衆議院

メインへスキップ



第2号 平成21年3月11日(水曜日)

会議録本文へ
平成二十一年三月十一日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 田村 憲久君

   理事 上川 陽子君 理事 鴨下 一郎君

   理事 後藤 茂之君 理事 西川 京子君

   理事 三ッ林隆志君 理事 藤村  修君

   理事 山井 和則君 理事 桝屋 敬悟君

      赤池 誠章君    新井 悦二君

      井澤 京子君    井上 信治君

      浮島 敏男君    遠藤 宣彦君

      大野 松茂君    金子善次郎君

      川条 志嘉君    木原 誠二君

      木村 義雄君    清水鴻一郎君

      杉村 太蔵君    高鳥 修一君

      とかしきなおみ君   戸井田とおる君

      冨岡  勉君    長崎幸太郎君

      西本 勝子君    萩原 誠司君

      福岡 資麿君    宮下 一郎君

      内山  晃君    岡本 充功君

      菊田真紀子君    郡  和子君

      園田 康博君    長妻  昭君

      細川 律夫君    三井 辨雄君

      柚木 道義君    赤羽 一嘉君

      福島  豊君    古屋 範子君

      高橋千鶴子君    阿部 知子君

      糸川 正晃君

    …………………………………

   議員           細川 律夫君

   議員           山井 和則君

   議員           園田 康博君

   議員           大島  敦君

   議員           郡  和子君

   議員           阿部 知子君

   議員           糸川 正晃君

   厚生労働大臣       舛添 要一君

   文部科学副大臣      松野 博一君

   厚生労働副大臣      大村 秀章君

   厚生労働副大臣      渡辺 孝男君

   厚生労働大臣政務官    金子善次郎君

   厚生労働大臣政務官   戸井田とおる君

   政府参考人

   (総務省人事・恩給局長) 村木 裕隆君

   政府参考人

   (総務省行政評価局長)  関  有一君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           戸谷 一夫君

   政府参考人       

   (厚生労働省大臣官房総括審議官)         森山  寛君

   政府参考人       

   (厚生労働省大臣官房技術総括審議官)       谷口  隆君

   政府参考人       

   (厚生労働省大臣官房審議官)           中尾 昭弘君

   政府参考人       

   (厚生労働省医政局長)  外口  崇君

   政府参考人       

   (厚生労働省健康局長)  上田 博三君

   政府参考人       

   (厚生労働省医薬食品局長)            高井 康行君

   政府参考人       

   (厚生労働省職業安定局高齢・障害者雇用対策部長) 岡崎 淳一君

   政府参考人       

   (厚生労働省職業能力開発局長)          草野 隆彦君

   政府参考人       

   (厚生労働省雇用均等・児童家庭局長)       村木 厚子君

   政府参考人       

   (厚生労働省社会・援護局長)           阿曽沼慎司君

   政府参考人       

   (厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長)    木倉 敬之君

   政府参考人

   (厚生労働省老健局長)  宮島 俊彦君

   政府参考人

   (社会保険庁総務部長)  薄井 康紀君

   政府参考人       

   (農林水産省大臣官房審議官)           梅田  勝君

   政府参考人       

   (経済産業省大臣官房審議官)           廣田 恭一君

   政府参考人       

   (国土交通省大臣官房審議官)           内田  要君

   厚生労働委員会専門員   榊原 志俊君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月十一日

 辞任         補欠選任

  谷畑  孝君     宮下 一郎君

  林   潤君     浮島 敏男君

  福島  豊君     赤羽 一嘉君

同日

 辞任         補欠選任

  浮島 敏男君     林   潤君

  宮下 一郎君     谷畑  孝君

  赤羽 一嘉君     福島  豊君

    ―――――――――――――

三月十日

 雇用保険法及び船員保険法の一部を改正する法律案(細川律夫君外六名提出、衆法第五号)

 求職者等に対する能力開発の支援及び解雇等による離職者の医療保険に係る経済的負担の軽減のための緊急措置に関する法律案(大島敦君外七名提出、衆法第六号)

 内定取消しの規制等のための労働契約法の一部を改正する法律案(細川律夫君外七名提出、衆法第七号)

 雇用保険法等の一部を改正する法律案(内閣提出第五号)

同月十一日

 後期高齢者医療制度廃止法案の衆議院での速やかな審議と可決を求めることに関する請願(松本剛明君紹介)(第八六二号)

 同(笠井亮君紹介)(第九三一号)

 同(志位和夫君紹介)(第九三二号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第九三三号)

 同(山田正彦君紹介)(第九六一号)

 介護・福祉職場の人材確保、職員の待遇改善を求めることに関する請願(石川知裕君紹介)(第八六三号)

 同(石川知裕君紹介)(第八八一号)

 無認可保育所への公的助成等に関する請願(郡和子君紹介)(第八六四号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第八八六号)

 同(菊田真紀子君紹介)(第九三五号)

 後期高齢者医療制度の即時廃止を求めることに関する請願(郡和子君紹介)(第八八〇号)

 同(篠原孝君紹介)(第八九九号)

 パーキンソン病患者・家族の生活の質の向上を求めることに関する請願(福田昭夫君紹介)(第八八二号)

 同(宮下一郎君紹介)(第九七八号)

 後期高齢者医療制度の廃止など国民の暮らしを守ることに関する請願(塩川鉄也君紹介)(第八八三号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第八八四号)

 同(吉井英勝君紹介)(第八八五号)

 特別養護老人ホーム等介護福祉施設の介護報酬引き上げに関する請願(笠井亮君紹介)(第九二二号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第九二三号)

 同(志位和夫君紹介)(第九二四号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第九二五号)

 同(山田正彦君紹介)(第九六三号)

 労働者派遣法抜本改正を求めることに関する請願(高橋千鶴子君紹介)(第九二六号)

 介護労働者の処遇改善を初め介護保険制度の抜本的改善を求めることに関する請願(笠井亮君紹介)(第九二七号)

 同(菊田真紀子君紹介)(第九二八号)

 同(志位和夫君紹介)(第九二九号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第九三〇号)

 同(山田正彦君紹介)(第九六〇号)

 社会保障の充実を求めることに関する請願(吉井英勝君紹介)(第九三四号)

 国民健康保険の充実を求めることに関する請願(穀田恵二君紹介)(第九六二号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 雇用保険法等の一部を改正する法律案(内閣提出第五号)

 雇用保険法及び船員保険法の一部を改正する法律案(細川律夫君外六名提出、衆法第五号)

 求職者等に対する能力開発の支援及び解雇等による離職者の医療保険に係る経済的負担の軽減のための緊急措置に関する法律案(大島敦君外七名提出、衆法第六号)

 内定取消しの規制等のための労働契約法の一部を改正する法律案(細川律夫君外七名提出、衆法第七号)

 厚生労働関係の基本施策に関する件


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

田村委員長 これより会議を開きます。

 厚生労働関係の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として総務省人事・恩給局長村木裕隆君、行政評価局長関有一君、文部科学省大臣官房審議官戸谷一夫君、厚生労働省大臣官房総括審議官森山寛君、大臣官房技術総括審議官谷口隆君、大臣官房審議官中尾昭弘君、医政局長外口崇君、健康局長上田博三君、医薬食品局長高井康行君、職業安定局高齢・障害者雇用対策部長岡崎淳一君、職業能力開発局長草野隆彦君、雇用均等・児童家庭局長村木厚子君、社会・援護局長阿曽沼慎司君、社会・援護局障害保健福祉部長木倉敬之君、老健局長宮島俊彦君、社会保険庁総務部長薄井康紀君、農林水産省大臣官房審議官梅田勝君、経済産業省大臣官房審議官廣田恭一君、国土交通省大臣官房審議官内田要君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

田村委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

田村委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。藤村修君。

藤村委員 おはようございます。民主党の藤村修でございます。

 この国会最初の厚生労働委員会一般質疑ということで、大臣は、きょう、参議院とのかけ持ちで御苦労いただきますが、よろしくお願いいたします。

 きのう、本会議においても質問させていただいて、御答弁の姿を見ていると、ちょっとお元気がないかな、疲れているのかなと思いましたので、ぜひ元気できょうはやりたいと思います。それにしても、お昼もなかなか食べる時間が少ないと聞きましたので、本当に恐縮はしております。また、きょう、そういう大臣の時間の都合で私が一番バッターで質問をさせていただく、恐縮をしております。

 私自身も、この厚生労働委員に所属するのは事実上初めてでございまして、ですから、初心者、ニューフェースのつもりで厚生労働行政全般について、きょうは一般質疑ということでございますので、まずはお問い合わせをさせていただきたいと存じます。

 私、厚生労働というのは、旧厚生省と労働省がくっついたということで、その設置法というのを改めて見直しました。つまり、どんな仕事をするのか、任務なんですが、「国民生活の保障及び向上を図り、並びに経済の発展に寄与するため、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進」、ここまでは厚生ですよね。「並びに」というところからくっつくのが多分旧労働省、「労働条件その他の労働者の働く環境の整備及び職業の確保を図ることを任務とする。」こういう仕事であるというふうにイメージができるんです。

 先日も、舛添大臣にちょっとお目にかかったときには、本当に広い範囲ですねと、私自身も驚きを隠し得なかったんです。揺りかごから墓場までと言われますが、どうも最近の情勢からすれば、受精卵から遺骨収集までだ、さらに幅広いんじゃないかな、そんな気がいたしまして、大臣、先般、どこか地方で、これは余りでか過ぎて三つぐらいに分けた方がいいという発言をされたので、それだけちょっと最初に聞いておきたいんですが、そういう発言があったのかどうか、あるいはどういう趣旨であったのかということです。

舛添国務大臣 おはようございます。

 きょうは、参議院の予算委員会もあって、委員の先生方にいろいろな時間調整や何かで御迷惑をおかけして、御配慮賜っていることを感謝申し上げます。

 冒頭の御質問でございますが、藤村委員、これはずっと私がこの職についてからの持論でありまして、分野が広過ぎますから、やはり年金は年金で記録問題を含めて大変でございます。それから医療は、医師不足を含めて、これもやはり特に現場の視察なんかをやっていると本当に大変だと思います。それから、今まさに雇用の問題が非常に大きくなっています。ですから、本来、それぞれ一人一人の大臣、一人二十四時間しかありませんし、能力の問題もありますので、体力の問題ももちろんあります。ですから、そういう意味で、やはり一度職務の分担を考え直した方がいいんじゃないかということ。もちろん、大村副大臣、渡辺副大臣、それから政務官の皆さん方も一生懸命お仕事をやっていただいていますけれども、それにしても、例えば他省庁に比べて業務量が多過ぎないかというようなこともございます。

 そういう意味で、私はずっとそういう持論を持っていますので、それを繰り返し述べたということでございまして、将来的には、前回の橋本行革からたしか十年たったでしょうか、時代の要請に合わせて省庁再編成や霞が関の機構を不断に見直すということも必要じゃないかなというようなことを申し上げましたので、民主党の皆さん方も例えば歳入庁のような御発想でありますし、それぞれいい面があると思います。ですから、少しやはり議論をする必要があるかなということで、ああいうことを申し上げました。

藤村委員 私どもも、次の内閣ということで、私が厚生労働責任者を務めることになっておりますが、年金問題担当は長妻君がやっておりますし、やはり分担してやらないといけないなということはよくわかります。

 きょうはその厚生労働行政の一番イロハのイの字をお尋ねしたいんですが、先ほどの任務で「国民生活の保障及び向上」それから「経済の発展に寄与」、この辺がポイントであろうと思うんですね。そのために、公衆衛生や労働関係のこと、これは割に具体的にイメージできますが、ここで「社会福祉、社会保障」と書いてあるんですね。私の既存の概念は、社会保障という大きな概念の中に社会福祉なども含まれていると思ったんですが、これは憲法の文言をそのまま持ってきたということもあって「社会福祉、社会保障」とあるんですね。これは別個のものなのか、それともおおむね一つの概念なのか、その辺だけちょっと言葉の意味を教えてください。

舛添国務大臣 これは委員御承知のように、今おっしゃったように、やはり憲法二十五条からきていまして、その二項で「国は、すべての生活部面について、社会福祉」、それで点が打ってあって、「社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。」という文言をとって設置法の三条に使っているわけでありますけれども、学者によってもいろいろ定義がございますけれども、社会保障には、生活保護や障害者福祉など社会福祉に分類されるものももちろん入ります。とともに、医療保険とか年金、疾病対策なども含まれるので、おおむね社会保障という中に社会福祉が含まれている。大きな社会保障の中に社会福祉が含まれている、そういうふうに理解してよろしかろうかというふうに思っております。

藤村委員 事前レクで官僚の方は、社会保障という非常に大きな分野があって、おおむね社会福祉がその中に含まれるんだけれども、では漏れているのはと言うと、意外なことを聞いたんですが、生活協同組合、コープ、これはどうも社会保障ではなくて、漏れている部分で、社会福祉なんだと。言葉を厳密に定義していくとそういうことで、しかし、その他、社会保障の中に社会福祉は基本的に含まれる、こういう概念でよろしいということでございました。

 そこで、きょうは所信に対する一般ということですが、大臣所信をこの前お聞かせいただきまして、「社会保障制度をめぐる動き」という括弧書きの項目、最初の方ですが、国民の皆さんにとって社会保障に不安が生じているのも事実だという舛添大臣の御認識があったんですね。

 社会保障に今国民の中に不安が生じている、確かに感覚的には私もそう思います。では何が問題なのかというところだと思うんですね。そこで、社会保障を論じる過去の委員会、十年ぐらいさかのぼって調べまして、案外論じられていないですね。ちょっとだけ例を引きます。

 例えば、平成十二年の四月、このときは丹羽大臣でありましたが、委員の質問に答え、社会保障のあり方で、「自立した個人、つまり、自助を中心にしながら、個人がお互いに支え合い助け合って、共助、互助、あるいは公的な仕組みによります公助をどのように組み合わせて社会保障を構成していくか」、こんなお答えでありました。

 それから、議論は、次には平成十三年に、これは参議院の委員会でありまして、このときは坂口大臣でありました。「自己責任と自立ですか、何かそういう言葉を使いましたときに、果たしてそれだけの言葉でいいかというのがかなり議論になったように記憶をいたしております」「自己責任というのは、保険料なら保険料はちゃんと払っていく、」そういう責任だよというふうなお答えがありました。

 大分ニュアンスが多分違うんです。片や自助、自立にちょっと力点があったかもしれない。しかし、坂口大臣の場合は、今のケースは、いや、自己責任、自助、自立は大事だけれども、といっても、やはりそれは一つの責任を果たすことであってと。私は、どっちかというと、シンパシーはこっちにあるんです。

 それから、平成十七年五月に、これは衆議院の厚生労働委員会、このときは尾辻大臣でありました。「私は、あるところで社会保障とはと聞かれたとき、つい思わず口に出た言葉が、やはり最後まで尊厳を持って人間らしく人生を全うできる、そのことをしっかり社会としてお手伝いするのが社会保障じゃなかろうか」と、感覚的には非常にすっと心に落ちるような。

 今のは大臣三様でございます。

 舛添厚生労働大臣に、社会保障とはと聞かれたときに、ひとつお答えを願いたいと思います。

舛添国務大臣 例えば健康ということについて言うと、日々自分の、スポーツをするとか、日常生活に注意をする、栄養の摂取の仕方を注意する、こういうみずからの努力は、それは非常にいいと思います。ただ、それから先は、例えば介護保険にしても年金にしても医療保険にしても、保険でみんなが賄っているというのは、やはりその背景にあるのは、お互いに助け合う、共助。例えば年金だと、世代間の仕送りという感じで、昔は個人で親に仕送りをしていた、年金制度がないときは。これを今は、若い世代が御高齢の世代をお支えする、今度自分が年をとったら自分の子供たちが支えてくれる、こういうやはり共助の体制。私は、だから、保険料でやるという考え方はかなり共助ということが強いのかなというふうに思っております。

 しかしながら、それでも支えられないというときに、公助ということで生活保護のようなものが出てくる。だけれども、生活保護に行く前に、みずから努力する。しかし、その努力もだめで、しかし、これはNPOも、皆さんも含めてみんな地域社会で支える。それも手が届かないという状況になったときに、やはり税金でということになると思います。

 ですから、ここで、今後やはり議論を深めないといけないのは、介護保険導入のときもそうでしたけれども、常に保険料か税金かという議論がございます。そうすると、粗っぽく言うと、保険料というのは非常に共助のにおいが強い。税金というのは、ある意味で、例えば昔の老健制度のように、措置という形で、お上が恩恵で上げたよと。いや、そうじゃないんだ、権利として、私たちは保険料を払っているんだから権利だよ、こういうことのいい面もある。ただ、例えば消費税なんかも含めて税金で広く薄く面倒を見るというときに、そこにもちろん共助という考え方も入ると思いますので、具体的には、保険料か税金かというような話をするときにこれをもっと詰めないといけないと思いますので、最終的には、憲法二十五条の精神を生かすとすれば、我が国においてセーフティーネットをきちんと張りめぐらせていって、そして、もう本当に人間として尊厳のある、最低の文化的な健康的な生活を送る、こういうことを担保するのが私は国の責任であるというふうに思っております。

藤村委員 後半部分に同意いたします。

 私も、社会保障というときに、健康で文化的な生活をふだん送っている方は、別にふだんはそんなに感じないわけですね。すなわち、おっしゃった何か起きたときのセーフティーネット、これを国がきちんとさまざまな分野で張っていく。ですから、これはうんと昔から余りその概念は変わっていないように思います。

 昭和二十五年に社会保障制度審議会が内閣総理大臣に対して最初に行った勧告でも、ここで割にきちっと書いてあるなと思いました。ちょっと読ませていただきます。

 「社会保障制度とは、疾病、負傷、分娩、廃疾、死亡、老齢、失業多子その他困窮の原因に対し、保険的方法又は直接公の負担において経済保障の途を講じ、生活困窮に陥った者に対しては、国家扶助によって最低限度の生活を保障するとともに、公衆衛生及び社会福祉の向上を図り、もってすべての国民が文化的社会の成員たるに値する生活を営むことができるようにすること」と。非常にこれ、新憲法に基づく、昭和二十五年でありますから、でも、しっかり議論をされて、しっかり理念を打ち出していただいていて、ほぼ今もそれは踏襲できるというか、考え方に合意できると思います。

 今、大臣所信にもあるように、社会保障に不安が生じているのも事実で、セーフティーネットとしての安心感、信頼感を高めるためには云々と所信で述べられたように、やはりセーフティーネットに、幾つかあちらこちらにほころびが出てきているのも事実です。それがすなわち不安感ではないかと思うんですね。だから、我々、特に今厚生労働省が考えるところは、今の社会の中で、セーフティーネットがひょっとして穴があいていないだろうかとか、でも、社会の構造が変わってきたら新たなセーフティーネットが必要でないだろうかとか、こういうことがやはりこの委員会でも議論をされるべきと思いますので、きょうはその具体的な議論を一つだけちょっとしたいと思うんです。

 雇用の問題です。

 日本は、二十年以上前というのか、一九八六年以前ぐらい、これは後ほど言いますが、派遣法ができたというところなんです。そこを境に、それ以前は日本社会がおおむね終身雇用、それから年功序列型賃金、これは制度でも法律でもありません、むしろ文化、伝統と言った方がいいのかもしれません。しかし、この考え方が、むしろ健やかで安心の生活を保障してきた面が非常に大きいと思います。

 そういう意味で、ある意味では、法律でも制度でもないけれども、日本の文化、伝統の中の一つのセーフティーネットがちゃんとあって、非常に安心感があった。そういうところが、一九八六年からいわゆる派遣労働というものが、これは仕事の仕方の問題ですが、解禁された。九九年には業種が相当ふえた。二〇〇四年には製造業まで派遣が拡大された。今や、派遣労働なしには労働が考えられない、雇用労働が考えられない時代になってきている。たった二十年余りの間にここが大きく変わっているわけですね。それまでは余り、大不況によって派遣労働の雇用どめとか派遣切りなどが言われたこともなかったわけですから。つまり、今新しい事態に遭遇しているなと受けとめるべきであろうと思います。

 すなわち、終身雇用、年功序列のセーフティーネットが縮小し、もう今、三人に一人以上ですからね、派遣労働者、非正規雇用というのは。だから、そこに新たな、きょうまで制度でも法律でもなかったけれども、終身雇用がある程度担保していたセーフティーネットにかわる新たなセーフティーネットの必要があると私は考えているんですが、大臣の御認識を伺いたいと思います。

舛添国務大臣 私は一九七八年に日本に戻ってきましたけれども、それまでヨーロッパの大学で仕事をしていたときに、日本的経営とは何ですかと外国人の学生に教えるときに、三本柱、その二本は今委員がおっしゃった年功序列と終身雇用、それと企業内の組合。つまり、セーフティーネットという観点からすると、その三本柱、ちょっと労働組合の問題は置いておいて、終身雇用、年功序列ということとともに、企業がフリンジベネフィットとしてさまざまな福祉的なものを提供していた、例えば保養施設であるとか。

 私は北九州の八幡というところの生まれで、今は新日鉄になりますけれども、八幡製鉄所というところの城下町なので、すべて、ここの社員であれば、病気になったら病院も製鉄病院というのがあります。それから、スーパーマーケットも製鉄の、購買会という名前でありましたけれども、もう何もかも企業が面倒を見る。夏の海に行くときは、海の家も会社のものだ。

 そういうことで、ある意味で企業がセーフティーネットを張っていたのが、今委員がおっしゃったように八〇年代以前だと思います。

 ところが、その後さま変わりした。そしてそれは、国際競争にさらされたこともあって、そういうフリンジベネフィット的なものをそぎ落としていかないと企業がやっていけないということで、だから、事実上のセーフティーネットを相当頑張って張っていた企業の役割が縮小し、それだけに、中央、地方を問わず、政府がセーフティーネットを張らなければならない時代が来たんだ、この認識をしっかり持つかどうかということが構造改革をおやりになる方にも実は必要なので、それは私はずっと主張してきたことであります。

 そういう中で、まさに派遣労働というのはそういうことの一つの典型でありますので、今回の雇用保険のネットワークにしても、加入期間を一年から六カ月、それから給付の日数を延ばす、さまざまな手だてをやっていますけれども、まさに私は、委員と全くそこの認識については共有しておりまして、今こそ政府の出番であるというふうに思っております。

藤村委員 認識が共有できて、本当にいいことだと思います。

 きのう私も本会議で数字を挙げて申しましたように、労働人口の三人に一人強ですか、もう千七百万人余が今非正規雇用であります。今日までは、大半がそうした企業による、あるいは社会的で文化的な習慣による終身雇用などの制度でネットがあって、そこからもしはみ出て、会社がつぶれた、倒産した、首になるといったときに、雇用保険制度というのが非常に大きな役割を果たしていた。

 ところが、今やその三分の一を超える労働者の、かつそのうちの一千万人ぐらいが雇用保険に入っていないというか、雇用保険のネットの外にいる人たちなんですよね。今回政府が提出された雇用保険法一部改正も、それを何とか少し救いたいと。きのう数字で挙げて言いましたとおり、今回の政府案で言うと百四十八万人ぐらいですか、そこから救える。

 ただ、しかし一千万ですから、あるいは非正規一千七百万のうちの半分はまだネットの外なんですよね。ですから、そのネットからはみ出た、あるいは雇用保険の枠外にいる人たちがそんなに、一千万人近くもいるという現状を見るときに、これは新たなネットを張るべきという議論が当然出てきて、私どもの提案は、求職者支援法という第二のセーフティーネットということになったわけです。

 それは、先般大臣にも御苦労いただいた日比谷における年越し派遣村ですか、あそこで残った三百人ぐらいの方のうち、結果二百七十何人が生活保護へ行っちゃったんですよね。つまり、今まで雇用保険の傘にいなかった人たちが、失業した途端に生活保護という最後のネットとも言えるここへ落ち込む前に、その間に雇用保険、第二のセーフティーネット、そして生活保護と、このぐらいのネットを張りめぐらさないといけない、私たちはそう考えるわけですが、この考え方に対して同意いただけるかどうか。

舛添国務大臣 セーフティーネットにほころびが生じたところ、今、派遣の問題がありましたけれども、これをさまざまな手で繕っていかないといけない、ネットワークを広げていかないといけない、これはもう全く同感でございます。

 しからば、どういう手段でやるか。例えば、一年以上を六カ月以上ということで加入期間を雇用保険について短縮する、これを先ほど一千万の中身の話で言うと、例えば、学生アルバイトさんがおられたり二十時間以内の方がおられたり、さまざまな形態があります。

 それで、常に二つの問題を考えながらいいバランスを、これはもう国会で御審議していただく必要があると思いますが、一つは、やはりモラルハザードやその他の問題点との絡みをどうするか。例えば一月半入っていればいいんですよ、それで一月半入ってすぐ、仕事をしてまたやめてというような形をやはり避けた方がいいと思いますので、できるだけ腰を落ちつけて仕事の場があった方がいい、そういうこととの配慮をどうするか。それと、後は財源の調達の問題との絡みをどうするか。

 こういうことと、今委員がおっしゃった第二のセーフティーネットとのバランスを考えた上で、それはもう、国会は国民の代表から構成されているわけですから、そこでこういうところがいいコンセンサスだろうというところであればいいと思いますので、私の立場は、今言ったモラルハザードはこういうところがあるよということを御指摘し、また財源の問題についても御指摘をするということでございます。

藤村委員 雇用保険法一部改正については、きょうの最後に趣旨説明がされて、次の機会にまた審議するので、そこはそこでまた中身を詰めてまいりますが、モラルハザードという言葉があったので、ちょっとだけ私の考えを申し上げます。

 では、生活保護にモラルハザードはないか。これは大変厳しい要件ですから、ないんだと思っていたんですね。しかし、いわゆる不適正受給というのが大体一・五%ぐらいは常にあるわけです。不適正なのはちゃんと、それは返してくださいとか、そういう措置で対応する。何事をやるにしても一〇〇%はないので、つまりモラルハザードと言うときにどの範囲が許容か。

 私たちも、今提案している求職者支援法という新しい第二のセーフティーネットについては、一応二十万人ぐらいの規模で考えていますが、二、三千人のそういう不届き者がいるということは、それは想定し、もちろんそれに対してきちっと対処する、法律的には行う、こういうことだと思うんですね。この大きな非常事態とも言える雇用、失業の危機には、やはり大きな考え方で、つまり、厚生労働行政の本分に返れば、先ほど来議論のあったとおり、きちっとしたセーフティーネットを準備する、こういうことだという考え方に基づいて、今回、求職者支援法というものを提出させていただいた次第であります。

 さて、ちょっと具体的な案件で御質問したいと思います。全般的な話はここまでにさせていただきます。

 一昨年の十二月でしたか、福田総理のときに、例のウイルス性のC型肝炎の問題、これを薬害肝炎というのは国の責任と認め、また昨年一月、官邸において、当時福田首相が肝炎の医療費助成について非常に前向きな提案をされ、それが今年度、昨年四月からの肝炎の医療費助成ということで、肝炎治療特別促進事業、これは法的事業ではなしに予算措置ということなんでしょうが、それをとられたことは大変意味のある大きな一歩であったと思います。

 ただ、昨年四月からの肝炎治療特別促進事業について、インターフェロン治療の助成をするわけですが、この実績がどうも芳しくないというふうに聞いているので、これはちょっと事務方から具体的に報告をいただきたいと思います。

 また、肝炎患者に対するインターフェロン治療の現状に関する調査というものも何かあわせて最近報告をされたので、これらについてちょっとまとめて手短に御報告を願いたいと思います。

上田政府参考人 昨年四月に開始しました医療費助成制度については、都道府県別の四月から九月の申請者数などの実績を取りまとめ、先般公表いたしました。

 その実績としては、全国合計で、四月が五千三百九十八件、五月が五千九百四十五件、六月が六千七百二件、七月は四千七百四十六件、八月が三千六百三十一件、九月は三千百七十一件で、開始後六カ月間の合計は二万九千五百九十三件となっております。

 また、御指摘の調査の件でございますが、昨年十月から十二月にかけて、長崎医療センターを中心に、肝炎を診療されている医療機関に受診されている患者さん方に調査を行った結果でございますが、患者さんがインターフェロン治療を選択しなかった主な理由として、まず一番目は、忙しく、入院や通院ができないからというのが三五%、二番目に、副作用が心配だからというのが二八%となっている状況でございます。

藤村委員 この平成二十年度、去年の四月からの、予算措置としては一応十万人規模の医療費助成ができるように措置された。今の御報告のとおり、半期、九月までですから半年で二万六千人余り。そうすると、二倍掛けたら五万二、三千人ぐらいですか。これは、その助成制度をせっかく設けた意味があるのかないのか。つまり、その以前の年も治療されているのは五万人ぐらいと聞いておりますので、何かせっかくの医療費助成、いい制度をつくり、だからより促進される、政府もそうして十万人規模で対応されたわけですが、これはどこにどういう原因があったのか、これもやや細部にわたる案件なので、事務方からちょっと答弁しておいてもらいましょうか。

上田政府参考人 インターフェロン医療費助成の申請者数が現時点において目標十万人を下回っている原因につきましてでございますが、開始初年度ということで周知不足の影響のほか、多くの方々が御自身が肝炎患者であると知らないこと、また、知っておられても治療の必要性について認識が薄いことから通院をされていないこと、また、通院をされていても地域の診療体制の整備のおくれにより適切な医療機関にかかることができていないこと、このようなことが考えられております。

 こういう考えられる理由に対しまして、私どもといたしましては、肝炎ウイルス検査の勧奨、肝炎についての正しい知識の普及、拠点病院の早期指定促進を通じた地域診療体制の整備などを進めておりますが、現在審議中の平成二十一年度予算案におきましても、インターフェロン医療費助成について今年度と同額の百二十九億円を計上したのを初め、肝炎総合対策として計二百五億円を計上しているところでございます。

藤村委員 大臣、どうもせっかくの予算がこの三月末を経て五十億円ぐらい残ってくるんじゃないか。これはもったいないというよりは、実はそれを受けて治療ができたら多分万という数の人たちのC型肝炎、これは今治療をきちっとすればもう七、八割方完治するということですから、それがないがしろにされ、ほうりっ放しにされているというこの現状があるんですね。

 今し方、なぜそれほど進まなかったのか、利用が伸びなかったのかの原因についてもおっしゃいましたが、それだけなのか。その最近の調査、発表されたのはさっきちょっと報告いただきましたが、やはり助成の仕方がちょっと中途半端じゃないか。自己負担を求め、残りを助成するんですね。収入に応じてですが、一万円、三万円、五万円ですか、これを毎月、多い人は七十二週ぐらい毎週毎週行くわけですね。ですから、毎月七、八万かかる。

 そこで、一万円負担ぐらいなら、あるいはそれ以下なら何とかという、つまり経済的な問題はなかったのかなということを、これは調査の結果の経済部分だけちょっとひとつ報告しておいてください。

上田政府参考人 先ほど申し上げましたように、治療をためらう理由の一つとして経済的な理由というのは非常に少なくて、一〇%程度以下だったというふうに聞いております。

藤村委員 一〇%は非常に少ないんですか。ちょっと言葉に今とげがあったように。一割の方が経済的な負担が苦しくて受けられなかった、これは人一人一人の命の問題ですから、一〇%が少ないとはとても言えない。

 この報告書によれば、順に、現状調査でウイルス性の慢性肝炎の患者を調べて、総数は八百九十五人で、受けたことがない、これが三百三十七人で、インターフェロン治療を勧められたことがある、勧められた人は二百九人。だんだん絞っていくと、インターフェロン治療を勧められたものの断ったというのが百三十人で、この調査によれば、このうちの五%ぐらいの方がやはり第一の理由に経済的理由を挙げられているんですね。やはり負担がなかなか大変だと。

 でも、命の問題ですから、負担が大変だと言ってみても、これは治療を本当に一年なら一年ばちっとしたら、今や相当完治率は高いんですね。それは、もししなかったら、その後に肝硬変、そして肝がんを起こし、逆に言えば、そこにまた医療費がより高くかかってくるわけで、本当にいいときにきちっと治療してもらうことが絶対に必要なんです。

 それで、この調査自体は、私、信頼性のある立派な調査だと思います。昨年の十月十日から十二月八日の間に全国の二十七の国立病院機構病院とそれから国立国際医療センター、合わせ二十八で調査をされ、肝疾患患者のうちインターフェロンの保険適用のあるB型及びC型慢性肝炎の方々を対象にしてアンケートをされた、これはこれで意味のある調査だと思います。

 ただ、昨年の、これは多分十月だと思うんですが、今の薬害肝炎事件の検証及び再発防止策のための医薬品行政のあり方検討会というものを厚生労働省の中でおつくりになり、ここで、この第六回の会合では、薬害肝炎の被害実態ということで、薬害肝炎の全国原告団、弁護団が相当詳しい調査をされた結果が報告されましたね。

 その内容によれば、これは薬害肝炎全国原告団の団員を対象に薬害肝炎の被害実態の調査を行った。調査対象者数は九百一、回答者数は七百五十五ですから、規模として似ています。片や、最近の報告された調査は大きな国立病院機構に限定されていました。こっちの被害者の方はむしろ全国ばらばらで、さまざまな形態でしょうから、そこの母集団が少し違うと言えるとは思います。

 ここで報告されているたくさんの、これは非常に精密な、綿密な報告を政府が主催する検討会で報告されて、インターフェロン治療を行っていない理由で、もちろん仕事ができないあるいは副作用が挙がっていますが、やはりその一に経済的負担というのがここでは出てきています。やはり、負担できる治療費、一カ月一万円はきつい、それ以下に何とかならないかという切なる声が過半数を占めている調査も出ているわけですね。

 ですから、私、最近の国立病院機構だけの調査を信用しないわけじゃなくて、これも重要な調査結果。しかし、昨年十月に政府の検討委員会で報告された調査も重要な調査。

 どうも、先日舛添大臣からちょっと聞いた言葉では、いや、経済的な面はそんなにないようだというふうに受けとめていらっしゃったら困るので、そうじゃないと。今の助成、せっかく助成するんですから、本当に届く助成をしてもらいたいわけですね。予算もとってあるわけです。そのとってある予算を今年度、何と五十億円かそれ以上残して、これは国庫返納ですよね、日本の年度予算でいえば。ですから、それはちょっとやはりどこかに欠陥があるのではないか。もちろん幾つかの理由がある中に。しかし、もう少しこれは公費で助成してあげたらどうか。事実できるんですから、予算の枠内で。

 だから、これはちょっと考えようがあると思うんですが、舛添厚生労働大臣の御見解を伺いたいと思います。

舛添国務大臣 肝炎の検証検討委員会、これは肝炎の原告団の方にもパーマネントメンバーとして入っていただいておりますし、私も毎回出ていますから、そういう報告もいただいています。この治療を受けないさまざまな原因がありまして、これはそれぞれ一つ一つ問題解決しないといけない。

 肝炎の原告団の皆さん方、弁護団の皆さん方のこの資料を見ましても、なぜ受けないんだというのは、やはり一番多いのが、副作用が強いから。皆さんに、お受けになっている方に聞くと、これは本当につらいということなんで、新たな、何とか副作用を軽減する治療ができないか、これは予算措置で今研究をやらせております。

 それからもう一つは、時間がない。相当時間がかかって、事前の準備があり、それで、それはやはり勤めている方々は経営者の皆さんの御理解をいただかないと行けないので、私は直接経団連に言って、ぜひひとつ、必要だったらそういう措置をきちんと配慮をやっていただきたいということは既に申し上げています。これはこれで今後とも努力をしていきたい。

 それから、ああ、私でも行けたんですかと。この制度を利用して治療をみんな受けられるわけですから、少しその周知徹底が足りない。これはもう少し努力をして周知徹底をするし、それから、それぞれの病院に対しても、ぜひこれは勧めてくださいということをやらぬといかぬと思っています。

 それで、今のお金の問題ですけれども、これは十万人目標で頑張って予算を獲得して、来年度もこういうふうにしてあります。

 今言ったような諸施策をやって、もちろん、先ほどの患者の方々、弁護団、原告団の方々を見ると、それは一万円以内なら負担できるよという方が多くおられるわけですから、そういう声も聞いて、今後どうするか。これはまず国会の中で、これは与野党を超えてこの肝炎の皆さんをお救いしようと、山井委員含めて、皆さんの努力が結実し、これは衆参両方の厚生労働委員会の理事さんたちが大変お骨折りいただいて、その支えがあってあそこまで持っていった話でございますので、このことについては、ぜひ党派を超えて御議論いただいて、私どもに何ができるかということは検討させていただきたいと思います。

藤村委員 そのために、私どもも先日法律を、これは野党全党で出しまして、今与党の皆さんに呼びかけて、まさに党派を超えて、本当に人の命にかかわる、人道というよりは人命の問題ですから、やっていきたいと思います。

 ですから、最後一言だけちょっと苦言を呈したいのは、この昨年の十月の薬害肝炎事件の検証及び再発防止等の医薬品行政のあり方検討委員会で、分厚な、今大臣も参考にされた薬害肝炎の被害実態調査が提出された。厚生労働省のホームページに、もちろんその幾つかの資料がある。これだけ抜け落ちていたんですよね。ちょっと不思議なんです。ですから、これはちょっとミスがあったとかそういうことかもしれませんが、大事なものを隠すとよく言われる、年金問題がそうでしたが、そういうことのないように、これは本当に命が即かかってきますから、今後ぜひ注意をしていただきたいと最後に苦言を申し上げまして、質問を終わらせていただきます。

 本日はありがとうございました。

田村委員長 次に、福岡資麿君。

福岡委員 自由民主党の福岡資麿と申します。

 本日は、質問の機会をいただきましたことを、まず心から感謝を申し上げさせていただきます。

 昨今の景気低迷を受けて、生活に対しての不安が高まっていることを考えると、雇用やセーフティーネット、社会保障を扱う厚生労働分野の重要性はますます高まっているというふうに思います。

 麻生政権でも、さまざまな景気浮揚策であったり生活対策を講じているわけでありますが、三月四日には二次補正が再議決をされたわけであります。二次補正においては、どちらかというと定額給付金ばかりがクローズアップされるわけでありますけれども、それ以外にも、高速道路料金の引き下げであったり、また妊婦健診の無償化など、生活に密着した対策もたくさん盛り込まれているわけであります。

 特に若い女性の方々とお話をしますと、妊婦健診の公費負担の拡充、これを望む声というのが非常に大きいということを実感するわけでありますが、しかし一方で、その実施について、本当にしっかりやっていただけるのかどうかと不安視する声が上がっておりますので、まず冒頭、そのことについてお聞きをさせていただきたいというふうに思います。

 妊婦健診というのは市町村の自治事務になるわけであります。これまでも、大体、十四回が必要とされるうちの五回分は公費負担で賄うということでされていたわけでありますけれども、昨年の四月時点の調査において、全国千八百ある自治体のうち、約一割弱の百七十二の自治体で公費負担が五回に満たないという状況があったわけであります。国としては、地方財政措置で必要な経費は渡しているんだということを言っておられますけれども、市町村も多くは財政が厳しいわけでありますし、また昨今の景気低迷を受けて、さらに税収不足に陥っている中、ほかの用途にも使える交付税での措置の場合は、しっかりと妊婦健診を実施していただけるかどうかというところが一つ不透明になっているわけであります。

 その中で、まず一つ大きな声としてあるのは、この十四回の健診についてはどこでも使える制度にしてほしいという声が関係者からたくさん上がってきています。今までも、例えば嫁ぎ先から自分の親元に戻ってきて出産をする里帰り出産とかの場合の妊婦健診については、これまでの五回の公費負担においても、調査によると三六・一%の自治体で、そういったふるさとに戻っての健診というのは公費負担で賄われないというような状況が起こっていたわけであります。

 それでもこれまでは、全部で十四回健診を受ける中で、大体ふるさとに戻るのは臨月であったり出産が間近になったケースが多うございますから、居住地の自治体に住んでいるうちに五回分の無料の部分を使えるということがあったわけでありますけれども、しかしながら、今後、十四回を公費負担ですることになってきた場合に、ふるさと出産が認められないというようなことになった場合においては大変問題が生じてくるケースが出てくることが想定されるわけでして、まず、この点についてどういったことを考えておられるのか、取り組みについてお聞きしたいと思います。

村木(厚)政府参考人 お答え申し上げます。

 委員からもお話がありましたとおり、妊婦健診につきましては、平成二十年度の第二次補正予算におきまして、費用の心配をしないで妊娠、出産ができるようにするために、標準的な健診項目について必要な回数、これは十四回を考えておりますが、妊婦健診を受けられるように、平成二十二年度までの間、地方財政措置されていない九回分につきまして、国庫補助と地方財政措置により二分の一ずつを支援することにしたところでございます。

 御指摘のように、里帰り出産につきましては、これまでも、里帰り先で妊婦健診の受診について公費負担が受けられるかどうかについては、市町村についてかなりばらつきがございました。こうしたことから、厚生労働省といたしましては、里帰り出産での公費負担の充実も含めまして、今回財政措置を強化することにあわせて一層自治体と連携を図って、適切な妊婦健診が行われるように努力をしていきたいと思っております。

 特に、この里帰りにつきましては、今回の国庫補助におきましては、里帰り出産に対する公費負担を実施しない市町村が行う妊婦健診については交付の対象としないという措置を講じたところでございまして、これらの手段を使って、自治体としっかり連携をとってやっていきたいと考えているところでございます。

福岡委員 ありがとうございます。

 里帰り先での負担をしない自治体については国庫補助の対象としないということは評価できるわけでありますが、きょう、参考資料としてこの概念図をお示しさせていただいておりますが、ベースになる五回部分については従来どおりの扱いでありまして、ここの部分については、従来の扱いどおり適用されないというところが一つ問題となってくるであろうというふうに思います。

 もう一つは、うちの地元とかでも、そういった受診券を今までは五回分配って、今後は十四回分配って、その受診券を検査のときに持っていけば、それで無料で受診できる。その受診券を、市であったり市から委託されたところが回収に来たときにお金と引きかえでやるというようなケースが多いということでございます。里帰り出産のときに、今のケースで聞くと、結局償還払い、要は、先にお金を立てかえていただいて、後で自分の居住する自治体に請求をするというケースを適用しているケースも多々あるというふうに承っております。いろいろ出産一時金のときも議論されましたけれども、一時立てかえにしても、出費が出ないような工夫をぜひしていただきたいということを申し上げさせていただきたいというふうに思います。

 また、ここで一つ問題意識を持っていますのは、自治体によってかなり基準がばらばらなんですね。今回、回数は五回から十四回でやってくれということで自治体に言われていますので、回数はほぼカバーされているんですが、実は、いつから実施するかとか、自治体によってどこまで公費でカバーできるかという部分は大分違うというふうに承っております。

 その辺、十四回に移行した後、どこまで各自治体によってカバーしているかという部分を把握されているかということについてお聞きしたいと思います。

村木(厚)政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、妊婦健診の実施主体は市町村でございますので、その内容や単価につきましては、このたびの国庫補助の措置を受けて各市町村が判断をして設定するということになります。しかしながら、大きな格差があってはならないというふうに思っておりますので、厚生労働省からも、標準的な健康診査の実施時期、内容については各自治体にお示しをしたところでございまして、これをできるだけ公費でやっていただきたいというお願いをしているところでございます。

 実際にこれからどういう形で自治体が行うかにつきましては、今のタイミングでございますと、ちょうど各市町村におきまして妊婦健診の公費負担の拡充を含めた予算案の審議を行っているような段階であろうかと思いますので、まだこの時点で、各自治体の健診、公費負担の内容につきましては厚生労働省として把握はしていないところでございます。

 しかしながら、いずれにしましても、妊婦健診の公費負担につきましては、回数だけではなくて内容が非常に重要であるというふうに考えておりますので、今後、各自治体の実態把握を行いまして、必要に応じて各市町村に対して強く働きかけをしてまいりたいと考えているところでございます。

福岡委員 まだ各自治体で予算審議等をやっているから実態は把握していないという話でございましたが、これは非常に大切な話だと思っています。

 きのう、実は地元の懇意にしている産婦人科の先生に、九州だけしかわかりませんでしたけれども、実態を聞きました。これは各市町村ごとでありますが、大体県単位で統一基準を、産婦人科医会と県と市町村とが入って決めているということでございますけれども、今回、かなり幅があるのでびっくりしたんですね。

 例えば、九州において一番高い公費負担をするのは、鹿児島県が十四回で九万四千三百円ということでありますけれども、九州で一番公費負担が低いところの大分県だと七万二千七百四十円ということであります。これは、厚労省が示している必要なことを廉価でやってくれるということでちゃんと握れていれば問題ないわけでありますけれども、実際、話を聞いてみますと、例えば佐賀県は、九州の中では三番目に高い九万二千五百円という数字なんですけれども、それでも厚労省が示したフルの検査をやるとすると十一万強かかると。その九万幾らでやるためには、厚労省が示している、例えばエコー検査は本来四回必要なのに、二回分しかその九万四千円の中に入っていないというような話であったりとか、また細胞診の検査とかもこの中に入っていないんだと。

 これは聞いた話なので確認はしていませんが、例えば大分県の七万二千七百四十円というのは、基本健診だけで大体一回五千円ぐらいかかりますから、基本的な健診の十四回分はカバーしているけれども、プラスアルファで例えばエコー検査をしたり、細胞診をやったり、B群溶血性連鎖球菌の検査であったり、そういった個別の、厚労省が示している検査はほとんど入っていないんだと。要は、もともとの契約というか握った中には入っていないんだという話でありまして、結局、では運用上どうしますかというと、そういった特定の医学検査をやる場合においては、窓口で実費をその分いただかないとやっていけないんだという話になっているわけなんですね。

 そうしたら、あれだけ広報とかでも無償化するという話をしていたのに、結局、窓口へ行ったらお金を取られちゃったじゃないですかということになりかねないわけであります。こういった点について、やはり約束したからには自治体に対してしっかりとやってもらうようにしていかなければいけないわけでございまして、その点について、どういうふうに強く各自治体に働きかけていかれるおつもりなのかというところについて御見解をお聞きしたいと思います。

村木(厚)政府参考人 先ほど申し上げましたとおり、内容のところについてはまだ実態の把握ができておりません。

 回数につきましては、十四回やるといった意向を示している自治体が圧倒的でございますので、回数の方はもうかなりクリアができたということで、今度は内容のところをしっかり実態把握をしまして、私どもお示しをしている基準というのがございます。先ほど幾つか例が出ましたが、超音波の検査であれば四回、連鎖球菌の検査が一回というようなことで我々、標準のものというのをお示ししてございますので、できるだけそれに各自治体が到達していただけるように、これはしっかり自治体にお願いをしていきたいというふうに考えております。

福岡委員 これはぜひとも強く言っていただかなければいけませんし、また、自治体が非常に抑制に走るというケースについては、一つは財政的に厳しいということもあるんですが、一つは、二年間の時限措置みたいな感じで打ち出されているということがあります。やはり自治体も、二年後に急にやめるということは簡単にできないことを考えると、今の時点から抑制をしておこうという方にどうしても行ってしまうということを考えると、これはいろいろ財政的な問題もありますけれども、今後、しっかりやっていくんだということをお示しいただくことが必要ではないかというふうに思っておりますので、ぜひ、その点は強く申し上げさせていただきたいというふうに思います。

 話題をかえさせていただきますが、次に、障害福祉の分野についてお聞きをさせていただきたいと思います。

 私も障害福祉をライフワークの一つとしているわけでありますが、自立支援法の施行で、理念はいいという声はずっとあったんですけれども、いろいろな事業所も、実際に障害者の方も生活が苦しくなったという声が当初はあったんです。その後、いろいろ軽減措置等を講じていただいて大分改善されてきたわけでありますけれども、今回、二月十二日、与党の取りまとめを受けて、応能負担に完全に切りかえるということも含めて、抜本改正に向けた一つの道筋ができたわけであります。

 その早期の実施を望む声というのが地元からもたくさん上がってきているわけですけれども、やはりこれは大幅な改正ですから、いろいろ慎重に議論をしなきゃいけないこともたくさんあって、いろいろな閣議決定もずれ込んでいるというような話も聞きます。ただ一方で、もう一刻も早くやってほしい、解散前六カ月になりましたし、国会日程も非常に逼迫する中で、何とか早期にこれに道筋をつけてほしいという多くの声をいただいていますので、その声に対しての、副大臣から意気込みについてお聞きしたいと思います。

大村副大臣 障害者福祉施策についての御質問をいただきました。

 その前に、先ほどの妊婦健診の実効性の確保につきましては、大変いい御質問、御指摘をいただきましたので、しっかりとこれはやっていきたいということをまず申し上げておきたいと思います。

 その上で、障害者自立支援法につきまして御質問をいただきました。福岡委員は、先般行われました自民党の障害者福祉委員会でも積極的に御発言をいただき、常日ごろ、この障害者福祉施策について、御地元でも、そしてまた党の方でもいつもいつも御支援をいただきまして、ありがとうございます。また、しっかりと進めていきたいと思います。

 そして、障害者自立支援法につきましては、法施行後三年の見直しに向けまして、社会保障審議会の障害者部会におきまして、昨年十二月に、相談支援でありますとか障害児支援、そして利用者負担など制度全般にわたりまして、その見直しにつきましての報告書がまとめられたところでございます。また、現在、与党の障害者自立支援に関するプロジェクトチームにおきましても、自立支援法の抜本見直しの基本方針が示されて、その改正につきまして御論議をいただいているところでございます。

 したがいまして、私どもは、論点、方向性は大体出尽くしてきたというふうに思っておりますし、煮詰まってきたというふうに思っておりますので、今国会に自立支援法の改正法案をできるだけ早く提出し、そしてこの委員会でも十分御審議をいただいて、早期に成立していただきますように努力をしていきたいというふうに思っております。

福岡委員 力強いお言葉をいただきまして、ありがとうございました。

 法改正とは直接絡まない話ですが、今回、報酬単価の大幅な引き上げということが実施をされています。五・一%という大変大きな引き上げ幅でございまして、これまで厳しい運営を迫られている事業所等から考えても、大変評価できることだというふうに思います。また、今回、国庫負担の基準も引き上げられるということになりまして、特に長時間のサービスとかを必要とする方などについては、公費負担の枠が広がるということについてはとてもありがたいお話だというふうに思っています。

 一方で、先ほどの市町村の財政格差によるところも大きいんですけれども、当然、国庫負担等の引き上げはあったとしても、四分の一は県が負担して四分の一は市町村が負担するわけですから、これまでも、財政が弱い市町村についてはなるべく支給を抑制しようみたいな、ばねが働いてしまうようなところもあったわけなんですけれども、今後、単価も上がった、国庫負担基準も上がったということになったときに、それこそ、財政的に潤っていて理解があるところとそうじゃないところの、抑制を働かせようとするところの差がますます生じてしまうんじゃないかというような懸念というのもあるわけでございまして、そういったあたりをどのようにしっかり担保していくかということについてお伺いをさせていただきたいと思います。

大村副大臣 委員御指摘のように、この四月から、障害福祉サービスの報酬改定で単価の引き上げということを実施させていただきます。この報酬改定が五・一%のプラス改定ということも委員御指摘のとおりでございまして、それを着実に実施していきたいというふうに思っております。

 また、これも委員御指摘のように、国庫負担基準、いわゆる市町村に対する補助の単価を決める国庫負担基準の引き上げも、今回、これにあわせて実施をいたしております。したがって、給付費に係る市町村の財政負担の増加が見込まれるわけでございますが、これにつきましては、まず、必要な地方財政措置が講じられているわけでございます。

 そしてまた、国庫負担基準につきましては、個々の障害者に対する支給量の上限ではありませんので、従来より市町村に対しまして、障害者が必要とする支給量の決定を行うよう要請してきているところでございますが、今回、この国庫負担基準を引き上げるということによりまして、今まで若干上乗せをしていると市町村が超過負担になっていた分も、その分引き上がりますので、必要な支給量を決定しやすくなるというふうに思っております。

 また、今般の補正予算によりまして、来年度から、国庫負担基準を超えてサービスを支給する市町村に対しまして、都道府県で造成された基金を活用するなどして、国としても財政支援の充実を図るということにしたところでございます。

 いずれにいたしましても、今後とも、個々の障害者に対する支給決定が適切に行われるよう、こうした市町村に対して、できるだけ市町村間でばらつきがないように、国としても財政的な支援をしっかりとやっていきたい、そのことを御答弁させていただきたいと思います。

福岡委員 力強い御答弁をいただきましたが、これは生のお話を障害者の方からお聞きする中で、やはり市町村によっては、意図的にとは言わないまでも、なるべく給付を抑制しようとする傾向がある自治体もあるやに聞いていますので、その辺は実態も今後しっかりと見ていっていただくことをお願いさせていただきたいというふうに思います。

 障害者に絡んだ施策でございまして、きょう実は国交省、経産省にもお越しいただいていますが、このマーク、皆様方、ごらんになられた方は多いと思います。(パネルを示す)

 シンボルマークと一般的に言われているわけですけれども、例えば一定規模以上の施設とかへ行ったら、入り口に近いところの駐車場にこのマークがつけられた駐車スペースがあるところをごらんになられた方もたくさんいらっしゃると思います。車いすの方とかもおりられるように、普通は二メートル幅ぐらいの駐車スペースが、大体三・五メートル幅ぐらい設けてあって、そういった移動が容易でない方にとめていただけるようなスペースとして設けておられるものでございます。

 これは国交省が管轄していますけれども、高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律、俗に言うバリアフリー新法等でもそういった規定がされているわけであります。

 これは、設置についての規定はあるんですが、実はその運用についての規定というのが、しっかりしたものが定められていませんで、実際地元でよく聞く声は、お買い物に行ったのはいいんだけれども、そこの入り口に近いところの駐車場が全部埋まっている。では、そこを障害者の方が使っているかというと、普通の健常者の方がたくさん占拠して使っている。ただ、それは定めたルールもないから、とめたことに対して何も言えないんだというような運用の話なわけでございまして、それはさすがに問題があるんじゃないかというようなことを思っています。

 これは私の地元の佐賀県の取り組みなんですけれども、パーキングパーミット制度というのを導入しておりまして、御承知の方も多いと思いますけれども、妊産婦とか、けがをした方とか、高齢者で移動が容易でない方とか、もしくは障害者以外にも難病の方で移動が容易でない方とかが、県がそういったことを認めた方に対してパスを支給して、それを車の一部に掲示しておいていただければ、そういうところに堂々ととめていただける。

 これは健常者の方がとめていらっしゃるという問題もあるんですが、一方で、内部障害とかで、一見普通に見えるんですけれども実は物すごく移動が容易じゃない方とかは、今まで、そこにとめることに非常に後ろめたい、白い目で見られたりというようなことがあったわけであります。そういったことに対しても、きちっと認定されたものを掲げればとめることができるというようなことでルール設定をしている県もあるわけです。今、佐賀県を皮切りに七県が導入していて、二十一年度中にさらに七県が導入をする予定で、十四県まで拡充をされるわけです。

 そのパーキングパーミット制度がいいかどうかは別として、まず、だれがとめていいとか、そういったことのルールも全く決まっていない。ですから、ルールも決まっていないから、だれがとめたことに対して注意もできないような状況に現状なってしまっているということに対して、非常に問題があるのではないかというふうに思っておりますが、その点について国交省の方から見解をお聞きしたいと思います。

内田政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、先生御指摘の障害者用の駐車スペースの問題でございますが、ハード面からの取り組みといたしましては、先生御指摘のようなバリアフリー新法の適合義務の基準によりまして、一定規模以上の駐車施設の新設等の際には、車いすで利用できる幅の広い駐車スペースでありますとか見やすい表示、そういうような設置を求めているところでございます。

 また、御指摘のような施設の適正利用の課題でございますね、健常者の方がとめてしまったり。

 まずは、もちろんこれは国民一人一人のマナーの向上ということが重要とは考えておりますが、国民の皆様方に御理解をいただく心のバリアフリーの観点から、普及啓発等もしているところでございます。また、御指摘の、佐賀県等で取り組まれておりますパーキングパーミット制度というものも、かかる論点の、適正利用のための手法の一つとして注目しておるところでございます。

 私ども国交省といたしましても、障害を持つ方が円滑に駐車できるよう、国交省だけというわけにはいきませんので関係省庁とも連携いたしまして、今御紹介のような公共団体での取り組み状況等も把握しながら、スペースの適正利用のための方策を検討してまいりたいというふうに考えているところでございます。

 以上でございます。

福岡委員 私も、いきなりルールをつくって罰則を設けろというようなことまで言うつもりはありませんが、現時点で、漠然と皆さん認識は共有していても、どういう車両がとめていいのかということの規定が全くないわけですから、先ほど申し上げたように、例えば、一時的に大けがをしていて、松葉づえとか車いすがないと歩けない人はとめていいのかどうかとか、妊婦の方はどうなのか、その共通の前提のルールが全く決まっていないということは非常に問題があるというふうに思っています。

 そういった部分も含めて、ぜひそういったルールづくりをやっていただきたいと思っていますし、きょうは障害福祉部からもお越しいただいていますけれども、どういった方々にとめていただいていいかということについては、しっかりと福祉的な観点から、国交省等とも話し合っていただきながら進めていただきたいというふうにお願いをさせていただきたいと思います。

 最後に、経産省にお聞きしたいんですが、先ほどのこのマーク、JISマークの表記として経産省でも指定をされているわけであります。

 このマークの運用自体も結構今ゆるゆるで、オートバックスとかに行けば五百円ぐらいでこのステッカーが売ってあって、それを勝手に、自分で意図的に車に張って、普通の健常者の方がおりてきても、その人はきっとそういう対象の方なんだろうと思ってだれも文句を言えないみたいな状況というのが生じてしまっているわけですから、マークの運用をどうするかということもあるんですが、実は、先ほどのバリアフリー新法でも、対象者は、そういったお年寄りの方とか障害者の方とか移動が容易でない方をすべて包含して新法をつくった上でこのマークをつけましょうと言っているにもかかわらず、経産省のJISのコード表を見ますと、このマークに対応する名前が身障者用施設というようなことになっています。

 それは意図するところの一部は網羅しているんですけれども、そのすべてを意図するにしては、このマークの対応呼称が身障者用施設というのではちょっと不十分じゃないかというような意識を持っておるんですが、その点についてぜひ御見解をお聞かせいただきたいと思います。

廣田政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の身障者用設備の図記号は、車いす等が利用できる設備について、身障者を念頭に置いて、二〇〇二年にJISとして制定したものでございます。今御指摘のとおり、確かに身障者用設備として規定しておるところでございます。

 しかしながら、この考え方は、その後、高齢者、障害者等への配慮に対するものとして、バリアフリー新法の制定等社会的要請を背景として、より幅広くなっているということは私どもも認識しております。したがいまして、御指摘の趣旨を踏まえ、今後、福祉分野の専門家の御意見をお聞きしながら、時代に即して、より適切な内容に見直していきたいというふうに考えております。

 以上でございます。

福岡委員 時間が来てしまいました。実は、周産期医療に係るNICUの問題とかも聞く予定でありましたが、もう時間が来ましたので、これで終了いたします。

 ありがとうございました。

田村委員長 次に、とかしきなおみ君。

とかしき委員 おはようございます。自由民主党のとかしきなおみでございます。本日は、質問の機会を与えていただきまして、本当にありがとうございます。

 本日、最初に質問させていただきますのは、循環器医療と救急医療体制についてであります。

 これは、実は私の個人的な思いもありまして、私の父も九年前に亡くなりまして、そのときに循環器の病で倒れて搬送されたんですけれども、当時は救急体制が確立されていなかったために、かなり時間がかかってしまいまして、結局、それが原因で三日後に亡くなってしまいました。ということで、父も多分この辺で見ているかと思うんですけれども、自分の思いを国会議員として少しでも生かしてほしいということで、きょうはこういった形から質問をさせていただきたいと思います。

 実は、舛添大臣が、私の地元に国立循環器病センターというのがございますけれども、そこを昨年の七月に、救急医療体制のことについて視察にお越しになりました。その視察で吸い上げられた声、たくさんあったかと思いますけれども、具体的に、今回の所信表明の中で政策としてどういった点を生かされているのか、ぜひその辺を教えていただければと思います。

渡辺副大臣 お答えいたします。

 昨年七月に舛添厚生労働大臣が国立循環器病センターを視察した際に、現場の医師の方々から、勤務環境が大変厳しい状況にあるとの御意見をいただいた、そのように承知をしているところであります。

 このような状況に対応するために、去る三月四日の本委員会におきまして、舛添厚生労働大臣のごあいさつにおいて、勤務医の勤務環境の改善などの対策を実効性のある形で具体化していく、そういう表明をされたわけであります。

 具体的には、先般成立をしました平成二十年度第一次補正予算及び二十一年度の予算案に、短時間正規雇用や交代勤務制を導入する病院に対しまして必要な経費の支援を行う、あるいは事務作業を行う医師事務作業補助者、メディカルクラーク等と言われておりますけれども、この設置あるいは養成する際に必要な経費の助成事業を行う等々を盛り込んでいるわけであります。

 そのほかに、医師の養成数でございますけれども、従来の閣議決定を見直しまして、来年度、医師養成数を過去最大の八千四百八十六名にふやすということなど、総合的に病院勤務医の方々の勤務環境の改善に取り組んでいるところであります。

 こうした対策を着実に実施することによりまして、今後とも、病院の勤務医の勤務環境を改善するために全力で取り組んでいきたい、そのように考えておるところであります。

    〔委員長退席、西川(京)委員長代理着席〕

とかしき委員 ありがとうございます。

 私も、実は一昨日、この質問もございますので、現地の状況はどうなっているかということで循環器病センターの方へ訪れまして、同じように視察をさせていただきました。後でちょっと循環器病のお話をさせていただきますが、先に、医療体制、特に医師不足のことについてはやはり切々と、強く訴えられたわけであります。

 医師や看護師がかなり不足をしていまして、きょうもデータでお示ししましたけれども、この八から十番までが現状をあらわしているんですけれども、循環器病内科の勤務医は、六割が五人以下の体制で今行われております。当直も週一回が七割を超えて、平均睡眠時間は三時間以内、そして九割が翌日勤務ということで、通常、当直をすると大体三十六時間ずっと勤務ということで、かなり過酷な労働を強いられております。

 さらに、夜当直をなさっている勤務医の先生方の年齢も、実は四十代後半から五十代がピークでありまして、仮に学校で教授になろうと、現場の当直をしないととても人員が回らない、そういう状況であるそうです。そして、ある医師は子育て中だったらしいんですけれども、家に帰ると、今度病院に出かけていくときに、子供にまた来てねと言われるぐらい、かなり家庭の中もひどい状況になっているということです。子供との接点もほとんど持てないということでかなり悲惨な状況でありまして、その悲惨な状況を見てまた新たな人材が入りにくいという、ある意味、絵にかいたような悪循環に陥っているところでありました。

 舛添大臣は所信表明の中で触れていただいておりますけれども、医師の数の抑制を見直して増員していこう、これだけ危機的な状況であるので対応していこうという形で考えていただいているんですけれども、実際私も医療の現場を見ると、やはり即効性のある政策をもっと打っていかないと、医者の数をふやしていこうとしても実際に現場に出てくるのに十年以上かかってまいりますので、それではとても間に合わないという状況であります。

 そして実際にお医者様の方に伺いましたところ、医師がやっている仕事も、別に医師じゃなくてもできるような仕事、例えば事務的な作業、カルテの入力ですとか、紹介の書類を書いたり、申請の書類を書いたり、そういったことも医師が指示をすればほかの人ができる業務であるということで、医師の周辺の仕事、やはり医師の仕事をトータルで見た場合、医師でなくてはいけないものと、医師の指示のもとにほかの人がサポートできる仕事をしっかり選別していくこと、これができれば大分、医師が医療行為に専念できるようになるのではないかと考えます。

 そして大切なのは、そのサポートをする人材にある程度報酬をつけてあげる、これができれば比較的即効性のある政策として有用ではないかなというふうに考えました。これは要望のみとさせていただきます。

 そして、循環器病センターの方に伺いましたところ、これは資料の一番から見ていただきたいんですけれども、日本の死亡率というところなんですが、今、もちろんがんが一番ではありますけれども、循環器病というふうにして考えていきますと、心臓とさらに脳卒中、この部分を両方足していきますと、実際、ほとんどがんの死亡率と変わらないぐらい死亡原因の大きな要因の一つとなっております。

 さらに、がんと違いまして単一臓器が対象でありますので比較的対策がとりやすく、さらに、急性期に適切な処理があれば救命の可能性はかなり高くなってまいります。さらに、病気の知識が事前にあればかなりの確率で予防ができる。このように考えますと、循環器病対策をきっちり行っていくと、かなりの死亡率の低減が期待できるのではないかと考えられます。

 死亡率低下に即効性が期待できる循環器疾患への国の取り組みの姿勢はどういうふうになっているのか、お知らせいただけますでしょうか。

渡辺副大臣 委員御指摘の循環器病でございますけれども、脳卒中あるいは心筋梗塞等の疾患でありますけれども、こういう疾患を原因とする死亡割合が、先ほど御指摘もございましたけれども、我が国の死亡全体の約三割を占めているということでありまして、国民の健康を守っていくためには、これらの疾患への対策は大変重要な課題であると認識をしているところであります。

 これらの疾患の発生を予防するということは大変重要でありますけれども、これは委員御存じのとおり、適度な運動、食生活の改善、あるいはたばこ対策等を軸として、健康的な生活習慣を守ることが効果的でありまして、国民の健康づくりを総合的に進める健康日本21を推進しているところであります。

 また、平成二十年四月より、生活習慣病対策として、特定健診、特定保健指導を開始したところでもあります。このほか、地域において、先ほど急性期の治療が大切だというお話がありましたけれども、急性期を含む医療提供体制の整備を推進しているところであります。

 これらの取り組みを通じまして、引き続き、生活習慣病の予防から医療提供体制にわたる循環器疾患の対策を総合的に進めてまいりたい、そのように考えているところでございます。

とかしき委員 ありがとうございます。

 国の方でもいろいろ考えていただいておりますけれども、きょうは現場の声をちょっとお届けさせていただきたいと思います。

 現場の方は、循環器疾患はしっかりと対応していけばかなり効果が上がるところなんですけれども、実は、対策を練ろうと思っても、現状の把握ができていないというのが一番の問題であるというふうに言われました。

 といいますのは、がんの場合は、がんになった段階で登録をしますので、大体どれぐらいの人ががんに今かかっているのか、そして、それによって最終的に死に至ったのはどれぐらいなのかということが、比較的情報が集めやすい環境が整っております。

 ところが、循環器に関しましては発症数を把握するすべがないということで、実際に亡くなられれば死亡率ということで死亡のデータはとれるんですけれども、どれぐらいの頻度で発症して、それがどういうふうにして死に至っているのかという生データを集めていくすべがないということで、要するに現状把握ができないので対応がしにくいということでありまして、このデータの蓄積、この辺もぜひ国のお力添えを賜りますようにお願いしたいということであります。これは要望のみにさせていただきます。

 そして、先ほどから言いますように、急性心筋梗塞症、これは表三で見ていただくとわかるんですけれども、実際に心筋梗塞が起こった場合は、五二%、半分以上の方は院外で亡くなっております。外傷を除いた院外での突然死の八割が実は循環器関係であります。さらに循環器系というのは、発症から一時間がある意味、勝負ということで、この一時間の間にどれだけの医療行為が施せるか、ここが生死にかかわってまいります。

 専門病院の今の状況というのは、二番目の資料なんですけれども、入院数と死亡率というところでこちらのグラフを見ていただきますと、実は死亡率はどんどん下がってきておりまして、かなり病院の中では効果が出てきて、実績が上がってきております。ですから、循環器病の疾患の死亡率を低下させようと思いますと、この院外での対応をどうしていくのか、ここが大きなポイントとなってまいります。

 院外はどういったところがあるのかといいますと、大きく分けると、家の中、ふだん生活しているスペースと、何かあったときに搬送している間、この二つがあるわけです。家の中では、ふだんの予防的なこと、ふだんの個人の生活で気をつけなくてはいけないことと、万が一異常があった場合の発症直後の対策、こういったことに対応しておくこと。あとは搬送中、これは病院に搬送している間の医療機関との連携、この二つがしっかり対応がとれていくことが大切であります。

 まず最初に、家の中なんですけれども、予防的に行っていく個人の対策、大体、循環器の病というのは事前に必ず体に何かしら変調が出ております。例えば高血圧ですとか不整脈であるとか、そういったことで事前にある程度健康に害が出てきて、いろいろ症状が出てきて、それが高じて大きなことになっていくわけであります。ですから、こういった事前の啓発活動、私たちが異常が起こったときにちゃんと対応する仕組みをつくっておく。そういった高血圧や不整脈を持っている方が、例えば麻痺ですとか、もしくは言語障害、そして強烈な痛みが伴った場合はすぐ救急車を呼ぶということが大切であります。

 ところが、ある調査によりますと、実際に救急車を呼ぶとなると、一割ぐらいしか呼んでいないということで、こういったときは異常を感じたらすぐ救急車を依頼する。さらに、脳梗塞は最近tPAという薬、これは三時間以内に投薬すれば絶大なる効果が期待できるという薬でありますけれども、これも本当に、刻々と、対応を早くしないとやはり難しいということで、救急車に乗っていただくまでに、少なくとも一時間以内には乗ってもらう、そのためには家庭の中で異常を察知しておく、そのための啓蒙活動、啓発活動をしっかりしておくことがやはり大切であります。

 最近、町中もAEDなどかなりふえてまいりましたけれども、蘇生措置が実際にとられたのはどれぐらいの確率かといいますと、実際は全体の三割でしかないということで、残念ながら、まだまだ十分に活用できている状況ではありません。さらに、先ほど言いましたように、公共施設は大体AEDは入っているんですけれども、発症するのが割と家庭の中の方が多いわけでありますから、やはり家庭の中で、どれだけ家族が見つけてあげたり対応できるか、ここが重要であると思います。ですから、こういった啓蒙活動が非常に重要であります。

 さらに、搬送中に行う医療行為との連携ということで、視察をしました国立循環器病センターでは、自治体である吹田市とともに、二〇〇八年六月から新しい挑戦をしておりました。これはモバイルテレメディシンというシステムなんですけれども、このことについては資料の四番から七番で書かせていただいております。

 これは、救急車の中にインターネットで接続したカメラを搭載してありまして、そして生データを、患者さんが今どういう状態なのかということで、心電図等、全部データで医療機関に送って、医療機関にいる人たちはその様子を見ながら、映像を見ながら的確に救命士に指示を出していく。さらに、地域の医療機関と連携をとって、どの病院に搬送したらいいのかということを相談しながら、要は、搬送しながら医療行為をしつつ、さらに医療機関の方でもきっちりと受け入れ体制を整えておくことができるという、搬送時間を非常に有効に使う手段として、これは新しいケースということで、今挑戦中であります。吹田市の方の救急車は五台全部搭載しておりまして、そして今、データを蓄積しているわけであります。

 特に、こういったシステムというのは、実は吹田市というのは大阪の中でも比較的医療体制が整ったところでありますけれども、やはり地方、こういったところに非常に有効であると考えます。例えば北海道や高知、鹿児島、長崎などは搬送に二時間以上かかっているわけです。そういったところにこういった体制が非常に生きてくるのではないかと思います。

 ここで質問なんですけれども、国としての予防医療の教育や、たらい回しを防ぐだけではなくて、こういった搬送中の医療行為に着目したシステムの構築、支援を国はどういうふうに考えていらっしゃるのか、お示しいただきます。

渡辺副大臣 循環器病、脳卒中とか心臓病、その最初の症状等を一般市民の方々が学んでいくということは、早目に通報ができるということで大変重要だと思っております。そういう意味で、健康日本21の中でも健康教育というものを大変重要視しておりまして、委員御指摘のように、そういう初期症状等のことを市民に対して啓発していきたいと考えております。

 それから、循環器病は突然に発症することが多いわけでありますけれども、心肺停止になった場合に、現場に居合わせた一般市民により、できるだけ早く胸骨圧迫による心臓マッサージあるいはAEDの使用等を含めた心肺蘇生法が行われることが大変重要であります。脳卒中、心臓疾患の急性期の発症の場合は特に重要と考えておりまして、これに対しまして、都道府県が行う一般市民向けの応急処置に関する講習会を開く場合の支援等を行っていく、あるいは一般市民にもわかりやすい教材の開発を行っているところであります。

 それから、先ほど吹田市のモバイルテレメディシンについてお話がございましたけれども、そのような患者搬送中に医療機関の医師が適切な判断を行えるよう、救急車から搬送先の医療機関に患者の映像やバイタルサイン等を転送するシステムにつきまして、現在、経済産業省と協力して、情報通信技術を活用した新たな連絡支援システムについて研究を行っているところでありまして、その結果を踏まえまして必要な施策を推進していきたい、そのように考えているところでございます。

とかしき委員 ぜひ、積極的な取り組みの方をよろしくお願いいたします。

 現在の医療体制の崩壊というのは、乱暴な言葉で言えばお金がないから、今、医療体制の崩壊が起こっていると言えると思います。

 日本は国民皆保険というすばらしい制度を整えて、高度成長のときは国民の皆さんがその恩恵をこうむることができました。ところが、少子高齢社会、低成長時代を迎えて、国民皆保険の制度の維持が非常に難しくなってまいりました。国民は制度の後退は絶対許しませんので、むしろさらなるサービスのアップ、さらに、負担もなるべくならば軽減させてほしいということを望んでいるわけであります。しかし、この二つの希望を同時に満足させるというのはほぼ不可能な状況であります。

 そして今の状況は、本来、国民皆保険は非常に厳しい状況にあるんですけれども、何とか継続しているように見えているのは、医療従事者の皆さんの熱意と好意によって支えられている部分が多くありました。それがいよいよ限界に達して、我慢に我慢を重ねたものがついに崩れてきてしまって今悲鳴を上げている、これが医療体制の崩壊だと考えております。

 では、これを打開するにはどうしたらいいのかといいますと、やはり根本の問題でありますお金をどうするかということであります。国民の皆さんは、もうこれ以上負担をしたくないというのが本音であります。こうなると、国内からの調達というのは不可能に近い。となると、目を外に向けていくしか方法はありません。要は海外からお金を持ってくる、こういった新しい発想の転換も必要なのではないでしょうか。

 日本の医療を外貨を稼げるビジネスとして育成していく、これも一つの方法だと考えます。日本に医療を受けに来てもらって、世界最高水準の医療技術と、日本人が得意とするおもてなしの精神で治療に専念をしてもらい、そして満足してそれぞれの国にお帰りいただく。例えば、日本人が得意としている食の指導も治療中に行ってもいいかもしれません。

 国としてこういった新しい取り組みをしていこう、医療ビジネスとして非常に有望であるということで、シンガポールや韓国、インドなども投資を始めました。このような中、日本ブランドの付加価値があれば十分に海外の国々と闘っていける、医療ビジネスとして育てて外貨を稼ぎ、そして、その収益を国民の社会保障の費用に充てんをしていく、こういった大胆な発想の転換があってもいいのではないでしょうか。

 世界の最先端を走っている超高齢社会、逆を言えば、これを逆手にとって高齢社会のノウハウを蓄積して、健康に年を重ねていって、そのソフトを充実させていく。医療がビジネスになる産業ととらえれば、将来の日本を支える基幹産業に確実に育っていくことも考えられます。

 社会保障制度の安定財源の確保、これも所信表明では述べられておりますけれども、具体的にはどういった方策をお考えなのでしょうか。あと、日本の医療を、そういった外資を稼げるぐらいの基幹産業として今後育成して財源確保に充てていく、例えばこういった政策をどういうふうに評価なさいますでしょうか。よろしくお願いいたします。

外口政府参考人 最高水準の健康寿命を達成するなど大きな成果を上げてきた日本の医療、医療技術を世界に知ってもらうことは、大変重要だと思います。

 また、医薬品、医療機器産業に関しては、近年、海外売上高比率が四〇%を超える企業もあり、全体として輸出額は年々増加しております。このことからも医薬品、医療機器産業は、今後、輸出産業として発展していく高い能力を持つ産業であると考えております。

 政府としては、我が国のすぐれた研究開発をもとに、革新的医薬品、医療機器の国際的開発、提供体制へ我が国が参加していくことで、医薬品、医療機器産業を日本の成長牽引役へ導くとともに、世界最高水準の医薬品、医療機器を国民に迅速に提供することを目標とする革新的医薬品・医療機器創出のための五カ年戦略を、関係省庁連携のもとに取りまとめ、現在、その着実な実施を進めているところでございます。

とかしき委員 地方分権の時代で、実は、自治体の中にもこういった新しい取り組みをしようというところが出てきております。私の地元も、実は環境と医療というのを町づくりのテーマに掲げて、地域の人たちと医療を積極的に結びつけて、町の永続的な発展に寄与していこうという新しい試みが生まれました。

 医療ビジネスを日本の基幹産業にしていこうと思うのであれば、やはりこういった自治体との連携、特に今、地方分権の時代でありますから、地域の特徴を出す一つのツールとして非常に有効だと考えます。モデル地域を決めて、その場所に集中的にみんなで資本を投下して、そして最初の助走のときだけ国の方がちょっと背中を押してあげる、そして弾みをつけて飛び出せるようにしていく。こういった時代を先読みして、やる気のある自治体、そして医療ビジネスを日本の基幹産業として積極的に取り入れる、こういったことも日本を元気にしていくことにつながると思いますので、ぜひ応援の方をよろしくお願いいたします。

 それでは最後に、インターネットの薬の販売についてお伺いさせていただきたいと思います。

 インターネットの薬の販売、最近はマスコミで大変話題になっておりまして、規制緩和を望むネット業界VS規制強化をもくろむ薬業関係者という構図ができ上がってしまいまして、今、大変話題を振りまいております。

 しかし、これは本当にVSなんだろうかと、私は正直疑問に思っております。もしかしたら両者は同じことを言っているのではないでしょうか。どんな人でも、安全性を無視して利便性を追求する、こんなことは絶対にありません。さらに、将来、今よりもネットが社会の中に入ってくる、これを否定する人もいないわけであります。大切なのは、消費者である国民の皆さんが、薬は毒である、薬はリスクを伴うものである、こういった消費者教育が本当に行き届いているのか、ここが大切であります。

 私も薬剤師の立場で意見を言わせていただくならば、薬に対する消費者教育、残念ながら、ひどくおくれているとしか言いようがありません。

 最近も連日のように報道されております大麻の事件も、やはり大麻の怖さを知らないからこそ、こういったことに安易に手を染めてしまう人が出ていると思います。例えば通常の薬に対しても、家族がもらってきたから、同じ症状だからといって、処方せんもないのに家族の中で流用したり、古くなった薬を昔と同じ症状だからといって再度服用したり、さらに、大人の薬を半分にして子供に安易に飲ませてしまったり、予防と称して症状が出る前に薬を飲んでしまったりと、多くの方々がこういった間違った薬の使い方を経験しているかと思います。やはりこれも、明らかに薬の知識が欠落しているから起こることであります。

 日本人は、食品に関しては非常にデリケートでありますけれども、なぜか、化学物質の濃縮版である薬に関しては非常に無頓着であります。消費者教育が行き届いていないから、現在もインターネットの薬の販売トラブルが出ているわけであります。

 ネットでの薬の販売を、これだけ今話題になっておりますので、仮にこれがこの後、全部オーケーということになれば、トラブルは今よりも出てしまいまして、さらに海外から、海外は、特に問題になっておりますのがにせ薬であります。にせ薬も日本の中にどんどん入ってくる可能性があります。このように考えると、ネットで今慌てて薬を拡販してしまうことが、結局は、訴訟問題等トラブルが続出して、将来のネット業界の発展を阻んでしまうことにもつながる可能性があります。

 ですから、今すべきことはVSではなくて、むしろ国も一緒になって、これをいい機会に、国民に薬のリスクをしっかりと教育していくこと、これが一番重要ではないかと思います。そして、国民にある程度薬のリスクを理解していただいた上で薬のネット販売を解禁した方が、かかわる人たちすべてがウイン・ウインの関係になる、このように考えます。薬の消費者教育、これこそ今一番私たちが取り組まなくてはいけないことではないかと思います。

 それで、最後にお伺いしたいんですが、二月の六日に省令を発令いたしましたけれども、舛添大臣の指示で、二月の二十四日、検討会が開催されました。なぜこの検討会が開催されたのか、その目的はどんな真意でこれを開催なさったのか、そこをお知らせください。

 さらに、インターネットの薬の販売に対して、国の方のお考えをお知らせください。お願いします。

渡辺副大臣 委員御指摘のように、薬あるいは薬の服用に関する国民に対する啓発、教育というものは大変重要だ、そのように考えております。

 さて、御質問の件でございますけれども、本年六月に施行される改正薬事法の趣旨は、いわゆる大衆薬、一般用医薬品のことでありますけれども、この販売に当たりましては、専門家が適切に情報提供を行うことにより国民の安全を確保するというものであります。施行に向けて二月に公布をした省令では、インターネット等の通信販売については、こうした法改正の趣旨が担保されないおそれがあることから、専門家の情報提供が不要な第三類の医薬品に限って販売できることとしたところであります。

 一方、省令案のパブリックコメント等を通じて、薬局や店舗に行くことが困難な方から、インターネットで医薬品を購入できるようにしてほしいという意見など、さまざまな御意見をいただいたところでもあります。

 このため、新しい販売制度のもとで、安全性を確保した上で、すべての国民が医薬品を適切に選択し、かつ適正に使用することができる環境づくりのために今回の検討会を開催したところであります。

 その課題につきましては、薬局、店舗等では医薬品の購入が困難な場合の対応の方策、あるいはインターネット等を通じた医薬品販売のあり方などについて、幅広い関係者の間で御議論をいただくこととしたところであります。

 今後、検討会の議論の動向を踏まえまして必要な方策を講じることとしたい、そのように考えているところであります。

とかしき委員 ありがとうございました。国民の健康を守っていく、国民の皆さん自身が健康を守っていく環境、消費者教育に、ぜひ積極的に取り組んでいただきたいと思います。

 ありがとうございました。

西川(京)委員長代理 次に、赤池誠章君。

赤池委員 自由民主党の赤池誠章でございます。

 本日は、厚生労働省の各施策についてお伺いをしたいと存じます。

 私たち人間が生きていくという場合には、大きく分けて三つのことが必要ではないかと常々思っております。第一番目は、人間が生まれ育ち、生きていくための共同体ですね。家族であったり地域であったり、そして広く国家ということだと思います。第二番目は、食料を確保して、物などを生産、流通させる職業、いわゆる経済活動ということではないかと思います。そして第三番目は、それらを支える心の部分、精神であったり魂の部分ではないかと思っております。

 そういう面で、政治の大きな役割というのは、人間に必要なこの三つの要素であります、家族、地域、国家を、共同体をしっかり守っていくことであり、雇用だったり産業振興ということ、そしてそれらを支える教育であり訓練ではないかと思っております。そういう面で、厚生労働行政というのは、以上三つの大きな役割にすべて関連をして、最も国民生活に密着した大変重要な職務ではないかというふうに感じております。

 そんな中で、現在、世界的な大不況ということで、日本においても大変厳しい経済状況であります。特に雇用の状況というのは本当に厳しいの一言に尽きるわけでありまして、これらの対策というのは待ったなしという状況ではないかと存じます。

 舛添厚生労働大臣の所信表明においても、第一番目に雇用対策ということが掲げられております。現在、各種施策が実施をされているわけでありますが、私は、その中で一番重要な施策、すべてが重要ではありますが、その中で一番大事な施策というのは、何といっても職業訓練、能力開発ではないかというふうに考えております。資源の少ない私たち日本にとって、機械化だったりコンピューター化が幾ら進んだとしても、結局、最後はすべて人間の力で担うということが大きいからであります。

 そこで、国家の繁栄のための雇用対策として、職業訓練の充実強化策の現状について厚生労働当局から見解をお伺いしたいと思います。

草野政府参考人 お答えいたします。

 厳しい雇用失業情勢が続く中で、離職者の方々に対し、再就職の実現に必要な職業訓練を確保することは重要な課題でございます。

 このため、平成二十年度第一次及び第二次補正予算におきまして、雇用失業情勢が厳しい地域における訓練を五千二百人拡充いたしまして、現在、順次実施しているところでございます。

 さらに、平成二十一年度予算案におきましては、二十年度当初予算の十五万人を四万人上回る、十九万人を超える訓練枠を確保し、離職者訓練を質、量ともに大幅に拡充することとしております。内容的には、介護でありますとかIT、こういった今後の雇用の受け皿として期待される分野に重点を置きまして、介護福祉士の養成のための二年分の訓練を含めまして、長期間の訓練を一万七千五百人分用意したところでございます。

 これらの訓練を今後確実に実施するとともに、今後とも、人材ニーズの高い職種、雇用の受け皿として期待できる分野などの把握に努め、効果的な訓練を実施してまいりたいというふうに考えております。

赤池委員 今までのいわゆる三カ月の短期訓練から、やはりそれでは不十分だということで六カ月の長期化をしたり、さらに、二年間、介護福祉士の資格取得ができるということで、いわゆる専門学校に委託をするということで、新たなる教育訓練の充実強化ということで非常にすばらしい部分ではないかというふうに感じております。

 改めて、ぜひ企業や専門学校などと連携して、これからの社会のニーズに合った、今は介護であったりIT分野のみということでありますけれども、さらに長期委託訓練をふやしてほしいと思うんです。例えば農業とかの分野もそうだと思いますし、工業分野であれば航空という分野も、さまざまな形で広がってくると思いますし、観光であったり、また環境ということもあると思うんです。そういうさまざまな成長可能分野に、積極的な職業訓練、そしてコースの設定というものをさらなる形で御検討いただきたいなというふうに思っております。

 その中で、介護の分野、IT分野で民間の教育訓練、いわゆる専門学校にお願いするときに、専門学校では当然、正規の授業料を払って入っていらっしゃる方と、職業訓練ということは国が払うわけでありますから、その方自身は無料、そういう方が同じ学校の中でともに学ぶという状況が四月以降出てくるということでありますね。

 そうなったときに、一体どういうことになるのかということで、個々の生徒さんたちが、あいつは無料だ云々なんていうことを言うとは思わないわけでありますが、ただやはり、実際やってみないとわからないこともたくさんあると思うんですね。そういう面では、不断の見直しを踏まえながら、当然現場のニーズを踏まえて、どういう形でやっていくのか。学校の方針もあるでしょうし、そういった離職者の方々への意識というのもあると思うんです。

 そういう面でのオリエンテーションといいますか、導入に関してぜひ配慮をする中で、よりスムーズな長期委託訓練が可能になるよう御配慮をいただきたいというふうに思いますので、改めてその一点、御見解をお伺いしたいと思います。

草野政府参考人 おっしゃるとおり、介護などの委託訓練を進めます場合、既存の、従来の学校を出てきた方、そういう方と混在するわけでございまして、自分で授業料を払っている方もいる、そういうことですので、これは、離職者の方を集めて訓練する場合、その方々を集めて委託枠をつくりましてゆだねるという形で、恐らく実行上は別の形の組、クラスという形でやることになると思います。

 ただ、おっしゃるようなこともございますし、また、離職者の方が二年間、長期にわたってしっかり能力開発をしていただく、そのためにやはりキャリアコンサルティング機能というのは極めて重要だと思っていまして、ジョブカード制度なども含めまして、このキャリアコンサルタントを通したきめ細かな相談と意欲の喚起というところに力を注いでまいりたいというふうに思っております。

赤池委員 今御紹介いただいた、キャリアコンサルティングとしてのジョブカード制度というものが昨年四月から創設をされたわけであります。そういう面では、職業能力形成システムとして、ジョブカード、まだ一年にも満たないということでありますが、現状どこまで普及が進んでいるのか。そして、一年もたたないわけでありますが、そういったところでどういう面に課題があるのか、改めて御見解をお伺いしたいと思います。

草野政府参考人 おっしゃいますように、ジョブカード制度は、フリーターや子育て終了後の女性、母子家庭の母などの職業能力形成機会に恵まれなかった方を対象に、きめ細かなキャリアコンサルティングや実践的な職業訓練を提供することにより、円滑な正社員就職を支援する制度でございます。

 本制度は昨年四月にスタートしたわけでございますが、本年二月末までの実績で、ジョブカード取得者は五万五千人、それから職業訓練受講者の方は、一月末までの統計しか現在ございませんが、三万一千人ということになっております。

 厚生労働省としましても、雇用失業情勢がこういう厳しい状況でございますので、職業能力形成機会に恵まれなかった方が安心して訓練を受けられるよう、補正予算の中で、第一に、訓練期間中の生活費に係る貸し付け、返還免除の制度を創設しましたほか、訓練を実施する企業のインセンティブを高めるための助成措置の拡充などを行ったところでございます。

 今後の課題としましては、活用促進を図っていく必要がある、特に有期実習制度などはそういう点が非常に重要だと思います。制度の認知度を高めるということに取り組んでまいりたい。そのため、インターネットでありますとか新聞広告などによる広報を実施しておりますほか、事業主側に対しては商工会議所に設置しておりますジョブカードセンターを通じて、あるいは求職者側に対してはハローワークや都道府県を通じましての情報提供などによりまして制度の認知度を高め、訓練への誘導を図ってまいりたいというふうに考えております。

赤池委員 私もジョブカードを見せてもらったわけなんですが、イメージがどうしても、カードというからカードなのかなと思っていたらそうではなくて、シートでありまして、総括表二枚に職務経歴一枚、学習歴・訓練歴一枚、免許・取得資格一枚、キャリアシート一枚、評価シート三枚という構成の中で、いわゆるファイル全体としてジョブカードと総称しているということでありまして、内容的に見ましたけれども、大変よくできているんではないかというふうに思っております。

 ぜひ普及のために、これは名前からもうちょっと、わからない名前ではないんですが、短くていいという反面、やはり日本語でそのものずばりをしっかりつけていくということも大事だと思います。

 今後、目標として五年間で百万人ということもお伺いをいたしましたけれども、今、十八歳人口は毎年毎年減って、百二十万になっています。そういう面では、せっかくこれだけいいものをつくられて、コンサルティングから訓練からそして就職という一連の動きがあるわけでありますから、ぜひ十八歳人口すべてにこれを知ってもらうという面で、文部科学省と連携をしていただいて、これは義務づけるという言葉がいいのかどうかわかりませんが、職業教育、キャリア教育というのが高等学校の中でもなされているわけでありますから、ぜひ連携をして、すべての若者がこういったジョブカードを知るという形での活用方法を引き続き御検討いただきたいというふうに思っております。

 続いて、第二問として、厚生労働大臣の所信表明で二番目に取り上げられていたのが社会保障という側面であります。

 喫緊の課題であります、年金であったり医療であったり介護であったり障害者施策というのは、順次所信が表明されております。そういう面では、それを聞きながら、確かに今すぐ大事なわけでありますけれども、もう一面、長い目で、またすべての基盤になる健康増進という側面の部分が、残念ながら触れられていなかったなということを感じております。国家の継続というのは、何よりも健康確保というものが一番の基盤になった上で、それぞれの社会保障の施策につながってくるというふうに思っております。

 政府においては、平成十九年に新健康フロンティア戦略というものを策定して、十二分野において健康寿命を延ばしていこう、生涯現役で健康国家の創造を実現しようということをうたっているわけでありまして、それが現在、政権の交代ということもあるわけでありますが、残念ながら、そういった文言が聞かれなくなってしまったということもございます。

 現在の健康増進策というものが一体どのような形で政策の中で位置づけられているのか、当局の見解をお伺いしたいと思います。

    〔西川(京)委員長代理退席、委員長着席〕

谷口政府参考人 お答えを申し上げます。

 ただいま御指摘の、平成十九年に策定をされました新健康フロンティア戦略というものにつきましては、国民の健康寿命を延ばすために、予防を重視した健康づくりを進めますとともに、すべての方々が持っておられる能力をフルに活用して充実した人生を送ることができるような、そういう健康国家の創設に向けた挑戦を取りまとめたものでございます。

 現時点におきましても、新健康フロンティア戦略を策定いたしました基本的な考え方のもとで、子供、女性、メタボリックシンドローム、がん、心、介護等の幅広い分野におきまして、厚生労働省といたしましても着実な健康増進のための施策に努めているところでございます。

 以上でございます。

赤池委員 ありがとうございます。

 ぜひ、すばらしいものは引き続きやっていただきたいと思いますし、法制化されていないということもあるにしても、ぜひ、そういった総合的な予防という視点から進めていただきたいというふうに思います。

 現在、健康診断というのは、六十五歳以上になると介護保険法に基づく生活機能評価であったり、四十歳から七十四歳は、これも高齢者医療確保法に基づく特定健診、いわゆるメタボ健診が義務づけられていたり、七十五歳以上は、努力義務ですけれども同じような形。また健康増進法に基づいて、がん検診であったり、歯周疾患検診であったり、骨粗鬆症であったり、肝炎ウイルスと、さまざまなものがそれぞれの目的ごとに設定されていたり、また労働安全衛生法に基づいて一般の健康診断、さらに学校は学校で子供たちが行われているということで、これはすべて法律が、それぞれ根拠法があって、それぞれの部署が縦割りの中でやっている。

 そのそれぞれは大変大事なことなんですが、それをトータル、総合的に、国として健康をどう進めていくか、健康診断をどう充実していくかというような部分が残念ながら足りないのかなということを感じておりまして、ぜひ、新健康フロンティアというすばらしい考え方に基づいた何らかの法制化であったり、縦割り行政を打破した相互乗り入れの中で、予防重視で一人でも早期発見するような形を進めていただきたいなというふうに思っております。

 第三番目として、次の質問に移らせていただきたいのは少子化対策の問題であります。

 国家の機能、国家の継続のためには、次世代の担い手であります子供を産み育てる環境整備というのは絶対不可欠なわけであります。よく言われる三つ子の魂百までもという言葉は、これは単なる昔からの言い伝えではなくて、現在では、まさに科学的な知見として幅広く受け入れられるようになってきています。

 そこで、親御さんたちが、乳幼児期において家庭の場で子供たちを直接育てる環境整備策というものはどのようなものがあるのか、当局の御見解をお伺いしたいと思います。

村木(厚)政府参考人 お答え申し上げます。

 三歳未満のお子さんを育てる環境は、御指摘のように非常に大切でございます。お子さんをお預けになる保育所はもとよりでございますが、御家庭で子育てをされる場合の、特にお母さん方ですが、この負担は大変大きいものというふうに認識をしております。

 最近は、特に核家族化、地域とのつながりが薄いこと、それから男性がかなり長時間労働をしていることで、父親がなかなか育児に参加できないというようなこともございまして、育児不安が大変大きい、とりわけ専業主婦の方の育児不安が大きいというようなデータも出ているところでございます。

 こうした状況に対応をいたしまして、まず一つは、地域において、子育て中の親子の方が一緒に集まれるような場所、あるいは子育てに関して気軽に相談できるような場所、これは地域子育て支援拠点事業と呼んでおりますが、こういった拠点づくりの事業を今推進しているところでございます。

 それから、特に専業主婦の方であれば、ほんの少しの間でもいいからお子さんを預かってもらいたいという一時預かりのニーズが大変強うございます。これにつきましても、一時預かり事業という形で事業を展開してございます。この一時預かり事業につきましては、来年度の予算案におきまして、実施主体をNPO等の多様な運営主体に広げるというような充実を図りたいと考えているところでございます。

 地域子育て支援拠点事業の方でございますが、大変評価は高いところでございますが、自治体によりまして取り組みにかなり格差があるというのが現状でございます。将来的には、すべての子育て家庭が御自宅から歩いて何とか通える場所、具体的には中学校区に一カ所はこういう拠点を設けたいということで、今、それを目標に各種の施策を進めております。

 自治体に取り組んでいただくために、市町村向けのガイドブックをつくって配付したところでございまして、これに加えまして、さらに二十一年度予算案におきまして、設置箇所数の増、それから先ほど申し上げた一時預かりの事業などもこの拠点でやっていただくとか、関係機関とネットワークをとっていただく、こういう機能強化をしていただきますと補助単価が上がるというような仕組みも盛り込んだところでございまして、こうした施策を使って、地域で子育て家庭の支援がしっかりできるように施策を進めてまいりたいと考えているところでございます。

赤池委員 三歳までは約八割が家庭で育てるというデータもあるということでありますから、それを支援するというのは、直接的には児童手当のように経済的支援、そして今御紹介をいただきましたような、間接的でソフトな支援ということでの地域子育て支援拠点事業ということではないのかなというふうに思っています。

 現行ですと約五千弱ですか、これを来年度は七千という形を掲げているわけですが、目標が中学校区に一つとなると約一万カ所ということでありまして、現行から考えれば倍増させなきゃいけないということであります。これは予算面、さらにそれの、だれでもいいというわけにはいかないわけでありますから、担い手の方々の部分ということでありまして、既にNPOの方々を初め、保育所であったり児童館であったり、できるところはそれなりに進んでいると思うんですが、これは先ほど御指摘のように、いわゆる地域間格差も相当大きいことだというふうに思っております。これは各地域地域の意識の問題であったり、どうしても高齢化の視点が多くて、少子化になかなか意識が向かなかったりということもあるのかもしれませんし、財政難ということもあると思うんですね。

 そういう面では、子育て支援というものが、地域、地方自治体が主体であって国はそのバックアップという発想からやはり抜け出さないと、教育と同様に、子育てというもの自体が国家の第一義的な責任であるという中で位置づけて、補助率を三分の一でいいのか、これはもっと上げていく必要もあるというふうに思っておりますので、でき得る限り、すべての親子が歩いて通える距離にこういった地域子育て支援拠点をつくるよう、引き続き担当部署にお願いしたいと思いますし、我々もしっかり応援をしていきたいというふうに思っております。

 それで、乳幼児期の支援と同時に、その前提となるのが結婚という問題であります。いわゆる結婚支援という問題は、私も以前国会で質問したことがあるんですが、各地方自治体は、いわゆる過疎の村、町を中心として結婚相談員の方々を置いたり、紹介サービスをしたりということがあるわけなんですが、これは残念ながら、全く国はタッチしていないということであります。

 これはよくよく聞いてみると、戦前、戦中のいわゆる産めやふやせよという問題から、軍国主義政策であるということで、これが過度の反省から、全くそういうものに国が触れるべきではないということであります。国際的に見ると、敗戦国であるイタリア、ドイツ、日本がなかなか少子化対策に踏み出せなかったということも、いまだにこういった戦争への過度な反省が出ているのかなということも感じております。

 そういう面では、子育て支援と違って、直接的に国が結婚支援に乗り出すということはいろいろ問題があるとは存じますが、今行われている地方自治体に対して、国が地方自治体をバックアップするということはできると思うんですね。

 そういう面では、これはなかなか議論が分かれるということは聞いてはいるんですが、ぜひそういったことも含めてやっていく。つまり、結婚したくない方々を無理やりするわけではないんですが、当然、我々地元を歩いているとそういった御相談もいただくわけでありまして、そういった機会のない、機会があればぜひ結婚したい方をマッチングする地方自治体の取り組みに関して、積極的に国が、直接的ではなくて、地方自治体を応援するという仕組みをぜひ御検討いただきたいというふうに思います。

 最後に、国家の基本中の基本の責務である援護行政についてお伺いをしたいと思います。

 国家のために戦い、お亡くなりになった戦没者の遺骨収集、それからその慰霊顕彰、そして家族の方々への援護というのは国家の責務であります。そういう面では、戦後一貫して続いてきた戦没者の遺骨収集事業は現在どうなっているのか、そして今後の見通しについてお伺いをしたいと思います。

 特に、これは外国の問題ということと絡むので、当然外交上の問題というのがあるのですが、その一方で、日本国内で引き続き硫黄島というところにおいては、現在、国内でありながら、いまだに大勢の方がそのまま遺骨として残されているという現実もございます。現在、航空自衛隊の滑走路整備に伴って、その滑走路の下をぜひ遺族の方々は遺骨収集させてほしいというお願いも出ているわけであります。

 そのことも含めまして、遺骨収集の見通しについてお伺いをしたいと思います。お帰りになっていない百十五万という大勢の方々、最後の一人まで、国家の責務として遺骨を収集するんだという決意を含めて、御見解をお伺いしたいと思います。

大村副大臣 この遺骨収集を含めました援護行政が、国家のまさに責務であり基本であるということは、委員御指摘のとおりだというふうに認識をいたしております。

 そういうことで、御質問いただきました現在の戦没者の遺骨収集の状況でございますが、これにつきましては、これまで、海外戦没者約二百四十万人のうち約百二十五万柱が本邦に送還をされたところでございます。戦後六十年以上が経過をし、関係者の高齢化などの理由によりまして、残された遺骨情報も減少するなど、特に南方地域での遺骨収集がなかなか難しくなってきているという状況にございます。

 このため、未送還遺骨の情報収集を強化するとともに、民間団体の協力をいただきまして遺骨収集の推進に努めておりまして、今年度におきましても、硫黄島におきまして収集された遺骨も含めまして、これまで一千四百三十一柱の遺骨を送還させていただいたというところでございます。

 平成二十一年度におきましては、これまでの情報収集事業を拡充いたしますとともに、民間団体と協力して機動的な遺骨収集ができるよう、現地の調査体制を強化するなどの見直しを行い、遺骨収集のさらなる推進を図ることといたしております。予算も拡充をさせていただき、しっかりと取り組んでいきたいと思います。

 そして、委員から御指摘がありました硫黄島についてでございますが、これは、赤池委員も硫黄島問題懇話会という自民党の中の懇話会で、硫黄島の遺骨収集、そして慰霊巡拝等々の活動を御支援いただいているわけでございます。

 私も、先週火曜日、三月三日に硫黄島の慰霊巡拝団として現地に行ってまいりました。百名余りの方と一緒に参りまして、慰霊巡拝の追悼の式典も行ってまいりました。その際、改めて現地を拝見いたしまして、委員御指摘のように、硫黄島で亡くなられた日本人戦没者二万一千九百名、そのうち遺骨の送還の数は八千六百六十四ということで、まだ六割が残されております。

 これは戦後の歴史的な経過の中で、その上に米軍が滑走路をつくった、そして今、その南の方に自衛隊が滑走路をつくっているということもございます。したがって、まだまだ埋まっているごうだとか、そういったところがございます。したがって、本格的な遺骨収集がこれまで実施できなかった滑走路の下の遺骨収集につきましては、現在、防衛省がその滑走路を北の方に移転する計画を進めておりますので、これに合わせるといいますか、先駆けて、現滑走路の北側のかつて米軍が使っていた、まだアスファルトが残っておりますが、そこのところにごうがないかどうかを、二十一年度、空洞調査ということをやることにいたしております。まずそちらをやり、そのこととあわせて、実際に滑走路が移転するということになりました暁には今のところもやっていく、こういうことで、これも防衛省としっかりと協議をして取り組み、進めていきたいというふうに思っております。

 なお、私、先週参りましたときに、ことし硫黄島で収集された遺骨が二十六柱でございましたが、実際にことし収集したところ、現地も行ってまいりました。まさにジャングルのところを切り開いて、ことしは海岸の方のところだったんですが、砂に埋もれた、土に埋もれたごうとかトーチカを一つ一つ掘り起こして遺骨を収集した。そのごう、トーチカの中にも私は入りましたが、土に六十年間埋まっておりましたので、何か、まだついこの間のような感じでございました。そういう意味で、改めてそういった状況を拝見いたしまして、これはしっかりとこれからも取り組んでいかなきゃいけないということを改めて思った次第でございます。

 また引き続き御指導賜りますようにお願い申し上げます。

赤池委員 ぜひ、大村副大臣、行っていただきましたので、引き続きよろしくお願いをしたいと思います。

 お帰りになっていらっしゃらない遺骨の中で、相手国の事情によって収集困難なお遺骨が二十六万人いらっしゃるわけですね。これは、いわゆる国交のない北朝鮮、それから一番多い二十万人が中国ということであります。

 中国政府は、さきの大戦における国内感情にかんがみて、遺骨収集の実施は困難という見解を示しておりまして、昭和五十五年から慰霊巡拝が実施されているだけということであります。これはもう二十年以上、そのまま放置という形になってしまっておりまして、日中友好というかけ声の反面、それがそのまま置き去りになっているという事態もございます。これは、厚生労働省として、外務省などと協議をしているということなんですけれども、これはやはり行政に任せるだけではなくて、まさに政治主導で、こういった問題も含めて、改めてあらゆるチャンネルで提起をしていく必要があるのではないかというふうに感じております。

 私たちが亡くなっても、この国、日本というものは残るわけであります。先人たちから受け継がれましたこのかけがえのない日本を、これから生まれてくる、少子化対策を含めて先ほど御質問させていただきましたけれども、子供たちに残していくという面で、引き続き厚生労働行政の充実強化をお願いいたしまして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

田村委員長 次に、赤羽一嘉君。

赤羽委員 公明党の赤羽一嘉でございます。

 本日は、先日の大臣の所信表明演説に対する質疑でございます。きょうは、大臣は予算委員会で御出席できないということでございますので、両副大臣におかれましては、大臣に成りかわったつもりでしっかり答弁をしていただきたい、こう思うわけでございます。

 まず最初に、雇用調整助成金について何点か質問させていただきたいと思います。

 この雇用調整助成金につきましては、平成二十年度の一次補正予算、二次補正予算、そして今回の当初予算、こういった中で、我々も現場の声を聞き、厚生労働大臣あてにさまざまな要望をする中で、中小企業とか、大企業もそうですが、申請の要件が大幅に緩和され簡素化されている。また助成率も、中小企業では三分の二のものが五分の四になる、大企業は二分の一が三分の二になる。また、教育訓練費も千二百円だったものが五倍の六千円に引き上げられる。大変、制度改革をしていただいている、大変な御努力をしていただいているということに、まず高く評価をするところでございます。

 しかし、さはさりながら、もっと簡素化できないかとか、支給限度日数も二百日とありますが、今の状況を見ると相当まだまだ厳しくなるということが見通せますので、こういった支給限度日数もさらに引き上げていただきたい、こういった具体的な要望を今後も出してまいりますので、ぜひ現場の状況に即した形でしっかりと取り組んでいただきたい、こう考えるわけでございます。

 やはり、制度改善がなされているということは、私は数字としても大きく反映されているなと認識するんですが、この雇用調整助成金に係る休業等実施計画届受理状況というのを、一月末までのを見てみますと、これはもう大変大きな数字が出ていまして、平成十九年度一年間では、受理されたのが六百三十八事業所、一万二千九百四十人の雇用が守られたということでございますが、実は本年一月、一月だけ単月だけ見てみましても、一万二千六百四十の事業所で約八十八万人が今回受理されているということでございます。平成二十年度の四月から一月までの数字を見てみますと、百万人を超えている。百万人の雇用をしっかりと雇用調整助成金制度で守られているということで、これは本当に、今の現下の状況の中で、中小企業だけではなくて大企業も、雇用を守るという点で大いに役立っているものというふうに私は高く評価をするわけでございます。

 この数字が、一月末の数字は出ているんですが、二月も、もう相当、単月で百万人を超えているのではないか、こういった話もありまして、その正式なデータは今月末にしか出ないという話も聞いておりますが、今の二月の状況はどうなのかということも含め、そしてちょっと一月のときに気になっていたのですが、沖縄県だけ受理がゼロなんですね。私、地域の偏在があったりとか、もし広報が行き届いていなくてこれが使われていないということは、やはり行政としてはあってはならぬことであるというふうに思っておりますが、このようなことの背景というか、例えば沖縄県がゼロだということの背景をどう分析されているのかということもあわせて、最新の状況と、地域的な偏在があるやなしやということについてお答えをいただきたいと思います。

渡辺副大臣 今委員から御指摘がございましたとおり、一月、約八十八万人を対象とするような雇用調整助成金の受理状況でありますけれども、沖縄の方はどうなっているのかというお話がありましたけれども、沖縄の方では、十二月のときは受理件数が一件、一月は先ほどお話ありましたとおりゼロ件であります。その要因につきましては、製造業等の大規模な工場等が少ないというようなことが考えられているわけであります。

 二月がどのようになっていくのかということでありますけれども、今の状況を勘案しますと、さらにふえてくる可能性はあると思いますが、詳細は、まだデータを持っておりませんのでお答えできないところでございます。

赤羽委員 常識的に言いますと、確かに沖縄は製造業が少ないということはありますけれども、経済状況というと、日本で一番厳しいと言われるのが沖縄、北海道という話が出てくるわけで、私、製造業が少ないから全国で一万二千件も受理されている中で沖縄県がゼロというのは、やはり、ちょっと何かもう少し調べた方がいいと思いますよ。

 それで、愛知県が千九百九十一とあるのも、実は、我が党の幹部とトヨタの幹部が会ったときに、雇用調整助成金という制度があるからぜひ利用してください、雇用を守ってくださいという話をして、そしてグループ会社を全部集めて雇用調整助成金の制度の説明会をしたというようなこともありますし、やはり、東京で数字がゼロというような話じゃなくて、経済状況が悪くて失業率も高いはずの沖縄で雇用調整助成金が低いというのは、私、もう少し丁寧に現地を歩かれて状況を把握するべきだと思いますが、ちょっともう一回、重ねてどうですか。

渡辺副大臣 委員の御指摘でございますので、沖縄等さらにどういう原因があるのか等、再度確認をしてみたいと思います。

赤羽委員 それで、今、中小企業の皆さん、いろいろ話を伺っておりますと、この雇用調整助成金制度でよく指摘されるのが、当然なんですけれども、休業の実施計画を出してから休業が開始され、休業が終了し、それから助成金の申請をされ、その申請に対する審査がある。当初、これでやはり二カ月から五カ月程度かかると。ですから、彼らが雇用調整助成金を申請するということは、もう目の前の経営が行き詰まっている、何とかしたい、首を切るのを思いとどまって休業措置で雇用調整助成金を利用しようというところに、実際支給されるのが半年というと、これは大変役立たずな制度になってしまうというふうに大変心配しております。

 これは、雇用調整助成金についての制度改革、与党のPTでも多分申し入れがされることになり、政府としても、厚生労働省としてもこの日数の短縮というのはすごくされていると思うので、ぜひここはやっていただきたいというのが第一点。

 もう一つ、さはさりながら、審査もしないで支給するわけにはいかないので、短期間のつなぎ融資を我々はきのうも官房長官あてにお願いいたしました。中小企業庁もしくは金融庁、この二つのところにも同じ要請をしたんですが、要するに、みんなバックアップしながら雇用を守ろうという体制をつくるために、多分、金融機関の立場になりますと、何の担保もない中でお金を貸すというのはなかなかしんどい。雇用調整助成金を申請するところというのは、そんなに経営として安泰なところばかりではありませんし。ですから、多分、中小企業庁から厚生労働省にも依頼が出ていると思いますが、休業の実施計画を実行した企業のうちどのくらいの割合が最終的に受理されているのか。これが統計的に例えば九割ぐらいのデータが出ていれば、その休業実施計画を提出したということをもって金融機関はある程度の融資ができるということになると思うんです。

 そういった要望が出ているはずなんですが、そういったことで、厚生労働省もこの雇用調整助成金の期間の短縮化を図るとともに、つなぎ融資についてもぜひ中小企業庁、金融庁と協力できるようなサポートをしいていただきたいと思いますが、この二点について御答弁いただきたいと思います。

渡辺副大臣 委員御指摘のとおり、申請から審査、支給に至る期間をなるべく短縮するということで努力をしておるところでございますが、御指摘もございましたので、再度その点もさらに努力をするということで対応していきたいと思います。

 委員御存じのとおり、雇用調整助成金については、休業を実際に行った後に支給申請を行う仕組みとなっているところから、休業の開始から助成金が支給されるまでに、少なくとも現状では二、三カ月程度の期間を要するのが通常でありますけれども、休業開始後できるだけ早く支給を受けたいという声があることは承知しておりますので、その点努力をしていきたいと思っております。

 また、先ほど質問がありましたが、先般、各労働局に対して行った調査によりますと、例えば昨年十月に休業等実施計画届を受理し、その後支給申請が行われたものにつきましてはどのようになっているのかというと、二月二十七日現在で八三%の企業に対して支給が行われているということであります。

 雇用調整助成金を利用して雇用の維持に取り組む事業主に対して、経営の維持、継続に必要な資金が円滑に融通されることは非常に重要なことであると考えておりますので、関係省庁と連携の上、対策を検討していきたいと考えております。

赤羽委員 どうもありがとうございます。

 やはり、八三%というのは相当高い数字なのではないか。もちろん、制度を悪用するというのは許されないことでありますけれども、やはり使い勝手の悪い制度であってはしようがないですし、ぜひ中小企業の声を聞きながら制度改善していただきたい、こう強くお願いするところでございます。

 次に、雇用促進住宅の件について質問させていただきたいと思います。

 今回、一連の派遣切りですとか職を失われた方たちに対して政府として住宅を用意する、その中に雇用促進住宅を利用する、こういったことについては大変いいことだ、私はこう考えております。

 ただ、もうこれは御承知のように、雇用促進住宅というのは、これまでの閣議決定で、例えば平成十九年の六月二十二日、規制改革推進のための三カ年計画で、遅くとも平成三十三年度までにすべての雇用促進住宅の処理を完了する、こういった決定があったりとか、同年、平成十九年十二月二十四日、独立行政法人整理合理化計画という中で、全住宅の二分の一程度に前倒しして廃止決定する、こういった閣議決定もございます。そういった閣議決定を受けて、この機構において、平成二十年四月一日までに運営収支が赤字等の七百八十四住宅について廃止決定を行ったところだ、こうなっているわけです。今、そういったことがスタートしている。

 実は、私の地元の長田区というところにも、廃止が決定されている雇用促進住宅がございます。ここに住まれている方というのは、この前皆さんに会ってきましたけれども、七十歳を超えているような高齢者が多いということと、出ていけと言われても、今の家賃は大変安いんですね。二万一千円程度の家賃で、市営住宅に移ったとしてもかなり家賃が引き上がってしまう。市営住宅に移れるかどうかという担保は全くないわけです。市営住宅の一般の応募をしなきゃいけない。ですから、今住んでいるところの近くに市営住宅というのは余りないとか、七十を超えて新しいところに、そして家賃も高くなるようなことというのは、人生においての負担というのは極めて大変なことだなと。

 私、このことだけでも何とかもう少し改善していただきたいと考えていたところに、今回、失業された方への住宅対策として雇用促進住宅が使われると。これは廃止決定したところも開放されるということになっているんですよ。これは、今回職を失われた方が入ることができる、しかし現在入っている人は出ていかなければいけない、これはやはり政策上大きな矛盾だと思いますし、出ていかなければいけない居住者にとっては大変割り切れない話だというふうに思います。

 私は、ここは必ず政治の措置としてやはり知恵を出さなければいけない。もともとのあれは平成三十三年度までに処理を完了するという閣議決定だったわけですから、中期目標が二分の一とか三分の一という話は、そこは少し柔軟にしても大きな流れを変えるということにはならないと私は思います。

 こういった今百年に一度と言われているような状況の中で、雇用対策の一環として住宅を用意したという特別な措置をした以上、この特別な措置をしている期間は閣議決定の中期目標を少し一時凍結する。最終的には帳じりを合わせればいい話で、平成三十三年までといいますとまだ十年以上あるわけで、やりくりはできるはずなんです。それを来年とか再来年までに半分出なきゃいけないみたいな話にすると、これは大変血の通わない政治になるし、行政になるし、現場では、市町村は大変な混乱に陥るというふうに私は大変危惧をしております。我が党からも大臣あてにこういったことは何度か申し入れをさせていただいておりますので、ぜひはっきり、早く決定をしていただきたい。

 もうそろそろ市営住宅に移らなきゃいけないのかということで応募を始めているんですよね。先に出ていっちゃったら、振り返ってみると、あれ、結局出なくてよかったんだみたいな話になると、行政的な不公平みたいなことを生んでしまっては、それは最悪のケースだと思いますし、これはずっと言っているんですけれども、何かもわっとしているんですよ。これは政治決断みたいなことで早く決着しないと、新しい年度も今月で来るわけですから、今月中に何らかの方針を出すということを決めて、そのアナウンスを今の居住者に全部伝わるようにする、これをやることが大事だと思います。

 私は、特別な雇用対策をやっている期間はこのプロセスは凍結する、こういう決断が必要だと思いますが、御答弁をいただきたいと思います。

渡辺副大臣 赤羽委員も御存じのとおり、これまで雇用促進住宅については、行政改革の一環として、累次の閣議決定等により、中長期的には譲渡・廃止を進めていくことが求められておるということでありまして、入居されている方々の生活についても配慮しつつ十分な説明を行い、理解を得ながら進めていくことが大変重要だ、その点も我々はそのように思っているわけであります。

 ただ、今御指摘ありましたとおり、今大変な経済状況、雇用状況を勘案しまして特別な対策が必要である、そのような状況も生まれておりまして、今般、住居を喪失した非正規雇用労働者等の支援のための住宅に活用する、そういうことに伴いまして、今御指摘があったように、平成二十三年度までに三分の一の住宅を譲渡・廃止するという中期目標等のあり方、そして、廃止決定済みの住宅に現に入居をしている方々への退去の促進と整合性の問題について検討を進めてきているところでありますけれども、退去困難な事情のある入居者、先ほど七十歳以上で次のところを探すのも大変だというようなお話もございました。そういう退去困難な事情のある入居者に必要な配慮をすることを可能とするような形で、できるだけ早く結論を出したいと考えているところです。

 なお、その場合に住宅等の修繕等が必要なところがあれば、そのような修繕等も必要に応じて適切に行っていこう、そのように考えているところでございます。

赤羽委員 さまざまな検討がなされているということはありがたい話でありますが、できるだけ早くじゃなくて、今月中に、今月中にを目標に、どうですか、しつこいようですけれども、野党みたいなことを言っているけれども、明確に。

渡辺副大臣 そういう目標で努力をしていきたいと思います。

赤羽委員 ありがとうございます。

 次は、救急医療体制について質問を移させていただきたいと思います。

 この救急医療体制、大変な問題が全国各地域で起こっております。平成二十年度も措置をされておりますが、今回の平成二十一年度の予算にもこの救急医療の充実に関する予算措置が盛り込まれているというのは高く評価したいと思います。中でも、救急医療機能の拠点化を目指した管制塔機能を担う医療機関の整備とか救急医療を担う医師及び医師スタッフの支援ということが予算化されているということは大変重要でございまして、ぜひこの当初予算を一日も早く執行できるように国会の方も対応していただきたいし、頑張っていきたい、こう思っておるところでございます。

 この第二次救急医療体制を構築するに当たっての中心的な役割を担う、いわゆる管制塔機能を担う医療機関の選定というのは、具体的に、ちょっと細かい話ですけれども、地域地域でどのくらいの数の拠点病院をどのように決定するのか、また、当然拠点病院だけ決定してもこういったシステムというのは機能しないわけで、地元の医師会等々の支援医療機関がどういったことを求められるのか、そして、そこに対する国としての予算的な具体的な支援というのは何があるのか。端的に、事務方でも結構でございますので、よろしくお願いいたします。

渡辺副大臣 委員も御指摘いただいたように、管制塔機能を担う救急医療機関運営事業を、今回、平成二十年度第一次補正等に盛り込み、さらに平成二十一年度予算案においてもさらなる充実を図るということで対応しておるわけでありますけれども、具体的に、管制塔機能を担う医療機関については、地域の実情に応じて、今、支援医療機関等と連携して常時休日夜間等において救急医療患者受け入れ体制を確保している第二次救急医療関係機関等を都道府県が定めておるわけでありますけれども、平成二十一年度予算案におきましては全国の二次医療圏の約半数分を計上しておりまして、それができるように努力をしていきたいと思っております。

 それから、お話がありましたけれども、それを支援する医療機関の機能としましては、管制塔機能を担う医療機関への医師の応援派遣、あるいは、症状が安定した患者等を管制塔機能を担う医療機関から受け入れるための空床の確保を求めております。国と都道府県が協力して、派遣医師に対する人件費の支援あるいは空床確保に伴う負担についての補助等を行っていく予定としております。

赤羽委員 ぜひ、いい話だと思いますので、一日も早く執行できるように我々も協力していきたい、こう考えております。

 この拠点病院の話の関連で、社会保険病院のことをちょっと確認させていただきたいと思います。

 これも、私の地元の神戸市北区というところに社会保険神戸中央病院というのがございます。何回も国会で取り上げてきております。神戸市の北区というのは六甲山の裏側にある地域でございまして、その地域の地域医療の拠点病院として役割を担っておるんですが、この社会保険病院の先行きが、見通しがなかなか立たないというようなこともあって新しいお医者さんとか医療スタッフがなかなか入ってこない、内科医が不足して夜間医療ができなくなっているというような状況も実は生まれてきております。

 この神戸の社会保険中央病院というのは、経営の合理化もしっかりやっていて黒字化になっている。これは舛添大臣もよく認識をいただいておりますし、地域医療としての機能も大変重要な機能を果たしているので何としても継続させていくといった趣旨の御発言をいただいているところでございますが、今回、厚生労働大臣名の通達も発出されているというふうに伺っております。

 ここで確認したいのは、厚労省として、この社会保険病院、さまざまなこれからの行く末というか手段というのはあると思いますが、ぜひ地域にとって、地域の地元の医師会の皆さんなんかが言われているのは、やはり今まで担ってきた公的な拠点病院としての役割、これは絶対守っていただきたい。平たく言うと、自分のことしか考えないような民間の医療法人なんかに売却されるようなことがあっては、さっき言いました救急医療体制というのがぐちゃぐちゃになる。だから、こんなことをさせないように、やはり国の責任、また都道府県の責任でしっかりとした地域医療という観点に立った決定をしていただきたい、アナウンスもはっきりしていただきたい。これが大変大事なことだというふうに私は思っております。

 そうすれば、新しいお医者さんもそこに勤務するようになり、夜間医療も復活することも望ましいわけですし、そういったさまざまなことがはっきりしないので大変不安を感じておりますので、ぜひこの社会保険病院の今後の取り扱いについての基本的な厚生労働省としての考え方をここで確認をしていただきたい、こう思うわけでございます。

大村副大臣 社会保険病院の取り扱いにつきまして御質問をいただきました。赤羽委員の御地元の、御指摘のありました神戸の社会保険中央病院を初め、各地域でのそうした役割を担っている拠点病院につきまして、いろいろ御意見をいただいております。

 そういう中で、この社会保険病院、厚生年金病院につきましては、昨年四月の与党合意を踏まえて、そして昨年十月に独立行政法人の年金・健康保険福祉施設整理機構に出資をしたわけでございますが、その際、地域の医療体制を損なうことのないように十分配慮することを基本とするということをうたいつつ出資をさせていただいたわけでございます。

 それを踏まえて、三月六日にこの機構に指示をした通知の内容は、譲渡の基本的な考え方といたしましては、年金資金の損失の最小化を図ることに加えて、まさに赤羽委員御指摘のように、地域の医療体制が損なわれることのないように十分配慮するということ、それから、これまで各病院が果たしてきた地域医療の拠点的な機能を踏まえつつ、地元自治体の意見を聞いてその譲渡対象となる病院を選定すること、それから、譲渡の相手方につきましては、地方公共団体、公益性のある法人や医療法人とすることといったことを基本とした通知を発出させていただいております。

 引き続き、地域医療の拠点的な役割を果たすという赤羽委員の御指摘を踏まえて対応をしてまいりたいというふうに思っております。

赤羽委員 ぜひ、いろいろな局面ができても、最終的に国が、例えば新しい独法をつくったとしても守っていくんだというぐらいの気迫でやっていただきたいということでございます。

 もう時間が迫っておるので、用意された質問を少しはしょります。

 よく救急医療体制は医師不足と。これは、医師不足といいますが、やはり医師不足というより病院勤務医不足だろう、私はこう考えております。病院勤務医が不足している。ですから私は、当然勤務医の診療報酬も考え直さなければいけない、こう考えておりますし、これは私見なんですけれども、御答弁いただく時間がないので結構なんですが、開業する前に勤務医を二十年ぐらいやらなければ開業できないというようなことがあってもいいのではないか。これは職業自由とかいいますけれども、そんなことをやっていたら、僕は、あと診療科別の医師の定員とかもマクロコントロールするべきだと思います。これは極端な話、日本のお医者さんは皮膚科しかいないとか命にかかわらないお医者さんしかいなくなったなんということは、これは国の失政ですよ。私は、医学部の定員をふやせばいいという話じゃないと思いますよ。これは、大臣のところでも臨床研修医制度の見直しということが出ていますし、私はそこは当然ちゃんと手を打つべきだというふうに思っております。

 きょう質問したいのは、最後に一点だけ明らかにしたいのは、地元の民間病院の支部長さんにこの前言われたんですが、経済連携協定でこの前インドネシアの看護師の皆さんが来た、しかし、厚生労働省は本気でやる気があるのか、こう言われたわけです。皆さんは、これからの少子化を考えると、ああいう人たちを自分たちの、同じ医療チームのスタッフとしてやはり育成していきたい、一緒にやっていきたい、こう考えている。しかし、どう考えても厚労省は腰が定まっていない、こう言われて、調べたんですよ。確かに腰が全く定まっていないわけです。予算は一銭も出していない。経済産業省と外務省しか出していない。

 それで、もともと日本語の国家試験を受けさせるということは大変なバリアだと私は思っているし、経済連携協定の何たるかというのを全く損ねていると思う。ことしは半年間日本で日本語の研修をした。これが来年からは、四カ月は母国、それぞれの国、フィリピン、インドネシアでそれぞれやってから。日本では二カ月しかやらない。

 私は、これからの中長期的なことを考えたら、これは前向きに取り組むべきだと思いますよ。フィリピンの看護師なんて、私も行きましたけれども、世界じゅうで高い評価をされているわけですよ。日本に住まわれている外国人の方もたくさんいらっしゃるし、英語ができる看護師が拠点病院に一人いたって全然おかしくないと私は思います。

 ですから、金も出さないような行政は絶対身が入らないんですよ。予算を一銭も使わないようなのは改めて、心改めて経済連携協定に臨むという決意を最後に一言聞かせていただいて、大村さん、ちょっと大村さんの方が決意のこもっていそうな顔をしているから。

大村副大臣 赤羽委員から力強い御質問をいただきました。確かに、問題意識はまさに一緒だというふうに思っております。

 日本の医療体制をしっかりやっていくためにも、そうした経済連携協定を含めた、医療に従事している方々をしっかり受け入れていく、このことは共通だと思いますので、委員の御指摘を踏まえてしっかりと取り組んでいきたいと思います。

赤羽委員 どうもありがとうございました。以上で終わります。

田村委員長 次に、古屋範子君。

古屋(範)委員 公明党の古屋範子でございます。

 本日は、ワクチンにかかわる質問をしてまいります。よろしくお願いいたします。

 我が国では、急速な高齢化に伴う国民医療費の伸びが非常に大きく医療財政を圧迫しております。

 昨年、社会保障国民会議が最終報告書をまとめました。そこでは、必要なサービスを保障し、国民の安心と安全を確保するための社会保障の機能強化、年金、医療、介護、少子化対策に重点を置いた改革が必要とされたわけでございます。しかし、この最終報告書を見る限り、この場でも、健診ですとかあるいは予防医療、こういうものに関する十分な議論が尽くされていないのではないか、そのような印象を持ちました。

 予防といいますと、昨年四月からメタボリックシンドローム健診の実施が始まりました。私の夫も人間ドックを受けまして、あなたはメタボリックシンドロームですと非常に断定的な検査結果が我が家に届きまして、これから改善をしなければいけない、私も妻としてその一端の責任はあるというふうに考えております。受診率七〇%という目標が掲げられまして、従来の、医療イコール治療ということから、予防医療へと視点を大きくシフトしたものと思われます。

 その一方で、がん検診率につきましては、五年以内で五〇%という目標を掲げましたけれども、現在、乳がん検診は一〇%弱、また子宮がん検診も約二三%にとどまっておるのが現状でございます。

 増大する医療費を適切に配分するためには、日本でも医療経済評価を行い、治療と同じように予防医療へ予算を回す政策が必要でございます。そして、国民の安心と安全を確保するための医療として、治療はもとより予防医療にもっともっと重点を置くべきである、私はこのように考えます。

 渡辺副大臣の御所見をお伺いいたします。

渡辺副大臣 委員御指摘のとおり、予防に力を入れていくということは大変重要である、そのように認識をしております。

 厚生労働省としても、それに力を入れていくということでさまざまな対策をとっておるわけでございますが、先ほども御指摘がありましたとおり、生活習慣病対策として、平成二十年四月から特定健康診査、特定保健指導を開始したところでありまして、今後とも、健康日本21を推進していく中で、しっかりこの予防に対して力を注いでいきたいと考えておるところでございます。

古屋(範)委員 渡辺副大臣は医師でもいらっしゃいますので、この予防医療の重要性、今御答弁をいただきましたけれども、国として、また、最終的にやはり個人のそういった意識、また生活改善、そういうところまでいかなければなかなか効果は上がらないと思いますけれども、さらなる推進を何とぞよろしくお願い申し上げます。

 次に、予防医療ということを考えましたときに、健診だけではなく、予防接種が重要であると考えます。現在、話題になっております新型インフルエンザなど感染症につきましては、危機管理の一環として国を挙げて対策を講じております。こうした例はほんの一部でございまして、海外で標準に使用されているワクチンも、日本では使えないというのが現実でございます。

 先日も、ワクチン予防議連の勉強会におきまして、三重病院の神谷名誉院長より、ワクチン政策の課題についてお話を伺いました。

 例えば、近年では、小児の肺炎球菌ワクチンあるいは子宮頸がんの予防に使用されているヒトパピローマウイルス、HPVワクチンなども日本では承認をされておりません。さらに、乳幼児に重い髄膜炎を引き起こす細菌、インフルエンザ菌b型、Hibの予防ワクチンに至っては、二〇〇三年に申請をされまして、承認をされたのが二〇〇七年の一月、さらに発売は十二月とおくれまして、ようやく利用できるようになりました。

 Hibによる髄膜炎の患者数は年間約六百人と、多い数字ではございませんけれども、患者の二五%に発達のおくれや聴覚障害など後遺症が残ります。五%が死亡する深刻な病気でございます。このワクチンは、既に百カ国以上で使われております。

 時間の関係で一例しか御紹介できませんでしたけれども、海外では標準的に使っているワクチンが日本では使えない、このワクチンギャップの現状、また、このように日本でおくれている状況をどう改善していこうとされているのか、副大臣に御所見をお伺いいたします。

高井政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘のように、ワクチンは、国民の健康の維持、感染症に対する脅威の克服のために必要不可欠と考えております。厚生労働省といたしましては、ワクチンの研究開発、供給を支える環境体制を整備して、ワクチンギャップを解消していく必要があると考えております。

 平成十九年三月には、ワクチン開発、供給の主な担い手でありますワクチン産業の育成を目的といたしまして、ワクチン産業ビジョンを作成するとともに、ワクチンの承認審査に関するガイドラインの取り組みを進めているところでございます。

 さらに、ワクチンを含めた医薬品の承認審査や治験相談に対する体制につきまして、独立行政法人であります医薬品医療機器総合機構の人員を二〇〇九年度までの三年間で二百三十六名増員することにより、一層の審査の迅速化を進めたいと考えております。

 厚生労働省といたしましては、引き続き、このワクチンギャップが解消されるように積極的に取り組んでまいる考えでございます。

渡辺副大臣 ワクチン行政の推進に関しましては、公衆衛生の向上を目的とした予防接種、あるいはワクチンの有効性、安全性等を確認するための審査、そしてまたワクチンの安定供給や流通の推進といった、それぞれの目的を異にする業務がありまして、それに対応した組織となっておりまして、現在、そのような組織の中で連携等を図りながら推進に当たっていきたい、そのように考えております。

 今後とも、ワクチン行政の推進に関しましては、関係部局で十分な連携を確保しながら推進し、ワクチンギャップの解消に向けて努力をしていきたいと考えております。

古屋(範)委員 そうしたワクチン産業ビジョンを立ち上げられ、あるいは人員の強化など体制強化には取り組まれているということでございますけれども、やはりこのワクチンギャップは非常に大きなものがあるというふうに思っております。これを迅速に、体制強化をさらに図っていく必要があるのではないか、そのように感じております。

 このワクチンギャップが発生する一因といたしまして、日本では予防接種行政の担当部局というものが非常に細分化をされておりまして、責任体制が不明確であるということが指摘をされております。

 アメリカでは、一九六四年に予防接種の実施に関する諮問委員会、ACIPが設立をされまして、多くの関係者による議論の結果、ここで決定される指針は国の予防接種政策に反映されていくという大変重要な役割を担っております。

 また、英国では、厚生省にワクチン部があり、予防接種施策の決定、状況の把握、質のよいワクチン製剤の選択、さらにはワクチン代はすべて国が負担するなど、ワクチンの重要性を深く認識し、責任部署の一元化を図ることによる施策、意思決定の迅速性、高接種率、そしてワクチンに費やす医療費のスリム化をうまく行っております。

 このように、海外では、新規ワクチンの接種年齢など、簡素な組織で意思決定を行うシステムが構築をされておりまして、限られた財源を効率的に配分するための医療経済評価が利用されております。

 一方、日本では、感染症の疫学は国立感染症研究所、ワクチンの許認可は厚生労働省医薬食品局審査管理課、予防接種の運用は厚労省健康局結核感染症課、ワクチン市販後の調査は、定期接種分は厚労省結核感染症課、任意分はメーカーや研究者など、それぞれが担当しておりまして、総合的な施策を議論する場が確保されていないというのが現状でございます。

 私は、ワクチンは医療経済性が高く、医療費削減が可能であるということも考えますと、国家の公衆衛生また感染症予防対策としてワクチンを位置づけることが必要でありまして、国の果たす役割は非常に大きいと考えております。

 そこで、今後の予防接種体制を整えるためには、まず関係者が一堂に会して議論をする場をつくるべきだと考えます。そして、新しいワクチンの導入や調査、ワクチンの安定供給、普及のための施策など、総合的な政策をつくることのできる予防接種体制を整備すべきと考えております。将来的には、ワクチン政策全般を担う部局の創設が必要と考えておりますけれども、この点に関してはいかがでございましょうか。

渡辺副大臣 先ほども少し触れましたけれども、ワクチンの行政に関しましては、産業振興という面と、安全を守るという意味での規制を担う組織がありまして、それが一緒だと課題もあるということで分離をしておるわけでありますけれども、委員御指摘のとおり、さまざまなワクチンギャップ等を改善するための体制も求められておりまして、そういうそれぞれ分かれておる部局がありますけれども、その中で情報を互いに共有する、あるいは、それぞれが開催する会議で他の部局の者も一緒に参加をして情報を共有する、そしてまた、さまざまな意味で連携を図っていくということで対応しているところであります。

 先ほど御指摘をいただいたような課題を克服するために、さらに連携を深めて頑張っていきたいと思っております。

古屋(範)委員 さまざまな理由はございましょうが、やはりどこか司令塔となってリーダーシップを持って牽引をしていく、それが必要だと思っております。ぜひ、副大臣、推進の方、何とぞよろしくお願いいたします。

 次に、Hibワクチンについて質問をいたします。

 このHib、二十人から百人に一人の割合で鼻とかのどにいる菌でございまして、髄膜炎や呼吸困難の原因であるのど炎症などを引き起こして、抵抗力の弱いゼロ歳児がかかりやすく、保育園などで他の園児からせきや接触で感染するケースが多いと言われております。

 このHibにつきまして、WHOは一九九八年に、五歳未満の小児、特に乳幼児のワクチン接種を勧告しております。そして、二〇〇六年に公表いたしましたポジションペーパーにおきましては、二〇〇六年時点で百八カ国でHibワクチンは小児予防接種計画に組み込まれ、Hib感染は激減した、しかし、最貧国にほんのわずかしかワクチンが届いていない、安全性と有効性の示された結合Hibワクチンは世界じゅうすべての乳幼児の予防接種計画に含まれるべきであるとされております。

 さらに、日本では年間約六百人の乳幼児が髄膜炎を起こし、うち約二十五人が亡くなり、百二十五人が、寝たきりになったり、けいれん、あるいは難聴や発育遅滞など、後遺症が残ると言われております。日本小児科学会の方々からも、髄膜炎を見分けるのは難しく、進行が早いため、ワクチンによる予防が一番であると訴えられております。

 この世界百カ国以上で使われて効果が認められているHibワクチンは、日本では二〇〇三年に申請され、二〇〇七年一月にようやく承認されたわけですが、発売が十二月になるなど、長い時間がかかってようやく利用できるようになりました。

 効果のあるワクチンでありますが、こんな遅い発売の上に、任意接種ということは、接種しない子供たちが感染する可能性が残ってしまうわけであります。さらに、ワクチン接種の費用が一回七、八千円程度、四回の接種で約三万円かかってしまう、非常に高額でもございます。任意接種で、親の経済力や情報の有無で子供の健康に格差が出てしまうおそれがございます。幼い命を守る迅速な対応が急務でございます。

 私も、地元で歩いておりましても、お母様たちからHibワクチンの御要望を多く受けます。Hibまた髄膜炎の怖さ、またワクチンの重要性を認識すべきだと考えます。後遺症で苦しむ子供や親がこれ以上ふえないよう、WHOが提唱しておりますように、日本でも早急に定期接種として予防接種法に位置づけるべきだと考えますけれども、いかがでございましょうか。

渡辺副大臣 委員御指摘のとおり、インフルエンザ菌b型、Hibと略されておりますけれども、それによる髄膜炎で約一五%の死亡あるいは重症化が大きな問題となっておるわけであります。

 このHibワクチンの予防接種法上の位置づけにつきましては、平成十七年三月に取りまとめられました中間報告書において、「疾患の重篤性、発生頻度を充分に勘案した上で、今後、わが国において更に有効性、安全性、費用対効果等の知見を収集する必要がある。」そのようにされておるわけであります。

 各国で使用されているということもありますので、我が国でも昨年十二月に国内販売が開始されたこともありまして、今後、我が国における有効性、安全性等の情報をさらに収集しまして、定期の予防接種として位置づけるかどうか評価を行っていきたい、そのように考えております。

古屋(範)委員 確かに、安全性に関しましてはしっかりと見ていかなければいけないことは承知をいたしております。しかし、WHOでも安全性と有効性が示されておりまして、Hibワクチンが推奨されて、さらに、欧米などでは公費負担で接種をされ、実際にほぼ全員の子供たちが受けております。

 さらに、米国ではHibワクチン導入後罹患率が百分の一になるという結果を示しております。二〇〇七年、米疾病対策センター、CDCによりますと、五%から三〇%の人で接種した部分が十二時間から二十四時間後にはれたり赤くなったりすることはあるそうですけれども、全身の副作用はまれと報告されております。

 そして、三重病院の神谷名誉院長も、ワクチンの接種率が高くなれば日本からほぼなくすことができる病気であると指摘をされております。

 このHibワクチン、一刻も早い定期接種の決定をお願いしたいと重ねて要望しておきたいと思います。

 また、一方で、茨城県ではこのHib予防ワクチンが発売されて以来、希望者が接種を始めましたけれども、供給されるワクチンが少なく、接種の見通しが立たないまま待機する乳幼児が後を絶たず、ワクチンの不足に苦慮しているとの報道がなされております。私も聞いたところでございますが、任意ワクチン開始後、一カ月前にHibで重篤となった子供の報道がございまして、ワクチン接種を希望する親が多くなった、このことも関係しているかと思われます。

 保育園に入園される子供たちが一年の中で一番多いのが四月でございます。大阪でも小児科医の先生方が苦悩されているということを聞いております。現在、ワクチンの供給が追いつかず、大きな問題となっています。不足の現状ですが、二カ月分の予約注文が十四万本入って、メーカーの手元にワクチンが六万本程度、それで二月分は六月ぐらいにかけて分けて供給する、三月以降の依頼は月五万本程度に制限をする、そういったメーカーの方針で現場が大混乱をしている。定期化のゴールを厚労省、国が示してくれればより早い問題解決につながると思っているとの御要望もいただいております。

 定期接種化するためのデータ収集は、やはり今の接種率を上げることが必要なのではないかと思います。そして、その接種率を上げるためには、やはりそのもととなるワクチンが行き届かなければいけないわけでございます。厚労省は、現場が混乱しないよう、ワクチンの供給体制を整えるべき、また、希望者への接種ができるよう、販売元にすべて任せっきりにするのではなく、供給不足の速やかな解消に努めるべきと考えますが、いかがでしょうか。

高井政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のHibワクチンでございますけれども、平成二十年、昨年十二月に、サノフィパスツール第一三共ワクチン株式会社から販売が開始されております。同社からの報告によりますと、販売前の予測を大幅に超える需要が生じているために、御指摘のような供給量の調整を行っているというふうに聞いているところでございます。

 厚生労働省といたしましては、この製造販売業者に対して増産体制の整備を求める、また、薬事法に基づく検定の迅速な実施など、可能な限りの対応を図っているところでございます。

 今後とも、安定供給が図られるよう積極的に対応してまいりたいと考えております。

古屋(範)委員 やはり関心も高く、需要が非常に大きくなっているということでございます。ぜひ国も最大限の努力をしてこの供給を満たしていっていただきたい、このように重ねて要望しておきたいと思います。

 さらに、このワクチンは、医療経済性が高く、医療費削減が可能になるということでございます。予防医療の中で、最近報告されているワクチンの経済効果は大変に注目をされております。例えば神谷先生の報告によりますと、Hibワクチン接種率九〇%の条件下で約八十二億円もの経済効果があるとされております。また、自治医大さいたま医療センターの今野先生によりますと、子宮頸がん予防ワクチンにつきましても、十二歳女児全員に接種した場合、約百九十億円の社会損失が抑制されると報告されております。

 この子宮頸がんは、女性特有のがんとして乳がんに次いで二番目に多い罹患率、年間約八千人が新たに罹患し、約二千四百人が死亡しております。特に近年、二十代、三十代の若い女性の部位別発症率では第一位となっております。

 子宮頸がん対策として、私たち公明党は、検診率向上によるがんの早期発見とともに、子宮頸がんの罹患予防、すなわち子宮頸がん予防ワクチンを取り入れることが重要であると政策提言、また、麻生総理、舛添大臣への申し入れ、勉強会の開催、街頭での訴えなど、一貫してこの子宮頸がん検診率向上と予防ワクチンの早期承認を求めてまいりました。

 この予防ワクチンは、既に世界百カ国以上で承認、推奨されております。日本では二つのワクチンが承認申請、治験中と聞いております。既に日本女性を対象とした臨床試験の結果も出る予定と伺っていたのですが、このデータができ次第、他の医薬品に優先して審査をしていただけることになっていると昨年の参議院予算委員会で大臣が答弁をされております。一刻も早い承認が待たれておりますけれども、現状と今後の対応についてお伺いをいたします。

渡辺副大臣 御指摘の子宮頸がんワクチンにつきましては、二つの製薬企業から薬事法に基づく承認の申請が出ているところでありますけれども、両社では、子宮頸がんの原因と考えられる長期間のウイルス感染を予防する効果があるかどうかについて国内で治験を実施しているところでありますが、そのうちの一社につきまして、昨年十二月に治験が終了し、本年の二月末にその結果が資料として提出をされたところであります。現在速やかに審査を行っておりますが、今後もさらに早く審査が終了するように努力していきたいと思っております。

古屋(範)委員 この子宮頸がんワクチンの早期承認、一刻も早く決定されますよう重ねて要望しておきたい、このように思います。

 英米では八、九割の女性が子宮頸がんの検診を受けているということでございます。しかし、日本ではわずか二〇%前後と低いことは先ほど指摘したとおりでございます。

 我が国の若年女性における子宮頸がんの発症率の増加、また検診率の低迷など現状を考えますと、やはり迅速な審査のもと、一日も早い承認が求められております。私たち公明党としても、草の根の運動でアンケート調査を行うなど受診率のアップに今努めているところでございます。

 この子宮頸がん予防ワクチンの使用が可能になっている諸外国で公費負担の推奨接種も始まっており、例えばオーストラリアにおきましては、十二歳から二十六歳までの女性が無料で接種を受けられる環境が整っております。

 また、社会を支える女性ががんに罹患しないということは、未来を担う子供の命を守ることと同様、社会的価値が非常に高いものでございます。中高年になってもがんに差別はございませんけれども、やはり若い女性の罹患率が高いこの子宮頸がんというものは、非常にまた他のがんとは違った意味合いを持っている、このように思います。女性の命を守り、また健康を維持するということは、将来的な出生率にも影響してくるわけでございます。

 そこで、医療費を削減できる子宮頸がんワクチンを国家のがん対策かつ感染症予防対策として組み入れて、がん根絶に向けた国の政策とすべきと考えます。そして、より多くの女性に公平な接種機会を提供できるよう、承認がまず先ですけれども、これがなされた後、ぜひ接種への助成、必要な対応を検討すべきと考えます。そして、各自治体における格差を生まないための財源の確保も必要であるというふうに考えております。

 最後にこのことを副大臣にお伺いいたします。

渡辺副大臣 先ほど審査中であることはお話を申し上げましたけれども、仮に承認された場合でありますけれども、このHPVワクチン接種に対する公的助成については、まず日本におけるHPV感染症の発生動向やHPVに感染した方からどの程度子宮頸がんを発症していくのか、その割合等の実態を十分に把握することが必要であるということと、それからHPVワクチンの日本人に対する有効性あるいは安全性を把握する必要があるということ、そしてまた費用と負担のあり方及び医療経済学的な評価を行う必要があることなど、さまざまな対応が必要でありますので、十分それらを検討していく中で、そういうことを検討していきたいと思っております。

 なお、御存じのとおり、子宮頸がん対策については、このワクチンが大変予防で重要であるという認識を持っておりますけれども、そのほか検診等、そういうのを充実しながら総合的な対策を進めていくということで対応をしていきたいと考えております。

古屋(範)委員 ありがとうございました。

 Hibワクチンの定期接種、また子宮頸がんワクチンの早期承認、公費助成、ひいては日本全体のワクチンに対します体制整備、これを強く求めまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

田村委員長 次に、柚木道義君。

柚木委員 民主党の柚木道義でございます。

 大臣におきましては、大変ハードスケジュールの中ではございますが、ぜひよろしくお願いをいたします。

 まず、二十一年度介護報酬改定についてお尋ねをさせていただきます。

 資料の一ページ目をごらんいただきますと、昨年度の麻生総理大臣の官邸における記者会見の配付資料の二番目、一番目が生活者対策として「定額減税等」と挙げていて、これは国民の経済対策の概要という位置づけですが、雇用よりも優先度の高い二番目に「介護報酬 月二万円アップ」と掲げておられます。そして同時に、「介護人材を十万人確保」という形で、麻生政権のまさに経済対策の一つの目玉といってもいいこの対策を掲げられているわけでございます。

 二枚目を見ていただくと、翌日の、今度は舛添大臣御自身の閣議後の記者会見の中で、アンダーラインを引いておりますが、「介護保険料三%」、これが「ラフに言うと、」というふうに言われてはいますが、「現場で働いている方の月給が二万円くらい上がるかなという感じですので、これは一つの介護の現場に対する答えだ」とおっしゃっているわけでございます。

 ところが、一昨日の参議院の予算委員会における鈴木寛委員への舛添大臣の御答弁を拝見していると、どうもトーンダウンしているようにも聞こえてなりません。総理が約束をし、そして大臣御自身も明確に約束をされている中で、大臣、これは本当に三%の引き上げで二万円の報酬アップを実現していただけるんでしょうね。お答えください。

舛添国務大臣 もともとの問題意識は、介護の現場で働く方の処遇、これを何とかよくしないといけない、離職率も高い、さまざまな問題があるということで、この生活対策において少しでも上がるようにということで、そしてそこに「ラフに言うと、」と、会見の場ですから、自動的に上がるわけではなくて、これがもし介護の現場の働く方々の賃金ということに換算すれば約二万円という言い方を申し上げたわけでありまして、事業所によってはそれ以上上げるところがあったりそれ以下であったりというのはあり得ると思いますけれども、いずれにしましても、介護従事者の待遇をさまざまな総合的な観点からよくするということでありますし、それに加えまして、モデル事業を事業所について展開するというようなことであるわけでございますので、とりあえずはこの〇・三%の引き上げということで……(柚木委員「三%」と呼ぶ)失礼しました。三・〇%の介護報酬改定ということで、さらに先に進めたいというふうに思っております。

    〔委員長退席、上川委員長代理着席〕

柚木委員 大臣、もっと介護の現場で働かれている方々に、そしてまた利用者の方々に、本当にこの間、寿退社は男性の話とか、潜在介護士がこれだけいてどうやって現場に帰ってきてもらうのか、いろいろな問題がある中で、ここはもっと明確にお約束をいただきたいんです。

 しかも、今回の三%プラスというのは、過去二回マイナス改定がある中で、まさにそれを取り戻せるかどうかというレベルの話だということで現場の方はおっしゃっているわけですよ。それにもかかわらず、三%増で二万円アップというふうに言われるわけですから、大臣、これはやはりちゃんと政治が、政府が責任を持って実現するということをまずお約束いただけないと、この先の議論に入れないんですよ。

 ぜひもう一度、明確に御答弁ください。

舛添国務大臣 介護報酬のシステム、これは診療報酬、医療の場合も同じですけれども、事業所に対してこのアップ分をお支払いする、そこから先は事業主がどういう形で自分のところで働いている従業員にこれを配るかという問題でありますけれども、先ほど申し上げたような経営指導をやったり、それからさまざまな形で加算措置ということをやって、今までも、例えば有資格者をふやしたりして加算措置をした、これはほぼそのまま賃金にはね返っておりますので、そういう総合的な努力で、今の枠組みの中で指導をしながら、ぜひ私の思いが遂げられるように努力をしたいと思っております。

柚木委員 思いが遂げられるかどうかというのは、大臣の思いというよりも、やはり制度をどうするかということなんだと思うんですね。

 私たち民主党は、資料の三ページをごらんいただきますと、介護人材を確保するという意味で、介護労働者賃金引き上げ法案、これはまだ仮のペーパーではございますが、この中で、介護報酬七%加算、そして政府の三%と合わせると合計一〇%、財源も必要財源四千三百億円、そして、これによって新たに三年間で四十万人の雇用、これは求職者支援法のメニューとリンクして行う、我々はこういった形でこういったものをしっかりとお出ししているわけでございます。

 大臣、先ほどのような心もとない御答弁をいただくくらいであれば、我々民主党の介護人材確保特措法、来週には出す予定も現在検討しております。ぜひ政府としても、こういったさらなる介護報酬の引き上げ、予算措置というものを、今政府が検討している例えば経済対策、こういったものの一環としても、セットでやっていただくとか、そういうことをぜひお考えいただけませんか、いかがですか。

舛添国務大臣 今、資料の三を見させていただいて、これは、法案を現実に御提出いただいた暁にまたきちんと検討させていただきたいというふうに思いますが、今回、一般会計から補正でやるということでしたけれども、要するに、本来は保険料という形で見るわけで、そうするとそれは国民負担の増加につながりますから、保険料と給付の見合いをどうするかという一つの問題は残ると思います。それから、今、ここの紙だと四千三百億円という、これは恐らく、明記はしてありませんが、仮に一般財源とすると、四千三百億円でその財源をどうするか。

 ですから、まとめますと二つの問題。今言った、保険料でやる場合、そうじゃない場合の負担をどうするか。それともう一つは、ほかの分野で働いている方々とのバランスも考えないといけなくて、福祉関係だと例えば保育士の皆さん方との給料の比較というようなこともありますので、そういうことも念頭に置いて、民主党の皆さん方の御提案があれば、それはまた真摯に検討したいと思っております。

柚木委員 我々は一般財源から四千三百億円ということで予算規模を掲げておりますが、今大臣がおっしゃったような問題点についてもまさに乗り越えて、そして実現をするという方向を、今後、さらなる経済対策の中で、ぜひ大臣もここはリーダーシップを発揮していただいて、お取り組みをお願いしたいというふうに思います。

 そして、そういう意味では、一つアイデアというか御提案で、ぜひ御検討いただきたいと思うんですが、今回、産科の医療の問題で、直接産科のお医者さんたちに分娩手当金という形で、新しいやり方、取り組みをされているわけですよね。実は介護事業所においても、経営実態調査、実際にはキャッシュフローの部分は大変厳しくて、黒字倒産というようなことにもなっているわけですよ、なり得るわけですよ。そういう中で、実態調査云々のそういう次元から、今回めり張りをつけた加算、それも当然必要なことですが、それとは別枠で、例えば行政から介護職員に直接手当てするような仕組みを、例えば分娩手当金のような仕組みを使って介護の分野でもぜひ御検討いただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

舛添国務大臣 これは、今委員御指摘のように、救急医療が大変だ、特に産科、小児科。それで救急医療に携わっている勤務医の方々の御負担を少しでも軽くしようということで、直接的な財源措置として、例えば、一回患者さんを受け入れると五千円という形でこの前手当てをいたしました。そういう方式でやるのか、それも一つの考え方であると思います、今委員がおっしゃるように。

 ただ、例えば産科の中でも、ハイリスク分娩加算というのを診療報酬改定で入れました。それによって、恐らく大きな病院の産科というのは、これは現場の聴取をしてみますと赤字が黒字に変わっているということですから、まさにハイリスク分娩加算のような形で、加算という形での事業所の指導をするのも一つの手だと思います。

 今までのところは後者でしかやっておりません。ただ、前者を使うこともそれは一つの政策の手段として考え得るわけで、また委員の御意見も念頭に置きながら、そういう道もあり得るということで検討させていただきたいと思います。

柚木委員 ありがとうございます。

 介護事業主の方々は、実際にはかなり、今回の三%の加算では本当に給料を上げられるかどうか、ばらつきが出る、みんな期待している、なのになぜ上がらないんだ、そういう部分についても大変心配されておるわけですから、今、こういうやり方も検討するとありました。これもぜひ御検討いただけるということですからお願いをしたいですし、何よりも、この今ともりかけている介護の現場の希望の光を消さない改定であっていただきたいということをお願いし、そうお願いをしておきながら、さらにちょっと厳しい話題を質問させていただかなければなりません。

 次は、四月からの要介護認定の基準厳格化についてお尋ねをいたします。

 基準厳格化というと言葉は何やらどういうことなのかなということなんですが、一言で言えば、介護切りあるいは認定切りということにつながるわけです。

 そこで、大臣、今回のこの経緯はいろいろ私も聞いておりますが、そもそも、今回の基準変更を介護保険利用者の一体どれぐらいの方が現段階で知っているとお考えですか。直観的でいいので、お答えいただけませんか。

舛添国務大臣 それは、直接一人一人聞いたわけじゃないので、ちょっと今お答えに窮しております。ちょっとわかりません。

柚木委員 答えに窮されるはずなんですね。現場で働いている方々ですら、突然、調査員の方々が二月になって研修のようなもので教えてもらって、どういうことなんだと。そして、もうこの三月に入って、四月から、来年度から。一体これで本当にやれるのか、こういう状況なわけですから、ましてや、利用者の方々に納得のいく説明なんかできているはずもないんですね。こういう中で、今回、このようなまさに認定切り、介護切りにつながるような基準の変更が行われる。

 私もいろいろな話を聞きました。要介護認定調査検討会をずっと傍聴されていた方々、そういった方々に聞いても、そもそもこの基準変更は、本来は、訪問調査項目の削減が一つ、それからコンピューター判定のロジックの変更、この二点については検討会で検討されてきたわけですが、判断基準の変更については議論をされていない、そういうお話を私は複数聞いております。

 こういった経緯も含めて、厚労省の担当官から幾つかの場面でおわびの言葉もあったように聞いておりますが、大臣としても、こういう不透明な経緯に対して、利用者や介護者、事業者の皆さんへおわびをいただくという気持ちはありませんか、いかがですか。

舛添国務大臣 介護全体について私の直属の検討会でも行っておりますし、いろいろな見方があるし、介護を受ける方々の状態というのは、私もよく現場を知っていますが、百人百様であります。

 ただ、今回についてどういうような観点から判断基準を変えたかというのは、一つは、もう委員御承知のように、介護技術の進歩を反映させたいということがあります。それからまた、自治体によるばらつきもなくしたい、そういうことがあります。介護を抑制したいからとか介護切りをしたいからとかそういうことでやっているわけではなくて、例えば、実際に介助が行われている場合は介助ありで新しい場合も古い場合も全然変わらないんですけれども、実際に介助が行われていないときはきちんと介助がないんだということを書く。例えば、一週間寝たきりの老人がいる、何にもされないでおけば褥瘡だって何だって起こるわけですから、そのときに、やはり介護は必要だから介護しなさいということを、介助がないよということを指摘することによってやることができるわけですから、そういう細かい指導をやりながら、そして私も、先ほど申し上げたような数字をどれだけの人が知っているかわかりません。利用者に対しての周知徹底の不足があれば、これはもう全力を挙げてやらないといけないと思っていますので、そういうふうにやりたいと思っております。

柚木委員 大臣は介護切りをやりたくてこういう変更をやっているんじゃないとおっしゃいますが、現実に、そもそも、きょうはつけていませんけれども、厚労省からいただいている「要介護認定制度の見直しについて」、これでモデル事業、いろいろここに書いていますよ。確かに、二次判定で重度化に変更になるケースもありますよ。しかし、実際には、軽度化に変更されている方々も一割、二割といらっしゃるわけですよ。

 ですから、問題なのは、きょう、五ページ目の記事に具体的な方も載っておりますのでおつけしておりますが、東京新聞の「認定軽度化「介護切り」」、ここの一番下の「サービス減」のところをごらんいただければ、こういう方がいるということははっきりしているわけですが、最後のパラグラフ、二番目。

 車いすでひとり暮らしをしている東京都の女性、七十六歳。昨年九月の認定更新時に要介護二から要支援二に三段階も下げられ、希望していた老健施設への入所が不可能になった。身体障害者一級で、全身にしびれや痛みがあり、立つことができない。女性は、車いすを自力で動かせるので歩けると判断され、要介護から外された、以前より体調は悪いのにと悲痛な声で訴えたと。こういう声が全国から既に上がってきているわけですよ、大臣。

 厚生労働省は、いやいや、これはちゃんと主治医の意見書、特記事項等を反映されてきっちりと判定がされる仕組みになっていると言われますが、現実にはそうでない部分が多々起こっているし、実際に重度化の部分も二次判定で出てくるでしょう。しかし、むしろ問題なのは、軽度化される方々をどうするのかということを考えていただかないとならないのではないでしょうか。

 そこで伺いますが、厚労省も説明される主治医の意見書、これはそもそも、今回、調査項目が八十二から七十四に削減される、その削減された調査項目は主治医の意見書に反映されるから不要だということなんですが、現行のその主治医というのは我が国では欧米のホームドクターのようには必ずしもいっていないわけで、患者さんは入院、通院をされる際のお医者さんに意見書を頼むケースが当然多くなるわけです。そこで、当然、お医者さんは、その患者さんを病院や診療所では診るでしょう。しかし、では家で患者さんが実際どういう生活をされているのか、当然詳しくはわからないわけです。

 そんな中でのこの意見書ですから、もちろんきっちりとやってくださるお医者さんも多いと思いますが、そうでなくても多忙なお医者さんが、おくれがちな意見書を、今回削減された項目も含めて書く、あるいは利用者や調査員の方にしてみれば書いてもらう、そういうことには大変な無理が生じてくるのではないかと思うわけですが、大臣、そういう御認識、いかがですか。

舛添国務大臣 私自身、介護の経験がありますし、今でも時間があれば介護の現場を見ております。

 当然、委員御承知のように、コンピューター判定もありますけれども、きちんと二次判定で審査会、これはドクターもナースも入ってきちっとやるわけですから、今御引用なさった記事にあるようなことばかりではなくて、逆のケースもあり得ると思います。

 それから、主治医の意見書は、例えば私が現場を見たときには、本当に訪問して親身に書いてくださるお医者さんもいるので、そういうお医者さんを励ますことをやるべきであって、お医者さんはそれが仕事ですから。ですから、いろいろなこういう報道されたようなケースに対して、やはり悪いところがあればみんなで直していかないといけない。

 そして、まさに今の東京新聞ですか、その例にあって、悲痛な声が聞こえてくると。これは、今度の四月一日より前の話ですから、こういうことに対してきちんと対応できる、例えば車いすがどうだというような話になったときに、それは自治体も含めて、二次判定の段階で、こういうことじゃありませんよということ、そういうことのためのものでありますので、決して、あえてこれを軽度に審査、認定し直そうとか、介護切りをやっちゃおう、そういう意図ではないということは繰り返し申し上げておきたいと思いますが、また実態について改善すべきところがあれば、これはきちんと対応したいと思っております。

    〔上川委員長代理退席、委員長着席〕

柚木委員 改善していただく部分についての検証の部分はこの後お尋ねしますが、その前に、今回のこの判定方法、確かに大臣がおっしゃるように、必ずしもこういう場合ばかりじゃない。それは私も先ほど言いました。しかし逆に、軽度化される方々に対してどうするのかという視点がやはり抜け落ちているんですね。

 そこでお尋ねしますが、今回変更される認定方法が、大臣がよく御答弁の際にもエビデンスということを本当に口癖のようにおっしゃいますけれども、本当に科学的な手法と言えるのかどうか、このこともあわせて今後検証していかなきゃいけないと私は思うんですね。

 御案内のとおり、この現行のシステムは、在宅の高齢者の認定基準ではなくて、施設居住の高齢者対象の高齢者介護実態調査に基づくということでございますから、実際には今、在宅が七割なのに、こういう状況で認定方法をシステム化している。

 このこと自体が実は非科学的と言われても仕方がないと私は思うんですが、それならば、せめて在宅に合わせた判断変更がきっちり担保できる仕組みをまずはつくってから、こういう認定の変更を行うべきだと私は思うんですね。実際に、利用者の方、介護現場の方、事業者の方、だれも納得できないんですよ、今の状態で。実際に調査員の方々が説明することができていないんですね。それでも、これは本当にやってしまうのか。こんなことを本当に許してもいいのか。

 そもそも、〇六年改定のときでも、要支援に軽度化されて、利用者や御家族の方に説明できなくて、良心の呵責やストレスで多くの調査員がやめられている。介護の現場からいなくなっている。今回、もっとひどいと言われているんですよ。そうでなくても介護人材が不足しているこの状況にあってですよ。

 そこで、私、大臣にぜひお願いします。この認定基準変更、確かにシステムのソフトをもう配ったりしているでしょう。しかし、三月まではこの現行システムでやっているわけですから、せめて、例えば三カ月でも半年でもいいですよ、延期をして、その間に、この検討会だけではなくて、外部の対人援助のサービスの専門家の皆さんの意見等を、第三者の方々も入れて、そして透明なプロセスで、だれからも信頼、納得の得られる基準の再設計を、延期してでも行うべきだと私は思いますが、大臣、いかがですか。

舛添国務大臣 今もう三月、三分の一終わっております。介護の現場、これは市町村ですから、市町村で今、いろいろなソフトの変換を含めて既に進んでおります。

 確かに、委員おっしゃるように、在宅の場合というのは、その方々の家族環境、家族の介護力含めて非常にばらつきがありますので、本当にこれはケース・バイ・ケースで一人一人細かくやらないといけないというふうに思っています。さまざまな問題点が出る可能性があるということを今御指摘でございます。

 いずれにしても、今の市町村の進行状況を含めて、四月一日からこれはスタートさせていただき、しかし、フォローアップの検証というのは必ずやっていきますので、そういう過程で必要な変更があればまた加えたいというように思っております。

柚木委員 私はとても納得しかねます。これは私は、この質問だけではとても納得できないので、引き続きやりとりをさせていただきたいと思いますが、ちょっとほかの質問もしたいので。

 せめて、大臣、検証をやると言われていますが、ある報道によれば、昨日、この検証を早ければ七月にも公開の場で行う方針を厚労省は固めた、そういう報道が出ているわけですよ。新制度の留意事項についても三月中に通知する、こういうことを言われているわけですよ、厚労省の担当官が。

 私は、七月じゃ遅い、もっと早くできますよ。四月の最初の申請が出た時点で、そのデータが集まって、それを分析した時点でやれば、七月よりもっと前倒しでできるはずですよ。ですから、前倒ししてこの検証を公開の場でやり、そして結果を公表し、そして早期の見直しをやると、大臣の口からしっかり御答弁いただけますか。

舛添国務大臣 検証し、公開の場できちんとそれをお知らせするというのは当たり前のことなんですが、四月から始まって、四月の認定が普通どおりいけば全部の集計のデータが七月なので七月ということでございますけれども、それは一日でも早く前倒しできれば努力をしたいと思います。

柚木委員 まさに今回の導入のときに極めて少ない数で、サンプルでやっているわけですから、まさにそういうサンプル等で早目に調査結果を出していただいて、早目の改定をすると今おっしゃっていただいたように、前倒しでとおっしゃっていただいたわけですから、七月より早い見直しが、もしこれが四月から導入されるとすれば必ず行われるというふうに御答弁をいただいたと思い、次の質問に入ります。

 この後医療もやりますが、介護の問題を引き続きしばらくお尋ねをさせていただきます。

 この介護の施設の今後のあり方、御承知のように、医療から介護へ、あるいは施設から在宅へ、こういう方向性の中で今一つ問題になっているのは、介護保険の適用施設における医療提供のあり方、これについても大臣は御存じだと思います。

 私は、確かに、医療機関と介護施設との連携、推進、医介連携とか病介連携とかいう言い方もしますけれども、そういうことは必要だと思います。しかしながら、例えば病院と在宅との中間施設と位置づけられている老健施設、ここで、当然介護施設だけれども、お医者さんがいて必要な医療も受けられる、こういう施設の役割は確かに大変大きいと思います。

 しかし、例えば、この老健において日常的な医療というものは、当然包括の中でやってもらうという方向はいいんですけれども、医療の進歩等によって、一部では高額な治療や薬も入ってきております。例えば透析のような高額の医療、あるいは一部の抗がん剤、さらには、アリセプトという薬だと伺っていますけれども、認知症の薬等、大臣も御存じだと思います。

 そこで、このような医療が利用者に提供できるような体制をぜひつくっていただきたいんです。大臣も御認識のように、医療と介護の区分も不明確な部分があります。ですから、例えば来年の診療報酬改定、あるいは二十四年のダブル改定、こういったものに向けて、ぜひ、老健施設あるいは介護保険施設で提供する医療行為について、いま一度きっちりと整理をして、必要な医療行為がきちんと算定できる制度設計を行っていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

舛添国務大臣 その点、全く委員と私は認識を共通しております。

 それで、今委員がおっしゃったように、常駐しているお医者さんが一般的に診れる、これは介護保険でカバーしますけれども、受ける人は一人なので、介護であれ医療であれ命を救っていくというところが大切ですから、例えば今言及なさいました人工透析については、これは今でも医療保険の請求が認められるので、特別な措置が必要なときには、専門家の意見も聞き、それから関係者、特に今老健施設のことをおっしゃいましたけれども、アリセプトの例なんかもまさにございます。そういう御意見をいただきながら、医療サービスできちんと提供できるように、そういう体制は整えたいというふうに思っております。

柚木委員 透析等算定できるとおっしゃったんですけれども、実際には持ち出しになっている部分もありますので、そこも含めて、今おっしゃった方向性でぜひよろしくお願いいたします。

 もう一つだけ本当は聞きたかったんですけれども、これはもう御指摘だけにしておきます。

 二十四年のダブル改定に向けてということで今申し上げましたので、いわゆる転換型老健、これと現行の老健、ここにおいての医療保険の算定に差が出てくるというようなことにもしなるとしたら、国民の皆さんから見たときに大変わかりにくいんです。ですから、そういうダブルスタンダードにならないようにあわせて検討いただくことをお願いして、次の質問に入ります。

 診療所のオンライン請求の問題でございます。

 私自身も、この間、地域医療の崩壊を防ぐという観点からもこの義務化の日程等については、これは見直すべきであるということをやりとりしてまいりましたらば、どうも政府・与党の中においても、今回、診療所のオンライン請求の義務化日程を延期する方向で検討しているというふうにお聞きをいたしました。

 ですから、私も診療報酬のオンライン請求の必要性を理解しております。しかし、現実的にもしこの義務化が強行されるのであれば、今後段階的に義務化されていくわけですが、しかし、これを実際診療所でやった場合に、約一割の医院、お医者さんが廃業を考えているというようなことでございますので、まさに地域医療の崩壊を防ぐためにも、もう新年度目前のこの段階ですから、ぜひ大臣御自身の御答弁から、このオンライン請求完全義務化の日程の延期、そして円滑な実施に向けたさらなる取り組み、まだ詳細がいろいろ詰まっていませんから、その部分についてきっちりと御答弁をいただきたいと思います。

舛添国務大臣 私も、各地に参りますと地域の診療所のお医者さんから必ずこの話を言われます。お金がかかる、それから、こんなことでは稼ぎ以上のものがかかるので私は診療所を閉める、こういう声をよく聞いていますので、問題意識はよくわかっております。

 ただ、今やれることは、二十三年度からというのを最大二十五年まで猶予する、それから、事務代行者を介してできるような制度もこれをやっているということで、今のような措置をとりあえずは講じております。与党の中でもいろいろな声が上がっているということも承知をしております。

 ただ、これは、私がずっとこの間この問題に携わってきて、二千二百億円の例の社会保障費の削減、あれは大きな改革であるということを主張される方々がシンボリックに挙げている問題がこの問題であって、レセプトのオンライン化もできない、そんな無駄も排除しない厚生労働関係の人間が二千二百億円の削減なんて言うなということを、例えば骨太の方針を策定するときにしょっちゅう言われてきたものですから、ある意味で、こういうことは大きな改革の流れとしてやらぬといかぬなというのはあります。

 そういう中で、今の委員の御意見もきちんと頭の中に入れて、与党の皆さん方の動きも見ながら、そしてまた、しかしこの改革の旗はおろさないんだという声にも配慮しながら、今後検討を進めさせていただきたいと思います。

柚木委員 ちょっと期待よりもトーンが低目の御答弁だったんですが、その二千二百億円の問題もこの間議論されております。対GDP比の部分、あるいは社会事業型の公共投資の部分、参議院の予算委員会でも議論されたと思います。そういう視点で、ぜひ医療立国というような観点でもお考えいただきたいと思います。

 それとこのレセプトのオンライン、オンラインの推進は私も理解していると申し上げました。しかし、これを義務化、強行することが地域医療の崩壊を招くわけですから、そこの部分の弾力的な運用ということで今お願いしたわけですから、その期間の延長についても今御答弁で触れられましたので、そういった形できっちりと、崩壊に至らないように重ねてお願いをしておきます。

 続きまして、今診療所のお話をしたわけですが、一方で病院の経営実態も大変な状況になってきております。資料の七ページ目をごらんください。

 いろいろな団体からこういったニュース、皆さんもごらんになっていると思いますが、「病院の医業損益過去最悪」、これは三月一日付の記事です。「百床当たり月千二百六十万円赤字 二十年病院運営実態分析調査報告」でございます。

 もちろん、公立、民間それぞれ状況がありますし、実際のいわゆる経営努力的な部分の必要性も私は理解しております。しかし、この状況を見る限り、例えば今後の病院経営をどういう形で、本当に地域のまさに医療崩壊を防ぐ、中小病院が毎月五件も六件も倒産、廃院していく、こういう中でどういった施策が必要なのか。

 少し私の観点からの指摘、質問になるんですが、御承知のように、前回の診療報酬改定で急性期病院への重点加算などのプラス改定が行われ、そして、現在その調査等が行われていて、病院勤務医の負担の軽減とか、さまざまな診療報酬改定の項目が行われているわけです。

 今回、この記事によりますと、外来の収入が対前年比のマイナス三・六%の大幅減収、これは、例えば外来管理加算、いわゆる五分間ルールの影響も考えられると思いますし、あるいは、入院収入に至っては前年比プラス〇・一%増ですが、トータルでの減益を考えれば、例えば入院基本料の増額といったようなことも今後検討が必要なんだろうと。

 あるいは、そもそもの全体的な視点で見ると、急性期が七対一看護、これによって、逆に地域の病院や訪問看護師などの分野で看護師確保が困難になっている、結果として地域医療への負の影響を及ぼしているということでありますので、例えば外来管理加算、今回の調査項目にも入っています。あるいは入院基本料、七対一看護、こういった事例を今申し上げましたが、これらのことを含めて、通常の運営努力をしっかりしている病院が健全な経営をできるような、そういった制度設計を来年度診療報酬改定に向けて反映させるということを、ぜひ大臣、ここでお約束いただきたいんですが、いかがですか。

舛添国務大臣 入院基本料の一部引き上げなんかは二十年度診療報酬改定で行いました。外来加算についてもそうで、新しい改定をやったら、必ずこれはフォローアップの検証をして、どこに問題があるか、プラスの成果が上がったかどうかということはやらないといけないというふうに思っております。

 そういう中で、ある意味でコストの削減という観点からずっと医療に対して対応してきた、これは間違っているだろう。未来への投資としてきちんと医療費を正当に位置づけるということが必要でございますので、今委員がおっしゃったように、病院を経営する方が健全な努力をすればきちんと赤字にならないで済む、そういう方向を目指してまいりたいと思います。

柚木委員 ありがとうございます。

 時間がもう迫っておりますので、最後の抗うつ剤の副作用についてはまとめて質問いたしますので、最後にまとめて確認をしますので、まとめて御答弁をお願いいたします。

 資料八ページ目をごらんください。「抗うつ薬で攻撃性四十二件 〇四年から昨秋まで」ですから約五年間ですね。「「パキシル」など四種 厚労省調査」とあるわけです。

 私は、そもそも特にパキシルだけがどうとか言うつもりはありません。実際効果もあるわけですから、このことだけを、とりたててマイナス面だけを強調するつもりはありませんが、しかしながら、私はこの間、この問題で厚労省ともやりとりをしてまいりましたが、そもそも今回のこの記事が、ある団体の情報公開請求で明らかになって、そして仕方なく厚労省として調査する、こういう流れ、体質、これは私は、そもそも薬害とかいろいろな問題がこの間起こっている中で、大変後ろ向きというか問題であるという認識を持っています。

 そこで、三つのことを伺います。

 一つは、今回、製薬メーカーのホームページによれば、これはパキシルの例が出ていますから、あえてパキシルで言いますが、同じパキシルなのに、イギリスとアメリカでは、十八歳未満の小児や二十四歳以下の青年がこのパキシルを服用した際に自殺の危険性が高まることについて、イギリスあるいは米国の処方情報などでは、最初の方に明確にその危険性について触れられていて、我が国についても、触れられてはいるんですが、これが非常に間接的に触れられているんですね。私も原文をいろいろ見たんですが、やはりその触れ方が弱い。

 そういう中で、我が国でも、パキシルだけではなくて、いわゆる抗うつ剤全般を服用した方が、事例として調べてみますと、例えばこういう事件があるわけです。九九年に全日空機のハイジャックを企てて機長を刺殺した例があるわけです。こういう例も踏まえて、小児を含めた比較的若い世代において自殺や他人への攻撃性が高まることを、添付文書の警告や使用上の注意に、より明確に記載する必要があると考えるがいかがか、これが一つ。

 そして二つ目は、この抗うつ剤の適切な使用についてでございます。

 パキシルが本来の用途である抗うつ剤として使用されているのみならず、痛みどめとして使用されたり、痴呆症の患者さんに投与されたりする事例があると聞いています。確かに、パキシルはほかの抗うつ剤と比べた場合に副作用が少ない医薬品だと言われていますが、それはあくまで本来の用途に使われた場合でありますので、厚労省としては、精神科のお医者さんによる適切な指導と処方のもとでとかいった形で、うつ病、うつ状態、パニック障害、強迫性障害に対して投与されるように、しっかり指導と処方のもとで行うべきであるというのが二点目。

 そして、最後にもう一点だけ。

 今、ネット販売のことがいろいろ議論になっております。実際、当然市販薬と処方薬とで区別はされているわけです。利便性と安全性の問題はありますが、抗うつ剤のような、飲み合わせの副作用によって大変薬の使い方が難しい場合、こういった場合については、ネット販売についてもやはり慎重に、今の状況、麻薬の問題等もあるわけですが、調査して、そしてこの抗うつ剤の処方の適切な使用の中であわせて検討していただけませんか。

 以上、さらなる処方等への注意を喚起する、こういう記載で明記する、これが一点。それから、適切な使用をきっちりと行うように厚労省として働きかける、二点。そして三つ目は、ネット販売においても、同様に適切な使用が行われるように調査し、対応を検討していただく。以上、三つお願いいたします。

舛添国務大臣 まず第一点で、私もアメリカの英語の添付文書と日本のを見ました。基本的なことは同じことを書いていると思いますが、恐らく、アメリカのはばあっと書いてあるから量が非常に多い。日本の場合、こうだということでかなり強調した書き方なので、今後、さらにもっと注意喚起できるかどうか、これは専門家の意見も聞いて検討してみたいと思います。

 それから、先ほどの、目的外で使われるようなことがないようにという、これもお医者さんを含めて、今後どうするか、専門の学会の意見も聞いて対応したいと思います。

 それから、例のネット販売の話ですけれども、一般用医薬品のネット販売について今いろいろ議論をやっているんですけれども、パキシルは医療用の医薬品ということで、これは診察がないとそもそも出ませんので、この問題をここでは……(柚木委員「パキシル以外の抗うつ薬全般」と呼ぶ)パキシル以外については、ネットについて今賛否両論ありますので、私のもとで直属の検討会を開いて、何よりも安全性、そして国民の利便性、両方をどうバランスをとるかということを考えながらやっていきたいと思っております。

柚木委員 以上で終わります。ありがとうございました。

田村委員長 次に、長妻昭君。

長妻委員 民主党の長妻昭でございます。

 本日、質問の機会をいただきまして、どうもありがとうございます。大臣におかれましては、端的に御答弁をいただければ幸いでございます。

 私、最近驚いたことがございました。これは、我々民主党、年金関係の部門会議というのを、藤村理事、山井理事も含めて開催させていただいているんですが、これが二年以上開催をして先週で百回目になったんですが、その席で、社会保険庁の課長クラスの方が来られているときに、年金を担当する政務官、社保庁を担当する政務官はどなたですかと聞きましたら、顔を見合わせて名前を御存じないということがございまして、政務官とか副大臣、一生懸命されているんだと思いますけれども、政治家ですから、現場に入ってこの年金問題ももっときちっと、我々は社保庁の奥の院には入れませんので、入れる立場でもっと頑張っていただきたいということも強く申し上げておきたいと思います。

 まず、無年金問題ということで、年金が一円も受け取れない方々という問題がございますが、舛添大臣にお伺いしますけれども、日本の無年金者というのは何人今いるんですか。

舛添国務大臣 そもそも、基礎年金番号をちゃんと打って、どれだけの人が年金を受けているか、そちらはとっていますが、無年金の方々を把握するような数字はもともと持っていません。

 ただ、国会での審議の過程の御要請もありましたので、平成十九年十二月に、一定の条件を置いて、年齢、階層別に推計したものの公表があります。これですと、今後納付できる七十歳までの期間を納付しても二十五年に満たない者の数を、六十歳未満の方で四十五万人、六十から六十四歳で三十一万人、六十五歳以上で四十二万と推計しておりますので、これを単純に合算いたしますれば百十八万人となるわけでございますけれども、支給要件の期間短縮、空期間とかいうようなこともあるので、それがそのままの数字ではないということでございますので、一応の数字はそういうことでございます。

長妻委員 これも、推計数字ということで、実数は把握していない。しかも、今言われた数字というのは、無年金の方でも、基礎年金番号がついている人で無年金の人ということで、基礎年金番号がついていなくて無年金の方はたくさんおられると思いますが、その数字はさっぱりわからないということで、判明しているだけでも推計百十八万人無年金者ということで、日本は皆年金の国でありまして全員が公的年金に入る、この数字一点をとっても私は異常だというふうに言わざるを得ないわけであります。

 その意味で、これはもう予算委員会等でも申し上げましたけれども、サンプル調査をぜひしていただきたい。無年金の方々を抽出して、どれだけ社保庁のミスで無年金にさせられてしまったのか、実は受給権があるのに無年金になってしまっている方々が何%の比率でいるのか、三千人程度のサンプル調査をしていただきたいということを申し上げているのでございますが、これはぜひ前向きに御検討いただきたいと思うんですが、いかがでございますか。

舛添国務大臣 お答えは、これはもうサンプル調査じゃなくて全数調査をやるという形で、全員を発掘するということが必要で、まず、先ほど基礎年金番号云々の話がありましたけれども、基礎年金番号を持っている方については、これはねんきん特別便をすべてお送りいたしました。

 持っていない方について、今特別便が届いていない方はぜひ声をかけてくださいということを申し上げておりますし、それから住民基本台帳ネットワークの調査、これがかなり、三百万以上のヒットがありますので、こういうことの結果を、記録確認のお知らせということで、この四月からまた年金の定期便をお送りいたしますので、年金受給要件を満たす方について黄色い封筒でわかりやすくしてお送りしたいと思いますので、全員これは調査するという方針でやりたいと思っております。

長妻委員 今の答弁、予算委員会でも同じような答弁をされて自民党席から拍手が起こったんですが、これは全然拍手する話じゃなくて、全数といって何にもやらないんですよ。ただ郵便で送る、勝手に気づいてくれというだけの話で、全数もやらない、サンプルもやらない。

 そして、この五ページでございますけれども、これは以前、平成十九年の十月に、実は総務省が五千万件がどういう内訳なのかというのを抽出した調査をしております。そうしたときに、この期間、抜けている記録がどれだけ長い期間なのかということで、例えば二十五年以上の期間抜けているものが一%あるということは、宙に浮いた記録が五千九十五万件ございますので、一%ということは五十一万件ある、こういうふうに推計されるわけです。

 つまり、二十五年の長期にわたって記録が抜けていた場合、恐らくその方は、日本は二十五年ルールというのがございますので、年金の受給権がなくなってしまった可能性が高いというふうに思うわけでありますし、五十一万件ということで人数ではないということですけれども、同じ人が二つ二十五年以上の記録を持っているとも余り考えにくいので、最大日本には五十一万人の、本来は受給権があるのに今は無年金になっている方がいるのではないか、こういうふうに私は考えざるを得ないというふうに思うわけで、これは本当に深刻な問題ではないんでしょうか。

 これは、ねんきん特別便を送って、何か抜けていたら言ってこいというのじゃなくて、こちらから調査をする。つまり、五千九十五万件のうち二十五年以上の記録というのは具体的に何件あるのかをコンピューター上から抽出をして、その方に直接お尋ねする、こういうことを何でやらないんですか。

舛添国務大臣 まず五千万件の中で、御承知のように、統合済みの記録が九百十万件あります。それから、死亡していたりとか脱退手当金を受給したとかいうことで解明がなされた記録が千六百二十万件あって、それらの記録の中にも二十五年以上の加入期間の記録があるために、単純にその一%だから五十万、五十一万ということにはならないと思います。そういう中で、名寄せの結果、この未統合記録と結びつく可能性のある千三十万人に対して名寄せ特別便を送付して記録を確認させていただいた。

 それで、今後解明を進める記録、これが約二千万件ございます。そして、先ほど申し上げましたように、住基ネットでヒットさせると、生存者と判明した人が三百十四万件です。未統合記録のみで二十五年の受給資格期間を満たしている方が約二万五千人おりますので、既にこれはお知らせを送付して、今記録の確認中でございます。

長妻委員 これは本当にひどい話で、先ほど九百十万件統合されたと言いましたけれども、ではその中に二十五年を超える記録は何件統合されたのか聞くと、いや、さっぱりわかりません、こういうことでありまして、本当に二十五年以上の記録がどういうふうになっているのか。

 では、無年金から実は年金受給権がある人は何人いるんだと聞きましたら、社保庁からたった六十二人しか出てきておりません。これは本当に氷山の一角でございまして、最大五十一万人と推察される可能性のあるこれらの人に対してなぜアプローチをしないのかというのが本当に不思議です。

 このお配りした資料の二ページ、三ページ目というのが、社保庁に抜粋をしていただいた十三人の事例でございますけれども、この事例というのはどういうものを十三人抽出していただいたのか、説明をいただければと思います。

舛添国務大臣 この十三人の方は、昨年五月一日から九月末日までに本人のものと特定される年金記録が判明し、新たに年金受給権を得ることになった方が六十二人おりますが、その中で、記録判明時に実は基礎年金番号を私は持っていないといった方々が十三人でございます。これは、ちょうど平成九年一月時点で基礎年金番号が導入された、そのときにたまたま年金制度に加入しないというようなことで付番されていなかったということでございます。

長妻委員 ということは、ねんきん特別便を送るということも、それは結構ですけれども、例えばこの十三人の方は基礎年金番号はついていないわけですから、これはきっかけというのは、ここにありますけれども、当然ねんきん特別便は送られていません、この方には。基礎年金番号がついていない人はだれにも送られていない、ねんきん特別便が。そういう基礎年金番号がついていない方ほど無年金になっておられる方が多いというふうに思うと、そういう意味ではねんきん特別便が着かないわけでございまして、こちらからなぜアプローチをしないのか。

 私は、将来、不作為責任というのが大きく問われる可能性もあるんじゃないかというふうに思うんですけれども、ぜひ三千人程度の無年金の方を抽出して、これは、舛添大臣、官僚の方はできないできないとまたペーパーを入れていると思うんですけれども、いや、三千人やる、別に基礎年金番号がついていようがついていまいが抽出をして、具体的に何%ぐらいがミスでそういう形になってしまったのかという比率を出す、これはぜひ検討、前向き、こういうことをぜひ言っていただきたいと思うんです。

舛添国務大臣 いつも申し上げていますように、御本人によるねんきん特別便なんかでの調査、これは何度も申し上げていますように、住所が不明で戻ってきた方もいたりするので、とにかく届いていない方は、どうか国民の皆さん御協力くださいということをやっていっておりますとともに、データからの解析という、その中で今サンプル調査ということをおっしゃったわけですけれども、とにかくもう全数調査をやっていくということで、一つ一つやっていきたいと思いますので、今まさに、標準報酬の不正な改ざんの問題があったり、再裁定に時間がかかっていたり、物すごい人手不足の中で一生懸命人をふやそうとしていますけれども、どういう作業を優先順位をつけてやるかということで、委員の問題意識はわかりますけれども、私は私なりに優先順位をつけて、限られた資源を使いながらやっていくということで御理解いただければと思います。

長妻委員 それは、どうしてもやらなければいけないことがあって資源が限れていれば、大臣というのは政治家ですから、人、物、金を差配してそこに持ってくるということをしなきゃいけない。私も本当に、前の厚生労働大臣ですか、柳澤大臣とも年金問題をやりましたけれども、柳澤大臣はサンプル調査をやるということで、特殊台帳のサンプル調査が始まったわけですけれども、これは私はかなり優先順位を高くやるべき調査だというふうに思うのでございます。

 そうしたら、逆に、五十一万件、二十五年以上のものがあるというのがコンピューターの中で浮いているわけですから、では、五十一万件の中で何件か選んで、それが今くっついているのかどうか、どういう状態になっているのか、そちらの方面からの調査、抽出調査というのも、これはぜひやっていただきたいと思うんですが、これはどうですか。

舛添国務大臣 先ほど申し上げましたように、住基ネットワークでとにかくヒットさせて三百万以上出てきています。それで、この二十五年以上、それで二万五千人に現実にある意味で一人一人個別にやって、今成果が出つつありますので、ぜひそこは御理解いただいて、サンプル調査が、費用対効果という観点、それから全体の優先順位の中で、これをやらなければ絶対前に進まないということであれば、それはやらないといけないですけれども、そのサンプル調査をやる手間暇があれば、例えば二万五千について、そちらに全精力を注いで、一つ一つ解明した方がいいのであろうという思いでやっております。

長妻委員 舛添大臣は本当にそういう被害者の方の声を日々聞いて、私もきょう、お電話で何人かの無年金の方とお話ししましたけれども、日々そういう御相談というのが、いろいろ消えた年金問題はありますけれども、この無年金の問題というのはさらに深刻でございまして、今のままだとほったらかしですよ。

 先ほど、住基ネットとヒットと言いましたけれども、二十五年超の記録は、受給資格がある、満たす記録というのが五十一万件のうち三万件ですから。あとは全部名寄せ便で送ったかというと、私はそうではないと思いますので、そこで漏れている記録とか、どうなっているんだということで、この無年金の問題はぜひサンプル調査を、これはあきらめずに絶対やっていただくように要請をいたしますので、これは三千件がだめというんだったら、では数が少なければいいんですか。

舛添国務大臣 いや、数の問題ではなくて、今申し上げたように、一つ一つ、これはデータの面から、そしてまたねんきん特別便のフォローアップということから、御本人の御協力もいただきながら、全数調査で一つ一つ片づけていく。ですから、サンプル調査をやる時間があれば、そちらの方にそういう精力を注ぎたいということであります。

長妻委員 そうしましたら、先ほど、統合がどんどんされているというふうにお話がありましたから、では、今、統合されていない五千万件の記録で、二十五年を超える抜けた記録が何件あるのか、それがどうなっているのか、そのぐらいは調べていただけますか。

舛添国務大臣 だから、大体、未統合が二千万件あります。そして今、住基ネットということでこれがヒットして、三百何万件。そのほかについても、明快にできることがあれば、それはきちんとやっていきたいと思います。

長妻委員 ただ、その二十五年以上の記録というのがまず最優先じゃないんでしょうか、無年金の可能性があるわけでありますので。その二十五年以上の記録が何件あって、具体的にどうなっているのか、これを着手するということを明言いただきたいんです。

舛添国務大臣 いや、まさに、ですから、それを着手して二万五千から送り始めているわけでありますし、それは空期間がどういうふうに計算するかとかいうようなこともありますので、それぞれ、これは若干でも疑義があれば国民の皆さん方に申し出ていただいて、それはきちんと丁寧に対応して調査をしたいと思っております。

長妻委員 申し出ると言っても、ねんきん特別便も全く届かない無年金の方もおられるわけで、これは本当に深刻ですので、官僚の方は積み上げでできないという理由をトラックいっぱい持ってきますけれども、ぜひ大臣、これは政治判断で、では、やるんだったら、人、物、金がどれだけかかるのか、ここに出していただきたいんですね、国会で。我々もその部分は本当に賛成しますよ、それは。

 そして、次に、利息ですね。

 年金の保険料は延滞すると高い利息を取られるんですが、逆に、消えた年金で、被害者の方に年金が戻ってくる、そうしたときに全く利息がついていないというような問題があり、我が党の仙谷議員がことしの一月八日、予算委員会で質問しましたら、舛添大臣は、これはきちんと与野党の皆さん方の御意見も賜りながら検討させていただきたいと思います、こういうふうに言われたんですが、今現在どうなっておられますか。

舛添国務大臣 そのときにも仙谷さんにも申し上げたんですけれども、幾つかの問題があります。

 基本的には、一つは申請主義からくる問題がありますが、その中で、責任がどこにあるのか、国の責任が例えば何%あってどうなのかということの責任の所在、これは、国税の場合、例えば税金の場合の更正・決定で、これは例えば税務当局のミスであるというのは明確にわかります。そういうことに比べて、責任の所在をどうするか、これを少し詰めないといけないというふうに思います。

 それから、さまざまな給付制度がありますけれども、年金の給付制度とほかの制度との比較考量ということも必要でありますし、それから、戻ってくる分についての利息ということの作業をどういう形で対応していくかということもあると思います。

 そういう意味で、これは、仙谷さんからそういう意見をいただいて、検討はしていますけれども、今言ったようなさまざまな問題点をどうクリアするかは非常に難しいなというのが今の私の感想であります。

長妻委員 責任の所在という話がありましたけれども、ただ、一つ考え方として、その方に本来もらうべき年金が受給されない、ではその年金はどこにあるのかというと、その方の積立金にあって、それは日々運用されているわけですよね。だから、その運用益が出ているわけで、ある意味では、考え方として、その運用益もいただきたい、そういう考え方もあるわけです。

 ただ、責任の所在ということで大臣今言われましたけれども、これも、我々年金関係の部門会議を開いてびっくりしたのは、こういうことを言われるので、私は聞いてみたんですよ。では、社会保険庁としては、今般言われているいわゆる消えた年金問題は、その全件の中でどのぐらいが社保庁の責任で、どのぐらいが社保庁は全く責任ないと言うんだ、大体半々ぐらいですかと聞いたんですよ。半分ぐらいは国民の皆さんが悪い、半分ぐらいは社保庁が悪い、そのぐらいの感覚ですかと聞いたらば、私は、即座に否定して、いや、大部分は社保庁が悪いと言われると思ったんだけれども、官僚の方は、いや、そこも言えませんと。

 こういうことになって、ちょっと愕然とするわけですけれども、大臣、この消えた年金問題で、では、社保庁に全く責任のない案件というのは、例えば具体的にどういうものなんですか。

舛添国務大臣 それはケース・バイ・ケースで、大体、厚生年金なんかの場合に、事業所、この事業主が全部申告する、そのときに事務員が完全にその書き方を間違えていたとかミスであるとかいうこともあり得ると思います。ですから、ケース・バイ・ケースでこれはきちんと考えないといけない。

 ただ、私は、やはりこの問題は、本質的に申請主義ということに根幹があるんだろうというふうに思っております。私も昨年、六十歳になりましたので、年金のそういう裁定ということの事務をやらないといけない。これは私がやらなきゃ何にもないんですよね。だから、まさに申請主義ということからきている。こういう問題を今後の大きな制度設計の中でやるということがやはり必要だというふうに思いますので、根本はやはりそこにある。

 ただ、委員がおっしゃるように、もう全くこれは社保庁の手抜きでミスであるということはあり得ると思いますから、こういうケースについてどうするかということで、それは今議論をしているところでございます。

長妻委員 いや、今ので大臣のお考えが若干わかったんですが、非常に狭く責任を考えておられるんですね。これは、かなり国民の皆さんの意識と、我々の意識も含め、社保庁、大臣、ギャップがあると思うんですね。

 つまり、今、事業所で、事務員のミスで、いろいろ書き方を間違えたり、いろいろなことがあると。ただ、それは仮にそうであっても、あるいは事業主がそれは猫ばばするということもあるかもしれませんが、そうであっても、年金制度をきちっと管理するということで、例えば、毎年その方に通知を送ったり、あるいは年金通帳というものを発行していれば、その段階でその本人が、給与からこれだけ天引きされているけれども現実に社保庁に登録されている情報が違う、こういうことに気づくわけですね、国民の皆さんが。

 気づかせることをやっていなかった責任というのだって、これは広義の責任としてもちろんあるわけでありまして、勝手に言ってこいと、今まで全部そうなんです、その発想は、昔から。つまり、お上が金を払ってやるんだから、領収証を握り締めて、文句があったら言ってこい、これが申請主義で、非常に不親切、冷たいということが問題になっているのに、その意識をぜひ変えていただいて、広くこの利息をきちっと払う、こういうことをしないと、日本が嫌いになる日本人がどんどんふえますよ。本当に悲しいことなんですよ、これは。

 そして次に、第三者委員会がきょう来ておられますので、こういう資料を出していただいて私もちょっとびっくりしたんですが、六ページ目でございますけれども、この資料をちょっと説明いただけますか。

関政府参考人 お答えいたします。

 総務省におきまして、地方第三者委員会ごとに事案の処理に要する期間を把握するために調査を行ったものでございます。

 その調査の内容でございますけれども、平成二十一年二月三日までに処理を終えた事案のうち、直近のものからさかのぼって、地方第三者委員会ごとに、あっせんをしました事案、それから訂正不要であると判断をいたしました事案、各五事案ずつ抽出をいたしまして、各社会保険事務所で受け付けてから第三者委員会に転送されるまでどのくらいの期間を要しているか、この平均値を算出したものでございます。

 本件は、あくまでこの二月三日という時点をとらえて、それからこのような抽出ということで行った結果でございますけれども、各社会保険事務所で受け付けてから第三者委員会に転送されるまでの平均の期間が全国平均で八十一・六日になっている、こういうものでございます。

長妻委員 受け付けてから第三者委員会に送られるまで、例えば六カ月かかるのが、神奈川、東京、千葉の全社会保険事務所の平均が六カ月、五カ月というのが熊本、茨城ということで、平均は三カ月弱ということでありまして、そういう意味でも、さっき申し上げましたように、利息をぜひ支払っていただきたい、国家として、国家の責任として。もし政府が本当にやらないのであれば、我々は民主党として、本日も次の内閣がございますけれども、そこで法案審査をいたしまして、この法案を提出ということも検討しておりますので。

 本当に、愛国心を持てなんと言う総理がおられましたけれども、それは私は重要だと思います。しかし、こういうことをほったらかしにして、国を愛せ、愛せと言ったって、愛さないですよ。ですから、社会保障というのは本当に重要な、先ほど藤村理事からも質問があって、社会保障は何ぞやという話があって、国の二つの保障、安全保障と社会保障、これは国家の礎です。ぜひお願いしたい。

 そして、この第三者委員会でさらにびっくりしたのは、これは社会保険事務所が受け付けて第三者委員会に送るまでの平均の日数を出していただいたんですが、社会保険事務所はすぐに受け付けてくれないんですね。行って、記録をいろいろ確認して、本当に消えている、ないと社保事務所が確認したら初めてその日に受け付ける、こういうことになっていまして、東京の品川の事務所だけ、例えば東京で選んで調べてくださいと申し上げたんですが、結果は出ましたか。

舛添国務大臣 きのう長妻委員から申し出があって、夜を徹してやらせたんですけれども、ですから、ひょっとしたら集計が完璧じゃないかもしれませんが、八十八日というのが出ております。

長妻委員 つまり、私も事前に官僚の方から聞いたのは、ちょっと全件調べるのは難しいということで、例えば東京で品川社会保険事務所をお調べいただいたんですけれども、これは、まずお客様が年金相談に行って記録を照会する、その一番初めに訪問して、記録を照会してくださいと言ってから御本人に記録があるなしの回答をするまでの期間、これが平均で八十八日だ、三カ月ということです。

 回答がないと社会保険事務所では第三者委員会への申請書類を受け付けないということになっていますので、ですから、この第三者委員会がつくっていただいた資料にプラスして、三カ月を足すと、東京の場合、東京は第三者委員会の資料では六カ月ですから、三カ月足す六カ月で九カ月、つまり、記録を調べてくれと言ってから、本当にない方が、第三者委員会にその書類がたどり着くまで九カ月かかる。それからまた第三者委員会で一年、最近は早まっているそうでございますけれども、こういう状況になっていて、例えば千葉、東京、神奈川、茨城、熊本、大変な状態になっていますので、これは政治家の役割ですよ。人、物、金を差配してここに集中投下して、私、聞いたら、証拠を集めるとかいろいろ雇用保険の受給票をもらってくるとかコピーをとるとか単純作業も結構あると言っています。ですから、我々もやりますよ、人、物、金、出していただければ。

 これはぜひ早めていただきたいと思うんですが、いかがですか。

舛添国務大臣 今全体的にそういう努力をする形で、人の手当てもやりつつあるところであります。

 ただ、私も現場を見てきましたけれども、ケース・バイ・ケースで、すぐできる方もあれば、もう日本全国転勤なさっている、そうすると、その事業所を探しに行く、たとえ単純作業であれ、その事業所がもう倒産してなくなっているというようなことがあって、めちゃくちゃ時間がかかるケースもあります。そういうことで、正確を期さないといけないというので時間がかかる場合もあるというのは御理解いただいた上で、しかしながら、やはりこれは時間がかかっていることは確かですから、少しでも早めるように、今、人の手当てをやっているところでございます。

長妻委員 これは、自治体から被保険者名簿とかそういうのを取り寄せるということもあるんでしょうけれども、それにしてもこれはかかり過ぎでありまして、当然、日にちが短いところというのは、お客さんに比べて人手があるということでありましょうが、ある意味では、人手があればできるんですよ。ぜひ、そこをそろそろ、もう毎回我々は国家プロジェクトでと申し上げているんですが、じゃ、それをやるには、今の体制じゃできないと言うのであれば、人、物、金が幾らかかるんだというのをここに出していただいて、そういうことが何で出てこないんだろう、できない、できないではなくて、ぜひこの件も本当に、繰り返しになりますが、単純作業の人手が足りないという部分もたくさんありますので、この期間には社会保険事務所での証拠探しというのもあります、ですから、ぜひそういう人を差配していただきたいということも強くお願いします。

 それに関連するんですけれども、これも驚くわけでございますが、七ページ目に、例の年金記録問題に関する関係閣僚会議、これが麻生内閣になってから全然開かれていない、もうほったらかしになっているということ。この会議も私はなかなか有効に機能していないと思うものの、ただ、資料はこの会議に備えて、大臣に怒られちゃかなわぬということで、お役人の方が多少調べて出してくるので、この会議があると多少解明が進むんですよ。そういう意味で、これまで、これは見ていただきたい、一回目から七回目まで本当に三カ月置きとか一カ月置きに開いているのが、ぷつっととまっちゃったということで、大臣、これはまさか解決したと閣僚の方みんな思っておられるんじゃないでしょうね。今月中に第八回目を開く、開け、こういうふうに麻生総理に進言していただきたいんですが、いかがですか。

舛添国務大臣 まず申し上げたいことは、年金記録解明の作業というのは着々と予定どおり進めていますというのがまず一つ。

 それから、もともと、こういう関係閣僚会議をやろうと言ったのは、やはりどういう状況で進捗していますという進捗状況を国民の皆さんにきちんとお話しする場を設けたいというのがありました。これは、関係閣僚会議を開かずとも、さまざまな場で必要なデータ、進捗状況は、例えばこの委員会なんかでも公表してきたところであります。

 しかしながら、政府全体としてきちんとやる、その新たな方針を策定するようなときにはこれはやらないといけないんですけれども、御承知のように、秋以降の金融危機、雇用危機ということで、私自身の体も一つしかありませんから、忙殺されている状況でございます。そういう中で、しかし、私のもとの作業委員会、拡大作業委員会、さまざまな機関を使って、私もそういうところに出て、前にはきちんと進めておりますので、そこは誤解のないようにお願いしたいと思います。

 それから、麻生総理がこれに全く無関心だということではなくて、先般国会でもおっしゃったように、これは時間がかかり過ぎる、何とか早くしろということもある。それから、総理の御指示を仰がないといけないときには、私はそのたびに総理に、ここはこういうことをいたしたいんです、どうですかと、閣議の合間なんかにお伺いをしております。

 そういうことで、そろそろ開かないといけないなと私は思っているので、これは総理の日程調整や何かがありますので、できれば三月いっぱい。ただ、ちょっと日程調整の難しさがありますけれども、それぐらいを目安に開ければということで、今検討をしたいと思っております。

長妻委員 経済危機だからこそ、一刻も早く不安を取り除くということで、むしろ本当に迅速化が求められているわけでありますので、ぜひ、今月中ということを今お話しいただいたので、よろしくお願いします。

 そして最後に、これも私もびっくりするんですけれども、この九ページ目の最後の資料でございますが、これは病院の耐震化ですけれども、大臣、これを御説明願えればと思います。

舛添国務大臣 委員の九ページ目の資料でございますけれども、これは耐震化調査の結果でありまして、平成二十年五月現在での耐震化調査によれば、すべてが新耐震基準である病院が四千百三十二病院、一部が新耐震基準でない病院が二千六百九十四病院、すべてが新耐震基準でない病院が千十病院、不明及び回答なしの病院が千二十六病院となっておりまして、これら全病院数八千八百六十二病院のうち、それぞれ、四七%、三〇%、一一%、一二%というのがこのデータの見方でございます。

長妻委員 これがほったらかしになっているという非常に重大な問題で、全病院の四一%、三千七百四病院が耐震性を満たしていない建物がある。

 この新耐震基準というのは、震度六強の地震で倒壊のおそれがある、これが満たしていない建物でございまして、震度六強の地震というのは時々日本でも起こります。Is値というものがあって、これが〇・六未満というものでございますけれども、これはいつまでにすべての建物を補修するんでしょうか。

舛添国務大臣 財政面からちょっと申し上げますと、二十年度の一次補正において、病院なんかの耐震工事に関する補助事業の負担比率を三分の一から二分の一に引き上げた、それから、今御審議いただいております二十一年度予算案からは、先ほど申し上げたのは災害拠点病院ですけれども、それに加えて、その他の病院も含めて、国の負担割合を二分の一に引き上げるということで、この財源措置を使って速やかにということであります。

 問題は、病院の場合は、中に入っている入院患者の皆様方を一時的に動かさないと仕事ができないので、学校なんかだと夏休みにやるとかいうことができるので、ちょっとそういうこともございまして、いつ完了するということは今明言できません。

長妻委員 確かにそういうこともありますけれども、びっくりするのは、何にも計画がないんですよ、厚生労働省は。いつというか、じゃ、ことしが何棟、来年は何棟、いつごろ終了する、これが何にもないんです。ゼロです。

 実は、きのう、非常におかしなことが起こりました。私がきょうの質問のために厚生労働省の方と国土交通省の方をお呼びして耐震性の説明をいただいたんですけれども、厚生労働省に、何でそういう計画を立てないんだと申し上げましたら、いや、それは自治体がそういうのはやるんだ、特定行政庁、建築主事のいる自治体がやるんだということで言っていたら、さすがに国土交通省が、本来は厚生労働省がフォローアップすべきなんだよと。そこで国土交通省と厚労省の方が言い合いになられて、そういう光景というのを私も珍しく見たんですけれども、これはだめですよ、病院は厚生労働省ですから。建物は別ですなんと言っているわけですから。

 災害が起こったときに皆さんは病院に行くわけですよ。そこが崩れる、あるいは第二次災害だってありますので、いつまでにこれをどうするのかということを、実は先月の上旬に予算委員会で質問をいたしました。その前の段階でいろいろ調査を要請いたしましたら、この八ページの調査ということで、厚労省ももう一回きちっと調査するということで、こういう依頼を出していただいたわけであります。来週の火曜日、三月十七日が締め切りで、全国の病院のIs値が出てくる。私は、それを公表するべきだと思うんです、一定の配慮をしながら。

 厚労省は、いや、それは不安をあおるから公表はしない方がいいというお立場ですけれども、そうしないと全然進まないんです。都道府県ごとにも公表しない方がいいと言っているんですから、厚生労働省は。これは、せめて都道府県ごとに、Is値が例えば〇・三未満というのはかなり危険なわけでございまして、そういうことも公表するというのを、大臣、これが出たら言っていただきたいと思います。

舛添国務大臣 三月十七日には全部データがそろいますから、その上で、いろいろ病院によっての対応もありますから、一概に全部公表というのもまた問題は問題であると思いますが、少なくとも私の管轄する国立の病院については、きちんと公表したいと思っております。

長妻委員 そうすると、都道府県、市町村ごとの病院のIs値の分布というのも公表いただけますか。

舛添国務大臣 それはきちんとやりたいと思います。

長妻委員 そして、平成二十一年度の予算の審議を今参議院でやっておりますけれども、ちょっとお伺いしたいのは、実際、病院の耐震補強について、平成二十一年度予算ではどれだけのものが入っているのかということも教えていただければと思います。

舛添国務大臣 二十一年度予算案で九十九億円でございます。

長妻委員 それで何棟の病院が補強できるんですか。

舛添国務大臣 これは、調査結果を待って、どの病院で幾らお金がかかってということからはじき出すしかないと思います。

長妻委員 そうすると、この調査結果が出て、一番問題がある病院から優先的に九十九億円を使い切って補強工事をする、こういうことでよろしいんですね。

舛添国務大臣 これは、それぞれの都道府県ときちんと協議をしながら、優先順位の高いところからやっていきたいと思います。

長妻委員 これで質問を終わりますけれども、冒頭申し上げましたように、無年金の方の相談というのが今本当に、私の事務所にも、ほかの民主党議員の事務所にも、ほかの与野党の方の事務所にも来ていると思うので、ぜひこの問題に関しても、事例を御存じかどうか。七十九歳まで無年金の独身の女性がおられて、無年金だということで、ずっと働き詰めで脳出血で倒れられて、今八十四歳でございますけれども、実は銀行にお勤めのときの記録が抜けていて、五十五歳から月十万円を本来は受け取るはずだったのが、今、三千万円以上受け取っても、もう寝たきりでございます。

 そういう例が本当に日本じゅうにある。あるいは、全く気づかないでお亡くなりになった方もたくさんおられると思いますので、この無年金問題をぜひサンプル調査をして、そうすると、お役所も重要性がわかると思います。サンプル調査をしたら、これだけの比率だと。全体で比率を見ると、これだけの人が、こんなに多くの方がその可能性があるんだということがわかって、世間も含めて物事がそういうことで動くんですね。

 最後に一点だけ。サンプル調査を前向きに検討するということだけ、ちょっとお願いしたいんです。

舛添国務大臣 繰り返しの御答弁になりますけれども、全数調査をきちんとやるということで、一つ一つ、困難であっても問題を解決していきたいと思います。

長妻委員 全数というのは、全数を本当にやるんですか。百十八万件、一件ずつ。

舛添国務大臣 いろいろな困難な問題があっても、私は、最後の一人、最後の一円まで頑張ってやり抜くんだ、この方針は変えておりません。

長妻委員 だから、全件調査というのは、無年金者百十八万人を一人ずつ聞いて調査する、そういう意味ですか。

舛添国務大臣 一つ一つ、一人一人について、今例えば二万五千人について調査をしていますから、そして、時間がかかろうとも、それは解決をしていく。ただ、さまざまな問題がある点は委員の御指摘のとおりです。どういう優先順位で、どういうふうに資源を配分してやるか、それはまた考えたいと思っております。

長妻委員 いずれにしましても、ぜひ政治のサイドが、副大臣、政務官が一丸となって、中を、現場をよく見て、足りない人、物、金の部分は堂々とここにばんと出していただいて、短期で、いずれこれはやらなきゃいけないんです、いずれはやらなきゃいけないものは、今こういう経済状態でもあり、前倒しして緊急にやってしまう、こういう姿勢で、長引けば長引くほど、本当に政治不信といいますか国家不信というところまでいきかねないので、ぜひよろしくお願いします。

 ありがとうございました。

田村委員長 次に、岡本充功君。

岡本(充)委員 民主党の岡本です。

 きょうは、厚生労働委員会の一般質問ということでありますから、厚生労働行政の各般にわたって質問させていただきます。

 まずは、医師の臨床研修制度のあり方について、大臣の御認識をお伺いしたいと思います。

 平成十六年から今般にわたるまで行われてきた臨床研修制度について、大臣はどのように御評価をされて、なおかつ、これだけの短期間では評価をし切れない部分があるのではないかと私は思いますが、今現時点でできる総括、それから、今まだ評価がなし得ないけれども、これから評価をしなければならないであろうと思われることについて、大臣の御認識をいただきたいと思います。

舛添国務大臣 これは、新しい研修制度について、教育の現場におられる先生方、それから学生さんにも意見を聞いてみました。さまざまな意見が賛否両論含めてあって、例えば、総合的にいろいろなことを学べて本当によかった、これでいいお医者さんになれるという意見があるとともに、片一方で、例えば自分は精神科をやりたい、産科に行くんじゃない、だから三月ぐらい産科をやってもほとんど役に立たないのでお客さん的に来ていたというような声もまた学生さんからもありました。

 そういう中で、私は、断じて今から言うようなことは考えてはいけないと思うのは、お医者さんが不足している、それは研修期間一年を二年にしたから不足している、だから、これを短くすればまた八千人ふえるからいいじゃないかと。そういう発想ではございません。これは避けないといけない。

 ただ、その中で、どのプロフェッサーの意見が正しいのか、私も両方サイドから毎回検討会で聞いていましてわかりませんが、いずれにしても、やはり大学一年生で入って一人前のお医者さんになるまでの、これは文部科学省の担当の学部の部分もあるし、我々の担当の研修の部分もありますから、一貫していかにいいお医者さんを育てるかという観点が必要だと思いまして、そういう中で、まさに医師不足の問題もこれあり。

 それから、地域の医師不足の顕在化というときに、それは大学の派遣機能がなくなったからだというのもあるので、当面は、そういう中で少しカリキュラムや研修プログラムは弾力化するということで、必須を選択必須にするというのはそういうことでありますし、それから医師派遣機能、これは一定程度大学病院が持っていいと思いますので、募集定員の見直しというようなことが必要だと思います。

 それから、そういうことを言いますと、今度、患者代表というかそっちから来ている委員の方々が、大学病院に何と言うのだと。あなたのところに若い研修医が行かないのは、あなたのところが病院として魅力がないからじゃないか、ちゃんとまともな病院になったらどうですかという激しい意見をおっしゃる方もありますので、いずれにしても、病院の側も研修医にとって魅力ある病院とならないといけないと思う。

 本当にさまざまな課題がありますから、一応この前は一つの御提言ということで有識者の方々に出していただきましたので、あくまでそれは一つのワンステップであって、これは今後とも、さらにいいお医者さんが育っていくような、そして、お医者さんの働く環境がよくなるように、そして、医療を受ける国民の皆さん方が満足できるように、そういう大きな政策の中の一環として努力をしてまいりたいと思っております。

岡本(充)委員 実際にこの臨床研修制度が始まって、臨床研修を終えた医師の技量についての評価という点については、大臣は現時点で評価が可能とお考えなのか、それとも、まだ時間がたってからの評価になるとお考えなのか、そこはいかがですか。

舛添国務大臣 恐らく、これはもう少し時間がたたないと評価できないんではないかというふうに思っています。

岡本(充)委員 私もそう思うんですね。

 そういう中で、今回、臨床研修制度導入以降の状況ということでお配りをしている、二ページからスタートで恐縮ですが、一本線で引いてあるところであります。「臨床研修制度の導入以降、大学病院において臨床研修を受ける医師が大幅に減少し、また、専門の診療科を決定することが遅れたことも影響して、大学病院の若手医師が実質的に不足する状況となった。」これは状況を書いてみえるんだろうと思います。

 ちょっとお戻りいただいて恐縮ですが、大きい紙です。手書きで恐縮ですが、わかりやすいようにパーセンテージを振りました。一ページ目、いわゆる今の研修医制度が始まる前の平成十五年の研修医の受け入れ数と平成二十年度の受け入れ数を見ますと、四割以下になった大学が、弘前、秋田、群馬、岐阜、三重、大阪、岡山、広島、山口、徳島、長崎、鹿児島、琉球、福島県立医科大学、名古屋市立大学、慶応大学、順天堂大学、東邦大学、産業医科大学、ざっとこういうあんばいにありまして、とりわけ地域の医師供給を担っているでありましょうそれぞれの地方大学の減少が確かに厳しいものがあるなということは、客観的事実としてはあると思います。

 これが実際に、最終的に、二ページ目にまた戻りますけれども、(5)の後段でありますけれども、大学病院が担ってきた地域の医療機関への医師派遣機能が低下し、地域における医師不足が顕在化、加速化するきっかけとなった。これを一つの原因として、結果がこうなったというアウトプットと考えるのは、私は必ずしもそうではないんじゃないかと思っています。

 これは、後ほど少しずつお話をしたいと思いますが、大臣、この点についてはいかがですか。

舛添国務大臣 今委員がおっしゃったような意見も検討会の中で聞かれました。最終的に検討会の先生方がこういう形でおまとめになりましたので、一番現場の地域医療を担っている方々からこういう声が来るものですから、ある意味では、それにおこたえするということでこういうことになったと思っていますので、一〇〇%これが正しいのかどうなのか、それは委員がおっしゃるように、もう少し検証が必要かもしれません。

岡本(充)委員 そういった中で、平成二十二年四月からまた新しく研修医制度を始めようではないかという話が厚生労働省の中で今どのような決定状況にあるのか、もう平成二十二年度から新しい臨床研修制度にするということで決まっているのか、それとも、その時期を含め、まだ決まっていないのか、そこを答弁いただきたいと思います。

外口政府参考人 現在、今の研修医制度の研修プログラムの弾力化、そして、地域偏在への対応等を入れた基本的考えについてのパブリックコメントの案を作成しているところでございます。これからパブリックコメントにかけて、それから次のステップに進む、そういうことになろうかと思います。(岡本(充)委員「じゃ、決まっていないのね」と呼ぶ)まだ決まっておりませんが、事務方としては、二十二年の四月から始めるということを目途に作業を進めているところでございます。

岡本(充)委員 平成二十二年四月の研修医の受け入れについて、そろそろ病院が募集を開始してしまうわけですね。今の答弁だと、あたかも決まったかのごとく始まっていくというのは、時期を含めて、それこそもう少し弾力的に考えていただきたいと思うわけですが、大臣、いかがでしょうか。

舛添国務大臣 今委員がおっしゃったように、募集をかけないといけないということでパブリックコメントが早まっているということでございますので、それは一つのタイムスケジュールとして必要だろうと思いますが、現実に具体化する過程において、省内に今回の検討会を受けた審議会がございますので、その場で検討を進めていただいていますので、今の委員の御意見も賜った上で、どういう形でこれを、タイミングも含めて調整できるか、ちょっと検討させていただきたいと思います。

岡本(充)委員 それで、今、二枚目の紙の二重線を引いたところでありますけれども、「制度の見直しに当たっての基本的な考え方」というところで、「より良い医師の育成のための「医師としての人格のかん養とプライマリ・ケアの基本的な診療能力の修得」という制度の基本理念、および基本理念を具体化した到達目標を前提として、」という基本的な考え方をお示しされているわけでありますが、三ページ目の方に行くと、ちょっと個別的な話になって恐縮でありますが、研修医が求められる到達目標として、こういう疾患については入院患者を受け持ち、診断、検査、治療方針について症例レポートを提出することがAの疾患でありますが、このAの疾患には精神疾患などが含まれてくるわけであります。

 今般の改定では、例えば精神科も必須から外れてくるという中で、これは実際に到達目標を達成することは困難になるのではないかというふうに思うわけでありますけれども、この到達目標を前提としながら、一方で必修とされる科目が残っていながら、必修とされる疾患を経験しない研修医が出てくることについて、この矛盾についてはどのようにお考えですか。

外口政府参考人 まず、今回の見直しにつきましては、到達目標、この必修項目については変えておりません。したがいまして、議員御指摘の、例えば精神科の患者さんに対する入院のレポート、それも必須としております。

 具体的には各病院で工夫することになりますけれども、例えばうつ病の患者さんのレポートであれば、内科の一環で診るところもありましょうし、また地域医療のところで診るところもありましょうし、それから、別途短期間の精神科の病棟の勤務ということも組み込むところもありましょうし、それぞれの病院が工夫されることになると思いますが、いずれにしても、この到達目標というのは大変大事でありますので、これは変えておりません。

岡本(充)委員 矛盾をすると言っているのは、まさに、そのほか、Bの疾患については、外来診療または受け持ち入院患者でみずから経験することというふうにされて、この下にも書いてありますさまざまな疾患を初め、多種多様な疾患が載っています。

 例えば産婦人科にかかわるところですと、妊娠分娩についても、これはある意味、外来診療または受け持ち入院患者として診なければいけない話になっているわけでありますけれども、今般のこの改定のいわゆる検討会に出てきた文書の中では産婦人科についても必ずしも必須ではないとなると、内科の一環で産婦人科を診るというのは基本的に矛盾をする話であって、この基本的な理念を具現化する研修目標を変えないままこれを導入するというのは、かなり矛盾があるということを私は指摘をしておきたいと思いますし、私は、これは当然到達をしていただきたいと思っている項目でもありますから、ぜひそこは、後刻また私に矛盾しているじゃないかと指摘をされないようにしていただきたいと思っています。

 ちなみに、これは私が厚生労働省からいただいた資料でありますが、出典は聖路加国際病院の福井先生が出された資料だと聞いております、医道審議会に出されたと聞いておりますけれども、そちらに、きょうはちょっとお出ししませんでしたけれども、平成十五年と、平成十五年というのは今の研修医制度が始まる前の時期と、それから平成十七年の研修医、それぞれのどういったことができるかできないかというのを対比化したものがありました。

 大変注目されたのは、基礎的な臨床知識、技能として、例えば細菌培養の技術、それから、やや専門化した臨床知識、技能で、妊娠の初期兆候を把握できる、こういったことが、新臨床、今の臨床研修システムが始まる前の平成十五年は、実は大学病院より一般の研修病院の方がこういった二項目はより修得度が高かった。しかし、この研修医制度が始まって、結果としてこの二項目はどちらも、大学病院もそしてまた研修病院もともにできる項目になってきて、今では両方差がなくなってきている。

 こういうような状況になってきているなど、本来、基礎的とされる、また、やや専門的といっても、ある意味、どの診療科でも念頭に置かなければならない手技などを修得できるような環境ができてきつつあるという。こういった資料を、実は、先ほどお話をしましたこの臨床研修制度のあり方等に関する検討会に御出席の先生からも提示をされているわけであります。

 そういう観点に立ちますと、今、推し進めようとしている二十二年度からの制度については、二年を一年にしてほしい、もしくは、スーパーローテートもしくはローテート研修をストレート研修にしたいという、完全なストレートではありませんけれども、ストレートに近いようにしたいという思いに引きずられないようにしてもらいたいと私は思っているわけでありますが、大臣にちょっと御答弁いただきたいと思います。

舛添国務大臣 検討会の場で福井先生とも何度も議論をいたしました。全く違う、福井先生を、全面的にその意見と違うという先生もおられましたが、今おっしゃったように、とにかくスーパーローテートもやれる形で、弾力化ということでそこはきちんと担保してございますので、委員が今おっしゃった懸念というのは私も共有しておりますので、その観点を忘れないように方向づけたいと思っております。

岡本(充)委員 医政局長でいいんですけれども、平成二十二年から新しい、弾力化という名称でいくかどうかは別として、ローテートする診療科を絞り、二年目から専門的な、かつてで言うストレート研修に入っていく可能性のある、そういった研修医は一体どのくらい出てくると推測をしてみえるんですか。つまり割合です。これまでどおりの、従来、今年度やっている研修システムでいかれる研修医の数、それから、新しく弾力化された研修システムに乗って研修を受けられる、そういった研修医の数、どのくらいの割合だというふうにお考えですか。

外口政府参考人 これはそれぞれの病院の特性、それから診療科によっても多分違うと思います。

 例えば、ある地方大学の外科の先生は、これで高度な外科治療をできる人を早くから育てることができるとおっしゃっていますので、そういったところではそういった外科に行くことを前提としたコースができるかもしませんし、同じことを産婦人科や小児科の先生でおっしゃられる方もおられます。また、一般の病院のところでスーパーローテートでかなり有名なところは、引き続き同じことをやりたいとおっしゃられている先生もおられますので、ここは具体的にどのぐらいというのはまだ把握しておりません。

岡本(充)委員 いや、把握はできないでしょう、まだ始まっていないですから。想定はどうなんですか。

外口政府参考人 今年度からのコースになりますけれども、大学特別に少し弾力化したコースを選択するようなことを可能にしたところ、四百名ぐらいでしたか、余り多くはふえなかったんですね。ただ、今度の方がより弾力化できますので、おそらくは大学等ではより弾力化したコースが今よりはふえると思っております。それから、今回、例えば二十名以上とかいうある一定規模のところでは、産科とか小児科に行くコースをつくるようにお願いするつもりでございますので、そういったコースはふえていくものと思います。

 ただ、具体的な割合は、恐縮ですけれども、まだ数字を言えるような段階ではございません。

岡本(充)委員 大臣、そういう意味では、医師の技能がどういうふうになったか、もっと言えば、先ほど言われたように、これから先、総合医を養成していくに当たって、必要な各般の技能が得られたかどうかの評価が五年ではとてもできない中、そして、今度制度を変えたら一体どういう割合になるかもまだわからないと言っている中、二十二年四月という数字だけがひとり歩きすることに問題があるということを私はお話をしたいわけですね。

 それで、もう一つちょっと指摘をしておきたいんですけれども、手前みそな話ですけれども、そもそも、私が卒業した名古屋大学は、かねてからスーパーローテート方式をやっていて、大学病院にほとんど医者が残らない。基本的に、外の病院に私は行ったわけです。一番最初に行った病院は、大村副大臣の地元の安城更生病院で、大村副大臣が初めて選挙に出られるときも、私の当直の外来に来られました。私は今でも記憶をしています。私が当直をしているときに来られました。まだ新人候補だったときですね。そういう記憶もあるわけですけれども、そういった外の病院で研修をして、しかしながら、名古屋大学の医師の数が大幅に減るということで困ったという話にはならずに、これまで人を出してきた。

 なおかつ、スーパーローテート方式ですから、私も、産婦人科も小児科も回った。したがって、どういう方にどういう薬は出してはいけない、例えば、一番典型的なのは、妊産婦の方のいわゆる禁忌薬は何なのかということをある程度把握しておくということは後にとっても非常に重要だという観点でずっとやってきた。これを長らくやってきたけれども、先ほど言われた検討会で出ているスーパーローテートに反対するような声が名古屋大学では出なかったというこの実態を見ると、この名古屋大学方式がなぜ実行できないのかな、全国に均てん化できないのかなということを思うわけですが、それについては省内で検討されたりしたことはあるんでしょうかね。

外口政府参考人 今回の検討会でいろいろ出てきた議論の中で、代表的な意見は、まず、到達目標は変えるべきではないという意見、それから、今まで行ってきたスーパーローテートは引き続き、できるところというか、やりたいところはやるべきであろう、こういった意見が出てきております。

 そういったことはそういったことで、本来の臨床研修制度のいいところはいいところで残すという考え方で残しながらも、やはり弾力化ということも入れながら、例えば評判の悪かった小刻みの、一カ月ずつの研修とか、そういったところは弾力化しよう、そういった議論をしてまいりました。

岡本(充)委員 いや、その名古屋大学方式も、まさに一カ月ごとに回って、二年目も含めてローテートをみんなしているわけですね。それで一応不満が出ずに大学の機能も医師の派遣機能も保持をしてきたという実態を、どうしてうまくいったのかということを、また、これが全国に均てん化できないのであれば、それは一体どういうことなのかということを少し検討されてはいかがですか。大臣、検討ぐらい一回してみてくださいよ。

舛添国務大臣 私も、名古屋大学医学部、特に腎臓透析の問題で先生方と研究会をやっていたことがございますので、ヒアリングも含めて、委員の御意見もございますので、いわゆる名古屋方式、なぜそれが可能だったのか、それは大変興味がありますので、ぜひお聞かせをいただいて参考にさせていただければというふうに思っております。

 それからもう一点、実は、文部科学省と一緒にこれをやりましたのは、卒前、卒後の臨床について、学生さんで、卒前でやったのに卒後またやるのかというような声もありました。ですから、例えば名古屋大学の卒前の方の研修がどうなっているかというのに恐らくかぎがあるかもしれない、そういうことも教えていただければと思います。

岡本(充)委員 ぜひ検討していただきたいと思います。

 それで、きょうはもう一つ、また一枚目の大きい紙に戻るんですけれども、実は、今回の検討会の中でも、大学病院が今後ある一定の優先度を持って研修医を受けられるようにしていこうという趣旨を酌み取るわけですけれども、そういった中で、きょうは文部科学省にも来ていただいておりますけれども、ある意味象徴的なのが、静脈注射、点滴注射の話なので、これを少し一覧表にさせてもらいました。

 医師が行っているところ、看護師が行っているところ、非常にわかりづらい表で恐縮なんですけれども、本来これは、平成十九年の十二月の二十八日に、医政局長通知をもって、静脈注射を含め、また、点滴のルート確保も含め、看護師もしくは看護職に行っていただくことができる業務だというふうに分類をされていると承知をしているわけでありますが、特に私立大学に限って言うと、ほとんどいまだに医師が実行をしているという実態があり、先ほどの話ではないですけれども、これをやっているのは教授ではありませんね、若い医師がやっているという現状がある。

 こういう現状のところで医師の数が足りないから医師を戻してくれといったら、研修をするのか、場合によっては、こういういわゆる必ずしも医師がやらなくてもいい業務に振り分けられるというか、そこの業務をあてがわれるという話になったら、本来の研修の目的ではない、要するに下積みをやれというだけの、またもとの世界に戻ってしまう。ここが改善できないのに大学病院に研修医の数をふやしてくれという話は、ちょっとなかなか、一般的に言うと懸念が残ると思うわけであります。

 この状況について、今後どのように調査をして、どのように改善を図るのか、改めて文部科学省からお聞かせいただきたいと思います。

松野副大臣 静脈注射に関する医師と看護師の役割分担については、平成二十年十月に実施した調査において、原則として看護師が静脈注射業務を行っている診療科の割合が前回の調査に比べ着実に増加をしておりますが、なお一層の取り組みが必要というふうに認識をしております。

 取り組みが進まない理由としては、それぞれの病院における看護業務マニュアルの見直しや、看護師が静脈注射を行うための必要な研修の実施など、環境整備のための準備が必要であることや、患者に対する影響が大きい薬剤や、小児科などの診療科では医師が行う場合があることが背景となっております。

 文部科学省としては、平成二十年六月三十日付で各大学に通知を発出しまして、医師、看護師等の医療関係職種間での役割分担の推進について要請をしたところであります。今後、各大学に対し、その趣旨等の周知徹底をよりきめ細かく行うことにより、静脈注射の実施のあり方や、大学病院の医師の雑務のあり方について取り組みを促してまいりたいと思います。

岡本(充)委員 一覧表を見ていただくと、特に私立大学において、いまだ医師が原則行っている。それからまた、この原則という言葉の定義が定かでないということもあり、また、「医師、看護師の区別なく実施」というところは、これまた定義が定かでありません。調査のあり方を含め、見直していただきたい。そして、格段の取り組みを行っていただきたい。端的にお答えをいただきたいと思います。

松野副大臣 目標の設定に当たりましては、大学病院において看護師が実施できないのはどのような場合か等の実情を把握した上で、適切な目標設定をする必要があると考えております。

 現在、一部の大学病院において、実際に行われた静脈注射のうち看護師が行った本数や、実施できなかった場合の理由等について把握をして、具体的な状況を確認しているところでありまして、その結果を踏まえて目標設定を行いたいというふうに考えております。

岡本(充)委員 あわせて、これは厚生労働省に関する話でありますけれども、雇用関係のない大学院生の数を経年文科省に調べていただいておりますが、現在でも、診療に従事する大学院生のうち、雇用関係のない者が平成二十年十月時点で三千七百五十七人いる。いわゆるそれ以外の身分の方については調査しておりませんけれども、こういった若い医師が、雇用関係がなく、また、場合によっては保険がない中で、ウイルス感染症の患者さんやさまざまなリスクのある医療措置を行っているということの実態を大臣もあわせてお知りいただいた上で、今後、この実態を、やはり労働基準の観点からも少し調べた方がいいんじゃないかと思いますので、早急な調査をお約束いただきたいと思います。

舛添国務大臣 半数の大学院生が雇用契約がないということですから、これは文科省と連携をとりながら、実態調査を早急にやりたいと思います。

岡本(充)委員 そういう状況でありますから、大臣、よく言われる、研修医がいないから大変という言葉が大学で聞かれるんですが、研修医がいないから大変というのは、まさにこういう仕事をやらせようと思っているから言っているんじゃないかと疑いたくなる。むしろ逆で、研修医がいるから大変なんですよ。自分の仕事だけだったらさっと終わるのに、研修医に見せて、やらせて、褒めてあげてという、何かどこかの、大変有名な、させてみて褒めてやらねば云々という言葉がありますけれども、本当にそういうことをやりながら、本当は研修をやっていかなきゃいけない。しかし、研修医がいないから大変という言葉が出てくるということ自体がこういった実態をある意味あらわしているのではないかということを最後に指摘して、大臣から、改めて今の臨床研修システムの見直しに当たっての抱負と決意をいただきたいと思います。

舛添国務大臣 医療制度全体を見直さないといけないということで、例えば、医師数をふやすということで、六百九十三人、この四月から医学生がふえていきます。そういう中の一環として臨床研修制度についても御議論をいただいて、先ほどございましたスキルミックスの面も、これはお医者さんに続いて、今、看護師の皆さんの仕事をどうするか。私たちで留置針のルートを探すのは簡単ですよ、そういうことをおっしゃる方もたくさんおられるし、その点も総合的に考えていきたいと思いますので、臨床研修制度については、いかにいいお医者さんを育てるか、そして国民のための医療を確保するか、そういう観点から、必要な見直しがあれば随時見直していきたいというふうに思っていますので、また委員の貴重な意見も参考にしたいと思っております。

岡本(充)委員 続いて、四ページ、五ページ目の方の「厚生労働省所管独立行政法人の売却資産等の概要」というところであります。雇用・能力開発機構、四ページの方でありますけれども、いろいろ売却をされている。実は、ここは結構随意契約が多くて、相手方が市町村の場合はそういうこともあり得るのかなと思いつつも、これは、社会福祉法人それから有限会社で随意契約をして、固定資産評価額もしくは簿価と比べて格段に安く売却をされている実態があるように見受けられます。

 例えば、二番目の雇用促進住宅林市川宿舎、こちらについては、簿価が二億四千七百七十五万二千円、そして固定資産評価額が二億七千二百九十万三千円、ところが、売却価格は七千百三十一万五千円。それから、下の方にあります、三穂の郷というところが買いました雇用促進住宅賀陽宿舎、こちらについては、同様に、簿価が二億七千六百四十六万八千円、そして固定資産評価額が二億七千六百十五万二千円、ところが、売却価格は六千百三十五万一千円ということで、かなりの差がある。しかも、これは随契で行われているという実態があります。

 これは十年間は資産を保有しなきゃいけないという話で、私が聞きましたら、これは不動産評価額の半額で一応随契を結んでいる。十年たったら売っていいという話ですが、半額で買って十年後は好きにしていいという話だと、これは複利でいったら五%か七%で運用しているのと同じで、非常にいい資産運用だということも言えるかと思います。十年たてば好きにできるわけですね。十年間は確かに制約がつく。言いかえれば、十年間の解約できない定期預金に預けているのと同じような仕組みになっているのではないか。もう少し高い設定で、五〇%といわず、評価額の七〇%ぐらいに設定するとかいう手もあるだろう。そういう意味では貴重な国民の資産になり得る話でありますから、この入札のあり方をひとつ見直してもらいたいという点。

 それから、同じように、上から四つ目ですけれども、リゾートトラスト株式会社が、一般競争入札でありますけれども一者しか入らずに、何と十一億円近くかけて平成八年に用意した蓼科山荘、どうも土地の買った時期と建てた時期が違うみたいなので平成八年と断定はできませんけれども、そういう意味では平成に入ってから建てた建物が、何と六千万円で売られている。そして、固定資産評価額が二億一千四百五十八万九千円ということでありますから、建物だけでも八億五千万円、そして土地の価格だけでも二億円するものがこういった価格で売られているという実態も、ぜひ大臣、お知りをいただいて、これは一者しか入札に入っていません。ぜひこういう入札のあり方も含めて少し見直していただかないと、国民の皆さんからあらぬ疑いを持たれるということにもなりかねません。

 役所は役所の論理でいろいろ言われますけれども、大臣、ぜひ見直すというふうにいただけますか。

舛添国務大臣 ちょっと今初めて御指摘いただいたものですから、今委員おっしゃるように、これはよく精査をして、どういう状況であるかということを確認したいと思います。

岡本(充)委員 その上で、また御報告いただきたいと思います。

 それから次は、きょうは、実は厚生労働省の退職職員のわたりのことについて聞こうかと思っていたんですが、どうも全般的な話になるということで総務省にお越しをいただいております。

 今、厚生労働省も含め、わたりの再調査をしていただいているようでありますが、先回、私が、質問主意書は今国会の第一四五号でお答えをいただいておりますけれども、懲戒を受けた国家公務員の再就職の状況について、これから年限を平成十八年から平成二十年という三年に限ってであれば調査をしていただけるのではないかという趣旨の話をきのう伺ったんですが、この場で調査をしていただけるかどうかお答えをいただきたいと思います。

村木(裕)政府参考人 お答えいたします。

 今御質問のあった点でございますが、先生から二月三日に退職管理に関する再質問主意書をいただきまして、その中で、国家公務員在職時に懲戒処分を受けた退職者の再就職についてのあっせん行為の有無の調査を求める御質問をいただいたわけでございますが、私どもとしては、これは、過去すべての国家公務員退職者を対象として、在職期間中の懲戒処分の有無を確認した上で、過去にさかのぼってその再就職についてあっせんの有無を調査する必要があるため、膨大な作業を要するということで、お答えすることは困難というぐあいに三月三日付の政府答弁書でお答えしたところでございます。

 これをもう少し御説明させていただきますと、例えば、国家公務員の退職者の数でございますが、平成十八年度の単年度で見てみましても、常勤の一般職の国家公務員が約一万七千名おります。それから、自衛官等も含めた特別職で考えますと、十八年度で六万四千人ほどおります。まずそういう膨大な数がございまして、この方々について……(岡本(充)委員「いや、やっていただけるかどうか、端的に」と呼ぶ)はい。

 それで、今ございましたように、調査の対象期間を絞りますとか、それから調査の対象職員、今数が大変多うございますので、もう少し条件を考えていただくとか、それから、物によりまして個人情報というものに当たることであれば、いわゆる個人を特定するような性格のものであれば本人の同意を得るというような手続も必要でございますので、そういう質、量両面にわたって工夫をする必要があるのではないか。

 いずれにいたしましても、私どもの考えもちょっとよく聞いていただいて、御相談させていただきながら、誠実に対応していきたいというぐあいに考えております。

岡本(充)委員 きのうの段階ではやっていただけると言っていたので、端的にお答えいただけるのかと思いましたけれども、大分長い答弁になって恐縮です。

 大臣、ちょっと一つだけ、最後の質問ですけれども、食の安全に関して。

 日本国内でBSEが発生したというのは、これはだれの責任だというふうに思っておみえか。大臣の認識、それだけちょっとお聞かせいただきたい。

舛添国務大臣 だれの責任って、それは、輸入業者もあり、輸出業者もあり、行政にも責任があるんだと思います。

岡本(充)委員 大臣、ありがとうございました。

 今大臣、そう言われたように、そういう意味では行政の責任があったという中で、副大臣もお残りでありますし、役所の皆さんもお残りでありますが、私は改めて指摘しておきたいのは、今、二十カ月未満のいわゆる牛の全頭検査、まさに委員長の地元なんかでも、そういう意味では行われているんじゃないか、そのお金を都道府県が担っているわけですね。都道府県の責任であるということは基本的に考えにくいという中で都道府県がお金を出さなきゃいけないという話は、やはり問題じゃないかということを指摘しておきたいと思っておりまして、この点についてぜひ御配慮をいただきたいという点が一点。これは指摘だけにしておきたいと思います。

 そしてもう一つは、きょうは農林水産省、お越しでありますけれども、日本の対米要求を取り下げるに当たって、米国の飼料規制、それから交差汚染の実態のフォローアップ等がなされていないのではないかと思っています。この点をしっかりフォローアップしていただきたい。そうでなければ、要求を取り下げるということは時期尚早ではないかという私の昨年の質問の状況の改善には至っていないということを指摘し、御答弁をいただきたい。

 最後にもう一つは、鳥インフルエンザが今般、愛知県で発生をいたしましたが、これに対してさまざまな事業者がいろいろな損害等をこうむることのないよう補償に万全を期していただきたいということ。特に、種びなを買ったり、それからまた卵等の出荷ができないときの収入の補償等についても、また、融資があるんだと言われても、金利だけでも大規模な養鶏場だとかなりの金利になってくるわけでありまして、こういうところに特段の御配慮をいただきたいということ、これはお願い。前段はフォローアップの状況についてどうなのかという質問、お答えをいただきたいと思います。

梅田政府参考人 米国政府は、昨年四月の官報告示によりまして、本年四月二十七日から飼料規制を強化し、三十カ月齢以上の牛の脳及び脊髄については、牛用のみならず他の動物用への利用も禁止することとしているところでございます。

 我が国は、昨年十二月に、米国政府に対し、米国における飼料規制の強化について重大な関心を有していることから、その実施状況について報告するよう要望したところでございます。

 米国政府に対しては、昨年の四月の官報告示のとおり着実な飼料規制の強化が実施されるよう引き続き求めているところでございまして、その取り組み状況を十分注視してまいりたいと考えております。

岡本(充)委員 ありがとうございました。

田村委員長 午後四時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後二時二十二分休憩

     ――――◇―――――

    午後四時一分開議

田村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。高橋千鶴子君。

高橋委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 初めに、肝炎対策について伺います。

 B型肝炎を初め三百五十万人と言われるウイルス性肝炎患者の救済へ、支援法の成立が待たれています。先ほど藤村委員の質問で、治療費負担が重いという実態調査もあることが紹介され、さらに、負担を軽減する点でも与野党の議論を踏まえたいという趣旨の答弁があったと思います。ぜひこれは一日も早く治療に専念できるよう整えるべきだと私からもお願いしたいと思います。

 そこで、先ほど紹介のあった国立病院機構長崎医療センターの八橋先生が主任研究員となって発表された調査では、大事なことがございます。今後の課題として、従来の治療法に比して治療効果が高く副作用が軽減された画期的な新たな治療法の開発、これが課題の一つ目に挙げられています。

 つまりは、インターフェロンにのみ特化した現行助成政策だけでは不十分だということにほかならないのではないでしょうか。

中尾政府参考人 肝炎対策につきまして、新たな治療法の開発、特に副作用が少ない治療方法、これの開発ということにつきましては重要な課題であるというふうに認識をしておりまして、肝炎対策の推進の中で、肝炎研究七カ年戦略ということで十九億円の予算を計上しておりまして、肝疾患の新たな治療方法等の研究開発を推進してまいりたいと考えております。

高橋委員 研究開発は存じておりますが、それが負担軽減という形で実際に治療に向かっている方たちにやはり手当てされるべきだという趣旨で質問をしております。

 重ねますけれども、興味深いのは、もう一つ、助成制度があることを七三%の方が知っていたけれども、何によって知ったかは、四七・一%が医師、看護師からであり、次が報道、政府や自治体広報によって知ったのは七・一%にすぎません。つまりは、政府の周知徹底が足りなかったことを意味するのではないでしょうか。

 また、義務づけられている特定健診にウイルス検査を入れるなど、もっとアクセスしやすい環境をつくるべきだと思います。全国各圏域に総合的な相談窓口もつくるべきだと思いますが、見解を伺います。

中尾政府参考人 肝炎対策の助成対象の一つといたしまして、現在行っておりますインターフェロンに加えて、抗ウイルス薬を加えるべきではないかとの点につきましてでございます。

 B型肝炎に対する核酸アナログ製剤による治療につきましては、ウイルスの増殖抑制が目的で根治療法ではないこと、また、インターフェロン治療の自己負担額が一月当たり七万円程度と高額であるのに対しまして、この核酸アナログ製剤の場合にはこれよりも相対的に低い額であることなどから、助成の対象として現在考えておりません。B型肝炎の新たな治療法につきましては、研究の推進に取り組んでまいりたいというふうに考えております。

 また、この助成制度についての認識が十分でないのではないかというようなことにつきましては、都道府県や関係団体の協力も得まして、検査勧奨や診療体制の整備、助成制度の周知等の取り組みを進めているところでございます。

 とりわけ、日本医師会にお願いをいたしまして、肝疾患以外で医療機関に来院された方に対しましても医師から受診勧奨をするなどのお願いもしているところでございまして、今後とも検査あるいは治療助成についての周知に取り組んでまいりたいと考えております。

高橋委員 特定健診との関係はどうですか。

中尾政府参考人 特定健診につきましては、御承知のとおり、生活習慣病対策ということで行われているものでございますけれども、実は肝炎についての検査につきましても、例えば健康増進法に基づく市町村の検査でありますとか、あるいは健康保険者の検査の中で取り組んでいる部分がございます。

 しかしながら、これらの検査では全体を必ずしも網羅することができませんので、保健所における検査を行っておりまして、またさらに、二十年より委託医療機関における無料検査も行われるように措置をしたところでございまして、現在、保健所における無料検査は九一%の自治体で、それから委託医療機関における無料検査は六六%の自治体で行われるということで、自治体の検査とそれから委託機関の無料検査いずれかは必ず、どこに住んでおられても受けられるという体制となっているところでございます。

高橋委員 余りここでは時間をとりたくなかったんですけれども、大臣に一言伺いたいと思うんですね。

 やはり、周知徹底が非常に低いんだという立場に立てば、アクセスしやすい環境をつくるのは当然のことだと思うんです。今、政府が義務づけている特定健診でやれた方がいいじゃないですか。だって、わざわざそれだけの、一つのために保健所に行くというのはなかなか大変です。仕事が忙しいというのが二つ目の理由だったと調査の結果にもあるわけです。

 そういうことを具体的に提案しているのに対してどうか、そして総合的な窓口をどうかということを答えていただきたいんです。

 せっかくですので一言だけ紹介したいと思うんですけれども、先ほど抗ウイルス薬の話がありましたけれども、やはり、残念ながら、抗ウイルス薬もそうだし、インターフェロン以外の治療に頼っている方たちがまだたくさんいらっしゃる。その方たちをどう救うかという問題です。

 群馬県のある女性は、C型肝炎から肝細胞がんに進行し、ラジオ波焼灼治療を受けています。一回治療すると、またがん細胞ができて、また治療しても、またがん細胞ができるの繰り返しなんですね。一月以上の入院を要し、昨年の治療代は五十二万円強。これは保険がきいていても、その残りの部分の自己負担です。さらに肝庇護薬、免疫療法で六十万円。合わせて一年間に百十万円を超えています。年金とわずかな退職金を食いつぶしながら、いつ再発がまた起きるかということを恐れている、そういう訴えなんです。

 既に命の期限を宣告されたという方もたくさんいらっしゃいます。そういうことを考えると、今できることは、こうした方たちの苦しみを少しでも取り除くために、治療生活全般を軽減させる体制が必要ではありませんか。

舛添国務大臣 まず、検査ですけれども、年に一遍、働いている者は義務的に検査があるわけで、そういう中でやるのはどうかというのは私も考えてみました。

 ただ、一つは、どうしてもプライバシーの問題ということがございますので、特定健診との絡みも含めてそれは検討し、検討するときにその点を配慮せぬといかぬということです。

 それから、確かに政府広報を含めて周知徹底体制が非常に欠けている。この点についても、反省するところは反省した上で、さらに展開したいというように思っております。

 本当に、仕事が休めないというのと、副作用がきつい。それから、もちろん経済的な事情もあります。それぞれに対して、これは経団連に対しても私は直接申し上げましたし、そして、新しい薬の開発、さらには経済的なことについても、これは与野党の議論も踏まえてさらに検討を進めていきたいと思っております。

高橋委員 そのためにも一日も早く支援法をぜひ成立させたいと思います。

 次に、介護報酬の問題について絞って伺いたいと思います。

 まず、今回の介護報酬三%の引き上げによって、実際どのくらい、どれだけの人に賃金報酬が上がるでしょうか。

宮島政府参考人 お答えいたします。

 介護従事者の給与、これは事業主と介護従事者の個々の契約で決まるものですから、一律に幾ら上がるというようなことはなかなか断言できません。

 ただ、常勤換算で約八十万、非常勤を入れれば百十七万というふうに言われている介護職員、この処遇の改善は大事だということですので、今回の介護報酬の改定では、キャリアアップや職場定着を促進するための加算、これが過半をかなり上回る事業者が取得できるというふうに思っておりまして、このようなことを通じて処遇の改善を図っていきたいというふうに思っているところでございます。

高橋委員 今ごろ大事だなんて言われたら、ちょっと遅いんですよ。大事だという議論をずっと積み重ねてきて、今、三%が出たわけでしょう。それの期待が、全然そうじゃなかった。今控え目におっしゃいましたが、過半の事業所がようやっと上がるであろう、しかもそれが二万円とはほど遠いものであるということは、もう本当にお認めになっていることだと思うんです。

 私も宮城や福島の事業所で試算をしてもらいました。かなり頑張っているところであり、加算が目いっぱいとれるんです。でこぼこあっても、通所とか施設とか総合的にやっていると、例えば八百万円を超える増収のところもございます。ところが、それを全部人件費に回したとして月額七千五百円あるいは三千五百円とか、非常勤を引き上げるということは非常に厳しい。もともと赤字がある、建物等の補修がある、そうすると、事業所にとっては、上がるはずでしょうと期待されているわけですから、厳しい選択が迫られるわけです。これは結局、加算だけで、全体を、基本をいじっていないというところに問題があるんですね。

 報酬で考慮されたことは、勤続年数、資格者の配置、常勤者割合など、これでは今現に人手不足で困っている事業所がますます困るのではありませんか。さらに、人件費割合を低めたことで報酬が下がるところもありますね。簡潔にお答えください。

宮島政府参考人 基本報酬に充当すべきではないかという議論は、介護給付費分科会の議論の中でも出てまいりました。ただ、こういう加算ではなくて基本報酬で介護報酬を払うとなると、処遇改善を行っていないところも介護報酬が支払われるというようなことがありますので、それは基本の人員配置とかそういうものの見直しとともにやるべきではないかということで、今回は、処遇改善を効果的に行うために、加算というような方式で、常勤職員が多いところを評価するとか、あるいは勤続年数が長い人を雇っているところは評価する、あるいは介護福祉士を雇っているところは評価するということで、多くの事業主に対してその処遇改善に努めていただくようにお願いしているというものを行ったところでございます。(高橋委員「二つ目。報酬が下がる話」と呼ぶ)

 三%の報酬を、何らかの形で、加算だけではなくて、いろんな評価をしておりますので、報酬が下がるというのは、ちょっと私も今初めて聞いたようなお話でございます。

高橋委員 人件費の割合によって下がるところがあるでしょう。

宮島政府参考人 失礼いたしました。

 人件費の割合を、地域加算、これを都市部であるとか地方であるとかいうことで、その地域加算を人件費の割合に応じて見直したところがございます。その中で、グループホームの特定の地域については、実際の人件費比率が低かったので、それに応じて報酬の改定を行っておりますので、そこは下がったというような例はございます。

高橋委員 一律に上がらないどころか下がるところもある。このことは本当に重要なんですよ。それも、非常に回りくどい説明で、そこはしっかりお認めになった。とんでもないですよ。これまで、これほど介護報酬を上げるんだ上げるんだと言ってきて、実はどさくさに紛れて下がるところもある。このことは本当に指摘をしたい。

 そして、人員配置と一緒にやるべきだとおっしゃいましたけれども、そもそも人員配置をなぜやらないのかということがあるわけですよ。三対一だと、もうとっくに二対一、あるいはそれ以下で頑張っているところがあるということはもう御承知のはずなんです。それに一切手をつけないで、それをやらないと今はまだやるつもりがないと言っているわけです。これでは一層格差を広げることになりませんか。

 これは大臣に伺います。格差を広げることにならないか。それから、再評価すると何度も言っていますよね。これでもし効果が上がっていないなと思った場合どうしますか。介護報酬、三年後の見直しを待っていられないと思います。いかがですか。

舛添国務大臣 介護に従事して働いている方々の待遇が悪い、それは給与を含めて。これは何とかせぬといかぬということで、補正で三・〇%手当てをしたわけでありますから、全体的に見れば、先ほどのようなちいちゃなグループホームについての例外はありますけれども、底上げをするということでありますので、さらに検証をしていって、見直す必要があればそれは適切に見直していきたいと思っておりますが、まずはこの一歩をきちんと踏んでいきたいと思っております。

高橋委員 小さなところと言いましたが、そういうところが今支えているわけですよね、地域の介護を。それが一つ二つではないのは御存じです。

 それで、格差が広がるというのは、そこだけが下がる、格差が広がるという意味ではなくて、今募集しても人が集まらない、改善できないと言っているところが、手厚くやっているところにだけ加算がされるということで、格差が広がるじゃないかということを言っているんです。

舛添国務大臣 事業者の方々から、そういう手厚い配置をしたのを正当に評価してほしいということでありますので、そういうことをやる。加算という形で、その加算した部分は、ほとんどこれは賃上げに向かっていますから。どういう形でこれから介護の施設を経営していくか。これは一つの経営モデルのようなことも提示するということをやっておりますから。

 例えば、小規模のグループホームはグループホームで、非常にこれは意義を持っています。大きなところのできないこともやれることもありますので、これを今後どういう形で経営を健全化していくか、経営モデルの提示も含めて、さらなる総合的な形での対応をしていきたいと思っております。

高橋委員 加算を否定していないんですよ、私は。加算は大事だけれども、しかし基本を上げて、その上で評価してほしいということを言っています。

 資料にあるように、全労働者に比べて、やはり入ってくる人も多いけれども出ていく人も多いわけですよね、二割を超えている。この実態の中で、二枚目の介護福祉士養成施設の充足率の推移、一番多くて大学で六七・一%、専修学校では四一・三%。たった二年間でここまで落ち込んでいるんですね。これ、どう対処しますか。

阿曽沼政府参考人 お答えを申し上げます。

 御指摘のように、介護福祉士の養成校の充足状況でございますけれども、平成十九年度で六四%でございましたが、二十年度に四五・八%ということになっております。

 大変厳しい状況にございますので、私どもといたしましては、今回の補正予算、あるいは当初予算におきましても、養成校の学生に対する月額五万円の修学資金の貸し付けでございますとか、あるいは養成校に専門員を設置いたしまして、中学とか高校の進路指導者、あるいは地域住民の方々に対して介護の仕事の魅力を伝達するといったような相談、助言の仕事を新たに提案しております。

 そういうようなことにあわせまして、介護分野で働いておられる方々の処遇改善あるいは雇用管理ということも徹底いたしまして、この職場を魅力的なものにしていくことによって介護養成校の定員充足もよくなっていくのではないかというふうに思っております。

高橋委員 今お話しされたことは全部やるべきだと思います。しかし、それでも解決にはまだまだ足りないだろう。なぜか。これは、例えば一月二十五日の高齢者住宅新聞によれば、この一年間で福祉専門の学校が四分の一減ったという大阪の法人の声を紹介しています。新聞の記事を見て、高校の先生や親から介護系は本当に大丈夫かという問い合わせがあった。先生や親が不安に思えば、子供は進路先として介護業界に進みづらくなる。まさにそのとおりだと思うんです。幾ら学校に奨学金やりますよといったって、その先で介護の実態が変わらなければどうしようもないではありませんか。

 資料の三枚目にあるように、これは、全労働者と比べても施設介護職員の給料は本当に低いです。しかし、一般労働者の派遣よりも低いのが今の実態なんですね。

 そういうときに、大臣、最後にどうしても伺いたいんですが、今、片や介護は人手不足だ、片や失業者が出ているからマッチングをするんだ、ただ、そう簡単ではないのは多分わかっていらっしゃると思うんですね。不況のときだけ介護を受け皿のように言うな、そういう現場の怒り、悔しさがあるんです。人間の最も弱い姿を支え、尊厳を守る仕事です。暮らしや家族、経済状態、全部受け入れて、みとりまでやらなければならない、そういう介護の仕事そのものを評価して全体の底上げを行う、そういうことが絶対必要だと思いますが、一言だけ伺います。

舛添国務大臣 私も高橋委員と全く同じ考えであります。限られた財源の中でさらにそういう方向を目指して努力をしたいと思います。

高橋委員 終わります。

田村委員長 次に、阿部知子君。

阿部(知)委員 社会民主党の阿部知子です。

 本日は、舛添大臣も衆議院、参議院を往復しながらの答弁で大変お疲れのことと思いますが、大臣所信への私の質疑でございますので、よろしくお願いいたします。

 本来であれば所信質疑ということで骨太なことを伺いたいのですが、いただきましたお時間が二十分ですので、なかなか全般には行き渡りませんけれども、きょうは、私は特に、生まれ出るところ、赤ちゃんの生まれる分野について御質疑をしたいと思います。

 大臣に予告をしてございませんが、大臣には、内閣府の政府広報室が二月二十六日に発表いたしました少子化対策に関する特別世論調査の概要というものを御存じであるかということと、御存じであれば、その中で大臣は特に何を気にとめられたでしょうか。御存じでなければ私が指摘させていただきますので、まずお願いいたします。

舛添国務大臣 私の記憶が正しければ、例えば妊婦健診の無料化のようなああいう少子化、育児対策、こういうことを一番期待するという、たしかその内容であったように記憶しております。

阿部(知)委員 今の大臣の御記憶にとどまった部分もしかりですし、これは、少子化問題について危機を感じておるという国民が八割から九割おられて、そして将来では年金や医療の社会保障にも害を及ぼすだろうというような内容と同時に、これは五年前にも調査しておるのですが、格段にふえた項目の中に、今大臣がおっしゃった「子育てにおける経済的負担の軽減」というものや、あるいは「仕事と家庭の両立」というのも、これは従来から高い希望なのですが、今回の調査で前回の二倍にふえましたものが「妊娠・出産の支援」ということでございまして、平成十六年九月には二七・〇%が、今回五四・六%になっております。

 大臣は、だからお金の心配をせずに分娩、出産ができるようにしているんだというふうにおっしゃいますが、私はいつも御指摘いたしますが、最も大胆に、本当に根本的にチェンジしていただきたい問題がございます。

 と申しますのは、例えば十四回、健診にかかわります費用を補助したとしても、きょうも午前中の与党の委員の御質疑の中にありましたが、妊娠の後半に経過を大変に密に追わなきゃいけない方となると、エコーもしょっちゅうになってきますし、正直言って、十四回で全然おさまらないんですね。だから大臣が、大丈夫、これでもうみんな、ただだ、頑張って産んでくれと言っても、大変な人ほどこぼれ落ちていくという実態がございます。

 私がきょう取り上げたいのは体外受精の問題であります。

 これは、さきの予算委員会で、民主党の逢坂委員が二月二十三日お取り上げでございますが、大臣もそのときも御答弁されておるので概略御存じと思いますが、県立の香川中央病院で、受精卵を取り違えて、Bという御夫妻の受精卵をAという御夫妻に入れてしまった、妊娠の途中で気がついて、結果的には中絶をされた取り違え事件でございました。

 今、大臣も御承知のように、こうやって体外受精で生まれてくる子供さんは二万人近くになっております。一九八三年に初めて、試験管ベビーという名前で呼ばれた当時から比べると隔世の感がございますし、逆にそれだけ現実に定着をしてきておる。しかしながら、この定着、二万人もの子供が生まれているこの技術の安全性やあるいは倫理面についてはどうであろうかというと、格段に対応がおくれております。

 大臣は、こうした取り違え事件というものの発生について、これまでに何か同様の報告をごらんになったことがあるか、また、そうした意識はおありであったかどうか、まずお尋ね申し上げます。

舛添国務大臣 生命倫理全体についてどうするかを考えたことはありますけれども、今回のように取り違えというような単純なミス、これはダブルチェックしなかったからだと思いますけれども、こういうことについて報告を受けたりとか、とりたてて関心を持ってフォローしたということはございません。

阿部(知)委員 起こり得てはならないことが、しかし、現場ではかなり冷やりとしながら起きているというふうな調査が、既に二〇〇七年から八年にかけての、こうした体外受精を扱います医療機関全体、五百九十四施設を対象にした調査の中で、回答数が百四十一カ所で、回答率は一九%くらい、ちょっと低いのですが、しかし、回答された百四十一カ所の中で、そうしたヒヤリ・ハット事例と申しますか、取り違えに至るのではないかというような感じを受けたという答えが五十六施設もあったんですね。これは、取り違えたから、ああ、やり直そうとかいうわけにはいきません。

 今、このAさんという御夫妻が訴訟に訴えておられますけれども、実は、勝手に受精卵を使われたBさんという御夫妻にとっても大事な卵子であり、受精卵なんですよ。どこかに行っちゃったでは済まないし、生まれ出るかもしれなかった子供さんの権利も含めて、二重の人権侵害を起こしているんだと私は思うんです。

 にもかかわらず、そして二万件余りにも及ぶ件数にもかかわらず、先般の大臣のこの逢坂さんへの御答弁では、学会にゆだねて任せておるというふうな御答弁でした。私も医師ですから、医学における自由というものの重要性は知っていますが、しかし、安全管理とかこうした人権抵触事案が起こるようでは、やはりちょっと看過できないと思うんです。

 大臣に二つお願いがございますが、一つは、これまでも散発的に取り違え事案は報告されておりますが、そのような事故につながる、医療でもありますよね、ヒヤリ・ハット事例の報告といいますが、そういうものを、学会任せじゃなくて、せめて厚生労働省としてきちんと報告を集積していくというのが一つ。

 もう一つは、私が常々お願いしております、やはり健康保険適用にすべきなんだと思うんです。それによって、例えば、胚の培養士といって受精卵を育てていく技術を持った人がいる施設、あるいは安全委員会を併設した施設など、施設基準を厳しく定めることができると私は思うんです。二万件にも及んでいるという実態、それを安全に、そして健康の被害もなくやっていただくために、私は日ごろ出産全体の保険適用もお伺いしたことがありますが、そういう視点からこの問題を見ていただけまいか。

 今、二点お尋ねいたしましたが、いかがでしょうか。

舛添国務大臣 第一点目につきましては、これは厚生労働省の各出先機関を通じて早急に調査をして、またお知らせをしたいと思います。

 二点目ですけれども、出産全体についての保険適用、これはさまざまな議論をいたしました。現場の産科の先生方が猛反対だったんですね。この前はそういうことで一つの結論を得ました。

 今、不妊治療については、所得制限はありますけれども、これは助成金を補助する形でやっておりますので、これをいかに充実するかということを考えたいと思います。

 全体の保険適用は、ちょっともう少し、これは現場の方々も含めて議論を深める必要があろうかというふうに思っております。

阿部(知)委員 保険適用は患者さんサイドにとって福音だということなんですね。医師たちは自由価格をつけられますから、御承知のように、非常に値段に差があるんです。私は、値段に差がある以上に安全性に差があったり、技術の面での問題もさまざまにあると思うんです。

 大臣のお手元に、現在、厚生労働省が補助金を用いてやっております特定不妊治療費助成制度の利用件数、確かに二〇〇七年度からは六万件余りになりましたが、日本全体では体外受精は十万件近くになっていると思います。膨大な数であります。しかし、それが安全委員会や、そして病院内で事態が発生したときのフォローアップ機関を持たない。

 大臣、例えばこのBさんという御夫妻は果たしてどんなお話を受けているでしょうか。Aさんは訴訟されました。Bさんは自分の卵子を使われちゃったかもしれない。でも、恐らく何にも御存じないんだと思うんですよ。私は、そうしたある意味での倫理性も、ここは非常に微妙な分野だけに、施設基準を上げて、きちんとしてフォローする。

 例えば、大臣、補助金が出ている施設において、そこが安全性についてのマニュアルがあるかないか、あるいはさっきの細胞培養士がおるかおらないかは必須条件じゃないんですよ、望ましい条件なんです。私はそれでは、望ましいといったって、そういう専門職を置かないでやった方が安上がりなんですよね。それからマニュアルも、それをつくるにはいろいろな人員配置が要りますよ。大臣が今、健康保険適用がまだまだ論議の先だとおっしゃるのであれば、せめてこうした国庫補助を出しているところの要件を、望ましいではなくて、設置されていることとなさったらどうですか。それは一歩前進だと思います。

舛添国務大臣 今調査をし、またアンケートを行っておりますけれども、指定している病院について、望ましいではなくて必要な安全管理上の措置をきちんと義務化して追加する、これは検討して、できれば実現したいと思います。

阿部(知)委員 ぜひそのようにお願いしたいと思います。

 そして、私がずっと一貫して問題にしております産科医療補償制度にまたきょうも行かせていただきます。

 私は、この制度には大きなボタンのかけ違いがあり、そして何よりも、例えば障害をお持ちの、脳性麻痺等々の当事者が全く喜んでいない、この制度を歓迎しないという意見書がいっぱい厚生労働省に寄せられております。

 大臣には二つお伺いいたしますが、まず、小児科学会が平成十九年の八月に産科補償制度について寄せた意見書と、二〇〇八年、去年の十二月に障害者各団体が厚生労働省に寄せた意見書をごらんになったことがおありでしょうか。お願いします。

舛添国務大臣 さまざまな意見書が届いていますので、その内容については御報告を受けていますが、詳細に今、どういうことが細かく書いてあるかというと、ちょっとそこまでの記憶はございません。

阿部(知)委員 大臣は、先ほどどなたかがおっしゃったが、受精卵から御遺骨まで、幅広いところを対象にしているので大変とは思いますが、やはりこの制度が、例えば小児科学会の意見書では、今回の制度では三十三週、二千グラム以上の赤ちゃんが対象なのですが、どの程度の早産や低出生体重児をもって補償の対象外とするかという線引きに合理的理由、納得を与えることはできないと。要は、小児科でやっていると小さく生まれて大変に手がかかって、そして、ICU等々でやっている子供たちに実際は脳性麻痺がふえ、そして低出生体重児がふえて、そのことが大変な、子供たちの後につながっていっているという実態の最前線におる者からは、一体この制度は何だろうと思うわけですね。

 それから、この制度ができることで、そうしたハイリスク妊娠、ハイリスク分娩を扱っている施設にとっては、この子たちは対象じゃないですから、むしろ訴訟がふえてしまうんじゃないか。一生懸命ぎりぎりで頑張っている施設の方が訴訟がふえて、楽してというのは失礼ですが、回した方はこれでよくなるというのでは、もうぎりぎりが踏ん張れない、やはりちょっとおかしいと。

 そしてもう一つ、脳性麻痺児の平等な患者救済につながらないのみならず、不平等を助長すると。

 これが小児科学会がずっと懸念している見解なのですね。大臣には、きょう初めてかと思いますので、厚生労働省、特に担当部署には行っているはずですから、ぜひお読みいただきたい。

 障害者団体の御意見もほとんど一緒です。「障害児が生まれる可能性があるということを、過大な「不安」として、女性におわせ、産科医療崩壊に対する根本的な解決を先送りする」ものであるというような指摘が、例えばDPI女性障害者ネットワークからも寄せられております。こうした意見を一切無視してやれば、私は、この制度は小さく産んで大きく育てると大臣は言うけれども、そうならないと思います。

 そして、少しだけお金の話をさせていただきます。

 大臣のお手元の資料二枚目。これはさきの予算委員会で取り上げたものですが、自動車の自賠責、損害賠償責任保険には法律があって、保険料算定も独自の規定があって、再審査請求もまた違う機関が担い、そしておまけに契約者保護、すなわち、お金、預けた保険料がもしも損害保険会社に何かあったときに補償される仕組みがあるんですね。

 それで、私はいろいろ言いたいですが、この産科医療補償制度は余りにも不備で、日本医療機能評価機構が何から何まで全部やっているために非常に不安定になり、そして民間損保会社が運営して、例えばこの民間損保会社がつぶれちゃったらどうなるか、お金の契約者保護はどうなるのかということがないんですね。ここがまた大きな問題で、今、損保会社は幾つかに統廃合されたり、一応リスク分散のために六社に分けているということがありますが、こんな金融危機の中ですからいろいろなことが起こります。この点については大臣はどうお考えなのか。実務係は恐縮ですが結構ですので、大臣の御認識を伺いたいと思います。

 それからもう一点は、大臣がこれを小さく産んで大きく育てると言いますが、私は何度も申しますが、こういう補償の仕組みを民間損保会社に丸投げしたら、やはり大きく育たないと思うんです。ほかの、自賠責でもあるいは原発の事故のときでも、一たんある域を超えたものには国家補償がきちんと後ろに控えております。そういう仕組み、国が補償についてはきちんとハンドルする仕組みがないと、国家意思がそこに明確でないといけないと思いますが、いかがでしょうか。

舛添国務大臣 産科医不足の大きな原因に、訴訟リスクということがありました。そういうことで、とにかくノーフォールト、無過失補償制度を何とか一歩でも先んじて入れようということで、正常分娩で脳性麻痺というカテゴリーから始めたわけで、先ほどの小児科学会やその他の御意見もよくわかるところでありますし、むしろ逆に問題を起こす可能性があるということも、委員の御指摘もよくわかります。

 そういう中で、国家がどこまで責任を持つのかということ。私は、理想的にはすべての医療事故に対してこういうことが行われればいいですけれども、各診療科によっての状況も違いますし、それはまだまださまざまな配慮をしないといけないというふうに思います。

 今のところ、私たちが普通入っている損保にしても生命保険にしても、それぞれの補償機構がありますから全部なくなるというわけではありません。ただ、今の阿部委員のような考え方もある、そういうことも踏まえた上で、とりあえず一歩を踏み出して、そして不断の検証をしながら、大きく変える必要があればまた変えていくということで、貴重な御意見としてきちんと念頭に置いておきたいと思います。

阿部(知)委員 申しわけないが、大臣、厚生労働省がおつくりになった質問への答弁集を読むと、これは去年の暮れなんですけれども、「補償対象が脳性麻痺に限られている理由」は、「思いがけず重度の障害児を持った親が、その原因の究明や障害に対する補償を求めて医師等に対する医療訴訟を起こすことが多い」からとなっているんですね。訴訟対策だというふうになってくると、やはり本旨がゆがんでくる。補償は補償なんです、その人に対する。だから無過失補償なんです。ここをたがえてはいけない、ボタンを違えてはいけないと思います。

 以上です。終わらせていただきます。

     ――――◇―――――

田村委員長 内閣提出、雇用保険法等の一部を改正する法律案、細川律夫君外六名提出、雇用保険法及び船員保険法の一部を改正する法律案、大島敦君外七名提出、求職者等に対する能力開発の支援及び解雇等による離職者の医療保険に係る経済的負担の軽減のための緊急措置に関する法律案及び細川律夫君外七名提出、内定取消しの規制等のための労働契約法の一部を改正する法律案の各案を議題といたします。

 順次趣旨の説明を聴取いたします。舛添厚生労働大臣。

    ―――――――――――――

 雇用保険法等の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

舛添国務大臣 雇用保険法等の一部を改正する法律案について、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。

 現在、我が国では、景気が下降局面にある中で、雇用失業情勢は厳しい状況にあり、その影響が、特に、非正規労働者の雇用調整の動きの急速な拡大として見られるところであります。

 このような状況に対応し、労働者の生活及び雇用の安定を図るため、雇用保険制度について、当面の緊急対策としての暫定措置も含め、その機能を強化するとともに、負担軽減の観点から特例的に平成二十一年度の雇用保険率を引き下げる等の措置を講ずることとし、この法律案を提出した次第であります。

 以下、この法律案の主な内容について御説明申し上げます。

 第一は、雇用保険法の一部改正であります。

 まず、有期労働契約が更新されなかったことによる離職者等については、被保険者期間が六カ月以上で基本手当の受給資格を得られることとし、また、所定給付日数を、暫定的に、倒産、解雇等による離職者と同様とすることとしております。

 次に、有期労働契約が更新されなかったことによる離職者及び倒産、解雇等による離職者であって、四十五歳未満である者または雇用機会が不足していると認められる地域に居住する者であり、公共職業安定所長が就職が困難であると認めた者等については、暫定的に、所定給付日数を延長して基本手当を支給することができることとしております。

 また、就業促進手当について、暫定的に、再就職手当の支給要件の緩和及び給付率の引き上げ等を行うこととしております。

 このほか、育児休業給付について、育児休業基本給付金及び育児休業者職場復帰給付金を統合し、全額を育児休業中に支給することとするとともに、給付率を賃金日額の百分の五十に引き上げている暫定措置を、当分の間、延長することとしております。

 第二は、労働保険の保険料の徴収等に関する法律の一部改正であります。

 平成二十一年度における雇用保険の失業等給付に係る保険料率について、暫定的に千分の八とすることとしております。

 第三は、船員保険法の一部改正であります。

 船員保険についても、雇用保険法の改正に準じて、失業保険金、再就職手当、保険料率等に関する改正を行うこととしております。

 最後に、この法律の施行期日については、平成二十一年四月一日としておりますが、育児休業給付に係る部分については、平成二十二年四月一日から施行することとしております。

 以上が、この法律案の提案理由及びその内容の概要でございます。

 何とぞ、御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。

田村委員長 次に、細川律夫君。

    ―――――――――――――

 雇用保険法及び船員保険法の一部を改正する法律案

 内定取消しの規制等のための労働契約法の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

細川議員 ただいま議題となりました雇用保険法及び船員保険法の一部を改正する法律案、内定取消しの規制等のための労働契約法の一部を改正する法律案について、提案者を代表して、その提案の趣旨及び主な内容を御説明いたします。

 世界的な景気後退の中で、我が国の雇用失業情勢は急速に悪化しております。企業による採用内定の取り消し、派遣労働者や有期労働者の労働契約の中途解除や雇いどめ、さらには正社員のリストラといった問題が発生しており、年度末とも重なる今月末にはさらに事態が深刻化することが懸念をされております。こうした失業雇用情勢への対応に万全を期すため、次の二法案を速やかに成立させることが重要であります。

 第一に、民主党、社会民主党提出の雇用保険法及び船員保険法の一部を改正する法律案について申し上げます。

 本法律案は、あまねく労働者の生活及び雇用の安定を図るため、雇用保険制度の拡充及び解雇等に伴い住宅からの退去を余儀なくされる者等に対する住まいの確保の支援についての雇用安定事業の実施等を内容とするものであります。

 まず、失業者へのセーフティーネットをより厚く、より広く適用するため、派遣労働者及び短時間労働者を雇用保険の被保険者とすること、基本手当の受給資格要件を緩和し、離職の日以前一年間に被保険者であった期間が通算して六カ月以上であれば受給資格を獲得できるものとすること、雇いどめにより離職した者を特定受給資格者とすること、基本手当の日額を引き上げること、失業等給付に要する費用に係る国庫負担額について、本来の額の百分の五十五としている暫定措置を廃止し、本来の負担率である四分の一の負担に戻すことを定めます。なお、船員保険についても、これに準じた改正を行うこととしております。

 また、雇用安定事業として、解雇等に伴い雇用主または派遣先から提供されていた住宅からの退去を余儀なくされる派遣労働者、失業等給付を受給できずに困窮している失業者に対し、再就職のための職業紹介及び職業指導、公営住宅への入居における特別の配慮等住宅への入居の支援、生活上の支援その他必要な援助を一体的に行うこと、派遣労働者等に住宅を提供している雇用主または派遣先であって、派遣労働者等の解雇等の後も引き続き住宅に住まわせる事業主に対して助成及び援助を行うことといたします。

 第二に、民主党、社会民主党、国民新党提出の内定取消しの規制等のための労働契約法の一部を改正する法律案について申し上げます。

 本法律案は、採用内定の安易な取り消しを防止し、内定取り消しに関する紛争の防止及び解決等を図るため、使用者が採用内定の通知を発した時点において労働契約が成立したものと推定すること、使用者は内定取り消しを行う場合があるときは、あらかじめ、内定者に内定取り消しの事由を書面にて明示をしなければならないこと、内定取り消しは、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして無効とすること、内定を取り消された者が内定取り消しの理由について証明書を請求したときには、使用者は七日以内に交付しなければならないことと定めます。

 以上が、二法律案の提案の趣旨及び主な内容でございます。

 雇用状況が日増しに悪化していることを勘案し、何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願いを申し上げます。

 以上であります。

田村委員長 次に、大島敦君。

    ―――――――――――――

 求職者等に対する能力開発の支援及び解雇等による離職者の医療保険に係る経済的負担の軽減のための緊急措置に関する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

大島(敦)議員 ただいま議題となりました、民主党、社会民主党、国民新党提出の求職者等に対する能力開発の支援及び解雇等による離職者の医療保険に係る経済的負担の軽減のための緊急措置に関する法律案について、提出者を代表して、その提案の趣旨及び主な内容を御説明いたします。

 世界的な景気後退の中で、我が国の雇用失業情勢は急速に悪化しています。景気回復の兆しが一向に見えない中で、失業者の再就職が困難となり、失業が長期化することが想定されます。現行では、失業者は、失業者給付が終了しても再就職できない場合、生活保護に頼らざるを得ない状況に陥ってしまうことが懸念されます。そのため、再就職のための職業能力を身につけて再起を図ろうとする求職者のため、雇用保険制度と生活保護制度の間に第二のセーフティーネットを創設する必要が高まっております。

 本法律案は、雇用及び失業に関する状況の悪化に伴い、多くの者が離職または自営業者が事業の廃止を余儀なくされていることにかんがみ、求職者給付の受給期間が終了した者や失業している廃業者等に対し、就職及び新たな事業の開始を促進するための能力開発を支援する求職者等能力開発給付を行う緊急の措置を講ずるとともに、解雇等による離職者の医療保険に係る経済的負担を軽減するための緊急の特別措置を講じ、もって求職者等の生活の安定を図ることを目的としています。

 雇用保険の求職者給付が終了した者や廃業した者等で、引き続き失業していて能力開発訓練を受けることを公共職業安定所で認定を受けた求職者について、能力開発訓練を受けた日数に応じて受給資格の認定後三年のうち二年間分を限度として支給することとします。

 また、医療保険料が前年度収入を基準に算定され、失業者にとって経済的負担が大きいため、被用者保険に加入していて解雇等により離職した失業者が、退職後、任意継続被保険者については二年間、国民健康保険の被保険者については一年間、在職中の保険料の水準を維持することとし、保険者の減収については一般会計から補助することとします。

 以上が、本法案の提案の趣旨及び主な内容でございます。

 雇用状況が日増しに悪化していることを勘案し、何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださりますようお願い申し上げます。

田村委員長 以上で各案の趣旨の説明は終わりました。

 次回は、来る十三日金曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時五十四分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.