衆議院

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第14号 平成19年4月18日(水曜日)

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平成十九年四月十八日(水曜日)

    午前九時三十分開議

 出席委員

   委員長 櫻田 義孝君

   理事 伊藤信太郎君 理事 石崎  岳君

   理事 鴨下 一郎君 理事 谷畑  孝君

   理事 宮澤 洋一君 理事 三井 辨雄君

   理事 山井 和則君 理事 福島  豊君

      新井 悦二君    井上 信治君

      大塚  拓君    岡本 芳郎君

      川条 志嘉君    木原 誠二君

      木村 義雄君    岸田 文雄君

      桜井 郁三君    清水鴻一郎君

      菅原 一秀君    杉村 太蔵君

      高鳥 修一君   戸井田とおる君

      徳田  毅君    長崎幸太郎君

      西川 京子君    橋本  岳君

      林   潤君    原田 令嗣君

      福岡 資麿君    藤井 勇治君

      増原 義剛君    松野 博一君

      松本 洋平君    三ッ矢憲生君

      安井潤一郎君    山本 明彦君

      内山  晃君    大島  敦君

      太田 和美君    菊田真紀子君

      郡  和子君    園田 康博君

      田名部匡代君    筒井 信隆君

      細川 律夫君    柚木 道義君

      坂口  力君    古屋 範子君

      高橋千鶴子君    阿部 知子君

      糸川 正晃君

    …………………………………

   議員           山井 和則君

   厚生労働大臣       柳澤 伯夫君

   法務副大臣        水野 賢一君

   厚生労働副大臣      武見 敬三君

   厚生労働大臣政務官    菅原 一秀君

   厚生労働大臣政務官    松野 博一君

   政府参考人

   (法務省入国管理局長)  稲見 敏夫君

   政府参考人

   (厚生労働省医政局長)  松谷有希雄君

   政府参考人

   (厚生労働省労働基準局長)            青木  豊君

   政府参考人

   (厚生労働省職業安定局長)            高橋  満君

   政府参考人

   (厚生労働省職業安定局高齢・障害者雇用対策部長) 岡崎 淳一君

   政府参考人

   (厚生労働省職業能力開発局長)          奥田 久美君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           川原田信市君

   厚生労働委員会専門員   榊原 志俊君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月十八日

 辞任         補欠選任

  加藤 勝信君     岡本 芳郎君

  木原 誠二君     藤井 勇治君

  岸田 文雄君     三ッ矢憲生君

  冨岡  勉君     橋本  岳君

  松本  純君     桜井 郁三君

  松本 洋平君     大塚  拓君

  吉野 正芳君     山本 明彦君

  柚木 道義君     太田 和美君

同日

 辞任         補欠選任

  大塚  拓君     松本 洋平君

  岡本 芳郎君     加藤 勝信君

  桜井 郁三君     松本  純君

  橋本  岳君     安井潤一郎君

  藤井 勇治君     徳田  毅君

  三ッ矢憲生君     岸田 文雄君

  山本 明彦君     増原 義剛君

  太田 和美君     柚木 道義君

同日

 辞任         補欠選任

  徳田  毅君     木原 誠二君

  増原 義剛君     吉野 正芳君

  安井潤一郎君     冨岡  勉君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第三七号)

 雇用対策法及び地域雇用開発促進法の一部を改正する法律案(内閣提出第三六号)

 雇用基本法案(大島敦君外二名提出、衆法第一三号)

 労働者の募集及び採用における年齢に係る均等な機会の確保に関する法律案(加藤公一君外二名提出、衆法第一四号)

 若年者の職業の安定を図るための特別措置等に関する法律案(山井和則君外二名提出、衆法第一五号)


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     ――――◇―――――

櫻田委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。

 本案に対する質疑は、去る十三日に終了いたしております。

 この際、本案に対し、高橋千鶴子君から、日本共産党提案による修正案が提出されております。

 提出者より趣旨の説明を聴取いたします。高橋千鶴子君。

    ―――――――――――――

 短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律の一部を改正する法律案に対する修正案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

高橋委員 ただいま議題となりました日本共産党提出の短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律の一部を改正する法律案に対する修正案について、趣旨を説明します。

 パート労働者は千二百万人を超え、今や基幹的な労働力として雇用されているばかりか、パート労働から得る収入は労働者の生活を基本的に支えるものとなっています。にもかかわらず、正社員とほとんど同じ労働時間や仕事であっても、賃金や労働条件の面で均等な待遇を受けていない実態があり、これを抜本的に改善することが強く求められています。若者の多くがパート労働者として働いている現状からしても、この格差是正は喫緊の課題と言えます。

 ところが、政府の対応は、パート労働者に通常の労働者と同じ権利を保障した一九九四年のILOパート労働条約にいまだ署名も批准もせず、差別の禁止や均等な待遇の実現に背を向けています。

 我が党は、均等待遇を柱とした改正案を二〇〇三年と二〇〇四年に参議院で提出しました。今回の提案も、パート労働者などの均等待遇を法案に明記するなど、格差是正を実現するための措置をとるものであります。

 以下、提案する修正案の骨子を説明します。

 第一に、パート労働者の多くが有期労働者であることから、有期契約を理由に通常の労働者と差別してはならないことを明確にするため、法の対象に有期労働者を加えます。

 第二に、すべてのパート労働者及び有期労働者を対象として、通常の労働者との均等待遇の確保を法案に明記し、差別的取り扱いの禁止を規定します。

 第三に、通常の労働者を募集、採用する場合、現に雇用する同種の業務についているパート労働者及び有期労働者で希望するものについては、優先的に応募する機会を与えなければならないこととするとともに、優先的な雇い入れの努力義務を課すこととします。

 第四に、事業者への規制を強化します。パート労働や有期労働を理由に通常の労働者との差別的取り扱いをした場合や正社員への優先的応募の機会を与えない場合、厚生労働大臣が行う勧告に従わない場合には、これを公表し、勧告に従うよう命令できる規定を新たに置きます。

 以上述べて、趣旨説明とします。よろしく御賛同くださいますようお願いいたします。

櫻田委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

櫻田委員長 これより本案及び修正案を一括して討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、順次これを許します。田名部匡代君。

田名部委員 民主党の田名部匡代です。

 私は、民主党・無所属クラブを代表して、内閣提出の短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律の一部を改正する法律案について、反対の立場から討論をいたします。

 以下、反対の理由を申し上げます。

 第一に、政府案は、短時間労働であることを理由とした差別的取り扱いを禁止する対象を正社員と同視すべきパートとしていますが、これに該当するパート労働者がどの程度いるのか、本当に存在するのか、ついに明確な答弁はありませんでした。また、正社員と同視すべきパートに該当するかどうかは、パート労働者ではなく、一義的には使用者が判断することになり、労働者にとって不利な規定であります。民主党案のように、すべてのパート労働者を差別的取り扱い禁止の対象とすべきです。

 第二に、パート労働者の中に、差別的取り扱い禁止の対象となる者とそうでない者とを分けている点です。正社員と同視すべきパート労働者に該当しなければ、均衡処遇の努力規定があるだけで、かえって処遇が切り下げられ、格差が固定することが懸念されます。

 第三に、パート労働者と通常の労働者との労働条件の均衡を図ることを理由に、正社員の労働条件が切り下げられるおそれがあります。民主党案のように、均等処遇の確保等を図る措置を講ずるに当たっては、通常の労働者の労働条件を合理的な理由なく低下されることを防ぐ規定を設けるべきです。

 第四に、パート労働者から正社員への転換を推進する措置の実効性に疑問がある点です。正社員募集のパート労働者への周知、配置転換を希望する申し出の機会の付与、正社員への転換試験制度の創設等のうち、どれかを実施すればよいことになっています。正社員と同じ内容の仕事や責任を何年間も任せられながら、正社員に登用されず、均等処遇が実現しないのでは、全く格差の是正になりません。

 第五に、同一賃金同一価値労働の実現に向け、職務給制度を構築しようとしていない点です。我が国の短時間労働者と通常の労働者との均等な待遇について、それぞれの事例を積み上げ、労使代表による検討を重ね、社会的なコンセンサスを得ていくことが重要ですが、政府案にはそうした施策は入っていません。民主党案のように、事業所ごとに均等処遇等検討委員会を設置すべきです。

 今やパート労働者は千二百万人を超え、通常の労働者と短時間労働者との均等待遇の確保は喫緊の課題です。しかし、政府案は、待遇の格差を是正するものではなく、かえって格差を拡大しかねない内容であることは、これまでの審議でも明らかです。

 よって、今回の政府提出改正案に反対することを表明し、私の討論を終わります。

櫻田委員長 次に、高橋千鶴子君。

高橋委員 私は、日本共産党を代表して、政府提出のパート労働法一部改正案に対して、反対の討論をします。

 反対の第一の理由は、本改正案は二〇〇三年の指針改正で示された均衡処遇を引き継いだものであり、賃金格差や男女差別を廃止する均等待遇を明文化していないことです。

 今日、パート労働者は全国に千二百万人、雇用労働者の二二%を占めています。ところが、正社員との賃金格差は大きく、厚労省の調査でも、男性パートの時給は千六十九円、男性正社員の五二%しかありません。女性の場合は九百四十二円で、男性正社員の四六%にしかなりません。しかも、パート労働者から正社員へ移行する道は厳しく、若者世代が結婚や出産も二の足を踏まざるを得ない実態にあります。この格差是正は社会的に急務であり、パート労働者の均等待遇の実現が強く求められるものです。

 反対の第二の理由は、本法案が均衡待遇の方向を押しつけることで、パート労働者の間に新たな格差、差別を持ち込み、それによって格差の固定化が生まれる懸念が強いからです。

 法案では、パート労働者全体を、通常の労働者と同視すべきパート労働者、職務内容同一パート労働者、パート労働者に区分しました。そして、通常の労働者と差別してはならないとする通常の労働者と同視すべきパート労働者は、職務の内容が同じで、人材活用の仕組みが全期間を通じて同じで、期間の定めのない場合という三つに限定して定めるとしました。ところが、この労働者は、厚労大臣の答弁でも全体の四から五%にしかなりません。

 さらに、この区分で大多数を占めるパート労働者は、職務内容、成果、意欲、経験等を勘案して、事業主の裁量で処遇するとしました。言いかえれば、これらの労働者は通常の労働者と同じように処遇しなくてもいいということであり、均衡待遇の名のもとに、パート労働者の中に格差を持ち込み、その固定化を図ることになります。均等待遇を求めるパート労働者の期待とはほど遠いものと言えます。

 反対の第三の理由は、有期労働者の権利保護の規定がないことです。

 パート労働者の七割は有期労働者です。この有期労働者を継続的な業務に細切れ的に従事させ、安い労働力として使用するという雇用調整が放置されていることは重大です。有期労働者の権利を守るための規定が必要であります。

 以上を述べて、討論とします。

櫻田委員長 次に、阿部知子君。

阿部(知)委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。

 私は、社会民主党・市民連合を代表し、内閣提出、短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律の一部を改正する法律案に反対し、共産党提出の修正案に賛成する立場から討論を行います。

 政府提出案に対する反対の第一の理由は、差別的取り扱いの禁止の対象となるパート労働者が極めて限定的で、差別禁止の実効性が全く期待できないからです。政府案は、対象者を正社員と同視すべきパート労働者として、現行指針の基準である職務内容、人材活用に、さらに期間の定めのない労働契約を加えて、三つのハードルを設けています。しかも、雇用関係が終了するまでの全期間と、その基準は将来の見込みにまで及び、政府答弁からは、対象となるパート労働者がどれだけいるのか、本当に救済されるのかさえ判然といたしません。

 反対の第二の理由は、大多数のパート労働者が対象となる均衡処遇が努力義務にすぎないからです。現行指針と同じでは、実効性が期待できないばかりか、逆に、差別禁止の対象ではないということで、差別が放置されかねません。

 反対の第三の理由は、期間の定めのない労働契約を差別禁止の要件にしたため、不安定な有期契約労働者がさらに増加しかねないからです。既に、パート労働者の七、八割が有期契約です。これ以上、雇いどめ、細切れ雇用の問題を放置することは許されないことです。

 また、パート労働者の正社員転換措置が形式的にすぎず、実効性がないこと、パート労働者の七割が女性であるにもかかわらず、性差別禁止の視点が全く欠落していること、さらに、いわゆるフルタイムパートや公務員パートが法のすき間に落ち込んだままであることなども極めて大きな問題と言わざるを得ません。

 今回のパートタイム労働法の大幅な見直しは、一九九三年に同法が制定されて以来初めてのことです。パート労働者が急増し、差別是正と待遇の抜本改革が急務になっており、当初、パート労働者に対する差別を禁止する規定が法律に明記されることに大きな期待が寄せられてきました。しかし、政府案は、差別是正への実効性がほとんどないばかりか、逆に、パート労働者への差別や格差を拡大、固定化を助長しかねないものであると言わざるを得ません。

 社民党は、同一価値労働同一賃金の観点に立って、パート労働者の均等待遇の確保、差別禁止の取り組みを一層強めていくと同時に、有期雇用については、EU指令のように、原則的に一時的、臨時的な業務に限定する方向で規制していく必要があると考えます。

 また、共産党の修正案については、基本的に我が党と方向を同じくするものであり、パート労働者全体の待遇改善に資するものであることから、賛成いたします。

 以上、両案に対する討論といたします。

櫻田委員長 以上で討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

櫻田委員長 これより採決に入ります。

 内閣提出、短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律の一部を改正する法律案及びこれに対する修正案について採決いたします。

 まず、高橋千鶴子君提出の修正案について採決いたします。

 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

櫻田委員長 起立少数。よって、本修正案は否決されました。

 次に、原案について採決いたします。

 これに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

櫻田委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました本案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

櫻田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

     ――――◇―――――

櫻田委員長 内閣提出、雇用対策法及び地域雇用開発促進法の一部を改正する法律案、大島敦君外二名提出、雇用基本法案、加藤公一君外二名提出、労働者の募集及び採用における年齢に係る均等な機会の確保に関する法律案及び山井和則君外二名提出、若年者の職業の安定を図るための特別措置等に関する法律案の各案を一括して議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 各案審査のため、本日、政府参考人として法務省入国管理局長稲見敏夫君、厚生労働省医政局長松谷有希雄君、労働基準局長青木豊君、職業安定局長高橋満君、職業安定局高齢・障害者雇用対策部長岡崎淳一君、職業能力開発局長奥田久美君、経済産業省大臣官房審議官川原田信市君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

櫻田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

櫻田委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。木原誠二君。

木原(誠)委員 おはようございます。自民党の木原誠二でございます。

 質疑に入ります前に、冒頭、昨晩、長崎市長が凶弾に倒れるという大変凶悪な事件がございました。こういう言論に対する挑戦ということについて遺憾の意を表明したいと思いますし、伊藤市長の御冥福を心からお祈り申し上げたい、このように思います。

 それでは、雇用対策法につきまして質疑をさせていただきたいと思います。民主党案につきましても質問させていただきたいというふうに思いますので、どうぞよろしくお願いをいたします。

 この雇用対策法、まさに雇用の分野における基本法ということで、昭和四十年代に制定をされた、こういうことでございます。一条の目的規定の中には、質量両面にわたる労働力の需給の均衡を図っていくという言葉がございます。私、非常によくできた第一条の目的規定だなと思って、改めて何度も読み直してみましたけれども、やはりそのポイントは、質量両面にわたる均衡を図っていくということにあるのかなというふうに思った次第でございます。量だけでもない、あるいは質だけでもない、質量両面を図っていくんだ、こういうことであろうかというふうに思います。

 まさにその四十年代というのは、高度成長期のもとで、量的には本当に労働力が不足をした時代でありますし、質的には高度技能者が不足をした時代でもある、質的な能力も高めていかなければいけなかった時代だろうというふうに思います。

 今この第一条の規定はまだ残っているわけでございまして、今この時代に要求される、求められる質量両面にわたる労働力の需給といったものはどういうものなのか。とりわけ、人口減少社会に入った、今回の改正はまさにそこが一つの趣旨になっているわけでございますけれども、人口減少社会に入って一体どういう質量両面にわたる影響が出ているのか、どういう影響が出ているからそれに対してどういう措置を今回とろうとしているのか、まず冒頭、副大臣の方から趣旨等を御説明いただければと思います。

武見副大臣 委員御指摘のように、少子高齢化が進行する中で、労働力人口の減少を抑えて経済社会の活力を維持増進させるためには、若者、女性、高齢者など、すべての方々がその働く意欲と能力を十分に発揮しながら就業参加を実現していくことが極めて重要であると考えております。

 このために、人口減少下における就業促進を目的とした本改正法案を踏まえまして、各般にわたる雇用対策、就業能力開発の実施に努め、第一に、量的な側面からは、より多くの方々の就業参加の実現を図る、第二に、質的な側面からは、だれもがその有する能力を有効に発揮できるような、職業訓練等も含めた就業環境の整備、これを促進してまいりたいと考えております。

 こうした労働力需給の質量両面にわたる均衡を目指す考えでございます。

木原(誠)委員 量的には、まさに人口減少社会に入って、できる限り多くの方々というよりもすべての方々に就労に参加をしていただく、そしてまた、質的には、多様な能力というものを活用できる、そういう社会をつくっていく。

 今、副大臣の答弁の中には特段御指摘がありませんでしたけれども、団塊の世代が大量に離職をするという中にあって、これは量的な側面でも多分に大きな影響がありますけれども、やはり質的な側面において高度な技術の継承がなかなか難しくなっていく、あるいは各現場での現場力というものの継承がなかなか難しくなっていく、そういった質的な側面もあるのかな、そんなふうに思っているところでございます。

 今、趣旨の御説明をいただいたわけですけれども、ここから少し個別の具体的な今回の取り組みについてお伺いをしてまいりたい、このように思っております。

 まさに青少年、女性あるいは高齢者、障害者等、すべての方々に参加をしていただく、その中で今回一つの大きなテーマが、年齢制限を努力規定から義務規定化していく、そういうものであろうかというふうに思います。

 この年齢制限にかかわる努力規定というものは平成十三年の改正で取り入れられた規定でございますが、当時の状況をちょっと見てみますと、あるいはまた当時の趣旨説明等々を見てみますと、やはり中高年齢者というものをまさに対象にしていたということであろうかというふうに思います。

 まさに、バブルが崩壊をした後、とりわけ中高年者について、労働需給というか、有効求人倍率も低い、そしてまたなかなか求人も少ない、こういった中にあって、できる限り中高年の人たちを職場に復帰させる、あるいは雇用を与えるという意味においてこの年齢制限の努力規定というのが入れられたのかな、そういうような趣旨であったかというふうに記憶をしております。

 今回、この努力規定が義務規定になった、こういうことでございますけれども、もちろん、努力規定が義務規定になったということについて、これは努力が義務になるということですから大変意義深いことであるというふうに思いますけれども、それ以上に、私は、今回の改正、むしろ、当初の努力規定の部分が中高年者を対象にしてきたというところからすると、条文の背景とか条文の思想というものが少しさま変わりをしてきていて、もう少し、中高年者だけではない、若年層、いわばフリーター、ニート、とりわけ年長フリーターといったような人たちも取り込んだような、条文が目指す背景が少し広がってきているのかな、こんなふうに認識をしておりますけれども、その点について御見解をいただければと思います。

高橋政府参考人 平成十三年の雇用対策法の改正におきまして、募集、採用に関しても年齢制限を行わないことを努力義務といたしたわけでございますが、この当時の背景といたしましては、今委員御指摘にありましたように、特に当時厳しい雇用環境に置かれておりました中高年齢者の再就職を促進するということを主眼に行ったわけでございます。

 現在の状況というものを考えますと、当時に比べましても少子高齢化が一層進んでおるわけでございまして、ただいま副大臣からも御答弁がありましたとおり、労働力人口の減少を抑え、経済社会の活力を維持増進させていくということが大変重要な課題になっておるわけでございます。

 こうした中で、中高年齢者に限らず、女性、若者など、だれもが年齢にかかわりなく意欲と能力を最大限発揮して働くことができるようにする、こういうことが大変重要な課題になっておるということで、御指摘のとおり、募集、採用にかかわります年齢制限の禁止につきましては、以前にも増して大きな意義を有するものと私ども考えておる次第でございます。

木原(誠)委員 ありがとうございました。

 人口減少社会に入って、単に中高年齢層だけではなくて、幅広く多くの、各界各層そして各年齢、各世代に労働に参加をしていただく、そういう中に、この年齢制限の努力規定も、義務化をする中で対象も少しずつ広がっている、より重要になってきている、こういう御答弁だったかというふうに思います。

 そういう中で、当初の努力規定だったときに、年齢差別禁止の中から除外をされる分野というものを指針という形で十項目にわたって提示されてきたわけでございます。当然のことながら、当初、中高年齢層を対象にしてきたそういう規定、その除外規定、除外の項目というものと、今度いわば義務化された後、この年齢制限の、省令に今度は規定がされるわけですけれども、内容は違ってきて当然かな、こんなふうに思うわけです。省令の規定の仕方について、あるいは省令で今どんなことを規定していこうかと考えていらっしゃるのか、お伺いをしたいと思います。

高橋政府参考人 現行の雇用対策法第七条の努力義務の例外として年齢制限が認められる場合ということで、年齢指針におきましては、具体的に、例えば新規学卒者等を募集、採用する場合、それから労働基準法など法令により特定年齢層の就業等が禁止、制限されている場合等々、十項目が定められておるところでございます。

 今回の改正によりまして年齢制限禁止を義務化するに当たりましては、合理的な理由があって例外的に年齢制限が認められる場合につきまして、厚生労働省令で規定をすることにいたしておるわけでございますが、この例外事由につきましては、企業の雇用管理の実態等も十分踏まえながら、やはり必要最小限の場合に限定する方向で検討をしてまいりたいと考えております。

木原(誠)委員 企業の労働現場の実態を踏まえながら必要最小限にということですから、今この時代にあって年齢制限というものの重要性というのを踏まえますと、そういう方向でぜひ検討していただきたいな、こんなふうに思うところでございます。

 そこで、民主党の方からは、この募集、採用における年齢制限ということについて、別途法律を一本立てて、御提案をいただいておるわけでございます。大きな違いは、民主党案の方は、年齢制限がかからない、除外をする項目について、まさに法律の中に四類型という形で示しておられる、こういうことだろうというふうに思います。

 四類型ということについて、当初、今の厚生労働省の指針の中には十項目あるわけでございますけれども、労働の現場というのはなかなか、生き物だろうというふうに思いますし、とりわけ経済も生き物でございます、そういう中にあって、四類型に限定をしてしまって本当にいいのかなという思いがございますし、また同時に、法律の中に書き込んでしまうということについて、ちょっと硬直的に過ぎるのではないかなというような思いもございます。

 この点について、硬直性ということについてどういう御見解を持っていらっしゃるか、お伺いできればと思います。

山井議員 木原議員、質問ありがとうございます。お答えをさせていただきます。

 日本におきましては、雇用環境の影響もあり、年齢という個人の力ではどうしようもないことで就業のチャンスを奪われている多くの若者、高齢者等がいらっしゃり、日本の経済の発展にとっても損失となっております。

 少し早口で読ませていただきます、時間にも限りがあると思いますので。

 年齢による差別を解消することは、多くの人々に就業のチャンスを保障するという意味で、大変意義深いことであります。政府の改正案におきましても、民主党におくればせながら、年齢差別禁止について現行法の努力義務規定を義務規定にする改正が盛り込まれているところでありますが、差別禁止の適用範囲が厚生労働省令により定められることとなっており、その内容によってはしり抜けになるおそれも否定できません。そういう意味から、民主党案におきましては、年齢差別の禁止の実効性を高めるために、その例外事由についても、必要最小限である四つの点に限定し、法案においてはっきり明示することとしたものであります。

 具体的に言いますと、今までの政府の指針に入っていて民主党の法案に入っていないのは、新卒求人であるから、適正な年齢構成を維持するため、年齢給があるため、労働災害防止のため、体力、視力が必要なため、特定年齢層対象業務があるから、このような六つのことは入れていないんですね。

 この趣旨をぜひ御理解いただきたいのは、余りにも例外規定、排除規定をふやしてしまうと、結局はしり抜け、ざる法になってしまいかねない。その結果として、現在のハローワークでの求人でも、五〇%ぐらいしか年齢差別が撤廃されているのがないわけなんですね。

 そういう意味では、私は、先ほどの高橋局長の答弁を聞いていて、まさに民主党の考え方をおっしゃっているのではないかと。要は、必要最小限の除外規定であると。かつ、それを法案審議が終わってから厚生労働省に任せるのではなく、その除外規定をいかに少なくして実効性のあるものにするかということが重要である以上は、正々堂々と法案の中に最小限の項目というのは何かということを書き込んで、それで多いのか少ないのか、当然企業のことにも配慮しながら、まさにそのことを私は国会で審議すべきではないか、そのような思いで、この四つの点に絞らせていただきました。

 以上でございます。

木原(誠)委員 ありがとうございました。

 おっしゃったとおりかなとは思いますけれども、他方でやはり、硬直的ということについては、今御答弁がなかったのかなというふうに思います。

 つまり、当初この法で年齢制限が入った、平成十三年に。まさにそのときは中高年者を対象にしていた。今回は、もちろん中高年齢者も対象になりますし、すべての年齢の方が対象になるわけですけれども、その一つの焦点はむしろ、年長フリーターであるとか、若年者に少しずつシフトをしてきている。そういう中にあっては、常に、労働市場あるいは労働問題、雇用問題において、施策が必要となる年齢であったり分野であったりというのは、刻々と動いてくるんだろうというふうに思います。

 そういう中にあって、法律で決めてしまうことについては、私は少し硬直的に過ぎるというふうに思います。つまり、省令で、その時代時代に合った年齢制限のあり方ということについては柔軟な対応をしないと、今回も対応がおくれてしまう、常に対応がおくれてしまうということについて、危惧をいたします。

 その点について一つ御質問をさせていただきますと、今回、民主党の方からも、若年者の雇用ということについて焦点を当てて法案が出てございます。そして、年齢制限の撤廃もその一つの項目に入っているんだろうというふうに思いますけれども、今回の民主党の法案の四つの類型を見ておりますと、年齢制限の除外に入るものとして、高齢者、高年齢者雇用安定法の規定は引いておりますけれども、この四項目の中に、若者ということについては何らも指摘がない。この点について、私は、少し時代をとり損ねているのではないかなというふうに思いますけれども、その点について御意見をいただければというふうに思います。

山井議員 まず、先ほどおっしゃった、民主党案の方が実効性が低いのではないかということでは全くなくて、まさに、先日の衆議院予算委員会に公述人で来られたキヤノンの請負労働であります大野さんもおっしゃっておられたように、やはりこの格差社会の犠牲者が今若者になっている。一度非正規雇用になったらなかなか正社員になれない、そういう部分というのは政府の労働の規制緩和によってなされたのであるから、政治の力で起こった雇用格差、若者排除の問題は、やはり政治の力で解決してほしいという強い御要望がございました。

 そういう意味で、私たちは、まさに今おっしゃった点でありますが、若年者就労支援、この若年者の職業安定の法律を別個につくってやらないとだめだ、そのことによって、今まで政府がやっておられたジョブカフェとか、趣旨自体は否定しませんが、ああいうものを予算的にも人員的にもやはり大規模にやっていく必要があるのではないか。そういうことで、今回、若年者職業安定の特別措置法を五年の時限立法で出させていただきました。

木原(誠)委員 済みません。余り民主党と議論をするつもりはなかったんですけれども、もう一点だけ。

 今の私が質問したかったことは、今回義務化になっているこの年齢制限の、その中で法律で四類型を挙げていらっしゃる、その三項目めだったというふうに思いますけれども、高年齢者の雇用の安定に関する法律に基づいて、特定の年齢階層に絞る必要がある場合というのを例外事由として挙げていらっしゃる。私は、このフリーターとかあるいはニート、若者の雇用というものを考える場合には、むしろそこにしっかり焦点を当てて、その分野の人たちもその除外から外れるような規定も入れておくべきだろうというふうに思うんですね。

 今度の政府案は、省令で今後これを決めていくことになると思いますけれども、当然のことながら、若者、フリーター等々についての除外の規定というのはこの省令の中に必要だというふうに私は思っております。ところが、この今の民主党案の方にはその規定がないものですから、そういう意味で、刻一刻と移る中にあって、例えば今の法案は高齢者にだけ特化したような形になっている、それで本当にいいのか、そのことについて御意見を伺いたい、こう申し上げているわけでございます。

山井議員 今まさに木原委員が質問されたように、そのことは今後省令で詰めていくとか、そういう議論というのは、やはり本来、国会ではおかしいと思うんですね。

 ですから、若年者の就労支援、今このロストジェネレーションという十五歳から四十歳未満の方々というのは非常に深刻な問題です。その認識は一致していると思いますが、だからこそ、五年間の時限立法で、今回、私たち民主党は、そういう意味では年齢を絞って法案を出しているわけであります。

 イギリスでも、一九九六年に、保守政権が若者再出発プログラムというもので、今のジョブカフェのようなプログラムをやったわけですけれども、なかなか効果が上がらなかった、それはやはり予算と財源、人員配置が不十分だと、それで、ブレア首相が本格的に予算と財源を投入してやり出して、五十万人の若者の雇用創出ができたということがあるわけですね。

 そういう意味では、私たちは、やはりこういう年齢層を絞った新たな法律をつくってやっていく、それも政府・与党のように地方自治体に任せるのではなくて、国が責任を持ってやっていく。実際、ジョブカフェの経済産業省の事業も三年間でもう終わってしまったわけですね、モデル事業が。あと地方自治体任せなわけです。やはり国の責任を示すということが非常に重要だということで、こういう法律をつくりました。

木原(誠)委員 済みません。大分、すれ違いな答弁だなとちょっと正直思うんですけれども、最後にいたします。

 端的に御質問いたします。要するに、二十代、三十代、四十代、フリーターの人たちだけを雇用するような、そういう募集、採用というものが今の民主党案の法律四類型の中では許されるのかどうかということについて、端的にお伺いをいたしたいと思います。

山井議員 私たちは、この除外規定のところで、新規学卒者と同じように、その年齢にかかわらず均等な機会を確保していくためということで今回の法律をつくっているわけです。それで、新卒だけを優遇しないということを禁止すればそれで十分だというふうに民主党案では考えております。

木原(誠)委員 ということは、少なくともフリーターやニートを対象として、そこに特化をしたような募集、採用をかけるということ自体は、この四類型では認められていないというふうに解釈してよろしいですか。

山井議員 それは今も答弁しましたように、新卒に限った採用、そういうものに関してやはり民主党案としてはよくないと考えて、年齢差別の撤廃をしていく、そういうことであります。

木原(誠)委員 必ずしも一対一の明確な答弁にはなっていないと思いますけれども、これ以上突っ込んでもあれだと思います。

 私が申し上げたいことは、例えば、今本当にニート、フリーター対策が重要だ、こういう時期にあって、国の施策としてニート、フリーターを中心に雇ってくださいということを事業主にお願いをする、そのときに、この年齢制限の撤廃、義務化になるわけですから、その部分がひっかかってしまうようでは、施策は進んでいかないんだろうというふうに思います。

 そういう中にあって、省令に規定をしていく、省令の中で、そのときそのときの状況、そのときそのときの政策課題でこれを抜いていくということは、私は、大変に臨機応変な対応をするという意味では重要だ、こういうふうに思っておりますので、認識が多分共有できていないというふうに思いますけれども、この硬直性というものについてはしっかりと指摘をさせておいていただきたい、こんなふうに思っております。

 どうぞ。

山井議員 もう長くは答弁しませんが、認識は一緒なんですね。ロストジェネレーションの世代を、これは政治の責任、国のリーダーシップで何とかせねばならない。だからそのためには、やはり予算と人員配置をきっちり、大胆に、緊急的に、時限的にでもいいからやっていくという国家の意思を示す必要がありますし、そのための根拠になる法律をつくらないとだめだと思うんですね。

 そういう意味では、私は、木原議員がおっしゃっていることをまさに実現したのが民主党のこの若年者の就業安定支援法だというふうに思っております。

木原(誠)委員 法律はつくっているんです。それから、若年者に対する雇用を確保していくための方策は、政府もやっているんです。その中で、私が申し上げたいことは、そこまでやられるのであれば、本来は、この年齢制限撤廃という中に、高年齢者の雇用の確保の安定等のためという高年者のための法律だけではなくて、なぜ、では若年者の雇用のための法律もちゃんと書いておかないのかということを申し上げているんです。

 本来であれば、この年齢制限というものは若年者についてもきいてくるわけですから、その部分も抜いておくべきだろうというふうに思います。法律で書くということはそういうことで、すべてのところをしっかり見て、どの部分に必要か必要でないかということをしっかり書くということが必要だろうというふうに思っております。

 政府案の方は、そのときそのときの状況に応じて、これは省令の中で、まさに皆さんの中で議論をして書けるわけですから、私はそれでいいんだろうというふうに思いますけれども、法律に書くということはそういうことであって、今回、まさに若年者が対象になっているときに……(発言する者あり)法律はつくっているんです。それとは逆のことを、私はそれとは関係ないことを言っているんです。年齢制限の中でなぜそれを抜かないのかということを申し上げているんです。(発言する者あり)

櫻田委員長 御静粛に。

木原(誠)委員 では、端的にもう一度お聞きします。年齢制限の中で、なぜ若年者を抜かないんですか。新卒者だけを……(発言する者あり)違うんです、新卒者だけを対象にしていればいいんだという答弁は、これは別なんです。高齢者という一群があり、それからフリーターという一群がある。新卒者だけを抜けばいいという議論をし出すと、高年齢者だけを抜く必要もなくなっちゃうんです。おわかりですか。

 新卒者だけを抜けば済むんだという議論をしたら、高年齢者に特化をした除外規定を設ける必要すらなくなっちゃうんです。それは、もう議論はそこでとまっちゃうんです。新卒者だけがよければいいというわけではないんですね。

 ですから、高年齢者に対する除外規定を設けているんであれば、当然のことながら、若者に対する除外規定も設けてしかるべきだ、このように思いますけれども、なぜ設けていないのか、その点についてお伺いをいたします。

山井議員 改めて答弁申し上げますが、新卒者に限るということ、それをなくすということで私たちは十分だと考えておりますし、ぜひ御理解いただきたいのは、年齢差別を禁止する法律と若年者の職業安定の法律をセットで出した理由はそこなんですね。だから、まさに一番危機的な問題がロストジェネレーションの問題だということで、この新たな法律をつくって、出しているわけですよ。

 ですから、ロストジェネレーション、まさにニート、フリーターを対象とした法律を出しているということが、民主党としてその部分を重視しているという最大のあらわれになっております。

木原(誠)委員 ありがとうございました。

 直接的な御答弁がいただけなかったと思いますので、これで終わりにしたいというふうに思います。法案を出していることはもちろん認識をしております。

 そのことで政府の方にお伺いをいたしますけれども、若者の雇用の量の確保という観点からいいますと、今回、雇用の機会の拡大というものを図ろうというふうにされております。この雇用の機会の確保という言葉は少しわかりづらい面があるな、このように思いますけれども、いわば雇用の機会の確保の一つの類型が年齢制限の撤廃ということになるんだろうというふうに思いますから、義務規定にするということで一つの手当ては済んでいるのかなというふうに思います。

 それ以外に、この雇用機会の確保ということでどんなことを具体的に想定されているのか、御答弁いただければというふうに思います。

高橋政府参考人 私ども、今回御提案申し上げている雇用対策法の改正案におきましては、今御議論にもございました募集、採用における年齢差別の禁止の義務化に加えまして、若年者をめぐる非常にさまざまな問題、特に、いわゆる就職氷河期に正社員となれずにフリーターにとどまっておられる年長フリーターの方々の就職支援を強化していくということが大変重要な課題になっている。他方、年齢が高くなりますと、正社員としての雇用機会も大変少なくなってくる、こういう実態があるわけでございます。

 こうしたことを踏まえまして、今回、年長フリーターを初めといたしました若者の安定した雇用を促進する、こういう観点から、青少年の、つまり若者の能力を正当に評価するための募集、採用方法の改善でありますとか、実践的な職業能力の開発、向上といったような措置を講ずることによりまして、雇用機会の確保が図られるようにする、こういうことを事業主の努力義務という形で規定をさせていただいたところでございます。

木原(誠)委員 人物本位の採用が図られるようにする、全くいい、すばらしいことだろうと思いますけれども、現状では、大企業もそしてまた官も、なかなか人物本位の採用というのは難しい面も実はあるんだろうというふうに思います。

 そういう意味で、とりわけ、今度努力義務になるということであれば、中小企業者にとっては、採用の過程が変わっていくということは大変に負担の大きいことだろうなと思いますけれども、中小企業者に何らかの支援といったものを考えていらっしゃるか、御答弁いただければと思います。

高橋政府参考人 今申し上げました努力義務に関しまして、今回の改正におきましては、あわせて、国は、事業主が適切に対処するために必要な指針というものを策定することといたしております。これに基づきまして、私ども、ハローワークを中心に必要な助言、指導を行うなど、若者の雇用機会の確保を実効あるものにしていきたいと考えておるわけでございますが、この指針策定に当たりまして、やはり中小企業等におきましても、その実効性が上がるものにしていくということが大事でございます。

 そういう意味で、中小企業の募集、採用の実情に通じました労使関係者の参画をいただいております労働政策審議会におきます議論等も踏まえまして、この指針を適切に策定していきたいと考えておるところでございます。

木原(誠)委員 ありがとうございました。

 ぜひ、本当に目配りのきいたそういう指針、そしてまた周知徹底というのをしっかりやっていただきたい、このように思います。

 もう時間も限られていますけれども、最後にいたします。

 今回、雇用対策基本計画をやめる、こういうふうになっております。経済計画との連動性がなくなったというのを、御説明でレクに来ていただいた方からお伺いをいたしました。ただ、やはり、今まさに人口減少社会に入って、質、量両面にわたって雇用環境を整備していくというのは、かつてに増して大変重要な局面に来ているというふうに思いますので、何らかの計画あるいは指針というものを出していただく必要があると思いますけれども、今後どういうふうに取り組んでいかれる所存か、お伺いをいたします。

高橋政府参考人 雇用対策基本計画でございますが、これは今委員御指摘になりましたような理由によりまして、固定的な期間を定めての計画を示す実効性が薄くなった、低くなった、こういうことで終了させていただくわけでございます。

 政府としての中長期的な雇用対策の基本的な考え方というのは、経済財政諮問会議で御議論をされます「進路と戦略」において示されておるところでございますが、厚生労働省といたしましては、具体的に実施をいたします施策の方向性につきましては、この「進路と戦略」を踏まえつつ、本改正法案で規定をされました国が講ずべき施策に即しながら、中期ビジョン、これは仮称でございますが、中期ビジョンという形で策定をし、公表をしてまいることを検討したいというふうに考えております。

木原(誠)委員 これで終わりにします。ありがとうございました。

櫻田委員長 次に、福島豊君。

福島委員 引き続いて、労働法制の議論が行われているわけであります。

 全般の議論を伺いながらつくづく感じることをまず申し上げたいと思うわけでありますが、労働法制というのはなかなか難しいものだなというのが私の率直な感想でありまして、なぜ難しいかというと、一律に法律で定めるということで、直ちにそのとおりの結果が出るかどうかというわけでは必ずしもないというのが労働法制の世界なんだろうというふうに思います。

 基本的には、労使の関係というのは自主的なものである。その中にあって、一定のルールをつくることが当然経営のあり方にも影響を与えるわけであります。また、雇用のあり方にも影響を与える。それは、プラスの面とまたマイナスの面が同時にあるということを複眼的に見ながらやらなければならないというのが実態なんだろうと思います。仮に、理念としては非常にすぐれていたとしても、それが現実に法として成立したときに、どのようにまたそれに対して経営者側が対応するか、こういうことも当然想定しながらやらなければならないというのが現実だと思います。

 そしてまた一方で、さまざまな形で非正規雇用の問題が取り上げられておりますけれども、バブルが崩壊した後に、日本の企業の競争力ということが鋭く問い直されたわけであります。三つの過剰とよく言われますが、雇用の過剰、また設備投資の過剰、債務の過剰、この三つの過剰というものを解消するプロセスで、日本の企業が再びその競争力を回復してきた。このこともまた紛れもない事実でありまして、今後さらに、中国またインド、BRICs諸国の台頭の中で、日本の企業が国際的に大変厳しい環境の中で生きていかなきゃいけない。そのときに、企業の競争力というものをどう支えるのか、こういうことも同時にまた考えなければならないわけであります。

 こうした非常に複合的な要素、そしてまたもう一つは、日本自身が人口減少社会に突入しまして、労働力人口そのものが減少している。そういった背景を踏まえながら、どういう施策、またどういう法律をつくることが最も適切なのか。これは決して、ストレートフォワードと言うんですかね、単純な議論だけでは済まない部分があるんだろうというふうに認識をいたしております。そうした点も含めて、国会での議論の中で審議が深まっていくということを期待するわけであります。

 そういった思いを持ちつつ、何点か雇用対策法の改正案等につきましてお尋ねをいたしたいというふうに思っております。

 今般の改正の理由、また趣旨としまして、人口減少が今後見込まれる中で、それに的確に対応した雇用政策を行っていかなきゃいけない、そういう必要があるということでありますけれども、今後の労働の供給についてどのように今見通しをしているのか、この点についての政府のお考えを確認したいことと、また、それに対してどのような雇用政策を今後中期的に展開をしていくのか、この点について、まず基本的なお考えをお聞きしたいと思います。

武見副大臣 今後の労働力人口の見通しについてでございますが、二〇〇五年七月の雇用政策研究会、これは職業安定局長のもとに置かれた私的諮問機関で出したものでございますが、ここでの労働力率に基づき、新しい将来推計人口を用いて試算を行いますと、二〇三〇年の労働力人口というものは六千万人程度となるものと見込んでいるところでございます。

 厚生労働省といたしましては、労働力人口の減少を抑えつつ、経済社会の活力を維持増進させるためには、若者、女性、高齢者など働く意欲を持つすべての方々の就業参加を実現していくことが極めて重要と考えております。このために、人口の減少下における就業促進を目的とした本改正法案を踏まえまして、各般にわたる雇用対策の実施に努め、より多くの国民の就業参加の実現を図っていくという考え方でおります。

福島委員 そうした大きな変化に機動的に対応する、これが政府に一番求められていることだろうというふうに思います。

 六百七十万人の団塊の世代が二〇〇七年よりは六十歳になります。また、二〇一二年には六十五歳に到達することと見込まれております。ただいまも副大臣から御答弁ありましたように、人口減少に伴いまして労働力人口が今後減少していくことが見込まれる中にありまして、特に団塊の世代を含めた高齢者の方々にできるだけ社会の支え手として活躍し続けていただくことが、日本の社会の活力を維持していくためには何よりも必要なことだというふうに思います。

 我が国の高齢者の就労意欲は欧米各国と比べても高い水準にある、このように認識をいたしておりますけれども、政府といたしましても、意欲のある高齢者の方々が働けるように、高齢者の雇用対策に取り組んでいく必要があるわけであります。

 そこで、今回の改正におきまして、国の実施すべき施策として、高年齢者等の就業促進、このことが明記をされておりますけれども、具体的にどのような施策を講じていくのか、その点についての御説明をいただきたいと思います。

高橋政府参考人 少子高齢化による労働力人口の減少が見込まれる中で、働く意欲を有する高齢者の方には存分に働いていただいて、社会の支え手として活躍し続けていただくということが大変重要な課題であるわけでございます。

 このため、一つは、現在の高年齢者雇用安定法に基づきまして、各企業におきます定年の引き上げ等、六十五歳までの雇用確保措置につきまして円滑な導入を図っていただく。また、今後は、今御指摘のございました団塊世代の動きということも踏まえて考えますと、七十歳まで働ける企業の実現に向けまして、企業の先進事例の収集、提供でありますとか、事業主に対します相談、援助を進めてまいりますほか、七十歳まで働ける企業に対する奨励措置というものを創設するなど、各般の施策を講ずることといたしているところでございます。

 これに加えまして、今回の改正法案におきまして、年齢にかかわりなく働ける社会の実現に向けまして、労働者の募集、採用にかかわる年齢制限の禁止について、これを義務化することといたしているわけでございます。

 これら施策を通じまして、高齢者が意欲と能力のある限り幾つになっても働ける社会の実現に向けて、最大限努力をしてまいりたいと考えております。

福島委員 今の御答弁はそのとおりで、しっかりやっていただきたいと思います。

 個人的な思いを申し上げますと、幾つまで企業で働き続けるかということも大事なんでありますが、団塊の世代の方々には大いに、第三の人生といいますか、みずからの働き方そのものを変えていくということも求めたいなというのが私の思いでございます。日本の戦後、会社人間という言葉がありましたけれども、会社の中だけで働くということではなくて、多様な働き方が恐らくあるんだろう。そしてまた、これだけの人口集団でございますから、日本の社会の働き方そのものを変えるような流れをぜひ団塊の世代に私は期待をしたいなというふうに思います。

 例えば、NPO法人で働く、こういう働き方もあるでしょうし、みずから起業する、こういう働き方もあるでしょうし、多様な働き方が恐らくあるんだと思います。また、企業の中で引き続いて就労するにいたしましても、そこでもまた、働き方の多様性があるんじゃないか。そういう一つの先進的な取り組みを支援していく、こういうことによって、日本の社会のあり方そのものも変えていくだけの力になっていただきたいなというのが私の率直な思いでございます。

 ただ、その中で、やはり企業には、年齢にかかわらずお元気な高齢者の方はたくさんおられるわけです、または技能の継承ということもあるわけでございますから、積極的な取り組みを促すように政府としては頑張っていただきたい、そのように思うわけであります。

 続きまして、高齢者の就業だけではありません、まさに日本の国民が、全員参加と言ってはあれですけれども、国の活力を維持するために、働ける人はしっかりと働いていただく、そのためには、若者、また女性、障害者等々の方々の就業促進というものもこれまで以上に重要な施策となることは間違いがないわけであります。

 安倍政権の最重要課題の一つでありますところの再チャレンジ支援、また成長力底上げ戦略についても、実効性を高めていく必要があります。そして、こうした障害者の方々でありますとか女性の方々でありますとか、さまざまな立場がありますけれども、その就労というものを支援していくために、ハローワークというものが非常に重要な役割を担っているわけであります。企業に対して積極的な働きかけを行う、また、障害者や生活保護受給者などの就職支援に際しましては、福祉関係機関とも連携を図ってその取り組みを進めていく、こういう多様な、ある意味で非常にパブリックな役割というのがハローワークにはあるわけであります。

 ハローワークがこうした雇用対策において果たすべき役割は今後ますます大きくなっていく、私はそのように思いますが、一方で、昨今、規制改革、民間開放ということで、ハローワークの包括的な民間委託をやってはどうか、こういう議論がなされているわけであります。

 これはILO条約との関連等々からやはり慎重に検討すべき課題であるというふうに私も認識をするわけでありますし、今申し上げましたように、今後、障害者の方々であるとか、さまざまな立場の方が就労していく、その流れをきちっとつくっていく、そこでかなめとなる役割を果たすのがハローワークである、そういう認識を持っておりますので、ハローワークについて、セーフティーネットとして、職業紹介はもちろん、雇用保険も含めたさまざまな雇用対策を全国的な体系で一体的に運営していく、このことは今後もしっかりと堅持をされる必要があるだろうというふうに思うわけであります。

 その中で、一方で、民間にゆだねられるものはゆだねていく、こういった改革も進めなければなりませんけれども、基本の骨格をどうするか、これは政府の考え方の一番土台になるところでございますから、それについて副大臣の御見解をお聞きしたいと思います。

武見副大臣 ハローワークが一体的に取り組むべきその基本という点については、委員御指摘のとおりでございます。

 このハローワークにおきましては、再チャレンジ支援対策の対象であるフリーターや、それから高齢者、障害者に対する就職支援ということに積極的に取り組んでいるところでございますが、また、成長力の底上げ戦略、ここでは、障害者や生活保護受給者などの就職支援、それからハローワークと福祉関係行政機関などとの連携によるチーム支援を行っておりまして、ハローワークがその役割をしっかり担えるよう努めていく考え方であります。

 それから、雇用保険制度の健全な運営のためには、国による雇用保険と職業紹介との一体的な実施というものが、さらに、障害者など就職困難者の就職促進のためには事業主指導と職業紹介との一体的な実施というものがそれぞれ不可欠であると私ども認識しているわけであります。

 したがいまして、今後とも、全国ネットワークのハローワークがこの三つの機能を一体的に実施して、国民の最後のセーフティーネットとしての重要な役割を果たすという基本的な考え方でこれから取り組んでいきたいと思っております。

福島委員 ぜひしっかりとお取り組みをいただきたいというふうに思います。

 続きまして、若年者の雇用の問題、今回のこの改正の一つの大きな目的でもございますが、その点についてお聞きをいたしたいと思います。

 最近の若年者の雇用情勢は、景気の回復や団塊の世代の大量退職に伴いまして、大学生、高校生の内定率は大幅に改善をし、また、フリーター数も減少傾向にある、そのように伺っております。

 しかし、若者の置かれている状況はさまざまでありまして、単に景気の回復のみでこのまま若年者の雇用問題が解決する、このように楽観的にとらえることも戒めなければならないというふうに思うわけであります。

 若年者の雇用問題については、いまだ解決するべき課題はたくさん残っている、そのように思いますが、まず現在の雇用情勢についてどのように認識をしているのか、その点を確認いたしたいと思います。

高橋政府参考人 若者の雇用情勢の状況でございますが、今御指摘ございましたとおり、新規学卒者、本年三月卒の就職内定状況につきましては、高校新卒者が八八・一%、これは一月末現在でございます。それから大学新卒者が八七・七%、これは二月一日現在でございますが、いずれも昨年同期に比べて上昇をいたしております。また、フリーターにつきましても、平成十五年の二百十七万人をピークに、平成十八年は百八十七万人ということで三年連続減少をしておるといったことなど、改善の動きが加速をしておるわけでございます。

 他方で、新卒採用が特に厳しい時期、いわゆる就職氷河期に正社員となれずにフリーターにとどまっている若者、いわゆる年長フリーターでございますが、こうした層が平成十八年におきましては九十二万人となお高い水準である。それから、ニート状態にございます若年無業者につきましても平成十八年で六十二万人ということで、いずれも改善がおくれておるわけでございまして、なお多くの課題があると認識をいたしております。

福島委員 今御答弁がありましたように、年長のフリーターの方が九十二万人、またニートの方が六十二万人と、大変膨大な数の方が今後やはり積極的な対応が必要である。景気の谷間、企業が採用枠を減らしていた際に就職活動を行わざるを得なかった就職氷河期世代の若者の方々には、正社員になれず、いまだフリーターにとどまっている、この実態が明らかになったわけであります。

 こうした状況が引き続きますと、若者の本人の方々のキャリアの蓄積がなされない、また企業内の技能の継承もなかなかうまくいかない、将来的に我が国の経済基盤を揺るがしかねない重要な課題である。そしてまた、これは社会保障制度、例えば年金の受給等にも直結する課題でございまして、今直ちにやはりこの問題に全力で取り組む必要がある、そのように思うわけであります。

 若者は我が国の次世代を担う社会の礎でありまして、政府として、こうした若者に対しての就職支援に全力を挙げて取り組むことが必要でありまして、副大臣の御決意をお聞きいたしたいと思います。

武見副大臣 御指摘のとおり、就職氷河期の世代という方々、まさに九十二万人もの多くの方々がこうしたフリーターにとどまっているという状況、これを一刻も早く改善する努力を政府としてもしなければならないという点については、御指摘のとおりでございます。

 このため、現在取り組んでおりますフリーター二十五万人の常用雇用化プランにつきまして、年長フリーターの正規雇用化の支援に重点を置き、ジョブクラブ方式による集団的な就職支援の実施、それから就職が困難な年長フリーターをトライアル雇用後に正社員として雇用する企業に対する助成、それから職業能力を判断するために企業実習を先行させる職業訓練システムの創設といったことに取り組んでいるわけであります。

 そして、企業におきましても、新卒者以外にも門戸を広げていただくために、雇用対策法を改正し、事業主に対して、若者の能力を正当に評価するための募集方法の改善などにより、若者の雇用機会の確保などに努めていただくこととしております。

 厚生労働省としても、こうした取り組みを通じて、一人でも多くの若者が新たに人生にチャレンジできるように、その社会の実現を図ってまいりたいと考えております。

福島委員 こうした若者の就労対策を全力で進めるべきだ。公明党におきましても、青年局が中心となりまして、この数年来さまざまな提言を行わせていただき、その多くが政府によりまして具体的な施策として実施をしていただいていると感謝を申し上げるものであります。そしてまた、引き続き私どもは頑張っていきたい、そのように思っております。

 ただいま副大臣から御説明がございましたが、今般の改正によりまして、若者の応募機会の拡大、とりわけ募集、採用方法の改善について事業主の努力義務とする、こういうことになるわけでありますけれども、事業主は努力義務として具体的にどのような措置をとることが求められるのか、この点について政府のお考えをお聞きしたいと思います。

高橋政府参考人 今回、若者の能力を正当に評価するための募集、採用方法の改善等によって、雇用機会の確保を図ることを事業主の努力義務といたすわけでございますが、その際、事業主が適切に対処するべき事項を指針という形で定めることをあわせ盛り込んでおるわけでございます。

 この指針の内容でございますが、改正法成立後に労働政策審議会において御議論をいただくことといたしておるわけでございますが、この改正法案を作成する際に、昨年十二月十二日に、この労働政策審議会において建議というものが取りまとめられたわけでございます。

 その建議におきまして、過去の就業形態でありますとか離職状況にとらわれずに、本人の能力、経験についての正当な評価がなされるべき旨明記されるとともに、定着促進の観点も含めまして、一つは、採用基準や職場で求められる能力、資質を明確化していく、二点目として応募資格の既卒者への開放、三点目として通年採用の導入、四点目として実践的な職業能力の開発の推進等々についてこの建議の中に盛り込まれたわけでございまして、こうしたことが一つの参考になっていくのかなというふうに思っておるところでございます。

 いずれにしましても、労働政策審議会にお諮りをして、この指針については適切に定めていきたいと考えておるところでございます。

福島委員 実践的な職業能力の開発、向上、こういうものは非常に大事だと思います。

 昨年、古屋委員とともにデュアルシステムの実践、実施状況について視察に伺わせていただきました。多くの方がそうした技能を身につけることによって、実際にその就職を可能にしている、その実態を見て、大変すばらしい取り組みだ、そのように思いました。

 しかし、また一方で、そういうトレーニングを受けている期間の生活をどうするのかということで二の足を踏むケースも間々あるわけでありまして、そしてまた、そのことで、手近なところでやはりまたアルバイトとして働く、そういうことを余儀なくされるという実態もございました。こうした方々に対して、生活面の支援も含めてそうした技能を習得するような機会を与える、こういうことについても、ぜひ政府として御検討していただきたいと要望いたしておきます。

 また、いわゆる就職氷河期に、希望しながらも正社員になれずにいまだフリーターにとどまっている若者は、いずれ若者でなくなる。雇用対策法第八条に規定されているところの若者の範疇から外れていくことになっていくということが想定されるわけでありますけれども、そうした今後の変化についても対応していただいて、必要があれば引き続き手厚い支援を行っていただきたい、そのように考えるわけでありますが、政府のお考えをお聞きしたいと思います。

高橋政府参考人 若者、具体的には三十五歳未満といったようなところを念頭に置いて今回特に応募機会の拡大の努力義務を設けさせていただきましたのは、現下の若者全体で見た雇用をめぐる状況というのが、例えば有効求人倍率はかなり高いわけでございますが、他方で完全失業率も高い、こういうような状態にある、この実態を踏まえた形で対応させていただいたわけでございます。

 こうした観点からいいますと、三十五歳を超える、あるいは四十歳代も含めて考えますと、有効求人倍率は、他の年齢層に比較しますと、今、比較的良好な状況である。また、完全失業率も、年齢計に比べますと低い状態にある。こういうようなことで、現時点では、こうした方々も含めて、法的な措置まで必要な状態ではないのではないかとも考えておるわけでございます。

 ただ、委員御指摘のように、いずれ年齢を加えることによってその範疇から漏れて、しかし、なかなか十分な就職ができない、こういう方々についても、当然私ども、ハローワークの場におきまして、個々の求職者の状況を十分踏まえながら、きめ細かな支援措置というものを講ずることによりまして、こうした方々も含めました雇用の安定を図ってまいりたいというふうに考えております。

福島委員 最近、「製造業崩壊」という本が出版されましたが、なかなか製造業の中小企業、人手不足感というのがあるようでございます。しかしながら、なかなか若い人が定着しない、こういう実態も一方ではあるということがその中では報告されております。

 中小企業とすれば、ぜひ安定して製造業の立場で継続してやってほしい、そう思うんだけれども、なかなかその現場が合わないのかどうか、やめてしまう、そしてまたサービス業の方のアルバイトの生活に戻ってしまう、こういう話もあるようでございます。こういった点では、どういう現場の就労管理また支援をするか、こういう話もあるんだろうと思いますけれども、そういった点にもぜひ光を当てていただきたいと御要望いたしておきます。

 募集、採用時における年齢制限の禁止、先ほどもいろいろと議論になっておりましたが、雇用失業情勢は厳しさが残るものの改善が進んでおりますけれども、中高年齢者については、一たん離職すると再就職が厳しい状況にある、これは事実でございます。公明党におきましても、自民党での議論と並行して、中高年齢者の再就職機会の妨げになる募集時の年齢制限について議論いたしまして、最終的に与党の実務者協議によりまして、現行の努力義務では不十分ではないかといたしまして、与党から政府に対して、年齢制限禁止について義務化するように申し入れを行ったところでございます。

 ここで、現在の努力義務に関して、指針において、年齢制限が認められる例外事由が十項目定められております。今回の義務化に当たりましても、厚生労働省令で例外事項を定める、このように伺っておりますが、この例外事項がこれまでの十項目と同程度ということになれば、せっかく義務化してもなかなか現状が変わらない、こういう話になるんだろうと思います。

 意欲と能力のある中高年齢者が、年齢にかかわりなく雇用機会を得ることができるように、例外事項を定める省令を検討する際に、現行の年齢指針で定める十項目についてさらに必要最低限のものへと絞り込みを行っていただきたい。これは、この国会におきましてもいろいろと質問されているところでございますが、この点についての御見解をお聞きいたしたいというふうに思います。

高橋政府参考人 御指摘のとおり、現行の雇用対策法第七条の努力義務の例外としての年齢制限が認められる場合として、この年齢指針におきまして十項目の例外規定が定められておるわけでございますが、今回の改正によります年齢制限禁止を義務化するに当たりましても、一定の合理的な理由があって例外的に年齢制限が認められる場合について厚生労働省令で規定をすることといたしておるところでございますが、この例外事由につきましては、企業の雇用管理の実態も十分踏まえながら、しかし、やはり必要最小限の場合に限定していくという方向で検討してまいりたいと考えております。

福島委員 よろしくお願いいたします。

 そしてまた、この年齢制限の禁止の義務化について、その違反に対して罰則が設けられていない、これでは不十分じゃないか、どうやって実効性を担保するんだ、こういう御指摘、御批判もあるわけであります。具体的に、この実効性をどのように確保していくのか、この点について御見解をお聞きしたいと思います。

高橋政府参考人 私どもといたしましては、今般の法改正を踏まえまして、事業主に対しまして、この募集、採用におきます年齢制限禁止の趣旨というものを周知し、理解を求めていくと同時に、求人の取り扱い、求人を出します際に労働者に求める能力あるいは経験といったような求人条件といったものを明示することを含めまして、その徹底を図ることを予定いたしておるところでございます。

 また、合理的な理由なく年齢制限が行われているような場合には、事業主に対しまして、必要な助言、指導、または勧告を行うことによりまして、確実に是正をさせて義務化の実効性を確保してまいりたい、このように考えております。

福島委員 今後の法施行後の運用状況を見ながら、勧告につきましても、なかなか厳しい対応でございますから、どの程度それが出されるか、こういった点もあろうかと思います。しっかりと我々もフォローしていきたいと思いますし、政府としても実施状況を厳格に見守っていただきたい、そのように思います。

 全国的に雇用情勢は改善をいたしておりますけれども、しかし一方で、北海道や青森県など、二人に一つの仕事しかない、こういう大変厳しい地域がまだ存在しているということも事実でございます。こうした雇用情勢が厳しい地域の状況についてどう考えるのか、一つの格差問題でございますけれども、こうした地域に対してどのような支援策を講じていくのか、もう時間がございませんので、最後の二つの通告いたしました質問につきましては、政府の対応についてまとめて御説明いただきたいと思います。

高橋政府参考人 御指摘のとおり、現在の雇用失業情勢全体としては改善を見ておるわけでございますが、しかし、この改善のテンポというものの地域差が依然見られるわけでございます。

 現在、私ども、雇用情勢が厳しい地域につきましては、現行の地域雇用開発促進法に基づきますさまざまな支援に加えまして、十八年度から、雇用の非常に厳しい七道県に対しまして、地域雇用戦略会議を設置、開催いたしますとともに、地域提案型雇用創造促進事業につきまして、この七道県に重点配分を行うなどの重点的な支援を講じてきておるところでございます。

 今回、地域雇用開発促進法を改正いたしまして、従来の地域法におきます支援のための地域類型というものを従来の四つから二つの類型に再編しまして、雇用情勢の厳しい地域にこの支援を重点化していくことといたしております。

 具体的には、雇用情勢が特に厳しい地域でございます雇用開発促進地域につきまして、事業所の設置、整備に伴う雇い入れ等に対する助成を行いますとともに、雇用情勢が厳しい中で雇用創造に向けた意欲が高い地域でございます自発雇用創造地域については、地域の協議会が提案をいたします事業を選抜いたしまして、その事業を委託する形で支援を実施していくといったような施策を盛り込んだところでございます。

福島委員 もう時間も終わりますが、労働行政だけにとどまらず、その地域のニーズは何か、産業行政等々、省庁横断的に地域の要望を生かしながら取り組みをしっかりと進めていただきたい、このことを要望いたしまして、質問を終わります。

 どうもありがとうございました。

櫻田委員長 次に、太田和美君。

太田(和)委員 厚生労働委員会では初めての質問になりますが、本日は、貴重な質問の機会を与えていただきまして、ありがとうございます。

 私は、ちょうど一年前、補欠選挙で当選をさせていただきました。その選挙で訴えたことはたった一つ、負け組ゼロへというキャッチフレーズに集約される格差社会の是正でありました。本日は、雇用対策法に関連して、格差社会の焦点の一つである若者の就労支援策に絞って質問させていただきますが、本論に入る前に、まず、格差社会についての基本的認識について大臣にお伺いしたいと思います。

 結果の平等と機会の平等という二つの考えがあります。大臣はどちらを重視しておられるのでしょうか。お願いいたします。

柳澤国務大臣 結果の平等それから機会の平等ということがございますが、いずれかといえば、やはりそれは機会の平等が大事ではないか、こういうように思いますけれども、その機会というものがどういうふうに与えられるのがいいのか、一回みんな平等に与えられればそれでいいのかというと、そうではなくて、やはり何回も何回もその機会を与えられるというようなことが、特に職業との関係なぞでは当然のことながら大事だというふうに考えているということでございます。

    〔委員長退席、石崎委員長代理着席〕

太田(和)委員 私も、人間の能力には差があり、結果においてある程度の差が発生するのはやむを得ないことだと思います。

 その意味で、まず第一に、機会の平等が実現されるよう政策を実行するのは当然のことだと思います。しかし一方、結果の不平等が余りにも拡大すると、機会の平等さえ実現されなくなる。これは、医者の子供の四割はまた医者になるとか、あるいは難関大学入学者の家庭の平均収入がかつてよりはるかに高くなったとか、いわゆる格差の固定化としてあらわれています。

 若者の就職問題というのは、人生のスタート地点で機会が不平等になってはいけないというお話ですが、日本の社会全体、結果の不平等が広がり過ぎると機会の平等は確保できない、機会の平等を確保するためには結果の不平等が広がり過ぎることにストップをかけなければならない、この認識は、大臣、いかがでしょうか。

柳澤国務大臣 おっしゃるとおり、機会の平等がまず第一に必要なんですけれども、そうすると格差が生ずるわけですけれども、格差の固定化、特にそれが世代をまたがってまた格差を生んでいくというようなことは、これはよくない、適当でないということがあろうかと思うんです。

 今、我々政府が考えていることは、格差の固定化はよくないということでありまして、固定化をすることをどうやって防ぐかということでいろいろな施策が考えられているということは、委員も御案内のとおりかと思います。

太田(和)委員 ありがとうございます。

 そこで、大学を卒業した若者が、これから先、一生フリーターでいた場合と、正社員として働いた場合、死ぬまでにどのくらいの収入格差が生じると大臣は思いますか。大体これぐらいという数字で結構ですので、お願いいたします。

柳澤国務大臣 これは、私も何かの雑誌で読んだ記憶があります。恐らく論者によっていろいろな評価があろうかと思うんですけれども、生涯の所得というようなことで考えますと、ちょっと記憶が鮮明でないので数字は申し上げませんけれども、かなりの実は格差がある、二けたになるかというぐらいの格差があるというふうにたしか読んだ記憶があります。

太田(和)委員 正確な統計がないので一概には言えないようです。しかし、ある推計では、大卒、正社員の生涯賃金が三億円、退職金が二千七百万円、平均的な年金収入が四千三百万円、これで合計三億七千万円。一方、年収百八十万円程度のフリーターの場合、生涯賃金は七千万円、退職金はないですし、国民年金を平均余命十八年で計算すると一千二百万円、合計八千二百万円です。約二億九千万円の差になります。もし保険料未納で年金がもらえないとすると、差は三億円にもなるそうです。これは極端な推計かもしれませんが、私はちょっと格差があり過ぎだと思うんですね。もちろん、国家の税収にも響きますし、生活保護などの社会的コストも大きくなる。

 厚生労働省の最新の賃金構造基本統計によりますと、非正規社員の賃金は正社員の六割だそうです。その差は、前回調査が十二万七千八百円で今回が十二万七千百円、横ばいというか、むしろ七百円とわずかながら差は広がっております。景気がよくなったにもかかわらずです。

 そこで、フリーターやニート数の推移ですが、総務省の最新の労働力調査では、平成十七年に二百一万人いたフリーターが百八十七万人になった、ニートは六十四万人が六十二万人になった、この推移について、大臣はどのような評価をお持ちでしょうか。

柳澤国務大臣 私の持っている、これも総務省の労働力調査あるいは就業構造基本調査によりますと、フリーターにつきましては、平成十五年が二百十七万人、最近におきましてはピークを記録した、それに対して平成十八年は百八十七万人ということでございますので、おおむね三十万近くのフリーターの数の減少が見られたということでございます。

 それからニートでございますけれども、ニートにつきましては、このところ六十四万人くらいで、平成十五年を中心としてずっと変化がなかったものが、平成十八年におきましては六十二万人になったということが言われているわけでございます。

 ただ、そうした推移の中で何を見るかということでございますけれども、先ほどのフリーターの方々の数の推移は三十万減ということでございますけれども、それは主として十五歳から二十四歳までの方々がかなり減っておりまして、いわゆる年長フリーター、二十五歳から三十四歳までの方々は、減ってはいるんだけれどもその幅が小さいということでございまして、なお多くの課題があるというように私どもは見ておるわけでございます。

太田(和)委員 今大臣からもお話がございましたが、統計を詳しく見ますと、十五歳から二十四歳までのフリーターは昨年調査から九万人減る一方、二十五歳から三十四歳までのフリーターは五万人しか減っていない。しかも、三十五歳以上は統計には載ってきません。また、ニートも十五歳から十九歳、二十歳から二十四歳の層では、逆にそれぞれ一万人ずつふえています。

 景気がよくなっているにもかかわらず、若者の中でも十五歳から二十四歳までの層でニートがふえている。あるいは年長フリーターがなかなか減らない。この事実は、若者の雇用問題が景気の循環だけによるものではなく、構造的な問題であることの証拠だと私は思います。だからこそ、川上から川下までの一貫した若年就労支援策が求められているのだと思っております。川上が子供の発達段階に応じたキャリア教育、そして川中が就労支援策、川下が雇用の質の改革、正社員をふやし、非正規社員を減らす政策。これは先日、青少年特別委員会で質問させていただきました。

 この点は後でまた質問させていただきますが、今申し上げましたような統計数字の内訳、これはフリーター、ニートは景気がよくなれば減るのだというような簡単なことではない、政府を挙げて取り組むべき構造的な問題だと私は思っております。

 大臣、そのような認識はお持ちでしょうか。

柳澤国務大臣 フリーター、ニートの方々の推移については先ほど申し上げたとおりで、認識が共通だと思います。

 フリーター、ニートの方々について、フリーターの方々については顕著に減少したというふうな面もあると思うんですけれども、そういう中でも年長フリーターの減り方が少ないというようなことを考えますと、今委員が御指摘のような、単なる経済あるいは景気の循環というようなことでこの問題が解決されるわけではないという御指摘は当たっているというふうに私は考えるわけでございます。

 したがいまして、フリーターの方々につきましても、私ども、特に、いわゆる今年長フリーターと言われる、年配になった方々については、そのいきさつを考えますときに、やはり非常に個人の責めに帰せられないようなことがあったのではないか、こういう考え方もありまして、これについては、使用者側と申しますか、企業の側によく事情をわかってもらって、理解ある雇用ということをやってもらいたいというふうに考えている次第でございます。

 それから、ニートの方々というのは、これはまた特別な難しさがあるというふうに私ども考えておりまして、これはむしろ経済の状況というよりも、今委員が指摘されるようないろいろな総合的なアプローチをして、この問題の解決が少しでもできるように取り組んでいかなければならない問題である、このように考えております。

太田(和)委員 ここまでは基本的な認識についてお尋ねをいたしました。しかし、現実はどうか。これほどまでに格差拡大が深刻化してきた。若者の雇用はその端的なあらわれである。この問題に対してどうして政府がもっと大々的に取り組まないのか、私にはそんな疑問がぬぐえません。

 例えば、若者の就労支援に政府が力を入れて事態が大きく改善したイギリスのニューディール政策と比べてみますと、イギリスでは、日本円に換算すると、若年就労支援対策として四百八十六億円、これとは別にニート対策として九百億円、合計一千四百億円近い予算を投入しております。日本の場合、厚生労働省予算で三百五十億円、調査室にお願いいたしまして、他省庁分も含めた政府全体の予算を合計していただきましたら四百五十三億円、これはキャリア教育なども含めての数字です。しかも、日本とイギリスでは倍ぐらいの人口規模の違いがあることを考えに入れれば、日英の取り組みの差は数字以上に開いていると言えるのではないかと思います。

 予算は一つのバロメーターではないかと思います。日本の取り組みは極めて不十分ではないのか、大臣の所感をお伺いします。

柳澤国務大臣 若者の就労支援に差し向けられる予算の規模をどう考えるかということでございます。

 確かに、予算というのは、施策の規模というか厚みというか、それをあらわす指標ではあろうと思うんですけれども、加えまして、予算には、執行の仕方によってその目的とすることがどういうぐあいに実現できるかということもあるわけでございます。したがって、私どもの予算をもってしても、実はかなりの成果を上げているということをぜひ指摘させていただきたいというように思うわけでございます。

 後でまた委員からもいろいろなお話が出ようかと思うんですけれども、ハローワークにおけるフリーターの常用就職支援事業というような、これはむしろルーチンの予算を使った仕事という面が多いわけですが、それでも現実に就業者を実現した数というのは十八万七千人ということになっておりますし、また、ジョブカフェ等によるものとかあるいはトライアル雇用によるものとかいうようなことで、これも合わせて六万人強の就職支援を実現しているというようなことがございまして、私どもとしては、予算の効率的な運用というものでもって、それなりの成果を上げているというように考えます。

 加えまして、委員がどの範囲の欧米の国の予算をごらんになった上での議論をなさっているかはちょっとわからないんですけれども、私どもとしては、主要先進国の若年の失業率はほとんどの国で我が国を上回っているというような状況も背景としてあるのかなというように考えているところでございます。

太田(和)委員 それでは、具体的にお伺いをしていきたいと思っております。

 ジョブカフェは、若者の間では認知度も高まってきて、この間の政府の若年就労支援に関する取り組みの象徴と言えるのではないかと思っております。しかし、これは、基本は自治体の取り組みを政府が支援するというスタイルになっております。なぜ政府自身がジョブカフェをやらなかったのでしょうか。

柳澤国務大臣 ジョブカフェにつきましては、平成十五年度に策定されました若者自立・挑戦プランというプランに基づきまして、若年者の雇用問題について、政府、地方自治体、教育界、産業界等が一体となって根本的な対策を早急に講じよう、そういう認識のもとでスタートしたものでございまして、その場合、地域の主体的な取り組みによる新たな仕組みという位置づけがなされたものでございます。そういうことから、政府としては、都道府県の主体的な取り組みを尊重しまして、地域の若年者雇用の実情を踏まえて設置されましたジョブカフェに対して、厚労省と経産省が連携して支援するという仕組みでこれを運営したものでございます。

 厚労省はその中で何をやったかといいますと、一つには、ジョブカフェにハローワークを併設したということで、これはかなり成果を上げたというふうに考えておりますし、また、各種のセミナーをジョブカフェに委託したというようなことで厚労省としての支援をいたしました。

 そういうようなことで、雇用というものあるいは雇用をめぐる状況というものが地域でもって区々であるというようなことで、国がすぐに前面に出るということではなくて、この場合には地域の自治体が前面に出てそれをいろいろな形で後押しする、こういうスキームのもとで運営がなされたというふうに御理解いただければと思うわけでございます。

太田(和)委員 そう言うと聞こえはいいんですが、結局自治体任せなんですね。

 国の責任においてハローワークに若年者向けのカウンセラーを配置し、若者向けのワンストップ就職サービスを行えば、その分ゆとりができる都道府県はもっときめ細かく県内の主要都市で就労支援策を打てると思うんですが、どうでしょうか。

柳澤国務大臣 ちょっと質問の趣旨がとれなかったんですけれども。恐縮でございます、もう一度御質問いただければと思います。

太田(和)委員 先ほど大臣もお話がありましたが、ジョブカフェにハローワークを併設したということも言っておりましたが、ジョブカフェというのは県に一つあるかないかの箇所になっております。ですから、私が申し上げたいのは、国の責任において、全国何百カ所かあるハローワークに対して、若年者向けのカウンセラーをそこに配置して若者向けのワンストップ就職サービスを行えば、その分ゆとりができる都道府県はもっときめ細かく県内の主要都市で就労支援策を打てると思うんですが、そういった考えはどうでしょうかということです。

高橋政府参考人 私ども、フリーターを初めといたしました若年者に対する就職支援ということにつきまして、特にフリーターの場合については、不安定な就業を繰り返すといったことで、安定した就業の経験が少ない者が大変多い、そういう意味で、常用雇用での就職の実現を図っていく上では、個々のフリーターの置かれた状況等を的確に把握してきめ細かな支援を行っていく必要がある、このように認識をいたしているわけでございます。

 そうしたもとに、今委員も若干お触れになられましたが、私ども、各ハローワークにおきましてフリーター向けの窓口を設けまして、ここにフリーター常用就職サポーターという専門の相談員を配置いたしまして、こうした相談員による一対一の相談、助言でありますとか、常用就職に向けたセミナーあるいは合同選考会の開催、個別求人開拓、それから職業紹介といったようなことを通じて、フリーターを初めといたしました若年者の常用雇用化のための一貫した支援を実施しておるところでございます。

 こうした支援を行う上で、当然私どもも、一方でジョブカフェとの連携ということも十分図りながら、このハローワークの窓口におきます就職支援ということに努めておるところでございます。

太田(和)委員 先日、千葉県の船橋にあるジョブカフェに、私、視察に行ってまいりました。千葉のジョブカフェはヤングハローワークと併設されておりまして、お互いの垣根を取り払ってうまく連携しております。平成十六年からことし二月まで来場者が約十万人、三万二千人が登録して、うち一万六千人、つまり登録者の半分が就職したり就職先が決まったりしたそうで、大変実績を上げております。

 すいている午前中に行ったのですが、責任者の方が言うには、午後は病院の待合室みたいに込み合うということでした。宣伝に一銭もかけていないのに込んでいるそうです。もっと広範な若者に宣伝したら、スペースやカウンセラー、スタッフが足りないのは目に見えています。責任者の方は、経済産業省からの補助が打ち切りになり、カウンセラーの数を減らすなど、その穴埋めに四苦八苦しているともおっしゃっておりました。

 千葉のジョブカフェは船橋にありますから、来場者はやはり船橋周辺が中心だということでした。私の選挙区は松戸市、流山市、野田市ですから、ここからはなかなか船橋まで行きにくい。野田市ではジョブカフェの出張サービスを行っているそうですが、やはり継続した相談が必要になるので、出張だと効果が薄いそうです。

 私が言いたいのは、ジョブカフェは県に一つしかない。千葉の場合は、宣伝もしていないそうですからこれだけの実績にとどまっているのであって、実は、潜在的なニーズがもっともっとあるのではないかということです。

 千葉県では、県内に出張所を除いたハローワークは十カ所ありますから、このレベルでカウンセラーをそれぞれ配置して、ジョブカフェのような支援を展開したっていいわけです。そうすればもっと効果が上がったのではないか、ジョブカフェという名前にこだわるわけではないですが、ハローワークでそういう機能を果たせるようにすればいいのではないか、現場の担当者の声を聞いてそのように私は感じたわけですが、大臣、もう一度お願いいたします。

柳澤国務大臣 太田委員から大変力強い御発言をいただいたように受けとめました。

 私も、しばしばというか、この職にありまして、時間があればそういうところに出かけるようにしておりますけれども、ハローワークは、かなりみんな頑張っていてくれるという印象を持っております。

 ジョブカフェというのは、これはどなたが命名したか知りませんけれども、非常に名称をつけるということについては得手なところが日本の政府組織にもありまして、大変ヒット作ではないかと思うのでございますけれども、さて、機能はどうかということになりますと、これは実はハローワークが縁の下の力持ちをやっているというのが、身びいきではないですけれども、実情ではないか、このように私は思っております。

 そういう意味で、今太田委員が言われるように、ハローワークということが前に出て、特にヤングハローワークなんというのはそういうことを前面に出しているわけですけれども、そういうようなことで特にフリーターを中心とする若者の就労支援を充実していったらいいじゃないかという御意見、これは私どもも同じように考えてこれに取り組ませていただいておるということを申し上げたいと思います。

太田(和)委員 国の責任で若年雇用対策をもっと大々的に全国展開するということに及び腰になっている理由は、別にあるのではないかと私は思っております。

 国の責任でとなった場合、その拠点はハローワークになるのだろうと思うわけですが、今、ハローワークは民営化、市場化テストの導入が経済財政諮問会議で議論になっており、厚生労働省としては、ハローワークは既に、行政改革を進めた結果、必要最低限のセーフティーネットとなっていて、余りのハローワークはないという主張をしておられます。

 また、日本のハローワークは、欧米主要国の公共職業安定機関と比べて、拠点数、職員定数ともに相当程度規模が小さいという主張をされております。定員は、昭和四十二年以降、二八%削減し、拠点数も一六%以上削減したということであります。そのような中で、ハローワークを拠点に大々的に若年就労支援を展開するとなれば、民営化論者を一層刺激するのではないか、そんな配慮でもあるのかと推測してしまいます。

 私は、ハローワークは必要最低限のセーフティーネット、この必要最低限という意味は、社会経済情勢の変化によって意味が違うとのことでありますから、この構造的な若者の雇用問題というものに対して、もっと胸を張って堂々と提起しても、国民の理解は得られるのではないかと思っております。大臣、いかがでしょうか。

柳澤国務大臣 ハローワークのこのごろにおける施設数、それからまた定員数の推移についてお触れいただいたわけですが、そうだんだん縮小していく必要はないではないか、胸を張って、もっと、必要であれば拡大の方向に向けた、そういうこともあっていいではないかというまことに力強い御発言でございまして、ありがたく受けとめさせていただきます。

 これについて私の所見はどうかということですが、人数につきましては、これは恐らく定員だろうと思います。いわゆる定員管理がなされている公務員の人数かと思うんですけれども、それ以外に臨時の職員を登用するということも可能でございますので、そうした努力も他面行われているということでございます。

 拠点については、やはりこれは経済社会情勢の変化に応じて機動的に、できるだけそういう需要の大きい、強いところに拠点を設けさせていただくというのは当然だと思いますので、こうした減少傾向については、これは必要なところにしっかり設置をするということであれば、結果としてこうしたことがあったとしても、私はそれほど差し支えはない、このように考えております。

 いずれにせよ、先ほど来、私、ありがたいというふうに申し上げておりますように、ハローワークはセーフティーネットでありまして、自分でもっていろいろな、自分が売り手市場になって就業の機会を得られるような方について、別にハローワークがしゃしゃり出る必要は毛頭ないわけで、ハローワークというのは、むしろ就職弱者と申しますか、そういうような方々のためのセーフティーネットとしてそれをしっかり支えていくということで、これに徹すべきだ、このように考えております。

 そういう意味では、今回いろいろ、民営化とか、あるいは、民営化はそんなにございませんけれども、市場化テストはどうかというような御意見もありますけれども、そのあたりのことを十分踏まえた上での話でなければならない、このように考えまして、そういう対応をとらせていただいているというところでございます。

太田(和)委員 民主党は、このたび、若年者の職業安定特別措置法案を提出いたしました。これは一言で言うと、若年者雇用については国の施策として位置づけ、全国各地で国の責任として展開する意思を法案としてお示ししたものであります。

 経産省の補助金がなくなったからカウンセラーを減らさざるを得ない、宣伝するとスペースやスタッフも不足してしまう。自治体は自治体として一生懸命に取り組んでおられて頭が下がるのですが、やはりこれは自治体では限界があるのではないか。国が責任を持って行わなければならない根拠はそこにあると思っております。

 そこで、大臣、少し質問をかえますが、政府の再チャレンジ支援総合プラン行動計画を見ますと、フリーター、ニートが対象となっている施策の数は全部で幾つでしょうか。

柳澤国務大臣 再チャレの計画は、大きく分けますと、就業弱者と申しますか、そういう人たちごとにカテゴリーが分けられておりまして、フリーター、ニートの方々につきましては、長期デフレ等による就職難あるいは経済的困窮等からの再チャレンジ、そういうくくりの中に属しております。

 その中に含まれたプロジェクトにつきまして幾つかということにつきましては、細目が分かれておりまして、いろいろな整理の仕方があろうかと思うんですが、私の手元の概要という資料によりますと、六つに分けられてこれが整理されているということでございます。

太田(和)委員 全部で五十九項目です。そのうち、厚生労働省が担当しているのが三十一、他省庁と共同でやるもの、全省庁で取り組むものを含めれば三十四です。いろいろあって、正直こんなにあるのかと驚きました。ただ、私は、数が多ければいいというものではないと思います。どういう違いがあるのかわからないような、紛らわしいキーワードが多過ぎると思います。

 目についたところだけ拾ってみても、若年者ジョブサポーターとフリーター常用就職サポーター、再チャレンジプランナーはどう違うのか、あるいはジョブカフェ、ジョブクラブ、ヤングワークプラザ、ヤングジョブスポット、地域若者サポートステーションはどう違うのか、企業実習先行型訓練システムと実践型人材養成システムは何が違うのか。私もかなり頭が混乱しましたが、全部に違いがあることが、厚生労働省の大変丁寧な説明を聞いて納得できました。

 しかし、丁寧な説明を聞く機会もない一般の若者はどうでしょうか。自分はどこに行けばいいのか、何を利用すればいいのか、混乱するのではないでしょうか。大臣はどのように感じられますか。また、御自分の子供がもし年長フリーターだった場合に、どこに行きなさいと言いますか。ジョブカフェがいいのか、それともハローワークなのか、それとも違うところなのか。どうでしょうか。

柳澤国務大臣 委員が御指摘になられたとおり、私もこの仕事に着任をいたしまして一度レクを受けたわけですけれども、なかなか一遍にはのみ込めないということがございまして、今委員のお話を聞いておりまして、私だけが例外に理解が不足していたわけではないということで、やや安心もしたわけですが。

 しかしながら、これをよく吟味していきますと、やはりかゆいところに手を届かせようという努力の結果こういうことになっているということも、それもまた、委員がよく聞いてみたら何となくわかったようなという、何となくという言葉をお使いになったかどうかはともかくとして、おわかりになられたということでございます。

 いずれにせよ、これはどういうことかというと、フリーターの人たちというのは、就職に、何回も定着できないということで、やや気分的にも強気でないというか、少し弱気になっているというような面もありますので、できる限り来やすいような場所だとか窓口の雰囲気だとかいうものをつくりたい。それからまた、今度は実際の対応の仕方についても、集団的に講義をするというか、そういうようなことのほかに、個別にまずプランをつくってやる、それからプランをつくるだけではなくて、ナビゲーターと称して、本当に最終の就職ができるまで個別のマンツーマンの世話をしてしまうというところまで考えているとか、非常にきめ細かなんですね。

 そういうようなことから、こうしたプロジェクトあるいはプログラムが非常に多岐にわたったということはあろうかと思うんです。私は、それにしてももうちょっと、いろいろ物を考える政策の担当者などについても、わかる整理の仕方というものは考えてもらいたいなという気持ちがいたしております。

 なお、私の子供がもし年長フリーターだったらどうするんだということでございますが、私はやはりハローワークに行かせると思います。やはりハローワークが一番、すべてわかっていただけるんじゃないか、こう思いますから、ハローワークに行かせるだろう、こういうのが私の考え方でございます。

太田(和)委員 ハローワークということでしたが、では、鳴り物入りでジョブカフェをつくった意義は何だったのかと思うんですが。

 私は、それぞれの施策の方向性自体は悪くないと思っています。しかし、商品ラインナップの展開がお粗末だと思うんです。商品はたくさんあっても、棚の区分けがされていない、お勧め品がわからない、それぞれの商品の違いがわかるようなカタログもない、そこに行けばスタッフがそれぞれの違いをわかりやすく説明して、ユーザーにマッチした商品を案内する販売店、これがジョブカフェの意図したものだと思うんですが、量が少な過ぎる。私は、何を最優先に取り組むのかもっと整理して、そこに予算も人手も集中的につぎ込むことが重要ではないかと思っています。

 順次、具体的にお伺いしていきますが、フリーター常用就職支援事業について、概要と実績、予算を御説明ください。

高橋政府参考人 フリーター常用就職支援事業でございますが、これは先ほども若干お答えをさせていただいたところでございますが、ハローワークにおきましてフリーター向けの窓口を設けて、そこにフリーター常用就職サポーターという専門の相談員を配置して、その専門の相談員がフリーターの方と一対一の相談を行うあるいは助言を行う、また常用就職に向けたセミナーや合同選考会の開催を行う、個別求人開拓を行う、そして職業紹介を行うといったような、フリーターの常用雇用化のための一貫した支援を実施いたす事業でございまして、本年度におきましては、十九年度でございますが、約六億三千万円の予算を計上しているところでございます。

太田(和)委員 フリーター常用就職サポーターは何人の配置になるのでしょうか。

高橋政府参考人 フリーター常用就職サポーターでございますが、全国で約二百名の相談員を配置するということといたしておりますが、特に、やはり若年者なりフリーターの多い地域のハローワークに重点的に配置をしていきたいというふうに考えているところでございます。

    〔石崎委員長代理退席、委員長着席〕

太田(和)委員 ありがとうございます。

 やはり少ないと思うんですね。全国のハローワークの出張所も入れれば三分の一ぐらいしかカバーできません。この事業は、十七年度の実績で常用雇用に結びついたのが十一・九万人で、二十万人常用雇用化プランの半数を占めているわけです。この事業が有効だとするなら、思い切ってここに重点的に予算もつぎ込むぐらいのことが必要なのではないかと感じました。大臣はどのように思われますか。

柳澤国務大臣 委員の仰せになることも理解できますけれども、しかしながら、やはり私ども、同時に予算の効率的な運用ということは常に心がけなければならないというふうにも考えるわけでございまして、そのバランスの中で私どもは予算規模あるいはこれに当たる人員規模の適正なレベルというものを決めていかなければならないということでございまして、全体としてまだまだフリーターの方々が多い、特に年長フリーターの方々にはなお工夫を要するということの中で、この充実の方向で今後とも考えて取り組んでいきたい、このように考えております。

太田(和)委員 では、再チャレンジプランナー事業について、概要と予算を御説明ください。

高橋政府参考人 再チャレンジプランナー事業でございますが、全体として雇用情勢は改善をしておるわけでございますが、その一方で、例えばフリーターも含めました若者の場合、中には、十分な能力がありながら、効果的な求職活動の進め方がわからないために、結果として求職期間が長期化をする傾向にある若者が一方でおられる。他方、リストラ等によりまして、離職後、計画的かつ効果的な求職活動ができないために、みずからの能力を生かせる仕事を見つけられない中高年齢者といった方々もハローワークの窓口においては少なからず存在をしておるわけでございまして、こうした求職者の方々の早期再就職を支援していくことが大変重要な課題になっておるわけでございます。

 そこで、平成十九年度より、全国の主要なハローワークにこの再チャレンジプランナーを新たに配置いたしまして、一つは、みずから再就職の実現に向けた計画の策定が可能な若者に対しては、その計画策定について少し相談、助言をしてやればみずからつくれる、こういうようなケース。他方、それがなかなか困難な中高年齢者に対しましては、これまでのキャリアというものを点検していただく、その中で足らざる能力の再開発を行っていただく、あるいは具体的に求職活動を行う上でのノウハウといったものを付与していく等々の総合的な支援計画を策定いたしまして、計画的、効果的な求職活動を支援することといたしておるわけでございます。

 本年度におきましては、約三十一億円の予算を計上してこの事業を実施することといたしておるところでございます。

太田(和)委員 ハローワークにキャリアカウンセリングや臨床心理の知識のあるプランナーを配置して、就職実現に向けた計画策定に対する相談を受け付けるということですが、全国に五百六十人ということで十分なのでしょうか。特に、これは中高年や早期再就職希望者、つまり若者以外も対象ということですから、私には決して十分とは思えません。

 次に、若年労働者キャリア形成支援・相談事業についても、概要と実績、予算、また、相談を受ける週当たりの頻度や相談窓口の数について教えてください。

奥田政府参考人 お答えいたします。

 若年労働者キャリア形成支援・相談事業の概要でございます。

 これは、現に働いておられる若者、おおむね三十五歳未満の方を対象にしておりますけれども、そういう方が、仕事上の悩みでありますとか、現に今自分がやっている仕事をこれからさらにどういうふうに発展させていったらいいのかというようなこと、これはキャリア形成支援というふうに言っておりますけれども、そういった相談をキャリアコンサルタントの方がお受けするということでございます。

 実施をしております場所は、地方公共団体が設置をしております公共施設、多くは勤労青少年ホームでございますけれども、この勤労青少年ホームで、平日の夜間、現に働いておられる方が対象になりますので、そういった方々が来やすい時間帯ということで、六時から九時ぐらいの時間帯、週に一回ずつということで、現在、全国で四十七カ所でこれを実施しているところでございます。

 十九年度の予算額は二千五百九十五万円ということでございます。

太田(和)委員 離職を防ぐために仕事の悩み等に関して相談を受けるということで、これはこれで必要なことだと思いますが、予算が二千六百万円しかなくて、週一回三時間、しかも全国で四十七カ所ですから、県庁所在地だけでしょうか。予約で満杯のところもあると聞きましたから、潜在的なニーズはあると思うんです。しかし、このような体制では非常に中途半端と言わざるを得ないと思います。

 次に、年長フリーター自立能力開発システムのうち、企業実習先行型訓練システムについてもお尋ねします。

 これは新規事業ですが、概要と予算について、デュアルシステムとの違いも含めて御説明願います。

奥田政府参考人 ただいま委員お話ございましたように、十九年度からの新規政策ということで、企業実習先行型訓練システムというものを開始いたしました。

 これは、主に年長フリーターと言われている方々に対する訓練をどういうふうにしたらいいのかということを検討いたしまして、そういった方々の特徴といたしまして、長年いろいろな仕事を経験しておられるわけですけれども、ある特定の分野でいわば深くキャリアを積み上げてこなかったということがある程度共通しているわけでございます。そういった方々に、まずは自分が就職したいと考えている企業に企業実習という形で入っていただきまして、これは訓練でございますけれども、企業実習という形で入っていただきまして実際に仕事をしていただく。

 その仕事の過程で、この人が常用就職するにはこういったところをさらに能力開発をきちっとやったらいいんじゃないかということを企業の方に診断していただきまして、こういった訓練が必要だという診断書をつくっていただきます。これに基づきまして、ある程度能力のある方は、わかりました、このまま雇いましょう、そういったケースも出てくると思いますけれども、この方については例えばパソコンについてはもうちょっとやってもらわなきゃいけないとか、いろいろなことが出てくると思います。そういった方についてはそういった訓練をするにふさわしいコースを紹介いたしまして、そこで訓練をしていただいて、これは三カ月ぐらいを予定しておりますけれども、その訓練を経た後、最初の企業にまた入っていただこう。こういうようなことで、年長フリーターの方の特性を踏まえた新しい訓練システムとして今年度から始めたものでございます。

 今年度は、予算約九億八千万円で、五千人を対象に実施をしたいというふうに思っているわけでございます。

 それから、日本版デュアルシステムとの違いということでございますけれども、日本版デュアルシステムの方はいわば順序が逆転をしているといいますか、座学をやるというのを前段に置きまして、就職に近いところで企業実習に行っていただいて、さらにより現実的な技能を身につけていただいて就職につなげよう、こういう仕組みでございます。特に若い人たちについては、そういった基礎的な能力を座学できちっと身につけていただいて、実践的な能力を企業での実習で身につけていただこう、こういう仕組みで、これは何年間かやってきたわけでございますけれども、年長フリーターの方については、今申し上げたような、いわば順序を逆転させた訓練を開発したということでございます。

太田(和)委員 これも方向性としてはいいんですが、フリーターは雇用保険に入っていない方が多いですね。企業実習に一カ月から二カ月、これで採用されればいいんですが、フォローアップ訓練が必要な場合、最長は五カ月程度訓練を受けることになります。

 訓練は無料とはいえ、雇用保険がないと、訓練期間中は給料なし、手当なしなわけです。これでは目先の利益を優先せざるを得ないのではないでしょうか。いやでもフリーターを続けないと生活できないという人が多いと思います。イギリスでは訓練期間中も賃金が出るわけで、しかも、失業手当よりも多いからしっかり働くわけです。きちんと機能するかどうか、これは大臣にお伺いします。

柳澤国務大臣 よく、研修期間中の生活費をどうするかという観点から、生活費支援の手当を出すべきではないか、イギリスではというようなお話をお聞きするわけでございます。

 しかしながら、それはそれでイギリスの政策当局の選択ということでやっておるわけでございますが、そうしたものがすべて、では功を奏しているかというと、なかなかそうではない。先般も、イギリスの当局者の来訪を受けまして、つい、そういったようなことの話になったわけですけれども、なかなか所期の効果は上げていないというようなことも他方で言っていらっしゃったというようなことでございます。私どもといたしましては、現在の私どものスキームのもとでできるだけ成果を上げていく、成果が上がるように努めていきたい、このように考えているということを申し上げたいと思います。

太田(和)委員 幾つかの施策についてお尋ねしましたが、特徴は小出し、不十分、実態に即しているのかが疑問などなどです。

 繰り返しになりますが、百歩譲って、どうしても予算が限られるというのなら、あれもこれも小出しにやるのではなく、戦略的に重要な政策に絞る、選択と集中でやる方が効果が上がるのではないかと思いますが、指摘するだけにとどめさせていただきます。

 法案についてもお尋ねしなければなりません。

 今回の雇用対策法改正案では、青少年の応募機会の拡大ということで、第一に、事業主の努力義務に、青少年の能力を正当に評価するため、募集方法の改善、雇用管理の改善等が加わりました。そして第二に、国が必要な指針をつくる。これは大臣告示の形で、人物本位による採用、採用基準や職場で求められる能力、資質の明確化、トライアル雇用の活用等有期雇用から正社員への登用制度の導入などが盛り込まれるということであります。

 これはむしろ当たり前過ぎる内容だと思いますが、結局、努力義務であること、大臣告示にすぎないことから、ないよりはましだけれども、若者の就労問題の抜本的な前進には到底つながらない中身ではないかと思っております。実際の就労対策が十分に行われるのであればそれでも問題ないのでしょうが、これまでお尋ねしてきたような実態はそうなっていません。

 この法案の効果、大臣告示の効果について、大臣はどのように認識されているのでしょうか。

柳澤国務大臣 今委員から御指摘をいただきましたように、今回の雇用対策法では、若者の応募機会の拡大という観点で、募集、採用の方法の改善及び実践的な職業能力の開発、向上ということに必要な措置、これを講ずるよう事業主に努力義務を課している次第でございます。

 この努力義務に対しては、今も委員が御指摘になられたように、大臣告示におきまして指針を示すということがございますし、さらにまた、これに基づきまして、必要な助言、指導を行うということが規定をされているわけでございます。

 同じようなことがかつて行われたことがございます。それは、平成十三年の法改正におきまして、募集、採用時の年齢制限の緩和につきまして、同じような規定、枠組みのもとでその運用を図ったことがございますが、これがかなり効果を上げまして、例えば、年齢不問求人の割合の推移を申し上げますと、改正が行われた十三年九月に一・六%であったものが、平成十九年の二月、最近時で、これが五〇%にまで向上をいたしました。

 というようなことで、私どもとしては、この努力義務と指針の告示、それから具体的な助言、指導という枠組みもそれなりに効果を上げ得る、そういうふうに考えておりまして、今回のこの若者の応募機会の拡大につきましても同様なことを期待いたしまして、大いにこの枠組みのもとで努力をし、成果を上げていきたい、このように考えております。

太田(和)委員 大臣の認識と大分隔たりがあるのですが、時間もなくなってまいりました。

 最後に、若者の就労支援策でいえば川下に当たる、雇用の質の改革についてお尋ねをいたします。

 今や二十四歳までの若者の二人に一人は非正規雇用という状態です。派遣や請負に従事する者の七割は若者というデータもあります。川上のキャリア教育で働くことの意義や生きがいについて教え、川中である就労支援策に力を入れても、肝心の川下の雇用の質が劣悪で、非正規社員しか働き口がない、難関を突破して正社員になっても、長時間労働で身もくたくたになってしまうのでは、就職してもすぐに離職したり、就職するよりも親のすねをかじって生きる方が楽だと考える若者がふえるのは当然であります。大臣、これは若者だけの責任なのでしょうか。

 また、先日、私、経済産業委員会で政府の経済成長戦略大綱について質問する機会をいただきました。GDPで中国に抜かれても質的に強い経済をつくる、人口が減少しても生産性を上げる、GDPや雇用の七割を占めるサービス業の生産性を上げて、製造業と並ぶ双発エンジンにする、人材立国を掲げて、一人一人の能力を高め、イノベーションを軸に経済の成長を図る、こういった大綱の方向性自体は私も間違っていないと思います。

 しかし、最大の問題は、格差を是正し、国民の消費をふやして持続的な安定成長を図るという視点が欠落していることだと指摘させていただきました。大綱の下敷きになった経済産業省の新成長戦略や各種のレポートを見ますと、政府は、質的に強い経済を実現するため、派遣や請負など非正規労働をもっとふやす必要があると考えているのではないかという危惧を私は感じました。

 現実の経済は、これは日本経団連のアンケート調査ですが、今後も長期雇用労働者を中心とすると答えた方は三〇%の企業で、長期雇用中心だが、パート、派遣等の比率を拡大すると答えたのが五二%、長期雇用は中核業務のみとするが一五%となっており、非正規雇用をふやす方向が七割近くを占めています。

 長期安定雇用はコア業務に集中させ、典型的な業務は非正規労働者に任せる、この新日本型経営というのでしょうか、こういう経営モデル、雇用モデルがさらに広がっていく勢いだと思っております。もちろん、非正規で働きたい、自分の都合に合わせて短時間のみ働きたいという方もいますから、これを全部否定するつもりはありませんが、こういう流れを規制するのかが問われているのだと思います。

 大臣にお尋ねしますが、政府は派遣や請負など非正規社員をふやそうと考えているのか、減らした方がいいと考えているのでしょうか。また、派遣はポジティブリスト方式に戻して、無制限な拡大を規制するとか、特に立場の弱い登録型を禁止するとか、そういった規制をする考えはありませんか。

柳澤国務大臣 今委員の方から、最初に、キャリア形成というものに対する意識をしっかり持たせる、それから第二は、就業の機会を確保するということの支援、それから最後に、雇用の質の確保が必要だ、時系列的にそういうことではないか、そういう考え方の枠組みの中からいろいろな御質問をいただきました。

 私どもも、雇用の質というものは非常に重要なものだというふうに思っておりますが、いずれにいたしましても、現在の多様化する価値観というものの中でこれに取り組んでいくということが必要であろう、このように考えております。

 そういうことで、何を基本にやっているかといいますと、私どもとしては、選択肢は備えておく、そういう非正規の雇用を選択される方にも、そういうことがしていただけるような枠組みを準備しておかなければならない。しかし、本当は正規雇用を望んでいるんだけれども非正規雇用にやむを得ずついているというような方については、これをできるだけ正規雇用に移行していただくというようなことでなければならない、こういうように考えていることが基本だということはしばしば申し上げているとおりでございます。

 現状はどうかといいますと、日本経済の低迷期にやむを得ず選択した雇用形態というものを、今、経営者の中にはもう一度見直そうというような動きもあるように受けとめております。そういうような方々は、やはり人的な資本がかえって脆弱になるのではないかというようなことを恐れる、あるいは、将来における労働人口の需給というものに対して一つの見方をとりまして、やはり非正規雇用をできるだけ正規雇用に転換していくということが必要だというような動きも見られるようになっているというふうに見ております。

 将来においてこれをどうするつもりであるかということにつきましては、私ども、将来の労働人口の推移を見ますと、日本の労働人口が非常に減っていくということが展望されるわけでございまして、これを相当引き上げていくということを考えなければなりませんが、それは、女性であるとか、あるいは高齢者であるとかという方々の就業率を引き上げていくということが非常に必要になってくる。そういうことを考えますと、これらの方々については、正規雇用ということでそうしたことが実現できれば、それにこしたことはないんですが、やはりそういうような方々の生活の実態に合わせた雇用の形態というものも準備しておかなければならない、こういうようにも考えられるというふうに思っている次第でございます。

 そういうようなことで、私どもとしては、選択肢を用意しておくということ、それからまた、望まなくて非正規になっている方々については、これを正規に移行して安定的な雇用を確保するということが大事だ、そしてまた、非正規の方々についての処遇の均衡を図るということが大事だ、こういうことを考えている次第でございます。

太田(和)委員 時間が参りました。

 繰り返しになりますが、若者の雇用の問題は、景気の影響は受けるけれども本質は構造的な問題であり、サービス経済化や国際的な生き残りをかけた企業競争の激化という環境の中で、本来、就労支援は国の責任で、もっと質量ともに拡充した施策を打つべきであるということを再度申し上げまして、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

櫻田委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十一時五十四分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時二分開議

櫻田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。細川律夫君。

細川委員 民主党の細川でございます。

 まず、質問の冒頭にちょっとお尋ねをいたしたいと思いますが、昨日夜、長崎市長伊藤一長氏が、選挙中に選挙事務所の前の歩道で短銃で射殺されるという大変衝撃的な事件が起こりました。この事件が日本の政治にもたらす危険性というのは私は大変大きいというふうに思います。

 今度の事件で特異なことは、開かれた選挙のもとで、しかも選挙事務所の前で、有権者の審判を仰ぐという選挙の候補者が物理的な暴力によって殺害されたということでございます。このことは、言論によって自分の信条を訴えるという民主主義の根幹にかかわる権利がこれによって奪われたと言えると思います。

 選挙期間というのは、これはもうここにいらっしゃる委員の皆さんも同じでありますけれども、何よりも政治家が有権者に対して自分の政策なりあるいは信条を直接訴える、そういう政治活動でございます。それが一番保障をされなければならない、それが今回は侵害されたということになります。

 私は本当に、このことによって暴力に対してひるむことが仮にでもあれば、これはまさに民主主義の敗北であり、大変危機的な事件でもあるというふうに思います。したがって、こういう事件が起こったならば、政治家としては毅然たる態度でこういう暴力に対しては立ち向かっていくということが大事であろうというふうに思います。

 そこで、政治の先輩であります柳澤厚労大臣に、政府の一員でもございますから、この事件に対する感想あるいは考えをお聞きしたいと思います。

柳澤国務大臣 昨日、今細川委員がお話しになられたとおり、長崎市長である伊藤一長氏が、選挙運動から選挙事務所にお帰りになられて、選挙事務所のほとんど直前でもって暴力によって深く傷つけられ、そしてその後お亡くなりになったという報道を、私も非常に緊張し、また怒りを持って見守っていた次第でございます。まずもって、亡くなられた伊藤氏に対して、心から哀悼の意をささげたい、このように思います。

 これを政治家としてどのように受けとめたかという御質問でございますけれども、全く細川委員がおっしゃられたのと同じような受けとめを私はしていると言わせていただきたい、このように思うわけでございます。

 つまり、私どもの政治というのは、もう言うまでもなく民主政治ということで、そのルールに乗って行われているわけでございますけれども、その場合に最も必要なのは、言論によって国民にいろいろ進路についての選択をお願いしていくということでございまして、最も重要なのは言論の自由ということでございます。それを暴力によって封殺してしまうというのは、最も民主主義が許すことのできない行為であるということになるわけでございます。

 加えまして、今回の事件というものが、その一般の民主主義の政治プロセスの中でも最も重要な選挙という時期に起こったということでございまして、その意味では、その批判されるべき、非難されるべき罪というのはある意味で倍加されていると私は考えるわけでございます。そういうことで、私どもとしては、断固これは許すわけにいかないということでございまして、以後は司直の手によって真相が究明されて、断固たる処断をお願いしたい、こういうように思うわけでございます。

 加えまして、私ども政治に携わる者としては、今細川委員がまさに御指摘になられたように、こういう行動に屈するわけにはいかないわけでございまして、私どもとしては、毅然とした態度でもって、言論、それから政治活動の自由を断固確保していくということを鮮明にしていかなければならない、このように考えておる次第でございます。

細川委員 ありがとうございました。

 きょうは、法務省からは水野法務副大臣もおいでをいただいておりますので、水野法務副大臣の方からもひとつよろしくお願いします。

水野副大臣 昨日起きました長崎市長の銃撃事件は、本当に民主主義また政治活動の自由というものに対する極めて大きな挑戦であり、決して許すことのできないことだというふうに思っております。

 また、細川先生並びに柳澤大臣からもありましたけれども、有権者の審判を仰ぐ選挙戦中にあったということ、ましてや許しがたいことだというふうに考えております。

 我々といたしましても、事件の解明、並びに再発を決して許してはならない、そういう思いの中でこうした問題に取り組んでいきたい、そのように考えてございます。

細川委員 ありがとうございました。

 私ども委員全員、政治の世界で仕事をしておりますけれども、やはり選挙というその期間は、まさに直接有権者に自分の考え方、政策なり信条なりを訴える場でございますから、そこで起こったこういう立候補者に対する殺害ということは、これはもう決してあってはならないということで、こういう民主主義の根幹にかかわるような、これを危うくするようなこの事件に対して、政治家全員で毅然たる態度で対処していかなければならない、このように思うところでございます。

 それでは質問に入りますけれども、雇用対策法案、これに、直接質疑に入る前に、ちょっとILOの関係で御質問をいたします。

 ILO百八十七号条約の承認に関連してお尋ねをいたします。

 今開かれておりますこの国会で、ILO百八十七号、職業上の安全及び健康を促進するための枠組みに関する条約の締結について承認を求めることになっております。これは当然、外務委員会で今後審議をされるところでありますけれども、条約の内容は当委員会にかかわることでありますので、この機会をおかりいたしまして質問をする次第でございます。

 それで、この条約そのものの批准については私は賛成でございますけれども、条約の前文にこういうところがございます。「職業上の安全及び健康の促進が、すべての人に対する適切な仕事の確保という国際労働機関の課題の一部であることを想起し、」こういう部分があります。この「適切な仕事」、これについてお聞きするわけなんですけれども、この「適切な仕事」というのは、ディーセントワークを翻訳したものと思いますが、私は、これでは本来の意味を正確に伝えてはいないのではないかという心配をしております。

 そこで、お聞きいたしますけれども、このディーセントワークの訳であります「適切な仕事」、これはどういうことを意味するのか、この定義について大臣にお聞きをいたします。

柳澤国務大臣 隣に武見さんという英語遣いの達人がいらっしゃるもとで英語について講釈をするというのは、甚だじくじたるものを覚えますけれども、私は、ディーセントと言ったときには、常に何と頭に日本語が浮かぶかというと、人間たるにふさわしいという言葉が浮かびます。恐らく、何かのときにそういう訳語がふさわしいような文章に出くわしたんじゃないか、こういうように思っております。

 このディーセントワークとはというのが実はありまして、この事務局長報告の中にあるようでございます。人々の働く上での希望を集大成した概念ということですから、私のうろ覚えの日本語に移しかえるときの用語もそう間違っていないかなというように思うわけでございます。

 過去の大臣の御答弁を見ますと、たまたまでございますけれども、坂口大臣の答弁が非常に名答弁というように私は思うのでございますが、労基法一条一項に「労働条件は、労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充たすべきものでなければならない。」という姿勢がうたわれているわけですが、この条項の意味するところと同じ方向を向いているというふうに坂口大臣がお答えになっております。私は、まことに見識において坂口先生を日ごろから尊敬をいたしておりますので、まさにこれはぴたりであるなと思って、さらに敬意を深めた次第でございます。

細川委員 このディーセントワークにつきましては、いろいろどういう意味づけがあるのかということについて、今、大臣の方からは、坂口元大臣の発言を引用されました。また、坂口元大臣のほかに、川崎大臣もこの点について発言をされているようでありますけれども、その発言と同じような趣旨だというふうに考えてよろしいでしょうか。

柳澤国務大臣 坂口大臣も、私が御引用させていただいたほかにもいろいろ御見識を披瀝されていらっしゃるわけですが、今御指摘のように、川崎大臣も同様でございまして、川崎大臣によりますと、「ディーセントワークとは、人間らしい仕事のことであり、まず仕事があることが基本であるが、その仕事は、権利、社会保護、社会対話が確保され、自由と平等」云々、こういうようなことをおっしゃっておられます。

 いずれにいたしましても、この事務局長報告も非常に周到な解説をされているわけでございますので、ここでは繰り返すことを差し控えますけれども、人間たるにふさわしい仕事ということかと私は受けとめるわけでございます。

細川委員 それでは、この訳としては、人間たるにふさわしい仕事、こういうふうに訳された方が私はいいのじゃないかと思うんです。「適切な仕事」というのはどうもわかりにくい。人間たるにふさわしい仕事と訳された方がいいのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

柳澤国務大臣 これは多分、条約の翻訳ということで、外務省とかあるいは内閣法制局が関与して訳をつくられたものと思いまして、私ごとき者が云々するということはいかがかと思うわけでございますけれども、適切なということにはふさわしいという字も入っておりまして、いろいろ総合的な判断のもとでこの訳を当てたということで、私も異存はないわけでございます。

細川委員 このディーセントワークの意味するところは、従来の大臣の御発言と同じというふうに理解をして、私は、この「適切な仕事」というふうな表現でこれから先いろいろなところにお話をしていくというのはちょっとわかりづらいのではないかというふうに思いますので、私としては、例えば、人間らしい働きがいのある仕事とか、そういうような訳語でいけば、聞いている方もわかりやすいのではないかというふうに思います。今後、いろいろなところで、先ほどの大臣のお話もわかりましたので、ぜひこの訳語についてはわかりやすい表現でお願いをしたいというふうに思います。

 それでは、雇用対策法についてお聞きをいたしますが、この雇用対策法の中に、外国人についての報告制度がございます。その点について絞ってちょっとお聞きをしたいというふうに思います。

 この法律改正案が成立をいたしますと、在留外国人の雇用管理制度が大きく変わります。現行の報告制度は、原則、従業員五十人以上の規模の事業所に対して求められておりまして、報告をしなくても罰則はなくて、内容も、個々の外国人の労働者を特定するものではございません。

 しかし、本法案が成立いたしますと、すべての事業主に対して、就職のとき、離職のとき、この外国人の氏名、在留資格、在留期間などの届け出を義務づけて、違反した場合は罰則を科すということになっておりますが、この制度の目的は何でしょうか。

柳澤国務大臣 今回の雇対法の改正におきまして、今委員御指摘のように、外国人雇用状況報告というものを事業主に義務づけたわけでございます。

 これは、事業主というものは、一般に、ハローワークとの間では、雇用保険等でしょっちゅう、連絡というか、報告等のことを通じまして相互にいろいろとつながりを日ごろから持っているわけでございまして、それに加えて、今回、外国人雇用状況報告というものをお願いする、こういうことになろうかと思うわけでございます。

 その目的は何かということでございますけれども、何といいましても、近年、我が国で就労する外国人の数が増加している中で、その就労状況につきまして見ますと、雇用が不安定な状況にあるということが多い。それから第二番目に、社会保険に加入していない者も多いというようなことがございます。加えまして、率直に申しまして、不法就労というものも依然として後を絶っていないのではないか、こういう状況にございます。

 こういう状況を踏まえまして、外国人労働者にとって就労環境がより彼らの能力を有効に発揮するものとなりますように、雇用管理の改善等を強力に進める必要があるということが一つでございます。それからもう一つは、やはり不法就労というものが、我が国の労働条件の向上であるとかあるいは若者、高齢者等の就業機会の確保を妨げるという弊害が生ずる、そういうおそれもあるということでございまして、雇用政策としては、こういうような不法就労というものの防止をしなければならない、これもまた今回の雇対法の改正にうたったところでございます。

 このような二つの政策目的を実現するために、外国人雇用状況報告というものを今回義務化いたしまして、就労状況を的確に把握した上で、今のような目的に対して適切な措置がとれるように、こういうことで今回の措置を講じた次第でございます。

細川委員 これまでも外国人労働者の報告制度はあったわけでございます。これは職業安定法の施行規則にあったんですけれども、労働力の需要供給の適正かつ円滑な調整等を図るため、こういうことで報告を職安の方にさせていたわけでありますけれども、今度はもっと、罰則までして報告制度をつくった。

 私は、この今回の報告制度が生まれる経過を見ますと、どうも在留外国人管理のために考えられたんだというふうに思われて仕方がありません。

 例えば、二〇〇五年の六月に自民党の政務調査会の発表いたしました「新たな入国管理施策への提言 不法滞在者の半減をめざして」という中で、外国人就労者の勤務先あるいは留学生の学校などの受け入れ機関に対して、外国人の受け入れに関する入国管理局への報告義務を課すというような提言などもされております。

 このように、二〇〇五年から二〇〇六年のいろいろな文書を見てみますと、この報告制度は、雇用政策の見地から考えられただけではなくて、むしろ、在留外国人の管理という入管行政あるいは犯罪対策というのが主要な目的であったということがどうも明白になってきております。

 そこで、今回の法律案につきまして、大臣そのものはどのような御認識をお持ちになっているのか。在留外国人の管理というようなことがこの法案の目的の中に含まれているかどうか、このことについてどのようにお考えになっているか、お聞かせをいただきたいと思います。

柳澤国務大臣 今回の雇対法の改正におきまして、外国人についてもいろいろと規定を設けさせていただいておるわけでございます。

 一つは、第四条の第三項、これは、不法就労を防止して、労働の需給調整の機能が適切に発揮されるように努めなきゃならないということもございます。それから、第八条には、外国人の能力が発揮されるような、そういう雇用管理をしなければいけないというようなこともうたわれておるわけでございますが、そういうものの規定の一環として、今回の第六章に「外国人の雇用管理の改善、再就職の促進等の措置」ということで、より具体的な施策として、今委員の御指摘になられる外国人の雇用状況報告というものも位置づけられているということでございます。

 外国人の置かれた雇用環境を改善するとともに、労働市場に悪影響を及ぼす不法就労に的確に対処するために、就労の状況をより的確に把握して、それに基づいて事業主の指導を強化していくことが不可欠であるというふうに考えておるわけでございます。

 ちなみに、委員が御指摘になられました従前の報告制度というものは、おおむね五十人以上規模の事業所を対象にしておる任意の報告であるというようなことで、外国人労働者全体の雇用の状況が必ずしも十分に把握できないといううらみがございました。それから、報告の内容が労働者の総数等にとどまっておりまして、氏名であるとかあるいは在留資格というような属性が把握できないため、的確な雇用管理指導、再就職支援等が行えなかったということでございまして、そういうようなことを考えて今回の規定を設けさせていただいたということでございます。

 それでは、外国人に対する在留管理を強化するような面はないのかという御指摘でございますけれども、率直に言って、結果としてはそうした面があるということは、私も、御指摘をされたことについて、それを否定するという立場ではないわけでございます。

細川委員 私は、政府案の第四条第一項十号、先ほども大臣の方からお話がありました、在留外国人に対し適切な雇用機会が確保されるための施策を実施する、これは私も大賛成でございます。しかし、今度新設をされるという報告制度は、単に不法就労を防止するといった目的だけではなくて、永住者も含めた在留外国人全般の在留状況の管理、いわば外国人総背番号制といったようなことにもつながる可能性があります。

 だから、いみじくも大臣が言われましたように、結果として外国人の管理ということにつながるというような、私は、大臣も認めておられるように、そちらの方が主ではないか。外国人の人権を侵害するおそれを多分に持っている。何かここは、どうも雇用対策とは全然異質のところが出てきているというふうに言わざるを得ないのではないかと思っております。

 そこで、その報告制度についてちょっと具体的にお尋ねをいたしますけれども、二十九条には、厚生労働大臣は、法務大臣から、出入国管理及び難民認定法または外国人登録法に定める事務の処理に関し、外国人在留に関する事項の確認のための求めがあったときは、前条第一項に規定する届け出及び第三項の規定による通知に係る情報を提供するものとある。法務大臣の方から求めがあったとき、ここが非常に重要でございます。

 昨今、国民は、個人情報の取り扱いについては非常に慎重になっております。雇用管理に役立つとか、あるいは再就職に役立つということで厚労省が情報収集することはともかくとして、その情報が入管当局に流れていくということになりますと、自己情報コントロール権という観点から見ましても大きな問題があるのではないか。運用によっては、憲法十三条、あるいは市民的及び政治的権利に関する国際人権規約十七条に定めますプライバシー権の侵害とか、あるいは行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律にも違反する可能性があるのではないかというような問題がございます。

 そこでお聞きをいたしますけれども、厚労省が収集した個人情報については、決して外国人の人権を侵害することのないように配慮すべきであるというふうに考えますが、この点、いかがでしょうか。

柳澤国務大臣 今委員が御指摘の二十九条におきましては、厚生労働大臣は、法務大臣から求めがあったときは、届け出であるとか通知についての情報を提供するものとする、こういうふうにあるわけでございます。

 それが人権侵害にわたるようなことのないようにという御指摘でございますけれども、私どもといたしましては、この運用については、もとよりそうした国際的スタンダードにあるものについては、当然のことながら配慮していくということでございます。

 その上で申し上げますと、この情報提供の具体的な方法等については、今後法務省との間で調整することになっておりまして、現時点で何か具体的なことにつきまして、方法等につきまして申し上げられる段階ではないということでございます。

    〔委員長退席、伊藤(信)委員長代理着席〕

細川委員 私が質問をしようとした先のことまでちょっとお答えいただいたんですが、もちろん人権には配慮していただける、こういうお答えでございました。

 それでは、二十九条で、法務大臣から厚労大臣に対して情報提供を求めるというこの求めは、大臣、ここをちょっとお聞きいただきたい。法務大臣から厚労大臣に対して求めるというのは、個々の個人の情報ですか。個人を特定してその情報をもらう、こういうのか、それとも、厚生労働省の方に集まったすべての外国人の情報、外国人労働者の情報すべてを包括的に求められた、そういうときも含むんですか。これをちょっとお答えいただきたいと思います。

柳澤国務大臣 法務大臣が求める根拠は、入管あるいは難民認定あるいは外国人登録、これが前、一緒の法律になったわけでございますが、その定める事務の処理に関してということでございます。したがって、法務大臣がどのような事務上の要請を受けてこちらに情報の提供を求めてくるかということにかかるわけでございますけれども、この全体の枠組み、法律的な枠組みとしては、包括的な情報提供というものが禁じられているかといえば、それは別に、そういったことが妨げられるというふうには解し得ないと私ども思っております。

 いずれにいたしましても、情報提供の具体的な方法といたしましては、政府全体として、外国人の在留情報について、相互融通と申しましょうか一元化と申しましょうか、そういうものを図るという趣旨を踏まえまして、今後、法施行までの間に法務省と調整をしていかなければならない、このように考えている次第でございます。

細川委員 それでは、法務省の方にお尋ねをいたします。

 法務省としては、すべての外国人についての包括的な情報を求めるという可能性はあるんでしょうか。

水野副大臣 法務省としては、今般の雇用対策法の改正により、厚生労働省から情報提供を受ければ、外国人の不法就労防止等の観点から、入管難民法に定める事務を適正に処理するため効果的に活用していきたいと考えておりますが、御質問の、では、個々じゃなくて包括的に情報を求める可能性があるのかないのかということに関して言えば、可能性としてはあるというふうに考えております。

 ただ、先ほど厚生労働大臣の御答弁にありましたように、では、具体的にどのような情報提供のやりとりをするのかということで言えば、これは今後の話でもありますし、雇用対策法が改正をされ、厚生労働省令において定められる厚生労働大臣に対する届け出の事項の詳細も踏まえつつ、今後、両省の間で密接に協議、検討していきたいというふうに考えてございます。

細川委員 この情報の提供ということに関して厚労省と法務省の答弁がありましたけれども、個別的な労働者に対しての情報を提供するのか、それとも、収集されたすべての外国人の情報も包括的に法務省の方に提供するということについても、これは包括的なこともあり得るという答弁でありますけれども、これはちょっと大きな、大事な問題じゃないですか。厚労省のところに集まった外国人の労働者の情報が要求によってはすべて法務省に行くという、こんなことは許されるんですか。不法就労だったら、個人的な情報、特定の個人の情報を要求すればいいじゃないですか。もう一度確認をいたします。

柳澤国務大臣 先ほども御答弁申し上げましたように、二十九条で規定をいたしておりますものは、「法務大臣から、出入国管理及び難民認定法又は外国人登録法に定める事務の処理に関し、」ということであるわけでございます。したがいまして、この「事務の処理に関し、」ということがどういうふうになるかということによっているわけでございますが、そういう前提のもとで、では、包括的な情報提供がこの条文で禁じられているかということを問われるとしたら、それは、それを行うことを妨げるものではない規定だというふうに考えるということでございます。

細川委員 それでは、違った角度から質問いたします。

 厚労省に対して報告のあったすべての外国人の情報を提供するようにということを法務大臣の方から求められた場合には、これは本条の規定どおりそれを提供するということになりますか。提供するんですか、法務大臣の方から求められたら。個々じゃないですよ、すべての情報を。

岡崎政府参考人 条文の説明だけさせていただきますが、法務大臣から、出入国管理法または外国人登録法に定める事務の処理に関し、外国人の在留に関する事項の確認のため求めがあったとき、こうなっておりますので、その範囲内で提供する、こういう条文でございます。

細川委員 いや、だから、それは大臣の方からお聞きをしました。

 法務省の方に尋ねたら、法務省の方も、すべての報告、すべての外国人の報告を要求することもあり得る、こういうことですから、それでは、具体的にそういう要求があったときに、それに対して応じるんですかというふうに私は聞いているんです。

柳澤国務大臣 先ほど来お答えしていることの繰り返しでございますけれども、法務大臣から、今たびたび引用しておる法律に定める事務の処理に関して、外国人の在留に関する事項の確認のための求めがあったときはということでございまして、事務の処理、それから外国人の在留に関する事項の確認ということであれば、我々としては、先ほど委員の仰せられる包括的な情報の提供というものを、そういうものであれば禁じている規定ではない、こういうように受けとめているわけでございます。

細川委員 それでは、オンラインを使ってすべての情報を流すという可能性はあるのでしょうか。

柳澤国務大臣 細川委員の仰せられるオンラインという用語がどういう事態を表現する言葉か、ちょっとつまびらかでないわけですけれども、オンラインリアルタイムというか、次々上がってきた情報がもうそのまま即時に流れるというようなことかと言われれば、私どもは別に今法務省との間でそんなネットワークを構築しているわけでもないし、現在、私どもがそうしたものをそのために構築しよう、そういうような気持ちもないわけでございます。

 したがいまして、情報提供が具体的にどういうものになるかということについては、先ほど来お答えしておりますように、今後の法務省との間での調整によるわけでございますけれども、リアルタイムに、事業主から上がってきた情報をそのまま常に法務省に流すというようなことは今想定しておりません。

細川委員 それは、もうリアルタイムで全部情報が行くなんていったら大変なことですよ。そのための法律だったら、これは大変なことだと思いますけれども。

 では、もう一度お尋ねしますが、少なくとも、オンラインを使ってすべての情報を法務省に送るというようなことはないですね。

柳澤国務大臣 ちょっとよくわからないことでございますが、要するに求めがあったときですから、求めもないのに情報をやる、そういう規定にはなっていないわけでございます。求めがあったときにどういう形で情報提供をするかということについては、たびたび申し上げておりますが、今後の調整にまつということになっているわけでございます。

 具体的な手段としては、昨今では紙でもってやるということではなくて、電子的な媒体ということが最近の状況からすれば考えられると思いますけれども、ただ、いずれにしても、具体的な情報提供の方法というものは今後協議をして決定されるということでございます。

細川委員 今後の法務省と厚労省の協議、それによって情報提供の仕方を考えるというのでは、ちょっと審議もやりにくいですね。

 もともと、すべての外国人労働者の情報をすべて包括的に法務省に送る、あるいは法務省も要求する、その可能性があるということですね。だから、私はそれは大変心配だというふうに話をしているわけですよ。

 私は、個々の、特定の外国人の情報がわかれば、不法就労なんかは調査ができるのではないか。それを包括的に、すべての外国人の上がってきた情報は全部包括的に法務省の方に送る、法務省もそれを要求する可能性があるという。では、あるということを前提に議論していいですか。

 そして今度は、それでは、オンラインでもう即送っていくというようなことはないのかあるのか。非常に個人情報というものが安易に、他省庁、別の目的にも使われる可能性が出てくるわけなんですよ。だから心配をして、ここで議論をしているんだから。そこの大事なところを法案成立後の協議で決めていくんだと言われても、ちょっとそれでは、この法案がいいのか悪いのか判断できませんね。非常に私はこれは大事なところだと思いますよ、外国人の労働者の情報。

柳澤国務大臣 もう何回も同じことを繰り返すようなことになりまして恐縮なんですけれども、第二十九条が定めていることは、法務大臣から、出入国管理その他のここに特定されている法律に定められる事務の処理に関しまして、外国人の在留に関する事項の確認のために求めがあったときということでございまして、それに対して、厚生労働大臣は、先ほど来申したような届け出等の情報を提供するものとする、こういうことでございます。

 それが書かれているわけでございますので、包括的な提供について何か妨げがあるような、そういう規定になっているかと問われれば、それはありませんということをお答えするほかないということでお答えしているわけでございますが、そこのところはそういうありのままで、現在この条文のあるままで御理解を賜りたい、このように思います。

細川委員 非常に大事なところで、法案にこういう規定になっているからそれで理解をしてほしいというようなことでは、ちょっと私の方も、はい、そうですかとはなかなか言いにくいですね。

 では、法務省にお尋ねしますが、法務大臣が厚労大臣に情報提供を求めるときは、その必要性とか理由とかいうようなことについても明らかにして情報提供を求めることになりますか。

水野副大臣 法務大臣が厚労大臣に対して二十九条に基づいて情報提供を求める際の具体的な方法等については、本法が改正されて省令が定められることとなる届け出事項の詳細なども踏まえつつ、委員の御指摘の点も含めて、両省密接に協議の上、適正に定めていくこととしております。

細川委員 全然わからぬですね。

 私が聞いたのは、情報を求めたときには、その必要性、どうしてその情報を求める必要性があるのか、その理由、それをきちんと明らかにして厚労省の方に要求するんですかという質問ですよ。こんなのを協議なんて言われても困るんですね。

水野副大臣 具体的にどのような情報が、全部厚労省の方に入っているのかということも、まだいろいろ省令で決まる部分もあるわけでしょうから、その点は、省令等が定まって、どういう情報があるのかということも全部定まってから、また、厚労省と相談をしながら決めていくことではないかというふうに思っております。

細川委員 それでは、聞きますよ。

 二十八条で、「その他厚生労働省令で定める事項について確認し、当該事項を厚生労働大臣に届け出なければならない。」これは一番最後の二行のところ。「その他厚生労働省令で定める事項」、これはまだ決まっていないんですか。

柳澤国務大臣 法に規定をいたしております氏名、在留資格、在留期間以外の報告事項を定める厚生労働省令は、法施行までの間に労政審の意見を聞いた上で定める予定でございますが、現時点では、国籍、それから生年月日、性別といった事項をお諮りする方向で検討いたしている次第でございます。

細川委員 そういう情報が厚労省の方には入るということですが、それでは、どうですか、そういうことを前提にして、必要性と理由をちゃんと書くんですか、書かないんですか。

水野副大臣 今、具体例が何例か大臣の方からございましたけれども、やはり全体像が決まって、その中で、そこで調整をしながら決めていくべきことではないかというふうに思っております。

細川委員 質問にしっかり答えてくれないと、できないですね、本当に。これは外国人の人たちの本当に個人情報ですからね。それがどういうふうに扱われていくかという大変大事な問題ですから、それがこの委員会の場でわからないじゃ困るんですね。

 委員長、これ以上ちょっと私は質問できませんね。

伊藤(信)委員長代理 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

伊藤(信)委員長代理 速記を起こしてください。

 水野法務副大臣。

水野副大臣 二十九条に基づいて要求をするとき、全く何の理由も言わないという形でくれという形の要求の仕方はないわけなんですけれども、どの程度、どの段階で、どういうふうに理由を明示するかというのは、やはり今後の両省の協議の中で決まっていくことだというふうに考えております。

細川委員 明快に答えてくださいね。

 法務大臣は厚生労働大臣に、情報を提供してくれ、こう要求するわけでしょう。その情報がどうして必要なのか、法務大臣として。それの必要性、理由を書くんですか、こういうことを質問しているんですよ。

水野副大臣 一般的に言えば、厚生労働省の方から提供していただいた情報と、また法務省入管局が保有している情報を有効につなぎ合わせるというかドッキングさせることなどによって、正規の滞在者を装い不法就労を行っている者とか、そういうような者を確実に排除していけることになるというのは、包括的にいただければそういうことはあり得るんでしょうけれども、具体的にどう要求するかというのは、包括的に要求するということも、先ほど、可能性はあり得るのかあり得ないのかといえばあり得るというふうに言いましたし、個別的に要求することもあり得ることはあり得るでしょうし、だからそこはケース・バイ・ケースでしょうから、お答えとしては、理由を全く言わないで要求をするということはないでしょうけれども、具体的にどの段階で、どういうような理由をどういう形で言うかということの細部などについては、調整をせざるを得ないということだと思います。

細川委員 理由を全く言わないで各段階のところで調整をして、それで、理由をはっきり言うんですか、言わないんですか、最後に。必要性と理由。

水野副大臣 そういう意味では、理由は言わないわけではないということでございますから、理由は言う。ただ、その細部などの、時期だとかいろいろな詳細の、どういう形でどの程度のレベルのことを言うのかというようなことは、いろいろと詰めなければいけない点はあるということでございます。

細川委員 言わないわけではないと。えらい消極的ですね。言うということですか。ちょっとはっきり言ってください、はっきり。

水野副大臣 第二十九条にも「外国人の在留に関する事項の確認のための求め」という表現があるとおり、そういう意味では、外国人の在留に関する事項の確認というような、そういう必要性があって求めるわけですから、理由というのは言うということでございます。

細川委員 そんなのは理由を明示することじゃないじゃないですか、この条文そのものに書いてあるんだから。

 じゃ、言わないということですか。

水野副大臣 そういうようなことが条文に書いてあるように、理由というのは言うわけなんですけれども、ただ、そこら辺、どのレベルのものになるのかとか、詳細とか、どういう形でやるかとかということは詰めざるを得ないけれども、言うのか言わないのかといえば、言うということでございます。

細川委員 この質問は、そもそももう通告もしてあったはずですよ、昨日。そんな遅いとかあれじゃなくて、早い時間に。

 もう時間も来たものですから、これ以上私は質問できないということで、次回に回したいと思います。

 終わります。

伊藤(信)委員長代理 次に、大島敦君。

大島(敦)委員 民主党の大島です。

 雇用に関する議論というのは非常に地味な議論でして、私も七年間、一番最初が労働委員会という極めて地味な委員会に所属をしておりまして、なかなか希望者が少ない委員会だったことを思い出しながら当委員会に所属をしておりまして、今御出席いただいている委員の方には心より敬意を表させていただきます。

 やはり今の労働行政に対する議員の興味のあり方というのが意外と少ないなと思いまして、極めて地味な議論を積み重ねていくのが雇用の施策だと思っておりまして、その中で、何点か、一時間にわたり、柳澤大臣初め皆様と議論をさせていただきます。

 今回、私たちの政党としては、雇用基本法として、雇用対策法にかわる雇用基本法を提出させていただいております。これは、やはり雇用というのは非常に大切だと思うからでございます。

 したがいまして、まず過去を振り返って、一九八五年のプラザ合意に始まり、一九九五年以降の景気が後退した時期、そして二〇〇〇年以降、ある程度景気がよくなった時期、それぞれ雇用の対策というのは変わってきた。恐らく極めて激動の二十年あるいは十年だったと自分は考えております。これは、柳澤大臣も御専門が金融経済だと思いますので、八五年のプラザ合意以降の日本経済のあり方について、経済と、あともう一つは団塊の世代、よく言われている団塊の世代の皆さんの処遇の問題だったかと思うんです。

 ですから、一九八一年に自分が学校を卒業して民間の会社に入ったとき、そのときには、団塊の世代の態様として、まずは皆さんが役職につけなかったわけですよ。団塊の世代よりも上の方たちは人数がそんなに多くなかったものですから、係長になって、課長になって、部長になって、大体一つの組織の段階を上っていけたんですけれども、団塊の世代の方たちは皆さんが課長になれなかったものですから、会社によっては主任部員制度という、給与は同じなんだけれども役職につかないという、創意工夫をしながらしのいできたのが一番最初の団塊の世代の皆さんなのかなと。

 特に、前回も御指摘させていただいたんですけれども、やはり一九九五年以降の景気の後退期と団塊の世代が日本の雇用のあり方を大きく変えたのかなと思っていまして、自分が会社をやめたのも一九九五年なものですから、極めて、九五年以降の雇用のあり方、そして二〇〇〇年以降本当に深刻になってきて、二〇〇二年か三年ごろから徐々によくなってきたということだと思います。

 その中で、雇用で、団塊の世代ですから、働く立場の人たちは大分譲ってきたわけですよ。譲ってきたというのは、例えば、今、坂口元厚労大臣がいらっしゃいますけれども、効き目があったかどうかはともかくとして、ワークシェアリングというのも労働側としては受け入れたり、あるいは、労働組合に入っていらっしゃらない方も、自分の会社を守るためにボーナス返上なり基本給を下げるなり、さまざまな努力をする過程というのが一九九〇年代に行われたのかなと思っていまして、大分立場を譲ってきた割には、今の経営者の皆さんはその思いを理解されていないと私は率直な感想を持っていまして、ちょっと悪乗りし過ぎているのではないかなと、下品な言葉を使えば。やはり今まで日本のサラリーマンが、ある程度自分の家族なり自分の所得を犠牲にしながら会社を守ってきたという、その気持ちを理解されていない経営者の方がふえたのかなというのが自分の今の実感なんです。

 ですから、これまで、例えばこれから議論させていただく派遣法の改正にしても、有期契約の改正にしても、団塊の世代の皆さんのミスマッチ、アンマッチを解消するために大分譲ってきたところがあるわけですよ。ですから、その譲ってきた上に、今それをさらに、これはもう譲ったんだから当然だということで、経営者の皆さんが、人件費というコストは国際競争力には極めて悪影響、大きなファクターになるからできるだけ抑えてくれよというのは、ちょっと私の価値観、私の現状の理解からすると無理があるのかなと思っております。

 それで、今回、雇用のあり方について、もう一つまた冒頭に述べるとすれば、この間、高校の先生の方、四十代の方とお話ししまして、一九九〇年代に子供たちがどういう気持ちのあり方を持ったのかというのがありまして、お父さんがちょうど今言った団塊の世代ですから、リストラに遭っているわけですよ。会社をやめなくちゃいけないお父さんたちが非常に多くて、それまでは、自信を持って自分の子供に、おまえら勉強しろ、勉強すれば報われる、そういうことを言えた時代があったわけですよ。多くのお父さんたちが九〇年代にリストラをされると、自信を失って、子供たちに勉強しないと将来大変だぞということを自信を持って言えなくなったということを伺いまして、これが、今の若年者の雇用に対して、家庭の中でなかなか自信を持ってお父さんたちが言えないところがあるのかなと私は思っているんです。

 ですから、これからの雇用政策を考えるときには、新しいモデルをつくらなければいけないなと自分は思っているんです。これまでのモデルというのは、自分はちょうど今五十になりまして、自分が二十四のときに、一九八一年、昭和五十六年に会社に入ったときには、別に給与明細なんて見なくても、大体課長なり部長なりの後ろ姿を見ていれば、自分の人生はこんなものなのかなというのが想像できたいい時代だったんですよ。その時代が今消えているわけですね、モデルがなくなっている時代。その中で、若年者、若者たちに働けと言っても、なかなかモデルが見つからないと思うんです。

 この間、学校の先生、今結構有名な経済評論家の先生とお話しして、学校で教えていらっしゃいまして、ちょうど偏差値が五〇ぐらいの学校なんですって。ゼミが二十六人いて、その二十六人のゼミ生に、どういう社会がいいかと聞いたわけですよ。まじめにこつこつ働けばある程度成功できる社会がいいのか、あるいは一発逆転の社会がいいのか、手を挙げろと言ったら、二十六人みんなが一発逆転の世の中がいいと手を挙げるわけですよ。

 今、私は、仕事というのは、まじめにこつこつ働けばしっかり報われるというモデルを私たちの社会が提供しないと、我が社会はもたないなと思っているわけなんです。あるCMで、普通の人が普通に働けば家を買えるなんというCMがありまして、これは非常にいい表現だと私は思っているんです。普通の人が普通に働いて家を買える。今は、大学を出ていても、三十代で普通の人が普通に働いても結婚できない社会になっているんです、契約社員とか派遣社員ですと。これは改善しないと、今多くの委員の方が御質問されたように、ちょっとこの我が社会が、難しい言葉で言うと持続可能性、もたなくなっているのかなと思っているんです。

 ですから、その点につきまして、私ばかりがしゃべってもしようがないものですから、まず、大臣の方から現状認識、特に、一九八五年のプラザ合意のときに日本の産業界はすべて合理化というアクセルを踏んだんですけれども、私はたまたまヨーロッパで海外駐在をしていて、自分は逆に、合理化というアクセルを踏むな、できるだけ残業をするのはやめてサボった方がよかったのかなと思っておりまして、多分当時から、今でも、世界が求めている内需の拡大というのは、君たち、一生懸命合理化するのも大切なんだけれどももっと内需を拡大してくれというのがいまだに世界の要求かなと思っています。

 その点について、柳澤大臣が経済に携わっていらっしゃいまして、特に九〇年代のあり方についてどうお考えなのか、それとあと、雇用の問題についてどういう認識を持たれているのかについて、まずは冒頭お聞かせいただければ幸いです。

柳澤国務大臣 九〇年代をどうとらえるのか、こういうお話でございます。

 九〇年代というのは、やはり、バブルが九〇年代初頭に破裂をして、そして日本経済が全体として三つの過剰に苦しむという形で長く低迷した時期、こういうように規定をさせていただきます。そういう中で、労働というか、そういう面について何が起こったと考えるかというのは非常に難しい問題だと思います。

 今大島先生から、そのときにまさに働き盛りと申しますか、そういう時期に当たった、いわゆる団塊の世代を中心とする世代というのが随分譲ってきたんじゃないかというお話を承りまして、そういう見方もあったのかみたいな、私はむしろ意外な気持ちでもってお聞きをいたしておりました。

 むしろ、団塊の世代は、みずからが正社員であるというか、そういうことで、労働組合なぞもやはり基本的には正社員の人たちを構成員とする組合であったので、むしろ組合員以外のところに労働市場の厳しい面をしわ寄せていったんではないか、こういう見方も、私はそういう方も知っておるわけでございますので、今ちょっと大島委員の見方については、おやおや、そういう見方もあったのかみたいな感じで受けとめておりました。

 もちろん、その中には、早々とリストラというようなことで、あるいは場合によってはみずからの勤務する会社が立ち行かなくなったというような形で離職を余儀なくされた方もいらっしゃるでしょうし、そういう親が、いわば自信喪失というか、みずからの選択した人生で蹉跌をしたということで、子供に、みずからを見本にするように、あるいはみずからの周辺にいる方を見本にするようにということが言えなくなった、そういう面は確かにあっただろうと思うわけでございます。

 それから、もう一つ委員の御指摘になられた点で、マイホームというものが一つの人生のモデル、つまり、ある種、マイホーム取得までで人生の完成したモデルを形成したということが実はあったということは多分共通の理解だと思うんですけれども、私が知っているのは、むしろマイホームというものの資産価値が目の前で下落していくという事態が生じまして、したがって、マイホームを取得するということが必ずしも人生のモデルを形成するような完結体になり得なくなったということがありまして、そういうようなことで、人生の一つの目的達成、自己実現のモデルというのは何をメルクマールにするんだということで、ちょっとメルクマールをみんなが見失ってしまっている。

 その意味では、大島委員がおっしゃられるように、我々は一つの別のモデルをつくっていかないと、みんなが迷える羊みたいな形になってしまいかねない、そういう世の中になってきているのではないか、この指摘は私もかなり共感を持ってお聞きさせていただきました。

 いずれにいたしましても、ちょっと、一番冒頭の点だけは、私はかなりおやっと思ったわけでございまして、むしろ、団塊の世代というのは、自分たちだけ既得権益というものにしがみついて、後続の人たちに対してかなり厳しい、それは意図したものでないことは間違いないわけですけれども、そういう面があったという指摘をむしろ団塊の世代が受けているという見方の方が、多いとは言えないんでしょうけれども、かなりそういう見方もあるということを私は認識いたしておりまして、その点以外はかなり委員の御指摘に同意するところでございます。

大島(敦)委員 ありがとうございます。

 団塊の世代に関しては、二〇〇〇年に労働委員会に所属してから、昨年一年間を除いては厚生労働委員会にずっと在籍しておりまして、もともとの課題で、今から七年前によく議論があったのは、団塊の世代の方たちのリストラに伴う、要はアンマッチ、ミスマッチをどうやって解消するかというのが大きなテーマでした。

 例えば、今は余りそれほど大きな会社ではなくなったと思うんです、再就職支援会社なんというのが外資系でできてきまして、会社としては、団塊の世代の人たちの首を切ると言っては失礼ですけれども、すぐにリストラするのは余り芳しくないなと思ったせいか、その再就職支援会社にお金を払って、一年間、うちの社員百人なり二百人なりの再就職をあっせんしてくれということで、コンサルテーションも含めてそういうあっせん、しっかり当てはめるような会社ができた。

 大臣がおっしゃっている団塊の世代が、確かにおいしかったところはあると思うんですよ。今残っていらっしゃる方は、リストラされなかった方は、今物すごくいい所得を得ています。例えば、私は鉄鋼業ですから、今最高の利益を得ていますから、残った方は極めてよかったわけです。ただ、残されなかった方たちも多かったという現実を私は片や見ていますから、今柳澤大臣がおっしゃっている、上場企業に残った方はやはり非常に今いいわけです。

 例えば、私は労働組合の出身ではないんですけれども、地元の労働組合の委員長の方がこんなことを言うわけですよ。昔はどの会社に属するかということがステータスだったんだけれども、今は正社員がステータスというわけですよ。そのように、この十年の間に大きく日本の雇用環境は変わってきたと私は思っています。

 ですから、団塊の世代については若干私もまだ納得しないところがありまして、それを踏まえて、では、どういうようなモデルが必要かということなんですけれども、今の男女共同参画ということと、男性でも女性でも同じ待遇、処遇をしっかり行っていくということと、もう一つは、前回も指摘しました二〇〇五年の「人口減少下における雇用・労働政策の課題」、これを私は読んで、現状認識、考え、非常によくできているなと評価をしております。

 そうすると、これからのモデルがどういうモデルかといいますと、今までのモデルというのは、男性が主に働いて、子育てとかあるいは家の所得とかで、男性の所得が十分じゃないときには女性が補助的にパートとして働いて、大体それで乗り切っていくのが今までのモデルだったとすれば、これからの二十代とか三十代の若い人たちのモデルは、女性でも男性でも余り大きな給与差はなくなってくると思うんです。

 もう一つは、多分、御指摘されているように、労働投入量ですか、労働力人口が減ってきますから、労働力人口掛ける労働時間で、全体的な日本の労働投入量がこれから減ってきますから、そうすると、高齢者の方も女性の方も、もちろん若年者の方もしっかりと働いてもらわなければいけない。ですから、今まで家庭に入っていた主婦の方にも働く機会を多くつくるという時代だと思っていまして、そうすると、二人で働くということがまずあるのかなと。

 もう一つは、年功序列賃金というのは、私は同一価値労働同一賃金という言葉は具体的過ぎて余り直接的には使いたくないんですけれども、同じような仕事をしたら同じような賃金を払うという、このことは大体今皆さん納得感がありますから、今は、二十代でも四十代でも五十代でも、同じ仕事をしたら同じ給与を払うということになってきているわけですよ。多分これが前提だと思う。

 そうすると、二人働いて、多分、東京とか関東圏であれば、一人が三百万から四百万ぐらい稼げて、掛ける二で六百万から八百万が標準世帯であれば、子育てのときは片っ方が子育てしてもう片っ方が働く。それで、ある程度子供に手がかからなくなったらもう一度二人が働いて、五十五ぐらいで、子供が自立したら老後の蓄えというような、そういうモデルがこれからの私たちの社会の中の働き方のモデルになってくるのかなという予感を七年ぐらい前からしていまして、ですから、今回のいろいろな労働法の改正、特に雇用対策法の改正ですと、その点に力点を置きながら考えたいなと思っているんです。

 ですから、今回、本会議場でも発言させていただいたんですけれども、政府案のパートに関しての問題意識はよくわかるんです、パートに関してはよくわかります。ただ、契約社員とか派遣社員の方がいらっしゃっていて、私の友人でも契約社員の方が何人かいるんですよ。関西の極めて大きな鉄道会社で働いている三十代前半の人、結構難しい試験に一年前に、面接試験までしっかりして入ったわけです。一年たって久しぶりに会ってみると、いや、大島さん、結婚できないと言うわけですよ。年収が二百五十万だから結婚できないと言うわけです。今、大きな会社でもそうなんです。要は、新入社員の給与と変わらないと言うんです。仕事はまじめに一生懸命やっているんだけれども、変わらないという実態がある。

 これがやはり今の私たちの社会の中で、今皆さん、大臣も何回も答弁していると思うんだけれども、契約社員とか派遣社員についての処遇をボーナス分上げてやることが必要だと思っている。彼らはボーナスをもらっていませんから、景気がよくなっても実感できない。実感できないのは、ボーナスをもらっていないからなんですよ、五十万とか百万とか。ボーナスをもらっていれば、景気がよくなったなというのはわかるし、ボーナス分何とか上げてあげるという労働施策が私は必要だと思っています。

 大臣が先ほど私どもの委員の方の質問に答えて、結果平等なのかあるいは機会の平等なのかという点、私も機会の平等だと思うんですけれども、最低限のミニマムラインはそろえる必要があるのかなと思っておりまして、まずは質問する前に、この労働法制、その点につきまして、大臣の御所見があったらぜひ伺いたいんです。

 なかなか答弁しにくいと思うんですけれども、例えば、私は、派遣法の改正が必要だと思っておりまして、派遣法のもともとの制度の趣旨というのが、恐らく常用代替については法文上は規定はないんですけれども、派遣法ですと、昭和六十年の七月にできて、昭和六十一年の七月一日に施行されたんですけれども、労働者派遣法についても、常用雇用の代替とならないようということの建議というんですか、もともとそういうのがありまして、改正の都度に常用代替にはならないという規定が入っているわけなんですよ。その点についてもう一度、労働者派遣法というのは、制度としてはやはり常用代替というのは望んでいないのか、あるいは時代が変わったからもう常用代替はしようがないと思っていらっしゃるのか、その点についての大臣のお考えをお聞かせください。

柳澤国務大臣 派遣契約について、基本的な考え方いかん、こういうことでございますけれども、派遣についてまず申し上げますと、派遣については累次の改正が行われてきたということでございます。そして、今私どもがどういうことに取り組もうとしているかということについては、まず基本的に、労働者派遣法の最終改正を受けて、その実際の適用状態と申しますか、これが労働市場にどういうふうに受け入れられているのかという実態の調査をするということをさせていただいているわけでございます。

 これには率直に言って両様の力が働いているというのが現状でございまして、派遣というものをもっと自由に使える制度にすべきだという力が働いている一方で、今委員が御発言になられたような、派遣についてはあくまでも一時的、臨時的な労働の需要に応じるべきところに限定すべきではないか、こういう両様の力が働いているというのが実態であろう、こういうように思います。

 いずれにせよ、私どもといたしましては、いろいろ印象的な評価というものはあろうと思いますけれども、もう少しきちっとした形での、この今の派遣法の運用の状況というものについて評価できるようなそういう調査をして事実の掌握に努める必要がある、こういうことが現状でございます。

 それから、契約につきましては、契約の社員と契約期間のない労働者、こういうようなものの均衡化と申しますか、そういうものを図るということにつきましては、我々の審議会の方でもかなり議論をいたしたわけでございますけれども、契約社員というものの具体的な態様には非常に幅があるものですから、そういうようなことで、期間の定めのない労働者との間での均衡をとるといっても具体的には非常に難しいということで、なかなか論議が収れんすることがなかったものですから、これについては、私ども、次の機会にこれを譲らせていただくということで、今年度、一連の労働法制の改正をお願いしながら、その中には取り込むことができなかった、こういうことでございます。

 それともう一つは、契約にしても派遣にしても、ボーナス分だけ賃金を上げてやるということを考えるべきではないかという御指摘でございますけれども、これについては、私ども、一つは、やはり最低賃金法というものの改正による引き上げで何とかそういったことの求めというかそういうものにもこたえていける余地があるのではないか、こういうように考えているわけでございまして、すぐボーナス分と私がここで言えないのは遺憾でございますけれども、いずれにしても、最低賃金法の改正ということについてまた後ほど御審議をいただくわけですけれども、そういったことが力になることを私どもとしては期待いたしておる、こういうことでございます。

大島(敦)委員 先ほどのボーナス分というのは例えでして、ただ、最低賃金法も、最低賃金法の法案が提出された際には御審議はしたいと思うんですけれども、要は、労働法制が、どうして労働法があるかという原点があると思うんですよ。あくまで民法の特別法だと私は理解しておりまして、民法上の契約の自由に任せると、労働者側は弱い立場ですから、契約の自由のところで、例えば雇用契約を結ぶとかあるいは雇用をやめるという解除の契約についても経営者側の自由に任せられるので、それは特別法をつくって労働者をしっかりと守った方がいいというので多分労働法制ができているので、その原点が、今の経済財政諮問会議等の議論をちょっとかいま見ると、大きく欠けている点があるのかなと自分は思うわけなんです。

 ですから、少なくとも当委員会ぐらいは、あるいは厚生労働省のみでもいいんですけれども、その趣旨はしっかり理解していただいて、やはり派遣法の改正についても、自分が経営者でしたら、できるだけ雇いやすい方がいいし、優秀な人をできるだけ多く雇いたいと思うのは、経営者があくまでそういうお考えを持つのは私は当然だと思うんです。

 ただ、それに任せると、私ぐらいの世代ですと、十人採用しても二人ぐらいは、ちょっと人事の目がかなわなかった人も、自分もそうだったと思うんですけれども、いるわけでして、それで世の中というのはうまくバランスがとれていたところがあって、今多分、人事の目がかなわなかった部分はしっかりと派遣でまず受け入れてみて、ある程度いい人しか正社員にしないように、企業が人事に対して大体リスクをとらなくなっている。そのことについても、それは行き過ぎなのかなと自分は思うわけなんですよ。

 ですから、派遣法の、今大臣がおっしゃっていました、要は、定性的な数字を持っての話ではなくて、自分の例えば四十九歳の親しい友人が川崎に住んでいて、七社派遣登録をして、肉体労働というんですか、そういう派遣を申し込んでみたんですよ。結構話を聞くとおもしろくて、しっかりとした会社もあるんですよ。

 七社のうち一社は、派遣社員を自分の会社で面接して派遣先に送る会社。これが徐々に小さくなっていきますと、おとり広告のようなものを出しまして多くの方を集めるわけです。それも自分の会社じゃなくて、公民館とかあるいは公共施設の会議室をとって、そこに来ていただいて五十人面接をして、こういう会社もありますよという紹介をするとか、もっと小さな会社になりますと、そこで面接をして派遣先に送り込むように、派遣社員というと自分も明るいイメージがあったんですけれども、実際派遣にそうやって七社試してみた方の話を聞くと、意外と暗いイメージが多くある。

 ですから、派遣労働について、特に今、派遣の市場は四兆円の市場になっているわけですよ。派遣会社の市場規模は四兆円で、かつ常用換算で百二十万人の方が働いている大きなマーケットですから、これが常用代替になっているかなと自分は率直に思うんです。

 ですから、派遣社員のあり方についてよく検討していただき、どうするかといったら、私は派遣社員を二〇〇三年の改正までは戻していいかなとは思っていたりもするんですけれども、その点について、大臣として、派遣法の見直しとかを今後議論する余地があるかどうか、あるいは数字を踏まえないとできないのか、あるいは、今経済財政諮問会議等に多くの権限が集まっていますから、そこの議論を踏まえないとなかなか大島さんできないよと答弁されるのか、ちょっとその点について大臣の御所見を伺わせてください。

柳澤国務大臣 まず、労働法制の位置づけというものについては、大島委員と私は見解を一つにしております。

 今ここに、昨年十一月三十日に経済財政諮問会議での議事録の要旨を手元に用意しましたけれども、労使自治で労使が対等の交渉ができるかというと、実際の力関係からいってできないという考え方で労働法制はできています、これは全く平等でフリーマーケットでやれるなら民法でやればいい、こう私も申し上げているわけでございまして、最低限の労働者保護規定を設けることが労働法制の一番の基本で、そこはしっかりと踏まえて考えていかなければいけないという趣旨の発言を私自身させていただいておるわけでございます。

 そういうことの中で、派遣法の改正についてどう考えるかということでございますけれども、定性的に考えろ、こういうことでございますが、役所の長の立場におりますと、そういう御質問にすっとなかなかお答えできないということでございまして、先ほど申し上げましたように、現在、そういう検証期間、検証の調査をしている、こういうことでございまして、これを踏まえていろいろとこれから考えさせていただくということでございます。

 この派遣というものをどう考えるかということですけれども、これもやはりいろいろの、最低賃金法の改正の影響をどの程度このカテゴリーの労働の形態の労働者が受けるかということもありましょう。それからまた同時に、私といたしましては、先ほど委員御自身もリポートの引用という形でお話しになられたように、実は労働力の不足をどう補うかということで、そのときに労働力率を引き上げられる方々というのが女性とか高齢者とかというようなことでございますので、そういう人たちの働く形というのは、おのずからかなりいろいろなバラエティーを用意しないと、労働力率を高める道がないということになりはしないかということも正直言って念頭にございまして、そういったことの中で、今申した調査結果を踏まえていろいろと検討させていただきたいということでございます。

大島(敦)委員 ありがとうございました。

 自分も、高齢者あるいは女性が改めて労働市場に参入する、働き始めるためにはさまざまなバラエティーがあった方がいいとは思っているんですけれども、やはり同じような仕事をしたら同じような賃金を払うという、まずその原則はしっかり保つこと。

 あともう一つは、これは労働の需給がタイトになってきますから、今までとは違って、これからある程度賃金は上がってくるとは思うんですよ。今までとは違って、ある程度就業意欲のある方は大体正社員化していくと思う。今、マスコミ等で多くの従業員の方をパートから正社員にするというのは、これは確かにすばらしい、いいことだとは思うんだけれども、これはあくまで経営者側の理屈なわけですよ。経営者側の経営判断として、パート労働で不安定な雇用よりも正社員化した方が得だという判断が一個入ってやっていることなわけですから、これは経営判断としての意見なので、余り褒めちゃいけないなと思う。

 これは、労働市場を見るときにはやはりそれは当たり前のことなんだ、それは損か得かで雇うんじゃなくて、社会の公器としての会社経営をもしも経営者の方がしているんだったら、しっかりとそれは正社員を雇うべきだというふうに今の企業の経営者の方たちに求めていかないと、逆に、では、法人税を上げるという議論も出てきてしまうかもしれないし、また別の面で、先ほど大臣がおっしゃったとおり、労働力、労働投入量が減っていきますから、年金保険料を納める方の数も少なくなるしトータルも少なくなりますから、上の世代に仕送りできなくなるわけで、では、その分は資産課税するとか、政治はまた別の手段も考えてくるわけですよ。

 ですから、そういうことも踏まえて、今の日本の経営者の方たちには国際競争力もあるんだけれども、ただ、その前提については、我が国も、ここの議論じゃないんですけれども、世の中のトレンドは、世界のトレンドは、余り競争を自由にやるよりも多少バランスをとった方がいいような、パラダイムシフトを起こすような議論を日本がしてもいいと思うし、それでもって、余り法改正を行えなくても徐々に正社員化していくという、これがCSR、企業の社会的責任としてしっかりそれは正社員化して、ちゃんと日本の社会の再生、要は、持続可能性が生まれる賃金レベルに持っていくのは皆さん経営者の社会的責任だよというところも、厚生労働省、国としても求めていかないと野方図になりがちだなと自分は危惧を持っているんです。

 その点についても、ぜひ大臣にお願いしたいところがあるんですけれども、一言だけお願いします。

柳澤国務大臣 企業というのも公器であるということで、それを十分自覚した上で、労働者の雇用についても考えてもらいたいという御主張かと思いますけれども、それは、何と申しますか、ステーク・ホルダー・オリエンテッドの経営ということかと思うわけでございます。

 そういう意味で、私どももいろいろな経営の先達の言説というものを記憶にとどめているわけです。例えば、松下電器の松下幸之助さんのいろいろな経営についての考え方というようなものも私ども記憶にとどめているわけでございますけれども、とにかく日本経済がフロントランナーになったということで、ある意味で、モデルのない時代をみずからクリエーティブにモデルをつくって進んでいかなければならないということでございますので、CSRだけで労働者の賃金あるいは処遇について決めるということを主張するというのも、なかなかおいそれとイエスと言うことには、私はかなりちゅうちょを感じております。

大島(敦)委員 その点については大臣の御答弁もわからないことはないものですから、それは次に譲りまして、今回の政府案の雇用対策法の改正案につきまして、第四条に国の施策として一から十二までの施策が用意をされております。この施策につきまして、時間的には十五分しかないんですけれども、個別に、具体的にどういう施策をするかについて伺っていきたいと思いますので、御答弁をお願いいたします。

 まず、これは第四条の一号、多分一番最初に書いてあるから一番大切なことだとは思うんですけれども、「各人がその有する能力に適合する職業に就くことをあつせんするため、及び産業の必要とする労働力を充足するため、職業指導及び職業紹介に関する施策を充実する」と書いてあるんですけれども、具体的にはこの施策とは何かということについて、御答弁いただければ幸いです。

高橋政府参考人 第四条第一項第一号の規定でございますが、これに基づきまして行っておる施策は、職業安定法に基づく公共職業安定所等による職業紹介、職業指導、また民間職業紹介事業の適正な運営の確保といったようなことでございます。

大島(敦)委員 今度は第二号なんですけれども、この中で、「各人がその有する能力に適し、かつ、技術の進歩、産業構造の変動等に即応した技能及びこれに関する知識を習得し、これらにふさわしい評価を受けることを促進するため、職業訓練及び職業能力検定に関する施策を充実する」ということで、これは技能ではなくて今回は職業能力検定に変えておりますけれども、この点につきまして、具体的にどういう施策を実施されるのか、教えていただければ幸いです。

高橋政府参考人 第二号でございますが、職業能力開発促進法に基づきましての公的あるいは民間が行います職業訓練及び職業能力開発、並びに、国が行います技能検定でありますとか民間が実施しております社内検定等がこの施策として入ろうかと思います。

大島(敦)委員 今度は三番目なんですけれども、「就職が困難な者の就職を容易にし、かつ、労働力の需給の不均衡を是正するため、労働者の職業の転換、地域間の移動、職場への適応等を援助するために必要な施策を充実する」と書いてありますけれども、この施策の内容について、お知らせいただければ幸いです。

高橋政府参考人 第三号の施策でございますが、これは、雇用対策法の中で規定しております就職困難者に対します職業転換あるいは職場への適応等のための職業転換給付金制度を通じた支援というものでございます。

大島(敦)委員 次の第四号なんですけれども、「事業規模の縮小等の際に、失業を予防するとともに、離職を余儀なくされる労働者の円滑な再就職を促進するために必要な施策を充実する」と書いてありますけれども、一号、二号、三号、四号を含めて、この四号について具体的に、この施策についてどのようなものがあるのか、あるいはどのような法的な裏づけに基づいて行われるのか、その点についてお聞かせください。

高橋政府参考人 第四号についてでございますが、事業再編等による事業規模の縮小等の際に、それに伴いまして離職者を発生させざるを得ない、その場合に、事業主に対しまして、再就職を促進するための再就職援助計画の作成ということを雇用対策法で義務として規定をしておるものがございます。

 また、離職ではなくて、一時的に労働者を休業、出向等をさせることによって失業の予防を図っていくというようなことに対しての雇用保険制度に基づきます雇用調整助成金等の支援というものがこの施策として入ろうかと思います。

大島(敦)委員 次は、五号ではなくて、ちょっとイレギュラーな質問をするんですけれども、今回、「人口減少下における雇用・労働政策の課題」というのがありまして、これは非常によくできていまして、この中で、ワークライフバランスという項目を起こしているわけですよ。

 やはり、今まで大臣といろいろと御議論をさせていただいた中で、モデルを、新しい雇用のスタイルというのを私たちの社会の中でもつくっていかなければいけない。その一つが、多分、仕事と生活のバランスだと思うんですよ。

 この点について、今回の雇用対策法の中だと入っていないように思えるんですけれども、その点について御所見を伺わせてください。局長で結構です。

高橋政府参考人 御指摘のワークライフバランスという考え方でございますが、少子化が進む今後の我が国におきまして、だれもが仕事と生活の調和がとれた働き方ができる社会を実現するという観点で考えますと、大変重要な課題であるというふうには理解をいたしております。

 委員御照会ございました雇用政策研究会でも、幅広く、実は、狭い意味での雇用対策のみならず、雇用労働政策という非常に広い視野のもとで、今後のあり得べき雇用労働政策というものを御提言いただいたわけでございます。今御議論いただいております雇用対策法自体は、労働者の就職、あるいは雇用継続の推進、さらには職業能力の開発、向上等といった内容を中心とした法律ということもございまして、ワークライフバランスというのは、むしろ労働時間、労働条件といった観点が重要な視点になる課題だろうというふうにも思うわけでございます。そうした意味では、この雇用対策法に直接規定をするものにはなじまないのではないか、こういうようなことで考えておるところでございます。

大島(敦)委員 今回、大臣、このワークライフバランスをしっかり雇用対策法の中で位置づけて書かれると非常によかった法律かなと思うんですよ。やはり、新しい仕事のスタイル、今まで、この十年間の景気のリセッションと、あと、団塊の世代がこれから退職されて労働力人口が減っていく中で、どういう働き方のモデルがいいかというのをこのワークライフバランスという言葉で一つ定義づけられてこの雇用対策法をつくられると、恐らくいい法律になったと思う。今一番から四番まで聞いてきたけれども、今までの施策の後づけ的なものというんですか、余り聞いていておもしろくないわけですよ。思想が一個入っていないところがあるわけです、国として何をしたいのかという思想が。

 今回、特に基本計画もなくなってしまったわけですね。今までは、国として雇用の基本計画を定めて、国として五年なり十年間なりでこういうような政策を行っていく。これは、今までの答弁ですと、経済政策とリンクしているからもう必要なくなった、毎年毎年地域ごとにやれば済むんだと言うんだけれども、今の大臣の御発言を聞いていると、違うと思う。国としての雇用のあり方をしっかりとここで位置づけて、ワークライフバランス、女性の方、男性の方、これから女性でも改めて労働市場に参入される方、若者たち、どういう日本の働き方がいいかということをしっかりと書いておいた方がいい法律になったのかなと私は思うんです。

 ですから、その点について、今回、本当に惜しいのは、この基本計画がなくなったところは、経済財政諮問会議に押されてしまったのかなと私は思うんです。そうではないと思われているようなんですけれども、その点について、やはり基本計画、私も会社で中長期計画をつくって、十年は当たらないんですよ、ただ、三年から五年ぐらいは当たりそうですし、今はおおむね、いろいろなことが起きた後ですので、大体見えやすいのかな、雇用政策をつくるに当たっては。

 ですから、もう一度雇用対策基本計画をつくる、なくてももういいんだという答弁なのか、その点について若干御意見をください。

柳澤国務大臣 まず第一に、雇用対策基本計画を廃止することとしたんだけれども、後悔はないか、こういうお尋ねでございます。

 これは、実は、まず経済全体について、昔の企画庁で中期的な計画をそれぞれ五年ぐらいのスパンでつくってきたわけでございます。私自身も細川内閣のときに予算委員会で質問をしたわけですね。それはどういうことかというと、これだけマーケットメカニズムに任せるということを言う内閣においてまだ中期計画をつくっているなんというのは、およそ言行不一致ですねということを指摘した記憶があります。私はそのくらいもう中期的な経済計画をつくるということは省みる必要があるじゃないかという基本的な考え方を持ってございました。

 今回、結局、小泉内閣になりまして、「改革と展望」という形になって、もう完全なローリングのシステムになりまして、ある程度固定的な、中期的な計画で目標を定めるというような手法はなくなったわけでございます。したがいまして、その中期的な経済計画のある意味でもとにありました雇用対策基本計画というものもやはり独立して、それで頑張るということは必ずしも適切ではないということでこの章が削除された、こういう経緯でございます。

 それでは、雇用対策の方向性というのはどうしてこれから国民に示していくのかということになりますが、これにつきましては、私どもとしては、今度同じようにローリングシステムの、「進路と戦略」と名前は変わりましたけれども、要するに「改革と展望」、これのもとで、やはりこの「進路と戦略」に定められた施策との整合性をとりながら、私どもとして中期的なビジョンをつくって、これを公表するということはしなければならないだろう、こういうように考えております。

 なお、ワークライフバランスの点でございますけれども、私はもう勝手に、法文をざっと通読をしたときは、ワークライフバランスは実は十二号に書かれているというふうに思ったわけでございます。それで、事務局に、十二号なんだろう、こう言いましたら、いや、そこまでは考えておりませんというようなことで、今のところ私の説は通っていないわけですけれども、しかしながら、雇用管理の改善ということで私は辛うじて少しさわっているというか、そういうことなんだろうと思います。

 それでは、なぜそのようにやや消極であったかということですけれども、私が考えますと、ワークライフバランスということになって、ワークとライフが入るんですね。ライフが入りますと、これは、せっかく厚生労働省となったので、両方を包括してもおれの守備範囲だ、こう言っていいのかもしれませんけれども、やはりライフ全部を私どもの領分だと言うにははばかられるというような気持ちが、事務当局というのはもう習い性でございますので、あったのかしらん、私はこういうふうに、ちょっと言い過ぎたかもしれませんが、今思っているわけでございます。

 しかし、もとより、このワークライフバランスというのが大事であるということは私どももよくわかっているわけでございまして、しかし、厚生労働省として、あるいは労働行政の責任の、衝に当たる者として、具体的でなきゃいけないわけですね。具体的には、この問題は、すぐれて労働時間とか労働基準法の問題であるという考え方でございまして、これは、長時間労働を抑制するという意味の法制を今回も御提案申し上げておりますので、そういったことを通じて、具体的にワークライフバランスを実現するための方策、施策を講じさせていただいているということで御理解を賜りたいと思います。

    〔伊藤(信)委員長代理退席、委員長着席〕

大島(敦)委員 率直な御意見、ありがとうございます。

 雇用対策法ですので、本来であれば、多分、雇用基本法なりそもそもに立ち返ってつくられると、ワークライフバランス等々、新しい定義づけができるとは思うんですけれども、やはり法改正ですから、なかなかそこまでは踏み込めなかったということは御理解をいたします。

 最後に、また個別の質問なんですけれども、第四条の九号「不安定な雇用状態の是正を図るため、雇用形態及び就業形態の改善等を促進するために必要な施策を充実すること。」というのは、私が読むと、先ほどの派遣とか契約社員という読み方もできるんですけれども、具体的にそういうことをスコープに入れていらっしゃるかどうかをもう一度最後に御答弁いただければ幸いです。

柳澤国務大臣 ここは私の読みと事務当局のあれがマッチしたところでございまして、今委員の御指摘のように、雇用形態ということで、これはパートであるとか有期労働であるとかということでありますし、就業の形態ということで、派遣、請負をカバーしているということでございまして、これについての施策の充実を図っていかなければいけないということがこの雇用対策法で基本的に定められたということでございます。

大島(敦)委員 ありがとうございます。

 最後までここに残られた委員の方に改めて敬意を表させていただきます。ありがとうございました。

櫻田委員長 次に、園田康博君。

園田(康)委員 民主党の園田でございます。

 引き続きまして、私からもこの雇用対策法の審議をさせていただきたいというふうに思っております。

 さすが、やはり大臣でございまして、政治家としての大臣の発言を少しずつ聞かせていただいて、私も、大臣がみずからこの雇用対策法を手がけていただければ、恐らく我が党が出している雇用基本法というものに近づいていったのではないのかなという印象を大変受けた次第でございます。

 やはり私も大島さんの考えと同一にさせていただいているわけでありまして、人間としてのモデルといいますか、職業モデルというものを恐らく今見失ってしまっている中で、新たなものを模索していかなければいけないんだろうなと。

 それは、恐らく価値多元社会の中でさまざまなモデルケースが考えられるわけで、これもまたやはり難しいのは、一元的にこれがモデルだよということをお示しするというのも私はどうなのかなと。したがって、では、これが職業として中心的になるものであるとか、あるいはこれをやらなければいけないであるとか、そういう押しつけ的なものでもだめであろうと。

 同時に、この法律のつくられ方といいますか、法律そのものをひもといていきますと、先ほどくしくも大臣が坂口元大臣のお言葉を引用されながらおっしゃっておられた中で、少し気になる点がやはり私もございました。それはすなわち、これは労働基準法の第一条の目的のところでございますけれども、人として、人たるに値する仕事という部分をとらえている。

 確かに、労働基準法の部分は、最低限の基準を決め、そして、それをいわば価値としてしっかりと整えていかなければいけないという国の方策によってつくられた法律であります。したがって、その最低保障といいますか最低限の基準を決める際には、やはり人たるに値する仕事という表現が目的の部分で出てきてしかるべきであろうというふうに思うわけでありますけれども、殊さら、雇用対策法といった場合に、その考え方が果たしてそのまま用いられるものであるのかなというところになると、私はもう少し概念を広くとっていただきたい。

 すなわち、先ほど細川委員からも御指摘があったディーセントワークの話でありますけれども、これは、やはり人間としての尊厳というもの、人間らしさというものが、どちらかというと、人たるに値するではなくて、人間らしさが尊重される、そちらに重きを置かれるものであろうというふうに私は思っておるところでございまして、このILOの事務局長の報告でも、私も原文を読んでいるわけではありませんけれども、翻訳された、これは労働経済白書、厚生労働省が十六年に出されていたものであります。ちょっと質問は最初に戻りますけれども、最初、私のコメントだけ言わせていただきます。

 この十六年の労働経済白書の中のディーセントワークの説明文でいきますと、「「ディーセント・ワーク」とは「きちんとした仕事」あるいは「人間らしい仕事」を意味する。その内容は、一九九九年のILO事務局長報告によると「権利が保護され、適正な収入を生み出し、適正な社会的保護を伴う生産的な仕事」であるとされている。」ということと、「また、すべての者が収入を得る機会を得るという意味で、仕事が十分にあることも意味するとされている。」というふうになっているわけであります。こういう形で、やはり人間の尊厳という考え方が恐らく必要になってきているのかなというふうに考えているわけであります。

 したがって、私どもが、対案といいますか基本法の理念として掲げてある法律の条文の中も、今までの経済的な視点というだけではなくて、やはり人としての尊厳、これがきちっと重んじられるということをこれから基本理念の中にしっかりと盛り込んでいってはどうかということをひとつ御提言しておきたいなと思っておる次第でございます。

 そこで、この法案の提案理由の部分でございますけれども、最初に大臣が提案理由として御説明をされた中に、人口減少等の経済社会情勢の変化が見込まれる中で、今後とも我が国の経済社会の安定等を図る観点から、これらに的確に対応した雇用政策を講ずる必要があります、このため、働く希望を持つすべての人の就業の実現を図ることを明確化するというふうにおっしゃっておられます。

 これには私も大変共感をするものでございまして、働く希望を持つすべての人が就業の実現というものをきちっと図っていきたいということで、さまざまな施策がここから打たれるのであろうなというふうに思うわけであります。

 では、改正案の実際の中身でいきますと、第一条の法の目的であるとか、あるいは第四条の国の施策に対して、今いろいろ議論になっておりました、女性、若者、障害者、外国人、地域雇用についてというものは追加されたわけでありますけれども、具体的な改正内容としては、青少年の応募機会の拡大であるとか、あるいは外国人の適正な雇用管理、募集、採用に係る年齢制限の禁止の義務化というものにとどまっているという部分があるわけであります。

 ここでの提案理由でありますが、この働く希望を持つすべての人の就業の実現を図ることを明確にするということが、実際にこの法律の文言の中でどのような形で明確になっているのかということをまずお伺いしたいと思っております。また、もし、その文言を明確化しなかった、記入をしていないということであるならば、では、それは一体どういう理由をもってそのような方策をとられたのかということの確認をまずお願いしたいというふうに思います。

柳澤国務大臣 今委員の御指摘の私の提案理由説明における一節でございますが、働く希望を持つすべての人の就業の実現を図ることを明確化するということにつきましては、これは、第四条の、新しく加わった女性、青少年、高年齢者、障害者といったようなところと照応しているというふうに御理解をいただければと思います。

園田(康)委員 委員長、大変恐縮でございます、ちょっと定足数を確認いただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

櫻田委員長 足りていますので。(発言する者あり)失礼しました。

園田(康)委員 そうしましたら、ちょっと私、この十八委員室というのは、先週大変嫌な思いをしたわけでございますけれども、こういう状況の中で審議をするというのはやはりいかがなものかというふうに思いますので、委員長、定足数が足りるまで質問をやめさせていただきたいと思います。

櫻田委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

櫻田委員長 速記を起こしてください。

 園田康博君、質問を求めます。

園田(康)委員 昨日の本会議場でも、大変悲惨な状況が報道されたり、国民が見ているわけでございますので、どうぞ与党の皆様方も、しっかりとこの法案の審議というものに国会議員たるに値する態度で臨んでいただきたいというふうに思う次第でございます。

 それでは、質問を続けさせていただきます。

 大臣、大変失礼をいたしました。こういった状況の中で、大臣には大変不快な思いをさせてしまったかもしれません。

 今、雇用対策の目的の部分で、そういう法案が盛り込まれていなかったわけでありますけれども、しかしながら、文言ではなくて、その内容の中でしっかりと担保をしていくという御答弁であったというふうに思っております。

 ただし、先ほど大島委員からも御指摘があったように、この雇用社会のあり方の中で、雇用労働政策のあり方というものを真剣にこれから考えていかなければいけないであろうというところから、これからの状況をしっかりととらえていくためには、やはりライフスタイルというものを、しっかりと国民の生活というものを念頭に置いた形で課題に取り組んでいかなければいけないというふうに思うわけでありまして、これからの人口減少社会、そしてさまざまな多様化した社会の中でこの雇用対策法というものがどういう役割を示しているのかということを考えれば、必然的に、私は、先ほども申し上げましたように理念法、国家の基本骨格というものがぜひ必要不可欠になってくるというふうに思う次第でございます。

 それについては、雇用政策研究会、先ほど少し議論になっておりました。この雇用政策研究会の中で、いわゆる雇用、労働を取り巻く状況を放置すれば、経済社会を支える者の減少であるとか、我が国の産業を支える人材の質の低下であるとか、あるいは社会の不安定化の加速であるとか、少子化の進行というものを招いてしまう、経済社会の長期的な停滞や国民生活水準の低下のおそれがあるというふうにこの中でも指摘をされていたわけであります。したがって、こうした認識というものをこの研究会の中で掲げておきながら、今回、こういった基本的な理念についての改正を行わなかった、それが私にはどうも、まだまだ不十分ではないのかなというふうに思っているわけであります。

 大臣、どうでしょうか。先ほどおっしゃった、もう既にこの雇用政策研究会の中で、厚生労働省の中では我々と同じ認識を持っていらっしゃるんですよ、本当に。これが今回、なぜこの対策法の中にきちっと盛り込まれなかったのか。あるいは、対策という名のもとではなくて、本来ならば、しっかりとした基本理念を打ち立てるということを置けなかったのは大変残念なことではないかというふうに思うわけですが、大臣としての何か御所見があればお伺いさせていただきたいというふうに思いますが、いかがでしょうか。

柳澤国務大臣 この雇対法の考え方でございますけれども、基本法的な側面、それと具体的な実定法というか、このものが作用法としても機能するという、その両面を実は持っているわけでございます。これはもう既に御案内のとおりでございまして、そういうことから、やはり基本的な理念というものについてうたうという側面と、具体的な施策の指針みたいなものを定めておくということの両方をにらんで作業が行われたということでございます。

 理念としては目的規定を改正することで、あとは国の施策ということで、ここも実は、方向性の面と実定法的な面と両方を兼ねてしまっておりますので、ここで基本的な方向をうたうことで他の個別法をリードするということが実際行われている面もありますので、そこを改正することによって目的が達せられるじゃないか、こういう考え方に出ているんではないか、このように考えているわけでございます。

園田(康)委員 少し弱いのかなというふうに思っているんです。

 つまり、それであれば、先ほどの大島委員とのやりとりの中で、基本計画を立てなかった、今回削除いたしましたよね。基本方針であるとか基本計画というものをしっかりと打ち立てるということも「進路と戦略」というところでやるというふうにおっしゃっておられる。これはさっきも聞きましたし、この答弁を求めるわけではありませんが、基本計画というものはやはりどこかできちっとやらなければいけないだろうというふうには私は考えているわけでありまして、それの根拠法としてこの対策法と言うには、ではもう少し、先ほど申し上げたようなワークライフバランスであるとか、そういう理念をもっと盛り込んでもよかったんではないのかなというふうに逆に申し上げておきたいと思うわけですね。

 だから、先ほど申し上げたように、大臣もそのワークライフバランスのようなものを高く評価していただいているということであるならば、今後大臣が主導して、もう一度この雇用基本法をしっかりと厚生労働省の中で、政府で立てるんだということをぜひおっしゃっていただきたいというふうに思います。

 では、予定をしていた質問を一つ飛ばして、労働政策審議会の報告の中で「人口減少下における雇用対策について」ということで「地域雇用対策の重点化」という項目がございました。

 ここにおいては、雇用対策法に基づく雇用対策基本計画は終了させた上で、先ほどのお話ですね、一、地方労働局長が、毎年度、都道府県知事の意見を聞いて、雇用施策の実施に関する方針、いわゆる地方指針というものを策定いたします。そして、厚生労働大臣は、この地方指針の策定に資するために、毎年度、雇用施策の実施に関する指針、これは全国指針ですよね、先ほど午前中の議論でもこの全国指針についての議論はあったわけでありますが、これらの地方指針や全国指針について、まず省令で、これからだというふうにおっしゃっておられるわけでありますけれども、何を目的に策定し、どのような項目を盛り込んでいくのかということを少し具体的に、もし決まっていればお伺いしたいということ。

 それから、今実際に毎年度毎年度やっていらっしゃる、ことしの、平成十九年度地方労働行政運営方針というものがきちっと掲げられているわけでありますけれども、この中にも、労働基準行政であるとか職業安定行政であるとか雇用均等行政であるとか、ガイドラインがきちっとお示しをされているわけであります。このようなものとの違いというものは、今後一緒のようなことをやるのかなというイメージもわいてくるわけですが、これとの違いというものをどのように御認識されていらっしゃるのか、お伺いをしたいと思います。

高橋政府参考人 今御指摘のございました労働政策審議会の報告の中で盛り込まれておりました地方方針並びに全国指針についてでございますが、これにつきましては、厚生労働省が、今後私ども策定を考えたいとしております中期ビジョン、仮称でございますが、こうした中期ビジョンを踏まえつつ、国と地方公共団体との密接な連携によりまして、地域の実情に応じた機動的かつ効果的な雇用施策を実施していく。このために、現行の雇用対策法二十七条に国と地方公共団体との連携の規定というものがございまして、この規定を具体化するものとして、雇用対策法施行規則におきまして今後定めていきたいと考えておるところでございます。

 内容でございますが、基本になりますのは地方方針ということになろうかと思いますが、地方方針は、これは都道府県労働局長が、毎年度、都道府県知事の意見を聞いて策定いたします雇用施策に関する方針というものでございまして、地域の産業、就業構造でありますとか、都道府県が実施をいたします福祉施策並びに両立支援対策あるいは産業振興施策等との連携ということを十分盛り込んだ形で定めていこうというふうに考えているものでございます。

 また、全国指針でございますが、これは都道府県労働局長が定めます地方方針の策定に資するという観点から、毎年度、職業安定関係の施策を中心といたしまして、それにとどまらずに職業能力開発施策等々も含めた体系的なものとして示していきたいというものでございまして、それぞれの施策につきまして、必要に応じまして目標数値といったことも定めながら考えていきたいというふうに考えておるところでございます。

 なお、もう一点御指摘ございました労働行政運営方針との関係でございますが、労働行政運営方針は、もともと都道府県労働局が実施をいたします労働行政全般、職業安定行政のみならず労働基準行政、雇用均等行政といった労働行政全体に関する方針を定めるものであるわけでございます。

 これと地方方針との関係ということにつきましては、労働行政運営方針のうち、主に職業安定行政関係の施策につきまして、先ほど申し上げました都道府県知事の意見をも聞きながら、地域において実施をいたします職業能力開発施策等々も含めます具体的な雇用施策全般の方針という形で定めていくというものでございます。

園田(康)委員 そうしますと、地方労働行政運営方針を策定する際に都道府県知事からお話を聞く、地方指針を策定する際も同じように知事から御意見を伺って決めていくという形というふうに理解をするんですが、それでよろしいのかということ。

 それからもう一点、となると、この運営方針は運営方針でやっていって、もう一つ、地方指針をつくる際にもまた同じプロセスといいますか段階を踏んでいくということになりますと、何か二つの同じことをやっている、二重にやっているというような印象を受けるんです。確かに、この運営方針の中では幾つかあって、そのうちの雇用分野においての指針をこの中できちっと決めていくということになるんだろうと思うんですが、何か重なり合っておって、明確に違いがわからないようなものになっていくんではないかなという心配をするんですが、その点はいかがでしょうか。

高橋政府参考人 行政運営方針自体は、これは厚生労働省、国の本省と地方出先機関でございます労働局との関係で策定をいたすものでございまして、また、そこの含みます範囲も、先ほどお答えしましたとおり、職業安定行政のみならず労働基準行政あるいは均等行政といった分野を全体的に行政として行っていく方向づけを示すものでございます。

 したがいまして、この行政運営方針について都道府県知事から意見を聞くということは考えておらないわけでございますが、行政としての範囲の中の雇用にかかわる関連施策の方向づけとして地方方針というものを改めて策定する、その地方方針を策定する際に、都道府県知事からも御意見をいただきながら、都道府県の施策との連携も十分意識した内容でまとめていく、こういうものでございます。

園田(康)委員 わかりました。

 そうしますと、この地方指針を策定する際のプロセスということでございますけれども、いわば内容が、機動的に雇用施策を実施していくということであるならば、知事からの御意見だけではなくて、さらに中央でも審議会等でさまざまな労使のあるいは関係団体からの御意見を伺っているという部分もあって、そこからさまざまな指針を取り出していくというようなものが考えられるんです。

 この地方指針においても、地方における審議会であるとかあるいは地域労使等からの意見というものも聞くというプロセスがあってしかるべきではないのかなというふうに思うわけですが、その点についてはどのようにお考えかということと、それから、先ほど雇用対策基本計画をなくすというふうにおっしゃっておられたわけでありますけれども、では、その廃止をした後、今後何に基づいてこの雇用対策というものを行っていくということになるのか、そのこともあわせてお答えいただきたいというふうに思います。

高橋政府参考人 まず、地方方針の策定のプロセスの中でのさまざまな関係者からの意見の拝聴と申しますか、意見を聞く場ということでございますが、今申し上げましたように、地方方針策定に当たりましては都道府県知事から意見を伺うということにいたしておりますが、同時に地域の関係者の意見というものも幅広く伺っていくということも大変大事な視点でございます。そういうことによって地域における円滑かつ効果的な雇用対策の展開も図れるということでございまして、私どもとしては、各都道府県労働局に地方労働審議会という公労使三者構成の審議会が設置をされておりますので、こうした地方労働審議会にも諮りながら御議論いただくことを十分考えていきたいというふうに思っております。

 それから、雇用対策基本計画を廃止することに伴って今後どういうものをベースに雇用対策を進めていくのかというお尋ねでございますが、国としての基本的な考え方というのは、先ほど来お答え申し上げるとおり、経済財政諮問会議で議論されます「進路と戦略」において示されるわけでございます。そうしたことも踏まえながら、厚生労働省として実施をいたします雇用対策の具体的施策の方向性につきましては、私ども、「進路と戦略」というものを踏まえつつ、本改正案で規定をされております国が講ずべき施策というものにも即しながら、仮称でございますが、中期ビジョンといったものを策定して、これに基づいて中長期的な雇用対策の方向づけというものを策定し、公表していきたいというふうに思っております。

園田(康)委員 地方労働審議会でございますけれども、先ほど局長から、そういったところへも諮っていきたいというお話がありました。確かにそういうプロセスを踏むことは大切であろうというふうに思うわけですが、実際にその地方労働審議会というものが機能しているかどうかというところは、やはりこれはつぶさに見ておいた方がいいのかなというふうに思っております。

 一概に全部否定するわけではありませんが、年一回あるいは二回ほどやって後は全く開かれていないというような状況も、局長、実はあるということも私は少し伺っておるところでございまして、実際にその地方労働審議会がしっかりと機能しているかどうかということも含めて、これからそのような地方指針をつくって知事から聞くだけではなくて、ちゃんと審議会にも聞く。それでその審議会もちゃんと開かれているかどうかというものも、あわせて、指導と言ったら強い言い方になるかもしれませんが、実態をきちっと把握した上で、実際に本当にその指針がきちっと機能していくかどうかというものもあわせて考えておいた方がいいのかなというふうに私は思っております。これは指摘だけにとどめておきたいというふうに思います。

 それから、先ほど少し経済財政諮問会議のお話が触れられておりましたけれども、労働市場改革専門調査会というものが設置をされて、そしてその中の第一次報告においては、若年者、女性、高齢者の就業率やフルタイム労働者の年間総実労働時間や年次有給休暇の取得率、これについても今後十年間の目標を掲げることであるというふうになっておりました。また、その中においても明確に、ワークライフバランス憲章というものを策定してはどうかというものも提言をされていたというふうに思っております。

 したがって、繰り返しになりますけれども、大臣、そういったものも、せっかく御提言をしていただいているわけでありますし、これから真剣に厚生労働省の中でもしっかりと検討していくということも、あるいは大臣が率先してそういったところを、研究会、検討会を立ち上げるんだというようなお考えがあるかどうか。

 そのお考えと同時に、もう一問、その次の質問と絡めさせていただくんですが、雇用対策法も、最初の太田和美委員からの御指摘にもありました、雇用の量的な面の対策だけではなくて、やはり雇用の質というものがこれから問われていくんだろうなと。量だけ、はいはい、ではふやせばいいんだ、あるいは失業率を下げればいいんだというような形で、失業率が四%台になったからよかったよかった、あるいは有効求人倍率が上がったからよかったよかったということではなくて、それによって非正規雇用もふえているという現状をしっかりととらえていかなければいけないわけでございます。

 したがって、EUにおいてはクオリティー・イン・ワーク、仕事の質ということと、それからOECDにおいてもモア・アンド・ベター・ジョブズ、より多くのよりよい雇用、いわば雇用の質の、中身の話にどんどん今移りつつあるんだというこの現状をやはりしっかりととらえていかなければいけないのかなというふうに思っておりますので、この法案に今回盛り込まれているのかどうかも含めて、もし盛り込むことができなかったということであるならば、今後、それもワークライフバランスと同じように私たちの生活の中においてどのように検討をしていくのか、その考えがもし大臣に今あればお聞かせをいただきたいというふうに思います。

柳澤国務大臣 まず、経済財政諮問会議に置かれました労働市場改革専門調査会、これにつきましては、今御指摘のように第一次報告というものが出まして、特に数値目標ということで、関心がその面に高いところから、高齢者の就業率とかフルタイム労働者の年間総実労働時間とかあるいは年次有給休暇の取得率などについて目標値が掲げられているということは承知をいたしております。

 ここの議論というのは、今後十年程度の期間を視野に置いた中長期的な改革の基本的方向というものについて御議論をいただいておるというふうに承知をいたしております。私ども、もちろんこういう中長期的な目標というものを掲げていただいていることは、それはそれとして重く受けとめるわけでございます。

 同時に、具体の法律にするとかあるいは具体の施策に結びつける話については、これは強く経済財政諮問会議でも私から申し上げてある点でございますけれども、やはり、今労働省に置かれている労働政策審議会等、要するに公労使の三者構成の審議会で結論が出されるということのフレームワークについては、これは尊重してもらいたいということを申し上げてあるわけでございます。

 したがいまして、こうした中期的な目標値についていろいろ論じられるということは、そういう手続的な考慮のもとで行われているということでひとつ御理解をいただきたい、このように思います。

 そういう中で、ワークライフバランスについては、そちらの方でも大きく取り上げられているんだから、よくその点を考えて厚労省としての取り組みにも生かしたらどうかという御提案については、私どももそれは非常に重要というふうに考えております。

 ただ、私は、実はこの点については、検証ということで高々とかがり火をたくということは、非常に必要だと思っておりますが、同時に、先ほど委員とのお話の中で、モデル、つまりワークライフバランスというものを考えたときに、恐らく一律、画一的なモデルでないのだろうと私は思っているわけでございまして、そういう幾つかの典型的なモデルというものを調査したらどうかということを実は申しているわけでございます。

 これは、フランスのモデルとかオランダのモデルとか、いろいろ、ワークライフバランス、クオリティー・オブ・ライフを追求したモデルが世界でもやや多様化しているというふうに思うわけでございまして、片や日本の労働者なぞは、一体どういう生き方がこれから我々のものになるんだろうか、あるいは自分の選択肢になるんだろうかということについて、ちょっと模索をしているということもあるのではないかということから、私は、むしろそういう幾つかのモデルを提示するというようなこともあっていいのではないかと。

 もちろん、この検証と一緒になることが十分あり得ると思うんですけれども、ワークライフバランスだよということに加えて、やや具体化したモデルを提示するということができれば、非常に難しいということで大変な努力をさせているわけですけれども、そういったことも実はプロセスとして申し上げておきたいというふうに考えるわけでございます。

 なお、雇用の質につきましては、私、先ほども、この御提案申し上げている雇用対策法の一部改正におきまして、四条の第九号ということも申し上げたところでございますし、また十二号についても御理解を賜りたいということで、ちょっと先ほど、余分なことも含めて申し上げたんですけれども、そのあたりのことで、私どもとしては、非正規雇用であるとか、均衡処遇であるとか、男女機会均等法であるとか、あるいは育児休業等について、実はそうした九号ないしは十二号でもってここに記させていただいておるということを御理解賜りたいと思います。

園田(康)委員 さまざまな生き方もあるだろうし、そして私自身も、まさか東京でこういう仕事に携わるというふうには思っていなかったわけでございまして、本来ならば田舎、田舎と言ったらちょっとおしかりを受けるかもしれませんが、大変住環境のいいところに住み、大変おいしい水とおいしい空気に周りを囲まれ、心豊かに、静かに暮らしながら、そして私は研究者を志しておりましたので、今、インターネット等も含めて、いわば、田舎にいてもさまざまな形で大学とのやりとりができたりというような形を夢見ていた人間の一人でございましたので、そういった部分もさまざまな形で、ここに人間がいるだけのクオリティー・オブ・ライフというものは持っているんだろうなというふうに思っております。

 だからこそ、大臣おっしゃるように、まず研究、検討というものを積極的に行っていただきたいなと。そうしなければ、恐らくヨーロッパであるとかアメリカもそうでありますけれども、そういう先進諸国の中には、もっともっと人間らしさ、先ほど一番最初に申し上げた、人間らしさとはどういうものであるのかというものをしっかりと追求している、その中で一つの理念を立ち上げて、そこに向かってさまざまな施策を打っていくという順番がしっかりと立ち上がっていくんだろうなというふうに思うわけでございます。厚生労働省としても、そういう実現に向けて、ぜひとも取り組みをいただきたいというふうに思います。

 時間がなくなってまいりましたので、少し順番を飛ばしてといいますか、用意させていただいたものを飛ばさせていただくんですが、先にこの法律の十条関係のお話を少し具体的にお伺いしたいと思っております。

 きょうの午前中の議論にもありました、募集、採用に係る年齢制限の禁止の部分でございますけれども、今回、募集、採用に係る年齢制限の禁止については、いわば経済活動の自由の一種である採用の自由というものを制約することになりはしないかというような危惧があるわけでございます。そういった中に、いわゆる合憲性というものを厚生労働省の中でどのように整理されているのかということを少しお伺いしたいと思いますが、いかがでしょうか。

岡崎政府参考人 先生おっしゃいますように、企業の採用の自由、これは一つの権利でございます。しかしながら、その採用の自由というのは、すべて自由かということになりますと、必ずしもそうではないだろう、いろいろな政策的あるいは公共の福祉その他の関係から必要な制約はあり得る、こういうふうに考えています。例えば、既に男女雇用機会均等法という法律がありますが、あの法律の中では、性別を理由として募集、採用で差別をしてはいかぬ、こういうことになっています。

 したがいまして、そういうふうに、いろいろな政策というか、あるいは公共の福祉等々の観点から、やはり採用の自由といいましても、考慮してはいけない事項とか、そういったものはあるのではないか。現在、年齢ということを考えますと、これまで私ども、努力義務という中でやってきたわけでございますが、年齢不問求人が五〇%となっているという状況のもと、それから、今後の高齢化その他を考えていった場合には、現時点の政策判断として、年齢による採用の禁止をするということにつきまして、これはそういうことを企業に求めたとしても、合憲性その他問題はないだろう、こういうふうに判断しているということでございます。

園田(康)委員 いわば、職業選択の自由の中から出てくる営業の自由とともに、この採用の自由というものもうたわれているわけでありますけれども、一方で二十七条、二十八条、勤労権、そして団結権という労働者の権利というものもあり、そして公共の福祉の概念の中から、そういったものも合憲的に扱われるものであろうというふうに思っております。

 では、更問で申しわけないんですが、お答えできる範囲でお願いをいたしたいと思います。

 そういった場合に、経済的自由権の一般的な概念からいきますと、私は大学で学び、そして教えている段階の中においては、いわゆる三種の違憲審査基準というものが、三重と言ってもいいでしょう、アメリカから派生したいわゆるダブルスタンダード、厳格な基準と緩やかな基準と中間基準、厳格な合理性の審査というものが間に入ってくるんだろうというふうに思っております。

 そういった場合に、この募集に係る年齢制限の禁止を争う事案として、もし裁判過程なんかに入った場合は、いわばこれに関して審査基準でいくならば、我々が決めるわけではないのかもしれませんが、厳格なる合理性の審査に服すのか、緩やかな審査に服すのか。経済的自由権の中のどちら側に当てはまるというふうに考えて、想定をされていらっしゃるか、少しお伺いできればなというふうに思うんですが、いかがでしょうか。

岡崎政府参考人 厳格か緩やかかということにつきましては、そこまできちっと詰めたわけではございませんけれども、現在のいろいろな雇用の状況等を考えてきた中で、年齢というものがどういう意味を持っているか、年齢を採用の基準にすることがどういう意味を持っているか、こういうことを考えますと、やはり企業活動の自由というよりは、そういう部分というのは強い価値を持っているのではないか、こういうふうに思っておりますので、もし仮に裁判で争われるとしても、法律に根拠を持たせたということもありますけれども、そういう中で裁判所も判断していただけるのではないかな、こういうふうに考えております。

園田(康)委員 三菱樹脂事件のときも、その他の法令で定める場合を除きというふうになっていたわけでありますので、判例上は、恐らくこういう形で法定化すれば問題はないであろうというふうに私も思っております。ただ、厳格な合理性の審査、もしそこに立脚をするということであるならば、立法事実の吟味をきちっとしておかなければいけないのかなというふうに思っておりますので、ちょっとそのことも含めてお伺いをしたというふうに御理解をいただきたいと思います。

 もう一問。それに係る年齢制限を禁止するということでありますけれども、省令で定める除外事由というものを考えていらっしゃるというふうに伺っておりますが、今の段階で具体的にどのようなものを想定されておられるのか、もしあれば聞かせていただきたいと思います。

岡崎政府参考人 先生御承知のように、現在の努力義務の中で、指針で十項目が定まっております。ただこれは、今回義務化するに当たって、この十項目をそのまま省令にするというのはいささか広過ぎる、こういうふうに考えております。これから法律が成立すれば、審議会の意見を聞きながら定めていくということにしておりますが、特に現在の企業の雇用慣行その他から見て本当に必要なものに限定していく、こういうことでやっていきたい、こういうふうに考えております。

園田(康)委員 恐らく、今の指針の中、ガイドラインに基づいて行っていくんだろうというふうに思いますが、私としてはなるべくきちっとこの委員会の中で審議をさせていただきたい。先ほどの外国人の情報提供の部分もそうでありますけれども、すべてこの後の議論に付するというのはいかがなものなのかなというふうに思っておりますので、その点、よろしくお願い申し上げたいというふうに思います。

 時間がなくなってまいりましたので、最後の方の質問にいたしたいというふうに思います。

 地域雇用開発促進法の分野でございますが、今回、地域のさまざまな雇用情勢というものを見ていきますと、やはりまだまだ大変厳しい状況のところ、そしてまた有効求人倍率だけで見れば、かなりの格差が生まれているというのが現状であろうというふうに思っております。

 私の住んでいる東海地域、愛知県を中心といたしまして大変今好調を期しているという部分があり、一方、東北、北海道、青森、そして沖縄という形で、地域によっては大変低迷をしていて、そこからなかなか抜け出せないという地域があるというふうに思っております。すなわち、やはり雇用の情勢も二極化が進んでしまっているなという印象があるわけでございます。

 したがって、大きな、相当な開きが出てしまっているということに対する認識として、なぜこのような地域間格差が生まれてしまったのかということに対して、厚生労働省としてどのような分析をされていらっしゃるのか、まずはお伺いをしたいと思います。

高橋政府参考人 雇用情勢におきます地域の差、地域格差、これがかなり広がっているんじゃないか、この原因というお尋ねでございます。

 なかなか一概にはその原因を申し上げるというのは難しい面がございますが、ただ、幾つか言える点といたしまして、今回の景気回復を牽引いたしておりますIT関連産業でありますとか、それから自動車関連産業といったような、こうした産業の地域別の集積状況の違いということが一つ指摘できるのではないか。また、かつて地域を支えておりました製造業の幾つかの分野については、やはり競争力等の面で海外に多く進出をしてしまった。さらに申し上げますれば、現在においても減少が続いております公共事業への依存度、地域によっての依存度の違いといったようなこととか、そうしたもろもろの要因が複合的に影響しているのではないかというふうに理解をいたしております。

園田(康)委員 そうすると、これまで雇用情勢の厳しい、いわば七道県というふうに言われておりますけれども、北海道、青森、秋田、高知、長崎、鹿児島、沖縄というふうに名前が挙がっております。これに対して雇用対策を重点的に行っているということでありましたけれども、まず、簡潔で結構でございますが、具体的にどのような対策を行ってきたかということを少し検証したいと思いますが、いかがでしょうか。

岡崎政府参考人 七道県に対しましては、各所の地域に対します雇用施策につきまして、配分比率等を決めるなどして対応してきております。例えば、地域で雇用創造のためにいろいろ研究をする事業、これにつきましては、七道県に対しまして五割、半分を配分いたしました。

 それから、いわゆるパッケージ事業、地域で雇用創造をするためのいろいろな事業を行う、これにつきましても、七道県に対しまして五〇%を配分してきております。

 そのほか、地域創業助成金という、当該地域で創業したところに対します助成制度があるわけでございます。これは一般の府県におきましては三分の一補助でございますが、この助成率を五割にする。そういったような重点的、あるいは基準を上増しするというような形で七道県におきます雇用開発を支援してきている、こういう状況でございます。

園田(康)委員 そうしますと、今回の地域雇用開発促進法の改正というもので、いわば今までの、既存の四つのスキームがございましたけれども、雇用機会増大促進地域というものと、能力開発就職促進地域、求職活動援助地域、そして高度技能活用雇用安定地域というふうに四つのスキームを立ててやってきたわけであります。今回からは、これがいわば二つのスキームになるわけですが、雇用開発促進地域というのと自発雇用創造地域というふうに二つに重点化するというふうになっております。

 この二つのスキームで行うということでありますけれども、これは新しい制度で、これについてどのような予算配分をし、そしてどこに重点化をしていくのかというのがまだちょっと伝わってきていないんですけれども、具体的にどのようなことをやろうというふうにしているんですか。ちょっと簡潔に教えていただきたいんです。

岡崎政府参考人 従来の四地域の中には、例えば求職活動援助地域等、これは、当該地域の雇用状況がいい悪いということではなくて、いい地域であっても情報ミスマッチがあるような地域は対象にしていたというようなことがございましたが、今回は、雇用情勢が特に悪い地域としまして雇用開発促進地域、それから、そこまで悪くはないですが、比較的悪くて雇用創造に向けた意欲が高い地域ということで、少なくとも全国的な平均よりは求人倍率等を見て雇用状況が悪い地域を対象にした施策に重点化する、こういうことを考えております。

 具体的には、雇用開発促進地域におきましては、当該地域で事業を始めます事業主等の方に必要な助成を行っていくということを考えておりますし、自発雇用創造地域におきましては、当該地域におきまして市町村等が経済団体等と協力しながら雇用創造のために行う事業に対しまして、事業を委託するという形で支援していくということを考えているということでございます。

園田(康)委員 そうすると、先ほど少し、悪い地域の中で公共事業に頼っている部分もあったのではないかというふうなお話が出ておりましたけれども、実際に、青森の方からのお話でいきますと、やはり今までそういったところに頼っていたという部分は否めない、したがって、これからは地域で、もっとさまざまな部署、産業界、経済界あるいは農業界、さまざまなところと連携をしながらこれから取り組んでいきたいというようなことをおっしゃっておられるところもあるというふうに伺っております。すなわち、雇用政策と産業政策の連携というものが極めてこれから重要になってくるというふうに思っておりまして、その施策の第一弾としてこれがスキームとして出てきているのかなというふうに考えているわけです。

 きょう、経済産業省さんもお越しをいただいているわけでありますけれども、地域間格差が生まれて、そこからの連携を今後どのように考えて、そして厚生労働省とのパッケージ的な推進といいますか、地域政策振興というか、そういったことを具体的にどのように考えていらっしゃるか、お話を伺いたいと思いますが、いかがでしょうか。

川原田政府参考人 雇用政策の観点からいたしますと、雇用の場づくりというのが重要であるというふうには認識をしております。また、当方が所管しております産業政策の観点からいたしますと、企業の人材確保というのは重要な課題でございます。

 このように、雇用政策と産業政策というのは表裏一体の関係にあるというふうに認識しておりまして、地域の活性化を図るためには、経済産業省と厚生労働省が緊密に連携していくことが必要不可欠だというふうに考えております。

 このため、経済産業省では、本通常国会に、地域の強みを生かした企業立地の促進をするための地域産業活性化法案を提出しております。これで厚生労働省の地域雇用開発促進法改正法案と緊密な連携を行うという方針であります。

 両省のこれらに基づく支援措置が相乗効果を発揮いたしまして、企業の立地と雇用の創出を効果的に進めまして、地域活性化が図られるよう取り組んでいきたいというふうに承知しております。

園田(康)委員 いわば地域協議会というものを設置して、その中で、労働部局と労働局それから産業局とがきちっと連携してさまざまな施策をこれから打っていくというふうに伺っております。ぜひその枠組みをしっかりと連携をとっていただきたいなというふうに思うと同時に、ただ、厚生労働省に私は一つ、最後、提言といいますか心配事をお話しさせていただきたいというふうに思っているんです。

 これから、地域の時代、地方の時代と、確かに私も、地方主権の時代をつくり上げていかなければいけないだろうというふうに思っておりますし、今回のこの法案の全体を眺めていきますと、地域のことは地域でやってくれ、そして自発的に行うところは、それは地域からしっかりと行ってくれ、どんどん言ってきなさいよというふうにおっしゃっておられるわけでございます。

 しかしながら、果たして、地域にすべて任せてしまって本当に、大丈夫という言い方はおかしいかもしれません、しっかりとしたものが出てくるかというと、まだまだ、それでもばらつきが出てくるのではないのかな。すなわち、部局によっては、大人数で地域の実情をとらえて、そして積極的に施策を打っているところ、さっき申し上げたような青森県の知事も、これからは物づくりの技術を持った人材育成を進めていきたいというふうに明確に指針を持って行っているところ、そしてそれを支えている部局があるところはしっかりと行っていけるんだろうなというふうに思うわけでございますが、そこに重点配置をしていないような部分は、どうしても施策的に薄くなってしまうという部分は否めないのかなというふうに心配はしております。

 したがって、国の役割として、それがきちっとした形で推進ができるというところに至るまでは、まだまだ国がさまざまな分野の、いわば地方には六百以上のハローワークというものもまだあるわけでございまして、ここを中心として、さまざまな地域の実情に合った、あるいは、先ほど申し上げた経済産業省との地域協議会というものをしっかりと活用しながら、もっともっと情報収集と発信、そしてそこの中から新たな施策を見出していくという方向性というものはこれから打ち出していくべきだろうなというふうに思うのでございますが、厚生労働省からの御意見として、最後、どのようにその辺も考えていらっしゃるか、お聞かせをいただきたいと思います。

高橋政府参考人 委員御指摘のように、厳しい状況にある地域の問題の背景には、なかなか構造的な問題というものも当然あるわけでございまして、地域だけで自主的に何事かをやるというだけでは限界がある。それだけに、国としても必要な支援を行っていく責務があるというふうに私ども受けとめております。

 そうしたことを踏まえて、今回の地域雇用開発促進法では、本当に厳しい地域といったところに支援というものを重点化していく。そういう中で、例えば、特に非常に厳しい地域である雇用開発促進地域に対するさまざまな支援措置に加えまして、そうした地域が企業立地等々を進める中で、必要な人材を確保していかなきゃならない、その場合にハローワークがそのお手伝いを十分やっていくということを我々も心がけていきたいと思います。それから、地域によっては、自分たちの地域を何とかしたい、しかし、なかなかノウハウがないという地域もあるわけでございまして、そうした地域に対して、私どもも、労働局が中心となって、都道府県、市町村あるいは商工会等々地域関係者が集まった雇用対策の検討を行う場を積極的につくっていく。また、専門家を派遣して助言するスキームというものも考えていきたいというふうに思っておるところでございまして、こうしたことを通じまして、私どもも、地域の取り組みというものに国として十分支援をしてまいりたいというふうに思っております。

園田(康)委員 ありがとうございました。

 以上で終わります。

櫻田委員長 次に、高橋千鶴子君。

高橋委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 先ほど来の議論もありまして、最初はおさらいになるかもしれませんが、確認をしたいと思います。

 雇用対策法一部改正の趣旨において、大臣は、働く希望を持つすべての人の就業の実現を図ることを明確化すると説明されました。この点は当然賛成するものでありますが、現在第九次となっている雇用対策基本計画が廃止をされます。

 そこで、今後、雇用対策の基本方針がどのように決められるのか、まず伺います。

柳澤国務大臣 先ほど来の議論をいわば確認するという意味のことになるわけでございますけれども、雇用対策基本計画につきましては、親の計画ともいうべき経済全体にわたる中期経済計画が廃止をされるということの中で、私どもとしても、この計画をそのまま維持するということはやはり適切でないというふうに考えまして、これを今度は削らせていただいたわけでございます。

 しからば、今後はそういう中期的な目標なしでいくのかといえば、それはそうではないわけでございまして、現在の「進路と戦略」を踏まえまして、私どもとしても中期的な雇用政策のビジョンというものを、これは仮称でございますが、策定いたしまして、公表し、これを道標として今後の中期的な雇用政策、労働政策を進めていくということでございます。

高橋委員 今、親の計画という表現を使われましたけれども、親の計画が目まぐるしく変わるので、長期的な視野での計画というのがなかなか持ちにくくなったということなのかと思うんですね。

 その上でですけれども、雇用対策法が昭和四十一年、一九六六年に成立をしておりますが、佐藤栄作首相の当時だったと思います。国会の議論の中で、経済計画に従属して雇用計画が策定されるようなことはあってはならない、そういう指摘がありました。私は、この指摘が非常に大事だと思っているんです。

 というのは、毎年決められる骨太方針、あるいは今「進路と戦略」と言われておりますが、官邸主導で、経済界の要請に沿った方針に雇用対策を合わせる流れが一層強まるのではないか、厚労省が本来雇用の所管でありますけれども、そういう親の計画待ちの姿勢になってしまうのかということに非常に懸念を持つわけであります。

 憲法二十七条における国民の勤労権を保障する、この基本的な立場が確保されるのか、この点を確認したいと思います。

柳澤国務大臣 今の御指摘でございますけれども、労働政策あるいは雇用政策といえども、経済全体の運営と全く無関係に独立に運営できるというものではないと思います。

 もとより、雇用というものは、先ほど来のお話にありますように、国民にとって最も大事な経済行為である雇用ということに非常に関係をするものでございますので、場合によっては、経済計画がかくかくしかじかであるけれども、その中にあってもなお、こういう目標を追求していくというようなことがないというわけではありませんけれども、基本的には整合性を持った計画ということが大事だろう、このように思うわけでございます。

 新しいビジョンというものにつきましては、私どもとしては、労働あるいは雇用の他に別して大切な側面があるということを十分に心得て、そういう心得のもとで策定していくという考え方でございます。

高橋委員 ちょっと最後の質問にお答えをいただいていないと思うんです。

 時々の経済にどうしても雇用の情勢が影響を受ける、引きずられるということは避けられないと思うんです。しかし、そういう中で、先ほど来ディーセントワークなどという議論もされておりますけれども、いわゆる労働者が犠牲になってもいいのかという点では、やはりそれは違うんだと思うんですね。

 二十七条における国民の勤労権、これを保障するために、厚労省はきちんとその点を中心に据えて仕事をするんだということは確保されますねということを確認したかったんです。

柳澤国務大臣 私の答弁も、高橋委員の御質疑あるいは立脚点を理解した上での答弁ということであった、このように考えております。

高橋委員 ありがとうございます。

 二〇〇一年、経済社会の変化に対応する円滑な再就職を促進するためとして雇用対策法が改正されましたが、我が党は、労働力流動化の名のもとに企業の大量リストラを合理化するものだと反対をいたしました。その年、三十人以上の大量雇用変動届を出した事業所は三千八十四事業所、離職者数は二十三万九千六百一人に上ります。これは前年比で倍加、一気に失業者を生み出し、完全失業率を五%台に押し上げました。

 当時の改正では、事業所が再就職援助計画を出せば大量雇用変動届を出したとみなされるとされていますが、どの程度この計画が出され、そして、どのくらい再就職に結びついたのでしょうか。

高橋政府参考人 お答え申し上げます。

 今お尋ねのありました再就職援助計画の認定状況の推移と申しますか、十三年十月以来どういう状況だったのかということでございますけれども、例えば、十三年は十月からの集計でございますけれども、十三年度で再就職援助計画の認定事業所数が二千三百三十六事業所、このうち、大量雇用変動の対象になります対象労働者が三十人以上の事業所が一千百七十四ということでございます。

 以下、十四年度以降の数字を申し上げますと、再就職援助計画の認定事業所数としては、十四年度が二千八百十七、十五年度が二千四百六、十六年度が一千七百、平成十七年度が一千六百十八、平成十八年度で一千百四十四事業所と相なってございます。

高橋委員 今、計画の事業所数を述べていただきましたけれども、例えば、十三年度が十月からの集計でありながら二千三百三十六の事業所が認定計画を認定されまして、十二万九千二十六人が対象労働者になっているわけです。ただ、その内容については、計画を出しただけということで後追いはできていませんよね、例えば再就職ができたかどうか。

高橋政府参考人 確かに、再就職援助計画に基づいてどれくらい再就職がかなったかということについては把握はいたしておりませんが、私ども、ハローワークにおきまして、再就職援助計画を策定した事業所からのいろいろな協力依頼等々があった場合、また、大量雇用変動の届け出を受けました場合には、必要に応じて、ハローワークが、隣接する他の地域のハローワークとも連携をとりながら離職した方々の再就職の促進に努めておるところでございます。

高橋委員 今、どのくらいというのはわからないというお答えだったと思います。

 ですから、さまざまな計画がつくられて、また改組される、そして奨励金もさまざま出されるんですけれども、それが本当に雇用の安定あるいは再就職に結びついたということがわからないままにまた新たな施策にいくんだという点では、非常に危惧されるものがあるんですね。

 今回、地域雇用開発促進法の改正によって、雇用情勢の地域格差是正として、特に雇用情勢が厳しい地域における事業所の設置、雇い入れに助成金を出す仕組みをつくるわけです。

 助成金をもらえる要件についてですけれども、これは例えばやはり正規雇用ということをすべきではないか、あるいは、雇用の継続という点についても、当然、一定、雇用の安定が保たれるということが審査されるべきではないかと思いますが、その点、いかがでしょうか。

高橋政府参考人 今御指摘のございました地域雇用開発促進法に基づきます助成金制度のみならず、その他さまざまな雇い入れ等にかかわる各種助成金というものがあるわけでございます。

 こうした助成金については、まず基本的に、受給のできる事業所、事業主に関しましては、解雇による離職者を生じさせた事業主ではないということをまずはその条件といたしておるところでございます。

 また、助成の対象になります雇い入れにかかわる雇用の中身といたしましては、常用雇用というものを前提にして助成金というものを支給いたしておるところでございます。

高橋委員 ですから、私は、常用雇用だけではなく、常用雇用というのは常用派遣というのもありですので、その点も含めて検討してほしいということを言ったわけです。今のお答えでは、多分今すぐには答えが出ないだろうということで、それを踏まえて、要望として受け取っていただいて、次の質問に入りたいと思うんです。

 地域雇用対策といいながら、地方で自治体が各種補助金あるいは税制措置での優遇をやっております。それが結局、安上がりの労働力の確保に企業が乗り出す、その一方で勝手な撤退や閉鎖で失業を大量に生み出す、こうしたことにはやはり歯どめが必要だと思うんですね。このことをぜひ考えていただきたい。

 まず、少し具体的な話をしてみたいと思うんです。宮城県の三陸ハーネスという会社であります。八八年十月に宮城県の指定誘致企業として志津川町、現在の南三陸町に設立をされ、株式会社協立ハイパーツの直営会社として日産自動車のワイヤーハーネスの製造を行っていました。このワイヤーハーネスというのは電線の束のことをいうそうで、自動車にとっては血管と神経に当たるんだというコマーシャルがあります。

 関連会社を含めて二百人が働いていました。〇五年一月に、突然、親会社である協立ハイパーツがワイヤーハーネスの生産拠点を中国へ移転することに伴い、同年九月三十日をもって工場を閉鎖すると告げられました。同会社は住友電装の一〇〇%出資子会社であり、三陸ハーネスは孫会社に当たりますけれども、長期債務も赤字もゼロであります。労働者は住友グループ内の技能オリンピックで二年連続代表となるくらい、大変労働者も優良な会社だった。それが一転、全員解雇となりました。

 志津川町は人口一万三千五百三十五人、今合併しましたが、それでも一万九千人余りです。この小さい町で二百人がリストラというのはどれほど大きな影響か、容易に想像できると思うんです。町議会は、九月十二日に全会一致で工場存続と雇用の確保を求める決議を採択しております。中小企業といっても、親会社である住友電装、あるいはその上の住友電工は世界第三位のシェアを誇る大企業であります。使用者としての責任が問われると思いますが、見解を伺います。

高橋政府参考人 今の御指摘の具体的な事案にかかわっての話でございますが、この事業所からは、親会社の生産拠点の海外移転に伴って事業を撤退する、こういうことで、それまで雇っておりました従業員に対しまして、解雇せざるを得ない、こういうことで、先ほど来お話のございました再就職援助計画というものが提出をされたわけでございます。

 この計画に基づきまして、事業主として再就職のためのさまざまな措置というものをこの計画の中で盛り込み、実施をしてきたというふうに承知をいたしているものでございまして、こういうようなことで、事業の大規模な縮小もしくは閉鎖というものがやむを得ない形で行われた、それに対して、一定の離職者を出さざるを得ない、この離職者に対する再就職の支援というものも取り組んでいただいているというふうに承知をいたしております。

高橋委員 今の御説明いただいた、まず再就職支援なんですけれども、会社の求職支援で再就職にこぎつけたのは九名にすぎません。もともと受け皿のない地域であり、困難な中で従業員をほうり出し、再就職支援の努力も十分に尽くしたとは到底言えません。

 しかも、問題なのは、生産拠点を海外に移す、だからそれはもう企業の経済活動の一環だからやむを得ないんだというふうな解釈が一定成り立つように思えるんですね。ところが、一方、この協立ハイパーツのある岩手県では、下請工場を岩手県内に八カ所も増設し、三十七名の求人を行っているんです。つまり、撤退するといって首を切っておきながら、ちゃっかり隣の県に工場を増設している。車で三十分から四十分の距離であります、十分通勤可能なところでありますね。労働者は非常に悔しい思いをしているわけです。この間、労働者は宮城一般労組に加盟し、裁判闘争を闘ってきましたが、そのうち労働者が一名みずから命を絶つ、そういう事態さえ生まれております。

 私は、解雇のときは事業が大変だからなどと理由を述べて、一方では、新たな工場増設あるいは新たな求人、こういうことがそのまま許されるのか、企業の勝手な振る舞いについて、労働行政において何らかの歯どめがないのか、このことを伺いたいと思います。

柳澤国務大臣 これは、労働行政で会社の経営の方針についてチェックを加えるというのは、やはり一般的にはかなり難しいことであろう、このように考えるわけでございます。

 現に、ここの事件は司法の方でも判断をされたようですけれども、いずれもやむを得ないというようなことになっているようでございまして、こうした経営上の判断というものは、私どもの経済のシステムでは尊重される。そして、雇用あるいは労働の政策というのは、そういう与えられた条件の中で労働者の雇用を図っていく、雇用機会の確保に努めていくということでありまして、経営判断そのものについて、これの自由というものを制約していくということは一般的には難しい、このように思います。

高橋委員 司法の場では、確かにやむを得ないという判断が出ました。しかし、これはまだ争っておりますし、労働委員会でも今係争中であるということですので、そこを覆せとか、その中身に踏み込むつもりはないんです。なぜかというと、その中で争われている話はたくさんありますので、事実をもっともっと突き詰めていかないと判断できない話がございます。

 ですから、そこを今求めているのではなくて、一般論として、大量に解雇をする、そのときはやむを得ないと言っている、しかしその後で大変また多くの求人を出している、そうしたことに対しては、やはりおかしいのではないかということを言ってしかるべきだということを私は主張したいんですが、もう一度お願いいたします。

柳澤国務大臣 今、私も一般論でお答えを申し上げているわけでございますが。先ほども職安局長からお答え申し上げましたとおり、助成の対象としてのお答えでございましたけれども、同じ企業がそうした再雇用をするというようなことの計画では困るという趣旨の答弁があったかと思いますけれども、いずれにしても、一般論として言えば、やはり経営上のいろいろな判断というものの自由は確保しながら、その中で労働者の保護に当たっていくという立場が私どもの立場ではないか、このように考えます。

高橋委員 ありがとうございます。

 やはり、同じ会社が、ほかの形で解雇した後にまた大量に再雇用というのはうまくないんじゃないかという判断だったと思います。やはり労働者の保護という点での行政のかかわり方が期待されるんだろうというふうに今のお話を聞いて思っておりました。

 残された時間で、このことを踏まえて、先ほど来少し議論になっているハローワークの問題についてお話をしたいなと思うんです。

 今回、女性、障害者、高齢者、青年、外国人など、各分野の雇用における施策を法律に明記いたしました。例えば、均等法、高齢法、職業能力開発法など、個々の法律をこの間改正してきたわけですけれども、いずれの分野においても、企業の義務違反などに対しハローワークの勧告だとか適切な指導が求められていると思うし、そういうやりとりがあったんですね。答弁の中で、きちんと勧告をしていきます、そういうふうなことがあったと思います。

 あるいは、各種助成金もさまざま出されているわけですけれども、これらの不正受給を未然に防ぐ問題、求職票の受け付けに当たって差別禁止や義務違反の徹底、今のような事態も含めて、期待される仕事は非常に多いと思いますけれども、この点についてどうでしょうか。

柳澤国務大臣 ハローワークの仕事の重要性について御指摘をいただきました。

 私どもといたしましても、ハローワークと申しますのは非常に、就職困難者というもののセーフティーネットという位置づけだろうと思うわけでございまして、そういう意味で、現在も、高齢者、障害者あるいはお子さんを持っているお母さん、こういうような方々につきまして特別ないろいろな手だてを講じまして、その方々の就職の機会の確保に努めているということであります。

高橋委員 私は、この間のハローワークとILO条約についての懇談会あるいは経済財政諮問会議の議論の中で、ILO条約に合わないなら破棄すればいいなどという議論がされていることに対して、非常に承服できない思いがあります。また、少なくない新聞報道においても、厚労省が条約を盾にとり抵抗しているというふうに描いているというのも非常に問題があるのではないかと思うんですね。

 やはり、コストで官の仕事と民の仕事を競争するという次元の問題ではないんだろう、最初に指摘をした、国民の勤労権を守るという本来の仕事からいって、コストではかれない国民の権利を守る大事な役割をハローワークが果たしているのであり、さらにもっと頑張ってほしいと私は思っているのだということを指摘して、終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

櫻田委員長 次に、阿部知子君。

阿部(知)委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。

 本日は、私の予告してございます質問以外に一問、冒頭、柳澤大臣にお願いいたします。

 先ほど細川委員もお取り上げでありましたが、昨夕刻、長崎市長伊藤氏が狙撃され、けさお亡くなりでありました。この第一報に接したときに、私は、安倍総理がおっしゃったことというのが、本当にこれでいいんだろうかと思うことでありました。

 総理は、捜査当局において厳正に捜査が行われ、真相が究明されることを望むと、まあ、これは当然のことであります。しかし、私は、事がやはり選挙期間中で、先ほど細川委員もおっしゃいました、政治活動中の狙撃という事態を、その理由とか背景とか真相とか以前に、事実として、政治活動への暴力による封殺であるときっちり認識された場合には、当然第一声は違う言葉であるべきだと思います。

 そして、けさになって安倍総理は、民主主義への挑戦は許さないという御発言でありましたが、やはり以前にも自民党の加藤紘一さんの御自宅が放火されるという事案がございましたし、実は、ことしに入って、私どもの福島党首が宮城県で街宣を行おうといたしましたときに、右翼団体から妨害の予告があり、実際に党の事務所に来られる等々の事案が相次いでおります。また、糸川議員には銃弾が送られる等の事案もございます。

 私は、今の社会風土を非常に危機的に感じております。非常に暴力的になっておりますし、実際にそうしたさまざまな政治活動の、議員の発言を実力で、殺してでもとめていいとするような風潮が広がることを大きく懸念します。

 そこで、大臣には、この事案の後、閣議は行われたのか、また、何かの、閣議としての、内閣の重要な方々の確認事項はあったのかどうか、冒頭お伺いいたします。

柳澤国務大臣 この件につきまして、現在段階で閣議が招集されたということはございません。また、どういう方々がお集まりになって、そして問題の協議が行われたかということ、大変恐縮ですが、私は現在つまびらかにいたしておりません。

 いずれにいたしましても、私は、先ほど御答弁申し上げましたように、民主政治の運営ということについて大変重大な挑戦だし、決して許されないというふうに考えております。

阿部(知)委員 大臣の大臣としての見解はお伺いいたしましたし、私も、そのように思っていただいて、本当に重要なことと思います。しかし、さらに、これは政府を挙げて、そのような認識を当然ながら一にして、国民に向けても発信なさるくらいの覚悟がないと、本当にこうしたことは、アリの一穴ではございませんが、一つ一つをないがしろにすることによって私どもの社会は非常に危機に直面するんだと思います。ある種の危機管理でもあると思いますので、本日の委員会でそうした指摘が委員からあったことも含めて、大臣としては行動もしていただきたいと思います。

 では、引き続きまして、予定された質問に入らせていただきます。

 実は、今回の雇用対策法の改正が、いわゆる大きな人口構成の変動、すなわち、少子化そして高齢化、私たちの次の時代をどのような労働力の確保をもって、本当に働く者の人間らしい労働と、そして社会の活力を持ち続けるかという観点からの法改正というふうには理解しております。

 私は、そのことの大前提、大前段といたしまして、実は三月の下旬に武見副大臣に質問を予告してございました少子化の事案について、冒頭、法案外のことですが、伺わせていただきます。

 きょう皆さんのお手元に配らせていただきました資料をごらんいただきたいと思いますが、ここには、分娩における医師、助産師、看護師等の役割分担と連携についてという三月三十日発令の厚生労働省医政局長の名による各都道府県知事にあてた文章がございます。この文章の意味いたしますところは、私がこの間この委員会で何回も取り上げさせていただきました助産、分娩の現状について、非常にマンパワーも不足しておりますし、一方で安全性ということも重要な国民的関心事になっているという中で、さて、厚生労働行政がどうあるべきかという非常に重要なテーマだと思っております。

 この文面は、大きく分けますと三つのことがここには述べられております。

 第一段が、いわゆる内診と申しまして、赤ちゃんがおなかの中から生まれてくるときに、だんだん頭が下降してきて、そして子宮口が開いて生まれ出るという段階、これに、例えば看護師さんはかかわれるのかどうかとこの間ずっと問題になってまいりました。

 この発令の中では、一応これまでの保助看法、皆さんのお手元の三ページに載せてございますが、保助看法によれば、看護師さん自身は、傷病者もしくは褥婦、お産の後の褥婦に対する療養上の世話はできますが、内診業務というものは、一応、保助看法上は看護師さんの業務とはされておらないものであります。しかし、これが特に現場の助産師さんの不足あるいは医師の不足等々において、現実には診療現場で行われておったということが明らかになり、この間、厚生労働省もいろいろなお取り組みの中で適正に是正していただきたいということを発信されてはおると思うのです。

 この発令も基本的にはそれにのっとったものと理解いたしますが、しかし、3で、非常に現場にとっては混乱を来す文章がございます。ここには、一番目、医師の役割、二番目、助産師の役割、三番目、看護師の役割というところで、看護師の役割のところの最後段に、「助産の補助を担い、産婦の看護を行う。」というふうになっております。この「助産の補助」というところが、例えば先ほどのいわゆる内診行為に当たる部分までを許可したものであるのかどうか、先ほどの子宮口の開大、赤ちゃんの頭がどこまで来ているか、内診と申しますのはお産の一連の行為ですので、そこだけ取り出して否やはもちろん言えないものですが、この部分が非常に人々によって理解が違います。このことが混乱になっております。

 そして、私は、わざわざと申しますと恐縮ですが、武見副大臣に御答弁をいただきますのは、副大臣がずっとこの事案というのは、医療分野の御出身でもありますし、さまざまな御見識もお持ちですし、またなぜこういう事態に立ち至ってまいったかという歴史も御存じの上と思いまして、あえて御質問をさせていただきますが、いかがでしょうか。

武見副大臣 委員御承知のとおり、直接の担当ではございませんけれども、御指名でございますのでお答えをさせていただきます。

 今回の通知は、これは、看護師等はみずから分娩の進行管理を行うのではなく、医師、助産師、看護師などがお互いの業を尊重した上で、適切な役割分担と連携のもとで出産の支援に当たるべきであるとの考えのもと、それぞれの役割分担を具体的に示したものであると承知をしております。

 また、御指摘の「助産の補助」という文言でございますが、それは、そうした役割分担を具体的に示すという通知の趣旨にかんがみ、看護師などが正常産の補助を担うことができることを明確にするために入念的に盛り込んだものであり、従来からの保助看法の業務分担の解釈に特段の変更はないというふうに聞いております。

阿部(知)委員 明確な御答弁をありがとうございます。

 実は、皆さんの資料の四枚目につけさせていただいたのは、「無資格助産問題の経緯」というふうに書いてございます。実は、一九六〇年代、このときもやはり助産師さんも不足という状態でありましたが、そこで、日本産婦人科医会というところが産科看護学院というものをつくられて、不足する産科医療の現場を何とか実際に運営していけるようにということで始められたシステムがございます。しかし、このシステムの中で、実は私が質問主意書を出させていただきましたが、二〇〇一年に出させていただいた主意書ですが、この産科学院の中には看護師さんでも助産師さんでもない、いわゆる医療現場では看護助手と言われている方々が、この看護学院に入られて、実際には、卒業されて、内診を行い、助産を行うということが多発いたしました。

 そして、その結果、ここには載せてございませんが、一九八八年でしたが、静岡県で出血多量で亡くなったお母さんがいて、その産院では、いらしたスタッフ全員がみんないわゆる看護助手さんで、それがナースキャップをかぶり内診をしていたという事案があって、非常に深刻な社会問題化いたしました。自来、厚生労働省でも、この助産という行為、特に内診は生命的危機にかかわるということで厳密に管理していただいてきておりますし、副大臣の御答弁もそうでありました。

 そのことは重く受けとめた上で、さて、柳澤大臣、済みません、これもきちんとは通告してございませんでしたが、しかし、また現状において、例えば先だって問題になった堀産婦人科の問題でも、実はこの堀産婦人科では、この下の方に書いてございますけれども、神奈川県の最大のお産の取り扱い分娩施設で、年間三千件を扱う医療施設でありますが、ここでもまた実は看護師さんが内診をしておられたということで、家宅捜索等々が入りました。私は、何度も申しますが、警察が医療現場に来るということは本当に避けたい、なくしていただきたい、そのための厚生労働行政であります。

 では、何でそんなことが起こるのかというと、ここでも大多数は准看護師さんをお使いで、助産師さんは四、五名で、その助産師さんは、助産にかかわらず、授乳指導等々をやっていたと。何でそんなことになるのかというと、一つは、実際に働いておられる助産師さんの数が足りないということに大きく起因しています。

 しかし、厚生労働省がいろいろ数を挙げられる中の集計を見ますと、助産師さんの数についても、現状、平成十八年度、厚生労働省がお出しになった需給見通しについては、いわゆる需要は二万七千七百、供給は二万六千人で、一千七百人の不足しかないと。少しは不足と言っているんですから、医師の場合よりはいいかもしれません。一千七百人の不足しかないと。ところが、先ほど言った産婦人科医会の方で、実際に診療所でどのくらいの数が足りていないのかというのを現場レベルで、現場ベースで調べましたら、何と六千七百十八人も足りないと。そして、もしも労働基準法を守って働いた場合には、何と二万三千四百六十六人も足りないと。もう圧倒的なダブルスコアの不足なんだという数値が出ておるんですね。

 私は、これは余りにも現状認識に差があり過ぎる、厚生労働省がいつまでも、例えば、千七百人の不足だ、だんだんふえてくるからいいよと言っていたのでは、いつまでもこの不幸な繰り返しは途切れることがないんだと思うんです。私は、ぜひこれから、今大臣は四月いっぱいかけて全国の各産科施設あるいは助産師さんの数等々をきちんと集計してくださるということでお進めいただいているようですが、実際に、ではそこで、看護師さん八時間労働というよりは二交代という場合もありますけれども、常勤換算して、頭数で、例えば、六時間働くとかじゃなくて、八時間ないし十二時間働くとして、一体幾ら必要で幾ら不足であるのか、これをきっちりデータ化していただきたいと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

柳澤国務大臣 厚生労働省では、かねて医師確保の問題を深刻に受けとめておりまして、この点について、私ども、いろいろな施策を立てさせていただいておるところでございます。

 去る三月九日付で、地域医療に関する関係省庁連絡会議という会議のもとに地域ごとの担当者を決めた医師確保等支援チームというものを発足させました。そして、まずこのチームは、各診療科目が問題なのでございますけれども、とにかく一番真っ先にこの産科の問題に取り組もうということで、最優先でまずこの問題に取り組んでいるところでございます。

 具体的には、地方厚生局とも連携をしまして、当該都道府県からのヒアリング等を行いまして問題状況についての認識の共有化を図る、また解決方策の提言、予算事業の活用方法などの具体的な助言を行うということに取り組んでいるところでございます。

 各種の取り組みを行うわけですが、それは、まず第一に、基礎的なデータを詳細に把握する必要があるということでございまして、今、阿部委員の御指摘のように、現在、各都道府県の医療圏ごとに、病院、診療所、助産所別の分娩数、それから、産婦人科のお医者さんの数また助産師の数、さらに三番目に、ハイリスク時等の主な紹介、搬送先病院などを調査しているところでございます。

 その場合に、産婦人科医師数や助産師数の把握に当たりましては、より実質的な把握ができますよう、常勤数だけでなく、常勤数にさらに非常勤を常勤換算して加算した数値ということで調査をしているところでございまして、委員の御指摘になられた常勤換算での実質的な数の把握に努めているところでございます。

阿部(知)委員 ぜひそのようにお願いしたいと思います。

 それから、さっきの発令の二段目は、これは大臣にお願いいたしました結果、各地で、助産師さんと病院のネットワーク、あるいは開業の先生のネットワークに御尽力いただきたいという発令ですので、大臣のやってくださったことに感謝いたします。

 では、本来の質問に移らせていただきますが、私は、きょうも委員会を拝聴いたしておりまして、やはり、全体の法体系の中にぜひ外国人問題というのをきちんと、本当の意味で私どもの国が対応していけるように組み入れていただきたいということを冒頭、質問させていただきます。

 提案の趣旨説明のところにもございますが、そもそも今回の法改正は、「人口減少等の経済社会情勢の変化に対応した就業の促進を図る」とされております。そして、その「人口減少等」に続く後に、「青少年、女性、高齢者、障害者等の就業促進対策を追加する」としております。あえて申しませば、ここには外国人という言葉は入っておりません。さらに、「働く希望を持つすべての人の就業の実現を図る」という文言もございますが、大臣に伺います。

 この「働く希望を持つすべての人」というところに外国人は当然含まれるのであるか、また、「青少年、女性、高齢者、障害者等」の「等」には外国人が含まれるのであるか。含まれるのであれば、「等」としないで外国人と書いていただきたいですが、どうでしょうか。

柳澤国務大臣 私どもの労働政策あるいは雇用政策の面で外国人という方々がどういう位置づけであるかと申しますと、労働力としてここに何か依存をしていくというようなことは基本的にございません。

 したがいまして、私どもは、労働力の不足という問題に直面する場合にも、実は、日本の国民の中の、女性であるとか高齢者であるとかというような方々の労働力率というものの引き上げを図っていくことによってこの問題に対処したいというのが基本でございます。

 しからば、この雇用対策法でどのようなことをもって外国人労働者に対しているかということでございますが、それは、基本的には、不法就労をやめていただくというようなこととか、さらに、外国人労働者が社会保険に未加入であるとか、あるいは、非常に厳しい労働条件にあるとかというようなことに対処して、しっかりした雇用管理の改善を行うということが我々の基本の立場でございます。

阿部(知)委員 今のような大臣の御答弁で本当にいいのかどうか、私はとても、柳澤大臣のために、本当に失礼な言い方ですが、懸念いたします。

 実は、日本は、さまざまな国際人権関連条約の中でも批准していない大きなものがございまして、移住労働者の権利条約というものは批准しておりません。しかし、これからグローバル化経済の時代です。大臣も経済にお強い。そうすれば、当然、グローバル化の中で、バリアフリー、国境は越えられていくわけです。その中にあって、どこの国で働いても、働くということ、これは例えば日本の憲法にも、憲法は国民主義ですが、労働は権利であり、義務である等々ございます。また、大臣が例をお引きになった坂口元厚生労働大臣の、労働基準法の一条一項は確かに人間らしく働くですが、三条にございますところの文面、大臣、労働基準法は、今度三条まで読んでいただきたいんですが、さっき、坂口元大臣は一条だと、本当にいい御意見でした。三条は、「使用者は、労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱をしてはならない。」実にこのような規定がございます。

 もし、今みたいな大臣の答弁ですと、外国人は労働力としては期待していないと。しかし、労働基準法には、国籍をもって差別はしてはいけないと。すなわち、労働基準法の体系の中に、人間らしく働くことと外国人の方もきちんとそこで差別されることなく働くというベースはあるわけです。それすらなくしてしまうような御発言に聞こえますので、私はとても懸念します。

 そして、角度を変えて伺わせていただきますが、大臣は静岡であるのでもう御存じかもしれませんと思って、大臣の答えが前向きになるようにお伺いいたしますが、外国人集住都市会議というのがございまして、浜松宣言とか、よっかいち宣言とかございます。

 外国人集住都市宣言とは、集住会議とは、既にたくさんの外国人が、不法か合法かは問わず働いておられて、これは日本の将来にとって、多文化共生、バリアフリー、グローバル化、本当に進むべき道を十八自治体が提言してございます。

 大臣にはまず、外国人集住都市会議を御存じか、あるいは、よっかいち宣言を御存じか、その提言を政府としてはどう受けとめているか、これをお願いいたします。

柳澤国務大臣 私の言葉が不足して、誤解を与えたのかもしれません。これは労働基準法の三条も、労働者の国籍云々ということで差別的取り扱いをしてはならないということでございますが、そういうようなことで、私は先ほど、外国人の雇用管理の改善をしなければならないんですということを申し上げました。しかし、我が国の労働市場あるいは労働需給というものを考えたときに、外国人労働者に依存するというようなことは考えておらないんですと。

 それは、私ども、いろいろこれまで積み上げてきた社会的な影響あるいは労働市場に対する影響というようなことで、実は、日本人の高齢者であるとか女性の方の労働力率を引き上げることによってその不足はできるだけ補おうとしているということで、今回の雇用対策法においても、希望の人たちについて、できるだけその希望がかなえられるように施策を打っていくということを申し上げたのでございます。

 ですから、入国をされた外国人労働者の皆さんについては、雇用管理を改善することによって、できるだけ、雇用が不安定なことであるとかあるいは社会保険に加入していないことであるとかということを改善していこう、こういうことであるわけです。そこはちょっと何か誤解があるようでございますので、あえて申し上げます。

 私の地元の浜松市におきましては、また浜松市のみならず、私の住まっている近隣でも非常に外国人の労働者は多くいらっしゃって、特に浜松市等では、もうほとんど、街路であるとかそういう箇所の標示は外国語も使っているということがございますし、また、学校教育の場におきましては、できるだけその御子弟が日本での教育で支障が生じないような、そういう努力をしているということは私も承知をいたしております。

阿部(知)委員 外国人労働者の問題は、もっと本当に視野を広く、多文化共生の観点からもう一度深めたいと思いますので、本日はこれで終わらせていただきます。

櫻田委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時十一分散会


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