衆議院

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第10号 平成19年4月4日(水曜日)

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平成十九年四月四日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 櫻田 義孝君

   理事 伊藤信太郎君 理事 鴨下 一郎君

   理事 谷畑  孝君 理事 宮澤 洋一君

   理事 三井 辨雄君 理事 山井 和則君

   理事 福島  豊君

      新井 悦二君    井上 信治君

      石田 真敏君    宇野  治君

      加藤 勝信君    川条 志嘉君

      木原 誠二君    木村 義雄君

      岸田 文雄君    菅原 一秀君

      杉村 太蔵君    高鳥 修一君

      戸井田とおる君    冨岡  勉君

      長崎幸太郎君    長島 忠美君

      林   潤君    原田 令嗣君

      広津 素子君    福岡 資麿君

      古川 禎久君    馬渡 龍治君

      松浪 健太君    松野 博一君

      松本  純君    松本 洋平君

      山本 明彦君    内山  晃君

      大島  敦君    菊田真紀子君

      小宮山洋子君    郡  和子君

      園田 康博君    田名部匡代君

      筒井 信隆君    西村智奈美君

      細川 律夫君    柚木 道義君

      坂口  力君    古屋 範子君

      高橋千鶴子君    阿部 知子君

    …………………………………

   議員           西村智奈美君

   議員           小宮山洋子君

   議員           山井 和則君

   厚生労働大臣       柳澤 伯夫君

   厚生労働副大臣      石田 祝稔君

   厚生労働副大臣      武見 敬三君

   厚生労働大臣政務官    菅原 一秀君

   厚生労働大臣政務官    松野 博一君

   政府参考人

   (厚生労働省医政局長)  松谷有希雄君

   政府参考人

   (厚生労働省医薬食品局長)            高橋 直人君

   政府参考人

   (厚生労働省労働基準局長)            青木  豊君

   政府参考人

   (厚生労働省職業安定局長)            高橋  満君

   政府参考人

   (厚生労働省雇用均等・児童家庭局長)       大谷 泰夫君

   政府参考人

   (厚生労働省年金局長)  渡辺 芳樹君

   厚生労働委員会専門員   榊原 志俊君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月四日

 辞任         補欠選任

  加藤 勝信君     古川 禎久君

  清水鴻一郎君     長島 忠美君

  西川 京子君     宇野  治君

  吉野 正芳君     石田 真敏君

  郡  和子君     西村智奈美君

  柚木 道義君     小宮山洋子君

同日

 辞任         補欠選任

  石田 真敏君     山本 明彦君

  宇野  治君     松浪 健太君

  長島 忠美君     馬渡 龍治君

  古川 禎久君     加藤 勝信君

  小宮山洋子君     柚木 道義君

  西村智奈美君     郡  和子君

同日

 辞任         補欠選任

  馬渡 龍治君     広津 素子君

  松浪 健太君     西川 京子君

  山本 明彦君     吉野 正芳君

同日

 辞任         補欠選任

  広津 素子君     清水鴻一郎君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第三七号)

 短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律の一部を改正する法律案(西村智奈美君外二名提出、衆法第九号)


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     ――――◇―――――

櫻田委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律の一部を改正する法律案及び西村智奈美君外二名提出、短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。

 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 両案審査のため、来る十日火曜日、参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

櫻田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 引き続き、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、政府参考人として厚生労働省医政局長松谷有希雄君、医薬食品局長高橋直人君、労働基準局長青木豊君、職業安定局長高橋満君、雇用均等・児童家庭局長大谷泰夫君、年金局長渡辺芳樹君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

櫻田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

櫻田委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。福岡資麿君。

福岡委員 自由民主党の福岡資麿と申します。

 本日は、大変重要な法案の委員会審議において冒頭に質問の機会を与えていただきましたことを、心より感謝を申し上げます。

 私は、昭和四十八年、一九七三年生まれであります。いわゆる団塊ジュニア世代、第二次ベビーブーム世代と言われるところで生まれました。私が生まれた年というのは、出生数二百九万人ということでございまして、団塊の世代以降でいいますと、一番人口が固まっている世代に生まれた者であります。

 しかしながら、私たちが大学を卒業して就職をするときは、就職氷河期と言われる大変厳しい時代でした。普通に四大を卒業すると一九九六年になるんですけれども、そのときの四大の就職率が六四%と非常に低い数字の中で、就職先がなく、やむを得ず非正規社員になった私の知り合いとかもたくさんいるわけです。

 そういった社会現象の中で、今、少子化問題等が社会現象として問題になっておりますけれども、私たちの世代は結婚をしないということも言われておりまして、その大きな理由の一つに、経済的に自立できていないということであったり、また将来的な不安ということを理由にする方がたくさんいらっしゃいます。

 やむなく非正規社員となった方々に対して、均衡ある待遇を確保することや社会保険を適用していくこと、また非正規労働者の正規労働者への転換の道の確保というのは、さまざまな社会問題に関連するとても重要なテーマだというふうに思っています。また、それは安倍政権が掲げる再チャレンジの柱の一つであるというふうにも承知をしております。また一方で、価値観が多様化する中で、自由度の高い就業機会を望む労働者もふえてきていますし、企業にとっては、業務内容の特性に応じた雇用を可能とすることは、ともに有益なことというふうにも言えます。

 しかし、今や働く人の四人に一人とも言われる、いわゆるパートと言われる層が、低い労働条件をのむことを余儀なくされているとしたら大変問題であるというふうに思っておりまして、この法律にうたわれています均衡のとれた待遇ということを、題目だけでなく実のあるものとしていくことがとても重要であるというふうに思っております。

 そういった観点から本日は質問をさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。基本的に政府案を中心に質問させていただきまして、若干、民主党の案にも質問させていただきたいというふうに思っています。

 質問の順番を若干変更いたしまして、まず、均衡待遇ということにつきましてお伺いをしたいと思います。

 政府案の理念というのは、均衡待遇というふうになっています。この均衡待遇というのは大変重要な理念でありますけれども、均衡を図るという言葉だけでははっきりとしない部分が多いというふうに思います。

 どのような労働者にどのような措置を講ずるのか。何をもって均衡というのか。そういった抽象的な概念をきめ細やかに、そしてわかりやすく明らかにしていくことが大切であると思いますが、その点につきまして政府案はどのように考えているのか、御説明をいただきたいと思います。

大谷政府参考人 お答え申し上げます。

 パート労働者の就業の実態は極めて多様でございます。管理職としての役割を担い、または担い得るような方もおられますし、また一方、短い時間で、あるいは補助的な仕事をする方まで、非常に多様な方がおられます。

 政府案におきましては、こういった実態を踏まえまして、一つは、すべてのパート労働者を対象とした均衡待遇を確保する、特に正社員と同視できる、同じと見ることができる働き方をしておられる方を対象とした差別的取り扱いの禁止、これを求めることとしております。また、パート労働者の働き方につきまして、職務の内容あるいは人材活用の仕組みなどによりまして、正社員と比較してどのような労働者にどのような措置を講ずべきか、法律上、きめ細かに規定しているところでございます。

福岡委員 政府案では、パート労働者を幾つかのカテゴリーに分けて、正社員との働き方の違いに応じてグラデーションをつけていくというような考え方を承っております。

 この点につきまして、民主党案についてひとつ質問させていただきたいと思いますが、民主党案では、すべてのパート労働者に対して差別禁止ということをうたっておられます。差別禁止というのも大変立派な理念でございますけれども、差別禁止という言葉だけではどういったことなのかはっきりしないというふうに思っておりまして、具体的にどのような労働者にどのような措置を講じていかなければいけないのかということが民主党の法案だけを見ていてもわからない状況です。

 どのような労働条件が差別に当たるのか、そういった具体的なお考えについてお聞かせいただきたいと思います。

西村(智)議員 御質問いただきました、具体的な考えはあるのかということでありますけれども、私たち提案者といたしましては、政府案においても実際にどういう具体的な差別禁止、均衡処遇を行うのかということについては明らかではないというふうに承知をしております。具体的なことについては、政府案第十四条で、指針において定めるというふうになっております。

 そこのところをぜひ御理解いただいた上で、私たち民主党の考え方について御答弁申し上げますと、民主党案におきましては、すべてのパート労働者を対象として差別的取り扱いを禁止するとはいいましても、すべてのパート労働者の賃金等を、就業の実態の違いを無視して、全く正社員と同じにするということを考えているわけではありません。その仕事の内容や転勤のあるなし、言ってみれば、職務の範囲、責任の大きさなど、就業の実態に応じてある程度の違いが生じることを包含しているという考え方でございます。そうした就業実態に応じた比例的な取り扱い、比例的な平等であれば許されるものと考えております。

 しかし、通常の労働者と異なる待遇が許容されますのは、どのようなパート労働者についても、その就業実態に応じた比例的な取り扱いとして許容される範囲においてでありまして、その限度を超える不合理な取り扱いは許容しないという基本的な考え方をお示ししているところでございます。

福岡委員 まず承っていて感じましたのは、政府案もはっきりしない部分が若干あることは確かでございますけれども、ただ、民主党案につきましても、まさに指針において定めるという言い方で、どのような層に対してどのような措置を講じていくのかというのが、私が聞いていてもはっきりしないというふうに思っていまして、その点をしっかり明らかにしていくということが大切だと思っております。

 民主党案についてもう一点お聞きさせていただきたいと思いますが、同一価値労働同一賃金ということをうたわれております。これも何をもって同じ価値とするのかというのが全くわかりませんで、何を同じ価値というふうにみなすのか。また、価値が同じというのをだれが定めるのか、だれが決めるのかといったことも全く見えてこないわけでございます。その点につきましてどういうふうに考えていらっしゃるのか、お聞きしたいと思います。

小宮山(洋)議員 同一価値労働同一賃金、何をもって同一価値の労働とみなすのかはっきりしないということですが、お答えをしたいと思います。

 同一価値労働同一賃金の原則というのは、異なる職種、職務であっても、労働の価値が同一または同等であれば、その労働に従事する労働者に、就業形態の違いにかかわらず同一の賃金を支払うことを求める原則というふうに言われております。

 それで、何をもって同一の価値の労働と評価するのかにつきましては、多くの国でその分析的な職務評価方法がとられておりまして、例えばカナダのオンタリオ州では、一つは知識、技能、二つ目に精神的、肉体的負荷、三つ目に責任、四つ目に労働環境といった四つの要素をもとにしまして、四百に上る項目で、これはペイエクイティー法という中にきちんと定められておりますが、異なる職種や職務の価値を比較してやっております。こういう実例が海外にもございます。

 日本でも、これは男女差別の判例ですけれども、平成十三年九月二十日、京都地裁で京ガス事件の判決というのがございまして、これは、コンピューターを扱う仕事をしている女性が、同期入社、同年齢の男性、この男性は現場監督をしていると承知をしておりますけれども、それと比較をして差別を受けたとして、会社に、不法行為に基づいて差額賃金相当額の支払い等を求めたものなんです。このときに、明らかに職種の異なる職務について価値的な評価を行って、同一価値であることを認めた画期的な判決が出ております。

 この場合は、原告の女性と男性社員の職務の価値評価をするに当たりまして、両者の職務内容を具体的に認定して、各職務の遂行の困難さの判断について、今のカナダのオンタリオ州と似ているんですけれども、一つは知識、技能、二つ目に責任、三つ目に精神的な負担と疲労度、これを主な比較項目として設定しまして、このカナダのペイエクイティー法を研究している森ます美教授の鑑定意見書や被告の会社の管理職二名の証言、原告本人尋問などに基づきまして、原告と男性社員の従事している職務の困難さにさほどの差異はないと認定しまして、各職務の価値に格別の差はないと認め、おおむね八五%が原告の本来受給すべき賃金額と認定をしておりまして、この件については、平成十七年に、これを多少上回る形で会社側と和解をしている、こういう例が日本にもございます。

 それで、だれが決定するかということにつきましては、これは本会議でもお答えをいたしましたけれども、パート労働者と通常の労働者の均等待遇の確保、これは各事業所ごとにその物差しではかる仕組みをつくらないと、日本の働き方では難しいので、今回私どもは、各事業所の中に検討委員会を設けて、事業主の代表、それから正社員の代表、パート労働者の代表が入りまして、そこで個々の事業所ごとに労使間で協議をして定めていく。

 このような形のものは、日本の中で同一価値労働同一賃金を定める物差しがない中で、これで最初からすべてうまくいくとは私どもも思っていませんが、政府案は何もそのことについて提示をしていない中で、私どもは一歩踏み込んで、日本で考えるとすれば、同一価値労働同一賃金を定めるには、こういう物差しを設定する仕組みをここに入れたということを御評価いただきたいと思っております。

福岡委員 今お話を承っておりまして、まず、同一価値労働というのは、確かに欧米においてはそういった概念があることは承知をしておりますけれども、日本では全くそういった基準というのが、今社会上は構築されていないわけでして、それをどうするかというのは非常に大きな問題だと思っています。

 また、今おっしゃいました民主党案においても、一般の正規社員の方と非正規社員の方々の待遇を同じにしていこう、均衡にしていこうという概念のもとで、本当に職場の中で、正規の代表、非正規の代表ということで分けて集まっていただいて、そこで議論を、それぞれの利益を代表するということで分けるということが、お互い一緒のことを目指す概念からすると、どうなのかなということを私は思うわけでございます。

 もう時間も結構たっておりますので、ちょっと政府案について質問をさせていただきたいと思います。

 まず、政府案につきまして、パート労働者の待遇については、このたび事業主に説明責任が課されることになりました。実際にパート労働者の方々は、だれからどのような説明を受けられることになるのかといったことにつきまして、お考えをお聞かせいただきたいと思います。

大谷政府参考人 お答え申し上げます。

 パート労働というのは、短時間でありますことから多様な働き方になりますため、一律の雇用管理を行いがたい雇用形態であります。個々の労働者の労働条件が、就業規則のみによっては明確にならないという場合も多いと考えております。

 このため、パート労働者が、みずからの処遇がどのような事項を考慮して決定されているかということについて疑問を持っても、通常はその説明を事業主に対して求めるということはなかなかなくて、十分に納得できないまま働いているケースが現状では少なくないというふうに見られているところであります。このような状況ではパート労働者がその有する能力を十分に発揮しがたいということで、その納得性を高めますために、本改正法案では、パート労働者が、みずからの待遇の決定理由について事業主に対して説明を求めることができるとしたものでございます。

 また、合理的な理由のない待遇をしている事業主は、説明を求められた際にきちんと応じることができないということも想定されるわけでありますが、そういったことが明らかになりました場合には、パート労働法上の義務を履行していないものとして行政指導等の対象となりますので、この説明責任によって、不合理な待遇を抑止するという効果が相当期待されると考えております。

福岡委員 この点、しっかりと対策を講じていただくことが必要でございまして、今おっしゃったように、このたびの一番大きな進展、前進の一つは、待遇の違いを要求に応じて説明しなければならないということが定められたことだというふうに思っています。それをしなければいけないことで不均衡な処遇を行いづらい環境を職場の中でつくっていくという意味では、この点をしっかり機能させていくことをお願いさせていただきたいというふうに思っています。

 次に参ります。

 今回、いろいろな均衡の待遇という中で、正社員と同一視できる労働者の方々に対して差別的な取り扱いの禁止ということが定められました。これは、幾つか要件がございまして、例えば、仕事の中身とか責任であったり、人事異動の有無であったり、また契約期間といったことがその要件として挙げられているわけです。

 契約期間につきましては、期間の定めのないパート労働者を対象とするというようなことがうたわれておりまして、また一方で、有期的な契約であっても、それを反復継続して更新して無期と同等にみなされるものについては、対象にするというようなことも言われているわけでございます。これは一般的に、今、契約上無期というのは約三割ぐらいと言われていまして、実態上、反復継続してずっとその雇用につかれている方、その方がしっかりと均等待遇の中に入っていく、差別禁止に入っていくという措置を講じていくことが、この法案にとっては非常に重要な点であるというふうに思っています。

 そういう意味では、有期契約を反復更新している人にも光を当てていく観点から、政府はどのように考えているのかということについて、お聞かせをいただきたいと思います。

大谷政府参考人 お答え申し上げます。

 日本の雇用システムにおきましては、主に、ある程度長期の雇用を想定して、人材育成を行うとともに待遇の決定が行われております。通常の労働者と同視すべきということであるかどうか、それを見る指標としまして、ある一時点における職務内容だけではなくて、それが長期に見てどうなるかという観点も無視できないということから、今回の改正の中で、職務の内容、それから人材活用の仕組みのほかに、契約期間という要件を定めたところでございます。

 この契約期間の考え方について、今御指摘があったところでありますけれども、今回の法律の改正では、期間の定めがないという契約のみならず、期間の定めがある契約であっても、反復更新することにより期間の定めがない場合と同視できるものを含むということを法文上も明記いたしたところでございます。

福岡委員 その反復継続、どういう場合がそういった事例に当たるのかということを、今後しっかりとつまびらかにしていただきたいというふうに思っております。

 次に参ります。

 今回の法改正で、パート労働者は、自分の待遇に関して不均衡ではないかという疑問が生じた場合、そういったいろいろな不満が生じた場合はどこが相談の窓口になるかということについてお伺いをしたいと思います。

 当然、労使関係というのは利害が対立するわけですし、使用者側も善意なところばかりとは限らないというふうに思っておりまして、そういった労働者に不均衡な待遇をもし強いる企業があったとすれば、そこで立場の弱い労働者が泣き寝入りをしてしまうようなことがあっては一番いけないことだというふうに思います。

 そういった観点から、どこに相談に行けばしっかりと話を聞いてもらえるのか、また、話を聞いてもらった結果問題があるとすれば行政としてどのように対応していくのかといったことにつきまして、大臣の見解をお聞かせいただきたいと思います。

柳澤国務大臣 今回の法律におきましては、新たに「紛争の解決」という章を一章設けているわけでございます。

 紛争解決のプロセスの基本は、まず第一には苦情の自主的解決ということでありまして、そういう事業者は、短時間労働者から苦情の申し出を受けたときには、苦情処理機関というものを組成しまして、そしてその処理をゆだねる等自主的な解決を図らなければいけませんよということが、いけませんよというか、努めるんですよということが書いてございます。

 それからその次に、そういうことでもなかなかうまくいかないという場合には、今度は都道府県労働局長に対していろいろな働きかけをすることによって、この局長が紛争の両方から援助を求められるという形になりまして、紛争の当事者に対して必要な助言、指導、勧告を行うことができる、こういうことでございます。

 それと、苦情の申し出あるいは援助の申し出をした短時間労働者がその後事業主によって不利益取り扱いにならないようにということも念のため書いてございますけれども、いずれにいたしましても、したがいまして、相談ということになりますと、都道府県労働局というものが非常に大きな存在になっているということは、この法文の規定からも明らかでございます。

 具体的には、雇用均等室というものがございます。雇用均等室のスタッフでは少ないのではないかと言う方も、そういう御指摘もありまして、全国に約三百カ所設けられている総合労働相談コーナーということで、よろず相談所のようなところが設けられておりますから、基本的にはここに相談をしていただくということがよろしいかと思うわけでございます。それがさらに専門的ないろいろな問題に深まっていった場合には、あくまで雇用均等室それから労働局全体で適切に処理する、こういう体制でこの法律の執行に万全を期してまいりたい、このように考えております。

福岡委員 不満がありましたときに、本当に身近なところに気軽に相談に行ける窓口をたくさん設けるということは大変必要なことだというふうに思いますので、そういった観点からも施策を進めていただきたいというふうに思っておりますし、今回の政府案におきましては、企業にとっては努力義務の部分におきましても行政指導の対象になるということでございますので、そこで利害が対立した場合に行政としてもしっかりと光を当てて話し合いに応じていくという姿勢をしっかりと明示していただきたいというふうに思います。

 次に参ります。

 今、経営環境の非常に苦しい中でも、均衡待遇の確保に積極的に、自主的に取り組もうとしているいろいろな企業が出てきております。具体的な例を挙げますと、アパレルのワールドさんであったりユニクロさんであったり、そういった方々が非正規社員を正規社員に転換していくという施策を独自に講じておられるということは大変すばらしい流れだというふうに思います。このような事実を報道等を通じて広く知らしめていくことで、労働均衡に取り組んでいる企業のイメージがアップしたりすることで、それがその企業の業績の改善等につながっていくようなことができれば、その後に続いていく企業もどんどん出てくるだろうというふうに考えています。

 しかし、そうはいっても、大手企業はいいんですけれども、中小企業、中小零細企業等は必ずしもそうはいかないのではないかというふうに思っていまして、景気回復の波も中小企業、中小零細企業にはまだまだ届いているとは言えない中で、均衡のための負担の増加ということに耐えられない中小企業もたくさんいるのではないかというふうに推測をされます。また、中小企業であれば、そういった措置を講じることによるイメージアップによる業績効果というのもさほど期待できないわけです。

 しかしながら、その中小零細企業でも積極的に均衡処遇に取り組んでもらう必要性を考えると、そういった熱心に取り組む中小零細企業に対しても、国の支援というか、国がしっかりと光を当てていくということが必要だというふうに思っています。

 昨日の質問にもありましたが、具体的に国としてどのような支援を行っていくつもりなのかといったことにつきまして、お伺いをさせていただきたいと思います。

大谷政府参考人 今回の法案を作成する過程の中でも、経営が非常に苦しいという中小企業がある中で、しかし、今回の法律の趣旨に御理解いただいて、今回政府提案のところまでこぎつけたというのが実情でございます。

 今御指摘がありましたとおり、中小企業の負担軽減というのは非常に重要な課題であると考えております。このため、今回のパート労働法の改正を受けまして、パートタイム労働者の均衡待遇を推進しようとする中小企業そのもの、またその中小企業団体、こういったものに対しまして、法に基づく指定法人であります短時間労働援助センターを通じまして助成金を支給し、支えていきたいということを考えているところでございます。

福岡委員 ぜひともしっかりとした対策をお願いさせていただきたいというふうに思っております。

 もう時間も参りましたので、最後に大臣に質問させていただきたいと思います。

 冒頭も申しましたように、この法案は大変重要な法案でございまして、また、安倍政権が掲げる再チャレンジ施策の大きな柱を占める重要な法案でもございます。そういった観点から、今回のこのパート労働法の改正に対しましての大臣の決意、そして意気込みにつきまして、最後にお聞かせをいただきたいと思います。

柳澤国務大臣 最近の労働市場の特徴ですけれども、一つは、グローバリゼーションの中で、日本の企業ももろもろの面で構造改革をしていかないと国際的な競争力において劣ってしまう、こういうようなことで、いろいろな形のビジネスモデルが模索されてきた、こういう背景が一つあります。それからもう一つは、労働者の側にも、時間とか自己研さんとか、あるいは家事、育児というようなことを理由として働き方の多様化を求める、こういう流れが出てきておりまして、昔と比べまして随分違った形になっているわけでございます。

 そういう中で、私どもの課題として考えておりますのは、いわゆる非正規と言われる人たちが、みずから選択したのではなくて、つまりやむを得ずそういう労働形態を選んでいるというような方がいらっしゃる、これはできるだけ正規の方に移行させていきたい、こういう考え方を持っております。

 それからまた、先ほど挙げたいろいろな個別の理由でもって非正規、特にパートのような労働形態を選んでいる方々についても、やはり処遇がしっかり均衡というか、そういうものが確保されなければいけない。単に労賃が安いからそれを使ってしまうんだというようなことがあってはならなくて、それにふさわしいきちっとした処遇を得ていくということが大事であります。

 したがいまして、今度のパート労働法というのは、この二つ、正規社員への移行と、それから、パートを選択してこれから先もパートで頑張っていこうというような方々についてもそれにふさわしいような処遇を確保する、これが均衡ある処遇ということになるわけですけれども、そういうことを確保しようということでありまして、今のこのかなり変貌を遂げた労働市場の中で、それをできるだけ正常化すると同時により充実させていく、こういう考え方で今回のパート労働法の改正が行われようとしているということをぜひ御理解いただきたい、このように考えております。

福岡委員 今回のこの法改正は、いわゆる非正規と言われる方の労働環境の改善に大きな一歩を果たす法案であるというふうに思います。しっかりとこの法案を機能させていただくことを心からお願いさせていただきまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

櫻田委員長 次に、坂口力君。

坂口委員 坂口でございますが、久しぶりに質問させていただきます。

 前にいつしたのか思い出しているんですけれども、なかなか思い出せませんで、たしかもう厚生労働省になりましてからは一度もいたしておりませんから、その前、新進党のときに、今民主党におみえになります岡田克也さんが筆頭理事で、そのもとで質問をさせていただいた、介護保険のときに質問をさせていただいた、それ以来でございますから、歴史はかなり動いているな、こう思いながらここに立たせていただいたわけでございます。

 それにいたしましても、厚生労働省というところは次から次へといろいろなことが起こるところですね。大臣も副大臣も、たまったものじゃないというふうに思いながら御努力いただいているのではないかというふうに思っております。

 民主党の皆さんには申しわけなかったんですが、民主党の皆さんが出していただいている法案にも本来ならば質問すべきだというふうに思いますが、立派な案でございますので質問は割愛させていただきたいと思っております。

 さて、パートの問題を少しお聞きしまして、後半、タミフルの話、看過できない問題がございますので、少し聞かせていただきたいと思っています。

 パートで働く労働者に対しましては、できるだけ多くの人に正規労働者と同じような扱いをする、そういうふうに思いますと、経営者の皆さん方からは当然のことながら反対がある。経営者の皆さん方だけ反対があるのかと思いますと、働いておみえになります皆さんの中でも三号被保険者の皆さん方からは猛烈な反対があるということでございます。それでは、その人たちをみんな除いて、そうして一部の人にだけこの正規扱いをしようということになりますと、では正規、非正規の格差は埋まらないではないかという反発が出る。孝ならんと欲すれば忠ならずで、なかなかこれは難しい話でございます。

 しかし、総論としては、できるだけ多くの人を正規雇用と同じような扱いにしていくというのが方向としては筋ではないかというふうに思っておりますけれども、大臣のお考えを少し聞かせていただきたいと思います。

柳澤国務大臣 大変なる専門家でいらっしゃいますし、草創期の厚生労働省を長く率いられた坂口委員から本日は質疑者という立場で質疑をいただくわけでございますが、お言葉は少なくてもその後ろに隠されている含蓄の深さを考えますと、余り軽率な答弁はできないな、こういうように考えるわけでございます。

 今委員が御指摘になられたように、パート労働者に対する処遇、特に賃金とかを中心とする金銭的な処遇というものを考えた場合に、なかなか一筋縄ではいかないという側面を御指摘いただきました。もとより経営者の側にとりましては、これは経済的な負担になるということで、コストを形成するということでございますから、そうにこにこと歓迎というわけにはいかない。

 他方、労働者の側はどうかというと、労働者の側にもいろいろな事情がありまして、その中の一つとして先生は今、年金における三号被保険者というものをお挙げになられましたけれども、あるいは場合によっては所得税のことも念頭にあって、余り上げられるとうちの非常に損益分岐点の微妙なところをオーバーしてしまうというような、そういうこともあるんではないかというような形での御指摘であったかと思います。

 私は、この点につきましては、経営者の側は、特に最近においては、コストの安い非正規労働を雇ったら自分の経営にプラスだというところだけ考えていればいいという時代が徐々に過ぎてきているんじゃないか。皆さんお気づきになってきたわけですけれども、結局、人的資本の蓄積と我々言わせていただいているんですけれども、現場力とかそういう言葉もあるようでございますが、そういったものが非常に衰弱していってしまうのではないかということでありますので、経営に対するコストは若干高くても、それを補って余りあるようなそうしたメリットの方も考えなきゃいけない。これの彼此勘案の中でパートの皆さんへの処遇も決めなきゃいけない。こういうような動きが、先ほど来雇児局長の答弁にもあらわれておりましたけれども、もう明々白々、そういった動きに出ている、こういうことでございます。

 問題は、したがいまして、労働者の側もそういった労働条件以外のところで、例えば今回、年金についても厚生年金を拡大したらどうかということが具体の問題として我々の課題として上がっているわけでございますけれども、これはちょっと労働条件とは違う問題として、この労働条件の問題というのは労使の間の労働契約のかかわりでございますので、ここのところは少し整理をして進んでいけるかなと。

 つまり、労働契約の中でどういうことであろうとも、まあ全く無関係に、独立にとはいかないですけれども、社会保障の方はある程度独立に考えさせていただくという余地もあるのではないか、こういうことも考えておりますので、私どもとしては、労働問題、あるいは経営の問題、労使の問題というようなことでベストの解を選んでいきたい、このように考えておるということを申し上げておきたいと思います。

坂口委員 ありがとうございました。

 なかなか労使でお話し合いをしていただいているだけでは前に進まない問題も私は多いと思います。私は、ワークシェアリングの問題を話をしてもらったことがあるんですが、全然前へ進みませんでした。鳴り物入りでやったんですけれども、前へ進まなかった。現在雇っている人と雇われている人とが現在働いていない人のことを考えるわけですから、それは、考えてみればなかなか結論は出ないんだろうな、そう思ったわけであります。

 いつも労使でお話し合いをしてもらって、そしてそれを足して二で割った案をつくるというのではなかなかうまく前へ進みませんから、これは、時には政治が先行して決断をしなきゃならないときがあるのではないか、そういうふうに思っているということだけ申し上げておきたいと思います。

 パート労働者を正規並みにという議論をしますと、雇用主からは判で押したように、国際競争力に勝てないという言葉が返ってまいります。しかし、国際競争力というのは何も収益率だけの話ではなくて、労働者をいかに大切に使うかということも国際競争力の一つではないかというふうに思います。

 だから、そういう意味では、今後労働力人口が減少していきます中で、いかに大切に働いてもらうかということの競争をしなきゃならない時期が来るわけですから、ここを見ていただくようにしていかなきゃならないというふうに思いますが、これは副大臣の方からひとつ御答弁をいただきたいと思います。

武見副大臣 坂口先生御指摘のとおり、人材というのは我が国の最大の資源であって、また国力の最大の源泉であると私も考えます。そういう中で、国民一人一人がその能力を十分に発揮することができる、そのことがひいては企業の活力を強化して、そして国際競争力の強化につながるというふうに考えるわけであります。

 したがって、本法案に基づいて、事業主がパート労働者の働きや貢献に応じた公正な待遇を確保するための措置を講ずることで、パート労働者一人一人の安心、納得、こういうものが確保でき、そして、この結果として事業所の生産性が高まり、我が国の経済社会の活力維持につながる、こういうふうに考えるわけです。

 そこで、従来、我が国の戦後の職域社会というものを考えたときに、復興期から高度経済成長期というものについて見た場合、我が国は明らかに、職域社会というものは、安定した、言うなれば長期雇用、いわゆる終身雇用制といったようなものを受けて、社員もまた同時に非常に強い会社に対する帰属意識を持ちやすい、そしてその中で、企業側も社員に対して帰属意識を強く求めるとともに、安定的なより質の高い労働力の確保をそこで期待できる。そして、その中でのさまざまな技術の伝承、さらにその開発というものも、またよりやりやすい環境が整ったというのがその経緯であったかと思います。

 そういう中で、改めて、こうした国際競争力強化という観点からのさまざまな考え方が、このような非正規雇用の社員のあり方にも導入されてきた。そして、そのことはまた、先ほど柳澤厚生労働大臣も御指摘になったとおり、労働力側も、仕事と生活というもののバランスを考える新しい価値観なども、多様化して我が国の国民の中に生まれて、そして新しい労働形態というものを求めるニーズもその中で出てきたことが、今日の状況をつくり出している。

 しかし、その中で改めて、働く場所において非正規であったとしても、そこにしっかりとした均衡処遇が求められ、そしてまた、会社との帰属意識についても一定の確保が期待できるような、そうした新しい職場環境、職域社会というものを形成する、そうしたことがまさに私どもが今目指そうとしていることではないか。それによって、御指摘の国際競争力の強化にもつながる、そういった流れが形成される、このように私は考えます。

坂口委員 大臣も副大臣も、非常に御丁寧な御答弁をいただきまして、ありがとうございました。ただ、時間が少し過ぎてまいりまして、なかなか厳しくなってまいりました。

 局長にも一問お聞きしたいと思いますが、これはひとつ簡単にお答えをいただきたいというふうに思います。

 正規労働者の場合は企業が人材の育成に努めてくれますが、パート労働者の場合にはなかなかそうもまいりません。そのパートの教育訓練について厚生労働省はどう考えているか。これはもう簡単にひとつ答えてください。

大谷政府参考人 簡潔にお答え申し上げます。

 企業における教育訓練、実施状況を見ると、パート労働者に対するその訓練はまだ水準は高くないというふうに考えております。

 今回の法律の中で、職務の遂行に必要な能力を付与するための教育訓練の実施を義務化し、また、パート労働者の職務の内容それから職務の成果、意欲、能力及び経験等に応じて教育訓練を実施するよう努める、こういったことを規定したところでございまして、この法案の施行により教育訓練の推進を図ってまいりたいと考えております。

坂口委員 ひとつしっかりとお願いをしたいというふうに思います。

 それから、これはもう答弁はよろしゅうございますが、業種別のパート労働者の割合を見ますと、飲食店ですとか宿泊業が一番多くて四八・〇%、そして、小売それから卸売が三一・五%。この辺までは、歴史的な経緯もありますからやむを得ないことだというふうには思いますけれども、もう一つ、新しいといいますか、近代的な業種であるはずの医療、福祉も三〇・四%になっておるわけですね。

 この医療や福祉というのは、仕事の性格からいきましても、パート労働者の割合が高いというのは少し問題があるのではないかというふうに思います。医療や福祉は厚生労働省の所管する分野でございますから、この分野でパートがふえていくということは非常に問題もありますし、考えていただかなきゃならないことだというふうに思います。

 これを減らしていくためにどうするか。財政的に厳しく厳しくと言うと、こういうことにもなってしまう、そうすると質的に落ちるではないかという問題がありますので、この辺のところをどう考えていただくか。大変難しいところですけれども、お考えをいただかなきゃならないことではないかというふうに、これはもう指摘だけさせていただいておきますので、どうぞよろしくお願いを申し上げたいと思います。

 番外でございますけれども、初めにもちょっと申しましたとおり、タミフルの話を、これは看過できませんので、ちょっときょうは申し上げさせていただきたいというふうに思います。

 局長さん、済みません、お越しいただきまして、ありがとうございます。

 それで、この一連の話を聞いておりまして、これは薬品でありますから、ここで起こってまいりますさまざまな症状、それがインフルエンザの随伴症状なのか、それともこのタミフルの副作用なのかということはわからないわけでございますが、その疑いがあるということであれば、それは第一義的には、そのメーカーなり、それを販売する、中外製薬でございますが、そこがまず第一に調べなきゃならないことではないか。厚労省としては、ここに、調べろ、きちっと報告しろということを言うのがまず第一ではないかと思うんです。

 そこのところが、そうではなくて、厚生労働省の研究班の方がこれを引き受けた。それはなぜだったのか。なぜ製薬会社の方に、君のところでやるべきだ、君のところがちゃんとしろということを言わなかったのか、そこを聞きたいですね。

高橋(直)政府参考人 お答え申し上げます。

 今御指摘のタミフルの安全性を含む研究として、私ども、インフルエンザに伴う随伴症状の発現状況に関する調査研究、こういったものを平成十七年度それから十八年度に行っております。この中では、異常行動・言動がインフルエンザ脳症の前駆症状か、それともインフルエンザの一般的な随伴症状か、それとも治療に使用した薬剤の影響がかかわっているのか、こういった不明な点が多かったために、インフルエンザ経過中に生じた臨床症状、使用した薬剤、それぞれの経過などにつきまして、全国の小児科医などの協力を得て行われたものでございます。

 使用した薬剤につきましては、タミフルだけではございませんで、解熱鎮痛剤であるアセトアミノフェン、セフェム系の抗生物質なども対象としたということでございまして、このように、本研究は、インフルエンザの臨床症状、経過それからさまざまな治療、これを広範にとらえまして、そういったさまざまな治療などを対象としたものでありまして、国側の研究としたということであります。タミフルだけということではなくて、全般のインフルエンザの病気と、それからそれに使った薬剤全般の研究を行ったということでございます。

坂口委員 そこなんですけれども、厚生労働省の中にできておりますその研究班というのは、インフルエンザの随伴症状について検討する研究班だったわけですね。別にタミフルの副作用をそこで調べるための検討会といいますか研究班ではなかったわけですが、このタミフルの副作用の問題を、何か想定外の問題をそこに持ち込んだという感じがしてならないわけです。

 本来ならば、その製薬会社なり販売会社なりがみずから解明をしなきゃならない問題だと思うんです。外部の先生方を集めて、自分たちで、公正に、国民の皆さん方から信頼をしてもらえる結論を出すべきであった。だけれども、それをさせずに厚生労働省の研究班、その研究班は別の趣旨でつくった研究班であるにもかかわらず、そこがタミフルの問題を引き受けさせられたといいますか、厚生労働省がそこでやってくれというふうに言ったのか、あるいはその製薬会社の方が、自分たちがやったら信頼がなかなか得にくいから、ひとつ公的な第三者機関でぜひお願いをしますというふうに言ってきて始めたことなのか、そこが明確でないんですね。

 それで、この研究班の先生にしてみれば、タミフルの問題をやるために集められた人ではなくてインフルエンザの随伴症状についての研究をするために集められた先生方ですから、それは降ってわいた話だと思うんです。タミフルの話をそこでやらなきゃならなくなった。それで、厚生労働省の方はそれに対する財源は用意されていたかというと、四百万しかなかった。四百万でやれというふうに投げられた。そうすると、この研究班の先生方は、何とかしてこれはやらなきゃならないし、お金はないしというので、どうするかという話に多分なってきたんだろうと思うんです。

 私個人は、本来、これは製薬会社がすべて自己責任で解明をしてきちっとすべき問題というふうに思っています。ところが、そうではなくて厚労省が引き受けて、そしてこの研究班に投げた。寄附金が流れていたとかなんとかという話が出ておりますけれども、この研究班の先生方にしてみれば、それはその研究班の先生が所属する大学があらゆるところからこの研究費を受けておみえになるわけでありまして、それはそれで研究をしておみえになるわけですから、別にそれとこれとは関係のない話なんですね。だから、大変迷惑な話ではないか、この研究班の先生方にしてみれば。

 六千万の問題に至りましては、これは、文部科学省が所管しております情報・システム研究機構、ここで統計的なことをやるということになって、ここに投げられた。ですから、そこにお金が要るというので、ここに製薬会社からのお金が入ったということですね。だから、この研究機構から、その下にあります統計数理研究所の方にそのお金が行って、ここで検討をされている。だから、ここに所属しておみえになる先生にもこれは関係のない話なんですね。それが、何かこの先生方が個人でその研究費をおもらいになって、そして何か話がゆがめられているのではないかという疑惑が持たれるというのは、これは少し話が違うのではないか。厚生労働省の方が想定外の問題をこの研究班に投げたんですから、もう少し厚生労働省の方が責任を持ってこれを処理していただかないと。

 厚生労働省が先日、三十日に発表になりました文書を見ますと、先生方が言われたのでやむなくそれを引き受けたというストーリーになっているんですね。それで、本来ならばそれをきちっとそこで断るべきだったけれども、断らなかった厚生労働省が悪かった、間接的に我々も責任がありますというようなストーリーになっている。でも、それは間接じゃなくて、直接、丸々厚生労働省がこの先生方と相談をして、それじゃ金がないからどうしたらこれをやっていけるかというので話をしたことでありますから、この先生方をスケープゴートにするような言い方は私はよくない。こういうことをいたしましたら、これから厚生労働省に協力してくれる先生方はいなくなってしまうのではないかと私は危惧をいたしております。時間も来ておりますから、特別に答弁はよろしいですけれども、ここは気をつけていただきたい。

 そして、そのもとをただしていきますと、それは、一番責任があるメーカーや販売する企業にきちっとそれをさせなかったところからスタートをしている。そうではなくて、なぜ厚生労働省の研究班が引き受けたのかということが余り明確でない。先ほど御答弁を聞きましたけれども、そこがどうもすっきりしない。そこがすっきりしないものですから、先までだんだんだんだんと話がすっきりしないようになっていて、最後はその研究班に所属しておみえになりました先生方に何か責任があるかのごときストーリーになってしまっている。そういうつもりは厚生労働省はないかもしれませんよ、しかし、結果としてそういうことになっている。

 これは少し、責任は責任として明確にしてほしいと思いますし、先生方に押しつけるというのではなくて、厚生労働省がそういうふうにその最初のスタートのところでそうお決めになったらお決めになったで、それでいいと思うんですね。製薬会社にやらせたのでは国民からの信頼を得ることができ得ない、それならかわって厚生労働省が研究班をつくってそこでやりますということを言われるのならば、それはそれで一つの見識だというふうには思いますけれども、それならそれなりのお金も用意をしなきゃならなかったけれども、金の用意はしていなかった。それでどうするかということになって、製薬会社から寄附金を受ける。寄附金を受けるというよりも、本来、その製薬会社がすべてを持って、私たちがやらなきゃならないことですけれども、私たちがやったのでは国民の信頼を得ることができませんから、費用はすべて負担をいたしますから、どうぞひとつ厚生労働省お願いします、こう言うべき筋合いのことではなかったかと私は思っております。

 所感を申し述べて終わりにさせていただきたいと思います。ありがとうございました。

櫻田委員長 次に、小宮山洋子君。

小宮山(洋)委員 民主党の小宮山洋子でございます。

 政府提出のパートタイム労働法改正案につきまして、私ども民主党も、先ほどから答弁も申し上げておりますように、私どもの法案も持っておりますので、そこを比較しながらさまざまな点で伺っていきたいと思います。

 全体的な、基本的考え方については大臣からぜひ御答弁をいただきたいと思いますし、パートで働いている皆さんも含めて、今回のパート労働法改正案、本当に前進するものであればいいけれども、いろいろ確認をしたいという点がたくさん寄せられておりますので、そうした点につきましては政府参考人の方からきっちりお答えをいただきたいというふうに思っております。

 まず、そのパート労働の実態のとらえ方なんですけれども、一九九七年以降正社員が減少しまして、パートとか派遣などへの代替が進む中で、最初のころの補助的なパートから、基幹パートあるいは学校を出てすぐなる新卒パートなど、恒常的なパート労働が家計の中心となるものに変化をしてきているわけですね。そうしたことに対して、今回の政府改正案は実態に対してきちんと対応しているのかどうか、まず大臣にその全体的なとらえ方を伺いたいと思います。

柳澤国務大臣 今、小宮山委員の御指摘のとおり、非正規雇用者と言われている方々の中に、幾つかのカテゴリーにこれを区分することが可能なんですけれども、そのうちのパート、アルバイトというものは、これはやはりかなりのウエートを占めて、しかも増勢にあるということはそのとおりでございます。

 これに対して政府案はどのような考え方をとったのかという御質問でございますけれども、要するに、パートというのは、数はふえておりますけれども非常に多様な働き方をしておるということがございまして、それぞれに見合った公正な待遇を実現するということが一番大事なのではないか、こういうように考えておるのが政府案でございます。

 そのために、事業主に対して、まずすべてのパート労働者を対象として均衡待遇というものの確保をお願いするということをいたしたわけでございます。この均衡待遇というのは、多様な就業実態を踏まえて、現実に即して、しかしそれをレベルアップしていく、こういうことをもって均衡待遇を確保しようとしているということでございます。そのうち、特に正社員と同視できるような働き方をしている方には、これは差別的取り扱いの禁止ということを求めた、こういう二段構えの考え方をとったということでございます。

 そういうことで、パートというものを選択される、自分の時間、あるいは家事、育児等、あるいは、場合によっては、さらにいろいろスキルアップを図るための自己啓発というような活動をしている場合に、それとのバランスをとった働き方をするにはどうしてもパートの形態がいいというような方の場合について、そうしたような、基本的にまず均衡待遇。それからまた、その中でも正社員と同じような方については差別的取り扱い禁止ということで、そうした均衡待遇を全体として確保するということをいたしました。

 それからもう一つは、今度は、みずから選択したのではなくて、やむを得ず、正社員の口がなかったのでこういうパートの形をとっているのだというような方々に対しては、その希望をかなえていただいて、正社員へ転換していただく、移行していただく、そういうものを推進することを事業主に対して義務づける、そういう措置を義務づけるということをいたしたということでございます。

 いずれにいたしましても、そうしたことで、目下、数量的にも、また仕事の形としてもいろいろな多様性をふやしているパートに対して、私どもはこのような対応をいたしているところでございます。

小宮山(洋)委員 たくさん質問項目を用意しておりますので、なるべく簡潔明瞭にお答えをいただければ幸いでございます。

 今お話あったように、多様な働き方に対して公正な待遇と言われたんですが、政府の法案の中では、とても公正な待遇にはなっていないし、二段構えと言われましたが、その一段目がない、どっちが一段目かわかりませんが、そこがないのではないかとも思っておりますので、そこは個々にまた詰めて伺っていきたいと思います。

 もう一つ、全体的な考え方を伺いたいんですが、パート労働者が今全体の二二・五%、特に十五歳から二十四歳の若者では約四割を占めている。パート労働者のうち女性が七割。こうしたことからも、正規と非正規の格差の是正、喫緊の課題ということで今回も法案が提案されたのだと思いますけれども、パート労働者と正規労働者との賃金の比較というものも厚生労働省はきちんとは示していないんですね。私どもで試算したところ、女性の正規労働者は、男性正規労働者を一〇〇とすると六七・六、そして女性のパート労働者は、男性の正規労働者に対して四四・五%の賃金にしかなっていないわけですね。

 ILOの百号条約、同一価値労働同一賃金の条約、日本も批准をしておりますが、これに反すると再三指摘をされているわけですけれども、今回のパートタイム労働法改正案で、この指摘に対してこたえられるものになっているんでしょうか。大臣に伺います。

柳澤国務大臣 ILO百号条約につきましては、同一価値の労働についての男女の労働者に対する同一報酬ということがうたわれておりますけれども、これは、性別による差別なしに報酬を定める報酬率というふうに定義をされているところでございます。

 労基法第四条は、男女同一賃金の原則を規定いたしておりまして、労働者が女性であることのみを理由として、あるいは社会通念としてまたは当該事業場において、女性労働者が一般的または平均的に勤続年数が短いこと等を理由として女性労働者に対して賃金に差をつけることを違法としているものでございます。そうしたことで、労基法の規定というものは同条約の要請を満たしているということでございます。

 パート労働者の中には女性が多いのも事実でございますけれども、一方で、多数の男性パート労働者もおられまして、このことをもってILO百号条約に反するということは、そうした事実をもってしてもない、このように考えております。

小宮山(洋)委員 全く私の聞いている趣旨とは違うお答えのように思います。

 とにかく、ILOの方でこれはやはり百号条約に反すると指摘をしているわけですから、それに対してこたえるものになっているのかと伺ったんですが、日本の法制度はこうなっていると。法制度は私もよく知っています。ただ、実態がそうなっていないからILOから指摘をされているので、今のお答えだと、どうも今回の政府の改正案ではこれの解決になるものではないのではないかというふうに思わざるを得ません。

 それでもう一点だけ、これは手短にお答えいただきたいんですが、安倍内閣の目玉が再チャレンジと言われて、会議もできているようですが、どうもその姿が全く見えません。そして、今回のこの改正案も再チャレンジ支援でもあると言われているんですが、どこが再チャレンジ支援なんでしょうか。

柳澤国務大臣 今回は、パート労働法の改正ということでパートそのものにつきまして取り組みましたので、そこのところがよく御理解を賜りたい点でございます。

 再チャレンジにおきましては、労働者が安心、納得して働けるように、パートタイム労働法の改正などを進めて正規、非正規労働者間の均衡処遇を目指すというふうにされておりますし、また同時に、やむを得ずパート労働を選んでいる方につきまして、そこから正規の労働にできるだけ移行する、そういう措置をとるということによって、再チャレンジという趣旨もそこで大いに生かしてもらおう、こういう趣旨でございまして、今回の改正案、このパート労働法改正案は、全体としてこれが再チャレンジ支援総合プランの一環をなすということは何ら当たっていないということは全くない、このように考えます。

小宮山(洋)委員 何か、御答弁を聞いてもやはりよくわからないというのが実感でございますが、具体的に幾つか伺っていきたいと思います。

 これまでのパートタイム労働指針は、均衡の配慮、同一の賃金決定方法などを規定していますけれども、この指針に基づく指導助言による改善の実績、これは余り上がっていないのではないかと思っています。今回の政府案は指針を法律に格上げしたという点が多いと思うんですけれども、そしてまた基本的な議論が余りなされてこなかったのではないかと考えております。これでは十分とは言えないと思うのですが、大臣はどのようにお考えになっているでしょうか。

柳澤国務大臣 パートタイム労働対策につきましては、平成十五年に改正いたしましたパートタイム労働指針に関する労政審からの報告におきまして、改正指針の社会的な浸透状況を含めた実態の把握を指針改定の一定期間経過後に行うことが必要だという御指摘をいただいております。さらに加えまして、これらの状況を踏まえて、社会的制度の影響も考慮しつつ問題点の分析を行い、パートタイム労働対策として求められる施策について幅広い検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずることが重要である、こういう指摘でございました。

 これを踏まえまして、労働政策審議会において議論をしていただき、その中で労使間で合意が得られたものを中心として改正法案に取りまとめたものでございまして、必要な内容が盛り込まれている、このように考えております。

小宮山(洋)委員 どうもなかなか中身にうまく、ぴったり合った御答弁になりませんので、これ以降は政府参考人の方に質問をいたしますので、きっちり答えていただきたいと思います。

 今、きちんと審議をしてきたということですけれども、均等分科会の建議の内容と審議会で答申をされた法案要綱、そして今回の政府の改正法案で、内容が変わってきている点が幾つかあります。

 私が見たところ、これはどうも限定する方向に変えられているのではないかと思いますが、一つは、労働条件の文書による交付について、均等分科会の建議では、「労働基準法において義務付けられた事項に加え、一定の事項(昇給、賞与、退職金の有無)を明示した文書等を交付することを事業主の義務とする規定とする」とされています。

 ところが、審議会で答申されました法案要綱では、「労働基準法第十五条第一項後段に定めるもののほか、」「退職手当その他の賃金に関する事項として厚生労働省令で定めるもの」というふうにされておりまして、政府の改正法案では、「労働条件に関する事項のうち労働基準法第十五条第一項に規定する厚生労働省令で定める事項以外のものであって厚生労働省令で定めるもの」というように、言い方が、きちんと最初のところの建議では中身を規定してございましたものが、だんだんだんだんぼかされていく方向になって、その結果として政府案が出されているように思いますが、この点は、どうしてこういうふうになったんでしょうか。

大谷政府参考人 法文案を作成するという段階にありましては、これは審議会の御意見を私どもも重々拝聴して進めたわけでありまして、抽象的な文言等も含めまして、法技術的な観点から文言整理あるいは明確化を行いましたけれども、その審議会の諮問の建議や要綱と内容が異なった方向に行ったということではないのではないかというふうに考えております。

小宮山(洋)委員 とてもそのようには思えませんが。

 もう一点、差別的取り扱いの禁止につきましても、均等分科会の建議では、「その待遇について」というふうに書いてあるだけなんですが、それが法案要綱を経て政府の改正案では、「事業主との雇用関係が終了するまでの全期間において、その職務の内容及び配置が当該通常の労働者の職務の内容及び配置の変更の範囲と同一の範囲で変更されると見込まれるもの(以下「通常の労働者と同視すべき短時間労働者」という。)」その「賃金の決定、教育訓練の実施、福利厚生施設の利用その他の待遇について、」というように、やはり限定的に枠をはめていますね。これはどうしてこのようになったんですか。

大谷政府参考人 お答え申し上げます。

 要綱の書き方といたしましては、通常の当該事業主との雇用関係が終了するまでの間においてということで抽象的に書いておるわけでありますが、これは、始期と終期といいますかそういったものを明確に規定しなければ、差別禁止という法律違反状況を適用することが難しいわけでありまして、そこは明快に書くために法案の中身としてはこのような書き方になったということでありまして、当初想定していた対象とこの法文で変化したというふうには考えておりません。

小宮山(洋)委員 それは、審議会で審議をされた方々はもう少し広い範囲のことを想定してされたのが、やっている間に本当に限定して狭くされたというふうに思います。それは必ずしもそこの審議の経緯を正確に反映したものではないのではないかということを指摘しておきたいと思います。

 それで、次に、今回のこのパート労働法のよって立つ、もとになるところなんですけれども、政府案では対象になるパート労働者を分断していると考えます。皆様もきょうはこの法案の審議なのでお手元にお持ちだと思うんですけれども、審議会に出されて、厚生労働省がつくっております、こういう、枠でいろいろと対象者を区切っている図がございます。

 これによりますと、一つは、賃金や教育訓練など均等待遇の対象となる、すべての短時間労働者という一番外側の枠組みがあります。そして二番目に、「職務遂行に不可欠な教育訓練を同様に実施する義務」という「職務が同じパート労働者」というカテゴリーがあります。そして三つ目に、「同一の方法で決定するよう努める」という「職務、人材活用の仕組み、運用等が同じパート労働者」というのがあります。そして四番目に、すべての待遇について差別的取り扱いが禁止される「正社員と同視すべきパート」と、ここだけが今回差別的取り扱いの禁止になっているわけですけれども、このように四つのカテゴリーに分けられていますね。これでは、それぞれに分けられたパート労働者の格差を固定することになるのではないですか。

大谷政府参考人 今回の法案で、均衡処遇を求めていく中で、そういう働き方の態様やら長期的な見地も含めて、そういうものをどう区分していわば均衡処遇をするかという区分をしたわけでありますけれども、最初に大臣から申しましたように、パート労働者の中には、正社員並みの働きをしていながらそれに見合った待遇を受けていないという方がおられ、また、正社員として働くことを希望しながら、希望がかなわずパート労働者として働いている方もある、こういったことで、格差を固定しないで、どういう働き方をしても、安心して、納得できるということを旨に区分して均衡処遇に努めたわけであります。

 そのメルクマールとして今回取り組んだのが、職務内容というもの、それから長期にわたる人材活用のあり方、それから実質的な契約期間、これこれの実態を踏まえて事業主に均衡処遇に取り組んでもらうということにして、その区分に応じた処遇を求めたわけでありますが、労働者の方々がその区分のところを移動することについて何ら制約しているわけではありませんので、役割固定というふうには考えておりません。

小宮山(洋)委員 いや、今のでは答弁になっていないと思いますよ。

 それで、しかも去年の十月に審議会に出された図では、今回政府が強調されているすべての待遇について差別的取り扱い禁止という、ここの部分はこの輪の中になかったんです。三つの輪だけが示されていて、これは欄外に書いてあったんですね。それをこの法案をつくる段階でこの輪の中に取り込んで四つ目の区分として、ここだけ差別的取り扱いを禁止しますというのは、どうもよくわけがわかりません。

 それで、それぞれ移動することは妨げないといいますけれども、実態としてそれができない実態にあるから今のパート労働者は大変な処遇の中でやっているのではないですか。それも余りに実態を踏まえない発言、答弁だと思います。

 それでは、政府としては、この四つのカテゴリー、それぞれどれぐらいの人が対象になると思っているんですか。

大谷政府参考人 差別禁止の規定の対象となりますパート労働者数につきまして、今回審議会の審議の中でいろいろ区分を考え、いろいろ新しい区分を決めてきたということでありまして、直接示す過去の統計データが、明快なものが存在していないというのは事実であります。

 しかしながら、既に把握しているデータの中で最も近いものを探しまして、例えば正社員と同視すべきパート労働者は、平成十三年の二十一世紀職業財団の調査によれば四、五%ということでありますので、これが一つの参考値となるのではないかというふうに考えたわけであります。

 また、正社員との職務が同一であるかどうかについてということでありますけれども、これは過去の調査の中で、職務が同じ正社員がいると回答したパートの方が五〇%、また職務が同じ正社員がいないと回答したパートの方は五〇%、こういったデータはあるところでございます。

 それからさらに、区分別のパート労働者の実例につきましてでありますが、これについて申し上げてよろしいでしょうか。(小宮山(洋)委員「実例はまた聞きます。今はその割合、そこの部分です」と呼ぶ)はい。

 以上です。

小宮山(洋)委員 そこの、差別禁止のところだけではなくて、四つにカテゴリーを分けられたということは、それぞれに該当するパート労働者がいるから分けたわけですよね。それぞれがどういう割合になると考えて今回の法案がつくられたかをまず答えてください。

大谷政府参考人 申し上げましたように、最初のグループにつきましては、過去のデータで最も近似的なものということで申し上げました。

 それから、その一つ目と二つ目のグループ、いわば同視すべきグループと賃金体系を合わせるべきグループ、これもそのグループとしてのデータがあるわけではないんですけれども、過去の統計調査の中でそういった方がいるというふうに答えた事業所の数が大体一五%あるということでありますから、その一と二の区分のところを合計して、そういう方がおられるという事業所が約一五%あるのではないか。

 それから、残る二つについては先ほど申しましたところでありまして、現実の統計調査ではそういうことでございます。

小宮山(洋)委員 そうすると、なぜこういう四つの分類にしたかという根拠が全くないではないですか、今の話だと。

 そうすると、何でこんなことにしたのか。私はそれぞれがどうしてこういう分け方になったのかさっぱりわからないので、それでは、こういう人はここに該当して、こういう人はここに該当するという実例を挙げて説明をしていただきたいと思います。

大谷政府参考人 今回の区分につきましても、これは労使の議論の中で、お互い、どういった方にどういう処遇が合意できるかということで、そういう考え方の整理としてこういう区分が入ってきたところでありまして、何%刻みでということで入ったわけではありませんものですから、まず考え方の整理でそういうふうになったということであります。

 その考え方の整理としての実例をまず申し上げますと、第一の、正社員と同視すべきパート労働者としては、例えば部品製造工場の組み立てラインに従事する労働者の方、それで正社員と同じ組み立て業務に従事し、正社員もパートタイマーも転勤がない、それから、契約更新が繰り返されている、あるいは品質管理サークルにも双方とも参加し、会社に貢献している、ただ勤務時間が正社員より短いだけ、こういった方々が第一のグループとして想定されているわけであります。

 二つ目のグループとして考えておりますのは、正社員と職務、人材活用の仕組みが同じパート労働者でありますけれども、例えばスーパーの上級販売職のように、正社員と同じ販売業務に従事し、また、正社員と同じキャリアアップによって部門リーダーやマネジャー等にもなっている、ただ一方で、正社員は長期的に本社に異動したり転勤したり、あるいは管理部門に勤務する、こういったことで、正社員とパートタイマーにそこに違いがある、こういったような方々が想定されているところであります。

 それから三つ目の、正社員と職務が同じパート労働者としては、例えば薬局チェーンの薬剤師のパートのように、正社員と同じ売り場業務に従事している、採用された店舗で同じ仕事を続けているけれども、正社員のように売り場業務の経験後に管理部門に異動する、そういったことのないような方々、こういうような方々が想定されているわけであります。

 それから四つ目のグループとして、正社員と職務も異なるパート労働者という方でありますけれども、例えばコールセンターのオペレーターパートのように、パート労働者の方が電話による問い合わせの対応をし、正社員がそのトラブル対応やパートのシフト管理をしている、こういう異なる業務をしている、こういったケースが想定されているところでございます。

小宮山(洋)委員 なかなかどうも、どうしてこういう区分けになっているのか、これが本当はこのパート労働法政府案の根幹をなすものであるはずなのに、ここがどうもぐらぐらしていてよくわかりません。

 それでは、具体的な例で少し詰めて聞いていきたいと思いますが、丸子警報器事件の例に即して伺っていきたいと思います。

 このケースでは、形式上は正社員より三十分短い所定労働時間で、三カ月という期間の定めを置いて雇用された労働者が、正社員と同じ業務で、長期にわたり毎日同じ時間、三十分の残業をして働き続けてきた。ところが、正社員には生活を保障するが、パートはもともと家計補助だからということで低賃金に置かれ、正社員に保障される昇給措置が講じられなかった。このケースにつきまして、政府案の第八条、通常の労働者と同視すべき短時間労働者に対する差別的取り扱いの禁止は適用されるんでしょうか。

大谷政府参考人 今御指摘のありました丸子警報器事件の判決でありますが、このケースは、組み立てラインにおいて基幹的業務に従事しながら、同一業務に従事する正社員よりも低い賃金が支払われてきた、こういう女性臨時社員について、賃金額が、同じ勤務年数の女性正社員の八割以下となるときは、公序良俗違反として違法となると判示されたものであります。

 一方、今回の改正案でありますが、この第八条の差別的取り扱いの禁止規定の対象は、さっき申しましたように、一つ目が職務の内容、それから二つ目が長期にわたる人材活用、三つ目が契約期間、この三要件で確定していこうということになるわけでございまして、この丸子警報器事件のようなケースについて、その個々のパートタイマーの方々がその三要件にどういうふうに該当しているか、これは事実認定が要りますので断定的にここで申し上げることは難しいと思いますが、今回の想定の中では、差別的取り扱い禁止の対象となり得るケースではないかというふうに考えております。

小宮山(洋)委員 それでは、同じように家計補助や仕事と家庭の両立のためということで、正社員と同じ昇給措置を講じないということは、これは不合理な差別になると考えていいですか。

大谷政府参考人 この改正法の第八条の差別的取り扱いの禁止は、すべての待遇が対象になります。

 そこで、先ほど申しました第八条の要件に該当する場合であれば、例えば、正社員について家計補助や仕事と家庭の両立を理由としても昇給を行っているのに、一方、パート労働者について昇給を行っていないということであれば、これは差別的取り扱いの禁止に該当すると考えております。

小宮山(洋)委員 この丸子警報器事件では、裁判所は、正社員と同じ賃金体系の適用をするべきと判断しているわけですが、政府案で、差別してはならないということは、同じ賃金体系の適用を保障するという趣旨だと考えていいですか。

大谷政府参考人 差別的取り扱いの禁止とは、正社員とそれからパート労働者で勤務成績等が同じである場合に同じ待遇を保障するというものでありますから、同じ賃金表を適用することが原則求められているものと考えております。

小宮山(洋)委員 労働基準法に基づく差別禁止規定に抵触した場合は、労基法十三条によって労働者は差別がなかったものとして権利を主張できると解釈されていますが、パート労働法でも同様と考えていいんでしょうか。よいとすれば、これに該当する条文はどれになりますか。

大谷政府参考人 労働基準法の第四条の男女間の賃金についての差別的取り扱いの禁止規定に違反した労働契約につきましては、今御指摘ありましたように、同法第十三条の規定により無効となり、差別のない賃金を主張することができるという裁判例が存在しております。

 今回の法案でありますけれども、この法案におきましては、労働基準法の規定は適用されませんけれども、その差別的取り扱いの禁止に該当するという賃金にありましては、これは、先ほどの判決と同様、民法第九十条の公序良俗違反に該当するものとして無効となり得るものではないか、こういう法律構成になると考えております。

小宮山(洋)委員 この裁判で裁判所は、結果的に正社員の賃金の八〇%になるまで格差を埋めないと公序良俗に違反して違法と判断しているわけですが、今回の政府案では、これは一〇〇%になるまで格差を埋めないと違法になるという考え方でいいですか。

大谷政府参考人 お答え申し上げます。

 丸子警報器事件におきましては、同一価値労働同一賃金の原則が労働関係を規律する一般的な法規範として存在していると認めることはできないとした上で、賃金格差について、使用者に許された裁量の範囲を逸脱したものとして、公序良俗違反の違法を招来する場合があるとして、職務の内容、勤務時間、契約期間等の実態から、そのパート労働者と正社員の同一性を比較し、同じ勤務年数の正社員の八割となるときは、許容される賃金格差の範囲を明らかに超えるというふうにしているところでございます。

 今回の政府案の内容につきましては、先ほど申し上げましたような三つの要件を定めたわけでありますが、これは事実認定が必要でありますが、この三つの要件が定められたとして認められた場合であれば、一〇〇%、十割の待遇を求めるという厳しい規定というふうに理解しております。

小宮山(洋)委員 このケースは警報器製造ラインでの業務が正社員とパートで全く同じだったというものですけれども、全員が異なる業務に従事していて、こうした苦情を申し立てたパートと同じ仕事についている正社員がいないという場合は、同等の労働、同一価値労働の物差しによって同一性を判断するということが必要ではないかと思いますが、こういう形はとらないんでしょうか。

大谷政府参考人 今御指摘ありましたように、職務の内容などが同一でなくても、労働としての価値が同一と判断される場合には同一報酬を支払うべきであるという考え方があることは私どもも承知しておるところでございます。また、そういう考えで民主党の案が構成されていることについても承知しておるところであります。

 この考え方につきましては、異なる職務であっても、それを細分化して比較することによって、先ほど欧米の例がありましたけれども、そういうことによって価値の比較ができるということが前提になっているわけでありまして、現状の日本の雇用システムにおきましては、まだそうした社会的基盤がないということで、すべての事業所にこういった考え方を適用することには無理があるのではないかと考えたところであります。

 このため、政府案におきましては、一つの事業所の中でパート労働者が正社員と同視すべき就労実態にある場合について、その待遇について差別的取り扱いを禁止する、こういう法律構成に至ったところでございます。

小宮山(洋)委員 私たちが出した法案は、そこに一歩踏み出す、一石を投じるという法案であるということを御理解いただきたいと思います。

 次に、政府案では、通常の労働者と均衡がとれた処遇と言っているわけですが、そのために正社員の処遇を低下させてはならないと考えます。

 これは本会議場の答弁でも例を挙げましたけれども、例えば、パートと正社員の処遇を整理したいということで、就業規則を変更して、正社員は転居を伴う転勤、残業を予定する社員、パートは予定しない社員という区分を明文化して処遇の見直しを図ることとしました。その結果、正社員で転居を伴う転勤や残業に応じられない社員がパートへの転換措置が講じられることになったというケースを例に考えたいと思います。

 このケースのような取り扱いがふえるということが危惧されるわけですが、このような就業規則の変更による正社員のパートへの転換を促す労務管理に、これは合理性があると考えられますか。

大谷政府参考人 均衡待遇を確保する場合に正社員の労働条件を見直すことの適否につきましては、これは労働政策審議会でも厳しい議論があったところでございますが、今回、法的な手当てをするということについては、労使のコンセンサスに至らなかったということで、結果として、政府案では、正社員の労働条件の見直しに係る規定は置いていないということであります。

 しかしながら、現在も、これは判例法理によりまして、合理性のない就業規則の一方的な変更というものは無効というふうな考え方があるところでございますし、また、今回、就業規則の変更によって労働契約上の労働条件が変更されるためには、今国会に提出した労働契約法案の中におきまして、これは諸事情に照らして合理的であることが必要である旨を明記しているところでありまして、この規定は、パート労働法に基づく均衡待遇を確保するための就業の見直しにも当てはまるものでもあり、合理的な理由のない正社員の労働条件の低下は法律上も許されないというふうに考えております。

小宮山(洋)委員 今の答弁だと、審議会の中でコンセンサスに至らなかったから、今回のこのパート労働法の政府案ではこのようなケースへの対応の措置は講じていない、今まである法律の中で対応するということで、この法案の中では対応されていないということでよろしいですか。

大谷政府参考人 今回の法案の中には、正社員の処遇については明記してございません。

小宮山(洋)委員 そうすると、冒頭申し上げたように、明らかにこれは正社員が引き下げられるという危惧を持たざるを得ません。

 このようにして転換させられた、あるいは転換させられようとする労働者は、政府案に基づく調停等の申し立て権が確保されると考えていいですか。

大谷政府参考人 ただいま御指摘のようなケースにつきましては、これは就業規則の変更の合理性の判断が求められるものでありまして、現在も判例法理により合理性がない就業規則の変更は無効と申しましたし、今回提出の労働契約法案の中でも御議論いただくものと考えておりますけれども、こういった案件につきまして、個別労働関係紛争解決促進法によりまして、都道府県労働局長の助言、指導、あっせんの対象となり得ます。まずは、その都道府県の労働局の総合労働相談コーナーに御相談いただきたいというふうに考えております。

小宮山(洋)委員 ちょっと、聞いたことに直接答えてほしいんですけれども、こういう相談はできるけれども、結局、今の話だと、調停等の申し立て権が確保されるということではないということですか。

大谷政府参考人 助言、指導、あっせんの対象とはなりますけれども、調停という法律の根拠はございません。

    〔委員長退席、伊藤(信)委員長代理着席〕

小宮山(洋)委員 転勤があるかどうか、残業するかどうかという区分の設定によって、正社員の区分が適用される対象者の多くが男性になり、適用除外の多くが女性に偏っていた場合、どのように法的に対応されるんでしょうか。

大谷政府参考人 改正法案は、パート労働者の多様な就業の実態を踏まえ、パート労働者の働きあるいは貢献に見合った公正な待遇を実現するために、事業主に対しまして、均衡待遇、あるいは正社員と同視できる働き方をしている方には差別的取り扱いの禁止を求めているわけであります。

 このように、パート労働法は、パート労働者に女性が多いかどうかということにかかわりなく、公正な待遇の確保を行うということを旨としておりまして、事業主の取り組みの結果、正社員とパート労働者の間に不合理な待遇の格差があれば、これは改正法案によって対応するものというふうに考えているところであります。

 なお、正社員に男性が多く、パート労働者に女性が多いことのみをもって、男女雇用機会均等法上の間接差別に当たるということもなかなか言えないというふうに考えております。

小宮山(洋)委員 正社員の処遇を低下させてはならないということで今四問伺いましたけれども、局長のどのお答えも、この危惧に対して答えるものにはなっていません。

 民主党案では、事業主の責務として、「通常の労働者の労働条件を合理的な理由なく低下させることがないように努めるものとする。」という条文を入れております。正社員の労働条件を切り下げないということは、やはりこういう条文を設けないと、これは非常に危惧が深まるばかりなんですけれども、それでは、こうしたことはどのようにして政府は担保をされるのでしょうか。

大谷政府参考人 先ほど申しましたように、今回、政府案でそういう規定を置いていないわけでありますけれども、政府といたしましては、企業や経済の活動全体の底上げの中で正社員とパート労働者双方の労働条件が改善されていく、そういう中で均衡待遇が確保されていくことが望ましいというふうに考えております。

 また、労働条件の引き下げを事業主の一存で、一方的に、合理的な理由がなく行われるという場合には、これは先ほど申しましたように法的に許されないものと考えておりますので、そういう事態はないように努め、相談があれば、さっき申しましたような指導、助言、あっせんに努めるということで努力したいと考えております。

小宮山(洋)委員 経済全体の底上げの中でとかおっしゃいましたけれども、上げ底であるので、なかなかこれはいろいろな意味で、やはりきちんと条文の中で切り下げないことを明記しないと担保されないというふうに考えるということを申し上げておきたいと思います。

 それから次に、政府案では、差別が禁止されるパート、これがどれだけいるのかいないのかは依然としてわかりませんが、この差別が禁止されるパートは三つの高いハードルをクリアしなければならず、いるとしても本当にごくわずかになるのではないかと思われます。その三つのハードル、一つは職務同一短時間労働者ということ、二つ目に期間の定めのない労働契約を締結しているもの、ここには反復更新を含むとされておりますが、そして三つ目に職業生活を通じた人材活用、運用等が同じものという、この三つのすべてをクリアしないと差別禁止には当たらないということですね。

 この中で、事業主の主観で見込まれては困るわけなんですけれども、職業生活を通じた人材活用、運用等が同じものという説明として、「当該事業所における慣行その他の事情からみて、当該事業主との雇用関係が終了するまでの間において当該通常の労働者と同様の態様及び頻度での職務の変更が見込まれる者」とあるんですが、この「見込まれる」が事業主の主観であっては困るわけです。雇用契約を結ぶ時点でその内容を明確にしておく必要があると思いますが、この判断基準を明確にすべきということについてはどうでしょうか。

大谷政府参考人 御指摘いただきましたように、その三つの要件を満たすことが必要になるわけでありまして、パート労働者の御本人は、みずからが差別的な取り扱い禁止規定の対象であるかどうかということを判断できないという場合もあるのではないかということで、今回、改正法案におきましては、事業主に対して、パート労働者からの求めに応じて説明をする義務というものを課すこととしたところでございます。

 それから、事業主が全く説明を行わない場合や、それから差別的取り扱いの禁止事例に該当すると考えられたという場合には、これは都道府県労働局長による助言、指導、勧告やあるいは紛争調整委員会による調停という仕組みも活用できるという制度でございます。

 また、通常の労働者と同視できるかどうかの判断基準というものを契約締結時に明示することができるかということでございますけれども、これにつきましては、労働契約を締結した後、数年間勤務してから正社員と職務内容が同一になるというようなことも多数想定されますし、また、人材活用につきましても、数年間の勤務の中で同一になるということも想定されますことから、その採用時においてそのパート労働者が該当するかどうかということはなかなか予想できないということで、採用時、締結時の明示というのはなかなか困難であるというふうに考えております。

小宮山(洋)委員 これによってどうやって今の実態が変わっていくのか、かなり疑問だというふうに思います。

 それから、「反復して更新されることによって期間の定めのない労働契約と同視することが社会通念上相当と認められる期間の定めのある労働契約」を期間の定めのない労働契約に含むとしたということ自体は評価できるんですが、「雇用関係が終了するまでの全期間」とはどういうことですか。

大谷政府参考人 お答え申し上げます。

 政府案の差別的取り扱い禁止規定の要件の一つとして、「当該事業所における慣行その他の事情からみて、当該事業主との雇用関係が終了するまでの全期間において、」というふうに書いているわけでありますが、これは、その職務の内容と契約期間に加えまして、長期的な人材活用の仕組みについても同一であることを要件としているものでありまして、パート労働者の職務内容が正社員と同一となってから退職するまでの全期間ということで、その人材活用の仕組みが同一であることを意味しているところであります。

 「全期間」となっておりますのは、当該期間の一部で人材活用の仕組みが異なる場合は、長期的な人材活用の仕組みが同じであるとは言えないということによるものであります。

小宮山(洋)委員 今の説明、ちょっとよくわからなかったんですが、同一になってからの全期間、だから、ずっと働いている間全部ということではなくて、同一になってからの全期間ということですか。もう一度確認させてください。

大谷政府参考人 繰り返しになりますが、採用当時はまだ同一でなかったというケースが結構あるわけでありまして、それが習熟なりあるいは訓練の期間において正社員と同視すべき中身になっていくということがありますので、いわゆる職務の内容が正社員と同一となったという時点から退職するまでの全期間ということでありまして、採用即ということではないということであります。

小宮山(洋)委員 でも、それが本当に同一になったかどうかという判断は、どの時点からというのはなかなか実質上難しいんじゃないですかね。

 反復更新の具体的な定義、規定はどういうものかを聞かせてください。

大谷政府参考人 政府案の差別的取り扱い禁止規定の要件の一つとして、「当該事業主と期間の定めのない労働契約を締結しているもの」というものがございます。この「期間の定めのない労働契約には、反復して更新されることによって期間の定めのない労働契約と同視することが社会通念上相当と認められる期間の定めのある労働契約を含む」、こういう書き方をしております。これは、パート労働者の就業の実態を、形式ではなくて実態で判断するということにしたわけでありまして、そのために置いた規定でございます。

 裁判例におきましては、以下のような事項が判断要素として考慮されているというふうに考えております。その例といたしましては、業務内容の恒常性、臨時性、あるいは正社員との同一性、次に、労働者の契約上の地位の基幹性あるいは臨時性、また、継続雇用を期待させる言動等当事者の主観的な態様、それから、更新の回数や更新手続の厳格性、また、他の労働者の更新状況、こういった判例を参考に考慮しているところでございます。

小宮山(洋)委員 今、形式ではなくて実態に即して判断と言われましたけれども、それを把握できる体制、反復更新されていると認定できるそういう体制が政府に整っているんですか。

大谷政府参考人 お答え申し上げます。

 その反復更新によりまして無期契約と同視するということが社会通念上相当となっている場合について、裁判例は多数存在しておるわけでありまして、事業主においてそういったものを念頭に雇用管理を行っているもの、また行っていただきたいというふうに考えているわけであります。

 また、厚生労働省といたしましても、今回の改正、これが成立いたしましたら、それを機に、通達等によりまして、裁判例により示されている判断基準を周知するといったことで、事業主の理解の促進に努めたいというふうに考えております。

 また、全国の三百カ所の総合労働相談コーナーにおきまして、基本的な事項については相談に対応したいと考えておりますし、専門的な事項や事業主への指導が必要な事項については、都道府県の労働局の雇用均等室において円滑に引き継ぎまして、その都道府県労働局全体で対応したいというふうに考えております。

小宮山(洋)委員 十分な答弁とはなかなか思えません。これも、また次の質問者にバトンタッチをしたいと思います。

 とにかく三つのハードルをクリアしなければ差別の禁止にはならない。パートと同じ仕事をしている正社員がいない場合や、有期契約労働者、転勤や配転がないパート、これは差別禁止の対象から外されることになるわけだと思いますが、例えばスーパーなどでは、正社員にも全国転勤型、地域限定転勤型、そしてもう一つ、近隣の転勤のみか転勤なし、その場合には昇進が限定的な型など、分けられているところが大手スーパーなどで多いですね。

 ある大手では、今回の政府案では該当者はゼロ、いないと答えているんですが、これが実態ではないですか。

大谷政府参考人 今回の労働政策審議会でも御議論があったわけでありますけれども、特に大手のスーパー等におきましては、現場の売り場主任とか、そういう人事管理を既に先行的に徹底しておりまして、今回私どもがいわば法律上あってはならないというような形で定めた差別禁止の対象みたいなものはもうほとんど存在しないということについて、私どもも調査をし、また関係者の意見を聞いたところでございます。

 一方で、そういう完備された人事ルールのないところがまだ多々あるという中で、今回そういう差別があってはならないという規定は有効に機能するんではないかということでありまして、大手のパートだけでなかなか確定できないんではないかと思います。

小宮山(洋)委員 それもやはり実態に合っていないと思うんですよ。大手の方はかなりいい処遇をしているから該当する人がいないと。そうじゃないんじゃないですか。ハードルが高過ぎるから、大手でさえ該当する人がいないんじゃないですか。

 では、中小には該当する人がいるんですか。

大谷政府参考人 これは、今回の制度のルールについて立ち入って実態審議をまだできているわけではありませんので、どこどこのどれがそうだということは言えませんけれども、その審議会の審議の過程の中でも、中小企業の関係者からは、こういった差別禁止について、なかなか厳しいという意見は随分出たところでありまして、実際に中小企業の場合には、転勤とか人事異動がないケースが多いわけでありますから、大手の企業よりはより差別禁止の要件に近いケースが存在するんではないかということも言われているところであります。

小宮山(洋)委員 それで中小は厳しいという話があった。そうだと思いますよ。

 それで、大体、今回経営者側が余りこの法案に反対をしないということは、実効性が余りないから、実質的に変わらないから、対象者がないからじゃないんですか。

大谷政府参考人 経営者の反対がなかったということではございませんで、審議会のプロセスでも、最終まで、合意できるかどうかぎりぎりの議論が続いた中で、労使、意見をまとめていただいて今回の法案提出に至ったということで、そのプロセスにおいては、私どもは経営者について大変理解を求めた。かつて、この十年間、なかなかこの法案がこういう改正が達成できなかったという事情もしんしゃく賜りたいというふうに思います。

小宮山(洋)委員 先ほど一部申し上げたように、審議会の建議、それから法案の要綱の答申、それと実際に政府案になったものとで表現ぶりが限定されるようになっているんですよね。そういうところも、やはり最近余り経営者側から反対の声を聞かないというところにあるんじゃないかと思います。

 もう一つ、今の点でちょっと視点を変えて言いますと、現状でも、既に大手の流通業界では、さっきお話があったように、正社員とパート労働者に同じ人事制度を適用して公正な処遇に努めている企業が出てきています。その適用になる労働者は、必ずしも期間の定めのない雇用契約を結んでいるわけではないし、正社員と同じ異動をしているわけでもありません。今回の政府案では、そうしたパート労働者の労働条件をかえって切り下げることにすらなりかねないのではないでしょうか。こういう場合に、不利益変更を防止する何らかの措置が必要ではないかと思いますが、いかがですか。

大谷政府参考人 お答え申し上げます。

 一般論として申し上げれば、どのような雇用形態でありましても、公正な待遇を実現するということが、その労働者一人一人について、安心して、納得して働くことを可能にするということで、正社員とパート労働者に同じ人事制度を適用するということは望ましい方向であると考えております。

 また、このような人事制度の適用が労働条件の引き下げを伴う場合もあるという御指摘でありますけれども、これは、さっき申しましたように、事業主の一存で、一方的に合理的な理由なく引き下げが行われるという場合は、法的に許されないんではないかというふうに考えるところでございます。

小宮山(洋)委員 これも今の答弁では不十分だということを申し上げておきたいと思います。

 それで、この後、もう少し広げた範囲で、今回民主党では最初の質問者ですので、少し引いた形で、また大臣にも御答弁をお願いしたいと思います。

 とにかく評価の物差しがないと差別の解消にはつながりません。そこで、再三申し上げているように、民主党案では、事業所ごとに物差しをつくるために、事業主、正社員、パート労働者が入った検討委員会をつくるということを一歩踏み出して提案をしております。こうした物差しを工夫する考えはないんでしょうか。これも再三申し上げたように、カナダのオンタリオ州では、四百もの項目を入れたペイエクイティー法というものを規定しまして評価をしています。

 就職ではなくて就社だと言われている日本では、一人一人の仕事についての評価ではなくて、課ごと、グループごとのどんぶり勘定的になっているので、ここに何らかの物差しを導入しないと、本当の意味の同一価値労働同一賃金を図ることができず、そうなると、真の意味のワークシェアリングも、今少子化への対応で政府も強く言っておられるワークライフバランスのとれた働き方もできないと思うんですけれども、まず、局長の方に、実務的にこうした物差しを取り入れるような工夫をする考えはないのかということを伺い、大臣から、政治家としてこれはぜひ取り組むべきだと思うので、お答えをいただきたいと思います。

大谷政府参考人 お答え申し上げます。

 平成五年にこのパート労働法を制定し、通常の労働者との均衡を考慮してという規定が盛り込まれて以降、厚生労働省としましても、均衡とは何かということについて検討を積み重ねてきたところでございます。

 具体的には、有識者による研究会を数度にわたり設置し検討を行いましたけれども、いずれにおきましても、日本における雇用管理の実態に見合った現実味のあるいわゆる物差しというものがコンセンサスを得られなかったというのが現状であります。

 そこで、今回の改正案におきましては、均衡待遇について、働き方の違いごとに具体的な待遇の水準を決めるという方法はとらず、そのような水準の設定に相当するような均衡待遇のための措置というものを事業主に課すという法体系として今回法案を整理したというのが現状でございます。

柳澤国務大臣 今局長の答弁の中で、働き方の違いごとに具体的な待遇の水準を決めるという、いわゆるそのための物差し、評価の物差しをつくる仕組みを盛り込んだらどうか、こういうお尋ねでございます。

 今局長が答えたとおりのことでございますけれども、この物差しが決まればこういう働き方をしている人にはこういうレベルの処遇をするということが決まるわけですけれども、これは、今の日本の雇用管理の実態に見合って、現実に即した物差しというものが国民的なコンセンサスのもとで得られるかといえば、私は、現状では非常に難しい、このように考えるわけでございます。

 したがいまして、今回私どもの政府案に示したような、今局長から答弁したような具体的な措置を事業主に対して課していくという法体系で、とにかく、実際上パート労働者の処遇の改善を図っていく、あるいはパート労働者の均衡処遇を実現していく、こういうことが必要であると考えております。

小宮山(洋)委員 局長の御答弁は実務的な立場からやむを得ないと思いますけれども、大臣はやはり政治家でいらっしゃるんですから、現状からもう一歩踏み込むことを、これは別に党派を超えていいわけですよ、私どもも提案をしているので、政府としてもぜひ提案をする、少なくとも考えるというぐらいの御答弁はいただきたいと思いますが、それはちょっと最後でもう一度伺いたいと思います。

 もう一点、大臣に。

 パート労働者の七割は女性です。改正された間接差別を禁止する男女雇用機会均等法が今月から施行されています。パートという働き方は固定的役割分業の延長線上にありますので、性差別禁止の視点がパート労働者の労働条件改善には不可欠だと思います。均等法では、募集、採用、昇進に当たって、転居を伴う転勤を要件とすることは間接差別として禁止をされております。パートへの差別は間接差別ではないかという指摘もございますし、私もそう思います。

 現実を反映した見直しになっていない政府のパート労働法改正案の残業、配転、転勤の有無等で処遇を分けている均衡処遇ルール、これも間接差別の観点から見直すべきなのではないかと思いますが、ぜひ、政治家としての踏み込んだというか、前向きの御発言を大臣からいただきたいと思います。

柳澤国務大臣 パート労働の中での男女が実際どういう役割を果たしているかというものを観察するときに、実態からして、そういう今の政府の案のような改正にとどまるのであればこれは間接的な差別ということにつながるのではないか、こういう御指摘であったかと思います。

 しかし、私は、現状の日本の雇用システムというものを前提にいたしますと、これはある程度中長期的な雇用を想定して労働者の待遇がなされているというのが一般的でございまして、正社員と比較して人材活用の仕組みが異なるが職務の内容が同じであるという場合に、正社員とパート労働者について異なる待遇とすることがすぐに一律に間接差別というふうに考えることは、働き、貢献に見合わない不公正な待遇となり得るわけでございまして、適当ではないというふうに考えます。

    〔伊藤(信)委員長代理退席、委員長着席〕

小宮山(洋)委員 中長期的と途中でお言葉がありましたけれども、やはりもう少し将来を見通して、これから女性の力を上手に生かさなければこの社会は成り立たないわけですよ。そういう意味からしてももっと踏み込んで、間接差別を禁止するという観点からも、やはりこのパート労働法の提出に当たってはもっと検討がなされるべきであったし、これからもそういう観点でやっていくべきだということを申し上げておきたいというふうに思います。

 それからもう一点、正社員への転換について、政府案では、正社員募集のパート労働者への周知、配置転換を希望する申し出の機会の付与、正社員への転換試験制度の創設のうちどれかを実施すればいいようになっています。

 民主党では、正社員募集の際に、現に雇用する同種の業務に従事するパート労働者について、応募の機会の優先的な付与、優先的な雇い入れ等が行われるようにするというふうにしております。そうしないと実効性が上がらないのではないかと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

柳澤国務大臣 民主党案は、通常の労働者への転換をより直接的に推進する手段として、パート労働者を優先的に正社員として採用するという措置を事業主に課していらっしゃるわけですけれども、この点につきましては、私ども、企業の採用活動を硬直的にするほか、当該企業に就職しようとする新規学卒者の機会を制限するというようなマイナス面がありまして、適当ではないと考えている次第です。

 さらに、失業者の中にはリストラされた方や母子家庭の母など生活が困難な方も多数おられるのが実情でして、これらの方々より、既に雇用され所得を得ているパート労働者の方を優先的に正社員として採用する措置を事業主に課すということは合理的でない、このように考えます。

小宮山(洋)委員 私どもの条文をしっかりお読みいただきたいと思うんですが、私たちは、他の応募者の就業の機会の確保についても配慮しつつとちゃんと盛り込んでございまして、それを努めるようにしなければならないという努力義務にしてあるんですよ。

 これぐらいのことはしないと、やはり実効性がかなり疑われるものだと思いますけれども、いかがですか。

柳澤国務大臣 法文のつくり方というのはいろいろあろうかと思いますが、配慮をして努めるということと、私どものように具体的な措置を命じていることとは、これは見解の相違に基づく両案だ、このように考えるわけでございます。

小宮山(洋)委員 法文のつくり方の問題ではありません。基本的に立っている理念と、実効性を上げられる工夫をしているかどうかの違いだと申し上げておきたいというふうに思います。

 それから、再び局長に伺いますけれども、事業所ごとの均等待遇の推進について、政府案では、短時間雇用管理者の選任努力義務という従来どおりのもののままです。民主党では、均等待遇等検討委員会の設置に加えまして、均等待遇推進者の選任も義務化をしています。もっと強い規定が必要なのではないでしょうか。

大谷政府参考人 お答え申し上げます。

 現行法において短時間雇用管理者の設置を求めております趣旨は、短時間労働者の就業実態が多様であり、事業主みずからがこれらすべての短時間労働者について、それぞれの就業実態に応じたきめ細かな管理を行うことが困難な面が多いということから、事業所において短時間労働者の雇用管理の改善等を求めるための体制を整備する、こういう必要から設けているわけであります。

 今回の改正でありますけれども、残念ながら、現状として選任しているという企業がまだ半数に満たないという状況にありまして、今後、そういったことで設置の指導に努めようということでありますけれども、今回、強制的に法律上の措置をするということにつきましては、審議会の中でも合意に至らなかったわけでありまして、今後、その実現にむしろ行政的に努力してまいりたいというふうに考えております。

小宮山(洋)委員 もう一点。調停が行えるようにしたということ自体は評価できるんですが、その体制がきちんと整っているんでしょうか。

 均等法に基づく調停の申請件数、これは、一方からの申し出で可能になった後は一時的にふえましたけれども、最近では、平成十七年度が四件、十六年度が三件、そういう状態で、これは均等法の方の話ですが、調停がやはり効果がないからこのように少なくなったのかなとは思いますが、都道府県の労働局均等室では、今、正規職員が二百三十八人、非常勤が五百五十一人と伺っておりますけれども、この体制で、調停をみんながどんどん申し立てをしたときに、対応ができる、きちんと実効性の上がる調停ができる体制になっているんでしょうか。

大谷政府参考人 今御指摘ありましたように、この法案で、事業主によります苦情の自主的な解決を前提とした上で、紛争解決援助の仕組みとして、紛争調整委員会による調停を行うということにしておりまして、その調整につきましては、都道府県の労働局の雇用均等室が担当することになっております。

 その人員についても御指摘がございましたけれども、この改正パート労働法につきましては、これは、今おっしゃった都道府県労働局の雇用均等室のみならず、全国に約三百カ所設けられております総合労働相談コーナーにおいても基本的な事項については相談に対応するほか、専門的な事項や事業主への指導が必要な事項については雇用均等室に円滑に引き継ぐなど、都道府県の労働局全体で適切に対応していこうというふうに考えているところでございます。

 どれぐらいそのプロセスの中で調停ということになるか、これはわかりませんけれども、実は、男女雇用均等法につきましても、調停について、その活用を現在指導しているところでありまして、そういった中で体制の整備あるいはその充実に努めてまいりたいと考えております。

小宮山(洋)委員 ぜひ、その実効性が上がる形で調停が活用されるような体制づくりをしていただきたいというふうに思います。

 そして、ILOの百七十五号条約、パート労働条約を早く批准すべきではないかと考えますが、なぜ日本は批准できないんでしょうか。

大谷政府参考人 パートタイム労働に関する条約、いわゆるILO第百七十五号条約におきましては、比較可能なフルタイム労働者といたしまして、パート労働法における通常の労働者と類似の概念が定義されております。これとの比較においてパート労働者を定義する体系をとっているという点では、これはパート労働法と同じであります。

 しかしながら、比較可能なフルタイム労働者という考え方でありますが、これが事業所の外におられる方も含む概念であるという点で、このパート労働法上の通常の労働者とは異なっております。一般的に、職務給ということが定着していて、また事業所横断的な労働市場が形成されているヨーロッパとは異なりまして、事業所ごとの雇用管理により賃金等が決定されている我が国におきまして、事業所を超えて通常の労働者というものを定義すると、実態と相当離れた制度となるという問題があるわけでございます。

 こういったことから、現状では適切な国内担保措置がないためにパートタイム労働に関する条約が批准できない状況にあると考えております。

小宮山(洋)委員 結局、国際的に言われているパートタイム労働者と日本のパートタイム労働者ではやはり置かれている状況が違い過ぎるということだと思います。やはり、国際的なものに近づけていく努力がもっと必要で、そのためにもこのパート労働条約の批准を早くできるように努力をしていくべきではないでしょうか。

 最後に、私の持ち時間があと七分半ほどでございますが、大臣、実務的なことは局長とお話をいたしました。これは政治家としての大臣に伺いたいので、ちょっと答弁書は置いていただいて、私と話をしていただきたいというふうに思います。

 そもそも、政府案と民主党案のよって立つ理念、考え方の違いは、均衡処遇と均等処遇というところにあるのではないかと思います。広辞苑を引きましたが、均衡というのは、「二つ以上の物・事の間に、つり合いがとれていること。」平衡、バランスということで、均等というのは、「平等で差のないこと。」ですよね。その中で、政府はあくまで正社員とパート労働者はバランスがとれていればいい、平等でなくていいとお考えですか。

柳澤国務大臣 これは、正義というのはどういうことか。大昔ですけれども、委員のお父様から随分仕込まれました。正義とは何か。これは、公平だ、こういうことなんです。公平とは何か。公平に二つある。均分的な公平あるいは算術的な公平と、幾何学的な公平ということと二つある。つまり、公平という場合に、もう全く一と一は公平か。平等です、これは。しかし、これはもう各人に彼のものを、各人、それぞれ違う人にそれにふさわしいものを上げるということが正義なんですが、これを実現することをめぐって随分争いをしてきたというのが人類の歴史です。

 ですから、いわゆる算術的な、均分的な正義ではなくて幾何学的な正義、これは本当に、違うんだけれども、それぞれにふさわしいものを与えるということが本当の正義なんだということがあるわけでございます。均等というのを、今委員がおっしゃるように、これはイコールということ、あるいはイコール・イン・アマウント、イコール・イン・ボリュームでもいいですが、そういうふうに考える考え方というのは、これは算術的、均分的な公平ということでまことにわかりやすいんですけれども、人類の歴史でもう一つの正義があって、そして、そちらの正義の方が正しいんだ、例えば、ハンディキャップの人にもっとたくさんの給付を上げることが正しいんだ、そういう正義論の方が私は現在の正義論だと思うのでございます。

 そういう意味合いから、私どもは、違ったものを違ったように処遇しながら、究極的にはその正義、公平が実現されているということを考えるわけでございますが、委員は少し短兵急だと思うんですね。現状が、我々の国の雇用管理の状態というものを、本当にそういう現状に立脚して現実的にこのパート労働者の処遇を改善していく、その道として、私どもはこういう道がベストだと思ってとっているわけであります。

小宮山(洋)委員 かなり高邁な議論を伺わせていただいているようですが、私はあくまで現実に立脚をして物を言っているつもりです。

 それで、やはり現状追認の法案では、政府案の役割を私は果たさないと思います。やはり将来に向けて、今不公平な状況で働いているパートの人たちに、希望が持てる、改善をされていく方向を示すのが政府の、特に大臣の責務だというふうに私は思います。

 短時間労働者ということで、ヨーロッパなどでは、短い時間の労働ではあるけれども、一時間当たり同じ価値の仕事をすれば同じ報酬がある、そのことが大臣の言われる本当の正義だと私は思います。そこをきちんとしない限り、本当の意味のワークシェアリングもできませんし、子育てをしている人が、子育ての間、家族が必要としている間、安心して短い時間働きなさいということを政府もおっしゃっているわけですよ。そのためには、やはり同じ価値の仕事をしたら同じ報酬があるというのが、これは考え方が二つあるのではなくて、そこには正義は私は一つしかないというふうに思っております。

 そういう意味では、均等待遇というところまではこれまで私たちも法案を出してきましたが、確かに、日本の中で同じ価値というのをはかる物差しが難しいわけですよ。そこで、そのための仕掛けとして、事業所ごとにそれを検討しましょうと。すべてそこが最初からうまくいくとは思いませんが、少なくともそういう仕掛けをつくる提案を野党の私たちがしているんですから、政府はやはりそれを上回る提案をする、そういう心意気、考え方をぜひ最後に再び伺わせていただいて、あと残り一分ほどでございますので、私の質問は終わりたいと思います。

柳澤国務大臣 先ほど申したように、算術的な、一のものを全部、一を与えてしまう、そういう方式だと、小宮山委員は民主党案についてそういう規定をなさっているわけですが、民主党案もそうではなくて、やはり物差しというものをそこに介在させて、違うものについては違うようなことであってもそれが均等だというシステムをつくろう、そういうふうにされているわけでありまして、やはり小宮山委員の言及されている民主党案も、そういう意味では、違うものを違うものとして処遇することによって、しかし、今申したような実質的な公平というものを、均等というか、実質的な均等というものを確保しようとしている、こういうことであります。

 我々の案はどうかというと、そういうような物差しあるいはその物差しを検討していただく検討委員会というようなものをそこに介在させることによって、非常に行政としては、何と申しますか、余り申し上げるのもいかがかと思うんですけれども、責任というものをもっと十分とった形にして、はっきりした形で民間あるいは労働市場がこれを取り扱うことが容易にできるように、そういうシステムにしよう、こういう考え方から、今申した同じ目的を、いろいろな具体的な措置を事業主に義務づけることによってそれを実現しようとしている、こういうことでありますので、ぜひそこは御理解を賜りたいと思います。

小宮山(洋)委員 時間が来ておりますけれども、私はそれは理解はできません。私どものは物差しをつくる仕掛けをつくろうと言っていることなので、同じものをきちんと評価しようと言っていることなので、その仕掛けをつくらない限り、今の政府案では同じ価値のものが同じと評価されない、その危惧ばかりが募るということを申し上げまして、私の質問は終わりたいと思います。

櫻田委員長 次に、細川律夫君。

細川委員 民主党の細川律夫でございます。

 私は、今度の法案の具体的な条文に入る前に、ちょっと年金の問題についてお聞きをいたします。

 パート労働の問題は年金の加入問題と密接に連動をいたしております。政府・与党の方でも、パートの人たちに、厚生年金加入について、どういう人たちに加入をしていただくかという点について検討をしていただいておって、先月の二十八日ですか、大体決まったようですけれども、しかし、その範囲というものは当初案よりも大幅に縮小したということで報道をされております。そうなりますと、雇用の格差の是正という意味においては余り貢献をしないだろうというふうに思えるわけでございます。

 また、年金加入者あるいはまた今後厚生年金に入ろうとしている、そういう人たちは、年金の運用あるいは自分たちが納めた年金が無駄遣いをされているのではないかということに対して大変関心も高いわけでございます。したがって、年金を管理運用する、そういう点については国民の期待にきちっとこたえられるような、そういう運用管理をしていただかなければならないというふうに思います。

 そこで、今あります年金積立金管理運用独立行政法人、これに関連したことについてお尋ねをいたします。

 この法人は去年の四月に設立をされておりますけれども、沿革的に見ますと、初めは、あのグリーンピアなどで一躍有名になりました年金福祉事業団でございます。そしてその後、平成十三年から制度を変えまして、組織を変えまして、年金資金運用基金、こういうふうになりました。そして、この年金資金運用基金は去年の四月に現在の独立行政法人になったところでございます。

 そこで、この年金資金運用基金、私のところに入ってきたいろいろな情報によりますと、ここでどうも何か裏金のようなものがつくられていたのではないかというようなことが入ってきておりますので、これについてお聞きをしたいというふうに思います。

 まず、事実関係からお聞きをします。

 年金資金運用基金が関係していたもので年金福祉研究会という組織があったのを御存じですか。あるいはこの組織はどういう組織だったか、これについてお答えをお願いします。

渡辺政府参考人 お答え申し上げます。

 年金福祉研究会という組織につきまして、率直に申しまして、先日委員からの御照会を受け、初めて私ども年金局として聞き及んだところでございます。その後、年金積立金管理運用独立行政法人に私どもの担当のセクションから事情を聴取いたしましたところ、年金福祉事業団の時代から年金福祉研究会という任意団体が存在し、被保険者住宅融資の借入申込書などの作成をしていたということを承知した次第でございます。

細川委員 それでは、年金福祉事業団のころからそれがあったということですけれども、では、年金福祉事業団は、いつごろからこういうのがあったんでしょうか。

渡辺政府参考人 この年金福祉研究会という任意の組織につきまして問い合わせましたところ、設立時期についてはよくわからないという状態が今の答えでございますが、少なくとも平成七年には存在していたというふうに聞き及んだところでございます。

細川委員 それでは、この年金福祉研究会という組織の仕事はだれがしていたんでしょうか。年金福祉事業団や年金資金運用基金、ここの職員がこの団体の仕事をしていたんでしょうか。明確に答えてください。

渡辺政府参考人 今お話のある年金福祉研究会という任意団体の業務でございますが、これを行っていた者は、年金資金運用基金の時代でございますと、総務担当の部長、課長、課長代理といった職員が原則として勤務時間外に行っていたという答えでございました。

細川委員 事業団のときはどうですか。

渡辺政府参考人 これにつきましても、聞き取りによる当時の記憶ということでございますが、年金福祉事業団時代も総務部というのがございましたので、当時の総務担当の部長、課長、課長代理という職員が担当をしておったというふうに聞いております。

細川委員 これは勤務時間外にその仕事をしていたというように聞いていますが、そうですか。

渡辺政府参考人 先ほどお答え申し上げましたように、原則として勤務時間外に行っていたということでございました。ただ、例えば顧客との関係での電話照会の対応など、常識的に考えましても、一部の業務が勤務時間内に行われていた可能性を否定できるものではないと考えております。

細川委員 それでは、一部は勤務時間内に行われていたというふうにお聞きをしておきますが、仮に勤務時間外としても、これは職員が販売をしていたわけですね。そうすると、販売をした収益、その収益を、販売をした者に報酬だとか、そういうことで報酬を渡していたんでしょうか。

渡辺政府参考人 年金福祉研究会の業務を行った職員に対する同研究会からの報酬は支払われていなかったというふうに聞いております。

細川委員 それでは、私の手元にあります文書ですが、平成十七年七月二十七日付、「受託金融機関 年金資金運用基金業務担当者殿」とありまして、「平成十七年度年金資金運用基金事務必携(CD―ROM)のご案内」ということで、これはCD―ROMの購入申し込みの勧誘ですね。これは、だれがこの文書を出したかということで、一番下にあります「千代田区霞が関一丁目四番一号 年金資金運用基金総務課内 年金福祉研究会」、こういうふうになっております。

 そうしますと、これは年金資金運用基金の内部に年金福祉研究会がある、あるいはあった、こういうことではないでしょうか。

渡辺政府参考人 先ほどお答え申し上げましたとおり、年金資金運用基金の総務担当の部長、課長、課長代理が担当していたということでございますので、こうした文書も出たものと思いますが、組織といたしましては、年金資金運用基金とは別の任意の組織であったというふうに承知しております。

細川委員 任意の組織といっても、「年金資金運用基金総務課内」というふうに書いてあるんですよ。総務課内の年金福祉研究会ということなら、年金資金運用基金の中に年金福祉研究会がある、これは当然、だれだってそういうふうに読むじゃないですか。どうですか。

渡辺政府参考人 団体としては別の任意の組織であったと承知しておりますが、お示しいただいた案内の書類を見ましても、御指摘のとおり、基金の内部に、その内部にという意味合いによるわけでございますが、内部でこういう研究会というものを名乗って仕事をしているという表現に見えるという点については、私どもも同感でございます。

細川委員 今お認めになったように、このペーパーから見れば、内部の団体のように思えると。しかも、職員がこの仕事をやっているわけでしょう。これは幾ら私的な営利活動といっても、明らかに年金資金運用基金がやっているというふうにしか言えないのではないですか。公的な団体を装ってこういうような私的な営利活動をやっていたら、大変大きな問題ではないでしょうか。どうでしょうか。

渡辺政府参考人 繰り返しになりますが、年金福祉研究会というのは、年金資金運用基金とは別に設けられた任意の組織であったと報告を受けております。また、その研究会の業務が営利活動であったのかどうかという点については、既に同研究会は解散されており、確認ができないというふうにも聞いております。

 ただ、まず一般論といたしまして、仮に、同研究会が営利を目的とする活動を行い、それが就業時間中にも行われていたとするならば、年金福祉事業団法あるいは年金資金運用基金法、あるいはこれらの法人が定めていた当時の就業規則等に照らし違反する可能性もあり、現時点において法律的に可能な範囲で適切な措置がとられるべきもの、こういうふうに考えますが、なお、その事実関係については十分確認できない状態でございますので、仮にということでお答えを申し上げたいと思います。

細川委員 これが、先ほど答弁があったように、部長とかあるいは課長とかそういう者が実際に携わっていたというようなことになって、先ほど言われた法律とか法規に照らして違反をしているというようなことになれば、こういう責任はだれがとるということになりますか。

渡辺政府参考人 年金福祉事業団、それから年金資金運用基金、そして現在の独立行政法人と組織が移り変わっておりますが、その時々、その組織の長たる理事長以下執行部が第一義的に責任を負うものというふうに考えております。

 私どもも、当時も、そしてこれからもでございますが、そうした法人の適切な業務運営を確保すべく、透明性が高まるように、厚生労働省としてもそれを促していく責任があるというふうに考えております。

細川委員 では、この年金福祉研究会というのは、年金福祉事業団あるいは年金資金運用基金、この融資業務に関連をして、それらの組織の会計とは全然別に、経費を支出したり、あるいは収入を得ていた、こういうふうに言っていいですか。ちょっと確認です。

渡辺政府参考人 そのとおりでございまして、年金福祉事業団、年金資金運用基金の時代を通じて、それらの事業団、基金とは全く別の経理がこちらで行われていた。逆に言いますと、事業団や年金資金運用基金の資金、予算、そういったものが混入するということは全くなかったものと承知しております。

細川委員 それでは、先ほど一枚のペーパーで質問をいたしましたが、平成十七年七月二十七日付で、平成十七年度の年金資金運用基金事務必携CD―ROMを販売いたしておりますけれども、では、十七年の年金福祉研究会の収支はどういうふうになっていますか。

渡辺政府参考人 書類が残されていないとの報告でございましたので聞き取り調査によるわけでございますが、十七年度、直近でございますので、聞き取ったところを申し上げたいと思います。

 年金福祉研究会の収入は、前年度からの繰越金約三十万円、事務の手引のCD―ROMの販売収入約六十万円、支出は、事務の手引作成費用約九十万円、収支同額であったというふうに承知しております。

細川委員 収支はゼロ、こういうことですか。

渡辺政府参考人 収支相償った状態というふうに報告を受けております。

細川委員 私は、収支がゼロだというようなことは全く信用しません。

 それでは、平成十七年度末の収支報告書のようなものはありますか。これをちょっと示してください。

渡辺政府参考人 先ほども申しましたとおり、そうした関係の資料が現在確認されていないということでございます。

細川委員 わずか一年前で、しかも、この年金福祉研究会の事業はずっと継続をしてきたわけでしょう。それは、十七年は少なかったかもわかりませんよ、額は。しかし、その前は大変な額じゃないかと思います。後からまたこれは質問をいたしますけれども。

 十七年度のしっかりした収支をちょっと示してくださいよ。

渡辺政府参考人 なお調査途上でございますが、同研究会にかかわった者からの聞き取り調査によれば、その研究会を解散した際に関係書類を廃棄したと聞いております。

細川委員 それは、だけれども、資料はありません、なぜないか、廃棄をしたからありません、それで、はい、そうですかというので終わるんですか、調査は。それだったら調査じゃないんじゃないですか、そんなことを言われるならば。

 わずか一年前ですよ。帳簿のようなものも残っていないんですか、本当に。私はあると思うんですけれども。それを出してくださいよ。出してくださいよ。委員長、ちょっと言ってください。出してください。

渡辺政府参考人 先ほど、現時点までに聞き取ったところをお答え申し上げました。その際にも、現在なお調査中ですがと申し上げましたところでございまして、私ども、さらに聞き取りを徹底してまいりたいというふうに思っております。

細川委員 今までの調査と言いますけれども、私は相当前に、このことについては問題があるということで尋ねております。昨日も午前中に、この件については質問通告で、出してほしい、こういうことを言ってきました。それまでの調査ということで、ただ廃棄をしました、あと調査を続けていますというのでは、余りにもずさんな調査じゃないですか。

 これは十七年のことだけを今私は質問しているわけですから、直近の、去年ですよ、もうそれがないと言われれば、はい、そうですかと私の方も、これ以上ちょっと進めないようになりますね、委員長。

渡辺政府参考人 昨日の質問の御通告をいただきましてからも、私ども、現在の独法の方とも連絡をとって重ねて聞いておるところですが、関係書類が廃棄されたという点については同じ答えでございました。

 いずれにいたしましても、これは単に十七年度のことだけではなく、かねてから、長い間の年金福祉研究会の経緯もあるようでございますので、既に廃止された団体の、さらにその中の関係者が関係していた任意団体ということではございますが、基金廃止当時の理事長である者が現在の独立行政法人の理事長であるということでもございますので、調査の実施について、現時点でどういう手法で調査をして事実関係を明らかにすることが正しいのか、そうした検討を含めて、私ども厚生労働省としても適切な対応を強く求めて、その結果を明らかにしてまいりたいという所存でございます。

細川委員 少なくとも、例えば十七年度の収支の帳簿、これがどうなっているのかということを調べる場合に、それはもう既に廃棄をしてありませんと言った場合は、では、それはだれが管理をしていて、いつ、どこで、だれが、どういうふうにして廃棄をしたかというふうなことは、それは聞くでしょう。その結果をちょっと発表してくださいよ。言ってくださいよ。どういうようにして廃棄をしたのか。

渡辺政府参考人 先ほど申し上げました年金資金運用基金の当時の総務担当の部長が、今申し上げましたような関係書類の廃棄をしたということを疎明しております。当該部長は現在の独法の部長で、在任中でございますので、又聞きではなく御本人の疎明というふうに私どもは理解しております。

細川委員 私の質問に答えてくれておりません。具体的にどういうふうに廃棄をしたかということくらいは聞いたんだろうというふうに私は質問したんですけれども、それに対しては全く答えがないわけです。

 まずは、この十七年度の件については、どうですか、徹底的に調査をしますか。そして、それを明らかにしてこの委員会で説明をする、そういう約束をしていただきたいと思います。その期間も限定して答えていただきたいと思います。

渡辺政府参考人 御指摘のとおり、当事者本人の疎明ではございましたが、具体的な、今御指摘の年月日、あるいは廃棄の手法等々について、詳しいことまではまだ私つまびらかにしておりませんので、そういう点も含めて、早急にさらに調査、そして認識を固めた上で、速やかに委員会にも御報告を申し上げたいというふうに考えております。

細川委員 いつまでにやってくれますか、少なくとも十七年度。

渡辺政府参考人 現時点では、速やかにということを申し上げたいと思っております。

 廃棄を具体的にどのようにしたのかという点につきましては、当事者がおりますので、それほど時日を要せずに御報告申し上げられるのではないかというふうに考えております。

細川委員 では、ちょっとその点についての私の質問は留保いたします。

 それでは、次なんですけれども、その十七年から前、これは過去にさかのぼってどういうような収支になっていたのか。先ほどの報告では、平成七年、一九九五年には大体その存在があった、年金福祉研究会の存在は確認がされている、こういうことだったんですが、それではこの年金福祉研究会の収支、これは先ほどお聞きをした十七年度の前、さかのぼってどういうような収支になっていたのか。これは融資の額が相当大きいですから、件数もすごかったんではないかと思いますけれども、それはどうなっているんでしょうか。

渡辺政府参考人 二点あったかと思います。

 一点目は、十七年度ということに限らずかつてのことも含めて、少なくとも平成七年度以降あったということであれば、そういう点も含めて会計収支等々についてしっかり調べるようにという御指摘だったと思います。

 そのようなことで対応したいと思いまして、早速にも担当の理事長、現在の理事長にも、そうした全般的な調査の実施について、手法の点も含めて適切な手法、そして単に内部だけで行うという検討では足りないのではないかという思いも持っておりますので、厚生労働省として適切な対応を強く求めて、その結果をできるだけ速やかに明らかにしてまいりたいと思います。先ほどの十七年度の話とはまたもう少し違う、幅の広い調査ということになると思いますが、それはそれとして、速やかに進めてまいりたいと思っております。

 なお、かつては、こうしたCD―ROMというような金融機関だけにということではなく、年金住宅融資の貸し付けの申込書の印刷というようなことがございました。そういった点から、今御質問にありましたように、かつては大変な件数があったのではないか、そうすると収入も、今のCD―ROMの数十万というような単位ではなかったのではないか、こういうようなお尋ねかと思いますが、当時の書類にまで当たれていないというか、廃棄したという現時点での報告であれば、当時の販売部数や単価というものについても不明ではございます。したがって、過去の総収入、支出というものを正確にどうやって推計するのかという点はあろうかとは思いますが、その点も含めて、調査を何らかの形で進めてまいりたいと思っております。

 なお、年金福祉事業団、それから年金資金運用基金を通じて、年金住宅融資事業新規貸付件数は、廃止する直近に近い平成十六年度ですと六十四件という少数でございますが、例えば平成八年度、あるいは先ほどおっしゃられた平成七年度、このあたりでございますと、十数万件の新規貸付件数があった、そういう時代が当時はあったということでございます。

細川委員 その平成七年とか八年、十数万件ですか、それは住宅の申込用紙だけではなくて、例えば、それに伴う火災保険だとかそういうような申込書とか、そういうものなんかも全部入っているわけでしょう。どれくらいの申込用紙、件数が行われたのか、概算でもいいから答えてほしい、こういう話をしていたんですけれども、単なる住宅の申し込みだけではないでしょう、年金福祉研究会が販売をしていた様式集というのは。

 私の質問通告したことについて、何か全然調べてきていないようなあれですけれども、これじゃ本当に審議ができませんよ。調査したことをここではっきり発表してください。

渡辺政府参考人 私どもが聞き取りましたところでは、年金住宅融資に係る新規借入申込書など数種類の申請書類を作成していたということでございますが、その関係には保険を付しておりますけれども、保険の関係の書類等々ということは含まれていなかったのではないかというところまでしか、まだ判明しておりません。

 現時点ですぐ参照可能な当時の関係資料が、廃棄のためか何か、現時点で私ども調査を促しましても、その関係に照らして報告が得られないものでございますから、新規借入申込書など数種類の申請書類があったように記憶しているということにとどまっておりまして、先ほど申し上げました十数万件の新規借り入れ申し込みということに絡んで何種類の申請書類が、それぞれ単価が幾らで、どのぐらい販売されたのかという点について、さらに実態に近い情報を得るべく調査を続けたいというふうに思っております。

細川委員 全く調査をしていないのではないかというような、そんな答弁ですけれども。

 それでは、少なくとも十数万件で何種類かの申込用紙を販売していたわけですから、相当の利益があったんでしょうけれども、概算で利益は年間どれくらい上がっていたんですか。

渡辺政府参考人 まことに申しわけございませんが、今、私どもが得ている情報をかけ合わせましても、過去の総収入がどの程度の規模のものであったかということを推計することがなお困難というふうに考えております。まことに申しわけありませんが、総収入の推計は現時点では困難でございます。

細川委員 では、わからないということを前提に。

 利益が上がっていた。その利益を何に使ったんですか。

渡辺政府参考人 当時、どのような支出項目に収入が充てられていたのか、そういう点についても今問いただしておるところでございますが、よって立つべき書類そのものがない以上、現在の職員に問いただしましても、なかなかよくわからないというところが続いております。したがいまして、もう少し調査の幅を広げて、どういう事実があったのかという点についてさらに詳しく調査を求めたいと思っております。

細川委員 それでは、その年金福祉研究会の代表者はだれだったんですか。

渡辺政府参考人 年金福祉研究会の代表者は、当時の年金福祉事業団であったり、年金資金運用基金の総務部長の職にあった者でございます。

細川委員 総務部長だということがわかれば、これはもうそんなに調査は難しいことではないじゃないですか。

 総務部長がこの会の代表者で、そして職員を使ってこれを販売させて、これはもうわからないはずないじゃないですか。きちっと調査していないんじゃないですか。あるいは、調査をしたけれども、ここで答弁されていないんじゃないですか。ちゃんと答えてくださいよ、調べたことは。

渡辺政府参考人 現在の独立行政法人の管理部長が十七年度までの年金資金運用基金の総務部長、同一人物でございますので、先ほど来御報告申し上げておりますような、当事者としての記憶ということで、さまざまな点を明らかにしてきたところでございます。

 ただ、関係書類そのものはその廃棄の結果、現在それを参照できないわけでございますので、恐らく過去のもの、例えば御指摘のありました平成七年度、平成八年度、非常に申込件数の多かった時期など、どういうふうになっていたんだろうかという点につきましては、既に退職済みの元総務部長ポストにおられた方々にも十分話を聞かないと、現時点の管理部長という者に聞いても、先ほど申し上げました最近の数十万円の単位のことは記憶にあるわけでございますし直接タッチしていたわけでございましょうが、その本人自身がタッチしていなかった過去のもの、とりわけ件数の多かった時代のものなどにつきましては、やはり当時の関係者にもっと調査の手を広げて事情を明らかにしていくしか道はないのじゃないか。ほかにどういう、もっといい手法があるのか、何か書類が見つかるというような可能性はないのか等々、現在の独立行政法人にしっかりそこの指示をしたいというふうに考えております。

細川委員 先ほど、今の管理部長は以前の基金の総務部長でもあった、それでこの年金福祉研究会の責任者でもあった、こういうことですから、それでは、その現在の管理部長に廃棄のことについて確認したんですね。具体的にどういうことを言ったんですか。

渡辺政府参考人 当該人物に直接私どものセクションから確認をしたところでございます。それが、先ほど申し上げました、関係の書類は廃棄されているということでございました。

 それで、先ほど申しましたように、何月何日、どのような手法でどの範囲の書類をどうしたのかという点については、なお答えが返ってきていないところでございますが、引き続きそこは明らかにしたいというふうに考えております。

細川委員 これではちょっと、委員会で質問をするという質問通告をして、しかも、その以前にもこのことについては調査を依頼していたわけですから。それが、この委員会で、何ですか、全然答えてくれないじゃないですか。それでは調査したと言えますか。隠していると同じじゃないですか、これは。全く解明できないですよ。私はきょうの質問でこのことを解明しようと思ったんだけれども、できないじゃないですか、そういう御答弁だと。

 委員長、これではちょっと私は進めませんね、もう質問が。(発言する者あり)

渡辺政府参考人 今申し上げましたように、廃棄を疎明しておる当事者が今管理部長をしておりますので、その廃棄の手法、時期等々につきまして直ちに調査をし、その結果について、(発言する者あり)いや、恐れ入ります、今週ないし週明けまでには明らかにさせてもらいたいというふうに思っております。

 そのために、実は本日、この審議の後、この審議の状況もしっかり伝えた上で、さらに調査を督励したいというふうに考えておりますので、数日いただければありがたいというふうに考えております。(発言する者あり)

櫻田委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

櫻田委員長 速記を起こしてください。

 この際、細川律夫君の残余の質疑につきましては、理事間で協議の上、後刻行うことといたします。

 暫時休憩いたします。

    午後零時十分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時三十分開議

櫻田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。山井和則君。

山井委員 それでは、これから一時間にわたり質問をさせていただきます。

 きょうは、パート労働法改正についての審議でございます。午前中の答弁を聞いていても、本当によくわからない法律だなということを痛感いたしましたが、そのことについては後ほど質問をさせていただきますが、冒頭に少しだけ薬害C型肝炎の訴訟と救済のことについて、先週動きがありましたので、このことだけお伺いをさせていただきたいと思います。

 これは、先週の水曜日も私質問をさせていただきました。そして、二十三日に、国が多くのケースにおいて敗訴という判決が出たわけですね。大阪、福岡、そして三回連続出たという中で、もうこれ以上同じことを高裁、最高裁続けても、根本的な国の責任というのはひっくり返ることはないと見るのが常識的な見方だと思います。

 そういうことで、やはりこの東京地裁での国の敗訴を一つの区切りとして、政治決着をしてほしい、司法に任せきりにしてほしくないというのが、原告のみならず三百五十万人の肝炎患者の願いであると思います。そういう思いで、これ以上引き延ばされたら自分たちの命ももたない、症状も悪化するという悲痛な思いで、命がけで座り込みを先週水曜日、木曜日、金曜日とされたわけであります。

 資料の十二ページを見ていただければと思います。ここに新聞記事が載っております。

 この資料十二の下のところにもありますように、マイクを握っておられますこの浅倉美津子さん、東京の原告の方も、今回、このままいったら本当に患者救済、治療費の助成などが進まないということで、自分も非常に肝炎が悪化して病状もお悪い中を、今回、意を決して、実名を公表して、自分の健康を犠牲にしてでも患者救済のために身を挺して取り組みたいということで、今回も座り込みに参加をされたわけであります。にもかかわらず、国は控訴をされたということに対して、強く抗議をしたいと思います。

 しかし、同時に、この間、少し前向きな動きもありました。

 公明党が首相官邸に要望にも行かれましたし、この記事にありますように、左の側の三月三十一日の朝日新聞ですね、「C型肝炎解決 「政府・与党で取り組む」」、下村官房副長官、原告と面会、そこで、安倍総理の強い決意を伝言の形ですが、原告に伝えられたということであります。

 そういう中で、やっと首相官邸で官房副長官が会って自分たちの思いを聞いてくださった、そして、政府・与党で取り組むという安倍総理からの力強い伝言もいただいたということで、多くの原告の方、患者の方々、涙を流して喜んでおられました。そういう状況であります。

 一つだけ、ちょっと若い方の声を読み上げさせていただきたいと思います。

 最後の十五ページに、C型肝炎の九州訴訟の二十九番の原告、匿名で二十の女性の意見陳述がありますので、少しだけ読み上げさせていただきます。

  私は、まだ二十歳です。時々、本当なら、仕事をしたり、友達と遊びにいったり、買い物をしたり、彼氏ができたり、もっといろいろなことがあってもいいんじゃないかな、と思います。けれど、今の私は、家で横になってばかりの毎日です。横になっていると、ついつい、いろいろな心配事が浮かんできます。

  また仕事ができるようになるのかな。いつか好きな人ができたら、「C型肝炎です」と言わないといけないのかな。言ったら、別れることもあるのかな。結婚したくても、相手の家族に反対されるのかな。子どもを産んでもいいのかな。産まれた子どもも肝炎になるのかな。そういったことを考えはじめると、答えがなくて、最後はいつも、「私は、どうしてC型肝炎になったのかな」、「肝炎にならない方法はなかったのかな」というところに行き着いてしまいます。

  裁判長。私は、どうしてC型肝炎になったのでしょうか。私が生まれた昭和六十一年四月、C型肝炎にならずにすむ方法は、なかったのでしょうか。「国も、製薬会社の人も、誰も悪くない」それは、本当なのでしょうか。エイズやC型肝炎になるような薬が、産まれたばかりの赤ん坊に、次々と投与されました。それなのに、誰も、何も悪くないと言われても、どうしても、理解ができません。

  どうしてこんな毎日をすごさなくてはいけないのか、その理由を、ぜひ明らかにしていただきたいです。

これは、九州原告の方が、九州の地裁で読み上げられた意見陳述であります。生まれたばかりのときに血液製剤を投与されてC型肝炎になった。まさに若い世代の方々も、多くの方々がこういう人生の不安を抱えておられるわけです。

 そして、これは適切な時期にインターフェロン治療があれば、ウイルスが完全に除去できる方もかなりの割合でおられるわけですね。ところが、副作用も強くて仕事を休まねばならないとか、治療費が自己負担で年間数十万かかるとかということで、治療も受けられない。その間にどんどんどんどん悪化していく。国に動いてほしいけれども、国は、やっと東京地裁の結果が出たのにまた控訴して、高裁、最高裁、あと五年かかるか十年かかるかわからない。

 こういう状況に対して今動きが出てきたわけですが、そこで、まず石田副大臣にお伺いします。

 公明党は、去る三月二十九日に、首相官邸に対して患者の救済等について申し入れをされたとお聞きしましたが、どのような内容で、どのような形で申し入れされたのでしょうか。

石田副大臣 委員の御質問でありますけれども、まず冒頭申し上げたいのは、公明党の政策等について私の立場から申し上げるのは、これは適当ではないと思いますが、事実関係といたしまして、公明党の肝炎対策プロジェクトチームが三月二十九日に下村官房副長官に対して、肝炎対策についての申し入れを行ったことは承知をいたしております。

 その申し入れの中身は、患者、家族の一刻も早い救済のための治療、検査体制の充実や患者の医療費負担の軽減など総合的な支援策を求めたもの、このように伺っております。

山井委員 公明党がこのように一番患者の方々の要望が強い治療費負担の軽減も首相官邸に対して申し入れられたということに対して、私は本当に深い敬意を表したいと思いますし、また、患者や原告の方々が非常にこのことに関して喜んでおられたということも、事実としてお伝えをさせていただきたいと思っております。

 このようなことも後押しになったのではないかと思いますが、初めて下村官房副長官が、山口美智子さん、原告の代表と面会されたわけです。その際に、新聞記事、もう一回十二ページを見ていただくとわかりますように、朝日新聞に書いてあります。

 面会した原告らによると、下村官房副長官は「「安倍首相の声と思って聞いてほしい」としたうえで、「政府としてもみなさんと痛みをできるだけ共有したい。与党と一体となって解決に向けて取り組んでいく」」と話した。また、下村官房副長官は「安倍首相から「訴訟とは別に、解決できることがあれば努力する」などと指示されたといい、与党にも肝炎対策を勉強・研究するよう働きかけると明言した。」全国原告団代表の山口美智子さんは、「私たちは何度もノックしましたけれども、やっと、重くて固い扉が開きました」と声を詰まらせた。鈴木弁護団長も「政府が訴訟を含めて、解決に向け対応すると受け取った。ゼロ回答ということはないだろう」というこんなコメントも載っております。

 そこで、柳澤大臣にお伺いしたいんですが、患者や原告の方々は一日千秋の思いで、この治療費助成を含む患者の救済、また、訴訟をもう終わらせて全面解決ということを、本当にもう首を長くして待ち望んでおられます。

 先週水曜日、私の質問を聞きに来てくださったある原告患者の方も、ある方は御高齢で、既にがんが進行されていて、きょうの質疑を聞かせてもらって一つの冥途の土産になったということをおっしゃっておられました。そういう意味では、死期が迫っておられる方々も多いわけですね。

 こういう状況において、いつまでにどのような内容で患者の救済を行うのか、原告の方々への回答のめどはいつごろなのか、そのことについて大臣にお伺いしたいと思います。

柳澤国務大臣 三月三十日の金曜日の日に、下村官房副長官が、原告団と仰せられるのでしょうか、代表の方とお会いしたことは承知をいたしております。

 肝炎患者に係る対策につきましては、我々といたしましては、これまで検査体制の強化、診療体制の整備、治療方法等の研究開発等の取り組みを推進してきたところでございます。そして、今後引き続き、これらの対策について総合的に検討していかなければならない、このように考えております。

山井委員 私がお聞きしたいと思っておりますのは、今回こういうふうに安倍総理からも官房副長官に対して指示があったということでありまして、もうちょっと具体的に聞きますと、今回のことを受けて、柳澤大臣あるいは厚生労働省へ何らかの指示が当然来たのではないかというふうに思います。

 要は、今回会ったけれども、別にそれは会っただけで何の指示もありませんよということではないと思うわけでして、そこで、今回のことを受けて、大臣や厚生労働省に首相官邸あるいは安倍総理からどのような指示が来たのか、そのことをお伺いしたいと思います。

柳澤国務大臣 下村官房副長官が原告の方とお会いすることにつきましては、下村官房副長官から私のところにも御連絡がありまして、私からは御判断にお任せするという趣旨のことを申し上げました。

 その後、何か具体的な指示のようなものが来ているのかというお尋ねでございますが、現在までのところ、そうした具体的な指示については承っておりません。

 訴訟は訴訟として、引き続き総合的な肝炎対策を推進していくことが重要だということは総理もおっしゃっていると認識しておりまして、厚生労働省としては引き続き、先ほど申した検査、診療体制の強化、治療方法の開発等の総合的な取り組みを推進してまいる所存でございます。

山井委員 では、ちょっと繰り返し申し上げますが、原告や患者の方々は、やはり総理大臣の口からこういう政府・与党で解決に取り組むという言葉が出たのは当然非常に重いというふうに受けとめて、涙を流して喜んでおられるわけです。それで、まだ柳澤大臣あるいは厚生労働省に対して指示は来ていないということなんですが、やはりそこは、下村官房副長官、安倍総理もそういうことをおっしゃったわけですから、有言実行といいますか、やはりそのおっしゃったことをぜひとも実行に移していただきたいというふうに思います。

 この件に関して、武見副大臣にお伺いをいたします。

武見副大臣 既に柳澤厚生労働大臣が何度も指摘されているとおりでございます。実際、総合的な観点からこの肝炎対策というものを充実していかなければならないという基本、これは常に厚生労働省としても一貫をしているわけでございますし、また、こうした中でさらに具体的な施策が充実されていくこと、このことに常に最大の関心を持つべき、こう理解しております。

山井委員 わかりました。

 大臣、このテーマはこれで最後にして、パートの方に移らせていただきますが、最後に一つお願いがあるんです。

 こういう経緯があったわけですから、ぜひとも柳澤大臣から下村官房副長官の方に、今後どういうふうにやっていこうかという御相談を一度ちょっと投げかけていただきたいと思うんですよ。やはり、ああいう面会があって、そのまま動きはありませんでしたよというのではあんまりな気がするので、ぜひ一度、下村官房副長官なり、あるいは安倍総理にまた相談を投げかけていただきたいと思いますが、柳澤大臣、いかがでしょうか。

柳澤国務大臣 政策的なことについては、いろいろな事柄あるいは節目で、総理大臣を初め官邸の皆さんとはいろいろと当然コンタクトを持たせていただいているわけでございまして、そういう中で肝炎の問題についても私からも御報告をし、またそういう中で話題になることもあろう、このように考えております。

山井委員 ぜひ、患者、原告の方々は首を長くして新たな前進した対策というものを待っておられますので、そのことをお伝えさせていただきます。

 それでは、パート労働法に移らせていただきます。

 午前中から話を聞いておりましたが、余りにも答弁があいまいで、本当に実効性があるのか、逆に正社員の方々の待遇が切り下げられて終わるのではないか、また、このパート労働法の改正の目玉である差別禁止対象という方々が本当に存在するのかという根本的なところまで、いろいろな質疑がなされましたが、それについても明確な答弁がございませんでした。

 きょうお配りした資料の、新聞記事の八ページと書いてあるところから、ちょっと概略を説明していきたいと思います。

 線も引いてありますけれども、この最初の読売新聞においても、差別禁止に関しては、「適用条件が厳しく、所管する厚生労働省からも」差別禁止の「「実効性は期待できない」(幹部)との声が漏れる。」ということで、あるいは、「ピアスグループは非正社員の賃金引き上げに伴って、正社員の給与を一割減らした。」というふうなこともここで報じられております。

 それで、九ページ目も見ていきますと、正社員型のパートのハードル、要は三条件、差別禁止の条件が余りにも高過ぎて、対象者が少な過ぎるのではないか。それで、見出しにもありますように、逆に正社員の待遇が切り下げられる、そういう法律になる危険性が高いということもここで書かれております。

 それで、十ページ、十一ページは、今回の四、五%の根拠となりました平成十四年の二十一世紀職業財団の調査であります。

 そして、この資料の十三ページには、前回の私の質問に対する答弁、差別禁止の規定に関して、「大多数は長期にわたって雇用される予定の者である、したがって、短期の契約者と差別的取り扱い禁止の対象とならない者のほとんどは、既に転勤、配転等の取り扱いが正社員と同じという、そのことからは除外されている」と。

 それで、十四ページは、差別が禁止される正社員パートの三条件をわかりやすく図にしました。

 それで、最後のページは、均等待遇アクション21からいただいた資料でありまして、「これでは、パート差別はなくなりません!!」「一、差別が禁止されるパート労働者は、ごくわずかです。」ということ、また、「差別が禁止されるには、三つの高いハードルをクリアしなければなりません。」というようなことも書かれています。余りにも差別禁止の対象が狭過ぎるということに対して、批判が高まっているわけであります。

 そこで、まず、柳澤大臣、今まで、平成十四年の二十一世紀職業財団の調査結果が、同じ職種で転勤、配転も同じと考えられる人が四、五%だという十一ページの資料をもとに、今回の差別禁止対象が四、五%と答弁されているんですけれども、前回、この四、五%の中で、無期あるいは反復更新、無期と期間、期限のない定めと考えられる反復更新に含まれないのはほんの一かけらというふうに表現されております。大多数は二つの条件でカバーされていると答弁をされておられます。

 柳澤大臣にお伺いしますが、ということは、三つの条件があったわけですが、職種、責任が同じで、配置転換、転勤が同じだったら、その大多数は差別禁止対象になるということでよろしいですね。これは確認ですが。

柳澤国務大臣 山井委員から御指摘のように、私どもは、この三要件は、審議会の最終の取りまとめで明らかになってきたということでございまして、そういう事情もありまして、それにぴったり裏づけをする統計データというものは存在しないということを明らかにしてきております。しかしながら、やはり何らかの像というか、そういうウエートのようなものは把握をして申し上げる必要があるというところから、近似的な数字を示しているではないか、こういうことで、先ほど委員も御指摘の、平成十三年度における二十一世紀職業財団の数字を明らかに御説明させていただいたということでございます。そういうことの中で、推定によって四、五%であると思われる旨のお答えをしたわけでございます。

 この推定の根拠となったのは、仕事、責任の重さ、残業、休日出勤、配転、転勤の有無、頻度が正社員と同じパートの割合というところから、四、五%である、そういう調査結果が得られたということでございます。

 このことから、これらの者の契約期間については、その大多数が、無期契約であるか、反復更新を繰り返して実質的に無期契約と同じとなっている、あるいはなることが見込まれる、そういうものであろうというふうに考えているところでございます。

山井委員 今のは非常に重要な答弁でありまして、配置転換や転勤が同じで、正社員と職種と責任が同じであるということは、大多数が無期と社会通念上同じと考えられる反復更新であるという答弁なんですね。

 資料をお配りしておりますが、なぜここにこだわるかというと、今回のパート労働法の目玉がこの差別禁止なんですね。差別禁止の対象者がほとんどいなかったら、この法律というのはだましになりかねないわけであって、そこはきっちりしておかないとならない。

 なぜここまで言うかというと、先ほど、午前中の答弁で、ではどれぐらいいるのか調査したことはあるのかという質問に対して、実態調査はしたことがないということをおっしゃっているわけですよね。したことはない。ですから、正社員と同視すべきパート、図の中ではこれぐらいとなっておりますが、本当にいるのかどうかなんです。

 そこで、柳澤大臣、確認したいのが、この二十一世紀職業財団の調査のときの書きぶりと今回の書きぶりは違うんですね。どうなっているかというと、二十一世紀職業財団の調査のときは、パートの配転及び転勤の頻度が正社員と比べて多いまたは同じと聞いているわけですね。この四、五%の調査のときには、パートの配転及び転勤の頻度が正社員と比べて多いまたは同じという聞き方になっておりますね、資料の十一ページでありますが。これは、そのとおり読んでおります。

 ところが、この八条の一項を見ますと、その部分は、「当該事業主との雇用関係が終了するまでの全期間において、その職務の内容及び配置が当該通常の労働者の職務の内容及び配置の変更の範囲と同一の範囲で変更されると見込まれるもの」、この法文では、「雇用関係が終了するまでの全期間において、」というのが入っているわけですね。

 つまり、かなりこれは未来のことまで規定しているわけですから、明らかにこれは狭まっているわけですね、二十一世紀職業財団の調査よりも。繰り返しますよ。二十一世紀職業財団は、パートの配転及び転勤の頻度が正社員と比べて多いまたは同じというふうに言っているわけです。

 そこで、柳澤大臣に大事なことでお伺いしたいんですが、これは狭まっているんですか、それとも同じことなんですか。要は、条文に書いてあることを平たく言えば、二十一世紀職業財団のときに調査された、パートの配転及び転勤の頻度が正社員と比べて多いまたは同じということなんですか。

柳澤国務大臣 もともと、ぴったりのものはない、したがって、近似的な調査結果で申し上げますとというお断りをしながら、この数字について申し上げたということでございます。

 したがいまして、この法律要件とどういう関係に立つかということを逐一突合させるということは、もともと近傍のデータとして得られたものです、こういうことを申し上げたわけでございますので、そうした意味合いからすると、それとの関係で法文の要件を云々することは適当でないと思いますけれども、私どもとしては、反復更新されるという八条二項の規定というものをその中に包摂しているものだというふうに考えているということでございます。

山井委員 ちょっと大臣、質問に答えてください。そのことを聞いているんじゃないんです。この二十一世紀職業財団の聞き方ですね。パートの配転及び転勤の頻度が正社員と比べて多いまたは同じというこの条件と、今回の条文の、事業主との雇用契約が終了するまでの全期間において、配置の変更の範囲と同一の範囲で変更されるというのは、これは同じと理解していいわけですか。要は、狭くなっていないかということなんです。

柳澤国務大臣 この配置が、「当該通常の労働者の職務の内容及び配置の変更の範囲と同一の範囲で変更されると見込まれるもの」ということでございまして、今申し上げたのは八条のイでございますけれども、これについては、先ほど局長が他の委員の御質疑に対してお答えしておりましたように、この配転等が正社員と同じような頻度とか範囲で行われるということの事情が成立した後においてはこのロで読むんだ、こういうお話があったわけでございまして、したがいまして、配転及び転勤の頻度が正社員と比べて多いというぐらいでございますから、これと同じような考え方に立っているというふうに私どもは考えまして、そういったことを勘案して、近傍値としてこういう統計がございますということで申し上げたということでございます。

山井委員 確認しておきます。今のことは割と大事な答弁でありまして、パートの配転及び転勤の頻度が正社員と比べて多いまたは同じという、今まで二十一世紀職業財団で聞いているような内容と、今回の法文の、契約が終了する全期間において配置転換等が同じだということはほぼ同じだという、これは非常に重要な答弁であります。

 なぜかというと、この二十一世紀職業財団のときにほぼ同じと言ったような人でも、いや、今後未来、変わるかもしれないからだめだよといってはねられたら、どんどんどんどん狭くなっていくわけですから、そういうことはないんですねということを確認させていただいたわけであります。

 そこで、午前中から、これは対象者はいるのかと。それに対して大谷局長は、大手にはいないだろうけれども中小企業にはいると言われているということなんですが、改めて柳澤大臣にお伺いします。この差別禁止規定の対象者は本当に存在するんですか。

柳澤国務大臣 もとより、まず全体に均衡処遇というのがあって、それの一番何というか最終的な姿として、形としての差別禁止というものが位置づけられているというのが我々の法律の考え方でございます。だからといって、差別禁止は何というか最終的な姿なんだからということを理由にして云々するつもりは毛頭ありませんけれども、私どもとしては、こうした先ほど委員も御指摘いただいたような資料からして、当然にいらっしゃる、当然存在するというふうに考えているということでございます。

山井委員 でも、この三条件の実態調査はしたことはないと。したことはないけれども、当然いると考えているということなんですよね。

 繰り返しますが、職務、責任が同じで、転勤も配置転換も同じで、そして期限のない定めかそれと同じような期限のない雇用と認められるような反復更新、そんなパートというのは本当にいるでしょうかね。

 私、実は、この一カ月探し回った、聞き回ったんですけれども、見つかりませんでした。そして厚生労働省にも、一カ月前から、いたらぜひその会社を教えてほしい、本人にも会わせてほしいということをお願いしておりますが、まだ返事はございません。

 そこで、柳澤大臣にお伺いしたいと思います。

 この法案審議はまだまだ続きます。つきましては、当然いると先ほどおっしゃったわけですから、来週水曜日も審議がございますので、それまでにぜひ、名前を出せとまでは言いませんので、どういうふうな企業に何人ぐらいいたということを御報告いただきたいと思いますが、柳澤大臣、いかがでしょうか。

柳澤国務大臣 何と申しますか、御審議に必要だということでございますので、私どもも検討してみる必要はあろうかと思いますが、私どもの考え方として申し上げておりますのは、今回の法律をいわば先取りしたような形で正社員化を図っていらっしゃるような、そういう状況の変化もある。

 それからまた、これはなかなか言いづらいことでありますけれども、事業主さんとかあるいは当該のパート労働の方々というような方々を対象に仮に調査をするということになりますと、これは必ずしも言いぶりというのが客観的ということではなくて、当然のことですけれども主観的なものになるというようなこともありまして、今この段階でそういう調査をするということについては、私ども、かなり問題があるのではないか、こういうように考えておりまして、そうしたことで、今この段階で調査をすることについては難しいということを申し上げている次第でございます。

山井委員 大臣、それは大々的な調査と言っているんじゃないんですよ。一つの会社でも二つの会社でも、三人でも五人でも結構ですけれども、来週水曜日にまた質疑を行いますので、その前日までに、例えば製造業のこういうところでこういうケースがあったとか、何パターンか実例を理事会にでもぜひ御報告していただきたいと思います。大臣、だから、大々的な調査でなくていいんですよ。とにかく、これから一週間で、どういう事例があるかというのを、これは法案審議をしているんですから、やはりそれぐらいのことはやってもらわないと、それぐらい探していただきたいと思いますが、大臣、いかがですか。

柳澤国務大臣 これは検討はさせていただきたいと思いますけれども、ただ、そういうことについていろいろとまた個別の企業名を出してということになりますとこれは難しい、これからいろいろな労使の間の関係もありましょうから。そういうことだろうとは思いますので、すっと今ここでお約束する、そういうことにはひっかかりを感じますが、検討してみたい、このように思います。

山井委員 でも、これは個別の企業名はもちろん出さなくていいですから、それをやってくださいよ。

 というのは、もし見つかりませんでしたということだったら、これは大変な問題になりますよ。一週間探しても対象者が見つからないような人たちを対象にした、それを目玉にした法案を出しているということになったら、この法案、もう一回ちょっとやり直しになりますよ、見つからないんだったら。そこは法案を出している責任として見つけてもらわないと困るんですよ。対象者がいるかいないかわからない、幽霊を相手に私たちは法案審議をしているんじゃないわけですから、そこはぜひともよろしくお願いをいたします。

 それで、先ほど、反復更新で、社会通念上期限のない定めとみなされるということがございました。ところが、きょうの午前中に小宮山委員からも話がありましたが、では、何回有期を反復したら期限のない定めというふうにみなされるのか、何年だったらいいのかというのが午前中の答弁ではさっぱりわからなかったんです。今回のこの法案を見てパートの方が、あっ、私もこの差別禁止対象に当たるのかもしれないわ、でも私、反復更新、五年で二回だけれども、それでオーケーなのかなと、だれもがそれは疑問に思いますよね。

 そこでお伺いをしたいと思います。

 これも質問通告をしてあります。まずその一、具体例で言います。私立高校の非常勤短時間講師として一年の契約期間を二十回にわたって反復更新をし、毎年四月一日の辞令を四月下旬に交付されるなど更新手続について厳格な手続を行っていない場合、このような場合は期限のない定めというふうにみなされるんでしょうか。

柳澤国務大臣 今委員の御指摘になられたケースで申し上げますと、やはり非常勤短時間講師と言われる先生の業務内容が不明でありますので、ここは、その最初の職務同一短時間労働者のところについて、なかなかちょっと判断ができかねるというのが率直なところでございます。

山井委員 柳澤大臣、違うんです。業務も責任も配置転換も同じという前提で、反復更新についてだけ聞いているんですよ。反復更新が、今の場合、業務も配転も一緒だった場合、これは期限のない定めというふうにみなされるのか、そのことを聞いているんです。

柳澤国務大臣 最後のところも、「社会通念上相当と認められる期間」ということでございまして、そういう広い観点から最終的に総合的に判断するということでございますから、更新回数のほかにさまざまな事情を考慮して判断するとされておりますので、ここで今委員がお尋ねになられたところだけでどちらかということを申し上げることはできかねるということでございます。

山井委員 いや、反復更新のことを聞いているのであって、一年の契約を二十回やって、ほかの職種、責任も配置転換も全く同一だった場合、一年で契約二十回というのは、期間のない定め、八条の二項ですね、それに当たるのかというのを聞いているわけです。ほかは一緒だという前提です。

武見副大臣 私も、大学で講師、助教授、教授とやってきた者でございますので、大学の中における非常勤講師といったようなものの位置づけというものは存じております。

 実際に、教室で一定の科目について講義をしていただくということをお願いしているわけでありますが、他方において、実際に学務にかかわるさまざまな業務、それから教授会に対する出席、そのほか、これらについてのその他の業務等、全部勘案した場合に、非常勤講師の果たす役割というものは、その中で限定されているわけです。ですから、そこだけ見て反復しているからといって、そう簡単にその議論をすることはできないということを申し上げております。

 ですから、大臣自身が先ほども御指摘になったように、その他の業務も含めて総合的な観点から判断すべきものである、こういう点であります。

山井委員 いや、ちょっとわからないんですが。

 そうしたら、期限のない定めというふうに社会通念上やるときは、期間何年、あるいは反復何回、大体何回ぐらいなんですか。

柳澤国務大臣 これは、もちろん、反復更新されるということが前提になった法文の書き方になっておりますけれども、そういうことによって、「期間の定めのない労働契約と同視することが社会通念上相当と認められる」ということでありまして、そういうことを言っておるわけで、それが社会通念上相当と認められるかどうかというのは、いろいろなことを総合的に勘案して判断されるということでありまして、期間の定めのある労働契約だからといってアウトにはなりませんよ、契約が更新すれば、それはそういう、いわば期間の定めのない労働契約と同視されることがあるんだけれども、それは社会通念上相当と認められるということがクリアされてそういうことになるということであります。

山井委員 だから、その社会通念上相当というのがわからないからここで質問しているんじゃないですか。大臣がわからなくて、聞いている私たちもわからなかったら、日本でだれがわかるんですか、それを。だれが判断するんですか、社会通念上相当というのは。だれがどこで判断するんですか。

柳澤国務大臣 対象者がどういうふうになるかということにつきましては、客観的な判断が可能な三要件を定めているところでございますけれども、まず、事業主がこの三要件を満たすパート労働者が事業所内にいると判断する場合には、雇用管理の見直しを行っていくということになります。一方、パート労働者本人は、みずからが差別的取り扱い禁止規定の対象者であるかどうかの判断がつかないことがあることから、本法案におきましては、事業主に対してパート労働者からの求めに応じて説明をする義務を課すということになっております。

 ですから、いずれ、反復更新しているんだから、自分はもうその意味では期限の定めのない労働契約の労働者と同視すべき労働者ではないかということを本人が考えたというようなことになれば、説明を求め、また、それに対して事業主は説明をする義務を負っている、こういうことでございます。

山井委員 いや、それは、具体的に例えば三年契約で十回、三十年働いている人がいるとしましょう。それで、職務も責任も配置転換も全部一緒、三年で十回、三十年、そういう人が事業主に、私もこれは期限のない定めに入ると思うんですけれどもと相談したときに、三年で十回だったらどうなんですか、柳澤大臣。期限のない定めというふうに社会通念上相当とされるんですか。

柳澤国務大臣 こうした法文の規定があります場合には、更新回数のほか、さまざまな事情を考慮して判断することとされるわけでございまして、更新回数について一定の数字をここでお示しするということはできかねるということでございます。

山井委員 いや、それは、客観的な基準がないと、本人も事業主もわからないんですよ。かつ、その客観的な基準をここで出してもらわないと、私たちも審議ができないんですよ。

 目安でいいですから、何年ぐらい働いたらいいのか、何回ぐらい更新したらいいのか、基準でいいですから、ちょっと言ってくださいよ。それがないとさっぱりわからないじゃないですか、そんなもの。総合的と言われたって。

柳澤国務大臣 これは、反復更新されることによって同視することが社会通念上相当と認められる、そういう契約を含むということなんです。これは法文でそういうふうに決めているわけですね。ですから、社会通念上、反復する、更新することによって社会通念上同視すべきだという判断になるかどうかというのは、社会通念上いろいろなことを勘案して、そういうふうに同視すべきかどうかということを判断するということであります。

山井委員 だめですよ、そんなの。こんな答弁じゃ進んでいないじゃないですか。だから、社会通念上何回ぐらい、何年ぐらいかと聞いているのに。ちゃんと答えてくださいよ。同じ答弁じゃだめですよ、もう。質問できませんよ、それは。

柳澤国務大臣 要するに、社会通念上、こういう法文を立てましたら、社会通念上、もうこれは期間の定めのない契約と同視すべきかどうかということを社会通念に照らして判断するんです。社会通念に照らして。ですから、それは、ここで社会通念を私が決めてしまうというわけにはいかないんです。

山井委員 いや、だから、だれがいつ決めるんですか。そうしないと、対象がわからないじゃないですか。その社会通念の中身をここでやってもらわないと審議にならないじゃないですか。これは、事業主もパート本人もさっぱりわかりませんよ、こんな答弁聞いても。

柳澤国務大臣 だれが決めるかというのは先ほど御説明しました。その時々、当該の労働者がいる、あるいは事業者がいるというときに、事業者から見て、これはもう期間のない定めだなと思えば、雇用管理上、そういうことをやっていく。それから、事業者はそういう考え方に基づいた行動をしないということになったら、しかし、労働者はそう思ったというんだったら、労働者はそれについていろいろな申し出をしたり、説明を求めたりするということで、法というものは運用されていくということであります。

山井委員 基準がない法律なんか、あっても意味がないじゃないですか。法文読んでも、この議事録読んでも、三年で十回反復しても、それでも期限のない定めになるかどうかもわからない。そんな法律をつくってどうするんですか。

 きのうも私、弁護士の方々と勉強会やりましたけれども、弁護士の方々も、例えば三年で十回で、裁判やって勝てるのかどうかさっぱりわからないと言っているわけですよ。弁護士の方もわからないと言っているわけですよ、この法文だけじゃ。その基準ぐらい言ってくださいよ、基準ぐらい。そうしないと、裁判やって勝てるのかどうかもさっぱりわからないじゃないですか。これは、裁判しないと答えは出ないんですか。

 だから、法律をつくるということは、今まで裁判やって、判例でやっていたから、それじゃまずいということで、法律で客観的な基準を決めましょうということで今回出しているんでしょう。にもかかわらず、今回質疑したら、社会通念上、社会通念上ともう二十五回ぐらいおっしゃいましたよ。その社会通念上ということを明らかにするのが法案審議じゃないですか。

 大体でいいですよ、反復更新何回ぐらい、何年ぐらい働いたら期限のない定めとなるのか。それを言わないと、差別禁止規定に当たるのかどうかさっぱりわからないですよ、これ。だれもわからないですよ、今の答弁聞いていても。柳澤大臣。

柳澤国務大臣 これは、先ほども申し上げましたように、まず事業所内で、事業主あるいは労働者が、自分の発案でもって、もう自分は期間の定めのない労働者と同じようじゃないかというようなことになったら、それはそういうことを申し出ていく、そういうシステムができ上がっているわけです。それから、その上で、もとより労働局長によるいろいろな行政措置を、一種の紛争解決援助の仕組みとしてそういうことも設定されていますから、そういった形で自分の主張が実現していくということもある。それからまた、行政機関、最後には司法機関というところでこれが判断されるということはございます。

 そういうようなことで、この法文を中心として、関係の方々が、社会通念上相当と認められる期間というのはどうなんだということを明らかにしていく。それはケース・バイ・ケースですから、そういうふうに総合的に判断されるところが次から次へと、裁判例でいえば裁判例として積み上がっていくし、行政であれば行政として積み上がっていく。そういうことでありまして、それは、場合によって、まあ、ここまで言うとまたいろいろなことを申されるだろうと思うんですが、社会通念というのも、そのときそのときで、かなり事情の変更によって変わることもあり得るわけですね。

 ですから、その場その場でみんなが、その当事者が協議をして、これはもう、ここまでいっていたら期間の定めのない契約と見ていいじゃないか、こういうようなことが積み上がっていく、こういうことで法の運用が期待されているわけであります。

山井委員 聞いていても、さっぱりわかりません。三年間を十回更新しても、それが期限のない定めとなるのかどうかも答弁してもらえない。それはどうやって判断するんですか、自分が期限のない定めだと思う、差別禁止対象に当たるんじゃないか。今の答弁、何にも語ってないじゃないですか。(発言する者あり)

 それじゃもう一回。語っていますよとおっしゃるけれども、でも、わからない、三年間で十回、三十年働き続けて、これが差別禁止規定の中の一つの要件に当たる期限のない定めに当たるのかどうか。それぐらい、恐らくということぐらい言ってくださいよ、それは、大臣。

柳澤国務大臣 職務の内容それから人材利用上の仕組み、運用が全く正社員と変わらないような状況に置かれていた場合、今、三年を十回更新したということは、私は、社会通念上、期間の定めのない労働契約だというふうに判断される蓋然性は非常に強いと思います。

山井委員 そうでしょう。最初からそうおっしゃったらいいわけです。

 では、柳澤大臣、三年で十回じゃなくて、三年で三回、九年だったらいかがですか。

柳澤国務大臣 そうした御質疑になってしまうんじゃないか。つまり、私は、ですから、これはもう社会通念上のことで、その場その場、当事者がベストの判断をしていくということがこの法律を実施するということですということを何度もお答え申し上げてまいりました。ですから、それ以上、今度は、何か値段の交渉をしているように、これはどうだ、これはどうだというようなことについて、私が一々それに答えるということは不適切なことになるだろう、このように考えます。

山井委員 不適切じゃないんですよ。法律を出している以上、基準を示すのは責任なんですよ。基準がないとわからないじゃないですか、範囲が広いか狭いかも。裁判の人もわからないじゃないですか。

 大臣、ということは、わからなかったら、これは一々裁判をしないとわからないということですか。大臣、どういうことですか、これ。そこがグレーで、判断が、事業主も本人もわからなかったら、自分が期限のない定めに当たるかどうか、裁判しないとわからないということですか、大臣。

柳澤国務大臣 この法律の手続の枠組みが決めている、それぞれの当事者が、あるいは事業主の場合のように単独で、あるいは当事者双方が納得して、あるいは行政機関と関係者の間で納得してというようなことで、その都度その都度判断をされていくということがこの法の定めているところ、想定しているところと申し上げてよろしいかと思います。

山井委員 そんないいかげんな法律、ないんじゃないですか。今の話だったら、そうしたら、事業主や会社によって全然違ってくるということなんですか。

 ですから、やはり、柳澤大臣、来週水曜日までに、大体ですよ、反復更新何回ぐらい、何年ぐらいかという目安、基準ぐらいないと、首を今、横に振っておられますが、そうしたら、事業主もパートの人もさっぱりわかりませんよ、自分が差別禁止規定に当たるかどうか。さっぱりわからない法律つくって、パートの人に役に立つとかそんなこと言わないでくださいよ。自分が当てはまるかどうかも、さっぱりわからないじゃないですか。何のために国会審議をやっているかわからないじゃないですか。法律を読んだだけではわからないから基準を示してくれと言っているんですよ。大臣、これは法案審議中にある程度の目安を出してほしいんです。そうしないと、結局、どういうことになるかということがわからないから、裁判をしてみないとわからなくなるんですよ。そうしたら、今までと全く一緒じゃないですか。法律つくった意味が全くないじゃないですか。

 柳澤大臣、ぜひ、社会通念上、どういう反復更新が期間のない定め相当になるかという、もうちょっと明確な方針を、基準を出してもらわないと、それが狭いか広いかが議論できないんですよ。狭いか広いかが。大臣、ぜひそれを審議中に出していただきたいと思いますが、いかがですか。

柳澤国務大臣 これは、要するに、社会通念上、期限の定めのある契約がどういう場合に期間の定めのない契約と同視されるようになるか、こういうことでございまして、それは、必須的には契約が反復更新されているという事実でありますけれども、そういうことによって、社会通念上、これは期間の定めのない労働契約と同視すべきだということが判断されるかどうかなんですね。

 それは、個々のケース・バイ・ケースの判断になるということでして、一義的に、ここで何回、何年程度だったら何回、そういうことをやるんではなくて、それぞれの関係当事者がそれぞれの企業の、あるいはお仕事とか、そういったことを総合的に勘案して、これを判断して積み上げていくんですというのがこの法律の枠組みであります。

山井委員 今、この間、一時間議論をさせていただいて、本当に私は議論したいことが山ほどあるんですが、今の差別禁止対象の、その中の期限のない定めと社会通念上相当とされるのがどういうことですかということ一つ聞いても、全く明確な答弁がない。つまり、差別対象がどれだけいるかも、自分がどうかも判断できない、事業主も判断できない、基準も不明確、そして、法律の専門家である弁護士でさえも、その基準が示されなかったら、差別対象になるかどうかもわからない、裁判をやらないと差別禁止対象になるかどうかもわからない、そんな法律だったら、これは意味がないんじゃないですか。逆に言えば、結局、そういうふうに要件を厳しく、不明確にすることによって、この法律自体、ざる法で骨抜きになってしまっている。

 そして、こういうごく一部の少ない対象者だけですね。先ほども言ったように、ぜひとも来週水曜日までに探してくださいよ。対象者、当然いますと言ったわけですから。そして、それ以外の人たちに関しては差別禁止という部分は書けない。ということは、裏返せば、ごく一部の人以外の差別はあっても仕方がないというふうに受け取られかねないパート差別拡大法案だというふうに私は思います。

 また引き続き、これからも議論させていただきます。ありがとうございました。

櫻田委員長 次に、内山晃君。

内山委員 民主党の内山晃でございます。

 大変ヒートアップしましたので、少し冷静にお話をさせていただきたいと思っています。私は、政府案と民主党案に質問させていただきたいと思います。

 冒頭、パート労働者の待遇改善なくして格差是正問題の解決にはならない、こう思っておりますので、ぜひよろしくお願いを申し上げます。

 大臣、お疲れのところ最初から恐れ入りますけれども、大臣は、パートタイマーの増加の原因というのはどのように御認識をされておりますでしょうか、お尋ねをしたいと思います。

柳澤国務大臣 やはり、パート労働が増加した原因は、使用者側あるいは労働者側双方に私はあるというふうに考えております。

 労働者を雇う側の理由といたしましては、やはり人件費が割安だということがあるでしょうし、さらには、一日の時間帯の中で忙しい時間帯が限られているというような業務をされている方には、パートタイマーの雇用というのが非常に効率的であるというようなことが理由ではないか、このように考えます。

 また、パート労働者の側につきますと、一日のうち八時間以上拘束されるということは、自分の何らかの生活の事情からいって、それはできないけれども、一定の短い時間であれば自分は働くことができる、こういうような都合があってそういう働き方を選んでいる方もいらっしゃる。そんなことで、双方にとって都合がいいということで増加しているというふうにも考えます。

 さらに、あえて言えば、雇用というものの中で正規の雇用を得るのがなかなか難しい、とりあえず、とにかく生活の糧を得るためにこうした労働形態を選ぶこともやむを得ない、そういうような消極的な選択の理由でこれが選ばれているということも当然あるであろう、このように考えております。

    〔委員長退席、谷畑委員長代理着席〕

内山委員 私は、それよりももっと重要な要素があると実は思っておりまして、やはり社会保障制度がパート労働者を増加させている大きな原因ではなかろうか、こう思っています。

 特に、十六年年金改正法によりまして、保険料の負担というのが非常に大きくなっております。厚生年金は毎年〇・三五四%ずつ引き上げられておりまして、これは平成二十九年まで継続をするわけであります。労使ともに、社会保険料の合計、健康保険、厚生年金、雇用保険、介護保険、こういったものを入れますと、税込み総支給額の約一三%にもはや該当している。

 全国の事業所で厚生年金の未加入三割、そして二百六十七万人が未加入であるという、昨年、新聞記事にも出ておりましたけれども、事業所が社会保険に入りたがらない、何としても社会保険の高負担を避けたい、こういう意味からパートタイマーの労働者がふえているんじゃなかろうか。

 さらには、夫の健康保険の扶養の範囲、百三十万円未満という基準があります、この百三十万円未満の基準以内で勤めよう。ただ単に、健康保険の扶養の範囲だけではなく、それを超えますと国民年金の第一号被保険者になってしまう、四月からは月額一万四千百円の保険料、国民年金保険料の負担がある。

 こういう要素がすごく私は大きいと思っておりますけれども、大臣、いかがでしょうか。

柳澤国務大臣 健康保険あるいは年金保険、さらには介護保険等々、未加入あるいは未適用というような、そういうことが背景にあるのではないか、こういう御指摘でございます。健康保険の被扶養者に関する基準につきましては、パート労働者が年収を抑制するために年間の労働時間を調整して働く、いわゆる就業調整の一因となっているとの指摘があるわけでございますが、この認定基準とパート労働者が増加していることとは、ここでその関係が定かであるという、そういうことを申し上げる根拠を我々は持っておりません。

 パート労働者が長期の傾向として増加していることについては、冒頭の御答弁で申し上げたような、経済情勢とか、あるいは生活の必要からの選択といったようなことがやはり基本ではないか、このように考えております。

内山委員 そうでしょうかね、大臣とは少し、意見が異なると思うんですけれども。

 二十一世紀財団のパート労働者の調査から見ますと、なぜパートタイマーを使うのか、これは、割安感である、こういうコスト意識が非常に強いわけですね。同時に、社会保険料の負担というのも、申し上げましたとおり税込み総支給額の約一三%ですよ、これは非常に大きいと思いますよ。ここは、厚生労働省ですから、私はやはり十六年年金改正法がいかに、いろいろな意味で影響があった、今もその影響が続いているというふうにぜひ強く申し上げておきたいと思っております。

 それでは、次に行きます。

 一九九七年以降、正規労働者が減少しまして、家計を支える主婦の補助パートから、男女を問わず若い年齢のコア労働者の増加、そして新卒パートなど、主たる仕事にパートで勤務する労働者が増加をしている、現行法では対応できない現状を政府はどのように今認識をされておるんでしょうか。

大谷政府参考人 例えば現行のパート労働法は、均衡待遇や正社員転換の促進について、法に基づく指針において努力義務として定める、現状はそういうふうにとどまっておりますけれども、これでは裁判における民事上の効力が期待できない。

 今回、そういった現状にかんがみまして法改正を行い、差別的取り扱いを禁止し、正社員の転換の促進については義務として法律に規定することなどにより、その差別的取り扱い禁止規定に違反した場合に労働契約無効となるような民事上の効力や、あるいはパート労働者のうち希望する者についての正社員への転換のさらなる推進、こういったものも期待しているところでございます。

内山委員 今回の改正の中の、労働者を雇い入れましたときに労働条件について文書等により交付をし明示する、これは具体的にどのようにされるんでしょうか。説明をしていただきたいと思います。

大谷政府参考人 お答え申し上げます。

 改正法案における労働条件の文書交付義務でございますけれども、これは労働基準法の義務に加えまして、昇給、退職手当、賞与の有無について文書の交付等による明示を義務化しようとするものでございます。

 また、その明示する文書の様式でありますけれども、法律の要件を満たせばこれは足りるものでありますが、法令によって一律に限定するという予定はありませんけれども、例えば厚生労働省がモデルを示している雇用通知書、こういったものが一例として考えられるのではないかと考えております。

内山委員 労働基準法にも決まっておりますけれども、文書による通知というのは、中小零細企業ではとても、やはり出ていないというか厳しい状況でありまして、これをさらに出させるというような何か施策を考えておられますでしょうか。

大谷政府参考人 方法についても、これは労働政策審議会でも議論があったところでありますけれども、メールといった簡便な方法というようなものも今後検討してまいりたい。

 また、強制といいますか、執行を担保するために、今回、過料という措置を設けて、民事上の違反に対してはそれなりの措置を講じていくということも盛り込んでいるところでございます。

内山委員 出さないのは罰則で縛る、それよりも、もっときちっとした、出させるような指導を行うべきだろうと思うんですけれどもね。

 私は、やはり、パート労働者を雇用する事業主に対しまして、パートタイム就業規則の作成の義務化等をした方がよろしいんじゃないかと思います。

 就業規則には、労働基準法の第八十九条の絶対的記載事項があります。今回の文書交付を組み合わせれば、より効果は大きいと考えます。パート労働者専用の就業規則を作成、明示することで、例えば有給休暇の付与の必要性も理解されるんじゃなかろうか、こう考えるんですが、労働条件の文書交付と就業規則の周知義務がつけられることにより、説明義務も同時に解決できると考えますけれども、大臣、こういう制度、どうでしょうか。

大谷政府参考人 今お話にありましたような方法はいろいろ考えるところであろうかと思いますけれども、今回の法律の議論におきましては、まず、特に退職とか賞与とか、そういった問題について契約時点ではっきりしないことが後々の争いになるということで、入り口で文書交付してそれが、確かに指導にも努めていかなければなりませんけれども、義務違反に対してはそれなりの、過料という措置を講じ、またその実施について各般の体制をとり、またその説明義務というものも事業主が負っておるわけでありますから、最初にきっちり説明してもらう、こういった体制で法律が考えられたところでございます。

    〔谷畑委員長代理退席、委員長着席〕

内山委員 ですから、そういうのを就業規則できちっとつくらせてうたわせるということにしたらいいんじゃないですか、こういうアイデアを御提案しているわけでありますけれども、大臣はどうでしょうか。

柳澤国務大臣 これは、就業規則はやはり経営側の制定権が多分認められているだろうと思いまして、それに対して行政の側から必要的記載事項を申し上げるということは、やや就業規則の性格上いかがかと考えます。

内山委員 それは決して難しいことではありませんよ。ぜひ検討していただきたい、こう思います。

大谷政府参考人 実効上、行っていただくということはもちろん歓迎すべきことだと思いますが、私どもが申し上げましたのは、法律によって強制するような形での改正ではないということでございます。

内山委員 ただ、このテーマで進まないと困るんですけれども、罰則でやらせるというのはなかなか難しいんですよ。今の中小零細企業のそういう事務処理なんというのはなかなかできないんですから。だから、こういうときこそ一緒にやった方がいいですよと御提案を申し上げておりまして、次のテーマに行きますので答弁は結構です。

 通常労働者と同視すべき短時間労働者に対する差別的取り扱いの禁止三要件、一、同一職務内容、二、雇用期間の定めなし(反復更新)、三、同一業務従事後、全期間を通じた異動の範囲、頻度が同じと見込まれる、このパート労働者はどこにどのくらいいるのか、答弁を求めたいと思います。

大谷政府参考人 ただいまお話のありました要件の労働者でありますけれども、これにつきましては、昨年、労働政策審議会の中で、どういった方々が差別禁止対象として望ましいか、ふさわしいかということを労使でぎりぎり議論して今のような要件が固まったわけであります。

 そこで、先ほど大臣が申し上げましたけれども、そういった要件の中では、過去にそれを、去年の暮れに決まったことについて調査したものがあったわけではありませんので、過去の調査の中で最も近似的なもの、このあたり、蓋然性の高いものについて申し上げました。

 二十一世紀職業財団が十三年度に行いました調査で、その一つ目のグループ、四、五%ぐらいがおおむねその規模であろうか。それ以外に四つのグループがございますけれども、賃金体系を合わせるという二つ目のグループでありますけれども、これも去年の暮れの決定の中から過去のデータを探しまして、事業主の調査によりますところで、一五%ぐらいの事業所の中にそういう方がおられるというふうに調査がされておるということで、蓋然性の高い数字というふうに考えているところであります。

内山委員 今四つのグループというのが出ましたけれども、ちょっと話はそれますけれども、パート労働者本人が、自分がどこの類型に属するのか、どうやって知ることができるのか。また、別の類型に移ったときにどうやって知ることができるのか。どうやって確認しますか。

大谷政府参考人 この法律では、事業主がまず自分たちの雇用している方について判断をしていくことになります。そして、その事業主の判断を適正にするためにも、この法律が成立し施行になれば、その考え方の根拠や基準については通達等で明快にし、なお研修、PR等に努めていきたいということであります。

 そして、労働者の方々がそれについてわからないときに、例えば説明義務と申しておりますけれども、今回、説明義務を事業主に義務づけておりますので、自分の状況について正社員とどういう状態にあるかということを事業主に尋ねていただく、事業主はこれに答える義務がある、こういう流れでございます。

内山委員 今お話しいただきました通達というのは、いつごろ出るのでしょうか。

大谷政府参考人 成立前提のお話になりますけれども、本法が成立しましたら、早急に作業をいたしまして関係者の了解を得て出したいと思っておりますので、できるだけ早い時期に努めたいと思います。

内山委員 少し戻りまして、禁止三要件の同一職務とはどのような職務を指しますか。答弁をお願いします。

大谷政府参考人 同一の職務と申しますと、それは、例えば販売であるとか、営業であるとか、あるいはもっと細分化した、レジの仕事であるとか、そういうことで考えておりまして、特にそのジャンルについて細かい定義はございません。

内山委員 同じく、職務内容にどの程度の同一性が必要なのか、だれがどのように判断するのか。厳しく判断をすればほとんど努力義務の範疇になってしまうんじゃなかろうか、差別的取り扱い禁止に該当する該当者が少なくなってしまうんじゃないかと思うんですが、お尋ねをいたします。

大谷政府参考人 お答え申し上げます。

 差別的取り扱い禁止の対象の要件として、職務、それから人材活用の仕組み、契約期間、この三つがございますけれども、そのうち、最も基本となります最初の要件は、職務の内容が同じということであります。

 職務の内容が同じということは、一つは、業務の内容であります。それから、その業務に伴います責任が同じである場合を指しまして、事業所における作業マニュアルであるとか、あるいは作業分担の実態の分析等によって職務内容を分類しまして、ある職務に通常の労働者とパート労働者の双方が従事しているかどうかにより判断するというふうになると思われます。

 もうちょっと詳しく申しますと、例えば、販売といいましても一律ではなかろう。その一般的な職務内容として、販売職の中に、商品の発注、あるいは接客応対、売り上げの数値管理、こういったものが考えられるわけでありますけれども、これらを役割分担しないで販売職の者全員で担当している、こういった小規模事業所もあります。あるいは、さらにこれを細分化して、例えば接客応対のみであるとか、商品発注のみであるとか、あるいは売り上げの数値管理のみ、こういった分担をしている大規模な事業所もございます。

 こういった意味で、小規模事業所であれば、明確な職務内容の違いはありませんから、一つの販売という職務が存在しますし、大規模事業所の例であれば、さっき言いましたような三つのグループがあるんだろうということで、これは事業所ごとにその対象者を判断していくということになろうかと思います。

内山委員 その判断はだれがどのように判断をされますか。

大谷政府参考人 これも先ほどの答えの繰り返しになりますが、まず、一義的には事業主がその違いを判断し、またそれに対してその労働者が説明を求め、確認していくという中で固まっていくものだと思います。

内山委員 続いて、反復更新の社会通念とは何かということを私も聞かせていただきたい、こう思っておりまして、異動の範囲と頻度をあわせてお尋ねをしたいと思います。

 反復更新の社会通念とは何か、そして異動の範囲と頻度はどのように考えるか、お尋ねをいたします。

大谷政府参考人 反復更新の考え方でありますけれども、これにつきましては、例えば更新の回数であるとか、あるいは実際上のさまざまな事情を考慮して判断するわけでありますけれども、裁判例をもとに考えますと、例えば業務内容の恒常性や臨時性、あるいは正社員との同一性が一つの基準。また、労働者の契約上の地位の基幹性や臨時性という基準。また、継続雇用を期待させる言動とか、当事者の主観的な態様。また、更新の手続の厳格性。その他、ほかの労働者の方の更新状況。こういったものを勘案しながら決まっていくものというふうに考えております。

内山委員 これはやはりだれがどのように判断をするんですか。だれが判断をするんでしょうか。

大谷政府参考人 これにつきましては、まずそういった実例というものを私どもも調べた上で、使用者団体あるいは事業者に考え方を伝えていくというプロセスの中で、事業主が一義的に自分のところのパートタイム労働者はこれに当たるかどうかということを判断し、そういう実例が一つは積み上がっていく。

 それから、先ほどの大臣の答弁につながりますけれども、それについて労働者が違う考えを持たれた場合に、それを労働局の方に話をされて、その中の行政実例として幾つかの事例あるいは相場観というものが積み重なっていく。そしてまた、それについてまだ決着しない場合に、今度は裁判例ということで積み上がっていくということで、そういう社会通念が形成されて一つのルールというものができていくのではなかろうかと思います。

内山委員 先ほど、山井委員と大臣との答弁の中でちょっとメモをしておきましたけれども、事業者の判断、大臣はこんなふうなことをお話しになっていました。事業者に任せるのかな、私はそんなふうに思ったんですけれども、または、政府のある程度の基準が出て、事業主がそれを見て判断をするのか、当事者の判断、当事者、だれが判断をするか、そんなやりとりの答弁があったかと思うんですけれども、ちょっと整理して詳しくその流れを説明していただけませんか。

大谷政府参考人 繰り返しになるかもしれませんけれども、さっき裁判の判例の考え方を申し上げましたけれども、そういったものは現在蓄積があるわけでありますので、それがまずはスタートラインにあろうかと思います。

 そういったものを普及する中で、事業主がまず一義的には判断し、またそれを受け取ったパート労働者はそれについて判断をし、もしそれが納得いかなければ、やはり行政事例ということで積み上がっていく。また、それについて最終的に納得ができない場合に、裁判例という形でまいりますので、繰り返しになりますけれども、事業主がまずは判断するところからスタートし、最終的には判例の積み重ねで、またそれが事業主の判断にフィードバックされていくというサイクルではなかろうかと思います。

内山委員 では、まず初めに政府のある程度の方向性みたいなものが出るということなんでしょうか。

大谷政府参考人 先ほど大臣が御答弁申し上げましたとおり、数量的な基準みたいなものが出せるとは現時点では考えられませんけれども、そういった裁判例などの積み重ねによって、事例によって考え方の基準をまずは示していくというところから始まるのではなかろうかと思います。

内山委員 同時に質問をしておりました異動の範囲と頻度ということについて、今度は御答弁をいただきたいと思います。

大谷政府参考人 職務の配置の変更の内容でありますとかその頻度等でございます。これにつきましては、日本の雇用システムにおいて賃金を決定する重要な要素でございますが、人材活用の仕組み、運用の実態を見るということの指標になるわけでございます。

 具体的には、仕事の変化あるいはポストの変化を指しておりますけれども、仕事の変化といたしましては、業務内容とか責任がどう変化していったか、あるいはポストの変化としましては、配置転換、あるいは昇進とか転勤といったものが考えられると思います。

 その変更の範囲につきましても、例えば同じ人事管理をされている集団単位で見て、将来つく可能性がある仕事、役職をいい、個人単位での人事異動の態様を見ることではなかろうというふうに思います。

内山委員 同一職務についての正社員とパートの責任や意欲などはどのように判断をするんでしょうか。

大谷政府参考人 これは、経営者が人事権として経営の中で判断していくものというふうに考えております。

内山委員 賃金制度が現状で正社員が月給、パートが時間給のような異なる制度でも、職務と異動の要件が正社員とパートが同等であれば同一の決定方法として、賃金制度の違いで比較対象から除外をすべきではないと思いますが、どうでしょうか。

大谷政府参考人 この法律で考えます賃金体系、賃金決定の方法でありますが、これは方法として、例えば職能給あるいは歩合給が正社員に提供されていれば同じ枠組みとか、こういったような形のものは考えておりますけれども、時給とか日給とか、そういった建て組みでの違いを考えているところではございません。

内山委員 繰り返すようですけれども、再度ちょっと確認をしたいと思います。

 雇用期間、契約更新を繰り返す実態に応じて判断をすべきであろうと。正社員と同視すべき雇用期間の目安というのはどうでしょうか。

大谷政府参考人 期間の考え方でありますけれども、これは、採用された段階で補助的な役割だった方が、その経験の中で正社員と同等というふうに変化していくようなケースもありますので、そういった期間を見ながら、同一になった時点から期間を考えていく、そして、それが目安として何年かというのは、これは数字的に何年とは一概に申し上げることは難しいかと思います。

内山委員 それでは、民主党案に質問をしたいと思います。

 民主党案は、短時間労働者について、通常の労働者と均等な待遇を確保することについて、同一価値の労働に対しては同一の待遇を確保するとの観点を盛り込んでいます。法第三条一項。

 ここでいう同一価値労働同一待遇とはどういう意味か。また、均等待遇とは、正社員とパート労働者が全く同じ賃金、待遇になるということでしょうか。

小宮山(洋)議員 お答えいたします。

 パート労働者につきましては、御承知のように、正社員と同様の業務に従事していながら、賃金額が同様の業務に従事する正社員より低いことや、定期昇給、賞与、退職金の有無などに差があるというのが現状です。

 そこで、民主党案では、パート労働者と正社員との均等待遇の確保を図っていく上での基本的な考え方として、同一の価値の労働に対しては同一の待遇を確保すべきとの観点を盛り込んでいます。

 既にこうした考え方は、日本も批准をしております、同一価値の労働についての男女労働者に対する同一報酬に関する条約、ILO第百号条約でも明らかになっているところです。

 民主党案では、短時間労働者であることを理由に、合理的な理由のない差別的取り扱いを禁止しているところです。

 均等待遇の基本的な考え方として、四点挙げておきたいと思います。

 一つは、パートタイム労働者について通常労働者との均等な待遇を確保するということは、同一労働同一賃金の原則にのっとり処遇されることであり、同じ仕事や働き方であれば同じ賃金とすること。そして、二つ目として、同じ働き方でない場合でも、仕事や職務遂行能力に見合った公正な処遇や労働条件を考えること。三つ目としまして、所定労働時間が通常の労働者とほとんど同じで、同様の就業実態にあるパートタイム労働者については、通常の労働者と同様の処遇を行うこと。そして四つ目としまして、パートタイム労働者の均等待遇を確保するためにも、従来の仕事一辺倒の働き方から、ワークライフバランス、仕事と生活の調和を図ることができるように、正社員の働き方を含めて総合的に雇用管理を見直すこと。こうしたことを均等待遇の基本的考え方としております。

 午前中の審議でも申し上げましたように、カナダのオンタリオ州などではペイエクイティー法で四百もの項目で職務評価方法を定めていますし、また日本でも、男女差別の裁判で、職種の異なる職務につきまして価値評価を行い、同一価値であることを認めた判例がございます。

 こうしたことから、日本でも同一価値労働同一賃金、この均等待遇を実現することが可能であると考えております。

内山委員 もう二問質問させていただきたいと思います。

 我が国の賃金制度は、同じ仕事をしていても、年齢、勤続年数、扶養家族の有無、残業、配転、転勤などの拘束性、職務遂行能力、成果などによって処遇が大きく異なっています。

 職務給が確立していないこうした現状の中で、民主党案ではどのように均等待遇を実現していくのでしょうか。

西村(智)議員 御指摘のとおり、日本の中では職務給というものがまだ未確立な現状にあります。欧米諸国では、この職務概念というものが社会的に確立をしておりまして、職務が賃金にリンクしている、そういう状況でございます。

 しかし、我が国においては依然として未確立なわけでありまして、今回、この法案をきっかけとして、我が国の短時間労働者と通常の労働者との均等な待遇について、それぞれの事例を積み重ねていき、労使代表による検討を重ねて、社会的なコンセンサスを得ていくことが重要であるというふうに考えております。

 それに向けた第一歩として、事業所内の労使が十分な話し合いの機会を確保するために、民主党案において、事業主に均等待遇等検討委員会を設置する努力義務を盛り込みました。第七条の五で定めております。

 この条文で、事業主は、短時間労働者の均等待遇の確保等を図るために調査審議し、事業主に対して意見を述べることを目的とする労使から成る常設の委員会を設置するように努めることとしております。また、この委員会の機能を十分に発揮できますように、委員会の構成員については、労働側の構成員にはパート労働者と正社員の両者、これを含めることを明記しております。

内山委員 最後にもう一問お尋ねをします。

 待遇の決定に当たって考慮した事項の説明、第七条の三についてお尋ねをいたします。

 事業主は、その雇用する通常の労働者の労働条件の一般的水準について説明するよう努めることになっていますが、これはどういう趣旨でございましょうか。

西村(智)議員 この規定でありますが、パート労働者の賃金を初めとする待遇の内容が正社員の賃金等に比べて不当に低く決定されるといったことがないように、パート労働者と通常の労働者との均等待遇の確保が図られているのかどうかを、パート労働者自身が確認できるようにするための規定でございます。

内山委員 ありがとうございました。

 それでは、政府案についてまた引き続きお尋ねをしたいと思います。

 差別的取り扱いの禁止で、すべての待遇の範囲に含まれない交通費、慶弔休暇、そして見舞金、なぜ含まれないのか、その根拠をお尋ねしたいと思います。

大谷政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、交通費、いわゆる通勤手当であります。これにつきましては、職務に付随する費用の補てんという観点から、その取り扱いについて、通常の労働者と差異を設けるべきではないという意見もあったことは承知しているところでございます。

 しかしながら、そもそもこの通勤手当の支給自体が法律上求められているというわけでもない上に、パート労働者に対する支給実態はさまざまでありまして、例えば、通勤手当として基本給と分けた支給がなされておらず基本給に織り込まれている例、また、違う形としては、通勤手当として支給されていても厳密な実費弁償ではなくて支給上限が設けられている例、こんなものもあるところでありまして、今回は、法律で一律の措置を求めることは困難というふうに判断したところでございます。

 それから、慶弔費あるいは慶弔の休暇等についての考え方でありますけれども、福利厚生はその実態が極めて多種多様であります。今回の改正法案におきましては、業務の円滑な遂行に必要な福利厚生施設の利用について、措置の対象とすることにしたところであります。

 福利厚生についての均衡待遇の考え方でありますけれども、福利厚生は、事業主が、人材の確保や長期定着等の観点から広い裁量のもとに実施しているものでありまして、その実施について、法は一切介入すべきでないという意見があったところであります。本来、労働者の働きやその貢献に直接の関係のない待遇であることから、労働者間でも取り扱いに差があることは身分差別のようなものであって、あらゆる福利厚生を対象として均衡待遇の確保を図るべきといった意見もございましたし、審議会でも相当の議論が闘わされたところであります。

 そのような中で、その福利厚生の中でも、業務に関連性があるものについては、パート労働者に対する措置の対象とする合理性があると判断いたしまして、今回、給食施設であるとか休憩施設、あるいは更衣室、こういった三つについて、正社員に利用の機会を与えているような場合には、パート労働者にもその機会を付与するように配慮すべきことといたしましたが、それ以外の、今言った慶弔費といったものにつきましては、法が介入して強制的に実施させるというまでの合理性はないと今回判断したものであります。

内山委員 今と関連することなんですけれども、慶弔休暇や慶弔見舞金の問題は、パート労働者たちからは、労働相談でも少なくないと聞いております。同じ職場で仕事をしていて、身内に不幸があった場合、なぜ短時間勤務だけだと正社員と同じように休めないのか、こういう扱いの違いは人権にもかかわる差別ではないか、こう思います。慶弔見舞金にしても、単なるコストの問題ではなく、同じ人間として、働く仲間として同等に見るかどうかの問題でありまして、法的な措置の対象に加えるべきだ、こう思いますけれども、大臣、御所見はいかがでしょうか。

柳澤国務大臣 そういう御議論があったことは、今局長の答弁でも御紹介をさせていただいたところでございます。

 しかしながら、福利厚生についてはやはりいろいろな考え方もあるというところから、今回の法改正におきましては、業務に関連性のあるものということで、合理性があると判断した給食と休憩施設、更衣室等に限るということにいたして、その他の福利厚生についてはまた改めて、いろいろ社会の意識の変化等を見て長期的に検討する対象というふうになるんだろうと思います。

内山委員 ぜひ、やはり人としての差別にならないように検討をしていただきたい、こうお願いをする次第であります。

 続きまして、通常労働者との均衡待遇の処遇について、基本給の決定について、仕事の中身、責任の重さや経験などを勘案するようにと厚生労働省のペーパーの中にありましたが、これはだれがどのような基準で判断をするんでしょうか。お尋ねをいたします。

大谷政府参考人 これにつきましても、事業主が一義的にまず判断いただくということになると思います。

内山委員 教育訓練の実施も均衡待遇、こうあります。今でも、パート労働者に職務遂行上に不可欠な教育訓練であれば、好むと好まざるとにかかわらず実施せざるを得ないはずでありますけれども、どのような教育を今後想定されているんでしょうか。

大谷政府参考人 基本的には、職務に必要な研修、教育訓練といったものについては、正社員がそれを受けているということであれば、これは同じくパート労働者もそういったものが受けられる、こういうことであります。

 また、対象が若干変わりますけれども、ステップアップに必要な研修といったものについても、今回一部措置をしたところでございます。

内山委員 均衡処遇の努力義務につきましてお尋ねをします。

 パート労働者の大半はこの努力義務の範囲になってしまうのではなかろうか、こう思うわけでありまして、差別的取り扱い禁止といっても、格差是正の実効性は非常に少ないんじゃなかろうか。対策としては、やはり時間給のアップ、最低賃金の引き上げが必要じゃなかろうか、こう思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。

柳澤国務大臣 いずれにいたしましても、私ども、また御審議をいずれお願いするわけですけれども、最賃法の改正を四十年ぶりに提出させていただいておる次第でございます。私どもとしては、生活保護との整合性という観点から、これを引き上げの方向での改正につなげるということで考えておりますので、今、委員の御指摘の同じ考え方に出るものだ、このように考えております。

内山委員 一般的なパート労働者には、賃金決定について均衡を考慮する努力義務が課せられることとなるわけでありますけれども、その規定が入ることによりまして、具体的に何がどのように変わるのか、見えないところがございます。企業の経営者に新たに何が求められるのか、パート労働で働く人にとって新たにどんなことが担保されるのか、また、行政の窓口対応や行政の指導は具体的にどう変わるのか、お尋ねをしたいと思います。

大谷政府参考人 お答え申し上げます。

 パート労働者の賃金につきまして、最低賃金とほとんど変わらない時給であったり、あるいは長期にわたって勤めることにより経験や能力が向上しても、昇給が全くないといったケースも見受けられるところであります。

 今回、このような現状を改善するために、パート労働者の働きや貢献に対する評価を何らかの形で賃金に反映させるようにしていくこととしたわけであります。本法案では、パート労働者の職務の内容、職務の成果、意欲、能力または経験等を勘案し、賃金を決定するよう求めているところであります。

 具体的に、例えば、事務、工場の製造ラインあるいは秘書業、こんな三つの職務につきまして、職務の内容を勘案せずに一律の時給としている、こういったことがあれば、そういう現状を改めていただいて、それぞれの職場ごとに賃金を定めることにしていただく。あるいは、工場の製造ラインで組み立てを行う、こういった職務につきまして、経験によって熟練度が増しても一律の時給、こういったケースであれば、これを改めていただいてその熟練度が反映されたような賃金を定める、こういった措置をとっていただくということが考えられるわけでございます。

 こういったことで、その際に、今言ったような均衡処遇の措置を一歩進めた形で、全く同一の方々については、これはもう差別的取り扱いの禁止というところまでのレベルの措置があるということでございます。

内山委員 通常労働者への転換を推進するための措置とはどのようなことでしょうか。

大谷政府参考人 通常の労働者への転換推進のための措置でありますけれども、この改正法におきましては、事業主は通常の労働者への転換を推進するための措置として、具体的内容として三つのものを定めているわけであります。

 一つは、当該事業所の外から通常の労働者を募集する場合には、その雇用する短時間労働者に対して当該募集に関する情報の周知を行う、こういった方法、また次に、社内公募として短時間労働者に対して通常の労働者のポストに応募する機会を与えるというやり方、また三つ目として、一定の資格を有する短時間労働者を対象として試験制度を設けるなど、転換制度を導入する、こういった措置をとっていただくということを義務づけたところでございます。

内山委員 通常以外の労働者でありながらフルパートの勤務をする扱いの者は短時間法の適用除外になっていると思いますけれども、この方たちをどのように対応するんでしょうか。

大谷政府参考人 お答え申し上げます。

 すべての労働者がパート労働者であるという事業所について、パート労働法に規定するパート労働者は存在しないことになるのかということでありますけれども、すべての労働者がパート労働者である事業所では、通常の労働者が存在しないということになりますので、パート労働法に規定するパート労働者は存在しないということになります。

 そのような事業所におきまして、パート労働法の適用はないけれども、もし同じ事業所内に正社員がいれば、短時間の勤務の者がパート労働法に規定するパート労働者に該当してパート労働法の保護を受けることができることから、その事業所では、正社員を雇用していない場合であってもできる限りパート労働法の趣旨を踏まえて雇用管理の改善を図っていただくことが望ましいというふうに考えております。

内山委員 質問をもう一回申し上げますね。

 通常以外の労働者でありながらフルパートで勤務する者の扱いは短時間法の適用除外になっていると思いますが、どのように対応するのでしょうかという質問です。

大谷政府参考人 大変失礼しました。

 パート労働法に規定いたします短時間労働者は、通常の労働者よりも所定労働時間が短い者を指しますために、フルタイムの有期契約社員、フルタイムのいわゆるパートと言われている方は、その呼び方が、どういうふうに呼ばれているかを問わず、このパート労働法の対象とはなっておりません。

 しかしながら、改正のパート労働法に基づいて、事業主が、パート労働者につきましてその働きや貢献に見合った公正な待遇を実現する観点から正社員との待遇の均衡を図る場合に、雇用している労働者全体の納得性、公平性を考えれば、法律によって措置を求められていないフルタイムの有期契約社員の雇用管理に当たっても、当然この改正パート法の考え方が配慮されるべきであろうと考えますし、また、企業の雇用管理の実態を考えましても、当然そのようにしていただくものと考えております。

内山委員 通常の労働者はどのような時間、労働時間にしているかということでお尋ねをしたいと思うんですが、通常の労働者の定義、通達で、基発六六三号には労働時間について具体的な所定時間の規定がありません。ともすれば短時間正社員も通常の労働者に含まれるのかというふうな質問ですが、どうでしょうか。

大谷政府参考人 その事業所にいわゆる通常の労働者がおられるということであれば、そこでお勤めの短時間の正社員の方は、この法律で言う短時間労働者の対象にはなると考えております。

内山委員 いいんでしょうかね。通常の労働者の定義、実際には労働時間、具体的な所定時間がない、通達、基発六六三号には、六時間なのか八時間なのか書いていない、そういうところで、短時間正社員です、短時間正社員も通常の労働者に含まれるのかという判断ですけれども。

大谷政府参考人 今申し上げたことでありますけれども、パート労働法に規定しますパート労働者とは、通常の労働者よりも所定労働時間の短い者であるということで、一般的には、短時間正社員であってもこれは該当するわけであります。ただ、特別なケースとして、例えば、全員が三十時間の正社員であったとするケースがあったとするならば、それは、そういった方々全員がここでいう通常の正社員になるということで、若干ケースによって細かく分かれる面があろうと思います。ただ、一般的な事業所においては、短時間正社員はこのパートタイム労働者の対象になると考えております。

内山委員 答えが返ってこないと思っているんですけれども、時間がぎりぎりになりましたので、ちょっと次の質問に行きます。

 長期間の定めなしの短時間パートを、長期雇用を前提とした処遇で判断するのか、それはどういうふうに判断しますか。

大谷政府参考人 事業所の実態によると思いますけれども、通常の労働者より長期の者が、長いということであれば、そういった者が基準になるというふうに考えます。

内山委員 続きまして、正社員と同じ処遇制度適用のパートは、雇用期間の実態で判断をするんでしょうか。

大谷政府参考人 恐れ入ります、もう一遍質問の趣旨をお願いいたします。

内山委員 正社員と同じ処遇制度適用のパートは、雇用期間の実態で判断をしますか。

大谷政府参考人 通常の労働者でありますけれども、その定義はいわゆる正規型の労働者を申します。社会通念に従い、当該労働者の雇用形態や賃金体系を総合的に勘案して判断するということになろうと思います。

内山委員 均衡処遇について比較する通常労働者がいない場合の取り扱いについてお尋ねをしたいと思うのですが、同一の事業所で、A業務、例えば製造部門の通常の労働者、所定労働時間四十時間、B業務、例えば販売管理のパート労働者、週所定労働時間三十五時間、この比較はどのようになりますか。これは通告をしてある問題です。

大谷政府参考人 お答え申し上げます。

 事業所の中に、例えば、販売部門というところにフルタイムの正社員がいて、週四十時間勤務している、それから、そこにパートタイムの方が、週約三十時間勤務の方がおられて、営業部門では週三十時間の勤務の者しかいない。こういった二つの部門があった場合にどう考えるかということでありますけれども、パート労働法に規定するパート労働者とは、通常の労働者よりも所定労働時間が短いという者であります。

 御指摘の事例になりますと、例えば、週三十時間勤務の者にいわゆる短時間正社員がいなければ、販売部門のフルタイム勤務の正社員を通常の労働者とするということになりますので、この部門の者はパート労働法に規定するパート労働者に当たるということでございます。

内山委員 パートタイム労働指針を今回努力義務に格上げした程度で、パートタイム労働者にとって具体的に本当に何か変わるんだろうか、非常にやはり心配をしているんですけれども、大丈夫ですかね。何か、午前中から聞いておりまして、何のためにこれを上げようとしているのか、非常にやはり理解ができないところがあるんですけれども。

 それでは、最後に一問。お配りをした資料があると思います。せっかくですので、最後に少し時間をください。

 厚生労働省のペラで、「パートタイム労働法の一部を改正する法律案の概要」というところに、「就業形態の多様化の進展に対応した共通の職場ルールの確立」、大きな矢印で「公正な待遇の実現 労働生産性の上昇」、こううたっているんですけれども、なぜパートタイム労働法の関係で生産性が上昇するのか、この理由がわからないので説明していただきたいんです。

大谷政府参考人 今回のパートタイム労働法によって均衡処遇が図られた結果、まず、労働する側が自分の職務に対する納得性が高まり、公平公正が高まったということで、それが労働意欲の向上なりモチベーションにつながるということで、また、それがひいては企業の活性化につながる、また、人口の高齢化が進む中で、将来の労働人口として、今後、いわゆるパートタイム労働者の数というものがある程度必要となってくるわけでありまして、やはり、そこの意欲あるいは生産性を高めていくということが企業なりそれから産業界全体にとってプラスの効果が期待できるということで、その効果の期待を述べたものでございます。

内山委員 委員の皆さん、お配りしました資料を後でぜひ読んでいただければと思います。

 ありがとうございます。終わります。

櫻田委員長 次に、高橋千鶴子君。

高橋委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 パート労働法の大幅な見直しは、九三年の法制定以来初めてであり、パート労働者の急増、差別是正と待遇の抜本的改善を求める声が高まる中、均衡待遇という大変微妙な表現であるとはいえ、差別是正のための義務が法律に盛り込まれたことは、こうした声の反映であったと考えております。

 問題は、先ほど来議論にあるように、実効性がほとんどないのではないか、逆に差別や格差を固定化しないかなどの不安が非常に大きくなってくると指摘せざるを得ません。

 まず、大臣に伺います。

 四月三日の衆議院本会議において大臣は、どのような働き方を選択しても、安心、納得して働くことができる雇用環境の整備を進めることも重要であると考えております、そういう事態が進めば、正規、非正規という区別も、自然と重要性が薄くなっていくのではないかと答弁をされました。

 私は、この言葉は大変共感できるものがあります。しかし、その前提に、同一労働同一賃金の原則が確立していること、二つに、選択できるだけの仕事があること、このことがあってこそ個人の選択も保障される、私はこのように考えますが、大臣はこの点は同じ立場だと考えてよろしいでしょうか。

柳澤国務大臣 四月三日の本会議におきましてそういう御質問がありまして、非正規という呼称をもうやめたらどうかということでございました。しかし、私どもは、やはり正規雇用というものがまだまだ日本で大事な労働形態である、そして、正規雇用を望みながらそれがかなわない方々もいらっしゃるということで、労働政策の基本として、そういう希望がかなえられるような、そういう方向の施策をやっていきたい、こういう考え方でございます。したがいまして、それの反対というか、そうでない労働者の皆さんを指す言葉としては、どうしても非正規ということを使うことが多くなっている。

 しかしながら、これから、このパート労働法等によって均衡処遇ということを実現して、今委員は同一労働あるいは同一価値労働同一賃金というような言葉を使われたわけでございますが、基本的にそういう考え方は私どもも共有いたしておりまして、ただ、同一価値ということの価値のはかり方というのが難しい、物差しでどうかというような御議論もあったわけでございますけれども、私どもとしては、これについて具体的な物差しを得るのは極めて難しいということの中で、そういう物差しによって賃金を決めていけるということはちょっと難しいので別の道をたどろうということで、均衡処遇について、いろいろな措置によってこれを実現しようということでございます。

 そういうことと同時に、選択できる雇用というもの、需要というものがあるということが大事だということについても、私ども、基本的には同じ考え方をしているということであります。

    〔委員長退席、宮澤委員長代理着席〕

高橋委員 今の大臣の、基本的に共有できるというところだけ採用したいと思います。別の道をという点では、当然納得がいくものではございませんで、それは今後の、この後の議論で深めていきたいと思っております。

 そこでまず、第八条に、通常の労働者と同視すべき短時間労働者に対する差別的取り扱いの禁止が盛り込まれたわけですが、ここで言う「通常の労働者」とは、どういう労働者をいうのでしょうか。

大谷政府参考人 ここで申し上げます「通常の労働者」は、いわゆる正規型の労働者をいいまして、具体的には、社会通念に従い、フルタイム勤務の者について、当該労働者の雇用形態、例えば期間の定めのない契約であるかどうか、あるいは待遇、それは長期雇用を前提とした待遇がなされているかどうか、こういったものを総合的に勘案して判断することとしております。

高橋委員 今、過労死ラインと言われる年間三千時間を超える労働者、男性正社員の四人に一人とも言われています。こうした働き方を通常の労働者ともし言うのであれば、パート労働者が長時間労働をしなければ、差別禁止の対象にはならないのかという問題であります。

 平成十五年三月十八日、パートタイム労働指針策定に当たっての労政審雇用均等分科会の報告の中には、「「働きに応じた公正な処遇」を実現するためには、パートタイム労働者の処遇改善だけを切り離して考えるのではなく、通常の労働者も含めた総合的な働き方や処遇のあり方も含めた見直しが課題である。」とされております。この指摘が改正に当たってどう考慮されているのでしょうか。目的にワークライフバランスが据えられているべきだと考えますが、いかがでしょうか。

大谷政府参考人 今お話がありましたように、この法案の審議のプロセスの中でも、パート労働者だけでなくて、全体の労働者の働き方という観点も、議論、御指摘があったところでございます。正社員の働き方につきましては、長時間労働であること、あるいは、仕事と家庭の調和という観点から望ましくないケースがあるということも指摘があります。これは事実でございます。

 少子化が進む我が国におきまして、だれもが仕事と生活の調和がとれた働き方ができる社会を実現するということは重要な課題であるというふうに認識しております。

 厚生労働省の現在の取り組みといたしましても、労働時間等の設定改善法に基づきまして、労使の自主的な取り組みを通じた所定外労働の削減あるいは年次有給休暇の取得促進を進めますとともに、今国会におきましても、長時間労働の抑制を図りますために、法定割り増し賃金率について、中小企業にも配慮しつつ引き上げを行う、こういった労働基準法の改正法案を提出しているところであります。こういった流れの中で、正社員の働き方、それからこの法律におけるパートタイム労働者の働き方、あわせて見直しを進めているところでございます。

高橋委員 今、重要な課題であるとの答弁がございました。

 そうであるならば、やはり、さまざまな施策はありますけれども、パートタイム労働法の中に、ワークライフバランスが前提とされるべきであるということが何らかの形で担保される、明記される、あるいは指針に置かれる、何らかの形でやられるべきだと思いますが、いかがですか。

大谷政府参考人 ワークライフバランスという考え方は、パートタイマー、正社員を問わず重要な考え方でございます。

 これまでパートタイム労働につきましては、むしろ長時間労働が議論になっていたわけではありませんので、目立ったそうした記述なり取り組みが強調されたことは余りありませんけれども、その考え方というものは、この制度の施行、普及において取り入れていく価値のあるものであろうと考えております。

高橋委員 考え方だけではどこにも生かされていきませんので、それを具体的に盛り込むことを検討していただきたいと思います。

 八一年のILO百五十六号、家族的責任を有する男女労働者の機会及び待遇の均等に関する条約なども日本は批准をしているわけですから、この点でも、パート労働法の中に貫かれるべきだということを指摘しておきたいと思います。

 関連しますけれども、パート労働者は、平成十八年で千二百五万人と、雇用者総数の二二・五%、その七割が女性であるということであります。一時間当たりの一般労働者との所定内給与の比較で見ると、男性が五二・五%、女性は六九%という表がございます。そこだけ見ると、何か、あれ、女性の方が高いのかなと思いますと、男性は男性と、女性は女性と比較をしているわけです。

 ですから、もともと、一般正社員の中で男女の賃金格差が六七%という格差がございます。ですから、もしこれを一般男性社員と比べると、パート女性社員は四六・二八%にすぎない、非常に格差があると思うんですね。そのことをやはり無視できないのではないか。

 労基法第三条の均等待遇、あるいは労基法四条の男女同一賃金の原則が、パート労働法において何らかの形で明記されるのか。あるいは、これがパート労働法における均等待遇の根拠となるように労基法を見直すとか、そういう整合性をとるべきと思いますが、いかがでしょうか。

    〔宮澤委員長代理退席、委員長着席〕

大谷政府参考人 御指摘いただきましたように、均衡のとれた待遇の確保を図るに当たりましては、今回も、パート労働者の働きや貢献を正社員と比較して、その違いによって待遇の相違を認めることとすると、転勤や異動に比較的柔軟に応じることができ正社員的に働けるパート労働者には男性が多くなり、育児等の事情でそういった働き方ができないパート労働者には女性が多くなる、こういったことも想定できないわけではございません。

 しかしながら、現状の日本の雇用システムでは、ある程度中期的な雇用を想定して労働者の待遇がなされているというのが一般的でありまして、ある一時点では、職務内容が同一であるにもかかわらず待遇が異なるといった場合において、法による介入が正当化されるほどの合理性はないといった考えもございます。

 しかしながら、今回、このパート労働法において均衡待遇あるいは差別禁止というものの徹底が図られれば、その中で正社員とのバランスが改善し、今御指摘ありましたように、大宗を占める女性の労働の条件というものも改善されるということで、こういったことに、今回のパート労働法で実現に向かって取り組んでいるということを御理解賜りたいと思います。

高橋委員 今、バランスが改善されていくだろうというお話がございましたが、先ほど来の議論で、通常の労働者と同視すべきパート労働者というのがほとんどいないのではないか、どこにいるのだという議論がさんざんされてきたにもかかわらず、この法律によってバランスが改善されていくだろうという認識は、一体どこからそれが出てくるのかなと、疑問を指摘せざるを得ません。

 ここに関連して続けますけれども、八条の同視すべき短時間労働者、まあ短時間正社員と言い切っていいのかと思うんですが、九条以降の職務内容同一労働者の違いというのは、処遇においては義務と努力規定というふうに大きく差が開くわけですけれども、その対象要件をよくよく見ますと、「当該事業主との雇用関係が終了するまでの全期間」、この言葉以外に違いがないと思います。

 それで間違いないのかということと、先ほど来の説明を聞いていても、全期間とはいうけれども、最初は同じはずがない、違う働き方をしていて、途中から同じ働き方になって、それから以降全期間を同視なんだという説明であって、非常に意味不明。将来にわたっては予測不能ということであるんですから、一定期間の部分と全期間というのを区別する意味がないと私は思いますが、いかがですか。

大谷政府参考人 期間の考え方でありますけれども、職務の内容あるいは人材の活用の仕方が同じであっても、それがごく一期間にすぎなかった、こういうことであれば、それは同一とはなかなかみなせないということで、今回、その期間という考え方が強調されるわけでありますが、それにつきましても、例えば、採用時点で補助的な仕事でスタートされた方が、その経験を積んで、これはもう正社員と同視すべき職務内容あるいは人材の活用レベルになったということであれば、その時点からやはりカウントしていくということになりますので、その全期間という意味は、やはりそういうことで、同視すべき社員については今の考え方が今回の法案で盛り込まれたというところでございます。

 それから、この法案の効果について、差別禁止の対象が少なければ、男女のバランスといいますか、パート労働者の処遇が改善されないという御指摘をいただいたわけでありますが、この法案は、均衡処遇をベースに全部のパートタイム労働者を対象に考えているわけでありまして、それぞれの態様に応じて、処遇の改善、あるいは、さっき申しました福利厚生とか研修あるいは正社員転換等を図っているわけでありまして、差別禁止以外のいわゆる均衡待遇の全体によってこの改善を図ってまいりたいと、全体で考えているところでございます。

高橋委員 今、要綱に書いてある一定期間という働き方のところを、ごく一期間という表現で答弁されました。

 そうすると、ごく一期間とは何ぞや。これは期間労働者のことを言っているわけですか。

大谷政府参考人 ごくという部分は、言葉を誤りましたので訂正いたします。一期間というふうに申し上げます。

高橋委員 そうすると、一定期間というのは、初めから期間の定めがある人を言っているんですか。

大谷政府参考人 一定期間の考え方でありますけれども、この期間といいますのは、長期的な人材活用の仕組みあるいは運用等が同じであるかどうかを見るための期間であります。そういう意味で、通常の労働者とパート労働者について、人事異動などの態様を比較して、その有無や範囲が同じかどうか判断できる程度の期間がなければならないと考えているわけであります。

 したがいまして、一律にどうと言うわけにはなかなかいきませんが、その実態に応じて、それはさっき申しましたような判断ができる期間がそれぞれのケースで出てくるのではないかと思います。

高橋委員 それは要するに、差別是正をするために、一定期間を見て、それから判断をするという意味ですか。

大谷政府参考人 ある程度のそういう判断をする期間というものが必要であるというふうに考えます。

高橋委員 非常にあいまいなことがわかったし、一定期間という中で、結局は、本来ならば同視できるはずの労働者がちょっと留保されるというか、そういう危険性があるなということを感じたし、企業の勝手な解釈を許すのではないかということを非常に懸念を今感じたということを指摘したいと思います。

 それで、今の期間の定めの問題なんですけれども、先ほど来、山井委員が、「反復して更新されることによって期間の定めのない労働契約と同視することが社会通念上相当と認められる期間の定めのある労働契約を含むもの」と。この社会通念上を大臣は何度も繰り返ししたわけです。

 同じことを聞くとまた同じ答弁になるので、角度を変えて伺います。

 期間の定めがあるけれども、実質反復雇用されて定めのない雇用と同視すべき労働者が相当程度いるという認識を持っていますか。また、それを改善したいという意図がおありですか。

大谷政府参考人 そういう方が相当程度おられるというふうに考えております。

 そして、改善したいのは、そういう方が合理性のない差別がされているということであれば、それがそうならないように差別禁止の規定を置いたということで、そういった禁止に当たるようなものが解消されていくということが望まれるというふうに考えております。

高橋委員 同じ質問を大臣に伺いたいと思うんです。

 パートタイム労働者の七割は有期契約労働者であります。ですから、このパートの問題を考えるときに、有期の問題を避けて通ることはできないと思うんですね。

 平成十七年のUFJ総研の実態調査でも、契約期間満了後、更新し、引き続き働きたいという方が五〇・一%、正社員として働きたいという方が一九・八%、七割を超えている中で、会社が契約を更新するつもり八七%、そういうふうになっているんですね。

 働きたい、雇いたい、だけれども、どうせ雇うんだったら安い方がいいという企業の論理が逆にあるのと、そのためによって、いつもいつ首を切られるかという不安を労働者は抱えている。この問題に今回きちんと取り組むおつもりがあるかどうか、最後に伺います。

柳澤国務大臣 先ほど局長から答弁をいたしましたように、パートと有期ということは切っても切り離せない。有期を反復するということによって、パートはずっとパートだ、こういうようなことでいろいろな処遇において劣後的に扱われるということを今度は直そうと考えているわけであります。

 反復する、もちろん、何回反復するんだ、また何年なんだという話を持ち出されますと、私どもは一義的にここで数字を申し上げるわけにいかないということなんですが、社会通念上期間の定めのない、いわゆるそういう労働者と同視すべきだということで、我々は、パートの労働者の期間の反復をされる方については、これは通常の労働者と同視すべき方だということで差別禁止を進めてまいりたい、このように考えております。

高橋委員 終わります。よろしくお願いします。

櫻田委員長 次に、阿部知子君。

阿部(知)委員 社会民主党の阿部知子です。

 本日は、本来であれば、冒頭、出産の場の確保で武見副大臣に御質疑をさせていただくというふうに通告いたしましたが、きょうは、ちょっとそれを先送りさせていただきまして、先ほど、坂口元厚生労働大臣が大変示唆に富む御質疑をしてくださいましたので、冒頭の時間をタミフルの問題で大臣と医薬食品局長にお願いしたいと思います。

 きょう、ちょうど、もう少したちまして十六時から、薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策部会安全対策調査会というのが行われます。本日行われます調査会は、せんだって来の質問で、柳澤厚生労働大臣が、この間、この安全対策部会に寄せられました千八百件の副作用事案について、委員会を開いて検討していただくということで、大臣の肝いりで始めていただきました。そのこと自身は大変評価させていただきます。

 そして、先ほどの坂口元厚生労働大臣のお話にもございましたが、恐らく、私は、こうした薬剤の安全性や副作用、そして、いろいろな承認にかかわりますことにおいて、薬剤メーカーと厚生労働省と医学界の研究者、やはりおのおの独自性、独立性を持って事に当たらないと本当の姿というのがなかなか出てこないと思います。

 先ほどの坂口委員の御指摘は、中外製薬は中外製薬でやるべきことがあるじゃないかと。私がもう一歩言わせてほしいのは、やはり、厚生労働省は厚生労働省として、それとは一定、独自に、特に安全行政を預かる立場から結論を出していただきたいと思うわけです。

 大臣にはここで、実はこのタミフルの安全性をめぐっては既に先行的に何人かの研究者の方からその危険性が指摘され、医薬品医療機器総合機構などにも意見書が出され、また安全対策部会にも意見書等々が出されておりました。そういう意見書の取り扱いは今後どのようになってまいるのか。やはり私は、いろいろな意見は、きちんと厚生労働省が受けて、それを公正な観点から安全行政に向けていくということが重要と思いますので、その点、大臣に一言お聞き申し上げます。

柳澤国務大臣 私、かねてからここでも申させていただいておりますけれども、国民にとって医薬の安全性というものは最も大事なものだ、こう考えております。

 したがいまして、今委員が言われたような意見書等を自発的に出していらっしゃる先生方、こういう方々の意見にもよく耳を傾けるようにという趣旨だと思いますけれども、私どもはそのようにさせていただくつもりでございまして、具体的には、意見書等が私どもに届けられた場合にはこれを安全対策調査会にも御披露するつもりでございます。

阿部(知)委員 既に昨年の十一月、濱さんという医師から医薬安全対策部会に送付され、そして一応担当には配られたということでありますが、せんだって来、私が申し上げますように、副作用事案が何例あっても審議にかかっておりませんで、このあたりは改めて、視点を新たにして見直していただきたいと思います。

 また、二点目でございますが、実はけさの報道にもございましたが、抗ウイルス剤タミフルに対して、ウイルスの方も必死に生き延びようと変化いたしますので、耐性が出てきたと。いわゆるウイルスはタミフルを乗り越えてやっていくかもしれないということも報道されております。今、我が国にあっては、特に新型インフルエンザに対してタミフルの備蓄ということをやっておりまして、もしここで大量にタミフル耐性のウイルスが発生いたしますと、現在の備蓄ということにも非常に悪影響というか、備蓄の効果ということが懸念されるような事態になってまいります。

 これは医薬食品局長にお伺いいたしますが、この報道されるようなタミフル耐性という問題、あるいは私が臨床現場から思いますには、やはりタミフルが、逆に、実際には非常に多用されている向きもあると思います。これまで、発売から既に三千五百万人分使用されております。そうした実態も踏まえて、使用実態、そして、耐性ウイルスをどう考えるかなどについても今後研究を進めていただきたいですが、いかがでしょうか。

高橋(直)政府参考人 お答え申し上げます。

 本日報道に接しましたところでは、御指摘のタミフルの耐性ウイルスに関する情報、これはアメリカの医学界雑誌に掲載されるものというふうに承知しております。

 報道の中身を見ますと、インフルエンザウイルスのB型に対するものの中で耐性ができてきたようだということでございます。新型インフルエンザの方はA型でございますけれども、AかBかは別にして、御指摘のように、こういったタミフルの使用によって耐性ができてくる、それが人からまた人にうつる可能性があるということは、今回報じられたところであります。

 そういった意味で、今後、タミフルの有効性にかかわる大変重要な情報でございますので、私どもとしては、これは関連情報を収集しながら、また適切に対処してまいりたい、かように考えております。

阿部(知)委員 世界的にも、このタミフルの備蓄という問題は、今WHOでも我が国のいろいろな調査結果を待っておる、副作用問題も含めて。また、耐性ウイルスが出現したというのも我が国で初めて報道されておりますので、世界の注目を浴びておる事案かと思います。しっかりと厚生労働省として、先ほどの安全行政と、そしてさらに、やはりこれからウイルスの問題というのは非常に大きな世界的な脅威でございますから、研究をしっかり進めて、世界にも発信していただきたいと思います。

 引き続いて、本来のきょうのテーマであるパート労働法について伺わせていただきます。

 既に委員の皆さんあるいは柳澤大臣のお手元にも配らせていただきましたが、二枚のプリントには、一枚目は、いわゆるパート労働者と一般労働者の賃金格差の推移、そして二枚目には、いわゆる有期、期限の定めのある労働者が、例えば平成六年から十七年にかけてどのようにふえてきておるか。簡単に申しますれば、先ほど高橋委員も御指摘でしたが、賃金は、正社員とパート労働者の格差は埋まるどころか拡大し、非正規雇用の中で特に期限の定めのある有期雇用というのも、むしろ、一九九三年にパート労働法が成立いたしましてから、逆にふえてきておるということになっております。賃金は正社員より低く、働き方もパートの七割が有期であるとなると、大変に不安定、低賃金ということになってまいります。

 まず、柳澤厚生労働大臣には、果たして、一九九三年に成立いたしましたパート労働法はどのような役割を果たしたであろうか、限界があるとすると何であろうか、このたび新たな法改正をすることの一番の眼目は何であろうか、この三点、お願いいたします。

柳澤国務大臣 パート労働者の増加は、他のいわゆる非正規の雇用者と言われる方々の中のいろいろなタイプの労働形態と同じように、経済産業構造の変化とか、あるいは労働者側の価値観の多様化などによって、双方のニーズに合う形で生み出されたというふうに考えておりまして、パート労働法の施行後の状況を見ますと、今委員が御指摘になられたような、そういうニーズもあって、それに対応したという意味で増加の状況がその後出現しているということは、そのとおりと考えます。

 施行後の状況といたしましては、労働条件の文書明示の割合が高まった、それから、賞与がパート労働者へ適用される割合が高まった、あるいは、パート労働者とされていながらというか、そういう立場にありながら責任ある地位へ登用されるというような割合も高まった等、ひとつのこれは成果かというふうに考えております。

 他方、限界は何かということについては、まさしく今回の私どものパート労働法の改正というものの目的といわば裏腹の問題でございますけれども、一つは、やはりパート労働者の処遇の均衡化を図っていかなければならない、こういうことが一つあります。それからまた、希望をされる方には正社員化への道を開くような方向での措置を講じなければならない、こういうことでございまして、私どもの改正法の目的と、これまでのパート労働法のひとつの限界と、今委員が言われた言葉で申し上げれば、そういうことが裏腹になっているというふうに申し上げたいと思います。

阿部(知)委員 せっかくの御提案ですからやみくもに否定はしたくないのですが、しかし、先ほどの大臣の御答弁の逐一の中で、確かに、労働条件が明示される率は多少高まったやもしれません。ただし、賞与のある方がふえたといっても、賞与込みの賃金格差も改善されておりません。マクロな数字でありますが、お示ししたのはそのような賞与込みのものもここに出してございまして、これは一切改善がない。責任ある地位につくことができたと言われますが、これは裏返すと、身分は違って責任だけ背負わされるということにもなってまいります。

 私は、この九三年から現状、十四年ですか、たった中で、本当にパート労働法というのは役に立ったんだろうかというのを、この改正の突端にあって非常に疑問に思うわけです。均衡化の問題も、もともと一九九三年のパート労働法にも明文化されておりましたので、なぜされないのかというところが問題なんだと思うのです。そこには労使の力関係、今回、希望する方が正職化されるといいますが、先ほど来伺っていると、一義的にはやはり雇用主の側の判断によるというふうなお話ですので、それでは何ら変わることがないだろうと思うのです。

 少し労働現場の実態というものに即してお伺いをしたいので、大臣のお手元にも「F社(製造業・印刷)における正社員とパートの賃金・福利厚生の格差」というものを出させていただきました。これは均等待遇アクション21という皆さんが作成されたものです。きょう、いろいろな審議がございましたが、何をイメージして、何を論じているかのところにかなり差があるように思いましたので、私が先ほど与野党の筆頭理事にお願いして、追加資料としてつけ加えさせていただいたものです。

 上に右と左で表が分けてございまして、左が正社員、右がパートでございます。御多分に漏れず正社員は男性が多くパートは女性が過半である。契約期間の有無も、一年契約のパート。労働時間においては、七時間、正社員は七時間半ですが、一人だけ正社員と同じ七時間三十分の方がおられて、これがいわゆるフルタイムパートと呼ばれている皆さんです。下にずっと行きますと、残業、配転などもこのパートの皆さんにはございます。しかし、家族手当や福利厚生は全くございません。一時金についても非常に差がある場合も多く、また、月収の比較という究極の賃金に行きますと、フルタイムパートの方と正社員の男性、片方は女性を比べますと、男性が三十四万六千円、女性が十七万一千円でもう二分の一になってしまいます。

 下に「パート社員の現状(二〇〇七年一月現在)」ですが、一体どれくらいの期間勤続しているんだろうということで見ていただきますと、二十一年、十九年、十七年六カ月、十六年、十六年、十五年、十四年、十四年、十二年、短い方でも二年六カ月であります。

 先ほどの大谷局長の御答弁の中には、多分に、正社員の方の方が期間が長くパートの方は暫定的であるかの、一言で言ってしまえばそういう御答弁もあったやに思いますが、こうやって事案を並べてみると、本当に、一体パートと正社員の間の巨大な壁、格差とは何であろうかという思いを強くいたすわけです。

 大谷局長に確認をさせていただきますが、今回の法案は、フルタイムパートは、いわゆる短時間社員ではございませんが、先ほどの御答弁では、このフルタイムパートの正社員化に向けても事業主にはそれなりのインセンティブを与えることを含み込んだものだというふうに御答弁されましたが、それでよろしいですか。

大谷政府参考人 今回の法律の対象は、これはまさに短時間労働者でありますので、いわゆるフルタイムパートは含んでおらないわけであります。

 ただ、今回こういった従来の指針ベースであったものを法律化する等、法律の構成ができてまいりましたわけでありますから、こういったものが社会実態として定着していく中で、フルタイムパートの方々にも、こういった考え方が企業主の方から普及していただけるものという期待も込めて考え方を申し上げたわけであります。

阿部(知)委員 では、大臣にもお願いします。大谷局長は期待を込めてと言いましたが、今までも、やはり、先ほどの一九九三年、パート労働法の成立以来、期待は常に行政の側にあったんだと思うんですね。でも、期待が現実に定着していかないという面もあると思うんです。大臣にあっては、このたび、このパート労働法の改正をするに当たって、これまでを何らか上回るもの、どのような形で定着化させていけるか、このことについてお考えがあれば最後にお願いいたします。

柳澤国務大臣 フルタイムパートにつきましては、今局長から御答弁させていただいたように、対象に加えるというわけにはいかないのですが、実質、待遇の改善を図っていくように考えていきたいということで御理解を賜りたい、このように思います。

 それから、こういうことを言うと、また委員会の審議にお差しさわりが出るかもしれませんが、非常にいい資料をいただきまして、こういう方々ですと、まさに私どもが、多分この中のかなりの高い率で今度は差別禁止の対象になられるパートの方々が、非常に目の当たりにすることができまして、心から感謝を申し上げる次第でございます。

 いずれにいたしましても、均衡処遇ということで、それ以外の、つまり差別禁止の対象外の人たちにもこの定着を図っていきたいというふうに私どもは考えておりますが、それについて、努力義務だから余り定着の有効手法とは言えないじゃないかという御指摘かと思います。

 しかし、例えば、例に挙げさせていただきますと、応募における年齢による差別というものを、私どもは、できるだけこれを少なくしたいということで行政指導をさせていただいてきたわけですけれども、そのおかげで、今日、ハローワークの年齢について制限をしない求人というものが五〇%になりつつある。こういうことで、行政指導というものの手法によるこうしたことの定着化あるいは進捗というものも、そんなに皆さんから御批判を受けるような状況には現にないということも言わせていただきたい、御理解をいただきたい、こう思うのでございます。

 私どもは、この新しい改正されたパート労働法を的確に運用することによって、処遇の均衡化を確保してまいりたい、このように考えております。

阿部(知)委員 現場の実態把握と行政指導は大変重要と私も思います。ぜひ、厚生労働省に、重ねて、実態をきっちり把握して、適切に指導していただきたいということをお願い申し上げて質問を終わります。

櫻田委員長 この際、細川律夫君の残余の質疑を許します。細川律夫君。

細川委員 民主党の細川律夫であります。

 それでは、午前中の質問に続き、新しい資料をいただきましたので、それを参考に質問いたします。

 午前中の質問の後、先ほどまでの間にいろいろ調査して把握したということで、私のところに「現時点で、年金積立金管理運用独立行政法人管理部長より確認できたことは別紙のとおりです。」ということで報告がございました。それで、この報告の一番最初に「年金福祉研究会代表を務めていた当法人管理部長佐々木満に対するヒアリングにより、現時点において把握できた事項は、下記の通りです。」ということで、いろいろ記述がございますけれども、そんなに特に新しいものは記載がされていないのです。

 まず最初に、ちょっとお聞きしますが、これは法人の管理部長佐々木満さん、この方からだけヒアリングをしたんですか。

渡辺政府参考人 そのとおりでございます。この間の時間におきまして、法人の管理部長の佐々木満氏を、一人でございますが、ヒアリングをさせていただきましたということで報告を受けております。

細川委員 この年金福祉研究会という、これのいろいろな事業に携わっていたというのは、午前中の私の質問で、現在の管理部長、したがって当時の総務部の総務部長、課長、それから課長補佐というふうに言われましたかね、この三人がかかわっていた、こういうことを言われたんですが、こういう三人の方がかかわっていて、なぜその三人にしっかり聞かないんですか、なぜ部長だけに聞くんでしょうか。実際の実務的な担当をやっていたのは、課長補佐にこの佐々木満という部長が指示をしてやらせたんじゃないですか。

渡辺政府参考人 年金福祉研究会が存在しておりました年金資金運用基金の際の総務課長及び総務課長代理は、いずれも退職しておられますものですから、現時点で直ちに独立行政法人としてヒアリングができたのは部長であったということでございます。

細川委員 それでは、この報告書によりますと、十六年、十七年は自分が担当というか、自分が関与していたのでということで記述がありますが、十五年以前、私が午前中にも質問をして、大量の申込書なんかの販売がなされたのではないか、こういう指摘に対しては、十分な答え、全くと言っていいほど答えがなかったんです。

 総務部長佐々木満さんは、前任者からいろいろな、通帳だとかそういうものを引き継いだということがちょっと書いてありますが、これは事実ですか。

渡辺政府参考人 ヒアリングによりますと、十五年度以前の金銭出納簿などの引き継ぎは受けていないが、預金通帳、残高約四十五万円の引き継ぎだけがあったというふうに述べております。

 十五年度以前の状況につきまして、数種類の書類の販売を行っていたと聞いているが、過去の期間のことについては詳細は承知していないというのが現在の佐々木部長の疎明でございます。

細川委員 その前任者というのは、名前は何という方ですか。

渡辺政府参考人 宮澤常夫と申します。退職しております。

細川委員 そうすると、十五年度以前というのは、前任者が、宮澤さんが退任しているということで事情は聴取しなかったんですか。あるいは、前任者の下で年金福祉研究会に携わっていたような人に対しての事情聴取はされたんですか。全くされていないんですか。

渡辺政府参考人 現時点では、まだ事情聴取はしておりません。前任者宮澤以前の総務部長、皆退職でございまして、こうした退職者に対するヒアリングはまだ行っていないというのが実情でございます。

細川委員 ということは、それでは全く調査をしていないということじゃないですか、前のことについては。何にもしていないということじゃないですか。当時そこにいて関与した人たちは、まだいるでしょう。全部役所をやめられたんですか。

渡辺政府参考人 午前中も御質疑ございました、平成七年度あたりからの総務部長は、先ほど述べました宮澤まで含めて全員退職者でございます。また、総務課長につきましても、おおむね退職者ですが、現在東京におらない者が一名おります。それから、総務課長代理は、退職者がおりますが、現在現役で、これは役人ではございませんが、独立行政法人の職員をしている者がおります。

 ただ、佐々木にその点確認をしたところでございますが、現在独立行政法人に奉職している者の中で、この間の事情についてよく承知している者がいるかどうかについては、つまびらかにしないということではございましたが、私ども、退職者も含めてよく事情を聞いてみないと、十五年以前の話については、なかなかわからない。したがいまして、さらに調査の対象を広げて、事実解明について私ども役所の側も努力していく必要があるというふうに考えております。

細川委員 委員長もお聞きになってわかると思いますけれども、年金福祉研究会というのは、答弁では、私的な団体だと。しかし、実際は、総務部長、課長、課長代理がやっていた。そして、年金資金運用基金の内部に、総務課の中にこの年金福祉研究会というのを置いて、それで昼間電話がそこへかかってくるということで、職員が担当してやっている。

 こういうことをやっていて、余り時間がたっていないんですよ、三年か四年ぐらいですよ。それで、私が調査をしてくれと頼んだのは、もう十日ぐらい前じゃないですかね、お話を持っていったのは。全然調べていないんだ。解明しようとしていないんじゃないですか。

 佐々木さんという人は、非常に責任のある地位にもあるわけなんですよ。だから佐々木さんに都合の悪いことは言わないでしょう。

 十七年度なんて、CD―ROMを販売したことについても、この報告書によりますと、こういうことを言っていますね。「研究会の解散に向け、かねてから銀行より要望のあった事務必携のCD―ROM化を行い、販売し、残金を使いきることとした。 CD―ROMの作成費用約九十万円については、繰越金約三十万円と販売収入約六十万円により賄い収支〇円」、ゼロ円とだけははっきりしているんですよ。ほかは全部、約。これはおかしいんじゃないですかね、だれが聞いても。ゼロのところだけ何でそんなにはっきり書くんですか。ほかの何十万は全部、約なのに。

 これは、そういうのを部長から聞いて、それを報告書に書いて、これがCD―ROMの関係の販売の収支の関係だ、その研究会の収支でこれはこれで終わりだ、これを私どもに信じろと言ったって信じられないですね。なぜほかの人に聞かないんですか。

 逆にもう一回聞きますけれども、なぜ佐々木さんだけですか。

渡辺政府参考人 このところ、事情聴取をいたしましたのは佐々木部長でございます。佐々木部長は、本日の調査書の表現にもありますように、この研究会を解散すべく、実務を実際みずから行ったということで、一番直近の状況についてお詳しいということで聞いております。

 また、現に独立行政法人の部長ということで現役で今おりますものですから、そこに十分話を聞くということが一番適切かというふうに考えてそうしたところでございます。おっしゃるように、佐々木氏自身も知らないという部分の時期の話等々ございますので、私ども、佐々木氏だけではなく、調査対象の範囲を広げなければ事実解明としては不十分な点があるのではないかということで、そういう方向で今後努力してまいりたいというふうに考えております。

細川委員 ちょっと時間が来ております。済みません。

 では、その調査はいつまでに行い、いつ私のところに届けてくれますか。

渡辺政府参考人 先ほどちょっと申し上げました過去の総務部長、総務課長、総務課長代理、十数名から二十名近くおりますものですから、そうした者とも話を聞いて、全体整理をして、報告をまとめさせたい、こういうふうに思っておるところでございます。一カ月程度お時間を賜ればありがたいと思っております。

細川委員 それは余りにものんびりし過ぎるというか、あえて、故意に何か時間がかかるみたいなことを言っているとしか思えない。もっと委員長の方から、はっきり、早く報告をするように指示してもらって、それから、私の方からは、この佐々木満さんを、参考人招致ではなく証人喚問をお願いしたい。

櫻田委員長 ただいまの件につきましては、理事会で協議させていただきます。

 細川律夫君に申し上げます。

 既に持ち時間が経過しておりますので、質疑を終了してください。

細川委員 はい。

 委員長、最後に委員長が指示をしていただきたいと思います。いつまでに報告をするようにと。

櫻田委員長 その件に関しましては、理事会で協議させていただきます。

細川委員 では、終わります。

櫻田委員長 次回は、来る十日火曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時三十三分散会


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