衆議院

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第5号 平成19年11月7日(水曜日)

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平成十九年十一月七日(水曜日)

    午前九時一分開議

 出席委員

   委員長 茂木 敏充君

   理事 大村 秀章君 理事 後藤 茂之君

   理事 田村 憲久君 理事 宮澤 洋一君

   理事 吉野 正芳君 理事 山田 正彦君

   理事 山井 和則君 理事 福島  豊君

      新井 悦二君    井澤 京子君

      井上 信治君    石崎  岳君

      川条 志嘉君    木原 誠二君

      木村 義雄君    櫻田 義孝君

      清水鴻一郎君    清水清一朗君

      杉村 太蔵君    薗浦健太郎君

      高鳥 修一君    谷畑  孝君

      冨岡  勉君    長崎幸太郎君

      西本 勝子君    萩原 誠司君

      橋本  岳君    林   潤君

      平口  洋君    福岡 資麿君

      福田 良彦君    松浪 健太君

      松本  純君    松本 洋平君

      三ッ林隆志君    安井潤一郎君

      山本ともひろ君    内山  晃君

      岡本 充功君    菊田真紀子君

      郡  和子君    園田 康博君

      長妻  昭君    細川 律夫君

      三井 辨雄君    村井 宗明君

      柚木 道義君    伊藤  渉君

      古屋 範子君    高橋千鶴子君

      阿部 知子君    糸川 正晃君

    …………………………………

   議員           細川 律夫君

   議員           山井 和則君

   議員           山田 正彦君

   厚生労働大臣       舛添 要一君

   厚生労働副大臣      岸  宏一君

   厚生労働大臣政務官    伊藤  渉君

   厚生労働大臣政務官    松浪 健太君

   政府参考人

   (内閣府政策統括官)   齋藤  潤君

   政府参考人

   (内閣府規制改革推進室長)            小島愛之助君

   政府参考人

   (厚生労働省医政局長)  外口  崇君

   政府参考人

   (厚生労働省医薬食品局長)            高橋 直人君

   政府参考人

   (厚生労働省労働基準局長)            青木  豊君

   政府参考人

   (厚生労働省職業安定局長)            太田 俊明君

   政府参考人

   (厚生労働省職業安定局高齢・障害者雇用対策部長) 岡崎 淳一君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局長)           中村 秀一君

   政府参考人

   (社会保険庁運営部長)  石井 博史君

   政府参考人

   (中小企業庁経営支援部長)            長尾 尚人君

   政府参考人

   (防衛省大臣官房衛生監) 外山 千也君

   厚生労働委員会専門員   榊原 志俊君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月七日

 辞任         補欠選任

  西本 勝子君     平口  洋君

  林   潤君     橋本  岳君

  松本 洋平君     清水清一朗君

  菊田真紀子君     村井 宗明君

同日

 辞任         補欠選任

  清水清一朗君     福田 良彦君

  橋本  岳君     安井潤一郎君

  平口  洋君     西本 勝子君

  村井 宗明君     菊田真紀子君

同日

 辞任         補欠選任

  福田 良彦君     山本ともひろ君

  安井潤一郎君     林   潤君

同日

 辞任         補欠選任

  山本ともひろ君    薗浦健太郎君

同日

 辞任         補欠選任

  薗浦健太郎君     松本 洋平君

    ―――――――――――――

十一月七日

 最低賃金法の一部を改正する法律案(細川律夫君外二名提出、第百六十六回国会衆法第三四号)

 労働契約法案(細川律夫君外三名提出、衆法第一号)

は委員会の許可を得て撤回された。

同月五日

 後期高齢者医療制度の中止・撤回を求めることに関する請願(高橋千鶴子君紹介)(第五二三号)

 同(笠井亮君紹介)(第五九三号)

 不妊治療にかかわるすべての薬剤と検査に対する保険適用に関する請願(市村浩一郎君紹介)(第五二四号)

 同(小川淳也君紹介)(第五二五号)

 同(大前繁雄君紹介)(第五二六号)

 同(菅野哲雄君紹介)(第五二七号)

 同(重野安正君紹介)(第五二八号)

 同(篠田陽介君紹介)(第五二九号)

 同(高井美穂君紹介)(第五三〇号)

 同(高木美智代君紹介)(第五三一号)

 同(寺田学君紹介)(第五三二号)

 同(糸川正晃君紹介)(第五九四号)

 同(川条志嘉君紹介)(第五九五号)

 同(郡和子君紹介)(第五九六号)

 同(猪口邦子君紹介)(第六五八号)

 同(照屋寛徳君紹介)(第六五九号)

 同(古川元久君紹介)(第六六〇号)

 同(細川律夫君紹介)(第六六一号)

 高齢者に負担増と差別医療を強いる後期高齢者医療制度の中止・撤回を求めることに関する請願(笠井亮君紹介)(第五三三号)

 中小自営業の家族従業者等に対する社会保障制度等の充実に関する請願(内山晃君紹介)(第五三四号)

 同(吉良州司君紹介)(第五三五号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第五三六号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第五三七号)

 同(吉井英勝君紹介)(第五三八号)

 同(渡辺周君紹介)(第五三九号)

 同(安住淳君紹介)(第五八九号)

 同(西村智奈美君紹介)(第五九〇号)

 同(逢坂誠二君紹介)(第六五二号)

 同(柚木道義君紹介)(第六五三号)

 安心で行き届いた医療に関する請願(古賀一成君紹介)(第五四〇号)

 同(藤村修君紹介)(第五九一号)

 一酸化炭素中毒患者に係る特別対策事業を委託する新病院に関する確認書早期履行を求めることに関する請願(古賀一成君紹介)(第五四一号)

 同(照屋寛徳君紹介)(第六五六号)

 同(山井和則君紹介)(第六五七号)

 社会保障の充実を求めることに関する請願(志位和夫君紹介)(第五八一号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第五八二号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第五八三号)

 同(吉井英勝君紹介)(第五八四号)

 同(松本龍君紹介)(第六四九号)

 医師・看護師不足など医療の危機打開に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第五八五号)

 同(下条みつ君紹介)(第六五〇号)

 国民健康保険の充実を求めることに関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第五八六号)

 同(穀田恵二君紹介)(第五八七号)

 同(志位和夫君紹介)(第五八八号)

 同(松本龍君紹介)(第六五一号)

 じん肺とアスベスト被害の根絶を求めることに関する請願(金田誠一君紹介)(第五九二号)

 医師・看護師などを大幅に増員するための法改正を求めることに関する請願(笠井亮君紹介)(第六二三号)

 緊急の保育課題への対応と、認可保育制度の充実に関する請願(金子恭之君紹介)(第六二四号)

 助産師の開業権を守り、医療法第十九条を廃止し、安全確保の法整備を行うことに関する請願(戸井田とおる君紹介)(第六二五号)

 戦時災害援護法の制定に関する請願(河村たかし君紹介)(第六二六号)

 大都市東京における特別養護老人ホームを初めとする介護保険施設の介護人材確保に関する請願(久間章生君紹介)(第六二七号)

 同(長島昭久君紹介)(第六二八号)

 同(松本洋平君紹介)(第六二九号)

 同(三井辨雄君紹介)(第六三〇号)

 同(山井和則君紹介)(第六三一号)

 地域医療を守り、国立病院の存続・拡充を求めることに関する請願(笠井亮君紹介)(第六三二号)

 年金・医療制度等の改革に関する請願(篠原孝君紹介)(第六三三号)

 保育・学童保育・子育て支援施策の拡充等に関する請願(石井郁子君紹介)(第六三四号)

 保育制度の改善と充実に関する請願(木村義雄君紹介)(第六三五号)

 身近な地域で、安心して産める場所の確保に関する請願(阿部知子君紹介)(第六三六号)

 同(石崎岳君紹介)(第六三七号)

 同(鈴木俊一君紹介)(第六三八号)

 同(戸井田とおる君紹介)(第六三九号)

 同(福島豊君紹介)(第六四〇号)

 同(吉野正芳君紹介)(第六四一号)

 同(寺田稔君紹介)(第六六五号)

 被用者年金制度一元化等に関する請願(篠原孝君紹介)(第六四二号)

 医療に回すお金をふやし、保険でよい歯科医療の実現を求めることに関する請願(竹本直一君紹介)(第六四三号)

 同(寺田稔君紹介)(第六四四号)

 同(松本大輔君紹介)(第六四五号)

 同(柚木道義君紹介)(第六四六号)

 国の医療に回すお金をふやし、医療の危機打開と患者負担の軽減を求めることに関する請願(寺田稔君紹介)(第六四七号)

 同(松本大輔君紹介)(第六四八号)

 安全で快適な妊娠・出産・子育て環境確保に関する請願(佐藤ゆかり君紹介)(第六五四号)

 同(田村憲久君紹介)(第六五五号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 労働契約法案(内閣提出、第百六十六回国会閣法第八〇号)

 労働基準法の一部を改正する法律案(内閣提出、第百六十六回国会閣法第八一号)

 最低賃金法の一部を改正する法律案(内閣提出、第百六十六回国会閣法第八二号)

 労働契約法案(細川律夫君外三名提出、衆法第一号)

 最低賃金法の一部を改正する法律案(細川律夫君外二名提出、第百六十六回国会衆法第三四号)

 労働契約法案(細川律夫君外三名提出、衆法第一号)及び最低賃金法の一部を改正する法律案(細川律夫君外二名提出、第百六十六回国会衆法第三四号)の撤回許可に関する件


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     ――――◇―――――

茂木委員長 これより会議を開きます。

 第百六十六回国会、内閣提出、労働契約法案、労働基準法の一部を改正する法律案、最低賃金法の一部を改正する法律案、今国会、細川律夫君外三名提出、労働契約法案及び第百六十六回国会、細川律夫君外二名提出、最低賃金法の一部を改正する法律案の各案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 各案審査のため、本日、政府参考人として内閣府政策統括官齋藤潤君、規制改革推進室長小島愛之助君、厚生労働省医政局長外口崇君、医薬食品局長高橋直人君、労働基準局長青木豊君、職業安定局長太田俊明君、職業安定局高齢・障害者雇用対策部長岡崎淳一君、社会・援護局長中村秀一君、社会保険庁運営部長石井博史君、中小企業庁経営支援部長長尾尚人君、防衛省大臣官房衛生監外山千也君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

茂木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

茂木委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。萩原誠司君。

萩原委員 まず、この間の質疑の成果、結果として、最低賃金法並びに労働契約法について、次第に私ども与党と野党の皆さんの意識が整合化されつつある、そういう雰囲気を感じておりまして、心から敬意と感謝を申し上げます。

 ただ、そのことを前提とした上でも、今後のこういった分野における議論を過たないためにも、しっかりと、それぞれの法案あるいは法案の背景にある政策論あるいは政治論について議論をしておく必要がある、そういう観点から質問させていただきたいというふうに思っています。

 せんだって、二日の日でございますけれども、川条委員の質問に対しまして、民主党提案者の方からこういう御議論がございました。

 実際、アメリカでは、二年間で五・一五ドルから七・二五ドルに最賃を上げていく云々かんぬん。そして、もう一つつけ加えさせていただきますが、根本的に、今まで、先進国の中で日本よりアメリカの方が最賃が低かったわけです。ところが、議会の中で民主党が勢力を持ったことにより、アメリカではこの最賃が大幅に、先ほど言いましたように、五ドルから七ドルに一・五倍上がって、これで、世界の先進国の中で日本の最賃は最低になっております。

 こういう発言がありましたけれども、この発言を聞きながら、ちょっとこれはいただけないな、最低賃金についての御理解ができていないのか、あるいは、理解をしておられた上で曲解をされて、ある種の政治的メッセージに変えられたのではないか。

 最低賃金というものは、経済の中で非常に重要なシステムであります。上げ過ぎてはいけない、下げ過ぎてはいけない。まさに生き物としての経済の中で、ある種の合理性を保ったバランスというものの中で成立をしておくべきものである。そのバランスというのは、当然でありますけれども、払えるか、生きていけるか、こういう大きな論点に依拠する。それを我々はシステムとして、政治的な、少なくとも党派的な利害とは関係なくて、まさに公平で、そしてしっかりした議論の上で成立をさせていく、そのことがまずは求められているというふうに考えております。

 その関係で、政府参考人の方にお伺いをしておきたいわけでありますけれども、まず、この間の議論、つまり、アメリカの最低賃金が一九九七年以降上がっていなかったわけであります。ちょうどことしが十年目になるわけですが、この十年間における日米の経済の名目の成長率はどのようなものであったか。そして、それにまた非常に深く関係をいたしますけれども、その同じ期間における日米のインフレ率、CPI、消費者物価指数でありますけれども、この累積インフレ率は一体どのようなものであったか、ちょっとお答えをいただければ幸いでございます。

齋藤政府参考人 お答え申し上げます。

 日米両国につきまして、二〇〇六年までの十年間の名目GDP成長率を累積いたしますと、日本は〇・七%の伸びとなります。また、米国は六八・八%の伸びとなっております。

 それから、同じ期間につきまして、日米両国の物価上昇率、これは今先生御指摘のように、消費者物価指数の総合で計算をいたしますけれども、これの累積をいたしますと、日本はマイナス〇・五%の低下、それから、米国は二八・五%の上昇となっております。

萩原委員 もう一つファクトだけお尋ねをしておきたいんですが、その同じ十年間に、日米の最低賃金、これは確認的な質問ですけれども、どういう推移をたどっているか、これについてもお答えをいただきたいと思います。

青木政府参考人 この十年間の日米両国の最低賃金の水準の変遷についてでございますが、アメリカにつきましては、一九九七年以来十年間、法改正が行われませんで、五・一五ドルに据え置かれてきました。ことしの五月の法改正によりまして、現在は五・八五ドルになったところでございます。

 一方、我が国につきましては、毎年、最低賃金審議会における地域の実情を踏まえた調査審議を経て決定が行われてきておりまして、この間、一九九七年、平成九年の六百三十七円から、ことしの六百八十七円になったところでございます。

萩原委員 お許しをいただきまして、お手元に、今の御答弁にあった事実をやや詳しく参考資料として提起をさせていただいています。

 御案内のように、日本の現在の法律では、生計費、賃金あるいは支払い能力といったことを加味しながら、いろいろな議論を重ねて最低賃金を決めていくわけでありますけれども、この間、日本においてはCPIがマイナスでありました。

 実は、生計費の基準というのはCPIが本当は一番正しいんですけれども、これが累積的にマイナスになる中で最低賃金が引き上げられているということは、考慮要素として、この間さまざまな、生産性の向上とかあるいはいろいろな形で企業収益が特にこの数年間回復している等々の支払い能力要因というのを考慮しないと、これは上がらなかったんです。そういう意味で、実は、私が申し上げたいことの一つは、非常にある意味ではバランスのとれた形になっている。

 一方、アメリカを見ますと、この間、二八・五%の累積CPIの上昇があったにもかかわらず五・一五ドルで据え置かれていたということは、完全にこれはアンダー水準、つまり、最低賃金が実質で低下をしてきたということであったし、あるいは、まさに合理的に引き上げる余地が非常にあったということです。

 さらに、アメリカの名目GDPの成長が六八ありますけれども、もちろん、名目GDPは、この中で物価の部分と、それに量的な拡大、つまり、人口がふえるとかあるいは機械設備がふえるとか、質的な拡大、労働生産性が向上するとかあるいは資本の効率が上がるとか、さらに税要素の部分が若干ございますけれども、いずれにしても、さまざまな要素でこれが増大をしている。

 その中で、労働生産性の部分は少なくとも賃金として還元できるのじゃないかということで、御案内のように、二八・五とそして六八・八のある間、ここに最低賃金の上昇率もおさまってくる。

 具体的に言いますと、その左上の表の上で四〇・八、つまり、二年後の七・二五というのが出ていますけれども、これが累積でいうとやはり四〇・八になるんですが、これを現時点に引き直してみると、ちょうどこの二八・五と六八・八のいい水準に達している、こういうふうに理解をすることができる。したがいまして、これは、ある種、経済合理的な判断の中で当然の帰結として調整されたというふうに考えるべきである要素が強いんです。

 もちろん、民主党の提案者なぜかおられなくなりましたけれども、民主党が勢力を持ったことによりという議論もあるかもしれないけれども、この最低賃金の算定に当たって、恐らくアメリカ政府当局の各部門が非常に正確な判断をして、それを情報提供した上で、それが法案の形になって通っていった、こういうことがあるのではないかというふうに思ってございます。

 一方、我が国について見ますと、この間、先ほど申し上げましたように、若干のデフレ傾向が継続をしていたにもかかわらず、七・八%、八%弱の最低賃金の引き上げをいろいろな形で実施できたこと、これは実は誇るべきことでありまして、そして、今までお話を申し上げたように、実質の世界に引き直してみますと、日本の方がきちっと最低賃金の上昇が図られていた。

 したがって、せんだって提案者の方がおっしゃったような、世界の先進国の中で日本の最低賃金が最低になっているということは、非常に大きな意味での誤解か曲解にほかならない、このことはまず明確に委員の方々にも共通認識としてお持ちをいただきたい、さよう考えるわけであります。

 もし提案者の方に御感想がございましたら、お聞きをいたします。なければ結構です。

細川議員 今、萩原委員の方から御高説を賜りまして、今のお話は理解できることが多々ございます。

 ただ、この間、別の提案者から御説明があったのは、アメリカの方でも最低賃金が上がったんだ、形式は、法定で決める、あるいは審議会とか、いろいろ違うんですけれども、その事実を踏まえて、最低賃金が上がったんだということを申し上げたくて、そして日本でもやはり今の状況を考えると上げるべきなんだということを申し上げたんだというふうに思います。

 あくまでも、アメリカの実態というよりも、アメリカで最低賃金が上がったんだ、そのときに、選挙によって民主党がアメリカの方で勝利をした、その直後に上がった、事実を中心に述べたものだと思います。

萩原委員 ということは、逆に、実質的な意味において、我が国の最低賃金というものが世界最低であるという判断は、これは違うという理解でよろしゅうございますね。(細川議員「もう一度」と呼ぶ)

茂木委員長 実質的な意味において、日本の賃金が世界最低であるという認識は違うということでよろしいですねと。

細川議員 形式的な数字からいえば、賃金は低いという事実を申し上げただけだと思います。認識においては、そんな変わりはないと思います。

萩原委員 最後にぼそっとおっしゃった、認識についてはそんなというところを信じて、御理解をいただいたものと推定をさせていただかなければ議論が前に行かないというふうに思っています。

 いずれにしても、今申し上げましたように、最低賃金を考えるときに、さまざまな要素を正確にとらえて議論をする、そして、それを絶対に政争の具にすべきではないということは明確でございます。

 実は、アメリカにおいてもそういう判断のもとに、先ほど言いましたように、この水準を決めるに当たっては、経済合理性、さまざまな意味での妥当性というものが議論されたものが法案になっている、審議会のレベルというのがもっとどこか下にあるんだ、そういう御理解をぜひ賜っておきたいというふうに思います。

 そして、私たちは、今、政府の提案でございますけれども、こういった公平な、妥当なシステムの中に生活保護の関係というものを加えて入れ込もうとしているわけでございます。

 これは、経済の合理性あるいは経済の流れの中にあるとはいえ、憲法が保障している最低水準の文化的生活ですか、そういったこともやはりこの賃金体系の中に反映することは、日本の今の状況から考えて、決して妥当性を欠くものではないという意味でありますが、実はかなり思い切った判断であるというふうに私どもは受けとめるべきだというふうに思ってございます。

 そして、その結果というのは、これも提案者の方のお話にあったんですが、毎年一円とか二円、そういうことを慎重にやっているうちに先進国の中で日本の最低賃金は最低になってしまって、その結果云々かんぬん、こういう先験的御判断があったようでございますけれども、少なくとも、私たちは、今、成長の成果というものを何とか早く国民経済全体に裨益をしようということで、民主党も自由民主党も公明党も一生懸命に意思を明らかにしてきたわけであります。そして、そういった意思というものが多くの方々に御理解をされる中で、御案内のように、この表にもございますように、例えば、二〇〇七年の改定、つまりことしの改定では、一円、二円ではなくて十数円の改定が既に行われている。その事実も御案内になっていないのではないかと思われるような御発言でありました。

 そして、今回、生活保護との関係というものを新たに判断要素に入れるということは、先ほど申し上げたように、これはかなり大きな制度変更であり思い切った決断である、他の要素も消していない。といたしますと、私の想定でございますけれども、結構大きなインパクトが最低賃金全体に与えられるというふうに私は思います。

 一円、二円ではない、三円、四円ではない、五円、十円でもなくて、もう少しいい水準のインパクトが与えられるだろうというふうに私は想定をし、そのことを、もちろん審議会の方々が議論した結果でありますから、今先験的にどうこう言う立場の方がこの中におられるとは思いませんけれども、もしそうなったとしても、舛添大臣は、それは高過ぎるとは言わないはずだというふうに思いますが、大臣、いかがでございましょうか。

舛添国務大臣 高過ぎると言うか言わないかですけれども、これは基本的に審議会の場で経済情勢をきちんと精査した上で決めているわけですから、先ほど来の委員の議論のように、成長率との兼ね合い、こういうことを考えれば、私は、基本的に公正な水準で決められているというふうに信じております。

萩原委員 ありがとうございました。

 まさにそのとおりでありまして、私たちがゆだねていくと、今度新しい要素が入ってきたときに、それが、私としては、例えば五十円とか三十円とかそういう引き上げになっても、大臣としては妥当なものである、公正なものである、こういう見解を恐らくお述べになられるだろうというような改正が今企図されているんだ、そのことは提案者の方々も含めてぜひ御理解を賜りたいと心からお願いし、そして、その非常に大胆な提案を、十分な議論もされない中で一円、二円というふうに先験的におっしゃる根拠がもしおありになるんだったら、ここで、提案者にその根拠について御説明をいただきたいと思います。(細川議員「何の話ですか」と呼ぶ)

茂木委員長 結局、引き上げが一円、二円と小さいということに対して、合理的な根拠があるのならという話だと思います。

萩原委員 要するに、今回の政府案を念頭に置かれた上で、一円、二円という引き上げしかできないんじゃないかという御議論があったようでございますので、その根拠はどうなんだということをお聞きしたわけであります。

細川議員 私たちは、最低賃金を決めるためには、その基準として、労働者一人そして子供一人の生活費を基本に決定したい、こういうことなんです。

 しかし、これまでは、最低賃金というものが生活保護の基準よりも低い、これが日本の中でも生じていたわけなんです。したがって、私たちは、そういうことではだめだということで、労働者一人とそれから子供一人の生活費を基準で上げなければだめだ、こういう主張を法案の中でしてきたわけです。

 したがって、生活保護との整合性ということだと、それだけでは、生活保護の基準まで行くのか、あるいは同等のような程度では私たちは不十分ではないかという判断をしておりました。

萩原委員 どうも、御理解をいただいたような、ようでないような、はっきりしませんが、次の質問に移ります。

 ところで、今提案者がおっしゃったように、不十分である、そして、民主党の方々は、全国最低賃金を八百円にするんだ、そして平均をそのうち千円にするんだ、こうおっしゃって今でもおられますか。

細川議員 今でも思っております。

萩原委員 そこでお伺いしますけれども、まずその前提として、アメリカの最低賃金の決定の法形式は、これはダイレクト、じかに単価書き込み型というふうになっているということをまず確認させていただきますが、それでよろしゅうございますね。

細川議員 はい、そのとおりであります。

萩原委員 八百円にしたい民主党が、なぜそういう法形式を選択されなかったんですか。

細川議員 これは、世界に二つの決定の仕方がありまして、法律の中にしっかりと最低賃金の額を法定するということと、もう一つは審議会の中で審議をして決定する、こういう方法が二つあると思います。世界の大勢は、審議会方式が多いということでございます。

 そこで、アメリカは法定で金額を決める、こういうことになっておりますけれども、先ほど委員が言われたように、経済の情勢がずっと変わっていっても、これは、最低賃金が法定されていますから、法律を変えなければ変わらない、こういうことになります。しかし、審議会方式だと、その時々の審議会に諮問をして、審議会で決定をしていく、こういうことになりますから、私は、審議会方式がいいのではないかというふうに思っております。

萩原委員 私も、その立論には全然違和感がないんですけれども、違和感がございますのは、では、なぜ八百円になるということがおわかりになるんですか。

 そして、もう少し言いますと、先ほど私が舛添大臣に何ぼになるかなみたいな質問をしたときに、絶対にお答えにならなかった。それが当然なんです。であるからこそ、公正な審議会に議論をゆだねるということが言えるわけで、大臣が何ぼになるだろうとかおっしゃっておられたのでは、この話、元も子もないんですね。その同じ構造がここに出ておられる。

 つまり、私たちと同じように、審議会というものが意味があるよ、こうおっしゃりながら、八百円になるんだとかするんだとかということがなぜ言えるのかというのが、どう考えても理解が難しいし、恐らく矛盾をしておられるというふうに思います。いかがでございましょうか。

細川議員 これは、法律をつくる場合に、審議会の中でいろいろな要素を考慮して、最終的な最低賃金を決める。そういうときに、法律を決めるときに、大体どの程度のことを目指すのかというようなことも、それはやはりある程度立法者としては検討しないと、最低賃金を上げられるつもりで法律をつくっても上がらないような状況では、これは何の意味もないわけです。

 それは、立法するときには、どの程度のことを考えているのかということは、あって当然だし、私どもも、法律で明示するような額そのものを言っているわけではなくて、やはり八百円ということを目指すということで、それは審議会の中で決めていただくということには変わりはありませんから、別に私どもの法案でいったら八百円と言っているわけではないんです。八百円を目標というか目指しているというようなことでございます。

萩原委員 今のお話を聞いていますと、やはりおかしいんですね。八百円を立法者が意図しなければいけない、その情報というのは一体どういうルートで審議会に反映されるんですか。審議会では生計費だけを議論するのではなかったんですか。

細川議員 その生計費ということに、何を考慮して生計費を決定するかということで、いろいろな情報があるはずなんです。生計費というものに、例えば、食料だとかあるいは住居、光熱水道費、それから被服、保険、医療、通信、それから教育、娯楽費とか、いろいろあろうと思います。それを、どういうところを入れていくのか。例えば、医療費なんかはどうするのか。医療費なんかを生計費の中に入れるかどうかということをこの間の委員会でも議論をしたわけなんです。

 そういうことによって、審議会の中でいろいろ判断していただいて最終的な最低賃金を決めるということですから、それは、立法者がどういうようなことを生計費の中に入れて御判断いただくかということを考えるのは、僕は当たり前だと思いますよ。

萩原委員 それではまた、もう一個同じ質問ですけれども、立法者が何を入れるとおっしゃっておられるのか。そして、生計費といっても、非常に、今の話にもあるように、御答弁の中自身に、医療費を入れるのか入れないのかという話もあった。そして、その前の御答弁では、審議会でいろいろなことを御判断されるという話がありました。

 ちょっと話を戻して聞きますけれども、この審議会は、どういう方が代表で出てこられて、何を議論するんですか。もう一度、そこまでおっしゃると頭が混乱しますので、お知らせ願えますか。どういう方々が出て、何の観点から何の議論をするのか。明確に、民主党案におけるこの中央最低賃金審議会の委員の構成であるとか委員の発言の立場であるとか、正当な論拠は何かということについてお知らせいただかないと、これはもう議論ができません。よろしくお願いします。

細川議員 私どもは、中央最低賃金審議会は、二十八条にも定めておりますように、労働者を代表する委員、使用者を代表する委員、それから公益を代表する委員、また、これは同数の数でというふうに考えております。民主党案によりましても、最低賃金法二十八条、今の二十八条は改正をしておりませんので、その構成については変わりはない、こういうことでございます。

 それから、何を材料にというような話でございますけれども、中央最低賃金審議会におきましては、民主党案では最低賃金法九条一項にありますように、厚生労働大臣の求めによって全国最低賃金の調査審議を行うということになります。

 そこで、この際、この審議会におきましては、民主党案で定めておりますように、労働者及びその家族の生計費を基本として決めますから、労働者及びその家族の生計費のデータ等、そういう必要となる資料をもとに議論をしていく、先ほどちょっと申し上げましたように、いろいろなものがあると思いますけれども、それを判断して決めていくということです。

萩原委員 今のお答えに明らかなように、矛盾とは言いませんけれども、これは非常に変わった構造になります。つまり、生計費だけの議論をするんだ、生計費にもいろいろなバリエーションがあるけれども、生計費だけの議論をするんだと。

 今まで使用者側の方々は、私どもの会社ではお支払いができる、あるいは、私どもの会社ではこういう賃金体系があるのでこれを参酌してそれは妥当だとか何かという、経営者としての固有のスタンスに立った議論ができておりました。

 今回は、その固有のスタンス、つまり、生産性でありますとかそういうことを全部含めた上での支払い能力についての議論が正当にできる根拠を奪っていながら、なぜ参加をせないかぬのかというところが非常にわかりにくくなっている、そういった議論の正当性も担保されなくなってくる、こういう構造になっています。

 さらに、生計費だけでいいますと、家族の構成を変えるかどうかというようなことはこの間も議論がありましたが、そこを変えないと、基本的にはCPIになっちゃうんです。細川さんがおっしゃったさまざまな要素を全部総合的に勘案するとCPIになる。

 基本的にはこのCPIの議論というのは一番大きな議論でありまして、さっき申し上げたように、私が非常に危惧しているのは、この民主党の形でいくと最低賃金が下がっちゃうんです。だからびっくりしているんです。

 なぜ、下がる案を出しておいて八百円だと言うのか。私がもし合理的に話をずっと審議会でさせられたら、これは下げざるを得ないんです。六百五十円を六百三十円にせざるを得ない案をお出しになっている方がそんなことをおっしゃるから、僕らは、本当にこの方々は労働者のためにまじめに考えておられるのかということについて多大な疑問を持たざるを得ないから、こう申し上げているんです。

 どうぞ、そういう危惧が自民党内にもあることだけは御理解をいただいておきたいというふうに思います。

 次に、もう一個伺っておきたいんですが、平均千円だという話がありました。これは根拠はございますか。

細川議員 民主党案では、労働者及びその家族の生計費を基本ということにしております。そこで、全国最低賃金は八百円、それから地域最低賃金は全国平均で千円、いずれもこれを目指すということにしております。

 それで、この数字を出すに当たりましては、健康で文化的な最低限度の生活ができること、労働力の再生産に必要な最低限度の生活ができること、それから最低限度の社会的体裁が保持できるためには必要最低限の生活費として必要な費用は幾らかということで、私たちは、大都市の労働者そして地方都市労働者について実施をいたしましたモデル試算を基準にして、世間の実態を踏まえつつ積算をしたところでございます。

 その結果、労働者そして子供一人当たりの食料費あるいは住居費、光熱水道、被服、医療費、交通通信費、教育娯楽費その他交際費等を合わせて、大都市労働者では約二百万、それから地方都市の労働者でも大体百八十万弱は必要だという結論に至りました。ただ、これに車の保有費用なんかは含まれていないところでございます。

 そういうことで、全国最低賃金というのは、全国すべての地域で生活の最低保障のための最低賃金額、すなわちナショナルミニマムの水準を保障するということになっております。

 一方、物価の中の差もあったり、あるいは、労働者とその家族の生計費は全国でいろいろと差異もございます。そこで、全国最低賃金では生活ができずに、これを適用することが不適当な地域もある、こういうことで、民主党案では、このような地域においては、最低賃金の適用ではなくて、この地域に合った、地域の生活費に応じた適切な最低賃金を設定できるということで想定をしておりまして、その結果、地域の最低賃金は全国の平均で時給千円というようなことを考えて想定をしているところでございます。

萩原委員 ちょっとわかりにくい答弁でありましたけれども、要するに、都市と田舎とか比較されたわけですね。四十七都道府県ございますね、一番高いのはどこですか、そしてそこは何ぼぐらいになりますか、計算されたとおっしゃるので聞きますけれども。

細川議員 私たちが調査をしてこのような結果を出しましたのは、一つは首都圏という意味で、首都圏が一番物価も高いだろうというようなことで、東京ではなくて首都圏ということで、埼玉を選びまして、さいたま市を一つモデルにとりました。それから、地方の都市ということでとりましたのが、これは宮崎県の延岡市というところで、そこをモデルの地域として調査をいたした、そこからモデルの賃金を考えたということでございます。

萩原委員 延岡とさいたまを足してなぜ千円なのかという根拠が全く出てきませんけれども。

 お手元に非常に簡単な統計上の一般則をお示ししています。真ん中の表でございます。左側は、平成十九年度における今の最低賃金体系の両端と平均がありまして、七百三十九円が最高で、六百八十七円がごらんのとおり平均値、下が六百十八円です。この分散の幅が、上に七%、下に一〇%になっています。妥当な幅というか、大体こういう幅で動いているんですけれども、これが今までの実態を反映しています。

 そして、民主党案は、最低が八百円で、そして中間値である、恐らく平均値と考えているのが千円です。提案者に伺うまでもないんですが、平均と最低が二〇%開いているというのは、分散の形が物すごく大きいということを既に示しているんです。そして、今の分散と同じ形をとるとすると、上が千百四十円になって、実は、今二〇%の分散に入っている全国の最低賃金の分散幅が、最低だけでも二〇%、そして民主党案を私たちが素直に解釈すると、倍の四三%、場合によっては五〇%に拡大するんです。

 これは、格差是正をおっしゃっている党として提案されるには、なかなか大胆な提案である。格差問題を拡大するということがこの最低賃金の中で明確に出ているということは、レコードにぜひ残しておきたいと思いまして、こういうお話をしていますけれども、いかがでございますか。

細川議員 御指摘をいただきまして、大変よくお調べになっておると思いますし、お調べになった結果からいきますと、こういう差が出ているということで、ここは差が出ているということについては私も認めたいというふうに思っております。

 ただ、最低賃金を決める場合に、格差ということも、これは当然考慮もしなきゃいかぬ観点かと思いますけれども、しかし私たちは、何といっても、労働者とそれから子供一人の生活費、最低限どれだけ生計費がかかるのか、その生計費を基本として、やはり、憲法でいう健康で文化的な最低限度の生活はどうなるかとか、そういうこともいろいろ考え、そして、働くことですから労働の再生産なんかも考えて決めていくということで、格差の問題については、またいろいろな政策の面で、地方の格差とかいろいろな格差の是正ということは当然努めていかなければいけないというふうに思っております。

萩原委員 お認めになった上での発言ですからこれ以上質問はしませんけれども、もし最低限の生活を守るという観点であれば、生活保護の分散がどれぐらいになっているか御理解をされた上でこういった最低賃金についての立論をされることが今後の政策の信憑性を主張される上で重要かと思います。丁寧に、そしてきちっとした議論を今後とも行っていただきますように、心からお願いをいたします。

 もう一つ矛盾に近い話がありますのでお話をさせていただきます。

 これも御質問にはしませんが、中小企業対策が要るんだということを川条議員の質問に対してお答えになって、そのときに、たしか一千九百億円規模、仮に八百円に上がった場合、こうなっているんですけれども、それはそれとして、一千九百億円がどう出せるかとか何に使うんだという議論はあるんですが、もう一個大きな論点は、民主党案でいきますと、千円とか千何百円という水準になった地域の対策はどうするのかということが抜けているんですね。

 物のマーケットは全国共通です。あるいはグローバルに同じなんです。そして、ある地域だけ、その地域の生産性の差はあります。全要素生産性といって、東京は東京における金融マーケットの生産性というのは岡山より高い、それはあるんですけれども、それを超えてぐっと賃金が上がったときに、中小企業の方々を含めて太刀打ちができませんね。岡山の鋳物屋と川口の鋳物屋は、生産性は大体同じなんです。川口はたしか埼玉ですね。これは大変なことになるんです。

 八百円までは保証してくれたけれども、千二百円の部分は一体どうされるおつもりでございますか。

細川議員 それは、地域地域でそういう経済事情は違いますけれども、そのことについては、この国会あるいは政治で、地方の分権というようなことも含めて、地方独自で、産業の育成とかいろいろそういうことで地方で頑張っていただく。しかし、それには国の方だっていろいろ努力はして、前回の委員会で申し上げましたような中小企業対策についてはきちっとそれはやりますけれども、御指摘の点については、私どもも重々考えていきたいというふうに思っております。

萩原委員 この辺で最賃法の話は終わらせていただきたいんですけれども、今お話ししたように、冒頭に言いましたが、我々としても、政府案として、実は非常に思い切った、最低賃金を制度的な意味で上昇させよう、そして成長や成果の配分をきちっとしていこうという考えに立っている。そして、民主党案については、思いはあるんだけれどもどうもうまくいくとは思えない、余りにも矛盾が多い。ぜひ、いい形で、よいところだけが残るように、提案者にも御協力をお願い申し上げて、この項の質問を終わります。

 続きまして、労働契約法でありますが、時間が大分たっておりますので、幾つか質問にかえて申し上げておきます。

 やはり労働契約のあり方というのは、その市場あるいはその国の経済の成長、発展、さらには、当然のことでありますけれども、社会的な安定、不安定につながる大きな課題でありますし、歴史的に見ると、この労働政策というものを過ったことが大変大きな社会的混乱に結びついているケースというのがさまざまにございます。そして、その過つケースというのは、ほとんどのケースが、労働者の保護を一生懸命やる方々がその裏側における供給曲線を無視してしまうことによって常に起こしているわけであります。

 中南米における、一九八〇年代、非常に各地域において失業率が高い。見ると、解雇無効ということ、あるいは解雇についての政府の許可が必要だという法制が当時の労働者保護という観点から導入されたことが、あの地域におけるあの時期の失業率の増大につながっている、これはもう労働経済史のある意味では定説になっている。

 あるいは、二〇〇五年のパリの郊外での暴動事件がございましたけれども、移民の方々を含めて失業がふえる。失業が移民の方々にふえているのは、これは社会的差別の問題というふうな部分と、一方で、フランスにおける労働法規が、いわゆる硬性、つまり解雇不能型になっているために、現役を尊重し、新しい方々が、フランスの母国出身であろうがなかろうがどうも強く排斥されざるを得ない、そういう形になっていたことというのが背景の柱である。このことは、きょう御参集の方々はみんな御理解だと思いますし、また提案者にも御理解されておられるというふうに目線で感じておりますので、よろしくお願いしたいと思うんです。

 そして、それが非常に大きな問題になったために、労働契約について、我が国と同じように、濫用廃止論というものをとろうという意見が出るんですけれども、それを全部の労働者にやることはもはやフランスの政体として難しいので、一定の若者、たしか二十六歳というのを基準にして、その辺の何年かだけについて解雇正当論というものを導入しようとしたものですから、今度は、何で自分たちの世代だけにそのしわが寄るんだということで、逆の暴動につながっていく。

 いかにもこれは、私たちがやってはいけないことの典型を示している。そういう危惧をこの民主党提案の法案には私ども強く感じている。そのことをぜひ、これは質問したかったんですけれども、時間がこうなっていますので、お話を申し上げて、この点については終わりにさせていただきたいと思うんです。

 次に、主に三点だけ、これは伺っておきたいと思うんです。もしお答えがあればいただきたいと思います。

 まずは、この法案が本当に労働者のためになるのかという観点から幾つか聞いておきたいと思うんです。

 例えば、労働契約の成立について、十分な情報というのが民主党案ではいわゆる縛りになっていますね。政府案ではそれは縛りになっていないで、別条で、使用者側から雇用者に対して十分な情報を提供しろという形になっています。そして、民主党ではそこがなくて十分な情報となっているものですから、これは使用者側から見ても、労働者からの十分な情報がなかったら解雇できるということになるので、労働者の地位が不安定になるんです。そのことはどうお考えになっておられるのか。

 八条において、これは民主党案ですけれども、健康診断に縛りをつけています。これはある意味では理解できないこともないんですけれども、健康診断の必要性が高い企業においては、健康診断に制限をつけると、基本的には医者の診断書を持ってこいという対応になるんです。そうしますと、労働者の方々がみずからお医者さんに行って診療、診察をしてもらって、健診をしてもらって、証明書を発行代を払って持ってくるというので、労働者の手間と時間が物すごくかさばるんですね。それは本当に労働者の方々のためになるのか。

 次に、民主党案の第九条で、内定通知を発したときは、「その時において労働契約が成立したものと推定する。」とあるんですが、これは内定が一個の企業対一個の個人オンリーであればある程度理解はできなくないんですけれども、通常、若い人たちの活動を見ますと、A社、B社、C社と内定をいただいて、最後、本決まりのときまでにその判断をする。それに対して、自分のところに内定をしたから、おまえ、来ないのはおかしいじゃないか、契約違反だというようなことは企業から言えない形になっています。

 このときに、内定通知を企業が発した瞬間に双務契約である雇用契約が成立してしまいますと、これは悪用されますと若い人たちが大変な目に遭う可能性があるんです。その辺は十分お考えになった上でおやりになられたのか、大変な不安を覚えるわけであります。

 それから、民主党案の第三十八条で、雇用契約について契約期間を限定することになります。この議論というのは、それは一つの意味があるんですが、これと、それから正規雇用と非正規の賃金同一規制というものがありまして、お手元にありますように、現行における、九月における有効求人倍率、全国で一・〇五ですけれども、このうち、正規が四四、その他が五五というふうになっていまして、ここのところに実は非常に大きなダメージが起こる可能性があって、この法案が成立して施行されたら、恐らく有効求人倍率が一を切ることは間違いないんです。当然そのことも御理解をされた上でのお話ですか。

 以上、本当にこの法案が労働者のためになるのかという観点から、私ほかにもいっぱいあったんですけれども、六点ほどお尋ねいたしますが、もし御見解があればお願いをしたいと思います。

細川議員 まず、三条での十分な情報、一番最初はこれでございましたかね。

 これは、私たちがこの十分な情報ということを規定いたしましたのは、会社と労働者が契約を結ぶ場合、やはり何といっても使用者側に情報量が多い、交渉力においても格差が存在をするということはもう明らかでありますから、そういう意味では、契約の締結あるいは変更に際しては、使用者と労働者との間で実質的な対等性を保つために、私たちは、むしろ、重要なたくさんの情報を持っている会社側、使用者側からしっかりした情報を出しなさい、こういう趣旨でこの規定はつくった、こういうことでございまして……(発言する者あり)そういう趣旨でつくりました。

 それから、健康診断のところで、かえって労働者の負担になるのではないかという御指摘ですけれども、しかし、むしろ私たちが一番心配をしておりますのは、選考時に健康診断を労働者の方に提出させるというときに、どうしても必要な形での健康診断の場所だけではなくて、かえって必要でない情報までもとるのではないかというような心配があってこの規定はつくったんです。

 というのは、例えばHIVだとか肝炎のウイルスの感染の有無とか、そういうようなことまで健康診断をされるということは、これは個人の秘密、個人の情報がそういうことによってあえて会社側にとられるということを避けるために、こういう八条の規定はつくったわけでございます。

 それから、あと、内定通知のこともありました。内定通知を発したときに労働契約が成立をしているというのは、これは労働者の方にとって不利ではないか、こういうことでございます。

 先ほども出ましたように、学生があちこち、いろいろとたくさんの内定をして、そしてその一つだけを選ぶということは、最終的に学生に対して損害賠償とかをされるのではなかろうか、そういう御心配だろうと思うんですけれども、私たちが、内定通知を発したときに契約が成立する、そういうふうにつくったのは、逆に、学生が内定をしたけれども、三月の末日になって、そのときに内定の取り消しをされたりすると、これは学生にとって、将来、本当に重要な人生の大事な就職で、そこで就職ができなくなるということを心配して、むしろ労働者側にとって心配であるから、しっかりと、内定を発したときに契約が成立をするということで、内定したら、もう企業の方は直前には取り消せませんよ、就職直前に取り消すということはできませんよという趣旨でこの規定はつくったということでございます。

 あと、三十八条で契約期限を限定する場合にということで規制をしていることがかえって就職率を悪くするんではないか、こういう御質問だったと思うんですが、平成十九年九月の一般職業紹介状況を見ますと、有効求人倍率は一・〇五倍、正社員有効求人倍率は〇・六二倍となっております。御質問の趣旨は、先ほど言ったように、これによって正社員の求人倍率はむしろ上がらないんじゃないかという御心配でしたね。

 我が国にとりまして、そういう期間を定めることに十分な理由がなく、継続的な雇用を予定しているにもかかわらず期間の定めがなされたり、専ら雇用調整のために短期契約期間を定める、いつでも切れるというような状態にしておくことが見られるわけであります。そこでトラブルの発生が多いということで、民主党のこの案におきましては、期間の定めのある労働契約を締結する際には、三十八条の第一項の規定を掲げる、入り口を制限することにして、本来における期間の定めのある労働契約をしていただけるというようなことであれば、特に新規の有効求人に影響を与えるものではないんではないか。今までも会社がしっかりしたことをやっているのを、そのまま契約をそれで締結していただければ、影響は余りないというふうに思っております。

茂木委員長 細川さん、こういうことだと思うんです。今、民主党案でいうと、要するに、雇用者側とそして労働者側の双務性が高まる。双務性が高まることによって、今までなかったような負担がふえたりとか、不利益の部分がふえるんではないですか、こういうのが基本的な質問だと思うんですけれども。

萩原委員 委員長、お答えいただきましてありがとうございました。まさにそういう問題だと。

 実は、もう一回念のため言いますと、健康診断についても、一部の方の利益に、それはそのとおりなんですが、一方で、契約のときに双務的な意味で十分な情報と書かれちゃいますと、この健康診断の規定と矛盾してくるんですね、使用者側から見て十分な情報が必要だと思ってしまった瞬間にそうなっちゃうわけですから。

 だから、今のお答えから明らかなように、確かに一部のケースや思いについてはあるんだけれども、それを達せんがために他の多くの労働者の方々の負担がふえてしまうというケースが非常に心配だというふうに総括を私からさせていただき、もう一個申し上げますと、特にそういうケースとしてあるのは、本人の問題はさておき、転勤についての組合の協議というのは、もし組合と本人が仲が悪かったらどうなるのかと思うと、労働者の方々は本当に心配されておられます、これは典型的な問題ですけれども。

 加えまして、今度、もう一個だけ論点を追加しますと、産業の社会にとって本当にこの法案がいいのかという論点も当然あります。

 今まで各先生方がおっしゃったことに加えて、例えば退職後の秘密保持について、民主党案は十九条で、保持すべき秘密及び当該秘密を保持すべき期間を、それぞれ、要するに当該労働者の退職の際に書面により明示するんです。秘密を書面により明示して、交付するんです。これはなかなか難しいんです、やろうとすると。物すごく悩んじゃうんです。一回実務的に考えられたらわかるんですが、これは執行不能な規定なんですね。この点はぜひ御理解をいただきたい。

 あるいは、十八条もなかなかのすぐれものでして、退職手当の不支給または減額について、一応本則的に、第一項でちゃんと事前に定めておくべきだと書いてあるんです。これはこれでいいんですけれども、次にまた同じ条項が出てきまして、「事業の継続が困難となる等」やむを得ない場合でなければできないんだと。この「等」があるものですから、物すごく条文が不安定になってくるんです。労働者にとっても使用者にとっても、この「等」がある瞬間に何が起こるかわからなくなってきて、本来、労働契約法というのは、使用者や労働者にとって労働契約を安定させようという法目的で立案されようとしている法律の中に不安定要因を拡大する条項があるということは、ちょっとこれは産業界にとってよくないかもしれない。

 そして、最後に一点だけ、御質問の時間がありませんから、論点として提供しますけれども、立法技術あるいは立法的な良心として問題があるのは、例えば民主党案の第二十四条に、今まで国会で恐らく一度も議論が出たことがない労働契約変更請求権というようなものが出てきている。つまり、ストライキをする前に裁判所に行けという話をしているんですね。これは僕らも、見たこと、学説書もほとんどないんです。それから、同条には、「別に法律で定めるところにより、」と書いてあるんだけれども、この法律についての説明がない。

 それから、第二十九条、これは最後の方ですけれども、これもこう書いてある。これは附則の第二十九条ですけれども、附則第二十二条から二十八条に定めるもののほか、「この法律の施行に伴う関係法律の整理については、別に法律で定める。」と書いてあるんです。

 もしこの別の法律の内容がわかっていれば教えていただきたいんですけれども、わかっていなくて、バイタルにこの法律の施行に絡む法案があったとしたら、これは大変なことになります。別法で定めることは否定しませんけれども、同じ国会に出しておかないと、別の国会に出したときに、国会ごとの意思が違ったら施行不能になる可能性がここに秘められているんです。これは通常やらないことなんです。

 こういった意味で、私はこう総括をさせていただきたいと思うんです。

 労働契約法案、これは今後の日本の労働社会を規律する非常に重要な法案、そして、数十年にわたるさまざまな判例を積み重ね、その中で労使双方から見て妥当だと現在合意できるものをまとめてできた法案です。したがって、将来の成長の可能性があります。将来の成長に民主党の提案を生かしていただきますように心からお願い申し上げて、質問を終わらせていただきます。

茂木委員長 次に、井澤京子君。

井澤委員 おはようございます。自由民主党の井澤京子でございます。

 今国会より厚生労働委員会に所属することになりまして、初めての質問でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

 さて、本題に入る前に、どうしても一つ触れなければならないこの一連の動きがあります。大臣の御所見をぜひお伺いしたいと思います。

 振り返れば、七月の参議院選挙では、これまでの強行採決と言われる国会の運営や年金問題、また、政治と金の問題について、国民に対し真摯な態度での説明責任が十分に果たされていなかった。その結果として、民意がこのような結果を出した。衆議院、参議院、ねじれ国会という事態になりました。

 改めて、私たちは、自戒の念の意味も込めて、反省すべき点は反省して、国民の信頼を回復することに一丸となって努力しなければならないと思います。

 今回も、福田総理と民主党の小沢代表による党首の会談が二回にわたり行われ、今日に至っていることは、私が触れるまでもございません。

 この臨時国会において、第一党である自由民主党の安倍総裁が辞任され、また、第二党の民主党小沢代表が辞任、そして辞意撤回ということは、この一連の動きは国民が理解できないことであります。

 連立という話は別にしましても、国会がねじれているからこそ、特に国民生活に密接に関係する重要な施策については、与野党の政策協議などを通じて、しっかりと議論を積み重ねまして、結論を得るための最大限の努力を私たちは払うべきだと思います。

 きのう、きょうの新聞報道、皆様もごらんになっていらっしゃるかと思いますが、最低賃金の改正法案や労働契約法についての修正協議が合意に向けて前向きに行われているということです。私も、そのことについては率直に評価をしたいと思います。

 そこで、昨今の情勢を踏まえまして、このねじれ国会の中、政策協議というものに対し、舛添大臣はどのようにお考えなのか、この局面をどう乗り切っていかれるのか、所見や御感想などあればお聞かせください。

舛添国務大臣 まず、私は政府案を提出して法案を成立させていただく厚生労働大臣という立場でございますので、その立場での発言は控えさせていただくということで、しかし、私もまた参議院に籍を置く国会議員であります。国会議員としての立場で、それからもう一つは、諸外国の政治をずっと勉強してきたという政治学者としての立場も踏まえて、私の所見を述べさせていただくことを委員長にお許しいただきたいと思います。

 こういうねじれ現象というのは、諸外国でたくさんあります。そして、一見、ねじれている、それから連立政権、これは問題が多過ぎるというのが私たち日本人の反応でしたけれども、私はずっとヨーロッパにおりまして、むしろ連立政権が普通である。それから、アメリカにしてもフランスにしても、例えば大統領を支える多数派と議会を支える多数派が違う、ではどうするのかと皆さん最初パニックになるんですけれども、例えばフランスのときは保革共存政権、フランス語でコアビタシオンというやり方でこれを乗り切ってくる。

 ですから、国会議員として、立法府の責任としては、これはきちんと、国民に対する国権の最高機関として国会が仕事をしないといけない。そこで知恵を働かせて、ねじれていても国民のためになる政策はきちんと法案の形でまとめるんだ、こういう意思をきちんと示し、それを実行することが私は責任ある国会議員の態度であると思います。

 ですから、それを、例えば大連立構想という形で持っていくやり方もあるかもしれません。しかし、一つ一つの法律について、それぞれ皆さん、いろいろな思いを持って各党派が出されるわけですから、そのいいところを、そしてまた欠けているところを補いながら、よりよいものに仕上げていくという形で責任を果たすということは、こういう難しい状況にある国会議員として最高の役割だと思いますので、今委員がおっしゃいましたように、最低賃金法それから労働契約法について、会派を超えて真摯に一つの答えを出そうとしている御努力をなさっているということも私も聞いておりますけれども、これこそまさに私は国会議員のかがみであると思って、高く評価したいと思います。

井澤委員 大臣、ありがとうございました。

 国会議員としての立場、諸外国での政治学者としての経験を踏まえて、連立政権を多く見られてきた、ねじれた中でも国民のために法案を通してまとめ、実行すること、一つ一つの法案をよりよいものに仕上げて、国会議員としてこれが最高の役割ではないか、会派を超えて真摯にやっていきたいと、力強い御答弁、本当にありがとうございました。

 では、早速ですが本題に入らせていただきます。

 まず、労働契約法案についてお伺いいたします。

 皆様は、厚生労働省に寄せられている総合労働相談というものを御存じでいらっしゃいますでしょうか。

 その内訳を見てみますと、会社対個々の従業員の間の民事紛争というのは、平成十四年からかなりふえております。平成十四年度では約十万三千件、平成十五年度では十四万件、平成十六年では十六万、そして平成十七年ではまた十七万、最近では、平成十八年のデータを見ますと十八万七千件と、年々、一年で一万件ずつふえて、わずかこの五年間で八万件も民事紛争はふえ続けております。

 景気が悪くなれば、どうも労使間の紛争がふえていくのではないか、いや、景気がよくなれば減るというようにも考えがちですが、その背景を見てみますと、完全失業率は、平成十四年度で五・四%のピークを迎えて、最近、平成十九年の九月では四・一%と、徐々に低下をしております。緩やかに雇用情勢が回復する中でも、労使間紛争というのは一貫してふえ続けているというのが現状です。

 この原因が、大きく分けて二つあるのではないかと思います。

 それは、まず一つは、働き方の変化ではないでしょうか。労使間の構造というのは、会社対組合から、会社対従業員個々人にと紛争が構造的に変化しており、増加傾向にもあります。

 もう一つの原因というのは、そのルールを定める法律が戦後から今まで六十年にわたりなかったこと、労使間の紛争が判例法理中心となって、その判例法理さえ十分に浸透していなかったことが原因ではないかと思います。

 そこで、企業実務、判例法理を踏まえながら、会社対従業員個人の現実的なルールを法律に明確化し、紛争を未然に防止しようという政府案には、私も賛成しております。ぜひとも早期に成立をしていただきたいと思います。

 現実の具体的な紛争というものを少し御紹介したいと思います。

 例えば、労働者にとって一番深刻な問題というのが、解雇だと思います。

 解雇の事案としては、例えば、娯楽施設を開設したところ、利用者の伸びが少ないからといって、何とわずか開業後五日間で従業員を解雇した事例。また、部下の時間外手当に対して、上司、管理者が正当に払ってほしいということで、その管理者が解雇された事例。あるいは、従業員を正社員からパートに切りかえるために、一たん店舗を偽装的に閉店をして正社員を解雇して、二カ月後に新規開店したという娯楽施設など、いかにも悪質な、質の悪い、従業員を解雇する、もう驚くような事例が多くあります。

 また、労働条件の引き下げについてもこんな事例があります。

 就業規則の改定で、一日の所定の労働時間を、時間の単価を切り下げて賃金を据え置きのまま延長し、代償措置もほとんど講じなかった事例などもあります。従業員の気持ちやその家族、生活に対する配慮に欠ける事例も数多くあるようです。

 これらを見ますと、政府案に盛り込まれた解雇権の濫用法理や就業規則の変更法理という、判例法理の中でも基本中の基本になる法理が、先ほども申し上げたように、まだまだ十分に企業側にも浸透していないのではないかと思わざるを得ません。

 そこで、厚生労働省に質問いたします。

 労働契約法案が成立した際には、法律の内容や関連する判例などを中小零細企業の経営者にも理解しやすく、わかりやすくするように周知徹底し、紛争を減らす努力が必要だと思います。これについてどのように取り組まれるのか、お伺いします。

青木政府参考人 個別労使紛争が大変ふえている中で、労働者が安心、納得して働くことができるようにするために、この労働契約法案というのは、おっしゃったように、いわば労働契約に関する基本的ルールを定めて、そういったことの防止を図っていくということであります。御指摘のとおり、これはやはりその趣旨の徹底、周知を図っていくというのは大変重要だというふうに思っております。

 この労働契約法案を成立させていただきました暁には、現在の判例法理や実務に即した適切な法律の解釈、運用がなされますよう、わかりやすいパンフレットを作成して、これを活用して周知をいたしたり、あるいは、都道府県労働局に総合労働相談コーナーがございますが、こういったところで相談を受けた場合には、これらのルールを十分に説明して、理解の促進に努めてまいりたいというふうに思っております。

井澤委員 まことに御丁寧な御答弁、ありがとうございました。

 実は、今回の質問に当たり、地元の中小企業を何社かヒアリングいたしました。すると、こんな話を聞いたんです。よく聞いていただきたいと思います。

 ある方が労働基準局に電話をしました。労働三法についてわからないから教えてほしいと聞いたところ、すぐに回答がなかった。再度、わからないから、では、厚生労働省が管轄だろうから厚生労働省に聞いたらいいんでしょうかねとその方がおっしゃったら、いや、厚生労働省は各部局にまたがっていて複雑でわからない、電話に出た方がそんな回答をされたということです。きのうの新聞にも載っていたから、それも知らないのかと聞いたら、何と最後に、新聞社に聞いてくれと言われたそうです。

 わからないからその方が、企業の経営者なんですが、気軽に聞いたのに、こんなことでいいのかとあきれ返られたというのが現実なことです。これが国民の最大の不安となっている年金問題の根幹ではないかとあきれ返られたと言われました。

 年金問題の社会保険庁の責任に始まり、肝炎問題など、労働省が社会的に信頼を失っているときだけに、職員一人一人が問題意識を持ち、利用する人の目線、気持ちになってほしいと私にまず訴えられました。

 今回相次いで起こる不祥事を見ると、現場の意識改革はまだまだなされていないのではないかなと感じていることが多くあります。職員一人一人が利用する方の視点、気持ちになって、本当に誠心誠意取り組んでもらわないとなりません。

 今回の法改正に当たりましても、先ほどおっしゃいましたよね、基本的なルールを周知徹底すると。まず身近な窓口から、そしてその電話対応から信頼を失うようなことはしていただきたくないと一言申し上げたいと思います。

 では、次に、民主党案についてお伺いいたします。

 実は、私ごとですけれども、大学卒業後、かれこれ二十年前になりますが、すぐに社会人としてスタートしたのが人材派遣会社での営業でした。その後、製造業で仕事をした際にも、採用から退職に至るまで人事担当者として実務を行ってまいりました。常に働く人のサポートをしてきたという自負もございます。

 二十年前というと、まだ働く女性も少なくて、まして派遣という言葉も、そういう言葉というか仕組みも、社会的に認知はされていませんでした。派遣というのは、必要なときに必要な人材を必要な時間だけ派遣するというシステム、これを説明してもなかなか理解が得られなかったというのが私の経験です。

 また、人事担当をしておりましたころには、毎年三百人以上の学生と会い、早くからインターンシップ制などを取り入れたり、人材育成の仕事もしておりました。

 人が働くという現場の実務にも携わっておりましたので、その経験に照らしますと、民主党案はどうも実務の感覚からずれているんではないかな、机の上の議論であるんじゃないかな、余りに現実的ではないと思わざるを得ない点が多くあります。その点を幾つかお伺いしたいと思います。

 まず、有期労働契約に関する規定です。

 民主党の第三十八条第一項では、有期労働契約を締結できる事由として、第一号から第八号まで並んでいます。

 先日、同僚の井上議員が、この条項によって現在七百七十四万人いる有期契約労働者は何人まで減ることになるのか質問しましたが、明確な御答弁はありませんでした。しかし、七百七十四万人が七百万人になるのか七十万人になるのかわからないのでは、この規定の意味することが判断できません。

 この条項は、無期雇用が原則、有期雇用は例外であるべきという、べき論だけで提案されている、余りにも何か、大きな影響を持つ内容が不明であります。

 まず、提案者には、現在七百七十四万人いる有期契約労働者が何人まで減ることになるのか、改めてお伺いしたい。そして、その数字の背景についてもしっかりと御説明いただきたいと思います。

    〔委員長退席、吉野委員長代理着席〕

細川議員 それでは、お答えいたします。

 この有期契約者が民主党案ではどの程度減るか、こういう質問でございますけれども、民主党案は、三十八条第一項各号におきまして、臨時的または一時的な業務、そして一定期間内に完了することが予定されている事業など、有期労働契約が本当に真に必要とされる事項について列挙しているところでございます。

 と申しますのも、我が国におきましては、期間の定めをすることに十分な理由がなく、あるいは、継続的な雇用が予定されているにもかかわらず期間の定めがされたり、専ら使用者側の雇用調整を目的として短期の契約期間を定めて、いつでも労働者の方をいわば切れる状態にしておくことが広く見られるという、ここが、この労働契約をめぐるさまざまな不満とか、あるいはトラブルの原因になっているところでございます。

 労働契約の期間の定めは、多くの場合には不安定雇用を意味しておりまして、ひいては契約関係としての当事者間の対等性を損なうという原因の一つにもなっておりますけれども、これは、本来におけます期間の定めのある労働契約を結んでいない、そこに原因があるというふうに思っております。

 そこで、民主党案におきましては、期間の定めのある労働契約を締結する際には、先ほども言いましたように、三十八条第一項の各号に掲げる各事由があることに該当するということを明らかにしていただくということにしているわけでございます。

 有期労働契約者の数が実際にどうなるかということでありますけれども、厚生労働省が発表いたしました平成十七年有期契約労働に関する実態調査報告によりますと、有期契約労働者を雇用している事業主のうち、有期の契約社員に対して、有期契約とする理由について、何らかの説明を書面でしている、この回答が七〇%、何らかの説明を口頭でしているというのが二二%というふうになっております。残りの八%程度が有期契約であることの理由を説明しないというふうに回答しておりまして、この部分については有期契約をする理由がないというふうにも考えられるわけですけれども、本来におけます期間の定めのある労働契約を結んでいただくのであれば、際立って有期労働契約が減るというものでもないというふうに思っております。

 そこで、最終的な委員の質問の何人か、こういうことは、これは計算上非常に難しいというふうに私は思っております。

 というのは、これは民事の法でございまして、ある目的を持って、行政法規のようにこれを守らなければ罰則を科すとかいうようなことでやれば、これは数字的にもはっきりしたものが出てくるかと思いますけれども、この法律を守っていただけるかどうかという、民事効では効力がございますけれども、そういうような数を明確に出すというようなことについては、出せないということで、委員の質問には直接お答えができなくて申しわけありませんけれども、私の方からの回答にさせていただきます。

井澤委員 ありがとうございました。

 有期契約労働者が何人減るという、その計算が出せないという背景までよくわかりました。

 次に、女性が圧倒的多数を占める登録型派遣スタッフはこの中の何号に該当するのか、お伺いしたいと思います。

 登録型派遣スタッフというのは、厚生労働省の発表によりますと約六十万人を超えており、企業にとっては重要な戦力となっています。派遣スタッフにも、就職氷河期の中で派遣で働いている人もいたり、また、派遣という働き方が自分に合ったものとして積極的に選んでいる人も多数いるのが現状です。

 提案者は、登録型派遣をまさか全面的に禁止するとは思えませんが、登録型派遣はこの法案の第三十八条一項の何号に該当するのかについて、お答えください。

細川議員 お答えをしたいと思います。

 一般労働者派遣業において認められておりますいわゆる登録型派遣スタッフというのは、派遣会社に登録をしておいて派遣先に派遣をされる、その期間について有期労働契約を締結している、そういう労働者だというふうに考えられます。

 この場合、労働者派遣法に規定しております二十六の専門業務に該当する労働者でありますならば、私どもの四号の専門的知識あるいは技術または経験であって高度のものとして厚生労働大臣が定める基準に該当する専門的知識を有する労働者を雇い入れる、この四号に該当するというふうに考えられます。

 また、二十六専門業務以外の労働者につきましては、一号の臨時的または一時的な業務に使用するための労働者を雇い入れる場合、これに該当をするのではないかというふうに考えております。

    〔吉野委員長代理退席、委員長着席〕

井澤委員 ありがとうございます。

 登録型派遣を禁止しないということで、常識的な御判断で少し安心はしましたけれども、登録型派遣の持つ意義を正当に四号で評価されるというのであれば、有期労働契約の方はなぜ正当に評価しようとしないのか、非常にわかりにくい提案であることを指摘して、次に進みたいと思います。

 次に、労使協議の制度についてお伺いいたします。

 民主党案では、労働契約のさまざまな場面で使用者に労使協議が義務づけられています。

 例えば、今回の法案を拝見しますと、二十五条、就業規則の作成、変更、労働契約の内容変更についてあります。二十七条、転居を伴う勤務地の変更、二十八条、出向について、二十九条、転籍についてなど、いろいろ、三十四条に至るまで列記をされていらっしゃいます。

 就業規則の変更のような場合は職場全体に影響がありますので、制度変更について労使間で協議せよというのは、私の経験に照らしても理解ができます。しかし、転勤や出向、転籍などの個別人事に労使協議を求めるという考え方がよくわかりません。労働組合の出番をふやすことが目的なのかとさえ受け取れます。

 民主党案では、労使協議の当事者となる労働者代表とは、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合はその労働組合をいい、また、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合は労働者の過半数を代表する者とされています。過半数を組織する組合があれば、個人より組合優先ということです。

 しかし、転勤、出向、その対象たる従業員は、現実、多数派組合員とは限りません。多数派組合員の多くは今でもまだまだ正社員中心ですから、非正社員は非組合員の場合の方が多いのではないでしょうか。また、少数組合の組合員の場合でさえあります。そのような場合にまで多数派組合が本人の立場を代弁して会社と協議をするというのは、甚だ疑問に感じます。

 労働契約法案のもともとの考えというのは、就業形態の多様化などを背景に、会社対組合の関係で処理し切れない問題がふえていて、会社対従業員個人のルールが必要だという考え方が基本になったものです。それが、個別人事にまで広げて組合協議にかけさせようという方向はそぐわないと感じるのではないでしょうか。

 そこで、提案者にお尋ねします。

 転勤や出向などの個別人事について、過半数組合がある場合に、その組合との協議を義務づける理由は何でしょうか。また、対象者が組合員でない場合でも過半数組合との協議を義務づけるのはなぜでしょうか。その二つについてお伺いいたします。

細川議員 お答えをいたします。

 労働基準法とか雇用保険法、育児休業法なども、法律がいろいろあるんですけれども、それらの法律におきましても、当該事業場の労働者の過半数を組織する労働組合、また、そういう組合がない場合には当該事業場労働者の過半数を代表する者、そういうものと書面の協定がある場合には、その協定には一定の法的効果が与えられるというような、そういう規定になっております。

 私どもがつくりました労働契約法の整備につきましても、手続的規制の手法が求められているものでありまして、現行の過半数代表の考え方を準用して規定をしたものでございます。

 今先生から質問のありました転勤や出向など、これは個別人事でありまして、労働契約法はそうした労働者個人の交渉能力の向上ももちろん目指すものではございますけれども、しかし同時に、労働契約は企業という事業組織の中で行われます協働関係、お互いがこうやるという協働関係でございますから、本質的に組織的、集団的性質を有するというものでございます。

 すなわち、労働者と企業という契約当事者間の交渉力の均衡を図ると申しましても、そこにはおのずと限界というものがあるわけでありまして、企業内の民主主義遂行というような観点からも、使用者に対抗して、当該事業場におきまして交渉の相手となり得る正当な代表として取り扱われる主体として、民主党案におきましては、現行の過半数労働者代表制というものを前提にしているところでございます。

 しかし、特に労働基準法におきましては、事業場の従業員代表制が拡大をされてきたこともありまして、事業場を代表する労働者の主体がどうあるべきか、あるいは少数組合の意見をどういうふうに酌み上げるかとか、あるいは労働法の歴史におきましてこういう問題が大変大きな課題となってきたわけでございまして、今後の検討の大きな課題だろうというふうに思っております。

 そうした労働者代表制のあり方を今後検討されるべき課題として位置づけてはおりますけれども、今回の労働法案におきましては、とりあえず、現行の過半数代表制を採用したということでございます。

井澤委員 ありがとうございます。

 民主党の労働契約法についてはほかにも尋ねたい点がたくさんございましたが、次に、最低賃金法についてお伺いいたします。

 時間も限られておりますので、簡潔に御答弁の方をお願いいたします。

 まず、民主党の法案の第三条第一項には、第九条一項に規定する全国最低賃金及び第十条の四第一項に規定する地域最低賃金について規定しています。一方、民主党の御自身のホームページについては、全国最低賃金は約八百円、各地域の地域最低賃金は平均で千円を目指すということを主張しておられます。ここは、どうも一貫性が欠けているようで、よくわかりません。

 実際、全国最低賃金は中央最低賃金審議会で審議されることになっておりますが、中央最低賃金審議会において考慮される労働者及び家族とは、どこに住んで、どんな仕事をして、どんな家族なのか、そのことについて簡単にお考えをお聞かせください。

山井議員 井澤議員、御質問ありがとうございます。

 最低賃金についてでございますが、中央最低賃金審議会におきましては、民主党案による最低賃金法九条一項にありますように、厚生労働大臣の求めにより、全国最低賃金についての調査審議を行うこととなります。ただ、物価の差などにより、労働者とその家族の生計費は全国各地におきましていろいろな相違がありますので、全国最低賃金の額では生活できず、これを適用することが不適当な地域もございます。

 そこで、民主党案では、そのような地域におきましては地域最低賃金を決定することができることとし、その地域の生活費に応じ、より適切な最低賃金額を設定することと想定しております。

 そこで、全国最低賃金は、ナショナルミニマムの水準として、比較的生計費の低い地域が想定されることになります。そして、最低賃金を決定する際の考慮基準として、労働者及びその家族の生計費を基本とすることにより、最低賃金額は、最低限、労働者とその家族の生計費程度の額となるようにいたしております。労働者が安心して結婚し、子供も育てることができる額ということを前提にしておりますので、労働者一人当たりに子供一人という家族を想定しております。このような家族の食料費、住居費、光熱水道費、被服費、保健医療費、通信交通費、教育娯楽費その他交際費等を考慮することといたしております。

井澤委員 ありがとうございます。

 まだほかにも幾つか提案をしたかったのですが、最後にもう一問だけお伺いいたします。

 民主党案は、附則で三年間の経過措置というものを規定しております。しかし、先日の趣旨説明の冒頭には、我が国の最低賃金はほかの先進諸国に比べて低いことから、最低賃金が低いことがまじめに働いていても生計が立てられないワーキングプアと言われている低所得者層が増加している原因である、我が国の格差を是正するために最低賃金の引き上げが必要であると説明されました。

 民主党が本当に格差是正のために全国平均千円の最低賃金でなければならないと思っているのであれば、三年と言わず、すぐやるべきではないでしょうか。三年の経過措置を設けたというその理由を、その必要とする根拠をお聞かせください。

山井議員 井澤議員にお答えをいたします。

 大変重要な御指摘だと思います。私たちがこの国会で今最優先で取り組まねばならないのは、この格差社会、ワーキングプアをどうしていくかということであります。まさにそのことに関して、この最低賃金を引き上げていくということで、与党も野党も方向性は当然同じであります。ただし、同時に、最低賃金の引き上げにおいては、中小企業が実現できる、やはりそことセットで考えていく。労働者の立場、そしてまた企業経営者の立場ということを両面、当然考えていかねばならないというふうに考えております。

 そこで、この激変緩和措置についてでありますが、最低賃金を引き上げる際に、中小零細企業への配慮が重要だと考えておりまして、民主党案では、全国最低賃金及び地域最低賃金については三年間で段階的に引き上げることを想定しております。これは、先ほど委員もおっしゃいましたように、アメリカでもそのような方式をとっております。

 具体的には、平成十九年十二月に公布されることを前提としますと、施行は翌二十年三月、公示は同年六月から同年七月、発効する十月に第一段階、翌二十一年十月に第二段階、さらに翌二十二年十月に第三段階の引き上げが実施されます。

 民主党は、最低賃金法改正案策定に当たって各界から意見を拝聴してきましたが、民主党案では、全国最低賃金をことしの最低賃金の一番低いレベルの六百十八円から八百円へと百八十二円上げることとなることから、中小企業対策とともに、段階的に引き上げることが最低賃金の着実な実施につながると判断をいたしました。

 先ほど萩原議員からも、一円、二円じゃないというお話がございましたが、ことしを除けば、過去十年間で五十六円ぐらいしか上がっていないわけでありまして、そういう意味では、政府案は二けた、民主党案は三けたというものを上げていきたい。そのためには、中小企業がしっかりとそれについてこれるように、一千九百億円の中小企業の財政支援をセットで行いたい。そして、それも、アメリカに倣いまして、段階的にやっていって、中小企業に無理なくということでなければならないという趣旨で経過措置を設けているわけであります。

 ただ、井澤議員がおっしゃいました、本来はワーキングプア対策、格差是正のために早急に最賃を引き上げるべきではないかという御意見に関しては、私も共感する部分がございますが、中小企業の現場に配慮して三年間の経過措置を設けたわけでございます。

 以上です。

井澤委員 三年間の経過措置について御説明いただきました。ありがとうございます。

 次に、時間がもうございませんので、舛添大臣に、最後、お伺いしたいと思っております。

 先日の当委員会で、舛添大臣から、働き方や休み方の見直しを含めたワークライフバランスが必要であり、人生八十五年時代のビジョンのお考えがあると伺いました。

 今回、長時間労働の是正に多面的に取り組むためにはどのように進めていけばいいのか、また、人生八十五年時代にビジョンもどうしていくのか、舛添大臣のお考えについてお伺いしたいと思います。

舛添国務大臣 まず最初に、長時間労働、これを是正するということで、今のこの労働基準法改正案が成立しました暁には、大臣告示を改正したいと思います。そして、今は、これは月八十時間を超えると五割増しとなっていますけれども、そこまでいかなくても、とにかく労使双方が頑張って労働時間を減らすということを努力義務として大臣告示で課したい、具体的にはそれが一つ。

 それから、しかし、そうなった場合に中小企業の経営が厳しいということがございますので、これは今、助成金制度がありますね、これの活用ということで短期的には対応していく、しかし、長期的にはやはり私は人生八十五年ビジョンを打ち立てたい。

 このビジョン策定のための委員会というか審議会、今これの人選を行っていまして、今月中には各界から、もちろん女性も多数参加していただいて、各階層、各年齢層、それで女性の参加もいただいた上で、何とか今月中に立ち上げたいと思って準備を進めております。

 私は、年金問題に典型的なように、やはり戦後は人生六十年時代、定年退職もそうですけれども。つまり、これだけの長寿社会になるということを前提にしない社会的なシステムをつくってきた。それがいろいろなところでひずみを起こしてきている。したがって、これは人生八十五年、その中で、働き方、生き方、子育てのやり方、介護の仕方、医療の仕方、こういうことを全部、総合的に、トータルに考える。こういう大きな発想の転換がなければ、つまり、人生六十年時代から八十五年時代へという大きな発想の転換、システムの転換がなければ、年金問題、医療問題その他あらゆる社会問題に根本的に解決を見出すことができない、そういう認識でしっかりやりたいと思いますので、また委員の先生方の貴重な御意見も賜りたいと思います。

井澤委員 以上で質問を終わります。ありがとうございました。

茂木委員長 次に、杉村太蔵君。

杉村委員 自民党の杉村太蔵です。

 私も、同僚議員に引き続き、民主党さん提案の最低賃金法に対する質疑をさせていただきたいんですが、山井先生、よろしいですか。(山井議員「何か通告ないと聞いたんですが」と呼ぶ)いや、そんなことないですよ。しっかり、きのう……(発言する者あり)言っています、言っています。

茂木委員長 では、答えられる範囲でもしあれでしたら。(発言する者あり)だって、これは少なくとも議題の法案ですよ。(発言する者あり)では、杉村君。

杉村委員 もし仮に私の不手際だったら、大変申しわけありません。ただ、本当に基本的なことを質問させていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします。

 まず、山井委員におかれましては、法案の説明のときに、民主党案では、最低賃金は法施行三年後には全国平均で千円になることを目指す、こうおっしゃられているわけですけれども、全国平均で最低賃金を千円にするという意味は、地域別最低賃金の全国平均を千円にするという理解で、まず一点確認なんですけれども、それでよろしいですか。産業別最低賃金の全国平均を千円にするというのではなくて、地域別最低賃金の全国平均を千円にするということでよろしいですね。確認のため、お願いします。

細川議員 そのとおりです。

杉村委員 だとすると、恐れ入りますが、きょう、私、ちょっと配付させていただきました資料を、山井委員、ごらんいただけますでしょうか。この資料というのは、まず1の方、表ページをごらんいただきたいと思うんですけれども、上が、全国で最高の地域別最低賃金と産業別最低賃金を表にまとめたものです。これは東京都のものです。下は、残念ながら今現在では全国最低の地域別最低賃金と産業別最低賃金を表にまとめたものでございます。

 先ほど来から、井澤委員の質疑の中にもありましたが、御党御提案の全国の最低賃金、下限というのを八百円に設定する。としますと、横に書いてある、私の、民主党御提案の法施行三年後のイメージというのは、秋田県の地域別最低賃金は八百円になりますよと。それで、全国平均は千円だと。

 そうすると、例えば、東京都や神奈川県や大阪府、愛知県といった、現在比較的高い都府県に関しては、当然、平均が千円で下限が八百円ということであれば、それよりもさらに上の、例えば千百円ないしは千二百円の地域別最低賃金の水準の引き上げが想定されるであろう。ここまではよろしいですか。

細川議員 はい、そのとおりです。

杉村委員 だとすると、今度、産業別最低賃金の話になりますと、当然、地域別最低賃金よりも産業別最低賃金が上回ってこなければこれまた意味がない話で、そうすると、東京都のある中小企業の、例えば鉄鋼業、ごらんいただけばわかると思うんですけれども、仮に東京都の地域別最低賃金が千二百円の水準まで引き上げられた場合、千三百円近くまで一気に、東京都にある鉄鋼業を営まれている中小企業の経営者さんは、人を雇うときに時給千三百円近くからでないと雇用できないというような私のイメージになるんですけれども、そういうことでしょうか。(発言する者あり)

茂木委員長 不規則発言ではなくて、委員とそれから提出者の間で議論してください。

細川議員 地域別最賃がぐっと上がれば、当然、産業別賃金の方もそれに応じて上げざるを得ないということになりまして、産業別最賃が下に下がるということはないというふうに私どもの法案では考えております。

杉村委員 この地域別最低賃金と産業別最低賃金で、なぜこの民主党さんの法施行三年後のイメージで千二百円と千二百九十一円になるかということ、私の単純なイメージですので、現在……(発言する者あり)いや、ちゃんと一応計算式がありまして、現在、平成十八年十月一日段階では、東京都の地域別最低賃金は七百十九円ですよ、それに対して鉄鋼業は八百十円ですよ。八百十円から七百十九円を引いたら九十一円になった。それを単純に、千二百円になったときに、千二百九十一円になるのかなというイメージですので、それでちょっと議論をさせていただいて、大体、地域別最低賃金よりは産業別最低賃金が上回るというお話だったと思うのです。

 ここで山井委員に、法案提出者にお伺いしたいのは、最低賃金が時給千円になりましたよと。これは非常に僕が心配になっているところなんですけれども、やはり中小企業経営者の方にしてみれば、今まで時給八百円で人を採用していた場合、三名の方を雇えた。ところが、千円になってしまったら、どうしても三名は雇えない、二人に削らなければならない。

 こういったように、議論になっていますけれども、中小企業の経営の圧迫にもなりません、失業率もふえません、さらには、有効求人倍率も下がりません、倒産件数もふえません、こういった論拠というか、その辺、教えていただけますか。

細川議員 ちょっと先ほどの質問の中で、産業別最低賃金と地域別最低賃金の関係が質問されましたけれども、東京の例を出されて言われましたけれども、地域別最賃が七百十九円ですね。この地域別最賃を適用しますと、産業別の方たちが低い。だから、産業別に、地域別最賃よりもっと上げなきゃいかぬということで、地域別最賃がずっとやっているわけなんですよ。したがって、地域別最賃がぐっと上がれば、もう産業別最賃は上げる必要はない、やる必要がなくなるわけですね。

 だから、今ちょっと御説明をし直しているんですけれども、そういうことは御理解いただきたいと思うんですが、地域別最賃が千二百円、こういうことになれば、産業別最賃をやる必要はないですね、それより下ならば最賃は決める必要はないわけですね。

 だから、あなたの言われる、あなたのイメージでやっている、千二百円よりも産業別の方をもっと高くしなきゃいかぬということならば、そのときには産業別最賃を上げる、こういうことになります。わかりますか。(発言する者あり)地域別最賃がありますね。それよりも低いということはないわけですから、それよりも高い、例えば鉄鋼業ならば、それはその産業別最賃を上げればいいわけです。つくればいいわけなんですよ。そういうことでいきますから、それでいいですか。

杉村委員 いや、細川先生のおっしゃること、僕も全く同じ考えで、わかっていて、要するに、僕の心配は、地域別最低賃金を千二百円の水準に上げますよと。当然、産業別最低賃金はそれよりも上回らなければならない。

 民主党案では、産業別最低賃金という考え方はないということですか。(発言する者あり)ありますよね。だから、その設定を変えないということですか。(発言する者あり)

茂木委員長 御静粛に願います。

細川議員 民主党の案では、今までどおりですから、特に、産業別を必要ならば上げるということで、最低は最低でやっていますから、今までと同じ考えでいっていますよ。

杉村委員 わかりました。わかりましたというのは、要するに、私のイメージとしては、民主党さんの法施行後のイメージをお尋ねさせていただいたんですけれども、地域別最低賃金を決めた、それで、今の最低賃金のシステムでいくと、要するに、僕の心配は、高くなり過ぎてしまわないかなということなんですよ。

 仮に最低賃金の水準が法施行三年後に一気に千三百円になってしまったら、ならないということですけれども、この程度でいいんだというお話だったと思うんですけれども、要するに、中小企業の経営に対するこの辺の御答弁はいかがですか。圧迫にはなりませんか。

細川議員 確かに、最低賃金が上がりますと中小零細企業の皆さん方は大変だということで、したがって、それに対するいろいろな手当てをしなければいけないということで、これまでもこの委員会で議論をしてまいりまして、そのときに、私どもとしては、大体千九百億円くらいを中小企業対策費として使いたい、こういうことを考えております。

 それからもう一つ、先ほどもお話が出ましたように、急にことし決まって来年から上がるということになれば、これまた中小企業の人たちも大変だろうということで、激変緩和といいますか、そういう意味で、三年間にわたって順々に上げていこう、こういう対策を立てて中小企業の皆さんにも配慮している、こういうことでございます。

杉村委員 先日来の川条委員の御質問の中にも御答弁があったと思うんですが、今おっしゃったその経過措置で、中小企業対策で千九百億円を講じていくんだというお話だったと思うんです。

 資料の裏を、ひっくり返していただきたいと思うんですけれども、一番上は今年度の一般会計予算の歳出の内訳なんですが、二番目を見ていただきたいと思うんですけれども、過去三年で、政府は、中小企業対策で、平成十七年から千七百三十億、十八年に至っても千六百十六億、本年では若干ふえて千六百二十五億、これにプラスアルファ、おっしゃった中小企業対策、経過措置として千九百億円を講じると。

 この財源の話なんですけれども、どこからその千九百億円を持ってくるのか。増税をするのか、減税をするのか、借金をするのか、それともどこか違うところから持ってくるのか、このあたりのところをぜひとも私にもわかるようにお願いいたします。

細川議員 先生には失礼かと思いますけれども、私ども、質問通告を受けているともっとはっきりと明快にお答えできたかと思うんですけれども、質問通告がなかったもので、ちょっと大ざっぱになったりしておりますから、それは非常に申しわけないと思います。

 この財源につきましては、私どもとしては、補助金の一括交付化や、あるいは談合、天下りの根絶による行政経費の節減、特殊法人あるいは独立行政法人の廃止等の徹底した歳出削減、こういうことで十五兆三千億円規模の財源を確保できるというふうに考えておりまして、これはもともと民主党の考えでございます。

 民主党としては、税金の無駄遣いをこれまでいろいろと追及してきましたけれども、今後とも、無駄な予算をチェックして、所要の財源確保に努めたいというふうに考えております。

茂木委員長 細川さん、今の質問の前段の部分、今、中小企業予算が年間千七百億から千六百億ぐらいなんですけれども、おっしゃっている千九百億というのは、それとは別枠なんですか、それとも一部食い込むんですかということ。

細川議員 それは、この最低賃金による中小企業のいろいろな影響ということを考えて、特に中小企業対策費として出すわけですから、別ということになると思います。

杉村委員 ということは、今政府が取り組んでいる千六百億弱の現在の中小企業対策に加えて、新たに千九百億円追加するということでよろしいんですね。

細川議員 はい、そういうことでございます。

杉村委員 済みません、先ほど御答弁があったのかもしれませんけれども、ちょっとうまく理解できなくて。その財源であるとか内訳だとか、そういうのを、うまく質問通告の疎通ができていなかったという点で大変申しわけないんですけれども、ぜひとも教えていただけますでしょうか。

茂木委員長 答弁はされたと私は思いますけれども、もう一度聞かれますか。(杉村委員「もう一度お願いします」と呼ぶ)はい。細川君。

細川議員 大変申しわけございません。

 財政をどういう規模で用意するかということにつきましては、十五兆三千億円規模の財源を我々としては確保したい、こういうふうに考えておりまして、そのうちに、中小企業対策としてこの十五兆三千億を民主党としては支出していく、こういうことも予定をいたしております。これは、民主党がこの参議院の選挙でも公約もしたことでございます。

 ただ、申しわけないけれども、その資料がないもので、その中から中小企業にどのように出すか、幾ら出すかということもちゃんと規定をしておりまして、書いておりまして、そういうことについてはその十五兆三千億の中から出す、こういうことになると思います。

杉村委員 正直申し上げて、若干やはり不明確だなという私の印象なんですが、答弁ありますか。

細川議員 先ほどの答弁に補足をいたします。

 十五兆三千億の財源を用意いたしまして、最低賃金引き上げのための中小企業対策等ということで、中小企業対策として一兆四千億円の財源を用意いたしておりまして、その中から、先ほど申し上げました千九百億円の財源を、最低賃金の引き上げによる中小企業の皆さんへの対策として出すということでございます。このことは、民主党がマニフェストでお約束をしたことでございます。

杉村委員 かなり大規模な金額、十五兆だの一兆だの、いろいろその財源を用意しているということでございますが、正直申し上げまして、私には明確に、この部分から持ってくるんだというのが余り伝わってこなかったんですけれども。

 ちょっと質問をかえさせてください。

 この私の配付した資料、今現在、この三番目の地域別最低賃金の全国の平均ですけれども、これは過去二十年間の最低賃金額の推移をまとめたものですが、バブル期の平成二年から平成四年で最も上がった時期として、三年間で七十三円というのは、労使間のいろいろな協議の中でもこれが限界だ、直近では二十二円だ。私も、これではだめだと思っているんです。少な過ぎる。低過ぎる。

 山井委員もおっしゃるように、とてもじゃないけれども、格差是正にはつながらない。私も、この政治の世界に入るきっかけというのは、労働問題、特にフリーター問題、ワーキングプアの問題をきっかけにこの政治の世界に取り組みさせていただいた背景があるんですけれども、ただ、これは確かに低過ぎる。

 だから、しっかりと引き上げられるように、特に、政府案での生活保護の観点でしっかり引き上げていけるようにしようということなんですけれども、とはいっても、いきなり民主党さんの案のように全国平均千円にするというのは、余りにも経済に与える影響といいますか、先ほどから中小企業対策をやるんだ、そうはおっしゃいますけれども、私の心配なのは、ワーキングプアは救いたいんですよ、救いたいんですけれども、全国平均千円になってしまうと、ワーキングすらなくなって、ただのプアになってしまうんじゃないかな、そういう心配があるわけですよ。

 御党の法案、しっかり読ませていただきました。方向性はほとんど僕は賛成なんです。ただ、千円という部分だけがどうしても不安なんですよ。ぜひこの辺、もう少し教えていただけますでしょうか。

山井議員 杉村太蔵議員は、まさにこういう問題を志に持って議会に来られたと思いますので、今の御質問の趣旨、痛いほどわかります。

 それで、故田中角栄元総理も、政治は決断と実行だと。要は、まさに杉村議員が今の資料で配付されたように、今までの一円、二円、こういうのではだめだということが根本的な問題だと思っております。

 ですから、十年かかって四十五円しか、昨年までは日本の最賃は上がっていない。ところが、その十年間に、アメリカでは一五二%、フランスで一三七%、イギリスで一四〇%、数十%上がっているわけですね。日本だけ七%しか上がっていなかったわけです。そして、アメリカでは民主党に議会の多数がかわって、二年間で一・五倍に上げる、これは繰り返しになるかもしれませんが、そして中小企業対策とセットでやるということをされたんですね。

 確かに、杉村議員、千円は高過ぎる、大丈夫なのかとおっしゃる趣旨はわかります。でも、考えてみれば、千円で一千八百時間働いても、年収が百八十万円なんですよね。その百八十万円で、望めば結婚をし、望めば子供を育てられるかというと、必ずしも高いと言えないのではないかと民主党は考えております。

 もちろん、簡単なたやすい道ではないというふうには思っておりますが、そこは、今までの延長線上ではなく、格差是正、ワーキングプアを減らしていくというためには、非現実的じゃないかという、太蔵議員からも真摯な御指摘ございますが、これぐらいのことをやらないとだめなのではないかというのが民主党の考え方でございます。

 以上です。

杉村委員 いや、御党の考え方もわかるんですが、今質疑をさせていただいても、三年で千円に上げるということは、全体で二百五十円以上上げていくということですから、これはそれこそ急激な改革。

 これが、例えば十年ないし十五年のスパンで最低賃金全国平均千円を目指す、そういう経済政策をやっていくんだ、労働政策をやっていくんだということならば、私もよくわかるんですけれども、山井委員、先週の法案説明でも、民主党は法施行三年後には千円を目指すと。この三年後に千円というのが、どうしても僕は極端じゃないかな、非現実的じゃないかな、この今の三十分の質疑の中でも、どうしてもその疑問がぬぐえない。

 また、それへの補てんとして中小企業対策、千九百億円投じるということでありましたが、その財源の部分、また、どう補てんしていくのか。例えば、千九百億円投入して、従業員の方に給料をその分そこから上乗せをさせていくのか。当然、回り回って増税になっていくわけですから、何となく、果たして意味があるのかな、そういう疑問がどうしてもぬぐい切れません。

 方向性としては、格差是正、特に若い人たちのワーキングプアの問題は本当に深刻です。これはどうしても解決して、政府が言われるように、最低でも生活保護を上回る収入を得られる、そういう環境を絶対つくらなきゃいけないなと思うんですけれども、でも、やはり民主党さんの案のように、千円は極端でしょう、高く設定し過ぎでしょう、しかも今後三年間でというのは、どうしても払拭できない疑問であります。

 その点をちょっと申しつけさせていただき、もし可能であれば、この三年後の千円、額かまたは期間か、どっちかを見直していただいて、もう一度考え直していただければ、政策協議もなかなか順調にいくのかなというように思います。

 時間がなくなりました。何か最後に御答弁ありますか。

細川議員 委員の御指摘は、本当に的を射ているところもあると思います。私どもも、中小企業対策というのは大変考えたところで、その考えたあげくに今こういうような案を出させていただきました。

 今の日本の経済なんかも考えていますと、輸出主導の経済になって、景気がいいといっても輸出が引っ張っていっているというところもあろうかと思います。この最低賃金の引き上げがいわば起爆剤となって、内需が拡大をしていくということも当然考えられますし、そういう意味でも、中小企業の皆さんにも、また一方でそういう効果も出てくるのではないかという、いろいろ考えた末に、私どもとしては、平均の千円、これを目指すということにしたわけですので、御理解をしていただきたいと思いますし、私どもも、この最低賃金につきましては、与党の皆さんと話し合いもし、ぜひ協議をしながら成立をさせたいというふうに思っているところでございます。

杉村委員 終わります。ありがとうございました。

茂木委員長 次に、川条志嘉君。

川条委員 自由民主党の川条志嘉でございます。

 本日は、先日やり残した質問について、それから若干情勢の変化もございましたので、その点も踏まえて質問させていただきたいと思います。

 まず最初に、民主党の最低賃金法案について、前回に引き続いてお尋ねさせていただきたいんです。

 先日の私の質問に対して、民主党の提案者の人はアメリカの事例を挙げて説明されていました。アメリカの最低賃金の事情についてはさきの通常国会で民主党の参議院議員の方が政府に質問をされていて、そのやりとりの中で、アメリカの連邦最低賃金の適用範囲については年商五十万ドル以上の事業所が対象になる旨の答弁がありました。日本円にして約六千万円以上の年商の事業所ですね。一方で、民主党さんが提案されている、日本の最低賃金、労働者を一人でも雇っていれば売上高に関係なく支払わなければならないものです。民主党の提案者は、このような制度の違いを御認識の上でアメリカの事例を参考にされたのかなと思います。アメリカでは小規模零細事業所には連邦最低賃金が適用されないし、一方では日本はどんな事業所も対象になる、これは今申し上げました。

 また、賛否はともかくとして、アメリカでは、管理職や専門職、小規模新聞社の労働者や電話の交換手などは除外、学生や障害者、チップを得る者などは特例が適用されるなど、多くの条件がついているわけです。

 また、このほかの先進国について言えば、例えば、イギリスやフランスの最低賃金というのは若者に対しては減額される制度であるということを御存じでしょうか。

 こういった制度の違いとか国情の違いというのは視野に入れずに、単純な金額の比較をもとに議論を行うのはいかがなものかと思うんですが、この点についての御認識を承りたいと思います。

山井議員 川条議員の御質問にお答えをしたいと思います。

 御指摘のとおり、アメリカの最低賃金は年商五十万ドル以上もしくは州を超えて流通する商品を製造する企業などに適用されることとなっております。また、御指摘のように、賃金についての基本的な定め方もアメリカと我が国では異なっております。この意味で、単純に絶対額を比較してどちらが高いからといって結論を導くのには慎重であるべきとの御指摘はそのとおりであると考えます。

 ただ、アメリカの最低賃金の対象となっている労働者は約八千万人であり、最低賃金がこのように多くの労働者に適用されているため、その引き上げが所得格差の解消に大きく貢献するとの認識から、一九九八年二月にクリントン政権が最賃を一ドル引き上げる法案を提出しました。しかし、上院は、産業界は最低賃金の引き上げを容易に吸収できないという共和党議員と経営者団体の主張を受け入れ、一九九八年九月二十二日、同法案を否決しております。

 このように、アメリカにおいても、最低賃金の引き上げが多くの労働者に影響を与え、所得格差の解消に重要であると認識されていることは我が国と同じであります。そして、産業界が賃金引き上げを吸収できるかどうかが議論となっているのも同じです。

 そのアメリカにおいて、このたび、五・一五ドルから七・二五ドルへの一・五倍という大幅な最低賃金引き上げが決定されました。ここにアメリカ政府の所得格差改善に対する決意を見ることができると思います。単純な金額の比較ではなく、引き上げの推移から、最低賃金改善によって所得格差を解消しようと政府が努力しているかどうか、その姿勢が見てとれると考えます。

 この最低賃金に見られる政府の所得格差解消に対する姿勢は、国際比較可能なものではないでしょうか。アメリカ、フランス、イギリスなどで最低賃金の引き上げが二〇〇一年以降続けられ、我が国の最低賃金のみが低く張りついていることは御存じのとおりであります。我が国が現状のまま最低賃金の引き上げの努力を十分に行わない場合、我が国のみが先進国で所得格差解消に無関心であるということになるのではないでしょうか。

 以上です。

川条委員 最低賃金を引き上げることによって所得格差解消に対する政府の努力を示してほしいという山井委員の趣旨は承りました。

 しかしながら、ここで忘れてはいけないのが、山井委員も常におっしゃっているように、枠組みのないところに救われない人がいるということなんですよ。ここで救われない人というのはやはり中小企業なんですよ。経営者側で、大規模事業主は全然足腰が強いんです、中小企業への支援が一番必要だと思います。やはり民主党さんもそこのところをすごく気をつかっておられると思います。

 法案の附則第八条で「中小企業への支援」として、国に財政上及び金融上の措置を講じなければならないとしていますが、山井委員、ごらんになったでしょうか。独立行政法人労働政策研究・研修機構の提供する海外労働情報には、小企業への最賃の引き上げの影響の大きさ、アメリカの影響の大きさなんかも、最新のものが提示されています。また、一九九六年の引き上げで、十四万六千人の職が打ち切られたし、新規雇用が期待された十万六千人分の雇用機会が失われたとする全米レストラン協会の主張も掲載されているんですよ。結局、雇用が拡大するどころか非常に減少してしまう、そんな影響も出ているんですよ。やはりこれは、統計では見えない部分だから、しっかりと認識していただきたいと思います。

 中小企業支援策について、現在、自民党では既に、地域の活性化策とか中小企業支援策には十分な予算を組んでいるんです。さっきの杉村太蔵委員の質問にも使われましたが、中小企業対策千六百二十五億以外に、頑張る地方応援プログラムとして二千七百億、戦略的中心市街地支援、暮らし・にぎわい再生に百五十三億、地域再生基盤強化交付金千四百十八億などの支援策を、安倍内閣のとき、体系的に地域再生総合プログラムとしてつくって、現在、その途上にあるんです。前の国会では九本もの法律をつくっているわけです。

 このように、ことしから地域格差の是正のために自民党も総力を挙げて取り組んでいても、正直言ってなかなか遠い道のりであるわけですが、そこに最低賃金の値上げという大きな負担が生じた場合、さらに道のりは遠くなると考えられますよ。

 現在、最も低い最低賃金の額は六百十八円。ところが、これを三〇%上げて八百円に引き上げを提案される、いや、三年後に最低賃金の平均千円への引き上げを視野に入れておられるというのであれば、どんな財政上及び金融上の措置が必要になるとお考えなのでしょうか。具体的な中小企業対策を、それこそ地域活性化プログラムのようにお示しいただければよくわかると思います。

 また、千九百億規模の中小企業対策、どのようなもので、具体的にどのような効果が期待されるのか、本当に抽象論じゃなく具体的に教えていただきたいと思います。

山井議員 川条委員の御質問にお答え申し上げます。

 私どもは、最低賃金を引き上げる際に中小零細企業への配慮が重要だと、まさに川条議員が御指摘のように考えております。民主党案では、最低賃金をことしの最低賃金の一番低いレベルの六百十八円から八百円へと百八十二円上げることとなるので、中小企業とともに段階的に引き上げることが着実な実施につながるものと考えております。

 中小企業の支援策としては、例えば、正社員を雇ったら減税をするといった方策による税制支援法や雇い入れ助成などによるインセンティブも考えられます。中小企業、特に零細企業の皆さんが安心して給料を出せるよう、全国最低賃金及び地域最低賃金の導入とセットで実施したいと考えています。その他にも、民主党がかねてから主張してきた中小企業支援対策を推進していきます。

 中小企業金融の円滑化を図るため、中小企業への融資の際に、不動産担保、人的保証に過度に依存することのないような資金調達体制の整備、安定的な資金供給を受けられるような多様な資金チャンネルを創設します。また、政府系金融機関については個人保証を撤廃します。さらに、地域金融円滑化法を制定し、地域への寄与の程度や中小企業に対する融資状況などを金融機関が情報公開するルールを設定します。

 そのほか、中小企業への支援策として、不当廉売や優越的地位の濫用による下請いじめを防止するための法整備を行い、大企業による不当な値引きや押しつけ販売、サービスの強要など不公正な取引を禁止するとともに、独占禁止法の見直しや厳格な運用によって厳正に対処してまいります。

 こうした中小企業支援策の財源をどのように確保するかとのお尋ねもございました。

 私どもは、補助金の一括交付化や、談合、天下りの根絶による行政経費の節減、特殊法人、独立行政法人の廃止等の徹底的な歳出削減により、合計十五・三兆円規模の財源を確保できると考えております。民主党は税金の無駄遣いを追及してきましたが、今後とも、無駄な予算をチェックし、所要の財源確保に努めてまいります。

 実際、参議院選挙政策リストの中でも、「中小企業支援予算三倍増」として「五千億円の中小企業支援予算を実現します。」と書いてありまして、内訳として、現在の中小企業対策予算約千六百五十億円に加えて、先ほど杉村議員からも話がございましたが、最低賃金大幅引き上げによる財政上、金融上の措置を実施するための予算約二千百億円、中小企業の研究開発能力強化のための予算四百八十億円などの予算措置を実施いたします。

 なお、川条議員も御存じかと思いますが、現状でも、パート労働者の時給は、平均的な零細企業でも四十四都道府県では八百円を超えておりまして、私たちは無理な額だとは考えておりません。

 以上です。

川条委員 中小企業支援の総論についてはお伺いさせていただきました。

 これが実現できればいいんですが、その財源といったものをもう少し精査する必要があるのかな、これだけのものがドラスチックに変わってしまったら、地域間格差、所得格差などと言っていますが、またそれ以外に大きな改悪に対する影響も出てくるのかなとちょっと私は危惧しております。

 次の質問に移らせていただきます。

 民主党の法案の附則第五条にもありますが、法施行後三年間は経過措置として、全国最低賃金の決定に際して、労働者及びその家族の生計費に加えて通常の事業の賃金支払い能力も考慮できるとしています。労働者及びその家族の生計費というのはさっき山井委員の本当に熱い思いを伺いましたので、今度は通常の賃金支払い能力について伺いたいと思うんです。地域最低賃金については、類似の労働者の賃金及び通常の事業の賃金支払い能力も考慮できることとしています。

 これは、法施行三年後に全国平均で千円という主張との関係が明確でないように思うんだけれども、経過措置期間中に全国最低賃金及び地域最低賃金を決定するに当たって考慮すべき通常の事業の賃金支払い能力とはそれぞれどのようなものでしょうか、そしてどのような指標が考えられるのでしょうか、答弁を求めたいと思います。

 また、先ほど、パート労働者の賃金について、全国四十四都道府県で八百円以上というお話がございましたが、その議論はまたこの枠組みとは別でございますので、したがって、この枠組みの最低賃金については、パートじゃなく、本当に有期でも無期に近い労働者だということをお考えに入れて考えていただきたいと思います。

山井議員 川条議員の御指摘にお答えをしたいと思います。

 三年間の経過措置や、通常の事業の支払い能力についてであります。

 ただ、その前に一つ申し上げたいのは、先進国の中で、最低賃金が最も上がっていない国の一つが日本である、そして、ワーキングプア、格差問題というのがこれだけ急速にふえている、そしてこのままでは、例えば結婚したくても、あるいは子供を育てたくてもなかなか難しいという、この現状をどうしていったらいいのかというゴールを民主党はまず設定していっているわけなんですね。

 それで、自民党の議員の方々の御指摘ももっともな点はあるんですが、一歩間違えば、何かそれが実現できない理由を探しているというように聞こえないでもないわけです。

 ですから、繰り返しになりますが、時給千円、一年間に千八百時間働いて、それでも百八十万円、少なくともこういう社会を日本じゅうどこにおいても実現したい、やはりそれこそが今政治が求められている、特に若い世代やワーキングプアの方々に対する、期待にこたえられるのではないかと思っております。

 そして、今の支払い能力についてですが、景気回復と言われながら、その恩恵が中小零細企業やそこで働く従業員に行き渡っていないのが実情だと私も感じております。繰り返しになりますのでもう一度答弁はしませんが、先ほど申し上げましたような中小企業へのきめ細かな支援策を実施していくことによって、中小企業の経営基盤が強化され、資金繰りが改善し、賃金支払い能力が向上するものと考えております。

 民主党案では、全国最低賃金及び地域最低賃金については経過措置を設けておりますが、具体的には、平成十九年十二月に公布されることを前提としますと、施行は翌二十年三月、公示は同年六月から同年七月、発効する十月に第一段階、翌年二十一年十月に第二段階、さらに翌二十二年十月に第三段階の引き上げが実施されます。このような段階を経て、労働者とその家族の生計費という最低賃金の決定基準が完全実施される法施行三年後には、全国最低賃金は八百円程度の水準となると想定をいたしております。

川条委員 時間もなくなってきたので政府側に質問したいんですが、その前に、山井委員に一言申し上げたいことがございます。

 ワーキングプアの視点からしたら、確かにそうなんです。しかし、この失われた十年の軌跡を振り返っていただきたいと思います。中小零細事業者にとっては、本当に経営基盤が成り立たないということは最大の死活問題なんですよ。本当に仕事がなければ中小企業の経営者というのはワーキングプアよりもひどい状態、全くの失業者、そこには雇用保険もつきません。そういった荒波を乗り越えて、ようやく何らかの形で生き残ってこられた人に、今ここで最低賃金を上げることによって、その細い細い命綱さえ切ろうとしているのかと私は非常に危惧を覚えるわけですね。したがって、そこのところを考えていかなければいけない。

 もう一点、申し上げたいことがあります。

 先進国の中で日本の最低賃金が一番安い、そう言われましたが、最低賃金の額だけじゃないんですよ。その千円のお金でどれだけのものを買えて、どれだけの暮らしができるかということの方が大事なんですよ。したがって、最低賃金を千円に上げたからといって、ほかの物価がどんどん上昇する、今までよりもレベルの低い暮らししかできませんでした、こういった世の中が待っているようでは私はいけないと思います。これは一言つけ加えさせていただきます。

 最後に、政府側に質問させていただきます。

 労働関係三法案全体について伺います。

 今回の労働関係三法案の改正というのは、国家戦略というマクロな視点から見たら、成長力底上げ戦略の一環などとして、少子化対策の環境整備の一環として、働き方を見直していこう、このための関連法制の整備であるという解釈もできます。そして、今回の労働関係三法案によって、労働者が安心、納得して働ける環境整備が私はある程度進むと思うんです。

 そのことは、とりもなおさず、近代資本主義社会の貨幣経済の中では見落とされがちであった家庭というものの重視にもつながると思っています。労働者にとって、仕事だけではなく家庭も重視できる、家族の暮らし、これが一番最大の生活の基本単位ですから、この暮らしの充実にもつながる、私は、この労働三法案の改正で、そんな期待を持っておりますが、この点について最後に政府にお伺いしたい。

 もう一つ、最低賃金が適用されたとしても、罰則が引き上げられて、ここは政府案も民主党案も非常に評価するところなんですが、結局、最低賃金が引き上げられたよということを世の中が知らなければ、そのまま、そして罰則五十万円がかかって、えっという状態になる。その周知広報はどのようにされるおつもりでしょうか。

 その二点について政府側にお伺いしたいと思います。

茂木委員長 時間が経過をしておりますので、簡潔にお願いします。

青木政府参考人 御指摘のように、仕事と生活の調和がとれた働き方ができる社会というのを実現することは大変重要だというふうに思っております。厚生労働省では、そういったことに向けて、社会的機運の醸成や企業の取り組みの促進を図っております。そういった環境整備を推進しているところであります。今後ともそういった努力を続けていきたいというふうに思っております。

 それから、最低賃金が引き上げられたときの周知広報でございますが、まさにおっしゃるとおりであるというふうに思っております。従来から、ポスターの掲示でありますとかリーフレットの配布でありますとかホームページへの登載など、周知を図っておりますけれども、そのほか、地方公共団体や使用者団体に対する広報紙への掲載依頼を行うというようなこともいたしておりますし、政府全体としても、国民への広報の推進に取り組もうということで、成長力底上げ戦略でも定めておるところでございます。

 ことしの六月には、最低賃金の履行確保を図るために、問題があると考えられる業種を重点として全国約一万事業場を対象に一斉監督も行いました。

 今後ともこういった努力をして、最低賃金が守られるように一層周知に努力をしていきたいというふうに思っております。

川条委員 ありがとうございました。

 女性に対する政策、労働に対する政策というのは国民全体にかかわるものだけに、いろいろな政党の協議を通してよりよいものをつくっていく必要があると思っています。そのためにきょうの議論は非常に有効であったと思っています。

 ありがとうございました。

茂木委員長 次に、福島豊君。

福島委員 大臣、御苦労さまでございます。

 まず冒頭、本日は民主党案の提出者の方もおられますので、法案の成立に向けて修正協議が粛々と行われまして一定のコンセンサスを得た、このことを評価させていただきたいというふうに思っております。各般にわたる事案につきまして、政治の停滞は許されないわけでありまして、これからも、民主党におかれてはしっかりと政策協議というものを行っていただきたい、このように要請をさせていただきたいと私は思っております。

 そして、まず初めに最低賃金法、これは、現在問題になっておりますワーキングプア、雇用格差、これをどう是正していくのかということにおいても非常に大切な課題でございます。

 さきの質問におきまして、法改正した後にしっかりとフォローアップをしていくことが必要である、このように申し上げたわけでありますけれども、具体的に、生活扶助基準に対して最低賃金の方が低い、こういう事例もあるというふうに伺っておりますけれども、具体的な方向性といいますか、どの程度の期間をかけてこの法改正にのっとった最低賃金を実現していくのか、政府のそのあたりのお考えをお聞きしたいと思います。

青木政府参考人 今回お願いしております最低賃金法の改正法案については、公布後一年以内で施行期日を定めるということになっております。したがって、これを成立させていただきましたならば、早急に公布をいたしまして、所要の準備、周知を行って施行していきたいというふうに思っております。

 具体的な最低賃金の額につきましては、毎年、中央最低賃金審議会における目安審議を経た上、地方の最低賃金審議会で毎年審議をして、毎年額を改定しているということでございますので、こういったスケジュールで、それにのっとって額の引き上げ、今回の法律の趣旨にのっとった額の決定というものがなされるというふうに考えております。

茂木委員長 生活保護等との調整をどれくらいのタイムスパンで進めるかという質問ですよ。

青木政府参考人 生活保護との関係について今法案で規定をいたしているわけでございます。そして、その施行が今申し上げましたような形でなっておりますので、それに応じて地方の最低賃金審議会で具体的に額が毎年度決定されるというふうに思っております。

福島委員 政府としては、なかなか具体的にどのような時間でというのは答弁しにくいだろうと思いますけれども、しかし、法が成立しましたら、余りにも長い期間にわたってその趣旨が実現しないということではまた困るわけでありまして、適切な御対応をいただきたいというふうに思っております。

 続いて、民主党の提出者、細川委員にお尋ねをいたしたいわけであります。

 八百円、そしてまた千円、こういう御提案をされているわけであります。私どもとしましても、ワーキングプア、雇用格差の是正ということに当たって、こうした水準が本当に実現できればいいなという思いでは全く同じでございます。

 しかしながら、この委員会で繰り返し指摘されておりますように、果たしてその水準というのは実現できるのか。もちろん都市部と地方の格差はありますので、特に地方において、これだけの賃金はとても払えない、こういう率直な経営者の方々の声があるというふうに私は思いますし、そのことを踏まえながら具体的な政治というものは進めていかなきゃいけない、一方これも事実だと私は思います。

 中小企業対策をどう進めていくのかというのは非常に大事だと思います。下請取引を是正する、こういったことも必要でございますし、また、今政府でも一生懸命取り組んでおりますけれども、生産性を向上させていく、こういう取り組みも当然必要であります。払えるような経営でなきゃいかぬ、払えるような経営をどう実現するのか、こういうことだというふうに私は思うんです。

 ただ、先ほどの山井委員の御答弁ですと、二千百億の財政的な措置をする、こういう話でありますけれども、そのままお聞きしていますと、賃金の補てんを税金でする、こういう話なのかなと思ってもみたりしまして、具体的にどうやって中小企業がこういう最低賃金を引き上げる体力をつけていくのか。

 この点について、細川委員の明確な御答弁と御提案をいただければと思いますので、よろしくお願いいたします。

細川議員 福島委員にお答えしたいと思いますが、福島委員御心配されておりますように、私ども、全国最低賃金が八百、それから地域の最低賃金が平均すると千円にしていきたい、こういう提案でございますから、当然、それを支払う中小企業の経営者の皆さんの御心配というのも委員が指摘されるとおりでございます。

 そこで、私どもとしたら、これまでにもお話をさせていただきましたように、全国最低賃金が八百円に上がったといたしますと、百人未満の企業におきましては、賃金増加額が年に換算をいたしまして大体千九百億円ぐらいになるだろうと。したがって、中小企業に対する支援というものはいろいろあるかと思いますけれども、まず、民主党としては千九百億円の中小企業対策を別途に行いたい、こういう考えでございます。

 そこで、中小企業への支援策といたしましては、例えば正社員を雇ったら減税するといったような方策によります税制の支援法、あるいはまた、雇い入れ助成によりますインセンティブも考えております。それから、民主党はかねてから、中小企業対策としてどのように支援をしていくか、これについてもいろいろと考えておりまして、それを実施したいというふうに考えております。

 具体的にはこういうことがございます。

 中小企業金融の円滑化を図るために、中小企業への融資の際に、不動産担保あるいは人的な保証に過度に依存することのないような資金調達体制の整備、それから、安定的な資金の供給が得られるような多様な資金チャンネルを創設していきたい。また、政府系の金融機関につきましては、個人保証というものはもう撤廃をしたいというふうに考えております。それから、地域金融円滑化法というような法律も制定をいたしまして、地域への寄与の程度とか、あるいは中小企業に対する融資状況などを金融機関が情報公開する、そういうルールを設定したいというふうに考えております。

 そのほか、いわゆる下請いじめなんかがございます。そういう不当な廉売とか、あるいは優越的な地位の濫用をして、いわゆる下請いじめというようなことを防止する法整備を行っていきたい。それから、大企業によります不当な値引きとかあるいは押しつけ販売、あるいはサービスの強要など、そういうものもありますので、不公正な取引を禁止するとともに、独禁法の見直しとかあるいはその厳格な運用とか、そういうようなことを行ってまいりまして、私どもとしては中小企業対策を行っていきたい。

 そういうことによって、最賃が上がることによっての中小企業のこうむります経営的なことに対する支援をしっかりやっていきたいというふうに考えているところでございます。

福島委員 今委員御説明いただきましたことは、もう既に政府でも取り組んでいることが多々あるし、また、公明党としても今までいろいろと主張してきたこともあります。

 ただ、問題なのは、金融も大事なんですけれども、実際利益が出せるかどうかという問題でありますから、今いろいろと御説明していただきましても、では、どこまで安心できるのかな、こういう感がないわけではありません。特に、この最低賃金については、製造業にしましても空洞化をますます加速するんじゃないかという懸念が一方であるわけでありまして、それだけ高いんだったらもう国内でつくらなくてもいいよ、こういう話も一方であります。

 ですから、そういうある意味で非常に難しいところなんですね。上げたいんだけれども空洞化を促進するんじゃないか、こういう話もあります。その中でどうやって引き上げを本当に実現するのか。ですから、今まで挙げてきた政策だけでは足りないところもあるんだろうなというふうに私は思いますし、そのあたりは、よりまた画期的なといいますか、目をみはるような政策提案をしていただければと私は思うわけであります。

 きょうは経済産業省にもお越しいただいておりますので、最低賃金法の改正、成立すると思います。それを踏まえて、中小企業施策を今まで以上に充実させていかなきゃいけない。この点についてどう考えるか、お聞きをしたいと思います。

長尾政府参考人 経済産業省といたしましては、委員御指摘のとおり、中小企業の経営強化、生産性向上に努めてまいりたいと思っております。

 そのときのポイントになりますのは、一つは公正な事業環境の整備をすること、もう一つは経営力の向上を図ること、三点目には、いわゆる付加価値を創造するような新事業展開を支援すること、こういった三つの柱を重点に施策を講じたいと思っております。

 まず、一つ目の公正な事業環境の整備でございますけれども、まさしく外需主導の景気回復の中で好調に収益を上げております大企業の果実を、いわゆる高騰する原油・原材料価格の転嫁もできない下請中小企業にも均てんする必要があるというふうに認識しております。

 このために、公正取引委員会とも連携いたしまして、下請代金法の取り締まりの強化をいたしますとともに、元請と下請の間のいわゆるウイン・ウイン関係をどう構築するかということに資する、いわゆる下請取引ガイドラインというものを策定いたしまして、これの普及促進、啓発を行うということで、下請取引の適正化に向けて積極的に取り組んでまいります。

 次に、中小企業の経営の効率化でございますけれども、特に税制の面からIT投資を支援するなど、中小企業のIT活用を図ってまいりたいと思っております。特に、小規模企業につきましては、「ネットde記帳」など、ITを活用してみずからの財務状況を正確に把握することへの支援とか、それに伴います資金供給の迅速化を検討してまいります。また、小規模企業が直面する課題を克服するための支援拠点の整備など、支援体制の強化を図ってまいりたいと思っております。

 三つ目の付加価値の創造でございますけれども、特に地方における格差を解消するということもございますし、地域における付加価値の高い産業をどうやってつくっていくのかということに注力しているところでございます。そのために、農林水産省とも協力いたしまして、農商工連携促進等によりまして地域経済の活性化の取り組みを進めてまいります。特に、中小企業地域資源活用促進法の着実な実施を図りまして、今後五年間に約千件ほどの新事業を地方でつくり出していきたいというふうに思っております。

 こういったような総合的な対策を実施することによりまして、中小企業の活性化を一層図っていきたいというふうに思っております。

 以上でございます。

福島委員 特に、今、原油高が引き続いている、大変心配いたしております。経営が悪化して会社が倒産すれば、最低賃金の引き上げどころの話ではありません。こうした経済状況をよく見ながら、経済産業省として機動的な対応をぜひともしていただきたい、そのようにお願いを申し上げたいというふうに思っております。

 続いて、労働基準法の改正案についてお尋ねをしたいと思っております。

 今回の修正協議の中では、現時点におきましてでありますけれども、与党そしてまた民主党の隔たりが大きくて合意形成がなかなか困難である、このように伺っておるわけでありますけれども、長時間労働の是正といったような観点から、割り増し率を引き上げてはどうかということで私どもも主張してまいりました。引き続き、合意形成に向けて精力的な検討をお願いしたい、このように思っているわけであります。

 私どもの認識は、法案におきましては、八十時間超で割り増し率五〇%、これもなかなか経済界は反対がございましたけれども、規定はより低い水準から開始することができないかということは今まで常々思ってまいりました。こうした観点から、ぜひとも与野党間の協議をしていただきたい、そのように思うわけであります。

 ただ一方で、民主党のお考えをお聞きしますと、割り増し率は一律引き上げるべきではないか、こういう御指摘であるように伺っております。先ほどの最低賃金の話ともこれは同種なのでありますけれども、長時間労働を是正したい、こういう理念は共有いたしますけれども、現実的に一律引き上げるということが果たして可能なのか、こういう話になりますと、やはり現実との乖離が甚だ大きいのではないか、このように思うわけであります。

 この点について、長時間労働は是正をしなければいけない。そもそも残業というものがあること自体がどうなんだ、残業がないようにしっかりと雇用を確保すべきじゃないか、こういう御提案は理解をいたしますけれども、しかし、現実がございますので、その中でどのようにお考えか、提案者にお聞きしたいと思います。

細川議員 福島先生御指摘のとおりでございます。

 労働契約法とか、最賃あるいは労基法も含めまして、労働法制を検討していく場合に、理念と、それから現場で実現が、ではそれが可能かというような、その兼ね合いといいますか、それが非常に重要だということを、つくづく私もこういう法案にかかわりまして認識をしているところでございます。

 そこで、労基法の割り増し率の引き上げでございますけれども、働き方を見直すということでは、これはもう極めて重要な要素になると考えておりまして、今の状況を引き上げなければいけないという先生のお考えとも一致をいたしているところでございます。

 そこで、前の委員会でも、審議におきまして我が党の議員が指摘をいたしましたけれども、この割り増し率の引き上げによりまして、経営者は、長時間労働が企業にとってコスト増の要因であるということを強く認識されるということになろうかと思います。また、従業員の労働時間が長くなれば企業の人件費負担も重くなることになります。したがって、長時間労働の高どまりというのは、労働者個人にとりましてはプライベートの生活というのが充実する、そこが阻害をされますし、心身の健康もむしばまれて、企業にとっても、生産性の低下、あるいは従業員の士気の低下、こういうことも考えると、中長期的には有能な人材も企業は集められなくなるんじゃないかというようなことも考えられるわけでございます。

 そこで、先生がおっしゃるように、現実に着実に変えていくということは、いろいろ私どもも考えましたけれども、政府案というのは、時間外労働がいわば過労死ラインとも言われております八十時間を超えたのみに時間外割り増し賃金率を五〇%に引き上げる、こういう内容でございますから、これでは長時間労働の是正に資する内容になっているとは到底思えないわけで、私どもとしては全く不十分だというふうに考えております。

 そこで、私どもは、もう時間外の労働は今の二五%を五〇%にする、こういう修正をしたいということで臨んだんですけれども、なかなか開きがあり過ぎて、余りにも開きがあり過ぎて、とてもこの修正協議というのは調わないというのが今の現状でございます。

 したがって、何とかこれを修正協議で、このこともぜひ合意に至るように私どもも積極的に臨んでおりますけれども、なかなかいい案が今はないところでありまして、先生がいい御知恵がありますならばぜひお聞かせをいただいて、できるものなら割り増し賃金の問題についてもぜひ協議が成立をして、少しでも割り増し賃金が上がっていくように、私どもとしても極力努力をしていきたいというふうに考えております。

福島委員 八十時間では余りにも、こういうお話でございましたけれども、八十時間でもなかなか、こういう人も世の中にはおるわけでありまして、その双方がある、こういう観点でぜひお考えいただければというふうに思いますし、そしてまた、何よりも物事が前進をするということが大事だというふうに思います。

 今までの割り増し率二五%に対して、これを倍増させる、このこと自体が長時間労働に対して一定の警鐘を鳴らすことは間違いがないというふうに思うわけであります。そういう現実的な法律の与える効果といったことについても、ぜひともよく御勘案をいただきたいと思いますし、引き続き、私どもも頑張らせていただきたいと思いますけれども、御協力をお願いする次第でございます。

 続いて、時間も限られておりますので、若干質問をはしょらせていただきたいというふうに思っております。申しわけございません。

 雇用格差ということで、非正規の労働者から正規労働者へ、正社員へ、こういう転換を推し進めるべきである。ということで、近年、政府においてもさまざまにお取り組みをいただいております。ただ、現場ではこういう指摘があるわけであります。

 一定期間派遣労働者として働いてきた、その間にその仕事ぶりというものが評価されて処遇がだんだんだんだん改善してきてよくなってきた、こういう方が、では正社員にということで採用される、そうなりますと、今まで高かった処遇が逆にまた一からリセットされてしまって下がってしまう、こういう現実があるんだ。これはもともとの企業の処遇体系によるところが大きいわけでありますけれども、そうした非正規から正規へ、特に派遣労働から正社員へと転換するに当たって柔軟に対応できるような仕組みが実はできていない、このことが正規雇用へ転換するに当たって一つのハードルになっている、選択されない。

 この点について、公明党としても以前に取り上げさせていただいて、政府としてもしっかりと検討いただきたい、このように申し上げた経緯があるというふうに存知しておりますけれども、この点についての今の政府のお考え、またお取り組みを御説明いただきたいと思います。

太田政府参考人 今、議員から御指摘のございましたとおり、派遣労働などの働き方にかかわらず、働く方が安心、納得して働いて、その意欲、能力を十分に発揮できるようにしていくことが大変重要であると考えているところでございます。このために、例えば、派遣労働者等の能力開発とか能力評価のためのモデルづくりに向けた検討を開始したところでございますし、また、さらには、有期労働者の雇用管理の改善や正社員への転換支援などのきめ細かな対応を図ってまいりたいと考えております。

 特に、今御指摘のございました、派遣労働者が同じ会社内で正社員に転換したときの処遇のあり方につきましては、やはり基本的には、当該労働者が派遣労働者として培った知識経験あるいは能力を十分に評価していくことが必要であると考えているところでございまして、現在、労働政策審議会におきまして、御指摘のような御意見も含めて、さまざまな論点について検討を行っているところでございまして、私どもとしましては、その結果に基づいて適切に対応してまいりたいと考えているところでございます。

福島委員 今、労働政策審議会、いろいろと御検討いただいております。また、政府におきましては経済財政諮問会議のもとでも検討され、規制改革会議のもとでも検討されている。両者のベクトルは同じ方向を向いているわけではありませんけれども、しかし、政府として最終的に、この労働市場改革をどう進めるのか、派遣労働の問題をどうするのか、ぜひ雇用の格差の是正という観点からしっかりとお取り組みいただきたいと思いますが、最後に、大臣の御決意だけお聞きしたいと思います。

舛添国務大臣 もともと派遣労働的なものが出てきたときというのは、終身雇用、こういう日本的経営システムの中でこういう働き方というのはあるのかなと非常に私も驚いて見ました。しかし、その後一定の定着を見る。その中で、確かに労働者の中でそういうニーズもありますが、今委員が指摘なさったように、やはり格差の一つの大きな原因になっていることは確かでありますので、この労働政策の審議会、精力的に、今委員がおっしゃっていただいた観点も入れた上で御検討を賜っておりますので、これは、審議会もありますが、広く国民的な議論を起こしたい。

 先ほど井澤委員の御質問に対して、人生八十五年ビジョンを今策定しようと言っている実は私の問題意識も、終身雇用、年功序列、こういう日本的経営がもはや普通の形ではなくなってきた、そういう中において、働き方、それは労使双方からアプローチしないといけないし、派遣労働者の問題は、今まさに委員がおっしゃった観点を必ず入れてやりたい。これは、人生八十五年ビジョンの中にもこの問題意識を入れた上で、きちんと取り組んでまいりたいと思います。

福島委員 終わります。ありがとうございました。

茂木委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時十分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時一分開議

茂木委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。細川律夫君。

細川委員 それでは、約四十分時間をいただきましたので、私の方から質問をさせていただきます。

 前回、与党の皆さん方からは、私たちの提出した法案についていろいろ質問があって、きょうも質問がございました。それを聞きまして、自民党の皆さん方あるいは与党の皆さん方、若い人たちが、全体的に何となく使用者側の立場に立っているのかなというような意見が多かったのが大変印象的でございました。ワーキングプアや働き過ぎなど、現在の働き方の問題について、もっともっと前向きな気持ちを持っていただきたいなというふうな率直な感想でございました。

 そこで、契約法の民主党案の策定の際には、働き過ぎを抑えて、生活との調和をどうとるかということに注意を払ってまいりました。

 例えば、転居を伴う転勤についてでございます。

 まず、誤解のないように言っておきますけれども、私たちの案も、必ず労働者本人の合意をとれとかということは言っていないのでございます。私も、企業が経営戦略上、経営者側の判断で人事配置をすることの重要性もよく承知いたしておりますし、そもそも転勤が日常的に行われている会社では、その転勤に合理性があれば、会社の業務命令として行われることは、異論があるわけではございません。ただ、その場合でも、本人や労働者代表にはきちんと説明をして、理解を求めていただきたいという内容でございます。そこで、本人やあるいは労働者代表が合意に至らなくてもそれはやむを得ない、これが私たちの労働契約法案の第二十七条二項の趣旨でもございます。どうもその点につきましては、質問を聞いておりましたら、何か誤解があるような気もいたしましたので、念のために申し上げておきます。

 ただ、その際問題なのは、いわゆるワークライフバランスでございます。つまり、仕事と生活の調和を保つこと。

 そもそも、日本のサラリーマンは、ほかの先進国と比べまして、単身赴任が多くて、転勤のために家族が別々に住む、こういうケースが多く見られるわけでございます。あるいは、超過勤務や休日出勤も多くて、いわゆる働き過ぎが指摘されていることは、もうこの場の委員の皆さんも御承知のことでございます。

 そこで、私たちの案では、基本原則を記述いたしました第三条に一項を設けまして、こう規定をいたしました。「使用者は、労働契約の締結若しくは変更又は労働契約に基づく権利の行使に当たっては、労働者が適切な仕事と生活の調和を保つことができるよう配慮するものとする。」こういうような規定を設けたわけでございます。

 この法案と離れましても、厚生労働省では、仕事と生活の調和、これについてはこれまでも非常に熱心に議論をしているということも聞いております。

 そこで、大臣にお聞きをいたしますけれども、日本人の働き方、特に、働き過ぎのために家庭生活や個人生活の調和がとられていないのではないか、こういう点について大臣はどのようにお考えになっているのか、お聞かせをいただきたいと思います。

舛添国務大臣 私も委員と認識を全く一にしておりまして、やはりちょっと働き過ぎ、そして、家庭、個人の趣味とか生活、これに割ける時間が少ないのかなと思います。だから、非常に高度経済成長で、終戦直後、とにかく豊かになろうといったときはお金持ちを目指していた。ただ、私は、どこかの研究会であったと思いますけれども、お金持ちもいいけれども、そろそろ時間持ち、今、大臣職をやっていて、時間持ちになりたいなという切実な思いでございます。委員の先生方もそうだと思いますけれども。

 やはり生活の豊かさというのは、働くことも必要だけれども、家庭も大事にする、自分の生活もしっかりする、週末はゆっくり休む。そして、私はできたら、これはコンジェペイエ、有給休暇というのは、フランスで一九三六年、レオン・ブルムの人民戦線内閣のときにでき上がった。それで、私もフランスにいるときは、とにかく夏一月休むために十一カ月頑張って働いたというような、極端に言うとそういう感じでありました。また、有給休暇の話も御議論になると思いますけれども、思い切ってこういう長期休暇をとるというようなことをやるのも今委員がおっしゃったような問題を解決する一つの道じゃないかなというようなことも考えていますので、こういうことも人生八十五年ビジョンの中に組み入れて、国民的な議論をする一つのたたき台としたいと思っています。

 そして、もちろん、その間におきましても、いろいろな意味で今御議論なさっていただいているような労働法制を使って、また、いろいろな手だてを使って、今のワークとライフのバランスをとる、この政策、きめ細かいものを厚生労働省としては頑張ってやっていきたいと思います。

細川委員 今、労働契約法をこの委員会で議論いたしておりますけれども、この契約法におきましても、基本原則の中でやはりワークライフバランスをしっかりと規定するということが私は大変大事なことだというふうに思っております。

 それでは、有期の労働契約についてお聞きをいたしたいと思います。

 有期契約につきましては前回も議論したところでございますけれども、この間いわゆる修正協議などもしてまいりましたけれども、どうも、与党の皆さんを含めまして、この契約法に別の条文を加えるということに大変消極的でございました。ただ、御承知のように、この有期労働を取り巻く状況というのは本当に問題が山積をしておりまして、私は何とかこの契約法の中で一歩前進を図っていきたいというふうに考えていたところでございます。

 そこで、もう一度お聞きをいたします。

 有期契約労働者に関しましては、労働契約内容の書面による確認を促進するということで、労働基準法第十四条二項に基づく大臣告示が規定をされておりまして、その事項について使用者に対してさらに助言指導を徹底していく、このことについてきょう大臣に御確認をしたいと思いますけれども、大臣いかがでしょうか。

舛添国務大臣 有期労働契約につきましては、今委員御指摘のこの労働基準法第十四条二項に基づきまして大臣告示がございます。

 この大臣告示で、一つは、契約締結時における契約の更新の有無の明示をする、今おっしゃったとおりです。もう一つ、更新する場合がある旨を明示した場合には、更新の判断基準を明示せよ、これを既に定めているところでございます。これをきちんと指導を徹底させたい。

 労働者が予期せぬ更新拒否によって不利益を受けることがないように、労働基準監督署においては、集団指導、監督指導等、あらゆる機会を通じて事業主に対してこの大臣告示の周知を徹底しろということを行っておりますし、必要な助言指導も行っているところであります。

 今後とも、今委員御指摘になったことは非常に重要なことでございますので、この大臣告示が遵守されるように、全力を挙げて指導助言を行ってまいりたいと思います。

細川委員 ありがとうございました。

 パート労働者を含め有期契約の労働者の多くは、現在、大変不安定な状況に置かれております。一方、使用者からのニーズはもちろんあるわけでございますし、また労働者からのニーズも否定できないわけでありまして、一言に有期といいましても、その雇用形態はさまざまでございます。

 今後、有期労働者がより充実して満足な働き方ができるよう、契約法制そのものもしっかり検討をしていかなければというふうに考えております。特に、待遇の面での均等あるいは均衡の考え方は、正規と非正規の間で大変現在も問題になっていますし、具体的には無期と有期の問題でもございます。

 均等待遇と言うだけで修正協議でも与党の皆さんは拒否反応というのがありますので、均衡でも結構ではありますが、特に有期労働者の均等待遇あるいは待遇に関する均衡ということについて、今後どう検討をしていくのか、この点、大変重要と思いますので、大臣にそのお考えをお聞きいたします。

舛添国務大臣 この有期、無期の間の均等待遇、均衡、これはやはりしっかりと検討すべき課題だと思います、もう既にこの委員会でも相当検討されておりますが。

 そこで、使用者のみならず、この有期労働契約というのは、私も何度もいろいろなアンケートを引用しますように、一定のニーズが労働者側にもあります。ただ、その条件が劣悪であって許されないようなことが現実にあると思います。これはしっかり是正しないといけない。

 そこで、有期労働契約の実態を見てみますと、契約更新時など契約終了場面における紛争が多く起こっていますので、これは前回も私申し上げたとおりなんですが、労働契約の終了というのは、もうあなたはここで首ですよ、終わりですよということで、非常に労働者にとって厳しい影響を与えます。

 そこで、労働契約法案におきましては、まず、契約期間中はやむを得ない事由がないときは解雇できないということを明確化する、それから、使用者に対しては、その労働契約により労働者を使用する目的に照らし、必要以上に短い期間を定めることによって、何度もその労働契約を反復して更新する、そういうことはあってはだめですよ、そういうことのないような配慮を求めるというルールを盛り込んでございます。これによって有期契約労働者が安心して働ける状況をつくろうということでございます。

 また、委員御指摘の均衡待遇に関しましては、労働政策審議会におきまして、有期契約労働者と無期契約労働者の間の均衡を含めた、雇用の実態に応じた労働条件について、均衡の考慮という形で今審議が行われているところでございます。

 この審議におきまして、少し御紹介いたしますと、労働者の代表委員からは、就業形態の多様化に対応し適正な労働条件を確保するため均等待遇原則を労働契約法制に位置づけるべきだとの意見がありましたし、また使用者からは、具体的にどのような労働者についていかなる考慮を求められるかが不明であり、労働契約法制に位置づけるべきではないと。ある、ないと、こうある。残念ながら、労使の間でコンセンサスはまだ得られておりません。

 これを踏まえまして、有期、無期の労働者との間の均衡問題、それにつきましては、労働政策審議会から、労働者の多様な実態に留意しつつ必要な調査等を行うことを含め、引き続き検討するのが適当である、こういう答申をいただいておりますので、我が省といたしましても、この答申を踏まえて必要な検討を加えていきたい。しっかり委員の問題意識を共有させていただきたいと思います。

細川委員 均等待遇あるいは待遇に関する均衡ということについて、大臣、ぜひよろしくお願いをいたします。

 そこで、これまで労働契約法がないときには判例が積み重ねられてまいりました。その判例法理との関係についてお伺いいたします。

 この有期労働契約でも今まで判例の積み重ねがありまして、特に雇いどめなどについてはしっかりした規制が必要だというふうに思います。それ以外でも、政府案が余りにも小さいために、今までの判例法理すら盛り込まれていない、あるいは判例法理よりも後退している部分もございます。そのために、中には、労働契約法の成立によって、今まで積み重ねられてまいりました判例法理が後退をするのではないか、そういう心配をする人たちもいるわけでございます。

 例えば、安全への配慮を規定いたしました政府案の第五条は、こういうふうになっています。「使用者は、労働契約により、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。」こととなっておりまして、安全配慮義務を判示いたしました川義事件の判決、これは昭和五十九年でございますけれども、それ以来確立した判例法理と比べますと、後退をしていると言わざるを得ないわけでございます。

 また、転居を伴う配置転換につきましては、政府案には規定はなくて、出向についても権利濫用法理に基づく規定のみでありまして、出向が適法とされる要件も示されていないわけでございます。もちろん、配転につきましても権利濫用法理は適用されるべきでありますし、出向については、特定の約定を定めていない限り、使用者は労働者に対して出向を当然に命令することができないという、これは日東タイヤ事件というのがございまして、こういう判例法理というものは当然これからも尊重されるものだというふうに考えております。

 そこで、お伺いをいたしますけれども、この労働契約法が制定されることによりまして、従来の判例で認められてまいりました労働者保護の法理がゆがめられたり、あるいは否定されたり、そういうことが私はないと思いますけれども、その点、御確認したいと思います。

青木政府参考人 今回の労働契約法案は、最高裁判所の判例法理にも沿ったルールを法律に定める、そういうことによりまして、使用者の合理的な行動を促す、あるいは、それによって労働者が安心、納得して働けるようにすることを目指したものでございます。

 今回の労働契約法案の規定によりまして、委員御指摘のような、従来の判例で認められていた労働者保護のための法理を弱めたりしているものではないというふうに考えております。

細川委員 それでは次に、お伺いをいたします。

 これは、役務提供契約という内容のものでございます。これは政府案にはございません。我が党の法案にはある、大事なところでございます。この役務提供契約の問題についてお伺いをしたい、こういうふうに思います。

 例えば、NHKの受信料の集金を請け負っている人、これは労働契約とされておりません。したがって、労働者保護の法制は適用されないわけでございます。現在、請負契約や委任契約で労働者性というものが否定をされる、労働者性がないとされますと、実態として企業に従属している人たちが、いわば使用者の意思で簡単に解雇あるいは解約をされる、あるいは労災保険が適用されないというような問題がございます。これに対して、我が党の労働契約法案では、役務提供契約、こういうものには、この労働契約法を準用して、契約法の一部が適用される準用条項を定めております。

 こういうこともしっかりとルール化をしないと、企業に従属的な形で雇用とか、あるいは請負とか委任契約で、形の上ではそういうふうになっている働いている人たちが、大変弱い立場に置かれているというふうに私どもは考えた次第でございます。

 こういう役務提供契約について、私どもは、こうしたことをしっかりルール化して労働契約法の中に盛り込んでいかなければというふうに考えておりますけれども、厚生労働省の方ではどのようにお考えなのか、お聞かせをいただきたいと思います。

舛添国務大臣 今の役務提供契約、これはいろいろな実態があると思います。今審議をお願いしております労働契約法案の第二条で、「「労働者」とは、使用者に使用されて労働し、賃金を支払われる者をいう。」こういう定義を置いております。ですから、この「使用者に使用されて労働し、賃金を支払われる者」すべてを労働者に含むということでございまして、現行の労働基準法の労働者も同じような形でありまして、契約形式がどうかということにとらわれず、実態として今言った定義が当てはまるかどうか、これで判断することといたしております。

 したがいまして、契約当事者が個人請負などの形で契約を締結していても、実態として今の二条の使用従属関係が認められるのであれば、労働契約法案の労働者として取り扱われる。したがいまして、この法案で規定する労働契約に関するルールが適用されるということでございます。

 今委員は、NHKの料金収集の方について、そうではないということをおっしゃいました。ひとまずは、法的には私が今御説明させていただいたような整理をいたしておりますが、今のような実態を委員から御指摘いただきましたわけですけれども、この役務提供契約についてどういうルールをつくるべきか、これについても、やはり私は今後の検討課題としてしっかりと位置づけていきたい、そういうふうに考えております。

細川委員 私たちの提案しております労働契約法案と政府案を比べて、私たちの法案には規定をしているけれども、政府案にはそれがないというのもたくさんございます。

 労働契約法というからには、契約の締結から終了までいろいろなことがありますから、そういう締結から終了に至る全過程をすべて網羅して、そして、その時々に起こるいろいろな使用者と労働者の紛争を解決する、あるいはそういう紛争が起こらないようなルールを定めておくというのが、この労働契約法の制定の趣旨あるいは目的でもあるわけでございます。そうすると、余りにも政府案にはそういうところが欠けているところが多い。

 そこで、例を申し上げたいと思います。

 例えば、労働契約が成立をする。成立をする前にもいろいろな事情がございます。例えば、募集をする、あるいはその募集のときに募集した内容と実際の作業をされるときの内容が違うとか、募集、採用時に関する事項というのが、政府案にはないわけなんですね。こういうのもやはりしっかりと定めておかないと、社会ではいろいろな紛争が結構起こっているというふうに私どもは思っております。

 それから、例えば大学を来年の三月に卒業する、そうすると、その前に募集をして、そして試験をして、合格をして、内定をするとか、そういうこともございますが、そういう内定のことについて、そこで契約が成立するのか、あるいはしないのかとかいうような問題などもございますし、あるいは、就職が決まって、いざ働き出しても、世間では一定期間、例えば三カ月、あるいは六カ月を試用期間として働かせてみるとかいうような試用期間などの問題もございます。

 それから、いざ労働契約が成立をして、その内容からいきますと、例えば労働者個人の情報をどういうふうに考えるのか、どういうふうな扱いにするのか。あるいは、会社に就職しながら別の仕事ができるのかどうかという兼業禁止義務。あるいは、今度は退職した後の、では今までの仕事で会社の秘密というかいろいろなこと、労働者が取得したそういう秘密について、これをどういうふうに守っていかなければいけないのか。退職後、以前に仕事をしていたのと同じようなことを起業して仕事をしていいのかどうかという競業避止義務。こういうこともやはり大事だと思うんですね、労働契約にきちっと定めなきゃいかぬじゃないかと。

 あるいは、会社に勤めて、海外に派遣されて研修をした場合、研修を終わってすぐにやめるとかいった場合に、その研修費用はどうするのかとか、これだっていろいろ問題になるわけですね。こういうようなことも政府案には一切ないわけでございます。そういう意味では、私どもの法案には、こういうこともしっかり規定をしている、こういうことでございます。

 また、労働契約の変更でいいますと、さきに触れました転勤、それから転籍、これらについても今世間ではいっぱいありますけれども、それらについてどういうふうにルールを定めておくのか。あるいは、働いていて会社に損害を与えたような場合、こんなときはどうするのかとか、あるいは懲戒はどうなるのかとか。こういうことも規定をしっかりしておかないと、せっかく労働契約法を制定しても、そういうところが抜け落ちておりますと、紛争を解決する規範なりルールにはならないのではないかというふうに思っております。

 しかし、今指摘をさせていただいたようなことが、前回も指摘をしました厚労省の中に置かれましたあり方研究会の報告書でも指摘をされておりまして、私たちはそういうあり方研究会での報告を大いに参考にさせていただいたという経過もございます。そういうことで、政府案は非常に規定をされている内容が少ない、このことについて、私は大変不満なところでもございます。

 政府の方は、小さく産んで大きく育てる、だから、いいんじゃないかというふうに言っておりますけれども、私たちは、今回、政府案が土台となって、それに対してある程度の修正がかなったとしても、やはりそれにはなかなか満足はできないというふうに思っております。より労働契約法の名にふさわしい法律になるということを私は望んでいるところでございます。

 それでは、最後にお聞きをいたしますけれども、今後、先ほど指摘をいたしましたように、労働契約の成立から変更、そして終結に至るまで、あらゆるところの事項につきまして検討を深めまして、労働分野における民法の特別法として胸を張れるようなしっかりした法律にしていくべきだというふうに私は考えております。この点について、労働大臣に最後にお聞きをいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。

舛添国務大臣 ルールメーキング、ルールづくり、どこまでやるのかなということで、こういう点もあった方がいい、例えば、海外に行かれるときはこうだとか、いろいろな細かいこともおっしゃいました。そこまで決めるのがいいか。ただ、今回は、やはり紛争の処理ということを基本に置いていますし、そういう意味では、一つの大きな第一歩であるというふうに私は考えております。

 特に、今回の法案は、労働の現場におきまして紛争が生じている、これはやはり労働者保護の、弱い立場であることは確かなので、そういう問題を中心に、労働者保護ということから、労使対等の立場での合意の原則、労働契約の変更をする場合には遵守すべきルール、こういうものを私は基本的には定めたというふうに思っております。使用者側もこれに基づいて合理的な行動をしてくださいよと。そして、基本は、労働者が安心して仕事ができる、この契約法ができたおかげで不安がなくなるよ、これでなければいけないと思いますので、基本的なところはしっかり押さえたなという感じがしておりますし、希望と安心というのが福田内閣のスローガンでございますから、働く人に希望と安心を与える、こういう思いがそこに込められているわけであります。

 しかし、今委員が御指摘なさったようないろいろな点、この点がもっと規定されればもっと働く人が安心できるよということがあれば、これは入れていかないといけない。しかし、余りに煩瑣になる、それから、この部分はやはり会社の中で、使用者と働く人で個別にお決めくださった方が、よりフレキシブルでいいんじゃないですか、そういう面もこれはあると思います。

 ですから、今言ったような観点から、今後、これをやってみて、新たな紛争が生じる、しかし、この契約法ではとてもじゃないけれどもさばき切れない。結局は、実態に即した、例えば裁判所の判例が出る、これによって解決するしかないというようなこともあり得ると思います。

 委員は法律の専門家でございますから、私は、裁判所の判例を積み重ねていって、その判例がルールになって法律になる、こういう道も十分あると思いますので、しっかりと今おっしゃった点を配慮しながら、今後ともよりよい労働契約法案に育てていく、そういう観点から、厚生労働大臣として努力をしてまいりたいと思います。

細川委員 ありがとうございました。

 働き方が現在非常に多様化しておりまして、個人と使用者との間で紛争も多発している、こういうことが今現在大変大きな問題でありますから、今回の労働契約法、これは修正によりまして合意を得ましたので、この労働契約法案は成立をするというふうに思っておりますけれども、さらに充実した労働契約法にしていただきたいということを特に希望いたしまして、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

茂木委員長 次に、園田康博君。

園田(康)委員 民主党の園田康博でございます。

 引き続きまして、労働三法に関する質問をさせていただきたいというふうに思っております。

 そのうち、私は、先般余り時間がございませんでしたので、労働基準法の改正案についてのいわば時間外労働の部分、そちらの御質問をさせていただきました。引き続いて、私は労基法の改正案のいわば年次有給休暇の部分、この有効活用ということで政府からお示しをされていらっしゃるところについての質問をさせていただきたいと思います。

 先ほど、くしくも大臣、少し休暇といいますかそのお話をされましたので、きょうは、恐らく大臣に就任されてから相当な過重労働といいますかプレッシャーの中での仕事というふうに、重責を担いながらのお仕事をされていらっしゃるということで、少しお疲れの御様子なのかなと。また、きょう午後は、C型肝炎の肝炎訴訟の和解勧告が出るということで、少し気にされつつも、その対応策もかなり重圧になられているのかなというふうには思っております。

 そんな中で、一九三六年、先ほど大臣がくしくもおっしゃった、ILO条約の部分から、いわば我が国においても有給休暇あるいは休暇そのもののあり方というものを少し考えていかなければいけないのかなというふうに思った次第でございます。

 まず第一問目は、休暇の趣旨というものについて、大臣、どのようにお考えなのかなというふうにお伺いをしたいと思っておりますが、今回の労基法は、労働者のいわば心身の疲労の回復、あるいは労働力の維持培養を図るため、また、ゆとりある生活の実現にも資するという位置づけから、休日のほかに毎年一定日数の有給休暇を与えるということがまず規定をされているというふうに思っております。心身のリフレッシュを図って、また、家庭責任を果たす、あるいは自己啓発に活用するといったような、こういうワークライフバランス、このような観点から、年休の重要性というものはますますふえてきたのかなというふうに思っております。

 そうした中で、労働法が誕生して、働く人々の心身の健康と人間性を確保しようという社会的要請があったからだというふうに思っておるわけでありますけれども、その意味において、休暇というものが、大臣、今大変欲していらっしゃるというふうに思っておりますけれども、休暇の持つ社会的意義や役割、これらについてどのように考えていらっしゃるのかということと、それから今回の改正案において、年次有給休暇の時間単位の取得が可能という形の改正案を出していらっしゃるわけでありますが、休暇の趣旨も踏まえて、この意味がこの改正案の中で変更されるのか、あるいはそうでないのかというところは、この改正案と絡めて大臣の御所見を承りたいというふうに思います。

    〔委員長退席、宮澤委員長代理着席〕

舛添国務大臣 いろいろ私の仕事をおもんぱかっていただいて、ありがとうございます。

 やはり、土曜日、日曜日、週末があるというのはありがたいなと。もう金曜日になりますとくたくたになる、しかし、土日、国会を離れリフレッシュする、それで出てきますと、山井先生初め厳しい御質問にもまたお答えする勇気がわいてくるということでございまして、私はやはり、リフレッシュしてさらに働くぞ、さらに頑張るぞと。だから、やはり一週間に一遍、これはキリスト教で安息日なんといいますけれども、イスラム教でも同じように金曜日にはお休みとかありますけれども、人類が働いているときに、一週間に一遍ぐらい休むべきだなというのが経験則で出てきたんじゃないかと思いますので、これは絶対に不可欠であるということをまず断言しておきたいと思います。

 その上で、今の、時間ごとに有給休暇をとれるというのは、これは特に働いている女性なんかから、例えば、きょうは朝三時間とる、そうすると子供の送り迎えができるな、ちょっと家事もできるなというようないろいろな御要望を賜ったものですから、五日間を限度として時間単位でとる。つまり、せっかく有給休暇がある、これを日にち単位でとらなきゃだめだというんだと、ちょっと使い勝手が悪い。

 ですから、有給休暇をさらに有効に活用できるようなための仕組みということで、皆様方の御要望におこたえして入れたものでありまして、有給休暇ということの発想、根源、それから休暇の重要さ、こういうものにいささかも反するものではございませんので、その点は強調しておきたいと思います。

園田(康)委員 そうしますと、休暇本来の趣旨は離れることはないということであろうというふうに思っております。

 ただ、今、例えば朝の家事も少しある、あるいはお子さんを幼稚園に送っていかなければいけない、あるいは急に熱が出たというような形もあろうかというふうに思います。それはそれぞれ理由が出てくるのかなというふうに思っておりますが、そうした場合に、先ほど申し上げた休暇、例えばフランスの場合は、大臣も御承知のとおり、夏の期間、バカンスといって一カ月近くの長期、一括的な休暇があり、そしてさまざまな形でリフレッシュを行っていくというのが休暇というものの概念であったわけでありますけれども、それが、この時点で、我が国では法定の一定の要件を満たせば十日から順次取得をすることができるというふうになってきているわけであります。そのうち、今回は五日というふうになっているわけですね。

 そうすると、時間単位で、どうしても今までは日単位でとっていたところが、そのような使い勝手のいいものにしていくということは確認をさせていただきたいんですが、そうしますと、使い勝手がいいからといって、本来の趣旨を変えていってはいけないのではないのかなというふうに私はまず考えております。

 したがって、余り時間というものを強調し過ぎると、ちょっと制度の趣旨から外れていくんではないかなという懸念が少しあるんだということだけ私は申し上げておきたいというふうに思っております。

 それで、就労条件総合調査結果の概況というのが先般十月に厚生労働省から発表されておりまして、その中で、労働者一人の平均年次有給休暇の取得状況というのが発表されておるわけでありますけれども、さまざまな形で年休の消化率を高める目的ということで、厚生労働省もさまざまな施策を打ってきたというふうに私は理解をしております。

 その中で、計画年休の取得のあり方ですとか、施策の中でも工夫をされていらっしゃったということでありますが、今般、まずこの取得率というもの、消化率ですね、これがどのようになっているのかということと、それから今回の改正案で、年休の消化率のアップがどのように結びついていくのかということを少し確認したいと思うんですが、いかがでしょうか。

青木政府参考人 年次有給休暇の取得率でございますけれども、これは十八年、委員お触れになりました就労条件総合調査で四六・六%ということでございます。取得日数、これが年間八・三日ということになっております。

舛添国務大臣 先ほどお答えして、今委員が問題指摘された、時間ごとに有給を消化する、時間単位で五日までできる、これが実は一つの有給休暇の取得率を上げていく手段になるかなということを考えています。

 ちょっと調査を見てみますと、やはり仕事をしながら子育てをやっている三十代、四十代の女性から、何とかこれは時間単位で許してもらえませんかという要望が非常に多いんですね。ですから、これは時間単位で、例えば今委員もおっしゃったように、子供を学校に送っていくために時間が欲しい、朝三時間だというようなことでとっていって、そうすると五日間の分はこの時間単位で消化できるわけですから、そのほかにもいろいろな施策は考えないといけないと思いますけれども、とりあえず、今回時間単位での活用法を考えたのは、実は、取得率を高めようという配慮の一つでもあるということを申し上げておきたいと思います。

園田(康)委員 恐らくそうだろうというふうに私も理解はいたしておりますが、ただ、ちょっと一点、局長から先ほど数字的な発表がございましたけれども、大臣、ぜひこの取得状況を今度時間があるときによく見ていただければなというふうに思うんです。

 年々、今は四六・六%ということでありますけれども、昨年よりも少しまた減ってきているという状況も、推移が上下がありますので、その点は、それでもやはり五〇%を切っている状況、依然として低い状況であるなという印象は私も持たせていただきました。

 と同時に、産業の業種別によってもかなり差が開いておりまして、電気、ガス、水道業におかれましては七七・五%と大変高いところを示しているわけでありますけれども、一方、建設業は三四・九%。あるいは、飲食店、宿泊業も、確かにこの辺は業種の形態にもよるんでしょうけれども、これが二六・九%と、これも格差と言っていいのかどうかあれですけれども、かなり上と下の取得率に差がある。したがって、平均すると四六・六%ということなんですが、ぜひこの業態別にでも詳しく、どういう形でこれを持っていったらいいのかということを、施策を今度考える際に、ぜひ一つの材料として見ていただきたいなというふうに思っております。

 今、くしくも、時間によって取得率を上げていこうという考え方をお示しになられたわけでありますけれども、しかしながら、現行の労基法でも、年休について、例えば半日単位で付与する義務はないと解されているわけではないんじゃないでしょうか。半日単位で付与しても、逆になれば、違法ではないんですよね。考え方として違法ではない。ただ、一日で付与するのがいいんですよという考え方に基づいて、そのような運用が今されているわけでありますけれども、決して、現行法でも、半日でやっても直ちに違法という形にはならないんだということですね。

 そこで、ちょっとお伺いをするんですが、これは労使協定の中で決まっていくものであろうというふうに思うんですが、半日ないし時間単位の年休の付与が従来から行われている、もう既に行われているという事例を少し聞いているわけでありますけれども、その辺の現状はどのようになっているでしょうか。

 もし把握していれば、その事業所がどのぐらいあるのかということを聞かせていただきたいのと同時に、そうした事業所が、それは今の法定の年休の付与日数にプラスして、それ以外のところで、さらに労使の努力によってそういう付与の仕方がなされているというふうにも聞いているんですが、そういう実態があるかどうか、局長、いかがでしょうか。

青木政府参考人 労働基準法の三十九条で、年次有給休暇の付与ということになっているわけですけれども、企業について、時間単位などの、あるいは半日単位などの付与をしている、そういう実態は把握をしておりませんけれども、三十九条の年休以外に、夏季休暇とか病気休暇とか、あるいはリフレッシュ休暇とかボランティア休暇、あるいは教育訓練休暇、企業独自に、委員がお触れになりましたように、労使協定でありますとか、そういうことによってやっている企業も存在しております。

 ただ、これがどのぐらいの企業数ということでございましたけれども、その数等については実態を把握しておりません。

園田(康)委員 恐らく労使協定の範囲の中でありますので、これを調べようとなると少し問題が出てくるのかなというふうに思うわけでありますが、しかしながら、そういう企業努力あるいは労使協議の中で、そういう努力をしながら、少しでもリフレッシュに向けて、労働者の環境改善に向かって努力をしているというところもあるんだということであります。

 したがって、私は、一概に今回のこの条文の改正がだめだとも言うつもりはありませんし、また、全部が全部いいというふうに果たして言えるかどうかというところで、少しこれから細かい議論をさせていただきたい、懸念が何点かございますので、その点をお答えいただければなというふうに思っております。

 その前に、ちょっと一点だけ確認をさせていただきたいんですが、例えば年次有給休暇制度は、あくまでも休養のため付与されるものであるから、遅刻や早退に充当されることは望ましくないというのが労基法のコンメンタールにははっきりと書かれているわけなんですが、時間単位の年休取得についての休暇の趣旨とは異なる活用の仕方が今後これによって多くなるということも指摘があるわけであります。

 特に、先ほどお話を申し上げた、共働き家庭や単身者にとってのメリットは確かに大きいというふうに私も思っております。病院の通院や役所の手続、保育園の送迎、親の看護、介護、マンション設備の安全点検、あるいは一時間早く退社をして、大臣も恐らく経験があると思いますが、私も今、大学で夜の通信教育の講座を担当させていただいていまして、夜間、日常働いていらっしゃる方々が夜来て、大学で勉強し、そして単位を取得して、学士あるいは論文を書こうという意欲のある方々もいらっしゃるんですね。そういった方々にとっては大変これが、ただし、私の場合は六時十分からの講義でございますので、そうなると、遠くから来る方は、五時ぐらいには退社しなければいけないという形になる。でも、なかなかそれが今の現状ではできにくいとなると、こういう時間単位でとる、一時間早く退社してこういうところに行くということは、大変有効に使われる使われ方だろうなというふうに思っておる、大変魅力のあるものであるというふうに思っております。

 したがって、法律上の年休の利用目的については、労基法の関知しないところであって、休暇をどのように使うかは、使用者の干渉を許さない労働者の自由というのが法の趣旨というふうに思っておりますけれども、今回の改正案、これについての趣旨が変わらないということでいいかどうか、確認をさせていただきたいと思います。

    〔宮澤委員長代理退席、委員長着席〕

青木政府参考人 委員が御指摘になりましたように、年次有給休暇については、法律上、労働基準法上、労働者がいかなる目的のために利用しようということも関知しておりませんし、また、休暇の利用目的によって使用者が拒否をしたりするということは、これは法律上認められないということになっております。

 今回の改正案によりまして、時間単位でありましても、今回の改正案によってもこの趣旨が変わるものではないというふうに考えております。

園田(康)委員 ありがとうございます。

 そこで、では今回時間を、五日分の時間に規定をされようというふうになっているわけであります。これは、政省令で今後決まっていくものであろう、あるいは労政審などの議論を経てこれが決まっていくものだろうというふうに思っておりますが、例えば、ちょっとこういう事例を幾つか挙げさせていただいて、基本的に、現段階で厚生労働省がどのように考えていらっしゃるか、少しお話を聞かせていただきたいと思います。

 まず、この五日というものは、通常の労働者の場合ですと、時間に換算すると何時間というふうに考えればよろしいんでしょうか。一日の所定労働時間、すなわち始業時から終業時までの時間から所定の休憩時間を差し引いた、いわゆる所定労働時間と言われておりますが、それに五日を掛けたというふうに考える時間として算出するんでしょうか。

青木政府参考人 年次有給休暇というのは、賃金の減少を伴うことなく労働義務の免除を受けるというものでございます。今度の法案で設けます時間単位年休におきましても、一日の所定労働時間が基本となるものというふうに考えております。

 しかし、さまざまな場面がございます。詳細な運用方法については、委員御指摘になりましたように、法案が成立した後に、労働政策審議会で御議論いただいて、厚生労働省令で定めるということにいたしております。

園田(康)委員 そうなんですが、一応、今の現状の中からいくと、例えば、所定労働時間が七・五時間というふうになった場合、これを時間で割るという形になると、この三十分間を切り上げるのか切り下げるのかによって、八時間労働のところの人とそれから七・五時間の人では、一ポイント減るか減らないかの大変大きな瀬戸際になってくるのかなというふうに思っていることと、それから、年休の買い上げというのは、これは最終的な部分になってくるわけなんですけれども、そういった部分も、この半端な時間が出たときの扱いというものは少し問題になってくるのかなというふうに思っております。

 それからもう一つ、みなし労働時間の場合です。所定労働時間が八時間というふうに設定されるならば、それが例えば九時間働いていらっしゃる方をみなしという形でなった場合、そういう場合でも、所定労働時間を超える分は、これを九時間というふうに見るのかどうかというところもあるんですが、このみなし労働時間についてはどのように考えていらっしゃいますでしょうか。

青木政府参考人 みなし労働時間制につきましては、みなし労働時間の定め方というのが企業によってさまざまでございます。

 一応原則として、みなし労働時間については所定労働時間労働したものとみなすということになっているわけでありますけれども、その際に、通常所定労働時間を超えて労働することが必要となるというような場合にどういう時間にするのかということについては、その通常必要とされる時間としたり、あるいは労使協定で定める時間労働したものとみなすというようなものがございますし、また、別の裁量労働制のような時間制度でありますと、労使委員会で決議した時間であるというふうにしてみたりするということが基準法上なっているわけでありますので、そういう意味では、それぞれの制度に応じた運用のあり方を定めていく必要があるというふうに思っております。

 したがって、そういったさまざまな細部、詳細な運用方法につきましては、法案成立後に労働政策審議会で御議論いただいて、厚生労働省令で具体的に定めをしていきたいというふうに思っております。

園田(康)委員 恐らく本当にこれからのことなんだろうというふうに思いますが、大臣、あと二点だけ、こういう問題もあるよということだけ、私の指摘。多分これは、議論を繰り返していてもまだ結論が出る話じゃないので。

 例えば、一勤務十六時間を、これは二日間にわたる方、あるいは介護士、看護師の方々なんかは夜勤が入ってきますから、そうすると、二日間にわたるんですね。例えば、一日が八時から始まって五時にまず終わって、そこから夜勤に入る、夜中の二時まで夜勤が入った、これは十七時間労働になるんですね。そうすると、十七時間労働なんだけれども、二日間にわたりますから、通常の年休の取得だと二日分とれるんですよ、年休の数え方でいくと。ところが、時間単位で計算して、一時間一ポイントというふうに換算すると、本来だったらば二日分使えるわけですから二十四時間分の時間が取得できるという形になるんですけれども、時間で切ってしまうと十七時間分しかとれなくなるという問題も出てくるんではないのかなというふうに思うわけなんですね。

 それから、あとパート労働者の場合、これは週に例えば月、水、金、二時間、二時間、五時間というふうに働いた場合、そうすると、週九時間の労働。ところが、次の週でいくと、少し繁忙期になって、三時間、三時間、六時間となると、十二時間その週は働いたという形になるわけですね。週によっていわゆるポイントが変わってくるというか、時間の差異が出てくるという形になるんだということですね。

 こういった問題も起こり得るというかあり得るわけですので、時間の設定の仕方というものを少し、これから指針をつくるに際しては、厚生労働省、労働形態の実態を踏まえながらしっかりと決めていっていただきたいというふうに思っております。

 時間がなくなってきましたので、ちょっと時季変更権について、先ほど少し局長がおっしゃられましたので、これだけ議論をさせていただきたいと思います。

 時季指定権と変更権についての関係でございますけれども、先ほどおっしゃっていただいたように、法律上の要件を満たして発生した年休権というものは、労働者がその時季を特定したときには、客観的に事業の正常な運営を妨げる場合に該当し、かつこれを理由として使用者が時季変更権を行使しない限り、時季指定によって年次有給休暇が成立するというふうになっておりますよね。

 日単位の取得においては、労働者にとってはその日でないと年休をとる意味がない、この日、この時間という形で指定をしていくわけなんですね。ということがあると思うんですが、時間単位の取得において、その具体的な時季指定の要請がより具体化して先鋭化していく。そして、その日の時間帯に年休がとれないと困るというケースが多くなってくるわけなんです。すなわち、これから時季指定権の重みがどんどん増していく、この時間単位でとる、この日のこの時間にとるんだということが重みを増してくるということになるんですね。

 これに対して、いわば使用者側から、他の時季に与えますから今回のこの時間にとることは承認しませんというような形で時季変更権を簡単に行使されるというふうにされても納得のいかないケースがふえてくる。私はこれからこういうトラブルが現場で起きてくるんではないのかなという心配をしております。

 さきの国会の中で、時季変更の意味については、局長が、労働者が日単位で請求した場合に使用者が時間単位に変更することは、時季変更には当たらないというふうに答弁をされました。複数日にわたる一括した年休の指定については、休暇の分割制限がないために、その一部について時季変更権行使も可能という最高裁の判例もありましたね。

 したがって、この日単位での請求に対しての時間単位に変更する時季変更権は行使できないと私は理解をしておりますけれども、この考え方でまずよろしいでしょうか。

 そして、それに対して、この時間単位の年休というものは、労使協定あるいは健全な労使関係が構築されていればとりやすいんだけれども、殊さら、先ほどの議論ではありませんけれども、中小企業、零細企業にとっていけば、なかなかそれがうまくいっていないところもかなり多くあるというふうに私は聞いておるんです。そういう、なかなかとりづらい状況にあるんだなというふうに私は感じておるんです。それについて最後に大臣の御所見をお伺いして、質問を終わりたいと思います。

青木政府参考人 年次有給休暇は、請求時季が事業の正常な運営を妨げるものでない限り使用者は付与しなければならないものでございます。この原則は時間単位での取得においても変わりはございません。

 御指摘のような、労働者が日単位で請求した場合に使用者が時間単位に変更することは時季変更には当たらず、また、労働者が請求した年次有給休暇のうち一定範囲について取得を認めないこととなるというものでございますので、労働者による自由な年休取得を阻害することになりますので、これは認められないというふうに考えております。

舛添国務大臣 この年次有給休暇を消化するというか、とる。そうすると、周りの仲間に迷惑がかかるんじゃないかな、どうもうちの職場でちょっと手を挙げてそれを言うというのは、そういう雰囲気じゃないな、まだまだそういうことで十分な年次有給休暇の取得はできていないと思います。

 そして、時間単位で消化をしよう、年次有給休暇をとろうというこの新しい制度については、労使協定できちんと書くことが必要でありますので、労使双方が、こういう新しい制度があります、したがって積極的に導入しましょう、こういうことをしっかり話し合っていただいて、そして国民全体、国全体でこういうシステムを上手にうまく活用する、そういう雰囲気づくりも必要だと思いますので、総合的なそういう努力を今後とも厚生労働省としてもやっていきたいと思います。

園田(康)委員 ありがとうございました。終わります。

茂木委員長 次に、岡本充功君。

岡本(充)委員 民主党の岡本でございます。

 きょうは、労働にかかわる幾つかの問題を議論していきたいと思います。

 まず、私は、以前より指摘をしておるんですが、そもそも労働関連の法令の中に労働とは一体何なのかということが定義をされていないということが大変不思議でならないわけなんですね。労働者とは何かとか強制労働はどういうことかとか、こういうことは定義をされているのに、なぜ労働というのが定義をされていないのかと思うわけでありますが、この際、労働の定義、厚生労働省としての定義を明確にお答えをいただきたいと思います。

青木政府参考人 岡本委員御指摘のように、労働基準法等において、労働について定義した規定は存在しておりません。

 お話ありましたように、労働者については、労働基準法九条で、職業の種類を問わず、事業または事務所に使用される者をいうと定義しております。

 それで、今度提案申し上げております労働契約法におきましても、第六条で「労働契約の成立」ということで、労働契約については、「労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことについて、」云々ということで、規定が一定程度なされているというふうに思っております。

 実態として、労働については、使用従属関係が認められるような法律関係が労働関係であるというふうに認識しておりますが、冒頭申し上げましたように、労働について法令上定義したものはございません。

岡本(充)委員 ですから、今回私は伺っているんですね。この六条でも「労働契約は、労働者が使用者に使用されて労働し、」と書いています。労働する、この労働というのはどういうものを指すのか、やはりそれをはっきりしておく必要があるんじゃないか。

 そもそも労働とはどういうことだというふうに厚生労働省がお考えなのかということを、通告してあるはずですから、明確な定義をお聞かせいただきたいと思います。

青木政府参考人 先ほど申し上げましたように、使用従属関係が認められるような、そういう法律関係が労働関係ということでありますので、労働というのはそのようなものだというふうに理解をいたしております。

岡本(充)委員 極めてあいまいなんですね。これまでも労働法制は、判例を重ねる中で定義づけをしてきた部分もある。解釈で運用してきたところもある。

 大臣、どうでしょう、労働ということについて、労働とは一体何なのか。今回の法案の中でも労働という言葉がちりばめられているにもかかわらず、そういうようなものではないかみたいなあいまいな答弁ではなくて、こういうものはやはり労働だというふうに定義をしていく必要性があるんじゃないかと思うわけなんでありますけれども、これまで定義をしてこなかった、もしくは今回も定義ができない理由とあわせて、もしそれは局長の方からあれば、また大臣の方からは、大臣の思う労働とはどういうものなのか、お答えをいただければと思います。

青木政府参考人 一つには、民法の方で雇用についての規定があるということと、もう一つは、労働関係法律におきましては、労働保護立法だということで、労働者として保護することができるかどうかということで、労働者性の判断ということで、そこに労働という関係を見出すことができる、こういう論理になっているというふうに考えております。

 したがって、法律的にいえば、労働者性の判断をする、それが労働者であるか否かということで労働という立法の中に入ってくるかどうかということで処理をされているというふうに理解をいたしております。

舛添国務大臣 非常に難しい問題ですけれども、労働法制、契約法、最低賃金法、こういうのを今議論していますけれども、そこにおけるのは、今局長が答弁したように、使用従属、賃金の支払い、そういうような要素はあるんだと思います。

 ただ、一般的に、広辞苑のような字引で書いてあるような形で労働とは何とやるか。それは、英語で言っても、例えばレーバーという概念がある、ワークという概念がある、ではそれはどこが違うのか。そういう議論は議論としてやる必要もあるかと思いますけれども、私はむしろ、恐らく委員が問題意識として持っておられるのは、先ほど細川委員がNHKの料金徴収される方の役務提供の契約、これが労働かどうなのかという別の観点から問題提起をなさいましたね。それと同じように、例えばボランティアの人が働く、これはどういう形で労働なのか。

 それから、今本当に働く人の価値観、いわゆる労働、いわゆる働き方の実態もたくさんあるので、私はやはり法律という観点から見たら、新しいいわゆる働き方、いわゆる形態が出てきたときに、それに対して新たなルールをつくっていくというのが立法する者たちの仕事だろうというふうに思っています。

 そしてまた、三権分立の中で、立法が既にそういうことをやる、それから司法の判断で、これは役務提供契約であっていわゆる労働法のルールの中に基づきませんよという判断を司法がやるかどうか。だから、判決という形で積み上げていくという方向もあろうかというふうに思いますので、そういう点を総合的に勘案して、むしろ私は、アプローチとしては、最初からアプリオリに労働とはかくたるものであるということを決めるよりも、現実の日本社会において、働き方の流動化、働く人の価値観の多様化、それに伴う新たなる事象ができてきたときに、既存の法律では律し切れない、そのときに一つ一つそれを解決していくというアプローチの方がはるかに生産的であろうかなというのが今の私の考え方であります。

岡本(充)委員 ただ、今回労働契約法というものを新たにつくって労働に対する新たな概念を導入していこう、もしくは契約という形で明文化していこうという試みをするのであれば、やはりそこは明確にしていく必要がある。これまでは、そういう意味では大臣がおっしゃられるように判例を重ねることでの例示にとどまっていた部分を明確にしようという試みを挑戦されるわけですから、そこははっきりさせる必要があるんじゃないかということで、私はあえて指摘をしたわけです。そういう意味で、改めてこの問題意識をまた省内でも一度御検討いただけたらと思っています。

 その中で、これは平成十九年の三月一日の予算委員会の分科会でも取り上げさせていただいておりますけれども、先ほど細川委員はNHKの料金徴収員の話をされましたが、私はかねてより、大学病院のいわゆる給与をもらわない医師の医療行為だとか、それが強制労働と言われても仕方がない部分があるのではないかということは、もうこの議事録をお読みいただければ、指摘をしたとおりであります。

 この中で、厚生労働省として、三月一日の時点で、当時の審議官が答弁をしていただいています。厚生労働省としてもこの実態を調査していく旨、そしてまた、文科省と連携をとりながら、個別の大学病院においてもそういう問題があるということであればそれはもちろん適切に対応してまいりたい、こういうふうに答弁をされているわけですが、その後どのような対策をとられてきたのか、御答弁をいただければと思います。

青木政府参考人 御指摘の大学病院の研究生についてでございますけれども、これにつきましては、文部科学省においてその実態調査というものをいたしました。

 お触れになりました当時から、さらにもう一度直近の調査をいたしまして、雇用契約を結んでいる大学院生については三五%というような調査結果も出ております。

 こういった調査も踏まえまして、一つには、文部科学省と連携いたしまして、文部科学省において大学に要請をして、それを踏まえた予算要求もいたしておるところでございますので、私どもとしては、個別の大学病院等においてさらに労使から相談があった場合には、適切に対応してまいりたいというふうに考えております。

岡本(充)委員 労使から相談があった場合にはという条件がついているわけなんですよね。それは実態としてやはり指摘をし、調査を、個別の事例を見るという話をされているわけですから、そこは、せっかく今回文部科学省が、今御指摘のとおり、概算要求ベースで百三十億円予算請求しています。大学病院としても、予算があれば雇用関係を結びたいという意欲のあるところが多いと聞いております。

 そういった部分を、大臣、ぜひ政府としても、今局長言われたように、雇用関係は三五%しか結んでいないで、医療行為をしたり、もっと言えば、みずからもそれこそ感染の危険性がある中、治療、診療行為をしている、こういう実態があるわけです。いわゆる雇用保険だけじゃない、労災の問題を含めて、こういう状況で診療行為をしていることが労働に当たるのか当たらないのかという、またさっきの話に戻るわけですけれども、私は、ある意味これは労働に当たるんだろうと思いますし、やはり雇用契約をきちっと結ぶべく、この点について、大臣からもきちっと財務大臣の方にこの予算措置をお願いしていただきたいと思うわけですが、御答弁をいただけますか。

舛添国務大臣 委員が医療、特に大学病院の現場を非常によく御承知で、現場におられたわけですから、私自身は別の角度から、日本の医療体制をいかに再構築するか、医師不足の問題を含めていろいろな問題が今噴出していますから、構造的な改革のメスを入れる必要があるというふうに思っています。そして、今、労働という側面から委員が指摘されたような問題も、これもやはり同時に考えていかないといけない。

 厚生労働省としても、これはしっかりと、まさに医師不足、医療体制の再構築という問題とも絡みますから、予算請求もしておりますし、ぜひ改善の方向で努力をしたいと思いますから、財務大臣含め関係省庁ともきちんと議論をして、この問題に取り組んでまいりたいと思います。

岡本(充)委員 今の答弁に大いに期待をしたいと思います。

 その上で、きょうは、とりわけ残業の話について取り上げたいと思っています。

 サービス残業という言葉もありますが、そもそも残業の実態を厚生労働省が調査すると、長時間残業はなぜか大企業の方に多くて、従業員数が少なくなると長時間の残業の割合が減ってくるという調査も厚生労働省はお出しであるようでありますけれども、こういう実態を見ると、やはり中小企業でのいわゆる残業の把握が難しいのではないかという懸念も持ちます。

 また、その一方で、大企業、私はある企業で産業医をしておりまして思っているわけでありますけれども、残業というのはなかなか減らない。きちっとつけているんですけれども、減らない。同じ人が同じように残業をするという実態があるわけですね、同じ部署が。そして、その中でも同じ人が残業をしている。今月も長時間労働の面接に来た、また先月も来た、私、三カ月連続です、こういうような実態もあるわけです。私は、特定の人に残業が集中するという実態も、なかなか改善は難しいけれども、対策としてはやはりとっていかなきゃいけないんだろう、これからの課題なんだろうと思っています。

 それはまず指摘をしておいて、そんな中、今回はサービス残業の問題についてです。

 これはさらに悪質な話ですけれども、サービス残業をした企業に対するペナルティーというのは、今個人に対して、監督者に対して懲役六カ月、それから企業に対して罰金三十万。これが本当に適切な罰則であるのか。もっと言えば、例えば税金の場合、滞納すれば利息がつく、延滞税がつく、重加算税がつく。しかし、サービス残業した分の不払い賃金を払うときには利息すらつかない、こういうことだと私、聞きました。

 サービス残業をさせてしまい、後から不払い賃金を払えばそれで済むという話であり、ほとんど罰則がないということでは、このサービス残業自体もなかなかなくならないんじゃないか。例えば、サービス残業をした企業名すら公表をされない、こういう実態。これでは、行政罰、刑事罰、それからいわゆる報道等による社会的な制裁、いろいろあると思うんですけれども、何らか、今の仕組みのままでは弱いのではないかという意識を私、持つわけであります。

 この点について、今回、特段改正をされなかった理由も含め、今後サービス残業を行った企業に対するペナルティーのあり方について厚生労働省としてどのようにお考えなのか、お答えいただきたいと思います。

青木政府参考人 いわゆるサービス残業は、これは賃金不払いだということで、私どもは賃金不払い残業ということを言っておりますけれども、今委員が御指摘になりましたように、この賃金不払い残業というのは労働基準法三十七条に違反するということでありまして、これについては六カ月以下の懲役または三十万円以下の罰金ということになっております。

 私どもは、残業が多いということも含めまして、長時間労働ということも含めまして、とりわけサービス残業などは論外でございますが、そういったことを改善するためにはやはりさまざまな努力が必要で、とりわけ、今お触れになりましたように、企業内における職務分担でありますとか、あるいは職務、事務の流れの変更でありますとか、そういったことも含めまして、かなり労務、人事管理の基本にかかわるような部分を改善しないと本質的な改善にならない。あるいはまた、経営トップも含めまして労使の意識というようなものも変えないと本質的な解決にはならないというふうに思っております。

 単に違反について指摘をして直すというだけではなく、そういった本質的な、体制的なところを変えてもらうということが、その後も適切な時間管理をするということにつながるというふうに思っております。したがって、そういう意味で、そういう指導を中心に考えているわけでございます。しかし、それでも極めて悪質なものについては司法処分に付すというようなこともいたしております。

 罰則についてでございますが、これは複数労働者に対して違反が認められた場合には、各支払い期ごと、各労働者ごとに一罪が成立するということになっております。それらは併合罪の関係に立つということでありますので、罰金額は単純に加算をされるということでございます。また、懲役刑についても、併合罪として六カ月の一・五倍まで科し得るということになっているわけであります。

 私どもとしては、こういった罰金につきましては、労働基準法の他の罰条、他の罪、他の違反との均衡なども考えまして、これが適当だろうと。現時点ではこれを引き上げることについては考えておりませんけれども、今ほど申し上げましたように、企業の本質的な労務管理体制、そういったものを変えてもらうということをまずもって強力な指導をするとともに、現在の罰則も、悪質なものについては厳正に対処をして適用していくということで今後も対処をしていきたいというふうに思っております。

岡本(充)委員 先ほどもお話ししましたけれども、いろいろな形態があると思います。別に刑事罰だけの話をしているわけではありません。サービス残業をして不払い賃金となった賃金に割り増しを科すとか、何らか方法はあるはずでありますから、ぜひ御検討いただきたいということをお願いしておきます。

 その上で、残業の話と合わさる話ですけれども、八十時間を超える残業時間に対しては五〇%の割り増し賃金を支払う、そのうち二五%は休暇で代用することができるということでありますけれども、こういった規定なども、どのような時間取得でいくのか。

 先ほども園田委員から話がありましたように、短時間の年次休暇という概念を導入するのは、それはそれとして今回の法案の中の一つのポイントなんだろうと思いますが、例えば八十八時間残業して、今の仕組みでは八時間分の四分の一、二時間の休暇がとれる、こういう話をしたら、あなたは先月の残業時間が長かったから二時間だけ休暇を差し上げますよ、こういう形で前月の八十八時間の八時間に対する割り増し賃金を支払ったということになるのか、それとも、二時間というのはさすがに短過ぎるから、例えば半日単位で付与していこうということになるのか。この法案、提出をされてから審議に至るまで大分時間がありましたから、こういうことも本当は詰めておいていただきたかったなというのが私の率直な感想です。詰まっていないということについて、私は問題意識を持っているということを指摘しておきたいと思います。

 もし今の指摘で何か間違っていることがあれば御指摘をいただきたいし、御答弁があれば局長からいただきたいと思います。

青木政府参考人 先ほど来申し上げていますように、これらの具体的詳細につきましては、労働基準法上の制度が多様でありますし、また現に、お触れになりましたように、企業の労働現場におきましても多種多様でございますので、それらに応じて詳細に決める必要があるというふうに考えております。それらについては、労働政策審議会の議論におきましてもきちんと議論していこうということになっているわけでございまして、そういった御審議を踏まえて、省令で規定をしていきたいというふうに思っております。

岡本(充)委員 ちょっと話をかえるんですが、気になる報道がありまして、今週の週刊誌の報道によりますと、こんな報道が出ていました。

 秋田県の男鹿市のみなと市民病院、ここの医師は、今、内科の常勤医が一人。そんな中、この病院に、医師を紹介しますという医療コンサルタントなる者があらわれて、月曜日から水曜日まで三日間内科医として月二回勤務をすれば、医師に一月百万円の報酬を払う、さらに、紹介をした人には紹介料六百三十万円、さらに二年間にわたりコンサルタント料を月三十一万五千円支払う、こんな契約を結び、医師が来てみたら、これが防衛医官だったということで、四日間勤めて退職した。こんな事実が本当にあったのかどうか。まず、事実関係をお聞きしたいと思います。

外山政府参考人 御指摘の件につきましては、防衛医科大学校病院におきまして専門研修中であって、東京大学医学部附属病院において部外研修も実施しておりました陸上自衛隊医官が、兼業するには承認が必要なことを知りながら、その申請をすることなく、平成十九年三月から五月の間に、数次にわたり秋田県内の病院において診療行為を行い、一時的に報酬を受け取っていたものであります。

岡本(充)委員 あきれる話なんですけれども、この防衛医官は、その後、処分をされたんですか。

外山政府参考人 当該医官に対して、本年七月六日付で、私企業への関与制限等違反及び正当な理由のない欠勤七日を行ったとして、停職八日の処分を実施したところであります。

岡本(充)委員 この問題は、防衛医官の方の問題もさることながら、この委員会で取り上げた理由の大きなところが、医師を紹介するに当たって、紹介料六百三十万円と、二年間にわたりコンサルタント料を月三十一万五千円支払うという内容で市民病院が民間の派遣業者と契約をしていた。しかも、こういう業者が雨後のタケノコのごとくあって、もう百社を超えている。玉石混交だ。紹介者の成功報酬の妥当な水準は報酬の二割、つまり、今回の事例でいえば毎月二十万円、このコンサルタント会社が報酬を取るのがもう相場になっている。今こういう状態になっているという話を聞くと、医師不足をある意味逆手にとってこういうビジネスが暗躍をし、市民病院が多額の紹介料を払う、これが厚生労働省が目指す僻地に対する、もしくは医師不足対策として目指す姿として適切なんでしょうか。

 私は、厚生労働省が、今回労働政策審議会において、医師派遣のあり方についてある一定の案を出されたというふうに承知をしておりますけれども、こういったスタイルで民間業者が暗躍するということを許していいのか、何らかの規制をかけていく必要があるのではないか、この点について御答弁をいただきたいと思います。

舛添国務大臣 今委員おっしゃったように、せっかく医師確保で努力するときに、こういう副作用というか悪い側面が出てはそれは話にならないと思います。

 私もこの医師不足の問題、今取り組んでいますので調査しますと、どういう手段でお医者さんの確保をしますかというのは、大学の医局からが一番多い。それから、知人・友人。ちなみに、大学医局から、九七・八%の回答、知人・友人、四一・九云々とあって、その他というものの中に、では、その他と答えた人たちに何ですかと言うと、今問題になっているこういう紹介業者というようなのもその中にあるように見受けられます。

 ただ、いろいろな手を使って医師の確保を図るというそのこと自体は悪いことではありませんけれども、労働法令に違反する、今話題になった例だと、これは何の登録もしていないような、ある意味で違法な紹介業者であったと、私はそういうふうに理解をしていますので、間違っていたら委員の方で答えていただきたいんですけれども、労働法令を遵守するというのは当然ですから、これは厳格に厳しく対応していきたいというふうに思います。

 今回改正を予定しています労働者派遣による医師派遣を初め、医師確保の方法としては、医療対策協議会を通じて調整する、それから、地域のマグネットホスピタルに勤務されている医師をローテーション方式で使うなど、いろいろな手を考えて対応したいと思いますけれども、労働法令に照らしてやるべきだということを強調しておきたいと思いますので、政府委員の方から、先ほどのケースについて、これが明確な法令違反であるかどうかの答弁をさせます。

太田政府参考人 今委員御指摘のようなケースでございますけれども、一般論で申し上げれば、有料で職業紹介を行う場合には厚生労働省の許可が必要なほか、職業安定法を遵守していただくことが必要でございますので、職業安定法に違反しているような状況が確認できれば、厳正に対処するということでございます。

岡本(充)委員 このケースに限らず、こういう相場がもうできてしまっている状況であるということは、まだほかにも多数事例があるんだと思います。一度調査をしていただきたいと思うわけでありますけれども、調査をしていただけるか明確な御答弁をいただいて、私の質問は終わりたいと思います。

舛添国務大臣 労働行政の根幹にかかわることでございますし、それから、医師不足対策、この大きな改革努力の一環を妨げるものでありますから、これは厚生労働省としてもきちんと調査をしてまいりたいと思います。

岡本(充)委員 終わります。

茂木委員長 次に、内山晃君。

内山委員 民主党の内山晃でございます。

 久しぶりの委員会質疑になりますので、どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 労働三法につきまして、お尋ねをしたいと思います。

 まず、労働基準法の一部を改正する法律案につきまして、一カ月の労働時間が八十時間を超えますと、時間外労働をさせた分に関しまして、割り増し賃金、五〇%以上の割り増し率を義務化されました。

 この割り増しの賃金の支払いにかえまして、有給の休日付与も可能としておりますけれども、果たして、これだけの長い時間を労働している者が、実際として、有給の休日を付与されても消化ができるのだろうかと大変疑問に思っているんですけれども、いかがでございましょうか。

青木政府参考人 八十時間を超える時間外労働について五〇%に割り増し賃金を引き上げる、引き上げた分の割り増し賃金の支払いにかわる有給休暇というのは、健康確保の観点から、実際にそういうことを行った労働者に休息の機会を与えるというものでございまして、その事業場の実情を熟知した労使により、こういった制度を導入していくということでございますし、また、その適用に当たっても、労働現場で労使がそういった人に対応していくということでありますので、そういったものを使っていただく、導入を決めた労使においてきちんと適正に使っていただくということになるだろうというふうに思っております。

内山委員 労働基準法の一部を改正する法律案の条文の第三十七条の二項というところに、五割以上の率で計算した割り増し賃金の支払いにかえて、通常の労働時間の賃金が支払われる休暇を与えることができるとあります。

 八十時間を超えた時間をどのように休暇、日にちに直すことができるのだろうか、その手法についてお尋ねをしたいと思うんです。

青木政府参考人 先ほど申し上げましたように、これは、例えば決算期の経理部門など、ある時期集中的に時間外労働が発生するけれども、その後は一息つけるというような実態の職場もあるわけでございまして、したがって、当該事業場の実態に応じて、その実情を熟知している労使が労使協定を結んで、こういうふうにやっていこう、こういうふうに導入していこうということで活用をしていただくということになるだろうと思っております。

内山委員 実務的なことでちょっとまだ練れていないのかもしれませんけれども、八十時間を超えた分に対して有給の休日を与える、ですから、労働時間をどういうふうに日にちに変換するんだろうとお尋ねをしておるんです。

青木政府参考人 これは、委員がおっしゃったように、時間を日にちに換算するということになるわけでありますけれども、これにつきましても、労働政策審議会で十分議論していただきまして、省令で定めるということにいたしております。

内山委員 非常に難しいんじゃなかろうか、こう思っているわけでありまして、例えば平均賃金で割るのか、そうしますと端数が出てきたりするおそれが十分ありまして、そういった端数の取り扱いなんかは一体どうされるんだろうかとすごく危惧をしているんですけれども、どう考えているんですか。

青木政府参考人 これは、今、平均賃金というお話が出ましたけれども、平均賃金の計算についても、極めて詳細、非常に多様なやり方を法令上規定いたしておりますし、取り扱いにおいても、個々の多様な実態に応じて定めているということでございます。

 おっしゃいますように、この換算の仕方というのは、そういう意味では極めて多様な、かつ詳細なことが必要だろうというふうに思っております。それにつきましては、先ほど申し上げましたように、政策審議会で議論していただいて、省令で定めたいというふうに思っております。

内山委員 同じように、今度は、有給の休日付与を消化する期間につきまして、一賃金支払い期間で処理をされるのかどうか、お答えをいただきたいと思います。

青木政府参考人 これも省令で定めるということでございますけれども、考え方としては、いわば代償措置として考えているものでございますので、一定程度の牽連性がある短い期間で考えるというふうなことで省令を定めたいというふうに思っております。

内山委員 これが長ければ、やはり消化し切れないというような形になってしまうんじゃなかろうかと思って危惧をしておるわけでありまして、やはり原則的には一賃金支払い期間内で処理されることを私は望みたい、こう思うわけであります。

 さらに、この有給の休日付与で労働者に付与されました休日は、労働基準法の第三十九条の年次有給休暇のように、事業主が時季変更権を行使することができるのかどうか、お尋ねをしたいと思います。

青木政府参考人 これは、年次有給休暇ではなくて特別の休暇ということで法律上位置づけられておりますので、労働基準法上言っております時季変更権だとかそういうところとは無縁のものでございます。

内山委員 ということは、できないということですね。

青木政府参考人 基準法上の時季変更請求権としてはできない、しかし、先ほど来申し上げていますように、これの具体的な詳細な取り扱いについては省令で定めるということにいたしておるところでございます。

内山委員 もう一度ちょっと整理して聞きますけれども、労基法の第三十九条の年次有給休暇とこの休日の付与は違うわけですよね。それを整理してちょっとお答えをいただきたいんです。

青木政府参考人 先ほど来申し上げていますように、これは年次有給休暇とは異なる特別の休暇ということでございますので、委員がおっしゃったように、違うものでございます。

内山委員 ですから、時季変更権は使用者側は使うことができないというふうに考えていいわけですね。

青木政府参考人 時季変更請求権は年次有給休暇についての規定でございますので、そのとおりでございます。

内山委員 こういう法律は、ここで皆さんがわかっていても、一般の事業主さんがどれだけ理解しているかが問題でありまして、だから、そういうところをやはりきちっと明確にお答えをいただかないとならないと思います。

 私の持ち時間は短い時間ですから、簡潔にお願いをしたいと思います。

 それでは、労働契約法の方に移りまして、お尋ねをしたいと思います。

 使用者につきまして、第二条で、「「使用者」とは、その使用する労働者に対して賃金を支払う者」とされておりますけれども、契約の当事者は使用者のみになるのか。労働基準法の第十条では、「使用者とは、事業主又は事業の経営担当者その他その事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為をするすべての者をいう。」とされております。

 この労働基準法の第十条の使用者と、今回、労働契約法の第二条の使用者の違いといいますか、その点につきまして、お尋ねをしたいと思います。

茂木委員長 青木局長、限られた時間の中で大変重要な質問をしておりますので、簡潔にお願いします。

青木政府参考人 使用者の概念でございますけれども、労働基準法における使用者は、最低労働基準の履行確保のための責任を有する主体ということでありますので、「事業主又は事業の経営担当者その他その事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為をするすべての者」というふうにその十条で決めております。したがって、委員が御指摘になりました、労働契約法上の使用者であります労働契約の締結当事者、いわゆる事業主、これよりは広いということでありまして、そういう意味では、異なっているということでございます。

内山委員 そうしますと、契約締結者は、人事部長とか支配人とか総務部長名で労働契約はできるんでしょうか。

青木政府参考人 労働契約法におきましては、労働基準法のように責任や義務の主体ということではなくて、労働契約の一方当事者ということでございますので、それを使用者というふうにとらえておりますので、具体的に、個人企業の場合であればその企業主個人、それから会社その他法人組織の場合はその法人そのものをいうということでございます。

内山委員 済みません、もうちょっとわかりやすくお願いしたいんですけれども、では、総務部長名で契約はできるんですか。

青木政府参考人 契約主体は、契約の権利義務関係を帰属させるという意味では、例えば企業の総務部長であったとしても、企業になるわけでございます。そういう意味で、労働契約法の権利義務関係、労働契約法では権利義務関係を規律する、規定するということでございますので、それは企業そのものに帰属をさせる、そういう意味で、法律上の規定をしているということでございます。

茂木委員長 できないということでいいんですか。

青木政府参考人 契約をできるかどうか、これは代理人になり得るかどうかということで、議論はまた別ですが、法律上の権利義務を帰属させる、効果を帰属させるのは、労働契約法で規定をしている、それを律しようとしているところでございますので、それは企業そのものになるということでございます。

内山委員 済みません、ちょっとよく理解できないんですけれども、人事部長とか支配人とか総務部長とか、こういう人たちは労働契約法の使用者になるのか、そして、契約を結ぶ対象者として該当するのかしないのか。

青木政府参考人 端的に言えば、ならないということです。

 労働基準法は、行為を罰する、罰則をもって強制をするということで、行為をする人たちについてとらまえるということでありますけれども、これは、権利を帰属させるのはどうするんだということでありますので、それは総務部長に権利を帰属させるのではなくて、企業そのものに権利を帰属させるものですので、労働契約法上は使用者にはならない、こういうことでございます。

内山委員 次に、では、労働者について同じようにお尋ねをしたいと思います。

 第二条では、「「労働者」とは、使用者に使用されて労働し、賃金を支払われる者」をいいます。雇用保険の加入要件等の有無の関係は、まず労働者となり得るのか、その要件に該当するのかしないのか。

青木政府参考人 雇用保険制度におきましては、労働基準法上の労働者に該当するか否かという判断をしまして、その判断に加えて、雇用保険法特有の労働時間あるいは雇用見込み期間などの要件を加味して被保険者の範囲を定めているというものでございます。

内山委員 次に、在宅勤務者と業務請負契約者は、この法律では労働者としての範囲に入りますか、どうですか。

青木政府参考人 在宅勤務者などの形態で働く人についてでございますけれども、これは労働者であるか否かという労働者性の問題でございます。これは、労働契約法におきましても、現行の労働基準法と同じ考え方をとっているところでございまして、契約形式にとらわれず、その実態によって判断するということにいたしております。

内山委員 この辺をしっかりと定義づけしませんと、やはり後で大きな問題を生じてしまうと思いますので、しっかりと整理をしていただきたい、こう思います。

 次に、第四条の第二項ということで、「労働契約の内容について、できる限り書面により確認するものとする。」とあります。労働基準法の第十五条の労働条件の明示は、労働契約の締結、雇い入れ時のみであります。雇い入れ後の労働条件の明示までは至っておりません。

 現実に、労働者の相談を数多く受けますと、あなたはどういう労働契約で勤めていますか、明確にすらすらと答えられる人は非常に少ないわけでありまして、これは提案なんですけれども、「できる限り書面により確認」としている部分に、定期的に確認をするべきというような文言を追加したらいかがか、こう思うわけでありますけれども、いかがでしょうか。

青木政府参考人 労働契約法は、労使間の紛争を防止しようということで、きちんとしたルールを法定していこうということであります。

 おっしゃいますように、労働契約の内容を書面でできる限り確認するということは、大変有用、有効なことだと思いますし、そういうことは望ましいというふうに思っておりますが、現実問題として、労働契約締結後も定期的に書面確認を義務づけるということは実務上の負担が極めて大きいと思いますし、また、労働契約締結時とは異なって、それと比べれば、労働契約が締結された後は、労働契約を実際に履行していっているわけでありますので、労使相互の信頼関係も醸成されますし、あるいは、自分たちが結んでいる労働契約内容自身についても理解は進むというふうに思われますので、義務づけまですべきかなというふうに考えております。

内山委員 かなというところでありますね。そうですか。

 この第四条第二項は「できる限り」と書いてあるわけでありまして、「できる限り」ということは、やらなくてもいいという事業主の判断が発生しないかというふうに危惧をしていますけれども、いかがでしょうか。

青木政府参考人 やらなければいけないというような意味においては、法律上の義務ということではないということであるかもしれませんが、法律上、「できる限り書面により確認する」ということになっておりますので、これは、労使がきちんとこういったものを尊重して実行していくということだろうというふうに思っております。

内山委員 それでは、法案第十条のことでお尋ねをしたいと思います。

 「労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、」「就業規則に定めるところによるもの」とありますけれども、この「合理的」の中に、労基法第八十九条、第九十条の就業規則の変更における法的手続の遵守が含まれるという判例、秋北バス、菅野、荒木の学説が有力でありまして、最近のデュープロセス、適正手続の重視というところから考えますと、第十条と第十一条を切り離したことが疑問に残るわけでありますけれども、いかがでしょうか。

青木政府参考人 御指摘になりました労働契約法の十条におきましては、合意原則の例外ということで、労働契約の内容である労働条件が変更後の就業規則に定めるところによるものとするという法的効果を発生させるための要件といたしまして、いろいろな考慮要素を示した上で就業規則が合理的であること、それと、就業規則を労働者に周知させたことを求めているところでございます。

 今お触れになりました労働基準法八十九条の届け出それから九十条の意見聴取、こういったものの遵守というものを十条の適用要件ということにいたしてしまいますと、これらの手続を踏まずに就業規則の変更がなされた場合は十条の合理性審査にかからないことになってしまう、かえってこれでは労働者保護に欠ける場合もあるということで、これらの規定の遵守を要件とはせずに、広くこういうことをしなかったものについてもきちんと合理性があるものだけが労働条件の変更につながるということにしたいということで、このような規定といたしたわけでございます。

内山委員 提案なんですけれども、労働者の立場に立てば、就業規則の変更手続における法令遵守の一言を追加すればよりわかりやすくなるんじゃなかろうか、こう考えておりまして、就業規則の変更手続の法令を遵守させ、合理性を確立することになると考えます。

 第十条に、労働組合等との交渉の状況、就業規則の変更の手続における法令遵守、これをつけ加えたらどうか。こういうことをつけ加えますと、秋北バス事件や学説、菅野、荒木等にも合致するんじゃなかろうかと思うんですけれども、御意見をいただきたいと思います。

青木政府参考人 お触れになりました秋北バス事件最高裁判決でございますけれども、ここでは、就業規則に関する労働基準法の手続、この規定は、就業規則の内容を合理的なものとするために必要な監督的規制にほかならないというふうに指摘をしているものでございます。したがって、その手続が重要であることにつきましては、労働契約法の十一条におきまして確認的に明らかにしております。

 十一条の規定しております届け出、意見聴取、そういう手続は、先ほど申し上げましたような十条の効力発生のための要件ではございません。これらの手続を踏まなければ、直ちに就業規則の変更を認めないという取り扱いになるものではありませんけれども、労働基準法で定められた重要な手続であるために、それらの手続が履行されていないような事案が裁判あるいは審判、そういったところで争われれば、就業規則の効力を判断する際に、そうした手続の不履行が考慮されるということになるというふうに考えております。

内山委員 同じく十条のことでお尋ねをします。

 変更後の就業規則を労働者に周知させ、内容が合理的であれば、労働条件が変更後の就業規則に定めるところによるもの、こうなっていると思います。

 今回の法律案では、内容の合理性と実質的周知があれば、労基法第八十九条、第九十条の要件をなさなくても効力を認めることになるというふうに考えていいわけですね。このことは、労使の合意がなくても就業規則の内容が労働者に適用になってしまう事態を招いてしまうんじゃなかろうかと危惧をしているんですけれども、就業規則の内容変更についてどのようにお考えになっていますか。お尋ねをしたいと思います。

青木政府参考人 労働契約法案におきましては、おっしゃったように、これは就業規則変更法理を十条で定めているわけでありますけれども、先行する条文八条で「労働者及び使用者は、その合意により、労働契約の内容である労働条件を変更することができる。」という合意原則をまず明確に規定いたしております。

 その上で、就業規則による労働条件変更に関する最高裁判所の判例法理に沿って、まず原則として、続く第九条で、使用者が労働者と合意することなく、就業規則の変更により、労働者の不利益に労働契約の内容を変更することはできない旨を規定いたしております。

 そしてさらに、御指摘になりました十条で、一つには変更後の就業規則が労働者に周知されており、二つ目には就業規則の変更が合理的なものである、そういう場合に、お触れになりましたように、労働契約の内容である労働条件は、変更後の就業規則に定めるところによるものとするというふうに規定をいたしております。

 このように、労働契約法案は、労働条件の変更に関しまして、まず労働者及び使用者の合意を原則としつつ、現在の判例法理に沿ったルールを明確化するというものでございます。したがって、八条から十条まで一貫して、基本的には合意原則から発生して、こういう規定をいたしているということでございます。

内山委員 会社の経営面から考えますと、使用者は労働者に対して労働条件の変更の必要性というのは否定できないと思います。労働条件の合意をしない相手に対し就業規則の適用がなされるというのは、最も重要な労働契約の原則である第三条一項にあるように、労使の対等な立場における合意に基づいて締結するということに矛盾をしているんじゃないかと思うわけでありまして、労働者は労働条件の変更権限を使用者にゆだねるという、今では余り支持されない状況が生まれるんじゃないかと思うんですが、いかがでしょうか。

青木政府参考人 就業規則の変更法理を労働契約法で規定するということに至った背景は、日本の労働現場におきましては、労働条件について、その変更につきまして、相当程度多くの事業主、事業場におきまして、就業規則の変更によって統一的に労働者の労働条件が規定され変更されている、こういう実態、そういうところから、労働条件の変更について触れる場合には、就業規則の変更によって行うということを避けては通れないだろうということで規定をされているわけでございます。

 お触れになりました三条との関係でございますが、この労働契約法案はまず契約でございますので、労使対等の原則に立って労使合意を大原則にするということで、先ほどるる申し上げましたけれども、八条それから九条、そういった合意原則をまずもって規定して、十条で例外的に就業規則で変更ができるという場合について合理性があるというような、最高裁判例等でも支持を受けるような、そういった要件のもとに認めようということで規定をされているものでございまして、三条なりの考え方と矛盾をするというものではないというふうに思っております。

内山委員 残された時間、お許しをいただきましたので、年金のことで舛添大臣にお尋ねを申し上げたいと思います。

 十六年年金改正法のところで、十九年度の年度末におきまして国民年金の納付率というのはたしか八〇%だと思いますが、今現在は何%で、また十九年度末には八〇%に届くんでしょうか、どうでしょうか。お尋ねをしたいと思います。

舛添国務大臣 御質問の平成十九年度納付率目標、これは平成十五年度に中期的な目標として掲げた数字でございますけれども、現在、平成十八年度の納付率で見てみますと、実績が六六・三%、これは目標は七四・五%でした。お尋ねの十九年度、これはまだ半ばでございますので四月から七月の納付率、実績が六〇・一%であります。

 したがいまして、やはりこれは国民年金をきちんと払っていただくということをもっとPRする。それは、根底には、背景には年金制度そのものに対する不信がある、それから特に世代間の不公平ということに関する問題も解決しないといけない、内山委員は年金の御専門家でおられますからいろいろな背景は一々るる申し上げませんけれども、そういうものがあります。

 ただ、納付する作業が煩雑だと、そこでもう納付率は下がりますから、例えば、今コンビニエンスストアでも納付できる、口座振替もあれば銀行もある、インターネットでもできる、こういうことが一つの工夫であります。それから、やはり少し強制徴収、これを強めたいなということを考えています。

 いずれにしましても、十九年度、今七月までで六〇・一ですから、全力を挙げてその八〇の目的を達成したいと思いますので、ぜひ、我々も努力をいたしますけれども、年金は自分の老後の、将来のための非常に大事な手だてでありますので、どうか国民の皆さんにも御理解賜って納付率を上げていただきたい、そういうふうに思います。

内山委員 時間が来ておりますけれども、大臣も、くしくも、やはり国民の年金不信が生じた結果によってと。これはやはり、年金不信を生じた結果は厚生労働省、社保庁の原因でありますので、そこら辺はよくこれから精査をしていただきたいと思います。

 また質問させていただきます。ありがとうございました。

茂木委員長 次に、高橋千鶴子君。

高橋委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 初めに、委員長のお許しを得て、一点だけ述べさせていただきたいと思います。

 先ほどのニュースで、薬害肝炎訴訟で、大阪高裁で初めての和解勧告が出たということであります。横田裁判長は、訴訟代理人だけでなく当事者との面談の機会も持ちたいと述べたと報じられております。

 私は、この間、舛添大臣が全面和解、全員救済に向けて御尽力をされたことに対し大いに感謝をするものでありますが、この裁判長の意見も踏まえながら、全面解決、全員救済に向けて、改めて国の決意を伺いたいと思います。

舛添国務大臣 私も今委員会の中におりましたので、間接的に、本日午後、大阪高裁の和解勧告が行われたということを聞きました。

 具体的にどういう細かい文言であったかは、委員会終了後、きちんと対応したいと思いますけれども、国としては、和解協議のテーブルに着きます。まず、これをはっきりと申し上げたいと思います。

 そして、今後、大阪高裁が精力的にリーダーシップを発揮くださって、問題の解決に当たる、和解協議を見直させる、そういう所存であると思いますので、厚生労働省として誠実に対応して、その成果が上がるように私も全力を挙げ、一日も早い問題の解決に取り組むということをこの場でお約束申し上げたいと思います。

高橋委員 ありがとうございます。

 原告団の皆さんがこれ以上悲しむことのないように、大臣のリードで全面解決を図っていただくことを強く要望したいと思います。

 本日の質疑に入ります。

 最初に、民主党さんに質問をさせていただきたいと思います。

 最低賃金法についてですが、これについては、きょうもかなりの時間を割いて議論がされておりました。私たちは、全国最低賃金、前回の国会でも主張しておりますけれども、世界の趨勢でもある、全国一律最低賃金千円以上を目指すべきだという主張をしてまいりました。

 民主党の考えも同じであるか、改めて確認をさせていただきます。

細川議員 高橋委員からの質問にお答えしたいと思います。

 御党がどのような全国一律最低賃金、詳しいことは私も存じておりませんけれども、民主党が考えております全国最低賃金は、全国の労働者すべてに適用される生活の最低保障の最低賃金額のライン、すなわちナショナルミニマムの水準でございます。

 ただ、物価などの差によりまして、労働者とその家族の生計費は全国各地におきましていろいろと相違がございます。したがって、全国最低賃金の額では生活ができず、これを適用することが不適当な、そういう地域もございます。

 そこで、民主党案では、そのような地域におきましては、地域最低賃金を決定することができる、そして、その地域の生活費に応じたより適切な最低賃金額を設定することを想定いたしております。

 そして、最低賃金額を決定する際の考慮基準、これは、労働者及びその家族の生計費、これを基本とすることによりまして、最低賃金額は最低限労働者とその家族の生計費程度の額となるようにいたしました。これによりまして、私どもは、全国最低賃金は八百円程度、全国各地で適用される最低賃金額の平均を千円程度になるものと想定いたしております。

高橋委員 ありがとうございます。

 労働者と家族の生計費を原則とし、全国最賃と、そして地域最賃がある場合にはそれを上回る、必ずそれを条件としているという点において、我々はこの民主案を歓迎したいと思っておりました。その旗をおろさずにいてほしいということを強くお話しさせていただきたいと思います。

 次に、政府に伺いますが、現在、政府は、生活扶助基準の見直し検討会を開催しておりますが、低所得世帯の消費支出を踏まえた見直しなどが二〇〇六年の骨太方針などで要請されており、このことによって生活扶助基準が引き下げもあり得るのかということを懸念しておりますが、いかがでしょうか。

中村政府参考人 お答え申し上げます。

 生活保護基準につきましては、平成十六年に専門委員会でその水準の検証を行ったわけでございますが、生活扶助基準と一般低所得世帯の消費実態との均衡が適切に図られているか否かを定期的に見きわめるために、全国消費実態調査などをもとに五年に一度の頻度で検証を行う必要がある、こういうふうにされているところでございます。また、委員御指摘の昨年の閣議決定もございます。

 御指摘の生活扶助基準に関する検討会は、全国消費実態調査、五年に一度行われておりますが、その結果が生活保護の作業にも使えるようになりましたので、級地を含む生活扶助基準について、直近の今の調査を踏まえた専門的な分析、検討を行っていただくことを目的といたしまして開催しているところでございます。

 委員御指摘の、引き下げることがあるのかということでございますが、まさに、本検討会は、今申し上げました全国消費実態調査という客観的な調査結果に基づいて専門的な分析、検討を行っていただくために、学識者に集まっていただいて検討しているところでございまして、あらかじめ基準の引き下げまたは引き上げといった方向性を持って検討しているところではございません。

高橋委員 あらかじめ決めるということではないと。もちろん、詳細に級位で分けていきますと、逆に基準の方を上げなければならないとか、そういうものがあるという資料もいただきました。

 しかし、私が伺っているのは、あらかじめかということではなくて、引き下げもあり得ますねということを伺っております。

中村政府参考人 まさに、ただいま申し上げましたように、全国消費実態調査等をもとに検証する必要があるということでございます。検証の結果、上がるケースもあると思いますし、下がるケースもあるということで、可能性については両方とも否定するものではございません。

高橋委員 両方とも否定するものではないというお話がありました。

 基本的にはこれは、そうはいっても、生活扶助基準の見直しということは、主に引き下げがねらわれているのではないかということに対して、私たちは強く反対をしているものであります。

 同時に、生活扶助基準というのは、生活保護法が、憲法二十五条に基づく健康で文化的な最低限度の生活、これを保障するものであるということでありますから、これの基準が下がるということは、いわゆる今述べた健康で文化的な生活という最低生活費がこの程度というふうに国が認めたということに相なるのだろうと私は解釈するのであります。

 そこで、最低賃金とこの生活保護基準と整合性を図るということは、国によって生活保護基準が結果として引き下げになった場合、最低賃金も引き下げされるということも選択肢としては否定できないと思いますが、いかがですか。政府に聞いています。

青木政府参考人 地域別最低賃金を決定する際に考慮すべき要素というものについては、労働者の生計費、それから賃金、それから通常の事業の賃金支払い能力という三つの要素、これを決定基準にいたしているわけであります。今般の改正におきまして、この地域別最低賃金を決定する際に考慮すべき要素の一つである生計費について、生活保護に係る施策との整合性に配慮するということを明確にしようとしているわけであります。

 したがって、地方最低賃金審議会で具体的な水準を決めるということでありますけれども、生活保護基準額の水準のみに連動するような性格のものではないわけであります。そういう意味では、総合的に考慮されるということであります。可能性については否定をされるものではありませんけれども、今申し上げましたように、生活保護基準が下がったからといって、機械的に何か地域別最低賃金が引き下がるというようなものでもないということであります。

高橋委員 今、否定されるものではないとお答えになったと思います。もちろん、私も、前回も最低賃金の問題を質問していますし、三つの要素であるということは十分承知した上で質問しています。ですから、当然、機械的に基準が下がったから下がるということでは決してないと。

 しかし、あえて今回、このことを条文に盛り込んだ。盛り込んだことによって、現状は生活保護基準を下回る最低賃金を改善しようというところからスタートしたかもしれないけれども、しかし、今最低保護基準を見直ししているという現状において、これを否定できないんだ、下がることも当然あり得るんだということをお認めになったと思います。

 私は、その点で、この最低賃金が生活保護との整合性を図ると書いたことによって大きく改善されるということではないのだ、むしろ引き下げもあるのだということを強く指摘したいと思います。

 そこで、次に伺いますが、産業別最賃が、使用者側のなくせという厳しい攻撃に遭いつつも特定最低賃金として残ったことは歓迎したいと思います。ただ、罰則は除外されました。これを補てんする措置をどのように考えていらっしゃいますか。

青木政府参考人 現行の産業別最低賃金については、御指摘のありましたように、これは廃止され、特定最低賃金として、いわば最低賃金法上の罰則の適用はなくして、民事的効力のみを有するということにいたしているわけでありますけれども、これは民事的効力を引き続き有しておりますので、この特定最低賃金の不払いにつきましては、これは約束した賃金ということになります。その賃金を払わなかったということになりますので、労働基準法の二十四条に規定いたしております賃金の全額払い、これに違反をするということになります。

 したがって、この労働基準法二十四条違反として、これは罰金額は、今度の最低賃金法とは異なりますけれども、上限三十万円ということでありますけれども、引き続き罰則としては、額は違いますけれども適用されるということになります。罰則規定については、そういう意味で、全くなくなるということではないわけです。

 ただ、これは、その特定最低賃金について最低賃金法上の罰則を外しましたのは、最低賃金については、賃金の最低限を保障する安全網としての役割、これはすべての労働者についてあまねくそういう役割を期待するということで、地域別の最低賃金をまず全国につくることを義務づけるということで、必ず地域別の最低賃金が日本全国の労働者に及ぶということで、まずセーフティーネットとして強化をする、この地域別最低賃金についても罰則を引き上げるというようなことで、ここに従来のセーフティーネットとしての意味合いを期待するということであります。

 産業別最賃につきましては、いわば関係労使のイニシアチブにより設定をして、企業内におけるいろいろな賃金水準を設定する際のいわば労使の取り組み、それを補完するというようなこと、あるいは公正な賃金決定に資する、そういうことを期待して整理をいたしました。しかし、先ほど申し上げましたように、罰則としては労働基準法が適用されるということになります。

    〔委員長退席、田村(憲)委員長代理着席〕

高橋委員 労働基準法二十四条が適用されて三十万の罰則になる、これは確認させていただきたいんですが、今回、今るる説明をされましたように、最低賃金法の罰則を五十万円まで引き上げた。引き上げたけれども、産別最賃は別よとしたということで、次は産別最賃危うしかということをどうしても指摘したいなと思っております。

 私は、むしろこのことは大いに充実をさせて、今課題となっている医療、介護、福祉分野などにおいても産別最賃ということを模索していったらいいのではないか、このように思っております。これは要望にとどめます。

 そこで、大臣に伺いたいと思うんですけれども、今回、珍しく二けたの引き上げということで、加重平均十四円余の引き上げになりました。ただ、それでも私の地元青森県は六百十九円でございまして、二千時間働いて百二十三万八千円にしかならない、こういう実態であります。まだまだ最低賃金はワーキングプアの水準ではないかと私は思いますが、大臣はどのように考えますか。

舛添国務大臣 今先生のお話を賜りながら、東京だと幾らになるんだろうと思って、これは七百三十九円で、二千掛けてみたら百四十七万八千円なんですね。そうすると、約二十五万ぐらいの差が、二十四万か差があるんです。

 そうすると、これはもう委員の御地元ですから、私の感覚からいうと、青森というのは非常に物価が安くて生活費がかからないところかなと。やはり、私も感覚的に申し上げれば、いや、これで生活するのは、まあ青森知りませんけれども、大変かなという感じはいたします。

 ただ、これは地方最低賃金審議会ということで、公労使三者で、青森の状況を全部勘案した上でお決めになるということですから、物価水準とかいろいろなことを考えてされるだろうなということで、公平な立場でお決めになったんだろうということが一つ。

 ただ、問題は、ずっとこの一連の議論でありますように、憲法二十五条、生活保護とこの最低賃金との整合性、やはり最低賃金の方が生活保護よりも下じゃないかということ、私が理解する限り、青森はそのケースに当たらないというように思います、たしか十一ぐらいそういうところがあったと思いますけれども。しかし、今回の法律はそれをきちんと明記するということでございます。

 それから、成長力底上げ戦略推進円卓会議で、やはり政労使の合意形成で長期的にこの最低賃金を上げていこうということでございますので、こういう方向をそれぞれ皆が努力しながら、長期的なこの最低賃金の引き上げということに向かってやるべきだ、そういう考えを持っております。

高橋委員 確かに東京に比べれば若干物価は安いけれども、それだけで吸収できる格差ではないということを指摘したいと思います。

 八月に厚労省が発表した、日雇い派遣労働者及び住居喪失不安定就労者、よくネットカフェ難民などと呼ばれておりますが、その実態調査、この中で、日々雇用される日雇い派遣労働者の平均就業日数は十四日、平均月収は十三万三千円です。これは、青森県の最賃労働者がフルタイムで働いても十一万足らずですから、それよりも下回っているという実態であるということを、これは答弁は求めませんので、こういう実態であるということをよく考えていただきたいと思います。

 私は、別に東京も高いとは思っておりません。この水準を全体として底上げするべきだと指摘をしたいと思います。

 次に、時間がなくなってまいりましたが、労働契約法について伺いたいと思います。

 まだたくさん伺いたいことはありましたが、きょうは九条について、民主案で、「使用者が、労働者になろうとする者に対して、就労に先立ち、採用する旨の通知を発したときは、その時において労働契約が成立したものと推定する。」というふうに書かれております。この意図するところは何でしょうか。

細川議員 この九条でございますが、採用内定の法的性質につきましては、いろいろ学説もございまして、始期つきあるいは条件つきの労働契約と考えるものが多くあることは承知をいたしております。また、採用内定の法律関係は、その実態に即して判断すべきものでもございます。

 しかし、採用内定におきましては、労働者になろうとする者と使用者の間にどのような法律関係があるかが不明確であるために、両者の間でいろいろと紛争が多く起きているのもまた事実でございます。

 そこで、民主党といたしましては、労働契約の成立の時期というものをしっかりと明確にしなければいけないということで、採用内定が出されたとき、発出された時点で両当事者の意思が合致してその契約が締結をされたということを推定する、こういうことにいたしました。

 ただし、内定の実態というものがいろいろ多様でございますから、そういうことも考慮いたしまして、労働契約が成立したものとみなすというのではなくて、推定するということにいたした次第でございます。

高橋委員 私は、この条項についてはいろいろな不安もあるんです、例えば、逆に内定者を拘束したりはしないかと。ただ、ここで目指している精神というのは非常に大事だと思って、特に、これまで法定化されてきていなかった問題に着目している。この点について、政府では、いわゆる内定者の保護的要素についてどのように整理をするのか、整理をする考えはないか、一言でお願いします。

青木政府参考人 採用内定につきましては、労働契約法制を検討した労働政策審議会において、労働関係の実態に即して審議を進めていただきましたけれども、これはコンセンサスが得られなかったため、今回、法律案には盛り込みませんでした。論点としては挙げられたわけでありますので、引き続き検討課題ではあるかなというふうに思っております。

高橋委員 この問題、あと試用雇用契約の問題などについても整理をする必要があるのではないかと思っております。ここは指摘にとどめたいと思います。

 最後に、労基法十八条の二の解雇権の濫用が労働契約法に移されました。この解雇権の濫用については、平成十五年の労働基準法改正時に、使用者は解雇できるという原案を削除させ、労働者の運動によって盛り込まれた貴重な成果だったと私は思っております。このことが後退することはないのかということを確認したい。

 そして、労基法は労働の最低限のルールを決めたものであります。労働契約法施行によっても依然として労働者にとって一方的な不利益変更などが考えられるけれども、これらを防ぐための役割を労働局がどのように果たしていくのかについて伺います。

青木政府参考人 この十八条の二の解雇権濫用法理の問題でございますけれども、これは労働基準法で規定をいたしておりますものを、労働契約法ができるということで、いわば民事ルールを定めているものということで、むしろ契約法に置く方が適切だということでそのまま持ってきたわけでありますので、変わるところはないということでございます。

 それから、労働局において、現在でもいろいろな労働相談窓口を置いているわけでありますが、相談件数も非常に多くなってきております。私どもとしては、個別労働紛争の増加とともにさまざまな相談もふえてきておりますので、労働契約法を成立させていただきました暁には、こういったものをきちんと周知し、窓口でも十分相談にこたえるよう、努力をしていきたいというふうに思っております。

高橋委員 しっかりお願いします。

 以上で終わります。

田村(憲)委員長代理 次に、阿部知子君。

阿部(知)委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。

 本日、第一問目は、先ほど高橋委員も舛添厚生労働大臣に対して御質疑でありましたC型肝炎の和解の問題でございます。

 今回、厚生労働省側も和解のテーブルに着くという御意思を固めていただいて大変によかったなと思いますが、三つ、ここでお願いがございます。

 やはり、せんだっても出ておりましたが、既に、フィブリノゲンだけでなくてクリスマシンという、主には小さな赤ちゃんにも使われた、頭の中に出血したときなど使われた薬剤についても、一九七八年段階で旧ミドリ十字がこの製剤の変更を考えていたことなども昨今明らかになりまして、大臣にはぜひ、やはり全体の薬事行政が大きく問題であったということを謝罪していただきたい。

 それから二点目は、やれクリスマシンだ、フィブリノゲンだ、あるいはどの時期だ、かの時期だと原告たちを差別することなく、全員救済、ここが非常に重要でございます。こういう和解のときでも、一部だれかが排除されていくということになりますと、本来的な大局的な見地に立った、いわば厚生労働行政の中で起きたことについてのきちんとした謝罪にはなってまいりません。

 三つ目は、定期的な協議の場を要求されておるということであります。

 全員を何としてでも救済したいという大臣の強い意思は私はしかとあるものと信じておりますので、今申し上げた三つのことについて、もうおわかりでしょうが、一点だけ御答弁をお願いいたします。

    〔田村(憲)委員長代理退席、委員長着席〕

舛添国務大臣 福田総理みずからが、この問題は一日も早く解決したい、そして、希望と安心というスローガンを掲げる内閣として、人の命は大切である、国民の目線でしっかりやるんだ、こういう大決断をなさいました。

 私は、その福田内閣の閣僚として、今阿部委員がおっしゃったことも含めて、きょう和解勧告が先ほど大阪高裁で出ましたので、これを一つのターニングポイントとして、いろいろな御意見があると思います、原告の皆さん方の中にも、また国の中にも、また議員の先生方の中にも。そういういろいろな御意見も賜りながら、一日も早い全面解決ということに全力を挙げてまいりたいと思います。

阿部(知)委員 リーダーシップを発揮していただくのは舛添大臣をおいてほかにございませんので、重ねてよろしくお願い申し上げます。

 そして、私は、本日の予定された質問、まず最低賃金についてお伺いを申し上げます。

 せんだっての委員会の後半でも取り上げさせていただきましたが、きょう皆様のお手元にございますのは、厚生労働省の平成十九年六月の最低賃金の履行確保に係る一斉監督結果というものの結果データでございます。

 この一斉検査というか一斉監督結果というものは、成長力底上げ戦略の中で、ぜひ最低賃金も何とか遵守の方向を獲得しようという政府の姿勢によって、通常ですと一月から三月、最低賃金の違反についての現場の監督は入るわけですが、それに合わせて、もう一回別に六月にやった、スペシャル版でございます。

 私は、いつも厚生労働省にああだこうだ批判ばかり言う方ですが、この検査については、やはり従来のものよりも破格に詳しくなされていますし、ぜひ、きょうここで最低賃金の論議がございました後のフォローにも生かしていただきたいと思いますので、あえて現物を御提示して取り上げさせていただきました。

 一枚目を見ていただけばわかりますように、ここには地域別と産業別の最低賃金の、いわゆる違反をしているなと思われるところをねらって入るわけですが、幾つの事業所が、おのおのどんな業種ごとに違反件数が多いかというものの紹介が地域別、産業別でございます。

 多少繰り返しになりますが、地域別の方で、繊維製品製造業、クリーニング、食料品、あるいは繊維工業、飲食店、理容業、ハイヤー・タクシーなど、千数百件というのはそもそもそういう業種が多くて挙がっているところでございます。

 あわせて、産業別の方を見ていただきますと、先日も申しましたように、多い業種、おのおの、産業別の方が賃金レベルは高いわけですが、例えば電気機械器具製造等、最初にどのくらいの相手に入っているかという、最初の数がいわば違反の多さの証左でございます。

 こういう新たな詳細な検討をなさった、きょう青木さんに御答弁いただきたいんですが、このことを生かして今後どのように施策をしていかれるかについて、一問目、お願いいたします。

青木政府参考人 この六月に実施いたしました最低賃金の履行確保を主眼とする監督指導結果、これは今御指摘になりましたように、業種別の状況が明らかになりましたし、また労働者につきましても、性別、あるいはパート・アルバイトというような雇用形態等の状況が判明をいたしました。

 最低賃金の履行確保を図るためには、監督指導とあわせて周知広報も重要でございます。こうした分析結果をもとに、問題があると考えられる業種等を重点とした集団指導でありますとか周知広報、そういった実施を図ってまいりたいというふうに考えております。

阿部(知)委員 今、青木局長の御答弁にあったことが二枚目にも出ておりますが、二枚目には、この監督検査が入った、そこで働く総労働者数は十六万八千四百五十四人、うち女性が何%、そして最低賃金未満の方が二千五十一人で、その内訳が女性やパート・アルバイト、障害者、外国人であることは前回も御紹介申し上げました。しかし、これまでの厚労省にはなかったデータでありますので、私は何度も申しますが、これらを生かした施策をしていただきたい。

 そして、ぜひ舛添大臣にはお願いがございますが、こうした監督検査に入るにも、やはり職員の数、監督官の数というものが重要になっております。

 この数年、微増はしておりますが、例えば平成十五年は二千八百十二、十九年は三千十一、これは監督官の数でございますが、今は対面のいろいろなトラブルにも対応しなきゃいけないということで、こうした労働法制の改正が本当に生きていくためには、私は監督官の人的な充実ということがとても重要と思いますので、大臣の御尽力とお考えを伺いたいと思います。

舛添国務大臣 今、委員に御紹介いただいた調査、こういうものが、この最低賃金法が成立した後もさらに続けていくことによって、法律の施行を担保していくものだと思っています。

 今、力強い御発言を賜りましたが、政府全体として、行政改革をやる、公務員の数を減らす、そういう厳しい方針で臨んでいる中で、いかにして人員を確保するか、日々努力をしているところでございますので、最終的には国民の皆さんの税金によってこういう監督官をふやさないといけない。ぜひ国民の皆様にも御理解を賜り、また国会の皆さん方の御理解も賜りまして、我々としてもこの人数を増員するという努力を傾けたいと思います。

阿部(知)委員 ぜひよろしくお願いしたいと思います。

 そして、私といたしましては、やはり産業別最賃の方が違反率が高いというところも、今回、特に特定最低賃金制度になりまして罰則がなくなるということを非常に懸念しておりますので、あわせて、監督の中でもそうした意識を持って何らかのフォローをしていただきたいなと思います。

 そして、これもせんだって私が取り上げさせていただきましたが、いわゆる障害者の分野でございますが、ここには、障害のおありの方が大体二千五十一人の最賃以下の方のうち一三・八%、すなわち最賃以下で働いておられる障害者が多いんだと。それは、既に労働者性を認められて労働基準法の枠内で見たんだけれども、やはり多いんだということで、この点は、せんだって大臣には、いわゆる北欧等々のノーマライゼーションの考え方で、一人でも多くがタックスペイヤーになる方向にかじを切るんだというお答えでございました。

 そういうお答えを受けて、現場サイドはいかがかということで、私はこれはちょっと懸念の点ですので御質疑をさせていただきたいのですが、あのときも御紹介申し上げました、保護雇用とか、あるいは、社会的な就労支援と申しまして、福祉の分野と就労の分野をブリッジするような施策が各国でとられておる。特に、ヨーロッパ、北欧ではそれを保護雇用という形で行っているわけです。

 私が懸念しますのは、こうした保護雇用制度についても、厚生労働科学研究で二〇〇三年、四年と二年続けてせっかく芽出しがされていたのに、その後の自立支援法の成立の過程で逆に消えていってしまった、十分に活用されていないように思います。

 この点について、やはり私は、本当の就労率を上げようと思うと何らかのサポーティブな仕組みは必要と思いますから、保護雇用制度について厚生労働省側ではどう思っていられるかということを、現場にお願いいたします。

岡崎政府参考人 障害者の方がいろいろな形で働けるようにしていくということは非常に重要だろうと思っています。

 そういう中で、基本的には一般企業の中で働いていくことにしたいというふうに思っておりますが、先生御指摘のように、なかなか障害の程度、特性等で難しい方がおられる。現在でも、企業のサイドからは、特例子会社制度等々、そういう仕組みをつくっておりますし、御指摘の自立支援法等の中ではいわゆる就労継続支援事業等を創設しまして、そういう中で、雇用という形の中で働ける場は広げていくという試みはしているわけでございます。

 御指摘の厚生科学研究も当然承知しておりますが、働いている方々に税金を含めて賃金補助みたいなことをしていくということになるとすると、それはいろいろな財政的な観点その他種々の問題、検討しなきゃいかぬ課題もあるだろう、こういうふうに考えています。

 ただ、いずれにしましても、障害者の方がどうやればより広く働けるようになっていくか、こういう観点から検討は進めていきたい、こういうふうに考えております。

阿部(知)委員 限られた時間ですから、私の今言ったことをもうちょっとちゃんと受けとめてほしいんですが、改革のグランドデザインというものが出て以降、逆に、ある程度進んだ論議がちょっと停滞していると私は思うんです。

 作業所の現状を調べ、この厚生労働科学研究で二年にわたって非常にいいデータが出ているんです。それは今、障害者自立支援法をどうしようかと、いわば、申しわけないけれども、この国会の中で与党側がどういう提案をなさるか、この前のあの施策だけでは全く障害者の皆さんは納得していない。この前も日比谷野音に四千人がお集まりであった。私は、本当の意味のいろいろな政策をやはり打ち出していかねばいけないときに、あの改革のグランドデザインとは何であったのか、本当にグランドなのかということを懸念して、今、わざわざそのようにお尋ねいたしました。きょうは十分な御答弁と思いませんので、また引き続きお尋ねさせていただきます。

 次に、いわゆる過労死あるいは自殺、過労自殺の問題についてお伺いしたいと思います。

 過重労働については、今回、労働基準法の改正は、民主、自民の皆さんの折衝成らずということで、法案は日の目を見ないということでありましたが、逆に、私はそうした中でぜひやっていただきたいことがございます。

 実は、いわゆる長時間労働の脳血管障害やあるいは精神障害あるいは過労死に及ぼす影響というのは、十分なデータ的な分析がなされていないと思います。皆さんのお手元にお示しした資料でも、実はこの労災の認定率と申しますものは、他の労災認定に比べて低いというのを私は挙げさせていただきました。

 例えば、表一、三ページ目でございますが、脳・心臓疾患については、認定率2という方を見ていただきますが、これは、申請をして不支給であれ支給であれ、決定されたもののパーセンテージ、約四割、そして、精神障害等の労災は約三割にとどまっております。医者も診断書を添え、家族もそうした労災ではないか、過労ではないか、うつではないか、精神障害ではないかといって申請して、三割しか認められないということは、例えば基準に問題がないのか、何か問題が私はそこにはあるんだろうと思うのです。

 きょうは時間の制約で、一つだけ私の方から御提案をしたいと思いますが、いわゆる過労によって、例えばお亡くなりになる場合に、必ずしもその方が、多くは精神障害をあわせ持つ、うつ病になるんですが、過労だけでも自殺に行かれるケースもあります。いわゆる申請されたものをもっとよく分析していただく、特に長時間労働という軸を、一つ切り口を立てて、申請されたもの、認定されたもの、不支給の認定もありますが、そういうものを分析していただく。この件についてはいかがでしょうか。

青木政府参考人 精神障害につきましては、これは労災認定に当たって、業務の量、質、責任の大きさなど、さまざまな要因が作用して発病するということで、そういう意味での業務の量、長時間労働ということでお話がありましたが、こういったものを既にもう総合的に判断しているところでございます。そこでは、労働時間について一つの指標として勘案しているわけでありますが、今後、精神障害の認定事例における労働時間についても、調査、集計をしてみたいというふうに思います。

阿部(知)委員 前向きな御答弁で、ありがとうございます。

 国は自殺予防の大綱をつくっておられて、その中には長時間労働ということがもう明記されていますので、我が国は世界に冠たる過労死大国でございますから、ぜひ厚生労働行政の中に時間軸、時間と過労死との関係ということをきちんと分析する、あるいは時間と精神疾患ということを分析する手法を持っていただきたいと思います。

 最後に労働契約法について伺わせていただきますが、この間、与党自民党と民主党、自民、公明と民主党と言った方がいいんでしょうか、鋭意いろいろな改善のための協議が重ねられたと思います。

 しかしながら、残念なことに、私は、とりわけ十条にかかわる部分、すなわち、これは就業規則の変更という一方的に使用者が行えるものをもって労働条件の変更をしていくことについては、何ら手だてがなされていないということで、この点は非常に問題が多いというふうに思うわけです。

 ちょっと皆さんに見ていただくために、最後の資料ですが、「派遣スタッフ 就業規則」というものをお手元に出してございます。これは、今は名高くなりましたグッドウィル、もうコムスン問題でも何でもそうですが、ここに線を引いておりますが、就業規則の中にデータ装備費という項目がございます。

 データ装備費って何だと思うと、これは勤務ごとに任意二百円を皆さんからいただいておる、ユニフォーム、ヘルメット等の安全装備、情報管理、あるいは何か事故が起きたときの十分な補償を得るため、会社で一括加入している障害・物損の民間保険料の一部に充当すると。

 実は、これは労働基準法違反で払い戻しの請求が今起きており、こういう日雇い派遣の業務にかかわる七社がピンはねをしておったということで大きな問題になっているわけです。

 この就業規則はインターネット等で見られるわけです。周知徹底といわれたって、行く、仕事する方は、これを見て、何かよくわからない、もらったら二百円は天引きされている、でもずっと気づかない、そういう状態で働いているわけです。

 私は、こういう実態を見たときに、就業規則というものの、そもそも周知徹底するといったって、極めて一方的になされ、それが労働条件の変更ないし、当初からかもしれません、そういう代替するものになっていくということには異議申し立ての場がなければ、あるいは覚悟がなければ、やはり大きな問題だと思います。

 大臣は、ちょっときょう駆け足で私が説明いたしましたが、こういうところには、就業規則の変更の合理性が、労働者に受忍できる範囲などの、例えばコメントをつけるとか、文言を入れるとか、あるいは就業規則の変更の影響を受ける当事者のグループや個々の労働者の事情などを配慮する項目を入れるとか、やはり何かが必要なんだと私は思うのですが、いかがでありましょうか。

舛添国務大臣 今の御指摘も十分検討させていただきます。

 ただ、新たな規則をつくる、新たな法律をつくる、例えば派遣業をどうするか、それは、国会できちんとしたルールをつくったときは、現場の方々にきちんとわかるようにこれを周知徹底する、そういう努力はやはり必要だというふうに思います。

阿部(知)委員 周知徹底するといっても、さっきのようにワンサイドゲームなので、逆に、働く側から異議申し立てをできるか、何らかの担保が必要だろうという意味で私は申し上げました。

 あと、きょう先ほど自殺と過労の問題を取り上げさせていただきましたが、今盛んに、抗うつ剤でリタリンというお薬の副作用が問題になっております。

 特に、若い二十代、三十代の若者が用いて依存症を起こすということと、非常に興奮的になりますので自殺等が多い。そして、インターネットで簡単に入手できるということで、私も九月から二回、厚生労働省に対して、被害を受けられた御家族ともども、何でこんな野放しなんだ、お医者さんは軽いうつにでも何でも処方するし、インターネットで入手できたら若者には蔓延する、いわゆる覚醒剤に等しいじゃないか、何らかの手だてを打つようにというお願いを申し上げました。

 その結果、幾つかの政策はとっていただきましたけれども、今後どのように、また、さらに対策を深めていただけるか、この点をお願い申し上げます。

高橋政府参考人 お答え申し上げます。

 私どもとしては、ただいま先生からお話がございましたように、リタリンの効能に関しまして、十月の二十六日に、うつに関しての取り消しを行うというようなことをやっております。(発言する者あり)うつに関しての効能の取り消しをいたしております。

 それから、新たに多動性障害についてコンサータという医薬品を承認しておりますけれども、こういったものについて、その流通についての厳正な管理をやっていくということをきちっとやっていきたいというふうに考えておりますし、それについてメーカーに対して、承認の条件としてそれを付して、きちっと管理をしていただくということを強く指導しているところでございます。

 それから、以前から全国の精神科医療機関を対象とした調査などによりまして、リタリンの依存症例に係る調査などを行っておりますけれども、こういった調査についても引き続ききちんとやっていきたい、かように考えております。

阿部(知)委員 従来やっておるといっても、非常に副作用の報告事例が少ないのです。逆にミドリ十字の方が多かったかもしれません、皮肉なことに。

 というのは、お医者さんみずからが安易に処方して、大体、精神科の疾患というのはたくさんのお薬が処方される、その相互作用もあるし、そして、医師が処方する薬でたくさんの患者さんが依存症になっていたということは、私は医薬行政上も極めて問題が多いんだと思います。

 近年、世界でうつに対してリタリンが処方されていたのは、我が国だけでございます。やっと中止になった。これも要請に行きました。でも、それ以前に、本当にモニターして、そうした危険な薬が若者の手に渡らないように、これから本当の薬事行政の改革が私は必要だと思います。

 大臣に、最後に、突然で済みませんが、きょう初めて聞かれたかもしれません。私は、周知徹底してほしいし、危険を若者にも伝えてほしいし、これから医師が過重に処方しなくなる、そのことはいいことだと思います。でも、知らなければ若者たちは危険をわかりません。そして、安易にやみネットで入手してしまいます。

 何らかの厚生労働省側からの若い人への周知徹底と、そして、そんなとき、どこの窓口で相談したらいいか、御家族も、家で暴れる、あるいは本人が死んでしまう、非常に深刻な事態を生んでいますので、厚生労働省として何らかの周知徹底、そして被害の相談窓口も設ける検討をしていただきたいが、いかがでしょう。

舛添国務大臣 リタリンの問題は私も心を痛めていまして、それで、ひどいお医者さんがいて、今おっしゃったように大量に、この前一人逮捕されましたけれども。ですから、これが扱えるお医者さん、扱える薬局を限定するということをまずしっかり、今の答弁にありましたけれども、これははっきりやる。

 それで、まさに、抗うつ剤としては排除したんですけれども、今委員がおっしゃったことの裏側だと思うんですが、私のところにたくさんネットで手紙が来まして、あの薬がないともう僕はやっていけないんだ、あの薬で何とか元気に仕事をしているという、知り合いを含めて、そういうのはあります。

 薬の効能、副作用、それからこういう問題があるというのは、それは薬事行政としてきちんとやっていかないといけませんが、委員もお医者さんでいらっしゃいますから、お医者さんの方でも、一番患者さんに身近に接するのはお医者さんですから、我々も広報行政含めてきちんとやりますし、今ネットというすばらしい手段がありますので、御自分のネット、いろいろな病院なんかで病気の症状について解説されておったりするので、私も非常に参考にさせていただいていますので、プライベートなサイトでもいいので、そういう真摯な努力をまたお医者さん側にもぜひお願いしたいなと思いつつ、できるだけのことをやりたいと思います。

阿部(知)委員 プライベートにやっている医師はおると思います。ただ、これは全体の厚生労働行政のことですので、さっき大臣がおっしゃった問題も、使いたいという人も現実にはありますから、もろ刃の剣の薬をどうやって上手に生かしながら、しかし依存症や悲しい副作用が起きないようにしていくかという点で、厚労省としてお取り組みいただきたいと思います。

 ありがとうございます。

    ―――――――――――――

茂木委員長 この際、お諮りいたします。

 今国会、細川律夫君外三名提出、労働契約法案及び第百六十六回国会、細川律夫君外二名提出、最低賃金法の一部を改正する法律案につきまして、提出者全員より撤回の申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

茂木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

茂木委員長 ただいま議題となっております各案中、内閣提出、労働契約法案及び最低賃金法の一部を改正する法律案の両案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

茂木委員長 この際、内閣提出、労働契約法案に対し、田村憲久君外四名から、また、内閣提出、最低賃金法の一部を改正する法律案に対し、田村憲久君外四名から、自由民主党・無所属会、民主党・無所属クラブ及び公明党の三派共同提案による修正案がそれぞれ提出されております。

 提出者から順次趣旨の説明を聴取いたします。細川律夫君。

    ―――――――――――――

 労働契約法案に対する修正案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

細川委員 ただいま議題となりました労働契約法案に対する修正案につきまして、自由民主党・無所属会、民主党・無所属クラブ及び公明党を代表いたしまして、その提案理由を御説明申し上げます。

 本修正案は、これまでの当委員会における審議を踏まえ、自由民主党・無所属会及び公明党並びに民主党・無所属クラブの協議の結果、合意が得られたものであります。

 修正案は、お手元に配付いたしたとおりでございます。

 以下、その内容を御説明申し上げます。

 第一に、目的を規定する第一条について、「労働契約が合意により成立し、又は変更されるという合意の原則及び労働契約と就業規則との関係等」とあるのを「労働契約が合意により成立し、又は変更されるという合意の原則その他労働契約に関する基本的事項」に改めるものとするものであります。

 第二に、労働契約の原則を規定する第三条に、「労働契約は、労働者及び使用者が、就業の実態に応じて、均衡を考慮しつつ締結し、又は変更すべきものとする。」という均衡待遇についての原則の規定及び「労働契約は、労働者及び使用者が仕事と生活の調和にも配慮しつつ締結し、又は変更すべきものとする。」という仕事と生活の調和についての原則の規定を追加することであります。

 第三に、労働契約の内容の理解の促進を規定する第四条第一項について、「締結し、又は変更した後の労働契約の内容」とあるのを「労働契約の内容」と改めるものであります。また、同条第二項について、「労働契約の内容」とあるのを「労働契約の内容(期間の定めのある労働契約に関する事項を含む。)」に改めるものとすることであります。

 第四に、労働者の安全への配慮を規定する第五条について、「労働契約により」とあるのを「労働契約に伴い」と改めるものであります。

 第五に、第七条の見出しを削るとともに、同条について、「労働者及び使用者が労働契約を締結する場合において、」を加え、「就業規則を労働者に周知させた場合」とあるのを「就業規則を労働者に周知させていた場合」に改めるものとすることであります。

 第六に、出向を規定する第十四条について、第二項を削るものとすることであります。

 第七に、期間の定めのある労働契約を規定する第十七条第一項について、「やむを得ない事由がないときは」とあるのを「やむを得ない事由がある場合でなければ」に改めるものとすることであります。

 以上であります。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

 以上です。

茂木委員長 次に、田村憲久君。

    ―――――――――――――

 最低賃金法の一部を改正する法律案に対する修正案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

田村(憲)委員 ただいま議題となりました最低賃金法の一部を改正する法律案に対する修正案につきまして、自由民主党・無所属会、民主党・無所属クラブ及び公明党を代表いたしまして、その提案理由を御説明申し上げます。

 本修正案は、これまでの当委員会における審議を踏まえ、自由民主党・無所属会及び公明党並びに民主党・無所属クラブの協議の結果、合意が得られたものであります。

 修正案は、お手元に配付したとおりでございます。

 その内容は、地域別最低賃金の原則に係る規定について、労働者の生計費を考慮するに当たっては、労働者が健康で文化的な最低限度の生活を営むことができるよう、生活保護に係る施策との整合性に配慮するものとすることであります。

 以上であります。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

茂木委員長 これにて両修正案の趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

茂木委員長 これより両案及び両修正案を一括して討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、順次これを許します。高橋千鶴子君。

高橋委員 私は、日本共産党を代表し、内閣提出の労働契約法案及び最低賃金法の一部改正案、労働契約法案に対する修正案及び最低賃金法の一部を改正する法律案に対する修正案の四案に反対の討論を行います。

 ワーキングプアなど働く貧困層の拡大に象徴される雇用、労働をめぐる深刻な実態は、日本の将来を左右する重大な社会問題になっています。さきの通常国会は、労働国会とも言われ、労働三法案の質疑が十分に行われることが期待されていました。

 ところが、さきの通常国会で社会保険庁改革関連法案の委員会強行採決の直後に、合意のないまま趣旨説明が行われるという不正常な形で審議入りし、今国会に継続されました。今国会でも、参考人質疑も行われないまま、審議時間は、通常国会と合わせてもわずか二十三時間半と極めて不十分であり、拙速な採決は断じて認められません。

 労働契約法案に反対する主な理由は、就業規則による労働条件の不利益変更法理を立法化していることです。しかも、これまで判例が確立した判断要素を後退させています。また、有期雇用契約の反復更新は、使用者に配慮を求めるにとどまっており、先の見通しの持てない不安定な生活を強いられている多くの非正規雇用労働者の働き方を改善するものではありません。さらに、解雇の金銭解決制度などが引き続き検討課題とされております。労働法制のさらなる規制緩和に向けた受け皿づくりに結びつく法案を成立させることは絶対に許されません。

 最低賃金法改正案に反対する第一の理由は、労働者、国民の切実な願いである現行最低賃金の抜本的引き上げに結びつかないからです。

 最低賃金の水準が生活保護の水準を下回るという異常な状態の解消は、遅きに失したとはいえ、当然のことです。しかし、今日、多くの労働者、国民は時給千円以上の最低賃金引き上げを要求しています。これは年収換算で二百万円程度という水準であり、いわゆるワーキングプア、貧困問題の解決のためには最低限の要求であります。

 ところが、政府は、一貫して最低生計費の水準を明らかにせず、生活保護とのどのような整合性を図るのかも不明です。一方、生活保護水準の切り下げが議論されている昨今においては、これに連動して最低賃金が引き下げられる懸念すらあります。

 反対する第二の理由は、地域別最低賃金を任意から必須とし、地域格差を固定化するものだからです。全国一律最低賃金こそ実現するべきです。また、廃止すべきとの意見もある中、産業別最低賃金は存続されたことは重要ですが、罰則が適用除外されました。労働契約拡張方式が廃止されることも、現行制度からの明確な後退であり、認められません。

 なお、労働契約法案に対する修正案は、就業規則による労働条件の不利益変更法理を法律化するという基本的仕組みにおいて、原案を何ら改善するものではありません。また、最低賃金法の一部改正案に対する修正案は、生活保護法の本来の原則である憲法二十五条の規定を重ねて述べたにすぎず、原案を改善させる保障にはなり得ません。

 以上を指摘し、討論を終わります。

茂木委員長 次に、阿部知子君。

阿部(知)委員 私は、社会民主党・市民連合を代表し、内閣提出の労働契約法案及びその修正案について反対、また、内閣提出の最低賃金法の一部を改正する法律案及びその修正に対して賛成する立場から討論を行います。

 まず、内閣提出の労働契約法案に反対する第一の理由は、本法案は労働契約法とは名ばかりで、労働者の保護が明確化されていないからです。

 集団的労働条件決定システムが低下し、個別労働紛争が増加する中、労働契約法の制定は、労働者側から大きな期待が寄せられてきました。しかし、本法案は、労働者及び使用者の実質的な対等性を確保し、採用から退職までにわたる全ステージにおいて、労働者の保護を図りながら、個別の労使関係の安定に資するものとはなっておりません。

 本法案には、労働政策審議会で労働者側が強く反対した解雇の金銭解決制度や整理解雇の四要素説は見送られたものの、このような内容では、本法案が今後どのように展開していくのか、不安を禁じ得ません。

 また、修正案は一定の改善点について評価するものの、原案への懸念を払拭するには至っておりません。

 第二の理由は、就業規則による労働契約の内容の変更を規定する第九条、第十条の問題です。九条は「使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない。」と原則を定めていますが、十条において、その例外規定を置いています。就業規則の労働者への周知とは、具体的にどのような場合が実質的な周知に当たるのか明確ではありません。また、法案が示す変更された就業規則の合理性に対する判断要素は不十分で、これまで積み重ねられてきた判定法理が過不足なく立法化されているとは到底思えません。

 労使の力関係が歴然と異なる中、使用者が一方的に作成、変更する就業規則を労働契約の決定や変更の方法の中心に据えることは、使用者の一方的な都合で労働条件が切り下げられることにつながりかねません。

 第三の理由は、労働契約法が新しく大きな法律であるにもかかわらず、徹底的な審議が尽くされたとは言えないからです。立法化によって現実に労使にどのような影響を与えるのか、本委員会では参考人質疑さえ行われませんでした。また、労働契約法の重要性が国民の前に明らかになっていない中で、拙速な採決は避けるべきです。

 次に、内閣提出の最低賃金法の一部を改正する法律案及びその修正案について意見を述べます。

 同法の見直しによって、産業別最低賃金が民事的な性格に変わり、罰則の適用がなくなること、また、派遣労働者に対して、現在適用されている派遣元の最低賃金が、派遣先の最低賃金の適用に変更される点などについては懸念があります。

 しかしながら、ワーキングプアの問題が深刻化し、地域別最低賃金が徹底強化され、大幅引き上げにつながっていくことが求められている中で、本法案の改正は一歩前進と評価できると考えます。今後、最低賃金を抜本的に底上げするために、全国一律の最低賃金制度の創設を含めて、議論を深めていく必要があると考えます。

 最後に、本法案が国民の生活にかかわる重大な内容であるにもかかわらず、与党と民主党のみでの修正を協議し、採決を急いだことについて疑問を呈し、私の反対討論を終わります。

茂木委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

茂木委員長 これより採決に入ります。

 内閣提出、労働契約法案及びこれに対する修正案について採決いたします。

 まず、田村憲久君外四名提出の修正案について採決いたします。

 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

茂木委員長 起立多数。よって、本修正案は可決されました。

 次に、ただいま可決いたしました修正部分を除く原案について採決いたします。

 これに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

茂木委員長 起立多数。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。

 次に、内閣提出、最低賃金法の一部を改正する法律案及びこれに対する修正案について採決いたします。

 まず、田村憲久君外四名提出の修正案について採決いたします。

 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

茂木委員長 起立多数。よって、本修正案は可決されました。

 次に、ただいま可決いたしました修正部分を除く原案について採決いたします。

 これに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

茂木委員長 起立多数。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。

 おかげさまで粛々と採決に至りました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました両法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

茂木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

茂木委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時二十分散会


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