衆議院

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第3号 平成18年10月27日(金曜日)

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平成十八年十月二十七日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 櫻田 義孝君

   理事 伊藤信太郎君 理事 大村 秀章君

   理事 鴨下 一郎君 理事 宮澤 洋一君

   理事 三井 辨雄君 理事 山井 和則君

   理事 福島  豊君

      あかま二郎君    新井 悦二君

      井上 信治君    石崎  岳君

      越智 隆雄君    加藤 勝信君

      川条 志嘉君    木原 誠二君

      木村 義雄君    岸田 文雄君

      清水鴻一郎君    菅原 一秀君

      杉村 太蔵君    鈴木 淳司君

      平  将明君    高鳥 修一君

      戸井田とおる君    冨岡  勉君

      西川 京子君    林   潤君

      原田 令嗣君    福岡 資麿君

      松野 博一君    松本  純君

      松本 文明君    松本 洋平君

      御法川信英君  やまぎわ大志郎君

      若宮 健嗣君    大島  敦君

      岡本 充功君    菊田真紀子君

      郡  和子君    園田 康博君

      田名部匡代君    田村 謙治君

      高井 美穂君    筒井 信隆君

      西村智奈美君    細川 律夫君

      松本 大輔君    柚木 道義君

      坂口  力君    古屋 範子君

      高橋千鶴子君    阿部 知子君

      糸川 正晃君

    …………………………………

   厚生労働大臣       柳澤 伯夫君

   厚生労働副大臣      石田 祝稔君

   厚生労働副大臣      武見 敬三君

   厚生労働大臣政務官    菅原 一秀君

   厚生労働大臣政務官    松野 博一君

   政府参考人

   (総務省大臣官房審議官) 榮畑  潤君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           辰野 裕一君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房長) 太田 俊明君

   政府参考人

   (厚生労働省医政局長)  松谷有希雄君

   政府参考人

   (厚生労働省健康局長)  外口  崇君

   政府参考人

   (厚生労働省労働基準局長)            青木  豊君

   政府参考人

   (厚生労働省雇用均等・児童家庭局長)       大谷 泰夫君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局長)           中村 秀一君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長)    中谷比呂樹君

   政府参考人

   (厚生労働省老健局長)  阿曽沼慎司君

   政府参考人

   (厚生労働省保険局長)  水田 邦雄君

   政府参考人

   (厚生労働省年金局長)  渡辺 芳樹君

   政府参考人

   (厚生労働省政策統括官) 薄井 康紀君

   政府参考人

   (厚生労働省政策統括官) 金子 順一君

   政府参考人

   (社会保険庁長官)    村瀬 清司君

   政府参考人

   (社会保険庁総務部長)  清水美智夫君

   政府参考人

   (社会保険庁運営部長)  青柳 親房君

   厚生労働委員会専門員   榊原 志俊君

    ―――――――――――――

委員の異動

十月二十六日

 辞任         補欠選任

  松浪 健太君     松本 洋平君

同月二十七日

 辞任         補欠選任

  石崎  岳君     鈴木 淳司君

  木原 誠二君     平  将明君

  木村 義雄君     やまぎわ大志郎君

  高鳥 修一君     あかま二郎君

  松本 洋平君     若宮 健嗣君

  内山  晃君     高井 美穂君

  菊田真紀子君     田村 謙治君

  園田 康博君     西村智奈美君

同日

 辞任         補欠選任

  あかま二郎君     越智 隆雄君

  鈴木 淳司君     石崎  岳君

  平  将明君     木原 誠二君

  やまぎわ大志郎君   木村 義雄君

  若宮 健嗣君     松本 文明君

  田村 謙治君     菊田真紀子君

  高井 美穂君     岡本 充功君

  西村智奈美君     松本 大輔君

同日

 辞任         補欠選任

  越智 隆雄君     高鳥 修一君

  松本 文明君     松本 洋平君

  岡本 充功君     内山  晃君

  松本 大輔君     園田 康博君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出、第百六十四回国会閣法第七六号)

 厚生労働関係の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――

櫻田委員長 これより会議を開きます。

 厚生労働関係の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として総務省大臣官房審議官榮畑潤君、文部科学省大臣官房審議官辰野裕一君、厚生労働省大臣官房長太田俊明君、医政局長松谷有希雄君、健康局長外口崇君、労働基準局長青木豊君、雇用均等・児童家庭局長大谷泰夫君、社会・援護局長中村秀一君、社会・援護局障害保健福祉部長中谷比呂樹君、老健局長阿曽沼慎司君、保険局長水田邦雄君、年金局長渡辺芳樹君、政策統括官薄井康紀君、政策統括官金子順一君、社会保険庁長官村瀬清司君、社会保険庁総務部長清水美智夫君、社会保険庁運営部長青柳親房君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

櫻田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

櫻田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。福島豊君。

福島委員 おはようございます。両副大臣におかれましては、さまざまな課題に積極的に取り組みいただいていることに心から敬意と御礼を表する次第でございます。

 最近いろいろとメディアで取り上げられました問題についてお尋ねをしたいと思っております。

 まず初めに、社会保険庁に関連した事柄であります。

 現在、社会保険庁の解体的な改革をどう進めるのかということについて、政府、とりわけ与党におきましてさまざまな議論が行われております。そうした問題については本日はお尋ねは差し控えたいと思いますが、先日、日経新聞で、「年金記録ミス二万四千件 照会者の二割 社保庁、ずさん管理」、こういう見出しで、年金の記録にミスがあった、しかも、それも大変膨大な数に上るミスがあったという報道がなされておりました。

 これは、現在といいますか、直近に発覚したということではなくて、年金制度にさまざまな変遷があったということからどうしても生じてこざるを得ないような側面があるわけでありまして、以前に報告されていたことだろうというふうにも思います。しかし、大体二割がミスなのか、こういう文字が躍りますと、国民の立場からすると、社会保険庁というのは、不正免除等々だけではなくて、記録もまともにできないのか、こういう誤解を招くわけでありまして、このあたりの点については事実関係をはっきりするということが必要だと思っております。

 この点についてまず御説明いただきたいと思います。

青柳政府参考人 社会保険庁におきます年金の記録についてのお尋ねがございました。

 社会保険庁におきましては、ただいまのお尋ねの中にもございましたが、先般の国民年金の保険料免除等に関する不適正な事務処理に際しまして、国民の皆様に対して年金記録に対する不安を与えたのではないかというふうに考えまして、これに対応するために、現在、年金記録相談の特別強化体制という体制をとらせていただいております。

 具体的には、年金記録に不安あるいは疑問を持たれる方々に対しまして、御本人の年金記録の確認あるいは疑問への回答が迅速に対応できるようにということで、社会保険事務所に年金記録相談の専用窓口を置かせていただいております。さらに、年金加入記録の有無等について社会保険事務所が調査、確認をいたしました後にも、御本人の申し立てによりまして、社会保険庁の本庁において記録訂正の要否について事実関係の調査を行い、体系的に整理した上で記録訂正の要否を判断するということにさせていただいております。

 報道にありました点は、この特別強化体制のもとで、これは八月二十一日から対応させていただいておりますが、九月末日までの間におよそ十五万件の相談がございました。そのうち、その場でいわば年金記録と御自身の記憶が一致したものが約八割の十二万件でございましたが、その場で年金記録と御自身の記憶が一致をしなかった残りの二割、これが九月末日までで申しますと二万六千件あるわけでございますが、他の年金手帳の記号番号で記録がなされていたというようなもの、あるいは、結婚されて姓が変わられたんですが、記録上は旧姓であったというようなもの、あるいはその他、振り仮名の誤りで最初のときに一致がしなかった、しかしそれの誤りが判明したものということがございまして、九八%のものは社会保険事務所において確認済みというふうになっております。

 また、記録が不一致であるということから改めて調査をしてくれという申し出がありました件数は、こうした事務所でのやりとりのほかに、インターネット等で直接に記録を確認していただくこともできるようになっていますので、そういう方々の分を含めまして約一万件ございますけれども、これらのおよそ七割については既に回答済みということになっております。

 報道でございました二割というのは、先ほども申し上げましたように、年金相談にいらしたときに、その場で直ちに年金記録と御自身の記憶が一致しなかったというものでございますが、繰り返し申し上げましたように、調べ、社会保険事務所において確認をした結果、そのうちの九八%は確認済みであるという点を改めて繰り返させていただきたいと存じます。

福島委員 九八%確認済みである、このことが大切だというふうに思っております。

 ただ、日経新聞の記事にはこのように書いてあるんですね。「社保庁は仮にこうしたミスがあっても、受給手続きなどの際に不自然な空白期間は本人に確認している」「ただ、本人が記録漏れに気づかない例もあるとみられ、放置すれば年金の支給額が減る可能性がある。」ここを一番国民は心配するんだと思うんですね。

 社会保険庁の記録ミスによって自分の年金が減るんじゃないか、それが、マックスでいうと二割みたいな書き方になっておりますので、ここのところは、裁定の際にさまざまな記録を照合してきちっと整理されるというのが基本的な実態だというふうに思いますけれども、この点についてどのように対応されるのか、実態はどうなのか、ちょっと説明いただけますか。

青柳政府参考人 裁定の際にどのようになっているかというお尋ねが重ねてございました。

 これは、年金受給権の発生する直前、現在では五十八歳という時点でございますが、この時点におきまして、保管しております私どものその方々の記録を全部お送りをいたしまして、そのお送りをいたしました記録を御本人にまずは必ず確認をしていただく、確認をしていただいたことを踏まえて最終的に年金の裁定を行うということになっておりますので、今回のように、御自身の方から確認をしてくれというふうに求めのあった場合以外にも、御本人がそういった求めをされない場合であっても、必ず年金受給前に御確認を私どもの方から求めさせていただいているという点を御説明させていただきたいと存じます。

福島委員 どうもありがとうございます。事実関係、年金制度、なかなか難しいですから、一つ一つきちっと確認をしておかなければいけないということで質問いたしました。

 いずれにしましても、今後こういった記録ミスが生じないようにしなければいけない、そしてまた国民の皆様にもしっかりと説明責任を果たしていかなきゃいけない、このように思うわけでありますけれども、政府としてどういう決意で臨まれるのか、副大臣にお尋ねしたいと思います。

石田副大臣 福島委員にお答えを申し上げたいと思います。

 今運営部長からもお答えしましたけれども、年金の記録というのは基本的には年金制度の信頼の基礎、こういうことであります。それで、御自身の記憶と記録を一致させる、こういう作業は私はどうしてもやらなきゃいけないというふうに思っております。

 今までも事前通知をやってまいりましたけれども、さらにこれからは、五十八歳ということで今までやっていましたけれども、もうちょっと早い段階で御自身に、ねんきん定期便、こういう形で確認もしてもらおう。そして、年金受給権という観点からしますと、どうしても今は二十五年という最低年限が要りますので、三十五歳段階で一度送る。これは、考えてみたら、五十八歳のときに今のように見て、四十年近いものを確認するというのは、なかなか御自身の記憶とも一致しませんので、三十五歳段階でまず一度見ていただこう、こういう形で、年金の記録に対する不安というものをぜひ払拭していきたい、こういうふうに考えております。

福島委員 できるだけ若いうちからということだろうと思いますけれども、しっかりとお願いをいたしたいと思います。

 引き続いて、児童虐待の話についてお尋ねをしたいと思います。

 先般、三歳児の長男のお子さんでございますけれども、餓死をさせたということで、その父親と内縁の妻が逮捕されたわけであります。テレビ等でさまざまな報道がなされる、それを見るにつけ、また聞くにつけ、大変悲惨な、またかわいそうな事例だな、事態だなと私も痛感をいたしております。なぜ防ぐことができなかったのか、こういうことに思いをはせる必要があると思います。

 警察が検挙した児童虐待件数は、本年の上半期だけで百二十件にも上るということでございます。児童虐待防止法ができましたけれども、引き続き増加の傾向に歯どめがかかっていない、こういうことが実態ではないかというふうに思います。

 こうした事態に対して政府としてどのように対応をしてきたのか、そしてまた今回の事例はなぜ防ぐことができなかったのか、この点について御見解をお聞きしたいと思います。

武見副大臣 今回の件に関しましては、児童相談所がかかわっていたにもかかわらず、こうした虐待を防止できなかったというのは、これは大変に残念なことであったというふうに考えております。

 御指摘のとおり、厚生労働省、虐待による重大事件の発生を防止するために、立入調査などにおいて警察との連携を図る観点から、九月末に警察庁と協議の上で通知を発出するということなど、取り組みを実は進めておりました。

 ただ、今回の事案では、姉が保護されるなどハイリスク家庭であったのに、きめ細かな対応がなされておりませんでした。それから、主任児童委員から情報提供があったにもかかわらず、目視による子供の安全確認がなされなかった。すなわち、その子供との面会をしておりませんでした。こうした報道がなされておりますけれども、そもそも児童相談所において虐待があるとの認識が薄かったというふうなことも実は聞いております。こうした問題点はやはりきちんと確認をしておく必要があると思います。

 そこで、こうした児童相談所が積極的に介入しなかったことなど、今回の事件の問題点については、京都府において早急に検証作業を行っていくと聞いております。

 厚生労働省としても、担当官及び専門家を派遣して現地調査を行い、本事案を含めて児童相談所が関与したケースについて、児童虐待等要保護事例の検証に関する専門委員会の場において検討し、児童相談所の運営などのマニュアルについて見直すなど、再発防止に努めてまいりたいと思っております。

 ちょうど今度の月曜ですが、十月三十日に京都府で児童虐待検証委員会というのが発足して、その会合が開かれるということになっておりますので、ここに私どもの方から担当官及び専門家を派遣して参加して、ともにその検討に当たるということをすることになっております。この場合、特に担当の児童相談員の対応のよしあし、そういう個人の問題と、それからあと、それぞれの担当者が大変多くのケースを抱えて制度上問題があるかどうかとか、こういった観点などを含めて検討させていただく、こういうことになると思います。

福島委員 児童虐待防止法の制定、またその改正を通じて、法的にはさまざまな整備が進んできたというのは事実だと思います。しかしながら、いまだにこうした事例が繰り返される。

 徹底して、今回の事例について、なぜそうなったのかという検証をしていただきたいと同時に、それを踏まえてどうするのか。言ってみれば、児童相談所の機能というのが、現場においてやはりうまく機能していない、働いていない。それは、個人の責任に帰するということではなくて、システムの問題だ。児相というもののシステムをどう変えていくのか、こういう事件が起こらないようにシステムをどう変えるのか、こういう結論を導くということが大事だろうというふうに私は思っています。

 児童虐待防止法を再改正すべきだ、こういう御指摘もメディアの論説等にはあります。また、埼玉県では、通報から四十八時間以内に安否を確認させるという規則、こういうものを定めている自治体もあるというふうに報道されております。こうした児相の運営についてどのような見直しをしていくのかということも含め、そしてまた法改正の必要性も含め、御見解をお聞きできればと思います。

武見副大臣 児童虐待防止法の改正につきましては、平成十六年の改正法の附則におきまして、施行後三年以内に、立入調査を実効的に行うための方策、親権の喪失等の制度のあり方について、この法律の施行状況等を勘案して検討が加えられ、その結果に基づいて必要な措置が講ぜられるものというふうにされております。

 ただ、立入調査ということになりますと、いわゆる憲法上の住居の不可侵との関係をいかに整備するかという極めて大きな課題が残されております。

 それから、親権の喪失等の問題というのは、親の方が、子供が非常に危険な状態に陥っているにもかかわらず、行政の介入を認めないというようなケース、現状でそういうケースがあった場合には家裁の手続をとらなければなりませんが、それに大変時間がかかります。そうするとそのリスクがさらに深まるというような問題にどう対処するかという課題になりますが、これらも課題として実は残っております。

 このために、現在、厚生労働省において、改正法施行後の立入調査等の状況について、自治体に対して調査を行うとともに、有識者からヒアリングなどを進めております。来年は改正法が施行され三年を迎えることになるんですが、この児童虐待防止法は議員立法でございます。したがって、見直しについては、こうした施行状況分析を行いながら、議員の先生方の御意見も伺ってまいりたいと思っております。

福島委員 公明党におきましても、法改正そしてまた再発予防ということを視野に入れて、検討のためのプロジェクトチームを発足させていただきました。しっかりと目的を達するように頑張っていきたいというふうに思っております。

 次に、引き続いて障害児保育の件についてお尋ねをしたいと思います。

 先日、東大和市で青木鈴花ちゃん、これは、たんの吸引が必要であるということで市立の保育園の入園が認められなかったということに対して裁判が起こされ、十月二十五日に、障害を理由に一律に保育園への入園を認めないことは許されない、こういう判決で入園が認められたわけであります。テレビで拝見すると大変しっかりしたかわいらしいお子さんで、本当によかったな、こういうふうに思っているわけであります。

 障害児保育、国もこの拡大のためにさまざまに取り組みを進めてきていただきました。現状どうなっているのかということについてお尋ねをしたいと思います。

 そして、その上で、一定の医療ケアが必要なケースについてどのように対応すべきか、これは一義的には自治体の判断であるということになるわけでありますけれども、しかしながら、こうした裁判によらないと解決できないということが繰り返されるという事態も、一方では憂慮すべきことであろうというふうに私は思っております。

 特に、たんの吸引などの医療行為について、それが医療行為であるということによって現場においてはさまざまな困難がある。それをどう解決するのか、もっと別の職種の人にもこれは認めた方がいいんじゃないか、こういう検討をこの数年間、厚生労働省もしてきたわけでありまして、それぞれの自治体がより適切な判断ができるように国が指導すべきではないか、こういうふうにも思うわけであります。

 こうした一連の事柄について、政府の見解をお聞きしたいと思います。

大谷政府参考人 障害児保育の現状についてのお尋ねでございますが、平成十七年度におきまして、七千三百七カ所の保育所で一万六百六十五人の障害児の方々の受け入れが行われており、この十年間で受け入れ児童数それから施設数ともに一・六倍強となるなど、障害児の受け入れは全国的に実施されるようになってきております。

 障害児の受け入れにつきましては、平成十五年度に必要な保育士の加配の経費につきまして一般財源化を図ったところでございまして、保育の実施責任を有する市町村において、児童一人一人の障害の程度や種類あるいは受け入れ施設の状況等を総合的に勘案して、適切に今御判断いただいているものと考えております。

 厚生労働省におきましても、障害児を受け入れるためのバリアフリー等を行う事業や障害児保育を担当する保育士の資質向上を図るための研修、こういった施策を実施しているところでありますが、今回の事件の反省に立ちまして、国といたしましても、各市町村における障害児の受け入れの拡充に向けて、地域の実情あるいはその医療の必要などケースケースをよく判断して、実情に応じた柔軟な取り組みを展開していただけるよう理解を求めてまいりたいと考えております。

福島委員 ぜひしっかりとやっていただきたいと思います。

 特に、拡大をしてきていると。多分、私、それぞれの地域でいろいろな工夫をされているんじゃないかなと思います。私の子供も障害児でありますが、保育士さんは、専門的な、どういうかかわり方をしたらいいのかということで何回か発達障害支援センターの方に足を運んでいただいて、勉強もしていただきました。そういうようなことも含め、こういう取り組みをしているよ、ああいう取り組みがあるよ、こういうようなことをある程度共有するということが、こういう子は受け入れられない、そういう予断を持った判断を変えるためにはそれが一番私はいいんじゃないかなと思うんですね。やはりそういう具体的な事例を収集して紹介できるような、そういうことも御検討いただければなというふうに思います。

 次に、療養病床、介護の問題についてお尋ねをします。

 二十五日に日本医師会の調査報告が公表されました。この療養病床の見直しについて、現時点で断行すれば四万人近い患者が退院後に行き場のない介護難民になる、退院後に入所する施設不足や在宅サービスが未整備である、早急に受け入れ体制を整備すべきだ、こういうことが報道され、また公表されておりました。四割も、四万人も介護難民になるんだ、大変だ、こういう話になるわけでありますけれども、要は、このプロセスをどのように進めていくのかということなんだろうというふうに思います。

 先日、私も高知県に行ってまいりました。本当に、現場の県も含め、そしてまた医療関係団体も含め、どうしたらいいのかということについて必死になって知恵を絞っているというのが現状だと思います。何よりも大切なことは、一人一人の患者さん、高齢者の方、この方々に不安のない道筋をきちっと示すということなんだろうと思いますし、その責任がある。改革は必要であるけれども、その改革の中で、お一人お一人の人は自分がどうなるのか、これが一番大事ですから、そこに不安を与えてはいけないというふうに思うわけであります。

 この点について、政府としてきちっとやります、こういう方向でやります、この御決意をぜひお示しいただきたいと思います。

石田副大臣 福島委員におかれましては、先ほどお話もありましたが、高知県にも行っていただいて、現実の現場にも足を運んでいただいて、精力的に研究していただいていることに感謝を申し上げたいと思います。

 それで、日本医師会が介護難民という言葉を使われていますけれども、これは、私はいささかどうかなと思うところでございます。

 長期にわたる療養を必要とする患者のための療養病床については、医師の対応がほとんど必要がない、こういう方々もいらっしゃるのは私は事実だろうというふうに思います。ですから、これからは、医療の必要性の高い人については今までどおり医療保険で対応する、しかし、必要性の低い人については、いわゆる療養病床を六年の間に老人保健施設等に転換していただいて、その受け皿にする。

 そういう中で、やはり一番大事なのは、お一人お一人に心配を与えない、不安を感じさせない、こういうことでありますから、その点ではしっかりと取り組んでまいりたいと思いますし、六年間の転換の中でこれをスムーズにやれるようにいろいろと過渡期の緩和措置も設けておりますので、しっかりと取り組んでまいりたいというふうに思っております。

 それで、委員が高知においでいただいた際、私も同行させていただきましたが、ある病院に行きますと、昭和の終わりから入院をしている人がいる、こういう方も現実にいらっしゃいました。しかし、昭和の終わりから入院しているから、長いからもういいだろうということではもちろんないわけですので、それぞれ個人個人が不安のないように制度としてしっかり対応していく、これは全力を挙げてやっていきたいと思っております。

福島委員 日医もいろいろと現場の調査をして、さまざまな御意見があります。しっかりとその点も政府として受けとめていただいて、頑張っていただきたいというふうに要請をしたいと思います。

 次に、先日、みのもんたさんの番組で、夫が妻を殺すとき、こういうことで取り上げられておりましたけれども、毎月のように夫による妻の殺害、しかも、それも介護の疲れによってそういう事件が起こっているという報道がなされておりました。老老介護によって悲劇がある。妻が認知症になる、夫が介護する、夫がどんどんどんどん介護疲れをする。介護というのは究極の家事で、そもそも家事を余りやったことのない夫にとっては、それが二重にも三重にも負担となって感じられて追い詰められていく、こういう構図があるんじゃないかというふうに思います。

 その中で、介護保険というサービスが一体本当にどう使われていたのか、こういう御指摘がありました。私も、こうして繰り返してこういう事件が起こりますと、一つ一つの事例において、介護保険サービスというのは本当にどういうふうに役に立っているんだろうかと。使っていたんだろうか、使っていなかったんだろうか、仮に使っていたとすれば何が足りなかったのか、こういうことについて検証するということが必要だろうというふうに思っています。

 もちろん、介護保険がなければ今まで以上に悲惨な事態になっているだろうというふうに私は思いますので、介護保険の果たす役割というのは極めて大きいと思いますが、しかしながら、その中でこうした事例が引き続いておりますので、政府としても調査そしてまた適切な対応をとるべきだろうと思いますが、この点について御見解をお示しいただきたいと思います。

阿曽沼政府参考人 お答えを申し上げます。

 介護者が要介護の肉親を手にかけるという大変痛ましい事件でございまして、私どもとしても大変心を痛めております。

 厚生労働省といたしましては、新聞などに掲載されました事例につきましては、家族の状況、家庭の状況、あるいは介護保険サービスの利用状況などを可能な限り自治体から情報収集するというふうに努めておりまして、十八年の一月、ことしの一月から今まででもう二十七件ぐらい殺人に至ったようなケースがございます。殺人に至るまでにはそれぞれのケースでさまざまな背景とか事情があろうと思っておりますが、分析をいたしておりますけれども、画一的な対策ではなかなか対応が難しいと思っております。

 しかし、こういう事件は未然に防止をしていかなきゃならないということでございますので、各地域で、行政あるいはケアマネジャー、さらには介護サービスの事業者、それからまた民生委員の方々、また近隣の住民の方々などによりますネットワークをきちっとして、早期にそういう方々の家族を支援していくということが必要ではないかというふうに考えております。

福島委員 今政府参考人から御説明がありましたように、制度だけですべてが救えるかというとそうではない。制度とその制度を利用する人をつなぐインターフェースのところの接続が非常に大事だ、そこには地域コミュニティーの果たす役割というのは極めて大きいと思います。こうした点については、それぞれの介護保険制度の運営者であるところの自治体にも十分留意をいただくということが必要だろうと思いますし、また御指導をしていただければというふうに思っております。

 本日、非常に時間がタイトな日程ですので、幾つか質問は省略させていただきまして、障害者自立支援法について一点だけ触れておきたいというふうに思います。

 先日も障害者当事者の五団体の方が公明党にもお越しいただきまして、いろいろと御要請をいただきました。今までも繰り返し御要請をいただき、それぞれに政府に対して御要望申し上げ、具体的な対応も進めてきていただいているところだというふうに思っております。その上で、なおかつ、また御配慮をいただきたいということで幾つか要請がありました。

 本日は若干御紹介をしたいと思いますが、全国脊髄損傷者連合会の方からはこういった御指摘がありました。

 重度訪問介護での外出が、通年かつ長期を除く一日の範囲というふうに告示でされていて、これは支援費制度のときの告示だそうでございますけれども、こうした規定があると、職業訓練等で繰り返し外出をするときにはこれが使えないじゃないか、こういった御指摘がありました。それからまた、重度訪問介護サービスにおいて、報酬単価の設定から事業者の経営が厳しくなっている、こういう御指摘もありました。また、ヘルパー制度、例えば福祉大学のあるようなところでは、自治体から離れた大学で学ぶ人もいる、そういうことを考えたときに居住地特例というのはやはり要るんじゃないか、こういう御指摘もありました。

 いろいろと御指摘がありまして、ただ、現時点で政府としてこうしますというふうになかなか言えない側面もあるということはよくわかっておりますので、御指摘をさせていただいて、そして一定の時間の中でしっかりと考えていただきたい、こういう要請をしたいと思います。

 ただ、一点御答弁いただきたいのは、障害者自立支援法の審議の中でさまざまな附帯決議がつけられました。それは、今後、障害者福祉サービスというものをどうしていくのか、基盤を整備する、そしてまた地域間の格差をなくしていく、これがまず自立支援法の入り口だと思います。そして、就労支援をもっと拡大していく、お一人お一人の方にみずから働いた対価として所得をふやしてもらう、そして所得保障ということはやはりやるね、こういう一連の流れというのが必要だ、こういうことが附帯決議の中に盛り込まれた考え方だと思うんです。

 自立支援法というのは入り口であって、これを入り口としてどういうふうに障害福祉サービスというものをもっともっと大きな体制にしていくのか。今、よく言われていることは、実はいろいろな個別の問題が指摘をされ、それにどう対応するのかということに終始をしているために、逆にそういうビジョンが見えなくなっていて、そういったビジョンについて、どこが考え、そしてまた障害者の方々に発信をするのか、こういうことが見えなくなっているというふうに指摘をされております。

 この点については、個別の問題に対応すると同時に、そういう太い大きな流れを明確にするということも大事でございますので、この点についての政府の御決意をお聞きしたいと思います。

石田副大臣 この問題につきましては、あくまでも厚生労働省が全省挙げて対応して継続的に取り組んでいく、こういうことが一番大事なことだろうというふうに思っております。

 ですから、まさしく障害者が自立をするということは、例えば、収入の面からいえば、障害基礎年金を一つのベースとして、その上にどれだけ自分で稼げるか、そしてその稼いだもので自立をしていく。これが私は地域で生きていくということだろうと思いますので、そういう点も含めまして、しっかりと全省挙げて対応してまいりたい、こう考えております。

福島委員 以上で終わります。どうもありがとうございました。

櫻田委員長 次に、筒井信隆君。

筒井委員 民主党の筒井信隆でございます。

 三十分しか時間ありませんので、柳澤大臣の就任を心からお祝いしながら、直ちに質問に入っていきたいと思います。

 年金の積立金についてでございますが、もう御存じのとおり、厚生年金が百三十八兆円、国家公務員共済が約九兆円、地方公務員共済が三十九兆円、私学共済が三兆円余り、国民年金が十兆円ぐらい、合計すると二百兆円ぐらいの積立金になっているわけでございまして、この多くが市場で運用され、あるいは、さらにその運用の率が多くなるという状況でございまして、世界的に見ても最大の、第一位の年金ファンドになっているわけでございます。それも、第二位の国と比べてちょっと上だというんじゃなくて、第二位の国と比べて四倍ぐらいの超弩級の年金ファンド。

 まず、そういう認識が厚生労働省に、もちろん前からあると思うんですが、そういう実情についてどう考えるか、それをお聞かせいただきたいと思います。

柳澤国務大臣 今、筒井委員から、厚生年金それから各共済年金、さらに国民年金の積立金の規模について、トータルしたところ非常に巨額なものになっておる、この運用を考えたときにこれをどう評価すべきか、こういうお話がございました。

 これについては、筒井委員もつとに御承知のとおり、従前は財政投融資に預託をするというようなことが大きな部分を占めておりましたが、それが徐々に引き揚げられるということの中で、独自の運用をしていかなければならない、そういう位置づけの変更もありまして、こういった問題にしっかり対応していくということは非常に大事なことだと私どもも思っております。

 ただ、一つには、先般の年金改正のときに、この積立金が一定の機能を持つということに位置づけられまして、定性的には、そういうことの中で、年金制度が全体として安定的なものになるためにこの積立金は非常に大きな役割を演ずるということになりました。

 それからまた、現実の運用はどうかということになりますと、運用については運用委員会というものが現在設置されておりまして、基本的にリスクを回避する、非常に大事なファンドでございますから、リスクを回避して安定的に運用するということになっております。

 具体的に言いますと、運用の仕方、投資の仕方にはポジティブな運用とパッシブの運用というのが市場でよく言われるわけでございますけれども、パッシブというのは、自分自身が相場というか市場を形成していくということではなくて、市場が形成したものを受けとめてそれを反映するような運用をする、大ざっぱに言ってこういうことだと言ってよろしいかと思いますけれども、それに徹して安定的な運用を図っていく、こういうことになっておりまして、新しい位置づけのもとで今後ともしっかりとこれを維持してまいりたい、このように考えている次第でございます。

筒井委員 今お答えいただいた部分についてはさらにちょっとお聞きしたいんですが、その前に、私が最初にお聞きしたかったのは、金融の専門家としての大臣に、市場で年金ファンドがこれだけ巨大なものがあることについては特に問題はないのか。どういうふうにお考えになるか。年金の立場からではなくて市場としての立場からどうなんだという点を、もしできたらお答えいただきたいという質問でございます。

柳澤国務大臣 ちょっと固有名詞が混乱しまして、失礼しました。

 しばしば、厚生年金基金の方で、いろいろ物申す株主というような立場での発言が紙上に載ったりするわけでございまして、ああいうように、どこの基金も、株の投資者というような立場ですと非常に大きな発言力を持つというようなことは、どこの国の市場でもあるわけでございます。

 そういう意味で、これだけの大きなものがこれから、ある意味で市場志向を持つ基金としてあるということであれば、それは市場に大きな影響を与えるじゃないかという筒井委員からの御質疑かと思うんですけれども、先ほど申しましたように、パッシブ運用に徹していくということが基本でございますから、市場としては、そういうものを織り込んでそれぞれのいろいろな金融のインストルメントの相場が形成されていくということでございますので、そういうものとして市場は受けとめて今後ともいくんだろう。

 ポジティブに市場の相場を形づくっていくというようなことになりますと、これは非常に大きな影響を与えますけれども、あくまでもパッシブの投資運用に徹していく、こういうことであれば、そういうものとして市場は受けとめて、織り込んで市場のいろいろな相場が形成されていくんだろう、このように考えている次第です。

筒井委員 それで、年金の立場からでございますが、これだけ巨額の積立金が、合計すると二百兆円に及ぶ、これが賦課方式のもとで積み立てられてきたこと自体が、私はやはり今までの政策の怠慢もあると思っています。これだけ巨額のものが積み立てられて、具体的には上げませんが、結構無駄遣いがいっぱいされてきた。

 そして、今度、ようやく有限均衡方式という方式が採用されて、二〇〇五年から二一〇〇年まで九十五年間かけて徐々に縮小していく。年間で四兆円とか三兆円とか縮小していって、最後は大体一年間の年金給付額に相当する額が残るというふうな形のものに今度決まったわけでございまして、しかし、これは二〇〇五年からなんですよね。もう世界最大級の年金ファンドはでき上がって、いろいろな無駄遣いがいっぱい指摘されて、それからようやくそういうふうな方向性が決まった。非常に遅いんだろうと思うんです。

 そして、今度、会計検査院が、年金積立金に関しても検査をしてその報告を出しました。それによりますと、過去十年間に最大ピークに使用した実績の額でこの積立金を割った場合に、厚生年金だと四百何年間、国民年金だと百九十何年間の積立金がある、こういう報告を、指摘をいたしました。

 もちろん有限均衡方式で二一〇〇年までの間にだんだん徐々に縮小するという方向はもう決まった後に、わざわざ会計検査院が、過去十年間で一番ピークで使用した実績の額で割ったら、これは四百年間以上ももつ、あるいは国民年金だったら二百年ぐらいもつという報告を、そういう指摘をした趣旨は、あそこははっきり言っていませんが、わざわざ今言う必要はないんだけれども、やはりこの処理が遅過ぎた、こういう指摘なんだろうと私は思うんですが、その点についてはどう考えられますか。

渡辺政府参考人 恐れ入ります、事実関係等を含みますので、若干整理をさせていただきたいと思います。

 私どもの厚生年金の積立金で見まして、給付と比べますと約四・五年分ということでございますので、その対比で見ますと諸外国にも幾つか例があるようには承知しておりますが、巨額の年金資金であることは事実でございます。

 今御指摘の、会計検査院につきまして、平成十六年度までの過去十年間の積立金の取り崩しと申しますか活用額が約三千億ぐらい、十六年度で三千億出たということをとらえて、割り算して四百年ということでございますが、先般、この夏でございますけれども、十七年度の厚生年金の決算も示させていただいておりますが、単年度の事情等ございますけれども、単年度で六兆円余りの積立金取り崩しをして賄っている。

 先生御承知のとおり、財政再計算の中でも、四兆円内外の毎年の取り崩しがどうしても必要となってくるだろうという見通しのもとに、全体の年金の給付と負担の枠組みが維持できますよう、負担面、給付面、そして積立金活用ということで、今先生御指摘のありました有限均衡方式、二一〇〇年の時点で、今の価格でいうと十六兆円ぐらいのファンド、今から見ますと十分の一ぐらいの感じでございますが、そういうものにしていくということでございますので、これまでの経緯をすべて引き、そして、将来を安定的に運営しなければならない年金制度としてはやむを得ない規模のものであると考えております。

 なお、仮にこれを、過去債務に関して、積立方式でということになりますと、現に今百五十兆円の積立金というのは、六百兆円は優に必要な世界でございますので、やはり賦課方式とかつてからの積立金というものを上手に利用しながら安定的に運営していくべきものであると考えておる次第でございます。

筒井委員 私がお聞きしたのは、有限均衡方式で決まって、二一〇〇年の時点で厚生年金に限れば十六兆円ぐらいというふうになった、これは当然会計検査院もわかっているわけで、そういう形で漸次だんだんに縮小していくのはわかっている。その上で、四百年間もつ、こういうふうな指摘をしたのは、これはやはり遅過ぎたんじゃないか、こういう意味を含めているんじゃないか、こういう質問なんですが、まあ、認めないでしょうから。

 これは実際にまだ決定していない部分がある、こういう指摘もされましたね。約一兆円規模の基礎年金の積立金の一部、二十年前からずっとその使い道が決まっていない、こういう指摘をされたことはもちろんわかっていると思いますが、二十年間、何でそんなに使い道を決めていないんですか。これも、遅過ぎるなんというものじゃなくて、まだ決めていないんだから、怠慢過ぎませんか。

青柳政府参考人 国民年金特別会計の基礎年金勘定の積立金についてのお尋ねがございました。

 これは、昭和六十一年の四月に基礎年金制度を導入いたしましたが、その際に、それまで国民年金に任意加入をしておられた被用者の被扶養の配偶者の方々が支払った保険料に係ります積立金を、専らいわば自営業のグループの方々の負担や給付に充てるための国民年金勘定の積立金からは切り離す、そして各制度が共通にかかわる基礎年金勘定の積立金として管理をしようという整理をしたことに伴うものでございます。

 今回の会計検査院の御指摘によりますと、平成十六年度の決算剰余金が約九千八百億円あるじゃないか、こういう御指摘でございますが、その内訳を子細に見てみますと……(筒井委員「内訳を聞いているんじゃないんだ」と呼ぶ)はい。まず、この積立金から生じた運用収益の累積額が七千四百億近くある。それとは別に、各制度から拠出をいただいております基礎年金の拠出金を、これは翌々年度に精算するという仕組みになっておりますので、その精算までの間、資金をいわばお預かりしておるわけでございますので、これに伴って生じた運用収益の累積額が二千四百億円ぐらいあるという内訳のことでございます。

 いずれにいたしましても、これらは被保険者からの保険料をもとにして生じた運用収益でございますので、将来の年金給付に活用すべきものであるという性格のものでございます。したがって、他の目的に活用することは適当ではない。

 一方、この積立金運用収益は、先ほどのような経緯がございますので、年金制度共通の財産であるということから、例えば今後の被用者年金一元化の検討状況を踏まえつつ、その中で早急に関係者間で合意形成を図りながらその取り扱いを決めていく必要があるものというふうに御理解を賜りたいと存じます。

筒井委員 使途不明金じゃなくて使途未定分が約一兆円ある。今の答弁ですと、これを今の被用者年金一元化の中でもっていろいろ決めていきたい、被用者年金一元化の問題が今出てきましたから、それを口実にというか、その中で決めていきたいと言っているけれども、もう二十年前なんですよ。

 二十年前からずっと、金額は運用されているから変更はあったとしても、その間使途が未定であったことは事実でしょう。もちろん、任意加入のときであったとしても、基礎年金の保険料としてもらったものだからそれ以外に使っちゃいかぬですよ。だけれども、具体的にどういうふうに使うかをずっと決めてこなかった、このことは事実でしょう。だから未定分として指摘されたわけでしょう。そのことと、なぜ二十年間それが、だから、議論はされてきたんですか、それとも完全にほっておいたんですか。

渡辺政府参考人 ただいまの先生のお尋ねにつきまして、過去の経緯にかかわる説明をさせていただきたいと思います。

 もう既に運営部長からお話し申し上げましたように、これは国民年金任意加入であった時代のサラリーマンの奥さんの、被扶養配偶者の保険料の集積でございます。基礎年金ができましたので、そちらに使うべきものということで基礎年金勘定に置いておるわけでございますけれども、もともとが各被用者年金制度に加入しておられた方の被扶養配偶者ということで、基礎年金を各制度からの拠出金で成り立たせるという基本に立って考えますと、被用者年金制度というのは、厚生年金のほかに国共済、地共済、私学共済、三共済グループがあるわけでございまして、それぞれの共済制度が、自分たちの基礎年金に対する拠出金に還元すべきであるというお考えをお持ちであったということがございます。

 その還元割合というものをどのように考えていくのか、厚生年金についても同様でございますが、また、基礎年金勘定に置いております上で、会計上予備費のようなものをどのように位置づけて考えるべきか、そういう制度技術的な問題につきまして、共済各省と私ども、そして国民年金サイドとの調整がずっと長引いてきたわけでございます。

 その原因の一つは、被扶養配偶者のパートナーである被用者そのものがどの被用者年金制度に加入していたかという網羅的なデータは任意加入時代にはなかったということで、配分する場合にもそのベースがなかなか難しいということがございました。当初から、これは被用者年金制度の一元化というような事態が発生すると、それはいずれのものということでもないわけでございますが、そうした問題意識を持ちながらも、決定的な合意にまでは至らなかったというのがこれまでの経緯でございます。

 今般、被用者年金を一元化し、財政単位をしっかり一元化していくという中で大きな課題の一つであり、関係省庁連絡会議におきましても、その取りまとめ文書の中でこの問題をはっきり記述し、この一元化のプロセスの中で何とか解決してまいりたい、このように考えている次第でございます。

筒井委員 調整が長引いたのが原因だと言われましたが、調整はしてきたということですね。二十年間やってきたんですね。二十年間やってきたんですね、ちょっとその点だけ。

渡辺政府参考人 昭和六十年ごろから二十年程度をもう経ているわけでございますが、その前提となる一元化に向けての諸データあるいは共通認識というものの形成に非常に時間がかかったということであると思います。二十年は決して短くない長さであるということを私どもも痛感しておる次第でございます。

筒井委員 しかも、当時は年金一元化のそういう議論さえなかった。最近になって出てきたから、今度は年金一元化の中でやろうなんて言っているけれども、そういう、調整が長引いて二十年間ずっと使途が未定のままだったというふうな、今この一つの例でやっていますけれども、そういう問題先送りの体質が随所に見られるところに問題があるんじゃないかと思うのです。それを追及していくと、もうあと時間もまたなくなっちゃったので、もう一点の質問の方に移ります。

 今、所得格差の問題が大きな問題になっている。その場合に、今の掛金の問題でいいますと、国民年金の保険料は定額である、これはやはり格差をさらに広げることになるのではないかというふうに思うのです。これは厚生年金も共済年金も定率ですから、所得に応じて払われる形になっている。国民年金だけは定額制で、所得が多いだろうが低いだろうが一定額が払われるという形になっている。これは格差を広げることになるので、この定額制を見直すのが、今、格差の問題がまさに議論されている中において、安倍内閣も格差解消、是正と言っているんですから、これを早急にやるべきじゃないですか。

渡辺政府参考人 お答え申し上げます。

 国民年金制度が昭和三十年代に発足した時代から、自営業者それから無職の方等々、いわゆるサラリーマンの保険に加入できない方々の保険として設定した際、この方々の年金の負担と給付は所得に基づいてできるだろうかということが大きな課題とされてきておりました。

 そうした方々の所得というものをどのようにとらえるか、また、雑多な稼得背景のあります方々でございますので、その間のいわゆる所得の捕捉に関する公平性というものが担保できるのか、とりわけ、零細な事業所に勤めておられる被用者の方々にとってみれば、同じ国民年金の中にありながら、自営業者の方々の必要経費の取り扱いというものを甘受していただけるかどうか、こういった点など非常に大きな問題があり、今日まで定額制というものの中で処理するしかないということで来た経緯があるわけでございます。

 サラリーマンの場合は、別途、事業主負担という仕組みがございますので、全体的な議論をまたしやすいという側面もございますが、仮に国民年金のグループの方々に所得に応じた定率保険料を導入するというようなことを考えてみましても、サラリーマンの場合には、例えば男子の場合でも、月額四十七万円以上の方が全体の過半数を占めている、分布としても真ん中ぐらいの給与の方が非常に多うございます。他方、国民年金の調査によりますと、所得別被保険者割合は、男子の場合でも二七%は所得なし、こういうようなことになっており、平均所得が約二百万円ぐらいということでございます。

 そうすると、定率保険料というものを考えた際に、そこに所得再分配機能を持たせる場合と持たせない場合、両面あると思いますけれども、大変こうした一部の高額所得者と、大多数の低所得者、無所得者というグループにおける定率保険料制というのは非常に困難ではないかというふうに考えているわけでございます。

 その場合、給付が定率である、あるいは所得比例であるということとか、あるいは、いろいろな議論の中には給付は定額でいいというような御議論もございますが、全体として、所得のある方、所得のない方、それらがそれぞれの立場で受け入れ可能な仕組みとなるだろうかという点について、なお私ども、大変自信のないところでございまして、引き続き、こうした方々を含めた皆年金体制の適用の問題というものをしっかり考えていかなければならない。

 とりわけ、先ほど例示いたしました中小零細企業にお勤めのサラリーマンの場合、これが国民年金に入ってございますが、安倍総理の政策として掲げておられる再チャレンジという精神から見ましても、厚生年金の適用をその方たちにも拡大していく検討というものが避けられないのではないか、こういうふうに考えている次第でございます。

筒井委員 今、所得捕捉の問題があるというふうに言われました。しかし、実際に今、国民年金保険料減免の措置がされておりますが、それは所得捕捉されて、所得を基準にされていますね。全額免除あるいは半額免除というのは、これは以前からあった。だけれども、ことしからは、さらに二つ、四分の三免除とか四分の一免除が、つまり四段階の減免制度が決まった。これは所得を基準にしているわけでしょう。所得を基準に捕捉で実際やっているじゃないですか。

渡辺政府参考人 社会保険の制度体系の中で、基本は所得に立脚せずに定率的、定額的な負担や給付をしているものが多々ございますが、そういう中でも、医療保険においても、こういうところでもそうでございますが、低所得者の負担軽減という配慮措置を講じるに当たりまして、個々人の申請に基づき、その所得状況の申告をベースにして負担の軽減を図るということが多く行われているわけでございます。国民年金の免除制度というものも、そうしたパターンの一つであると考えております。

 最近、任意でございますが、市町村の住民税の情報を多くの市町村が提供していただけるという事態に変わってまいりましたので、御本人による所得の申告と申しますか、課税状況の申告、こういったものが簡便に、提供された情報による処理というものを片方に置きながらできるようになってきたという違いは出てまいりましたけれども、基本的には、特段の低所得者配慮というものをお求めになる場合には、御本人の申請と証明書類、こういうことが基本になるものと考えておりまして、そのことと、制度そのものを、あらかじめ自動的に所得というものを把握したという前提に立って制度を設計するというものとの間には相当の距離があるというふうに考えております。

 また、先ほど申しましたように、所得捕捉という問題と、所得の概念と私どもは言うておりますけれども、そもそも、営業形態、稼得形態の違う方々の中における必要経費の取り扱いは少しずつ違うわけでございますが、それを無視して同一の物差しではかっていくということをいたしました際、しかも、それを制度の正面の建前といたしました際における御納得という点が大変大きなハードルであるというふうに考えております。

筒井委員 減免する場合の所得も、収入から必要経費を引く、こういう形で計算されているわけですよね。詳しい説明をしているともう時間がないから、そうですね、その点だけ確認。

渡辺政府参考人 低所得者配慮措置を手を挙げて申請なさる場合の、その際に把握できる所得の状況というのは住民税情報というものが基本になりますので、御指摘のように、収入がありそして経費があり、個人の場合なかなかそれはございませんけれども、住民税法に基づいた計測がなされる、それが所得として申告される、こういうものでございます。

筒井委員 そういう所得があって、そして、例えば四分の三納付の人たちは四人世帯なら三百三十五万円以下だとか、あるいは全額免除は百六十二万円以下だとか、こういう形で四段階に分けている。所得を基準に分けている。この所得を基準に分けていることで特に問題は起こっていないでしょう。この前は社会保険庁の方が問題を起こしたんだよね、これは調べもしないで免除した。だけれども、この所得を基準にして納付額を決めている、今の場合は低い方ですが、これについて問題は起こっていないですね。

渡辺政府参考人 国民年金の免除制度の運用の段階における御指摘のような問題点があるかないかということでございますが、本質的にはあるというふうに思っておりますが、余り大きな声になっていないのは事実でございます。

 しかし、先生御承知のように、所得に応じた保険料賦課をしております市町村国保の場合におきましては、そうした住民税情報に基づいてやっておりますが、かなり大きな論点となっていることも否めない事実でございます。

筒井委員 最後の質問。

 下の方は四段階に分けている。では、上の方も四段階ぐらいに分けて、納付額に差をつける、これは可能でしょう。所得捕捉の問題があるとか言っていたけれども、実際にもうやられていることだから。下の方だけできて上の方はできないという理由はないでしょう。

渡辺政府参考人 先ほど少し触れさせていただきましたが、制度の原則という部分と、例外としての配慮措置という部分における所得情報の制度的な活用の仕方というのは、各制度で、今のような形になっていることが多うございます。

 御指摘のように、もし、所得の高い方につきまして、定額であったとしても、段階的な保険料をより高く納めてもらいたいということになりました際に、実際、その方たちにどのような給付を保障していくべきかという問題が次に発生するわけでございますので、先ほど申しましたような所得分布という、そのグループ特有の大きなハードルというものを考えまして、所得の高い方、低い方、全般に新しい納得の水準というものが得られるのかという点がかねてより大きな課題となっているところでございます。

筒井委員 時間が来ましたので終わります。ありがとうございました。

櫻田委員長 次に、園田康博君。

園田(康)委員 民主党の園田康博でございます。

 この厚生労働委員会、柳澤大臣が御就任されて、私も初めて大臣に御質問をさせていただきますので、どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 また、大臣所信に対する二日間の一般審議をとっていただきました、櫻田委員長初め与野党、各党の理事の方々にも敬意を表したいというふうに思っております。

 今後とも、この厚生労働委員会、やはり国民の生活あるいは健康、今日までのこれまでの審議を伺わせていただいても、年金、介護、医療、労働安全あるいは生活一般という面で、大変幅広い分野でございますので、先ほど石田副大臣が、障害者の関係については全省挙げて取り組むという決意もお示しをしていただいたということでありますので、どうぞその気持ちをしっかりと持って継続していただきたいというふうに思うわけでございます。

 私は、本日、時間もございませんので、大きく分けて二点、一点目は原爆症認定に係る課題でございます、それからもう一点は障害者自立支援法の施行状況、これをしっかりと、時間の許す限り、大臣も含めて御答弁をいただきたいというふうに思っております。

 まず、原爆症認定の問題でございます。

 ことしの五月、大阪地裁、そして、八月の四日でございますけれども、広島地方裁判所において判決が下されました。これにつきましては、原爆症認定の集団訴訟という形で、いわば、認定を取り消す、それを取り消してほしいという訴えを起こし、そしてその原告の訴えが全面的に認められた事例でございます。いわば国が敗訴をした判決でございます。

 私どもも原告の方々からさまざまな御意見を拝聴してまいったわけでありますけれども、国がこれを控訴したという理由をまず大臣からお聞かせいただきたいというふうに思います。

柳澤国務大臣 原爆症の認定というのは、非常に丁寧な仕組みでもってこれを行わせていただいておるということでございます。

 具体的には、申請疾病が原爆放射線に起因していることがまず要件となるわけですが、その判断は、申請者の方がどのくらい放射線を浴びたか、またその浴びた量と疾病との因果関係がどの程度認められるか、こういうようなことを中心として、いわば確立された科学的知見に基づいて行われている、こういう背景がございます。

 このため、原爆症の認定は、いわば、合議制の審査会において、ただいま申した確立した科学的知見に基づいて審査をし、その結果を受けて行っているということでございまして、その観点から見ますと、お触れになられた地裁の判決というのは、そうした正式の機関の一般的な理解とは非常に大きく内容が隔たっておりますので、そうしたことから、やはり訴訟の場において引き続き国の考え方を主張していくことが適切である、このように判断したということでございます。

園田(康)委員 今、確立した科学的知見に基づいてというふうに大臣もおっしゃっておられるわけでありますが、その点は後ほど少し御議論をさせていただきたいと思うわけでございます。

 去る十月の十九日でございますが、日本原水爆被害者団体協議会の方々が、今までずっと、原爆症認定にかかわる課題を厚生労働省の皆さんとぜひ協議をしたいということで申し入れをしていたわけでございます。私も何度かそれをお願いさせていただいたということがあったんですが、残念ながらそれがなかなかかなわなかった、長年かなわなかったということもありまして、大変、被爆者の方々が切望されていたわけでございます。

 この判決といいますか争いに関しては、またこれは司法の場で行われるものであろうと思うわけでありますけれども、この認定の内容について、さまざまな原爆の被害者の当事者の方々から、私は、意見を聞きながら制度を進めていく必要があるのではないかという思いもございましたので、何とかして厚労省の皆さんが門戸を開いていただけないかなと思っておりました。そうしましたら、ようやく十月の十九日に、先ほど申し上げましたように協議の場が設けられて意見交換がなされたというふうに私も報告を受けているわけでございます。

 何か裁判が一方で行われているから話し合いはできないんだとかそういうことではなくて、この認定が、被爆者の方々の実態あるいは思い、そしてここまで、戦後六十年以上たって、あるいは六十一年間苦しんで原爆症の中に、まだ国はそれを、原因確率性であるとか、あるいは、後ほど申し上げますけれども閾値であるとか、そういったもので、なかなか科学的知見に基づけば認められないんだけれども、しかしながら、御本人からすれば、原爆が落ちたその後に入市、広島市あるいは長崎に入って、さまざまな形で救援活動や、あるいはみずからの親族を捜し回ったという状況があるんだということからすれば、戦後大変長い期間にわたって、原爆症と思われるような、そういった症状に悩まされ、あるいは苦しめられ生活をしてきた、そういう方々の思いというものも、ある一面ではしっかりと受け取ってほしいというふうに思うわけでございます。

 そういった意味では、今後、こういう協議の場というものをしっかりと持っていただきたいというふうに私は思うわけでございますけれども、大臣、その辺の御所見はいかがでしょうか。

柳澤国務大臣 今、園田委員が仰せになられたとおり、先般、十月の十九日に日本原水爆被害者団体協議会の皆さんが厚生労働省を訪問されて、いろいろと意見交換の場を持たれたということでございます。

 これは、我々役所の考え方からいたしますと、訴訟上の争点というのはやはり司法の場で処理をされるべきだ、こういうことでありますが、他方、被爆された方々に対する援護施策を行う上で、いろいろな御要望があるということであれば、これについては必要に応じて担当者が御要望をお伺いすることは、これは訴訟の話とは別の問題ではないか、こういう整理のもとで、今回こうした機会を持たせていただいたわけでございます。

 そういうようなことでございますので、この点についてはこれが一つの実績になったということでございますが、やはり、どこまでいきましても、訴訟上の争点についていろいろまた別の行政の場でやりとりをするということは、これは国の意思というようなことがばらばらになってしまうおそれもある、そんなことだし、またいろいろな誤解とか行き違いも生じかねませんので、ここは慎重に、切り離しておいて臨まなければならない、このように思っている次第でございます。

園田(康)委員 その訴訟上の争点という部分は、確かに難しい立場で話をしなければならないんだろうというふうに、その点は私も理解をさせていただきます。

 ぜひ大臣、一度、被爆者の方々が戦後どういう生活をしておられたのか。広島判決の判決文、原文でございますけれども、全部で三百五十一ページに及ぶ判決文でございます。私も今それを取り寄せさせていただいて一文一文読ませていただいておるところでございますけれども、その中でも、一人一人の原告の方々がどういう状況に置かれていたのかということがつぶさに書いてある部分もございます。ぜひ大臣、御一読をいただきたい。

 それはそれと、訴訟上の話として受けとめていただいて、もう一方で、全国に今健康手帳を所持しておられる二十六万人という方々、あるいはそれ以上に、まだ健康手帳の申請すらもしていない方々もひょっとしたらおられるわけでございますので、そういった面では、そういう方々が戦後どういう苦しみの中で生活をしてこられたのかという、その声を大臣が直接みずから、五分でも十分でも結構でございますので、聞いていただく機会というのをぜひつくっていただきたいなというふうに思うわけでございます。

 そこから、これは答弁を大臣に求めるというふうに事前通告しておりませんけれども、ぜひそういう機会を持っていただいて、今後の施策の中にぜひとも援護策を、しっかりとこれを充実させていくんだ、あるいは、さらにまだ足らず前のところがもしあれば、その辺の手だてがないのかということを、直接やはり御本人の皆様方の御意見、御要望を大臣みずからが受け取っていただきたいなと思うわけでございます。

 時は許されないといいますか、被爆者の方々が大変御高齢になってきているという部分もございます。平均年齢はもう七十九歳にもなってきておりまして、私からすれば、残り少ない人生の中で大変苦しみながらまた生活をしていかなければいけないという、その心の悲痛といいますか、それを思うならば、大臣の温かい御見識とそれから良心に照らして、ぜひその機会をつくっていただきたいと思うわけでございます。

 さて、内容を少し私も勉強させていただいているわけでありますけれども、被爆者健康手帳が交付されているのは、先ほど申し上げましたように、正確に申し上げますと、恐らく二〇〇六年の三月現在で二十五万九千五百五十六人、このうち、先ほど大臣もおっしゃっていただきました医療手当、医療の給付や医療特別手当の支給を受ける原爆症認定、いわゆる原爆症認定でございますけれども、これを受けていらっしゃるのが二千二百八十人、健康手帳を受けていらっしゃる方々が二十六万人で、そのうち認定を受けていらっしゃる方々が二千二百八十人、実に〇・八七%、一%にも満たない方々しかまだ認定をされていない。

 なぜだろうなというところでいきますと、被爆者援護法でございますけれども、第十条と十一条で受けるその要件が書かれているわけでありますが、一つには、放射線起因性、いわゆる被爆者が原爆の放射線によって病気やけがを発症したこと、あるいは治癒能力が原爆放射線の影響を受けていること、このものがあって初めていわゆる原爆症の認定がなされるんだよ。それから、要医療性という部分がございます。原爆放射線によってその病気やけがが治療を必要とする状態にあることというふうになっております。

 それを受けまして、平成十三年の五月の二十五日に、これは原子爆弾被爆者医療分科会というところから、認定に関する審査の方針というものが出されております。ここにおいて、まずは原爆放射線起因性の判断をどのようにしていくかということになりますと、一つには、先ほど大臣もおっしゃっていただきました原因確率性、すなわち病気が発症するためには科学的知見がなければならないというものが、つまり原爆の放射線の影響を受けている必要があるということでございます。それからもう一つには、閾値というものがありまして、これは一定の被曝線量以上の被曝を受けていない、それが病気を発症しないんだというところから、この閾値というものが目安として用いられているわけであります。

 この二つの要件に対しては、この広島判決の中でも指摘がなされておりますけれども、大変細かく、私もまだ、科学者ではありませんので、その中身がどうであるのかというのをもっと勉強しなければいけないところもございますけれども、一定の割合でまだ、先ほど確立した知見であるというふうにおっしゃったわけでありますけれども、それそのものに対して少し疑問があるのではないかということが判決文によって投げかけられているわけであります。

 したがって、この原因確率性というのと閾値でありますが、二〇〇〇年までは、これは厚労省の御意見でありましたけれども、すべての病気に閾値というものがあったんだというふうにその当時はおっしゃっておりました。ところが、今は、原爆の白内障のみが、一・七五シーベルト以上の放射線量を受けないとこれは病気を発症しないんだということから、一定の数値というものが設けられているわけであります。

 この閾値、すなわち、以前は、すべての病気に閾値というものがあるんだから、これを超えないと原爆症認定としては認めませんよということを主張しておられたんですけれども、ある時期から、さまざまな判決が出てきて、少しこれはまずいなということで、まずいといいますか、本当にすべての病気に閾値というものがあるのかどうかということをやはり研究しておかなければいけないということで、恐らくそこで内容が変更されて、今は白内障のみにこの閾値というものが適用されているというふうに私は理解をしておるんです。

 すなわち、何を申し上げたいかといいますと、この確立した科学的な知見というものにまだ私は研究の余地があるのではないかと。そのもののずばり、被爆した、直爆で放射線を浴びたその距離であるとか、あるいはそこに遮へいがあったかどうか、あるいは年齢であるとか、そういった要件だけで線を引いてしまうということでは、私は、先ほど申し上げた人数、すなわち二十六万人の方々が健康手帳を所持していらっしゃるんですが、たった〇・八七%、二千二百人の方々しか認定を受けていないという状況が起きてしまう、ここの残念ながら要因ではないのかなというふうに考えているわけであります。

 したがって、今後、一方では訴訟をやっているわけでありますけれども、一方では、この科学的な知見というものが本当に確立されているものであるのかどうか、私はもう一度これを研究していただきたいというふうに思うわけでございますけれども、その点はいかがでしょうか。

外口政府参考人 御指摘の審査の方針についてでございますけれども、審査の方針につきましては、新しい科学的知見の集積等の状況を踏まえ、必要に応じて見直すこととしているところであります。

 このたびの大阪及び広島地裁の判決を受けまして、原爆症認定の審査を行います疾病・障害認定審査会原子爆弾被爆者医療分科会におきましてもその報告を行ったところでございますが、現在のところ、審査の方針の見直しを行うまでの科学的知見の集積はないとされたところであります。

 現在の国の科学的知見の正当性については、司法の御判断を仰いでいるところでございます。今後とも、必要な科学的知見の集積等については行ってまいりたいと考えております。

園田(康)委員 ぜひ、これは精力的にやっていただきたいと思うわけであります。これは、岩波のブックレットで「被爆者はなぜ原爆症認定を求めるのか」というところの中にも書かれておりますけれども、先ほど申し上げた原因確率性であるとかあるいは閾値についても、科学的な知見というものに疑問があるのではないかということが投げかけられている箇所があります。

 アメリカの統計学、公衆衛生学の著名な研究者であるグリーンラント氏、これはカリフォルニア大学のロサンゼルス校の教授が指摘をされているわけでありますけれども、原爆症認定の審査を行う原子爆弾の被爆者医療分科会の分科会長代理であります草間朋子さんという方が、この原因確率性については多少疑問があるのではないかということで、二〇〇一年度の厚生労働省の委託研究の中で、このグリーンラント博士の研究を紹介しておられます。そして、労災認定の基準としては原因確率を採用しないという報告書をまとめているわけでありますので、いわゆるこの原因確率論に関しては、さまざまな観点から今疑問が投げかけられているということを念頭に置いて、ぜひ精力的にこれを集積、研究を進めていただきたいというふうに思うわけであります。

 これを早くやっていかないと、原爆症で大変苦しんでいらっしゃる、あるいは申請を出してもどうせ却下されるんだから申請をしないというふうに我慢をしていらっしゃる方々も中にはいらっしゃるわけでありまして、訴訟をやると、それだけで外に自分の、いわゆるプライバシーではありませんけれども名前も出さなければいけない、あるいは顔も出さなければいけない、自分の生活もさらけ出さなければいけない、そういう苦しい状況にも置かれるわけでございます。

 ぜひそういう方々を救済する、私は、原爆そのものは非人道的な化学兵器であったと思うわけでございますので、その非人道的な化学兵器にさらされた方々を救うのは、やはりこれは最後には国の責任で行うべきであるということを強く要望させていただきたいというふうに思います。

 時間がございませんので、もう一点、私が強く厚生労働省に求めたいことがございます。

 障害者自立支援法の施行状況、先ほど福島理事からもその旨触れていただいて、副大臣からは全省庁的に挙げて取り組んでいくということをおっしゃっていただいたわけでございます。

 これは、委員長を初め各党理事の方々にもぜひお願いをしたいと思います。

 昨年の障害者自立支援法、衆議院のこの厚生労働委員会で成立をした際に、こういう申し合わせが理事会でございます。

  当理事会は、次の事項を確認し、政府に申し入れるものとする。

 (一) 前国会において障害者自立支援法案に関して付した附帯決議の内容は、政省令の制定など法律の施行に当たり、政府において十分尊重すべきであること。

 二点目、障害者自立支援法に係る政省令事項、運営方針等については、その内容に関する審議が社会保障審議会障害者部会で行われる際には、その都度直ちに衆議院厚生労働委員会理事会に報告を行うこと。各党理事は、理事会において上記政省令事項等につき意見を述べ、政省令事項等を適切にフォローアップするものとすることという形で、それぞれにおいて政省令事項がなされた、あるいはこの障害者自立支援法の施行状況について理事会でしっかりとフォローアップをしていかなければならないというふうにまず書かれているわけでございます。この点、各党の理事の方、十分共通認識を持たせていただきたいと思うわけでございます。

 これは、与野党で合意して、理事会で申し合わせ事項という形で確認をされているものでございます。

 そしてもう一点、衆議院での附帯決議の第十一条でございますが、「本法の施行状況の定期的な検証に資するため、本委員会の求めに応じ、施行後の状況、検討規定に係る進捗状況について、報告を行うこと。」これに対して、厚生労働省としては、真摯に受けとめて、これを誠実に行ってまいりますという御答弁をいただいているところでございますので、ぜひ、定期的な検証を行っていかなければならないと私は思っておりますし、先ほども、全国の障害者団体からもさまざまな声が上がっている、先般も、この委員会の中でも野党の委員の方からも御指摘があったところであります。

 ちょっと時間がなくなりましたので、後ほど私の同僚の委員からもこの点はお話をしていただけるというふうに思っておりますけれども、全国の障害者団体の方々、当事者、あるいは事業者、家族、あるいはボランティアで一生懸命やっていらっしゃる方々というものが大変多く今声を上げていらっしゃる。

 恐らく大臣も御認識をしていただいていると思いますけれども、この新しい制度をつくられて、大変大きな、厚生労働省、あるいは政府として、あるいは国の責任としてこの障害者の施策を大きく進めていこうという心づもりは私も理解をさせていただいているわけであります。

 しかし、何せ、去年十月に成立をして、準備期間がもう半年も切っていた状況の中で、これだけ大きな改正をして新しい制度を導入して、それを行っていくという形になれば、どうしても準備期間が足りなかった。それによって各自治体、あるいは利用される障害当事者はもちろんのこと、それを行っていく各自治体の方々も大変混乱を来しながら今日まで至っているというのが私は現状であろうというふうに思うわけでございます。したがって、その状況をしっかりと私はまず把握をしていただきたい。

 きょうはいろいろ質問事項を用意させていただいて、職員の皆様にはきのう夜遅くまでかかって御用意をしていただいたかもしれませんけれども、時間がありませんので、この点だけ指摘をさせていただきたいと思います。

 先般、厚生労働省が発表した障害者自立支援法の実施状況についてということで、概要版とそれにかかわる内容を私も見させていただきました。

 これはやはり、今各都道府県、各自治体が行っている調査、それを厚生労働省が集積して、そしてそれを一定の数値的なものとして発表したと理解をしております。しかしながら、これをもって、これが今の施行状況の実態だというふうに言うのはいかがなものかなと思っておりますし、これをすなわちそのまま、今の障害者が置かれている状況そのものである、しかもこの法案が施行されてしっかりと進捗をしているんだよということで理解をするのは、まだ私は、実は拙速過ぎるのではないかなと。

 したがって、これだけ大きな制度を導入し、そして進めていくということを行うのであるならば、やはりきちっとした調査を私は行っていただきたいですし、それを待っているのが、自治体の方々もそうですし、あるいは言いわけとしては、今そういう調査を行うと、また新たな混乱を生む、あるいは事務量を多くしてしまうのではないかという懸念がどうやらあるようでございますけれども、私は逆に、そういう今の混乱している状況を国の皆様方にも理解をしてほしいというのが実は現場の意見ではないのかなというふうに私も聞いております。

 ぜひしっかりとした調査と実態把握を行って、それをもって次の施策という形で手を打っていただきたいというふうに思うわけでございますが、大臣、その点はいかがでしょうか。

柳澤国務大臣 まず、園田委員が、今度の障害者自立支援法にあらわれた、障害者の皆さんに対する施策について新しい方向を模索している、こういうことについては御理解をしていただけるということで、これは大変ありがたいことだというふうに、私、お聞きしながら思ったわけでございます。

 ただ、これからこれを、新しい方向を実際に進めていくという中で、もっともっと実情把握をすべきではないかという御指摘をいただきました。

 この点については、先般、厚生労働省の方から発表いたしました実施状況についてというものは、確かに全国のことを考えれば一部でございまして、十四県とか、あるいは定点観測をしている市町村であるとかということでございます。ただ、十四県ということですが、一応、人口的にいうと三割ぐらいをカバーしているので、ある種の趨勢というものはわかるのではないか。

 本当に先生方から熱心な御質疑をいただく中で、いろいろ非常に厳しいという状況の御指摘もあるものですから、我々が集め得た十四県の状況、あるいは定点観測している市町村の状況をとりあえずお示しをさせていただいたということでございますが、同時に、我々は、これをもって、これでよろしいんだというふうには考えておりません。したがって、鋭意、これからもっと全国的な調査の結果を得べく、今この調査対象を広げておるという段階でございます。

 これも、とにかく私は督励をしておりまして、余り迷惑をかけてはいけないとかというようなことを言うものですから、そんなこと言ったって、こういう国会の状況あるいはいろいろな国民の皆さんから寄せられる声ということを考えますと、そこはちょっと県にプッシュして、相当の無理をしても早く実情把握のための調査をしてもらうということでやらなきゃいけないということでさせていただきまして、何とか早く調査結果、かなり悉皆的なものを出して国会の方にまた御報告させていただく。それをまた基礎にして、実行上、政省令の段階でも報告しろというような、これはこれで決議をいただいたんですが、そのとき廃案になっちゃったそうですから附帯決議としてはもう残っていないということですが、その精神は残っているわけですから、我々としては、この政省令の施行状況について、またいろいろお考えいただくときの参考資料にして、ぜひさらなる御検討をして、この制度の定着、浸透のためにまたいろいろとお力をいただきたい、このように考えております。

園田(康)委員 ぜひ全国調査とともに実態把握をして、そして、ぜひ私はこの委員会で、この点は集中審議を、そして参考人という形で、障害当事者の方々も含めてそういった参考人の御意見を聞くという機会を、委員長、ぜひお計らいをお願い申し上げて、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

櫻田委員長 ただいまの件につきましては、理事会で協議をいたします。

 次に、郡和子君。

郡委員 民主党の郡和子でございます。

 柳澤大臣の厚生労働大臣の御就任をお祝いするとともに、きょう直接質問させていただく機会を与えていただいたことに感謝を申し上げます。

 私、今園田委員からもお話がございました障害者自立支援法について、主に大臣のお考えを伺わせていただきたいと考えております。

 障害者自立支援法の実施状況、現状をどのように把握なさっているのか、そしてまた、我が国の障害福祉について、所管するトップリーダーとして大臣はどのようなお考えを持っていらっしゃるのか、伺わせていただきたいと思います。

 まず、先日、私どもの三井委員からの質問に対しまして、柳澤大臣は、障害者の自立ということにつきまして、身の回りのことができるようになるということが自立であるというような旨の御発言をされたというふうに受けとめております。これは質問の通告はしておりませんけれども、大臣に、障害者の福祉、障害者の自立とは何であるのか、それをまず伺わせていただきたいと思います。

柳澤国務大臣 私は、今委員がおっしゃられたように、それだけを別に自立と言ったわけではないんです。それをスタートとして、最終的には経済的な、所得の稼得というものもできるようなところまでを一貫して、その方向に行くことを自立の方向というふうに考えていると申したということでございます。

 障害者の皆さんについて、私もいろいろ個人的にも事情がありまして、いろいろと考えさせていただいておるということでございますが、とにかく障害者の皆さんに対する考え方は、私は個人的に言って、人後に落ちるものではない、このように確信を自分自身しています。

郡委員 今の、障害福祉を所管するトップリーダーであられる柳澤大臣の御答弁、障害を持っておられる方の自立というのは、今、身の回りのことができることがスタートであり、所得をしっかりと持てるようにすることであるというようなお話でございましたけれども、そこに至らない障害を持っておられる方々も大勢おられるわけです。障害を持っておられる方の自立というのは、その人が尊厳を持って生きるということだろうと思います。大変残念ながら、この障害者自立支援法を所管するトップリーダーであられる柳澤大臣のそういった御所見であるならば、この自立支援法というのがさらに後ろ向きなものにしかならないのではないかと、今お話をお聞きしまして大変残念な思いでいっぱいでございます。

 そこで、個別具体的に質問をさせていただきます。

 国の区分認定を経て支給決定がなされたわけでございますけれども、従前のサービスの基準というのを大幅に下回ったという声が全国各地から届いております。今までの支援費制度の中で使っていたサービスについては、そのサービスを量も質も下げないのだということが全国課長会議の資料にもしっかり出されております。低下させないために、国庫補助基準の中ですべて保障するんだというふうになっているわけですけれども、そしてまた、国会での答弁でもそうでございました。

 ところが、私、きょうは資料を皆様方に配付してございます。これは、私の地元宮城県での例でございます。名取市の例なんですけれども、ごらんいただきたいと思います。

 ここに、Cという方でありますけれども、脳性麻痺一級です。区分認定では六、最重度に区分されました。五十代の男性の方ですけれども、これまでサービスを受けていた支援費の時代よりも、何と二百九十三・五時間、およそ三百時間もダウンしたんですね。そのほかの人たちでも、軒並み二割から三割、支給が下がってしまいました。

 この支給決定に納得できないと、名取市を含め地元宮城の人たちは、今月の十日から実はハンストの抗議行動をずっと続けておられます。命にかかわることだという抗議行動であります。このように、サービスの低下が生じているということをどの程度把握されているのか、そしてまた、サービスが低下したことについてどのように対応されるおつもりなのか、大臣にお尋ねいたします。

柳澤国務大臣 障害者支援の制度につきましては、国の制度で行う部分と、市町村が現実いろいろやっていらっしゃる部分もございまして、国の部分については、制度移行後におきましても、平成十七年度実績を下回ることがないように従前額保障をすることといたしています。

 したがいまして、こういう数字をお見せいただきますと、我々としては、もう少し分析をして、どの部分が国に起因している部分か、どの部分が市町村としての措置というものが入ってその影響を受けた部分かというのをもう少し分析させていただかないと、これについてにわかに我々が議論に入っていくことはできないかな、こんな感じを持っております。

郡委員 もう既にこの十月から三百時間という時間が減らされまして、この方というのは、二十四時間の介護を必要とされる方で、これまで支援費のもとで二十四時間の介護を受けておりました。ところが、今回、夜間の分を訪問介護という形に変えることが言われたわけでございます。このことは何を意味するかといいますと、トイレに行くこともできない、のどが渇いても水を飲むこともできない、寝返りをさせてもらうこともできない、布団のかけ直しもすることができない、訪問介護でいらっしゃる方を待つしかないわけです。この方は、水を飲むのも我慢し、おむつをされたそうです。

 大臣がおっしゃいます身の回りのことができることがスタートであるという、その大臣がおっしゃるスタートのところにもいかないわけです。もう少し実態をしっかりと見詰めていただきたいと思います。

 そしてまた、この給付の引き下げについてどういうふうに対処なさるのか、重ねてお尋ねいたします。

柳澤国務大臣 国庫負担の基準につきましては、全国どこでも支援の必要度に応じて一定のサービス利用が可能となりますように、障害程度区分ごとに設定しているわけでございます。この基準は、あくまでも国庫負担の際の一人当たりの基準額でありまして、個々の利用者に対する支給量の上限となるものではないということを自治体に対して周知するように計らっているところでございますので、そういう中でまた、自治体においていろいろな措置が行われることもあり得るということで我々としては考えている、こういうことです。

郡委員 今の御発言、ちょっとよくわかりませんでした。しかも、全国課長会議の資料にも、しっかりと国庫補助基準の中でサービスを低下しないようにちゃんと保障するというふうに書いてございます。これはもうほごになったものですか。

柳澤国務大臣 いや、全く委員のおっしゃるとおり、我々としては支援のレベルはこれを維持しようということを考えて、そのように申し上げているわけでございますが、この例そのものについてどうかと言われますと、これはもう少し我々としてちょっと分析をさせていただかないと何とも申し上げようがないということを申し上げているわけです。

郡委員 ですから、言いますように、実態をちっとも把握なさっていないということです。現状をしっかりと見詰めていただきたいと思います。

 とにかく、私からも、ぜひ参考人を呼んでいただく、あるいは全国の自治体に対してしっかりとした調査を行う、そのことをお約束いただきたいと思います。

柳澤国務大臣 国庫負担の基準というのは、あくまでも一人当たりの基準で、市町村に対する給付費の支弁をする積算の基礎ということになっているわけでございまして、個々のケースにつきましては、別にそれが上限になるものではなくて、その範囲内で、支給決定に当たっては障害者の一人一人の事情を踏まえて適切に行っていただきたいということを会議の資料の中でも申し上げているわけでございまして、ぜひそのように現場において実施をしていただきたいということでございます。

 なお、先ほど来、冒頭から申し上げて、また園田先生の御質問に対して申し上げましたように、実情把握ということが必要だということは我々も十分承知をいたしておりまして、今、鋭意、実情把握を全国的に行えるように、情報の収集に努めているところでございますので、もう少し我々に時間を与えていただきたい、このように思います。

郡委員 次に、障害程度区分、これも大変いいかげんなものであったのではないかという指摘をさせていただきたいと思います。

 千葉県の我孫子市では、障害程度区分を決めるツールを、政府が取り決めた百六項目の調査だけではなくて、てんかん発作の頻度や時間の長さ、あるいは危険や危ないことに対して身を守れるかどうかなど独自に八項目を加えて、より実態反映を目指しているということでありますが、この障害程度区分、知的障害者を初めとして大変認定が困難である、評価されないシステムであるという指摘がなされております。

 厚労省からいただきました資料の中でも、一次判定からさらに引き上げたものという資料をいただきましたけれども、大変な数、判定のし直しがされたということになりましょう。この程度区分のシステム自体が既に間違いだったのではないか、もう少し実態に即したツールをつくるべきではないかということを申し上げたいと思います。

 質問させていただく予定でしたけれども、時間が余りありませんので、これは指摘だけにとどまらせていただきたいと思います。

 次に、認可施設がございますけれども、これが制度変更で収入が大幅に減少しているという実態です。これも私がきょうお配り申し上げました資料を見ていただきたいと思います。資料二でございます。これは仙台市がまとめた資料です。このように、各自治体独自の調査というのもしっかりやられているわけです。それを厚労省が把握していないということが怠慢だということを私は申し上げたいと思います。

 この中で、5制度改正による収入の減少に対する施設の対応策の検討状況ということで回答がございますけれども、定員を大幅に上回った形で受け入れざるを得ない、あるいはたとえ体調が悪くても無理やり通所回数をふやさざるを得ない、あるいは人件費の削減をして乗り切るしかないということがこの表から見てとれると思います。

 単価を減らされて、それから利用者の日割り計算が導入されて、これまた宮城の例で恐縮でございますけれども、県南のはらから作業所というところがございます。十一の通所施設を持っておりまして、二百三十人の方々が利用されているんですけれども、大変おいしいお豆腐をおつくりになったりして、あっという間に売り切れるというようなそういう作業所でございますけれども、この運営者の方にお話を伺いました。日割り計算と報酬単価の引き下げで四億円の収入が三億円に減る、つまり、一億円、二五%の収入減である、制度を見直してほしいと強く訴えておられました。

 ただでさえ立ち行かなくなっておりますのに、さらに追い打ちをかけるように、厚労省は各自治体に、この新体系への移行を見込みまして、補助金の二五%の削減というのを通知されております。現場の声というのがもう耳に入っているのではないかと思いますけれども、多くの施設が、年度内に二五%移行するなどとても考えられないというのが東京都の話です。また、埼玉県では、移行実績に即した補助金額の確保を求める要望書を出すんだというふうにおっしゃっているわけです。実績に見合った補助金予算というのを確保していただきたいと思います。いかがでしょう。

柳澤国務大臣 先ほど来申し上げていることですけれども、国の補助金としては、その対象自治体にある、これが都道府県から市町村に大きく転換しているわけですが、その人たちの積算をしているわけでございます。そして、それの国庫補助金というものを市町村に支給している。その中で市町村が、この積算の基礎になった区分ごとの人々のあるいは施設ごとの金額というものが、別に上限を画するものではありませんということを念のため申し上げているわけでございまして、その範囲の中で個々の事情に応じた支援をしていただくということを我々としては希望している、こういうことであります。

郡委員 議論が平行線のままで大変残念なんでありますけれども、十月の十八日、宮城県の大崎市、きょうは自民党の厚労委員会の理事の伊藤信太郎先生もいらっしゃいますけれども、伊藤先生のおひざ元でございますが、そのおひざ元で東北市長会の総会が開かれました。十月の十八日のことでございます。この東北市長会の総会の決議で、障害者自立支援法に関する決議というのがまとめられております。一部の地域だけのことではありません。東北だけのことでもありません。全国津々浦々、このように大変、自治体も困っているし、障害当事者も困っているし、施設運営者も困っておられる。

 これは東北市長会がまとめた決議でございます。読みます。「障害福祉サービス事業者に対し本年四月に導入された日額払い方式は、施設運営に与える影響が極めて大きいことから、実態を踏まえた方式を検討するとともに、報酬単価の見直しの影響を把握した上で適切な単価設定を行うなど、必要な措置を講じること。」東北の各市長さん方も、現場の声をお聞きになって、このような決議文をまとめられております。

 これだけではございません。無認可の施設に対しましてもこれまで自治体が出しておりました補助金というのが、地方は財政状況が厳しいということもあるのでしょう、廃止したり、廃止を予定しているというところが続出しております。

 きょうまた配らせていただいた、これはきょうされんの方々が全国にアンケートしてまとめたものでございますけれども、ごらんいただきたいと思います。補助金が廃止あるいは廃止の予定、検討中、軒並みそうでございます。これでは、移行まで五年というふうな時限が決められておりますけれども、その五年を待たずにこういう作業所がばたばたと閉じていく、やめざるを得ないという状況が出てくるのではないか。地方自治体の個別の問題であって国としては全く責任がないという姿勢で、この事態というのを放置されるのでございましょうか。

柳澤国務大臣 私どもの施策につきましては、正確な理解というか、そういうものが十分行き渡っていないということも非常に、これは、だれのとがかと言われれば、我々の側の説明の仕方が不足しているということがあるわけですけれども、例えば、今先生のおっしゃられた、都道府県で小規模作業所に対する補助金をもう廃止するというような県が多いよというこの図表にいたしましても、これは大きな誤解でありまして、これは補助金の行き先が都道府県から市町村に変わるものですから、都道府県では廃止をしてもらわなきゃ困るわけでございます。そういう制度の変更をただ申し上げているわけですが、それが現象的には、廃止をされる、これは大変だというように受けとめられてしまう。

 それからまた、さきの二五%云々も同じなんですね。二五%云々も同じで、これは、これから六年間かけて新しい事業体系に移行していく、施設をしていく中で、十八年度中に二五%程度が移行していくと見込まれますということを申し上げているわけでありまして、二五%国庫補助金を削減するというようなことでは決してないわけであります。

 ですから、もう少し、我々の方も実態もよく調べますけれども、先生方の方、重要な役目を、実際の現場との橋渡し役として役割を演じていただいておりますので、そこでもうちょっと役所なりに確かめていただいて、正確な情報、正確な理解というものをぜひお引き継ぎいただきたい、このようにお願いを申し上げる次第です。

郡委員 ですから、まだまだ国の方はその実態というのを把握していなくて、制度を決めて、今二五%移行する見込みだということでのものだというふうにおっしゃいましたけれども、それも実態に即していないのですよということです。

 まだまだたくさんございまして、時間も限られてきますので、これは申し上げるだけにいたしますけれども、移動介護というのが、今般の制度改正で、地域生活支援事業と、これも各自治体の事業に変わりました。これでも自治体の財政力によって大変大きな格差が生まれております。また、利用時間も大変低目に設定されているということが調査で出ております。

 ちょっと読ませていただきますと、移動支援、十一月からは原則一カ月十二時間、たった十二時間では社会参加と言えるのだろうか、家族の顔色をうかがって外に連れていっていただくしかない、これで自立とはよく言えたものだ、これは神奈川県の座間市の方です。あるいは、移動支援が一律二十時間に下がってしまった、これまで移動介護が五十時間だったものが二十時間に減った、これは東京都東久留米の方です。

 このように軒並み下がっているわけですけれども、障害を持った方々の移動支援というのは、通院をする、あるいは買い物をする、理美容に行く、地域で生活するに当たって、自立に欠かせない大変重要なサービスであります。これが軒並み下げられている。これも裁量的な経費で賄う地域生活支援事業にした結果、予算不足、支給の引き下げなど、私たちがこの間の特別国会で審議をした折に大変心配だと指摘させていただいたことがそのまま、やはり現実のものになってきている。十分にこれも御検討いただきたいと思います。

 そもそも、この障害者自立支援法、大変たくさんの政省令にゆだねられまして、本格施行まで時間がなかった。今自治体では、先ほど園田委員も述べましたけれども、大変な混乱を来しております。十月始めるけれども、九月議会に条例をどういうふうにつくっていいのかわからないと、九月の中旬まで言っておられるんですよ。これを厚労省が自治体にしっかりお伝えになったのは九月の三十日のことだったと思います。

 こういう状況で、スムーズな制度移行ができるのかどうか。そもそも日程に無理があった。そして、自治体の方々がマニュアルとして使うという大変分厚い資料ですけれども、これもまだ最終版さえ届いていない、事務処理ができないという状況を訴えておられます。

 これは、国として、地方に責任を全部投げちゃったんだということではありません。この国として、障害者の福祉をどういうふうにするのかをもう一度お考えいただいて、地方の実情をしっかり把握いただいて、私ども民主党は障害者自立支援法に対する改正案を出させていただきました。この集中審議をぜひお願いをしたい。そしてまた、皆さんたちの生の声をこの国会の場でぜひ言っていただきたい、大臣にお聞きいただきたいと思います。

 そのことを御要望して、私の質問を終わらせていただきます。

櫻田委員長 次に、山井和則君。

山井委員 これから三十分間、柳澤厚生労働大臣に、続きまして自立支援法についてお伺いをさせていただきたいと思っております。

 まず何よりも、柳澤大臣には、これからしばらくこの委員会でお世話になりますが、どうかよろしくお願いを申し上げます。

 また、この間、先ほど柳澤大臣からもお話がありましたが、障害福祉部の方々におかれましては、全国の実態調査、本当に早急にしていただいたんだと思っております。この間、ここ一、二年になるかもしれませんが、自立支援法の施行に対して一番残業が多い部が障害福祉部ではないかと思っております。そういう中で、いろいろこちらの資料要求にもこたえていただいたことに心より感謝を申し上げたいと思っております。

 また、何よりも、きょうも福島議員からも自立支援法の質問がありましたが、こういう障害者福祉は、特に党派を超えて、やはり障害のある方、もちろん望んで障害を持って生まれておられるわけではございませんわけですから、こういう障害者が社会で、そして望めば地域で暮らせる社会、自立生活をできる社会をつくっていく、これは党派を超えた願いであると思いますし、特に国会議員は、こういう弱い立場の方々の声を真摯に受けとめていかねばならないと思っております。

 私、この三十分間を使ってやりたいのは、柳澤大臣、現状認識なんです。要は、現状認識が間違っていると対策が間違うのは当たり前なんです。もう施行されて半年もたっております。そして、その現状認識として、このたび厚生労働省からペーパーが出てまいりました。私が配付させてもらいました「障害者自立支援法の実施状況について」、一から五ページまででございます。月曜日にこれが発表になりました。

 そして、私、今回お願いをしまして、もとの二十六都道府県の生データというのをいただき、同僚議員とともに読み込ませていただきました。大体、量でいいますとこれだけあったわけですけれども、二十六の原本を読ませていただきました。一言で言いますと、地方自治体からの悲鳴ですね。それとこの五ページの厚生労働省の発表とに、かなり落差があるのではないだろうかというふうに私は感じておりますので、そのことを一つ一つ議論をしていきたいと思っております。

 そして、この資料の中の最後から二ページ目、通し番号でいきますと二十四ページ目に、先ほど園田議員、郡議員からも言及がありました、我が党の障害者自立支援法改正法案というものの要旨についてお配りをさせていただいております。簡単に申し上げますと、応益負担、定率一割負担を緊急事態として今は凍結する、やはりサービスの利用抑制や不安が非常に高まっているから、これを一たん凍結する。

 そしてまた、今、郡議員からも切実な話がありましたが、作業所、グループホーム、そして多くの事業者が、このままではやっていけないという悲鳴を上げておられます。やはりこの方々が存続していけるように、今までのサービスが維持できるように、そういう支援をしていくということ、そして、この六つの緊急提言というものも述べさせていただいております。ぜひとも、この法案の審議、そして集中審議や参考人質疑をお願いしたいと思っております。

 それで、早速入らせていただきますが、まず大臣にお伺いします。

 今回、〇・三九ショックと言われているんですね。この資料の八ページ、新聞に出ております。「負担増で利用中止〇・三九%」「障害者〇・三九%が施設利用中止」、〇・三九、〇・三九と。これを見ると、八ページに新聞のコピーがございますが、ああ、割と低いのかなというふうに、一般の人が見るとそういう印象を受けるわけで、これ自体が、現場からすると、何かちょっと自分たちの現場の実感と違うなという意識があるわけです。

 そこで、柳澤大臣に事実としてお伺いしたいんですが、今回、通所施設、入所施設の利用を中止した人は実数として何人で、それは何%に当たるのか、そのことをお答えください。

柳澤国務大臣 これは実数を調査したということがなくて、率でもって答えていただくというか、公表されたものを集計したということでございますので、実数は、今ここでというか、我々のところでは把握しておりません。

山井委員 本当にそんな答弁でいいんですか。これは全部実数が書いてありますよ。質問通告もしてありますし。時間もないんですから、質問通告したことぐらいぱんと答えてくださいよ。

 答えられないのなら時計とめてくださいよ。こんなことで、ちょっととめてください、一たん。委員長、とめてくださいよ。これは通告している話ですから、ちょっと一たんとめてください。

櫻田委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

櫻田委員長 速記を起こしてください。

 柳澤厚生労働大臣。

柳澤国務大臣 今手元に持ち合わせておりませんけれども、原資料に当たって調査をさせていただけば、あるいは実数の把握ができるかもしれません。

山井委員 いや、ちょっと待ってください。これは通告していることですから、それでは通りません。これでは納得できません。きのう通告したんだから。それはだめですよ、そんなの。そんなんじゃ質疑する意味ないじゃないですか。それはちょっと困りますよ。頼みますよ。

 ちょっととめてください、一たん。まず時計とめてくださいよ。三十分しかないんですから、ちょっととめてくださいよ。

櫻田委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

櫻田委員長 速記を起こしてください。

 柳澤厚生労働大臣。

柳澤国務大臣 大変失礼しました。

 資料を探しまして、十四府県の単純な合計によりますと、百八十五名の人がこのサービスを中止したということを掌握しまして、今申し上げた〇・三九という計数を計算した、こういうことでございます。

山井委員 これも質問通告してあるんですが、その入所と通所のパーセンテージはそれぞれ幾らですか。

柳澤国務大臣 十四府県のうちで、入所施設の退所者数が三十四名、通所施設の中止者数が七十九名、このように掌握しております。

山井委員 ちょっと、三十四と七十九を足したら、さっきおっしゃった百八十にならないですよ。

 ちょっととめてください。ちょっと待ってくださいよ。委員長、ちょっととめてくださいよ。こんなことをやっている時間はないんですから。ちょっと頼みますよ。

櫻田委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

櫻田委員長 速記を起こしてください。

 柳澤厚生労働大臣。

柳澤国務大臣 今回の調査におきまして、県の公表をもとに我々集計をさせていただきましたので、一部の県については入所、通所別の申告がなかったということで、今のは、十四府県のうちデータが明らかな府県における入所、通所別の人数を申し上げたということでございます。

山井委員 誠実に対応していただきたいです。実数とパーセンテージを質問通告で言っているんですから。

 それで、私の事務所で計算したのがこの半ぺらのページで配っております。そちらと微妙にカウントが違うかもしれませんが、通所の場合は〇・七四%、入所の退所率は〇・一七%となっております。もしかしたら、計算方法で多少違うかもしれませんが。これはまた後で触れますが、次の質問に行きます。

 それで、どういう現状かということで、長野県の調査にはこういうことが書いてございました。

 事例一、サービスをとめた、または減らした例、資料の六ページですね。工賃が一万円だけれども、利用者負担が今回の自立支援法で一万二千六百八十七円に上がった。その結果、工賃を上回る利用料を払うことになったわけですね。ホームヘルプサービスの利用時間を五時間から三時間に減らした、買い物や外出などに利用していたが、自分でできる範囲で頑張ることとし、行事等の参加は我慢する。行事等の参加を我慢するようになってしまったわけですね。

 次の事例二は、工賃が二万五千円だった方が、利用者負担が二万二千円になった。その結果、工賃と同じぐらいの利用者負担金を払わねばならなくなったため、通所をやめた。

 そして、事例三では、工賃より高い負担金を払った例として、一万五千円の工賃だった方が、二万九千円も利用者負担を払うことになってしまった、こういう事例なわけですね。

 柳澤大臣、次の七ページでありますが、次は沖縄の調査であります。こういうサービス利用を中止した方がどうしているかという調査があります。在宅でサービス利用なし十一人、その他・不明六人。就職または就職活動中、これもどうしているかというのがまだめどが立っていないわけですね。過半数の方がサービスを受けていられないなり不明なわけです。

 柳澤大臣、やはりこれは自立支援法の負担増の影響でサービス利用を中止して、そしてどうなっているかわからない、この実態調査というのは早急にしないとだめだと思うんです。

 ことし三月一カ月だけでも、去年は一件だったのに、ことしは六件も障害者あるいは障害児が親から殺されて、親も自分の命を絶つという無理心中が起こっているんですね、六倍も。もしこれが引きこもってしまって、本当にそういう虐待とか事件にでもなったら大変ですから、法律によってサービスも受けずに家にいるようになられたんですから、この実態調査をしていただきたいんですが、大臣、いかがでしょうか。

柳澤国務大臣 今お触れになられたそういうことが起こっては断じてならないんです。

 したがいまして、私ども、こういうように、先ほども民主党の先生方もこの方向性というものについては、一定のとあえて言わせていただきますが、一定の御理解がいただけている。現場がこれをどう受けとめるかということの実態の把握が非常に大事だ、これも全く仰せのとおりだというふうに私も思っておりまして、部内を督励し、また都道府県、場合によっては市町村の方々に大変御負担、御迷惑になるかもしれませんけれども、早急にとにかく実態把握をしたい、このように考えて、その方向で今努力をしているところです。

山井委員 こういうサービス利用を中止、中断された方の実態調査、ぜひ今のお言葉どおり早急にやってください。

 次に、十ページに行きます。

 厚生労働省からいただいた資料で、宮崎県が、中止をされた方が〇・〇%という回答が返ってきました。でも、〇・〇%というのはおかしいと思われませんか。

 次のページを見てください、十一ページ。それがその宮崎県の中身です。

 確かに、利用者負担増による退所者はゼロであります。しかし、制度そのものに不満がある者、例として、工賃以上に負担したくない、利用者負担をしてまでサービスを受けようと思わない、二人。これは利用者負担増が原因じゃないですか、まさしくこの二人も。だから、これは、例というのはおかしいわけですよ。そういうふうに、このデータにはさまざまな問題点があります。これも指摘にとどめておきます。

 次に行きます。

 十二ページ、千葉県のデータであります。今回の厚生労働省の発表の中でそのことがどうなっているかというと、三ページで、千葉県では通所日数を減らすなどの利用控えは〇・六%と出ているわけですね、利用日数を控えるとかで。ところが、この千葉県のもとのデータ、十二ページを見てみると、身体通所で三・四%、知的通所で一・四%。三・四と一・四の平均が〇・六になるのはおかしいんですね。要は、これは入所をまぜているから、薄まって数字が下がっているだけなんですよ。

 柳澤大臣もこの十二ページを見てもらったら、三・四と一・四の平均が〇・六になるはずないことはすぐわかると思います。これも答弁を求めませんが。ところが、厚生省の発表を見ると、通所日数を減らすなどの利用控えが〇・六%と見ると、これは通所施設で利用控えが平均〇・六%と普通は読めるわけなんですよ。

 こういうふうなデータ一つ一つを見ても、今回の発表というのが極めて、私が一日かかって見ても、明らかに数字がおかしいということが出てきているわけであります。これはもう指摘にさせていただきますが。ですから、この千葉県の例でも、通所だけ考えたら、利用抑制は一・八%なんですよね。〇・六の三倍あるわけですよ、通所施設の控えは。

 次に、グループホームのことに移らせていただきます。

 今回の厚生労働省の発表で、グループホームが、伸びた給付が一六・六%で、着実に伸びているということが書かれています。「「地域移行」を進める上で中核となるサービスとして着実に伸びている。」と。

 しかし、こちらの資料の十三ページを見ていただきたいと思います。朝日新聞の記事でありますが、「減収 伸び悩む自立の家 グループホーム」と書いてありますね。二〇〇三年から毎年十カ所ずつ知的障害者のグループホームを新設してきた川崎市、しかし、国基準の事業収入は、支援費時代の三、四割減、これが、法人がホーム新設に踏み切れない最大の理由だと。現場の声を聞いたら、グループホームをふやせないといって苦しんでいるじゃないですか。でも、厚生省の発表によると、「「地域移行」を進める上で中核となるサービスとして着実に伸びている。」これはどっちが本当なんですか。

 そして、その次の十四ページ。栃木県では、四グループホーム閉鎖、報酬が減って。障害者自立支援法が影響、運営困難に。

 大臣、私は、言い出したら切りがないんですけれども、厚生労働省の今回の発表と現場感覚と、これはかなり開きがあるんですよ。

 大臣にお願いしたいんですが、先ほど郡議員から小規模作業所の話もございました、こういう作業所やグループホーム、四月以降に閉鎖になったところが幾つあるのか、一度調べていただけませんか。

柳澤国務大臣 これは、いろいろと厚生労働省としても工夫をしていまして、一つ一つのグループホームではなくて、一つのグループホームのネットワーク化というか、そういうもので一つの事業体としてとらえて、いろいろ条件を満たしていただくということの中で、今我々の提示している報酬でもって運営していただくというような、ある程度工夫をしていただくということを前提に私どものスキームをつくらせていただいている、こういう事情もございます。

 ただ、今先生おっしゃったように、報道等にそういうことがあるということもよくわかりますし、それからまた、なお我々として実態を把握していかなきゃいけない、その努力はさせていただくつもりでございます。

山井委員 ぜひ、その実態を、グループホーム、作業所、どれぐらいつぶれてしまったのかというのも調べてほしいと思います。

 それで、今回の厚生労働省の発表で不思議なのが、施設の中止、通所の中止のことは書かれているんですが、その通所以外の在宅サービスの抑制などについては全く書かれていないんですね。利用控えに関しては〇・六%から二%だと。本当にこれは〇・六%から二%なんですか、利用控えは。在宅サービスはどうなっているんですか、大臣。

 それで、実際、事例で説明します。十五ページを見てください。熊本県はどう書いているか。熊本は非常に知事さんも熱心なところです。退所または利用中止は一%、そして利用減少は回答総数の六%、こうなっていますよ。実際にも書いてありますように、利用者負担増による退所または利用減少の傾向が見られ、いろいろな国の措置があっても、利用を継続できないケースがあらわれている。次に、家族の負担感が大きくなった。そして最後に、今後も退所や利用控えを考えざるを得ないケースが潜在しているものと思われる。また、事業者も収入減少による事業運営の困難性を感じている。

 このような施設、通所だけじゃなくて、ほかのサービスについてもどうなっているか。次のページに行きます。十六ページ、長野県の例。一つ二つだとそんなところばかり取り上げているのかと思われますから、大臣、十六ページを見てくださいね。長野県では、自立支援法によるサービスをやめた、または減らした人が十七人、ホームヘルプ、デイサービス、通所授産、タイムケア、そして下に、七人の方は外出や旅行の費用を削減した、六人の人は趣味の費用を削減した。

 そして十七ページ、次にこれは沖縄です。「障害者孤立支援法? 施行後に負担急増 居宅サービス県内六十四人中止」、ホームヘルプでは三十二人、デイサービスでは三十人、ショートステイ二人、そのうちホームヘルプでは子供が十七人、子供のデイサービスが十人利用中止。本当にこれは、大人も大変ですけれども、お子さん、障害児がこういうサービスを利用中止せねばならないというのは、本当に私は涙が出るぐらいかわいそうだというふうに思います。

 大臣、こういう在宅のサービス中止や利用抑制、ここは一切、今回発表されていないんですけれども、こういうことは調査してやはり発表していただくべきだと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

柳澤国務大臣 都道府県の調査では、居宅サービスの利用についてデータをとっているものもあるが、この調査の方法と指標がさまざまでございますので取りまとめることが困難であった、こういうことでございます。そして、私どもが活用、利用可能なデータとしては、定点市町村、百四市町村における居宅サービスの費用の動向であったということで、それが前年同月比八・五%だということから、私どもとしては、全体としてサービスの利用量が増加しているものと、この数字を酌み取る限りではそのように理解をした、受けとめた、こういうことでございます。

 なお、我々として、今こうした問題についても実態調査をすべく努めているというのが現状でございます。

山井委員 ですから、柳澤大臣、重要なのは、こういう調査結果が既に厚生労働省に入っているわけですよ。施設も厳しい、ホームヘルプの利用中断、抑制が数%あると。にもかかわらず、公表されているのは、〇・六%とか二%とか低い数字ばかり公表されているわけですよ。これは明らかに誤解を招くんじゃないですか。もしトータルな調査ができていないんだったら、それができるまでその部分に関しては控えて、低いところもあるけれどもこんな高いところもあるとちゃんと書かないとだめじゃないですか。今、サービス量はトータルとしてはふえているという話でしたが、一人一人が大事なんですよ。

 例えば、十八ページを見てください。これも今回の調査に入っているものです。大阪府、全体のサービス量はふえていると厚生労働省は大本営で発表しています。しかし、大阪の資料、十八ページを見たらどうなんですか。一人当たりの利用時間数、日数、大臣、十八ページを見てくださいね。利用時間、居宅介護一・四時間減、身体介護二・七時間減、家事援助一・四時間減、デイサービス〇・五日減、施設通所支援二・三日減というふうに、軒並みこれは、ほぼ全部マイナスになっているじゃないですか、一人一人の利用時間も利用量も。これで利用抑制が、〇・六%とか二%とかと違うでしょう。軒並み一人当たりが、みんなこれはサービスが減っているじゃないですか。

 次の十九ページ。大阪だけじゃないですよ。大分県でも、利用人員は三月から六月で十人だけふえています。でも、居宅介護の平均利用時間数の推移は、三十三時間から二十九時間に減って、トータルで六千四百時間もホームヘルプの時間は減っているんですよ、この大分県も。

 そういうことが何で今回の実態報告書で、こういう報告が届いていながら、なぜ表に出していないんですか。これは、やはりおかしいんじゃないですか、入っているんですから。

 次に、施設のことにも行きたいと思います。

 これは、京都新聞のきのうの朝刊一面記事であります。二十ページ。「障害者施設 年収一割減」、一施設につき千四百万円の減額というのが出ております、京都新聞。府南部の運営者は次のように語っています。「利用者負担の増加で、通所をやめたり、退所する障害者が出ている。これが施設経営を圧迫してサービス低下を招き、家に閉じこもる障害者を増やしている。これでは自立支援とはとても呼べない」、京都府の保健福祉部は「「国の想定と施設の実態に隔たりがある」とみて、国に改善を求めている。」というふうになっているわけです。

 これは、柳澤大臣、先ほど申し上げた、トータルだけじゃなくて、一人当たりの在宅サービスが減っているのかふえているのか、それと施設の年収が減っているのかふえているのか、このことを早急に調査していただきたいんですが、いかがですか。

柳澤国務大臣 いろいろ山井先生、非常に広範に資料を収集され、また、実際に非常に膨大な資料を分析されたということからいろいろ御質疑を、御指摘をいただいているわけですけれども、私どもとしては、このサービスの趨勢を給付費の趨勢でもって推しはかることができるだろう、こういうことで、そういう指標でもって一応の趨勢をつかむ、こういう努力をしたということでございます。

 今先生から、そんなことだったらもうちょっと、全部悉皆の調査ができ上がった後で結果を公表すべきでなかったかということもございますが……(山井委員「いや、既に入っているということですよ、調査に」と呼ぶ)既に入っているんですけれども、それが全部集計できる同じような様式のものでないと、なかなかそれを集計することは難しい、こういうこともございまして、もともとが、こちらから全部様式を決めて、それに基づいてその実態の調査結果を申告してもらうというようなことではなくて、むしろ都道府県側の自主的な調査の結果を我々収集させていただいた、こういうようなことがありまして、集計についてはやや限界があったということでございます。

 したがいまして、個々に当たりますとまたいろいろな事例が出てくることは当然でございますが、今申したように、こういう福祉の制度というのは個々のケースが大事だということも御指摘のとおりですので、我々としてはさらに実態の把握に努めて、必要な、もし欠くるところがあればそれを補っていく、そういう措置をとってまいりたい、このように考えております。

山井委員 二十三ページにきょうされんの調査があります。きょうされんのデータについては厚生労働省も今回の発表で引用されていますが、例えば、きょうされんの調査では、四月から七月の通所施設の利用断念、抑制、そして断念を考えている、食費や利用料を払えない、そういう方が、身体に関しては七%、知的に関しては五%、精神に関しては九%なんですよ。

 繰り返しますが、これは断念だけじゃないですよ。断念予備軍と言われる、断念を検討している人、利用料や食費を払えなくなった人、抑制をしている人、多少これは重なりがあるかもしれません、もしかしたらちょっと高く出ているかもしれません。しかし、〇・三九やそういう数字ではなくて七%、五%、九%。特に精神は十月から新しく制度に入ってきますから、ますます深刻な問題もあるわけですね。そう考えてみると、現状認識、かなり今回の発表と違うのではないか。

 それと、最後のページ、佐賀県です。

 佐賀県も、下線を引きましたが、利用中止が一・六%、デイサービスでは利用中止及び利用を減らしたのが三・七%というふうに非常に深刻な問題になっているわけです。

 ですから、大臣にお願いしたいのは、確かに今回はフォーマットを決めてお願いをしたのではなかった、これは仕方ないんです。しかし、事ここに至った以上は、やはり二十六だけじゃなくて四十七都道府県に、最低限これだけは調べてくれ、そうしないと、どう見直していいのか、見直さなくていいのかわからないから早急にやってくれということをぜひ言ってほしいんですよ。

 もちろん都道府県も大変ですよ。でも、これは当事者と親御さんが本当に一番切実なんですよ。本当に困っておられます。悲鳴が上がっているんです。ぜひその調査を早急にやっていただきたい。これはぜひお願いしたいんです。

 柳澤大臣、お願いいたします。答弁をお願いします。

柳澤国務大臣 我々も、制度の改善、あるいは私どもが想定したとおりに円滑に運営されていないというようなところがあれば、これは早急に手を打っていかなきゃいけない、こういうように思っております。

 そのための実態調査がどういうことが有効であるか、どういう調査をしたら一番負担が少なく、また時間もかからず、また我々に有用な情報を与えてもらえるか、こういう観点で、調査方法についてもよく工夫をしてこれから取り組んでまいりたい、このように思います。

山井委員 これは本当にせっぱ詰まっていますので、早急にやっていただきたい。

 それで、二十二ページには、今度、自己負担への軽減策が全国の自治体で行われている。今回の自立支援法は、市町村の格差をなくするというのが目的だったはずです。でも、柳澤大臣、逆に、軽減策をやっている自治体とやっていない自治体でどんどん格差は開いているんですよ。それに対して厚生労働省はまだ調査もやっていないんですが、柳澤大臣、どの都道府県、どの市町村が自己負担に対してどういう軽減策をやっているか、この調査をやはりやるべきじゃないですか。

 柳澤大臣、お願いいたします。

櫻田委員長 申し合わせの時間が経過しておりますので、御協力願います。

 答弁は簡潔にお願いします。

柳澤国務大臣 これは、市町村として現実にいろいろな工夫をする、その工夫は、単に利用者の負担軽減ということだけではなくて、それぞれの地域の実情に応じて、やはり市町村も一つの財政団体でありますから、効率というようなことも考え、また利用者にとって温かいものである、そういうようなことを総合的に考えて、恐らくいろいろな支援策を講じていっていただいているんだろう、このように思います。

 そういうものを、単に一つの次元である利用者負担をどれだけ軽減しているかということ、そういう角度だけから見て調査を進めるということについては、我々は極めてちゅうちょを感ずるわけでありまして、市町村の取り組みはいろいろバラエティーがあってしかるべきで、それを一つの観点から調査結果に結びつけるというのはやはり難しいというふうに考えているわけでございます。(山井委員「委員長」と呼ぶ)

櫻田委員長 既に持ち時間が経過しておりますので、質疑を終了していただきたいと思います。

山井委員 もうそろそろ終わりますが。

 それで、最後に申し上げますが、二十一ページの滋賀県の報告書に、大臣、どう書いてあるか申し上げます。「制度の変更が、利用者にも事業者にも急激な変化として実際に影響が及んでおり、何らかの対策を講じないと、地域の福祉資源が衰退するなど「入所施設から地域生活への移行」という滋賀が進めてきた施策の目標が実現できなくなる懸念があります。」

 自立支援法によって、滋賀も大阪も全国で最先端を走って、障害者が地域で暮らせる運動を進めてきたわけですよ。そういう運動がこの法律によって頓挫しかねない。また、十年、二十年、親や地域の方々がお金を出して、バザーをしたりして、小規模の作業所をつくってこられた。そういう作業所が今つぶれたりもしている。利用抑制になっている……

櫻田委員長 山井和則君に申し上げます。

 申し合わせの時間が経過しておりますので、ぜひ御協力をお願いします。

山井委員 そういうことですので、ぜひともこれは集中審議や法案審議、参考人質疑をやっていただきたいと思います。

 最後に申し上げますが、もし時間のことをおっしゃるのでしたら、今後、通告したことにはちゃんと答えていただきたい。そういうことをやっていただかないと、こちらも計算しているんですよ、三十分ということで。通告したことぐらいちゃんと答えてくださいよ、今後。そうしないとこういうことになってしまうでしょう。

 ということで、最後に……

櫻田委員長 山井和則君に申し上げます。

 既に持ち時間が経過しておりますので、質疑を終了していただきたいと思います。

山井委員 最後に、法案審議、参考人質疑、集中審議を理事会で諮っていただきたいと思います、委員長。

櫻田委員長 ただいまの件につきましては、理事会で協議させていただきます。

山井委員 これにて質問を終わらせていただきます。

櫻田委員長 次に、田名部匡代君。

田名部委員 民主党の田名部匡代でございます。

 柳澤大臣、もうたくさんの皆様から大臣御就任おめでとうございますというお言葉をいただいて聞き飽きたかもしれませんが、私からも一言、大臣御就任おめでとうございます。

 ぜひこれからもしっかりと、この厚生労働関係について大臣ともいい質疑をさせていただきながら、国民のために頑張っていきたい、そのように思っております。

 時間がございませんので、私も三点質問させていただきたいと思いますが、まず初めにリハビリテーションの診療報酬改定についてであります。

 強行採決されました医療制度改革において、リハビリの診療報酬改定も行われました。この大幅な改定によりまして、現在リハビリを受けている方の七割から八割、その方々が今後リハビリを受けられなくなるのではないかということが言われております。まさに今全国の患者さんから不安と救いを求める声というものが届いております。これは私の地元青森県でも同じであります。

 もちろんそのすべてが百八十日という期間で打ち切られるわけではございません。そのことは十分承知をいたしております。その点について申し上げるとすれば、不安を抱えている患者の皆様や混乱している医療現場への周知徹底を図る努力というものが足りなかったのではないだろうか、こんな短期間の間に決定をして実施をするのであれば、なおさらのこと、もっともっときめ細やかな周知徹底を図る必要があっただろうというふうに思っております。

 ただ、現に、全国の、あるリハビリ関係の専門職を配置している、それが手厚い配置をしている医療関係に調査をした結果を私も拝見いたしました。六千人を超える患者さんが既に治療を打ち切られてしまったという結果が出ておりました。逆に、患者さんの回復を信じて、医療報酬を算定せずにサービスでこれを継続しているといったことも現場では行われているそうであります。

 実は、先日、我が青森県では、東京大学名誉教授の多田富雄氏の御出席のもと、リハビリ上限見直しのリレートークというものが行われました。残念ながら私は出席をすることができなかったんですけれども、そこに御出席されました多田先生、大臣も御存じかと思いますけれども、御自身が脳梗塞で倒れられ、その後リハビリを続けられながら病気と闘ってきたという、それが多田先生であります。

 その多田先生のホームページ、近況報告というところを拝見しました。リハビリ打ち切りは人権の問題、生存権の問題なのだと書かれてありました。生まれて初めてこういった市民活動に参加をしたそうであります。体がきかないので大変な毎日であった、奥様との協力も含めて本当に大変だったということが書かれてあります。しかし、この運動にかかわったことを、誇りであり後悔はしていない、そして最後の方に、日本はいつからこんな冷たい国になってしまったのか、行動を起こさないと急速に二流の国民になってしまう、そんなことが書かれてありました。

 国では急性期のリハビリを充実いたしました。そのことは大変重要なことだと私自身も思っております。ただ、維持期のリハビリが医療からカットされてしまった。厚生労働省は、維持期のリハビリは介護保険で可能だというふうに言っておられますけれども、いただいた御意見の中には、介護保険でやろうと思ってもなかなかその場所が見つからないというような声も届いております。

 また、介護保険のリハビリは、量も質もきちんとしたものが準備されているのか、そしてその受け皿というものはしっかりと必要な分だけ準備されているのか、そういった予測すら行われていないのが実態ではないでしょうか。またさらには、介護保険のリハビリは、六十五歳以上を対象に、医学上の判断とは別に、介護の必要度に応じて認定審査会が評価するサービスの量の枠内でケアプランに沿って選択することになるわけであります。

 こういった多くの問題、課題を抱えたまま、急いでスタートしてしまったこのリハビリのことについて、大臣は一体どういうふうにお考えになっていらっしゃるのか。これは来年二月までに検証をまとめるというふうに厚労省の方でおっしゃっておりますけれども、本来、これだけたくさんの悲鳴が上がっているのであれば早急に見直しをするべきではないかと思われますが、大臣、大臣のお考えをお聞かせください。

柳澤国務大臣 リハビリテーションの今回の期限の設定は、結局、事態、状態が改善しないままに同じような医療の資源を投入していくということはある意味で合理的でないのではないか、そういう方々は逆に介護の方に移行していただくということが合理的ではないか、こういう考え方からこういう制度を導入させていただいたということでございます。

 だから、もちろん急性期とか回復期の最初のところは、今田名部先生も御指摘いただいたように、これは集中的にリハビリを行っていただく、そういうことのための加算もした、こういうことでありまして、最も回復に応じた手だてを講じていくということにふさわしい制度にさせていただいたということが基本でございます。

 この制度について検証すべきだというお話でございますけれども、私どもとしてもそういうことを考えているということでございます。

    〔委員長退席、宮澤委員長代理着席〕

田名部委員 本来であれば、実態がどうなっているのか、どのぐらいの人がこの制度を改定されたことによって大変な思いをするのかということを、先にもっときちんとしたものを検証すべきであったんだろう、こうして来年の結果を待っている間にも何千人もの人が苦しい思いをしているんだということを、ぜひ大臣を初め厚生労働省の皆さんには感じていただきたいというふうに思います。

 そして、今行われている検証も、先ほど山井先生からもありましたけれども、障害者自立支援法と同じであります。一人一人の状態のことをきっちりと把握できるような、そういう検証をしていただいて、一くくりで、この状態の人はここから先はよくならないだろうということではなくて、一人一人の判断を、いい状態に持っていけるような判断を国ができるように、きちんとした調査を早急にやっていただきたいというふうに思っておりますし、もちろん日数制限の廃止ということが求められるわけでありますが、少なくとも除外規定の拡大やその明確化というものを行っていただきたいということを御要望申し上げて、次の質問に移らせていただきます。

 午前中も少しお話がありました子供の命にかかわることについてであります。

 まず、皆様もまだ御記憶に新しいことと思いますが、先日、京都におきまして、三歳の男児が虐待で餓死するという本当に悲しい事件が起こりました。この事件は、守れたはずの大切な命でありました。救えたはずの命だったんです。私は、救わなかったと言ってもいいのではないかというふうに、大変怒りを感じています。

 午前中も、副大臣から残念であったというお言葉がありました。そして大臣からも、新聞報道を見ますと、残念であったと。私はもっと怒っていただきたいと思うんです。一つの命が奪われたんです。一つの命に対して、できることがあったのにやらないで命が奪われたにもかかわらず、残念だったと。私は、国としてもっともっと怒りを持って指導していただきたい、そのように思っています。

 まず一つ、その男児のお姉さんが虐待で保護されていました。当然その時点で、兄弟への虐待が起こり得るだろうと、なぜこれを疑わなかったのか。基本的なことであります。仮に安全のように見えたとしても、それでもその家庭に対しては十分に留意すべき必要があったはずであります。

 そして二点目。児童相談所に対して住民からの通報が数回にわたりありました。しかし、適切な安全対応、安全確認をしてこなかったんです。

 先日、その事件のあった地元出身、我が党の泉健太議員から地域のことをいろいろ教えていただきました。地元の町内会というのは本当に人々の交流が深く、また住民意識が高いところだそうです。そういう中にあって、加害者は子供と一緒に外になかなか出てこない、そして家からは泣き声が聞こえ、家からはだしで出されたり、あざをつくったりというものが何度かその地域住民によって確認をされていたそうであります。そして、住民は通報したんです。児童相談所に住民は通報しました。つまり、住民側の機能は果たされていたんです。しかし、児童相談所は通告扱いしませんでした。

 山田知事は、判断が甘かったというふうにコメントをされています。国の判断としても、今回の児童相談所の判断、それは明らかに間違いだったとお考えでしょうか。今回の対応は間違っていたとお考えでしょうか。大臣のお気持ちをお聞かせください。

    〔宮澤委員長代理退席、委員長着席〕

柳澤国務大臣 児童相談所の判断というのは、やはり、起こったことからすれば、明らかに間違いであったということは明確に言えると思います。

 私ども、こうした場合のどうした対応がいいかということについて一つのマニュアルを示しているわけですが、そこには、まずこうした情報提供があった場合には直接目視ということが基本ということが記されているわけですけれども、それが遵守されなかったということは極めて遺憾なことである、このように考えております。

田名部委員 マニュアルとかシステムづくりというのは確かに必要なことかもしれません。しかし、今大臣からお話があったように、今回の場合、本来、足を運んで子供の安全を確認すべきだったんです。どんなマニュアルがあろうと、どんなシステムがあろうと、そこを担当する、そこにかかわる個々の資質、そこが上がらなかったら、私は同じことが繰り返されるのではないかというふうに思っています。大変専門的なお仕事であります。

 私も、地元八戸の児童相談員の方からいろいろなお話を伺いました。本当に現場ではたくさんの苦労を乗り越えて、子供たちのことを考え、そしてその親御さんとの話し合いを重ねながら、何とかいい形で家庭を築いてほしいということで努力をしておられました。たくさんの御苦労がおありなのも十分わかります。しかし、その一人でも、そこに気持ちがないというか、こういったような事件を起こす、直接安全を確認しに行かない、するべきことをやらないという人がいたのでは、先ほど申し上げたとおり同じことが繰り返されるわけです。

 そこで、今、この児童福祉司の資格の話でありますけれども、児童福祉司の配置、それも、本来、人数が足りないんじゃないかということが一つあります。それと、児童相談所の担当職員、これは所長にだけ研修が義務づけられているというふうにきのう御説明をいただきました。しかし、本来、そこに携わる全員がちゃんとした研修を行うべきではないだろうか、それを義務づける必要があるのではないかと考えますけれども、大臣、いかがでしょうか。

大谷政府参考人 京都府におきます児相の職員の配置でありますが、児童福祉司につきましてはこの数年間で二名増員するなど、京都府としては取り組んでいただいておったということも事実でございますけれども、結果として、その職員がこういった事態を防ぐことができなかったということは、まことに申しわけないことだと考えております。

 研修につきまして、今お話にありましたように、所長についての研修というものが前回の法律改正で義務づけられたわけでありますが、福祉司につきましても研修の充実ということでこの数年間取り組んできたわけでありますけれども、今回またこうした事件が起きたということで、当面、京都府においても今、児童虐待検証委員会を設置して、来週にも会合が開かれると聞いております。

 私どもも、こうした場に専門家あるいは担当官を派遣して、こういった事実が本当にどこにその病根があったのか解明した上で、また再発しないような事例の蓄積なり、それから研修、指導に努めたいと考えております。

田名部委員 それとあわせて、国でも随分いろいろな努力をされて、各自治体に指導されているというのも承知をしております。ただ、前回の法律改正で、地域住民に通報の義務を課しております。地域住民には、虐待の疑いがある場合ちゃんと通報するようにということが義務づけられているにもかかわらず、受ける側の児童相談所の側もしくは各自治体の窓口、そういったところの対応がきっちりしていなければ、幾ら通報してくれたって何の解決にもならないんです。

 地域住民にそういった通報を義務づける、これはやはり大事なこと、大変いいことだと思います。であるならば、受ける側にも、例えば埼玉県では、通報を受けてから四十八時間以内に安否を確認するという規定を設けています。こういったことを国でも考えて、各自治体に指導すべきではないでしょうか。義務づけるということを考えるべきではないでしょうか。いかがでしょう。

大谷政府参考人 御指摘がありましたように、地域ではネットワークをつくっていただいて、本当に充実した取り組みをしていただいていたということでございます。それを受けとめる側がそれを適切に対応できなかったということで、今回の問題は大変遺憾であります。

 その通告、それはまず市町村のかかわりも出てまいるわけでありますが、市町村それから児童相談所、どういう形でその通告について体制をとるか、十分検討をさせていただきたいと思います。

田名部委員 この判断というのは大変難しい、午前中の議論の中にも、いろいろな問題を抱えていてなかなか改正できない点もあるということではありましたけれども、ただ、先ほどの大臣のお話にあったように、マニュアルだとかシステムだとかいうのであれば、判断する基準というのはどこにあったのか。例えば今回の件でいえば、児童相談所はどの時点で子供の安否を確認しに行くべきだったのか。その判断というのは一体どこにあるんでしょうか。大臣、教えてください。

柳澤国務大臣 これは、児童相談所に情報がもたらされた、それが信憑性も高いということであれば、この場合、すぐに直接目視をすべく現場に足を運ぶ、そして現実に児童の状態をみずからの目で見る、こういうことが必要になってくるということでございます。

 したがって、いつということですが、それは最初に情報がもたらされたときということに当然なろうと思います。

田名部委員 今回のその対応は、児童相談所だけを責めるものではないのかもしれません、もっともっと連携をとってやるべきだったことだろうとは思いますけれども、しかしながら、今おっしゃられたように、一般的に考えれば、当然第一報があった時点で駆けつける、それが子供の命を守るということだろうというふうに思っているわけです。

 今お話しした連携ということなんですけれども、私の地元で伺ったところ、元保育士さんだとか学校の先生、そして警察、民生委員、さまざまな方々と連携をとっている、そしてその連携をとることが早急な対策につながり、子供の命、安全を守ることに大きくつながっているということを話しておられました。そして何よりも、この体制をつくるだけではなくて、そこに参加している皆さんが、みんなが同じ気持ちを持って、子供の命を必ず守るんだという同じ気持ちを持っていることがとても大事だというふうに話しておられました。

 今回も、警察等にもいろいろな通知をなされて、協力体制をつくるようにという国からの指導があったと思います。大変いいことですし、これはどんどん連携をとって、子供の命を守るために力を合わせてほしいものだなというふうに思うわけですが、要保護児童対策協議会、そのためにこういう協議会を設置しなさいと国では決めたと思います。しかし、この設置が余り進んでいるとは思えません。今で六〇%ちょっとの設置だというふうに聞きました。ぜひ、これを早急に各自治体に設置をしてくれるように国から強い指導を求めていただきたいと思うんですけれども、いかがでしょうか。

大谷政府参考人 御指摘のとおり、急速に整備していただいているところでありますが、ことしの四月の時点でもまだ七割弱ということで、できていないところがあるわけでありまして、私どもとしても早急に整備していただくよう助言指導してまいりたいと思います。

 今回の件につきましては、地域にちゃんとした協議会があったということで、長岡京市は取り組みがされておったこともあわせて申し上げたいと思います。

田名部委員 手だてはたくさんふえたんですけれども、その一つ一つが確実なものにならなければ同じことが繰り返されるだろうというふうに思います。ぜひ、国でもしっかりと目を光らせて指導していただきたい、そして一緒になって子供の命を本気で守っていただきたいと思います。

 次の質問に移ります。残り時間が大変少なくなりました。

 先ほど山井委員が、一人一人への対応、命、そのことが大事なんだというようなお話をされたときに、大臣、うなずいておられました。ちょっと変な質問かもしれません。大臣、人の命というのはマクロ的にとらえられるものでしょうか、それとも、一つ一つ、また細かくとらえて考えていくものでしょうか。大臣のお考えをお聞かせください。

柳澤国務大臣 もとより、人の命というのは、昔、地球より重いということを言った総理大臣もいますけれども、一人一人の命は極めてとうといものだ、このように私も思っております。

 ただ他方、いろいろな社会的な制度を考えていくときには、これはマクロ的にという言葉が正しいかどうかはともかくとして、やはり一つの制度、ある程度の画一性を持った制度として組み立てていかなければならないということも、これも紛れもない事実であります。

 しかし、事社会保障とか福祉ということになりますと、そういう制度を持ちながら、実際にそれが適用され、運用され、施行されるに当たっては、今言った、本当に人の命、人生、こういったものに直接かかわるだけに、そこに非常にきめ細かい配慮が必要になってくる、こういうことだろうと私は考えております。

田名部委員 前回、医療制度改革が行われましたときに、医師の需給に関する検討会報告書というものが、今検討会が行われているということでありました。私たち民主党は、これを医療制度改革を行うときにしっかりと出すべきだ、報告書を見てから審議すべきではないかということを申し上げてきました。つまり、医師不足なのか医師不足でないのかという議論が随分行われたわけであります。

 そして、私自身も、何度も川崎前大臣に、青森の医師不足について、こんなに自分がしつこい性格だったかなと思うぐらいしつこく質問をさせていただきました。しかし、大臣も、そして役所の方も、全体的に見れば医師は足りているんだ、将来的に見れば医師は足りているんだというふうにおっしゃいました。ただ、地域の偏在はあるし、診療科ごとの偏在というものもあるんだということはおっしゃっていました。

 そして、この夏に出ると言われた医師の需給に関する検討会報告書、これを私もいただきました。一文、御紹介します。

 いろいろ説明が書いてあった後、仮にマクロの医師数は充足するとしても将来にわたって国民の求める質の高い医療を安定的に提供することは困難であろうとの意見が多く述べられただけではありません。必要医師数の算定に当たっては、医師の勤務時間を週四十八時間と置いており、これによれば、平成十六年において、医療施設に従事する医師数が二十五・七万人であるのに対し、必要医師数は二十六・六万人と推計されるというふうになっています。ずっと医師不足ではないと言ってきたんです。しかも、休みを入れたり、また研修に行く機会をその中に入れますと必要な医師数が三十一・八万人あるという報告書が出されておりますけれども、これでも本当に医師不足ではないのかということ。

 時間が来ました。またこの問題をぜひ取り上げたいと思うんですけれども、あわせて、地方の実態というものをぜひ柳澤大臣にもしっかりと見詰めていただきたいんです。

 青森では、子供を産むために一時間も一時間半もかけて通っている人たちがいるんです。冬になって雪が降れば二時間も二時間半もかかるんです。そういった地域に住む、本当の北国の果ての果てかもしれません、そういったところで一生懸命生きている人たちにもしっかりと目を向けて実態を考えていただきたいというふうに思います。

 この日本の中で、どこに生まれてもその一つの命が同じように大切にされる、守られていく、こういった社会を大臣とも一緒になってつくっていきたいというふうに思っておりますけれども、大臣、この地方の実態、医師不足の問題をどのようにお考えか、最後に聞かせてください。

柳澤国務大臣 実は、青森だけじゃなくて、私の地元も不足しているんです。私は、お医者さんの不足の問題は非常に深刻な問題だ、こういうように思っております。

 したがいまして、田名部委員のところには今回、十県において最大十人、医師養成数を増加することを認めるということにもいたしているわけでございまして、こういったことについてこれからいろいろな対策を講じて、今の地域的な偏在の問題に、あるいは診療科目の間の偏在の問題に取り組んでいきたい、このように考えております。

櫻田委員長 申し合わせの時間が経過しておりますので、御協力を願います。

田名部委員 大学の定員を増員していただきました。しかし、これは時間のかかることでありまして、今、現状、医師がいないということのその医師の確保に対して、国からもぜひ強い支援をしていただきますように御要望申し上げまして、終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

櫻田委員長 次に、菊田真紀子君。

菊田委員 民主党の菊田真紀子でございます。

 もうお昼を過ぎてしまいましたけれども、私の質疑も全力で取り組ませていただきますので、ぜひ明快なる御答弁を大臣初め皆様にお願いを申し上げたいと思います。

 今ほど田名部議員の方から、医師の不足の問題について大臣はどのように考えておられるかというお話がございました。大変深刻であると受けとめているというお話がございまして、私も同じ思いで、以下、新医師確保総合対策についての御質問をさせていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします。

 さきの国会の医療制度改革関連法案の議論の中で、地域の医療の現状、とりわけ医師の不足、偏在の問題が大変大きくクローズアップされました。私の地元の新潟県は、二百五十万県民に医師を養成する大学は新潟大学医学部のただ一つだけでございます。せめて、この医学部の定員百名を増員していただきたいと訴えさせていただき、また県知事からも国に対して強い要望活動を行ってまいったところでございます。

 去る八月三十一日、厚生労働省、総務省、文部科学省の三省が新医師確保総合対策を打ち出し、医師不足が深刻な十県の大学医学部の定員を、平成二十年度から最大十年間に限り、十名を限度としてふやすということが示されました。医師削減方針が続く医学部定員の見直しは実に二十四年ぶりの方針転換であり、やっと国が動き出したと私の地元では大変ありがたく感謝をいたしているところでございます。しかし、この中身をよく見てみましたら、簡単に増員できるわけではどうもないようでございまして、幾つかの要件をクリアしていかなければなりません。

 その中で、まず最初に、奨学金について伺います。県が講ずべき措置として、増員後の医学部定員の五割以上の者を対象として奨学金を設定することとありますが、確認をさせていただきたい。

 現在、新潟大学医学部の定員は百人でありますが、これが最大十年間、十人までふやすとなると、百十人の定員になりますが、奨学金は、新たに増員された十人分ではなく、全体の五割、すなわち五十五人分の奨学金を県として毎年実施するということなのでしょうか。お答えください。

松谷政府参考人 今委員御指摘のとおり、本年八月に取りまとめました新医師確保総合対策におきまして、医師の不足が特に認められている県におきまして、一定期間、将来の医師の養成を前倒しするという趣旨のもと、医師養成数の暫定的な調整を容認するということといたしております。その場合の条件といたしまして、当該県が奨学金の拡充など実効性のある医師の定着策を実施することを求めているところでございます。

 お尋ねの新潟大学の例に即してお答えを申し上げますと、新潟大学医学部の定員の暫定的な調整を行いますと、定員が現在百名のところが百十名になるわけでございまして、増員後の医学部定員の五割以上、すなわち五十五名以上を対象として、新潟県内または医師不足県での特に医師確保が必要な分野、例えば救急医療等でございますが、ここにおける一定期間の従事を条件とする奨学金を新潟県が設定するということが必要となります。

 ただし、医師の地元定着をより実効性のあるものとする観点から、地元出身者以外の奨学金貸与者の割合の上限を六割とする旨の条件を課しているところでございまして、仮に奨学金の対象数を五十五名とした場合、地元出身者以外の奨学金の貸与の上限が三十三名ということになります。

菊田委員 今現在、新潟県では、自治医大と合わせますと毎年六人に月額三十万円の奨学金を出しています。仮に五十五人分の奨学金を同じように月額三十万円支給した場合には、一年間で一億九千八百万円、六年間では十一億八千八百万円が必要と試算をされます。もし月額十万円としても六年間で約四億円の支出ということで、もちろんまだ試算の段階ではありますけれども、県にとりましてこれは大変大きな財政負担でございます。私は、率直に、どうしてこんなにハードルを高くするのか。新潟県に限らず、財政が厳しい地方自治体にとりまして、これは大変大きな財政負担であります。

 そこでお伺いいたしますが、国は財政的な支援を行うのでしょうか。

松谷政府参考人 暫定的な調整の容認につきましては、今、総務省とも相談をいたしまして、地方の交付金の中で調整ができるものかどうか相談をしているところでございます。

菊田委員 ぜひ、国策として取り組んでいただくものでございますので、地方に全部押しつけて、国は全く身を切らないというようなことがないようにしていただきたいと思いますし、本来、この奨学金制度を大いに利用してもらい、効果を上げることを考えれば、県の方が財政負担が大きいから、わずかばかりの奨学金でやめてしまおうという消極的なことにならないように精いっぱいの支援をしていただきたいと思います。

 しかし、時間がないわけでございまして、これから予算編成もしていかなければならない、いろいろな面で試算をしていかなければなりませんが、いつまでにその方針を県の方にお示しになる予定でしょうか。

松谷政府参考人 暫定措置につきましては、医師の定着数の増加が図られたと認められた場合には暫定措置を講じる前の養成数を維持することができるということといたしておりまして、その具体的な要件につきましては、例えば医師の定着数の増加がどのような条件で認定をするかというようなことにつきましては、実際に医学部定員増が行われる過程において決定していきたいと考えております。常識的には、定数増分に見合った増加が求められることになるのではないかと考えております。

菊田委員 ちょっと、私の質問した答えが全然合っていないんですけれども、でも、もう時間がないので、せっかくなので続けていきたいと思います。

 今お答えにありましたように、新潟県において最大百十人に定数をふやしてみて、それでは、どの時点で定着数の増加が図られたと判断されるのか。そして、その判断はだれがされるんでしょうか。

松谷政府参考人 失礼をいたしました。

 今御指摘の点につきましては、先ほど申し上げましたように、その奨学金をもらった卒業生が出てからの時点になることは当然でございますけれども、その時点以降に定着数の増加が図られたかどうかということを、第一義的には県が判断をするということになりますけれども、その判断をもとに国としてもそれが妥当なものかどうかということを判断することになるかと思いますが、その詳細につきましては定員増を図られる過程において決定をしていきたいというふうに考えております。

菊田委員 医学部六年、そして臨床研修制度で二年間ですから、一人の医師を育てるのに合計八年かかります。そして、この暫定期限というのが十年しかないわけですから、残りの二年で判断をしていかなければならない。これはどうやって御判断をされるのかなというふうに思います。

 そしてまた、何人残ったら定着数の増加が図られたということになるんでしょうか。

松谷政府参考人 今申し上げましたように、具体的な点につきましては、今後、医学部定員増が行われる過程において決定してまいりたいと考えておりますけれども、常識的には定員増分に、この場合、新潟大学の場合は十名でございますけれども、それに見合った増加が求められることになるのではないかと思っております。

菊田委員 それでは、引き続いてお聞きしますけれども、では、定着が図られたと認められた場合は、効果があった、成果があったということですから、引き続いて医学部の定員増を認めていただき、百十名で続けることはできますか。

松谷政府参考人 今回の暫定措置では、医師の定着数の増加が図られたと認められる場合には暫定措置を講じる前の養成数を維持できるということといたしているところでございます。

 したがいまして、今回の新潟大学の例で申し上げますと、定員を百十名とする暫定措置、十年間でございますが、終了後も、現在の定員数の百名を維持できるということになります。

菊田委員 十年間は百十名にして、そして定着数増が認められたけれども、また十年たったら前の定員数、すなわち現行の百人に戻るということですね。

 それでは、医師の定着数の増加が図られなかった、効果が上がらなかった、うまくいかなかった場合には、この百十名の定員はどうなりますか。

松谷政府参考人 今回の措置が暫定ということで、十年たつとそういうことになるというのが現段階での考え方でございます。

 今先生御指摘の、定着数の増加が万一図られなかった、私どもはそうならないことを希望しているわけでございますけれども、そういう場合には、当該暫定措置が将来の医師の養成の前倒しであるという今回の暫定措置の趣旨にかんがみまして、暫定措置終了後の定員は、暫定措置を講じる前の養成数から定員増分の人数を減じた数ということになります。

 したがいまして、わかりやすく、新潟大学の例で申しますと、定員を百十名とする暫定措置の終了後にもし万一増加が図られなかったというような認定がなされた場合には、現在の定員数百名から十名を減じた九十名が定員となり、これが十年間続くということになります。

菊田委員 つまり、うまくいってもいかなくても結果は同じ。約束の十年たったら、またもとの百名に戻されてしまうということなんですね。これは新潟県だけでなくて、今回定員増を認めていただいた青森、岩手、秋田、山形など、医学部の定員増を長年お願いして、やっと要望がかなったと喜んでおりましたけれども、しかし、それは暫定的措置だからということで打ち切られる。ぬか喜びじゃありませんか。成果があってもなくても、十年という期限では効果があるのかないのかはっきりしません。

 十年たったからここで取り組みはおしまいですということであれば、全くテンション上がらないですよ。おかしいではありませんか。本当にこれが国と地方自治体が一体になって取り組む対策なんでしょうか。私はとりあえずやったというポーズではないかというふうに思わざるを得ないんですけれども、大臣、いかがですか。

柳澤国務大臣 もう原理原則的なお話は十分御理解の上でなさっていると思いますけれども、お医者さんの数は毎年三千五百人から四千人ふえているわけでございます。そういう中で、地域の偏在にどうやって対処していくかということで、ある意味で地域の努力も期待した上で、今定員増を認めるという施策を打ったわけでございまして、我々としては、これが実際の効果を生んでいくということを期待しているということでございます。

菊田委員 地域の医師不足だけではなくて、もう何回も言われていますけれども、診療科による医師不足も大変な問題でございます。

 十月二十四日の朝日新聞に出ておりましたけれども、大学卒業後、臨床研修二年間を終えて、この春から小児科に進んだ医師の数が発表されました。都道府県によってかなり大きな隔たりがあるというふうに発表されておりますけれども、実は、私の地元の新潟県では、今年度、たった一人しか小児科の方に進みませんでした。二〇〇二年、二〇〇三年度の平均では十一・五人ということでしたので、本当に大幅に小児科になろうという医師が出なくなったということで、この状態が続けば小児科医療体制が崩壊する県が続出するということであります。新潟だけではありません。秋田、富山、岩手、山形、山梨、高知、これらの五県で一人だけしか進まなかったということが発表されております。

 先ほど大臣から、医師の不足に対しては十分深刻であるという認識が示されましたけれども、私は、この新医師確保対策、非常に期待をして見てみたら、しかし、十年間だけの取り組みで、それでは何のために県が今一生懸命試算をしてお金をやりくりしながらやるのか、何かむなしささえ感じるんですね。やはり効果を上げていくためには、これは十年では結果が出ないというふうに思います。

 ぜひとも、一回ふやしたものをまた減らすというようなこと、あるいは効果が上がっても上がらなくても同じだというような政策というのは、やはり率直に申し上げてこういうことは余りやらない方が、やらないという言い方は変ですけれども、せっかくやるなら、やはりもっともっと、頑張れ、新潟県頑張れ、地方自治体頑張れというエールを送るようなものにしていくべきではないかというふうに思います。

 それから、医師の不足、医師の偏在という問題がたくさん出ておりますが、逆に、医師の不足や偏在がない地域、どんどん医師が集まって成功している地域、成功している病院はどこでしょうか。そして、それはどういう理由でうまくいっているんでしょうか。

松谷政府参考人 医師につきましては、都道府県別に見ましても、もともといわゆる西高東低、西日本に多く東北に少ないという状況にございます。これは、歴史的に西日本に医科大学、医学校が多かったということを反映しているのではないかと私ども思っております。

 また、今御指摘の、しからばどういうところで医師の確保に成功しているのかということでございます。

 もちろん、西日本においても、全体的に多くても、その県内での県庁所在地など人口当たりの医師数が多い地域と郡部など少ない地域があるということは承知しておるところでございます。また、科別の問題もさらにあるわけでございます。

 医師の確保に成功している取り組み例といたしまして、県で申しますと、これは特定の例でございますけれども、類似のものは幾つかの県で行われておりますが、例えば長崎県や宮崎県が実施しておりますドクターを県職員として採用する事業がございます。

 これらの県におきましては、長期研修を保証することを条件にドクターを採用して、離島や僻地に派遣する医師を県職員として派遣するというシステムでございまして、身分を保障するとともに収入を保障し、そして何よりも、若いお医者さんは一定の技量、技術の研修の機会を求めていらっしゃいますので、そういう機会をその中に組み込むというようなやり方で成功をしているというふうに伺っております。

 また、医師の確保に成功している病院も、いわゆる勝ち組と言われるような病院も全国に多数ございます。これらの病院の特徴といたしましては、一般的でございますけれども、医師に魅力のある条件、十分な症例の数、あるいは優秀な指導者、あるいは院長の医学への理解などを備えておって、地域における病院の機能、役割というものを明確にした上で、魅力ある病院の運営を行って、その結果として医師確保に成功しているというふうに聞いております。

菊田委員 医学部の定員をふやしたところで、実際に地域に出てくるまでに十年以上かかります。それまで地域医療は本当に持ちこたえられるのかという危機感が大変強まっております。より実効性の高い対策をどう行っていくのか、こういうそれぞれの地域の成功例に倣って医療崩壊にストップをかけることに全力を注いでもらいたいと思いますし、うまくいっている事例にどんどんいろいろなところが取り組めるような、もちろんお金がないと何もできませんから、財政的な支援を精いっぱいしていただきたいというふうに思います。

 それから、医学部の定員増に関しまして、大学側も受け入れの準備に入らなければならないわけですが、カリキュラムの充実や実習の充実、設備や機材の充実などをこれから始めていくことになると思いますけれども、そんな中、ただでさえ国立大学法人への運営費交付金、これが大変厳しい状況になっておりまして、毎年百億円ぐらいずつずっと削減されているわけですが、大学に対する支援はどのように行っていくのか、お聞かせをいただきたいと思います。

辰野政府参考人 文科省といたしましては、まず、医師養成数の増について、先ほどの総合対策に基づきまして、関係省庁との連絡を図るとともに、大学の具体的な定員のあり方について関係審議会等において現在検討を進めているところでございます。

 その際、対象県に所在する大学とは、意見交換の場をこの十月の五日に設けまして関係大学との意思の疎通を図るとともに、大学からの意見等も今後の検討に反映させたいと考えております。

 お尋ねのありました財政的な支援でございますけれども、大学からの提案に応じて財政的支援を行う事業として、地域医療等社会的ニーズに対応した質の高い医療人養成推進プログラムというのがございまして、これによって大学の地域医療等を担う医療人を養成するための取り組みに対する財政的支援も行っているところでございます。

 地域における医師不足の問題への対応は喫緊の課題でありまして、文部科学省といたしましても、大学の具体的な定員のあり方について速やかに検討を行うとともに、医学部の地域医療に関する教育の充実や地域枠の拡充等、地域医療に貢献する医師の養成について積極的に取り組んでまいりたいと考えております。

菊田委員 文科省さん、速やかに、積極的に頑張っていただきたいと思います。

 時間がありませんので、ちょっと女性医師の就業支援についてお伺いしたいと思います。

 ことしの国家試験合格者七千七百四十二人のうち女性の合格者が二千五百二十九人、三二%を占めました。やはり産科、婦人科、小児科という部門で女性の医師がおられるということは患者さんにとっても大変安心であり、現場としては待ったなしで女性の医師の就業支援をしていかなければならないというふうに思いますけれども、女性医師バンク事業というのがことし目玉事業として行われていると思いますが、この取り組み状況についてお伺いします。

 これまでに何人の方が登録されたんでしょうか。さらに、どれくらいあっせんできましたか。実際に採用された人はどれくらいあったでしょうか。

松谷政府参考人 女性のお医者さんは、今委員御指摘のとおり、国家試験合格者でいいますと約三分の一ぐらいまで出てまいりました。全体では一六%ぐらいでございますけれども、特に御指摘の小児科では最近では四割を超すような方、あるいは産婦人科では七割近くの若い女医さんがその分野に出ていくというような状況でございまして、女性医師の支援というのは大変大事なことだと私ども考えております。

 御指摘の女性医師バンクは、今年度からの事業ということで、女性医師のライフステージに応じた就労支援をし、そしてまた研修をするというようなことでございます。その実績のお尋ねでございますけれども、今年度からの事業ということで、今その実施を委託するための委託契約を結ぶ段階にございまして、その最終的な調整を行っているところでございます。できるだけ早期に立ち上げたいと考えております。

菊田委員 これは予算一億六百万円ですか、ついておりますし、厚生労働省はことしの目玉事業ということで取り組んだはずですけれども、もう年度も半分終わりますよ。もっと急いで、スピード感を持ってやっていただかないとだめだと思います。

 そして、平成十九年度の予算の概算要求を見ますと、今年度に比べて七千八百万円というふうに減額になっていますよね。まだ事業として実質何もスタートしていなくて評価もわからないけれども七千八百万円が概算要求として出ている、これは一体どういうことなのかなというふうに思いますけれども、私は積極的にやっていただきたいという思いで質問させていただいておりますので、ぜひ成果を上げていただきたいと思います。

 質問の時間が参りましたので、これで終わらせていただきます。ありがとうございました。

櫻田委員長 この際、休憩いたします。

    午後零時二十九分休憩

     ――――◇―――――

    午後二時二十分開議

櫻田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。大島敦君。

大島(敦)委員 民主党の大島です。

 きょうは何点か質問をさせていただきます。久しぶりの厚生労働委員会なものですから、落ちついて質問をさせてください。

 まず、鳥インフルエンザについて質問をさせてください。

 厚生労働省の今の用語ですと新型インフルエンザになるかと思います。私も、二カ月前までは、鳥インフルエンザと聞かれても、それは鳥の問題であって私たち人間の問題ではない、それで、インドネシアあるいは中国で鳥から人に感染して亡くなったという報道があっても、それは他国のことであって、まさか私たち日本までは流行が広がることはないなと考えておりました。

 たまたま二カ月前に私の会社のときの友人と会ったときに、大島、海外のメディア、その方は海外の報道とか海外のニュースを読んでいる会社員でして、海外のニュースだとパンデミックインフルエンザという記事が結構多く出ている、日本の報道だとほとんど小さな記事しかないんだけれども、海外では世界的流行のインフルエンザが多く取り上げられており、それは日本語だと鳥インフルエンザと言うというお話を聞きまして、専門家の方からお話を伺うと、結構シリアス、大変な状態にあるのかなと考えた次第なんです。

 今、私たち国会議員の中でも、あるいは町のごく普通の有権者の方、国民の方も、それほど新型インフルエンザについての認識というのはないかと思うんです。特定の医療関係者あるいは感染症の研究者の方については結構大きな問題なんですけれども、一般国民としてはさほど注意は広がっていないと思いますので、まず、柳澤大臣から、この新型インフルエンザについて国としてどのような認識を持っていらっしゃるのか、御説明をお願いいたします。

柳澤国務大臣 鳥インフルエンザにつきましては、二〇〇三年以降患者の発生が継続いたしておりまして、さらに、ウイルスの変異による新型インフルエンザの発生が危惧されているところであります。

 世界保健機関、WHOや各国ともかなり高い危機意識を持って対策を講じているところでございます。我が国におきましても同様でありまして、そういう意識のもとで、昨年十月に厚生労働大臣を本部長とする対策推進本部を省内に設置し、十一月には新型インフルエンザ対策行動計画というものを策定いたしております。

 また、本年になりまして、六月にはインフルエンザH5N1を感染症法に基づく指定感染症に政令指定を行いまして、患者の入院措置等を行えるようにするとともに、九月になりましては、内閣官房を中心として、関係省庁新型インフルエンザ対応机上訓練を実施するなど、発生時に向けた体制整備に努めているところであります。

 このように、国民に対して余り恐慌を来すような言辞というものに注意しつつも、実質的には非常に高い危機感のもとで各般の対策に取り組んでいるところでございます。

大島(敦)委員 今大臣の御答弁にありました、余り危機感をあおり過ぎて国民が大恐慌というんですか、パニックに陥ってしまっては困るというそのお気持ちもわかるんですけれども、いつ世界的流行が始まるかが予測のつかないインフルエンザだと聞いておりまして、ひょっとすると今回の冬がその世界的流行になるかもしれないし、あるいは十年後かもしれないしということはよくわかります。

 しかしながら、今大臣がおっしゃったとおり、感染して、死亡者の数は確実に、二〇〇三年が四人、二〇〇四年が三十二人、二〇〇五年が四十二人、今年度も九月までには六十六人の方が鳥から人へ感染し、そして、鳥インフルエンザの鳥自身の感染している国も、東南アジアから、今はアフリカあるいはヨーロッパまで広範になってきておりますから、リスクというのは高まってきていることは確かだと思うんです。

 したがいまして、ある程度国民に対する啓蒙というのが必要だと思っておりまして、昨年は厚生労働省が中心となって国の対策を立て、そして九月には内閣官房が中心となって図上訓練を行ったというお話は承知はしているんですけれども、まだ、ことしひょっとして世界的な流行になった場合には、恐らく対策は追いついていないのかなと考えております。

 ここは、政治あるいは政府としての方針、あるいはどれだけ注力をしているかということが必要だと思っていまして、例えばアメリカの例ですと、厚生労働省の方から伺ったんですけれども、予算規模としては七千八百八十七億円、それに対して日本の予算は六百七十三億円ですから、十倍以上の金を使いながら危機に備えているということが言えるかと思うんです。

 したがいまして、今、国としてもう少し啓蒙をした方がいいと思っていまして、今の対策というのは政府の各省庁間での図上訓練であり、あるいは地方自治体に対しての、こういう対策をとってほしいという要求にとどまっているかと思うんです。今後、やはり産業界にも、あるいは一般国民、各家庭とかあるいは各個人に対しての啓蒙活動も必要だと私は考えるんですけれども、その点についての御所見があれば伺わせてください。

外口政府参考人 地方自治体への働きかけと同様に産業界への働きかけが重要ではないかという御指摘でございますけれども、御指摘のとおりでございまして、企業が行うそれぞれの事業を所管する各府省庁が各企業に対する指導助言を行うこととしているところでございまして、新型インフルエンザ対策行動計画におきましても、そういった観点も含めて、社会機能を維持しながら対策を講ずることとしておりまして、ライフライン関係事業を初め産業界における取り組みを強化していこうと考えております。

 厚生労働省といたしましては、こういった感染拡大防止の対応策をさらに具体的に検討しながら、各省と連携しながら、新型インフルエンザのパンデミック時においては産業界が適切な対応を講ずるよう働きかけを行うとともに、御指摘のような、国民お一人お一人に対しての、発生時にどのような対応をすべきかということにつきましてもさらに具体的な検討を進めて、行動計画のフェーズ5、6のところにももちろん書き込んであるわけでございますけれども、それをさらに具体的に周知徹底するにはどうすればいいかということも含めて、取り組みを進めてまいりたいと考えております。

大島(敦)委員 予算の問題というのは、一つには国の優先順位づけがありますから、厚生労働省が頑張ったとしても、政府として余り重要視しなければ、多くの予算は配分というんですか割り当てが来ないと思うんです。

 しかしながら、予算をかけないでできることが、今局長おっしゃったとおり、各産業界に対して、私も鉄鋼業出身なものですから、先般は通商産業省の方に来ていただいて、各鉄鋼会社のこういう新型インフルエンザの対策がどうなっているかなということを調査を依頼したところでして、やはり鉄鋼会社ですと、高炉が、二十四時間三百六十五日、火を消すと日本の鉄鋼業はとまってしまうものですから、そこはどうなっているかとか、あるいは、原子力発電所あるいは火力発電所のインフラの部分、通信の部分についても、一言聞くだけでも、相当業界の方はこのことについて関心を持っていらっしゃると思うんです。

 ある企業の対策を人から聞いたんですけれども、一番最初の段階が世界的にはフェーズ3ですから、鳥から人へ来る段階、フェーズ6が世界的な大流行。その会社は、世界的な大流行になったときでも、自分の会社の指揮命令系統はしっかり確保して世界的な大流行を乗り越えるということをしっかりと書き込んでいる会社もあるわけなんです。それは、いろいろな事態にも備えてお客さんのサービスを確保するとともに、世界的大流行が終わった後に圧倒的なシェアをとっていくという企業の意思もあるわけなんです。そこには国家意思もあっていいかと思うんです。

 鳥インフルエンザというのは、私も知らなかったんですけれども、インフルエンザは、もともと鳥インフルエンザから人に感染して要は人のインフルエンザになるということで、九十年前のスペイン風邪、これは、日本の人口が五千五百万人で、三十九万人から四十五万人がお亡くなりになったと言われております。地域によっても相当死亡率について偏在しておりまして、京阪神が高かったり、あるいは青函連絡船のあるところの青森が高かったりするものですから、恐らく、このインフルエンザが流行した後には、各都道府県によっても死亡率が大分違ってくるのかなとも思うわけなんです。

 したがいまして、ぜひ国の方には、大臣にお願いしたいのは、お金をかけないでできる、例えばどういうものを用意した方がいいのか。抗ウイルスのマスクを各家庭に用意した方がいいかもしれないし、あるいは目を覆うゴーグルを用意した方がいいし、あるいはゴム手袋も用意した方がいいかもしれない。そういうことについて、国として、世界的流行になった場合にはあっという間にフェーズ3からフェーズ6まで飛ぶことがあるわけですよ、そのときに本当に国民が要は混乱を来さないような、お金をかけない準備もしっかりしてほしいと思います。

 もう一つは、今政府の方では、抗インフルエンザウイルス剤の備蓄を二千五百万人分始めたと伺っておりますし、あるいはウイルスのプロトタイプのワクチンの製造にも取りかかっているということを聞いております。そこの中で、抗ウイルス剤、ワクチンとかあるいは抗インフルエンザウイルス薬をだれから投与していくかという優先順位づけがあるわけなんです。

 国の行動計画ですと、まず医療関係者からということが書いてあるんですけれども、これは今のうちから議論しておかないと、では政府の総理大臣から投与していくのか、あるいは警察なのか、あるいはだれから投与していくか、この一番難しい順位づけを公の議論に付して決めていかないといけないのかなと思うんですけれども、その点について御所見があれば伺わせていただければ幸いです。

外口政府参考人 実際にパンデミックインフルエンザが流行したときに、あるいは流行し始めるときに、抗ウイルス剤の投与の優先度、それからワクチンの投与の優先度をどうやって決めるかということは大変重要な問題だと思います。特にワクチンの場合は、実際に今、現に開発中でございますけれども、開発してできている量との兼ね合いも考えながら優先度を決めていく必要があると思います。

 それで、これについては各国の担当者ともいつも情報交換しているんですが、行動計画にも書いてありますけれども、医療従事者については、これは優先度が非常に高いということはまず大体コンセンサスであろう。それから、社会的機能維持者と申しますか、例えば消防とか救急とか警察とか、そういった方はやはり優先度が高いだろうということでございますけれども、それから先、どの順番で打っていくかということにつきましては、それはウイルスの病原性あるいは感染力、こういったことも踏まえながら考えていく必要があると思います。

 例えば、新型のインフルエンザの場合に、普通のインフルエンザと違って、高齢者ではなくて、むしろ若い人の方に被害が出てくる可能性もありますので、そういった点も踏まえながら、これは状況も見ながら、幾つかのシナリオを考えつつ、先生御指摘のように、早目早目に、はやる前に国民的議論ができるような、そういった提示を我々の方もしていきたいと今準備を進めているところでございます。

大島(敦)委員 大臣に確認したいんですけれども、今局長から答弁がございました、日本人はこの順位づけというのが結構難しくて、平時において順位づけをしておいた方がいいかと思うんです。冗談で、与党の議員が先で野党の議員が後なのかということも党内的には話しておるんですけれども、やはりその順位づけを、だれから投与していくかということについてまず公開の議論が必要だと思っています。

 もう一つは、国民の理解と同様、早急に得なければいけないなという点があります。

 もう一つは、今、お金をかけないで広報、あるいは厚生労働省のホームページでもいいんですけれども、どういう準備が必要なのか、あるいは食料備蓄、アメリカにおいては十日間の食料備蓄を勧めているという話も聞いたことがございますし、私自身も抗ウイルスマスクをこの間、三十日分四千五百円で買いまして、こういうことをやってみるというのも結構皆さんに対する啓発になるかなと思っていまして、そういうことも含めて、大臣の公開での議論についての御所見について再度確認をさせてください。

柳澤国務大臣 最初の御答弁で申し上げましたように、私は、政府部内の準備状況というのは、せんだっての九月に内閣官房が中心になって机上訓練まで行っている、こういうことでございます。

 そこで、実際いろいろな訓練をしてみますと、問題点というのも出てくるわけでありまして、恐らくそういう中には、大島委員御指摘のような、シナリオをはっきりさせておいた方がいいというような問題点も浮き上がってくるんだろう、このように思います。

 そうした場合に、公開の議論というようなことが先生から御提案いただいているわけですけれども、一応幾つものシナリオ、それは先ほど外口局長が申されたように、実際にいろいろなはやり方というか流行の仕方があるでしょうから、それに応じた想定されるシナリオを規定しまして、そしてそういう中でどういうことが考えられるかということについて、今いろいろな行政手続の規定の過程で、パブリックコメントというような形で、先に情報を流して、そしてパブリックコメントの形で世論を喚起しながら、またいろいろな意見を収集していく、そういうようなプロセスがあるわけですが、それに準ずるような形でこの議論が行われる、これは一つ十分考えられることかと思います。

 また、最近、NHKがいろいろな形で厚生省関係の議論をかなり長時間かけて集中的に議論するというようなところもありますので、場合によっては、NHKが公共放送の使命というものに徴して、そういったことについて番組を編成してくれるなどというようなこともまた非常に有益かと。これは余分なことのようですが、コメントとしてだけちょっとつけ加えさせていただきます。

大島(敦)委員 確かに、大臣がおっしゃるとおり、日本のマスコミが余り敏感ではないという点がありまして、その点については私も同意見であります。

 続きまして、不祥事について大臣の御所見を伺いたいんですけれども、厚生労働大臣が一番悩まれるのは、重要法案があったときに、時々不祥事が発覚をしまして審議がとまるというのが、当委員会のこれまでの伝統というわけじゃないんですけれども、習い事になっておりまして、やはり不祥事というのはなかなかとまらないのかなと私も思っております。

 特に今回は、広島とか兵庫の労働局、私も二年前かな、厚生労働委員会に所属をしていたときに、この問題について役所にお伺いをしたところ、大島さん、ほかにはないというお話を聞いていたものですから、つい先般も新聞報道を見まして、またどうして発覚したのかなと不思議に思った次第なんです。

 そうしますと、対応の方法として、今回、原則としてそのような事件を起こした人については懲戒解雇にするという対策案をとられているんですけれども、原則としてですから、原則として懲戒解雇の処分にしないところもあるのかなと私は理解しているんです。

 処分の仕方について、私が二年前ここで議論をさせていただいたときも、皆さん本当に全体責任ということを役所の方は感じていただいていて、その金額を各役職別に割って、応分の負担で国庫にお返しするという対策をとられているんですけれども、私は、今の時代というのは、個人の責任にできるだけ帰した方がいいと思っている人間なんです。ですから、社内接待に使ったのか、だれが参加したのか、わかる範囲内で、例えば課長さんで一人百万の御負担をいただくとすれば、わかっている部分についてはその分だけ、百万に二千円をオンするとか、ある程度個人のリスク、個人の責任というのをとっていただくことも省内の規律を保つためには必要かなと思うんですけれども、その点についての御所見がございましたら、手短にお願いをいたします。

柳澤国務大臣 私、ちょっと院が違うんですけれども、昨日参議院の方で、経済事犯については、刑事犯として刑務所に経営者を収容するような刑罰、こういうのがいいか、あるいは課徴金がいいかという議論をたまたましたばかりなんですね。そのときに、個人的には実は私は、経済事犯については、機動的な、またバリエーションが幾らもたくさんあり得る課徴金の方がいいのではないか、そういう持論を持っているんですけれども、日本の刑罰法規の体系の中では今、課徴金を活用するということは極めて法制局を実は通りづらい、あるいは法務省当局のコメントを求めたときには大体ネガティブな反応がある、こういうようなことで、なかなかその点が進まないんですということを申し上げたわけでございます。

 他方、さて個人の面について、これは先生の御提案も、課徴金とはもちろん違うわけですが、不祥事を犯したその金額については、個人にできるだけさかのぼっていわばその弁償をさせるべきだ、こういうことの御提案かと思います。

 今回、私ども、本当にあってはならない不祥事が生じまして、不正経理、こういう事案が生じてしまったわけでございますが、これらについても、個人的な着服の関係が明確なものについてははっきり弁償をさせる、こういうことにいたしております。

 他方、しかしながら、今先生もお触れになられた、宴会で飲んじゃったみたいな話については、その宴会に参加したメンバーを特定することもなかなか困難である、こういうような非常に難しい条件があるということで、しかし、実際に与えた国損についてはぜひ弁償、弁済をしなきゃいけない、こういう思いの中から、結局、管理者の人たちが責任を持って頭割りで責任をとっていく、そういう形で弁済をする、こういうことが選択されているということで、これは私も聞く限りにおいては、やむを得ないかというふうに考えているところでございます。

大島(敦)委員 ありがとうございます。若干、私は、わかる範囲内では個人の責任に帰した方が、今の個人責任が言われている中では必要かな、時代が変わってきているのかなという認識を持っているものですから、そのような指摘をさせていただきました。

 もう一つ、社会保険庁のシステムの話なんですけれども、二年前の年金改革のときに、この場で我が党からいろいろと社会保険庁について指摘をさせていただきまして、その中で、システムの費用一千億円、我が党の長妻委員が大分指摘をさせていただきました。そのたびに、自分も鉄鋼会社のシステム部門にいたものですから、半分にはできるはずだと指摘、あるいはやじを飛ばしたことがありました。

 社会保険庁としても、今、一千億円程度かかっている年金の計算システムを五百五十億円に合理化するということで動いているという話を聞いていまして、これは村瀬長官の成果かなとは思うんですけれども、もう一つ、聞くところによると、バックアップシステムが今回のシステムの中では、ないというお話を伺っております。

 普通ですと、例えば金融系のシステムですと、ミラーサイトというんですか、必ずバックアップで同じようなシステムが動いていて、それでいざという場合でもしっかりと立ち上がることができる。しかしながら、社会保険庁の今回のシステムですと、バックアップについては、一週間ごとかな、リールで落として、それを金庫にしまうというようなことですから、そこについては、年金の制度の信頼を確保するんでしたらバックアップも必要かなとは思うんですけれども、その点についての御所見を伺わせてください。

村瀬政府参考人 先生御指摘のバックアップの件でございますけれども、現在どういう形でバックアップをしておるかということでお話し申し上げますと、日々の業務終了後にバックアップデータを作成しまして、遠隔地に保管をしておる、こういうやり方をとってございます。

 一方、専用回線につきましては、公衆回線であるとか、それからまた停電等が発生した場合については蓄電池と自家発電ということで、最低限のバックアップシステムで現在運用をしてございます。

 一方、バックアップセンターの設置の要否の問題でございますけれども、これにつきましては、設置の時期、場所、それから関連業務との共有化につきまして、実は厚生労働省の中に情報政策会議というのがございまして、その中で十八年度中に具体的に中身を検討するという段階でございまして、残念ながら現段階においては、完璧に、例えば停止したら即バックアップが動いて対応できる、こういう仕組みにはなってございません。

大島(敦)委員 今のシステムの見直しが平成の二十三年に終わるかと思うんですけれども、その二十三年の後には、今の共有のバックアップシステムも含めて、瞬時に立ち上がるようなバックアップを準備した方がいいのか、あるいは現行のままで十分、長官は損保会社にいたものですから、対応が可能なのか、その点についての御所見を最後に伺わせてください。

櫻田委員長 村瀬長官、答弁は簡潔に願います。

村瀬政府参考人 バックアップにつきましては、社会保険庁の場合、一番大事なのは年金の受給者の方にしっかりと年金をお支払いすること、こういうことだと思います。したがいまして、民間企業のように、オンラインシステムのバックアップという形までは私は必要はないんだろうというふうに思っておりまして、その中で、先ほどお話し申し上げましたように、十八年度中にしっかり回答を出したい、このように考えております。

大島(敦)委員 どうもありがとうございました。

櫻田委員長 次に、柚木道義君。

柚木委員 民主党の柚木道義でございます。

 今臨時国会では最初の質問でございます。その機会をいただきまして、ありがとうございます。柳澤大臣、そして櫻田委員長初め厚生労働委員の皆様方、どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 さて、大臣、そして委員の皆さん、早速質問に入りたいと思います。

 出産は終点ではない。すべての始まりなのです。そんな言葉が、先日、ある新聞の投書欄に寄せられておりました。世の中で、病院に入院したのに唯一おめでとうと言われる出来事、それが出産なのではないでしょうか。

 ところが、そんなすべての始まりを突然に奪われる悲劇がこのたび奈良県で起こってしまいました。

 皆様にお配りをしている資料の一ページ目をごらんください。「奈良の妊婦死亡問題」とございます。この見出しに「医師数格差 脆弱な転院ネットワーク 背景に産科の危機」とございます。冒頭だけ簡単に記事の概要を読みますと、奈良県大淀町の町立大淀病院で八月、同県五條市の高崎実香さん、三十二歳が分娩中に脳内出血で意識不明となり、十九病院から転院を断られた末、転院先病院で後日、死亡した問題は、医師数の地域格差や転院ネットワークの脆弱さなど、医療現場の問題点を浮かび上がらせている。以下、「ただ満床という理由だけで…」、妻を亡くした晋輔さんがというふうに続いてまいります。

 最後の一言、これをぜひごらんください。「大淀病院は、地域の中核病院としてみんなが信用していた。せめて実香の死を無駄にしないために、医療システムを早く改善してほしい」、これは実香さんの義理のお父さんである憲治さんの言葉でございます。

 新婚で、これから二人でともに新しい命を育てていこうというやさきに、まだ三十二歳という若さで実香さんの命は失われてしまいました。私も先日、実は奈良に伺ってまいりました。そして、御遺族のお話を伺う機会もございました。そういう立場も含めて、本当に心から御冥福をお祈り申し上げたいと思います。

 さて、私が奈良に伺ったのは、十月の二十三、二十四両日でございます。高崎さんの御遺族、御主人の晋輔さん、そして晋輔さんのお父さんである憲治さん、さらには実香さんの忘れ形見となってしまった奏太ちゃん、お会いしてまいりました。最後の言葉にあるように、せめて実香の死を無駄にしないために医療システムの改善をという、この憲治さんの言葉の実現こそが今ここにいる我々の責務ではないでしょうか。

 無論、私は、実香さんが入院されていた町立大淀病院を初めとする関係病院、奈良県の医師会の産婦人科医会、さらには奈良県庁健康安全局医務課といった多くの関係者の方々にお会いし、話を聞いてまいりました。その後、何人もの医療関係者の方からも客観的に今回の件に関する御意見もちょうだいしました。

 さて、大臣、ここでより重大なのは、実香さんの御遺族は、遺族への補償よりもまず救急体制の不備を問題にしていることだと思います。そこで、この日本の医療崩壊危機を象徴するかのような現状の産科救急医療体制整備を通じて、だれであっても、どこに住んでいても安心して医療が受けられるその体制整備を何とか求めて、以下、質問を行ってまいります。

 まず、大臣、今回こういった奈良の悲劇でございます。なぜこのような悲劇が起こってしまったのでしょうか。その原因は一体どこにあって、だれにその責任があるんでしょうか。大臣、きょうは、奈良県初め全国の周産期医療を必要としている母子、御家族、また日夜献身的に医療現場で働いておられる皆さんが、医療行政をつかさどる厚生労働省の最高責任者である柳澤大臣の御認識を注視しているわけです。今回の悲劇はなぜ起こってしまったのか、どうぞ、大臣御自身のお言葉ではっきりと、全国の妊婦やその御家族の皆さんへも含めて、お答えをいただきたいと思います。

柳澤国務大臣 今先生が、奈良県の今回の不幸な事故が起こってしまった現場を早速に踏まれて、関係の当事者の方々から悲痛な声を聞いてこられた、こういうことでございまして、私も大変緊張をしてお話を伺っていたところでございます。私も、また、今回のお亡くなりになられた実香さんに対して心から冥福をお祈りさせていただきたい、このように思います。

 さて、今回の事故というのが何で起こったと考えるかということでございますけれども、今回の医療事故につきましては、まず、当該の病院で行われた医療行為というか診断というか、診断に引き続いての医療行為が実際に適切であったかどうかということについて問題があろうかと思いますけれども、この点については、現時点ではより深い解明が必要だということで留保をさせていただいておる次第でございます。

 それから第二点は、こういう母体の搬送が必要な患者さんが適切に救急搬送されなかった、これはもう明らかでございまして、こういうことが今回の非常に悲惨な悲劇を呼び起こした、こういうように考えておる次第でございます。

柚木委員 ただいま大臣がお答えいただきましたように、確かに当該病院における対処がどこまで適切であったかどうか、あるいは搬送体制の不備等、今後さらに検証を進めていく必要があると思います。

 しかし、大臣、先日の当委員会で、今後同様の事例がまさにしっかりと究明をされるべく死因究明検討委員会、言い方が正確かどうかはちょっと覚えておりませんが、そういった委員会を設置していくと御答弁をされたと思います。しかし、やはり今回既に起こってしまっていること、このことです、このことそのものに対して、厚生労働省として、全国の救急ネットワークそのものが崩壊の危機に瀕している中で起こったこの件だからこそ、今回の件に関してもしっかりと究明を行っていく、そういったおつもりがあるかどうか御答弁をいただきたいと思います。

柳澤国務大臣 先ほど犠牲者の御主人のお言葉として、ぜひこういうことが再発しないように体制を築いてもらいたいという悲痛なお言葉もありましたが、その関連で、私どもとしては、もう一回この死因の究明というものを客観的に行って、そのことを今後の発生予防、再発防止に生かしていくということがまず第一に必要なことである、このように思っております。

 それから、もう一つ私どもが考えておりますのは、周産期医療ネットワークというものを整備するということが必要だという考え方でございまして、この考え方に基づきまして、現在、鋭意そういうネットワークの構築を進めているところでございます。大変不幸なことだったんですけれども、この事故が生じた奈良県を含めまして未整備のところがまだ八県もございますので、これらについては、県と連携を図りつつ早急に整備を進めてまいりたい、このように考えております。

 それからまた、先般の医療法の改正によりまして、医療機関に対しまして、従来の安全管理体制をさらに一層強化して医療の安全確保を義務づけることといたしておりますが、そのような努力を今後ともしっかりと進めて、この義務づけが単なる法律上のことに終わらないで本当に現場に生かされていく、こういうことを確保していきたい、このように考えております。

柚木委員 今おっしゃっていただきました原因の究明、さらには周産期救急医療ネットワークの整備、そして安全の義務づけ等、もちろん必要なことでございます。しかし、現状として大変に私が心配をしておりますのは、今回起こった悲劇に関して、既に奈良の警察が業務上過失致死の疑いで捜査を始めた、そういう状況にあるわけです。

 私は、今回のような専門性の高い医療行為における過誤の有無、あったのかどうなのか、そういったことに対しての警察権力の介入、これは、そういったものによるのではなくて、先ほど大臣おっしゃったような、まさに死因究明検討委員会、あるいは既に現在行われている死因究明モデル事業の制度化、そういった制度の早期実現によって行っていくことが望ましいと考えます。

 そうでございますから、大臣、今回の警察の現在の捜査、医療現場へのある意味では介入、こういったことに対して、今回のあるいは今後の警察の介入も含めて、大臣としての認識をお伺いしたいと思います。

柳澤国務大臣 事件、事故には、最近のような複雑な社会のもと、また高度に技術が進歩した段階におきましては、警察権力が直接に入っていろいろと処断をしていくことが必ずしも適切でない分野というものが非常に多くなっているというふうに私は考えるわけでございます。

 そういうことで、別に警察権力を排除するという気持ちがあるわけではございませんけれども、やはりその前に、より専門的あるいは技術的な検討がなされるということが、それに携わっている方々が今後十分に活躍をしていくということのためにも必要だというふうに考えるわけでございます。

 そういう観点から、実は、先行事例としてあります航空・鉄道事故調査委員会というような、それに類似したような医療事故に対する事故の究明、こういうようなものを行う体制が必要であるということを考えておりまして、現在、そうした機関を構築すべく検討をいたしておりまして、本年度内に厚生省としての試案を提示し、来年度にはそれについてまた有識者の御検討をお願いする、こういうようなことで順を追って体制の整備に取り組んでいるところでございます。

柚木委員 今いただきました大臣の御答弁、大変重要であると思います。

 そういった救命制度の体制を一日も早く整備することによって、本当にこういった不幸な事例、そしてその再発防止のための徹底的な原因究明、そういった取り組みを切にお願いをして、次の質問に入りたいと思います。

 先ほど大臣もお答えをいただいたんですが、今回、大変な悲劇の原因の一つに、周産期救急のネットワークの不備があったという御認識を御答弁いただきました。

 私がこちらにパネルをつくってまいりました。大臣、見えますか。ちょっと遠いんですけれども、これをごらんいただきたいと思うんです。実は、皆さん、この図、ちょっと小さいですかね、ごらんをいただきたいと思うんですが、この上の図の方なんですね。下の図はまた後ほど質問で使いますが、この上の図を見ていただきたいんです。

 全国の八つの都道府県において、今まさに大臣も御答弁いただきました、総合周産期母子医療センターのネットワークの整備が大変におくれている、未整備な県があるわけです。ある意味では、その代表例であるのがこの奈良県なんです。

 今回、奈良県の高崎さん、ハイリスク分娩として、そして母体への危険がある、そういった状況の中で、結果的に十九もの病院をたらい回しにならなければならなかった。どこにその問題があるのか。実際に奈良県、依然として母子医療センターが設置をされていないわけです。大臣、これをこのままにしておいたら、今後、ひょっとしたら第二、第三の実香さんが生まれかねないわけですよ。

 そして、私が驚いたのは、きょうの新聞報道にこうあるわけです。ちょっと間に合いませんでしたので、簡単にお読みしますが、実は、私が昨日、事前の質問通告のときに、こういった状況にある整備を前倒しでやると、厚労省として各自治体に積極的な助言あるいは指導、さらには予算の援助、そういったことをやっていくべきじゃないですかと申し上げたならば、そのときの医政局の方は、これは自治体が主体的にやることであって、我々がそういったところまで口出しをするような問題ではないと言われた。にもかかわらず、きょうのこの新聞です。

 何と、そういった連携を「六月に指導 転院拒否 産婦死亡 厚労省が奈良県に」。実は、今回のことが起こる直前の六月に、産科病院同士の連携体制を早急に整備するように指導していたことがわかった。総合周産期母子医療センターの設置を全都道府県で進めているが、奈良県は未設置だった。しかし、奈良県を含む九県でおくれが目立っていたために、厚労省はこの五月から六月に九県の全員の担当者を呼んで整備促進を指導していた。にもかかわらず、今回こういうことが起こってしまって、依然としてこういった状況にあるわけです。

 大臣、お伺いをいたします。こういった未整備の中に今回の奈良県も含まれてしまっていました。一体、この母子医療センターの設置、いつまでにこの八都道府県において行う見通しなのか。大臣、明確に御答弁をいただきたいと思います。

柳澤国務大臣 御指摘のとおり、総合周産期母子医療センターを中心としてネットワークをつくらせるということが、非常に危険なというか難しい分娩に対処するには一番よろしいのではないか、こういう考え方で今このネットワークの整備を進めているわけですけれども、これにつきましては、厚生労働省としては、助言指導それからまた補助金も支給をいたしておりまして、早期の構築を促しているわけでございますが、その期限はどうかという御質問に対しては、今現在のところは、十九年度までというものを一応の期限にしておるというのが現況でございます。

柚木委員 これは、十九年度までに計画策定して、実施はいつやるんですか、大臣。実施はいつになるんですか。実施が十九年度になるんですか。お答えください。

柳澤国務大臣 実施も当然、そういう構築をして機能し始めるというのは十九年度ということを想定いたしております。

柚木委員 今大臣の大変重い御答弁をいただきました。

 実は、この奈良県、ついせんだってまで計画自体が未整備だったわけです。そして、現状では、政府としては当初、子ども・子育て応援プランの中に、実際に十八年度中に設置をして二十年実施とその時点では明記されていた。しかし、今大臣は、十九年度策定して即やるとおっしゃったわけです。

 さらに奈良県は、実は私、先日県庁に行って奈良県の周産期医療に向けての提言書をいただいてまいりました。この中には、十九年度中に策定して二十一年実施と書いてあるんです。全然おくれているわけです。しかし、今の大臣の御答弁、十九年度即座にやると。大変に重い、そして前向きな御答弁をいただいたと思います。

 一年おくれになるごとに本当に今回のような悲劇が起こり得る、そういう体制を是正していくために早期の取り組みを改めてお願いして、そして答弁をいただいて、取り組みをいただけるものとして次の質問に入らせていただきたいと思います。

柳澤国務大臣 これは、ひとり厚生労働省の問題というよりも、先般来あります少子化社会対策会議というところでも決定しておりまして、十九年度までに達成ということでございますので、我々の方も、今申した指導助言、さらには補助金の交付というものをそういう期限に合わせて確実に実施してまいりたい、このように思います。

柚木委員 大臣の本当に前向きな御答弁をいただきまして、ありがとうございます。

 それにしても、大臣、今回、十九もの病院でいわゆる受け入れができない、そういった事態が起こってしまったわけです。私は、今回その原因の究明をすることが再発防止に向けての重要な施策だと考えます。

 皆様にお配りをしている資料、この二ページ目を見ていただくと、今回の受け入れをできなかった病院、全部ではありませんが、その理由が報道されています。満床であったり、分娩中であったり、あるいは麻酔科医が不在であったり、さらには子癇患者受け入れ体制がないなどと、いろいろな理由はあるわけです。今回の実香さんの場合には、妊婦の子癇でさらに脳内出血である。これは、私も何人かの産科医の方に伺いましたが、何万人かに一人という極めて少数のケースだった。

 そういったことも考えますと、実際に、産科の方、毎年出産をされる事例が百から二百というふうに伺いますから、ひょっとしたら一生産科をやっていてもない事例だったのかもしれません。しかし、これまではこういったことで十九病院たらい回しになることなく何とか機能していたわけですね。

 実際に、奈良県のハイリスク分娩の母体の県外搬送というのは実は四割近いんです。私も調べてみてびっくりしましたが、これは何と他県の四倍近いんですね。幸いすぐ隣の大阪府に、全国でも有数の機能とされる産婦人科の診療相互援助システム、OGCSというそうですが、そういったものが四十三病院が加盟して機能していて、これまでは何とかぎりぎりの状態でやってきたんです。しかし、これも、ついにここに来て、今回十九病院たらい回しという結果、その限界を露呈してしまったわけです。

 そこで、私は大臣に提案したいと思うんです。いろいろな理由があって受け入れができなかった。しかも、この資料の最後のところ、皆さん、ごらんください。このOGCSを使って加盟病院に搬送された件数は、九六年が九百六十三件だったのが、〇五年には千七百七十九件と倍増している、その対応に追われているのが実情。同府は、なぜ受け入れ拒否が続いたのか府としても検証しなければならないと、大阪府自体もそういう認識をしているわけです。

 そこで、私は、ぜひその検証とともに提案をしたいと思います。それは、今回、奈良県が周産期救急医療ネットワークをお隣の大阪のOGCSのシステムに組み込んでもらえるように要請をしたと伺っています。今回のような本当にレアレアケース、母体救急も含む、そして周産期救急、つまり一般救急と周産期救急が一体となった、そして、都道府県の境界を越える横断型の新たな広域そして高度救急医療ネットワークシステムというものをぜひ、各自治体に協議会がありますから、厚労省がしっかりとリーダーシップを発揮して構築をしていく、その構築していくということに対する大臣の御見解、御決意をお伺いしたいと思います。

柳澤国務大臣 まず各県におきまして、この場合、奈良県でございますけれども、周産期医療ネットワークを構築していただくということがまず第一だと思います。

 私もそんな専門知識を持ち合わせていませんので専門家に聞いているわけですけれども、これを整備してやることによって、今回の事故についても、全く同じような経過をたどってしまうということは、かなりの程度これを防げたのではないか、こういうことを聞くわけでございまして、その意味からも、まずそこのところを基本的に整備していただくということが大事だ、このように考えます。

 その上で、今柚木委員がおっしゃられるように、たまたま奈良県というのはより医療機関の整備をされている大阪府の隣接の県であるということからしまして、でき得れば、そういういざというときに、特に県境のそうした地域を中心として、大阪府の助力を求める、そういうネットワークを日ごろから築いておくということは大変有意義だ、このように御賛同申し上げるわけでございます。

 我々もそうした動きについてはバックアップをしてまいりますけれども、まずこの両県においてそういう話し合いが進むということが必要であるというふうには思っておるわけです。

柚木委員 ぜひ本当に前倒しかつ前向きな取り組みをお願いしたいと思います。

 時間がございませんからちょっと駆け足で参りますが、これはお願いということでお聞きください。

 下の図です、ドクターヘリの導入県。皆さん御承知のとおり全国まだ十県。しかし、計画では今年度三十県が導入目標だったんです。全然おくれています。しかも、この奈良県はまだ導入できていません。山越えをして大阪まで行く、そういう面でもドクターヘリの導入を本当に、全県における導入、大臣の御地元はいち早く全国で二番目に導入され、今度二機目が導入されます。全国での導入をぜひお願いしたい。要望して、次の質問を伺います。

 無過失補償制度、この件についてでございます。

 先日、二十五日水曜日の当委員会で与党議員の方が御質問されて、それ以降の委員会でも御答弁されていると伺っていますが、大臣は、できる限り早く整備すると御答弁をされました。しかし大臣、このできるだけ早くというのは一体何年後のことなんでしょうか。来年でしょうか、三年後でしょうか、五年後なんでしょうか。できるだけ早くというのはいつなのか、御答弁いただきたいと思います。

石田副大臣 無過失補償制度については、大臣もそういう御答弁をされましたけれども、できるだけ早くということで今進めておりますが、詳細なスケジュールということでありましたら、基本的には年内に一定の結論が得られるように努めてまいりたい、このように考えております。

柚木委員 年内に来年やるという結論を出していただきたいと思うんです。

 これは、ちなみに、副大臣もきょういらっしゃいますが、日医のニュースにちゃんと書いてあります。十九年度通常国会への上程を協力してほしいと書いていますよね、来年度の導入。しかも、協議はいつからやっているか。昭和四十七年、私が生まれた年ですよ。もう三十四年やっているんですから、来年でいいでしょう。ぜひ前向きな取り組みをお願いいたします。

 時間がなくなってまいりました。

 今回いろいろな問題が背景にありましたが、やはり大きな問題は、実は今の産科救急医師の実態、これも大きな問題なんです。これは、時間が来ましたから最後のお願い、そして最後に一言大臣にお答えいただきたいと思いますが、本当に今大変な状況にあります。

 今回の奈良の大淀病院、主治医の方が常勤一名、非常勤二名、この常勤の主治医の方は週三回の当直をやっていて、そして、近隣圏で、すぐ近所の三つの市町村で、何と産科が閉鎖をされていたんです、この七月、八月に。大淀町にすべての負荷がかかっていた。もちろん、これで事故が起こっていいわけじゃありません。だけれども、こういう切実な状況にある。この医療現場の声を、ぜひともこの労働環境、過重労働の実態、これをしっかりと調査していただいて、そして改善をしていく。そうしないと、いつまでたっても今回のような問題はなくなりません。

 必要なのは、医師そのものの絶対数をふやす。そして、本当に助産師の活用であったり、さらには救急の診療報酬の大幅な加算、今回されましたが、まだ足りません。あるいは、本当に奨学金制度と地域枠なんかを組み合わせて、医師が不足している地域に、そして不足している診療科への医師を定着させる。入学定員をふやすだけで、県外に行ったり、不足している小児科や産婦人科に一人も行かない、三年連続、青森の弘前大学医学部、産科入局ゼロ、そんなことでは改善されないんです。とにかく医師をふやす、そして労働環境が改善される、そういうことをお願い申し上げたいと思います。

 最後に、これは私からというよりはむしろ、今回、三十二歳の若さで日本の医療体制の未整備のせいで亡くなられたかもしれない高崎実香さんに対して、あるいは、私もお会いをしました、実香さんそっくりになってきて、愛くるしいそのひとみで笑うようになってきたまな息子の奏太ちゃんや残された御家族に対して、また、きょう今この瞬間も、全国で献身的な自己犠牲のもと医療の最前線で戦っていらっしゃる医療現場の皆さんへ、さらに全国のこれから出産を控えている母子やその御家族に対して、実香さんの死を絶対に無駄にしないと、無駄にしない、その決意を大臣からお伺いして、私の質問を終わりたいと思います。

柳澤国務大臣 いろいろな問題が、今回の高崎さんの事故から我々は教訓を引き出さなければいけない、このように考えております。

 もうこれまで質疑のあった問題については避けますけれども、最後の、産科のお医者さんが足りないのではないか、あるいは助産師さんが十分にその力を活用されていないではないか、こういうような問題も今回の事故の背景にはあったという御指摘は、私もそのとおりだというふうに考えております。

 どういうふうに産科の先生を各地域で確保していくか、また助産師さんの活用をどういうふうに図っていくか、これについては、これから我々も非常に重要な喫緊の課題であるという認識のもとでいろいろなことを考えて取り組んでまいりたい、このように思っております。

柚木委員 終わります。ありがとうございました。

櫻田委員長 次に、高橋千鶴子君。

高橋委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 きょうは二つテーマがありまして、一つは、二十五日の質問の中でちょっとやり残した部分がございまして、それを先に伺いたいと思います。小規模作業所の問題であります。

 小規模作業所は、大体十人から十五人ぐらいの規模が一番多いと聞いておりますが、全国で約六千カ所、八万五千人が利用していると言われております。障害児者と父母などが力を合わせて育ててきた小規模作業所は、障害者が仕事や創作活動などを通して社会にかかわる拠点として重要な役割を果たしていると思います。

 一昨日の質疑の中で、大臣は、障害者自立支援法の目的の一つに、地域的に格差のあったサービスを全国一律のものに近づけて、どこに住んでいる障害者もそのケアに均てんできるようにと述べられました。私は、小規模作業所はまさにそういう点で、地域にまだまだある格差を少しずつ埋めて、障害を持つ人たちに居場所をつくってきた、社会参加への道を開いたという貴重な役割を果たしてきたと思っております。

 大臣は、この点では同じ思いだと確認してよろしいでしょうか。

柳澤国務大臣 私も、友人の中にそうした小規模作業所をつくって、そして、その後運営している方もいらっしゃいますので、その点はよく承知をしているつもりでございます。

高橋委員 ありがとうございます。

 そこで、自立支援法の中で小規模作業所の存続が危ぶまれております。この十月からは、小規模作業所は地域活動支援センターへの移行が期待されておりますが、法人格を持つかどうか決めるには時間がかかります。これを踏み出していくのにも、みんなが悩み考えなければならない。非常にその点では慎重にやらなければならないという状態であります。順調に移行するのか、あるいは、どのくらいの作業所が移行できるとお考えですか。

中村政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま大臣からも御答弁申し上げました、また委員からも御指摘がございましたように、小規模作業所、全国に約六千カ所ございますが、御案内のとおり、この小規模作業所は、現在、いわば法定の事業所ではないということで活動していただいておりますが、法定の事業を補完し、働く場あるいはアクティビティーの場、社会参加の場として重要な役割を果たしておられます。

 国の方ではこれまで、こういう小規模作業所のうちの幾つかにつきまして、民間団体を通じて一カ所当たり百十万円の国庫補助を行ってまいりました。しかしながら、国庫補助の箇所数は二千二百五十五カ所ということで、全国の小規模作業所の四割弱を対象に国庫補助させていただいたところでございます。

 障害者自立支援法の中で法定の施設としてやっていただくには二つの道がございまして、一つは、小規模作業所などを就労移行支援、就労継続支援、地域活動支援センター、こういったところに転換していただくことになりますと、今の法定外の施設ではなく、いわば障害者自立支援法の施設として活動していただける、こういうことになるのではないかと思っております。

 どのぐらいの移行を考えているかということでございますが、これはまさに小規模作業所の方々の御判断にもよるというふうに考えておりますが、私どもといたしましては、地域活動支援センター、これは地域生活支援事業に位置づけられております。この事業のセンターにつきましては三つの類型を考えており、実利用人員の方、十人以上、十五人以上、二十人以上と考えておりますが、経過的には、今年度は五人以上の方でも対象となるのではないかと考えております。

 こういったものの対象になる方々については、法人格をとっていただければ、地域活動支援センターとしてこの要件を満たしていただければ採択できるもの、要件を満たしていただければ、現在六千ある小規模作業所のうちのかなりの部分がこの地域活動支援センターになれるのではないか、こういうふうに期待しているところでございます。

高橋委員 局長、端的に答えてください、時間がありませんので。

 資料の一枚目をごらんください。

 小規模作業所に対する支援の状況ということで、先ほど説明がございました単価百十万円の国庫補助、このときの厚労省が出した資料では二千二百三十三カ所になっておりますが、十七年度で廃止でございます。その先の、今るる説明いただきました地域活動支援センターに移行することが期待される、移行したいと頑張る人たちにしたとしても、十月からです。半年間の空白がございます。

 つまり、このことによって、そもそも今のわずかな補助金の中で、小規模作業所の皆さんはもともと脆弱な財政基盤になっている、支払いそのものに追われている、そういう中で半年間も補助を切られて、何とかなるでしょうなどと言われたって、できるはずがありません。作業所の淘汰をこういう制度によってやろうとしているのではないか、私はここを指摘せざるを得ないと思うんですね。

 二枚目をごらんになってください。

 午前の部で郡委員が示したきょうされんの資料と、これはちょっと打ち直したもので、同じ資料でございますけれども、さっき指摘があったように、小規模作業所補助金制度、そのことによって自治体の補助金がこんなにも減る、廃止をするということを、廃止五道県、廃止を検討中が三十四都府県、こんなにもなっているということ、実際ほとんどですよ。そういうことを指摘したのに対して大臣は、市町村に移行するのだから都道府県の補助金は廃止をしてもらわなければならないと答えました。訂正されますか。

 これは、単独の補助金でしょう。全国すべての都道府県百五十七億、市町村全部合わせたら三百七十九億、これだけの単独補助をやっております。これを今打ち切ろうとして、自治体が国もやめたんだから打ち切ろうかな、そういうところになっているんです。そういう中で作業所がやっていけるのかということを聞いています。

中村政府参考人 お答えを申し上げます。

 ただいま委員の方から、図を示していただいて御説明をいただきましたが、その図にございますとおり、例えば平成十七年度でいいますと、地方交付税を財源とする地方自治体の単独補助がございました。大体一カ所当たり六百万円が地方交付税の措置額、こういうふうになっております。この交付税額は平成十八年度も図にございますように継続いたしますが、この交付税の対象が十七年度までは都道府県と市町村になっておりましたけれども、この交付税の財源が市町村の方に一元化された、こういうことで、二枚目に書いてありますような、都道府県の補助制度としては、市町村の方に交付税の財源が行ったのでいろいろ検討されているのではないか、このように認識しているところでございます。

 したがいまして、私どもは、地方交付税を財源とする小規模作業所についての支援につきましては、十八年度あるいは十九年度においても引き続き継続するように総務省の方にずっと要望もいたしてきておりますし、現に、十八年度についてはそのような補助制度が交付税においては措置されているということでございますので、あくまでも、交付税の財源の主体が都道府県及び市町村から市町村になったということに伴う都道府県と市町村の間の御検討になっていることではないかと承知いたしております。

高橋委員 今の説明で、基本的に、これまで自治体が単独でやっていた補助については地方交付税で措置されるという説明があったかと思います。ですから、そこを飛び越えて、県が補助を廃止してもらわなければならないという先ほどの説明は、言い過ぎだった、大臣の答弁は言い過ぎだったということを、撤回するべきだということを指摘したいと思います。

 そこで、次に行きますが、移行できない小規模作業所であっても、先ほど来言っているように、地域活動支援センター事業の中で位置づけることができる。今、さっきお話ししたのは交付税ですから総務省の所管、しかし、では厚労省は何をするのかということなんですね。それが表の一枚目の地域活動支援センター機能強化事業。十八年度は年度の途中ですので二百億、そして、来年度の予算概算要求が四百億という、地域生活支援事業という形で予算がある、これが余りにも小さいということなんです。

 資料の三枚目をごらんになってください。これを都道府県に配分するといかに小さくなるかということなんですね。これで幾ら裁量があると言われても、あれこれやれるはずがないではありませんか。これを市町村に配分すると本当に情けなくなります。しかも、実績に応じて今は配分をしておりますので、実は、東北の分、配分をいただきました。名誉のために市町村の名前は言いませんが、例えば宮城県では年間予算十万四千円という村があります。福島県では四万八千円というところがあります。これでは何もできないと思います。

 愛知県がまとめた市町村地域生活支援事業実施状況という調査資料が私の手元にございます。これを見ますと、自立支援法七十七条一項に基づき、必須事業となっている事業のうち、一般相談と手話通訳だけは六十三市町村すべてで十月実施になっておりますが、それ以外はバツなんですね。地域活動支援センターは、未定や検討中を入れて半分以上が実施にならない、つまり十月では始まらない。見切り発車だということがこのことからも明らかなのだと思うんです。

 実際に、幾ら裁量があるといったって、何もできないのが実際なんです。それを、地域生活支援事業全体の予算枠を拡大し、市町村への支援を強めるべきと考えますが、伺います。

中村政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘の地域生活支援事業、三ページで都道府県の配分額が示されておりますが、これは、委員から御指摘のありましたとおり、都道府県に対して地域生活支援事業が配分される分でございます。地域生活支援事業、国費として満年度四百億という規模でございますが、配分につきましては、一割を都道府県、九割を市町村に配分する、こういうことでございますので、ここに出ております額は一割の都道府県分でございまして、この都道府県の事業の中には地域活動支援センターは入っておりません。そういうことでございます。

 また、この地域生活支援事業は一種の交付金でございまして、その枠内でさまざまな事業をしていただくということでございます。

 地域活動支援センターがまだない市町村がある、それを見切り発車だということで御指摘でございますが、むしろ、そこの小規模作業所なりそこの地域で、地域活動支援センターを置くか置かないか、そこに移行するかしないかは、そこの事業者の方あるいは市町村の御判断でありますし、市町村が地域活動支援センターにどのくらい資源を配分するか、それは市町村の判断になる、こういう制度でございます。

高橋委員 ですから、先ほど、後で言いましたように、残りの九割のうち地方に配分された数字について、市町村にすると十万何がしとかそういう予算になってしまって何もできませんねという指摘をさせていただきました。

 そういう事業をやるかやらないかは市町村の判断だとおっしゃいましたけれども、ですから、例えば、小規模作業所がセンターの中で生きていけますよとか、施設で、例えば移送サービスですとか、それが地域の支援事業の中でやっていけますよとか、いろいろ説明をしてきたけれども、現実はこんなに予算がないんだということをお話しさせていただいたんです。ですから、裁量だといったって、やれる範囲がもう限られている、だから予算をもっと確保してほしいということを指摘させていただきました。

 きょうは時間がありませんので、この問題は、十月から始まって、実際どうなっていくのかがこれから非常によく見えてくると思いますから、引き続いてお話をさせていただきたいと思いますので、ぜひ検討をお願いいたします。

 次に行きます。きょうはトンネルじん肺問題について質問をさせていただきます。

 国発注のトンネル工事に従事をしたためにじん肺になった、このことは必要な規制をとらなかった国に責任があるとして、九百六十四人の原告が全国十一地裁に訴えているのがトンネルじん肺根絶訴訟でありますが、七月に東京、熊本、十月に仙台で判決がありました。いずれも国の責任をきっぱり認めるものでありました。原告側勝訴にもかかわらず、国が控訴したことに対し、まず強く抗議をしたいと思います。

 十月二十日付読売新聞に、厚労省が「じん肺訴訟敗訴受け 粉じん測定義務化検討」という記事が載りました。一瞬サプライズかと思ったんですが、厚労省は同日、この記事は事実ではないとプレス発表をいたしました。大変残念であります。私は、読売新聞のフライングかもしれないけれども、この記事がいずれ事実になることを期待したいと思います。

 そこで、まず伺いますが、粉じん濃度測定は原告団の要求の第一に上げられているものですが、なぜ厚労省はやろうとしないのですか。

青木政府参考人 トンネル建設工事におきましては、とりわけ切り羽の付近におきましては、一番先端のところでありますけれども、大型重機による掘削作業でありますとか、あるいはコンクリートの吹きつけ、あるいは掘削した土砂の搬出作業が行われておりまして、そういった切り羽の位置における粉じん濃度の測定ということは危険でございます。また、測定点の確保が困難ということでございますので、罰則をもって義務づけることとはいたしておらないところでございます。

 しかしながら、トンネル建設工事の掘削作業等においては、既に法令により、湿潤化による発じん防止、つまり発散することをまず防止する、それから呼吸用保護具を使用しなければいけない、それから換気、これを義務づけております。それと同時に、総合対策を講じまして粉じん対策の効果を上げてきておりまして、今後ともこういった意味で予防対策に積極的に取り組んでいきたいというふうに思っているところでございます。

    〔委員長退席、宮澤委員長代理着席〕

高橋委員 予防対策がしっかりできるかどうかということを何によって担保するかという問題なんですね。

 例えば、平成十二年十二月にずい道等建設工事における粉じん対策に関するガイドラインを発出して、この中で、換気対策の効果を確認するための粉じん濃度測定を義務づけております。このこと自体が原告団が求めている切り羽での測定とはかけ離れたものなんですね。換気を目的としているということと、切り羽から五十メートルも離れているということで、全然違うわけですけれども、少なくとも、このガイドラインが、例えば測定の記録をチェックしたり、改善を指導できる仕組みがあるでしょうか。

青木政府参考人 今お話しになりましたガイドラインでございますけれども、これにつきましては、先ほど申し上げましたような法令上の義務づけとは別に、さらに一層、発じん防止でありますとか災害予防という観点からガイドラインを定めて、それを守っていただくという指導をいたしているところでございます。

 そういう意味では、先ほど申し上げました予防対策、総合対策などで、事業者、あるいは我々関係機関もともにそういったものを監督したり点検をしたりしていくということで、災害の発生の防止に努めているところでございます。

高橋委員 ですから、監督したり予防したりということがどうやって担保できるかと言っているんです。ガイドラインは規則ではないので、それに基づいて、では、監督官が具体的に測定の記録を出せ、改善をしなさいという指導がちゃんとできるんですか。

青木政府参考人 当然のこと、さまざまな私どもの手法としてガイドラインを定め、それに基づいてやるようにということで指導いたしているわけです。もちろん、法律上の義務づけということでありません部分については、罰則というようなことで最終的な担保ということはできないわけでありますけれども、そういったガイドラインに基づいて指導をやっているというところでございます。

高橋委員 今お認めになりましたように、さまざまな指導と言いますが、担保するものがないということが問題なんですね。それははっきりしている。何でトンネルだけできないのか。金属や炭鉱が規則になっていることと比べても、全然違うのではないかということであります。

 先ほど、切り羽は危ないからというふうなお話も少しありましたけれども、ここに、長野県がトンネル工事における粉じん対策を検討するに当たってのモデル事業として取り組んだ資料がございます。この中で、五カ月の間、十一回にわたって粉じん濃度測定を行っております。切り羽から五十メートルのところでは、確かに、国の基準である一立方メートル当たり三ミリグラムに対して一ミリグラム以下である。しかし、切り羽では最大で三十二・八ミリグラム、非常に大きい。

 これでは、ガイドラインを仮に守っていたとしても、それに基づく測定では実態とはほど遠いということがわかるし、むしろ測定すればとても仕事をさせられない環境なんだなということを恐れているのかなと疑わざるを得ないと思うんですね。どうでしょうか。

青木政府参考人 今委員がお触れになりました報告書でございますけれども、この報告書の中におきましても、トンネル工事現場においては大型重機の間を縫っての測定が不可能な場合もある、あるいは、切り羽付近は安全上の観点から部外者立入禁止区域ということになっていまして、測定者の安全確保が確実でない、そういった問題があるというようなこともあるわけでございます。実際、切り羽付近における死亡事故も多く発生しているところでございます。

高橋委員 切り羽付近における死亡事故も発生している、非常に危険な場所であるということはよくわかります。だったら、労働者はそこに毎日従事をして危険ではないのかということが問われると思うんですね。やはりトンネルは、日本は国土の七割が山である、そういう地形もあって、まだまだトンネル事業というのは続くと思うんですね。だからこそ、本当に安全対策というのが問われてくると思うし、逆に、だからこれをやると言えないのかな、そういうことを思わざるを得ないんですね。

 労働者の安全を守るためにも粉じん濃度測定をやるべきではないかということ、なぜそれができないのかということを重ねて指摘したいと思うんです。

 ちょっと時間もありますので先に進みたいと思うんですが、資料の四枚目をごらんになっていただきたいと思います。

 「改正じん肺法下の有所見者数・要療養患者数の推移」ということで、厚労省の資料をもとに作成をさせていただきました。この間、皆さんは、有所見者数が四人しかいない、減っているということをおっしゃって、対策はうまくいっているということを随分おっしゃっております。しかし、その前の数字を見ますと、全産業合計で要療養患者数が七百六十七名に対し、トンネル建設業が百四十五名いらっしゃる。依然として二割前後、やはり全産業の中でトンネル産業の占める割合、じん肺のいわゆる罹患数が多いということ、これはまずしっかりと見なければいけないと思うんですね。

 そして、括弧に入れたのは、百四十三名というのは、これは随時申請による健診で療養が必要になった患者さんであります。渡り坑夫と言われ、トンネル現場を次々と移らなければならないトンネル労働者の仕事の特性、そしてじん肺が発症するには何年もかかる、そういう病気の特性、そこから見て、やはり随時申請も含めて所見者がどれだけいるのかということをしっかり見なければ、本来の姿にはならないだろうということがあると思うんです。

 このことは平成十三年の第一回の労政審のじん肺部会でも労働側の委員から指摘をされて、その数字を資料に出さないじゃないかということを指摘された、そういう経緯もございます。

 そこをしっかりと示して、ここに向き合わなければ、全産業のうちいかにじん肺患者がトンネル産業に多いのか、ここに向き合うという立場に立たなければならないと思いますが、この点で大臣の見解を伺いたいと思います。

柳澤国務大臣 じん肺を病む方々については、本当に御同情申し上げるわけですけれども、今先生御指摘の四ページ目の有所見者数また要療養患者数の推移を見ますと、これはやはり、徐々にではありますけれども減少をしているというのが読み取れるのではないか、このように思います。特に、新規の有所見者数を見ますと、全産業二百五十三に対して四名ということでございまして、その比率も大変減少しているというふうに見られます。

 しかしながら、そういうことに満足というか、そういうことだからいいんだというふうには考えずに、これからも、いろいろな新しい技術あるいは科学的な知見を踏まえて、この対策に我々としては取り組んでまいりたい、このように考えております。

高橋委員 ですから、幾らかはそれは減っていかなくちゃ困るんです。何度も総合対策をやっているわけですから、今第六次にまで行っているわけですからね。しかし、それでも依然としてこんなにあるじゃないか、三けたの数字があるじゃないかということを指摘したわけですから、そこをしっかりと向き合っていただきたいということを重ねて指摘したいと思います。

 五枚目に紹介をしておきましたが、「じん肺症及び合併症による労災新規受給決定者数及び療養継続者数」、これを見ていただきたいと思います。〇四年度で千二百三十三人、療養継続者数が一万七千三百四人と依然として大きい状態であります。

 また、先ほど来お話をしている遵守という問題ですね。担保するものがないじゃないかというお話をしましたけれども、一般的に、「土木工事業に係る定期監督等実施状況」を見ますと、〇五年で一万一千六百十一件の監督件数に対して、違反が六千九十八件、五二・五%なんですね。この労働条件も含めての違反率の問題であります。

 ですから、そもそも建設土木工事業全体がこうした法規を守れない状況にある、これが依然として続いている中で、トンネル産業だけがしっかりやるだろう、やるから大丈夫だろうなどということが言えるはずがないんです。そこを何としても認めていただきたいと思います。

 じん肺根絶訴訟は六年余りの裁判闘争、ゼネコンを相手にして闘って勝利和解をして、この間も百人が結審をする前に命を落としています。しかし、和解をしたけれども、後に続く人のために根絶をしなければならないということで国に対してもう一度裁判をした、これは例のないことだと思うんです。しかし、例のないことだけれども、原告団は、勝利をすれば、あるいは国が謝罪をして協議の場に着くなら解決金を放棄するとまで言っています。その原告団の声に本当にこたえて、控訴を繰り返し、負けを繰り返し、死に絶えるのを待つつもりか、このことを本当に受けとめていただきたいと思います。これは時間がないので指摘だけにします。

 十月十九日の西日本新聞に、水俣裁判の最高裁を受けて懇談会の提言に加わった柳田邦男氏が次のように述べています。

 国が負ける裁判が、薬害とか原爆とか続いているけれども、その本質は同じなんだ、なぜかというと、それは一つは行政の規制権限不行使だ、そして一つは形式主義だということを指摘して、官僚が経済成長や産業の保護育成を優先順位の第一位に置き、住民や働く者、国民の健康と命を二の次にしか考えてこなかった、ここに問題があり、根本的に変えるべきだと指摘をしています。

 この指摘をしっかりと受けとめて、大臣が政治決断をされることを強く求めて、終わりたいと思います。ありがとうございました。

宮澤委員長代理 次に、阿部知子君。

阿部(知)委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。

 本日は、大臣を初め御出席の委員各位、また委員長も、本会議を挟みましての長時間の審議で大変お疲れのことと思います。いま少しお時間をちょうだいいたしまして、私の質問を行わせていただきます。

 私は、本日の本会議でも思いましたが、北朝鮮の核実験声明以降、我が国がどう対応するかということが国会の内外で大きく問題になる中で、大変に残念なことに、政府の要職にある方の中からも核保有論の論議をしてはどうかというようなお話が漏れ聞こえます。

 きょう、たまたまこの委員会でも園田委員がお取り上げでございましたが、いわゆる原爆症という形で、認定をめぐって、原爆症であったか否かということをめぐって、戦後六十一年たった今日もなお、そのときの体に負った傷をずっと抱えたまま生きておられる方があると。

 私は、まず政治の役割は、例えばこの段にあって核保有論をおっしゃるのではなくて、現実に唯一の被爆国と言われ、その傷のいえぬ方たちが、今厚生労働行政をめぐっていろいろに訴えを出されています。

 私は、きょうの園田委員の御質疑、厚生労働省側の御答弁も聞きながら、実はこれから、相次いで、五月の大阪地裁、八月の広島、次々と被爆者の皆さんが認定を求めた訴訟の裁判判断が下り、また厚生労働省が控訴されということを繰り返される、そうした悲しいいわば応対以前に、この委員会の場で、これは委員長にお願いがございますが、そしてこの認定のための訴訟を起こしておられる多くの患者さんたちの願いでありますが、この厚生労働委員会において、例えば二〇〇一年段階の認定方法の問題、現実になぜこれだけ裁判が起きているかということも含めて、各委員が真剣に話し合っていただきたいという要請が皆さんのお部屋にも届いていると思います。

 ぜひ、理事会で御協議いただきまして、この国会中にも、核保有論を論議するんじゃなくて、原爆症で苦しんで、現在も認定を求める皆さんに何が私たちができるかということの論議をしていただきたいと思いますが、委員長、いかがでしょう。

宮澤委員長代理 後刻理事会で協議いたします。

阿部(知)委員 よろしくお願い申し上げます。

 さて、私の質問に入らせていただきますが、私は実は、先回の質問の折にも、皆さんに一つ御紹介をしたい詩がございます。原爆詩人である栗原貞子さんという方が一九四五年の八月につくられた「生ましめんかな」という詩でございます。もしかして柳澤大臣は私以上にとても文化的ですので御存じなことと思いますが、しばらくのお時間ちょうだいして御紹介をさせていただきます。

  こはれたビルデングの地下室の夜であつた。

  原子爆弾の負傷者達は

  暗いローソク一本ない地下室を埋めていつぱいだつた。

  生ぐさい血の匂ひ、死臭、汗くさい人いきれ、うめき声。

  その中から不思議な声が聞こえて来た。

  「赤ん坊が生れる」と云ふのだ。

  この地獄の底のやうな地下室で、

  今、若い女が産気づいてゐるのだ。

  マッチ一本ない暗がりの中でどうしたらいゝのだらう。

  人々は自分の痛みを忘れて気づかつた。

  と「私が産婆です。私が生ませませう」と言つたのは、

  さつきまでうめいてゐた重傷者だ。

  かくて暗がりの地獄の底で新しい生命は生れた。

  かくてあかつきを待たず産婆は血まみれのまゝ死んだ。

  生ましめんかな

  生ましめんかな。己が命捨つとも。

 私がこの詩をあえて紹介いたしましたのは、きょう問題になっております少子化の問題も、すなわち、今私たちが現在生きている社会が、この社会にどのように生命を受け入れ、そして一緒に歩んでいこうかという奥深いところでの命をはぐくむ力がもしかして衰退してきているかもしれないという危惧を、私自身は小児科医の臨床をやりながらずっと感じておりました。

 こういう委員会の審議の場では、いや、一・三幾つだ、一・二幾つだと数だけが躍りますが、それ以上に必要なことは、今、私どもの社会が本当に子供たちをはぐくみ育てる決意があるのかどうかということにおいて、私は先回の御質疑の中で、柳澤大臣にはそういう意味を御理解していただいた上で助産師さんの役割を高く評価していただけた、産ます側と生まれ出る命が共感するような場がとても少なくなる、それがまた医療事故の大もとにもなってございます。

 きょうは、確認の答弁を二つとらせていただきます。

 大臣には既に御承知おきのことと思いますが、さきの医療制度の改革の審議の中で、せんだってもちょっと申しました、助産所の開院には二つの要件が、ダブル、加わりました。一つは産科の医師と提携すること、及び病院と提携すること、これが現実にはなかなか難しくなっているということをせんだっても申しました。

 実は、この案件はさきの国会でさんざん論じられたのです。でも、この形にしか落ちつきませんでした。私は、今が本当の見直しのチャンス、今私たちがかじ取りを誤れば、お産のための大事な定点が消えていくだけじゃなくて、お産の文化が消えていく。お産は、一方で安全が大事です。でも、産ましめようという共同作業であるという、この大きな力を助産師さんたちは持っておられて、私は自身は医師ですが、それをどうやって医療側が受けとめるかということの転換点です。

 大臣には恐縮ですが、実は、南野議員がさきの国会の中で、例えば医療ネットワークの中にちゃんと助産所を位置づけるように発令してくださいということを与党側から聞かれたにもかかわらず、それは却下になってしまいました。私が聞いて成るものかとも思いますが、でも私は、先日来の答弁を聞いていて、大臣はここを過つことなくきちんと行政指導、すなわち助産所は地域のネットワークで支えるんだという強い意思をもう一度お示しいただきたい。いかがでしょう。

    〔宮澤委員長代理退席、委員長着席〕

柳澤国務大臣 助産師さんを、そのお力をかりるということの重要性ということは、私も本当に大事に考えているわけです。殊に、もちろん助産師さんが産科のお医者さんのかわりになってということを言いますとこれは語弊があるわけですけれども、実際の問題として、今こうして産科のお医者さんが少なくなる中で、助産師さんのお力をかりるということの意味はやはり大きいんだ、このように思っております。

 特に、今厚生省が進めている、ちょっと他人みたいな話になるわけですけれども、拠点の病院にすべてを集約するんだということで、そして近回りのところにせっかくある助産師さんまで失われてしまうということがあるとすれば、それは大変な問題だという認識に私は立ちまして、今ある助産師さんのいらっしゃる助産所というのは、これは、もちろん緊急に招集されるというようなことはあっていいけれども、全部がそこに行かなきゃならないというような、そういうネットワークのつくり方、あるいは拠点のつくり方というのは、やはりおかしい。やはり日ごろ正常な妊婦さんがそこに行っていろいろ健診をされるということは本当に確保されるべきだ、このように考えておるわけでございます。

 そうした中で、今、阿部委員から御提案があった、ネットワークの中にぜひ助産師さんを位置づけるべきだ、こういう御提案については、私はそれは当然そうなってしかるべきだ、このように考えているわけでございます。

阿部(知)委員 ただいまの大臣の御答弁を賜りまして、そのような行政指導もいろいろな形でなされるものと心から期待しております。

 そして、もう一点だけお産関連でお話をさせていただきますが、先ほど柚木議員もお取り上げでありましたけれども、ああ、柚木議員は私の子供くらいの年なんだと感動しながら聞いておりましたが、産科の周産期センターの未整備の問題で、実は八カ所が未整備である、早急に整備してほしいというお話をしてくださいました。私もそのように思うことは同じなのですが、しかし、またこれも実態を見てみなければ、未整備が本当に今あるような集約化の方向で整備されるのがいいかどうかというところには問題が残ります。

 実は、八カ所の未整備の逐一のデータを厚生労働省にお願いして私は見せていただきました。例えば宮崎県では、いわば中央のセンターはないけれども、点々点々と、そうした形で実績を上げ、ネットワーク化をして乳幼児死亡率を下げてきたとか、私はそれはそれでよいと思うのです。

 そして、むしろ厚生労働省にやっていただきたいのは、柚木議員もお取り上げでありましたが、実はこの妊産婦さんが亡くなられた真の理由は、いわゆる妊娠に合併する子癇というけいれんを来す疾患ではなくて、たまたま、もしかして御本人がお持ちであった脳血管の脆弱性あるいは子癇から二次的にきた脳出血かもしれません。これによって、実は今の周産期センターでは、母体の側の、いわば救急疾患、ICU疾患は手当てできないものでもある場合もございます。

 となりますと、縦割りに周産期センターあるいは小児センター、何とかセンターとやるだけでは、このお母さんは救えない。もう一段上の、周産期センターと他の救急とのネットワークということを各自治体にきっちりとお取り組みいただくように発令していただくなりなんなりが、私は本当にこのような悲しい事故を防ぐことであると思いました。

 大臣は先ほどそのような御答弁の向きでもありましたが、実際には、私は補助金が周産期センターにおりているのも知っています。でも、それ以外にも、基盤整備のために一括の補助金も厚労省はお持ちであります、医政局で。であれば、全体がネットワークできる、全体が安心できるということに向けて、縦割りでない、個々のセンター別でないところの機能をぜひ発揮していただけるようお取り組みいただけますでしょうか。お願いします。

大谷政府参考人 ただいま御指摘いただきましたように、例えば総合周産期の母子医療センターあるいは救命救急センター、いろいろな高度な機能の施設がございますが、現在でも、実際のところを見ますと、約六割ぐらい、総合周産期母子医療センターは救命救急センターの機能をあわせ持っておるという状態でございます。

 こういったセンターにつきまして、あるいは広域的な連携につきましては、それぞれの地域連携で取り組んでいくよう、私どもも実態を把握の上で各地方自治体に対応を求めていきたいと考えております。

 それから、先ほどの大臣の答弁、一点補足申し上げますと、周産期ネットワークに助産所を位置づけるということにつきまして、実は先般、国会の御審議もいただいた結果でありますが、そのネットワークにおける助産所の位置づけをより明確にした通知を改正したところでございます。

阿部(知)委員 今の御答弁でも、周産期センターの六割が救急の他の大人の疾患と併設、四割はそういう機能を持っていないわけですから、ここだと、例えばお母さんが妊娠の合併症の御病気であればまだしも、このようにほかにもう一つ御病気であった場合、大人の救急の対応が必要になります。ですから、残る四割は今度はどこと組んでいけるのかというような観点がないと、今回のように十八カ所も十九カ所もとなってまいりますので、私は、各自治体は本当に人的資源の乏しい中やっていると思います。むしろ厚生労働省として、文部科学省と一緒にやっていただきたいのは、人的資源の育成、医師の育成であったり、助産師さんの育成であったり、再教育という分野で、本当にリーダーシップをとって自治体の下支えをしていただきたいと思いますので、大臣にはよろしくお願い申し上げます。

 では、本日の予告の質問に移らせていただきますが、大臣には、既に予算委員会で私がお示しいたしました「社会保障財源の項目別推移」というグラフをお手元に見ていただきたいと思います。

 私は、このグラフで何を示したかというと、いわゆる社会保障にかかわります財源のうち、事業主の拠出分と被保険者の拠出分と公費、税という形の拠出の一九九四年から二〇〇三年への推移をお示しさせていただきました。そして、予算委員会での私の主張は、我が国の社会保障体制はそもそも事業主と被保険者によるところのいわばがっちりとした社会保障の体制がもともとあっただろう。しかし、この間、これがどんどんいわば内部崩壊を来してきて、つまるところ、結果的には、税による財源負担ですね、補てんが多くなっているのが現状である。

 ここで税制の論議をすると絶対柳澤先生の方が強いので、私はそういうふうにいかないで、ここで問題にしたいのは、ぜひ見ていただきたいのは、柳澤大臣は、二〇〇二年から三年に事業主負担が減っているのは、いわゆる厚生年金基金などが取りやめになったことだろうとおっしゃった。確かにその点もさすが大臣よく見ていますねと思いました。でも、私はトレンドを見ていただきたいんですね。トレンドは、事業主拠出と被保険者、働いている者の拠出は本当はパラレルであるはずです。だって、普通は折半なんですから。でも、これがどんどんどんどん近づいてきちゃって、今では被保険者拠出の方が上回ってきております。

 私は、これは社会保障の形としてやはり根幹が危なくなることだと思っておりますが、大臣の御認識はいかがでありましょう。

柳澤国務大臣 先般来、社会保障全体の財源の拠出者を中心とした時系列的な推移を示されまして、非常にこの最近の状況についての憂慮を表明されております。

 先般の私の予算委員会での答えは、二〇〇二年から二〇〇三年度のこの事業者拠出のかなりの減少、これは代行返上が主たる背景だ、こういうように申し上げたわけでございます。しかし、きょうはまたトレンドを、もうちょっと先からのトレンドを見ろ、こういう御指摘でございます。

 このトレンドをどう見るかということでございますが、基本的に事業主拠出が一九九七年ごろから非常に低迷をしているというのは、阿部委員とは財務金融委員会でたびたび応酬を繰り返したように、まさに九七年が金融危機の一番しょうけつをきわめた、そういう時期でございまして、それ以後極めて日本経済は深い低迷をたどる、こういうことがございまして、この経済環境の中で、どうしても経営者というのは新しい人を正式な雇用という形では雇わない、こういうことが続きまして、この関係で、国保、国年というようなものを利用する雇用者が多くなっていった、これを恐らく示しているんだろう、このように考えるわけでございます。

 そして、被保険者の拠出につきまして、九九年ころからずっと上がっているわけですけれども、これは、やはり医療費につきまして自己負担部分、窓口負担部分が増嵩していったというようなことを示しているのではないか、このように考えているわけでございます。

 そして、税の部分につきましては、二〇〇〇年からの急な増嵩、増加は、これは政府管掌健康保険について、一時、本来納めるべき、一般会計が投入すべき資金を投入しないでおっていわば借りた形になっていたのを、この際返済をしたというようなこと。それから、二〇〇二年から二〇〇三年にかけては、やはり老人医療につきまして、これもまた負担率が引き上げられたというようなことで、それに見合う公費負担が増加した、こういうようなことを反映しているのではないか。にわかに詳しい分析を背景にした答弁ではございませんけれども、概略そのように考えているわけでございます。

阿部(知)委員 私は、このグラフを人口問題研究所の「社会保障給付費」からとりましたが、実はこの被保険者拠出の中には窓口負担分は含まれていないのです。それでこの形をとっているということは、やはりいかに事業主拠出が減り、被保険者の保険料拠出がふえ、プラス今大臣がおっしゃってくださったように窓口でも負担しているわけですから、やはり庶民にとっては負担感が強いんだなと、私自身も改めてこれをつくってみて思ったわけです。

 きょうは、その点をまず大臣と、これはまた繰り返し論議させていただきたいので、御答弁いただきました上で、いわゆるこうした形であっては、今大変に話題になっている社会保険の骨格であるところの厚生年金が大変だろうなとだれでも察しがつくわけです。年金論議のときにも私は指摘いたしましたが、一体、厚生年金に本来は入らなきゃいけないのに入っていない未適用事業所と申しますものは幾つあるんだろう。これを尾辻大臣にも伺いました。尾辻大臣は、詳しいデータはなかなか全体像がわからないというような御答弁。しかしながら、雇用保険と突合して何らかの未保険の数を出しましょうという御答弁をいただきました。

 そこで、きょうは村瀬長官に来ていただきましたので、申しわけありませんが、現段階で社会保険庁が把握していらっしゃる、いわゆる厚生年金の未適用事業所数と未加入数はどれくらいでしょうか。

村瀬政府参考人 従来、社会保険庁では、雇用保険との事業所データの突合や法人登記申請書の閲覧によりまして、十六年度から重点的な加入指導を継続してございます。

 その結果、十八年三月末現在の未適用事業所数は六万三千五百三十九事業所ということで把握しておりまして、ホームページにも公表をしてございます。

阿部(知)委員 これは大臣と村瀬長官両方に伺いたいですが、九月の十五日に総務省から厚生労働省に出ました勧告でございますね、これは厚生年金の未適用の事業所数についても述べてございますが、厚生年金保険に関する行政評価・監視ということで、評価・監視結果に基づく勧告というのが出てございます。

 まず、大臣にはこの勧告をつまびらかにごらんになったかということと、村瀬長官にも同じ問いで、はっきり言って随分数値も違います、もちろん手法も違うことは了解した上でです。しかしながら、総務省の方から今の社会保険庁の仕事をごらんになって、こういう違う分析があるということについてどうお考えかを村瀬長官に、柳澤大臣には勧告をごらんになったかをお答えいただきたいと思います。

柳澤国務大臣 大変恐縮ですけれども、本文についてはまだ私つまびらかに読むという時間がとれておりません。概要につきまして、これはどこが作成してくれたものか承知をいたしておりませんけれども、先ほども、これは非常に的確に要点を摘記しているねというようなことで感心して見ておりましたけれども、その概要だけを目にしております。

村瀬政府参考人 先ほども申し上げましたように、社会保険庁としましては、雇用保険の事業所データ、それから法務省から閲覧させていただきます新規事業所データ、これらを踏まえて適用事業所を見ておりまして、その中で未適用事業所というのは、先ほど申し上げましたように六万三千五百三十九という位置づけでございます。

阿部(知)委員 きょう、皆さんのお手元に、総務省からいただきました抜粋を資料の二と三につけさせていただいています。総務省の方で、未適用、適用漏れのおそれのある事業所数は六十三から七十万、村瀬長官のおっしゃるのが六万ちょっと、適用漏れのおそれのある被保険者数は何と二百六十七万人となってございます。年金というのは公正さが必要で、本来加入されるべき人が加入していなくて、不正免除とかじゃなくて本当に加入すべき人が加入していなくて、共通にお互いに支えていくルールがどうして成り立とうか。私は大変に、やはり大きな問題があろうと思います。

 現状で、もう長官もごらんになりましたでしょうが、例えば総務省の方からの御指摘ですと、この雇用保険との突合ということも、いわゆるデータ化されたものを用いているのではなくて紙ベースでやっておる。そして、実はそうした突合というのもしっかりやっていない事務所すらある。それからまた、法務省の方で登記情報をお持ちなので、いわゆる商業・法人登録簿の閲覧も電子化しているので、これも利用されてはどうかというような御指摘であります。

 村瀬長官に伺います。

 私は、不正免除の問題は別途またやらせていただきますが、やはり本当に国民がやってほしいのは、年金の公正さを保つために、こうした、どんな手があって、どういうことができて、未適用の人にちゃんと入ってもらうルールをつくろうよということだと思いますが、この総務省の指摘を受けて、長官としては今何をお考えでありましょうか。お願いします。

村瀬政府参考人 まず、先生御指摘のシステム面での未適用事業所の把握の問題でございますけれども、まず一つは、現在のシステムを刷新しておりまして、残念ながら機械突合ができない仕組みになってございます。これは、労働保険との徴収の一元化を含めまして、厚生労働省内できちっとシステムを突合できるような形に変える、それまでは、残念ながら、データを打ち出して目検で対応していくということしかできないというふうに考えております。

 一方、法務省のデータにつきましても、先ほど申し上げました、オンラインで検索できるようにするためには、どうしてもシステムの変更が出てまいります。そういう点で、優先順位からいきまして、我々としては刷新の方を優先したいということで、新しいシステムの移行時にはそれも踏まえて対応できるように考えていきたい。

 それまでの間、ではほっておくのかということでございますので、実は、パソコンシステムで民間から新規登録企業リストというのがいただける仕組みが見つかりました。これをきちっとやりまして、その中で新規企業については適用促進に生かしていきたい。そして、最後はやはり法律に基づいて公平公正に、職権適用までやるというのが本来の社会保険行政の筋だろうというふうに思っておりまして、我々はそこまで行くような形で仕組みを考えたい、このように考えております。

阿部(知)委員 長官も鋭意お取り組みでありますが、やはり、もっとスピードアップされてしかるべきだと思いますね。目につくいろいろな年金関連は不祥事ばかりで、どんな努力をされているのか、どんなふうに長官の指導のもとにスピードアップされているのかは一切国民には見えません。

 そして一方で、この法案も審議になるのかならないのか全くわからない状態が続いています。私として最後に一問だけお願いしたいんですが、実は、適用漏れの事業所数の割合は、各社会保険事務局ですごく幅があるというのが三ページ目に書いてございます。ある事務局では、社会保険事務局ですね、そのあるところでは、そこにある事業所の全体の一〇%、あるところでは三四%、一つの地域で三四%も適用漏れ事業所があったら大変なことです。各社会保険事務局ごとに目標をきっちり設けなさいとここには書いてございます。

 もう一つ、今長官がおっしゃった、具体的なお入りいただくためのいろいろな手順が全くルール化されていません。立入調査及び職権適用の実施ということも、もっとルールを持って明文化する。これには行政権が、権力が必要ですから、そこで不足のものがあるなら私どもにもおっしゃっていただきたい。こんな不信を蔓延さすような取り組みばかりして、総務省から指摘されて、一体何だろうと国民は思います。残念ながら、皆さんのこれまでの社会保険庁では、未加入のところのわずか三%しか加入させられていません。これはゆゆしき事態だと思います。

 時間が過ぎていて恐縮ですが、大臣にはぜひこれ全文を見ていただきたい。早速に当たっていただきたい。長官には、今の三%適用を、三%ですよ、迅速にきちんとお納めいただけるようにお取り組みいただきたいが、御決意と、私は期限も区切りたいが、最後の御答弁をお願いします。

櫻田委員長 村瀬長官、簡潔にお願いします。

村瀬政府参考人 まず、規模のところからやりたいと思っておりまして、十八年度は、従業員数十五名以上の企業につきましては職権適用するということから進めたいというふうに考えております。

阿部(知)委員 ありがとうございます。また引き続き質疑させていただきます。

櫻田委員長 次に、糸川正晃君。

糸川委員 国民新党の糸川正晃でございます。

 私が最後の質問者でございますので、しっかりと御答弁いただければというふうに思います。

 私も社会保険庁の改革につきまして御質問をさせていただきたいというふうに存じます。

 現在、継続審査というふうになっておりますこの社会保険庁改革法案は、社会保険庁の解体的出直しを行うものとして提出されたというふうに伺っておりますが、にもかかわらず与党内では、さらにこの解体的出直しにふさわしい内容となるようこの法案の見直しを行うことが決まっているとの報道もあるわけでございます。これは、現在の法案が看板のかけかえにすぎないのではないか、こういう批判を認めるものであるというふうに考えられますし、また、年金制度に対する国民の信頼を回復するための社会保険庁改革という目的を見失ってしまっているのではないかというふうにも思われるわけでございます。

 そもそも、政府としまして、この社会保険庁の解体的出直し、この目的をどのようにお考えなのか、大臣にお伺いさせていただきたいというふうに思います。

柳澤国務大臣 年金等なんですけれども、これは一つには、制度というものがしっかりと国民の信頼を得るように構築されなければいけない、これが一つあります。これは年金局が主として扱っていることです。そして、その制度に基づいてしっかりした実際の運営ができるかということは、それの任に当たっている社会保険庁が行うわけですけれども、この制度、それから運営、両面にわたって国民が信頼してくれる、そういう社会保障制度というものが築かれなければいけない、こういうことであろうと思います。

 社会保険庁については、いろいろその位置づけが変わったというようなこともあって、実は私自身は、それはそれで大変だったろう、こう思いますけれども、いろいろな不祥事が明るみに出たということは、これはもう言いわけができないことでありまして、何といっても、年金を中心とする社会保障制度について国民の信頼を回復するためには、実施機関である、運営機関である社会保険庁の解体的な出直しが求められている、このように考えております。

糸川委員 たび重なる不祥事ということで国民の信頼を失った事実を考えれば、信頼の回復をするためにはどんな努力でも積み重ねていく必要があるのではないかなというふうに考えておるわけです。

 大臣にもう一問お伺いしたいんです。

 どのような組織形態におきましても、民間委託による年金運営業務、この効率化は必要ではございますけれども、職員の非公務員化、それから、民営化された組織、例えば独立行政法人等ということですれば、国会ですとか政府による監視機能が弱まるんじゃないのか。例えば、これは国土交通省所管なんですが、道路公団が民営化されて、例えば何々高速道路というところに変わったわけですけれども、どうもすりガラスのようになってしまって中身が見えなくなってしまったんではないか、そういうような声も聞かれるわけでございます。

 ですから、例えば非公務員化や独立行政法人化というのは、一見すると、組織が一新されて国民へのサービスが向上するのではないかというところもあり、ただ、年金行政のチェック機能が働かない、そして、業務の実態が不透明になって、実際にはすりガラスのようになってしまって、国民の年金制度に対する不信というものが増してしまうんではないか、そういう懸念もあるわけでございます。

 職員の非公務員化、独立行政法人化、こういうものを行うのであれば、国民への徹底した情報開示、こういうものをすることで国民の信頼を維持していかなければならないというふうに考えているわけでございますが、その辺の御見解をお聞かせいただきたいというふうに思います。

柳澤国務大臣 私どもは、現在御審議をいただくべく提出をさせていただいておる社会保険庁改革法案、これをぜひ踏まえた御議論、御審議をお願いしたいという立場でございまして、今先生が、それをさらに飛び越えて、もし独立行政法人化ありせば、あるいは非公務員化ありせばという前提でこれについてのコメントを求められたわけでございますが、私の立場としては、そこまでいってちょうちょうコメントをすることは適切でない、このように考えます。

糸川委員 と申しますのは、えてして、何かが起きますと、独法化したり非公務員にして見えなくしていくということが、どうもいろいろなところで起きているような気がしますものですから、そういうことのないように、やはり、すりガラスにして業態を変えれば我々は責任を引き継がないんだというようなことではなくて、責任をしっかりと持っていっていただきたい、どんな形態であっても、やはりそれは持っていってもらいたいというところから、こういう質問をさせていただいたわけでございます。

 そもそも、この公的年金制度が現行制度のまま続く以上、これは、それを運営する組織の形態が実際どういう形であっても、国民が必要とする年金業務には変わりがないわけでございます。

 社会保険庁を改革するのは年金制度に対する信頼回復が目的のはずでありまして、そうした意味でいいますと、組織形態の議論より年金運営業務の改善が重要であるというふうに考えておるわけです。その業務改善には、前から私も何度も言っておるんですが、職員の意識改革の徹底が前提となるわけでございます。職員の意識改革がなされないのであれば、実際どのような組織にしても改革にはならない。本当に徹底できるのであれば、社会保険庁を解体的にする必要がないのかもしれませんし。

 社会保険庁では、これまでさまざまな取り組みを行ってきたというふうに思いますけれども、国民年金保険料の不正免除、こういうものも見られますように、いまだに意識改革が十分に進んでいないのではないかなというふうに考えるわけでございます。

 国の組織であれ民間企業であれ、組織を活性化させる上で最も重要なのが、第一線にいらっしゃる現場、ここがいかにしっかりと業務をこなして、モチベーションを高めていくのかということであります。社会保険庁につきましても、職員が一丸となって業務に取り組んでいける組織とする必要があるというふうに私は思っておるわけでございますが、今後、今回の問題を踏まえつつ、どのように現場の立て直しが行われているのか。また、不祥事が起きてから、今どのようにモチベーションの向上を図っておられるのか、その辺も踏まえてお答えいただけますでしょうか。

村瀬政府参考人 委員御指摘のように、やはり社会保険庁、実施庁でございますので、実施庁を、国民の視点に立って公平公正に法令に基づき業務を遂行する組織につくり上げなければならないというふうに考えております。

 その中で、どういうことをやっているかということを少しお話し申し上げますと、やはり国民の皆様の声に耳を傾け、サービス改善に徹底的に取り組む。それから、目標を明確に定め、組織目標として共有する。職員一人一人が自覚を持って業務を遂行するとともに、結果を正しく評価する仕組みをつくる。現場第一線の声を業務に反映させる。それから、広域な人事異動を行う、このようなことだろうというふうに思っております。

 また、現在「改革リスタートプロジェクト」を立ち上げまして、「やるき化」「あたりまえ化」「見える化」「きれい化」という形で取り組ませていただいております。一人一人から「わたしのリスタート・プラン」を提出させまして、本音トークを開催しておりますし、全職員対話キャンペーンを行い、組織内コミュニケーションを実施しております。

 職員一丸となって、国民の信頼回復に向け最善を尽くしていきたいというふうに考えております。

糸川委員 今ユニークな名前の、何とか化ということでいろいろなお名前を上げられましたが、本当に職員のモチベーションを向上していただかないと、それは現場の人たちが、どういう声が長官に上がるかということよりも、現場の人がどうやって国民に接するかという部分になると思いますので、長官の御機嫌取りであっては絶対にいけないということで、それはしっかりと監督していただきたいというふうに思います。

 また、新組織が設けられれば、それが国の組織であろうと民営化された組織であろうと、年金運営業務というものが円滑に引き継がれていくためには、恐らく、現在の社会保険庁の職員の多くが移行されるのではないか、スライドされるのではないかなというふうに思うわけでございます。

 ただ一方で、国民の側に立っていない仕事ぶりであったりとか、それから、いわゆる三層構造というものを背景とした内部統制の欠如、こういうものの問題が指摘されておるわけでございます。年金個人情報の業務目的外閲覧ですとか国民年金保険料の不適正免除、こういう手続で処分された職員も多数いらっしゃるというふうに聞いております。

 ですから、社会保険庁の職員が漫然と新組織に移行されたのでは、国民の理解が得られないのではないかなというふうに考えておるわけでございまして、新組織で年金運営に携わるふさわしい職員を選別する、選別という言葉が正しいのかどうかわかりませんが、選ぶに当たっての課題というものをお聞かせいただければというふうに思います。

石田副大臣 社会保険庁につきましては、これまでさまざまな問題があったことは事実でありまして、組織の構造問題を一掃しなきゃならない、こういうように思っております。

 このためには、まず、現在の社会保険庁においても、職員一人一人の仕事に対する意識、こういうものを大きく改めていかなければならないというふうに思っております。

 また、今委員が御指摘になられましたように、漫然と新組織に今の方が移行するのか、こういう御心配も国民はあるのではないか、こういうお話でありましたけれども、そういうことはあり得ないわけでございます。やはり従前の仕事をどのようにやってきたのか、そういうことを公正に判断をしてやっていかなければいけないと思っております。

 いずれにしても、新組織に関しましては、仕事に対して強い責任感、また職務を遂行できる能力、こういうものを基準にして、国民の信頼にこたえる新組織にしていかなきゃいけない、こういうふうに思っております。

糸川委員 実際、業務目的外閲覧にかかわる処分の数というのは三千二百七十三人、うち懲戒処分というのは九百七十三人だと。そして、不適正免除にかかわる処分数というのは千七百五十二人、懲戒処分が百六十九人。非常にそういう不適正だというふうに思われる方なのかどうかというのがいらっしゃるわけですから、しっかりとそれは面接も含めて、新業態に移られるときに確認をしていただきたいというふうに思います。

 最後に、大臣にお伺いしたいんですが、この社会保険庁改革の内容を見直す、こういう与党の意向によって、法案審議はどうも行わないというような状況でございますが、この国民年金事業等の運営の改善のための国民年金法等の改正案、これは国民に対するサービスの向上ですとか保険料の納付の促進を図る、こういうことを目的とされておるわけでございまして、組織のあり方を定めるねんきん事業機構法案とは切り離して審議する必要があるのではないかなということも考えられるわけですが、大臣の御見解をお聞かせいただけますでしょうか。

柳澤国務大臣 大変御親切に、我々の提案の内容についてよく見ていただいておる、そういうお立場からの御指摘でございました。

 ぜひ、事務事業の合理化のための、国民へのサービスの向上のための法律案、これについても御審議をいただきたいと思いますし、同時に組織の方も、私の立場としては御審議を賜りたい。一人だけ取り残さないで、ぜひ全部をひとつ御審議賜りたいというのが私の立場でございます。

糸川委員 もう時間が参りました。終わりますが、やはりこの社会保険庁改革の問題は、しっかりとそのすべての法案も含めて審議をする必要があるのではないかなというふうに思っておりますので、その辺を、大臣もしっかりとまた取り組んでいただければというふうに思います。

 終わります。ありがとうございました。

     ――――◇―――――

櫻田委員長 次に、第百六十四回国会、内閣提出、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。柳澤厚生労働大臣。

    ―――――――――――――

 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律等の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

柳澤国務大臣 ただいま議題となりました感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律等の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由及び内容の概要を御説明申し上げます。

 我が国においては、国民の生命及び健康に影響を与えるおそれがある感染症の病原体等の管理が、研究者、施設管理者等の自主性にゆだねられており、その適正な管理体制は、必ずしも確立されていない状況にあります。また、感染症の予防に関する施策の国際的な動向にかんがみ、生物テロに使用されるおそれのある病原体等の管理の強化が重要な課題となっております。

 このため、最近の海外における感染症の発生の状況、保健医療を取り巻く環境の変化等を踏まえ、生物テロによる感染症の発生及び蔓延を防止する対策を含め、総合的な感染症予防対策を推進することとし、本法律案を提出することとした次第であります。

 以下、この法律案の主な内容について御説明申し上げます。

 第一に、病原体等について、その病原性及び国民の生命または健康に対する影響に応じて、一種病原体等から四種病原体等までに分類し、所持または輸入の禁止、許可及び届け出、基準の遵守等の規制を創設し、その適正な管理体制を確立することとしております。

 第二に、最新の医学的知見等を踏まえ、南米出血熱を一類感染症に、結核を二類感染症に追加し、重症急性呼吸器症候群を一類感染症から二類感染症に改め、コレラ、細菌性赤痢、腸チフス及びパラチフスを二類感染症から三類感染症に改めるとともに、検疫法による検疫の対象からコレラ及び黄熱を除外することとしております。

 第三に、感染症の発生及び蔓延の防止を迅速かつ的確に行うため、慢性の感染症の患者及び疑似症患者の届け出制度を創設するとともに、厚生労働大臣及び都道府県知事は、感染症に関する情報を積極的に公表することとしております。

 第四に、患者等の人権の尊重の観点から、就業制限、入院勧告等の措置に関し、感染症の診査に関する協議会の意見聴取、患者の意見陳述及び苦情の申し出等の手続を整備することとしております。

 第五に、総合的な結核対策を推進するため、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律に結核予防対策として必要な定期の健康診断、通院医療等に関する規定を、予防接種法に結核の定期の予防接種に関する規定をそれぞれ設け、これに伴い、結核予防法を廃止することとしております。

 最後に、この法律の施行期日は、一部を除き、公布の日から起算して六月を超えない範囲内で政令で定める日としております。

 以上が、この法律案の提案の理由及びその内容の概要であります。

 何とぞ、御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。

櫻田委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。

 次回は、来る十一月一日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時四十七分散会


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