衆議院

メインへスキップ



第9号 平成20年4月22日(火曜日)

会議録本文へ
平成二十年四月二十二日(火曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 茂木 敏充君

   理事 大村 秀章君 理事 後藤 茂之君

   理事 田村 憲久君 理事 宮澤 洋一君

   理事 吉野 正芳君 理事 山田 正彦君

   理事 山井 和則君 理事 福島  豊君

      新井 悦二君    井澤 京子君

      井上 信治君    石崎  岳君

      川条 志嘉君    木原 誠二君

      木村 義雄君    櫻田 義孝君

      清水鴻一郎君    杉村 太蔵君

      高鳥 修一君    谷畑  孝君

      冨岡  勉君    長崎幸太郎君

      西本 勝子君    萩原 誠司君

      林   潤君    福岡 資麿君

      松浪 健太君    松本  純君

      松本 洋平君    三ッ林隆志君

      山本ともひろ君    内山  晃君

      岡本 充功君    菊田真紀子君

      郡  和子君    階   猛君

      園田 康博君    長妻  昭君

      細川 律夫君    馬淵 澄夫君

      三井 辨雄君    森本 哲生君

      伊藤  渉君    古屋 範子君

      高橋千鶴子君    阿部 知子君

      糸川 正晃君

    …………………………………

   厚生労働大臣政務官    伊藤  渉君

   厚生労働大臣政務官    松浪 健太君

   参考人

   (国立感染症研究所感染症情報センター長)     岡部 信彦君

   参考人

   (聖マリアンナ医科大学難病治療研究センター准教授)            清野研一郎君

   参考人

   (厚生労働省成田空港検疫所長)          藤井 紀男君

   参考人

   (日本弁護士連合会人権擁護委員会特別委嘱委員)  光石 忠敬君

   厚生労働委員会専門員   榊原 志俊君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月二十二日

 辞任         補欠選任

  木原 誠二君     山本ともひろ君

  柚木 道義君     馬淵 澄夫君

同日

 辞任         補欠選任

  山本ともひろ君    木原 誠二君

  馬淵 澄夫君     森本 哲生君

同日

 辞任         補欠選任

  森本 哲生君     階   猛君

同日

 辞任         補欠選任

  階   猛君     柚木 道義君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律及び検疫法の一部を改正する法律案(内閣提出第三二号)


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

茂木委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律及び検疫法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 本日は、本案審査のため、参考人として、国立感染症研究所感染症情報センター長岡部信彦さん、聖マリアンナ医科大学難病治療研究センター准教授清野研一郎さん、厚生労働省成田空港検疫所長藤井紀男さん、日本弁護士連合会人権擁護委員会特別委嘱委員光石忠敬さん、以上四名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人の方々に一言ごあいさつ申し上げます。

 本日は、御多用中にもかかわらず本委員会に御出席いただきまして、まことにありがとうございます。それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただき、審査の参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願いいたします。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 最初に、参考人の方々から御意見をそれぞれ十五分以内でお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。

 なお、発言する際は委員長の許可を受けることになっております。また、参考人は委員に対して質疑することができないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。

 それでは、まず岡部参考人にお願いいたします。

岡部参考人 ありがとうございます。お招きをいただきました国立感染症研究所感染症情報センターの岡部と申します。

 感染症情報センターというところは、いろいろな感染症に関する情報を、国内でありますと臨床の先生あるいは保健所等々からいただいて、それをまとめるというような役割であると同時に、発信するという役割も持っております。もちろん、ほかの、国外の情報ということも得ながら、それをできるだけまとめて、これも多くの人に情報をお伝えするというような役割を持っております。

 それで、きょう、こういうことをしなさいと言い渡されましたのは、いろいろ話題になっておりますけれども、新型インフルエンザの発生についてどういうふうな状況なのかということをお話し申し上げるようにということでしたので、資料を用意してまいりました。この色つきの資料をごらんいただければと思います。

 一枚目の下の方からですけれども、これは、新型インフルエンザに限らず国際的に問題になったいろいろな健康危機が、左の上から右の下の方にずっと動いておりますけれども、中にはチェルノブイリとか化学物質の流出であるとかというのもありますけれども、ここにあります多くは感染症の発生であります。直接日本に関係があったかというと、必ずしもそうでもないんですけれども、それが果たしてどういう影響があるかということは、その都度大きい話題になっております。

 感染症の歴史というものを今まで見てみますと、我が国では、O157の発生、それから、SARSは患者さんがありませんでしたけれども大きい話題になり、もっと昔ですと、ペスト、コレラの時代も、いずれもそれは発生をしてから何かアクションをとるということで、すべて後追いというのが感染症の今までの発生の歴史であります。

 ですから、この新型インフルエンザというのは、実は、世界じゅうのどこにも発生していないわけですので、それに対して事前に準備をしているということが今までの感染症と全く違うところであります。ですから、よくチャレンジという言葉を使いますが、その中には試行錯誤をすることが数多くあるということになります。

 二枚目の上をごらんいただければと思うんですけれども、これは新型インフルエンザウイルス、私たちはこれを地球規模の発生ということでパンデミックというふうに言っていますけれども、ここの問題点というのを、ここに幾つかまとめました。

 医学的なことというのは、大体、経験に基づいて次の手を打つということですけれども、この新型インフルエンザ対策は、今申し上げましたように、未知のものに対する準備であります。したがって、なかなか経験でははかり知れないので、過去の経験ももとにしますけれども、いろいろな想定であったり推定であったりモデルであったりということをやります。

 一定の健康被害が出たときに、その目標をどこに設定するか。一〇〇%の人々を安心、安全にするのか、あるいはそこは五〇%ぐらいにせざるを得ないのか、三〇%しかできないのかということで、随分設定の目標が変わってまいります。ということは、必ずしもそのプロセスが医学的に決定されるだけではなくて、そこには、社会的なコンセンサスであるとかその国の文化であるとか、あるいは行政の仕組み、予算の問題、実行性の問題、いろいろなことが絡んでまいります。

 最も確実なこととして書いてありますけれども、判断者、ここにおられる先生方あるいは行政の担当者、それから私たちも含めて、それがそうなったときにパニックにならないということが一番重要ではないかと思っているんです。その判断者である方々に対して、これは私たちの役割になるんですけれども、その方々がそうなったときにパニックにならないように、いろいろな情報を提供しておくということが私たちの役割ではないかというふうに思います。

 そのパンデミックに対する基本戦略でありますけれども、これは、ほかの国でまずそういったようなウイルスが発生するということであれば、できるだけその侵入をおくらせ、もし入った後には、できるだけ時間を稼ぐことによって、いろいろな作戦を練り直したり、あるいはその前の準備を進めるわけです。そういうことによってすべての部署に少しでも余裕を与えるということがありますが、そこから先に何かが入って広がってきたときに、大規模発生にどうするか、この対処もしておく必要があります。

 三枚目の方ですけれども、よく一般の方々も含めていただく質問なんですけれども、本当にそういうのが来るのか。これはわからないわけでありますけれども、しかし、過去の経験からいえば、地球規模でインフルエンザという病気が時折、新たに起きるということは既に経験されているので、むしろ起きないという保証はないわけであります。

 それでは、いつ来るのか。これは余り表現がよくないのかもしれませんけれども、さいころを幾つか握っていて、ぞろ目が出てくるかどうか、これをやっているようなものですから、あした出てくるかもしれないけれども、相当たっても出ないかもしれない。私は、そういう意味では、十年間ぐらいさいころを振っているような感じで、時々オオカミ少年じゃないかと自分でも思うことがあるわけです。しかし、それは来るものに対して備えるという意味であります。

 では、どのぐらいの規模であろうか、致死率はどのぐらいであろうかということですけれども、これまたわからないところで、過去の経験でいう大正年間に起きたスペイン型インフルエンザというものを一応基準にして、それより大きいか小さいかということが話題になりますが、しかし、余り小規模に見積もって侮ってしまうということは、もし大きくなったときには相当な被害あるいはパニックが想定されるわけです。

 実際に過去には、この下にありますように、二十世紀で三回、その前にも、よくわからないときでも、インフルエンザ様の病気が多く発生したということがあるわけですけれども、幸か不幸か、この四十年近く、パンデミックという事態にはなっていないわけであります。したがって、これが四十年以上続くかどうかというのはよくわからないわけですけれども、先ほど申しましたように、これは起きないという保証はないわけであります。

 四枚目の上の方ですけれども、これはアジア型インフルエンザ、私たちが子供のころに流行したものであります。病原性としては比較的弱いと言われたものですが、それでも、この当時の新聞を見ますと、かなり世の中が騒然とした様子がうかがわれます。「全国にひろがる恐れ」とか「暴れ回る」とか「登校停止 集会・旅行も見合せ」といったような見出しが見られます。

 その下は、これはよく話題になりますが、余り細かい説明は省略しますけれども、現在の新型インフルエンザの発生というのは、もともとは鳥のインフルエンザから、鳥だけにかかっていたようなものが人にうつってきて、それでそれが人に広がりやすいようなものに遺伝子の変異をするというふうに言われております。

 過去のインフルエンザの新しいものの発生は、比較的毒性の弱いインフルエンザウイルスが豚を通してやってくるというものだったわけですけれども、現在危惧されているのは、鳥にとって病原性が強い、しかし、それがたまたま人に来るときもやはり病原性が強いということですので、これが人に来たときに、人から人に広がりやすくなったときに、病原性の強いまま人に来るのではないか。

 今、人が時たま鳥のインフルエンザウイルスに感染しているということが、ベトナム、タイ、あるいは最近はインド、パキスタン、エジプトなどで見られているわけですけれども、重症度がかなり高いわけであります。それをまとめてありますのがその次の表で、普通のインフルエンザ、それから鳥のインフルエンザ、新型インフルエンザというふうにして、幾つか比較をしております。

 感染力は今幸いに、鳥のインフルエンザは人に来てもそんなに強いわけではないんですけれども、人から人にうつりやすい形への遺伝子の変化が起きた場合は、これはかなり強くなります。

 この症状も、新型インフルエンザというのは、まだ出ていないので、経験がないからわからないわけですけれども、普通のインフルエンザのパターンよりも、まずは症状は強いだろう。それに加えて全身症状がどのぐらい出てくるか。これは推定のところでしかないわけです。

 この死亡率というのがありますけれども、従来のインフルエンザ、今流行しているインフルエンザでも〇・〇五%ぐらいですけれども、これは数は非常に少なくありますけれども、膨大な患者さんが感染するということでは、その死亡者も多くなります。

 それに加えて、新型インフルエンザ、これがスペイン並みの二%程度なのか、アジア型並みの〇・三%、どの辺を想定するのかということが非常に問題になるところでありますが、世界じゅうがどういう数字をもって一応の基準にしているかというのがその下であります。流行規模の想定というのは、全人口の二五%が新型インフルエンザに罹患するというふうに想定をして、これはスペイン型の経験なんですけれども、それについて、致死率がどのぐらいかということをアジア並みにするのかスペイン並みにするのかということで、この死者数が十七万から六十四万という数字が一応我が国に当てはまったわけです。

 これは、いろいろな国で、次のページをごらんになれば上の方に、最悪以上の最悪の事態に備えるということで、大体このぐらいの線を各国は目安にしているわけですけれども、しかし、現在の鳥インフルエンザウイルスのようなかなり強毒なものが人にやってきたときに、本当にこの数字でいいかどうか。これについて考え直している国もあるということがあります。

 その下は、余り細かい説明はしませんけれども、これはアメリカの例でありますけれども、この矢印の黄色いものから上の方の黒い方に行くに従って、その致死率のレベルによって幾つかの想定をしているところがあります。我が国のは、一点をとってだけ、それが多いとか少ないとか言っているわけですけれども、これはやはり、ある程度段階別にやり、そしてどこら辺で合わせるかというような考え方が必要じゃないかと思います。

 もう一つめくっていただきますと、青っぽい表が一つ、二つ出ています。これは、我が国に侵入する前、水際作戦でどうするか。新型インフルエンザガイドラインというところに基づいてつくった表でありますけれども、上の方が水際作戦、下の方は、ごく少数の患者さんが我が国で発生したときにどうなるかというときの対応でありますが、これは割に進んできているのではないかというふうに思います。

 そして、その次のページでありますけれども、昨今話題になっておりますワクチンの問題。これは、実際には新型インフルエンザウイルスはどこにもないわけでありますから、そのモデルとして、鳥のインフルエンザを原型として、仮のワクチンといいますか、プレパンデミックワクチンというものを我が国でも開発しているわけですが、これの備蓄。あるいは、その下の方には、抗インフルエンザウイルス、これもここ数年間で非常に伸びた、生産量としても伸びた薬なわけですけれども、それのストックというようなことも行われております。

 その次のページをめくって、またブルーのバックのところに戻っていただきたいんですけれども、しかし、この水際作戦だけでは足りないわけでありまして、むしろ、そこから先に入ってくる、大規模になったときにどうするかということが、これからやらなくてはいけないことであります。それには、ワクチンの開発、あるいは薬の備蓄というようなものは医薬品なわけですけれども、それ以外による手段というものが必要になってまいります。

 幾つかここに書いてありますけれども、これは、パンデミックが出現したときに、なるべく早くその患者さんを検知して、そして流行の推移を見ていくというためには、これからの課題として下に書いてあります。

 やはり、迅速に情報を収集する、それの分析を行って、なおかつそれを還元する、情報提供するわけですけれども、実際、我が国はそこまでの機能がない。そして必要な人員、これは専門家でありますけれども、一人の人が今何件もいろいろなことをやっているような状況で入ってきたときには、これを担当する人がいない。あるいは、対応機関の情報ネットワーク。そして、せっかくITが進んでいる中で、旧型のITではなかなか対応ができないというようなこともございます。そして、検査方法の充実。

 一番最後に、「自治体における対策の支援」と書いてありますけれども、頭でっかちの形で上だけやっていても、実際に動く自治体がそれについていろいろな悩みを持ちながらやっているわけですけれども、自治体において実際にやるときの現場での動きに対する支援というものが必要になってくるというふうに考えます。

 最後の一枚でありますけれども、そのほかの対抗手段でありますが、(2)で、一番最初は「社会対策」と書いてありますけれども、やはり、何かありましたときには、人の移動、それから集会といったようなものはどうしても制限せざるを得なくなってくる。一般の方にとっては、通常の生活が制限されるというのは非常にうっとうしいことであろうと思うんですけれども、しかし、それによって少しでも被害を減らす。あるいは、それぞれのいろいろな集まり、会社であり学校でありという組織があるわけですけれども、そこですべて医学的に正しいということがとられるわけではないので、そこの社会に応じた対策案、これはそれぞれのところで計画をしていく必要があります。

 また、個人対策としても、食料の備蓄といったようなこともよく言われますけれども、それよりも、パンデミックがどういうものであるかということを理解していただいたり、その不便さを少しでも減らすための努力が皆で必要であるというようなことを御理解いただく。そのためには、一番最初に「課題」と書いてありますけれども、これは私たちの役割ですけれども、いわゆるリスクコミュニケーションとこのごろ言われておりますけれども、メディアの方、一般の方々に十分な説明をしていくということが必要であろうと思います。

 これは、過剰におどかすということではなくて、その下のところに、これはSARSのときに、そのときの状況を私と前の竹田所長とでまとめた本に書いたのを引用してあるんですけれども、これに書いてあるのは、物を怖がらなさ過ぎたり、怖がり過ぎたりするのは易しいけれども、正当に怖がるのはなかなか難しいという寺田寅彦の文章がありますけれども、私たちは、こういう場に直面したときに正しく怖がったであろうか。それから、今後あるべきものについて、正しく怖がるような方法をとっていく、そして適切にそれに対処する。すべて一〇〇%の安心、安全ということはなかなかできませんけれども、少しでもその割合を高めたいというふうに思っております。

 以上です。ありがとうございます。(拍手)

茂木委員長 岡部参考人、ありがとうございました。

 次に、清野参考人にお願いいたします。

清野参考人 本日は、意見を述べる機会をちょうだいしまして、まことにありがとうございます。

 私からは、新型インフルエンザ対策の中でも予防、特に新しいワクチンの研究開発につきまして二、三述べさせていただきたいと思います。資料はこの一枚だけであります。

 現在、インフルエンザワクチンに関しまして、二つの大きな変化が訪れようとしています。一つは製造過程に関すること、もう一つはワクチンの投与経路に関することです。そして、その二つともが新型インフルエンザの予防と密接にかかわっています。

 まず、製造法に関してですが、これまでは、発育鶏卵、つまりふ化途中の卵の中でインフルエンザウイルスを増殖させ、これをもとにワクチンをつくっていました。この方法ですと、品質が管理された卵を大量に準備する必要があり、培養の期間も比較的長いため、ワクチンが精製されるまでに少なくとも数カ月以上かかります。

 また、高病原性鳥インフルエンザウイルスの場合は、鶏に対して病原性を有するために、卵自体が致死となってしまい、ワクチン製造に使えないという問題点があります。また、卵にアレルギーを持つ方へは、この方法でつくったワクチンは投与できません。

 一方、これまでの卵を使った方法に対して、哺乳類培養細胞を用いたワクチン製造法に注目が集まっています。これは、試験管の中でも培養できるような細胞にウイルスを感染させて増殖させ、これからワクチンをつくるものです。こうすることで、ワクチン精製までの時間が大幅に短縮され、また、コストも下がる、卵アレルギーの問題もなくなるなどの利点が指摘されています。

 つまり、パンデミックワクチンを想定した場合、ワクチン製造の意思決定から可及的速やかに大量のワクチンを供給できるようにしなければならないわけですから、そのためには、今述べましたような細胞培養法を用いたワクチン製造法の体制づくりというものが今後非常に重要になってくると考えられるわけです。

 さて、次に、ワクチンの投与経路についてでありますが、最近、経鼻ワクチンの重要性に注目が集まっています。これは、鼻にシュッと一吹きなどと表現され、その簡便さが強調されている部分もあるようですが、それだけではありません。従来の皮下に注射するようなワクチンでは、実はインフルエンザの感染そのものを防ぐことはできず、症状の悪化を防ぐことが目的となっています。それに対しまして、経鼻ワクチンの場合は、上気道粘膜面にインフルエンザに結合するようなたんぱく質が産生され、ウイルスの感染、体内への侵入そのものを防御することが可能となります。

 また、従来のワクチンでは、ワクチン株と流行したウイルス株が異なると予防効果は期待できないのですが、経鼻ワクチンでは、交差防御と呼ばれる性質があり、ワクチンで投与された以外のウイルスが流行したとしても、ある程度ではありますが予防効果が見込める、すなわち防御範囲が広いということが知られています。この点が経鼻ワクチンの大きな特徴であります。そして、先ほども申し上げましたが、経鼻ワクチンでは注射が不要である、痛くないということも大きなメリットであります。

 一方、経鼻でのワクチンを成立させるためには、アジュバントと呼ばれる、免疫を活性化する物質の同時投与が必要なこともわかっています。そのため、安全なアジュバントの開発が急務となっているわけです。なお、アジュバントを用いることは経鼻ワクチンにとってデメリットであるとは一概には言えません。アジュバントを用いることで、必要な抗原量、ワクチンの量を低く抑えることができるのです。このことの重要性については後ほど述べたいと思います。

 さて、私たちの研究チームは、最近、新しい免疫細胞、NKT細胞を利用した、注射の要らない経鼻インフルエンザワクチンの開発に成功しました。この成果は先月発行されたアメリカの専門誌に掲載されたのですが、私たちはその中で、このワクチンが幅広い防御能を持ち、鳥インフルエンザに対しても有効であることを証明しました。つまり、NKT細胞の活性化が先ほど述べましたアジュバントとしての機能を果たしたことになります。

 このNKT細胞の活性化に用いた物質はアルファガラクトシルセラミドというものなんですが、これは日本で発見された物質であり、研究チームも全員日本人であり、純日本製の成果であるということが言えます。また、これに関する特許も、世界に先駆けて日本から申請しているところであります。

 私たちは、これらの研究成果をもとに、最初に述べました細胞培養法によるワクチン開発を行っている国内ワクチンメーカー、また国立感染症研究所とともに、まさに産官学のチームで今年度から、そちらに書いてありますが、細胞培養法とNKT細胞を利用した新しい経鼻ワクチンの開発という応用研究に取り組む機会をいただくことになりました。今後ますますの御支援、御指導を賜りたい所存であります。

 では、経鼻ワクチンにも使えるようなアジュバントはほかにはないのかという点について御説明します。これはお手元の資料には書いてございません。

 実は、これまでにも多くの物質がアジュバント候補として取り上げられてきました。例えば、コレラ菌の毒素や大腸菌の毒素由来の物質があります。今述べたような物質は、非常に強いアジュバント効果を持ち、既に人での臨床応用も行われたものです。しかし、ともに強い副作用が出たため、開発は中止となっています。

 つまり、今後開発していくアジュバントの条件としては、効果が高いことはもちろんですが、人体にとって安全であることが極めて重要です。先ほど御説明しましたNKT細胞の活性化物質は、一度、がん患者さんの薬として安全性試験が行われた経緯があります。そのときの結果では、重篤な副作用はないという結果でした。

 また、NKT細胞を活性化させるもの以外にも、幾つかの物質が国内で開発中であることが報告されています。通常、似たような研究は国の研究費では同時に行わせないということが通例かとは存じます。しかし、新型インフルエンザ対策という事の重要性にかんがみ、幾つかの研究が多面的、有機的に展開されることは重要であると思います。このような新型インフルエンザに対するワクチンの研究開発に対しましては、今後より一層の御配慮と御支援をいただければと思います。

 それでは、これまで述べてきましたような研究開発の状況が新型インフルエンザ対策へどのように応用されるかについて、多少考察いたします。資料の3をごらんください。

 まず、プレパンデミックワクチンですが、これは流行前のワクチンであり、問題となるウイルス株を特定できていない段階でのワクチンということになります。ですので、ワクチンに用いるウイルス株が流行株と異なる、外れるという状況も考えられるわけです。このような場合、このプレパンデミックワクチンを経鼻ワクチンとして開発することで、先ほど申し上げました交差防御が期待でき、限度はありますが、異なるウイルス株が流行しても、ある程度の防御能が期待できる確率が高まるということが言えます。

 また、パンデミックワクチンの場合、日本以外の場所で先にパンデミックが発生した場合を想定すると、本法案などの対策を十分に講じることで、国内への侵入、拡大をできるだけ長い期間阻止することが重要です。この時間を生かし、原因ウイルスを入手し、迅速かつ大量にワクチンを製造できる体制の確立が極めて重要であると思われます。

 この点については、細胞培養法が大きく貢献するものと考えられます。そのためには、製造開始から半年以内に最大六千万人規模のワクチン供給が可能となるような、細胞培養によるワクチン製造プラントの新規建設が必要になると考えられ、今後、産官学による取り組みを国がリードし、支援する体制が重要になってくると思われます。

 また、全国民分のワクチンを一気に製造することは現実的には難しいと考えられますが、一人当たりの必要量を減らすことができれば、多くの国民に行き渡ると考えられます。

 ここでは、先ほどお話ししたアジュバント、例えばNKT細胞の活性化が活躍します。NKT細胞の活性化により、必要なワクチンの量は六分の一から十分の一に減らすことができることが動物実験でわかっています。つまり、二千万人分のワクチンしか用意できない場合でも、アジュバントを用いることで一億二千万人分のワクチンを生み出すことができるというわけです。もちろん、効果も高い方がいいわけで、経鼻での投与が望まれます。

 以上、私たちの研究成果をもとに、ワクチンに関する現状と問題点、そして今後の展望について述べさせていただきました。

 最後になりますが、私たち研究開発者からお願いを一つだけ述べさせていただきます。それは、今後、経鼻ワクチンに関する臨床試験を展開するに当たって、申請に必要な項目を明確に示していただきたいということであります。

 先日、舛添厚生労働大臣からも、新型インフルエンザに対するワクチン開発に当たっては、実用化の時期を早めるため、臨床試験にかかる期間を短縮するように取り組まれるとの御発言がございましたが、私たち研究者が、前臨床試験においてどこまで、どのような安全性試験を行うことが必要か、また、臨床試験においても、何例の症例数が必要で、確認すべき項目はどれかなど、ガイドラインのようなものをお示しいただければ、無駄な実験や手続を省くことができ、実用化までの期間短縮につながるのではないかと思われます。

 経鼻ワクチンの開発というものが日本においては初めてのことであり、まだそれが確定していないことは承知しているところでありますが、効果のあるワクチンの早期実現を目指し、関係者の皆様の御指導を賜れれば幸いでございます。

 私からは以上です。どうもありがとうございました。(拍手)

茂木委員長 清野参考人、ありがとうございました。

 次に、藤井参考人にお願いいたします。

藤井参考人 成田空港検疫所の藤井でございます。

 本日は、この大事な場所にお話をさせていただく機会をいただきまして、心より感謝を申し上げます。

 私の方からは、検疫所を中心といたしました水際対策の現在の取り組み状況、また現在の課題といったものにつきまして、資料をもとにしまして御説明を申し上げたいと思っております。

 先ほど岡部先生の方からもお話ございましたが、新型インフルエンザはまだ出現していない未知のウイルスでございます。ただ、過去の経験をもとにいたしまして事前の準備を整えることにより、人類史上初めてということになると思うんですが、その流行を最小限にとどめる、コントロールできるかもしれない、コントロールしたいんだ、そういう思いで鋭意私たちは準備を進めさせていただきたいというふうに思っております。

 まず、一枚目をおめくりいただきたいのですけれども、上の方には、新型インフルエンザフェーズ4以降対策ガイドラインというものが簡単に図示してございます。これは、平成十九年の三月に専門家会議におきまして作成をされまして、関係省庁対策会議等で御了解を得て公表されたものでございます。

 全体といたしましては、上に水際対策というのがございます、下が国内対策でございまして、医療対応、社会対応。医療対応の中には、当然ながら、早期発見の話あるいは患者さん等の調査の話、ワクチンの話、抗ウイルス薬の話等々。社会対応といたしましては企業や家庭での取り組み状況などが書いてございます。先ほどの話にもありましたように、水際対策と国内対策というのは両輪でございまして、両方がきちんと対応できて初めて国内での蔓延が防げるものだと思っております。

 下の二ページ目でございますが、それでは、水際での検疫対応、どういうことが役割なのかということを簡単に御説明申し上げたいと思います。

 主に二つあると思います。一つは、この図で示しておりますように、基本的に新型インフルエンザは海外で発生するものというふうに想定をされておりますけれども、海外から船あるいは飛行機でお戻りになってまいります。この方たち、何も対応いたしませんと、電車等にお乗りになって地域に帰っていかれるわけです。その中に患者さんがお一人いらっしゃると、左の赤で示しますように、お一人の方が三人にうつすとは限らないのですけれども、ネズミ算的にふえてまいります。潜伏期につきまして、例えば五日と想定をいたしますと、五日、十日、十五、二十日、一週間でも一カ月以内でこのような状況になってまいります。

 そこで私たちは、右の方に「STOP」と書いてございますが、一人でも二人でも、その患者さんが地域に帰ることを防ぐことができれば多くの方たちが黄色のまま、あるいは、左から二番目でございますけれども、患者さんをきちんと治療する、あるいは感染をしないように防御するといったようなことを果たせば、一部分の方の感染でとどまります。この間、医療の提供ですとかワクチン等々の国内対策がきちんと追いついてくれば何とか蔓延というもののスピードを遅くすることができる、具体的に申し上げますと、患者さんの数のピークを遅くするあるいは低くするということが可能かと思っております。

 二つと申しましたが、もう一つは、当然、この方たちは海外から帰ってまいります。先ほどのお話にもございましたけれども、この方たちの行動パターン、外出を自粛するあるいは不要不急の用事以外では外に出ない等々の対応をきちんと一人一人がやっていただければ、それが非常に大きな効果をもたらすというふうに言われています。空港あるいは港の検疫所におきまして、通過する方たちにこのことを十分理解していただき、それを地域で行動していただく、そういう動機づけの機会にする、そういうことも非常に大きな役割かというふうに考えております。

 次のページ、三ページでございます。特に成田空港の話を中心にお話をさせていただきますが、海外から国内に入ってこられる方のボリュームのイメージをお示ししております。

 これは年間の数字でございますが、飛行機でございますと全国で十六万機、人数でいいますと三千万人以上の方が国外から入ってこられます。これを一日で申し上げますと、入国者数は一日八万人以上ということになります。

 右下に、成田空港、その他の空港での割合でございますが、成田空港におきましては約半分、五〇%から六〇%の飛行機あるいは乗客の方が通過をされていかれるという状況でございます。

 左の方には、後ほど御説明申し上げますが、新型インフルエンザが発生した場合に、空港の場合ですと全国の四カ所、成田、中部、関西空港、そして福岡空港に発生国からの飛行機を集約するということが想定をされております。この四カ所だけで、右のグラフで見ていただくと、大体八〇%から九〇%がフォローされているという状況になっております。

 下の方、四ページでございます。

 それでは、中国等々を含めました発生の蓋然性が高いと言われている国からの数字でございますけれども、これは成田空港の数字でございます。平成十九年の五月の数字でございますけれども、中国からは、現在の状況では、一日約五十五機、お人でいうと九千人ほどの方が帰ってこられます。そのほか、ベトナムですとかインドネシア、あるいはトルコ、エジプトといった鳥から人に感染した可能性があると言われている国からの便は約二十機、四千人以上の方が利用されているという状況でございます。

 今申し上げましたのは直行便でございまして、実はそのほかにも、発生国からほかの国を経由して帰ってこられる便というのがあるということがもう一つ大きな課題かと認識しております。

 次のページをごらんください。次のページは船の状況でございます。

 海港につきましては、左の図で書いてございますように、横浜、神戸、関門に集約をして、右の方には客船の数字しか書いてございませんが、ちょっと手元に数字がなかったものですから、あとクルーズ船といったようなものも使って海外から帰ってこられるという状況になっております。

 六ページ、下の方をごらんください。

 これは、現在、成田空港、あるいはほかの検疫所でもそうなんですけれども、行っている検疫対応でございます。

 左上に「質問票の回収」というふうに書いてございますけれども、実は、コレラ等の消化器感染症は、昨年、検疫感染症から外れまして、現在は質問票をいただいておりません。ただ、ペストですとかエボラ出血熱等々の感染の可能性がある国から御帰国される方には、質問票を書いていただきまして、回収させていただいております。これは検疫ブースでございます。

 また、空港を利用されていらっしゃる先生方、テレビが置いてあるのを見ていただけたのではないかと思うんですけれども、お一人お一人につきまして、お客様が通られるブースを絞りまして、確実にサーモグラフィーの前を通っていただきまして、そちらで体温の確認を検疫官がさせていただいております。

 真ん中の方に、上下に顔がかいてございますが、ちょっと色がおかしいのですけれども、実際に熱が三十八度、九度ある場合には、このように首から上が真っ赤っかで、お面をかぶったような形で、明らかに発熱しているということを確認いたしまして、そういう場合には検疫官がお声をかけさせていただきまして、どちらの国から帰っていらっしゃったのか、いつからこういうふうになっているのかというようなことをお尋ねいたしまして、検疫感染症として少し様子を見させていただいた方がいいという方につきましては、右に書いていますように、健康相談室で医師が詳しい診察をさせていただくという状況になっております。

 実際に、ここには書いてございませんが、検査につきまして、例えば新型として出現する蓋然性が高いと言われているH5N1につきましては、現在、検疫所におきましても検査ができる体制ができておりまして、これまでも、鳥から人にかかったかと疑われているH5N1につきましての検査実績もございます。

 次のページ、七ページになります。少しややこしい図です。

 先ほど岡部先生の資料にもありましたけれども、そちらの方がわかりやすかったのかもしれないんですが、全体の対応の様子をまとめさせていただきました。

 左の方に、フェーズ4地域指定、これがWHOで示されるわけですが、我が国ではそれに基づきまして検疫の強化等々のフェーズ4の対応が開始されます。下の方に「フェーズ4指定地域の出入国者の自粛等」というふうに書いてございますが、恐らく外務省等が、渡航を自粛するようにですとか、あるいは航空会社に運航を自粛するようにといったような呼びかけがなされるものと認識しております。その下の方に、先ほど申し上げました検疫空港ですとか検疫港が集約をされます。

 いずれにしても、初動の態勢というのが非常に大切だと思っておりまして、ここにタイムラグがあると、そのタイムラグの間に多くのことが起きてしまうといったようなことを危惧しておりまして、私たちも、初動態勢をいかに早く立ち上げるかということが重要な認識だというふうに思っております。

 右の点々の中は、直行便に対する対応です。

 指定地域から帰ってくる便、この便につきましてはすべて、航空機あるいは客船の場合は、患者さんの有無、なしの場合も含めて事前に通報いただくという仕組みができております。これは現在もしていただいております。

 その中で、有症者がありの場合、恐らくこれは新型インフルエンザの感染の可能性が高い方ですけれども、この方に対しましては、飛行機が飛んでいる間に、アテンダントさんにお願いをいたしまして、乗客等に対して、席を移っていただいたり、マスクの着用をしていただいたり、質問票を書いていただいたりということをいたします。

 また、到着後でございますけれども、飛行機の場合ですと、一機一機検疫官が対応いたしまして、質問票あるいはサーモグラフィー等で健康のチェックをさせていただきます。その上で、症状がある方につきましては、医師、看護師が診察を行いまして、検査等を行って、左下、入院をしていただく。

 濃厚接触者というのは、旅行中同行された方ですとかたまたま席が近くの方だったとか、そういう方ですけれども、そういう方たちにつきましては、感染しているリスクが高いということで、ホテル等で十日間停留をして経過観察をさせていただく。そのほかの方につきましては、先ほど申し上げましたように、インフルエンザの基本的な知識を御説明申し上げた上で、マスク等を着用して自宅へ帰っていただき、自宅で十日間健康観察をさせていただくということでございます。

 その周囲に、航空会社、都道府県云々のところに赤い枠で囲ってございますけれども、このあたりが今回の法改正によりまして初めて私たちの対応として実際にできるようになる部分であります。

 航空会社、船舶への御要請、あるいは、都道府県につきましては、健康監視は都道府県の方にお願いをすることになっております。と申しますのは、先ほど中国便五十機以上というふうに申し上げましたが、一機に二百人乗っているとしますと一日当たり一万人の方が健康監視の対象になります。十日間フォローいたしますと十万人の方の健康監視をするという状況になりますので、検疫所におきまして物理的にも非常に困難でございますので、都道府県の保健所に乗客の情報を御提供申し上げて健康監視をしていただくという仕組みにしていただくというふうになっております。

 下の方が、昨年の十一月に、政府それから関係省庁、地元の千葉県、地元の医療機関等々と一緒に訓練をした様子でございます。今申し上げたようなこと、事前通報をいただき、機内に検疫官が乗り込んでいく、検査を行う、患者さんを病院に運ばせていただく、あるいはそのほかの方たちにつきましては健康調査をさせていただく、消毒を行う等の一連の動きの確認をさせていただきました。

 ガイドラインに基づいて行いましたが、これにつきましてもいろいろ、課題ですとか、あるいは私たちの工夫があろうかというふうに考えております。

 最後のページです。今後の課題でございます。

 先ほど申し上げました、新型インフルエンザが国内に入ることを可能な限り防止すること、それからきちんと情報提供するということが大きな目的だと思っております。そのために、マンパワーを最大限に活用いたしまして、確実な対応ができるよう、今体制の整備を進めているところでございます。

 また、これは対応の準備をしてつくづく思うのですけれども、空港あるいは検疫所、あるいは厚生労働省だけでの対応ではなかなか十分な対応が行き渡らないという自覚がございます。

 自治体あるいは空港関係者、海港関係者、そのほかの関係者を含めて、共通認識をきちんと培いながら、理解を得ながら協力を得るように努力したいと思っております。

 先ほども申し上げましたが、一番下ですが、水際対策だけで一〇〇%阻止をする、蔓延を防ぐということは難しいものというふうに思っております。

 我々、最大限努力はいたしますが、先ほど申し上げましたように、その後に国内対策がきちんと追いついてくる、あるいは整備をしていただくということを私たちは信じながら、水際での対応をきちんとやっていきたい、そういうふうに考えております。

 どうもありがとうございました。(拍手)

茂木委員長 藤井参考人、ありがとうございました。

 次に、光石参考人にお願いいたします。

光石参考人 弁護士の光石忠敬です。

 感染症の素人として、今先生方のお話でまたいろいろな勉強をさせていただきましたが、きょう、こういう機会をまた与えていただいて、大変感謝いたしております。

 私、この今の法律を制定するための公衆衛生審議会の伝染病予防部会の基本問題検討小委員会というところ、ないしはハンセン症問題検討会議で委員として、それからまた結核予防法と感染症法の統合についての感染症部会の参考人として、どちらかといいますと感染症法の基本的な問題にかかわってまいりました。

 お手元の資料に、佐藤元教授の健康危機管理研究事業というところで分担研究をいたしましたその内容を平成十九年にまずまとめまして、今度は、平成二十年には、具体的な新型インフルエンザの感染を疑われる人がアジアのある国から日本に戻ってきたというようなシナリオをもとに、新型インフルエンザ対策の机上訓練についての意見も述べました。

 そういう観点から、これは以前からも私が申し上げてきたことでありますけれども、第一に、感染症法の基本的価値であるところの感染症制御のための基本原則、特に、人々の任意協力の原則、これを立法化するということについて述べます。

 それから、他方で、私は、治験審査委員会の外部委員ということで、人についての医学研究にかかわってまいりましたし、それから、生命倫理法制上最も優先されるべき基礎法としての研究対象者保護法の要綱試案を公表したということもありますので、第二に、プレパンデミックワクチンの研究に関して、研究デザインの適正さであるとか、審査システムであるとか、被験者の選定であるとか同意に関する基本問題について述べたい、こういうふうに思います。

 まず第一ですが、人々の任意協力の原則を立法化するということ。これは、感染症法というのは、今の前文を見ますと、「我が国においては、過去にハンセン病、後天性免疫不全症候群等の感染症の患者等に対するいわれのない差別や偏見が存在したという事実を重く受け止め、これを教訓として今後に生かすことが必要である。」ということを明確に述べているんですが、ところが、これを法律の本文に反映させて落とし込む、そういう基本原則を定める条項が欠けているんですね。

 法律というのはだれのためなのか。私も、この感染症に関する限り、私が病者になるかもしれないし、それを疑われるかもしれないし、また逆に、単なる健康者として、病気になりたくないという立場になるかもしれません。それはだれでも、各人みんな同じような状況にあると思います。

 感染症の立法においては、人々はメディアにあおられて、不安や恐怖に駆られて、社会的なパニック、集団ヒステリーが起きる状況を想定しなければなりません。それから、これはやはり、特に自分以外の他者の幸福を重んじる、そういう人ではなくて、もう少し平均的な人、平均的な行政官、医療関係者、市民などが多くかかわるということから、当然のことながらヒューマンエラーも起こり得るんだということも考えて立法しなければなりませんし、さらに、有事の状況のもとでも、感染症病者などの人間の尊厳及びこれに由来する人権が徹底して尊重され、保護される、信頼できる法律システムであるということ、これが実は効率的な公衆衛生の目的からも必要です。

 そうなりますと、少なくとも、次のような基本原則及び適正手続条項は法律に明記すべきだというふうに思っています。

 まず第一が、感染症の制御については、人々が正確な情報を受けて理解すること、そしてその上で、人々が任意に健康診断とか検査とかを受診する、そして、任意に家族を含む他者と別になることなど、人々の協力が原則であって、第一義的に重要なんだということを何で法律に最初に書かないんだろうか、これが第一です。

 それから二番目に、そういった任意手段が奏功しないときには、強制措置というのが必要最小限で均衡のとれたものでなければならないんですけれども、感染症法が二〇〇六年に改正されて、健康診断、就業制限、入院、移送の強制措置については必要最小限度でなければならないという原則規定が入りました。しかし、この原則は、あらゆる強制措置についての原則規定でなければならないんですね。

 私が思いますのに、強制措置というのは、医療機関への入院のみならず、ほかの予防手段として必要な場面でも、任意協力が奏功しないときにやはり必要になるだろう。そういう意味では、入院に限定せず必要な場面についても検討していく、立法の場面で検討していくということが望まれます。

 強制措置というのは、一般的に言えば、公衆衛生上の措置を、リスクの程度とか、対応に対するコストとか効率性、それと人権に対する負担によって定める、そういう考え方に立つ必要がありますし、リスクの判断要素については、リスクの蓋然性、これは感染のおそれですけれども、それから重症度、これは結果の重大性ですが、それから人権への負担、こういったものが判断要素です。この人権への負担のことなんですが、これも、負担の性質であるとか重さとか期間が措置の有効性とバランスをとるということであります。あと、感染者あるいは感染を疑われる者に対する強制措置というのは、著しいリスクのおそれの合理的、客観的な立証に基づくものとするということも必要です。

 それとは別に、健康診断とか、検査とか、治療とか、入院への積極的な協力を得るために、病者などの諸権利、なかんずく、最善の医療を受ける権利、インフォームド・コンセントの権利、プライバシーの権利、補償を受ける権利なんかを保障しなくちゃいけません。

 それから、法律上の強制の要素がない限り予算措置を講じないという従来の予算編成上の運用とか慣行あるいは方針が、人間の尊厳及び人権の尊重に照らして、もはや破綻しているということを認識しなければなりません。そうではなくて、パブリックヘルスの目的が存在する場合には、強制の要素がなくとも予算措置を講ずるように努力する、そういう原則をやはり樹立する必要があるだろう。

 人間を動かす二つのてこは恐怖と利益であるというのは、これはナポレオンの言葉なんだそうですが、任意、自発的に自分が家族や他者と別になるということ、受診するというようなことを原則として、強制措置を例外とするという制度を推進するためには、こういった強制の要素がなくても、やはり一定の地域あるいは期間の場合には、健康診断その他の医療費を免除するとか公的負担をするということが必要になりますし、疑い患者などを別にする場合、一定の休業補償金などを支払うということも制度化する必要があると思います。

 検疫法なんかを見ますと隔離という言葉を用いていますし、また、政府内の政策論には地域閉鎖というような言葉が使われていますけれども、これらは、感染症の病者や病気の疑われる者を、多数の非病者と区別するだけでなくて、切り離して、多数者である非病者の下位に置いているのではないでしょうか。

 やはり原則は、人々の理解と任意の協力であって、強制的措置は、最も制限的でない他の選び得る手段の原則に従って、証明された実質的なリスクの脅威に基づくことが制度として構築され運用されれば、ほとんどの人々は、みずから進んで健康診断や治療に参加し、家族を含む他者と分離ないしは別になりますから、感染症対策も効率的になると思われます。

 原因不明の疾病への緊急時対応のあり方については、医師に対する届け出義務のほか、過小権限行使や過大権限行使を防ぐために権限行使者の免責制度であるとか、あるいは補償制度などが必要でしょう。

 現行法制のままでは、感染症の病者など、そういった人たちの原則と例外が逆立ちしていますから、やはり感染症病者を下位に置いて遠ざけて、多数者である非病者の安全を前面に出して健康危機管理対策を講じることになります。

 そうではなくて、私たち一人一人が病者などにも非病者にもなり得るということを法律の基本に示しておかなければならない、これが第一に述べたいことであります。

 第二に、プレパンデミックワクチンの研究の問題点です。

 ワクチンについては、もう申すまでもなく、感染予防の目的で接種しますけれども、病原体を弱めたり、無毒化した病原体からつくられて、体内に病原体が注入されることで抗体をつくって、感染症にかかりにくくするという説明があります。免疫反応を誘発して以後は疾患に罹患しないようにするために投与されるのでしょう。個々のワクチンには利益のみならず危険も付随し、全く安全であるとか、完全な効果を示すワクチンなどはないとも言われています。

 いまだ発生していない新型インフルエンザは、H5N1型ウイルスが変異して発生する可能性が最も高いと考えられていますけれども、H7型などほかのウイルスの変異によって発生する可能性も考えられるそうです。いずれにせよ、新型インフルエンザに真に有効なワクチンは、新型インフルエンザウイルスが発生してからそのウイルスをもとに開発されるもので、発生してからでないと製造に着手できないわけです。しかも、新型ウイルスの発生から実際にワクチンができるまでに相当の時間が必要だとされています。

 プレパンデミックワクチンというのは、H5N1型の鳥から人へ感染したウイルスをもとに、新型のウイルスにもある程度の有効性が期待できると考えられるワクチンです。そしてまた、プレパンデミックワクチン研究というのは、プレパンデミックワクチンを事前に接種することの安全性と有効性を検討して、今後のワクチンの備蓄方針や効率的な利用方法を判断するための基礎データとする研究をする予定で、これは世界で初めてとされています。

 新型インフルエンザ発生初期の段階ではプレパンデミックワクチンにより対応するほかはないようですけれども、新型インフルエンザの感染予防とは異なるわけです。しかし、プレパンデミックワクチンを新型インフルエンザワクチンと命名してしまいますと、どの感染症に対する予防ワクチンかについて素人に誤解が生ずるように思います。

 ワクチンの開発は第一相から第三相までですけれども、第一相、第二相は、普通の薬物の第一相と同様に、志願者本人に直接の益のない研究なんですね。ワクチン開発の第三相は、普通の薬物のどの相の臨床研究とも異なると言われています。今回検討されているのは新型インフルエンザワクチン臨床研究とタイトルされていますけれども、新型インフルエンザは発生していないんですね。その予防とは異なるということを正確に表示するべきなんでしょう。

 今回、プレパンデミックワクチンは、インドネシアと中国株を使うもので、昨年十月に成人について治験の末、製造承認されたもので、副作用の点で大きな問題はなかったと説明はされています。しかし、そうしますと、何か、普通の薬物の第四相の市販後の臨床試験のように考えられがちだけれども、それは全然違いますね。

 審査結果報告なんかを見ますと、そのうちの一つの原体、製剤ともに劇薬に該当するともされていますし、副反応、これは副作用ですけれども、副作用は高頻度に、特に局所位反応が一回目に多く認められる、そして感染防御効果を確認することは現時点では困難である、こんなことも言われていますね。こういうふうに評価されているんですね。

 この治験ではプラシーボ対照研究をやってこなかった。そうしますと、研究デザインを審査する必要があるだろうと思います。そういう場合、専門家以外の人が入っているとは思われない新型インフルエンザ専門家会議、これは今回の研究の審査システムとはやはり言えないんじゃないでしょうか。

 被験者としては、研究の趣旨やリスクに対する理解が得られやすいというような理由で、検疫所職員などの水際対策に従事する者とか、感染症指定医療機関職員などの中で希望する者六千人というふうにされています。しかし、これらの被験者の同意の自発性には問題があるように思われます。なぜなら、政府の職員ですから、政府が被験者となることを要望した場合、拒否は難しいと思われるからです。自発性を確保する方法を検討すべきですし、インフォームド・コンセントにもたれかからないように、デザインの審査を独立した審査システムにより十分に行うべきです。

 最初の被験者である六千人の検疫所職員や医療機関職員などについては、プレパンデミックワクチンの安全性の検討が研究目的です。安全性と有効性の双方の検討が目的だなんというようなことを報道されていますけれども、これは素人は目的を誤解するかもしれません。安全性なんです。

 研究により生じた健康被害のうち一定程度の重篤なものについては副作用救済給付の対象にするとありますけれども、これは肝心な情報の一つですから、具体的なリスクの区別を明確化すべきでしょう。

 それから、小児に対する安全性及び小児にも効果のある投与量を研究するために、六カ月以上の子供を被験者とする医師主導型治験を始める方針が決まっています。しかし、成人における一定の評価に基づくとされていますが、その評価の水準が極めて重要です。その上で、子供に直接の益のない研究に親の同意で子供を参加させることができるかという基本的な問題に入ってまいります。

 感染症について、新型インフルエンザなど科学的未解明の状況は常に存在しています。しかし、科学的解明ないし予防方法の開発について、研究対象者である感染症病者などや非病者を保護する研究対象者保護法制は日本ではつくられていません。国際人権自由権規約七条が医学的、科学的実験について規定しているにもかかわらず、今日本では、治験を除きますと、人を対象とする研究について法制化されていません。

 研究対象者保護法がつくられれば、さっきから申し上げている研究計画の審査システムであるとか、被験者の選定であるとか、被験者の同意などについて適正な研究が行われて、被験者の人間の尊厳及びこれに由来する人権を尊重するシステムができ上がるものと期待しております。

 ちょっと急ぎましたが、私の意見です。どうもありがとうございました。(拍手)

茂木委員長 光石参考人、ありがとうございました。

 以上で参考人の方々の御意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

茂木委員長 これより質疑に入ります。

 まず、参考人に対する質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。石崎岳君。

石崎委員 おはようございます。自民党の石崎岳でございます。

 参考人の諸先生方、本当にお忙しい中、貴重な御意見をお聞かせいただきまして、ありがとうございました。

 最近、この新型インフルエンザに関する報道というのが物すごく新聞等でも多くて、読む機会がふえております。また、政府の側でも累次いろいろな対策方針を打ち出してきているという状況にございます。

 先ほど岡部先生の御説明では、新型インフルエンザが日本に入った場合は人口の四分の一に当たる三千二百万人が感染して、最悪で六十四万人が死亡するという予測があるということでございまして、大変ショッキングな数字だというふうに思います。

 研究者によりますと、新型と通常のインフルエンザは全く別物、別次元であって、通常のインフルエンザでは健康な大人が死亡するということは余りないんだけれども、新型の場合は若者や働き盛りの中高年でもたくさん死亡する例が出る可能性があるというような指摘がなされております。

 先ほど先生は最悪以上の最悪の事態に備えるというお言葉でございましたけれども、一方で、インフルエンザウイルス研究で有名な北大の喜田先生、私も大変御指導いただいております。インフルエンザの本を読んだことがございますけれども、新型といっても、ウイルスが流行するまでには偶然の積み重ねが必要で、そんな簡単には起こらない、新型ウイルス対策は通常のインフルエンザ対策の延長であり、落ちついて備えるべきだと喜田先生は新聞のインタビュー記事でおっしゃっておられました。

 そういう両極のと言ったら失礼ですけれども、いろいろな認識、意見を聞くと、我々素人は、この新型インフルエンザというのをどの程度の病気と認識して備えればいいのかというのをちょっと戸惑ってしまうわけであります。もちろん未知の領域だとは思いますが。

 岡部先生、こういった御意見がございますけれども、この新型インフルエンザを我々はどう認識すべきか、御意見をお伺いしたいと思います。

岡部参考人 どうも御質問ありがとうございます。

 まず最初の、二五%感染するというのがびっくりする数字だというふうにおっしゃったわけですけれども、私たちのサーベイランスデータでは、通常のインフルエンザの患者さんが一〇%から一五%ぐらいは常時感染をしているというふうになります。つまり、一千数百万人の患者さんが毎年、流行の上下によって違うわけですけれども、出ているということは、仮にその患者さんが二倍になるとするとたちまちや二五%や三〇%ぐらいになるので、あながち全く途方もない数字というわけではないというふうに思います。

 ただし、程度が違うというところが、ここがまた、先ほど説明申し上げましたように、どの程度というのがなかなかわからないところでありますけれども、そこの部分をある程度、悪いものを想定しながら対策をとるというところが重要なわけであります。

 それから、通常のインフルエンザという病気と新型インフルエンザという病気は違うのではないかと。これは病態として、通常のインフルエンザのような発熱、せき程度におさまるのではなくて、もう少し全身の症状がぐっと悪くなるようなことを、これはスペイン・インフルエンザのときもそうなわけですけれども、そういうことも想定しておく必要があるという意味です。

 もう一つ、ちょっと御説明を加えておきたいと思うのは、新型インフルエンザが発生して、ある程度致死率等々が悪いものであるとしても、それはやがて普通のインフルエンザに成り下がっていく可能性があるわけです。ですから、どこかでスイッチを切りかえる必要があるだろうというのが私がいつも申し上げているところなんです。

 では、普通のインフルエンザに対する備えと新型インフルエンザに対する備え、余り差があってはいけないのではないか。私は、その点は喜田先生のお考えと全く同じでありまして、むしろ、新型インフルエンザというものは非常に重要なんですけれども、それだけに目を当てているのではなくて、通常のインフルエンザというものに対する対策がとれていないと新型に対する対策もとれない。つまり、そういう意味での延長上である。

 そして、H5N1によるものはかなりの重症度等々が推定されるわけですけれども、必ずしもそれだけではなくて、これは喜田先生と全く共通の部分なんですけれども、そのほかのルート、例えば豚経由であるとか、従来の弱毒経由であるということも視点に入れておかなくちゃいけないというのは、これは全くそのとおりであります。

 つまり、何か一つのことだけに集中し過ぎるのではいけないので、全体を見渡しながらこの対策をとっていく必要があるけれども、しかし、そのときに余り楽なことだけを考えているのでは、こちら側の難しいものが来たときへの対処ができないだろうというのが私の考えであります。

石崎委員 ありがとうございました。

 清野先生からも大変貴重な最新のお話、知見をお聞かせいただきましたけれども、今まで政府がやっていることについてどうお考えかということをお聞きしたいと思います。

 政府の方も、ガイドラインをつくったり、タミフル、リレンザの備蓄をしたり、訓練をしたり、水際対策を発表したりといろいろやっております。しかし、感染者が数千万人というような単位になった場合に、こうした事前の対策というものが整然と行われるのかどうか、パニックになるんじゃないかという心配があります。

 現時点での政府の取り組みをどう評価するかということと、海外、欧米の取り組みと比較して日本はかなりおくれているという評価もございますが、その点、いかがでしょうか。

清野参考人 御質問ありがとうございます。

 憎むべきは感染症でございますから、政府もよくやっているのではないか、大まかに言ってそのように考えております。

 ただ、個別の案件に対しては、科学的に判断するとどうかなというところが幾つかありまして、例えばプレパンデミックワクチン、これはプレパンデミックという名前はついておりますが、実は、はやるものかどうか全くわからない株でつくったワクチンなわけですね。それを打とうということですから、要するに全く益がない可能性があるわけです。

 ですから、そのときに注意しなくてはいけないのは、予防接種全般に言えることですけれども、健康な方に打つわけですから、やはり一人たりとも例えば死亡事故みたいなことがあってはならない、その辺の配慮をされているのかなということが多少心配であります。

 それから、対策としましては、薬の備蓄を進められているようであります。それはもちろん、現在、インフルエンザに対する薬としては商品名でタミフル、リレンザが有名であり、これを備蓄するのが妥当ではあると思います。しかし、既に言われております耐性ウイルスの出現といった問題もあります。

 ワクチンは予防ですけれども、一つちょっと抜けているのかなと思うのは医療の部分です。医療の部分では、薬の備蓄ということをやっているわけですけれども、実際に患者さんが担ぎ込まれたときにどういう薬でどういう治療をするかということを、例えば内科医あるいは救急医などは余り考えていないと思うんですね。その辺の指導といいますか熱を高めるというようなことも国主導でやっていいのではないかというふうに考えているところであります。

茂木委員長 清野参考人、もし、海外の取り組みとの比較で何か御意見ございましたら。

清野参考人 例えばプレパンデミックワクチンに関して言うと、有名なのは、スイスは全国民分のプレパンデミックワクチンを既に備蓄していると言われておりますけれども、僕は先ほど申し上げたような意見ですので、その副作用の問題、それから効果の問題という点で、プレパンデミックワクチンに関する施策は慎重に進めていかないといけないと考えております。私も医療者の一人でありますけれども、今プレパンデミックワクチンを医療者から打ってくださるという話が出ておりますが、自分自身の問題として考えたときに、フェーズ3という現在の状況で打ってほしいかどうかというと、ややクエスチョンマークがつくところがございます。

 それから、海外との比較という点でいいますと、細胞培養でのワクチン開発というものは欧米でやはり進んでいるようでありまして、EUでは、先ほど私が御紹介しました細胞培養によるワクチン開発が既に承認されているという段階ですので、やはりそちらの方の開発研究は迅速に進めた方がよろしいかと存じます。

石崎委員 今プレパンデミックワクチンのお話が出ましたけれども、先週の専門家会議で鳥インフルエンザウイルスからとったプレパンデミックワクチンを、今年度、CIQ職員あるいは医療機関の職員に事前接種する方針が明らかになったということでございます。来年度は、さらに医療関係者や社会機能維持者、これには国会議員も含まれるそうでございますが、一千万人への事前接種を検討するということでございます。

 そもそもが安全性と有効性を検討する、確認を行うということが目的だとされておりますが、新型インフルエンザが発生していない段階でこのプレパンデミックワクチンの有効性というものをどうやって確認するのか、素人考えでありますが、よくわからない。その新型インフルエンザにこのプレパンデミックワクチンが効くのかどうか、効果があるのかどうかというのもちょっと疑問に思うところでございますが、岡部先生、その点はいかがでしょうか。

岡部参考人 御質問ありがとうございます。

 先ほど、新しいワクチンの治験に参加するかしないかというような問題が出ましたけれども、私は、この新型インフルエンザ対策委員会の座長を務めさせていただいたのですが、そのときの優先順位としては、研究者の我々も入れるべきではないかということを申し上げました。それは、我々もそういうような場合には治験に参加する可能性があるということを入れてほしいといったような意味であります。

 それは、一つは、効果と安全性、この間の委員会のときでもいろいろ議論があったんですけれども、ちょっと私は、どういうメカニズムでああいうふうになったのかわからないんですが、メディアの報道の仕方もちょっと先行したようでありまして、委員会の決定の前にいろいろな報道が流れたというのがありますけれども、平和なときといいますか落ちついたときであればこそ、きちっとしたステップを進めて、一歩一歩それが科学的に正しいものか検証しながら次の立場に行くというのが本筋ではないか。

 そういう意味で、現在ストックされているものについて、今までの小規模な臨床研究から少し進んだ形の、これはほかのワクチンの開発でもそうですけれども、小規模でやって少しずつ規模を広げるというステップを踏んでいくのが必要ではないかというのがございます。したがって、そこには、あそこの会議でも申し上げましたけれども、決して強制的にだれそれにやるということではなくて、あくまでも自主的な参加に基づく安全性の確認であります。

 それから、効果ということですけれども、御質問にあるように、全く今病気がないものに対して効果というのは、これはなかなか判定できないというのは、全くそのとおりであります。ワクチンの開発のときには、いずれのワクチンもそうでありまして、ある病気が少なくなってきたときに、例えばポリオという病気があるわけですけれども、ポリオのワクチンを新しいものに切りかえようというふうにしたときに、そのものの効果を何ではかるかということは、実際にポリオにかかる人がないわけですから、わからないわけですね。そうすると、その場合は、安全性並びに抗体価の上がりであるとか、つまり体の中にできる免疫の力がどのぐらいあるかとか、そういうようなことを参考にして推測せざるを得ないわけですけれども、プレパンデミックワクチンというのは、そういう意味では効果の判定を実際にその病気で再現するのは難しいというのはおっしゃるとおりであります。

 したがって、ほかの方法でその効果が期待できるだろうということをやるわけですけれども、それがもし起こったときに、さあ、それというのでやり始めると、これは目をつぶって幾つかのことをやらなくちゃいけないわけで、その事前の段階として、きちっとした科学的なものに基づいて、なおかつ、先ほど私たち参考人側の先生の方からも御説明がありましたように、参加される方々が、一人一人が強制的にではないという形での参加を求めることが必要だというふうに思っております。

石崎委員 岡部先生、そうすると、例えば、一千万人の人にプレパンデミックワクチンを事前接種する政策的な意味というのはどこにあるのかというのがちょっとわからないんですけれども。

岡部参考人 政策的な方は私たちの検討する部分ではないと思うんですが、とりあえず、この間のが六千人という規模が出たわけですけれども、その接種を行って、安全性、それから血中抗体等々、それから、もし今のプレパンデミックワクチンを接種したことによって違う形のウイルスが来た場合に、ブースター効果というんですけれども、刺激的な効果があるかどうか、そういうようなことを見きわめれば次の段階に広げていくことができるだろうということで、直ちに一千万人にすぐに接種する、あるいは全国民に接種するというのではなくて、その都度評価をしていかなくちゃいけないだろうというふうに私は思っています。

 ただし、それは段階を踏んでいかなくちゃいけないわけで、その段階を踏んでいる最中にもし何か発生があるということであれば、そこの段階は省略してやらざるを得ないということもあるかもしれませんけれども、今の段階でその省略を全部前提としてやるのではなくて、ステップを踏んでいく必要があるのではないかと思います。

 したがって、一千万人直ちにとか、あるいは全国民に接種する方法であるということは、私自身はそういうことを想定しているわけではないです。

石崎委員 それから、清野先生、先ほどの研究成果がございましたが、新型インフルエンザが発生した場合に、そこからワクチンをつくるというのが本来のあり方で、そのときに、海外で新型インフルエンザが発生した場合に、直ちにそのワクチンをつくるという準備ができるのかどうか。それから、海外で発生したものでつくられたワクチンが日本人にとって安全なものかどうかというのは、いかがでしょうか。

清野参考人 逆に申しますと、海外でもしパンデミックが発生したときに、日本で直ちにつくれるような体制を今からつくっておくことが大事だろうということであります。

 それはどういうことかと申しますと、先ほどもお話がありましたけれども、やはりふだんは、喜田先生の意見もありますけれども、シーズナルな、通常のインフルエンザに対するワクチン製造工場といいますか、プラントといいますか、あるいはそういう体制といったものをまず充実させていくということが大事なんじゃないかと思います。

 そして、私のレジュメのタイトルのところに書かせていただきましたけれども、ワクチン製造は発育鶏卵から細胞培養へ、接種は経皮から経鼻へと。だから、これは今の段階では、鶏卵で経皮のワクチンしかないわけでありますね。これを、右側の、細胞培養そして経鼻というものに変えていくことによって、スピードアップであるとか、効果が高まるとか、そういったことがある。そういったことを通常のインフルエンザウイルスに対するワクチン製造の段階からつくり上げていくことによって、将来、仮にパンデミックが起きたときに、日本国内においても迅速に対応できるんじゃないかというふうに考えているわけです。(石崎委員「安全性は、日本人」と呼ぶ)

 海外で実際にパンデミックとなったウイルス株の安全性に関しましては、それ以前に日本で入手できるものであればある程度の安全性は確認できますが、本当に全く新規のものであれば、それは緊急事態として、そういう安全性等の試験を省略して先に進むしかないと思います。

石崎委員 藤井所長にもお聞きしたいんですが、今回の法改正で、感染の疑いのある者について、医療機関以外の宿泊施設においても停留措置がとれるということになっておりますが、この宿泊施設はホテルとかということになるんでしょうか。これが確保できるのか、発症者、感染者の数が膨大になった場合に確保できるか、あるいは事前に指定しておくのかどうかについてお聞かせください。

藤井参考人 御質問ありがとうございます。

 今回の法改正で、停留者、すなわち経過観察を十日間程度する方につきましては、医療機関以外ということで、その方たちを市内ですとか東京などにお願いするというのはなかなか難しいものですから、成田空港の周囲の宿泊施設等が想定されております。現在、成田空港の周囲のホテルは大体十六から十七ホテルで七千室ぐらいございます。

 実は、この法改正案が出た段階で、ホテルの皆様方には、勉強会等を開かせていただいて、実際新型インフルエンザとはこういうものだ、こういう対応をしたいというようなことを御説明申し上げながら、同意を得るべく今準備をしているところでございますけれども、実は、なかなか、それぞれホテルでも宴会があったり予定の宿泊者がいたりということで、確保について現段階でオーケーですというふうに言っていただいている段階ではありませんが、その重要性は理解をしていただいていると思います。

 数のお話、七千がどうかというお話なんですけれども、先ほど申し上げました、中国ばかりで非常に恐縮なんですけれども、例えば中国でございます。五十機おりてきます。その一割ぐらいに有症者がいらっしゃったとして五機です。その周囲の二、三十人の方が濃厚接触者で、経過観察をホテル等でしていただくということになると、大体一日で、五機の三十ですから百五十人、それが十日間ですと千五百人、もうちょっと多かったら数千人という方に、そういったような形でホテルにいていただかなきゃいけないんです。

 その範囲内では恐らくホテル等で対応することも可能だというふうには思いますが、それ以上の数字、例えば、全員停留をしなきゃいけないですとか、飛行機丸ごと、乗っていらっしゃったすべての方に対してホテルにとどまってくださいというふうなことは物理的にも非常に難しいので、その場合には医療機関以外の施設ということになっていますので、ほかの選択肢等につきましても検討をしていく。我々もそうですし、あるいは政府としても検討していただかなきゃいけないんじゃないかなというふうに理解しております。

石崎委員 光石先生にもお聞きする予定でしたが、ちょっと時間がなくなってしまいました。光石先生が御指摘になった人権の問題ですとかワクチン接種の問題点については、本当に貴重な御指摘だというふうに思っております。

 まだまだ詰めなければならない点が多々あるこの新型インフルエンザの問題だと思いますので、参考人の先生方におかれましては、引き続きまたさまざまな御指導をいただきたいというふうに思います。

 終わります。

茂木委員長 次に、古屋範子さん。

古屋(範)委員 公明党の古屋範子でございます。

 本日は、参考人の皆様、わざわざ国会においでいただき、貴重な御意見を述べていただきまして、心から感謝を申し上げたいと思います。

 まず最初、岡部参考人にお伺いをしてまいります。

 先日、与党のプロジェクトチームにおきましても、WHOの尾身さんをお招きいたしましていろいろと御意見をいただきました。その中でも、ともかく最初の危機管理が重要である、高目の危機管理をして封じ込めをしていく、その体制づくりが非常に重要だというような講演をしていただきました。

 WHOは新型インフルエンザが発生してからどのくらいの時間でフェーズ4宣言をするということを予想されているか、お聞かせいただきたいと思います。

    〔委員長退席、吉野委員長代理着席〕

岡部参考人 御質問ありがとうございます。

 尾身さんなんかともよく話をすることはあるんですけれども、WHOというメカニズムの中で、現在フェーズ3にあるわけですけれども、そこからフェーズ4に切りかえるというのは、恐らくは、その国に対する問題、ある国で起きたときに、そこはフェーズ4かどうかということを認定するのは、現象だけではなくて科学的な部分、それから国対国のこと、そこのところの経済事情、あるいは全体に波及する力、いろいろなディスカッションをするので、直ちにというわけには恐らくいかないだろうというふうに考えております。

 また、WHO自身も、それを直ちに宣言するのではなくて、やはりいろいろな意見をやりながら調整をするということで、時間がかかる可能性はある。それは何週間も、何カ月もかかるというほどではないですけれども、時間がかかるということははっきり申しています。

 したがって、私たちの方としては、往々にして行政機関はある数字をつけると、その数字に達していないから動かないんだ、あるいは、ある数字に達したから動くんだという判断をしばしばしがちだと思うんですけれども、この場合には、いろいろな情報を得た上で、その可能性があるならば動き出す、あるいは動く必要がないというようなことを、ある程度柔軟に我が国としてはやっておく必要があるというふうに思います。

古屋(範)委員 今のお話ですと、WHOの判断は、総合的にさまざまなものを勘案するために多少時間がとられるだろう、その手前にといいますか、やはり、我が国ができること、これを迅速、柔軟に対応していく、そのことが重要なんだというふうに思います。

 続けて、岡部参考人にお伺いいたします。

 新型インフルエンザの患者を診療するために、やはりその医師は特別な教育を受けた者でなければならないのか、特別な訓練も必要なのか、また、医療機器、また設備についても、これに対する特別なものが必要なのか、それについてお伺いいたします。

岡部参考人 ありがとうございます。

 例えば、コレラであるとかペストであるとかいう病気は非常に特殊な病気でありまして、その広がりも、そんなに広がらないものであるので、やはり感染症の専門家ということが必要になってくると思います。しかし、仮にパンデミックというような形になると、パンデミックというのはいろいろな人に感染をするという意味ですから、患者さんの広がりが多くなるので、すべてに専門家が当たるということは、これは無理であります。

 したがって、ではどうするか。これは我々の方の責任もあるわけですけれども、医療、医学の常識ということを、感染症に関してレベルアップしていく必要があると思います。それは多少時間の要ることでありますけれども、そんなに難しいことではないので、きちんとした常識を私たちも含めて医療関係者がレベルアップできるような形を考えていく、あるいはやっていく必要があるというふうに思います。

古屋(範)委員 今、岡部参考人がおっしゃいましたように、国としても、こうした医療関係者への意識啓発といいますか教育のレベルアップというものをしっかりと図っていかなければいけないということだろうというふうに思います。

 次に、清野参考人にお伺いをしてまいります。経鼻ワクチンの開発に関する貴重な御説明を先ほどいただきました。

 私たち与党、自民、公明の有志で、昨年来、ワクチンの将来を考える会という会を立ち上げまして、坂口元大臣が会長となりまして、さまざま勉強会も重ね、提言も取りまとめたところでございます。

 先ほどの御意見にもございましたけれども、我が国における、新型インフルエンザ対策のみならず、ワクチン行政、ワクチン施策全体にわたる御意見がさらにございましたら、お聞かせいただきたいと思います。

清野参考人 私、免疫を専門とする学者でありまして、その中で、インフルエンザに対するワクチンということで、最近こちらの領域にかかわるようになってきたんですけれども、それで、ちょっと驚いたのは、国内においては、インフルエンザウイルスに対するワクチンは、少なくとも過去三十年以上新しいものができていないわけですね。要するに、昭和の時代のワクチンをいまだに使っている。

 繰り返しになりますけれども、鶏卵でつくる技術でやっていて、いまだにといいますか、注射でやるというのが常識となってきたわけですけれども、二十一世紀になって、ワクチンは人々の健康を守るために非常に大事なものですから、そこに、これまで二十世紀後半にいろいろ蓄積されてきた新しいテクノロジーを入れて新しいワクチンをつくるという段階に来ているんじゃないかな、これはインフルエンザだけではないですけれども。

 しかし、インフルエンザは多くの国民が関与する非常に重要な疾患ですから、まずこれをターゲットにして新しいワクチン開発をする、ワクチンづくりに新しい考え方を日本において根づかせるということが大事かなというふうに考えております。

古屋(範)委員 ありがとうございました。

 やはり、まだまだ我が国のワクチン政策は立ちおくれているのかなというふうに感じます。

 次に、藤井参考人にお伺いをしてまいります。

 こうした新型インフルエンザの水際対策をとっていく上で、検疫所の存在は最重要であるというふうに考えます。参考人はその最前線にいらっしゃるわけでございますけれども、まず、フェーズ4になった場合、この重要な検疫にかかわる人員の確保というものが十分かどうか。また、この新型インフルエンザ対応時の検疫官の感染防御、これが非常に重要だと思いますけれども、これについてどのようにお考えか、お聞かせいただきたいと思います。

藤井参考人 御質問いただきました、まず、フェーズ4となった場合に検疫に係る人員が十分かというお話でございます。

 今想定されておりますのは、先ほど御説明申し上げましたように、発生国からの直行便につきましては、四つの空港と三つの海の港の方に集約をするということになっております。そこで重点的な検疫を実施するということで準備がされているわけでございますけれども、その体制につきましては、検疫所は今、全国で十三カ所、支所等も入れますと百以上あるんですが、そこに八百人以上の職員がおります。その職員をこれらの集約空港あるいは集約港に応援派遣をして応援体制を組むということが今想定されておりまして、実は、成田空港を例に申し上げますと、現在五十人程度でございますが、それが約倍の体制で検疫に当たるということが想定をされております。

 それで十分かということにつきましては、それは現場の人間といたしましては、十分でしょう、あるいは大丈夫ですということはなかなか申し上げにくいのですけれども、現在、訓練等を通しまして、この人数で何とか対応できるということを前提といたしまして、マニュアルの整備ですとか体制整備をしているところでございます。

 ただ、今回の法改正で、そのほかに、ホテルで停留をさせていただく、あるいは健康監視のために自治体さんに情報を送っていくといったようなことをまた想定して作業しなきゃいけないんですけれども、そちらの方につきましては、現在、恐らく厚生労働省本省でも検討課題として検討していただいているというふうに考えております。

 まとめて申し上げますと、検疫業務についての人員確保についてはかなり見通しがついていて、これで頑張りたいというふうに感じているところでございます。

 それからもう一点、感染防御の点なんですけれども、これは、検疫官の健康はもちろんなんですが、検疫官が感染をして、通っていかれるお客様におかけしてしまうとか、あるいは検疫官も生活をしておりますので、その検疫官が地域の中で感染を広げてしまうといったようなことは非常にあってはいけないことだというふうに思っております。

 現在とり得る方法としては、PPEといいまして、個人の感染防御の方法、例えばゴーグルをするとかマスクをするとか防護服を着るとかいったような方法につきましては、十分その備蓄等も行って、その着脱の方法なども繰り返し訓練などを行っているところであります。

 あるいは、感染が起こりにくいフォーメーションみたいなことも検討しているんですけれども、でも、やはり万が一を考えますと、先ほどから話題になっておりますけれども、効果的なワクチン等を事前に打っておきたいといったようなことは私たち自身としても考えておりますし、あるいは、例えば組織として、一番最初の、まだ有効なワクチンが開発される前に、最前線で検疫をみんなでやろうと、その職員を最前線に送り出す立場から考えても、まさしくそのワクチン、プレパンデミックワクチンの安全性のこともありましたけれども、その有効性ですとかあるいは安全性等につきましてもきちんと確認がなされた段階で、私たち、打つことができたらというふうに考えている次第であります。

 以上でございます。

古屋(範)委員 四つの空港、三つの港に人員を集中して管理体制に当たっていくということでございましたけれども、やはり、いざ危機が発生したときには、この人員の確保というものも、また今後さらに厚くなるよう検討していかなければならないのかなという気がいたしました。

 続けて藤井参考人にもう一つお伺いいたします。

 今回の法改正によりまして、航空会社に対する要請が明記されることとなりますが、具体的にどんなことを要請されるのか、教えていただきたいと思います。

藤井参考人 お答えさせていただきます。

 法律で、航空会社についての要請を明記していただくということでございます。実は、これまでも、航空会社につきましては、検疫法に基づきまして、例えば飛行機でございましたら、空港に到着する前に、その飛行機の中に感染症の疑いのある乗客の方がいるかいないか、いない場合でも、いないという旨を事前に連絡してくださいということで、飛行機が着く前に私たちの検疫体制を整えるということをしております。

 ただこれも、近年航空会社さんに非常にお願いを申し上げて、ようやく一〇〇%に近くその通報をしていただいている状況なんですけれども、今回の法改正で、そのほかにも御協力いただくということを法に基づいてきちんと要請できるというのは非常にありがたいと思っております。

 具体的なお話は、やはり、飛行機の中で発症された場合には、ほかのお客様に感染を広げないといったようなことをなるべく早く開始したいというふうに思っておりますので、当然、乗客、その有症者の方も含めて質問票を配付していただいたり、それへの記入の指導をしていただいたりということから始まり、空港到着後に検疫の手順というのはこうなるんですよといったようなことを御説明いただいて、多分、着いてからすぐおりられないというとパニックが起きてしまうと思いますので、そういったことをきちんと説明していただくといったようなことについてはまず御要請させていただきたいと思っておりますし、あるいは、ほかのお客様等も含めて、マスクの着用ですとか、患者さんに移動していただくとか、まさにこれは航空会社さんの職員としてやるものではないとは思うんですけれども、そういうことがどうしても必要ですので、そういうことをお願いしたい。

 あるいは、先ほどから問題になっておりました、直行便でない便に発生国からお客様が乗っていらっしゃったといった場合には、やはり、航空会社が有していらっしゃる乗客情報等を御提供いただいて、到着したら確実に検疫所に御連絡をいただくといったようなことについても御要請させていただきたい事項かなと。

 また、何より、これは在留邦人の方が帰ってくるということもありますが、極力、観光客の方が航空機で日本に入ってくるようなことがないように、運航自粛等々につきましても協力要請をさせていただければいいのかなといったようなことを今想定させていただいております。

 以上でございます。

古屋(範)委員 ただいまの御説明で、航空会社の協力が不可欠であるということがよくわかりました。ありがとうございました。

 次に、光石参考人にお伺いをいたします。

 先ほどの意見陳述の中で、感染症の制御について、人々が正確な情報を受け、理解すること、及び、人々が任意に健康診断に受診をし、任意に家族を含む他者と別となること等、人々の協力が原則であり、第一義的に重要であるという御意見でございました。

 伺っておりまして、感染の疑いがある、感染の可能性がある者の人権、こうした側からの御意見が主であったかというふうに感じます。感染の疑いがある者が移動して、それによって他の者が感染をする、そうした感染をさせられる側の人権についてはどのようにお考えでしょうか。

光石参考人 御質問ありがとうございます。

 私が申し上げているのは、このような法律を、いわゆる健康者、あるいは大勢おられるそういう方をとにかく守らなくちゃいけない、それは大事なんです。大事なんですけれども、それと全く同じレベルで、感染してしまった方、あるいは疑われる方、その方々の人権というのも同じように大事なんだと。

 今の法律のままいきますと、読みますと、何か怖いことがずっと書いてあって、これは一体私どもは何をすればいいんだろうかということで、非常に戸惑うんですね。

 だから、そういう意味では、私、前にも、小委員会のときにも申し上げたんですが、要は、両方が大事なんだと。特に、効率的に言えば、人々が、どんな人々でも任意に協力するということが一番効率性があるんですよ。だから、そのことを法律の一番前のところに書いておいて初めて皆さんが理解できるんじゃないか、こういうふうに思います。

    〔吉野委員長代理退席、委員長着席〕

古屋(範)委員 ありがとうございました。

 また、岡部参考人にお伺いをしてまいります。

 先ほどの意見陳述の中で、最も重要なこと、それは判断者、政治、行政、医学がパニックに陥らぬことという御説明がございました。

 パニックに陥らないためには一体何が必要というふうにお考えか、お聞かせいただきたいと思います。

岡部参考人 ありがとうございます。

 申し上げている側もなかなか難しい部分なんですけれども、しかし、パニックというのは、何にも知らないときにどんというものが起きたときに、何事でも、よく頭が真っ白になるというふうなことが言われるわけですけれども、そうならないために、パニックは恐らくゼロにならないと思うんですね、発生したときには。社会的にもいろいろな騒ぎになりますから、パニックがゼロということではないと思うんですけれども、頭が真っ白になるようなことは避けなくてはいけない。

 そのためには、ある程度のことを想定しながら、そのときにどういうふうに対処するか。それは、考え方だけの問題ではなくて、実際のツール、道具としてのものも我々持っていないとできないものですから、そういうことを持っている。

 それから、特にメディアの方々は一般の方々に話をする一番前線におられるので、その方々が現象だけではなくてその背景にあるものを理解していただくというような形での、通常からのコミュニケーションが大切だろうというふうに思っています。

 これは、思っているだけではなくて、常々実行していかなくちゃいけないわけで、できる範囲のところから進めているところであります。

古屋(範)委員 そうした情報提供などなど、国立感染症研究所の存在というのは非常に大きいというふうに思っておりますし、また、その他のこうしたインフルエンザ対策ワクチンに関する研究機関の存在というものも重要であるというふうに感じます。

 こうした研究機関に対する国の施策への御要望などありましたら、お伺いしたいと思います。

岡部参考人 ありがとうございます。

 研究も、純粋的な研究と、それからかなり実際的な部分に関する研究もあるわけですけれども、ともに重要でありまして、例えば、清野先生のように基礎的なところからやっていくということは、時間がかかりながらも、サポートしていかないとなかなか進まない。それから、私たちのように実行を目の前にしなくちゃいけないというところでは、今やっていることで手いっぱいなところにもう一つ加わってくると、もうにっちもさっちも出ないということもありますので、そういうところの理解をいただいて、現在の研究機関は、やはり技術的に、先ほどの正しい情報というのは、科学的な背景に基づいた正しい情報という意味なんですけれども、それが日常からできるような体制、これをぜひお考えいただければというふうに思います。

 ありがとうございました。

古屋(範)委員 大変貴重な御意見、ありがとうございました。皆様の御意見を踏まえ、これからも対策に全力を挙げてまいりたいと思います。

 ありがとうございました。

茂木委員長 次に、郡和子さん。

郡委員 おはようございます。民主党の郡和子でございます。

 四人の参考人の皆様方、早朝から大変貴重な御意見を開示いただきまして、ありがとうございます。今後の法案審議の中でもぜひ生かしてまいりたいというふうに考えております。

 いろいろと議員からの質問もございましたけれども、まだ幾つか確認をさせていただきたい点がございますので、限られた時間ですけれども、私からも質問させていただきます。

 まず、岡部先生、これまでもWHOの地域事務局にいらした経験も踏まえて、かつてから国に警鐘を鳴らしておられ、それが政府の背中を押してきたということ、これまでの活動に対しましても感謝を申し上げたいと思います。

 先ほどのお話の中で、いわば水際での予防というところに対しての、封じ込めに対しての政策に力点が置かれていて、医療体制についてはまだ十分ではないというお話がございました。

 古屋議員からの質問でも、医療者のレベルアップを図ることが大切であるというふうな御回答でございましたけれども、現場の医療従事者の方々のレベルアップを図るための方策について、具体的なお話をぜひお聞かせいただきたいと思うのですけれども、いかがでございましょう。

    〔委員長退席、吉野委員長代理着席〕

岡部参考人 ありがとうございます。

 また何かお褒めをいただいたようで、冷や汗が出る思いなんですけれども、感染症の非常に高度な部分というのはやはり専門家がやるところでありますけれども、対策というものは極めて常識的な部分があります。例えば何げないときにすっとマスクをつけるとか、あるいは、しかしそのマスクがないとできないわけでありまして、あるいは、感染症の治療というものは、基本的には必要なものを必要なときに十分投じるのであって、むやみやたらに使わないといったようなことも含めて、感染症に対する感覚を身につける必要がある。

 これはちょっと時間のかかることでありますけれども、例えば医学教育において、感染症に関する部分というのが極めて縮小した時代があります。最近は随分いろいろな大学、医学部でもその部分の時間数がふえつつはありますけれども、そういう意味での医学教育からのスタート、これは基本的な部分であります。

 それから、実際の診療に当たる先生方が、ある調査によると、二〇%ぐらいの医師あるいは看護師がもうやめちゃいたいというようなことを言ったそうでありますけれども、それは、やはりこういう病気が全く未知で、何か漠然としたわからないものという部分への恐怖ではないかと思うんです。

 そういうものに対して、きちんとした感染経路であるとか、あるいは、わかる範囲での出来事、こういうことを御説明すると同時に、先ほどワクチンの話も出ましたけれども、丸腰で行くのではない、そのためには、ワクチンだけではなくて、防護するための用具であるとかそういったようなものもきちんと防備されて、安心して医療関係者が患者さんの治療に当たれるということが重要でないかというふうに思います。

郡委員 ありがとうございます。

 次に、清野先生にお話を伺わせていただきたいのですけれども、卵からつくる従来のワクチンではなくて、細胞培養でワクチン株を培養する、動物細胞でワクチン株を培養するという、製造のコストもスピードも大変に短縮されるし、また、卵による副反応、これもリスクが少なくなるだろうということで、私も、お話を聞いて、大きな期待を寄せたところですけれども、一点、お話の中に、注射によって、これまでの株でのワクチン投与の場合、抗体ができるまでには一カ月程度時間がかかるというふうに聞いておりますけれども、経鼻ワクチン、清野先生が開発を手がけておられるこのワクチンについては、抗体が発生するまでの期間というのはどのぐらいを見込んでおられるのかについてまずお尋ねしたいと思います。

清野参考人 御質問ありがとうございます。

 やはり数週間、経鼻ワクチンでも抗体産生までには時間を要するわけであります。

 従来法の注射より極めて早いかといいますと、そういうことは余りありませんで、抗体産生までの期間は、やはり体内での免疫反応を要するので数週間程度必要なんですけれども、経鼻ワクチンの方では、これは実験レベルですけれども、通常は二回、期間をあけて注射で打ったりすることはあると思うんですけれども、我々の経鼻ワクチンは、一回でも二回打ったときと同じだけの効果が得られるというようなデータも得られております。

 ということで、二回目を打った後の期間は不要と考えますと、やはり経鼻ワクチンの一回投与というのは、全体から見ると早く効果が発現するのかなということは考えられます。

郡委員 ありがとうございます。

 それと、北里とそれから阪大の研究所で承認を受けた新型インフルエンザワクチンの開発、これはオーファンドラッグの制度が活用されました。臨床試験では、いずれも、第一相が百二十人、それから第二相及び第三相、合計三百人の被験者の方々に協力していただいて、そして、免疫原性を評価尺度として承認された、こういうふうに承知しております。国内での臨床評価のためのガイドラインがない中で、欧州医薬品庁のガイドラインを参照するなどして迅速に承認を受けたということでございまして、これは、私自身大変意義のあることだろうというふうに思うわけです。

 清野先生らが着手されております経鼻ワクチン、しかも細胞培養であるということ、継続的な研究費の必要性というのも大変大きな問題になってこようかと思うんですけれども、先ほどのお話の中に、同じような種類の研究に対しては国からの研究費が届かないというふうなお話もございましたけれども、制度上の問題として、どういう改善点があるというふうにお考えになっていらっしゃるのか、お聞かせいただきたいと思います。

清野参考人 私たちの研究費にまで御配慮いただきまして、ありがとうございます。

 確かに、通常の競争的資金というのは、それがその目的なんでしょうけれども、似たような研究が出てきたときには、競争させて、いい方だけとるというようなところがあるわけです。ですけれども、幸いにして、私たちの研究テーマに関しましては、先ほどのレジュメの真ん中あたりに書かせていただきましたけれども、本年度からも厚労省の研究費として、研究班の一つとして進めさせていただいているところではあります。

 やはり、この新型インフルエンザの医療に関すること、予防に関することに関しましては、例えば、iPS細胞というのが非常に取り上げられて注目されて、百億円ですか、ついたというようなところがあると聞くと、額はともかく、なぜ新型インフルエンザ対策で似たような制度がつくれないのかなというのは、研究者、研究現場の率直な感想であります。

 そういったものを、例えば国立感染研を中心としたような、感染研だけでなく、私たち、あるいは北大、東大などなどのチームを組めるような新しい研究プロジェクトというものを立ち上げていただけると、そこでも研究費が継続的に回ってくるのかな、そんなふうな体制を考えていただくのもありがたいなというふうに思っております。(郡委員「ガイドラインについてはどうでしょうか」と呼ぶ)

 ガイドラインにつきましては、先ほど意見陳述のところで申し上げさせていただきましたとおり、経鼻ワクチンの開発というのが日本国内では初めてということがありまして、実は、国立感染研の長谷川先生ともよく話しているんですけれども、何をやったらいいかわからないよね、とりあえず、これとこれとこれをやるというふうに我々が話して決めているようなところがあります。そこは恐らく厚労省ということになると思うんですけれども、そちらから逆に、これとこれとこれは必須であるからやりなさい、必須なものは我々でもわかるんですけれども、逆にこれは要らないというものをもしやっているというようなことがあったら、実用化までの期間を短くすることができないという点ではよろしくないなと。

 ですから、そういった新しいワクチンの製造になりますので、これについては、こういう方針、これとこれのこの項目は試験をしなさいというようなものを明確に示していただけると大変ありがたいと存じます。

郡委員 重ねて清野先生に。

 清野先生が行っていらっしゃる研究、似たような細胞培養のワクチンがEUで既に承認をされているということだったかと思いますけれども、こういうことを踏まえて、国内での研究の迅速というふうな面からはどういう御意見をお持ちになっていらっしゃいますでしょうか。つまり、海外での承認を速やかに利用できるような、そういうシステムについてどのようにお考えになるかなんですが。

清野参考人 おっしゃるとおりであります。

 培養細胞は、同じ種類の細胞を用いて、日本国内でも細胞培養でワクチンを製造しているんですけれども、同じ細胞といいましても違う研究室由来の細胞なので、やはり日本の細胞は日本の細胞で安全性の試験を行わなければいけないとは思います。EUで承認されたからといって、盲目的に日本に入れるわけにはいかないというのが現状であります。

郡委員 わかりました。ありがとうございます。

 海外では、細胞培養ワクチンの製造設備というのを大変迅速に進めようというふうな動きがありまして、半年以内にも供給が可能だというような報道もございまして、日本での対応について清野先生もじくじたる思いをきっと持っておられるのかもしれません。ありがとうございました。

 続きまして、藤井所長にお尋ねをしたいと思います。

 新型インフルエンザの潜伏期間というのは、まだこれははっきりしていないわけですけれども、八日から九日というようなことも言われているようでありますが、はっきりしない中で感染が疑われる方をどのように水際でとめ置くのか。お話がございましたけれども、どのぐらいの数だったらばこれについて対応が可能なのか。

 先ほどは十万人の対応は厳しいという認識をお示しになられました。これは、本当に最悪の事態になった折に入ってこられる十万人に対して、とても対応できないということなのだろうと思いますけれども、簡易検診キットについてもまだ承認が得られないという中で、どういう検査体制、先ほどサーモグラフィーのお話がございましたけれども、遺伝子キットなどが配置されているのかどうか。また、それに対して、検査にかかる時間あるいは可能な人員などについてお教えいただきたいと思います。

藤井参考人 御質問ありがとうございます。

 今、郡先生の方から主にお二つの話だったと思うのですけれども、一つは、潜伏期がわからない状況で、その潜伏期にいらっしゃる方も含めてどう対応するのかというお話でございます。

 先ほど若干説明をさせていただいたんですが、資料の七ページがそのイメージなんでございますけれども、有症者で発症されていらっしゃる方というのは、まさに熱も出ていらっしゃるし、症状も出ているので、空港できちんと、私たち検疫所の方できちんと把握をさせていただいて、その方については、先ほどお話がありました検査も含めて実施をさせていただく。

 ただ、そのほかの、感染の可能性はあるけれども症状等がない、この中に恐らく潜伏期の方も含まれているんだと思うんですけれども、その方については、空港で検査を行うということではなくて、かなりリスクの高い濃厚接触者、停留をしていただく方についてはホテル等で、そのほかの方については御自宅等に帰っていただいて、今は法律の上ではたしか十日間の経過観察をしなさいというふうに書いてございますので、これは潜伏期が最大十日以内だろうというふうに専門家の方がおっしゃっているんだと思います、それを踏まえて対応させていただきます。

 ホテルですとか、あるいは御自宅で健康状態をフォローしていらっしゃる方の中で熱が出てきたといったような状況になれば、ホテルであれば私たちが、あるいは自宅であれば保健所の人間が直ちに対応させていただいて、感染しているということであれば、直ちに適切な医療を受けていただく、治療を受けていただくという形で、潜伏期の方たちも発症するその早期で対応するというふうな対応方針になっております。

 当然ながら、症状が出る前から感染性があるという話もございますので、自宅にいらっしゃる方は外出を自粛していただく、あるいは、停留先では余り出歩かないように指導をさせていただくといったようなことが必要かと思っております。

 したがいまして、先ほど、十万人はとても難しいと申し上げたのは、私たちは、何人であってもそれをできる体制で一生懸命やらなきゃいけないというふうには思っているんですけれども、十万人全員が検査をしなければいけない、あるいは病院にいなければいけないということではなくて、そのリスクに応じまして、それぞれの場所でフォローアップをしていき、必要なときに検査をするというふうな体制になっているというふうに考えて準備をしております。

 後半の、検査のことでございます。

 まさしく迅速キットのように、検査をして、今、たしか通常のインフルエンザですと、十五分ぐらいでA型、B型等がわかるものがございまして、これは空港の方にもあるんですけれども、新型インフルエンザの場合には、それが開発されているかどうかというのは、申しわけありません、私はまだないという認識なんですけれども、確かにそういうものがあれば非常に迅速に検査ができてすばらしい、そういうものが開発できたらすぐに使いたいという気持ちがございます。

 ただ、今の現状を申し上げますと、現在は、検査につきましては、検疫所に検査室がございます。それと国立感染症研究所と並行して検査を行いまして、新型インフルエンザかどうかの判定を行うというふうに考えて体制を組んでおります。

 検査は、PCR法と言いまして、新型インフルエンザのウイルスの遺伝子があるかどうかということを調べるものでありまして、遺伝子を抽出して、それを増幅して型を決定するというプロセスを経ますので、約六時間程度の時間と、それから、やはり検査を行うための技術を有している者というものが必要になってくるわけであります。

 現在、成田空港の例で申し上げますと、一度に二十検体を検査する能力の機械がございまして、それを一日三回回すことができるような体制整備をしておりますので、一日大体六十人分程度の検査ができるというふうに考えております。この六十というのは、恐らくほかの集約が検討されている空港等でも同じ体制になっているんじゃないかというふうに理解をしております。

 この数が十分かどうかということについては、一応想定なんですけれども、例えば、航空機で発生国からいらっしゃるお客様で、せきをごほごほしていらっしゃる、明らかに新型インフルエンザなのかもしれないという方を航空機にはお乗せにならないというふうなルールがきちんと機能していけば、実際に成田空港におりてきたときに検査を要する方というのが次から次と、次の便から次の便から複数いらっしゃるという状況ではないと思うので、この体制で何とかやっていけるのかなといったようなことも想定はしております。

 ただし、先ほど岡部先生からも、最悪以上の最悪という話もありました。そうなった場合に、検査がオーバーフローするようになった場合に、検査ができる人員をふやすとか、あるいは施設の改修なんかも必要かもしれませんが、その辺の体制をとるといったようなことはちょっと想定して検討しておかなきゃいけないかなというふうに考えております。

 以上でございます。

    〔吉野委員長代理退席、委員長着席〕

郡委員 ありがとうございます。

 最後に、光石先生、余り時間がなくなってしまって大変恐縮なんですけれども、パンデミック時における社会活動のさまざまな制約による不利益が益を上回った場合の個人への補償、これはワクチンの事前接種についても同じことが言えるんだろうと思いますけれども、問題になってくるんだろうと思います。

 いずれにせよ、リスクを最小限にするための方策に知恵を絞らなくちゃいけないんだろうと思いますけれども、先ほど、光石先生のお話の中に、検査、治療、入院への積極的な協力を得るために、病者等への諸権利、なかんずく最善の医療を受ける権利、インフォームド・コンセントの権利、プライバシーの権利、補償を受ける権利を保障することの重要性という指摘がございました。大変同感を持って聞かせていただきました。

 また、日本の臨床試験のおくれを指摘されまして、被験者保護を担保することが研究の促進にもつながって、法制化が望まれるということも指摘されていて、全く同じ思いでございます。

 今回、北里とそれから阪大の研究所で承認を得られたワクチンについては、重篤ではないにしろ、幾つかの副作用事例が報告されていたというふうなこともございました。これはパンデミック前夜と言われる今日、迅速な承認をということで理解もできるわけですけれども、今回の小児についての治験と六千人への評価、研究の投与、この点について、留意すべき点を改めてまた伺わせていただきたいと思います。

光石参考人 どうもありがとうございます。

 最初にはどうやら六千人ということが予定されているようです。その場合、この方々が何か理解がしやすいからとにかく最初に安全性をというふうに言っているんですけれども、やはりこの方々の身体といいますか、そういったことを非常に重視して守っていかなくちゃいけない、それがないと、そういう研究というのはうまくいかないだろうと思うんですね。

 そういう意味で、そういった研究目的をはっきりするとか、あるいは、安全性について、劇薬とかいろいろなことを言っているようなことがあるので、そういう点もきちんと説明しなくちゃいけませんし、それから、何かリスクが起きたときに、それについての補償というのもきちっとしなくちゃいけませんし、それから、小児に関しては、これは先ほど申し上げましたように、成人についてどの程度の安全性とか有効性が評価できたのかということができないと、特に六カ月以上の小児について親が同意して参加させることができるかどうかということについては、もちろん、その小児には何の意思も表明できない、理解もできない、そういうときに、では、どうやったら親の同意でやれるのかというようなことをもっときちんとルールをつくっていかなくちゃいけない、そういうふうに思っております。

 以上です。

郡委員 ありがとうございます。

 時間になりました。これからの審議の中でも参考にさせていただきたいと思います。ありがとうございました。

茂木委員長 次に、高橋千鶴子さん。

高橋委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 きょうは、四人の参考人の皆さん、お忙しい中、本委員会に出席いただき、貴重な御意見をいただきました。本当にありがとうございました。

 初めに、岡部参考人に伺いたいと思います。

 国民の新型インフルエンザに対する関心が、この一年間でようやく高まってきたかと思います。一方、センセーショナルな報道も多く、予想のつかない混乱が起こり得るということも想定されるし、同時に、先生御指摘のように、判断者がパニックにならない、このことは非常に重要ではないかと思っております。

 その点で幾つかお伺いをしたいと思っておりますが、まず、こんな聞き方をしていいのかどうかあれですけれども、パンデミック発生のきっかけはどんなところから来るとお考えか、WHOの監視のポイントなども、もしあれば伺いたいと思います。

岡部参考人 御質問ありがとうございます。

 何らかのエビデンスに基づいて、つまり事実に基づいての説明ではなくて、想像と周辺からの考えになるんですけれども、日本の国内で初めて新型インフルエンザというウイルスが発生するということは、メカニズムから考えると非常に起こりにくいであろう。

 現在、鳥から直接来る、あるいはそのほかのルートを考えても、恐らくは、インフルエンザという病気に関する通常の監視が行き届いていないところでふっと起き上がってくる、そして、それがわかりやすいところに広がった時点で初めて見つかってくるのではないか。つまり、国内よりも国外のところで発生して、そこからスタートをするのではないかというのがあります。

 その分だけ、時間をできるだけ稼げるのであれば、そういうような地域での発生をなるべく早く検知できるということが重要になってまいりますので、これが、先ほどの御質問にもありました、通常のインフルエンザに関する関心あるいはチェック、検知システムを国際レベルで引き上げていくということが重要だろうと思います。

高橋委員 ありがとうございます。

 その上で、例えばトリ・ヒトの、今の鳥インフルエンザの場合は、既に死亡率が六割ということになっておりますけれども、やはりその特徴として、トリ・ヒトの場合は圧倒的に途上国で発症しているということ。もともと、免疫がないというだけではなく、抗ウイルス薬などの備蓄もないなど、いわゆる貧困、経済的な理由というのが大きいかなと思っております。

 その点に対する先生のお考えと、日本は逆に、タミフルは世界じゅうのシェアの七、八割くらいを占めているということも言われておりますけれども、では、日本が国際貢献としてやるべきこともあると思いますが、その点で伺いたいと思います。

岡部参考人 御質問ありがとうございます。

 例えば、今韓国で鳥のインフルエンザが発生して、二十数羽の陽性鳥が見つかっているというようなこともあるわけですけれども、韓国で発生した後に我が国で鳥インフルエンザが発生しているという事例が、今までは二回ともそのようなことが想定されているわけです。

 したがって、日本の場合は、今、次の段階で鳥インフルエンザが出てくるかどうか。しかし、前回の例でも、早いところでは数十羽単位で見つけられるようになっている。これは、やはり我が国のそういう意味では検知精度が随分進んでいると思います。

 ところが、いわゆる途上国に行きますと、患者さんが一人発生をし、二人発生し、その人をずっと追っていってみると、自分のうちで鶏が死んでいたというような形で、逆のことになっています。つまり、早期の発見ということができない中でだんだんたまっていっている。まだ人の患者さんの数としては三百数十人ですから、極めて少数だと私は思うんですけれども、しかし、その積み重ねがぱっと破裂するといいますか、そういう状況が警戒されるというのが今です。

 したがって、途上国全体の医療、それから、先ほどのインフルエンザの延長でありますけれども、そういう感染症対策ということを、やはりこれは、できるところはできないところに対してもっとサポートをしていく。そのサポートは、必ずしもその国のためだけではなくて、こちら側の方に反映をしてくるということでの国際協力。それから、その辺は医学を超えていくわけですけれども、国際政治も含めた協調性というものが非常に重要だというふうに思います。

 私たちの立場からは一生懸命そこができますけれども、それを超えたところをぜひいろいろなところでお考えいただけるとありがたいというふうに常々思っています。

高橋委員 ありがとうございます。

 今先生のお話を聞いていて、やはり医療の水準というのが非常に大きく違うのかなというふうに考えました。

 タミフルの備蓄に関しても、いろいろな政策的な問題はともかくとして、日本がフリーアクセスの国であるということ、一定の医療の水準があるということの上に立って使われているということもあるのであろうと。そうすれば、やはりそういう途上国の医療の水準を引き上げるためにも、国際貢献という形が非常に重要なのかなということを改めて考えさせられました。ありがとうございます。

 そこで、ヒト・ヒト感染がどこかで発生した瞬間でありますけれども、国としては、WHOがどこかで発生しましたよということで、一斉に諸外国に対策を求める、そこで、検疫や出入国の規制あるいは移動など、段階的な程度によって規制や公衆衛生介入などによって時間を稼ぐということが求められてくると思うんですけれども、同時に、先ほどお話があった、通常のインフルエンザ対策の多くの積み重ねによって、個人のレベルアップということも求められる。ですから、高性能のマスクや、あるいはうがい、手洗いなども有効な手段ではないかと。

 そうしたことなどを基本的に周知して、国民に過度に恐れるものではないんだということを徹底していくことも非常に大事ではないかと思いますが、その点でお願いいたします。

岡部参考人 ありがとうございます。

 何か一つのことを集中すればそれでパーフェクトだということはないというふうに思います。例えばワクチンも非常に期待をされているところではありますけれども、ワクチンさえ接種しておけば一〇〇%安全ということでもありません。それから、通常タミフルという名前の薬を飲めばこれで絶対に治るということではないので、幾つかのいわゆるバリアを設けていって、複数のものでやっていかなくちゃいけない。

 その中には、先ほど申し上げましたような、医薬品だけではなくて、日常の習慣としての、今議員がおっしゃったマスクであるとか手洗いであるとか、そういうようなことに対する習慣づけであったり、それから、通常の医療の中で、これは清野参考人もおっしゃっていましたけれども、医療の中で必要なものは必ずしもタミフルとワクチンだけではなくて、そのほかの、呼吸器、呼吸を調節する機械であるとか、あるいは点滴であるとか、あるいはそのほかの指示薬、こういったようなもの、加えてベッドの余裕とか、医療体制そのものの方に関連が出てくると思います。

 今、医療の崩壊と言われていますけれども、お互いのそういうようなものの信頼を戻さないと、実際の新型インフルエンザ対策のときになかなか難しいというふうに思います。非常に広範であると思いますけれども、ぜひよろしくお願いいたします。

高橋委員 ありがとうございます。

 非常に貴重な提言をいただいたと思います。今後また生かしていきたいと思います。

 次に、藤井参考人に伺いたいと思うんですけれども、政府が先般発表した新型インフルエンザの水際対策において、もちろん発生国からの出入国規制やおそれのある人への衛生介入などのほかに、在外邦人の帰国について検討していると。

 帰国を希望する在外邦人に対してはすべて速やかに帰国させるということを言っているわけですけれども、これは、全体としては出入国を規制しつつ、何らかの手段で在外邦人だけを帰国させるというのは、またその後の態勢も含めて、かなり技術的には難しいのかなというふうに思うんですけれども、その点についてはいかがでしょうか。

藤井参考人 ありがとうございます。

 水際対策のお話で、特に在外邦人の帰国のさせ方というのが議論されているがというお話でございますが、確かに、私も実は、この会議、特に検疫所は直接入っていないんですけれども、四月九日に関係省庁対策会議というのがあって、それがかなり新聞で報道されましたものですから、私たちもちゃんと知っておきたいということで、内閣官房などのホームページで内容を見させていただきました。

 先ほどから水際のお話をしておりますけれども、恐らく、水際対策というのが、陸続きの国ではない日本だから、帰ってくるのが飛行機あるいは船でしか帰ってこれないものですから、さらに効果が出るんじゃないかと思っておりますけれども、帰ってくる便の調整の仕方なのかなというふうに思っています。

 資料を見させていただきますと、在留邦人の方が例えば中国で十数万人いらっしゃるということで、その方たちを帰すためにはどうするかといったような検討がなされているということであります。

 我々は、その帰ってくる便が、例えばの話ですけれども、これはまた国土交通省さん等とも調整をしていただく話だと思いますけれども、すべての便を一応運航を停止して、在留邦人さんだけが特定の便で帰ってくるとか、あるいは観光客の方などはもうシャットアウトをしていただいて、まさしく日本の方だけ、お住まいになっている方だけ帰っていただくといったようないろいろな方法があると思うんです。

 どういう、帰していただき方、航空機あるいは船舶の運用であっても、私たちが水際でやることは、その方たちに対してきちんと健康チェックをさせていただいて、御説明を申し上げて、必要な方は入院等をしていただく、あるいは地域に帰ってからもきちんと留意をしていただく、せきエチケットみたいなものはちゃんとやってくださいとかというお話をする。

 私たちがとり得る方法はそういう方法ですので、恐らく今先生が御質問いただいたことは、帰し方の運用方法については、恐らく政府の方で検討していただいて、その方針に従って私たちがきちんと対応させていただくと。

 済みません、御回答になっているかどうかわかりませんが、そのように考えております。

高橋委員 ありがとうございます。

 なかなか難しい問題ではないかなと今思っているわけですけれども、ただ、在外邦人の対策についても、あるいは一般的な出入国の規制についても、日本だけではなく、国際的な合意が必要であろうと思うわけです。検疫に関する業務というのは、国際保健規則、IHRにより各国共通と聞いております。

 そこで、例えば、SARSの経験はどうだったのか、生きているのだろうか、あるいは国内対策を国際スタンダードと照らし合わせたときにまだ追いついていない点などがあるのかどうか、その点について伺えればと思います。引き続いて藤井参考人に。

藤井参考人 ありがとうございます。

 確かに、私たちが行っております検疫は、法に基づいて仕事をしております。また、感染症法も、感染に関しての法律だというふうに理解しております。それとIHRがきちんと整合がとれているということは非常に重要なことだというふうに思っておりますし、恐らくそういう観点からの見直しもされているというふうに認識をしております。

 ただ、先ほど出入国規制というお話をしていただきましたが、私たちは、今、検疫法に基づいて行える業務は、入国者に対する対応でございます。恐らく、出国については、いろいろあると思うのですけれども、感染者の方が出国しようというのは、本当に、外国に感染者の方を送り込んでしまう、あるいは航空機に御迷惑をかけるので、というふうに考えた時点で、ふと考えますと、感染者の方は、地域で入院の治療をどうしてもしてくださいということで、入院勧告などをされておられますし、あるいは、外国に行きたいというのでチケットを買われる、あるいは航空会社に来られるといったら、その時点で御連絡をいただいて、きちんと出国を取りやめていただくといったようなことが、運用上はできるんじゃないかと思います。

 むしろ、一般の方、健康な方が外国に行かれて、発生国で感染をされて、持って帰ってしまうといったようなことも、最終的には入国される方ですので、そういう方に対しての出国の自粛等々につきましては、これは恐らく外務省さんとの御連携になるんだと思いますけれども、そのあたりをきちんと、先ほど岡部先生等々がおっしゃっておられますけれども、情報共有を国民の方ときちんとさせていただいて、その辺の重要性を理解していただくといったような対応が、今の運用上ではとり得るのではないかと思っております。

高橋委員 ありがとうございます。

 続きまして、清野参考人と光石参考人に同じ質問をさせていただきたいと思います。

 先ほど、清野参考人から、新たな経鼻ワクチンの問題について貴重な提言をいただきました。そこで、最後に発言された、臨床試験についての考え方、国の考え方を示してほしいとの要望がございました。新型インフルエンザのワクチンの製造に当たっては、フェーズ4以降においては、直ちに、国家備蓄しているプレパンデミックワクチン原液の製剤化を行うようワクチン製造会社に要請した時点をもって、薬事法四十三条の規定にかかわらず、当該新型インフルエンザワクチンの販売、授与等を行えるという形で、国家検定の一部カットや期間短縮などということが想定をされております。

 発生後にしかワクチン株が得られないという特殊性や、とにかく急ぐという問題と安全性の確保との兼ね合いという非常に難しいことが問われると思いますけれども、その点について御意見がもしありましたら、お願いします。

清野参考人 御質問ありがとうございます。

 おっしゃるとおり、パンデミックワクチンの開発に当たっては、フェーズが非常に大事だと思います。先ほど私、現在のプレパンデミックワクチンなら自分は受けたくないかもしれないというようなことも生意気に申し上げましたけれども、それは、今フェーズ3だからです。フェーズ4になったら、事は全然変わると思います。ですから、フェーズ3の今だったらこういう指針で、フェーズ4になったら、もう既に法律等は定められているようですけれども、それにのっとってやれと。そこを明確に私たちにも示していただければということであります。

光石参考人 今の点について言えば、フェーズ4になっても、とりあえずはプレパンデミックでやらざるを得ないという期間があるようです。その辺のところを明確に説明する、理解してもらうというあたりが、安全性を検討していくときに非常に重要じゃないかなと。だから、新型インフルエンザというのは、新しいのは全部新型インフルエンザなんだけれども、今治験で承認されたのは新型インフルエンザですけれども、これは今後起こってくる新型インフルエンザと少し違うはずなんですね。だから、その辺のところの説明、同意というあたりは非常に重要なことかな、こういうふうに思っております。

高橋委員 ありがとうございました。

 今のお二人のお話を聞いていて、やはり事前の説明と理解というのが非常に重要であるかなというふうに改めて感じました。

 最後に、岡部参考人にもう一度伺いたいんですけれども、国内対策について、やはり都道府県が最前線である、それでいて、何をどれだけ備えるかというのは、自治体の側にするとまだまだ見えていない、よくわからない。それで、どこまで計画を進めていくかという点で非常に混乱しているということがあるかと思います。発熱センターをやるということ一つとっても、保健所が看板を一つつけるだけという印象がございます。

 都道府県の計画を実効あるものにする上で、政府として急ぐべきことについて御意見を伺います。

岡部参考人 御質問ありがとうございます。

 先ほど、医療の中で専門家が見るかどうかというような御質問もあったのですけれども、少数のときには専門家が必要だと思います。多数になったときは、専門家ではなくて、いろいろな人がそれに取りかからなくちゃいけないんですけれども、現在、私たちもそうですけれども、自治体の中の保健行政、あるいは医療現場、それから検査をするような衛生研究所、そういうところに今求められているのは準備ですので、これは専門家が要るんですね。しかし、その専門家の数が余りにも足りなくて、なかなか動きが進まない。一たん動き出したら、その専門家たちがつくったものについて多くの人が取りかかればいいので、そのときに専門家がいても、もうしようがないとは言いませんけれども、そのときにたくさんの専門家が要るわけではない。

 そういう意味では、自治体や何かに、必要な人材とか、あるいはその人たちが教育を受けてできるだけのことをやれるというのが今は必要なことじゃないかというふうに思います。

高橋委員 もっともっとお聞きしたいんですが、時間が来ましたので終わります。

 どうも本当にありがとうございました。

茂木委員長 次に、阿部知子さん。

阿部(知)委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。

 本日は、四人の参考人の皆さんに、本当にいろいろな意味で考えさせられる貴重な御提言をいただきまして、ありがとうございます。

 思い起こせば、二年ほど前、岡部先生にも、感染症法の改正のときにもお越しいただいて、その後も一貫してこのインフルエンザ対策問題にリーダーシップを発揮していただいていること、先ほどどなたかの委員の中の御指摘にもありましたが、本当に敬服いたしますし、また、それに比べて、果たして政治の側は十分な準備をしてきたんだろうかということを、私はきょう改めて、ああ、問題かなと思ったことがありますので、まず冒頭、そうした問題をお話しさせていただき、岡部先生に質問をしたいと思います。

 新しい形、新型インフルエンザというものは、二年前のここでの審議よりも、アジアの各地で、インドネシアあるいは韓国、中国、いろいろなところで発生しましたし、それから鳥から人への感染ということも現実に起こってきて、三百人くらいと言われている段階になったわけです。

 今の国内での論議、あるいは、これはちょっと急に時間が前倒しになった感染症の審議なのですが、主にはワクチン対策や、あるいはそれまではタミフルの備蓄問題が論議されておりましたけれども、例えば、今後恐らく岡部先生は一番予見し得るお立場かと思いますが、この新型インフルエンザがはやるとすると、やはりアジアの国のどこかで鳥から人に感染し、そして、そのときは恐らく、例えば日本の国内であれば鳥の殺処分とかは可能なのですが、インドネシアで発生した場合に、インドネシアの現地の社会、経済、政治状況の中で、一番大事な、一番最初にやっていただく殺処分のような、ある意味で隔離ですよね、その病原体を隔離していくようなことには、政治の力が大きいというか、政府間交渉が大きいんだと思うんですね。

 一方でそういう政治と、それから医学の世界と、今、本当に不思議なことなんですが、この間がないというか、この間をどうやって結んでいくかということが、実は、私から見れば、政治の世界でも医療ということが問題にならざるを得なくなっている時代だと思うんです。

 特に岡部先生はWHO等でお仕事されましたから、果たして日本は、アジア各国からの情報の収集や、あるいはある意味での医療の、あるいは医療を超えた医療行政の、指導とまでは言いませんが、助言というようなことで、特にアジア地域で十分な役割を果たせているのか、あるいは、それに見合う人的なマンパワーはどうか。

 実は、私、SARSのさなかに中国に行って、日本の厚生労働省から北京の大使館に行っている関係者は一人で、SARSとかはやはり非常に、現地の公衆衛生というか衛生状態、あるいは、どうやって蔓延を防ぐか、岡部先生たちが一生懸命、香港等々でもやっていただきましたけれども、病気、医学の分野と行政の分野、政治の分野というのは、すごく大事な時期に来たんだと思います。

 岡部先生から見て、日本の厚生労働省はもっと何をなすべきか。私は、まずそういうことがあって、これは水際作戦ばかり言われますが、まず、発生する状況をとらえて、そこを未然にどう国際的にできるかということも第一なんじゃないかなと思いますので、その点をお願いします。

岡部参考人 御質問どうもありがとうございます。昔の当直仲間からそういうような話を聞けてありがたいんですけれども。

 政治と医療の間を取り持つのがなかなか少ないというのは全く事実だと思いますけれども、それは、阿部先生のような方々が医療のことを知りながらやっていただかなくちゃいけないと思います。

 御質問のアジアのことについてですけれども、現在、新型インフルエンザあるいはパンデミックということが非常に注目をされていますけれども、もしこれが去った後に新型インフルエンザだけをやっていたら、これは何も残らないというふうに思います。

 現在、アジアにおける情報の収集が的確かというと、やはり、かなりの部分がおくれたり、あるいは先方が話しにくいというようなこと。あるいは逆に、我が国が、例えば宮崎で起きた鳥のインフルエンザに関して早く他国に発信したかというと、決してそうではないわけですね。そういう情報の交換をきちんとできるようなことというのは、ある事件が起きたときではなくて、通常から非常に重要だと思います。そういう意味でのアジアへの貢献、通常からの対話をやっておく。

 例えば、私たち感染症研究所では、類似したような機関でCDCというところがあるんですけれども、中国のCDCと、あるいは台湾CDC、それから韓国CDCというようなところと研究所の友好関係を結んで、情報提供をやろうと言って、意見交換が随分進むようにはなりましたけれども、全部それで解決できるわけではない。

 それから、先生おっしゃったように、あるところにたった数人がぱらぱらっといるだけでおしまいになる。あるいは、ある国に援助をしたけれども、五年のプロジェクトが終わったら全部引き揚げて、結局はフォローができていないとか。そういう意味では、もう少し継続的に対話を続けていくということが、新型インフルエンザに限らず、今後、こういう感染症というのはほかにも起きると思いますから、地道な関係を築き上げていくということが必要だと思います。

阿部(知)委員 私はきょう、清野先生の新しい経鼻ワクチンのお話も伺いながら、本当に、国内だけでなくて、広く世界、特にアジアでのそうした有効なものを届けるというのが日本の国際貢献の一番ではないかと思いながら伺った次第ですので、その意味でも、岡部先生にはさらにさらに取り持っていただいて、本当の意味で、世界じゅうでこうしたことが未然に防止されるように、ぜひお願いしたいと思います。

 そうした前提をお願いした上で、次に、一に大事なのは国際的にも国内的にも情報であることは変わりはないと思うのですが、今度、国内でございますと、この情報ということをめぐって、受け手の側、すなわち国民の側、私は小児科医ですから、そういう目で見ると、お母さんがどう思うかとかいうことを考えると、今、非常に国民は、ある意味で過大評価したり、ある意味で無視したり。これは医者をやっていて思うんですけれども、ちょうど寺田寅彦さんの言葉で言われたように、ほどよくこの実態を知るということがなかなか難しい時代になっているように思います。

 岡部先生の書かれたきょうの資料集の中でも、私はきょう思いましたが、例えば、プレパンデミックワクチンと言われると、これはあくまでも、人が鳥インフルエンザにかかって、その人からとったワクチンですが、新型インフルエンザワクチンとは全く違うものですけれども、この間のマスメディア報道では非常にここが混同されて、一気にパニック願望的なものも起こりかねない状況が私は少し懸念されるんですね。

 岡部先生から見て、例えば、このプレパンデミックという言葉が適切なんだろうかと。私は、逆に、清野さんがお使いになった、鳥インフルエンザワクチンの人にうつったものというふうな言い方の方が今のところ実態なんじゃないかなと思うんですが、このあたりはどうでしょう。言葉が与える影響というのは大きいと思うので、お願いします。

岡部参考人 御質問ありがとうございます。

 全く同意見でありまして、例えば、今のワクチン、新型インフルエンザワクチン承認とか、非常に誤解を与える形で、私たちは、むしろプレパンデミックの方がまだわかりやすい。あるいは、鳥インフルエンザワクチンに使った原型であるとか、その辺の説明がなされないうちに名前として動き出してしまうというのがあります。

 これも、新型インフルエンザ対策という言葉が先に出ていますけれども、新型インフルエンザは必ずしも大ごとではなくても起きる可能性があるので、これはパンデミックに対する、つまり地球規模で患者さんがふえたときに対する対応であるということですので、そのネーミングというのは非常に重要だというふうに思います。

 私たちは、しかし、もうある程度決まったものに対してはやはりしようがないというところもあるので、ただ、息長く、そこの部分をきちんと、メディアの方も含めて、御説明を我慢強く続けていく必要があるというふうに思います。

阿部(知)委員 先生のお話の中でも、通常のインフルエンザ対策の持続性が大事なんだというお話でしたので、ぜひまたそのようにもお願いしたいと思います。

 三点目というか、安全性ということがどなたにとっても一番大きな問題で、私が今回、一番懸念しますのは、この「プレパンデミックワクチン」の安全性を検証するために六千人に打ってみるという、今まで、第一相が百二十、第二、第三が三百人ずつですか、六千人規模にして安全性を確認するという段階であるし、でしかないしというところなんですね。

 そうなると、この安全性には二つの意味があると私は思うんですけれども、一つは、それを受けた方が起こす副作用ですね、これは従来言われていたところ。もう一つ、これは私が懸念しているだけなのかもしれませんが、そういう新しいワクチンを六千名に打つことで、逆に言うとウイルス変異を惹起しまいか、起こしやすくすることはないのか。これは今のところ、ある程度世界に、鳥から人にうつった原型はあるんですけれども、六千人が今度新しい、ある意味で培地に人間がなるわけで、そちらの側の安全性、ウイルス変異の安全性については医学界はどういうふうに考えるんだろうというのを、これは済みませんが、岡部先生と清野先生に一言ずつお願いします。

岡部参考人 後半の部分の問題ですけれども、これは、似たような議論は、鳥に対する鳥インフルエンザワクチンの接種がいいかどうかということとかなり共通していると思います。

 パンデミックワクチンあるいはプレパンデミックワクチンもいずれも不活化型ワクチン、病原体を殺してあるので直接の変異や何かを誘導することはないと思いますけれども、中途半端に抑制した場合に、わからないうちに周りに病原体がはびこってしまって、その結果として変異が出やすくなるということはあり得るので、例えば鳥に対する鳥インフルエンザワクチンの接種というのは日本ではやらないことになっておりまして、私も反対の方なんですけれども、しかし、人の場合にはその変異のスピードが速まるかもしれないけれども、しかし、現在の起き得ることに対して防御しなくてはいけないのではないかということが多分優先しているのではないかと思います。

 おっしゃるところはあり得るのかもしれませんけれども、そこのバランスを考えた上での必要性というふうに考えています。

清野参考人 御質問ありがとうございます。

 その六千人に打ったワクチン自体は、もう完全にウイルスではない、もう死んでいる、まあたんぱく質のようなものですからそれ自体が変異するということは考えなくていい。それで、その六千人に鳥インフルエンザが集中的に感染して、その人たちの中で、よく鳥とか豚の絵で出てくるように変異するということは、確かに可能性としてはゼロではありませんが、恐らく都市部にいるような方に打たれることも多いと思いますので、その可能性も非常に低い。ですから、議員がおっしゃったような可能性は非常に低いというふうに医学的には考えられると思います。

阿部(知)委員 そうなると、打たれる御本人の安全性という方が第一なんだろうと。これは、税関の職員の皆さんのお体のことも考えますと、さっき、藤井さんのお話の中では、安全性と有効性が確認されたら積極的に打ちたいと。私もそうなんだと思うんですね。だって、一番水際で活躍してくれている方が被験者になった場合に、ある種大切な人材を失いかねないわけですから。

 私は、今後、もしこの六千人ワクチン接種計画があった場合には、本当に十分な自発性と、そして、安全性についてはまだこれは今後の要素もある、今は安全性を確認するためのものであるんだということをきちんとお伝えいただきたいと思うんですね。そうでないと、一番大事な検疫の職員が被験者というのは、私はちょっと懸念しております。

 最後に、光石先生にお願いしたいですが、いずれにしろこれから、例えば経鼻ワクチンにしろこの「パンデミックワクチン」にしろ、未知の実験をしていかなきゃいけない。ある種、言葉の印象がよくないですけれども、人体を用いた実験になってくる、被験者が必要となる。そのときの保護規定が日本ではほとんど整備されていない。私はこっちの方を早急に整備すべきでないかと思うのですが、もう少しその点について御意見があれば賜りたいと思います。

光石参考人 どうもありがとうございます。

 やはり、そういった被験者に対する説明と同意のもっと前に、先ほども申し上げましたが、要するに、余りインフォームド・コンセントにもたれかからないようにするにはどうしたらいいかということを考えますと、このような研究、プレパンデミックワクチンの研究についても、やはり審査システムというものがよほどしっかりしていないと、デザインが本当にいいのか、あるいはプラシーボ対照がなくていいのかも含めてなんですけれども、研究のデザインがどの程度大事なのかということをよほどよく検討した上で、今度は被験者一人一人の同意の問題に入っていくんですね。

 だから、そういうことを考えますと、治験を除きますとこれが法制化していない。ということは、その審査システムというものが、例えば今回の審議会ですか、ではそれが審査システムとしての立場としてやっているのかといいますと、私の見るところではどうも専門家しかいない。そうなりますと、審査システムでは、もう少し素人の人にも入ってもらって、このデザインで本当に大丈夫かというようなことの審査もしていただく必要がある。

 だから、やはりそれを考えますと、この立法というものを、しっかり審査システムなんかの立法をしないと、何か、国がこういうふうにしますよと言ったら、その被験者たち、六千人の人たちはもうそれに従わざるを得ない、希望する人とはなっていますけれども、そうはなかなかいかないのではないか。そういう人たちのことを私が一番心配するのはそういうことでございます。

阿部(知)委員 私もその点は同じように思いまして、審査のシステムということが、これは、清野先生たちの御発案のも本当にすばらしいし、そして、清野先生は、だからどういうことをクリアすれば本当にこれが使えるようになるのかを明らかにしてほしいというふうに御提案であったんだと思います。

 最後に、岡部先生にまた戻って済みませんが、そのあたりはどのようにしていったらいいのかというのと、それから、私はもう一つ、先ほど光石先生がおっしゃった子供に対して安全性の確認のために治験するというのは、これは親の同意があってもちょっとやはり今の日本の法体系では考えられないことなので、もしかしてメディアが先行してそういうことを言っているのであれば、それは否定していただいた方が小児科医師としては心が安らぎますし。

 審査システムをどうするか、そして、子供の治験、安全性についての問題、懸念ということの二点、最後にお願いします。

岡部参考人 お答えします。

 プレパンデミックワクチンの六千人規模というのは、研究計画は発表になっているけれども、私は、あれはまだ倫理委員会等々を通っていないというふうに認識しています。研究班が構成されて、それでスタートになるので、デザイン等々についても治験委員会は多分通っていないんじゃないかと思います。ですから、そこの部分は先行しているのじゃないかと思います。

 私も、参考人の方々あるいは先生方がおっしゃっているように、ある職業だからやるんだということではなくて、そこはできるだけ自発的な意思に基づいて、本当に嫌な人は嫌だと言えるような形のものでないと治験ではないというふうに言えると私は思っています。

 それから、小児に対する治験というのはなかなか難しいところで、小規模で今度行われる予定というふうには聞いているんですけれども、私も新生児や何かの医療をやっていたことがありますが、例えば新生児の医療は、結局そういうものが集積していないから使えないという薬がほとんどだったわけです。

 しかし、それでも理論的には必要なもので使わざるを得ないという状況が、先生もそうですし、我々も若いときにそうだったように、ある時期になるとどうしても、子供さんに全部オーケーをとるわけにはいかないので、そこは親御さんの同意ということになると思いますけれども、きちんと説明をした上で、やはり小児の方でも、結局、多くの方に使うという前提としては、少数の方でできるだけ安全と思われることを確保して、担保しながらやる、万一のときにはそれに対してきちっとした補償ということを考えながらやるのが治験であって、そうしながらの治験は必要だというふうに思います。

阿部(知)委員 成人でも安全性は確認されていない段階ですので、今、岡部先生に御指摘いただいたのは、その後の計画になると思います。

 最後ですが、質問ではなくて、藤井さんに一言お礼です。日々本当に大変なお仕事を、そしてこれだけのいろいろな取り組みをしていただいてありがとうございます。これからも、また引き続き国民のためによろしくお願いしたいと思います。

 終わらせていただきます。

茂木委員長 次に、糸川正晃君。

糸川委員 国民新党の糸川正晃でございます。

 本日は、四人の参考人の皆様方、大変貴重な御意見をいただきまして、本当にありがとうございます。私からも質問をさせていただきたいというふうに思います。私、最後の質疑者でございますので、また忌憚のない御意見をいただければというふうに思います。

 まず初めに、岡部参考人にお伺いをしたいというふうに思います。

 感染症法におきまして、今回新たに類型化される新型インフルエンザ等感染症の患者に対しまして入院勧告措置等を講ずることというふうにしておりますが、一類感染症において可能な建物の立ち入り制限とか封鎖等の強い感染防止措置というのは別途政令によって定められるということになっております。これは一類と二類の間に位置づけられているのかなというふうに思います。

 これは、過去に発生したパンデミックインフルエンザが世界じゅうに与えた影響とか、それから新型インフルエンザの感染力の強さ、こういうものを考えると、新型インフルエンザ等の感染症についても、初めから一類感染症に位置づけて、政令によらずとも強い感染防止措置というのを講ずることができるというふうにしてもよかったんじゃなかったかなというふうに感じるわけでございます。

 この点について、参考人、どのようなお考えをお持ちなのかお答えいただけますでしょうか。

岡部参考人 ありがとうございます。

 私の意見としてお聞きいただければと思うんですけれども、仮に、法律上で一類感染という非常に強い形での感染症になった場合に、先ほどから繰り返しますけれども、ごく少数の患者さんのときはそれによって対策がとれるかもしれないんですけれども、数が大きくなってきたときに、一類という取り扱いではとても間に合わない。また、それによって、例えば一類感染ということになると、これは通常の医療機関は診なくてもいい病気ということになりますから、通常の医療を離れるという意味では、医療を受ける機会は患者さんにとって非常に少なくなり、恐らく利便性もなくなるのではないかというふうに思います。

 そういう意味では、私はむしろ、一類と同等に扱うことはあっても、一類感染症というふうにしてしまうのは早計ではないかというのは、これは私自身の考えです。

 それから、先ほども申し上げましたように、ある数になってきて、そこから膨らんできて、時がたってくると普通のインフルエンザに成り下がる可能性があるわけですから、どこかできちんとスイッチをするということを決めておかないと、状況としてはよくなったにもかかわらず、いつまでも一類感染症だから、あるいは一類感染症並みだからということで、それこそ無用の隔離であったり、あるいはいろいろなものの制限がかかる可能性があるので、そこら辺の議論をだれがどこでスイッチを切りかえるかということをきちんと決めておく必要があるというふうに思います。

    〔委員長退席、田村(憲)委員長代理着席〕

糸川委員 もう一問、岡部参考人にお伺いしたいんですが、国内において新型インフルエンザの感染拡大を阻止するためにも、今おっしゃられるように、一類に分類するとか二類に分類するとかじゃなくて、どちらかになるようにスイッチをできるような体制をとっておくということが必要なのかもしれませんが、できる限り、例えば外出は自粛してほしいというようなことができるようにしておくということも必要かなというふうに考えるわけです。

 今回の法改正においても、都道府県知事が感染の疑いのある人に対して外出の自粛を要請できることといたしました。ただ、外出の自粛をしても、同居人がいる場合は、この人たちを感染させてしまうおそれがあるわけで、感染症法においても、検疫法の停留と同様、感染のおそれのある者について、例えば宿泊施設に一時的にとどまっていただくとか、そういうことも認めてもよいのかなというふうにも考えるわけです。

 この同居人に対する感染防止策について、参考人の御見解をお伺いしたいというふうに思います。

岡部参考人 お答えします。

 同居人に対する、つまり、ある人が患者さんになったときに、その周りの人をどうするかということなんですけれども、その人が感染する可能性も考えれば、早目にきちんとしたところで医療のもとにあるという方が、恐らくその方にとってもいいことじゃないかという意味では、同居人の方の制限ですか、そういうことも必要ではないかというふうに思います。

 ただ、あるところを隔離したり制限したりすることによって、いわば水際作戦でこれが確実に防げるわけではなくて、漏れ出る可能性があるので、これが広がったときの対策を一緒にとっておかないと、制限の方ばかり一生懸命やると結局は広がってしまうということを想定して取りかからないとだめだろうというふうに思います。

 感染症の場合に一番心配なのは、ある特定の人が感染を受けたときに、周りからその人が、あの人が感染源だと言われるのが一番危ないので、その人にとってもですね。ですから、そういうことがないように、多くの人がコンセンサスをとって、これはその人を医療のもとに置く意味でもあるし、一緒に感染を広げないための対策であるというような理解が進まないと、ある特定の人だけを制限すればいいんだという考え方になるのは間違いだと思います。

糸川委員 私も、おっしゃられるとおりだというふうに感じております。ありがとうございます。

 続きまして、清野参考人にパンデミックワクチンの問題についてお伺いをしたいと思いますが、このワクチンは、新型インフルエンザが発生した場合に全国民に対して速やかに投与することというふうにしておりますが、このワクチンを投与するころには、もう患者さんが増大して、医療従事者のみによるワクチン投与というのが困難な状況になっているのではないかなというふうに思うわけでございます。この点について、どのような対応をとればそういうことが可能なのか、お聞かせいただけますでしょうか。

清野参考人 御質問ありがとうございます。

 おっしゃるとおり、完全にパンデミックになったときに全国民に投与することと対策に書いてあるわけですけれども、あれは何カ月目のことを想定して書いてあるのかなと、確かに疑問なところがあります。

 そこで、議員おっしゃるとおり、恐らく海外で発生して日本で顕著に広がる前に打つということが大事になってくるわけですけれども、それは具体的に何日ぐらいかといいますと、恐らく二、三カ月でつくれれば大分現実的ではないかなというふうに考えております。

 私が説明しました細胞培養法によるワクチン製造法ですけれども、これは、特定のウイルス株、これでやるということを決めていただきましたら、最速で二カ月目に製品を供給できるようになります。ただ、これは一番最初の製品ということなんですけれども、その後は、半年目までには六千万人分の供給が可能な技術であります。

 ですから、さらに、先ほど申し上げましたアジュバントというものを用いて抗原量を下げることによって、やはり二、三カ月目で人に、しかも多くの日本国民に投与できるだけのものはできる。ただし、そういったプラントは今のところ日本には存在しておりません。ですから、そういったものをそういったことを想定しつつつくっていかれてはどうか、いくべきではないかということを僕は申し上げたわけであります。

糸川委員 ありがとうございます。

 続きまして、藤井参考人にお尋ねをさせていただきます。

 この新型インフルエンザの感染力の強さ、こういうものを踏まえますと、感染の疑いのある者について、可能な限り停留させることが必要ではないかなというふうに考えます。

 今回、この検疫法を改正して、新型インフルエンザの患者さんに対しては隔離を行って、また、感染のおそれのある者に対しては停留を実施することとしております。そして、この停留については、感染のおそれのある者が大量に発生する可能性を想定して、医療機関だけではなくて宿泊施設においても実施することができることとなったわけでございますが、ただ、法案においては、感染のおそれはあるものの、停留されない者がある、こういうことを前提とした規定もございます。

 新型インフルエンザの感染力の強さ、それから国内における蔓延を防止するためにも、感染のおそれがあるということであれば、とりあえず宿泊施設に停留していただくことが必要ではないかなというふうに考えておりますけれども、水際で働かれていらっしゃる藤井参考人が、感染のおそれがある者に対してどういう対応をしていけばスムーズに行えるというお考えをお持ちか、お聞かせいただけますでしょうか。

    〔田村(憲)委員長代理退席、委員長着席〕

藤井参考人 御質問ありがとうございます。

 先ほどから岡部先生もおっしゃっているように、恐らく新型ウイルスは毒性が強いというか重症になりやすいということがわかっておりますが、感染性が高いか低いかという議論については余りなされていないような気がいたしまして、今、多分、通常のインフルエンザ並みの感染性であれば今の対応で何とかなるだろうというふうなことが想定されているんだと思っております。

 まさしく、水際の私たちの対応は確率論で、どれだけ地域の中に入れないかということですので、恐らく、感染をしている方の範囲というものもきちんとリスク評価をしていかなきゃいけないと思っております。完璧を求めるとすれば、もう発生国で感染していることを想定して、非常に感染性が高いということを想定すると、発生国から帰っていらっしゃった方はすべて十日間きちんと停留をさせていただくというのも一つの考え方だと思いますけれども、その段階で、そのほかの方たちは御自宅で健康監視ということなので、そちらの方もきちんと行われれば、それと同等の対応の効果はあると思っています。

 ただ、ちょっと私たちが判断しにくいのは、その感染性、周囲の方たちにどのぐらいのリスク、その現場にいるときにはもうかかっている可能性が一〇〇%あるのかないのかといったあたりについては、まさしく専門家の先生方の御意見を聞きながら、停留をさせていただく方の範囲というのをその時点で検討しながら、修正しながら、ガイドラインに基づいてきちんと対応していくということになると思いますので、お答えになっていないと思うんですけれども、そういうふうな考え方できちんと対応したいと思います。

糸川委員 もう一問、藤井参考人にお尋ねしますけれども、今の、感染が広がるおそれがあるのかないのかということも考えられながら、どういう方をとどめるのか、隔離するのか、そういうことも、いろいろな情報収集が必要なんでしょうけれども。

 例えば、検疫所で、停留されない者に対して、ちょっと疑いがあるなということで、空港から自宅までの帰途においてマスクの着用を指示することとされております。しかし、こういったマスクの着用について、これは自主的な対応なのかなと。結果として、着用しないで帰途の公共交通機関等においてウイルスをあちこちでばらまいてしまって、感染を拡大させてしまうおそれもあるわけでございますが、検疫所として、マスクの使用等による感染防止策の実効性を高め、そして確保するためにどのような対応をとっていけばよいのかということで、いろいろ悩みもあるんだろうと思いますが、その点を少しお聞かせいただければなというふうに思います。

藤井参考人 ありがとうございます。

 御自宅に帰っていただく方には、基本的にはマスクの着用ということでマスクを差し上げて、それから、それからの行動パターンをこういうふうにさせてください、あるいは、新型インフルエンザについてはこういうふうな病気なので気をつけてください等々のことをもろもろセットでお話をさせていただいた上で帰っていただくことになります。

 この方たちは、先ほど先生もおっしゃいましたように、まさしく感染をさせる可能性が非常に高い患者さんは医療機関に入っていただきますし、感染しているリスクが比較的高い方については停留という形でホテルに入っていただくんですが、帰っていただく方たちは、その時点で感染していることが、あるいはウイルスをほかの方にうつす可能性がかなり低い方についてお帰しするというのが考え方の原則だとは思っております。

 ただ、万が一のことも十分ございますので、そのあたりは、一人一人に対してマスクの着用の仕方等の、ビデオも今つくっているんですけれども、そういったものをきちんと、これはとったら罰則だとかそういう話ではないと思いますが、必要性と重要性をきちんと理解していただくための努力を行った上で、きちんとマスクの着用方法等も御伝授申し上げた上で、家へ帰るまでやってくださいという言い方をさせていただくことが、今精いっぱい、必要なことだと思っております。

糸川委員 答えにくい質問だったかもしれませんけれども、やはり、国内に、地域の中に入れてしまって蔓延させるのを防止する本当に最前線でございますので、マスクの着用等を的確に、そして適正につけていただいてということをまた進めていただければなというふうに思います。

 続きまして、光石参考人にお尋ねさせていただきます。

 患者さんの隔離といった強制的な予防措置を中心としていた旧伝染病予防法と異なって、感染症法というのは、患者さん等の人権、これを尊重しつつ、良質かつ適切な医療を提供するということとされております。

 今回の改正案において、新型インフルエンザの患者さんに対して、都道府県知事が入院勧告とかそういう措置を講ずることができることとしております。こういった措置が、確かに患者さんに対する制限を加えるものではあるんですが、その一方で、最大限患者さんの人権に配慮した上で、入院等の措置によって新型インフルエンザの患者さんに対して適切な医療を提供すること、これが患者さんの健康等の維持に資するものとなるという面は否定できないのではないかなというふうに思いますが、光石参考人の御意見をお伺いしたいというふうに思います。

光石参考人 どうもありがとうございます。

 患者の人権を尊重するということの前に、やはり、患者が自分の意思で、自分の協力で感染症の防御をするという方向に何とかこの法律を持っていきたい、そういうことをさっきから申し上げているんですが、そのために、人権に配慮するとかいっても、それは、言ってみれば、普通の人には余りぴんとこないですね。

 だから、入院するときにだけ強制措置があるというのも、これも妙なことでして、要するに、先ほどの検疫のとき、あるいは自宅にマスク云々、そういったところでも、やはり原則は任意にお願いする、でも、場合によっては、人によって強制的なことがあるかもしれない。そういう意味での伝染病予防法からは少し進歩しましたけれども、そういう基本原則をちゃんと最初に書かないと、普通の人には、やはりこの法律は、いざ感染症が疑われたときにいつもこういうふうにされるんだよというふうにしか読めないんですね。

 だから私は、法律をつくられる皆様方にはぜひ、法律というものが人々の常識をつくっていくんだ、人々の常識の中に、感染症については、ほとんどの方は、よし、私が家族を守ろう、そういうふうに思ってほしいんですね。そのためにはどうしたらいいかということ。だから、余りきつい規定だけを設けるということはやめた方がいいのではないかというのが私の意見です。

糸川委員 本日は、四人の参考人の皆様、大変貴重な御意見をありがとうございました。また今後の質問に生かしたいと思います。本当にありがとうございました。

 終わります。

茂木委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人各位に一言ごあいさつ申し上げます。

 参考人各位には、長時間にわたりまして大変貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。(拍手)

 次回は、明二十三日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時八分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.