衆議院

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第13号 平成19年4月13日(金曜日)

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平成十九年四月十三日(金曜日)

    午前九時三十二分開議

 出席委員

   委員長 櫻田 義孝君

   理事 伊藤信太郎君 理事 石崎  岳君

   理事 鴨下 一郎君 理事 谷畑  孝君

   理事 宮澤 洋一君 理事 三井 辨雄君

   理事 山井 和則君 理事 福島  豊君

      新井 悦二君    加藤 勝信君

      上川 陽子君    川条 志嘉君

      木原 誠二君    木村 義雄君

      岸田 文雄君    清水鴻一郎君

      菅原 一秀君    杉村 太蔵君

      薗浦健太郎君    高鳥 修一君

      戸井田とおる君    冨岡  勉君

      長崎幸太郎君    西川 京子君

      林   潤君    原田 令嗣君

      福岡 資麿君    松野 博一君

      松本  純君    松本 洋平君

      内山  晃君    大島  敦君

      菊田真紀子君    北神 圭朗君

      郡  和子君    園田 康博君

      田名部匡代君    筒井 信隆君

      西村智奈美君    細川 律夫君

      坂口  力君    高橋千鶴子君

      阿部 知子君    糸川 正晃君

    …………………………………

   議員           園田 康博君

   議員           山井 和則君

   議員           太田 和美君

   厚生労働大臣       柳澤 伯夫君

   厚生労働副大臣      石田 祝稔君

   厚生労働副大臣      武見 敬三君

   厚生労働大臣政務官    菅原 一秀君

   厚生労働大臣政務官    松野 博一君

   政府参考人

   (厚生労働省雇用均等・児童家庭局長)       大谷 泰夫君

   厚生労働委員会専門員   榊原 志俊君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月十三日

 辞任         補欠選任

  井上 信治君     薗浦健太郎君

  吉野 正芳君     上川 陽子君

  柚木 道義君     西村智奈美君

  高橋千鶴子君     石井 郁子君

同日

 辞任         補欠選任

  上川 陽子君     宮下 一郎君

  薗浦健太郎君     井上 信治君

  西村智奈美君     北神 圭朗君

  石井 郁子君     高橋千鶴子君

同日

 辞任         補欠選任

  宮下 一郎君     吉野 正芳君

  北神 圭朗君     馬淵 澄夫君

同日

 辞任         補欠選任

  馬淵 澄夫君     柚木 道義君

    ―――――――――――――

四月十二日

 雇用基本法案(大島敦君外二名提出、衆法第一三号)

 労働者の募集及び採用における年齢に係る均等な機会の確保に関する法律案(加藤公一君外二名提出、衆法第一四号)

 若年者の職業の安定を図るための特別措置等に関する法律案(山井和則君外二名提出、衆法第一五号)

 雇用対策法及び地域雇用開発促進法の一部を改正する法律案(内閣提出第三六号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第三七号)

 短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律の一部を改正する法律案(西村智奈美君外二名提出、衆法第九号)

 雇用対策法及び地域雇用開発促進法の一部を改正する法律案(内閣提出第三六号)

 雇用基本法案(大島敦君外二名提出、衆法第一三号)

 労働者の募集及び採用における年齢に係る均等な機会の確保に関する法律案(加藤公一君外二名提出、衆法第一四号)

 若年者の職業の安定を図るための特別措置等に関する法律案(山井和則君外二名提出、衆法第一五号)


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     ――――◇―――――

櫻田委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律の一部を改正する法律案及び西村智奈美君外二名提出、短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、政府参考人として厚生労働省雇用均等・児童家庭局長大谷泰夫君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

櫻田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

櫻田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。西村智奈美君。

西村(智)委員 民主党の西村智奈美でございます。おはようございます。

 まず冒頭、昨日の憲法調査特別委員会におきまして、極めて不正常、強行的な採決がなされたことに対して強く抗議を申し上げたいと思います。

 与野党の協議が円満に進んできた中で、それを水泡に帰するがごとき与党側の強行採決は断じて許すことができない。きょうのこの委員会も、不正常に近い、円満とは決して言えない状況の中で開催をされております。このことについて強く抗議を申し上げ、そして、数の力におごった国会運営が決して行われることのないように、強く申し上げたいと思います。

 それでは、この法案について質問に入りたいと思います。

 今回、パート労働法、大変大きな改正でありましたけれども、政府の方は何度も、この法案が現時点では百点満点の法案だというようなことを繰り返し述べておられます。しかし、実際にパート労働者の側から見ますと、これは決して百点満点ではなくて、むしろ後退している面が多々生じるのではないか、そういうことが懸念をされている、これはもう何度もこの委員会の中で繰り返し議論されてきたことであります。

 つまり、通常の労働者と同視すべきパート労働者の三つの要件のハードルが余りに高くて、対象となる労働者は実際には一%ぐらいにしかすぎないのではないか、そのわずか一%の労働者において均衡の処遇を実現するということと引きかえに、残りの九九%のパート労働者は、言ってみれば、底辺のところに張りつけられるという、このパート労働の格差がさらに拡大して固定化するのではないか、こういうことが懸念をされているわけでございます。

 こういったことに加えて、特に、このパート労働というのは女性の労働者が極めて多いということになっておりますし、実質的に、女性労働者の雇用の平等の実現、これがさらに遠のくのではないか、こういうことが懸念をされております。私も同じ見方をしております。

 政府法案の審議に当たっては、もちろんのこと、対象となるいわゆる一%と言われるパート労働者が一体どれだけ広がってくる可能性があるのか、そしてまた、総合的な施策の推進によって、女性労働者、性差別をどうやったら解消できるのかということが議論の中心であるべきだというふうに考えております。きょうは、これまで議論されてきたことを含めまして、確認的に幾つか伺っていきたいと思っております。

 まず、私たち民主党の法案の中では、特に、今回、この法律を理由とする処遇の切り下げに大変大きな懸念を持って取り組んでまいりました。つまり、経済財政諮問会議での議論及びその周辺の議論を伺っておりますと、このパートの待遇改善によって、言ってみれば、正社員の労働条件の切り下げもできるんだ、そういう議論がちらほらと聞こえていたわけでございます。

 一体それにどうやって歯どめをかけるかということは大変大きな問題だろうと思っておりますけれども、例えば、期間の定めのない短時間雇用から有期の短時間雇用への切りかえ、そして正社員の労働条件の切り下げ、正社員からパート労働契約への切りかえなどなど、この法律の運用の結果として、立法の意図とは裏腹に、労働条件の不利益変更が生じることもこれは十分考えられることだと思います。こうした事態は決して許されるべきではないと考えますが、いかがでしょうか。

 この法律の中には明確な規定というのはありません。ですが、合理的な理由なく一方的な労働条件の不利益変更は認められないというふうに考えてよろしいかどうか、また、未然防止のために行政としてはどう対応するのか、伺います。

大谷政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘がありましたように、今回、提出しておりますこの法案には明確な規定はなくても、労働条件の不利益変更を事業主の一存で合理的な理由なく一方的に行うということは、およそ法的に容認されないものというふうに考えております。

 それから、今後の改正法の施行までに、合理的な理由なく不利益変更を行えないということも含めまして、具体的な事例や対応方法をわかりやすく解説したパンフレットやQアンドAの作成また配布等によりまして、事業主に対する十分な周知に努めてまいりたいと考えております。

西村(智)委員 次に、この法律の対象でありますけれども、今回の改正パート法では、いわゆる疑似パート、フルタイムパート、これは対象外となるということであります。

 先日、川内委員の質問の中にもありましたように、フルタイムパートの数は今や全国で三百四十五万人という数だそうであります。これは非常に驚くべき数字でありましたが、今回、この改正法の中で対象にならないということは、これは明らかにおかしいと私は思います。差別的取り扱いを禁止する必要があるという点で考えまして、いわゆるフルタイムパート、疑似パートと言われる労働者は今回は対象外でありますけれども、短時間労働法の、この法改正の考え方が配慮されるべきであるというふうに考えますが、いかがでしょうか。

大谷政府参考人 パート労働法に規定します短時間労働者は、これは御承知のとおり、通常の労働者よりも週の所定労働時間が短い者を指すということでありますために、フルタイムの有期契約社員は、どういうふうに呼ばれているか、その呼称を問わず、パート労働法の対象とはならないものでございます。

 しかしながら、この改正パート労働法に基づきまして、例えば、事業主がパート労働者について、その働き、貢献に見合った公正な対応を実現するという観点から正社員との待遇の均衡を図るといった場合には、雇用している労働者全体の納得性とか公平性を考えれば、法律によって措置を求められていないフルタイムの有期契約社員の雇用管理に当たりましても、当然、この改正法案の考え方が考慮されるべきであるというふうに考えております。また、企業の雇用管理の実態を考えましても、当然、そのようになっていくということが望ましいというふうに考えているところでございます。

西村(智)委員 次に、通常の労働者と同視すべきパート労働者のいわゆる三要件について伺っていきたいと思います。

 冒頭申し上げましたように、この三要件が極めてハードルが高いということは、この委員会の中でも何度も繰り返し指摘をされてまいりました。このハードルをよりわかりやすく、見えるようにしていきたいという思いで、以下、何点か質問をいたします。

 比較対象となる通常の労働者でありますけれども、これまでに何回か答弁をいただきましたが、つまりは、今の日本の働き方というのは極めて二極化されております。猛烈に働く人は長時間残業をして働いているという状況があることを考えますと、そういった猛烈な長時間残業を行っている通常の労働者と比較するのであっては、これは、今、日本が目指しているワークライフバランスに逆行するので、それはあってはならないというふうに私は考えます。

 それとの均衡を図るということではなくて、将来的にはワークシェアリングなどということも視野に入れながら比較を行っていくべきだというふうに考えておりますけれども、この通常の労働者にはいわゆる短時間正社員も含まれるという理解でよろしいでしょうか。

大谷政府参考人 この法律で言う通常の労働者とは、いわゆる正規型の労働者を言い、具体的には、社会通念に従いまして、フルタイム勤務の者について、当該労働者の雇用形態、それは期間の定めのない契約であるかどうか、また待遇、これについては長期雇用を前提とした待遇がなされているかどうか、こういったことを総合的に勘案して判断することとされております。

 いわゆる短時間正社員でありますが、ほかにフルタイムの通常の労働者がいる中で極めて短い労働時間勤務する短時間正社員につきましては、いわゆる正規型のフルタイム労働者というふうに判断される可能性は低いと思いますが、そうでない場合は、さきに述べました要件を満たせば、これは通常の労働者として判断されることになると考えております。

 したがいまして、この短時間正社員が通常の労働者と判断されるということであれば、一つは、これらの社員類型への転換というものもこれは通常の労働者への転換というふうになりますし、また均衡待遇の比較対象にもなり得るというふうに考えます。

西村(智)委員 それでは、具体的に二つ伺います。

 まず一つは、育児短時間正社員が近年広がってきております。ある職場においては、育児短時間正社員の方が例えば週三十五時間勤務、しかしパート労働者の方が週三十六あるいは三十七時間勤務というふうに、実際には勤務時間で見ますと逆転している、そういう現象も生じております。

 このように、育児のために短時間勤務を行っている正社員も、比較対象たる通常の労働者となり得るのでしょうか。

大谷政府参考人 育児あるいは介護を行うために短時間正社員という身分になっている方につきましては、この短時間正社員が通常の労働者というふうに判断されれば、さっき申しましたように、これらの社員類型への転換もこれは通常の労働者への転換となり、また均衡待遇の比較対象にもなり得るというふうに考えております。

西村(智)委員 次に、もう一つの事例で伺いたいんですが、例えば、週に二日しか業務が発生しないというケース、土曜日、日曜日だけ業務が発生するというような場合において、実際にフルタイムで土曜日、日曜日勤務する労働者と、午前と午後と分けてパートで勤務する労働者とある、しかし、その労働条件には非常に大きな格差が存在しているという場合において、このフルタイム労働者は通常の労働者となり得るかどうか。改正法の八条によって、この格差是正を行うことが可能でしょうか。

大谷政府参考人 ただいま御指摘のありましたようなケースであれば、これは通常の労働者になり得るというふうに考えます。

西村(智)委員 次に、短時間労働者が同一の職務に該当するか否かの判断は、これはどのようにして行うことになるのでしょうか。作業マニュアルなどで分類するということになるのかどうか、その点について伺います。

大谷政府参考人 職務の内容が同じであるということは、これは、一つは業務の内容、それから二つはその業務に伴う責任が同じである、こういった場合を指すところでございますが、事業所における作業マニュアルや作業分担の実態の分析等によりまして職務内容を分類し、ある職務に通常の労働者とパート労働者の双方が従事しているかどうかということによって判断するわけでございます。

 通常の労働者の中には、業務の困難性等が異なるものが複数存在することもあると思われますが、このような分類を行った上で職務の内容が同一のものと比較することになります。

 ちょっと長くなりますが、例えば販売職というものの例をとりますと、一般的な職務内容として、商品の発注、それから接客の応対、また売り上げの数値管理といったものが考えられますけれども、これらを役割分担せずに販売職の者全員で担当しているといった例えば小規模事業所もあれば、さらに細分化して、さっきの接客応対のみであるとか商品の発注のみであるとか、こういった分担をしている大規模事業所もあるところでございます。

 この小規模事業所の例によりますと、明確な職務内容の違いがなく、一つの販売という職務が存在するわけでありますが、一方で、先ほどの大規模事業所の例では、これは販売というものの内容が三種類ある、こういったことで、ケース・バイ・ケースであると思います。

西村(智)委員 それは、異なる事業所との比較ということで、別の問題にもなってくるかと思います。

 続きまして、責任について伺いたいと思います。

 同一の責任という場合に、時々事例として挙がってまいりますのはクレームの処理でありますけれども、例えば、事業所の中に、顧客のクレームを受け付けるだけの正社員もいれば、またクレームの処理にまで携わる正社員もいるとしたときに、パート労働者と同じような責任を負う正社員と比較することになるという理解でよろしいのかどうか、伺います。

大谷政府参考人 通常の労働者の中には、責任のレベルが異なるものが複数存在するということもあると思われますが、このような分類を行った上で職務の内容が同一の者と比較することとなります。

 御指摘のケースについて申し上げますと、当該パート労働者について、クレームの受け付けと処理の双方を行っている正社員と比較するということになると思います。

西村(智)委員 そういたしますと、確認ですけれども、通常の労働者の中にもさまざまな業務の範囲や責任のレベルがあって、同一の職務という場合には、パート労働者が担う業務の範囲と責任のレベルが同一の通常労働者との比較を意味する、こういうことを確認させていただきますが、よろしいですね。

大谷政府参考人 お見込みのとおりだというふうに思います。

西村(智)委員 次に、異動について伺いたいと思います。

 改正雇用機会均等法においては、間接差別禁止の要件として、募集、採用に際しての全国転勤要件が挙げられております。今回のパート労働法改正における同一職務の判断に当たっても、こうした間接差別禁止の趣旨が考慮されるべきだと思います。

 人事異動の、転勤の要件について、職務との関連において合理的なものであるべきと考えますけれども、同一職務の判断に当たっては、この転勤要件の有無で、入り口で排除しないということを周知徹底する必要があると考えておりますが、この点についてはいかがでしょうか。

大谷政府参考人 改正法案の第八条、それから第九条二項におきまして規定しております職務の内容及び配置の変更の範囲につきましては、当該事業所における慣行その他の事情から客観的に見ることとしておりますが、これは、当該の転勤を含む人事異動の範囲等が合理的かどうかという目的は問わず、実態により判断することとなると思われます。

 しかしながら、この転勤要件につきまして考えますと、その転勤要件そのものが男女間の間接差別とみなされるような場合も、これはあるのではないかというふうに考えております。

西村(智)委員 この異動の範囲と頻度についてでありますけれども、単なる形式ではなくて、職務との関連性が伴わなければならないと考えております。異動の範囲についても、取り決めではなくて、きちんとした実態を伴うものでなければならないと考えるんです。

 この異動の範囲と頻度の見込みについて、これは何度も議論になってまいりましたけれども、使用者側の恣意的な判断にゆだねられることが往々にして考えられます。使用者側の方が圧倒的な力を持っている今の日本の現状において、そういった恣意的な判断に任せないための具体的な措置が必要ではないかと考えますけれども、いかがでしょうか。差別禁止の対象要件として掲げられている三要件の判断、これに当たって、事業所の判断にすべてをゆだねるようなものにすべきではないというふうに考えますが、いかがでしょうか。

大谷政府参考人 本改正法案におきましては、差別的取り扱いの禁止の対象者につきまして、一つ、職務内容、二つ、人材活用の仕組み、三つ、実質的契約期間と、この三つの基準を定めたところでございます。

 これらの基準は、労使の意見を踏まえまして平成十五年に改正しましたパート労働指針に沿って指導してきたものをベースといたしまして、今回の労働政策審議会においてさらに議論を深め、我が国の雇用管理の現状を前提としたものとして最終的に労使に受け入れられた客観的なものというふうに考えております。

 この改正法案の第八条や九条第二項において規定しております職務の内容及び配置の変更の範囲の判断につきましては、一義的には事業主が判断することになりますが、その判断に当たっては、当該事業所における慣行その他の事情から見ることとされておりまして、今御指摘がありましたように、客観的な事情により判断することとなると考えております。

 今後、そういった趣旨を徹底してまいらなければなりませんが、これは、通達によりましてより詳細を明らかにするとともに、成立いたしますれば、改正法の施行までに、具体的な事例や対応方法をわかりやすく解説したパンフレットやQアンドA集の作成、配布等によりまして、事業主に対する十分な周知に努めてまいりたいと考えております。

西村(智)委員 ぜひ、事業主に対する周知徹底とあわせて、パート労働者自身にもこういった周知が届くようにお願いをしたいと思います。

 続きまして、期間の定めについて伺います。

 私の意見をちょっと先に述べさせていただきたいんですけれども、やはり有期の問題は、このパート労働法の中に含めてしっかりと議論されるべきだったと、今でも私はそう思っております。八割以上のパートが有期契約でありますし、また、その有期契約労働者に対する合理性のない差別というのは、言ってみれば合理的理由のない有期雇用や契約更新回数の上限設定が禁止されていないということから生じるものだろうと考えております。

 また、合理的理由のない有期雇用や反復更新した有期雇用は、期間の定めのない雇用契約とすべきだというふうに考えます。つまり、継続する仕事に有期で従事させるという正当性はどこにも存在しておりません。有期契約は女性差別につながってまいりました。しかし、審議会の中では、この問題が全く審議されないまま、また今回も置き去りにされようとしております。

 こういった状況の中で、非常に不満の多い今回の法案制定過程ではあったんですけれども、改めてきょう伺いたいのは、この第八条の範囲についてであります。期間の定めについてであります。

 第八条の要件である期間の定めのない雇用については、その実態で判断されるべきだと考えますが、いかがでしょうか。第八条は、契約更新により継続して働くことを前提とすると客観的に判断できる場合も含まれるのかどうか、確認いたします。

大谷政府参考人 先ほどの、今回の三要件の周知につきましては、今御指摘いただきましたように、事業所のみならずパート労働者の方々についても周知徹底できるように体制をとってまいりたいと考えております。

 それから、今御指摘の第八条の要件となっております期間の定めのない雇用でありますが、この八条第二項は、期間の定めのない契約となっているかどうかを実態で判断することが趣旨であることから、御指摘のケースが、例えば期間の定めがない契約と実質的に変わらないと客観的に判断できる場合には、対象となり得ると考えております。

西村(智)委員 これも確認でありますけれども、そうしますと、実際に反復更新をしていなくても第八条第二項の要件を満たすことはあるという理解でよろしいでしょうか。

大谷政府参考人 個々のケースに基づく判断にはなると思いますが、期間の定めがない契約と実質的に変わらないと客観的に判断ができる場合には、過去に一度も反復更新していなくても対象となり得るケースはあると考えております。

西村(智)委員 次に、残業について伺いたいと思います。

 責任は、これは職務内容に必然的に伴うものでなければなりませんし、また、業務の責任に伴って、あるいは業務全体が忙しいからということで残業が発生するケースも考えられるんですけれども、その前に、責任の程度を判断するに当たって、あらかじめ残業に応じられるかどうかが要件になってはならないと考えますが、それでよろしいかどうか確認をいたしたいと思います。

 つまり、残業対応できるかどうかといった問題については、これは考慮の対象外であって、いわゆる同一義務説と言われる立場はとらないものと理解してよろしいかどうか、伺います。

大谷政府参考人 職務の内容の要素であります責任が同じかどうか、これは、トラブル発生時や臨時、緊急時の対応、ノルマ等が同じように職務上の責任として含まれるかどうかということによって判断することとなるわけでございます。したがって、残業につきましても、職務上の責任の軽重に伴って差異が生じることはあると考えられますが、残業を責任と見る際の一義的な要素ということは考えておりません。

西村(智)委員 業務の責任については、働く側の判断と働かせる側の判断が一致しないというケースが圧倒的に多いだろうと思います。今後、どういう取り組みが必要になると考えておられるか、職務との関連性を明確にすべきだと考えておりますが、行政としての取り組みはどのようなものになるでしょうか。

大谷政府参考人 職務の内容の要素であります責任が同じかどうかは、個々の実態を見て、責任の違いがあらわれている業務を特定して比較していくこととなります。そのような実態判断に当たりましては、労使間の認識が大きくずれるといったことのないように、通達等で判断の目安について解説し、明らかにした上で、また、先ほど申しましたように、具体的な事例や対処方法をわかりやすく解説したパンフレットやQアンドAの作成、配布等をいたしまして、事業主、労働者に対する十分な周知に努めてまいりたいと考えております。

西村(智)委員 次に、職務給に向けた取り組みについて伺っていきたいと思います。

 私たち民主党の案の中では、この職務給の確立に向けて第一歩を踏み出そうということで意思を示しました。今現在の日本の雇用システムのもとで、職務分析の手法がすべてのケースに適用できるとは考えにくいわけでありますけれども、事業主が職務内容を分析、判断する際の一つの手法としてこの職務分析が活用されるべきであるというふうに考えますけれども、いかがでしょうか。

大谷政府参考人 現状におきましても、先進的な雇用管理を進めておられる企業では、いわゆる職務分析により職務を評価し、実務に生かしておられる例はあると聞いております。このような事例は、正規雇用、非正規雇用との間で働き方の評価基準を公正かつ中立的なものとしていくためには望ましいものであると考えております。

 この職務分析の手法が確立されているとは思えない我が国の現状を踏まえまして、今法律改正案におきましては一律に強制することとはしなかったところでありますが、今後、この先進的な雇用管理事例について把握に努めて、できる限りそれを情報提供してまいりたいと考えております。

西村(智)委員 それは、私は、やはり立法府としてはきっちりと意思を示していくべきだろうと考えております。

 次に、相談体制について伺いたいんですけれども、先ほど、フルタイムパート三百四十五万人だという数字を挙げましたが、そういった人たちが相談に行ったときに行政がこれまで以上にしっかりと対応してくださるのかどうか、その点について伺いたいと思います。

 相談件数自体は大変多いということなんですけれども、これまで指導や勧告が行われたのはゼロ件であるということであります。労働局ないし均等室では、フルタイムパート労働者も含めて幅広い相談に応じるという理解でよろしいでしょうか。

大谷政府参考人 このパート労働法が施行されましたら、そういったことに対する違反等の相談に応じることはもとより、フルタイムパートの方につきましても、その相談を含めて、都道府県労働局の、これは雇用均等室それだけでなくて、全国に約三百カ所設けられております総合労働相談コーナーにおきましても、基本的な事項については相談に対応することとしたいと考えております。また、専門的な事項や事業主への指導が必要な事項については雇用均等室に円滑に引き継ぐなど、都道府県労働局全体で適切に対応してまいりたいと考えております。

西村(智)委員 引き継ぐということもよろしいんですが、ワンストップサービスの観点からいたしますと、やはり全国三百カ所の労働局に専門官の配置が必要ではないかと考えますが、現時点で、厚労省、この配置に向けてやるおつもりがあるかどうか、伺います。

大谷政府参考人 まずは、今回の法律の周知徹底を見ながら、その業務の実態を勘案して今後の体制をまた固めていかなければなりませんが、当面は、まだ確定的に専門官配置とか、そういうことまでは考えてはおりません。

西村(智)委員 私は、やはりきちんと配置していくことに努めるべきだというふうに考えております。

 続きまして、少し時間が迫ってまいりましたので走りたいと思いますが、賃金について伺いたいと思います。

 賃金は、とりわけ事業主が思うままに決定しているというのが現状でありますけれども、今回、法律第九条一項でそれを防ぐための手当てをされたということであります。しかし、これは努力規定でありまして、行政権限の発動はどうなのかというふうに考えておるんですけれども、質問は、賃金の決定方法を合わせることは、これは既に企業の取り組みが進んでいるように、法律で範囲を限定するのではなくて、行政として普及や促進を図っていく施策が必要だというふうに考えております。そういう取り組みを強化する考えはあるのかないのか。同一の賃金決定方法について普及のための措置を講ずるというふうに考えておられるのかどうか、伺います。

大谷政府参考人 御指摘のありました改正法の第九条第一項でありますが、これも努力義務でありますけれども、その実効性の担保のために、これは御相談があれば労働局において対応していきたいということで考えております。

 また、本法案に規定をしております均衡待遇の確保のための措置は、法律で一律に強制することができる最低限のものにすぎないということでもあります。したがいまして、御指摘の賃金の決定方法を通常の労働者と合わせることに限らず、個々の事業主がより進んだ雇用管理を行っていくことが望ましいということは言うまでもないところであります。

 厚生労働省といたしましては、短時間労働援助センターによる助成金の給付を通じた支援を行うほか、先進的な雇用管理事例についても、今後も把握し、できる限り情報提供してまいりたいと考えております。

西村(智)委員 今回の法案、周知を図っていくという、今ずっと政府参考人からの答弁がありましたけれども、冒頭申し上げたように、この法案というのは本当にパートの労働格差の拡大につながりかねないというふうに懸念をしております。特に、今回、法律事項にならなかった指針の項目がありますけれども、これについてしっかりと、これは後退しないのだ、引き続き指針に掲げ続けて後退させないようにするというふうなことで確認をしたいと思いますけれども、いかがですか。

大谷政府参考人 新たなパート労働指針の内容につきましては、これは改正法が成立いたしますれば、その後、改めて労働政策審議会の御議論も経た上で内容を検討することとなりますが、厚生労働省の立場といたしましては、今回の法改正を契機として、現行のパート労働指針の内容が後退することのないように努めたいと考えております。

西村(智)委員 大臣に伺いたいと思います。

 労働条件を低下させることが許されないという原則、また疑似パートの差別禁止問題、これは有期契約の問題なども含めて、やはり今後の法制上の課題とされるべきだというふうに考えております。現行のパート法の対象は短時間労働者に限定をされておりますが、日本では、多くのパート労働者は何度も申し上げますけれども有期契約雇用者です。短時間であることに起因する課題だけでなくて、有期契約であることに起因する課題の方がむしろ、もしかしたら多いのかもしれない、そういう有期契約について、大臣は先日検討するというふうに述べていただきましたが、改めてその決意を述べていただきたいと思います。

柳澤国務大臣 今、るる西村委員から今回のパート労働法の改正の内容について確認的に御質疑をいただきました。それに対して雇・児局長からお答えをいたしまして、労働条件を引き下げるというようなことを招来しないようにしっかり取り組んでいくという趣旨の答弁をさせていただきましたが、これは、私といたしましてもそのように取り組むということをはっきりここで申し上げておきたい、こう思います。

 それから、加えまして、有期、無期の問題につきまして御指摘をいただきました。

 有期契約労働者の均衡待遇ということについては、今回は、パートというか短時間労働者だけについては有期であっても実質期間の定めがないものについてはとか、そういったようなことで均衡の処遇を図る道を設けたわけでございますけれども、全般としてこの有期の問題というものを考えていくべきではないかということでございます。

 これは、前回も御答弁申し上げましたように、労政審におきましても検討はいたしたわけでございますけれども、やはり、有期の労働者というのが、現状の実態からすると、非常にいろいろな性格の労働者が多岐にわたってお仕事をなさっているというようなことがございまして、そういう実態からすると、そういうことを定めた場合に、使用者側の委員の意見でもあるわけですけれども、どのような労働者をどういうふうに、どこを直して処遇していけばいいかというのが必ずしも一義的にわかってこない懸念があるというところから賛成を得られなかったということでございます。

 しかし、この問題については、やはり引き続いて検討しなきゃならないということで……

櫻田委員長 大臣、時間が経過しておりますので、答弁は簡潔にお願いします。

柳澤国務大臣 はい。ということで、我々としては、この問題を引き続き検討していくということにいたしたということでございます。

西村(智)委員 立法者の意思は、労働条件の切り下げにつながらないということであると大臣はおっしゃいました。

 しかし、その意思に反して、この法律が世に送り出されたときに、その意思とはまた逆の現象が起きるかもしれないということを私たちは強く懸念しております。

櫻田委員長 西村議員、申し合わせの時間が経過しておりますので、御協力願います。

西村(智)委員 ですので、すべてのパート労働者に対しての差別禁止を私は盛り込むべきだったというふうに思いますし、同一価値労働同一賃金、この原則の確立に向けて、引き続き私たち民主党は取り組んでいきたいと考えております。

 これで、質問を終わります。

櫻田委員長 次に、高橋千鶴子君。

高橋委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 差別をなくしてほしいという多くのパート労働者が見守る中、この審議が進められてまいりました。私は、まだ審議が十分とは思っておりません。大臣は一歩前進という言葉を繰り返しましたが、果たしてそうでしょうか。

 四月十日の参考人質疑において、佐藤参考人は、基準が適切ならば、同視すべきパート労働者は少ない方が望ましい、対象者が少なければ差別がないということと述べられました。

 本当に驚く意見でありました。対象を絞り込むだけの基準ではないのかという危惧がまずあるということ、そして、パートというだけで最賃すれすれの低賃金、忌引もない、休憩室なども与えられない、そうしたさまざまな実態が今あり、その中でパート労働法の改正が求められているというのに、これらもみんな合理的な理由になってしまうのかということを考えております。

 大臣は、同視すべきパート労働者が少ない方が好ましいと思っているのですか、またそれが少なければ差別はないと考えているのか、伺います。

柳澤国務大臣 私も、率直に言って佐藤参考人のこの部分を読んだときは一体どういうことかとちょっと戸惑いました。戸惑いましたが、よく考えてみると、なるほどと思って、この限りでは得心したんです。

 それはどうしてかというと、佐藤先生が言われていることは、基準が大事なんだ、当てはめるべき基準がどこから見ても均衡待遇というものを実現するような基準になっていれば、そこをまず一義的に考えるべきだ、その結果、その適用対象になる人がなかった、あるいは少なかったということだったら、論理の世界の話なんですけれども、それは、全く差別というか、そういったことがなかったということになりますよねというふうに考えると、なるほどというふうにわかるわけです。

 しかし、今我々が直面している、今度この基準をパート労働法を改正して実行するというのは、やはり不均衡があるという前提で、実態にもうそういったことがあるという前提で、この実態との関係では、改正が行われるわけでございますから、それは、今度は、我々実際界に対処しなきゃならない人間としてはそういうことはないわけで、基準が公正に定められるということは大事なんだ、それはわかる。しかし、適用したときもやはりそれにさわる人たちがいましたから今度は改善されましたということが期待されているんだと私は考えておりまして、佐藤参考人の御意見というのは、論理的に言えばそのとおりだけれども、我々が法の改正に取り組んでいる、我々実際界に対処しなければならない者としてはやはりそうではないのではないか、もう一つこの話が必要なんじゃないか、こういうように考えておる次第でございます。

 しかし、佐藤先生の言うことは、この改正法ができ上がった後、運用された後、もう使用者、労働者の間でそういう不均衡な取り扱いということがなくなる世界というものを想定するとすれば、それはそれでまた佐藤理論が成り立つ世界が現出される、それは非常に大事なことだと私は思います。

高橋委員 また今の発言は大問題だと思いますよ。

 基準が適切であればとお話ししましたけれども、佐藤参考人は、既にその三つの基準に納得したということを前段で述べておられて、その上で少なければ差別はないとおっしゃっているんですから、もうそれは全然前提が違うわけです。対象をうんと絞り込んでいて、今だってどのくらいいるかわからないと答えているのに、それがわからない、ちょっとしかいなかったら、大臣が言うように五%でもいいですよ、五%しかいなかったら、ああ五%しか差別はないんだと言っていることなんです。それを大臣が認めちゃった、とんでもない、これはもう強く抗議をしたいと思っております。

 それだけで時間がなくなると大変でございますので、パート労働法の二条に照らして、通常の労働者に比べて所定内労働時間が短いだけがパートであるなら、本来疑似パートというものは存在しないはずです。十分短くてもパート労働法の対象になる、それ以上は通常の労働者とみなすということを確認してよろしいでしょうか。

 もしそうであるならば、なぜこんなにも疑似パートという言葉が問題になるのか、なぜ疑似パートは生まれるのか、それを伺います。

大谷政府参考人 お答え申し上げます。

 いわゆる疑似パートにつきましては、法律上定義がないわけでありますけれども、この法案における差別的取り扱いの禁止の対象者を疑似パートというふうに呼ぶ方もあれば、フルタイムで働いて、呼称としてパートと呼ばれている方を疑似パートというふうにとらえている方もいるというふうに考えております。

 この疑似パートにつきまして直接示すデータは存在しないわけでありますけれども、フルタイムのいわゆる呼称パートについては、より近い数値として、一定の数がおられるということも承知しているわけであります。

 企業がこの疑似パートを雇用する理由を明らかにした調査等を把握しておりませんので正確に回答することはできませんが、今、企業がパートを雇用する理由で一番多いのが、人件費が割安、六六・五%というふうに承知しておりますが、こういったことを考えますと、人件費の安いフルタイムの非正規労働者を雇い入れて、その者に対して、単に正規労働者と区別してパートというふうに呼んでいる面もあるのではないかというふうに推察しております。

高橋委員 企業の都合のいいように雇われているということを認めたと思います。

 九三年のILOの報告書を見ても、日本語で言うパートタイムという言葉は、ILOが定義するパートタイムとは異なる意味を含んでいると指摘をしております。日本だけが都合のいいようにパートタイムといって、その言葉によって差別が非常に横行しているということなんだと思っております。

 そこで、今問題になっているフルタイムパートなどが、実際は、本当ならば通常の労働者として扱われるべきなのにパート扱いをされている、不当に安きにおとしめられている、そういうことがないように。あるいは、実質、契約は七時間というようにパート扱いなんだけれども、始業開始前あるいは退社前など、三十分、四十分というように実質ただ働きをさせられている、企業が恣意的にパート労働者を安く働かせている、そういうこともたくさんあるわけです。

 こうした問題を、実態調査を行うことや指針に書くなどしてきちんと歯どめをつくるべきと思いますが、いかがでしょうか。

大谷政府参考人 今回の法案に定めております短時間労働者、それに当たる方々について、適正に処遇されるように今後とも努め、また必要に応じてその実態の把握には努めてまいりたいと思います。

高橋委員 多分、今の段階で指針に書くというのを断定的には言えないから、適正に処遇ということを言ったのかなと思うんですが、そのことを踏まえながら、指針は労政審に再度諮ることになりますよね。その際、パート当事者の意見を反映させて実効あるものにすべきと思いますが、どうでしょうか。

大谷政府参考人 指針につきましては、この法律が成立いたしますれば、今後、労働政策審議会にお諮りすることになると思いますが、その中でいろいろな方々の考え方が反映されるように努力してまいりたいと思います。

高橋委員 同じことを大臣にもう一度伺いたいと思います。指針をつくる上で、当事者の意見を大いに反映させて、不当な扱いがされないようにきちっとしていくべきだと思いますが、いかがでしょうか。最後に決意を伺います。

柳澤国務大臣 労政審も、この問題については、先ほども答弁いたしましたように、引き続いて検討ということになっております。

 したがいまして、その検討の具体的な進め方というものをどうされるかというのは、やはりこれは労政審の先生方がお決めになるという部分も多いんだろうと思いますけれども、いずれにしても、今の労政審における公労使のそれぞれの方々の責任ある発言のもとでこの取りまとめ、検討が進められていくというように私は考えております。

高橋委員 時間が来ましたので終わりますけれども、ちょっと今、大臣の答弁と局長の答弁が微妙に違うかなと思っておりましたけれども、当事者の意見を踏まえてということを確認しておきたいと思います。

 終わります。以上です。

櫻田委員長 次に、阿部知子君。

阿部(知)委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。

 本日、私にいただきました時間、十分でございますが、そもそもこのパート労働法の審議に当たって、立法背景、現状がどうなっておるか、そして、この立法は何をしたいためのものか、立法趣旨そのものが私はやはりまだまだ深められておらないと思いながらきょうの審議も伺いました。しかし、もう時間が残されておりませんので、不承不承でございますが、十分間やらせていただきます。

 さきの委員会で柳澤厚生労働大臣にお伺いいたしました郵政公社の民営化問題に伴うものでございます。大臣もあのとき御答弁くださいましたが、実は、公社となってこの三年の間にも正規常勤職員は減り続け、今、二十五万四千百七十七、そして非常勤が十三万二千四百十二人(常勤換算)ということになっております。

 郵便業務や集配業務におきましても、どんどんどんどんこの非正規職員の比率が増してきてございまして、その中で、大変に労働災害なども多い分野ですから、問題も山積しております。そして、そういう問題をさらに深刻にさせるのが、私は、このたびの公社化の中でしかれるいろいろな身分差別であると思います。

 きょう、大臣のお手元には、一応これは日本郵政株式会社人事資料という中から抜粋いたしてまいりましたが、公社から民営化された場合の職員の処遇について書いてございます。正規社員は八時間働きますが、そのほかに、スペシャリスト、エキスパート、キャリアスタッフ、一般、パートタイマー、アルバイト、郵政短時間職員と、さまざまな身分がここに出現いたします。スペシャリスト、エキスパートはのけておきまして、この下の契約社員以下が、現状でゆうメイトと呼ばれる非正規社員のこれから振り分けられる先というふうに予定されております。

 この中で、特に私はしっかり見ていただきたいのですが、例えばこの契約社員、キャリアスタッフ、一般という中で、キャリアスタッフは、非常勤でありながら他の職員の指導をするということにおいてキャリアスタッフと置かれておりますが、例えば八時間働くキャリアスタッフ、一般の契約社員で八時間働く、八時間働けば、すなわち正社員と同じ時間なので、何度も指摘されるようなフルタイムパートになるわけです。といたしますと、ここにまた非常に膨大な数のフルタイムパート、せんだっての御質疑で三百四十五万人と言われる方たちが、またここで十数万あるいはふえてくるかもしれません。

 大谷局長、再度の御答弁で恐縮ですが、こうした実態というものも、これが現状起こりつつある世の中の実態であるということも認識されておるのかどうか、そして、重ねて、どう取り組むのかもお願いいたします。

大谷政府参考人 今回、法律で規定をしております短時間労働者、それから、それに類似するいろいろな呼び方の労働者の方々がおられるということは承知しておりますし、また、今の資料でも勉強させていただいたところでございます。

 この改正パート労働法に基づきまして、事業主が、パート労働者について、その働きや貢献に見合った公正な待遇を実現するという観点から、正社員との待遇の均衡を図っていただく、こういう場合には、一般論としてでありますけれども、雇用しておられる労働者全体の納得性や公平性を考えれば、法律によって措置を求められていないいわゆるフルタイムの有期契約社員、いろいろな方々がおられますが、こういった方々についても、雇用管理に当たって、この改正法案の考え方が考慮されていくということは望ましいというふうに考えておるところでございます。

阿部(知)委員 望ましいのですが、逆に言えば、八時間にしてしまえばパート労働法からも外されて、固定的に契約社員として何ら措置が図られないということが起こるから、この法律改正は大きな問題があるんじゃないかと私は指摘させていただきました。

 さらに、もっと深刻な問題がございます。

 これは大臣にお伺いいたしますが、さまざまに分けられたキャリアスタッフ、一般、パート、アルバイトの中で、二枚目をお開きいただきますと、これも郵政株式会社の資料でございますが、上段の一番下のところに、「必要な労働力を確保するため、派遣社員の活用、」次であります、「キャリアスタッフから正規社員への登用などを検討する。」と。

 そうなりますと、正規社員への転用は、ここでは、はなからキャリアスタッフということしか念頭に上げられておりません。非常勤で雇われて他の職員の指導をするキャリアスタッフだけはこのような形で差別化され、他の者については、このパート労働法の趣旨とは見合わない。私は、このような取り決めはいかがなものかと思います。

 大臣は、こうした事案をどのようにお考えになるでしょうか。こうやって最初から固定的に、現実を見ないで、あなたは永久にその身分だよというようなことでは、今お考えになっているパート労働法は生かされませんよね。どうでしょうか。

柳澤国務大臣 日本郵政株式会社の労働者については、既に民間会社の労働者として、もしこの改正パート労働法を成立させていただいた場合にはこれが適用されるということは、かねて御説明をさせていただきました。

 私どもは、そういう中で、非正規の方々が正規に移行することを促進するという制度的ないろいろな手だても講じておりますので、そういうことで、正規社員の方に登用される、それからまた正規社員に登用されない方についても均衡待遇を図っていただくということで、いろいろなメルクマールに従って、それに応じた均衡処遇を図っていただくということを今回させていただいておりますので、そういうことが実現されるということになろうかと思っております。

阿部(知)委員 こうした実態を放置しておいたらざる法になるということですから、厚生労働行政としてしっかりと注意も喚起していただきたい。

 最後に伺います。

 私は、このパート労働法が、いわゆるパートの方たちの人権や人間性すら差別するものに現状のパート労働がなっている中で、さらにまたそこに固定するのではないかという非常に大きな懸念を持つ一項を質疑させていただきます。

 改正法第十一条の項目の中に、福利厚生施設をパート労働者にも供与しなければならないということが明記されていますが、具体的には食堂、休憩室、更衣室となっております。これは権利にのっとったものでありますが、しかしながら、現行のパート指針によれば、給食、医療、教養、文化、体育、レクリエーション等の施設の利用について、短時間労働者にも同等の取り扱いとなっております。

 大臣、私は特に医療施設を伺いたいです。もし、職場でおなかが痛くなったり、頭が痛くなったら、パートの人は同じ職場にある診療所を同様に利用できないものであるのか。

 これは、パートの労働指針の中ではきちんと医療というものが組み込まれながら、今度の十一条では医療という問題は、人間がもうそこで、生ものですから急なことというのはあると思います。パートであればわざわざ外の医療機関まで行かねばならないのか、そこまで差別されねばならないのか。弔慰金の問題もしかりであります。

 人としての人権にかかわるような部分までこのパート労働法改正法案では到達していない現実を踏まえて、少なくとも、今のパート労働指針を一歩たりとも後退させず、人として当たり前の尊厳を持った扱いがされるように大臣として取り組んでいただけるかどうか、御答弁をお願いいたします。

柳澤国務大臣 今回の法改正を契機といたしまして、現行のパート労働指針の内容をどうするのかという観点から、今、委員は医療施設の問題をお取り上げになられたわけでございます。私どもといたしましては、今回の法改正を契機として、現行指針の内容を後退させるということは一切考えておりません。

 したがいまして、医療施設の利用については、パート労働者を通常の労働者と同様に取り扱うよう努めるべき旨、引き続きパート労働指針に規定を残しておきたい、このように考えております。

阿部(知)委員 残すだけでなく強めていただくことをお願い申し上げて、質疑を終わらせていただきます。

櫻田委員長 以上でただいま議題となっております両案中、内閣提出、短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律の一部を改正する法律案に対する質疑は終局いたしました。

 この際、休憩いたします。

    午前十時三十六分休憩

     ――――◇―――――

    午前十一時三十分開議

櫻田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 内閣提出、雇用対策法及び地域雇用開発促進法の一部を改正する法律案、大島敦君外二名提出、雇用基本法案、加藤公一君外二名提出、労働者の募集及び採用における年齢に係る均等な機会の確保に関する法律案及び山井和則君外二名提出、若年者の職業の安定を図るための特別措置等に関する法律案の各案を一括して議題といたします。

 順次趣旨の説明を聴取いたします。柳澤厚生労働大臣。

    ―――――――――――――

 雇用対策法及び地域雇用開発促進法の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

柳澤国務大臣 ただいま議題となりました雇用対策法及び地域雇用開発促進法の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由及び内容の概要を御説明申し上げます。

 現下の雇用失業情勢は全般的には改善が進んでいるものの、フリーター数が依然として多い等の若者の雇用問題や、地域における雇用情勢の改善のおくれ等の課題があります。また、人口減少等が見込まれる中で、今後とも我が国の経済社会の安定等を図る観点から、これらに的確に対応した雇用政策を講ずる必要があります。

 このため、働く希望を持つすべての人の就業の実現を図ることを明確化するとともに、青少年の応募機会の拡大、雇用情勢が特に厳しい地域への支援の重点化等のために必要な措置を講ずることとし、この法律案を提出した次第であります。

 以下、この法律案の主な内容について御説明申し上げます。

 第一に、雇用対策法の一部改正であります。

 人口減少等の経済社会情勢の変化に対応した就業の促進を図ることをこの法律の目的として追加するとともに、国の実施すべき施策として、青少年、女性、高齢者、障害者等の就業促進対策を追加することとしております。

 また、青少年の能力を正当に評価するための募集、採用方法の改善等により、その雇用機会の確保等を図ることを事業主の努力義務とするとともに、年齢にかかわりなく働ける社会の実現に向けて、労働者の募集、採用に係る年齢制限の禁止について義務化することとしております。

 さらに、外国人の適正な雇用管理等を図るため、事業主による外国人の雇用状況の報告を義務化するとともに、外国人の雇用管理の改善等を事業主の努力義務とすることとしております。

 第二に、地域雇用開発促進法の一部改正であります。

 地域雇用開発のための措置を講ずる地域について、現行の四類型を、雇用情勢の特に厳しい地域である雇用開発促進地域と雇用創造に向けた意欲の高い地域である自発雇用創造地域の二類型に再編し、支援を重点化することとしております。

 最後に、この法律の施行期日については、公布の日から起算して三月を超えない範囲内において政令で定める日としておりますが、青少年の雇用機会の確保に係る事業主の努力義務の部分等については、平成十九年十月一日施行としております。

 以上が、この法律案の提案理由及びその内容の概要でございます。

 何とぞ、御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。

櫻田委員長 次に、園田康博君。

    ―――――――――――――

 雇用基本法案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

園田(康)議員 ただいま議題となりました雇用基本法案につきまして、提出者を代表して趣旨説明を行います。

 我が国では、経済産業の構造改革を経て、終身雇用、年功序列、内部労働市場での雇用調整、企業による職業訓練といった日本型雇用モデルが崩れていきました。また、長引いた不景気を背景に、企業が労働コストを削減する中で、パートやアルバイト、派遣、有期雇用といった非正規雇用の割合がふえてまいりました。雇用が不安定になり、だれもがいつ何どきリストラされるかもしれない、労働条件が切り下げられるかもしれないといった不安を抱えるようになりました。こうした中で、結婚し、家庭を持ち、定年まで勤め上げるといった将来への展望を持ちたくても持てない人がふえているのでございます。

 旧来のモデルが崩壊し、雇用が不安定になってしまった今、国を挙げて新たな雇用モデルを構築することが求められています。民主党は、長期安定雇用を基本とし、すべての労働者が、生涯にわたって、生きがいを持って働き、豊かで安心して暮らすことのできる社会を目指しています。

 それを実現するためには、その時々の雇用情勢に対応する形で対策を継ぎはぎしてきた雇用対策法ではなく、我が国の雇用政策に関する基本方針と基本的施策を定める雇用基本法を新たに制定する必要があると考えます。

 以下、法案の概要を説明いたします。

 第一に、雇用に関する施策の基本理念を定めます。すべての労働者が、公正な労働条件のもと、人としての尊厳を重んじられ、安心して働くことのできる環境を整備すること、適切な職業能力の開発等の機会を与えられ、その有する能力を有効に発揮し、充実した職業生活を送ることができるようにすることをうたっています。

 そして、雇用に関する施策は、長期の安定した雇用を基本とし、労働者が安心して働き、その有する能力を有効に発揮することができるようにするとともに、労働者が人生の各段階において、その働き方を多様な就労形態の中から主体的に選択することができるようにすることを旨として講ぜられなければならないこと、雇用に関する施策を講ずるに当たっては、労働者の職業選択の自由を尊重しなければならず、また、事業主の雇用の管理についての自主性を尊重するよう配慮しなければならないものとすることを定めています。

 第二に、国、地方公共団体について、基本理念にのっとって雇用に関する施策を策定し、実施する責務を定めています。また、事業主は、労働者が安心して働き、その有する能力を有効に発揮することができるよう、国または地方公共団体が実施する雇用に関する施策に協力するとともに、必要な雇用環境の整備に努めるものとしています。

 第三に、政府は雇用に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、雇用基本計画を策定し、これを閣議決定し、公表することとしています。

 第四に、国は、十二の分野について基本的施策を講ずることとしています。国は、若年者への就業支援、女性への就業支援、高年齢者等への就業支援、障害者への就労支援、被生活保護者等への就業支援、地域雇用開発の促進、職業能力開発の促進、外国人の労働に関する環境の整備、公正な働き方の確保、安全と健康の確保、ワークライフバランスの確保、求人の開拓や雇用情報の収集、提供等を含めた雇用機会の確保について、必要な施策を講ずることを定めています。

 このように、我が国が目指す雇用のあり方について明確な方針と施策を講ずる責任を法律で定めることにより、しっかりとまじめに働けばだれもが普通の生活が送れる、そうした雇用状況をつくり出せると考えております。

 本法案の趣旨を御理解いただき、御賛同いただけるようお願いを申し上げ、私の趣旨説明を終わらせていただきます。

櫻田委員長 次に、山井和則君。

    ―――――――――――――

 労働者の募集及び採用における年齢に係る均等な機会の確保に関する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

山井議員 私は、ただいま議題となりました労働者の募集及び採用における年齢に係る均等な機会の確保に関する法律案について、提出者を代表して趣旨説明を行います。

 バブル崩壊後の長期にわたる不景気の時代は、就職氷河期と言われておりました。その当時に学校を卒業した皆さんは、本人の努力にもかかわらず就職できない、あるいは、常用雇用、いわゆる正社員を希望してもパートやアルバイトの仕事にしかつけなかった人が多かったのであります。そのいわゆるロストジェネレーションと言われる世代は、今もなお、雇用が不安定な状況が続いています。

 内閣提出の雇用対策法等改正案では、募集、採用の年齢差別の禁止に関し、現行法の努力義務を義務規定にする改正が盛り込まれています。しかし、差別禁止の適用範囲が省令で定められることになっており、対象が狭く、実際には骨抜きになっています。

 そして何よりも、民主党案では、当然、公務員も年齢差別禁止の法案対象になっているにもかかわらず、政府案では、今までの再三の民主党からの批判にもかかわらず、この期に及んでも対象から公務員を除外しています。

 民間企業に対して募集、採用の差別禁止規定を義務化するという厳しい法改正を行っておきながら、いつまでたっても公務員だけは募集、採用の年齢禁止規定の対象から除外する。これを言行不一致、骨抜き法案と言わずして何と言うでしょうか。与党議員に申し上げたい。こんな法律一つに公務員を対象とできずに除外規定を設けて、何が公務員制度改革ですか。

 民主党は、当然、公務員も対象とするとともに、募集、採用における年齢差別の禁止の実効性を上げるために、以下の点を法案に盛り込みました。

 第一に、厚生労働大臣は、労働者の募集及び採用において、その年齢にかかわりなく均等な機会を確保するための施策の基本となるべき方針を定めるものとしています。

 第二に、事業主は、労働者の募集及び採用について、その年齢にかかわりなく、均等な機会を与えなければならないこととします。

 ただし、労働基準法等によって特定の年齢層に属する者の就業が禁止されたり制限されたりしている場合などは、この限りではありません。

 第三に、都道府県労働局長は、募集、採用における年齢差別について労使で紛争が生じ、当事者の双方または一方からその解決について援助を求められた場合には、紛争当事者に対し、必要な助言、指導または勧告をすることができることとします。

 民主党は、募集、採用における年齢差別を禁止する法案を二〇〇三年と二〇〇四年の二度にわたって提出してきましたが、いずれも与党の反対によって審議未了で廃案になっております。そもそも、政府・与党が、これまでの民主党の法案について真剣に対応しておれば、今回の内閣提出案を待つまでもなく、多くの若者の雇用が改善されたと思われます。残念でなりません。また、政府は今回ようやくこの問題の重要さに気づき、政府案が提出されましたが、その内容は全く不十分であります。

 本法案のみではありません。今国会に提出された内閣によるパート労働法改正法案も、民主党が過去に提出した改正案の後追いである上に、肝心の差別禁止対象者の要件が極めて厳しく、厚生労働省も、対象者は事実認定が困難であるだけでなく、現在でも公序良俗違反に当たりかねない、名乗り出る事業主がいるとは想定しがたい、パート労働者の一方的な指摘のみによっては判断しかねるなどと答弁しており、これではほとんど対象者を発見できないと言わざるを得ません。委員会審議においても、本当に差別禁止対象者は存在するのか、どこに存在するのかが明らかにならず、対象者が少なく、実効性が低い骨抜き法案であることが明らかになりました。

 多くの議員にこの民主党の年齢差別禁止法案の重要性を御理解いただき、あわせて、年齢を含めて、ありとあらゆる差別のない社会をつくり、一人一人が持って生まれた能力を最大限発揮できる環境を整える一歩とするため、本法案にぜひとも御賛同いただくことを願って、私の趣旨説明を終わります。

 以上です。

櫻田委員長 次に、太田和美君。

    ―――――――――――――

 若年者の職業の安定を図るための特別措置等に関する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

太田(和)議員 ただいま議題となりました若年者の職業の安定を図るための特別措置等に関する法律案について、提出者を代表して趣旨説明を行います。

 バブル崩壊後の不景気は、我が国の雇用情勢に深いつめ跡を残しました。若い世代についても、学校を出ても就職先がない、正社員の職につけないといった厳しい雇用状況が続きました。そうした就職氷河期に社会に出た方にとって、景気が回復しつつある現在も正規雇用への転換は狭き門であり、就業能力開発の機会も乏しく、正規雇用との格差が広がっています。いつまでたっても雇用が不安定であれば、将来を展望することもままならず、結婚したくてもできない、子供を持ちたくても持てないという状況に陥り、少子化の一因となってしまいます。また、さまざまな理由から、就労するのでもなく、就学するのでもなく、社会から隔絶してしまう引きこもりが社会的な問題となっております。

 こうした方々を放置しておくのではなく、安定した職業につけるよう、集中的に支援していくことが必要です。若年者の雇用問題に精通した若年者等職業カウンセラーが、若年者からの相談を広く受け付け、個々の状況をよく把握した上で、必要な場合は個別就業支援計画を策定し、その計画に基づいて、職業指導、実習職業訓練の促進など幾つかのステップを踏んで、きめ細やかな支援を実施していきます。こうした施策を特別の措置として、およそ五年間にわたって実施することを定める法案を策定しました。

 以下、本法案の概要を説明いたします。

 第一に、この法律で定める施策の対象は、十五歳以上四十歳未満の者であって、そのうち、契約の期間を定めないで雇用される者、自営業者、学校教育法で定める高等学校の生徒や大学の学生である者等を除くこととします。いわゆる就職氷河期に社会に出た世代で、職業の安定を図る必要がある方への支援を行うために、対象者をこのように定めました。

 第二に、若年者等職業カウンセラーは、対象若年者等の相談に応じ、必要な情報の提供及び助言を行うとともに、安定した職業につくことが困難な者と認めるときは、本人の希望、適性、職業経験その他の事情を踏まえた上で、個別就業支援計画を作成することとします。

 第三に、若年者等職業カウンセラーは、対象若年者等の個別就業支援計画に基づき、適切かつ効果的に職業指導を行うこととします。こうした指導を円滑に実施するために、職業指導を受ける対象若年者等に対して手当を支給できることとします。

 第四に、対象若年者等が職業指導のほかに、実践的な職業能力の開発及び向上を図るために効果的であると認められるときは、事業主による実習職業訓練を実施することとします。事業主は、実習職業訓練の実施計画を策定し、認定を受け、若年者等職業カウンセラーの紹介により対象若年者等を雇い入れ、実習職業訓練を実施することができるものとします。政府は、実習職業訓練を行う事業主に対して、必要な助成及び援助を行うものとします。

 政府は、今までも、日本版デュアルシステム、トライアル雇用、ジョブカフェ、さらにはジョブパスポートなど、さまざまな若年者向け支援策を実施してきましたが、安定した雇用につくのが最も困難な方たちには支援が不十分です。私たちは、若年者の職業の安定を目指した法律を制定することにより、おのおのの置かれた状況に応じた支援を的確に実施できるようになると考えます。

 何とぞ御賛同のほどよろしくお願いいたします。

櫻田委員長 以上で各案の趣旨の説明は終わりました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時四十五分散会


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