衆議院

メインへスキップ



第23号 平成19年5月23日(水曜日)

会議録本文へ
平成十九年五月二十三日(水曜日)

    午前九時二分開議

 出席委員

   委員長 櫻田 義孝君

   理事 伊藤信太郎君 理事 鴨下 一郎君

   理事 谷畑  孝君 理事 宮澤 洋一君

   理事 吉野 正芳君 理事 三井 辨雄君

   理事 山井 和則君 理事 福島  豊君

      新井 悦二君    井上 信治君

      石崎  岳君    加藤 勝信君

      川条 志嘉君    木原 誠二君

      木村 義雄君    岸田 文雄君

      清水鴻一郎君    菅原 一秀君

      杉村 太蔵君    高鳥 修一君

      戸井田とおる君    冨岡  勉君

      長崎幸太郎君    丹羽 秀樹君

      西川 京子君    林   潤君

      原田 令嗣君    福岡 資麿君

      松野 博一君    松本  純君

      松本 洋平君    内山  晃君

      大島  敦君    川内 博史君

      菊田真紀子君    郡  和子君

      園田 康博君    田名部匡代君

      筒井 信隆君    長妻  昭君

      細川 律夫君    柚木 道義君

      坂口  力君    古屋 範子君

      高橋千鶴子君    阿部 知子君

    …………………………………

   厚生労働大臣       柳澤 伯夫君

   内閣府副大臣       林  芳正君

   厚生労働副大臣      石田 祝稔君

   厚生労働大臣政務官    菅原 一秀君

   厚生労働大臣政務官    松野 博一君

   政府参考人

   (内閣府規制改革推進室長)            田中 孝文君

   政府参考人

   (総務省大臣官房総括審議官)           久保 信保君

   政府参考人

   (国税庁長官官房審議官) 荒井 英夫君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房総括審議官)         宮島 俊彦君

   政府参考人

   (社会保険庁長官)    村瀬 清司君

   政府参考人

   (社会保険庁総務部長)  清水美智夫君

   政府参考人

   (社会保険庁運営部長)  青柳 親房君

   厚生労働委員会専門員   榊原 志俊君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月二十三日

 辞任         補欠選任

  木原 誠二君     丹羽 秀樹君

  田名部匡代君     長妻  昭君

  柚木 道義君     川内 博史君

同日

 辞任         補欠選任

  丹羽 秀樹君     木原 誠二君

  川内 博史君     柚木 道義君

  長妻  昭君     田名部匡代君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 日本年金機構法案(内閣提出第七八号)

 国民年金事業等の運営の改善のための国民年金法等の一部を改正する法律案(内閣提出第七九号)

 歳入庁設置法案(山井和則君外五名提出、衆法第二三号)

 国民年金事業及び厚生年金保険事業の適切な財政運営に資するための国民年金法及び厚生年金保険法の一部を改正する法律案(山井和則君外五名提出、衆法第二四号)

 公的年金制度に対する国民の信頼の回復を図るための年金個人情報関係調査の実施等に関する法律案(山井和則君外五名提出、衆法第二五号)


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

櫻田委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、日本年金機構法案及び国民年金事業等の運営の改善のための国民年金法等の一部を改正する法律案並びに山井和則君外五名提出、歳入庁設置法案、国民年金事業及び厚生年金保険事業の適切な財政運営に資するための国民年金法及び厚生年金保険法の一部を改正する法律案及び公的年金制度に対する国民の信頼の回復を図るための年金個人情報関係調査の実施等に関する法律案の各案を一括して議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 各案審査のため、本日、政府参考人として内閣府規制改革推進室長田中孝文君、総務省大臣官房総括審議官久保信保君、国税庁長官官房審議官荒井英夫君、社会保険庁長官村瀬清司君、社会保険庁総務部長清水美智夫君、社会保険庁運営部長青柳親房君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

櫻田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

櫻田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。長崎幸太郎君。

長崎委員 自由民主党の長崎幸太郎です。

 私は、厚生労働委員会は比較的、つい先日入れていただきまして、まだまだ素人でありますが、何とぞよろしくお願いいたします。本日は貴重な機会を与えていただきまして、心より感謝いたします。

 きょうは、新しい年金組織のあり方を中心にお伺いしたいと思っております。

 新しい年金組織につきましては、政府提案の非公務員化された日本年金機構、それから民主党の対案である公務員の身分を維持したまま国税庁と統合する案、いわゆる歳入庁構想がありますのは御承知のとおりであります。

 国税庁と社会保険庁につきましては、これまでの総理答弁におきましても、国民年金と国税では徴収の対象が異なる、確かに推計では、一号被保険者二千二百万人のうち約一五%が所得税を申告している、このように徴収の対象が異なっていたり、あるいは国民年金と国税では業務の基本的性格が異なる、すなわち、国民年金は滞納額三十万円程度の少額多数の債権である一方で、国税は大口、悪質事案を優先的、重点的に処理するというふうにされております。

 今回の年金組織の改革におきましては、一つ大きな目的として、国民年金の納付率の向上、それから徴収業務の効率化、これが大きな重要テーマとなっておりますが、社会保険庁と国税庁を統合する案、これは両庁では業務内容が大きく異なっているわけですが、仮に統合するとした場合、国民年金の納付率の向上あるいは徴収業務の効率化という今回の改革の重要テーマについていかなるメリットがあるのか、これは社会保険庁と国税庁、それぞれにお伺いしたいと思います。

清水政府参考人 社会保険庁でございます。

 御指摘のとおりでございまして、国民年金と国税とを比較した場合、国民年金第一号被保険者は約二千二百万人おりますが、そのうち所得税が申告納税となっている方は約三百五十万人と、少数ではないかと推計しておるところでございまして、徴収の対象は大きく異なっているものと認識してございます。

 また、国民年金保険料につきましては、未納額が最高でも二年分、約三十万円でございます。少額多数債権という特性を有してございます。このため、年金制度の意義等、被保険者の方の御理解を得まして、納付環境も整えながら自主的な納付に結びつけることが基本というふうに考えてございます。

 また、未納になっている方に対しましては、そのお一人お一人の属性に応じたきめ細かい対策が必要であると考えてございまして、まずは効果的な納付督励を実施する、その上で、十分な負担能力がありながら納付督励に応じていただけない未納者の方には強制徴収を実施する。一方におきまして、免除基準などに該当する方につきましては免除などの申請勧奨を行う、そして年金受給権に結びつけていく、こういう形で考えているところでございます。

 国税につきましては、後ほどお答えがあろうかと思いますけれども、私どもといたしましては、やはり国税の方は大口、悪質な滞納案件の対応に重点が置かれているのではないだろうかというふうに認識してございます。

 このように、国民年金保険料の徴収と国税徴収とでは対象、業務特性が大きく異なってございまして、両組織の統合ということによる効果はなかなか期待できないのではないだろうかというふうに考えてございます。

荒井政府参考人 お答えいたします。

 国税庁が国民年金保険料を徴収することにつきましては、国民年金保険料と国税とは、先生御指摘のように、徴収の対象や業務の特性が大きく異なってございます。このため、収納率の向上や徴収事務の効率につながるとは必ずしも言えないと考えているところでございます。

長崎委員 もう一点、国税庁にお伺いいたしますが、いわゆる歳入庁構想では、歳入庁を財務省から分離して内閣府に置くというふうになっているかと承知しておりますが、すなわち、これが意味するところは、税制の企画立案を担当する主税局と国税庁を分離して別々の役所のもとに置くということになっておりますが、この点につきまして、国税あるいは税制を担当する組織のあり方としてどういう影響があるとお考えになるのか、お聞かせいただきたいと思います。

荒井政府参考人 お答えいたします。

 税制の企画立案及び執行の機能については、現状では、制度の趣旨に沿った適正、円滑な執行を行うとともに、税務執行の実情を踏まえて円滑な執行を可能とする制度の企画立案を行う観点から、一人の大臣の責任のもとで、財務省と国税庁が密接な連携を図りながら、おのおのの機能を適切に果たしているところでございます。

 仮に、税制の企画立案に責任を持つ大臣と執行に責任を持つ大臣が分離された場合には、このような両者間の密接な連携が阻害される可能性があると考えているところでございます。

長崎委員 税制は、まさに執行と制度自体が、ある意味有機的にというか、執行を踏まえて制度を考える、あるいは制度があってどういう執行をするか考える、こういう有機的なつながりが特に重要な業務ではないかと思いますが、この点は、そういう認識で正しいでしょうか。

荒井政府参考人 お答えいたします。

 先生御指摘のように、税制の企画立案と執行というものは非常に密接な関係にあるというふうに我々としても考えているところでございまして、少し具体的な例を挙げさせていただきますと、例えば主税局が税法の企画立案を行うに当たりましては、広く税務執行の実情や税制改正案の執行可能性について把握する必要がございます。このため、国税庁への課税状況等の調査や意見交換等を行うなど、密接に連携を図っているところでございます。

 また、国税庁のサイドから見ましても、全国の税務署における法令の解釈や取り扱いの統一を図るための国税庁の通達の発遣に際しましては、税法の立案段階から、国税庁も内閣法制局の審査に同行するなどして、通達が税法の企画立案の趣旨に即するものとなるよう、主税局と密接に連携、調整を行っているところでございます。

長崎委員 ありがとうございました。

 私も、財務省に在籍時代、経験があります。いわゆる財政、金融の分離、大蔵省から金融監督庁を当時つくり、その後、金融監督庁は、また再度、どうしてもこれは企画立案機能が必要だということで、当時の大蔵省の金融企画局と金融監督庁を合体させて、また金融庁に戻した、こういう経緯がございます。

 一方で組織を分離し、一方でまた組織を統合する、こういう複雑な組織統合というのは、私の経験からも、大変膨大な事務処理コスト、統合のためのコストですとかその過程における摩擦、こういう大きな大きな統合コストが発生するものだと思います。これは私が申し上げるまでもなく、財政、金融分離のときですとかあるいは中央省庁改革で、明らかに我々は経験していることだと思います。

 さらに、こういうことを初めとして、組織を、特に社会保険庁と国税庁を統合するということのデメリットというのは、これまで十分議論されてきていなかったのではないかと思います。

 民主党の園田先生の当委員会における御説明の中で、まさに歳入庁の母体であります国税庁の職員の士気の高さ、それからモラルの高さというものは、他の省庁に比べてかなり秀でている、そして、現在の社保庁職員が国税庁職員と融合することによって資質と文化あるいはモラルというものが大幅に向上する、まずここに力点があるというふうに思っているわけでありますという御説明を拝聴しております。この前半部分はまさに同意をするところではあるんですけれども、問題は後半部分。確かにそういう効果はあるかもしれないけれども、逆のデメリットもあるんじゃないか。むしろ国税庁から見たときにどうなるのか。

 これはお答えがなかなか難しいと思いますので、私、言いっ放しにしてしまいますが、今、社会保険庁の職員さん、残念ながら、多分役所の中では最も批判の多い役所であると思います。こういうところが、極めて高い評価をいただいている士気の高い国税庁と統合することによって、逆に、こういう国税庁職員の士気が低下するというデメリットも出てくるのではないかと思います。

 国税はまさに国家存立の基盤であって、国税徴収組織というものの見直しは極めて慎重にやらざるを得ない。悪貨が良貨を駆逐すると言ったら言い過ぎかもしれませんけれども、こういう国税徴収の組織は大事に大事に考えていかないといけない、こういうふうに私は考えるわけであります。これは私の考え方でありまして、したがって、国税庁との統合は余りよろしくないのではないか、徴収のあり方として問題じゃないか、このように考えます。

 次に、政府提案の日本年金機構の人件費のあり方、これについてお伺いしたいと思います。

 日本年金機構、これは非公務員化された職員から成る公法人でありますが、この職員の給与、これにつきましては、公務員である場合よりもアップするのじゃないか、こういう指摘がございます。一説には、厚労省の職員の平均給与、これは六百六十三万円である一方、厚労省所管の独立行政法人の職員、これは七百九十六万円になるという話も聞いております。

 問題はここの正否なんですが、現在の社会保険庁職員あるいは厚生労働省職員と厚生労働省所管の独立行政法人の給与水準、果たしてそれぞれどのようになっているのか、お聞かせいただきたいと思います。

清水政府参考人 お答え申し上げます。

 厚生労働省職員の全職員の平均給与額は、平成十七年度でございますが、六百六十三万円となってございます。一方、当省所管の独立行政法人でございますが、これは、小さいものは数十人単位、大きいものは四万七千人強と、極めて人的規模の違いがございます。この厚生労働省所管の独立行政法人の平均給与を見る場合におきましては、このような職員数、これを勘案して、全体の加重平均をとる方が妥当ではないかと考えてございまして、加重平均を算出いたしますと、同じく十七年度で六百四十五万円になるわけでございまして、厚生労働省の職員の平均給与額とほぼ同水準、やや低いということになっておるというふうに認識してございます。

長崎委員 今、加重平均で六百四十五万円ということですが、この七百九十六万円という数字はどのように出ているのか、これは何かありますでしょうか。

清水政府参考人 私どもが国会に御提出申し上げている資料がございまして、その資料の全常勤職員の平均給与額を単純平均、すなわち、一つの独立行政法人のものは皆同じウエートであるというふうに仮定して算定した場合には、委員御指摘の額になろうというふうに考えてございます。

長崎委員 一般に、よく地方公務員と国家公務員の給与を比較する場合は、ラスパイレス比較といって、年齢ですとか学歴、こういうものが同等なものをそれぞれ加重平均して出すとか、あるいは、職種によっても相当違いがあるものですから、職種の比較というものも考えないといけない。

 私自身としては、職員数だけで単純に加重平均した六百四十五万円という数字も、ちょっとラフな統計数字かなとは思いますが、さらに言えば、全平均給与を法人数で割った、ちょっと粗っぽい数字かなと思います。厚労省所管の独法の中には、国立病院機構、ここにはお医者さんなんかもいるはずですし、いわゆる日本年金機構の職員、これと同種の事務職については実質的にはさらに低いものになるのではないかと思います。

 また、さらに言えば、仮に国税庁と社会保険庁を統合する場合、国税庁職員には、いわゆる税務職の俸給表、これは一般行政職の俸給表よりも一般的には高い水準に設定されている、つまり、税務の職種の性質に応じて高い俸給表が付与されている。ということは、国税庁と社会保険庁を合併することによって、統合することによって、では国税庁職員の給与を逆に引き下げる、これはなかなか難しい話だと思う。ということは、逆に、社会保険庁職員の給与が上がってしまう可能性があるのではないか、こういうことも懸念されるわけであります。

 効率的な徴収体制の確立ということであれば、給与水準が現在の水準よりも上がるということは好ましくない。逆に、厚労省所管の独法のような形にすれば、今おっしゃったように、今ですら六百六十三万円と六百四十五万円の違い、要は、単純に独法の水準になったとすればむしろ給与水準は下がる結果になる。これは、効率化するというふうにも言えるのではないかと思います。

 改革の成果として、効率性の……(発言する者あり)特殊法人、まあ、それに反応してもしようがないので。

 済みません。効率的な徴収体制の確立という意味では、これは社会保険庁改革をしましたということ自体で給与が上がるというのは、国民の理解はおよそ得られない。むしろ現行の水準を多少なりとも下回らないとおかしいのではないか。もちろん、その後の改革の成果として効率性の上昇があった、これに伴って、成果として給与が上がる、これはわかる話ですが、合併すること自体、あるいは組織改革すること自体で給与水準が上がるというのは、これはだれも理解ができない話だと思います。

 こういう意味で、先般も大臣答弁の中では、国家公務員の平均を上回らないようにしないといかぬ、これは長妻先生の質問に対して柳澤大臣が答えられておりますが、私もそのとおりだと思います。そのとおりだと思いますが、国家公務員の平均給与を上回らないだけではなくて、現状を総体としては上回ることもおかしいのではないか。つまり、組織改革によって税務職の俸給表が適用され給与が上がるとかいうのは好ましくない。むしろ逆に、公法人、独法のように、六百四十五万円になるというような、下がるという方向が正しいのではないか。こういう観点からも、歳入庁というのはちょっとどうかな、課題が多いのではないかと思います。

 そこで、今そういう点を踏まえてお伺いいたしますが、日本年金機構の発足時における人件費総額、それから給与水準の設定に関してどのような基本的な考え方で臨まれるのか、お聞かせいただきたいと思います。

清水政府参考人 お答え申し上げます。

 機構の給与水準についてでございますけれども、今回の法案の第二十二条第三項におきまして、「機構の業務の実績を考慮し、かつ、社会一般の情勢に適合したものとなるように定められなければならない。」と定められておるわけでございまして、適切な水準にすることが法案上も求められている、かように考えてございます。

 手続面について申し上げますと、給与水準につきましては、機構設立委員が十分に検討いたしまして、その上で機構が厚生労働大臣に届け出る、かつ、機構みずから公表するということで、外からのチェックが働くようになってございます。

 さらに、機構の人件費につきましては、国からの交付金により賄われるものでございます。国からの交付金は、当然のことながら国の予算査定を経ることになります。したがいまして、その査定過程におきましては、その時点におきます国家公務員の給与水準などを参照しながら算定される、そして交付金と措置されることとなるというふうに考えてございまして、総人件費も適正な水準になるものというふうに考えてございます。

長崎委員 今おっしゃっている話は、実際、もう少し詳しいところで言うと、これはもちろんこれから検討される話だとは思いますが、最初の案をつくるときは恐らく総額も給与水準も現状の段階をベースにして考え、特に総額については、統合したがゆえに人件費総額がふえる、こういうことは起こらないのではないか、現状があくまでも出発点で、それより下の人件費総額が設定されるようになるのではないかと思いますが、こういう点はいかがでしょうか。

清水政府参考人 やはり総額が移行前の水準と移行後の水準で大きく異なるということは多分ないのではないだろうかというふうに考えてございます。

 ただ、個々の職員への給与につきましては、やはり今回の改革は非公務員化ということの中で給与体系を変えていくということが一つのポイントではないかというふうに私ども考えてございますので、設立委員におきまして、そのあたりも十分に勘案の上、検討していただくことが適当ではないかというふうに考えておるところでございます。

長崎委員 人件費総額も個々の給与水準も、この改革があってから本当に給与がふえてよかったよと言われると、ちょっとこれは説明しづらいと思います。そういう点を指摘させていただきまして、次の質問に移りたいと思います。

 社会保険庁につきましては、先般来、当委員会における議論でも、基礎年金番号に統合されていない年金記録が多数あるとか、あるいは、個別ケースにおいて、年金保険料を納付したはずなのに記録から落ちており、結果、年金額が減額されていると疑われるようなものがある。さらに、ひどいことには、調査を依頼しても証拠がないからということで門前払いをされてしまう、そういうケースがある。これはだれが聞いてもとんでもないことであり、こういった点を真摯に反省し、新しいスタートを切るべきことは当然のことだと思います。むしろ、新しいスタートを切るまでもなく、現在、今、きょうからでも改善に取り組む必要があるのではないかと思います。

 効率的業務の遂行あるいはサービス意識の徹底、こういう職員の意識改革ですとか、それに見合うだけの専門的な人材育成、あるいはコンプライアンスの徹底、これはいずれにしても年金組織が取り組むべき、改革しようがしまいが取り組むべき課題であると思います。

 そこで、お伺いします。これらの点について、現在、社会保険庁ではどのように取り組まれているのか、具体的に御紹介いただきたいと思います。

清水政府参考人 お答え申し上げます。

 社会保険庁におきましては、現在、業務改革と意識改革を進めておるところでございます。このうち、意識改革につきましては、これがやはりすべての改革の取り組みの基盤になると考えてございまして、すべての職員が、これまでの業務の進め方を見直して、みずから変わるんだという強い決意を持って改革に臨むことが必要であると考えてございます。

 そのために講じている措置でございますが、現在、まず一番目には、現場の職員から前向きな改革の提案を募集する内部改善提案制度を設けてございます。また二番目として、主要な事業の取り組みを事務局や事務所に競わせて、高い実績を上げたところに長官表彰を行うという社会保険事務局・事務所グランプリを実施してございます。三番目として、職員の能力や実績を評価いたしまして、これを給与、処遇に反映させる新しい独自の人事評価制度を導入してございます。四番目に、お客様志向の業務遂行を徹底するため、職員行動規範を策定いたしますとともに、接遇マナー研修を実施してございます。五番目。さらに、全職員参加によります社会保険庁リスタートプロジェクトを立ち上げまして、社会保険庁改革リスタートプランをまとめるということなど、改革に意欲的でサービス意識が徹底された人材の育成を進めているところでございます。

 また、コンプライアンスの徹底につきましては、社会保険庁に法令遵守委員会を置いてございます。また、職員からの内部通報制度、それから外部通報制度を設けまして、職務上の法令違反行為を早期に発見、対処する仕組みを整備してございます。さらに、全職員を対象として、年一回以上の法令遵守研修の実施、これらに取り組んでいるところでございます。

長崎委員 さらにお伺いしますが、日本年金機構になって国家公務員制度から離れることによって、今おっしゃったような取り組みに加えてさらにどういう取り組みが可能になるのか、あるいはやるべきだと考えておられるのか、この点についてお聞かせいただきたいと思います。

清水政府参考人 日本年金機構につきましては、非公務員化することによりまして、能力と実績に基づく人事管理でございますとか柔軟な職員採用がしやすくなると考えてございます。

 具体的には、まず第一といたしまして、機構の職員は現在の社会保険庁の職員を自動的に引き継ぐのではなくて、募集し採用するという方式をとっておりまして、強い責任感を持って誠実かつ公正に職務に当たろうとする者が機構の職員になるというのが一点でございます。

 二点目といたしまして、給与面でございますが、公務員の場合につきましては、御承知のとおり労働基本権の制約がございます。一般職の職員の給与に関する法律で法定された俸給表に基づいて支給ということになってございますが、機構は非公務員でございまして、非公務員にすることによりまして独自の給与体系をつくることができるわけでございます。例えば勤務年数に応じた部分、能力や実績に応じた部分、役職の重さに応じた部分といったものを最適に組み合わせるなど、能力と実績に応じた、めり張りのきいた民間的な給与体系がより行いやすくなるわけでございます。また、それへの当てはめ、すなわち、降任降格でございますとか昇任昇格なども、機構の業務それ自体に即した運用ができるものと考えてございます。

 三点目でございますけれども、職員の採用については、公務員の場合は、原則として人事院の国家公務員採用試験の合格者から採用しなければならないわけでございます。しかし、機構は非公務員でございますので、そのような制約がない採用もでき、また、能力の高い人材の中途採用も制約なく行えるようになるもの、このように考えてございます。

長崎委員 ありがとうございました。

 社会保険庁が、過去の反省というか経験を踏まえ、新しいスタートを切るべく既に取り組みを開始している。それから、非公務員化されることによって、採用における柔軟性、あるいは能力、実績に応じた給与あるいは昇任、降格、こういうものでさらに職員の士気を高めていくようなことができるということを理解いたしました。重要なのは、これらの取り組みが本当に成果を上げることが重要であって、単にやっていますということだけで終わるのではなくて、きっちりとした成果を上げるように強くお願いをしたいと思います。

 もう一つは、そうはいっても、今回の改革がどうも看板のかけかえになるんではないか。看板のかけかえに終わらせてはいけないというのは当たり前のことでして、真に新しい組織として再生するためには、やはりこれまでの組織体質の一掃、もう既に御努力をされていることではありますが、これをきっちり、旧来の組織体質の一掃をしっかりやっていく必要がある。これがなければ、新法人に移行したとしても、今回の改革の目的は達成できないんじゃないか。

 そこでお伺いいたしますが、例えば業務のアウトソーシング、これも積極的にやる、それから民間採用も、今おっしゃったように中途採用も含めて行っていくんだ、こういうことであります。そうだとすると、単純に、現在の社会保険庁から新法人に移行する職員数というのは、当然のことかもしれませんが、今の職員数よりは少ない職員数になる。したがって、そこで何らかの選別が行われるんだと。

 この選別のあり方については、設立委員がやるということにはなってはおりますが、今の段階で基本的にどのような考え方でこれを進めていくのか、お聞かせいただきたいと思います。

清水政府参考人 日本年金機構の職員の採用についてでございますが、委員御指摘のとおり、この採用につきましては、機構の設立委員会が、中立公正な人事管理の学識経験者の会合の意見を聞きまして、厳正な審査をして決定する、そういう仕組みになってございます。

 では、その具体的な採用基準はどうなるのかという点についてでございますけれども、これは設立委員会がお決めになるわけでございますが、やはり、社会保険庁職員のうち、機構の業務につきまして意欲と能力がある職員、こういう者は機構においても必要な人材になるのではないかというふうに考えておるところでございます。

 現在、社会保険庁におきましては、先ほど御紹介申し上げましたように、能力と実績に基づく人事評価制度を導入してございます。社会保険庁の職員の中から機構が採用するに当たりましては、この現在行っております人事評価の結果も踏まえ、個々の職員の能力と適性を総合的に判断して採否をお決めいただくものになるだろう、そのように考えてございます。

長崎委員 ありがとうございました。

 これから、この法律が通ってからのことなのかもしれませんが、新法人への移行に当たって、新法人がスタート段階から新しい組織としての理念に基づいて円滑に業務に移り、かつ、それを職員が十分理解し実績を上げるような形で今後の移行期間に取り組んでいただくことが必要である。そのために、研修の徹底ですとか、そういうものについては十分配慮していただいて、もちろん、願わくは、なるべく多くの意欲のある社会保険庁の職員の方が円滑に移れるような対応をお願いしたいと思います。

 次にお伺いしますが、年金の加入記録、これが先般来ずっと議論になっております。

 年金の加入記録について疑義がある場合、すなわち、自分はもっと長い期間年金を払っていた記憶があるのにもかかわらず、どうも、そうではない短い期間、あるいは空白の期間がある、こういう場合、そうはいっても客観的な証拠がない場合、領収書がないとか、あるいは家計簿とかそういう記録がない、こういうような場合において、社会保険庁は現時点においても本当に門前払いの対応をしているんでしょうか。

 過去そういうことがあったというのはこれまでの議論の中でも指摘されていることではありますが、これについて、この委員会の議論を踏まえ、特に改善措置は講じていないのか。現時点における、社会保険庁では具体的にどのような対応を行っているのか。これは、国民の皆さん大変心配される話でもありますので、詳細にお聞かせいただきたいと思います。

青柳政府参考人 年金の加入記録についてのお尋ねでございます。

 年金の加入記録につきましては、この委員会でも何度かお答えをさせていただきましたように、もともとは各制度がそれぞれの記録を管理しておったというところに、平成九年から基礎年金番号というものを導入させていただいて、この基礎年金番号にいわば一元化をしていくという形で記録管理をしておるということでございます。

 その際に、平成九年の段階で、もちろん、それぞれが加入しておられた制度に基礎年金番号を付番したという形でございますが、その時点で、例えばほかにも番号があるという方や、ほかに年金手帳等を持っておられるという方については、お尋ねをした上で、その方々の番号というものが、申し出のとおりのものがあるかどうかということのチェックもいたしましたし、それだけではなく、社会保険庁の方でお持ちをしております性別、氏名それから生年月日、これらの情報が合致して、その方の情報と思われるものをいわば候補として絞り込みをいたしました。

 合わせて一千八百万件について、私どもの方から、今お持ちであるあなたの基礎年金番号によるところの記録はこういうものであるが、それ以外に記録がある可能性があるので、その可能性があるということについて、御自身で何か記憶なり記録があればお申し出をいただけないかという申し出をいたしまして、一千八百万件の方にそういう照会をしたということで、順次この記録の整備をしてきたというまず大前提がございます。

 それから、かてて加えて、近年、五十八歳の時点で、これから年金を受給される方に、あなたの記録として私どもが基礎年金番号で管理している記録はかくかくしかじかの加入記録であります、これに対して、そのほかに御本人記録のあるようなものがないでしょうかということをお尋ねいたしまして、お申し出をいただく。

 そして、これに基づいて、今度は六十歳になって年金の受給権が発生するときに、私どもの方から、ターンアラウンド方式と申しておりますけれども、その五十八歳の時点で確認いただいたものをプリントアウトしたものをお手元にお届けして、もう一度確認をいただく。そこで、まず、その記録がないかどうかということのチェックをさせていただいている。これが、この議論の大前提としてまず御認識をいただきたい点でございます。

 さらに、では、年金年齢に近くなるまでそういったことは一切確認できないのかということになりますので、これに加えまして、ID、パスワードを活用いたしまして、インターネットで自分のこれまでの加入記録を閲覧できる。したがいまして、年齢の若い方でも、インターネットを利用していただければ、この記録の確認が可能でございます。

 これに加えて、本年の三月から、いわゆるねんきん定期便の前倒し、一部先行ということで、三十五歳の年齢に到達した方に、通常、二十から加入しますと十五年間ということになるわけですが、その方の加入記録をお送りして、そういう若い、早い段階からこの確認をしていただこうと。これも、本年の十二月には、四十五歳の段階でさらにこれに追加して確認をしていただこうということで、要するに、年金の加入記録をなるべく若い段階から、しかも、何度もそういう形で確認していただける機会をつくる、これがこの問題をまずは構造的に解決していく前提となる作業であるということを、前段として申し上げさせていただきたいと存じます。

 かてて加えまして、この委員会で大臣からも何度か申し上げておりますが、現在の対応といたしまして、昨年の八月二十一日から、御本人の年金記録の確認や必要な調査に迅速に対応しようということで、社会保険事務所、全国に三百十二ございますが、ここに記録確認のための専用窓口を設ける等の年金記録相談の特別強化体制というのを講じさせていただいております。

 この特別強化体制について若干詳しく御説明をさせていただきますと、この特別強化体制は、一義的には、社会保険事務所に来ていただいても結構ですし、それから、先ほど申し上げましたID、パスワード等、インターネットを活用していただいての記録の取り寄せをしていただいても結構ですし、また、文書、書面による申し出をいただければ、郵送でという形でも結構なわけでありますので、御本人にとって最も便利と思われる方法でまずは申し込みをしていただきます。

 申し込みをしていただきますと、私どもが基礎年金番号で確認している年金記録をその方に郵送、あるいはインターネットを通じて、あるいは事務所においでいただければその場でプリントアウトして、御提示を申し上げるということになります。

 これをごらんになった上で、自分の記憶あるいはこれまでの認識とそごのあるようなケースがある場合に、まずは、御来所いただければ、その場でオンラインでさまざまな検索をさせていただきます。例えば、御本人が、いつ幾日こういう事業所に勤めていたという私は自分で記憶があるんだけれども、それは何らかの形で管理されていないだろうかというふうなことを検索は当然いたしますし、それから、これも委員会でお話が出ましたように、氏名が御本人のいわば戸籍上の氏名と違う形で掲載されているようなケースもあり得ますので、氏名の読み方をかえて例えば検索してみる、こういったことをまず事務所の段階でさせていただきます。

 そういたしますと、例えば、ほかの事業所に昔の記録が番号が統合されないままにあったというようなこと、あるいは結婚前の旧姓で名前が登録されていたというようなこと、これが事務所の段階でも相当見つかります。昨年の八月から本年の三月末までの間に二百十五万件の御相談がございましたが、今申し上げたような形で、旧姓であったとかあるいはほかの番号が見つかったよという形で、いずれにしろ、事務所の窓口で九九%の方の記録がきちんと確認できているという実績が上がっておるわけでございます。

 さらに、そういう形においてもお申し出のものが見つからない場合には、その場で御本人から、職歴等についてのお申し立てを整理して申出書を出していただきまして、これを私どもがマイクロフィルムで保管している名簿にさかのぼって調査いたします。このマイクロフィルムは、それぞれ、退職をされたところの事業所を所管する事務所で保管しておるものですから、その場でいわばオンライン上の検索はできませんけれども、その事務所に、御相談いただいた事務所の方から改めて照会をさせていただきます。そうして、そういう申し出のような記録がマイクロフィルムで保管されていないかどうか、これを確認させていただくということをさせていただきます。

 さらに、それでも記録がない場合、特に国民年金の加入記録の場合には、市町村で例えば被保険者名簿というものがある、あるいは社会保険事務所でも特殊台帳という形でマイクロフィルムで記録しているものがございます。こういったものをそれぞれの所在の市町村あるいは社会保険事務所に相談いただいた事務所から照会させていただきまして、徹底的に調査をする、これがいわば第二段階の調査としてさせていただいているものでございます。

 さらに、第三段階として、そういう形でも記録がないという場合に、御本人からいわば再調査依頼ということのお申し出があれば、あるいは御本人がその上で何らかのさまざまな材料を御提供いただければ、この材料の提供は、御本人にお任せするだけではなくて、私どもの方でも、例えば、こんなものはないか、あんなものはないかということを一緒に御相談しながら材料探しをするわけでございますが、それを本庁の年金記録の審査チームの方に送っていただいて、まず、社会保険事務所が現場できちんと十分な調査をしているかどうかということを私どもの目で点検、確認をいたします。また、そうやって一生懸命探していただいた材料、これがあれば、それに基づいて記録訂正が可能かどうかということの判断もいたします。

 その段階で、私どもの方から、気づいた点、例えば、これについてはもと所属していた事業所にきちんと照会してみたかどうかというような微に入り細に入ったことについても、我々が気づいた点があれば、事務所に指示をして改めての調査をさせる。あるいは、こういった材料を御本人がお持ちでないかというようなことに気づいた点があれば、これも、微に入り細に入り、私ども、気づいた点はすべて事務所の方に指示をさせていただいております。

 そういったことを行いまして、ある意味では、年金の過去、現在、未来にわたっての制度あるいは実務について精通している人間が頭を寄せ合って、知恵を出し合って、何とか記録の復元、統合ができないかということで最大限の努力をしていただいた上で、記録の訂正を図っているというのが現実の姿でございます。

 ただ、そこまでいたしましても客観的な資料が全くないという状況の中で、御本人の申し出だけでこの記録を訂正するということは、残念ながら困難でございます。したがいまして、私どもとしては、これも委員会でこれまでお答えさせていただきましたが、例えば、口座振替により納付していたことが記入されているような預金通帳などを前後の納付記録と照らし合わせてみて判断ができないかというような、かなり詳細かつ責任のある判断を最終的に本庁でさせていただくということで判断をさせていただいておりますが、いずれにしろ、具体的な判断についてはケース・バイ・ケースで判断せざるを得ないということでございますので、最大限の努力をしているということだけまずは御理解賜りたいと存じます。

 なお、こういうような体制は、年金の新組織の発足後におきましても、そういった記録についてのきちんとした管理あるいは調査のできる組織的な体制を整えることも含めて、現在行っております取り組みを引き続き実施するということで適切な対応を図ってまいりたいと考えております。

 以上でございます。

長崎委員 ありがとうございました。

 一点確認しますが、今言った事務所での調査、それから市町村あるいは他の社会保険事務所に対する照会、そして最終的には本庁の調査、ここに至るまでは、客観証拠があればもうあれなんですけれども、私はこう納めていたはずなのに、残念ながら証拠は手元に今ないんですけれども、でも、そういうふうにやっていただけますかという申し出があれば、そういう努力を払っていただける、こういう理解でよろしいでしょうか。

    〔委員長退席、伊藤(信)委員長代理着席〕

青柳政府参考人 私ども、この特別強化体制における調査のやり方について既に詳細な通知文書を発翰しておりますが、その中で明確に、御本人から希望がある場合には本庁の方へ必ずそれを送るようにという指示を改めてさせていただいておりますので、間違いございません。

長崎委員 ありがとうございました。

 今のお答えを聞いただけでも、いかに努力をしているか、この答弁時間だけでも十分超えるぐらいの、しっかり説明するとやはりこれぐらいの、かなり早口でも十分超えているぐらいですから、やはりそれだけのことをやっていただいているんだ、まさに最大限の努力を払っているんだと、私は、どうもいろいろな意見はあるかもしれませんが、感じざるを得ない。

 さらに、柳澤大臣の答弁では、本庁の調査は、場合によっては最高のエネルギー、一番のマンパワーを一人当たりにかけて徹底的に資料に当たるんだ、こういう御答弁をされております。まさにこういう前段階、二段階、三段階における調査をした上でもさらに出てくる、その最高のマンパワー、最高のエネルギーを注入して調査すべき案件が二百件以上もあるんだということであります。

 確かに、現状の社会保険庁、限られた人員あるいはリソースである、これはいたし方のないことかもしれませんが、必要性が高い人、何段階も調査をやったけれどもなお出てこない、こういう人から優先的に処理するというのは、私は、業務の効率的な執行体制という意味から当然だと思います。

 異論があるのはもちろん承知しておりますが、本庁としてやるべき調査は、まずはこういう人の調査に、何段階もスクリーニングを経てもなお見つからない、だけれどもやはり記憶と違うから何とかしてくれ、こういう切実な思いにまずはこたえていただくのが重要であって、そのエネルギーはやはり私は分散するべきではないんだと考えております。

 今のお答えでは、こういうことを新法人になってもしっかりと実現していく、こういう御答弁でありました。それにぜひ期待したいと思いますが、もう一つ、この年金組織に対するいろいろな批判あるいは懸念というものの中に、今いろいろなことを社会保険庁さんに言っていただきましたが、業務運営に対する政府あるいは国会の監督、これが甘くなるのではないか、こういう指摘がございます。

 この点について伺いたいと思いますが、今回の法案の中では、法人の業務運営に対する監督体制、これはどのように確保されるのか。さらに、我々国会による監視というものは何らか法人化することによって制約を受けるようになるのか、そういう不安がありますが、これについてはどういうことになるのでしょうか、教えていただきたいと思います。

清水政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の法案におきまして、年金実務を担います日本年金機構を新設するということにしているわけでありますけれども、年金の財政責任、管理運営責任は一貫して厚生労働大臣が担うこととするわけでありまして、その中におきまして、機構も大臣が直接的に監督するということにしておるわけでございます。その直接監督を具体的に申し上げますと、一つは、機構の事業計画や予算を毎年度認可するということ。二つ目には、機構の業務の指導や監察を実施するということ。三つ目には、必要に応じまして、業務改善命令、違法行為等の是正命令を行うということなどでございます。

 また、法人化によりまして、法人固有の内部統制メカニズムを持つことになるわけでございまして、具体的には、一点目としまして、重要事項に関する合議制の意思決定機関として理事会が設置されるということ。二点目としましては、外部の識者の非常勤理事の投入ということ。三点目としましては、被保険者や事業主などの方々の御意見を業務運営に反映させるために、これらの方々も入ったところの運営評議会を開催するということ。四点目としましては、厚生労働大臣が任命する監事による監査がある。五点目として、これもやはり厚生労働大臣が選任する外部の監査法人による専門的な会計監査が入る。これらにより、組織のガバナンスの強化を図ることができると考えてございます。

 日本年金機構が行う業務につきましては、厚生労働大臣が管理運営責任を負うものでございますので、厚生労働大臣を通じまして、これまでと同様に国会の御監視を受けることになるものではないかというふうに考えてございます。

 また、機構の理事者が、理事長でございますとか、理事などがこの場で参考人としていろいろと発言することができるかどうかという点については、国会でお決めになることでございますけれども、機構法等におきましては、それらについての制約は全くないということになっていると考えてございます。

長崎委員 あくまでも年金の業務運営に対する最終的な責任の所在は厚生労働大臣にあるんだ、厚生労働大臣が全責任を負うんだ、こういうことであります。

 そうだとすれば、例えば、今取り組まれております年金加入記録の確認作業、それから基礎年金番号への統合、あるいはその照会、確認作業というのは、先ほど、疑義があるとみずから思われる方に対して誠実にこたえていく、こういう業務運営、こういうものに対して厚生労働大臣が全責任を持ってやるということではないかと思いますが、この点に関して、副大臣、ぜひ御決意を、新機構になってもこういうことはしっかりやっていくんだ、やらせていくんだ、こういう決意をお聞かせいただきたいと思います。

石田副大臣 今委員が質問の中でもおっしゃったように、最終的には厚生労働大臣がしっかりと責任をとっていく、こういうことでございます。

 年金の加入記録は、社会保険方式をとる我が国の年金制度においては、年金の裁定、支給等を行うために重要なものであり、年金制度の適正な運営の基礎となるもの、このように考えておりまして、このため、法人化後におきましても、記録については国が責任を持って管理することとしておりまして、引き続き、年金加入記録の確認作業、基礎年金番号への統合作業をしっかりと推進をしてまいります。

長崎委員 少し時間が余りますが、これで質問を終わらせていただきたいと思います。ありがとうございました。

伊藤(信)委員長代理 次に、松本洋平君。

松本(洋)委員 自由民主党の松本洋平でございます。

 先日、五月九日に引き続きの質問でございます。本日は、政府案に対しましての質問をさせていただきたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 前回の質問の冒頭にも申し上げましたとおり、本当に今回の厚生労働委員会での審議というのはマスコミも大変大きく取り上げておりまして、国民の関心も大変高いものとなっているわけでございます。この国会で議論される事柄というのは、これからの年金行政を大きく左右する、そうした大切な議論の場だと思っておりますので、私も一生懸命頑張って参加させていただいているわけでございますけれども、その点、しっかりと政府におかれましても念頭に置いていただきまして、よくよくわかっていらっしゃることだと思いますけれども、ぜひともよろしくお願いをいたしたいと思います。

 同時に、やはり議論というものをしっかりと尽くすことはもちろん大事でございますけれども、しっかりとした年金行政の体制というものをつくり上げていくためにも、一刻も早い法案の成立、そして新しい体制への準備というものに入っていただくということが私は極めて重要なことだと思っておりますので、ぜひとも、今後、国民の信頼を失うことがないような機構の姿というものをしっかりとつくり上げて国民に示していく、そうしたことをよろしくお願いしたいと思います。

 まず、質問の冒頭に当たりまして、基本的なことからお伺いをしたいと思っております。

 これまでの議論を聞いておりまして、例えば各委員から質問がなされる中で、こういうところが問題だ、ああいうところが問題だということに対する答弁というのがいろいろと出てきているわけでございますけれども、果たして、社会保険庁自身が自分自身で自分を見詰めたときに、一体何が本当に問題だと思っているのか。

 その辺のことを、社会保険庁自身の、自分たちの内部統制といいますか、自己反省の仕組みの中からの言葉というのを、ぜひまとめて聞かせていただきたいなというふうな思いがございます。

 ですので、質問の冒頭ではございますけれども、改めて、社会保険庁みずからが、現状、認識している問題点というものをぜひお聞かせいただきたいと思います。

清水政府参考人 お答え申し上げます。

 これまでさまざまな不祥事がこの社会保険庁に起こったわけでございまして、それらにつきましては、おのおの原因を究明し、再発防止策を講じ、職員の処分も行ってきたというところでございます。改めて遺憾であるというふうに申し上げたいと思います。やはり、そのような不祥事が起こったことは、内部統制、ガバナンスの不足があるのかなというふうに考えてございます。

 さらに、その背景には何があるかということでございますが、私ども考えまするに、かつて地方採用職員は、身分が国家公務員でありながら、都道府県知事の指揮監督を受ける地方事務官、こういう特殊な存在であったわけでございます。平成十二年四月にこの制度が廃止されたわけでございますけれども、その後も都道府県ごとの独自な事務処理でございますとか閉鎖的な組織体質が根強く残っていた、まだ完全に解消し切れていないというところが一点あろうかと思います。

 また、よく言われますように、三層構造、すなわち厚生労働本省採用の1種職員、社会保険庁本庁採用の2種、3種の職員、それと今申し上げました地方採用職員、この間で生じました三層構造でございますが、これによるガバナンスの不足、そういう組織の構造的問題があった。こういうことが、社会保険庁においてさまざま生じました問題、これらの背景にあったというふうに考えておるところでございます。

松本(洋)委員 今お聞かせいただいたんですけれども、正直、私自身、不満でございます。もっとガバナンスさえしっかりしていれば本当にできたのかという問題ではないんじゃないのかと私は思っております。

 実際問題といたしまして、社会保険庁さんも大変な御苦労をされながら、村瀬長官をお迎えして一生懸命頑張って、業務改善の努力、またガバナンスの強化ということをやっていらっしゃったわけですけれども、しかしながら、不祥事というものはなかなか後を絶たない部分があるわけでございまして、そういう意味で、国民の怒りというのも頂点に達してしまっている部分があると思います。

 だからこそ、今回、政治主導という形でもちろん改革案を提示し、それを実現していかなければならないと思っているわけでございますけれども、この改革案を進めていくに当たりまして大切なことは、我々、この国会もそうです、厚生労働省もそうです、そして旧の社会保険庁もそうだと思いますけれども、問題点が一体どこにあるのかということのやはり共通認識というものをしっかりと持っていかなければ、これからの組織を運営していくに当たっても何か大きな落とし穴というものができてしまうんじゃないかと私は思っております。

 今、社会保険庁の方から、現状の問題意識ということでのコメントがあったわけではございますけれども、ぜひこの国会での議論というものをしっかりと受けとめていただいて、社会保険庁としても我が身をしっかりと振り返っていただきたいと思っております。

 そんな中で、当然、新しい機構を設立して改革をしていこうとしているわけですから、こういう問題点があります、それに対する対応策はこれです、だから、これからの年金機構というものはしっかりと運営することができるんです、この問題と対策の比較というものがしっかりと国民に伝わっていく、そうしたことが論理的にしっかりと国民に対して伝わっていかなければならないと思うんです。

 残念ながら、これまでのマスコミ報道等を見たりとか、私も地元を回りましていろいろな方々とお話をさせていただく機会というのがあるんですけれども、やはりそこまでしっかりと論理的に、こういう問題点があるからそのためにこういう対策を打って、こういう新しい姿になるんですよというところの体系立った認識というのは、なかなかまだできていないのかなというのが私の素直な実感でございます。

 ですので、もう何度もお答えになっていることではありますけれども、改めて、そうした体系立ったといいますか、社会保険庁からは先ほど、自分たちが考える問題点はこういうことですということがあったわけですけれども、そうした問題点とその対応というものをしっかりとわかるような形で、ぜひ包括的な今回の政府案の説明というものをお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

清水政府参考人 お答え申し上げます。

 社会保険庁におきましては、先ほど申し上げましたさまざまなガバナンスの不足という点から、さまざまな問題が生じたというふうに考えてございます。やはり現場のことを十分熟知し、また国民の目線に立った議論になっていたかというと、そうなっていなかったということでございます。

 したがいまして、今回の改革でどのようなことをやるかということでございますけれども、年金実務につきましては、年金実務を担うにふさわしい法人をつくるということでございます。ただ、それと同時に、年金の財政責任、管理運営責任、これは大変重要なものでございますので、それは一貫して厚生労働大臣が担うということで、国が責任を持つということにしてございます。

 また、年金実務を担う機構、新法人においてはどうするかということでございますけれども、機構移行時に、募集採用方式をとることによりまして意欲と能力のある者のみ採用できるということ、公務員の身分保障を離れまして能力本意の人事管理を徹底できるということ、公務員の俸給表と異なる独自の給与体系をつくりまして、実力に見合った昇給、昇格でございますとか降格、減給を行えるということ、それから、統一的な国家公務員試験の制約を離れまして必要な人材を自由に採用できる、こういうメリットが期待できるわけでございまして、これらによりまして、職員の意識改革の加速、徹底を図るということにしてまいりたいというふうに考えてございます。

 また、機構の内部統制につきましては、理事会の設置でございますとか、非常勤理事ということで外部の方の御参画をいただくことでございますとか、監事監査あるいは監査法人監査の導入といった外部チェックをさまざま導入することによりまして、ガバナンスの強化に努めてまいりたいというふうに考えておるところでございます。

松本(洋)委員 ありがとうございます。

 ぜひ、問題点が一体何なのかということ、そして、それに対する対策というものがどういうことなので今回の改革案というものは国民の皆様の信頼を二度と失うことがないんですというメッセージを、より一層国民に対してしっかりと発信していっていただきたいと思います。

 やはり、現在のこの審議の議論というのは国民の皆様も大変注目をしていらっしゃいますし、逆に心配をしている部分というのもあると思うんです。ですから、そこのところを政府として情報発信することによって、議論の透明性、そして今政府が考えていることを包み隠さずしっかりと国民の皆さんに説明していただいて、無用な心配だったりとか不安というものが生じないように、しっかりと国民の大きな理解の上に今回の改革というものが実現され、そして新法人発足へと歩んでいっていただくようなお取り組みというものをぜひお願いしたいと思います。

 これからはちょっと細かい議論をさせていただきたいと思います。

 今回の日本年金機構の法案におきましては、やはりアウトソーシングの積極的な推進というのが大変大きな柱だと思っております。各委員からも再三いろいろなお話がありましたけれども、これまでの社会保険庁の不祥事だったりとか問題というのは、民間企業ではとてもじゃないけれども考えられないような、そういう大変大きな問題があったわけでございます。民間に任せられるもの、そして民間に任せることによって業務の効率が上がるようなものは、どんどんと、ぜひともアウトソーシングというものを進めていっていただきたいと私自身は思っております。

 業務内容というものを精査する上では、ぜひ、聖域というものは設けることなく、しっかりとこの議論というものを進めていっていただきたいと思っているわけですけれども、では、アウトソーシングした先の会社というものがしっかりと適正な業務運営を行っているのかとか、そういうものはこの日本年金機構が管理をしていくというような仕組みになっていると認識をしております。

 アウトソーシングを積極的に推進するというからには、同時に、それじゃ、日本年金機構がアウトソーシング先をしっかりと管理していきますという、この二つがパッケージになっていなければ、とてもじゃないけれども適正な業務運営というものはされないわけでございますけれども、このアウトソーシング先の業務の適正管理だったりとか監督というものをどのように行おうとしているのか、その担保というものをぜひ教えていただきたいと思います。よろしくお願いします。

清水政府参考人 今回の改革におきましては、業務運営の効率化を図りますために、アウトソーシングの積極的な推進を図るということにしてございます。具体的にどこまでアウトソーシングするかということにつきましては、内閣官房の方で設けていただきます第三者機関で御検討賜るということになっておるところでございます。

 御指摘のとおり、アウトソーシングの推進に当たりましては、委託業者が適正に事務処理を行うということと、業務品質が維持されるということが重要であると考えてございます。このため、現在どうやっているかということでございますけれども、委託業務の内容や性質に応じまして、一つは、価格のみではなくて、質についても評価を行うという総合評価落札方式というものも取り入れてございます。

 また、二点目としましては、委託業者に管理責任者を設置してください、あるいは業務委託員に対する教育訓練の実施をしてください、そういう委託の条件をつけるということもやってございます。

 また、三点目としましては、委託業者のノウハウの蓄積といったような観点から、複数年契約、これは国庫債務負担行為が必要でございますけれども、そういう契約にするということによりまして、委託業務の質の確保、これが重要でございますから、その確保を図るということを現在行っているところでございます。

 法人化後どうなるかということでございますけれども、これまでの現状の取り組みを踏まえまして、機構から業者に委託する業務につきまして、必要とされる専門性の程度に応じてでございますけれども、一つは、先ほど申し上げましたような総合評価落札方式、あるいは企画競争といったもの、あるいは一般競争入札というものも当然あるわけでございまして、これら競争性を確保しつつ多様な契約方法をとるということが一点ございます。

 また、二点目としましては、入札参加資格でございますとか契約の条件の中に、専門性あるいは業務の適正処理を担保するための条項を盛り込むということがあろうかと思います。また、三点目としましては、当然内容に応じてでございますけれども、複数年にわたる継続契約というものを締結する、こういうようなさまざまな工夫があろうかと思います。

 これらによりまして、適正な事務処理、品質の維持ということを確保してまいりたいと考えてございます。

 なお、アウトソーシングする業務の範囲につきましては、先ほど申し上げましたように、内閣官房が事務局をやります第三者機関の意見を聞きまして策定いたします基本計画に基づいて、厚生労働大臣が業務委託に係る基準、これを定めます。そして、この基準に照らして必要だなと思う場合には、機構に対して大臣が業務改善命令を出すということもできるわけでございまして、このように、委託業務の適正実施ということにつきましては、国も必要な指導監督を行うことができるというふうな形にしているところでございます。

松本(洋)委員 ありがとうございました。

 もう少し詳しく聞いていきたいと思っているんですけれども、例えば、今回アウトソーシングを積極的に活用することによって、当然、例えば情報管理の面ですね、個人情報といったようなものが実際にアウトソーシング先に提供されて、そうした情報をもとにしてアウトソーシングをする先は何らかの活動をしていくというような形になると思っております。これまでもいろいろと個人情報の話というのはこの委員会の中でもされてきたわけでございますけれども、実際に、個人情報保護という観点からの懸念というものも指摘をされてきたと思います。

 そこで、余り具体的な業務のイメージというのがまだわいていないんですけれども、そうした、アウトソーシングするに際しての個人情報保護に対しましてさまざまな懸念が出ている、それに対してどういう対応をとるつもりなのか、現状どういうことを想定されているのか、そうしたことをちょっと教えていただきたいと思います。

青柳政府参考人 アウトソーシングとその際の個人情報保護についてのお尋ねがございました。

 まず、民間へさまざまな仕事を委託していくに当たりましては、利用できる情報は業務に必要な範囲のものに限定する、これは大原則であろうかと思います。また、関係の法律におきまして、情報の漏えいでありますとか不正利用の禁止、あるいは安全確保措置が義務づけられているということ、そして、御審議をいただいております本法案におきましても、委託先の役職員に守秘義務を課し、これを罰則で担保する、いわばそういった三段構えでまずは年金個人情報の保護の徹底を図ることとしております。

 また、現在、運用面においてさまざま配慮しておりますことを御紹介申し上げますと、一つは、個人情報の適切な管理のもとに業務を遂行する能力を有する業者を選定していく、そのためには、個人情報保護に係る第三者評価の取得状況、これは通常プライバシーマークというような言い方がされていると思いますが、例えばそういったものを取得しているかどうか、これを取得していないような場合にありましては、個人情報保護に係ります基本方針等がきちんと整備されているか、あるいは、安全管理に係ります実施体制や措置の状況などを証する書面の提出、こういったものを入札の参加条件とするということをやっております。

 また、次いで、委託契約を交わすに際しましては、年金の個人情報にアクセスをする従事者を必要最小限に特定する、そして、あらかじめそれについて承認を受けるとともに、これらの従事者に個人情報の取り扱いに関します教育あるいは研修等の実施を義務づけている、こういったことをきちんとチェックするようにさせていただいております。

 かてて加えて、これらの安全確保措置を担保するために、業務開始後おおむね三カ月以内に、委託業務を履行しております場所に私どもが立ち入りまして、年金個人情報へのアクセス記録の適切な管理などについて、それまでに書面等で提出のあったものと同様にきちんと実施がされているかどうかといったことの検査の実施をいたします。そして、年金個人情報の適正な管理の徹底を図っておるところでございます。

 なお、いわゆる業者、あるいは実は職員もそうなんですけれども、そういった者がどういった個人情報にアクセスをしたかといったことを、いわば履歴をトレースするということも、例えば具体的には有効な方法であろうかというふうに思っておるわけでございまして、これは私ども、いわゆる無断閲覧の事件が起きまして以来、これを定期的に、職員、委託業者を問わずいわばチェックするということを実施しておりまして、きちんとした監視のもとに置いておるということをつけ加えさせていただきたいと存じます。

 なお、これらの対策につきましては、新組織の発足後におきましても引き続き実施をするということで予定をしておりまして、加えて、取り扱う情報に応じまして適宜必要な措置を講じるということによりまして、年金個人情報の保護の徹底に引き続き万全を期してまいりたいと考えております。

    〔伊藤(信)委員長代理退席、委員長着席〕

松本(洋)委員 ありがとうございます。

 おっしゃるとおりで、例えば情報を閲覧できるというのも、ただ単にペーパー上の権限を付与するだけではなくて、例えばその情報を管理するシステムの中で一定の権限を持っている者でなければ当然アクセスできない、また、アクセスした際には、だれがどの情報に触れたのかということを後々チェックしてトレースをすることができる、何かの問題が起きたときには、何があって、どの人がアクセスした情報でそうした問題が起きたのかということがしっかりとわかる体制、それをハード的な面でつくり上げていただくということはとても重要なことだと思っております。

 アウトソーシングをする先がふえるということは、要するに、ある意味、外部の人の目に触れてしまう機会というのも多くなるということを意味すると思っておりますので、これまでと同様という話ではなくて、さらにリスクが高まっているという認識をしっかりとお持ちいただいて、その体制構築をやっていただくということが私はとても重要なことだと思っておりますし、こうした問題、国民の皆さんもやはり大変心配をしている大きな問題の一つでもありますから、この点はしっかりと御認識をいただいた上で、さらにいろいろと御検討をいただいて、万全の体制というものをとっていただきたいと思います。

 先ほど、このアウトソーシング先の選定といいますか、適正管理という中で、例えば総合入札方式なんという話がありました。こうしたことをやることによりまして、単に価格だけではなくて、本当に業務委託に資する、そうした能力を持っている会社なのかなとか、今お話があった個人情報の保護なんかに関しても同様だと思いますけれども、そういう個人情報を守れるような体制がしっかりとある会社なのかという、そういう本当に総合的な判断の上にこのアウトソーシングというものを実施していきますということだと思っているわけでございます。

 しかしながら、では、入り口でそれをしっかりとやっておけばあとは大丈夫ですよという話ではなくて、今回の法案が成立して、そして新機構が誕生した後も、当然アウトソーシング先に対しても不断の見直し、改善というものをしっかりとやっていくような体制というのができていないといけないと私は思っております。

 先ほど、適正管理という質問の中で、どちらかというと入り口のことを議論としてはお答えをいただいていたと思うんですけれども、出口といいますか、では、アウトソーシング先が本当にちゃんとした業務をやっていますよというような事業評価、こうしたものを新機構においてはどのようにやっていくおつもりなのかということを教えていただきたいと思います。お願いいたします。

清水政府参考人 業務の適正実施、業務品質の維持、それのみにとどまらず、貴重な財源の効果的な使用という観点から、やはり委託業者の評価は大変大事なものであるというふうに考えてございます。

 委託業者の実績評価については機構が行うわけでございまして、その方法につきましては、個々の検討を待つところが大きいわけでございますけれども、市場化テストの民間委託の実績評価の例などを参考にいたしながら、それぞれの委託業務の性格に応じまして、業務の質、コスト、両面から、具体的、客観的に評価していくことが必要というふうに考えてございます。

 また、今回の法案におきましては、機構の行う業務について、民間委託した業務を含めてパフォーマンスがどうであったかということを、厚生労働大臣が、社会保障審議会の意見を聞いて実績評価を行って公表するということにもなってございます。

 これらの措置によりまして、大事な評価をしっかりやり、その評価結果が国民の目にも明らかになる、このような仕組みにしてまいりたいと考えてございます。

松本(洋)委員 ありがとうございます。

 今、御答弁の中にもありましたけれども、国民の目にも触れていくという言葉がございました。これは私は大変重要なことだと思っておりまして、もちろんしっかりとした評価はやってくれているんでしょう。しかしながら、やはり、それの透明性というものをしっかりと高めて、国民が常にそういう情報にアクセスできるようにする、そうすることで、その透明性が高まるということも、年金、そして厚生労働省もそうですし新しい機構に関してもそうですけれども、それも、一つ、国民の信頼をかち取っていくための大変重要な事柄だと思っております。

 そんな観点からも、ぜひしっかりと事後評価というものを行っていただいて、そして、その上で国民の皆さんに、いいところはいい、悪いところは悪い、だからこういうふうに改善をしていくのですと、やはりそういう姿をしっかりと包み隠さず、何らかの方法、例えば今インターネットなんかもあるわけですし、実際に社会保険庁さんのホームページなんかを見ましても、今一生懸命さまざまな情報を公開している姿というのは、私はわかったような気がいたしましたが、ぜひ、そうした形でこれからもしっかりとやっていただきたいと思います。

 今ちょっとITという話をさせていただきました。現在も、社会保険庁におきましては、さまざまなIT投資というものが行われていると思っております。業務効率を拡大していかなければならない、また、例えば記録の管理というものが今後しっかりとできるような、そうした体制を整えていくために、IT投資というものはどうしても欠かせないものだと思っておりますし、私もこの点しっかりやっていただかなければならないと思います。

 しかしながら、ITというのは、よくよく御存じのとおり、万能なものではありませんで、逆に、情報が一カ所に集中してしまった分、何か起きたときには一気に膨大な情報がロストしてしまうというようなリスクというのも我々は常に念頭に置いておきながら、では、それに対する対応というのをどういうふうにやっていくんですかということは見守っていかなければならないと思います。また、そうしたことがしっかりとできなければ、やはり、大変国民の皆さんからは心配を受けるんじゃないかなと思っております。

 現在、これまでも答弁の中でIT関連に対しては、例えばレガシーシステムの更改といったような話が出てきているんですけれども、私は、コンピューターの中に保存されている記録というものがしっかりと保護されるかどうかという観点で、今回お聞きをしたいと思っております。

 現在、いろいろ話を聞きましたら、都内の二カ所にそういうデータセンターというんですか、何かそういう情報システムのセンターがあって、そこで情報というものは管理されていますという話がありました。

 しかしながら、私は実はそれでは不十分じゃないかと思っております。私も東京選出の議員でございますけれども、例えば首都直下型の地震とかというようなものも、我々の中では大変重要な、心配な、そういう出来事なわけですね。実際に、そういう首都直下型の地震というものは、我々住民だけじゃなくて、当然政府の方も大変大きな心配をしていることだと思っております。

 都内の二カ所にそうしたデータセンターみたいなものがあって、首都直下型の地震等が起きてデータセンターが何らかの被害を受けたときに、本当にそういう情報というのが守られるのかということは、私はとても大切な観点だと思っています。

 実際に、私は銀行員をやっていましたけれども、データは必ず二つの分かれた場所に保管をするんですね。例えば一つは東京、千葉だったり、もう一つは関西圏だったりというような形で、どこかで大災害が起きて、それこそインフラが壊滅的な打撃というものを受けても、大切なお客様の情報というのが絶対に失われないような仕組みというのを構築しているわけでございます。

 ですから、そんな観点からぜひ聞かせていただきたいと思っているんですけれども、現在、情報のバックアップシステムというのがどういう形になっているのか、また、これは通告していませんでしたけれども、これから何かしら展望みたいなものがあれば、ぜひお教えいただきたいと思います。お願いいたします。

青柳政府参考人 バックアップについてのお尋ねがございました。

 現在、社会保険の仕事は、オンラインシステムという形で仕事をさせていただいておるわけでございますので、オンラインで仕事をする上で、このバックアップの問題が出るのは、大きく二点あろうかと存じます。

 一つは、ただいま直接のお尋ねがございました、まさに記録の問題をどうするかということ。それからもう一つは、まさにオンラインで仕事ができるような体制が維持できるかどうか、この二点であろうと思っております。

 まず第一の記録の問題でありますが、お尋ねの中にもございましたが、現在、社会保険業務センターは、都内二カ所、高井戸と三鷹にございます。高井戸の方では受給権者の記録を主に管理する、それから三鷹の方では被保険者の記録あるいは基礎年金番号の管理をするということで、仕事をさせていただいております。

 いずれにいたしましても、これらについては、まさに記録をどうやって保護するかという問題について、万が一の被災等によります滅失に備えまして、日々の業務の終了後にバックアップデータを作成し、これを遠隔地に保管するという形でまずは対応させていただいております。

 それから、大きく二点目の、まさにオンラインで仕事ができるような状態をどうやって維持するかという問題でございますが、これは専用回線でまずは仕事をしております。したがいまして、専用回線に障害が発生した場合にどうするかということですが、これはバックアップ用の公衆回線に切りかえができるような形の措置が講じられております。回線の確保を図りまして、例えば落雷等によりまして停電が発生した場合には、電力供給を商用電力から蓄電池と自家発電装置に切りかえるというようなことも含めて、オンラインの稼働が確保できるような手当てをさせていただいております。

 最後に、将来的にさらに、これら私が今申し上げたこと以上に何か検討する点があるかというお尋ねがございまして、実は、二〇〇六年の三月に、社会保険業務の業務・システム最適化計画をつくりまして、これに基づいて、お尋ねの中にもありましたレガシーシステムの見直しをしているわけでございます。

 今、私が申し上げたことに加えて、いわば業務継続計画をきちんと策定して、あわせて、バックアップセンターについても、その設置の要否あるいは設置時期、設置の場所等についても検討すべきではないかという御指摘がされております。仮にバックアップセンターのようなものをつくるとしても、それを社会保険だけでつくるのがよいのか、他の関連業務とあわせたような形でつくるのがよいのかと、いろいろ実は検討すべき問題もあるものですから、現時点では結論は得ておりませんけれども、私どもは、これは検討すべき課題であるとの認識を持っている次第でございます。

松本(洋)委員 よくわかりました。ぜひとも、今後ともしっかりと取り組んでいっていただきたいと思います。

 ちょっと質問を変えて、先ほど来お話の中で、これまでの審議の中でも出てきておりますけれども、第三者機関という言葉がよく出てくるわけでございまして、例えば業務の振り分けだったりとか人員の検討、そういうものはこの第三者機関というところにゆだねられているというような状況でございます。そういう意味におきましては、この第三者機関というのがしっかりとその役割を果たしてくれるか否かというのが、今回の新機構法案の大変重要な肝の部分の一つではないかと私は思っております。

 この第三者機関のメンバー構成がどういうものになるのかというのが大変重要なのかなと思っておりまして、現状、なかなかお答えできるような話ではないと思うんですけれども、例えば、こういう業界の方々に入ってもらいますとか、そんなことが、何か想定されているような事柄があれば、ぜひ教えていただきたいと思います。

清水政府参考人 御承知のとおり、日本年金機構の業務の委託の推進などに関します基本計画を定める際の学識経験者からの意見聴取につきましては、内閣総理大臣の御指示によりまして、渡辺行革担当大臣が御担当されるということになっているところでございます。

 この学識経験者でございますけれども、今回の法案の附則三条三項におきまして、「政府管掌年金又は経営管理に関し専門的な学識又は実践的な能力を有し、中立の立場で公正な判断をすることができる学識経験者の意見を聴く」このように規定されているところでございます。

 この第三者機関のメンバー構成につきましては、先日のこの委員会におきまして、内閣府岡下大臣政務官から御答弁がございましたとおり、今も私が申し上げました規定に従いまして、渡辺大臣が適切な方々の人選を行っていただけるのではないか、そのように考えておるところでございます。

松本(洋)委員 恐らく、今お答えになれるのはそういうことだけなんだろうと思いますけれども、しかしながら、幅広い視野でさまざまな角度から意見が述べられ、そして、大変活発な議論の中に、最終的なその方向性といいますか、この第三者機関というものが設立されていくような形というものを、ぜひつくっていただきたいと思います。

 同時に、この第三者機関というのは、新機構設立時の、先ほども申し上げましたような、例えば業務だったりとか人員の検討というような形で使命が与えられているわけでございます。しかしながら、今申し上げましたように設立時だけでございまして、私は、先ほども申し上げましたように、これからの年金行政というのは、この法案、そして新機構設立で終わるわけではなくて、不断の見直しの作業、改善の作業というのを進めていかなければならない。

 その中で、私は、第三者機関というのは、第三者機関という形をそのまま残すかどうかとか、そういう話ではなくて、要は外部の有識者だったりとか、そういう方々にしっかりとこれからもチェックをしてもらうような体制というのを担保していかなければならないと思っております。厚生労働省がその責任を持つから厚生労働省がしっかり管理監督をしますというのでは、私はいかがなものかと思っておりまして、そこにしっかりと民間の方々の中立的な目線というものも入れていくということが、私は、国民の信頼をかち取るために極めて重要なことではないかと思っております。

 ある意味、言い方はよくないかもしれないですけれども、性善説でチェックをするんじゃなくて、性悪説に基づいてしっかりとチェックをしていくような体制というものを私自身はつくっていくべきではないかと思っております。

 先ほど、国民の意識との乖離という言葉が御答弁の中であったと思います。私は、それはとても大切なことだと思っておりまして、国民の一般が持っている意識といいますか、やはりそういうものを敏感に取り入れていくための、そういうチェックの仕組みをぜひともつくっていただきたいと思っております。

 その点につきましてお考えがございましたら、ぜひ御答弁をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

清水政府参考人 まず、第三者機関のメンバー構成につきまして、松本委員からこの委員会におきまして御指摘があったという点につきましては、内閣府の事務当局に私どもの方から伝達したいというふうに考えてございます。

 そこで、お尋ねの、日本年金機構設立後における外部からのチェック、これをどのようにしていくのか、どのように考えていくかという点でございますけれども、私どもも、外部からのチェックというものは大変重要なものであるというふうに考えてございます。

 このため、四点ばかりポイントがあろうかなというふうに考えてございます。

 一つは、理事会に外部の識者に入っていただく、非常勤理事として入っていただく、いわば民間企業の社外取締役のような存在になっていただきたい、それが一点でございます。

 二点目でございますけれども、外部の監査法人によります専門的な会計監査を受けるということがあると思います。

 それから、三点目でございますが、被保険者や事業主の方々の御意見の反映というものも大切でございますから、このために、運営評議会という名称の会合を機構で開催するということを考えてございます。

 四点目でございますが、先ほど、委託先の実績評価のときにちょっと申し上げたわけでございますが、委託先のパフォーマンスも含めまして、機構のパフォーマンス、実績評価は厚生労働大臣がするわけでありますけれども、それに当たりましては、社会保障審議会でいろいろと御議論いただくということになってございます。この社会保障審議会は、多分、部会などを設けてやることになろうかと思いますけれども、当然のことながら、民間の識者により構成されるというものでございます。ここで実績評価を御審議いただくということでございます。

 このような形で、外部からもチェックをさまざまいただいてまいりたい、このように考えておるところでございます。

松本(洋)委員 ありがとうございます。しっかりとやっていただいて、改革の努力というものは不断に続けていただければと思います。

 あと、これも先般の質問の際にも、このときは質問じゃなくて、ちょっと触れるだけにとどまったと思うんですけれども、要は、積極的な、予告されていない監査というもの、検査というものをしっかりやるということが、業務の適正運営の中では大変効果的なのではないか。要は、いつ検査が入ってくるかもわからないというような監査体制というものが、職員の皆さんに対する緊張感だったりを生じさせる大変重要なツールじゃないかという話をさせていただきました。

 現在も、そういう予告されていない監査というものは実施しているというふうにお伺いをしているんですけれども、その実績というものが、正直、私、いろいろ資料を探したんですけれども、特にどこにも公表されていないように見えました。ですので、その監査の実施状況とその結果に関して、言える部分、言えない部分あるのかもしれないですけれども、ぜひ教えていただきたいと思います。お願いいたします。

清水政府参考人 御指摘のとおり、事前通告なしの監査は大変効果的なものでございます。

 社会保険庁におきましては、これは新しい試みでございますけれども、昨年の九月から、社会保険事務所に対します本庁の業務監察、これは、事前通告をしないで実施するという形に切りかえたわけでございます。平成十八年度の数カ月におきまして、三十地方社会保険事務局管内の四十社会保険事務所において実施をいたしました。

 これは、単に事前通告しないということだけではございませんで、その中で適正検査を実施しようということにしてございます。適正検査とは何かといいますと、事務処理が法令でございますとか通知といったルールに基づいて適正に実施されているかどうか、それを現物の決裁文書、申請書、そういったものでチェックする、そして確認するというものでございます。

 十八年度におきますテーマは、国民年金保険料の免除処理について、もはや不正はないだろうなという観点から適正検査を行ったところでございます。この適正検査でございますが、申請書等は二万六千五百二十五件を見たわけでございます。その結果、国民年金保険料の免除処理の不適正事案はございませんでした。

 ただ、それ以外の事務処理誤りが十四事務所におきまして五十六件あったわけでございます。これらにつきましては、直ちに是正措置を講じさせました。また、その事務局管内におきますすべての事務所の状況をチェックいたしまして、事務処理が適正に行われることを確認いたしたわけでございます。

 このように、事前通告なしの監査それから適正検査といったものは、相当の効果を上げているのではないかと考えてございまして、今後とも、適正検査の対象となる事務処理を適切に選定しながら、継続的に的確な監査を行ってまいりたい、このように考えてございます。

松本(洋)委員 ありがとうございます。

 ぜひ積極的に実施をしていただきたいと思いますし、先ほど申し上げたように、検査結果というものは、これは公表されているんですか。多分、公表されているにせよ、されていないにせよ、極めて見にくいところにあるのは私は事実だと思っております。

 国民の皆さんに、やはりこの点、しっかりとお伝えをして、こういうチェックをしっかりやっています、問題点が発覚したときにはこういう対応をしています、こういうことをちゃんと細かく積み上げていくということが、やはりこれからの機構にとりましてはすごく重要な観点だと思いますので、御答弁は結構ですから、その点、しっかりと念頭に置いていただいた上で、ぜひ進めていただきたいと思います。

 ちょっと時間がなくなってまいりましたので駆け足で、国民年金事業等の運営の改善のための国民年金法等の一部を改正する法律案、ちょっと長いですけれども、これについて質問をさせていただきたいと思っております。幾つか通告させていただいているんですけれども、時間の関係で、ちょっとくっつけたりしながら御質問をさせていただきたいので、よろしくお願いをいたします。

 まず、この中において、住基ネットの利用拡大という項目があるわけでございますけれども、この住基ネットの利用拡大によってどういうメリットがあるのか、どういう業務効率化というものが達成できる見込みなのかということを教えていただきたいのと、同時に、先ほど、アウトソーシングした先の情報管理云々かんぬんという話をさせていただきましたけれども、この住基ネットの活用というものの拡大に関しましても、ではそこから得た情報というものをどういうふうに情報管理していくのかというのは、非常にこれまた懸念の声というものが上がっているわけでございます。

 この住基ネット利用拡大へのメリットというものと、あと情報管理はどういうふうに対応していくのか、この二点、お答えいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

青柳政府参考人 住基ネット利用についての御質問がございました。

 現在、実は社会保険庁、既に住基ネットを一部導入させていただいておりまして、例えば年金の裁定請求時の住民票の写しの添付とか、年金の受給者の方、三千万人全国にいらっしゃるわけですが、その現況届をこの住基ネット情報が利用できる場合には省略するということをさせていただいております。

 今回の法案におきましては、これらに加えまして、全国で七千万人に及びますところの被保険者の方々の氏名、住所等の情報を住基ネットから取得することによりまして、そういった変更の届け出を省略することができる、これが今回の利用拡大の主たる内容でございます。

 従来は、そういうことで国民年金、厚生年金被保険者等の住所、氏名が変更になった場合には、国民年金であれば市町村、それから厚生年金であれば事業所を通じて届け出ていただいているわけですが、住基ネットを活用することによって正確かつ適時に必要な手続を行うということで、被保険者や事業主の方の届け出の負担が軽減できる、正確も期することができるということであろうかと存じます。メリットとして、年間でおよそ七百万件の届け出を段階的に廃止することができるということで、業務の効率化につながるだろうと見込んでいるところでございます。

 ただ、便利になる反面、それに対していろいろの懸念もあるのではないかというお尋ねがあったわけですが、私どもはまず、個人情報保護の観点からの年金個人情報の活用範囲を、先ほどと重なるところがございますが、例えば、年金事業の運営のために必要な場合にまずこの年金個人情報が活用できるということで、私ども自身をまず縛るわけでございます。それから、法律の規定に基づいて利用、提供しなければいけない場合ということ、さらに、年金の事業に関連する業務で、どうしても厚生労働大臣や日本年金機構が利用、提供する必要がある、他の、例えば厚生年金基金等の情報と突き合わせをしなきゃいかぬ、こういうような場合にまずは限定をする、情報の限定ということが大前提でございます。

 それから、社会保険庁が住基ネットを活用する場合でありましても、これは住民基本台帳法の規定に基づくところの活用になりますので、当然のことながら、住民基本台帳法によるところの例えば目的外利用の制限あるいは守秘義務違反に対する罰則規定、こういった規定が適用されるということで、法律上の担保もあるわけでございます。

 いずれにいたしましても、私どもとしては、住基ネットからの個人情報の取得、利用につきまして、国民の皆様に十分に周知を図ってその利便をお伝えすると同時に、年金個人情報を含みます個人情報の保護、対策には万全を期すという形で、この円滑な実施を図ってまいりたいと考えております。

松本(洋)委員 ありがとうございます。

 次に、ちょっと通告した質問を一個飛ばさせていただきまして、口座振替の話なんですけれども、この口座振替というのは、そういう意味では、利用者にとりましても、一々手続する必要がないわけですから、非常に利便性が高いですし、そして年金の納付率も上がるということで、私は大変これは切り札になる政策というか、この口座振替を進めるということはかなり重要な柱ではないかと私自身は思っております。

 そんな中で、口座振替制度導入のために早割というものが現在導入されているわけでございますけれども、これは私は大変ユニークかつ画期的な取り組みだと思っておりまして、正直、これまでの行政とか役所の感覚では余りなかった制度なんじゃないのかなと私自身は思っておりまして、大変高く評価をしているんです。

 しかしながら、そうした制度をつくっても、それが実際に結果と本当に結びついているのかというところをぜひ教えていただきたいと思っております。具体的な口座振替利用率の伸びですね。この早割制度というものを導入したということによってどれぐらい口座振替の利用率がふえたのかということをぜひ教えていただきたいと思います。お願いいたします。

青柳政府参考人 口座振替についてお尋ねがございました。

 実は、口座振替の割引という点で申し上げますと、今までも、平成十四年の四月からでございますが、一年分あるいは六カ月分の前納によります割引というものは行っておりました。これに加えまして、十七年の四月分の保険料から、新たに一カ月単位で毎月の保険料を前納する場合の割引制度として、今御紹介のありましたいわゆる早割制度というものを導入させていただいたという経緯がございます。

 平成十六年度と十七年度におきます納付月数全体に対する口座振替による納付月数の割合、この間に、今申し上げたように十七年度から早割があったということですから、早割の効果というものも反映されているかと思いますが、これを比較いたしますと、平成十六年度が五二・六%、平成十七年度が五五・八%でございますので、三・二ポイントの伸びがあったということでございます。

 十八年度につきましては、まだ年度末というのは数字が確定しておらないわけでございますが、中間の平成十九年二月分までの保険料が、数字がわかっております。この割合が五七・九ということでございますので、先ほどの数字と比べていただいても、着実に口座振替による納付月数の割合が伸びているということは御理解いただけようかと存じます。

松本(洋)委員 ありがとうございます。

 こうした創意工夫によりまして、着実に口座振替の利用率というのがふえているということでございますから、ぜひしっかりと国民の皆様方にも周知徹底を図っていただいて、こうした誘導というものをぜひしていただきたいと思いますし、せっかく非公務員型の日本年金機構という話があるわけでございますから、いわゆる創意工夫というものをさらに発揮できるような体制というものをぜひ整えていただきたいと思います。

 国民の皆さんが、それこそ本当に年金を納めやすくする、また、納めることによるメリットというものをさまざまな場で実感できるような創意工夫というものを、ぜひ、非公務員化というものを一つのきっかけにして、そういう発想、アイデアというものがしっかりと出てくる、そういう体制づくりというものもぜひ念頭に置いてやっていただきたいと思います。

 もう時間もありませんので、質問はもう一問にさせていただきたいと思います。

 若年者におきます年金の未納というのが大変大きな問題になっておりますけれども、その中で、学生納付特例制度というものは、私は大変重要な仕組みだと思っております。この学生納付特例制度を推進することはとても重要でございますし、それは、実際に、本来適用を受けるべきである子供たちにとりましても、しっかりとその権利を守っていく意味でも、この制度の活用、推進というのは、私は極めて重要なことだと思っております。

 学生納付特例制度を促進するための取り組みというものを教えていただきたいと思っておりますし、もう一つつけ加えさせていただくのであれば、やはり大学の所管官庁であります文部科学省との連携というものをしっかりととって、文部科学省からも各学校に対してしっかりと指導をしてもらうというような対応というものもしっかりとやっていくことが重要だと思っております。

 これは決して厚生労働省だけの話ではなくて、国としての大変重要な命題でございますから、そういう意味では、縦割り行政というものに左右されるのではなくて、厚生労働省がしっかりとやりながらも、各省庁にしっかりと協力を依頼して、そうした所管している省からの指示だったりとかお願いというものをしていただく、そういう取り組みというものが必要になっております。

 以上、ちょっと長くなりましたけれども、二点にわたりまして御質問させていただきます。よろしくお願いいたします。

青柳政府参考人 学生納付特例についてのお尋ねでございました。

 学生の納付特例制度は、御存じのように、学生は一般に所得がないということを踏まえまして、親元の方の世帯で所得がある場合であっても、学生本人が低所得であるという場合に保険料納付を猶予いたしまして、卒業後に追納できるように、出世払いをしていただくというような仕組みとして、これは平成十二年の四月から導入された次第でございます。

 これをどうやって普及していくかということが大変重要だということでございます。従来から、私ども、例えば学内でポスターを掲示したりリーフレット等を備えつけていただくというようなこと、それから学内の学内報といったようなものに学生の納付特例制度の記事を載せていただくようなこと、それから、結構有効なのが、大学等で学期の初めにオリエンテーションという形でさまざまな説明をするわけですが、そういった機会を利用させていただいてこういった制度の説明をさせていただくようなこと、それから、オーソドックスに考えれば、学生さん等に対しまして、いわば年金セミナーのような形で御説明をさせていただくというようなこと、こういったことを、従来からも大学の方と連携して実施をさせていただいております。

 さらに、学生納付特例制度の利用を拡大するために、平成二十年四月からこの学生納付特例の申請手続の簡素化というようなことができないかということで予定しておるわけでございまして、具体的には、当初、納付猶予の申請をしていただいたときに、卒業の予定年月日を何らかの形で記載をしていただきまして、次年度以降、その卒業予定年度までは、いわば一々の申請書を出し直すというのではなくて、私どもの方で必要項目を印字した申請書をお送りいたしまして、それに簡単な項目を記入していただく、いわば一種のターンアラウンドで申請をするというようなこともやらせていただこうということで準備を今進めております。

 それから、今御審議をいただいております事業改革法案の中で、学生納付特例制度をさらに利用拡大するために、大学にお願いをいたしまして、学生さんの委任を受けて大学の方が申請の手続を代行できる仕組み、これを一応法律的な制度として盛り込ませていただいたところでございます。

 しかしながら、お尋ねにございましたように、こういった制度的な取り組みや、さまざまな私どもからのアプローチだけでは必ずしも十分ではないんじゃないだろうか、やはり、大学行政を所管しておられる文部科学省さんとの協力体制をどのように構築するかが非常に必要ではないかという御指示であったかと存じます。

 この点につきましては、先ほど申し上げましたようなポスターの掲示、あるいはオリエンテーション等は私どもで勝手にできませんから、当然、大学の方に、一々にお願いをして取り組んでまいったわけでございまして、大学によっては大変積極的にこれを受け入れてくださるというところも少なからずございました。

 しかしながら、個々の努力のみならず、文部科学省からも各大学に対してこういった協力依頼をお願いしたいということで、実は昨年の四月でございますけれども、私どもの方から文部省の担当課長さんに公文をもって依頼をして、これに基づきまして、文部科学省の担当課長さんから、各国公私立の大学の学生部長さんほか、これに担当する方々あての公文での通知を出していただきました。この中では、学生の年金制度への理解を深めるために周知広報について社会保険庁から協力依頼があったのでよろしくお願いする、あわせて、入学時のガイダンス等におけるセミナーの開催などについても協力をしてもらいたい、こういう文書を改めて公文で出していただきました。

 こういうことに基づいて、私ども、現場での、いわばこれまでのお願いに加えて、そういった役所間での協力体制も組んで、さらに強力にこれを進めておるところでございますけれども、今後とも引き続き、新しい制度の周知なども含めて、文部科学省さんとはよく協力をして仕事を進めてまいりたいと考えております。

松本(洋)委員 時間なので終わりますけれども、今回の学生特例にしても、また事業主との連携という話も、この法案の中では書かれていると思います。直接年金を納めてもらう人と接点を持つ事業主だったりとか学校だったりというところに協力をしていただくということは、私は大変重要なことだと思っておりますし、その業務の効率化だったりとか収納率向上のためには欠かせない事柄だと思っておりますから、ぜひ、そこの観点に関しましては、しっかりと、各関係省庁、一致団結をしていただきまして、その手段というものをしっかりとつくり上げていただきたいと思いますし、新しい日本年金機構が発足するに当たりましては、ぜひこれまでの、従来の慣習にとらわれることなく、新鮮な発想で国民の信頼を取り戻していっていただきたいと思います。

 以上でございます。ありがとうございました。

櫻田委員長 次に、坂口力君。

坂口委員 四十分間の時間をいただきましたので、きょうは村瀬長官を中心にしまして御質問をさせていただきたいというふうに思っております。

 村瀬長官には、御就任いただいてから間もなく三年でございましょうか、大変な御苦労をいただいておりますことに敬意を表したいと思っております。

 火中のクリを拾っていただいたわけでありますから、本当に申しわけないというふうに思っているわけでございますが、就任をいただきましてから今日まで、さまざまな社会保険庁の内容をごらんをいただいたというふうに思います。

 ごらんをいただいて、今まで損保会社におみえいただいたわけですから、その民間におみえをいただいたときと、社会保険庁にお越しをいただいて社会保険庁の中をごらんいただいたときと、何が一番違ったんでしょうかね。ここが違うというふうに思われたところは何か。そして、それに対して、どういうふうなことをやろうというふうに思って今日までお越しをいただいたかという、この三年間の経緯、少しお話をいただければありがたいと思います。

村瀬政府参考人 今、坂口委員からお話ありましたように、ちょうど二年十カ月前に、当時坂口大臣から社会保険庁長官として任命を受けまして就任をさせていただきました。

 その中で、正直言いまして、社会保険庁がどのような業務をどのような形でやっているかということが全くわからないまま庁に入りまして、たったわけでございますけれども、その中で、いろいろ御指摘いただいていますように、さまざまな不祥事案件が生じたというのは、やはり一番大きな部分だろうと思います。

 なぜこれが生じたのかというのは、先ほど総務部長からお話し申し上げましたけれども、私自身は、やはりガバナンスの問題が、残念ながらこの組織にはできていなかったことが最大のポイントだろうというふうに思っております。

 したがいまして、この組織を生かしていくために、そのガバナンスをいかに強化するか。ガバナンスは、庁のガバナンスもありますし、事務局のガバナンスもありますし、事務所のガバナンスもあります。それぞれの組織の長、責任者が事業運営という形に対してどこまで責任を持って運営をするのか、ここに尽きるんだろうというふうに思います。したがいまして、個々の対策につきましては、そこをいかに強化していくかということが最大のポイントだったんだろうというふうに思っております。

 後ほど、どんなことをやってきたかというお話を詳細に申し上げたいと思いますが、まず、民間から来まして役所と何が違うのかという中で、幾つか御指摘をさせていただきたいと思います。

 民間につきましては、特に私は損害保険会社でございまして、最終的には契約者を選別できます。極端な言い方をすれば、商品を売りたくない方には売らなくても構わない。ただ、もちろん顧客サービスという観点がありますから、表立ってはできませんけれども、結果としてはそういうことが可能でございます。また、企業の場合には、利益を上げることが最終目的でありますので、すべての方を対象にする必要はございません。したがって、効率的な事業運営をやろうと思えば幾らでも可能である、このようにお考えいただいていいんだろうと思います。

 一方、社会保険庁は、法律に基づきまして、対象となる方についてはすべてに適用し、対応しなければならない、こういう責務を負ってございます。したがいまして、法律で決められたとおり、選別できない業務を行わなきゃだめだ、こういう宿命を負ってございます。したがいまして、事業運営におきましては、非効率にならざるを得ないというものを抱えている、こういう前提で事業をやっていくんだ、こういうふうにお考えいただけたらと思います。

 また、行政側ということからいきますと、社会保険庁は行政処分権限、これを役所として持ってございます。例えば徴収等におきましては、国家権力の行使ということが可能でございます。こういうものは民間には絶対ありません。また、組織を運営するに当たりまして、役所の場合には、組織、予算、人員等、事業運営にかかわるインフラ部分でございますけれども、これはすべて、みずからのところで決定権はございません。例えば、財務省であるとか総務省であるとか、いろいろなところに話をした上でお決めいただく、その中で運営をしていくという義務がございます。もちろん、国会の監視も受けるわけでございます。

 一方、民間の場合には、法令遵守のもとにおきまして、組織内で決定のルールはございますけれども、例えば取締役会で決めなきゃいかぬとかルールはございますけれども、民間はみずからの組織内で決定をすることが可能である、こういう大きな違いがあるんだろうというふうに思います。

 次に、事業運営につきまして、どういうことをやってきたかということについて若干お話を申し上げたいと思います。

 まず、事業運営の基本でございますけれども、やはり、国民の皆さんの信頼を回復する、これが最重要課題、そのためには、業務改革と職員の意識改革、これに徹底的に取り組む、これしかないんだろうというふうに思っております。

 では、具体的にどういうことをやってきたかということからお話し申し上げますと、まず一つは、各種サービスが必ずしも国民の目線に立ったものとなっていないということをどう改善するか、また、事業の目標の設定であるとか、だれがいつまでに何をするのかという明確な管理目標、これが十分できなかったということで、これを明確にする、また、人事が固定的で能力本位の人事管理がされていないという問題があり、これを変える、こういう視点に基づいてさまざまなことをやってきたということでございます。

 具体的な項目でいいますと、業務改革プログラム、初めは八十からスタートしましたけれども、現在、百六十項目にわたりまして、業務改革プログラムを策定し、いつまでに何をするかということを明確にしてございます。

 また、新しい人事評価制度を導入いたしまして、広域人事異動の大幅な拡大であるとか、人事政策につきましても抜本的に刷新をしてございます。

 そして、仕事の仕方でございますけれども、標準化であるとか統一化、これについては、残念ながら、地方事務官制度の名残もありまして、独自の事務処理をやっていたケースが多々ございました。したがいまして、昨年十月から、これらをすべて統一のプログラムの中でやっていただくようにしております。

 それから、最も大事なのは、やはり職員の意識が変わるかどうかという部分だと思っておりまして、職員のやる気をいかに引き出す組織にするか、これがやはり最大のテーマだろうというふうに思っています。一番初めに手をつけましたのは何かといいますと、やはり職員が何を考えているかということがわからなくては改革はできませんので、できるだけ多くの職員と対話をすることによって彼らの本質を見抜くこと、これから始めたわけでございますけれども、やはり中にはいろいろな職員がございます。

 したがいまして、一生懸命やる職員から早く意見を引き出す、これが大事だろうということで、現場職員からの改善提案制度を早期に導入いたしました。この考え方は何かといいますと、すべての解決は現場に解がある、こういうことだろうというふうに思っています。

 それから、来た当初一番大きな問題でありましたのは、お金の無駄遣いの問題でございました。したがいまして、お金の無駄遣いを徹底的に排除する。これは、税であろうが保険料であろうが、私は同じだろうというふうに思っておりまして、調達につきまして、調達委員会を立ち上げまして、徹底的に中身の精査をいたしてございます。もちろん、システム開発につきましても、システム検証委員会というものをつくりまして、このシステムは本当にこのような開発でいいのかどうか、これも徹底的に、青柳君を中心にやっていただいております。そういう点では、これはある意味では職員の意識改革、職員教育の一環だろうというふうに思っておりまして、今、月に二回、それから、システム検証委員会については、場合によっては三回、四回ということでやらせていただいているところでございます。

 その中で、将来を含めまして、やはり職員は、変えられるのではなくて、みずから変わるんだ、こういうふうに思っていただくのが一番大事である、これが基本だろうと思っております。職員一人一人の意識を変えていくこと、これが、今の社会保険庁もそうですし、もし仮に日本年金機構に彼らが移ったとしても、この意識が変わらない限り、新しい組織は決して国民の皆さんから信頼できる組織にはならないんだろうというふうに思います。

 したがいまして、今現在、国会会期中でございますけれども、私が任期にある間につきましては、できるだけ現場へ行きまして職員とじかに話し合って意識改革を進めてまいりたい、このように考えてございます。

坂口委員 ありがとうございました。

 ガバナンスができていない、一言で言えばそういうお話をしていただいたわけでございます。もう少しお聞きしたいと思いますけれども、時間に制限がございますので、お話を伺うのはこれぐらいにします。

 それで、損保の方も、不払いの問題だとかいろいろな問題が起こりましたが、その問題を取り上げるつもりはありません。ありましたけれども、社会保険庁の中で起こっておりますように、例えば、生年月日が落ちているとか、あるいは人のところに記録の一部が行っているというような間違いは多分損保では起こっていないんだろうと思うんです。決められていたとおりに払っていたか、払っていなかったかの違いだと思うんですね。

 いつか一遍お聞きしたことがあるように記憶するんですが、年金の問題は、次から次へと改正されて、次から次へと枝分かれをしている、また改正されるというようなことで、非常にややこしくなっていて、それは言ってみればあみだくじみたいなもので、どこへ落ちるかわからないというような感じになっている。それに比べて、損保なんかの商品というのは、一つ一つ新しいものができると、それはまた新しいもので最初からいくというならば、琴線のように平行に真っすぐに並んでいるのが民間のものだ。だけれども、年金はもう本当に枝が次から次へと分かれているというお話をされたのを記憶いたしております。

 そこで、お聞きをしたいのは、社会保険庁の職員がいろいろの間違いをしたということで、今、言ってみれば袋だたきになっているわけです。一人が悪いというと全部が悪いといってたたくのが国会でございますから、それはちょっとやむを得ないとは思うんですけれども、しかし、そういうことになっている。

 しかし、よくよく考えてみれば、長官がいつか言われましたように、次から次へと制度改革を行って、そして一人一人の行き先というのが、それぞれが違うという大変複雑な内容になっているということであれば、それは、社会保険庁の職員が悪い悪いと言われていますけれども、一番悪いのは、政府と国会で決めたことが一番悪いのではないかとも思うんですね。一体そこは、社会保険庁の職員に与えられた商品といいますか、仕事と、そしてそのコンピューターシステムとあわせて、いや間違いなくそれはできるようになっているんだということなのか、それとも、いや、そうとばかりは言えない、間違ってはならないけれども、やむを得ざるところがあるというふうに思われるのか、そこは一体どうなんでしょうか。そこを聞きたいと思ってきょうは来ました。

村瀬政府参考人 委員の御質問にお答え申し上げたいと思います。

 その前に、まず、民間の損保、生保はどういうような仕組みの商品になっていて、どういうシステム展開になっているかということをまずお話を申し上げたいと思います。

 損保でございますけれども、損保は基本的には単年度契約が中心、一年契約が中心でございます。仮に、長期契約というのがあったとしましても、契約時から、商品内容、例えば十年間、二十年間の契約があったとしても一切変わりません。したがいまして、単一管理という形になろうかと思います。一方、生保につきましては、基本的には長期契約が中心でございまして、特約等の追加は可能でありますけれども、基本的に、基本契約を変える場合には、契約を変更、更新して別契約を立て直す、こういう事務処理になっていると思います。したがいまして、一証券一契約、一保険証券一保険という形の考え方になろうかと思います。

 したがいまして、一つの商品でいろいろな商品を統合するということは、基本的には考えられない、こういう形になろうかと思います。したがいまして、システム上の問題からいきますと、民間では、商品用の新システムが開発されませんと商品を販売いたしません。システムを開発して初めて商品が販売できる、こういう仕組みになってございます。

 先ほど、一契約一証券番号というお話を申し上げましたけれども、顧客名寄せ等のサービスはやっておりますけれども、これもシステム的に持っていることがありますけれども、商品管理という形からいえば、一商品一システム一契約、こういうのが基本でございます。

 一方、年金はどうかといいますと、公的年金については、基本的には強制加入でございます。そして、その中身は、国年、厚年、共済という形で、共済は別管理になっておりますけれども、基礎年金のところは統合されておりまして、ここの部分については別々の商品体系になっている。したがいまして、人によりましては、被用者年金と国民年金との間、または被用者年金間を頻繁に行き来する人が期間ごとにございます。それにつきまして、従来は、平成八年度以前でございますけれども、基礎年金番号が制定されなかったがために、一人一番号、適用単位の番号を保有されている、こういう仕組みになってございます。

 したがいまして、そもそもが複数保有を前提とする事務処理になっていた、こういうことが言えるんじゃなかろうかと思います。極端な言い方をしますと、期間が一カ月とか二カ月の記録をお持ちになっている方、それから、一人で番号を複数、十以上お持ちになっている方等もおみえにならないとは決して言えないんじゃなかろうかと思います。

 したがいまして、それをどういう仕組みで事務処理を行うかということでございますけれども、裁定時に番号を統合すること、要するに、六十歳時に番号を統合することが前提の制度運営でございます。六十歳に到達しないと裁定ができませんので、六十歳になって、例えば、五月生まれの方は、誕生日が来て初めて裁定手続をとっていただくわけでございます。したがいまして、その方が一番初めに厚生年金のお支払いを受けるという場合が八月になろうかと思いますけれども、それまでに事務処理をしないと年金がもらえないということで、一回裁定をした上で再裁定をするというのは、ある意味では、事務処理上、当然の行為として行われているわけでございます。

 団塊の世代の方々が六十歳を迎えられることによりまして、裁定時の混雑を緩和するために、御存じのように、五十八歳通知等で事前に記録をしっかり確認していただいて、六十歳になれば、場合によったら事務所へ来ていただかなくても郵送等で手続がとれる、これが五十八歳通知、ターンアラウンドのねらいになっているところでございます。したがいまして、そういう事務処理の前提ということでお考えいただければよろしいのではなかろうか。

 また、記録の確認という作業が極めて重要な業務運営になってございます。今まで記録の確認ということでさまざまな機会を設けてこなかったというのは、社会保険庁としても反省する部分はあろうかと思いますけれども、被保険者の皆様につきましては、ねんきん定期便、これは有効な手段になっていくのではなかろうかというふうに思います。

 また、裁定者につきましては、一番早い方法としましては、やはり記録に疑問をお持ちになっておられる方については、申し込みをしていただいて、再チェックをしていただいて安心していただく。どちらにしましても、一対一の確認作業を行わない限りは再裁定の道というのは出てきません。そこはやはり、しっかり社会保険庁とやっていくというのが極めて大事な部分じゃなかろうかと思います。

 その中で、大量の件数を処理するということで、一部年金の記録が間違っていたところがあろうかと思いますけれども、この部分については、やはり事務処理上、反省するところはあるんだろうと思います。ただ、いろいろなデータを見させていただきますと、基礎年金番号が制定される以前、個々の番号でやっている時期が多かったというのも事実ではなかろうか、このように考えております。

坂口委員 間違ってはならないことでありますけれども、非常に間違えやすいような状況を提供しているのかどうかということをお聞きしたかったわけであります。結構でございます。時間もなくなってまいりましたので、これぐらいにしておきます。

 それで、例えば、年金を払い過ぎていた、あるいは払い足りなかったというケースが何万件か起こったことが過去にありましたね。ある人には払い過ぎていた、ある人には払い足りなかった、それはどういうことで起こったのかよくわかりませんけれども、どういうことで起こったかということよりも、どういうことでそれが間違っているということを気づかれたのかということを聞きたい。

 長官が難しかったらほかの方で結構ですけれども、なぜ間違っているということが途中でわかったのか。それは入力ミスの間違いだということに気づいたためにそれがわかってきたことなのか、あるいは、どなたかのお申し出によってそれはわかってきたことなのか、なぜ間違ったかというよりも、なぜ間違いに気づいたかということをお聞きしたい。

青柳政府参考人 記録等の事務処理のミスについて、どういう契機でこれが明らかになったかということのお尋ねがございました。

 お尋ねの中には幾つかの内容が含まれていると思いますが、大きく分けさせていただきますと、一つは、平成十六年ごろから、主として社会保険業務センターのさまざまな支払いの関係で、多量の過払いあるいは逆に未払いがあった。このケースについてまずはお答えをさせていただきます。

 これにつきましては、多くの場合、例えば年金を支払われた方が、何か違うんじゃないだろうかということにまずお気づきになられたというケースが大変多うございます。これは、いろいろなものがありますけれども、例えば、システムを組むときに指示が誤っていたというようなケースであったり、あるいは事務処理のミスであったりということはありましたけれども、契機としては、多くの場合が、受給者の方からのお尋ねを契機として、それを受けた窓口が、業務センターなりの方に、こういうお尋ねがあってどうもこれは誤っているんじゃないだろうかということを上げてきたということから明らかになったというケースがございました。

 そこで、こういったシステムあるいは事務処理に伴うところの誤りにつきましては、一たん全体の総ざらいをいたしまして、そういうものがないかどうかということを全体としてチェックすると同時に、業務センターの方で、システム上のミスについては定時に自分たちで自主点検をする。そういう形で、今度は、みずからそういうものの誤りを発見していくというふうに今は切りかえておりますので、委員から、ミスはしようがないというふうに言っていただいたことに、こちらの方から、実はそうなんですと言うつもりはないんですが、そういった自主点検の中で最近はミスが見つかるケースもございます。これは、そういうことで御指摘をいただく前に、私ども、見つかった段階できちんと処理をした上で公表を順次させていただいている、こういうことがございます。

 また、もう一つ大きなグループといたしましては、現在問題になっております年金の加入記録の問題についてのさまざまな御指摘がございます。これはやはり、五十八歳通知、その他年金の記録確認を御当人の方にしていただく機会を私どもふやしておりますので、こういう記録確認をしていく過程で、自分が持っているものと違うものがあるぞという御指摘をいただいて、これをさまざま調べていく中でそういったミスが見つかるものもあるというふうに、大きく分けて、そういうシステムに絡んで出てくるミスと、それから記録の管理に絡んで出てくるミスがあるというふうに御理解をいただければと思います。

坂口委員 この問題は、例えば三十万件なら三十万件の、生年月日なら生年月日の入っていないそうしたケースがある、それをどう処理するかということとも大変かかわってくるわけでありまして、自主点検というものができるのであれば、その生年月日の入っていないものも自主点検をして、もう少しわかるようにならないのか、こういうこともあるわけでありますから、その辺のところをどうするかということとの関連で少しお聞きをしているということでございます。

 もうちょっとお聞きしたいことがあるものですから次に行きますが、個々の年金記録は、これは間違って写したりとか、間違って年金額を決定したりというようなことはあってはならないことでありますが、これは人間のやることでありますから、絶対間違わないとは言えないんですね。

 私も、若いときに血液の仕事をしておりまして、血液型を間違わないようにしなきゃいかぬ、これはもう当たり前の話でありまして、ABO型の血液型でありますから、A型、B型、O型、AB型の四種類あるだけの話であります。その四種類を間違わないようにするというだけの話でありますから、まことに単純なことでありますけれども、検査をするときに、一人の人が検査をして、もう一人の人がそれを見直す、持ち帰った血液をもう一遍、一人の人が検査をして、もう一人の人がそれを見直す。少なくとも四人の人の目を通していたわけですね、間違ってはならぬことですから、人の命にかかわることでありますから。

 四人の目を通していたんですけれども、それでも、年間一件か二件、間違っていることがあるんですね。背筋が寒くなるという言葉がありますけれども、いや、背筋がいてつくような思いをしたことがございます。知らずに病院の方がそれを輸血しましたら、もう刑事責任を問われる話であります。そして、その人の生命にかかわる話でありますから。あってはならないことですから、そういうふうに四人なら四人の目を通してやっていても、どういうことでくぐり抜けていくのかわかりませんけれども、それでも誤ることがある。

 だから、皆さんの仕事も間違ってはならないことでありますから、例えば入力ミス、入力のときの作業でありますとかさまざまな作業のときに、一人の人に任せておいたらだめなわけですね。何人かの人の目を通して間違いがないかどうかをやっていかないと、私は間違うおそれがあるという気がするんです。そこのところはどんな手順でおやりになっているのか、そこの手順はきちっと決めておやりになっているのかどうか、そこを私は少し心配するわけですが、わかっている人がお見えになっていたら、ちょっとお答えをいただきたい。

青柳政府参考人 今のお尋ねは、主に加入記録に関してどういう契機で誤りが生ずるのであろうかというお尋ねの趣旨かと存じます。

 これにつきましては、厚生年金の場合と国民年金の場合と、それぞれ加入記録が記録されるまでの経緯に若干の違いがございます。

 まず、厚生年金でございますが、厚生年金の場合には、事業主の方が、自分の事業所に加入されている従業員の方について、どういう方であり、その方についての報酬は幾らであり、いつから適用になる、こういうことを社会保険事務所の方に届け出ていただくわけでございますので、まずは事業主の方が正しい届けを社会保険事務所にしていただく、そして、社会保険事務所がいただいた届けをきちんと、現在の仕事であってもオンライン入力をしていく。これが仕事の流れということになりますので、そういったそれぞれの情報がいわば入力される過程で、幾つかのステップを踏む中で間違いが生じる可能性があるんだろうと思います。

 今日では、なるべく間違いをなくすということで、いわば磁気ファイル等で直接、例えば、オンラインということで、事業主の方から情報をいただき、それをそのまま、いわば手を加えることなく私ども入手をするというような手法まで進歩してきておりますけれども、ただ、昔はそういうふうになっておりませんので、その間に紙の台帳に書き写したりなんだりするということがあったということが誤りの生じる一つの原因として推測されるわけでございます。

 それから、国民年金につきましては、まずは被保険者の方が市町村の窓口に保険料を納付していただく、そして市町村の方から社会保険事務所の方に進達があるということになります。

 これは、市町村から社会保険事務所に進達がありますときに、かつて一番多いときでは三回にわたって個々の記録のいわば突合をしておりました。まずは、毎月毎月の保険料納付をいただくときに、市町村からいただくものを社会保険事務所で突合いたしました。それから、印紙納付をいたしますときに検認をいたしました時代は、これをまた突合するという作業をいたしました。そして、最後に、年間の記録を一年度分まとめて、その方についてどういう記録であったかということの突合をする。これだけの突合をして、社会保険事務所の方への記録に移しかえをしたというようなことがございました。

 ただ、これでも、例えば、市町村の被保険者名簿には記録が残っているけれども、こちらには来ていないようなケースが現にあったわけでございますので、間違いが生じたということだろうと思います。

 そして、これらの記録を、いわば紙で記録したものから、電磁的なファイル、今日ではオンラインでございますが、ここへ移しかえていくという作業が、国民年金、厚生年金、それぞれ時期は若干ずれておりますけれども、それぞれ行われた。この際にも、そういう形で当時それなりの突合は行ったわけでありますけれども、結果的に、紙の台帳では残っているけれども、オンライン上に残っていない記録というものが発見されたというような状況でございます。

 いずれにいたしましても、そういったそれぞれのプロセスの中で誤りが生じる可能性というものは否定できないわけでございますが、今日、では、それぞれがどの段階で起こったものかということを個々に特定するということは大変困難であるというふうに御理解を賜りたいと存じます。

坂口委員 三十万件、すべてが生年月日かどうかわかりませんけれども、生年月日が入っていないようなものがある。それは、個々の人がミスをしたというのにしては数が多過ぎると私は思うんですね。それは、多少はミスというのも起こり得るかもしれませんけれども、三十万件起こるというのは起こり過ぎだと思うんですね。

 それは、もともと生年月日の入っていないような、例えば企業なら企業、ある企業から出たものはもともと入っていなかったといったようなケースもあったのかどうか。私は、そういうケースがあれば、それを新しいところへ入力するという作業をしているところで、生年月日なら生年月日の入っていないのがたくさんありますというような情報が上がってくるのが普通だと思うんですね、たくさんあれば。だけれども、聞くと、そういうこともなかったかに聞くんですけれども、その辺のところは、もう簡単でいいですから、なかったらないでよろしいですが。ありませんね。簡単にお願いします。

青柳政府参考人 三十万件のすべてについて承知をしておるわけではございませんけれども、考えられますのは、当時のそれぞれの記号番号がきちんとあれば、一義的にそれが、何かの情報が欠けていても、記録をされていたという可能性は否定できないだろうと思います。

坂口委員 ですから、いろいろなことが起こったときに、こういうケースがある、これはどうしますかということが上の方に上がってこない、そういうシステムになっていたということではないかという気がするわけであります。

 それで、時間がなくなってまいりましたので、もう一、二、聞きたいことがありますから、次に行きます。

 社会保険庁の在り方に関する有識者会議がございました。十回ぐらい有識者会議が開かれたわけでありまして、ここでいろいろのことが議論をされて決められております。特に、この決められた中の一つを見ますと、年金受給者や年金保険料負担者等の意向を新組織の運営等に十分に反映させるため、年金受給者や年金保険料負担者等から構成される運営評議会、仮称を設置し云々というようなことが書かれたりしている。この辺の議論というのが今回に生かされているのかどうかといったようなことを、少し手短にお話をいただきたい。

村瀬政府参考人 委員御指摘の運営評議会でございますけれども、被保険者等の御意見をお聞きして業務運営に反映させるための措置ということで、機構に義務づけられてございます。

坂口委員 もう一つお聞きしたいことがございますが、労使の間での合意事項並びに確認事項というのが百個ぐらいあって、その中にはさまざまな問題が含まれている。

 例えば、ファクシミリを導入いたしますときに、即時の回答を要求しないなど労働強化にならないよう配慮すること。ファクシミリを導入しても即刻送れというようなことは言わないでくれよ、こういう話でございます。それから、よく言われます、パソコンを操作しますときに四十五分やったら十五分間の操作しない時間を設けるといったようなことがある。あるいは、基礎年金番号を設定するに当たっての確認事項としましては、中央の権限強化や社会保険職場の国一元化に結びつくものではない、こういう確認事項がある。国の方で一元化していろいろなことを言っちゃいけませんよ、こういうことなんだろうというふうに思います。

 こういうことがもう百個近くあって、そして私が心配しますのは、そういうことがたくさんあるがために、長官が最初に言われましたガバナンス、各段階のガバナンスがあると思いますけれども、それが機能をしないということに結びついていたのではないかという気がする。新組織、日本年金機構ができるわけでありますが、今度は非公務員でありますから、これは正式に組合活動というのは起こって当然であります。働く人は働く人の立場からおっしゃることも当然でございます。しかし、もともとの仕事のガバナンスが、それが動かなくなるというようなことでは元も子もないわけでありますから、そこのところは気をつけていただかないといけないのではないかというふうに思います。

 別に、新しい機構ができたわけではありませんから、回答を求めるということではありませんけれども、何か意見がありましたら、一言、言ってください。

清水政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のとおり、平成十六年の三月まででございますけれども、職員団体との間でいろいろな確認事項あるいは覚書といった表題の文書を取り交わしてきたわけでございます。これらの確認事項、覚書は、業務を円滑に推進するためにと考えて取り交わしたものでございますけれども、それらの内容を見てみますと、委員御指摘のような内容のものを含んでおりまして、それらが、ガバナンスの点について問題を生じさせる、あるいは非効率な業務執行でございますとか、内向きで硬直化した組織運営に結びついていったのではないか、そういった面もあるのではないかといった点は否定できないというふうに、一方当事者でございます私どもも反省しなければならないと考えてございます。これらの確認事項につきましては、平成十七年の一月にすべて破棄したところでございます。

 今後に向けてでございますが、こういうこともございまして、業務改革と意識改革を進めているところでございます。

 意識改革につきましては、長官からも若干御紹介ございましたけれども、内部改善提案制度、事務局・事務所グランプリといったさまざまな取り組みを進めているところでございます。

 また、労働組合の方々との関係に関しましては、平成十七年度以降、労使交渉を行った場合におきましては、その議事概要を社会保険庁のホームページに掲載してございます。そういう形で公表する取り扱いにいたしまして、オープンな形にするということにしておるわけでございます。

 今後、新たに機構を設立いたしまして、非公務員化する、募集、採用方式で適切に職員を採用する、民間的な人事給与体系をつくっていく、それらによりまして、意識改革をさらに加速、徹底させてまいりたいと考えてございますし、ガバナンスも改めて確立してまいりたいと考えてございます。それらのことによりまして、今後、かつてのようなことが繰り返されることにはならないようになる、そういうふうに考えておるところでございます。

坂口委員 ありがとうございました。終わります。

櫻田委員長 次に、福島豊君。

福島委員 本日は、私ども、坂口委員に質問していただきまして、坂口大臣のもとでこの社会保険庁改革はスタートしたわけでありまして、村瀬長官におかれましては、この二年と十カ月、本当にその先頭に立って改革を推し進めていただいた、心から感謝と御礼を申し上げたいというふうに思っております。

 法案の審議、まだまだ時間が必要だ、こういう御指摘もございますけれども、ある意味では、社会保険庁をどう改革するのかということは、まさに三年にわたって議論してきたテーマでありまして、何よりも大切なことは、一日も早く改革のためのこの法案を成立させまして、次のステップに進んでいくということが最も大事なことではないか、そのように思っております。

 本日は、限られた時間でございますけれども、この委員会におきまして、新しい日本年金機構についてさまざまな御指摘がなされております。その点について明確にしておくことが必要であるという観点から、組織についてのお尋ねを幾つかしたいと思います。

 民主党の委員の方から御指摘がありましたのは、日本年金機構の設置によって、かえってガバナンスがきかなくなるんじゃないか、勝手なことをし始めるんじゃないか、独立の公法人とすることによって現在の社会保険庁よりもさらに悪くなるんじゃないか、こういう御指摘があったわけであります。私どもは、決してそんなことはないと。ただいまも村瀬長官が、そもそもガバナンスの問題が根っこにあったわけでありまして、この間にさまざまな改革をしてまいりましたけれども、さらにガバナンスのきく組織をつくり上げるということに今回の改革の意義はある、そのように思っておりますが、この御批判について政府の御見解をお聞きいたしたいと思います。

    〔委員長退席、吉野委員長代理着席〕

石田副大臣 お答え申し上げたいと思います。

 年金実務を担う日本年金機構、今回御審議をいただいて新設をしたい、こういうことでございますけれども、年金の財政責任、管理運営責任は一貫して厚生労働大臣が担う、こういうことといたしておりまして、機構も大臣が直接的に監督することとしております。具体的には、機構の事業計画や予算を毎年度認可し、機構の業務の指導監察を実施し、必要に応じ、業務改善命令、違法行為等の是正命令を行う、こういうことにいたしております。

 また、法人化によりまして法人固有の内部統制メカニズムを持つことになりますけれども、具体的には、重要事項に関する合議制の意思決定機関として理事会を設置する、外部の専門人材の非常勤理事への登用、被保険者や事業主等の意見を業務運営に反映させるため、これらの方々により構成される運営評議会の開催、厚生労働大臣が任命する監事による業務監査、会計監査、厚生労働大臣が選任する外部の会計監査人による専門的な会計監査、こういうことによりまして組織のガバナンスの強化を図ることとしております。

 その他、内部通報や外部通報の制度、必要な情報公開等により法令順守を徹底することとしており、今回の改革によりまして組織のガバナンスがきかなくなるとの批判は当たらないと考えております。

福島委員 私もそのとおりだと思っております。システムとしてどのようにガバナンスをきかせるかということで、どのような仕組みをビルトインするか、ここのところが一番大切なのでありまして、独立した公法人イコール勝手なことをする、これは余りにもずさんな理屈、御批判ではないかな、私はそのように思うわけであります。

 そしてまた、これに関連しては、独立した公法人となることによって逆に国会の監視が弱まる、そういうことが指摘をされておりました。ただいまの副大臣の御答弁で、厚生労働大臣が直接に、最終的な責任を持って、指揮監督権限を持っている、そういう点からいえば、国会の監視が弱まるということは決して当たらないと私は思っているわけでありますけれども、この点についてもつまびらかにしていただきたいというふうに思うわけであります。

    〔吉野委員長代理退席、委員長着席〕

清水政府参考人 御指摘のとおりでございまして、年金に関しましては、厚生労働大臣が財政責任、管理運営責任を負うということになってございまして、機構の業務につきましては厚生労働大臣が直接監督するということでございまして、これによりまして、厚生労働省、厚生労働大臣を通じて国会の監視をいただくというのが日本年金機構の姿かと思います。

 それからもう一点でございますが、現在、私ども、長官、総務部長、運営部長が本日の委員会で答弁をいたしますためには、政府参考人として理事会及び委員会で御了承いただいているというふうに承知しておるわけでございます。日本年金機構の理事長、副理事長、理事というものも、他の独立行政法人の役員と同様、参考人として答弁すべしということであるならば、理事会及び委員会で御了承いただいて出席させていただけるのではないかというふうに私ども考えてございます。いずれにしろ、国会でお決めいただくことでございます。

 このように私ども考えてございまして、法人化に伴って国会の御監視が弱まるというものではないのではないかというふうにとらまえております。

福島委員 私は、むしろこの法案はぜひ一日も早く成立をさせていただきたいと思っておりますが、成立した後、新しい組織をどうつくっていくのか、ここのところが非常に大事な次のステップでありまして、国会の側もしっかりとそれを監視していかなきゃいけない、与党としてもこの点についてはしっかりと取り組みを継続する必要がある、そのように思っております。そういう意味で、むしろ法案が通ってしまって監視がなくなる国会であっては困る、そのように申し上げたいわけであります。

 また、この委員会での審議におきましては、旧年金福祉事業団において、年金福祉研究会、こういう裏金づくりのような不祥事が明らかになったわけであります。まことにもってけしからぬ話でありますし、まさにガバナンスが一体どうなっているんだ、こういうことが横行することを認めるような組織のあり方そのものが私は問題だと思っておりますし、新しい組織のもとではこうした不祥事を絶対起こさない、そういう強い決意で新しい組織づくりをしていただきたい、そのように思うわけであります。

 日本年金機構、先ほど申しましたように、民主党の先生方からは、独立した公法人になって、監視の目が行き届かなくなって、また勝手なことをするんじゃないか、こういう話でありまして、この点について明確に、ガバナンスをどう評価するのか、こういう視点から、起こり得ない、起こしてはならない、この点についての政府の御見解をお聞きしたいと思います。

清水政府参考人 お答え申し上げます。

 日本年金機構は、昔の年金福祉事業団など従来の特殊法人と異なるものと考えてございます。それは、日本年金機構は厚生労働大臣の直接の監督下にあるということ、それから、法令に基づきます年金事業、その業務のみを行う法人であるということでございまして、御指摘の年金福祉研究会といったような事案は生じがたいというふうに考えてございます。

 また、規律保持のための装置を用意しておるわけでございまして、職員の法令違反が疑われるような場合の内部通報制度、実際に何件も通知をいただいてございます。また、外部通報制度がございます。そういうものを論議する法令遵守委員会がございます。外部の弁護士の方に今御参画いただいてございますけれども、このような取り組みは機構においても引き続き行っていくべきというふうに考えてございます。

 また、今回の法案では、機構が職員に非違行為があった場合の制裁規定を作成いたしまして、厚生労働大臣の認可を受けなければならないということにしてございます。

 機構の職員は非公務員でございますから、国家公務員倫理法の適用を受けません。しかしながら、この制裁規定におきまして国家公務員倫理基準に準じたルールを盛り込むということを考えてございまして、それに基づいて、非違行為があれば厳正な処分をしてまいりたいと考えてございます。

 また、いずれにしましても、そのような不祥事、非違行為が起こらないような職場規律といったものが重要でございますから、職員の意識改革は大事でございまして、そのための研修でございますとかさまざまな措置を講じてまいりたい、そのように考えてございます。

 不祥事等々を何とか少なくする、できる限りゼロにしていくという強い意思が機構においてやはり必要ではないか、そのようなために私どももさまざま準備してまいりたいというふうに考えておるところでございます。

福島委員 この年金福祉研究会の話というのは、年金制度といういわば公のシステムから私の利益をかすめ取る、こういうことなんだろうと思います。この点は、例えばグリーンピアのような話とも一脈通じるようなところがあるなと私は思って、話を伺っておりました。そうした意味からも、新しい組織として新しいスタートを切る、そのことによって、年金制度という国民にとって本当に必要不可欠な公の制度というものをしっかりと運営していく、そういう区切りをつけるべきだ、そのように私は確信をいたしております。

 また、天下りの話も問題になっておりました。国から機構への天下り規制というものはどのように適用されるのか、この点についても、大切な点ですので御説明をいただきたいというふうに思います。

清水政府参考人 日本年金機構が発足いたしました後の国と機構との関係でございますけれども、今国会に提出されております国家公務員法等改正法案が成立いたしますると、これによる再就職の規制が適用されます。ただ、一点だけ補足いたしますと、日本年金機構の発足に当たっての一回限りのことでございます。その発足に当たっての職員採用、これは、機構が現在社会保険庁が担っている業務を引き継ぐ組織でございまして、年金業務に精通した者を職員として募集し、その中から選考して採用するということでございます。この一回限りについてはいわゆる天下りに当たるものではない、このように考えてございます。

福島委員 また、天下りについて言えば、機構から民間への天下りは今回の国家公務員法等改正法案の適用される範囲ではない、したがって、天下りのし放題になるんじゃないか。これは多分に日本年金機構が持つ業務の性格、そういうものをどう考えるかということによっておのずと判断ができる話だと思いますけれども、こうした御批判について政府としてはどう考えているのか、明らかにしていただきたいと思います。

清水政府参考人 日本年金機構は非公務員型の法人でございます。したがいまして、他の非公務員型の独立行政法人と同様でございますけれども、今回国会で御論議されております国家公務員法等改正法案による天下り規制は適用されないわけでございます。しかし、幹部職員に早期退職勧奨の慣行がある中央官庁、これと機構は異なるわけでございます。これから組織立て、いろいろな、給与等々さまざま新しいことが考えられていくわけでございます。その中におきましては、まじめに働く職員はそれぞれの能力に応じて定年まで勤務できるようにするといった形を組み立てることも可能でございまして、そういうことにできるのであれば、機構が押しつけ的に天下りをする必要がないようにできるのではないか、そんなふうに私ども考えておるところでございます。

 また、もう一点ございます。機構の発注契約を原則として競争入札または企画競争入札にするということにいたしまして発注業務の透明性を高めるということも、これは極めてこの問題に関しましては重要であるというふうに勘案しまして、これを進めていくことにより不明朗な天下りの土壌というものが生じない、そういうことにできるというふうに考えてございます。

福島委員 坂口大臣のもとでさまざまな入札改革をスタートしていただきました。今後、日本年金機構の設立以後でありますが、できる限り民間にできるものは民間にゆだねる、こういう組織運営をしていく、業務運営をしていく、こういうことになるわけでありまして、このところは、業務委託を受ける民間の企業とそしてまた日本年金機構との間の関係については、入札のプロセスは透明にする、こういう話はありましたけれども、今後の具体的な組織の構築に当たりまして十分注意をしながらやっていただきたい、そのように私は思っております。

 また、これに関連してでございますけれども、第三者機関が当面の業務運営に関する基本計画を策定する、こういうことになっているわけであります。この第三者性というのは一体何なんだ、こういう御指摘もあるわけであります。

 少なくとも私は、第三者として、人材派遣でありますとか業務委託でありますとか資金運用などの面で利害関係がある方がそこでいろいろと決定をしていくということはふさわしくない、そのように思うわけであります。どこまでも公正中立に、民間にゆだねるものは民間にゆだねる、こういった判断を下していっていただく必要があるわけでありまして、この点について政府の考えを確認したいと思います。

清水政府参考人 第三者機関のメンバー選定でございますけれども、法案の附則の三条三項、「中立の立場」「公正な判断」といった規定がございますが、これに基づきまして渡辺大臣のもとで適切な方々の人選が行われていくものというふうに承知しておるところでございます。

 ただいまの福島委員の御指摘、御質問につきましては、私どもの方から内閣府の事務方にそういう御指摘があった旨伝達してまいりたいというふうに考えてございます。

福島委員 そしてまた、今のこの法案を議論するに当たりまして、現場の職員の方、さまざまな不祥事があったわけでありますけれども、ほとんどの方はまじめにお仕事しておられるんだろうというふうに私は思います。その中にあって、みずからの雇用がどうなるのか、こういう不安があることも事実なんじゃないかというふうに私は思います。

 いずれにしても、職員の皆さんのモラールが低下するということがあってはならないと私は思っておりますし、改革は現在の社会保険庁から日本年金機構へと進めていかなければならない、連続した線であるというふうに私は思っております。そういう意味で、これまで厚生年金また国民年金等の実務経験を持ち、そしてまたしっかりと職務をするという意欲を持っている人はきちっとその仕事の場が確保されるということが大切なことだというふうに思うわけであります。

 この点について、新組織の発足に当たりましてさまざまな判断がなされるわけでありますけれども、適切に対応していただきたい、このことを申し上げたいと思います。この点についての政府の御見解をお聞きしたいと思います。

清水政府参考人 お答え申し上げます。

 日本年金機構の職員の採用についてのお尋ねでございます。

 まず、採用数などの基本的事項につきましては、内閣官房のもとの学識経験者の会合、先ほど御指摘のございました会合の意見を聞いた上で、政府が基本計画として閣議決定するわけでございます。その上ででありますけれども、個別の職員の採否につきましては、大臣から委嘱されますところの機構の設立委員の方々が、中立公正な人事管理の学識経験者の会合の意見を聞きまして、厳正な審査をして決定する、そういう仕組みになっておるわけでございます。

 したがいまして、個別の職員の採用につきまして今私どもがお答えするという立場にはないわけでございますけれども、当然のこととして、これまでの勤務成績などに基づいて厳正な審査が行われるものというふうに考えてございます。

 新しい組織におきましては、この組織にふさわしい意欲と能力のある人材をしっかり採用することによりまして、効果的、効率的、安定的な事業運営を図ることが必要である、そのように考えてございます。

福島委員 以上で終わります。ありがとうございました。

櫻田委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十一時五十八分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時一分開議

櫻田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 この際、お諮りいたします。

 各案審査のため、本日、政府参考人として厚生労働省大臣官房総括審議官宮島俊彦君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

櫻田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

櫻田委員長 質疑を続行いたします。園田康博君。

園田(康)委員 民主党の園田康博でございます。

 午後も引き続きまして、日本年金機構法案ほか、私ども民主党が提出をさせていただいております歳入庁法案、この審議ということで進めさせていただきたいというふうに思っております。

 まず冒頭、私、きょうは三十分しかございませんので、大臣、簡潔に御答弁をいただきたいというふうに思っております。午前中の審議の中で、詳しく説明をされる、丁寧に説明されるという姿勢は、私は正しい姿勢であろうというふうに思っておりますが、ただし、この国会のルールの中では、質問者が国会議員の質問権という形で質問をさせていただいているという部分からすれば、その質問者の意図を酌んで、それに対して真摯に御答弁をいただきたいということだけ申し上げたいと思います。

 それから、一言、午前中の議論の中で、私はこの委員会に出席をしておりまして、つぶさに大臣がどういう御発言をされたのかということは見ているわけではありませんが、私ども民主党は、今回のこの年金の問題として、いわゆる五千万件の消えた年金という表現をさせていただいているわけであります。この消えた年金という概念に対して、どうやら大臣が、少し、そうではないのではないかという御答弁をされたということでありましたけれども、私は、一体大臣はどちらの立場に立っておられるのかという姿勢をまずお伺いしたいというふうに思うわけであります。

 つまり、後ほど、消えた年金記録の関連するところで御質問をさせていただきたいというふうに思っておりますが、実は、大臣の後ろに座っておられる方々、政府参考人も含めて、厚生労働省あるいは社会保険庁の職員の方々、この方々は、国家試験を受けられて、ある面、公務員という立場で入って、行政の執行官という形で入っておられる。しかしながら、大臣というお立場は、議院内閣制の制度の根幹の中で、いわば政治の分野から行政に対してしっかりとその統括をするという、政治家の立場でもお入りいただいているという立場ではないかというふうに思うわけであります。したがって、おのずと、行政官と、それから政治家としての大臣の立場とでは、私は違うんではないかと。

 すなわち、議院内閣制というものは、国会は国民の正当な選挙で選ばれた国会議員によって構成される。その国民主権に基づいて、国民の代表たる人間がこの国会を構成し、そして政治家が行政に対してさまざまなチェックあるいはバランスをとっていくということが本来求められる姿である。したがって、国民の代弁者、代表者という立場を離れてはいけないのではないかというふうに私は思うわけであります。

 であるならば、かんがみて、この今回の年金の問題につきましては、総じて、国民の立場、いわゆる受権者、年金の受給者、この立場に立って物を考えるというのが、私は大臣の役割であろう、一つの役割だろうというふうに思うわけであります。

 したがって、払ったはずの年金の記録が自分のところに届いていないということであれば、当然のごとく、払っている年金受給者の方からすれば、これは消えた、自分の払っている部分についても消えている、今現状は消えているというふうに表現してしかるべきではないのかなと私は思っております。

 だからこそ、我々は、その消えた年金記録をしっかりと復元してくださいね、しっかりとした責任を持って復元をすべきであるという立場において、消えた年金という問題を大きくとらえさせていただいて、この問題が解決するまでは、私は、よもやというふうに思うわけでありますが、この国会の委員会の中において採決を行う、ここで打ち切って、時間が来たから採決を行う、あるいは、当初の時間の、四十時間をめどにするということに対しても、それがいわば達成されていないにもかかわらず、そこにおいて途中で採決をされるなどということは、ましてやないというふうに信じておるところであります。

 そこで、大臣、政治家としての大臣のお考えを聞かせていただきたいんですが、そこまで私が申し上げて、だれの立場に立ってこの消えた年金という文言を使っているかということに対する大臣の御所見をまずお伺いしたいというふうに思います。

柳澤国務大臣 それぞれ言論の自由があるわけでございますから、ある事態をどのようにとらえて表現するかということも、それぞれの考えに従って御主張があろうかと思うわけでございます。

 しかし、消えたと言われますと、本当に世の中から消えてなくなってしまったのかというのが、一般に考えられる、その言葉から受ける印象でございまして、私どもの五千万件の記録は、基礎年金番号の記録と同じように、実はオンラインの中、つまり電磁的なファイルの中にファイルをされているわけでございまして、いわば統合を待っているというふうに言わせていただきたいわけでございます。

 私どもといたしましては、やはり、統合されていない年金記録ということで、国民の皆様にもこのことについてお申し出をいただいて、私どもとして丁寧にこれに対応して、できる限り早く、そして多く、統合すべきものを統合してまいりたい、こういうことを考えているということだけ申し上げさせていただきます。

園田(康)委員 それでは、その議論はまた後ほど、私の私見も含めて申し上げたいというふうに思います。

 それでは、まず、先般私がグリーンピアの問題といいますか、少し懸念材料があるというふうに申し上げた件がございました。言わずと知れたグリーンピアの南紀基地の話でございました。そうしましたら、先般、社民党の保坂委員からもそのような御指摘を受けたわけであります。

 その中で、一点、私が気になりましたのは、那智勝浦町とボアオ、契約先でありますが、ボアオとの契約において、その契約の場所として、二階現自民党の国対委員長でありますが、当時経済産業大臣の応接室が使われたというふうに御報告があったというふうに伺っております。

 まず、現実といいますか実態として、当時の経済産業大臣の応接室が使われたということに対して、まず、きのう、レクのときにお願いを申し上げたんですが、だれの指示によって、そして当該の場所がなぜ選ばれたのか、そしてそこに同席した者は一体だれであるのか、そのことを少し経緯を含めて御報告をお願いしたいというふうに思います。

柳澤国務大臣 経済産業省の大臣応接室において那智勝浦町と香港ボアオが契約を締結したということ、それから、契約の場には経済産業大臣は同席されていなかった、こういうことを、先般、年金局長の方から御答弁を申し上げましたけれども、今の委員の御質疑にございました、だれの指示で、だれの許可でというようなことまで、私どもは、特段、情報を得ていないのでございます。

園田(康)委員 ちょっと待ってください。大臣、きょうは政府参考人を私はお呼びをしておりませんが、昨日のレクの段階でお願いをしておりましたのは、きちっとこのことを経済産業省なり当時の大臣に対しても、しっかりと事実関係を確認しておいてくださいというふうに申し上げたんです。

 今、後ろの方でいらっしゃる方に、大臣にすぐお伝えをしていただきたいんですが、だれに指示したのか、だれが許可をしたのか、まずそのことをきちっと伝えてください。そして、だれに聞いたのか。私がきのう夜の七時の段階で調査をしろと言った。にもかかわらず、だれに聞いたのか、そしてどういう返答があったのか、すぐ大臣に伝えてください。

柳澤国務大臣 先般、年金局長の方から、私が今申し述べたようなことを町当局から得たということで、それをお伝え申し上げたわけでございますが、今の経済産業大臣の応接室がその契約の場として選ばれたということが、だれの指示で、だれの許可でというようなことについて、町当局には、これはもう町当局に調べさせるということ自体も、私はそれは困難であろう、こういうように考えるわけでございまして、これは経済産業大臣室の使い方の問題で、経済産業省の問題、こういうことになることは、これはもう委員も御案内いただけるかと思います。

園田(康)委員 だから、昨日の段階では、その経済産業省に対してきっちりと、あるいは那智勝浦町に対してきっちりと調査をしてくださいというふうに私は頼んでおきました。それがどういうふうな形で調査をされたのでしょうか。

柳澤国務大臣 いえ、これは、那智勝浦町もそうしたことを調べる立場にはないというふうに私は考えますし、また、私どもの方で、経済産業大臣の応接室が、どういうふうな方の指示で、どういう方の御許可のもとでそれがある使い方を、特定の使い方をされたときに、それがどうであったかということを調べる立場には私はないだろうと思います。

園田(康)委員 そうしたら、大臣、ちょっと質問の趣旨を変えますけれども、では、例えば厚生労働省で、柳澤厚生労働大臣の応接室、これがそういう使い方をされたことはないとこの間おっしゃっておられましたけれども、そういう使い方をしていいものかどうか、厚生労働省ではいかがですか。

柳澤国務大臣 私がこの前申し上げたのは、私自身が大臣である、あるいはあった、そのときに、そういうことをみずからの大臣応接室でやったことがあるか、こういうお尋ねをいただいたので、私は、そういう経験はたまたまございませんということをお答え申し上げたわけでございます。

 厚生労働大臣応接室というものにつきましては、私ども、今、特定のそうした使い方について何か指示、許可の関係があるかといえば、これは、それを管理している秘書官室がいろいろ考えるのだろう。私の厚生労働大臣室は、応接間というよりも、むしろ私へのいろいろな連絡の待合室みたいになっておりますので、そういうことで秘書官室が管理しているというふうに申し上げることができようかと思います。

園田(康)委員 その際に、当然、厚生労働大臣の応接室ですから、厚生労働大臣の所管の業務の範囲内で行われるべきものだというふうに私は考えるんですが、仮に、厚生労働省の所管の業務に関係のない契約事項をその厚生労働大臣の応接室で行うということは可能なんですか。

柳澤国務大臣 これは、可能かどうかということであれば、別段、大臣がこれをどういうふうに使うかというのは、大臣秘書官室が事実上管理しておりますけれども、大臣の意向に沿った使われ方をするということについて、秘書官室は、それは困りますとかというようなことは多分言われないだろうと想像するわけでございます。

園田(康)委員 では、そうしますと、全然関係のない、例えば柳澤厚生労働大臣の御地元の業者と、例えば道路建設にかかわる公共工事の契約を国土交通省所管のもので結ぶのを大臣室で、応接室でやっても構わないということになるんですか。

柳澤国務大臣 これは、先ほど園田委員は、冒頭、私の立場というのは行政官庁という立場、行政官庁は行政法で言う行政官庁で、我が名においていろいろと行政的な処分を行う主体という意味で申し上げたのでございますけれども、そうであると同時に、また、その出自を尋ねれば、衆議院議員である、その意味では政治家である、こういうことをいみじくも御指摘いただいたわけでございますけれども、政治家ということになりますと、これはまたいろいろな御判断の中で、便宜という意味で、最寄りのそういう部屋を使う場合も全くあり得ないというふうには私は考えません。

園田(康)委員 大臣、今の御発言、私は看過できるものではありません。すなわち、政治家としてさまざまな形で引き合わせるというような話、これをやるのであれば、御自分の議員会館があるんじゃないでしょうか。その立場と厚生労働大臣の大臣室というものが同じ感覚で使われているというふうには、私は、到底これは見過ごすわけにはいかない御発言ではなかったのかなというふうに思うわけであります。

 ちょっと時間がなくなってきますので、大臣、この問題は、今後少し別の観点でお伺いをしていきたいというふうに思います。

 それでは、消えた年金の話でありますが、先般、我が党の内山委員からの資料の中で、茅ヶ崎市役所が出した領収書の記述の中で、いわば、国民年金保険料の保存期間というものが五年間、五年間でいいですよというふうに書かれていたわけであります。この領収書は、皆さんのお手元にもあったわけであります。

 この領収書に関して、運営部長が、このことに関しては、厚生労働省あるいは社会保険庁としてはこの領収書の保存に関する通達を出している、二回も出しているんだというふうなことをおっしゃっておられたわけであります。

 先般、私もその通達を拝見させていただいたわけであります。一つは四十六年、それからもう一つには四十九年に出されていたわけでありますけれども、まず、いわゆる年金保険料の領収書を保存するというこの施行規則をどういう形で行ったのかという事実関係についてはいかがでしょうか。

村瀬政府参考人 事実関係をお尋ねでございますので、御報告を申し上げます。

 まず、四十六年でございますけれども、「国民年金法施行規則の一部を改正する省令の施行について」ということで、各県に通知をしております。

 一方、四十九年でございますけれども、「国民年金における年金手帳の実施事務等について」ということで、同じくこの時期に、「領収書については、大切に保存しておくべき旨を注記させるなどして、長期間にわたつて所持しておくよう被保険者に周知徹底を図ること。」このような形でやってございます。

園田(康)委員 では、それに対して、この茅ヶ崎市の場合はこの通達に反してこのような記載をしたというふうに理解をしてよろしいんでしょうか。

村瀬政府参考人 前回も茅ヶ崎の事実関係につきましては運営部長から御報告をさせましたけれども、基本的な事務の流れということでお話し申し上げたいと思います。

 まず、平成十四年までは、地方分権法によりまして、各県、各市町村におきまして年金の事務を取り扱っていただいておりました。したがいまして、具体的にどうかといいますと、市町村は国の機関として知事の指揮監督を受けて、社会保険庁が都道府県に国民年金事務にかかわる通知を発した場合は、各都道府県は、その通知を受け、市町村に対して指示するとともに、指導監査などを実施しているものと承知している、こういう形でございます。

園田(康)委員 そうしますと、県の指導監督下にも違反していたということでございますね。そうするならば、社会保険庁はちゃんとやっていたということですね。それに対して、この茅ヶ崎市、例としては茅ヶ崎市だけが出てきたわけでありますけれども、ここがそれに対して違反をした。したがって、本来ならば、社会保険庁としては、年金の相談に来たときに、それに対して、立証責任としての領収書がなければ、もうだめですよということが成立しているというふうにお考えなんでしょうか。

 それに対して、私は一つの反論をさせていただきたいというふうに思っております。

 すなわち、ここの通達をごらんいただきたいんですけれども、皆さんにはちょっときょうお配りをしておりませんが、この四十六年、当該領収書には、領収書は必ず国民年金手帳に張りつけておくべき旨を注記した、これはいいですね。注記する等の方途を講じ、当該領収書を長期間にわたって所持しておくよう被保険者にその周知徹底を図ることというふうになっております。

 後段の部分で、当該領収書を長期間にわたって所持しておくようというふうになっておりますので、受給を受ける際、裁定の際に、このものをここまで保存しておかなければいけないということは、まずこの場で書いておりませんね。ただ単に、長期間保有しておくべきというふうに言っているだけであって、その長期間が、最後の最後、裁定を受けるまで、あるいはそれ以降まできちっと保持しておかなければいけないということがまず書かれていないということ。

 それから、周知徹底を図ることというふうに一番最後に書いてありますけれども、これについてどのような周知徹底を図ったんでしょうか。それによって、社会保険庁としての責任がまたさらに私は問われるんではないかというふうに思うんですが、どうでしょうか。

村瀬政府参考人 まず、現在の実務処理上の原簿という問題をちょっとお考えいただきたいんですが、基本的には、社会保険庁が保管しております電磁ファイルに基づきまして記録を管理させていただいております。したがいまして、市町村から進達されました年金の記録というものについては、基本的にはすべて電磁ファイルの中に保管をされている、こういう前提条件でございます。したがいまして、基本的に、御本人が年金の裁定請求をされて記録を確認されるという仕事は、電磁ファイルに基づいて確認をする、こういう仕組みになってございます。したがいまして、各市町村からの、または、もしくは個人の領収書という問題につきましては、補完的な措置と。したがいまして、今回、特別対策月間という形で、どうしても記録が見えないということについて、御本人がそういう領収書等をお持ちになっていればそれによって訂正をさせていただく、こういう実務をとっている、こういう形でございます。

園田(康)委員 したがって、領収書がない場合に、それの立証責任は社会保険庁にあるんじゃないですかというふうに私は申し上げているんです。

 すなわち、社会保険庁がきちっと、瑕疵なくして、長期間保存ではなくて、この領収書は最後の最後までとっておいてください、そうでないとあなたの年金は将来的に証明できなくなりますよということを先に注意喚起しているのだったらまだ話はわかります。にもかかわらず、それがなかったわけでしょう。どこで、どういう通知でそのことが証明できるんですか。あなた方にもその証明責任、立証責任はあるんじゃないでしょうか。

 きのうの参考人質疑の中において谷澤弁護士がおっしゃっておられました、立証責任の転換という考え方があります。最後、ちょっと私も時間がなくなってきましたので、大臣、この問題について逆提案をさせていただきたいんです。今の長官との議論では、長官はあくまでも、いまだに領収書だ、領収書だというふうにおっしゃっておられる。その原簿そのもの、電磁的な原簿、コンピューターの中においてもきちっとそれが整理されているかというと、そうではなかったわけですね。しかも、それに漏れている記録もまだあるかもしれないというところまで言われているわけです。そのコンピューターそのものが全部正しいということであるならば、私は、その議論は正しいと思うわけでありますが、そのコンピューターそのものの記録が一部欠けている、あるいは、先ほど申し上げたように、コンピューターの中にも入っていない記録というものがまだまだひょっとしたら百万件ぐらいのものがあるかもしれないというふうに言われている。だったら、それをきちっとした形の完全なる情報としてつくり上げたならば、それは原簿として認められるであろうというふうに思うわけなんですね。

 そこで、その領収書を持ってこないとあなたにはその権利はありませんよと言うことの是非でありますけれども、それは、すなわち、社会保険庁として、今までそういう形をきちっと周知徹底しておかなかったんです。

 しかも、委員長、この間、内山委員から指摘をさせていただいているんですが、全国的な調査を行ってほしい、このことは理事会で協議をしていただきたいというふうに言っておきましたね。この調査というものも一刻も早くやっていただきたい。すなわち、それによって多くの方々が領収書を保管しなくてもいいという認識の中でそのまま来ていたかもしれない。ここに来て、いざ、領収書を持ってこないとそれは証明にはなりませんよというふうに言っていたのでは、らちが明かないではないですか。だから、その立証責任はまず社会保険庁の中にあるんですよということを立証責任の転換という形で行っていく必要がある。これこそ、私は、国民の、年金受給者の権利として、それを守る政治家としての大臣の御判断が必要ではないかというふうに私は思うわけですが、いかがですか。

柳澤国務大臣 国民年金法、厚生年金法ともに、裁定につきましては受給権者の申請に基づき裁定をする、こういうふうに法律で明定されているわけでございます。

 したがって、我々の行政の基本的な枠組みというのは、国会で成立させていただいたそういう法律に基づいて行政が行われるということは当然だというふうに考えますが、実際上はどうやってやっているかというと、私どもは、裁定に当たって、当方が原簿で持っている情報というものをそれぞれの受給権者たるであろうそういう方々にそれをお送りして、それをよく確認してくださいということ、つまりターンアラウンドの方式というものをとらせていただいて、そして、これでいいですとか、これはちょっとここが欠けているように思いますというようなお申し出等をお受けして、適正な裁定をするということをいたしております。

 そして、その場合に、先ほど園田委員は、長官の答弁をそういうふうにおとりになったようですが、そういうことではなくて、領収書だけで、領収書を持ってこなきゃだめというようなことを言っているんじゃなくて、いろいろなことも、また領収書がない場合でも、いろいろな状況を勘案しながら真正なものに近づいていくという努力をさせていただきますということを御答弁申し上げているわけでございます。

園田(康)委員 ですから、まず実態として、では、社会保険庁の長官、社会保険事務所の職員が、領収書を持ってきなさい、そうでなければだめだと言ったことはないということでよろしいですか。そういった事実はなかったということでよろしいですか。

村瀬政府参考人 具体的な事例として委員にもお示しさせていただいたと思いますけれども、領収書だけではなくて、例えば口座振替等で預金通帳から落ちている部分であるとか、さまざま個別具体的に見た上で承認できるものは承認させていただいている、こういう仕組みをとっているということでございます。等ということでお考えいただきたいと思います。

園田(康)委員 ですから、最終的には領収書というものが証明になるということでありますね。それを持ってこなければそれは証明できてないんだからあなたはだめですよというふうに、事実的に、実際というか、現場ではそういう形になっているんですよ。そういうふうに言われて何人もの方々が追い返されてしまっている。きのうの参考人の谷澤弁護士だって、そのように同じように言われているじゃないですか。しかも、それで、もう一度調査をさせて、では、社会保険庁の事務所の中にあった、ようやく見つかったからそれで請求しようとしたら、今度は会計法の時効によって、その受給、あなたの権利はもうなくなっていますよというふうに言われてしまっている。こんなばかげた話があるでしょうか、大臣。

 だからこそ、私は、先ほどから申し上げているように、救済措置というのをやりなさいということを申し上げているんです。やって考えてみたらどうですかと。すなわち、何度も申し上げているように、厚生労働省が悪い、あるいは、社会保険庁が、法律行為によって、違法行為を行ったということを申し上げているつもりはありません、私は。よろしいでしょうか。その辺、勘違いしないでください。

 したがって、賠償責任たる救済をしろと言っているわけではないんです。あくまでも、補償責任で、結果責任でこういう形になっている以上、それをやるべきではないかというふうに申し上げているんですが、大臣、いかがですか。

柳澤国務大臣 まず、先ほど申したように、この年金記録相談の特別強化体制におきましても、被保険者の方から、いろいろな、五十八歳通知等の機会で御相談をいただく場合には、まず第一に、我々の現在の台帳であるところの電磁ファイルでもって対応させていただくということでございます。

 しかし、それではやはり自分は不満足であるというような方につきましては、照会の申し出というものを改めてしていただきまして、今度は、さらに徹底した調査を行うということを私どもとしてやらせていただいているわけでございます。この場合には、厚生年金であれば、マイクロフィルムであるとか、事業所への照会であるとか基金への照会であるとか、場合によっては健保組合への照会、こういうようなこともやらせていただいて、その場におけるいろいろな私どもの原簿を補強するような調査をやらせていただいておる。

 それから、そういうことで確認をした上で納得をしていただければいいんですが、さらにまだ回答に不服があったり、また、別途の資料が見つかるというようなことになりますと、これは、本来、受給権者あるいは被保険者に応対する官庁といたしましては社会保険事務所でございますけれども、事実上、本庁でもって、さらに、もっと事情に詳しい者がそれぞれの状況にも当たるということで判断をさせていただくという、二段構え、三段構えの調査体制をしかせていただいて、そして、その上で、本庁から事務所に対して意見を言うというようなことで、幾つもの段階を設けて、真正な、客観的な事実に近づく努力をさせていただいておるということでございます。

櫻田委員長 既に持ち時間が経過しておりますので、質疑を終了してください。

園田(康)委員 おっしゃるとおり、質疑は終了させていただきます。

 最後に、今大臣るるおっしゃいましたけれども、まず、私は、姿勢として、国民の生活権がかかっている大切な大切な年金、この生活費たる年金をお預かりしている立場であるということは忘れないでいただきたい。お預かりをしていたにもかかわらず、それが自分のミスによってなくしてしまった、あるいは、どこかに行ってしまった。確かに、その当時はいろいろな理由があったかもしれません。移動する際にその原簿をどこかにしまい込んでしまったというのは全くないとは言い切れないと思うんですね。

 したがって、そういう事実があったかもしれない。だからこそ、一生懸命私どもの方で調べさせていただきますから、どうぞ皆さん、国民の皆さん方にも大変申しわけないことをしてしまったけれども御協力はお願いしますという立場で、私は、国民に対して大臣のそういう言葉があってしかるべきだったのではないかなというふうに思っております。残念ながら、そういった言葉も聞かれませんでしたので、私は、今の大臣のその姿勢というものは到底私の受け入れられるものではないということだけ指摘をさせていただき、質問を終わらせていただきます。

櫻田委員長 次に、内山晃君。

内山委員 民主党の内山晃でございます。

 園田議員と大変かぶる部分もあろうかと思いますけれども、切り口を変えて、お尋ねをさせていただきたいと思います。

 基礎年金番号へ未統合の五千万件の被保険者問題が余りにも大きく国民に影響のある問題なので、肝心の法案審議の中身になかなか質問が入れません。きょうは、先に法案審議の方を質問させていただきたいと思いますので、よろしくお願いを申し上げます。

 さて、いささか我田引水に感じますけれども、大変理不尽な取り扱いとなっております社会保険労務士の登録拒否について質問をさせていただきたい、こう思っております。

 今回の改正案で、社会保険労務士が、社会保険料、労働保険料の滞納によって、社会保険労務士の登録申請を認めないことや一年以上の業務停止の懲戒処分を受ける対象となっている理由、これは一体何なんでしょうか、お尋ねをしたいと思います。

柳澤国務大臣 社会保険方式によります我が国の公的年金制度におきましては、保険料の確保というものが存立の基盤であることは申すまでもありません。そこで、保険料の納付促進を図るためには各般の努力をいたしておりますけれども、それに加えまして、さまざまな関係者との連携協力のもとに社会全体での取り組みを進める必要がある、このように考えております。

 その一環として、社会保険労務士さんは、社会保険及び労働保険の業務について特別な地位を与えられている、こうした地位にある者が保険料を確実に納付しなければ、年金制度に対する国民の信頼や納得を得ることが難しい、このように考えまして、滞納処分を受けながらその後もなお三カ月以上にわたって引き続き滞納しているという、いわば確信的な滞納者につきましては、社会保険労務士の登録申請を拒否するという措置を設けたところでございます。

内山委員 ただいま大臣の答弁にありました中におきまして、特別な地位が法律上付与されている、こういうふうに書かれておりますけれども、特別な地位が認められる、これは、特別な地位とは一体何なんでしょうか。

柳澤国務大臣 社会保険関係の業務をいわば被保険者にかわっていろいろ取り扱うことができるという職業上のお立場でございます。

内山委員 社会保険労務士を、社会保険に密接にかかわる従事者として位置づけている。医療、介護、看護の従事者と違いまして、社会保険労務士というのは、年金保険料や健康保険料、こういった保険料から手続報酬とか顧問料という形が発生しているわけではありません。民間の損害保険会社、そして生命保険会社のように、保険料を払った中から手数料という形でいただいているわけではありませんので、ここはどうも医療従事者との相違点を感じるわけでありますけれども、いかがでございましょうか。

柳澤国務大臣 社会保険労務士の先生方の業務でございますが、労働社会保険諸法令に基づく帳簿書類、申請書等の作成、申請書等の提出代行、申請、届け出等についての事務代理、紛争調整委員会における個別労働紛争のあっせん代理、労務管理その他労働及び社会保険に関する事項についての相談及び指導、こういうようなお仕事でございますが、そのお仕事については、いわゆる業務独占ということでございまして、それ以外のものは、他人の求めに応じ報酬を得て、業としては行ってはならない、こういう立場が認められているということでございます。

内山委員 いささかちょっと質問と答弁がかみ合わないんですけれども、私たちは、社会保険料や労働保険料から手数料としていただいているわけではなく、純粋に事業主さんから手数料としていただいているわけですよ。ここが大きく、医療関係者と社会保険労務士との違いがあるわけですよ。なぜこれを医療関係者と一緒に、社会保険労務士をその中に一緒にして欠格事由みたいな形で扱うんでしょうか。もう一度、御答弁をいただきたいと思います。

柳澤国務大臣 委員は、医療機関についても、今回の私どもの法律で、一定の協力をいただくという立場からこの条項を設けさせていただいておることとの比較をなさって、社会保険労務士は保険料から何ら手数料等を得ていないという御指摘をいただいているわけでございますけれども、私どもとしては、その報酬の原資いかんの問題ではなくて、社会保険労務士というものも、いわば我々の年金制度というものの中で特別な立場に立っていろいろと御協力をいただきたい、あるいはいただくべき、そういう立場であるというふうに考えて、今回の条項を設けさせていただいたということでございます。

内山委員 それではお尋ねいたしますけれども、他の国家資格、例えば弁護士さんであるとか税理士さんであるとか公認会計士さんであるとか、いろいろ国家資格はたくさんございます。そのような人たちは、社会保険料や労働保険料を滞納してもよいということでしょうか。答弁をお願いします。

柳澤国務大臣 私ども、今の御質問に対しては、よいというようなことを申し上げているわけではなくて、弁護士さんあるいはそういった方々について、それでは社会保険労務士としての仕事を停止することができるかということを設問した場合に、そういうような一部の業務停止ということはなかなか困難である、こういう認識で、今回、そうした認識に立った措置を、御理解をお願いしたいと考えているわけでございます。

内山委員 弁護士は社会保険労務士の仕事ができます。それから、行政書士の方も一部社会保険労務士の仕事ができます。矛盾をしているじゃないですか。他の国家資格も含めて、一律同じような取り扱いということであれば、これは納得をいたします。しかし、社会保険労務士が何でこの中に入るのか。

 それでは、実際に滞納処分を受けた社会保険労務士の事業所数、該当者は何名ぐらいおられるんでしょうか。

柳澤国務大臣 突然のお尋ねでございますので、今ちょっと事務当局に調べさせていただいておりますが、そういうことで、手元にあればお答えを申し上げたいと思います。(発言する者あり)

 仮に平成十六年度をとって申し上げますと、社会保険労務士事務所で、厚生年金保険料の滞納処分を受けました件数は二件、それから、国民年金保険料で同じく滞納処分を受けた件数は一件でございます。

内山委員 滞納処分を大量に受けているというのならともかく、国民年金保険料でいけば、十六年は一件じゃないですか。そして、厚生年金でいけば、十七年度が三件、十六年度が二件、十五年度が五件、十四年度が二件。

 何でこういう滞納処分の少ないところがこの中に入らなきゃならないんですか。納得ができません。

柳澤国務大臣 年金の保険料というものの大事さ、重要性ということについては、委員も御理解、御認識を深くいただいておるものと思いますが、そういう立場で、この問題に専らかかわりのある、そうした社会保険労務士の先生方については、ある意味で専門職としてのお立場からぜひ御協力をお願いしたいということで、別段、登録拒否であるとかあるいは業務停止を目的としているということではありません。

 姿勢の問題として、ぜひとも協力をお願いしたいんだということの意思をこうした形で表明させていただいておる、こういうことでございまして、万が一、滞納処分で、しかもその後なお三カ月も滞納されるような場合に限って規定をさせていただいて、姿勢というか協力体制の構築をお願いしているということでございます。

内山委員 もう一度お尋ねをします。

 他の国家資格者、弁護士、税理士、公認会計士、こういう人たちは滞納してもいいんですか。この人たちの滞納処分の実績、こういうのがありますか。

柳澤国務大臣 弁護士さん、公認会計士さん、それから行政書士さん等についてのそうした滞納実績については、ちょっと手元に用意がございません。

内山委員 比較対照もしないで特定の業種のみ罰則的な取り扱いをするというのは、法のもとの平等に反するんじゃないですか。憲法に違反しているんじゃないですか。明確に答えてください。

柳澤国務大臣 これは、異なる方々を異なるように扱うということが平等原則に反するとは、私は考えておりません。

内山委員 他士業の滞納処分のデータもなくて、おかしいじゃないですか。どうやって比較をしているんですか。

柳澤国務大臣 先ほど来申し上げておりますように、社会保険労務士の先生方のように専門的なお立場で、まさに年金の保険料のいろいろ、計算であるとか申請であるとかということに直接かかわりを持つ方々に対しては、特別な立場からの御協力をお願い申し上げたい、そういう考え方に発するものでございます。

内山委員 昨日、参考人に来られた方も弁護士さんですよ。多くの、年金のこういう問題を取り扱っているじゃないですか。

 特定の業種のみを扱うということは、これは不公平ですよ。国家資格全員をやるのならともかく、私は全く納得ができない。どういう答弁をいただこうが、全く納得ができないと私は思います。

 ぜひ他士業の滞納処分の情報を委員会に上げていただきたいと思うんですが。委員長、他士業の滞納処分の実績を委員会に上げていただきたいと思うんです。

櫻田委員長 委員長として、審議をスムーズに運営するのが私の任務でありまして、調査するのが私の任務ではございません。

内山委員 理事会に上げていただきたいとお願いをしているんですけれども。

櫻田委員長 柳澤厚生労働大臣。(発言する者あり)

柳澤国務大臣 委員長の御指名でございますので、答弁をさせていただきます。

 現行法におきまして、社会保険労務士と税理士の登録拒否の理由でございますけれども、社会保険労務士法十四条の七と税理士法二十四条にそれぞれ規定をされておるわけですが、税理士法には、国税または地方税について不正に賦課徴収等を免れまたは免れようとした者で、その行為があった日から二年を経過しないもの等というようなことで、やはり税理士さんについては、税務に直接かかわりのある士であるという立場で、このように、国税、地方税についての賦課徴収に対して一定の協力を、特別の協力を求める、こういう考え方の規定があるわけでございまして、社会保険労務士の先生方にも同様の見地から、今回このような規定を設けさせていただいたということでございます。

内山委員 今の大臣の答弁、私は全く質問をしていない答弁であります。審議妨害です。

 その前に、委員長に各士業の滞納処分の実績を理事会に報告をしてほしい、こういうことをお願いしました。ここから始めてください。

櫻田委員長 それでは、後刻理事会で協議いたします。(発言する者あり)

 静粛にお願いします。

内山委員 国民の代表として、私たちは負託を受けてここに来ているわけです。国民の重要な年金を審議しているわけでありまして、きちっと委員長の議事采配をお願いしたいと思います。

 それから、大臣に申し上げます。私は、今の大臣の答弁に対しては質問をしていません。税理士がどのような処分を受けているかなんというのは聞いていません。それぞれの他士業の滞納処分の実績について、委員長に、理事会に資料を上げていただきたい、こうお願いをしているところでありますので、ぜひそこはお願いをしたいと思います。

 さて、時間の関係もありますので、前々回から続いております国民年金保険料領収書の保管期限のことにつきましてお尋ねをしたいと思います。

 五月十八日の委員会で、茅ヶ崎市の国民年金保険料領収書は保管期限が五年と明記してある資料をお示しし、質問をいたしました。きょうの配付した資料をごらんいただきたいと思います。所沢市の国民年金保険料領収書が新たにその資料の中に含まれております。実はこの領収書の保管期限は、五年と書かれております。多くの市町村でこのように保管期限を明記していると想像できます。

 前回も申し上げましたが、社会保険事務所に、年金納付記録が未納となっている、誤りではないかと相談に出向いた方に対し、保険料を納めた領収書がないからだめだと言って取り合わないことは、この茅ヶ崎や所沢の例を見れば、全く役所の対応はおかしいということになるわけであります。

 予算委員会の先ほどの集中審議で、長妻議員がやはり取り上げておりました。二万六百三十五人のうち一万七千四百三十八人は申し出た内容のすべてが却下され、三千百九十七人は申し出た内容の一部しか認められなかった。領収書を持参していなければ保険料納付を認められず、結局、約百三十人に一人しか救済されていない。おかしいじゃないですか。所沢にしても、茅ヶ崎にしても、保管期限をきちっとこれで五年とうたっている資料が皆さんのお手元のところにあります。日付も入っていますよ、本当に。

 私は、前回の委員会で、全国の市町村すべて調査をすべきだ、こう申し上げましたら、与党の反対により拒否をされている、こう聞きました。大臣はどのようにお考えになりますでしょうか。御所見をお尋ねしたいと思います。

柳澤国務大臣 社会保険庁におきましては、昭和四十六年十月から、国民年金保険料の納付方式につきまして、いわゆる印紙納付方式に加えまして、現金納付方式を認めるということにいたしました。そのことを踏まえまして、都道府県に対して、領収書は必ず国民年金手帳に貼り付けておいてくださいという旨の注記をする等の方途を講じまして、当該領収書を長期間にわたって所持しておくように被保険者にその周知徹底を図ることということで通知を申し上げたわけでございます。

 地方分権によりまして、市町村に対する機関委任事務が廃止される前は、市町村は国の機関としての知事の指揮監督を受けておりまして、社会保険庁が都道府県に国民年金事務に係る通知を発した場合には、各都道府県において、その通知を受けて、市町村に対し指示するとともに、指導監督などを実施していたものと承知をいたしております。

内山委員 もっと生きた答弁をしてほしいですね。

 資料の四番を見てくださいよ。昭和四十六年度の大きな資料の下に「この領収証は五年間保存して下さい。」昭和四十六年七月三十一日の所沢の年金課の判こが押してあります。そして、さらに資料五枚目、五十六年七月から五十六年九月の国民年金保険料の領収書です。五十六年から、この領収書は「所沢市収納代理金融機関」というところを「この領収書は、裁定請求を行う時の証拠書ですので、大切に保存しておいてください。」このように書きかえたんですよ。四十九年の十月に指導したとなっていても、地方ではこのような状況なんですよ。

 国民年金領収書が手元にない、これは当たり前だと思いますよ。そういう当たり前の人たちを、国民年金の領収書が持参できないから、納付したという申告があったにもかかわらずさかのぼれない、門前払いをするというのは、どこか間違っていませんか。大臣、もう一度答弁をしてください。

柳澤国務大臣 私どものこの五十八歳通知あるいはターンアラウンド、裁定請求書の送付、こういった機会に、年金加入履歴に欠缺があるのではないか、こういうようなことを考えられた被保険者等の方がもう一度補正の申し出をされるという場合に、領収書があればそれはもう非常に、これはいわゆる資料として価値があるというふうに常識的に考えられるわけでございますが、先ほど来私が申し上げておりますとおり、領収書に限らず、このほかの納付が確実だというふうに考えられるような資料もまたお持ちいただければ、その事実関係の調査において大変私どもとしてはありがたい、そういうことでございます。

 それらを含めまして、要は私どもの方も、申し出をいただいたら、我々の手持ちのありとあらゆる資料に当たってしっかりした徹底した調査を行う、それがまず第二段階で、そして、さらにそれについてもなお腑に落ちないというような方々については、記録の申し立てということで、本庁の練達の担当官が構成するチームにまたいろいろと審査を申し出るというようなこともあり得るとして、その体制をしいておりまして、私ども、領収書のあるかないかということだけですべてを決するというような考え方に立った行政をいたしておるわけではございません。

内山委員 大臣は、その他の資料があればそれを参考にと。でもその他の資料があるかどうか、それもわからないですよ、昔のことですから。家計簿があるかとか、つけていない人だっていっぱいいますよ。論理が矛盾するじゃないですか。何もなかった、領収書もなかった。どうやって救済するんですか。

 これは、先ほど園田議員も言いました。私も強く申し上げたいと思います。国民が申し出た疑義ある国民年金保険料納付期間に対して、社会保険庁は、国民が年金保険料を払わなかったということを逆に立証しなければならない責任があると私は思います。ぜひそこは考えていただきたいと思います。大臣、いかがでしょうか。

柳澤国務大臣 私ども、先ほど来、累次お話し申し上げておりますように、国民年金にせよ厚生年金にせよ、法律にのっとった行政をしなければならないという立場でございまして、そこには、裁定というものは申請主義によるんだというふうに書かれておるわけでございます。しかしながら、私どもは、すべて申請がなければ給付なしというようなことではなくて、我が方から、私どもの持っている資料をお示しして、これでよろしいでしょうかということの確認を裁定の決定前にさせていただく、そういうことで、それに欠缺があるというような考え方、認識をお持ちの被保険者の方には申し出をいただいて、丁寧に調査を申し上げます、こういうことで、真正な納付の実績というものに基づいた裁定を心がけているところでございます。

内山委員 前回もお配りをしましたが、きょうも同じように資料の一番でお配りをしております。佐賀社会保険事務局より、「「国民年金納付記録」誤りについて」、この報告書が出ております。この詳細を御説明いただけますでしょうか。

柳澤国務大臣 御指摘の事案につきましては、平成十八年の五月に、国民年金の保険料が一部未納になっているというオンライン記録に基づきまして年金の裁定を行ったところ、その後、同年六月に、御本人から佐賀社会保険事務局に国民年金納付記録の確認依頼があり、その結果、マイクロフィルムの記録によりまして特例納付されているという記録が判明したため、年金の裁定変更を行ったものというふうに認識をいたしております。

内山委員 なぜこのような事象が発生したのかについて複数の要素があるわけでありまして、その個々具体的な要素は大臣の御説明がありませんでしたので、私の方から、この原因として幾つか指摘をしたいと思います。

 まず、原因の第一として、紙台帳からコンピューター管理に切りかえる際、マイクロフィルムのデータを正しくコンピューターに入力しなかった担当職員の入力ミスです。

 原因の二、本人が六十三歳のときに、年金相談センターに出向き、保険料納付記録の照会をしました。昭和三十六年四月から昭和三十八年三月までの期間が未納とコンピューターのデータが表示されたため、未納であると回答しただけで、本人が疑義を感じていても、マイクロフィルムによる納付記録を照会せず、未納との回答しかしなかった職員のミスによるものです。マイクロフィルムのデータとコンピューター上のデータとに相違があることを示した顕著な例であると思います。

 原因の三、紙台帳からコンピューターに入力した際に職員がダブルチェックをしなかった、またはダブルチェック時にチェック漏れが発生したことによる職員のミスによるものである。コンピューター上のデータがいかに信用できないかを物語っている顕著な事例である、こう思います。

 大臣、今、私が一から三まで申し上げましたこの原因、御所見をいただきたいと思います。

柳澤国務大臣 紙台帳の記録をオンラインの記録に入力する際の誤りということがここの事案で見てとれると思います。それからまた、今委員が仰せのように、三十六年四月から三十八年三月でしょうか、未納が見出されたということで調べに行ったと仰せられたんでしょうか、そういうことについて、これの際に調査が不十分であったというミス。それから三番におっしゃられた、ダブルチェックから、そこにまたミスがあったのではないかということでございますが、紙台帳からコンピューター管理へ切りかえる際には、私が報告を受けているところでは、これはチェックをしておる、こういうことでございまして、そこで見つかれば、第一の、紙台帳からコンピューターへの切りかえということについても誤りが防げたはずだということについては御指摘のとおりかと思います。

内山委員 大臣は、当委員会の答弁で、五千万件の基礎年金番号未統合の年金手帳記号番号の中身について、定性的に三つに分類されると発言をされております。前回もお尋ねをいたしました。一つは、亡くなられた方、二つは、支給要件を満たさないで保険料の納付を終わった方、三つ目は、一定の年齢に達する等の要件を満たせば年金受給が行われる方。

 この五千万件の未統合被保険者記録は三分類型ではないと私は思っています。職員の誤入力によって発生したデータというのは、どこの分類に入るんですか。大臣にお尋ねをします。

柳澤国務大臣 大別してということを申し上げておるわけで、我々が大きく一つの塊として認識すべきはということで申し上げているわけでございます。

 なお、その後におきまして、もちろんこの五千万件には、もう一つの塊と申しましょうか、そういうものとして既裁定者のものも含まれるということでございますが、しかしながら、今、誤記入のものがないかと言われれば、番号において誤記入というのは、なかなか私としては、委員の御指摘ではありますけれども、行政に携わって責任を持つ立場としては申しづらいわけでありますけれども、年金加入記録というものの上でのミスということは残念ながらあり得るというふうに思います。

内山委員 原因の一で私も申し上げました、紙台帳からコンピューターに切りかえる際、マイクロフィルムのデータが正しくコンピューターに入力されなかった、担当した職員の入力ミスがあるんですよ。だから、こういう報告書が出ているわけであります。

 次に進めますけれども、配付資料の二また三をごらんいただきたいと思います。前回もお配りをしましたが、時間的な関係でできませんでしたので、ここで質問させていただきます。

 配付資料の新聞報道にあります、国民年金の未納者から集めた掛金を着服した事件について、大阪社会保険事務所二十八万円、練馬社会保険事務所四百四十六万円、蒲田社会保険事務所一千二百六十六万円を着服した保険料納付記録は、正しく納付されたことになっているんでしょうか。よもや未納となっていないでしょうね。着服した金額に対し、どのように納付を確認し対応したのか、それぞれ何人分で何カ月の期間だったのか、また、正しく漏れなくどのように処理をされたのか、お尋ねをしたいと思います。答弁をお願いします。

柳澤国務大臣 委員の御指摘になられた順番に申し上げます。

 大阪府内の社会保険事務所で発生した二件につきましては、平成八年八月から九月にかけて、城東社会保険事務所の職員が、被保険者五名から現金で領収した保険料約二十八万円を、国庫に払い込まずに着服しております。この場合、納付記録は正常に納付されたように入力をして、不正の隠ぺいが図られました。

 事後処理といたしましては、着服した保険料を返還させて、納付記録と整合をとったということでございます。

 それから、他の大阪のもう一件の事案でございますが、平成九年十月から十年六月にかけまして、同じく城東社会保険事務所の別の職員が、被保険者一名の国民年金の記録に架空の納付記録を追加した上で、その一部を取り消して、国民年金保険料の還付金約三十五万円を不正着服するということで、まことに遺憾千万で、ほかもそうですけれども、特にこんなことをしているというのは遺憾千万でございます。

 着服した保険料は返還させるとともに、改ざんされた記録は、真正な記録に修正をいたしております。

 それから、練馬社会保険事務所の件でございますけれども、これは、職員が被保険者二十九名から現金で領収した国民年金保険料約四百四十六万円を同じく国庫に払い込まずに着服して、それで納付記録の方は正常に納付されたかのように入力していたということでございます。これにつきましては、着服した保険料を返還させて、入力した記録との整合を事後的にとらせていただいたというものでございます。

 なお、蒲田社会保険事務所の件につきましては、平成十年、蒲田社会保険事務所の職員が百三十三人の被保険者から受領した国民年金保険料の一部、約千二百六十六万円を同じく国庫に払い込まず着服した上、納付記録の方は正常に納付されたかのように入力したという件でございます。これにつきましても、着服した保険料を返還させて、納付記録との整合を図ったというものでございます。

 また、同職員が被保険者記録を改ざんした事件は、年金の受給資格を満たしていない被保険者三十名から約千九百十四万円を不正に受け取り、年金を受給できるよう国民年金保険料納付記録を改ざんして、そのうち十九名に対して約二千六百四十五万円の老齢基礎年金等を不正に支給したという件がございます。改ざんした保険料納付記録は正しい記録に訂正をいたしておりますが、過払いとなった老齢基礎年金につきましては、今、返納させる取り扱いをしているところでございます。

内山委員 長々と御答弁をいただきましたが、私は何を聞きたかったのか、このことでまとめてお話をしたいと思います。

 これまで指摘をしましたように、職員の被保険者データの誤入力、マイクロフィルムとコンピューターデータとの相違点、職員の保険料着服事件、本当に年金のデータが正しいのか、疑問を感じるのは私一人だけではないと思います。こういう事案を知れば知るほど、年金制度に対して大きな疑念を抱くのがやはり当たり前だろうと思います。

 こういった状況の中で、社会保険庁の幹部の方がテレビで、五千万件の基礎年金番号に統合されていない被保険者記録は年金受給の際に判明するから大丈夫なようなことを言っているビデオを見ました。正しく年金受給をしていない方が現に存在しているにもかかわらず、これからも不利益をこうむる方が発生するであろうという状況において、公共の電波を使い、未統合の記録が国民に対し不利益を生じないような発言をしている社会保険庁の幹部を私は大問題だと思いますけれども、大臣はどのように思いますか。

柳澤国務大臣 私ども、被保険者の方々は、これを裁定する際にも、ターンアラウンドの手続によりまして、みずから年金加入記録というものを確認していただく、そういう機会がある等、また、事前にも、五十八歳、これからは四十五歳、三十五歳というように、常に確認をしていただく機会を提供して、年金記録というものを客観的に真正な事実に基づくものにしていく、こういう機会を累次設けさせていただいているところでございます。

 加えまして、今回、年金の既裁定者につきましても、私ども、振込通知書におきましてお呼びかけをさせていただいて、そして、これを補正していただく、そういう機会を設けさせていただいているところでございまして、この五千万件というものにつきまして、統合の機会ができるだけ与えられて統合されるということ、こういうことを念頭に置いた発言というものも全部否定されるべきということには私は考えないわけでございます。

 しかしながら、これから国民の皆さんに御協力を呼びかけていくということが必要でございますので、それにふさわしい事実の評価、現実の評価、それからまた国民の皆さんへの御協力の呼びかけというものが常になされなければならない、このように考えております。

内山委員 私の聞いていることは、社会保険庁の幹部が、今このような実態、状況で大丈夫なんですよということを言っていていいんですかということを聞いたんですよ。ちゃんと答えてくださいよ。

 時間が来ていますけれども、答弁が審議妨害をしていますので、もう少し続けてお尋ねをしたいと思います。

 社会保険庁はもっともっと反省しなきゃならないんですよ。今やらなきゃいけないことというのは、社会保険庁は、国民の年金記録を安心できるようにすることですよ。それが年金制度の信頼を取り戻すことの第一番だと思います。

 私からお願いをします。

 まず、マイクロフィルムとコンピューターデータの照合作業を早急に行うこと、二点目、三十万件の生年月日が壊れたデータを早急に修正すること、三点目、五千万件の基礎年金番号の未統合データから、死亡した方、受給資格が発生しない方を明確にして、年金受給に結びつくデータがどのくらいあるのか、実態を早急に把握すること、私は、これを大臣に望みたいと思います。

 もう一度申し上げましょうか。

 マイクロフィルムデータと……

櫻田委員長 内山晃君、申し合わせの時間が経過しておりますので、御協力願います。

内山委員 コンピューターデータを照合する作業を早急に行うこと、三十万件の生年月日が壊れたデータを至急修正すること、五千万件の基礎年金番号の未統合データから、まず、死亡した人、受給資格が発生しない人を除いて、年金受給に結びつくデータがどのくらいあるのか、実態を早急に把握すること、これをぜひお願いしたいと思います。

 また後ほどお尋ねをしたいと思います。

 終わります。

櫻田委員長 次に、長妻昭君。

長妻委員 民主党の長妻昭でございます。

 本日も質疑の機会を賜りまして、ありがとうございます。

 大臣におかれましては、ぜひ端的に御答弁をいただきたいと思います。

 委員長におかれましては、同じことの繰り返しのような審議妨害のおそれのあるような答弁が続くときは、ぜひ御注意をいただきたい。それを放置しておられる場合は、私は、その時間は自分の時間として、質疑時間が終了しても質問をいたしますので、御了解いただきたいということもお願いを申し上げます。

 まず、先日の民主党の山井議員から大臣に対する質問で、五年間の時効、これがあって自分は年金の納付記録が漏れているんだ、消えている、だから回復してくれ、こういうふうに要求される方は多いわけでございます、昨日の谷澤弁護士が言われていた例もございました、そういう事例で、ずっとおかしいと社保庁に言っていたけれども社保庁はないないと言っていた、しかし、ある日、社保庁側から、記録が見つかったという連絡がある、しかし、五年前まではさかのぼって不足の受給額をいただけるわけですが、五年以前のものはもらえない、こんな理不尽なことがあるのか、社保庁の怠慢で発見がおくれたのに五年前はさかのぼれない、これはおかしいのではないかという質問が山井議員からございました。

 柳澤大臣は、ちょっとあいまいでしたけれども、そこは見直すような御答弁があったやに私は記憶しているんですが、これは当然ですね。この五年時効というのは、何らかの法律をつくるのか、政府の見解を出すのかしていただきたいと思うんですが、いかがでございますか。

柳澤国務大臣 私の話が長いということ自体を何か審議妨害というようにおっしゃられたんですが、決してそういう気持ちは持っておりません。

 年金給付を受ける権利は、国民年金法等の規定により、その権利の発生から五年を経過したときに時効によって消滅することとされております。ただし、時効完成前に裁定請求を行わなかった場合等宥恕すべき理由がある場合は時効を援用しない取り扱いになっております。これは基本権のことについて申し上げます。

 一方、基本権に基づいて毎支払い期月ごとに支払われる年金給付の請求権、いわゆる支分権でございますが、この時効については、会計法の規定により、その権利の発生から五年を経過したときに時効によって消滅することとされております。会計法においては、消滅時効について援用をせず、またその利益を放棄することができないというふうに定められておりますので、時効期間の五年を経過した時点で直ちに消滅することとなるというのが法律の規定でございます。

長妻委員 大臣、ゼロ回答であるんですか。

 では、極端というか、こういう例を申し上げましょう。例えばの例として、そういう例は私は多いと思うんですが、社会保険庁の職員が怠慢で、きちっといろいろマイクロフィルムとかに当たればわかったのに、表面的に捜して記録がないとずっと答え続けた。ところが、例えば今回のように国会で問題になったので多少真剣に捜したらあった。そうしたら、五年前の記録はさかのぼれないと。その怠慢のせいで記録の発見がおくれたということがはっきりした場合、それでも時効で五年前はもらえない、こういうことでいいんですか。

柳澤国務大臣 先ほど私は、法律に基づく行政の一般ルールについてお話を申し上げたのでございますが、これと個々に判断すべき個別具体の権利救済との調整の問題については、その事案ごとに判断をすることが必要となります。

 具体的には、社会保険庁が受給権者の請求権の行使を著しく困難にさせた結果、年金の支分権が発生してから五年以上経過した後に行使されることとなったというような事例におきましては、消滅時効の主張が信義則に反し許されない場合もある、このように考えております。

長妻委員 それは大臣、今までの社会保険庁の対応と変わるということなんですか。

柳澤国務大臣 これは個別具体的な判断をするということが第一点で、その個別具体的な判断に当たって、社会保険庁が受給権者の請求権の行使を著しく困難にさせた結果、支分権が発生してから五年以上経過した後に行使されることとなったというような事例においては、消滅時効の主張が信義則に反し許されない場合がある、こういうことでございます。

長妻委員 では大臣、今までと扱いが変わるんですか。

柳澤国務大臣 私が申し上げているのは、今日考えられる行政のあるべき対応について申し上げたということでございます。

長妻委員 そうすると、今までと扱いを変えるということですか。今までも今言われたことはずっとやってきたわけですか。では、同じということですか。

柳澤国務大臣 こういうことは、一般の行政が従うべき原理について私が御説明をしたということでございます。(発言する者あり)(長妻委員「では同じか、今までと変わるか変わらないかだけ」と呼ぶ)

櫻田委員長 長妻昭君、質問を。

長妻委員 では、今までと変わるか変わらないか、扱いが。

柳澤国務大臣 これは我々が従うべき一般の原則について申し上げているわけでございまして、個々に行われる判断のことを申し上げておりますので、今までもこういう考え方は存在していたということでございます。

長妻委員 わかりました。今までもそういうことをやっていた、これからもやるということで、基本的には扱いは今までと変わらないということじゃないですか。大臣、正直に言ってください。時間が本当にもったいないわけでありまして、何か変える清新なイメージを打ち出そうという意図はわかりますけれども、今までと同じ原則をただ述べられたわけでありますから、ちょっとこれも失望します。当然の配慮があっていいと私は思うんです。

 そして、私、きょう午前中に衆議院の予算委員会で大臣と質疑をさせていただきました。そのときに大臣から、五千万件の記録について、受給者及び四十万件の二十五年の資格に満たない方々に関しては、名前、生年月日、性別をもとに抽出した五千万件のデータの中から、おたく様、例えばヤマダヒロシさんという方がいらっしゃれば、ヤマダヒロシさん、あなたは昭和何年から何年までこういう記録が抜けていませんかと具体的にお示しをする、こういう提案をしましたところ、ちょっと前向き的な御発言があったように聞こえたんですが、これは踏み込んでやるということでございますか。

柳澤国務大臣 あのときには安倍総理も御同席で、安倍総理も私の前に御発言があって、社会保険庁において工夫をするようにという御発言があったことは長妻委員も御案内のとおりでございます。

 私はその際に、今申されましたように、あなたの特別な調査をしましたから、まだ統合漏れの可能性がありますというようなことをお知らせするということは、これから統合していくにも、予算と手間はかかりますけれども、そういうことを今回振込通知書に加えまして、そういう方々に準備ができ次第やっていくということについては、これは検討してみたい、こういうふうに御答弁申し上げまして、我々は振込通知書でお知らせするわけですけれども、そういう可能性について、ちょうど平成九年の一月にやりましたような表現でもって特段の御注意をいただくようにお知らせをするということは検討してみたい、こういうことを申し上げた次第であります。

長妻委員 いや、がっかりしました。違うじゃないですか、大臣。平成九年のときと同じようにやると。

 つまり、私どもが申し上げているのは、ヤマダヒロシさんならヤマダヒロシさんと同じ名前、生年月日の方の記録を持ち出して、そのヤマダヒロシさんに、あなたは昭和四十年何月何日からこういう記録があるけれども抜けていませんか、こういうお尋ねをしてくださいと言った。大臣は検討すると言った。しかし、細かく今お伺いすると、そうじゃなくて、平成九年の基礎年金番号統合時にも被保険者の方に出していますよ、全部、受給者の方にも。つまり、ほかにあなた様は番号を持っておられませんでしたか、お考えください、こういうのはこれまでも出されているわけでありまして、そういうあいまいな聞き方がわからないということになっているので、それと同じことをやるんだったら全然これは、もったいないですよ、コストが。話が全然違うじゃないですか。

 予算委員会でテレビが入っているから何かやるようなことを言って、ちょっと、そういう誤解を招くようなことはぜひ言わないでいただきたい。例えばヤマダヒロシさんに対して、その同じ名前、同じ生年月日の記録を、これはあなた様の記録ですか、こういうふうにお示しするということを検討するということはしないわけですか、それは。

柳澤国務大臣 長妻委員があの場ではそうおっしゃったんです。何年何月からこういう会社にあなたは勤めておりましたという記録がありますがということを言ったらどうかという御提案に対しては、私は、そういうことはできないとその場でもはっきり申し上げました。

 それはどうしてかというと、いろいろ不規則発言もありましたけれども、私どもは、重複をして統合してしまったことすらあるわけでございまして、私どもができる最大限のことは、これから検討はしますけれども、やはり、こういうお持ちの可能性のあるお客様にのみこの通知は送付しておりますよということを言って、特別の関心をお持ちになっていただきながら、御自身が確認していただくということについていざなう、勧奨するというようなことを考えますということを申し上げたんです。

 長妻委員のように、何年何月からどこの会社におったというのはあなたでございましょうかというようなことをやることは、私はやはり、もし間違いが起こったときに行政に混乱を持ち込むことになるということを非常に懸念しておりまして、その観点から今のようなことを申し上げたということでございます。

長妻委員 今混乱させているのは社保庁じゃないですか。そういういいかげんな記録がいっぱい出てきて混乱しているんですよ。ですから、それを収拾するということが重要でございます。

 そして、実際、大臣もいろいろなところで御答弁しておられますけれども、基礎年金番号を平成九年に統合したときに、九百十六万人の方が、ほかに番号がありますよ、それでこれは統合されたということでございますか。そして、九百二万人の人に、名前、性別、生年月日が同じだという方を抽出して、別番号の可能性はありますか、こう聞かれている。足し算すると約一千八百万人。

 これは、私は通知を拝見しました、実物を。この九百二万人の方に、名前、性別、生年月日が、五千万件というか未統合の中にある方に、別番号の可能性はありますかという通知を拝見しましたが、私が読んでも意味がわかりません。ましてや普通の方が読んでもどういう意味なのかわからないような書き方で、細かい字で送られているわけでございまして、実際に一千八百万人に照会をしましたところ、五百六十五万人は未回答だった、こういうようなことも事実としてございますし、三百六万件の方々は、いや、自分は別番号はありません、こういうふうに答えたということでございますが、あの書き方だと、本当に深く理解して答えた方がすべてかというと、私は首をかしげるわけでございます。

 そういう意味で、同じやり方をしても五千万件の統合は進まないと思うから聞いているわけでございますが、大臣はゼロ回答ですけれども、これは我々はあきらめずに取り組みます。当然、すぐに、相手の確認もとらないで、宙に浮いた情報を名前と生年月日と性別が同じだからぱっと統合しろ、こんなことを私は言っているわけじゃありません。相手様に確認をいただいた上で、このデータというのを具体的に示した上で、裏づけもある程度とった上で統合する、これはどうですかと聞いているわけでございます。

 次に、今までいろいろ資料要求をいたしました。実は、かつてこの審議が始まる前に分科会で、私が柳澤大臣に、特殊台帳のほんの一部のサンプル調査をしてくださいと要請をいたしましたら、特殊台帳だけはやると大臣が言われて、今社保庁がそのデータの突合をやっている。各社会保険事務所が三百十二カ所ございますけれども、そこから約十件ずつアトランダムに特殊台帳、マイクロフィルムに入っているものを今業務センターに集めて、大半が集まった、三千件のマイクロフィルムが全国から集まったということでございます。では、それがコンピューターの中身と正しいのかどうか、今、突合の作業をしている。

 しかし、これは五月十八日の質問までにいただきたいということで、大分前に要請をしていたものでございますが、きょうぜひ出していただきたいと思うんですが、いかがでございますか。

柳澤国務大臣 マイクロフィルム化した被保険者台帳等の記録とコンピューターで管理する記録の突合につきましては、今委員が御指摘になられたとおり、現在、全国で約三千件程度のサンプル調査を実施しているところでございます。

 ところが、これは簡単にはなかなかいかないわけでございまして、コンピューター化したものをマイクロフィルム化したものと比較するには、マイクロフィルム化した時点にオンラインのコンピューターの記録を修正して、時点を合わせる作業が必要になるわけでございます。そういう意味で、結構これは時間をとっているということでございまして、現在のところ、この取りまとめに至っていないということでございます。

長妻委員 いつ出ますか。

柳澤国務大臣 本当に我々一生懸命やらせていただいておるわけでございますが、そういう手間のかかる仕事がありまして、大変恐縮ですが、今この時点で、いついつまでということを申し上げるだけの調査の進捗状況にはないようでございます。

長妻委員 いや、私、非常に不可思議な経験をしているんです。つまり、国会でこういうふうに質問すると、資料がぴたっと出なくなる。国会でこういうふうに問題が大きくならない前は、私に、五月十八日の私の質問までにまあ出るでしょう、こういうお話だったんです。五月十八日というのはもう過ぎておりますけれども。

 ところが、国会でこういう問題が何か大きくなると、ぴたっと資料が一切出なくなりました。これはどうしてなんですか。一年前から我々はこの問題を調査していますが、国会が閉じているとき、これは担当者の御判断で、ある程度資料は出てきているんですよ。五千万件とか、いろいろ出していただきましたね。ところが、ぴたっと今とまるんですね。これは私は何か意図があるんじゃないのかと。何で国会で質問すると資料が出なくて、国会がないときにお伺いすると、担当者が資料をある程度出していただけるのか。大臣、だめですよ、こういう情報操作をしているとすれば。

 これは大体どのぐらいかかるんですか。というか、もう十八日に出す見込みでやられているということを前々から、要請したときに言われていましたから、これは法案の採決までにせめて出してくださいよ。お願いします。

柳澤国務大臣 先ほどの答弁を繰り返すことになるわけですけれども、今委員も、その手続、アップデーテッド化じゃなくて逆に過去にさかのぼらせるという資料の加工が必要だということで手間がかかるということでございまして、今現在、この時点でいつまでという日を切るということが難しいということでございます。

長妻委員 いや、不思議ですよ。五月十八日の私の質問までにまあ出しますということだったんですよ。それが何ですごく長期化するんですか。これは採決までにぜひ出してください。それを約束してください、大臣。指導してください、大臣、やれということを。

柳澤国務大臣 役所の者がどのような言葉を先生にお返ししたかということは、ちょっとその点は私はわかりません、正直言って。わかりませんが、今、事務処理の状況を聞きますと、やはり現在のオンライン化されたデータを当時の形に戻すということには結構手間がかかるので、今この時点ではデッドラインを申し上げるということは困難であるということでございます。

長妻委員 いや、本当に、国会で質問するとぴたっと資料がとまるというのも、日本は珍しい国だというふうに本当に思います。

 しかも、この三千件のうち、ずっと作業しているんだけれども、何件が終了したんですかというのも答えられない、こういうふうにお役所の方は突然言い出したわけです。三千件中、では何件終わっているか、これは大臣も答えられないんですか。

柳澤国務大臣 結論的に言いますと、私、お答えすることができないわけでございます。

 加工をするということに手間がかかっているということを私としては報告を受けているわけでございます。

長妻委員 理事会で報告するように求めてください。

櫻田委員長 長妻昭君に申し上げます。

 政府側に求めてください。

長妻委員 理事会でやってください。

櫻田委員長 後刻、では理事会で協議いたします。

長妻委員 それともう一つ、大臣、大臣は私との質疑で、ことしの四月からは社会保険庁の窓口のいろいろな年金の記録の相談の統計をとるようにしたと。ことしの四月、これもすごく遅過ぎると思うんですが。

 私どもが聞いたのは、つまり、回復した、あなた様の申し出どおり記録がありましたというふうに答えるケースもあるわけで、その中で、コンピューターには記録が全く入っていなかった、しかし、マイクロフィルムを捜したらあったということで、その方にありましたと回答したのは全体の中で何件ぐらいあるんですか。そうするとコンピューターの消えた比率というか、消えた件数がどのぐらいあるかというのがわかるということで、その資料をいただきたいと言いましたら、四月からは出せるよというお話だったのでございます。

 ところが、お役所に大臣の答弁を受けて聞きましたところ、今現在は、三百十二の事務所のうち三分の二の事務所からは、それが何件あるのか紙を回収しているということでございます。それで私が申し上げたのは、これは半分の時点のときに申し上げたのですが、今時点で三分の二出ているんですけれども、半分集まった時点、先週の時点で、では半分を私に見せてください、でも生の資料は見せないでいいけれども、何件あったのか、半分事務所から出てきたのを足し算した数字を教えてくださいと申し上げたわけです。

 担当者の方は、それは足し算すれば出ますというお話だったんですが、その後、戻ってこられて、課長が、これはお名前は申し上げませんけれども、いや、それは出すなという指示が来た。あるのなら何で出さないんですか。出さないということに急遽なるわけでございまして、大臣、今何件か言ってください。三分の二のデータが事務所から来ている、では三分の二の段階で何件あったというのはぜひ教えてください。

柳澤国務大臣 余り長話をするつもりはないんですが、経緯を申しますと、要は、社会保険庁の仕事というのは、その受給権者なり、あるいは被保険者なりに的確に対応するということを旨としておりまして、よく解釈してよく表現するとすると、管理者がその事務処理の状況をつかめるようなデータを同時に蓄積していくという仕事の癖がついていないということを私は申し上げたことがあるんです。それは部内の会議でも、そういうことをやらなければだめだ、銀行だって三時に終わって、その後管理の情報をまとめるでしょうというようなことを言って、ようやくこの四月から強化月間のことが始まったということなんです。

 それも部長が、これはもう本当に、私はあそこまで担当者に言うのはどうかなと思うぐらいのすごく強い口調で督励をしているわけでございますが、やはりこれはしっかり取りまとめた上で、役所でございますから、しっかり取りまとめてもいないものをだらだらだらだら出すということは、やはりそういうことはなすべきではない、これは私から申し上げたいと思います。

長妻委員 これは幾ら何でも大臣、私は、物理的にもきょうじゅうに出ると思います。そういう感触を得ていますよ。大臣、きょうじゅうに出せと言ってください。

柳澤国務大臣 これはもちろん、私は常に督励をするつもりでございます。

長妻委員 これも本当にずさんです。五月九日に、本庁から各事務所に締め切りということで、五月九日付でそのデータを送ってください、こういう指示を社会保険庁本庁が出した。ところが、もう締め切りはとっくに過ぎているのに三分の二の事務所しかそれがまだ回収されていない。この期に及んでもまだ、だらだらだらだら仕事をやっている。

 そして、三分の二だけのデータを出してくれと申し上げましたら、半分の時点だったけれども、では途中の足し算をして持ってきましょうと担当者の方は言ったんだけれども、課長が、いや、だめだ、出すな、こういう話になっているわけでございまして、どう考えても、採決までにこれは絶対出していただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。

柳澤国務大臣 仕事が半分しかできないときに外部に発表しろと言われて、担当者が、その計算はできないことはありませんと言って戻りまして、課長さんから、それは全部まとまったところで出すべきだという意味で半欠けの仕事を外部に対して示すようなことは不見識だと言われたということは、私は、むしろそのいきさつの方をやはり正しいと思って評価する次第でございます。

長妻委員 いや、その課長が政治的な動きをされる方だから言っているんですよ。過去にもそういうことが、似たようなことがあったから申し上げているわけであります。

 大臣、では採決までに出していただけますか。

柳澤国務大臣 とにかくできる限りの努力をさせていただきます。

長妻委員 そして、このねんきん定期便、私は、ねんきん定期便は非常に不十分だと。百億円もかけてやる割には、三十五歳、四十五歳、五十八歳の方には納付履歴一覧、これは送られますよ。ところが、今申し上げた年以外の方は、あなたは国民年金何百何カ月、それだけ。厚生年金何百何カ月入っています、こういうのは確認しようがないじゃないですか。もし四十六歳の人であれば、五十八になるまで十二年かかりますから、十二年間はそれがわからないわけですよ。しかも、ねんきん定期便は受給者には何にも送られないわけですよ、今、受給者三千万人には。

 そこで提案なんですが、受給者に対して納付記録の履歴を送る、受給者に納付記録の履歴を送るということは、大臣、検討いただけませんか。

柳澤国務大臣 ねんきん定期便は、まさに現在進行形で納付が積み上がっていく方々に現在の状況をお知らせするということが趣旨でございます。そういうことでありますので、受給者の皆さんに対しては、今回、振込通知書の際に、未統合の記録もこういうように保管されていますので、御自身にそういう未登録の記録がないかどうか確かめていただけませんかというお呼びかけをして出す、こういうことをこれからいろいろ工夫をして考えていきたい、こう思います。

 要するに、受給者の皆さんにとっては、むしろ五千万件のこの記録をいかに統合していくかということが私は大事だと思います。

 それから、納付記録については、委員は御案内のとおりでございますけれども、事務所に来ていただければわかりますし、インターネットでもこの提供をいたしておるということでございます。

長妻委員 大臣、これが六月から始まる、受給者に送る振込通知書の、受給者の方も御自身の記録を確認してくださいという、そういうレイアウトですよ。しかし、こんなちっちゃいスペースで、あなたの年金加入記録を確認します、こういうふうに書いてあって、詳細の文言はまだ検討中ですけれども、こんなのを書いただけで受給者に送っても、全然これは注意喚起にもならないんですよ、こんな、またちっちゃい字でこういうふうに書いていくことでは。ぜひ、受給者全員に納付履歴一覧を送る、こういうことを早急にやっていただきたい。これも我々はあきらめません。

 そして、もう一点。消えた年金記録の問題でございますが、五十五人の方が、社会保険庁の中、あるいは自治体も含めて、どこにも全く記録がない。しかし、御本人が本物の領収書等を持っていたということで、これはもう完全に消えたというのは、さすがに政府も認めざるを得なかったのが五十五件ありますが、大臣、原因はある程度わかりましたか。消えた原因は、五十五件。

    〔委員長退席、吉野委員長代理着席〕

柳澤国務大臣 これらの事例の事由でございますけれども、関係書類からある程度推定できるものといたしましては、当時、市町村に保険料を納付いたしましたが、保険料納付に係る期間が誤って未加入期間等とされていたことによると考えられるものがございます。

 それからまた、国民年金手帳の印紙検認台紙が、本来でしたら、切り離されて市町村から社会保険事務所に送付されるということがなければならないわけですが、それが行われていなかったことによるものと考えられるものもございます。

 それから、市町村または社会保険事務所が発行した納付書の記号番号が、当該被保険者の国民年金手帳の記号番号と異なっておったという、番号誤りによりましてそうしたことになったのではないかと思われるものもございました。

 そうしたものが主な理由でございます。

長妻委員 五十五人のうちまだ三十六人の方は、これは全く原因が推定もできない、こういうことで、その一部の推定される原因を今お述べになったわけでございますが、ぜひ、こういう民主党の要請によって出てきた今の情報、これを被害者救済のために積極的に役立てていただきたいんです。待っているだけじゃなくて、社会保険庁も相談に来い来いと言うだけじゃなくて。

 例えば、二十で自動的に国民年金の資格取得になるべき方がなっていないケースもあったということでございますが、そういうケースがほかにはないんだろうか。あるいは、厚生年金資格を喪失した方のうち、同日に自動的に国民年金の資格取得となるべき方が取得にならなかったケース、こういうのもほかにないんだろうかと捜す。そして、市町村から社会保険事務所に通知がない、こういう事例もほかにはないのか、手がかりをもとに捜す。納付書の番号が本人の番号ではない、こういうミスもほかにはあるのか捜す。攻めていかなきゃだめなんですよ、これは。企業だったらもうとっくにつぶれていますよ。

 こういうことの情報もあるわけですから、これをぜひ活用して、その観点から、ミスがほかにないのかということに取り組んでいただきたいと思うんですが、いかがでございますか。

    〔吉野委員長代理退席、委員長着席〕

柳澤国務大臣 これは、これからはどちらかというと、基礎年金番号で統一管理をいたしておりますので、そうしたミスというものは、これまでに比べますと起こりにくいということになっているとは思いますけれども、過去のことについて、五千万件の統合漏れの問題であるとか、あるいは、調べる際に、磁気ファイルと手書きの台帳あるいは名簿というような照合を行うときに、そうしたいろいろな、過去に起こったあるいは過去に確認されたケース、事例、こういうようなものについてはしっかりと蓄積をして、部内のそうした事務処理に当たって遺憾のないようにこれを活用していく、こういうことは当然のことであると考えております。

長妻委員 そして、この五十五件の完全に消えた年金記録の方々の分析データを拝見しますと、これはすべて国民年金の被保険者の方でございますが、最高の期間消えているのが、十四カ月消えた方がいらっしゃる。五十五人のうち、十二カ月消えた方も五人いらっしゃるということも判明をいたしました。

 この資料、五十五件という少ない資料を見て気になるのは、申し立て期間当時の管轄市区町村ということで、これは東京の葛飾区というのが三件もある。これは偶然なのかどうか。あるいは、二つある同じ市町村もあるわけですね。二つという例も、五十五件のたった少ない中で。恐らく当時、この葛飾区で納められたんじゃないか。

 そういう偏りというのも、ぜひ、こういう五十五件だけじゃなくて、データを隠さないで、ちゃんと表に出して分析をしていただくということもお願いをしたいんですが、大臣、場所の偏り、こういうものにも観点を持って調査をする、こういうことも御答弁いただきたいんです。

柳澤国務大臣 長妻委員の非常に御熱心な取り組みの中で、時期的な偏りはどうだろうか、あるいは場所的な偏りはどうだろうかというようなことも、私ども事務当局が、御指導をいただきながら、そうした傾向が見てとれるかということについて分析をいたしたわけでございますけれども、現在のところ、この五十五件につきまして、地域的な傾向であるとかいうことについて、一概に申し上げるような特徴はつかめていないということでございます。

 ただし、今御指摘になられたようなことは、先ほど申した今後の事務処理において、留意点として私どもしっかり認識をし続けてまいりたい、このように考えます。

長妻委員 申し立て期間当時の管轄市区町村ということでございますが、葛飾区が三カ所、三人おられた。そして、札幌市の中央区というのがお二人おられる。そして、大阪市の東住吉区というのがお二人おられる。これは、別に示し合わせているわけじゃなくて、五十五人がアトランダムに御相談に来られたんだと思いますけれども。あるいは、長野県長野市がお二人おられる。名古屋市がお二人おられるというような形になっているわけでございまして、こういう自治体を一〇〇%疑うわけではございませんけれども、そういうことがどうして起こったのかということも分析していただきたい。

 そして、さきに内山議員の方からこういう配付資料がございまして、これは、納めるところ、所沢市役所指定金融機関派出所と書いてございます。これは所沢市が預かった領収書だと思いますが、その下に、この領収書は五年間保存して下さい、こういう非常にとんでもない記述があるというのは、先ほど質問があったとおりでございます。

 そして、私も、つらつらこの資料を見ておりますと、この五十五人の中に、先ほど大臣が言われた年金手帳の検認台紙、検認台紙を切り取ってそれを市から社会保険事務所に送らなきゃいけないのに、ついたままになっているものを被保険者の方が持っていた。これは普通はあり得ないわけでありますが、その検認台紙、被保険者の方が持っていたコピーをいただきました。そうすると、これは既に当委員会、五月十一日に質問したときの資料で配付させていただいているものでございますけれども、九ページに、これも所沢市なんですね、この検認印。本当はこの台紙を、片方を切り取って送らなきゃいけないのが送られていない。これはだれのミスかというのは、厳密には今のところはわからないわけでございます。

 そうすると、所沢が昭和四十六年度に出した領収書に五年間の保存という、領収書は本当は裁定するまで保存しなきゃいけないものを、こんなようなおかしなことを書いておられる。そして、この検認台紙を送らなかった年金手帳には昭和四十四年度というふうに書いてございまして、こういう時期に非常に問題のあるような処理が、特に何か特定の場所で起きたのではないか。

 こういうようなことも、大臣、いっぱい情報をいただければ、先ほどいろいろ申し上げましたけれども、出さない出さないではなくて、かなり多くの情報が出てくれば、いろいろなことを、社保庁の知恵だけじゃなくて、国民の皆さんの知恵を結集して原因究明ができるわけでございます。

 こういうことにも資するように、五十五件が消えたと言っておりますけれども、これは昨年の八月から十二月までの数字でございます、そうしましたら、ことしの一月から最新の数字で、消えたというのは何件でございますか。

柳澤国務大臣 一月からのものにつきましては、先ほど来私が申し上げたような徹底した調査ということで、今、こちらの持っている資料に当たっている途上であるということでございます。

長妻委員 それも、八十四件という数字は事務方の方から出てきたわけですよ。八十四件といいますのは、昨年の八月から昨年の十二月まで。そのときは社保庁の中には記録がないということだったけれども、八十四人の方が本人が本物の領収書を持っていたので、社保庁に記録はないけれども直した。これが八十四人。ところが、その後、刻々と時間がたっているわけですね、去年の十二月から。

 ほかに何人相談があったというようなものは、これはその都度いただいているんです。相談が何人かという、確かにこれはカウントを今とっているわけでありますけれども、では、その八十四人と同じベースの領収書で訂正した人がことしの一月からは何人なのかというのは、これがぴたっと出ないわけですよ。何でなんですか。これは出していただきたいと思うんです。

柳澤国務大臣 そういうことで八十四件について、動かぬ証拠と申しましょうか、信頼に足るあかしをお持ちだということで、即座にそれで訂正をさせていただいたわけです。その後におきまして、今度は二十九件になるんでしょうか、そういうことで領収書もありましたし、当方の記録にもそれが認められる、こういうことが判明したということがございまして、今、事務方といたしましては、そのことを確認した上で対応したいというふうに考えているということでございます。(長妻委員「いつ出るんですか」と呼ぶ)つまり、自分たちの手持ちの資料を当たった上で、これを出していきたいということで今資料を調査している、こういう状況でございます。(発言する者あり)

櫻田委員長 御静粛にお願いします。

柳澤国務大臣 点検を実施中だということでございまして、市町村に問い合わせている部分もございますので、時間を要することになっているということでございます。

長妻委員 いつ出ますか。

柳澤国務大臣 要するに、市町村に徹底的な調査をお願いしていることがある、こういうことでございまして、市町村の方にお願いベースでやっている仕事であるということで、指揮命令をするというような関係にございませんので、御協力をひたすらお願いしている、こういう状況を御理解賜りたいと思います。

長妻委員 これも大臣、奇妙なんですよ。昨年の十二月末までの数字というのが八十四件、これが出てきたのは、そんな四カ月も五カ月もかかっていない段階で出ましたよ。ところが、ではせめて一月の数字、一月分だけ、これも出ない。ところが、もう今五月中旬ですよ。ですから、本当に疑うんですよ。国会でこういうふうにいろいろ議論するから出さない、これ以上は大きくなるから出さないということを本当に疑うわけでございますけれども、ぜひこれは大臣、出していただきたい。採決までに出していただきたい。先ほど三つの要求もいたしましたけれども、採決までに出していただきたい。

 そして最後に、大臣、午前中の予算委員会でも大臣から御答弁ございましたが、つまり、原票である手書きの台帳、これとコンピューターの中が本当は同じでなければいけないんだけれども、それが違う事例は社保庁も確認されている。そうであれば、それをやはり全部突合して間違いを修正する、こういう努力をしたらどうですかというふうに申し上げたら、いや、国民年金はほとんど捨てちゃっているからできないんだと。こういう、何かちょっと居直るような御答弁がありましたけども、厚生年金は捨てていないんですよ。全部、手書きの原票と名簿がマイクロフィルムで保管されている。

 では、厚生年金をまずコンピューターと突合する、これは大臣、一考に値するんじゃないでしょうか。

柳澤国務大臣 私は、実は厚生年金につきましても、申し出のあった方について調査に当たられている現場をちょっとかいま見させていただきました。やはり並大抵ではないです。そういうことでございますので、これだけ膨大な数のものについて、そういうことをやるということが実際どのくらいの手間を要するかというようなことを考えますときに、まず我々が行うべきことは、実際の申し出に対して手際よく調査を行って、年金の給付に結びつけていくことを優先すべきだという考え方に傾くわけでございます。

長妻委員 いや、大臣、いつもそういう言い方をされて私はすごく違和感を持つんです。

 つまり、現場は並大抵なことではない、つまり大変だと。年金をもらえない人はもっと大変なんじゃないですか。普通の企業だったらつぶれるから、一生懸命、もう死に物狂いでやりますよ、これは。保険会社はきちっとやっていると思うんですけれども、金融庁の指導があって。

 国民年金の特殊台帳は、先ほど申し上げましたように、今三千件のサンプル調査をしている、コンピューターの中と同じように。では、厚生年金の手書き台帳をサンプル調査してください。何で特殊台帳だけサンプル調査して厚生年金はしないんですか。

柳澤国務大臣 特殊台帳というものは、これはもう名前が名乗っているとおり、非常に穴ぼこのある、また、先ほどのどちら様かの事例にありますように、事後に納付をするといったようなやや変則的な形なのでございます。

 そういう意味合いで、私もそこに固有の問題があるとするならば、これから流用しなければならないというような意味合いでサンプルも意味があるかということで、しかし、サンプル数についてはちょっと検討させてくださいということを申し上げた上で、今それに取りかからせていただいているわけでございますが、一般的な手書きの台帳との突合ということは膨大なマンパワーを要するということから、私としては、やはりもっと社会保険庁の力というものを通常の事務に傾けることを優先いたしたい、このように考えているということでございます。(長妻委員「サンプルです、サンプルです」と呼ぶ)

 サンプルについては、先ほど特殊台帳のところで申し上げたつもりでございます。

長妻委員 いや、これは我々はあきらめずに要請をしてまいります。

 基本的に、昭和四十年代、五十年代、消えている記録がその時代に、平成のものもありますけれども、集中をしているわけでございます。統合漏れの記録の五千万件がいつの時期なのかというのは資料が出てきておりませんけれども、基本的に、社会保険庁のミスもあったと思いますが、それだけじゃなくて、市区町村がお金を預かったけれども、そのことを伝達しないということも私はあったと思いますよ。事実、そういう事例もあります。あるいは、企業が届け出を忘れたり、届け出が不十分で社会保険庁に届いていないというのもあります。

 ですから、私は、過去のそういう消えた年金問題すべてが、過去の発生時点ですべて社会保険庁がへまをしたんだ、ミスをしたんだと言うつもりはありません。そういうことも言っておりませんが、今大臣にかかってくる責任は、では、その経緯はどうあれ、今被害者の方々がいらっしゃると、その可能性を大臣も認めておられるわけです。そうであれば、そういう方々を救済する責任は、これはもう大臣の肩に一点かかってくるんですよ。

 ですから、我々が言っているのは、大臣の姿勢をぜひ変えていただきたい。つまり、待ちの姿勢なんですよ。待っていて、向こうから言ってきたら応じましょう、こういう姿勢じゃなくて、つまり、我々が、いろいろな民主党の議員が質問の中で申し上げております、社保庁もいろいろなやり方があるというか、やるべきことがまだたくさんあるんですよ。ですから、それをやらないということは、現時点の被害者救済の責任を放棄している、そういうふうに言われても仕方がないんじゃないのか。

 私も本当に、いろいろな問題の救済の障害が、先日も申し上げましたけれども、大臣にあるんじゃないかというふうに思うんですよ。大臣が部下の方に、ぜひ、これはきついかもしれないけれどもこういうふうにやってくれ、こういうふうにやろう、そうじゃないと国民の信頼は得られないということを、これは言っていただかなきゃいけないんですよ。

 私、非常に奇妙な感じを受けるのは、大臣にやってください、やってくださいと言うと、どんどんどんどん責任者というか、やる責任者が下におりていくんですね。課長がやると言えば、大臣も国会で、やるという答弁をする。大臣の上司というのは課長なんですか。今私、そういう感覚を受けますよ。課長さんが、ではそれは資料を出しましょうと言うと、大臣も国会で、出しましょう、こう御答弁がある。責任者は、大臣じゃなくて課長が責任者になっているんですか、この組織は。

 ぜひ大臣、資料をお出しいただきたい。前向きに被害者救済にお取り組みいただきたいと思うんですが、最後に、本当に待ちじゃなくて、今大臣がずっと御答弁された以外にやるべきことがあるんじゃないか、こういう謙虚な反省をして、やるべきことがあればやる、こういうこともぜひ御答弁いただきたいと思うんです。

柳澤国務大臣 必ずしも待っているばかりではないわけでございまして、私ども、今回、年金受給者、既裁定者の皆さんにも、振込通知書のときにそういう呼びかけをさせていただく。しかも、そのときに、ある意味で私どもとしては必ずしも喜ばしくない数字、未統合の非常に多数の数字まで挙げまして、そして、こういう事情にありますからぜひひとつ確認のお申し出をしていただきたいというようなことを初めとして、こちらからできるだけ働きかけを行って、そして、そういうものに呼応する形で、そういう形で申し出をいただいて、実際の個々の、大数観察ではなくて、個々の受給、給付に結びつけていく努力というものをしたい。

 早く五千万件の未統合の記録というものを統合したい、それには国民の皆様に御協力をいただかなきゃならないんですということを申し上げて、そして御協力をいただく中で、ある意味で統合に当たっての困難の一つであったこの問題に対処をしていきたい、こういうことを考えているわけでございます。ぜひとも御理解を賜りたいと思います。

長妻委員 これで質問を終わりますけれども、これは与党、自民党、公明党の皆様にも、この審議をずっとお聞きいただいて、これは我々与野党対決の話じゃないんですね、被害者をやはり救済する。多数党がやる気になれば、国はそういうことをやるんですよ。ぜひ自民党、公明党の皆様方もこういうことに、被害者救済に御賛同をいただきたいということを申し上げまして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

櫻田委員長 次に、川内博史君。

川内委員 川内でございます。

 早速質問を始めさせていただきたいと思います。

 社会保険庁を廃止し、新しい組織に移行する、看板をかけかえるだけだというふうに私どもは申し上げさせていただいているわけでございますが、数々の不祥事もあった、処分も行われた。しかし、国民にとっての関心事というのは年金問題という大きな問題であって、社会保険庁問題ではないわけであります。そういう意味では、社会保険庁を改革したから年金に対する信頼が回復をされるのだというようなことは決してないだろうというふうに思います。

 さらに、他方で、社会保険庁が数々の不祥事を起こしてきたのだから、新組織に移行した暁には、ばんばんばんばん首を切ってもよいのだというようなことにもならないだろうというふうに思います。

 そこでちょっとお尋ねをさせていただきますが、二〇〇七年五月九日、本委員会で、石田厚生労働副大臣が自民党の委員の質問に答えて、社会保険庁改革に伴う職員の雇用問題についてこのように答弁をされていらっしゃいます。

  国家公務員法の規定、また従来の裁判例に従えば、社会保険庁が廃止される場合には、任命権者である社会保険庁長官は、他の任命権者に協力を要請して、職員を他の職場に配置転換させるなど、分限免職を回避するよう努める必要があります。これらの措置が比較的容易であるのに、その努力を尽くさずに組織の廃止に伴う分限免職処分をした場合には、裁量権の濫用になる、違法になる、こういうふうに承知しております。

というふうに石田副大臣は答弁をされていらっしゃるわけでございます。

 本日は、日本年金機構法案を御担当になられる、行政改革の御担当であられます林副大臣にもお運びをいただいております。

 そこでお尋ねをさせていただきますが、この石田厚生労働副大臣の御答弁について、日本年金機構法案を所管する行革担当としても同様の趣旨であるということでよろしいかということをお尋ねいたします。

林副大臣 せっかくの川内委員の御質問でございましたので、私も議事録を読んでまいりました。

 今御指摘がございました、副大臣おられますけれども、今委員がお読みになりました文、「こういうふうに承知しております。」と。その後、こういうふうにおっしゃっておられまして、

  このことを踏まえますと、分限免職を回避する努力を行った上で、公務員を退職して機構に採用される者、みずからの意思により退職する者、厚生労働省の他部局などに転任する者のいずれにも該当しない職員につきましては、社会保険庁の廃止時に分限免職処分を行うこととなるものと考えております。

こういう御答弁をされておられたという議事録を拝読してまいったわけでございます。

 委員が御承知のように、国家公務員法におきましては、「本人の意に反する降任及び免職の場合」として、「官制若しくは定員の改廃又は予算の減少により廃職又は過員を生じた場合」というのが掲げられておるわけでございます。

 国家公務員法の直接の判例はないのでございますが、地方公務員の裁判例におきましては、まさに今御答弁の中にもありましたようなことが、分限免職に際し、配置転換について一定の努力を行わなかったなどの場合に裁量権の濫用になるという判例があるわけでございますので、まさに石田副大臣の御答弁は、こういったことに照らして、任命権者であります社会保険庁長官が必要な努力を行った上で、機構への採用、自主的退職、他への転任のいずれにも当たらない職員は社会保険庁廃止時に分限免職となる旨述べられたものと私も承知をしておりますけれども、社会保険庁におかれまして職員の問題については適切に努力をされるものというふうに考えておるところでございます。

川内委員 任命権者である社会保険庁長官のもとで御努力をいただいた上でということでございますけれども、私は、不祥事は不祥事としてしっかりと処分が行われたというふうに認識をしておりますけれども、さらにその上で、不祥事があったんだから、あなたは首だというようなことがあってはならないであろうというふうに思います。

 そういう意味では、厚生労働大臣も、今までの石田副大臣の御答弁やあるいは林内閣府副大臣の御答弁を踏まえた上で、政府として努力をする必要があるということを御答弁いただきたいというふうに思いますが、いかがでしょうか。

柳澤国務大臣 組織の改廃がございますときには当然こうしたことがあり得るわけでございますが、その場合に、任命権者である社会保険庁長官はできるだけ分限免職を回避するように努める必要がある、こういうことでございまして、私ども、この努力をまずいたしたい、このように思います。また、いたずらに分限免職処分をするというようなことで権利の濫用というようなそしりを受けることはあってはならない、こういうように考えております。

 いずれにせよ、今、林副大臣も答弁をいたしましたように、そうした上で、公務員を退職して機構に採用される、あるいはみずから退職する、他部局などに転任をする、こういういずれにも該当しなくなった職員につきましては社会保険庁廃止時に分限免職処分を行うこととなるということもあり得るわけでございまして、そういう前提で、私どもは、できるだけそうしたことがないというか少なくなるというか、そのために最大限の努力をしてまいりたい、このように考えております。

川内委員 それでは、次の論点に移らせていただきます。

 社会保険庁というと、さまざまにいろいろな場所で議論がされてきたわけでございますが、実は平成十五年に、総合規制改革会議、宮内議長のもとで社会保険庁が話題になっておりまして、それはどういう場所であったかというと、総合規制改革会議の構造改革特区・官製市場改革ワーキンググループというところで、社会保険庁あるいは社会保険制度についての規制の緩和、規制改革というものが議論をされております。

 それでは、当時の総合規制改革会議の事務局に来ていただいておりますが、この構造改革特区・官製市場改革ワーキンググループというのは当時何回開かれたんでしょうか。

田中政府参考人 御指摘のありました構造改革特区・官製市場ワーキンググループは、平成十五年度において八回開催してございます。

川内委員 その中で、社会保険制度の見直しについて、社会保険庁を絡めて議論をされたのは何回、いつといつというふうに明確にお答えいただきたいと思います。

田中政府参考人 そのうち、社会保険庁改革の関係で議論しましたのは、第四回であります平成十五年五月二十九日、第五回、平成十五年七月八日の二回でございます。

川内委員 それでは、官製市場ワーキンググループの委員、専門委員、この議論に参加された方々のお名前を教えてください。

田中政府参考人 同ワーキンググループの正式な委員は、当時の肩書で申しますが、八代尚宏社団法人日本経済研究センター理事長、河野栄子株式会社リクルート代表取締役会長、鈴木良男株式会社旭リサーチセンター代表取締役社長、森稔森ビル株式会社代表取締役社長、四名と、専門委員、安念潤司成蹊大学法学部教授、福井秀夫政策研究大学院大学教授、以上六名でございますが、実際に二回の会議において、まず五月二十九日の会議において出席されましたのは八代、福井、奥谷の三名、それから、七月八日の会議におきましては八代、奥谷、安念、福井の四名でございました。

川内委員 今、委員として名前のなかった方が、この二回に出ている委員の方がいますね。何と言いましたか、もう一回答えてください。

田中政府参考人 同ワーキンググループの運営に関しましては、同ワーキンググループの委員、専門委員のほか、総合規制改革会議正委員が任意に参加できることになっておって、奥谷委員が出席してございます。

川内委員 その奥谷委員という方のフルネームと役職をお答えいただけますか。

    〔委員長退席、吉野委員長代理着席〕

田中政府参考人 当時の肩書でございますが、奥谷禮子、株式会社ザ・アール代表取締役社長でございます。

川内委員 奥谷禮子さんという方、ザ・アールの社長さんでございますが、ホワイトカラーエグゼンプションでも勇名をはせていらっしゃる方でありますが、この方は、この構造改革特区・官製市場改革ワーキンググループのメンバーではなかったが、わざわざこの五月と七月の社会保険庁が議論された回には出席をされていらっしゃるということでございます。

 それでは、社会保険庁にお尋ねをいたしますが、奥谷禮子氏が代表取締役を務める株式会社ザ・アールは、社会保険庁と何らかの契約を結んでおりますか。

清水政府参考人 社会保険庁の中に社会保険大学校という組織がございます。現在、ここで接遇研修を外部委託により行っておるわけでございますけれども、その接遇研修の外部委託先が、企画競争で選定したわけでございますけれども、そこがザ・アールという名称でございます。

川内委員 そのザ・アールと社会保険庁、あるいは社会保険事務局、社会保険事務所と契約関係ができたのはいつからですか。

清水政府参考人 私どもが把握しているところをお答え申し上げます。

 まず、社会保険庁の中の地方組織でございますけれども、東京社会保険事務局というところがございます。ここが平成十五年度にザ・アールと接遇研修について契約をしてございます。それから、十六年度以降は、今申し上げました社会保険大学校がザ・アールと接遇研修について契約をしている、そういうことでございます。

川内委員 平成十五年に規制改革会議で社会保険庁のことが話し合われた。それと時を同じくして、ザ・アールと社会保険庁は接遇研修について契約を結んでいたということでございます。契約とだけしかおっしゃらなかったわけですが、随意契約ですか、それとも一般競争入札による契約ですか、それとも企画競争による契約ですか。

清水政府参考人 各年度によりまして、また契約の時期等によりまして異なってくるわけでございますけれども、一番最初のもの、先ほど申し上げました平成十五年度の東京社会保険事務局が締結した契約形態は、随意契約でございます。

川内委員 内閣府の規制改革会議は、これら社会保険庁とザ・アールとの契約関係について御存じでいらっしゃいましたか。

田中政府参考人 総合規制改革会議の委員は、他の審議会と同様、非常勤の国家公務員として会議に参加してございますが、これ以外、個人あるいは組織として行っている事業等の内容については、内閣府としては承知する立場にはございませんでした。

川内委員 特に問題はないんでしょうかね。

田中政府参考人 一般職の非常勤公務員の服務に関しましては、一般の公務員と同様に国家公務員法の規律がかかりますが、そのうち適用除外として、兼職の禁止という規定は除外されておりますし、また、各委員は、規制改革について識見を有する個人として、その所属する組織、立場を離れて、公共のために会議に参加していただいているものと考えてございます。したがいまして、服務規則上の問題があったとは考えておりません。

川内委員 服務規則上はというか、法律上は問題がないということを言い切られたわけでございます。

 ちょっと幾つか尋ねていきますが、平成十五年から、十六年、十七年、十八年と、ザ・アールは社会保険庁の職員研修に係る契約を結んでいるわけでございますが、平成十五年、十六年、十七年、十八年、これらの研修に使われた費用、すなわちザ・アールに支払われた費用というのは、一般財源なのか、それとも保険料からの年金事務費という形で支払われたのか、どちらですか。

清水政府参考人 職員研修は年金事務費の一部ということでございます。

 御承知のとおり、平成十年度以降は、年金事務費に保険料を充てる特例措置が講じられてきたところでございます。まずその当初、平成十年から十六年までの考え方でございますけれども、それは、職員人件費は国庫とし、その他は保険料財源とするという考え方でございましたので、したがいまして、平成十六年度までの研修につきましては保険料財源ということになるわけでございます。

 しかしながら、平成十七年度予算に関しまして、現在のルールに明確化、財源負担区分を整理したわけでございます。すなわち、職員人件費のほか、内部管理的な経費というものは国庫負担にしたということでございます。本件の研修につきましても、一般行政的なものという整理で、十七年度以降は国庫負担ということになっておるわけでございます。

川内委員 十五年、十六年は保険料を使った、十七年からは違う、一般財源であるということでございます。

 それでは、続けて聞かせていただきますが、そもそも最初は随意契約で始まっているわけですが、なぜ随意契約をするに至ったのかということについて事情を教えていただけますか。

清水政府参考人 十五年度の東京社会保険事務局の接遇研修の契約金額、実際に支払った金額でございますけれども、三十一万五千円という額でございます。この額でございますと少額のものでございますので、会計法令上、随契ということになるものと承知してございます。

 また、経緯につきまして、必ずしも書面は残っておらないのですけれども、東京事務局に尋ねましたところ、この当時、接遇研修について、複数社の売り込みといいますか、申し出というものがあって、その中からザ・アールという会社を選定したという報告を受けているところでございます。

川内委員 ザ・アールから売り込みがあったということですね。

清水政府参考人 私どもは東京事務局からそのような報告を受けてございます。

川内委員 では、平成十六年度、社会保険大学校で随意契約をお始めになられたときの契機は何ですか。

清水政府参考人 平成十六年は、秋になりまして、それまでのさまざまな年金をめぐります論議、社会保険庁をめぐります論議というものがあった後でございまして、したがいまして、国民サービスの向上というものが大事である、お客様第一、国民サービスの向上という観点でさまざま取り組まなければならぬというふうに社会保険庁で考えていた時期でございます。

 そういう中で、社会保険大学校におきまして接遇研修をしようということになりまして、実践的な研修内容であるのか、公共的なサービス業において研修実績があるのかといった点で、いろいろとどういう業者がいるのかというふうに社会保険大学校の中で検討いたしまして、他の公的機関での研修の実績があるということにかんがみて、ザ・アールを選定したというふうに報告を受けてございます。

川内委員 他の公的機関とはどこですか。

清水政府参考人 CS活動、顧客満足というふうに日本語に訳せると思いますけれども、そういうものに積極的に取り組んでおられる公的機関にお尋ねをしたというふうに承知してございます。

川内委員 だから、他の公的機関というのはどこですか。

清水政府参考人 日本郵政公社というふうに承知してございます。

川内委員 日本郵政公社だけですか。

清水政府参考人 私どもが社会保険大学校から報告を受けておりますのは、日本郵政公社さんにお尋ねをいたしまして、それで研修実績があるということを確認したということでございます。

川内委員 もう当時、既に奥谷さんは日本郵政公社の非常勤の取締役であったというふうに思いますけれども、そういうところからお聞きになられて当初随意契約を結ばれたということでございます。その辺の法的な整理については、ちょっと私もまた勉強した上でお尋ねをさせていただきます。

 平成十七年の接遇研修では企画競争というものが行われて、ザ・アールがその企画競争に勝って契約を結んでおります。平成十七年のこの企画競争による接遇研修の発注というのは、どのような方法で公告をし、何社応募してきましたか。

清水政府参考人 社会保険大学校の接遇研修の発注方法でございますが、御指摘のとおり企画競争ということで公告をするわけでございます。

 その公告の方法といたしましては、こういうものの通例に従いまして、社会保険庁本庁の所在地でございます中央合同庁舎五号館一階にございます掲示板に企画競争に係る公告というペーパーを掲示いたしたわけでございます。十七年四月のことであったわけでございます。

 その公告をごらんになって企画競争に参加されましたものは三社であったわけでございます。

川内委員 平成十七年の四月で掲示板に掲示したことが公告であると。それは法令上は違反はしていないでしょう。

 しかし、例えば平成十三年の時点で、平成十三年の四月に総務省が、官庁共通経費等に関する行政評価・監視結果に基づく勧告というような形で、「契約に係る情報提供の充実」として、「関係府省は、事業者の利便向上、入札参加機会の拡大及び一層の競争性の確保を図る観点から、」「契約以外の一般競争入札に係る契約についてもホームページ上で入札の公告を行い、調達情報提供の一層の充実を図る必要がある。」ということで、内閣府を初め、防衛庁や金融庁などに対して勧告を出していますね、厚生労働省ももちろん入っています。

 掲示板に公告をしました、三社応募がありました、企画競争でザ・アールに決めましたということでございますね。では、その企画書と予定価格、まず予定価格を教えていただけますか、このときの予定価格。さらに、企画書を本委員会に提出をしていただきたいと思いますが、どうですか。

清水政府参考人 御質問にお答えする前に一点だけ御説明申し上げたいと思うんですが、現在の調達はインターネットでやっております。先ほど申し上げたのは、当時はそういう方法でやったということでございます。

 それで、お尋ねの件でございますけれども、ザ・アールから提出された企画書でございますけれども、これは、公にすることによりまして企業の権利、競争上の地位などを損なうおそれがあるというふうに考えられるものでございますので、私どもが一方的に私どもの判断で開示するということについては差し控えさせていただきたいと考えてございます。

 それから、予定価格の点でございます。

 先ほど一件につきまして契約価格は申し上げたわけでございます。そういう形でオープンにしておるわけでございますが、お尋ねの予定価格ということにつきましては、今後も外部委託により接遇研修を実施するということは十分あり得ることだと考えておるわけでございまして、予定価格それ自体を公表するということにした場合におきましては、今後の契約に当たりまして予定価格を類推される、そういうおそれが非常に強いわけでございます。したがいまして、公表することは差し控えさせていただきたい。契約価格であれば、これは公表することはやぶさかではございません。

川内委員 清水さん、何か、非常に強くなるとか、随分大層なことのようにお答えになられているが、まず、企画書については、行政に提出された時点で行政文書ですから、相手に聞くとか相手の競争上の地位にどうちゃらこうちゃらとか、そんなものは理由にも何にもならないですね。やらせのタウンミーティングのときに企画書はすべて公表されています。企画書はすべて公表をされることになっていますね。そのとき全部出されたんです。

 さらに、予定価格についても類推をされる可能性があるということでありますが、これも、タウンミーティングのときなども予定価格は公表をするということで、最近は予定価格はもう全部公表することになっている、原則は。他に類推されるおそれがあるというようなことはちょっと理由にならないですよ。

 私はきょうこの点で余り議論をする気はないので、理事会でこの企画書のことと予定価格のことは御議論をしっかりいただいて、やはり、社会保険庁改革をするんでしょう。国民に信頼される、行政サービスのトップランナーを目指す、何かこの、社会保険庁の村瀬長官のお名前で出されていらっしゃる「「社会保険庁は変わります」宣言」というのに、行政のトップランナーを目指しますとか、あるいはもうさまざまに、志の高いことがいっぱい書いてありますよ。国民に信頼されるようになる、それは大前提だと思いますよ。ぜひ理事会で御協議いただけますか。

吉野委員長代理 後刻理事会で協議をいたします。

川内委員 それでは、平成十八年の企画競争についてお尋ねをいたします。

 この企画競争のときの、応募してきた会社は何社ありましたか。

清水政府参考人 平成十八年度の応募につきましては、十七年度や十九年度と異なりまして、一社だけでございました。なお、先ほど私の答弁の中で企画書のことを申し上げましたが、先ほど申し上げた趣旨は、行政機関の保有する情報の公開に関する法律の第五条に基づいて申し上げたものでございます。

川内委員 平成十八年の企画競争は、大臣、一社ですよ、一社。ザ・アールだけ。それで発注をしているわけですね。私は、この社会保険庁とザ・アールとの関係というのは、先ほど内閣府の御説明では法令上は問題がないということでございましたけれども、社会保険庁改革をしていかなければならないというときに、極めて不適切な関係ではないかというふうに思います。

 政府の審議会の委員として社会保険庁改革に携わり、また厚生労働省では厚生労働大臣の諮問機関である労働政策審議会の労働条件分科会の委員も務めている方が経営されている会社が、随意契約のオンパレードですね。金額がちっちゃいから随意契約でよいのだというふうにおっしゃられるが、しかし、最近は、さまざまな行政上の文書には、金額の多寡ではなく、原則として一般競争入札にするということがさまざまな文書に書かれていますよ。金額の多寡には関係なくね。平成十五年、十六年は全部随意契約です。十七年、十八年も随意契約で発注しているものがある。企画競争についても一社しか、ザ・アールしか応募してこなかったものもあるということです。

 これは、大臣、この社会保険庁の接遇研修の発注のあり方については大臣もしっかり御指導をされた方がよろしいというふうに思いますが、大臣の御所見をいただきたいと思います。

清水政府参考人 平成十五年度につきましては随意契約であったわけでございますが、その後、社会保険庁改革を進めていく中で、原則として競争入札または企画競争にするということで私ども考えてございまして、そういうことで取り扱っているわけでございます。

 なお、随意契約のものもございますけれども、これは、年度当初に企画競争等々の手続が間に合わない場合には随契になる場合もあるというふうに御理解を賜れればと思ってございます。

川内委員 私は大臣の見解を尋ねたので、部長にここで言いわけをしてくれと言ったわけじゃないんですよ。十五年、十六年は随意契約だけ、十七年、十八年も、五つの契約のうち三つは随意契約、二つが企画競争、そのうち一つは一社しか応募がない。これは随意契約と一緒ですからね。

 大臣、奥谷さんは審議会で言いたい放題言っていらっしゃる方なんですよ。言いたい放題言っていらっしゃるのは、それは委員として、御発言は自由なので、言いたい放題のことを言っていただいて結構だ、そう私は思いますよ。それに対して我々も意見を言わせていただく。しかし、そういう言いたい放題言うのであれば、政府として疑われるようなことをされるのはいかがなものかということを申し上げているわけですが、大臣の御見解をいただきたいと思います。

柳澤国務大臣 社会保険庁が変わるに当たって接遇の研修を受けるということは、これはもう必要なことであった、このように思いますが、それの外注の契約対象者というものは適正に選択されなければいけない、その者との契約ということは、会計法規の一般原則に従って適法に行わなければならないことは当然だと思います。

川内委員 だから、法にのっとっていればいいのかということですね。私は、適法だけではなくて、社会保険庁改革なんですから、国民から信頼を受ける、国民の信頼を取り戻す、行政サービスのトップランナーになるということをおっしゃっていらっしゃるわけですから、その言葉にたがわないお仕事をしていただきたいというふうに思います。

 それでは次の論点に移らせていただきますが、今までも天下りのことは本委員会でも議論が出たかもしれませんが、改めて聞かせていただきたいんですが、厚生労働省あるいは社会保険庁出身の方で、NTTグループあるいは日立製作所グループに、これはシステムを受注している会社という意味でございますが、再就職をしている人がいるのかいないのかということについてお答えをいただきたいと思います。

清水政府参考人 私からは、社会保険庁関係でということでお答えを申し上げます。

 まず、一般論を申し上げますと、国家公務員の退職後におきます再就職の状況につきましては、公務を離れた個人に関します情報でございます。一般的に政府が把握する立場にないわけでございまして、御質問の日立グループ会社、それとNTTグループ会社全体への再就職の状況についても把握しておらないわけでございます。

 しかしながら、この間、御照会がございまして、社会保険庁とシステムに関して委託契約を結んでいる企業への再就職の状況ということのお尋ねでございました。それにつきましては、当該企業の協力を得て調査したわけでございます。

 結果を申し上げますと、厚生労働省の職員でございまして本省企画官相当職以上で退職した方が、現時点ではおりません。ただ、過去のことを振り返って申し上げることを許していただけるのであるならば、平成十八年二月現在でNTTデータに一名、NTTデータシステムサービスに一名おったということでございます。ただ、両名とも十八年三月末で退職しているということでございます。

川内委員 十八年三月末まではいた、NTTデータに一名、NTTデータシステムサービスに一名。その方たちは今どうされているか御存じですか。

宮島政府参考人 お答えを申し上げます。

 NTTデータにおられた方は、現在、全国社会保険協会連合会に所属しており、また、NTTデータシステムサービスの方は社会保険診療報酬支払基金の方に属しております。

川内委員 次の就職先に異動された、退職したんじゃなくて異動をした、人事異動をしたということだろうというふうに思いますが、それでは、NTTデータあるいはNTTデータシステムにいらっしゃった方々、この方々の前にも違う方が同じポストにいた事例がありますか。

清水政府参考人 企業の中の役職名のみをもってそれが同一ポストかどうかというのはにわかにわかりかねるわけでございますけれども、一応、同一名称のポストにほかの者もついていたというように把握してございます。

川内委員 NTTデータのポスト名を答えてください。

清水政府参考人 NTTデータを十八年三月末に退職した者のNTTデータにおける最終ポスト名は、常務執行役員であったというふうに把握してございます。また、NTTデータシステムサービス、これを十八年三月末に退職した者のその時点のポスト名は常務取締役であったというふうに承知してございます。

川内委員 NTTデータの常務執行役員とNTTデータシステムサービスの常務取締役というポストは厚生労働省のポストであったということが言えるのではないかというふうに思いますが、その方たちは今また別な厚生労働省関係のところでお仕事をしていらっしゃるということが明らかになり、これで、社会保険庁という組織をいじくれば、国民の年金に対する信頼が回復を果たしてするんだろうか、私は甚だ疑問に思わざるを得ないわけでございます。

 先ほど、NTTグループ、日立グループという形では調査はしていないと。要するに、契約企業に行っているか行っていないかについては聞かれたから調査したというふうにおっしゃられたわけでありますが、私はこの際、社会保険庁あるいは厚生労働省と、巨大なお金を扱う役所に厚生労働省は今なっているわけですね、社会保険庁も含めて。それらの企業グループに対しても出身者がいるのではないか、そしてわたっているのではないかというような国民の皆さんの疑問にしっかりと答える必要があるというふうに思います。そういうふうなところの襟を正して初めて年金に対する信頼というものが生まれてくるのではないかというふうに思います。

 そこで、お尋ねをさせていただきますが、そういうNTTグループなり日立グループなりに厚生労働省出身者あるいは社会保険庁出身者が在籍をしているのかいないのか、いるのであれば、どのような状況で在籍をしているのかということを、契約企業だけではなく、広くグループという視点でとらえてお調べになられたらいかがかというふうに思いますが、御見解をいただきたいと思います。

宮島政府参考人 退職後の再就職の状況は個人情報なので一般的には知り得ないんですが、今の国家公務員法では百三条で、離職後二年以内に営利企業につく場合は再就職の承認というのをとらなければいけないということになっておりまして、この再就職の承認をされた者については、営利企業についた場合はわかるということになっておりまして、実は株式会社日立製作所に就職した者が一名おりますが、これはナショナルセンターの臨床検査の技師の人が行っているというようなケースはございます。

川内委員 いや、私は日立の人のことを言っていないですからね。それは余り問題ではないだろうと思ったので聞いていないじゃないですか、この質問で。私が申し上げているのは、さまざまな事例があるのではないかと。要するに、法令に違反しているとか法令にのっとっていないとか、そういうことを申し上げているわけではないんですよ。

 「社会保険庁は変わります」宣言というのを先ほどから再三にわたって取り上げているわけでございますが、これは村瀬長官の名前で出されている文書ですけれども、さまざまに志の高いことが書かれていますよ。こういう志の高いことを目指して頑張るんだということであるならば、そういう再就職問題、今まさに内閣委員会で天下りバンクのことなども議論されているわけでございますが、公務員の皆さんの再就職の問題ということが議論されているわけでございますけれども、そういう広い観点でお調べになられたらいかがですか。今まで調べたことがないとおっしゃるので、グループとしてとらえて、どのくらい再就職をしているのかということをお調べになられたらいかがかということを申し上げているわけですが、大臣、御見解をいただきたいと思います。

柳澤国務大臣 再就職というのは、その出口のところには一定のルールがありまして、このルールを守って再就職をしたということについては、これはそれぞれ個人の就業の自由その他、個人情報として尊重しなければならない、そういうルールのもとで我々は仕事をさせていただいているということでございます。

 他方、私どもは今社会保険庁の改革ということに真剣に取り組んでいるわけでございまして、その社会保険庁の仕事の外部委託あるいは調達、そういうようなことについて、いささかも疑念が持たれるようなことはあってはならないわけでございまして、しかも、扱う金額が非常に多額であるということで、あらゆる仕事が大量に行われるというのが我々社会保険庁の仕事の性格でございます。それだけに、いろいろな事柄について、契約もまた多額の金額を単位として行われることが多い。したがいまして、それについては、先ほども申したように、我々の出直し的な改革というものに国民の皆様が信頼を寄せていただくように、襟を正したそうした人事も行われるべきである、このように考えております。

 したがいまして、今の委員の御質問に直接お答えするということではありませんが、御趣旨を体したそうしたことを実現してまいりたい、このように考えております。

川内委員 御趣旨を体した改革を実現してまいりたいということでございますけれども、これは日本年金機構になったら、ますます天下りし放題というか、再就職し放題というか、押しつけ的あっせんし放題というか、逆に言えばそういうこともやりやすくなるということもあるわけでございまして、今きちんと明らかにする情報は明らかにしておいた方がよろしいのではないかというふうに思います。

 それでは、次の論点に移らせていただきます。

 本委員会でずっと議論になっております統合されずに宙に浮いている年金記録、いわゆる消えた年金記録についてでございますけれども、厚生労働大臣は再三にわたって、窓口にいらしていただいてお申し出をいただいたならば調査をいたします、統合のための努力をいたしますというふうに答弁をされていらっしゃるわけですが、窓口に来なければ調査をしないのだ、しなくてよいのだとする法令上の何か根拠があるんでしょうか。

青柳政府参考人 年金記録につきましての法令上の根拠のお尋ねがまずあったわけでございますけれども、これは御存じのように、まず、年金は御本人の請求に基づいて裁定がされるものであるというのは、その権利の発生の根拠規定でありますし、それを実現するために、社会保険庁長官が年金の原簿というものを備えまして、これに記録をするということが法令上の根拠となっているわけでございます。

 したがいまして、窓口に来なければ年金記録の確認の調査をしなくてもいいという法的根拠はございませんし、また私どもも、窓口に来なければ確認しないというふうに申し上げているつもりはございません。あくまでも、裁定という手続、あるいはその根拠となるための記録原簿の確定ということのために、もちろん窓口に来ていただいて記録を確認することもそうでございますが、窓口にいらっしゃらなくても、例えば、インターネット等で記録を前もって確認することができますし、あるいは、五十八歳通知等によって私どもがお知らせをいたしましたものに対してお返事をいただくという形での記録の確認もできるというふうに承知をしております。

川内委員 本人の申し出がなければ確認はしないということですね。

青柳政府参考人 これは、私どもが管理をさせていただいております年金原簿というものが、まず一義的には真正な記録であるというふうに認識をしております。

 したがいまして、私ども、現在では、年金原簿で管理をしております記録をまず一たんは五十八歳の段階で御本人に御通知し確認をする、確認をさせていただいたものに基づいて、ターンアラウンドと私ども申しておりますけれども、六十歳の裁定時に、こういうことでよろしいでしょうか、よろしければ、お名前のサインをいただいて、お返しいただければそのまま裁定の手続に入ります、このようなやり方をやらせていただいております。

川内委員 聞いたことに答えていただきたいんですけれども、どういう形であれ、本人が申し出ないといけないんですね。

青柳政府参考人 裁定は御本人の請求に基づいて行うということになっておりますので、御本人が請求をしていただくことが前提でございます。

川内委員 それは裁定のときですね。要するに、受給権が発生をするときですね。年金をもらうときは本人が請求をしてきてくださいということが法律に書いてあって、その納付記録がきちんと整えられているかどうかということについて、本人が申し出てこいというようなことについては法律には書いてないですね。

青柳政府参考人 繰り返しで恐縮でございますが、一義的には私どもが管理させていただいている原簿の記録が正しいものであるという前提で、私ども書類を準備して御確認をいただいているということでございます。

川内委員 正しいものであるとしてというのはどういうことですか。すべての年金記録がだれのものであるか、だれの記録であるかということについて確定をさせているということですか。

青柳政府参考人 現在では、基礎年金番号で管理をさせていただいております記録が一義的に真正なものであるということで、私ども先ほど申し上げた手続をしておりますが、この委員会の中でもこれまで御議論になっておりますように、基礎年金番号にいわば統合されていない記録、番号というものがある。これは亡くなっておられる方もあるでしょうし、あるいは統合がまだ行われていない方もあるであろう。

 したがいまして、御本人に確認を求めた際に、もし自分のお申し出によってほかに記録があるということであれば、その時点で改めて統合させていただいているということでございます。

川内委員 私が聞いているのは、だれのものかわからなくなっている年金記録あるいは基礎年金番号統合前の番号については、一義的には、政府の方で、社会保険庁の方で統合をするための努力をする義務があるのではないかということを言っているんですけれども。

青柳政府参考人 これも本委員会でたびたび申し上げさせていただきましたが、私どもは、そのための努力といたしまして、平成九年に基礎年金番号を導入いたしました際に、こういう番号が今後基礎年金番号として皆さんの番号になります、そして、この番号以外にこれまで公的年金制度に入っていたときの番号がないか、あるいは年金手帳等がないかということのお尋ねをまずはいたしました。

 そして、お尋ねに対して御返事をいただいた方がおよそ九百万人、それから、御返事はいただけなかったけれども、私どもが独自に持っている情報の中で同一人と思われる方が九百万人、この方々にまずは基礎年金番号で管理されている記録をお送りいたしまして、これ以外にあなたの場合にはほかの記録のある可能性があるので、そういう可能性がある場合には、ぜひ御自身のお申し出をしていただきたいというお願いをいたしまして、総計で千八百万件の方にそういう御案内をした上で統合作業を進めさせていただきました。

川内委員 だから、さっきから何回も聞いているじゃないですか。本人の申し出がなければ統合のための作業はしないのだとする法的根拠はないんでしょう。

青柳政府参考人 私どもはあくまでも真正と思われる記録に基づいて裁定作業を行うわけでございますので、いわば、これに対して、かたい言い方をすれば、異議の申し立てをしていただいて、それに基づいて真正の記録に統合していこうということが裁定の手続の過程でそもそも予定がされている。しかしながら、裁定の手続の過程まで待った場合に非常に時間をお待たせする方もいらっしゃるので、先ほど申し上げた五十八歳通知をやっている、あるいは、今後は三十五歳通知、四十五歳通知ということをやることによって、なるべく早い段階でそういったことを行っていこうというふうに試みているものでございます。

川内委員 それは、今おやりになろうとしている仕事を私は聞いているわけではないんです。おやりになられている仕事を教えてくださいと言っているわけじゃないんですよ。それを幾ら説明されても、それは繰り返し繰り返し説明されていることでわかっていますから、もう説明しなくていいです。

 私が聞いているのは、本人の申し出がなければ統合のための作業を始められないというのは法的根拠のあることなのかと聞いているんです。それについて答えてください。法的根拠があるなら、何法の何条の何項のこの条文に当たります、ないならない、どっちかですよ。

青柳政府参考人 統合されるまでは統合されていない記録は真正の記録にはなりませんので、その限りにおきましては、私どもは、真正な記録に基づいて裁定を行うという一連の作業の中で、いわば法的根拠を持って仕事をさせていただいているというふうにお答えをしているつもりでございます。

川内委員 ここは議論する場で、いいかげんな言い逃れをする場じゃないんですよ。

 統合されていない番号が五千万件あるということは、あなた方は認めているんでしょう。今ごろ何を言っているんですか。すべて統合されていることが前提でやるんだなんて、今さら何ということを言うんですか。それじゃ議論にならないじゃないですか。

青柳政府参考人 繰り返しになる点をお許しいただきたいと存じますが、私どもは、法的な根拠といたしましては、あくまでも御本人の申し出に基づいて裁定を行うという法律上の根拠と、裁定を行う場合には、原簿に基づいてこれを管理させていただいているということが法律的な根拠となっておるわけでございます。

川内委員 だから、その答弁の前提はもう崩れているじゃないですか。何を非論理的な議論をされているんですか。ちょっとおかしいですよ。

 いいですか、ちょっと時間が来ましたけれども、最後にもう一度お聞きしますから。

 五千万件は統合されていない、だれのものかわからないということを政府は認めているんだ。いいですか、認めているんですよ。今あなたがおっしゃっていた、しかし、原簿は真正なものだと認識してやりますと。この時点で矛盾があるじゃないですか。矛盾しているんですよ、おっしゃっていることは……

吉野委員長代理 持ち時間が過ぎています。お急ぎください。

川内委員 来ているけれども、いいですか。

 それからもう一つ。受給権が発生するのは裁定するときですから、その裁定するときに統合すればよいのだというのは、それは五千万件が宙に浮いているということを確認しなくてもいいという根拠にはならないですよ。全く根拠にならない。受給権が発生する、あるいは裁定する、行政処分をするというのは、その裏側に、年金記録は真正な十全な年金記録が整っているということが前提にあって請求権が発生し裁定するわけですからね。今その前提がすべて崩れているわけですよ。にもかかわらず、あなたはさっきから同じようなことを何回も何回も言って、またこの後、さまざまな委員から議論があると思いますが、もうちょっと論理的な議論をしないと、ますます国民の皆さんから信頼を失うと私は思います。

 以上です。

吉野委員長代理 次に、高橋千鶴子さん。

高橋委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 昨日の参考人質疑では、法案に対する強い懸念が各方面から出されたと思います。とりわけ、御自身が払った年金記録が消滅したとして訴えていた谷澤参考人は、多くの当事者たちの実態も紹介しながら、抑え切れない怒りを表明しておりました。

 事実に誤りがあったこと自体が大問題でありますが、さらに、社会保険事務所が誠実な対応をとってこなかったことが次々と露呈し、今日の問題をさらに悪化させていると思います。年金記録の問題は絶対にあいまいにせず、年金加入者に不利益とならないように解決するべきと思います。

 私は、最初に一つ伺いたいと思うんですが、きょうも何度か議論になっておりました時効の問題でありますが、みずから申し出て、誤りがわかったにもかかわらず、時効だと言われて受給できない、これは絶対に納得いくものではありません。本人に何らかの瑕疵がある場合、時効の議論もあり得るかもしれませんが、その逆であれば救済されてしかるべきだと思います。

 一般論でいいのですが、現場では状況判断によって一律に時効としないこともできるし、またその実例もあると聞いております。簡単に教えていただきたいと思います。

青柳政府参考人 年金の支給において、五年を超えて遡及した差額支給の実例についてのお尋ねと受けとめました。

 年金の支払いを受ける権利は、委員も御承知のように、会計法の三十条、三十一条によりまして、権利の発生から五年を経過することによって、時効によって消滅する、これが大原則でございます。しかしながら、御本人から裁定請求書が提出されていながら、保険者において適正な処理が行われていなかったことによりまして時効の進行が中断していた、その中断の結果、最終的に支払われた、こういう事例がございます。

 具体的には、老齢年金の受給者が亡くなって、その遺族から遺族厚生年金の裁定請求があった、その際に、老齢年金の年金額計算の基礎となっていました被保険者期間の一部がその遺族年金の計算の際に漏れていたということが判明したために、再裁定を行いまして、このときには約九年分の差額をお支払いしたものと承知しております。

高橋委員 今簡単に一つ事例を紹介していただきましたけれども、こうしたことは現場では行われているということで確認してよろしいかと思うんですね。

 適正な処理を事務所が行っていないということがわかれば、本人に瑕疵がないのだということで時効にはしないということが現実に行われている。私はこのことをしっかり徹底していただきたいと思うんです。時効だから無理なんだということが国会からアナウンスされてしまうと、気づいた人でさえも申し出をあきらめ、大臣がこれまで、申し出があれば丁寧に対応しますと答えてきましたが、それすらも無駄になります。加入者の利益を守る立場でやってもらいたい、このことを強く指摘をしたいと思います。

 それから、先ほど来議論されている、受給されている方の記録の突合ができないという答弁でありますけれども、安倍総理が、やはり年金をきちんと説明するんだ、ねんきん定期便を最高の売りにしている、そういうことからいって、現在の受給者がその権利を剥奪されるということがあってはならない、当然、同じように説明責任が求められると思うんですね。

 六月の振り込み通知の際に納付記録を一緒に送付する、そのくらいは最低やるべきです。多分、発注だとかいろいろな事情があってもう間に合わないということなんだと思うんです。間に合わなければおくれてでもやるべきだ、このことを検討するべきと思いますが、いかがですか。

青柳政府参考人 被保険者の方と違いまして、受給権者の方々は、本来、年金の裁定に当たりまして、御本人が、その加入履歴なり、あるいは基礎年金番号、あるいは基礎年金番号以外にも年金手帳の記号番号がある場合には、これを記載していただき、申請をしていただく。そして、その申請に基づきまして、社会保険庁の方で管理する年金の加入記録と照合、確認を行って、御本人にも、その場合に、記録提供の申し出があればこれをごらんいただいているというような手続を、受給権者の場合は既にいわば一回経過しているという事情がございます。

 また、かてて加えまして、十七年の十月からは、いわゆる五十八歳通知によりましてまず確認を私どもにしていただき、さらに、受給権が発生する六十歳、基礎年金の場合は六十五歳ですが、その方に対して、裁定請求書に、五十八歳時点で加入した記録に基づいて整理したものをターンアラウンドでお送りいたしまして、これを御確認いただいている、こういう手続も行っておるわけでございます。したがいまして、被保険者の方は、これまでそういうものが、例えばID、パスワードでお求めをいただくとかいう形でしかなかったわけですが、年金受給者の方は、一たんそういうものを経過しているという事情の違いがございます。

 したがいまして、改めて加入記録を送付して確認していただくということ以上に、もしそういう御懸念、御心配があるのであれば、本年の六月に、まずは年金の振込通知書において御案内をさせていただきますので、これをお読みいただいて、御心配の方にはまず記録確認を申し出をいただくということの方が、より優先すべき、かつ効率的な方法ではないかというふうに現時点では考えている次第でございます。

高橋委員 非常に残念な答弁でありますね。

 私は、本当にこれは最初の一歩だ、当然求められている水準からすれば満足のいくものではないんだと思うんです。ただ、最低でもそのくらいの説明責任を果たすべきだと指摘をしているんです。一度の裁定が、では完全だったと言い切れますか。平成九年に基礎年金番号を統一したことによって、丁寧にやっていた裁定がどうなりましたか。そのこと自体も振り返らなきゃいけないんじゃないですか。これはまたもう一度機会があったら必ず指摘をしたいと思いますけれども、少なくとも、六月に間に合わなくても、おくれてでもやるべきだ、そのことを重ねて指摘をしたい。それは、どうしても今国民の世論がそれを求めているんだということを重ねて指摘をしたいと思います。

 次に進みます。

 私は、前回の委員会で、システム経費や外部委託の問題について質問しました。先ほど川内委員からもお話があったと思いますが。

 そこで、まず確認をしますが、運用業務においてはかなり外部委託はもうやられているということがあったんですけれども、では現実の職場の状態は、正職員と委託先の民間会社の社員が混在して業務を行っている、こういう状況ですね、確認をさせてください。

青柳政府参考人 社会保険庁におきましては、かなり早い段階から、いわゆる外部委託という形で、職員が必ずしも行わなくてもできるような業務を積極的にアウトソーシングしてまいりました。

 また、近年では、いわゆる市場化テストという施策を内閣全体で推進するという観点から、私どもも積極的にこの市場化テストというものを実施しておるわけでございまして、その結果として、業務の分野によっては、ただいま委員から御指摘のあったような分野も生じておると承知しております。

高橋委員 そういう状態でいろいろなことが心配されるわけですね。例えば個人情報の流出、委託会社の本来業務に流用されるおそれがないか、この指摘がかねてからございます。

 今回、五月十八日に発覚した愛媛県愛南町での個人情報流出事件は、私は非常に象徴的な事件だと思っております。資料をつけておきました。見ていただきたいと思うんです。

 これは町が出した「ご報告とお詫び」という文書であります。真ん中辺に「住民情報漏えいに係るデータ調書」ということで内訳が書かれてございます。一番上が住基情報で、五町村が合併しておるので、旧町の名前が書いてありますが、トータルで六万八千四百二十六。実は、町民の人口は全部合わせても二万九千人しかおりません。つまり、転出入や死亡者などもみんな含めて、これだけの情報がまだあったということでございます。国民年金の情報も三万五千八百十六件、老人保健情報や口座情報までも含まれておりました。

 報道によれば、町が委託契約を行ったデンケン株式会社が、山口市にある山口電子計算センターに業務を再委託した、これは契約書違反であります。流出したのは、その委託先の女性派遣社員が自宅に持ち出し、さらに福岡の情報システム会社の派遣社員であるその女性の夫が、私物パソコンでウィニー、交換ソフトを使用したために情報が流出してしまった。二重三重に誤りのある深刻な事例だと思います。

 まず、総務省に伺いますが、本来、住基ネットの扱いについては、民間会社のアクセスを禁止するなど厳密な運用が求められているはずなのに、どうしてこのような事件が起きたのでしょうか。全国の実態調査もするべきだと思いますし、再発防止策が求められますが、考えを伺います。

久保政府参考人 当然のことでございますけれども、地方公共団体は各種の行政サービスを行うということでございまして、そのために多数の個人情報を取り扱っておりまして、当然、これを適切に管理するということはもう言うまでもないことでございます。

 私ども総務省では、これまでも地方公共団体に対しまして、今回愛南町で問題になったようなウィニー、これに関しましても、これについての個人情報保護について適切な対応をとるように要請をいたしてまいりました。

 例えば、委員から配られた資料にも出ておりましたけれども、昨年、平成十八年の七月十八日に通知を出しておりますし、またその後、九月の二十九日付でセキュリティーポリシーのガイドライン、これを全面的に訂正いたしまして、このことについても触れております。そして、ことしになりまして、四月の二十四日付の通知でも、改めて注意を喚起いたしてまいりました。さらに、情報セキュリティー監査でございますとかあるいは研修といった各種の取り組みも実施をしてまいったわけでございます。

 そうした中で、このたび、こういった事案が生じたということはまことに私ども遺憾であると考えております。今回の事案が発生したことを踏まえまして、私どもの菅総務大臣から、再発防止のために実効性のある対策を早急に検討するように指示も私どもに出されておりまして、私どもとして、どういったことがさらに可能なのか、とり得ることがあるかについて、現在鋭意検討している最中でございます。

高橋委員 けさの地元紙、地元紙といっても愛媛ではありません、秋田です。北秋田市の一部住民の個人データがインターネット上に流出していた問題、十一万件の住民票コードが流出しているという事件が報道をされております。そのうち七百十一人分のデータは、氏名と住所、性別、生年月日の四項目がそろい、個人の特定が可能であると。

 驚くのは、この中身が今回の案件と全く同じですね。山口の電子計算センター、仲介をしているのはNEC、これも同じですね。秋田から山口で、再委託も問題だし、それがさらに山口で処理されているということも問題だし、それで、同じように、同社の元職員がパソコンにデータをバックアップしている。もう業務が終了したのにバックアップしている。そのことによってデータが流出してしまった。しかも、この事件は今ではなくて〇四年の十一月と聞いております。いかがでしょうか。

久保政府参考人 ただいま委員の御指摘のあった北秋田市の事例、そして、ただいま御指摘のあった愛媛県愛南町、これは全く同一の業者といいますか、すべて同じ原因で生じているということでございます。

 そして、私ども全貌を承知したというわけではございませんけれども、特に北秋田市の場合についてはそうでございますが、原因といいますか問題点、これは明らかでございます。

 まず、業務の委託先事業者が無断で再委託をしているということ、それから、再委託先の従業員がデータを無断で持ち出して、そして自己の、個人用のパソコンにその情報を入れていたということ、そして、御指摘がございましたように、これは、愛南町でいいますと、委託契約は平成十五年の四月から平成十六年の十月、随分前のことでございまして、委託終了後にデータの返還とか廃棄、これが徹底されていなかったということでございます。特に愛南町の場合には、再委託の禁止でありますとか、今申し上げましたデータの返還、廃棄、これにつきましては、愛南町と委託先事業者との契約でそういったことについて規定をされていた。にもかかわらず、当該契約は遵守されていなかったということが原因であるし、問題点であると考えております。

高橋委員 私は、大手の会社が仲介になって二重三重にこのような誤りを犯すということは絶対にあってはならないということを強く言いたいと思います。改めて、全国の実態調査もして、今後の対策について御報告をいただきたいと思うんです。

 大臣に、きょうはこの点を聞いていただいたと思いますので、感想を伺いたいと思います。

 きょうの午前の質疑なんかでも、個人情報の保護について、罰則のある守秘義務を課すんだとかいろいろ説明をしますけれども、実態はこうなんです。大手の会社が間に入ってこういうことをやられている。外部委託、再委託、さらに派遣社員だと。社員教育を徹底するといっても、そもそも教育を受けるような立場にない人にやらせている。こんなことでは、とてもとても安心して情報を任せられるはずがありません。社会保険庁は、さまざまな情報をオンラインでつなぐ試みと外部委託化を進めていますが、社会保険庁だけが、あるいは年金機構だけが安全ですと言い切れるでしょうか。大臣の感想を伺います。

柳澤国務大臣 年金の個人情報の保護ということは、我々、最も心して取り組まなければいけないということは、委員もるるおっしゃられることですし、我々としても当然そのように考えております。

 二つありまして、現在のオンラインシステムは、専用回線を使用した独自のものということになっておりまして、他の外部システムと接続することはございません。したがいまして、オンラインによる情報漏えいの問題は発生しないという認識でございます。

 他方、今委員から、いろいろ情報漏えいの事案として御指摘のありましたような問題、つまり、民間の外部委託に当たっては、我々は非常に注意を必要とするというふうに考えております。利用できる情報は業務に必要な範囲のものに限定するということで、自衛的なことも考えなければなりませんし、また、情報の漏えい、不正利用の禁止や安全確保措置を厳重に義務づけていかなければいけない、このように考えております。

 運用面においても、これは、通り一遍のことを答弁書も書いておりますのであえて申しますと、管理能力を有する業者を入札の参加条件にするとか、あるいは事前承認や研修を義務づけるといったようなことが書いてあるんですが、実は、今委員が言うとおり、こんなものを信頼して、委託のまた再委託というようなことを許容しておったのでは、大事な個人情報の保護ということをとても全うできるわけはないと私は思います。

 したがいまして、これから先、社会保険庁の外部委託に当たっては、これは絶対に再委託は認めないということで、それから、委託先の研修等も本当に実効性のあるものにしていく等々、今御指摘のような情報漏えいの事案によく学びまして、重大な決意を持ってこの面については臨んでいかなければならない、このように考えます。

高橋委員 答弁書を無視して大臣が重大な決意を述べていただきました。それは大変感謝をいたします。

 そこで、青柳部長にお約束をいただきたいのでありますが、既に外部委託はかなりの部分で進んでおります。先ほどの答弁にもございましたね。民間の業者と正職員が混在しているということでございますので、再委託のような状態や、派遣社員が短い期間で入れかわっているとか、そういう実態がどうなっているのか、実際に今現在何もないのか、実態を調査して報告していただきたいと思いますが、いかがですか。

青柳政府参考人 にわかなお申し出でございますので、私も、ちょっとこの時点で確認を持ったお答えはなかなかできかねるところですけれども、ただ、我々も、正直申し上げまして、一体どういうふうにそこら辺のところがなっていて、あるいは、どういうところに問題が生じているかいないかということは当然に把握をしたいというふうに思いますので、どのような形でそれをお伝えできるかという点については少し研究をさせていただきたいと思いますが、我々としてとにかくどういうことができるかということについては、まずはそういうことを考えてみたいというふうに思います。

高橋委員 よろしくお願いします。

 次に、収納業務、社会保険の未適用事業所への適用促進業務、年金相談という三つの分野で市場化テストを行ってきましたけれども、今年度から適用と相談は完全に委託事業になると聞いております。

 例えば、平成十七年度、五カ所の収納事業を人材派遣会社と債権回収会社の二つの会社で受託しておりましたが、今年度の入札を見ても、十三カ所中十一カ所でこの二社が落札をしております。窓口業務の外部委託も同じ会社が受託をしていると聞いておりますが、そうでしょうか。まず一つ確認します。

 そして、外出しした業務のかなりの部分を特定の会社が占めるとなれば、新たな利権の温床ともなりかねないと思いますけれども、いかがですか。

青柳政府参考人 ただいまのお尋ねの中で、窓口業務云々というところだけ、私、にわかにちょっと理解ができなかったわけでございますけれども。

 いずれにいたしましても、私どもが現在市場化テストでやっております案件につきましては、業務の範囲なりあるいは業務のそれぞれの目標設定というものをきちんと区分けして、いわばエリアを分けた形で整理をしまして、その上でそれぞれのいわば分野、エリアを担当していただく業者を一般競争入札で選定しております。

 このような仕事については、当然それぞれの業務分野の中で得手不得手もございましょうし、また、正直申し上げて、ある程度のいわばロットでこういうものを得た方が、より有利な形でいわば先行投資的なものが生かせるというものも働きましょうから、結果的にそれがある程度幾つかのところに集まってくるということはございましょうが、私どもとしては、あくまでもより効率的なやり方をするにはどうしたらいいかという観点から、一般競争入札のメリットを生かすという形で業務委託をさせていただいているということでございます。

高橋委員 窓口業務というのは、社会保険事務所の窓口も同じ「もしもし」という会社がやっているというお話を聞いていたので、確認をさせていただきました。

 ちょっと時間がなくなりましたので、少し飛ばしまして、今回、職員の分限処分が明記されるに当たって、私は、職員やあるいは今謝金職員と言われている方たちがリストラをされて、委託先で低賃金で働くということもあり得るのではないか、このように思っております。これはちょっと前に質問する予定でしたが、時間がないので、そういうことが実際に起こっております。

 それで、例えば〇四年の十一月に市場化テストに参入を希望して提案書を出したリーガルマインドの中身を見ますと、一部的な業務委託ではコスト増になるから一括で委託させてほしい、こういう提案をしているんですね。徴収なんかでも、コストがかかるから、強制徴収、差し押さえなどもやらせてほしいという提案もしております。その中で、「現在社会保険事務所にて現業分野などを担当しておられる職員の方々は、ご本人のご希望があれば、原則として、そのまま当社受託後も継続して就業していただく」、こんなことまで書いてあります。委託会社というのは期限が区切られているのに、こういうことまで書くんだなと思いましたら、政府の説明書の中に分限処分の回避努力とあって、委託先への派遣も検討に含まれております。

 長官に伺いたいと思いますが、委託先というのは長くて三年から五年と聞いています。身分の不安定な委託先まで、職員のあっせんを分限回避の努力としてやろうということでありますか。

    〔吉野委員長代理退席、委員長着席〕

村瀬政府参考人 まず、先ほど副大臣の話として出ましたように、職員の分限という問題は、任命権者の長官として職員に対してさまざまなことを行った上で行うという、そのさまざまな中身だろうと思います。

 一つは、当然のことながら、今は公務員でございますので、同じ厚生労働省本省内で仕事があるのかないのか。それから、本省を経由しまして、国家公務員全体の中で仕事があるのかないのか。また、その間に御退職をされる方がおみえになるのか。またまた、先ほどもお話がありましたように、ほかで仕事ということで、これは透明性というものをしっかり確保しなきゃだめでしょうけれども、委託先というところに対してお話し申し上げて快く受けていただけるのかどうか、さまざまなことをやはりやっていくんだろうというふうに思っております。

 したがいまして、すべての選択肢を視野に入れながら動いていきたい、このように考えております。

高橋委員 すべての選択肢ということでお認めになったと思います。

 残念ながら時間が来ましたので、まだまだ審議は尽くされていないということを重ねて申し述べて、終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

櫻田委員長 次に、阿部知子君。

阿部(知)委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。

 本日も、大臣初め各委員の皆さん、そして委員長、長時間の審議、大変お疲れさまです。

 しかし、審議は一向に国民の期待に沿うような結論を出していないのではないかと私はきょうも思いました。そもそも、五千万件に及ぶ、消えた年金という言い方を私どもはさせていただいておりますが、このことの責任はだれにあるのか。これが一貫して、謝罪もされていなければ、大臣は、これから裁定のときに統合されるんだからと、いわば待てば海路の日和ありみたいなことをおっしゃいますが、決してそうではないんだと思います。

 先ほど川内委員の御質疑でもありましたが、この五千万件に関して、一体この五千万件の年金の持ち主には瑕疵、誤り、問題はあるでしょうか、大臣。まだ見ぬ人です、それは。しかし、この年金の持ち主には誤り、瑕疵、間違い、問題はあるでしょうか。お願いします。

柳澤国務大臣 これは、ばらばらの年金番号をみんながそれぞれの期間について持っていたということを、どのようなシステムにして一元的な管理を行うか、これはだれがやろうとこういう問題に直面したわけです。そのときに、社会保険庁は、現に今この年金に加入している、そういうことに着目をいたしまして、それぞれに年金番号を振ったということです。

 ですから、過去に加入していた年金記録というものが残ったということでございまして、だれに責任があるという問題ではないと考えております。

阿部(知)委員 だれに責任があるかは、社会保険庁に責任があるんです。年金の持ち主には責任はないのです。大臣、だれに責任があるか、わかりはしないなんということはおっしゃらないでください。これは、統合の過程で、そのシステムの開発も含めて起こり得るミスだったか、あるいは起こり得る出来事だったかもしれません。しかし、私が今伺ったのは、この年金の持ち主には瑕疵、誤り、問題はあるのですか。ないでしょう、大臣。そこを明確に、ないとまずおっしゃってください。

柳澤国務大臣 これは、年金の加入者の側に責任があるということではありません。

阿部(知)委員 であれば、これから、この六月には既裁定者にも御案内が行き、もしかして再裁定になります。しかし、よもよも、この五年間の受給の期限、いわば有効は五年間のみなどという措置は、どの一件に対してもなされませんね、大臣。この持ち主には何の落ち度もないのです。そこを大臣は今この場でしっかり言明してください。これから六月、不十分なものであれ、ちっちゃい字であれ、既裁定者にもお知らせが行くでしょう。統合される方もあるでしょう。びた一文欠けることなく年金を給付してください。大臣、どうですか。

柳澤国務大臣 これは、かねがね申し上げておりますように、会計法では、これは時効によって消滅する、これは支分権ですけれども、そういうことになっているわけでございます。もとより、今高橋委員も御質問の中で触れられたように、そういう裁定請求をしたということであれば、それはもう言うまでもなく、時効の中断の措置をとられたということになりましょうし、また、我々の社会保険庁の側が重大な障害を与えている、そういう請求権に対して、それが実現されることに重大な障害を与えているというような事情があるということになれば、それは時効の進行がとまるというようなことで、我々は、今現在、一般的なこの枠組みの中に置かれているということでございます。

阿部(知)委員 重大な障害を与えているということになればじゃなくて、なっているんです。だって、統合されなかったんだから。あらゆる手だてを用いて統合する義務は、申しわけないけれども社会保険庁に課せられているんです。だから、年金受給側には何の落ち度もない。この当たり前の原点すら答弁の中であやふやにすることはしないでいただきたい。

 そして、まず記録を、原簿を保存しなきゃいけない義務も社会保険庁。それから、裁定については御本人が申請しますが、その間に、あえて抜かされる一項目があると思います。ここには、例えば厚生年金にかかわる法律の第三十一条の二、被保険者に対する情報の提供、国民年金では十四条にありますが、情報が正しく提供されねばならないのです。どういうことをいいますかというと、「当該被保険者の保険料納付の実績及び将来の給付に関する必要な情報を分かりやすい形で通知するものとする。」通知するものに基づいて申請があり、裁定があるんです。今どこで滞っているかというと、この浮いたものは通知されてないんです。

 いいですか、大臣、よくこの法律の枠を考えてください。記録がある、正しく通知される、本人が申請される、裁定がされる、その二番目の正しい通知を社会保険庁が五千万件もいわばやってないのが現状なのです。どうですか、大臣。

青柳政府参考人 条文についてのお尋ねでございますので、私からお答えをさせてください。

 ただいま阿部委員が御紹介になりました条文は、まさに平成十六年の年金改正の際に新たに導入されました条文でございまして、これに基づきまして、私ども、実はねんきん定期便を二十年四月から実施させていただく。まさにこの条文は、二十年四月から本格実施ということになっております。

 それに先立ちまして三十五歳通知等をさせていただいているというのは、これまで委員会でも御紹介させていただいたとおりでございます。

阿部(知)委員 それが、例えば五十八歳通知、三十五歳通知、四十五歳通知だけのことじゃないんです。いいですか、ここに書いてあることは、必要な情報をわかりやすい形で通知するんです。私が年金を受けるために必要な情報を通知することは、あなたたちの義務なんですよ。五千万件浮いたこの情報の持ち主に、この宙に浮いている、ぷかぷか浮いてしまった年金の記録を通知するのは、あなたたちの義務なんですよ。単にねんきん定期便を百億円もかけて送ればいいという問題じゃないんです。そういうずさんな仕事をするから、本当に表面だけの仕事になり、何ら受給権を持った国民のサービスにならないんです。

 この法文をそんな浅いものとしか読めないんだったら、もともとあなたたちの組織というのは何ですか。お手紙だけ出すだけのものですか。五千万件、だれの責任で浮いたのですか。

 大臣は、こういうシステムをつくれば当然あり得るとおっしゃいました。そのことは、少しはありましょう。しかし、システムを変えたは国民のせいではないです。システムを変えたは、よりよいサービスのために社会保険庁がやったんです。しかし、そのことで同時にあらわれた弊害もあるわけです。おのおの発達過程の違う年金を寄せて一つに集めた。そのとき寄せ切れないものができて、その寄せ切れない情報は、あなた方が国民に発信すべきですよ。

 この五千万件は、おのおのどこの社会保険事務所から出てきたデータであるかということはおわかりなんですね、青柳さん。一言で答えてください。どこの社会保険事務所から進達されたものであるかはわかりますね。時間がないのでイエスかノーで答えてください。

青柳政府参考人 すべての案件について当たったわけではございませんが、基本的には、その時点で入力をされた事務所というものの所在はたどることができると認識しております。

阿部(知)委員 申請を待つとか言っていないで、例えば、どこの社会保険事務所から来たものかがわかれば、先ほどもありました、少なくとも厚生年金については、各社会保険事務所はマイクロフィルムの原簿を持っているわけです。それを今、五千万件を各社会保険事務所別に分けて、それと符合することだってできるんですよ。やらないだけですよ。

 大臣、やはりおかしいと思うんです。だれが犠牲を受けているか、だれが痛みを負っているか。そのことに大臣は、これから行政的な仕事量が過大になるからと、一定働く職員には配慮をなさいました。しかし、一番の被害は、そして一番不安に置かれているのは国民であります。この情報を知らせるのは社会保険庁側からやるべきです。社会保険庁、そこのデータを中央に送った各社会保険事務所別に分けてマイクロフィルムで突合する、できない作業じゃないと思います。どうですか、大臣、考えてみて。

柳澤国務大臣 五千万件のこのデータを、ではその名義人に送れるか。送れないんですね、これが。早い話、厚生年金の場合には、その被保険者の住所というものの登録をしたのはごく最近になってからということで、古いものには住所はありません。例えばですよ。

 それからまた、では、その企業に送り返してチェックをしてもらえるか、これも全部が全部そういうことが可能かと。企業も引っ越す、それから企業はなくなる、こういうようなことをいろいろ考えますと、やはり私どもは、何回もお願いをして皆さんに来ていただくことをきっかけにしてお調べさせていただくということが結局は早道ではないかという判断になるわけでございます。御理解を賜りたいと思います。

阿部(知)委員 大臣、五千万件を塊で、五千万件、五千万件、五千万件と言っていれば済むわけではないのです。私が今具体的に提案したんです。各社会保険事務所三百何カ所、分ければ二十万件くらいでしょうか、以下ですよ。特に厚生年金に関しては、社会保険事務所ごとにマイクロフィルムを持っているわけです。

 私は、この間、社会保険事務所、自分の選挙区へ行って、本当にどうすればこれが可能かを国民のために一生懸命考えてみようと思って行ってきました。でも、ここの審議の大臣の言葉からは、あるいは青柳さんの態度からは、これを何とかしなきゃいけない、どういう道があるのか、いつも大臣たちは、できない理由を挙げるだけですよ。それでは国民は納得できないんですよ。

 本当に自分から言っていけない、だって、正しい情報が伝えられてないんですもの。法律に定める正しい情報は行ってないんですよ。だったら、いろいろな提案が各委員からあったと思います。例えば、五千万件を現在の受けている三千万人と突合しなさいとか。私は、これは社会保険事務所ごとに分けたら、少なくとも、そこにあるマイクロフィルム、事業所別、合うものがあるだろう。全部やれるなどとは思いません。だけれども、浮いているものの数が一日も早く少なくなるだろう、それくらいのことは、大臣、真剣に考えてみるべきですよ。次回までに御答弁をよろしくお願いいたします。

 私は、あと、きょう残された時間の中で、いわゆるこの間の市場化テストということを伺いたいと思います。

 これは、先ほどの高橋委員も御質疑でありましたが、大臣は、せんだって私の質疑の中で、市場化テストは、例えば電話かけ等々は公務員ではできない時間帯にやれる、一定のそうしたこともあるのかと思ったということで、前向きに一部評価しておられたんだと思いますが、きょうお手元に配らせていただいた国民年金保険料の収納業務に係る評価についてというところで、評価というところに三つ挙げられています。

 対象事業所のいわゆる免除等の実績が低調なので、結果的に納付率は市場化テストでは上がらない。二番目、要求水準が低過ぎて、納付率の向上につながる納付月数の獲得が図られる水準にはない。三つ目、対象事務所において、積極的に受託業者との連携が図れないために、総合的に見て納付月数並びに納付率を上げるには至っていないということが一枚目に書かれています。

 そして二枚目。いわゆるコストは安かった。では、コスト面で差を生じた要因は何か。これは、せんだって少し御紹介しましたが、社会保険事務所が現状でやるところは遠隔・山間地などで、訪問して督促をしているということも加味されて人件費は高くなる。

 きょうの坂口委員から村瀬さん、社会保険庁の長官への御質疑でありましたが、村瀬さんがいみじくもおっしゃったように、これは民間の損害保険等々と違って、顧客を相手にすればいいんじゃなくて、全員を相手にしなきゃいけない。当然、徴収の困難な方、戸別訪問の方も必要だし、ほかのさまざまなデータを寄せて納付率を上げていかねばいけないということなんだと思うんですね。

 こういうデータが出ていて、なおかつこれで市場化テストに投げて、年金の信頼回復に結果がつながっていると大臣は思われますか、どうでしょうか。

村瀬政府参考人 市場化テストでございますので、私の方からお答えを申し上げたいと思います。

 まず、国年の業務につきまして、五カ所の評価でございますけれども、今委員御指摘のように、残念ながら芳しい結果ではなかった。これはなぜかといいますと、一つは、できるだけ多くの業者の方々に参加をしていただきたいということで、要求水準をぎりぎりのところで定めたという経緯がございます。したがいまして、現在行っております市場化テストにつきましては、納付率の向上につながる適正な要求水準を設定する。それから、すべての未納者に対して納付督励の実施を必須条件とするという、反省を踏まえまして、さらなる効率的、効果的な事業推進、こういう形で運営してまいりたい、このように考えております。

阿部(知)委員 せんだっても御紹介しましたが、既にことしも三十カ所でしたか、十八年の七月からは三十カ所が対象になっていて、今の村瀬長官の御答弁にもかかわらずというか、ほとんど同じ業者が受託しているんですね、先ほど高橋さんもおっしゃいましたけれども。これらの業者、例えば、エー・シー・エス債権管理回収等は、戸別訪問は前回の実績でもゼロなんですね。

 ですから、今村瀬長官がおっしゃったことは、もう少し今回の事業の投げられ方も見ていっていただきたいと思いますのと、さらにこれで三年も先までやることが決まっていて、これまた税金の無駄遣いになるのではないかと私は強く懸念いたします。

 また、納付率の問題も、きょうちょっと時間の関係で触れられませんが、一点だけ、大臣にお伺いいたします。

 来年度八〇%というのは、とても届きませんね。納付率は今多目に見ても六七・一。多目にというのは、不正免除やあるいは不正不在処理、いるのに不在処理して分母対策、去年問題になりましたね、そういうものをやって辛うじて六七なんですよ。これを、不正不在処理を全部正しく処理したらもっと落ちますね。ここで、村瀬長官の立場からは、納付率をもっと上げるためにと言わねばならない立場ではあると私はあえて思いますけれども、しかし、本当にそうです、今ここでありました八〇%とか、来年一年で十何%どうやって上げるんだろうか。こんなことは、国民との約束ですから、大臣、どうなっていますか。お願いします。

柳澤国務大臣 村瀬長官が八〇%ということを目標にして努力をなさっているわけですけれども、六七%も今委員から指摘されたような事情が背景にあった。六五%程度にとどまっているのが現在の状況ということになりますと、八〇%が私ども容易に達せられる目標とは言いがたいということは御指摘のとおりでございます。しかし、目標として立てた以上、これに向かって最大限の努力をしなきゃならないということが私どもの任務だと思っています。

阿部(知)委員 そうではなくて、制度設計の問題とか、だって、立てられない目標を立てて、それに向かって走れと言われて、職員も本当に気の毒だと私は思うんです。あえて言えば、村瀬長官だって気の毒だと思います。きょう、申しわけありませんが、長官に伺うお時間がないので。

 今の大臣の御答弁は、数値に強い大臣とも思えません。立てた以上はやらねばならぬというのは、到底到達できないんですよ、あと一年では。どうひっくり返ってできましょうか。そんなものを目標といって、走ることもできないし、国民に約束もできません。それは余りに不誠実であります。

 もう一つ、きょうは絶対伺っておかねばいけないことがございますので、話をかえさせていただきますが、いわゆる厚生年金病院のことでございます。

 社保庁の改革の審議の冒頭で吉野委員もお取り上げでありますが、今、我が国における医療崩壊状況というのは、本当に深刻な事態が、なぜ経済大国、世界第二位の我が国で、あっちこっちで医師がいない、病院がつぶれる、お産ができない、いろいろな問題があるんだろうということは、与野党を問わず、実は政治が解決せねばならない最大共通課題だと私は今思っております。

 その中で、厚生年金病院が、地域への医療の貢献、あるいはリハビリ医療の貢献などをしていることは、大臣も既に御承知おきだと思います。

 昨年の四月、医療法の改正がございましたが、その中でも、いわゆる県単位で医療計画を立てますときに、その四番目に挙げられておりますが、生活習慣病その他の国民の健康の保持を図るために特に広範かつ持続的な医療の提供が必要と認められる疾病として、厚生労働省は、糖尿病、がん、心筋梗塞、脳梗塞を挙げておられます。糖尿病、がん、心筋梗塞、脳梗塞、これらはいずれも、その方がQOL、よい生活をしていただくために、予防も大切ですが、かかったときのリハビリ、再び社会の中で生きていくためのリハビリテート、そういう医療が不可欠な分野でございます。

 大臣には、まず厚生年金病院の位置づけはどのようにお考えであるか、そして地域にとっては消してはならない灯であるということもどのようにお考えで、どういう形でこれを存続させていくか、まず存続への強い意思をお願いしたいということと、医療崩壊はもうこれ以上一歩も譲ることができませんので、大臣の強いリーダーシップを望みますが、いかがでしょうか。

柳澤国務大臣 厚生年金病院の位置づけやいかに、こういうことでございますけれども、厚生年金という立場にふさわしいリハビリテーションあるいは高度の整形外科療養というようなことで、地域にとって非常に重要な役割を担っていると思います。したがって、拠点病院等の指定も受けているところが多い、こういうことでございます。

 厚生年金病院、これをどうしてもこれから合理化を図っていかなきゃいけない、新しい位置づけを求めていかなければならないということでございますけれども、今申したような地域医療における重要な役割というものと厚生年金から切り離すということをどのように両立させ、調整させていくかということについて、私どもとしても、非常に困難ではありますけれども、ベストの解を求めていかなければならない、こういうことに考えておる次第です。

阿部(知)委員 私が今指摘させていただいたのは、地域の医療計画の中で柱とせよと厚生労働省が定めている疾患のいずれもが、この厚生年金病院の現下の活動と深くかかわっておるわけです。

 そして、大臣にはぜひ、この間、医療法の改正のときに、社会医療法人といって、社会にとって不可欠な、いわゆる公共サービスを担う医療法人のあり方も厚生労働省としてこれから財務省にも求めていくというお話でありました。今のところそれは、小児医療や救急医療、産科医療をやるということを前提としてございますが、一方で少子高齢社会です。こうしたリハビリということの安定的な供給、提供ということも必ずや時代の要請でございますので、きょう御答弁は結構でございますから、社会医療法人ということの膨らみと枠を大臣にはぜひお考えいただいて、よい方向にお願いしたいと思います。

 ありがとうございます。

櫻田委員長 次回は、来る二十五日金曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時十一分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.