衆議院

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第8号 平成19年3月28日(水曜日)

会議録本文へ
平成十九年三月二十八日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 櫻田 義孝君

   理事 伊藤信太郎君 理事 石崎  岳君

   理事 鴨下 一郎君 理事 谷畑  孝君

   理事 宮澤 洋一君 理事 吉野 正芳君

   理事 三井 辨雄君 理事 山井 和則君

   理事 福島  豊君

      新井 悦二君    井上 信治君

      伊藤 忠彦君    加藤 勝信君

      川条 志嘉君    木原 誠二君

      木原  稔君    木村 義雄君

      岸田 文雄君    清水鴻一郎君

      菅原 一秀君    杉田 元司君

      杉村 太蔵君    高鳥 修一君

      戸井田とおる君    冨岡  勉君

      長崎幸太郎君    西川 京子君

      林   潤君    原田 令嗣君

      福岡 資麿君    松野 博一君

      松本 洋平君    森  英介君

      山本 明彦君   山本ともひろ君

      内山  晃君    大島  敦君

      菊田真紀子君    小宮山泰子君

      郡  和子君    田名部匡代君

      寺田  学君    細川 律夫君

      柚木 道義君    坂口  力君

      古屋 範子君    高橋千鶴子君

      阿部 知子君

    …………………………………

   厚生労働大臣       柳澤 伯夫君

   厚生労働副大臣      石田 祝稔君

   厚生労働副大臣      武見 敬三君

   厚生労働大臣政務官    菅原 一秀君

   厚生労働大臣政務官    松野 博一君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           荒井 和夫君

   政府参考人

   (厚生労働省医政局長)  松谷有希雄君

   政府参考人

   (厚生労働省医薬食品局長)            高橋 直人君

   政府参考人

   (厚生労働省労働基準局長)            青木  豊君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局長)           中村 秀一君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長)    中村 吉夫君

   政府参考人

   (厚生労働省老健局長)  阿曽沼慎司君

   政府参考人

   (厚生労働省保険局長)  水田 邦雄君

   政府参考人

   (厚生労働省年金局長)  渡辺 芳樹君

   厚生労働委員会専門員   榊原 志俊君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月二十八日

 辞任         補欠選任

  加藤 勝信君     杉田 元司君

  木原 誠二君     木原  稔君

  松本  純君     森  英介君

  松本 洋平君     山本ともひろ君

  吉野 正芳君     山本 明彦君

  園田 康博君     小宮山泰子君

  筒井 信隆君     寺田  学君

同日

 辞任         補欠選任

  木原  稔君     伊藤 忠彦君

  杉田 元司君     加藤 勝信君

  森  英介君     松本  純君

  山本 明彦君     吉野 正芳君

  山本ともひろ君    松本 洋平君

  小宮山泰子君     園田 康博君

  寺田  学君     筒井 信隆君

同日

 辞任         補欠選任

  伊藤 忠彦君     木原 誠二君

同日

 理事吉野正芳君同日理事辞任につき、その補欠として石崎岳君が理事に当選した。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 理事の辞任及び補欠選任

 政府参考人出頭要求に関する件

 戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案(内閣提出第三八号)

 厚生労働関係の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――

櫻田委員長 これより会議を開きます。

 理事辞任の件についてお諮りいたします。

 理事吉野正芳君から、理事辞任の申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

櫻田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 引き続き、理事補欠選任の件についてお諮りいたします。

 ただいまの理事辞任に伴う補欠選任につきましては、先例により、委員長において指名するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

櫻田委員長 御異議なしと認めます。

 それでは、理事に石崎岳君を指名いたします。

     ――――◇―――――

櫻田委員長 次に、内閣提出、戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として厚生労働省大臣官房審議官荒井和夫君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

櫻田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

櫻田委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。菊田真紀子君。

菊田委員 おはようございます。民主党の菊田真紀子でございます。

 柳澤大臣そして武見副大臣、朝早くから大変お疲れさまでございますが、きょう、私にいただいた時間は二十分でありますけれども、どうぞよろしくお願いしたいと思います。

 まずもって、先般の能登半島地震につきまして、お亡くなりになった方の御冥福を心からお祈り申し上げますとともに、被災地の皆さんが一日も早く安心してまたもとの暮らしに戻れるように、政府を挙げての強力な御支援を冒頭お願い申し上げたいと思います。

 いまだ千七百人の方が避難所に暮らさなければならないという状況でありまして、余震も二百回以上続いているということでございますし、また、避難所ではなかなか眠れません。うちが心配だという声も聞こえております。ストレスあるいは心身の疲労がだんだんとたまってまいりますので、私も新潟県の中越大震災を経験した者の一人としまして、大変心配をし、また他人事には思えない思いでいっぱいであります。

 その新潟県中越大震災では、死者六十七人のうち、倒壊した家屋の下敷きなど、地震が直接の死因になったのは十六人でございました。残りは、避難生活の疲労や地震のショックあるいは復旧作業による過労死など、関連による死因だったということでございまして、しかも、亡くなった人の多くは高齢者でございました。

 今回の被災地も高齢者が大変多いだけに、私は心配をいたしているところでございますが、厚生労働省として被災者支援にどう取り組んでいかれるのか、冒頭お聞かせをいただきたいと思います。

柳澤国務大臣 今回の石川県能登半島沖を震源とする地震によりまして、まず、亡くなられた方の御冥福を私もお祈り申し上げる次第でございます。なかんずく、被災された方々には、また心よりのお見舞いを申し上げておきたい、このように思います。

 ただいま菊田委員の方から、厚生労働省としての対処についてお尋ねをいただきましたけれども、厚生労働省といたしましては、被災当日、溝手防災担当大臣を団長とする政府調査団が現地に派遣されたわけですが、この調査団に担当官を加えました。そしてまた、石川県を初めとする関係機関との連携を密にしまして、被災情報の収集に努めているところでございます。

 具体的な対応でございますが、直ちに厚生労働省災害対策本部を設置するということを決めさせていただきました。そして、そのもとで、災害救助法に基づきまして避難所の設置や食品の提供等、各般の支援を行う。それからまた、今お触れになられた高齢者、障害者等のいわゆる要援護者への緊急的対応につきまして、旅館であるとかホテル等の活用あるいは社会福祉施設への受け入れ等を自治体に対して要請をいたしました。それからまた、国立精神・神経センターから心のケアの専門家を派遣させていただいたところでございます。

 特に、これから心のケアの問題が大事だということを私ども注意いたしておりまして、引き続き、関係省庁や地元自治体等の関係機関との連絡調整及び情報収集を緊密に行いまして、住民の皆様方が一日も早く安心して生活される環境を獲得されるように万全を期してまいりたい、このように考えております。

菊田委員 新潟県中越大震災の際にも厚生労働省から大変な御支援をいただきましたことを改めて感謝申し上げまして、既に迅速な対応をしていただいておりますことを感謝申し上げて、そしてさらなる御支援を、私からもお願い申し上げたいと思います。

 それでは、法案につきましての質問に移らせていただきますけれども、まず最初に特別弔慰金制度についてお伺いをいたします。

 終戦二十周年、三十周年、四十周年といった機会に、国として改めて弔慰の意をあらわすため、戦没者等の遺族に対し、特別弔慰金として国債を支給しているわけでございますが、対象件数はどれくらいあるか、お聞かせください。

武見副大臣 御質問の平成十七年から支給されている特別弔慰金の対象件数は、約百五十九万件でございます。

菊田委員 約百五十九万件、大変多くの方々が対象になっているわけでございますが、そのせいでしょうか、この制度に関しまして、私はよく地元で、問い合わせあるいはまた苦言をいただくことがございます。率直に申し上げますと、時間が大変かかり過ぎる、なぜこんなに待たされるんだというような声が多いのでございまして、私は、せっかくの趣旨であり、せっかくの制度でありますので、大変残念だというふうに思っております。

 どうしたらもっとスムーズにできるんだろうか、そんな思いで質問させていただきたいと思いますけれども、対象者が請求をしましてから一年半もかかっている現状が私の地元では起こっておりますけれども、このようなことを知っているでしょうか。

武見副大臣 事実は確認させていただいております。

菊田委員 なぜこんなに時間がかかるんでしょうか。新潟県だけの問題なんでしょうか。全国の実態はどうでしょうか。

武見副大臣 まず、弔慰金の現在までの受け付け件数なんですけれども、平成十七年から支給されている戦没者等の遺族に対する特別弔慰金の請求受け付け件数が、本年二月末現在で百七万件というふうになっております。特別弔慰金の請求期間というのが、平成十七年の四月一日から平成二十年の三月三十一日までとなっておりまして、ちょうど中間の時期に入っている、こういう状況にあるわけであります。

 この上で、実際に、ではこれがどれだけ裁定されているかという裁定件数についてお話し申し上げますと、この裁定件数というものは、本年の二月末現在でおおよそ九十五万件となっております。

 なお、この裁定を行う手続というものは、各都道府県で行っているというのが現状でございます。

菊田委員 平成十九年二月末現在で約百七万件の受け付けがあった、そのうち裁定されたものが九十五万件ということで、これはパーセンテージにしますと、八九%ぐらいはもう裁定が終わっているということであります。

 しかし、その一年前ですね、平成十八年三月末現在ではどうだったかということであります。つまり、この制度の最初の年、一年目でありますけれども、平成十八年三月末現在で受け付け件数が七十五万九千九百六十九件あったということをお聞きいたしております。そのうち、裁定できたのは三十四万九百六十二件、これはパーセンテージにしますと約四五%だけが裁定できた。残りの四十一万九千七件、約五五%です、半数以上が未処理に終わったわけでありますけれども、その理由は何だったか、お聞かせください。

武見副大臣 御指摘のような状況が確かにございます。裁定された処理数というのが、おおよそ全国平均で八八・九%、新潟がちょっと低うございまして七一・一%という状況で、手続が滞ったという経緯はこの数字からも出ているように思います。

 平成十七年から支給されている特別弔慰金の未処理件数というものは、本年二月末現在で約十二万件というふうになっております。この未処理件数については、一般的には特別弔慰金の請求は現在も受け付け期間中でございまして、日々新たに請求が行われていること、また、未処理件数が多い都道府県においては、多数の請求が初年度に集中するということがあったこと、それから、事務処理に当たって、都道府県の中で十分な受け入れ体制が整っていなかったこと、そしてまた、十年前の前回の事務経験者の確保というものが難しかったこと、こういったことが原因となって処理がおくれた、こういうふうに認識をしております。

菊田委員 先ほど申し上げましたように、初年度の未処理件数がこれだけ多かったということをとっても、私は、新潟県だけでなくて全国的に、やはり初年度、見通しが甘かったために、一斉に上がってきたものを処理できなかったという現象が、各地域で起こったということが言えるのではないかというふうに思います。

 しかし、厚生労働省としては、初年度、圧倒的に集中するのではないかということは、当然見通しをされていたというふうに思いますし、また、この制度は、戦後五十周年の平成七年、つまり十年前にも同じように措置されているのに、なぜこのようなことが起こると思いますか。

武見副大臣 初年度において周知徹底がされて、このように多数の申請が行われた、これに対する見通しが甘くて、それによって対応、手続がおくれたという点は大変遺憾であったと思います。

 その上で、こうした状況を一刻も早く改善するために、厚生労働省としては、各都道府県に対して事務処理の迅速化を要請するとともに、都道府県の要望を踏まえて事務委託費の追加交付を行っております。また、制度の理解を深め、迅速な裁定が行えるように、都道府県職員に対する研修会の開催といったことも行っているわけでございます。今後とも、引き続きこの事務処理の迅速化には努めていきたいと考えております。

菊田委員 そこで、初年度の経験を生かしまして、新潟県の方では、当初十五名体制で行っていたものを、今現在はさらに増員をいたしまして、二十三名体制で対応しているということであります。また、一年目に圧倒的に集中しましたが、二年目はこれが落ちついてきているので、そんなに混乱もなく、またお待たせをせずできるのではないかというふうに思っておりますけれども、通常、請求から当事者が受理するまで、大体どれくらいの日数がかかるんでしょうか。

武見副大臣 特別弔慰金の請求につきましては、都道府県において受給権の裁定をまず行います。可決したものについては、都道府県が毎月厚生労働省に報告をし、厚生労働省が特別弔慰金国債の発行を請求し、そして財務省と日銀において国債の発行手続をとる、こういう全体の手続になっております。

 都道府県の裁定までに要する期間、都道府県によって実は異なります。一概には言えないのでありますけれども、都道府県の裁定報告から国債の受領までに要する期間、すなわち厚生労働省が、裁定が終わって報告を都道府県から受けた後の部分に関してでありますけれども、この部分に関しては、おおむね約三カ月、こういう状況でございます。

菊田委員 問題は、対象者が請求をしまして受理されるまで、いかにこれを早くするかということだというふうに思っております。

 そこで、今、国債発行についてのお話がありましたけれども、国債発行には、これは限度があるんでしょうか。

武見副大臣 これは限度がございます。およそ特別弔慰金は国債で支給されて、申し上げたとおり財務省、日銀において発行手続が行われておりまして、厚生労働省からの発行請求に当たっては、各都道府県の請求枠が設けられております。月一回の発行請求について、各都道府県で七万件、これが上限となっております。

菊田委員 つまり、この請求の枠があるがために、それ以上のものは上げられないということがあるわけであります。

 例えば、新潟県が七万件以上の数を上げるということは、これはちょっと待ってくださいという話になるわけでありまして、新潟県の場合は、お聞きをいたしましたら、月二千五百件以上は上げられないというお話を聞いております。したがって、幾ら県の方で早く裁定をしても、そこで待ったがかかってしまう。結果として、対象者には一年とか一年半という時間がかかってしまうというのが現状ではないでしょうか。

 それは、先ほど私が数字を申し上げましたとおり、ただ圧倒的に数が集中した、現場の人間が足りなかったということだけじゃなくて、そういう制限枠があるためにこれだけの未処理件数がふえたということではないでしょうか。いかがですか。

武見副大臣 請求枠の拡大をすべきではないかという御趣旨だろうと思いますけれども、この点については、特別弔慰金の支給事務が全体的に進捗するように、請求枠を超えて処理を行うことを必要とする都道府県については、その要望に応じることができないかどうか、財務省、他の都道府県と相談をいたします。そして、新潟県の請求枠、月二千五百件でございますけれども、これをまず月三千二百件に拡大する要望が今来ておりまして、これについても早速財務省と協議をしておるところでございます。

菊田委員 ぜひよろしくお願いします。

 二千五百件が三千二百件になっただけでも、これはかなり上がってくるというふうに思いますので、ぜひ検討して前に進めていただきたいというふうに思っております。

 やはり私は、せっかく厚生労働省がこのような制度をやっていて、これを当事者から大変ありがたいなと喜んでいただけるような制度にしていきたいと思っておりますし、国債にかかわることだから、これは財務省の範疇だから、所管だからということがないように、ぜひうまく連携をとっていただきたいというふうに思っております。

 また、新潟県、これは対象者が大変多いんですね。全国でも五、六番目に多いんじゃないかというお話を聞いておりますので、その辺、各都道府県の対象者の現状を見ながら調整を図っていくことも厚生労働省の一つの役割ではないかというふうに思っておりますので、どうぞよろしくお願い申し上げたいと思います。

 それから、残り時間わずかとなりましたけれども、戦後半世紀以上が経過をいたしまして、戦争体験を風化させてはいけないということでございますが、私ももちろん戦争を知らない立場でありますので、折に触れて、さまざまな文献あるいは映像等を通しまして、この戦争体験というものをしっかりと自分の身につけていかなければならないというふうに思っております。特に若い世代に戦争の記憶を伝える継承事業に、厚生労働省としてはどのように取り組まれているでしょうか。

柳澤国務大臣 戦傷病者や戦没者の遺族の方々が経験された戦中戦後の御労苦を後世代に伝えていくことは非常に重要なことである、このように考えております。

 厚生労働省におきましては、援護施策の一環として、戦没者遺族が経験した御労苦を後世代に伝えるため、平成十年度に昭和館というものを設置いたしました。また、戦傷病者及びその御家族の御労苦の継承を目的に、平成十七年度にしょうけい館というものを設置したところでございます。そして、いずれの館におきましても、当時の実物資料、写真資料、あるいは体験者が御経験を語る映像資料の展示等を行っているところでございます。

 今後とも、当時の御労苦を風化させることなく的確に後世代に伝えていくために、幅広い国民の方々に御来館をいただいて、よく見ていただく、あるいは聞いていただくということに努力をしてまいりたい、このように考えております。

菊田委員 今お話がありましたとおり、平成十八年三月に厚生労働省が東京九段に戦傷病者史料館、しょうけい館を開設されたわけですけれども、大臣は行ってみられましたか。

柳澤国務大臣 実は、しょうけい館、まだ行っておりません。

菊田委員 私は行ってきました。ぜひ大臣も行かれるべきだというふうに思います。

 これは平成十九年度も一億八千七百万円の運営費がついております。私は、せっかくこういう予算を使って立派な施設をつくっているわけですから、ぜひ多くの方に足を運んでいただきたいというふうに願っておりますけれども、この一年間の実入場者数はどれくらいあったか、最後にお聞かせください。

武見副大臣 このしょうけい館、入館無料の施設でございまして、自由に出入りができるということから、正確な入館者数というものを把握することが実は困難でございます。

 なお、館内に設置されたカウンター、出入りをチェックする、数をチェックするカウンターでございますが、これで、重複する場合も確かにございます、同じ方がそこを出たり入ったりするとその分余計にカウントされてしまうんですが、これをも含めた形で、このカウンターを通じて確認できた延べ人数でありますが、本年二月末までに、延べ九万一千八百八十七名を計上しております。

菊田委員 予算としてもこれは少ない額じゃないですし、所期の目的を果たすために、私は、ぜひ現状を見ていただいて、よりよいものを皆さんにお伝えしていく努力を不断に行っていただきたいということをお願いしまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

櫻田委員長 次に、三井辨雄君。

三井委員 民主党の三井辨雄でございます。おはようございます。

 このたびの石川県能登半島の地震に際しまして、被災に遭われた方、残念ながらお亡くなりになられた方にお悔やみ申し上げたいと思います。

 それでは、早速質問に入らせていただきます。

 まず、中国残留孤児の問題について。この問題については、各党の委員からも御質問がありましたし、もう大臣も何度も御答弁なさっておりますけれども、また私の方から、大臣からさらに細かくお聞きしたい、こういうふうに思います。

 私ども、昨年の十一月ですか、札幌地裁の原告団の皆さんと弁護団の皆さんから御要請を受けまして、お話を賜りました。その中で、原告団の代表者の皆さんは、私が今でも頭に残っているのは、私たちは何の悪いことをしたんですかと。また、中国にいるときは私たちは日本人だとばかにされて、そして日本に帰ってくれば、祖国の夢を見ながら帰ってきたはいいけれども、実際にそこでもまた邪魔者扱いされたと。こういうお話を聞いていますと、今まさに高齢になっている方々でございますから、その当時は孤児でいらっしゃったわけですけれども、聞くたびに私も非常に胸が痛むわけでございます。

 やはり代表者の皆さんがおっしゃるように、本当に悪いことはしていないんですよ。本当にお気の毒なんですよ。どうしてこれが司法の場で、このような形で国が裁判なり、大臣も御答弁されていますけれども、法律という中でやるというのが非常に、そもそも残念なことだ、こういうふうに私は思うんですね。

 ですから、後ほどいろいろ質問させていただきますけれども、まず、この裁判の結果も、今月二十三日に徳島で残念ながら却下されたわけです。一月の三十日にもまさに東京地裁の判決が出ましたけれども、この結果を踏まえても、非常に残念だな、まさに原告団の皆さんにとっては本当に切実な思いだというぐあいに思っております。

 そこで、一月三十日、与野党で一緒に、きょうは阿部先生もおいでですけれども、阿部先生も参加されまして、今後の取り組みについて、そのときに集まりがありましたけれども、その日、一月三十日に総理大臣にお会いする。そのときに総理は、今までの支援の仕方も含め、やはり不十分なところはある、誠意を持って対応するよう、与党とも相談するよう厚生労働大臣に指示されたということをおっしゃっていました。

 政府・与党で残留孤児の支援策を拡充する、検討するということを明らかにしておりますけれども、まずは、現在どのような取り組みをされているのか、お尋ねしたいと思います。

柳澤国務大臣 今、三井委員の御指摘になられたとおり、一月三十日に東京地裁での判決がありまして、一応判決としては国側が勝訴したわけでございますけれども、その直後に総理から私に対して御指示をいただきました。そういう裁判の結果とか法律問題は別として、中国残留邦人の方々への支援のあり方について、その置かれている特殊な事情を考慮して、与党ともよく相談しながら誠意を持って対応するようにという御指示でございました。私といたしましては、したがいまして、この御指示に従い、今この問題に全力で取り組んでいるということでございます。

 どういう状況であるかと申しますと、まず、中国残留邦人の方々のお話を十分に承る、こういうことが第一点でございます。何が問題であるかということを、支援策を決定するに当たってよく把握しておく必要があるということでございまして、そういう努力をさせていただいております。

 私自身も、総理のところにいらっしゃった原告団の方々が私のところに回っていただいたときにお会いしたのと、それからまた、それとは別途に代表者の方々ということでお会いしたわけですが、その後も、事務当局の方で、札幌であるとか大阪であるとかというところ、現地に足を運んでこういう方々のお話を承っているということでございます。

 そうした上で、第三者である有識者からの御意見もいただきながら速やかに検討を進めなければならない、こういうことを考えておりまして、生活の支援、言葉の問題、それから二世、三世の方の就労の支援など、中国残留邦人の方々が安心して地域で暮らすことができるように、支援策を夏ごろまでには取りまとめたい、このように考えて、今鋭意検討を進めているところでございます。

三井委員 今大臣が御答弁されましたように、大体そのように今までも御答弁されているとおりだと思います。

 そこで確認したいんですが、中国残留孤児の方々の話を十分に伺いという一点と、それから、夏ごろまでにと今大臣御答弁されましたが、新たな支援の枠組みを取りまとめる、それから、第三者である有識者の意見をいただくという三点ほど今お話がございました。大臣が孤児の方々の話を聞くことについては、御答弁にもございますように、大臣は今もう二度お会いしているということでございますね。

 それで、具体的にどのような意見交換をされたのかが一点と、それから今後、いつまでに、どのくらいのペースで、あるいは全国的に何カ所ぐらいで行うのか、また継続的にやるのか、お伺いしたいと思います。

武見副大臣 三井先生御指摘のとおり、厚生労働大臣、お会いされて、さまざまに意見交換をされました。そして、帰国されてから経験された御苦労として、生活保護は制約が多い、それから日本語教育を充実させてほしい、こういった中国残留孤児の方々からのさまざまなお話を相当程度伺ってきているわけであります。

 今後のことでございますけれども、引き続き中国残留邦人の方々から意見を伺う必要が生じた場合には、改めて意見を伺うこととしたいと考えているところでございます。

 なお、その具体的な内容について御説明をもう少し詳しく申し上げますと、中国の残留邦人の方々からは、老後を安心して暮らせるようにしてほしい、それから生活保護ではない給付金制度を創設してほしい、それから年金受給額が少ない、医療費補助の制度を創設してほしい、帰国直後だけでなくその後も公営住宅に入れるようにしてほしい、地域社会での孤立化を防止してほしい、生活保護は制約が多い、日本語教育を充実させてほしい、働く意欲と能力のある者への労働の場が保障されていない、こういったさまざまな、かつまた深刻な課題というものが訴えられているところでございます。

三井委員 まさに今、副大臣から御答弁いただきましたように、中国残留邦人等の対策についてということもここに列記されておりますけれども、意見交換も私も非常に大事だと思うんですが、そこで、中国残留孤児の皆さんの実態についてどのように把握されているのかということをお伺いしたいと思います。

 お手元に資料として、これは北海道新聞の三月二十四日のをちょっとお配りしたんですが、この見出しにありますように、「「帰国満足」わずか一〇%」と。大変、九割の方は満足していらっしゃらないわけですね。

 そこで、これは北海道日中友好センターというところが行った生活実態調査なんですが、まず、「日本に帰国した感想は」という質問に対して、中国帰国者で「満足している」と答えたのは一〇・八%、「後悔している」というのが二三%ということで、二倍以上の方がいらっしゃるわけですよね。後悔している理由は、中国帰国者の中で二四・八%が、今副大臣が御答弁なさいましたように「老後の不安」があるということを挙げております。

 また、生活保護受給率は、中国残留孤児の皆さんが八七・八%と約九割近い方なんですね。それから、サハリンもこれは同時にやっていましたので、サハリンが九四・一%と全国平均の七割を大きく上回っているわけですよ。また、月収十万円以下の世帯になりますと、中国残留孤児で、ここに書いてありますように四〇%、それからサハリンでは七四%。経済的に苦しいから老後を安心して暮らせないという実情がここに浮き彫りになっているんじゃないかなと私は思うわけでございます。

 サハリンはまた別にしまして、いろいろな御事情はあると思いますけれども、これの結果をごらんになってどのようにお考えになるか、御意見をお伺いしたいと思います。

武見副大臣 まず、実態をどのように把握しているかという御質問でございますけれども、昭和五十九年から九回にわたりまして、中国帰国者生活実態調査を実施しております。直近の平成十五年度の調査によりますと、帰国者本人の平均年齢は六十六・二歳。帰国後の感想は、よかったが三〇・六%、まあよかったが三三・九%、どちらとも言えないが二二・九%、やや後悔しているが七・五%でございます。日本語の習得状況は、日常のほとんどの会話に不便を感じないというのが三八・四%、買い物等に不自由しないが二七%、全くできないが六・九%。それから、生活保護受給率は全体で五八%という実態となっているところでございます。

 そしてまた、北海道日中友好センターが実施した生活実態調査というのは、札幌市とその近郊市町村に居住する中国とサハリンからの帰国者本人、配偶者及び二世、三世を対象として行われたものと承知しております。中国残留邦人等に対する今後の支援のあり方を検討する上でも、中国残留邦人等の方々の実態をできる限り正確に把握することが不可欠でございまして、このような調査結果についても、私どもとしても大変参考になるものと考えております。

三井委員 これは参考になると思うんですね、副大臣。

 それで、時間もありませんので、中国残留孤児の皆さんも、何で私たちは生活保護なんですかということも私、意見としてお聞きしました。

 そこで、生活保護でなく、残留孤児に対して新たな制度、給付金制度というんでしょうか、それを新設するということの支援策はどうお考えになっているのかということと、また、新たな支援枠組みについて、先ほど御答弁にありましたように有識者の意見をいただくとしておりますけれども、第三者である有識者とはどのような立場の方なのか、また、夏までに新たな支援の枠組みを取りまとめるということでありますけれども、いつの時点でどういう有識者にアプローチするのか、お伺いしたいと思います。

武見副大臣 中国残留邦人に対する支援のあり方については、これまでの議論を一度白紙に戻して、そして中国残留邦人の実情をよく把握して対応を考え、検討する、こういうこととしております。

 そして、第三者の有識者の御意見を伺うということで新たな支援策を取りまとめるということとなっているわけでございますけれども、この点については、総理からも第三者である有識者の御意見を伺うようにという指示を受けているところでございまして、中国残留邦人の御意見を聞いた上で、大局的な観点から幅広い判断のできる方から御意見を伺いたいというふうに考えております。

 そして、まずは中国残留邦人本人の御意見を伺い、その実情を把握することが重要であると考えているところでありますが、まず、大局的観点から幅広い判断のできる方としては、例えば地方行政の専門家の方、それから社会保障の専門家の方などを含めて幅広い分野での人選を考えております。

三井委員 いずれにしましても、長年にわたって、責務というんですか、政府の責務というのは、まず戦後処理がおくれているということをやはり指摘しなきゃならぬと思うんですね。

 それで、孤児の皆さんもかなり高齢化しておりまして、健康面でも大変不安を持っていらっしゃる。そしてまた、生きているうちに何とか解決をしていただきたいという思いもございますし、ぜひ、政治決断が迫られているところでございますので、よろしくお願い申し上げたいと思います。

 最後に大臣、大臣の座右の銘をちょっと拝見させていただきましたが、私みたいに教養のない者には到底難しくて、これは「友に交るには須らく三分の侠気を帯ぶべし。」とございますね。そしてまた、私も、頭の悪い中で、広辞苑やインターネットで引っ張らせていただきました。そうしますと、中国の古典の「菜根譚」という一節でありますね。さらに、その後には「人となるには一点の素心を存するを要す。」と続いておりまして、これをわかりやすく言えば、友として交際するからには一肌脱ぐ心意気を持たねばならない、そのためには純真な心を持つことが必要であるということになる、こういうふうに書いてございました。

 そこで大臣、まさに大臣の座右の銘でありますように、中国残留孤児の皆さんに、やはり、大臣というお立場を離れて、一政治家として、そして柳澤伯夫として、しっかりと取り組んでいただきたいことを申し添えておきたいと思います。

 最後に、大臣の御見解をお聞きしたいと思います。

柳澤国務大臣 私、座右の銘というか、いろいろ、古い方の経験からにじみ出た言葉というものには、どれがどうということなく一々感心することが多いわけですけれども、なぜ、交友はすべからく三分の侠気を帯ぶべしという言葉を挙げたかといいますと、今、三井委員がいみじくもかみ砕いて解説をお伝えいただいたように、やはり、友というのは人生で一番の大事な宝物。その人間の蓋棺の際に、一体、その人間、何が、どういう価値を持ったんだというのは結局友の存在だ、こういうことを常々話をしていたこともございまして、では友を得るにはどうしたらいいんだ、やはり、侠気という言葉で、これは非常に難しい言葉だと思うんですけれども、利害得失などということじゃなくて、要するに一肌脱ぐ、男気ともいうんでしょうけれども、そういうようなことが必要だということに私はちょっと心を揺り動かされたことがございまして、時に座右の銘は何かと言われたときにそれを挙げているということでございます。

 行政の長としてはなかなか難しいことでございますけれども、やはりそうした気持ちでもっていろいろなことに臨んでまいりたい、このようには考えております。

三井委員 どうもありがとうございます。

 ぜひ、一肌も二肌も脱いでいただいて、この問題にしっかりけりをつけていただきたいと思います。

 以上で質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

櫻田委員長 午前十時三十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前九時四十三分休憩

     ――――◇―――――

    午前十時三十二分開議

櫻田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。高橋千鶴子君。

高橋委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 今般の戦傷病者戦没者遺族等援護法改正については、恩給の額の引き上げに準じて遺族年金等の額を引き上げるというものであり、賛成とします。

 戦争犠牲者の生活保障は国家の責任で行うべきだという立場から、我が党は、軍人恩給、戦傷病者戦没者遺族等援護法に基づく障害者年金、遺族年金などについては、求められる生活水準に即して引き上げをするべきだと考えております。また、一律にではなく、階級による格差を縮めるように改善を図るべきだと主張してまいりました。

 きょうは、そうした点からいって、抜本対策が急がれている中国残留孤児の問題について伺いたいと思います。

 一月三十一日、東京地裁での判決直後に安倍総理が孤児らと直接面会し、大臣自身も二月九日にお会いになりました。総理の指示を受け、夏ごろまでに新たな支援策をつくると伺っています。

 私は、昨年十二月一日の神戸地裁での勝利判決を受け、原告も弁護団も本当に感激で泣きながら、晴れがましい顔をして全身で喜びを表現していたことが忘れられません。その後の東京地裁は余りにひどい判決でした。また、三月二十三日の徳島地裁においても原告らの請求は棄却されました。

 しかし、そういう判決の中にあっても、原告ら中国残留孤児ないし中国残留婦人を生み出す原因の一つに関与したという立場や、人道上の観点から、前記のような困難な状況にある原告ら中国残留孤児ないし中国残留婦人が自立した生活等を送ることができるよう、できる限りの配慮をすべき政治的責務を負っていると明言をしたことは重要だと思っております。新聞各紙の論調を見ても、政府の早い政治判断を迫っていると思います。

 大臣に伺います。

 夏ごろまでにつくろうとする支援策は、生活保護ではなく、新たな給付金制度で生活の安定と人権の回復をかち取りたいという孤児の願いにこたえるものになるでしょうか。

    〔委員長退席、宮澤委員長代理着席〕

柳澤国務大臣 一月三十日だったと思いますけれども、東京地裁の判決直後に総理からの御指示をいただきました。私としては、その方針に基づきまして、今、中国残留邦人の方々のいろいろな声をお聞かせいただくこと、その上に立って第三者の有識者の御意見を聞き、さらにまた、与党でもいろいろとPT等におきまして支援策を練ってきていただいた、そういう経緯もございますので、それらの方々の御意見も拝聴しながら支援策を考えていきたい、このように考えているところでございます。

 もともと、十九年度予算におきましても、私どもは、今の枠組みの中でそれを少しでも改善させていただくということの一環で、例えば中国に養親を訪ねるようなときに生活保護の給付が切れるというようなことについては、改善をすることでその予算化も図っているわけでございます。このようなことについては、これは予算の執行としてまた別途考えるにいたしましても、本当に中国残留邦人の方々が安心して地域で暮らすことができるよう、そういったことを一たん白紙に戻して、その支援策を夏ごろまでに考えていきたい、このように考えている次第でございます。

高橋委員 今、具体的な検討をしていること、孤児らの意見を聞く会をやっていることや、十九年度予算での拡充されたことについて説明があったと思うんです。具体の話も少ししたいと思うんですけれども、やはりその前に、どういう立場で大臣がこの新たな支援策に臨むのかということをもう一度伺いたいと思うんですね。

 やはり、孤児らは、日本語がうまく話せない、そして、余りに長くたくさんの苦しい思いをしてきましたので、聞き出すには大変時間がかかります。辛抱強く聞いていただきたいと思います。現在、七割くらいが生活保護を受けておりますが、体を壊すまで働きづめに働いて、どうにもならなくなってとうとう保護を受けた、そういう事情があります。中国で獲得した医師や教師などのキャリアも生かせず、本当に屈辱的な思いをしてきた。

 そういう特殊な事情を政府が受けとめて、施策に生かすのかということを一点確認したいことと、先ほど、第三者、有識者からの意見を聞きたいというお話がありましたけれども、具体的に、例えばどんな方たちを、どんな役割をということを考えていらっしゃるのか、伺いたいと思います。

柳澤国務大臣 まず第一に、中国残留邦人の方々の立たされている状況等についてお話を伺うということを総理自身からも御指示をいただいたところでございまして、私自身も含めまして、役所全体として、これまで五回でしたか、御意見をお聞きするというか、お話を伺ったところでございます。

 その結果、帰国してから経験された御苦労として、生活保護は制約が多い、あるいは日本語教育をもっと充実させてほしいなど、中国残留邦人の方々からさまざまなお話を相当程度伺うことができたと現状考えている次第でございます。

 今後の進め方については、先ほども申し上げましたように、第三者である有識者からの御意見もいただきながら検討を進めるということを考えているわけですが、この第三者である有識者とはどういう方々かということにつきましては、先ほど武見副大臣からも御答弁させていただいておりますけれども、地方自治であるとか、あるいは社会保障の問題につきまして有識の方々ということを考えております。

 そういう方々からの御意見もいただきながら検討を進めまして、中国残留邦人の方々が、先ほども申したように安心して地域で暮らすことができるような、そういう支援策をまとめたい、このように考えております。

高橋委員 どうも、先ほどから聞いていますと、すごく事務的に答えていらっしゃるような気がしてならないんですね。私も、とても時間の制約があるものですから、お話ができなくて苦しい思いをしているんですが、やはり大臣に、孤児の皆さんから相当程度話を聞いたと今おっしゃいましたけれども、その中で、孤児のこれまで置かれてきた思い、中国にいたときは日本人と言われ、日本に来てからは中国人と言われ、苦しみ続けてきた思いを本当に受けとめているのかということがなかなか伝わってこないなということを非常に思うわけであります。そのことを強く指摘して、繰り返し、特別給付金制度を孤児らの要望を受けた形にしていただきたいということを指摘しておきたいと思うんです。

 それで、要望しておきます。有識者の懇談会というんでしょうか、そういうものをやると今おっしゃいました。そういうときに、やはり当事者たちとの定期協議をやるべきと思いますが、いかがでしょうか。

 それと、地域の支援・交流センターが二ブロックで増設することに来年度予算で提案されております。ただ、そこまで行くこと、交通費などを考えれば、やはりもっときめ細かに、地域で、県で配置されている例えば自立指導員などの身分を保障して、継続的、安定的な支援をする、そういうことがどうしても必要だと思いますが、この点を一点伺います。

柳澤国務大臣 高橋委員は、私が何か事務的に構えているんじゃないかということを言われたんですが、私も心を持っている人間でして、私は、実際にお会いしてお話を聞いたときには、本当に心を動かされたわけです。

 それは、一つ、二つ、記憶で申し上げるとすると、私は、非常に立派だという感じがしました。代表で、特に私がお会いした人たちは非常に立派な方が多いということを感じました。経歴がすばらしいにもかかわらず、それが日本でなかなか生かされないもどかしさといったようなものも、非常に落ち着いて実情をお話しいただいて、私自身、大変感動をいたしました。

 それから、日本語が十分に話せないというか、相当難しいことを話さなくちゃなりませんので、それには少しまだ語学の力が不足していらっしゃるという方も、現に私もそのように感じましたけれども、しかし、その方々が、私どもは義務教育を受けていないんですよと。つまり、日本人として生まれたら、みんな、義務教育を全部国の費用でもって受けることができるんですね。それを、私どもは中国にいたことによって受けることができなかったんですというようなこともお訴えになられまして、私も、よく考えれば当然なんだけれども、実際に具体的にそのように訴えられて、改めて再確認するというか、そういう思いで聞いておったようなことがございます。

 いずれにいたしましても、有識者の意見を聞くようにということは総理からの御指示の中にもありましたので、大局的な観点から幅広い判断のできる方から御意見をお願いしたいというふうに考えているところでございます。中国残留邦人の事情に精通していらっしゃる方とか、あるいは地方自治だとか、あるいは社会保障だとかといったようなことを含めまして、幅広い分野での人選を考えてまいりたい、このように考えております。

 なお、おっしゃられた帰国のときの交通費の問題ですけれども、これについては支給するということで私どもの方の制度は考えておるということでございます。

 それから、自立指導員の地位といったことにつきましては、また今後、支援策を考える中で考えてまいりたい、このように思います。

    〔宮澤委員長代理退席、委員長着席〕

高橋委員 よろしくお願いします。

櫻田委員長 次に、阿部知子君。

阿部(知)委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。

 本日審議にかかります法案に関しましては、毎年毎年、戦後六十年余を経て、あの大戦によって大変に御苦労をなさった、あるいはつらい運命を背負われた方々への国としての補償の充実を期すものといたしまして、賛成をいたします。

 そして、私が例年の審議の際に取り上げさせていただいているのは、御遺骨のことでございます。

 大臣も既に御承知のように、我が国が、第二次大戦において二百四十万の海外戦没者を持ち、なおかつ、現状で百十六万人の方が未帰還でございます。中にはもちろん、海没、海に埋まり、あるいは国情等で我が国と必ずしも遺骨収集で良好な関係にない国々に眠る方々もおられますが、それらを差し引いたとしても、六十万人余りは、我が国の努力の中で御遺骨の収集が可能になるはずのものでもあるかと思います。

 私は議員になって七年目、歴代の厚生労働大臣にこの問題を御質疑してまいりました。坂口厚生労働大臣あるいは尾辻大臣おのおの、戦争でお兄様やお父様を亡くされた経験があります。また、さきの川崎厚生労働大臣にも、御遺骨収集に尽力していただくという御答弁もいただきました。

 さて、柳澤大臣は、安倍内閣が始まって六カ月ですが、この内閣の中で、御遺骨の収集ということはどのように受けとめられ、話され、また大臣自身はどう思っておられるか、この御決意のほどを一点伺います。

柳澤国務大臣 戦没者の御遺骨につきましては、これは今阿部委員も御指摘のとおり、国の責務として、可能な限り早期に収集できるよう努めていかなければならないと考えておりまして、現にそうした運びになっているというのが私の認識でございます。これまでも、遺骨収集事業におきまして、いろいろな方々の御協力も得ながら、また、戦没者の御遺族及び関係者の方々の気持ちを大切にしながら、さまざまなルートからの情報を収集、精査いたしまして、国として、御遺骨が一柱でも多く収集できますよう力を注いでいかなければならない、このように考えております。

阿部(知)委員 私も実際に、例えば昨年の一月、ちょうどことし三月に厚生労働省の遺骨収集団が派遣されましたフィリピンのセブ島に参りまして、御遺骨の眠られる状況を拝見してまいりました。その中で、私も、昨年も、またことしのこの遺骨収集団の報告を受けても感じますことは、まずやはり内閣を挙げての取り組みをしていただきたい。

 どういうことかというと、外務省の出先機関である大使館、そして厚生労働省からは、派遣されております医官がおられますが、実は、全フィリピンでたったお一人、外務省の大使館の館員として行かれるわけです。フィリピン等々は、大臣も御承知のように、非常に急な傾斜地や洞窟や、いろいろな、必ずしも遺骨というものが目に見えるところにはないような状態で、そして、現地の邦人保護のためにも他にたくさんの仕事がある。

 そうなりますと、私は実は尾辻大臣の時代に、詳しく言うと十七年の六月ですが、厚生労働省内に遺骨の情報収集のための専門チームを置きたい、もっと言えば道筋をつけたいというふうに、尾辻大臣、御答弁でありました。そして、きのう、その道筋がついたかなと思って担当者に伺いましたが、結局のところ、平成十八年度は、日本遺族会の皆さんにお願いして、約二千九百万円の予算で現地の情報収集に当たっていただくということでありました。

 私は、それ自身は否定いたしませんが、やはり受け皿となるような厚生労働省側のチームなり体制の充実がないと、実は米国に比しても、遺骨収集に専門にかかわります行政サイドの力量といいますか体系が弱い我が国でございます。もし、内閣挙げてというお考えであれば、まず隗から、厚生労働省みずからこの遺骨収集と、それから、もちろん根幹は情報収集です、このことによりマンパワーを充実させていく、このことを柳澤大臣にお願いしたいですが、いかがでしょうか。

柳澤国務大臣 まず第一に、遺骨収集のためには情報の収集というのがその基盤になるという御指摘は、私どもも全く同じ思いを持っているわけでございます。

 私どもの事業としては、国内情報は、遺族会のホームページにおきまして情報提供の呼びかけをするとか、あるいは戦友会の関係者の方等から事情を聞かせていただくとかいうことがその柱になっているわけでございます。

 それから、海外の情報収集としては、フィリピン及び東部ニューギニア地域へ調査員を派遣しまして、現地の在留邦人や日系人の組織に対して、情報収集のためのネットワークづくりといったようなものにつきまして協力を依頼する、さらに、当該国の政府等の関係機関に対しまして、現地住民等への本事業、情報収集の事業の周知等の協力を依頼する、さらには、各自治体単位で現地住民を招集して情報の聞き取りを行う、こういったことを柱として活動してきたところでございます。

 そういうことで、これはもう地道な努力が必要だというふうに考えておりまして、常設の機関としてどういう体制で取り組むべきかということにつきましては、援護局の事務としてもかなり力を入れて取り組んでおりますので、引き続き調査員の派遣等についてしっかりした取り組みをしていくことが必要なのではないか、それが柱となるのではないか、このように私としては考えております。

阿部(知)委員 恐縮です、お手を挙げられたのですが、時間の関係で申しわけないです。

 大臣はそうはおっしゃいますが、実際にやはり遅々として進まない。悠長にはしていられない。一つは、もう御遺族が御高齢化されるわけです。情報も風化いたします。遺骨も風化いたします。やはり私は、こうしたことはきっちりと、内閣を挙げて、政府を挙げて取り組む中心課題に据えていただきたい。例えば硫黄島にも、また沖縄にもございます。それから、海外にもございます。

 そして、最後の一点。

 実は、今回の遺骨収集団、四十五体をお連れ帰ることになりましたが、もともとは民間人から寄せられた情報です。常に民間が厚労省にお願いする。まず民間の人が、やむにやまれず情報を集めておられます。そのことは大変に貴重なことですし、しかしながら、またさまざまな、例えば、どなたの骨であるか、場合によっては動物の骨か、いろいろなものが混入してまいります。このことをきっちり鑑定するためにも、鑑定体制の強化をお願いしてまいりました。

 このたび、フィリピンの博物館の副館長である方から、現地の鑑定員、フィリピン大学の人類学者がおられますが、日本からも鑑定人を同行することもよいのではないかと御助言をいただきました。私は、よい御助言は一つでも前向きに取り組んでいただきたいが、いかがでしょうか。

 これで終わりです。

荒井政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、遺骨収集の関係でございますが、民間の力を活用するということは、私ども大事だと思っております。従来からそういうことで情報収集をしながら、また民間の力をかりながら遺骨収集もしてきたということがございます。

 今後もそういうことで、御遺族それから関係者の方々の気持ちを大事にしながら、大切にしながら、さまざまなルート、さまざまなパイプを広げながら情報を十分に精査し、国として戦没者の御遺骨が一柱でも多く収集できるように力を傾けてまいりたいと思っております。

 また、先ほどの鑑定の話でございますが、遺骨鑑定に関しましては、現地の事情に詳しい専門家に協力していただくことが、事務全体を考えると一番いいことだというふうに考えてございます。そのために、従来から、在外公館を通しまして、相手国政府から、考古学それから人類学の見地で遺骨鑑定が非常にうまくできる方だということで推薦いただいております。その鑑定には信頼を置いているところでございます。

 また、相手国にそういう専門家がいない場合には、日本から鑑定をされる方を連れていく形で遺骨の鑑定をしているということでございます。

阿部(知)委員 そういう後ろ向きな姿勢で、本当にあなた方、この国が一番犠牲を強いた人たちに報いられると思いますか。

 相手国からお申し入れがあったからどうするのと私は伺いました。人の質問もよく聞かない、厚生労働省内に専門班もつくらない、そういう格好で、本当に、援護など、語るもはばかられると思います。

 以上、質問を終わります。

櫻田委員長 以上で本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

櫻田委員長 これより討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 内閣提出、戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

櫻田委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました本案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

櫻田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

     ――――◇―――――

櫻田委員長 次に、厚生労働関係の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として厚生労働省医政局長松谷有希雄君、医薬食品局長高橋直人君、労働基準局長青木豊君、社会・援護局長中村秀一君、社会・援護局障害保健福祉部長中村吉夫君、老健局長阿曽沼慎司君、保険局長水田邦雄君、年金局長渡辺芳樹君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

櫻田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

櫻田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。杉村太蔵君。

杉村委員 自由民主党の杉村太蔵です。本日は、質問の機会をいただきましたことを深く感謝申し上げます。

 私のような下々の議員にとりましては、年に数回あるかないかの晴れ舞台でございます。張り切って質問をさせていただきたいと思いますので、柳澤大臣初め、武見副大臣におかれましては、どうぞよろしくお願い申し上げます。

 本日は、七問質問を御用意させていただきました。前半四問は労働問題を中心に、そして後半は介護、福祉に関する点、それから歯科予防、少子化問題、引き続き質問をさせていただきたいと思います。限られた時間で最後まで到達できるかわかりませんが、時間の許す限り、どうぞよろしくお願い申し上げます。

 早速、雇用対策法に関してであります。

 フリーター問題、この問題は、我が国特有の構造的な問題があるのだろうと考えます。それは、多くの企業が実施している新卒採用という弊害です。

 安倍総理は、この通常国会の所信表明演説においても、再チャレンジ総合支援策の一環として新卒一括採用の見直しを経済界に求めていく旨申されました。同様の趣旨は予算委員会においても再三述べられております。また、柳澤大臣におかれましては、この厚生労働委員会における所信表明において、さらに踏み込んで、募集段階における年齢制限の禁止を述べられております。

 こうした一連の政府による取り組みは、就職活動を新卒時に限らず、仮に新卒時に失敗したとしても、翌年、または自己の技能を高めた上で何度でもチャレンジできるという仕組みであります。その点、私ども若い働き手、就職活動を行う立場の者といたしましては画期的な構造改革であります。

 さて、柳澤大臣にお伺いしたいのは、今法案において、こうした政府の姿勢を本当に企業側が受け入れてくださるのか、この法案ではあくまで企業の努力規定にとどめている点、実際に企業が採用風土を変革してくれるのかどうか、若干の懸念があります。その点、柳澤大臣の所見をお聞かせいただければと思います。

柳澤国務大臣 今、杉村委員から雇用対策法における改正事項について御質問をいただきました。

 具体的に申し上げますと、いわゆる年長フリーターを初めとした若者の安定した雇用を促進、確保する観点から、私ども、今度雇用対策法を改正いたしまして、もう少し若者の能力を正当に評価してもらいたい、そういうことを募集、採用に当たって考えていただいて、その方法について改善を加えてもらいたい、こういう趣旨の改正を盛り込んでいるところであります。それから二点目といたしまして、実践的な職業能力の開発、向上につきまして必要な措置を講ずるということも改正に盛り込んでいるところでございます。

 そういうようなことで雇用の機会の確保が図られることを事業主の努力義務ということにいたしておるわけでございますが、今委員は、この努力義務だということにとどまっていることに若干懸念がある、こういうお話をいただいたわけでございます。

 この努力義務に関してでございますけれども、今回の改正におきましては、国は、事業主が適切に対処するために、まず、必要な指針を策定するということにいたしております。いわゆるガイドラインということでありまして、これを策定いたします。これに基づきまして事業主に対して必要な助言、指導を行っていくということを考えておりまして、こういうようなことによりまして、ただ法律の中にこれを努力規定として置いて、事業主にその努力をゆだねる、こういうことにはとどまらないわけでございます。

 例えば、平成十三年の雇用対策法改正で、募集、採用時の年齢制限緩和に係る事業主の努力義務を規定しまして、同じようにガイドラインを策定してこれに取り組んでおりますが、現に、これによって年齢不問求人がハローワークで増加をしているということがございます。したがいまして、今回の改正における努力義務につきましても、指針であるとかあるいは助言指導、こういうものをきめ細かく行うことによって効果は期待できるというふうに考えているところでございます。

    〔委員長退席、伊藤(信)委員長代理着席〕

杉村委員 ありがとうございます。ぜひそのようにしていただければありがたいと思います。

 次に、年金一元化法案の一部で議論されておりますパート労働者の厚生年金適用拡大に関する質問です。

 これは言葉の問題になるのですが、いわゆるパートとフリーター、どちらもこの法案では厚生年金適用拡大の対象となるわけであります。ところが、どんなにパートの御婦人と全く同じ時間、同じ時給、同じ内容の仕事をしていても、多くのフリーターの場合、自分たちをパートだとは思っていない。自分たちはフリーターだと思っている。

 実はここがこの法案の非常にもったいない、惜しい点でありまして、本来、この法の趣旨からいえば、超就職氷河期時代に残念ながら正規雇用されなかった人たち、何度も就職活動をしたけれども、世の中がその受け皿とならなかった時代、まことに不本意ながらフリーターという非正規雇用で働かざるを得ない状況にある人たちに対して、将来の年金受給格差を少しでも是正することを目的とした、なかなかすばらしい法案であります。一方で、パートの御婦人の中には、将来受け取る年金の額よりも、今の手取りの額が減ってしまう方が苦しいよという方も中にはおられるのだろうと思います。

 そこで、厚生労働省にはぜひとも、この厚生年金適用拡大に関する議論の際は、あえてわざわざパート労働者というふうに限定のような印象を与えるのではなく、フリーターの厚生年金適用拡大とは申しませんので、せめて非正規労働者の厚生年金適用拡大と申していただければ我々にとっては大変ありがたいのですが、厚生労働省の御見解をいただければと思います。

渡辺政府参考人 お答え申し上げます。

 いわゆるパート労働者への厚生年金等の適用拡大につきましては、ただいま御指摘ございましたが、その御指摘は、正規、非正規の間の格差是正という観点に位置づけて考えるべきであるという点においてまことに当を得たものというふうに私どもも理解をしております。

 ただ、用語の問題と今おっしゃられたように、厳密に用語の問題で申し上げますと、法律上は、今回の検討、御議論は、平成十六年年金改正法附則の検討規定において「短時間労働者」というふうに法文上規定されておるものでございますから、年齢、性別の区別なく、正社員と比べて労働時間の短い者を想定した議論で設定しているわけでございます。

 なお、今回の政府・与党で現在も調整中の案につきましては、御承知のとおり、再チャレンジを支援し、また被用者としての年金保障を充実させるという観点に立脚しているわけでございますが、その対象者につきましては、御指摘のとおり、いわゆる就職氷河期に直面し、正社員になりたいという希望にもかかわらず非正規労働者のままでいる若年層の方々を当然含んでおるわけでございます。

 厚生労働省といたしましては、成案を得た場合、そして適用拡大を行った場合には、フリーターの方々あるいは非正規労働者の方々を含め、特にまたその点も強調して、将来の所得保障の充実につながることをわかりやすく周知してまいりたい、こういうふうに考えております。

杉村委員 ありがとうございます。ぜひともメッセージの伝え方として工夫をいただければなと思います。

 次に、労働基準法改正案についてであります。

 この法改正案では、サラリーマンの有給休暇の取得が大きく変わります。これまでは一日単位でしか有給休暇を取得できなかったのが、これからは一時間単位で取得できるようになる。これは、例えば金曜日の午後と月曜日の午前中、合わせて一日の有給とすることができる。これにより、金曜日は、いつものように九時に出社して午後一時まで働く、その後、例えば御家族で北海道に行き、旭山動物園なり見に行く、三時にはもう北海道に着いていることができる。土曜日、日曜日、たっぷり二日間遊んでもらって、月曜日の午前中の便でまた東京に戻られる。戻られた御主人は午後一時からそのまま会社に直行される。それで、丸一日の有給の扱いができるという法改正案であります。

 これもまた、私どもサラリーマン経験者といたしましては本当にありがたい話で、要するに、丸一日休ませてくれとはなかなか言いづらいものでありますが、半日だけ休ませてくださいとなれば比較的言いやすいわけであります。一方で、事業主サイドからしても、丸一日休まれるのはつらいけれども、半日ならいいよとなるわけであります。

 この有給制度は、両者にとって大変使いやすいものになると考えますが、厚生労働省の御所見をお聞かせください。

青木政府参考人 年次有給休暇は、労働者の心身の疲労を回復させるとともに、ゆとりある生活の実現に資することを目的とした制度でございます。現行では日単位で取得することとなっているのは委員御指摘のとおりでございます。

 年次有給休暇の実際の取得状況を見ますと、時間単位など、一日未満の単位での年次有給休暇の取得を望む労働者が一定割合存在しております。このため、年次有給休暇の一層の有効活用を可能とするため、今国会に提出している労働基準法改正法案において、労使協定によりまして、五日の範囲内で年次有給休暇を時間を単位として取得できるようにすることとしているところでございます。

 年次有給休暇の付与日数自体は変えずに、年次有給休暇を取得することによりまして、仕事と家庭の両立、余暇の充実さらには経済的な波及効果など、さまざまなメリットがあるというふうに考えているものでございます。

杉村委員 ありがとうございます。ぜひとも、それはまた強く事業主サイドにも宣伝していただければ、本当に使いやすい制度だと思いますので、よろしくお願いいたしたいと思います。

 次に、ホワイトカラーエグゼンプションについてであります。

 私は、日本のこれからの労働市場、働き方、働くということと家庭とのバランス、多様な勤務スタイルを認めていくという観点では導入に前向きな立場であったのですが、今回、国民の皆様には理解が得られなかった。その理由として、これは遠因にもなるかもしれませんが、やはりこれまで厚生労働省は、残業代不払い問題、サービス残業の問題について、残念ながら、有効な手だてを打ってこられなかったのではないか、ここに国民の大きな不信の種があるのではないか。私は、まずはこうしたサービス残業に対する問題についてしっかりと解決をするんだ、そうした姿勢が非常に重要ではないかと考えております。

 そこで、これは武見副大臣にお尋ねいたします。

 これまでの厚生労働省、副大臣が御就任する前でありました、同省におけるサービス残業の問題に関する取り組み、そして、今後、厚生労働省としましてこの問題についてどのように取り組んでいかれるか、御所見をいただければと思います。

武見副大臣 賃金不払い残業というのは、これはもう労働基準法に違反する、あってはならないものでございます。厚生労働省としては、平成十五年五月に策定した、賃金不払残業総合対策要綱などに基づきまして、毎年、賃金不払残業解消キャンペーン月間を設定しておりまして、企業全体として労使の主体的な取り組みを促すとともに、重点的な監督指導を実施するなど、賃金不払い残業の解消に向けた総合的な対策を推進しております。

 なお、平成十七年四月から平成十八年三月までの一年間における監督指導の結果、割り増し賃金が支払われた企業のうち、一企業当たり百万円以上となったものは千五百二十四企業、対象労働者数は約十六万八千人、支払い合計額は約二百三十三億円になりました。

 今後とも、同要綱に基づきまして、賃金不払い残業の解消に積極的に取り組んでいきたいと思っております。

杉村委員 ありがとうございます。ぜひとも、そうしていただければと思います。

 次に、介護福祉士の国家試験受験資格に関する質問です。

 我が国の介護福祉士の資格取得者の約七割が、実務経験者ルートによるものです。これは、一定時間現場で実際に働きながら勉強されて、その一定時間を満たすことで国家試験の受験資格を取得し、国家試験に挑戦されるというルートです。これが約七〇%です。

 今回の改正の趣旨は、介護福祉士の質の向上ということでありまして、これは大賛成なわけですが、改正案では、実務経験者ルートにおける受験資格の要件に、新たに、養成学校での修業が義務づけられることになります。これは、正直に申し上げて、介護の分野にこれから活躍されようとされる多くの方にかなり強烈なハードルになることを懸念しております。

 というのも、この養成学校での修業を義務づけられますと、受験生にとりましては、養成学校に通う学費、これが絶対経費としてかかってまいります。法案を御説明いただいた事務方にお尋ねしますと、まだこれは決定ではない、正確なところはまだまだわからないというところですが、数十万円ほどはかかってくるのではないかというところであります。

 そこで、厚生労働省には、これからますますこの介護の分野では人手を必要とします。介護の質を高めるという視点と同時に、こうした働きながら学び、試験に挑戦されるという方々に対して、絶対経費、自己負担、せっかく介護の分野で頑張ろうとされている方の足かせにならないような工夫をいただければと思うのですが、この点、担当の方、いかがお考えでしょうか。

中村(秀)政府参考人 委員から今御指摘いただきましたとおり、働きながら学ぶ、こういうことになりますので、御負担にならないような配慮が大事ではないかと思います。

 そういった意味で、通信課程等を認めることを検討しておりますし、また、働く方の能力開発の取り組みを支える制度といたしまして、教育訓練給付という制度がございます。現在でも、介護福祉士の養成二年課程などでも、この教育訓練給付の支給対象として指定を受けている教育訓練講座もございますので、特に今委員から御指摘のございました、働きながら学ぶ、こういう方々にとってはこういう制度は大事ではないかと思いますので、担当部局ともよく連携をとりながら工夫を重ねてまいりたいと思います。

杉村委員 ありがとうございます。ぜひとも、またそうしていただければと思います。

 次に、ちょっと労働問題から離れまして、予防歯科の話をさせていただきたいと思います。

 実は、私の父が歯科医、祖父も歯科医です。弟までも歯学部に通い、さらに母は歯科衛生士。ちなみに、もう一人弟がおりまして、彼は国立の医学部に進学するという、これだけを見れば私も立派な厚生族だと思うわけでありますが、どうして私だけが高卒どまりになったのか不思議でありますけれども。

 そうした背景から、幼少のころから歯の健康に関しては口うるさく教育を受けまして、そのおかげをもちまして、今日まで虫歯は一本もなし、体は健康そのもの、お口の健康は体全体の健康につながるものだと信じているわけでありますが、厚生労働省のホームページを拝見させていただきますと、この歯科医療に関する啓蒙、歯の健康が大事だといった歯に関することが、指一本という言葉はありますが、歯一本触れていない、そういう状況であります。本年度予算の中の重点施策に関する内容にも、歯科に関することは一切触れられていません。

 これからの日本において、健康寿命を延ばすということは非常に重要なことだと思うわけですが、その点、厚生労働省の担当の方は、歯の健康に対する国民への啓蒙活動について、何かお考えがあればお聞かせいただければと思います。

松谷政府参考人 安心、信頼の医療を確保して、治療重点から、疾病予防を重視した保健医療体系への転換は、現在の医療制度改革の基本的な考え方でございます。

 歯科保健医療の分野におきましては、八十歳の時点で自分の歯を二十本以上保つという八〇二〇運動をやっておりますが、この八〇二〇の達成者の増加、また子供の虫歯の減少など、国民の歯の健康状態は着実に改善しているところでございます。こういった成果は、国民の歯の健康に対する関心の高まりとともに、地域や歯科医療機関において、歯科医師や歯科衛生士等が歯科疾患の予防に取り組んできたことによるものと考えております。

 厚生労働省のホームページも、若干ですが、実は触れてはおります。

 それで、昨年十二月に、今後の歯科保健医療と歯科医師の資質向上等に関する検討会の中間報告書におきまして、今後の方向性につきまして、一つには、住民みずから歯磨きなどを行ういわゆるセルフケアと、歯科医師や歯科衛生士が歯石の除去等を行ういわゆるプロフェッショナルケアをあわせて実施することを基本とすること、また、八〇二〇運動推進特別事業が都道府県における歯科保健事業の中核であること、また、口腔の健康と全身の健康に関する研究を推進していく必要があることなどが提言されたところでございまして、この報告等を踏まえまして、生涯を通じた歯科保健医療対策に取り組んでいくこととしてございます。

 中でも、口腔の健康と全身の健康との関係につきましては、委員御指摘のとおり、口腔ケアが誤嚥性肺炎の予防になることなどが広く知られておりまして、近年、歯周病といろいろな全身疾患との関係も注目されているところでございます。

 口腔の健康と全身の健康との関係の研究につきましては、歯科医師が、医師等多くの保健医療関係者と連携して研究を進めていく必要があるというふうに考えております。

 また、例年、六月四日から十日までの歯の衛生週間におきましては、歯の健康にちなんだ催しが全国各地で開催されておりまして、歯科保健の普及啓発に大きな役割を果たしているものと考えております。

 厚生労働省といたしましては、今後とも、歯、口腔の健康の重要性を踏まえまして、歯科保健対策の充実に努めていきたいと思っております。

杉村委員 ありがとうございます。

 時間がなくなってまいりました。最後に、少子化問題についてお尋ねしたいと思います。二点、短く課題を申し上げたいと思います。

 一点目は、いかにして婚姻数を伸ばしていくか。出生率向上に向けては、どうしたって婚姻数の伸びというのが気になるわけであります。

 その点、例えば、どんなに好きな女性がいても、時給七百八十円では、おれについてこいとはなかなか言えないものであります。また、一方で、女性の立場から考えましても、時給七百八十円では、君を幸せにするからと言われても、にわかに信じがたい。それがやはり、現場の声と申しますか、そういうものなんだろうと思います。

 こうした点、話が最初に戻るようでありますが、若年者雇用問題の改善こそが、婚姻数の増加、ひいては出生率向上につながると考えますが、これはぜひとも柳澤大臣のお考えをお聞かせいただきたいと思います。

 もう一点、男性の育児休業についてであります。現状それから今後の見通し、また、これから子育てを始める若い世代に、大臣からは、ぜひ人生の先輩として、何かアドバイスなりメッセージなり、子育てに対する熱い思いをいただければと思います。

柳澤国務大臣 杉村委員の方から、少子化対策として雇用問題というものが大事ではないかという御指摘をいただいたというふうにお受けとめいたしました。

 実際に、私ども、雇用と結婚や子育てとの関係につきまして、非常に興味深いデータを整理しているわけでございます。二十一世紀成年者縦断調査であるとか、あるいは若者就業支援の現状と課題というような資料をひもときますと、明らかに、結婚、子育ての基盤としての雇用の重要性というものが示されているわけでございます。

 端的に言いますと、正社員と非典型雇用の人たち、あるいは、今委員がお触れになったような、いわゆる周辺フリーターと言われる方々の年齢階層別の配偶者のいる割合というものをとってみますと、二十歳から二十四歳、あるいは二十五歳から二十九歳、三十歳から三十四歳という各年齢層におきまして、正社員である男性の、配偶者のいる割合というものは、ほかの非典型雇用あるいは周辺フリーターの方々を上回っている、こういう統計データが示されているところでございます。

 その意味におきまして、少子化対策の観点からも、雇用というもの、特にフリーターやニートの方を初めとする若者が自立をして、また、安定した収入を得られるようにすることが重要な課題である、このように考えているところでございます。

 このため、平成十九年度におきましても、年長フリーターの正規雇用化の支援に重点を置いたフリーター二十五万人常用雇用化プランを推し進めておりますし、また、ニートを初めとする若者の方々の働く意欲を高めるために、若者自立塾の推進だとか、あるいは地域若者サポートステーションといったような機関を設けまして、その自立支援を拡充しているところでございます。さらに、先ほど委員が触れました雇用対策法の改正もその観点からも行われておりまして、若者の応募機会の拡大が図られるということを期待いたしているわけでございます。

 いずれにしましても、そういうことで、もちろん、選択肢として非正規雇用を選ばれる方は、それはそれとしてまた尊重をし、その人たちについては処遇の均衡化というものを考えていきたいと思っておりますが、いずれにせよ、そういうことで、雇用が結婚、子育ての基盤であるという考え方に立って施策を進めているところでございます。

 男性の育児休業についてお尋ねがありましたけれども、現状、十七年度で見ますと取得率は〇・五%ということで、政府が目標といたします一〇%を大きく下回っているという現状で、この点についてはもっと我々が努力する必要がある、このように考えております。

 その観点から、やはり取得を進めるためには、職場の理解不足であるとか法制度に対する理解不足が原因であると考えておりまして、この観点から、制度の周知徹底であるとか、あるいは企業の取り組みについて次世代法に基づくいろいろな施策を推進するとか、あるいはモデル的な取り組みを行っている企業の支援をするとか、そういうような施策に取り組んでいるところであります。

 最後に、子育てを始める若い世代へのメッセージをというお話でございますけれども、すべての子供、すべての家族を、世代を超えて国民みんなで支援する国民総参加の子育て、こういうことで、私も、前々回の選挙ですか、自民党の公約づくりをしたときにも、社会の育てる子供ということを一項目掲げて私どもの考え方を示したこともございますけれども、いずれにしても、子育てに優しい社会づくりを私どもとしては目指していきたい、このように考えているということを申し上げて、お答えとさせていただきます。

杉村委員 ありがとうございました。

 私も、積極的に育児休業は取得していきたいと思います。

 以上で質問を終わります。ありがとうございました。

伊藤(信)委員長代理 古屋範子さん。

古屋(範)委員 公明党の古屋範子でございます。

 まず初めに、このたびの能登半島地震で亡くなられた方、また御遺族の皆様に心からお悔やみを申し上げますとともに、負傷された方々、被災者の皆様に対し、心からのお見舞いを申し上げたいと存じます。

 今回の地震で大きな被害を受けた石川県能登半島地方は、過疎に悩み、ひとり暮らしの高齢者が多い地域と伺っております。政府は、被災者の方々が安心した生活を送れるよう、一刻も早く激甚災害に指定するとともに、被災地の復旧復興に全力を尽くしていただきたいというふうに思います。

 まず初めに、先般、フィブリノゲン製剤等による肝炎感染の被害者につきまして、新たに国の責任を認める判決が下されました。国としては、関係省庁と協議の上、最終的な判断を下されるものと思いますが、適切な判断を下されるよう要望いたします。同時に、司法判断をどのように求めるかという問題と並行して、数多く存在する肝炎感染者の方々の実質的な救済と支援について検討を進めるべきと考えます。昨年来の国会での論議、指摘を踏まえまして、この薬害肝炎患者の救済について質問してまいります。

 全国で多くの肝臓がんの患者の方々が生体肝移植を受けて救われていますが、保険適用が認められず多額の自己負担という大変な困難に直面をしております。これはまた、手術を行った医療機関や医師自身も、手術前に保険適用となると説明をし、移植を実施していることから、同様に困難に直面しているわけであります。厚生労働省は適用の条件と異なると説明をされていますが、実際の記載は、ミラノ基準とは異なって、先立つ肝臓がんの治療の経過について規定されておらず、執刀医が保険適用と理解することもやむを得ないと言わざるを得ないわけであります。

 こうした事態を踏まえ、多くの困難に直面する患者の方々の心情も踏まえ、当面保険給付を継続すべきと考えますが、いかがでしょうか。

水田政府参考人 お答えいたします。

 現在の生体部分肝移植の保険適用基準についてでございますけれども、これは、エビデンスに基づきまして、専門家による議論を経て、中医協での議論を踏まえて、平成十六年一月に肝がん患者にも適用を拡大したところでございますけれども、これは、再発が少なく生存率が高いと見込まれるものに限定して保険適用の拡大をしたものでございます。

 このいわゆるミラノ基準につきましては、生体部分肝移植を行う医師の方であれば熟知しているものと考えられまして、また、この基準を設定する際の議論も公開の場で行われているものでございますので、保険適用のルールは十分に周知されているものと私どもは考えてございます。

 委員御指摘のように、厚生労働省が示す基準が十分周知されず現場が困っているといった事実があるのであれば、現行の基準の周知につきましてさらに徹底すべく、必要に応じて対応策を検討してまいりたい、このように考えてございます。またさらに、治療の進展に関しましては、そのエビデンスに基づきまして判断をしていきたい、このように考えております。

古屋(範)委員 大変厳しいお答えであるというふうに感じます。

 次に、肝炎に罹患した患者の方々の困難、一つには、肝炎から肝硬変へと進行し、さらには肝臓がんへと進行する、この長い経過と疾病の重大性に起因をしているわけであります。現在、肝硬変への進行を防ぐために、慢性肝炎の治療としてインターフェロンの投与また抗ウイルス薬の併用療法が行われておりますが、長期にわたっての治療であり、患者の方々の負担も大変に大きいものであります。また、インターフェロンの投与は肝臓がんへの進展を予防する効果があるのではないかとも考えられております。

 そこで、患者の方々の負担を少しでも軽減するために保険適用のさらなる拡大などさまざまな努力を進める必要があると考えますが、この点はいかがでしょうか。

水田政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のインターフェロンの効果についてでございますけれども、これにつきましては、なお私どもといたしましては知見の集積が必要である、このように承知をしておりまして、現時点の情報をもとに保険適用についてお答えすることは困難でございます。

 今後、知見の集積がなされまして、そのデータをもとに、まずは薬事承認が必要でございます。この薬事承認がなされた場合には、その適応内容等を踏まえて適切に検討していきたい、このように考えております。

古屋(範)委員 肝炎患者の方々への実質的な支援と救済、これを強く要望しておきたいというふうに思います。

 次に、きょうの質問のテーマであります療養病床再編成について質問してまいります。

 医療の分野は、国民の大きな関心事であり、医師確保の問題またリハビリテーションの問題など、さまざまな課題がございます。初めに、この療養病床再編成の考え方についてお伺いをしてまいります。

 高齢者の方々の介護は、まず、家族がサービスを使いながらできるだけ在宅で支えてきているように思います。また、最後は施設や病院に入所、入院することが多く見受けられます。療養病床は、このようにどうしても在宅では支え切れない、そういう方々が入るベッドとして機能しております。しかし、療養病床には必ずしも医療の必要性が高くない方々も入院している、そのことが、昨年厚生労働省が初めて行った療養病床実態調査によって明らかとなりました。そして、昨年の医療構造改革の中で、療養病床の見直しを進めることとなり、療養病床の六割削減、全体の数が大きく減らされる方針が打ち出されたところでございます。

 テレビや新聞の報道を見ておりますと、なぜ再編成が進められるのか、全体としてどのような方向を目指すものなのか、そこを説明せず不正確な理解のまま、ただ療養病床がなくなるという側面のみを取り上げて、患者の追い出しとか介護難民などとセンセーショナルにあおって、かえって高齢者や家族の不安をかき立てているように感じてなりません。

 本来、療養病床の見直しは、療養病床がすべて廃止されたり、サービスを必要とする患者を無理やり追い出したりするものではなかったはずであります。しかし、当事者の高齢者、家族には伝わっていないのが現状ではないかと思います。その病床削減に対して、今後が不安、受け皿がなく介護者も共倒れになるのではないかといった切実な声も寄せられております。

 再編に当たって、入院、入所されている皆さんが不安を抱かれることのないよう、一人一人の患者また高齢の方々が安心して過ごせる道筋を示すなど、きめ細やかな対応を行い、不安を払拭することが必要であると考えます。

 今回の療養病床再編成のねらいと対応方針について、副大臣にお伺いをいたします。

石田副大臣 長期にわたる療養を必要とする患者のための病床であります療養病床につきましては、患者の状態が安定しているため医師による指示の見直しがほとんど行われていない、そういう方も利用している実態が、委員も御指摘のありましたように、調査の結果、そういうこともわかったわけであります。そのことから、今般の医療制度改革の一つの柱である医療費適正化の総合的な推進におきまして、長期入院を是正するための具体的な方策の一つとして、療養病床の再編成に取り組むことといたしました。

 これによりまして、一つは、患者のニーズに即した適切なサービスの提供、また二つ目には、医師、看護師など限られた人材の効率的な活用、そして三つ目には、医療保険や介護保険の財源の効率的な活用による安定的な制度の運営、こういうことが図られることとなるものと考えております。

 療養病床の再編成に当たりましては、患者の状態に応じた施設の適切な機能分担を推進することといたしまして、具体的には、医療の必要性が高い方々を受け入れるものに限定し医療保険で対応するもの、そして、医療の必要性の低い方々については、こうした方々が利用している療養病床を、平成二十三年度末までの間に、より居住環境のよい老健施設等に転換していただく、そして、それをその受け皿とすることといたしております。

 いずれにいたしましても、委員御指摘になりましたように、メッセージというんでしょうか、その趣旨が明確に伝わらず、いたずらに、追い出されるのではないかとか、こういう御心配をされる向きもあるということを私もお聞きいたしておりますけれども、療養病床の再編成に当たりましては、入院されている方々が追い出されるとか、そういうことの不安を招かないよう適切な対応を図ってまいらなければなりませんし、特に療養病床再編成の意義につきましては、もっともっと周知をしていかなければいけない、このように考えております。

古屋(範)委員 ただいまの副大臣の御答弁により、ただ単に療養病床を減らすということが目的ではなく、それぞれのニーズに合わせてその状態にふさわしいサービスを提供していく、その環境を整えることというお話でございます。

 そのねらいや方向は正しいといたしましても、実際に円滑な転換が進むかどうかということが問題であります。療養病床の再編成、二〇一一年末までということでございます。全体で六年間をかけて進めることとなっております。既に一年間経過したことから、これから五年をかけて取り組むということになるわけですが、実際、転換を進める上で、現場の医療機関にとってさまざまな課題がございます。

 そこで、厚生労働省として、どのような転換支援策を講じてこられたか、その概要の御説明をいただきたいと思います。

阿曽沼政府参考人 お答えをいたします。

 療養病床の再編成に当たりましては、療養病床の老人保健施設等への円滑な転換を促進する、そういう観点から、まず医療保険、介護保険の双方におきまして、医師、看護職員の配置などを緩和いたしました療養病床の類型を創設するということが一つでございます。

 それから二つ目に、既存の建物をそのまま活用いたしまして老健施設に転換できるように、床面積の基準を経過的に緩和するという措置も講じております。

 それから三番目でございますが、財政支援策といたしまして、地域介護・福祉空間整備等交付金等を活用して転換に要する費用を助成する。

 そういった形の転換支援措置を今まで講じてきているところでございます。

古屋(範)委員 さまざまな緩和施策あるいは財政的な支援措置などを講じられてきたということでございますが、この療養病床の再編、その受け皿となる老人保健施設は、入院を終えた後、またはリハビリなどをして在宅復帰を目指す中間施設であります、入所期間が長期化しているなど、その役割自体が揺らいでいるのではないかというふうに思います。

 厚労省の調査によりますと、子供と同居する高齢者、一九八〇年で六九%から、二〇〇三年には四七・八%と減っております。このように家族の介護力が低下をしている。その上に、在宅介護の難しい認知症の高齢者はますますふえている。老健施設の存在がより重要性を増してくることが予想されます。医療療養病床十五万床を目標とするならば、その転換先として有力視されている老健施設の医療提供体制はやはり見直しが必要であるという指摘がございます。

 今後、終末期も含め、医療の必要性が高い人たちが老健施設に移っていくことが考えられますが、現在の老健施設での医療提供の実態を見ますと、医療処置の実施状況は特養ホームより低い現状であります。このため、関係者から、現在の療養病床に入院している患者さんを老健施設でそのまま受け入れることが可能なのか、実際には受け入れが難しいのではないかという声が聞かれます。

 そこで、これまでより医療を充実させた施設、例えば医師や看護師の人員配置を厚くする、また、夜間の急変にも備えられるよう、最低限、看護師の当直体制を義務化する、もしくは、そのままの内部配置で必要に応じて訪問診療や訪問看護を潤沢に提供することができる体制を整備するなど、老健施設のあり方を見直すべきというふうに考えます。この点につきまして、厚生労働省の御認識をお伺いいたします。

阿曽沼政府参考人 先ほど副大臣から御答弁申し上げましたように、療養病床の再編成につきましては、医療の必要性が高い患者さんについては医療保険で対応する、それから、医療の必要性の低い方々については療養病床を老健施設等の介護施設に転換することで対応するという基本的考え方でございます。

 その場合に、御指摘ございましたように、老健施設でございますけれども、現在の老健施設といいますのは、在宅の復帰の施設としての役割を担っているということがございます。したがいまして、療養施設の受け皿としてどうかという議論がございまして、特に夜間の看護職員の配置をどう考えるかという問題、それからもう一つは、みとりへの対応をどうするか、そういう課題が指摘をされているところでございます。

 私どもとしては、法律の附則にも、老人保健施設等の基本的なあり方あるいは入所者に対する医療の提供のあり方等については、入所者の状態に応じてふさわしいサービスを提供する観点から検討を行うという附則の規定もございますし、そういうことを、全体を踏まえまして、現在、介護施設等の在り方に関する委員会におきまして、老人保健施設等の基本的なあり方等について速やかに検討しております。特に、先般取りまとめられました療養病床アンケート調査結果もございますので、できるだけ関係者の御意見を十分に伺いながら検討を進めてまいりたいというふうに思っております。

古屋(範)委員 やはり、この転換の中では、一人の高齢者、人が中心ですので、そこをより重視した転換のさまざまな体制づくりというものが必要になってくるというふうに思います。

 先日、私は、多摩市にあります新天本病院というところに行ってまいりました。ここは天本理事長が、人里離れた地ではなくて市街地に高齢者専門病院をつくりたい、住みなれた地域の中で高齢者と御家族を支援したいという信念でつくられた病院であります。

 病棟は、一階から、外来リハビリ、また一般病棟、回復期のリハビリテーション、また認知症デイケアなどというふうになっておりまして、非常にリハビリのスペースなども広く、明るくつくられております。スタッフも非常に厚く配置をされておりました。

 また、介護老人福祉施設も併設されていまして、ここでは、より生活に近いグループホーム的なリハビリを行っている。また、少し離れたところには、在宅ケアのベースキャンプとして、外来、また訪問診療、通所リハビリテーション、また居宅介護支援事業所、訪問看護ステーション、グループホーム、認知症対応型の共同生活介護などが集合した多機能型のいわゆるベースキャンプも備えてあるということでありまして、さまざまな高齢者のニーズがある、またいろいろに変化をしてくる、そういったものに柔軟に対応できるようなメニューを持っているというような病院であります。一九七〇年代後半から老人病院が急増しまして、いわば薬漬けとか検査漬けの老人医療のあり方に疑問を持った医師たちが老人の専門医療を考える会を八三年に設立され、そこから一貫してここまで病院を進化させてきたということでございますが、私もその先見性に敬服をいたしました。

 実際、二〇〇〇年の介護保険開始で、療養型病床群は医療保険型と介護保険型に分けられ、翌年、療養病床と名前が変わりましたが、それが、二〇一二年までに介護型が廃止、医療型も削減されることとなっております。病院の中ではすべてが介護療養病床というところも少なくありません。療養スペースの拡大のために借金をして建て増したばかりなのにとの嘆きの声もございます。このように、病院関係者の方々は、やはりこれまでの制度の目まぐるしい変化への対応を余儀なくされ、不安を抱えて、今後進むべき方向を悩んでいるというふうに思います。

 先般公表されました療養病床アンケート調査の結果を見ますと、半数が療養病床に居続けることを希望する、また一方で、未定としている者も三割いるということであります。都道府県の状況を見ましても、医療療養病床の医療区分二、三に重い方が集まりまして、介護療養病床には医療区分一の方が集まるといった、ある程度療養病床間の機能区分は進んできているというふうに思いますが、老健施設等への転換については実際にはまだ進んでいない、これで円滑な転換が進んでいるとは今のところは言いがたいのではないかというふうに思います。

 そのために、これまでの先ほど御説明いただきました支援措置に加えまして、さらに医療機関の実情に即した対応を考えて、速やかに実施をすべきというふうに思います。厚生労働省としてどのように取り組んでいくおつもりか、お考えを伺います。

阿曽沼政府参考人 今お話がございましたように、先般公表いたしました療養病床のアンケート調査結果によりますと、転換の意向がまだ未定であるというのが三割ぐらいございます。今月開催いたしました介護施設等の在り方に関する委員会におきましても、委員の先生方から、当面転換を進めるためにできるだけ具体的な対策を検討すべきだというような御意見もいただいておりまして、厚生労働省といたしましては、これらの御意見も踏まえまして、さらなる転換支援措置を検討し、速やかに実施をしたいというふうに考えております。

 例えば、具体的に申し上げますと、療養病床を老健施設等に転換する場合の食堂や機能訓練施設などの施設基準を緩和する、あるいは、転換によって老健施設と医療機関が併設になるというようなケースの場合でありますと、階段とかエレベーター、出入り口などの共用を可能とするような、そういう設備基準を緩和するとか、あるいは、第三期の介護保険事業支援計画におきまして、定員枠を少し弾力化するといったような形で今検討を進めておりまして、明日ございます介護給付費分科会に諮問するなど、できるだけ実施を急ぎたいというふうに思っております。

古屋(範)委員 さらなる基準の緩和、弾力化などを考えていらっしゃるということでございます。しっかりと推進をしていただきたいなというふうに思っております。

 今後さらに高齢化が進展をしてくる、後期高齢者の患者というものが非常に増大をしてくるということを考えますと、この療養病床の転換に当たりまして、地域における高齢化の対応や、また在宅ニーズへの対応を念頭に、地域の将来像も見据えながら進めていくことが必要なんだろうというふうに思います。

 そのときにポイントとなりますのが、やはり在宅医療ではないかというふうに思っております。療養病床削減、また老健施設への転換を進める中で、本当に豊かで安心な医療を提供するために、できるだけ住みなれた家庭、地域で生活が送れるよう、希望すれば在宅医療が受けられる体制の整備が必要であるというふうに考えております。

 在宅療養支援診療所は、この在宅療養にとって大変重要な役割を担っております。厚生労働省は、昨年の診療報酬改定におきまして、新たに在宅療養の中心的な役割を担う在宅療養支援診療所を創設しました。今後の展開が大いに期待をされております。この在宅療養支援診療所の普及も含めまして、また、今後の在宅医療の推進についてどのようにお考えかをお伺いいたします。

水田政府参考人 ただいま委員御指摘のとおり、平成十八年度の診療報酬改定におきまして、在宅医療の推進の観点から、診療報酬上の仕組みといたしまして、在宅療養支援診療所を新設したところでございます。

 その内容といたしまして、二十四時間の往診及び訪問看護等の提供体制を評価したところでございまして、平成十八年七月時点での届け出数は九千四百三十四医療機関、全診療所の約一割となっているところでございます。

 この在宅療養支援診療所におきます在宅でのみとり患者数でありますとか、訪問診療あるいは緊急訪問看護の実施回数など、実際に提供されている診療実績につきましては本年から報告をいただくこととしてございまして、これに基づいて、中医協の検証部会において結果検証を実施する予定でございます。

 厚生労働省といたしましては、この中医協における結果検証、あるいはその場での御議論を踏まえながら、次回改定に向けて在宅療養支援診療所のあり方について検討してまいりたい、このように考えております。

古屋(範)委員 この在宅医療の拡充というものを強く望んでいるわけでございますが、年間百万人の方が亡くなる中で、自宅で亡くなる方は約一割であるのに対して、病院、診療所で死亡される方は約八割となっております。

 先日、墨田区のホームケアクリニック川越、またグループ・パリアンというところに、公明党の福島議員とともに訪問いたしました。ここでは、川越院長が、末期がんまた高齢者の方々ができるだけ家で普通に過ごしたいという希望をかなえようということから、在宅ケアを行っていらっしゃいました。看護師、医師のカンファレンスを見せていただきまして、また、患者、御家族の了解を得まして、川越院長と、約半日往診に同行をさせていただきました。

 やはり、川越院長との会話にしましても、かなり踏み込んだといいますか、末期の方もいらっしゃいますし、また、家族との関係性あるいは経済的な問題など、多分病院ではあり得ないというか難しいことも、在宅では、もう一歩踏み込んだといいますか、そういう会話を交わしながら、エコーで検査をしたり、あるいは緩和ケアの張り薬も張り、自宅で緩和ケアもできるということであります。

 病気になっても、地域の行事などに参加しながら生活をしていく、これが非常に大切なんだろうというふうに思っております。私も、在宅でのこうした医療提供の大切さということを目の当たりにしてまいりました。また、こういうものが身近にあれば非常にいいわけですが、なかなか、こういう医療提供をしてくれる機関はまだまだ足りないように思っております。

 今後、終末期医療を支える医療をどのように進めていくことが大事なのかという点に関して、厚生労働省にお伺いをいたします。

松谷政府参考人 患者さんのQOLの向上の観点から、できるだけ住みなれた家庭や地域で生活を送られるよう、患者さんが希望する場合には必要な在宅医療が受けられる体制を構築していくということは、委員御指摘のとおり、大変大事なことだと思っております。

 特に、在宅でみとり、亡くなられる場合もこれからふえてくるというふうに思います。終末期医療につきましては、人の生死に深くかかわる問題でございまして、国民の関心も高いことから、重要な課題と考えているわけでございます。

 このため、国におきまして、昨年九月に、患者さんの意思の確認方法あるいは治療内容の決定手続等の終末期医療に関するガイドライン、たたき台を国民にお示しいたしまして、本年一月より、終末期医療の決定プロセスのあり方に関する検討会を開催しているところでございます。

 この検討会におきましても、終末期におきましては、患者さんに十分な情報提供が行われ、その情報に基づいて患者さんがどのような医療を受けるのかを決定することが重要という意見が多く出されておりまして、その旨明記する方向で検討がなされているところでございます。

 医療関係者や、また患者さんからも、このようなガイドラインの作成を通じて、終末期医療のあり方について一定の前進を求める声が強いことから、合意できる範囲についてできるだけ早く取りまとめていただきまして、その内容を関係者に対して周知していきたいというふうに考えております。

古屋(範)委員 最後に大臣にお伺いいたします。

 この在宅医療、二十四時間三百六十五日対応していく、また、医師一人ではなく、さまざまなコメディカルな方々との連携も必要であるというふうに思います。在宅サービスの基盤整備を強力に進め、生活の場に医療と介護が二十四時間提供される安心の仕組みが構築できるよう取り組みを進めていただきたいと思いますが、最後に大臣の決意をお伺いいたします。

柳澤国務大臣 古屋委員におかれては、ここずっと、在宅医療の安心の体制を構築するために必要な施策についても御質疑をいただいてまいりました。私どもも、必要な在宅医療が、希望される場合には受けられる体制の構築を一層推進する必要がある、このように考えております。

 したがいまして、今回の医療法の改正でも、新たな医療計画において、居宅等における医療の確保に関する事項を明記してもらうということになりまして、その中で、がん、脳卒中、糖尿病、急性心筋梗塞といった疾患については、在宅医療を含めた連携体制を明示していただく、こういうことになっております。医療機関におきまして、退院した患者に対して、保健医療サービスや福祉サービスとの連携を図って、在宅等での適切な療養を継続できる環境を確保するという努力義務も規定をいたしているところでございます。

 また、先ほど保険局長から答弁いたしましたように、診療報酬改定におきましても、本年度から、二十四時間往診可能な体制を確保して在宅医療を提供する診療所に対しては厚い評価をするということも措置しているところでございます。

 静岡市や尾道市におきまして、地域の医師会が中心となりまして、在宅医療に係る先進的な取り組みが行われているということでございまして、私自身、静岡市の例を、先般訪ねまして承知したところですが、厚生労働省といたしましては、このような好事例を紹介するなどいたしまして、他の地域におきましても、今委員の御指摘のとおり、安心して在宅医療が受けられる体制が構築されますように努めていきたいと考えております。

古屋(範)委員 以上で質問を終わります。ありがとうございました。

伊藤(信)委員長代理 これにて午前の質疑は終了しました。

 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時三分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時二分開議

櫻田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。阿部知子君。

阿部(知)委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。

 本日は、与野党の理事のお計らいで、一般質疑の時間をちょうだいいたしました。また、私の時間を、この午後の冒頭をちょうだいいたしまして、御配慮に心より感謝申し上げます。

 さて、一般質疑でございますので、日ごろなかなかこの委員会の法案のラッシュの中では取り上げられることのない、国家百年の計にかかわります事案について、柳澤厚生労働大臣に御質疑をさせていただこうと思います。

 日本は、どなた様かは神の国とおっしゃいましたが、森の国であります。森林、美しい日本の自然というものは、今後私どもが、今、地球温暖化あるいは災害の問題、あるいはこれから大切になってまいります水の問題、いろいろな多面的な側面から見直されるべきものと思います。内閣におきましても、そうした観点をお持ちになり、このたび美しい森林づくりに向けたさまざまなお取り組みをなさるというふうに漏れ聞いております。

 冒頭、柳澤大臣にお伺いいたしますが、本年の二月に、第一回会合、美しい森林づくりのための関係閣僚による会合がございましたと思います。そのときの、他省庁たくさん出ておられましたけれども、主に厚生労働省としてのお役割はどのようにお受けとめであるかという点を冒頭お伺いいたします。

柳澤国務大臣 ことしの二月でございましたか、安倍総理のリーダーシップのもとで、もちろん林野庁を所管する松岡農水大臣が大きな役割を演ずるということが想定されておりますけれども、いずれにしても、内閣挙げて美しい森林づくりということに取り組もうということで、関係閣僚会議が設置をされました。

 本当に阿部委員初めこの委員会の先生方に申しわけないんですが、当日たまたま私は所用がありましてその会議に出席できず、石田副大臣がかわって御出席いただいたわけでございます。したがって、詳細は石田副大臣にお任せした方がよろしいかと思うんですけれども、たまたま私はきのう安倍総理と立ち話をしまして、この話を、美しい森林づくりの話をちょっとお話ししたことがあるんですけれども、そういう意味で、安倍総理としてもすごく力が入っている。

 実は、スウェーデンの国王がいらっしゃったものですから、そういう大変豪華な祝宴にお招きをいただいたわけですけれども、そのときにある皇室の方と森の問題についてお話をしまして、総理もそこに当然いらっしゃったものですから、我々の内閣でも美しい森林づくりというものに取り組むんですよというような話を交わしました。少なくとも、非常に重視をして取り組むということは、内閣の方針として打ち立てられているということでございます。

 そういう中で、厚労省がどういう役割を演ずるかということでございますけれども、とりあえずは、私ども、これからの審議に参加して、その中で私どもがやるべきことを受け持っていきたい、このように考えております。

阿部(知)委員 私がいただきました資料等々の中には、やはり森林を守るための森林労働者の問題が一点、それからまた、介護施設やあるいは医療施設等々での人間がくつろげる木材の使用というものの二点が大きく挙げられておりました。それで、前者の雇用面、いわゆる森で働く方々の健康管理、労働条件等々で私はぜひ厚労省に御尽力いただきたいと思うことがございますので、次の質問に移らせていただきます。

 実は、森林で働く皆さんの問題は、私が、安倍総理が総理になられて早々の、臨時国会の冒頭の予算委員会、平成十八年十月六日に取り上げさせていただきました。森を守るためにどのくらいの人々が必要で、そこで働く方々の数、それについて総理はどのような目標に向けての取り組みをなさるのかと。そのときの総理の御答弁は、第二の人生を歩んでいただけるような方々を森林に従事する方にお招きしたいということでありました。

 しかし、はっきり申しまして、林業と申します分野は、経験も必要ですし、また非常に危険の多い分野でございます。例えば六十あるいは六十五から急に森に入られて、森を守れと言われても、現実的には、能力的にも体力的にもかなわない、技術的にも体力的にもかなわない。やはり、これから積極的に森林を守っていただく労働者の育成やあるいは労働条件の改善、あるいは特に労災等々の手当てをしていただきたいと思い、私はきょう質問をさせていただきます。

 まず、大臣のお手元に、きょう皆さんのお手元にも配らせていただきました一枚の紙がございます。ここには、「事業所規模別、度数率」といううたいになっておりまして、「労働災害動向調査報告」、厚生労働省が出典でございます。昭和四十年から平成十七年に至るまでの数値が挙がってございますが、実は、度数率という、災害発生の頻度を申しますが、これで見ていただきますと、例えば事業規模三十人から九十九人というところでごらんいただければわかりますが、林業においては、非常に労災の発生率が高うございます。例えば平成十五年、全産業で申しませばこの度数率が三・七三というところ、林業においては四四・五五、一般の産業の十数倍の労災が発生する分野だということであります。

 おまけに、長時間労働に今なっておりますし、高齢化しておりますし、賃金も低賃金、世の中で言うと三Kと言われるような職場に近くなっておりますが、しかしまた、国が積極的にそういう人を育成しよう、守ろうという心意気があれば、本当の日本の財産を守っていただくのに、若い方の就労もかなうかと思います。

 そこで、特に労働災害の分野からお伺いしたいと思いますが、今、他の工場での労働災害の発生等は、労働基準監督署あるいは局等々で、そこの労災の発生状況について、よく見て、再発防止なり、何が労災の原因になったかというようなことについても、労働基準監督署から人が送られていきます。ところが、林業分野というのは、山奥であったり、一般的に言えば非常に広いエリアに広がりますので、なかなか労働基準監督署の方が実際に指導に入られたり、どのような危険の改善をすればいいのか、なかなかこれが行けない、わからないという分野が多いと思います。

 そこで、私のお願いですが、実はそういう森林労働ということにこれまでもいろいろな意味で御経験のある林野庁と積極的に労働基準監督署がタイアップなさって、特に、重大な死傷事故等々はリスクをチェックすれば随分未然に防げるものがございます。そういう点で御尽力いただけまいかと思います。林野庁との連携、提携はどのようになされるべきか、まずお願いします。

    〔委員長退席、伊藤(信)委員長代理着席〕

青木政府参考人 林業について、非常に危険が多い、災害が多いという御指摘もございまして、まさにおっしゃるとおりだと思います。我々としても、そういうことで、林業については、重点といいますか重要な業種ということで考えて行政を進めてきております。

 とりわけ、まさにお触れになりましたように、林野庁と連携して仕事を進めるというのはとても大切だというふうに思っております。それと同時に、お話にもありましたように、場所もかなり、いわば森林でありますので、離れたところにあるということもありまして、やはり労使の取り組みというのも大切というふうに思っております。

 そういう面でも、我々自身といたしましても、事業主団体、あるいは事業主団体で構成されています林業労働災害防止協会でありますとか、そういったところとも協力をし、労働災害の防止のために進めていく、それには、やはり林野庁とも関係機関とも十分連携をしてやっていくことが大切だというふうに思っております。

阿部(知)委員 次回のこういう関係省庁会議がございましたら、ぜひ大臣の方からもこの点よろしくお願い申し上げたいし、もう一点、大臣にはお願いがございます。

 この森を守るために一体どれくらいの働き手がいたら、本当に私たちの国は森林を守っていけるんだろうか。この点についても、昨今、新規で就労者はふえておると言われながらも、中途退職者も非常に多うございまして、このままの見通しでいくと、平成十七年は現状で五万二千といたしまして、平成二十七年は四万人程度というふうに減ってまいることになっております。これが平成七年では、八万数千人、九万人近くおられました。

 これから本当にこの森を守るための必要な人数、働き手の人数、これも、寡聞にして、私は政府から発表されたものを見てございません。ちなみに社民党は十万人という数値を出させていただいておりますが、このあたりについても、もちろん、数だけ上げればいいというものではありません。働く環境、労使の関係、安全、いろいろあると思いますが、積極的に見直しをしてくださって、大臣にはぜひ関係省庁会議の中でも御発言を賜りたいと思います。よろしくお願いいたします。

 さて、私に与えられました残りの時間で、今のは、長い、国家百年の計のことでございましたが、この三月末日をもちまして、緊急、火急、非常に、大変に困ることがございますので、これを大臣に御質疑いたしたいと思います。

 これまでの委員会でも何度も取り上げさせていただきましたが、いわゆる我が国における出産の場の確保の問題でございます。せんだって、朝日新聞には、何とこの一年間で、出産できる病院、診療所が百五カ所も減ってしまったと。また減っていっている、本当にもう悪循環、これきわまりなしというところに参っております。

 その中で、全体の出産の約一%をつかさどるということで、それを多いと見るか少ないと見るかはありましょうが、しかし、現実に一生懸命頑張ってくださっている助産所、これが、昨年の医療法改正において、本年の四月一日から、医療法の十九条におきまして、嘱託医師とそして嘱託病院、機関、両方を兼ね備えないと助産所としてやっていけないということが決まりました。

 しかしながら、現状では、なかなか、例えばこの嘱託医をお受けくださる先生、武見先生がちょうどおられますが、各診療所の先生方も、もう御自身のことで、正直言って今大変である。助産師さんの嘱託医を受けたとしても、本当に責任が持てるだろうかというような不安な思いも一方でございます。そうなってまいりますと、その指定の嘱託医あるいは嘱託機関がないために助産所が立ち行かなくなる。既に横浜の青葉区でも報道されております。横浜などは人口が急増しておりまして、そこで助産所の出産を望むお母さんもたくさんおられます。

 大臣には、せんだっても私は、この助産師さんの活用、もっと積極的に行政がネットワークの中に組み込む、行政の主導権でやっていただきたいということをお願いいたしましたが、この現状で、十九条のあり方について見直していただけまいかというのが一点。

 それから、現実にそうした受け皿機関がないとおっしゃっているような助産院については、行政機関がもう少し積極的にネットワーク先を、手助けする、探す、お願いする、そこで現状お産ができるようにする、このお取り組みをやっていただけまいか。二点お願いいたします。

柳澤国務大臣 助産所あるいは助産師さんを重視するという考え方は、私は阿部委員と同じ気持ちでいるということを申し上げられると思っております。

 その中で、医療法十九条を改正いたしまして、嘱託医師に専門の医師を選任していただく、さらには、異常度、緊急度が高い場合にはその嘱託医師でも対応困難なことも想定されるので、医療機関と申しますか病院というか、そういうものとの関係もしっかりしていただくということを規定いたしたところでございます。

 その場合に、義務づけというようなことも考えられないかということが御念頭にあられるかと思いますけれども、私どもとしては、助産所とこうした嘱託医師あるいは嘱託医療機関との間を結びつける根底にしっかりした信頼関係がなければならない、そちらを重視したいという気持ちもございまして、義務づけはいたさなかったところでございます。

 ただ、そういうことで、この嘱託の関係先が確保できないというようなことである場合にどうしたらいいかということでございますけれども、私どもとしては、関係団体等に本制度への協力を呼びかけるということで対応してまいりたい。個別にその関係を形成するということに具体的な支援が行い得るかということについては、やや、積極的にお答えするのにちゅうちょを感じております。

阿部(知)委員 大臣にとってはちゅうちょで済むのですが、申しわけないが、その難関を抱えた助産院にとって、あるいは地域で、そこで産みたいというお母さんにとっては、本当に存続するかどうかの危機的な状況にあります。そのことは、何らかの行政的な手助けを必要としていると私は思います。

 今、二重のハードルがあるわけです。嘱託医師を見つける、これは大体開業の先生にお願いいたす。そして医療機関を見つける、これは、しかるべく、非常に重症な場合にもお願いできるような。しかし、これを個々の助産院があっちこっち探し歩いてお願いして、現実に、見つけようにも見つけられないという状況があり、それが新聞報道されるわけです。

 申しわけありません、武見先生、御答弁を振って恐縮ですが、やはり現実に厚生労働省として動いていただかないと、お産の場がなくなっていきます。私自身は、十九条というもののあり方、今パブリックコメントも求められていますが、現状、ハードルが高過ぎたら、安全性のためといえども、現実にはお産の場が消えていくということになると思います。

 武見先生は、長年医師会関連のお仕事もしていらっしゃいました。そして、助産所のあり方についても御理解があると思います。そういう中で、今厚生労働省が何ができるか、その点はどうお考えでしょうか。私は、もうこれは四月一日からの問題で、みんな非常に深刻に悩んでおりますので、きょうはどうしても、何をしてくださるか、御答弁をいただきたいです。

武見副大臣 我が国の中で常に安全に安心して出産ができるという状態をいかにより確実なものとしていくか、こういう観点から、やはり、産科医、助産師、そして看護師、こういった人たちの役割というものをしっかりと確認しながら、その連携というものをより緊密にしていくという基本的な考え方がまず必要だろうと私は思います。

 そういった中で、嘱託医の確保の件あるいは提携する病院の件、これらについては、厚生労働省としても、それぞれ関係団体と連携して、そうした確保がしやすいようにその協力を図るということは、私は、厚生労働省としては当然するべきことだろうと思います。

阿部(知)委員 では、確認です。存続が危うくなった助産所は、厚生労働省にじかにお願いしてそのような手だてをとれるものというふうに今の御答弁を承りました。やはり行政の関与が必要です。弱い助産院の側から医院にお願いしたり病院にお願いするということが時にうまくかなわない場合もございます。そこは、今の副大臣の御答弁をいただきまして、厚生労働省は、もしそのような事案があったら積極的に言ってこいと言ったというふうに受けとめさせていただいて、本日の質疑を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

伊藤(信)委員長代理 次に、山井和則君。

山井委員 民主党の山井和則です。

 これから五十分間にわたりまして、去る二十三日、東京地裁の判決も出ました薬害肝炎の問題、判決、そして今後の患者救済、早期全面解決ということについて、柳澤大臣、そして武見副大臣、石田副大臣に御質問をさせていただきたいと思います。

 まず最初に申し上げますが、きょう私が胸につけておりますこのカキ色のバッジは、肝炎訴訟を支える方々のバッジであります。そして、きょうは傍聴席にも、原告の方、患者の方々にお越しいただいております。残念ながら、この間、たびたびの面会希望にも大臣にはこたえていただいておりませんので、せめてもということできょうは傍聴にお越しいただいておりますので、患者の方々、原告の方々の思いを少しでも代弁させていただきたいと思います。

 お手元に資料は行っていますでしょうか。

 きょうお配りした資料の説明から入らせていただきます。

 これはもう言うまでもないことでありますが、二十三日、フィブリノゲン、そしてクリスマシンに関しても、国、企業の責任が断罪されたわけであります。そしてこれは、大阪、福岡に続く三度目の国の敗訴であります。もちろん、一部原告敗訴している部分もありますが、これが薬害であるということがこれで確定したのではないかと思っております。

 まず一枚目、毎日新聞の記事でありますけれども、今回、投与の時期によって勝訴、敗訴が分かれていると。しかし、司法においてはそうかもしれませんが、国が安全だと認定した薬によってこのような肝炎にかかってしまわれた方々にとっては、その被害の大きさ、苦しさというのは、当然、年代とは全く関係ないものでありますので、こういう司法の判断を超えて、政治的にはすべての原告、患者の方々を救済すべきだと私は思っております。

 二ページ目の記事でありますが、この朝日の記事にも、見出しにありますが、「「使われすぎている」血液製剤普及の教授」と。今回、フィブリノゲンでもクリスマシンでも、やはり、その有効性を超えて、特に必要でなかったのにこの薬剤が投与された。ですから、患者の方々にとっては、必要性が十分になかったにもかかわらず投与をされてこういう肝炎になってしまった、まさに怒りがますます高まっているわけであります。

 そして三枚目、日経新聞「「薬害」国に猛省促す」「薬事行政後手に回る」と。きょうの質問のポイントは、まさに薬害、この三回の判決で、国の責任があるということは明らかに、もうほぼ決定的になったと言えます。この国に猛省を促すという中で、国はどう動くのかということこそが、今問われています。

 四ページ目、「国の責任三たび認定 クリスマシンも対象」ということであります。

 そして、次のページ、五ページ目には社説を載せております。「「敗訴慣れ」せず救済を図れ」「争うより感染者救済を」「控訴やめて救いの手を」、これは今までも私、委員会で取り上げておりますが、大阪地裁の後の社説も福岡地裁の後の社説も、すべての社説がもうこの論調一色であります。そういう意味では、マスコミも世論も含めて、司法に任せるのではなくて政治的な決断が今求められている、このことに関しては、もう全国民的に異論はないと私は思っております。

 七ページ目には、ある九州の原告の方の記事を載せさせていただきました。「残り時間はごくわずかなのです」と。この原告の方も、慢性肝炎で、いつ肝硬変になってがんになるかということにおびえおびえ、今この訴訟を闘っておられます。

 そして八ページ目、今回の東京地裁の判決を受けて、厚生労働大臣に何としても会ってほしいという申し出に対して、きのう届いた回答がこの二行でありますね。「標記につきまして、国の賠償や謝罪を前提としない肝炎一般対策に係る御要望であれば、担当者がお会いすることは可能です。」ここでもまた大臣は逃げておられるわけです。

 九ページ、十ページ、十一ページ、十二ページは、これも今まで私、委員会で取り上げておりますが、インターフェロン治療、早期の治療を通じて肝硬変、肝がんになるリスクが抑えられれば、高額の治療費がかかるからといって、インターフェロン治療を今ためらっておられる方々が経済的理由のハードルなくして利用できるようになれば、かえって総医療費も安くつく、これは弁護団も主張している点であります。

 ですから、ここでも申し上げたいのは、お金の問題ではないわけですね。トータルに考えたら、今の状況を放置して多くの方々が肝硬変、肝がんになってしまう方が、より医療費が高くつく。

 それと、もう一つ言わねばならないのが、お金の問題だけではなくて、そういう後手後手に回ることによって、いたずらに裁判を引き延ばすことによって、原告の方のみならず、多くの患者の方々の命が奪われていく、そのことの価値。人の命が、一日百人肝がんで亡くなっておられます。対応がおくれればおくれるほど、年間三万人の方が亡くなっていかれます。

 ある原告の方がおっしゃっておられました。もし最初の裁判が始まったときに、五年前に救済してくれていたら、多くの患者の方々がもっと救われている、治っておられる方も多いかもしれないということをおっしゃっておられました。

 そして、最後のページになりますが、さまざまなデータがあります。慢性肝炎になれば幾らぐらいお金がかかるか、肝硬変、肝がんになると幾らぐらいお金がかかるか。飯野教授、森口教授、三原教授のどれを見ても、大幅に悪化すればするほど費用もかかるということがわかっているわけであります。このような基本的なことを最初に申し上げたいと思います。

 そして、今回問題になっているフィブリノゲンがこれであります。大臣もぜひ見ていただきたいと思いますが、これは国が安全であると当時認定した薬です。その薬を使用したことによって、何の罪もない方々が御病気になっておられます。そしてもう一つ、今回企業の責任が認められたクリスマシン、第9因子製剤です。これがクリスマシンであります。

 繰り返しになりますが、司法においては何年以降とか区切りがつきましたけれども、この薬によって肝炎で苦しんでいる人にとっては、線引きというのは意味のないことなんです。

 そこで、柳澤大臣にお伺いをしたいと思います。

 このようなフィブリノゲンやクリスマシンで不幸にして肝炎に感染された方、この方々御本人に何か落ち度や罪はあったとお考えですか。

柳澤国務大臣 フィブリノゲンの製剤というのは、出産時の大量出血の際、救命のための医薬品として、当時、大変有効であったというふうに私ども考えておりまして、現にこの二十三日、先週の金曜日でございますが、その東京地裁判決におきましても、フィブリノゲン製剤の承認時から昭和六十三年時点に至るまで、一貫して有効性、有用性が認められるとして、この点では国の主張が認められたというふうに受けとめております。

 一方、今回の判決では、六十二年四月から六十三年六月までの間、製薬企業を指導して、指示、警告義務を尽くさせることを怠ったということで、国が一部敗訴しておりますけれども、この点については、国の主張が認められずに、厳しい判決であったというふうに受けとめております。

 今の山井委員、ずっとこのところ、この問題について御熱心に問題提起をされ、私どもとの間でいろいろとこうした議論を通じて、あるべき対策について御提議もいただいているわけでございますけれども、その中で、今、何か落ち度があったか、こういうことでございますが、その点については、やはりお薬というのは、有用性と同時に、一般的に言っても、必ず副次的ないろいろなマイナスの効果も背負っているということでございまして、そのバランスのもとで薬事行政も行われ、また、各個別の医療機関あるいは医師の先生方、こうした方々の御判断によって治療が行われたということでございます。

 それぞれのところでベストを尽くしている中で、本当に不幸なことと申さざるを得ませんけれども、病気に罹患をされたということで、その点については御同情を申し上げる次第でございます。

山井委員 改めてお聞きします。端的にお答えください。

 このフィブリノゲンやクリスマシンで肝炎にかかられた方々に、本人に何か落ち度や罪はあったんですか、大臣。

柳澤国務大臣 先ほども申したとおり、その方々の御病気を治すための治療ということで、その治療薬として薬事行政の中で承認をされ、そしてお医者さんの個別の判断でその投与が行われたということでございまして、そのプロセスの中で何か患者の方に落ち度があったかといえば、それはないということは言えると私は考えております。

山井委員 そうなんですね、患者の方々は被害者なんですよ、これは。そして、少なくとも、その薬は国が安全だと認定したから使用されていたんですね。そのことが今回裁判でも問題になったわけですが、司法の判断を離れて、柳澤大臣、大臣としてお伺いしたいんですが、国が安全と認定した薬で、今御答弁あったように、本人に何の落ち度もないにもかかわらず肝炎に感染して、これだけ苦しみ、命の危険にすら身をさらされている。このことに関して、道義的なり、国として責任はお感じにはなりませんか。

柳澤国務大臣 一般的に申し上げて、国の責任ということはどういう意味か、責任という言葉も非常に多義的なのでございますが、もし今、山井委員がそういうお言葉でおっしゃっておられることが、国の側の不法行為責任というか、そういうことであれば、それはまさに裁判の争点として今司法が担当して、その判定を下そうとしているということであるというふうに私は思っております。

山井委員 ですから、裁判としてではなく、国が安全と認定した薬でこれだけ被害者が苦しんでいるというこの現状に対して、厚生大臣として責任はお感じになりませんか。

柳澤国務大臣 先ほど来私が申し上げておりますとおり、薬剤というのは、もともと体の中にあるものではなくて、外側からそれを投与する、あるいは体の中に入れるということでございますので、一般的に言って、御病気を治すという有用性と同時に、いろいろな意味でのマイナスの影響があるということも、どのお薬についても懸念をされておるわけでございます。

 そういう意味で、そうした副次的なマイナスの効果ということについては、日ごろからいろいろなシステムで注意をする仕組みになっております。そういう注意のもとで、しかし御病気との関係で一つの最善の選択としてその医療機関なりが判断をして、そこにお薬が投与されるということでありまして、そういう副次的なマイナスの影響ということについては常に留意をしてお薬は使われるということになっております。そういうことを通じて、国としての責任を適切に果たしていく、そういう仕組みになっているということだと私は認識をいたしております。

山井委員 改めてお伺いします。

 こういう国が安全と認定した薬で肝炎にかかってしまわれた方々に対して、国として責任をお感じなるのかお感じにならないのか、どっちですか、大臣。

柳澤国務大臣 先ほど申したとおり、医薬行政の責任というか任務というか、そういうものは、今言った行政のシステムを通じて果たされているということでございます。

山井委員 もう一度お聞きします。

 そのような国が安全と認定した薬で肝炎になった方々に対して、国として責任を感じるのか感じないのか、それをお答えください。聞いていることに答えてください。

柳澤国務大臣 ですから、その責任というものがどういう意味であるかということをまずはっきりさせなければいけないのかもしれませんが、私どもは、行政の責任としては、今言ったようにシステムを通じて果たしているということでございます。それ以外に、それが十分でないというか、不作為とかその他そういう一般の不法行為ということかどうかということは、今司法のプロセスの中で判定されようとしているということだと考えております。

山井委員 そうしたら、大臣、国がその薬を認定したのは事実ですね、その方々に対して申しわけないという気持ちはありますか、ないですか。

柳澤国務大臣 先ほど来申し上げておりますように、御病気との関係で、その治療の効果と、それから、大体随伴する薬剤というもののマイナスの効果というものもはかりにかけられて、そして医療機関なり具体的にお医者様なりが、ベストの判断としてこの治療の行為としてお薬の投与をしたわけでありまして、この枠組みをつくっているのは国でございますが、その枠組みの中で、そういう枠組みをつくることの中で行政としての責任が果たされているということでございます。

 本当に不幸にして、そういう判断のもとでまた別の病気に罹患された方々に対しては、大変御同情を申し上げている、感じている次第でございます。

山井委員 何度か御同情申し上げるという表現をされています。そういうことをおっしゃるのであれば、やはり一番困っておられるのはインターフェロン治療などの治療の経済的負担なんですよ。先ほど、本人に落ち度はないということを明確に答弁された、そして、今そのような御不幸な目に遭われた方に対しては御同情を申し上げるということだったら、患者の方々の一番の切実な願い、もうこれは命がかかっているわけですから、せめて、その治療費の助成ということは検討していいんじゃないですか、大臣、いかがですか。

柳澤国務大臣 政府というのも、結局、国民が選んでつくられているものでございまして、私どもとしては、やはり行政というのも一種の預かり物だということでございます。その行政をするに当たっては、我々は、やはり国民の皆さんが認める、そういうルールというものを考えまして、そして、そのルールに従っていろいろの行政措置をとっていくということでございます。そこでは、やはり私ども、一つの、行政の今の力というものは国民から預かっているものだということでありまして、そういうものだということを前提に、あくまでも筋を通したことをやるということをもって、国民からの信託にこたえていくということでございます。

 そういう意味で、私どもとしても、今委員が御提案になられたようなことについては、もう検討に検討を重ねているわけですけれども、今日まで、なかなかこれを突破してそうしたことに踏み込んでいくという道が見つからないということでございます。

 したがいまして、私どもとしては、今は検査体制の強化であるとか、診療体制の整備であるとか、治療法等の研究開発などの総合的な取り組みをさせていただいているということでございます。

 この肝炎の治療費助成につきましては、治療費の助成が行われているほかの例えば難病というようなものとも比較し、また結核等の感染症等とも比較する中で、この対象疾病とこの肝炎との間には、やはり事情が異なるものがあるというふうに考えまして、これを乗り越えていくことは非常に難しいというふうに考えているということでございます。

山井委員 きのうから、事情が異なるという答弁をされていますが、逆に、三度もこれは地裁で負けているわけですよ、国は。今回の東京地裁でも、薬害だということで断定されているじゃないですか。まさにこれは特殊事情ですよ。先ほどおっしゃったように、本人には何の落ち度もないんですよ。国が承認した薬でこんな目に遭っておられるわけですよ。

 先ほども、十二時から民主党として申し入れをさせていただきました。きょうの十一時から、厚生労働省前の日比谷公園のところに、今患者、原告の方々は座り込みを始めておられます。私も先ほど行ってまいりましたが、こういうふうなことを患者の方はおっしゃっておられます。

 私たちは何の落ち度もないんです。命がけで座り込みに入ります。被害者が座り込みまでしないと大臣と会えない、被害者の救済をしない国が美しい国と言えるでしょうか。国が安全と認めた薬で病気になって、効くか効かないかわからない薬で肝炎になった。悔しくて悔しくてたまりません。なぜ大臣は会って声すら聞いてくれないんですか。裁判の引き延ばしに腹が立って腹が立ってたまりません。私たちには時間がありません。病状はどんどん進行するのです。会わないと話にならない。これ以上裁判を続けることに何の意味があるのですか。病状が悪化して、あるいは命がなくなって、五年後、十年後に賠償金をもらって何の意味があるのですか。

 私は、国会議員として恥ずかしくて仕方がありません。最も苦しい立場に置かれている肝炎の方々本人が、自分の健康を顧みず座り込みをしないと、大臣が会いもしない。B型肝炎のときもそうじゃないですか。訴訟中は会えないと言って、やっと去年結審したから、最高裁判決が出たから会ってくださいと言ったら、似たような裁判をC型でやっているから、それが終わるまで会えない。B型肝炎の木村さんを初めとする原告の方々は、大臣の訴訟が終わったら会ってくれるという言葉を信じて、十九年間待っておられたんですよ。

 大臣、改めて申し上げます。

 私も今も行ってきましたが、肝炎の方々が体調が悪い中、座り込みをされる、これはやはり本当にただならぬことです。ぜひ、まず一度会っていただいて、話を聞いていただきたいと思います。きょうも傍聴席にお見えになっておられますが、午前中、大臣は、中国残留孤児の方々と会われた、そして、心を動かされたとおっしゃっておられたわけですね。ぜひ、原告の方々と会って、話を聞いていただきたい。

 一番申し上げたいのは、原告の方々も、賠償金をくれといって裁判をやっているのでは全くないんです。三百五十万人もおられる肝炎患者の中で、だれかが、本当にこれは、裁判で原告になるのは大変なことですよ、何年も、いつ終わるかもわからない。本当にこれは、全国の肝炎患者の方々の声なき声の代弁として、今座り込みをやってくださっているわけですが、ぜひとも大臣に会っていただきたいと思います。いかがですか。

柳澤国務大臣 先ほど山井委員を初めとする代表の方々ともお会いしたときにも申し上げたことでございます。今、国が、不法行為というか、そういうことだということを御主張になられる患者の皆さん方との間で、先ほど申したように、司法の場での判断を求めておられるということでございまして、私ども行政の立場として、そういう司法の場で、いわば争点を掲げられてその裁定を求められているということを本題として、他方で、司法の場以外のところでお会いをしていろいろお話をするということは、やはり適切なこととは思われないということを申し上げているわけでございます。

 したがいまして、その争点ということを離れて、先ほど申し上げたような一般的な対策について、いろいろなお話を聞くなり、私どもが御説明するなりということでお会いをするということでありますれば、それは専門の担当がおりますので、その方々との間でいろいろお話をしていただくのが適切ではなかろうかということで、私どものお答えとさせていただいているわけでございます。

山井委員 これは、最終決断をするのは厚生労働大臣なんですよ。だから、大臣が会わないと、大臣は現状がわからないじゃないですか、どれだけ大変かということを。

 そうしたら、大臣、訴訟が終わったら会うということですか。それはいつですか。最高裁までこれはされるおつもりなんですか。では、訴訟がいつごろ終わると見込んでおられて、その発言をされているんですか。いつですか。

柳澤国務大臣 裁判は、本当に被害に遭われて御病気になられた方々から提起をされて、国はそれに対して、国民から負託を受けている、そういうことをやる立場で、それはそうではないではないでしょうかということで、応訴というか応じさせていただいているというのが立場でございます。

 それに対して、いろいろと司法の場で御裁定をいただいているわけでございますが、そういうことを法律的な争点としている限り、やはり国には国で主張させていただくべき点がございますので、そういうことで、いろいろと検討、分析の上、関係の省庁との協議のもとで、さらに上級審の御判断を求めたいというようなことをさせていただいているわけでございます。

 そういう中で、一体いつごろそういう争訟というか争いという局面から離れられるかということは、これは私どもだけで判断できることではございませんので、とにかく、裁判の早期結審あるいは早期決着ということは、一般的に今司法に課されている課題だとも思っておりますので、一般的にそういうことを思う以外に、私が何もここで、何かいつごろだというようなことを言える立場にはないというふうに考えております。

山井委員 最初に申し上げたでしょう。患者の方、原告の方には時間がないんですよ。もう、きょう、あす、がんが発症するんじゃないか、もう余命一年、二年じゃないか、みんなそういうことにおびえておられながらやっておられるんですよ。

 きのうの参議院を傍聴して、ある原告の方はこうおっしゃっておりました。このままいけば、あと十年生きられるかどうかわからない私に、幾らもがいても無理だよ、死ぬしかないよと言われた気がしました。きょう、最高裁まで行くんだろうなと感じましたと。これは普通の人じゃないんですよ、裁判をやっているのは。御病気で、深刻にいえば、死期が迫っている方なんですよ。

 きょうもお配りしましたが、この二ページの朝日新聞でも、今回も、原告の方々、御家族が遺影を抱いて裁判されているじゃないですか。柳澤大臣、そうしたら、これから五年か十年最高裁で闘って、やっと会えますといったときに、御家族の遺影と話をするんですか。そんなことして何の意味があるんですか。先延ばし先延ばしで、見殺しじゃないですか、これやったら。

 国民の命を守る厚生労働省がやるべきことですか。私は、これは本質的な問題だと思いますよ。厚生労働省そして国は、国民の命を守るためにあるのか、一番つらい、病気で人生苦しみもがいて、死すら意識しているような方々を、引き延ばし引き延ばしやっていくのか。これは本質的な問題ですよ。

 大臣にお伺いします。

 主要三地裁で、そろって国の法的責任が、今回、肝炎に関して認められたわけですが、国に法的責任があるという司法判断は揺るぎないものではないかと思いますが、大臣はどう認識されておりますか。

柳澤国務大臣 山井委員がおっしゃられる、厚生省は国民の命を守る役所ではないかということは、それはそのとおりなんです。おっしゃるとおりです。ただ、それを守るためにいろいろな行政のシステムを置いて、そういうシステムを通じて守るということをさせていただいているわけでございます。

 この問題について、私どもの行政のシステムではどういうことになるかというと、薬剤というのは、先ほど来るる申し上げているように、効能というか、御病気に対して有用である、そういう部分と、もうほとんど必然的と言っていいほどに高い度合いでマイナスの影響もあるということでございまして、そういうものを薬剤として使うときのシステムというかルールというのはどういうものかということも決まっております。

 例えば、フィブリノゲン製剤につきましては、初めから肝炎発生のリスクが存在するということを添付文書で明記してあるわけでございまして、臨床の現場の使用については、お医者様の専門的な判断によって、御病気を治すということとリスクとを比較検討して使用されるということが私どもの、厚生労働省としての責任を果たしている一つのシステムということでございます。

 そういうことでございますので、私どもとしては、今山井委員からそういうことを言われているわけですけれども、こういうことを通じてその責任を果たしているというふうに認識をいたしているわけでございます。そういうことをぜひ御理解いただきたいというように思うわけでございます。

山井委員 そんなもの、理解なんかできるはずないじゃないですか。患者さんが一人一人倒れていって、患者さんの方々は知っているんですよ、自分らの仲間がどんどんがんを発症してどんどん亡くなっていっているというのを。次は自分の番なのかと思って、一日千秋の思いで政治的な決断を待っているんじゃないですか。

 それを、これ、最高裁まで行ったら、あと五年かかるか十年かかるかわからないですよ。エイズでもハンセン病でもヤコブ病でも、このような、もうある程度地裁の判決で国の法的責任というのがわかった段階で政治決断しているじゃないですか。原告がみんな倒れてしまうまで引き延ばして最高裁まで行っていないじゃないですか。

 武見副大臣と石田副大臣にも、これは大事なことなのでお聞きしたいと思います。このまま引き延ばしたら、これは健康的な理由もあって、三年後、五年後に治療費助成しますよと言っても、もう手おくれになっている方が多いんですね。あるいは亡くなっている方も多い。このまま控訴して引き延ばしていったら、これは患者、原告の方を見殺しにすることになると思うんですが、武見副大臣、石田副大臣、いかがですか。

武見副大臣 司法の、訴訟の問題については、私も副大臣として大臣と同じ立場をとるということについては御理解をいただきたいと思いますが、C型肝炎等に罹患された患者の皆様方に対しては、私は心から同情をしておりますし、また同時に、治療のための最善を尽くす、そうした努力は厚生労働省の立場としては当然すべきだろうと考えております。

石田副大臣 今、山井委員と大臣のやりとりもお聞かせいただいておりまして、大臣も本当にいろいろな思いをされてここで答弁をされているんじゃないかということを私は正直実感いたしました。私も、座っておりまして、ある意味では、山井委員の言葉というのが胸にぐさぐさと突き刺さってくるような感じもいたします。

 この裁判につきましては、これはいたずらにということではもちろんないわけですし、また、政治決断ということを何度もおっしゃいますけれども、どういう政治決断をするのか、これはまた将来において考えていかなきゃいけないことが出てくるかと私は思います。

 現に、ある意味でいえば、二十三日に東京地裁で一つの結論が出た、それを受けての現段階でありますので、いろいろと、今後のことについては、それは上級審に判断をさらに求めるとか、またどうするかということはまだ結論が出ていないんじゃないかというふうに私は思いますけれども、少なくとも、法律、法廷の問題については、国が訴えられている立場ということは、これは御理解をいただきたいと思います。

山井委員 厚生大臣、頼みますよ、もういいかげんにしてくださいよ、引き延ばすのは。何とか控訴せずに、和解の話にでも入ってくださいよ。患者の方、原告の方、体がもたないじゃないですか。五年後、十年後、ぴんぴんして生きて健康にされていたらいいですよ、まだ百歩譲って。そうじゃないじゃないですか。今石田副大臣も、将来的にそういう政治決着もということをおっしゃっていましたが、将来的じゃないんですよ。私は今しかないと思います。

 大臣、ぜひ、ここが決断のしどころです。その決断をするためにこそ厚生大臣がいるんじゃないですか。政治家がトップにいるんじゃないですか。柳澤大臣以外、だれがこの訴訟の泥沼に終止符を打てるんですか。これを何にもしないんだったら、厚生大臣なんか要らないじゃないですか、政治決断しないんだったら。これで最高裁まで持っていくんですか。

 昨年の十一月に大臣にプレゼントした本があるのを覚えておられると思います。大臣、これ、読んでくださったということで感想も聞かせていただきましたが、きょうも、この原告の福田衣里子さん、二十六歳、生まれたときにクリスマシンで肝炎に感染して、二十までは夢あふれる人生を送っていたのに、二十からはずっと闘病生活ですよ。そして、この裁判が終わって、これでまた最高裁まであと五年、十年引きずるんですか。

 繰り返しますが、原告の方、患者の方は自分のためにやっているんじゃないんですよ。この本のタイトル「イッツ・ナウ・オア・ネバー」、時は今、そして今を逃したらもうないということなんです、これ。「イッツ・ナウ・オア・ネバー」、今やるか、先送りして見殺しにするか、その決断が今週なんですよ。だからこそ、患者の方々も今座り込みを命をかけてやっておられるんですよ。

 大臣、ぜひ、大臣の決断で控訴を取りやめて、そして和解のテーブルに着いてください。先ほど石田副大臣がおっしゃったように、治療費助成のあり方、どういう救済の仕方、それはその後で議論したらいいじゃないですか。

 大臣、御決意をお聞かせください。

柳澤国務大臣 国は今、不法行為をやったということで損害賠償責任を問われているわけです。ですから、その判決で国が敗訴しているということになると、これは必然的に賠償責任というものを命じられる、そういうことでございます。そういうことについては、国としては法律的な主張を持っておりますので、それに甘んじて控訴をしないとかということはなかなかできかねるわけでございます。

 東京地裁の判決については、まだ別に何か態度を決定したということはないんですけれども、しかし、これはまた検討させていただいて、どうするかということを決める、こういうことは累次お答えを申し上げているわけでございますけれども、もう控訴しないでおけとかというようなことは、国民から負託されている私どもの行政の立場からいって、なかなか、すぐにここで賛同できるというような考え方は私どもはいたしておりません。

山井委員 大臣、今聞き捨てならないことをおっしゃいましたが、今争っている最中で云々ということで。

 では、高裁、最高裁まで行って、国が全面的に無罪になる可能性があると大臣、本当に思っておられるんですか。

柳澤国務大臣 それは私どもはわからないわけです。それは司法という、もう一つの憲法で定められた力がそういうときには最終的な判断をされるということでありますから、我々としては、今訴えられている立場で、私どもの国民から負託された行政の立場で、私どもとしては別の主張がありますということを申させていただく、こういうことでございます。

山井委員 昨日、民主党は肝炎対策本部の会合を開きまして、そして、菅直人代行、仙谷議員、家西議員初めとしてみんなで話をして、とにかく、早期全面解決、そして患者の方々の救済、治療費助成というものをこれから統一地方選挙、そして参議院選挙も含めて訴えていこうということに決めさせていただきました。

 私は何度も申し上げておりますが、ハンセンもヤコブも、今までの決着したケースは、やはり超党派でやってきたんですね。余り民主党だけで、私は正直言ってやりたくない。ですから、ぜひとも与党の議員の方々も決断をしていただきたい。こういう問題に党派は本当に関係がないと私は思っております。政府・与党の決断を求めます。

 そして、すぐに座り込みが終わるようにしてください。民主党は、原告や患者の方々とともに闘っていきたいと思います。患者や原告の方々を放置しません。見殺しにすることもしません。柳澤大臣と与党議員の方々の人間愛と決断に期待します。

 これからも徹底的に闘っていくことをお誓いして、質問時間が終わりましたので、質問を終わります。ありがとうございました。

伊藤(信)委員長代理 次に、内山晃君。

内山委員 民主党の内山晃でございます。

 授産施設に対する労働基準法の適用除外につきましてお尋ねをしたいと思います。

 昨年十二月一日に、当厚生労働委員会におきまして、授産施設で働きます知的障害者に対し労働基準法の適用除外とする、昭和二十六年十月二十五日、基収第三八二一号に違反する障害者の施設の改善指導は、現在どのように進んでおりますでしょうか。その御報告をいただきたいと思います。

青木政府参考人 神戸の作業所についてのお尋ねでありますけれども、個別事案についてはお答えを差し控えさせていただきたいと存じます。

内山委員 これは神戸だけじゃないんですよ。全国でこういう施設があるということで、私は今、ここで名前を挙げて言っていません。指導がどういうふうになっているのか、お尋ねをしております。

青木政府参考人 福祉施設、小規模作業所におきましても、雇用関係にございまして労働をしている労働者の保護のためには、労働者であれば労働基準関係法令が適用されるわけでありますので、それらにつきましては、私ども、個別指導あるいは集団指導、そういったものを通じまして、労働関係諸法令が厳正に適用されるように、守られるように、一般的に指導しているわけでございます。

内山委員 昨年の十二月一日にここで質問させていただきました。今、三月です。何でこんなに時間がかかっているんですか。こういった知的障害者の授産施設は全国にたくさんあるわけです。そして、新聞記事でも取り上げられております。私のところも該当するんじゃないか、こういった施設も非常に心配をしておられます。

 そして、今青木局長が言いました神戸の件、労働基準法の適用で作業員に最低賃金法に沿って適切な賃金を払うのか、自立支援法に基づき、福祉事業として作業員に全額の工賃を払うのか、これは難しいことじゃないはずですよ。二つに一つの選択肢があるはずです。どうしてそれを今まで指導しないんですか。

青木政府参考人 神戸の件については、個別案件でございますので、個別のものについてはお答えを控えさせていただきたいと存じますけれども、福祉施設あるいは小規模作業所等につきましては、これはその労働者性の判断というのは非常に難しいということでございます。

 お触れになりました通達も、いわば我々としては、実際に労働現場の労働実態、そういう実態に応じて、労働者を使用している事業かどうか、事業性の問題、あるいは、現にそこにいる人たちが労働者性を持っているかどうか、そういったことを個々具体的な実態に即して判断をするということであります。

 それが大変難しいということで、個別判断ではありますけれども、一般的なルール化できるところについてはできるだけルール化したり、例を挙げたりしながら、斉一的な判断ができるような努力をいたしているわけであります。そういう意味でお話しになりましたような二十六年の通達も出しているわけであります。

 しかし、そうはいいましても、それは個々具体的な当てはめの場面でありますと、作業場における実態を考慮しながら、またこれは福祉の場面との境目の問題でもありますので、福祉部局とも連携を図りつつ慎重に検討を行うという必要がございますので、慎重に検討しているということでございます。いずれにしても、結論が出次第、速やかに対応したいというふうに思っております。

内山委員 適用除外の五つの要件に該当していない。抵触しているんじゃないですか。神戸東が調査に行って、黒というふうに断定しているんじゃないですか。なぜ指導しないんですか。個別の案件じゃないですよ。

青木政府参考人 まず、一般的に申し上げれば、私ども、臨検監督ということで、個別の事業場に立ち入りまして、検査をし、調査をし、あるいは書類を調べ、そういったことで、先ほど申し上げましたような労働基準関係法令に抵触することのないようにいたしているわけであります。もしそこで違反があれば、私どもとしては、それを是正するということで指導しているわけでございます。基本的には、それを完全に是正するということで臨んでいるわけでございます。したがって、私ども、実際に調査をいたしました暁には、それを分析し、結論を出して、もし法令に違反するようなことがあれば是正を必ずするということで臨んでいるわけでございます。

 障害者施設につきましては、確かに、これは委員とも前にも五要件についてのお話をいたしました。その際にも申し上げましたように、個々具体的な判断というものが必要でございますので、私どもとしては、そういうことで他と変わりなく行政を進めていくということで考えているわけでございます。

内山委員 納得できませんね。五つの要件に抵触しているから最低賃金法違反になっているんでしょう。そのまま見過ごしていていいんですか。

青木政府参考人 若干申し上げますと、五つの要件ということでありますが、これは、先ほども申し上げましたように、そういった小規模作業所ではなくて授産施設についての話でありますけれども、いずれにしても、基本的な考え方は通用するだろうというふうに思っておりますが、その五要件に該当するものについては、労働者性があるとは認められない、認めなくていいだろうということで、それに該当する場合にはまずもって適用をしなくてもいいだろうということで出している通達でございます。

 しかし、必ずしもそれだけに限られているわけではありませんで、先ほど申し上げましたように、事業としては、適用しないとかするとかいう議論でありますが、仮に、適用された場合でありましても、個々の労働者性については、その個々の労働者の現実に活動している実態を見て、個々の労働者ごとに判断するということになるわけでございます。

 したがって、お話にありました二十六年の通達で、その要件に一つでも抵触したから直ちに違反だということになるわけではないわけであります。さらにその労働者性というものを判断する必要があるということでございます。

内山委員 何でしょうか、この五つの要件にすべて該当しなければ適用事業所としなくていい、こういうことなんでしょうか。もう一度、ちょっと確認します。

青木政府参考人 この通達は、前にもお話をしましたけれども、昭和二十六年に、当時の厚生省の社会局長から、授産事業所に対する労働基準法の適用除外についてということで当時の労働省の労働基準局長に照会があって、それに対するお答えとして出したわけであります。それで、適用除外についてということでありますけれども、ここで言っていますのは、お触れになりました五つの条件をすべて満たす授産施設については、労働基準法上の適用はないということでいいんだということを言っているわけであります。

 ですから、繰り返しになりますが、では、これが一つでも欠けたときはどうなるのか、それは、それだけで適用除外になるわけではありませんということになるわけであります。

内山委員 一つだけじゃなくて、ここは工賃を五〇%施設側がカットしているんですよ。さらには、タイムカードや労務管理をしている。そういう自由性もない。いろいろとこの適用除外の条件から外れているじゃないですか。ということは、労働基準法を適用して最低賃金法にひっかかるわけじゃないんですか。

青木政府参考人 確かに、労働基準法が適用されて、そして支払われている対価が最低賃金法に定める最低賃金の額よりも低ければ、これは最低賃金法違反ということになります。その前提としまして、まず適用事業かどうか、そして、適用事業だとすれば、そこで活動している人たちが本当に労働者なのかどうかということであります。

 それで、まず適用事業かどうかということについて二十六年の通達では五つの条件を示した、これに当たる場合には適用事業でないんだということを言っているわけであります。

内山委員 適用事業所でなかったら何なんですか。

青木政府参考人 適用事業でなければ、労働基準法上の適用対象とならないということであります。

内山委員 今、その逆ですよ。労働基準法の適用除外を受けるために五つの要件に該当する、これが必要なんでしょう。その五つの要件の中で幾つも抵触しているから適用除外を受けられないということは、適用事業所ということじゃないんですか。

青木政府参考人 実際に、授産施設であれば、いろいろな事業活動といいますか、そういったことに伴うような契約、委託か請負かになるだろうと思いますが、そういった契約のもとに一定の作業をし、一定の対価、報酬が払われるという実態が出てくるだろうと思います。それが労働基準関係法令を適用するべき労働関係にあるのかどうかということが問題でありまして、それは、先ほど申し上げましたように、個々の活動している現場を見て判断しなければいけないということであります。

 ですから、例えば委託契約であったり請負契約であったりすれば、労働基準関係法令、お話に出ましたような最低賃金法の適用もないわけであります。そういう意味で、まず基本がまさに適用事業であり、そこで実際に活動しているその実態が労働であり労働者である、そこに働いている人が労働者だということがまずありまして、しかる後に、それであるならば、労働関係諸法令はきちんと守っていただきたいということになるわけでありますし、そこに法に抵触するようなことがあれば、私どもは是正をさせるということで指導をいたすということでございます。

内山委員 少し整理をしたいと思いますけれども、授産事業所に対する労働基準法の適用除外をするためには五つの要件が合致していなければならない、しかし、神戸の場合には、この五つの要件に合致していないところがたくさんある、抵触をしている。言いかえれば、適用除外ではなく適用事業所になる。そこで勤める方の工賃イコール賃金、賃金は最低賃金法に当然抵触をしているわけですから、そこにも反しているじゃないですか。どうしてそういう状況の現状に指導改善命令を今までしないのかということを聞いているんですよ。

青木政府参考人 個別の案件ですから、ちょっと一般論で申し上げますと、授産施設におきまして五つの要件に通常は合致しているということで、これは当時の厚生省の社会局長から、通常のはこういうパターンなんだということで、これについてはどうだろうか、適用されないのではないかということで照会がありまして、それに対して、そういうことであるなら、それは基準法の適用にはなりませんねということでお答えしたのがこの二十六年の通達であります。

 しかし、それと違っているものについてはどうかということについては、前にも委員にも申し上げましたように、個々の実態といいますか、そういったものを判断して労働者性を判断するんだということであります。おっしゃるように、労働者性がありということになり、なおかつそこで払われている対価が最低賃金法に定めるような額よりも低ければ、これはもう最低賃金法違反になりますし、そういう意味では、私どもは当然そういうことであれば指導する、是正もさせるということであります。そういう場合には、もちろんそういうことをいたすわけであります。

内山委員 全国でこういう施設はたくさんある。特に神戸だけじゃないわけでして、こういったところをやはり早急にすべて調査をすべきなんですよ。

 その後、全国のこういう施設に、同様の施設に対して、何か調査をしたり確認をしたりしたことがありますか。

青木政府参考人 実は、二十六年の通達も、厚生省の社会局長の方から照会があって、福祉施設、授産施設としてはこういうものだということでやったわけでありますし、最近の自立支援法で新しいタイプの施設が出てきましたから、それも、今度は同じ役所になりましたけれども、十分連携をいたしまして、こういうパターンであれば斉一的に、一般的にできるだろうというようなことも整理をいたしたわけであります。それから、おっしゃるように小規模作業所も多くあります。したがって、こういったところについてもきちんと整理をしなくちゃいかぬだろうと思います。

 そういう意味で、私どもとしては、関係部局とも十分連携をとって、十分話を聞いたり話をしながら、基準関係法令を所管している者としても整理をしていきたいというふうに思っております。

内山委員 時給百円台で働いている障害者が数多くいる、こういう実態があるということを新聞も報道していますよ。局長が今神戸という話をされましたからその神戸の案件の話をしますけれども、いろいろ神戸のところも私は調べに行きましたよ、実際に。でも実際はその五つの要件に該当していない、これは明らかなんですよ。ということは、労働基準法を適用しなければならない施設である、こうなるわけじゃないですか。それを、今まで百円台で、ずっと最低賃金法違反で働かされている。けがをしても、労働者災害補償保険法の給付も受けることができない。ずっとそういう障害者の差別があるわけじゃないですか。

 これはいつ、そこの改善指導をするんですか。

青木政府参考人 一般論として申し上げれば、労働基準法上の労働者と判断されて、そういう抵触するという事実が認められた場合には、速やかに必要な指導を行っているところでありますし、是正をさせるということで臨んでおるところでございます。

内山委員 聞き及んでいるところによりますと、神戸東は明らかに黒である。通常であれば、やはりすぐにでも是正命令やそういう指導をしなければならない実態だろうと思いますよ。それを、ずっとこのままほうっておいていいんですか。この案件を周りの人はみんな見ていますよ。波及効果はすごく大きい。やはりいいところと悪いところをきちっと精査しなきゃならないんですよ。

 確かに、一生懸命やっているところはありますよ、本当に。そういうところは、工賃でも年間五十万円近く払っているところもありますよ。でも、ここなんかは劣悪きわまりない。自由度もない、工賃の半分は取ってしまう。明らかにそういう実態資料がいっぱいありますよ、私の手元にだって。そんなところをずっと野放しにしておいていいんですか。

 青木さんではちょっと話が進みませんので、大臣に聞きたいと思います。

 柳澤大臣、前回も十二月にこの件を取り上げましたけれども、やはり時給百円台の最低賃金法違反で雇用されている障害者がいるんですよ。そういう最低賃金法を適用しなくてもいいという施設であれば、もっともっとその人たちは、一生懸命社会に出るための準備として、訓練というような形でもいいわけです。でも、悪いところでいけば、そういう障害者を、逆に言うと搾取して、奴隷労働のように使っている実態があるんですよ。

 だからこそきちっと指摘をして、一生懸命まじめにやっているところとそうでないところを、この昭和二十六年みたいな古い通知が、労働基準法を上回るような労働基準局長の通知がいまだに生きていて、これでいいんですか。できれば、全国でやはりこういう施設をきちっと実態調査していただきたい。個別案件だけじゃなくて、こういう実態はすごく数多く聞いています。私もいろいろ見に行きました。いいところもあれば悪いところもあります。ですから、悪いところを是正していただきたいんですよ。

 大臣、これは早急に全国の調査をさせる、ぜひそうしていただきたいんですが、答弁を求めます。

柳澤国務大臣 障害者の就労につきましては、今委員も、大変その線引きについていろいろ御心配をされる見地から御質疑をいただいているわけですけれども、労働という側面と福祉という側面があるんだろう、こう思うわけです。

 今、労基局長からは、この五条件すべてに合格していれば労働者性はないというふうな通達があるけれども、五条件すべてに合格していなくても、それが直ちに労働者性ありということにはならない。これはいろいろなことをまた考えなければならない。では、通達は何かというと、いわば一番疑うべくもなく労働者性がないものを規定しているんだ、こういう趣旨の答弁をさせていただいているということでございます。

 内山委員の見地からは、むしろ労働者性を認めて、それで最低賃金を適用すべきだという考え方からの御質疑でございますけれども、私は、今いろいろお聞きしておりますところ、仮に労働者性がなくて、労基法はそのまま適用されないにしても、では福祉であればもう何をやってもいいのかということはやはりだめなんだろう、不適切だろう、私はこう思うわけでございます。

 そういう意味では、これは労基局長が担当局長なのか、例えば障害福祉の関係の部局が担当すべきかは私もちょっと今にわかに判断がつきかねますけれども、いずれにしても、今、内山委員が御指摘になられるように、福祉ということ、労働基準法が適用にならないということで不当なことが行われているということは、私はこれはこれで、これとして是正されなければならない、こう考えますから、したがって、今の委員の御意見、問題提起を踏まえて、適切な措置をするように検討させていただきたい、このように申し上げます。

内山委員 大臣、では、ぜひ検討していただきたいと思います。

 もう一度青木さんに確認をとりたいと思います。

 労働基準法の適用除外をするためには、五つの要件に合致をしなければならない。しかし、答弁の中で、その五つの中で、すべて合致しなくても適用除外とはならないという要素もあると。これでいいわけでしょうか。五つの要件に何件か欠落していても、その適用除外をそのまま継続をしていく、いいんでしょうか。

青木政府参考人 五つの条件に合致していれば適用しないということになるわけですし、その五つの条件のどれかに抵触をしているという場合については、今度は、直ちには適用されないということではなくて、個々の労働実態、就労実態というものを見て、適用されない場合もあり得るということでございます。

内山委員 ならば、労働基準法を上回る通知、そもそもそれはおかしいですよね。国の法律を上回る通知を一局長が出せる、おかしいじゃないですか。

 ということは、今、青木さんがおっしゃった、五つの要件に合致をしていない、幾つか抵触をしている、労働基準法の適用除外に該当しない。ならば、通知に該当しないのであれば、労働基準法が適用されるんじゃないんですか。おかしいじゃないですか。そんな、労働基準法を上回る一局長の通知が生きていていいんですか。

青木政府参考人 二十六年の通達は、授産施設における基準法の適用範囲を明らかにしたものでございます。そういう意味で、法律の解釈を示したものでございまして、法律の例外を通達で定めたものではありません。

 当時の照会に基づいて、そういう場合には、通常、これこれのような形で、授産施設というのは、障害者の人たちが就労しているということであるんだけれども、適用にはならないのではないかという照会に対する回答をしたものを通達したわけでありますので、そういう意味では、法律の例外を通達で別に定めたものであるわけではありません。

内山委員 授産事業所に対する労働基準法の適用除外について、五つの要件に合致しなければならない。ということは、五つの要件に当てはまらないところは適用事業所とするんじゃないんですか。それは労働基準法の適用事業所として該当するんじゃないんですか。

青木政府参考人 適用事業というのは、労働者を雇っているところが適用事業でありますので、一番端的に言えば、労働者が一人もいないようなところは、そういう意味では労働保護法令が適用されないということになるわけであります。

内山委員 そんなこと聞いていないですよ。

 授産施設に通っている知的障害者が、そこで現に工賃をもらって働いているんですよ。この工賃をもらって働いている人は労働者として見ないんですか。

青木政府参考人 いいえ、これは、その実態によりまして、労働者ということの範疇に入る方ももちろんいらっしゃいますし、そうでないという方もいらっしゃいますし、それは、福祉的な就労をしているということもありましょうし、あるいは独立して事業者性を持って、いわば委託契約の相手方となっているような場合もあるでしょうし、そういう意味では、そういう雇用労働形態に入っている者、実態としてある者については、労働者であるとして労働基準関係法令が適用されているということであります。

内山委員 時間が来ておりますので、この続きはまたの機会にやらせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

伊藤(信)委員長代理 次に、郡和子さん。

郡委員 民主党の郡和子でございます。

 きょうの午前中にも三井委員、高橋委員からも質問がございましたけれども、私もこの問題から触れさせていただきたいと思います。中国残留孤児支援の問題でございます。

 先日の委員会でも、私どもの宮城県議会が全国で初めて、今月の十三日に、この残留孤児の生活支援制度を早期に、政治の救済を求める意見書というのを採択して、それを提出させていただいたということを触れさせていただいたわけですけれども、先週末、仙台で、残留孤児を支援する宮城の会というのが正式に発足いたしました。私も参加をさせていただきました。

 この会に、九三年に日本に帰国してこられた角張紘さん、仙台裁判での原告でもいらっしゃいます。この角張さんは、中国にいらっしゃったときはハルピン師範大学の助教授も務められた方なんですけれども、九三年に日本に帰ってこられてからは、労働条件の厳しい肉体労働を転々とされております。そして、その角張さんが、集まった会のメンバーの方々に、発足式で、マイクを握ってこうおっしゃいました。

 日本政府は私たちを見捨てた、しかし、日本人は私たちを見捨ててはいなかったということでした。私も大変胸が締めつけられるような思いがいたしました。あこがれてあこがれて、夢にまで見た祖国を訴えなくちゃいけない、見捨てられたとまで言わせてしまう。大変残念なことだと思います。

 先日も大臣が、この夏までに具体的な支援策をまとめたいということをお話しになりましたし、きょうの午前中もあわせてそのような御答弁がございましたけれども、私も重ねてお尋ねをしたいと思います。

 この支援策の具体化というのには、この孤児の皆さんたちからのいろいろな御意見を伺うという機会が大変重要になってくるかと思うんですけれども、午前中は、東京とそして大阪、札幌で開かれたということですが、私の地元仙台ではこういうような予定がありますでしょうか。また、裁判が行われている全ブロックでぜひこういう意見を聞く場というのを設けるべきだと思うんですけれども、いかがでしょうか。

柳澤国務大臣 中国残留邦人の皆様に対する支援策というものは、これまで講じてきたものが不十分であった、こういうことを考えまして、総理の御指示もありまして、今回、これをまた白紙から考え直すということで進んでいるわけでございます。

 その際、中国残留邦人の皆さんの実情というものについてよく話を聞くということをさせていただいておりまして、今日まで五回、東京が多いわけでございますけれども、それ以外にも札幌と大阪で行わせていただいたわけです。これは、今委員がおっしゃる裁判の原告というようなお立場で聞いているわけではなくて、裁判や法律問題とは別にという総理の御指示もありまして、私どもとしては裁判の問題を離れて今検討をさせていただいておるということでございますので、原告の方がいらっしゃるところへ必ず出かけていったらどうかという御指摘ではありますけれども、私どもとしては別途の立場で考えさせていただいているということでございます。

郡委員 しかし、本当に多くの孤児の方がいらっしゃるわけで、その方々は、全国各地でさまざまな、生活の大変厳しい状況に置かれている、だからこそ国を訴えざるを得なかったという側面があるわけですから、そのところもしっかりとお含みおきいただきたいと思います。

 午前中に、聞き取りで、これまでのところ、生活保護に対して使い勝手が悪いであるとか、それから日本語の研修についてもう少し力を入れてほしいというような要望があったということでございますけれども、これは私からも、生活保護というのは大変あれこれと制限が多くて、例えば、子供たちが就職をしますと、生活を分かつことになってしまいます。せっかく日本に帰ってきても、家族離散が前提になってしまう、こういうような状況では大変に忍びないわけでして、この辺のところ、ぜひ、生活保護にかわる生活給付金制度というのを設けていただきたいと思います。

 また、日本語の習得プログラムにつきましても、きめ細かな対応が求められていますので、重ねて御要請を申し上げたいと思います。

 では次に、きょう、傍聴席に多くの皆さん、おいでくださいました。被爆者の皆様方、それから被爆された方々を裁判でお支えになっている弁護団の方々、本当に多くの方々が来てくださいました。

 先日、我が党の園田議員からも質問がありましたけれども、裁判、五連敗でございます。科学的と称して二〇〇二年以降行っている審査の方針に基づく機械的な認定行政というのは厳しく断罪されているわけでございます。

 二十三日の委員会の園田議員の質問に対して、大臣は御答弁されております。争点は科学的知見の問題であるとした上で、認定審査で被曝線量を推定するために使われている方式であるDS86について、世界の放射線防護の基準の基礎となっていて、その正しさは最近の研究においても再検証されているという御答弁であったかと思います。

 しかし、広島地裁は、厚労省が言うところの科学的知見によって推定されるのは初期放射線であって、その被曝線量は一応の最低限度の参考値として位置づけるべきものと端的に示しているわけです。最高裁を初め、一連のこの裁判では、科学的な知見、大臣のおっしゃる科学的な知見なるものに大きな疑問符がつけられているというのが現状認識ではなかろうかと思います。

 厚労省は、この一連の判決に対しまして、医学や放射線学上の一般的理解とは大きく異なるというふうにして、あたかも科学的な知見に基づかないものであるかのように批判しているというふうに聞いておりますけれども、そこで、きょうは、初歩的なところからお話を伺ってまいりたいと思います。

 審査の方針は、DS86と、それからまたDS86を基礎とする原因確率論、これは放影研の疫学調査ですけれども、これを基礎とされているわけですよね。お尋ねいたします。

    〔伊藤(信)委員長代理退席、石崎委員長代理着席〕

石田副大臣 原爆症認定において用いられる審査の方針といたしましては、一つは、直接の放射線量である初期放射線量をはかる、委員今おっしゃいましたDS86と、そしてDS86によって算定された放射線が疾病の発症にどのくらい寄与しているのかをあらわした原因確率、これをもとにして作成されております。

 また、審査の方針では、この初期放射線に加えまして、原爆投下後における申請者の行動に応じて残留放射能の線量を推計し、これを加算する仕組みともいたしております。

郡委員 残留放射能につきまして、またさらに詳しく後々伺ってまいりますけれども、原子爆弾による放射線というのは、直爆の放射線とそれから残留放射線の二つあるという認識で間違いありませんよね。

石田副大臣 初期放射線と残留放射能でございます。

郡委員 そして、そのDS86ですけれども、原子爆弾の放射線のうち、主に直爆放射線、初期放射線を基礎として計算されていると思いますけれども、いかがでしょうか。

石田副大臣 初期放射線につきましては、原爆投下により発生する放射線、それをDS86で推定しているということでございます。

郡委員 もう一度、初めに質問をしたところに戻りますけれども、審査の方針というのは、このDS86と、DS86を基礎とする原因確率論を基礎としているという確認ができました。そのDS86というのは、主に初期放射線、直爆放射線である。

 では、残留放射線を考慮しないで、なぜ被爆者の被曝実態というのが把握できるんでしょうか。

石田副大臣 最初の御質問のときに、DS86というものとそれから原因確率、これを基礎にしているということを申し上げました。また、審査の方針では、初期放射線に加えて、原爆投下後における申請者の行動に応じて残留放射能の線量も推計し、これも加算をする仕組みとしている、このことをお答えいたしました。

郡委員 確かに、残留放射能について加えているのだという御発言がございました。

 ここに審査の方針がございます。そして、残留放射能についてですけれども、これは別表十というところであらわされています。これによりますと、広島の場合は、既に、爆心から七百メートル以遠ではゼロであります。長崎では六百メートルより遠いところもゼロという評価です。それから、放射性降下物については、広島の己斐と高須、長崎では西山、木場という極めて限定した地区のみに認めているにすぎません。これ以外の地区が残留放射能がゼロであったというふうなことはないわけでして、これで適切に加算を加えているということが言えるのでしょうか。私は大変疑問だというふうに思っております。

 厚労省としては、残留放射能が測定されていて、その結果によれば線量は極めて低い、今言ったように大変低い数字ですから、したがって、一般的には急性症状が生じるような線量ではないという認識をお持ちになっていらっしゃるんでしょうか。

石田副大臣 今お答えいたしましたけれども、残留放射能につきましては、測定の時期にもよって当然少なくなっている場合もあるわけですけれども、これは計算によって、半減期がはっきりしておりますので、さかのぼって、その当時が幾らであったか、こういうこともわかるわけであります。

 そこで、放射線被曝によって具体的な急性症状が出るには少なくても一グレイ、脱毛で三グレイ、下痢で五グレイの被曝が必要であるということが医学的にも判明しているわけでございまして、先ほど申し上げました残留放射能については、半減期とまたその距離を考えましても影響は少ないのではないか、こういうことでございます。

郡委員 それでは、また伺いますけれども、厚労省が審査の方針の基礎としている疫学調査でありますけれども、これは放射線影響研究所の研究に基礎を置いているというふうに承知をしております。

 その放射線影響研究所の大久保利晃理事長が、昨年の八月六日付の中国新聞に、「被爆影響 解明の道半ば」とするインタビュー記事が紹介されております。きょうは資料として皆様方にお渡しをいたしました。

 この中で、「被爆影響 解明の道半ば」のすぐ下のあたりです。「残留放射線は線量の数値化が難しいうえ、過去の評価で「無視しても大きな影響はない」とされたことから、十分に解析されてこなかった。今後、入市被爆者のデータについて検討を進めたい。」というふうにおっしゃっているわけです。

 つまり、今まで残留放射線について十分に解析はしていないと放影研の理事長がおっしゃっています。これについては、大臣、どういうふうにお考えでしょうか。

柳澤国務大臣 今御指摘の新聞紙上におきます放影研理事長の発言は、限られた紙面でもあって、その真意は必ずしも明らかなものではないというふうに考えますが、原爆放射線に関連したこれまでの知見についてお話しになられたものではないか、このように受けとめております。

 また、同理事長は、被爆者調査の結果について、十二万人という対象集団の大きさだけではなく、追跡期間の長さ、あるいは追跡率の高さ、精度の点で、世界に類を見ないものだということもおっしゃっていることを、私どもとしては大事な御指摘と受けとめております。

郡委員 放影研の疫学調査では、被爆後の行動についての調査というのが行われておりません。

 つまり、残留放射線を考慮していないということは、裁判所でも明らかになって、放影研でも、そして国もお認めになっていることではないでしょうか。これでは、残留放射線を無視していると言われましても、つまり、その点では、被爆の実態にそぐわない調査が行われて、そういう意味で、さらに、非科学的な調査に基づいてこの審査の方針というものが作成されているというふうに言われても仕方がないのではないかと思うのですけれども、この指摘に対してはどうお答えになられますでしょうか。

    〔石崎委員長代理退席、委員長着席〕

石田副大臣 放射線影響研究所が実施しております疫学調査は、先ほど大臣からも御答弁がありましたが、広島、長崎の被爆者の方を中心に十二万人を追跡調査している、世界にも類を見ない大規模な調査である、国際的にも信頼性が高い、こういう評価がされているということでございます。

 また、原爆症の認定に当たりましては、一番初めの御質問にもお答えいたしましたが、初期の放射線の被曝線量に加えて、残留放射線も申請者の方個々人の状況に合わせて加味をしている、それも加えている、こういうことでございまして、加える程度について、少ないのではないかとかいろいろな御議論は当然あろうかと思いますが、先ほど申し上げましたように、残留の部分については、放射線の半減期等も、また距離等も加味をして考慮に入れている、こういう方針でございます。

郡委員 それでは、審査の方針の中で、「原爆放射線起因性の判断」というところで、「判断に当たっての基本的な考え方」が示されているわけですけれども、その中に、「おおむね一〇パーセント未満である場合には、当該可能性が低いものと推定する。」として、であれば、大抵の方が認定に当たらないということになるわけですよね。

 それをいろいろと、機械的にやっているわけじゃなくて、多くの方々の状況を加味しながらやっているというふうなことをおっしゃられたんだろうと思うんですけれども、ならば、該当しない方で、何人認定を受けていらっしゃる方がおられるんでしょうか。これは質問通告は正式にしておりませんので、その数というのがすぐさま出てくればお答えいただきたいと思うんですが、出てこなければ資料をいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

石田副大臣 今お問い合わせがありましたけれども、数は不明でございます。

郡委員 それは、ちゃんとデータとしてお持ちにはなっているんですか。

石田副大臣 今、にわかのお問い合わせでしたので不明と申し上げましたが、これは調べれば出てくる数字であると思います。

郡委員 それでは、ぜひ、時間がかかって結構ですので、その数字をお示しいただきたいと思います。どういうふうな形でこの認定外の、該当しない方々を拾い上げているのか、拝見をさせていただきたいと思います。

 それと、DS86そのものについてなんですけれども、これは、ネバダの核実験を含めまして、要するに、一九六三年に発効した部分核停止条約、大気中での核実験禁止条約ですけれども、これのために空気中でこういう実験が禁止されたことによって、中性子爆弾の威力をはかるために作成したコンピュータープログラムに基づくシミュレーションだというふうな指摘もあります。そして、軍事機密のために、アメリカでやったこの実験結果については日本につまびらかにされなかった。

 つまりは、これはコンピュータープログラムでのシミュレーションである、実測されているものではないというような指摘もあるわけですけれども、これについてはどういうふうな反論がありますでしょうか。

石田副大臣 委員御指摘のとおり、コンピューターのプログラムで計測したものでございます。

郡委員 重ねて、東京地裁判決というのが、これらの問題についてこういうふうに指摘をしております。「放射線に特有の疾病や症状が存在するわけではない。したがって、放射性起因性の有無は、病理学、臨床医学、放射線学や、疾病等に関する科学的知見を総合的に考慮した上で、判断するほかはないわけであるが、これらの科学的知見にも一定の限界が存するのであるから、科学的根拠の存在を余りに厳密に求めることは、被爆者の救済を目的とする法の趣旨に沿わないものであって、最終的には、合理的な通常人が、当該疾病の原因は放射線であると判断するに足りる根拠が存在するかどうかという観点から判断をするほかはないものというべきである。」というふうにしているわけです。

 すなわち、これは、残留放射線の測定は行っていないのだ、そして、極めて限定された測定しか行っていないのだ、だから個別にちゃんと対応しなくちゃいけないということを言っているんだろうと思うんですけれども、いかがでしょうか。

石田副大臣 広島と長崎、本当に、人類史上初めて原爆投下ということで、大変な被害を受けて、今なお苦しんでいらっしゃることは私もよく承知をいたしておりますが、これを改めてある意味でいえば再現をして、現実に数字をとるということは、これはもうできないわけですし、やってはいけないことだろうと思います。ですから、DS86においても、コンピューターの中でプログラムを組んで、現実の影響としてはこういうことだろう、こういうことを推定していると私は思っております。

 ですから、ある意味でいえば、その判断について、科学的なといっても限界があるじゃないかとおっしゃられれば、それはそのとおりかもしれませんが、では何をもってある意味でいえば納得をする基準を示していけるか、これもやはり考えていかなきゃならない問題ですから、初期の放射線、残留放射能、あわせて検討させていただいておりますから、あながち、DS86が間違っているだとか、そういう結論ではなかったというふうに思います。

郡委員 今の判決文の引用、ちょっとあれでしたけれども、こういうところもあります。「残留放射能についての問題点」ということで、広島、長崎の原爆とも、「原爆投下直後から残留放射能についての調査がなされたものの、誘導放射能及び放射性降下物について、十分な実測値が得られておらず、ある程度本格的な調査がなされたのは昭和二十年九月十七日の台風の後である。」

 つまり、風雨の影響があって、放射能というのが随分と流されていってしまった後で測定をしていて、これは大変不満足な、満足ではない調査であるということにも言及されているわけですが、では、これはどうでしょうか。

石田副大臣 この残留放射能の実測につきましては、台風があった時期以降だけではなくて、原爆投下後三日目にも行われております。

 また、私も委員と同様の疑問を実は持ったわけであります。そのときに、現実に残っているものから、例えば半減期というものが放射能というのはあるわけですけれども、そうすると、時系列的にさかのぼって、ではその時点では幾らだったのか、これは半減期がわかっておりますから計算ができる、こういう説明を私も受けまして、それも一つの科学的な考え方かな、こういうふうにも思いました。

 ですから、ここのところで、審査の方針において、残留放射線量の推定は、複数の実測データに加えて、放射性物質の物理的性質やこれらに関する科学的知見を踏まえて、考えられる最大の値をとって計算している、こういうことでございます。

郡委員 しかし、いずれの裁判におきましても、それが科学的知見に基づいていないだろうと大きな疑問符がつけられているわけですよね。そして、認定基準の見直しをすべきだ、そういうふうに言われているわけです。

 今、本当に石田副大臣はそのように納得されたんでしょうか。

石田副大臣 私も判決文を、全文ではありませんが、概略文を読ませていただきましたが、そういう中でも、DS86そのものについて間違っているということは書かれていなかったというふうに思います。しかし、現実の被害を受けられた方々の生のお姿について、もうちょっとそれは考慮すべきではないのか、それらをあわせて合理的に判断すべきではないか、こういう裁判所の結論だったというふうに思います。

 ですから、放射能の値とか初期放射線の数量だとか、そういうものについては、やはり現在の科学において考えられ得るしっかりとした数字になっていると思います。

郡委員 お言葉ではございますけれども、副大臣も厚労省もそういう御認識なのかもしれませんけれども、大阪、広島、名古屋、仙台そして東京と、各地裁でも、それ以前では、松谷訴訟で最高裁、小西訴訟で大阪高裁、東訴訟で東京高裁で、すべて国は負けているんですよ。いずれの裁判でも、国側が言う認定基準の科学性、これを立証するために本当に多くの科学者の方々、研究者の方々も証人にお呼びになりました。それから、膨大な文献も裁判所に提出されました。しかし、そのいずれも裁判所は認めなかったということであります。

 つまり、裁判所は、厚労省の言う科学性というのを完全に否定し続けているということにほかならないんじゃないでしょうか。どうでしょう。

石田副大臣 いや、委員の御質問、いただきましたけれども、私も読ませていただいたんですが、最初に申し上げたように、根拠にしているのはDS86の初期の数値と原因確率論、それから残留放射能、放射線の量ですね、これについて加味をして決定している、こういう話でありました。

 それで、DS86については、たしか不十分だというふうな言い方はされていたと思いますけれども、それのみを機械的に当てはめるのは間違いだ、こういう判決だったと思いますが、そのものについて、これはおかしいとか科学的に成り立たないDS86の結論だとか、そういうことではなかったというふうに思います。

 そのほかの残留放射能の影響が人体において一グレイ、三グレイ、五グレイと、先ほど頭髪が抜けたりするところで申し上げましたけれども、それについては、そのときに入市された人、また御心配なされて入った人がどういう動きをされたか、いろいろな心理的な影響というのもこれは当然あるんじゃないかな、こういうことを私は思いますが、科学的に全否定されたということではなかったというふうに思いますけれども。

郡委員 厚労省は、判決というのをちゃんと検討されているんですか。これまで五回の裁判で、どうなんでしょうか、出されたことについて本当にしっかり検討されているんでしょうか。そして、検討されて、今のような御答弁なんでしょうか。大変驚きますし、残念でなりません。

 先ほどお示しいたしました中国新聞の放影研の大久保理事長のお話なんですけれども、この記事の中には、「長い期間を経過してから現れる「晩発影響」で分かっているのは、まだ五%程度かもしれない。最終的な答えが出るのは、いま約四割の人が生存されている対象集団の追跡調査がすべて終了する時点だろう。」というふうにおっしゃっています。

 これは何かというと、どういうことを言っているかというと、つまりは、その対象になっている方々が亡くなられて初めて、追跡調査が終了した時点で最終的な答えが出るのかもしれないと言っているんですよ。

 大臣は、ずっと副大臣のお答えだったわけですけれども、お亡くなりになるまで待たれるわけですか。そうやってずっと裁判をお続けになって、認定基準も見直さず。審査の方針の基礎になっている放影研のデータがあるわけですけれども、その大久保理事長が、これは十分に解析してこなかったとおっしゃられ、さらには、晩発影響についてもまだ全くわかっていない、五%しかわかっていないというふうに言っていらっしゃるわけですよ。

 それで、それが科学的知見に基づくものだというふうに大上段に振りかざしていらっしゃるわけですけれども、つまりは大臣も、被爆者の方々が亡くなって初めて出てくるデータを待つということになるんでしょうか。

柳澤国務大臣 今委員が御指摘のようなことを国が目的としているということは、これはもう全くないわけでございます。

 私どもといたしましては、今回の仙台地裁判決、東京地裁判決について、現在、判決内容を精査中でございます。

 国としては、これまでの科学的知見に基づいて原爆症認定を適切に行ってきたと考えておりますが、今後の対応につきましては、判決を精査して、関係省庁とも協議した上で、いかがにするかということを決定するという立場でございます。

郡委員 ちょっと質問の角度を変えてみます。

 昨年の十二月十八日、厚労省の医療分科会は、原爆による被爆はC型慢性肝炎などの肝機能障害に影響を与えないとする戸田剛太郎氏の報告書を採用されました。いわゆる戸田意見書と呼ばれるものですけれども、これは、東訴訟の東京地裁判決、高裁判決では採用されなかったものです。

 そしてまた、東京地裁判決ではこのように言っています。「放射線被曝がC型肝炎の進行そのものにも影響を与える可能性があることなどを考え合わせると、」「一般的なC型肝炎の症状経過を理由に、肝硬変と放射線との関係を否定することもできない」こういうふうに言われているわけですね。

 そのように、関係性がないとは言えないのだ、関係性がむしろあるというふうに言われていながら、この戸田報告書が医療分科会で議論にならず、反対、これはおかしいんじゃないですかととめる人もおらず、なぜこれがすっと通ってしまうのでしょうか。判決を無視されますのでしょうか。お答えください。大臣、お答えください。

柳澤国務大臣 平成十七年三月の東京高裁における肝機能障害の原爆症認定をめぐる訴訟の判決では、個別の事案に対する判断として、被爆したことがC型肝炎の発症等と関連している旨、判示されたものであります。

 しかしながら、判決の段階では、依然として放射線と肝機能障害との関連について科学的知見が十分には集積、整理されていなかったこと、さらに、この訴訟におきましては肝機能障害の放射線起因性に関する科学的知見の評価が争点となっておりましたことから、これについて改めて科学的、専門的見地から検討を行い、海外の専門家による評価も経て、昨年末に検討結果が取りまとめられたところでございます。

 この研究報告は、過去の論文の総括レビューという手法で行われておりまして、研究手法と内容の中立性については、海外の専門家からも適切であったと評価されていると我々は承知をいたしております。

 この結果を受けて、今後の肝機能障害に係る原爆症認定の審査をどのように行うかについては、審査会が公開で行われ、本検討結果が妥当である旨の御意見をいただいておりまして、今後の取り扱いがまとまったものであると承知をいたしております。

郡委員 今、柳澤大臣がとうとうと答弁書をお読みになられて、少し早口だったものですから、私も少しついていくのが大変だったんですけれども。

 この戸田意見書というのは、裁判で全く採用されなかった、否定をされたものであります。私がお尋ねしたのはそういうことでした。ところが、その否定をされたものが、同じものを、批判的な意見のないままで医療分科会ですんなりと通ってしまうというこの状況はどういうことなんですかと。ですから、裁判所の判断というものについて真っ向から否定するに足るものをお持ちになっていらっしゃるんですか。なぜこれがそのまますっと通っていたのかは大変解せません。

 加えて、この戸田報告書、これは国も、厚労省もお認めになっていることではありませんけれども、相当額の金額が戸田さんに支払われているということでありますけれども、これはどうなんでしょうか。なぜ、裁判ではこれは否定されていますよねという一言もなく、分科会で通ってしまうわけなんでしょうか。大変私は解せません。

石田副大臣 時系列でいきますと、東京地裁の判決の結審は十八年の七月だったと思いますが、この戸田報告がまとめられたのが、その後の十八年の十一月ではなかったでしょうか。

郡委員 ですから、私は申し上げました。その報告とほぼ同じ内容のもので、既に裁判にこの戸田意見書が出ているわけですよ、東裁判のときに。副大臣、何を血迷ったことをおっしゃっているんですか。

石田副大臣 いや、血迷ったとおっしゃいましたけれども、結審をしたのが七月で、まとめられたのが十一月でしょう、これは間違っていないと思いますけれども。ですから、その取りまとめが裁判の中で否定をされたということでは、これは違うんじゃないでしょうか。私は、時系列の話として、こうであったということを申し上げました。

郡委員 それでは、また違う角度から聞かせていただきます。

 被爆者援護法の立法趣旨というのは、その前文に掲げられているわけです。副大臣ではなく大臣にここからはお答えいただこうと思いますけれども、前文では、とりわけ高齢化した被爆者の救済という色彩が強いわけでありまして、御存じのように、既に全国の被爆者というのは高齢化しております。昨年の三月三十一日現在で、平均年齢は七十三・八歳でございます。

 前文に掲げられている救済という色彩を考えますと、これは十三年前にできた立法ですから、その当時よりもさらに重くなっているというふうに思うわけですけれども、大臣、いかがでしょうか。

柳澤国務大臣 確かに前文には、高齢化の進行している被爆者に対する保健、医療及び福祉にわたる総合的な援護対策を講じてこの法律を制定するということが書かれておるわけでございます。前文の一番末尾のところです。

 ということでございますけれども、それは、したがって、私どもとしては肝に銘じてこの援護法の運用に当たっているわけでございますが、私ども、先ほども同じようなことを申させていただきましたけれども、国民の負託を受けて行政を行っている立場でございますので、やはりきちっとした手続のもとで一定のルールを踏んで法の運用に当たるということでございまして、その意味では、現在、審査会の審査の方針というものをこれにこたえる最善の基準として運用に当たっているということでございます。

郡委員 何度も同じことになるわけですけれども、その最善の審査の方針というものについて、裁判所は、これはいかがなものかというふうに断じているわけです。

 既に、原告の方々、三十一人の方々が亡くなられてしまいました。きょう、その新聞資料の後ろに、これは「原爆症認定申請件数と認定状況」ということで、被団協の方々がまとめていただいたものを持ってまいりましたけれども、一九五七年、五八年、五九年、六〇年と、ずっと認定率九七%、九八%、九九%、九八%でございます。ところが、近年の数字をごらんください。ずっと認定一九%、二四%、二五%ほどです。

 全国で被爆者手帳を持っている方々は二十六万人弱であります。そのうち、原爆症と認定されている被爆者の数は二千人をちょっと超えるぐらい。率にいたしますと、これは一%を切って〇・八%という状況でございます。

 被爆者援護施策の適切な運用がこれで行われているというふうに言えるのでしょうか。大臣、どうでしょうか。

柳澤国務大臣 原爆症認定につきましては、平成十三年五月に、最新の科学的な知見に基づきまして、疾病・障害認定審査会原子爆弾被爆者医療分科会におきまして原爆症認定に関する審査の方針を取りまとめております。したがいまして、これを目安といたしまして、認定に際しては、申請者の個々の状況を総合的に勘案した上で審査が行われておるところでございます。

 審査の方針が策定されてから、こうした科学的知見に基づきまして、個別事案に即して審査は行われております。認定される件数自体はむしろ増加傾向にあるものと承知をいたしておりまして、私どもとしては、いわば認定の率とかそういうことは結果としての数字というふうに考えている次第でございます。

郡委員 ですから、その審査の方針について、科学的な知見に基づいていないのではないかということが裁判所でも立て続けに出されているということはお伝えいたしました。

 何だかんだと、今ある最善の方策だというふうにおっしゃられましたけれども、それこそ先ほどの肝炎のお話じゃありませんが、被爆者の方々も病気と隣り合わせで、ベッドから起きられずに、せっかくの勝訴判決も聞かずに亡くなられた方々もいらっしゃるわけです。

 もちろん、被爆してがんになった、被爆していないけれどもがんになった、これはどちらのがんに、色がついているんだったらそれはわかりやすいでしょうけれども、そういうことはないわけなんですよね。あの原子爆弾が落とされた折に、あるいはそこからしばらくした折に広島や長崎に入った、そして残留放射線で被曝した、それでがんになった、それは原子爆弾が影響してがんになったと考えていいわけじゃありませんか。どうしても、今、国の方針としては、狭めよう狭めよう、何としてもその認定を認める幅を狭めよう狭めようとしていっているように見えてなりません。

 多くの方々が、本来であれば、これも国の戦争責任ということが問われなくちゃいけないことで、しかも、あの講和条約によってアメリカに対する謝罪の要望というのもなくなったわけですよ、それをこらえて、原子爆弾という怖い、最強の兵器をそれこそ使ったことに対して、どれほどの気持ちで、断じたい思いでいるか、あるいはまた、国の戦争責任について、本当に謝ってもらいたいという気持ちでいるか。

 私は、今ちょっと気持ちが高ぶって申しわけないんですけれども、この国として、本当にどう責任を感じ、償いをしていく気持ちがあるのか、それを示すべきだとやはり思います。裁判所もそのように断じ、そしてまた、今多くの国会議員も控訴を取りやめるようにという署名に協力をしています。これは野党、与党関係ありません。大臣も御存じのことだろうと思います。

 科学的知見に基づいたものだというふうに何度も何度もおっしゃるわけですけれども、「原爆放射線の人体影響」という、これも資料につけさせていただきましたが、グラフで見ていただいてわかるように、年を追うごとに発症する病気というのがだんだんわかってもくるわけです。なのに、認定される人たちは狭く狭くしていく方向、そして、裁判所でも科学的知見というのはどうなんだと疑問符がつけられても、かたくなに態度を崩そうとしない。大変残念であります。

 被害者の方々、被爆者の方々も、控訴を取りやめてもらいたいという願いで、一日も早い解決を願って座り込みの予定もあるそうです。四月の二日から四日にかけて、政治判断を求める七十二時間連続の座り込みを開く予定だということであります。認定をめぐる裁判の五連敗をめぐっては、各新聞の社説でも、もちろんお目をお通しのことと思いますけれども、政府を糾弾しております。ぜひ、大臣の政治的な御判断をお願いしたいということを重ねて申し上げて、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

櫻田委員長 次に、田名部匡代君。

田名部委員 民主党の田名部匡代でございます。

 本日は、タミフルの件について御質問したいと思っております。

 その前に、先ほど山井委員から肝炎についての質問がありました。その審議のやりとりを聞きながら、今の政治というのは、一体どこを向いて政治を行っているんだろうかということをすごく考えさせられました。

 そして、そのときに大臣が、肝炎の被害者の方々には責任はないというふうにおっしゃったわけでありますけれども、では、被害者の方に責任がないのであれば、そして国もそれを認めないのであれば、これは自然災害でしょうか、天災でしょうか。だれも悪くない、被害者も悪くない、だれにも責任がない、だれも責任をとらなくていいことなんでしょうか。

 大臣にとっても、また今いる私たちにとっても、この先この問題を先延ばしにすることは、五年後、十年後、私たちが今と同じように議員としてその肝炎の皆さんの思いを訴えることはもうできないかもしれない。であれば、今できることを、今の私たちに今しかできないことを思い切って決断して、被害者の皆さんを救っていくべきではないだろうかというふうに思っております。

 山井委員がおっしゃったように、その政治的な決断ができないのであれば、役所とか、国とか、立場とか、プライドとか、何だかよくわからないけれども、そういうことを守るためにただ発言をしているのであれば、大臣も要らないし、政治家なんて要らないんじゃないでしょうか。

 大臣、被害者に責任がないとおっしゃいました。これは自然災害ですか、天災ですか。もう一度そのお考えをお聞かせください。

柳澤国務大臣 先ほど来申し上げておりますように、薬剤を体の中に入れるということは、現にかかっていらっしゃるその御病気を治癒するのに有用だということがございます。ところが、他方、要するに異物を体内に入れるわけでございますから、本当に残念なんですけれども、ほとんどすべての場合にマイナスの副次的な影響も受けるということでございまして、国としては、行政の責任は、その間の取捨選択というものが的確に行われるようにシステムをつくっておりまして、そういうことに即して現実の対応もしているということでございます。

 医療の現場におきましては、そういう国からの副次的な効果に対する注意というものも頭に入れながら、患者さんを救うという有用性を活用するという最終の判断というか、ベストの判断をされているわけでございまして、そういうことの結果、本当にその点は御同情申し上げるわけですけれども、副次的な効果の方を受けられた、影響を受けられたということでございます。

 御病気は、しかし、その反面というか、その一方で治られたということでございまして、そういうことが現実のありようだと私どもは認識をいたしております。

田名部委員 座り込みをしていらっしゃる被害者の方、また御家族の方、そうしなければ思いは届かないというのは、本当に山井委員のおっしゃったように情けない話でありますけれども、でも、それをやったら大臣が会ってくれるんじゃないだろうか、思いが届くんじゃないだろうかと思ってそういう行動をしているわけですから、ぜひその思いを聞き入れていただきたいというふうに思います。

 タミフルの質問に移ります。

 先日、三月十四日、この委員会で大臣に、現時点でタミフルの投与をやめるべきではないだろうか、そういうお考えはないですかということを質問しました。大臣は、タミフルと異常行動の因果関係は明らかではない、むしろ否定的であるというふうに御答弁をいただいているわけでありますが、この御方針が一転、三月二十日の夕方には、十代には原則使わないんだという決定を下しました。緊急安全性情報を出して注意喚起をされたわけであります。

 このこと自体は、因果関係がはっきりするまでは投与を避けるべきだというこれまでの被害者の会を初めとする我々の訴えが少なからず通じたのかなというふうに思っておりますし、わずかながらも前進と受けとめていいのかなというふうにも思いますが、投与は続けると今まで言ってきたことを、方針を一転された理由は何でしょうか。

柳澤国務大臣 今委員の御指摘のように、タミフルにつきましては、三月二十日に緊急安全性情報を発出いたしまして、十歳以上の未成年の患者におきまして、原則として使用を差し控えることといたしました。

 その理由ですけれども、タミフルを服用した後、いわゆる異常行動により死亡したということがはっきりしている事例が五例あり、いずれも十歳以上の未成年であったということと、もう一つは、インフルエンザによる死亡者数を見ますと、九歳までの小児に比べまして十歳代では少なくなっている、つまり、十歳以上の未成年者は一般に抵抗力が高く、必ずしもタミフルを投与する必要はないと考えられることなどから判断したものでございますけれども、しかしながら、その中でも、原則としてと今私が申したように、やはりハイリスクの患者さんというものもいらっしゃるわけで、この方々に対してはもう選択の問題として投与をすることもあり得るということでございます。

 いずれにいたしましても、このことは予防的にとったわけでございまして、私どもが、この因果関係は明らかではない、あるいはむしろ否定的だという考え方を今この段階で変更したということではございません。

田名部委員 この緊急安全性情報を出した、このことで、被害者の皆さんは、その御家族の皆さんは、いろいろな複雑な思いであっただろうというふうに思います。

 まず一つは、もっと早くそういう判断を下していてくれたらという思いと、これ以上同じような被害者が出なくて済むんだろうというその安堵と、そして、本当に今のような緊急安全性情報の内容で十分だろうかというような不安、そういったいろいろな思いを抱いているんではないかというふうに思います。

 今回出された直前に二件の飛びおりがあった、これは、不幸中の幸いと申しますか、二階から飛びおりたということで死に至らなかったわけでありますけれども、最悪、もしもこれが二階じゃなかったらと考えたら本当に恐ろしい思いがいたします。もし二階じゃなくて、飛びおりて同じように死に至っていたらどうやって責任をとったんだろう、何とおわびをしたんだろうというふうに考えるわけでありますが、これまでの対応というのも私は非常に不十分だと思っております。

 厚生労働省が二〇〇四年に出した情報と注意喚起、これ自体が十分ではなかったということであります。例えば、前回も申し上げたんですけれども、その内容の中に、二日間は小児そして未成年の方から保護者が目を離さない、一人にならないように配慮をするようにとありますが、本当に配慮程度でよかったのか、御家族に対してもっと強い注意を促す必要があったんじゃないだろうか。

 さらには、これまでのケースの中で、三十分目を離したすきに飛び出して、車にひかれて亡くなってしまったということもあるわけですから、そういうことも踏まえて、では、どんなに家の中に一緒にいても、眠ってしまったときに、夜中に起きて飛び出す可能性がある、あるのであれば、夜の薬を飲まないのか、それとも飲ませた後にできるだけ寝ないで看病した方がいいのか、そういうもっと細かい注意というか、もっと強い慎重な対応をとるべきだったんじゃないだろうか。

 改めて今考えても、やはりこれまでの国の対応というものは不十分だったというふうに思うんですが、大臣、この点はいかがでしょうか。

柳澤国務大臣 この問題につきましては、薬剤を販売するのに伴って添付文書というものがあるわけですが、平成十六年五月にその改訂をして、その重大な副作用欄に、精神・神経症状ということで追記をして、お医者さんとか薬剤師さん等の医薬関係者への情報提供を行うように製薬メーカーに指示を出しております。

 その後、いろいろな客観情勢の変化に応じて、私どもとしてはいろいろと、先ほど委員が指摘したような、先般の二月二十八日の注意喚起、それから三月二十日の緊急安全性情報の配付ということをいたしたわけでございます。

 その間、この薬剤に対する基本的な評価というかそういうものとしては、個々の事項につきまして、専門的な、専門家における御検討をお願いいたしておりましたし、また、平成十七年度におきましては、いわゆる疫学的な調査というものをいたしましてこの薬剤の評価をいたしておりますが、それについては、先ほど来申し上げましたように、因果関係ということについてはむしろ否定的とされておりまして、そういう中で二月二十八日とか三月二十日の措置がとられているということでございます。

 ですから、我々としては、そういう否定的なことで本当にいいのかということについて、早急にそういう判断の適切性について再度チェックをするということを今考えているわけでございます。

田名部委員 大臣がおっしゃっております因果関係は明らかではないというのは、これは十七年の調査結果でありますけれども、その主な調査対象は十歳未満が大半、十歳未満が約八〇%なんです。だけれども、異常行動で死亡している事例というのは十代じゃないですか。そもそも、この調査結果をもとに因果関係がないと果たして言えるんでしょうか。大臣、いかがですか。

柳澤国務大臣 この調査結果について申し上げておりますことは、要するに、異常言動の発現頻度につきまして、タミフル未使用群と使用群の対象者を比較した結果、統計学的に有意な差が見られなかったということでございます。

 そして、この調査の対象は約二千八百名の小児等でございますけれども、その調査の過程におきまして、十歳を超える年齢層の方々を対象とする比率が低いということ、すぐにそのことはもう認識に上っておりまして、したがいまして、平成十八年から十九年にかけて、より詳細な検討ということを、対象者を拡大し、さらに対象年齢を引き上げる等を行って、この調査を再度上乗せ的に行おうということを考えた次第でございます。

田名部委員 大臣、調査をされた主な対象年齢が十歳未満が多かったということを御存じの上で因果関係がないとおっしゃっているのであれば、また因果関係は大変それは否定的だとおっしゃっているのであれば、私は非常に無責任だというふうに言わざるを得ません。

 十代が一番異常行動で死亡している事例が多いにもかかわらず、対象は全くそこではない人たちを調査しているわけです。それに基づいて因果関係がない、そんな判断によって同じような異常行動で死亡するというケースが起こったらどうするんだろうかと。

 専門家ではない私が考えたって対象年齢が違うじゃないかと思うようなことを、それをもとに因果関係がないと言い続けていること自体が大変私は無責任だと思いますが、大臣、いかがですか。

柳澤国務大臣 因果関係が否定的というふうにいたしました、私どもがそういうことを申し上げておりますのは、いわゆる疫学的調査からというよりも、むしろ、異常行動があって、事故が起こったものを個別的に検討、評価した結果に基づいて申し上げているわけでございまして、この疫学的調査については、有意な統計学的な差が見られないということで、先ほど、個別的な検討の結果ということと統計学的な評価というものとがいわば両立的であるということを踏まえて申し上げたということでございます。

田名部委員 であるならば、私は逆に、因果関係はない、さらには、どちらかといえば否定的だというお答えではなくてというか、国の対応ではなくて、因果関係は否定できない、可能性はある、だから注意をするべきだというふうに呼びかけるべきではないかと思っております。

 また、先日大臣は情報公開をきちんとしているというような内容の御答弁をされております。「副作用等の情報は添付文書に広く記載するとともに、個別の副作用報告や研究成果等についても情報提供に努めている」ところであるというように御答弁されておりますけれども、大臣、情報がどれだけどのように公開されていたか、大臣は御存じですか。

柳澤国務大臣 一般に、薬剤についての副作用の情報でございますけれども、これは、一定のルールに基づきまして報告、管理、公表が行われているところでございます。実際に副作用が発生したときには、その情報をつかんだ医薬品製造販売業者あるいは医療機関等から情報が医薬品機構にもたらされまして、そして、この医薬品機構において取りまとめの上、公表がなされているわけでございます。

 タミフルにつきましても、そういうルールに基づきまして、この情報が一つの取りまとめの上で公表されているということでございます。

田名部委員 先日、朝日の記事を見て厚労省にお問い合わせをしたんですけれども、タミフルの異常行動死の問題が随分マスコミに取り上げられるようになりまして以降、初めてというか、おくれて公表された事例が幾つかあったという内容でございました。そういった記事を読んでいると、情報公開のあり方自体も不十分じゃなかったのかなというふうに思いまして、役所から資料をいただきました。

 公表をしなかった事例というのは、例えば二階から飛びおりというのがあるんですね。もう一つは、中二階から転落。これは、注意喚起以前に発生した死亡以外の事例である、また死亡をしていないというのが理由なんだそうであります。このほかにも、インターネットに掲載をされて、副作用の症例一覧というもので見られるものがあるんですけれども、それを幾ら探しても、異常行動というか、飛びおりだとか転落だとか、そういった行動が起こるというのは、どれを見ても明記はされておりません。

 大臣、こういう情報公開の仕方で十分でしょうか。

柳澤国務大臣 医薬品の副作用報告については、先ほどここで御説明をしたとおりでございます。

 タミフルの件につきましてどうかということでございますが、三月二十日に緊急安全性情報発出を指示した際に、これら公表済みの副作用報告の中で、タミフル服用後の転落あるいは飛びおり事例を集計いたしまして、改めて十五件と発表し、その翌日にその内訳を情報提供したものでございます。

 そういうことで、今委員が御指摘のように、副作用の公表については、一つのくくり方をして公表している関係で、現象的なことについてどこまで公表できたかということについては、くくりの関係で限界があって、そういうことで、私どもは、もう一度こうしたことについても考え直していかなければならないとは考えております。

田名部委員 ぜひ十分な情報公開がしっかりとなされるように大臣から指導していただきたいというふうに思っております。

 次に、今回出された緊急安全性情報の中身についてちょっと伺いたいと思います。

 今回、十代ということに限定したわけなんですけれども、大臣のお耳にも入っていらっしゃると思いますが、現場の先生方は大変混乱をいたしておりまして、では九歳数カ月だったらどうなんだろうかとか、子供の体の大きさとか体力の問題とかいろいろあるので、一概に十代ということで区切るのは一体いいんだろうか、これで大丈夫だろうかというような御心配が現場の声としてありました。

 またそのほかに、成人で飛びおりてしまったという事例が七件あります。子供であれば保護者が見ていれば大丈夫というようなこともあるのかもしれませんけれども、では成人の場合、御本人には何らかの注意喚起をしなくていいのかとか、例えばそのほか、八歳とか九歳で同じような事例が起こったときに、ではまた年齢を下げるのか、いろいろなことが考えられると思うんです。

 一つ、タミフルはインフルエンザ脳症に効くのではないかということをもってこのタミフルの必要性がうたわれているんだ、そういうケースもあるんだと思うんですけれども、このインフルエンザ脳症は五歳以下の発症が大変多いと聞いていますので、もしも、どうしても因果関係も認めず中止ということもあり得ないというのであれば、このインフルエンザ脳症の最も多いと言われる五歳未満、ここはお医者さんのきちんとした指導、説明、判断に基づいて認めるとしても、五歳以上は原則使用しないというふうにした方がいいのじゃなかろうかということも考えるわけなんです。

 前回出された御家族への、保護者は一人にしないように配慮をしなさいということが行われた中で、これは三月二十八日水曜日の毎日新聞の夕刊ですけれども、家族の要望でタミフルを処方、その夜、タミフル服用後、叫んで家の外に飛び出そうとしてしまったということなんですけれども、これも、死亡とか交通事故ということじゃないからいいんじゃなくて、万が一にもその可能性があったわけですから、本当に今のような緊急安全性情報の内容で十分なのかということもしっかりと検討されるべきだと思うんですが、大臣、いかがでしょうか。

柳澤国務大臣 このタミフルについての安全対策といたしましては、先ほど来申し上げておるように、平成十六年五月の添付文書の改訂以降、我々としてはそれぞれの客観条件の変化があったごとにこれに対応してきたということでございます。

 そういう中で、緊急安全性情報について再検討すべきではないかという御指摘でございますけれども、これについては、今まさに、私どもとしては、緊急の情報として、予防対策としてこういうことをする一方、もう一度、タミフルの安全性と申しますか、こういう異常行動等の副作用との因果関係について再チェックをするということで、鋭意今その措置を講じようとしているという状況でございます。

田名部委員 緊急だったからということでありますけれども、ぜひ、今後引き続き内容をチェックしていただきまして、より細かく、そして慎重に、強い注意喚起を行っていただきたい、そのことによって、とうとい命が二度と失われることがないように国として責任を持って取り組んでいただきたいというふうに思います。

 ところで、このタミフルですが、これはもう時間がないので申し上げますけれども、インターネット上で販売されているんですけれども、これはいいんでしょうか。

柳澤国務大臣 タミフルは、医療機関でもって受診をし、医師の指示に従って服用するという、いわゆる処方せん医薬品でございます。

 したがいまして、タミフルは、受診した医療機関で処方されるか、医師の処方せんに従って薬局で処方されることが原則で、それ以外のインターネット等で販売する行為等は薬事法で禁じられております。このようなインターネット販売等の薬事法違反の疑いのある業者については、都道府県を通じまして必要な取り締まりを行っているところでございます。

 なお、個人がみずから使用するためにみずからが輸入する、いわゆる個人輸入は禁止はされておりませんけれども、自己判断で使用することによりまして健康被害が引き起こされる可能性があるわけでございます。したがいまして、厚生省としては、安易に個人輸入して使用することのないよう呼びかけをしているところでございます。

田名部委員 厚生労働省からいただいた、インターネット上で個人で購入してもいいんですかという質問どおりの御回答を大臣はされたんですけれども、私、この回答は間違っているというふうに思っておりまして、そのことを大臣に申し上げようと思ったら、大臣が同じことをおっしゃったのでちょっとびっくりいたしました。

 これは薬事法に違反しているわけでありまして、医師の処方がないのに購入してはいけない、しかも、こういった問題が多々起こっているにもかかわらず、「自己判断で使用することにより、健康被害が引き起こされる可能性もありますから、安易に個人輸入して使用することは控えて下さい。」こんな注意喚起でいいんですか、これだけの事件が起こっていて。こういう回答で間違っていないですか。大臣、おかしいと思わなかったですか。

柳澤国務大臣 タミフルをインターネット等で個人輸入する場合の注意喚起でございますけれども、「タミフルは、医療機関を受診し、医師の指示に従って服用する医薬品です。 タミフルを個人輸入して、自己判断で使用することにより、健康被害が引き起こされる可能性もありますから、安易に個人輸入して使用することは控えて下さい。」こういうことでございます。

 恐らく、タミフルについては、これは一方で、新型インフルエンザが起こったときの備蓄をしているわけです。ですから、個人の中に、そういうことに備えようというような動きも私はあるのではないかというふうに思うわけですけれども、購入することと服用することとは必ずしも同一ではない。特に、今度新型インフルエンザが発生したときにタミフルをどういう順番で皆さんに配付するかということ自体も実は今問題になっているわけです。

 ですから、そういうことを考えると、個人の中で、そういう個人の国際取引というものに割となれていらっしゃる方とか、あるいは特に自己防衛ということでそういう措置をとっておいた方がいいじゃないかというふうにお考えになる方もいらっしゃるのかなと、私は委員のこの御質問の通告を受けたときにそんなことも頭に描いたわけですけれども、いずれにせよ、こういう注意喚起をしているというのが私ども役所の今行っているところでございます。

田名部委員 もう時間が来ましたので終わりますけれども、ああ、法律ってこんな簡単に破ってもいいものなのかと。薬事法で禁止されているものが、厚生労働省の回答が、控えてくださいぐらいのものであり、この中に、タミフルで現に異常行動で死亡する、こういった事例もあるというような注意が明記もされていない、一言も書いていないということに大変驚きました。ぜひ、これまでの被害に遭われた方々のその思いになって、もっと真剣に、慎重に安全というものに取り組んでいただきたい、守っていただきたいというふうに強く申し上げて、終わります。

 ありがとうございました。

櫻田委員長 次に、柚木道義君。

柚木委員 民主党の柚木道義でございます。

 田名部委員に引き続きまして、私も、今本当に現場、そして御家族、あるいは服用される御本人も大変心配な状況にありますタミフルの問題、田名部委員と多少重複する面もございますが、幾分違った角度からということも含めて、四十分間の中で質疑をさせていただきたいと思います。

 まず、柳澤大臣にお伺いをいたしますが、一連のこれまでの厚生労働省の対応の経緯、先ほど来の御答弁にもあるわけですが、いま少し丁寧に確認をさせていただきたいと思います。

 今回、厚生労働省は、三月二十一日未明の緊急記者会見で、タミフル、原則十代使用中止ということで、従来の方針を転換されたわけです。

 これまで、十代の異常行動死が問題になる中でも、タミフルの安全性に問題はないとの見解を示してきたわけです。報道等にもございますように、こうした厚生労働省の見解の根拠が、今回、実は中外製薬からの寄附金計一千万を受けて調査メンバーから外れることになった横田教授らの研究による、インフルエンザに伴う随伴症状の発現状況に関する調査研究報告だったと聞いております。

 ですが、この横田教授も、三月十三日の会見では、そもそもこの研究はタミフル調査としては不十分なところがあったとし、したがって厚生労働省としても、さらにこの異常行動発現が二十日にあった段階で、これはそのタミフル服用時との関係をより正確にチェックできるような、調査項目も改めた形での再調査をするというふうなことを示されたという認識でございます。

 しかし、この不十分な調査にだけ基づいて安全性に懸念はないと言い続けてこられたことに対する責任、これは一体どうなるのか、大臣、まずこれについて端的にお答えください。

柳澤国務大臣 その点につきましては、先ほども答弁の中で言及させていただきましたけれども、平成十六年七月、平成十七年四月、平成十八年七月というように異常行動の事案が出てまいりまして、これについては個々に、薬事・食品衛生審議会安全対策調査会で議論もいたしましたし、また、小児科、呼吸器科等の専門家からの意見聴取というようなことをしておりまして、要するに、専門家の個別的な事案の評価、検討、それから、そういうものでいいかということの安全対策調査会での議論、こういうようなことで、因果関係については否定的とされているわけでございます。

 先ほど委員がおっしゃられた調査研究、これは疫学的な調査でございますけれども、これはたびたび申し上げておりますとおり、タミフル未使用群、それから使用群、対象の中のこの二つの群の比較検討をした結果、統計学的に有意な差が見られなかったということで、個別的な判断と相矛盾しないということが確認されているということでございます。

柚木委員 その疫学的調査についても、御承知のとおり、そのデータの分析の仕方によっては、例えば、服用後、初日のまさにもう数時間以内にそういう異常行動が出るわけですから、その場合に限ってやった場合には四倍の差があるとか、さまざまな見方ができるわけでありまして、その結果だけに基づいて、今回の対応であったことが正しいということにもならないというふうに思います。

 また、大臣、そもそも、きょう資料でおつけしております、特に四ページを見ていただくと一連の経緯がわかりやすいと思います。方針転換に至るまで、まず、この上側の表を見てもわかるように、例えば、アメリカの食品医薬品局が、二〇〇五年の十一月の段階で、既に日本人の子供十二人が死亡していたことを報告し、さらに翌二〇〇六年には、厚生労働省の研究班がその報告を出した翌月にも、服用と異常行動との因果関係を否定できないとの見解を公表していますね。

 さらに、きょう実は傍聴席に薬害タミフル脳症被害者の会の方もお越しいただいているわけですが、被害者の会からも同様に、二〇〇六年十一月十七日に、厚生労働省に対して、タミフルと被害との因果関係について公正な判定を求める要望書を提出しておられるわけですよ。

 そこで、大臣、伺いますが、この四ページの表の右下、ずっと、この異常行動事例が十六事例、うち五人の方がお亡くなりになられています。この表を見ていただくと、直近ではこの二月に、十四歳の女子学生、男子学生それぞれが転落死をされているわけですよ。

 昨年の十一月の段階においても既に、FDAであったり、さらにはきょうお越しいただいている被害者の会の皆さんであったり、つまり、今回の緊急安全性情報を出しても全くおかしくないような事例が、そこまであるわけですよ。

 そういった中で、では、昨年の十一月のタイミングで今回の緊急安全性情報を出していれば、少なくともことしの二月に亡くなられたお二方、この方々は亡くならずに済んだのではないでしょうか。私はそのように考えるんですが、大臣、十一月に出していればお二方は亡くなられたのか亡くならなくて済んだのか、御認識をお答えください。

柳澤国務大臣 時系列的に言って、極めて単純に言えば、委員が御指摘のとおりだと思います。とおりというか、そういう注意をしておけばこの死亡事故がなかったとまでは、それはなかなか言い切れないわけですけれども、タミフルは他方で備蓄の対象にもなっているような薬剤でございますので、それはまああれですけれども、より強い注意喚起をしていればもう少しそうした事故を防げたのではないか、そういうことについてまで私は否定しようという気持ちはございません。

 なお、ここに米国の添付文書の記載がございますけれども、「タミフルのこれら事象に対する相対的な寄与は不明です。インフルエンザ患者は、治療期間中は、異常行動の兆候について厳重に観察されなければなりません。」というようなことだというふうに我々としては認識をいたしております。

柚木委員 大臣、その認識が、その認識の甘さが、これまでにもさまざまな薬害事件を引き起こしてきたんじゃないんですか。

 きょうは、くしくも薬害肝炎の問題等も議論されたわけですが、本来、因果関係を立証できないから、出すタイミングがこの三月二十一日の未明だった、あるいは二十二日にまた方向性の転換を出したということではなくて、因果関係を否定できないならその情報を公開するのが予防原則なんじゃないですか。それをせずに、しかも、たった十六例ですよ、十六例の異常行動をちゃんと分析していなかったがために、このタイミングまでおくれているわけですよ。昨年十一月までですら、既に三件の転落死を含む十件のまさに死に直結する異常行動情報があったわけですよ。それを放置した厚生労働省、そしてその管轄をすべき大臣の、これは薬事法上にも監督責任は明記されていますね、その監督責任は免れ得ないと私は考えます。

 そういった認識に立ったとき、大臣、これは別に裁判じゃありませんから、少なくとも、私は、全国で今副作用の被害に苦しんでおられる方あるいは亡くなられた方、きょうも傍聴席にまさにその会の方々もお越しになられているわけですが、そういう皆さんに対して、この一連の経緯のおくれに対して大臣はまず謝罪をされるべきだと思いますよ。大臣、いかがですか。

柳澤国務大臣 タミフルについてもそうなんですけれども、一般に薬剤については、先ほど来私がここで発言しているようなそういう特性がある、性格があるということでございます。

 したがいまして、タミフルの発売、カプセルについては十三年二月、それからドライシロップについては十四年九月、こういうことで販売を開始しているわけでございますけれども、その後、死亡例はありませんけれども、意識障害とか異常行動とかというような重篤な症例が集積をいたしましたので、死亡例がない段階でも、平成十六年の五月に添付文書を改訂する等の指示を行っているわけでございます。そして、重要な副作用欄に精神・神経症状につきまして追記をしまして、医師や薬剤師の医薬関係者への情報提供等を行うよう、製薬メーカーに対して指示をいたしているわけでございます。

 そういう中で、死亡事故が起きました。十六年七月、十七年四月、十八年七月、こういう死亡事例が起きましたので、それについては、先ほども申し上げましたように、専門家の評価、検討というものをお願いし、さらにその上で、安全対策調査会での御議論もお願いをしておる。

 同時に、十七年度の厚生労働科学研究で、これはインフルエンザに伴う随伴症状の発現状況に関する調査研究ということで疫学的な調査を行っている、こういう流れになっているわけでございまして、もう十六年五月段階から、厚生労働省としては重大な副作用というふうにとらえて、警告的なことをいたしておるということでございます。

柚木委員 大臣、やはりその段階においても、このたびのような最も緊急度の高い、そういう情報をしっかりと示していただかないと、こういった被害はなくならないと思いますよ。そして、そのために時間が、後手後手に回っているのであれば、例えば年間三万例の副作用報告を七人体制で対応しているというふうに聞いていますが、そういった体制の強化拡充も含めてこれはちょっとお願いをしておいて、次の質問に入ります。

 そういう状況にある中で、先ほど田名部委員からも、タミフルの処方について、処方禁止の対象年齢の見直しといったような質問もありました。私も多少関連して、そのタミフルの今後の処方について御質問をさせていただきたいと思います。

 まず、異常行動自体も、これは現在は十代が使用中止ということでの緊急安全性情報を出されているわけですが、しかし、実は十代が十六件、十歳未満が二十件以上という報道もありますし、さらに、昨日、これは参議院の委員会の中で議論がされたというふうに聞いておりますが、タミフル副作用は、十歳未満、この二年間で八十一件、厚労省発表、幻覚など。一方、十代は六十七件ということで、十歳未満の方が十代より副作用と見られる症状の件数が多かった、こういった報道もなされております。

 さらに、突然死についても、大臣は、先ほどの答弁の中でもあったかと思いますが、このタミフル服用による千八百の副作用の再調査をしっかり行う、そして、その中に突然死についても当然含めてきっちりと調査をしていくというふうに何度か答弁されていると思います。私は、その突然死の方についても、異常行動による死亡の方が最初に問題化していた部分もあるんですが、実は、服用後の突然死の数は異常行動による死亡より数倍多いという報道がございます。

 ですから、そういったことも含めて、今回、十歳代への処方を中止ということがあったんですが、これは私の個人的な見解ですが、先ほどの質問の中にも脳炎、脳症の関係でという話もあったと思いますが、例えば五歳未満とか、あるいは就学前とか、その処方について検討されますかという質問について、先ほどは、今まさにそのことに対して調査を行っているところだというお話でしたから、では、仮に見直しをするのであれば、調査結果をいつまでに出して、いつまでに指針を出すのか。それについて、大臣、可能な範囲で結構ですから、お答えをいただけますでしょうか。

    〔委員長退席、宮澤委員長代理着席〕

柳澤国務大臣 突然死を含めまして、私どもとしては、副作用千八百事例の再検討をいたすつもりにいたしております。

 その千八百事例の再検討、そしてまた審議会での御議論ということを行うわけでございますけれども、我々としては、とにかくできるだけ早くにそうしたことをお願いしたいというふうに考えておりますけれども、審議会における検討というものがどのような展開になるのかというようなことも、今ここで予想、想定をするわけにもまいりませんので、私どもとしては、安全性にかかわることでございますから、とにかくできるだけ早くにこの審議会の御議論の結果もいただきたいということで対処してまいる所存でございます。

柚木委員 できるだけ早くの対応とともに、これはさらにちょっとお願い申し上げたいんですが、異常行動と突然死と、それぞれ今問題になっていますが、その突然死についても、これはまさに遺族の会の皆さんからも要望が出されていると思いますが、当然に副作用認定を含めて調査検討いただけるということでよろしいんでしょうか、大臣。

柳澤国務大臣 突然死につきましても、当然、重大な副作用ということであれば、これは大変な問題でございますので、この症例につきましても薬事・食品衛生審議会等で御議論をいただきまして、全体的な精査の中で結論を出していかなければならない、このように考えております。

柚木委員 ぜひきっちりとした結論を出していただけるように、お願いをしたいと思います。

 それから、この夏から秋にかけて、いわゆる一万人規模の調査の結果が出されるというふうに聞いておるわけですが、その調査について一つお伺いをしたいんです。

 今回、タミフルの投与による異常行動、副作用の問題もあるんですが、そもそも、このタミフルがインフルエンザ脳症に効くかどうかということについては、実際、実証データがないというふうな話も専門家の方からも聞いていますし、そういったことも勘案して、私はこの調査の中で調べられるかどうなのかということを伺いたいんですが、タミフルを服用した場合のリスク、つまり、突然死であったり異常行動であったり、服用した場合のリスクですね。それから、服用しなかった場合のリスク、当然、脳症であったり、ひょっとしたらお亡くなりになられるケースもあるかもしれない。そういったことも含めて、やはりこれはそういうところをきっちりと明確にしていただかないと、現場も、そして患者さんも安心できないわけです。

 この調査の中でできるのであれば、ぜひそのお願いをしたいですし、そういう調査項目になっていないのであれば、ぜひともそういった形の調査を別途お願いしたいんですが、この件について御答弁いただけますでしょうか。

石田副大臣 タミフルにつきましては、A型またはB型インフルエンザのウイルスの感染症の治療やその予防について承認しているところであります。

 これらの承認に当たりましては、欧米等において、比較対象としていわゆるプラセボ、にせのお薬を用いた比較試験成績のほか、国内で実施された十六歳以上のインフルエンザに感染した患者三百十六例を対象とした臨床試験成績などによって、インフルエンザの罹病期間の短縮等の効果が示されております。

 一方、インフルエンザ脳症・脳炎につきましては、タミフルの有効性を示す臨床試験データは得られておりません。また、この調査につきましては、欧米等でもこういう調査はまだやられておらないということでございます。

 ですから、国内でこの調査をやるということになりますと、いわゆる病気を前提にして、治療をする人としない人という形での分け方になってしまいますので、実務的、倫理的に極めて困難ではないか、このように考えております。

柚木委員 これは、副大臣、欧米で得られていない、そして、大変困難であるという今御答弁でしたが、逆じゃないでしょうか。世界の中で八割もの消費量が実際に現状としてあるこの日本が、まずそういった調査を行うべきじゃないですか。そして、それは、今困難であるとおっしゃいましたけれども、実際に受診をされても、服用する方しない方、それぞれいらっしゃるわけですよ。

 先ほどのお話だと、感染した方に対する、感染していない方を対象群としてとればいいわけですよね、さらに、脳症は得られていないということですが、それについても、検証しようと思ったらできるはずなんですよね。そういったことをきっちりとやらないから、今現場や患者さんがやみくもに不安に陥ることになっているんじゃないんですか。

石田副大臣 先ほど私御答弁いたしましたように、罹患している人と罹患していない人、いわゆる、これは極端な言葉になるかもしれませんけれども、脳炎・脳症という大変重篤な病気を、ではタミフルを与えなかった人がどうなるかということだと、ほうっておいて経過を見なきゃいけないということになりますよね。だから、そういうことは倫理的にはできないということを申し上げたわけです。

柚木委員 余り具体的な議論をしている時間はありませんが、ぜひ、処方しないことを希望する方もいらっしゃるわけですから、無理やりそうしろと申し上げているわけじゃないわけですから、その調査方法については工夫、検討していただきたいと思います。

 検討をお願いして、ちょっと次の質問に移らせていただきます。

 きょうは、先ほど来申し上げておりますように、実際にタミフルを服用して、さまざまな副作用あるいは突然死、異常行動死、そういったことで御家族を亡くされている遺族、被害者の会の方もお越しいただいているわけですが、医薬品医療機器総合機構の被害救済申請事例について幾つかちょっとお尋ねさせていただきたいと思います。

 まず、先ほど来御答弁もいただきましたが、突然死も今回新たに調査をするときの調査対象に含めるという御答弁をいただきました。そういった中で、これまでの、タミフル服用後に、異常行動死あるいは突然死された方々の救済事例についても、とりわけこの突然死の方については今回見直しの調査対象になるということですから、ということは、この救済申請事例についても当然見直しの対象になるというふうに私は考えるわけですが、大臣、これはその理解でよろしいでしょうか。

柳澤国務大臣 これまでのタミフルに関する副作用報告につきましては、全体を再度精査し、薬事・食品衛生審議会において御検討をしていただくことになります。

 これまでのところは、タミフルの服用と異常行動等による個々の死亡事例との因果関係については、たびたび申し上げておりますとおり否定的であるという立場に立っておりますが、今後検討を進める中で、これが維持されるかどうかということの問題が我々の前にあるということでございます。

 そして、仮に判断が変わるというような場合には、副作用被害救済制度における医学的、薬学的判定にも影響を与える可能性があるというふうに考えております。

柚木委員 大臣、これは大変大きな答弁をいただいたと私は思っております。既に一たんそういった救済事例に対して判定が出ている部分も含めて、これは現在進行中のものも含めての見直しを意味するという御答弁だと思います。きょうは被害者の会の皆さんもいらっしゃっていると思いますので、最初にそういった申請をされて、再申請をされて、本当に御苦労されている方もいらっしゃると思います。ついては、ぜひとも、早期のそういった形での対応をお願いし、次の質問に入りたいと思います。

 副作用の千八百事例の再検討について言及をされているわけですが、当然に、その検証メンバーは製薬会社と利害関係のない者であることが原則であるということで、これは、今いらっしゃらないんですけれども、阿部委員の先日の御質問の中でも、そのように考えているというふうに大臣は御答弁をいただいていると思います。

 その上で、私は、さらにもう一つ、客観性、公平性を担保するという視点からも、今度検討メンバーに新たに加わる方々の、例えば利益相反の事例になるのかならないのか、そういったいわゆる経済的な関係があるのかないのかということを、これはアメリカなんかでも論文においては公表するというふうな形も聞いておりますので、我が国においてもそういったことについて公表していくべきというふうに思うわけですが、これについて、大臣、御認識をお答えいただけますか。

柳澤国務大臣 まず、一般的に、利害関係の中に、過日の報道に取り上げられました奨学寄附金の問題があるかと思います。この奨学寄附金は、一般的には使途を定めない寄附金、つまり、タミフルならタミフル、インフルエンザならインフルエンザということの調査のためとかということでこの寄附が行われるわけではございません。加えまして、各大学等の機関の定める規定に従いまして、適正な手続のもとに各施設で受け入れられ、執行されているものと承知をいたしております。

 そういう意味では、一般論としては、各施設において適正な手続を経ている場合には、直ちに利害相反とかという問題が何か起こるかと言えば、私どもはそのようには考えておりません。

 しかし、今度のこのタミフルの副作用の事例につきましては、私ども、この問題についての国民の関心が高いこと、それから、本当に信頼される体制で精査を行う必要があるというふうに考えておりまして、この検討に参加するメンバーにつきましては、このような寄附金でありましても、受け入れがあったかどうかについて確認をして、そういう方については除外をして選定することといたしたい、このように考えているわけでございます。

 その上に、さらにまた利害関係の公表ということで、どういうことまで含意しているかということはちょっと理解ができませんけれども、私どもとしては、できるだけ今回の再検討、再精査につきましては、そうしたことの信頼の上での安全性確認というのが最大に重要なことであるという立場からいろいろなことを考えて処理してまいりたい、このように思っております。

柚木委員 少なくともタミフルの検証について、今そういう御答弁をしっかりいただきましたので、それは大事なことだと思います。

 ただ、それ以外の部分についても、奨学寄附金については、私も、現場のお医者様何人かの方から、あるいは学会の方からもお話を伺いましたが、やはり、例えば、科研費など国からの助成金は限りがあるし、年度内に使わなくてはならない等の制約があり使いにくいが、企業からの寄附は自由がきくし、特定の研究課題のために企業から受ける委託研究費と、それから奨学寄附金ですね、自由に研究費として使える。そういう研究寄附金ほどありがたいものはないと。それで、製薬会社は自社の薬を病院や研究室で使ってほしいから寄附金を出したりするというふうな話もございますし、その他にも同様のお話は、私も昨日、一昨日と、それぞれ現場のお医者さん、研究者の方からも伺っております。

 これはぜひ要望をさせていただきたいと思いますが、そういった寄附金、とりわけ奨学寄附金の取り扱いについて一定のガイドラインを、それぞれ個別ばらばらでやっていても余り、どうかという部分もありますから、厚生労働省としてきっちりとした指針を示すということをお願いして、ちょっと時間もございませんから、次の質問に入りたいと思います。

 インフルエンザ関連脳症という言い方をしたりもするようですが、いわゆる脳症の研究促進について、それからまた、新薬の開発促進あるいはその審査体制の整備について少し御質問させていただきたいと思います。

 まず、タミフル自体がこのインフルエンザ脳症に直接的に効くという形での実証データはないというふうに聞いておりまして、そうした場合に、現状として、脳症に対する特効薬がなかなか見当たらないというふうな話でございます。この脳症の研究について、私はぜひ、現在も進めていただいているとは思いますが、さらに促進をしていただくべきと考えますが、現状と今後の方向性について、ちょっと短く御答弁いただけますでしょうか。

柳澤国務大臣 インフルエンザ脳症は、インフルエンザに罹患した小児等につきまして、意識障害等の脳症症状が出現するものでございます。厚生労働科学研究におきまして、その発症のメカニズム等に関する研究を現在も進めているところでございます。

 これまでの研究から、インフルエンザ脳症の発症には遺伝子の型等が関連することがわかってまいっておりますが、この疾患のメカニズムの解明と発症予防の方法の確立にはさらなる研究が必要と思われまして、来年度も引き続き研究を行うことといたしております。

 より副作用の少ないインフルエンザ治療薬につきましては、医薬品開発全体のこととして、新しい治療法などの研究の成果が速やかに実用化され、新たな治療薬の開発につながりますように、平成十九年度から新たな治験活性化五カ年計画を実施することといたしております。治験の中核病院、拠点医療機関等の実施体制の整備や人材育成に取り組んでいるところでございまして、このような取り組みを通じまして、インフルエンザの疾患の克服に向け、引き続き対策の強化に努めてまいりたいと考えております。

柚木委員 ぜひその推進をお願いさせていただくのですが、その際に、当然、新薬の例えば審査体制等、そちらの整備についても同様に、これはもちろんインフルエンザにかかわらず必要になってくると思うんです。

 今回、医薬品医療機器総合機構、こちらの方の審査体制について少し私も調べてみたんですが、例えばアメリカのFDAなんかに比べて、専従者の数であったり、あるいは審査の透明性、そういった部分について、少なくとも今の日本の状況は決して十分というふうには私は思わないわけです。ぜひこれはお願い、お伺いをしたいのは、まず、そういった審査体制を強化するために、医療機構の専従者を増員するべきではないでしょうか。

 さらに、私が聞いた話で一点気になるので、これはぜひきっちり御答弁いただきたいんですが、これまで、審査の透明性を担保するために、過去五年間に民間企業で従事をした業務については、二年間はそれはやらないということを、国会の審議、参議院の附帯決議と聞いていますが、そこできっちりと決めたものが就業規則に盛り込まれているというふうに聞いているわけです。この三十日に行われる会議において、内閣府に置かれております総合科学技術会議がそういった就業規則の見直しを提言しており、そのことが実際に会議で話し合われるというふうな話を聞いているわけです。

 しかし、これは大変重要なポイントだと思うんですね。これまで、過去さまざまないわゆる薬害事件等の反省にも基づき、そういった審査の透明性を担保する、そのためにそういった規定が盛り込まれているわけですから、これについてはやはりきっちりと維持をしていただく。

 一点目は、専従者をふやす、二点目については、その透明性を担保するための今の規定はしっかりと維持をしていくのかどうなのか、それについて御答弁をいただけますでしょうか。

柳澤国務大臣 私ども、イノベーションの関係の施策を強化しようとしているわけでございますが、その中でも、医薬品の開発、イノベーションということは非常に高い優先順位で考えていかなければならない、こういう考え方をとっているわけでございます。

 その場合に、やはり今委員の御指摘の審査体制の強化ということは不可欠だというふうに認識をいたしておりまして、この審査に当たる担当者の増員というものも今図っているところでございます。今後三年間におきまして倍増をして、四百人以上の体制にするということを考えているところでございます。

 その上で、今委員の御指摘の、就業規則における利害相反といったようなものの確保についてどういう体制をとるかということでございますが、これは特に重要な、安全性という問題にもかかわることでございますので、その改革については慎重の上にも慎重を期してまいりたい、このように考えております。

    〔宮澤委員長代理退席、委員長着席〕

柚木委員 ぜひ、慎重の上にも慎重を期してということでの今の答弁、確認いたしますので、よろしくお願いします。

 きょうはタミフルについてちょっと質問をさせていただいたわけですが、大臣、このタミフルというのがなぜ日本でこれほどまでに使われているのか。やはりここは、厚生労働省、薬事行政、薬がここまで日本で使われることに対しての今後の方向性というのを、今回のこの件を契機に一度ぜひ見直していただきたいとも思います。

 他国なんかでは、インフルエンザは自然に治る病気ですときっちりと国のガイドラインに明記をしている国もあったりするわけですから、新型インフルエンザへの対処、大変な数の備蓄もするわけですが、きょうはそのことを伺う時間はちょっとありませんでしたが、薬の服用についての薬事行政の中における位置づけというものも、ぜひ一度、見直しも含めて御検討いただくことをお願いし、きょうの私の質問を終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。

櫻田委員長 次に、高橋千鶴子君。

高橋委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 きょうは二つのテーマで聞きたいことがございます。

 初めに、障害者自立支援法が成立後一年で一千二百億円規模の見直しをするということになったということは、障害者団体を初めとする運動の成果でもあり、それほどこの法律が矛盾だらけであるということの証左ではないかと思います。

 私は、昨年の当委員会において、障害児に対する自立支援法適用については、負担がふえたことにより療育を断念することがあってはならない、年収八十万円未満など、税金さえ払わなくてよい、あるいは払えない、そういう世帯からまで利用料を取るべきではない、このように主張してきました。

 そこで、まず、四月から、上限の四分の一まで負担が軽減されることになり、年収八十万円以下、低所得一に値する世帯は、一万五千円の利用料から三千七百五十円まで引き下げられます。障害児のサービスを受けている世帯のうち、この低所得一に当たる世帯がどのくらいいるでしょうか。

中村(吉)政府参考人 お答え申し上げます。

 御質問のありました低所得の一の層に当たる層がどれくらいの割合かということにつきましては、私どもとしては、現在、きちっとした数字としては把握してございません。

高橋委員 そのこと自体がちょっとどうかなと思うんですけれども。

 一たん説明を受けたときに、低所得一と生活保護世帯と合わせて大体四八%くらいだという数字を伺っておりますが、よろしいでしょうか。

中村(吉)政府参考人 自立支援法施行前の数字としては、そういうふうに承知しております。

高橋委員 私は、かなり大きな数字ではないかなと思っているんです。四分の一まで引き下げになりました。しかし、現実に数字で見ますと、まだまだ負担は大きいなと思います。それと同時に、そういう世帯ならば生活保護基準以下ではないのか、そのように思います。

 そこで、境界層という言葉がございます。生活保護基準まで到達しない水準まで利用料や医療費の自己負担分を最大でゼロ円まで引き下げる。つまり、利用料をゼロにすれば保護までには至らない階層、そういう階層を境界層というわけでありますが、この対象は一体どのくらいあるでしょうか。

中村(吉)政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のありました障害者自立支援法の利用者負担に係る境界層減免の措置につきましては、障害福祉サービスの利用者が利用者負担を支払うことにより要保護者となる場合において、当該利用者が保護を必要としない状態になるまで負担を減免する仕組みでございます。

 ただ、先ほど申し上げましたように、自立支援法施行後のこの措置の該当者ということにつきましては、現在、数値を把握してございません。

高橋委員 実は、私、この問題は何度か問題意識を持って伺ったことがあるわけなんです。どのくらいの方が救済されているのかということが全くつまびらかにならないということなんです。私はやはり、制度上負担がゼロになる、三千七百五十円だけではなく、医療費もあるわけですから、全体としてはかなりの負担軽減になるわけです。ですから、その資格のある人、境界層として救済されるべき人はすべて救済されるべきだと思っております。これは介護保険でも同じことが言えると思うんです。

 ところが、それがなぜ全体像もよく見えないのか、あるいは救済されたという話が余り聞こえてこないのか。大きな障害がございます。平成十八年三月三十一日の課長通知を見ると、福祉事務所長は、保護の申請に応じ、保護開始時の要否判定を行った結果、当該申請者が境界層対象者であることが明らかになった場合、別添の証明書を対象者に交付するものとし、負担軽減措置の申請に当たっては、当該証明書を添えて提出するよう教示することとされています。

 つまり、生活保護の申請をして却下されたという証明書がなければ、境界層ということを証明することができないわけです。本人は生活保護を受けなくても頑張りたい、そう思っている人が、わざわざ生活保護を申請し、断られなければ境界層としての減免を受けられない。これはおかしいのではないでしょうか。何とかこれは改善できませんか。

中村(吉)政府参考人 お答えいたします。

 境界層減免の措置につきましては、先ほどのような性格から、障害者自立支援法の利用者負担を支払った場合に要保護者となるか否かを適正に判断するということが必要でございます。このため生活保護の仕組みを活用しているものであり、必要な手続であるというふうに考えております。

高橋委員 確かに、お答えは、生活保護を受けるだけの世帯であるということを調査する必要があるというお話だったと思うんです。

 ただ、実際にそれだけの人がどれほどいるのかということが全くわからないわけですね。だけれども、五割近くの人が生活保護世帯と低所得である。あるいは低所得二の人だって十分該当するかと思うんですね。まず、それを知らずに、利用していない人がいるのではないか。知っていても、そこまでして、屈辱的な思いをしてまで受けなきゃいけないのかという方もいらっしゃる。しかし、税金を払っていないわけですから、あるいは母子家庭だったり、だれが見ても、例えばケースワーカーさんですとか民生委員ですとか、だれが見ても証明してあげられることは十分可能ではないか、そういう仕組みを考えてもいいと思うんです。

 これは大臣に伺いたいと思います。当然受けられる資格を持っていながら、その手続のために受けられない人がいるということは少なくとも避けるべきだと思いますが、いかがでしょうか。

柳澤国務大臣 生活保護境界層の方々に対する措置につきまして、手続面でもう少し考えられないか、こういう問題提起をいただきました。

 今般、法の円滑な運用を図るため、現場の声を十分に踏まえまして、在宅、通所施設利用者について負担上限を現行の四分の一に引き下げるなど、もう一段の負担軽減措置を講ずることとしているわけでございます。

 私どもとしては、これらの軽減措置が必要な方々に確実に適用されることによって、手続面を含めて、負担軽減の趣旨が実現できるというふうに考えているところでございます。

高橋委員 負担軽減の趣旨が実現できるように思うというふうな答弁だったかなと思うんですけれども、私が述べているのは、資格を持っているのに受けられない人がいるのはおかしいのではないか、そのこと自体が、せっかく軽減策を設けているのにその趣旨が生かされないということになるのではないかということを指摘しているわけであります。

 昨年の十二月六日に、障害者自立支援法の問題で参考人質疑をやりました。そのことでは、本当に多くの皆さんも、まだ記憶に新しい、本当に関係者の皆さんの切実な訴えが胸に響いた質疑であったなと思うわけですけれども、あのときに、障害乳幼児の療育に応益負担を持ち込ませない会の代表の池添参考人の発言が大変感動を呼んだわけです。

 その会がことしの二月にまた全国集会をやって、全国の取り組みや実態などをまとめているんですけれども、その中で、宮崎の保護者がこんなことを言っているんですね。「今まで、給食費も含めて二千二百円でしたが、今では一万円前後になって、さらに園が遠いので通園にかかる燃料代が三〜四万円かかります。家計は厳しいです。 最近、おたふく風邪で一週間お休みしていたのですが、家から出なければお金がかからないのだと実感しました。しかし、家にずっといるというのは、私も子どもも変になりそうなぐらい大変なことだと思い、がんばって通おうと改めて思っています。」私は、家から出なければお金がかからないと気がついたというこの一言が非常に胸に響くわけなんです。

 せっかくの自立支援法なのに、もうお金がないから、ではやはり家にいようかというふうになるのであれば、全く法律の趣旨が生かされないじゃないか。そのことを本当に受けとめていただきたいと思うんです。

 施設関係者の方は、こんなことを言っています。「新しく入ってくる子どもへの説明会では、希望がたくさんありました。今までは、「お金のことは心配しないで、この子のことを大切にしよう」といってきました。今、説明会では、「お金は○○円かかります」といわざるをえない状況です。それが、どの子にも必要な、早期の取り組みが行えるだろうかと心配しています。」私は、こういう皆さんたちの希望が、もう断念せざるを得ないということにはならないように、まずは、来年に検討されている自立支援法の見直しに当たっては、抜本的な応益負担の撤回を求めていきたいと思います。

 同時に、今できること、少なくとも制度としてあることはそれが受けられるように、厚労省として知恵を使うべきだ、英断をするべきだと思いますが、もう一度伺います。

中村(吉)政府参考人 お答えいたします。

 制度のPRにつきましては、私どもとしてもきちんと進めていきたいというふうに思っております。

 それから、境界層減免の措置につきましては、介護保険にもある仕組みでありますし、市町村の事務の負担の軽減ということからも、先ほど答弁いたしましたように、必要な措置であるというふうに考えております。

高橋委員 きょうは指摘にとどめます。大臣にぜひ、税務の専門家でありますから、本当に、所得がないことがはっきりしているのに、生活保護の申請をしなければならないという壁によって受けられない方たちがいるんだということをしっかり受けとめていただいて、救済ができるように検討していただきたいと思うんです。あわせて、このことが介護保険やその他の問題にも波及するということ、本来ならばあるべき制度なのですから活用していただきたいということは指摘をしておきたいなと思っております。

 次に、三月二十五日に発生した能登半島地震について伺います。

 私からも、お亡くなりになられた方の御冥福をお祈りするとともに、負傷された方々の一日も早い回復をお祈りしたいと思います。

 被災地の復旧復興と生活の再建に政府も国会も全力を挙げるべきだと考えています。現時点では、まだ余震が続いていることもあり、安全の確保が最優先であります。避難所生活が長引けば、厚労省が既に通知をしているように、民間宿泊施設の借り上げ等安全な居住施設の確保、あるいは被災者の心のケアや健康面での対策も求められています。同時に、現場では、必要な情報が被災者に行き渡らず、非常に混乱をしています。使える制度がわからなかったり、わかっていても、手続が煩雑では困ります。

 そこで、まず、災害救助法の活用についてですが、自治体の特別基準の問題など、例えばこれらの手続については、電話一本でとりあえず手続できるようになっていると思いますが、こうした簡素化を徹底するべきと思います。この点についてどうか。また、あわせて、住宅の応急修理制度の有効活用を積極的に考えるべきと思いますが、いかがでしょうか。

中村(秀)政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員から御指摘のありました、高齢者、障害者等、特に被災者は高齢者の方が多いということで、避難所の問題、廃用症候群関連の問題、心のケアの問題、きちんとやる必要があると思っております。

 災害救助法につきましては、三月二十五日十六時三十分に石川県で知事が決定をいたしておりまして、七市町について災害救助法が発動されております。今委員からお話がございました、そういう災害で困っておりまして救助法の手続をとる場合には電話一本で対応していただいて構わない、こういうことで、まさに災害時でございますので、きちんとやっております。

 また、災害救助法では、住宅の応急修理がございます。災害のために住家が壊れたということ、全壊されたお宅もあるわけですが、特にこの応急修理につきましては、半壊等、そういったことがあるわけで、現在のところ百八十六戸半壊いたしておりますが、この応急修理をきちんとする必要があるというふうに考えております。この点につきましては、市や町において被害の調査が実施されているところでございます。住宅の応急修理制度の利用を希望されているかどうか、被災者のニーズを踏まえて、応急修理を実施するかどうか検討中であると聞いております。

 私どもも、県とよく連絡をとるということで、厚生労働省の担当官も、現地の本部のほか、こういう現地の事情を聞いて応急修理等についても迅速に対応してまいりたいということで、石川県の方にもきょうから派遣しておりますので、今後この仕事はふえてくると思いますので、きちんとやってまいりたいと考えております。

高橋委員 担当官を現地に派遣して、相談に応じて迅速に対応したいという答弁がありました。この点については本当にありがたいと思っております。

 そこで、重ねて伺いますが、私は、〇四年の新潟、福井の豪雨災害のときから、この住宅の応急修理の活用について質問を重ねてまいりました。その後、中越の地震のときには、県単事業と合体して、この制度が大変広範に活用されました。

 ただ、中越では、被災の規模が大変大きかったこと、またスピードが求められる、そういう条件があったものですから、住宅の応急修理を受けられる被災者の要件は、被災者生活再建支援法に準じた要件を課しました。このことによってかなり条件が狭められてしまったわけですけれども、新潟においては、この基準に満たなくても、所得制限のない県単制度がカバーしておりました。

 ただ、問題は、このときの中越につくった基準がずうっとその後も、その後の宮崎ですとかいろいろな被災地で運用されて、固定化してしまったわけですね。

 本来、災害救助法は、その運用と実務において、みずからの資力をもってしては応急修理ができない者であることとのみ書いているのであって、所得が何万以下とかそういう細かいことは書いておりません。まして、被災者が一日も早く日常の不可欠な生活の部分を取り戻すために応急的に行う修理でありますから、本来、その際に、所得が何百万以上であるかないか、そういうことは考慮している場合ではないというのがこれまでの解釈だったと思うのであります。

 そういうことを確認させていただきたい、自治体が判断すればよいことだと思いますが、いかがでしょうか。

中村(秀)政府参考人 お答え申し上げます。

 災害救助法の住宅の応急修理の概要でございますけれども、みずからの資力で応急修理することができない者、こういうことでやってまいりまして、中越地震前は、生活保護世帯、特定の資産のない低所得世帯等、こういうことでございました。

 しかし、新潟の中越地震におきまして、被災者生活再建支援法の所得要件と整合性をとった運用をしている、そういうことでございます。これは、災害救助法に基づく応急修理が、被災者生活再建支援法による支援と一体的に実施する、こういうことでございますので、制度間の整合性を図るという観点から、こういう運用をさせていただいているところでございます。

 また、新潟県の中越地震以降の災害におきましては、新潟県中越地震でそういう取り扱いをさせていただいたということ、被災者の間で同一の災害や災害ごとに所得要件が変わることはある意味で不公平ではないかと考えまして、被災者生活再建支援法に準拠した要件とする運用を行わせていただいているところでございます。

 基本的には、年収の合計が五百万円以下というのが基本の制度でございまして、これがいわゆる中越地震前は、生活保護世帯あるいは特定の資産のない低所得世帯という定義でございましたけれども、その定義のものは今の被災者生活再建支援法の所得要件で大体カバーされている。また、世帯主の年齢が上がりますと、五百万円というのが七百万円に四十五歳以上ではなるとか、特に六十歳以上または要援護の御世帯は年収八百万円というような要件でございますので、大体、そういった意味で、みずからの資力で応急修理することができない者ということで整合性がとれているのではないかと認識しているところでございます。

高橋委員 時間がなくなりましたので指摘にとどめますが、今の答弁は大変不満であります。

 自治体が判断できるということをちゃんと厚労省がこれまで説明してきたわけです。それを、被災者生活再建支援法に準ずるということは、応急救助の性格を曲げてしまったということになります。

 十六年度の指摘からは所得制限の幅が大きく広がった、それは評価したいと思いますが、これを支援法と重ねてしまったことによって、今までなかった枠をはめてしまった、これは非常に重大な問題だと思うんですね。

 これはまた、引き続いて次の機会に指摘をしたいと思います。終わります。

櫻田委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時十分散会


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