衆議院

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第6号 平成18年11月10日(金曜日)

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平成十八年十一月十日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 櫻田 義孝君

   理事 伊藤信太郎君 理事 大村 秀章君

   理事 鴨下 一郎君 理事 宮澤 洋一君

   理事 吉野 正芳君 理事 三井 辨雄君

   理事 山井 和則君 理事 福島  豊君

      新井 悦二君    井上 信治君

      石崎  岳君    加藤 勝信君

      川条 志嘉君    木原 誠二君

      木村 義雄君    岸田 文雄君

      清水鴻一郎君    菅原 一秀君

      杉村 太蔵君    高鳥 修一君

      戸井田とおる君    西川 京子君

      林   潤君    福岡 資麿君

      馬渡 龍治君    松野 博一君

      松本  純君    松本 洋平君

      三ッ矢憲生君    御法川信英君

      内山  晃君    大島  敦君

      菊田真紀子君    郡  和子君

      園田 康博君    田名部匡代君

      筒井 信隆君    細川 律夫君

      柚木 道義君    坂口  力君

      古屋 範子君    高橋千鶴子君

      阿部 知子君    糸川 正晃君

    …………………………………

   厚生労働大臣       柳澤 伯夫君

   厚生労働副大臣      石田 祝稔君

   厚生労働大臣政務官    菅原 一秀君

   厚生労働大臣政務官    松野 博一君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  山浦 耕志君

   政府参考人

   (厚生労働省健康局長)  外口  崇君

   政府参考人

   (厚生労働省医薬食品局長)            高橋 直人君

   政府参考人

   (厚生労働省医薬食品局食品安全部長)       藤崎 清道君

   政府参考人

   (厚生労働省保険局長)  水田 邦雄君

   政府参考人

   (環境省自然環境局長)  冨岡  悟君

   厚生労働委員会専門員   榊原 志俊君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月十日

 辞任         補欠選任

  冨岡  勉君     馬渡 龍治君

  原田 令嗣君     三ッ矢憲生君

同日

 辞任         補欠選任

  馬渡 龍治君     冨岡  勉君

  三ッ矢憲生君     原田 令嗣君

    ―――――――――――――

十一月九日

 児童扶養手当の減額率を検討するに当たり配慮を求めることに関する請願(赤澤亮正君紹介)(第三〇四号)

 同(中山成彬君紹介)(第三〇五号)

 同(福島豊君紹介)(第三〇六号)

 同(宮澤洋一君紹介)(第三〇七号)

 同(伊吹文明君紹介)(第三一五号)

 同(木村隆秀君紹介)(第三一六号)

 同(後藤茂之君紹介)(第三一七号)

 同(石田真敏君紹介)(第三二〇号)

 同(やまぎわ大志郎君紹介)(第三二一号)

 同(鍵田忠兵衛君紹介)(第三二四号)

 同(木村義雄君紹介)(第三二五号)

 同(武田良太君紹介)(第三二六号)

 同(田野瀬良太郎君紹介)(第三三五号)

 同(玄葉光一郎君紹介)(第三九六号)

 同(七条明君紹介)(第三九七号)

 同(三日月大造君紹介)(第三九八号)

 同(渡部恒三君紹介)(第三九九号)

 同(石破茂君紹介)(第四四四号)

 じん肺とアスベスト根絶に関する請願(辻元清美君紹介)(第三二七号)

 同(照屋寛徳君紹介)(第三二八号)

 同(日森文尋君紹介)(第三二九号)

 同(赤嶺政賢君紹介)(第三六一号)

 同(石井郁子君紹介)(第三六二号)

 同(笠井亮君紹介)(第三六三号)

 同(穀田恵二君紹介)(第三六四号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第三六五号)

 同(志位和夫君紹介)(第三六六号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第三六七号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第三六八号)

 同(吉井英勝君紹介)(第三六九号)

 療養病床の廃止・削減と患者負担増の中止等を求めることに関する請願(岡本充功君紹介)(第四〇〇号)

 同(長島昭久君紹介)(第四〇一号)

 同(牧義夫君紹介)(第四〇二号)

 同(山田正彦君紹介)(第四〇三号)

 同(小宮山洋子君紹介)(第四二六号)

 同(高木義明君紹介)(第四二七号)

 同(古本伸一郎君紹介)(第四四五号)

 同(松野頼久君紹介)(第四四六号)

 同(松本龍君紹介)(第四四七号)

 同(三井辨雄君紹介)(第四四八号)

 雇用保険の特例一時金の廃止・改悪に反対し、国の季節労働者対策の強化に関する請願(荒井聰君紹介)(第四二三号)

 同(金田誠一君紹介)(第四二四号)

 障害者自立支援法による新たな障害程度区分に関する請願(木村義雄君紹介)(第四二五号)

 患者負担増計画の中止と保険で安心してかかれる医療に関する請願(高橋千鶴子君紹介)(第四四三号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出、第百六十四回国会閣法第七六号)


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     ――――◇―――――

櫻田委員長 これより会議を開きます。

 第百六十四回国会、内閣提出、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官山浦耕志君、厚生労働省健康局長外口崇君、医薬食品局長高橋直人君、医薬食品局食品安全部長藤崎清道君、保険局長水田邦雄君、環境省自然環境局長冨岡悟君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

櫻田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

櫻田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。菊田真紀子君。

菊田委員 おはようございます。民主党の菊田真紀子でございます。

 きょうは、大臣、参議院の本会議の出席もあるということで、そのような中、四十分間大臣にも直接御質問させていただける貴重なお時間をいただきまして、まことにありがとうございます。この審議を通しまして、国民の皆さんに対するさまざまな問題提起あるいは感染症に対する意識、認識が高まっていくことを心から望みたいと思っております。

 質疑の前に、大変恐縮でありますが、通告はいたしておりませんけれども、今大変大きな議論になっています赤ちゃんポストについて、冒頭お聞きをしたいと思っております。

 このたび熊本の病院が日本で初めて赤ちゃんポストの設置を検討しているということが、けさの朝刊やワイドショーでも盛んに取り上げられておりました。少しお時間をいただきまして内容を紹介してみたいと思います。

 熊本市島崎の慈恵病院が、さまざまな事情で子育てができない親が新生児を匿名で託す赤ちゃんポストの設置を検討しているということがわかった。全国初の取り組みで、同病院は既に保健所などと協議を進めており、できるだけ早く設置したいとしている。赤ちゃんポストはドイツで既に設置の例がある。

 この病院によると、ポストは既存の病院建物に穴をあけ、外からあけられるようにして、内側に「こうのとりのゆりかご」と名づけた箱を取りつけるというものであります。病院は市や児童相談所、県警などに届けて、児童福祉法に基づき施設や里親に引き渡すということであります。

 この病院はカトリック系で人工妊娠中絶をしていない。世の中にせっかく生まれてきた命を幸せにはぐくみたいということが設置の趣旨であるということでありますが、ただ、こういう行為につきましては、乳児の置き去りとみなされ、保護責任者遺棄罪に触れる可能性もあるということでございます。

 日本は少子化の一方で、人工妊娠中絶あるいは里親制度が十分に進んでいるとは言えない中で、赤ちゃんの命、人の命をどう考えるか、大変大きな問題になると思っております。このことにつきまして、児童虐待などから子供を守るという設置者側の趣旨は理解でき、賛成するという意見もありますけれども、その一方で、この制度をこのまま認めれば、社会全体に捨て子を容認することにつながるのではないかという反対の意見もあるわけでございますが、大臣は、個人的な感想で結構でありますけれども、このようなことに対してどういうお考えをお持ちでしょうか。

柳澤国務大臣 日本で初めて熊本市の病院が、ドイツの先例等が恐らく念頭にあったかと思うんですけれども、赤ちゃんポストということで、ここに赤ちゃんを置いていってくれれば後は善処しましょう、こういう前提のもとでこうした施設をつくられるということ、この報道には私自身も接して承知をいたしておりますが、詳細はまだわかっていない、こういう段階でございます。

 この段階で個人としてどう思うかということのお尋ねでございます。

 私も、今先生がおっしゃられたとおり両面あるなというふうに最初思いました。つまり、最近における虐待とか、あるいは場合によって子供を遺棄してしまうというようなこと、それで子供を大変不幸な目に遭わせるということからすると、これは現実的には一つの救いを提供する、こういう意味もあるけれども、同時に、こういったことでかえって、親の子供に対する責任というようなことで、あそこへ行けば自分は子供から離れることができるんだというような、そういう気持ちを助長してしまうのではないか、こういう懸念も他方であるわけでございます。

 したがって、非常にこれは難しい問題でございまして、やはり私どもとしては、そういったことで子供の命が大事にされるということは非常に大切に思いますけれども、私ども、そうしたことがあれば、先ほど先生もお触れになりましたように、児童福祉法の規定に基づいて子供の保護に努めたい、このように思いますし、また、これは刑法に触れることにもなろうと思いますので、それはそれで当局が処断をすべき問題であろう、このように考えております。

菊田委員 ありがとうございました。

 大臣の現状における御認識をお聞きすることができまして、大変ありがたく思います。このことは日本の子供たちの命をどういうふうに考えていくのか、私たち国会議員、行政の責任者として、政治の責任者として今後大いに議論をしていかなければならないと思っておりますので、また改めてお時間をいただきたいと思っております。

 それでは、これから本日の本題に入らせていただきまして、感染症について御質問させていただきたいと思います。

 私は、恥ずかしながら、国会議員になるまで、感染症に対する知識もなく、また問題意識も非常に薄かったのでございますが、結核は既に過去の病気であり、私の親の世代の話だというふうにずっと思い込んでおりました。しかし、今回、感染症対策についていろいろ勉強するうちに、これは大変な社会問題、そしてまた政治課題だという強い危機感を持ちました。

 エイズ三百十万人、結核百七十万人、マラリア百二十万人で、年間六百万人が死亡すると言われております。これは新潟県の人口二百四十万人の二・五倍にも相当します。そう考えると、大変に恐ろしいことでございます。さらに、新興感染症の台頭、鳥インフルエンザは人へも蔓延する、全世界規模の対策を真剣に考えていかなければなりません。さらに、生物テロなどの危機にどう対策を立てていくのか。私は、改めて、二十一世紀は感染症の時代、日本人は日本国家の存亡をかけたバイオテロリズムとの闘いに真剣に取り組まなければならない時代になったんだという認識を持つようになりましたが、まず最初に、感染症に対する大臣の御認識と御決意をお伺いしたいと思います。

柳澤国務大臣 私ども、世界の歴史を学ぶ中で一番、例えばペストの恐ろしさというもの、これはヨーロッパに猛威を振るって、ヨーロッパ社会の政治や社会あるいは経済、こういったものに甚大な影響を与えて、ある意味で歴史の経路を決めた、そういうような側面を持つ、そういう感染症であったということを学ばせられるわけでございます。

 その意味で、そういったものはそれぞれの努力で人類が克服してきたわけですけれども、依然として感染症は、新しい形の感染症が発生をする、あるいは古いものがまた再び猛威を振るうような再興があるというようなことが見られるわけです。

 それに加えまして、何といっても、現在、感染症の問題で一番我々が悩ましく思うのは、人々の世界的な規模における行き交いが激しい、したがって、ある地域に発生した、遠い地域に発生した感染症であっても、いつ何どき自分のところにそれが持ち運ばれているかわからない。そういう文明の発達に伴う危険の増大というような側面もあるわけでございまして、依然として、我々のあるいは人類全体の大変大きな脅威である、こういうように考えておるわけです。

 こうした認識のもとで本法案も提出されているところでございまして、生物テロによる感染症の発生及び蔓延を防止する対策を含め、総合的な感染症予防対策を推進して国民の生命及び健康を守っていく、それからまた、そうした形を通じて、世界あるいは人類、こうした国際社会にも貢献をしていく、こういうものになっているということで、ぜひ、御協力、御理解を賜りたいと思っております。

菊田委員 私たちは万が一という言葉を何気なく日常よく使っていますけれども、日本では、万が一とは実際には起こらないと考える風潮があるのではないかと思います。行政も国民もでございます。一方、アメリカでは、実際に起こることを前提として周到な事前準備に大変な時間と人員とお金をかけるわけですが、この点につきましては私は大いにアメリカを見習わなければならないと思っております。

 感染症の類型を見ましても、これだけ多種多様な病原体を管理し、万が一に備えて個別の検討、準備を周到に進めていかなければならないのは大変苦労があることでございますが、率直に申し上げまして、これだけの専門的な分野を、ただでさえ忙しい厚生労働省が、どれだけの時間と人員とお金をかけて取り組んでおられるのか、大変心配になってまいります。感染症対策の担当者は何人おられますか、バイオテロ対策の担当者は何人おられるのか、お伺いします。

外口政府参考人 感染症対策につきましては、主として健康局結核感染症課が担当し、海外からの感染症流入の対策を講じる検疫業務担当部局や院内感染対策の担当部局などの関係部局と連携をしながら取り組んでいるところであります。なお、健康局の結核感染症本課においては、現在、二十九名体制となっております。

 また、バイオテロ対策については、これは平時においてはバイオテロに関する厚生労働省の窓口的な役割として、大臣官房厚生科学課の職員が三名で対応しております。

 バイオテロが発生した場合には、事態の早期把握や原因究明のほか、その事案に応じて医療体制や医薬品の確保を行う必要がありますことから、関係部局の職員も動員して対応していく予定であります。

菊田委員 アメリカやイギリスでは、感染症対策は国家の危機管理として特別に危機管理センターを置いています。感染症管理局というようなものを日本でも絶対につくるべきであるとの御意見が先日の参考人質疑の中でも指摘をされたところでございます。

 非常事態に官房の危機管理室で対応するということは当然であると思いますが、私が申し上げたいのは、今二十九名と三名というお話がありましたけれども、常時、常日ごろからさまざまなシミュレーションを行ったり、何をどれだけ整備しておく必要があるのか、地方自治体との連携など常勤で取り組む人員がもっともっと必要ではないかというふうに率直に思いますが、このことを指摘させていただきながら、大臣、いかがでしょうか、今の人員で十分やれるんだという自信がおありでしょうか。

柳澤国務大臣 危機管理、安全保障というのにどれだけ人手をかけるか、あるいは予算をかけるかということは非常に難しい問題であります。

 よく、ある党が、いろいろな施策に経費がかかると言うと、わかった、その経費は出すべきで、自衛隊の経費を回せばいいじゃないかというようなことを御主張になる場面がしばしばあるわけですけれども、これがまさしく安全保障というものの経費とかマンパワーというものの性格であります。要らないといえば要らない、何にも今起こっていないじゃないか、これは要らないじゃないかと言われれば要らない。しかし、今先生がおっしゃったように、万が一にも備えていくんだということになったら、これはもう絶対必要なものだ、こういうことになるわけであります。

 どれだけの備えをしておくかということは、ある意味で保険のようなことでございまして、私どもとしては、保険事故が起こる確率、あるいは起こったときの災難、こういったような規模をよくよく勘案して、余りこれはやり過ぎても、先ほど言ったように、無駄になる、そういうことにもなりかねない、こういう性格のものでございますので、それらを勘案して現在はそのような体制をとっているということでございますけれども、私、就任してまだ日も浅いわけでございますが、もう少しこれらについては拡充した方がいいのではないかという一般的な感想を持っておりまして、そういった気持ちでこれから取り組んでいきたい、このように考えております。

菊田委員 これはある意味、国家の安全保障でありますし、そしてまた、人の命に直接係る分野であります。私は、こういった分野に対して、いつ万一が起こるかわからないから費用をかけないようにしようということでは、なかなか万全の体制が整わないと思いますので、ぜひ思い切ってやっていただきたい。そのために応援もさせていただきたいというふうに思っております。

 続きまして、仮定のお話でありますが、しかし実際に起こり得るとして想像していただきたいと思いますけれども、ある町で感染症が発生したとします。この患者は一体何の感染症にかかっているのか、医師が即座に正確な診断を下すことが何より重要になりますが、それが天然痘なのか炭疸菌なのか、あるいはペスト、ボツリヌス、SARSなのかマラリアなのか鳥インフルエンザなのか、これをきちんと見分けて対処をすることは現実として可能なのでしょうか。風邪の症状と似ていたり、最近では結核のわかる医師さえ急速に減少しているという指摘もある中で、これだけ多種類の感染症について専門性を持ち、対処できる医師や医療機関が、果たして、日本全国、北海道から沖縄まで、どれだけあるんでしょうか。

 もちろん、国の指定病院では専門的な研修がなされていることでしょうし、間違いのない対処がなされるとは思いますが、しかし、生物テロは、いつ、どこで起こるのか全くわかりません。大都会で起こるかもしれませんが、しかし、病院自体が少ない、医師そのものが不足している地方の小さな田舎で感染症患者が発生することがあるかもしれません。

 いずれにしても、どんな場合においても、しっかり対応できる医師の育成と医療機関の体制づくりを図っていく必要があると思いますが、現状はどうなっているのか、お伺いをしたいと思います。

外口政府参考人 感染症患者への適切な医療体制の整備のため、都道府県における感染症指定医療機関及び感染症の専門医の確保は大変重要な課題と考えております。

 厚生労働省として、都道府県に対し、感染症指定医療機関を確保するよう通知し、地域での感染症患者の受け入れ体制の強化を図るとともに、感染症専門医についても、一類感染症等予防・診断・治療研修事業を行うなど、感染症専門医の養成に努めているところであります。

 また、専門スタッフのみならず、広く医療関係者が感染症に関する高度で正しい知識を有することが感染症対策を推進する上で重要と考えており、関係機関との連携を図りつつ医療関係者の資質の向上に努め、医療体制の整備のさらなる推進を図ってまいりたいと考えております。

菊田委員 我が国の感染症の専門医の数は、ことし十月で八百三十九人、アメリカでは六千人というふうにお聞きをいたしております。実に七倍の開きがあるわけですが、私はこれではとても胸を張れるものではないと思っています。圧倒的に不足していると言わざるを得ません。加えて、看護師も不足しています。専門医の育成を早急に図るべきですが、それには時間がかかるわけです。しかし、少なくとも今できることもあります。日本全国の医者を初め医療機関とできるだけ情報や知識を共有していく、現場の意識を高めていくことの必要性についてはこれまでもたびたび論じられてきたはずですが、そこでお伺いをしたいと思います。

 過去、武力攻撃事態等への対処に関して衆議院でさまざま議論が行われた際にも、感染症に対処するマニュアルを厚生労働省がつくって、医療機関に配付すべきでないかとの議論がなされたはずですが、今どのような進みぐあいになっているでしょうか。お答えください。

外口政府参考人 感染症の患者さんを診察して適切に対処していくためには、医師は各感染症に関する臨床症状や検査所見等の情報を把握しておく必要があり、厚生労働省としては、そのための情報を医療関係者に提供する必要があります。

 このため、医療従事者に向けた「感染症の診断・治療ガイドライン」の作成に協力するとともに、各関係団体等が作成する書籍や雑誌等へ必要な情報を提供しているところであり、さらに国立感染症研究所のホームページにも医療従事者の参考となる情報等を掲載しているところであります。

 御指摘の感染症に対処するマニュアルということでございますけれども、これは、実際には臨床症状や検査所見等の所見だけじゃなくて、行政との関係でどういった対応をとるべきかといった情報も大変重要であります。こういった中で、実際、現場で使われております感染症に対処するためのマニュアル、ガイドライン的なものがありますが、その中で、例えば日本医師会作成のもの、あるいは東京都作成のものが内容がよくできていて、我々も、そういったものも参考にしながら各地域の医師たちといろいろ議論し次の対策を講じているわけでございますけれども、そういったマニュアルについては現場でもよく使われているようでございます。

菊田委員 それでは、このマニュアルが医師会ですとかそれぞれ地方自治体あるいは医療関係者の努力によってさまざまつくられているけれども、しかし、厚生労働省が責任を持って、全国の開業医に至るところまで大方網羅できる形でのものはつくっておらない、配付をされておらないという理解でよろしいですか。厚生労働省がつくったものではないということですか。

外口政府参考人 例えば日本医師会の作成している「感染症の診断・治療ガイドライン」というものについては、これはもちろん日本医師会だけじゃなくて、厚生労働省健康局結核感染症課も監修させて、いわば一緒に内容を作成しているという形式になってございます。

菊田委員 そうしましたら、それが全国の一般の開業医にはほとんど手元に届いているという認識でよろしいですか。

外口政府参考人 すべて届いているかどうかというのは確認できておりませんけれども、このガイドラインについてはかなりの方がお使いになっているというように聞いております。

菊田委員 確認をしていただきたいと思います。

 そして、大切なことは、マニュアルができて終わり、配って終わりではなくて、現場のお医者さんから大いに利用してもらい、認識を深めてもらうことだというふうに思います。そういえば何年か前にそのようなガイドライン、マニュアル本が送られてきたけれども、よく見ていない、忙しくて見る時間がないという実態では困るわけでございまして、そういう意識向上のために、厚労省自身が知恵を絞って、絶えず現場を督励していく努力をしておられますか。

外口政府参考人 感染症に関しましては、その発生状況も、国際的な動向を踏まえますと、かなり変動がございます。また、治療の方法についても日進月歩でございますので、私どもといたしましても、そういった状況の変化に応じて対応できるよう今後とも努力してまいりたいと思います。

菊田委員 さらなる御努力をお願いしたいと思います。

 さらにお伺いしたいことは、SARSの騒動のときに、緊急事態に備えて、SARSウイルス感染者が大量発生した場合に感染症患者を専用に搬送するトランジットアイソレーターを各都道府県に補助金を出して整備することになったわけですけれども、現在の整備状況についてお伺いしたいと思います。

外口政府参考人 感染症法に基づき、都道府県等が感染症の発生を予防し、その蔓延を防止するための必要な措置の一つにトランジットアイソレーターがございますが、この購入経費について平成十五年度より支援を行っているところであります。平成十七年度末までに四十四都道府県、九政令指定都市、二十六政令市が計百十三台の補助申請をしてきており、そのすべてについて国庫補助を行ったところであります。

 今後とも、都道府県等によるこのような機器の購入について支援してまいりたいと考えております。

菊田委員 ぜひ四十七都道府県に少なくとも一台以上は必ずすべて整備されるように、これからも御努力をいただきたいというふうに思っております。

 国が財政的に大変厳しいということは承知しております。財務省や総務省との調整もあるでしょうし、そんなのにお金を使うのは無駄だという声もあるかもしれませんが、私は、こういうことを言っていれば結局何にも進まない、国が腰が重ければ地方自治体はなおさらのことだと思います。これは、いつ来るかわからない災害への備えと同じだという認識で、これからも御努力をいただきたいというふうに思います。

 続きまして、結核についてお伺いします。

 結核は依然として我が国最大の感染症であり、取り組み強化がさらに必要でありますが、いまだに年間三万人の患者が発生し、二千人を超える死亡者が出ているわけでございます。これは二類感染症の総数を超えており、人口対比率でアメリカの五倍にも相当するというわけです。

 今回、結核予防法を廃止した場合、結核は過去の病気あるいは低蔓延化の目標が達成されたための廃止といった誤った認識が広まり、特に地方自治体の結核対策にかかわる予算や組織、人員体制の弱体化を招かないだろうかと大変心配いたしております。国からの補助金が減れば、自治体の独自予算枠も減る可能性があります。国と自治体の信頼関係が悪化し、公衆衛生の現場の職員の士気にも影響します。

 今回の統合によって国の結核対策予算が減らされることはないのか、地方自治体に対する補助金はどうなるのか、お答えください。

外口政府参考人 改正感染症法におきましては、旧結核予防法に規定する予防及び医療に関する費用負担については、引き続き、結核の蔓延の防止と患者に対する適正な医療の提供のため、感染症法の経費区分に従い、国の負担金として統一することとしております。

 また、結核固有の通院医療等に関する費用については、旧結核予防法と同様に補助金として規定を設けているところであります。

 さらに、地方自治体が行う結核対策については、地方財政措置によって必要な財源が確保されていると考えておりますが、それぞれの地域特性に配慮したきめ細やかな対策を推進するため、結核対策特別促進事業を実施して自治体の事業支援をしているところであります。

 改正感染症法施行後におきましても、引き続き、結核対策を推進するため、所要の予算を確保してまいりたいと思います。

菊田委員 大変心強い御答弁をいただきました。

 それではお伺いしますけれども、診療報酬が下がる中、病院側は病床の赤字リスクを少しでも減らしたいと考えています。結核患者は以前よりも入院期間が短くなり、病院は病床を確保していても、年間を通じて空きベッドの割合、空きベッドの日が多くなっているわけですが、結核病床の空きベッド対策はどうなっているのか、お伺いします。

外口政府参考人 平成十六年における結核病床の利用率は、病床数一万三千二百九十三床に対して四八・六%となっております。

 しかしながら、結核については、高齢者等の患者数が増加するなど依然として厳しい状況にあります。こうした動向を踏まえると、結核病床の扱いについては慎重に判断していく必要があると思います。

 現在、厚生労働省として、空き病床に対する財政措置は特段講じておりませんが、空床問題については、病床区分の見直しに対する御要望や感染の動向など、総合的な観点から検討して、政策が後退しないようにということを十分踏まえて考えていく必要があると考えております。

菊田委員 感染症のための空き病床には運営費補助金が出ているはずですが、結核病床に対するものはないわけでございます。地方自治体の裁量、あるいは結核対策に熱心に取り組んできたお医者さんの自負心や病院のやりくりだけに任せておいて本当によいのでしょうか。ぜひとも前向きに検討していただきたいと思います。

 続きまして、地域格差拡大についてお伺いしますが、地方自治体はそれぞれ懸命に頑張っておりますけれども、地域格差が拡大しているようです。東京や大阪など大都市圏は、人が多いですし、住所不定者やホームレスなど社会的弱者も多く、罹患率が高いと言われています。

 東京の中でも極めて患者が多い地区、あるいは大阪の中でも罹患率が高いところは既に特定されているわけですが、ここにどう対策を講じていくんでしょうか。地域を特定したピンポイントの対策も必要ではないかと考えます。地方自治体の取り組みだけに任せず、国が主導して手だてを講ずるべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。

外口政府参考人 我が国における結核の罹患率の地域間格差は、やや縮小はしているものの依然として大きく、罹患率の最も高い大阪市の結核罹患率は、最も低い長野県の約五・五倍となっております。大阪を初め、東京、兵庫の大都市を中心に結核の罹患率が高い状況であります。

 この原因としては、結核に感染するリスクの高いグループが特に大都市部に多く存在することや、過去において大都市を中心に蔓延していたことの影響が残っていることなどがあるものと考えられます。

 地域格差の対策としては、結核対策特別促進事業、これは地方自治体に対する国庫補助事業でございますけれども、こういったものを活用し、特に罹患率の高い地区においては、治療成功率向上のためのDOTS事業を実施するなど、地域の実情に応じた取り組みを行っているところであります。

菊田委員 そして、その事業の結果、現実に、罹患率の高い地域ではこれがだんだんと改善されておられますか。

外口政府参考人 リスクグループの多い地域におきましては、そのリスクグループ自体がかなり流動性がございます。そして、やはりこれから特に対策を講じていく必要があるのは、例えばホームレスの方ですとかそれから外国人の方ですとか、いわゆる今までの結核対策で割と見過ごされていた部分でございます。やはり、こういったところをきめ細かく対応して、例えば、普通の結核対策じゃなくてDOTS事業等を行いながら、あるいは外国人向けのわかりやすいパンフレットとか、そういったものも活用しながらきめ細かくやっていく必要があると思っております。

 これは、ではどのぐらいうまくいったかというのが、流動性があるものですから評価がなかなか難しいわけでございますけれども、やはり、そういったそれぞれの大都市の現場の担当者の御意見を伺いながら、国としてもできる支援を行っていきたいと思っております。

菊田委員 まさに、ホームレスの方あるいは外国人に対する対策をしっかりと行っていき、そして、そこが改善しているのかどうなのか、今の政策で不十分であるのであればもっとほかにどういう手当てができるのかどうか、ここを真剣に対策を講じていかないと、私はなかなか、大変難しいとは思いますけれども、改善していかないというふうに思っています。

 今、外国人のお話がありましたけれども、今後労働市場の開放がより一層進めば、さらに大きな問題になる可能性があるわけですが、外国人結核患者への対応はどうなっているのか、お伺いしたいと思います。

 在留資格者はまだしも、全国を転々とする外国人不法労働者が結核にかかったとして、本当に彼らが進んで治療に通うんでしょうか。特に、長期にわたって服薬管理しなければならないDOTSを根気よく受け入れるんだろうか、大変危惧されるわけですが、現状についてお聞きしたいと思います。

外口政府参考人 現行の結核予防法や改正後の感染症法には国籍条項はありません。外国人の方も当然この結核対策の対象となっていただいております。

 厚生労働省におきましては、先ほどから申し上げております結核対策特別促進事業等を通じまして、各自治体の地域の実情に応じた外国人対策を支援しておるところであります。

 具体的に行われている対策としては、例えば、結核健診を受診する機会の少ない外国人に対する健康診断事業、これは、例えば日本語学校等に結核検診車が行って健診を受けていただくとかいうのが幾つかの自治体で行われております。また、外国語のパンフレットを利用した正しい知識の普及啓発等も実施されておるところでございます。

 今、二万八千人、新規に結核になられる方がおられますけれども、外国人の方が今千人弱ぐらいおられると思います。そういった方への対応を今後ともきめ細かく考えていきたいと思います。

菊田委員 私が心配しているのは、日本語学校に通ってくれたり、あるいは役所に足を運んだり、外国人用のパンフレットを読んでくれる外国人というのは心配要らないと思うんですね。

 そうではなくて、そうじゃない全国を転々としているような方々あるいは不法就労の方々、こういう外国人が結核を持った場合にどのような影響が出るのかということでございまして、ここに具体的な対策を講じていかないと罹患率は決してよくならないということを厚生労働省ももちろん御承知であると思いますけれども、そこにぜひ知恵を絞っていただきたいというふうに思います。

 時間が大変少なくなってまいりましたが、次に、法律の第四条に、国民の責務として、国民が、感染症に関して正しい知識を持ち、その予防に必要な注意を払うよう努めるとともに、感染症の患者等の人権が損なわれることがないようにしなければならないと明記されているが、現状では全く不十分だと言わざるを得ないと私は思います。今後どのように取り組んでいくのか、お聞きしたいと思います。

 日本では、あるセンセーショナルな情報、例えば台湾人の旅行客がSARSを発症したなどという場合、日本国全体がパニックになるくらい、国民がその情報に翻弄されます。SARS情報が流れた際にマスクが売り切れになったり、O157のときにはかいわれ大根の不買行動になったり、偏ったメディアに翻弄されない、冷静で確かな判断が必要だと思いますが、政府が国民に向けて確実な情報をタイムリーに出していないということを指摘させていただきながら、この質問をさせていただきたいと思います。いかがでしょうか。

外口政府参考人 感染症法においては、第四条で、国民の責務として、感染症に関する正しい知識を持ち、その予防に必要な注意を払うよう努めること、感染症の患者等の人権が損なわれることがないようにすることを規定しているところであります。これは、第一条の目的及び第二条の基本理念で示した感染症対策の基本的考え方に基づき、感染症対策において国民が果たすべき役割について明らかにするものであります。さらに、国及び地方公共団体には、正しい知識の普及に努め、感染症の患者等の人権を保護しなければならないとされており、必要な対応が求められているところであります。

 このため、感染症法の規定として、入院等に当たっての人権への配慮、患者の情報の漏えいに対する罰則等を設けるとともに、厚生労働省としては、ホームページなどさまざまな機会を通じて感染症に関する情報を提供しながら、国民がその責務を果たせるよう引き続き努めてまいりたいと考えております。

菊田委員 今ほど人権のお話がありましたが、残り、最後になりますけれども、今回の改正は、人権への配慮からさらに一歩踏み込んで、人権の尊重がうたわれました。この精神を踏まえれば、今までより以上に患者の立場に立った格段の対応が求められると思います。簡単なことではないとは思いますが、この世の中から差別や偏見をなくす具体的な取り組みについて、大臣からお伺いしたいと思います。

柳澤国務大臣 感染症は、その疾病の性格から患者への差別、偏見が生じやすい、したがって人権侵害も起こりやすい、そういう性格は否定できない、このように思います。

 このため、今回の改正によりまして、基本理念に人権の尊重という文言を特に盛り込みまして、その考え方のもとで施策を推進することを明示しているところでございます。例えば、就業制限や入院に関する手続制度の充実、あるいは、第三者機関である感染症診査協議会に、学識経験者という中で特に法律に関する学識経験者の参画を義務づける、こういうような規定を設けたところであります。

 これらの法条の施行、実効ある施行によりまして、人権の尊重に格段の配慮を図ってまいりたい、このように考えております。

菊田委員 質問を終わります。ありがとうございました。

櫻田委員長 次に、新井悦二君。

新井委員 自由民主党、新井悦二です。

 本日は、発言する機会を与えていただきまして、本当にありがとうございます。また、副大臣そしてまた委員の皆様方におかれましては、これから本格的にインフルエンザの時期を迎えますけれども、健康には十分気をつけていただきたいと思います。

 それでは、発言通告に従いまして順次質問をさせていただきますので、よろしくお願いします。

 人類の繁栄の陰には常に感染症がつきまとい、近年の生活環境の改善、抗生物質やワクチンの開発など、医学的進歩により感染症は著しく減少いたしましたが、感染症の発生は一九七〇年以降減少しなくなり、その原因といたしましては、やはり海外旅行者の増加、そしてまた輸入生鮮魚介類などの増加などが考えられますが、その一方で、一九七〇年以降、エボラ出血熱とかエイズなど、少なくとも三十種類の新たな感染症が出現し、日本でもO157が全国的な集団発生をして、これまで経験したことのないような感染症や、そして近い将来制圧されると考えられました感染症が再び流行するなど、いわゆる新興・再興感染症に対して従来の感染症予防法を抜本的に見直す必要が出てきたのではないかと思っております。

 まず最初に、感染症専門医について質問させていただきます。

 我が国における感染症の課題について、専門家の不足が上げられております。特に感染症専門家の育成においては、今の医学教育においては感染症分野が重要視されているとは言いがたく、感染症専門医は非常に不足していると思いますが、感染症対策には早期の適切な診断、対処がその後の被害拡大防止に資することから、専門医の人材育成は喫緊の課題であると思っておりますが、どのような対策を考えているのか、まずお伺いいたします。

外口政府参考人 感染症患者への適切な医療体制の確保のために、感染症指定医療機関における感染症の専門医の育成は大変重要と考えております。

 厚生労働省においては、平成十三年度から、一類感染症発生地域等における臨床研修のため、一類感染症等予防・診断・治療研修事業を行うなど、感染症の専門医の育成にも努めているところであります。

 新たな感染症の出現や国際交流の進展を踏まえ、感染症に対する関心は高くなっており、感染症対策へのニーズも高まってきております。今後とも、感染症の専門医の育成について一層の推進を図ってまいりたいと考えております。

新井委員 また、医療機関だけではなく、感染対応の第一線機関であります保健所の人材確保も、被害拡大防止の観点から重要と思われますが、非常事態時の迅速かつ適切な対応をどのようにしていくのか、お伺いいたします。

外口政府参考人 感染症対策を初めとする健康危機管理体制の充実等や健康危機における被害拡大防止の観点から、保健所の人材確保及び資質の向上は重要な課題であります。

 保健所の人材確保については、保健所における医師及び職員等の継続的な確保に努め、感染症対策等の推進に支障を来すことがないように自治体に指導しております。

 また、保健所職員の資質向上については、国立保健医療科学院等で、健康危機管理事例の具体的な対応に関する研修を実施するなどして、非常時の迅速な対応に対処できるよう努めているところであります。なお、過去五年間で、三日間にわたる健康危機管理保健所長等研修を受講した保健所の職員は計千四百十八人でございます。

新井委員 また、最も危険度が高いバイオセーフティーレベル4の病原体を扱っている施設は現在我が国に存在しておりませんが、生物テロや新興・再興感染症の発生等をかんがみますと、このレベル4の必要性が今高まっていると思っております。平時における研究の積み重ねが緊急事態発生時における国民の安全、安心の確保につながるのではないかと思っておりますけれども、この点についてお伺いいたします。

石田副大臣 近年、人類に甚大な健康危機を引き起こすおそれのある新たな感染症の出現や生物テロ発生に対する懸念が高まっております。我が国においても、感染症に関する研究や対応策を常に怠りなく進めていくということは大変重要な課題でございます。

 今回の法改正では、病原体の管理に関する規制を導入すると同時に、厚生労働省では、感染症病原体の適正管理に関する研究等を推進することにより、平時からの取り組みを強化しているところでございます。また、一類感染症の発生など緊急事態発生時については、感染症法に基づき所要の対応を迅速に行い、適切な感染症対策を行うこととしております。

 このようなことにより、国民の安全、安心の確保に努めてまいりたいと考えております。

 なお、先生御指摘のバイオセーフティーレベル4に該当する病原体を取り扱う事態が生じた際には、国立感染症研究所村山庁舎でのP4病原体の取り扱いを検討することになります。

 厚生労働省としては、地元自治体や関係省庁と緊密に連携をとりつつ、検査の必要性や安全性について地元自治体や住民の理解を得られるよう、引き続き取り組みを進めてまいりたいと思います。

新井委員 そうですね。レベル4ぐらいの高さになりますと、やはり地元住民の反対とか、かなりあります。特に、施設としては埼玉県、私の住んでいる県にもありますけれども、ぜひとも、やはり住民の反対活動というものが多いんだったら、それなりに考えて、感染症の先進国とかそういうところでも、人材育成というものにやはり取りかかっていっていただきたいなと私としては思っておりますので、この人材育成についてはよろしくお願いいたします。

 次に、動物由来の感染症についてお伺いいたします。

 今、ペットの種類も多様化し、人と動物の共通の感染症が問題となっております。特に最近は、犬、猫、鳥のみならず、イグアナとかミドリガメ等ペットにする人もふえております。オウム病やエキノコックス病等を初め、我が国では一九五七年以降国内発生していない狂犬病の輸入さえも懸念されておりますが、動物の輸入の実態や諸外国における対応はどのようになっているのか、お伺いいたします。

外口政府参考人 我が国へのペット動物の輸入量は、昨年、哺乳類で約三十九万頭、鳥類で約七万羽となっているところであります。

 このため、輸入動物を原因とする人への感染症の発生を防止することは大変重要でありますので、狂犬病やラッサ熱を媒介するおそれのあるコウモリ、ペストを媒介するおそれのあるプレーリードッグ等の輸入の禁止、エボラ出血熱等を媒介するおそれのある猿、狂犬病を媒介するおそれのある犬、猫等の輸入検疫、これら以外の哺乳類、鳥類であって家畜伝染病予防法の検疫対象動物を除くものに対する輸入の届け出、こういった対応により、輸入される動物による感染症の発生防止を図っているところであります。

 また、諸外国、特に欧米においても、こういった輸入の禁止や動物検疫などの規制を実施しているところであります。

 引き続き、輸入動物に係る法制度の適切な運用により、輸入動物を原因とする感染症発生の未然防止に努めてまいりたいと思います。

新井委員 また、アメリカとか中国、イギリス、フランスなどでも、自国の生態を守るための商業用動物の輸入禁止をしているのに対しまして、日本は時代に逆行して、かなりのこういう動物たちが入ってきておりますけれども、その点についてはどのようにお考えでしょうか。

冨岡政府参考人 我が国の生態系を守るための措置につきまして申し上げます。

 もともと我が国に生息しないいわゆる外来生物につきましては、在来の、我が国に古くからいる希少種を捕食するなど生態系に被害をもたらすものがございます。こういうものにつきましては、外来生物法に基づきまして、特定外来生物に指定しまして、この輸入、譲渡、飼育、野外に放すことといったことを原則禁止いたしております。

 また、既に定着してしまった特定外来生物につきましては、被害の内容等に応じまして、国、地方公共団体が必要な防除作業を行っております。

 具体例を申し上げますと、例えば、鹿児島県の奄美大島にはアマミノクロウサギという非常に希少な動物がおりますが、これを食べてしまうマングースを駆除する、それから、沖縄におきましては同じくマングースの駆除を行っております。それから、全国各地で農作物や小動物に影響を与えるアライグマの駆除、こういったものも広く行われております。

 さらに、我が国に導入された記録のない生物であっても、特定外来生物と同様の被害をもたらすおそれのある、可能性のある生物につきましても、未判定外来生物に指定しまして、輸入の制限を行っております。

 今後とも、このような外来生物法の適正な執行を行いまして、我が国の生物多様性の維持に努めてまいりたいと考えておるところでございます。

 以上でございます。

新井委員 ぜひとも、自国の生態とかまた環境を守ることからも、しっかりやっていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 次に、感染症法に統合される結核予防法についてお伺いいたします。

 我が国は、先進国の中では結核の罹患率が高く、中蔓延国に位置づけられており、我が国において結核対策に関する法制度の必要性には変わりないと思いますが、結核予防法を廃止して感染症法に統合することによって、社会的な差別また偏見を生む懸念があるのではないかと思っております。

 特に、ハンセン病等に対する偏見、差別を助長し、多くの苦しみを与えた歴史があるわけでありますので、この人権問題などについてはどのように対応していくのか、お伺いしたいと思います。

外口政府参考人 感染症は、その疾病の性格から患者への差別、偏見を生みやすく、人権の保護については十分に尊重する必要があります。

 このため、今回の改正において、必要最小限度の措置を講ずる旨の原則を明記、就業制限や入院勧告等に関する感染症診査協議会の関与の強化、入院勧告の際の適切な説明、入院延長に関する意見聴取手続や入院に関する苦情の申し出制度の創設等の感染症の患者の人権の尊重に関する規定を設けたところであります。

 なお、結核予防法については、患者の人権上、手続が十分ではなかったことや、特定の感染症の病名を冠した法律は差別、偏見の温床になるとの指摘があったところであり、こうした御意見も踏まえて、これを廃止して感染症法に統合することとしたものであります。

 感染症法の施行に当たっては、こういった考え方についての関係機関への周知も含め、これらの規定の適正な施行に努めてまいりたいと思います。

新井委員 そうですね。結核予防法を廃止して感染症法に入れたことで要するに人権問題を防ぐとありますけれども、逆に、感染症法にすべてを含んじゃっているので人権問題が生じるおそれもあると思いますので、そこら辺のことはしっかりと国としても対応していただきたいと思っております。

 結核は国内最大の感染症であるということと、結核予防法に関しては、きめ細かな健康診断や外来医療に対する適切な医療の規定など、結核対策の規定がありますが、感染症法にはこれらの規定をどのようにしていくのか、お伺いいたします。

外口政府参考人 改正後の感染症法におきましては、結核予防法に固有の定期健康診断や通院医療等については引き続き関係の規定を設けるとともに、入院勧告の規定など感染症対策全般に共通する規定も適用されるため、従来の結核対策に関する規定は感染症法においても担保されるとともに、疫学調査や動物の輸入に関する措置など、従来の結核予防法にない措置が結核についても行えるようになります。

 こういった対応によりまして、結核予防法の廃止、統合後も、感染症法に基づき結核対策の一層の推進を図っていきたいと考えております。

新井委員 また、統合することによりまして結核軽視になり、一般の人及び医療関係者の関心がますます薄くなり、予算や人員の確保に問題が生じる懸念があると思っておりますけれども、そこら辺のことはどうなっているのでしょうか。

石田副大臣 我が国におきましては、結核患者は年々減少傾向にはございますけれども、平成十七年においても二万八千人余の新規登録患者が発生しております。また、大都市と地方との間での罹患率の格差は依然と大きい。また、感染した場合には治療が困難な薬剤耐性結核菌が発生している。こういうこともございまして、引き続き十分な対策を講ずる必要がある、このように認識をいたしております。

 そのため、今回の改正においても、これまで結核予防法に規定されてまいりました結核固有の措置を感染症法に規定するとともに、人権を尊重した適正手続等を結核についても適用することといたしております。

 こうした今回の法改正による措置も活用しながら、今後とも、高齢者など発病しやすい者に対する健診、保健所等において服薬状況を確認しながら指導するいわゆるDOTS、こういうものも推進して、地域の実情に応じたきめ細かい対策をとることといたしておりまして、引き続き必要な予算や人員を確保し、結核対策の一層の推進を図ってまいりたいと考えております。

新井委員 ありがとうございます。

 いろいろな問題が出てくると思いますけれども、ぜひとも現場の状況を十分に考慮して、結核対策の後退にならないようにしていただきたいと思いますので、よろしくお願いします。

 次に、病原体管理体制のあり方についてお伺いいたします。

 生物テロ対策の観点で構築されました今回の病原体の管理体制が、生物テロ対策以外の事態に対応可能であるのかどうか、対応できるレベルの規制についてお伺いいたします。

外口政府参考人 今般の改正感染症法におきましては、特定の病原体等を一種から四種までの四種類に区分し、研究機関等がこれら病原体等を所持する場合には、その区分に応じた施設の基準や使用等の基準を遵守しなければならないと規定しております。

 また、今般導入する規制の内容には、所持施設における感染症発生予防規程の作成、病原体等取扱主任者の選定、施設に立ち入る者に対する教育訓練、帳簿を備えつけ、必要な事項の記録及び保管などが含まれているところであります。

 これらを行うことにより、病原体等の適正な管理がなされ、生物テロ対策のみならず、事故等の非意図的な要因による感染症の発生及び蔓延を防止することができるようになるものと考えております。

新井委員 また、我が国の病原体等の管理体制が他の先進国に比べますとおくれがあるという指摘の声もありますけれども、病原体の管理強化により、今まで行われていた試験とか研究活動が制約される機関などが出て、感染対策が後退する懸念はないのでしょうか、お伺いいたします。

外口政府参考人 今般導入する病原体等についての所持等の禁止、届け出等の規制は、生物テロを含めた感染症の発生、蔓延防止を図るためのものであり、企業、大学等においても基本的に適用されるべきものと考えております。

 しかしながら、本規制を行うことで感染症対策に係る研究の機運が低下することは適当ではないことから、法施行時に既にある施設について、一定の経過措置を設けたり、施設の基準、保管、使用等の基準についても、研究等の業務に著しい支障が出ないよう、遵守すべき基準の内容について所要の経過措置を設けるなど、必要な配慮について検討し、感染症対策が、あるいは感染症についての研究が後退しないよう対応してまいりたいと考えております。

新井委員 また、病原体に関する情報につきまして、これは厚生労働大臣または都道府県公安委員会が関与することになっており、都道府県の衛生管理局や保健所は関与していないようでありますが、テロとか災害等によって病原体等が流出した場合、迅速な初動対応を行うためには、関係自治体、とりわけ住民の衛生サービスを担う保健所との連携協力体制の構築が必要不可欠だと思っておりますが、この点につきましてどのように考えておるのか、お伺いいたします。

石田副大臣 今般の感染症法の改正による病原体等の規制については、生物テロ等による感染症の発生及び蔓延を防止するということを趣旨とするものでございまして、これら病原体等の盗取、テロ等の犯罪等の防止等の危機管理上の観点から、所持者等に関する情報は国で一元的に管理する、このようにしたものでございます。

 しかし、万が一、テロや災害等によって病原体等が流出し患者が発生した状況においては、当然ながら、住民の衛生サービスを担う保健所を初め関係自治体の役割は大変重要でございます。それらとの連携協力体制は必要不可欠であると考えておりますので、今後、保健所との連携協力体制を踏まえた緊急対応要領を作成するなど、病原体等の流出事例の発生時においては必要な情報交換を含め適切な対処をしていく、このように備えてまいります。

新井委員 ありがとうございます。

 ちょっとこれは発言通告していないんですが、私、県会議員もやっていたときに、保健所などの統廃合などがかなり進められていたんですけれども、この統廃合によって、要するに感染症とか生物テロに対する対応というのはできていけるのかどうか、そこら辺のことをちょっとお伺いしたいんですが、どうでしょうか。

外口政府参考人 保健所の統廃合、かなり各地域で行われておりますけれども、私どもは、それは、自治体の方では、単なる合理化ではなくて、その地域、地域で果たすべき役割が本当に果たせるのかどうかも、それも踏まえての上で考えていただいておると思います。

 もし、そういったことにならないで単なる統合で、感染症対策等、いろいろ保健所の行っておる対策ありますけれども、そういったことが低下するようなことがあれば、これは問題でありますので、そういったことがないようにということは、常々、各自治体にもよくお話ししていきたいと思います。

新井委員 ぜひとも、そこら辺の対応は、国といたしましてもしっかりと取り組んでいただきたいと思っております。

 終わりに、この感染症予防法の目的というものは、感染症の発生予防と蔓延防止による公衆衛生の向上及び増進であると思っておりますが、生物テロ対策としての病原体管理体制を感染予防法に位置づけることに対して私は少し疑問があると思っておるんですけれども、副大臣としての生物テロ対策全般の取り組みについての決意をぜひお聞かせいただきたいと思いますので、よろしくお願いします。

石田副大臣 先生御指摘のとおり、生物テロを未然防止をする、こういう観点から、感染症改正案では、生物テロに使用される可能性の高い病原体等の管理を強化する、こういうことを考えております。

 しかし、万が一、生物テロが発生した場合には、事態をいかに迅速に認識し、適切な措置を講じるか、こういうことが重要でございますので、感染症の早期把握と原因究明、また、感染症の診断、治療方法等に関する情報提供などを迅速、適切にやっていく必要があると考えております。

 また、テロの被害者が発生した場合には、その治療を行うために、感染症の指定医療機関の整備、医薬品等の確保、備蓄、こういうものも推進をし、医療体制の充実も図ってまいらなければならないと考えております。

 今後とも、関係省庁、地方自治体及び関係機関と一体となって、生物テロ対応も含めた国民生活の安全確保のため、最善を尽くしてまいりたいと考えております。

新井委員 ありがとうございました。ぜひとも、生物テロ対策、そして感染予防法とかそういうものに対しては、国民の安全、安心というものは非常に今関心が高まっているわけであります。いろいろな風評被害とか、いろいろ出ますけれども、やはり国といたしましてもしっかりと対応をしていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 以上です。きょうはどうもありがとうございました。

櫻田委員長 次に、松本純君。

松本(純)委員 自由民主党の松本純でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

 厚生労働大臣からの提案理由説明にもありましたように、今回の改正は、生物テロを未然に防止する観点から、病原体やその毒素の管理制度を創設すること、医学的知見の進展を踏まえて感染症の分類を見直すこと、そして、総合的な結核対策を推進するため、結核予防法を廃止し、感染症法及び予防接種法の中で必要な規定を設け、感染症の予防対策を総合的に推進しようとするものと理解をしております。

 我が国の疾病構造の変遷は、多くの皆さんが御存じのとおりでありますが、明治の初期においては、コレラ、チフス、赤痢などの急性感染症が最大の課題でありました。特にコレラについては、私どもの祖父や祖母の時代では最も恐ろしいもの、最も嫌うものの代名詞として位置づけられていたのではないでしょうか。流行のときには数万、多いときには十万を超える死亡者を出したと伺っております。明治の後半になると、結核を中心とする慢性感染症が医療の最大の課題となり、その後再び急性感染症が課題となって、終戦を迎えることになりました。

 戦後は、結核も含め多くの感染症は、ペニシリン、カナマイシンなどの抗生物質の登場やワクチンの開発と普及により激減していくことになりました。特に急性感染症の大きな流行というものはほとんど見られなくなり、現在では、高病原性鳥インフルエンザのような新たな脅威というべき感染症は存在するものの、国民には安心して生活ができる環境が整備されております。

 このような感染症との闘いを有利に進めてくることができましたのは、伝染病予防法や結核予防法などの法律による社会制度や生活環境の整備のためであることはだれもがうなずくところであろうと思いますが、もう一つの重要な要素が医薬品の存在であると考えております。感染症と医療との闘いにおいては、抗生物質という治療薬とワクチンという予防薬の存在が強力な武器としてその力を発揮したという歴史であると信じているところです。

 そこで、私は、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律等の一部を改正する法律案の審議に当たりまして、医薬品という側面から幾つかの質問をさせていただきたいと存じます。

 まず、結核についてお尋ねをします。

 先ほども申し上げましたように、結核というのは明治後期から問題となり、国民病と呼ばれ、大正時代、昭和時代と、長い間我が国の医療の最大の敵となっていました。しかし、第二次世界大戦後、結核の治療分野においては大変な進展を見ることになりました。ストレプトマイシン、カナマイシン、リファンピシンといった抗生物質、イソニアジド、エタンブトールといった抗菌薬の登場が国民病と言われる結核を大きく撤退させることにつながったわけであります。

 しかし、結核の減少傾向が鈍り、平成九年、十年、十一年には前年より増加になったと承知をしております。その後、再び減少しているというものの、欧米諸国と比較すると罹患率は相当高く、また地域格差があるということであります。そのため、政府としては、結核緊急事態宣言を発表して種々の対策を講じ、結核予防法の改正を平成十六年に行ったわけであります。

 そこで、確認のためにお尋ねしたいのは、平成十六年の結核予防法改正の主なねらいをお聞きするとともに、その後の成果がどのようになっているのか、また、今回の改正で結核予防法を廃止するということになるのですが、従来の法律のねらいが後退するようなことがないのか、改めて確認させていただきたいと思います。

石田副大臣 先生の御専門の特に医薬品の分野での貢献が結核という国民病の撤退に大きな貢献をされたということは、私は御指摘のとおりだというふうに思います。

 その上で、平成十六年の結核予防法改正のねらいということでございますけれども、一つは、予防接種の前に行われていたツベルクリン反応検査の必要性が科学的に否定をされましたので、できるだけ早く検査義務づけを廃止し、BCG接種の徹底を図る必要があった。二つ目には、健康診断の対象者を、一定年齢層の者とするなど一律的、集団的に決めておりましたけれども、六十五歳以上の高齢者など罹患している可能性が高いハイリスク者を対象とすることとし、罹患状況の変化に応じた対応ができるようにする必要があること、こういうことから平成十六年に所要の見直しを行いました。この改正により、地域の特性に応じた対策やハイリスクグループへのよりきめ細やかな対応が充実をいたしました。

 しかし、一方、現行の結核予防法については、一つは、患者の人権上、特に入院に際して本人の意思を尊重する勧告の前置などの手続が十分ではなかった、二つには、特定の感染症の病名を冠した法律は残念ながら差別、偏見の温床になりかねない、こういう指摘があったところでございます。

 こうした指摘を踏まえまして、改正感染症法においては、入院勧告の規定など、結核についても感染症対策全般に共通する規定を適用し、人権を尊重した適正手続を拡充すると同時に、従来の結核対策に加えて、より実効ある対策を講ずることといたしたところでございます。

松本(純)委員 結核の根絶に向けて最も重要なことは、患者の早期かつ確実な治療と再発をさせないということだと承知しております。そのための重要な対策の一つがDOTS、直接服薬確認療法ということでありますが、法案にも結核予防法と同じ条文が規定されております。すなわち、第五十三条の十四として、保健所長は、結核患者に対し、保健師またはその他の職員をして、患者の家庭を訪問させ、処方された薬剤を確実に服用することその他必要な指導を行わせると規定しております。

 結核の治療において失敗となるのは、多剤耐性結核の出現であります。つまり、基礎的薬剤であるイソニアジドとリファンピシンが効果のない結核の発生ということであると理解をしておりますが、この多剤耐性結核の出現の主な原因は、治療の中断と不規則な服薬だと言われております。結核の治療のためには、薬物療法は六カ月以上にわたるため、処方された適切な薬剤が確実に服用されなければなりません。それを確保するのがDOTSということになります。入院中の場合には患者の服薬管理は容易だと思いますが、退院後の患者の服薬管理は大変困難なものだと思われます。

 そこで、お伺いさせていただきます。

 平成十六年の結核予防法の改正以降、全国の保健所においてDOTSはどのように行われているのか、平均的な実施内容を教えていただきたいと存じます。

 また、保健所には保健師以外に薬剤師も所属をしていると思いますが、DOTSにかかわっている薬剤師はどの程度いるのか。

 さらに、外来患者の場合には、町の薬局で薬剤を調剤してもらう場合もふえてきていると思いますが、DOTSの実施に当たり、薬局の薬剤師を活用することも効果的なのではないかと考えますが、現状はどのようになっているのか、お教えいただきたいと存じます。

外口政府参考人 平成十六年の結核予防法改正において、患者の治療成功を支援するため、医師または保健所長の指示内容として、患者に処方された薬剤を確実に服用させること、いわゆるDOTSに関する規定が盛り込まれたところであります。

 厚生労働省においては、現在、DOTSの実施形態として、患者ごとに計画を立て、入院中は院内DOTS、退院後は、患者のリスクや生活形態、地域の実情等に応じて、外来DOTS、訪問DOTS、連絡確認DOTS等を行い、終了後は治療成績の評価等を行うことを推進しております。

 現在、このDOTSにかかわっている薬剤師さんの数は把握しておりませんが、一部の自治体においては、薬局への委託により、DOTSの実施に当たって薬剤師を積極的に活用している事例もあると聞いております。

 DOTSは、保健所の保健師だけで推進するものではなく、医薬品の知識を有する薬剤師等他の職種や、地域の医療機関、薬局等との連携のもとに実施することが重要であり、厚生労働省としても、服薬確認を軸とした患者支援を趣旨とするさまざまな形態のDOTSを推進していきたいと考えております。

松本(純)委員 結核の治療が確実に実施されるためには、DOTSの実施がさらに進められることが必要であると思います。DOTSの実施者と患者さんが頻繁に接するということは、服薬を確実にするということだけではなく、副作用の早期チェックにもつながることだと思います。そういった観点からも、もっと町の薬剤師さんに頑張ってもらいたいと思うところでございます。

 次に、毎年流行し、特に高齢者が感染すると致死的なことにもなるインフルエンザ対策についてお尋ねいたします。

 インフルエンザウイルスは、年によって流行するタイプが微妙に異なり、そのために、事前に流行するタイプをできる限り正確に予想しておくことが重要であります。その予測のもとで、その年の流行時期の前までに、予測されたウイルス株を用いてワクチンを製造しておかなければなりません。近年では、流行株の予測が大変進歩していると聞いております。

 また、ワクチンについてもう一つ重要なことは、必要な量のワクチンが確保されているかということであります。インフルエンザの流行規模の予測も大変なことと思いますが、需要を賄う必要な量のワクチンが提供されていないことに伴う混乱が起こった年もあったと聞いております。たしか平成十五年、十六年にかけて、冬のシーズンにインフルエンザワクチンが全国で不足したという状況がありました。

 ことしもいよいよインフルエンザの流行シーズンを迎え、既に予防接種が始まっておりますが、今シーズンのワクチンの需要予測と供給量の見込みはどのようになっているのか、教えていただきたいと存じます。

高橋政府参考人 お答えを申し上げます。

 私ども厚生労働省では、従来から、インフルエンザワクチンの需要予測に基づきまして、必要なワクチンが確保されるように取り組んでおります。

 毎年のシーズンのインフルエンザワクチンの需要予測につきましては、前のシーズンの使用量を踏まえまして、全国の医療機関を対象とした抽出調査と、それから一般家庭を対象といたしました世帯アンケート調査の結果に基づきまして、専門家による検討を経まして、その年の冬のシーズンの需要予測をいたしております。

 本年は、六月にインフルエンザワクチン需要検討会を開きまして、このシーズンは二千百五十万本から二千二百八十万本程度の需要というふうに見込んでおります。

 一方、ワクチンの供給量につきましては、現時点で、インフルエンザワクチン製造企業四社分を合計いたしまして、二千四百万本程度を製造し、供給するということを見込んでおります。

 このことから、この冬のシーズンは、需要に対しては十分な製造量は確保でき、供給できるものというふうに考えております。

松本(純)委員 ところで、平成十六年から十七年にかけてのシーズンでは、ワクチンが不足と言われる医療機関がある一方で、シーズン終了後では未使用品で返品が大量に発生したと聞いております。

 インフルエンザワクチンは、そのシーズンに流行するであろう三種類のウイルス株を選定して毎年製造され、有効期間は一年と定められていると聞いております。したがって、シーズン終了後の再利用はできないわけであります。このようなワクチンが返品されたり廃棄されることが可能な限りないようにしなければなりませんが、これについてはどのように取り組んでいらっしゃるのか、お尋ねします。

高橋政府参考人 ただいま先生のお話のように、かつては、インフルエンザワクチンの接種時期の前に医療機関が使用量以上に大量に注文するということが多うございまして、その時期はワクチンの不足を来す。ところが、一方、終わってみると、そのシーズン終了後でございますが、未使用分の返品がまた今度は大量に発生するという事態がかつてございました。

 このようなことから、厚生労働省といたしましては、これまでの経験を踏まえまして、次のような取り組みを都道府県と協力をいたして行っております。

 まず、国から都道府県に対しまして、全国のワクチンの在庫状況を毎週情報提供するとともに、都道府県の管内でワクチンが不足をした場合には、融通が可能な体制をあらかじめ確立しておくように要請をいたしております。

 それからまた、医療機関におきまして、ワクチンのそのシーズンにおきます初めての注文、初回注文量が前年の使用実績を上回らないようにする、必要が生じた都度、追加発注をするというやり方をとっていただくということを要請いたしておりまして、在庫の方の流動性を確保しているということでございます。

 さらに、全国的な在庫の調整のために、製造販売業者におきまして一定量のワクチンを留保いたしまして、不足の生じた都道府県にはこの調整用の在庫から適宜提供していただくというようなシステムをとることといたしております。

 このようにいたしまして、地方公共団体や医療関係団体の協力を得ながら、インフルエンザワクチンが安定的に供給されまして、過剰な返品が問題とならないように努力をいたしております。

松本(純)委員 インフルエンザの流行シーズンを迎えて、国民、特に高齢者が安心できるような環境を整備することが重要であると考えます。関係者の皆様の、今後とも安定供給に対する御努力をお願いしたいと思います。

 新たな感染症の脅威として、高病原性鳥インフルエンザについては、東南アジアを中心にふえ続けており、我が国での発生が心配されているところでもあります。この問題については、既に本委員会においても質問がなされているので、私からは、予防手段のワクチンの開発状況を中心として質問させていただきます。

 政府においては、厚生労働省に新型インフルエンザ対策推進本部を設置し、新型インフルエンザ対策行動計画を昨年十一月に策定されたと聞いております。感染症、特にウイルス感染症対策としては予防が重要であり、そのための手段としてワクチンの開発が重要であると思います。

 行動計画では、人から人への感染が確認されていない段階において、鳥から人へ感染を起こすウイルスを用いたワクチン、すなわちプロトタイプワクチン、今ではプレパンデミックワクチンというようでありますが、この原液を製造し、貯留を開始するとしております。この考え方は、人から人への感染が発生した場合には、人感染集団周辺等への緊急的なワクチン接種が必要となることから、この段階からプロトタイプワクチンの原液を製造し、貯留するものと認識しております。

 そこで、お尋ねします。

 我が国では、既にプレパンデミックワクチンの開発が進められており、臨床試験が実施中であり、また一方で、いざというときに流通させ、使用することを目的としたワクチン原液の製造が始まったと聞いておりますが、具体的な開発状況と、それに対する政府の支援の状況を教えていただきたい。

 また、臨床試験中とのことですが、順調に進めば承認申請はいつごろ行われることになると見込まれておるのか、お伺いいたします。

石田副大臣 新型インフルエンザ対策でのワクチンの開発については、我が国も、米国、欧州、豪州と同様に、WHOとの協力のもとで取り組んでいるところであります。国内製造四社により開発中のプレパンデミックワクチンについては、薬事法上の承認申請に向け、現在、臨床試験が行われている段階でございまして、本年九月から千人以上の健康な成人を対象とした臨床試験を開始し、ワクチンの有効性と安全性の確認が進められているところでございます。

 政府の支援の状況につきましては、平成十六年度から、国立感染症研究所が中心となって、国内製造四社が行っている開発研究を支援するとともに、平成十七年度補正予算におきまして、ワクチン生産用鶏卵の確保等のワクチン生産体制を整備するなど、官民一体となって取り組んでおります。また、本年六月に、新型インフルエンザワクチンを、希少疾病用医薬品、オーファンドラッグに指定したところでございまして、試験研究に対して助成金の交付、税制上の優遇措置を行うこと、そのほか、薬事法上の承認申請後は優先審査を行う、こういうことにいたしております。

 また、お尋ねの承認申請の時期につきましては、このまま臨床試験が順調に進めば、二〇〇七年、明年の春にも承認申請を行うことが可能となるのではないかと国内製造企業より聞いております。

松本(純)委員 WHOは、本年八月に新型インフルエンザのワクチン開発に関する専門家での検討結果を公表していると聞いております。

 その検討結果の中では、これまで進めてきている、ベトナムで分離されたクレード1のタイプのウイルス株を用いたワクチンの開発を継続すべきであるとしながらも、トルコやインドネシアなどで新たに分離されたクレード2のタイプのウイルス株、すなわち、ウイルスも徐々に変異しており、こちらの株の方が人から人への感染を起こしやすいタイプに近づいているのではないかと言われています。この新たなウイルス株を用いたワクチンの製造と貯留についても指摘していると聞いております。

 我が国においても、現在開発中のプレパンデミックワクチンはクレード1のタイプのウイルス株を弱毒化してワクチン製造株としていると聞いておりますけれども、新たなタイプのウイルス株を用いたワクチンの製造と貯留についても開発を進めるべきであると思いますが、今の状況と今後の方針についてお尋ねします。

高橋政府参考人 お答え申し上げます。

 今お話のございましたクレード2のウイルス株を用いたワクチンの開発の状況につきましては、現在、インドネシアで採取された株、それからトルコで採取された株、これらは鳥から人への感染を起こしたウイルスでございますけれども、これらの株につきまして、国立感染症研究所及び国内製造四社におきまして、ワクチン製造用の株として利用可能であるかどうかを現在確認いたしておる、その作業中でございます。

 その確認ができ次第、製造業者におきまして所要の準備を速やかに行いまして、ワクチン製造用の株を、現在のベトナムで採取されましたクレード1のウイルスに由来する株から、このクレード2のウイルスに由来する株に切りかえまして、プレパンデミック用のワクチンの生産を行いたい、かように考えております。

松本(純)委員 新型インフルエンザ対策は、健康危機管理の問題であり、国の主導による対策の実施が必要であります。今後の新型インフルエンザ対策の実施についてのお考えをお伺いします。

石田副大臣 新型インフルエンザ対策につきましては、世界保健機関や各国とも危機意識を持って対策を講じているところでございまして、我が国におきましても、昨年十月に、厚生労働大臣を本部長とする新型インフルエンザ対策推進本部を省内に設置をいたしました。そして、十一月には、新型インフルエンザ対策行動計画を策定して、各般の取り組みを進めているところであります。また、本年六月には、インフルエンザH5N1を感染症法に基づく指定感染症に政令指定を行いまして、患者の入院措置等を行えるようにいたしました。また、九月には、内閣官房が中心となりまして関係省庁新型インフルエンザ対応机上訓練を実施するなど、発生時に向けた体制整備に努めているところであります。

 今後も、各国における発生状況等を注視しつつ、関係機関等と緊密に連携するとともに、新型インフルエンザ対策行動計画に基づいて各般の対応を総合的に進め、発生時の対応に万全を期してまいりたいと思っております。

松本(純)委員 それでは次に、ワクチン全体についてお尋ねします。

 ワクチンは、ただいま質問をした、新型インフルエンザを初めとする感染症に対して、大変重要な武器として我が国の社会に貢献してきたと思います。国民の健康防衛のための大きな柱と考えていいと思います。

 政府は、我が国において将来にわたり必要なワクチンを開発して安定的に供給できる体制を確保するため、ワクチンの研究開発、供給体制等の在り方に関する検討会を立ち上げ、今後の取り組み方策を検討してきております。そして、本年七月に、ワクチン産業ビジョン(案)を作成し、広く意見を募集してきたと伺っております。

 ワクチン産業ビジョン(案)では、アクションプランとして、一、政府の取り組み及び方向性、二、基礎研究から実用化、臨床開発への橋渡しの促進、三、産業界における体制の目指すべき方向、四、危機管理上も必要なワクチン等の研究開発及び生産に対する支援、五、薬事制度等における取り組み、六、需給安定のための取り組み、七、情報提供及び啓発の推進。以上の七項目に分けて具体的な取り組みを掲げ、定期的に実施状況及び動向についてのフォローアップを行うとしております。

 予防のための医薬品であるワクチンは、健康な人を病気にかからせないというものであり、そのありがたみがなかなか実感されることが困難な医薬品であると思います。それゆえ、病気の治療薬のように、一部の方々を除き国民の目にとまる機会が少ないと思います。

 そこで、お伺いいたしますが、ワクチン産業ビジョン(案)に対する意見募集期間が八月二十八日で終了したと聞いております。今後どのように進めていくことになるのか、予定について簡単に教えていただきたいと存じます。

高橋政府参考人 ただいま先生のお話がございましたように、ワクチンは、一般の医薬品と違いまして、病気になったらその薬を取り寄せるということではなくて、主に感染症でございますが、予防的に投与するということから、全くお話しのとおりに、国民の皆様方にその重要性というのは御理解がなかなか難しいのかなというような感も実は持っております。

 それで、私どもとしても、ワクチンの産業について今後のあり方をどうするかということにつきましてワクチンの産業ビジョンを作成したわけでございますが、この会議は、平成十七年の四月に、ワクチンの研究開発、供給体制等の在り方に関する検討会ということで発足いたしました。さまざまな論点を議論いたしまして、今お話ございましたように、幾つかの方向性を出したわけでございます。

 パブリックコメントにおいていただいた御意見も踏まえまして、今後は、ワクチン産業ビジョンに示したものはワクチンの一般論でございますので、またこれは個々の感染症ごとのそれぞれのワクチンについてはいろいろな課題がございますので、おのおののワクチンごとの課題を検討、整理しながら、本ビジョンに示されましたアクションプランをそれぞれのものについてどういうふうに実行していくか、これをまた考えながら実行に移してまいりたい、かように考えております。

松本(純)委員 予定の時間となりました。以上で質疑を終わります。ありがとうございました。

櫻田委員長 次に、三井辨雄君。

三井委員 民主党の三井辨雄でございます。

 きょうは、主に結核予防法について質問させていただきたいと思います。

 今回の改正は、結核予防法を廃止し、結核対策を感染症予防法に統合するということが大きな柱になっているわけでございますけれども、その統合に関して、一点目は、結核は国内最大の感染症である。先ほど来から、私どもの菊田委員からもお話ございました。また二番目に、慢性感染症である結核には長期にわたる疾病対策が必要である。感染症法は、主に急性感染症が対象となっているというところでございます。それから三番目といたしましては、結核予防法に固有の規定があるわけです、例えば健康診断をとか。ところが、感染症法にはこれは欠けている。

 こういった理由から、結核対策の後退を懸念する声があちこちから出ているわけでございますけれども、厚生労働省にお伺いしますが、こうした懸念に対してどうお答えになるのか、お伺いしたいと思います。

外口政府参考人 我が国におきましては、結核患者は、年々減少傾向にあるとはいえ、平成十七年においても二万八千人余の新規登録患者が発生しており、大都市と地方との間での罹患率の格差が依然として大きく、また感染した場合に治療が困難な薬剤耐性結核菌が発生するなど、引き続き十分な対策を講ずる必要があると認識しております。

 このため、今回の改正におきましても、これまで結核予防法に規定されてきた結核固有の措置を感染症法に規定するとともに、人権を尊重した適正手続等を結核についても適用することとしたところであります。

 こうした今回の法改正による措置も活用しながら、今後とも、高齢者など発病しやすい者に対する健診や、保健所等において服薬状況を確認しながら指導する直接服薬確認療法、いわゆるDOTSを推進するなど、地域の実情に応じたきめ細かい対策をとることとしており、引き続き必要な予算や人員を確保し、結核対策の一層の推進を図ってまいりたいと考えております。

三井委員 そこで、これまでの検討経過というのもちょっと検証したいと思います。

 結核対策の法的位置づけの見直しということで繰り返しこれまで検討されてきたわけでございますけれども、感染症法制定時から、前回、平成十六年に結核予防法を改正した際にも、先ほど外口局長もおっしゃっていましたが、特定の病名を冠した法律は、患者に対する差別、偏見につながり、人権侵害を招くおそれがあることから、統合すべきだという議論があったわけです。しかし、その時点で、新たに結核患者の登録が年間約三万人、そしてまた死亡者数が二千数百人。先ほど来からありますように、結核は依然国内最大の感染症であるという判断のもとに、法律の統合は見送られたという経過がございます。

 その後も、厚生科学審議会の中でさまざまな議論があったと聞いておりますが、とりわけ昨年の十月には、結核予防法の感染症法への統合には反対であるという意思表示が、日本結核病学会及び日本呼吸器学会から共同声明が発せられたわけです。また、全国保健所長会からも緊急声明が出されました。これに対して、厚生労働省は、感染症法に結核対策の新たな規定を設けることを示して、結核予防法を廃止しても結核予防対策は後退させないという約束をして、ようやく関係者団体の理解を得た、こういうぐあいに理解しているわけでございます。

 このところでお伺いしたいのは、結核対策を後退させないということで局長は先ほどおっしゃっていますが、この改正の前後、結核予防法と改正感染症法の規定を比較してみますと、結核予防法にあって今回の法改正に盛り込まれていない事項、あるいは変更されている事項が散見されているわけですね。私は、こうした相違があること自体については、別に一律にけしからぬとか後退だと申し上げるつもりはございませんが、相違点についてはきちんとした合理的な理由を御答弁いただきたいと思います。

 まず、そこで、各先生方のお手元に今回のこの感染症法の法案と結核予防法との対比を配付させていただきました。

 結核予防法三十一条の二項でございますが、物件の消毒廃棄等を行った際の損失補償に関する規定があったわけでございます。改正案にはこれは入っていないんです。改正案に引き継がれなかった理由をまずお聞きしたい。それから、改正案の成立後、こうした消毒廃棄を行った場合、損失はどこが負担するのか。また、結核以外の感染症について同じような規定が必要でないかと私は思うんですけれども、御答弁願いたいと思います。

外口政府参考人 御指摘の結核予防法第三十一条第二項の損失補償、これは昭和二十六年の結核予防法の制定時に規定したものであります。その第二項の前提となる第一項につきましては、結核患者が使用し、または接触した衣類、寝具、食器その他の物件について、結核菌に汚染し、または汚染した疑いがあるものについて、消毒を命じ、もしくは消毒によりがたい場合に廃棄を命じることができるという規定でございます。

 当時は、まだ治療法もそれほど確立しておりませんので、できるだけのことをやろうということで、こういった入念なことが書いてあったと思います。ただ、現在では、結核菌に汚染された器物については、一般的には通常の洗浄、清拭で足りるものと考えております。これを踏まえて、今回の改正では、消毒廃棄等に係る損失補償の規定を新たに設けることはしないこととしたものであります。

 なお、感染症法においては、補償が必要な場合には、これは直接、憲法第二十九条第三項の規定、「私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。」に基づき補償が行われるため、従来から特段の規定を設けておりません。結核も含めて、感染症について今後こういった必要な場合が起きたときには、この規定に基づき適切に対処してまいりたいと考えております。

三井委員 今局長に御答弁いただきましたが、これは確かに昭和二十六年の法律でありますけれども、しかし、やはり廃棄ということも私は必要でないかと思うんですね。ただ消毒だけで本当にそれで安全なのか、そこできちっと対応ができるのかということになりますと、私は甚だ疑問だと思います。もう一度御答弁をお願いします。

外口政府参考人 一般にはこういった消毒または廃棄ということはないと思いますけれども、先ほど申し上げましたように、仮にそういったことが起きまして補償が必要なことがあったときには、感染症法同様に、憲法第二十九条第三項の規定に基づきまして、これは「私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。」ということでございますので、これに基づいた対応を行っていきたいと考えております。

三井委員 何度聞いても同じことでしょうけれども、しかし、消毒で済むというものと、病院でも同じですが、実際にそれを消毒して再び使うということと廃棄するということは、私はこれはもう少し考えるべきだと思うんですね。ですから、例えば病院でもそうですよ、特に感染症なんかの場合は、消毒の仕方、あるいはその消毒の内容によっては全く効果のない場合もあると思うんですね。ですから、これはやはり廃棄するということもひとつ視野に入れていただきたい、こういうふうに思うわけでございます。

 そこで、次にお伺いします。

 結核予防法の三十三条、ここには結核療養所の設置及び拡張の勧告に関する規定がありますが、改正案にはこれは入っていないんですね。そこで、現在、国立療養所などの結核療養所は全国に何カ所あるのか。また、年間何人の患者が利用しているのか。あるいは、今後、結核療養所に対する国の役割に変更があるのか。新たに設置しないということなのか。その理由をお聞かせ願いたいと思います。

外口政府参考人 国立病院機構が設置しております結核病床を有した病院については、平成十八年十月一日現在、五十四病院となっております。また、平成十七年度の延べ入院在院患者数は約八十二万人となっております。

 法第三十三条に規定する結核療養所の設置及び拡張の勧告につきましては、昭和二十六年の法制定当時の医療機関の不足、例を挙げますと、昭和三十年には新登録結核患者数が約五十万人、結核病床数は当時二十四万床でございました。こういったことが結核対策上一つの大きな障害になっていたことから設けられたものであります。

 しかしながら、昨今では、医療機関の整備、結核患者の減少傾向等から、本条が発動されるような事態は想定されず、改正案においては本条は規定しないこととしたものであります。

 今後は、国による勧告に基づき整備、拡張するという従来のスキームが廃止され、都道府県が主体となって地域における医療提供体制の確保を図る中で、必要な結核病床の整備を行うこととなります。

 具体的には、都道府県がそれぞれみずから作成しております医療計画において、これは国立病院機構が設置しております結核病床も含めて、必要な結核病床数を確保することになります。

    〔委員長退席、吉野委員長代理着席〕

三井委員 今、民間ではこれだけ結核病棟というのがないんですね、なくなってきているんです。というのは、診療報酬が上がらないという理由もございます。また、結核患者を診る医師も少ない。特に、若い医師が多くなって、特にやはりそのトレーニングがされていないドクターがいらっしゃるということで民間病院はやっていないということなんですけれども、三十三条に書いてございますように、「厚生労働大臣は、必要があると認めるときは、都道府県、市その他必要と認める地方公共団体又は地方独立行政法人に対して、結核療養所の設置及び拡張を勧告することができる。」今の局長の御答弁でいきますと、ある程度その役割が終わったということで理解していいんでしょうか。

外口政府参考人 役割は全く終わっていないと思います。

 ただ、役割の性質が従来より少し変わってきておりまして、従来はまず病床数の確保ということが最大の課題でありましたけれども、今は、病床数を必要なだけ確保しつつ、あとは、結核の患者さんの内容が少しバラエティーに富んでいると申しますか、変わってきておりますので、そういった方々に対するきめ細かい対応が必要となってきたというところだと思いますので、これは質と量の面で変化を踏まえながら対応していきたいと考えております。

三井委員 確かに質と量の問題、後でまた質問させていただきますけれども、多剤耐性結核菌、スーパーという非常にそういう菌も発見されているわけでございますから、その辺のことは後ほどまた質問させていただきます。

 そこで、次にお伺いします。

 就業禁止、命令入所患者の医療についてでございますけれども、結核予防法三十五条では、都道府県が医療に要する費用を負担する場合として、従業の禁止、入所命令があった場合を上げていますが、改正案の三十七条は入院の勧告、入院の措置があった場合のみを上げ、改正案十八条の就業制限の場合は上げられておりません。

 そこで、就業制限の場合に医療費は負担しないということでありますけれども、入れられなかった理由は何なのか、お伺いしたいと思います。結核予防法三十五条の一項は、都道府県が費用負担する医療として、四号で「居宅における療養上の管理及びその療養に伴う世話その他の看護」と規定し、入院しない場合も都道府県の医療費負担の対象にしているようでありますけれども、改正案三十七条にこれは入っていないんですね。お手元にあるように入院のみを前提としているようでございますけれども、改正案では、結核患者に対して都道府県が医療費を負担する対象がこれまでより狭くなるのではないかと実は私は心配するのでございますけれども、これを入れなかった理由もお聞かせ願いたいと思います。

外口政府参考人 御指摘の結核予防法第三十五条は、従業禁止、入所の命令を受けた患者の医療に要する費用について公費で負担することを定めております。

 昭和二十六年の結核予防法の制定時から、入所命令については、法律上は、同居者に結核を感染させるおそれがある場合に限って行われるものとされており、同居者のない患者による公衆への蔓延を防止するため、こうした者について従業禁止の命令を行うこととしていたものであります。そして、これらの入所命令あるいは従業禁止命令のいずれを受けた場合であっても公費負担をすることとしておりました。

 これは、当時は、今よりも、例えば高齢者のひとり暮らしの方とか、そういった方が少なかったという背景もあったかもしれません。ただ、近年、同居者のない患者さんという方は増加しております。そして、こういった中で、必要がありましたので、実際には同居者のないひとり暮らしのお年寄りについても、この命令入所の仕組みを使って入院していただいて公費負担をする、そういったことが運用上行われてきております。

 そういった関係で、実際は、これは法律上は従業禁止と入所命令と両方あるわけでございますけれども、結核の排菌がある患者さんについては、通常、入所の命令の仕組みを使いますので、従業禁止の命令のみの対応となる患者は、実態的には存在しないと言ってもいいぐらいの状況でございます。

 こうした状況を踏まえまして、今回の法改正では、結核を蔓延させるおそれがあると認められる患者についてはすべからく入院の勧告等が行えることとし、実態に法律を合わせているわけでございますけれども、そして、就業制限を受ける結核の患者さんについての公費負担の仕組みというのは、実態に合わせてこれをなくしたものであります。

 なお、入院勧告を受けずに入院はしないが、結核の通院医療を受けつつ従業禁止の命令を受ける者、これは通常想定されておりませんが、仮にそういったケースがあったとしても、その通院に要する費用については、引き続き感染症法に基づいて公費負担がされることになります。

 それから、三十七条のところですけれども、「居宅における療養上の管理及びその療養に伴う世話その他の看護」というのが、これが結核予防法三十五条四号であったところがなくなっているということでございますけれども、これも、先ほど申し上げましたように、従業禁止ということが実態的になくなっているということから、それを規定していないものであります。

 そういったことで、結核の排菌がある患者さんについては、今運用でやっていることも含めて、これからの感染症法での規定も含めて、通常、入所していただいて治療していただく、そういうスキームを使っていただくことになります。

 もちろん、繰り返しますけれども、入院勧告を受けず入院はしないが、通院医療を受けつつ従業禁止の命令を仮に受けるといった場合があったとしても、その通院に要する費用については、引き続き感染症法に基づき公費負担されることになっているわけでございます。

三井委員 それでは、次にお伺いいたします。

 先ほど局長も御答弁されていましたけれども、秘密の漏示に関する罰則についてでございます。

 結核予防法六十二条は、秘密の漏示の罪の主体として、予防接種の実施の事務に従事した者まで含め、罰則は一年以下の懲役または百万円以下の罰金となっておりますが、改正予防接種法には、そもそも秘密の漏示に関する罰則がありません。個人情報保護の観点からすれば、こうした秘密の漏示に対する罰則は、医師だけでなく、予防接種の段階においても重要だと考えられますが、改正法ではどの条文で読まれるのか、お伺いしたいと思います。

 そこで、この改正案を見ますと、感染症予防法改正案七十四条、これは改正前の六十八条に当たるわけでございますけれども、罰則規定が適用されるのかなと私も考えたわけでございます。そうであれば、六カ月以下の懲役または五十万円以下の罰則であり、結核予防法では、先ほど申し上げましたとおり、一年以下の懲役または百万円以下の罰金と規定されているので、従来より罪が軽くなるのではないかと思いますが、いかがでございましょうか。

外口政府参考人 御指摘の結核予防法第六十二条は、結核の予防接種の実施事務に従事した者等による秘密の漏えいについての罰則を規定しております。これは、昭和二十六年の結核予防法の制定当時には、まだ結核に対する偏見というものが大変根深いものがあったと思います。そういった社会事情も踏まえて、予防接種まで含めて、結核関連の事務に従事する者について高度の規範性を要求することとして、厳重な罰則が科されていたと思います。当時は恐らく、あの人は結核なんだとかいう情報が、今の結核ということと全く、その人にとってすごく重要な情報だということだったと思います。

 昨今における結核についての知識の普及状況等を踏まえますと、これは、正しい知識の普及とそれからよい治療法が開発されてきたことによって、偏見は大分少なくなってきたと思います。そういったことを踏まえまして、結核の予防接種を予防接種法に位置づけた今回の法改正では、結核の予防接種についても、他の感染症に係る予防接種と同様の取り扱いとしたところであります。すなわち、予防接種法上については特段の罰則は科さないこととしておるところでございます。もちろん、医師等が業務上取り扱ったことについて知り得た人の秘密を漏らした場合には、刑法や医療関係者に関する資格法による罰則が科されます。

 それから、感染症予防法改正案第七十四条、改正前は六十八条の罰則規定が従来より軽くなったのではないかという御指摘でございますけれども、現行の結核予防法第六十二条では、予防接種、健康診断等の事務に従事した者が秘密を漏示した場合の罰則は、一年以下の懲役または百万円以下の罰金とされているが、改正後の感染症法第七十四条、改正前の六十八条ですが、これは六月以下の懲役または五十万円以下の罰金となっております。

 今回の法改正における罰則の改正については、先ほども申し上げましたように、結核に対する知識の普及、あるいはよい治療法が開発されてきたことによって認識が変化してきたということを踏まえまして、結核についてほかの感染症と比べて特別に重い罰則を講じることはしない。かえってそういうことをすると、逆に差別や偏見の温床となるのではないかという考えもありますので、他の感染症と同じ扱いとすることとしたものでございます。

三井委員 認識の変化ということでございますけれども、ここは、確かに今局長おっしゃったところではある程度納得するわけでございますが、幾らこの中で健康診断法なりが進んだとはいえ、余りにも極端な罰則の改定というのも余り釈然としないものがございます。

 いずれにしましても、例えば、今回の罰則の中にも、結核予防法の届け出は二日以内となっている。実際には、それ以上届け出がおくれている実態がもちろんあるわけでございますけれども、現在も罰則規定、罰金があるわけでございます。これまで罰則規定の適用になっている例はたしか二件ぐらいしかない、こういうぐあいに聞いているわけでございますけれども、医師が届け出がおくれた場合は、自己負担が患者自身の負担となる。まさにドクターが、お医者さんが届け出がおくれた場合には、これは患者さんの負担になるわけですよね。これは質問通告しておりませんけれども、お答え願いたいと思います。

外口政府参考人 そういったことによってできるだけ患者さんの負担にならないように、実際、運用上どういったことができるかということも含めて検討したいと思います。

三井委員 いずれにしましても、医師が通告をおくれているわけですから、この辺はぜひ御検討願いたいと思います。

 続きまして、テロ等への対応についてお伺いしたいと思います。

 今回の改正案で、生物テロやあるいは事故の発生等を防止するための病原体の管理体制を確立する観点から、病原体等を一種から四種まで分類されていると、先ほどから局長も御答弁なさっているわけでございますけれども、この各分類に応じた保有、運搬等に係る規制を法定化し、また感染症の発生状況等の情報公開を図ったとしています。このような改正に対して、テロ対策をどう感染症予防法に位置づけるかというのが大きな議論になっているわけでございます。

 そこで、お伺いしたいと思います。

 いわゆるバイオテロとバイオハザードとでは、前者は意図的なものでありますけれども、後者は過失や事故を想定しています。そもそも生物テロ対策というのは警察目的の規制でありますから、公衆衛生目的の規制である感染症予防法とは別途に私は整備されるべきでないかと考えるわけでございますけれども、これはさまざまな議論がある中で、やはり何か桜の木に梅の木を接ぎ木した、そういうような思いだという感じもします。これは逆かもしれません、梅に桜の木を接ぎ木したのかもしれませんけれども。

 これはやはり、バイオハザードなんかにつきましては、阿部先生の阿部私案がございます、すばらしい私案だと思いますけれども、そういうことも含めて、これはぜひ政府の見解をお伺いしたいと思います。

外口政府参考人 病原体等の管理につきましては、アメリカやイギリスなど諸外国においては法規制により管理体制の適正化を図っているところでありますが、我が国においては、病原体等の管理を規制する法的な枠組みが存在せず、研究者、施設管理者等の自主性にゆだねられているところであります。

 このような中で、病原体等の適正な管理について、入院や消毒等の措置を定める感染症法において、これらの措置と一体的、総合的に取り扱うことによって、生物テロなど人為的な拡散を防止することも含め、感染症の発生及び蔓延の防止に資すると考えております。平成十六年十二月に政府が策定したテロの未然防止に関する行動計画においても、生物テロに使用されるおそれのある病原体等の管理についての規制は感染症法の一部改正で行うものと定められているところであります。

 実際、この病原体等の管理規制を行うに当たりまして、バイオテロ対策という観点で行うのか、あるいはバイオセーフティーという観点から行うのか、これは国際的にも二つの考え方がございます。

 それで、私ども、今回、公衆衛生の法律である感染症法の中で位置づけた形をとったわけでございますけれども、これについてもいろいろ後で専門家の御意見を聞きますと、実際に病原体を管理しておられる研究者の方からは、取り締まり的な規制の中でつくられるよりも、いわゆる医療というか公衆衛生の観点を含めてつくられた方が、自分たちとしてはやはり現場の感覚がうまく伝わるのではないかということで、今のやり方の方がいいんじゃないかというような意見もいただいております。

三井委員 時間もございませんので、次をお伺いいたします。

 そもそも、感染症予防法というのは、その法の趣旨というのは、「感染症の患者等の人権を尊重しつつ、これらの者に対する良質かつ適切な医療の提供を確保し、感染症に迅速かつ適確に対応すること」、このようにあるわけでございますけれども、本来、研究を促進するための支援法的な法律である。

 今回の法改正が病原体等の管理体制の整備も含めて厳しい規制を伴っていることは明らかでありますけれども、生物テロ対策の名のもとに、不当に人権が制約されたりとか、あるいは研究促進を阻害するようなことがあっては、これは本末転倒であるわけでございますから、このことについて大臣の御見解を求めたいと思います。

柳澤国務大臣 先ほど来、三井委員からるる我々のこの法案とかつての結核予防法等との比較考量の中からいろいろな論点を御指摘いただきまして、この議事録もきちっと後々に残りますから、そういう意味で非常に有益な、有意義な御議論をいただいた、このように考えております。

 私に対しては、一たん生物テロということが疑惑として浮き上がったときに、警察権力だとか、法律には海上保安庁の権力も書かれているわけですけれども、そういうものがいろいろな病原体の研究者等のところに立入検査等をして研究の阻害をしたり、あるいは、はたまた当事者の人権の侵害にわたるようなことが起きる懸念はないのか、こういう御議論でございます。

 これは、ちょっと筋は違うんですが、例のサリンのときに、長野県でしたか、河野さんのお宅にもいろいろな化学薬品もあったというようなことで、あれは、これは当局という以上にマスコミさんがということもあったんですけれども、非常に人権侵害にわたるような事態が起きてしまったというようなことも素朴に思い出されるわけでございます。

 私ども、テロには断固とした対処が必要だというふうに思いますけれども、そういう疑念が生じたようなときに、警察権力なりがどのようにうまく目的を達しながら、同時に濫用にならないようにするかというのは、重々注意をしていかなきゃならない点だと思っております。

 私は、今、法文に、つまびらかに当たったわけではありませんが、そのあたりのことは、警察庁長官あるいは海上保安庁長官と厚生労働大臣との間の連携というような形で、十分注意した規定がなされているものだ、このように考えておるところです。

三井委員 ぜひ、大臣の御答弁にございましたように、慎重にやはり配慮をしていただきたい、こういうぐあいにお願いする次第でございます。

 また一方、テロ以外の原因で、つまり、天災ですとかあるいは人災で生じる事態にも十分な対応ができる、そういうような法運用を私は望むところでございますし、つまり、先ほど阿部私案のことを申し上げましたが、非意図的、意図的なということについても、先ほどのことに戻るわけではございませんけれども、ここはやはり議論のされるところでございます。いずれにしましても、後ほど阿部委員が御質問されると思いますけれども、バイオハザードについてもしっかりと取り組んでいただきたい、こういうぐあいに思うわけでございます。

 そこで、次にお伺いしたいのは、時間もございませんので、多剤耐性結核菌について、先ほどスーパーということを申し上げましたけれども、どれぐらいの患者さんが罹患しているかというのは実態はわからないんですね。一説によりますと七百人とか一千人とかということも聞いておりますけれども、この罹患率についても知っている範囲内でお答えいただきたいということと、また、患者さんに対してどう対処されているのか、検査体制あるいは診療体制はどうなっているかということをお伺いしたいと思います。

外口政府参考人 多剤耐性結核についてのお尋ねでございますが、人数については、これは具体的な数字の把握、なかなか難しいのでございますけれども、少し前に調べたのでは千五百人ぐらいの方がこの多剤耐性結核菌に感染している、そういった数字もあったと思います。

 それから、治療でございますけれども、これは実際、例えば多剤耐性結核の方というと、以前若いころに結核の治療をして、一たん治ってから、また高齢になって免疫力が落ちてきたときに出てきた例とかということもございますし、だから、本人がかなり、病状としてそれほどよくないということもございますし、それから、もちろん薬の使い方も難しくなるので副作用の問題等にも心配しなければいけませんし、また、場合によっては外科的治療をせざるを得ないというようなケースもあるわけでございます。こういったことにつきましては、各、例えば国立病院機構とか、結核を特に専門にやっておられるところで一生懸命努力して治療をしているわけでございますけれども、例えば排菌が続いておるようなときにはなかなか難しいこともございます。

 こういったこともありまして、私どもとしては、そういった患者さんへの対応とともに、多剤耐性結核に対する新たな抗結核薬の開発とか、そういったことも含めて対応をしていきたいと考えております。

三井委員 時間が参りましたので、きょう内閣からもおいでいただいておりますけれども、答弁は結構でございますが、私は、議運で働かせていただいたときに、バイオテロに限らず、大量の殺傷型テロの標的というのは、駅ですとかあるいはショッピングモールですとか、国会も当然標的になるわけでございますけれども、こういう場合に、やはり国会のテロ対策というのは全く丸腰だと私は思っているんですね。ですから、やはりこういう危機管理というのは私はしっかりするべきだと。

 最終的に、例えば鳥インフルエンザにしてもあるいは生物テロにしても、こういう感染症が発生した場合にはいわゆる政治的な判断というのが重要になってまいりますから、やはりこの辺の管理もしっかりしていただきたいということを申し上げまして、私の時間が参りましたので、終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

吉野委員長代理 次に、高橋千鶴子さん。

高橋委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 八日付のプレスリリースで、アメリカ産輸入牛肉のうち、スイフト社グリーリー工場からの七百六十箱中、米国農務省発行の衛生証明書に記載されていない胸腺一箱が混載されていたことが発表されました。

 八日といえば、ちょうど私がこの場でBSE問題を質問していたときで、ケース・バイ・ケースという答弁もございました。既にそのケースが起こっていたのかということで、改めてちょっと怒りを感じております。

 もともと、対日輸出プログラムをアメリカが遵守するということが前提での食品安全委員会のリスク評価でございました。そういうことから考えれば、胸腺が特定危険部位ではない、だからいいという問題ではありません。プログラム違反がまたも犯された、そのこと自体が問われるのではないでしょうか。

 ちなみに、スイフト社は全米三位の巨大パッカーでありますが、グリーリー工場は、今回のような単純ミスばかりではなく、ことし三月にも香港への輸出禁止となっている牛の骨を出した、そういうことも重ねている工場であるということをしっかり踏まえなければならないと思います。

 大臣に伺います。問題はプログラム違反であるということであります。リスク評価の前提であるプログラム遵守に責任を負うべきリスク管理機関としてどう対応するのか、伺います。

柳澤国務大臣 今回の米国産牛肉の輸入に胸腺という部位のパックが一箱含まれていたという事案でございます。これは、今委員の御指摘になりますとおり、仮に適格品リストにこれが掲載されていれば対日輸出も可能な品目でございまして、その意味でも特定危険部位ではないということでございます。

 しかし、それにしても、適格品リストに掲載されていないということであれば、それが入ってくるということは明らかにこのプログラムに反する事態でございまして、これに対してはそういうものとして我々は認識し、適切な措置をとろうということで対処しているところでございます。

高橋委員 明らかにプログラム違反であるということをお認めになったと思います。

 ジョハンズ米農務長官は、八月三日付の毎日新聞で、「日本車の一台に欠陥が見つかったからといって、米国はすべての日本車を締め出したりはしない」こういう言い方をして、もしまた問題があったときに全面禁輸を日本がするようなら、対日制裁も辞さないという警告を発しています。

 こういう高圧的な態度、事が起こる前に前もって言っておく、縛りをかけておく、こういうアメリカの態度は本当に許せないと私は思うのであります。

 農林水産調査室が、七月二十七日に輸入再開を決めてからの各界の反応という資料をまとめておりますが、その中で、例えばマックス・ボーカス上院財政委員会委員ですとかケント・コンラッド上院議員などがそれぞれ、自身のホームページで述べておりまして、「もし日本が八月三十一日までにその禁止措置を解除しなかった場合に、毎年三十一・四億ドルに相当する日本からの輸入品に関税を課すとの法律の共同提案者となった。」というコメントを述べております。ですから、八月三十一日までに解禁してよということを、そうしなければ三十一・四億ドルの関税ですよということが提案されていて、それがかなりの圧力になっていただろうということが推測されます。

 これを見ると、米国の議員らが在米加藤大使を何度も議会に呼びつけて、注文をつけていたということが記されております。私は、期限を区切った制裁という議会の圧力がやはり七月二十七日の再々開の決定にも影響したのかなと思わざるを得ません。

 改めて、きっぱりとした態度がとれるのかということ、前もって、これから起きても全面禁輸なしよなどということに対しても、きちんと態度がとれるのかということをまず伺います。

 それから、ならし期間はあと三カ月でありますが、具体的に、日本向け処理がされているもとでの査察計画について伺います。

藤崎政府参考人 お答えいたします。

 七月二十七日の輸入手続再開に際しましては、再開後六ヶ月間を対日輸出プログラムの実施状況の検証期間と位置づけております。これまで日本側におきましても、全箱確認等の措置を通じて、対日輸出プログラムの検証を行ってきているところでございます。

 しかしながら、今回のような事例が発生したことを踏まえまして、厚生労働省及び農林水産省では、当該施設から出荷された貨物につきまして輸入手続を保留するとともに、米国側に対し、詳細な調査と再発防止措置の実施を求めたところであります。今後、米国側から再発防止措置を含む最終的な調査報告書が提出された後、当該施設について現地調査を実施し、改善状況について確認することといたしております。

 また、近く、対日輸出実績が多い施設を中心に現地査察を実施することとしており、輸入時の全箱確認や検疫所における検査とあわせまして、対日輸出プログラムが遵守されているかについて、農林水産省と連携しながら、適切に検証してまいりたいと考えております。

 いずれにしましても、国民の食の安全を守る立場から、適切に対処してまいりたいと考えております。

高橋委員 今詳細な調査をいただくというお話がありましたけれども、先般、八日の委員会でも私、指摘をしましたとおり、現状はまだならし期間である、しかも、まだ本当に対日の処理がしっかりやられているかどうかを見た段階ではないということをしっかり踏まえていただいて、先ほど私がアメリカの対応についてお話をしましたけれども、圧力に屈するのではない、きっぱりとした態度で対応していくということでよろしいでしょうねと、大臣に一言確認します。

    〔吉野委員長代理退席、委員長着席〕

柳澤国務大臣 私どもは、国際的な約束事に基づいて、冷静に、また的確に対応するということを旨として今後にも臨んでまいりたい、このように思っています。

高橋委員 この問題はまた次の機会に譲ります。今のお答えでしっかりとお願いいたします。

 次に、新型インフルエンザの問題で、これも八日の委員会にお伺いをしたわけですが、先ほど松本委員の質問の中で、インフルエンザワクチンの問題を少し紹介いただいたと思っております。

 それで具体的に伺いたいと思うんですけれども、国内において国立感染研の指導のもとに四つのメーカーが製造に当たっている、インフルエンザワクチンの製造の大体八割方を占めている大手の株式会社なども仲間に加わっているわけですけれども、いわゆる知的財産権との兼ね合いでどのようになっているのかを伺います。

 また、新型インフルエンザワクチンについては、欧米の一部のベンチャー企業に特許が押さえられて、緊急対応時の障害となるのではないかという指摘が各界から出されているところです。これに対してWHOが仲介となって調整が進んでいるという話も聞いております。実際、どうなっているのか、伺います。

高橋政府参考人 お答え申し上げます。

 まず第一点目の、現在準備を進めておりますプレパンデミックワクチンに関する製造に関しての知的財産権のお話ございましたが、このワクチンに関する知的財産権、これは日本側のだれかが特許とかそういったものを持っているわけではございません。これは現在の製造プロセス、ちょっと詳細を申し上げますと、採取をした後、弱毒化をして、それから各国に配付をされているわけですが、その弱毒化をしていくプロセスの中で特殊な技法を用いて弱毒化をするわけですが、その技法についてアメリカの企業の特許が設定されているというものでございます。これについては、特許が設定されていますからそこに当然知的財産権はあるわけであり、今回の製造関連でもそれについてのシェアが当然生じるということでございます。

 それから第二点目のお尋ねの、何かWHOが仲介に入って事が進んでいるというようなお話ございましたが、その点については私どもは承知をいたしておりません。

高橋委員 今、承知をしていませんというのはちょっと意外な答弁でございました。各種論文や新聞にも書かれているので、当然問題意識を持っていると思うんですね。緊急対応のとき、国民の命、世界的な人命がかかっているときに、いわゆる知的財産権が障害となっておくれたり緩められたりということがあってはならない。この点で問題意識を持っているということでは確認をさせていただいてよろしいのかどうか。

 それを踏まえて、大臣に私はぜひ伺いたいのですけれども、ちょっと時間がないのでそれを踏まえて答えていただきたい。国内においても今プレパンデミックワクチンをつくっているわけですが、国の責任が非常に重要であるだろう。この中心となっている国立感染研においては、この間さまざまな国立系の研究機関が独法化あるいは非公務員化が進む中でも、国立感染研として機能を果たしてきたわけですが、ここが国立であり続けるということが非常に大事である、そして、やはり国の責任でしっかりとワクチンの製造やインフルエンザ対策というものをやっていく必要があると思いますが、その点について大臣の見解を伺いたいと思います。

高橋政府参考人 先ほどは承知していないというふうに申し上げましたが、私、質問趣旨をちょっと取り違えて、大変失礼いたしました。

 プロセスとしては、新型インフルエンザワクチン、現在プレパンデミックでございますが、それをまず発生国のある患者さんから採取をいたします。これは……(高橋委員「説明は要りません、時間がないですから」と呼ぶ)現在、WHOの規約の中では、WHOのフレームの中で、WHOの依頼を受けた人間がとってきて、それをWHOがその協力機関でありますアメリカのCDC、アメリカあるいはイギリスの研究所で弱毒化をいたします。WHOの研究協力機関は各国で十一ございますが、その研究機関の間ではとられた後の、弱毒化をされたウイルス株については相互に利用が自由になっております。

 そういった意味では、各国ともそこに対して自由にアクセスをできるということでございまして、日本の感染研はそこから譲り受けてきて、後に日本の国内メーカーに渡すというシステムでございまして、そういったシステムになっていることで、各国とも、日本から見ればきちんと自由にその利用ができるという状態になっております。

柳澤国務大臣 国立感染症研究所につきましては、感染症の流行時の疫学調査であるとか海外との情報交換などといった国民の健康管理に直結した業務を行っているところでございまして、これはまさしく国の責任において直接実施すべき業務である、このように考えております。したがいまして、感染症対策を担う中心的な機関として、本省との一層の連携のもとで機能強化が強く要請されているところでございます。よって、このような健康危機管理に当たる業務を行う研究機関でありますところから、独立行政法人化というようなことは適切ではないと考えております。

高橋委員 ありがとうございました。ちょっと今、ワクチンの問題についてはもう少し整理したいところですが、時間がないので、先ほど私が言った趣旨はしっかりと伝わったかなと思いますので、次に進みたいと思います。

 結核の問題についてであります。

 感染症に統合されることで、入院勧告が決定される前に保健所長が応急入院を決めることができる、その間、七十二時間、三日間ということで限られるわけですね。これまでは大体協議会の開催に合わせて二週間くらいの猶予で公費負担の部分も遡及できていた結核予防法と比べて、混乱がないのかが心配をされます。これは昨年の十月の厚生科学審議会感染症分科会においても問題となり、例えば、大阪市は毎週協議会を開いているけれども、大体毎回百件ぐらいずつある、それが発生するたびに云々ということになったら、まず物理的に不可能という指摘がございました。実際、七十二時間以内に協議会を開くというのが可能なのか、伺います。

外口政府参考人 御指摘の七十二時間というのは、これは緊急措置でありますので、人権を制約する面もあり、必要最小限度の期間とすることが必要であることから、他の法令等を参考にして七十二時間を限度としたものであります。

 では、実際に各自治体で円滑にこれが運用できるかということでございますけれども、例えば今大阪の例を挙げられましたけれども、結核患者数が多い地域では、委員の招集を前提とした協議会の開催が場合によっては困難となることも想定されます。このため、客観的な検査結果により結核の診断が可能ないわゆる定型的な事例等については、結核患者の人権を尊重しつつ、当該協議会の開催方法を簡素化する方向で検討したいと考えております。

高橋委員 簡素化する方向とおっしゃいました。もちろんそれはいろいろな工夫はできるかと思うんですが、それにしても保健所が過重負担にならないように、このことはぜひ要望しておきたいと思うんです。

 そこで、そうはいっても、患者本人の責任ではなく、例えば今月もそうでしたが、三連休だったというような場合にやはり協議会が開けずに、七十二時間を超えてしまった場合、それは患者負担をさせるべきではないと思いますが、その点、確認したいと思います。

外口政府参考人 例外的な場合についてどういった運用が可能かということにつきましても、十分検討させていただきたいと思います。

高橋委員 ちょっと今、検討では納得がいきません。患者の責任ではないのですからそれは負担をさせるべきではないと、もう一度お願いいたします。

外口政府参考人 簡素化も含めて実際に七十二時間でできるような方策、それがもちろん最も進めなければいけないことでございますけれども、そういったことを中心にしながら、患者さんに負担がかからないようにという方向でいろいろ考えていきたいと思います。

高橋委員 ありがとうございます。もちろん大前提はあるけれども、できなかった場合ということを伺っていったので、患者さんに負担がかからないようにということで確認をさせていただきました。

 それで、実質、結核を見分ける医師が少なくなっているというのも現場の声であります。そういう問題意識があるのかどうか、まず一つです。

 それから、私自身も直接相談を受けたことがございますが、結核とがんの診断を誤って抗がん剤を投与されてしまったというケースもございました。がんでなくてよかったじゃないかと医師が開き直った、非常に悔しい思いをしたことがあります。そういう点でも、必要な医師や看護師、技師などをしっかり確保して、初期の段階できちんと診断をするということが決定的な対策になると思うんですが、その点について大臣の見解を伺いたいと思います。

外口政府参考人 我が国におきましては、結核の罹患率の低下に伴い、医師が結核患者を診察する機会が少なくなっており、医療従事者に対する結核の研修の重要性は一層高まっていると考えております。

 先ほど、がんと結核との誤診の例を例に挙げられましたけれども、実際、胸のレントゲンを見ても、教科書に出ているのは定型例なわけでございます。ただ、実際には、結核の患者さんの陰影というのは非常に多種多様でございまして、やはり数多くの写真で勉強することが必要です。影を見たらがんを思えということと同様に、影を見たら結核を思えということも実際言われるわけです。

 そういったことも踏まえまして、医師に対する研修としては、財団法人結核予防会において、これまで毎年、結核の臨床及び結核対策に必要な知識の習得を目的として、それぞれの目的に応じて複数の研修コースが実施されてきております。また、診療放射線技師、保健師、看護師、臨床検査技師等に対しても、同研究所によりまして複数の研修コースが実施されてきております。厚生労働省においては、必要な国庫補助を行っているところであります。

 厚生労働省としては、引き続きこれらの研修を支援するとともに、学会等関係機関と連携を図りながら、今後とも結核の診療に携わる医療従事者の人材の確保と育成に取り組んでまいりたいと思います。

高橋委員 ありがとうございました。時間になりました。

 私たち、今回、本法案については賛成とすることにいたしました。ただ、今述べたように、大臣が最初に述べてくれた、後退をさせないということを本当にしっかりやっていただきたいことと、必要な人材の確保というのは感染症全般にわたって求められている課題だと思いますので、その点を強く要望し、意見を付しつつ賛成としたいということで終わりたいと思います。

櫻田委員長 次に、阿部知子君。

阿部(知)委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。

 本日で三回の質疑のお時間をいただきましたが、私は、この問題に、最初に法案をいただきましたときから、いろいろに、一体これは何の法案かということを考え、せんだっては私案も出させていただきました。きょうは、三井先生がお取り上げいただきまして、本当に面映ゆい限りであります。

 ちょうど数日前、米国では中間選挙が行われまして、共和党が敗れ、民主党が躍進するという報道がございました。実は、九・一一テロ以降、テロという問題は世界が本当にどう対処していくべきか、そのとき身をかたくして、そして、国民もいわば総監視体制のもとに置いて、アリの穴すら残さないという形で締め上げてきたブッシュ体制の一つのほころびを今回の選挙の結果に私は見るわけです。

 と同時に、テロという問題が避けられない時代状況であるのであれば、それに打ちかっていくというと変ですが、きちんと対処していく知恵も社会は持たなければいけない。すなわち、日ごろどのような管理体制にあれば、その危機を少なくしながら、国民の生活がより心地よいというか過ごしやすいものになるかという二つの観点が必要なんだと思います。

 実は、金融危機という問題、これは柳澤大臣がもともと金融、財務にお詳しい方でいらっしゃいますから、アジアの金融危機に対しても、恐らくあれで学んだことは、グローバル化した経済のもとでの日ごろの金融体制のさまざまな未整備な部分や、あるいは対応すべき部分、私はあのときもっと円が活躍できるような道が開ければ本当はよかったなと内心思っておりますが、そういう金融面においても、そして、恐らくきょう私が質疑させていただく健康管理面においても、日常の管理をどうしっかりするか。そして、危機と申しましても、そこからはなるべく過剰な公安や警察の介入を避けねばいけない。

 それは、柳澤大臣がおっしゃったような、サリンの事件での河野さんという、いわば犠牲者の夫が加害者と思われたり、あるいは、せんだって私が取り上げさせていただきました、ちょうど四十年前のこの、厚生労働委員会と言いませんで、当時、社労委と言われておりましたが、千葉県で蔓延したチフス事件で鈴木充さんというお医者さんが犯人と疑われ、その後裁判が重ねられ、彼は人生の中でほとんど名誉の回復ないまま受け入れていかざるを得なかったような事態等々考えると、今こそ、時代は、本当にどうやって人間の人権と言われる部分と難問の時代を越えていくかという分かれ目にあると私は思います。

 その意味で、実は、もっともっと質疑をさせていただきたいですが、きょうは採決だと言われておりますので、そういう時間制約の中で、本来の法案に入る前に、一点だけ触れさせていただきたいことがございます。

 実は、お示しした資料の最終ページに載せてございますのは、この間、衆参両院でいろいろな議員がお取り上げになったリハビリの日数制限問題であります。このことに関しまして、厚生労働省の保健局医療課長の原さんが、朝日新聞の「私の視点」という投稿欄に投稿をなさいました。

 私は、各官僚諸兄が、こうやって自分の意見を自分の口で自分の考えとして責任持って述べるということには賛成であります。何とか外務大臣の核保有発言とはその意味では違うと思っています。そして、このことによって、もしかして、厚生省の今回のリハビリの打ち切り問題が国民に本当に伝わってほしいという思いで書かれたものと思いますが、しかしながら、私から見れば、この文面の中に既に国民との間のそごが生じた大きな原因があると思います。

 もちろん大臣は今初めてお目通しのことと思いますから、私が感じた部分を指摘させていただきますが、最も大きなそごの第一は、最後段にございます。最初から二行目、「リハビリという手段が自己目的化してしまう「訓練人生」が望ましいかどうか、よく考える必要がある。」と書いてあります。

 だれが考えるんでしょうか。訓練人生と思ってだれもリハビリをやってはおりません。きつい、苦しい、よくなりたい、本当に尊厳を持って生きていきたい。その願いが結集したものが、今、多くの患者さんがリハビリの打ち切りに対して署名を上げられているところの本当の気持ちでございます。私は、この原さんが悪意があったとも何とも思いません。でも、こういうふうに書いてしまったときに受け取られる受け取られ方との間の大きなそごが、やはりこれは厚生労働行政としても私は望ましい方向にならないだろうと。

 訓練人生という言い方は、一方で、介護保険のときにマシンに乗って筋トレをして介護予防しなさいと命じていた、あの厚生労働省の姿勢とは、これはどうなっちゃうのと思うようであります。

 やはり、命長らえ、障害があっても生きたい、その生きたい思いの発露の一つがリハビリであり、それをどうサポートしていけるかという体系がまだ整っていないと見るべきだと私は思います。

 そのことがもたらす大きな現状の混乱が、この原さんの文章では「不測の事態が起きる可能性」と書いてございますが、私ども医療従事者におきましては予測の事態でございました。何が予測かというと、余りにこの法律が、例えば脳梗塞の人は最長として百八十日で終わりという一例をとっても、通知、周知、徹底、準備期間なし。ですから、次にどこの医療機関に、あるいはリハビリ機関に、あるいは介護保険施設に移そうかという準備も何も、できよう間もございませんでした。

 あわせて、きょう指摘されております感染症の人手不足と同様に、リハビリ分野も、医師から、それに携わるパラメディカルまで、すべてすべて足りておりません。

 私は、厚生労働省がリハビリを充実させようという意思があったということは疑うものではありません。しかし、それを現実に移すときの現状分析が足りておらなかった。あるいは、本当に患者さんたちの声を聞くことにおいて、一方的にこういうふうに決めつけてはいけない、この姿勢を持たないと、人を相手の、生身を相手の、今も生きている、きょうも生きている、あすも生きたい、そういう人を相手の行政はうまくいかないと思います。

 きょう大臣にはぜひこれをお読みいただきまして、私は何度も言いますが出されたことは批判しておりません。だけれども、なぜそごが生じるかはすごく私にはわかります。

 そして、今現在現場で生じている大混乱、混乱はたくさんあります、大混乱の二つだけ早急に是正していただきたい。私は、本質的にはこの日数制限の科学的根拠がありませんので見直しを求めますが、そこまで言うとなかなか今、きょうの限られた時間で討議できませんので。

 今、医療リハビリが終わった人は介護リハに行きなさいと言われましたが、介護保険適用でない四十歳以下の若い方は、医療リハが終わった途端、介護リハにも行けません。医師が必要と診断してとおっしゃいます。そういう診断をして延ばしている方もあります。でも、それ以外に、では、これからは日常訓練の中でと言われても受け皿がありません。この問題に一つは早急に対応していただきたい。四十以下、まだ若い皆さんが、大変に行き場がない、施設がすごく少ない、どこで受けられるかも本当に、ないのです。

 それからもう一点、続けてお願いしたいのですが、百八十日を超えて医療リハをやっていて、保険で査定されて切られた場合、保険適用じゃないと言われた場合、その前までさかのぼって保険適用を外されてしまうかのような報道が出回っておりました。混合診療になるからと。

 この点については厚生労働省に、それまでの既に受けた治療はきっちりと医療保険で払うと。その後の、残念ながら医師が一生懸命必要性を書いても査定される場合がございます、だめと言われる場合がございます。その部分について、医療者は今お金が入ってこなくても覚悟してやっているところもあります。でも、患者さんに混合診療だから全部払えという圧力になって、気持ちの圧力になっています。そういうことはないんだということを、この間違った情報がそういうふうに伝わっていることは遺憾であり、厚生労働省としてきちんと対処すると。

 若年者の問題と後者の問題と、まとめてお願いいたします。

水田政府参考人 今回のリハビリテーションの見直しにつきまして御意見を賜ったわけでございますけれども、まず冒頭で、私どもの医療課長のコメントの中で、「訓練人生」と書いてございます。

 これは、かぎ括弧で書いてございますように、実は、高齢者リハビリテーション研究会という専門家の会合が平成十六年に報告書をまとめておりまして、その中で言われていることを引用したものでございます。リハビリの目的は最終的に生活に再適応することで、医療機関というセッティングで機能回復訓練を続けること自体は、それを目的にしたのはおかしい、こういった議論がそこで展開しているわけでありますので、これは課長の名誉のために、個人の考えというよりは、そういう下敷きがあるということは申し上げたいと思います。

 それから、御質問の趣旨のまず一点目、介護保険の方で、その受け皿がないんじゃないかという点でございますけれども、これも大変つらい、ある意味の選択でございます。今回、リハビリを見直す上で、私ども、急性期と回復期は医療保険で、維持期は介護保険でという役割分担をしたわけでございますけれども、その趣旨は、やはり毎年三十万人の脳卒中の患者さんが生じてくるわけでございますけれども、そういう方々の早期の受け入れ体制というものをきちんとしたいというのが私どもの発想の原点でございます。

 そういう意味で、先生御指摘のとおり、リハビリに関しましては専門医あるいは理学療法士、作業療法士、非常に資源がまだ限られております。その資源をどういうふうにしたら有効に活用できるかということを考えましたときに、やはり私どもとしては発症後早期のリハビリに力を入れるべきであると。

 そうすると、その結果として、では、維持期のリハビリのところ、不足しているところはどうするんだということを言われるわけでありますけれども、ただ、逆に、維持期のリハビリのところをずっと続けていきますと、それだけ医療保険での……(阿部(知)委員「済みません、年齢のことで伺いました、四十歳。その前段はわかっていますが。恐縮です、時間がありません」と呼ぶ)

 失礼しました。年齢のことで申されますと、それは今回、実はそういう方々の場合には、難病でありますとか障害児者の場合が考えられるわけでありますけれども、こういった方々につきましては、そういった算定日数の上限の定めのない報酬体系を準備しておりますので、それで対応がいくものと私ども考えてございます。

 それから、最後にもう一点、混合診療になるんじゃないかということでお尋ねがございましたけれども、算定日数上限を経過した後に行われるリハビリテーションについてでございますけれども、これは主として機能維持を目的として行われているものでございまして、介護保険のサービスないしこれにかわるものと考えられるわけでございます。したがって、医療保険とは別個の給付として整理するのが適当であって、御質問にありましたような、全額の返還を求める、こういったことはない、このように扱いたいと思います。

阿部(知)委員 私の指摘もよく聞いてくださいね。「「訓練人生」が望ましいかどうか、よく考える必要がある。」と。だれがだれに対して、よく考える必要があると言っているんですか。こういう使い方をしちゃいけないと言っているんです。訓練人生という言葉がどこから来たかくらいは知っていますよ。それを例えば私が患者さんに、訓練人生かどうかよく考えてみなさいよなんて言えませんよ。そのときの人間の機微が医療なんですよ。だれがよく考えてみる必要があるんですか、そちらがよく考えてみたがいいでしょう。

 それからもう一つの、若い人の受け皿の話は、今おっしゃった中で処理できない若い人がいるから問題にしているんです。そして、保険の診療の点は、そういう厚生省の御意見を承りましたから、さかのぼって自費診療を請求されることはない、これをしかと通知してください。

 本日の質問に移らせていただきます。

 私は、理念においての、テロということにどう備えていくかという考え方だけの問題じゃなくて、現実のこの法案を見ると、日常のそうしたバイオハザード、生物学的な災害を及ぼすいろいろなものを取り扱っている施設の、施設基準はどうであるか、耐震性はどうであるか、日ごろから危険はないのかということにおいて、この法案は不備があると申したいのであります。

 きょうは耐震を一つ取り上げさせていただきますが、法案の五十六条の二十四項と二十五項には、施設の位置や構造及び設備、特定病原体の保管、滅菌等について、厚生労働省令で定める技術上の基準に適合するようにというところがございます。

 時間がないので三つくらいまとめていきますが、こういう基準の中に耐震性はどう組み込まれているのか。こういう病原体を扱う既存の施設の耐震性は、厚生労働省管轄のもの、文部省管轄のもの、民間の管轄のもの、耐震性についてどこまでチェックが済んでいるのか。この二点、お願いします。

外口政府参考人 まず、厚生労働省関係で、国立感染症研究所がありますけれども、今回の法律で一番問題となるのは、例えば一種病原体の取扱施設になるかと思いますけれども、これは厚生労働大臣が指定する国等の施設とされているところでありまして、私どもは現時点では国立感染症研究所のみを想定しております。国立感染症研究所を含め、官庁の施設については、官庁施設の総合耐震計画基準が適用され、必要な耐震安全性が確保されることになります。

 それから、本法に基づく施設の基準として、耐震安全性の要件をどう考えるかということでございますけれども、これは施設は類型がいろいろございますので、そこは今後専門家の意見も踏まえて検討を進めたいと思います。

阿部(知)委員 今おっしゃったことは、たった一つの国立感染研究所しか目にないということなんですよ。

 でも、厚生労働省御自身がいろいろ調査、通達を出していらっしゃるように、平成十七年の三月とか十月とか、関連施設の管理状況調査というのを出し、私のいただいた資料集にも出ておりますよ。扱っている施設は、例えば病原体保有施設、五百八十七、もちろん病原体の一類、二類、いろいろありますよ。でも、そのおのおのがやはりバイオハザードなんですよ。

 そして、耐震基準は、国立感染研究所は新しく改築されました。住民の反対もあったけれども、とにかく戸山に行ったわけです。新しい施設はぴかぴかの、国で一つの施設はそうでしょう。しかし、その他の、病院の中だって病原体を扱っているんですよ。そういう中での耐震性というのは、ここの用意された資料には全く出てこないんです。これから点検しますと言って、日本は地震大国であります。そういう中で、日ごろの安全管理がこれでは心もとないということを私はずっとこの法案の審議の中でも指摘をしてきたわけです。

 そして、それの一方で、すべてを対テロという形になっていったときには、実は、備えあれば憂いなしじゃなくて、本来の整備されるべきものが整備されない。この前、私は大臣は本当に見識がおありと思いましたが、例えば、バイオ施設でも周辺住民に汚染とかいろいろな関係があるので非常に厳密に管理されておったというのを静岡でお話しになりましたね、御自身の静岡の県のことで。

 今、日本の中で、大学も含めて研究施設も含めて病原体を扱っているところ、もちろんおのおの一類、二類ありましょう、本当にその施設は大丈夫なのか、安心なのか。この点について改めて大臣、そうした見地から早急に耐震性も含めて検討する、この御答弁、確約をいただきたいです。

柳澤国務大臣 ここには、五十六条の二十四ですけれども、この施設の位置、構造、設備を厚生省令で定める技術上の基準に適合するように維持しなければならない、こういう規定がございまして、この技術上の基準につきましては、いろいろな専門家の御検討も参考にしてこれから定めていくわけでございまして、委員の御心配、御懸念になるようなことにつきましては、この基準の中で私どもとしては的確な対応をとっていきたい、このように考えております。

阿部(知)委員 耐震構造の問題は以前にもいろいろなところで、姉歯建築士の偽装問題、〇・五とかいう問題も出ておりましたが、既存の施設自身がもう危ないというところがいっぱいあると思います。そうした観点は、実は日ごろの安全対策なんだということで、ぜひこの骨格にしていただきたい。そして、あわせて、申しわけありません、インフルエンザと結核については質疑できませんでしたので、どうかお許しください。

 終わらせていただきます。

櫻田委員長 以上で本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

櫻田委員長 これより討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、これを許します。阿部知子君。

阿部(知)委員 私は、社会民主党・市民連合を代表し、内閣提出の感染症法改正案に対し、反対の討論を行います。

 当法案は、生物テロの未然防止を図るため、感染症に病原体等の管理制度を創設するとともに、感染症の分類の見直しを行い、あわせて結核予防法を廃止して感染症法に統合するものと厚生労働省は説明しています。しかし、生物テロ対策と患者の視点からつくられた法律である感染症法を無理やり統合させたために、双方ともあいまいにさせただけでなく、これまでの感染症患者などの人権を守り、治安対策としては行わないという感染症治療や予防策の厳しい反省を踏まえないものと言わざるを得ません。

 反対理由の第一は、病原体等の管理についてですが、バイオハザードは、テロや犯罪などの意図的なものと地震などの災害、事故、ミスといった非意図的なものとに分けて考える必要があると思います。

 非意図的なものであれば、保健所、衛生機関との連携、疫学調査など、主として厚生労働省が中心となって対応する必要があります。一方、意図的なものに対しては、総合的なテロ対策の中で、警察が前面に出る形で対策がとられなければならないと思います。

 当法案はこうした基本的な区分ができていません。このため、研究機関や大学などに対する警察の立ち入りなどの点で十分な歯どめがなく、無用な摩擦を起こしかねない点を指摘せざるを得ません。

 反対理由の二つ目は、バイオハザードに対してバイオセーフティーが全くと言ってよいほど不十分なことです。

 バイオセーフティーについてはWHOがガイドラインを出しています。そこでは、病原体等を保有する施設周辺の住民に対して、正確な情報を提供すると同時に、感染予防策をとることが明記されています。

 日本政府は、このガイドラインを守るというWHO総会での決議に賛成しながら、当法案では、住民のみならず、当の研究者など施設で働く者、また訪問者などに対する対策は全くなされていません。バイオ施設でどのような病原体が保有されているかという情報も、厚生労働大臣、警察庁長官に独占され、地元自治体にすら公表しないという内容になっています。これでは真のバイオセーフティーとは言えません。

 反対理由の三つ目は、人権問題についてです。

 法案第二条では、感染症患者に対する人権擁護が明記されています。これは極めて当然のことですが、先ほど指摘したように、バイオセーフティーの観点に立てば、研究者だけでなく、施設に出入りする人、そして周辺住民の人権擁護は欠かせません。当法案にはこうした視点が全く欠落しています。

 これまで、ハンセン病など感染症対策は治安対策的な側面があり、この間、国はこうした点を厳しく反省することから新たな感染症対策の姿勢を明確にしてきたはずです。本法案はこうした反省をないがしろにするものと言わざるを得ません。

 最後に、日本においてバイオハザードに対する国としての体系的な対応策、すなわちバイオセーフティー政策を確立するために、独立した法律をつくることを強く訴え、反対討論といたします。

櫻田委員長 以上で討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

櫻田委員長 これより採決に入ります。

 第百六十四回国会、内閣提出、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律等の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

櫻田委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

櫻田委員長 この際、本案に対し、吉野正芳君外四名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、日本共産党、国民新党・無所属の会の五派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者より趣旨の説明を聴取いたします。吉野正芳君。

吉野委員 私は、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、日本共産党及び国民新党・無所属の会を代表いたしまして、本動議について御説明申し上げます。

 案文を朗読して説明にかえさせていただきます。

    感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  政府は、本法の施行に当たり、次の事項について適切な措置を講ずるべきである。

 一 結核対策において結核予防法が果たしてきた役割の大きさと、いまだに結核が主要な感染症である現実とを踏まえ、結核予防法廃止後においても結核対策の一層の充実を図ること。特に、地域における結核対策の中核機関である保健所については、その役割が十分果たせるよう体制の強化に努めること。また、結核患者の治療成功率の向上に向けて、医師等に対する結核の標準治療法の一層の周知や研修に取り組むこと。

 二 結核が感染症診査協議会の診査対象になること及び感染症患者の人権への一層の配慮のために同協議会の役割が増大することに鑑み、各地域において同協議会が十分な機能を果たせるよう、必要な支援策を講ずること。

 三 病原体等の所持等に関する情報の管理については、厳重な管理システムの構築、取扱基準の策定及び遵守を徹底することにより、万が一にも漏出することがないよう万全を期すこと。

 四 病原体等の管理基準等に関する政省令の策定に当たっては、医療機関、検査機関、研究機関等の実態に留意し、遵守可能な合理的なものとすること。また、移送に当たっての届出等の手続については、業務に支障が生じないよう十分周知するとともに、円滑な窓口業務が実施されるよう留意すること。

 五 生物テロの発生や災害等により病原体等が流出したケースを想定した緊急対応マニュアルを示し、保健所その他の関係機関が住民の健康を守るために迅速かつ的確な対応がとれるようその周知を図るとともに、実地訓練の実施を促進すること。

 六 感染症に関する研究を推進し、一類感染症等の国内発生や生物テロなどの緊急時に備えるため、周辺への安全配慮の下、P4施設を確保し、稼働させること。

 七 新型インフルエンザの発生に備え、実効性のある計画を策定し、国と地方との連携等について訓練を実施するなど国内における初動態勢の確保に努めること。また、新型インフルエンザが発生する危険性が高いとされる東南アジア地域の各国と緊密な情報交換を行うとともに、保健医療分野における支援を含め協力関係を更に推進すること。

 八 感染症は過去の疾病ではなく、日常的な疾病であることから、医師を始めとする医療関係者に対し定期的に研修を実施し、診断、治療、感染予防等の知識の普及に努めるとともに、指定医療機関における感染症専門医等の確保など医療機関の体制整備を図ること。また、感染症専門医、研究者の養成のため、海外への派遣研修などの事業を更に充実させること。

以上であります。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

櫻田委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

櫻田委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付すことに決しました。

 この際、柳澤厚生労働大臣から発言を求められておりますので、これを許します。柳澤厚生労働大臣。

柳澤国務大臣 ただいま御決議のありました本法案に対する附帯決議につきましては、その趣旨を十分尊重し、努力してまいる所存でございます。

    ―――――――――――――

櫻田委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました本案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

櫻田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

櫻田委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時十五分散会


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