衆議院

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第28号 平成19年6月6日(水曜日)

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平成十九年六月六日(水曜日)

    午前九時三分開議

 出席委員

   委員長 櫻田 義孝君

   理事 伊藤信太郎君 理事 鴨下 一郎君

   理事 谷畑  孝君 理事 宮澤 洋一君

   理事 吉野 正芳君 理事 三井 辨雄君

   理事 山井 和則君 理事 福島  豊君

      新井 悦二君    井上 信治君

      石崎  岳君    稲田 朋美君

      小里 泰弘君    大塚  拓君

      加藤 勝信君    川条 志嘉君

      木原 誠二君    木村 義雄君

      岸田 文雄君    清水鴻一郎君

      清水清一朗君    杉村 太蔵君

      鈴木 淳司君    平  将明君

      高鳥 修一君    冨岡  勉君

      長崎幸太郎君    丹羽 秀樹君

      西川 京子君    林   潤君

      原田 令嗣君    福岡 資麿君

      松野 博一君    松本  純君

      松本 洋平君    安井潤一郎君

      山内 康一君    内山  晃君

      大島  敦君    菊田真紀子君

      郡  和子君    園田 康博君

      田名部匡代君    筒井 信隆君

      長妻  昭君    西村智奈美君

      細川 律夫君    柚木 道義君

      坂口  力君    古屋 範子君

      高橋千鶴子君    阿部 知子君

    …………………………………

   厚生労働大臣       柳澤 伯夫君

   厚生労働副大臣      武見 敬三君

   厚生労働大臣政務官    松野 博一君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 山崎 史郎君

   政府参考人

   (内閣府規制改革推進室長)            田中 孝文君

   政府参考人

   (厚生労働省医政局長)  松谷有希雄君

   政府参考人

   (厚生労働省労働基準局長)            青木  豊君

   政府参考人

   (厚生労働省労働基準局労災補償部長)       石井 淳子君

   政府参考人

   (厚生労働省年金局長)  渡辺 芳樹君

   厚生労働委員会専門員   榊原 志俊君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月六日

 辞任         補欠選任

  木原 誠二君     小里 泰弘君

  菅原 一秀君     鈴木 淳司君

  高鳥 修一君     大塚  拓君

  菊田真紀子君     西村智奈美君

  柚木 道義君     長妻  昭君

同日

 辞任         補欠選任

  小里 泰弘君     丹羽 秀樹君

  大塚  拓君     稲田 朋美君

  鈴木 淳司君     清水清一朗君

  長妻  昭君     柚木 道義君

  西村智奈美君     菊田真紀子君

同日

 辞任         補欠選任

  稲田 朋美君     高鳥 修一君

  清水清一朗君     安井潤一郎君

  丹羽 秀樹君     山内 康一君

同日

 辞任         補欠選任

  安井潤一郎君     菅原 一秀君

  山内 康一君     平  将明君

同日

 辞任         補欠選任

  平  将明君     木原 誠二君

    ―――――――――――――

六月五日

 患者負担増に反対し、保険で安心してかかれる医療に関する請願(田名部匡代君紹介)(第一三一二号)

 療養病床の廃止・削減と患者負担増の中止等を求めることに関する請願(田名部匡代君紹介)(第一三一三号)

 同(田名部匡代君紹介)(第一三二七号)

 同(田名部匡代君紹介)(第一三五七号)

 格差社会を是正し、命と暮らしを守るために社会保障の拡充を求めることに関する請願(塩川鉄也君紹介)(第一三一四号)

 被用者年金制度一元化等に関する請願(横光克彦君紹介)(第一三一五号)

 体外受精等不妊治療の保険適用を求めることに関する請願(枝野幸男君紹介)(第一三二八号)

 同(福島豊君紹介)(第一三四一号)

 介護療養病床の全廃、医療療養病床の大幅削減に反対し、療養・介護の環境及びサービスの整備・拡充を求めることに関する請願(穀田恵二君紹介)(第一三三八号)

 国民健康保険の充実を求めることに関する請願(高橋千鶴子君紹介)(第一三三九号)

 同(吉井英勝君紹介)(第一三四〇号)

 同(穀田恵二君紹介)(第一三八三号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第一三八四号)

 マッサージ診療報酬・個別機能訓練加算の適正な引き上げを求めることに関する請願(筒井信隆君紹介)(第一三四二号)

 ウイルス肝炎総合対策の推進を求めることに関する請願(新井悦二君紹介)(第一三七五号)

 同(菊田真紀子君紹介)(第一三七六号)

 同(郡和子君紹介)(第一三七七号)

 同(清水鴻一郎君紹介)(第一三七八号)

 同(谷畑孝君紹介)(第一三七九号)

 同(阿部知子君紹介)(第一三九五号)

 同(笹川堯君紹介)(第一三九六号)

 最低保障年金制度の実現に関する請願(塩川鉄也君紹介)(第一三八〇号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第一三八一号)

 同(吉井英勝君紹介)(第一三八二号)

 労働法制の拡充に関する請願(篠原孝君紹介)(第一三八五号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 労働契約法案(内閣提出第八〇号)

 労働基準法の一部を改正する法律案(内閣提出第八一号)

 最低賃金法の一部を改正する法律案(内閣提出第八二号)


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     ――――◇―――――

櫻田委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、労働契約法案、労働基準法の一部を改正する法律案及び最低賃金法の一部を改正する法律案の各案を一括して議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 各案審査のため、本日、政府参考人として内閣府大臣官房審議官山崎史郎君、規制改革推進室長田中孝文君、厚生労働省医政局長松谷有希雄君、労働基準局長青木豊君、労働基準局労災補償部長石井淳子君、年金局長渡辺芳樹君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

櫻田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

櫻田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。西村智奈美君。(発言する者あり)

西村(智)委員 民主党の西村智奈美です。

 我が党の理事が申し上げているとおり、この委員会、きょうの委員会は、委員長の職権によって立てられている委員会であります。冒頭、強く抗議をいたします。

 しかも、理事会で、年金保険料のサンプル調査、特殊台帳とコンピューター記録の整合について三千件のサンプル調査をされたようでありますけれども、この結果についても理事会に任されているということでありますが、全く出てこない。これを出さない限りは審議が進まない。そうではありませんか、委員長。冒頭、強く抗議をいたしますが、委員長のこれについての見解を伺いたいと思います。

櫻田委員長 職権で開会するということは現在の議会のルールによって認められたものでありますので、議会のルールに基づいて、本日、委員会を開催させていただいております。(発言する者あり)

西村(智)委員 委員長、この国会、本当にこの厚生労働委員会は、大変重要な法案が大変多く提出されております。その委員会の中で委員長職権でこれほどまで多くの委員会が立てられているということ、これはもう前代未聞ではないでしょうか。今後の議会運営、憲政の歴史に大きな汚点を残すことになるということを強く申し上げたいと思います。

 貴重な時間でありますので、年金の保険料問題についてはこの後の委員からも質問があると思いますので、私は、きょうの議案となっております労働契約法以下三法案について質問をしたいと思います。

 私がきょう質問させていただきたいと思っておりますのは、労働契約法の中でも、特に就業規則といわゆる有期雇用契約についてであります。

 私は、この国会の前半で提出されましたパート労働法、これについても民主党としての対案を提出し、この委員会にかけていただいて議論をいたしました。その中で、これまでに雇用が多様化し、そして大きな雇用の二極化が進んでいる中で、一体有期契約をどう取り扱うのか、このことについて、依然として私は立法府の意思というのは明確に示されていないというふうに考えています。一体このまま放置するのか、それとも、この雇用の二極化を何としてももう少し改善して均等待遇を実現するという方向に向いていくのか、そのことが明確になっていないまま今回の労働契約法案が提出されておりまして、この法案の中に期待するところも私も少なからずあったわけなんですけれども、中身的にはやはり弱い部分が非常に多いというふうに思います。

 まず一点、この労働契約法案の中で就業規則についてでありますけれども、法案要綱、それから法案の実際に出てきている条文、見比べますと、大変大きな変更が六カ所にわたってあるというふうに承知をしております。このそれぞれの変更点についても、本来であれば一つ一つ伺っていきたいところでありますけれども、きょう伺いたいのは就業規則の変更であります。

 この提出されております第七条で、就業規則が存在しない事業所において、使用者が新たに就業規則を制定することによって労働条件の変更を行うことを可能にするものではないかという点について危惧をいたしております。これは審議会の中での基本合意、そしてまた法案要綱と異なる部分ではないかと考えますが、これについて政府はどのように答えてくださるでしょうか。

青木政府参考人 今委員御指摘になりました法案の七条でございますけれども、これは、現在多くの企業で就業規則の作成によって集団的に労働条件の決定が行われておりますけれども、その就業規則の労働条件が個々の労働者の労働契約の内容となっているのかどうかについて法律上は明らかでないのが現状でございます。

 今般、七条を規定しましたのは、このため、労働契約の内容である労働条件について労使で特段の取り決めをしていなかった部分について、就業規則に定められている労働条件が合理的なものであり、かつその就業規則を労働者に対して周知させたという場合には、労働契約の内容はその就業規則で定める労働条件によるものとするということ、それから、労働者と使用者が就業規則の内容と異なる労働条件を合意していたという場合には、その合意が就業規則の定めに優先するということを明らかにするということでございます。

 そういうことで、就業規則の法的効果とか、あるいは労働契約上の権利義務関係を確定させて、労働関係を安定させるという趣旨でございます。

 今お話ありました、これまで就業規則を制定していなかった企業においてはどうかということでございますが、新たに就業規則を制定した場合についてもこの七条の規定は適用されるものでございます。労働政策審議会におきまして諮問した法案要綱では、ここの「周知させた場合」というのが「周知させていた」という文言を用いておりますけれども、この場合におきましても、その法的効果が生ずる時点が不明確でありますけれども、第七条の規定が適用されることには変わりはありません。

 そういう意味では、御質問になりましたけれども、諮問要綱あるいはこの法案の要綱あるいは法案の条文そのものに変わるところはないというふうに思っております。

 ただし、個別具体的な事情により判断されるものでございますけれども、一般的には、既に就業していた労働者との間では、個別に労働者と使用者が合意して労働条件を決定していることが多いというふうに考えられますので、このような場合には、第七条のただし書きの方が適用されまして、その両者の合意が優先されるということになります。

 したがって、そういう場合には、就業規則の新規作成によって使用者が自由に労働条件を変更することができるということになるものではないというふうに考えております。

西村(智)委員 今局長は、「周知させた」と「周知させていた」と、変わりはないという趣旨の答弁だったかと思いますけれども、それだったら、わざわざ変えて条文をつくる必要はなかったわけですね。この点については本当に強く申し上げたいと思います。いかがですか。

青木政府参考人 私ども、法案の条文をつくる際には、内閣法制局において条文の審査をしてもらうということになっております。この際に、具体的な条文について御指摘のあったような変更になったわけです。

 この理由につきましては、「周知させていた」、諮問要綱ではそうなっているわけですけれども、これではこの七条の法的効果の発生時点が不明確だということで、その発生時点を明確にするため、「周知させた」に変更したものでございます。

 したがって、時点が明確になったということでありまして、その余のことについて変わるところはございません。

西村(智)委員 この就業規則というのは、これは当然のことながら、使用者が主となって作成することになるわけでありまして、今の労働の現場の実態からいたしますと、やはり労働者がなかなか物を言いにくいという性質のものだと思うんですね。言ってみれば、使用者と労働者の関係でいうと、より弱い立場に置かれている労働者の権利保護のために、やはりこういった条文は、あいまいにするのではなくて、しっかりと趣旨が明確になるような書き方をすべきだったのではないかというふうに強く申し上げたいと思います。

 また、この就業規則でありますけれども、これは民間の団体が行った調査でありますが、およそ三〇%の働く人たちが実は就業規則を見たことがないというふうに答えております。実態はどうなっているのか。これは、厚労省の方でも状況は把握しておられることと思いますけれども、就業規則をまだ見たことがない、どこにあるのかもわからないという人たちが、推計いたしますと全労働者の約三分の一いるというときに、この労働契約法案で本当にそういった実態に対応できるのか。就業規則を周知させるという点からも、本当にこの法案で実効が上がるとお考えなのでしょうか。

青木政府参考人 今御指摘になりましたように、就業規則を周知させるというのは大変重要なことだというふうに思っております。

 今回の労働契約法案におきましても、就業規則の効力発生のための要件として、周知をさせるということを求めております。したがって、法律的に言えば、使用者が就業規則を周知させずに、その結果、今お触れになりましたような、労働者が就業規則を見たことがないというようなことになっているのであれば、使用者は就業規則の効力を主張することはできないというふうに考えております。

 ただし、使用者が就業規則の周知の手続を踏んでいるのであれば、個々の労働者が現実に就業規則を見たことがあるかどうか、あるいは知っているかどうかまでは問われないという規定でございます。これは、現在までの判例法理でなっているところでございます。

 そういう意味でも、周知手続というのは大変重要なことだというふうに思っております。使用者が就業規則の周知手続をとっていないという場合には、現行の労働基準法の百六条にも違反ということであります。そのような事案を把握した場合には、是正指導をいたしているところでございます。

 周知というのは、具体的に指導している中では、常時各作業場の見やすい場所に掲示しろとか、あるいは備えつけるというようなことによって実効を図るとか、労働者に現実に交付をするという場合も多くあるわけですが、交付をする、あるいは、電磁的に、パソコン等に入れていつでも見られる状態にするというようなことなどの方法によって、希望すればいつでも就業規則の存在、内容を知り得るようにしておくということを指導いたしておるわけでございます。

 そういうことで、私どもとしては、就業規則の周知については、今後ともしっかりと指導していきたいというふうに思っております。

西村(智)委員 ただ、就業規則に含まれておりますところの労働条件一般でありますけれども、これは、働く人たちからのいろいろな訴えがありますね。私のところにも、例えば女性労働者が直面している問題について、本当に細かい具体的なケース、これは百近く手元に寄せられているんです。労働条件、使用者の方から一方的に、これは合理的な変更ですということで変更を強いられているケースというのが極めて多い、これは雇いどめも含めてであります。

 そういう実態が今まさに現実の職場に横行しているということからいたしますと、やはり、就業規則を重視するということはよろしいんですけれども、そこに、それが例えば使用者側にとって一方的に有利に使われないような歯どめをかけていく必要が非常にあると私は思っています。

 そういった目で見ましたときに、第九条のただし書き及び第十条でありますけれども、第九条のただし書き以下は、労働条件の変更ができない、ただし、次の場合はこの限りでないということで、第十条の四つの要件を勘案して合理的と判断されるときは変更できるんだというふうになっておりますけれども、この部分は労働者保護の観点から不必要な条文ではないかというふうに私は考えているんです。この点について削除するお考えはなかったんでしょうか。

青木政府参考人 労働契約法案におきましては、労働契約は労働者及び使用者の合意により成立し、変更されるものであるという旨の合意原則をまず明確に規定しております。

 そして、その上で、就業規則による労働条件変更に関する最高裁判所の判例法理に沿って、まず原則として、使用者が労働者と合意することなく就業規則の変更により労働者の不利益に労働契約の内容を変更することはできない旨をまず規定しております。さらにその上で、就業規則が労働者に周知されていること、そして就業規則が合理的であること、そういう場合に、労働契約の内容である労働条件は変更後の就業規則に定めるところによるものとするというふうに規定しております。

 このように、今回の労働契約法案は、労働条件の変更に関して、労働者と使用者の合意を原則としつつ、現在の判例法理に沿ったルールとするものでございます。今お触れになりましたような、使用者側にとって都合のよい労働条件の変更を認めてしまうというようなものではないというふうに考えております。

 就業規則による労働条件の変更ができる場合の合理性の判断要素として、労働者の受ける不利益の程度という個々の労働者にとっての影響でありますとか、あるいは労働組合等との交渉の状況という就業規則の変更に当たっての労使協議の状況を明示しております。労働者の保護に十分配慮したものとなっているというふうに考えております。

 委員も御指摘になりましたように、我が国の一般的な労務管理実務におきましては、就業規則によって労働条件を集団的に設定することが行われておりますので、労働条件の変更というものも就業規則の変更によって行うことが広く行われている。したがって、こうした就業規則に関する実務を適切なものとするようなルールをこの法案に盛り込むということが必要だというふうに考えております。

西村(智)委員 そうしましたら、この第十条について具体的に伺いたいんですけれども、私は、さっき局長は労働者にとって不利益な変更を想定しているものではないとおっしゃったんですけれども、そうならないとも限らないのが労働行政の難しいところだと思うんですね。十分御承知のことだと思いますけれども、本当にひどい実態が、どんどん本当に複雑化して発生してきているわけですから、そこのところについてはしっかりとまた目を光らせていっていただきたいと思います。

 第十条について、二点伺いたいと思います。

 第十条で、合理的か否かを判断するいわゆる考慮要素、これが四点示されているわけなんですけれども、これは今までの判例、第四銀行の最高裁判決だそうですが、七つの考慮要素が挙げられていたと承知をしています。この最高裁判決の七つから、今回、法案の中では四つに絞り込まれているわけですが、判例法理に変更があったのかどうか、それを伺いたいのが一点。もう一つ、「労働組合等」と書いてあるんですけれども、この「等」というのは一体何を指すのでしょうか。

青木政府参考人 第十条の考慮要素の御質問でございますけれども、第十条は、私どもは、第四銀行事件最高裁判決で示された判例法理に沿って、これを明確にしようということで規定したということで考えております。就業規則の変更が合理的であることと変更後の就業規則を労働者に周知させることを要件として、労働契約の内容である労働条件は変更後の就業規則に定めるところによるものとするという効果を付与しようというものでございます。

 それで、お触れになりました第四銀行事件の最高裁判決で述べられた合理性を判断する際の考慮要素、七つございます。それぞれ、変更の必要性であるとか、内容の相当性でありますとか、代償措置その他労働条件の改善状況とか、労働組合との交渉の経緯だとか、他の従業員の対応でありますとか、一般的状況とか、それから労働者がこうむる不利益の程度というようなものもるる挙げられておりますけれども、この要素七つの中には内容的にお互いに関連し合うものもございます。このため、各条文では、関連するものについてはこれを統合して列挙をしたというふうなことでございます。したがって、十条の規定は、判例法理に沿ったルールを判例法理に変更を加えることなく規定したというふうに考えております。

 それから、第十条の中にある「労働組合等」の「等」という御質問がございました。この「労働組合等」には、多数労働組合あるいは過半数代表者は当然でございますが、それのほか、少数労働組合とかあるいは労働者で構成される親睦団体など、広く労働者側の意思を代表するものが含まれるというふうに考えております。

西村(智)委員 続いて、第十七条、いよいよ有期契約の方に移りたいと思いますけれども、「期間の定めのある労働契約」について、ここの第十七条二項、「使用者は、」「労働契約を反復して更新することのないよう配慮しなければならない。」というふうに書かれてあります。

 私は、これは一体どういう効果を生み出すんだろうかということで、右から左から斜めから、いろいろな読み方をしました。いろいろな読み方をしましたし、厚生労働省の方からも説明に来ていただきましたけれども、効果があらわれるというものではないという結論に達しました。つまり、「配慮しなければならない。」ですから、配慮していればいいわけで、配慮していますと言えばいいわけで、これはいわゆる罰則ということもないし、違反してもすぐどうなるというものではない、ただ書いてあるだけになるのではないかな、そういうおそれの強い法律だと思っております。

 申し上げましたとおり、有期契約雇用については本当に大変大きな、多くの問題が出てきております。有期契約の皆さんは、例えば未払いの残業代を請求したら雇いどめに遭ったとか、保険に加入してほしいというふうに申し出たら不利益変更をされたとか、あるいは有給休暇を取得したいと言ったら雇いどめに遭った、社会保険に加入したいと言ったら和を乱す人だと解雇された、こんな例が本当に枚挙にいとまがないということになっています。

 こういったような非正規雇用の労働条件の不利益変更、雇いどめを含めて、こういったことが横行している現状で、やはりきちんとこれに歯どめをかける、雇いどめのおそれなどがないというふうにきちんと歯どめをかける必要があると思うんですけれども、今回、この法律の中で、例えば不当や不法な使用者側の行為に物を言ったときにそういう雇いどめのおそれがあるわけなんですけれども、そういったことになりませんよという担保は一体この法律のどこでなされることになるのでしょうか。

青木政府参考人 労働関係紛争を未然に防止するため明確なルールを定めるというのがこの労働契約法案の大きな目的でありますけれども、委員がお触れになりましたように、個別の労働紛争の中で、やはり何といっても労働契約の終了の場面、とりわけ有期雇用のような非正規雇用の場合では、お触れになりましたような雇いどめというのが圧倒的にトラブルとして多いわけでございます。これをまずやはりきちんとしたルールのもとで、できるだけトラブルを少なくしていくということが大切だというふうに私も思っております。

 それで、確かに、有期労働契約労働者で物を言うと雇いどめのおそれがあるという、どこにそうならない担保があるんだという御指摘でございますけれども、この労働契約法案におきましては、雇いどめ、これは使用者による有期契約の更新拒絶ということでありますけれども、この雇いどめ自体を制限する規定は確かに設けられておりませんけれども、権利濫用に該当する解雇は許されないということについては十六条に規定をしております。

 有期労働契約の雇いどめに関する裁判例においては、その有期労働契約が期間の定めのない労働契約と同視することが社会通念上相当と認められる場合、あるいは労働者に労働契約期間満了後も雇用関係が継続すると期待することに合理性があると認められるような場合には、解雇に関する法理を類推適用いたしまして、その雇いどめが客観的に合理的な理由を欠いて社会通念上相当であると認められない場合は無効になるという判断が行われております。

 したがって、仮に不当、不法な使用者側の行為に物を言ったことに対する雇いどめが行われた場合には、その有期労働契約が今のような期間の定めのない労働契約と同視するようなことができるような場合には、権利濫用に該当するような対応であると認められる場合も多いと思います。そういう場合には、この労働契約法案の第十六条の規定が類推適用されて、権利濫用に該当する雇いどめとして無効になるという判断が行われるというふうに考えております。

 それから、十七条二項が御懸念があるということでございましたけれども、十七条二項の規定自体は、確かに配慮しなければならないという規定でございますけれども、これらの配慮を行ってもなお、結果として短い期間の労働契約となった場合とか、配慮しなかったことをもって直ちに契約期間が変更される等の特定の効果が生じるものではございませんけれども、契約期間を細切れにしたことを原因とする紛争が起きて、雇いどめが安易になされたというような場合には、裁判所等において、この配慮を行ったことが当然考慮をされるものというふうに考えております。

西村(智)委員 当然考慮されるものと考える、それはちょっと余りに楽観的なのではないかなというふうに思うんですね。大体、第十六条の解雇においても、社会通念上相当であると認められない場合は無効とするということで、こういう書き方だといろいろな誤解、誤った解釈を生みかねないものだと思います。私たち民主党の方ではこの点についても修正などを今考えておるところでありますけれども、今後の議論にゆだねたいと思います。

 厚生労働省御自身が平成十七年に有期契約労働に関する実態調査結果というのを行っておりますので、既に御承知のことと思いますけれども、企業が有期契約労働者を雇用する理由として一番多いのは何か。一番は人件費節約のためであります。

 本来、有期契約、有期雇用というのは、例えば仕事が本当に忙しい一時期に雇用するとか、あるいは、一時的に専門的な知識が必要になったからそういった知識を持っている人を取得するとか、本来そういった趣旨から始まったものだと思うんですけれども、やはりこの間の規制改革の流れの中で、有期雇用契約というのはどんどん拡大をされてきた。しかも、その有期雇用の、雇用の終了が容易だということで企業が注目をしてどんどん拡大をしてきたという経過があるのでありまして、これまで民法や労働基準法が想定していたものとこういった労働の実態はもう既に著しく乖離をしていると私は思います。

 有期雇用を望む労働者は少ない、これも厚生労働省の調査から明らかです。正社員として働きたいが働ける職場がないと答えている男性の契約社員が有期雇用契約で働いている、これが非常に多いということでありますし、そういったことを考えると、有期雇用のいわゆる入り口規制そのものが必要なのではないかというふうに考えるんですが、今回、労働契約法案に入らなかった理由を教えてください。

青木政府参考人 有期労働契約につきましては、確かに御指摘の面もございますけれども、もう一つ、契約期間中は雇用が保障されるからとか、あるいは勤務時間、日数を短くしたいのでといった理由でこの就業形態を選択している者が相当数存在いたしております。

 有期労働契約については、おっしゃるように、使用者側のニーズもございます、当然ございますが、それのみならず、労働者の側にもニーズがあるものでございます。したがって、有期労働契約が良好な雇用形態となるようにするということがまず大切ではないかというふうに思っております。そして、労働者が安心して働けるようにすることが重要であるというふうに思っております。

 したがって、有期労働契約を締結することができる理由を制限する、入り口を規制するということについては、やはり労使双方のニーズにもこたえられなくなるので、引き続き慎重な検討が必要であるというふうに考えております。

西村(智)委員 有期雇用の、その当該期間を定めた理由を明示することを少なくとも使用者に義務づけるべきではないかというふうに私は考えております。この点についてもう一回御答弁いただきたいのが一点。

 そして、大臣、最後に、今局長の方から、使用者側のニーズがあると同時に労働者側のニーズもあるというふうに答弁がありました、有期雇用契約について。それは、働く人たちにとっても、本当に短時間あるいは短期間働きたい、そういうニーズがあるということは当然のことだと思いますけれども、しかし、問題は、そういったニーズというレベルから話がどんどん外れていって……

櫻田委員長 西村智奈美君に申し上げます。

 申し合わせの時間が経過しておりますので、御協力願います。

西村(智)委員 既に有期雇用契約のトラブルが非常に多くなってきているわけでありますので、ここは、やはり私はもう一度原点に返って、すべての人たちに働きに見合った同一価値労働同一賃金の原則、均等待遇原則をこの契約法の中に盛り込むべきだったのではないかというふうに考えておりますが、その点について伺って、終わります。

櫻田委員長 申し合わせの時間が過ぎておりますので、簡潔に答弁願います。

青木政府参考人 有期雇用についての理由明示についての御指摘でございますけれども、これは、今回は、先ほど申し上げましたように、契約更新時などの契約終了場面における紛争が多くなっているので、まずこれをきちんとルール化しようということで、今回法案にお願いしております。

 それ以外のお触れになりました理由明示のようなものにつきましては、労働政策審議会におきましても、就業構造全体に及ぼす影響も考慮して、良好な雇用形態として活用されるようにするという観点を踏まえつつ、引き続き検討するということで、全体として引き続き検討ということになっておりますので、今後もこの答申を踏まえて必要な検討を進めてまいりたいというふうに思っております。

柳澤国務大臣 有期雇用を含めましていろいろな雇用形態がある中で、それぞれについて、これを良好な雇用形態にしたいという観点から、労政審においても諸般の検討が行われました。

 その際、雇用形態あるいは雇用の実態に応じた労働条件について、均衡の考慮ということも審議が行われたこと、これは以前パートタイム労働法の改正につきましても委員からそういう御質疑があり、私もお答えしたわけですけれども、結局、労働者側の代表者からはそうした御主張があるということの中で、使用者代表委員からは、具体的にどのような労働者についてどういうことをしろと言っているのかということについて不分明であるということから、労働契約法制の中に位置づけられないという御主張があって、コンセンサスに至らなかったということでございます。労政審としても今後引き続き検討の課題だというふうになっておりますので、今後、この答申を踏まえて必要な検討を進めたい、こういうことでございます。

 それから、同一価値労働同一賃金の原則につきましては、これもまた以前もお答え申し上げましたように、日本が職務給でないということで、給料が職務以外の人材育成や処遇の仕組みを全体として考えて設定されているということから、そのような客観的な賃金の分析あるいは評価ということが前提になるその前提が欠けている、確立していないということから、直ちにこれを導入する、あるいはそれをうたい込むということは現状にそぐわない、そういうことを御指摘申し上げる次第でございます。

櫻田委員長 以上をもちまして西村智奈美君の質疑を終了いたします。

 午前十時四十五分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前九時三十九分休憩

     ――――◇―――――

    午前十時四十五分開議

櫻田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。内山晃君。

内山委員 櫻田委員長、よろしくお願いを申し上げます。

 まず、労働三法につきましてお尋ねを申し上げてまいりたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 青木局長がきょうおられますので、急遽参考人としてお願いを申し上げたいと思います。

 私は、昨年来から厚生労働委員会で、授産施設で働く知的障害者に対して労働基準法の適用除外とする昭和二十六年十月二十五日に発した労働基準局長通知の問題点を指摘させていただきました。そして今回、五月十七日に、基発第〇五一七〇〇二号の、授産施設や小規模作業所等において作業に従事する障害者が労働基準法第九条の労働者に当たるか否かについての判断基準が示されております。その基準について、どのようになったのか、まずお尋ねをしたいと思います。

青木政府参考人 授産施設、小規模作業所等における障害者に対する労働基準法九条の適用に関する五月十七日の通達、もう発出いたしましたけれども、これは、昭和二十六年に授産施設についての通達を出して、それに基づき行政を実施してきたわけですけれども、その二十六年通達の制定当時と異なって福祉の場における障害者の就労実態が大きく変化していることから、改めて今般、授産施設、小規模作業所等において作業に従事する障害者の労働者性の判断基準を整備したものでございます。

 新たに発出した通達における労働者につきましては、訓練生との違い、これの判断基準を設けまして、これにつきましては、当該障害者が使用者との間で使用従属関係にあれば、労働基準法第九条の労働者に該当することとなるということで、具体的には四つ挙げております。

 一つは、所定の作業時間内でありましても受注量の増加等に応じて、能率を上げるため作業が強制されている。それから二つ目が、作業の時間の延長や、作業日以外の日における作業指示がある。三つ目が、欠勤、遅刻、早退に対する工賃の減額制裁がある。四つ目が、作業量の割り当て、作業時間の指定、作業の遂行に関する指導命令違反に対する工賃の減額や作業品割り当ての停止などの制裁がある。

 こういった四つのいずれかに該当するか否かを個別の事案ごとに判断するというものでございまして、労働者に今のような制裁等があれば該当するということで考えているということでございます。

内山委員 今の、「訓練等の計画」の中の一から四というところのあるかないか、こういう話でございましたけれども、そもそも訓練と労働というものの違いは一体何なのかということをお尋ねしたいんです。

青木政府参考人 これはなかなか難しいところでありますけれども、労働も訓練も、ともに作業を伴うという意味で、境目をきちんとするということは大切なことだというふうに思っていますけれども、労働という概念については、労働基準法第九条におきまして、「「労働者」とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。」というふうに定義をされておりまして、一般的には、事業主と使用従属関係にあるか否かによって判断されるというものでございます。

 授産施設でありますとか小規模作業所等で行われる作業、これらにつきましては、障害者の労働習慣の確立でありますとか職場規律や社会規律の遵守などを目的とした訓練であるというものが多いわけですけれども、こういうものについては、事業主と使用従属関係が認められる場合にはこれは労働となるけれども、使用従属関係がない場合には労働とはならないということでございまして、先ほどの五月十七日の通達でその判断基準を示したということでございます。

内山委員 使用従属関係、この四つの部分ということを指しておられるんだろうと思われますけれども、訓練等の計画が策定されている場合と策定されていない場合、二つにこれは分かれますね。策定をされるということは、例えば所定のフォームがありまして、それを作成し労働基準監督署等に届ける、そういうことが義務づけられているとか、必要になっているんでしょうか、お尋ねをします。

青木政府参考人 五月十七日の通達におきまして、訓練等の計画が策定されている場合と策定されていない場合ということで分けて通達をしておりますけれども、計画が策定されている場合には、先ほど申し上げましたように四つの基準に沿っているということと、それから、作業実態が訓練等の計画に沿ったものである場合には労働者ではないということを明らかにしているわけでございまして、特段、届け出等が必要だというふうにはいたしておりません。

内山委員 そうしますと、労働基準法の第九条に該当する、労働者と認定する、労働者以外と認定するのは、だれが認定をするんですか。

青木政府参考人 これは、授産施設、小規模作業所等における労働者性の判断特有のものではございませんで、一般に労働者性を判断するという場合と全く同じでございまして、個別具体的に、おのずと法律関係として規定されるということでございます。

 私どもとしては、労働基準法等の施行に当たっているわけでございますので、実際、個々の事例に応じて監督官等が指導を具体的にするということになります。

内山委員 そこをもう少し詳しくしていただけませんでしょうか。監督官の指導があって労働者として認めない、または労働者とするのか。または、施設側の経営者が、計画に沿って、その四つに該当していませんよということで、労働基準法の九条の労働者としないのか。明確に、小さいところでもわかるような、かみ砕いたお話をしていただきたい。

青木政府参考人 これは、法律で規定されているものが当てはまるかどうかという話でございますので、その実態そのものでもう既に決しているというのが正しいことだろうと思います。

 ただ、実際の運用としては、では一体、それはどういうふうに決しているのかというのは、もう既に法律関係として決まっているわけですけれども、具体的な事例に応じて、我々は、指導する際には、監督官がその判断をして指導するということになるだろうと思いますし、個々の事業場で使用者としてその労働者の方を雇っているという場合にあっては、それは、使用者の方がまずもって労働関係法令をきちんと適用して、遵守してやっていただくということになるだろうというふうに思っております。

内山委員 それでは、国の指導というのは、どういうローテーションで、スケジュールで行いますか。

青木政府参考人 私どもの指導のやり方はいろいろあります。一番基本的なところは、監督官が個々の事業場に立ち入りをすることができます。立ち入って、実際の作業状況を見たり、あるいは帳簿、書類を検査したりいたしましてやる。これは、全国で大体三千人ぐらいの監督官を用意しておりまして、事業場臨検監督と言っておりますけれども、こういったものが年間十二万件とか十五万件とかいう数字がございます。

 それだけでは、多くの事業場に対しまして全部やるというわけにもなかなかまいりませんので、集団的な指導ということで、業界団体を集めて、そこの傘下の事業主に対して一遍に指導をするというような手法も講じているところでございます。

内山委員 それでは、これからの計画、どのようなものがありますか。

青木政府参考人 私ども、大変多様なニーズがございます。いろいろな産業あるいはいろいろな職業ということがございますので、それぞれ、毎年、計画を立てまして、とりわけ問題が多いと認められる産業、事業場、そういったものに対して重点的に立ち入り監督をやっているという状況でございます。それは、計画的、かつ基本的には事業場には事前通告なしに立ち入って検査監督をするということでやっております。

内山委員 何でこんなことを細かく聞いているかといいますと、私が指摘をしました昨年十二月現在のときにおいて、明らかに労働者としての扱いをしなければならない、そして最賃法違反であるというような事業所が数多く見受けられたわけでありまして、こういう通知を変えて、やはりきちっと周知をしなければ改善されないだろう、さらには、定期的に、例えば一年に一遍とか、これはもうやはり足を運んでいただかなければ改善はされない、こう思うわけでありまして、その辺の計画、もう一度お尋ねをしたいと思います。

青木政府参考人 委員が御指摘になりましたように、いろいろな基準を定めまして指導いたしましても、やはりおっしゃったように、周知をするというのは大切だというふうに思っております。そういった努力は私どもとしてもきちんとしていかなければいけないだろうというふうに思っています。

 それで、立ち入り監督につきましては、先ほど申し上げましたように、三千人ぐらいの監督官で、全体、事業場が四百万から五百万ぐらいありましょうか、それを単純に延べてやりますと、実は二十五年とか三十年に一遍立ち入るというような話になってしまいますので、先ほど申し上げましたように、問題が多いと認められるような重点的なところに絞ってまず監督に入る、あるいは、さまざまな情報、そういったものを平生から入手することに努めまして、そういった労働者の保護に欠けるような事業場、産業、そういったところを重点的に、計画的にやるということをやっているところでございます。

内山委員 二十年から三十年に一回しか事業所を訪問できない、これでは、一体どういうふうになっているかわからないですよ。これはもう、もっと早くきちっと手を打ってほしいですね。

 例えば、次に続けますけれども、この通知の中に、障害者または保護者との間の契約について、対等な契約は地位的立場から結ぶことは難しいと私は考えておりまして、施設側は今でも、嫌なら来なくてもいいですよ、こういうスタンスですよ。障害者、ましてや親はやはり社会参画させたいために、これは障害者または保護者との間の契約について、対等な契約はとても難しいんじゃなかろうかと思いますが、その辺、どういうふうに指導されますか。

青木政府参考人 もちろん、先ほど来申し上げておりますように、小規模作業所、授産施設におきましては、訓練と労働と両方の場面があるわけです。

 私どもとしては、労働の場面につきましては、先ほど来申し上げていますような指導監督に努めているところでございます。一たん労働者性ありということであれば、ひとしく労働関係法令が適用されるということでありますので、そういう意味では、労働条件をきちんと明示するとか、そういったことについては罰則をもって強制をされるということでありますし、私どもはそれを執行していくということでありますので、一般の労働者と同様に、委員がおっしゃったように規則、基準の周知をまずもってすると同時に、個別に指導することについて努力をしていきたいというふうに思っております。

内山委員 自立支援に必要な生活費を当然稼がなければならないわけでありますけれども、施設においても、最低賃金法が適用される労働者とみなされる必要があると考えますけれども、いかがでしょうか。

青木政府参考人 障害者の方が自立して生活をするためには、一般就労への移行の促進を図るということが大切でありますし、授産施設で働いている労働者たる障害者の方々の、工賃水準の引き上げを図っていくということも大切だというふうに思っております。

 施設で作業に従事する障害者の方についても、先ほど来申し上げていますように個別の事案ごとに総合的に判断をしまして、使用従属関係が認められる場合には労働者に当たるわけでありますし、当然のこととして最低賃金法も適用されることとなります。おっしゃったとおりであります。

内山委員 もう一点だけ、この件についてお尋ねをします。

 通知の「基本的な考え方」の中において、「なお、当該小規模作業所等における事業収入が一般的な事業場に比較して著しく低い場合には、事業性を有しないと判断」する、こうありますけれども、「著しく低い」という基準を教えていただけますか。

青木政府参考人 五月に出しました通達の中で、御指摘の部分についてでございますが、これは障害者の方々が作業をしていらっしゃる授産施設でありますとか小規模事業場特有の問題ではありませんで、まず一般に、事業場における事業か、事業性があるかどうか、それからそこで実際に作業をしているのが使用従属関係、労働関係に当たるかどうかという判断をする場合に、事業収入が一般的な事業場に比較して著しく低い場合には事業性がないというのが一般でありますので、これは、一般的にこういう基準でどの場合も考えているということでございます。

内山委員 その著しく低いという数値的なものは何かありませんか。

青木政府参考人 これは事業、業種によって多種多様、事業活動は多種多様でございますので、それからボランティア活動とかそういったものも多種多様でございますので、この基準を一律に定めているということはございません。

内山委員 では、これはだれが判断するんですか。

青木政府参考人 これも先ほど申し上げましたように、労働基準法、法律の解釈をしているものでございますので、法律関係がその実態に対して直ちに効力が発生するかしないかということでありますので、法律的にはもうそこで既に決しているということだと思いますが、我々が監督指導する際におきましては、監督官が個別に立ち入ったときに判断をするということになります。

内山委員 それでは話題をかえまして、年金のことについてお尋ねをしたいと思います。柳澤大臣。

 ここで、強行採決が続きました。純粋に、なぜ法案審議を急ぐんだろうかと本当に思っております。日本年金機構法案の問題点というのはたくさんある、私たちはこう考えております。今、幾つか述べさせていただきたいと思うんです。

 社会保険庁改革と言っても、給与は全額税金で賄う、隠れ公務員である。年金保険料の流用が、年金広報や年金教育まで流用される。職員は国家公務員法の適用対象とならず、天下りが可能である。不祥事を繰り返してきた社会保険庁職員の多くが日本年金機構に移るにもかかわらず、新しい機構には不正防止策というのが見えません。特殊法人化により機構の理事は、さんざんここでもお話がありましたけれども、国会へ出席義務がないんではなかろうか。そして、消えた年金記録、五千万件の基礎年金番号へ未統合の被保険者記録の対応も不十分でありました。

 なぜこのような状況で法案の審議を急ぐのか、どうも私は理解できないんですが、大臣の御答弁をいただきたいなと思います。

柳澤国務大臣 私ども、社会保険庁の抱えるいろいろな問題の表面化によりまして、年金において最も大事な国民の信頼、いわばこの一翼である事業運営に対する信頼というものが非常に危機に瀕しているという状況を認識いたしておりまして、これについては一刻も早く事業運営組織の立て直しを行いまして、国民の皆様の年金に対する信頼を回復することに資させたい、こういうふうに考えたところでございます。

内山委員 それでは、何もこれはもう与野党で対立する問題ではありません。政争の具にすることでもありませんから、やはりじっくりとやるべきだったと私は思います。それはとても残念でならないというのが、大臣の答弁を聞きましても、やはりそれだけなのかなと非常に残念な思いでなりません。

 それでは、今与党が出しておりますビラにつきまして、絡めてお尋ねをしたいと思うんです。さきの委員会の質疑では、与党は政府と一体となって対応をしているということを御答弁しておられましたので、厚生労働大臣にお尋ねをさせていただきたい、こう思うわけであります。

 まず、基礎年金番号に未統合の被保険者記録五千万件、今後一年間で処理するということを計画しておられるようでありますけれども、どのような流れ、どのようなシステムで処理をしていかれるのか、御答弁をいただきたいと思います。

柳澤国務大臣 この五千万件のいわば未統合の記録を、何とかして、現在の基礎年金番号の形でファイルしておる年金の受給権者及び被保険者に統合いたしたいということでございまして、その日程につきましては、今後一年間の間にプログラムを開発して、そして、今申した年金受給者及び被保険者の記録と五千万件の記録の名寄せをいたしたい、こういう考え方でございます。

 まず、私どもとしては年金受給者から取り組みたいと考えておりまして、名寄せの結果、同一人の可能性がある方には、来年の六月から八月まで、三カ月の間に、今言った可能性がある旨の話と御本人の加入履歴をお知らせする。それから次いで、被保険者で同一人の可能性のある方には、九月から、先ほどと同様に、その旨と御本人の年金加入記録をお知らせして年金記録を確認いたしたい。また、名寄せによって一致しなかった年金受給者に対しましても、九月から御本人の年金加入記録をお知らせして年金記録を確認していただく、こういうことを考えているわけでございます。

 そういうことで、一年間でプログラム開発と名寄せを完了した後に、今申したようなそういうスケジュールを想定いたしまして、そのスケジュールに従って最終的な確認作業をしてまいりたい、このように考えているということでございます。

内山委員 鴨下議員はテレビで、コンピューターのソフトをつくればすぐにでも五千万件とそれから年金受給者、突合ができるようなことを何度かお話しされておりますけれども、その仕組みがどうもよくわからないのであります。コンピューターのシステムをつくるとしても、これは相当な時間が、設計から組むに当たってもかかろうかと思うんですが、その辺の流れを詳しく、お持ちでしたらお話をいただけますでしょうか。

柳澤国務大臣 これはかなり専門的なことになって、私がどこまでつまびらかに御説明できるかについては委員の御判断によるしかないんですけれども、基本的に、今、年金の記録と給付の関係というものについては別のシステムになっているわけでございます。前者は三鷹にあるし、後者は高井戸にある、こういうことでございまして、この両ファイルを突合するということになりますので、これは、その突合のためのプログラムの開発というものが基本的に必要になってくるということでございます。

 そういうようなことで、今までこれは全くやったことのない作業でございますので、かなりの時日がかかるという今の委員の指摘も、私ども、それに対して何か反論して、簡単だと言うつもりはございません。

内山委員 より掘り下げてお尋ねをしたいんですけれども、システム設計、これはやはり膨大な期間と費用がかかろうかと思うんですが、どれくらいを見込まれておられますでしょうか。

柳澤国務大臣 これにつきましては、今現在は、いろいろとこちら側の注文というかがございまして、それを固めて、しかる後に、いろいろとお願いをする、そのプログラムの専門の方々と協議をするということでございますので、今現在、私が時間であるとか費用であるとかということを明確に申し上げるという段階には至っておりません。

内山委員 でも、一年でやると明言されておられるわけでありますから、非常にやはり、大丈夫なのかなと本当に危惧をしております。

 物理的なことをちょっと申し上げてみますと、五千万件の名寄せを一年間でやるとすれば、五千万件割る三百六十五日とすれば、一日当たり十三万六千九百八十六件という数値になります。これを全国三百十二の社会保険事務所で仮に担当するとすれば、一社会保険事務所が一日当たり四百三十九件の処理。それで、労働時間八時間と置きかえますと、時間当たり五十五件の処理をしなきゃいけない。一分に一件、処理をしなきゃいけない。こういう処理をしなければならないわけであります。

 しかも、日中は通常の業務でコンピューターが回っているわけでありまして、夜回せるだろう、こういう話はあるんですけれども、これはなかなかメンテナンス等で夜は業務で回せないという部分があるわけですね。

 そうすると、やろうとしたら、どうやってコンピューターを突合のために回していけるんだろうか、そんな危惧もしておりますけれども、その辺、大臣、何かおわかりになっておられるか、後ろからアドバイスをいただいているようでありますけれども、お話をいただけますでしょうか。

柳澤国務大臣 この仕事は基本的に業務センターにおいて集約的に行うということが第一点でございます。なお、コンピューターの稼働時間というものは、これは工夫をして生み出していかなければならない、このように考えております。

内山委員 次に、そのシステムが稼働し始めたときに、では、五千万件のデータと今現在生きているデータと突合していく、それらしい人が出てきたときに、実務的にどうやって判断をされていくんだろうか。これも非常に危惧をしております。

 三千万人に対しては、二千八百八十万件の突合を行い、残り二千百二十万件を六十歳未満の方と突き合わせる、こうあります。六十歳未満の被保険者と突き合わせるということなんでしょうか。この六十歳未満の被保険者は一体何名というふうに把握されておられますか。

柳澤国務大臣 先ほども我々の今回のプロジェクトの日程的なことはお話をさせていただきましたが、要は、二千八百五十万プラス生年が不詳の者三十万を加えて二千八百八十万ということになるわけでございますけれども、これと三千万の受給者を突合するということでございます。それが一つ。

 それから、被保険者については、今、七千万ということでございますので、年齢層であと残った者は二千百二十というふうになるんですが、二千百二十にも、また三十というものは加えなきゃならないということで、これと七千万を突合するということになると思います。

内山委員 ですから、この二千百二十ですか、これを現役の被保険者六十歳未満の人と、約七千万から六十歳以上の被保険者を引いたら、そんなに数は減らないと思いますけれども、この作業も膨大な作業じゃなかろうかと思うんですよ。これは、とてもとても一年の中で作業できるとは私は全く判断できないんですけれども、本当に大丈夫ですか。いかがでしょうか。

柳澤国務大臣 私どもも大変な作業だということは考えておりますけれども、基本的に、コンピューターシステムということ、ある意味で大数処理というものがコンピューターの特徴的な機能と考えておりまして、まずコンピューターによる突合、名寄せということがございます。

 もちろん、そのためには非常にしっかりと仕組まれたプログラムというものが必要だと思いますけれども、こういうことがまず基本にあって、その後、必要な作業を伴って、一年間の間に名寄せとしては終了いたしたい、このように考えているというところでございます。

内山委員 この五千万件のデータからは、既に亡くなった方の扱いというのはどのようになるんでしょうか。住基ネットでこの死亡者との突合ができるんでしょうか。また、亡くなっている人には通知をされないんでしょうか。お尋ねをします。

柳澤国務大臣 亡くなった方の記録ということでございますが、この方々は一義的には遺族年金の受給者がその記録と関連がある、こういうふうに我々考えておりまして、遺族年金の方々の背後にある被相続というか、その対象になった元受給権者の加入履歴というものを把握するという作業を通じまして、そういったことで突合は遺族年金の基礎になった元受給権者との間の突合を行うということになろうかと考えます。

内山委員 亡くなった方には通知は出るのでしょうか、出ないんでしょうか。

柳澤国務大臣 これは、遺族年金の方に対して御通知を申し上げるということになろうかと思います。

内山委員 すべて遺族年金に転化するとは限らないわけでありまして、未支給で遺族年金につながらない方もいらっしゃるわけでありますから、そういう未支給で遺族年金には行かないような方には通知はされますか。どうでしょうか。

柳澤国務大臣 ここは大変私どもの悩みでございますけれども、今の委員の御質疑に対して素直にお答えするとすれば、これは通知のあて先がないということになりまして、一般的な御注意の広報をもって、こういう方々はぜひ御注意くださいというような方で相続だとかそういう問題が絡んでいくんだろうと思います。

内山委員 同じように、受給資格のない方にも何か通知を送らないとかというようなことを耳にするんですけれども、それも本当ですか。

柳澤国務大臣 これは当初私どもが考えたことでございますが、受給権を持つに至らなかった方々に対して、もし仮に統合したら受給権が発生するというようなケースを想定すると、これは当然放置できないわけでございます。

 そういう観点から、こういう方々に対してもやはり御通知をしなければならない、そのあて先はどうして見つけ出すことができるだろうかという問題を設定いたしまして、現在のところは、それは介護保険の方々に対して、年金をもらっていればそこからある意味で控除されるという形で保険料が納まったりするわけですが、そういうことができないということに着目をいたしまして、そういう介護保険の関係ということで手繰ることができるだろう。そのためには、やはり市町村の方々に御協力を呼びかけなければならない、このように考えているわけでございます。

内山委員 受給資格のあるなしにかかわらず、やはりそれはすべて送っていただかなければならないと思うんですね。記録だけでは受給資格を判明することが不可能な、例えば合算対象期間というようなものを使って受給資格を得る、特に女性なんかの場合、こういう記録が見つかることによって受給資格が発生するという可能性が十分あるわけでありますので、ぜひそこは慎重に処理をしていただきたいな、こう思うわけであります。

 それから、五千万件のデータそのものの中身についてお尋ねをしますけれども、厚生年金であれば、一件のデータの加入記録が、例えば五年あるのか二年あるのか、数カ月で終わっているのか、こういったところの一覧表というのはとれないんでしょうか。生年月日によって、被保険者の分布はいただきましたけれども、五千万件それぞれの加入した被保険者記録の一覧、これはとれますか。

柳澤国務大臣 厚生年金の場合の方が多いわけでございますけれども、しかし、今現在は、我々が御提出申し上げました年金の年齢階層別のデータというものがあるにとどまっておりまして、その方々がどのぐらいの期間保険料を納付されておった方々であるかというようなデータは持ち合わせていないのでございます。

内山委員 時間がなくなりましたので、少し飛ばして質問したいと思います。

 与党の第三者機関の設置に関しては、私は、了と認めるものではありませんけれども、一言申し上げたいところがありますので、お話をしたいと思うんです。

 総理大臣は、第三者機関は弁護士と税理士で構成されるとさんざん街頭でもお話をしておられます。二十五日に強行採決をしました国民年金法等の一部を改正する法律案の中には、「社会保険労務士に係る社会保険・労働保険の保険料の納付の促進」の中で、「社会保険労務士は、社会保険・労働保険に関する法令に基づく申請書等の作成及び手続の代行や相談・指導等を業務としており、その専門性から特別な地位が認められている主体」であるとして、ゆえに社会保険料や労働保険料を自主的に納付しなければ業務の停止の懲戒処分を行うという内容が書かれた法律でありました。

 しかし今回、第三者機関の構成員の中に、年金の国家資格である専門知識を持った社会保険労務士の言葉が全く入ってこない、なぜ取り上げられないのかということを大変率直に疑問に思っておるわけでありますけれども、大臣の答弁をいただきたいと思います。

柳澤国務大臣 総理が、第三者委員会に加わっていただくべき専門家として、弁護士、税理士というような具体的な資格の名称を挙げられたことは、私もよく承知をいたしております。

 第三者委員会の具体的な構成につきましては、私どもとして今現在いろいろと検討させていただいておりますけれども、私は、社会保険労務士の方には当然参画していただくべきものだ、このように考えております。(発言する者あり)

内山委員 サービスとは何ですか。当然じゃないですか。

 自民党のビラに記載されていることについて、再度お尋ねをしたいと思います。「オンライン化されていないが、マイクロフィルムや市町村にある記録についても手作業で突き合わせいたします」と。

 ところが、マイクロフィルムに収納されている被保険者数、市町村に記録がある被保険者の人数というのは一体どのぐらいあるのか、つかまれておれば御報告をいただきたい。

柳澤国務大臣 厚生年金につきましては、内山委員もよく御存じのとおり、マイクロフィルムに保存をされております。それから、国民年金については、いわゆる特殊な名簿ということで、特殊台帳についてはマイクロフィルムで保存がなされている、こういうことでございます。その他、今お触れになられたことで申し上げますれば、市町村にも名簿が残っているものもあるということでございますが、今現在、それぞれの資料の量というものについて把握をいたして、そして委員にも御答弁申し上げるというような状況にないわけでございます。

内山委員 しかし、この与党のビラには、あたかもできますというような感じで書かれているわけですよ。これは非常に国民を欺く行為じゃないでしょうか。できもしないことを書くのを誇大広告とか詐欺広告というわけでありまして、これを見た国民が一体どう思うか。

 さらには、このビラの中に一つ非常に思うものがありまして、ちょっと時間をオーバーするかもしれませんが。

 基礎年金番号ができたから、宙に浮いている人が、これは逆に言うと判明したんですよ、大臣。基礎年金番号というものができたから……

櫻田委員長 内山晃君に申し上げます。申し合わせの時間が経過しておりますので、御協力願います。

内山委員 ほんの少し下さい。お願いします。

 宙に浮いている人が判明したんです。ですから、この自民党の配りましたビラ、基礎年金番号導入時の大臣はだれかなどと、また、菅さんや民主党を批判するビラを配っていることはとても理解できないんですけれども、大臣はどう思われますか、所見をいただきたいと思います。

柳澤国務大臣 私は、基礎年金番号というものの導入は結論として正しかった、もう一元化しなければ処理を的確にすることはできない、こういうふうに思います。

 ただ、その際に、こうして過去の記録が何口かあるということも認識していたはずですから、それをいかに統合するかということを、やはり制度設計の段階で何とか工夫できなかったか、そういう残念な気持ちもあるわけでございます。

 いずれにいたしましても、どなたがということではなくて、この間の処理については、やはりこの経緯、それから場合によっては責任の所在というようなことを踏まえて、しっかりと検証をしていくということがなければならない、これだけの大ごとになっているわけですから、そのように考えておりまして、これはまた有識の方々にお集まりいただいて、しっかりした検証をさせていただきたい、このように思っております。

櫻田委員長 以上をもちまして内山晃君の質疑を終了いたします。

 次に、細川律夫君。

細川委員 民主党の細川律夫であります。

 最初に、従来から質問をしております年金福祉研究会のことについてちょっとお尋ねをいたします。

 年金法案の例の審議の際に、私は、年金資金運用基金内にあるとされました年金福祉研究会の不祥事につきましてお尋ねをいたしました。その際、当時の年資基金の理事長であって、そして、今現在の年金積立金管理運用独立行政法人の理事長であります川瀬隆弘氏らの参考人招致をいたしました。これについて、何回も質問をし、そのたびにこの参考人のことについては委員長にお願いをしてまいりましたけれども、委員長、この点については理事会で諮って検討していただきましたでしょうか。

櫻田委員長 検討いたしました。

 ただいまの件は理事会で協議いたしましたが、参考人招致については合意に至っておりません。

 以上でございます。

細川委員 まことに私としては遺憾に思うところでございます。

 その年金機構の法案審議のときでも、公的機関でなければ責任者は国会に出なくてもよいことになるということで、大変議論があったところでございます。それがまさにこの件では先取りをしたような形で、この参考人招致を認めていただけない、これは、特殊法人やあるいは独立行政法人で不祥事が起こっても国会に出なくてもいいような、そんな慣例ができれば、これは私はいかがかというふうに思います。

 もう一度理事長らの招致を私は請求したいというふうに思いますが、委員長、いかがですか。

櫻田委員長 後刻理事会で協議させていただきます。

細川委員 形式的な協議ではなくて、ぜひ委員長には、この理事長を参考人として招致する必要があるかどうか、理事会でよく協議をしていただきたいというふうに再度要請をしておきます。

 理事長に私はお聞きをしたかったのでありますけれども、仕方なく、きょうは厚労省にお尋ねをしなければならないわけです。何度か話題になりました元総務部長、そして現在は管理部長で、この年金福祉研究会の責任者でありました佐々木満氏の件でお尋ねをいたします。

 彼は、研究会の責任者として不適切な支出を繰り返して、事実上は脱税に加担をし、さらには会計帳簿とか預金通帳を廃棄するという、これはまた税法違反でありますし、ひいては裏金口座を解約して、残金も飲食して費消したという、いわば本当に一切の弁解の余地がないような、そういうことをした方でもあります。

 そこで、前回の質問直後の五月の十八日、年金積立金管理運用独立行政法人理事長川瀬隆弘の名前で年金福祉研究会に関する調査結果を発表して、そして記者会見もされているわけなんですけれども、その報告書の最後のところでありますけれども、「今後の対応」ということで、「今後、今回の調査結果も踏まえ、所要の手続を経て、関係者に対する処分が適切かつ早急に行われることが必要となる。」、こういう調査結果の報告がなされているわけでありますけれども、この点、一体どうなっているのか、お聞きをしたいと思います。

渡辺政府参考人 ただいまお尋ねの件でございます。

 今御指摘ありましたように、五月十八日に議員の質問に私からお答えをし、同日、調査結果がその独立行政法人から公表されたわけでございます。その中で、今御指摘ありましたように、「関係者に対する処分が適切かつ早急に行われることが必要となる。」という認識をみずから記し、公表されているということでございます。

 これを受けまして、私ども、今把握しておるところでございますが、この独立行政法人において適切な処分に向けた手順を進めている。具体的には、法人の内部規定に基づき、処分事案を審議する委員会を開催し、そこを中心として、全役職員に対する面談調査による事実関係の最終確認等を外部の法律関係者などと相談しながら進めてきておるところでございます。

 職員の身分にかかわる問題でありますので、処分は公平に行われる必要があることは論をまたないわけでございますが、そのため、手続に若干の時間を要しているということは否めないところであります。しかしながら、厚生労働省としても、本件はそもそも大変に遺憾なケースであったというふうに考えておりますので、当該独立行政法人においては、みずから公表したように、早急かつ適切な処分を速やかに行うよう強く求めているところでございます。

細川委員 それでは、適切かつ早急に行われるということですが、その処分が行われるまでは、この佐々木氏の身分あるいは仕事、それはどういうふうに現在もなっているわけですか。

渡辺政府参考人 年金積立金管理運用独立行政法人の管理部長の現在の状況ということでございますが、現在、先ほど申しましたような処分の手続が鋭意進められているところであり、現職についたままではございますが、この処分方針が確定され次第、処分とあわせて人事面での所要の措置がとられる予定であると聞いております。

細川委員 それでは、仕事はさせていない、だけれども給料はずっと払っている、こういうようなことになるわけですか。頭を下げているようですからそのとおりだというふうに受けとめますけれども。

 これは、こういう問題を起こして、国民の皆さんから見れば、何だ、こんなことがあって不祥事があって、早く何らかの形で処分も行われるだろうと。みずから適切に、早急に処分を行うと言いながらもいまだ何もやっていないというようなことになれば、幾ら内部でいろいろなことの手続があるというようなことを言っても、それはなかなか外には通用しないことであって、私は、民間がやるように早くしっかりした処分をやるべきだというふうに思います。そのことを強く私の方から申し上げておきたいというふうに思います。

 次に、ちょっとかわりまして、規制改革会議についてお尋ねをいたします。

 五月の二十一日、規制改革会議の再チャレンジワーキンググループ労働タスクフォースの方から意見書が出されました。これは、「脱格差と活力をもたらす労働市場へ 労働法制の抜本的見直しを」、こういう題でこのタスクフォースというところから意見書が発表されました。

 この意見書の内容を見まして、私は大変驚いたわけなんですけれども、民間団体がこういう意見書を出すということならば、まだしもそれは考えられるんですけれども、政府の非常に重要な諮問機関からこういう意見が出されて、その意見書の内容がこれまでの労働法制をほとんど否定するような、そういう内容は、これは本当にいかがかというふうに私は思います。

 冒頭の二段落目にはこういうふうに書いてあります。「労働者保護の色彩が強い現在の労働法制は、逆に、企業の正規雇用を敬遠させ、派遣・請負等非正規雇用の増大、さらには、より保護の弱い非正規社員、なかでもパートタイム労働者等の雇用の増大につながっているとの指摘がある。」こんなことが書いてあるんですよ。つまり、非正規雇用が増大したのは労働者保護法制のためだなんて、とんでもないじゃないですか。これはマクロ経済の動向もあろうと思いますけれども、むしろ、パート労働者らに対してしっかりと労働者保護法制が適用されなかったから非正規雇用がふえたんじゃないですか。私はそういう認識ですよ。労働法制が保護のあれが強かったからこんな非正規がふえたなんというのは、全く逆だと思いますね。

 大臣は、こういう規制改革会議の労働タスクフォースの意見をどのようにお考えでしょうか。

柳澤国務大臣 今委員の方からも御指摘がありましたように、規制改革会議の中にございます再チャレンジワーキンググループというものの、さらにその一部でありましょうか、労働タスクフォースというグループが五月の二十一日に意見を発表したということは私も承知をいたしております。

 この規制改革会議労働タスクフォースの意見書でございますが、これは、今後三年間において検討すべき規制改革項目について、このタスクフォースの現段階における考え方を取りまとめたものだというようにとらえております。

 中身は、今委員が御指摘になられたようなことも記されておりまして、私ども現在、労政審の方々の御議論を踏まえて、政府として労働法制の改革、改善というものを図っていきたいということで、六法案、あるいは、二つ一緒にさせていただきましたので細かくいいますと七法案でございますが、この法律案を提出させていただきまして御審議を仰いでいるところでございます。

 そこに流れている考え方とこのタスクフォースの意見として表明された考え方とは合致していない、私はこのように考えておりまして、このタスクフォースがそれぞれの作業の段階でこうした意見を表明されるということを私どもとして押しとどめるというわけにはいかなかったわけでございますけれども、いずれにせよ、政府が法律案を出して、一つの考え方に基づいてその実現を図ろうとしているときに、およそそれと背馳するような意見を政府の一部門、これは諮問会議の一つなんでしょうが、そういうことを出すことはまことに不適切ということを私はかねて申し上げております。

 結果、どうなりましたかというと、去る五月の三十日に決定されました規制改革会議の第一次答申には、この意見というものは盛り込まれなかったというふうに承知をいたしております。

細川委員 大臣のそのような御見解をいただいて、私はその点については力強く思いました。

 そこで、もう一カ所、ちょっと意見書の紹介をいたします。これも冒頭のページに書かれているんですが、「過度に女性労働者の権利を強化すると、かえって最初から雇用を手控える結果となるなどの副作用を生じる可能性もある。」言いかえれば、これは、女性の雇用そのものは、下手に男女雇用機会は均等だ、そういうことを言うと女性の雇用そのものが減少するというような、こんな見解なわけですね。これも、女性問題ですけれども、大臣、まさか大臣は同じように考えてはいないと思いますけれども、重ねてちょっと、こういうようなことが意見書の中にあるのをどういうふうに大臣はお考えでしょうか。

柳澤国務大臣 引き続いて、規制改革会議労働タスクフォースの意見書ということの内容にかかわる御質疑でございますが、確かに今委員が御指摘のように、「過度に女性労働者の権利を強化する」という記述がございます。具体的にどのようなことを指しているのかはわからないわけでございますけれども、男女均等取り扱い、育児・介護休業、パートタイム労働に係る法令のことを指しているのであるとするならば、女性労働者に対する過度の権利とは私は毛頭考えておりませんで、このような意見は適切さを欠いていると再び申さざるを得ない、このように思います。

 なお、女性の雇用を手控えることについては、男女雇用機会均等法によりまして募集、採用における性差別が禁止されているところでありまして、その点からも適切を欠く意見だと考えます。

細川委員 規制改革会議の一部門といいますか、そういうところでこのような全く許されないような意見書が出されたことは本当に私は許されないと思っておりますが、これもまた意見書の後段では、解雇権濫用法理を見直してもっと解雇しやすいようにする、解雇の金銭的解決とか、あるいは労働者派遣法を改正して、派遣期間の制限や業種の限定を撤廃するとか、あるいは派遣と請負の区別も変更して、つまりは偽装請負を合法化する、さらにまた、労働政策審議会、労政審そのものを改組するとかいう、こんなことが意見書の中に書いてあって、現在の労働法制のあり方を根本から変えるような提案をいたしております。

 また、今回、大臣の方から提案が、政府提案として労働法制が出されておりますけれども、それにもまるきり反するような、本当にそういうものが意見書の中に入っているということは、これは許されないことであります。先ほど大臣の方は、五月三十日に出された第一次答申には盛り込まれなかったということを言われましたけれども、こういう規制会議の中の労働タスクフォースの意見というのに対して、これは本当にどういうふうに政府はこたえていくつもりか、ここはしっかり大臣にその見解をもう一回お聞きいたしたいと思います。

柳澤国務大臣 ただいま委員も御指摘され、私の答弁もいたしたところでございますけれども、この意見書は、規制改革会議の第一次答申というものには盛り込まれなかったものでございます。

 そして、今後の取り扱いぶりをどうされるかということについては承知をいたしておりませんけれども、一般的に規制改革の手順といたしましては、規制改革会議の答申を受けて、政府として規制改革推進計画というものを閣議決定する運びになるのが例でございます。それに基づいて各般の措置を進めていく、そういう手順になっておりまして、私どもとしては、そのような手続の中で厚生労働省としての考えを適切に反映させていきたい、このように考えております。

細川委員 それで、一次答申には入らなかった、盛り込まれていなかったということでありますけれども、それでは、この第一次答申の中に入らなかった理由はどういう理由なのか。それでは、答申に入っていない労働タスクフォースの意見というものは、これは規制改革会議の意見なのかどうか、答申には入っていないけれども規制改革会議の意見なのかどうか、この点についてお聞きをいたします。

田中政府参考人 お答えいたします。

 当見解は、規制改革会議の下部組織である労働タスクフォースが、今後さまざまな関係者との議論を進めるための出発点として公表したものであります。したがって、本見解は会議として取りまとめたものではなく、したがいまして今回の会議の答申にも盛り込まれませんでした。

細川委員 だから、その答申に盛り込まれなかった理由は何なのかというふうに聞いているんです。

田中政府参考人 報告書自身は、下部組織であるタスクフォースが今後議論をしていく出発点としてのいわばたたき台のようなものであって、会議として何ら結論を出すというものではないものでございますので、これは当然会議の意見ではなく、したがいまして答申にも盛り込まれません。

細川委員 それでは、これから検討をしていくということで外に意見書として出したわけですね、タスクフォースは。これは規制改革会議の中の意見じゃないんですか。

田中政府参考人 規制改革会議、本会議は委員が十三名でございますが、こちらの方で審議されて会議の意見としてまとまったものではございません。あくまでも今後審議をする過程においての資料として、タスクフォースとして取りまとめたものでございます。

細川委員 それでも、この意見書に基づいて、ではこれから規制改革会議の中で議論を進めていく、こういうことですね。そういうことでしょう、うなずいておられるけれども。

 これは現状の労働行政とは全く異なる意見であって、諮問機関としての役割を全然果たしていないんじゃないか、僕は逆だと思いますよ。こんなことをやっているタスクフォースの座長というのは福井秀夫委員、それから専門委員の和田一郎委員、この人たちが主導的にこういう意見書を書いたようなんですけれども、とんでもないことじゃないですか、これは。特に、厚生労働省にとってはまるきり違うことなんですから、これまでの行政と。大臣、こういう委員はもうやめてもらいたいと強く言われた方がいいですよ。違うんですから、厚生労働省のこれまでやってきた考え方と。

 これはどうでしょうか、大臣。主導的にやっているこのタスクフォースの座長、あるいは専門委員としてやっている和田一郎委員なんというのは、こんなことが意見書として出されるなんということは、本当に、そういう人を任命していることがおかしいと思いますね。どうでしょうか。

柳澤国務大臣 今も政府参考人の担当者から御説明させていただきましたように、これは規制改革会議の下部の組織の出発点としての考え方ということでございまして、決して規制改革会議全体としての考え方として取りまとめたものではない、こういうことでございます。

 したがいまして、私どもといたしましては、今、国会に提案させていただいて御審議をいただいております法案というのは、法律に基づいて労政審という、ずっと長いこと労働行政の指針を与えてきてくれたその審議会の御議論を経て出させていただいているものでございまして、今後とも、そうした方々の御意見をいただいて、具体的な労働法制の展開をしていきたいということを考えているわけでございます。

細川委員 労働法制を担当する厚生労働省として、私は、しっかりみずからの省の意見をこういうところには反映できるような、そういう強い姿勢で、ぜひ大臣にはいろいろなところで御主張をいただきたいというふうに思っております。

 それでは次に、最低賃金法の改正案について伺ってまいります。

 まず、最低賃金決定の基準について伺いたいと思います。

 最低賃金の水準についてでございますけれども、我が国の現状は、全国加重平均で時間当たり六百七十三円、最低の地域で六百十円ということになっております。いろいろなところで既に指摘もされておりますとおり、先進国でも最低のレベルということになっております。今まで六百十一円ということで低かったアメリカ、ここも二年後には八百六十円に引き上げられるということになっております。イギリスは千百九十円、フランスは千二百三十八円、優に千円を超えております。これを見るだけでも、我が国の最低賃金は国際標準に近づけるべきだというのが結論になるわけでございます。

 したがって、この委員会で議論をすべきことは、どういう案であれば、ある程度の最低賃金の引き上げにつながるかということが大変重要でございます。民主党としては、全国平均で千円を目指すという政策を出しておりまして、これは、この法案に対して与党の皆さんがどういうふうにお考えになるかわかりませんけれども、一部では、余りにも高過ぎる、非常識だという意見も私は聞いております。しかし、もともとフランスやイギリスなんかはもう優に千円を超えているわけですから、仮に千円で年間二千時間働いたとしても、年収は二百万円にしかならない、決して私は大きい数字ではないというふうに思っております。

 政府から提案されました今回の改正案、中でも最も大事なのが九条三項で、「労働者の生計費を考慮するに当たつては、生活保護に係る施策との整合性に配慮するもの」、これが入ったところでございます。生計費を考慮するに当たっては、生活保護との整合性を配慮する、ここであります。今まではどうだったかというと、現行法第三条で、最賃は、労働者の生計費、類似の労働者の賃金及び通常の事業の賃金支払い能力を考慮して決定しなければならない、こういうふうにされておりました。この規定は改正案の九条二項に引き継がれておりますけれども、この二項と、それから先ほど指摘をいたしました九条三項の生活保護との整合性、この関係について私はまず伺っていきたいと思います。

 最低賃金の決定基準は以前から三つありまして、一つは労働者の生計費、二つ目が類似の労働者の賃金、三つ目が通常の事業の賃金支払い能力、この三つの要素になっておりました。今回は、「地域における」という限定をつけておりますけれども、この三つの要素は原則変更はないわけでございます。

 そこでお伺いをいたしますけれども、労働者の生計費、類似の労働者の賃金、通常の事業の支払い能力、この三つの要素は対等な関係にあるのか。それとも、この三つのうちで一つはもっと重要性があるのか。この三つの要素それぞれ、そういう重さというのが異なるのか。これについてまず伺いたいと思います。

青木政府参考人 地域別最低賃金についての委員の御質問でございますが、委員のおっしゃるように、三つの要素で決定されるということになっているわけですが、この三つの要素につきましては、軽重があるわけではなくて、いずれも地域別最低賃金の決定に当たって考慮されるべき要素であるというふうに考えております。

細川委員 それでは、生活保護との比較についてお伺いをいたします。

 私は、憲法二十五条にも規定がありますように、労働者の最低限の生計費というのは、最低賃金のいわば下限でありまして、そしてまた一方で前提だというふうに思います。

 まず、最低賃金の基準は生活保護などの最低の生計費を上回る、これは当然でありまして、今まで生活保護以下の最低賃金の決定があったとすれば、それはもう憲法二十五条の健康で文化的な最低生活をする権利、こういう二十五条に違反するような疑いがあるというふうに思っております。

 類似の労働者の賃金、それから通常の事業の支払い能力、この要素も、マクロに見て最低の生計費を上回って支払い得る根拠とはなっても、それを下回る基準ではないだろう、こういうふうに思います。

 お伺いをいたしますが、労働者の生計費とは生活保護の水準を上回るべきだというふうに私は考えますが、法案の「生活保護に係る施策との整合性に配慮するものとする。」というこの規定の意味は、少なくとも生活保護の水準を上回る、こういうふうに解釈してよろしゅうございますか。

青木政府参考人 今委員が御質問になりましたように、生活保護との関係でございますけれども、地方最低賃金審議会における審議に当たって考慮すべき三つの決定基準のうち、この生計費につきましては、「生活保護に係る施策との整合性に配慮する」ということにおっしゃるとおりなっているわけでございますが、これは、最低賃金は生活保護を下回らない水準となるよう配慮するという趣旨でございます。

細川委員 それでは、その生活保護に係る施策との整合性ということについて、さらに進んでお聞きをいたしますが、生活保護との比較をするのか、その生活保護の何と比較をするのか、それが大変大事だというふうに思います。

 そこで、厚労省で作成をいたしました「生活保護と最低賃金の比較」というのがございまして、これには四種類の表があって、事前に厚労省の方からお聞きをいたしましたところ、おおむね二の表が一つの基準となるということでございましたので、それを参考にしながら質問をしたいと思います。きょうは、委員の皆さん方にもお配りをいたしております。

 この表は、生活保護の方については、都道府県の生活扶助基準人口過重平均プラス都道府県の住宅扶助実績値で見るわけです。最低賃金額は、これは最低賃金額に百七十六、これは一カ月の働く分でございますが、働く時数、そして〇・八六七、これは収入から税金あるいは社会保険料などを引かれた分、いわゆる可処分所得の額でございます。そこで、これを比較いたしますと、およそ十一都道府県で最低賃金額が生活保護を下回っていることになります。

 そこでお尋ねをいたしますが、厚労省として、これら十一都道府県で修正を加える、九条三項ですね、つまり、生活保護に係る施策との整合性に配慮する、これをクリアすると厚労省は考えているのではないかというふうに思いますけれども、これについていかがでしょうか。

青木政府参考人 生活保護と最低賃金の比較に当たりましては、例えば、地域別の最低賃金は都道府県単位で決定されておりますのに対し、生活保護は市町村を六階級に区分している。また、生活保護は、年齢や世帯構成によって基準額が異なるというようなこと。あるいは、生活保護では必要に応じた各種加算や住宅扶助、医療扶助などがある。そういったことをどういうふうに考慮するのかという問題が、御指摘のようにございます。

 しかしながら、最低賃金は労働者の最低限度の生活を保障するものであります。モラルハザードの観点から、少なくとも、最低賃金が生活保護を下回っている場合には問題となるだろうというふうに思っております。

 さらに、労働して賃金を得る場合には、単に今生活保護を受けている場合よりも必要とする経費が増加するという観点からすれば、最低賃金の水準は生活保護を一定程度以上上回るものとすべきであるという考え方もあり得るというふうに思っております。

 現在の最低賃金と生活保護の水準を見た場合に、衣食住という意味で、生活保護のうち、若年単身世帯の生活扶助基準の都道府県内人口加重平均値により住宅扶助を加えたものを手取り額で見た、先ほどの図でありますが、その最低賃金が下回っている地域、これが十一地域ということでございますが、まずはそういったケースについて、生活保護との整合性を考慮の上、その逆転を解消する。そして、その上でさらに、最低賃金と生活保護との整合性のあり方について考慮していくことが必要だというふうに考えております。今申し上げましたそういった考え方も、一つの考え方ではないかなというふうに思っております。

 いずれにしても、生活保護との整合性を具体的にどのように考慮するかということにつきましては、具体的な額の話になってまいりますので、中央最低賃金審議会及び地方最低賃金審議会における審議を経て決定されるべきものというふうに考えております。

細川委員 いろいろお聞きをいたしましたけれども、「生活保護に係る施策との整合性に配慮する」という意味が、今聞いただけではちょっとよく私は理解できませんでした。

 そこでもう一度お聞きをいたしますが、現在、最低賃金額が最も低い県、これは最低賃金額が六百十円の青森、岩手、秋田、沖縄、この四県のうち、生活保護の方が高いのはわずかに秋田県のみで、青森はほぼ同額、そのほかの二県は最低賃金の方が高い、こういうことになっております。逆に、生活保護の方が高い都道府県というのは、東京、神奈川、大阪、埼玉、千葉、京都、兵庫、広島、北海道、宮城、秋田、こういうことになっております。

 そこでお聞きをいたしますが、ちょっと秋田を除きまして、すべて大都市を擁する都道府県、先ほど申し上げましたこの十一都道府県については、仮にこの基準にいたしますと、大都市を抱えた都道府県は生活保護の方が高いので、最低賃金は上がるだろう、こういうことではないかと思いますけれども、そういうことでよろしゅうございますか。

青木政府参考人 生活保護との整合性だけで最低賃金額を決定するわけではありませんので、これによってこれだけしか上がらないという話ではないと思います。

 ただ、単純に、おっしゃるように、地域別最低賃金が、先ほどの基準で考えて、先ほどの方式、生活扶助基準、人口加重平均と都道府県の住宅扶助実績値の合計と賃金の可処分所得ベースとを比べてみますと、生活保護を下回っているのは十一都道府県でございます。確かにそうでありますけれども、具体的な額、水準につきましては、これは考慮の一要素ということでありますし、地域における労働者の生計費及び賃金、それから通常の事業の賃金支払い能力を考慮して、地方最低賃金審議会における審議を経て決定されるものでございますので、それによって適切な引き上げがなされていくというふうに思っております。

 さらに、成長力底上げ戦略推進円卓会議におきまして、生産性の向上を考慮した最低賃金の中長期的な引き上げ方針について政労使の合意形成を図りまして、その合意を踏まえて、最低賃金の中長期的な引き上げに関しまして、産業政策と雇用政策の一体運用を図って取り組んでいくということでありますので、こういった成果として、生産性の向上に見合った最低賃金の引き上げがなされるものというふうに考えております。

細川委員 私が中心的に聞いているのは、今度の改正案で、今までの三つの要素にプラスして、生活保護の施策との整合性ということがプラスになったわけでしょう、そこが。だから、その関係で最賃がどういうふうになっていくかということに私は注目しているんですよ。これが大事なんですよ。そのほかは変わっていないんですから。いろいろなことを言われても、これは我々は理解できませんよ。大事なのは、この改正案で一体どうなっていくかですから。どういうふうに最賃が上がるかですから。

 それでは、ちょっとお聞きしますよ。まず、では、沖縄県の最賃というのは今度の法改正案で上がるんですか。上がるとすれば、どれくらい上がりますか。お聞きいたします。

青木政府参考人 おしかりを受けるかもしれませんけれども、地域別最低賃金の具体的な水準については、これは先ほど来申し上げておりますような諸要素を勘案して、適切に地方最低賃金審議会の審議を経て決定されるということになりますので、具体的にどれが上がる、どのぐらい上がるということは今直ちにはお答えできないわけでありますが、今御質問にありました、先ほど来申し上げております生活保護の生活扶助基準の一定の方式、それと地域別最低賃金の可処分所得ベースをとる場合においては、おっしゃるように、沖縄県においては最低賃金が生活保護を上回っているわけでございます。

 したがって、ここの条項がまず、先ほども申し上げましたように、まずもってその観点の逆転を解消した上で、さらにその上で生活保護と最低賃金との整合性を考える必要があるというふうに先ほど申し上げましたように、そういった点を踏まえて、沖縄においても具体的な額が決まっていくだろうというふうに思っております。

細川委員 具体的な数字というのは出てきませんから、しつこく聞くようですけれども、毎年毎年一円とか二円とかそういうものの額が上がっていく、その攻防を毎年やっているわけですね。だけれども、そんなことじゃいかぬ、思い切って国際水準に上げなきゃいかぬじゃないか、もっと最低賃金を上げて、そしてワーキングプアなどが発生するようなことがないようにしなきゃいかぬじゃないか、そういうようなことも含めてこれを提案されたわけでしょう。

 具体的に沖縄は、今六百十円だったらどの程度になるかというぐらいは、ある程度聞かせてくださいよ。

青木政府参考人 何度も同じお答えで恐縮でございますけれども、具体的な額を定めるのは、地域の実情に応じて、それぞれの法律で定められた要素を具体的に勘案しながら地方の最低賃金審議会で決めるというスキームになっているわけでございます。その際に、どういう枠組みで物を考えるかということが法律で決定基準として決められているということでございます。その中にありまして、まずもって、生活保護との整合性というのは少なくとも従来の決定基準にさらに必要だろうということで、明確化を今回するわけでございます。

 したがって、具体的な額についてどうだというのは、今直ちにお答えできかねるわけでありますけれども、少なくとも、そういった考え方に基づいて具体的な額が決められるというふうに考えております。

細川委員 今、沖縄は、最低賃金は六百十円ですね、六百十円。これが今度の法案、とりわけ生活保護との整合性ということで、どれぐらい上がるか。これまでは一円とか二円の上がったり下がったりでしょう。それと同じことなんですか、それとも、もっとぐっと上がるんですか。十円単位ですか、百円単位ですか。ちょっとそこを聞かせてくださいよ。何かよくわからないんですよ、その御説明では。

青木政府参考人 先ほど申し上げましたように、生活保護につきましては、さまざまな決定の仕方がございます。したがって、どれをとるかということはこれからの議論だというふうに思っております。法律の枠組みとしては、生活保護との整合性をきちんととってくださいということだろうというふうに思っております。

 少なくとも、先ほど来申し上げていますように、単身世帯の一類、二類の扶助基準と、それから住宅扶助、それといわば手取り額、そういったものを加えたものは、そこをスタートラインとして、少なくともそこをまずもって解消し、さらに、その上で生活保護との整合性をさらにどうするのか、どのような水準に持っていくのかというのは地方審議会で議論をしていただきたい。

 少なくとも、参考に申し上げますが、先ほど申し上げました、委員がお触れになっている十一都道府県分でありますけれども、これだけで逆転解消を機械的に算定いたしますと十一都道府県で四十九円、全国加重平均で二十五円の引き上げとなります。しかし、これが最低賃金の額の引き上げ水準ということではないというふうに思っております。

細川委員 だから、先ほどの十一のところは大都市を含む都道府県であって、それは生活保護の方が上なわけですね。最賃がずっと下だ。だから、これに合わせるように、生活保護に合わせるように高くなるというのはわかりますよ。では、そうじゃない沖縄はどうですかと聞いているんですよ。上がりますか、上がりませんかということです。

青木政府参考人 先ほど来申し上げていますように、この法律上の枠組みは、生活保護との整合性をきちんと考慮して三つの要素を十分考慮した上で具体的な額を決めろという枠組みでございます。具体的な額の決め方としては、労使も交えた地方の最低賃金審議会で十分審議をした上で、地方の実情なども考えながら決定をして、しっかり遵守をしてもらいたい、こういうことになっているわけであります。したがって、法律上、具体的な額が直ちに出てくるという枠組みになっているものではありません。

 したがって、今回お願いをしております法律によって、少なくとも生活保護との整合性との観点でいえば、最低限といいますか、まずもって十一都道府県については、これはまず解消されるでしょう、さらに、それでおしまいというわけではなくて、生活保護との水準というのはさまざまありますから、水準との整合性はさまざまありますので、それはこれから議論をして、何が適当かというものをきちんと、具体的な額を決めるに当たって十分審議をした上で決定がされるというふうに思っております。

細川委員 何度聞いてもちょっとよくわからないですね。仕組みも今までと同じでしょう。仕組みは今までどおりですね、地方最低賃金審議会で決める。そして、その三つの要素も同じですね、最初から話しました三つの要素。今度プラスされた生活保護との整合性を加味して決めるというわけですね。

 だから、いいですよ、十一の都道府県についてはわかるんです。生活保護の方が上ですから、それに最賃を合わせるというのは。上がりますよ、それが今言われた二十五円ですか。そうしたら、沖縄はその場合、今度は上がるんですか、生活保護を考慮して上がりますかということを聞いているんですよ。

 今までの仕組みで具体的にやるからなかなか具体的なことは言えませんというんですけれども、生活保護より最賃の方がちょっと上だったり、あるいはそれが同じだったりしたら、生活保護を考慮したって変わらないんじゃないですか。今までどおりになるんじゃないですか。一円二円の……

櫻田委員長 細川律夫君に申し上げます。

 申し合わせの時間が経過しておりますので、御協力願います。

細川委員 ちょっと、今の質問だけ許してください。

 今までどおりの一円二円の値上げの問題になるんではないですかと私は聞いているんです。上がるんだったら上がるとちゃんと言ってくださいよ。もっと、どれぐらい上がるか。沖縄の人も心配だと思いますよ。

青木政府参考人 先ほども申し上げましたように、生活保護は年齢や世帯構成によって基準額も異なりますし、必要に応じた各種加算、住宅扶助や医療扶助や勤労控除とか、そういったものがあるわけです。先ほど来お話がなされておりますのは、そのうちの若年単身世帯の生活扶助基準に住宅扶助の実績値のみをやった場合に十一だ、単純に機械的に比べると十一だということを申し上げているわけで、では何を比べるのか、少なくともそれは解消してもらわなくちゃいけないと思いますが、何を比べるというのは、さらにそれに乗っかってくるものが考え得るわけですね。それは具体的な額を決めるに当たって十分議論をしながら考えるべき話だというふうに思っております。

 こういった仕組みは世界的にも、額を法定しているアメリカを除けば……

櫻田委員長 答弁は簡潔にお願いします。

青木政府参考人 労使で十分話をして額を具体的に決めていくというやり方がいわば世界の趨勢でありますので、そういった枠組みに基づいて日本の最低賃金法もなっているということでございます。

細川委員 ありがとうございました。

櫻田委員長 以上をもちまして細川律夫君の質疑を終了いたします。

 午後一時三十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時三十五分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時三十一分開議

櫻田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。長妻昭君。

長妻委員 民主党の長妻昭でございます。本日も質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 この労働三法の法案が出ておりますけれども、私自身は、国家として、国民の皆様方の最低限の生活というのはどういうようなものなのか、これをきちっと定義して、最低限の生活は国家としてきちっと一律に保障する、こういう強い意思を持つことが国の信頼を高める基本だというふうに考えております。

 ところが、今の現状の日本は、最低限の生活、国が保障する生活というのはどういうものか、非常に分野分野でばらばらになっている、整合がとれていない、きちっとした哲学がないというふうに私は考えているところでございます。

 そういう意味では、大臣の哲学をお伺いしたいんですが、具体的には、最低賃金法の改正案が出ております。この生活保護との関係、あるいは国民年金の支給水準との関係、いろいろ、国が最低の保障をしなければいけない、こういう哲学がばらばらだと私は思っております。そういう意味では、今回の改正案は、最低賃金と生活保護あるいは国民年金との給付の関係というのはどういうような設定をしているのか。具体的には、一般的な働き方をしたときに最低賃金が生活保護を下回らない、こういうような哲学があるのかどうかということをお伺いいたします。御明言いただければ。

柳澤国務大臣 最低賃金制度は、賃金の低廉な労働者につきまして、賃金の最低額を保障することによって労働条件の改善を図ることを目的といたしております。

 一方、近年、労働者の最低限度の生活を保障する観点から、生活保護との整合性の問題もいろいろなところで指摘を受けたところでございます。

 今度、このために、最低賃金法改正案におきましては、最低賃金制度がセーフティーネットとして十分に機能するように、地域別最低賃金について、その水準を生活保護との整合性も考慮して決定するということを法定させていただきました。

 具体的な水準については、今長妻委員からは全国一律にということでございますけれども、実際問題として、最低賃金を構成する三つの要素のうち生活費というものがあるわけですが、この生活費というのは、物価の水準、動向等も地域によってばらつきがありますことを考えますと、地方それぞれに最低賃金を決定するということがよしとされております。私もそれが実情を反映しているものだ、このように考えておりますが、したがいまして、最低賃金の具体的水準については、地方最低賃金審議会における審議を経て決定される、こういうことになっているわけでございます。

 そういうことで、今回、生活保護との関係ということをこの法律上明らかにいたしましたけれども、御指摘のように、最低賃金は生活保護を下回らない水準にするという趣旨で、具体的にもこのことを今後実現してまいりたい、このように考えております。

長妻委員 そして、労働者の年金、今懸案となっております消えた年金問題、特に厚生年金に関して確認をさせていただきたいのでございますけれども、今お配り申し上げました手書きの資料、一ページ目、手書きで恐縮でございますけれども、結局、ポイントは、紙データ、紙情報、手書きの納付記録が記された紙台帳と現在のオンライン、コンピューターの中の記録がかなり間違っているのではないのか、こういうことも今回の大きな原因だというふうに考えております。

 厚生年金は、昭和十七年に制度がスタートいたしました。初めのころは、手書きの台帳と言われるもの、これは昭和十七年から昭和三十年代前半まで使われていた手書きの方式でございます。そのうち旧台帳と言われるもの、これは定義としては、昭和二十九年の四月以前に厚生年金の資格を喪失された方、これはいわゆる旧台帳と呼ばれて管理をされている。

 そして、昭和三十年代の半ばになりますと、手書き台帳の体裁が変わりまして、名簿という形になりました。正式名称といたしましては健康保険厚生年金保険被保険者名簿ということでございまして、さきの台帳は、被保険者台帳、これは個人で一枚だったのでございますけれども、今度はこの名簿は、事業所ごとに従業員がずらっと書いてある体裁になりました。

 しかし、この名簿方式は、いろいろ問題があったのか、余りこの方式は続かず、すぐに昭和三十年代後半に原票というものに切りかわりました。これは、個人で一枚というものにまた切りかわったわけでございます。正式名称としては、健康保険厚生年金保険被保険者原票、こういうものでございます。そしてその後、磁気テープに入力をして、その後現在のオンライン、コンピューターになる。

 つまり、今申し上げた台帳、旧台帳、名簿、原票、マイクロフィルムでも結構ですけれども、これは柳澤大臣、すべて保管されている、こういうふうに認識してよろしいんですか。

柳澤国務大臣 今委員が御指摘になられました台帳、旧台帳、名簿、原票、ともにマイクロフィルム化しておるということでございます。

長妻委員 これは、すべてというふうに、きちっと御答弁いただきたいと思うんですが。

柳澤国務大臣 これらのそれぞれの書式による資料というものは、すべてマイクロフィルム化されているということでございます。

長妻委員 そして、今四つの台帳、旧台帳、名簿、原票、これはデータとして今のオンラインのコンピューター上にすべて入力されているかどうか、これも確認をさせてください。

柳澤国務大臣 昭和三十年代に、委員がわざわざお書きになっていただいているわけですが、磁気テープ化したものにつきましては、これがオンライン化されているということでございます。したがいまして、名簿、原票はオンライン化されている、こういうことでございます。

長妻委員 そうすると、名簿、原票はすべてデータがオンラインの中に今入っている。

 では、台帳と旧台帳は入っていない、こういうことでよろしいのでございますか、データが入っていないと。

柳澤国務大臣 お尋ねになられました厚生年金保険の旧台帳でございますが、これは、先ほど委員が仰せられたとおり、二十九年四月以前に資格喪失した被保険者で、昭和三十四年三月三十一日までに再び資格取得をしていない方の厚生年金保険の台帳であるわけですが、これはマイクロフィルムに収録し、社会保険業務センターにおいて管理をいたしているということでございます。したがいまして、この旧台帳の記録についてはすべてオンライン化されているということではなくて、年金裁定時あるいは御本人からの記録確認時においてオンラインに随時収録している。

 ですから、すべてがオンライン化されているわけではなくて、マイクロフィルムとして残されているものもある、それからまた、実際に生かしていかなければならないものについてはオンラインへ収録してある、こういうことでございます。

長妻委員 そうしますと、確認ですけれども、これはもう、一枚の紙一枚の紙に一人の人生がかかっていますので、細かく詰めてまいりますけれども、台帳の中で、旧台帳以外の台帳は、すべてのその紙のデータが今のオンラインに入力されている、こういうことでよろしいのでございますね。

柳澤国務大臣 台帳、名簿、原票というふうにいろいろな形をとったわけでございますが、それらについては最終的にはオンライン化された、こういうことでございます。(長妻委員「旧台帳以外は」と呼ぶ)旧台帳以外は。

長妻委員 これは大臣、私は大きな問題だと思うんです。つまり、旧台帳はコンピューターの中にデータが入力されていない、今、公式に認められましたけれども、これは大問題じゃないんでしょうか。納付履歴、入っていないわけですよ、旧台帳は。

 二十五年ルール、延べで二十五年払っていないと保険料を没収されて一円も受給できないとか、あるいは、今、統合漏れ五千万件が問題になっておりますけれども、旧台帳を入力していなければ、旧台帳自体の統合漏れ、これも多く発生する可能性があると思います。

 この旧台帳の数、これはどのくらいあるんだろうか。国会図書館でいろいろ調べておりましたら、お配りの資料の十ページ目でございますけれども、こういう資料がございました。「社会保険庁二十五年史」という資料です。国会図書館には出版直後の昭和六十三年七月に寄贈されているものでございます。

 そこを見ると、その次の十一ページ目の上でございますけれども、「比較的使用頻度の低い台帳(昭和二十九年四月一日以前に取得して、同日前に喪失し、昭和三十四年三月三十一日まで再取得していない者の台帳)」、厚生年金被保険者の台帳、これは大臣が今言われた定義と同じでございますけれども、「については、マイクロフィルムに収録して管理することとした。 昭和六十二年三月現在の被保険者記録の管理状況は、次のとおりである。」というふうに書いてございます。ここに、マイクロフィルム一千四百三十万件とございます。

 つまり、今現在、このときから増減がそれほどないとすれば、旧台帳というのは大体一千四百三十万件ある、こういうふうに考えてよろしいのでございますか。

柳澤国務大臣 旧台帳のマイクロフィルムの件数といたしましては、六十二年三月現在で千四百三十万件ということになっているわけでございますが、先ほども付言をいたしましたように、その後、年金裁定時や御本人からの記録確認があった場合には、そのときにおいてコンピューターに随時収録をさせていただいております。

長妻委員 それでは、この旧台帳のうち、約一千四百万件といたしましょう、この一千四百万件ある旧台帳、データが今のコンピューターの中に入っていない、こういう台帳でございますけれども、この台帳のうち、基礎年金番号に統合されていないものというのはどのくらいございますか。

柳澤国務大臣 この数字も、私ども、数字として持ち合わせていないということでございます。

長妻委員 そうすると、この約一千四百万件のうち、基礎年金番号に統合されていない記録もあるということでございますか。

柳澤国務大臣 基礎年金番号に統合されていない記録もあるということでございます。

長妻委員 では、これは置き去りじゃないですか、今回の議論に。五千万件以外にも基礎年金番号に統合されていない記録があるんじゃないですか。この一千四百万件というのは、統合されていない記録がこのうちにあるということでございますけれども、それは五千万件とは別にあるということでよろしいのでございますか。

柳澤国務大臣 結果としてそういうことになるということでございます。

長妻委員 そうすると、五千万件がさらにふえたじゃないですか、大臣。何でこれは、我々の指摘があって、後手後手に回るんですか。みずから実態を出してくださいよ。

 これは、私どもが調べた話を申し上げますと、この一千四百三十万件すべてが基礎年金番号に統合漏れしているわけではないということでございます。

 つまり、この中の一部は、データは全く今のオンラインのコンピューターの中に入力されていないけれども、カセット番号、つまりマイクロフィルムのカセット番号が表示される被保険者もいるということでございます。つまり、柳澤伯夫さんであれば、柳澤さんの基礎年金番号がある、そして、マイクロフィルムにも柳澤伯夫さんのまさにそのデータがある場合、これは確認された場合のみ、柳澤伯夫さんの今現在オンラインに出るコンピューターの加入履歴の画面の中に、この方はマイクロフィルムがあります、旧台帳があります、カセット番号は何番です、こういうのが表示されるわけです。

 そして、それに気づいた相談員が、最近、私が聞くところによると、若い社保庁の相談員はそういうカセット番号を余り気にしないで、そこまで確認しないという方もいらっしゃるということを聞いたことがございますけれども、気のきいた相談員であれば、ああ、柳澤伯夫さんの加入履歴にはカセット番号、旧台帳があると書いてあるから、それも見なきゃいかぬなと気をきかせる。

 そうしたときにどうやって見るか。当然コンピューターに情報が入っておりませんので、すぐにそれは三鷹、社会保険業務センターの三鷹に当該社会保険事務所が書類を送ります。この書類、記録整備依頼書というのを三鷹にファクスで送ります。柳澤伯夫さんの旧台帳を、マイクロフィルムから見て入力してください、こういう依頼書なんですね。

 そうすると、東京の三鷹で、柳澤伯夫さんの台帳を、これは当然その日にはできません、次の日か翌々日か、お客さんには一回帰っていただいてまた来ていただくことになるような運用をしているということでございますけれども、三鷹の社会保険業務センターで、その柳澤伯夫さんのマイクロフィルムを、オペレーターがその一件をコンピューターに全部打ち込む、それで、何日かすると柳澤伯夫さんの記録は加入履歴が全部きれいに出てくる、こういうような仕掛けでございます。

 本人の申し出とか、あるいは年金相談員がきちっと機転をきかせてマイクロフィルムの依頼書を出す、こういうことがないと、統合されているものでも、一千四百三十万件の、基礎年金番号に統合されてカセット番号だけが入っているものですら、こういう高いハードルがあってやっと記録が完結するということですよ。ですから、そういう申し出、相談がない方は、マイクロフィルムのままで入力されていないという現実があるわけです。

 それと、もっと症状が重いのは、先ほど柳澤大臣も認められました、一千四百三十万件のうち、基礎年金番号に統合されていなくて、その方のコンピューター、現在のオンラインで加入履歴を見ても、カセット番号が書いていない。本来はその方は旧台帳を持っているのに、ここにあるかもしれないのに、カセット番号が出てこない。こういうものもあるということです。つまり、これは、今言われている基礎年金番号に統合されていない五千万件と同じカテゴリーじゃないですか。

 これは大臣、もちろん、一千四百三十万件のうち、基礎年金番号に統合されていない件数、至急調べますね。

柳澤国務大臣 まさに今委員がるる、逆に、本当に教えていただくように御発言いただいたわけでございますけれども、旧台帳の記録につきましては、年金裁定請求時や御本人からの記録確認時におきまして、コンピューターに随時収録をいたしております。

 そういうようなことでございますが、今回、私ども、新しい取り組みとして、今のオンラインのシステムと、いろいろな残された、いわば原資料と申しましょうか、そういうことを照合して、それで漏れているものについてはオンラインに収録する、こういうこと、あるいはミスをしているものについては正しく収録するという作業をいたしますので、その一環として、この旧台帳のものについても、照合の上、オンラインに収録していくということを考えております。

長妻委員 非常に悠長なことを言っておられますね。これは、旧台帳という印がついているんですね、今のオンラインで。カセット番号が入っている件数は何件か、引き算すればいいんですよ。カセット番号が現在の加入履歴に出ていないものは基礎年金番号に統合されていない旧台帳でありますから、そんなものは件数はすぐ出ます。

 五千万件が、宙に浮いた年金記録が、六千万件になるかもしれないじゃないですか。この数字自体は、私は、コンピューターのプログラムをつくれば数日あれば出ると思いますので、大臣、数日で出すと指示してください。

柳澤国務大臣 プログラムをつくればという前提のもとで委員も御発言いただいたわけですけれども、私ども、今私がここにいる段階で、そのプログラミングの作業がそうした期間で完了するということについては明言ができません。

長妻委員 明言できない。

 では、きょうこの委員会が終わったらば、部下の方に、一千四百三十万件のうち基礎年金番号に統合されていない番号を一刻も早く調べなさい、こういう指示は出していただけますね、きょう。

柳澤国務大臣 今、この年金記録の問題について、しっかりした構えと申しますか、体制でもって取り組むということをいろいろとやっておりますので、そういうところに、また新しいいろいろなプロジェクトを持ち込むということについては、これは検討させていただきたいということでございます。

長妻委員 ですから、大臣、私はあした出せと言っていないんですよ。青柳部長、後ろから何かにやにや笑いながら変なアドバイスをしないでくださいよ。

 柳澤大臣、ですから、この質問が終わって帰ったら、部下の方に、一刻も早くその件数を出せ、こういう指示をしていただくだけでいいんです。そんなに負荷はかかりません。

柳澤国務大臣 私どもは、今度の年金記録の問題について、どういう体制をとり、またどういう仕事を優先してやるべきかということを検討しているわけでございますので、そういう状況も御賢察をいただいて、もちろん検討するということは初めから申し上げているわけでございますので、そこの仕事の段取り等については、検討の結果をお待ちいただきたい、このように申し上げます。

長妻委員 いや、指示をするだけしていただきたい。

柳澤国務大臣 この仕事は、いろいろな段取りを今やっているところでございますので、指示をするとかしないとかを含めて、これは私のもとで検討するということを御理解賜りたいと思います。

長妻委員 国民の皆様がもしこの質疑を見ておられたら本当に申し上げたいのは、この期に及んでもまだ隠す。何で隠すんですか、大臣。件数ぐらい指示を出してくださいよ。(発言する者あり)いや、与党の方も、出す必要ないですか。指示をすると。今、五千万件の宙に浮いた年金記録がふえるという御答弁をされているんですよ、大臣。この政府はとんでもない政府だと思います。

 もう一つ、では観点を変えて聞きますけれども、二十五年ルール、大臣もよく御存じだと思いますが、そうすると、このマイクロフィルムのすべてがデータとしてコンピューターに入っていない、では、二十五年ルールで、本来は払ったのに旧台帳に記録があった場合、それが足し算されないで受給資格が得られない、こういうケースも出てくるんじゃないですか。

柳澤国務大臣 それは五千万件の問題と同じような性質を持っておりますので、そういうことを含めて我々は検討させていただきたいということを申し上げているのでございます。

長妻委員 私どもが今調査をしておりますのは、こういう埋もれた紙台帳という問題なんですよ。消えた年金が消えていないんだと、ずっと、自民党のビラにも書いてありまして、こういう間違ったことを国民の皆様にお知らせをしている。五千万件とは別に消えた年金記録というのがある、社会保険庁もこれは認めているじゃないですか。ですから、被害者の方を補償するためには、与党・政府案のようにコンピューターの今ある中だけを突合して、そして、お示しあるいは注意喚起するという対策ではだめなんですよ、これは。前から言っているんですけれども、我々も。

 こういう埋もれた紙台帳があるじゃないですか。そして、これ以外にも、本当に埋もれた紙台帳はないんですか。普通台帳でとってあるもの、あるいは被保険者名簿で、役所はないと言っているけれども実はあるもの、倉庫の下にほこりをかぶっている台帳、こういうものがたくさんあるんじゃないかと私は感じているんです。仮に段ボール一つでも見つかれば、そこに何百人、何千人の人生が入っているんじゃないですか。そういうずさんな紙台帳の管理をして、そして調査の依頼もしない、今何か忙しいからこういうのは後回しなんだと。これが最優先じゃないですか。

 そして、今申し上げました「社会保険庁二十五年史」の中には、こういう記述もあります。十一ページでございますが、「被保険者記録は、年金手帳の記号番号で管理しているが、適用事業所を異動した際被保険者の制度に対する認識の不足、また、年金手帳の亡失等により新たな記号番号による年金手帳等の交付を受ける結果、同一人の記録が複数で管理されることとなり、本人の職歴と合理的につながらないことが往々にして生じることとなる。」当時からこういうことがずっと言われていて、ずっとほったらかしにしていた。こういう責任も私はあると思います。

 それでは、大臣、この埋もれた紙台帳、旧台帳一千四百三十万件、これは五千万件と同じような扱いで政府として対策をとる、こういうことでよろしいんですね。

柳澤国務大臣 私は、この問題について、明確に、今委員がおっしゃられたとおりのことがうまくいくという自信も持てませんが、基本的に私はそういう考え方でこの問題に取り組み……(長妻委員「どういう考え方ですか」と呼ぶ)つまり、やはり全部調べて、統合すべきは統合する……(長妻委員「何をですか」と呼ぶ)この千四百三十万件について、未統合のものをできるだけ早く統合するという観点から取り組みたいということでございます。

長妻委員 そうしますと、政府は五千万件を突合、チェックする、一年以内。この一年以内には、五千万件プラス何件になるかわかりませんが、今の件数も含むということでよろしいんですか。

柳澤国務大臣 これは、一年以内にできるのは両方ともがコンピューターの中に入っている、そういう記録の突合について申し上げているわけでございまして、それと全く軌を一にして処理できるということはここでは申し上げられないわけですが、私としては、ほとんど、いわばそれに次ぐ優先度のある課題としてこれに取り組んでいきたいということを申し上げるわけでございます。

長妻委員 そうしますと、この一千四百三十万件、データとして今のオンラインに入力を開始する、こういうことでよろしいんですね。

柳澤国務大臣 これは段取り等をまた事前によく検討しまして、迅速に統合を実現するように取り組みたいということでございます。

長妻委員 そして、この政府の五千万件、一年以内に突合、チェックする、この具体的な手法を、私が何度も社会保険庁の幹部の方を呼んでもお越しいただけない、担当の方では、いや、このやり方は全く聞いていませんと。大臣にお伺いするしかないので端的にお答えいただきたいと思うんですが、この五千万件、突合、チェック、一年以内、例えば被保険者に限定してちょっとお伺いします。

 この五千万件のデータの中で、名前と生年月日と性別、これが、当然受給者三千万人もチェックされるということでありますけれども、被保険者もやられる。被保険者と同じ名前と生年月日と性別のものを五千万件照合して、被保険者の方で同じものがあった、あった方に対して郵便で加入履歴を送って、あなた様、抜けがありませんか、こういうことを聞く。これを一年以内、こういうことでございますか。

柳澤国務大臣 ですから、これはもう具体的に発表させていただいているわけですけれども、名寄せを一年以内に完了しまして、それに基づいて、今委員が言われるような年金の履歴と一緒に、ほかに同一人の可能性のある年金番号がありますというようなことで御確認をお勧めするという通知をいたしたい、このように考えております。

長妻委員 そして、ちょっと先ほどの話に戻りますけれども、旧台帳というのは決して大昔の話じゃないわけです。つまり、旧台帳の最年少者はどのくらいか。例えば昭和二十九年四月で十六歳であれば現在六十九歳ですから、まだ御存命で、年金を受け取っておられる可能性は高い。あるいは、では最年長者、例えば厚生年金が始まった昭和十七年に十七歳であれば現在八十二歳でございますから、御存命の方も多くいらっしゃると思います。それだけつけ加えます。

 そして、今大臣が御答弁いただきました被保険者へのチェック方式というのは、これは平成十年から十八年に行っていたことと基本的には同じやり方ということでございますね。

柳澤国務大臣 突合の仕方のことについては、基本的には委員が言われるように同じであります。

長妻委員 これは、国民の皆さんもマスコミの皆さんも今まではだまされておられました、政府の対策。今、大臣が図らずも正確なことを言っていただいて、これはこれでありがたいと思います。

 つまり、どういうことかといいますと、政府が言っている五千万件、一年以内に突合、チェックというのは、基本的に今まで、平成十年から十八年にやってきたことと同じやり方でやるということなんですね。五千万件未統合の中の、名前と生年月日と性別、これに当たる方に対して、そのものずばりのデータを示すんじゃなくて、何か抜けがありませんかとお伺いする。

 これは効果が上がらないから五千万件残ったんじゃないですか。今までのやり方であればプログラムをつくる必要がないじゃないですか、今までと同じプログラムをもう一回やればいいわけですから。被保険者に関しては、プログラムはつくらないでいいわけですね、同じということで。

柳澤国務大臣 全く手直しが必要でないとまで言う、そういうつもりはないわけでありまして、やはり経験に学んでいろいろなことをまた加除修正する必要があるかどうかということを検討いたしたい、このように考えております。

 なお、その後において同一人のものと思われるデータがある場合に、我々がとる被保険者の方への情報というものは、この前の情報に比べて、まず履歴を加える等、より御確認がいただけるような工夫をいたしたい、このように思います。

長妻委員 いや、平成十年から十八年のときも履歴はあるじゃないですか、送っているじゃないですか。

柳澤国務大臣 今度の場合には、前回お知らせできなかった、年金の履歴の中において事業所名も入れるということでより確認しやすくしたい、このように考えております。

長妻委員 そんなものは当たり前ですよ。前回の平成十年から十八年、年金の番号、そして右に厚生年金、それだけのそっけないものだった。でも、今度は事業所名を入れる。しかし、それも私は効果は期待できないと思います。

 つまり、事業所名というのは、その方が今まで払っておられた、そういう記録が一覧表で送られる。そうじゃなくて、我々が申し上げておりますのは、紙台帳とコンピューターの中をすべて照合して、コンピューターをきちっと訂正した上で、五千万件、このデータに該当する人、もう五千万件じゃないかもしれません、旧台帳も今後加わりますから。そういう方々に対して、一件一件、あなた様は、このデータが、抜けがありませんかというのを工夫してお示しする、こういうことを言っているわけです。

 つまり、国民の皆さん、だまされてはいけません。政府が一年以内に五千万件と言っておりますのは、被保険者の方々に対して、あなた様、抜けがありませんかと郵便物を送る。こんなもの一年もかかりませんよ、やるとしたら。数カ月でできますよ。今までの焼き直しじゃないですか。コンピューターで突合して、該当者に郵便を送るだけですから。

 そして、ただ、違うのは、受給者にも送ると。ただ、受給者も、かつて、ずっと統合作業をやられていた中で受給者に変わった方もいらっしゃる。同じことをもう一回やる方もいらっしゃる。方法を変えればいいですよ。ただ、受給者に対しても、平成十年から十八年にやったのと同じ手法で、受給者に対しても、あなた様、何か抜けがありますかと郵便を送る。五千万件突合チェックというのは、今のやり方なんですよ、私が申し上げた。

 マスコミが、一年でできないんじゃないかとか何かいろいろ言われていますけれども、私は数カ月でできると思いますよ、そういうやり方であれば。つまり、これまでやってきた、効果のないやり方をもう一回やるのであれば、それは一年もかからない。しかし、それで効果が上がらずに五千万件残って、どうなんだということなんですよ。つまり、コンピューターの中のデータ自体が、旧台帳も含めた形で、正確になっていないものをこねくり回してもだめだ、こういうことを申し上げております。

 そして、もう一つ誤解を呼んでおりますのは、この自民党のビラでございます。四ページでございますけれども、まあ、これを何万枚か配られたということで、私は政権政党である自民党の見識を本当に疑います。

 「ご心配はいりません!!あなたの年金が消えたわけではありません!!」自分たちに気休めを言い聞かせているわけではないと思いますけれども、現実には消えているんですよ。だからこそ、我々は総力を挙げて調査しているんじゃないですか。

 言いたいのはこの下です。この下に、自民党と書いたマークの上に、一年以内に五千万口の名寄せを完了すると。ここで注意しなきゃいけないのは、「オンライン化されていないが、マイクロフィルムや市町村にある記録についても手作業で突き合わせいたします。」と。この五千万件の記録、一年以内に。これは大臣、本当でしょうね。

柳澤国務大臣 これは、我々は何回も、委員にもお答え申し上げておりますとおり、めどを立てろ、めどを示せと言われておりますけれども、私どもは、めどを今申し上げるわけにいかないということで、そしてそのかわりとして、定期的に進捗状況を公表しますという作業でございます。

長妻委員 いや、これは、国民の皆さんもマスコミの皆さんもよく聞いていただきたいと思うんですよ。私も、あるテレビ番組に出させていただいて、自民党の幹部の方が、一年以内に五千万口、突合、チェックします、しかも、マイクロフィルムや市町村にある手書き記録についても全部突き合わせします、一年以内です、こういうふうに言われているわけですよ、公共の電波で、国民の皆様方に。この自民党の、一年以内、手書きも突合するというのはうそじゃないですか、大臣。うそでいいんですね、これは。

柳澤国務大臣 私は、そのテレビ番組、不幸にして見ておりませんので、その発言について真偽をコメントできませんけれども、いずれにいたしましても、オンラインの記録と、そのもとになった手書きのいろいろな台帳、あるいはそれをマイクロフィルムに写真として撮ったもの、こういうものとの突合については、前々からも御議論がありますように、私といたしましては、めどをここで申し上げるわけにはいかない。そのかわりに進捗状況を定期的に公表いたしますということを何回も申し上げているところでございます。

長妻委員 それでは、これは、だれが見ても、この自民党のビラ、一年後名寄せ完了、五千万口、「オンライン化されていないが、マイクロフィルムや市町村にある記録についても手作業で突き合わせいたします。」一年以内。では、この自民党のビラは間違いだというふうに、大臣、よろしいんですか、大臣。

柳澤国務大臣 私は、そういう誤解が起きない程度のデザイン上の工夫は施されているのではないかと、個人的には思います。

長妻委員 いや、これも、国民をばかにするなと言いたいですよ、本当に。

柳澤国務大臣 私は、よくわかっているせいかもしれませんが、とにかくそこで、そのものを、色のものを見れば、白黒のコピーよりももっとわかると思いますけれども、これは私がもうここで何回も言っていることなんです。恐らく、そういうことで、その他の報道においても、そのことは多分報道してくれているんだろう、こう思います。

長妻委員 大臣も、自民党の大臣ですから、何らかのコメントはないですか、このビラに対して。

柳澤国務大臣 私は、非常に、もちろんのこと当事者でもあるし、当事者である者の責任者ですから、よくわかっていますから誤解をしませんけれども、誤解ができるだけ、広報というのも生じないように努めるべきだとは思います。

長妻委員 これは、私も前からこの委員会でも申し上げているんですが、こういう年金の事務の話ですね、今回。こういう話は、ディテールをきちっとやはり詰めないと、非常にアバウトな議論になると、積み残しが大き過ぎてしまう危険性があるということを申し上げているわけであります。

 そして、もう一点。これは、ただ時間がないので次に行くだけで、本来、こういう話というのは、本当に許せない話であります。

 次に参りますと、この二ページ目、こういう通知も、社会保険庁年金保険部長が、昭和四十二年三月十五日に出しておりました。各都道府県知事あて、国民年金市町村事務取扱準則、これは抜粋でございますけれども、こんなことが書いてあります。「受付処理簿は、完結の日から三年間、」この次からが重要です。「被保険者名簿は完結の日から五年間、それぞれ保存するものとする。」と市区町村に出しているんですね。

 これはどういう意味か。五年たったら捨ててもいいよと書いてあるんですよ、手書きの被保険者名簿を。御丁寧に、何で市区町村にこういうものを出すんですか。

 この完結という意味は何か。これは、国民年金の方が、その市町村から引っ越す、その市町村の外に引っ越すときから五年間。引っ越しても残さなきゃだめじゃないですか。あるいは、厚生年金に移行した、国民年金を脱退して厚生年金に移行してから五年間たったら、その被保険者名簿は捨てていい。これは、その方が受給するまで持ってなきゃいけないじゃないですか。

 こういう、捨てていいという通知を出した責任、あるいは問題点、大臣はどうお考えですか。

柳澤国務大臣 市町村の国民年金被保険者名簿と申しますのは、委員もよく御存じのとおり、国民年金法に基づく国民年金原簿ではないわけで、市町村が国民年金保険料の収納事務をするに際して、納付状況を管理するための、いわば納付状況管理に限っての、当座の帳簿ということで備えつけていただいていたものでございます。

 したがって、今このように記録のミスであるとかあるいは漏れであるとかということが明らかになっているこの段階からいたしますと、五年間の保存ということも、ある意味で悔やまれるわけですけれども、この当時の、事務が円滑に遂行されているという前提に立った場合には、市町村の方々にも、今委員が言われるように、被保険者が年金の受給を実際に開始されるまで保存しておけと言うことは、やはり法律上の根拠とかそういうものがない場合には、社会保険庁側には余り迷惑をかけないように、そういうこともあり得るわけでありまして、そういったことから、これを受給開始に至るまで保存しておけと言わなかったことについて、今、今日の段階からいろいろと私も考えるところがないわけではないですけれども、こういうように円滑に事務が進捗しているという、そういう中でこうした措置をとったことについて、すごい手落ちということまではなかなか言えないのではないかと、私はそのように考えます。

長妻委員 円滑に事務が進捗していたと思っていたから、保存しておけというのはなかなか言わなかったと。国民の皆様には、受給が始まるまで保存しておけと言うわけですね、領収書を持ってこいと。国民の皆様は円滑に進んでいるともっと思いますよ、内部にいないのだから。国民の皆様には、ちゃんと保存しろ、領収書を持ってこい。自治体には、当時は円滑だから保存しないでもいいと言うのは無理もないと。

 では、こういう質問をします。今から振り返って考えると、この通知は間違いだった、こういうふうに思われますか。

柳澤国務大臣 この名簿が進達されて、同じ情報が進達されて、私ども、原簿であるとかその当時の正規の書類、法律上に保存すべき書類に結びついているということでございますから、この当座の記録についてこういう措置をとったというのは、今から考えると悔やまれるということを、先ほど私は、残念だったな、せっかくこれがあればという思いですけれども、これが誤りであるとかということを申し上げるというのは、円滑な事務の遂行が行われているという前提に立てば、それはやはりちょっと過ぎたことになるのではないかと私は感じているわけでございます。

長妻委員 言い方が非常に軽いと思うんですね。残念だったな、悔やまれると。

 これは、きょう、委員の皆さん、国会議員の皆様が委員であるのは当たり前ですけれども、皆様の地元の自治体が本当に被保険者名簿を保存してあるのかどうか、私もチェックしましたけれども、ぜひ国会議員の皆様も聞いてみていただきたいと思うんですね。どういう保存状態なのか。そして、捨てないできちっと保存しろ、散逸していたらその自治体の中のものを一カ所に集めて保存しておけ、そういうふうに国会議員の皆さん、全国に自治体があるわけですから、そういうことも呼びかけていただきたいと思うんです。

 もちろん政府はそれをやると思いますけれども、その捨ててしまった市町村名も出したくない、出さない、出さないと言っているわけですね。出すんですか、捨ててしまった二百以上の市区町村の名前。

柳澤国務大臣 今現在私どもが把握しているものは、これは、今度の合併後の市町村を単位としてやや簡易な調査をした、それで概要を概数としてつかんだということでございまして、これについては、大変恐縮であったわけですけれども、今正規の公文書による照会をいたしておりまして、公文書による回答を期待しているという状況にございます。

長妻委員 これも出さないと。

 そして、もう一つの廃棄通知、廃棄命令。これは私もここで話題にいたしましたけれども、国民年金の普通台帳はコンピューターに入力したら捨てなさい、これが昭和六十年の九月に社会保険庁から各事務所に出されました。この差出人の方というのが、お二人でございました。社会保険庁業務第一課長、そして社会保険庁業務第二課長のお二人です。

 この社会保険庁業務第一課長Aさん、このAさんを見ると、その通知を出す前の月にこの業務第一課長に就任した、しかし、その通知を出した翌月に異動して年金課長に就任した。これは非常に不可解な人事の動きです。二カ月しかこの業務第一課長におられない。何でこんなに短いのか。この通知の責任をとらされたのかどうかわかりませんけれども、非常に短い。

 そして、この方は平成十年に退官されました。平成十年には年金福祉事業団の理事となられた。そして、平成十三年、NTTデータ国際事業担当取締役になった。そして、現在、平成十八年からでございますけれども、社団法人全国社会保険協会連合会の常務理事をされておられる。

 このNTTデータというのは、まさにこの五千万件の記録を保持しているコンピューターのベンダーではないでしょうか。どうですか、大臣。

柳澤国務大臣 NTTデータが三鷹の記録の関係のコンピューターの担当の会社であるということは間違いございません。

長妻委員 五千万件の記録はそのコンピューターに入っている、こういうことでよろしいんですね。

柳澤国務大臣 おっしゃるとおりでございます。

長妻委員 そして、この会社とは非常に巨額の取引をされておられるわけですよ、金額で。そこに天下られる。しかも、こういう非常に問題のある通知を出された方です。

 そしてもう一つ、社会保険庁の職員が社長だったコンピューター会社と高井戸の社会保険業務センターなどは年間九億円の随意契約を結んでいた、こういう事実はありましたですか。会社名も教えてください。

柳澤国務大臣 社会保険業務センターが、平成十四年からSBCという会社に、文書の受け付け、発送等業務、扶養親族等申告書の受け付け、分類、補正業務等につきまして委託をいたしております。

長妻委員 この会社は昭和五十二年四月に設立された会社でございまして、私もその会社にかつて行ったことがあります。高井戸社会保険業務センターのすぐ近くにある会社でございますけれども、昭和五十二年の四月といえば、その後、昭和五十九年前後に年金事務が全面オンライン化したわけでございまして、この会社は年金個人情報の入力等にかかわっていた会社でございますか。あるいは、この会社はオンライン化にかかわっておりましたか。

柳澤国務大臣 昭和五十八年から六十年当時のオンライン化の際の契約関係書類については、大変恐縮なんですけれども、資料の保存期間が経過しているということから、お答えすることが困難であります。

長妻委員 年間九億円の随意契約。大臣、年間九億円の随意契約というのは、これは問題だと思いませんか。

柳澤国務大臣 平成十四年、十五年は、この受け付け、発送等業務委託で、今委員が言われるように、十四年が九・三億円、十五年が九・五億円というような委託契約をしておる、随意契約のようでございます。

長妻委員 それは問題だと思いませんか。社会保険庁OBが社長の会社と。

柳澤国務大臣 これは、今委員が御指摘のとおり、適切でない、このように考えます。

長妻委員 これは、るる御質問申し上げましたけれども、埋もれた紙台帳、旧台帳の存在がきょう明らかになりましたけれども、さらに、いろいろな埋もれている紙台帳があると思うんですね。あるいは紙台帳はあるけれども入力が漏れてしまったもの、つまり、まずそういう紙台帳を捨てられないように確保して、あるいは、倉庫も、あるのかないのかもいろいろチェックしていただいて、そういうものをもう一刻も早くコンピューターのデータと照合してコンピューターを正していく。

 と同時に、当然、その五千万件プラス紙台帳、旧台帳の宙に浮いた記録、お一人お一人、それが、名前と生年月日と性別が合っている方に対して、抜けがありませんかという聞き方ではなくて、その宙に浮いた記録そのものを工夫して見せて、そして確認していただくということをしなきゃだめなんです。

 そしてその上で、それ以外の受給者、被保険者全員に、きれいになった、正しくなった加入履歴、納付履歴一覧をお送りして緊急チェックしていただく、こういうプロセスがあって初めて一歩踏み出すんです。そして、この申請主義、厳格な申請主義も見直しの検討もする、そして、この立証責任の問題も変えていく……

櫻田委員長 長妻昭君、申し合わせの時間が経過しておりますので、御協力願います。

長妻委員 こういうことと同時に、情報公開が何よりも重要でございます。被害者の情報の蓄積、取り組む進捗状況の全面開示、そして五千万件の保険料総額一つ出さないじゃないですか、大臣。すぐ出るんですよ。もう多くの実態が隠されておりまして、いろいろな問題がまだまだありますよ……

櫻田委員長 長妻昭君に申し上げます。

 申し合わせの時間が経過しておりますので、御協力ください。

長妻委員 解明されているのは、ほんの一部でございますので、ぜひ全部を明らかにしていただきたい。全容解明、責任明確化、そして抜本対策、この三つが不可欠でございます。

 以上であります。

櫻田委員長 次に、山井和則君。

山井委員 これから四十五分間、質問をさせていただきます。

 まず最初に、強く抗議をしたいと思います。きょうも職権で、この委員会、強硬に立てられました。その理由は、長妻議員が二月以来要請をされています三千件の特殊台帳とコンピューター記録とのチェック、これの結果がまだ出てこないということであります。

 今まで、再三再四委員会で問題になっておりまして、そして、忘れもしない五月三十日の強行採決の直前に、この三千件のサンプル調査を出してほしいということを柳澤大臣に長妻議員が質問されたら、それは理事会にお任せしているということで、理事会の了承があれば出せるということを柳澤大臣は答弁をされました。しかし、理事会では、まだこのことが出てきておりません。既にこのことは、調査は終わったと聞いております。にもかかわらず、いざ理事会で出してくれと言ったら出てこない。これはまさに情報隠し以外の何物でもありません。そういう一番重要な情報を出さずして、審議は終わりようがないんですよ。

 安倍総理は、五千万件のだれのものかわからない年金記録の名寄せを一年以内にされるということをおっしゃっておられます。しかし、なぜ私たちがこの三千件のサンプル調査にこだわっているのかというと、そもそも五千万件のコンピューターの記録自体が、元となる手書きの台帳と食い違っていたら、大きく前提が狂ってくるんですね。

 だからこそ、長妻議員は四カ月も前から、サンプルでいいから手書き台帳とコンピューター記録のチェックをやって結果を出してくれということを毎回委員会で言い続けてこられました。そして、社会保険庁の現場の方々からは、もう一たん調査が出て、理事会で言ってもらえれば出せるということまで聞いております。にもかかわらず、なぜか理事会マターになったら、急に精査がさらに必要だということになって、先延ばしになっております。

 きのうの理事会でも私は申し上げました。これは一歩間違えると、三年前の出生率の後出しじゃんけんと同じような大問題に発展しますよ。早急に出さずして後でサンプル調査の結果を出して、実は、コンピューターの記録と手書き台帳はかなり違いがあったんです、そんなことを後で出してきたら、今の国会審議の前提が全部狂ってしまうんですよ。

 柳澤大臣に冒頭に、この問題はもう何度も質問をしております、そして理事会では、早急に出すようにということも確認をしております。大臣、出していただきたいと思います。いかがですか。

柳澤国務大臣 マイクロフィルム化した特殊台帳と言われる被保険者台帳等の記録とコンピューターで管理している記録の突合につきましては、現在、三千件程度のサンプル調査を実施しているということでございます。

 前々から、途中であるということは申し上げておったと思いますけれども、途中で出すべきかどうかというようなことについて、理事会の方で御検討をいただいているというふうに私としては認識しているわけでございます。

山井委員 理事会では、早急に途中であろうが出してくれということになっています。大臣、いかがですか。理事会では、早急に出すということをもう全会一致で言っています。大臣。

柳澤国務大臣 理事会の御判断もあり、また、私自身といたしましては、この調査を完了するように、早くするようにということを督促、指示をいたしているわけでございます。

山井委員 では、督促、指示を出しているんでしたら、いつ出てくるんですか、大臣。

柳澤国務大臣 今ここで私がめどを申し上げるということは、これは途中であっても、こういう今段階ですというようなことであれば、これはもう出し得ると思うんですが、それだとまた、今度はもうちょっとしっかりしたものを出せということになりますから、とにかく、今、督促の指示を出して、早く処理をするようにということで今やっているところでございます。

山井委員 柳澤大臣、これは四カ月前に長妻議員が要望されて、そして五月の九日以降、毎週のように、毎回のようにお願いして、そして柳澤大臣は、毎回のように急ぎます急ぎますと言って、全く進んでいないじゃないですか。いつまでに出すというのを明言してくださいよ、大臣。全く答えていないのと一緒じゃないですか。一カ月間答弁は変わっていないじゃないですか。国会審議を何と考えているんですか。

柳澤国務大臣 ともかく早くして、きっちりした資料を御提出したいという気持ちでございます。

山井委員 三千件のサンプル調査、こんな時間がかかるものじゃないんですよ、これは。三百十二の社会保険事務所からサンプルをとって、本当に大臣、今の長妻議員の質問もそうでしたけれども、そういう隠す姿勢をとればとるほど国民の年金不信は高まっていきますよ。きょう初めての質問だったら私も百歩譲りますけれども、一カ月間、急がせます急がせます、いつになるかわかりません、要は隠しているんじゃないですか。そういうのを隠しているというんですよ、事実上。

 少し、最賃の質問をさせていただきます。

 今回、第七条で最低賃金の減額の特例を設け、厚生労働省令で定める率を乗じて得た額を減額した額により最低賃金の効力の規定を適用するとしているが、厚生労働省令とは何を想定しているのか、武見副大臣、お願いします。

武見副大臣 現行の最低賃金法は、障害により著しく労働能力の低い者等については、個別の許可によって最低賃金の適用を除外することができるというふうにしております。

 実際の運用においては、適用除外の許可を受けたからといって、極端に妥当性を欠く低賃金となることがないよう、例えば精神または身体の障害により著しく労働力の低い者については、支払う賃金額が、最低賃金額から、労働能率が低い割合に対応する金額を減じた額を下回ってはならないといった運用、すなわち減額措置という運用が行われてきております。これは、現行法においても、通達によってこうした運用が今も既に行われているわけであります。

 そして、今般の改正によって法律上もこの減額措置となるものでありますけれども、支払うべき賃金の下限額については、現在の運用における取り扱いを変更するということではございません。現在の運用の実態を踏まえて省令を策定する、こういう考え方でございます。

 なお、厚生労働省令で定める率の具体的内容については、例えば、精神または身体の障害により著しく労働能力の低い者については、当該最低賃金の適用を受ける他の労働者のうち最下層の能力者と比較した被申請者の労働能率の割合とするというふうに考えておるところでございます。

山井委員 また最賃の議論は後で戻りますが、この最低賃金、そして老後の年金の問題、非常にこれは密接に絡み合った問題であります。

 実は私ども、年金一一〇番というのをやっておりますが、メール、ファクス、数日分でこれだけ、そしてまた手紙も、ここ二、三日で来ているだけでこれだけ、とにかく、自分の納付記録が消えた、見つからない、払ったはずなのにという悲鳴、問い合わせが今殺到しております。読み切れないぐらいたくさん来ております。

 こういう現状において、一つ私は気になりますのが、先ほども長妻議員の質問にありましたが、柳澤大臣、御心配要りません、あなたの年金が消えたわけではありません、こう自民党のホームページに出ておるんですね。御心配要りません、あなたの年金が消えたわけではありません。大臣、これについてコメントを一言いただきたいと思います。この御心配要りません、あなたの年金が消えたわけではありませんという表現は、これで大臣も同意見ですか、大臣。

柳澤国務大臣 私は、一昨日、国民の皆さんに御心配をおかけしたことを大変責任者として申しわけなく思っておるということで、記者会見を通じておわびを申し上げたところでございます。

山井委員 質問に答えてください。

 この自民党のホームページの、御心配は要りません、あなたの年金が消えたわけではありません、これと大臣は同意見ですか、同じ意見ですか。

柳澤国務大臣 これは党の文書でございまして、私の立場でこれについて云々することは、私としては差し控えたいと思います。

山井委員 わかりました。そうしたら、質問の仕方を変えましょう。

 年金記録が消えた、そういうケースはないわけですか、大臣。

柳澤国務大臣 領収書などを持たれる、あるいは検印のされた印紙の貼付された帳面をお持ちであるということで、被保険者あるいは受給権者の皆さんが動かぬそうしたものをお持ちであるのに対して、市町村から検印を押されたものが進達されなかったということで、こちらに全く記録が残っていないというケースも生じておるということは、既に判明しているところでございます。

山井委員 消えているじゃないですか、そうしたら。消えているじゃないですか、大臣もおっしゃっているように。自民党のホームページに書いてあることと大臣が言っていることと違うじゃないですか。ということは、あなたの年金が消えたわけではありませんというのは、うそが書いてあるということですか、大臣。

柳澤国務大臣 そういう私が申したような例も厳然として存在していまして、これは我々として重く受けとめなければならない、こういうように思っているわけでございますが、他方、コンピューターの中に残っているものについても、最近は、だんだん、メディアの、あるいはいろいろ人々の認識も、正しい表現というか、宙に浮いたとかというような表現になっているわけでございますけれども、やや全体を一括して、消えたというような表現をとられていた時期もありまして、そういうことについては、先ほども長妻委員がいみじくも指摘されたように、非常に事務的に細かい事実でございますので、これはやむを得ないといえばやむを得ないわけですが、できる限り正確な表現を用いていくべきだとは、私、思っております。

山井委員 この今消えた年金記録の問題、宙に浮いた年金記録の問題というのは、やはり本当に一人一人の人生がかかっている非常に重い問題なんです。私もきのうの夜中までかかってこれを全部一件一件読んでいましたけれども、本当にこれは老後すべてがかかっています。二百四十万円もらえるはずの年金がもらえない、四百九十六万円の時効でもらえなくなった年金、これは戻ってくるんでしょうか、書留で来たり、必ず返事を下さいというものもあります。本当にこれは悲痛な叫びです。

 そういうものに対して、政争の具にしたり、選挙対策とかそういう次元ではなくて、本当にこれは、まじめに、冷静に、落ちついて、そして何よりも、うそのないことを与野党超えて国民に対して発していかないとだめだと私は思っております。そういう意味ではやはり、軽はずみに不正確なこういうメッセージを発するということは、結果的には、逆に、では何を信じていいのかということになってしまうのではないかと私は思っております。

 それで、少し具体例についてお伺いをしたいと思っております。

 きょうは、雇用、労働の議論も行われておりますが、大臣、覚えておられると思いますが、私が三週間前に最初に御紹介させていただいた六十六歳のひとり暮らしの女性の方、六年間の国民年金の納付記録が消えている、二年間交渉しても門前払い。昨夜も電話で話をお聞きしました。その後どうですかと言ったら、国会で取り上げてくださったので対応はちょっとはよくなりましたけれども、その後何の連絡もありませんということであります。おっしゃっていました、毎月遅刻をして、会社を遅刻して払い込んだ、確かに払い込んだ、でも証拠がない、領収書もない、家計簿もないと。そして、この方の場合は、二十年間、平均寿命まで生きるとしたら、二百五十四万円のマイナスになるんですね。

 そこで、柳澤大臣に重要なことをお聞きしたいと思います。

 こういう、物証はないけれども、毎月遅刻をして、会社を遅刻して払った、確かに払ったということをおっしゃっておられる。こういう物証のないケースというのは、今考えておられる政府・与党の救済策では記録訂正を認められるんですか。どうなりますか。

柳澤国務大臣 多分、委員の今御指摘の案件と思いますけれども、今本庁で調べさせていただいているわけですが、同時に、なおこれから私ども第三者委員会を発足させて、そうした受給権者の方あるいは被保険者の方のお申し立てを、いわば当事者ではなくて第三者の立場で、しかもそうした国民の皆さんの立場に立ってよく聞かせていただくということをお願いしようとしておりますが、そうしたことの中では、いろいろなことを総合判断してということになるであろう、また、そういうことになることを私どもは期待をいたしているところでございます。

山井委員 そうしたら、本当に一例なんですが、今のようなケースは、第三者委員会はいいんですよ、第三者委員会は、問題は、こういうケースは記録を訂正してもらえる対象になるんですか、ならないんですか、柳澤大臣。

柳澤国務大臣 これは、もとよりその方の御意思によるわけですけれども、どうしてもこれまでの調査に納得ができないということであれば、お申し出をいただいて、そして第三者委員会の方々がよくお聞きをする、そういう対象になるということでありまして、それの後の問題というのは、我々としては第三者委員会というものをせっかくつくって有識者の方々にお取り組みをいただくわけでございますから、そういう方々におゆだねをいたしたい、このように考えます。

山井委員 柳澤大臣、結局何も答弁したことになっていないんですよ。何の解決にもなっていないんですよ。安倍総理も大臣も、第三者機関第三者機関と、第三者機関がそんな何でもできるというんじゃないんです。要は原則なんですよ、原則。私たち民主党は、社会保険庁も立証責任を持っていく、本人の立証責任を本人だけには負わせないという原則を打ち立てているんですよ。そういう原則の変更もない。つまり、今困っておられる被害者の方々が補償されるかどうかがさっぱりわからないということではないですか。

 そして、先ほど消えた年金の議論がありましたが、宙に浮いた年金とか消えた年金とかいろいろな議論がありますが、一つ申し上げたいのは、それは消えていないとか消えたとか論争はありますが、本人にとって、今その加入、納付記録と結びついていなくてその分の年金がもらえないのであれば、消えたも同然なんですよ、どこかにあるといってもその分の年金をもらえないわけですから。

 では、もう一つ具体例ですが、これも今までここで取り上げさせていただいた中村さん御夫妻。十万円近いお金を、一括納付で国民年金を払われた。夫婦で一緒に払いに行かれた。奥様は四年、御主人は十一年、合計約十五年分、十万円近いお金を一括納付で、二歳の子供を連れていって払った。でも、その記録が見つからない。これも物証がないというわけであります。

 そして、加えますと、もうお一方、先日も傍聴にお見えになった隅田さん、夫婦そろって一括で納付した。そして、御夫婦連番になっている。にもかかわらず、御主人は加入、納付記録があって、奥様はない。十一年間消えている。この隅田さんの場合は、十一年間消えたら、老後平均寿命まで生きれば、何と四百九十五万円受け取れない。そして、中村さん御夫妻も四百七十五万円もらえるはずの年金が受け取れない。

 このようなケースも、今回の政府・与党案で、記録訂正そして救済される対象になるんですか、大臣。

柳澤国務大臣 これについても第三者委員会の方々が、本当にお申し出をよく聞いていただく、そして国民の立場に立って総合的な御判断をいただく、そういう対象にしていただくということが、これはもちろん御本人の御意思によりますけれども、そういう手はずを我々として整えようとさせていただいているということでございます。

山井委員 ということは、まさに象徴的、典型的な、最初取り上げた六十六歳のひとり暮らしの女性、中村さん御夫妻そして隅田さんですらまだわからないということですね。要は救うと言えないわけですね。

 そうしたら、柳澤大臣にお伺いしますが、では、こういう方が第三者委員会で救われるかどうかというのは、その基準はいつ出るんですか。いつわかるんですか、大臣。

柳澤国務大臣 これは、第三者委員会が発足したときにいろいろと検討されるということになろうと思います。そしてそのときに、私どもとしてはもうできる限りの、今までのそうした審査請求であるとかあるいは窓口での調査であるとかということの経験を、たくさん事例として御報告する、そういうようなことで、そうした基準の、あるいは考え方のまとめというものに御協力をさせていただきたい、こう思っているところでございます。

山井委員 私たち民主党は、小沢代表が党首討論でもはっきり言ったように、基本的には本人の言い分を最大限尊重する、そして、立証責任を本人だけに負わせるのではなくて社会保険庁にも負わせる、そして、本人が払っていないというのならば、社会保険庁がそのことを立証していく、そういうふうなスタンスにしっかりと立っております。

 そして、肝心の第三者委員会、政府のこの時効撤廃法案には、第三者委員会のダの字も入っていないじゃないですか、法的根拠も全くないじゃないですか、一番大事なところが。

 もうお一方、これも以前お伺いしたケースです。十六年間、六十歳で申し込んだけれども、十一年分が発見されなくて、十六年おくれで見つかった。しかし、五年間の時効の関係で、四百九十三万円、もらえるはずの年金がもらえなかった、五年間の時効で。しかし、この方の場合は、七十六歳のときにたまたま資料が見つかったから年金をもらえるようになったんです、たまたまです。

 そこで、柳澤大臣にお伺いしたいと思います。

 もし、たまたま社会保険事務所がこの方の資料を見つけることがなかったら、いまだにその方は、払ったはずだ払ったはずだということで、闘っておられることになるわけですね。このように、物証がない、そして本人が払ったと言っている状況では、与党の時効撤廃法案の前提となる記録訂正は行われるんですか、物証がなくても。

柳澤国務大臣 さきの、委員がもう御指摘になられたケースの場合には、そうした記録があったということというふうに今お伺いしたんですけれども、そうした記録がない場合にどうするかということについて、私どもとしては、今までは当事者としての社会保険庁で調査をさせていただいたわけですが、こういうことではなくて、中立的な第三者の方の御判断を参考にさせていただこう、こういうことで、今度、第三者委員会を設立して、こういった問題の解決に当たろう、こういうふうにしているということでございます。

山井委員 これは、与党の方々も、この委員会室におられる方、皆さんも、聞いていてわかると思います。だからみんな国民は不安なんですよ。肝心なことを聞いても、結局、対象になるのかならないのかさっぱりわからないじゃないですか、全部第三者機関というブラックボックスの中に行って。それで何か、「ご安心ください!!あなたの年金は大丈夫です!!」、また、自民党のこのホームページ。

 安心してくださいといっても、第三者機関でどこまで対象になるかもわからない。また時効撤廃法案も、たまたま証拠があって記録訂正ができた方はいいけれども、今の方のケースのように、記録訂正が証拠がなくてできなかったら、対象になるかどうかもわからない。安心しようがないじゃないですか、こういうことでは。そういう状況で強行採決したから今問題になっているわけですよ。

 それで、お伺いしたいと思います。

 これは、二十五万人推定ということですが、時効撤廃法案の対象者二十五万人推定で、これは名前は把握しているんですか。もし把握していないとしたら、いつまでに把握できるんですか。この時効の方に当然払うべき年金を払うんですね。どれぐらい把握できているんですか、二十五万人のうちの。

柳澤国務大臣 委員も理事としてこの委員会で御審議をしていただきましたので、そのときに提案者からも申し上げましたように、これは、一定の前提のもとで推計した人数であるということを申させていただいておるわけでございます。

 したがいまして、今それを、人物を特定しろと申されても、これは推計として挙げた数字でございますので、当然にそういうものには結びつかないわけでございます。

山井委員 ということは、対象者二十五万人とおっしゃる割には特定はできない。では、どうやってこれを払うんですか、払うべき年金。私のところにも、これはいっぱい来ていますよ。時効で二百万円、私、戻ってくるんですか、四百九十万円戻ってくるんですかと、いっぱいこれは手紙が来ているんですが、これはいつになったら、柳澤大臣、それを特定できるんですか。

 それで、私の知り合いの方も、いつか年金記録が見つかるかもしれないけれども、もうそれまでは長生きできない、見つかる前に亡くなってしまうかもしれないということを、私の知り合いの被害者の方もおっしゃっておられました。これは、特定はいつまでにされるんですか。これは非常に重要ですよ。亡くなってしまわれたら、これはだめですからね。いかがですか、柳澤大臣。

柳澤国務大臣 具体的には、氏名、生年月日、住所等があらかじめ記載されました請求書を対象となる方に計画的に送付いたしまして、郵送等によって御返送いただくことによりまして、対象となる方の利便に資する仕組みを検討いたしております。できる限り早い時期に開始できるよう、これはもう機械で、コンピューターの中で調べることができますので、そういうことで検討を進めてまいる所存でございます。

 もっと、一刻も早く、社会保険事務所を訪問してでも回復措置を受けたいという方は、施行の日から社会保険事務所において申し出を受け付けて早急に優先処理をすることになろう、このように考えております。

山井委員 そういう申請主義がだめだということに、この間の議論でなったわけでしょう。法律はつくったのに対象者がわからない、いつまでに対象者も、時効で二百万とか四百万を払うべき人もわからない。それではだめでしょう。

 例えば、私どものところに来ているこのはがきでも、昭和三十七年生まれですから私と同い年の方ですが、大学の二年間の保険料が、払ったはずなのに未納になっているということで、ここに納付記録も送られてきました。それで、地元の市役所に行ったら、市役所は、平成九年に年金は電算化されたため、過去の手書き台帳類はすべて破棄されているので、いかなる調査も不可能であると回答があったと言っているわけですね。考えられるのは、電算化の時点での投入データの投入の漏れであったのではないかと思われると。つまり、手書き台帳が処分されれば全く確認の道がなくなる、したがって救済の道は断たれるというふうに書かれています。これは、台帳がなくてコンピューターの記録にも入っていない、そういう問題も出てきているわけです。

 また、去年まで社会保険事務局にお勤めであった方からも来ております。

 自分の経験でいうと、国民年金の記録の場合、あろうことか、年金の納付記録の欠如しているものが幾つか存在します、また、付加納付の月数がコンピューターの方が少ないものや、果ては、台帳上には納付記録があるのにコンピューターの記録には納付記録がなかったなどというものもありましたと。また、厚生年金の記録の場合、戦災により消失しているものや、水害等により中身がにじんで見えなくなっているもの等、完全に資料として役立たなくなっているものもあります。

 そこで大臣、こういう現場からの報告で、やはり台帳とコンピューターの記録がこれはかなり食い違っているのではないかということが言われているわけですね。

 そこで最初の要望に戻るんですが、だからこそこの三千件のサンプル調査の結果を早急に出さないと、五千万件の名寄せというものもその前提が崩れてしまうと思うんですが、大臣、いかがでしょうか。

柳澤国務大臣 ですから、この五千万件については、二千八百八十と二千百二十とに分けまして、コンピューター上のオンライン記録との突合をやる。他方でまた、このオンラインの記録と、今委員も御指摘になられたような、いろいろ、手書きの台帳であるとか、あるいはそれを写真に撮ったマイクロフィルムであるとかというようなものの突合というか、そういうことの調査も行うということを申し上げて、できるだけ国民の年金の記録が正しいものになるということを実現しようというふうに申し上げているところでございます。

山井委員 先ほど、二十五万人の対象者の名前なりは全く把握していないということですが、では、そのうちお亡くなりになられた方が何人ぐらいおられるかということも全くわからないんですか、時効で本来もらえるべき年金がもらえなかった方で。柳澤大臣、いかがですか。

柳澤国務大臣 二十五万人の推計というのは、委員も理事としてお聞き取りいただいたかと思いますけれども、最近における二十二万人くらいの累積の裁定、修正、訂正という事跡から、一年に三万七千件程度があるということから推計したものでございまして、そのうち死亡者の数はどのくらいか、それはわかるかと言われても、これは片っ方は全く計算上のものでございますので、そのうちというようなことにはなり得ません。

 したがって、私どもは、そうではなくて、今度コンピューターの中で時効消滅したケースというものを何らかのプログラムによりまして抽出して、そしてこれに対して対処をしていこう。それから、亡くなられた方については、遺族年金ということに結びついている方については、その遺族年金の基礎になった年金記録というものを再現して、その遺族年金の支給を受けている方にそのことをお知らせしよう、こういうような取り組みをいたそうとしているところでございます。

山井委員 ということは、申請をした人は先ほど優先的にということをおっしゃいましたが、これは本人が気づかなかったりしたら、時効になった人でもらうべき年金がもらえないというケースもあるわけで、ということは、二十五万人が対象者とおっしゃっていますが、この時効撤廃法案でその時効分の年金を受け取れる人は、本当に受け取れるのは五万人なのか十万人なのか十五万人なのか、はたまた三万人なのか、要はわからないということですか、大臣。

柳澤国務大臣 もらえる方を推計したのが二十五万人ということでございます。そして、この二十五万人と推計したということでございます。そういうことについては、コンピューターでプログラムをつくりまして時効消滅で裁定をされたということを抽出いたしまして、その資料をただいたずらに待っているというのではなくて、その方にこういうことになりましたということでお送り申し上げるわけでございます。そして、それをまた郵送で返戻していただいて、それで確認をこちらができますのでそれでお支払いをする、こういうことでございます。

 先ほど申した申し出というのは、それよりも、そんなに待っていられないから自分の方で申し出て早く受給したいという方のケースについて申し上げたということでございます。

山井委員 今長々と答弁されましたが、要は、二十五万人の対象者が全員もらえるのか、五万人なのか十万人なのかわからないということですね。

 それでは、ちょっと最賃の話をしたいんですが、武見副大臣、地域別最低賃金の不払いに係る罰金額が五十万円に引き上げられましたが、これは労働者一人当たりに対する罰金額ですか、武見副大臣。

武見副大臣 御指摘のとおりでございます。

山井委員 特定最低賃金については今回の最賃法の罰則の適用ではないが、これはなぜですか。どのように労働者の保護を図るんですか。

武見副大臣 最低賃金の一義的な役割ですね。

 これは、すべての労働者について賃金の最低限を保障するセーフティーネットということでございます。その役割は、地域別の最低賃金が果たすべきものであるというふうに私どもは考えておりまして、あくまでも一番基本的なセーフティーネット、これは地域別の最低賃金という確認をまずしておきたいと思います。

 このため、今般の見直しにおきましては、地域別最低賃金について各地域ごとに決定することを義務づけるとともに、労働契約の内容を規制する強行的、直律的効力を付与した上で、地域別最低賃金額以上の賃金を支払わなかった場合には最低賃金法の罰則を科す、このことによってこの履行を確保するということで五十万円ということが決められてきているわけです。

 他方で、一定の事業または職業に適用される特定最低賃金については、関係労使のイニシアチブにより設定をされており、企業内における賃金水準を設定する際の労使の取り組みを補完して、公正な賃金設定に資するものとしてセーフティーネットとは別の役割を果たすというふうに、私どもはこちらについては考えているわけです。その不払いにつきましては最低賃金法の罰則は適用しないというふうにそこで考えました。

 ただ、他方で、特定最低賃金不払い、これは賃金の全額払い違反となることで、実際、賃金の全額払い違反に係る罰則として上限で三十万円、それが適用されるということになりますので、こういった観点からの労働者の保護というものはきちんと行われていると考えます。

山井委員 また大臣に質問を戻りますが、一年間で五千万件の照合をするということですが、工程表をお出しいただきたい。そして、予算と人手はどうかということを御答弁ください。

柳澤国務大臣 先ほども申し上げましたことでございますが、繰り返しになりますが、今後一年間でプログラムを開発しまして、年金受給者及び被保険者の記録と五千万件の記録を名寄せを実施する、こういうことでございます。

 その結果を受けまして、まず、年金受給者で同一人の可能性のある方には、平成二十年六月から八月まで三月をかけまして、その旨、つまり、名寄せの結果、ほかに年金の記号番号をお持ちである可能性がございますという旨と、また御本人の加入履歴をお知らせする。それから、被保険者で同一人の可能性のある方には、九月からその旨と御本人の年金加入履歴をお知らせして年金記録を確認していただく。それからまた、名寄せによって一致するものが見出せなかった年金受給者に対しましても、九月から御本人の年金加入履歴をお知らせし、年金記録を確認していただく、こういうことでございまして、そのことによって私どもとしては記録の統合が進められるものと考えております。

櫻田委員長 既に持ち時間が経過しておりますので、質疑を終了してください。

山井委員 はい。以上で終わります。

 ありがとうございました。

櫻田委員長 以上をもちまして山井和則君の質疑を終了いたします。

 次に、園田康博君。

園田(康)委員 民主党の園田康博でございます。

 引き続きまして、労働契約法、労働基準法並びに最低賃金法の改正案ということで職権で立てられているわけでありまして、私どもはこの審議の持たれ方に対しまして大変抗議を申し上げたいというふうに思っております。

 先々週からこの委員会も大変混乱を来していたところでございますので、本日は、私自身は、怒ったり泣いたりわめいたり騒いだりというような形ではなくて、事実関係をしっかりと国民の皆様方にお伝えしていかなければいけないという思いでこの場に立たせていただいているということをぜひ御理解いただきたいというふうに思っております。

 また、先ほど来、さまざまな形で何か委員からやじが飛んでいるわけでありますけれども、最低賃金法であるとか、あるいは労働基準法の改正もそうでありますし、労働契約というものは、雇用、あるいは労働者がこれから生計を立てていく上にこの内容をしっかりと整えていかなければいけない。その上で、国民生活の算定の基準となるといいますか、それをきちっと明らかにしていかなければいけないであろうということで、大臣も御理解をいただけるというふうに思っておりますけれども、やはりこの年金の問題というものは避けて通れない問題であろう。

 とりわけ、先週から、国民の皆さんに、先ほどの審議でもそうですけれども、誤解がまだまだある、あるいはきちっと伝わっていない部分がありますので、その点はやはり、私どももそれに努めていかなければいけないというふうに思っておりますけれども、正確にお伝えをいただきたいなというふうに思っておる次第でございます。

 では、後ほど、成長力底上げ戦略推進円卓会議についての内容については少しお伺いをするとして、それに向かいます間の、消えた年金問題ということに関しての御質問をさせていただきます。

 先ほど来、長妻委員やあるいは山井委員から、消えた年金、この消えた年金という表現が、自民党さんと私ども、あるいは大臣も含めて厚生労働省、社会保険庁の認識がまだ少し違うというふうに、大臣もそのように御答弁をされておられるわけでありますけれども、ちょっとこの質問に入る前に大臣に一つ確認をさせていただきます。

 厚生労働省あるいは社会保険庁に、裏金、いわゆるプール、不正資金というものの存在、これがあるかないか、あるいはそれに対する何か調査を大臣が命じたことはあるかどうか、まずこのことだけお答えをいただきたいと思います。

柳澤国務大臣 私は、昨年九月二十六日に就任をいたしましたが、そのような疑いを持つような事実に出くわしておりませんで、したがいまして、そういったことの調査を格別指示したということはございません。

園田(康)委員 はい、わかりました。

 そういった事実に直面をしていないということでしょうから、そういう調査をするということにはなっていないということであろうというふうに思っております。

 それで、先ほど、一昨日、国民の皆様に今回の年金の問題についておわびを申し上げたという事実はお話しになられましたし、昨日の参議院の厚生労働委員会の中でも、大臣は何度か御自身のお言葉で、今回の一連の不祥事に関する謝罪の言葉と、それから、これからこの問題の解決に向けてのお言葉を述べられていたというふうに思っております。

 残念ながら、まだこの衆議院の厚生労働委員会では、午前中どこかで大臣からそのようなお言葉があるのかなというふうに思っておったんですが、先ほど、そういう事実があったという御報告のようなお言葉は述べられたわけでありますけれども、改めてこの衆議院の厚生労働委員会において、きょうはマスコミの皆さん方もいらっしゃるわけでありますけれども、今回の一連の責任の所在も含めて、大臣はどのようにお考えになられていらっしゃるのか、お答えをいただければなというふうに思っています。

柳澤国務大臣 今回の年金の記録について、もろもろの問題が指摘をされるような事態になりまして、年金記録を含めて、年金の制度、さらには年金の制度を事業として運営する、そういう役所の責任者として、私は国民の皆さんに大変申しわけないというふうに今思っておりまして、その点、皆さんに心配をおかけしていることに対して心からおわびを申し上げたい、このように考えております。

園田(康)委員 本来ならば、私は、一番最初に大臣の危機管理のあり方が問われる状況ではないのかなというふうに思っているんですが、事実関係が少しずつ判明をしてきた段階で、強行採決という話もいろいろありましたけれども、支持率云々かんぬんの話で、そこから謝罪をされるということではなくて、この事実関係の大きさというものにはやはり当初から気づいていただきたかったなというふうに思っておるんですね。

 実は、先ほど裏金問題について大臣がどのように感じておられるかということをお尋ね申し上げたのは、私は岐阜県の出身でございますけれども、昨年の岐阜県庁の不正資金問題、いわゆる裏金問題でございます。恐らく大臣もこの問題についてはどこかで見ていただいたというふうに思っておるところでございますけれども、あの岐阜県庁の不正資金問題について、大臣、どのように見ておられたか、もし御所見があればお聞かせをいただきたいなというふうに思っております。

 もう少し詳しく話をしますと、昨年のたしか七月の五日に、岐阜県議会の開会の冒頭で、地元の岐阜新聞という新聞がありまして、そこに、当初は四億円か六億円か、県庁の中で公金の裏金があるのではないか、そういうお金がプールされているというのが朝刊に載りまして、それからいろいろ古田県知事も精力的にこの問題に取り組まれ、徹底的に調査をすると。そして、調査の段階においても、逐一その内容を県民の皆さんに御報告すると。最終的には第三者委員会をつくって、そしてそれは内部とそれから外部と二つの第三者委員会をつくって内部的な調査を徹底的に行った。そして、それだけでは飽き足らず、外部的な第三者委員会をつくって徹底的に調査を行った。

 その結果、平成四年までさかのぼって、それ以上はどうやらさかのぼれなかったわけでありますが、まず総額十七億円余りの不正資金、いわゆる裏金が出てきた。そして、それに対する利子をつけて十九億円、いわば全額を、これは県民の皆さんの税金、公金でありますので、これはOBの職員であるとかそういった皆さんも含めて、一円たりとも無駄にさせない、これを全部返還させて、そしてこれから県政の信頼回復のためにそのお金を使わせていただきますという宣言を幾つかされていらっしゃる、その取り組みをされていらっしゃるのが今の岐阜県庁の体制であるということでありますけれども、この一連の流れを受けて、大臣はどのようにお考えになられたでしょうか。

柳澤国務大臣 プール金ということが御指摘の事案の内容かと思いますけれども、公金をプールして、いわば公用的なものもあるかもしれませんけれども、公の予算にのらないような私的な面も含めて、そういったものに費消をするというような事案かと思います。

 これについては、それぞれの当事者が強く反省をし、またそうした自己の利益に還元させた分については弁済をするなりして、その補いをとったということでありまして、こうしたいわば不祥事というものは本当に遺憾千万なことだと考えます。

    〔委員長退席、吉野委員長代理着席〕

園田(康)委員 それで、その際に、ちょっと大臣、これは、私から、御提案ではありませんけれども、岐阜県庁の古田知事が、県民の皆さんの信頼を失墜させてしまったというところで、どういう姿勢で取り組んだかということを一つ御披瀝させていただきたいと思います。

 これは岐阜県庁のホームページにもありますので、ぜひお時間があれば、報告書は途中の段階で、全部で十七ページありますし、これは経緯から、なぜそのようなプール金が発生し、そしてどういうものに使ったか、あるいは、中にはお金を、公金を燃やしてしまった、そして段ボール箱で一緒に捨ててしまったという事例も、それもつまびらかに、もう厳密に全部公開をされております。

 ここの一文でいきますと、「岐阜県政再生のために」というふうに題しまして、今般の不正資金問題は岐阜県政史上かつてない規模の重大かつ深刻な不祥事である。県民のために働くべき県職員みずからが、県政に対する信頼を失墜させ、岐阜の名を大きく傷つけたことは、容易に取り返しのつかない事態である。このことに対する県民、国民の憤りは激しく、これまでに七千件を超える激しいおしかりをいただいた。職員一同、組織全体の問題として深く反省し、心よりおわびを申し上げなければならない。まずおわびがございます。

 そして、経緯が少し書いてありまして、これらを通じて、長年にわたり県組織ほぼ全体で不正資金づくりが行われ、県民の血税を本来の目的を逸脱して処理してきたという事実が明らかになった。また、当時の幹部の誤った判断から、今日までの約十年間、調査、解明をすることができず、事態は深刻化した。その背景には、県職員の公金意識の著しい欠如と、情報公開をちゅうちょし、不都合なことを隠ぺいしようとする組織の体質にかかわる重大かつ深刻な問題があることも浮き彫りになった。しかし、このような深刻な事態の中にあっても、我々には県民生活の向上を図り、県民の幸せを実現していくという使命がある。失われた県民の信頼を取り戻す道は長く険しいが、職員一人一人が深い反省の上に立って、県民の奉仕者としてのみずからの立場を再認識し、歯を食いしばって、一刻も早い岐阜県政の再生を果たしていかなければならない。このような宣言を知事はされておられたわけでございます。

 したがって、こういう姿勢を、私はまず大臣に、この問題に対する取り組みというものを求めさせていただきたいというふうに思う次第でございます。

 後ほど、これに関連して、どのようにこの問題の解決に至ったかというのを参考程度に申し上げながら、次の質問に入らせていただきたいというふうに思っております。

 先ほどの長妻委員あるいは山井委員の御質疑の中にもありましたけれども、自民党さんがやっておられたことに対するコメントというのは私は求めはしません。しかしながら、事実は事実として、消えた年金という言葉がどうだということであるならば、ほかの道も探るつもりもないわけではありませんが、まず、消えた年金として、昨年から実施されております年金記録相談の特別強化体制、この質疑の中でも何回か出てまいりましたけれども、まず、本人が領収書を持っていたために年金記録が訂正された件数、これについては、大臣、何件と把握されておられたでしょうか。

柳澤国務大臣 全体で八十四件ございました。

園田(康)委員 そうですね。

 この八十四件というものはもう既に厚生労働省もお認めをいただいていたわけでありますけれども、そして、この八十四件のうち、社会保険庁または市町村の資料に納付記録があった件数は何件だったでしょうか。

    〔吉野委員長代理退席、委員長着席〕

柳澤国務大臣 五十四件のうち二十九件だったか……(園田(康)委員「八十四件です」と呼ぶ)失礼しました。八十四件のうち二十九件でございまして、五十五件が全く我が方に、市町村を含めて、記録がなかったということでございます。

園田(康)委員 そうですね。

 大臣が今おっしゃっていただいたように、八十四件のうち二十九件は社会保険庁あるいは市町村に記録が残っていた、だからこそ訂正が可能になったということでありましたけれども、では、五十五件というものは、これは社会保険庁並びに市町村にも記録がなかったわけですね。これが、訂正の記録がなされたというものは、これはもう何度もこの委員会でも確認をさせていただいておりますけれども、本人が領収書を持っていた、あるいは何らかの手帳の検印があった、本人が記録があったからこそ記録の訂正に結びついたということで理解をしておるんですけれども、それでよろしいでしょうか。

柳澤国務大臣 そのとおりでございます。

園田(康)委員 そうしますと、少なくともこの五十五件に関しましては社会保険庁あるいは市町村に記録がなかったわけですね、記録がない。だけれども、御本人が払って、その領収書は残っていた。だからこそ、証明ができたからこそその訂正ができたということだけれども、もしこの五十五人の方も領収書がなかったら、大臣、どのようになっていたでしょうか。

柳澤国務大臣 これは当方にも記録がない、それから国民の皆様方の方にも記録がないということで、双方の主張が折り合いがつかないという事態に立ち至るというふうに思います。

園田(康)委員 そうしますと、その場合に、もしこの方々の領収書がなければ記録の裁定ができなかったわけですから、本人には支払われなかったということになりますね。

 したがって、これはいわば消えているというふうに、どこかにひょっとしたら、もっとほかに捜せばあるかもしれませんけれども、調べた結果、今の段階では社会保険庁にもない、それから市町村の台帳の中も当たってみたけれどもなかったというならば、消えてしまっている、消えたではなくて、消えてしまっているですね。大臣、この表現はどうでしょうか。

柳澤国務大臣 これは国民の皆さんの側にはちゃんとした動かぬ証拠があるわけですけれども、裁定をする側の社会保険庁にはその記録がなかった、ない、失われているということになると思います。

園田(康)委員 先ほど山井委員も消えているではないですかということを申し上げたわけですけれども、こういう事実があるということは、この厚生労働委員会の委員の皆様方はまずしっかりと御認識をいただきたい。

 消えたという表現が自民党の皆さんからすれば違うということであるならば、今消えてしまったという表現をさせていただきたいというふうに思いますが、もう一つ、一歩踏み込んで、国民の立場に立っていけば、消された年金という形になってしまうんですよ。自分は払って、自分は領収書を持っているんだけれども、社会保険庁の中に記録が残っていない、どこかに行ってしまったわけですから、社会保険庁によって消されてしまった年金なんですよ。つまり、消された年金バイ社会保険庁なんですよ、国民からすれば。(発言する者あり)猫ばば、そうですね、お金だけ払っているわけですけれども。記録が消されたということですから、このことは正確にやはり御認識をしていただく必要があるのではないのか。

 そして、その相談の特別強化体制の中で、私は保険料を納付した、でも、領収書、そういったものがないという方々が二万六百三十五人いらっしゃったわけでありますけれども、この方々はやはり記録の訂正がこの時点でも行われていないということでありますね。この点は、大臣、もう一度確認をさせてください。

柳澤国務大臣 二万六百三十五人の方については、一部記録が判明した方が三千百九十七名いらっしゃいますけれども、あとの一万七千四百三十八名の方には記録がないという事態になっております。

園田(康)委員 その点については、先ほど来大臣がおっしゃっておられるように、これから第三者機関等々、その第三者機関の内容についても私どもは疑義があるというふうに思っておりますけれども、その方々をやはりしっかりと、社会保険庁そのものあるいは厚生労働省として、逆に、あなたはこういう形で払っていたのではないでしょうかという記録の突合というものは、いろいろな意味でやっていかなければいけない。

 先ほどの長妻委員の議論の中で、新たに一千四百万件ほど、まだ五千万件の中に入っていない記録なども出てきている。この一千四百三十万件ですか、このうち何件なのかはまだこれから調査をしていかなければいけないということでありますけれども、このことはきちっと、何万件であるのか、そして、そのデータがどういう形で保存されているのかということは一刻も早く調査をしなければいけない。

 先ほど、自治体の中で手書き台帳をまだ保存しているところがあるのではないかという話がございました。

 そこでまず、私がいただいていたのは、昭和六十年、一九八五年九月三日に課長名で通知が行われたわけでありますけれども、この通知を受けた際に、全国の市区町村で市町村合併があって、千八百三十五自治体が調査対象として出てきたわけでありますが、これを破棄した自治体の数というものは幾つあったかということに対して、私が理解をしているのは二百八十四自治体だというふうに伺っているんですが、この数に関しては、大臣、どのように今御認識されていらっしゃいますか。

柳澤国務大臣 これにつきましては、今委員が御指摘になられたとおり、全国の市町村が今千八百三十五自治体あるということで、この自治体に対していわば簡易な調査を行わせていただきました。そのうち全体の八五%に当たる千五百五十一の市町村におきまして資料が保管されている。残りの二百八十四の市町村においては保管していないという回答をとりあえずいただいたわけでございます。

 しかしながら、千五百五十一の市町村につきましても、これは合併してなった市町村でございますので、その構成をした各市町村についてすべて、例えば二つの町が一緒になって市になった場合に、その二つの町がすべて保存をしているということで保存をしているというお答えがあったのか、そのうちの一つが保存をしていたので保存をしているというお答えになったのか、そのあたりは、実はこの調査の結果では必ずしもつまびらかでないわけでございます。

 そこで、私どもといたしましては、公文による正式な回答をより詳細に求めるということを目下いたしておるところでございます。

園田(康)委員 そうしますと、その公文書による通知でありますけれども、期限はいつまでになっているんでしょうか。

柳澤国務大臣 一応、先月、五月末が期限ということになっておるところでございます。

園田(康)委員 そうしますと、どうでしょうか、もう数は出ているんじゃないでしょうか。

柳澤国務大臣 御協力を求めているわけですけれども、まだ未到着のところもあるということで、集計もできておりません。

園田(康)委員 そうしますと、今、事務方の方からでもいいですけれども、済みません、きょうは参考人の登録をしておりませんから、今現在で幾つ回答が返ってきているんでしょうか。

柳澤国務大臣 大変恐縮ですけれども、今電話で問い合わせてわかるかどうかですけれども、手持ちで今の数を申し上げる準備ができておりません。

園田(康)委員 昨日、私は一応質問通告をさせていただいておりまして、破棄した自治体の数はいかん、そして、その公文書をやっているというのは、先ほど長妻委員の質疑の中で聞かせていただいたんですが、合併後の自治体の中で千五百五十一自治体から、台帳が残っているという簡易調査による回答があったということでありますけれども、そうしますと、では、これは公文書による、今どういう形で残っているかというのと、それから、何人のデータであるのかというところまで問いかけをしているものなんでしょうか。私は、その質問をきょうさせていただく予定だったんですが、どうでしょうか。

柳澤国務大臣 今回の調査につきましては、被保険者数を含む国民年金被保険者名簿等の保管状況の詳細について回答を求めているということでございます。

園田(康)委員 五月末で回答が何件来ているのかということは恐らく後ほど伝えていただけるんだろうというふうに思っておりますけれども、だったら、幾つかの自治体から最終的に、では、ここだ、これだけの数がまだ残っている、それで、何件、何人分の件数の台帳が残っているという形で明らかになるのはそんなに遠くないというふうに、私は伺わせていただけるのではないかなというふうに思うんです。

 では、それが例えば一週間以内にわかったということであるならば、大臣、それをまた当委員会にも御提示していただけるということはお約束していただきたいと思います。

柳澤国務大臣 数ということで御理解させていただいて、そのような数字を提出させていただきたい、このように……(園田(康)委員「人数も」と呼ぶ)人数、それから市町村の数ということで、そういう理解のもとで数は提出させていただきます。

園田(康)委員 ただし、どこの自治体かというところまで、実は先ほどの議論の中で要望もさせていただいておりますので、それもあわせて私は要望をさせていただきたいと思っております。

 委員長、そのことも後ほど理事会でお計らいをいただきたいなというふうに思いますが、いかがでしょうか。

櫻田委員長 後刻理事会で協議させていただきます。

園田(康)委員 それと、今回の国民年金被保険者台帳の取り扱いについてという通知、六十年の九月の三日に行われております。この際、台帳の破棄というふうな形で、マイクロフィルム化が完了した特殊台帳及び記録の突合、被保険者ファイルの補正が完了した特殊台帳を除く台帳については、破棄することというふうに通知が出されたわけでありますけれども、この通知が出されたときの社会保険庁の長官はどなたでしょうか。

柳澤国務大臣 正木馨氏でございます。

園田(康)委員 正木馨さんですね。今現在、財団法人復光会というのがあって、これの理事長をされておられるということですが、間違いないでしょうか。

柳澤国務大臣 財団法人復光会の理事長をなさっております。

園田(康)委員 この復光会の前職はどこになるでしょうか。

柳澤国務大臣 社会保険健康事業財団理事長でいらっしゃいます。

園田(康)委員 九六年から社会保険健康事業財団理事長に御就任をされておられますが、この前の職はどこでしょうか。

柳澤国務大臣 社会保険庁長官を去った後の履歴を申させていただきたいと思いますが、最初、全国社会保険協会連合会副理事長、次が社会保険診療報酬支払基金理事長、それから医薬品副作用被害救済・研究振興基金理事長、それから同調査機構理事長で、先ほどの社会保険健康事業財団につながっているということでございます。

園田(康)委員 天下りとわたりの問題は、さらにまた後ほどお話をさせていただきたいと思います。

 その前に、問題の所在を明らかにしたいと思います。

 この六十年の九月の三日に出された通知というものは、特殊台帳を除いて破棄することというふうに出されたわけでありますけれども、したがって、ここでこの通知がなければ、そのまま自治体もこの台帳はすべて残していたと私は思うんですが、大臣は、そのことについてはいかがお考えでしょうか。

柳澤国務大臣 委員、これは社会保険事務所に対するものでございまして、市町村あてではありませんので、ちょっと話の筋がそうはならないのではないか、このように思います。

園田(康)委員 そうしますと、社会保険事務所に対して破棄することというふうにしてしまっているわけで、それがひょっとしたら、それによって破棄された場合もあるわけですね。違いますか。

 済みません、大臣。これはもう一度確認をさせていただきます。

 これは社会保険事務所に対してのみ行われた通知なんでしょうか。「昭和六十年九月三日庁業発第三十一号 都道府県民生主管部(局)国民年金主管課(部)長あて社会保険庁年金保険部業務第一課長・業務第二課長通知」となっていますけれども、社会保険事務所のみに行われた通知ですか。

柳澤国務大臣 これは当時、地方事務官制をとっている組織ということでございまして、社会保険事務所がいわば県の下部機関というような位置づけになっておりまして、そこに発出された文書でございます。

 特殊台帳以外の台帳、紙の台帳を廃棄する、こういう趣旨の通達であるかと思います。

園田(康)委員 そうしますと、そこから委任事務という形で市町村に委任されていたのではないんですか。そういうわけではない。

柳澤国務大臣 そうではなくて、今、市町村で保管されている書類について照会をいたしておりますが、これは先ほど来御答弁申し上げておりますように、国民年金のいわば名簿というものでございまして、これは市町村が社会保険料の収納事務を行うに当たって、当面の事務処理のための書類ということで管理、保存しているものでございまして、それとこの台帳とは別途のものということでございます。

園田(康)委員 そうしますと、この破棄された台帳に関しては、社会保険事務所は、このとおりなされたというふうに理解をしてよろしいんでしょうか。

柳澤国務大臣 これは、なお精査を要するところでして、廃棄するという指示ですけれども、いろいろな理由で、必ずしもそのとおりしなかったところもあるということもあり得るというふうに私どもは考えておりまして、その記録の保存というのは、今や非常に大事になっているものですから、そういうケースであれば、それを十分な注意を払って保存するようにというようなことで今対処をしているということでございます。

園田(康)委員 そうしますと、この指示がなければ、あわよくばというか、本来ならば、ずっと社会保険事務所にもこの記録の台帳が残っていた可能性はあるわけですね、この通知がなければ。そうですね。

 そうすると、さらに、今のコンピューターとの突合なんかも、この中から一つ一つ探していけば、ひょっとしたら、先ほどの消されてしまった年金との整合性がとれて、御本人が領収書を持っている、そして社会保険庁の中にもそういう記録がこの中にあるということで、突合される可能性だって高かったわけですね。それで、ここで破棄されてしまったかどうかというのを今調査されていらっしゃるんでしょうか。

柳澤国務大臣 五十五件の内訳ということになるわけですけれども、五十五件のうち、社会保険事務所の台帳が廃棄されたということと対応しているという件数が何件であるかということは、今つまびらかにいたしておりません。

園田(康)委員 ごめんなさい。私が質問したかったのは、この全国の三百十二の社会保険事務所がありますね。これは、社会保険事務所に対して通知が行われた、破棄をせよというふうに通知をしたわけですけれども、これによって破棄しなかったかどうか、あるいは残っているかもしれない、この通知に従わずして社会保険事務所にひょっとしたら残っているかもしれない、そういう調査はされていらっしゃらないんでしょうか。

柳澤国務大臣 いわば非公式に保存されている台帳というものに当たったということはなかったようでございまして、したがって、今この保存されている、正規に保有されている台帳を調査をかけておりまして、その中で、五十五件の中で見つかるものがある可能性はないとは言えない、こういう状況になっているということでございます。

園田(康)委員 そうすると、五十五件以外にもひょっとしたら、管理もずさんだったんですけれども、その指示系統に対して、その指示を守らなかったということですね、残っているということは、逆に。すなわち、言うことを聞くときと聞かないときとあったようでございますけれども、もしこれが幸い、言うことを聞かずしてこの通知を無視して残していた場合、それは国民にとってみれば、この台帳がひょっとしたら残っていて、復元される可能性だって出てくるわけですから、これはぜひもう一度きちっと、全国の社会保険事務所、調査をやはりこれもするべきであろうというふうに私は申し上げておきたいと思うわけであります。

 さて、そのときに破棄せよという通知をすること自体が私は問題であるというふうに思っているわけです。すなわち、こういう事態にならなければこの台帳が残っていて、そして、時間はかかるかもしれないけれども、ちゃんと完全な形の台帳という形で国民の皆さんに御提示ができたはずだったんだろうなというふうに思うわけなんですね。

 したがって、このときの管理監督責任というのは、やはり私は、その当時の職員、OBの職員も含めて、実際にさまざまな形で携わった方々というのは責任をとるべきではないのかなという思いは持っております。

 なぜこういうことを申し上げるかというと、一番最初に岐阜県庁の話を申し上げました。古田知事が何をその際にやったか、県民の皆さんの信頼を回復するためにはどういう手法をとってこの問題に対処したかというのを実例を挙げて申し上げます。

 まず処分です。組織責任にかかわる処分とそれから個人責任にかかわる処分、これは刑事告発も含めてです。この二つの種類に分けて処分を行っておられます。ですけれども、例えば、公金をプール金として裏金をつくって、そしてそれで個人的な飲み食いに使ってしまった、そういった部分に関しては、これは横領罪が適用されるわけですから、当然刑事告発が今なされていますし、裁判の司法上の関係の中で扱われている事例であります。それは個人の責任にかかわる処分という形でありますけれども、古田知事が一番こだわっていらっしゃったのは、組織責任にかかわる処分というものでありました。

 一、今般の不正資金問題は、公金意識の欠如や組織の隠ぺい体質に根差したものであり、これらは今回問題が発覚するまで変わることなく、職員組合への集約であるとか個人的な保管、処理などの形で隠ぺいが続けられていた。ここからが重要です。二、さらに、昨年政策総点検を行ったにもかかわらず、不正資金の存在が内部から明らかにされるような組織、体制づくりがなされていなかったことについて、現在の知事以下の管理職員の責任は重い、こう結論づけています。三、以上の組織責任を明らかにし、反省を促すとともに、厳しく戒めるため、別紙のとおり、知事以下すべての管理職員について、処分を行う。

 岐阜県庁の役人の中で処分を受けた総数は四千四百二十一名、実に全職員の五七%にも上る処分を下しました。訓告処分から、さまざまな処分の形態があったわけでありますけれども、全職員、まず現役の職員に対する処分を行いました。

 そしてその中で、この知事はすごい責任感のある方だなというふうに私は拝見をさせていただいたんですが、先ほど申し上げた十七億円、そして利子もつけて返さなければいけないのは十九億円であります。そして、第三者委員会から指摘をされた額でありますけれども、知事みずから、自分の給料、減給処分として科しました。自分の給料の二分の一、これを一年間、総額約一千百万円です、一千百万円。まず自分の給料の減額、私が管理責任の最高責任者である、処分として、これは私が責任を負うものであるという形で、まず一千万円を、自分の給料の半額で責任をとって、県民の皆さんに対して責任を全うしたということがありました。そして、副知事以下はもう全員です。管理職の方々は減給十分の二であるとか十分の一であるとかいう形でやっておられます。

 そして問題は、過去に起きたさまざまな、その時々の部長や課長の組織の中で行われていたというものもありますし、あるいは中には、その部長が何も知らずに、課長以下が部長には告げずに、部長は来てまた移ったりとかいう形になりますから、部長は何も知らないけれども課長以下がそういう組織的なことをやっていたという事例もありました。でも、組織責任として、そこについた部長には、あなたが携わっていなくても、これは岐阜県庁全体の問題であるから、あなたもその責任の一端を担ってください、全職員に対してそのことを明言し、そして給料も含めて返還をさせる。

 これは、現役の職員が全体の額の約四割、そしてOBの職員に対しては、もう退職をされている方々にも、その約六割をOBの職員の皆さんで話し合っていただいて、そして県民の皆さんの信頼の回復のために皆さん方にも御協力いただけませんかという形でもってOBの方々にもその呼びかけをして、そして裏金の使われた部分、そこの部署のポストについていたということだけをもって返還させた。ほぼこれは全額が返ってきたそうであります。

 こういう処分のやり方があるんですが、今回の消えた年金、消された年金、宙に浮いた年金、いろいろ言葉はあるでしょうけれども、この不祥事について、歴代の社会保険庁の職員も含めて、長官も含めて、大臣は今、どのように責任やらその責任の所在を明らかにしようとされていらっしゃるでしょうか。

柳澤国務大臣 私ども、今回のことはもう随分古くからの経緯が積み重なった話でございますが、きのう私は、菅大臣にお会いをして、菅大臣のもとに検証委員会を設けていただくということでございましたので、私から、今回の問題はその全部についてぜひ検証していただくようにお願いをいたしたい、そして、そのいきさつ、それから判断の誤り、あるいは責任の所在というようなことをすべて明らかにしていただきたいということをお願い申し上げて、お忙しい大臣で、大変恐縮で、またもう一つ仕事がふえるということは大変かもしれませんが、くれぐれもよろしくお願いしますということでお願いを申し上げておきました。

 菅大臣におかれては、この検証委員会のメンバーの人選その他、今後精力的にこれに当たっていただきまして、できるだけ早期にこの委員会を発足させていただくように私も申しましたし、また期待もいたしておりまして、この問題の全容が早く明らかになって、それからまた、今委員が特に強調されている責任の所在というものも明らかにされることを私としてお願いしているところでございます。

園田(康)委員 そうしますと、この責任の所在という点においては、その当時の歴代の長官の方々に私はやはり参考人としてぜひ話をお聞かせいただきたいというふうに思うんです。

 特にこの正木さんに関しましては、現在も天下りを、いわゆるわたりという形で今でも復光会の理事長についておられるということでありますけれども、ぜひ私は、この元長官の方をこの委員会でもお呼びをいただきたいというふうに思うんですが、委員長、どのようにお計らいいただけますでしょうか。

櫻田委員長 後刻理事会で協議させていただきます。

園田(康)委員 今私が申し上げた、台帳の破棄について命じた、当時の長官、正木馨さんの話であります。

 同時に、その第三者委員会がずっと行われて、この責任の所在が一つ一つ克明に明らかになってきた、その時点で、またさらに、その当時の長官の任命責任あるいは管理監督責任というものを、一つ一つ、私はこの委員会でも取り上げさせていただきたいというふうに思うわけでございます。

 ちなみに、大臣、内閣委員会だったでしょうか、この正木さんの話ではありませんけれども、歴代の社会保険庁の天下り状況というものが出たわけでありますけれども、長官によっては退職金が六千万円に近い方というふうに伺っております。

 先ほどちょっと計算をしていただいているんですが、これは国家公務員等退職手当支給率というのがあって、昭和六十年当時の算出式で申し上げますと、これは正木さんがということではありません、これは一般論を申し上げているわけです。一般的に、六十歳を定年退職といたしまして三十八年間勤務した場合、これは、掛け率、支給率でいきますと、六十二・七ポイントになりまして、月額給料が九十一万もらっていらっしゃるんですか、九十一万一千円掛けることの六十二・七でいきますと、五千七百十一万円もの退職金が得られるというふうになるわけです。これが、オンライン化のときからずっとさかのぼっていきますと、お一人様約六千万円としますと、これまでに十九人になるわけでありまして、そうしますと、総額十一億円を超える額になるわけですね。これが当たっているかどうか、いずれ資料要求をさせていただきたいと思うんですが、どうでしょうか。

 私も昨日資料要求をさせていただきまして、一九八〇年代から今日に至るまでの社会保険庁長官の退官の年数と退職金の一覧、そして退職後の再就職の一覧、これは個別ごと、そして、その報酬額及びそれぞれの退職金、すなわち、天下った先で一体この方々は幾らもらっているのかということも、一つ一つ、私は問題にしていかなければいけないと思っております。昨日からずっとこの問題について、資料がもしあったら出してくれというふうに申し上げているんですが、残念ながら、これに関しては個人情報である、したがって、個人の、その当該の方の許可がないと出すことができないというふうにおっしゃっておられるわけです。

 これだけ国民の年金不信がかかわり、そして、その当時そこに携わっておられた長官の方々が、幾らもらって、今どういう形でわたりをして、そして、そこにおいても報酬を得ているのか。今回、この問題がなければ、そして、歴代の長官がしっかりとこの管理監督責任を果たしていれば、このような問題にはならなかった可能性もあるわけです。

 だからこそ、本来ならばもらえる年金が、実は、私の身内にも、きのう電話がかかってきまして、一回社会保険事務所に調べてもらったんですけれども、二カ月間足りないからだめだと言われたそうであります。もう一回詳しく調べるように、資料を取り寄せるように、もう一度、社会保険事務所の担当官の名前であるとか聞いておくようにというふうに言っておきましたけれども、その二カ月間あるいは四カ月間足りないだけで支給されなくなってしまった方々も多くいらっしゃるわけですね、大臣。

 その一方で、その当時の社会保険庁長官がしっかりと管理監督していればそのようなことにならなかったにもかかわらず、そういう事態を招いてしまった責任。そして、自分は六千万円にも及ぶ退職金をもらい、そして、さらにわたりとして、この正木さんに関しては五カ所渡り歩いている。そして、総額三億円という話も出ているようであります。

 その二つ前の方でいきますと、金田さんについても六カ所、やはりわたりをしていらっしゃる。その前の大和田さんについても六カ所。その前の山下さん、五カ所。その前の石野さんにおいてはやはり五カ所。一体、この方々は総額幾らいただいているんでしょうか。私はこの資料をすべて要求したいと思うんですが、大臣、どうでしょうか、出していただけますでしょうか。

柳澤国務大臣 そうした、本当に判断ミスがそれぞれの長官にあったかなかったか、こういう問題も、詳細に検証して明らかにしていく必要がある、このように私は思っておりまして、その意味で、検証委員会の設置、発足というものを迅速に菅大臣のもとで行っていただいて、そうしたことについてすべて明らかにしていくように、私としてもお願いしてまいりたい、このように考えます。

園田(康)委員 恐らく今の私の質問に対して直接お答えをしていただいたものではないというふうに認識しておりますが、ぜひ委員長、このことを資料要求として、先ほど申し上げた記録すべてを提出するように、まず理事会でお諮りをいただきたいと思います。委員長、いかがでしょうか。

櫻田委員長 園田君に確認しますけれども、委員長にそれは要請しなければできないことですか。直接要求したらどうですか。

園田(康)委員 大臣が答えていただけないから、私は理事会を通じて、この衆議院の厚生労働委員会の総意でちゃんと調査をしてくださいと申し上げました。

櫻田委員長 後刻理事会で協議いたします。

園田(康)委員 ぜひ、第三者委員会も含めて、我々はこの問題を過去にさかのぼってしっかりと調査する必要があるということを申し上げておきたいというふうに思います。

 この問題、まだまだあるわけでありますが、あと三分、四分であります、最低賃金法の質問をさせていただきます。

 でも、まだこの最低賃金法の内容に入る以前の問題でありますので、この内容そのものにはきょうは触れるつもりはありません。ちゃんとした、正常な形の中の審議に基づいてこの最低賃金法の中身の審議をさせていただきたいんですが、その内容に入る前に、先般、三月の二十二日でありましたでしょうか、政府の成長力底上げ戦略推進円卓会議、これについての大臣の御感想を少し伺っておきたいというふうに思うわけですが、このときに、安倍総理が、三月十九日の参議院の予算委員会での我が党の質問に対しまして、円卓会議についてこのように述べておられます。

  最低賃金について申し上げれば、近年、最低賃金制度が言わば生活保護と比べてもある意味セーフティーネットとしての機能を十分に果たしていないと、こういう観点から見直しを行うことにいたしたわけでございます。

  そしてさらに、我々としては、この成長力底上げ戦略を進めていくことによって、将来、中小企業等々においても生産性を引き上げていくという中において、当然それに倣ってこの最低賃金も上がっていくような仕組みをつくっていきたいという中において、円卓会議をつくって、その議論を各地域における最低賃金の審議会における議論のこれは正にベースにしていきたいと、このように考えているところでございます。

というふうに総理はおっしゃっておられるわけでありますが、大臣、最低賃金は決定過程においてどのようになっていくんでしょうか。この円卓会議がベースになって、これに基づいてつくられるものなんでしょうか、制度として。どうでしょうか。

柳澤国務大臣 私は、最低賃金の決定というものは、これまでの最低賃金審議会、これは中央の審議会、地方の、両方ありますが、これを通じて決定されていく、それはある意味で、諮問に対する答申ですけれども、基本的にそれを尊重して、行政として決定をしていく、この仕組みは基本的にというか、全く変わらないというふうに御理解いただきたいと思います。

 しからば、この底上げ戦略推進円卓会議というのはどういう位置づけかというと、結局、そういうことで、最低賃金の要素として、もちろん生活費もありますけれども、事業主の支払い能力ということも一つの要素にございます。

 支払い能力というのは、結局どうして生まれてくるかといえば、これはやはり生産性の向上をすることによって支払い能力の向上というものも図れるという意味でございまして、ある意味で最低賃金を引き上げる環境を整備するというか、改善していくというか、そういうことの戦略あるいは施策というものを中長期的に考えていく、そういう機関であるというふうに私としては理解をしておりますし、また委員にもぜひそのように理解をしていただければ幸い、このように思っております。

園田(康)委員 今回の制度で、中央最賃審議会と地方最賃審議会の枠組みは変わらない。そして、屋上屋のようなこの円卓会議なるものが、私はそのような印象を受けているわけでありますけれども、しっかりとこういう政府全体の取り組み、中小企業の推進策というものもあわせて私は行う必要があるというふうに考えておりますので、そのことも含めて、屋上屋だけでやっていくのではなくて、ちゃんと実質的な地域の中身の実態を把握しながら、それぞれにおいて引き上げていくという方向で頑張っていただきたいというふうに思っております。

 そのことを指摘させていただきまして、質問を終わります。

櫻田委員長 次に、高橋千鶴子君。

高橋委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 きょうは最賃の質問をいたしますが、その前に、先ほど来、宙に浮いた年金記録の問題で、きょう一日だけでも問題がさらに次々と明らかになった、本当にどうなっているのかということなんです。

 社会保険事務所に今国民の相談が殺到している、本当に強い関心が示されております。そして、先ほどの質疑の中で、五千万件では済まないのではないか、その外にさらに宙に浮いた記録があるのではないか。あるいは、一年間で名寄せ完了という自民党のビラがどうやらごまかしではないか、こういうことまで判明をいたしました。大臣がこの場でできないと否定したことや、めどは言えないと言ったことを、総理が先に言ってしまった、やりますやりますと。後から大臣がそれにつじつまを合わせている。矛盾がそこに噴出するのは当然なんですね。これは内閣の体をなしていない、余りにも無責任ではないか、私は強く指摘をしたいと思うんです。

 この問題についての解決策については、衆議院で議論の途中でありました。途中であったにもかかわらず、強行採決で与党がふたをしたんです。ですから、私たちがこれまで積み上げてきたことと全然違うことがどんどん出てくる。これは衆議院の責任が問われてくるんです。だから、これをもう一度審議をしようと言っているのは当然ではないですか。

 きょういろいろ出された参考人要求、資料要求、そしてきちんと整理をしなければわからなくなりました。サンプル調査の結果と、政府の考える対策の全容をこの委員会で報告し、年金問題での集中審議を行うべきと考えますが、委員長にお願いいたします。

櫻田委員長 後刻理事会で協議させていただきます。

高橋委員 よろしくお願いいたします。必ず理事会で審議をしていただきたいと思います。

 そこで、最低賃金の問題でお話をいたしますが、最初に大臣に簡単な質問をいたします。

 今現在、最低賃金の全国平均額は六百七十円、月収に直すと十一万七千円何がし、年収で百四十一万五千円くらいになると思うんですけれども、この水準を低いと大臣はお考えでしょうか。ワーキングプアという言葉がございますが、まさしくこの最賃に張りついた労働者の実態、貧しいと考えていらっしゃいますか。見解を伺います。

柳澤国務大臣 今委員が御指摘になられましたように、現行の地域別最低賃金の全国加重平均額は六百七十三円でございます。したがいまして、これを一日八時間として二十二日間働くということで考えますと、十二万円足らずということになります。

 この具体的な水準は、委員も御承知のとおり、公労使三者構成の地方最低賃金審議会における地域の実情を踏まえた審議を経て決定されているものでございまして、そのこと自体については、私どもとして審議会の御意向を尊重して決定させていただいておるという立場で、このこと自体について云々することは、こうした枠組みの中では差し控えさせていただきたいと思います。

高橋委員 今、決め方の問題についてはこの後質問いたしますけれども、そこに逃げないでいただきたいんですね。これで暮らせると思っているのかということを、大臣の率直な認識を伺いたいと思うんです。数字の上の積み上げではなくて、実際として十二万足らずで暮らしていけるのかということなんです。そのことを本当にお答えをいただきたいと思います。

 〇五年一月七日の最賃制度のあり方に関する研究会に提出された資料、「最低賃金制度の意義・役割について」によれば、第一条、目的の解説の中で、労働条件の改善とは、労基法で言えば労働条件の向上という改善度合いの向上、これは現状より上回ることであって、水準が一定高くてもそれより上回れば向上と言う、しかし、改善とは現状が悪いことを前提としている、このように説明がされています。現状が悪いことが前提なんだということなんですね。

 同じ資料の中に、「ILO事務局ジェラルド・スタール「世界の最低賃金制度」による整理」の中で、最低賃金制度は「すべてのあるいはほとんどの労働者に、不当に低い賃金から保護する安全網を提供することによって、貧困の減少に適度に寄与する手段」と整理をされております。

 あれこれの要素の前に、現状は極めて低いんだ、これをまさしく改善するのだという立脚点に立つのかどうかが問われていると思います。もう一度お答えをお願いします。

柳澤国務大臣 最低賃金というのは、今委員がお述べになりましたように、労働者の最低限度の生活を保障する、そういうセーフティーネットという役割を果たすことを当然期待されておる制度でございます。

 そういうことで、今私が申し上げましたように、現在の水準というのは六百七十三円ということが全国加重平均額になっているわけでございますけれども、今回の改正においては、地域別最低賃金を決定する際に考慮すべき要素の一つである労働者の生計費について、生活保護に係る施策との整合性に配慮するということを明確にさせていただいておりまして、このことを踏まえて、私どもとしては、最低賃金額をぜひ引き上げの方向でそれぞれの審議会からの答申もいただけるように、そういうことを願って、こうした法律の改正案を提出させていただいておるということを御理解賜りたいと思います。

高橋委員 なかなか暮らしていけないということを大臣のお言葉では言えないのだろうと思うんですね。ただ、今お話しされたように、生活保護よりも低いような状態を改善しようという点では、極めて低いということの認識であったのかなと思います。

 確認をさせていただきます。それが違うというのであれば、後でまた答弁なさればいいかと思うんです。簡単なことでございます。最賃の決定者はだれかということです。

 第十条には、厚労大臣または都道府県労働局長はという主語になって、決定しなければならないというのが最後にあります。また十七条には、「著しく不適当となつたと認めるときは、その決定の例により、その廃止の決定をすることができる。」ともある。これは大臣に決定権限があるということで確認をしてよろしいでしょうか。

柳澤国務大臣 結論的に申しますと、高橋委員が言われるとおりであります。

 最低賃金については、原則として、一都道府県労働局の管轄区域内のみに係る事案については都道府県労働局長が、それからまた、二以上の都道府県労働局の管轄区域にわたる事案等については厚生労働大臣が決定することとされております。

 都道府県労働局長が決定した最低賃金が著しく不適当であると認めるときは、厚生労働大臣が都道府県労働局長に対してその改正等を命ずることができることとされておりまして、それぞれの、中央及び地方の最低賃金審議会のお考えを尊重しながら、決定は、都道府県労働局長、あるいは場合により厚生労働大臣であるということが法律の規定するところでございます。

高橋委員 基本的な権限の所在がはっきりしたかと思います。

 ただ、改正や廃止の決定について、大臣が伝家の宝刀を抜いたことは一度もないということでありましたので、私はやはり、今こういう議論を積み重ねている中で、そういうことだってあるんだよということを、今抜けと言っているわけではありませんが、そういうことをきちんと念頭に置いて議論を進めていきたい、そういうふうに思っております。

 そこで、生活保護との整合性について伺います。

 九条三項で、「労働者の生計費を考慮するに当たつては、生活保護に係る施策との整合性に配慮する」というふうに盛り込まれたわけであります。

 ここで、十一都道府県の生活保護費を最低賃金が下回っているということが、この間議論をされてきました。そこで、政府が基準としている生計費というのは、ここでいう生活扶助、つまり食費、水光熱費、居住費、これをいうのでしょうか。

青木政府参考人 生計費につきましては、各地方最低賃金審議会において、生活保護基準や生活保護水準の具体例とか物価指数だとか標準生計費だとか家計収支、可処分所得、消費支出などさまざまな資料を用いて審議が行われているところであります。

 それで、生活保護と最低賃金の比較に当たりましては、例えば、地域別の最低賃金は都道府県単位で決定されているのに対しまして、生活保護は市町村を六級に区分しておりますし、生活保護は年齢や世帯構成によって基準額が異なる、あるいは生活保護では必要に応じた各種加算や住宅扶助、医療扶助などがある、これをどういうふうに考慮するのかといった問題があります。

 現在の最低賃金と生活保護の水準を見た場合に、衣食住という意味で、生活保護のうち、若年単身世帯の生活扶助基準の都道府県内人口加重平均値に住宅扶助実績値を加えたものを手取り額で見た最低賃金が下回っている地域が見られる。まずはそういったケースについて比較をし、その整合性を考慮の上、逆転を解消し、その上でさらに最低賃金と生活保護との整合性のあり方について考慮していくことが一つの考え方ではないかというふうに思っております。

    〔委員長退席、伊藤(信)委員長代理着席〕

高橋委員 級の区分の仕方が違うですとか、そういういろいろな違いがあることを乗り越えて生活保護との整合性を図るということを今回盛り込んだわけですから、基本的な考え方をきちんと整理していく必要があるのだろう。

 そこで、政府の出している資料というのは、最低賃金に対し、税や社会保険料を考慮した可処分所得として〇・八六七を掛ける、そういう数字を比較しているかと思うんです。当然、生活保護であれば負担がないものを、普通の賃金労働者であれば負担しなければならない、そのことを考慮していると思うんですね。そうすると、すべての都道府県が生活保護より下回るという資料が出ているかと思うんですね。それは間違いありませんね。

 そして、その上で、最低でも、局長が言うここからスタートというときには、この〇・八六七を掛けた数字、ここはすべての都道府県が下回っているんだ、その認識から出発するべきではないでしょうか。

青木政府参考人 今委員がお触れになりましたすべての地域で下回るというお話でございます。

 これは、今申し上げましたように、生活保護の基準というものを、具体的にどういうものをとらまえるかということは議論のあるところだろうと思います。

 私が先ほど申し上げましたのは、少なくとも衣食住ということで、そこは生活扶助基準一類、二類と住宅扶助の実績値というところでいけば十一ということでありますけれども、今お触れになりましたのは、例えば住宅の扶助を実績値じゃなくて基準額で考えた場合にはそういうふうになるということだろうと思います。

 したがって、生活保護という場合に、具体的にどこを基準にしてやるのかというのは、これから審議会において十分議論をして審議を経た上、具体的な水準額に反映をさせていきたいというふうに思っております。

高橋委員 少なくとも、考慮すべき重要な指標だと思いませんか。

青木政府参考人 委員がお触れになりましたように、衣食住という意味で、住宅についても重要な指標だというのはおっしゃるとおりだと思います。

 その額を、具体的にどれをとるのかということについては議論があるところだろうというふうに思っております。

高橋委員 先般、本委員会で、生活保護世帯に対するリバースモーゲージの問題で私は質問させていただいたことがございました。五百万円以上の資産を持っている受給者に対して、いわゆる資産を活用して融資に切りかえて保護を打ち切るということによって、生活保護費をこれまでもらっていた額の一・五倍の額を月々融資するというのが厚労省の考え方なんですね。それは、生活保護受給者でなくなれば、医療費扶助ですとかさまざまな保険料の負担がかかる、だからこれまでもらっていた額と同じ額では当然暮らしていけなくなるのだ、水準は下がるのだという認識を厚労省が持っていたということなんです。

 同じように、最低賃金も同じ額といって比較したらだめなんですよ。当然、扶助として転化されている部分をきちんと考慮する、税金や社会保険料の負担を考慮するというふうにならなきゃ、そもそも話にならないということを強く指摘をしておきたい。ここを今後の議論の中で必ず考慮していただきたいということを言っておきたいと思います。

 そこで大臣に、そもそも生活保護制度そのものが、私はもう、人たるに値する制度となり得なくなってきている、このように思っております。老齢加算や母子加算など、これをプラスして初めて最低生活費とこれまでは整理をしてきました。それを、加算分を廃止して、つまり政府の解釈によって、最低生活費というのはこの程度よというふうに割り込まれたんですね、この間の施策の変化によって。そういうふうに今変わってきた。こういう大変なところで、今老齢加算や母子加算廃止に反対しての、私たちは人間裁判あるいは人権裁判と呼んでいますが、そういう闘いが今全国で行われているところであります。

 その中身の議論はきょうはしませんけれども、問題は六月一日の本委員会です。野党が出席しないところで、とても気持ちが楽になったのかわかりませんが、生活保護費と最低賃金の逆転現象の解消を尋ねられたのに対し、大臣の答弁はこうです。生活保護との整合性という意味でモラルハザードが起こってしまう、遊んでいた方が高い手当が手に入るというようなことがあってはならない、こうおっしゃいました。

 どういうことでしょうか。これはまるで、生活保護受給者がみんな税金をもらって遊んでいる、大臣がそういう認識をしているということになるんです。

 病気や障害やさまざまな事情があって働けない方、年金だけでは余りにも少ない方など、そういう事情があって、その上で、すべての資産を調査し、それをすべて処分された上でなければ保護受給に至らない、そういう方たちが今の受給者なんですね。そういう人たちを、遊んでもらっている、こういう認識でよろしいのでしょうか。撤回されますか。

柳澤国務大臣 モラルハザードということが、逆転現象が存在すると生ずる、労働意欲を阻害するということがいろいろなところで議論があるということを踏まえて、私、別に気を楽にしたからそういうことを申したのではなくて、わかりやすく言ったつもりですが、今こうして高橋委員に指摘をされてみますと、私の本意を必ずしも表現していないというふうに気がつきました。大変不明をおわびして、撤回します。

高橋委員 撤回されましたので、確認をいたします。

 産む機械じゃないですけれども、こういう考え方がずっと大臣の根っこにあって、今の施策に反映しているのかなということが本当に問われてしまうので、しっかりと御認識は改めていただきたいと思います。

 局長に簡単に確認をいたします。

 生活保護との整合性ということであると、理論上は、低い方に合わせることも条文上は可能になってしまいます。決してそうではないということで確認してよろしいですね。

青木政府参考人 今般の改正において、地域別最低賃金を決定する際に考慮すべき要素の一つである労働者の生計費に関しまして、生活保護に係る施策との整合性に配慮するということを明確にすることとしておりますけれども、これは、もちろん、具体的な水準については、再々申し上げていますように、三つの決定基準に基づいて地方の最低賃金審議会で地方の実情に応じて決定することになるわけでありますけれども、今回の改正の趣旨は、地域別最低賃金は生活保護を下回らない水準となるよう配慮するという趣旨でございまして、生活保護が引き下がったからといって機械的に地域別最低賃金が引き下がるということにはならないというふうに考えております。

高橋委員 よろしいです。

 次に、最賃を引き上げれば中小企業への影響があるということが繰り返し答弁をされております。もともと国の中小企業対策が大変貧弱で、一般歳出の〇・三五%にとどまってきている。本当に史上最高の利益を大企業は上げている、経済成長しているという一方で、中小企業には全くそれが回ってこない。そういう中にあって、それを怠ってきた政府の責任を棚に上げて、こういうときだけ、中小企業が困るからという議論は、私は逆立ちだと思うんです。

 何をもって中小企業に影響があると言うのか、具体的な根拠を示してほしいと思います。

青木政府参考人 中小企業に対する影響の問題ですが、我が国におきましては賃金の規模間格差が非常に大きゅうございます。現金給与総額あるいは一時間当たりの所定内給与についても大きな格差が見られます。千人以上の事業所を一〇〇としますと、それぞれ、五人から二十九人の事業所では現金給与総額は五一・七、あるいは所定内給与は六七・八ということになっておりますし、また、労働分配率を見ますと、資本金十億円以上の企業と比較しまして資本金一千万円未満の企業は、人件費の利益に占める割合が高くなっております。十億円以上が五四・九%、一千万円未満の企業が八五・八%ということであります。加えまして、労働分配率が、十億円以上の企業におきましては最近低下傾向にあるのに対しまして、資本金一千万円未満の企業においては高どまりしているということでございます。また、労働生産性については、やはり資本金十億円以上の企業が資本金規模一千万円未満の企業を大きく上回っております。

 こういったことから、最低賃金の大幅な引き上げを急にするということは、特に中小企業にとっては労働コストにより企業経営が圧迫されて大きな影響を受けるというふうに考えております。

高橋委員 所定内給与の比較ですとか、それから、今お話がありました分配率で比較をすると、確かに一定の格差がございます。特に、今お話しされたように、利益のうち八五・八%が人件費にかかっている、そういう中で、直に人件費を上げればそこに影響するだろうというのは容易に理解ができることではあるんですね。

 ただ、今、例えば厚労省が行っている、事業所三十人未満あるいは製造業は百人未満の事業所を対象に行っている調査でも、未満率というようですが、最賃に達していない労働者の比率は一・二%、最賃を上げたときに影響を及ぼす率は一・四%にすぎない。実際は、圧倒的多くの中小企業は、やはり労働者がいなければ仕事が成り立たないし、安い給料では逆に来てもくれないという点で一定の賃金を払っているというのが実態だと思うんですね。

 労働政策研究・研修機構が平成十六年十一月に行った最低賃金に関するアンケート、これも同じく対象が三十人未満の企業であります。賃金がどのくらい最賃に張りついているかで見ると、正社員では二・四%、パートでも五・九%というところであります。また、最賃が引き上げられたために新規雇用を抑制したのは四・二%にしかなっておりません。私は、重要だなと思うのは、地域別最賃が役立っているかなという問いに対して二四・六%が役立っている。つまり、裏を返せば、七五%以上が役立っていない。その理由は、最低賃金が低過ぎて参考とすることがないから、こういうふうに答えているんですね。

 ですから、最低賃金が、中小企業がみんな、かなり低くて、もう今にも上げればやっていけないんだというのは過大過ぎるのではないか、もう少しここは冷静に見る必要があるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

青木政府参考人 確かに、委員がお触れになった数字はそういうことだろうと思います。しかし、それは全体で見たときにはそういうことでありますけれども、やはり、そうはいっても最低賃金のところの水準に張りついているところはあるわけでございまして、そういったところの企業におきましては中小企業がやはり相当な痛手を受けるということは、これもまた確かだろうと思います。

 それから、現行の最低賃金の水準で、最低賃金未満の率は非常に低うございます。これは、最低賃金法違反は犯罪でありますので、きちんと守っていただかなければいけないということが一つと、それと、やはり、最低賃金の改定についても、地方の最低賃金審議会でいろいろな事情を勘案して、地方の実情に応じて引き上げているという事情もあろうかというふうに思っております。そういう意味では、委員のお触れになりました調査の中においても、役立っているというのが相当数あるということでありますので、最低賃金がいわばセーフティーネットとして、安全網として機能しているというふうに考えております。

 さらに、今般は、罰則を引き上げましたり、あるいは生活保護との整合性を明確にするというようなことで、一層のセーフティーネットとしての機能を果たすように改正をお願いしているということでございます。

高橋委員 役立っていると答えている企業の理由は、パートやアルバイトの賃金を決める上で参考になるというふうに答えております。ですから、この問題はまたパートやアルバイトの賃金が低く抑えられる別の役割も果たしているということを指摘しておかなければならないと思います。

 先ほど取り上げられました成長力底上げ戦略推進円卓会議、この問題について内閣府からもおいでをいただいております。成長力向上と最賃を一体のものとして取り組むということで、私は、その中で、例えば、下請取引の公正化ですとか、バイイングパワーの取り締まり強化もしなくちゃいけないですとか、貴重な立場、発言もされているなとは思うんですね。ただ、問題は、やはりこれは厚労省の所管である最賃審議会との関係なんですね。

 資料の一を見ていただきたいと思います。

 このスケジュールが六月ごろから立ち上がって、二回から三回やって、八月に最賃引き上げ等についての実施方針を出すんだと。地方最賃審議会の流れ、中央最賃審議会の流れを右に書いておきましたが、例年ですと七月下旬ころに出される答申が、今回、国会で今こういう議論がされているので、一応待ちの姿勢になっている、若干おくれるということを聞いております。そうすると、日程が完全にリンクをするんです。二枚目を見ますと、最低賃金の目安の提示ということが基本的スキームの中に書き込まれているんです。ということは、円卓会議は審議会が目安を出す前に何らかの方針を出すということでしょうか。

山崎政府参考人 お答えいたします。

 御指摘の円卓会議でございますが、御指摘のように、成長力底上げ戦略に関しまして、有識者と労使の代表の方々が集まって、まさに幅広い観点から意見をいただく、こういうものでございまして、その中で、中小企業の底上げ戦略ということで、中小企業の生産性と最低賃金、これに関しても議題に取り上げている、こういう状況でございます。

 したがいまして、この円卓会議はあくまでも政労使が幅広い観点から意見交換を行っていただくというものでございまして、この生産性向上と最低賃金、これに関しましても、そういう形から基本的なものについて御意見をいただき、意見交換を行うというものでございます。これを一つ参考としていただいた上で、実際に具体的には、最低賃金の審議に関しましては最低賃金審議会において議論されていく、このように理解している次第でございます。

高橋委員 これは、結局、先ほど言ったのと同じように、屋上屋なんですね。

 中小企業団体中央会が昨年の十月に、制度的に、実質的引き下げも可能な制度とすることという決議を上げています。その決議を上げている中央会の会長が、円卓会議の中に入って、生産性が向上しなければ最賃を上げないといった、そういうふうな発言をされているんですね。

 この円卓会議は政労使なんです、公労使ではないんです。そうすると、まず官邸が直結しているということで、労の立場が非常に弱くなるんですね。三つの要素と言いながら、どうしても企業の側に引っ張られる可能性があるんです。そういうときに、この微妙なスケジュールで最賃審議会に横やりを入れる、これまでのルールがゆがめられることになるんではないかということを指摘しなければなりません。

 大臣、もう一言、答弁をお願いします。

柳澤国務大臣 委員も賛成のようなお話も最初にいただいたので安心をして聞いておりましたのですが、急にまた論旨が厳しくなりまして、ちょっと当惑ぎみなんですけれども。

 どういうことかと申しますと、先ほども私が申し上げたように、最低賃金の決定の仕組みは全く変わるものではないということでございます。しかし、実際に最低賃金を引き上げようといたしますと、これは、生産性が上がったり、あるいは先ほど委員が指摘されたように、例えば親企業に対する、いわば商品の販売価格を引き上げるというようなことがないと、実際上、最低賃金を引き上げた場合に、それを実行する段になると経営が非常に苦境に立つということは事実でございます。

 したがいまして、今、割と大きな企業については成績がいいわけですが、中小企業については成績が余り振るわないということの中で、いかにして我々は最低賃金を引き上げられる環境を整えるかということにいろいろと知恵を絞っているということでございまして、これはあくまでもそうした意味の環境整備のための審議をいただいておる場であるということで御理解を賜りたいのでございます。

高橋委員 いろいろ言いたいことはありますが、次にします。

伊藤(信)委員長代理 次に、阿部知子さん。

阿部(知)委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。

 本日もまた、委員長の職権によって委員会が立ちました。この間、強行採決あるいは委員長職権によるこうした委員会審議というのは、本来的な意味で民主主義の原則にも大きく外れておりますし、もっと本質的なことを言えば、今、この年金問題をめぐって、例えば柳澤厚生労働大臣の最もなさるべきことは、このたび安倍総理がサミットに向かわれるとき、後顧の憂いなくという御発言でありましたが、私は、国民の憂いをこそ最も大臣には考えていただきたい。

 そして、きょう、私ども野党がこぞって、いわば労働三法の審議で、これも十分に審議したいと思いながら、年金問題をもっとしっかり論議したい、そうでなければ国民に申しわけが立たぬ、特にこの衆議院の厚生労働委員会で積み残した課題が本当に膨大にあるんだということにのっとって、御質疑をしたんだと思います。

 大臣には、冒頭伺います。

 きょう長妻委員が御提示になりました、いわゆる旧台帳と言われるものに残されたオンライン化されていない記録については、大臣はいつ存在をお知りになりましたか。きょうですか。

 旧台帳と言われるものは、マイクロフィルムにしかございません。オンラインには一切入っていませんが、その存在自身、一千四百三十万件、いつお知りになりましたか。きょうですか。

柳澤国務大臣 いずれにいたしましても、きょうの御論議を準備する過程で知りました。

阿部(知)委員 となりますと、大臣ももう事態は十分に認識されていると思います。いわゆるオンラインに載っかった記録以外が膨大にあり、また載っかった記録にも間違いがあり、このずたずたになったデータをもとにしたら物事が一歩も進まないから、私どもは三千件のサンプル調査をお願いしました。

 それに対して大臣の答弁は、理事会の御指示があればということでした。きょう、大臣は新たな事態の発覚に基づいて、当然見解を、これは我が身を切ってでもみずから全貌を明らかにせねばならない、国民に申しわけが立たない、不安が後を絶たないというふうに認識されたと思いますが、いかがでしょうか。

柳澤国務大臣 私は、事態を、とにかく情報開示をしていくということをとった方が、すべてを明らかにした上でどういうふうに再構築していくかという論議が進みやすくなる、このように考えます。

阿部(知)委員 そんなことは当然で、大臣、五千万件だって十分びっくりするに値する数値なんです、それが宙に浮いているという言われ方をしても、受給に結びつかないから消えたという言われ方をしても。

 でも、これは、間違った形であれ、とにかくオンラインにあったわけです。名前が違ったかもしれない、生年月日が違ったかもしれない、十分な正しいデータでなかったかもしれないけれども、あったものでしょう。しかし今、一千四百三十万件、新たに全くこちらにはないデータがあったということは、大臣、その一人一人にとってはいかに重大か。情報公開が大事だという一般論ではなくて、そのことは大臣がみずから主体的に開示の努力を即刻せねばならないんだと思います。

 私は、この間の理事会の審議は、いわば大臣が理事会に云々と言った途端から極めていびつなものになったと思います。逆に政治化されたんだと思います。この年金問題でそうした対立構造をとることが、実は本来明らかにされるべき全貌を隠してしまう、そのことを深く私は憂慮します。

 そして、国民は、何だ、納めたってデータもない、なくしちゃう、記録のオンラインにもない、これじゃ信頼できないと思うのが当たり前じゃないですか。

 大臣、もっとみずからの手で、このことを即刻、もう一刻の猶予もなく明らかにすべきですよ。そのための調査の方法も、もっと大臣が率先して、前に立って、動かぬ社会保険庁であればむち打ってでも動かすべきではありませんか。大臣、どうですか。誠実に答えてください。

柳澤国務大臣 私は、五月二十五日の新しい対応策ということも、実は、私自身がこういうことをやろうということで決定をさせていただいたものでございます。

 私は、今度の年金問題ということについては、国民の皆さんに不安を与えているということを、もう本当に申しわけなく思っておりまして、これをどのように一番効率的に不安を解消していくかということに自分として最大限努力をしなければならない、このように考えております。

 したがいまして、先ほどの三千件というサンプル調査ですけれども、これもいわばイレギュラーな特殊台帳というものがたまたまマイクロフィルムの形で残っておりますので、それとの突合をするということを長妻委員から御提案を受けまして、それを今、実際に突合をしていただいているわけでございます。

 これが時間がかかっておりますのは、要するに、マイクロフィルムの方を先に見ちゃうというようなプロセスをとっておりまして、それで、その後に実際のオンラインの方の資料で確かめるというようなことをやっておりまして、そして、手順をとるということの中で時間がかかっているという側面もありまして、いずれにしても、精査が完了次第、きちっとまとまった形でこれを開示するということは、私ども、当初から考えているということでございます。

阿部(知)委員 余りにも時間がかかり過ぎているんです、大臣。もうそれはおわかりなんだと思います。

 今そこに国民の最大の関心事があったら、消えたのか、マイクロフィルムにはあるのか、もう何もなくなっちゃったのか、オンラインが間違っているのか、とにかくこれを出していただかないと、全貌がわからないのです。

 そして、大臣、例えば東京都の、この前二万件の相談件数を受けたうちに、マイクロフィルム化された、そちらに当たったもの三百二十八件というデータが出ましたね。これは、半月分のものを三百二十八件集計されています。その中には、マイクロフィルム化された台帳で記録の統合を行ったもの六十一件、また、オンラインには全く記録がなく、マイクロフィルムの記録に基づき記録が確認された八件とか、これは出たわけですよ。同じような作業じゃないですか。

 なぜ三千件について、まあ十倍の差といたしましょう。しかし、これが発表されたのは六月の初め、そして、恐らく調べられたのは本当に数週間前だと思いますよ。大臣がそうやって、実際には、もし十倍のものであれば、十倍の人手をかければできることじゃないですか。なぜそれだけ、申しわけないけれども、故意におくらせたとみんなが思っても仕方がないような対応をなさっているんですね。これは、国民にとっては物すごく不幸なことなんだと思います。

 大臣、ネックは何ですか。今、滞っているネックは何ですか。お願いします。

柳澤国務大臣 これは、議員と委員長との間で理事会で検討するということになった。その後、理事会で御議論をいただいているという状況でございまして、私どもは、こういう構成のもとで委員会運営が行われておりますれば、それは私は、ここへ座って、皆さんの御議論に対して、質問に答えるということでございまして、議会の運営というのは、委員長を初め、また理事の皆さん方でお願いしているということでございまして、私が一々議会の運営にまでくちばしを入れるということは、やはりそれはルール違反になってしまうわけです。

 ですから、私は、今回のことは、これは早く理事会の手を離していただいて、途中でもいいからいいではないでしょうかという感じを持っているということでございます。(発言する者あり)

阿部(知)委員 明確な御答弁をありがとうございます。

 今の大臣の御答弁は、理事会が決めればよいということでした。最初は、時間がかかっている、仕事量だというお話でした。でも、今ネックは何ですかと聞きましたら、理事会だというお話でした。

 委員長、申しわけありませんが、早急に理事会を開催してください。この時刻、お願いします。私どもは、きょう野党こぞってこの問題を取り上げました。そうせざるを得ない状況があるからです。与野党の筆頭理事、理事会の開催を私はお願いしたいので、この時刻、即刻に。今、大臣の答弁はそうでした。理事会がネックなのだと。であれば、先に理事会を開いていただきたい。それでなければ、私どもは次の労働の審議に入れません。

 委員長、どうですか。

柳澤国務大臣 阿部委員は、私の発言をそうおとりになられたわけですけれども、それは、私どもが確かに時間がかかっていることも事実であります。今現在は、私はちょっとどういう状況かというのを必ずしも正直言ってつまびらかにしておりませんが、今ちょっと申し上げたようなことで、ちょうど東京都の例を委員は出されましたが、同じことをやっておりまして、そういうことで精査に時間がかかっているということも事実としてございました。

 ですから、途中で申し上げたように、途中でよければ出せるのではないかということまで言及したということが事実でございまして、(発言する者あり)余り、どうぞ、お静かにお願いして、冷静に議論を進めたいと思います。

阿部(知)委員 では、今大臣は、時間はかかっておるが、途中でよければ出すというお話でした。

 理事会の方で即刻御協議いただきたいですが、委員長、どうでしょうか。

伊藤(信)委員長代理 後刻理事会で協議します。

阿部(知)委員 この件で、委員長は御存じでしょう。私ども、本来は次の審議に行きたいんですよ。でも、この件がまさにとげになって、次に行けないんですね。それは、私どもにとっても国民にとっても不幸なんです。理事会で途中の……

    〔伊藤(信)委員長代理退席、委員長着席〕

櫻田委員長 委員長かわりました。

阿部(知)委員 理事会をお願いします。

 今、柳澤厚生労働大臣は、記録は途中でよければ出せるという明確な御答弁でした。私どもは、サンプルの記録を途中で構いませんから出していただきたい。即刻この件で理事会の開催を要求いたします。委員長。(発言する者あり)

櫻田委員長 筆頭間協議で、場内で協議していただきますので、それまで続けてください。

阿部(知)委員 では、私はきょう明確に大臣の誠意ある答弁をいただきました。

 私どもは、この記録が出なければ全貌が出ない、みんなそう思っているんです。あの自民党のおつくりになったチラシの中でも、あれでは土台がなくて、その上に家は建たないのです。国民は不安になるばかりですから、今筆頭間協議ということですが、途中の段階でも記録は大臣の方はお出しになる意思があるということでしたから、その次、さらに何を詰めればいいか、理事会でしっかと答えを出していただきたいと思います。

 では、時間がもったいないので、次の質問に行かせていただきます。

 私はきょう、医療現場の過重労働、過労死の問題など、実は先週の委員会で与党の冨岡先生もお取り上げでございますが、今、我が国の医療の崩壊状況というのは、これは与党の皆さんも深刻に受けとめておいでだと思います。

 そもそも、こうした、医師不足なのか、あるいは医師偏在なのか、この間、厚生労働委員会でも論議がございました。しかし、不足しているのか偏在なのかを判断するデータについて、実は、私は、厚生労働省は十分なものを委員会にも提示していないんだと思いました。

 そこで、大臣には一問目の質問でございますが、先ほど来私が申しますように、与党の皆さんも医師不足対策を打ち出しておられますが、そもそも、我が国における医師の数を数えますときに、三師調査、医師、看護師、薬剤師の登録されている方の数でずっとデータとして用いておられます。しかし、これに対して、実際に、各病院の医療施設調査、病院報告というものは、働いている医師が例えば非常勤であれば、それを常勤換算いたしまして数を出します。三師調査で二十七万人と言われた数は、この病院の施設調査、病院報告との間に約四万人の差がございます。

 柳澤大臣は、こうした労働問題を話されるときに、医師は、例えば二時間働いても、八時間働いても、十六時間働いても、同じ一であればその数は正しく評価されないということはおわかりだと思います。今、医療現場は、特に勤務医は皆もう過労死寸前の状態にあると言っても過言ではありません。

 柳澤大臣にお願いがございますのは、前回も一度私はお願いいたしましたが、今後、我が国の医師の数を数えます場合に常勤換算を用いていただきたい。これは、私は、冨岡先生のようにタイムカード云々までは申しておりません。病院の報告数に挙がる施設報告数、医療施設調査、病院報告の方の数値を用いて事を論じていただきたいということです。それでないと、ただでも少ない我が国の医師数は、見かけだけの数値がひとり歩きし、いや、不足ではないと。

 実は、この間、少しずつ大臣は不足ということをお認めであります。その点については私は大臣を評価しておりますから、今後は、きちんと常勤換算で厚生労働省のデータの下データを準備する。そうすると、各地区に、各県に何人お医者さんがおられるかとかも全部変わってまいります。

 大臣、どうでしょう。

柳澤国務大臣 日本全国の医師数を申し上げる場合であるとか、あるいは人口当たりの医師数を算出する場合に用いる医師数は、御指摘のとおり実数ということで、何時間勤務されているかということを余り考慮しない、医師のいわば人数ということでいろいろと申し上げているところでございます。

 一方、しかし、医師確保対策の検討に当たりましては各地域や個々の医療機関等における実情を十分踏まえる必要があるというので、例えば、医師数の将来推計に当たっては年齢別、性別の就業率であるとか勤務時間を考慮するなど、情報をきめ細かく収集する、そしてまた活用するということをやっておりまして、その目的に応じまして、施策の検討なぞの場合には、今言ったような、現実をできるだけ反映するようなとり方ということをさせていただいているところでございます。

阿部(知)委員 その一点がしっかりしないと、大臣、例えば今度、医師数が特に少ない、頭数だけでも少ない、頭数だけですよ、実働じゃないですよ、頭数だけでも少ないところは、十の都道府県と自治医科大学で百十人の増員ということでありました。しかし、先ほど言った四万人余が、実際の実働では数値が下がるんです。今の養成のスピードではとても間に合いません。例えば、学士入学の枠をもっと多くする。一年間の医師数が八千三百人以上養成されていた時期がありました。しかし、それを急速に減らしてきたわけです。

 そして、ここに来て本当に、大臣、回ってみればわかります、非常に深刻な医師の過重労働であります。今の対策では、年金は消える、命は失われる。私は本当に日本のこれからの社会を憂いますので、大臣に、今まあとりあえず御答弁でした、これからはきちんと、場面場面でじゃなくて、実際にどれくらいが働いて、世の中、ほかは全部常勤換算なのです、どんなところでも。医師だけなぜ登録の頭数換算なのか。もう医師の不幸な死をこれ以上私は看過できませんので、大臣はよく肝に銘じていただきたいと思います。

 実は私の手元に、知るだけでも、九二年から今日までの十五年間で過労死認定のおりた医師は十五名ございます。認定のおりていない係争中のものもございます。命を支える者がみずから死んでいては成り立たない職場であります。大臣の英断を、私は方針転換とも呼べるものを求めたいと思います。

 次いで、時間外の割り増し賃金について御質疑をさせていただきます。

 このたびの政府案では、八十時間を超す者の残業について五〇%の残業割り増しとするという規定が入ってございます。

 しかし、そもそも、八十時間というのは十分長時間であります。きょう大臣のお手元に、一枚目をごらんになっていただきたいですが、これは、長時間の過重業務により、それを理由として支給決定された労災認定の数でございます。ここを見ていただきますと、八十時間以上百時間未満あたりから最高は百六十時間以上まで、これは残業であります。労災認定の数はウナギ登り。この八十時間というところは、もちろんそれ以前の六十時間でも十分問題が多かろうと私は思いますが、もう生命体、体がその労働時間に耐えられない。どこかが不調になる。精神か脳か心臓かは別として、体が悲鳴を上げる、心が悲鳴を上げる、そういう時間が八十時間のところで、これはありありとわかるデータでございます。

 とすると、今回、八十時間を超えたら五〇%という規定の仕方は、実は、体を犠牲にするか、死ぬか、金か、こういう設定の仕方になっているのではないでしょうか。大臣、なぜ八十時間なのですか。

柳澤国務大臣 労基法上、時間外と申しますか、所定時間外の労働を行うということについては、三六協定というものが結ばれて初めて可能になるわけですが、その三六協定で時間外の労働をするというときに、特別条項というものをもって三六協定を締結しなければならないという制度がございます。それは、いわばその八十時間という前に、実は四十五時間というものがあるわけでございまして、それ以上働くということについて特別な協定が必要だということになっております。

 今回も、そういう時間を超えたものについては二五%以上の割り増し賃金を払うように、それから、そもそも、そういうことで三六協定で四十五時間以上を規定するにしても、実際の所定外の労働時間というものはできるだけ短くするように、こういうことが四十五時間のところから行われているということでございまして、八十時間というのはいわばその次にある境目ということでございますから、八十時間だけに着目されて御議論を展開するというのは、もうちょっときめ細かく我々の制度をごらんになっていただきたいということでございます。

 八十時間の根拠について説明をしろということであればさらに申し上げますが、もう委員から挙手がされておりますので、これでとりあえず御答弁を終わらせていただきます。

阿部(知)委員 大臣、四十五時間で三六協定くらいは知っているんです、そこで二五%というのも。八十時間からその次のランクというふうに言われますが、私が言っているのは、八十時間ではこれだけの労災死が起こるということであります。労災の時間外の数え方と多少は違うこともあえて捨象して、わかりやすくここでは私は述べさせていただきました。

 厚生労働省というのは、人間が生き働くことについて、その健康と労働は権利であり義務である、憲法二十七条の規定です。そのことを実際にどう担保していくか、それがなければ、大臣、今度の施策は余りにも、時間外労働の割り増し賃金、さっきも申しました金か死かになりかねないと思いますし、私は極めて不適切、不十分だと思います。

 次いで、時間との関係でもう一つだけお聞きしたいと思います。

 同じように、精神障害にかかわる労災ということがこの間大変ふえてございます。〇六年度の請求件数は八百十九件、決定件数六百七件、このうち、不支給もありますから、支給決定は二百五件で三分の一しか認定されません。これも低いと思いますが、さらに、このうち自殺ということで、〇六年では、請求件数百七十六件、決定件数百五十六件、認定件数六十六件、すなわち、決定されて支給されて六十六件が亡くなっております。

 この厚生労働委員会でも、自殺問題に対して、去る平成十七年七月十九日、自殺に関する総合対策の緊急かつ効果的な推進を求める決議というのが上がりました。その中でも過重労働という文言が入ってございます。

 そこで、当然、私は、先ほどお示ししたのは脳血管障害の労災認定を受けた方の労働時間ですが、精神疾患並びに、特に自殺と長時間労働との関係について厚生労働省はデータをおとりなんでしょうねというふうに伺いました。ところが、きのういただきました答えは、簡単に省略して申しますと、必ずしも自殺は時間だけの問題ではないからと。

 しかし、それでは、このときの私どもが上げた決議は何であったのか。せめてこの脳血管障害で行われている調査、労働時間と発病したケース、そして認定されたケースについての調査をなさるべきと思いますが、いかがでしょうか、大臣。

柳澤国務大臣 平成十一年に精神障害に係る業務上外の判断指針を策定した以降、労働時間との関連を含む職場ストレスと精神障害の関係に関する研究も、実は行われてきております。

 今後とも、これらの研究成果の収集に努めてまいりまして、それを私ども、いろいろな行政の配慮に生かしてまいりたい、このように考えております。

阿部(知)委員 大臣はきっとほかのことでお忙しくて、私の意味がよくおわかりにならなかったんだと思います。

 私は、研究してほしいんじゃないんです。研究も大事です。でも、実際にそこに人が死んでいるんです。その人たちが、例えばうつで自殺されたり、どのくらいの時間働いているか、その元データくらいは厚生労働省が求めればできるんです。やるべきことをやって、人が死なない行政をやっていただきたいと思います。

 私の質問を終わります。

櫻田委員長 以上で阿部知子君の質疑を終了いたします。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時二十四分散会


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