衆議院

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第8号 平成18年12月6日(水曜日)

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平成十八年十二月六日(水曜日)

    午前九時二分開議

 出席委員

   委員長 櫻田 義孝君

   理事 伊藤信太郎君 理事 大村 秀章君

   理事 鴨下 一郎君 理事 宮澤 洋一君

   理事 吉野 正芳君 理事 三井 辨雄君

   理事 山井 和則君 理事 福島  豊君

      新井 悦二君    井上 信治君

      石崎  岳君    加藤 勝信君

      川条 志嘉君    木原 誠二君

      岸田 文雄君    清水鴻一郎君

      菅原 一秀君    杉田 元司君

      杉村 太蔵君    薗浦健太郎君

      高鳥 修一君   戸井田とおる君

      冨岡  勉君    西川 京子君

      林   潤君    原田 憲治君

      原田 令嗣君    広津 素子君

      福岡 資麿君    藤野真紀子君

      松野 博一君    松本  純君

      松本 洋平君    御法川信英君

      内山  晃君    小川 淳也君

      大島  敦君    菊田真紀子君

      佐々木隆博君    園田 康博君

      田名部匡代君    高井 美穂君

      筒井 信隆君    寺田  学君

      西村智奈美君    細川 律夫君

      柚木 道義君    横山 北斗君

      坂口  力君    古屋 範子君

      高橋千鶴子君    阿部 知子君

    …………………………………

   厚生労働大臣       柳澤 伯夫君

   厚生労働副大臣      石田 祝稔君

   厚生労働副大臣      武見 敬三君

   厚生労働大臣政務官    菅原 一秀君

   厚生労働大臣政務官    松野 博一君

   政府参考人

   (厚生労働省職業安定局高齢・障害者雇用対策部長) 岡崎 淳一君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局長)           中村 秀一君

   参考人

   (慶應義塾大学商学部教授)            中島 隆信君

   参考人

   (世田谷区立知的障害者就労支援センターすきっぷ施設長)          宮武 秀信君

   参考人

   (NPO法人全国地域生活支援ネットワーク事務局長)            戸枝 陽基君

   参考人

   (日本障害者協議会常務理事)           藤井 克徳君

   参考人

   (DPI(障害者インターナショナル)日本会議事務局長)          尾上 浩二君

   参考人

   (らく相談室主宰・障害乳幼児の療育に応益負担を持ち込ませない会事務局長) 池添  素君

   厚生労働委員会専門員   榊原 志俊君

    ―――――――――――――

委員の異動

十二月六日

 辞任         補欠選任

  加藤 勝信君     原田 憲治君

  川条 志嘉君     藤野真紀子君

  木村 義雄君     広津 素子君

  松本 洋平君     薗浦健太郎君

  郡  和子君     佐々木隆博君

  園田 康博君     高井 美穂君

同日

 辞任         補欠選任

  薗浦健太郎君     松本 洋平君

  原田 憲治君     杉田 元司君

  広津 素子君     木村 義雄君

  藤野真紀子君     川条 志嘉君

  佐々木隆博君     西村智奈美君

  高井 美穂君     寺田  学君

同日

 辞任         補欠選任

  杉田 元司君     加藤 勝信君

  寺田  学君     横山 北斗君

  西村智奈美君     小川 淳也君

同日

 辞任         補欠選任

  小川 淳也君     郡  和子君

  横山 北斗君     園田 康博君

    ―――――――――――――

十二月五日

 児童扶養手当の減額率を検討するに当たり配慮を求めることに関する請願(河村建夫君紹介)(第七八一号)

 同(衛藤征士郎君紹介)(第八三一号)

 同(金子一義君紹介)(第八三二号)

 国民健康保険の充実を求めることに関する請願(古賀一成君紹介)(第七八二号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第八三四号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第八七八号)

 臓器の移植に関する法律の改正に関する請願(奥村展三君紹介)(第七八三号)

 同(金田誠一君紹介)(第七八四号)

 同(北神圭朗君紹介)(第七八五号)

 同(細川律夫君紹介)(第八三五号)

 身体障害者補助犬法の改正に関する請願(阿部知子君紹介)(第八〇六号)

 同(市村浩一郎君紹介)(第八三六号)

 同(金田誠一君紹介)(第八三七号)

 同(重野安正君紹介)(第八三八号)

 同(細川律夫君紹介)(第八三九号)

 同(森山眞弓君紹介)(第八四〇号)

 同(井上義久君紹介)(第八七九号)

 同(近藤基彦君紹介)(第八八〇号)

 同(中馬弘毅君紹介)(第八八一号)

 同(辻元清美君紹介)(第八八二号)

 同(とかしきなおみ君紹介)(第八八三号)

 同(徳田毅君紹介)(第八八四号)

 同(野田毅君紹介)(第八八五号)

 同(三日月大造君紹介)(第八八六号)

 同(山本明彦君紹介)(第八八七号)

 同(川条志嘉君紹介)(第九〇四号)

 同(平岡秀夫君紹介)(第九〇五号)

 同(やまぎわ大志郎君紹介)(第九〇六号)

 難病患者などの医療と生活の保障に関する請願(木村義雄君紹介)(第八〇七号)

 療養病床の廃止・削減と患者負担増の中止等を求めることに関する請願(近藤昭一君紹介)(第八〇八号)

 同(前田雄吉君紹介)(第八〇九号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第八三三号)

 同(河村たかし君紹介)(第八七六号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第八七七号)

 医療費負担増反対、患者負担の軽減に関する請願(佐々木憲昭君紹介)(第八三〇号)

 国民医療を拡充し、建設国保組合の育成に関する請願(重野安正君紹介)(第八七二号)

 同(辻元清美君紹介)(第八七三号)

 同(日森文尋君紹介)(第八七四号)

 同(保坂展人君紹介)(第八七五号)

 同(菅野哲雄君紹介)(第九〇七号)

 同(照屋寛徳君紹介)(第九〇八号)

 保育・学童保育・子育て支援施策の拡充等に関する請願(藤村修君紹介)(第九〇三号)

同月六日

 療養病床の廃止・削減と患者負担増の中止等を求めることに関する請願(石井郁子君紹介)(第九五一号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第九五二号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第九五三号)

 同(吉井英勝君紹介)(第九五四号)

 同(笠井亮君紹介)(第一〇三四号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第一〇三五号)

 国民健康保険の充実を求めることに関する請願(志位和夫君紹介)(第九五五号)

 同(仲野博子君紹介)(第九五六号)

 身体障害者補助犬法の改正に関する請願(郡和子君紹介)(第九五七号)

 同(田村憲久君紹介)(第九五八号)

 同(筒井信隆君紹介)(第九五九号)

 同(佐藤剛男君紹介)(第九八七号)

 同(山崎拓君紹介)(第九八八号)

 同(横光克彦君紹介)(第九八九号)

 同(笠井亮君紹介)(第一〇三六号)

 同(高木美智代君紹介)(第一〇三七号)

 同(船田元君紹介)(第一〇三八号)

 同(古屋範子君紹介)(第一〇三九号)

 難病患者などの医療と生活の保障に関する請願(平井たくや君紹介)(第九六〇号)

 国民医療を拡充し、建設国保組合の育成に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第九六一号)

 同(石井郁子君紹介)(第九六二号)

 同(笠井亮君紹介)(第九六三号)

 同(穀田恵二君紹介)(第九六四号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第九六五号)

 同(志位和夫君紹介)(第九六六号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第九六七号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第九六八号)

 同(吉井英勝君紹介)(第九六九号)

 同(赤松広隆君紹介)(第一〇四一号)

 同(荒井聰君紹介)(第一〇四二号)

 同(石関貴史君紹介)(第一〇四三号)

 同(河村たかし君紹介)(第一〇四四号)

 同(後藤斎君紹介)(第一〇四五号)

 同(園田康博君紹介)(第一〇四六号)

 同(高木義明君紹介)(第一〇四七号)

 同(長浜博行君紹介)(第一〇四八号)

 同(福田昭夫君紹介)(第一〇四九号)

 年金・医療制度等の改革に関する請願(篠原孝君紹介)(第九八三号)

 進行性化骨筋炎の難病指定に関する請願(伊藤信太郎君紹介)(第九八四号)

 無免許マッサージから国民を守る法改正に関する請願(大島理森君紹介)(第九八五号)

 臓器の移植に関する法律の改正に関する請願(田中眞紀子君紹介)(第九八六号)

 生活保護に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第一〇二八号)

 同(石井郁子君紹介)(第一〇二九号)

 同(笠井亮君紹介)(第一〇三〇号)

 年金・医療・介護等の社会保障制度充実に関する請願(川内博史君紹介)(第一〇三一号)

 介護療養病床の全廃、医療療養病床の大幅削減に反対し、療養・介護の環境及びサービスの整備・拡充を求めることに関する請願(佐々木憲昭君紹介)(第一〇三二号)

 児童扶養手当の減額率を検討するに当たり配慮を求めることに関する請願(臼井日出男君紹介)(第一〇三三号)

 医療費負担増反対、患者負担の軽減に関する請願(佐々木憲昭君紹介)(第一〇四〇号)

 保育・学童保育・子育て支援施策の拡充等に関する請願(小宮山洋子君紹介)(第一〇五〇号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第一〇五一号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 厚生労働関係の基本施策に関する件(障害者福祉)

 厚生労働関係の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――

櫻田委員長 これより会議を開きます。

 厚生労働関係の基本施策に関する件、特に障害者福祉について調査を進めます。

 本日は、本件調査のため、参考人として、慶應義塾大学商学部教授中島隆信君、世田谷区立知的障害者就労支援センターすきっぷ施設長宮武秀信君、NPO法人全国地域生活支援ネットワーク事務局長戸枝陽基君、日本障害者協議会常務理事藤井克徳君、DPI(障害者インターナショナル)日本会議事務局長尾上浩二君、らく相談室主宰・障害乳幼児の療育に応益負担を持ち込ませない会事務局長池添素君、以上六名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。

 本日は、御多用中にもかかわらず本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じますので、よろしくお願いを申し上げます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 最初に、参考人の方々から御意見をそれぞれ十五分以内でお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。

 なお、発言する際は委員長の許可を受けることになっております。また、参考人は委員に対して質疑することができないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。

 それでは、まず中島参考人にお願いいたします。

中島参考人 おはようございます。

 本日、参考人ということで呼ばれまして、私は、けさ大学の講義があったのでございますけれども、講義の方は、国のお役に立ちたいということで休講にしてまいりました。学生は今ごろ多分大喜びをしていると思うんですけれども。

 学生が大喜びをしているというのは、考えてみればちょっとおかしな話でして、つまり、私はサービスを提供する側であるのに、なぜそれを受け取る側の学生が休みになって喜ぶのか。これはいろいろな理由があると思うんですけれども、もちろん生徒側、先生側にいろいろな理由がありますが、一つの原因として考えられることは、本人が金を払っていない、つまり、親が月謝の負担をしていて、本人がその教育サービスを受けている。自分でお金を払わないと、実際にお金を払っている人の側の立場に立った発言というのはなかなかできないのかなというふうに私は感じております。

 私、経済学の立場からいろいろな現象を観察しておりますので、障害の問題に関しては、そういう意味では専門家ではありません、素人です。それで、多分ほかの参考人の方の方がその辺の事情についてはお詳しいだろう、私は経済学を専攻している立場として、世の中の現象を見てどこかおかしいところはないかなと、だから今の大学の状況なんかも、私の目から見ると、ちょっとおかしいんではないかというふうに思います。

 福祉の領域を考えてみますと、福祉サービスに関して今議論が沸騰しているわけでございますけれども、その大きな理由の一つは何かというと、先ほどの学生の件もそうなんですが、どうもサービスを受ける側の方たちが、恐らく受け手として自立が難しいのではないか、つまり、消費者としての自立というものが困難なのではないかというふうに私は考えています。

 つまり、これまでの、支援費制度が導入される前の措置時代からそうなんですけれども、障害者の方たちに向けてのサービスの内容というのが行政によって決められて、施設に入るなり施設で決められたサービスを受けるということで、ずっと福祉というのは成り立ってきた。それはそれで、決して問題があったとは私は思わないんですけれども、だけれども、最近、我々の生活がだんだん豊かになってきた。その豊かになってきたというのは、物質的な豊かさだけじゃなくて、選択肢が広がった、いろいろなサービスを我々が受けられるようになり、自分たちの選択の自由というものを実現することによって、より豊かさを実感できるというふうに世の中が変わってきたんじゃないかというふうに私は感じております。

 その中で、障害者の方たちは今まで決められたサービスを受けてきたということなので、どうしても、御自分でサービスを評価する、もし内容がよくないときはそれに対して堂々と文句を言う、あるいはほかのもっといいサービスを別途選択するというような、そういう消費者としての自立というものがなかなか難しかったんじゃないかというふうに私は思っています。これは経済学の立場から考えますと非常に悲しいことでありまして、つまり、国民の一人として自立するということは、まず第一に何を考えなきゃいけないかといいますと、消費者として自分が豊かな暮らしをしたいと思ったら、それが現実に実行できるということが何より重要なことなわけです。

 ですから、私は、これから障害者を含めてですけれども、福祉事業の一つの目的といたしましては、サービスの受け手である高齢者なり障害者の方たちがいかに消費者として自立するかということを、そのためにどれだけ我々が支援していけるかということを考えるのが正しい筋道ではないかなというふうに思っています。

 消費者として自立するということはどういう意味があることかと申しますと、例えばいろいろな業界を見ていますと、先ほどの大学もそうなんですけれども、なかなかうまくいっていない業界というのは、どうも消費者が健全な形で育っていないということが私は言えると思います。つまり、消費者からもっとこういうサービスをしてほしい、こういうように改善してほしいというような要求が出てきたときに初めて、そのサービスを提供する事業者側が、ではもっとこうしよう、こういうような工夫をしてみよう、そうしないとお客様のためにならない、そういう発想というものが生まれてくるわけです。簡単に言うならば、健全な、あるいは賢い消費者がその事業をつくっていく、また、サービスをよりよく向上させていくという一つの大きな原動力になっていると私は思っています。

 もう一つのメリットというのは、やはり障害者の方たちも、自分でいかに自分の欲しいものを手に入れるかということで、我々、所得に関しても青天井で生活しているわけじゃありませんから、限られた予算の中でどういうふうにして我々の生活を豊かにしていこうか、つまりお金の配分ということが消費する上では非常に重要になってくるわけですけれども、それもやはり自立のうちの一つだと私は考えています。

 つまり、自分にとって何が必要なのか、どういうサービスをどのように組み合わせることによって私たちは豊かな生活を送れるのかということを本人が考え、それを実現していくということがとても重要だというふうに思います。ただ、消費をしていくためにはやはりなかなか難しい面というのがありまして、まずは私たちが消費者として自立すると、そのために、ああ、働かなきゃいけないのかなということを考えていくわけで、これは一般の方たちの自立と一緒だと私は思うんですね。

 つまり、我々が小学校、中学校という形で親からお小遣いをもらい消費をし始めていく。そうすると、どうしても自分の買いたいものというのが出てくる。だけれども、お小遣いではなかなか買えないので、高校生になるとアルバイトをする。アルバイトをして消費の仕方というものを学んでいくわけですよね。それに応じて働き方も学んでいく。大学生になるともっといろいろな働き方ができるようになってきまして、それで卒業して社会に出るということで、初めて働くということの意味がわかってくると私は思うんです。

 ですから、そういう意味で、消費者として自立するということが、最終的に働き手としても自立するということにつながっていくんじゃないかと私は思っています。働くことの意味というものは、まさに消費者として自立するところから生まれてくるというふうに思います。

 ただ、働くということはなかなか大変なことでして、特に障害を持っている方たちというのは難しい。だからそういう意味では、社会へ出る前に、一般の健常児と同じぐらい、あるいはそれ以上に、就労の支援というものを養護学校に存在するうちから十分にしていくということがとても重要だと思うんですね。残念ながら、現在の養護学校の教育というものは必ずしもそういう形になっていないというふうに私は思います。それで、消費者として自立すれば、働くことの意味がわかってくる。もう一つ、バリアフリー化というのもそれに応じてどんどんどんどん進んでいかざるを得ないというふうに思います。

 つまり、障害を持っている方たちが消費者として自立しようと思ったら、町へ出ていって買い物をしなきゃいけないわけですね。買い物をするために、そこに段差があったり、歩道が曲がっていたり、でこぼこしていたりすれば、そこで消費者になれないわけですね。ですから、社会全体として、障害を持っている方たちを消費者として受け入れようというふうな考えを皆さん持つことによって、それで初めてこのバリアフリー化の本当の意味というものがわかってくるんじゃないかと私は思っています。

 ただ、働けない方とか障害の重い方がいらっしゃるということも事実ですね。ですから、就労の支援をしてもなかなかそういうのが難しい非常に重度の障害者の方というのは、やはり所得保障というものがどうしても必要になってくる。ただ、そのときも、必要なサービスなんだから無料で提供すべきだという議論がありまして、それはそれで一つの福祉のあり方だとは思うんですけれども、障害を持っている方たちも、一般の方たちによりわかりやすい形で、自分たちもしっかり一国民として生きているんだ、一般の国民の仲間なんだということをわかってもらうためには、やはり一消費者として受けたサービスに対して対価を払うということは、私はそれは決しておかしなことではないというふうに思います。

 ただ、そのためには元手が必要なわけですから、所得保障をするということは非常に重要なことである。結局、サービスをただで与えるのではなく、所得を与えて、その所得をどのように使っていくかということを障害者の人たちも知る、あるいはそれを体験するということが、私はまさに自立へ向けての非常に重要な第一歩だというふうに考えています。

 ですから、障害者の自立支援法というのが施行されまして、いろいろな賛否両論が出ているわけですけれども、その中で今後考えていかなきゃいけないのは、消費者として障害者がいかに自立できるかということをみんなで意見を出し合って考えていく。その際に、所得保障が必要なんですけれども、その所得保障のつけ方も、どのような形にすれば御本人の意思に基づいた生活というものができるかということを考えていくことが大変必要だと思っています。

 それから、もう一つの重要なポイントというのは、やはり親の存在であります。

 障害児の場合は、どうしても一般の子供と違って、親の世話になる期間が長いということになります。親はやはり自分の子供がかわいいわけですから、どうしても子供がふびんだ、障害を持った子供がかわいそうだということで抱え込もうとしてしまいます。その行為自体は私は決して悪いことだとは思いませんけれども、果たしてそれが本人のためになっているかどうかという視点がとても重要だというふうに考えております。

 つまり、最終的に子供は親から離れて一人で生活していかざるを得ないということになるわけですけれども、そのときに親が自分の子供をずっと抱え込んでしまいますと、本人の自立にとって必ずしもプラスにはならないということは私の経験上もよくわかっていることであります。ですから、そういうような観点から、親の自立ということも必要である。

 障害者自立支援法は働くことでの自立というものを目指したものでありますけれども、それにさらに加えて考えるとすれば、消費者としての自立をどういうふうにこれから実現していくか。障害者自身を健全な賢い消費者にするにはどうしたらいいかということをまず第一に考えていくこと。それから、それを支援する側の立場として一番重要な役割を担うはずの親、その親自身がいかに子供の将来を客観的に考え、また子供の自立というものを親として支援していく、親自身もある意味では子離れが必要だ。そういう点をまた当事者以外の一般の人たちがどのように支援していくかということが、これから先非常に重要になってくるだろうと私は思っています。これが、今後、私が考えます障害を持った方々の自立ということの本当の意味なんだろうというふうに思います。

 以上です。(拍手)

櫻田委員長 ありがとうございました。

 次に、宮武参考人にお願いいたします。

宮武参考人 おはようございます。

 本日は、冬晴れの朝、私は大変うれしく、また晴れ晴れとした気持ちでこちらに参りました。実は、私は、本日、知的障害者の就労支援についてお話ししますが、三十数年間、知的障害者の通勤寮というところで勤務をしておりまして、通所授産施設に移ったのが五年ほど前ですけれども、知的障害者の就労そして地域での自立ということを三十数年やってきて、そのことについてきょう国会でお話ができるということを大変うれしく思います。また一段と、知的障害の方の就労が進むことを期待しております。

 きょうは資料を用意いたしました。レジュメの次のページになりますが、実は世田谷区にあります私どもの知的障害者の通所授産施設は、それと就労支援の機能を兼ね備えておりまして、最初から知的障害者の就労を目指す、そういう施設でございます。四十名おりまして、二年間で就労を実現する。実は、自立支援法の就労移行支援事業の参考にしていただいている、そういうことで本日お招きをいただいていると思います。

 その中で、就職率が九二%ということで注目をされております。大体一年半ぐらいで就労されている。十日に一人は就職で巣立っていっている。では、九二%で、八%の方はどうなっているのか。八%の方は通所できなかった方です。登校拒否とかそういう形でどうしてもなかなか集団生活になじめない、そういうことで時間がもう少し必要な方。そういう方を除いて、全員が就労しております。半数が養護学校新卒で入ってきていただいています。あとの方は、離職者あるいはずっと家で引きこもっていた方。最近、高校を卒業して十五年間自宅におられた方が、一歩社会に踏み出したといいますか、そういう形で私どもの施設に入った方もおられます。

 この就職者はどういう仕事をしているかということなんですが、グラフがありますけれども、実は事務系職種が一番多うございます。この国会を見おろすプルデンシャルタワー、プルデンシャル生命保険がありますけれども、実はそこでも知的障害の私どもの青年が働いて、毎日この国会を見おろしながらダイレクトメールの仕分けをしたりとか、応接間のテーブルをふいたりとか、そういうお仕事をしております。そのほか、清掃が多い形になっていますが、これは特例子会社とかそういうところで、グループ就労が多いということもあります。あとは、スターバックスコーヒーとか、会社名を上げたらまずいんでしょうけれども、ユニクロとか、そういう小売、喫茶、サービス関係、流通関係とかが多うございます。

 実は、このことは知的障害だからこういう職種じゃなくて、東京で働いている方がこういう仕事についているんですね。都心ですとオフィスがありますから、そこでのお仕事。その周りに喫茶店とかコンビニとか。あるいは、ちょっと住宅地に入りますと、ユニクロとかスーパーがあります。あるいは、流通センターの倉庫の中での仕分け作業とか、都内全域で働いているということが言えます。それと、東京大学に最近就職した例がございます。そういう形で、さまざまなところで知的障害の方は実際に就労しております。

 なぜこういう九二%を達成できるかということになりますけれども、これは一つは、そういう多様なニーズにこたえるシステムをつくったということなんですね。それが二ページでございます。

 入ってくる方は、学校、作業所、在宅、離職、さまざまな方、年齢層も違います、障害程度も違います。ですから、就職という目的は一緒ですけれども、それに至る何が必要かということになります。そういう中で、このシステムが非常にうまく生かされて、効果を発揮しています。

 授産作業でクリーニングと印刷の作業をしていますけれども、これは区が優先発注したもので、それを訓練の教材にして、工場と同じですから、労働を通して働く力を身につけていく。体験実習という形で、どんどん外での、事業所さんにお願いして現場での経験をさせていただいています。その次の段階で求職活動に入っていきます。大体二年以内。

 次のページの在所期間と就職の時期ですが、これが実はシステムの効果をあらわしております。利用期間、就職するまでの在所期間が大体十六カ月から十八カ月ぐらいの方が一番多いんですね。それで、一年間延長できますので、三年利用される方も中にはおります。三十六カ月まで利用される方は、これは養護学校の新卒で、情緒不安の問題とか自傷行為が激しいとか、やはりかなり訓練が必要な方はそれなりの時間が必要になります。そういう方も就労ができております。

 その次に、私ども世田谷区でございますけれども、実は、就労支援のネットワークができてございます。それが世田谷区の雇用促進協議会という形で、地域ぐるみで就労支援に取り組もうと。この中で特徴的なのは、商工会議所さんとか青年会議所さんが、非常に協力していただいて取り組みをしておられる。すべての団体が入っております。就労支援センターが国の制度、都の制度を使いまして屋根をかぶせるような形で全体の支援をしている、そういう絵柄になっております。

 実は、就労支援のネットワークは生活支援のネットワークでもあるんですね。ですから、就労を支えるということは、就労を続けるためのグループホームとか相談センター等、そういう地域支援が必要だと思います。

 新聞記事等も用意してございますけれども、今、新たな開拓先として、知的障害の方、東大のお話をしましたけれども、東京大学の経済学部に二名、事務職で仕事をしております。教授の書いた英文の論文をパソコンに入力してホームページに載せる。御本人は英語は読めないですけれども、ローマ字入力ができますので、十分その仕事を果たしておる。さまざまな仕事がそのほかございます。今、介護関係の施設、有料老人ホームが随分多うございまして、そこのサポートスタッフという形でたくさん就職をしております。そういうさまざまな職種の開拓もまた進めていっております。

 それと、実はナチュラルサポートという言葉がございます。私どもはジョブコーチで入って、一定期間が過ぎますと引いていきます。その中で、会社の方、現場の方に支えていただくという形になります。現場の支えをナチュラルサポートという言葉で言います。

 実は、今急成長している靴屋さん、マーケット、小売店で自閉症の青年が就職しまして、彼は、空間認知といいますか認識力が非常に高くて、靴の箱というのは同じ箱なんですね、バックヤードにナイキとかアディダスとか、それぞれ棚がばっとあるわけですね、靴の種類というのはラベルで色だとかサイズがございます、そのことの分別が非常に得意なわけですね。実習のときに、彼が入ったことで非常にバックヤードが片づいた。

 ただ、店頭ではたきをかけたり整理しなくちゃいけない。やたら人通りが多いので、道を聞かれるらしいんですね。道を聞かれるとパニックになってしまう。ちょっとお客様が靴を見ようとしたら、どかない。そういうのはちょっと困るわけですね。では、それをどうしようかと。そういう困ったときに、周りの方がちょっとサポートしてくれる、そのことで彼はもう一年半以上就職できています。

 それと、御本人は一人で食事に行けませんので、だれか周りのスタッフの方と一緒に行く。最近お金の支払いが、レジが使えなかったんですが、御本人使えるようになりましたという報告がお母さんにあったと。だから、さりげなく今の若者たちが、フリーターの方とか学生さんが彼を仲間としてサポートしてくれている、それがナチュラルサポート。そういう形で支える方たちが非常に多くなっていっているのが現状でございます。

 それで、お願いですけれども、就職先の拡大としまして、全国にハローワークは六百カ所ございますけれども、東京のハローワークがことしから知的障害者雇用を始めております。ぜひ全国のハローワークに、一人でも二人でも知的障害の方を受け入れて雇用していただきたい、雇用モデルをつくっていただきたい。それと、国会でぜひ雇用していただきたい。あるいは政党とか中央省庁、自治体での知的障害者雇用、まず隗より始めよで受け入れまして、それを雇用モデルにして拡大していく。民間は非常に、大変努力をして受け入れをしております。ぜひお願いしたい。総論賛成、各論困難ではなくて、各論でも御理解いただきたいと思っております。

 それと、知的の重度障害者の方の方も今雇用に進んでいってございます。私どもの施設も、重度の自閉症の方を受け入れて、何とか就職に向けて今支援をしている最中でございます。ある団体の調査で、通所授産施設の利用者の四〇%が就労を希望して、保護者の方は八〇%が消極的というようなデータがございました。それは、今まで余りにも障害者に対して労働は過酷でした。知的障害の方は、私は三十年やっていますが、町工場で真っ黒になってそういう厳しい労働条件の中で働いてきて、それで支援がありませんでしたから、結局はうまくいかなくて作業所に戻った方もたくさんおられます。そのことの不安をまず解消する必要があると思います。

 私は、就労を通して三つの実現ということをお話ししております。

 一つは、満足です。

 御本人が就職したいということで入ってこられて、それが実現する満足。それで、今、大体時給八百円から八百五十円で、週三十時間労働が多うございます。一日六時間。ちょうど手ごろな働き口がたくさんあるんですね。その中で経済的な満足感もございます。

 二点目は、コストです。

 私どもの施設は職員配置も多うございますけれども、それに対して十分な支援をして、それで費用対効果と考えますと、彼らが一年半で納税者になるわけですから、やはりそれはコストパフォーマンスの面で非常に大きいものがあると思います。

 三点目は、やはり啓発。

 企業の方が恐る恐る受け入れて、それで知的障害についての理解をしていただく。理解が進めば支援が生まれるわけですね。会社がそういう形で知的障害の方の理解を持って支援が進めば、会社の裏返しは社会ですから、社会の意識が変わっていくと思います。身近なところで知的障害の方と一緒に働く、生きるということが、やはり差別の解消につながっていくと私は確信しております。

 最後になりますけれども、実は、この機会ですから一言申し上げさせていただきたいと思います。それは応益負担のことです。

 やはり一割ということは大変な負担でございます。私は三十数年この仕事をやっていまして、応益負担、一割負担というお話があったときに、これは所得保障だと瞬間的に思いました。やはり経済的な基盤の整備ということが必要です。逆に、ようやく所得保障の問題が登場してきたな、政策課題として出てきたな、そういうふうな考えを持ちました。今、利用者の負担の軽減ということも検討されるということで、大いに期待して、また、経済的な基盤が確立されるよう御尽力いただきたいと思います。

 私の意見を終わりたいと思います。御静聴ありがとうございます。(拍手)

櫻田委員長 ありがとうございました。

 次に、戸枝参考人にお願いいたします。

戸枝参考人 おはようございます。私は、NPO法人全国地域生活支援ネットワークの事務局長をしている戸枝といいます。きょうは厚生労働委員会にお招きいただきまして、ありがとうございます。

 私は、まずは私の身の上話を聞いていただきたいと思います。

 私の母親は重度の障害者です。障害としては、片目がほとんど見えていないという状態で片目が弱視ということで、それだけで一種一級の障害者です。さらに、二十で舌がんをして舌を半分切除するという状態から、放射線治療をしまして、その影響があるのか転移を繰り返すということで、喉頭がんで声帯摘出をしまして、さらに乳がんで乳房を片っ方取るという状態、さらに胃がんで胃を三分の二切除するという状態になって暮らしてまいりました。

 さらに、実は私を含め七人きょうだいがいまして、姉、姉、僕、妹、妹、弟、弟という七人きょうだいなんですが、私が三番目で、逆子だったものですから帝王切開で生まれるということで、その後、母親は僕を含めて五人を帝王切開で産むということで、裸になると、もう本当に体じゅうが切り張りだらけになっているというような母親で、まさに重度の障害と病気と闘いながら、結局最後は、がんで死なずに本当に老衰というような形で、寝たままの格好で死んでいるという状態でした。

 その母親が、目が余り見えないものですから、歌を歌ったりすることが好きで、いつもコーラスに参加したりということで楽しんでいたのが、声帯を摘出したものですから、しゃべれなくなったということで、すっかりいろいろな楽しみがなくなったり、同時に、やはりそうなったときに訪れる人もいなくなってくるとコミュニケーションがとれませんので、どうしても家にこもりがちになるということになりました。結果としては家でじっとしていることが多くなってきて、最終的には認知症を発症するということで、ただ、厄介なことに、自分で歩いて外に出られるという状態だったものですから、出かけていっては結構近所の方に迷惑をかけるというようなこともあったんですね。

 その際に、家族でどうやって母親の介護をしていくのかということを、七人もきょうだいがいるわけですが、やはりそれぞれが成人してそれぞれの生活をしているとしたときに、だれが面倒を見るのかということがなかなかまとまらないということになったわけです。

 そのときに、きょうお手元に配らせていただいた、施設・在宅・地域支援を定義するということを私自身強く感じたので、そのお話をさせていただきたいと思います。

 まず、母親の介護を在宅でするとしたときに、だれか家族が介護負担を背負わなきゃいけない。そこの見通しが七人もきょうだいがいながらなかなかつかなかったということで、結果としては五番目の妹が母親の介護をする、仕事をしないで介護をするという選択をしてくれて、最期をみとれたわけですが、今のこの国で、僕たち、私はまだ三十代ですが、きょうだいが七人もいるようなありさまの家庭というのはほとんどない。

 先日も、超少子高齢化社会が到来するということが新聞等で発表されていましたが、そういった中で、核家族どころか個での暮らし、個人での暮らしを選択していく方がこの日本ではふえていく中で、家族介護に頼った福祉では限界が来るということに対して、これは障害者自立支援法の中でやはり私が一番落ちていると思っているのは、一人で暮らしている障害のある方がそのまま一人の暮らしを維持できるのかということに対して、とりわけ重度障害者への配慮が欠けているんじゃないか。これはもちろん障害者だけじゃなくて高齢者の介護保険も含めて、このままで大丈夫なのかということを思っているわけです。

 それで、家族介護ができない場合に何か選択肢があるのかといった場合には、施設支援ですね。結局、施設に母親を入れ切れなかった。母親は、施設に入れなさいと僕たちに迫りました。僕が、地元は群馬県の太田市なんですが、愛知県に今暮らしています、愛知県に引き取ると言ったときにも、友達と会えなくなるぐらいだったら施設で、地元に残りたいとやはり言ったんですね。

 そのときに、家族がなぜ施設に入れ切れなかったのか。やはり、大規模処遇の中で、プライドの高い、本当に自尊心だけでその障害と病気と闘ってきた母親が、本当に満足した状態になるのかということに対して、きょうだいみんなでためらったわけですね。

 そういう意味では、施設支援の魅力としては、家族にかわって他人がきちんと誠心誠意見てくださるということに対しては魅力なんですが、やはり選び切れなかった。そうだとしたときに、私たち家族が欲しかったのは、小さな人数で他人が支えてくれる暮らし、個であっても支えてくれる暮らしということがやはり必要だった。どうしても、これだけ人口が流動化している中で家族介護だけでは限界がある、そこをよくよく理解いただきたいということ。

 もう一つは、本人主体のサービス選択といったときに、母親が、やはり施設に入れなさいとか、あなたたちに面倒を見てほしいとか、いろいろなことを言えたとして、障害のある方の場合、とりわけ知的障害や場合によっては精神障害で自分の自己決定が制限されている方の場合、本人の思いと、保護者等後見人の思い、さらに事業所の都合、場合によっては事業所の都合の背景には国家財政の都合、いろいろなことの中で本人の人生が決められていくとしたときの、本当に本人の思いでサービス選択がされているのかということに対してよくよく考えていただくとすると、例えば山の中の入所施設に三十年、四十年入っているという生活が本当に御本人さんの希望なのかということに対して、よくよく考えていただきたいというふうに思っているわけです。

 要するに、サービス選択はだれが主導権を握ってしてきたのか、本当に障害のある御本人さんが希望した暮らしをしているのかということを考えていただきたいということです。

 ここで、そういった前提に立って、現在主流になっている考え方として、ノーマライゼーションの理念とエンパワーメントの概念というのを確認していただきたくて、資料で用意しました。

 ノーマライゼーションというのは、もう皆さん御承知のとおりに、可能な限り障害のない人の生活と同じにすることを社会として目指すという考え方でありますし、エンパワーメントの概念としては、障害者には本来一人の人間として高い能力が備わっているのであり、問題は、社会的に抑圧されていたそれをどのように引き出して開花させるかにあるとする考え方です。

 うちの母親が、障害があっても、父親の深い愛情に支えられて、また僕たちきょうだいが助ける、また隣人の方から助けていただいて、七人の子供を産んだ。しかし、重度障害者だということで、もし母親が何かの間違いで施設に入った場合に、七人の子供を残せたでしょうか、また、私がここに存在したでしょうか。そう思ったときに、障害のある人が本当に能力がないのか、社会参加する環境がないのか、そこをよくよくもう一度考え直していただきたいというふうに思うわけです。

 その上で、僕は障害者自立支援法の第一条が大好きです。読み上げますが、「この法律は、」「障害の有無にかかわらず国民が相互に人格と個性を尊重し安心して暮らすことのできる地域社会の実現に寄与することを目的とする。」と書いてあるんですね。何が好きかというと、ここには、立派な福祉施設をつくるとか、立派な福祉サービスをつくると書いていないんですね。障害のある方がいることを前提とした社会をつくるとはっきり明記されているわけです。

 そういう意味では、いよいよ待ちに待った法制度がされたということで、私たち全国地域生活支援ネットワークとしては、この法律に期待をし、一貫して支持をしてきたという経緯でございます。

 その上で、施設パラダイス論ですね。障害のある方の差別が社会にあるとして、その人たちに理解のある人だけで処遇をするということが、先ほどの中島先生の話ではないですが、やはりさまざまな刺激とかさまざまな体験の中で障害のある方が成長するとしたときに、収容保護主義的な福祉はもう終わりにしていただきたいということを確認した上で、そのためにはやはり社会基盤整備をしなきゃいけない。

 障害のある方が暮らせる、うちみたいにたまたま七人もきょうだいがいて支えられる、そういう偶然ではなくて、そういう家族介護がなくてもやれる社会基盤整備をぜひしていただきたい。今回の法律が障害者自立支援法だとしたときに、地域福祉の基盤整備に重点的にお金を投入していただきたいということを確認します。

 さらに、ノーマライゼーションの原理の八番目を見ていただいて、ノーマライゼーションの原理の中には、支え手である家族、さらに職員の環境水準もノーマルにしなければいけないという考え方が入っています。

 今回、障害者の自立支援法で、居宅介護事業所ですね、地域の中の重要な支え手になるホームヘルプ等をしている事業所の単価がやはり低いということで、一部地域では、介助者が確保できないという形で地域生活を断念する障害者が出てきています。居宅介護事業所が大幅な減収になっているという現実の中で、例えば通所系サービスなどには従前額の九割保障という話が上がってくる中で、なぜ居宅介護系事業所にはそういったことがないのか。やはり居宅介護、ホームヘルプが地域支援の一番重要な基盤だとしたときに、一定の配慮が必要ではないかということを、単価の見直しとともに、ぜひお願いしたいということです。

 さらには、地域基盤整備をすると、どうしても差別が起こる。障害者の環境整備をする場合に、とりわけ精神の方の基盤整備は本当に難しい。そういう意味では、自立支援法とあわせて障害者の差別禁止法の制定をしなければ進んでいかないという実感を持っていますので、ここもあわせてお願いしたいと思っています。

 障害者の自立支援法に関しては、私たちが理解していることを資料の図三としてまとめています。

 まずは、入所施設の生活を地域に戻していくときに、昼間の活動と夜の活動を切り分ける。とりわけ、長年障害のある方を施設に預けてきた親御さんからすれば、一遍に施設を出されるのかという不安感が今日本じゅうであります。これは、まずは昼間の活動だけでも出るということがやはりノーマライゼーションの原理から考えても適当かということでいけば、まず働く場所へ出す、その上で、本人が生き生き働けるようになったら住む場所も普通の状態にするということを進めていく。

 さらに、暮らしの場、日中活動の場、余暇、社会参加支援を組み合わせる、ケアをマネジメントされた生活になるというのが自立支援法の概念だとしたときに、この地域の生活支援センターですね、ケアマネジメントをする機能がすごく重要になる。今回、自立支援法では、残念ながら相談支援体制が個別給付に入っていない、地方に任されている。これでは大きな市町村格差が出ていて、例えば、DPIの日本会議なども言っているように、小さな自治体ではやはり相談支援の体制を確保できないとか、イレギュラーにたくさんの支援が要る重度障害者への長時間介護の配慮ができないとか、そういった問題が起こっている。やはりそういったところには一定の配慮が必要なんじゃないかというふうに思っています。

 さらに、「個別支援計画でソフトの福祉が動く!」というところでは、自立支援協議会というところで、いろいろ組み合わせたサービスが適切に動いているということを調整するのがこの自立支援法のかなめだとしたときの、やはりここを動かしていく装置としての相談支援体制ですね、ここをよくよく配慮いただきたいということをお願いしたいと思っています。

 最後に、全国地域生活支援ネットワークとしての要望事項を皆さんにお配りしています。この中で、先ほどの説明にあわせて、とりわけ重度障害者への配慮を強くお願いしたいと思っています。

 私が住んでいる地元の愛知県は、全国でも数県しかない、入所施設支援と地域の居宅等の支援の障害のある方の一人当たりの費用が、地域支援ですね、居宅等の支援の方が厚いという、珍しい、地域福祉が充実した県であります。その県で、障害のある当事者の方や保護者から、ケアホームの単価が低いと。さらに、ホームヘルプを入浴や排せつなどに個別に入れないと生活ができない方への配慮が、このホームヘルプを入れるということが十九年末への経過措置なものですから、このままでは重度障害者の地域生活の見通しが持てないということで、やはり入所施設支援じゃないとだめなんじゃないかという声がかなり上がっています。

 そういう意味では、ここの配慮をしていただかないと、自立支援法なのに入所施設支援に戻るというようなことになってしまいますので、特段の配慮をお願いしたいということを申し添えておきます。

 障害のある方が本当に地域社会の中で一員として暮らせる世の中に、この法律をばねに、きちんとした財政措置でしていただけるように祈念して、話を終えたいと思います。ありがとうございました。(拍手)

櫻田委員長 ありがとうございました。

 次に、藤井参考人にお願いいたします。

藤井参考人 藤井です。どうぞよろしくお願いします。

 この時期にこうした場を設けていただきまして、大変ありがとうございました。きょう十二月六日は、障害者の週間のちょうど中日であります。ぜひ、後で振り返って、二〇〇六年の障害者週間が非常に意味があった、こういうふうに言えるような一日にしていただければというふうに思います。

 私は、まず、中身に入る前に、どうしてもこの障害者自立支援法に関係しまして二つほどお話ししておきたいことがあります。

 一つは、この自立支援法を振り返って、その成立の過程で、尾辻元厚生労働大臣が何回となく繰り返したあの、現行のサービス水準は低下させませんと、これが一体どうだったのかということであります。私たちはあの答弁に一縷の望みを託しまして、その後の推移をずっと見てきたのですけれども、結果的にはどうもこれが裏切られた感じがいたしているわけであります。

 いま一つは、全国の障害者、当事者は、やはり今なおこの法律については納得ができていない。先般、十月の三十一日なんですが、日比谷公園の周辺で約一万五千人フォーラムを行いましたけれども、あの数字がそれを物語っているように思うわけであります。

 一般論で言いますと、普通、法案というのは、ぶつかっていましても、これが施行されますとだんだん鎮静化していくというのが一般的な形です。しかし、この法律に関しましては、どうもそうはいきにくいということであります。それは、単に費用負担が大きいとかという問題だけではないと思うのです。そこにはやはり厚労省に対する不信感、あるいは、障害者政策に関しまして守ってほしかった一線を越えたことへの人間としての怒り、これが入っているように思うのですね。

 そういうことで、以下、少し中身に入ってまいります。私は、きょうは少し資料をもとにしまして、その後の実態ということを御紹介していきながら、その実態の背景にどういう問題があるかという問題点と、そして今とるべき道は何かということについて、分けながらお話をしてまいろうと思っています。

 まず、この施行後の実態でありますが、きょうは三つほど紹介しておこうと思っています。

 その第一点目は、やはり肝心の、障害を持った人々に対するこの負担が大変大きいということであります。

 私が最も深刻に認識していますのは、表面化した問題ということより、むしろ潜っている問題、つまり、何とかお金を工面して、そして利用料あるいは食費等の法定負担額を払っているという方々であります。恐らく生活の質や命の質にも影響があるのだろうというふうに思うわけであります。

 また、表面化している、データ化している問題もあります。お手元の資料でいうと二ページになりますけれども、これは授産施設の全国の連絡会組織でありますゼンコロという団体のデータですが、三月からこの九月までの七カ月間で六十四人が利用料負担を理由にして退所している。約五・四%というふうな数値であります。

 私ども、私が関係していますきょうされんの団体のデータによりますと、これは次のページにありますけれども、三ページの下の方なんですが、利用料の滞納者がふえてきています。四、五、六と、三月分しかここにはデータはありませんけれども、四月分で百六十一人が利用料滞納、五月で二百二十二人、六月には二百九十人ちょっと。このデータは、その後の状況をずっと聞いてまいりますと、どの法人にも数名ずつやはりこういう滞納者がいらっしゃるということであって、もっと広がっているというふうに思います。

 さらにつらい実態は、授産施設等で起こっている現象です。それは、働いている工賃がすべて利用料で消えているということ。場合によっては、払っている利用料の方が工賃よりも多いという現象も生まれてきています。また、障害児を含めて、障害が重いほどこの負担がかさむということも大変深刻であります。精神科の通院医療を抑制しているということによって、この医療抑制が将来どんなふうにあらわれてくるのか、これも大変心が寒くなる思いであります。

 実態の二つ目は、自治体間の施策水準の格差が生じているということであります。私どもは、データとしまして、お手元の四ページから五ページ、六ページをあけていただきますと、四ページには、千八百四十の市区町村、悉皆調査を行いました。十月現在で義務的経費に関してどういう独自施策を講じているかということで調べてみました。結果的には、四百十一、二二・三%の市町村で独自の義務的経費の軽減策を設けている。

 なお、これをさらに六ページで詳しく書いていますけれども、例えば京都府なんかでは、府下の全市町村が単独施策を持っていらっしゃる。次いで高いのが、神奈川あるいは愛知。県下の市町村が全く何もやっていないというところは、岩手、山口、佐賀であります。これはゼロですね。私どもは、こうした独自施策を講じていることをもちろん称賛するものではありますけれども、これほどまでに格差が生まれますと、これは看過できないというふうに認識すべきではないでしょうか。

 実態の第三点目は、事業所、事業者の悲鳴であります。さまざまデータが出ていますけれども、例えば、全国社会就労センター協議会の四月のデータでは、切りかわった時期に一二・八%の減収率である。また、東京都の通所施設の減収率は一五%である。これらはすべて平均値であって、私が知っているところでは、二〇%減収率のところも多々見られているわけであります。

 こうした事業者に対する減収は、直接、賃金を中心とした職員の労働条件に影響をしてきています。お手元の資料で、たしか七ページでしたか、職員の意識調査を約千二百六十五ケース集めてみました。やめたいという方たちが、将来、やや展望がないという方たちも結構いらっしゃるということは、極めて深刻でないか。つまり、この分野からの若者離れ、人材離れ、障害分野の劣化、こういうことが懸念されるわけであります。

 さて、次に、こうした実態を生んでいる背景は何かということについて少し言及をしてみようと思います。

 私は、この問題の背景には、本質的にはやはり応益負担問題があるんだろうと。すなわち、利用者の負担増、または自治体間の格差、そして事業者の悲鳴、これらに横たわっているのは、やはり今度の法律の真髄である応益負担制度ではないかというふうに認識をしています。

 少し角度を変えましょう。

 私自身も、今全く目が見えないんですけれども、障害の特性ということを少し考えてみました。障害とは何だろうと。本人の機能障害、私は目が、角膜が悪いということもあるでしょう。国連なんかでは、WHOでは環境要因との関係で見るという視点も言われています。

 私は、これに加えて、五つの特性を持っていると。一つ目は、自分では回避できなかったということです。二つ目には、障害というのはこうだろうなということを知っていてなったわけじゃなかったわけです。三つ目には、障害というのはもとに戻りにくい。四つ目には、こういったことを若齢で、若くして背負うということです。五点目には、万人みんなにその可能性がある。不可避性、不可知性、不可逆性、若齢性、そして普遍性。だから、個人ではどうにもならないんですね。社会の支援が必要なんです。

 私の知っているある母親が言っていました。藤井さん、障害というのは鉛を背負わされたような人生に感じます、今度の自立支援法というのは、鉛を背負った上に、その格好で山に登れ、そういうような感じがしてならない、しかも、この山というのは頂上がないんです、ずっと歩き続けるんです、こういうふうに言っていました。

 もう少し突っ込んで考えてみましょう。

 私は、本当に益だったら負担はいいと思うんです。問題は、障害者自立支援法で言う種々の施策が益に該当するかどうかということだと思うんです。排せつだの食事だの入浴、手話を含むコミュニケーション、移動、労働への支援、あるいは症状を保つための医療支援、これらは生きていくためのむしろぎりぎりの支援であって、到底、受益感、益を受けたという感じは得られないと思うんですね。たとえ一割とはいえ、障害から来る不利益、不都合を本人のせいにするという考え方は、これはどう見てもやはり理不尽で納得ができないと思います。

 実は来週にも、国連では障害者の権利条約が国連総会で採択されるそうであります。この障害者権利条約の中心概念の一つに、合理的配慮という言葉があります。初めて盛り込まれる概念です。この合理的配慮という概念は、障害がゆえに得た不利益、不都合、これを社会の側で調整、変更しながら支援をする、この合理的配慮を欠いた場合にはこれを差別と定義するというふうに書かれているそうなんです。我が国のこの障害者問題の目下の応益負担問題というのは、もしかしたらこの合理的配慮に抵触しないだろうか、権利条約の精神に背を向けないかということを懸念するものであります。

 最後に、私は、二つほど提言といいますかお願いしたいんですが、一つは、今とるべき道につきましては、改めてこの法を、応益負担制度を含めて、やはりもう一回これを考えていただきたい。もちろん、個別の対応策、緊急策、これは期待したいと思っています。しかし、並行して、もう一度、この応益負担制度を含めた検証作業をぜひともお願いしたい。

 さらにいま一つは、今も出ていましたけれども、本当は、自立支援法以外にもっともっと立法府で検討してほしいことがあるんです。障害者問題の基幹的な課題です。それは幾つかあるわけで、これについて、行政府と連携して、立法府として本格的に調整あるいは着手をしてほしい。

 その第一点目は、何といっても基盤整備です。お手元の八ページに、精神障害者関係の社会復帰施設の市町村別の設置状況を書いておきました。八割がゼロ地帯なんです、八割が。三障害統合といっても、やはり精神障害者の方たちについては、ここが頼りなんです。この基盤整備を、できれば何らかの立法措置、すなわち特別立法、時限立法を含めて、これを飛躍的に、新しいヒューマン公共事業として展開できないか。二つ目は、やはり所得保障です。自立の基本は、何といってもこれはやはり経済基盤ではないか。そして最後に、三つ目には、三障害統合じゃなくて、全障害統合の障害者政策を考えていただきたい、障害定義の見直しを含めて考えてほしいということであります。

 結びに当たりまして、こういう言葉を贈って、終わります。私たち抜きで私たちのことを決めないでください。この言葉というのは、障害者権利条約のあの八回の国連でのアドホック委員会で、一貫して底辺に据えられたスローガンでした。国連ですから、政府間交渉であります。しかし、政府の方々がこのスローガンを底辺に据えて、こうなったわけであります。だから、障害者権利条約はどうも価値が出そうなんですね。

 翻って、日本のこの障害者の自立支援法、どれくらい立法化の過程で障害者がかかわったでしょうか。まだ遅くはありません。ぜひ、三年後の見直し、また緊急の見直しに当たって、私たち抜きで私たちのことを決めないでほしい、これを尊重していただきたいということを切望しまして、意見陳述を終わります。

 どうもありがとうございました。(拍手)

櫻田委員長 ありがとうございました。

 次に、尾上参考人にお願いいたします。

尾上参考人 お招きいただきましてありがとうございます。DPI日本会議、障害者インターナショナル日本会議の事務局長をしております尾上と申します。

 私どもDPIは、世界各国に支部を持っている国際組織ですけれども、まさに来週、国連総会で障害者権利条約が採択されようという、そういう記念すべきときにお招きいただきましてありがとうございます。

 私たち抜きに私たちのことを決めないでほしい、そして地域生活をあきらめないということをスローガンにずっと取り組んできておりますが、特に、DPIは、身体、知的、精神、難病等、すべての障害種別を超えた当事者団体で構成をしておる団体ということで、かなり多岐にわたる論点がありますので、資料も含めて皆様のお手元に配付させていただいておりますので、それに基づいて説明をさせていただきたいと思っております。

 まず、意見陳述に当たっての基本視点でありますけれども、私自身、子供のときから、脳性麻痺、障害を持ち、子供のときにずっと肢体不自由児施設にいざるを得なかった、いわばみずから希望して入ったわけではなかったのにいざるを得なかった。そういった体験もあって、どんなに重度の障害があっても地域の中で当たり前に暮らせる、そういった自立生活を推進していきたいということ、そしてもう一つが、入所施設や病院から地域への移行ということを着実に進めていく、そういった観点からこの日本の障害者施策があってほしいなと思っております。

 私ども、インターネット等で呼びかけまして、二回にわたるアンケートを、ことしの六月と十月に、自立支援法のサービスを利用している障害当事者の方々からアンケートをとりました。

 配付資料の三ページ等にあるんですけれども、これは六月の第一弾アンケートです。四ページを見ていただければわかりますが、このとおり、障害が重ければ重いほどやはり負担がぐっと重くのしかかっているという姿が明らかであります。

 例えば、低所得二という、障害基礎年金一級だけ、月十万円足らずで何とか生活をしている方においてすら、月々二万五千円近くの負担、あるいはそれ以上の負担がのしかかっている。簡単に言えば、年収百二十万円ぐらいの方々にいきなり負担増が、年間でいえば三十万円になるというふうな負担増という結果が、そういう層がそれぞれの層において一番多いということなんですね。

 つまり、特に、私どものこのアンケートに協力をいただいた方というのは、脳性麻痺や筋ジストロフィーといった全身性障害あるいは知的障害、そういう重度の障害を持っていても、必要な支援を受けて地域で暮らしている。そういう重度の障害者であればあるほどやはり負担が重い仕組みになっているということが、データとしては明らかになっています。その結果、生活費を削らざるを得ないという方が四割近く、あるいは預貯金を切り崩したという方が二五%というふうな結果がそれぞれ出ています。

 そしてさらに、十月からの全面施行でどういう影響が出ているかということで、第二弾ということで資料の五ページ目のところにアンケートを入れておりますが、やはり、今回のコンピューター判定に基づく、介護保険になぞらえた障害程度区分というので、私たち障害者の特性やニードということが反映されなかった、十分聞いてもらえなかったということで、変えてほしいという方が三分の二、六六%以上に上っています。これは、身体、知的、精神、どの障害分野においても、変えてほしいということが多数に上っております。

 そして、とりわけ深刻なのは、六ページのところを見ていただければと思うんですが、十月からのサービスの支給決定によってサービスが減ったという方が、回答者四百名近くのうちの百名ということで、二五・八%の方が現実に、九月三十日から十月一日に月がかわるだけでサービスが減ってしまったという結果になっているんですね。

 その結果どういうことが出ているか。例えば、外出を減らすという方が八十二名、二一%に上ったり、あるいは入浴の回数を減らす、あるいはトイレや水分補給の回数を減らす、そしてその結果体調を崩すという方が、これは精神だけじゃなくて身体、知的、すべての障害にやはり共通してあります。

 例えば、これは筋ジストロフィーの方ですが、体位変換、やはり障害が重度になると寝返りも打てないですから、その体位変換も介護が必要なんですね。その体位交換がサービスが減った結果回数が減ってしまって、褥瘡ができ、痛みのために睡眠不足になって体調を崩すという、まさに命を削るような深刻な影響が出ている。これがあるがままの現実だということをお伝えしたいと思っております。

 そういったアンケートの結果に見られる傾向を、具体的な事例を通して、以下、レジュメでいえば三以下ですけれども、皆様のお手元の資料の七ページ以降で説明をしてみたいと思います。

 これは宮城県の名取市という市で現実に起きていることなんですが、九月三十日までは、このCさん、重度の脳性麻痺を持っておられる方ですが、一日二十四時間の介護を入れていたのが、十月一日からいきなり二百九十三時間、一月に三百時間減らされた、そういう支給決定が起きています。そして、この方の場合だけではなくて、その方以外にも、七十時間、九十時間というふうに介護サービスが大きく減らされている方が続出をしているわけであります。

 先ほどもほかの方がおっしゃられていましたけれども、尾辻元大臣がおっしゃっておられた、現行サービス水準を下げないんだということが本当にこの自立支援法の趣旨、あるいは国会での確認ということならば、こういった事態がなぜ起きているのか、ぜひ検証をお願いしたい、そして見直すべきは見直していただきたいというふうに思います。

 そして、先ほどの例だけではなくて、これは沖縄県の例です。九ページのところですけれども、この方は名前も出していただいてむしろ訴えてほしいということでしたので、お名前を出しています。沖縄県の大城さんという方で、筋ジストロフィーの障害をお持ちで、小学校四年から国立の筋ジス病棟におられたわけですが、小学校四年から高校卒業までの八年間ずっと施設にいて、毎日同じような変わりのない生活の中で、一生死ぬまでこのような生活が永遠に続くのだろうか、自分の生きている意味がないのではないかというような絶望的な気持ちであったところが、同じ障害者が運営をしている自立生活センターやあるいは高校の担任のサポートがあって、どんな重度の障害があっても施設じゃなくて地域で生きていけるのか、あるいは高校を卒業したら大学にも進んでみたいな、そういう夢を持って、まさに支援費制度が始まったと同時に、夢に燃えて自立生活を始められたわけです。

 ただ、今現在、一日十一時間の介護しか認められておりません。ですので、四月からの応益負担ということの自己負担に加えて、足りない分の負担額ということで月額十万円の自己負担を強いられる。ということは、結局、年金と手当全部がその応益負担と不足額にかわっている、消費生活どころではない現状なわけですね。そして、その結果、本当に悲しいことなんですけれども、学費を払うことができず、自主退学といいますか除籍になってしまったということです。

 大城さんからのメッセージです。せっかく生きる希望を持っていたのに、また施設に入所している感じになっています。重度障害者は人生が短いです。しかし、死ぬときに、生きていてよかった、最高の人生だったと思い人生を終わらせたいです。だから、一日一日を大切にして、社会にも貢献できるように勉強したい。

 そういう夢を持っておられる青年の、その夢を打ち砕くのがまさか自立支援ではないというふうに思うんですね。こういった現実に率直に耳を傾けていただき、いわば国政の場で解決に当たっていただきたいというふうに思っています。

 それ以外にも、重度障害者のサポートはやはりこの自立支援法で欠けている部分が非常に多くて、十三ページのところですけれども、これはグループホーム、施設や病院から地域移行といったときに非常に重要な資源と言われているグループホーム、ケアホームが、この十月から新しいサービス体系になりました。その結果、ケアホーム等では、今まで、九月三十日までは認められていた一人一人のホームヘルプが認められなくなったんですね。その影響が深刻に出ております。

 もちろん、小規模加算や経過措置やいろいろなものを御配慮いただいたというように思っていますが、それでも、例えばこのグループホームAの場合でいいますと、世話人さん以外の報酬で見ますと月二十三万円以上の減収、介護時間でいえば月四十四時間も減っているということになります。そして、とりわけ今回の報酬単価やそういう仕組みを重ね合わせてみますと、重度であればあるほど逆に九月三十日からの減り幅が大きい、つまり、重度のサポート体制を欠いた状態になっているわけですね。

 となると、結局、施設からの地域移行といいながら、やはり重度障害者は一生施設だねという話になってしまわないだろうか。つまり、施設から地域へということの逆流現象が起きないように、ぜひそういう意味で、グループホームでの、とりわけ重度の方々への個別の支援としてのホームヘルプをお認めいただきたいというふうに思っております。

 そしてさらに、知的障害の同じ事例ですけれども、十五ページのところ、これは移動介護の問題でございます。

 これはある地域の方の例ですが、知的でひとり暮らしをされている方、現実にやはり一番大きくサービスが減ったのは移動介護であります。移動介護が月五十時間、九月三十日まで認められていたのが、この地域では、地域生活支援事業の移動支援事業になると、月二十時間、一律上限になってしまって、五十時間が二十時間に減ってしまったんですね。

 特に、障害者の場合、自立と社会参加、その社会参加でとりわけ重要なのが移動介護だったというように思っていますが、この移動介護が個別給付から外れてしまい、地域生活支援事業になった。しかも、地域生活支援事業が、やはりこれまでのサービス水準を維持し、さらに発展させていくためには、財源としても大きく不足をしているという状況の中で、そういった移動介護、移動支援の上限設定とかという、深刻な影響をもたらしているということを確認しておきたい。

 そういう意味で、ぜひ移動介護を個別給付に戻していただくとともに、少なくとも当面、この地域生活支援事業について、現行のサービス水準を守る、あるいはもっと引き上げていくという何らかの仕組みが要るのではないかというふうに思っております。

 さらに、精神の社会的入院の解消、これも非常に重要な問題であります。十七ページに引用しておりますのは、朝日新聞の九月五日の社説でございます。

 今回、自立支援法の障害福祉計画の中で、社会的入院の解消ということもテーマにはなっていたと思うんですが、それがこんな、ある意味でトリッキーなことだったのかみたいなのが、退院支援施設という、いわば精神科病床の看板をつけかえて、書きかえて、六十人の病床が急に来年の四月から退院支援施設ですよということで、そこにおられる当事者の生活は何一つ変わらないのに、これでいわば医療から福祉に変わりましたというふうな、これで社会的入院の解消ということでは決してないだろうというふうに思います。本当に、真っ当に地域で暮らせるような住まいの確保や、ピアサポートを初めとした人的なサポート体制の充実をお願いしたいと思っています。

 そして、さらに十九ページでありますけれども、これは私どもが二〇〇三年に実施をいたしました支援費制度時代のアンケートでございます。このとき、今でいう重度訪問介護、その当時、日常生活支援という類型でしたけれども、重度障害者のサポートというのはやはりNPO系がある意味で益に関係なくサポートしてきた。とりわけ日常生活支援は、単価が低いということの中で、ほかの類型に比べて、身体介護とかに比べても、よりNPOが中心にサポートしてきた。七四%も、いわば四分の三近くNPO系が重度障害者のサポートをしてきたということ、これはアンケート結果で出ているわけですね。

 そういう意味で、重度障害者の移動介護や重度訪問介護等はNPO系がサポートしてきた。ところが、社会福祉法人等の減免の対象にもならない。さらに、重度訪問介護が、この九月三十日までの単価と比べると四分の一近く、二十数%も減っているというのが現実であります。今回、通所施設等の、八割から九割とかいう話がマスコミ等で報じられていますけれども、やはりこういった在宅サービス、とりわけ重度障害者向けのサービスの充実ということに御配慮をお願いしたいというふうに思っています。

 非常に雑駁な説明になってしまいましたけれども、ぜひ、この自立支援法、四月からの施行で十カ月、この十月からの施行から見てわずか二カ月でこれだけのたくさんの問題が出てきている、そのことの深刻さ、影響の重さを十分御配慮いただいた上で、今後の国会審議に生かしていただきたい。そして、本当に、どんなに重度の障害があっても当たり前に地域で暮らせる、先ほどの大城さんの言葉をそのままおかりすれば、本当に生きていて、一生生きてきてよかったなと思える日本の社会であってほしいなと思います。

 よろしくお願いいたします。(拍手)

櫻田委員長 ありがとうございました。

 次に、池添参考人にお願いいたします。

池添参考人 私は、障害乳幼児の療育に応益負担を持ち込ませない会の事務局長をしています。仕事は、子供の発達や子育てに悩むお母さんたちの相談に乗る仕事をしています。

 大変緊張しております。なぜならば、いつもはもっと若いお母さんたちを前にお話をさせていただくので、きょうは随分勝手が違います。それともう一つ、全国からたくさんの、障害を持つ子供を育てているお母さんやお父さんたち、関係者の方からの熱い期待を背中に受けて、きょうお話をさせていただきたいと思っています。

 障害者自立支援法と、同時に改正された児童福祉法が本格実施されてから、費用負担の大きさから、施設利用を取りやめた、療育に通う回数を減らしたという声があちこちから聞こえてきます。きょうは、その実態を四点に絞ってお話しし、ぜひとも改善をお願いしたいと思っています。

 こういう資料が私の資料です。一つ目は、障害乳幼児の分野での問題点です。

 奈良にある奈良県総合リハビリテーションセンター内の障害児通園施設わかくさ愛育園では、十月一日以降、まず保育や給食に大変多くの欠席が見られるそうです。この園では、一日療育を受けると給食費は六百円かかります。大多数の家庭は軽減が受けられず、来れば来るほど大変な額で、二十日通うと一万二千円かかります。きょう、その施設の保護者の方、篠原さんと一緒に来ました。随行で一緒に来ているんですけれども、彼女は二万五千円の負担がこの十月からふえました。

 九月末で二人退園されました。十月の運動会までは何とか出席されていた方も、それを境にぐっと減り、十六人が一グループの集団活動の日に、五、六人しかいない日もあるそうです。もう既に大きな影響が出ています。費用負担については、この資料の「私たちの声をきいてください!」のところに出ています。

 それからもう一つ、児童デイサービス。

 この事業は、既に自立支援法の介護給付の事業ですが、支援費制度に比べて報酬単価が上がり、それも人数の少ない施設ほど運営しやすいようにと高い単価で、事業所にとってはよいように思われたのですけれども、十人以下の小規模の施設、事業所に通わせている場合、一日の費用が大きな施設より三百五十八円高く、月十回通うとそれまでの三倍以上、七千五百円となります。これによって退園が相次いだ鹿児島県喜界島の児童デイサービスは、とうとう休園に追い込まれてしまいました。この島にはここしかありません。

 我が子の障害が告げられたとき、目の前が真っ暗になってしまった親の気持ち、少し想像力を働かせていただければわかっていただけると思います。その暗い気持ちを受けとめ、励まし、支え、子供との接し方を教えてくれるのが、療育を行う通園施設や児童デイサービスです。最初は通うことに消極的でも、発達していく我が子の姿に励まされ、下を向いていたお母さんも次第に笑顔を取り戻し、子供とともに人生の新しい一歩を踏み出していくのです。先日話を聞いた吹田で重症心身障害児を育てているお母さんは、療育は子育ての出発点です、そして将来にわたってのホームグラウンドですと言われました。いかに早く療育と出会うかが大切なのです。

 また、あるお母さんは、私たちは選んで障害児の親になったわけではありませんから、障害のことに詳しくありません、戸惑いの中で専門家からのアドバイスをもらって安心して子育てができるのです。育てにくさを抱えている軽度発達障害の子供たちも同じです。障害程度の重い軽いにかかわらず、療育施設は子供や親の人生に大きな影響を与えると言っても過言ではないのです。

 十月からの本格実施に当たって、就学前の通園施設には食費の減額が導入されましたが、その際、保育料程度の負担がその根拠にされています。しかし、実際に各地で保育料と減額された後の支払い額を比べてみると、やはり通園施設との負担には差があります。

 本日お配りした資料は、広島県の親の会がつくったものです。これを見ていただければわかるように、国の新しい減額区分である所得税二万円未満の世帯で保育所の場合と比べると、三歳児でも一万六千五百円ですから、約六千円の差です。それぞれの自治体の保育料と比較するともっと差が開きます。先日TBSの取材に応じた鎌倉の通園施設の保護者は、保育園に入りたくても障害があるために入れないのに、通園施設での保育料が高いのは納得いかないと話しておられました。

 また、その上、利用料以外に多くの費用が必要です。家の近くに通園施設がなく、宮崎県の児湯郡から宮崎市内の通園施設に通う今井さんは、片道四十三キロの道のりを週三回車で通います。ガソリン代は月五万を超えます。これに減免はありません。肢体に障害のある場合は、補装具や車いすなどにお金がかかります。仙台に住む小関さんは十六万円のバギー、十五万円の座位保持いす、七万円の靴の中敷き、六万円の補装具、どれも子供が生活するために必要です、購入しても体の成長が早くて長くは使えませんと話しています。

 実際に保育料と同じではないのです。そして、障害のある子供の子育ては、精神的負担と経済的負担両方が若いパパやママにのしかかっているのです。本当にこれだけの経済的負担をかけてよいのでしょうか。奈良県リハビリテーションセンターの通園施設に通う保護者の皆さんは、わずか一カ月の間に二万筆の署名を集めました。きょう持ってきています。利用料で通園をあきらめたくない子供と保護者の切実な願いです。私たちの、障害乳幼児の療育に応益負担を持ち込ませない会で作成したブックレット「自立支援法と子どもの療育」は発売と同時に売り切れ、現在増補版をつくっています。それだけ全国の関係者の危機感が強いと言えます。

 第二点目は、親元を離れて生活している障害児施設の問題に移ります。

 通園施設と同じく、十月から契約制度が原則となり、費用の一割負担が始まりました。保護者が遠くに住んでいる場合もあり、これらの変更を保護者に説明する時期、方法などの点で不十分さがあることを指摘します。結果、契約がスムーズにいかず受給者証が発行されていない、そのために、契約すべき児童であっても契約に至っていないといった、制度を始める上での前提そのものが整っていないのに、利用料負担だけが先に走っているという実態です。

 きょうの朝日新聞の、この「弱者自立押し上げを 分裂にっぽん」のところに、大阪のすみれ愛育館の事例が載っています。ぜひ、お読みください。

 知的障害者福祉協会の児童施設部会が行った実施直後の緊急調査によれば、負担金を捻出するためにほかのパートの仕事を見つけなければならない、家庭への引き取りを考えているなどの声が、負担金の多さに出ています。また、施設や学校関係者からは、退所者が多く、深刻な事態になりつつあるといった声を聞いています。

 ふだんは近隣の養護学校に通っている子供たちですけれども、修学旅行の費用などがこれまで措置費で賄われていました。でも、保護者負担になりました。保護者から費用徴収ができるかどうかが不確定だとして、本来は十月以降に行う修学旅行を九月に繰り上げて実施した養護学校もあります。費用の負担の大きさに加えて、余りにも急な制度変更に、児童施設とそこで生活する子供、保護者が翻弄されています。

 もう一点、障害のある子供たちの放課後の問題です。

 障害者自立支援法のもとで実施される介護給付となっている児童デイサービスは、十八歳までを対象とする福祉サービスです。障害のある子どもの放課後保障全国連絡会が行った全国調査では、学齢期の放課後活動を実施する児童デイサービス事業所は、今回の自立支援法で児童デイサービス二というものです、報酬単価が低く抑えられたため存亡の危機に直面しているという調査結果が出ています。そして、実際にやめた事業所も出てきています。

 〇五年までは、厚生労働省は、各地に広がる障害児の放課後を保障してほしいという声に押されて、小学生は児童デイサービスで、中高生は新規補助事業のタイムケア事業で対応していました。しかし、障害者自立支援法の具体像が明らかになる過程で、放課後活動の位置づけはだんだん小さくなってきました。厚生労働省は、障害児タイムケアとともに、地域生活支援事業の日中一時支援事業として実施するように推奨しています。市町村の独自財源に頼るこの事業は、地域間格差を生み、住んでいる地域で受けられるサービスの違いを子供のところでも生み出します。障害のある子供を育てていても働き続けられる条件をつくることや、放課後や長期休暇に子供をテレビやビデオ漬けにしないためにも、障害のある子供たちの居場所が必要です。しかし、多くの事業所は運営が困難になり、子供たちの居場所が失われようとしています。

 四点目に、施設の運営にかかわる問題です。

 十月二日の月曜日の朝、京都のある施設でお母さんから電話がかかりました。開口一番、「せんせ、ごめんなさい」と言われたそうです。それは、施設に入るお金が日額現員払いになり、病気などで休むと施設の収入が減ることを申しわけなく思ったお母さんの言葉です。日払いでは、病気にかかりやすい乳幼児が対象の施設は安定した経営ができません。資料にもあるように、難聴幼児通園施設半年間で一千三百万円程度の減収が見込まれています。「こんなに減る施設の運営費!」のところに書いてあります。

 子供の発達を促し障害を軽減する働きかけや、親の障害の受けとめをサポートするなど、高度な専門性が要求される業務であるにもかかわらず、安定した雇用が保障できず運営も脅かされます。保育所は子供が休むと収入が減るのでしょうか。学童保育所や児童館はどうでしょうか。学校はどうでしょうか。

 すべての種別の施設において現在の運営費が確保できるよう報酬制度を見直していただくことをお願いいたします。

 乳幼児の療育も、学童期の放課後の居場所も、児童の入所施設も、障害や特別なニーズがあるから必要なのです。しかし、障害者自立支援法は、障害があるから利用料が必要ですと言っているのです。それは、あなたが障害児を産んだのだから責任をとりなさいと言われているようでつらいと保護者の方は言われます。障害があってもなかっても、どの子も子供として大切にされる権利があります。そして、子育て支援というのは、どこに住んでいても安心して子育てできるために、子供にもしも特別なサービスが必要になっても社会がサポートしてくれるというものではないでしょうか。

 子育て支援、虐待の防止などの視点も重要です。子供と保護者の希望を利用料負担でつぶさないでください。子供たちが通う施設の日額現員払いで運営の危機にさらさないでください。子供の利用する施設やサービスに、保護者の収入に関係なく払わなければいけない利用料負担を撤回してください。

 子どもの権利条約で言われているように、障害児の特別なケアは原則無償とし、日本国じゅう、どこの地域においても、だれもが安心して子育てできる条件を先生方と厚生労働省で実現していただくことを強くお願いします。

 最後に、わかくさのお母さんの文章を少しだけ聞いてください。

 障害者自立支援法の障害乳幼児への適用は、せっかく得た療育の場を去らねばならない、利用を制限しなければならない現実になっています。この機会を得るのに何カ月もかかったのに、せっかくできるようになったのに。療育は連続して大きな効果を得られます。この子供たちは、これから先、大人になるまでにはたくさんの壁があるやもしれません。幼い間は大人が守れるときもあるでしょう。しかし、やがては大人の保護から離れていく日が来ます。それが自立です。そして、そのときのために、幼いうちから少しでも力をつけてやりたいのです。

 保護者のたくさんの気持ちをどうか聞いてください。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

櫻田委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の方々の御意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

櫻田委員長 これより参考人に対する質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。高鳥修一君。

高鳥委員 自由民主党、高鳥修一でございます。

 参考人の皆様におかれましては、本日は大変お忙しい中を厚生労働委員会にお越しをいただき、現場の声、そして多様な御意見、御自身の体験をお聞かせいただいたことに対して、まずもって心から厚く御礼を申し上げます。私自身、皆様の御意見を聞かせていただいて大変参考になった、そのように感じております。

 まず、私の立場を少しだけお話しさせていただきたいと思います。

 私は七歳になる長男が知的障害児でありまして、ダウン症でありますが、私自身が手をつなぐ育成会の会員であります。親の会の皆様の声は日ごろよくお聞きをいたしております。そしてまた、市内すべての障害者の施設に実際に足を運んで、事業者の皆さんの声も聞かせていただいております。きょうは、私自身も当事者の一人として質疑に立たせていただきます。

 まず、親の立場から一言申し上げたいことがございます。それは、同じダウン症児の母でもある歌手の水越けいこさん、この方の歌で「You are my life」という歌がございます。

  どこまで行けるだろう 夏空の坂道を

  つないだ指先の ぬくもりを今日も感じて

  You are my life You are my life だから

  たった一日でいい あなたより永く生きたい

  たった一秒でもいい あなたより永く生きたい

自分の子より長く生きたい、普通の親はこのように願わないわけであります。しかし、これは知的障害児を持つ親として共通の切なる願いであるというふうに私は思います。

 我が子よりも一日でも長く生きて、我が子が幸福に生涯を閉じるのを見届けたい。制度が変わったから、法律が変わったから、自立支援法になったからそう思うんじゃないんです。これは、子を思う親の心というのは制度や法律を超えたところにある、そのことをまず私は申し上げたいと思います。

 そして、自立支援法については、私は、見切り発車の部分があるけれども、方向としては間違っていないというふうに思います。

 見切り発車と申しますのは、自立するための前提条件が十分に整っていないということであります。

 方向として正しいと申しますのは、親として、親亡き後、我が子がどんな人生を送っていくのか、これが最大の心配事であります。できればだれか身近な肉親に見てほしい。しかし、それも兄弟、あるいはそれ以上離れた間柄になれば負担はかけられません。施設というのはやはり隔離された世界であります。できることなら、だれかの力をかりて、生まれ育った町中で暮らし、親亡き後も変わらぬ生活をさせてやりたい。逆に、親がいなくなった途端にだれかが迎えに来て、今までの生活をすべて失う、これは余りにもふびんであるというふうに思います。

 私自身は、町中で少人数で暮らして他人に見てもらうというシステム、これが一層充実するのが理想ではないかというふうに思います。その前提として、差別や偏見のない社会づくりにぜひとも取り組んでいく必要があると強く考えております。

 そこで、まず中島参考人にお伺いをいたします。

 配付された資料や御著書等によれば、御自身も障害児の親として、障害者の自立ということをさまざまな角度から考えてこられたのではないでしょうか。御自身の経験から、障害者の自立には何が必要と考えておられますか、お聞かせ願います。

中島参考人 私の子供の場合は、生まれたときからの脳性麻痺ということで、ことし二十になりまして、横浜市のグループホームで自立生活をスタートさせた。ただし、自立という点でいきますと、先ほど私が申し上げたような消費者としての自立もなかなか難しいという状況、身体と知的が重複しているということもあるんですけれども。

 それよりも何よりも、今の御質問にあったように、私自身が親として子供の自立というものをこれまで余り重要に考えてこなかったなと。私自身が子供に対して、いろいろリハビリ等、勉強等で熱中して世話をしてきたという経緯もございますけれども、それが果たして本人の自立のためにどれだけ役に立っていたか、あるいは役に立つのかというような視点が、私には大変欠けておりました。そういう点で、私自身、やはり子供が小さいころからこの子供の自立ということを考えていかなければいけないなというように今反省しています。

 もう一つは、今回グループホームで一人で暮らしを始めたということによって、私は親としてかなり所得の面で損をしたということがあります。といいますのは、やはり障害基礎年金とかさまざまな給付金というのは本来本人に行くべきお金だったんだなということに改めて私は親として気がついた。今までは、結局家庭にそういうお金が入っているわけですから、親が主導権を持って消費をしておりますので、私自身がそのお金をどういうふうに配分しようかということを決めていたわけですね。だけれども、そういったものがすべて子供に行くんだということが初めてわかったし、また、さまざまな恩典、駐車禁止の除外車章とかそれから高速料金の割引とか、そういうのも、ああ、こういうのは本人が使うものなんだということを初めて私も親として知った次第です。

 つまり、現状の制度では、障害者に対するいろいろな補助というものが実は親の補助になっている部分というのは非常に多い。その経緯を引きずったままいきますと、本人が二十になって、いざ自立しようと思ったときに、なかなか親が本人の自立というものを経済的にも考えにくいという状況にあると思います。それを私が今回親として感じたという次第です。

 ですから、親にとっても本人が自立することが、言い方は悪いですけれども、得になるような仕組みといいますか、自立させてよかったなと思えるような仕組みというものを今後つくっていく必要があるというふうに思っています。

 以上です。

高鳥委員 大変ありがとうございました。

 まさに目からうろこと申しますか、障害者に対しても経済の面からの、あるいは親の意識の自立ということで新しいお話を聞かせていただきまして、本当にありがとうございました。

 次に、宮武参考人にお伺いをいたします。

 宮武参考人は、自立支援法は障害者の就労支援を強化するものというお立場だと思います。御自身の経験を踏まえて、こうした就労支援を全国で進めていく、その際に留意すべき点、特に重度の方の就労についてアドバイスをいただけることがありますでしょうか。

宮武参考人 一つは、意識の変革が必要だと思います。既存の職業訓練等ありますけれども、先ほど御紹介しました私どもの訓練と支援のシステム、これは多様な個々人のニーズにこたえていくような支援のシステムでございます。これが一つ。それと、やはり地域ぐるみでそれを支えていくネットワークづくり、これが肝要かと思います。

 それと、重度の障害の方について、実は、知的障害で重度の方の雇用がまさに今取り組みが始まっております。私どもの「すきっぷ」でも、重度の知的障害、行動障害を持った方の就労支援を始めております。違った視点、方法が必要ですけれども、やはり可能性としては非常に伸びていきます。それは、いろいろな形の工夫が必要ですけれども、持っている能力、可能性をいかに引き出していくか。

 実は、ある特例子会社の中でも重度の知的障害の方の就労支援が始まっております。今、重度の障害者の就労の場の拡大として、実は東京大学で四月から構内の清掃を、知的障害者の方十名のチームを組んで、それで本郷のキャンパスで清掃が始まっております。その中には重度の方も入っております。ですから、就労の形態としてグループで働くということが重度の方の就労の場をさらに広げていく、そういうことが言えるかと思います。

 以上でございます。

高鳥委員 大変参考になる御意見、ありがとうございました。

 次に、戸枝参考人にお伺いをいたします。

 重度障害者の地域生活支援のために早急に改善をすべき点、今お考えになっている点がありましたら、ぜひお聞かせください。

戸枝参考人 お答えします。

 地域生活支援をしていく場合に、地域生活支援の方に、例えば、報酬単価も含めてインセンティブが働かないと事業所も動かないということがありますし、また、障害当事者や御家族もインセンティブの働いていない地域生活支援ということを信じないというふうな問題が起こっていると思います。

 先ほど、日額単価、日割りにした問題が出ていましたが、介護保険開始のときに、日割りにするタイミングで、例えばデイサービスの報酬単価は一・二倍にして事業所の減収分を補うということをしたのに、逆に自立支援法では大体二割ぐらい減っている。一日の出席者がきちんと来ない場合には受け取れないということで事業所は減収になったということで、日割り自体は、サービスが一日一日選べるということでは、障害者の選択を広げるということで僕自身は正しい方向性だと思っているんですが、やはり財源の問題で行き詰まっているという気がしているんです。

 さらに、重度障害者の地域生活の拡大ということでは、一つはやはりケアホームですね。

 先ほどDPIなんかからもありましたが、ケアホームにホームヘルプを個別に、入浴、排せつ、食事の介助、そういったものをするために入れることで重度障害者でも地域で暮らせるということを担保していかないとやはり難しいだろうというふうに思っています。この件に関しては、私たちの団体でも厚生労働省と再三協議いたしましたが、やはり限りある予算の中でここに配慮することは難しいということが、厚生労働省もわかっていると思うんですが、できないというような回答をいただいていまして、ここはまさに、財源論だとすると政治の役割ではないかということを確認した上で、グループホーム、ケアホームに個別にホームヘルプを入れることをぜひお願いしたいということが一つ。

 もう一つは、知的、精神障害者が社会参加する場合に、常時見守り、危機回避をする人が必要だということで、自立支援法では行動援護という新しいサービスができたわけですが、やはり対象が、まだ基準が厳し過ぎるということで、なかなかサービス、個別支援が移動介護で必要な場合に出ないという状態が起こっています。これは重度障害者の、先ほど言った身体障害の方の単価が下がってなかなか介助者が見つからないという問題もあわせて、もう一度社会参加の部分を見直していただきたいということですね。

 さらに、そこをきちんと個別に必要な人だけに届けていくというふうに考えた場合には、介護保険の場合にはケアマネジャーがそこの給付管理をしているということを考えると、自立支援法の場合、ここの相談支援体制をきちんとすることで本当に必要な人に積み上げることができると考えますから、そこの相談支援体制の整備をぜひ一層お願いしたいということを私としては意見として述べておきます。

高鳥委員 大変貴重な御意見、ありがとうございました。

 次に、藤井参考人、尾上参考人、池添参考人にお伺いをいたします。

 福祉サービスの向上というのは、障害者本人の利益を最優先で考えるべきであると思います。サービスの向上には、事業者のコスト意識を喚起する、このことも必要であるというふうに思います。これまでの応能負担のままで、質、量にわたる向上が可能であるのか、御意見を簡潔にお聞かせ願います。

藤井参考人 おっしゃるとおり、私もやはり事業者の質に関しましては大変心配をしております。ただし、応能負担において、私はそれは可能ではないか。

 それはやはり、一つは、今のサービスをチェックする第三者委員会とか、あるいは本当の権利擁護に関するシステム、これは幾つかあるんですけれども、これがやはり機能していないということであります。したがって、応益負担だからサービスの向上が担保されるということは少しやはり論理が違うんじゃないか。

 私は、やはり、成果主義だとか競争原理と別なんですが、本当の成果とか、いい面での実践を競い合うということは、これは当然なくちゃいけない。そういう点でいうと、それにかわった、本当の意味でのそれをきちんとチェックする機能、これを内外につくるということを考えていくべきじゃないか。

 したがって、応能負担あるいは応益負担と、その成果あるいはいい競争ということは、直接はつながっていかないというふうに私は思っております。

 以上です。

    〔委員長退席、伊藤(信)委員長代理着席〕

尾上参考人 まさにサービスの質の向上というのは、障害当事者という点から非常に重要な点だというふうに思っております。とりわけ重要なのは、サービスが選択ができるというところではないか。その点では、まさに措置から支援費という、二〇〇三年の段階で、いわばNPOやそういったところが参入ができ、そして自分たちに必要なサービスを自分たちでつくるというような中で、多少サービスが選べるようになってきたのかなというふうに思うんですね。

 ですから、応能負担か応益負担かでサービスの質というのではなくて、言うならばサービスが余るぐらいになって、そして、いわばこんなサービスしかやらないところはだれも契約しないよという、つまり、地域でのサービス基盤が過剰ぎみになって初めて選択というのがきき、そしてサービスの質の向上というのができるのではないか。

 だとすれば、応能か応益か以上に、今、地域のそういった基盤が、ホームヘルプを確保したり事業所を確保することが困難な状態、つまりほかに選びようがないような状態だと、逆に事業者から逆選択がきいてしまって、サービスの質の向上につながらない結果になってしまわないかということを懸念しております。

池添参考人 子供の施設サービスにコストはやはりなじまないというふうに思います。高鳥先生のところの子供さんも、例えば保育所とか療育施設に通われるのに、うまく定員があいているときに生まれられたとは限らないと思うんです。子供が生まれるときはさまざまですので、通いたいと思ったときに施設の定員があいていなければいけませんので、例えば常に定員をあけておくなんということも障害児の施設には必要です。そういう意味で、それでいくとコストは全くなじまないということ。

 それと、今度、子供がたくさん休むからたくさんとったらいいじゃないか、定員を超えて子供をとったらどうかということが提案されていますけれども、当然のことながら、子供がたくさん来れば、それだけ療育の中身というのは薄まるわけですから、やはりコストということとはちょっと相入れないように思います。

高鳥委員 同じ質問を中島参考人にもお願いしたいんです。

 今までの応能負担のままでサービスの向上が可能であるかどうか、その点をお聞かせ願います。

中島参考人 私は、冒頭にも申し上げましたように、まさに大学の学生の実態、能力がないから親に月謝を払ってもらっているわけですね。だけれども、その状況で、結局、大学生が教育サービスの消費者として本来の役割を果たしていない、それが今の大学の教育の質を著しく下げているということもありますので、やはり費用を払った者がその見返りとしてしっかりとしたサービスを受ける。支払い手とそれからサービスの受け手というものを部分的にせよリンクさせておくことが、やはり長期的にはサービスの向上につながるんじゃないかなというふうに考えております。

高鳥委員 大変貴重な御意見をありがとうございました。

 本日は、限られた時間でありますけれども、現場であるいは第一線で御活躍の皆様の体験に基づく非常に貴重なお話をお聞きできたことをありがたく思います。障害者自立法に関しまして私も強い思いがありますので、いずれ、さらに踏み込んだ議論をさせていただきたいというふうに思います。

 参考人の皆様におかれましては、今後とも御指導、御鞭撻を賜りますことをよろしくお願い申し上げます。本日はまことにありがとうございました。

伊藤(信)委員長代理 次に、福島豊君。

福島委員 本日は、参考人の皆様には、大変お忙しい中、国会までお越しいただきまして、さまざまな経験、また実践に基づいた貴重な御意見をいただきまして、心から御礼を申し上げたいというふうに思っております。

 公明党としましても、障害者自立支援法、審議の段階、また施行後におきましても、さまざまな御意見をお聞きしながら、少しでもその円滑な運用ができるようにということで努力をしてまいりました。

 きょうは、引き続きさまざまな御意見があったわけでありますけれども、その一つ一つの御意見というものが、しっかりとまた今後反映されるように努力をしていきたいというふうに思っておりますし、そうした意味で、貴重な御意見をお聞きできて、重ねて感謝をいたしておる次第でございます。

 障害者自立支援法をどう考えるかというのは、私もこの二年ほどずっと悩んでまいりまして、いろいろと御指摘ありますように、問題がある、それは率直に私も思います。

 ただ一方で、なぜこの法律が必要なのかということも考えなきゃいけない。障害者の福祉サービス、世界の先進国の中でも、我が国はいまだ低い水準にとどまっているということも間違いありません。これをどういうふうに将来にわたって拡大をしていくのか、非常に大切なポイントであります。

 また、従来、施設福祉というものが中心だったんじゃないか。私も議員になるまで都外施設という言葉をよく知らなかったんですが、東京都の施設が、青森であるとか非常に遠方にある、山の中にあると言ってもいいのかもしれませんけれども、そういうところに多くの方が入所して生活している、地域にどうやってこういう方々に戻ってもらえるのか。こういった施設から地域ということ、これも自立支援法の中の非常に大切な理念だというふうに思います。

 また、障害者の福祉サービスの利用というものは、お上から与えられるものではなくて、権利としてそういうものがあるんだということを明確にするというようなところも私はあるというふうに思っています。

 ただ、その問題が、今までの障害者福祉サービスの体系から移行していくに当たって、さまざまなきしみといいますか、また痛みといいますか、があって、これはこれでしっかりと真っ正面から受けとめて、対応できることはしっかりしていかなきゃいけない、そういう両様の思いでおるわけなんです。

 まず、戸枝参考人にお聞きをしたいのでありますけれども、施設福祉から地域福祉へ、これがNPO法人の目指しているところだと思います。障害者自立支援法がこうした施設から地域へという理念を実現するに当たって果たす役割、こういうものをどういうふうに考えることができるのか、もちろん報酬等の決め方でなかなか理念が十分反映されていないというところもあるわけでありますけれども、この点についてお考えをお聞きしたいと思います。

戸枝参考人 お答えします。

 この間、障害者自立支援法で大きな混乱が、反対運動も含めてあったというときに、僕自身いろいろ関係者の方たちにお話を聞いていて感じるのは、だれ一人として収容保護主義が終わることを嫌がっている人はいないということを確認したんですね。

 これは、どういうことかというと、事業者の方たちも、地域福祉をやった場合にきちんとやれるか、もっと言うと、移すにはかなりの作業が要るわけです。今、本当に二十四時間大変な思いをして事業をやっているとしたときに、やはり地域移行の社会基盤整備をしようと思っても、職員が外に出て頑張るということができないぐらいぎりぎりの状態で施設を支えているわけですね。そうだとしたときに、どうやってするのかということに対して、皆さん、不安に思っている。

 親御さんだって、できれば親元で、近くで暮らしていけるということが望ましいと思っていても、今までは、やはりここは大事だと思うんですが、入所施設支援の果たしていた役割、生存権を保障する場合にこれしかなかったということで、職員の皆さんも親御さんも一生懸命入所施設支援をつくってきた。

 そういうことを確認いただいた上で、ここをまた、先ほど説明したように、自立支援法の仕組みを使いながら、やはり町の中で普通に暮らすというふうに移していっていただきたいということで考えると、ノーマライゼーションの理念を否定する人はこの国にはだれもいないと考えた場合に、地域にインセンティブを働かせていただくと再三申していますが、そのためには、地域福祉にお金がやはりきちんとついているということと、もう一点、移すにはそのための経費がかかるということで、普通の国は地域移行する場合にそのための特別予算を基金などを整備してやるわけですね、そこをやはり御配慮いただかないと進んでいかないということを、僕自身は強く感じています。

福島委員 ある意味で、理念はいいけれども、財政的にもっとがちっと体制を組んでしっかりやらないと、理念そのものが十分展開されないよという御指摘なんだと思います。それはしっかり重く受けとめて、我々もそうした取り組みが政府としてできるように頑張っていきたいというふうに思っております。

 次に、就労の話なのでありますけれども、きょうは藤井さんがお越しでありますが、日中活動の場ということで、小規模作業所、本当に大切な福祉基盤として全国各地に六千を超えて存在している。今回の自立支援法の施行に当たって、事業の経営がどうなんだということがいろいろなところで聞かれるわけであります。

 親御さんたちが、いろいろな思いがあって、努力してつくってこられたところが多数あると思います。ただ一方で、私は、就労支援ということを考えた場合に、今のままの体制でいいのだろうか、これをどういうふうにして安定した経営に移行していくのか、質を高めていくのか、こういうことが問われているんだろうと思うんです。

 もちろんそれは、あなた方勝手にやりなさいよということではなくて、しっかりとバックアップしなければいかぬ話なんだと思いますけれども、就労支援ということで大変先進的なというかすぐれた実践をしておられる宮武参考人に私はお聞きしたいんですが、こうした全国の数多くある小規模作業所の方々が、将来こういう方向を目指して頑張っていくべきじゃないか、そしてまた、その中で少しでも所得というものを確保する道を拡大していく、このあたりについての参考人のお考えをお聞きしたいと思うんです。

宮武参考人 小規模作業所自体は、学校を卒業しても働く場がない、その受け皿から始まった、まさに社会資源であります。その中で、やはり今、選択として作業所もあり地域の中で働く場もあり、そういう選択できるサービスをデザインしていく、それが自立支援法の趣旨だと思います。

 ですから、今いろいろな形で施設体系が変わる中で、まだ規制があると思います、就労移行支援事業にしても、五名以上といいますか、それで全体が二十名というやはり大きな枠の中でというような。それは経営的な観点もあるでしょうけれども、もっとフットワークよく、例えば奈良市に出張型作業所というのがございます。これは五人単位で補助金が出ますので、一人支援者がついて、それで重症心身障害児施設とか老人ホームの中に出張して仕事をする、そういう形で、そこで訓練をして一般就労へ、エンクレーブといいますけれども、そういう方法もあります。

 ですから、むしろ、これからはその辺を地域で使いやすいような、それでその地域の資源を生かす形で、その地域地域の過不足の面を勘案しながら方向性をつくっていく、取り組みをつくっていく、そういうことが必要だと思います。

 もう一点、私は、働く中で非常に皆さんが成長していく、やはり働くことでの自信といいますか、役割、責任を持って社会参加していく、そういうことを本当に身近で見ておりますので、やはり選択肢、ちょっと疲れて戻る場もある。地域で生きることはやはり地域で働くことであって、郵便局へ行けば知的障害の青年が元気で働いている、区役所に行ってもいる、スーパーにもいる、国会にもいる、そういうどこにでも身近な形で活躍している姿というのがノーマライゼーションの社会だろう、そういうふうに考えております。

福島委員 本当に御指摘のとおりだというふうに思います。隗より始めよということで、ぜひ国会から始めてというのは大変大切な御指摘ではないかと私は思っております。

 小規模作業所の問題、藤井参考人も、将来像といいますか、どういう方向に変わっていくのか、この点についてお聞かせいただければと思います。

藤井参考人 どうもありがとうございます。

 まさに大変大事な御指摘でありまして、小規模作業所はいつまでもこれでいいとは思っていません。これが生まれる背景は、やはりその場がなかったことからくる、やむを得ず自主的につくってきたという場だと思います。

 今般の自立支援法は随分期待したわけですね。当時、塩田部長さんも今度は個別給付に行けるんだということをずっとおっしゃっていました。しかし、いざふたをあけてみますと、地域活動支援センターというこの裁量的経費の方に指定席があります、四千二百カ所分組んでありますと。ただ、これは非常に財政面で不十分でありまして、やはり今後、もしいろいろな問題はあるにしましても、個別給付に行く道をどう展望するかということ、これを考えていただきたい。

 もう一言。私は、やはり就労というのは基本中の基本でありまして、今回就労に力を入れていこうということの割には、旧労働省と旧厚生省のジョイントがしっかりしていない。やはり、もう少しいわゆる福祉と就労との連結政策、ヨーロッパでは保護雇用という言葉があります。保護という言葉は、イメージは別としまして、要するに、福祉と医療と雇用が組むんですね。例えば、私は目が悪いです。通勤に人がつくということは、今のヘルパーは使えないんですね、これは労働行政がやれということ。そういうのは全くないんです。

 したがって、この就労に関しましては、人的な支援、ジョブサポーターあるいはジョブコーチ、加えて、例えば作業所に対しても、企業が仕事を提供した場合にインセンティブが作動する、ドイツでは仕事の発注量に応じてこれを雇用率にカウントできる、等々を含めて、もう少し企業と、そして雇用行政と福祉が組むということを含めますとまた新しい展開が出てくるんじゃないか。いろいろなことを感じております。

福島委員 次に、まさに中核的な論点であります応益負担というものをどう考えるか。

 ただ、私は、かねてから申し上げておりますように、上限がありますから、一律応益負担というのはやはり当たらないんじゃないかというふうには思っております。障害者の方々も当事者として御負担をしていただく、一緒になって障害者福祉サービスを支えていただく、こういう概念もやはりあり得る話だし間違っていないんだろうと私は思うんですね、一緒になってやっていただく。

 ただ一方で、非常にちゅうちょするというのは、児童の話なんですね。児童は、子育ては社会で支援するんだというふうに我々もずっと言ってきて、手当も拡大して、そしてまた児童サービスに関しては、八月に、もっと軽減しなきゃだめだということを大臣にも申し上げまして、一定の対応をしていただいた。ただ、今見ていますと、まだやはりちょっと高いんだな、こういう話があるなと思って、もう一段やはりやらなきゃいけないんじゃないかと思うんです。

 中島先生、先ほどもちょっと御質問あったんですけれども、児童のサービスに関してどう考えるかというのはやはりあるのかなと私なんかは思うんですね。ただ、子育てのさまざまな支援サービスも、親の責任ということもありますから、一緒になって担っていただく部分というのはやはりあるんだろうと思うんですよ。そのあたりをどう考えるかというのはなかなか難しくて、この点、中島先生のお考えをお聞かせいただければと私は思うんです。

中島参考人 子供は、ある意味では、将来の社会を担うという意味での公共財的な部分というのが当然ありますので、その教育に関して公費でもって補っていくということは、これは必要なことだと思います。

 それは、特に障害児であろうとなかろうと、障害を持っていようといまいと関係ないというふうに私は考えています。ただ、現状でどうしても教育サービスというものが行政から与えられるという部分で、教育を受ける側の親なり子供なりがどれだけそのサービスの対価といいますかサービスというものの評価をきっちりと下しているかという点につきましては、非常に難しい点もあるのかなと私は思っています。

 だから、それは義務教育的にはある程度行政が責任を持っていかなければいけない部分はあると思うんですけれども、やはり本人の将来性とか、それから本人が将来どういう人生を歩むのかということは、これは本人が決めていくことでもありますし、またそれを見た親が、この子には将来どういうような人間になってもらおうかということ、それを踏まえた上で考えてサービスを選択するという面も必要なので、そのあたりはすべて全面的に公的な部分が負担するということではなくて、必要な部分というものをしっかり押さえた上で、そこから先はある程度本人の自主性に任せて自分の好きなサービスを選ぶという部分というのは当然必要になってくるんじゃないかなと考えております。

福島委員 池添参考人にもお尋ねしたいんですが、今中島先生がおっしゃられたことはやはり当たっているんだろうなという気はするんですね。

 私の子供も障害児で療育サービスを使わせていただきました。負担も応能負担ですからあれなんですけれどもね。ただ、自分の子供が受けている療育サービスというのはどういう質のものなんだろうか、どう専門性があるんだろうか、こういうことをやはり親は選択する必要が私はあるんだろうと思うんですよ、選択できなきゃいけないと言ったらいいのかな、主張できなきゃいけないと言ったらいいんでしょうかね、親の側が。

 そういう意味では、一定の権利性みたいなものをその中でどう確保するのかというときに、自分自身も、丸ごと無償で上から与えられるものではないという側面もやはりあるんじゃないか。ただしかし、その中でも、若い親御さんたちですから、どこまで負担するのかねという話は当然あるんだろうと思うんですよ。バランスの問題だと思うんですが、どうですか。やはりだめですかね。

池添参考人 今、私たちもお母さんたちからお話を聞くんですけれども、今の先生の御発言もそうなんですが、療育を受けられた方がおっしゃる発言なんです。受けたからそのよさがわかるとか、経験しなければやはり療育あるいは訓練の子供に与える影響というのはわからないです。やはりこの応益負担は、受ける前にバリアをつくってしまう、受ける前にハードルをつくってしまうので、子供ですから、やはりもう少し様子を見てみよう、もうちょっと待ったら成長するかもしれないと思っているうちにその時期を逃してしまうということもあるわけです。

 障害の発見とかは、保健所であるとか医療機関であるとか専門機関で発見がされます。どちらかといえば公的なところが多いわけです。でも、その次につながれるところは有料の機関であるという大変矛盾が起こってくるわけです。なので、若年世帯の経済的負担も大きいですし、今思ったのは、やはり障害の受容というか受けとめのところでハードルがあるということと、経済的負担と、それからもう一つ忘れがちなんですけれども、障害児のいる家庭はほかにも兄弟がいます。その子供たちにも負担があるわけです。だから、そこの点も、やはり若年の世帯にとったら非常に厳しいものがあるというふうに思いますので、ぜひ考えていただきたいと思います。

福島委員 引き続き、児童の問題についてはまたしっかりと取り組んでいきたいというふうに思っております。

 最後に、尾上参考人、グループホームのお話、御指摘ありました。確かに大阪で多くの方からそういう御意見をお聞きして、私も要望したいと思っているんです。自立支援法が施行されて、いろいろな課題がある、一つ一つやはりクリアしていかなきゃいけないと思いますけれども、ただ、全体論の話として、今後の障害者福祉、やはりこの自立支援法というのは一つの柱になる、三年後の見直しをどうするかという話が一つのポイントだと思いますけれども、その点について、せっかくですので、どういう見直しをすべきかという御意見をお聞かせいただければと思います。

尾上参考人 ありがとうございます。

 まず一つは、お尋ねいただきましたグループホームでの暮らし、そこの、とりわけ重度の方への個別支援の重要性ということ。これはまさに、この自立支援法というのは、私思うのが、キャッチフレーズで言っている部分と、法律の実体的な仕組みの部分と、それといわば運用から出てくる実態的な部分と、その三つをちょっと分けなきゃいけないのかなと思っております。

 自立支援法がうたい文句で、障害者が普通に暮らせる社会に、もっと地域で暮らせる社会にという言い方をおっしゃっているならば、やはり、いわばケアホームという形であったとしても、それは明らかに地域での住まいなわけですね。では、在宅の障害の方には当然ホームヘルプは使えるのに、なぜ九月三十日まで使えていたケアホームの入居の方々が十月一日からホームヘルプが使えなくなるのかということ自身、ケアホーム自身が在宅の場、地域生活の場なのか、それとも変わってしまったのかみたいな、まず位置づけの問題があると思います。

 そういう意味で、施設から地域へといったときに、ケアホームは地域での住まいの場である、だとすれば、当然在宅サービスの一つであるホームヘルプが使えなければいけないという、まずそもそも論があるかと思います。

 そしてもう一つは、先ほどサービスの選択という話がありましたけれども、あるいはサービスの質の向上ということからしても、重度であれば、地域ではもうこれ以上のサービスを受けられない、それだと結局施設から出られないということになってしまえば、幾ら負担を強いられようが何しようが、サービスの選択がきかなくなってしまうわけですね。だから、そういう意味で、施設から地域へという大きな流れをやはりつくり出していただきたい。

 特に思いますのが、障害者の権利条約の中でも、地域生活、インクルーシブな生活というのは、障害のない者と平等な権利である。まさにその障害者権利条約にうたっている精神からすれば、障害者が権利として地域で暮らせるようにしていかなきゃいけない。

 だとすれば、一つは、まだまだ先進国の中ではかなり低い水準の日本の障害者予算を大幅にアップしていただかなければいけないですし、とりわけ、その中でも、地域のホームヘルプの事業所やあるいはケアホームでより重度の対応ができるような体制であったり、より地域へ流れていくような、水はやはり高いところから低いところにしか流れません。そういう意味では、やはり地域を底上げしてもらって流れやすくしないと、幾らうたっても施設から地域へとならないと思うんです。だから、それを本当に地域へとなっていくように、いわば地域での生活基盤、地域で重度の障害者が暮らせるようなサービス基盤が整備されていくようなしっかりした仕組みをつくっていただきたいなと思います。

福島委員 以上で終わります。どうもありがとうございました。

伊藤(信)委員長代理 次に、園田康博君。

園田(康)委員 ありがとうございます。民主党の園田康博でございます。

 本日は、参考人の皆様方、本当にこの国会にお忙しい中おいでをいただきまして、また貴重な御意見をそれぞれのお立場からお聞かせをいただきましたこと、心から感謝を申し上げたいと思います。そして、そのいただきました御意見、それを私どもも率直に、国会、立法府の立場として、しっかりと今後政策の中に生かしていかなければいけないんだろうなというふうに新たに思った次第でございます。本当にありがとうございました。

 同時に、幾つか私からも御質問をさせていただきながら、今後のあるべき道というものを探っていきたいなというふうに思っておりますし、今まで自民党の委員の方、そして公明党の委員の方が御質問をされながら、私も伺っておりますと、この法律をつくった、あるいは政府・与党で取り組んでこられたその方々からの発言としては、大分悩みを抱えながらの御質問をしていただいているのかなと受けとめさせていただいた次第でございます。

 と申しますのは、先ほど藤井参考人からもお話がございましたけれども、十月の三十一日に日比谷公園で、一万五千人もの当事者の皆様方あるいは事業者の皆様方、ボランティアの皆様方も含めて、この自立支援法に対する大きな疑問を呈する、あるいは三年後の、先ほど三年後の見直しという御意見がございましたけれども、そこまでもう待てないんだよという大変悲痛に満ちた声を集められたというところを、私自身もつぶさに見させていただき、あるいは体験をさせていただいた次第でございました。

 したがって、民主党の立場からすれば、一刻も早く今の現状を、この自立支援法、修正できるものは修正をする、あるいは、先ほど来出ております定率負担の問題の部分に関しても、一たんこれは凍結をしておいて、さまざまな問題、先ほど来出ております地域間格差でありますとか、あるいは重度障害の地域での取り組みに関しても、社会基盤整備という形がまだまだ困難であるというところも踏まえてきちっと整備をし、そして就労支援あるいは所得保障という形がしっかりとなされた後に、そういったいわゆる定率負担の考えというものが本当に正しいものであるのかどうかというところもしっかりと私は考えておくべきであったんだろうなと。

 したがって、与党の委員の方からも、この進むべき方向性はいいというふうに思っているんだが、しかし施行に拙速過ぎたのではないか、すなわち、社会基盤整備がきちっとできていないにもかかわらず見切り発車をしてしまった感は否めないのではないかという御発言があるのは、その部分にあるのかなと私自身はとらえさせていただいたところでございます。

 そこで、まず、恐縮でございますが、中島参考人に一つだけお伺いをさせていただきたいと思うわけでございます。

 この応益負担といいますか、政府が今回出してきたこの定率負担という考え方に、私自身は障害者の権利という立場あるいは個人の尊厳としての人権という意識でずっとこの問題を取り組ませていただいた経緯があったわけでございますが、きょうは、中島先生から、消費者としての問題という形で、経済、自立という問題を考えてはどうかという御指摘をいただいたわけでございます。

 そこで、私の考え方が正しいかどうかというよりも、むしろ、こういう考え方に対しては中島先生はどういうふうにお考えになるのかということをちょっとだけ御意見を先にお聞かせいただきたいと思います。

 すなわち、今回、今までずっと言われておるサービスという概念でありますけれども、社会参加あるいは自立ということをどう考えるかというお問いかけも先ほどありましたが、社会参加をしていく上で、この中ではさまざまな福祉サービスというものが考えられているわけでありますけれども、そういった面をとらえて、自立あるいは社会参加というものが豊かな生活を生むためのサービス提供であるというふうに考えるものと、それからもう一つ、先ほど来から出ておりますように、人間としての生きる権利、個人としての尊厳。

 すなわち、例えば、あすは我が身かもしれませんけれども、交通事故に遭って私自身が歩けない、あるいは手足を失ってしまったという場合に、それを介助していただく、入浴あるいは排せつ等々も含めて、人間として生きていく最低限度のもの、これをサービス、消費という形でとらえるのがいいのかどうかというところにまだ私は腑に落ちていないところがございまして、その点をどのように考えるかという点を最初にちょっと、恐縮でございますけれども、中島先生からお聞かせをいただきたいと思っております。

中島参考人 確かに、おっしゃることはよくわかります。生きていく上でどうしても必要なことをなぜ買わなきゃいけないのかという議論ですよね。

 先ほど来私も大学の事例なんかを出したりしていますけれども、私は、生きていく上で必要なサービスというのは何かなと考えたときに、これは、世の中がいろいろかつてからずっと変わってきまして、どんどん技術も進歩しておりますし、ある部分は機械に取ってかわられる部分もあるということで、何が必要最小限のサービスか。食事、排せつ、入浴だというようなことも言われますけれども、あるいは衣食住だというような言い方もあると思うんですけれども、そのあたりの線引きというのは私は非常に難しいと。

 また、障害を持っている方御本人にしても、ある人は入浴というのは必要不可欠なサービスで、とにかく毎日おふろに入らなければ自分はいられないんだという人もいれば、私なんか余りおふろが好きじゃないので、一週間に二回か三回ぐらい入って、それでもいいかな、ほかにもっとやりたいこともあるしななんという人もいたりして。

 だから、私は何が必要不可欠かというのも御本人が選ぶという発想がやはり必要なのかなと。だけれども、そのときに、選べる状況をつくってあげるということがとても重要ですね、選べない状況のままでさあ選べといっても、これは選べないわけですから。だから、そういう時点で、どのくらい自分は食べるべきなのか、どのくらいトイレに行くのかとか、そういう生理的なものになっちゃいますけれども、そういうこともあくまで御本人が選ぶというようなことは原則として考えることが、これから先の社会を考えたときにはある意味必要な視点ではないかというふうに考えています。

園田(康)委員 個人のニーズというものが恐らく違うものでありますし、それは個人として尊厳が尊重されるというところにすべて帰着するのであろうなというふうに思うわけでございます。したがって、要は、これを定率的にすべて横並びの制度にするということの発想が、そこに結びつけられるというのが、まだちょっと私自身は政府の考え方というものが一概に理解をしがたいなというところがございます。

 ただし、今回の障害者自立支援法、先ほど戸枝参考人もおっしゃっていただきました、この一条のところに出ております理念、障害の有無にかかわらず国民が相互に人格と個性を尊重して安心して暮らすことのできる地域社会の実現、これに寄与することである、これをつくっていかなければいけないんだろうというふうに思っておるところであります。

 バリアフリーな社会というふうによく言われておりましたけれども、そこからユニバーサルデザインというところに派生をし、さらにもっとそれが進化をこれから遂げていくような形で、我々がしっかりと頑張っていかなければいけないのかな、そして、社会全体、みんなでこの社会をつくり上げていく、国連の権利条約が結ばれるというところからすれば、これからしっかりと、この日本国内においてもつくり上げていきたいなと思っておる次第でございます。

 そこで、藤井参考人にちょっとお尋ねをしたいのでございますが、三障害、今回この理念があったわけでありますけれども、身体、知的、そして精神という形で、とりわけ精神の部分に関しては大変おくれていたというところがございました。したがって、三障害、総合的に取り組んでいこうという考え方、これは私も期待をいたしたところでございます。ところが、難病も含めてその部分がまだまだ、知的の部分も定義がまだ明確になっていないというところから、この制度から、対象から少し外れてしまった部分もあったわけでございます。

 この三障害統合政策ということに対しての評価と、それから、これからあるべき姿というものを少しお教えいただければなというふうに思っております。

    〔伊藤(信)委員長代理退席、委員長着席〕

藤井参考人 ありがとうございます。

 私は、今おっしゃったように、三障害統合、これはやはりとても大事なことです。さっきも言いましたように、願わくは、やはり全障害統合という日を一日も早く実現してほしい。

 ただし、今度の三障害統合が本当の三障害統合かと申しますと、これは疑問があります。身体障害者というお兄さん格の大きな部屋があって、知的障害者という次の弟の中くらいの部屋があって、精神障害者という形の小さい部屋があって、今回の統合というのは、小さい方にみんなまとめられたという感じがするんですね。つまり、いろいろな施設の報酬単価を見ましても、軒並みかつての精神にいわば合わせられているという点において、どうも今度の統合というのは、そういった意味でいうと、多くの精神障害者が期待したのは、身体あるいは知的の方に合わせてほしいと思っていたと思うんです。

 そういった意味でいうと、やはりそういう点での不備がいっぱいあったんじゃないか。本当に統合を言うんだったら、JRの運賃割引ですね、あの交通費問題を含めて、ここにどう風穴をあけるかということも含めてやってほしかった。

 私は、そういった意味でいうと、どうも、精神の、低い方にという感じがするのと、もう一つ、どうしても今回解せなかったのは、なぜ、実定法の身体障害者福祉法、知的障害者福祉法、精神保健福祉法の福祉部分、これを残しておいたのか。つまり、残したことによって、精神障害者の定義は今でも、精神保健福祉法第五条です、精神障害者とは、統合失調症、精神作用物質による中毒症またはその依存症、精神病質者。つまり、精神障害はイコール精神病者、障害イコール病気。そこからは、医療の施策の根拠法令とはなっても福祉の根拠法令は出てこないんですね。こういった意味でいうと、今度の法体系でいうと非常にいびつなまま進んでいる。

 そういった意味におきまして、やはり本来の統合を、この際もう精神と言わず、難病とか発達障害、高次脳機能障害を含めまして、そこにやはり展望をぜひ開き、そのためには、もう一度、障害の定義、それから等級制度、手帳制度、これを含めて検討するという前提があっての統合だろう、こういうふうに思っております。

園田(康)委員 ありがとうございます。

 それも含めて、私は実はこの自立支援法はちょっと横に置いておきたかったのであります。すなわち、そういうしっかりとした定義から、この三障害あるいはそれ以外の部分、以外というふうに言うのはちょっと不適切な発言でありました、それに含まれないところの障害のある方々、そういった方々をすべて統括する形の総合福祉法というものを、やはりこの国会では当初から考えるべきであったんだろうなと。権利も含めてそれができて、その後に、この自立支援というものがしっかりと、基盤整備も含めて、就労支援あるいは所得保障、確保という部分に行くのが筋ではなかったのかなと。少し急ぎ過ぎた部分があったわけでございます。そして、その急ぎ過ぎた上において、やはり弊害というものが出てきてしまっているのが今の現状であろうと。

 と同時に、先ほど少しお話がありました、地域においても、減免措置をしているところ、していないところというところで、同じサービスであったとしても、それがいわば負担も違ってきてしまっているという現状があるのかなと私自身は伺っておるわけでありますけれども、その点、藤井参考人、尾上参考人、池添参考人にも端的にお伺いしたいというふうに思います。

尾上参考人 この自立支援法が議論されるときに、支援費制度では地域間格差が非常に大きいというふうな言われ方をしていました。でも、現実には、基盤整備をしていた自治体と、そうでない自治体の格差だったわけなんですけれども、たしかその地域間格差を解消するためにということが自立支援法の趣旨の一つだったかと思うんですが、かえって現実には自治体ごとによって、これは自治体の努力の結果でもありますけれども、減免をしているところもあれば、そうでないところもあるということで、いわば、一つ隣の町へ行けば半額になるのに、こちらの町では国の基準どおりであるというふうな形で、かえって地域間格差が広がってきているんではないでしょうか。

 そして、それはさらに、地域生活支援事業や、そういった、かなり地方自治体に任せられてしまったといいますか、負荷がかかるような仕組みになったサービスで、例えば手話通訳一つとってみても、無料のところもあれば有料のところもやはり出てきてしまっている、そういった格差として明らかに拡大をしてきていると言わざるを得ません。

池添参考人 まずは、減免の制度そのものはありますけれども、はなからそれに該当しないという家庭が子供のところは多いですので、まずそれがあることと、それから、全く減免の制度をつくっていない地方自治体もありますので、例えば京都だと上限の半分とかいうことで、ある意味ですごく減免されているわけですけれども、お隣の奈良では全くないという意味では、物すごい格差が開いています。

 そして、子育てしやすい県としにくい県というのは、子供一般でもある中で、障害を持っている場合だとさらに格差が開くと言っても間違いはないと思います。

園田(康)委員 といいますと、この制度の理念と実態が、やはり残念ながらうまくいっていないというのが現状なのかなと。したがって、この部分を早急に是正するためには、制度そのものの根幹が少しまずかった、制度設計がまずかったというのは私はどうも否めないのではないのかなという気がいたしてなりません。

 そして、戸枝参考人に、先ほど、高度障害、ガイドヘルプの話をしていただきまして、重度障害者のそういったサービスを地域の中でもしっかりと構築していかなければいけないんだという御意見をいただいたわけであります。

 そこで、もう一つ、移動介護という部分も個別給付にというのは私もあってしかるべきではなかったのかなと。これが今回、地域生活支援事業の中に含まれてしまって、それに財源的な裏づけがないと、半年ベースで二百億円、年間ベースで四百というところが、ここに財政支援を行うというところも少し言われているようでありますけれども、この部分を個別給付化して、そして、いわゆる二分の一の国庫負担というものをしっかりとここに位置づけていく必要があるのではないかなと思うわけですけれども、戸枝参考人、そして、この点については尾上参考人にもお伺いしたいというふうに思います。

戸枝参考人 冒頭、私が母親の話をしましたが、やはり、社会参加支援ですね、移動支援がないと全く社会参加ができないというような人の介護ということが、これが何か余暇的な、何かもしかしたらプラスアルファの支援というふうにとらえられているような感じがして、これは障害のある方だけでなく、本当は介護保険制度も含めて、すべての人にとって、やはり社会参加というのは人間として生きていく上の、本当に、食事を支援してもらうぐらい大事な支援なんだと思うんですね。そういう意味では、やはりここをきちんと国として財源保障してもらいたいということが一つ、僕自身もそう思っているということ。

 もう一点は、一方で、例えば私のいるところは田舎なものですから、車での移送がないと障害のある方が社会参加できないわけですね。東京だと例えば地下鉄なんかでいろいろなところへどこでも行けるというところでは、運用に関しては、やはり地域ごとの状態を反映する仕組みということも持っていないといけないということ。うちの地域なんかでは、そういった議論が、一方で地方に財源が投げられるということで起こっていますので、やはり、ここに関しては、メリット、デメリットいろいろあるかと思うんですが、しっかりした財源と、また地方ごとでの適切な運用ということをお願いしたいと思っています。

尾上参考人 特に移動介護については、支援費で非常に大きく伸びた制度と言われています。それだけやはり必要とされていた制度なんですね。

 そして、余暇とかそういうふうな言われ方をされるんですけれども、そうではなくて、今までですとどうしても、ともすれば、重度であればあるほど集団で、いわばお出かけ会のような形でしか出られなかった人が、一人一人、いわば自分で選択をし、そして自分のペースに合わせて外出をしていく、そのときの自己決定をしたりコミュニケーション支援をしたりという、非常に個別性の高い支援がガイドヘルプだった。もっと言うならば、知的障害の方々の自己決定支援を本質に含んでいたものだというふうに思うんですね。

 そういう意味では、やはり個別給付から外すべきものではなかった。ぜひともこれは、法の見直しを早急にしていただいて個別給付に戻していただくとともに、当面これは地域生活支援事業で、非常に今まで移動介護を頑張っていればいるほど、その自治体が、今回の二百億の配分では移動支援事業で全額使い切ってしまって、相談支援事業やコミュニケーション支援事業や何々はもう足らず前になっている。地域住民からすると、何か障害者同士が予算の奪い合いをしてしまうような状況に追い込まれている。

 そうではないだろう。むしろ、地方自治体が、もっともっと安心して、障害種別を超えて障害を持つ住民とともにつくり上げていくのが本来の地域生活支援事業の姿だと思いますから、今の地域生活支援事業の姿並びにその補助金の状況というのは、非常に危ない状況にあるのではないかというふうに思っています。

 ぜひともこの点、頑張っていただきたいと思います。

園田(康)委員 本当に、もう時間が来てしまいましたので、宮武参考人にもお伺いをしたかったわけでございますけれども、大変失礼をいたしました。

 また、この福祉予算の関係も、しっかりと全体の中から私どもも見詰め直していって、しっかりと皆様方の御意見を反映させてまいりたいというふうに思っておりますので、また御指導をよろしくお願い申し上げて、質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。

櫻田委員長 次に、高橋千鶴子君。

高橋委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 きょうは、参考人の皆さん、お忙しい中、本委員会に出席をいただきまして、また本当に貴重な御意見をいただきましたこと、心からお礼を申し上げます。

 皆さんが本当に現場からの声をこの場で発してくださったということを私たちがしっかり受けとめて、障害者自立支援法を、本当にいい意味での見直しができるように頑張っていきたい、このように思っております。

 最初に、中島参考人に伺いたいと思うんですけれども、本日、最初から先生が主張されております、障害者施策に市場主義の導入をという問題、障害者は消費者であるという問題が随分中心になっているのかなと思っております。先生御自身が障害を持つ息子さんを持ち、そして、その息子さんが自立していく姿を親として目の当たりに見た、その思いから、やはりこの自立ということを提唱されているんだということは十分承知をしております。

 ただ、それと同時に、先ほど来指摘をされている、生きるために必要なサービス、オプションではないと。そこに対してやはり市場原理というのはなじまないのではないかということを私は重ねて思っております。

 特に、先生御自身がアメリカのコネティカット州で受けた息子さんの無料の手厚いサービスの問題、私は、これは無料だから自立を妨げるということではなくて、障害者を家族のハンディそのものに、家族だけに押しつけるのではなく、みんなで受けとめて支え合っているということで、非常に教訓的なお話ではなかったのかなというふうに思っているんです。

 そのことを踏まえて、改めて、市場原理と障害者施策というのはなじまないのではないかなということを先生に伺いたいと思います。

中島参考人 まさかコネティカットの話を御存じとは思わなかったので、非常に、私自身のことなので、実体験があるんですけれども。

 私は確かに、アメリカのコネティカット州にいるときに、無料で学校へのバスの送迎サービスを受けておりまして、子供が非常にいい教育を受けたなというふうに思っておりました。だけれども、そのときに同時に考えたことは、私が、やはりそういうサービスを受けて、どうしてもお世話になっているという発想から抜け切れなかったというところもありまして、これは親自身の考えの持ち方なんですけれども。その後、日本に帰ってきてから、非常に日本の養護学校のあり方とかあるいは統合教育のあり方に疑問を持ったこともありましたが、そのときもやはり一貫して思っていたことは、養護学校で自分の子供がお世話になっているから、なかなか言いたいことも言えないなということが実感でございました。

 ですから、私は、必要不可欠なサービスだから、与えられたものを、行政なり社会なりが決めたものを、最低限のサービスをただで受けなさいということも確かに重要な視点ではありますけれども、そういうサービスだからこそ、お金を払い、いいサービスでなかったならばもっといいサービスをしてくれと堂々と言えるというような環境をつくっていくことが、長期的にはやはりサービス全体の底上げになるんじゃないかなというふうに考えております。

 以上です。

高橋委員 どうも、先生大変ありがとうございました。

 同じ質問を、藤井参考人と尾上参考人に伺いたいと思います。

藤井参考人 私はそもそも、障害者問題の基本としまして、障害からくる不利益については、やはりこれは公的に応援をしてほしいと。

 要は、ここに、コップに水が半分入っています。私は、このコップの半分以下の水というのは、これはまさに生命維持の行為あるいは支援。これは、さっき中島参考人はそういうおっしゃられ方をしたけれども、私はやはりあると思うんですね。このコップの半分上は、これは社会参加に必要ないろいろな行為や支援。それで、あふれる。実は、応益の「益」というのは、語源辞典を見ますと、「溢れる」と書くんです、本当は。私は、ぜいたく部分は全部自分で払うのは当たり前なんですよ。しかし、生命を維持していくぎりぎりの行為というのは、これはやはり公的な面で支援をしてほしい。

 さあ、真ん中のこの部分、ここは就労を含めて社会参加ですね。これに関しては、例えばスウェーデンなんかでは、ダイレクトペイメントという所得保障をしながら買うという方式もあります。あるいは、ドイツ等含めて、現物支給もあります。これは今後議論をしていきましょう。今回は、このコップの全部を含めてこれを応益だという点でいいますと、これは少し無理があるし、私はやはり、所得保障が仮にあったにしても、この部分というのは厳しいんじゃないかな、こう思います。

 ついでに言いますと、障害者問題の視点から言いますと、単純な市場原理、あるいは、早く、ちゃんと、きちんと、こういう視点は、やはりなじみにくいんじゃないかなという感じが私はしております。

尾上参考人 二つほど論点があると思っています。

 一つは、具体的には、応益負担か無料かという議論というよりは、今までの支援費の状況で考えますと、応益負担か応能負担かなんですね。今回は、そういう意味では、払えないにもかかわらず負担を課すという応益負担になっている。その応益負担がどういう状況を生み出すかというと、障害が重ければ重いほどやはり大きな負担になっているということなんですね。

 先ほど私どものアンケートで、私どものアンケートに協力をいただいた方々は、全身性や知的の重度の方、そういう意味ではかなり重度でサービスが必要な方々です。いずれも上限いっぱいいっぱいまで行っている。ところが、実は、この自立支援法の審議のときあるいはその前の社会保障審議会のときに、厚生労働省はどういう資料を出しておられたかというと、ホームヘルプを利用されている在宅障害の方は月八千四百円どまりで負担がおさまりますよと。月八千四百円どまりでは全然おさまっていないわけです。つまり、障害が重ければ重いほどそんなものを何倍も超える負担になっている。そういう意味では、明らかに制度設計の段階に瑕疵があったと言わざるを得ないのではないでしょうか。

 そういう意味で、応益負担か無料かではなくて、応益負担か実際に払えるような状況の中での応能負担というのが具体的な論点であったのが一つと、もう一つは、やはり応益負担の原理性、障害が重ければ重いほど大きな負担になっているというのが、国のデータと私たちの重度障害者をターゲットにしたデータとの大きな差としてあらわれているということを指摘したいと思います。

高橋委員 法律が成立をする前に指摘をされてきたことが現実のものとなって起こっている、それを踏まえての今の御発言だったと思いますので、改めて応益か応能かということでさらに議論を深めていきたいなと思っております。

 次に、池添参考人に伺いたいと思います。

 本当に、療育の現場でのお母さんたちの思いや携わっている先生方のいろいろな思いが紹介をされました。本当にありがとうございます。

 それで、たくさんお聞きしたいことはあったんですけれども、利用者負担がふえたがために給食さえもとらない子供たちが出てきているということ、本当に深刻だなと思って聞いていました。私は、まず、療育の現場における給食の役割というのはやはり特別な意味があるんだろうということをぜひ紹介していただきたいと思っております。

池添参考人 子供たちにとっての給食、先ほど奈良の場合に六百円というふうに申しましたけれども、これも地域格差がございまして、払っている給食費は地域あるいは施設によって違うんですけれども、そもそも子供たちにとっての給食は、食べることではなくて療育の一環です。

 つまり、自閉症の子供さんで非常に偏食が激しい子供さん、いつかは食べるかもしれない、でも今は食べないというときに、目の前にその給食がある必要があるわけです。でも、それは全く手をつけないかもしれない。でも、目の前にあることによって、これをみんな食べているんだよ、おいしいんだよということを見せなくてはいけない。特に、目で見ていろいろなことを理解していく自閉症の子供さんだとなおさらです。そうした場合に、食べないのに給食費を払わなければいけないという現実があります。でも、食べないのだったら要りませんということになると、その子供が偏食を克服していろいろなものが食べられるというプロセス、そのことそのものを奪ってしまうことになります。

 それから、いっぱい用意しても少ししか食べない子供もいます。それから、いろいろな形態でないと食べられない子供もいます。本当に、食べるということだけではなく、体そのもの、あるいは命を、あるいは心を育てていくための栄養だと言っても間違いはないというふうに思います。

 そのために、六百五十円というふうに国は言っていますけれども、これは普通のお弁当でもそんなにはしないと思います。ましてや子供の食べる量というのはそんなに多くありません。光熱費とか人件費とか全部を含めている費用でありまして、ここのところも保育料の給食費とは少し違うと思います。

 以上です。

高橋委員 ありがとうございました。

 もう一つ池添参考人に伺いたいと思うんですが、児童デイサービスの問題がお話しされたと思っております。この間、児童デイサービスの基準について、学齢前の子供さんを七割入れなければならない、経過措置として三割を条件とするということがあって、それが施設の存続にかかわるという大きな反対運動が起こったという経過がございました。

 そこで、なぜ今行われているデイサービスの実態と厚労省がやろうとしている基準が合わないのだろうか、そのことと、デイサービスの持っている意義について、ぜひ御紹介いただきたいと思います。

池添参考人 障害を持っている子供たちの放課後あるいは長期休暇、これは障害を持っていない子供たちにとったら余り問題はないんです。おうちに帰ってきて友達と遊びに行くとか、あるいは長期休暇もいろいろなところへ遊びに行くことができます。しかし、障害を持っている子供は、自分でそれをつくっていくことができなかったり、あるいは安全の確保ができなかったりで、常に保護が必要であるとか、あるいはその場が必要である。その場が家庭であることもありますが、ずっと子供につき合っているのはすごく大変ですから、先ほども申しましたけれども、テレビとかビデオ漬けになっていることが多くて、非常に貧困な、豊かでない放課後であるとか長期休暇を過ごしている子供たちが多いです。

 そこのところを、もっと豊かに放課後を過ごさせたいということで、関係者や親御さんたちのお力でつくられてきた、草の根からつくられてきたものだというふうに言えると思います。でも、なかなか制度に乗らなくて、共同でやっていたところとか親御さんたち同士でお金を出し合ってやっていたところがありますけれども、今回児童デイサービスあるいはタイムケアなどの形で制度ができてきて、これはうれしい、もっと広げられると思ったやさきの今回の報酬単価の減額ということになるわけです。

 学童期ですから、今、全児童対策とかいろいろな形で、たくさんの子供たちを対象にした学童保育、放課後保障のことが言われていますけれども、それだけではやはり障害を持つ子供たちには対応できません。現に今でも、非常に狭い学童保育所とか児童館に障害のある子供がいて、そこで非常にトラブルが多かったりとか、保護者そのものもしんどい思いをしていたりすることもあります。障害児が集まってやっている場というのは、障害を持っている子供に対応した場所ということですので、それだけ職員体制も必要ですし、場所も必要です。

 そういう意味で、財政的な裏づけがないとやっていけない。せっかく広がってきたそのことが、現に今畳まなくてはいけないような実態になってきているというのが今回の調査でも出ています。職員さんたちがかなりボランティア的にやっていらっしゃることも多くなっていますので、そういう意味で、ぜひ実態に目を向けていただきたいというふうに思います。よろしくお願いします。

高橋委員 厚労省の皆さんも聞いてくださっていると思っております。

 次に、宮武参考人と戸枝参考人に伺いたいと思います。

 特に、宮武参考人が紹介してくださった「すきっぷ」の取り組みですが、多分厚労省が目指す改革の姿だというふうになっているんだろうなと。ただ、それが、確かにすばらしい取り組みだけれども、就労支援ということでは全体としてそこまで一律になかなかいかないだろうなと思って聞いておりました。

 また、障害という問題は、私、ある方がお話しされていたことなんですが、やはり周りの環境、バリアを除くことでその人にとっての障害の価値というか程度というのもまた大きく違うだろうというふうに思っているわけなんです。

 そういう点で、まず宮武参考人に、「すきっぷ」は大変立派な施設でして、プロポーザルコンペまでされて、特別な、やはり区としての応援だとか、そういう何か大きなきっかけがあったのかなということを思いますので、行政がどういう形でそれをやろうとしたのかということを伺いたいと思うのと、戸枝参考人には、実際には、地域では財政もない、そして実績もない、そういう中で市町村が実施主体よと言われているわけで、確かに地域生活は大事だけれども、すぐには移行できる条件がない中で、では何ができるか。例えば県の役割ですとか、そういうことがあると思うんですが、ぜひアドバイスをいただきたいと思います。

宮武参考人 世田谷区の状況といいますか、世田谷区が政策的につくった施設でございます。

 世田谷区、各地域がそうだったと思いますけれども、学校卒業後の受け皿として小規模作業所ができて、福祉的就労の場が広がっていった。なかなか一般就労には移行が難しいというような時代がずっと続いておりました。その中で、世田谷区は、保護的就労という中間雇用の制度もつくって、ステップアップというような考え方もあったんですね。それでもなかなかうまく進まない。それで、職能開発センターというような構想があって、作業所から職能センターに通って訓練を受けて一般就労という、一つの循環型のシステムということがあり方検討委員会で出されまして、それが私どもの「すきっぷ」でございます。

 そういう区の施策的な取り組みの中から生まれたものですから、最初は都市型福祉工場というような構想もあったそうですけれども、クリーニング、印刷も区が発注するような優先受注を受けております。ですから、そういう、大型じゃなくても、私どものシステムとノウハウをいろいろな形で生かしていただければ、就労支援の拡大につながると思います。

 もう一点だけ、働く意味といいますか、当初、労働能力によって障害者が選別されるのじゃないか、そういう話が出たときに、それは選別じゃなくて選択肢を広げるというふうに私は理解しました。

 実は、地域の保育園に体験実習という形で、ダウン症の青年が三週間ほど委託訓練という制度を使ってお世話になりました。それは、雇用は難しいけれども体験としてその場を提供していただいた。最後に委託訓練の修了式で賞状をもらう場面があるんですが、その中で、ダウン症の青年ですけれども証書を受けた、年少さんはお昼寝の時間帯で、年長さんの子供さんたちが質問を受けていろいろな感想、サッカーを一緒にやって楽しかった、そういう話の中で、最後にある五歳の子供さんが、たかしお兄さんと会えてよかったというふうにおっしゃったんですね。それで、雇用にも結びついたんですけれども、そういう理解が小さな子供に生まれたことに私は大変感動しました。

 そういうことで、働く意味を、地域で生きるということで、重ね合わせて、就労の問題をぜひ考えていただきたいと思います。

戸枝参考人 県で起こっている問題と市町村の問題、二点についてお話しさせていただきたいんですが、障害福祉は、特に地方に行きますと、町村に関しては県の事務所で今までいろいろな事務をやってきたというふうに考えると、町村は障害福祉をやった経験がない、理解している職員がいないという現状があります。

 そういう意味では、自立支援法では、県がアドバイザーという相談支援者を県に置いて、それぞれわからない自治体に情報提供したり、場合によっては、財政力の弱いところは広域連合をしないと障害福祉が進められないということですからそこをくっつけていったり、そういったことをするという仕組みにはなっているんですが、ここも、厚生労働省にお伺いしたときには、百七十万人標準で大体一千四百万ぐらいの財政措置しかされていないということでいけば、県が十分に町村を支援する体制になり切れていないんですね。やはりここの、県にきちんと相談支援体制、特に市町村への相談支援体制ができる仕組みをつくってほしいということが緊急に必要だと思っています。

 もう一点が、先ほどの福島豊先生の、地域支援はNPOが支えてきたという質問を掘り下げる形にもなるかと思うんですけれども、例えば、市町村が社会福祉法人減免で認められている減免をNPOに認めればできるというふうに制度上はなっているんですが、やはりNPOが所得保障、減免をするほどの財政措置ができないという形でなかなか進んでいません。NPOでやれるようにするにはやはりある程度市町村に財政措置しないとだめかなという気がしていますので、そこも配慮いただきたいと思っています。

高橋委員 時間が参りました。きょうは本当にありがとうございました。

櫻田委員長 次に、阿部知子君。

阿部(知)委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。

 昨年の秋に、この委員会の場で、障害をお持ちの皆さんあるいはそれを支える皆さんの大変に大きな不安の声の中成立したこの法律が、実際には全面施行になってわずか二カ月、この十月から子供たちの問題も自立支援法に組み込まれましたから、その中で、やはりどうしてもこれでははっきり言って苦しくてやれない、あるいは制度を見直してほしいという障害団体の皆さんの声や、あるいは与党の皆さんも含めて、その必要性を認めたからこその本日の委員会の開催だと思います。

 そして、その中で、きょうまた私は、六人の皆さんにお話を伺って改めていろいろなことを学びましたし、きょうの皆さんの御意見がこれからの福祉行政にぜひ生かされるといいし、柳澤新厚生労働大臣も聞いてくれたらいいなと思いながら皆さんのお声を伺っておりました。時間の許される範囲内で、できれば全員の皆さんにお伺いしたいと思っています。どうかよろしくお願いいたします。

 冒頭、中島参考人にお伺いいたしますが、恐らく御自身が、お子さんが障害をお持ちで、その親御さんとしていろいろな、はばかられたり十分に本当の意味で本音が言えなかったりした、あるいは、これで本当にいいんだろうかというさまざまな思いの中で、福祉の質を変えたいという一点でさまざまに御教示をいただきました。その思いというものは私も本当に深く受けとめますし、そのために、では具体的に何が必要かということで、私は二点お伺いしたいと思います。

 中島参考人と他の委員との御質疑の中で、いわば不可欠なもの、生きていくのに不可欠なニーズと、ある意味でのぜいたくだったり欲望だったりのウオンツ、欲しいという部分は、実はこれは連続的につながっていて、なかなか、ここまでニーズ、ここからウオンツと言えないし、質においては、例えばおしっこをしたときにおむつをかえてもらうやり方一つでも、じゃけんにやってほしくないし、人として尊厳を持って扱ってほしいしというので、なかなかニーズとウオンツの境というのは難しいと思うのです。

 ではあっても、私は、例えばきょうDPIの皆さんが提出していただきましたような重度の筋ジスの方で、おしっこをするのを我慢しなきゃならない状態、そのために水分摂取すら控えなきゃいけない状態、それは介護を受けられる時間の上限、頭打ちがございますから、それでは、やはりこれは何としてもおかしいだろうと思うものであります。

 では、どうすればいいのかというときにお伺いしたいのは、まず、日本の福祉予算総体の枠はこれで大丈夫だろうか。実は、対GDP比でアメリカよりも低いわけであります。もちろん理念はアメリカでは障害者の差別禁止法がきっちりとそこにどでんとあって、そしてプラス、それでもまだあの国において我が国よりも予算が多い。そうすると、我が国の全体のパイの少なさが逆に悪い方向に引っ張っているというのが一点あろうかと。

 それからもう一点は、いみじくも中島参考人がおっしゃったように、親と子の自立、お互いの相互自立の問題で、これは今の法律もそうですが、すべて世帯単位でいろいろな負担を決めてございます。世帯単位から個人単位にすべての制度設計をしない限り、やはり本当の意味で、障害のある、自分が選べる仕組みになっていかないと思いますが、この点についてはいかがでしょうか。

中島参考人 大変いい御質問をしてくださったと思います。

 ニーズとウオンツの区別というのは私も非常に難しいと思っておりまして、先ほどのようなトイレ介助にしても、どうしても生理的な欲求というのは、そこで選択の余地があるだろうかといえば選択の余地はないわけでありまして、そこの部分に関して費用をどこまで負担すべきなのかということは大変難しい問題だと思っています。

 そのときに、そういうことも含めて、福祉の予算というものを日本の国全体として、あるいは障害者福祉、全障害福祉でもいいんですけれども、どのくらいの負担を我々国民がすべきなのかという大枠をしっかりと決めた上で、それが本人の本当に必要とするニーズの方向へどれだけ使われるかという配分の部分に関して、私は、なるべくやはり市場経済的な枠組みを使うのが望ましいだろうというふうに、これは経済学者の立場上どうしてもそういう考えになるんですけれども、それでやっていくのが一番望ましいと考えています。

 それは、先ほども言いましたように、ニーズとウオンツの区別というものが現行では非常にしづらい、また、それが技術の進歩等によってだんだん変わってくるということも上げられると思います。例えば、眼鏡一つとっても、眼鏡が発明される前は目の見えない人というのは大勢いたわけですよね、だからそういうことも言えるのではないかなと。

 それから、二番目の御質問で、それは全面的に私も賛成で、世帯単位から個人単位というのは私は障害者だけの問題ではないと思います。障害児だけの問題でなく、普通の自立ということを目指している、望んでいる子供に関しても、また家庭の中でさまざまなドメスティック・バイオレンスの被害に遭っている奥さんたちや子供たちについても、同じような視点から考え直すべきだろうというふうに思います。

阿部(知)委員 ありがとうございます。

 続いて、宮武参考人にお伺いいたします。

 私は実は国立小児病院という世田谷にある小児の専門病院に勤めておりまして、世田谷には同時に都立の梅ケ丘の養護学校というのがございました。多分、世田谷でお仕事をしておられるということで、きっと宮武参考人のところにも都立の梅ケ丘の養護学校を卒業した方が行かれることと思いますが、私が現場で思ったことは、養護学校を卒業した途端に、みんな、さあ、外に出ようと思っても、実は手も足も出ない。社会や働くということとすごく分断されたところに、現在、養護学校が置かれているように思います。

 これは中島参考人にも本当はぜひ伺いたかったところですが、養護学校あるいは特殊教育の中、実はそのほかの日本の教育体系の中でも、働くということをどのように位置づけ、教えているかというのは弱いと思いますが、現在「すきっぷ」でやっておられて、逆に養護学校から来る子供たちを見ていて、いわゆる障害を持った子たちの教育、あるいは持たない子との統合教育はどうあるべきか、この点についてお話を伺いたいと思います。

 あわせて、この背景には、実は教育委員会が、障害者雇用率が大変に低うございます。中には教員までも含めた数値であるのでということですが、教育委員会障害者雇用率は一・二とか三とかの低レベルで低迷しております。民間の方が既に一・五近く行っております。そういうことも考えると、教育の場における問題は大きいと思いますが、参考人の日ごろのお仕事の中でどのように思われますでしょうか。

宮武参考人 先ほど理解と共感というふうにお話ししましたけれども、実は、私どもに入ってこられる方、養護学校から入ってこられる方も多いですけれども、中学まで普通学級で、養護学校を選んで入られる。皆さん、いじめに遭っています、ほとんどの方が。

 私どもの地域の中学校で、実は総合学習の一環で、地域にある施設を紹介したいということで、利用者とともに中学校に行って、中学一年生百人ほどの皆さんに私どものことをお話しするんですね。それで、障害者の方が来るということで、子供たちですから戦々恐々でいるんですね。知的の子、私どもの利用者の方が行ってお話をします。作文を用意して、学校のころいじめられた、でも今仕事を目指して頑張っていますというような、そういう内容のお話なんですね、クリーニングを頑張っていますと。百名の中学一年生から感想文をいただくんですね。その中に、やはり自分もいじめに遭っているけれども、人に話せなかった、「すきっぷ」の人はそういうふうに自分のいじめられたことを話したことで、私はすごい勇気づけられました、そういうことがありました。

 ある小学校の五、六年生のやはり総合学習で見学に地域の方が来られたときに、素朴な質問で、障害者の人は何を食べているんですかということがありました。地域の中で生きるということが、あるいはともに生きることが理念的に話される中で、地域はやはりそういう状況にあるわけですね。ですから、地域で暮らすこと、社会参加ということが大変必要だと思うんですね。ですから、養護学校の方たちが、単に働く力をつけるのじゃなくて、社会で生活するための力をつけるということが我々の目的です。

 もう一つ、あるお母さんが、終了会議というのをやります、就職をして次のアフターケアの確認で。そのときに、就職できてよかった、子供が就職できないと思っていたのでよかったと。それ以上にうれしかったのは、二十になったときに子供に背広をつくった、だけれども、この子は、背広はあるけれども、背広を着る機会は少ないだろうなと思っていた。「すきっぷ」に入ったら、背広を着てきなさい、背広を着てきなさい、あっちこっち行きますよ、社会見学だということで、それがうれしかったと言うんですね。

 ですから、やはり、親心といいますか、社会で生活するということが、その地域でみんなで応援していくということが大事だろう、学校もしかりだと思います。教育の問題でもあると思います。

阿部(知)委員 ただいま国会では、参議院で教育基本法の改正問題等々論議されておりますが、やはり幼いころからの障害のあることの受容やあるいは共生関係というのはとても重要で、その中に、本当に中島先生がおっしゃるような、その子たちも含めて、どうやって能力を生かしていくかということが、私は教育の基本法の論議でもあってほしいなと、ちなみに思っておる者であります。

 次に、戸枝参考人と尾上参考人に同じ質問でお願いいたしますが、実はお二方とも、重度の方が、今の法体系の中では地域での生活がとてもできない、端的に言えば。戸枝参考人の方は、介護保険でも同じような壁にぶち当たるだろうと。私も日ごろそう思っております。では、この壁を突破していくために何をすればよいのか、これをおのおのに提言をお願いいたします。少しお話しいただきましたが、重ねてお願いいたします。

戸枝参考人 介護保険で壁があるというふうに御指摘いただきましたが、介護保険でもやはり上限を超えたサービス利用ができないという形で、先ほど言った、施設支援しか選べないという状況があって、大規模処遇の中でいいケアになっているのかという問題がやはり起こっているわけですね。障害のある方の場合、そういう意味では、個別にアパートで自立生活をするという実態が今まであったわけですから、そこがたちまちに行き詰まっているという実態も起こっているわけですね。

 その中で、やはりグループホーム、ケアホームの、とりわけケアホームのところの個別支援の、世話人が一人とか二人の状況の中で、全身性の方の入浴をするとかということを、例えば二人でやったとしたときに、ほかの方をだれが見ていたらいいのかということでは、もうたちまち説明がつかない状態になるわけですね。ここが個別に積み上げられるべきだというふうに思っているということと、僕らが行動援護ということを言っているところでいけば、やはり動きのある方というのが、室内空間の中でじっとしていればいいですけれども、社会参加した場合にいろいろ問題が起こってくるわけですね。そういう意味では、行動援護の定数拡大という二点をやっていただくことで、重度障害者の生活を保障していただきたいと主張しているところです。

尾上参考人 ありがとうございます。

 御質問いただきました点、まず一つは、今回、義務的経費になったというふうに言われているんですが、具体的には、介護サービスについては上限がついていたというか、つまり、実際に自治体が介護サービスに使った費用の二分の一をちゃんと保障してもらって初めて義務的経費と言えるはずだったのが、現実には最重度であっても月でいえば百七十時間が国の基準額ですよというような形になっています。

 区分間流用、いろいろな形の御配慮をいただいておりますけれども、やはりその部分で、長時間介護をやってきた自治体に非常に負荷がかかっているということで、実は資料の十一ページのところに、これは昨年の百六十三回特別国会で、ちょうど目の前におられます福島先生が御質問をされて、宜野湾や筑後なんかの例を出されましたけれども、特にそういう小規模な自治体を中心に、長時間の介護を出したいんだけれども、出せば出すほど国庫補助基準を上回って、国庫負担基準を上回って負荷がかかってしまう、そういう仕組みになっています。

 この点、例えばスウェーデンなんかのような、あれだけ地方分権が進んでいる国においてすら、重度の長時間介護の障害者というのは人口的には少なくて、かつコミューン、基礎自治体レベルで全部解決するのが難しいということで、スウェーデンでいいますと週二十時間以上の長時間介護の人は、むしろ全国で集めた中央基金で担保するというふうな仕組みになっています。

 ちょうど同じ去年の十月二十八日の福島先生の後、さらに園田先生の質問に対しても中村局長さんが、例えば市町村の国民保険、それが足らず前になったときに保険間で再調整をするような仕組みもあると。

 そういったようなひとり暮らしの長時間の介護が全国で集めたお金で何とか賄えるような形で調整する仕組みとか、あるいは、先ほどの地域生活支援事業もやはり自治体によって移動介護の部分にかなり差がありますので、そういった部分も含めてバッファー的に何らかの形で調整する仕組みがないと、あとはもう各自治体ですよということになってしまって、今回の沖縄のような事例あるいは名取市のような事例が起きているのではないでしょうか。ぜひその点、御配慮いただければと思います。

阿部(知)委員 最後になってしまうやもしれません。藤井参考人にお願いしたいんですが、今福島先生のお話も出ましたけれども、与党の中でもいろいろな見直しがなされているというふうに伺いますし、障害団体の皆さんには御意見も述べておられる、きょうされんからもあると思いますが、現状進められている与党サイドの見直しのところで、なお藤井さんから御意見があればよろしくお願いします。

藤井参考人 障害者当事者からしますと大変な問題ですが、やはり社会から見えにくいのが障害者問題なんですね。そういう点で、国会でもぜひ問題をきちんと解明してほしいと思っています。

 私は、先ほどから理念はいいというふうにこだわっていますけれども、本当にそうだろうか。目的は私も賛成です。しかし、本当の理念というのは、やはり公費の抑制の政策思想。つまり、この間、持続可能ということを随分言ってきました。それは言いかえれば公費の抑制。私は、これくらい国家が厳しいわけですから、当然障害者もある面ではこれは考えなくちゃいけない。

 しかし、問題は、障害分野へのお金の配分率が妥当かどうかということなんです。その見積もりが本当にこれで正しいのだろうか。なぜそう言うかというと、この国は障害分野に関しては余りにも基礎データがなさ過ぎる。そういう点では国会でも随分問題になったと思うんです。やはり基礎データを集められて、私は本当はそこで議論をしてほしい。

 今回、木村先生を初め高鳥先生、福島先生に非常に頑張っていただきまして、与党として考えていただきました。しかし、二つの面で、私は大変うれしかったという気持ちが半分です。でも、その次にむくむくと出てきましたのが、全面施行二月目にしてこんなに変わっちゃうのか、もともとその設計自体に難がなかったのか、ある意味ではもう一回、応益負担問題を含めて何か棚上げというのができないのかということを一方で感じました。障害者を守るという観点から、やはり現実的に対応していくのは大事だと思います。したがって、全部理想形は言えませんけれども、その二つの気持ちがあったことをぜひ念頭に置いていただきたい。

 少なくとも、障害者の方々が一番つらいのは、経過措置という言葉なんです。障害には経過がないんですね。したがって、やはりこういう点において、きょうの参考人のいろいろな意見も含めてもう一度そこは慎重に検討していただきたいということ。そして、この問題というのは、与党、野党を超えて、この先生方がやはり我々としては味方なんですよ、そこをぜひともよろしくお願い申し上げます。

阿部(知)委員 池添参考人には、子供に対しての応益負担がいかに理不尽なものであるかということのお話、肝に銘じて生かしていきたいと思います。

 ありがとうございました。

櫻田委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。

 参考人の方々には、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして、厚く御礼を申し上げます。

 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時十四分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時二分開議

櫻田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 厚生労働関係の基本施策に関する件、特に臓器移植について調査のため、来る十三日水曜日、参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

櫻田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

     ――――◇―――――

櫻田委員長 厚生労働関係の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として厚生労働省職業安定局高齢・障害者雇用対策部長岡崎淳一君、社会・援護局長中村秀一君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

櫻田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

櫻田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。吉野正芳君。

吉野委員 自由民主党の吉野正芳でございます。

 障害者自立支援法は、多くの議論の中でつくらせていただきました。ここの委員会の私の正面席に八代英太先生の額がかかっております。八代先生は、本当に中心になってこの自立支援法をつくられました。自立支援法はすばらしい法律です。地域で暮らす、暮らすためには地域に住む、そして地域で仕事をする、そのことによって基本的な人間としての人権が守られる、午前中の参考人質問の中でもございました。

 私も昔、ある施設、別府にある「太陽の家」というところを見てまいりました。ここは福祉工場なんです。そこのキャッチフレーズが、ノー・チャリティー・バット・ア・チャンスと書いてありました。チャリティーは要らない、仕事をよこせ、そして、「太陽の家」の周りは、スーパーも郵便局も車いすで対応できるような、補助金をもらわないで、そこまで町全体、地域全体が障害者のための地域、暮らしやすい地域になっておりました。これが自立支援法が求める目標かな、私はそう思います。

 自立支援法が十月に施行されて、今、続くか続かないか、大きな危機を迎えております。その中で、私たち自由民主党は、障害者福祉委員会を木村委員長、大村委員長代理のもとでつくり、十月二十四日から六回の会合を開いて、十一月三十日に一つの提言をまとめたわけであります。きょうはその提言に沿って質問をさせていただきます。

 まず、自立支援法の枠内で、かつその趣旨に沿ったものとして、また施行直後であることにかんがみ報酬単価の変更は行わないという基本的な考えのもとで、多くの意見が出ました。負担軽減の問題、そして事業者の負担軽減の問題、また新たなサービスへの移行のための緊急措置の問題、この三つについて議論をしたわけであります。

 障害者自立支援法を壊さないためにも、早急なる対応策を考えるべきと思うのでありますけれども、大臣の考え方をお聞かせ願いたいと思います。

柳澤国務大臣 障害者自立支援法は、本当に、今、吉野委員が触れられたように、八代議員を筆頭にいろいろな方々のお知恵をいただいて、障害者福祉のあり方というものをよりよいものに改めていくという大きな構想のもとで制定されたものだということでございます。

 今委員がお触れになりましたように、地域での生活や就業など、障害者のニーズに即応した支援を体系づけるなどの改革を行うものでありまして、こうした自立支援法の目指す方向性はおおむね賛同が得られていると認識をいたしております。しかし、本改革が抜本的なものであったがゆえに、御指摘のように、利用者負担のさらなる軽減を図ってほしい、あるいは事業者の報酬の状況はどうかといったようないろいろな御意見をいただいているところでございます。このため、法の定着を目指しつつ、法の運営上の声に対しては、施行に当たって激変緩和という観点から丁寧に対応していく必要があろう、このように考えております。

 今般、自由民主党の障害者福祉委員会からも、法の運営の改善策について大変な御議論を踏まえて御提言をいただいたわけでございますが、その提言におきまして、基本的な考え方として「自立支援法の枠内で、かつその趣旨に沿ったものとする」とされたことは、こうした趣旨のものであると理解し、敬意を表するものであります。

 今後、法の実施状況として得られたデータや、このたびの自民党の提言を初めとする関係者からのさまざまな御意見を踏まえまして、現行制度の運用がより法の趣旨に沿ったものとなりますよう、今年度補正予算や来年度予算において必要な対応を検討してまいりたい、このように考えております。

吉野委員 ありがとうございます。

 「障害者自立支援法の円滑な運営のための改善策について」という提言をさせていただきました。議論の中で一番多く出た議論が、利用者負担の軽減であります。これは、働いた工賃よりも施設を利用した利用者負担の方が大きくなってしまいます。これはおかしいのではないかという御意見がたくさん出たわけであります。

 それで、私たちは、特に負担感の多い通所、在宅について経過的に負担上限額を引き下げるとともに、これは二分の一から四分の一へ引き下げてほしいということです、そして軽減の対象もNPO法人等も含めた課税世帯全部に広げていく、また軽減を行った社会福祉法人等の事業者の持ち出しも解消する、こういう提言をしております。これについて大臣の御意見を聞かせていただきたいと思います。

柳澤国務大臣 今、吉野委員から御指摘になりましたことでございますけれども、現行も軽減措置を講じてはいるわけでございます。

 しかし、在宅の場合に、大体において稼得能力のある家族と同居していることが多いものですから、なかなか、我々が設定いたしました軽減の適用については、その割合が他に比べまして非常に低いという現実がございます。そうしたことであるとか、今まさに先生が御指摘になられたような授産施設など、工賃のある通所者につきまして、平均的に言っても工賃より利用料が大きいといったようなことがたびたび指摘をされたというふうに認識をいたしております。

 このため、負担感の多い通所、在宅について経過的に負担上限額をさらに引き下げたらどうか、あるいは軽減の対象を課税世帯にまで広げたらどうかという御提言をいただいたわけでございますが、利用者の方々の負担感の軽減を図る上で一つの有効な方策であるというふうに受けとめております。こうした提言の内容や関係者の意見などを十分踏まえながら必要な措置を講じてまいりたい、このように考えております。

吉野委員 入所施設で、やはり工賃で働くわけなんですけれども、工賃控除というのがありまして、二十八万八千円までは控除できる、それまでは手元に残るという従来の制度だったんですけれども、今度、食費がかかるようになってしまいました。そういう意味で、工賃控除の見直しも私たちは委員会の中で提言をしております。従来の工賃控除を復活し、これも遡及して適用するように求めておりますので、ここについて御意見をいただきたいと思います。

中村政府参考人 工賃控除についての御提言でございます。

 入所施設における工賃控除につきましては、かつて年間二十八万八千円まで手元に残るように定められてきたところでございます。それを踏まえまして工賃控除を考えているわけでございますが、御提言の趣旨は、今委員から御指摘ございましたように、月二万四千円の工賃がある場合、食費等の負担がかからず、手元にそのまま残り、年間二十八万八千円までは工賃が確実に手元に残るようにという御指摘をなされたものと認識いたしております。

 障害者の自立を図る上で、障害者の働くことへのインセンティブを促進することが重要であるということは各方面からも提言されております。今般の御提言や関係者の御意見などをよく踏まえながら、必要な措置を講じてまいりたいと考えております。

吉野委員 次に委員会の中で議論が多かったのが事業者に対する意見でございました。サービスの質を向上する、そしてそれをまた維持していくというのは、そこで働く施設の職員のやる気、意欲だと思います。このやる気、意欲をそぐような報酬体系ではなりません。こんな意見もありました。職員の生首を切らせるようなことだけはやめてくれという御意見もございました。

 これは、事業者への報酬が月払いから日割りへ移り、通所施設においては即時の対応に苦慮し、減収となっている状況も見られるところでございまして、中間まとめ、提言においては、通所施設においては、旧体系サービスに係る従前報酬の八〇%保障について、経過的にこれを九〇%を目途として保障機能を強化する、またあわせて、旧体系サービスから新体系サービスに移行した場合について同様の保障を設ける、さらに、遠隔地であっても利用者が利用できるような送迎加算も設けるべきであるという提言をしております。この点について、大臣の御意見を賜りたいと思います。

柳澤国務大臣 自立支援法におきましては、サービスを利用していない場合でも毎月一定額の報酬を保障している月払い方式から、いわゆる日払い方式へと方式を改めたわけでございます。これは、複数のサービスを組み合わせて利用者が利用できるということをねらった仕組みであったわけでございます。日払い方式の導入に当たりましては、サービス事業者の運営に必要な費用は十分賄えるように、利用率を加味して一日当たりの報酬単価を設定したり、あるいは従前の支援費制度における報酬額の八割を保障するというような激変緩和措置を講じておるところでございます。

 しかし、いろいろな統計データを私ども見させていただきますと、報酬の日払い化への即時の対応に苦慮している事業者も確かに見られるところでございまして、そのより安定的な運営を検討する必要があるというふうに受けとめているわけでございます。このため、障害者自立支援法の着実な実施を図る観点から、いただきました御提言や事業者の実態を踏まえまして必要な措置を講じてまいりたい、このように考えております。

吉野委員 次は、小規模作業所なんです。

 小規模作業所が生まれた生い立ちというのは、お父さん、お母さんたちが自分の子供たちである障害者のために、ある意味で寄り添ってつくられてきたというのが小規模作業所の出発点であります。そういう意味で、財政的にもノウハウ的にも何にもないところから、お父さん、お母さんの子供への愛情の固まりとしてできてきたところです。そういう意味で、法定外サービスという仕分けをされているところです。今度の自立支援法の施行に伴って、法定外サービスから法定サービスに移行をしていく、小規模作業所を法定サービスに移行していくという大きな転換が図られたわけであります。この移行に伴って、現場は今大混乱をしているところです。

 自由民主党の中にも障害者の小規模作業所を支援する議員連盟というものがございます。ここでも議論もし、そして私たちの障害者福祉委員会も提言をさせていただきました。そこで私たちは、まず緊急必要な利用に対して都道府県及び市町村に交付金をつくったらいいだろうという提言をしております。その使い道は、新たなサービスに直ちに移行できない小規模作業所に対し、これまでの対策、すなわち国費でいうと一カ所当たり百十万円の補助でありますけれども、これを踏まえた、従来のサービスを踏まえた支援をすべきだということを一つ言っております。もう一つは、グループホームの立ち上げの支援をすべきだ、もう一つは、視覚障害者等に対する移動支援の充実等をすべきだ、自治体への交付金をこういう形で使うべきだという提言をしております。

 これについての御意見はいかがでしょうか。

中村政府参考人 お答え申し上げます。

 障害者自立支援法の制定によりましてサービス体系が大きく変更されましたが、小規模作業所の新体系への移行やグループホームなどの基盤整備を含め、新たな制度に直ちには移行できていない事業者も見られるところであり、障害者の方々、施設の経営者の方々及び自治体などからさまざまな御意見をいただいているところでございます。今委員から御紹介のありました自由民主党の委員会の御提言も、このような状況から出ているものと拝察いたしております。

 御指摘のとおり、事業者が事業を継続することを可能とするために、円滑な移行を促進することは極めて重要であるというふうに考えておりますので、自立支援法の理念を後押しするような取り組みへの支援を中心に、その具体策について検討させていただきたいと考えております。

吉野委員 次に、障害程度区分についてです。

 この障害程度区分はなぜする必要があるのかといいますと、障害者の支援の必要度、これを客観的に判定するためにこれは必要であります。でも、その区分に対しては信頼が置けなければなりません。今度、コンピューター判定の一次判定と二次判定との間にはかなりの落差がございます。

 そういう意味で、信頼度を上げていくためには、知的障害とか精神障害を中心に、身体障害も含めて、おのおのの障害特性を反映した区分が出るよう、コンピューター判定のあり方をも含む抜本的な見直しをすべきである、こう提言をしております。これについて御意見を賜りたいと思います。

中村政府参考人 お答え申し上げます。

 障害程度区分の意義については委員から御紹介いただいたところでございます。一次判定と二次判定でさせていただいております。二次判定も、一次判定には盛り込み切れなかった行動障害や精神面に関する項目二十項目と、医師の意見書等をあわせて合議体で総合的に二次判定をする、こういうことで今やらせていただいております。

 二次判定で判定すべき項目が多い知的障害、精神障害につきましては、委員御指摘のとおり、二次判定による変更率が知的障害、精神障害では四割以上となっております。身体障害ではこれが二割になっております。このような差は障害者の障害特性を踏まえたもので、ある意味では一次判定と二次判定あわせてはそれなりの機能を果たしているとは考えておりますが、御指摘いただきましたように、一次判定につきまして、もっと精度を高めていくということは課題であるというふうに考えております。「コンピューター判定のあり方を含む抜本的な見直しを行う。」こういう御提言でございますので、御意見を踏まえて検討させていただきたいと考えております。

 その際、まずは見直しの方向性について検討するため、各障害関係者がどのような課題を認識しているかを十分にお伺いして整理を進めてまいりたいと考えております。

吉野委員 施設入所者なんですけれども、この法改正によって、軽度の方は出ていかねばならない場面もございます。でも、この経過措置として五年間は入所はできる。ただ、これを裏返してみますと、五年たったら出ていかねばならないんだということで、利用者もまた事業者も、双方不安に思っているところでございます。

 私たち、提言では、五年たっても出ていくだけの体制が整わなければいられるんだ、そういう提言をしております。これについて大臣の御見解を伺いたいと思います。

柳澤国務大臣 自立支援法におきましては、できる限り住みなれた地域において生活を継続していただく観点から、自立訓練事業や就労移行支援事業を創設いたしました。これらの事業に積極的に取り組むことによって障害者の方々が地域移行を円滑に進めていく、こういうことが重要であると考えております。

 他方、既存の施設入所者の方につきましては、これまでの生活が激変することがないよう、障害程度区分にかかわらず、五年間は現に入所されている施設を引き続き利用できるとの経過措置を講じているところでございます。

 今後、新体系サービスの実施状況や障害程度区分の判定状況等を踏まえまして、法附則の規定にある三年後の見直しに向けまして、まず早急に検討に着手していく、このことをまず考えておりますが、いずれにせよ、御指摘のとおり、既存の施設入所者が追い出されて行き場がないなんというようなことは決してないよう適切に対処してまいりたい、このように考えております。

吉野委員 次に、障害者の自立を図っていく上で一番大切な所得の確保でございます。

 支援法の附則にも、所得の確保については早急に検討せよと書かれております。所得の確保は、就労で所得を確保するのと、就労できない場合はいろいろな形で所得保障をしていくということでございます。その際、まず地域移行を進めるという本法の趣旨を踏まえ、地域生活に必要な工賃水準が実現されるよう取り組みを強化すべきである、そして、安定的な仕事の確保のため、発注者への取り組みも強化すべきである、こう提言をしておりますので、これについて御意見をいただきたいと思います。

中村政府参考人 お答え申し上げます。

 障害者の所得確保につきましては、御指摘のように、まずは地域生活に必要な工賃水準が確保されることや、さらに一般就労への移行促進を図ることが重要な課題であると認識いたしております。

 障害者自立支援法におきましては、賃金や工賃の引き上げのため、事業所ごとの目標工賃水準の設定、公表や、目標を達成した事業所に対して報酬面で評価するとともに、一般就労への移行を積極的に推進するため、新たに就労移行支援を創設するとともに、福祉と雇用の関係機関のネットワークによりまして、企業等への就労をより効果的に支援する仕組みを構築することといたしたところでございます。

 また、私ども、平成十九年度概算要求におきましては、企業OBなどの専門家の派遣によります経営の改善や、地域における共同受注システムの展開などにより工賃の倍増を目指す工賃倍増計画を都道府県が策定し、国がこれを支援する工賃倍増計画支援事業を要求しているところでございまして、障害者が地域で自立した生活を送ることができるよう全力で取り組んでまいりたいと考えております。

吉野委員 住まいの場の確保でございます。

 地域で暮らすわけでありますから、仕事をする場所、そして住む場所、これも重要なことでございます。知的障害者や精神障害者についてはグループホームやケアホームに入居ができるんですけれども、身体障害者については今のところ入居が認められておりません。それで、私たちは身体障害者のためのグループホーム、ケアホームに関する検討を早急にしてほしい、と同時に、ケアホームにおける重度者への体制確保についても早急に検討してほしいという提言をしているところであります。これについて御意見をいただきたいと思います。

中村政府参考人 お答え申し上げます。

 障害者自立支援法は障害者の方の地域移行を目指すものであり、その暮らしを支えるため、住まいでありますグループホームやケアホームの整備を進めていくことは大変重要であると考えております。

 委員御指摘のとおり、知的障害者及び精神障害者につきましては、共同生活による利用者同士の助け合いが支援として有効である、こういう考え方から、グループホームやケアホームの対象となっております。それに対しまして、身体障害者につきましては、現在、グループホーム等の対象とはなっておらず、福祉ホームの利用や地方公共団体の判断による公営住宅への優先入居を可能としているところでございます。

 身体障害の方に対しますグループホーム等の問題も含めまして、身体障害者の方の居住支援のあり方については現在研究を行っているところでございまして、その成果を踏まえまして検討させていただきたいと考えております。

 また、ケアホームにおける重度者への体制確保については、さまざま御指摘をいただいているところであり、今委員の方からも御提言がされているところでございますので、現在の制度を点検し、実態もよく踏まえながら検討してまいりたいと考えております。

吉野委員 以上でありますけれども、私たちの委員会では、いろいろな団体、利用者の団体、また事業者の団体から御意見を伺いました。そして、議員の中の本当に真摯な議論も伺いました。そういった中でまとめた提言でございます。できることは補正予算も含めて速やかに、また、検討すべきことは早急に検討してくれることを要望して、質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございます。

櫻田委員長 次に、福島豊君。

福島委員 大臣、副大臣、大変御苦労さまでございます。

 障害者自立支援法をめぐっての私ども公明党の今までの取り組みについて簡単に申し上げさせていただきたいと思います。

 昨年の法案審議の段階におきましては、閣法でございますけれども、与党修正ということを行わせていただきました。また、さまざまに施行に当たりましての具体的な要望をさせていただきました。そしてまた、その後も、四月の法施行を目指して、具体的に報酬等をどうするのかということについても要望させていただきました。

 そしてまた、十月の完全施行を目指しましては、八月の十四日の日に、当時の川崎厚生労働大臣に、完全施行に当たっての要望をさせていただきました。障害児の利用者負担に関しては保護者の収入による負担となるため、通所施設、入所施設ともに負担の軽減を図ること、また、入所施設の報酬単価について、安定的な運営がなされる水準となるように適切な対応を図ること、グループホームにおける夜間の配置に関しては、報酬上の評価が適切になされるように配慮すること、こういった十項目に及ぶ要望をさせていただいたわけでございます。

 これに引き続いて、平成十八年度補正予算が編成されるかもしれないということも考えながら、さらに引き続いた努力が必要であるという思いから、安倍新政権の発足に際しまして、私どもは連立協議を行わせていただきました。その中で、九月二十五日でございますけれども、障害者自立支援法を円滑に運用するための措置を講ずる、こういう文言を盛り込んでいただきました。先ほど吉野先生から、私どものこうした思いも受けとめていただいて、自由民主党において精力的な御検討をいただいたということに感謝申し上げたいというふうに思っております。

 その後、十一月に入りまして、補正予算の編成が具体的な検討課題として浮上してまいりました。関係者間の協議を経まして、補正予算編成に関しての与党合意ということで、十一月二十四日に、障害者自立支援法を円滑に運用するための措置については、改革の趣旨を維持しつつ、適切に対処すること、このように明記をしていただいたわけであります。

 私ども公明党におきましても、こうした合意を受けまして、十一月二十九日に、これは仮称でございますけれども、障害者福祉基盤整備特別対策事業の実施について、こう題しました取りまとめを行いまして、障害者福祉基盤整備特別交付金の創設と自治体の実情に合わせた障害者福祉基盤整備の実施、利用者負担の減免、事業者に対する支援を三本柱として、障害者自立支援法の理念を踏まえつつ、特別対策を実施することにより、その円滑な施行を促すことを提案させていただきました。その後、自由民主党との協議によりまして、障害者自立支援法の円滑施行にかかわる合意に至ったわけであります。

 本日は、こうした一連の経緯を踏まえまして、厚生労働省の対応についてお聞きをいたしたいと思っております。

 まず初めに、利用者負担の軽減ということでございます。

 障害者の福祉サービスでありましても、社会全体でこれを支えていることには変わりがありません。当事者の方々も支え手としての意識を持っていただくことは必要であると思っております。しかし、結果として利用の手控えなど利用抑制につながってはならないことも事実であります。一方で就労政策など所得確保施策の進捗状況を見きわめながら、きめ細かい対応をしていくことが必要だと思っております。

 そして、まず初めに確認をさせていただきたいことでございますが、負担感の大きい在宅、通所サービスについて、一層の負担の軽減が必要であると考えております。

 具体的には、現在、社会福祉法人減免により負担上限が二分の一に引き下げられておりますけれども、これをさらに四分の一にまで引き下げ、社会福祉法人のサービス利用者に限らずあらゆる利用者に拡大をする、こうしたことが必要であると思っております。対象者の範囲も課税世帯まで拡大をしまして、低所得の世帯だけではなくて、中間的な所得の方々についても配慮をする必要があると思っております。また、この際、事業者の持ち出しになる経費についても配慮を行わなければならないというふうにも思っております。

 さらに、工賃の問題でございます。先ほど吉野先生からも御指摘がございました。働いて得られる工賃よりも利用者負担が大きいのはおかしい、こういう声などを踏まえまして、授産施設等の利用者負担について、低い額の工賃に見合った利用者負担に軽減するために一層の努力が必要であると思いますし、また、工賃控除についてもその見直しを促す必要がある、そのように考えております。

 こうした利用者負担のあり方について、厚生労働大臣の御見解をお聞きしたいと思います。

柳澤国務大臣 利用者の負担につきまして、特に通所、在宅サービスを利用している低所得者の方々につきましては、私どももこれまで配慮をしてまいったつもりでございます。所得に応じた負担上限額の設定、それに加えまして、社会福祉法人軽減により上限額を二分の一に引き下げるというような措置を既に講じているところでございます。

 しかしながら、現行の軽減措置につきましては、在宅の場合、稼得能力のある家族と同居して、その所得との比較になるということで、どうしても軽減の適用割合が少なくなって、その適用されない人には負担感が募っておられる、こういうことがあろうかと思います。

 それからまた、授産施設など工賃のある通所者につきましては、平均の工賃より利用料が大きい、それも問題ではないか、さらにまた、工賃控除につきましても、月二万四千円の工賃がある場合でも、現行の制度ですと、食費等に食われてしまって手元にそのまま二万四千円が残らない、こういうようなことで、このために年間二十八万八千円までは工賃が確実に手元に残るようにすべきである、こういったさまざまな御意見が寄せられておるわけでございます。

 こうした中で、今、福島委員がお触れになられたように、公明党の特別対策におきましても、通所、在宅については経過的に軽減策を拡充すべきではないか、工賃控除の見直しを行うべきではないか、これらの御提言をいただいているわけでございまして、利用者の方々の負担感の軽減を図る上で有効な方策の一つかな、このように受けとめているわけでございます。

 今後、こうした提言の内容や関係者の御意見などを十分踏まえながら、必要な措置を講じてまいりたい、このように考えております。

福島委員 大変ありがとうございます。

 午前中の参考人の意見陳述にございました、児童のサービス利用における負担の問題でございます。負担感から利用を手控える、療育を受けるところにまでいかない、こういう事態があるのではないかという御指摘がありました。

 私ども、八月の要望におきまして、十月の完全施行に際し、その負担を軽減することを求めました。これに対して、厚生労働省としても軽減策を講じていただきましたが、利用実態等を踏まえ、さらに一層の配慮が必要ではないか、そのように思っております。

 午前中の参考人の御指摘では、保育園の利用料よりも実際に療育サービスの利用の方が負担が大きいということがあります、保育料の負担というものを一つの目安として減免措置を講じていただきましたけれども一層努力が必要ではないか、こういう御指摘がございました。

 こうした声を踏まえて、子供を健やかに育てるという観点から、ぜひ御配慮をいただきたいと思っているわけであります。どうか、厚生労働大臣の御見解をお聞きしたいと思います。

柳澤国務大臣 障害児施設の利用者負担の見直しでございますけれども、本年十月からこの制度が施行されたばかりでもあるということで、その状況について私どもとしても注視をしているところでございます。

 しかし、自治体などからいろいろな御要望をいただいておるところでございまして、現在の軽減策に加えまして、さらなる追加的な措置を講ずるべきであるというただいまの福島委員の御意見は、重く受けとめたいと考えております。

 今後におきまして、関係者の御意見などを十分踏まえながら、この障害児施設の利用者負担につきましても必要な措置を講じてまいりたい、このように考えております。

福島委員 大変ありがとうございます。

 引き続いて、先ほど吉野先生からも御指摘がありました、事業者の方々の安定的な事業運営についてでございます。

 従来の措置制度のもと、また支援費制度のもとでの施設経営から脱却をし、新しい障害者福祉体系の構築へと、各事業者の努力が求められていると思います。しかし一方では、急激な変化のもとで、施設職員の方々の処遇の低下など、さまざまな課題が発生している、このように指摘をされておるわけであります。

 一方で、急激な変化に対して、下支えをしながら、新たな体系へと個々の事業者の方々の努力を促していく、この両面が必要であるというふうに考えております。

 そこで、まず初めに確認をさせていただきたいことでございますが、新たな報酬体系の単価の変化、またさらに、日額化によりまして、従来より大幅な収入の減少を来しており経営が困難となっている事業者に対して、激変緩和のための対応が必要だと考えます。特に、通所系の事業者における収入の低下が深刻との指摘があり、旧体系サービスにおける従前報酬の八〇%保障をさらに一定程度引き上げるということが必要ではないかと思っております。また、そうしたことのために、サービス利用者の増加も期待できる送迎などのサービス提供を給付の一環として認める、こういうことも一つの対応ではないかというふうに思っております。

 また、新事業体系への移行により報酬が悪化するおそれから、新体系への移行をちゅうちょする場合もございます。こうした事業者に対しても一定の保障措置を講じるべきと考えておりますけれども、事業者に対しての支援という観点から、厚生労働大臣のお考えをお聞きしたいと思います。

柳澤国務大臣 利用者については、ただいま既に申し上げたようなことで問題点に対応していくということでございますが、今御指摘のように、事業者にもまた問題があるのではないか、こういうことでございます。報酬の日払い化への即時の対応に苦慮している事業者が見られる、そういうようなことから、もっとより安定した運営ができるように検討する必要があるのではないか、こういう御指摘でございますが、これまた重要な御指摘であると受けとめさせていただきます。

 このため、障害者自立支援法の着実な実施を図る観点から、いただいた御提言、あるいは事業者の実態を踏まえて、この点についても必要な措置を講じてまいりたい、このように思っております。

福島委員 その中で、東北、北海道など寒冷地の方々からは、燃料費の負担が大変である、特に原油高という状況でございますので、問題になっているという御指摘があります。こうした検討の中で、ぜひこういった点もお考えいただければと要望させていただきたいと思っております。

 次に、こうした事業者の方々への支援の検討に当たりまして、十分に考慮しなければならない点があると思っております。従来の入所施設を中心とした福祉から地域への障害者の生活の場の移行、これが障害者自立支援法の一つの理念でございますけれども、こういう視点を踏まえながらやっていく必要があるということでございます。

 今般の対応におきまして、こうした施設から地域へ、こういう理念をどのように踏まえて対応策を考えていくのか、御見解をお聞きしたいと思います。

中村政府参考人 お答え申し上げます。

 地域移行を進めていくということにつきましては、極めて重要であると考えております。

 このため、まず、地域における住まいの場としてグループホームやケアホームを充実させていくことが必要であり、市町村の方で策定していただく障害福祉計画を通じまして、グループホームやケアホームの整備を進めていくということが大事になると思います。

 その際、やはりグループホーム等の立ち上げになかなか費用がかかるとか、そういった面もございますし、また、重度障害者の方々への配慮も必要といったことを御提言いただいておりますので、そういったことを踏まえまして、障害者の方々の地域生活を支えるという観点から、そのような施策について努力してまいりたいと思います。

 また、自立訓練事業や就労移行支援事業等、いわゆる日中活動サービスの整備も、これは住まいの場と並んで車の両輪でございますので、地域移行を進めるという視点に立って、これらの日中活動サービスの充実と住まいの場の確保が図られるよう、必要な措置を検討してまいりたいと考えております。

福島委員 若干、個別の論点についてお尋ねしたいと思います。

 午前中の参考人の意見陳述でございましたけれども、グループホーム等について重度の障害者の方、これは今まで支援費のもとでは、ホームヘルプサービスというものを同時に利用することができることによって、そこで生活の継続ができたわけでありますけれども、新しい報酬体系のもとではこうしたことが困難になりまして、経営が厳しくなっている。八月の対応におきまして、夜間支援体制加算など一定の対応がなされていますけれども、いまだに十分ではなく、従来の運営は困難である、こういう御指摘がございます。

 施設から地域へという理念を踏まえますと、こうしたグループホームというものが継続できることは極めて大切な点でございますけれども、今般の対応でより充実した対応をすべきである、このようにも考えますが、お考えをお聞きしたいと思います。

中村政府参考人 お答え申し上げます。

 グループホーム等におきます重度者への対応の問題でございますが、今委員から御紹介ございましたように、十月施行を前にいたしまして、夜間支援体制について十分ではないということで、その夜間支援体制の充実ということの配慮は行ったところでございます。

 また、ホームヘルプサービスには、基本的には、ケアホーム等の人員配置、これは障害者の方々の程度に応じそれぞれ必要度に見合った報酬を設定するということで、そのケアホームの方で介護する体制を整備したということで、考え方としては、本制度では外部からのホームヘルプサービスの受け入れはできない、こういう整理になっております。この点については、いろいろ参考人の方からも御指摘があった点でございます。現在の扱いとしては、平成二十年三月までの間に限り、経過的に外部からの受け入れを可能とするという措置を講じているところでございます。

 このケアホームにおける重度障害者への支援のあり方については、このたびの御提言を受けまして、ケアホームにおけるただいま申し上げました経過的なホームヘルプサービス利用の取り扱いも含め、その実態をよく踏まえながら、今後検討してまいりたいと考えております。

福島委員 よろしくお願いいたします。

 次に、就労継続支援事業についてでございます。

 これは、A型、B型と、両型があるわけでありますけれども、特にB型からA型へ移行していくということが事業者に求められていることであろうというふうに思っております。しかし、単価の低さから、そもそも事業の運営が厳しいという指摘もあります。また、必ずしも、その報酬単価の設定がA型への事業移行が促されるような形にはなっていないのではないか、こういう御指摘もあるわけであります。

 今後の検討の中で、B型からA型へ就労継続支援事業移行を促していく、そういう観点から一定の対応が必要であろうと思いますけれども、この点についての御見解をお聞きしたいと思います。

中村政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のとおり、就労継続支援ということでB型からA型に移行していくことは、極めて大事だというふうに考えております。そのために、できるだけA型が成り立ちますように、一定割合の障害者以外の方々も雇用を可能にするとか、雇用契約を結ぶことは現段階では難しいけれども将来的に雇用契約が結べるような障害者の方々も一緒に働けるようにするとか、そういう移行促進の仕組みを設けたところでございますが、なお、さまざま課題があるというふうに指摘されておりますし、私どもも、この点は解決していかなければならない問題ではないかと思います。

 今年度、現在、障害者自立支援調査研究プロジェクトで、実際に、就労継続支援A型の経営モデル開発事業によりまして研究を進めているところでございまして、それらの成果も踏まえ、A型への移行がもっと促進されるような方策を検討してまいりたいと考えております。

福島委員 次に、強度行動障害についてお尋ねをします。

 強度行動障害への支援というものは大変難しいものでもあります。しかし、その評価というのが十分になされていないのではないかという指摘があるわけであります、点数づけによって行われているわけでありますけれども。

 今までこの点について要望させていただき、また一定の対応を見ておるところでございますけれども、その仕組みのあり方そのものも含めてより適切な対応が必要である、そのように考えますが、御見解をお聞きしたいと思います。

中村政府参考人 お答え申し上げます。

 強度行動障害を有する方々に対する支援につきましては、さまざま御意見もいただきまして、十月から施行される前、八月二十四日に提示した対策の中で、施設入所支援について従来の支援費における加算制度と同水準の報酬額が確保されるように評価を行うことといたしたところでございます。

 こうした方々に対します、どういう報酬があるべきなのかということにつきましては、今後、障害程度区分の判定状況や重度障害者支援加算の給付の動向等を検証いたしまして、三年後の制度見直しに向けて必要な対応を検討させていただきたいと考えております。

福島委員 重度の障害者の方々の地域での生活が継続できるようにすべきである、これは参考人の意見陳述でも強く言われたわけであります。ホームヘルプサービスの利用についての上限問題、またサービス提供の単価の問題など、累次にわたりまして要望してまいりましたが、重度訪問介護など単価設定の水準に起因して事業者の事業継続が困難である、こういう指摘もいただいているところでございます。実態把握を適切に行いまして、対応にぜひ努めていただきたいというふうに思っております。

 この点について、もし意見がありましたらお聞きできればと思います。

中村政府参考人 お答えを申し上げます。

 この重度訪問介護に係る報酬基準については、新制度で新たに設定されたものでございます。

 特に重度の方々に配慮するという観点から、重度の方であります区分六の方については七・五%の加算、区分六のうち著しく重度の障害の方については一五%の加算措置を講じ、地域で重度の方が暮らせるサービスが提供できるよう配慮をしているところでございます。

 今後、事業者の経営実態等を含めた施行の状況を把握いたしまして、障害報酬の改定においてその必要性を議論させていただきたいと考えております。

福島委員 よろしくお願いいたしたいと思います。

 三番目の論点でございます。地域ごとのきめ細かな対応による地域の障害者福祉基盤の整備ということでございます。

 障害者福祉サービスの基盤にはまだまだ大きな格差が存在いたしております。とりわけ精神障害者の福祉サービスについては著しい格差があるわけであります。障害者自立支援法のもとで新たな障害者福祉サービスの提供を円滑に進めていくためには、ケアマネジメント、すなわち相談体制の構築も重要であります。また、この点でも地域格差が存在いたしております。

 今般、公明党が障害者福祉基盤整備特別対策事業及びその実施のための交付金の創設を提案いたしておりますのも、こうした状況にきめ細かく対応することが必要だ、このように考えるからでございます。市町村における障害者計画の策定、交付金による事業、地域生活支援事業が一体のものとして障害者福祉基盤整備が進められることを期待いたしております。

 そうしたことの中で、小規模作業所の問題でございますが、補助金の見直しにより大きな影響を受けている地域が存在するということは事実でございます。また、新たな事業体系への移行にはハードルが高く、支援が必要な場合も多々存在いたしております。こうした事例に対しても地域の実情に応じた対応が必要であると考えております。

 小規模作業所の運営の継続、また新たな事業体系への移行を促すためにどのような支援を進めていくことが必要であるか、この点についてのお考えをお聞きしたいと思います。

中村政府参考人 お答え申し上げます。

 小規模作業所につきましては、現在、法定外の施設でございますが、新しい体系では、就労移行支援、就労継続支援、地域活動支援センターと、それぞれ法定内の施設に移行できるというふうな整理をしたところでございまして、その新しい事業体系への移行が望まれているところでございます。

 ただ、こういうふうに大きな変更でございますので、小規模作業所の中には新たな制度に直ちには移行できないという事業者の方も見られ、また、その方々の事業継続が大事ではないかというふうに思っておりますので、公明党の方の特別対策の御提案も、小規模作業所の新事業体系への移行支援、緊急、必要な需要に対応するという御提言というふうに理解しております。

 事業者の方が事業を継続することが可能となるよう、具体的な取り組みの支援策については検討させていただきたいと考えております。

福島委員 よろしくお願いいたします。

 また、自立支援法を円滑に運営していくためには、地域におけるケアマネジメント体制の構築が極めて重要であると思っております。重度の障害者の方々のサービスをどうするのか、また地域生活支援事業をどうやって構築していくのか、こういった観点からも重要でございます。

 しかし、その体制というものは必ずしも整っておりません。地域の相談体制の充実強化のために一層の取り組みを促すべきであると思いますが、お考えをお聞きしたいと思います。

中村政府参考人 お答え申し上げます。

 相談支援事業につきましては、利用者の最も身近な地域において行われることがよいということで、市町村にお願いをするというのが障害者自立支援法の整理になっておりまして、市町村の必須事業として位置づけられております。相談支援体制の整備を進めることが求められております。

 また、都道府県におきましては、なかなか市町村では対応できない専門的、広域的な分野や人材育成等により、市町村の相談支援をバックアップする体制をとるということが設けられたところでございます。

 これにつきましては、具体的には地域生活支援事業に位置づけられておりますので、その地域生活支援事業を活用していただきたいと考えております。特に、市町村の相談支援体制の充実強化に関しましては、都道府県に自立支援協議会を設置して市町村をバックアップする体制整備ということをお願いしておりますので、都道府県、市町村に対しまして、またこの点について十分事業が推進されるよう、私どもも都道府県、市町村の方にお願いしてまいりたいと考えております。

福島委員 精神障害者に対してのサービスの問題でございますが、地域生活支援センター事業については、地域によってはその存続が危ぶまれる、こういったところもあるわけでございます。精神障害者サービスの基盤整備について十分に配慮する必要がある、そのように考えるわけでありますけれども、この点についてもお考えをお聞きしたいと思います。

中村政府参考人 精神障害者地域生活支援センターにつきましては、これまでは都道府県事業として実施してきたところでございますが、本年十月以降は、市町村地域生活支援事業の相談支援事業あるいは地域活動支援センターの事業へ移行するということが想定されております。

 しかしながら、なかなか移行できない、直ちに新体系に移行が困難な事業所もあることが想定されますので、市町村事業として経過的に精神障害者地域生活支援センター事業ができるように配慮してきたところでございます。これもいわば新体系への円滑移行の配慮が必要だということでございますので、その点、十分配慮できるような支援策について検討してまいりたいと考えております。

福島委員 そのほかにも、例えば児童のサービスについて、グループホーム、ケアホーム、こういった新しいサービスの整備も必要である、こういう御指摘もあります。できるだけ幅広くさまざまな声をすくい上げながら、今後の対応を進めていただきたいと思います。

 時間も残り少なくなりましたので、最後に大臣に、三年後の見直しに向けての決意ということをお聞きしたいと思います。

 見直しに向けまして、特別対策により下支えを行いながら、障害者の定義の見直し、また負担のあり方について、こうした検討を障害者当事者の声を十分反映しつつ、また、自立と社会参加という理念を堅持しながら鋭意検討を進めていくべきだと考えております。

 その中には、障害程度区分の判定のプロセスの見直しということも当然含まれると思いますけれども、大変な作業だと思いますが、どうかしっかりと取り組んでいただきたい。

 そしてまた、付言するならば、所得保障の問題につきましても、厚生労働省を挙げて就労の拡大ということでさまざまな取り組みをいただいておりますけれども、この三年後の見直しの中で、そうした成果がきちっと出るように頑張っていただきたいと思うわけであります。

 最後に、大臣の御決意をお聞きして、終わりたいと思います。

柳澤国務大臣 障害者自立支援法の附則におきましては、障害者の定義の問題、あるいは障害者の就労支援を含めた所得確保に係る施策のあり方が検討課題とされておりまして、法施行三年後の見直しに向けて検討を進めるべきこととされております。

 このため、障害者の所得の確保については、働いて自立しようとする方々への支援や、福祉施設で働く方の工賃の引き上げを図るための工賃倍増計画などの施策を実施するほか、障害者の定義につきましても、厚生労働科学研究におきまして研究を行っておるところでございます。

 委員御指摘のとおり、今後も、だれもが地域で普通に暮らせる社会を目指すという障害者自立支援法の理念の一層の促進を図ることが重要だと考えておりまして、法の見直しに当たっては、障害者の方々も含めた関係者の御意見をよく踏まえながら、また地域福祉の変革の動向といったようなものも十分フォローアップをしながら、この三年後の見直しに備えてまいりたい、このように考えております。

 まずは、新たな特別対策の自治体における円滑な実施、周知、定着を図ることが重要であると考えておりまして、特別対策実施後の施行状況についても十分注視してまいりたい、このように考えます。

福島委員 以上で終わります。ありがとうございました。

櫻田委員長 次に、菊田真紀子君。

菊田委員 民主党の菊田真紀子です。

 きょうは、大臣に質問をさせていただく機会をいただきまして、まことにありがとうございます。限られた時間でありますので、障害者自立支援法の細かいことよりも、むしろ大臣の認識、基本的な考え方をお尋ねしたいと思います。どうぞよろしくお願い申し上げます。

 私たち民主党は、当初から、これは障害者の自立を促す法律ではなく、障害者の自立を阻害する法律ではないかと訴えてまいりました。私自身も、昨年十月十八日の本会議で質問に立たせていただき、障害者自立支援法は、障害が重い人ほど負担が大きくなる制度であり、障害者に対して十分な所得保障もないままに一割負担を押しつけるべきではないと強く訴えたところでございます。

 しかし、御案内のとおり、私たち民主党の猛烈な反対を押し切って、与党の賛成多数により可決されました。そして、やはり私たちが心配していたとおり、四月からの施行で負担増となった障害者や収入が減った事業者などから多くの不満が相次ぎました。

 私は、週末、地元に戻るたびに福祉現場を回り、障害者や御家族、施設関係者とお会いをし、御意見を伺ってまいりました。

 新潟市にほがらか福祉園という知的障害者授産施設がございます。四月以降、昼の給食を食べずに持参した弁当で済ます利用者が出始めました。一日五百五十円の給食費を節約するためであります。施設に通うペースが半分に落ちた人もいます。通えば通うほど自己負担がふえ、家計を圧迫するからであります。

 魚沼市にある知的障害者通所授産施設、堀之内工芸は、知的と精神の重複障害者など三十三人が利用していますが、国などから施設に支払われる報酬が月額から日額払いに変わったことにより、収入が大幅に減りました。本年度の収入見込みは昨年度より約一千百万円少ない約四千九百万円と、大きな痛手を受けています。ほかの施設でも、職員の給料が満足に払えない、職員を正規ではなく契約採用に変えたといった声を多く聞きました。

 こうした状況は新潟県だけではございません。全国の地方自治体や地方議会からも、この法律に対する不満の声が上り、見直しを求める意見書などが相次ぎました。さまざまな障害者団体からも、とりわけ、この法案に賛成した障害者中央五団体までもが大幅な見直しを訴えたのであります。去る十月三十一日には、史上最大の一万五千人以上の障害者、福祉関係者が日比谷公園周辺に集結し、自立支援法の見直しを必死に求めました。

 このような中で、私たち民主党は、三年後の見直しまで待てない、一刻も早く見直すべきだと訴え、今国会でいち早く自己負担一割凍結を柱にした改正案を提出したところでございます。一つの法律が施行された後、短期間の間にこれほどの反響、これほど多くの不満の声、悲鳴の声が上がるというのは珍しいのではありませんか。大臣はこんなに反響が出るということを予想されていましたでしょうか。また、こうした事態に対してどう対応されるのでしょうか。お伺いいたします。

柳澤国務大臣 障害者自立支援法は、もう何回も申し上げておりますように、地域での生活や就業など障害者のニーズに即応した支援を体系づけるなどの改革を行うものでありまして、こうした自立支援法の目指す方向性については、いろいろな方から御賛同の声をいただいているものと認識をいたしております。

 しかし、本改革が抜本的なものであるだけに、その実施に当たって関係者からさまざまな御意見をいただいていると、これまた認識をいたしております。このため、この法の定着を目指しつつ、法の運営に関する声に対しましては、施行に当たっての激変緩和という観点から、丁寧に対応していく必要があると考えております。

 今般、与党からは、障害者自立支援法の円滑な運用のための措置の申し入れがございました。法の運営の改善策についての御提言でありまして、今後、このような申し入れ等も含め、関係者からのさまざまな御意見や法の実施状況として得られたデータを踏まえながら、制度の運用がより法の趣旨に沿ったものとなりますよう、必要な対応を検討してまいりたい、このように考えている次第であります。

菊田委員 十月の本格施行からわずか二カ月を待たずして、今回、大幅な見直しを行うことに至ったわけですが、これは極めて異例のことです。そもそも、政府の見通しや現状認識が非常に甘く、私たち民主党がさきの国会審議の中で問題提起したことが、そっくりそのままあらわれたのだと指摘をしておきたいと思います。

 しかし、今回、私たち民主党の提案や現場の声を真摯に受けとめ、問題解決のために大臣が動かれたことは大変立派な御英断であることを評価したいと思います。大臣にはこれからも、何よりも現場の声を大切にし、決まったことだから動かせないという姿勢ではなく、改めるべきは改めるという姿勢で、ぜひ頑張っていただきたいと思います。

 振り返ってみますと、支援費制度も、わずか一年目にして在宅サービスの予想外の伸びに対して予算が不足するという事態に陥りました。このときもまた見通しが甘かったのではありませんか。そして、この制度の限界を知った厚生労働省は、今度は新たに応益負担、つまり、障害者の皆さん、受けるサービスの量に応じて支払ってくださいという制度に変えたわけです。

 しかし、この自立支援法も、本格施行後わずか二カ月を待たずして、今回、大幅な見直しをせざるを得ない事態になったわけですが、そのたびごとに障害者や家族、福祉現場関係者は混乱させられています。今回の見直しは三年間の暫定措置となっていますが、その後は果たしてどうなるのでしょうか。現場の不安はなくなっていません。こんなに短期間の間に多くの問題が噴出し、見直さなければならなくなった法律です。応益負担という基本的な考え方、制度を変更しない限り、障害者自立支援法ではなく、自立阻害法であると私は思います。三年後の見直しでは、応益負担という考えを根本から改めるべきではありませんか。

 障害者が食事をしたり、着がえたり、トイレに行くにも、それはサービスだから、益だから利用料を払えという発想自体が、福祉の理念に逆行し、障害者を苦しめています。世界の福祉政策の流れにも逆行すると私は考えますが、大臣、いかがでしょうか。

柳澤国務大臣 自立支援法は、支援措置に移りましてから補正予算のたびに大変多額の財政資金投入をしなければならない、こういう事態に立ち至りまして、より安定した財政的な裏打ちをした制度にしたい、こういう考え方のもとで、かたがた、また実際に障害者の状況を施設に閉じ込めておくような傾向のある制度から、地域で普通の生活ができる、そういう枠組みにしたいというようなことから、それをみんなで支えるためには利用者の負担もお願いしよう、こういうことで始められたものでございます。

 その際、低所得者にも無理なく御負担をいただけますように、所得に応じて負担の上限を設けるほか、障害年金のみで生活している方や預貯金の少ない方に対してはさらに負担を減免するということで、配慮措置を講じてまいったところでございます。

 今般、与党から、激変緩和の観点から利用者負担につきましても御提言をいただきました。これは法の枠内における対応として扱うべきとされておりまして、私どもとしては、これを検討させていただきながら、引き続き本法の定着に向けて全力を尽くしてまいりたい、このように考えております。

菊田委員 午前中の参考人質疑の中でも、日本障害者協議会の藤井参考人から、費用負担の問題だけではない、人間としての怒りなんだという言葉が発せられました。ぜひ大臣にもこの声をしっかりと受けとめていただきたいと思います。

 この法律ができたとき、障害者からこういう声を聞きました。国はさんざん借金をつくって、その財政難のしわ寄せを障害者に押しつけているという批判です。この声に大臣はどうお答えしますか。

柳澤国務大臣 現在の社会保障制度は、国民皆保険、皆年金その他万般にわたりまして、国際的に見てもかなりの水準にあるというふうに考えております。

 ところが、他方で社会保障制度を支える財政資金、こういうものについては、社会保障制度の枠内ではこれがしっかりと投入されている。昔のように、年金へ投入すべきものをしばらくの間延期してもらうというような、そういう措置はとっておりませんで、しかるべく適時適切に必要な資金が投じられております。

 しかし、その原資はどこから来るかといいますと、これは大幅な赤字国債でもって賄われる、こういう仕組みになっておりまして、社会保障制度を見る方々、これは受益者の方あるいは支え手、こういうような方々も、果たしてこの社会保障制度がこのままで持続可能なんだろうか、こういうようなことで、不安や信頼の点で欠けるところが示されているということが実態かと思うわけでございます。

 いずれにしましても、社会保障制度を支えていくためには、やはり受益者それからまた負担の点、こういったようなことについて、あくまでも公平に、それからまた、そのレベルにおいても基本的には負い得る範囲内でその負担を負っていくというようなことで、みんなで支え合うということでないと、持続可能で国民から信頼される社会保障制度にはなり得ない、こういうように思うわけでございまして、今回の自立支援法の制定もそのような基本的な考え方から出発しているということをぜひ御理解賜りたいと思います。

菊田委員 障害は自分ではどうすることもできません。障害の重い人ほどより多くのサービスを受けなければ生きていけません。自分の力で収入を得る可能性は閉ざされています。そのような人たちに、たとえ一割といえども自己責任で頑張れと言うのは、どう考えてもおかしいと思います。どうしても応益負担というならば、十分に所得保障がなされ、生活保障がなされるのが前提です。それまでの間は、少なくとも一割負担を凍結することを求めたいと思いますが、大臣、いかがですか。

柳澤国務大臣 自立支援法の考え方でございますけれども、財政的な裏打ちを本当に不足のないようにしようということでありますと、やはりその制度は、制限的な支援費あるいは制限的な措置費の時代に比べましてより広く国民の支持を得なければならない、このように私は考えるわけでございます。

 そういう意味合いで、今回、基本的に一割の御負担をお願いしたい、しかし所得のレベルに応じて上限を置き、また減免措置を講ずるということで、スムーズなこの制度の定着に向けて努力をしたい。こういうことで、今そういった方向での努力が払われているところでございまして、ぜひ私どもとしては、このような制度について御理解をいただき、その制度が円滑に運用され、定着していくことを期したい、このように考えております。

菊田委員 就労支援についてお伺いします。

 私の地元三条市に、わかばの会という障害者の雇用を積極的に支援している事業者のグループがございます。障害者雇用のために涙ぐましい努力を重ねていますが、残念ながら、不況にあえぐ中小零細企業の多くは、障害者への理解はあっても、受け入れる余裕がありません。受け入れてくれる企業が年々減っているのが実態です。

 企業に課せられた一・八%の法定雇用率が達成されたことはこれまで一度もなく、この十年間の実雇用率の推移を見ましても、平成八年で一・四七%が、平成十七年でも一・四九%と、わずかに〇・〇二ポイント上がっただけ、ほぼ横ばいとなっています。

 なぜ障害者の雇用は遅々として進まないのでしょうか、お伺いします。

柳澤国務大臣 民間企業におきます障害者の雇用状況でございますが、平成十七年六月一日現在におきまして実雇用率が一・四九%、これは確かに委員の御指摘のとおり、法定雇用率の一・八%が未達の状態ということでございます。

 他方、この法定雇用率達成企業の割合が四二・一%というふうになっておるわけですが、特に中小企業の実雇用率が低い水準にあるという事情がございまして、この面では事業主の理解が必ずしも十分でないということがあるんではないか、また改善を要する点も多いというふうに認識をいたしているわけでございます。

 このため、厚生労働省では、従来から、実雇用率の低い企業に対して、雇い入れ計画の作成を命じ、この計画を適正に実施するよう指導を行っておりますけれども、本年からは、さらに未達企業に対しまして指導基準を見直し、雇用率達成に向けて段階的にこの実現が図られるということを今期しているところでございます。

 具体的に障害者雇用を促進するためには、企業、障害者両方に対するきめ細かな支援、相談体制が必要であると考えておりまして、ハローワークにおきますきめ細かな職業相談、職業紹介を初めとして、各般の取り組みを行っているところでございます。

 今後とも、こうした取り組みを積極的に推進することなどによりまして、障害者雇用がより一層促進されるよう努めてまいりたい、このように考えます。

菊田委員 障害者雇用率制度のもとで雇用率未達成の事業主は、障害者雇用納付金を納付しなければならないこととされていますが、しかし、当分の間、常用雇用労働者数が三百人以下の事業主からは徴収しないことになっています。

 当分の間とはいつまでを言うのでしょうか。これでは、障害者を積極的に雇用しよう、しなければというインセンティブになっていないのではないでしょうか。お答えください。

岡崎政府参考人 納付金制度につきましては、発足当初のいろいろな状況の中で、中小企業、三百人以下の企業につきましては今対象にしておりませんが、現在の中小企業におきます雇用率の低い状況、こういったものにかんがみますと、そういう制度でいいかどうかという問題があることは認識しております。

 現在、中小企業におきます障害者雇用の促進についての検討会を行っておりまして、来年夏までにその検討会で、その点も含めまして検討しているところでございまして、そういった中で、納付金制度のあり方、これについても見直しを含めて考えていきたい、こういうふうに考えております。

菊田委員 午前中の参考人質疑の発言の中でもありましたが、ドイツなどでは企業が発注すると実雇用率に反映されるというインセンティブがあります。こういう取り組みをぜひ日本でも行うべきだというふうに思います。

 それから、知的障害者、精神障害者は、日によって体調が変わり、気持ちが不安定になってしまうという、非常に波があるわけでありますが、そういう障害者を雇用する、長く働いてもらうことは、企業にとっても障害者にとっても大変な苦労があるわけです。就職しても数カ月でやめてしまう、そしてまたしばらくして次の会社に入るということで、本当に大切なことは、就職した後にいかに長く定着していただけるかどうかだというふうに思いますけれども、障害者の平均勤続年数がどれくらいなのかということを厚生労働省はつかまれておりますか。

岡崎政府参考人 定着が重要であるということは、私どももそう思っておりますし、ジョブコーチによります定着指導その他、ハローワークにおきましても行っているところでございますが、障害者につきましての勤続年数というのは把握していないという状況でございます。

    〔委員長退席、吉野委員長代理着席〕

菊田委員 就職して終わりではなくて、いかに長く働いてもらえるか、そのためにみんなが協力をしていかなければいけないと思っています。ぜひ、そういった見守り、そしてこれは厚生労働省として当然やるべきことだと思いますので、今後しっかり取り組んでいただきたいと思います。

 時間が参りましたので、終わりにしたいと思います。ありがとうございました。

吉野委員長代理 次に、田名部匡代さん。

田名部委員 民主党の田名部匡代でございます。

 この障害者自立法に関しましては、私も随分地元の方々にお話を聞かせていただきました。障害当事者、また事業主の方だけではなくて、役所の方々も本当に苦労をしておられまして、担当の課の方がお会いをするたびに何だか元気がなくなっているような気がいたしまして、お話を伺いに行くのも本当に忍びないというような気がいたすほど、本当に大変な思いをされていたわけであります。

 これというのも、先ほど来いろいろお話がありますけれども、これだけ大がかりなことを、少ない人数で、しかも短期間に実施を迫られてしまった。そして、あげくの果てには、地方は財政難であります。何とか支援をしたいと思っていたとしても、それがなかなか形とならないのが現状でありまして、その担当の課の方が、事業者の方には何とかつぶれないで乗り越えてほしい、つぶれたら、そこを必要としている利用者の行き場がなくなってしまうからと。これは、本来であれば、では行政が何とか支援してくださいよというところでありますし、行政もできることならやってあげたいと思っている。しかしながら、本当に財政が厳しくて、なかなかそれができない。その苦しい胸のうちを明かしてくれたのではないかなというふうに思っています。

 一方、役所だけではなくて、当然、私の伺ったところでは、御自身が車いすで生活をしながらにして施設を運営していらっしゃる方がいますけれども、この方に伺ったときも、利用者の数は減るし、職員もリストラをしなければならない状況に追い込まれているんだ、さらには、受けるサービスには地域間の格差があって、このことに関しては各自治体の責任なんだとか、まあ格差があることは仕方がない、そんなことで片づけないでもらいたいというような、苦しい話を伺ってきました。

 この自立支援法に関しましては、そもそもこんな考え方はおかしいんじゃないかということがたくさんあるわけでありまして、例えば、百六項目の認定基準の中身、また応益負担というそのこと自体の考え方、さらにはその一割負担であります。一割負担によって、先ほどから何度もお話が出ていますけれども、工賃よりも利用料の方が高い、そういう現状になっているわけです。

 先にちょっとお伺いしたいのですけれども、参考人にお伺いしたいのですが、こういった実態は想定済みだったでしょうか。

中村政府参考人 お答え申し上げます。

 障害者、例えば授産施設等の工賃につきましては大変低い水準にあるということは、私ども、月額平均一万五千円というふうに承知いたしております。そういう工賃の状況等は把握いたしております。

 それから、利用料の問題でございますが、定率負担ということでいたしますと、例えば、通所の場合に、授産施設を運営するために一人当たり仮に十六万円の費用がかかっていたとしますと、単純に一割負担をそのまま適用しますと一万六千円、こういうふうになります。入所施設の場合にはさらに高い水準になりますので、そういった意味では、受けているサービスといいますか、それに要した費用、つまり、税金で負担しているのが九割という部分、一割が御自身の負担ということで単純計算しますと、一割の御負担が、その方々が授産施設で働かれてその成果を工賃として得られるものよりも大きい現状にあるということは、私ども承知いたしております。

 利用料と工賃とはパラレルに結びつくものではないので、そこのところがわかりにくいので大変いろいろ御疑念を生んでいるところですが、考え方としてはそういう考え方で、私どもとしては、工賃が低いことの方が基本的には問題である、最低賃金をクリアできていないわけですので、そちらの方を何とか高めていくことが施策の優先順位ではないか、こういうふうに考えております。

田名部委員 昨年のこの自立支援法の質疑の中で、自民党の林委員から、利用者の負担について、所得の低い人が働く喜びあるいは意義を失わないような、そういうきめ細かいことをやってほしいと言ったことに対して、中村参考人の方から、賃金収入の件については、「特にそういう年金や工賃収入につきましては、利用料に充てていただく場合に手元に残る額が多いような設定もさせていただいておりますので、年金や工賃収入の範囲内で利用者負担額は御負担いただける水準になるものと考えております。」というお答えがありました。

 私は、先ほど菊田委員からもお話がありましたけれども、支援費制度のときも、たった二年で財政が破綻してしまった、維持できなくなってしまった。そして今回も見通しを誤ったんじゃないか、想定外だったのではないかと思っているわけです。どうしてこういうことが起こるのかといいますと、やはり障害者の生活の実態をほとんど把握していない。そして、午前中の参考人からもお話がありましたけれども、当事者の声をほとんど聞かないで、急いでこの制度をつくってしまった。それは何でかといったら、一割負担を一刻も早く払ってほしい、私は、すべてが財源ありきでこの法律の話が進んでしまったのではないかというふうに思っているわけなんです。

 そこで、ちょっと通告していないので、わかればでいいですけれども、払っている利用料が受け取る工賃を上回っているところというのは、全国で、全体ではどのぐらいあるか、おわかりになったら教えてください。

中村政府参考人 それぞれの方の工賃もばらつきがありますので、そういうデータは現在はございませんが、例えば、これからの新しい仕組みにおきましては、就労継続支援事業所におきまして、そこでの目標工賃の水準の設定、それから公表をするということになっておりますので、実態がわかるというふうになると思います。

田名部委員 皆様のお手元に資料をお配りいたしておりますけれども、私の地元八戸市で調査をした結果であります。これは、まだ新体系に移行していないところもあるため、すべての数字ではありませんけれども、調査できる範囲で行った工賃の状況、ごらんいただきたいと思うんです。

 工賃状況、利用料を下回っている人、一番下に合計が書いてありますけれども、二百二十五名とあります。これは、パーセンテージであらわしますと七二・八%。約七三%の人が、そこに行って働いて受け取る工賃以上の利用料を払っているということなんですけれども、これは、何度考えても、世の中にこんなことってほかにあるんだろうか、本当におかしなことだというふうに思っているんです。言ってみれば、働きに行って給料をいただいて、しかし、その会社にそれ以上のお金を払う義務が課せられている。こんなことがあるのか。まあ、あるわけでありまして、これは大変おかしなことだと思っています。

 先ほども、国の財政がという話がありました。国の財政が苦しいことで国民にたくさんの負担をしていただいているのが今の現状であります。では、例えば、国も借金だらけで財政的に苦しいのだから、我々も、そして役所の皆さんも、働きには来ていただきたいけれども、ただ働き、ただ働きとまでは言わなくても、来たら来た分お金をちょっと払ってもらえませんかといって、働く気になるんでしょうか。例え方が大げさかもしれないけれども、私は、そんなことと同じような話ではないかというふうに思っているんです。

 私は、先ほど参考人の方からいろいろ御説明がありましたけれども、施設に通って工賃を得るということは、サービスを受けているということではない、私はそんなふうに思っているわけです。それをサービスと受けとめることの方が、考え方が間違っていると思いますが、大臣はいかがお考えでしょうか。

柳澤国務大臣 働きに行ってということで、働きに行ってもらう賃金、工賃よりも支払う方が多くなるということは通常あり得ないではないかという田名部委員の仰せは、それは、そういうことであれば、そういう言い方をするとそのとおりかと思うんです。

 しかし、その場合に、働きに行くということが、単に働きに行くのではなくて、特別な施設に行っていろいろな施設のサービスを受けていらっしゃるということがそこにあるわけでございまして、そのサービスとの関係で利用料というものがそこで設定されておるわけでございまして、決して、お働きになっていただくことと利用料が見合っているということではないということは、先ほど中村局長の方からも御説明させていただいたとおりでございます。

田名部委員 おっしゃっていることは、私も十分理解をしております。しかしながら、多くの利用者は、なぜ働きに行ってそれ以上のお金を取られなきゃいけないのだろうと。それは、実は障害者の皆さんも理解をしているのかもしれません。しかし、心情的には、それならば、ほかに、年金をもらって、そこに行かなくても生きていけるのであれば、別にわざわざ取られに行かなくてもいいやというふうな思いになってはいけないと思うんです。

 ですから、やるべきことの順番が逆なんです。所得の保障も確保もしない。そして、工賃倍増計画というのが出てきたようでありますけれども、やるのであれば、こういうことをやってから負担を求めるべきではなかったんでしょうか。

 では、工賃倍増計画というのは、一体、例えばどんなことをしたら工賃が倍増になるのか、お考えがあったら簡単にお聞かせください。

中村政府参考人 お答え申し上げます。

 私どもも、さまざまなところでモデル事業などをやらせていただいております。例えば長野県では、十万円程度あると地域で生活ができるということのようでございますが、長野県の工賃は一万五千円を切っておるということで、県の方で、モデルの事例で、事業者あるいは施設の方で協力をして、できるだけ働く場所を確保し、それぞれの工賃の引き上げを図って工夫した結果、一万円程度の工賃の上積みができ、場合によっては地域移行できるような成果を上げております。

 そういった事例などを検証してみますと、やはり施設の経営をなさっている方々の方の工夫、これは、今お話ありましたように労働者と考えますと、働いている方の問題よりも、賃金を多く出すというのは経営の問題でございますので、経営者の努力によるところが大きいわけですが、福祉施設の経営者の方は、残念ながら、必ずしもそういった意味での企業経営的なセンスがすぐれているわけではないわけで、そういった意味では、経営者の方のサポートが必要だ。共同して販路を拡大するとか、よい仕事を下請として持ってくるとか、そういった努力が必要になると思いますので、経営者の方のサポートというようなことをやり、共同受注とかそういうことも広げていくようなことを我々は想定いたしております。

田名部委員 であるならば、そういうことがわかっているのであれば、経営者にしっかりとした指導を行うだとか、こういうことをやったら工賃が倍増するんですよ、そういったことをもっと知らしめて、それからこの議論に入るべきであって、先に負担ありきだったじゃないですか。

 工賃倍増計画も、本来、この法案を議論しているときに、所得の確保を保障するべきだとあれだけ我々も申し上げてきたわけですから、本当はそういったときに考えて、もっと早くに手を打つべきだった、私はそんなふうに思っているわけなんです。

 私は、国が何でも面倒を見るとか支援をすればいいというふうには考えていません。それは、健常者であっても、また障害者であっても、苦しくても頑張れる人には頑張ってもらうべきだろう、働ける人には働いてもらえばいいんじゃないかと思うんです。働くことによって、そこで生きがいを見つけて、そして自立をしていく、そういう社会をつくっていかなければならないと思いますし、皆さんが、いつも財政ありきでおっしゃるのであれば、財政のことで考えたって、自立ができるほどの所得があったら、年金ではなくて、所得税を納めてくれるかもしれない。もっといろいろな国の財政的なことを考えても、いい方向に進んでいくのかもしれない、そんなふうに思うんです。

 先ほども申し上げましたように、苦しくてもみずからがそれぞれにできることを頑張って、その上で、支えを必要としている人にはしっかりと支援をしていく、こういうことが大事なのであって、それこそがまさに共生の社会、ともに生きる社会だろうというふうに思っています。今のような、生きがいも感じられない、楽しみながら、そして頑張って仕事をしているのに、それ以上に負担が重いというような、それは頭では理解していても、気持ちの上で何だかそれはおかしいなと思うような、私はこんなおかしなことはやめるべきだと思っています。

 時間もありませんので次の質問に移りますけれども、障害者の雇用の状況であります。ことしのデータを下さいとお願いいたしましたら、ことしのものは今月の中ごろでなければ集計が出てこないということですので、ぜひ、その集計が出た時点でその資料をいただきたいと思いますけれども、お手元にもお配りしていますが、昨年のものを見ていただきたいと思います。

 昨年、この審議の中でも随分議論もあったと思いますけれども、民間の話はおいておきまして、国、都道府県、そして市町村、教育委員会、こういったところの法定雇用率の達成を私は率先してやっていかなければならないというふうに思っております。指導をする立場にあって、民間の法定雇用率が達成していないだとか、納付金を払ってもらおうとか言う前に、やはりみずからがこの障害者の法定雇用率を一〇〇%実現させるというのは当たり前じゃないかと思うんですけれども、大臣、いかがお考えですか。

柳澤国務大臣 仰せのとおりと思っております。

田名部委員 どういう対策をとるおつもりでしょうか。

岡崎政府参考人 国の機関につきましては、状況を把握した後、昨年来指導してきまして、基本的に今年度は全機関で達成できる見込みというふうに考えております。

 ただ、都道府県の機関あるいは市町村につきましてはまだ十分ではありませんし、特に教育委員会等、非常に低いところもございます。そういったところにつきましては、私ども、それから都道府県の労働局長あるいはハローワークの所長、これらが直接それぞれの、例えば教育委員会であれば教育長でありますとか、そういったところに話しに行きまして、トップダウンの形できちんと対応していただく、こういうふうなことで一層指導を強めていって、障害者雇用率の達成、これを図ってまいりたい、こういうふうに考えております。

田名部委員 この資料を拝見しますと、都道府県の教育委員会、達成割合二・一%と、これは驚くべき数字でありまして、ぜひ、大臣は達成するのが当然だと思いますとおっしゃっておりますが、その御答弁こそが当然でありまして、だからどうしなきゃいけないのかということを、しっかりと大臣がリーダーシップを持って指導していただきたいと思いますし、これはやはり早急に達成をしていただくようにしていただきたい、そんなふうに思います。

 そして、この雇用のことに関しましては、どれだけ雇用率が上がったかということだけが重要なのではなくて、やはり、例えば会社が不景気であるだとか、会社の何らかの事情で真っ先にリストラをされるのが障害者であってはいけないというふうに思っているんです。ですから、逆に、障害者が不利益をこうむらないような、そういう対策も必要ではないかと思っておりますので、よろしくお願いいたします。

 この雇用の問題に関連いたしまして、ちょっとジョブコーチについて伺いたいと思います。

 これは平成十四年から始まっている事業でありまして、お聞きしたところ、四年たった現在、約八百名弱しかこのジョブコーチは養成されていないということであります。ジョブコーチがふえることによって障害者の就労がふえるであろうということは予測できるわけですが、せっかく立ち上げた事業であるにもかかわらず、四年間で八百名弱しか育っていないという理由は何だとお考えでしょうか。

岡崎政府参考人 八百名という数字は、高障機構の地域センターでありますとかあるいは福祉施設で現時点でジョブコーチとして配置されている人数でございますが、講習を受けられた方については千数百名おられます。ただ、それでも十分ではないという感じも持っておりまして、今年度につきましては、高障機構と民間団体におきます講習も含めまして約四百名ぐらいの講習をやる、こういうことにしております。

 それから、ジョブコーチの配置の仕方につきましても、従来、地域センター等に配置するということをしていたんですが、もう少し広く活用していただくために、助成金制度にしまして、各福祉施設でありますとか企業で使っていただいた部分については助成金で資金的な面倒を見る、こういう仕組みにしておりますので、今後さらに拡大していくというふうに考えております。

田名部委員 実は、一つ御紹介を申し上げたいんですけれども、地元の話で恐縮ですが、私の地元、八戸市で、行政と有識者と申しますか、大学の先生であるとか障害当事者の方々が一堂に会しまして、このジョブコーチについて、どうやったらもっとよりよいものになるのかということを議論されたそうです。その中で、例えば、条件だとか資格の取得方法等の問題だけではなくて、はっきりした数字は伺わないとわからないですけれども、このジョブコーチをやることによっての日給だとか日数によって、ジョブコーチでは生活していけないということが一つ大きなネックになっているのじゃないかというお話がありました。

 伺ってみるとそのとおりでありまして、これに対してどういう御提案をしてくださったかと申しますと、学生のうちにこの資格を取れるようにしたいと。そしてその後、地域の施設の中で一定期間、例えば二カ月なら二カ月研修を受けてもらう。その後就職をする際に、受け入れの企業にも、新規採用のときに一緒に資格の有無も考慮をしていただきながら採用をしてもらう。これをやることによって、企業にとっても何の負担もないわけなんです。つまり、新規採用をして、通常、例えば障害者の方がいらっしゃらないときにはふだんの業務をやっていただけばいいだけのことでありまして、しかし、障害者を雇い入れたときにはその方がジョブコーチとして見ていくということになっているんですね。

 これはいい御提案だなというふうに思っておりまして、これは学生たちの意識の向上にもつながります。また、先ほど申し上げた、途中で地域の施設に何カ月か研修に行くことによって、障害者との交流というか、また理解も深まるでしょうし、障害者の方がどこかに就職をするときに、今度はそこで交流を持った学生さんがどこかの会社に行っている、顔見知りから教えていただけるという安心感もあるというような話でありました。

 ぜひ、いい御提案でありますので、厚生労働省だけではなくて文部科学省との連携もしっかりとりながら、こういったことを考えてみてはいかがでしょうか。お考えをちょっとお聞かせください。

岡崎政府参考人 障害者の雇用を全体として進めていくためには、雇用の面だけではなくて、教育あるいは福祉を含めてでありますが、その連携が必要でありますし、ジョブコーチの今のお話も、ジョブコーチだけで生活するというのはなかなか厳しい面もあるというのは、御指摘の状況もございます。

 そういう中で、企業に対しましてジョブコーチの助成金を出すことにしたというのも、先生の御指摘のような趣旨も含めてあるわけでございまして、企業の中でジョブコーチとして活動するところにつきましては国の方から助成金を出す、それ以外のときは普通に働く、そういう中で、ジョブコーチとしての活動につきましては企業の負担もなくなる、こういうような発想でございます。

 今の御指摘も含めまして、教育の方とも、教育委員会の雇用率だけの話ではなくて、むしろ今のような積極的な面につきましても連携を深めていく必要がある、こういうふうに考えております。

田名部委員 ありがとうございました。

 もう一つ、私の地元ではいい取り組みをしているので、たくさん御紹介をしたいことが出てきてしまうんですが、障害者の就労支援を行っている民間の団体があるんですけれども、これは全国いろいろなところにあるかと思いますが、何が珍しいかといいますと、この団体、十七、八年前に結成をされたんですが、行政主体ではなくて、全く民間の中小零細企業の皆さんが独自に活動を立ち上げた、雇用の受け皿をつくったという、これは全国でも珍しいということで、地元の新聞等でも報道をされていたところであります。実際、現在も三十名近い障害者の皆さんが、地域の建設業界また飲食業等々、いろいろなところで働いております。

 こういう民間での活動をもっと支援してもいいのかなというふうに思うんですけれども、まさにこの皆さんの活動というのはボランティアであり、養護学校の先生方と協力をし合いながら、本当に、私もいろいろお話を伺ったんですけれども、何度も何度も企業に足を運んで、汗を流して、一人でも多くの子供たちを何とか雇用してもらおうという努力をしているわけなんです。

 ぜひ、こういった民間の力、マンパワーというのも生かしながら障害者の雇用を高めていただきたいという中で、一つちょっと気になることがありまして、お伺いしたいと思います。

 ジョブコーチ等々、いろいろな事業をやっているわけですが、その事業をやっているのが独立行政法人や公益法人。高齢・障害者雇用支援機構、これはジョブコーチだけではなくて、相談事業だとか講習、また広報活動等を行っております。

 例えば、この機構が行っている事業の一つに、民間の企業の納付金を預かるというか、受け取るというか集める、そういうことをやっているんですが、決算報告書を拝見したら、これが業務を委託されていたんですね。業務を委託してかかっている経費というのが相当ありまして、人件費だけでも十億以上のお金がかかっていますし、そこにどのぐらいの人数がいて、委託をしなければならないような業務なのかなと思って伺ってみました。実際どんなふうにお金を集めているんですか、例えば保険料のように一軒一軒回って集めているのであればそれは人数も必要でしょうけれども、一体どうなっているんですかと言ったら、書類を送付して、返ってきたものをチェックしているんだということでありました。

 そこの機構の本体の役員さんの報酬も、年間約一千五百万から二千万。この人たちが障害者の雇用にどれだけ汗を流してくれているのか。全くそれはしていないということではありません。必要な経費であればそれは使えばいいのでありますけれども、これだけ障害者に財政難だからやっていけないから一割負担ですよというようなことをやるのであれば、私は全体をしっかり見直すべきだと思うんです。やはり、みんなが納得して、快く受けるサービスにお金を払えるような体制を国全体でつくり上げなければならない。自分たちの利益は守り続けて、そこは隠しておいて、財政が苦しいですから皆さんだけ負担をお願いしますといっても、それは私は納得いかないんだというふうに思いますし、これは間違っていると思います。

 徹底して、無駄があるのであれば無駄を省いていただいて、削れるものは削る、民間でできるものはやっていただく。先ほど申し上げましたように、民間の個人事業主のマンパワーでたくさんの雇用を生んでいることもあるわけですから、そういったこともしっかり考えていただきながら、今後の障害者自立支援法、私たちはその改正案を提出しているわけですから、本来であれば審議をしていただければ、もっともっと時間をとって、いい方向に向けていい議論ができると思いますので、そのこともぜひ御検討いただきたいとお願いを申し上げて、質問を終わります。

 ありがとうございました。

吉野委員長代理 次に、山井和則君。

山井委員 これから三十分間、自立支援法の見直しについて議論をさせていただきます。

 まず冒頭ですが、きょうの午前中は、本当に参考人の方々から非常に貴重な現場の声をお聞きすることができました。また、この声を真摯に受けとめて、この自立支援法の見直しに、私たち国会議員、取り組んでいかねばならないと思っております。

 そしてまた、この間、新聞報道等によりますと、自民党、公明党が千二百億円程度の補正予算を要求している、また、政府も内々そういうふうなことに合意しつつあるというようなことも聞いております。こういう障害者福祉というのは、ある意味で政党、党派というのは関係なく、みんなの願いが障害者が地域で暮らせる社会をつくっていきたいということですから、この間の自民党、公明党、そして、厚生労働大臣を先頭とする、また中村局長を先頭とする厚生労働省の障害福祉部の方々の御努力には、本当に敬意を表したいと思っております。やはり、現場で困っておられる方々は非常に多いですから、この補正予算をてこに、障害者の方々が喜べる社会にしていかねばならないと思っております。

 また、その前提としては、十月三十一日に、一万五千人以上の、史上最大の障害者関係者の方々が日比谷公会堂や国会周辺に集まられて、自立支援法、出直せということで運動をされました。やはり、その方々の現場の声、そういうものが政治を突き動かしてきたんだと思います。

 私たち民主党は、きょうの資料にもお配りしておりますように、臨時国会が始まって当初、自立支援法改正法案というものを提出しました。ここに資料もございます。一割負担、応益負担の凍結、それと施設への財政支援ということを書きまして、六つの緊急提言も書きました。先ほどから与党の方々の見直しの御議論を聞いておりますと、ある意味で、私たち民主党を初めとする野党が、この一年半、こういう問題が起こりますよということを言ってきたことや、また我が党が臨時国会冒頭に緊急提言をしたことが多く含まれております。そういう意味では、やはりこういう声を真摯に踏まえて、これからも議論をしていきたいというふうに思っております。

 そこで、限られた時間ですので、順番に申し上げたいと思います。

 まず最初、私たちの法案にも書いてございます、応益負担の凍結、一割定率負担の凍結のことについて質問をさせていただきたいと思います。

 この資料の中の三ページ目に、私の住んでおります宇治市で、ここに書いてございます十四の施設関係者の方々が市長あてに要望を出されました。私も、すべての関係者からもう何回も話を聞き、この四月以降、本当に悲鳴にも似た要望を聞いてきております。

 少しだけ読み上げますと、自立支援法の「理念や考え方とは裏腹に施設の現場では利用者負担の増大、支援費の大幅減に伴うさまざまな問題がでています。法施行に伴い利用者負担の増を理由に施設を退所する方、サービス利用を控える方が生じています。」「施設経営も現状のままで推移していけば施設の運営自体が困難になってくることが予想されます。しかし、日々の利用者支援にあたっている施設の現場においては、施設の経営がどんなに厳しくなっても、常により質の高いサービスを利用者に提供していくことが求められていることはいうまでもありません。」こういう声もございます。

 また、この資料の一番後ろと二枚目に、これも私、日々聞かされている現場の悲鳴が、地元の洛南タイムス、城南新報でも報じられております。これは、保護者の方々、施設の方々が宇治市議会に要望されたときの記事でございます。ある施設職員の方は、次のように語っておられます。「職員の安定的雇用ができず、利用者へのサービス提供に影響が出るが、サービスは落とせない。にっちもさっちも行かない。」また、次のページによりますと、ある保護者の方は、「「自立支援法が続く限り、地獄の生活を送ることになる。処置費に戻してほしい。それでも一割負担をしろ、給食費を払えというなら払う。しかし、施設だけは何とか守ってほしい」と涙ながらに懇願」されたというふうに出ております。本当にこの自立支援法で現場の方々は苦しんでおられるわけです。

 我が党の菊田議員、田名部議員からも質問がありましたが、そもそもやはり応益負担に問題があるのでないかと、午前中、藤井参考人からも話がありました。冷静に考えていただきたいんですが、好んで障害を持って生まれたわけではありません。そして、重い障害がある人ほどより多くの利用料が必要となるというのがこの応益負担の考え方です。でも、障害が重ければ重いほど働くチャンスは減って、所得を得るというチャンスも低いわけですね。その人に対してより多くの自己負担を求める。やはり、これは本当に、この理念、正しいでしょうか。

 それともう一つ。午前中も藤井参考人がおっしゃっておりました。この法律は、やはり越えてはならない一線を越えたのではないか。つまり、私も多くの障害者から聞かされたのは、なぜトイレに行くのに、なぜおしっこをするのにお金がかかるんだ。一般の人だったらお金がかからないわけですね。それによって、先ほどの尾上参考人のDPIの方々のアンケートでは、四割の人がサービスを減らしておられる。どんなサービスを自立支援法の自己負担増によって減らしたかというと、トイレを我慢している、外出を我慢している、入浴の回数を減らした、こういうことになっているわけです。

 そこで、お伺いをしたいと思います。この利用料以外に食費や交通費も別途あるわけで、やはりこの応益負担、定率一割負担は凍結して、応能負担に戻すべきではないでしょうか。あるいは、もっと大胆に軽減をすべきではないでしょうか。大臣、いかがですか。

柳澤国務大臣 障害者自立支援法につきましては、たびたび申し上げておりますように、これが当初の措置費から支援費に変わり、支援費をぜひもっと安定的な財源で裏打ちしてもらいたい、かたがた、障害者の支援については地域的な偏りもあるので、それを全市町村の障害福祉計画のもとでみんなが均てんできるような、利用者が非常に拡大できるような、そういう制度にしたい、こういうようなことでつくられたものでございます。

 そうした中で、これを一部、九割は財政で背負うわけですけれども、残りの一割について負担をしていただきたいということを制度として導入させていただいたわけですが、しかし、よく考えてみると、やはりそこには所得による一定の限度もあるじゃないかということで、これについては上限を設ける。さらには、いろいろな形で減免措置も講ずることによって、きめ細かに支払いの能力に対応できるような、そういう制度にしようということで一歩一歩進めてまいりました。そうしたことによって、この制度が円滑に運用され、定着し、そういうようなことで障害者のできるだけ多くの方というか、ほとんど全部の方がこの制度のもとで地域の普通の生活ができる、そういう方向に持ってまいりたいということでつくり出した制度でございます。

 したがって、私どもとしては、基本の制度の趣旨は守りながら、それに沿う形で、現実の移行期にありますこの困難さというものに対して必要な施策を講じて、先ほど申したように定着を図っていきたい、このような考え方をとっているわけでございます。

山井委員 今私が聞いた肝心の、重い障害のある人ほどなぜ重いお金を払わねばならないのかということに対する御答弁はございませんでした。このことは大きな問題提起として受けとめていただければと思います。

 次に、日割り制の問題です。

 自己負担の問題とともに、要は人数割りから日割り制になったということで、本当に施設経営は非常に厳しくなっております。九割ぐらい保障するという声も政府から出ておりますけれども、私も現場を回っておりますが、逆に言えば、一割マイナスというのはやはり非常に厳しいわけなんですね。ですから、やはり日割り制をなくすなり、あるいは九五%か一〇〇%、ある程度保障する。そうしないと、きょうもるる議論があったように、職員の方のボーナスが減った、あるいはリストラされた、正規職員が非正規職員になった、それではいいサービスができないわけであります。

 その点について、大臣、いかがでしょうか。

    〔吉野委員長代理退席、委員長着席〕

柳澤国務大臣 障害者自立支援法におきます事業者への報酬の支払いは、日払い方式になったわけでございます。これは、利用者にとりましては複数のサービスを組み合わせて利用することができるということ、それからまた事業者にとっては、利用者から選ばれる存在になることによってサービスの向上に努めることが促されるというようなことから、こうした制度を導入させていただきました。

 現に私が訪ねました施設におきましても、この制度になってから、どこか別のところの通所の施設がいいかもしれないといって自転車でそちらの方に出向いてしまった人がいるんですよと、施設の長が苦笑いしながら話をしておりました。現にそういう反応がもう起こっているということも、現実の一端でしょうけれどもあるわけでございまして、そういたしますと、今私が申し上げましたように、やはり事業者も本当に利用者の方に目を向けて、利用者の方々に魅力のある、そういう施設にしなければいけない、こういうようなことも促されざるを得ない、そういうことにもなろうかと思いまして、この日割り方式ということには非常に意味が、我々のねらいとしては込められているということをぜひ御理解賜りたいと思います。

 しかし、さはさりながら、実際に移行期で、まだそれほどのいろいろな心構え、準備ができないうちにそういうことが現実のものになるということには戸惑いもあるだろうということで、私どもは従前の報酬の八割を保障しますということを申し上げたのでございますけれども、今回、与党の方々からは、別途これをもうちょっと引き上げるようにという御提案がありましたので、私どもとしては真剣に検討して、改善が図れるものなら図りたい、このように考えているというところでございます。

山井委員 これに関連して、利用抑制が非常に深刻な問題となっているんですね。結局、本当はきょうは体調が悪いから休みたい、でも施設の報酬が減るから休めない、あるいは、風邪を引いて休むときは、本当にごめんなさいと施設に謝って休まないとだめだ、あるいは、よく休む重度の方がなかなか施設に通いにくくなる、そういう深刻な問題も起こっているわけです。

 この利用抑制について等、きっちりと厚生労働省がフォーマットをつくって、全国の自治体に利用抑制の調査などをすべきだ、経営実態や雇用の問題、そして滞納の問題等をすべきだということを今までからお願いしておりましたが、この件について答弁をお願いいたします。いつ調査結果が出ますか。

柳澤国務大臣 たびたび山井委員を中心とした方々からそういう強い要請がございまして、私どもも、実態を把握することは何よりも必要である、こういうようなことから、現在、調査を行っております。

 共通のフォーマットで、そうした利用抑制というようなことを中心として今尋ねているわけでございますけれども、やはりこれはかなりきめ細かな調査が必要になってくるというようなことから、やや時間がかかっているわけでございます。できるだけ早くこの調査結果を皆さんにお示しするように、今、努めているところでございます。

山井委員 要望ですが、年内には出していただきたいというふうに思っております。

 それでは次に、引き続きまして療育、きょうの午前中も池添参考人からございました療育のことについてお聞きしたいと思います。

 私の家の近所にも、宇治福祉園、かおり之園、双葉園などの、障害児の療育をやっている施設がありまして、この二週間、私もずっと回ってまいりました。しかし、そこで出会ったのは、二歳、三歳の障害のあるお子さんを抱いたお母さん方が、この自立支援法は何とかしてほしい、そういう本当に切なる願いを聞かされました。先日もTBSの番組でも、鎌倉市の療育施設でお母さん方の悲鳴、それも報道されておりました。この鎌倉市の例でも、平均的に四、五倍、自己負担が上がったというわけであります。

 そこでお伺いをしたいと思いますが、やはり午前中お越しになっていた参考人の方々もおっしゃっておりましたが、若い世代はただでさえ収入も少ない、そして、障害のあるお子さんがおられたらパートにも行きづらい、そしてまた、ただでさえ障害のあるお子さんを育てて苦労されているところをさらに応益負担で一割定率負担というのは余りにも酷ではないか、やはりこれは応能負担に戻すべきではないかというふうに思います。大臣、いかがでしょうか。

柳澤国務大臣 障害児を持たれた親御さんというのは本当に御苦労が多いということも、私も近回りにそういう方がいらっしゃいますので、よく承知をしております。

 そういうことで、山井委員からはせめてこの部分だけでも、応益制というのは私どもこれを申し上げておりません、むしろ定率負担ということで理解をお願いしたいわけですけれども、それを撤回すべきではないかということでございますが、私どもは私どもなりの配慮をさせていただいておるということもひとつ御理解いただきたいわけでございまして、就学前の障害児の方につきましては、一般の子育て世帯との均衡を図るということで、保育所の保育料程度の負担水準になるように負担を軽減させていただいた。それから、入所施設につきましても、課税世帯のうち、より所得の低い世帯という区分を設けさせていただいて、これに対して負担の軽減を行ったところでございます。

 しかし、この点についても、今回、与党の方で経過的な措置ということで申し入れがなされましたので、これについて私ども真剣に検討させていただきまして、現行制度の運用がより法の趣旨にのっとったものになりますように必要な対応を検討していきたい、このように考えております。

山井委員 ぜひ大幅な軽減をお願いしたいと思います。

 続きまして、まさに今、保育所でも利用料を取っているんだからという議論がありましたが、保育所は日割り制になっていますか。療育施設で本当に困っているのは、職員の人はいるわけですね、ところが今、インフルエンザがはやっていますよ、お子さんが来なくなったら、その分、収入が入ってこないわけですよ、でも職員の方はいるわけですね。そうしたら、何回も休みがちな子供というのは、ある意味で不採算なお子さんといってはじき出されかねないという問題もあるわけですし、二歳や三歳の子供が急に体調が悪化して休むのは、もうこれは仕方ないじゃないですか。でも、休むときに、先生、休んでごめんなさいと言って休んでいる。やはりこういうのはどう考えてもおかしい。

 繰り返し言いますが、保育園に行って、幼稚園に行って、子供が病気で休んだらそこの収入を減らす、そんな制度がありますか。これはやはり障害児いじめじゃないですか、こういう制度は。職員の方も、これだけ発達障害児などのニーズがふえ、急拡大している、待機児童もふえている、にもかかわらず、経営は日割り計算でますます苦しくなって施設がつぶれかかるのはどう考えてもおかしいということをおっしゃっております。

 この施設への財政支援なり、日割り制を見直すということについて、大臣、いかがでしょうか。

柳澤国務大臣 保育所が日割りであるということは、私、聞いておりません。そういうことはないというふうに認識をいたしております。

 このたびの施設の事業者につきまして、日割りになったことによって、特に通所のケースが多いと思いますので、通所の場合にはなかなか減免のところの適用者が少なくなっているというような調査のデータもございますので、それらに配慮して、今回、従来の報酬の八割を保障するということについてさらなる上乗せの提案がございましたので、これについて検討をして対処をしていきたい、このように考えております。

山井委員 もう一つ、現場に行って深刻な相談を受けました。それは、こういう通所をする療育施設においても、障害の申請をしないとサービスを利用できないんですね。ところが、やはり二歳、三歳という親も障害をなかなか受け入れられないときに障害の申請書を出すというのは、なかなかこれはハードルが高いんです。

 今、発達障害のお子さんも含めたら六、七%、多い人は一〇%、二〇%とさえおっしゃっているんですね。より多くの人が利用しやすく、間口を広くする、それはやはりこういうところを早いうちから利用した方がその後の発達保障にも役立っていくということは明らかであると思います。

 その意味では、具体的な提案になりますが、こういう申請書の中から障害という言葉を除く。例えば、将来の発達の開きが予想されるとか、将来の発達のばらつきが予想されるとか、何らかの表現に変えたり、また障害福祉サービス受給証というのも、児童デイサービス利用証でいいと思うんですよ。やはりできるだけ利用しやすいように改善していただきたいと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

柳澤国務大臣 これは非常に、山井委員の現実に即してよく事実をごらんになった立場からの御質問だと思って、受けとめました。

 私の友人で、知的障害を持っているかなり重症の障害児をお持ちの方がいらっしゃるわけですが、彼が言うには、こう言うんですね。ずうっと何にも言葉を発しない、しかし、ある日突然、本当に父親たる自分の言葉に反応することを常に夢見ているということを聞いたことがあります。

 そういうようなことで、こういう障害をお持ちのお子さんを持っている御両親も、やはり現実に、障害というものをこういう形で現実ではあっても突きつけられるということに、恐らくきつい思いをされるということは十分あり得ると思います。この点は、委員の御発言の趣旨がどうやったら生かされるかということで、今後、工夫、検討してまいりたい、このように思います。

山井委員 ぜひとも前向きに検討していただきたいと思います。

 それで、少し非常に残念な新聞記事を読み上げさせていただきたいと思います。昨日の中日新聞の朝刊であります。

 滋賀県甲良町の駐車場で、四日夜、とめてあった乗用車から三人の死体が見つかった。父親四十三歳と、いずれも養護学校に通う長女十四歳と二女十歳。死因は一酸化炭素中毒で、無理心中と見られる。母親は三年前に他界し、父親は在宅支援サービスを活用しながら一人でまな娘を懸命に育てていた。その生活を一転させたのは、四月からの障害者自立支援法。過重な負担が父の背中にのしかかった。

 生活が苦しい、娘の将来が不安、車内に残された遺書には絶望の言葉がつづられ、自宅からは消費者金融の督促状が見つかった。娘二人は二〇〇三年四月から養護学校に通学していた。十一月、母親が病死。子供は自宅から通っていたが、平日は養護学校の寄宿舎などで過ごすこととなった。

 四月に施行された障害者自立支援法がじわりと父親を追い込む。ヘルパー利用は、本人負担がこれまでの月千円程度から月六千円にふえ、受けた短期入所費も、千円程度だったのが二万円に膨れ上がった。出費がかさむと職員にこぼしていた。

 父親は、五年前から勤めている製造業の工場で、平日の朝九時から夕方五時まで、月給は月に二十数万円ほど。まじめで無口。同僚に家族のことを話すことはなかった。

 父親は、仕事帰りに、十一月三十日、役場の福祉課を訪れたが、そのとき、十二月一日のサービスをキャンセルした。週末明けの月曜日。三人の遺体は車の中で折り重なって見つかった。

 この一家の御冥福をお祈り申し上げたいと思います。

 おとついです。もちろん、こういう真相ということはなかなかわからないかもしれません。しかし、審議の際にも、ただでさえ御苦労をされている障害者の御家族に負担を与えるのではないかと大きな問題になりました。また、この三月にも、去年より五倍もの障害者を巻き込んだ心中事件が起こって、このままいけばこういう犠牲者がふえるんじゃないかということが委員会でも指摘をされていました。きょうの朝の藤井参考人も、障害者の家庭というのは鉛をおぶって歩くようなものであるという話がありまして、そして、今回の自立支援法は、その鉛をおぶってさらに坂道を歩けというような法律だということをおっしゃっていました。

 大臣、この滋賀県は全国でもトップレベルの先進地です。そして、今回政府がやろうとしている九割保障とか軽減を先取りしてやっているところなんです。それだけのことをやってもこのような悲劇が起こってしまっているわけであります。その意味では、私は、今回の軽減策なり見直しは急いだ方がいい、それも大幅にやらないと大変なことになる、そういうふうに思います。

 大臣、このような痛ましい犠牲者をもうふやさないという御決意を語っていただきたいと思います。

柳澤国務大臣 いずれにしても、私も、もしそういうことが事実であれば、本当にお気の毒だというふうに申さざるを得ないと思います。

 私ども、そうした悲劇が起こらないように、本当にきめ細かく、負担能力をよく見て負担のレベルを決めていこうということで今いろいろと努力をいたしておるところでございますので、ぜひそういったもので、正確な情報と申しますか、相談なぞもぜひしていただいて、そして、そうした悲しい結果につながるようなことのないようにしていただきたい、こういうように思います。

 私どもとしては、今申し上げましたとおり、いろいろな方面からの御意見、さらには我々の調査のデータを踏まえて改善をしてまいりたい、こういうように思っております。ただ、国の制度であるだけに、すぐあしたからとか、ただいまからというわけにはまいりませんので、よく利用者の皆さんも新しい改善策等についても正しい御理解をいただいて、そういうようなことについて余り悲しいことを引き起こさないようにぜひお願いをいたしたい、このように申し上げます。

山井委員 お母さんからのお便りを一つ読ませていただきたいと思います。きょう、午前中、参考人に来られた方からいただきました。

 息子が二才すぎた頃から、他の子と違うと感じ初め、二才半の時に小児科へ行き、いきなり五分程で”この子は自閉症です。”と言われました。二〜三枚の説明書きを渡され、”障害”という事はまったく考えもしない現実と受けとめれない私達がいました。先生に療育をする事でこの子達の未来も自分で出来る事も増え、いろんな経験を通して成長します。との言葉に私達は自分の子供でありながらこれからどうかかわってあげればいいのか全くわからず、障害児の療育施設へ通う事にしました。それまで半年の期間がありましたが、家で子供と二人きりでいると精神的にも肉体的にもつかれ、この子と一緒に死んだ方がこの子のためかなとパニックをおこすたびに考えました。でも同じ子供をもつ親との交流や親身に息子にかかわってくれる先生や苦手な事に経験をかさねていくことで克服していく息子の成長を見れた時に、どんな子供も成長する力があり、親も子供とのかかわり方を日々勉強できました。

 私のまわりの人でもこの自立支援法が施行されてから、毎日お金の問題で療育に行けない人もいます。子供をのばしてあげれる場を、お金のために奪わないで下さい。長い人生生きていくため、親がいなくなった後も少しでも自分でできる事をふやし一番脳が発達するこの大切な時期を見守っていただけるのなら、この法案をもう一度考えてほしいと思います。どうぞ宜しくお願い致します。

という療育施設に通っておられるお母さんでした。

 最後に申し上げますが、やはり、党派を超えて、そして厚生労働省の方とも一緒になって、何としても、障害者が暮らしやすい、そして、やはり日本に暮らしてよかったと障害者の方が思えるような形にしていかねばならない。その意味では、私は、今回の補正予算、またきょうの参考人質疑は、これで終わりではなくて、ここからスタートで、どうやってこの困っておられる方々を支えていくかということの大きな議論をこの厚生労働委員会でせねばならないと思います。この法律一つが障害児の人生、障害者の命を左右しているということの重さを私たちは感じねばなりません。

 最後に、大臣にお答えいただきたいんですが、そういう趣旨も踏まえて、ぜひともこの補正予算の中でも、こういう療育児の、障害のあるお子さん方の支援というものにも大幅にやはり支援をしていっていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

柳澤国務大臣 ただいま山井委員がおっしゃられたとおり、障害児の皆さん方は、施設を利用することによって少しでも発達、それからいい方向への状況の改善ということの希望がふえるんだろう、こういうように思います。ですから、施設をできるだけ円滑に利用していただけるように、所得の状況に応じて御負担いただけるような、そういうことを目指して改善をしていきたい、このように考えております。

山井委員 ありがとうございました。

櫻田委員長 次に、高橋千鶴子君。

高橋委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 先ほど来紹介されている一千二百億円規模という与党の補正予算案については、利用者と事業者への一定の負担軽減が盛り込まれました。十月三十一日の日比谷に一万五千人が集結する、このことを象徴とした全国の障害者団体の大きな運動が後押ししたのだろうと受けとめております。私たちも、各委員会での質疑はもとより、ことし二月、六月、八月と重ねて緊急要求を提言してきたところであります。ただ、与党案は時限措置であって、二年後に迫った、三年後ですが、もう一年たっておりますので、二年後に迫った見直しまでのつなぎと言えるものであります。

 応益負担という制度の根幹は崩すつもりはないということでありますから、ここが最大の問題であります。私としては、今回の経過措置をとらざるを得なくなった背景は何だったのか、そのことをしっかりと認識し、制度そのものの見直しが必要ではないかと考えております。

 まず最初に伺いますが、自立支援法施行に伴う利用者の負担増、いわゆる財政影響額は幾らだったのか。また、今回与党が提案している上限の引き下げは、そのうちどのくらい軽減することになるのでしょうか。

中村政府参考人 お答え申し上げます。

 障害者自立支援法による利用者負担の見直しに伴う財政影響額は、平成十八年度予算ベースで、障害者分約三百十億円、障害児分約八十億円、合わせて国費負担として約三百九十億円となっております。

 今回、与党からの申し入れにおいては、利用者負担の軽減、十九年度、二十年度当初予算二年間で国費二百四十億円とされており、この額を前提として計算いたしますと、三百九十億円から一年分百二十億円マイナスという計算になりますが、二百七十億円になるものと考えております。

高橋委員 改めて確認したいなと思うんです。

 三百九十億の影響額であったと。当事者にとっては、今山井委員からの指摘もあったとおり、生命にかかわる負担増であります。でも、国にとっては、それが国が倒れるほどの多大な額であるだろうか、本当にここは食いしばって、この負担をもとに戻しても問題はないのではないか、私はそのことを本当に言いたいと思います。

 今回の与党の提案、十分ではないけれども、この間繰り返し指摘されてきた応益負担について、影響の大きさが一定反映されたものかと思います。さらにこれを深めて、思い切った見直しを強く求めたいと思います。

 さて、昨年の議論の中で、介護給付、訓練給付、公費負担医療などが義務的経費として位置づけられました。義務的経費と裁量的経費との割合が九対一であること、三年ごとの見直しの中で各自治体がつくる障害福祉計画を踏まえ、この割合が変わっていくだろう、そういう説明であったかと思います。当事者が心配されているのは、この義務的経費について国庫負担分がきちんと担保されるのだろうかという点ですが、いかがでしょうか。

中村政府参考人 お答え申し上げます。

 福祉サービスの経費、従来は在宅福祉サービスの経費については裁量的経費でございましたが、障害者自立支援法において義務的経費になっております。

 したがいまして、市町村が給付をした経費につきまして、国は二分の一、義務的負担を行うということになっております。十八年度予算では、四千三百七十五億円、国費ということで、前年度に比べて一一%の増加の経費を算定しております。また、十九年度の概算要求におきましても、一一%台の伸びの福祉給付費の経費を要求しておりますが、これも予算でございますので、実績に基づいて二分の一、負担をするという義務的経費になっております。

高橋委員 今のお答えは、当然、義務的経費ですので担保するということで受けとめてよろしいということですね。はい。今後、補正で義務的経費が拡大したときどうなるのか、予算不足のため自治体にしわ寄せが行かないのか、さまざまな心配があります。それが今の答弁で、きちんと担保されるということを確認したいと思います。

 私は、その上で、サービスの量はこの程度なんだと決めて、それ以上使ってはいけませんよと上から決められている、このことがやはり一番大きな問題なんだろう。私は、なぜこの程度と決められなきゃいけないんだろう。午前中の参考人の質疑の中でDPIの資料の中にもありましたけれども、一人一人に必要なサービスは違うんだ、そのことを本当に踏まえたら、最初から量も仕組みも決まっているということそのものを見直ししなければならないのではないか、そして、実績に応じてきちんと義務的経費が担保されるような仕組みにしていきたい、そのことを指摘していきたいと思います。

 そこで、厚労省は、この間、野党が繰り返し要求してきたこともあり、全国的な影響調査を行って、取りまとめを行っているところと聞いております。そこで、障害者施策にとって欠かすことのできない職員、サービスを支えている職員の実態に着目した調査は行っているでしょうか。

中村政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、調査の件は、先ほども大臣お答えいたしましたように、実施状況についてきちんとしたフォーマットで調査を行っております。特に、その際、当委員会でも、例えば所得区分に応じて利用の控えがどうなっているか、そういったことについても調査するようになど細かな御要請をいただきましたので、そういったことについて、まずは急がれるものについて調査をいたしております。

 それから、今委員の御指摘は、福祉サービスを提供する施設職員の待遇、処遇、そういった観点から、適切な経営が担保されることの前提としてそういう実態調査をすべきではないか、こういうお話だと思います。

 これは、従来も、施設の報酬については、それぞれの施設の経営状況等について見させていただいた上、実態把握に努めて、事業者の状況について把握し、報酬水準の改定をするという作業をいたしております。何分、障害者自立支援法の新体系につきましては、まさに十月から施行されたところでございますので、状況が落ちつきました段階で、また報酬改定の時期等も踏まえて、経営状態について把握をしてまいりたい、こういうふうに考えております。

高橋委員 いろいろおっしゃいましたけれども、職員の実態は把握をされてないということだったと思います。

 午前中の参考人の資料の中にもございましたけれども、きょうされんが十二月一日に発表した自立支援法に伴う影響調査、これは、十月からの全面施行に伴って、多くの事業者や施設では厳しい経営を余儀なくされていること、そういう中で、施設、事業所職員にも深刻な影響を与えていることを浮き彫りにしました。ことし三月以降、施設職員が七十二人も退職をしています。自立支援法の影響で、やめたいと感じている人は、回答があった千二百六十五人中、六割近い、七百二十九人にも上っております。特に、やめたいと感じている人への調査では、忙し過ぎて体調を崩した、百六十六人、忙し過ぎて精神的に体調を崩した、百十五人、減給によって生活設計の見通しが立ちがたくなっている、漠然とした不安を抱えているなど深刻な声を出しております。

 大臣に伺いたいと思います。

 もともと、施設、事業所の職員は、十分な条件ではないものの、障害者事業を担っている誇りと気概に燃えて献身的に支えてきたのが実態ではなかったでしょうか。こうした支え手がいなければ、障害者の自立も福祉施策もそもそも成り立たないと思います。職員の皆さんが退職をされる、またはやめたいと思っている実態をどう受けとめていますか。

柳澤国務大臣 委員の御指摘のとおり、質の高いサービスを確保する上では、資質の高い職員を確保しておくことが非常に重要だ、このように考えます。

 これも今委員のお述べになったところから、やはり事業者に対する報酬がそういう事態をもたらしているのではないかというようなことを御主張される向きが多いわけでございまして、私どもとしては、この報酬については、当初案から、実はかなりいろいろなことを配慮した単価に設定してきたつもりでございますし、また、全体額についても、従前額の八割を保障するというような激変緩和の措置を講じてまいったわけでございます。

 ただ、特に通所の施設につきまして、報酬の日払い化への即応の対応に苦慮されている事業者も見られるというようなことがデータの上からも示されている、そういうことかと思いまして、こうした事業者が、より安定的な運営を確保できるように、また、職員が、今仰せのとおり、やりがいを持ち、生きがいを持って質の高いサービスを障害者の皆さんに提供されるように、そういった考えから、今回与党から御提言もございました、したがいまして、私ども、その御提言と、それからまた、我々の把握している実態等を踏まえまして、どのような対応がいいかということを検討していきたい、このように考えているところでございます。

高橋委員 職員の話をしますと、必ず、質の高いサービスをというお話をされるんです。もちろん、よりよいサービスをやりたいとみんなが思っています。でも、私が今指摘をしているのは、それ以前の問題なんです。障害者施策を支えている職員の皆さんがもたなくなったら施策は崩れるでしょうということを言っているんです。そのことに対して、しっかりと受けとめているのかということであります。いかがですか。

柳澤国務大臣 同じ事態に着目してどのような表現をするかということではないか、このように思います。

 事業者のもとにおける職員の皆さんが生きがいを持ってやっていただけるというように私は申したのでございますけれども、そうした職場を離れたいというような消極的な気持ちに陥っている、こういうことを委員は御指摘になっていらっしゃるのかと思いますけれども、私どもとしては、やはり本当にやりがいを持って質の高いサービスを障害のある方々に御提供いただけるようにというような考え方でもっていろいろな措置を講じてまいりたい、こういうように申し上げているところでございます。

高橋委員 全然わかってません、大臣。消極的とかそういう問題じゃないんです。本当に驚きました。

 今の調査には個票がついているんです、一人一人の声が。全体で六割を超える方が、以前より強くストレスを感じている、利用者と話す機会が減った、家族との摩擦が多くなった、職員が減って職員間がぎくしゃくしている、利用者との間の心のすき間ができたような気がする、こういう声が上がっていることを本当に深刻に受けとめるべきなんです。一生懸命お世話をしたいけれども、すき間を感じてしまう、お互いに大変だ、こういう事態を消極的などという言葉であらわしてはなりません。

 全国福祉保育労働組合障害種別協議会が十月二十六日に発表した労働条件等に関するアンケート調査、これは施設の経営がどのように職員にしわ寄せされているかを示しているんです。三八・五%が職員数が減ったと答えて、その理由の六割が施設の収入の減だと。それで、数を減らしていなくても、パートや臨時に置きかえている。それから、日払いの問題がございますので、もう休みがなくなっちゃった、土日全部出勤している、平日に代休といっても、もしまともに休むとその分の対応がとても間に合わない、そういうことで休みを我慢するしかない、そういう労働強化がはっきりしているんです。そういう実態があるんだということをしっかり認めていただいて、実態把握と対策を強く求めたい。

 次に行きたいと思います。

 それで、先ほど来出ている日払いの問題では、やはり山井委員もお話ししたように、ごめんなさいと利用者が言わなければならない。利用者にとって、自分が休むことで施設の収入が減るということをわかっているからなんですね。これは、障全協の十月の調査でも、自分にとって負担は重い、だけれども事業所に迷惑がかかると三四・三%が答えていて、自分の体や負担もあるけれども施設のことを苦慮している、こういう状態が起こっているんです。ぐあいが悪くても、経営を考え、施設に行く、あるいは来てもらうという現状について、障害者の特性からいえば本来あるべき姿ではないと思いますが、いかがですか。

中村政府参考人 日払いについての御指摘がございました。また、そういった中で、利用者の方、事業者の方、それぞれ御心配されているという御指摘もございました。

 私どもは、大臣の方からも御説明しておりますように、従前の施設の収入の八割の保障ということを提案しておりますし、また、日割りをするときには、開所日数を加味したり、利用率を加味したり、また、利用者の方々が必ずしも一〇〇%通所されるということもありませんので、さらに定員外の利用者の方の利用も考えていただく、そういう措置を講じてきたところでございます。

 なお、こういう措置でも、報酬日払い化への即時の対応に苦慮している事業者も見られることから、さらに安定的な運営を確保する観点から、与党からの御提言もいただいております、事業者の実態等を踏まえ、対応について検討させていただきたいと考えております。

高橋委員 聞いたことにはきちんと答えていただいていないような気がしますけれども、やはりそういう現場の声があって見直しをせざるを得なくなったんだろう、それはそういうふうに受けとめたいと思います。それでも十分ではありません。しかし、見直しは必要だということで指摘をしたいと思います。

 次に、きょうは障害児の問題が随分指摘をされました。障害者自立支援法に、名前にそもそも障害児が入っておりません。確かに条文の中では「障害者及び障害児」として定義をされておりますが、障害児の通所サービス、入所サービスについては改正児童福祉法で対応しているという状況であります。私は、「すべて国民は、児童が心身ともに健やかに生まれ、且つ、育成されるよう努めなければならない。」とした児童福祉法の精神と今の障害者自立支援法が合致するだろうか、このように疑問に思っています。

 十月に放映されたNHKのテレビ、「@ヒューマン」でも紹介をされていました。また、そのときに出ていた方が、きょうの参考人のところにも来ていただいております。そのお母さんたちの声が本当に一つ一つ胸に刺さるんです。政府から重荷だと言われている気がするというお母さんの声。自分の子供の周りはゆったりとした時間が流れている、その言葉にはっとさせられました。毎日毎日、同じことの繰り返しのように思えるけれども、その長い時間を経て子供は確実に変化をしている、あるいは、ある日突然できなかったことができるようになっている、そういう喜びも語りながら、しかしこれ以上の負担には耐えられないと訴えていること、そのことをどう受けとめるかということであります。

 そこで、質問は二つです。

 確認しますが、子供は成長、発達するものであり、障害を固定的に見るべきではない、この認識が一致できるのかどうか、これが一つ。十月の委員会でも指摘をしましたが、子供の障害は、続ければ改善もあります。しかし、その逆もあります。そのためにも、負担増が利用制限につながり、障害を悪化させてはならないと思うが、どうでしょうか。大臣に伺います。

柳澤国務大臣 障害児の方々は発達過程にもとよりあることでございますので、個々の状況に応じて適切な療育や支援を行うことがその発達にとって極めて重要だと思っております。

 それから、障害児についても、措置ではなくてサービスの選択ができるように新しい制度がなったわけでございますけれども、これについては原則一割ということで御負担をお願いしていますが、しかし、障害者以上によりきめ細かな軽減措置を講じておりまして、利用者としての障害児の皆さん、また親御さんが使いやすい制度になるように配慮しているところでございます。

 障害児に対して適切な支援を行うべきという御指摘ですけれども、障害児施策については、サービスの利用動向を注視しながら、今後とも適切な療育や支援をよりよい形で受けられるように努めていきたい、このように考えております。

高橋委員 障害児の問題は、児童福祉法の原点に返って応益負担をやめるべきだ、このことを指摘して、終わりたいと思います。

櫻田委員長 次に、阿部知子君。

阿部(知)委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。

 本日は、午前中、六人の参考人からお話を伺いました。私は、そのお話を伺いながら、実は、さきの国会でいわゆる支援費からこの障害者自立支援法に変わるに際しまして、約二十四回の社会保障審議会の障害者部会でのお話し合いがあり、その議事録をつまびらかに読んでみたところに指摘されていることが、そのまま何にも解決されていないで、また参考人のお話を伺うことになったなと、私はある意味で、参考人を呼んでいただいた委員長を初め理事の皆さんには感謝しますが、逆にこの障害者自立支援法は、本当に障害者の自立を支援し、また私どもの暮らす社会をより人間的なものにしたんだろうかという思いを深くしました。

 その二十四回の審議会の中で専ら問題になっておりましたのは、やはり地域で生活するための体制が全くないということ、そして重い方が、重度な障害への対応がとてもこれは立ち行かないということ、あるいは就労支援も全くと言っていいほど立ちおくれていること、あるいは所得の保障の問題など、いずれも、きょう午前中の参考人が御指摘されたことであります。

 私は、冒頭一点目、大臣に端的に伺いたいですが、先ほど山井委員がお示しいただきました、二人の養護学校に行っているお子さんをお持ちの御家族が死を選ばれたということの御答弁の中で、大臣は、負担は能力に応じてというふうに最後に御答弁なさいました。であるならば、そもそも、もともとの支援費の応能負担でよかったのではないですか。大臣は、応益と言うとなんだから定率という負担だとおっしゃいました。でも、なぜ応能負担ではいけなかったのでしょうか。

 私は、能力を持てる者がその能力に応じて負担していく、これは当たり前のことだと思います。きょうの審議の中でも、いろいろな、いわば能力を上回るような負担、あるいは負担して負担してどんどん貧困化していくような実態が明らかにされました。

 大臣、なぜ応能負担でいけなかったのでしょうか。それがたかだか先ほどのお金の額なのでしょうか。三百九十億を捻出するために定率の、応益の負担にしなければならなかったのかどうか。大臣は大臣御自身の言葉で、なぜ応能負担ではいけないのか、冒頭お答えください。

柳澤国務大臣 この障害者に対する施策のいきさつをよくお考えいただきたい、こう思うわけでございます。

 最初は措置費、これはもう全く施設の中でいろいろ処遇をするということが基本です。

 それが支援費になった。私も実は党の政調におりまして、当時の厚生省の担当官が、補正の都度、二年連続でしたけれども、大変です大変ですと言って支援費の補正予算を、かなりの額であったと記憶していますけれども、それを補正しなければならないということで駆け込んできました。こういうのを一体いつまで続けるんだろうか、私も傍らから見てもそのぐらいに思ったわけでございます。

 そういうことで、今度は、厚生労働省が財務当局とかけ合いまして、これは必要な経費についてはしっかりと義務的に財政によって裏打ちをしてくれ、こういうことで、財政の裏打ちに係る制度に変わったわけでございます。

 そして、しかもその間どういうことを望んだか、求めたかといえば、やはり全国の障害者の皆さん、広くこの障害者の支援に対して均てんをするということでございまして、応能ということになりますと、どうしても、どちらかというと措置費とも共通するところがあるんですが、対象が局限されていくというようなことではなくて、やはりみんなが広くこれに均てんする、こういうような、財政的にある程度それが負担になってもそういう障害者支援を行いたい、こういうことになったというふうに私は思っております。

 そうしたときに、一体、これを本当にみんなで支えていくというようなことのためには何がいいかということになりますと、やはり、九割は公費で負担するけれども一割程度は持っていただくということが、国民全体からこれだけ財政資金でもって裏打ちする、義務的に裏打ちするというんだったら、そういうことが国民の理解を求める道ではないかということを恐らく考えたんだろう、このように思うわけでございまして、そういうことで利用者負担に踏み切った。

 しかし、それはやはり、所得というか支払い能力の点を顧慮しなきゃいけないというようなことで、これに対して負担の上限を画するというようなことの工夫を凝らしていった。しかし、また、移行期においては、いろいろとそこに当然備えがないわけですから、いろいろな摩擦もあるというようなことで、それに対しては一時的な、暫定的な円滑移行措置、移行を促進する措置というものを入れて対処しようとしている、こういうのが現行かと私は思っています。

阿部(知)委員 今のでは、申しまして、応益負担、定率負担と応能負担が何が違い、なぜ今大臣がおっしゃったようなことになるのか、実は御説明がついていないと思います。

 私は、措置費から支援費になった、そして財政的な安定が必要であるということは、認識を一にいたします。しかし、先ほど申しましたように、例えば応能で定額を定めてもよかったわけであります。それは、なぜそうなさらなかったのかは、逆にそのことによって問題が大きくなりました。

 隣にちょうど武見副大臣がおられますが、例えば医療は、例えて応益、定率三割であります。ところが、医療にかかる頻度よりは、介護を受け、日常生きていることの支えにするこの障害者のさまざまなサポートは、いわば非常に負担が強く、なおかつ日々重い人ほど負担が積み重なっていくわけです。ここに応益を入れれば、当然ながら、各委員が御指摘のように、重い方ほど負担が加わる。

 大臣はそれを、例えばですが、負担が重過ぎないようにいろいろ軽減措置を図っているとおっしゃっていますけれども、そうしたとて全体を貧困に向かわせていることには変わりがありません。

 ここの一点を、大臣は長いこと、財政、税制、経済、本当に私は見識ある方と思いますが、この施策が表面、負担ぎりぎりまで耐えさせるという施策、厚労省はよく生活保護に落とさない程度と、私はとんでもない表現だと思いますが、そういうことを使われました。しかし、それは、そうした暮らし方をする方の生活をあるいは意識をより貧困化させているという政策になるのではないでしょうか。これで負担が軽くなった人は果たしているでしょうか。これで生活の余力ができた方がいるでしょうか。

 大臣、果たしてこれは貧困化に向かわせていないかどうか、この点はいかがでしょうか。

柳澤国務大臣 余り財政論を振り回すつもりはありません。ありませんが、義務的な経費にするということ、それに加えて、もっともっと、今まで放置されてきたと言っては、厚生労働省の職員、事務方にちょっと厳しい言い方過ぎるかもしれませんけれども、そういう方がもしいたとしても、それを漏れなく市町村の障害福祉計画のもとで、みんなにそういうものを、支援を均てんさせようと、そういうことで、どちらかというと拡大の方向なんですね、施策としては。そういうことをみんなで支えなきゃいけないということの中で、そういう発想が出てきているということでございます。

 ですから、応能ということになりますと、これはどのくらい、応能でも、実は例えば医療費の負担なんかは物すごく、何というか、逆に上限を画すような措置を入れておりますけれども、そういうようなことではなくて、やはり本当に、原則として一割だけれども、いろいろな上限措置を講ずることによって、みんなで支えていただくという制度にしていただけないでしょうかということが私はこの制度の根幹に横たわっている考え方ではないか、このように思っているということです。

阿部(知)委員 私が指摘しましたのは、応能でかつ定額、頭打ちをつくってくれと。

 逆に、きょうの参考人の御意見の中にもありましたが、非常に重度の方はどんどん自己負担がふえていく。負担は、幾ら地方自治体が何らかのサポートをしても、自治体の経済格差で担い切れない。例えばスウェーデン等々では、そこに国家的な規模のお金を補てんしている。

 そのような形で支えなければ当然支えられないようなものの制度設計を自治体と障害者に丸投げして、大臣は義務的経費にしたとおっしゃるかもしれません。それでは、厚生労働省は調査はしていないそうですが、なぜ各自治体で独自の減免策をしたり補てんをしたり、そうしなければならないほどの苦しい障害者たちの実情があるからこそ、座して見ていられないからこそ、各自治体は努力なさるわけです。しかし、その努力とて、財源がおのずと限られた中では私は限界があろうかと思います。

 大臣にお伺いしたいですが、大臣は、今生じているこういう地方自治体間格差、広く均てんするとおっしゃったこととは真っ逆さに進んでしまった自治体間格差、これに対してはどのように対処していかれようとするのか。この一点、お願いいたします。

柳澤国務大臣 自治体の財政力については、それぞれの自治体が置かれている経済状況、地域地域の経済状況によって一定の格差があるという御指摘は、私どももよく認識をいたしております。同じ認識だということでございます。

 しかし、これはそのまま私ども、これで固定化させていいということは申しておりませんで、これを何とか経済産業政策あるいは我々の雇用政策というようなものでもってこの厳しい地域について施策を講じていかなきゃならない、一刻も早くこういう事態を是正しなければならない。これは別途の、それぞれ政策には割り当てがあるわけでして、何もかもが全部福祉で、社会保障制度で背負ってしまうということはできないわけでございまして、それは別途にそうしたこと自体が是正されるべきことである、そういう政策を進めなければならないということで対処すべきものだというふうに私は考えます。

阿部(知)委員 もちろんそれは原則で、しかし、その間にも日々、障害のある方は生きておられるわけです。その日々が支えられないというところから、死を選んだり、絶望ということが生まれてまいります。

 大臣がおっしゃっているような自治体間格差を、例えば経済の活性化等々で少なくしていこうという試みはだれも反対ではございません。しかし、事この障害者施策に関して広く生じてしまった自治体間格差、これは果たしてこの制度の導入前と後でいかがなものであるかはきちんと担当部局として調査していただきたいと思います。何にももとデータもないところで始まり、例えば、先ほど高橋委員がお尋ねございました、障害の施設にお勤めの皆さんの待遇や賃金や労働意欲がいかがなものか、これについても厚生労働省はもとデータをお持ちではありません。やはりよりよいサービスをとおっしゃるのであれば、実態を、本当にこの実態を調査なさる。

 二つお願いがあります。自治体間格差について実態を調査する。働く者の勤労状況についてきっちりと厚生労働省としてお調べいただく。これは、実は介護保険のときに既にやっていらっしゃいますが、そのような施策についてどうお考えか、お願いいたします。

中村政府参考人 お答え申し上げます。

 福祉施設や介護事業所で従事されております介護従事者の賃金とかそういったものについては、今は手元に持参してきておりませんが、調査がございますので、また、私ども、介護福祉士、これも国会の附帯決議に基づいて資格制度のあり方の見直しも検討しているところでございますので、またその際にも御説明しなければならないと思っております。

 また、自治体格差の問題につきましては、いずれにいたしましても、今回、与党からの御提案のようなさまざまな措置を講ずるということで、国による新たな軽減措置が講ぜられましたら、今委員の御指摘になっている意味での自治体間での負担軽減措置の差異というものは縮小する方向になるのではないかと考えております。

阿部(知)委員 施行後の状況についてと、前後で比較していただきたいと思います。

 最後の質問に移らせていただきますが、実は、きょう私に寄せられました資料の中に、北海道で十月の下旬に、ある区役所の職員の駐車場で精神の障害をお持ちの方が自死、自殺なさいました。それに先立って、いわゆる今回の自立支援法にこの方はのっとるわけですから、訪問調査があったそうです。その訪問調査というあたりからとても精神の調子を崩されて、結果的には御自分で命を絶たれた。この障害のおありの方の心のありさま、あるいはいろいろな困難は、実は、ここでこうやって論じている私どもの推しはかるはるか向こうにあるくらい厳しいんだと思うのです。

 私がきょうここにお示しした資料は、実は、厚生労働省がやっていらっしゃる障害認定のうち、恐らくこの調査に行かれた方も障害認定にかかわって調査に行かれ、ヒアリングをした、しかし、それを受けた方がほどなく自殺をされたというケースなのですが、見ていただくとわかりますように、あるいは先ほど中村局長の答弁にございましたように、いわゆる精神というものにおいては変更率が半数以上、五二・九%、上段でございます。下段には、厚生省が調査なさいました変更率と、診療所、精神科のクリニックをやっていらっしゃる先生たちが一緒に二次判定に加わった場合のさまざまな見直しの重度の分布の差でございます。

 見ていただけばわかりますように、右側の方に明らかにシフトいたします。どの段階に判定され、どういうサービスを受けられるかということは、とても御当人には微妙な、そして重要なことであると思います。

 そもそも、厚生労働省の研究班におきましてこの区分認定を行っておられますが、いわゆる病院関連の精神科の先生はお入りでありますけれども、診療所で、地域で密着して患者さんを診ておられる方々のお声は、システム的には反映されるようにはなっておりません。また、地域の認定作業にもぜひ、こうした形で実際に患者さんを支えておられるお医者様方、精神科のクリニックの方の御助力を仰ぐべきと考えますが、この二点についてお願いいたします。

中村政府参考人 お答え申し上げます。

 障害程度区分については、先ほど申し上げましたように、その見直しについて検討したいと思っております。その際、まず、整理する観点から、障害関係のいろいろな方々の御意見をお伺いしたいと思っております。今委員からお話がありました精神科医、特に診療所の精神科医というお話でございますので、私ども、そういう点について配慮してまいりたいと思っております。

 また、各地域でこの二次判定を行われる際に、専門の方が入っていただくというのは非常に結構なことだと思いますので、自治体もそういう思いであると思います。私どももそういったことについて努力してまいりたいと思っております。

阿部(知)委員 私は、まだまだ改善するべき根本課題が多いということを申し添えて、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

櫻田委員長 次回は、来る十三日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時七分散会


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