衆議院

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第18号 平成19年5月9日(水曜日)

会議録本文へ
平成十九年五月九日(水曜日)

    午前九時三十三分開議

 出席委員

   委員長 櫻田 義孝君

   理事 伊藤信太郎君 理事 鴨下 一郎君

   理事 谷畑  孝君 理事 宮澤 洋一君

   理事 吉野 正芳君 理事 三井 辨雄君

   理事 山井 和則君 理事 福島  豊君

      安次富 修君    新井 悦二君

      井上 信治君    石崎  岳君

      稲田 朋美君    大塚  拓君

      加藤 勝信君    亀岡 偉民君

      川条 志嘉君    木村 義雄君

      岸田 文雄君    菅原 一秀君

      杉田 元司君    杉村 太蔵君

      高木  毅君   戸井田とおる君

      冨岡  勉君    西川 京子君

      橋本  岳君    林   潤君

      原田 令嗣君    福田 良彦君

      牧原 秀樹君    松本  純君

      松本 洋平君    内山  晃君

      大島  敦君    菊田真紀子君

      郡  和子君    園田 康博君

      田名部匡代君    細川 律夫君

      柚木 道義君    坂口  力君

      古屋 範子君    高橋千鶴子君

      阿部 知子君

    …………………………………

   議員           山井 和則君

   議員           古川 元久君

   議員           内山  晃君

   議員           枝野 幸男君

   厚生労働大臣       柳澤 伯夫君

   厚生労働副大臣      石田 祝稔君

   内閣府大臣政務官     岡下 信子君

   厚生労働大臣政務官    菅原 一秀君

   政府参考人

   (社会保険庁長官)    村瀬 清司君

   政府参考人

   (社会保険庁総務部長)  清水美智夫君

   政府参考人

   (社会保険庁運営部長)  青柳 親房君

   厚生労働委員会専門員   榊原 志俊君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月九日

 辞任         補欠選任

  木原 誠二君     杉田 元司君

  清水鴻一郎君     亀岡 偉民君

  高鳥 修一君     安次富 修君

  福岡 資麿君     大塚  拓君

  松野 博一君     高木  毅君

同日

 辞任         補欠選任

  安次富 修君     福田 良彦君

  大塚  拓君     牧原 秀樹君

  亀岡 偉民君     清水鴻一郎君

  杉田 元司君     木原 誠二君

  高木  毅君     松野 博一君

同日

 辞任         補欠選任

  福田 良彦君     稲田 朋美君

  牧原 秀樹君     橋本  岳君

同日

 辞任         補欠選任

  稲田 朋美君     高鳥 修一君

  橋本  岳君     福岡 資麿君

    ―――――――――――――

五月八日

 歳入庁設置法案(山井和則君外五名提出、衆法第二三号)

 国民年金事業及び厚生年金保険事業の適切な財政運営に資するための国民年金法及び厚生年金保険法の一部を改正する法律案(山井和則君外五名提出、衆法第二四号)

 公的年金制度に対する国民の信頼の回復を図るための年金個人情報関係調査の実施等に関する法律案(山井和則君外五名提出、衆法第二五号)

 日本年金機構法案(内閣提出第七八号)

 国民年金事業等の運営の改善のための国民年金法等の一部を改正する法律案(内閣提出第七九号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 日本年金機構法案(内閣提出第七八号)

 国民年金事業等の運営の改善のための国民年金法等の一部を改正する法律案(内閣提出第七九号)

 歳入庁設置法案(山井和則君外五名提出、衆法第二三号)

 国民年金事業及び厚生年金保険事業の適切な財政運営に資するための国民年金法及び厚生年金保険法の一部を改正する法律案(山井和則君外五名提出、衆法第二四号)

 公的年金制度に対する国民の信頼の回復を図るための年金個人情報関係調査の実施等に関する法律案(山井和則君外五名提出、衆法第二五号)


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     ――――◇―――――

櫻田委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、日本年金機構法案及び国民年金事業等の運営の改善のための国民年金法等の一部を改正する法律案並びに山井和則君外五名提出、歳入庁設置法案、国民年金事業及び厚生年金保険事業の適切な財政運営に資するための国民年金法及び厚生年金保険法の一部を改正する法律案及び公的年金制度に対する国民の信頼の回復を図るための年金個人情報関係調査の実施等に関する法律案の各案を一括して議題といたします。

 順次趣旨の説明を聴取いたします。柳澤厚生労働大臣。

    ―――――――――――――

 日本年金機構法案

 国民年金事業等の運営の改善のための国民年金法等の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

柳澤国務大臣 ただいま議題となりました日本年金機構法案及び国民年金事業等の運営の改善のための国民年金法等の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由及び内容の概要を御説明申し上げます。

 まず、日本年金機構法案について申し上げます。

 公的年金制度は、国民の信頼を基礎として常に安定的に実施されるべきものであります。しかしながら、その運営を担う社会保険庁については、事業運営に関するさまざまな問題が生じたところであり、公的年金制度の運営体制を再構築し、国民の信頼を確保することが不可欠であります。このため、社会保険庁を廃止し、厚生労働大臣が公的年金制度に関する財政責任及び運営責任を担うこととする一方、新たに年金事業の運営業務を行う日本年金機構を設立するため、この法律案を提出した次第であります。

 以下、この法律案の主な内容につきまして御説明申し上げます。

 第一に、日本年金機構は、厚生労働大臣の監督のもとに、厚生労働大臣と密接な連携を図りながら、年金事業の運営業務を行うことにより、年金事業の適正な運営及び公的年金制度に対する国民の信頼の確保を図り、もって国民生活の安定に寄与することを目的としております。

 第二に、機構に、役員として、理事長、副理事長、理事及び監事を置き、その職務及び権限等を定めるとともに、理事会を置くこととしております。

 第三に、機構の役職員の身分は非公務員とし、その報酬・給与及び服務について、所要の規定を設けることとしております。

 第四に、機構の業務運営に関し、被保険者等の意見を反映するための措置や、年金事務所の設置、年金委員の創設、年金個人情報の利用及び提供の制限などを定めるとともに、厚生労働大臣の業務改善命令等の監督規定を設けることとしております。

 第五に、機構の当面の業務運営に関する基本計画の策定その他の機構の設立準備に関する事項を定めることとしております。

 以上のほか、社会保険庁の廃止に伴い、厚生年金保険法等において、社会保険庁長官の権限を厚生労働大臣の権限とし、厚生労働大臣はその権限の一部に係る事務を機構に行わせるとともに、保険料等の効果的な徴収を行う上で必要があると認めるときは滞納処分等の権限を財務大臣に委任できることとするなど、所要の規定の整備を行うこととしております。

 最後に、この法律の施行期日は、一部を除き、平成二十二年四月一日までの間において政令で定める日としております。

 次に、国民年金事業等の運営の改善のための国民年金法等の一部を改正する法律案について申し上げます。

 公的年金制度に対する国民の信頼を確保し、その安定的な運営を図るためには、社会保険庁の組織の改革とあわせて、国民年金事業等の運営の改善を図る必要があります。このため、本法律案を提出し、国民年金事業等について、サービスの向上、保険料の納付の促進、公正で透明かつ効率的な事業運営の確保などの措置を講ずることとしております。

 以下、この法律案の主な内容につきまして御説明申し上げます。

 第一に、住民基本台帳ネットワークシステムから被保険者等に係る情報を取得することにより、その氏名及び住所の変更等の届け出を原則として廃止するとともに、社会保険と労働保険の手続の期限を一致させることにより、事業主による手続の簡素化を図ることとしております。

 第二に、クレジットカードによる保険料納付制度の導入など、国民年金保険料を納めやすい環境を整えるとともに、その滞納者に対して通常より短期の有効期間を定めた国民健康保険の被保険者証を交付することができる仕組みの導入、長期間にわたって保険料の自主的な納付がない場合に保険医療機関等に係る指定等を認めないこととすること、事業主に対して国民年金制度の周知等について協力を求めることができることなど、関係者や関係制度との連携のもとでの保険料の納付促進策を講ずることとしております。

 第三に、年金事務費に保険料財源を充当できるようにするとともに、いわゆる福祉施設規定を廃止し、新たに年金教育・広報、年金相談、情報提供等の国民年金事業等の円滑な実施を図るための措置に係る規定を整備するほか、基礎年金番号を法定化することとしております。

 以上のほか、国家公務員共済組合法等関係法律について所要の改正を行うこととしております。

 最後に、この法律の施行期日は、平成二十年四月など、改正事項ごとに所要の施行期日を定めることとしております。

 以上が、日本年金機構法案及び国民年金事業等の運営の改善のための国民年金法等の一部を改正する法律案の提案理由及びその内容の概要でございます。

 何とぞ御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。

櫻田委員長 次に、内山晃君。

    ―――――――――――――

 歳入庁設置法案

 国民年金事業及び厚生年金保険事業の適切な財政運営に資するための国民年金法及び厚生年金保険法の一部を改正する法律案

 公的年金制度に対する国民の信頼の回復を図るための年金個人情報関係調査の実施等に関する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

内山議員 私は、ただいま議題となりました民主党・無所属クラブ提出の歳入庁設置法案外二法案、いわゆる年金信頼回復三法案につきまして、提案者を代表して、提案理由及び趣旨を御説明申し上げます。

 二〇〇四年の年金法改正は、抜本改革とは全く言えず、国民の年金制度への不信を増大させただけで終わりました。また、民主党などの追及により、貴重な保険料の無駄遣い、年金支給のミス、不正免除、社会保険庁職員の個人情報ののぞき見、不適切な金銭の受領など、多くの社会保険庁の問題点が明らかになってきました。

 加えて、民主党の求めた調査によって、約五千万件もの保険料納付記録がだれの記録かわからないために年金給付に結びつかない可能性があること、その状態を放置したままで、民主党が重ねて調査を求めても、社会保険庁に全く調査する意思がないことが明らかになりました。

 このようなたび重なる社会保険庁の不祥事、不誠実な姿勢に対して国民の怒りは頂点に達しており、それが年金に対する不信に直結をしています。この事態を招いた社会保険庁がこのまま存在することは許されず、これを解体することは当然であります。

 しかし、社会保険庁の解体は社会保険庁たたきを目的とするものではありません。その真の目的は、年金制度の安定性、持続性を高めることであり、そして、これに不可欠な年金に対する国民の信頼を回復することであります。

 私たち民主党は、この年金を守るという国民の立場に立って、年金信頼回復三法案、すなわち、社会保険庁を解体し、歳入庁を設置する歳入庁設置法案、年金保険料流用禁止法案、消えた年金記録被害者救済法案を国会に提出した次第であります。これら三法案は、年金制度に対する国民の信頼を回復するために必要不可欠なものと確信をしております。

 以下、法案の概要を御説明申し上げます。

 まず、歳入庁設置法案について御説明申し上げます。

 この法案では、現在の社会保険庁を廃止し、その事務を、国税庁から組織変更する歳入庁に事務を移管することとしております。これにより、国税庁の所得情報や徴収ノウハウを活用し、徴収コストを大幅に減らしながら徴収率を向上させることが可能となるとともに、公金納付や相談のワンストップ化により、国民の利便性も高めることができます。また、社会保険庁と国税庁との類似の事務を整理することで、公務員を削減し、大幅な国民負担の軽減を実現することが可能となります。

 新設する歳入庁設置に際しては、政府が当面の業務運営に関する基本計画を定めることとしております。基本計画では、民間に委託する業務、委託先の選定方法などを定めることとしております。民間委託によっても、歳入庁のスリム化や徴収コストの大幅な削減が可能になると考えております。また、基本計画では、社会保険庁または国税庁の職員が歳入庁に移行する際の基準を設けることとしており、歳入庁に異動する職員を厳選することによって、公務員定数の削減が可能となります。

 新設する歳入庁の事務処理状況や政府の定める基本計画について、国会に報告することを義務づけることで、国会が適切な監視を行えるよう担保しております。これによって、年金制度を国会が責任を持って直接的に監視できることとなります。

 次に、年金保険料流用禁止法案について御説明申し上げます。

 社会保険庁は、年金保険料を公用車購入費用や宿舎建設費用などに無駄遣いをしてきました。にもかかわらず、政府提出の法案では、福祉施設の規定は削除していますが、ある意味、それ以上に広範囲な流用が可能と考えられる教育及び広報等への保険料流用が可能となっています。加えて、年金事務費への保険料流用の恒久化も盛り込まれており、これは国民の理解を全く得られないものであります。民主党案では、年金保険料の流用を禁止し、大切な保険料の無駄遣いを許さないように措置をしております。

 最後に、消えた年金記録被害者救済法案について御説明申し上げます。

 冒頭に申し上げたとおり、五千万件もの保険料を納めた記録がだれの記録かわからないために年金給付に結びついていない可能性があります。また、被保険者等の提出した証拠に基づいて年金記録の訂正を社会保険庁が行ったケースでは、年金保険料の納付記録が全く社会保険庁には存在せず、完全に消えてしまった事例も判明しました。にもかかわらず、政府は責任逃れをし、全容の調査を拒んでおります。よって、本法案は、五千万件の記録の全数調査及び全被保険者、全受給者の年金納付記録の確認を課すものであります。

 以上が、本法律案の提案理由及びその概要であります。

 議員各位の御審議と御賛同をお願い申し上げます。

櫻田委員長 以上で各案の趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

櫻田委員長 この際、お諮りいたします。

 各案審査のため、本日、政府参考人として社会保険庁長官村瀬清司君、社会保険庁総務部長清水美智夫君、社会保険庁運営部長青柳親房君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

櫻田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

櫻田委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。鴨下一郎君。

鴨下委員 おはようございます。

 いよいよ、この年金の組織をどうするか、こういうようなことで審議に入るわけでありますけれども、大臣が残念ながら参議院の方でお忙しいということで、副大臣に聞かせていただきたいというふうに思います。

 社保庁につきましては、これは平成十六年以降、国会議員だとかタレント、さまざまな人たちの年金記録の業務外閲覧、こういうようなことでも大変問題になりました。さらに、昨年の五月には、社会保険庁の改革法案の審議の最中に国民年金保険料の免除等の不正事務処理が明らかになりまして、再び国民の信頼を失墜する、こういうような事態になったことから、今回、思い切って解体、そして出直し、こういうような趣旨で改革方針が取りまとめられたわけでありますけれども、この与党方針に沿って、社会保険庁を廃止、解体して、年金運営の新組織として法人化、非公務員化という、言ってみれば大変厳しい改革を断行するものでありまして、今国会で成立を図り、国民の信頼回復をぜひともこの国会でしていかなければならない、こういうようなことでございます。

 まず伺いたいのは、この基本方針についてですが、社会保険庁の改革の議論は、十六年の夏に開始して以来、間もなく三年になるわけであります。この中で、きょうは石田副大臣にお伺いいたしますが、改革に向けた基本的な方針について伺いたいと思います。端的にお願いいたします。

石田副大臣 お答えを申し上げます。

 今委員がお話しになりましたように、この夏で丸三年、この社会保険庁の改革の議論がなされておるわけでありますけれども、振り返ってみますと、これまでは、年金その他の各種サービスの向上だとか保険料徴収の推進、予算執行における無駄の排除、人事異動の広域化や他省庁に先行して実施した人事評価制度など、一定の成果を上げてきたものと認識をしております。

 しかしながら、年金制度への信頼の回復や事業運営の効率化のためには、一層の改革が必要である。このため、今回、改革案を提案させていただきまして、まずは社会保険庁を廃止する、そして非公務員型の新法人として日本年金機構を設置し、あわせて、能力と実績に基づく人事管理、民間企業へのアウトソーシングを推進することとしております。

 この改革を通して、さらなるサービスの向上や業務の効率化などを進め、真に国民の信頼を得ることができる新組織の実現、これが基本的な考え方であります。

鴨下委員 今石田副大臣がお話しになりましたように、社会保険庁の廃止・解体六分割と年金新法人の設立、こういうようなことについては、ある意味で六つの柱があるわけです。

 一つは、社保庁を廃止あるいは解体六分割するということ。それから、職員については非公務員化するということ。それから、国の財政責任、管理運営責任と公法人への委任、こういうようなこと。あるいは、強制徴収の委任につきましては、これは悪質な滞納者については国税庁に委任をする、こういうようなことも決めてあります。それから、第三者機関による委託業務の振り分け、これは極めて重要なことでありますけれども、できるだけ民間にできることは民間にお願いしようということで、アウトソーシングしていこう、こういうようなことも決めてあるわけであります。加えて、募集、採用方式で適切な職員を採用するんだ、こういうようなことでありますから、この基本方針に従って今から話を聞いていきます。

 私は、一番重要なことの一つは、今まで社保庁がやっていたことの中で、民間にできることはできるだけ民間に出す、こういうような趣旨で、ある意味で民間へのアウトソーシングの積極的な推進というものが重要だろうというふうに思います。民間委託すれば、ある種コストダウンも図れるし、それから新法人の人員はスリム化できる、こういうようなことであります。

 こういう中で、今回の改革案では、法案の成立後に、第三者機関が、法人がみずから行う業務と民間委託する業務の振り分けといいますか、切り分けをしていくわけでありますけれども、この第三者機関というのは、ある意味で一番重要な、社会保険庁を解体していく上での手術をする術者、こういうようなことにもなるわけでありまして、この第三者機関の人選、だれがそれをやっていくのかというのは極めて重要であります。きょうは岡下政務官に内閣府から来ていただいておりますけれども、時間がないようでありますから早目に伺いますが、ぜひそのことについての決意をお話しいただければというふうに思います。

岡下大臣政務官 鴨下委員にお答えいたします。

 委員のおっしゃっているように、本当に人選というのは非常に重要な問題であると認識をいたしております。

 日本年金機構の業務の委託の推進や職員の採用に関する基本計画を定める際の学識経験者からの意見聴取については、総理の指示によりまして、渡辺行革担当大臣が担当いたしまして、林副大臣そして私が渡辺大臣を補佐することになっております。

 この学識経験者につきましては、法案附則の第三条三項において「政府管掌年金又は経営管理に関し専門的な学識又は実践的な能力を有し、中立の立場で公正な判断をすることができる学識経験者の意見を聴く」ということと規定をしております。この規定に従って、渡辺大臣が適切な方々の人選を行っていくということになっております。

鴨下委員 引き続き、運営について少し伺います。

 第三者機関の会議の事務局をいわば厚生労働省だとか社会保険庁が行う、こういうようなことになると、ある意味でどこにイニシアチブがあるかわからなくなるわけでありますけれども、どういうふうに中立性を担保していくか、こういうようなことについて、岡下政務官、お考えをお伺いできればありがたいんですが。

岡下大臣政務官 業務の委託の推進や職員の採用に関する基本計画を定める際の学識経験者からの意見聴取につきましては、渡辺行革担当大臣のもとで内閣官房に適切な場を設けて行うことと考えております。

 その際の事務は、厚生労働省や社会保険庁ではなくて、内閣官房に担当させることにより、御指摘のように、中立公正な運営を確保してまいる所存でございます。

鴨下委員 岡下政務官、どうぞ、お忙しそうですので、これにて結構でございます。

 通告していないんですけれども、長官に伺います。

 今の第三者機関でいわば仕切ったことについては旧社会保険庁はきちんとそれに従うというようなことについて、長官のお考えを聞きたいと思います。

村瀬政府参考人 今回の法案の最大のポイントは、第三者機関による日本年金機構の業務の振り分けだというふうに思っております。したがいまして、現在社会保険庁でやっております業務のすべてを御提示申し上げて、具体的に何がどこまでどういう形で外出しできるのか、十分議論をしていただきたいというふうに考えております。

 また、その議論の結果については、年金制度の運営ができる形であれば、当然のことながら従うということでございます。

鴨下委員 長官は、ある意味でまないたのコイでもあるわけでありますけれども、料理されるされ方というのも潔くやっていただきたいというふうに思いますし、できるだけ国民にわかりやすいように、要は、何を民間ができるのか、あるいはどうしても公的にやらなきゃいけないのか、こういうようなことができるだけわかりやすいように第三者機関にゆだねていただく、こういうようなことでいいんですね。

 それでは次に、社会保険庁は、いわばこのまま法人化するというようなこととは違うわけでありまして、再三申し上げているように、社会保険庁を廃止して日本年金機構を新たに設置する、こういうようなことでありますので、現在これだけの職員数がいるからこれだけの業務は新しい公法人でやらせてくださいとか、そういうようなことではなくて、公法人がやるべきことを第三者機関が切り分けて、ここは公法人がやるべしと。この業務の内容に沿って職員数がどれだけ必要なのか、こういうような発想が必要なんだろうというふうに思っております。

 第三者機関で、外部委託する業務の振り分けとそれに基づいて算定する法人の人員規模について議論をしていただいた上で、政府として決定することになるわけでありますけれども、現段階で社会保険庁の考えとしては、どの部分について外部委託が可能なのか、あるいは推進するのか、それから、どのくらいの人員削減を図る方針であるのか。これは第三者機関が最終的に決めるわけでありますから、今明確なことというのは、皆さんはどちらかというと受け身の立場だから言いにくいこともあるでしょうけれども、それにしても、今の段階でどういうふうに考えているかについて、総務部長から答えてください。

清水政府参考人 お答え申し上げます。

 この法律案におきまして、日本年金機構は積極的な外部委託を推進するという考え方でございます。それを具体的にどうするかということにつきましては、今お話がございましたように、内閣官房の第三者機関でいろいろと御論議いただくわけでございますので、具体的な内容、どういう業務を出していくのか、あるいは人員削減の規模はどうなのかといった点について、具体的なことは現段階では申し上げることはできないわけでございます。

 しかしながら、一つ目安を申し上げたいと思います。

 平成十七年十二月段階で私ども人員削減計画を策定してございます。その内容は、外部委託の推進など人員の合理化を進めるということで、当時想定しておりました年金運営新組織の正規職員数を平成二十四年度に一万三千人程度にする、職員の純減数を正規職員で千五百人程度とする、そういう内容であったわけでございます。

 したがいまして、当時と前提は違いますけれども、この新しい日本年金機構につきましては、これを一つの目安といたしまして、さらなる外部委託の推進、合理化といったものを図っていくことになるのではないか、そんなふうに考えておるところでございます。

鴨下委員 そういう方針なんでしょうけれども、これから第三者機関でより厳しく、あるいは民間にできることを徹底的にアウトソーシングしていく、こういうような方針でありますから、ぜひそういう方向に従っていただきたいと思います。予断を持って、皆さんの要求あるいは考え方に沿うように第三者機関を誘導するようなことは、ゆめゆめあってはならないわけでありますから、ぜひよろしくお願いいたします。

 法人の職員の採用についてであります。

 社会保険庁におけるこれまでのさまざまな問題の根本的なところには、社会保険庁職員の大多数が参加している組合組織があるわけでありますけれども、例えば業務改善とは無縁の覚書あるいは確認事項を当局と結んできた、こういうような経緯があります。

 それは、当局の方にも責任がありますけれども、例えば私たちが見ていても、VDT作業で目が疲れるからといって、本当の短時間で休憩休憩、こういうようなこともあって、もう本当にあきれるような覚書を結んできたわけであります。公の奉仕という公務員の使命から見ると、本当に極めて逸脱しているような、いわば社保庁の中の組合組織、こういうようなものについても、これから国民にとって重要な年金運営ができるような組織に生まれ変わらなければいけないわけでありますから、今回のいわば解体に伴って、ぜひそこのところの改善も十分していただきたいというふうに思っているわけであります。

 ついては、まず、職員の採用審査についてですけれども、これは、一番最初に大きな問題になったのは、業務目的外閲覧で処分された職員は新法人に採用されるんですか。また、能力や意欲がある意味で乏しい、こういうような判断をされるような職員を新法人に採用するというようなことは国民のためにあってはならない、こういうふうに私は思っているわけでありますけれども、この職員の採用については、今の段階でどういうふうに考えているか、お示しください。

清水政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、手続面でございますけれども、日本年金機構の職員の採用につきましては、人員規模につきまして、先ほど来御指摘のございます内閣官房の第三者機関での意見を聞いた上で、政府が基本計画を定めるということになってございます。その上で、個別の職員の採用あるいはそうでないかということにつきましては、機構の設立委員が中立公正な人事管理の学識経験者の会合の意見を聞く、別の第三者機関の意見を聞いて、それで厳正な審査をし、決定するということになってございます。それが今回の法案の考え方でございます。

 したがいまして、個別の職員の採用につきまして、私どもが今お答えする立場にはないわけでございますけれども、当然のことといたしまして、そういう手続に至る、審査に至るまでの個々の職員の勤務成績等を踏まえた上で、厳正な審査が行われるものというふうに考えてございます。

 したがいまして、新しい日本年金機構の職員としてふさわしくない職員、そういう者がそのまま漫然と日本年金機構の職員として採用されることはないものというふうに考えてございます。

鴨下委員 今、最後にお話しになったことは、総務部長、きちんと責任を持って次の組織に申し送っていただきたいというふうに思います。

 加えて、これは、組織として活性化していく上では、新しい血を入れていかなければいけないと思います。そういう意味では、民間人、特にほかの業務をしていたような人たち、ITの専門家も含めてですけれども、こういうような人たちをどんどん採用していくようなことも必要なんだろうと思いますけれども、そういうことは想定しているんですか。

清水政府参考人 先ほど申し上げました手続で新しい日本年金機構の職員を採用するわけでございます。したがいまして、民間からの採用ということも当然許容されるというふうに考えてございます。

 すなわち、申し上げますと、新しく日本年金機構の設立委員が職員を募集し、採用するという形をとるわけでございます。民間からも新しい組織にふさわしい職員を採用するということによって、これまでの職場体質の刷新ということも期待できる、そんなふうに私どもは今考えておるところでございます。

鴨下委員 第三者機関の議論の結果、新法人の徹底したスリム化、こういうようなことが実現しますと、今お話しになった人員あるいはその業務内容、これがかなり縮小していく可能性もあるわけで、この公法人について、ある意味で採用をされない職員もかなりの数出てくるというふうに私は見込んでいるわけであります。

 そのときに、新法人に移行できない職員については、社保庁の廃止に伴って、国家公務員法に基づく分限処分、こういうようなことに相なるんではなかろうかというふうに思うわけでありますけれども、石田副大臣の見解をお伺いしたいと思います。

石田副大臣 国家公務員法の規定、また従来の裁判例に従えば、社会保険庁が廃止される場合には、任命権者である社会保険庁長官は、他の任命権者に協力を要請して、職員を他の職場に配置転換させるなど、分限免職を回避するよう努める必要があります。これらの措置が比較的容易であるのに、その努力を尽くさずに組織の廃止に伴う分限免職処分をした場合には、裁量権の濫用になる、違法になる、こういうふうに承知しております。

 このことを踏まえますと、分限免職を回避する努力を行った上で、公務員を退職して機構に採用される者、みずからの意思により退職する者、厚生労働省の他部局などに転任する者のいずれにも該当しない職員につきましては、社会保険庁の廃止時に分限免職処分を行うこととなるものと考えております。

 いずれにせよ、公的年金の運営を再構築し、国民の信頼回復を図るためには、新組織にふさわしくない職員が漫然と機構に移るということにはならない、このように考えておりまして、委員御指摘の点に関しては適切に対処をしてまいりたいと考えております。

鴨下委員 分限免職を含めて考える、こういうようなことでよろしいんですね。

 それでは、続いて長官にお伺いしますが、職員の意識改革についてであります。

 社保庁の職員のさまざまな不祥事、もう挙げれば切りがないけれども、こういうようなことで、ある意味で、せっかくの、いわば国民皆年金という制度が毀損された部分があるわけでありまして、私は、その責任は極めて大きいというふうに思っているんです。

 ですから、この不祥事、さまざまな問題を反省して、これから職員の意識改革をしていく上で、どういうふうに取り組んでいくのか、厳しくどういうふうに当たるのか、こういうようなことについて、長官もそれぞれ反省もしているんでしょうけれども、長官、ぜひお伺いをしたいというふうに思います。

村瀬政府参考人 お答え申し上げます。

 今議員おっしゃいましたように、一番大事なことは職員の意識改革だというふうに思っております。その意識改革も、他人から変えられるということではなくて、やはりみずから国民のために尽くすという意味で変わっていく必要があるんだろう、このように考えております。

 そのために、現在、職員から前向きな改善提案を募集するということで、内部改善提案制度、それから、一生懸命仕事をやる人間、高い業績を上げた人間が報いられるということで、社会保険事務局・事務所グランプリの実施、それから、能力主義、実績主義に立った独自の新しい人事評価制度の導入、さらに、全員参加による社会保険庁改革リスタートプロジェクト、これらを立ち上げまして職員の意識改革を進めてまいりたい、このように考えております。

 すべての職員がこれまでの業務の進め方を見直し、みずから変わるという強い決意を持って改革に臨み、国民の皆さんに社会保険庁は変わったと言っていただけるように日々邁進してまいりたい。

 今回の法案によりまして日本年金機構が設立されることによりまして、その職員の意識は大きく変革されるものというふうに考えております。

鴨下委員 組織が変わるというのは、新しい革袋に新しい酒を入れるというようなことでありますから、ぜひ、これは職員の皆さんの意識も変えないといけないけれども、職員そのものの、いわばメンバーをもかえないといけない、こういう意味で、民間からの採用も積極的に行っていただきたいと思いますし、今まで年金、こういう制度について、毀損をしてしまったようなところにある意味で加担した、こういうような職員については厳しい態度で当たっていただきたい、かように思っているところであります。

 業務運営上の諸問題について少し伺います。

 一つは、これは保険料の納付率の話です。納付率は、平成十七年度には対前年比で三・五%回復した、こういうようなことでありますけれども、年金制度の安定的な運営のためには、これを支える国民の間で公平な保険料負担が確保されていなければならないのは、これはもう言うまでもないことであります。

 したがって、さらなる納付率の向上を図るために、効果的、効率的な対策の推進、こういうようなことを不断にやっていかなければいけないんだろうと思いますが、今回の法案による措置を含めて、今後、直近にできること、それから中長期的にやらなければいけないこと、こういうようなことも含めてお話をいただきたいと思います。

青柳政府参考人 国民年金保険料についてのお尋ねがございました。委員の御指摘にもございましたように、国民年金保険料の納付率を向上させていくということは、負担の公平という観点から極めて重要な課題であるというふうに受けとめております。

 このため、これまで国民年金保険料の未納対策といたしまして、一つは、口座振替割引制度の導入、あるいはコンビニでの納付の導入など、いわば保険料を納めやすい環境をどのように整えていくかという課題。

 それから二つ目には、未納者の負担能力に応じたきめ細かな対策を講じるという観点から、十分に負担能力がありながら納付義務を果たさない場合には、差し押さえを含む強制徴収による厳正な対応を図る、他方、負担能力が乏しい場合には、免除あるいは学生納付特例等によりまして、確実に年金受給権にこれを結びつけていくということ、さらに、市場化テストの実施など、民間のノウハウを活用した効果的、効率的な対策の展開を図るといったことに取り組んでおります。

 加えて、今回御審議をいただいております法案の中では、クレジットカードによります保険料納付の導入、あるいは市町村の国民健康保険の窓口を活用した保険料納付の促進策などといった各般にわたる納付率の向上策を盛り込ませていただいたところでございます。

 今後とも、これらの対策の徹底を図るとともに、平成二十年四月から本格導入を予定しておりますねんきん定期便の実施などを通じまして、年金制度への理解を深めていただくなど、納付率の向上に全力を挙げてまいりたいと考えております。

鴨下委員 納付率が上がるということが、いわば信頼をかち得るということの最も重要なことだろうというふうに思っておりますので、これについては、いわゆる旧社保庁の中でのノウハウだけではなくて、あらゆる民間のノウハウを活用して、納付率が上がっていくように、ぜひ最大限の努力をしていただきたいというふうに思います。

 もう時間になりました。最後に石田副大臣にお伺いしますが、年金の業務運営上の問題によって年金制度への国民の信頼が揺らぐことがあってはならないわけでありまして、業務運営の改革に向けて、国民の信頼を確保していくこと、このために、副大臣、厚生労働省を挙げて、あるいは社保庁を挙げて、何が最も重要なことなのかということについて、あと一分ありますから、一分間で答えてください。

石田副大臣 今委員がいろいろと御指摘いただきましたように、この問題については全厚生労働省また全社会保険庁を挙げて取り組んでいかなきゃいけない、このように考えております。ですから、この場合に、やはり抜本的な改革をしていかなきゃいけない、これが今回の提案させていただいている法案だと思っております。

 また、新組織が発足するまで、その間、ではどういうことをするのか、こういうことを考えましても、国民サービスの向上、保険料収納率の向上、事務処理の効率化と予算執行の無駄の排除、法令遵守、個人情報保護の徹底、意識改革の徹底と能力重視の人事政策、こういう五つの点が大事だと思っておりますので、新組織の発足までにしっかりとやれることはやっていかなきゃいけない。

 今般御審議いただいております事業改善法案に盛り込んでいる事項を含め、引き続き、業務運営の改革を進め、真に国民の信頼を得ることのできる組織の実現に向けて最善を尽くしてまいりたいと考えております。

鴨下委員 その移行期の三年についても、これは主体的に社保庁に頑張ってもらわないといけないわけでありますけれども、その後については、第三者機関の決定あるいは第三者機関の意思にきちんと従っていただきたい、このことを最後に申し上げて、質問を終わります。

 ありがとうございました。

櫻田委員長 次に、吉野正芳君。

吉野委員 自由民主党の吉野正芳です。

 社会保険庁を解体して新しく出直す、組織論ですけれども、普通の会社なら、自分の会社をつぶして新たな会社をつくって出直すということは余り例がありません。普通ならば、内部改革をして、そして新たな姿になって出直していくというのが普通の姿なんです。

 過去をさかのぼってみますと、国鉄がそうでした。国鉄は、自分で内部から改革をすることではなくて、一たん解体をして、JRという形に組織を新しくつくって出直してきたわけでありまして、国鉄の場合は膨大なる借金を抱えておりました。また、累積債務、いわゆる赤字体質、毎年毎年も赤字を出す、そういう体質がありました。また、働く人たちにとって労働生産性がかなり低い、こういうことによって、解体をして出直す、この手法が当たって、今JRはきちんと黒字を出している、そういう体質になったわけです。

 内部改革の成功例、成功例ということはちょっとおかしいんですけれども、私は、この東京の電力の三分の一をつくっているところ、福島の原発地域が私の選挙区です。

 東京電力。五年前から始まった原発のトラブル。社長はすごく一生懸命ディスクローズ、情報公開したい、隠すなと言っているんですけれども、末端に行けば行くほど、隠す体質、ごまかす体質というのが東京電力にございました。

 五年前に最初にトラブルが起きて、もうトラブルがあったら、過去のトラブルを全部吐き出せ、こういう形で言ったんですけれども、最初に出てきたのはほんの氷山の一角でございました。五年たってやっと、過去三十年近くさかのぼってのトラブル、いわゆる臨界まで起きてしまった、こういうことがありましたという、ここまで社員みずからが全部情報をトップに伝えることのできる、そういう、ある意味での風通しのいい組織に五年かかってできたわけですけれども、社会保険庁は、今回、内部改革を捨てて、解体して出直すという、その辺の、内部改革ではもうどうにもならない、直らないんだという、ある意味の判断をしたと思うんですけれども、なぜ解体的出直しを選んだのか、その理由はいかにあるか、お聞かせを願いたいと思います。

石田副大臣 社会保険庁におきましては、これまで事業運営やたび重なる不祥事、さまざまな問題がございました。その背景にある組織体質を一掃して、真に国民の信頼を得ることができる組織を実現するためには、組織内部の改革にとどまらずに、社会保険庁を廃止、解体し、新たな運営組織を構築することが必要と判断したものでございます。これはもう内部改革ではどうにもならない、こういう結論だと私は思っております。

 今回の改革案では、公的年金に対する国の管理運営責任を堅持しつつ、新たに非公務員型の公法人として日本年金機構を設立し、あわせて、能力と実績に基づく人事管理の導入、民間へのアウトソーシングを推進することとしておりまして、これにより、さらなる信頼回復、サービス向上、事業運営の効率化を図ってまいりたいと考えております。

吉野委員 村瀬長官、ちょっと通告していないんですけれども、村瀬長官は、内部改革の旗手として社保庁に入ったと思うんですけれども、それが解体的出直しという形になった、その辺の長官の思いをちょっと聞かせてください。

村瀬政府参考人 十六年の七月に社会保険庁長官に就任いたしまして、私の仕事は、職員の意識改革、それから業務改革、そしてできるだけ内部で健全な組織にならないかということで努めてきたわけでございます。その中で、私は、確実に職員の一部は変わってきているだろうと思いますし、仕事のやり方も変わってきていると思っております。

 ただ、残念ながら、全体の仕組みで、すべての人間が変わったかというと、変わり切れなかった、それが昨年の不適正な免除問題等にあらわれた、このように考えております。

 したがいまして、その中で一番大事なことは何か。やはり先ほど話がありましたように、国民の皆さんから信頼できる組織になるためにどういうやり方が一番いいのか、また、そういう社員になっていくためにはどうしたらいいのか、そこを選択した場合に、今回の非公務員型の公法人である日本年金機構、これが最善である、このように判断をしております。

吉野委員 ありがとうございます。

 次に、病院についてであります。

 平成十六年三月の与党年金制度改革協議会で、年金福祉施設等の見直しについての与党の合意がなされたところであります。これに基づいて、独立行政法人年金・健康保険福祉施設整理機構が十七年の十月に設立をされ、五年かかって売却処分をしていこう、こういう形で今なされているところであります。このときに、地域の医療体制を損なうことのないように、十分に検証した上で整理合理化計画を策定することという附帯事項がついております。

 また、社会保険病院については、平成十四年に厚生労働省の方針が示されました。それは、平成十五年、十六年、十七年、この三カ年間きちんと改善をしてみよう、この三カ年の改善状況を踏まえて、平成十八年、もう終わってしまいました、ことしは平成十九年ですけれども、平成十八年に整理合理化計画を策定していこうという内容であります。

 先日、五月六日の朝日新聞の報道に、厚生年金病院、社会保険病院については存続という記事が掲載をされておりました。附帯事項にもあるように、地域医療の確保、いわゆる赤字体質というものは当然にぬぐわねばなりませんけれども、ここの病院だけ見ていくと、赤字体質がどうしても続いてしまう病院、また黒字体質の病院、ここを見るとやはり分かれてしまうと思います。でも、地域医療の確保の点から見れば、必要な赤字の病院というのもこれはあろうかと思いますので、そういう意味の一括売却とかグループ別の売却とか等々、私はそういうところも検討の課題に入れるべきだというふうに考えているんですけれども、どんな検討状況にあるのか、どうして十八年度までに整理合理化計画ができなかったのか、その辺のことをお尋ねしたいと思います。

    〔委員長退席、宮澤委員長代理着席〕

青柳政府参考人 厚生年金病院及び社会保険病院についてのお尋ねがございました。

 厚生年金病院につきましては、ただいま委員からも御紹介ございましたが、平成十七年の独立行政法人年金・健康保険福祉施設整理機構法案の審議の際に、本委員会の附帯決議におきまして、地域の医療体制を損なうことのないよう、整理合理化を進めるというふうにされたところでございます。

 一方、社会保険病院につきましては、これも委員から御紹介ございましたが、平成十四年の十二月に、私ども厚生労働省方針といたしまして、社会保険病院の在り方の見直しについてという考え方をまとめさせていただいたわけでございますが、これに基づきまして、今後、施設整備には保険料を投入しない、あわせて、経営改善を図った後に、平成十八年度に整理合理化計画を策定するというふうにされておったわけでございます。しかしながら、社会保険病院につきましても、先ほど申し上げました整理機構法案審議時の経緯にかんがみまして、厚生年金病院と平仄を合わせていくことが必要となってきたというふうに考えております。

 さらに、近年の地域における急性期医療等の状況を踏まえれば、地域の医療体制を損なうことがないよう、厚生年金病院及び社会保険病院が現に地域において果たしている役割をどのように維持していくかというようなことを念頭に置いて、その整理合理化を進めていくことが求められているというふうに認識をしている次第でございます。

 いずれにいたしましても、今後、各般の御意見を踏まえながら、できるだけ早く整理合理化計画を取りまとめてまいりたいと考えております。

吉野委員 平成十八年までに整理合理化計画をつくるということが与党合意でなされておりますので、できるだけ早く、十九年度中にはきちんと合理化計画をつくっていただきたいと思います。

 次に、今の整理機構、施設をより高く売却しようという努力を一生懸命しているところであると思うんですけれども、五年かかってやる、一年半経過したと思うんですけれども、今現在、どのくらいの売却をしているのか。どのくらいの施設があって、売れたのはどのくらいの率になるのか、その辺のところをお聞かせ願いたいと思います。

青柳政府参考人 独立行政法人年金・健康保険福祉施設整理機構について、実績のお尋ねがございました。

 機構は、平成二十二年の九月までに国から出資した年金福祉施設等をすべて民間に譲渡等をするということを目的として、平成十七年の十月に設立されたものでございまして、今御紹介ございましたように、設立から一年半程度が経過した状況ということでございます。

 現在、三百二の施設が国から整理機構に既に出資をされておりまして、平成十九年三月末現在で、このうちの六十六施設が売却済みでございます。これは出資全体の二二%に当たるものでございまして、設立当初の平成十七年度は、年度の途中からということでございましたし、組織の体制整備を図っておったわけでございまして、平成十八年度からいわば本格的な売却が実施されているという状況を踏まえますと、順調に売却が進んでいるものとお考えいただきたいと存じます。

吉野委員 六十六施設が売却されたわけですけれども、機構としては売ってしまった後のところは余り関知しないと思うんですけれども、売られた施設でどのような活用をされているのか、その辺のところ、わかるところでお答え願いたいと思います。

青柳政府参考人 機構によります売却等の内容ということのお尋ねでございました。

 譲渡の時点で事業を実施しておった施設が四十六施設ございますが、そのうちの七八%に当たる三十六の施設では、宿泊施設等、従来からの事業がそのまま継続をされております。これは機構が、どちらかというと、単に売ればいいというのではなく、できる限り事業継続ができるようにという考え方で、事業継続に力を注いだマーケティング活動を行ってきた結果として、ただいま申し上げたような事業継続が図られたものというふうに承知をしております。

 一方、譲渡した後に事業継続がなされなかった施設が残念ながらあるわけでございますが、そうした施設の用途の例といたしましては、例えば高齢者福祉施設、在宅介護の関連施設、学校の校舎、市庁舎、ビジネスホテル、あるいは分譲マンションなどがあると承知しております。

吉野委員 一年半の事業というか営業をしてきたと思うんですけれども、販売に対して、戦略的に販売していると思うんですけれども、いろいろなノウハウができていると思うんですね、高く売るため、また施設を売った先がきちんと活用できる。どんなノウハウをこの一年半の中につくったのか、努力の成果をお聞かせ願いたいと思います。

青柳政府参考人 整理機構がどのようなノウハウで仕事を進めておるかというお尋ねでございました。

 独立行政法人でございますので、その仕事のやり方については基本的に整理機構が自分の判断で進めていく。もちろん、私ども、中期計画なりをいただいて、それを見させていただくということはありますが、その意味では整理機構の考え方を私がここで申し上げるのもやや僣越かなという気はいたしますが、私どもなりの受けとめということであえてお答えをさせていただきますと、大原則であるところの一般競争入札によってすべての年金福祉施設をいわば適正な価格で売却するということが課せられておるわけでございまして、そのためには、すべての施設について、いわば適正な競争状態を創出するということが不可欠の要素になってくるというふうに承知をしております。

 そのため、機構におきましては、全国的な規模で多業種を対象としたマーケティング活動を展開するとともに、全国的なネットワークを有する宅地建物取引業者を売却業務の委託業者として活用するということによりまして買い受け希望者を広げていく、それを一つのポイントとして進めている、努めているというふうに承知をしております。

 また、機構に出資をされました施設につきましては、先ほども御紹介をさせていただきましたように、その多くがその時点で事業を運営しておるわけでございます。そういたしますと、単に不動産として売却をするというのとは事情が異なるために、買い受けをしていただく方の方も、いわば事業として買い受けを希望する方々と、それから不動産としての買い受けを希望する方々が両方いらっしゃるというような状態にあるわけでございます。

 このため、機構としては、いわば事業価値と、それから不動産の価値の双方から評価を行いまして、それぞれの物件のいわば立地条件、それから事業の将来性、あるいは買い受け状況等を踏まえまして、それぞれの施設の特性に即したマーケティングを行うということを心がけておるものと承知をしております。

 こういう取り組みの結果が、機構発足以来の売却額、六十六施設で約三百五十億円、これは出資価格が二百四十八億円でございましたので、これと比べますと、出資価格を百二億円上回るものでございますし、価格比で見ますと一四一%という成績になっておるわけでございます。

 なお、マーケティング活動のうまくいっている一つのあらわれといたしまして、入札一回当たりの平均応札件数がどうであるかというようなことも一つの指標になろうかと存じます。これを見てみますと、事業を開始いたしました平成十七年度が平均すると二・〇件であったのに対しまして、平成十八年度は四・一件というふうに着実に増加しているわけでございますので、買い受け者の開拓を進めているということをこの点からも御理解いただければと存じます。

吉野委員 次に、国民年金事業改善法についてお尋ねをいたします。

 今回、口座振替、コンビニでも納付ができる、インターネット、電子納付ができる、それに加えてクレジットカードでも納付ができるような改革をいたしたところであります。クレジットカードで納付しやすくした、そこのねらいはどこにあるのか、お尋ねをしたいと思います。

青柳政府参考人 国民年金の納付についてのお尋ねがございました。

 国民年金制度の安定的な運営のためには保険料を確実に徴収していくということが必要でございまして、そのためには、一つに、納めやすい環境づくりをどうやって整備していくかということが重要であるというふうに考えております。

 ただいま委員から御紹介ございましたように、このために、口座振替による納付のみならず、コンビニエンスストアでの納付やインターネットバンキングによる電子納付など、いわば納付手段の多様化によりまして、納めやすい環境づくりを進めてきたというのがこれまでのところでございます。

 これらに加えまして、今般提出し、御審議をお願いしておりますところの事業改善法案の中で、各種公共料金におけるクレジットカード納付が定着してきた状況を踏まえて、クレジットカードによるところの国民年金保険料の納付を導入いたしまして、さらなる納付環境の整備を図るということをお願いしているところでございます。

 クレジットカードによります納付は、口座振替と同様に自動的に保険料の納付が行われる仕組みであるということは申すまでもないわけでございますが、実は、これまでも、口座振替の利用率の高い都道府県においては国民年金保険料全体の納付率も高いという傾向が見てとれます。したがいまして、今般クレジットカードによる納付を導入することによりまして、その利用率を高めていくことができれば、国民年金保険料納付率、全体の納付率の向上にも効果があるのではないかということを期待している次第でございます。

吉野委員 次に、市町村との連携でございます。

 国民年金の未納者に対して、健康保険である国民健康保険は市町村が取り扱っているわけですけれども、健康保険料は払っているんですけれども年金を払っていなければ健康保険証を短期の保険証にする、そういう改正案が今回盛り込まれております。これは市町村の判断に任せられているわけですけれども、保険料を満額いただいているその人に、年金は未納だから短期の保険証を渡すということは、なかなか市町村としては現実にできにくいのかなという感じを私は持つんですけれども、この実効性はどの程度あるのか、どう考えているのか、お尋ねをしたいと思います。

青柳政府参考人 国民年金の事業についての市町村との連携についてお尋ねをいただきました。

 国民健康保険の短期被保険者証は、通常の被保険者証と比較して最大の違いというのは有効期間が短いということでございますので、有効期間が短くても、それをお持ちになれば医療機関で受診ができるということでございます。したがいまして、その発行を通じて、市町村が保険料の未納者との接触の機会をふやしていただく、そして市町村の窓口で保険料納付などを直接働きかけていただく、この機会をふやすということが最大の目的でございます。

 今回の措置は、このような短期被保険者証の機能に着目をいたしまして、市町村が国民年金保険料の未納者に接触をして、保険料の納付、それから、所得の低い方の場合には免除の働きかけというのもあるわけでございますが、こういった申請を促すということが可能になるというふうに期待をしておるところでございます。

 これが本当に実効性があるんだろうかというお尋ねがあったわけでございますが、私どもも、この措置が意味のあるものとなるためには、少しでも多くの市町村にこれを実施していただくということが必要だろうというふうに考えております。その場合、実は、市町村が運営している介護保険、それから医療保険のうちの後期高齢者保険や前期高齢者の国民健康保険、こういったものの保険料、さらには現在検討中でありますが、地方税の住民税、こういったものの徴収について、高齢者からの徴収については年金からの天引きというものが既に法律で決められ、あるいは今後のテーマとして予定されているという状況に現在あるわけでございます。

 したがいまして、年金受給権の確保を目的として今回きちんとこの措置が機能するようになりますと、そのことは同時に、そういった保険料あるいは住民税を確実に徴収しなければならない市町村にとっても徴収が確実に行えるというメリットが生じるわけでございます。何よりも、こういった年金の受給権を地域でお年寄りがきちんと確保することによって、地域全体の消費の下支えが行われるという意味での地域の活性化にもつながるという面もあるわけでございますので、こういった機能、働きというものを多くの市町村に御理解、御協力いただけるのではないかというふうに考えております。

 いずれにいたしましても、今後はできるだけ多くの市町村に実施していただけるように、具体的な事務処理の詳細などを詰めながら、実施に向けて市町村とよく相談をいたしまして、御指摘のございました実効性ということについて、きちんと私どももこれが図られるように努めてまいりたいと考えております。

吉野委員 今回、市町村が納付の受託機関になれるという法改正が盛り込まれております。でも、それは短期保険証に限るという縛りがあるんです。コンビニの場合はいつでもすべての納付ができるわけでありまして、国民にとってはいろいろな納付場所があっていいと思うんですね。ですから、社保庁にも行くし、口座振替でもいいし、出向いていけば市町村の窓口でもすべての納付が取り扱えるようにすべきではないのかなと私は思っているんですけれども、なぜ短期保険証に限っているのか、すべての納付を扱うことができないのか、せっかく受託機関になったわけですから、その辺のところをお尋ねしたいと思います。

青柳政府参考人 市町村をどういう場合でも納付受託機関にすることについてのお尋ねがございました。

 今般の国民年金保険料の未納者に対しての国民健康保険の短期被保険者証に関連した施策につきましては、いずれにしろ、市町村の判断によりまして国民健康保険の短期被保険者証を発行できることとして、この仕組みを通じて、あくまでも未納者との接触の機会をふやすということで、その負担能力のある方には自主的な納付を働きかけ、負担能力のない方は免除等の案内を行うということでございますので、短期被保険者証の発行のために訪れた方に対して、その機会をいわば利用して、ただいま申し上げたような納付の働きかけや免除の案内を行うということを目的としたものでございます。

 国民年金保険料の未納者の利便性という観点から考えますと、今申し上げたように、未納者が被保険者証の更新のためにやってきた機会を利用して払えるようにするということが望ましい。今までは、仮にそうやって市町村で任意に払ったらどうですかと言っていただけたとしても、市町村は収納できないという法律上の制約があったものですから、これを取っ払って、その場で払うことができるようにするということが望ましいのではないかというふうに法律を改めることにしたものでございます。

 したがいまして、国民年金の保険料を払うことそのものを目的にわざわざ市町村においでいただかなくても、例えばお近くのコンビニや金融機関を御利用いただけるという意味では、いわば一般的な支払い窓口として市町村を位置づける必要は必ずしもないのではないかと認識している次第でございます。

吉野委員 次に、社会保険にかかわる仕事をしている方々、保険医療機関や保険の薬局や介護サービス業者等々でありますけれども、この方々が国民年金の保険料を滞納している。まさに社会保険で飯を食べている方々がみずからの保険料は滞納している。この方々に対して免許の更新や免許を与えるときに、それはしない、そういう規定が今回盛り込まれております。このねらいはどこにあるのか、お尋ねをしたいと思います。

青柳政府参考人 年金保険料の納付に関連して、保険医療機関等や社会保険労務士さんの指定あるいは登録について一定の制約を加えるという今回の改正事項についてのお尋ねがございました。

 今さら申し上げるまでもなく、社会保険方式によります我が国の公的年金制度におきましては、保険料の確保は存立のいわば基盤でございます。したがいまして、保険料の納付促進を図るためには、納付の督励それから強制徴収等の取り組みに私ども最大限努力をしてまいるわけでございますが、これに加えまして、先ほど御紹介のございましたようなさまざまな関係者の方々との連携協力のもとに、いわば社会全体での取り組みを進めてまいるということが必要であろうと考えております。

 このような中で、保険医療機関あるいは介護サービス事業者等の方々に対して支払われております診療報酬あるいは介護報酬、これらは、もとを正せば、その一部は年金保険料を含む保険料が、先ほど申し上げたように、天引きされているということから、原資になっておるということがあります。

 それから、社会保険労務士さんは、今さら申し上げるまでもなく、社会保険や労働保険の法令に基づく手続について業務独占の地位が認められているという方々でございます。したがいまして、これらの事業者の方が確実に保険料を納付するのでなければ、制度に対する国民一般の信頼あるいは納得もなかなか得られないのではないかというふうに考えておる次第でございます。

 現に、若干の数字を御紹介させていただきますと、厚生年金保険で平成十七年度に滞納処分になった事業者の方が二百十七件ございます。それから、国民年金保険料でも平成十七年度に滞納処分までいった方々が、今申し上げた関係の業種の方々で二十六件ございます。

 こういった状況を踏まえまして、これらの事業者等であって、保険料の滞納処分を受けながら、その後も三カ月以上にわたって引き続き滞納しているといういわば確信的な滞納者の方につきましては、その事業の指定あるいは登録を拒否することができるというふうにさせていただきたいと考えた次第でございます。

吉野委員 滞納処分というのは、一年から二年間支払わなくて初めて滞納処分というのを出す。そして、なおかつ処分を受けてから三カ月も滞納している。全く悪質中の悪質、この方々はプロ中のプロでありますので、これは私は甘いなと思うんですね。もっと厳しく、三カ月とか六カ月とか、この辺、もう滞納したら自動的に免許取り消しというくらいのところまで踏み込むべきだと思うんですけれども、いかがでしょうか。

青柳政府参考人 先ほども申し上げましたように、今回の措置は、社会保険料を主たる財源とする事業に参入して報酬を得ている事業者等について、社会保険料をいわば確信的に滞納しておられる方々に対する指定等を行わないという措置の内容でございます。

 したがいまして、こういった措置につきましては、事業者の方にとっては仕事の制限に直接かかわるものにもなりかねないということでありますので、その要件の設定に当たりましては、慎重を期すことが必要ではないかと考えた次第でございます。このため対象者を、甘いのではないかという御指摘もあったようでございますが、保険料の滞納処分を受け、なおその後も滞納を続ける、いわば確信的滞納者に限定をするということで取り組ませていただきたいという考えでございます。

吉野委員 これで質問を終わります。

 ありがとうございました。

宮澤委員長代理 次に、松本洋平君。

松本(洋)委員 自由民主党の松本洋平でございます。

 厚生労働委員会での質問は、私、これが初めてになるものですから、大変緊張しておりますけれども、どうぞよろしくお願いいたします。

 また、本日は、政府案の一方、民主党さんからも法案が提出されているわけでございまして、こちらに関しましても質問をさせていただきたいと思っております。きょうは、野党案に対する初めての質問ということもありますので、大きなところからいろいろと聞いていきたいなと思っておりますので、よろしくお願いをしたいと思います。

 今、我が国におきまして、年金及び社会保険庁に対する国民の不信感、また怒りというのは本当にピークに達していると思います。私も地元を歩いておりますけれども、やはりこの問題に対する国民の思い、怒りというのは大変強いというのを肌で感じているというのが私自身の実感でございます。

 そういう意味におきまして、今国会におきまして、この社会保険庁の改革、解体というものが審議の日程に上がりまして、そしていよいよ開始されたということは、大変すばらしいことだと思っておりますし、何としてでも国民の信頼を回復すべく、一日も早い成立というものをぜひ実現していただきたいということをまず冒頭申し上げたいと思います。

 一昨年の選挙で私は初当選をさせていただきました。よく郵政民営化、郵政民営化ということが言われたわけでございますけれども、実は、私は地元で、郵政民営化の次は社会保険庁を民営化しなきゃいけないんじゃないかということを申し上げてまいりました。と申しますのも、私自身、やはりサラリーマンの経験をしてまいったわけですけれども、とてもじゃないですけれども、民間の企業ではこれまで考えることができなかったようなそういう不祥事というのが、出るわ出るわ次々出てくるわというような状況であったわけでございます。

 こうした状況を何とか打破して国民の信頼というものをしっかりとかち取るためには、やはり大きな改革をしていかなければならない。では、その大きな改革というのは一体何なんだといえば、社会保険庁という組織のことをいうのであれば、やはり改革、解体をして、そして民間の力というものをしっかりと入れていく、そうしたことが私は極めて重要なことではないか、そんなことを思っております。

 今般提出されました政府案を見ていますと、責任といたしましては、年金ですから、当然政府、厚生労働省がしっかりと持っていく。しかしながら、業務の分野に関しましては、非公務員化をしていくことによりまして、業務の効率性だったりとか、常にコストを意識した運営だったりとか、そういうものを実現していこうということでございまして、私は、今政府案が進もうとしているこの方向性というのは大変正しいものであると思っておりますし、それを強く支持するものであるわけでございます。

 そこで、まず最初に政府に対して質問をさせていただきたいと思っております。

 とはいえ、やはり最終的な責任を持つのは政府なわけですから、新しくできる日本年金機構に対しての管理監督というものをしっかりとしていかなければならないのは当然のことだと思っております。政府が管理監督する責任というものをどういうふうに今担保しようとしているのか、考えているのか、その辺をお伺いしたいと思います。よろしくお願いします。

清水政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の改革におきましては、公的年金の一連の運営業務を日本年金機構に行わせることとしているわけでございますけれども、公的年金制度を堅持する、こういう原則のもとに、まず、国といたしまして、年金の特別会計を国に置きまして、保険料の徴収や年金の支払いを国庫金の歳入歳出とするという形で財政責任を明らかにしているのが一点でございます。また、二つ目といたしまして、機構の業務や予算につきまして、国が直接的に管理監督するという形にしてございます。

 その具体的内容といたしましては、一つとして、理事長の任命でございますとか、理事長による副理事長、理事の任命の認可、これは国が行います。また、機構の業績悪化を理由とする役員の解任権限も国にございます。また、二つ目といたしまして、機構の事業計画や予算を毎年度認可とし、これも国の役割でございます。さらに、業務の指導監察を実施して、必要があるとするならば、業務の改善、是正命令を行うということにこの法案はしておるわけでございます。

 これらによりまして、国として公的年金事業の運営責任を十全に果たすこととしている、これが法律案の考え方でございます。

松本(洋)委員 よくわかりました。

 私、前職はサラリーマンという話をしましたけれども、銀行員だったんです。銀行の規律というものをしっかりと保つために政府当局が監督をしているわけですけれども、その中で非常に強い役割を果たしたなと思っているのは、やはり立入検査といったような、当局からの積極的な管理監督というものが大変重要じゃないかということを強く感じている次第でございます。

 そういう権限ももちろん持っているわけでございますから、そういうものを活用しながら、新機構がしっかりとした業務運営というものをしてくれるような管理監督というものの運用を、これからより一層考えていっていただきたいと思いますし、先ほども申し上げましたけれども、大事なことは国民の信頼をいかに得るかということでございますから、その国民の信頼という観点からの管理監督というものをしっかりやっていただきたいと思います。

 一方、民主党案におきましては、先ほども申し上げました、私は、社会保険庁は民営化すべきだというようなことをずっと言っておったわけですけれども、政府案が非公務員という形になっているのに対しまして、民主党案は公務員の身分はそのままというような形になっているわけでございます。

 盛んに、業務の効率化だとかいろいろなお話をされているわけですけれども、これが公務員という身分のままで、民主党さんが目指しておられる姿というのが本当にできるのかなというのを、私自身は大変心配をしております。

 というのも、もし公務員のままでもできるのであれば、では、なぜ今までこういう不祥事だとかいろいろな国民の信頼を裏切るような出来事というのが出てきてしまったんだろうとか、そういういろいろな疑問が出てきてしまうわけでございまして、私は、ここを変えていかなければ抜本的な改革とはとてもじゃないけれども言えないんじゃないか、実はそんな感を強く持っているんです。

 ですから、お伺いしますけれども、何で今回、公務員という身分をそのまま残すことにしたのか、ぜひそこの点について教えていただきたいと思います。

枝野議員 公務員であったから不祥事があった、そして、公務員であった状況のときになぜそれを防げなかったのか。社会保険庁の歴史の中で、自由民主党が管理監督をしていなかった時期というのは多分二年間しかなかったと思いますが、その管理監督者の能力の問題だと私は思っております。

 不祥事を起こした役所は民営化した方がいいんだったら、防衛庁も民営化するんですかという話になるわけでありまして、民営化をしたらすべてが解決するという幻想は大きな間違いだというふうに思います。

 その上で申し上げますと、公務員とは何なのかということを前提にお尋ねになっているのかよくわからないんですけれども、政府案は非公務員化と一生懸命おっしゃっておられるんですが、どこが非公務員なのか全く私には理解できません。与党案も公務員ではないんでしょうか。形式的意味の国家公務員法上の公務員ではないですが、政府案で置かれているこの年金機構と称するところの職員は、明らかに実質的意味では公務員であります。

 私も、小さな政府論者であります。できるだけ役所は小さい方がいい、民間の方がいい。民間の方がいいというのには二つ理由があるわけでありまして、一つは、民間であれば基本的にはそのコストについて税金を使わないでいいということが一つ。もう一つは、民間であれば競争原理が働くというのが二つです。

 ところが、この年金機構の政府案による非公務員と称するものは、この民間であることのメリット、二つともありません。その賃金、給与は税金プラス年金保険料から支払われるということでありまして、つまり、民営化をしたら人件費が税金じゃなくなるんじゃないかと結構有権者の皆さんは勘違いをしておりまして、その勘違いに乗っかっているちょっとこそくなやり方だなというふうに思いますけれども、この部分のところ、本当に民間会社だったら、自分たちの自助努力で人件費を稼ぐのが民間会社だというふうに思います。

 それからもう一つ。競争原理が働くから民間企業は頑張るんです、コスト意識が働くんです。つまり、変な経営をして、ばかな経営をすれば会社がつぶれる、賃金が下がるということになるわけです。おかしなことをすれば、最終的には倒産をするということが民間の競争の裏づけになっているわけです。どんなことをやっても倒産しない民間企業というのがあれば、それはもはや民間企業としての競争原理は働きません。年金機構は、変な運営をしたら倒産させるんでしょうか。それならば民間企業だと思います。

 それから、競争相手はあるんでしょうか。消費者からの選択というものにさらされるんでしょうか。A年金機構とB年金機構があって、ああ、こちらの方がサービスがいいからユーザーはこっちを選びますよ、そういう選択があるから資本主義、自由主義における競争原理が働くのであって、年金機構は一つしかない、競争相手がいない、そして何をやっても倒産しない、つぶれない、そんな民間企業って民間企業じゃないんですね。

 したがって、非公務員というのは全くのでっち上げであって、政府案も実質的には全くの公務員であるということは、全く変わっていない。

 しかも、国家公務員法上の公務員でなくなるということによるマイナスも大変大きいんですね。

 一つは、天下り規制、これまた骨抜きの天下り規制を政府の中で一生懸命検討しているようでありますが、この骨抜きの天下り規制すら、この年金機構に天下ることについて、そして年金機構からの天下りについて全く及ばなくなるんですね。実質的に公務員でありながら、天下り規制は全く適用されない。焼け太りと言われても仕方がないんじゃないのかなというふうに言わざるを得ないと思います。

 それから、民営化すると効率が上がってコストがよくなるという話も一説ありますけれども、これは、きのう、本会議場で山井提案者からもお話をさせていただきましたが、厚労省職員の平均給与は六百六十三万円です、厚労省所管独立行政法人職員の平均給与は七百九十六万円です、特殊法人の事務、技術職員の平均給与は八百六万円です。つまり、公務員であれば、これは国会とかあるいは世の中の目ということで、その給与についてはそれなりに厳しい目で今見られている世の中でありますから、それなりの抑制は働くのですが、そこから遠くなれば遠くなるほど、国民や議会によるチェック、監視が働かないで実は人件費コストは上がっていったりするということになるわけですね。ですから、何のための非公務員化と称するものなのか、私にはさっぱりわからないと言わざるを得ません。

 そもそも、今回の改革のスタートになっているのは、グリーンピアを初めとする悪名高きいわゆる福祉施設の問題ですけれども、これをやったのはどこかというと、みんな特殊法人なんですよ。特殊法人にしたらよくなるのか。全くわけのわからない話であります。

 しかも、情報公開の話などについても、形式的に非公務員になるということで、形式的公務員のような縛りがかからなくなるということでございまして、いや、本当に非公務員化するんだったら、失敗したら倒産するというような仕組みにされたらいいし、それから、人件費その他について一切税金を使わない、それならば、民営化あるいは非公務員化として認めますよ。でも、税金で給料を払いながら、そして競争が働かない分野に置きながら、非公務員というのは全くのまやかしであるということで、公務に当たる以上は公務員であるのは当たり前だ、こういう答えになるわけです。

松本(洋)委員 何か随分違うところに議論が飛んでしまっているような気がしてしようがないんですけれども……(発言する者あり)静かにしてください。

 おっしゃることもわからなくはないんですけれども、しかしながら、例えば窓口のサービスだったりとか、さまざまな問題、または内部の業務の管理の問題とかで、やはり公務員という身分保障がされたような形の中で、一人一人の個人の、そういうコストだとか業務の適正管理というものに対するインセンティブというものが本当にしっかりと働くのか、そうした部分というのはしっかりと見ていかなければいけないと思います。

 また、先ほど非公務員にした方が給料が高くなるという話がありましたけれども、それこそ、先ほど申し上げたように、新機構の中でも、国会において、全体的な予算ですとか予算の執行とか、そういったものというのはチェックがされるわけですから、そうした部分でしっかりとしたチェックというのは働いていくと思いますから、枝野先生の指摘というのはちょっと当たらないんじゃないのかなというようなことを、正直なところ、私自身は感じている次第でございます。

 ちょっと次の質問に移らせていただきたいと思っておりますけれども、昨日の本会議で、山井先生が大変な大演説をされたわけでございまして、その場で、業務効率の向上、国民の利便性向上、収納率の向上、一石三鳥の法案ですというようなことをこの歳入庁法案に関しておっしゃっていたかと思います。しかし、説明を聞いてもよくわからなかった部分があるので、ちょっと教えていただきたいと思っております。

 まず、歳入庁の業務効率の規模というのはどれぐらいなのか、具体的な見通しというものをぜひとも教えていただきたいと思います。

古川(元)議員 お答えいたします。

 私どもは、昨日の本会議でも山井議員から御説明をいたしましたように、今回のこの歳入庁法案というのは、単に、今失われた社会保険庁に対する信頼を回復する、そういう手段だけでなく、やはり行政コスト全体を削減する。そしてまた、特にこれは税とか保険料、国民の視点に立ったときに、これは松本委員も御存じだと思います、おわかりだと思いますけれども、いろいろなところから税金だとか保険料だとか請求書が来ますね、それに対して一々それを別々に納めているわけです。これは行政の側のコストだけじゃなくて、納税者、納付する者にとってもコストがかかっている。私たちは、行政コストを削減するだけじゃなくて国民の側にもかかるようなコストを削減する、このことも、トータルとして行政サービスを向上させ、そして効率的な運営をしていく、そういう意味で非常に大きな意味があるというふうに思っております。

 そういう意味では、私どもは、今回のこの法案というのは、単に社会保険庁の問題だけではなくて、広く国全体を見通して、税や保険料にかかっている、徴収にかかっている行政コスト、そして国民の側のその納付にかかるコスト、それをトータルとして引き下げるような、そういう形での改革案というものを示させていただいているということをまず最初に申し上げさせていただきたいと思います。

 その上で、今、業務効率化の規模がどうだというお話がございましたけれども、まず、政府案の方で、業務運営の効率化というのがうたわれておりますけれども、これによって一体どれくらいこの業務効率化がされるのか、そのことはほとんど示されていない。これは、社会保険庁が村瀬長官という人を民間から入れて、当然今の組織の中でも効率化をしてきたはずだと思うんですが、その結果も、どれくらいこれは効率的になって結果が出たのかというのはわかっていないわけであります。

 その上、今回こういう形で解体をするという、表面上だけだと思いますけれども、組織をいじる、その結果、業務運営が効率化というわけでありますけれども、一体どれくらい効率化されるか、そのこと自身がまず与党の、政府の側から示されていない、このことは極めて大きな問題だというふうに私たちは認識しております。

宮澤委員長代理 古川君、質問に答弁してください。

古川(元)議員 今から答えますのでお待ちください。

 その中で、私どものところは、そういう意味での定量的なものは、具体的な形で見れば、これは明らかに、与党との関係でいっても我々の方が効率化が進むということは端的に言えるのではないかと思います。

 そのことは、社会保険庁の業務量調査結果によっても、総務関係の業務が全体の一二%、徴収関係の業務が三七%、合計で約五〇%となっております。こうした業務は、現在の国税庁と同様の業務、これは重複がかなりあるというふうに想定されますから、そのところを整理合理化するだけでも、これは相当な業務の、全体として見れば、今の国税庁と社会保険庁に分かれている、そのことを統合する、それだけでも大きな合理化になると思います。

 また、出先機関であります社会保険事務所、これは三百十二カ所ありますけれども、これはもう基本的に廃止をして、現在の税務署、これは五百十八カ所でありますけれども、これに統合することを想定しておりますし、また、都道府県単位の四十七の社会保険事務局についても、国税庁の全国の十一ブロック単位に統合することを想定しております。

 これだけを見ても、これは組織も業務も相当大幅な効率化が可能であるということは、具体的にこういう形でも、私は、目に見える形で我が党の案の方が業務運営の効率化というものが示されているというふうに考えております。

松本(洋)委員 そうすると、具体的な数字とかという形では、現状、あらわすことができないということでよろしいんでしょうか。

宮澤委員長代理 古川元久君、簡潔に答弁をお願いします。

古川(元)議員 今申し上げましたように、そもそも、この総務関係の業務と徴収関係の業務だけで五〇%、この分は整理合理化をすれば相当に縮減できると思いますし、先ほどから申し上げておりますように、社会保険事務所を廃止したり社会保険事務局についてもこれを統合する、これは数字として先ほどお示しをしたように、具体的に効率化が進む部分だというふうに考えております。

松本(洋)委員 では、一つ例を挙げてちょっと具体的に教えていただきたいんですけれども、徴収業務を具体的に効率化しますというのは、役職員の仕事のイメージとしてはどういうイメージなんですか。要するに、一人の歳入庁の職員が国税の徴収もするし保険料の徴収もするしというような形を考えていらっしゃるというイメージでいいですか。

古川(元)議員 当然、先ほどから申し上げておりますように、これは徴収業務、同じベース、所得ベースに賦課をするわけでありますから、それを徴収する者は、これは同一の職員が保険料も税金も一緒に徴収するという形になります。

松本(洋)委員 そもそも、年金の方の保険料の徴収と国税というのは全く意味合いが違うと思っていて、年金保険料に関しては、大変少額でかつ多数を相手にし、かつ、しっかりと年金の意義というものをお話しした上で自主的に納入してもらうような、そういう交渉が必要になるわけですし、一方、国税に関しては、大口で悪質なものを重点的にやっていくという、そうした違いがあると思います。そうした違いというのは本当に乗り越えることが可能なのかということをぜひ聞きたいと思っています。

 また、現在、年金の徴収に関しては、実際の担い手というのは、非常勤職員の方々がかなりの人数雇われてやっていらっしゃると思いますけれども、では、そういう人たちに国税の徴収も任せなければならないのか。逆に、そういう人たちが本当に非常勤でいいのか。その人たちの一人一人の人件費というものは、当然、職務がふえれば上昇をしていかなければならないと思っていますし、そういうところのコストの見積もりというのはどう考えているのか、教えてください。

古川(元)議員 松本委員は、ほとんどの人が、一々お願いに行って、年金の意義を説明をして、保険料を納めてくださいとその場まで行かないと徴収がいただけないと。国民を信用していないということなんでしょうかね。

 ほとんどの方は、これはもう松本委員もそうだと思いますが、御自分で、請求書が来ればそれに対して納めているはずだと思います。税についてもそうです。ですから、ほとんどの国民の皆さんは、納付の申込書が来ればそれに対してきちんとそれを納付しているわけであります。

 あとは、それを納めない人たちに対してどうするかというところが問題になってくるわけでありまして、そこの納めない人たちに対してどういう形でやっていくのか。

 それは、これまでの社会保険庁がやってきた状況を見れば、これは徴収のところで、その徴収能力に対して非常に欠けていた部分はあると思います。私どもは今回、こうして税務署と統合することによりまして、税の徴収、その段階のところでかなりの部分、これは税の徴収と保険料の徴収とを統合することによって、例えば税の納付の還付を受けるような人たち、還付金があるのであれば、その人たちは税務署に来るわけですね。そのときに、保険料が徴収できていないのであれば、保険料部分と還付部分、その部分を相殺するということもできるわけであります。

 そういう意味では、一々そこに行かなくても、例えば税の還付が必要な部分は、保険料が未納であればその部分を相殺したりとかいう形で、これは同じ役所の中で、そして徴収を税と保険料と同時に行う、そのことによって、もともと最初からそこに行ってお願いをしなくても保険料の徴収がきちんとできるような、かなりそういう状況もできていくと思います。

 その上で、私どもは、最終的にそれでも納めないような人たち、そういうような人たちに対しての徴収のノウハウというものは、これは国税においても、別に大口のところだけ調査に行くわけじゃありません、小さなところだって税務調査には行っています。ですから、そういう意味では、そういう小さな事業所も含めていろいろなところの徴収をする、チェックをする、そういうノウハウを国税は持っているわけでありますから、そういうノウハウを新しい歳入庁の中で生かしていくということができるというふうに私たちは考えております。

松本(洋)委員 いろいろと御説明をしていただいたんですけれども、結局のところ、いろいろ教えていただきましてもよくわからないんですが、要は、徴収をする人というのは、では、これからはもう回りませんということなんですか。結局、一緒にできるノウハウとかいろいろとおっしゃっておりますけれども、しかしながら、実際問題として、要は、国税も徴収をします、年金の徴収もしますという人が一体となって、実際に町に出ていってやっていくということは、今お話しの中だと、それは余り想定をされてないということですね。要は、それは国民を信頼して、そこの部分というのはお願いします、本当に悪質な方のところにだけ行きます、そういうことでよろしいんですか。

宮澤委員長代理 古川君に申し上げます。

 徴収と調査ははっきり分けて答弁をお願いいたします。

古川(元)議員 そのことはもともと、これは、委員長、申し上げますが、そもそも質問者の方がそこのところを混同しておられるんじゃないかなというふうに思うんですね。

 私たちは、普通の徴収をするのと調査をする部門、当然、これは税務署の中でも今でも分かれているのと同じように、今度の新しい歳入庁の中でも、そういう形で普通に徴収をする部分と、そして調査やあるいは未納の人たち、そういう人たちに徴収に行く、そういう二つの部門を分けていかなきゃいけないというように思っています。

 そこの未納の部分の人たちに徴収をかけていく、その部分でも国税のノウハウは使えるんじゃないかと思いますし、そもそも、先ほどから申しておりますように、今まで国税がやっている、そして、税務署の中で所得情報があるとか、この部分はもちろん全体ではありませんけれども、しかし、かなりの部分、国民年金を納めている納付義務者に所得税とかを納めている人たちがいるわけでありますから、そういう人たちの分だけでもこの所得情報がきちんとわかる、そういうのを踏まえて、これは普通に徴収できる分もかなり高くなるであろう。

 そういう意味では、今の組織よりもかなり納付率も、国税庁と統合する歳入庁にする形で、これは徴収ができるというふうに私たちは考えております。

    〔宮澤委員長代理退席、委員長着席〕

松本(洋)委員 いや、別に混同しているつもりはなくて、徴収にかかる人件費のコストが三十数%、そういう話をしていましたから、それを一つ例にとって、具体的にどういう姿なのか教えていただこうと思ったんですけれども、何かいろいろな話が入ってきてよくわからなくなってしまったので何度も聞かせていただきました。

 しかしながら、本当に悪質な方というのは、今の政府案の中でも、財務省を通じて国税に連携をして国税の職員に助けてもらう、そういうスキームも今政府案の中であるわけですから、余り、民主党案でなければならないという必然性を、正直、私自身は感じることができないということは、一言申し添えておきたいと思います。

 続きまして、利便性の向上という話がございます。

 きのうも山井議員がワンストップサービスということをおっしゃっていたわけですけれども、実際問題として、現在の年金保険料の収納というのは、自動振替とか金融機関とか、またコンビニ、そういうところでの納付というのがほとんどで、かつ、先ほど政府案でもありましたように、インターネットとかそういうツールというものを新たにどんどんどんどん整備いたしまして、そして、そういう収納しやすい環境、逆に言ってしまえば、事務所に行かなくても収納できる環境というのはどんどんどんどん整えていっているわけですね。

 そんな中で、利便性の向上というのが、この歳入庁とどこまで、どの程度結びつくのかというところがちょっとわかりにくいものですから、その点につきまして教えていただきたいと思います。

山井議員 まず、最初に一言だけ申し上げたいのは、本当に、こういう議論は、ぜひとも初日からきっちり与野党合意の委員会でやるべきだと思うんですね。それを職権でこういうふうに立てて、お経読みの後、すぐこういう議論をするというのは、本当に厚生労働委員会のルールに反していると思います。そのことだけ申し上げます。

 利便性の向上でありますが、例えば、今まで税務署に税金の相談に行く、社会保険事務所に年金の相談に行く、そして、たらい回しに遭っているケースとかも多々あるわけですね。これからは、医療保険料や事業主負担分の介護保険料、雇用保険料、労災保険料というものも、税金や年金だけでなく、ワンストップサービスで納付することができるわけです。

 また、厚生年金の加入率の問題に関しても、きのうも申し上げましたように、今、三〇%も未加入ということが総務省の調査の推計から出ているわけですね。こういう問題についても、やはり、税務署と社会保険事務所の役割が一緒になるということで、これは加入率が非常に向上するというふうに考えております。

 やはり、今まで、雇用保険料、労災保険料、税金、年金の相談、納付というのが余りにもばらばらであった、そのコストというものが今までの行政の中では無視されてきたというふうに私は思っております。

 以上です。

松本(洋)委員 済みません。もう少し答弁を短くしていただければと思ったんですけれども、時間がなくなってしまったのでこれで終わります。しかしながら、先ほども申し上げましたように、民主党さんの案、先ほどからお話を聞いているんですけれども、正直、余りメリットというのが、お話を聞いてもわからなかったというのが私自身の感想でございますし、やはり公務員という身分を残したままというのは、いろいろとお話を聞かせていただいたけれども、どうしても納得がいかないというのが私自身の個人的な感想でございます。ぜひその点だけは申し添えまして、時間が終了しましたから、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

櫻田委員長 次に、福島豊君。

福島委員 大臣、副大臣、大変御苦労さまでございます。また、長官も、本当に長年にわたりましてといいますか、この間の御努力に心から敬意を表したいというふうに思っております。

 この三年間、平成十六年の年金改革から、社会保険庁の問題というものが大変大きな問題として議論の対象になってきたわけであります。さまざまな不祥事が発覚をいたしました。一日も早くこの社会保険庁の改革というものをなし遂げて、そして、年金制度に対しての国民の信頼を確保する、このことが今政治に課せられた最重要の課題の一つである、このように認識をいたしております。

 年金制度の改革、十六年改革は大変大きな意義を持つものでありましたけれども、しかしながら、こうした運営組織のあり方自体がクローズアップされて、逆に十分国民の理解を得ることができなかったんじゃないか、そういう嫌いもあるわけであります。この国会におきまして、この後半の審議をめぐって、与野党、野党の先生方からいろいろと御指摘ありますけれども、やはり一日も早くこれを成立をさせるということが国民の負託にこたえることである、このことをまず指摘をいたしたいというふうに思います。

 そしてまた、もう一つ冒頭申し上げておかなければいけないことは、この国会におきましては、まさに労働関係の労働基準法の改正でありますとか最低賃金法の改正でありますとか、国民の生活に密着した法案というものが同時に提出をされているわけであります。会期末までの期間は限られております。その中で、この国民の生活に大切な法案もどう取り扱うのか、こういうことも野党の委員の皆さんにはしっかりと御認識をいただいて、この法案の審議を進めていただきたい、このように念願をするわけであります。

 本日は、まず、政府・与党の社会保険庁改革二法案がすぐれている点について明らかにしたいと思います。また、民主党が提案をしている法案との比較を行いたいと思っております。そしてまた、この国会におきましても繰り返し取り上げられました年金記録の問題、これは、年金制度という非常に巨大なシステムが歴史的な変遷をたどりながら今日に至っている、そうした経過を無視してはその問題の本質が理解できない、私はそのように思っているわけでありますが、この点について御質問いたしたいと思っております。

 まず第一番目の御質問でございますが、政府・与党の日本年金機構法案は、社会保険庁を廃止し、公的年金の財政責任、管理運営責任を厚生労働大臣に引き上げた上で、業務の実施については、新たに非公務員型の年金公法人を設置し、厚生労働大臣の直接的な監督のもとで一連の運営業務を行わせるものであり、年金新組織を法人化、非公務員化する、このことが最大のポイントとなっているわけであります。ここに至るまでは、社会保険庁のさまざまな不祥事、その組織のあり方、それに対しての国民、メディア、多くの批判を受けながら、私どもはこうした改革をせざるを得ない、このように判断をしたわけであります。

 まず、年金新組織を法人化、非公務員化することによって何がよくなるのか、この点について、副大臣に端的にお答えいただきたいと思います。

石田副大臣 今回の改革案は、新たに非公務員型の新法人として日本年金機構を設置し、国の直接的な監督のもとで一連の運営業務を担わせる、こういうことにしたわけでございます。

 私は先ほども答弁させてもらいましたけれども、もう内部改革ではだめだ、こういうことを申し上げました。私は、民間から村瀬長官に来ていただいて、努力をしていただいたと思います。しかし、国民の期待するものとやはりまだ相当な乖離があって、国民の期待に沿うには、今の内部改革だけでは、これはもう時間がかかり過ぎる。ですから、思い切って廃止、解体をして、国民の期待にこたえようと。長官の努力は大変私は多とするものでありますけれども、そういうことがあったということでございます。

 年金新組織を法人化し非公務員化することによりまして、一つは、能力と実績に基づく人事管理ができる、そして二つ目には、職員の親方日の丸的な意識の払拭をする、三つ目には、民間へのアウトソーシングの推進、こういうことが可能となるわけでございまして、また、社会保険庁の職員を自動的に引き継ぐのではなく、募集、採用方式で適切な職員を、これは民間を含めてということになろうかと思いますけれども、採用することにより、これまでの組織体質の一掃を図ることができると考えております。

 これらにより、さらなるサービスの向上と事業運営の効率化を進め、真に国民の信頼を得ることができる新組織の実現を一日も早く図ってまいりたいと考えております。

福島委員 政府・与党案では、年金新組織を法人化し、非公務員化しているのに対し、民主党案では、社会保険庁と国税庁を統合して歳入庁とし、公務員のままとすることとなっております。民主党案は、社会保険庁の職員を公務員のままに温存するにすぎない法案ではないか、こう指摘をすることができると思います。非公務員化し、業務実施組織にふさわしい人事管理をすることが、政府・与党案がすぐれている点の第一点目であろうというふうに思います。

 公務員は、政治的中立性や営利企業からの隔離などが定められていると同時に、労働基本権が制限され、そのかわりに身分保障が与えられ、人事院が行う一律の公務員試験で採用され、人事院勧告に基づく俸給表により、安定した給与が保障されているわけであります。こうした公務員の特質、これは、政策立案をする本省の部局や裁判所、警察などにはふさわしい仕組みであるというふうに思いますけれども、社会保険庁のように、法律に基づき定められた業務をできるだけ効率的に処理する事業組織には必ずしも向いていない、こう言わざるを得ないのではないかというふうに思っております。

 今回、非公務員化により、事務処理を効率的に行う組織にふさわしい組織になる、そのように思っておりますが、人事給与制度、また職員採用、非常に大事なポイントでありますけれども、非公務員化することによって何が変わるのか、このメリットについて端的にお答えいただきたいと思います。

清水政府参考人 お答え申し上げます。

 日本年金機構につきましては、非公務員とすることによりまして、能力と実績に基づく人事管理でございますとか、柔軟な職員採用がしやすくなると考えてございます。

 具体的に申し上げますと、まず、職員の採用につきましては、公務員でございますと、原則といたしまして人事院が行う統一的な国家公務員試験の合格者から採用しなければならない、これは御承知のとおりかと思います。一方、新法人を非公務員化しますと、そのような制約がない採用ができるわけでございまして、また、能力の高い人材の中途採用もより自由に行えるということになるわけでございます。

 二点目としまして、職員の給与についてでありますけれども、公務員は、一般職の職員の給与に関する法律によりまして、また人事院勧告に基づいて定められます統一的な俸給表の級別号俸などによりまして支給がされるということになっておるわけでございます。一方、新法人も非公務員ということになりますと、独自の給与体系が可能になります。例えば、勤務年数に応じた部分、能力や実績に応じた部分、役職の重さに応じた部分など、これらを組み合わせ、めり張りのきいた民間的な給与体系、こういうものも可能になるわけでございます。

 また、人事について申し上げますと、公務員は級別等級に基づく任用という形になってございます。したがいまして、極めて例外的な分限事由、これに当たらない限りは降格されることはないという形になってございます。一方、非公務員ということになりますと、能力や実績に応じまして、昇給、昇格、あるいは降格といったものが行いやすくなるわけでございます。

 その他、親方日の丸意識の払拭など、石田副大臣からお答え申し上げたことなども、非公務員化することにより可能になるのではないか、そのように考えております。

福島委員 先ほど松本委員の御質問に対して民主党の提出者の側からるる御答弁がありましたが、どこか論点をずらしているんじゃないか、その答弁をお聞きしながら私は感じました。

 政府参考人から御説明ありましたけれども、こうした点について民主党案では本当にどう改革されるのかということについて、民主党の提出者の皆さんはきちっと説明されるべきだ、そしてまた、社会保険庁のさまざまな不祥事がそうした組織体質からきているということは、私は紛れもない事実だと思います。それをどう改めるのかということについて、公務員のまま国税庁と統合することによって、看板をまさにかけかえて焼け太りすることによって改革できるというのは大違いだ、このように申し上げざるを得ないわけであります。

 政府・与党案では、社会保険庁を機能ごとにガバナンスのしやすい単位に分割することが、また一つの特色となっております。安倍総理は、これに対して廃止・解体六分割、こういう呼び方をしておられますけれども、社会保険庁をばらばらにする、お仕置きということではなくて、社会保険庁の問題の本質の一つが、ガバナンスが十分にきいていなかったというところにあることから、ガバナンスがきかせやすい組織にする、その単位に分割するという考え方に基づくものであります。

 これに対して、民主党案は、業務の性格が異なる国税庁と社会保険庁を、社会保険庁の年金給付の部門までも含めて単に結合して大きな組織にするという案と言わざるを得ないわけでありまして、これでは、全体のガバナンスが逆にきかなくなってしまう。今でも十分ガバナンスがきかないものが、統合することによって余計ガバナンスがきかない組織にする、こういう提案ではないかというふうに思います。ガバナンスがききやすい組織に分割する、このことが政府・与党案がすぐれている第二点目であろうというふうに思います。

 社会保険庁をどのように分割するのか、また、その目的は何か、この点について政府の見解をお聞きしたいと思います。

清水政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の案では、社会保険庁の機能を六つに分割することとしてございますが、具体的に申し上げますと、第一に、国が公的年金に係ります財政責任、管理運営責任を担うこととしてございますので、それを担当する組織を厚生労働省の本省に移管する。これが第一点でございます。

 第二に、公的年金に係ります適用、徴収、給付、記録管理という業務、これは日本年金機構、ここに移管するということでございます。

 第三にでございますけれども、この日本年金機構の業務の一部を民間事業者などへ外部委託するわけでございます。これは複数になろうかと思いますが、これを一つと数える。これが第三でございます。

 第四でございますけれども、悪質な滞納者への強制徴収につきましては、法人がいろいろと努力するということを前提に、国税庁に委任することができる。これが第四でございます。

 第五でございますけれども、医療の関係でございますけれども、保険医療機関の指導監督の業務、いわゆる医療Gメンの業務でございますけれども、これを厚生労働省の地方厚生局に移管するということでございます。

 第六でございますけれども、これは既に昨年の健保法の一部改正法でお認めいただいておるところでございますけれども、政管健保関係の業務を、全国健康保険協会を設立して、これに移管するということにしておるわけでございます。

 社会保険庁につきましては、これまで事業運営上のさまざまな問題、いろいろとあったわけでございますけれども、本庁から組織の末端に至るまでの内部統制、ガバナンスが行き届いていなかったということが、御指摘のとおりその原因の一つというふうに考えておるわけでございます。

 したがいまして、現在の社会保険庁を、その機能に応じまして、今申し上げたような形で分割するということによりまして、それぞれの組織の目的の明確化、それから内部統制、ガバナンスのききやすい組織にするということができるものであるというふうに考えておるところでございます。

福島委員 また、同時に、できるだけ行政組織をスリム化する、このことが一つの目的でもあります。民間企業に委託できるものは委託をし、独立行政法人などの法人化ができるものは法人化をしていく、これは、小泉改革の五年間でさまざまな取り組みをしてまいりましたけれども、安倍内閣においても引き続き推し進めていかなければならない大切な課題であると思います。

 社会保険庁については、これまで厚生労働省の説明では、公的年金については国が責任を負うべきであるから法人化はできないとか、また、滞納処分や事務所調査などの公権力の行使を伴う事務を行うから法人化はできない、こういう説明がありました。しかし、私ども、与党の立場で、国が年金の責任を負いつつ業務を法人化する仕組みはつくれないか、また、滞納処分も行えるような法人はつくれないか、法律上の工夫を考えて実現するように強く働きかけた結果として、初めて日本年金機構法案という新しい法律の枠組みが実現をしたわけであります。

 行政組織のスリム化という行革の流れの中で、最先端を行く新しい取り組みである、試みである、このように評価できるのではないかというふうに思います。こうした取り組みを先例として、さらに行政組織のスリム化が進んでいく、こういう可能性があるのではないか、そのように思います。行政組織のスリム化を進める新しい仕組み、これが政府・与党案の三点目のすぐれた点であるというふうに私は思います。

 国が責任を負いつつ一連の業務を法人に行わせるための仕組み、また法人に滞納処分を行わせる仕組みについて、法案ではどのような新しい工夫が、今までにない工夫がなされているのか、この点について御説明いただきたいと思います。

清水政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、さまざまな検討を重ねた上、この法案でいろいろと工夫をしたわけでございます。

 この法案におきまして、まず第一に申し上げますのは、国が公的年金の保険者、すなわち制度の実施主体としての責任を負いつつも、一連の業務は法人に、日本年金機構に行わせる、そういう仕組みとしてどのような工夫があるかということでございますけれども、一つとして、国が年金の特別会計を備えます、保険料の徴収と年金の支払いは国庫金の歳入歳出という仕組みにいたします。

 このため、法律上、保険料の決定でございますとか年金受給権の裁定などの権限は厚生労働大臣の権限というものにいたしまして、そのための事務処理は日本年金機構に行わせることができる、そういう形で法律で規定してございます。

 また、国庫金の収納事務を日本年金機構に行わせることができるよう、会計法の特例も設けているところでございます。

 あわせまして、法人の自主性、自律性を重視する独法とは異なりまして、厚生労働大臣がこの機構を直接的に監督する、そういう公法人にして、すなわち具体的に申し上げますと、大臣が毎年度この機構の事業計画や予算を認可する、あるいは大臣が必要に応じて業務改善命令、是正命令などを行えるということで、監督規定を強化しているというところがございます。

 また、二点目で申し上げます、この日本年金機構、国ではない政府ではない組織が滞納処分という公権力の行使を行う、これができるようにするための法律上の措置でございますけれども、事前の三つの措置、それと事後の三つの措置がございます。

 事前の措置といたしましては、滞納処分についての大臣の事前の個別認可、二つ目としまして実施細則の策定と大臣の認可、それから三つ目としまして滞納処分の実施職員の任命についての大臣の認可、このような三つがございます。

 また、事後の措置も三つございまして、法人が実施した滞納処分の大臣への事後報告、大臣による法人への報告徴収と立入検査、三つ目といたしまして、法律違反等があれば大臣が必要に応じて是正命令ができる、このような仕組みを設けておるところでございます。

 今申し上げましたように、これらのように、これまで先例のないような形に踏み込んだ法律上の仕組みを設けることによりまして、従来の考え方であれば法人化は難しいと考えられてきました公的年金の実施組織の法人化をできるようにこの法律はしている、そういうものでございます。

福島委員 民主党の歳入庁法案では、先ほどもお話がありましたが、国税庁の所得情報や徴収ノウハウを活用することで年金保険料の未納をなくすことができるという説明がされました。しかし、国民年金の被保険者には所得税が非課税の方々も非常に多い。国税庁のノウハウを活用すれば未納がなくなるというわけにはいかないだろうというふうに私は思います。実態論が大切でございます。

 国税庁は大型または悪質な脱税を追うのが得意でありますけれども、国民年金保険料のような少額多数のお金を集めるということは本来の業務から考えると余り得意な組織ではないと考えるのが妥当だろうというふうに私は思います。また、国税徴収には国税優先の原則があります。社会保険庁と国税庁を統合したときに、国税に先に充当されるとすれば、保険料の取り扱いはどうなるのか、こういった点についても整合性が求められるのではないかというふうに思います。

 年金保険料と国税では徴収の対象が大きく異なっている、また、徴収業務の基本的な性格、あり方も異なっている、このどのように異なっているのかという点について認識を明らかにすることが大切だと思いますが、政府の御見解をお聞きしたいと思います。

清水政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおりでございまして、国民年金と国税を比較いたしますと、まず、国民年金第一号被保険者、これは二千二百万人おるわけでございますけれども、そのうち所得税が申告納税となっている方は三百五十万人ということでございまして、徴収の対象が大きく異なっているというふうに認識してございます。

 また、国民年金保険料について申し上げますと、未納額は最高でも二年分で約三十万円ということになるわけでございまして、比較的少額な多数債権、こういう特性があるわけでございます。このようなものにつきましては、やはり年金制度の意義でございますとか、年金制度にかかわりますことへの御理解を得まして、自主的に御納付いただけるようにする、そういうことが基本であるというふうに私ども考えてございます。

 したがいまして、より具体的に申し上げますと、未納の方々につきましては、そのお一人お一人のいろいろな事情といいますか属性というものにできる限り配慮したような形でのきめ細かい対策ということになってくるわけでございまして、まずは効果的な納付督励を実施する、その上で、十分な負担能力がありながら納付督励に応じていただけない未納者の方には的確に強制徴収を実施する。一方、免除基準に該当するなど比較的所得の多くない方につきましては、免除などの申請勧奨を行い、そういうことで年金受給権に結びつけていく、このような対策が必要ではないか、そのような形で業務を行っているところでございます。

福島委員 民主党の歳入庁法案では、先ほども提出者から御答弁がありましたが、社会保険庁と国税庁の徴収対象のダブりを解消すると同時に、民間委託を通じて徴収コストを大幅に削減することができるという説明になっております。

 ただ、今御説明ありましたように、徴収対象そのものが大きく異なっている、こういう実態を踏まえると、こうしたことが直ちに結論できるかどうか甚だ疑問だと思います。もちろん、総務部門の費用、こういったものについては、多少なりとも共通してやれば軽減されるかもしれませんけれども、その本来の業務の中核であるところの徴収に関して、そうそう物事は簡単ではないんじゃないかと私は思います。

 民間委託によりコスト削減が実現できる業務を業務品質の保持に留意しながら民間委託を進めていく、このことは政府・与党案と同じでありまして、その点に着目すれば、政府・与党案をしっかりと評価していただき、また御賛同いただければと私は思うわけでありますが、社会保険庁と国税庁の統合でコストが下がるのか、これが非常に大事なポイントでございます。

 国民年金の保険料を徴収する対象者と国税庁が税金を徴収する対象者が大きく異なっている中で、徴収コストが簡単に下がるわけはない、私はそのように思いますけれども、この点について、社会保険庁と国税庁の徴収コストはそれぞれどのくらいか、また、統合すれば徴収対象のダブりを解消して徴収コストが大幅に減るものなのかどうなのか、これは業務の実態を踏まえて政府の御見解をお聞きしたいというふうに思います。

清水政府参考人 お答え申し上げます。

 社会保険庁におきましては、実は、恐縮なことなのではございますけれども、適用、徴収と給付に係る経費、これを厳密に区分して一枚の伝票を処理しているということではございません。したがいまして、徴収コストを確定的に算出するということは困難であるわけでございますけれども、私ども、一つのあらあらの算出をしてございます。

 一定の仮定のもとで平成十五年度についていろいろと仕分けしたわけなんでございますけれども、徴収額百円当たりの年金保険料の徴収コスト、これは〇・三四円ということになるわけでございます。また一方、国税庁さんにおきます徴収コストを伺っておりますと、平成十五年度のものは一・六七円というふうになっていると承知してございます。これがまず現状推計でございます。

 それから、お尋ねの徴収コストが大幅に減るかということでございますけれども、先ほど私から申し上げましたように、国民年金の対象者のうち所得税が申告納税となっている方は三百三十万人と、比較的少ないということを申し上げました。また、当然のことながら、国民年金の保険料の対象となるのは所得ということではないわけでございます。

 そういうことを考えますと、国民年金関係の徴収コスト削減というのはなかなか難しいのではないかな、そんなふうに考えておるところでございます。(発言する者あり)

福島委員 やる気があるからこそこの改革法案を出しているわけでありまして、ぜひ民主党の皆さんも御理解いただいて御賛同いただければと思うわけであります。

 最近、保育料の未納というのもあるんですね。私、びっくりしました。毎日自分の子供を通わせておきながら保育料を払わない、信じられぬなと。給食費の未納というのもあるんですね。やはりその未納問題の根っこは、社会保険庁の問題と同時に、国民のそうした義務をしっかりと果たすという意識が大分緩やかになってきてしまっているんじゃないかなという気も私はいたします。そういった点からいうと、今教育改革の議論をいたしておりますけれども、やはり国民の果たすべき責任というようなことについて、しっかりと社会がそれを一人一人の心の中に涵養していくということも非常に大事ではないかというふうに私は思っております。

 民主党の歳入庁案では、年金保険料も税金も支払い、相談が一カ所で済む、こう説明されております。先ほど、三百カ所を超える社会保険事務所を廃止して国税の事務所に統合すると。しかし、統合するといってもどこにそのスペースがあるんだろうか、甚だ疑問だなと思いながら、また増築をしなければいけないんじゃないか、こう思って答弁を聞いておりました。

 保険料の支払いは口座振替が通常であります。また、年金の相談は年金給付の手続の相談や年金見込み額の相談などが中心でありまして、これは税務署の職員では対応できる内容ではありません。専門的な知識が必要でございます。一人の職員が税も年金も両方扱うのは無理だ。今の税務署の建物に年金の適用、徴収、給付の機能を担当する職員を置くためには、先ほど申しましたように、庁舎のスペースは足りない。

 となると、簡単に一緒にしますと言っても、私は絵にかいたもちなんじゃないかなと。国税庁と社会保険庁を統合しても、結局は税金を扱う庁舎と年金を扱う第二庁舎が別々に残るだけなんじゃないか、このように思うわけであります。

 社会保険庁と国税庁が統合すれば国民の利便性が高まるものなのか、社会保険庁の側から、これは片方のサイドになりますけれども、お考えをお聞きしたいと思います。

清水政府参考人 お答え申し上げます。私どもが把握していることについて申し上げるわけでございます。

 年金保険保険料につきましては、現在でも口座振替でございますとかコンビニでの納付というのが一般的になっているところでございます。国民年金について言いますと、九八%の方々がこのようなコンビニや金融機関を通じて保険料を納付いただいておるわけでございます。したがいまして、個々の方々が保険料納付のために社会保険事務所に来ていただくということはほとんどないというのが実情でございます。

 また、相談の関係を申し上げます。

 相談の関係は、ちょっと数字を申し上げますと、被保険者記録の相談が三二%、年金見込み額がどうなるかというのが二一%、手続の関係が二〇%、支払いの関係が九%、このような相談内容でございます。私ども、データがあるわけではございませんけれども、これらの方々が同時に国税について具体的な相談事項をお持ちかどうか、これはどうなんだろうかなというふうに思っておるわけでございます。

 私どもは、統合というお尋ねでございますけれども、どのようなことが国民の利便性の向上に直接寄与する具体的ケースなのか、なかなか想定しがたいのではないか、このように思っているわけでございます。(発言する者あり)

福島委員 私が質問者でございます。

 民主党案の歳入庁案では、保険料徴収権限を厚生労働省から切り離し、保険料の流用をストップすると説明されております。民主党の三法案の一つは年金保険料流用禁止法案、このように呼ばれているわけであります。

 これに対して政府・与党の法案では、年金保険料の事務費への充当を、平成十年度から行ってきた特例措置から恒久措置に改めることといたしております。また、時代おくれとなった、まさに流用と言わざるを得ない福祉施設事業の規定を廃止して、年金相談、年金教育、情報提供など、年金事業の円滑な実施を図るために保険料財源で引き続き行う事業を法律で限定する改正を行うこととなっております。

 雇用保険また労災保険、他の公的保険や民間の保険では、保険運営に必要なコストを保険料で負担してもらう、こういう仕組みになっております。合理的なことである。これは私はそのとおりだと思うんですね。受益者と負担者というのはやはり一致するべきである。例えば雇用保険で、これは税金でやるとこういう議論になるのかならぬのかという話は、やはり雇用保険に加入している人というのはすべての国民ということではないわけでありまして、利益を受ける人も限られている。ですから、当然、被保険者が保険料の中で負担をするというのは合理的な仕組みだと私は思います。

 公的年金、皆保険であるからこれは税金でやるべきだ、こういう主張だったらわかるんですが、とにかく税金でなければいかぬという議論がそこでもなぜ成り立つのか、私は成り立たないと思いますね。受益者と負担者がやはり一致しない。というのは、税金には法人税もありますし、別に個人の所得税だけではありません。また、所得税もたくさん負担する人もいれば少ない人もおるわけであります。

 ただ、年金の性格というのは、やはり一人一人がひとしく利益を受ける、こういう考え方だと私は思います。ですから、当然、保険料の中で給付にかかわる一連の事務というものは賄われてしかるべきである。これが税金でないからけしからぬというのは本末転倒の議論だと私は思います。もちろん、流用することはあってはなりません。ほかのものに使ってはいけません。このことは民主党の言っていることも正しい。しかし、年金の事務、そしてまた教育、情報提供、こういうことに対して使われる費用すらも税金でやるべきだという議論は本末転倒だ、私は率直に言ってそう思います。

 年金給付以外に年金保険料を使うのはけしからぬというのは、無駄遣いの問題と年金事務費の財源の問題をごっちゃにして国民にこれをわかりにくくさせている、私はそう思います。財源が税であろうと保険料であろうと、無駄遣いはあってはなりません。財源のルールをきちんと決めた上で、個々の経費について必要性を毎年度の予算できちんと精査し、また何に使うのかを国民に明らかにしていくべきであります。そしてまた、先ほど申しましたように、相談の業務であるとか教育の業務、情報提供の業務でも、これも年金の保険料が使われるのである以上は、徹底してきちっとやってもらわなければいけない。そこで無駄に使われるようなことがあってはならないことは当然であります。

 年金事務費への年金保険料の充当を恒久化する理由、また福祉施設規定の見直しの考え方について、わかりやすく御説明いただきたいと思います。

石田副大臣 今委員がほとんど質問の中でお答えを一緒に言われたような気もしますけれども、御質問いただきましたので、簡潔にお答えをしたいと思います。

 年金事務費につきましては、年金給付と密接不可分なコストである経費に保険料を充てることとするものでございまして、これはお触れになりましたように、民間保険はもとより、他の公的保険制度や諸外国の例を見ても妥当なものであると思っております。

 また、今回の法案におきましては、これまで批判のあった、必要な施設をすることができる旨の規定を廃止します。そして、年金相談、年金教育及び広報、情報提供など真に必要なものを明示的に列挙し、事業の範囲を限定する、こういうことにいたしております。これらの改正は、年金保険料は年金給付及び年金給付に関連すること以外には使わない、こういう政府の一貫した方針に従ったものでございます。

 いずれにせよ、重要なことは無駄遣いを排除することであり、調達に当たっても調達委員会により厳格な審査を行うなど、無駄を排除するための取り組みを徹底してまいりたいと思っております。また、今後、年金保険料の使途が国民の目に明らかになるようにホームページで予算を公表し、一層の透明化も図ってまいります。

福島委員 続いて、今回の政府・与党案の特色の一つは、外部委託の範囲、また職員の採用の基本的事項について専門的な学識経験者の意見を聞いて検討する、こういう点にあります。

 ここで大臣にお願いをいたしたいことは、公法人の人員規模をどれだけ削減したかとか、削減することは大切ですけれども、どれだけばらばらに小さくしたかとか、数字や見ばえにこだわるということではなくて、真に実務的な視点から、どのような業務運営が最も効率的で質の高いものにできるのか、客観的な検討をしていただきたいということであります。

 年金の運営業務は膨大な個人情報を扱う業務であります。また、記録のミスや給付のミスがあってはなりません。一連の業務をばらばらにして外部委託すれば、個人情報の漏えい、また事務処理の間違いも起きやすくなります。また、営利企業に外部委託すれば、委託費には企業の利益も盛り込まれます。非営利の公法人が民間の経営感覚を持って効率的な事務運営を行えば、外部委託よりもコストが下がるということもあり得ます。さらに、非常に複雑化した年金制度の運営には、業務品質を高めるために、長期的な視野に立って、専門知識とノウハウを持った職員を育成していかなきゃいけない、こういう中長期的な視点というものも当然あるわけであります。

 機構の業務の外部委託について、法人の人員規模を小さくすることにこだわるということではなくて、個人情報の保護、事務処理の間違いの防止、公平公正な事務執行の重視ということを踏まえつつ、民間の経営感覚を持って効率的に公法人がみずから事務処理を行えるように、合理的な検討をするよう大臣にお願いいたしたいと思いますけれども、御見解をお聞きしたいと思います。

柳澤国務大臣 日本年金機構の業務につきましては、機構がみずから行う業務とするか、外部委託する業務とするか、この切り分けに関する基本的な事項は、学識経験者の意見を聞いて基本計画で定めるということにいたしております。

 その学識経験者の会合をどこに置くかということで、お手盛りを排するという意味合いで、これは厚生労働省ではなくて、あるいは社会保険庁の中に置くのではなくて、内閣官房に置くということに決まっております。そして、この担当の大臣も、私ではなく、渡辺行政改革担当大臣が行うということを、総理がこの法案を閣議決定するに当たって指示をされているところでございます。

 そういうことでございますので、結論的に言いますと、今福島委員の言われる御注意も、実は渡辺大臣がお聞きするのがよろしいかと思うんですが、あえての御指摘でございますので、私としての考え方を申し上げますれば、委員の御指摘のとおり、この区分の検討に当たりましては、公平公正な事務執行、それからまた、正確かつ能率的な事務処理、それから最後に、一番大事かと思うんですが、個人情報の保護というようなことが当然の大前提にならなければならない、このように考えます。

 加えまして、年金新法人そのものに民間の経営の感覚を取り入れて、質の高い業務を少ないコストで実現できるようにするということが、もうこっちも前提でございますので、そういうことであるということを踏まえますと、現行の組織を守るという視点がみじんもあってはならないということが私は必要だと思いますが、同時に、今委員が言われるように、単に組織が小さきゃ小さいほどいいというような視点だけでは私は適当でない、このように考えているところでございます。

福島委員 ぜひよろしくお願いいたしたいと思います。

 次に、年金記録の問題について触れたいと思います。

 最近の報道ですと、基礎年金番号漏れ五千万件、年金支給漏れ二十二万件、記録紛失八十六件、こういった見出しが躍っているわけであります。単にこれらの数字だけを見ると、けたが大きいだけに、大きな不安を感じておる方もおられるというふうに思いますが、国会の場におきましては、こうした数字が意味するところがどういうものなのか十分に理解した上で冷静な議論をするということが必要だ。逆にまた、そうした議論をしなければ、いたずらに国民の年金に対しての不安をあおるだけになってしまう、このことを指摘したいわけであります。

 まず、社会保険方式を原則とする我が国の年金制度において、記録管理は極めて重要な課題だと思いますけれども、まず大臣の御認識をお聞きしたいと思います。

柳澤国務大臣 簡潔にお答え申し上げたいと思いますが、我が国の年金制度は社会保険方式を原則としておりまして、私は、将来ともにこのことは堅持すべきである、このような考え方でございます。

 そういうことを前提にいたしますと、給付を受けるために一定期間保険料の納付が必要であるということ、それから、年金額の計算は保険料納付済み期間等に基づいて行われるということから、個人個人の被保険者記録を長期間にわたって適切に管理するということ、そして、これに基づいて的確に年金を支給するということは、もう言うまでもなく最重要な機能である、また仕事である、このように考えております。

 したがいまして、今委員が言われるように、非常に多数の口数に上る、それを長期にわたって正確に記録を維持しなければならないということで、必ずしも私は易しい仕事ではない、このように考えますけれども、何といっても、この易しくない仕事、困難な仕事であろうとも、これを完遂することが年金制度に対する信頼の基盤である、こういうふうに思っておりまして、そういう観点から、これからも正確な管理ということに努めてまいりたいと考えております。

福島委員 極めて膨大な情報を管理しなきゃいけない、ここに一つの困難の原因があります。同時にまた、年金制度そのものが長年の間に変遷をしてきた、変わってきた、これがまた記録管理の難しさをもたらすもう一つの原因であります。

 我が国の年金制度、昭和十七年に民間被用者を対象とする厚生年金保険制度ができました。昭和三十六年に自営業者等を対象とする国民年金制度が発足いたしました。昭和六十年の年金制度改正によりまして基礎年金制度が設けられた、こうした変遷があるわけであります。

 現在の発生している年金記録に関してのさまざまな事象を議論するためには、このように、加入者の属性により制度が複数存在している年金制度における記録管理、これの経緯について正しく理解する必要があると思います。複数の制度がある中で、記録管理がどのように今まで行われてきたのか、また、どのような課題がそこで指摘されたのか、そして、それにまたどのように対応してきたのか、この点について簡潔に御説明いただきたいと思います。

青柳政府参考人 記録管理につきましての経緯についてのお尋ねでございます。

 年金制度の加入者の記録は、今委員からも御指摘ございましたように、それぞれの制度発足以来、例えば国民年金、厚生年金保険あるいは船員保険、それから共済組合、それぞれの制度は保険者ごとに管理をされてまいりました。

 このため、平成九年に基礎年金番号を導入する前におきましては、一つは、制度を通じた記録の把握が困難である、したがいまして、例えば職業を変更したことによって加入する年金制度が変遷をする、そういったものが複数ある場合等には、年金相談や年金裁定時における記録確認に非常に手間や時間がかかるといった問題が生じておった。

 二つ目には、制度加入等の際に、加入者に届け出をしていただくことになっておるわけでございますが、届け出等がなければ保険者側で情報の把握が困難である、特に国民年金の一号被保険者及び三号被保険者についての届け出漏れが生じかねないという事態であったという問題が生じておりました。

 こういった問題を解消し、年金事業運営の一層の適正化、効率化、それから被保険者、年金受給権者に対する一層のサービスの向上を図るという観点から、平成九年一月から各年金制度共通の基礎年金番号を導入し、これによりまして制度を通じた記録の把握が可能となったという経緯がございました。

福島委員 ですから、基礎年金番号ができることによって、ようやっと年金の記録を制度を通じてきちっと管理する仕組みがスタートした。ですから、それまではまさに本当にばらばらだったんですね。

 その基礎年金番号を導入して、付番をした。ただ、それをどういうふうに遡及的に適用していくのか、これはなかなか難しい問題なんですね。

 私も四十二歳になったときに総括政務次官にならせていただきましたが、そのとき、自分の年金記録を調べて、基礎年金番号が二つあるというのをそのとき初めて気づきまして、統合させていただいたんですが、それまでは別に未納はないので、ずっとそれぞれの職場で私は払っていましたけれども、全くそういうことは意識しなかったですね。ああ、そうなの、こう私は思いました。多くの国民の人は、多分そういうことを十分やはり知らずに来ている人はたくさんいるだろうと思うんですね。

 平成九年の基礎年金番号の導入のときに、どのように付番したのか、ここなんですね、ポイントは。例えば、厚生年金の適用事業所に就職して厚生年金に加入した後、退職して国民年金に加入し、その後、結婚により氏名変更し、さらに別の適用事業所に就職し、厚生年金に加入した。これはよくある話ですけれども、こうした事例で、平成九年のときにどのように付番されたのか、その仕組みをまず説明していただく必要があると思います。

青柳政府参考人 基礎年金番号導入時のお尋ねがございました。

 導入時には、被保険者の方は、まずその時点で加入している制度の年金手帳の記号番号をそのままお使いいただくことになりました。それから、年金の受給権者になっていた方は、裁定の基礎になりました最終の加入制度における年金手帳記号番号を使わせていただくことになりました。

 なお、共済組合につきましては、組合員の方それから年金の受給権者の方々通じてでございますけれども、全く新規に付番をさせていただいたという経緯がございました。

 こういったことがございましたので、基礎年金番号導入以前に加入をしておりました他の制度の番号、あるいは同一制度内で職場がかわったこと等により別の番号を持っているような場合には、基礎年金番号には統合していないために、御本人の申し出があるまでの間は旧来の番号のままで記録を管理するということにならざるを得なかったわけでございます。

 御例示をいただきました件につきましては、実は、それぞれの退職の後とか、あるいは再就職の際に、従来の例えば手帳をお示しいただいて、これがつながるような手続をとっていただければ何の差しさわりもなかったわけでございますが、例えば、退職後に結婚をして、あるいは再就職の際に別の年金手帳記号番号を交付された、これは、職場がかわる場合には前に働いていたことを知られたくないというような御事情があって、初めて厚生年金が適用されるというような申し出をされる方も少なからずあったようでございます。

 いずれにしろ、そういう場合には、平成九年の当時に加入されていた年金手帳記号番号のみが基礎年金番号として付番され、他の番号は旧来の番号のまま管理されるという状態にならざるを得なかったと承知しております。

福島委員 今、五千万件がという話になりますけれども、当時そういうふうな形で対応せざるを得なかった、こういう事態をよく把握する必要があるんだというふうに思います。

 一つ質問を飛ばさせていただきます。

 ただいま、基礎年金番号導入時に複数の年金加入歴を有する方々に対してどのような取り組みを行ったのかということについて、簡単な御説明があったと思います。

 基礎年金番号導入時の社会保険庁からの照会に応じているのは、ごく一部の方に限られているというふうに思います。私もそのとおりでございました。年金をもらう年齢になってといいますか、私は、職務上調べておかなきゃいかぬな、こういうふうに思ったから調べたのでありますけれども、初めて真剣に考える人が多いということじゃないかというふうに思います。

 五千万件の未統合の記録があるというのは、実は、首根っこをつかまえて全部やればそれはなくなるんですけれども、そういうことが果たしてその当時できたか、先ほど運営部長からお話ありましたけれども、こういういろいろなケースがあってできなかったというのが実態であったんだと思います。

 基礎年金番号の導入によりまして、導入後の複数の加入履歴について各制度共通の番号である基礎年金番号により管理されることになるけれども、基礎年金番号導入前の加入履歴については統合する必要があるけれども、年金受給年齢に到達していない多くの方は、年金受給の際に統合すればよい、こういう考え方で統合の手続をとっていないことがあるのではないかというふうに私は思います。

 社会保険庁によりますと、現在、基礎年金番号に統合されていない記録は約五千万件あるというふうに言われておりますけれども、これは、基礎年金番号への統合過程の一つの局面を私はとらえているにすぎないと。

 これは当然、基礎年金番号が導入されて、そしてまた、裁定を毎年毎年百万を超える人が行っているわけでありますから、そのプロセスの中で過去の記録というのは全部整理されていく、こういうことが繰り返されていくことによって逐次減っていく。それだけ年金制度というのは巨大なシステムで、時間をかけないと一億を超えるような情報というものを整理していくことはできないというのが、私は客観的な事実だと思うし、そのことをやはり国民も十分理解する必要があると思います。

 もちろん、その中で、自分の納めた記録というものがなくなったりして、年金受給の権利が侵される、こういうことがあってはいけないというふうに思いますけれども、ただ、こういった非常に歴史的なプロセスだという認識を前提とした上でその議論はなされるべきだというふうに思います。

 この約五千万件の未統合の記録について、すべて統合する必要があるものなのか、また、基礎年金番号に統合する必要がある記録について、社会保険庁がみずから調べて統合することはできないのか、こういう指摘について御見解をお聞きしたいと思います。

青柳政府参考人 基礎年金番号に統合されていない五千万件の記録についてのお尋ねがございました。

 これの中身は大きく分けて二つのものがあるというふうに考えております。一つは、基礎年金番号にそもそも統合する必要のないものということで、具体的には、基礎年金番号の導入前に死亡した方や、導入後、年金受給前に亡くなった方の記録など、それから、受給要件がなく請求を行うことができない方の記録、こういった統合する必要のないものがあるわけでございます。一方、御指摘の中にもございましたが、今後、年金裁定時、あるいは、現在私どもが実施しております五十八歳時点での通知、こういったことに基づいて記録確認が行われて統合が行われていくような記録、この二つが含まれているものというふうに承知をしております。

 そして、この統合されていない記録について、何らかの形で調べて統合することはできないのかというお尋ねがございましたが、これらの記録は、いわば住所がその当時の住所のままでございますので、例えば更新されていないというようなことが端的な理由としてあるわけでございます。

 いずれにせよ、社会保険庁がみずから調べて統合することは困難でございますので、御本人から申し出をいただいて、社会保険庁で管理している記録と一致したものについて、初めて御本人の記録として確定することができるという形になっております。

 なお、先ほどお尋ねの中にございましたように、実は、基礎年金番号を導入した際にも、一億人を超える方に基礎年金番号を御通知すると同時に、他の制度の加入歴がないか、あるいは他の年金手帳を有していないかということのお尋ねをいたしまして、御照会した結果、九百万人以上の方から御回答をいただきました。これと、御回答をいただけなかったけれども、私どもの持っている記録の中で、氏名、性別、生年月日が一致するので同一の記録でないかと思われる九百万人の方、合わせて一千八百万人の方に改めて御照会をかけて、この統合を順次進めてきたという経緯があることを申し添えさせていただきたいと存じます。

福島委員 後先して大変申しわけありません。

 ただいま御紹介ありましたように、過去の記録について、統合を促すために国民に対して情報提供、当時は厚生省、そして社会保険庁みずからが行ってきた、この事実もぜひ知っていただきたいということであります。

 しかし、その通知を受けても、私も全く記憶がないのでありますけれども、意識していた人というのはどのぐらいいたのかな、こういう話だと私は思います。私は未納はないんですけれども、ちゃんと保険料は納めておりましたけれども、そうしたことについて十分な認識はありませんでした。それはまだ、自分が年金の保険料を払っていればいい、こういう意識でありまして、やはりもらうときにならないと、どうなっているかなというところまでなかなかいかないんだなと、振り返って改めて思います。

 そういう意味では、ねんきん定期便ということで、国民の皆さんに、裁定時ではなくて、早い時期からそうした年金の保険料の納付等々について注意喚起をしていくということは、極めて重要な取り組みだというふうに思っております。

 続きまして、基礎年金番号への統合には、本人が記録を確認するということが必要になるわけでありますけれども、本人が記録を確認する機会としては、まず年金の支給決定時ということになろうかと思いますが、この際の手続について簡単に御説明いただきたいと思います。

青柳政府参考人 年金の支給決定時の手続についてのお尋ねでございます。

 私ども、この支給決定の手続を裁定請求というふうに呼んでおりますが、裁定請求時におきましては、裁定請求書、つまり年金を支払ってくれという申込書に、御本人の加入履歴、それから基礎年金番号、あるいは基礎年金番号以外の手帳記号番号がある場合にはその番号、こういったものを記入して申請をしていただきまして、私どもが管理しております加入記録と照合、確認を丁寧に一つずつ行わせていただいているという形でございます。

 なお、平成十七年十月からは、五十八歳の時点で、それまでの加入履歴を被保険者の方々にお送りさせていただいております。ここでお送りをして、加入履歴の確認をあらかじめするということをさせていただいておるわけでございますが、ここで確認をした情報をもとに、平成十七年の十月から、実は、受給権が発生する六十歳または六十五歳の方に対しまして、裁定請求書に加入記録をあらかじめ記載したものをお送りいたしまして、記録を御確認いただいた上で、あわせて請求を行っていただくという手続をとらせていただいております。

 いずれにしろ、加入記録に不明な点がある場合には、御照会の都度ないしは五十八歳通知の際に、御本人の申し出に基づいて調査を行わせていただきまして、基礎年金番号で管理する記録に統合されていないものが判明した場合には、その時点その時点できちんと記録の整備を行い、最終的に的確な年金の裁定につなげているということでございます。

福島委員 年金支給漏れ二十二万件、こういう報道がありましたが、これもある意味で不適切な表現だと思いますけれども、支給決定時の裁定が変更されたものが二十二万件に上ったということであって、これは要するに、今御説明がありましたように、過去の記録を全部統合するというプロセスを経て変わったということであって、しかし、その過去の記録自体が十分統合されるに至らない経過があったということを踏まえると、こうしたこと自体は起こり得る話であるし、そしてまた、逆に言うと、そうした変更というものをきちっとやっていただいているということが、年金の受給権を確保するということになっているあかしなんだろうと私は思うわけであります。

 年金支給額が、過去六年間で二十二万件変更になったということについて、どういう経緯か、御説明いただきたいと思います。

青柳政府参考人 二十二万件の裁定変更についてのお尋ねでございます。

 これは、平成十三年度から十八年の十二月末までの間に、社会保険事務所から裁定の変更処理依頼を受け付けた件数ということで、二十二万件ということを申し上げておるわけです。

 この裁定変更処理の主な理由といたしましては、一つには、裁定請求の時点におきましては、その被保険者記録の一部が未確認であった、しかし、御本人は一刻でも早く年金を受給したいということで、未確認の記録の分は後ほど調べて、それが確認できた場合に年金をその分増額してもらえればいいから、まずは裁定をしてくれというお申し出がある場合に、まず先に裁定を行い、その後にその確認をした部分を含めたすべての被保険者期間の確認に基づくところの記録の追加を行うというような事例が多うございます。

 また、御本人の確認の上で裁定を行ったわけでありますけれども、後になって、やはり申告していなかった期間があったということでお申し出があるようなケースもございます。また、まれではございますが、逆に事業主の方から賞与等の記録が間違っていたということが後で届け出がありまして、これに基づいて裁定変更が必要になったというようなケースもございます。

 いずれにいたしましても、年金の裁定請求時は、御本人の請求に基づいて加入記録を確認の上、支給決定を行うということで進めておるわけでございますけれども、先ほども申し上げたように、一刻でも早く年金をまず受け取りたいということを希望されるような方がいらっしゃる場合には、まず御本人の希望を優先するというような手続をさせていただいておりますので、したがいまして、変更の依頼に基づくものという意味では、手続等の不備によるものではないという点を御理解願いたいと存じます。

福島委員 続いて、こうした経緯を踏まえると、請求を待つだけではなく、社会保険庁から積極的に情報提供を行って、本人による年金記録の確認の機会をさらに拡大すべきではないか、このように考えますけれども、簡単に御説明いただきたいと思います。

青柳政府参考人 年金の記録確認の機会の拡大ということにつきましては、これまでに五十八歳に到達した方に対する年金加入履歴の通知、これは平成十六年の三月から行っております。また、これに基づきまして、年金支給開始年齢に到達する者に対しまして、この確認いただきました加入履歴等をあらかじめ印字して裁定請求書をお送りし、最終確認をいただく手続、これは平成十七年の十月から行っております。また、インターネットを活用した年金加入履歴の提供は、平成十八年の三月から行っておりまして、いずれにせよ、年金記録を確認する機会を順次拡大しておるところでございます。

 また、年金の加入履歴につきましては、ただいま申し上げた五十八歳時点だけでなく、ねんきん定期便の前倒し実施といたしまして、本年三月から三十五歳時点での通知の開始、それから、十二月からは四十五歳時点でも通知することを予定しておりまして、これらの通知は、最終的には、平成二十年度から全被保険者を対象として実施を予定しておりますねんきん定期便として行わせていただくことを考えております。

 なお、昨年来、年金記録につきましての個別の相談に対して、社会保険事務所に専用の窓口を設けて特別強化体制をとっておるわけでございますが、本年の六月には、既に年金を受給しておられる方々にも広くこの窓口を御利用いただきたいという趣旨で、約三千万人の年金受給者すべての方々に対して、毎年お送りをしております年金の振り込み通知書に、そうした旨の御案内をさせていただくことを予定しております。

福島委員 若干時間の関係で質問を省略させていただきたいと思いますが、もう二点質問いたします。

 もう一点は、五十八歳通知について、これまで四十一万人から加入履歴の再調査依頼があったということでありますけれども、これはどのようなことを意味しているのかということであります。年金記録の誤りという判断になるんでしょうか。政府の見解をお聞きしたいと思います。

青柳政府参考人 先ほど来申し上げております五十八歳通知は、将来の年金請求手続を円滑に行うために、年金受給年齢に近づいた五十八歳の時点で社会保険庁における加入記録をお知らせして、御本人に記録を確認していただくということが目的でございます。

 その時点で、基礎年金番号に統合されていないような年金記録の番号がある場合には、御本人の申し出で調査を行って確認をし、順次、基礎年金番号に統合しているということでございまして、このように調査依頼があること自体は、五十八歳通知がその本来の目的を適切に果たしていることを意味していると承知しておりますので、四十一万件が不適切というふうには認識をしておりません。

福島委員 現在、特別強化体制をとっていただいて、年金記録の相談に精力的に応じていただいているわけであります。この点については、本当に一人一人にとって大切な年金ですから、現場においては極めて丁寧に対応していただきたい、親切に対応していただきたい、この点を要望いたしたいと思います。

 また、この特別強化体制におきまして、領収書等の資料に基づいて記録を訂正したものがあると報道されております。その概要について御説明いただきたいと思います。この件についてどのように考えておられるのか、御説明ください。

青柳政府参考人 特別強化体制についてのお尋ねがございました。

 まず、特別強化体制そのものにつきましては、昨年の八月二十一日から社会保険事務所に専用窓口を設けるということで実施をしておるわけでございますが、この特別強化体制のもとで、最新の状況を申し上げますと、本年の三月三十日までの間に約二百十五万四千件の相談がございまして、そのうち九九%はその社会保険事務所の現場で確認ができたものでございまして、残りの一%、およそ三万件と、そのほかに郵送で調査の申し出をされた件数、これがやはり三万件強ありますけれども、六万件についていわば調査のお申し出を受けて再調査をするということをしておりますが、九割は既に回答をさせていただいておるという状況にございます。

 そして、その領収書等の資料に基づき記録を訂正したものがあるかというお尋ねがこの中についてございました。

 現在までのところ、領収書等の資料に基づき記録を訂正したものは、五十五件確認をしておるところでございます。

 これらの事例について、記録訂正がそもそも必要になった理由として、私どもがある程度推定をしております内訳を申し上げますと、当時、市町村に保険料を納付したけれども、保険料納付に係る期間が誤って未加入期間とされていたことによると考えられるものがおよそ十件、それから、国民年金手帳は、昔、印紙を張りまして、それを検印することによりまして納付を確認しておったわけですが、その納付を確認した場合には、その台紙を切り離すということになって初めて納付の確認ができたわけでございますが、住所を変更する等の事情と思われますが、結果的に、その印紙の検認台紙が切り離されておらず、市町村から社会保険事務所に納付の記録が送付されていなかったというものが六件、それから、市町村あるいは社会保険事務所が発行した納付書の記号番号が異なっていたということによるものが三件等の内容がわかっております。

 また、この五十五件の事例の具体的な状況といたしまして、例えば、記録訂正に係る期間では、昭和三十八年二月というのが最も古い期間のものであり、六十年三月というのが最も新しい期間のものであるというようなこと。あるいは、記録訂正に至った被保険者がお持ちであった資料については、年金手帳でその証明ができたものが二十八件、領収書で証明ができたものが二十九件、あるいは領収済みの証明書が四件、一部重複がございますが、そのような内容になっております。

 また、これらについて、私どもの方で最終的に、被保険者台帳、マイクロフィルムで保存をしておるものもあるわけでございますが、これがあったものが三十三件、なかったものが二十二件等となっております。

 このほか、ちょっと細かい状況がございますが、お尋ねがあれば追加して御説明をさせていただきたいと存じます。

福島委員 もう時間が終了いたしておりますが、せっかくですから、もう少し細かいこともおっしゃっていただければと思いますが、よろしいですか。

青柳政府参考人 失礼をいたしました。

 追加で御説明をさせていただきますと、保険料を領収した場所でございます。市町村で領収したというのが三十五件、金融機関であったものが十三件、郵便局が八件、当時ございました地域の納付組織で納付したというものは一件ということで、特に特定の機関への偏りはなかったかと認識をしております。

 また、その五十五件の方のうち、年金受給権の裁定を受けた方がいるかどうかということについてですが、既に裁定を受けた年金受給権者は十二名、これから裁定を受ける方が四十三名という内容でございました。

 また、記録訂正に係る期間の前後一年間の住所変更の有無、すなわち住所変更がこれにかかわっているかどうかということについては、住所変更があった方が二十七件、なかった方が二十八件ということで、特段住所変更にかかわって生じたものということは言えないかなというふうに認識をしております。

 いずれにしろ、こうした事例があったことは、私ども、大変に申しわけなく、遺憾であるというふうに思っておりますが、これらについては、先ほど委員からも御指摘をいただきましたように、かつてコンピューターの技術が未発達で、かつ制度ごとに記録が管理されていた時代に生じたものであり、その後、社会保険のオンラインシステム、あるいは先ほど来御説明をさせていただきました基礎年金番号の導入によりまして、年金記録の的確な管理に努めておるということをぜひ御理解賜りたいと思います。

 いずれにいたしましても、先ほど申し上げました領収書等何らかの証拠書類によりまして保険料の納付の事実が確認されれば、速やかに記録を訂正し、適切に対応させていただきたいと思っておりますので、引き続き年金記録相談の特別強化体制の周知を図り、必要な記録の確認と補正に丁寧にかつ的確に対応してまいりたいと考えております。

福島委員 以上で終わりますが、私のところにも、納めたのに記録がない、こういう御相談が来て、御照会をさせていただいたこともあります。丁寧に調べていただいております。全く対応していないというわけではありません。ただ、証拠が全くないものについてはどうしようもないという側面があって、本当に申しわけないなという思いをいたしておりますが、一つ一つの御相談に対して丁寧に誠実におこたえいただきたい、このように要望いたしまして、私の質問を終わります。ありがとうございました。

櫻田委員長 この際、休憩いたします。

    午後零時二十一分休憩

     ――――◇―――――

    〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕


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