公務員共済組合連合会熊本中央病院長岩永勝義君、医療法人相生会宮田病院病院長中山眞一君、福岡大学大学院非常勤講師(医学博士)浦江明憲君、宗像久能病院医師久能治子君、以上六名の方々でございます。

 それでは、まず山本文男君に御意見をお述べいただきたいと存じます。

山本文男君 御紹介いただきました、全国町村会の会長を務めております、この福岡からずっと南の方の山の中の添田町の町長の山本でございます。

 平素、町村行政について委員の先生方には格別な御配慮をいただいておりますことに対し、お礼を申し上げたいと思います。なおまた、きょうは、医療関係の法律案の審議に際して私どもの意見をお聞き取りいただく機会を与えていただきまして、まことにありがとうございます。お礼を申し上げたいと思います。

 私は、この機会に、国民健康保険を運営しております町村長の立場から、健康保険法等の一部を改正する法律案ほか医療に係る関係法の一部改正等について意見を申し上げさせていただきたいと思います。

 まず最初に、国民皆保険の堅持についてでございます。

 医療保険財政の破綻を回避し、国民の生命を守る国民皆保険を堅持し、かつ持続可能な保険制度を構築するには、絶対に国民皆保険というのが必要であるということは言うまでもありません。そのために、医療費の適正化が絶対に必要であります。

 高齢化の進展に伴い、医療費の増大が見込まれておりまして、医療費の適正化を進めていく必要が出てまいりました。しかしながら、生活習慣病予防対策、入院日数の短縮等により、医療費適正化を進める上で、国民の生活の質の向上、医療の安全確保や質の向上を図ることが前提でなければならないと思います。

 特に、生活習慣病予防対策につきましては、保険者が中心となり、健康診断それから保健指導を初めとした各種事業を展開することが必要であると思いますが、既に実施をしていることがございます。なお、保険者が効果的な取り組みを行うため、保健師の配置等、保険者による取り組みについて、都道府県、国として支援措置を講じていただきたいと思っております。

 また、今回の改正で療養病床の廃止が行われますが、これはやむを得ないものだと思っています。ただし、廃止が入院をしている患者さんに不利益な扱いにならないよう、受け皿の整備は十分に措置することが絶対に必要であるということを御認識いただきたいと思います。

 このほかに、予防、入院から在宅医療まで切れ目のない形での地域の医療機能の分化、連携、医療と介護の両面にわたる総合的な地域医療、ケア体制の整備といった取り組みが極めて重要であります。この点については、国とともに医療費適正化計画を作成する都道府県に積極的に取り組んでいただきたいと強く申し上げておきたいと思います。

 次でございますけれども、医療保険制度の一本化についてであります。

 負担と給付の公平化を図るため、我々市町村は、かねてから医療保険制度の一本化を主張してまいりました。一本化により、保険運営の広域化による保険基盤の強化及び負担と給付の統一化を図ることになるのであります。

 今般の医療制度改革大綱においても、医療保険制度の一元化を目指すことが明記をされておりますが、基本方針に示されております方向が再確認されました。それは一つの前進だと私どもは認識をしているところでございます。

 次に、高齢者医療制度についてであります。

 福岡県においては、介護保険制度の施行に当たりまして、県内同一水準の認定、給付、保険料で介護が平等に行われるよう、平成十一年に、県下七十一市町村で組織をする福岡県介護保険広域連合が誕生いたしました。介護保険事業の実施に必要なほとんどの事務を行っております。最近は、市町村合併により、構成市町村の数は減少いたしました。しかし、それでも当初の目的を十分果たし得るよう、今加盟をしている市町村は全力を挙げて努力をしているところであります。

 今般の改革案において後期高齢者医療制度の財政運営の主体が広域連合となったことは、財政運営の広域化及び安定化という観点から評価できるものと考えておりますが、これは市町村だけで抱えるものではないと思っているところでございます。国、都道府県も責任を分担すべきものであります。保険料の未納や見込みを超える医療費の増加によって、必要な給付を保険料で賄えないという財政リスクは、広域連合を財政運営主体としても起こり得るものであります。こうした財政リスクの軽減を図るためには、広域連合や市町村だけでなく、都道府県や国の役割が欠かせません。それぞれに財政責任を果たしていただくことが重要であります。

 広域連合は、平成十八年度、今年度中に設立をさせなければなりませんことはもうわかり切っておりますが、準備に要する時間的余裕が余りございません。全都道府県において広域連合の設立が円滑に行われますよう、国や都道府県において必要な対策を行っていただくことをぜひともお願い申し上げる次第であります。

 三番目は、国民健康保険の財政安定化についてであります。

 国保の抱えております問題は、極めて深刻であります。これはもう御承知だと思いますけれども、国保は毎年三千万円から四千万円近い不足額を生じておりますが、これはそれぞれ市町村の一般財源で負担をしていることは御承知のとおりであります。我が国の医療保険制度は、自営業者や無職者等を対象とする市町村国保と、政管健保及び組合健保等から構成されております被用者保険に大きく二分化される構造となっておりますことは御承知のとおりでございます。国民健康保険制度は、他の医療保険に属さない人をすべて受け入れる構造となっております。近年の急速な少子高齢化の進展、リストラ、そしてまたフリーター及びニートの増加に起因する無職者、低所得者の増加、毎年一兆円規模で増加している老人医療費など、多くの課題、問題点を抱えております。

 失業等の増加により所得のない加入者が増加し、保険料未納者の増加につながっております。収納率が低下すれば、制度を維持するためにも、穴のあいた不足分を市町村が一般会計よりさらに補てんせざるを得ない状況でございます。市町村の財政状況についてはもう御承知のとおりでございますので、このことについては十分な御理解をいただきたいと思います。

 次に、国保の財政安定化についてでございます。

 このような、国民皆保険の最後のとりでとしての役割を果たしてきた国民健康保険が非常に厳しい状況下にありますことは、もう御承知のとおりでございます。今般の医療制度改革法案においては、保険者の再編統合ということで、国民健康保険においては、財政基盤の強化策の延長と、都道府県単位で財政リスクを分散する保険財政共同安定化事業の創設が盛り込まれておりますが、これについては、国保の財政基盤の安定化を図るものとして高く評価をしているところであります。

 しかしながら、国民皆保険制度を維持するには、医療保険制度の一本化が絶対に必要であると思っております。保険財政共同安定化事業は、都道府県単位で国保財政の安定化、保険料の平準化を図るもので、都道府県単位の財政運営を進めるものであります。医療保険制度の一本化への一つの過程と考えておるところであります。どうぞひとつ御理解をいただきますよう、お願いを申し上げておきたいと思います。

 ちなみに、御承知だと思いますけれども、今のそれぞれの保険団体、市町村国保に加入している被保険者は、少し資料が古うございますけれども、既に五千万人を超えております。政管と健保で約七千五、六百万という数字でございます。その中で、国保の場合は自分で収入を得ている被保険者というのは非常に数が少なくなっておりまして、財政上の負担は毎年一兆円近い不足額を出しておりますけれども、制度によりましてこれらの補てんをされておりますが、それでも、先ほど申し上げましたように、三千万円を超える一般財源の拠出をしている状況でございます。

 どうぞ、今回の改正が国保の運営を安定化させていただけるよう、格別な御配慮をいただきますことをお願い申し上げまして、私の意見を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。(拍手)

岸田座長 ありがとうございました。

 次に、横倉義武君にお願いいたします。

横倉義武君 福岡県医師会の横倉と申します。よろしくお願いします。

 本日は、医療関連法案の公聴会で意見を述べる機会を与えていただきましたことに感謝を申し上げる次第であります。

 初めに、今回の医療関連法案改正の目的は、逼迫した国家財政の中で、国民皆保険体制を維持すると同時に、医療の安全、安心を適切に確保し、国民にとって必要な医療が公平に受けられる目的にあると考えております。

 国民医療費の将来推計の問題や、対国民総生産に対する医療費の占める比率の問題、また混合診療や高齢者医療制度創設などの意見につきましては、先日行われました衆議院での公聴会、日本医師会の内田健夫常任理事が意見を述べておりますので、基本的にはその意見に同意するものでございます。

 私は、医療改革により地域の医療提供体制に困難が生じないよう、また、地域特性を踏まえ、医療現場の意見を十分に反映し、柔軟な対応がなされることを望みます。また、医療現場の視点で見ますと、公平公正で良質な医療の確保という点でなお問題点が存在します。公的医療保険給付の縮小を伴う混合診療につきましては、導入すべきではないと考えております。また、現行以上の患者さんの自己負担の増加はもたらすべきでないと考えております。地域の実情を考慮した医療改革が進められるように望むわけであります。そういう観点から、福岡県の現状を踏まえて意見を述べさせていただきます。

 まず、福岡県の医療費でありますが、福岡県の一人当たり国民医療費は、若者では二十二万一千円、高齢者では九十万五千円ということで、全体で三十万五千円であります。若者は全国で第四位、高齢者は全国第一位ということで、非常に福岡県の高齢者医療費は高いという批判を受けているところでございます。

 お手元の資料に少しずつありますので、後ほどそれは御参考に見ていただければと思いますが、福岡県は、いわゆる旧産炭地問題がございまして、高齢独居者や高齢単独世帯が非常に多いという問題があります。そこで、平均在院日数や総治療期間の短縮、医療費適正化のために都道府県別の診療報酬を定める旨の案が今度出ておりますが、福岡県の地域医療に将来制限が行われることのないようにと思っております。

 また、在宅医療のかなめは、家族介護ができる環境整備ができているかがポイントであります。医療と介護は密接な関係を持っておりますので、医療提供内容の変更が行われるような場合、それを補完する介護提供が行われるかどうかが重要と考えております。

 次に、療養病床の削減の問題について触れさせていただきます。

 療養病床の削減については、適切な代替の介護保険施設の整備が不可欠になってきます。福岡県は、全国に比して介護施設入所率が非常に高い状況でありますが、この背景には前述の高齢独居者の多さがあり、医療面だけにとどまらない社会基盤の整備が必要だと考えております。医療度の低い長期入院の是正を目的とする療養病床の削減に当たっては、長期入院患者の退院後の受け皿整備が不可欠でありますので、運用に当たっては、混乱を招くことのないような十分な配慮をお願いしたいと思います。

 また、平成四年に新たな病床区分として医療法でうたわれました療養病床が短期間に制度変更がなされるということで、多くの医療機関は一般病床から療養病床への転換時の借入金の返済が済んでいないというような問題を含め、現場の困惑は高まっている状況であります。介護施設に転換するに当たっての十分な助成が行われないと、現場での混乱がさらに予想されるというところであります。また、現在の療養病床入院患者の実態調査が早急に行われて適切な代替措置が政策としてとられなければ、行き場を失う方々が多数出ることも予想される次第であります。

 本年の四月に実施されました診療報酬改定において、療養病棟入院基本料の算定基準においても、意識障害があり、口から食事がとれないような状況で、やむを得ず管を入れる、もしくは胃から管を入れるような処置が必要な患者さん、そういうような状況の患者さんも医療度一に区分するなど、現在の介護施設で管理ができないような状態の患者まで十分な医療が受けられないような状況の設定になっているという問題もあろうかと思います。

 また、現在、介護施設における医療行為に対して医療保険上の制約も多く、適切な医療行為が行われがたい状況もありますので、介護施設での医療保険適用も必要に応じて行われることが重要と考えております。

 三番目に、在宅医療の充実におけるかかりつけ医の役割について述べさせていただきます。

 療養病床の削減を行うには、在宅医療が整備されることが不可欠であります。在宅療養のキーマンの一人はかかりつけ医であります。従来、かかりつけ医については、その役割は明確に示されておりませんが、お手元の資料の十ページと十一ページに、私ども福岡県医師会では、かかりつけ医の役割を重視し、医師みずからがかかりつけ医宣言を行ってもらっています。在宅医療のキーパーソンとしてのかかりつけ医の評価、支援そして育成というものが非常に重要であろうと考えております。

 四番目に、地域における医療連携についてでございます。

 在宅医療を行うに当たりましては、かかりつけ医が診ている患者さんが入院医療を必要とされる状態になったときに支援をする入院機能が必要となります。地域にある中小病院や有床診療所の地域に密着した入院機能を評価し、在宅療養を支援する位置づけを明確にする必要があろうかと考えます。

 脳血管障害や虚血性心臓疾患等の急性発症に対する急性期医療から回復期医療への道筋は、今回の医療法改正、医療計画の中でかなり明確に示されていますけれども、維持期の医療が必要な方及びその患者さんたちが急性増悪をされた場合の対応への施策がまだ不明確であります。終末期医療のあり方を含め、在宅療養されている患者さんの状態が悪化した場合に対応できる入院の機能というものは、地域密着型の入院施設を持つ医療機関が不可欠であります。かかりつけ医と、有床診療所を含めた地域病院と、高度医療を提供する病院との医療連携が、切れ目のない医療提供の実現には必要と認識することが重要かと考えております。

 次に、高齢者医療制度についてでございます。

 今回の法改正の中で、新たに七十五歳以上の後期高齢者を対象に高齢者医療制度の創設がうたわれています。対象の高齢者の方々は、ほとんどの収入が年金しかないと考えられます。もし医療、介護を必要とする状況になったとき、自己負担額が年金額を超えることが想定をされます、現行の法ではそうでありますが。医療、介護保険の自己負担の上限額は年金受給額を大幅に超えることがないような制度をつくっていただきたいと思います。

 また、高額医療費制度がございますが、これはあくまでも自己申告による還付方式をとっておられますけれども、自己申告をすることができない高齢者の方も多くいらっしゃるという事実がございますので、その対策もしっかりとっていただきたいと思います。

 そして、今回、高齢者医療制度という名称になりました。この制度でも、通常一般の医療保険で給付されている医療内容については、当然この高齢者医療制度でも給付されなければならないと考えております。

 保険者については、都道府県ごとの広域連合を想定されておりますけれども、福岡県における介護保険の広域連合を見てみますと、政令都市など財政に力がある地域は、独自で保険者を持ち、広域連合の中に入っていらっしゃいません。高齢者医療制度では、政令市を含めた県単位の広域連合ができるようにぜひしていただきたいと思います。

 六番目に、医療機関の情報提供についてであります。

 これは、お手元の資料の十二ページから十四ページにありますので、後ほどごらんをいただきたいんですが、福岡県医師会では、県民への医療情報を提供する目的で、県と共同しまして財団法人の福岡県メディカルセンターを運営しています。平成十六年から県内の全医療機関の医療機能の情報をホームページで公開をしております。一日平均約一千件のアクセスがあり、県民に信頼を得ている状況だと考えております。一度見てもらえればわかると思いますけれども、必要と思われる情報はほぼ検索できる状況でございます。また、現在高度の技術を要する手術についても調査中でありまして、年内には情報提供が可能になると考えております。

 次に、医療相談についてでございます。

 同じく、福岡県メディカルセンターに福岡県医療相談支援センターを設置いたしまして、医療についての電話相談を行っています。平成十七年度に七百四十五件の相談を受けました。そのうちの四七%強が医療機関についての苦情、四五%強が病気についての相談、七%は県弁護士会の協力で行っている法律相談であります。その法律相談では、相談者の九三%の方が、弁護士のコメントやアドバイスで納得、了解をされているという点が注目されるところであります。ぜひ相談員の質向上のための研修を充実してもらいたいと思います。

 次に、医師の診療科偏在についてであります。

 福岡県においても、産科医師の減少が著しい状況であります。勤務時間が不定期という産科特有の問題だけで産科を希望する医師が少ないということではないと思います。周産期における医療訴訟の多さが産科希望医師の減少となっている。出産への期待が高いだけに、もし障害があったりすれば、親の批判も当然強いわけであります。

 周産期には母子ともにさまざまな病状の変化が起こり得ますし、最悪の場合は死亡されることもあり得るわけであります。医学的な常識では、脳性麻痺は正常分娩においても数百例に一例は起き得るという報告もありますし、それに対する何らかの補償がない現在、産科医師を訴えることで補償を受けるしかないという状況でもあります。これが産科事故の訴訟の原因となり、ひいては産科医師の希望者の減少、地域の産科医の不在につながっています。

 医療は、残念ながらまだ不確実な科学でもありますので、周産期の無過失補償制度の創設、これは資料の十八ページ以降につけておりますが、福岡県では平成十五年にこういうことを考えまして、いろいろ模索をし、今、日本医師会からお願いをしているところでありますが、そういうことをお願いしたいと思います。

 また、現在新しく医師になる方の約四分の一は女性でございます。現在の医療の勤務環境は女性医師にとって十分に配慮されているとは言いがたい面がございますので、女性医師が臨床医として仕事ができる環境整備を国としても配慮していただきたいと思います。

 終わりにでありますが、若い病院勤務医の中で、今、医師の勤務時間外、臨床現場から密かに立ち去りたいということが少しずつ言われています。今まで医師は、医師の責任感として、労働基準法の規定によるより医の倫理を尊重し、病で苦しむ人のそばから立ち去るというようなことはほとんどありませんでした。福島県立大野病院の産科の事故とその後の刑事事件としての処理、そして逮捕した警察署に対する県警本部長賞の授与のニュースを聞き、医師が医療に献身することに少しずつ疑問を持ち出したのではないかと非常に危惧を持っております。

 財政も大事でございますけれども、日本の医療制度が守られていくような政治がなされなければ、最大の被害はやはり国民に及ぶわけでございますので、よろしくお願いして、意見を述べさせていただきました。

 ありがとうございました。(拍手)

岸田座長 ありがとうございました。

 次に、岩永勝義君にお願いいたします。

岩永勝義君 岩永でございます。

 私は、熊本の地で、医療を提供する側に立って物を考えてまいりましたし、熊本というのは大変急性期病院が多いところで、生き残りも大変なんですけれども、そこの中で見えてきたことが幾つかございます。私は、医療の提供体制についてだけ申し述べたいと思います。

 医療というのは本来国民のために、国民の中に医者もい、患者さんもいると思うんですけれども、エクイティーを持って、公平に、エフェクティブな医療、有効な医療をエフィシェンシーに基づいて提供し、なおかつ患者側にエンパワーメント、力を与えて、これは自己決定権を含めてそういう能力を与えて、それを医療人がサポートするということ。これは、実は一九九〇年ごろのOECDの保健担当大臣での申し合わせ事項なんですけれども、本来医療というのは、国民のために、我々が情熱を持って、志を高くして取り組むべきだ、私もそう思います。

 だから、そういうグローバルスタンダードに合わせていく、少なくとも医療というのは西洋医学ですから、しなきゃいけない。ただ、グローバルスタンダードに合わせるというとき、しばしばほかの連中に、おまえたち黙っておれ、グローバルスタンダードというのは相手をおどすためになされる危険性がしばしばあるので余り使いたくないんですけれども。

 日本の厚生省のやってきたことは、大まかにそういう基準を満たしている。すなわち、効率よく、これは自己負担が導入されたことも含めて、医療提供側にもコスト感覚が出てきたことは確かですし、療養型が整備されたということで無駄な医療がなくなっていることも確か。そして、世界から非難されていた薬漬け、注射漬けあるいは検査漬けの医療が、今度のDPCその他の導入によってより効率的になってきた、これも進歩です。それから、OECD、アメリカは既に百ベッドに百人以上ナースがいるんですけれども、日本ではたかだか五十人。それが、今度一・四対一の導入があればそれもまた非常によくなるわけで、厚生省の施策というのはそれなりに前を向いて正しいことだと私は思います。

 ただし、三歩進んで二歩バックすることがあるんですね。これは、今の医師会の先生がおっしゃった、療養型が行きどまりになったということが一つ。私の方で言うと、せっかく華々しくかかりつけ医と急性期特定病院という、病院の機能を二つに分ける案が数年前出てきたと思ったら、ことしは引っ込んでいる。ちょっとはしごの外し方が早過ぎるのではないかというふうな思いをしております。

 しかし、フォー・ザ・ピープルという意味での医療というのは、私は少しいい方向に行っていると思います。ただし、あえて現場から言いますと、グローバルスタンダードに合わせて、合わせようがなくて苦しんでいるのが、実は最後のエンパワーメント、患者さんに自己決定権を与えるということでありまして、外国みたいに、これは宗教の問題かもしれませんけれども、日本のお年寄りは農耕民族として優しく、温かく、周囲から見ておった人に自己決定権を与えたって、現場は混乱します。きれいごとで言うと自己決定権をちゃんとその人にさせなさいと言うんですけれども、現場では苦労いたします。

 そのことを踏まえた上で、私は三つの提言をしたいと思いますけれども、私の資料があります。その一ページをごらんください。

 実はこれは、それまでの医療は、患者さんが好きなところにフリーにアクセスをしていい、大病院だろうが中小病院だろうが診療所だろうが、どこにでも好きなところに行っていいということだった。それを、平成九年の八月二十九日に、当時の与党三党、自由民主党とさきがけと社民党でありますが、それが今後の医療はこういうふうにした方がいいよとかいたのがこの絵です。

 これは、決してフリーアクセスを制限するものではありません。より多くの国民に効率よく、あまねく医療を提供しようとするならば、一回ゲートキーパーを通って、そしてそれぞれに機能的に分けた方がより効率がいいよという、世界がすべてそうであります。またグローバルスタンダードという言葉は使いたくありませんけれども、保険ないしは税金で医療にコミットしている国は、すべてゲートキーパーを通らないといけません。これをやることこそが日本に、例えば教育のことを考えてください、みんなフリーに教育を受けられるとしたら、全部が好き勝手に東大に行ったり京都大学に行ったり慶応大学に行ったり早稲田に行って、そこで教育が果たしてできるでしょうか。そういうミゼラブルな状況に今大きな病院が、例えば慶応とか虎の門は一日四千人の患者が押し寄せている、三時間待ちの一分診療にならざるを得ない。

 だから、それをもう少し、本当に医療を必要とする人に必要に与えるためには、制限するんじゃありません、効率よく整理をして、交通整理をすることによって、あまねく多くの人たちによりいい医療が提供できるようにしていただきたい。しかも、これは平成九年に政党から出た案です。何で今までたなざらしになっていたんでしょうか。私は、このことをぜひ急いで拡充していただきたいと思います。

 二番目のお願いは、医療圏の拡大の問題であります。

 各県に医療圏を小さく分けて、そこの中で地域完結型の医療を目指しておりますけれども、もうそういう医療圏というのをなくして、衆議院の先生は小選挙区制でありますけれども、私は、医療は中選挙区で、なおかつ定員二とか三あった方が、病院間の競争も出てきて、よりいい医療を県民に提供できるのではないかと思っています。だから、個々の市町村ごとに医療圏を分けるといったって、実は隣の方がよっぽどアクセスがいいということはあるわけですから、少なくとも最低県単位の医療圏にして、自由に動きができるようにする。

 ちなみに、熊本県は、熊本市を中心に一時間以内で人口の九〇%をカバーできます。そうすることによってより効率のいい医療を、例えば地方に本当にそれだけの医者が集まってこないことも含めて、もしアクセスが十分に確保できるならば、そこにお住まいの方々の医療も確保できると思うんです。もっと言うと、県境では道州制も視野に入れた形で医療というのを有機的につながるようにしてほしいというふうにお願いします。

 三番目は、今度の法案に出ていますけれども、やはり日本というのは医療を提供する側が非常に細分化されている。例えば、私は国家公務員共済でありますが、それとか県とか市とか国立とか済生会とかという、どうも細切れ過ぎるから、これを、できれば地域の方々が自分の病院として運営に責任を持つようなことをするためには、現在の市町村立の病院を特殊法人化するというのも非常に理にかなったことではないかと思って、今度の法案が進歩することを期待しているわけであります。

 以上です。(拍手)

岸田座長 ありがとうございました。

 次に、中山眞一君にお願いいたします。

中山眞一君 宮田病院の中山眞一でございます。本日、このような機会をいただきまして、ありがとうございます。

 私は外科医でございまして、外科、麻酔科、救急を中心に、現在、民間病院である相生会宮田病院で、その中で急性期病院の確立に力を注いでいる者でございます。そういうわけで、今回の地方公聴会の意見陳述では、一臨床医として日常の診療活動の中で直面している、地方の民間病院の抱える問題等について意見を述べさせていただきたいと思っております。

 宮田病院は、先ほど医師会長もお話しになりましたけれども、福岡県の北部で、福岡市と北九州市の中間にございますけれども、かつては筑豊炭田を有した旧産炭地そのものでございます。最近でこそ、九州トヨタ工場等の進出がございまして、若干の人口増と活性化が期待されておりますが、昭和四十年代の炭鉱閉山の傷跡のために高齢化率は非常に顕著でございまして、約二六%の高齢化率を示しております。高齢者医療の問題は深刻で重要でございまして、また同時に、当時から、閉山後三十年ぐらいの地域ですので、新規の医療機関の数も少なく、開業診療所の先生方の高齢化も著しいというような状況にございます。

 私どもの病院は、平成五年に運営を開始いたしまして、約十年ちょっと経過しております。二百四十二床の病床を有しておりますが、こういう地域ですので、救急とか外科だけの急性期医療だけではなかなか運営が難しゅうございまして、高齢者の医療も一つの柱として運営している次第でございます。そういうわけで、一般病床を九十二床、療養関係の病床を百四十床ほど有しているわけでございます。

 現在の形は、この数年間に次々と行政の方から指示されております病床配分について、それに追従する形で変わってきたものでございまして、そういう意味では、地方小都市における代表的なケアミックス型の中規模の病院ではないかと理解をしております。また、当院では、ケアマネジャーとかソーシャルワーカー等を配置いたしまして地域連携室を運営しておりますが、これは、近隣の貴重な医療資源でもございます有床診療所や老健、特養、グループホーム等との緊密な連携をとっていくことでいろいろな近い将来の転院先を確保していく、そういうような運動がなければなかなか病院の運営が難しいという状況にあるわけでございます。

 そういうわけで、現在の問題の一つで、私は、一番に、社会的入院の解消について、高齢者医療の問題になるわけですが、述べさせていただきたいと思います。

 介護施設に医療が必要かというような議論が出ているように思いますけれども、私は、その前に、社会的入院と終末期医療というのはやはりはっきり線引きをしていただいて、かつ、高齢者の終末期の医療のあり方については一定のガイドラインなり指針を示していただきたい、そのように考えております。また、この問題は医療従事者だけではなくて国民全般へも投げかけてほしいと思いますし、まだまだ一九七〇年代の老人医療費の無料化の影響が国民の心理として根強く残っているかと理解しております。

 在院日数の短縮、これも似たような問題になりますが、現在、この数年間で、在院日数の短縮ということは一般病棟に関してはかなり進んできていると考えております。ただし、高齢者の医療を扱う部分に関しましては、どのような治療の選択をいたしましても、在院日数が延長するということについては疑問の余地はほとんどないんじゃないかというふうに考えております。

 同じようなことで、介護療養型病棟と終末期医療ということですが、先般、介護型療養病棟の全廃についての政府の方針が発表されたわけでございますが、平成十二年に導入された介護保険制度としては余りにも制度変更が早いと言わざるを得ないと思っております。現場を預かる臨床医として、高騰する医療費に対して知恵を絞ると同時に、地域住民には安全と安心を提供しなければならない。国民として医療費の高騰を抑制せざるを得ないことは十分に承知しておりますが、これまで医療制度改革の中で、在院日数の短縮、病棟の再編成、看護部門の整理等に努力はしてきております。ただ、高齢者の医療では個人差が大きく、非常に単純に分類することはできませんが、終末期の医療ということに関してはまだまだ十分な議論が必要ではないでしょうか。

 いずれにしろ、高齢化の波は今後さらに強まることは明らかでございまして、国民として、終末期の医療、介護の問題にどれだけの経費をかけるべきかを具体的な数字として示さなければならないのではないかと思っております。

 もともと、移植医療のときの議論でも同様だと思いますけれども、日本人は死生観に関して突っ込んだ議論をしない傾向がございますので、医師として、医療人としてはこの辺の議論をリードしていくのはなかなか難しいところがございますので、皆様の御支援をぜひよろしくお願いしたいと考えております。

 それから、在宅におけるみとりというようなことも最近よく言われております。我々の地域は、僻地とは言わないまでも、田園風景を残した地方小都市で、それでも現在、高齢者の、施設内、病院とかそういうところでの死亡率が約九〇%を超えております。ちなみに九州は大体九五%とかいう数字も聞いております。我々の地域では高齢者との同居習慣は比較的残っていると思われますけれども、それは健常高齢者の話でありまして、介護が必要となると、施設への入所、入院が切に望まれていることを日々実感しております。さらに、健常高齢者が介護を必要とする形で入院する契機になりますのは、一般的な肺炎とか骨折、胃腸炎などにより突然入院してしまうというような形で表面化してくるかと存じております。

 こういう地域ですので、核家族化の時代も含めまして、現在もう既に老老介護とか独居老人という状況が出現しております。在宅医療に積極的に努力されている診療所の先生がいらっしゃることに関しては十分承知しておりますけれども、全体として見ればやはり例外的な存在であると感じておりますので、今後、高齢化社会において介護難民と称するものが出現しないように、それだけの努力はやはりしなければならない。ぜひこの辺は行政の御支援をお願いしたいと考えております。

 終末期医療と病診連携について一言述べさせていただきます。

 これは、救急医療の問題等ともある部分で関係してくる部分でありますが、我々の地域病院には救急車の搬入が非常に多くなっておりまして、その中での病院の勤務医への過大な負担の発生として、高齢者の院内死亡について述べていきたいと思っています。

 回復不能の救急例が院内で死亡に至ることは避けようもないことでございます。しかし、入院後、結果的に長期の入院を余儀なくされ、最終的に死亡に至る例も少なくないことを常々感じております。まさにこのような問題は高齢者の終末期の医療の問題と言えるわけでございまして、回復が不可能に思える患者さんでも、我々医療人は回復を期待して最高の治療をしなさいというような形で教育を受けてきております。

 また一方で、高齢患者さんとその家族は、昭和五十年代の老人医療費無料化の感覚からいまだに脱却できずに、単純に最高の医療を我々に求めるということもよく遭遇することでございます。しかし、加齢に伴う肉体の弱体化と、病気、疾病とは全く異なるものでございまして、結果は最初から予測がつくことが多いかと思います。このような部分に現在の医療費高騰の問題があるのではないかと思っております。

 ちなみに、我々の病院では、昨年度、平成十七年度は百七十七件の死亡退院を経験しておりますけれども、宮田町の年間の死亡者数が二百四十名ですので、七〇%という相当な高率の患者さんが我々の病院で亡くなっているということになります。もちろん、そういった患者さんのかなりの部分は介護療養病棟入院中の方であったということは想像にかたくないかと思っております。

 そういうことですので、我々スタッフとしては、失礼のないように、二十四時間誠心誠意尽くしているのが現状でございます。このような状態に対して、人間としての最後の儀式というか、みとりの現場を支えているのは、現在の日本ではまさに病院勤務医を含めた病院のスタッフであるということを皆さんに理解していただきたい、このように考えています。

 私どもの地区では、この部分を少しでも有床診療所の先生にも受け持っていただきたいと考えておりまして、地域連携室を通じて時々お願いするような形になっております。実際にお引き受けいただきますと、御家族の方などにも安らかな最期をとても喜んでいただいた経験もございます。地域の医師会の活動として、このような面にも今後力を入れていきたいと思っておりますけれども、現実には、有床診療所の数は激減して、死亡診断書を書くことのない無床診療所の先生がふえるばかりでございます。

 現在の医療保険制度の中では、有床診療所を維持していくことが非常に不利だというようなことが強調されているかと思いますけれども、有床診療所の入院費は病院の入院費と比べればかなり安価でございますので、高騰する医療費への一つの解答として考えてもいいのではないかと思っております。地域医療のゲートキーパーであるはずの診療所医師のもとに患者さんが最後に戻り、なれ親しんだ医療スタッフと地区において自然体で最期のときを迎えるというようなことは、本人にとって、また家族にとって不幸であるはずはない、そのように信じております。

 現在、医療法十三条の、有床診療所四十八時間規制の撤廃も現実化していると聞いておりますけれども、私は、さらに踏み込んで、有能で使命感に燃えていたはずの若い医師が死亡診断書を書くこともないような無床診療所にばかり逃げ込むことに行政として一定の歯どめをつくってほしいというか、そういう機運をつくっていただきたい、そのように思っております。そのような形で、魅力があって活力のある有床診療所が検討されていきまして、私どもとまた新たな病診連携が構築できることを期待しているわけでございます。

 それから、よくついの住みかというような形で老健とか特養などが議論されておりますけれども、現実には、統計上調べてみますと、そういった施設からの死亡の退所例が非常に少ないということはどういうことを意味するのかということも知っていただきたいなと思っております。

 あと、地域医療の当面の問題点について、二、三述べさせていただきます。

 小児の医療体制、これも何度もいろいろなところで問題になってくると思いますけれども、私、その中でも、特にフリーアクセス、日本の健康保険制度の非常にいい点ということでフリーアクセスということになっておりますけれども、患者さん側の拡大解釈にも大いに疑問を感じておりますので、節度を守らなければフリーアクセスも保てないということを強調していきたいと思っております。

 それから、最後に、新臨床研修制度についてちょっと述べさせていただきたいと思うのです。

 私は、三十代の前半に外科的なプライマリーケアを目指して米国で研修をしておりましたけれども、そういった意味で新臨床研修制度には非常に期待をしております。これまでの日本での教育というのは、特に外科に関してですけれども、サブスペシャリティーを専攻させる傾向が非常に強かったと思いますので、ちょうど世代的に今五十歳以下の先生方は非常に専門性を大事にするところがありまして、一般というか、ゼネラルという部分に余り興味を示していただけないような傾向が多少見られるかと思います。

 このようなことから、新臨床研修制度がスタートして、立派な医師をつくっていくということが厚生労働省の主導でスタートしているわけですけれども、現実には、二年間の義務を課した後に今までと同じ入局を繰り返すというようなことになりますと、六年間の医学教育が八年に延びたというだけになるんじゃないか、そんなふうに思います。せっかく、卒後臨床研修制度、二年間、ぽっとスタートしたわけですので、やはりその先の医師の再配分、科別の配分ですね、医師の偏在をもちろんなくすということなんですけれども、かなりそこら辺も、地域的偏在、科別偏在をなくすために、その後の医師の専攻科目を自由経済の原則に任せるだけでは地域の医療がますます苦しい状態になりますし、これが自由経済で正常化するということになるかもしれませんけれども、それではかなり時間がかかるのではないかという意味で、臨床研修制度修了後の医師の配分ということについても行政の一定の指針というものを示していただきたい、そのように感じております。

 以上、私の発表を終わらせていただきます。ありがとうございました。(拍手)

岸田座長 ありがとうございました。

 次に、浦江明憲君にお願いいたします。

浦江明憲君 私は医師でありますけれども、今具体的な話がかなりいろいろ出ましたので、医師として半分、それから一市民、国民として半分、三点について述べさせていただきます。

 その三点のお話をする前に、今の医療制度についての私の個人的な概観といいますか、そういうものについてお話しさせていただきます。

 現行の国民皆保険制度が世界的にも非常に評価の高い制度であることは、若干古い話になりますけれども、米国のヒラリー・クリントンが目指した医療改革の骨子がまさにそのものであって、成立は見ませんでしたけれども、それを見ても明らかであると考えております。実現を見なかった理由は、今回問題になっておりますことと同様、米国の医療費が対人口比で我が国の約二倍、総額では四倍ですので、これらの財源の確保が困難であったからであります。

 我が国は、そういう意味では、約半分の費用で米国以上の高齢化社会を実現しているという点から、前述の制度がすばらしいということとともに、医療関係者が奉仕的とも思える長年の努力をしていることは言うまでもないというふうに考えております。

 しかし一方で、医療、福祉の発展の結果として、御承知のとおり高齢化社会が到来し、疾病構造が変化し、また、経済成長による豊かさが実現することによって国民の医療に対するニーズが多様化しました。また、この間、検査、診断、診療技術は大変高度化いたしまして、それらの要因によって医療費は増加し、国家財政上極めて重要な問題となる規模に達していることは私たちも認識しております。

 そこで、私の友人である米国の医療経済学者が、数年前、日本の医療制度について述べた意見について、そのまま御紹介したいと思います。これを述べますのは、やや辛らつな意見も含まれておりますが、我が国の制度をまねしようと思ってできなかった国の人たちの意見ですので、実際に制度をつくられております行政の方々も懐深く聞いていただければと思います。

 今日の日本の医療保険制度は、帝国ホテルの地下ですしを食うようなものです。帝国ホテルの地下にはとてもおいしいおすし屋さんがあります。きょうは何がうまいかな、適当に握ってくれと言えるのが今日の日本の皆保険制度です。おすし屋さんは、新鮮でおいしいネタをお客さんの好みとおなかのすきぐあいを見ながら握ります。すし職人にとって腕の見せどころであり、プロとして大満足です。おいしいすしを自分のペースでゆっくりと味わって食べられる客も大満足です。

 今の日本の保険制度は、自己負担は二割から三割、しかも月額一定を超えた場合はそれ以上の支払いは免除されます。入院して医療費が高くなればなるほど、実際の自己負担比率は限りなくゼロに近づきます。行く病院も、聖路加であろうと順天堂であろうと、自分で決めることができます。帝国ホテルのおすし屋さんに行って、財布の中身を心配せずにお好みでおすしを食べるようなものです。お客さんである患者さんも、おすし屋さんである医師も満足しています。日本の医療制度改革は成功しないのではないでしょうか。一般の庶民にとっては、現在の日本の、出来高払いに基づく、自由に医療機関を選べる国民皆保険制度が一番ありがたい制度です。これ以上患者と患者の家族にとって満足できる医療システムはあり得ません。

 今日日本が直面している問題点は、現在の制度がよいとか悪いとかではなく、医療保険の財政が破綻を避けられないという事実です。お金が余っている世の中なら、今の、すし屋で適当に握ってくれというシステムほどよい制度はありません。無駄だとかぜいたくだとかいう批判はあるでしょう。しかし、消費者にとってこれ以上満足のいくシステムはあり得ないのです。しかし、現在、このような自由奔放なお好みずしを許してきた経済成長は終わり、少子化、高齢化の時代を迎え、財政が底をつきました。今まで皆がハッピーだった、帝国ホテルでお好みのすしを食うという選択はできなくなったという現実を伝えなければなりません。

 これからの時代とは、帝国ホテルではなく、回転ずしに行くように指示されます。あるいは、おすしの前におにぎりとかお茶漬けを出され、クーポン券をもらってその額だけのセットメニューを食べるという時代なのです。効率性の追求ということで、在院日数ならぬ在卓時間を短縮され、三十分しかカウンターに座れなくなったら、おすしのファンは暴動を起こすかもしれません。今までむっつりしていた板前さんが急に愛想を振る舞っても、だれも満足はしないでしょう。

 DRG、これは現在我が国で行われておりますDPCとほぼ同様の制度ですけれども、DRG云々と言っているが、DRGがなぜ必要なのか、そしてそれがどのような影響を及ぼすのかをきちんと一般国民に理解できるよう説明し、合意を得ない限り、真の医療改革はあり得ません。ちまたでは、医療ビッグバンとか病院革命とか、ファジーで前向きな言葉が使われています。しかし、これは供給側あるいはビジネスチャンスを期待する側からの発言にすぎず、偽善であると思います。問題の本質は、お金がなくなっちまったにあります。

 人間はだれでも、悪いことは聞きたくないし、言いたくもありません。特に政治家の方々は、悪いことばかり言っては票に結びつかない。これでは政治的なリーダーシップが期待できないはずです。たとえポジティブな情報ばかりを流してDRGを実現したところですぐに破綻するでしょうというのが、数年前といいますか、五年前に彼が述べた意見です。

 私はこれを何で御紹介したかといいますと、これは私たち国民にとって非常に重要な問題ですので、いろいろな方面から、つまり多面的にこの問題をぜひ考えていただきたいということで、私はこの意見に必ずしも賛成しているわけではありませんが、そういう意見、そういう見方もあるということで御紹介いたしました。

 私は、このような環境を踏まえて医療費削減が今現実に叫ばれておりますけれども、今回議論されております制度改革についても、はっきり言うと、医療費削減を新たな医療保険制度の新設に絡めて、国民そして医療機関への負担増で当面解決しようという趣旨というふうに考えております。

 しかし、私思いますのは、本来、医療を含めた社会保障は、私たち生活する人間にとって、教育と並んで最も関心の高い、内政上の重要な問題であると考えておりますので、例えば、金融システムへの公的資金の支出であったり、公共事業を通じての財政支出等との比較でぜひ考えていただきたい。つまり、今私たちが問われているのは、有限な国家財源をどのように適正に配分するかの問題であるというふうに考えております。

 以下、私の意見を三点に集約して述べたいと思います。

 第一点ですが、まず、私たち国民にとって、日常生活をするに当たって、この国の医療ないしは社会福祉政策が長期的にどのような方向に向かうかということは極めて大きな影響を与えます。しかし、現状は、私個人は、この長期的ビジョンがいま一つ明確ではないように思われます。国として、そこをまず明確にしていただきたいというふうに考えております。そうでない限り、私たち国民は、絶えず老後を心配しながら恐る恐る生活せざるを得ない。

 これは、長期ビジョンは明確にしていると反論されそうですが、私たちの生活に直結するような大きな変更が五年ないしは十年でたびたび行われると、それは示されていることにならないというふうに考えております。例えば、介護保険導入のときにも、私は、当時二号保険者であった団塊の世代が一号保険者になったときにこの制度の財政的保障をどういうふうにするのかと大変疑問に思いましたが、現在そのことは現実の問題になってしまい、比較的大きな改革がなされようとしております。

 したがって、思いますのは、ぜひ長期的なビジョンを明確にしていただきたい。例えば、高負担・高福祉なのか、低負担・低福祉なのか、その中間のいずれかなのか、わかりやすく、他の財政支出等、つまり金融システムであったり公共事業のような、そのシステムの中でどういう位置づけなのかをぜひ私ははっきりしていただきたいというふうに考えております。

 この点に関する私個人の意見は、国民生活の根幹となる医療等の社会福祉については、当面、適正配分を考慮するための工夫が優先されるべきではないかと思っております。

 二点目は、医療の適正化をどう進めるかに関してですが、例えば、救急医療や先ほどお話に出ました小児医療、がん治療の特殊なものについての高度医療などは、余りコストにとらわれずに行わなければならないと私は考えております。これらの医療の重要性は、自身の家族がそのような状況になったことを想像するだけで容易に理解できることであり、これらの状況に税を投入することに異を唱える方は少数であると思われます。したがって、これらの疾患に関しては、地域的に受け皿がないところでは、公的資金を投入してでも公的な医療機関で実施する必要があると思います。

 一方で、生活習慣病を中心とした慢性疾患や日常的な疾患を同様な枠組みの中で取り扱うことは、既に無理が生じていると考えております。生活習慣病を中心とした慢性疾患や日常的な疾患は、例えば先ほどお話のあった、一般の市民の方々と密接な関係にあり柔軟な工夫のできるかかりつけ医で実施するような体制が一つの案として考えられると思います。

 また、先ほどお話の出ました医療費適正化の工夫としての生活習慣病の予防についてですけれども、これはよく議論されますが、実際に種々の予防効果を検証することは膨大な費用と時間が必要になります。現在の保険制度の中で予防を認めているケースが極めて少ないことを考えても、それは容易にわかると思います。本気で予防医療を進めようというふうに考えるならば、予防に関する指導や活動も保険上認めた上で、必ずその結果を報告することを義務づけ、その情報を分析し、予防効果の実証と、社会資本の節約にどの程度効果があるかについて分析する体制を構築する必要があると思っております。そのような具体的な体制をとらない限り、予防の普及というのは絵にかいたもちに終わると私は考えております。

 三点目は、これも先ほどお話に出ましたが、受益者としての患者さん方の知る権利ないしは選択する権利の強化の取り組みについて述べたいと思います。

 今回の改正案の中でも、都道府県に権限を移譲して保険者機能を強化するということをうたわれております。これについては具体的には述べませんが、分散しただけで保険者がとても機能を強化するとは思えません。これは患者さんと全く同様なんですが、保険者、医療機関、患者さんと考えた場合に、今最も強化が必要なのは、患者さんの情報量をふやす、それに基づく選択の権利ではないかと思っております。そのために必須なのは医療機関の情報の開示であり、その基盤となる各医療機関の情報基盤整備だと私は思っております。

 この情報基盤が整備されない限り、患者さんの情報量をふやし、みずからの責任で的確に選択することは不可能です。そのためには、たびたび公的資金が出ますが、そういうものを投入してでも医療機関の情報基盤整備を進めることが第一義的に必要と考えております。こうして情報を公開して患者さんに自立を促していくことがまず必要ではないかと思います。患者さんに情報を公開するということは、患者さんに対しても、情報収集の努力さらには自覚を促すことにもつながると思っております。

 具体的な情報開示に関しては、まず、税金を補助金として受けている病院に対して、基本的データの公表を義務づけることが必要ではないでしょうか。これは納税者として当然の知る権利であり、開示しない病院に対しては、納税者として補助金の支出をストップするよう要求することを主張することも必要かもしれません。納税者の立場に立って、患者さん、患者さんの家族はもとより、健康な一般の国民が納税者としての権利を自覚して、必要な情報の開示を求めるような仕組みとすることが一つの案として考えられます。

 具体的な情報としては、例えば、どのような病気の方がどのぐらい入院したのか、先ほど出ましたが、主要疾患に関する平均入院日数がどうだ、レセプト請求額がどうだ、手術の件数がどうだ、出生児数はどうだ、特定の疾患における院内死亡率がどうだということを決定する必要があると思われます。

 こうやって税を補助金として受ける病院が情報公開をいたしますと、消費者は、今までのように病院の見ばえやうわさによる病院選びから、少なくとも、幾つかの主要な疾患に関する、例えば平均入院日数ですとか、レセプト請求額ですとか、手術件数ですとか、院内死亡率などの実証的なデータを事実として把握することによる病院選択が行われるようになると思います。このようなデータを私ども国民に与えることで、消費者は自立を促されることにもなると考えております。

 以上三点、今回の医療制度改革に関して日ごろから考えることを率直に述べさせていただきましたが、ぜひ、この問題は重要な問題ですので、多面的な切り口からとらえて、私たちに安心を与える制度を確立していただきたいと思います。

 以上です。(拍手)

岸田座長 ありがとうございました。

 次に、久能治子君にお願いいたします。

久能治子君 最初に、私のような若輩の身に発言をお許しいただいたことを感謝いたします。本来なら、この場に立つのは、母、久能恒子のはずだったと思います。

 御存じない方が多いと存じますので簡単に申し上げますと、母は、一九九二年、三女紹子を十七歳のとき不要な開頭手術で亡くした後、医療過誤問題に奔走し、昨年逝去しております。医師の身で、父とともに医療過誤訴訟を起こし、十年かけて勝訴判決に至るその過程で、医療過誤の問題の深さに気づき、医療事故調査会発起人となり、また医療過誤原告の会の二代目会長を務めた者です。

 私も医師ですが、本日は、なおまた医療過誤被害者の家族としてこの場におります。さきにいろいろな先生方がお話しされていることもあり、実態を知っていただくためにも、重複を防ぐためにも、必ずしも法案に沿ったお話ではないかもしれませんが、医療過誤紛争に関係してお話しさせていただきます。

 医療過誤というものは、世間的にはまだよく理解されていない向きがあります。まず、医療過誤は確かに、うっかり型などの医療ミスをも含みますが、以前の訴訟ケースはほとんどがそれとはまた別の、独断的な傲慢さによる犯罪に近いものでした。どれだけの人がそれを理解されているでしょうか。最近は、不可抗力型の医療ミスまでも医療犯罪と混同されている方も少なくないようです。

 しかし、臨床医ならだれでも知っていることですが、医学はまだまだ不確実な学問です。絶対はありません。くれぐれも誤解のないようにお願いいたします。ミスはなくすことはできないけれども紛争はなくすことができるというスローガンがあります。そのためには、まず患者さんたちとコミュニケーションがとれる医師を大きな柱とする。問題に対処するためには、まず正しく理解することも大切ではないでしょうか。

 お手元の資料をごらんください。先日、日本評論社からカルテ改ざん問題について出版された書籍中のアンケートです。母が、判決後、弁護士の先生方とともに始めたものです。医療過誤問題について、どれほどカルテ改ざんの頻度が高いかを示しています。

 また、提訴に至る理由というのは、裏のページにありますけれども、原告の会のアンケートで、真実が知りたかったからという気持ちが一番多いとされています。医療過誤訴訟において、提訴した人間の多くが求めているのは被害者の尊厳です。また、医療過誤に詳しいある弁護士の先生はおっしゃいました、医療過誤はほかの事件とは違う、原告にとって時間はとまったままなのだと。まさしくそのとおり、真実を明らかにできるまで気持ちの持っていきどころはないのです。

 例えば、アメリカでは、真実が明らかになった後、国のデータとして今後の医療の礎となり、歴史に生かされます。日本では記録は書きかえられてしまって、真実の知りようもありません。生命のデータが故意に消されてしまうのです。昨今は原告勝訴の声も聞くようになりましたが、そうして数年前までは、まともな審議も望めないまま十年以上もかかって、疲れ果て、敗訴する歴史が続いていたのです。

 お手元の資料で、二ページ目ですけれども、各国の例を比較してみて、職業的懲罰機関がないのは日本だけであることがおわかりいただけると思います。行政処分が現在この任を負っているわけですが、職業機関ではないため十分とは言えません。カルテ改ざんについては、日本でも現実には、裁判になった場合、裁判長の権限で裁量することも間々あるということですが、例えば、全く見つからないなどと言われては審議のしようがありません。

 それらを踏まえて、現時点で医療過誤防止のために幾つか必要と思われるものを上げます。

 一、カルテ改ざん防止策をとっていただくということ。

 これは、慈恵医大病院事件などに代表される、昔の人体実験的な考えの残る一部の医師に対して特に必要です。医療者から見て、まともな医療を施したとは思えない犯罪的なケース。どの業界であろうと犯罪は犯罪として裁かれるべきですが、証拠隠滅が容易であるのがネックになっています。そして、このような医師が懲罰を受けることがなければ、産地偽装、耐震偽造、粉飾決算などモラル喪失の事件が多い社会で、良貨は悪貨に駆逐され、医療が信頼を保持していくことは困難でしょう。

 二つ目に、ADRの推進をさせていくこと。

 これは司法改革のテリトリーにもなりますが、故意に犯罪的な件でなければ、極力ADRにて審議するのがよいと思っています。法の解釈とは時にデリケートなものだと知りました。もともとリスクのある状態で行われる医療について、ほかの業務と同列に扱うのは危険です。医療ミスは裁判にはなじみません。賠償金を得ることはできても、謝罪や真実を知りたいという欲求が優先されることがないので、被害者からも満足感が得られません。

 長く、医療事故に遭った人は、まずどこに相談すればいいかもわからなかった。警察、医師会、保健所、弁護士。報道によって現在提訴という手段が身近になったけれども、ADRの方が、医療従事者にとってばかりではなく、双方にとってよいという場合も多いはずです。専門家の積極的な協力は必要でしょうが、医療においてプライマリーケアが重視されるようになったように、まずADRを経て裁判に至るという道筋をつくれば、現状は改善される可能性があります。医療過誤を防止して安全な医療を目指すというのは、医療従事者を締めつけて実現できるものではないと思っています。適切な質的評価こそ求められているもののはずです。

 そしてもう一つ、どのような解決手段をとるにせよ、三、医療紛争において鑑定の重要性というものは、主な行方を決めてしまう大変責任の重いものです。欧米では鑑定人は匿名ですし、また、鑑定をしたことが、鑑定を頼まれるような偉い先生だなどと業界に評価されます。

 しかるに日本では、間々十分な証拠が与えられない中で公平な鑑定を行おうとすると、時には医療界の裏切り者のようにとられながら、また時には患者さんに失望されながら、身を切って行われることがあるわけです。かと思えば、逆に、何らかの利害関係からか、不自然なほど医師側に有利というものもあります。

 署名式であるがゆえに書きにくいということであれば、匿名にすればずっと協力していただきやすくなるし、ネットなどで業界に公開すれば、単なる身びいきのような、同じ専門家から見て恥ずかしいようなものは書けないのではないでしょうか。鑑定書を公開し、ADRを利用してフィードバックできれば、延長線上に懲罰的機関の代替的な役割も期待できるかもしれません。

 そして、最後に四として、医療の人材の育成もまた今後の医療過誤防止を考えるには不可欠です。紛争処理として上げるには異質かもしれませんが、ミスが一定の割合で起こること、信頼関係が保てれば紛争に至ることが少ないということを考えると、やはり無視することはできません。

 お手元の資料に厚生労働省の資料を用意しております。先進国での医療費の伸び率の増加の原因は、ただ高齢化だけではなく、医療の質を守る、医師の女性化など、まさに今回の審議で述べられている理由であるとされています。劣悪な職場環境を改善して人材育成をしていく必要については、医療人材の十年と言われるほど重要視されているのです。医療に人件費は必要なものであり、また、日本のように身分保障や労働条件の保持もないのに罰則だけはあるというのは、バーンアウトとはまた違ったやりきれなさです。

 各国と比較した人口当たりの医師数は足りているというお言葉がありましたが、このたび、不足感という文言で、多少は数字ではかれない実情のことを認めていただいたのかもしれませんが、その要因はもちろん偏在だけではありません。お手元の資料の新聞記事にもありますが、基幹病院の医師不足は恐らく予想外のことだったのではないでしょうか。その理由は、医療過誤や労働環境に対する正しい管理がなされていないことが一番に上げられると思います。

 アメリカに留学された医師に伺いましたが、例えば、アメリカの病院で正看護師は日本の医師の多くの役割ができますし、足専門の整形外科医など、日本にはない専門職が多くあり、医師の仕事が大変に専門的です。特にまた、大学病院では、無資格でも可能な雑用が山ほどある上に、教育、臨床、研究を同時に要求され、管理職ともなると、運営や医師派遣など、さらなる雑用までこなさなければなりません。それについてもアメリカでは別の専門家が行っています。開業医と勤務医の比率も、アメリカでは開業医でも入院医療に貢献しています。

 ですから、実際には、数字以上に日本の勤務医の負担は大きいわけです。病床当たりの医師数も多くはないのに、まだ集約化もスキルミックスも進んでいない状態で、精神的負担は大きくなるばかりです。その実情は数字だけでははかれませんが、推察するにかたくありません。問題点が山積している状態で、実情に即しないまま医療費抑制をすれば、必ず現在の産科医不足のようにまた弊害が出てきます。

 医療は社会や文化と密接に関係しています。医療が正しく理解されれば、もっと社会にも還元できると信じています。オーダーメード医療を推進し、技術向上をうたうその傍らで、命の守り手の締めつけを厳しくするというのは矛盾ではないでしょうか。そして、社会保障に不安がある社会に、だれが暮らしたい、働きたいと思うでしょうか。水俣病などの例を出すまでもなく、たった一度でも弱者の身に立ったことのある人なら、容易に想像がつくはずです。

 医療はもろ刃の剣と母はよく申しておりました。その施策もまた、一つの局面だけを見て大なたを振るうのではなく、バランス感覚を失わず、細やかなものにしてください。どうか、今まで医療過誤で命を落としたり障害を残したりしてきた人やその家族の歴史を無駄にせず、信頼し合い育て合う関係をお守りください。

 これで終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)

岸田座長 ありがとうございました。

 以上で意見陳述者からの御意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

岸田座長 これより委員からの質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。冨岡勉君。

冨岡委員 各陳述者の皆様、本当に貴重な御意見をありがとうございました。

 私自身、帝国ホテルですしは食べたことがないんですけれども、いつも百円回転ずしで食べているんですが、それくらい、言われるぐらいやはり日本の医療制度というのはある意味ではぜいたくかなと。ただ、世界に誇る医療皆保険制度を私たちは維持しているのではないかという、一面、日本国民として自負はあると思っております。

 アメリカのように四千万、五千万とも言われる無保険者、あるいはイギリスのサッチャー政権のもとで行われた医療制度をまねする気は我々はさらさらありません。ただ、トヨタが乾いたタオルを絞って、カイゼンということで世界の一流企業になったように、日本の医療制度を今後ももっともっとよくしていくために、私たちはこういう会を持ってお互いの議論をしているというふうに私自身は認識しております。多くの陳述者の皆様方もそのように考えられているのではないかと思っております。そういう立場から二、三の質問をさせていただきたいと思っております。

 まず、先ほど申しましたように、乾いたタオルを絞るような、確かに財政危機という名のもとで、この社会保障制度、特に医療費の抑制というのは、我々も強く意識してそれを遂行しているところでございます。

 先ほど幾つか陳述者の皆様方から、どこの部分を削ればいいのか、順番みたいなものがあれば、また政策的に、例えば終末期医療、一言で終末期医療と言ってもいろいろな病態があるので、ここでは限定して、高齢者の終末期の医療についてどういう部分を削ればいいのか。例えば、今申しましたように終末期医療、それから、ちょっと浦江先生からお話がありましたように健診の問題ですね。私自身も健診に十年ぐらい携わってきたんですけれども、何度も何度も言っているのですね。血中のコレステロールが高かったり肥満があったりして受診されているタクシーの運転手さんなんか、半年に一度も受けなくてもいいんじゃないかと思うぐらいの方もございます。

 そこで、各陳述者の皆様に、まず、医療費ではこことここをもう少し工夫、改善すれば国民医療費の抑制の一助となるんじゃないかという御提案あるいはアイデア等ございましたら、それを各陳述者の皆様にお聞かせ願えればと思います。すぐには思いつかないかもしれませんけれども、今お話を聞いていたら、こういう点というのでちょっと二、三、出てきたような気がしますけれども、そのほかにございましたら。

山本文男君 特に高齢者の医療についてでございますけれども、一番大事なことは、ちょっと言いにくいんですが、私も高齢者の一人なんです。私の年は今八十を超えています。それで、私自身が思うんですけれども、暇をつくらないことですよ。暇というのは、余裕時間がいっぱいあるのはいけませんね。これはいかぬ。絶対いかぬ。

 では、どうしたらいいかということですよ。これは、市町村あるいは都道府県、国も全部含めて行政が、高齢者の暇をつくらないようなことを考えていくことが必要だと思うんですね。遊ぶことでもいいんです。あるいは何かの競技をやることもいいんです。だから、どういうふうにして、そういう暇のできないような、日常生活の中に、しかも親しまれるような施設をつくっていくか、こういうことです。そうしますと、言い方がちょっと難しいんですけれども、暇だからということで行く人もたくさんおられるんじゃないかな、そういう想像をします。

 ということは、私自身、最近目を悪くしましたので、病院へ行くようになりました。ところが、待合室で待っているほとんどの人が私と同じような年齢の人たちばかりですね。こんなにここに来なければだめなんですかねというぐらいたくさんいらっしゃる。私なんかは、少し悪いぐらいでそういう治療を受けようという気は起こりません。起こりませんけれども、要するに、なぜそんなにたくさん行くか。

 そこは、こういう話があるんです。きょうはあの人は欠席したな、こう言っているんですね、だれかが来ないと。行かなきゃならぬように思っているのがおかしいんじゃないでしょうか。だから、私は、もう少し高齢者の、言うならば暇をどうしたらなくしていけるかということを考えたら一番いいんじゃないかな、そういうふうに思いますので、これの対策を立てることは絶対避けてはならないと思いますね。

 医療とは関係ないじゃないかと思うのは間違いです。要するに、医療費の適正化というものについてはそういうことをやればいいんですね。だから、ターミナルケアも、ただ何かでやればいいなというのではなくて、もう少しターミナルケアがやれるような施設をつくることが一番大事じゃないでしょうか。

 そういうことを考えますので、ぜひひとつ、高齢者の暇の時間をつくらないようにしていく、それこそ生きがいのある生活のできるようなことを政策として考えることが必要じゃないでしょうか。私はそう思います。

冨岡委員 今、恐らく、不必要な受診抑制施策の一つとして御提案があったと思います。ありがとうございました。

横倉義武君 質問の趣旨が、医療費のどこの部分を抑制できるかということですね。余り抑制ができる余裕はもう既にないのではないか。

 と申しますのは、今、高齢者の方が頻回受診というお話がございましたが、実は、前々回の診療報酬改定で投薬日数の長期投与ができるようになりました。それで、一人当たりの外来の受診回数はかなり減少しています。そういうことを見ると、そう頻回に、待合室がサロンがわりというのは今から十年ぐらい前の話じゃないかというのが一点。

 それと、私の資料の中にいろいろ産炭地の問題を含めて書いておきましたけれども、高齢者の生きがいをどうつくっていくかというのが非常に重要です。今、山本町長おっしゃった、暇をつくるなというお話ですが。高齢者の方の生きがいづくりというのは非常に重要であろうと思いますし、健康を保持するためにはやはり生きがいを明確にしておく必要があろうかと思います。

 それと、終末期の問題ですが、これはやはり一つには国民的なコンセンサスを終末期に当たってどうつくっていくか。これは個人一人一人の考えがありますし、その御家庭のお考えもあるという中で、患者さんに十分な情報提供とそして選択、これは本人、家族を含めて、人間の終末、いろいろな形がとれる、ある意味では医療の進歩が死に方まで選べるようになってきたのかなという気もしますけれども、そういうところでの国民的コンセンサスはだんだんと明確にしていく必要があろうかと思います。これは法律云々じゃないところですね。

冨岡委員 法案の早期成立を望まれるというふうに、終末期医療の、エンドステージの、尊厳死法を含めて、やはり早期成立を望まれるということでよろしいんですか。

横倉義武君 そうですね、尊厳死と末期医療の部分は、区分をちゃんとしておかなきゃいけないと思いますけれども、ある意味では、国民のコンセンサスとして、人間の死に方はどうあるかということは明確にしておく必要があろうかと思います。

冨岡委員 時間がすぐたってしまうので、次に進ませていただきます。

 先ほど、浦江先生の方から、健診問題、総合健診の話がちょっと出たと思うんですけれども、あの有効性について検証をしろと。したがって、有効でなければしない方がいいというふうにお考えなんですか。私自身もそういう考えをちょっと持っているので。

 政府は、予防医学という点で割合健診に力を入れているんですけれども、受診する人たちは、受診して、こういうことを改善しなさいというふうになってもほとんどの方が無視されるというんでしょうか、そういう傾向がやはり強いんですね。だから、多分そういう点を改善しないと無駄な医療費というふうになると思うんです。

 先生、何かその点についてお考えがございましたら。

浦江明憲君 健診云々よりも予防ということですけれども、予防の効果というのは、例えば病気にならないということなので、病気になった人を治療することよりも、それが効果があったかどうかを検証するのは難しいということは、恐らく容易に想像がつくと思うんです。例えば、予防のための何かをした人としない人を、長期的に大量の人たちを追っかけていって初めて効果があったということがわかるわけです。

 そういうことで、なかなか予防というものを、エビデンスを持ってこれは効果があるというふうにするのは難しいんですけれども、そう言っているとなかなか予防というのは普及しませんので、やはり制度として、私たちが言う、例えば代替的な指標でもいいからどうもこれは効果がありそうだと思えばもう思い切って保険制度上に乗っけて、そのかわり報告をよこして、ずっと追っていって、やはり効果があったと。効果が実証できれば、当然それに連なって財政的なインパクトがどのぐらいあるかということがわかりますので、そういう意味では、先に先行投資をしないと、なかなか現場は動きづらいというのが実情じゃないかというふうに思います。

冨岡委員 ありがとうございました。

 それでは、ちょっと矢継ぎ早になって申しわけないんですけれども、中山先生にお伺いします。

 卒後の新臨床研修制度、医師の偏在という問題が非常にクローズアップされております。この新臨床研修制度ですけれども、以前からこれはあったわけなので、義務化されたのが二年前ということなんですね。それで、光と影というか、弊害が、今、医師の偏在が新臨床研修制度に基づくんじゃないかという考え方、意見がありますが、その点につきまして先生はどうお考えですか。

 いわゆる医局制度というんでしょうか、医局にプールしていたドクターを派遣するような制度が前あったわけなんですが、今、少しそれが崩れている。そのため、もとに戻した方がいいんじゃないかという考え方、意見もありますが、その点についてお聞きしたいんです。

中山眞一君 これは非常に難しい問題で、医局制度は医局制度でよい点が多々あったかと思います。ただ、例えば、米国などでは、二十年ぐらい前はファミリープラクティスというのがかなり前面に出てきていたわけですけれども、このことがとてもいいことになったかどうかは一応別として、これを広げるために、例えば、行政というか政府の方で、予算を最初からそっちの方につけて大学に補助をするという格好が起こっていたそうでございます。それと比べれば、日本の卒業してしまった先生方、新卒の医師に対しては、全く本人たちのフリーハンドに任せているというのは、果たしてどうなのかという気がいたします。

 それから、先ほど先生がおっしゃるように、二年間の研修制度ということですが、それまで我々もそうやって経験してきたわけですけれども、それまでは何となく学生気分で、もっと純粋な気持ちで選択してこられたという気がいたしますが、世の中どんどん変わってきまして、情報もどんどんオープンになってきている。それと同時に、今の若い方々が、よく言われるQOLというような部分、自分の生活はどうだとか、それをほかと比較する。

 例えば、お医者さんの中でも、外科と内科、外科と皮膚科とか心臓外科と何科とか、それぞれの科の比較ができるようになってきたということから、意外と若い方々は我々の時代よりももっと冷静で、ある意味では賢く、ずる賢いというようなことも含めてですけれども、自分の将来の専門性を決定していくという意味では、少し苦しくなってきているんじゃないかというふうに考えております。

冨岡委員 ありがとうございました。

 私、長崎で、離島とか僻地をたくさん抱えている県なんですけれども、離島医療圏組合とか、あるいは自治医科大卒業の先生とかの協力をいただいて、昨今、非常に医師の偏在等が言われている中で、県が主体で以前から取り組んでいた非常にいい医療制度がございまして、それなりに足らない状態はずっと慢性化しているんですけれども、そこそこにきちんと制度でやっているということがございますので、私自身、医師の総数が足りていないとは思っておりません。

 そこら辺の政策的なものが、医療というのは県単位ぐらいでやるのが、割合きめの細かくいい制度ができるのじゃないかというふうに思っていますので、また今後いろいろな御意見をお聞かせ願いながら、厚生労働委員会への御協力をお願いいたします。どうもありがとうございました。

岸田座長 次に、高木美智代君。

高木(美)委員 公明党の高木美智代でございます。

 本日は、ゴールデンウイーク明けにもかかわらずお越しいただきまして、また貴重な御意見をちょうだいし、心よりまず感謝を申し上げたいと思います。

 今回の医療制度改革につきまして、先ほど来お話を伺いながら、やはり一つは、ふえ続ける医療費をいかに分かち合っていくか、またもう一つは、いかに良質な医療を提供していくか、この二つの視点から、これが表裏一体でなければならないという認識を強く受けとめさせていただきました。いずれにしましても、国民の皆様の御理解と御協力をいただきながら、どう少子高齢社会に耐え得る持続可能な制度としていくか、ここが大きな課題と思っております。

 時間も大変限られておりますので、簡潔にお伺いをさせていただきたいと思います。

 まず、今回の医療制度改革では、都道府県と市町村の役割につきまして明確に盛り込まれております。例えば、都道府県は、今までは医療の提供体制につきましては権限と責任をお持ちでした。しかし、医療費に対するものはほとんどありませんでした。今回から責任を負うという形になっております。医療保険者の再編統合であるとか、またその中には、地域の医療費を反映した保険料率の改定もできる、また診療報酬の特例もつくることができる等々、盛り込まれております。

 こうした都道府県と市町村の果たす役割につきまして、今回、この医療制度改革をごらんになって、先ほど来、高く評価するというお声もありましたけれども、山本先生そして横倉先生、岩永先生に御所見を伺いたいと思います。

山本文男君 今回で特に新しいものというのは、広域連合をつくって各県単位で医療運営をやっていくべきではないか。これはいいことだと思いますね。先ほども申し上げましたように、私は広域連合を福岡県でつくりました。そのときに、七十一の市町村で広域連合をつくったんですが、共通する部門が非常に多いわけですね。ばらばらでやりますと、同じことをやる。いわば管理部門なんというのは一つあればできるわけですが、そういうことなどを考えると大変効率的な運営ができるということで広域連合をつくりましたが、さっきも申し上げたとおりで、市町村合併で少し数が減りました。

 今までは、医療というと、悪口みたいになって申しわけないんですが、都道府県はこっちを向くんですよ。全然向いてくれなかったんです。ですから、地方というならば、都道府県も同じ地方じゃないか、一緒にやるという考えになってもらわなければ、本当の意味での医療改革というのはできないということを私どもは主張してまいりました。ですから、今回は、広域連合も、都道府県の加盟をした広域連合でやるべきではないか、こういうふうに私は思います。

 そこで、では、役割分担は一体どうするのか、こういうことなんですが、実務については市町村がやらなきゃできないでしょうが、県の役割というのは、さっきお話がありましたようなこと等を含めて、財政負担を国も県も負担をする。言うならば、財政リスクというのが広域連合になれば全然ないかというと、決してそうではありません。財政リスクというのはいつの場合でも存在しますので、そのリスクを解消していくために国と都道府県が共同して努力をしていく、その役割を分担していただくというやり方をしていただければ、私は、今回のせっかくの改正が有効に、持続性の高いものになって続いていくだろうと思いますので、そういうふうに考えているところでございます。

横倉義武君 都道府県と市町村の役割がふえてくるということについてですが、都道府県単位でいわゆる提供体制の中のいろいろな医療機能を考えていくということはやはり非常に重要であろうと思います。そういう中で、前の医療法改定で、地域医療圏というものが今福岡県の場合十三あるわけでありますが、機能を考えた場合に、やはり十三では小さ過ぎるという点で、少し広域化が必要であろう。そうなると、そこには当然県の関与が非常に重要になってくると思います。

 財政的な話は、今山本さんがおっしゃったとおりで、それぞれのリスク負担は必要だというのは当然だろうと思います。ただ、いわゆる都道府県別の保険料率の問題と診療報酬の特例の問題については、国民皆保険の中で国民が等しく負担をするのがいいのか、その地域だけで料率が非常に変わるのがいいのかというところについては、十分な検討が必要であろうかと思っております。

 以上です。

岩永勝義君 私は、全県一区ぐらいに医療の範囲を拡大してください、時には道州制も入れてもう少し大きくしてくださいと言ったのは、これはあくまでも、医療の質を確保する、あるいは効率をよくするためのことでして、例えばスウェーデンでは、県立でやっていた医療費を市町村のところまで落としたら、非常に負担する人の姿が見えてくるようになって、医療費が減ったんですね。特に社会的入院が減ってきたという事実があります。

 機能と財政が、私はまずそこの財政のところがよくわかりませんから、大きくすれば、例えばこれを国立、国が運営されると非常に無駄が出てくる、あるいは市町村においてどうせよそが払うんだからというようなことが出てくると非常にまずいなと。どうした方が一番いいのかよくわかりません。

高木(美)委員 ありがとうございました。

 そこで、これは岩永先生にお伺いしたいのですが、先ほど来お話を伺いながら、熊本ではやはり地域連携が大変成功しているという実感を持たせていただきました。あわせまして、平均在院日数、これがよく言われる医療費の一番大きなポイントであるということですが、やはり連携の結果かと思いますが、在院日数も減ってきているという、恐らくそれは、急性期から自宅へ帰るまで、この連携が大変スムーズにいっているのではないかと思います。その成功した秘訣、中には、それは、熊本で医療をやっていらっしゃる方たちは大体熊本大学の医学部出身が多いから成功したのではないか、そういうお声もありますけれども、その秘訣についてお伺いをしたいと思います。

岩永勝義君 熊本にいる病院関係者が非常に危機感を持ったということ。それで、それぞれの病院が自分のポジショニングを考えて、何ができるか、何をしなければならないか、どうすれば県民の医療に貢献できるかというのを、それぞれの病院、公立、準公立含めて七つほどあります、そこで非常に切磋琢磨した結果が、三十年ぐらい前からいかに私のところの外来患者さんを減らして開業医の先生とタッグを組むかということを考えてきました。

 私は、政党、自民、さきがけのあの案を支持しているのは、日本の医療を一番効率よく運営したのはやはり使命感を持ったかかりつけ医がいたこと。日本の開業医は使命感と責任感があったから日本の医療は効率よくできたというふうに私は考えています。その上にどうやって病院を重ねるか、それしか考えていなかったら、結果的には、私のところは外来患者さんを、かつては千人ぐらいいた患者を四百人まで落としても、なおかつ月八百五十人の紹介の方々が来ていただく。そうすることによって、薬漬け、検査漬けの医療から、本来のドクターフィーに変わってきて病院が運営できているという事実があります。そうすると、すべての病院がコンペティションするわけですよ。

 だから、余り難しいことを考えなくて、厚生省はアバウトな形でこういう医療とすると、あとは民間が知恵を出し合ってすき間をちゃんと埋めていくと思うんです。ちなみに、熊本は、リハビリ専門の病院、いろいろなことがそれぞれ機能的にあります。あるいは行政が過度に介入しなかったからこそ民間の知恵が出てきたのかなと言う人もいるぐらいでございます。そういうことです。

高木(美)委員 今、行政が介入しなかったから民間の知恵が出てきたというお話をいただきました。今、地域におきまして、それぞれの病院の特性を大事にしながら役割分担をしていこう、今はむしろ医療は施設完結型から地域完結型へ向かっている、このような指摘も多くお声をいただいております。

 その一番キーマンになる存在。それは、例えば、先ほど民間の知恵というお話がございましたけれども、その点につきまして、こういう自治体病院の統廃合も必要なところもあるでしょうし、また、今までの交通機関の変更によりまして、車も普及しておりますので、当然アクセスも変わっております、そういうことに対しての病院の機能の見直しも、当然、今後必要かと思います。その点につきまして、どうすればそこのところがうまくいくというふうにお考えか。このことを、山本先生、横倉先生、岩永先生、そして中山先生に、一言ずつ、一分ぐらいで御教示いただければと思います。

 では、山本先生からお願いできますでしょうか。

山本文男君 難しいと思うんです、そういうことを私が申し上げるのは。私は医療の専門家ではありませんので、よくお答えができないと思いますけれども。

 これからの医療というのは、まず一点目は、医師の数が一万四千人も多くなっている、余っている、こういう言い方をされるんですけれども、私はそうじゃないと思うんですね。偏在をしているから、過疎地域だとか中山間地域だとか離島というようなところには医師が少なくて、いないわけですね。特に小児科と産婦人科というのは、なり手がなくて非常に困っているという実情なんです。

 私のところは人口十五万ですけれども、全部合わせて小児科が十二名しかおりません。産婦人科は七名しかいないんです。先生方御存じのように、少子高齢化の課題というのは日本にとっては大変大きな課題なんですね。これを解消していくためにはどうしても小児科と産婦人科は必要なんですよ。ところが、その小児科と産婦人科になる先生方が非常に少なくなってきた。そういう現状を考えてみますと、これからの地域医療というのは一体存在することができるのかどうかという心配がそういう点からも考えられます。

 もう一つは、よく言われておりますように、地域に基幹病院を一つ指定する、そしてそれに波状形に全部で地域的な医療をやっていくというやり方をするのが一番いいと思いますね。もう一つは、在宅医療というのがよく言われますけれども、在宅医療ではそれを解消することはできません。したがって、基幹病院をつくって、それで波状形の配置をして、そしてその地域の人たちの全部を救済していく、治療を行っていくというやり方をすることの方が望ましい、そういうふうに思います。ですから、連携をし合えるような医療制度にすることが一番大事じゃないでしょうか。それがこれからの医療への進歩になる道筋だ、私はそういうふうに思います。

 どうぞひとつ、特に先生方にお願いしておきますが、小児科と産婦人科になれるお医者さんが全部そちらの方に行けるように、我が福岡県では、婦人科になる人なんというのは、全然、ゼロなんですよ、ことしなんかは。だから、そういうことを考えていきますと、そこらあたりに力を入れていかないと、医療というものが皆さん方のなじみを失っていくことになっていきます。そうすると偏った医療になりますから、さっき言ったようないろいろな問題が起こる可能性が高い、こういうことになると思いますので、特別にひとつ御配慮いただきますようお願い申し上げたいと思います。

横倉義武君 地域での連携のキーマンというのは、やはりかかりつけ医ですね。かかりつけ医があって、かかりつけ医をサポートする地域医療機関があってというような連携のシステムをつくっていくというのは非常に重要だと思いますし、地域で育てられている医療機関かどうかというのが大きな選別のポイントであろうと思っております。ですから、それぞれの地域で住民から支持されている医療機関というのが、その地域の中心的な役割をしていっているのではないかと思っております。

岩永勝義君 今と同じなんですけれども、我々がかかりつけ医をどう信じるか、そのことを彼らが信じてくれるならコミュニケーションできます。一カ月に平均三百五十のプライマリーケアから八百人の患者が来るという、それはお互いに信頼し合うからです。ただし、決して私は、うちの病院で直接的に外来の患者さんをとるということは一切いたしません。それだけです。

中山眞一君 非常に難しい問題だと思うんですが、私は、もう一つ、施設完結型と地域完結型、地域完結型というのが響きはもちろんいいと思いますし、先ほど、平均在院日数はそういったことで少なくなったと。もちろんそうなんですけれども、一人の患者さんを見れば、例えばある病院で手術をして、その後別の病院に行ってリハビリをしてということになると、トータルではA病院からB病院に移っただけで入院している期間は余り変わらない。そういう意味では、本当に医療費が下がっているのかどうかというのは僕は意外と疑問だと思います。その辺は、案外ちゃんと議論されていないんじゃないか、そういうふうに考えています。

 それから、おっしゃるような、施設完結型、地域完結型といろいろあって、それから、今医師の偏在の問題が出ていますけれども、もちろん小児科、産婦人科の問題、いろいろ危機的な状況であるということはよく存じておりますが、実際には、例えば福岡県だけでもいいんですけれども、何科に一体何人欲しい、何科には新規参入の医師が最低何人ないと困る、それで、理想的には何年後にどれだけ配分しておくんだ、もっと言うとそれが各地域で何人ずつ要るんだというようなことは、行政とかが数字として提示されたことはただの一度もないんじゃないか。

 もちろん、それはある意味で医師の側が自発的にそういうことをしなくちゃならないのかもしれませんし、ある部分では、医師会等はもっと実地に即した意味でそういったものをどんどん出していかなくちゃいけないんじゃないかと私は思っていますけれども、現実には、そういう数字というのは我々の目の前には実際には出ていない、そんなふうに思います。そういうことを積み重ねることで、我々が本当に必要としている医療はこの程度なんだ、このぐらいのサイズが要るんだということがだんだんつかめてくるんじゃないかというふうに考えています。

 以上です。

高木(美)委員 ありがとうございました。以上で終了いたします。

岸田座長 次に、古川元久君。

古川(元)委員 民主党の古川元久でございます。

 本日は、意見陳述人の皆様方には、大変お忙しい中おいでいただきまして、また貴重な御意見を拝聴させていただきまして、ありがとうございました。

 私ども民主党は、日本の医療制度、いつでもどこでもだれでも安心してお医者さんにかかれるという、これまで世界に誇る医療制度が崩壊の危機にある、では、その後に来る、新しい、国民にとって安心できて、納得できて、安全な医療制度の姿というのが見えてきていないんじゃないか。

 その幾つかの例が、例えば、勤務医におけるバーンアウト現象と言われるような、どんどん勤務医の人がやめて、一方で開業医ブームが生まれている。また、開業する人たちも、小児科とか産科ではなくて、開業するとなると、眼科とか耳鼻科とか、まさに医療過誤で訴えられるケースが少なくて、かつ突然夜間に飛び込まれることが少ないような診療科においての開業医ブームが起きているとか。また、今毎日のように、全国各地で医療事故や医療過誤が起きて、その被害者の方が生まれている状況。

 また、産科、小児科、先ほど山本さんの方からお話がありましたように、特に山間地や僻地を中心に産科や小児科のお医者さんがいなくなってしまっている。子供を産みたくても、お医者さんがいなくて産むことができないような状況さえも広がっている。そういう意味では、制度的な疲労が、いろいろな形でその傷口というものを明らかにしてきているのではないか。

 我々は、崩壊しつつある今の医療制度を立て直して、そして、国民にとって安心できて、納得できて、安全な医療制度をつくるということのために全力を注がなければいけないのではないか、そういう視点から、今回政府の方から提案された医療制度改革法案の議論もしているわけなんですが、いろいろこうした具体的に起きている問題が、今回の法案が成立することによって解消されるのかというふうに考えてまいりますと、どうも解消はされないのではないか、むしろ、この法案が通っても、ますますそういう医療現場の危機的な状況というのは拡大をしてしまうのではないか。

 そして、先ほど浦江陳述人の方からもお話がありましたように、日本の医療制度改革自身が成功しないだけではなく、医療制度そのものが崩壊をしかねないような、国民にとって、病気になったときに路頭に迷ってしまうような、そういう状況が起きてしまうのではないか、そんな危惧を私どもは感じておるわけなんです。

 まず、浦江陳述人にお伺いしたいと思いますが、今回の法案が通ることによって、先ほど御指摘がありましたような三点の御提案というのは、実は私どもは、今回の法案の中ではこの提案にのっとるようなことはほとんど含まれていないのではないかと感じておるわけでありますけれども、浦江さんから見られて、今回のこの法律が通ることによって日本の医療制度はどんな方向に進んでいくというふうにお考えになっておられるか、まずお聞かせいただけますでしょうか。

浦江明憲君 その質問に答えるというのは、かなり酷な質問だなと。

 これは一生懸命考えてやられたと思うんですが、これが施行されることによって、恐らく一番の問題点というか、私が印象として受けるのは、もちろん、どうしても財政あっての制度なので、どうもそこに焦点がやはり行き過ぎている。そこを中心にいろいろな制度の改革がやられている気がいたしますので、そういう意味では、なかなか思っていらっしゃるような方向には進まないのではないかなというのを危惧しております。

 私、先ほど言いましたように、あるところには前もって、例えば予防に関しては制度上負担を投入する、そういうことも含めて、余り短期的な視点で、とにかく下げる下げるという視点でいくと、大きな失敗をしそうな気がしております。ちょっと答えになっていないかもしれませんが。

古川(元)委員 ありがとうございました。

 中山陳述人の方には現場の責任者としてお伺いしたいと思いますけれども、この法案が通って、勤務医の大変な過労、過重な労働状況、それが改善するような、そういう措置が含まれていると思われるか。

 また、久能陳述人におかれては、御自身も病院にいらっしゃいますから勤務医の皆さんの状況もおわかりだと思いますが、その点は改善されるのか。

 また、この法案が通ることによって、医療事故が起きにくくなるような環境は整備されるとお思いになっておられるか。お二人にお伺いしたいと思います。

中山眞一君 私どもの病院は、昨年実は病院機能評価を受けまして、幸い合格はさせていただいたんですが、今回の要旨を見てみますと、ちょっと似たような内容のものが法案として出ているように感じました。

 例えば、医療事故云々というところに関しましても、我々の病院でも毎月そういうことをやっておりまして、例えば、医療安全を守るという病院としての文化とかいったものをつくっていくという部分ではいいことだ、そういうふうに考えています。ですから、それが義務化されていくとかそういうことはとてもいいんだろうと思うんですが、ただ、負担がふえていくということに関してはやはり間違いございません。

 それから、今回のを幾つも見て、例えば小児の中核医療センターの問題とか出ていますけれども、それはいいことだと思うんですが、新規の小児科医として参入するための誘導策というのはないと思います。何しろ担ってくれる方が余りいないという場面でそういうものがあっても、果たしてどういうふうに、だれがそれをやるんだろうかという感覚は持っております。

 というのは、私どもの病院も小児科はやっておりますけれども、はっきり言って、お一人を確保するので精いっぱいでございまして、この先生が疲弊しないように何とか周りでカバーして、とてもいい先生で、細かく地道にやっていただけますので本当に感謝しているんですけれども、もっともっとそういう方がふえていただけるような何か誘導策があれば本当にありがたいと思っております。

 以上です。

久能治子君 医療事故の抑制につながるかというお問い合わせについては、先ほど私が述べたとおり、解決策としては、もっと法曹界の協力などを取り入れる必要があると思っています。今回の法案にはたしか盛り込まれていなかったと思いますので、まだ解決の道筋には至らないというふうに思っています。

 財源のことに関しても、部分的には削減できるところはあると思いますし、現在の療養病床の減床など、先日の医療雑誌のアンケートを見ましても、妥当であると思われている方は多かったです、医師の中でも。ただし、受け皿がまだできていない状況で移行するのはどうかと。今回の勤務医の問題に関しましても、先ほど述べましたように、スキルミックスなど、そういった措置がとられてから行われたことであればよかったんですけれども、順番が違ったのではないかというふうに考えています。

古川(元)委員 次に、医師不足との絡みで、医師の偏在等に絡みまして、病院の再編、とりわけ公的病院の再編の問題についてちょっとお伺いをしたいと思います。

 福岡県は、県立病院について外部監査を入れたわけなんですけれども、外部監査が行われた後もなかなか県立病院の業績は上がっていなくて、都道府県の中でいくと、福岡の県立病院の経営状況というのは一番改善が進んでいない、むしろ悪くなっているというのが現状なわけですね。

 県立病院というのは知事が責任者なわけでありますけれども、今回の法案では、相当知事に、地域の医療計画、またそれを実施するための責任を負わせたり、また病床数の削減などを命ずることもできるという権限も与えているわけなんですね。福岡は、かなり病床数は基準よりも多い状況であるわけなんですが、外部監査が入ってもなかなか経営が改善しない、そしてまた病床数も減っていない。こういう状況の中で、これは知事の個人的な問題なのか、あるいは私はもうちょっと制度的な問題というものも多いんじゃないかと思いますが、これは決して福岡だけの問題じゃなくて、全国的な問題ではないか。

 都道府県の知事に今回の改正案の中では相当大きな責任が負わされて、その地域の中での病院の再編やベッド数の削減あるいは適正な配置、そういったものについて知事がリーダーシップをとってやるようにというふうに言われているわけなんですが、これは現場でこれまでもそういうものに取り組んでこられた山本陳述人と横倉陳述人にお伺いしたいと思いますが、今回のこの法案で、では、知事の権限が少し強まったぐらいで、今のこの状況というものが劇的に改善するような状況というのは期待できるんでしょうか。どうでしょうか。

横倉義武君 まず、福岡県の県立病院のお話がございましたので、福岡県の県立病院の状況について少しお話ししていきます。

 福岡県の場合は、たしか四年か五年前に、県立病院のあり方について検討して、将来的には県立病院を民間移譲するという方針が決まりました。それにのっとって今行われている状況にあるので、外部監査が入っても経営状況がよくならないのはそういう要因があるということをひとつ御理解をしていただきたいと思います。

 医療計画等々、県知事に非常に権限が集約される、これについては、もちろん、いろいろな審議会で住民の方の御意見や医療担当者の意見等々を十分踏まえて行われる。適正な病床数はどうなんだとか適正な診療科はどうなんだということは、これは当然地域地域でやっていく必要があろうかと思いますので、県知事にある程度の権限を移譲するというのは結構ではないかと思いますし、将来、こういうことがだんだんと地域医療の改善につながっていくと思います。

山本文男君 県立病院の経営状況が悪いというのには原因があるんですね。先生は御存じだと思うのでここではあえて申し上げませんけれども、その原因の解消を図ればうまくいくと思うんですよ。思うんですけれども、その原因解消が非常に難しいんです。ですから、そこらあたりに、長年やってきたところで積み重ねられてしまっているものですから、改善ができないというところもあるかもしれません。

 中身を一言だけ申し上げますと、問題は人件費なんですね。医療職の人件費というのは一般職よりも少し高いんですよ。それで、年功序列型になっておりますから、そこで在職しておりさえすれば給料がどんどん上がっていくわけですね。だから、古い人たちばかりになっていきますと、ずっと人件費が高騰していくんですね。福岡県の県立病院もその例外ではないんです。したがって経営状態が悪くなってきた、こういうことです。

 だから、通常の場合の病院の経営というのは、人件費が固定費の中で何%を占めるかによって、それぞれがうまくいくかいかぬかがほぼ決まると言われておりますね。したがって、県立病院の場合は、固定費が、そういうふうな計算もできないほど人件費が飛び出ているわけですね。だから、それをどう是正するかにかかっていると思います。

 しかし、言うならば、それと今回の改正とは関係がないと言えないかもしれませんけれども、それはそれで改正を知事としてはやってもらわなきゃならないけれども、今度の新しい制度をつくり上げていく上で、やはり知事がイニシアチブをとって実施していくというやり方をすべきだと思います。その過程の中で少しでも県立病院の改善を図っていけば、やれぬことはないと思います。

 だから、今回のこの改正は、言うならば、県を除外視し、県はそれには加入させないよということをやりますと、またもとへ戻るんです。何のための今回の改正か、こういうことになりますので、そこらあたりの御理解を先生方の方で十分いただいた上で御配慮を願いたい、そういうふうに思っているところです。

古川(元)委員 私は、県を除外視するというんじゃなくて、もう少し知事がリーダーシップをとってきちんとやれるような仕組みをつくるべきじゃないかと。人件費が高いのは、別に福岡だけじゃなくて、ほかのところでもあって、思い切って民営化したりとか、そういう形で人件費をぐっと下げているところもあるわけですね。ですから、福岡だけ県立病院が人件費が高いから改善が進まないんだということは理由にはならないんじゃないかなというふうに思うんです。

 時間が参りましたので終わりたいと思いますが、いずれにしても、医療については、やはりその地域地域で、先ほどもお話がありましたけれども、各関係者の意思をまとめていく相当なそれぞれの責任者の皆さん方のリーダーシップが重要だと思います。きょうおいでの皆様方はまさに地域での医療現場のリーダーだと思いますので、ぜひ先頭に立って医療制度改革に取り組んでいただくことをお願い申し上げまして、質問を終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。

岸田座長 次に、阿部知子君。

阿部(知)委員 社会民主党・市民連合の阿部知子と申します。

 国会では、この三年ほど、一昨年には年金制度の改革、昨年が介護保険、今般医療制度改革という審議が行われておるわけですが、最も国民にとって大切であるはずのこの社会保障制度全般が、実はこの間の改正で本当によい方向に向かっているのかどうか、私は非常に心もとないという立場に立っております。

 山本参考人にはこれまで何回かお越しいただきまして、都度、御意見も伺いましたし、いろいろな現場で長く地方自治を預かっておられる立場からの貴重な御意見も承りましたけれども、特に今回のこの医療制度改革におきましては、県の役割が新たにきちんと位置づけられたという意味で評価はされます。と同時に、これから例えば市町村なり県が医療ということをやっていく場合の財源問題というのが全く見えないまま、地方や市町村に移譲というか職務が渡されるということに私は非常に懸念を抱いております。

 ぜひ山本参考人に教えていただきたいのですが、例えば先ほどのお話の中の国保においても、市町村の一般会計からの繰り出しといいますか、そこに入れる、あるいは市町村立病院をお持ちのところは、その財政赤字の補てんに、全国的に見れば一兆円余りのお金が入っているわけですね。これはもちろん民営化していくということも一つの方向ですが、やはりそれなりの政策医療を担っているがゆえの不採算というところもあると思うのです。

 今後、本当に医療が地方分権化されるために、果たして国はどのような財源措置をとればよいとお考えか、まず山本参考人にお願いします。

山本文男君 国保の方の赤字体質というのはずっと続いているんですね。ことしや昨年できたものではないわけでして、長年のずっと続いてきた国保の財源不足なんです。

 その中で、さっきも申し上げましたように、大体、全体で一兆円足らない、約一兆円くらいが毎年不足をするわけですけれども、そのうちの六千億程度は、それぞれの制度がこしらえてありますから、その制度に基づいて国が補てんをしているんです。残り、どうしても三千億程度、三千五、六百億になると思うんですが、これが制度がありませんから、どうしても、赤字をたくさん出したそれぞれの保険者である市町村が一般財源から負担をしているというのが実情でございます。ですから、これを解消するためには一体どうしたらいいかということは、我々にとってはやはり長年の課題でございます。

 ところが、簡単にそうはいきませんものですから、したがって、解消するためにはどうしても国民保険料を高く引き上げる以外はありません。高負担それから高給付ということをやればそれで解消するかもしれませんけれども、それではとても住民の皆さんたちの理解を得ることができませんので、そこらあたりに、言うならば我々にとってはジレンマがあるわけでございます。したがって、制度をもう少し考え直していけばうまくいくんじゃないかと思うんです。

 第一、国保の被保険者というのは、もう先生御存じのとおりに、保険料を収入から払っていく、そういう人たちは一六%ぐらいしかいないんですね。それに無職の人が六%、あとは年金の人たちが非常に多いわけです。ですから、保険財政の財源そのものが非常に乏しいというのが国保の実態なんです。だから、そこらあたりを解消しない限り、さっき申し上げたように、国保の財源の安定化というのは難しいと思います。

 そこで、どうしてもそういうような財源不足の起こり得る原因を国側の支援によって解消するような道はないのかなというのが長年の私どもの課題。そこで考えたのは、私どもは、医療保険というのは全国で一本化が一番いい。健保もなし、政管もない、国保もない、みんな一つになった保険制度にした方がいいということで、医療保険の一本化というのを私どもは主張してまいりました。全国町村会としては、それを主眼にして今日までお願いをしてまいりました。ところが、なかなかそれが簡単にいかないものですから今日のような状況になっているところです。

 だから、もう一つは、国や県に依存するということも大事ですけれども、それよりも、自分たちが自己努力をして、そしてこの解消に努めていくことが必要である、そういう認識を高めていくことが一番大事なことではないか、そういうふうに思っております。

 以上です。

阿部(知)委員 もちろん自己努力は原則でございますが、結局、医療と申しますのは、絶対的なニーズでもあるわけですね。人は好んで病気になるわけでもなく、また老いを重ねていくわけでもなくて、そのときに必要な介護や医療であるからこそ、国民が、例えば税の投入の仕方の合意をとった上で、どこに何を使っていくかという問題になっているんだと思うんです。

 私は、次に横倉参考人にお伺いしたいのですが、大変に貴重なレジュメをいただきまして、この基本的な考えのところにもお述べでございますが、今回の医療制度改革によって地域の医療提供体制に困難が生じないようと、まさに地域の医療体制に本当に困難が生じないんだろうかという点を私は本当に懸念するものであります。

 先生のお示しのデータの中にもございますが、例えば介護保険でお示しいただきました七番のデータで、福岡県の中でも会社立の事業所が全くない町村があって、ここでは介護保険を受けようにもサービスがない。結局、サービスを提供できるだけの、医療においても提供体制をどうきっちりとインフラ整備していくかということがないと、これからは特に、高齢者医療制度でもそうですが、介護保険でもそうですが、保険料はいただいているんだけれどもサービスは受けられない、はっきり言うと詐欺じゃないか、そういうことすら起こりかねないほど、今医療提供体制の方にほころびが生じてきているのが現状なんだと私は思うんです。

 先生がおっしゃる医療提供体制に困難が生じないようにというあたりは、具体的にはどうあればよいのか、ここをお願いいたします。

横倉義武君 地域医療、福岡県内で見ても、いわゆる福岡市中心の非常に人口過密な地域と、極端に言うと、山本町長がいらっしゃるような、かなり人口の過疎地域とございます。我々の願いというのは、やはり、福岡だけに限って言いますと、県民がどこにお住まいになっても必要な医療はちゃんと受けられるというような体制だけはしっかりつくっておかなきゃいけない、また、高齢者の方が介護が必要なときは介護が提供できる体制をつくっておかなきゃいけない。

 先ほど資料をお話しになりましたように、いわゆる民活、介護保険の場合は株式会社の参入等を非常に期待されました。確かに都会には参入したんですが、田舎には参入しないんですね。そこを補完したのは何かといいますと、もちろん市町村の社会福祉協議会もやりましたし、それと、地域にある小さな医療機関が介護サービスまで何とかケアしていくという形をつくっていったわけであります。それが今回の改定で余りにも大きな激変になりますと、そこら辺ができなくなる。そういうふうにならないように、今度のいろいろな法改正がございますが、その運営に当たって十分な配慮をしていただきたいというのが一つの大きな願いであります。

 ようございましょうか。

阿部(知)委員 先生からいただきましたデータの中には、ほかにも、例えば福岡県の医療費は高いと世上言われておりますが、やはり独居率が高い、日本のいろいろな諸政策の中で住宅政策というものが非常に手薄であったがため、それから現在は都市化が非常なスピードで起こっているために、独居のお年寄り、また過疎に住まうお年寄りなどなど、本当に医療という分野だけでは解決しない住まいの問題というのが大きくここで資料としても示されていると思うのですね。

 医師会というのは全国組織でございますから、各県でこうしたデータをおとりいただいて、医療は医療で努力いたしますが、しかし、いかんともしがたいところは他の政策で手を打っていかないと、結局は、医療費の抑制をせよせよという中で、医療提供体制もおぼつかない、あるいは独居の方は一体どこに行けばいいのかということが生じてくると私は思うのです。

 きょう先生からいただきましたデータが非常に実際の分布をわかりやすく示してございますので、また重ねてこの点については全国的なデータもお示しいただきたいとお願い申し上げます。

 同じように、独居とかあるいは療養型病床群の問題もそうでございましょうが、社会的入院と言われていることに関しまして、きょう中山先生のお話も大変に参考になりまして、実は先生は二百四十二床の病院で院長をやられて、実際に日本の医療をこれまで地域において密着して支えてきた、恐らく中核病院といいますか、そうした地域密着型の病院で先生はお仕事をしてこられたんだと思います。ここの介護型療養施設が百四床というのも、やはり、例えば独居である、あるいは家族が御高齢者同士であれば、病院で最期を迎えざるを得ないということの結果もここにあらわれているように思います。

 この点、先ほど来何人かも御指摘でありましたが、今回療養型病床群は、理念においては、例えば介護は介護、医療は医療と分けていくことはできても、一人の人間を医療と介護と分けてなかなか区分はできませんし、受け皿という意味で、これから先生方の病院がどのような形で実際に介護型の療養におられる百四床の方々のお世話をなさっていかれようとするのか、このあたりをお願いいたします。

中山眞一君 今の御質問は、介護型療養病棟全廃後のお話、その辺を見据えてと。(阿部(知)委員「はい」と呼ぶ)それは非常に一番悩んでいるところでございます。

 たまたまこれは介護病棟百四で、医療型を十六というような格好に今しておりますけれども、私が言いたいのは、この足して百二十床というのは、やはり制度変更に基づいて変わってきただけのところがございまして、実際は内容は、余り本当は変わっていないということなんですね。

 だから、おっしゃるように、一人の患者さんをどちらかに分けるということはもちろんできませんし、感覚的には、医療が必要だった患者さんがいつの間にかもう介護中心になっているということは、日々遭遇することだと思います。

 それと、また、悲しいかな、患者さん御本人はどっちであろうとよくわかっていないということも現実の問題ですよね。とにかくどちらかでちゃんとお世話していただければ、もうそれが一番ありがたいんだというのはすごく、多分そのぐらいのことは思ってはると思います。もちろん御家族はある程度理解しておられますね。

 今、全廃の問題、本当に頭を痛めておりますけれども、今の制度の中でいえば、やはり同一敷地内とか同一の建物の中でその間を橋渡しするような、いわゆる今現存する老健とかとはまたちょっと、経過措置的なものを必要として、そういった意味で、言葉は悪いですけれども時間稼ぎをさせていただけるような環境は、私どもの病院に限らず、やはり全国のいろいろな似たような病院の中は必要としているんじゃないか、そういうふうに考えております。

阿部(知)委員 実に御苦労の多い分野だと思います。逆に、患者さんにしてみても、あなたはここから例えば医療型の療養病床群、次に介護型の病床群と移らされても非常に負担が強いものと思いますので、いろいろなことを加味された上で、よろしくお願い申し上げたいと思います。

 以上で終わらせていただきます。

岸田座長 次に、糸川正晃君。

糸川委員 国民新党の糸川正晃でございます。

 本日は、陳述人の皆様におかれましては、大変お忙しい中、大変貴重な御意見をいただきましてありがとうございます。私が最後の質問者でございますので、私も幾つか質問させていただきます。

 今般の医療制度改革におきましては、国民の医療に対する安心、信頼を確保し、質の高い医療サービスが適切に提供されて、また、医療保険制度の持続性を確保するということに向けた改革的な医療制度の構築というものが求められておるわけでございます。このため、医師不足の問題ですとか、地域医療の連携体制の構築ですとか、患者に対する情報提供の推進等を図るとともに、予防を重視した医療費適正化の総合的な推進ですとか、新たな高齢者医療制度の創設、保険者の再編統合等を行おうとするこの政府案というものが提案されておるわけでございます。

 本日は、地域の医療に日々御尽力を賜っておりまして、また、医療保険の課題に御見識が大変深い陳述人の方々から御意見をお聞きして、今後の参考にさせていただきたいというふうに思っております。

 まず、山本陳述人にお尋ねいたします。

 先ほど、後期高齢者の保険料ですとかそういうものが都道府県で均一になっていくというようなことに対してお話をいただいたと思うんですが、この後期高齢者医療制度については、都道府県単位の財政運営となって、市町村国保に比べて安定的な運営はできると思うんですが、都道府県の医療費が高齢者の保険料率に反映される仕組み、こういうふうになるわけでございます。

 九州地方では、長崎の被爆者ですとか熊本の水俣病患者の方々が高齢化されている、こういう現状もございまして、それぞれの地域で異なる特性があるのではないかなというふうに思いますが、後期高齢者の医療について、都道府県がいわば競争するというようなことについて、山本陳述人の御意見をお聞かせいただきたいなと思います。

山本文男君 後期高齢者の医療については、難病だとか特殊な病気については分離されると思いますよ。だから、通常の病気の治療に当たるというのではないかと思います。難病とか特殊な病気まで一緒に含めてやるということには全然ならない、私はそういうふうに思っていますが、もしそういうふうになるならばこれはやむを得ませんけれども、そういうことをもし一緒にやるということになると、そういったように各県ごとの差が出てくると思います。

 ですから、できれば後期高齢者のいわゆる通常の病気、それらについて広域連合でやるようにすれば、各県ごとの言うならば違いが、差が出てくるということにはならないような気がいたします。また、そういうふうになるべきものではない、そういうふうに思います。

 先生の御心配なさっているようなことは、やり方次第によってはないのではないか、そういうように思います。

糸川委員 では次に、横倉陳述人と中山陳述人にお聞きしたいと思うんです。

 長期入院の是正や医療費の適正化に向けて、療養病床の再編成というものを進めていく必要がございます。患者の状態に応じた適切な療養病床の再編成のあり方について陳述人の御見解をお聞きしたい。

 また、在宅医療の推進が重要となる中で、医療側から見たこれまでの取り組みの不十分な点ですとか、今後の取り組みで重点化が必要な点ということに対して、何か御見解をお聞かせいただければなというふうに思います。

横倉義武君 まず療養病床の問題ですが、やはり実態が十分にまだ把握されないままに、今回いろいろな施策が出されたのではないかと思います。確かに、ある一定の数の調査で、介護療養型病床なり医療型の療養病床に入っておられる方の医療ニーズをはかった、時間測定をやったということでのデータがありますけれども、それだけじゃないんですね。ですから、やはり患者さんが本当に、医療ニーズがどれだけあるから、医療型の療養病床にちゃんと入院していただいておかないと生命の危険が非常に強いんだということまでしっかり把握した上で、その区分というのは十分考えていかなきゃいけない。

 確かに、非常に医療ニーズが低くて今療養型に入っておられる方については、将来的にそういう介護施設に移行をしていく。だから、移行していくに当たっては、やはり十分いろいろな環境変化に配慮していただかないといけないかなと思っております。ただ、介護施設に変えるということで、単に財源を医療保険から介護保険に変えるだけというような施策であれば、ある意味では意味がないんじゃないかという気もいたします。

 それと、かかりつけ医の在宅医療の問題ですが、在宅医療については、今までは診療報酬でのいわゆる経済誘導がいろいろやられていたわけですね。ある程度道筋ができたかと思うと、それがぽんと外されるというようなことがここ何回か繰り返されています。ですから、本当に在宅医療のあり方はどうだというものをしっかりやはりつくっていかないと、これは我々も提案しますし、国の、行政の方もいろいろなお考えを言われると思いますが、それを方向性をぴしっと固めてやらないと、今みたいに二年おきの診療報酬改定でああだこうだというようなことでは、現場といいますか我々も混乱しますし、国民の方々も混乱をすると思います。

 以上です。

中山眞一君 療養病床、在宅のことが今も話題にちょっとなりましたけれども、私は、昭和二十四年の団塊の世代でございます。私たちの世代は、今の若い人たちの大体倍おります。ちょっと計算しますと、今から三十年ぐらい、二〇四〇年ぐらいで団塊の世代も大体終わりかなという気がしますけれども、要するに、今からもっともっと後期であろうが高齢者がふえていく、お世話しないといけない。

 しかも、もう一つの問題は、今度は若い方は、元気なお年寄りはいいんだけれども、ちょっと弱ってきたお年寄り、実際は見ていないですよね。医療従事者は別です。一般の方は知らないというのが僕は現状じゃないかと思いますね。

 それはどういう経過をたどっていくのかもよく御存じないので、案外、今、在宅、在宅と言われますけれども、そんな絵にかいたもちというか、それを推進しようとするのはよくわかるんですけれども、現実にはどんどんそういう対象者はふえていく、受け持たなければいけない若い人はそんなの見たこともないというような現状が実際起こるんじゃないかという気がしますので、療養病棟とか長期入院する施設、そういったものが、日本人の社会としては、やはりローコストなものを真剣に考えて、そっちしかないということを国民として何か考えてもいいんじゃないかなという気が私はしているんです。

 在宅も、在宅ができるところはいいですけれども、先ほどから過疎地の問題とか独居老人の問題とかで、本当にできないというのも幾らでもあります。そういう方が押し寄せてきた場合に、やはり我々としては引き受けざるを得ないというのも現実ですから、必ずそういうことはあるので、制度の経済的な裏づけの部分は別として、ベッドは持っておかざるを得ないというか、それを使っていかざるを得ない環境は続くんだろう、そういうふうに考えています。

糸川委員 ありがとうございました。

 今、横倉陳述人も、実態が把握されていないまま進んでいってしまっているんじゃないかというような御意見がございました。本日、福岡県の医師会の会長という立場で、代表という形でおいでいただいているわけでございますが、医師会の中にも今回の改正に対しましてさまざまな御意見ですとか賛否があるのではないかな。私の地元は福井なんですが、そちらでもいろいろな声が聞かれておるわけでございます。

 恐らく横倉陳述人におかれましても、さまざまな場所や会合で、いろいろな方の不安、今回改正されることによって病院の経営が成り立つんだろうかとか、いろいろな御不安があるのではないかな。横倉陳述人におかれましても、病院を経営していらっしゃるわけでございます。ですから、そういうことも含めて、医師会の中で今多く聞かれている不安、今回のこの改正に伴って大きく聞かれる不安というものはどういうものがあるのか、お聞かせいただけますでしょうか。

横倉義武君 まずは、一つは療養型病床の今後のあり方ですね。今後どういう方向性に進むのかということの意見をよく聞きます。それと、療養型病床は、これは病院だけじゃないんですね、有床診療所に療養型病床がございます。ですから、その分についても十分な配慮が必要ということ。

 それと、在宅では、ある意味ではとっぴかなというような在宅療養支援診療所というカテゴリーができて、その中に、終末を診ると点数が一万点という、とんでもない点数がついちゃった。実際、これを請求できるかというんですね。一万点というのは十万円、その三割負担というのは三万円です。終末を診るだけでというようなことにもつながる。ですから、そういう現実離れした感じの点数設定が通るような診療報酬改定が今度は行われたということについての不安。だから、いろいろなところにそういうものがあるのではないかという不安があります。

 それともう一つは、リハビリテーションの制限が行われたということですね。今度の医療法改定には関係ありませんけれども、診療報酬の制度の中でそういういろいろな制限をいろいろなところでかけた、これが実態と合わない部分が幾つかあるのではないかということに対して、もう少しいろいろな考慮が必要かなと思っております。

糸川委員 どうもありがとうございました。まだまだいろいろな不安というものがあるのではないかなというふうに思うんですけれども、大変お答えにくい質問だったのではないかなと思いますが、ありがとうございます。

 もう時間もほとんどございませんので、久能陳述人にお尋ねいたしますが、今、医療情報の提供の推進というものに対して、患者の選択に資するためにこれは必要でございます。一方で、医療情報がはんらんして患者様が戸惑ってしまう、こういう懸念もあるわけでございます。適宜適切な医療に関する情報提供の体制整備に必要な要件に対して、久能陳述人がどのような御見解をお持ちなのか、お聞かせいただきたい。

 また、医療側の事務の負担についてもあわせて御見解をお聞かせいただければなというふうに思います。

久能治子君 不安はそのままあると思いますが、暫定的な方法として、とにかく何らかのクッションを用いて対処するのであればよいのかなというふうには思いますけれども、現在は、ちょうど流れとしては、先ほど申しましたように、医療過誤に対する国民意識というものがまだ不十分なので、現在、行政の方で地方自治体に行われているような医療情報センターとかそういったことでタイアップして考えるなり、そのままではなくて、何らか連携する必要があるのではないかなと思っていますが、ちょっとそちらの方は余り確かなことは申し上げられません。ただ、基本的にはいいことだと思っています。

 事務の負担に関しましても、診療報酬に関してなど、やはり本当に必要かどうかというような議論も医療者の方ではなされておりまして、数字だけ見ても理解しにくいのではないか。ただ、結局、先ほど申しましたように、自治体でそれを協力していただくのであれば、事務だけではなく自治体の負担にもつながってしまうでしょうけれども、それは実際施行してみて、またほかの事象と同じように流動的に対処されるのかもしれませんけれども、なかなか不安は大きいと思います。

糸川委員 もう時間が参りました。岩永陳述人と浦江陳述人に対しましては、本当は質問したかったんですが、時間の都合上お許しいただきたいと思います。

 ありがとうございました。

岸田座長 以上で委員からの質疑は終了いたしました。

 この際、一言ごあいさつを申し上げます。

 まず、意見陳述者の皆様方には、大変お忙しい中、長時間にわたりまして貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。ここに厚く御礼を申し上げます。

 また、この会議開催に当たりまして格段の御協力をいただきました関係各位に対しましては、深く御礼を申し上げさせていただきたいと存じます。まことにありがとうございました。

 これにて散会いたします。

    午後三時四十五分散会

    ―――――――――――――

   派遣委員の福島県における意見聴取に関する記録

一、期日

   平成十八年五月八日(月)

二、場所

   ウェディング エルティ

三、意見を聴取した問題

   健康保険法等の一部を改正する法律案(内閣提出)、良質な医療を提供する体制の確立を図るための医療法等の一部を改正する法律案(内閣提出)、小児医療提供体制の確保等のために緊急に講ずべき施策の推進に関する法律案(小宮山洋子君外四名提出)及び医療を受ける者の尊厳の保持及び自己決定に資する医療情報の提供、相談支援及び医療事故等の原因究明の促進等に関する法律案(園田康博君外三名提出)について

四、出席者

 (1) 派遣委員

    座長 鴨下 一郎君

       新井 悦二君   木原 誠二君

       林   潤君   平口  洋君

       郡  和子君   仙谷 由人君

       山井 和則君   福島  豊君

       高橋千鶴子君

 (2) 意見陳述者

    福島県町村会長     菅野 典雄君

    福島県医師会副会長   高谷 雄三君

    東北大学大学院医学系研究科医科学専攻発生・発達医学講座周産期医学分野教授         岡村 州博君

    福島県産婦人科医会会長 幡  研一君

    仙台市立病院救命救急センター副センター長兼小児科医長        村田 祐二君

    国見町長        佐藤  力君

 (3) その他の出席者

    厚生労働省大臣官房審議官           宮島 俊彦君

    厚生労働省医政局長   松谷有希雄君

     ――――◇―――――

    午後一時開議

鴨下座長 これより会議を開きます。

 私は、衆議院厚生労働委員会派遣委員団団長の鴨下一郎でございます。

 私がこの会議の座長を務めさせていただきますので、よろしくお願い申し上げます。

 この際、派遣委員団を代表いたしまして一言ごあいさつを申し上げます。

 皆様御承知のとおり、当委員会では、内閣提出の健康保険法等の一部を改正する法律案、良質な医療を提供する体制の確立を図るための医療法等の一部を改正する法律案、小宮山洋子君外四名提出の小児医療提供体制の確保等のために緊急に講ずべき施策の推進に関する法律案及び園田康博君外三名提出の医療を受ける者の尊厳の保持及び自己決定に資する医療情報の提供、相談支援及び医療事故等の原因究明の促進等に関する法律案の各案の審査を進めているところでございます。

 本日は、国民各界各層の皆様方から幅広い御意見を承るため、当福島市におきましてこのような会議を催しているところでございます。

 御意見をお述べいただく皆様方におかれましては、御多用中にもかかわらず御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。どうか忌憚のない御意見をお述べいただきますようお願い申し上げます。

 それでは、まず、この会議の運営につきまして御説明申し上げます。

 会議の議事は、すべて衆議院における委員会議事規則及び手続に準拠して行い、議事の整理、秩序の保持等は、座長であります私が行うことといたします。発言される方は、その都度座長の許可を得て発言していただきますようお願いいたします。

 なお、御意見をお述べいただく皆様方は、委員に対しての質疑ができないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願います。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 最初に、意見陳述者の皆様方から御意見をそれぞれ十分程度でお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。

 なお、御発言は着席のままで結構でございます。

 次に、派遣委員を御紹介申し上げます。

 自由民主党の新井悦二君、木原誠二君、林潤君、平口洋君、民主党・無所属クラブの山井和則君、郡和子君、仙谷由人君、公明党の福島豊君、日本共産党の高橋千鶴子君、以上でございます。

 次に、本日御意見をお述べいただく方々を御紹介いたします。

 福島県町村会長菅野典雄君、福島県医師会副会長高谷雄三君、東北大学大学院医学系研究科医科学専攻発生・発達医学講座周産期医学分野教授岡村州博君、福島県産婦人科医会会長幡研一君、仙台市立病院救命救急センター副センター長兼小児科医長村田祐二君、国見町長佐藤力君、以上六名の方々でございます。

 それでは、まず菅野典雄君に御意見をお述べいただきたいと存じます。

菅野典雄君 福島県町村会長を仰せつかっております飯館村長の菅野といいます。大変な機会を与えていただきました。どうぞよろしくお願いいたします。

 私の村は、人口六千六百人ほどの純農村地帯であります。私も農業者出身であり、お医者さんでもございませんので、医療制度についてはそう詳しくはわかりませんが、首長として現在考えていることを四点に絞って述べさせていただきたいというふうに思っております。

 まず第一点は、村として、住民の医療費に、もろもろで一般財源から約一億五千万ほど繰り入れをしているところでありますけれども、今、地方交付税が大幅に減っている中で、特に、小さな町村は身を削るような行財政改革をしているわけですが、これ以上の一般財源からの繰り入れはもう限界だなという感じであります。したがって、これから考えられる究極の行財政改革は、健康づくりをしっかりと進めて、医療費を大幅に下げることしか方法はないのではないかとも思っているところであります。

 今、私の村では、介護保険適用以外の方が介護保険を受けないで元気で過ごしていただくことが大切であろうということで、六十五歳以上を対象に、村の二十の行政区すべてにいわゆるミニデイサービスを開いているところであります。対象者の約三割、六百人ほどが、月二回から四回、地元の方と保健師の協力でミニデイを実施しているところでありまして、内容はいろいろ多岐にわたっています。たまには私も講師で呼ばれるときがあるわけでありますが。

 この制度には、在宅福祉活動補助金ということで以前は少し補助金が出ていたようでありますけれども、今ではもうなくなってしまいました。したがって、村で約七百万ほど予算化をしているわけであります。この医療制度改革、私もとても大切なことだろうというふうに思いますが、このように、いわゆる健康づくりや医療費をかからなくする策へも力を入れるべきではないかなというふうに思っています。

 今回の改革で、生活習慣病の義務づけを市町村でということであります。方向としては大変よい方向と考えているわけでありますが、職員減で交付税の減ったところを乗り切ろうとしている市町村にとっては、これ以上仕事量がふえるということは大変であって、まさに財源がしっかりと伴わない限り無理ですので、十分充当していただきたいというのが第一点の意見でございます。

 次に、第二点は、後期高齢者医療制度についてであります。私は、日本の医療保険制度を大変高く評価しています。正直申し上げて、日本に生まれてよかったな、日本人でよかったな、こう思うところでありますけれども、しかし、今回、今後一人当たりの医療費が高くつく、今後増大が見込まれる、つまり、リスクの高い後期高齢者だけを別枠で独立制度をつくるということに関して、首長として心配している点を述べさせていただきたいというふうに思っております。これも四点述べたいと思います。

 一つは、この独立制度をつくる目的の柱に、高齢世代と現役世代の負担の明確化、わかりやすくする、言いかえれば、高齢者も応分の負担をということだと思います。これはある程度納得であり、やむを得ないものだ、こう考えているわけでありますが、ただ、世の中にはいろいろな人がおり、いろいろな家庭があり、いろいろな地方があるわけであります。都市と農村でもいろいろな面で大違いということでありますね。

 例えば、都市部の病院の窓口なんかは老人の方でサロン化して、あれ、あの人が来なくなったけれども病気になったのかなという笑い話があるという話でありますけれども、そういうような中で、日本はどうも単線制度、一つの制度におさめようということが好きというわけではないでしょうけれども、そんな国かなと。せいぜい減免制度がありますよ的な考え方でありますけれども、私は、やはり幾つかの複線の制度があってそれを選んでいくというシステムがあってこそ、一流の国であり、大人の国家ではないかというふうに思っています。

 平成の合併問題もしかりでありますけれども、なぜ、いろいろあってそれでよいというような大きな考え方に至らないものなのかなと。ぜひ今回の医療制度改革にも、このような考え方を幾らかなりとも取り入れていただきたいものだなと考えているところであります。

 二つ目は、広域連合で実施となるようですが、これは国という大きな枠組みでは手の施しようがなくなったので、もう少し小回りのきく中で改革をということだろうと私は思っておりますが、ある意味で、方向としてはわかります。しかし、これまでの国の責任を市町村へ転嫁する以外の何物でもない、私はこんなふうに思います。広域連合になっても、国や県がどのように医療制度にかかわっていくのかということを、一番先に明確に国民に示した上で、財政責任も法律的に明記をしてスタートしてほしいものだなというのが二つ目でございます。例えば、これから値上げがあるであろう消費税の何%はこれに充てるよ、この方が国民としては納得していただけるのではないかな、こんなふうにも思います。

 三つ目であります。この広域連合制度の中では、これまで、医療費を低くするためにあらゆる努力を払ってきた市町村の努力を無にしてというわけではないでしょうけれども、プール制にということになりはしないかという心配でございます。努力した者が報われない制度になっては、各市町村に責任がなくなり悪循環になる可能性も秘めている、こんなふうに思います。これまでの努力、そしてこれからの努力が評価されていくような制度に、ぜひしてほしいものだなというふうに思います。

 四つ目ですが、広域連合ということで、県単位で事務所をつくり職員を配置していくのでありましょうが、これですべて事が済めばいいわけでありますけれども、相変わらず市町村に、前とそう変わらない、あるいはそれ以上の徴収を初め事務が残るような制度では、屋上屋をつくり、より経費のかかる組織になりはしないかという心配もあります。

 以上、後期高齢者の点で四点でございます。

 それから、大枠の方の三つ目の意見でございます。

 今回の医療制度改革には、少子化対策の面からの改革も若干はあるようでありますが、大幅に取り入れるべきではないかという考え方でございます。今、日本のすべての問題、経済、産業、教育、年金、労働、福祉、その他もろもろ、すべて少子化がベースになっている、こんなふうに私は思っておりまして、したがって、子供の医療費の無料化などは市町村の方が国よりはるかに二歩も三歩も進んでいるわけであります。私の村も、もう既に五、六年前から六歳まで無料化しておりますし、妊産婦健診もほぼ無料でございます。

 したがって、国も堂々と少子化対策の重要性を国民に訴えて、支援制度を高めていくということが、この医療制度に国民の理解を生む最善の方法ではないかな、こんなふうに私は思っているのが三つ目でございます。

 最後に、四つ目の意見であります。地方や僻地などの医師不足の件でございます。

 私の村にも診療所がございまして、以前、医師が欠けたときに、議員諸君から、首長、医者を探せないようなのは首ものだ、こう言われたことがあります。過疎地などにとっては、医師の確保はそのぐらい重要な行政課題であるわけでありますね。したがって、福島県はその点、ここ数年必死に対応してもらっているところでありますけれども、いかんせん、人口当たりの医師の数では、福島県は全国平均よりも約五百人ぐらい足りないという現況のようでございます。

 ですから、なかなか難しい。我が県にも県立の福島医大があり、定員が八十名でありますけれども、人口数からすれば大変少なく、これは地域格差と言っていいんじゃないかなと私は思います。国は医学部の定員増は認めない方向のようでございますけれども、この地域格差をなくす方向での定員増をぜひお願いしたいというふうに思っております。

 さらに、教員には僻地経験が義務づけられているということ、これは皆さんどこも同じだろうと思うんですが、医師にとっては、大きな病院や都市で多くの経験を積みたいという思い、私も十分わかります。ですから、その経験をしっかりと積んだ後、二、三年の地方医療を経験するという何か緩やかな制度というか、あるいは、しかも医師にとっては有利になるような制度も考えていただけないものかなという気がいたします。

 以上、四点を述べさせていただきましたが、年々あらゆる面で、ちょっと言葉は悪いのですが、地方いじめあるいは弱い者いじめと感じられる方向に日本はなってきているな、こう感ずるところであります。どうぞ今回のこの医療制度改革では、その点がなきようにぜひお願いをいたしまして、私からの意見を終わらせていただきます。

 どうもありがとうございます。(拍手)

鴨下座長 ありがとうございました。

 次に、高谷雄三君にお願いいたします。

高谷雄三君 福島県医師会副会長を務めております。

 初めに、私は、ことしの三月まで十四年間、会津若松医師会長をやってまいりました。会津といえば、藩校日新館の教えに、ならぬものはなりませぬという教えがあります。会津の政治家で、昔、伊東正義という人がおりました。私のおじです。彼はこの言葉どおりの政治姿勢を貫き通しました。

 では、一番からまいります。

 福島県の実情で、お配りの参考資料、このパワーポイントの方も後でごらんいただきたいのですが、全体的には、全国の医師数からすれば少ない県に入ります。会津の方を先にしゃべるわけですけれども、周囲の山間僻地の少子高齢化、人口減、高齢化率が四〇%を超えるワーストテンはすべて会津の山間僻地でありまして、渡部恒三先生御出身の南会津郡医療圏の三町四村の面積は東京都をすっぽり入れてもまだ余りあり、人口約三万二千人、医師数は人口十万対四・五人です。そこをちょっと飛ばします。

 救急医療ですけれども、会津には三次救命センターが一カ所あります。救急救命士からの要望は、せめて都会並みの搬送時間になるよう道路網の整備をいつも要望されております。

 小児医療ですが、会津では一民間病院のみが集約化し、他の二病院は小児科医が全部引き揚げて、やっておりません。開業医は、小児科医療機関七カ所八人。医師会では日曜祭日に内科系、外科系に加えて小児科当番医輪番制度を独立させて、好評でございます。夜間急病センターも、土日祭日は小児科に特化させて患者数がふえておりますが、小児科医の負担は大きく、過重労働が叫ばれています。

 産科医療ですけれども、会津全域人口三十一万人に対し、お産可能な病院は二病院、三診療所のみ。県立病院にもありましたけれども、婦人科医師の集約化で閉鎖。浜通りのいわき共立病院は、産科の医者が六人いましたが、一人が定年、後任は病気で亡くなり、ことし四月、県立大野病院の事件で一人の医師が嫌気が差して引き揚げ、三人体制となったために、地区医師会に、一カ月のお産受け入れを制限、健診業務ストップ、緊急患者さんしか受け入れませんという通知を出しました。

 医師不足ですが、県立医科大学の卒業生が卒後大学に戻ってこない現状は、東北六県医大共通の問題でございまして、公立大学法人化に伴って、小児科も産科も麻酔科医師も引き揚げまして、大病院での手術も制限されてきております。

 医師偏在、僻地医師不在ということで、産科、小児科、麻酔科、外科系を目指す医学部卒業生が少なくなっております。昔、看護師業務を三Kと称したことがありましたが、医大卒業生にもその傾向が出てきました。医師を志した動機は人それぞれでしょうが、志高く、医の倫理を尊重し、与えられたる使命に燃え、生きがい、働きがいのある職業と思って入学しても、いろいろな医療情報を耳にし、ネットで情報を得、過重労働、勤務時間の変則、医療過誤での訴訟の増加などなど、小児科、産科、外科系などは避けたくなる条件ばかりで無理もありません。

 資料の方にも載せてありますが、僻地診療所では一人で二十四時間頑張っており、過重労働で病気になり入院または手術というようなことがありました。これは県の方から医大に要請があって派遣することで切り抜けましたけれども、今後とも、医師の過重労働、老齢化、疾病によるリタイアが予想されております。

 七番ですが、新臨床研修医制度の功罪ということで、ことし四月から後期研修が始まって、医師教育、医師供給源の大学に戻ってくるのか来ないのか、地方大学は存廃の危機に直面しております。研修医は都会偏重、出身地元に行きたがります。本制度は、プライマリーケア、家庭医の知識を持たせる制度かもしれませんが、やはり医師は資格、博士号、勤務医は特に専門医志向が高いと思われます。

 入学制度を見直してほしいというところなんですが、偏差値だけで入学してくる傾向があります。西高東低ですので、八割近くが関東、関西、九州方面から来られます。最新の知識の詰め込みに終始して、ゆとりのある人間形成、人格成熟の時間がとれません。進級試験、卒業試験、国家試験に合格するよう飼育されているように思えてなりません。知識偏重の、思いやりのない、自分勝手で協調性のない医師が輩出されるのを危惧しております。

 医科大学は文部科学省管轄で、医師は厚生労働省の縦割りとなっております。融合連携を図って、例えば文部厚生労働科学省とかいうことにしまして、保育園と幼稚園が管轄別々と同じように、何か一本化した制度をつくっていくべきではないかと思っております。

 それから、衆議院での公聴会でも出ていましたが、女性医師の増加と活用、これを早急に手をつけていただきたいと思います。けさの新聞には、小児科学会がネットで病院に小児科医師募集というようなことが出ておりましたが、まだまだいろいろな方策を考えるべきだと思います。

 十番、労働基準法を医師、看護師、経営者は守れるのかということなんですが、関西医大研修医の過労死の判決で、医師も労働者と認定されました。そこで、過重労働を解消し、週四十時間を遵守せよとのお達しが出されました。非常に喜ばしい提案ですが、医師不足、医師偏在の現状で、どうやって国民の命を守れというのでしょうか。現実を全く無視しています。

 厚生労働省の中で、厚生行政では医者の方をやり、医者の労働条件は労働行政。同じ厚労省の中で、労働基準法を守れというと、厚生省の方は困るんじゃないんでしょうか。一人の医師が一日に診る患者さんは限られているわけですから、時間が来ましたから帰るというような医者がいるわけはありません。医師はおのれの職業に誇りを持ち、使命、責任感から、体と心の健康を犠牲にしてまでも職責を果たしております。もし法令遵守となれば、時間外労働拒否とか夜間呼び出し拒否とか、救急患者受け入れ拒否となった事態を予想すると恐ろしくなります。

 日本の医療は、医療人の決して報われることのない献身的サービスで成り立ってきました。今、医師不足、看護師不足の折、国民の命の安全、安心が崩壊する危機を迎えていると感じております。

 少し飛ばします。十一番、介護療養型医療施設の廃止。これは後で新聞で、決して廃止ではない、五年後に廃止ではない、介護施設転換、高度な医療を要する人は病院で診てもいいということになりましたが、もう五年後に廃止というふうにマスコミで先に出ましたときには、我々を愕然とさせたわけです。

 福島県でも厚労省の指示に従い療養病床転換、転換ということでやってきましたが、私は、二階に上げてはしごを外すやり方になるよということを医療審議会でいつも言っておりました。十年たたずに廃止の方向になってまいりました。昨年度でさえも、廃止が決まる直前、介護療養病床整備計画で千五百九床の整備計画を予定されているわけですね。通達が遅かったのかもしれませんけれども、そういうぐあいにして整備計画もあったという事実がございます。

 十二番に行きまして、厚労省が政策を策定するに使う数値の情報開示を要求したいと思います。日本医師会で出す数値と厚労省で出す数値がいつも乖離しております。これをどこかで出していただいて検討、検証していただかないと、公平公正な政策が出てこないのではないか。総医療費が何十年後かに百何兆とかいう、あれが日本医師会で出している数値と全く大きく変わっており、最近は厚労省もだんだん総医療費の数値を下げてきていますから、どういう根拠で下がってきたのかも教えていただきたいというような気もします。

 国会議員の先生方、このブラックボックスをぜひ解明していただいて、正しい方向に持っていってくださるようお願いいたします。

 十三番で、弱者切り捨て、地方切り捨て。これは、菅野村長がおっしゃいましたように、地方ではみんな子供がいなくなって、そういう人が都会に行って都・市民税を向こうに納めるわけですね。こちらは老人だけが残っていて、親に対する孝行もできない、地方の財政も厳しいということから、何かしら地方に、地方交付税は減額ないしはカットですから、こういうのを何とかしなければ、地方が疲弊して国が成り立つわけはないと思います。

 十四番の、県立大野病院のことにつきましては、これは次の次に幡先生がお話しになると思いますので、私はカットさせていただきます。

 十五番、今回の医療法改正について。時間が来ましたので。

 電子カルテを私ども入れました。これは全く割に合わない。初診料はマイナス四点で電子カルテ導入が三点、マイナス一点。これは五百万かけてやったんですけれども、うちは初診者は年間六百人ですから、単純計算で、元を取るには八百三十三年かかります。これでレセプトオンライン化をしろとかいっても、我々医療側はちょっと無理だというふうに思います。

 それから、オンライン化ですけれども、今は一人一枚になりましたけれども、これはただのプラスチックカードです。ここに命を吹き込まないと、暗証番号はお年寄りは忘れますから、カードリーダーでこうやって、指紋か何かでこうやって、これにコードを埋め込めば、医療過誤というか記号、番号の間違いというのはなくなると思います。ですから、こういうことをやっていかないとオンライン化は無理だと思います。

 最後のまとめになりますが、まとめじゃないですが、まだ美辞麗句、絵にかいたもちの部分が多数箇所見られます。実行可能でしょうか。拙速な決定で朝令暮改、はしごを外すことのないよう、各界、各団体、識者と十分な検討と検証を重ねてから施行してくださいますようお願いして、総論は、今後、明治政府以来の改革というふうに思いますので、改革はいいのですが、細部までは、これからぜひ国会議員の先生方、よろしくお願いしたいと思います。

 ありがとうございました。(拍手)

鴨下座長 ありがとうございました。

 次に、岡村州博君にお願いいたします。

岡村州博君 東北大学の岡村でございます。

 本日はお招きいただきまして、本当にありがとうございます。

 私は、厚生労働省の地域における分娩施設の適正化に関する研究の主任研究者として、分娩施設の集約化についてスタートしてまいりました。そのような立場から、また、東北大学で教授として、特に産婦人科医の足りない地域における大学教授としての立場から、意見を述べさせていただきたいと存じます。

 資料は、カラーのパワーポイントのハンドアウトのものと、その後ろに私の研究班の三年間の総括報告のサマリーをつけてありますので、これは後でお読みいただきたいと存じます。

 まず、二番目のところから始めますが、周産期医療は世界のトップでありますが、これは、今までの医療システムの中で、医師を含む従事者の犠牲に立ってなし得ていると言っても過言ではございません。現在は、その戦後、連綿と続いてだれも疑問を抱いていなかったシステムの破綻が見えてきているというふうに私は思っております。

 このまま産婦人科、小児科の医師が減少したらどうなるかといったよい例が北海道で示されておりまして、それが三番目でありますが、黒い部分の、小児科医、産科医の少ない地域では早期新生児死亡率が高くなっています。このように、小児科、産婦人科医が少なくては、現在世界のトップにある周産期医療は瓦解するという危惧を持っておるわけであります。

 さて、産婦人科医をふやすにはどうするか。この救急処置はありません。しかし、次に示してありますように、学生は産婦人科をおもしろいと考えています。また、魅力のある医療と考えてもいます。私の大学でも、五年生には全員、夜中の分娩でも主治医制の形で立ち会うように指導しておりますけれども、皆学生は生命の誕生に非常に感激して実習を終えております。

 次のところでありますが、しかし、産婦人科の若手医師の二七%は産科医をやりたくない、お産を扱いたくないというふうに言っております。要するに、ハイリスクでローリターンではなくて、ノーリターンということだと思います。

 医師過剰の理論がありますけれども、これは数字上の理論構築でありまして、医学の進歩によりまして、医師一人の患者にかける業務の量というものは数倍になっているというふうに考えていいかと思います。またさらに、女性医師がこのようにふえるというような予測で考えたものとは到底思えません。現場では、医師不足、これに反対の意見を持っている方はいないと思います。

 このような労働条件の中で、産婦人科医のストレスをとるためにぜひ必要なものは、無過失賠償責任制度であるというふうに私は思っております。医療のスタンダードを示すのは学会や大学の責務かと思いますけれども、それに基づく正しい医療でありながら訴訟になる場合は、早く被害者の救済と、医師へ無過失の認定をする機関が必要ではないかというふうに感じております。

 もう一つは、医師の待遇であります。

 若い産婦人科医は、生命の誕生というやりがいを求めて産婦人科医を志しているのでありますが、決して高収入のみを目指しているわけではありません。産科医には夢があるはずですが、今は夢を描くことさえできずに、やりがいの喪失ということになっているかと思います。個人的には、産婦人科医は、正当な評価さえしていただければ、必ずしも収入にこだわることはないというふうに考えています。しかし、残念ながら、現在のところ、収入を上げるという評価以外に正当な評価方法がございません。

 このようなことで、我が国でも勤務医のドクターフィーを認めていただいて、後で述べますけれども、拠点病院、連携強化病院でしょうか、そういうような病院の長たる産科医に開業の先生以上の収入を与えるシステムが必要であり、それがあれば、若い医師も目標を持って産科診療に携われるものというふうに私は考えております。

 一枚目の一番下になりますが、現在は、この図に示しますように、医師不足からきます医療水準は低下し、医療紛争も増加してまいります。ますます産科医は嫌になりまして、残った医師の勤務は激務となり、研究もできず、医学の進歩もなく、人気もなくなります。ますます産科医のなり手がない、こういうような負のサイクルが働いておるかと思います。これを今どこかでストップしなければなりません。

 それが医師の集約化であると信じて、冒頭に述べましたような厚生労働省の科学研究費のもとで、集約化とそれに伴うセミオープンシステム、拠点病院とその他の地域との間のクリニカルパスを設定してまいりました。

 次のページにありますけれども、仙台市におきましては、仙台市の円グラフにあるくらいの分娩を扱う病院がありました。その中で、斜線で示す病院では分娩をやめていただき、医師を拠点病院に集約いたしました。この赤で示しますのが開業医での分娩数を示しております。

 その経験に基づきまして考えておりますのが都市型の集約化システムです。ここでも問題点がございまして、病院経営の母体が違いまして理念も違う病院間の理解のもとに、いかにして産科医を集約させるかということが大きな問題です。公的病院だけが現在の地域医療の中核になっているわけではありませんので、集約化を公的病院のみに限定して考えるというのは地域の実情に合わないところも出てまいります。分娩をやめるということに関しましては、地域におけるその病院の特徴を際立たせた病院の個別化を図り、それを経営母体の長や院長に理解していただくことが必ず必要でございます。このことに関しましては、国と県が主体性を持って行っていただきたいというふうに考えているところです。

 拠点病院を指定するということは、県の医療協議会で審議して決定するということは可能かとは思いますが、しかし、拠点病院の院長、病院事業管理者みずからが主体となって医師の待遇を改善して産科医を集めるという意識がないと、こういう制度は成り立たないというふうに思っております。

 一方、地方は都市とは違いましてさらに難しい問題がございます。表がございますけれども、それは全国の勤務医数別の施設数でございます。これは日本産科婦人科学会で調べたものでありますけれども、東北、北海道では、いわゆる一人医長で診療している産科医は二三%になります。また、先日、こどもの日の河北新報、宮城県の新聞ですけれども、一面トップ記事として、東北地方の基幹病院の二〇%は産婦人科医一人医長となっているというような記事がございました。東北地方では半分以上の病院が産婦人科医師二人以下という現状で診療しているわけであります。

 次の、これは青森県の状況を示す図でありますけれども、赤が開業医で行われたお産、青が病院で行われたお産を示しております。これを見ましても、都市部では集約は可能かと思いますけれども、郡部は都市部と違ったシステム構築をしなければならないということは明らかでございます。全国一律に集約化が可能かどうか、疑問を与える内容ですけれども、これも何とかしなければ若い医師の理解が得られないというふうに考えているところです。

 そこで、次のところでありますけれども、現在のところ考えているシステム案でございますけれども、分娩拠点病院の中に分娩宿泊施設をつくって、遠くから来る妊婦さんの便宜を図る、ITを利用した分娩拠点病院とほかの病院との連携を考えていかなくちゃいけない、それからヘリコプター等を視野に入れた搬送システム、こういうものに地域全体で取り組まなければならないということで、いろいろな問題を抱えております。このようなシステム構築を国の指導でお願いしたいというふうに私は考えております。

 最後に、女性医師問題でございますけれども、これは大学にいる私としては非常に頭の痛い問題でございます。ここに示しますのは東北地方女性産婦人科医師の当直回数などを調べた結果でございますけれども、大変な労働条件であります。これは私たちが「産婦人科女性医師の叫び」というような小冊子にまとめたその中の一部でございますけれども、現在、私たちの関連の病院の中で、七人の女性産婦人科医師が産休または育児休暇で休んでおります。さらに六月からもう一人産休に入ることになっています。このワークフォースをカバーする妙案は今のところ私にはございません。しかし、医学部女子学生の半分以上は産婦人科医になることが選択肢の一つに入っているのに、このまま無策であれば、これをも失うことを私は危惧しているわけであります。

 早急な女性医師対策が必要でありますが、保育所、育児所の優先的な確保、あるいはベビーシッターを病院が独自に雇用して女性医師に優先的に派遣するというようなシステムにしなければ、女性医師は肉体的に楽な診療科に流れてしまうということを私は大変心配しております。今は、母である以前に妻であることも大変な産婦人科女性医師の労働条件であるというふうに私は考えております。

 まとめはそこに三つ書いてございますけれども、これを読んでいただければありがたいというふうに思います。

 時間が参りましたので、以上で私の意見陳述を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。(拍手)

鴨下座長 ありがとうございました。

 次に、幡研一君にお願いいたします。

幡研一君 福島県産婦人科医会会長の幡と申します。

 このような場で発言の機会を与えていただき、感謝申し上げます。

 私からは、我が国の周産期医療の現状と問題点、さらには今後の課題について申し述べさせていただきます。時間が限られてございますので参考資料を準備いたしました。詳細はそちらをごらんいただきたく存じます。

 それでは早速申し上げます。

 まず一番に、今、岡村先生が申し上げましたように、日本におけるこれまでの周産期医療の実績についてですが、図の一、表の一に示しました。諸外国と比較しても、日本の周産期死亡率、乳児死亡率は最良の成績を示しております。妊産婦死亡率に関しては、まだトップとは言えませんが、年々減少しております。ちなみに、平成十六年の妊産婦死亡は出生十万対四・四でございます。このように、妊産婦死亡、周産期死亡とも減少はしておりますが、ゼロではございません。国民にも、分娩は必ずしも安全ではない、常に危険を伴うことを理解してもらう必要があるところでございます。

 また、このようなよい結果というのは、医学、医療の進歩もありますが、実際には、周産期医療、新生児医療に携わる、医師を初めとする医療スタッフの献身的な努力の結果得られたものであります。

 次に、現在の周産期医療における問題点について述べさせていただきます。

 図の二に、現在の周産期医療の構造を示しました。周産期医療は、地域に根差した一般の開業医、地域の中核的病院、さらには高度な医療を提供する総合周産期母子医療センター等でなされております。これらが有機的に連携を保って動かないと、周産期医療はうまく機能しません。また、このピラミッドのどの一部が壊れても、周産期医療システム全体が崩壊します。現在、その崩壊の危機が迫っております。

 まず一つは、産婦人科医師数の減少、高齢化でございます。

 図の三に示しました。日本産婦人科医会、日本産科婦人科学会の年齢別会員数を示しましたが、両者の間に開きがあるのは、大学病院等の若手の医師は産婦人科医会に加入していない人が多いためです。いずれにしろ、四十五ないし五十四歳をピークに、若い年代の産婦人科医の減少がはっきりしております。これらの会員の中で、周産期医療に携わる医師は約二分の一以下と考えられます。周産期センター等の二次、三次の医療機関で、診療に当たる医師は大部分が若手の医師です。その年代の減少は大きな問題と言えます。

 次に、安心、安全な分娩を提供する医療施設の減少について述べさせていただきます。

 図の四は、分娩取り扱いを中止した診療所、病院の年間の数です。平成十六年では、中止した診療所九十七に対し、新たに始めた施設が二十九、病院では、六十の施設で分娩を中止、新たに始めたのは六施設となっております。病院での中止の理由は、大部分が産婦人科の医師不足が原因と思われます。

 次に、図の五に、診療所医師の分娩取り扱いの中止理由です。二十四時間拘束、常にぴりぴりして心配している生活から解放され精神的にゆとりを持ちたい理由がトップで、体力的、経済的理由がそれに続きました。助産師、看護師等医療スタッフの不足を理由に上げた人も多く見られました。

 診療所における助産師の勤務状況を図六に示しましたが、助産師一人のみの施設が最も多く三百四十六施設であり、一人もいないところも九十施設ありました。

 助産師の充足状況につきましては、日本産婦人科医会で本年一月、全国の産婦人科医療施設を対象に行いました。最後の二枚にその資料が載っております。九二・一%という回答率を得ましたが、その結果、助産師の不足数は六千七百十八人となっており、厚生労働省の十八年度需給見通しの千八百二十三人を大きく上回っております。医療訴訟を原因に上げた人も見られ、一局面からのみ見た報道による国民の誤解も一因と思われます。

 次に、周産期ネットワークシステムの不備についてです。

 図の七ですが、全国で公的な周産期ネットワークシステムが構築されているのは四〇%にすぎません。この点も周産期医療システムが効率的に機能しない一因と思われます。

 周産期センターや基幹病院における産科、NICUのスタッフ不足からくる過酷な労働環境も大きな問題です。その結果、救急受け入れを中止した中核病院が二二%に見られました。これが図の八でございます。

 続いて、今後の課題について述べさせていただきます。

 まず、周産期医療の集約化についてでございます。集約化に当たっては、幾つかの問題点があります。

 まず一つに、受け皿となるセンターのスタッフの補充をどのようにするのか。現在でも少ない産婦人科医をどのように配置するのか。特に、受け皿のスタッフはほとんどが若い医師、または看護師、助産師等が対象になると思われます。また、配置が変更される場合、金銭的な問題、子供の教育の問題もございます。また、集約化に当たっては、産婦人科医のみならず、小児科、麻酔科医も集約化する必要があります。スタッフとともに設備の拡充も必要となってまいります。

 集約化の結果、安全性は多少向上するかもしれませんが、住民の利便性は低下します。アメニティーも低下します。日本の文化として、出産は地元でという希望が多いのではないでしょうか。出産する本人だけでなく、家族も不便を余儀なくされます。また、そのようなことが少子化を助長する結果となるおそれが多分にございます。集約化に当たりましては、対人口比のみではなく、地域特性に十分な配慮が必要となります。交通事情、気象条件等を考えて、センターまで何分で行けるか、距離ではなく時間が問題となります。

 過疎地におけるセンターの運営には、それなりの公的補助がないと経営は困難となります。このような結果、集約化は現時点では、都会ではできても地方ではまだ難しいかと思われます。オープン、セミオープンシステムも十分検討の余地があると思われます。

 二番目に、無過失補償制度の創設でございます。

 医療行為に過失がなくても、患者の期待と医療結果との不一致により医療紛争は発生します。特に産科においては、元気であった人が突然不幸な結果になることもあります。また、新生児の脳障害は分娩時の対応に過失があったととられやすい点も、訴訟を増加させておる一因だと思われます。裁判で長引くと、患者、医療者、双方にとって大きな負担となります。

 また、分娩の安全神話が患者側にはあり、元気に生まれて当たり前という感覚が一般的でございます。現在は、晩婚の影響で高齢出産が多く、合併症も当然多く見られます。また、生活の欧米化とともに生活習慣病を初め多くの合併症を持った人が多く、現在では子供のころから小児生活習慣病ということも見られておりますし、それらの方が妊娠、出産する年代は今以上にいろいろ合併症を持った方が多く出ると思われます。

 三番目に、医療事故における第三者による審査機関の設立です。

 医療過誤の有無の判断は第三者審査機関で行うのがよいと考えられます。無過失補償制度の適用に当たっても必要な制度でございます。

 次に、医師法二十一条の解釈についてお願いいたします。

 これについては早目に統一した見解を出してほしいと思います。患者のために最善と思われる医療行為を行っても、結果が悪いと即逮捕というような状況は、医療現場で働くスタッフに混乱と恐怖を与え、萎縮診療につながります。

 五番目に、大学附属病院等における研究、教育体制の援助が必要となります。

 現在のような周産期医療の成績の向上は、医学の進歩によるところが大きいのは明白です。また、若い医師が主にセンター等に勤務することを考えれば、その教育に当たる大学附属病院等への援助も必要であります。

 六番目に、経済的な担保です。

 集約化が進めば進むほど、現在の少ない人的資源では現場の医師に過重な負担がかかります。その意味でも経済的援助が必要と考えます。今回、ハイリスク妊婦管理料が新設されましたが、そのお金が現場で働く医師に還元されるように希望いたします。医療費を削減することもある意味では仕方がありませんが、努力しているところにはお金をかけてほしい、そのためには医療費を上げることも必要であると考えております。

 七番目に、国民への啓蒙です。

 すべての国民は、夜中だろうが僻地だろうが、常に最高、最善の医療を期待しております。そのためにはそれなりの人員と費用がかかることを、どれだけの人が理解しているでしょうか。いつでもどこでも利用できて質が高く費用は安い、そのようなことはあり得ません。国民の求める医療の量と質がどの程度か、それを実現するための医療者の数と医療費の試算、国で負担できる程度を出す、それによって医療の質を国民へ明示することが必要と思われます。

 以上、我が国における周産期医療の現状と問題点、今後の課題について申し述べさせていただきました。ありがとうございました。(拍手)

鴨下座長 ありがとうございました。

 次に、村田祐二君にお願いいたします。

村田祐二君 仙台市立病院救命救急センターの村田と申します。よろしくお願いします。

 今回は、当院の立場を離れまして、東北地方の小児救急医療の現状ということを主にお話をさせていただきたいと思います。

 まず、例を出してお話ししますと、当院の所属する仙台医療圏での休日、夜間、いわゆる時間外での小児科の初期救急患者数、それは年間大体四、五万に上ります。仙台が人口百万、宮城県が二百四十万、年間四、五万の子供さんが救急にかかりますが、入院が必要で後方の病院に転送となるのは、そのうちの約一から二%です。

 このように、小児救急患者さんは軽症者が多いと言われますけれども、現場にいますと、子供さんの場合は急に病状が悪化することがまれではありません。御家族、お母さんの立場としては、この子が初期救急なのか二次救急なのかの判断は、実際的には難しいものがあると思っております。

 我々から見た軽症者の方が、御家族の不安から大きな病院に殺到する現実もあります。しかし、逆に、僕たちから見ると実際本当に重症な患者さんが初期救急診療施設を受診して、冷や冷やするようなことも多々あります。

 仙台市の場合、二十四時間三百六十五日、全く時間外も小児科専門医が救急診療に当たっていますが、最近、深夜帯、十二時から翌日の朝までの時間なんですけれども、その患者さんが非常に増加しております。それで、深夜帯勤務の当直の医師が燃え尽きてしまってやめてしまう、そこの当直医師の補てんに難渋しているのが現状です。

 当然、当直をしても翌日は通常勤務です。御存じの方がほとんどだと思うんですけれども、その理解がない方もいらっしゃるのでぜひ言ってくれと言われたんですけれども、もう僕たち、三十二時間勤務あるいはそれ以上の連続勤務が続いています。人の命を預かる職種で、これはまさに異例、異常な状況です。

 この小児救急医療の現状を需給のバランスから考えてみたいと思います。

 需要の面ですけれども、言われているとおり、少子化にもかかわらず子育てに対する不安が大きいために、いつでも、どこでも小児科専門医に診てほしいという希望が根強く、この需要はどんどんふえているのが現状です。それに加えて、夜型のライフスタイルが広まり、地域に同年齢の子供がいなく、相談できる相手もいない、夜中に熱が出たら、まず小児科へ行ってみようということになってしまうのが現状です。

 このように、小児救急医療の多くの部分が育児支援に向けられておりまして、そのかなりの部分に精力を費やしているような状況であります。この割合は今後もどんどんふえていくことが予想され、ますます夜の受診がふえてくることが予測されます。

 また、供給の面では、仙台医療圏では、今のところ小児科医師数全体では大きな変化はありません。ただ、小児科医の老齢化は着実に進んでいます。宮城県の場合、都市型の救急と地方の救急では全く体制が異なり、同一の議論はできません。もう地方では、仙台医療圏以外では、小児科専門医は数えるほどしかいません。地方では勤務医は激減しており、小児科常勤医師が不在の病院もふえています。その面では小児科医の偏在が際立っています。都市部でも病院勤務の小児科医は減っています。やはりここに大きな問題があると思われます。

 若手の医師や医学部の学生さんは、小児医療に非常に興味を持ち、モチベーション高く小児医療に入ってくるんですけれども、現場の余りの過酷な業務を見て、離れていく者も少なくありません。

 御存じのように、小児医療というのは、患者さんの数は季節による変動が大きく、採算性も悪いために、やはり経営を考えるとベッドを減らされる。さらに、小児科の医師も減らされ、逆にまた入院ができる病院もなくなってくるということが起こっています。

 数年前ですけれども、救急患者の仙台市立病院への一極集中を避けるために、厚労省の支援もあり、二次病院群輪番制を開始したんですけれども、最初参加した十一の二次輪番病院も現在八まで減ってきております。先ほども申しましたように、需給のバランスが崩れて勤務がきつくなり、ますます若い小児科医が減ってくるというこの悪循環を何とか打破しなければなりません。

 新臨床研修が始まり、研修医を全国から自由に集められるという反面、研修が終わってしまうと、また大きな都会の高次の病院でさらに専門性を追う若手医師が多くなり、東北地方として考えますと、小児科医が定着しないということも十分に考えられます。

 さて、我々はどうすればいいのでしょうか。

 言われているとおり、大規模な病院の集約化は避けられないと思います。初期から高次救急まで一カ所でできるセンター的病院にマンパワーを集約する。研修医の地元定着を進めるためにも、このような病院で後期研修プログラムを充実させる。救急医療と地域医療、先ほど強調したように、子育て支援まで含めた総合的な研修の場とし、さらに専門性を取得するためのプログラムを備えたシステムを構築する。集約化すればその弊害も出てくるわけですけれども、当然、周辺地域の医療の補てんも同時に考えていかなければなりません。

 ここで強調したいのは、先ほども出てきましたけれども、病院で働く勤務医の待遇改善ですね。すぐに医者はふやせないけれども、今一生懸命やっている人を燃え尽きさせないようにしたい。長時間労働、重症患者を扱う緊張、訴訟の多い現状を踏まえて、やはり早急に対応が必要かと思います。

 繰り返しになりますけれども、医師をふやし集約化するためには、それなりの時間がかかります。早急に現状を改善できなければ、まずは業務に対しそれなりの対価を支払うことが必要ではないでしょうか。診療報酬面でさらに検討していただければと思います。

 あとは、時間のかかることですけれども、医師の供給、移動をスムーズにするための具体的な制度の整備。現在でも、集約化は強調されていますが、特に公的病院の場合、人の移動は簡単にはできません。フレキシブルな雇用が可能になればと思います。例えば、当直勤務への開業医の参画によるオープン制や、休職中の医師などのパートタイム勤務のようなことが可能にならないと、特に東北地方のような小児科医自体が少ない地域では集約化も難しいと思います。

 仙台医療圏以外では、小児科医の絶対数が不足のために、小児科専門医以外の参画が必要となります。救急医療の質の保障のためには、IT技術を駆使した診療体制の支援の構築も必要となってくるでしょう。

 さて、小児救急医療と育児支援を分離しての医療の負担軽減は可能でしょうか。私は、現実には不可能と思います。ただ、病院前支援システムを充実させることで、ある程度の負担軽減は可能と思います。育児不安を軽減するための子育て支援のNPO団体の活動や、保育所を核とした育児支援の援助、急病や急な仕事の都合で育児が困難になったときの緊急支援、あるいは病後児保育の充実など、共働きの家族の支援体制整備も必要となってくると思います。

 小児医療、特に小児救急医療を充実させるためには、まず小児科医をふやすこと、これが解決されないと、システムもつくりようがありません。まず、勤務医が疲弊してやめてしまわないような緊急の職場環境整備が必要です。診療報酬が上がって病院の収入がふえても、働いている医師に配分する工夫がないと、現場の人間としては余りうれしくはありません。この悪循環を断ち切る最初のポイントが、やはりそれに見合ったペイだとは思います。

 小児救急医療自体は、若い力を引きつける十分な魅力はあると自負しております。あとは、医療資源を有効に利用できるような集約化を含めたシステムづくり、医療の地域格差解消のための情報システムの整備、病院前の子育て支援体制の充実などが緊急の課題となると思います。

 どうもありがとうございました。(拍手)

鴨下座長 ありがとうございました。

 次に、佐藤力君にお願いいたします。

佐藤力君 私は、国見町長で、組合立藤田病院の管理者をしております佐藤力と申します。どうぞよろしくお願いいたします。

 国見町は、福島県と宮城県の県境に位置する人口一万一千人弱の町です。

 公立藤田病院は、国見町、桑折町、旧梁川町の組合立病院で、昭和の合併の前の昭和二十八年に開設された病院で、一昨年に改築工事が完成して、ベッド数三百三十五床、二十一の診療科を持つ総合病院であります。

 公立藤田病院は、所在地が国見町にあり、田舎町でも病院があるということが、地域住民の健康の維持と福祉の向上、ひいては地域の発展に貢献してきた大きさははかり知れません。近くに病院があるということで、病気の軽いうちに治療を受けることができ大病になる人が少ないことから、国民健康保険料についても比較的低く抑えられてきました。病院の経営も数年前までは健全経営を維持してきました。しかし、近年の診療報酬のマイナス改定などさまざまな医療制度改正によって、地域住民の医療に対する不安は増大し、そして病院経営も非常に大変になってきております。

 厚生労働省は、急性期疾患は病院で、慢性期疾患は診療所でという役割分担による地域完結型の医療を目指しております。しかし、藤田病院には、入院患者の三倍以上の外来患者が毎日受診しております。

 なぜこのようになるのかといいますと、藤田病院のある国見町には、病院以外には診療所はたったの二軒だけだからです。したがって、地域住民は、慢性期疾患であろうと急性期患者であろうと、療養型から在宅診療まで、藤田病院を頼らざるを得ない状況にあります。

    〔座長退席、新井座長代理着席〕

 その結果、医師は朝七時前に出勤して、外来患者の診察前に入院患者の回診を行い、九時から午後二時ごろまで昼食も食べないで外来の診察、それから昼食をとり、その後は手術や入院患者の処置などで、毎日七時、八時まで勤務というのも珍しくありません。そこに、日直、当直、救急患者が入ってきます。このような状況が毎日続くわけですから、医師の労働条件は激務になってしまいます。

 最近、病院の勤務医が退職して開業することがブームのようになっておりますが、藤田病院も例外ではありません。

 藤田病院における昨年四月からの診療体制を振り返ってみますと、四月には皮膚科医が開業してしまい、現在は週一日だけの非常勤勤務医による診療となっています。九月には内科の二名の非常勤勤務医が開業し、十月にはさらに二名の常勤医が開業、退職してしまい、地域住民には大きな不安と動揺を与えました。

 ことし三月には、二人いた産婦人科医の一人が、年齢的に激務に耐えがたしという理由で、開業医の外来の診療のみというところに移ってしまいました。そこに県立大野病院の産婦人科医が逮捕されるという事件があり、総合病院でありながらお産を断らなければならない状況となってしまいました。

 これに大学制度の改革が追い打ちをかけました。すなわち、二年前に始まった新医師臨床研修制度と、ことしからの独立行政法人化です。医大の医師派遣能力が大きく低下してしまいました。藤田病院は、整形外科医が二年間で二名、泌尿器科医一名の派遣がなくなってしまいました。これからも医師の引き揚げが心配される状況にあります。その結果、病院は慢性的な医師不足の状態となり、医師の仕事量はさらにふえるという悪循環に陥ってしまいました。

 勤務医の労働が激務過ぎるということが勤務医が開業する一つの大きな理由でもありますから、病院の外来患者を他の診療所へ誘導しようとします。すると、町民から、我々の病院なのにほかに行けというのは何事だとしかられてしまいます。町長という立場は、町民の皆さんがいつでも健康で安心して暮らせるようにすることが務めですが、このような医療環境にあっては、その責務を果たすことが難しくなってきてしまいました。

 医療費抑制という観点からの医療制度改革は、私たち地方自治体にとっては、町民の健康悪化、医療費の増大、自治体病院の経営悪化の悪循環に陥るような気がしてなりません。

 病院経営についても、赤字になり、病院の管理者としては、町の一般会計からの繰り入れをお願いしたいとのどから手が出るほど言いたいところですが、町長の立場に立ちますと、三位一体の改革によって地方交付税が減少し、新たな繰り出しは大変困難な状態で、頭の痛い問題であります。

 今回の医療改正の中には、療養病床と介護病床の削減がうたわれておりますが、地方においては療養病床そのものが僅少であり、もし病床削減が現実化した場合には、行き先を失う患者が多数発生して大きな社会問題になると考えられます。特別養護老人ホームにおいては、当地方のすべての施設で入所待ちの待機者が多数おる状態であります。

 改正のもう一つの柱として、老人医療費の自己負担の増額が上げられておりますが、これも実施されたら大変なことになると考えられます。

 国見町においても、国民健康保険税の滞納者がふえてきております。国保税の現年度課税の収納率で見てみますと、平成九年度には九七・四%だったものが、平成十四年度に九六・三%、平成十七年度には九四・六%と、だんだん低下しています。

 都市部から見ればこれでも収納率はいい方だと思いますが、収納率の向上には大きな努力と苦労をしております。お金があって払わない人からは取りようがあるのですが、毎日の暮らしも容易でない方が大部分であります。そういう方には分納の約束をしてもらい、千円でも入れてもらうようにしております。

 このような方たちは国保税の支払いにも事欠いているわけですから、病気になって自己負担が高くなったらどうなるのでしょうか。病気になっても病院には行けない、そのうち重病になって、結局は医療費が大きくなり、自己負担分も支払うことができないという人が多数出てくるのではないでしょうか。

 医療制度改革につきましては、実態をよく見ていただいて、慎重に進めていただくことをお願いいたしまして、私の意見陳述を終わります。よろしくお願いします。(拍手)

    〔新井座長代理退席、座長着席〕

鴨下座長 ありがとうございました。

 以上で意見陳述者からの御意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

鴨下座長 これより委員からの質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。木原誠二君。

木原(誠)委員 自由民主党の木原誠二でございます。同僚議員がおりますけれども、代表して質問させていただきます。

 本日は、大変貴重な時間をありがとうございました。まずもって御礼を申し上げます。

 きょうは、さまざまな意見をちょうだいいたしました。特に印象深かったなと思いますことは、高谷先生そしてまた岡村先生から意見がございました、今の医療というものが医師の方々の献身的なサービスあるいは自己犠牲の上に立っているんだというところは、まさに共通の認識なのかな、こんなふうに思っている次第でございます。

 私も、実はイギリスに長くおりまして、イギリスの医療の崩壊過程というのをつぶさに見てまいりました。イギリスの場合、予算が切られると、お医者さんがむしろ病院を閉めてしまう、あるいは診療時間を短くしてしまう、こういったようなことが現実に起こっております。そういう意味では、日本の医療に従事される皆様の非常に高いモラルそしてまた献身的な活動ということに、本当に頭の下がる思いできょうは拝聴させていただきました。

 そしてまた、まさに今回の医療制度改革というのは国民が最も関心を持っている事柄でございます。その中で、我が党も、単にこの問題が財政の問題にとどまらない、やはり国民皆保険制度をしっかり堅持していくんだ、その中で安心で安全な医療を確保していく、そういう立場から今議論させていただいているわけでございます。

 そういう中で、今回、まさに現場の皆様の声を伺って、委員会の場でもいろいろ議論がございました。特に僻地あるいは幾つかの診療科、特に小児科あるいは産婦人科での医師不足の問題、まさにその現状というものを、きょう、よくお教えいただいた、こんなふうに感じているところでございます。

 ただ、きょうは、その中でも非常に明るい兆しもあるのかなと思ったことは、実は産婦人科というものについて、学生の印象は悪くないんだ、要するに、これは非常に有意義な仕事である、あるいは本来役立つ仕事であるという希望を大変強く持っていると。他方で、幡先生からお話がございましたけれども、若手医師がどんどん少なくなっているという現状もある。このギャップをどう埋めていくのかということが我々に課された課題かなというようなことで、きょう拝聴した次第でございます。

 そういう中で、国も、厚生労働省もこれまでさまざまな取り組みをしてきたんだろう、このように思っております。高谷先生から縦割りが過ぎるぞという話もございましたが、厚生省、今は厚生労働省になっておりますけれども、それから文科省あるいは総務省で、医師確保総合対策を十七年からやっておる。あるいは、今回の医療制度改革の中でも、都道府県において医療対策協議会をつくってしっかり議論していただいたらどうか、あるいはまた、医療計画を見直す中で医療資源を重点化あるいは分布していったらどうか、といったようなことを議論しているわけでございます。

 一つの方向性としては、やはり地域の実情をよくわかった皆様に、きょうは県の代表の方はいらしておりませんけれども、しっかりと取り組んでいただくということが一つの方向性で出ているのかな、こんなふうに思うわけです。

 恐縮でございますけれども、まず最初に高谷先生、岡村先生、幡先生、お三方に、そうはいってもやはり国として、医師、特に産婦人科あるいは小児科医師の不足を何らか埋めていくための取り組みが求められるんだろうと思いますけれども、もし第一点に上げるとすれば、何をまず国はやるべきかということについて御教示をいただきたい、このように思う次第でございます。

 そして、あわせてその中で、菅野会長から、若手医師に例えば二、三年僻地での医療従事を義務づける、まあ義務づけるとまではおっしゃいませんでしたけれども、そういったことも考えられるのではないかというような御意見もあったかというように思いますけれども、この点についてどのようにお考えになるかということをお伺いしたいなと思います。

 それからまた、岡村先生には、大変恐縮ですけれども、正当な評価がなされるべきだという御意見があったかというように思います。必ずしも収入にこだわらないんだ、やはり正当な評価が重要だということの御意見がございましたけれども、これをもう少し具体的に御教示いただければな、こんなように思います。

 まずお三方の御意見をよろしくお願いをいたします。

高谷雄三君 妙薬は我々医師も持っておりません。

 学生が何かを選ぶというのは自由裁量権がありまして、君は小児科をやりなさいとか産科をやりなさいという強制力はありませんので、いかに魅力のある科であるかという意識を上手に植えつけていく。私は精神科で催眠術をやるので、おまえは小児科をやれというふうに持っていってもいいんですが、これは集団催眠とか変な宗教の人たちが使う手ではいけないので、やはり本人に、それだけの魅力のある、そしてやりがいのある、生きがいのある、働きがいのある、そういう環境を整えてあげて、自分がやることは国民にとって大いに役に立っているというようなところを学生時代から植えつけて、そして臨床研修の前期または後期の中においてそういう経験を、症例をいっぱい見させてあげる。

 僕らのころはインターンというのがございまして、この研修制度が四年だとしますと、僕らの場合は一年です。その中で小児科を回ったのは二週間しかありませんが、医者になってみて、やはりあちこち、精神病院へ行っていても、内科も小児科も診させられるわけですね。

 そのときに、友達の中に小児科医がいれば、こういう患者さんが来たんだけれどもどうすればいい、いや、それはすぐ送った方がいいよ、今はこういう伝染性疾患がはやっているからこうすればいいよ、これをやれば治るよというような知識を教えてもらい、経験を積んでいくうちに、何か、精神科をやっていても小児科も内科も診られるようになった。眼科と耳鼻科だけは、婦人科もだめですね、それ以外ならば大体診られるようになってきたという経験を、医者になって四十年にもなればそれぐらいはわかるわけです。

 ただ、新卒の医学生にどれだけ動機づけするかといったら、やはりおもしろい、それから研修の間にこういう経験を積んだ、こういう経験を積んだということをどんどん教えていって、興味を持たせるというのも必要かなと思います。

 あとは、小児科のテレビの番組を見ましたけれども、先ほど村田先生がおっしゃっていましたけれども、三十六時間勤務は当たり前だと。ですから、労基法が守れないような我々の過酷な状況をなるべく解消しつつ、産科にも小児科にも、やはりやってみたいということを思わせるのも大事かと。

 お金は、新卒ではそんなに欲しい欲しいと思っているわけではないと僕は思うんですね。やはり生きがい、働きがい、そこのところの動機づけかなと思うんです。お答えになっているかどうかわかりませんけれども。

岡村州博君 二点あると思いますけれども、一つは、産婦人科医をふやすには一番の妙薬は何かというようなことだと思うんですけれども、妙薬は正直言ってないんですね。

 しかし、先ほど私申し上げましたとおり、産婦人科ですから、夜中に起こされるというのは当然と思って皆さん来ています。若い女性も、そういうことが産婦人科の診療業務の中にあるんだというようなことは、もう当然そのつもりで来ています。

 それでいながらどうしてやめてしまうのかとなると、女性もそうですし、男性もそうですし、だんだん家庭もあり何もあり、自分の生活、QOLですね、クオリティー・オブ・マイ・ライフといいますけれども、そういうものを考えるときに、やはり医師の余りにも過重な労働が家庭を全然顧みないようなことになってしまう、そんなことも大きな原因じゃないかなというふうに思いますので、今の若い医者のQOL、それを保つようなシステムをぜひつくっていただきたいということが一つです。

 あとは、正当な評価、これは非常に難しいと思います。私が言いましたとおり、正当な評価というのは今の時点でなかなかないので、やはり経済的な評価をせざるを得ないというふうに私は思っています。しかし、経済的評価ばかりでは、医学の進歩そのものはなかなかいかない。私、大学におりますので、やはり若い医師も新しい学問に対する興味というのが非常にあるわけです。そういうことの道をどんどんつけてあげるというようなことも大変大事なことかなと思います。

 特に今、大学で、大学病院そのものが独立行政法人化しまして、福島もそうですけれども、すべて経済原理の中で動いていきます。大学そのもの、大学病院も経営を担当しろというようなことになっておりますので、やはり研究なり教育なり、そういうものに対してかなりお金もかけていただきたい。経営のもとになりますと、今は昔と全然違いまして、そういういろいろな学問がおもしろいんだという道を教えることがなかなか、それが次のものになってきてしまう、二番目のものになってきてしまう。まず経営があって、その次に研究というものになってくる。

 そういう道をぜひつけていただいて、そういう道に進む方の評価ということも考えていただきたいというふうに思っております。

幡研一君 若手医師が産婦人科、小児科を志すような方策ですが、なかなか具体的には難しいと思われます。

 我々が医師になったころは、産婦人科を専攻する医師というのは非常に多うございまして、毎年大学の医局に十名近く入るようなところもたくさんございました。何が少なくしたかといいますと、一つは少子化です。少子化になって、結局それだけ収入が少なくなるということが一つかと思われます。

 もう一つは、医師と患者の間の信頼関係というのがなくなりまして、契約というか、お互いにというか、常に疑いの目を持って見るようなそういった関係、そのことからくる医療紛争の増加、また、少ないことが悪循環となりまして、厳しい労働環境ということで毛嫌いする。

 昨年からことしにかけて、日本産婦人科医会で、スーパーローテートをしている研修医にいろいろアンケート調査をして、今集計中で、千三百名ぐらいから返っているんですけれども、中間の集計では、産婦人科を専攻したいと答えた人が一〇%強に見られたんですね。ところが、実際にはそれほど入らない。

 どういう条件だったら入るかということを聞くと、やはり大きいのは、労働環境が一番なんです。それからもう一つは、医療紛争が多い、医事紛争が多いということが毛嫌いされているということが出てくるんですね。

 興味は持っているんです。興味は持ちましたかというと非常に興味は持っているんですけれども、実際、専攻するところになるとそういうことになってしまうということで、まず一つは、やはりマンパワーがふえなければ勤務条件はなかなかよくならないと思います。

 これは、一気に解決しようと思ったら、出産数が今の半分ぐらいになれば勤務条件はよくなるかもしれませんけれども、そういうわけにはいかないので、勤務条件は急にはよくならない。

 解決するとしたら、金銭的なことで多少バックアップするという程度だと思います。やはり無過失補償制度というのを早急につくっていただいて、お互いにぎくしゃくした関係を早期からなくすような、そういった対策をつくっていただきたい。それでそういう点においては安心して、産婦人科、特に周産期医を志すような若い医師がふえるように望んでおります。

 産婦人科になったから全部いわゆる出産を取り扱う医師になるわけではないんですね、半分以下ですから。産婦人科になればいいというものではないんですけれども、全体的に産婦人科の医師をふやすのは、その辺しか今のところは考えが出てきません。

 以上です。

菅野典雄君 多分、お医者さんでも先生でも、当然技術といいますか必要なんだろうと思うんですが、その前に、やはり人間性の研修というものが非常に大きいのではないか。先生でも、先生が好きだからその学科が好きになるということだって幾らでもあるわけでありますから。お医者さんなども、そういう意味で、何年か地方に来ていただいて、きっとそこですばらしい体験ができるだろう、こんなふうに思っているんです。ただ、義務化というのが果たしていいのかどうかというのは、私も疑問であります。

 そんなことであります。

木原(誠)委員 実は、いろいろ質問したいこともございますが、時間が来てしまいました。特に菅野会長には生活習慣病対策についていろいろお聞きしたかったんですけれども、時間が来てしまいました。きょういただいた貴重な御意見を踏まえながら、しっかりと審議をしてまいりたいと思いますし、夢のある医療制度改革になるようにしっかりとまた取り組んでいきたい、こんなように思っております。

 本日は、本当にありがとうございました。

鴨下座長 次に、福島豊君。

福島委員 公明党の福島豊です。

 本日は、参考人の皆様には大変貴重な御意見をお聞かせいただきまして、ありがとうございました。

 まず、先生は大学で教鞭をとっておられますので、岡村参考人にお聞きしたいんですが、今の医師不足が深刻化した理由の一つは、臨床研修制度がスタートして大学が医師を引き揚げている、ここがやはり一つ大きな影響があるんだと思うんです。臨床研修でどこでも選べますから、地方から都市ということで医師のシフトが起こっている。医局自体も医師を派遣する余裕もないし、そしてまた、派遣する能力というのは今まで医局にありましたけれども、今後も多分どんどん失われていくだろうと私は思うんです。

 ですから、医局制度が今まで僻地へ医師を派遣する機能を底支えした、それがだんだん衰退していく中で、臨床研修制度を前提としてどういう新しいシステムをつくるのか、このことが問われていると私は思うんですが、この点についての参考人の御意見をお聞きしたいと思います。

岡村州博君 私もまさにそのとおりだと思っております。

 以前は、派遣という言葉がいいかどうかわかりませんけれども、関連病院の中で、要するにそういう病院に医師を送って、そこでやってもらう。これは卒業してすぐあるわけですね。今は二年間の研修制度ができましたので、学生が研修病院を今度は選ぶわけです。その中では、特に東北地方とそれから都会のいわゆるブランド病院と言われるような病院と比べた場合に、やはりどうしてもそういうブランド病院の方に行ってしまう。ですから、ある意味では少し東北地方そのものが、東北に限らず、地方の方でそういう研修病院をつくることに関してややおくれたのかなというふうに思っております。

 ですから、今後は国なりなんなりが、例えば、拠点にもそうですけれども、研修をさせるような病院をしっかりとつくっていく、その制度を地方でもつくっていくということが非常にこれから問題になるんじゃないかなというふうに思っております。

 大学にいますと、まさに大学から医師を送るということはその医師の人生を変えることになります。東北地方になりますと、関連が非常に多いので生活する場所が全く変わってしまいます。そういうことがなかなか厳しい状況になってきています。医師も人間ですから、そこの都会なりなんなりに子供の教育その他でいたいというようなことがありますので、どうしても、例えば単身で派遣するなんということはできません。ですから、そういうようなことで、まず医師を派遣するということが無理になってきている。医師が少ないということもありますが。

 それからもう一つは、先ほど申しましたとおり、大学もほかの病院と同じような競争社会になってまいりましたので、十分なよい医療をするために大学にも医師を確保しなくちゃいけない、それがいわゆる引き揚げというふうに言っている部分じゃないかなというふうに私は思います。大学に依存した医師の地域医療に対する派遣制度というものが完全に壊れてきている。これからはほかのシステムをつくって、病院なり先ほど言いましたけれども病院管理事業者等が、ある程度のものを地域の研修病院も含めて考えていただいて、そこでいかにいい病院、地域医療をやって、医者がそこに来るようなことを考えていただく。

 もう大学自体も力がなくなりましたので、大学に依存する医師派遣制度というのは全く今後は難しいことになってくるんじゃないかなというふうに私は思っております。

福島委員 どうもありがとうございます。

 その際、地方それぞれの事情があるので、やはり県単位でどうするかという知恵を絞ってもらわなきゃいけないし、先ほど高谷参考人からありましたように、地方枠をふやせ、こう言っても文部科学省はノーだと。もっとこれはやはり裁量を与えないとだめだと私は思うんです。

 一つは、地方には公立病院がたくさん、たくさんと言ったら語弊があるのかもしれませんけれども、ある程度統廃合をしていかなきゃいけないんじゃないか。私も駆け出しのころ、兵庫の田舎の公立病院で働いておりましたけれども、町なり市なり、公立病院組合というのをつくってやっていたんですけれども、それぞればらばらにあるんですね。これは、これからの時代は僕は続いていかないんじゃないか、ある程度集約していくということがまずないと、産婦人科の問題もそうですけれども。

 ただ、なかなかそれは、先ほど佐藤参考人もありましたけれども、地元住民の反対が結構強かったりするんですね。ここはやはり県単位ぐらいでかなり英断を持ってやっていただく必要があるのではないかというふうに思っているんです。

 もう一つは、今、地方独立行政法人というのがありますね。県立病院なんかは地方独立行政法人になっていいわけですね。そういうところにそれぞれの地域の公立病院が全部参加するような形にして、一種のプールをある程度大きくして、特定の地域の地方の病院だけにずっと勤めなきゃいけないということでなくて、ローテートが中でできるような受け皿をつくった方がいいんじゃないかな、私はそんなふうに思っているんですけれども、高谷参考人からちょっとそのあたりの御意見をお聞きできればと思います。

高谷雄三君 お配りしました参考資料の中に、県立病院の赤字問題が福島県でも大変問題になっておりまして、統廃合を昨年の三月に知事に諮問しまして、その後私も委員に加えてもらって、県立病院の統合と。

 会津はなぜ県立病院が五つもあるかというと、昔は非常に不便な場所だったわけですね、東北本線から離れていますから。容保公が会津藩で、本当は福島県というのは会津県でよかったんですけれども、それが福島県になりまして、会津地方が明治政府に疎まれて、結果的には過疎地というか置き去りにされてしまったということによって、県民の健康を守るために県立病院が県内で一番多いわけです。でも、これは無駄だということになります。

 それから、築五十年近いのが多いわけですから、これを新しく決める。会津若松市が隣町の河東と北会津と合併したんですが、やはり場所選定で怒られまして、おら方に持ってこねえということなんですね。喜多方ラーメンで有名な喜多方の方から怒られているんですけれども。会津のへそは、結局は、竹田病院、中央病院という千ベッドずつの二大総合病院がありますので、やはりすみ分けが必要である。ですから、この科はこの病院、この科はこの病院、それぞれの特色を出していただいてという形での県立統合病院をつくろうということで、あと五年以上かかると思いますけれども、その五年の間に、木原委員も、この医療改革の方向性がまた変わるかもしれない、それを見据えながら中身を考えていかなきゃいけないと。

 県のお偉いさんの方から、お金は心配するな、いい病院をつくってくれと言われるんですけれども、実際は、公営企業法というんですか、あれで赤字だ赤字だと言っている。でも、私はいつもおかしいと思うんですね。何で医療だけが公営企業法なんだと。命を守るのは警察官も消防もみんな同じ。教育にお金がかかって赤字とは言わないんですね、警察官をふやせということで赤字とは言わないわけですよ。何で人の命を助けながら赤字だといって我々の働く意欲をそいでしまうのか。県立病院にいる先生はほかの病院にどんどん引き抜かれていますよ、やっていられないと。職員はやる気がなくてサービスが低下、アメニティーはない、何かあるとすぐ改善しろ改善しろという命令が来る、それを何とかしなきゃいけないで、こんなのやっていられないよなという陰口が飛ぶ。

 だから、そこら辺は、医療には赤字があったって人の命は、ここの一番奥、檜枝岐村、つまり尾瀬に近い方ですけれども、そこに住んでいる人だって同じ医療を受ける権利があるわけですよ。ところが、余りにも距離的な時間的な制約があって、いい医療は受けられないという格差はもちろん既にあるわけですね、健康格差が。

 そういうことから考えれば、福島委員のおっしゃるような、この地域には何が必要か、足りないのは、というのは、赤字部門は私立病院はなるべくならば減らしたいわけですよ。そういうところを公営でやってくれと言ったら、赤字になるからといって今度また怒られるわけですね。マスコミにいつもたたかれるんですね、県立病院はことしは何億円の赤字、累積赤字が百五十億円とか。あれをマスコミは出さないでほしいですね。そうでないとやる気がなくなっちゃうし、県民税を何で無駄遣いしているんだということにしかならない。

 なるべくならばいい医療を、東京でも受けられる医療が、知事にも言うんですけれども、福島県はがんセンターがないじゃないか、何とかセンターがないよ、循環器センターがないよ、恥ずかしいと思わないのと言ったら、恥ずかしいと言っていました。だから、統合病院にセンター的なそういうものを持ってくるのは大いに賛成だと思います。ただ、なくなった地域の首長さんからは怒られています、ここに書いてありますけれども。そういうわけなんです。

福島委員 なくなる地域もあるわけですね。ですから、県全体としてどうバランスをとるのか、こういうコンセンサスづくりが極めて大事なんだろうと思うんですね。人口減少社会に日本は入りましたから、今後、特に地方は人口減少が進みますね。過疎化がますます進んでいく。町づくりでも、今やコンパクトシティーをつくらないとなかなかうまくいかない。病院も、郊外につくるのじゃなくて町の真ん中につくって利便性を高めるということが必要だ、町づくりの課題とも密接に関係していると思うんです。

 先ほど、高谷参考人は道路も大事だという話だったんですが、ヘリコプターとかITとか、小児救急もそうですけれども、そういうのをやはりやった方がいい。ヘリにしても一年大体一億ぐらいですか、道路をつくるよりその方が多分安いかもしれぬと私は思うんですけれども、このあたりは高谷参考人はどういうふうに思いますか。

高谷雄三君 来年ドクターヘリが導入される予定になっております。それからITによる遠隔医療ですか、これは、栃木に近い方の県立南会津病院とこちらの県立病院または竹田総合病院との間では、ITによる診断、検査結果、それから治療の指示とかというのは行われてはおります。

 ただ、ここは豪雪地帯であり、一定の条件でないと雪の間はヘリを飛ばしてくれないんですよ。防災ヘリと自衛隊のヘリは使おうと思えば何とか使えるという会議での発言ですけれども、大雨、風、そういうときにはだめなんですね。ですから、そこら辺は、この地域においては、浜通りの方だったら天候がいい方です、でも、新潟に近い山合いだということではヘリがなかなか飛ばないという現実があります。

福島委員 菅野参考人にお聞きしたいんですが、予防に一生懸命取り組んでおられると。昨年、介護保険法を改正したときに、介護予防とはけしからぬ、こういう意見もあったんですけれども、予防の取り組みがどういう実績を上げているのか、もう少し御説明いただければと思います。

菅野典雄君 まだ数字としては特別出てきませんけれども、先ほどもお話ししましたように、できるだけやはり介護を受けない。介護料を払っていくわけですけれども、私などは、介護料を払ったので使わないと損だというのは大変な間違いだろう、どんどんと払って、使わないで長生きをして一週間でころりというのが一番いいんだという話をさせていただく。そんな話も、先ほどのミニデイサービス、全区を網羅をしていますので、そういう中で話していきますと、かなりいろいろな意識改革といいますか、わかっていただけるのではないかなという気がします。

 やはり一番大切なことは、考え方を、今までとは違う時代になっていますから、あるいは違う制度も出ていますから、そういうのをしっかりと、私らのようなそういう純農村なり山村ですと知っていただくということが大切ではないかということで、数字としては出てきませんけれども、間違いなくそういう意識改革は一歩一歩進んでいるな、こんな思いであります。

 以上です。

福島委員 どうもありがとうございました。

鴨下座長 次に、仙谷由人君。

仙谷委員 民主党の仙谷由人でございます。

 きょうは、東北地方そして福島県の実情を忌憚なく御意見をちょうだいいたしました。また、現場の実態も率直に披瀝をいただいたと思います。改めて、質問をさせていただく前に感謝を申し上げます。どうもありがとうございました。

 お話を伺っておりまして、厚生労働大臣は、私どもの質問に対して、医師不足ではない、単なる偏在である、こういうことを最近強調されているわけであります。しかし、国民といいますか医療サービスを受ける方から見ると、偏在であろうが何であろうが、そこに病棟が閉鎖され、産科、小児科がなくなり、お医者さんがいなければ、これは何のために健康保険料を払っているのかわからない、こういう不満が強くなるのは当たり前でございます。

 きょうのお話を伺っていますと、小児科、産科はとりわけ労働環境がひどい、つまり、人間以下の労働環境で働くことを強制させている。さらに、女性のお医者さんが多くなる、このこと自体は日本社会の未来にとって大変いいことだと私は思いますけれども、女性のお医者さんがちゃんと働ける労働環境、労働条件になっていない、ここが最大の問題であるというお話であったように思います。

 そこで、村田先生、幡先生、岡村先生、まずはお三方にお伺いするわけですが、私どもは、小児科あるいは産科の問題も、基本的には二交代制か三交代制、そういう勤務の仕組みをつくれるようにすることがまず一番だと。それについては、それを保障できるように、診療報酬の方でカウントするか、産科の場合には、診療報酬という概念が約七、八割の正常分娩の方についてはないわけでありますから、分娩料を大幅に引き上げるか、それとも、先ほど菅野公述人でございましたか、子育て政策の一環として、ここは大々的に公的な助成を入れるということになるのか。

 いずれにしても、現在の診療報酬あるいは現在の仕組みの中では、これは、先ほど岡村先生がおっしゃった、悪循環の泥沼の中でますます縮小均衡に入らざるを得ないということになるんだろうと思いますが、今私が申し上げましたような、勤務時間、労働時間体系だけは二交代にするとか三交代にする、そのための仕組みを何らかの形でつくる、ここが最低限のまず出発点であるような気がするんですが、それについて、村田先生、幡先生、岡村先生の順番でお話をまず伺いたいと存じます。

村田祐二君 まさに仙谷先生おっしゃるとおりだと思います。私も、シフト制については今後十分検討していくべきものだと思いますし、実際、日本ではほかの病院で行われているところもありますので、情報を収集しているところなんですけれども、ただ、そのシフトを組むに当たって、やはりこまが足りない、すぐには組めないだろうというところが現状です。

 シフトに関しては、今のこういう現状で、検討しましたけれども、ちょっとすぐには無理じゃないかなというところで、財政的な負担ができて、将来的にはもうこの方向しかないんじゃないかなと思っております。

幡研一君 仙谷委員のおっしゃるとおり、二交代、三交代制の勤務体制がつくれれば非常にすばらしいことだと考えております。

 ただ、現在のマンパワーでそれをつくるのはちょっと難しいかなと。今でも多分、週四十時間どころか八十時間以上の勤務状況だと思うので、現在の倍の人数がいて、やっと二交代ができるかなということだと考えております。圧倒的にマンパワーが足りないということだと思います。

岡村州博君 同じことの繰り返しになるかと思いますけれども、二交代制、三交代制にするには余りにもマンパワーが足りない。女性医師の問題でも、ジョブシェアリングだとかフレックスタイムだとかいろいろ考えていますけれども、そういうふうなシステムを導入したときに、それをカバーする、要するに、もともとのマンパワーがいませんので、それをカバーする力がないというふうに考えておりますので、二交代制、三交代制で勤務するということは、頭で考えるのは簡単なんですけれども、現実は本当に非常に難しい。

 特に、産婦人科の場合は、患者さんとの関係が一対一の非常にそういう関係にありますので、それを二交代制、三交代制にしたときに、医師と患者さんとのいろいろな関係が本当にうまくいくのかどうかということも非常に疑問に思います。ちょっと今は、現実的にはなかなか難しいんじゃないかなというふうに思っております。

仙谷委員 私の地元で、辛うじてそういう改革をして維持されている日赤の病院があるものですから、お伺いをしたわけでございます。

 高谷公述人にお話をお伺いいたしたいと存じます。

 きょうお出しいただいた資料で、先ほどお読みにならなかったところで、四枚目でありますが、「財政状態に応じた医療費抑制を打ち出している内閣府の言うが儘では、日本の医療は滅び廃れるだけです。充分な労働力を確保出来る医療費設定なくしては、労働基準法を遵守出来る筈がありません。国民の命を守る医療費に応分の配備を求めます。」それから、次のページには、十二の真ん中ぐらいですが、「我々は騙され続けております。皆さん此処を重点的に取り上げて頂きませんと、何十年後の推計値に踊らされ・結果的に馬鹿にされ・誤った情報操作に踊らされて今日があるのに気付いて下さい。」というくだりがございます。

 私どもも、ほとんど同じような感覚でこの法案審議に臨んでいるわけでございますが、ただ一点、先ほどどなたか、啓蒙のお話が出されました。つまり、国民に対する啓蒙といいましょうか、情報伝達がうまくいっていないんじゃないかというお話だと思います。

 私、医療をめぐって、勤務医の方々がこれほどの労働環境、労働条件の中でもだえ苦しんで、バーンアウトして、開業医の方に、逃散という言葉を使っている人がおりますが、そういうふうになっている現実にそれほど自覚がなかったわけでありますけれども、そういうところまで現在来ている。

 他方、これは国民あるいはマスコミの見方の中に、そうはいっても、開業医の方々は割といい生活をなさっておるんじゃないか、収入もいいんじゃないか、私は、こういう見方は相当広く存在をしておって、そこに医療改革の難しさがあるのではないか。

 つまり、小泉さんは、日医を真っ向から敵に回して、診療報酬を下げることで何か英雄気取りになっておるわけでありますけれども、ここが相当問題なのではないかと思うんですが、高谷参考人、この今申し上げた、開業医さん、勤務医の問題、そして高谷さんが今お書きになっておるような事柄について、御所見をいただければ幸いでございます。

高谷雄三君 勤務医の過酷な状況を御理解いただきましてありがとうございます。

 病院の経営がこんなに厳しくなるとは思わずに、いろいろな病院の経営者がベッド数をただふやしてふやして、出来高払いということで、その結果、病床過剰地域が全国ほとんどになってきましたね。そういう意味で、人件費もどんどん上がってきます。そこに今度は医療費削減となってきて、いい人材を置くためには経営努力をしなければ維持できない。そこで、開業させないために勤務医にある程度条件をというのは、労働条件じゃないんですよね。何かというと、やはり高収入というところを求める人もいるわけですね。腕のいい人はやはり病院も放したくない。そうしないと患者さんが集まってこない。集まってこないと収入が上がらない。

 今回のマイナス三・一六で、二つの病院の理事長に聞きまして、四億五千万と、もう一カ所が六億五千万減収だそうです。これは相当なる減収ですから、今度はどこにしわ寄せが行くか心配になりますね。そういうような中で、労働基準法で四十時間というようなことを言われてしまって、では、サービス残業分よこせと言われたら、絶対に経営者は払えませんよね。

 そこで、厚生省は内閣府の言うとおりにしなきゃいけないので医療費を抑える。だけれども、厚労省の中の同じ労働部門では基準法を守れと。ちょっと矛盾しているわけですね。どうやって経営していけばいいんですか。マンパワーもありますよね。そこら辺のところがおかしい。やはりそれに見合った財政支援がなければ労働基準法を守れないということが一つです。

 推計値と言いましたのは、総医療費が百何十兆円という根拠が僕はあやふやだと。この間、課長さんお二人、うちに説明に見えられましたけれども、平成七年からの五年間の統計を使っていると。日本医師会は平成十二年からのを使っている。では、何で厚生省は平成十二年からのを使わないんだと言いたいわけですよね。何で平成七年からの五年をいつまでもやっているのかと。絶対、日本医師会との基準値にずれがあるんですね、直っていないわけですよ。

 当然、二年度ごとに二年前の結果が出るわけですから、それに基づいた推計値を使うべきではないか、日本医師会と同じソフトでいきましょうと僕は言うわけです。ところが、うちの基準値は間違っていないと厚労省の方は言うんですよ。だから、それはおかしいよと言いたくなるわけですね。そこのところにメスを入れてほしいと言っているわけです。そうしないと、何で二十五年、五十年後に何十兆円と違った数値になるんでしょう。

 それから、傾斜配分なんでしょうけれども、マイナス三・一六、その前のマイナス二・七%。そのとおりじゃないんですよ、もっとマイナスなんですよ。我々の収入はマイナスです。ふえているのはどこでしょうね。やはり病院でしょうかね。病院志向というのは高いですから。

 それと、調剤薬局、調剤薬局と、外圧に負けて調剤薬局をつくり過ぎまして、歯科医療よりかは一・何倍高いんじゃないですか。あそこだって、薬を仕入れて、ただそれを上乗せして売っているんですよね。医者が何で薬価差、薬価差とかいって怒られて、八百屋が大根一本八十円で仕入れてきて百円で売っていて、何で資本主義社会で悪いんでしょうね。そういうところに、やはり僕らの医療費というのが、統制経済ですからそこで抑えられて、何か薬屋さんの方がもうかっていますよね、メーカーの方が。だから、あっちにメスを入れるべきであって、医者が何かいい高収入、開業医がいい高収入を得ていると言いますけれども、あれはまた基準値が違うんですね。

 私みたいに、開業して二十三年たつのに、まだ借金が残っているんですよ。それでは何で残っているかというと、一番最初に、姉歯さんに頼まなかったので、いい設計料とかセメントを使ったものですから高くついたというのもありますけれども、医療費の収入が少ないわけですね、精神科なんというのは。ですから、返そうにも返せない。卸問屋からもしょっちゅう、毎月女房が、頭を下げながら、来月まで待ってくださいという昔の掛け取りみたいなものですね、大みそかの、そういうのをやっています。

 それで、開業医の高収入というのは、ベンツ、BMWに乗っているとかそういうのは、はやっている先生、患者さんの多い先生、それから科が少ない先生の、その地域の先生であって、全部が全部じゃないということです。この間、統計が出ていましたよね、日医FAXニュースで。大体が七十何万という数字だったと思います。

 これは国税局の人がいないから言いますけれども、あれはやはりちょっと数字のマジックがありまして、そういうぐあいに設定しないと借金が返せない仕組みになっているんです。ですから、高収入に設定して、その中からみんな銀行とか日本国に納めているわけですよ。ただし、所得はそういうぐあいにしないと借金が返せないので、ことしから個人情報で出ませんけれども、高額納税者に入っているわけです。あれは数字のマジックなんです。実際はすっからかんのかんなんですよ。そういうことです。

 中にはいい人もいますよ。それは一生懸命、二十四時間、三十六時間働いている人もいますよ。というようなことでよろしいでしょうか。

仙谷委員 どうもありがとうございました。

 菅野参考人それから佐藤参考人にもお伺いしたかったんですが、質問の持ち時間が終了いたしましたので、終わります。

 どうもありがとうございました。

鴨下座長 次に、高橋千鶴子君。

高橋委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 きょうは、六人の参考人の皆さん、本当に貴重な御意見をありがとうございました。

 先ほど来お話を聞いていますと、まず時間が足りないということを非常にせっぱ詰まって受けとめておりましたので、早速質問をさせていただきます。よろしくお願いいたします。

 最初に村田参考人に伺いたいと思うんですけれども、小児救急の現場のお話がございました。多分、仙台以外では小児救急の受け皿が非常に少なくて、それ以外ではなかなかないんだというお話もこれあり、同時にまた、輪番制の体制も壊れてきているというお話があったと思うんです。ただ、今国がやろうとしているのは、二十四時間救急の体制がとれる拠点病院と、いわゆる後方の連携病院を、県境も含めてもっと広域で集約化をしようとしておりますよね。

 私は、やはり仙台は一極集中という特徴があって、周辺の医療圏の医師不足が仙台の救急に対しても非常に重大な影響を与えているということがあると思うのと、そういう中で、今のような県境越えも含めた医療圏構想というのが現実的なのかどうかと思っているんですけれども、御意見を伺いたいと思います。

村田祐二君 医師の偏在に関しては、救急診療システムをつくる上で、仙台医療圏と医療圏以外では全く別々の構想があります。

 その前に、県境を越えたもう少し広い救急に関しては、小児救急医療に関してはちょっと当てはまらないんじゃないかなと思うのは、九割以上が初期救急にかかわる、先ほどお話ししたような育児支援にも絡むようなものなので、特殊な先天性の心臓病とか新生児医療に関しては県境を越えた患者さんの搬送もあるんですけれども、小児救急医療全体に関しては県境を越えたところは非現実的じゃないかなと思います。

 それで、今一言ここでお話ししておきたかったのは、県単位、先ほどもお話が出ましたけれども、宮城県としてどういう小児救急医療体制をつくっていくか、それは都市型あるいは地方型の救急体制なんです。

 それは、先ほど仙谷先生がおっしゃったようにシフトができると一番いいんですけれども、そういうところはちょっとこまが足りないので、ある一定の期間は激務もしようがないだろう。

 しようがないというのは、ネガティブなことではないんですけれども、若い時期、何でも吸収できる時期というのは、これはちょっと流れに反しますけれども、三十二時間勤務しても、一、二時間寝てまたやろうと。こういう何でも吸収できるときに一生懸命やってもらう。ただ、その先が見えないから、私はいつまでこれをやるんだとか、あと数年やるともう死んでしまうんじゃないかなどということがある。

 ここは、研修システムも変わって、新しい研修システムはすごくいい面もあるんですよね。地域をどんどん売り出そう、宮城県に若い後期研修医の人を集めるような体制をつくろうということで、私もその中の一人に入っているんですけれども。大学は、人事権、よく、飛ばされたという言葉があったんですけれども、大学に当然入ってもらうんですけれども、医師会とか公的病院のスタッフが何人か集まって、宮城県にどんどん小児科の若い先生を呼ぶような長期展望を示した形でのリクルート。

 例えば、最初は大きな市立病院の小児科とかで一年間、二年間研修を積んだら、次は激務でも一人でデシジョンメーキング、一人で患者さんを診て一人で診断をつける。これは非常に大事な時期なので、そこで激務であっても、それは後方病院のそれこそITとかヘリ搬送も含めた形の情報交換で何とかクリアして、そこを乗り切れば、後は、一年間は自分の自由な研究ができるとか留学できるとか、そういうところまで含めて、その後はまた戻ってきて、中堅クラスになって、そこでまた後輩を指導する。

 その屋根がわら方式で若い人がどんどん入ってくるような宮城県としての小児救急医療体制をつくっていかなきゃならないんじゃないかなということで、今動いているところです。

 ちょっとポイントがずれたような形になったかと思うんですけれども、今、県を越えたというような形ではなくて、宮城県として、それも仙台一極集中なんです。中核病院はあるわけなんですけれども、サテライトのところの病院も、全体的な十年計画で若い小児科の医師をトレーニングしてひとり立ちさせるような中で、地方の病院にも順番に、デシジョンメーキングの場として診療に当たる。飛ばされたのではなくて必ず戻ってきて、その分の臨床経験を積んだ、そこから出た疑問でリサーチに行く、そこで大学がかかわってくるという形の医療システムをつくるような形で少しずつ動いているのが現状です。

高橋委員 ありがとうございました。

 先の見通しがあってこその広域構想ということかなと。非現実的とおっしゃいましたので、私も非常に同じ意見でございます。

 それで、佐藤参考人に伺いたいんですけれども、この間、非常に話題になっている女性医師の問題で、公立藤田病院のホームページの中で、病院として福島県内の女性医師のアンケートをとったということで紹介をされておりました。その中身と、そこから見えてくる課題ということをぜひ紹介していただきたいんです。

佐藤力君 先ほども医師不足のことについて発言させていただいたんですけれども、藤田病院の医師不足というのは、これは何とかしなくてはならないというふうなお話が管理者会の中でも出ております。

 差し当たってどうするんだということになりますと、医大の方から派遣してもらえないということの中ではどうしようもないという状況に今あります。そういう中で、病院としてどうしたらいいかということのお話がなされまして、今、医大の卒業生の三〇%から四〇%は女性医である、そういうふうなお話になりまして、では、女医に病院に来てもらうような方法は何かないのか、そういうことで院内保育所とかあるいは院内託児所のようなものが必要ではないかという話が出ました。

 そういうふうな中で、病院におきまして、福島県内の病院の女性の勤務医の方にアンケートを依頼いたしました。県内の女性の勤務医の五十五名の皆さんに藤田病院からお願いをしましてアンケートに答えていただきました。

 その結果、十三項目にわたっていろいろやっているんですけれども、五十五名の中で十九名の方が子供がいるというお答えでした。その女性医の皆さんの中で、現在子供がいて仕事と育児で悩んでおりますかということにつきましては、悩んでいるという答えをしたのが八三%ございました。保育施設は院内にあった方がよいかということでは、このことも八三%の方があった方がいいという答えをしています。保育施設の場所は施設内かあるいはどちらでもいいかというので、施設内という方が六一%ということです。

 そのほか、何歳まで預けたいかということでは、五歳から六歳までが二八%で、学童までというのが六六%でしたので、全体の九〇%以上が預けたいというふうなことです。保育時間は、二十四時間対応というのが二六%、七時半から夜の八時ごろまでというのが五八%というような回答がありました。

 こういうふうなことを見てみますと、女性の医師の皆さんは、働きやすい場所、働きやすい病院、そういうふうな施設、それから、女性医が働く、そのことに対して理解をしてもらえるような場所であれば子育てをしながらも働くことができる、そういうふうなことが見えてきたような気がします。そういうことについて取り組みたいと思っておりますけれども、やはりこれはいろいろ財政的なこともありますので、こういうふうな問題に対して国の支援制度とかそういうものがあれば大変ありがたいなというふうに思っているところです。

高橋委員 ありがとうございました。

 女性医師の働きやすい状況について随分この間も委員会でも話題になっておりましたので、行政としてできることというのを、ぜひ参考にさせていただいて提案させていただきたいと思っております。

 次に、福島県立大野病院の事件の影響というのが本当に全国的にはかり知れなくて、また産科医を目指す医師やあるいは一人医師体制の引き揚げなど、深刻な影響を受けていると思います。私は、同時に、福島県内の産科医の状況がいつどこで同じ問題が起こってもおかしくない、危うい状況にあるということを浮き彫りにしたのではないかと思っております。

 特に、先ほど会津の状況のお話を伺いましたけれども、地理的に非常に大変だというのは想像にかたくないわけで、現実の医療制限というショッキングな事態も起こっているという報告がされたと思います。

 また、同時に、幡先生の発表にありましたように、助産師の不足数が厚労省の見通しと医師会の調査では非常にギャップがある、ここら辺のところからも、何か一定できることがないのかなということも考えさせていただきました。

 そこで、幡参考人と高谷参考人に伺いたいと思うんですが、今、県と医師会が協力して取り組んでいこうとしていること、あるいは、その上でやはり行政にやってもらわなきゃいけない課題ということについて、現状も含めながら紹介していただきたいと思います。

幡研一君 県と医師会が協力しているというか、福島県の周産期医療の状況ですけれども、福島県においては、平成十四年の春、四月に、福島県周産期医療システムが稼働されております。現在、総合周産期センターが一施設、地域周産期母子医療センターが五施設、周産期医療協力病院が五施設ございます。

 そのような中で、昨年の母体搬送件数は四百九十七名、月平均四十一名が母体搬送されております。そのうち地域外搬送が百四件、その中には県外から搬送されたものが四件ございました。ですから、約四分の一は地域外搬送ということです。福島県は、御存じのように、全国で三番目の広大な土地を有します。浜通り、中通り、会津地区とありまして、間に山脈がありまして、山を越えていかなくちゃいけない、地理的に非常に不便な状況にあるわけですが、そういった地域外搬送が百四件、四分の一に見られるということでございます。

 そういう総合・地域・協力の母子医療センターに収容された新生児の数は九百五十七名でありまして、そのうち、一般病院、産科診療所、いわゆる院外で出生してそういうところに運ばれた人が百九十六名、またそういう施設間、総合・地域・協力施設間での搬送が五十四名、残りは院内出生ということで、大部分は母体搬送されるようになってきて非常に喜ばしいことですが、母体搬送にしても、地域外に搬送されるということは本人並びにその家族にとっても決して喜ばしいことではない。安全の上では仕方がないということではあるが、それが究極の目的ではないと考えております。仕方なくそういう体制をとっているというところでございます。

 また、産婦人科医師の状況ですが、平成十七年、産婦人科の県内の医師数は二百二十二名です。人口十万対産婦人科医師数は七・七人で、これは平成十四年の調査で全国三十三位です。その中で、お産を扱っているというか、産科に携わっている医師数は百十五名、大学にいる医師二十名を引きますと、平成十六年、福島県の出生が一万八千三百人ですので、県内の医師は、年間約百八十八例の分娩を平均で扱っているということになります。

 医療機関の状況については、県内に産婦人科のある病院は四十施設ございます。その中で産婦人科一人勤務のところが二十四です。二人勤務が七、三人以上が九と、一人勤務のところが圧倒的に多い状況です。二十四の一人勤務の病院の中で分娩を扱っているのは十五です。ですから、十五の病院では一人勤務で出産を扱っているという状況です。

 診療所に関しては九十六ありますが、その中で分娩を扱っているのは三十九施設です。九十六中一人でやっている診療所が八十六件で、その中で三十二件が分娩を扱っているという状況で、二人以上の勤務のところが診療所で十件ありまして、そのうち七件で出産を扱っているという状況です。

 県と一体になってやっているということは、周産期医療システムにのっとって母体搬送なり新生児搬送をやっているというところで、現実的にはまだ今のところはございません。集約化が今動き始めているというところでございます。

高谷雄三君 幡参考人は三月三十一日まで県医師会の母子保健の方の担当常任理事でしたので、県医師会としてどうのこうのは、幡先生がおっしゃったことがすべてでございます。

 行政がすることとかという話がありましたけれども、してほしいことはあるんですけれども、予算がない、財政困難であるからできないというだけの返事しか、それしか返ってこないような気がします。

 以上でございます。

高橋委員 ありがとうございました。

 時間がなくなって、菅野参考人、岡村参考人にも聞きたいことがあったんですが、申しわけありません。本当に地域医療を守るために今深刻な状況だということがうかがえたと思うんですが、そのために、お金がないという話で終わらないで、何とか国としても果たせる役割を果たしていくように私たちも頑張っていきたいと思います。

 本当にありがとうございました。

鴨下座長 以上で委員からの質疑は終了いたしました。

 この際、一言ごあいさつを申し上げます。

 意見陳述者の皆様方には、御多忙の中、長時間にわたりまして貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。ここに厚く御礼を申し上げます。

 また、この会議開催のため格段の御協力をいただきました関係各位に対しましては、深く御礼を申し上げたいと存じます。

 これにて散会いたします。

    午後三時十七分散会


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