衆議院

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第6号 平成21年4月1日(水曜日)

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平成二十一年四月一日(水曜日)

    午前九時二分開議

 出席委員

   委員長 田村 憲久君

   理事 上川 陽子君 理事 鴨下 一郎君

   理事 後藤 茂之君 理事 西川 京子君

   理事 三ッ林隆志君 理事 藤村  修君

   理事 山井 和則君 理事 桝屋 敬悟君

      赤池 誠章君    新井 悦二君

      井澤 京子君    井上 信治君

      遠藤 宣彦君    大野 松茂君

      大前 繁雄君    金子善次郎君

      川条 志嘉君    木原 誠二君

      清水鴻一郎君    杉村 太蔵君

      高鳥 修一君    谷畑  孝君

      とかしきなおみ君   戸井田とおる君

      冨岡  勉君    長崎幸太郎君

      西本 勝子君    萩原 誠司君

      林   潤君    福岡 資麿君

      馬渡 龍治君    内山  晃君

      岡本 充功君    菊田真紀子君

      小宮山泰子君    郡  和子君

      園田 康博君    長妻  昭君

      細川 律夫君    三井 辨雄君

      柚木 道義君    福島  豊君

      古屋 範子君    高橋千鶴子君

      阿部 知子君    糸川 正晃君

    …………………………………

   議員           長勢 甚遠君

   議員           上川 陽子君

   議員           鴨下 一郎君

   議員           後藤 茂之君

   議員           西川 京子君

   議員           三ッ林隆志君

   議員           桝屋 敬悟君

   議員           福島  豊君

   議員           古屋 範子君

   議員           長妻  昭君

   議員           山井 和則君

   議員           内山  晃君

   議員           園田 康博君

   議員           阿部 知子君

   議員           糸川 正晃君

   厚生労働大臣       舛添 要一君

   厚生労働副大臣      大村 秀章君

   厚生労働大臣政務官    金子善次郎君

   厚生労働大臣政務官   戸井田とおる君

   政府参考人

   (消防庁次長)      株丹 達也君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           中尾 昭弘君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           岸田 修一君

   政府参考人

   (厚生労働省医政局長)  外口  崇君

   政府参考人

   (厚生労働省健康局長)  上田 博三君

   政府参考人

   (厚生労働省医薬食品局長)            高井 康行君

   政府参考人

   (厚生労働省労働基準局長)            金子 順一君

   政府参考人

   (厚生労働省職業安定局長)            太田 俊明君

   政府参考人

   (厚生労働省職業安定局高齢・障害者雇用対策部長) 岡崎 淳一君

   政府参考人

   (厚生労働省雇用均等・児童家庭局長)       村木 厚子君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局長)           阿曽沼慎司君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長)    木倉 敬之君

   政府参考人

   (厚生労働省老健局長)  宮島 俊彦君

   政府参考人

   (厚生労働省保険局長)  水田 邦雄君

   厚生労働委員会専門員   榊原 志俊君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月一日

 辞任         補欠選任

  井上 信治君     馬渡 龍治君

  木村 義雄君     大前 繁雄君

  細川 律夫君     小宮山泰子君

同日

 辞任         補欠選任

  大前 繁雄君     木村 義雄君

  馬渡 龍治君     井上 信治君

  小宮山泰子君     細川 律夫君

    ―――――――――――――

三月三十一日

 社会保険の保険料等に係る延滞金を軽減するための厚生年金保険法等の一部を改正する法律案(長勢甚遠君外九名提出、衆法第一一号)

 厚生年金保険の保険給付及び国民年金の給付の支払の遅延に係る加算金の支給に関する法律案(長妻昭君外六名提出、衆法第一三号)

 国民年金法等の一部を改正する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出第一九号)

は本委員会に付託された。

四月一日

 国民年金事業等の運営の改善のための国民年金法等の一部を改正する法律の一部を改正する法律案(第百六十八回国会衆法第六号)の提出者「後藤茂之君外二名」は「後藤茂之君外三名」に訂正された。

四月一日

 あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律等の一部を改正する法律案(後藤茂之君外三名提出、第百六十九回国会衆法第五号)

は委員会の許可を得て撤回された。

三月三十一日

 現行保育制度の堅持・拡充と保育・学童保育・子育て支援予算の大幅増額に関する請願(岡本充功君紹介)(第一一四〇号)

 同(川条志嘉君紹介)(第一一四一号)

 同(辻元清美君紹介)(第一一四二号)

 同(広津素子君紹介)(第一一四三号)

 同(三井辨雄君紹介)(第一一四四号)

 同(山田正彦君紹介)(第一一四五号)

 同(松本大輔君紹介)(第一一六一号)

 同(柚木道義君紹介)(第一一九七号)

 同(吉井英勝君紹介)(第一二二六号)

 人間らしい働き方と暮らしの実現を求めることに関する請願(辻元清美君紹介)(第一一四六号)

 同(柚木道義君紹介)(第一一九九号)

 同(吉井英勝君紹介)(第一二二七号)

 同(鈴木克昌君紹介)(第一二三五号)

 同(松本龍君紹介)(第一二三六号)

 同(渡辺周君紹介)(第一二三七号)

 同(安住淳君紹介)(第一三一〇号)

 同(村井宗明君紹介)(第一三一一号)

 同(山田正彦君紹介)(第一三一二号)

 同(山井和則君紹介)(第一三一三号)

 同(横光克彦君紹介)(第一三一四号)

 後期高齢者医療制度廃止法案の衆議院での速やかな審議と可決を求めることに関する請願(小宮山泰子君紹介)(第一一七六号)

 同(枝野幸男君紹介)(第一一九二号)

 同(神風英男君紹介)(第一一九三号)

 同(岡本充功君紹介)(第一三〇四号)

 同(牧義夫君紹介)(第一三〇五号)

 社会保障の二千二百億円削減計画を撤回し、安全・安心の医療を保障するよう求めることに関する請願(菅野哲雄君紹介)(第一一七七号)

 同(重野安正君紹介)(第一一七八号)

 同(照屋寛徳君紹介)(第一一九四号)

 同(日森文尋君紹介)(第一一九五号)

 同(辻元清美君紹介)(第一二二五号)

 同(長安豊君紹介)(第一三〇八号)

 パーキンソン病患者・家族の生活の質の向上を求めることに関する請願(棚橋泰文君紹介)(第一一七九号)

 同(林田彪君紹介)(第一二〇八号)

 社会保険二本松病院を公的病院として存続させ、地域医療の確保を求めることに関する請願(亀岡偉民君紹介)(第一一八〇号)

 同(渡部篤君紹介)(第一一九八号)

 後期高齢者医療制度の即時廃止を求めることに関する請願(照屋寛徳君紹介)(第一一九六号)

 小規模作業所等成人期障害者施策に関する請願(井脇ノブ子君紹介)(第一二一六号)

 同(鍵田忠兵衛君紹介)(第一二一七号)

 同(河井克行君紹介)(第一二一八号)

 同(神風英男君紹介)(第一二一九号)

 同(田村謙治君紹介)(第一二二〇号)

 同(高市早苗君紹介)(第一二二一号)

 同(玉沢徳一郎君紹介)(第一二二二号)

 同(萩原誠司君紹介)(第一二二三号)

 同(宮路和明君紹介)(第一二二四号)

 同(あかま二郎君紹介)(第一二三九号)

 同(赤松広隆君紹介)(第一二四〇号)

 同(泉健太君紹介)(第一二四一号)

 同(岩國哲人君紹介)(第一二四二号)

 同(宇野治君紹介)(第一二四三号)

 同(大塚高司君紹介)(第一二四四号)

 同(岡下信子君紹介)(第一二四五号)

 同(岡本充功君紹介)(第一二四六号)

 同(奥野信亮君紹介)(第一二四七号)

 同(奥村展三君紹介)(第一二四八号)

 同(金子恭之君紹介)(第一二四九号)

 同(金田誠一君紹介)(第一二五〇号)

 同(川端達夫君紹介)(第一二五一号)

 同(神崎武法君紹介)(第一二五二号)

 同(北側一雄君紹介)(第一二五三号)

 同(楠田大蔵君紹介)(第一二五四号)

 同(小平忠正君紹介)(第一二五五号)

 同(小宮山泰子君紹介)(第一二五六号)

 同(後藤斎君紹介)(第一二五七号)

 同(後藤田正純君紹介)(第一二五八号)

 同(河本三郎君紹介)(第一二五九号)

 同(佐々木隆博君紹介)(第一二六〇号)

 同(坂本剛二君紹介)(第一二六一号)

 同(実川幸夫君紹介)(第一二六二号)

 同(鈴木克昌君紹介)(第一二六三号)

 同(田中良生君紹介)(第一二六四号)

 同(高井美穂君紹介)(第一二六五号)

 同(高木義明君紹介)(第一二六六号)

 同(谷川弥一君紹介)(第一二六七号)

 同(谷畑孝君紹介)(第一二六八号)

 同(照屋寛徳君紹介)(第一二六九号)

 同(徳田毅君紹介)(第一二七〇号)

 同(中川正春君紹介)(第一二七一号)

 同(中川泰宏君紹介)(第一二七二号)

 同(長妻昭君紹介)(第一二七三号)

 同(丹羽秀樹君紹介)(第一二七四号)

 同(丹羽雄哉君紹介)(第一二七五号)

 同(西村智奈美君紹介)(第一二七六号)

 同(日森文尋君紹介)(第一二七七号)

 同(平井たくや君紹介)(第一二七八号)

 同(平口洋君紹介)(第一二七九号)

 同(平沼赳夫君紹介)(第一二八〇号)

 同(福田昭夫君紹介)(第一二八一号)

 同(藤村修君紹介)(第一二八二号)

 同(古屋圭司君紹介)(第一二八三号)

 同(細川律夫君紹介)(第一二八四号)

 同(牧義夫君紹介)(第一二八五号)

 同(松浪健四郎君紹介)(第一二八六号)

 同(松本龍君紹介)(第一二八七号)

 同(三井辨雄君紹介)(第一二八八号)

 同(宮澤洋一君紹介)(第一二八九号)

 同(保岡興治君紹介)(第一二九〇号)

 同(山崎拓君紹介)(第一二九一号)

 同(山本拓君紹介)(第一二九二号)

 同(吉田泉君紹介)(第一二九三号)

 同(渡辺具能君紹介)(第一二九四号)

 同(安住淳君紹介)(第一三一五号)

 同(井上義久君紹介)(第一三一六号)

 同(池坊保子君紹介)(第一三一七号)

 同(石関貴史君紹介)(第一三一八号)

 同(岩屋毅君紹介)(第一三一九号)

 同(漆原良夫君紹介)(第一三二〇号)

 同(江藤拓君紹介)(第一三二一号)

 同(大前繁雄君紹介)(第一三二二号)

 同(亀井静香君紹介)(第一三二三号)

 同(菅直人君紹介)(第一三二四号)

 同(木原稔君紹介)(第一三二五号)

 同(木村隆秀君紹介)(第一三二六号)

 同(後藤田正純君紹介)(第一三二七号)

 同(河野太郎君紹介)(第一三二八号)

 同(河本三郎君紹介)(第一三二九号)

 同(近藤昭一君紹介)(第一三三〇号)

 同(近藤三津枝君紹介)(第一三三一号)

 同(近藤基彦君紹介)(第一三三二号)

 同(斉藤斗志二君紹介)(第一三三三号)

 同(清水鴻一郎君紹介)(第一三三四号)

 同(清水清一朗君紹介)(第一三三五号)

 同(下条みつ君紹介)(第一三三六号)

 同(杉田元司君紹介)(第一三三七号)

 同(田島一成君紹介)(第一三三八号)

 同(滝実君紹介)(第一三三九号)

 同(筒井信隆君紹介)(第一三四〇号)

 同(寺田稔君紹介)(第一三四一号)

 同(中谷元君紹介)(第一三四二号)

 同(長安豊君紹介)(第一三四三号)

 同(西博義君紹介)(第一三四四号)

 同(西村康稔君紹介)(第一三四五号)

 同(鉢呂吉雄君紹介)(第一三四六号)

 同(原田憲治君紹介)(第一三四七号)

 同(平岡秀夫君紹介)(第一三四八号)

 同(二田孝治君紹介)(第一三四九号)

 同(古川禎久君紹介)(第一三五〇号)

 同(馬淵澄夫君紹介)(第一三五一号)

 同(松本剛明君紹介)(第一三五二号)

 同(村井宗明君紹介)(第一三五三号)

 同(森山裕君紹介)(第一三五四号)

 同(谷津義男君紹介)(第一三五五号)

 同(山岡賢次君紹介)(第一三五六号)

 同(山口壯君紹介)(第一三五七号)

 同(山田正彦君紹介)(第一三五八号)

 同(山井和則君紹介)(第一三五九号)

 同(横光克彦君紹介)(第一三六〇号)

 レセプトのオンライン請求に関する請願(楠田大蔵君紹介)(第一二三八号)

 全国ペアーレ施設の存続を求めることに関する請願(田島一成君紹介)(第一三〇三号)

 高齢者に負担増と差別医療を強いる後期高齢者医療制度の中止・撤回を求めることに関する請願(平岡秀夫君紹介)(第一三〇六号)

 同(松本剛明君紹介)(第一三〇七号)

 無認可保育所への公的助成等に関する請願(岡本充功君紹介)(第一三〇九号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律等の一部を改正する法律案(後藤茂之君外三名提出、第百六十九回国会衆法第五号)の撤回許可に関する件

 国民年金法等の一部を改正する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出第一九号)

 社会保険の保険料等に係る延滞金を軽減するための厚生年金保険法等の一部を改正する法律案(長勢甚遠君外九名提出、衆法第一一号)

 厚生年金保険の保険給付及び国民年金の給付の支払の遅延に係る加算金の支給に関する法律案(長妻昭君外六名提出、衆法第一三号)

 国民年金事業等の運営の改善のための国民年金法等の一部を改正する法律の一部を改正する法律案(後藤茂之君外三名提出、第百六十八回国会衆法第六号)

 国民年金事業等の運営の改善のための国民年金法等の一部を改正する法律の一部を改正する法律案(参議院提出、第百六十八回国会参法第一号)

 厚生労働関係の基本施策に関する件

 あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律等の一部を改正する法律案起草の件


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     ――――◇―――――

田村委員長 これより会議を開きます。

 厚生労働関係の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として消防庁次長株丹達也君、厚生労働省大臣官房審議官中尾昭弘君、大臣官房審議官岸田修一君、医政局長外口崇君、健康局長上田博三君、医薬食品局長高井康行君、労働基準局長金子順一君、職業安定局長太田俊明君、職業安定局高齢・障害者雇用対策部長岡崎淳一君、雇用均等・児童家庭局長村木厚子君、社会・援護局長阿曽沼慎司君、社会・援護局障害保健福祉部長木倉敬之君、老健局長宮島俊彦君、保険局長水田邦雄君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

田村委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

田村委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。遠藤宣彦君。

遠藤(宣)委員 おはようございます。自由民主党の遠藤宣彦でございます。

 私はこの厚生労働委員会で初めての質問となります。数多くの論客の方々がいらっしゃって、そしてまた最も国民生活に身近なこの委員会で、しかも平成二十一年度の一番初めの日に質問をさせていただくということで、大変感謝をしております。私自身はほかにもいろいろな委員会に入っておりますけれども、今回が初めての厚生労働委員会の質問ということで、基本的な厚生労働行政についての認識、このことについてお伺いをしていきたいと思います。

 今、百年に一度という非常に大きな経済危機の中にあると言われております。そもそも、社会保障というのはどんなものなのか、一体どうするべきなのか。

 そもそも論にさかのぼっていろいろと考えてみますと、国際政治学者で著名でありました舛添大臣でありますから、御存じのことと思いますけれども、社会保障制度は、ビスマルクの時代に社会保険が誕生した、一八八三年だと思いますけれども、当時、マルクスが資本論を書いたのが一八六七年ですから、世の中が本当に大変なときに社会の安定化装置として出てきた。さらに、社会保障という言葉自体がニューディール政策の一環として、一九三五年だったと思いますけれども、そのときに誕生した。いずれにせよ、社会の不安が大きく広がっているときに社会保障制度というものが社会の安定化装置として必然的に登場してきたということが歴史の事実でございます。

 そんな中で、憲法に定められていますように、最低限、健康で文化的な生活を営むとか、とにかくナショナルミニマムを確保するとか、そういった社会の安定化装置としての役割が今最も求められている。今、将来の不安があるために動きがとれない。こんな中で、そもそもの社会保障の機能、あるべき姿というものについて、まず大臣の御見解をお伺いすることから始めたいと思います。

舛添国務大臣 ヨーロッパの歴史についても言及なさいましたけれども、私は、今、日本の社会保障の原則である自助、共助、公助、これでいいんだろうと思っていますのは、やはり天はみずから助くる者を助く、まずみずから努力をする。それは、健康の維持だって、何もしないよりも日ごろからちゃんと予防するというのは大切だと思います。

 しかし、そうはいっても、やはりみんなでお互い助け合う。介護の現場において、私は遠距離介護の経験がありますけれども、東京に息子がいて九州の、委員も福岡ですけれども、介護というのはなかなか大変だ。急なときはやはり御近所の皆さんに助けていただく、これは共助です。

 しかし、最終的に、一番最後のセーフティーネットは生活保護がありますけれども、やはり最後は公助、みんなの税金で助け合おうじゃないか、こういう組み立てをやるということが必要でありますし、そのセーフティーネットを幾重にも張りめぐらすということが私は現代国家の役割だというふうに思っていますので、そういう意味で、むき出しの市場経済原則、これだけではやっていけないと思います。何のために国会があり、何のために政府があり、何のために政治があるか。経済原則だけではどうしようもないことに対して政治がきちっと介入する、それが現代の民主主義国家である、その最たるものが社会保障であると思っております。

遠藤(宣)委員 ありがとうございます。

 私自身も、一昨年の暮れに父をがんでみとりました。昨年には下の子供が生まれました。まさに、イギリスのビバリッジ勧告にありましたように、揺りかごから墓場まで、それの両端といいますか、両方を最近経験させていただきましたので、本当に安心できる社会というのはどんなものなんだろうかということをつくづく感じた次第であります。

 そして、今大臣がおっしゃられましたように、自助の努力をしなければならないけれども、社会構造上、どうしても助けられない人というのが出てくるというのは、これはもう必然的なものでございます。こんな中でどういうふうにセーフティーネットを張っていくか、こういう要望があるわけでありますけれども、一方において財政というのは限りがあります。余りに自助の精神を損なってしまいますと、国が何とかしてくれるからという甘えが出る。

 私、いろいろな選挙区でこの社会保障の話をするときによく言われる、こんな笑い話がある。病院のサロンでおばあちゃんたち、おじいちゃんたちが集まっていた。いつも顔を合わせて、楽しく会話をしていた。ある日、ある人が来なくなった。みんなの会話はどうなったか。どこか体のぐあいが悪くなったんだろうか。こういうような話がある。もともとぐあいが悪いからこそ病院に行っているはずなのが、来なくなったらぐあいが悪くなっているんじゃないかということは、いかに医療費が無駄に使われているんじゃないかということを示すような話です。

 しかし、その一方で、また別な話がございます。きんさん、ぎんさんという百歳を超えたおばあちゃんの双子がおりました。この方々が、百歳を超えて非常にブレークをした。ギャラがいっぱい入ってくる。そして、インタビューを受けました。いや、きんさん、ぎんさん、売れていますね、いっぱいギャラが入っているけれども、どうするんですかと。何と答えたか。先々のために貯金をしておきますと。こういうことを言われるわけですね。つまり、余りに無駄をしてはいけないけれども、しかし、将来不安というものがあると、これはどうしても社会の不安定につながってしまう。

 こんな中で、我々は小泉選挙のときに当選をさせていただいた。小泉改革と社会保障の関係は一体どうなんだろうかということを改めて考えてみる必要があると思います。

 私自身は郵政省の出身でありまして、世の中には、市場原理になじませなきゃいけないものと、市場原理に基本的になじまないものがあるというふうに考えています。たしか、小泉内閣が成立したのが二〇〇一年の四月の二十六日だったと思います。その後に、舛添大臣が参議院選挙で、たしか目を悪くされて眼帯をしていたと記憶をしておりますけれども、当時、ITバブルが二〇〇一年の三月にはじけて、非常に世の中、不良債権とか過剰設備、過剰人員があった。

 歴史的な必然として小泉内閣というのが登場したと私は思うんですけれども、その一方で、私たち自民党、保守系の政党というのは、一たん決めたことを必ずしも未来永劫変えないというわけではございません。例えば、池田内閣で高度経済成長、所得倍増をやったら公害が発生した。そうすると、佐藤内閣で公害対策基本法をつくる、あるいは環境庁をつくる。佐藤内閣が台湾寄りだったら、日中国交回復を次の内閣がやる。つまり、前の政権の反省と総括の上に次の政策を立てていくということだと思います。

 そうしたときに、改めて、小泉改革、不良債権処理とさまざまな過剰人員、過剰設備を整理しなきゃいけないということでありましたけれども、本来、私自身は、社会保障というのは基本的には市場原理には余りなじまないというふうに思っております。その部分について、まず舛添大臣の御見解を伺いたいと思います。

舛添国務大臣 小泉さんのもとの構造改革というお話がありました。私は、今でもさまざまな分野で必要な構造改革が残っているというふうに思っていますから、改革をとめてはいけないと思います。

 その上で、先ほど申し上げましたように、ただ単に競争原理、マーケットメカニズムだけですべて押し通していいのかといったときに、基本的には、マーケットメカニズムだけでやると強い者が勝ちます。そうすると、弱い者、本人に自己責任がなくても弱い人が生まれてくる。それを救うのが現代国家だと思っていますから、その最たるものが社会保障です。ですから、原理原則としては、社会保障というのは市場経済原則になじまない。まさに、市場経済原則を推し進めていったときに救えない人たちを救うためにあるわけです。

 しかしながら、その具体的な運営についていうと、市場経済原則のいいところを入れていくことは可能であって、例えば介護のサービスでは、民間の業者が入っています。

 今、公立病院が非常に危機的な状況になって、それは例えば総務省のガイドラインを見直せというような話もあります。民間の病院もあります、医療法人立とかいろいろありますけれども、民間か公的かといったときに、聞こえてくる不満の声は、むしろ公的な機関からの方が多い。では現場はどうですかと見たら、やはりそれは民間が相当創意工夫なさっているところもあって、官ということの上にあぐらを組んで効率化の努力をやらないということもまた問題ですから、そういうことをやりながらさらにいい方向を目指すというのが一番いい形だろうと思っております。

遠藤(宣)委員 市場原理になじまないというのは、私なりに解釈すると、一つは国家の安全保障に関すること。例えば、日本は車をつくるのが得意だから車をいっぱい売って、食料を輸入すればいいとか、あるいはガソリンを輸入すればいいとか。それは、なかなかそれだけでは成り立たない。

 もう一つの市場原理になじまない分野というのは、個人の安心と安全にかかわることだと思います。私自身も九カ月の子供がおりますけれども、子供が少ないからそこの部分は保育所が余り要らないとか、余り患者が来ないからそこには要らないとか、なかなかそういうことにはなりにくいだろうというふうに思います。

 しかしながら、先ほど申し上げたように、特に官の方に対して、それに守られているということにあぐらをかいてしまうと、自助努力がむしろその部分でなくなってしまうので、常に緊張感を持たさなければならないということがあると思います。ただ、これは、どこで線を引くかというのが非常に難しいと思います。

 昨年の暮れに決着しました二千二百億円の話。これは事実上どういうふうに扱ったかというところについては、なかなか難しい解釈があると思いますけれども、私の周りの人間は、これまたおもしろい例えをするんですね。

 済みません、非常に下世話な話ばかりなんですが、「あしたのジョー」という漫画があります。大臣はごらんになったかどうかわかりませんけれども、ボクサーが減量をするんですね。減量をして、とにかく最後の一滴まで絞り出そうということで何とか減量を達成するんですけれども、その後に死んでしまうということなんですね。それからもう一つ、私が好きなアーティストでカーペンターズというのがいますけれども、カーペンターズの妹の方はカレンさんというんですが、拒食症でどんどん体重を落としていく。しかし、最後はやはり死んでしまう。

 それで、私の周りはどういうふうに言っているかというと、医療費の削減とか社会保障費の削減というのは、確かに財政再建の部分で非常に重要なんだけれども、行き過ぎたら元も子もありませんよという議論があります。

 そんな中で、厚生労働省、あるいは社会保障の分野において、財政再建と社会保障の両立というものがどういう形で成り立つのかという議論が常にあります。

 こんな中で、今言われているのは、今、GDPの大体半分ぐらいが個人消費だというふうに聞いておりますけれども、昨今、麻生総理も、とにかく個人の金融資産を消費あるいは投資に回してもらうということが一番大事だと。千四百三十兆円の個人の金融資産がなぜ出てこないかというと、やはり将来不安があると思うんですね。

 つまり、何を申し上げたいかといいますと、将来不安の解消というものが最終的に個人消費に結びついて、そして税収が上がって財政再建にも資する。財政の再建と社会保障の充実というのは両立をするというふうに私なんかは考えてしまうんですけれども、そのあたりについてはどういうふうにお考えか、お聞きしたいと思います。

舛添国務大臣 セーフティーネットを張りめぐらすことによって安心をもたらす、そのことが個人消費の刺激につながって経済が活性化する。これは、内需拡大の議論としてそのとおりだと思います。

 ただ、どうしてもそのときにもう一つつけ加えたいのは、やはり経済成長はしないといけない。つまり、我が国が、江戸時代のように三千万人の人口ではなくて、一億二千五百万が食っていかないといけない。油も食料も輸入に頼っている、そういうときにどこかで外貨を稼がないといけない。だから、セーフティーネット論の陥穽というのは、実は落とし穴がそこにあると思っていますから、経済成長戦略をきちんと立てる。

 そして、一番理想的なのは、経済成長戦略、特に、わかりやすく言えば外貨獲得戦略ですね。今、車や家電で非常に苦しい思いをしている。では、医療や介護の部分を輸出産業に育てることによって、両方同時に、セーフティーネットも拡充をする、そして外貨も稼げる。こういう形の経済政策の展開というのを社会保障政策とうまくマッチングさせるということがいいだろうというふうに思っております。

遠藤(宣)委員 日本は資源も食料も基本的に乏しい国ですから、知恵を絞った上で、技術あるいはそういった日本の持っているすばらしいものを富にかえていくということが、まず大前提だと思います。

 そんな中で、今申し上げましたように、将来不安をなくすことによってお金を使っていただく、そして景気を刺激していくという視点は、私は非常に重要だと思うんですが、今度、一方、市場原理に基本的にはなじまないという前提に立ちますと、社会保障の担い手、私は農業の方にもいろいろと議論をしているんですけれども、そもそも担い手がいなくなっちゃったらどうするんだという話が、私自身は非常に心配をしているものでございます。

 そんな中で、ちょっと個別にお話をしたいと思います。

 まず、お医者さん、うちは、実は父方の本家がずっと代々お医者さんだったものですから、お医者さんの苦しさとか内情というのをちっちゃいときから随分聞かされているんですけれども、今、ある種の市場原理が働いたのか、地域による偏在、あるいは専門による偏在、特に、私なんかも、去年、下の子が生まれたものですから、小児科とか産科の不足というのは、実は本当に心配をした一人であります。

 こんな中で、喫緊の課題として、医師の地域偏在や分野の偏在をどう是正していかれるのか、ここについてちょっとお伺いしたいと思います。

舛添国務大臣 全体の医師の数は、この四月から新しく大学に入る学生で約七百名ふやしました。そして、ふやす方向にかじを切り直したわけですけれども、偏在の問題は、一つは地域による偏在がある、それから診療科、特に産科、小児科、外科、麻酔科、こういうところが非常に手薄になっている。

 個々にどれだけの規制を加えるか、枠を持ってきて、福岡は何人、それは絶対行きなさい、それから、学生に、産科が足りないんだからあなたは産科に行きなさい、これはやはり職業選択の自由、住居選択の自由が憲法でも保障されていますので、なかなか難しい。

 そういう中で、全体の研修プログラムの見直しとか、それから地域に手厚い予算措置を加えるというようなことで今手を打っているところでありますけれども、私は最終的には、ずっとこの問題にかかわってきて、やはり大学で教える先生方が、ああいう先生のようになりたいと学生が慕ったその先生が産科だったら、産科はふえると思うんですね。それから、やはり地域医療、僻地だけれどもこんなに頑張れるんだということもあっていいし、そういうのも研修プログラムの中にある程度弾力的に組み入れるというようなこと、やはりインセンティブだと思うんです。僻地をやっていただく、ではそれだけの手当を加えましょう、それから、真夜中にたたき起こされて、小児科、産科はだからみんな嫌がる、それからリスクがある、そういうことに対してはきちんと手当てはしましょうと。

 ただ、そういう話をすると、若い学生諸君は、いやいや、我々はそんなことではありません、やる気はありますと言うので、非常に私は心強く思っていますし、最近、例えばハイリスク分娩加算なんかもやりまして、産科の問題に世間の耳目が相当集まってくると、これは大学の産科の先生方に聞くと、下げどまり状況に、大体底を打って、学生の志望が産科にも行き始めているので、大変喜ばしいという話も聞いています。

 ですから、総合的にそういうことをやるとともに、地域医療を確保するということは、今、昨日総理が新しい経済政策という中でいろいろ指示なさった中にも含まれていると私は思いますので、そういう中でもまたこれを充実させていきたいと思っております。

遠藤(宣)委員 私ごとばかりで申しわけないんですけれども、子供がいる家庭はまずどこを探すかというと、小児科がそばにあるかどうか。お子さんをお持ちの方は必ず一度や二度は経験があると思いますけれども、子供が熱を出したときに救急病院がそばにあるかどうか。おとといも、下の九カ月の子供が四十一度出しまして、夜中まで家内と交互にしていて、まず病院に連れていけるかどうか、連れていってあいているかどうか、そんなのが大体普通の親の気持ちであります。

 ですから、職業選択の自由ということはもちろんありますけれども、行政的に偏在がないように誘導していっていただければなというふうに思います。

 そして、次の担い手ですけれども、歯科医師というのは、最近余り議論にならないかもしれませんが、いろいろ話を聞くと、都市部で非常に競争が激しいですね。昔、最高裁の判例で、職業の転換の話で、薬局は転換ができるけれども、ふろ屋の転換はできないというような判例が、大臣は御存じだと思いますけれども、その文脈でいうと、歯科医というのは、あの高いいすをそろえて、借りたときに、これは廃業してどこかへ行くというと大変な仕事だというふうに私は聞きました。

 最近、キシリトールなどの普及もあって、どっちかというと予防、とにかく一生懸命歯医者さんが働けば働くほどパイが少なくなってくるという非常にかわいそうな状況にあるということを私自身は知りました。

 そんな中で、医療の扱いなんですけれども、ある部分、予防とか健康維持ということに対して評価をしてあげるということが要素として入ってこなければ、なり手がいなくなるんじゃないかという心配が実は私自身すごくあるんですけれども、そのあたりの視点について教えていただければと思います。

舛添国務大臣 これは、歯科のみならず普通のお医者さんもそうですけれども、予防したらお客さんが来なくなるんじゃないかと。この問題については、現場の歯科の一生懸命取り組んでおられる方々とも話しました。例えば八〇二〇運動をやっている。予防をやれば、それはよくなります。では、我々は失業するのかと。

 今、その点については、歯医者さんを、これはさっきの医師数とは逆で減らしなさい、場合によっては、同じ大学の中に歯科と医科があったら、上手に定員を相互に融通するようなことも考えています。それから、お医者さんの国家試験の合格率に比べて、歯医者さんというのは六七・五%と低い。というのは、厳しくして、能力のないのは歯医者になるなということです。

 それで、先ほどの予防との関連でいいますと、私はまだまだ歯医者さんの努力は足りないと思っています。というのは、よっぽど虫歯で痛くならない限り行きませんよ。ちょっと風邪引いたとかおなか痛いといったら、すぐ病院には行く。歯医者はなかなか行かない。

 私は、大臣になって時間がなくなっちゃったので、朝から晩まで時間がないから行かないんですけれども、それまでは一月に一遍、確実に行っていました。きれいでしょう、歯が。きれいでしょうと自分で言うのも……。それは、必ずきれいに歯垢を取り、全部チェックして、それで、歯ブラシじゃないです、私はフロスで全部一つ一つ歯を完璧に磨きます。そういうことをやって、お金を払いますよ、保険適用の分も、適用でない分も。それを歯医者さんが自分のコミュニティーの全部の家庭に戸別訪問でもして、こういうふうにしてやるといいですよと一月に一遍全部の子供を来させてごらんなさい、失業しません。それだけの努力をやはりコミュニティーの中でやらないといけない。

 例えば、私も子供が小さいので、弗素を二月に一遍ぐらいやりに連れていくんです。これで大分違います。だから、予防によって生計を立てることは十分可能なんです。そして、虫歯なんかが見つかるわけです。それで早期治療をする。それはお客さんがしょっちゅう来ているわけですから。ですから、そういう努力も歯医者さんにやっていただきたいということです。

 というのは、どうしても厚生労働の分野はサービスの提供がお医者さんの方ばかり向く、歯医者さんの方ばかり向く、国民の側を向かないということを先般の厚生労働行政の検討会でも言われたので、やはり我々の仕事は両方バランスをよくとってやることだと思っています。

 私が今言ったことは、歯医者さんで私も同じ質問をしたんです。あなたたちは一生懸命八〇二〇という予防をやって、食えなくなったらどうするんだと。違います、大臣、こういうことをやったら十分食っていけますよということをおっしゃったので、その受け売りなんですけれども、そして、私自身がそれを実際に患者の立場でやってきているしということであえて申し上げました。

遠藤(宣)委員 ありがとうございます。

 本当におっしゃるとおりで、需要、パイを広げる努力もすると同時に、中での需給調整といいますか役割分担。今、医師、歯科医師のお話をしましたけれども、予防の分野までしっかりとウイングを広げるとともに、今大きな変動期ですから、中で役割分担をどういうふうにするかということを改めて立ちどまって考える時期だというふうに思います。

 そんな中で、薬剤師の役割も随分変わってきたかと思います。医師の補完的な機能をいや応なしに担うような部分が出てきた。専門性が高まる中で、一般の病院や薬局が実習生を受け入れるとか、医療の提供施設となってきた。薬局というものが非常に重要になってきたと思います。

 こんな中で、役割が重くなってきた一方で、昨今、インターネット、ネット販売の話が出てきております。薬剤師の方々というのは余り大きな声では言いませんけれども、売れるものから自由化されていくというんですね。要するに、需要の高いもの、簡単なものから、非常にもうけの大きいものから売られていくということになって、このトレンドが続くと基本的に経営が成り立たなくなるんじゃないかと。つまり、風邪薬にしても、あるいは非常に需要の高いものから、例えばコンビニで売られるとかネットで売られるとか、そうしたときに、薬局というのは経営が成り立つのか。

 そもそもが役割がどんどん大きくなっていくのに経営基盤が揺らいでいく。ここら辺について厚生労働省はどういうふうに考えているんだろうか。私自身はすごく薬局にもお世話になっているものですから、子供もしょっちゅう薬をつくってもらっていますので、そういった意味で、どういうふうに考えられているのか、そのあたりをお伺いしたいと思います。

岸田政府参考人 今先生の方から、薬剤師の役割、医師との連携、あるいは地域医療への貢献、そういった観点、それからまた販売に関する問題、こういった提言があったかと思います。

 私ども、薬局が医薬品の供給拠点として地域医療あるいは在宅医療に貢献するということが非常に重要である、こういうふうに考えております。そのために、使用頻度の低い医薬品を薬局に備蓄する、あるいはそれを薬局に譲渡する、それから、地域住民への医薬品情報を提供する、そういった観点からの支援センター、その設備、施設への補助、そういったものを講じてまいっているわけであります。

 また、インターネットについての御質問があったかと思いますけれども、医薬品といいますものはリスクを伴っているわけでございますので、そのリスクに応じて専門家が適切に情報提供するということが重要でございますので、現在、専門家による対面での情報提供を求める、こういったことを省令で決めさせていただいております。

 インターネットの通信販売、そういうものについては、その原則から見て、第三類の比較的リスクの低いもの、これについては問題ないんではなかろうかということで決めさせていただいたわけでございます。

 現在、このインターネットの販売、あるいは薬局、店舗に行くことが困難な方に対してどうやって医薬品を購入できるようにするのか、こういったことにつきまして、さまざまな意見がございますので、この検討会を開いて、幅広い意見を聞いて、議論をいただいているところでございます。

遠藤(宣)委員 私、郵政省のときに、インターネットについての研究というか調査をしたことがあります。言うまでもなく、インターネットというのは、東西冷戦が終わって軍事技術が民間に転用されてきた、一九九一年から九二年ぐらいに急速に普及したものでありますけれども、そのときの研究が、最後まで何を残さなきゃいけないかという話だったんですね。航空券のチケットの販売も対面が原則だったとか。

 その中でどうしてもやはり乗り越えられなかった山は、薬だったんですね。世の中、ウナギと梅干しを食べたらおなかを壊すとかいろいろなことがある。まして薬なんか、どういう組み合わせで飲んだらどんなことが起きるかわからない。したがって、これについては極力慎重であるべきだということを議論した覚えがあります。

 そしてもう一つ、薬局で販売をすればどこが責任を最終的にとるのかというのがはっきりしますけれども、ネットの場合にはだれが責任をとるのか、こういうような議論がいろいろあると思います。私は消費者の方の特別委員会にも入っていますので、そちらの方でも議論ができればなと思いますけれども、ネット販売というのは、もちろん消費者の利便性を考えなければならない部分もあるかもしれませんけれども、安全性とのバランスを常に念頭に置いてやっていただきたいなというふうに思っています。

 そしてまた、薬局の経営基盤というものが揺らぐとこれまたおかしなことになってきますので、ひとつそこら辺のところを御留意いただければと思います。

 さて、今るる医療の分野で役割分担の話が出てきましたけれども、実は非常に大変な思いをされているのが看護師の世界。これは、三Kとは言いませんけれども、相当きつい仕事。この中で、医療事故の危険性を常に持ちながら、質と量、双方確保しなければならないというところが求められています。入院をしたりすると一番接するのは実は看護師さんですから、この方々が本当に信頼できるかどうかということがすごく重要だと思います。

 女性の方がまだまだ多いと思うんですけれども、一たん離職をして戻ってこれるか、これは保育の話も関係するんですが、いずれにせよ、看護師の量と質をいかに確保していくかということが非常に今重要な局面にあると思うんです。そのあたりについてどのようにお考えか、お伺いしたいと思います。

舛添国務大臣 そういう問題意識で、先般、私のもとに直属の看護の質の向上と確保に関する検討会を開きまして、三月十七日に中間取りまとめを行いました。

 質については、教育内容と方法、必ずしも三年以上という教育年限を前提としないで、この内容や方法の検討をしようと。それから、新人看護職員研修について制度化、義務化も視野に入れて行うということ。

 それから、量は、今もったいないのは、免許を取っているんだけれども家庭に入った、そういう方がおられる。それから、要するに、免許を取ってさあ就職というときに、いや、自分の技量だとちょっと追いついていかないから怖くてやれないと言って、そもそも就職しない人もいるので、就職の支援、それから、潜在的に眠っておられるこういう方々の再就職の支援ということをやりたいと思いますので、今具体的な検討を、その中間取りまとめを受けてやっておりますので、この問題は全力を挙げて取り組みたいと思っております。

遠藤(宣)委員 多分、これは次に申し上げる保育の話と相当関係があると思います。私の友人もこの仕事をやっていますけれども、子供を産んでから職場に戻ろうかなと思うけれどもなかなか戻れない、こういうような悩みを持っている方々が相当いっぱいいらっしゃいます。

 そこで、次に保育のことについてお伺いをしたいと思います。

 きょう冒頭、基本的に社会保障の分野は市場原理になじまないということを申し上げました。保育は、言うまでもなく社会福祉という位置づけでありますので、その話からいきますと、基本的には市場原理にはなじまないというふうに私は思っております。しかし、一方において、待機児童が非常に多くなってきている。需要に対して供給が追いつかない。特に昨今、不況で、お母さんの方も働きに出なきゃいけない、しかし子供の預け先がない。家計は苦しいし子供を預かってもらうところがないということになりますと、これはもう本当に政府が挙げて取り組まなきゃいけない話だと思います。

 しかし、その一方、余りに企業の方に任せてしまいますと、東京のハッピースマイル東中野駅前園ですか、突然閉園になる。これは、預けている側としては、園が突然閉園になりました、子供を引き取りに来てくださいという話になると、とんでもない話になってしまいます。こんな中で、利益優先になれば劣悪運営も生じることがありますし、また、一方において、今度改正がいろいろ議論されていますけれども、このあたりの懸念というのがどうしてもある。つまり、自分たちで申し込みをするということになると、私の頭の中のイメージでは、子供をだっこしながら複数の園を回らなきゃいけないんじゃないかという心配なんですね。

 保育が福祉であるという前提に立つならば、保育園経営や保育を求める保護者の間に余り競争原理が芽生えないようにするという配慮が、これはもう最低限の条件じゃないかなというふうに思っておりますけれども、そのあたりの基本的なお考えについて伺いたいと思います。

舛添国務大臣 私も八歳と五歳の子供を抱えて、今委員がやっていらっしゃるような経験をずっと、ごく最近もやっておりますので、本当に、夫婦とも日常性の仕事があるときにどこに子供を預けるかというのは、もう民間の託児ルームから何から四苦八苦してやっているという状況なんで、これは全力を挙げてやらないといけない。

 それで、上川さんが大臣だったときに、福田総理からの指示で、待機児童ゼロ作戦というのを集中的に三年間でやれということで、今、十五万人分の保育所の整備などを前倒しで一生懸命やっているところでありますけれども、そういう保育所の整備を含めて、私は、これは今委員がおっしゃったように大事な児童福祉ですから、市町村とか国が責任を持ってやるべき仕事だというふうに思っています。

 そして、担い手の話を先ほどおっしゃいましたけれども、やはり保育士についてもちゃんと光を当ててやらないといけないというふうに思っています。全体の財源、予算全体から見たら、相当高齢者福祉は行ったんですけれども、相対的に子育てとかそちらの方がちょっと弱いんじゃないかなという気は、私も管轄していて思います。ですから、今後、さらに子育て支援ということをやっていくのが国家の大きな責務だと思っておりますので、新しい、昨日総理から指示がありました、次なる経済政策のパッケージの中でもこの問題に積極的に取り組んでいきたいと思っております。

遠藤(宣)委員 私の上の娘はやはり八歳でありまして、しかも初めの選挙でおっこちた三日後に生まれたものですから、幸か不幸か子育て機会をたっぷりいただいて、子供の成長とともに世の中を見る機会に恵まれました。

 今、看護師の話と保育士の話が出ましたけれども、まだ女性が比較的多い分野ですから、そういった方々が職場に戻れるように、そしてその方自身も子育てと両立できるように、やはりこれは手厚くやっていかなければ担い手の方から崩れてしまうんじゃないかなというふうに思います。

 もちろん、今大臣がおっしゃられたように、子供のことも大事です。そしてまた、高齢者あるいは身体障害者、もともとの市場原理になじまないという部分において、障害者自立支援法も大きく見直していただいていると思いますけれども、こういった市場原理に基本的にはなじまないという中で、では、これから我々はどういうふうに方向を考えていけばいいのか。

 例えば目の不自由な方々が、これはきょう後でやられると思いますけれども、ほとんどマッサージという、それが非常に重要な仕事となっている。ならば、その人たちが優先的にその仕事につけるようにほかのところからの参入を少し規制しようとか、あるいは、タイ式マッサージに荒らされているんですね、だから資格をしっかりと認めようというのも、きょう多分この後の決議にあると思いますけれども、そういった配慮をしつつ、子供たちにもやっていくと。

 そして、最後に私はここで申し上げたいんですけれども、日本の社会がかつて支えられていた、だれもが学校を出れば働ける、完全雇用、だれもが最後まで働ける、終身雇用、そして、その組織は最後まで崩れない、護送船団方式。これは東西冷戦の中でアメリカの要求というものがそこそこのところで手を引かれた、そんなような中で、日本はこの三つで守られてきた。

 その中で、社会保障というのは、いわば組織を通じて個人が守られる社会の側面が非常に多かった。しかし、言うまでもなく、冷戦が終わって二十年たちますれども、組織が守られても個人が必ずしも守られない社会になってしまった。組織の利益と個人の利益が必ずしも同じでなくなってしまった。だからこそ、個人が直接政治に守ってもらいたいという欲求が高まったからこそ、当厚生労働委員会が非常に重要になったというふうに思います。

 もう時間が来ましたのでそろそろ終わりますけれども、やはりすべての人がすべての人を支えていくという概念、消費税を事実上福祉目的税にするとか、すべての人がすべての人を支えていく、こういう考えに基づいて、今、ある部分原点から、社会保障のあり方、そして安定した日本の社会の構築というものを考えていかなければならないと思いますけれども、最後にそのあたりについての大臣の御決意、見解をお伺いしたいと思います。

舛添国務大臣 戦後、高度経済成長期の日本の社会保障、セーフティーネットを担った最も大きなアクターというのは、これは会社であったと思っております。年功序列賃金体制、終身雇用、そしてとりわけフリンジベネフィット。そのフリンジベネフィットが、海の家、山の家を提供し、社宅を提供し、私のところは八幡製鉄のおひざ元ですけれども、企業城下町、企業の病院、企業のスーパーマーケット、こういうものを提供してきた。それが国際化の中で立ち行かなくなっていった。

 その中で、では、次はだれがセーフティーネットを張りめぐらすのか。まさに中央、地方を問わず政府の役割だと思っておりますので、ますます社会保障の役割は重くなっていき、政府の役割は実は重くなっている。それだけまた厚生労働委員会の皆さん方の重責も大変だと思いますので、みんなで協力していい政策をつくりたいと思います。

遠藤(宣)委員 ありがとうございました。

 ぜひとも組織だけでなく個人そのものが守られるすばらしい日本という社会が築かれることを皆さんと一緒に力を合わせてやっていきたい。また、この厚生労働委員会がそういったものの大きな推進力になりますことをお願い申し上げまして、私の質問を終わらせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

田村委員長 次に、長崎幸太郎君。

長崎委員 おはようございます。自由民主党の長崎幸太郎です。どうぞよろしくお願いいたします。

 先ほど遠藤委員からの質問でもありましたけれども、きょうは、まず最初に保育についてお伺いさせていただきたいと思います。

 まさに実体験の、私も今一歳の娘がいて、ことし何とか保育所に入れようと思って、本当にえらい苦労をいたしました。まさにいろいろ、区役所その他、あちこち行っている中で、本当に大変なお母さん方もいらっしゃって、なかなか、何とか自分の娘を入れてくださいというのもちょっとはばかるようなこともあるんですが、そうはいっても、我が家も、私も働いている、家内も働いている。家内も、働くことを通じて自己実現したい。でも、今、自己実現どころか、生活を守るためにお母さん方が働かないといけないような状況になっております。

 そこで、いろいろ厚労省の事務方さんからお話を伺ったところ、ちょっと不思議な現象があります。というのは、いただいた資料の中で、これは二十年四月一日現在ですが、保育所の定員から実際入所している児童の数を引いたところ、まだ定員に枠がある、余力があるところが幾つも、例えば東京二十三区を見てもある。しかも、そこに待機児童がいる。

 例えば中央区なんかでは、三歳未満児二十一名の枠がまだあるところで、待機児童数は、これは全体ですが、四十九名の待機児童がいる。あるいは新宿区は、六十名の待機児童がいる中で、三歳未満児百三十一の枠、それから三歳以上でも百十七残っている。あるいは葛飾区なんかでも、待機児童四十八名のところ、三歳未満児の定員の枠があるところがまだ二百八あって、三歳以上になると三百七十三残っている。

 こういう現象が起こっているわけですけれども、そもそもこういう現象が起こっているのはなぜか。常識的に考えれば、定員が足りないんだったらわかるんですけれども、定員いっぱいは普通は入れていいはずなのに入っていない。

 ただ、ほかの頑張っているところもあって、例えば世田谷区とか品川区なんかは、一五%から二五%の弾力措置を活用して、定員を超えて公立も私立も受け入れている。だから、これぐらい頑張っているところがある。他方、待機児童がいるにもかかわらず、定員すら受け入れていない自治体がある。こういう現象は一体なぜ起こるのか、おわかりであれば教えてください。

村木政府参考人 お尋ねのとおり、待機児童がいる地域でも定員を下回る利用児童数のところがございます。区によって、それから公立か私立かによってもかなり数字が違っております。

 この原因については、私どもも、特に東京都が一番待機児童の問題が深刻でございますので、都ともお話をいろいろしているわけですが、幾つか理由が挙げられるんですが、一つは、年齢ごとの受け入れ児童数によってアンバランスがある。どちらかというと、三歳から五歳は定員割れが生じやすく、ゼロ、一、二の方が比較的定員が満杯になりやすい。ただ、先生御指摘のように、定員が、ゼロ、一、二でもまだあきがあるというところがあります。それから、同じ都内でも地域でかなり需給のアンバランスがある。駅から遠いと非常に、保護者の方がそこには入れたがらないというような現実も生じているというふうに聞いております。

 待機児童の問題については、安心こども基金を創設して、できるだけ新しい保育所をつくっていただくということもやっておりますが、やはり既存の保育所のキャパを上手に利用するということは非常に大事なことだと私どもも思っております。

 それで、先ほど先生からも御紹介をしていただきましたが、従来から、最低基準を下回らない範囲であれば保育所の定員の弾力化をやってもいいということでこれを認めておりますので、自治体に対しまして、ぜひこの弾力化の措置を有効に使ってほしいということを改めてお願いしたところでございます。

 今後、今のような待機児童が非常にふえている状況でございますので、都ともまたよく情報交換をしながら、どの区も、それから公立も私立も、定員の弾力化などをしっかり使っていただいて、また、足りない部分は新しい保育所をつくっていただいて、できるだけ待機児童を減らしていくという努力を重ねたいというふうに考えております。

長崎委員 またいただいた資料を見ると、特に公立が全然枠が残っていて、私立の方はむしろ頑張っているような状況だと思います。

 これも、個人的な経験でいくと、どうも公立の方が施設の水準はいい、間違いなく。園庭があって、ちゃんとした建物もある。ところが、私立は、本当にマンションの中の一室にある意味閉じ込められているようなものであって、私は、むしろ本当に公立が今こそ頑張って、枠を広げていただきたい。

 多分、いろいろ想像するに、保育のクオリティーを考えれば、それは保育士さん一人当たりが見ている数が少ない方がいいということもあると思うんですが、今この時期ですので、まさに、本当に生活を支えるためにどうしても働きに行かざるを得ない、そのために子供を預けざるを得ない。インターネットなんか見ると、本当にもう子供を放棄しないと生きていけないとか、そんなようなことも書かれているような悲惨な状況も今現在あるわけですので、ぜひ、これは関係者、いろいろなステークホルダーがいると思いますけれども、国としてリーダーシップをとっていただいて、この厳しい期間、少なくとも待機児童が増加している傾向はとめるべく、特に自治体にも働きかけをしていただきたいと思います。

 それともう一つ、これは今度うちの地元の中で出てきた問題なんですけれども、今、小学校とか中学校については耐震工事というのが物すごい勢いでやられています。問題は、保育所というのは、この耐震基準との関係で、まず事実関係からお伺いしますが、施設の認可基準その他において耐震性というものは考慮されているんでしょうか。教えてください。

村木政府参考人 保育所の耐震性でございますが、保育所については、まず基本的なところは、建築物の敷地、設備、構造、用途については、建築基準法に規定する耐震基準に従って建築をするということが義務づけられておりますので、まずは建築基準法によって基本的な耐震性を確保しているところでございます。

 それから、それに加えまして、保育所には自分で避難をすることが困難な乳幼児が入所をしておりますので、児童福祉施設最低基準におきまして、避難経路の確保のため、建築基準法に上乗せをしまして二方向の避難経路を確保するといった基準を定めております。また、少なくとも月一回は避難及び消火に対する訓練を行うことを義務づけているところでございます。

長崎委員 建築基準法自体がたしか昭和五十六年からということで、それ以前に建てられた保育施設というものについては該当していない、建築基準法の耐震性水準は求めていない。求めていないし、そうじゃないものがあり得るということだと思います。

 では、例えば建築基準法レベルの耐震基準を満たしていない保育所がどれぐらいあるかというのは、厚労省としては把握はされているんでしょうか。

村木政府参考人 公私立を合わせまして全体の保育所、二万二千六十の保育所の中で、建築基準法が改正されて以降のもの、あるいはそれ以前のものでも耐震性の調査をしまして耐震性があるということがはっきりとわかっているものが五九・七%でございます。残りのところは建築基準法改正以前のところでございまして、これについて、まだ耐震の診断が終わっていないようなところも含めて四〇・三%あるというのが現状でございます。

長崎委員 先ほど局長さんがおっしゃられたように、まさに保育所は乳幼児がいて、中学生とか高校生だったら自分で走って逃げればいいんでしょうけれども、逃げられない子供たちが基本的にいる。したがって、保育所はまさに建物で地震から子供を最も守ってあげなければならない施設であって、保育所の耐震性の確保こそ大変今重要なことだと私は思います。

 ところが、今これが、三位一体だったか何だかわかりません、地方分権で一般財源化される中で、国から手が離れてしまっている。地元の自治体も、やりたいんだけれどもお金がないとかそういうことで、どうしても子供が後回しになっているのは、やはり地域によっては現実問題として起こっております。

 先ほど大臣が、経済政策のパッケージの中で子育てについてもどんどん取り込んでいきたいというお答えを答弁されていましたが、ぜひとも、できるだけ早く、できれば今度の経済対策で保育所の耐震化についても自治体を支援するような施策というものを何とか取り込んでいただけないのか、そういうことは考えられないのか、ぜひ御見解を賜りたいと思います。

舛添国務大臣 二十年度の二次補正で安心こども基金の創設をいたしまして、これを今のようなことに都道府県が使えるような道はつくりました。

 ただ、今、委員がおっしゃった点は、これは与党の皆さん方ともよく相談をして、新しいパッケージに入れられるかどうか検討させていただきます。

長崎委員 ありがとうございます。ぜひとも与党のみならず、もちろん政府もお願いしたいと思いますし、野党の皆さんもぜひ御理解をいただきたいなと。大変重要な問題で、お父さん、お母さん方がいつも心配されていますので、ここを何とかしていただきたいなと切に要望をいたします。

 次に、地域がん診療拠点病院制度についてお伺いしたいと思います。

 このがん診療拠点病院制度というのは、全国どこでも質の高いがん医療を提供することができるよう、がん医療の均てん化を戦略目標とするとされています。

 しかしながら、今回、基準の改正があって、新しく、放射線治療設備というものを持っていないところは地域がん診療拠点病院の指定要件を満たさないものとして外れることになります。

 現実問題として、リニアックというものを備えている病院がない二次医療圏が幾つかあるはずで、まさに戦略目標としてがん医療の均てん化を図るということであれば、予算措置、例えばリニアック緊急整備事業、これは今年度で終わってしまいましたけれども、まだこの措置の継続ですとか、あるいはそれを導入するための、例えば公立病院であれば地方財政措置、あるいは医師確保に対する手助け、こういうものががん医療の水準の均てん化のためには私は必要だと思いますが、ぜひともこういうものに対する取り組み方針についてお伺いしたいと思います。

上田政府参考人 がん対策基本法の基本施策の一つとして、がん医療の均てん化の促進が位置づけられました。その中で、放射線療法、化学療法の充実が必要となりましたことから、私どもにおきましては、がん診療連携拠点病院において質の高い放射線治療を提供するため、リニアックの緊急整備事業を平成十九年度からの二年間において実施してきたところでございます。

 この緊急整備事業におきましては、リニアックを設置していない拠点病院から整備計画が提出されたものについては、結果として、そのすべての計画を採択し、補助したところでございます。このことによりまして、全国的に見れば質の高い放射線療法の提供体制がおおむね整備できたものではないかと認識をしております。

 なお、平成二十一年度予算、今年度予算におきましては、がん医療の均てん化をさらに促進するために、拠点病院におきまして、専門的医療に従事する医師などの研修、療養上の相談や地域の医療機関の紹介などを行うための相談支援センターの整備、このようなことを引き続き実施するとともに、院内がん登録の実施体制の強化を図るために、がん登録実務者を常勤化し、複数配置するための所要の経費などを予算計上したところでございます。

 今後とも、がん医療の均てん化を図り、全国どこでも質の高いがん医療が提供できるよう配慮していきたいと考えております。

長崎委員 今おっしゃったおおむね整備されているというのは完全ではないわけで、例えば山梨県なんかでも二つの地域がん診療拠点病院が、今回リニアックが確保できないために指定要件から外れてしまったという現実があります。

 それで、それは単に機械だけの問題ではなくて、実はリニアックを操作する放射線科のお医者さんの確保ができない、こういう問題があって、高い機械は入れたはいいけれども、使えないからやめておくとか、採算が合わないからやめるという判断になっているわけです。

 患者さんの観点からすれば、このがん診療拠点病院における放射線療法、あるいは化学療法が充実すればするほど、それはこしたことはないんですけれども、それが充足できないところは要件から外れてしまって、今局長がおっしゃったようなさまざまなメリットがむしろ逆に与えられなくなってしまう。これは、全く、がん医療の均てん化を目的としながらも、実際やっていることはがん医療の格差がますます広がるような制度になっているのが、今回の見直しに伴って発見された問題じゃないかと私は思います。

 ぜひとも、がん医療の均てん化ということは極めて重要な問題であって、まさに二人に一人の国民病ですから、これは何とかしていただきたい。単に基準だけ上げて、皆さん、それについてこいというんじゃ、それはなかなか地方の現実としては追いつけないところがあって、そこに対するバックアップがなければ、私はこの戦略目標の最も大切な部分が充足できないと思います。

 まさにここは、さっきも議論がありましたけれども護送船団でやるべきところであって、一番船足の遅い地域あるいは医療圏に対するバックアップというものをぜひともやっていただきたいと思いますが、御見解をいただきたいと思います。

上田政府参考人 がん診療連携拠点病院につきましては、がん対策推進基本計画において、連携体制の構築、相談支援体制の充実、医療水準の向上といった、機能の強化が求められていることから、平成二十年三月に指定要件の見直しを行いました。それ以前に、旧要件に基づいて指定されていた既存の拠点病院についても、指定更新期限であります平成二十一年十月末までに新要件の内容を充実するように求めているところでございます。

 今後、新要件に基づく更新に向けて、地域におけるがん医療提供体制に空白が生じることのないよう、各都道府県のがん対策担当者と、新要件の充足状況の確認や今後の対応策を確認する場を個別に設けるなど、都道府県との連携を図りつつ対応する予定でございます。

 なお、これまで厚生労働省といたしましては、拠点病院の指定に関しまして、拠点病院が指定されていない医療圏におけるがん医療水準の確保のため、隣接医療圏の拠点病院からの診療支援体制を具体的に検討するよう都道府県などに働きかけるなど、がん診療の連携体制が全国的に構築できるよう要請をしてきたところでございますが、委員御指摘のように、拠点病院を指定することが目的ではなくて、国民に安心して適切ながん医療が提供できることが最終目的でございますので、そういう観点に立って、この拠点病院の指定要件については今後とも検討し、適切に国民に対してがん医療が提供できるように努力をしていきたいと考えております。

長崎委員 今おっしゃったのは、今の御説明ですと、指定要件から外れるところの病院に関しては、個別にヒアリングをして、ではどういうバックアップがあるかというのを確認します、確認した上で、場合によっては隣接の拠点病院からのバックアップをいただきます、こういう理解でよろしいんでしょうか。

上田政府参考人 個別の事情はさまざまでございますので、今おっしゃいましたように、充足できていない病院についてはヒアリングを行って、どうするかということを個別に対応していく。そういう中で、一つの案としては、周辺地域から支援をいただくことも方法ですし、実際にリニアックがないとか、そういう物理的にないものはなかなかすぐにはどうにもならないし、お医者さんが来ないということもあれば、その辺をどうするか。

 ただ、基本的に、相談支援センターのような機能というものはやはり身近にあるべきだということで、そういうものをいかに確保していくか、そういうことを含めて、ちょっと個別の対応を検討させていただきたい、このように考えているところでございます。

長崎委員 まさに個別に対応するわけですけれども、個別に対応する中で、いや、それは周りが助けてくれるからいいじゃないかといったら、では、そもそも地域診療拠点病院制度というのは一体何なんだと。

 それは、二次医療圏に一個あるぐらいの身近さがあることがそもそも望ましいということで、こういう二段構えの地域診療拠点病院制度というものをつくったんだと思いますけれども、では、ちょっとお伺いしますけれども、個別の事情を確認した上で、地域住民の皆さんの利便性から考えればやはりここに一つある方がいいという観点であれば、そこに対する支援というものは国として考えていくおつもりだという理解でよろしいんでしょうか。

上田政府参考人 拠点病院というのは、さまざまな機能、先ほど申し上げました放射線治療、あるいは化学療法、あるいは相談機能、いろいろございますので、そういうものがトータルとして期待されるわけでございまして、恐らく住民の方々もそういう機能を期待して来られるんだろう。でも、そういう中で、例えば放射線療法の機能がない場合に、それはやはりそういう期待にこたえられない。ではそういうところをどうするのかというようなことについて、個別の事情を勘案してやりたい。

 ただし、これについては都道府県にも御協力をいただかなければいけませんし、私どもでも予算措置でどこまでできるか、できる範囲でできるだけの努力をしていきたい、このように考えているところでございます。

長崎委員 私は、どうも、がん診療拠点病院、発想は本当にすばらしいものだとは思いますが、やはり、ここの部分はまさに護送船団で絶対やっていかなければいけないところだと思います。クオリティーを上げることと底上げをすること。今、この戦略目標というのががん医療の均てん化ということであれば、その最低限のがん医療体制を全国につくるという意味では、まだまだ私は国として底上げをしていかなければいけない地域が間違いなく残っている。それに対する支援というものは、これは国を挙げてやらなければいけないと思います。

 現状は、まさに、きょうはもう四月一日ですので、昨年度でそのような補助金というものがなくなってしまっている事態があります。私は、財政措置も含めて、このがん医療の底上げというものをぜひとも図っていただきたい。少なくとも二次医療圏に一つずつは最低限の地域がん診療拠点病院レベルのものがそろうように、これは国としてでもぜひともやっていただきたいと思いますが、ぜひとも大臣の御見解をいただきたいと思います。

舛添国務大臣 新しい要件にする、それはレベルアップのためなので、まず、今委員おっしゃったように、新しい要件を満たすためにさまざまな財政的支援があり得ると思います。特に、これは都道府県、委員の御地元、山梨県とよく相談をして、そういう方向での支援を考えたいと思います。

 運用を弾力化するということを考えるよりも、まずはレベルアップしてもらうことが重要だと思います。ただ、それぞれの地域によって、お医者さんの確保とか、これはもう、私も昔河口湖に住んでいたことがありますから、よく状況がわかっております。各地域の、本当にお医者さん不足というのは悲鳴を上げているので、山梨県と議論し、山梨大学でも議論しというようなことをやっていますので、委員の今の御意見もちょうだいした上で、各地域とよく相談して、できるだけの支援をしたいと思っております。

長崎委員 ありがとうございます。ぜひお願いいたしたいと思います。

 引き続きまして、腎疾患についてもお伺いしたいと思います。

 腎疾患、今国民の死因の第八位ということで、二十七万人が透析を受けられております。これに対して、大変重要な健康課題の一つでもありまして、この問題に対して国としてどのように対策を進められようとしているのか、教えていただきたいと思います。

上田政府参考人 御指摘のとおり、腎疾患は国民の死因の第八位でございます。また、約二十七万人の方が透析療法を受けるなど、私どもといたしましても腎疾患対策は非常に重要であると考えております。例えば、我が国における慢性腎臓病、CKDの有病率は成人の約六%もある、このように言われています。

 そういう中で、特に重症化予防の観点から、平成十九年十月に腎疾患対策検討会を設置いたしまして、今後の腎疾患対策のあり方について検討を行い、平成二十年三月に報告書がまとめられました。

 その報告書の概要としましては、腎疾患の予防とか重症化の防止を普及啓発する、地域における医療連携体制を整備する、診療水準を向上させる、専門医やかかりつけ医などの人材育成、それから最後に研究開発の推進というものが入っております。

 現在、この報告書に基づきまして、関係団体と連携しながら普及啓発や調査研究などを進めておりまして、引き続き、総合的な腎疾患対策を進めてまいりたいと考えております。

長崎委員 ぜひお願いします。

 そんな中で、二十一年度の予算を見ると、腎疾患に対する研究の推進、これは二十年度が三億二千五百万円、二十一年度が二億九千二百五十万円、差し引き三千二百五十万円の減額措置になっています。まさに今、腎疾患対策を総合的に進めていかれるというのであれば、このような姿になっていると本当にやる気があるんですかと疑われても、要は患者さんに心配になられても困ると思いますので、国としてぜひとも研究の推進に特に力を入れていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

上田政府参考人 厚生労働省におきましては、五年後の透析導入患者さんを予測値から一五%減少させることを目的としまして、平成十九年度より腎疾患重症化予防のための戦略研究を推進しているところでございます。

 さらに、平成二十一年度からは、腎疾患対策検討会の報告を踏まえ、新たに腎疾患対策研究事業を立ち上げ、慢性腎臓病の病態解明、予防、早期発見、診断、治療、重症化防止等に関する一般公募型の研究事業を開始するなど、効果的、効率的に研究を推進する体制を整えたところでございます。

 今回、予算としては若干減額になっておりますけれども、本研究事業は、総合科学技術会議におきましても、重要課題として支援すべき施策であり、着実、効率的に実施する必要があるとの評価を受けたところでございます。今後とも、腎疾患対策の重要性は増すとの認識のもと、腎疾患に対する研究を推進していきたいと考えております。

長崎委員 しつこいようですが、それだけ重要な問題であれば、対前年度一割減という予算の減額というのはかなり大きい減額であって、一生懸命されているとは、もちろん承知はしているんですけれども、結果としては大惨敗とも言わざるを得ないような厳しい水準のものになっています。

 これは、やはり皆さん大変なんですよね。透析を受けながら働いている中で、根治が難しいのかもしれないですけれども、でも、いつかは研究によって根治するかもしれない、あるいは、早く見つけて、透析だってもっと軽い負担で済むかもしれない、こういうのはまさに研究開発が重要だと思いますので、ぜひとも力を入れていただきたいと思います。

 これも通告をしておりませんけれども、また大臣に御決意を賜りたいと思います。

舛添国務大臣 腎不全というか腎臓の病を抱えておられる方々、特に透析の大切さというのは、名古屋大学の医学部でちょっと私はこの問題に取り組んでいたことがあるものですからよくわかっております。予算的な措置も含めて今後頑張っていきますので、またいろいろ皆さん方の御支援も賜りたいと思います。

長崎委員 済みません、先ほどから金のかかる話ばかり私もしているわけですけれども、ただ、私は、そろそろ医療に対するお金の出し方に対する哲学というものは変えていかないといけないんじゃないかなと思います。

 今言った腎疾患もそうですし、がんの問題もそうですね。これは全部金がかかる話ですけれども、ますますふえていくものであって、それに対するお金もかかってくるものだと思います。医療費というものは、いつかはゼロになるようなものではなくて、我々、今後社会が高齢化していくにつれてどうしてもおつき合いをしていかなければいけない経費であると思います。

 であれば、これはある意味積極的にとらえていただいて、私も今まで財政当局に多少籍を置いていたこともあるので、その当時は、医療というものはあくまでも消費でしかない、これは使い切りのお金でしかないというぐらいの感覚しかなかったんです。だから、例えば二千二百億円のシーリングで何とか抑え込んでやれとか、こういう話になっていったと思うんですが……(発言する者あり)私は厚生労働の予算をやっていないのでわからないんですけれども、多分そういうことじゃないかなと思っています。

 だけれども、今後は、どうせ出さざるを得ないお金であれば、これはもっと積極的に位置づけて、医療に対する支出は消費ではなくて投資だというふうに考えることができないか。投資として考えた上で、要は投資ということは将来にリターンがあるものですから、こういうものを踏まえながらふやしていくことができないかと思います。

 我が国は世界有数の医療マーケットを持った国だと思いますが、そんな中で、医薬品はもちろんそうですけれども、医療サービスそれから医療機械、サービスは国内のものですけれども、これらのマーケットは基本的にすべて内需である。内需であって、しかも高齢化するに従ってその市場規模はどんどん大きくなってくる。ところが、今、医療機械にしろ医薬品にしろ外国製品が多い中で、お金を持っていかれている。だからこれは消費というふうな認識になっちゃうのかもしれないんですけれども、これがしっかり国内産業で根差す中で、国内企業が医療に関して雇用を抱える、ここで生活する人が多くなる。かつ、医療サービスだって、今国内の方ばかり対象ですけれども、例えばシンガポールなんかは、外から患者さんを連れてきて、国内で治療して、そこでお金を落としていっていただく。

 こういうことで、私は、今この時期において、医療というものを、国内産業だ、マーケットだととらえて、これをしっかり育成するんだ、そのための投資なんだと。いずれは、外国、特に中国、彼らは不老不死の薬を歴代皇帝が探し求めるような健康コンシャスな国でもありますし、あるいは中東、ロシア、場合によっては欧米なんかからも患者さんを日本にお招きすることができる、あるいは日本の機械で治療してやる、こういうことができるように、今我々は、しっかりと医療関連産業というものを次世代の日本国の主力産業の一つとして育てていってはいかがかなと思いますけれども、大臣、いかがお考えでしょうか。

舛添国務大臣 元大蔵官僚がそういうことをおっしゃっていただくというのは、時代の変化だなという感じがいたします。

 それで、おっしゃるとおりで、例えば私は先ほど遠藤さんとの話で歯のことを言いましたけれども、毎月チェックするというのはお金もかかる、しかし、そのことによって年をとっても歯をきちんと保つことができれば、おいしく御飯を食べることができ、病気の予防にもなる、全体の医療費のコストを実は下げることにもなる。だから、やはり治療より予防という観点から取り組んでいかないといけないし、そういう意味での将来に対する投資、希望への投資としての医療というものを位置づける必要があるというふうに思っています。

 それから、先ほど申し上げましたように、日本は何かを輸出して食っていかないといけない。ですから、自動車とか家電業界は今非常に苦しい、そういう中で、医薬品というのは世界的な評価がすごい高いものがありますし、デバイス、医療機器も、これはまだまだ進んでいませんけれども、それがある。これを輸出産業に育てるというので、今官民対話ということで、そういうプロジェクトを、経済産業省、文部科学省、そして技術担当の大臣、私、四人でこれを進めて、そこには日本にいる外資も含めて全部の製薬企業が入って、スーパー特区どうする、そういう話をしています。

 だから、シンガポールの例が出ましたけれども、やはりそういう点ではシンガポールは非常に進んでいます。私は、アジアの医療拠点として日本を位置づけるということは必要だと思います。まさにこういう苦しい経済情勢、雇用情勢だからこそ、この状況をばねにして、今のような新しい展開が開ければと思っておりますので、元大蔵官僚の長崎委員のお力もおかりしたいと思っております。

長崎委員 ということで、ぜひ今後は、今、力強いお言葉もいただきましたし、医療というものはもう消費ではなくて今後は投資なんだ、日本の将来の発展するための、もちろん国民皆様のそれぞれの健康をつくるための投資でもあるんですけれども、将来の食いぶち、国としての食いぶちを確保するための投資でもあるんだ、こういう理解でやっていくべきだと思いますし、やっていただきたいと思います。

 そういう意味では、ことしは、来年度予算がまた始まりますけれども、まさか二千二百億、もう限界を本当に超えていて、私自身、とんでもない話だと思っています。ことしはぜひとも投資的経費として医療を位置づけて対前年度増でやるように、きょう御参会の委員の皆様の御協力も求めつつ、発言を終わりにしたいと思います。

 ありがとうございました。

    〔委員長退席、上川委員長代理着席〕

上川委員長代理 次に、桝屋敬悟さん。

桝屋委員 公明党の桝屋でございます。

 ただいまの長崎委員の議論、とりわけ医療の財源二千二百億のキャップ、私も賛意を表しながら、二十一年度、二十二年度、必要な予算は確保しなきゃならぬ、こう決意をした次第であります。

 きょうは、四十分ですから、四点ほど議論をさせていただきたいと思います。あの群馬県渋川の火災事故、雇用促進住宅、ハンセンの問題、それからEPA、この四点議論をさせていただきたいなと思っております。

 一点目が、群馬県渋川における火災事故であります。三月十九日深夜に発生をいたしました。静養ホーム「たまゆら」という名前でありますが、死者十名に及んだ大惨事になったわけであります。

 私ども公明党も、直ちに、二十一日でありましたが現地へ行きまして、実情も視察をしてまいったわけであります。そうしたことも含めて、二十七日には官邸にも申し入れを行ったところであります。

 その後の、火災事故以降今日までの、消防庁それから厚生労働省の取り組みについて確認をしておきたいと思います。時間も限界がございますから、端的に御説明をいただきたいと思います。まず消防庁、火災の原因やその後の同種の施設への対応について御説明いただきたいと思います。

株丹政府参考人 消防庁では、火災後直ちに職員を現地に派遣するなどいたしまして、地元の消防本部と連携をしながら、現在、火災の原因の調査をしているところでございます。

 その上で、全国の消防機関に対しまして、老人ホームなど就寝を伴う施設について、火気管理等の火災予防対策を徹底するということ、それから、実は本日施行された消防法令がございまして、そういった消防用設備の設置の義務づけが広がってございます。それについて、経過期間中であっても早期に設置するということを促進する、さらに、関係部局と連携をしまして緊急調査を行うという通知を出しております。これは単独の名称でございますけれども、厚生労働省、それから国土交通省とも連携をしてございます。

 今後とも、こういうことで入所施設における火災の再発防止に努めてまいりたいと思っておるところでございます。

宮島政府参考人 厚労省では、このような施設が全国にどのぐらいあるんだということを、改めて、実は先週調査いたしました。老人福祉法に基づく届け出が行われていない有料老人ホーム、三月二十七日現在で、全国で五百七十九施設ということで報告を受けております。

 今後でありますが、さらに追加調査を都道府県でやっております。四月末までにこの報告を受けたいと思っていますが、その間に、防火安全体制の点検、入所者に対する処遇状況について確認を行って、不適切なものは指導し、厚生労働省にも報告を求めるというような措置をとっているところでございます。

桝屋委員 両省庁におかれて迅速な対応をしていただいているということで、そこは評価したいと思うのであります。

 消防と厚労、実は、十八年の長崎の佐世保の火災事故がありました。あれ以来、こうした小規模の施設の火災については私も本当に心が痛むわけでありまして、あってはならない事故だなといつも思っているわけであります。十八年のあの長崎の佐世保以降も、毎年幾つかのこうした事件、火災事故が起きているわけであります。そこで、大臣にもぜひ聞いてもらいたいんですが、やはりこうしたことを二度と起こさないという取り組み、両省庁挙げて、全力で取り組むという姿勢が必要なんだろうと私は思っております。

 とりわけ今回の事件は、地元群馬県においても問題の所在を把握して、県当局が現地に入って、届け出等の実態把握、届け出をきちっとしなさい、あるいはその届け出に値する施設なのかどうなのか、その確認のために現場に入ろうとしていたやさきであります。あるいは四月一日から消防法施行令が施行される、こういうやさきの事故でありまして、そういう意味でも心が痛むわけであります。

 そこで、これからの問題でありますが、本日からまさに消防法施行令が改正をされ、簡易型のスプリンクラー等の設置義務も拡大されるわけでありまして、こうした施行令の改正の趣旨、あるいは厚労省における補助制度についてしっかりこの趣旨を徹底してもらって、少しでも早く防火体制の整備に努めていただきたい、こう思うわけであります。

 具体的に、一つは、今回の施行令の改正で、二百七十五平米以上のスプリンクラーやその他の消防設備につきましては、厚生労働省地域介護・福祉空間整備交付金、いわゆるハード交付金で対応するということにされたようでありまして、適切な対応だろうと思っています。

 これは全国で相当の施設、まずは対象になっております認知症のグループホーム等でも相当の数があるだろうというふうに思うんですが、これは消防法の施行令が一気につくれといったって、整備しろといったって大変だから、三カ年の経過期間を置かれているようであります。これを少しでも早くやるべきだと私は思っておりまして、希望すれば、このハード交付金でしっかり二百七十五平米以上のところについては対応していただけるのかどうか。

 今の経過措置と同時に、今回のスプリンクラー等も免除規定もあるようであります。例えば、しっかり夜間の職員が配置されているとか、容易に避難できるという環境であれば免除するということになっているようでありますが、そんな免除規定にかかわらず、設置者がこれを設置したいと思った場合に、二百七十五以上でありますけれども、設置をしたいと考えたときに、このハード交付金は対応できるのかどうか、その点をまず老健局に確認したいと思います。

    〔上川委員長代理退席、委員長着席〕

宮島政府参考人 今お話がありましたように、スプリンクラーの設置の対象施設数は全国で六千二百三十一あるというふうなことでございます。ハード交付金の金額は三百八十七億でございますが、金額的には対応できる額でございます。

 私どもも、猶予期間は二十三年度末ということでございますが、なるべく早く設置してほしいということで、全国会議等を通じて交付金の活用が可能だということを周知しているということでございまして、自治体、事業者への早期の設置を周知徹底してまいりたいと思っております。

桝屋委員 ぜひそうした対応をお願いしたい。

 それからもう一点、介護保険の指定は受けているものの、今の二百七十五平米以上でない、以下の、例えばグループホームもあるのではないかと私は思っているんですが、そうした場合はこのハード交付金の対象に多分なっていないんじゃないかと思うんです。

 こうした場合の対応について、私は、いい機会ですから対応すべきだと思っておりますが、とりわけ設置者が希望された場合、これはやるべきだ、こうお考えいただいた場合に対応できるかどうか、重ねてお伺いしたいと思います。

宮島政府参考人 今御指摘ありましたように、消防法上のスプリンクラー設置が義務づけられていない二百七十五平米未満の施設は交付対象となっていません。例外的なもので、消防機関が設置するよう指導をするという場合は個別に対応ということになっておりますが、そうでない場合には設置義務づけが消防法上行われていませんので、そこは今は難しいというのが状況でございます。

 それをどうするかというのは、今後どういう議論をしていただくかということだと思っております。

桝屋委員 今の局長のお答えは、一応、消防法施行令で義務づけされたところがあくまでもハード交付金の対象ですよ、こういうことなんですが、私がお伺いしたかったのは、介護保険の指定を受けてそれの基準を満たさないケースというのはあるわけであります。

 現に私も問い合わせをいただいておりまして、しかも設置者としてはぜひ整備したい、入所者の方に安心していただこう、こういうものについては、今局長は、例外的な対応もあるような雰囲気のお答えがあったわけであります。消防から、ここの構造からいって、ここはやはり簡易型のスプリンクラーをぜひおつけになったらどうですか、こういう指導があれば例外的にもと、こういうことなんですが、消防の次長さん、どうでしょうか。しっかり現場を回って、そうしたものについては御指導いただきたいと思いますが。

株丹政府参考人 先生御指摘ございましたように、平成十八年の一月、長崎県の大村市であったかと思います、認知症高齢者グループホームの火災を踏まえまして、防火安全対策を強化するということで、本日、消防法令、改正をされたものが施行されたところでございます。

 改正によりまして、主として、自力避難困難な者が入所する施設につきまして、従来は千平米以上というところが区切りであったわけですけれども、二百七十五平米以上のところも含めまして、その部分は新たにスプリンクラー設置が義務づけられたということでございます。

 その際はいろいろ御議論がございまして、費用負担等のお話もございました。そのために、従来型でない簡易なスプリンクラー、水道連結をいたしますと水槽等が要らない、こういうことで、経費的にも三百平米で三百万ぐらいということであったかと思います、そういうものを新たに入れるというふうな規定の整備をしてございます。

 一般論で申し上げれば、こういった施設を含めまして、安全性の向上のためには、スプリンクラーもそうでございますけれども、消防用の施設というものが設置をされればされるほど望ましい、こういうふうには思いますけれども、消防法令上の義務づけにつきましては、今、二百七十五平米以上というところで区切りがされてございます。

 したがいまして、消防機関において、施設関係者に対して訓練あるいは研修を通じまして、具体的な危険性ですとか、スプリンクラー設備、簡易なものの性能等、こういうものを啓発するということが大変大事だというふうに思っておりまして、私どもとしても積極的に情報提供等を行ってまいりたいと思ってございます。

桝屋委員 長々と御説明をいただきましたが、よくわからぬのでありますが、要は、簡易型のスプリンクラーについては、消防と厚労省、平成十八年のあの長崎の事件以来ずっといろいろ議論してきた、こういう経緯があるわけでありまして、スプリンクラーの効果、簡易型の効果があるとかないとか、そうした議論が随分続いてきたわけであります。

 大臣、私は、やはり必要なものは用意する、必要なものといいましょうか、最低限を用意すればいいということではなくて、できるものはできるだけ用意していこうという姿勢が必要なんじゃないかなと。現に、十八年のあの事件以来、毎年二、三件死亡事故が発生しているわけでありまして、加えて、今議論しているのは介護保険の指定を受けているとか制度に乗っかったものでありまして、今回の渋川は乗っかっていなかったわけであります。

 先ほどの老健局長のお答えでは、十九年の把握で三百七十七カ所ぐらいが、今回の調査では五百カ所以上になっているという実態があるわけでありまして、今、追加の経済対策を考えようとしているときに、私は、こうした方々の命を守るという観点で、ここは最優先でできるだけの手当てをする、三カ年の経過措置を待つということではなくて、できるだけ早く整備をする、こういう指導性がやはり求められている、こう思っておりますが、大臣、いかがでしょうか。ぜひとも督促をしていただきたい。

舛添国務大臣 五百以上の施設が無届けであるということでしたから、これは確実に届け出を出させて、必要な指導をするということがまず第一だと思います。

 その上で、それは小さな施設でもスプリンクラーがあった方がいいわけですけれども、設置にお金がかかる、そのお金をどういうふうに支援するか。消防庁や厚生労働省から今話があったように、一定の基準を満たせばこれは交付金の対象となっていますけれども、今委員がおっしゃったように、そうじゃないものについてどういうふうに対応するか。

 新しい経済パッケージの中で対応できるかどうか、検討させていただきます。

桝屋委員 あわせて、今回の事件はいろいろな問題点を想定させたわけであります。

 一つは、東京の都区内のそれぞれの区から群馬県、近郊の県の、こうした未届け、無認可の施設で生活をされておられる、しかも区の生活保護を受けながらそこで生活をされておられるということであります。都市部、とりわけ東京都あたりで、実際に地域のニーズや福祉需要にこたえるために機能しているこうしたものについて、しっかりと実態を把握した上で問題点を整理していただきたいと思っておりますが、いい機会ですから、例えば介護保険制度の住所地特例あたりは、そのありようについて見直すべきではないかと私は思っているわけであります。

 介護保険制度については、施設については住所地特例があるんだろうと思っております。例えば東京墨田区から群馬県の施設に入っているという場合は、住所地特例、引き続き墨田区がお世話をする、こういうことになっているんだろうと思いますが、施設のみならず、私は、在宅サービスなんかもこの住所地特例をこれから検討するべきではないかと思っております。ある意味では、東京あたりは、東京でお世話をするよりも周辺の、近郊の地域あるいは施設で生活していただく方が効果が、費用対効果を考えても相当いいのではないかと私は思っております。

 この住所地特例、いい機会でありますから、老健局長、ぜひ検討していただきたいな、在宅も含めて見直しをしていただきたい。御提案でありますが、簡単なお答えをいただきたいと思います。

宮島政府参考人 今御指摘がありましたように、現在は、介護保険の三施設、特養と老健と療養型、それと有料老人ホームで特定施設という介護保険の対象になっているもの、それから養護老人ホーム、軽費ホームはこの住所地特例の対象になっています。それ以外の、認知症グループホームですとか地域密着型ですとか、あるいは通常の住居、高齢者の賃貸住宅などの在宅サービスは対象になっていないという整理でございます。

 これは、普通に高齢者が引っ越したといった場合に、その高齢者の人が例えば要介護だったという場合に、それを住所地特例を認めるのかというような話になって、対象拡大ということになると非常に難しい、線引きの問題が難しいというふうに思っておりまして、私どもも、今御提案ありましたけれども、ちょっと慎重に考えさせてもらいたいというふうに思っております。

桝屋委員 慎重は結構ですが、慎重の上にも積極的に御検討いただきたい。

 それから生活保護ですね、今回も明らかになりましたが、生活保護の取り扱いについては、恐らくこれはケース移管をするのが生活保護上の取り扱いだろうと思いますが、しかし、簡単にケース移管できるわけではない。したがって、引き続き墨田区が生活保護の適用をした実施責任の問題でありますけれども、ここは、新聞報道等によりますと千件ぐらいこうしたケースがあるという状況も聞いておりますから、ここも今党内で、我が党は実態調査をやっているわけでありますが、私は、例外的な取り扱いではなくて、例えば今回のような事例は、墨田区が引き続き生活保護の実施責任を持って対応する。例外規定ではなくて、そういう取り扱いがあっていいのではないかと思っておりますが、この点はいかがでしょうか。

阿曽沼政府参考人 お答えを申し上げます。

 今、実は、他の県に対して生活保護の受給者の処遇をお願いしているケースがどれぐらいあるかというのを調査いたしております。その調査結果をまとめた上で、この問題にどう対応するかというのを考えていきたいというふうに思っております。

 先ほど老健局長も答弁いたしましたけれども、生活保護の場合も、原則は居住地、現在地の自治体が責任を持つということでありますが、先生おっしゃいましたように、墨田区の場合は、今回は例外として、一時的なものであれば入所前の実施機関が引き続き保護の実施を行うということでやっております。

 この問題は大変奥行きの深い問題でございまして、被保護者の生活の実態の問題、それから自立の支援をどうするかという問題、あるいは介護保険制度等々、他の制度との関係もございますので、自治体の意見もよく聞いて、その上で十分検討したいというふうに思っております。

桝屋委員 確かにいろいろ深い問題はあるのでありますが、相当の数があるということがこれから明らかになると思いますし、既になっているわけでありますから、私は、きょうの両局長の御答弁、検討するということでありますが、エープリルフールの答弁にならないように、これは非常に重要なポイントでありますから、大臣におかれても今の議論をしっかり頭に入れていただきたい。

 それで、要は、両局長の答えの心の底にあるものは、大体、東京都がきっちり施設整備すればよかったではないか、していないがゆえにこういう問題になるんだ、こういう思いが見え隠れ、私には伝わってくるのでありますけれども、それでなくても施設整備率は低いわけでありまして、まずは中長期的な展望として、私は、東京都ももう一回、施設整備の計画をしっかり見直してもらいたい。土地が高いという理由だけで整備がおくれるということが許される事態ではないだろう。これは、我が党は東京都議会とも連携をして取り組みたいと思っております。

 大臣、いずれにしても、下に潜ると、全く表に見えないところでこういうことが行われているということが問題であります。実態を明らかにした上で最低限の対応はするという姿勢が必要だと私は思っておりまして、今後とも、この点については議論させていただきたいと思います。

 続いてもう一点、雇用促進住宅の取り扱いについてであります。

 この委員会でも、先日も我が党の赤羽委員が議論をさせていただきましたが、現下の厳しい雇用情勢の中で、派遣の雇いどめ等に対応するいわゆる住居の提供ということで雇用促進住宅が活用されているわけであります。全体で今五千四百、その中で廃止決定された雇用促進住宅も、千二百六十一件ですか、使われている状況だというふうに聞いております。

 したがって、問題は、例の雇用・能力開発機構の中期目標、廃止決定されたものについては退去の指導が進んでいくということでありまして、そこの取り扱いをどうするかという議論がありましたが、結局、雇用・能力開発機構の中期目標はどのように整理されたのか、改めて御報告をいただきたいと思います。

太田政府参考人 お尋ねいただきました雇用・能力開発機構の中期目標でございますけれども、この中期目標、もともとは平成二十三年度までにおおむね三分の一の住宅について譲渡・廃止することとしておりましたけれども、今般の、今お話のございました緊急的な住宅の活用の実施に伴い、この委員会での御議論、そして与党の御指摘も踏まえて、そのあり方を検討してきたところでございます。

 その結果、この目標の達成が困難になったものと判断いたしまして、これを削除するということ、そして、廃止決定した住宅も含め最大限活用するとともに、現に入居している方へ配慮すべきことを明記するという変更を行ったところでございます。これによりまして、今後、譲渡・廃止の当面のスケジュールにとらわれずに、雇用失業情勢に応じて住宅の活用を推進することができるものと考えているところでございます。

桝屋委員 ありがとうございます。

 そうしますと、そこで中期目標が明確になったわけであります。譲渡・廃止の計画の部分が削除された、こういうことでありまして、片方では退去が進められ、片方では入居してくる、こういう現場の混乱は整理できた、こう思っております。

 それでは、この四月、きょう以降、雇用促進住宅の現場でどういうことになるのか。昨年末あるいは昨年、入居者説明会が行われて、退去してくださいよ、こういうふうに説明を受けた入居者に対しては具体的にどういうことに相なるのか、もうちょっと具体的に御説明いただきたいと思います。

太田政府参考人 お答え申し上げます。

 もともとの中期目標では、それを達成する観点から、この四月以降は、廃止決定した住宅に現在入居している方に対する退去促進の取り組みを実施するということで、具体的には、普通借家契約の更新拒絶通知の発出を開始するということを予定していたわけでございます。

 しかしながら、今般の変更を受けまして、今後の雇用失業情勢等を勘案しまして、活用を進める一方で退去を求めるということにならないように、少なくとも三年間はこうした取り組みを延期することとしているところでございます。

 これに伴いまして、先ほど申し上げた入居者への通知につきましては、当面は行わないということでございます。

桝屋委員 この四月から、説明会を経た上で退去を求める方に対する更新の拒絶の通知、これは当面ストップされるということで、経済状況あるいは雇用失業情勢を見た上で今後の対応が行われる。少なくとも三年間ということでございますので、ぜひとも大臣におかれても、ここは引き続き、さらに雇用促進住宅の活用ということも求められるでしょうし、中には、いい機会だから、機構がそこまでおっしゃるのであれば我が自治体がこれを購入したいという、数は少ないんですが、そういうところもあるでしょうし、個別具体的な対応が求められると思っておりまして、きめ細かな対応を引き続き御指導賜りたいと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

舛添国務大臣 三月までに五千四百件、非正規労働者の方々がこの住宅に入られましたので、中間目標を下げましたので、今から具体的にどう取り扱いするか、これも周知徹底をし、自治会等にも通達をする、文書も発出するという形でやりたいと思いますので、これはもう雇用情勢を見ながら臨機応変にやって、目的は、きちんと整理をしていくとともに、今住宅に困っている方を助けるということですから、その二つの目標を追求したいと思います。

桝屋委員 ありがとうございます。

 大臣、今、太田局長がきめ細かくやっていただけるような雰囲気でありましたけれども、どうも一律ずばっとやられるものでありまして、ぜひ、自治会の皆さん方へのお知らせであるとか丁寧にやっていただくように、引き続き御指導を賜りたいと思います。

 続きまして、ハンセン病問題について二点ほど議論させていただきたいと思います。

 実は、きょうからハンセン病問題の解決の促進に関する法律が施行されるわけであります。

 私ども公明党議員団で、三月の十五日でありましたけれども、私の地元の長島愛生園、それから邑久光明園へ行ってまいりました。園長さんや施設側から、あるいは自治会の皆さんからいろいろなお声をいただいたわけであります。

 いずれの施設においても、年々入所者の数は減っております。しかしながら、平均年齢がともに八十を超えております。高齢化に伴いまして、身体機能の低下あるいは視覚機能の低下などによりまして、日常生活の不自由度の進行、そして多様な医療の必要性というものが増している状況を見させていただきました。特に不自由者棟における処遇の確保、入所者の方々の良好で平穏な生活を確保するという点では、やはりこれからも基盤の整備が必要だろうと思った次第でございます。

 片方で、看護助手、介護員と言われておりますが、こうした方々の職員体制、これは定員削減計画が例外なく進められている状況もあるわけでありまして、なかなか難しい問題だなと感じさせていただきました。

 厚生労働省としては、入所者の処遇の確保について今どのように取り組んでいるのか、お答えをいただきたいと思います。

外口政府参考人 国立ハンセン病療養所におきましては、高齢化の進展により入所者数が年々減少しておりますが、必要なサービスを確保するために、看護師等の増員に努めてきたところであります。

 入所者の方々への介護については、ハンセン病の後遺症による身体障害や、高齢化による認知症や合併症を発症している現状を踏まえますと、看護師による療養上の世話の充実など、看護、介護が一体となったサービスの提供を図っていくことが重要であります。

 今後とも、入所者の方々への介護力の低下を招くことのないよう、必要となる看護師の確保等により、看護、介護が一体となったサービスの充実に努めてまいりたいと考えております。

桝屋委員 さはさりながら、片方ではさっき申し上げた、行革の観点から定員削減計画が進んでいるわけであります。

 大臣、私どもも、ぜひとも、これは政治の判断としてこの問題に取り組んでいかなきゃならぬという思いがあります。とりわけ、私も坂口大臣の時代に副大臣を仰せつかっておりまして、ハンセン病問題対策協議会座長として、全療協の皆さんとも随分議論をいたしまして、最後の一人までお世話いたします、こうお答えをしてきた経緯もありまして、ぜひともこれは取り組まなきゃならぬと思っております。

 加えて、長きにわたった国の隔離政策なども踏まえて、ハンセン病あるいはハンセン病対策の歴史に関する正しい知識、これなどもしっかり、多くの国民の皆さんに知っていただく必要もある。そのために、各療養所の歴史的な建物あるいは資料の保存などにも取り組んでいかなきゃならぬと思っているわけであります。

 こうした課題を踏まえながら、大臣として、きょうハンセン病問題解決促進法が施行されるに当たりまして、大臣のお言葉をいただきたいと思います。

舛添国務大臣 国のいわれのない差別、隔離政策によって大変な御苦労を負われた方々、今委員おっしゃったように御高齢になっておられます。そして、介護、看護にしても、例えば後遺症で感覚がなくなっているから、そうじゃないお年寄りに比べて、例えば食器を持っても熱いかどうかわからない。だから、二重手間、三重手間というか、それぐらいかけないとだめなんですね。ただ片一方で、行政の効率化ということで人員の削減という問題がある。

 こういう問題に対して、基本的には国が最後まで責任を持つんだ、最後の一人まできちんと責任を持ちますというこの態度はきちんと堅持していかないといけない。

 この法律は、一つは、今申し上げましたような高齢化ということで、施設、例えば病院にしてもそうなんですけれども、あるところなんかは非常に皮膚科の水準が高いですから、地域住民に自由に使っていただく。地域との交流をもっとやっていくことによって、その存在をきちんと守っていく。

 それからもう一つは、今おっしゃったように、やはり歴史を正しく国民に認識させる。名誉も回復しないとか、今でも差別がありますから。先般、ある園で地域住民に、ずっと御苦労なさった写真の展覧会をやって、本当にこれは見てよくわかったよということがありますので、そういうことを引き続きやっていくべきだというふうに思っています。

 これも、先ほどの長崎委員の話じゃありませんけれども、財政の問題がありますけれども、こういう問題に対してきちんと国が責任を負うというのが本当の高度な福祉国家であるというふうに私は思っていますので、引き続き、皆さん方の御支援もいただきながら、前に進めていきたいと思っております。

桝屋委員 ハンセン病療養所、全国で十三ございますが、今のその実態というものも大臣、随分御理解をいただいて、御答弁をいただいたと思っております。

 私も現地へ行きまして、やはり不自由者棟の実態を考えますと、まさに大臣がおっしゃったようなことがあるわけでありまして、地域開放については、なかなかやはり入所者の皆さん方の理解というのは簡単なものではないなと思っております。しかし、これは、これからの施設のあり方としてどうしても、地域の地元の自治体や皆さん方とも相談をしながら、時間がかかっても進めていきたいなと私も思った次第であります。

 あわせまして、長島愛生園等では、施設の展示、資料の展示等について職員の皆さんが大変な苦労をしておられる。限られた予算の中で懸命に取り組まれている実態を見て、応援してあげたいなと思った次第でございまして、そんなことも大臣、またお考えいただきたいと思います。

 最後のテーマになりましたけれども、EPAの関係であります。

 日本とインドネシア、あるいはフィリピンもそうでありますが、二国間の経済連携協定に基づきまして、インドネシアが昨年からでありますけれども、来日をしておられる看護師、介護福祉士候補の取り扱いについて確認をしておきたいと思います。

 インドネシアについては、既に昨年八月、第一陣を受け入れて、現場における研修作業なども始まっているわけであります。私ども公明党に地方議会から寄せられた話の中で、受け入れを行った施設の状況について報告をいただいたわけであります。着任をして一カ月、まずは言葉の問題で大変な苦労をされているし、四六時中指導者がつきっきりになって取り組んでいただいている。日本の文化や仕事になれさせるということがまだ第一でありまして、それこそ、土曜、日曜もなくサポートされている話をいただいております。

 もちろん、国際厚生事業団があっせんに当たっているわけでありますが、あっせんに当たりましては、これは基本的に、研修にかかる費用は受け入れの施設が持つということが前提としてあっせんされているわけであります。

 そうはいっても、実際に受け入れてみて大変だなということでありまして、厚労省あるいは経産、国際厚生事業団、側面からの支援策はあるのでありますけれども、今後の状況を見ながら、何らかの受け入れ施設に対する支援策も考えていくべきではなかろうか、こう感じている次第であります。

 とりわけ、これから緊急経済対策で、介護の人材というものをしっかり定着させよう、あるいは育成をしていこうという仕掛けがたくさん動き出しますので、何らかの手を考えていただきたいな、考えなきゃならぬなと私自身も思っているわけであります。

 三年、四年で国家試験が受からなければそれで終わりということになりますと、せっかくの二国間の経済連携協定、成否も問われるわけでありまして、今後の動きに注目をしていただき、御検討をお願いしたいと思っておりますが、御答弁をお願いしたいと思います。

阿曽沼政府参考人 EPAについてのお尋ねでございますが、これにつきましては、先生お話がございましたように、国際厚生事業団の方から、研修が着実に進むように支援をするという観点で、候補者に対する母国語による相談でありますとか、あるいはインドネシア語による看護、介護用語集の作成とか、あるいは定期的な巡回訪問とかといった取り組みを行っております。

 さらに今後、加えまして、国際厚生事業団の方から、相談できるような社会保険労務士とか精神科医等の専門家の紹介でありますとか、あるいは受け入れ施設における情報交換会をつくるとか、さらに、候補者が計画的に学習するための教材等を支援するとかを考えております。

 それからさらに、今御指摘ございましたように、私ども、いろいろ経済対策等で考えておりますので、EPAの施設についても何らかの支援ができるのではないかと思っておりますので、よく検討させていただきたいと思います。

桝屋委員 最後で、やっと局長からいいお答えをいただいたような気がしております。

 これは、例えば、受け入れ施設側にとってはあくまで、ある意味では労働者、介護従事者ということになるわけでありますから、余りのことをするとバランスを欠くということにもなるかもしれませんが、しかし、やはり二国間協定で入国された方については、何とか介護福祉士、看護師としてしっかり力をつけていただくということが目的だろうと思っております。

 恐らく都道府県に相当の基金が、これから我々の対策も通じて、次の補正予算でも行くのではないかと思っておりまして、厚労省が余り、これはだめ、あれはだめと言わずに、現場の知恵にしっかりゆだねていただきたいなというふうに思っている次第でございまして、最後、大臣にお願いをして、質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

田村委員長 次に、山井和則君。

山井委員 三十五分間、介護問題、肝炎問題について御質問をさせていただきます。

 まず、きょう四月一日から要介護認定の基準が変更になりました。

 一言で言えば、派遣切りの次は介護切りかということで、これは厚生労働省の資料、今日もお配りしておりますが、一ページにありますように、約二〇%の方が要介護認定が軽くなる危険性があるということであります。

 これに関しては、本当に私の地元でも悲鳴が上がっております。今まで要介護一で週に六回ホームヘルプを受けられていた人が、要支援二になって週三回以下に減らされる。あるいは、もっと深刻なのは、今まで要支援でデイサービスに行けていた人が、非該当になって介護保険のサービスを受けられなくなる。保険料を払っていて、こんなことを一方的にしていいんですか。今、もう現場はパニックになっていますよ。

 そして、舛添大臣、これは四百七十万人が介護保険のサービスを利用されています。二割の方が認定が軽くなるといったら、これは約百万人ですよ、百万人。百万人の人の要介護度が、本人の状態は何にも変わっていないのに切り下げられようとしている。サービスもカットされようとしている。そして、要支援一の人は五十六万人。二割がカットされたら、約十万人が非該当になってサービスが受けられなくなるじゃないですか、十万人が。これは深刻な問題だと思います。

 この四月一日から介護報酬が引き上げられるんですよね、三%、大臣の英断で。介護職員の方は、賃金が上がるのかと言って期待していますよ。その一方、介護の主人公はお年寄りじゃないですか。職員の方はちょっと賃金が上がるかもしれないけれども、一方、お年寄りは二割の人がサービスをカットされる。介護保険から追い出されて、サービスを全く受けられなくなる人も出てくる。

 あるいは、今回の介護報酬三%アップというのも、私たちは一割負担に響かせてはならないということで主張したのに、今回、一割負担もアップするから、今まで限度額満杯利用していた人が、天井まで行ってサービスが減る。あるいは、私の近所の事業者の方も、介護報酬の加算を厚生労働省の言うとおり受け取ったらお年寄りの自己負担がアップするから、職員の賃金アップをあきらめて加算報酬を受け取らない、お年寄りの自己負担をふやすのは申しわけないからと。こういうことになっていて、まさにこれじゃ、昨年の四月は後期高齢者医療制度の導入でお年寄りいじめ、ことし四月は介護保険の改悪でまたお年寄りいじめになるんじゃないですか。

 舛添大臣、そこで改めて確認しますが、今回の、きょうからの要介護認定の変化で、今まで介護保険サービスを受けられていた人で非該当になる人が出てくる可能性はあるのか。そして同時に、要介護の人が要支援になって施設から追い出される、そういう人が出てくる可能性があるのかどうか。そのことについて、大臣、お答えください。

舛添国務大臣 質問の前に委員も前置きをお述べになりましたので、私もちょっと前口上をさせていただきたいと思います。

 ある一つの制度を、医療保険制度でも介護保険制度でも、不断の見直しを行ってよりよい制度に育てていかないといけない、そして、そこで働く人たちの処遇もまた考えていかないといけない。そういう意味でさまざまな、認定基準を含めて、もうこれは不断の見直しを、あれは五年というふうに書いてあっても見直しをやっている。そういう中で、介護の技術もだんだん進歩する。そういう中での一つの見直しであって、何かこれは悪いことをするために見直しをやっている、そういうことではないということをまず申し上げておきたい。それは、民主党の皆さん方が政権をおとりになり、山井先生が介護担当の大臣になられても、これはやらないといけないことであります。

 そういう中で、今委員がお示しになっている資料にあるように、認定基準を見直すと重度になる方もおられる。こういう方は、今まで一だったのが二になって、それはふえますね。逆に減る方々もおられる。

 そのときに、これは全く不合理である、とてもじゃないけれども、こういうふうに認定基準の見直しで減らされるのは極めて論理的ではないというならそれは問題ですけれども、一定の基準を用いて、そしてまず一次判定をやる、しかし二次判定があり、担当医もきちんとそこに特記することができますから、そこのきめの細かさでいろいろな問題点は処理できますよということをまず申し上げた上で、そういう大きな目標に向かって動いています。そこで、ただ問題があればそれは必ず検証し、しかも公開の場所で検証し、見直していきますということであります。

 御質問の方ですけれども、この要支援一の方が非該当と判定された割合は、モデル事業だと約四%、それから研究事業だと、今のパーセンテージは〇%。これはあくまで一つのモデル事業として検証してみたわけですから、現実にこの四月からやってみてどういう結果があるか、これは全部のデータが出てまとめるのに、七月ぐらいにどうしてもかかりますけれども、少しでも早くそれをまとめて公開の場で検証して、これはやはり見直さぬといかぬ、よくないということであれば、臨機応変にやっていければというふうに思います。

 したがって、先ほどもう一つあった、施設から追い出されるかどうかというのも、そういうことの中で現実に判断をしていく必要があると思っております。

山井委員 これは後期高齢者医療制度でも一緒なんですよ。舛添大臣、言ったら失礼かもしれませんが、今厚生労働省がやろうとしているのは人体実験なんですよ。やってみないとわからないということでは困るんですよ。

 大臣、それではお聞きしますが、今現場に、この認定調査員テキストというのが配られて、大混乱になっているんですよ。これで多くの判断基準が変わっているんです。例えば座位の保持、ずっと座っていられるかどうかという、保持ができる、できないというときに、今まで、三月三十一日までは、十分間座っていられるかどうかが判断基準だったんですよ。ところが、今回のテキストで、勝手に一分間に変わっているんですよ。一分間に変わっている。

 新しいテキストが配られて、現場は今非常に困っているんですよ、認定が軽くなるわけですから。このテキストによってどれだけ認定が軽くなるか、あるいは重くなるか、モデル事業でもやったことはあるんですか。

舛添国務大臣 モデル事業や研究事業は先ほど言ったデータが出ていますけれども、これが完璧であるとは、それは全部、まさにモデル事業で見ているわけです。

 今のような問題について言えば、十分間か一分間か、ただ、これは要するに、今まではとにかく調査をする人の恣意が入る場合にばらつきが多過ぎる、なるべく恣意がなくてやるにはどうするか。

 それで、例えばこの前申し上げたように、介助されていないという状況、自立という言葉はわけがわからぬから、これは取れということで削除しましたけれども、介助されていないという現実をしっかり書いて、しかし、これはほっておくと床ずれを起こしますよ、褥瘡になりますよ、そういうことをしっかり特記する。そういうことによって、そして、さらにこれは二次の判定もあるわけですから、それを見ただけじゃなくて、まさにありのままの姿を書いてもらって特記事項をやるという、二段構えでやるということで、何か、軽くする、軽くする、要介護認定を軽くすることによって国が負担を逃れよる、そういうことでは全くないということは申し上げておきたい。

山井委員 舛添大臣は正確に答えられないんですよ。この今回の改正でどれだけの方のサービスがカットされるかということは……(発言する者あり)わからないですよとおっしゃられているわけでしょう。それを答弁してください。答弁してください。今おっしゃったことでいいですから。

舛添国務大臣 それは、ですから、今からこの認定をやってみて、きめの細かいこっちが指示したとおりの調査を調査員が行わないで、特記事項もいいかげんにしか書かないで、そういうケースがあれば、それは軽度になることがあるでしょう。

 ですから、そういうことをきちんと指導していくということを申し上げているわけで、データを見て、現実にそういうことが起きれば指導して直していくということであるわけですから、そういうことを申し上げているわけです。

山井委員 だから、現場の方々そしてお年寄りが何よりも怒っているのは、やってみなければわからないということを一方的に導入することなんですよ。

 以前の介護保険の予防のときもそうなんです。私の家の近所でも、実際、介護予防になってサービスがカットされて、そのおじいさん、戦争で苦労した自分が今までずっと介護保険料を払ってきて、何で急にサービスが減るんだと非常に怒っておられましたよ。もちろんそれだけが理由ではないですけれども、サービスがカットされた後に非常に状態が悪化して、しばらくしてお亡くなりになられたというケースも残念ながらあります。

 ひとり暮らしのお年寄りも含めて、今まで、デイサービスに行って一週間のリズムを保っていた、あるいは週に六回ホームヘルプを受けていて、それで在宅で介護できていたという人もいるわけですよ。その人たちが三回に減ったら、それは生活のリズムが崩れて、それで、半年たって検証して間違っていましたといっても、もうそのお年寄りは体調が悪化して入院している可能性もありますよ。

 私は、舛添大臣が介護の専門家とおっしゃっているから言っているんです。御高齢の八十、九十の方々が、こういうサービスを何の理由もわからずにカットされてどれだけ困るかということです。それで、配付資料に入れてありますが、現場からは非難がごうごうと出ております。

 今も私言いましたように、モデル事業では二割の方が認定が軽くなると言われていますが、舛添大臣、最近出たこの介護認定のテキストを見てください。一センチのこの分厚いもの。ここでかなり判断基準の変更があるんです、座位が十分だったのが一分になったりして。

 こういう変更によって正確なところ何割の人が軽くなるかというのは、今大臣がおっしゃったように、やってみないとわからないんです、二割より多いか低いか。だから、ここの三ページにもありますように、市民の会の方々は、とにかく当面この見直しは延期してくれ、そして、一回、今回配られたこのテキストでどれぐらい軽くなるのか、重くなるのか、変わらないのか、まずモデル事業をやってくださいと。当たり前じゃないですか、相手は生身の人間なんですから。

 それで後期高齢者医療制度のときにも問題になったんです。結局、後期高齢者という、ああいう非常に失礼な、お年寄りの尊厳を汚す名前が何で入ったのかというと、検討会に当事者が一人も入っていないんです。今回のこの認定の検討会も、この資料の中にはきょうはお配りしていませんが、十三人の中、学者と専門家ばかりです。介護保険を利用している当事者が入っていないじゃないですか。大臣、この種の問題は、やってみて失敗していたらもとに戻すではもたないんですよ。

 そして、次のページにも行かせていただきますが、介護保険を持続・発展させる一千万人の輪という、介護保険をよりよくしたいと思っておられる最大の団体です。ここからも、六ページにありますように、多くの要介護高齢者がサービス給付から外れるという危惧がある、一たん凍結してくれということを言っているわけです。

 それはそうでしょう。繰り返しになりますが、こういう判断基準を変えて、モデル事業を一切やらずに、ぶっつけ本番で生身の高齢者にやってみる、やってみて問題が起こったら見直します、それが厚生労働省のやることですか。おまけに、サービスをカットされたり非該当になるお年寄りも、介護保険の保険料は年金から天引きされているんですよ。

 ぜひとも、これは一たん凍結をすべきだというふうに思いますが、大臣、いかがですか。

舛添国務大臣 よりよい制度にするためにさまざまな見直しを行う、このことは反対じゃないですね。(山井委員「反対じゃありません」と呼ぶ)

 それからもう一つ、最大二年に一度、この見直しを個々人について言うとできる、もし非常に急激に状態が悪化して、そうしたらそれで見直しできるわけです、今の制度であっても。ですから、何かもう、全員軽く軽くして悪意でやっているようにおっしゃるけれども、そうではありません。それから、樋口さんや高見さんの意見も私もよく聞いております。

 そして、私自身が役所に指示したのは、確かに識者や自治体の方を入れてやっているつもりではあるんだろうけれども、少なくとももう少し広く輪を広げて検討をし、もっと周知徹底の努力を事前にすべきであったということは反省しないといけないというように、私は、役所自体はそういうことは反省せぬといかぬということは指示を出して、しかも、わかりにくい言葉は見直すようにしております。

 しかしながら、今申し上げたように、人体実験をするとかそういうことではなくて、とにかく現実に動かしていく、その中で検証をきちんと公開の場でやっていく、そして今回の新しい認定基準がそこで問題であれば、これはみんなの知恵で変えていこうということでありますから、今直ちに凍結をすることの混乱ということを考えれば、私は、今は着実に進ませていただいて、そして検証を公開の場でやっていきたいというふうに思っております。

山井委員 現場の方がそんな答弁を聞いたら怒られますよ。無理やり導入しているから現場が混乱しているんじゃないですか。強行することが混乱なんですよ。人体実験じゃないとおっしゃるけれども、繰り返しますよ、こういう新しい判断基準に変えて、新しいテキストを配って、モデル事業を一切やっていないんですよ。モデル事業を一切せずにやってみる、これは人体実験じゃなくて何なんですか。

 もうこれ以上はこの問題は質問しませんが、私が言いたいのは、後期高齢者医療にしてもそうなんですけれども、今の日本の社会を築いてくださったのはやはり御高齢の方々なんですよ。その方々に対する敬意や思いやり、いたわりの心がないんじゃないか。繰り返しになりますが、検討や改正を私は否定しません、やったらいいんです。問題は、全国レベルでやる前にモデル事業をやってください。そんなものは当たり前じゃないですか、相手は生身の人間なんですから。

 それで、一方では介護報酬を上げて賃上げをすると言っていますが、さっきも言ったように、賃金は二万円上がるとおっしゃったけれども、実際、そんなに上がりません。そんな中で、民主党としては、今回、法案を参議院に出しました。まだ審議をしていただいていないということですが、与党の理解を得て審議をしてほしいと思います。

 この七ページの、私たちは三%じゃなくて、プラス七%上乗せして、一〇%報酬を上げるべきだということなんですね。これについて、与党も御検討されていると聞いておりますが、舛添大臣、やはりこれは三%報酬引き上げというのは不十分なので、もっと介護報酬を引き上げるなり補助金を上乗せするなりして、介護職員の賃金をさらに上げるようにすべきだというふうに民主党は法案を出して要望しておりますが、大臣、いかがですか。

舛添国務大臣 三%、これがどういう形になるかはそれぞれの事業所によっても異なるというように思いますし、また、民主党さんが一〇%という数字を出しておられますけれども、これはよく状況を見た上で、どういうことがさらにできるか。私は、全体的にさらにもう一歩、介護の現場で働いている方々の処遇はもっと改善できればいいというふうに思っています。

 ただ、ほかの職種もありまして、保育士の方がどうだ、もちろん看護師の方なんかと直接比べるわけにはいきません、またケアマネの方もおられる。全体を見て、どういう形で処遇の改善をさらに一歩進めるか、これは与党の皆さんとも検討しながら、前に進めていきたいと思っております。

    〔委員長退席、西川(京)委員長代理着席〕

山井委員 九ページ、次の質問に進みます。

 今回、「たまゆら」のことにもありましたように、生活保護の方が無届けの施設に入れられて、そこで火災で死んでしまうというような、現代版うば捨て山と言えるような事件が起こっております。この九ページにありますように、昨日締め切りで全国調査をされたということですが、生活保護の方々が入っている無届けの施設は全国で何カ所あるのか、その調査結果をお教えください。

舛添国務大臣 生活保護受給者が入っている施設ということ……(山井委員「いえ、この調査結果です。質問通告にもあります」と呼ぶ)五百七十六だったと思いますが、ちょっとお待ちください、正確に今データを。

 五百七十九件でございます。

山井委員 これは何都道府県でですか。これは、昨日返ってきたこの調査の結果ですね、確認しておきますが。五百七十九件、そうしたら何人ですか。そんな少ないんですか。

舛添国務大臣 報告結果は、各都道府県が平成二十一年三月二十七日時点で把握している有料老人ホームに該当し得る……(山井委員「違います。ちょっと時計をとめてください。その質問じゃないですよ。三十一日の」と呼ぶ)

西川(京)委員長代理 山井君、もうちょっと正確に質問してください。

山井委員 ですから、昨日締め切りの、この配付資料に入っている調査結果を教えてください。これは昨夜、質問通告しましたよ。

舛添国務大臣 ちょっと、どの質問をしていたかはっきりわからなかったので、私が今五百七十九件と申し上げましたけれども、生活保護受給者を何人送っているかという質問でしょう。(山井委員「いや、違います」と呼ぶ)

 ちょっともう一度質問してください。

山井委員 この配付資料にあります、質問通告をした、三月三十一日締め切りのこの調査結果を教えてください。

舛添国務大臣 結果については現在集計中であります。そういう意味では、まだ結果が出ておりません。

山井委員 それだったら、きのうの晩、言っておいてくださいよ。きょう答弁するというから、これは時間を割いて質問しているんですから。三月三十一日締め切りで、あした答弁できるというからこれは質問しているんですから。わかりました。

 次に、肝炎の問題に入ります。

 肝炎の問題は超党派でぜひともやっていきたいと思って、今、鋭意協議をしております。与党は前向きでありますが、厚労省が割とかたいという印象を持っておりますので、質問をさせていただきたいと思います。

 きょうも原告や患者の方が傍聴にお越しいただいておりますが、昨日、党派を超えて、すべての党派に対して、肝炎対策基本法、肝炎医療費助成法案を成立させてくれという重い重いこの請願を出してくださいました。

 そこで、今回私たちが提出している法案の中でも、B型肝炎に効く抗ウイルス剤も医療費助成をすべきだということを私たちの法案には入れました。インターフェロン治療というのはほとんどがC型肝炎の方にしか効かない、B型肝炎の方も使用されていますが。そういうことで、B型肝炎に効く抗ウイルス剤に医療費助成すべきと考えますが、大臣、いかがですか。

舛添国務大臣 これは二つの点、一つはインターフェロン、これは治療ができる、それから自己負担額が非常に高い。

 それから抗ウイルス剤、B型肝炎に対するものについては、ウイルスの増殖抑制が目的で、根源的な治療薬ではない。それから、インターフェロン治療による自己負担額に比べて相対的に低額であるということ。

 これは全体の、ほかのさまざまな疾病、病気がありますから、こういう方々との公平ということで、今のところは助成は考えておりませんが、全体の中で、治療法とか副作用を抑制するための研究、こういうことを総合的に研究して、何とかその根治可能な治療法の開発を進めたいと思っております。

山井委員 根治ということをおっしゃいますが、きょうも患者の方がお越しをされていますが、インターフェロン治療はB型肝炎の方々にとっては根治ではないんですね。でも、根治でないけれども既に医療費助成が行われているんですよ。

 かつ高額でないという意見もありますが、これは、逆に、根治でないがゆえにずっと一生使い続けなければなりませんので、月二万円であっても年間二十四万円、三十年続ければ七百万円という非常に高額になるんですね。ですから、ぜひともこれは抗ウイルス剤も入れるべきだと考えますが、大臣、いかがですか。

舛添国務大臣 先ほど申し上げましたほかの治療薬とのバランスというようなことを考えて、現在の枠組みの中では非常に難しいと思いますので、とにかく、根源的な治療法を何とか研究開発するということを第一義的に考えたいと思っております。

山井委員 実は、私が二年ほど前にC型肝炎のインターフェロン治療を医療費助成すべきだと言ったときも、当時の柳澤大臣は何度も、ほかとのバランスがあるから、肝炎だけやると不公平だからと言い続けておられたんですけれども、結局、与党もインターフェロン治療の医療費助成をやろうと踏み切ってくださったわけです。ここは何が背景だったかというと、やはりこの肝炎は、御存じのように、輸血、予防接種、そして血液製剤という医原病の可能性もある、そういうことでインターフェロン治療の医療費助成も出てきたわけです。

 そこで、この配付資料にもありますが、十八年闘って、これはもう最高裁で判決が出ているわけですね。こちらの配付資料の十二ページにありますように、予防接種で五人の方がB型肝炎に感染されたということで賠償命令が出た。そこで、当時の中島健康局長は、原告の方に対して国の賠償義務が認められたことについては重く受けとめております、この原告の方に対しては、まことに申しわけない気持ちであり、判決に従って迅速に対応したいと思っておりますと。

 これは大臣、今も二百八十五人の方が全国で訴訟されています。母子感染でない、そして輸血を受けていない、そういうふうなことで予防接種の可能性が極めて大きいわけですが、やはりこれは、十八年間も闘われたということは、たった五人のためだけじゃないんですね。

 そして、この十二ページの中に、B型肝炎に詳しい飯野四郎病院長のコメントも出ています。下から六行目。B型肝炎の患者、感染者百四十万人の「ほぼ半数は使い回しの注射器を使った注射など、医療行為による感染とみられる」というふうに、この権威の飯野先生もおっしゃっておられるんですね。だから、たった五人じゃないんです。

 大臣、このB型肝炎についての、結局国の責任ということに関してどうお考えですか。

舛添国務大臣 五名の方は最高裁の判決がありますから、これは当然、国の責任があるということ、要件が認定されたということで非常に重い責任があると思っております。

山井委員 五名の方の話をしているんじゃないんです。五名の方は、百四十万人の代表として裁判されているんです。飯野教授も、半数ぐらいは予防接種じゃないかと。五人だけが予防接種を受けたわけじゃないんですから、トータルのB型肝炎の方々の感染に関して国がどういう責任を感じているかということを聞いているんです。

舛添国務大臣 それは、どういう理由で肝炎になったかという証拠の確定がきちんとしなければならないので、そのために最高裁がそれを確定したわけですから、そこで国の責任が、例えば予防接種のそこに書いてあるようなたらい回しのようなことがあれば、これは責任であるということですから、証拠に基づいて、要件の確定がまずは前提だと思っております。

山井委員 私は、そういう答弁を聞いていると、昨年の薬害肝炎のあの和解は何だったんだと。要は、救済してほしかったら訴訟しなさいと。十八年かかって、その間にお亡くなりになられた方もおられるわけですよ。ですから、薬害肝炎の弁護団の代表の方も、最後におっしゃったのは、被害を受けて、病気で苦しんでいる当事者が必死になって動き回らないと救済されないようなことはもう二度とやめてくださいということを最後におっしゃったわけです。

 今、全く同じことをさせているわけです。ということは、舛添大臣の答弁でいくと、救済してほしいと思ったらみんな裁判しなさい、そういうことですか、これは。

 そこで、配付をしております十四ページにも、きょうも傍聴に来られていますが、桜井則子さんもB型肝炎と診断されて、今非常に苦しんでおられます。インターフェロン治療を受けられたわけですけれども、根治はせずに、ずっと今も治療を続けておられるわけですね。

 また、坂岡さんは、お子さんがB型肝炎で亡くなられた。集団予防接種の可能性が極めて高い。

 みんな必死に病気と闘いながら、二百八十五人、全国で闘っておられる方の中には、肝硬変になった方、肝がんの方、もう余命幾ばくもないと言われている方もおられるんです。

 そういうことじゃだめだからということで、ここにおられる自民党や公明党の先生方とも協議をして和解に導いたわけですね、薬害C型肝炎は。特に、公明党の太田代表もこの集会にもお越しいただいて、この肝炎の問題、党派を超えて、私たち国会議員は今やろうとしております。自民党も非常に熱心にやってくださろうとしております。しかし、申しわけないけれども、厚労省が一番後ろ向きなんですね。

 これはもうストレートに申し上げますが、二百八十五人、また十八年させるんですか。皆お亡くなりになってしまいかねないですよ。そうじゃなくて、やはり一日も早く和解に結びつける、これが薬害肝炎の教訓だったんじゃないですか。C型薬害肝炎の方々があそこまで頑張ったのは自分たちだけのためではないんです。三百五十万人もの多くの肝炎患者全体の救済のために頑張られたんですよ。それを、あれとこれとは別だ、B型肝炎は一人一人訴訟してください、これはおかしいんじゃないですか。大臣、いかがですか。

舛添国務大臣 C型肝炎の場合も、和解をするかどうかというのは、裁判の土俵の中で一生懸命努力をして、なるべく和解に持っていけるようにみんなで努力をして、最終的には議員立法という形になりました。ですから、証拠についての要件の確定は、これは訴訟の場でやらないといけないわけです。

 その上でそれが、例えばフィブリノゲンの場合も、カルテが残っていなくても、先般あったように、それを推証できる十分な証拠があればそれを採用していただくわけですから、そういう形での一日も早い解決に、我々も、きちんとそれは支援をしていきたいと思っております。

山井委員 改めてお伺いします。

 まさにおっしゃるとおりです、訴訟ですから。でも、私は、まさにC型肝炎の問題も解決に導かれた舛添大臣だから質問しているんです。このB型肝炎の問題、和解に持っていきたいというような思いは、個人的にでも結構ですが、大臣はお持ちなんですか、どうですか。

舛添国務大臣 C型肝炎のときにもありました、例えば入れ墨をする、そういうことで感染する場合があったり、いろいろな場合があるわけですから、そういう中で、何が感染原因であるかというのはこれは特定しないといけない。これは一つの法的な要件でありますけれども、現実に、自分はどう考えても、予防接種でたらい回しが自分の原因であるということ、これをなるべく確定できるいろいろな材料を集めて、それは一日も早くそういう方を救ってあげたい、そういう気持ちは変わりません。

 したがって、C型、B型を問わず全体の肝炎の問題、どういう形で解決を考えていくか、それはまた与野党を通じて、この委員会の皆さん方の御意見も賜りながら、一緒にそれは前に進めていきたいと思っております。

山井委員 その和解がおくれればおくれるだけ医療費助成もおくれますし、救える命が失われるから、私も必死でこれをやっているんです。

 そこで、これは最高裁で闘っておられる木村原告を初めB型肝炎の方々、私、この委員会でも何度も会ってくださいと大臣に言いました。ところが、訴訟中だから会えないということだったんですよ。これはもう最高裁で結審したんですよ。国が敗訴したんですよ。

 そこで、大臣、さすがにもうこれは会われるべきじゃないですか、最高裁で結審した方々の原告に関しては。大臣、いかがですか。

舛添国務大臣 訴訟中であれば、司法の判断に行政の長が影響を与えてはいけませんから、そういう意味ではそれは慎まないといけない。ただ、国会日程や何かで時間が許せば、それはお会いして、それは原爆症の方々もC型肝炎の方々も、それからさまざまな難病の方々も、時間の許す限りお会いして直接声を聞いていますから、そういう機会を時間が許せば持ちたいと思っております。

山井委員 ぜひお目にかかっていただきたいと思います。やはり、この五人の方々は五人だけのために闘われたんじゃないんですよ。多くの方々がなかなか立証ができないんです。

 それで、私は大臣にお願いしたいんですが、入れ墨があるだろうとかそういうことは、私は正直言って、大臣の口から言っていただきたくないんですよ。非常にレアケースじゃないですか。予防接種や薬害や輸血や、少なくとも自己責任ではない医原病で、本当に人生に大変な御苦労を背負って、例えばC型肝炎がインターフェロン治療でもう完治した人、そういう若者でさえ、完治しているのに、もともとC型肝炎だったということで就職差別を受けて大好きな仕事につけない、一生本当に苦しんでいる人もいっぱいいるんですよ。そういう人たちに対して優しい言葉を言ってほしいんですよ。

 入れ墨していたかもしれないって、そういうのは、やはりそういう姿勢は変えていただきたいと思いますし、ぜひとも早期にB型肝炎の原告の方と会って、五人だけの問題じゃなくて、B型肝炎の和解のことも含めて前向きに検討していただきたいと思います。そのことについて答弁をお願いします。

西川(京)委員長代理 時間が来ておりますので、簡潔に御答弁をお願いいたします。

舛添国務大臣 タトゥー、入れ墨のことを言ったのは、そういう意味で言ったのではなくて、御党の、民主党の家西議員から、今、タトゥーによって肝炎にかかっている方が多いので、ぜひこれを警告してくださいというのを先般言われて、それが頭にあったものですから、そういうことも含めて原因について申し上げたので、何か変な意図があってそういうことを申し上げたのではない。

 解決のために、皆さんと協力して努力をしてまいりたいと思っております。

山井委員 最後に、締めくくりますが、大村副大臣もこの問題には本当に熱心に尽力していただいていますので、厚生労働省もぜひ前向きにしていただいて、かつ公明党、自民党の議員の方々も、このことは、基本法、医療費助成法、何とか成立させようということで今協議をしていますので、短い国会ですが、この間、ぜひとも与野党を超えてやっていきたいと思いますので、厚生労働省としてもよろしくお願いします。

 以上で質問を終わります。

西川(京)委員長代理 次に、内山晃君。

内山委員 民主党の内山晃でございます。

 レセプトオンライン請求義務化について少し掘り下げて質問させていただきたいと思っております。

 二〇一一年四月からはほとんどの医療機関にレセプトオンライン請求が義務化されます。この件について全国保険医団体連合会がアンケート調査をいたしました。その結果について、全国の医科一万一千六十九件、歯科三千十件、合計一万四千七十九件の医療機関からの回答では、オンライン請求に対応できるか否かについて、対応できない、わからないという回答が過半数を占めた。対応できるという回答は、医科四六・二%、歯科三三・一%にとどまりました。さらに、レセプトのオンライン請求が義務化されれば、医科千三百三十六件、一二・二%、歯科二百十二件、七・二%が開業医をやめると回答し、地域医療に重大な影響を及ぼすことが予想できるとしています。

 医療機関の負担について、現在手書きでレセプトの請求をしている医療機関は、レセコン、レセプトコンピューターの導入で百万から三百万の費用がかかる、大変な負担になるわけでありますけれども、またオンライン化の費用や従業員の教育にも費用がかかり、大変な課題となるという声がたくさん出ております。

 そこで、医療機関の過大な経費負担を国はどのように考えているか、答弁を求めたいと思います。

水田政府参考人 お答えいたします。

 レセプトオンライン請求についてでございますけれども、これにつきましては、本来御自身でオンライン請求をしていただくのが筋でございますけれども、それが手間の面あるいは費用の面で賄われないという場合につきましては、代行請求という道も開いているわけでございます。

 したがって、御自身で請求する場合の費用負担、それから代行請求を利用する場合の費用負担、二つあるわけでありますけれども、それぞれにつきましてどういった負担軽減策を講ずるべきか現在検討しているところでございます。

内山委員 コンピューターができないドクターが千葉県内では百二十八名いらっしゃるという情報があります。医師不足が叫ばれている、社会的に大きな問題となっている中で、こういったベテランの医師の引退に拍車がかかるだろう、こう言われておりますけれども、大臣、こういったことをどのようにお考えになりますか。

舛添国務大臣 日本各地に私が行くときに、三師会、つまり医師会、歯科医師会、薬剤師会の皆さんとよく懇談する機会を持ちますけれども、今一番多いのはこの問題で、もうとにかく、千葉だけじゃなくて、これじゃもう廃業するぞという方がたくさんおられます。

 一つは、若いお医者さんはいいけれども、お年を召された方はなかなかコンピューターは苦手だ、だからそんな急がないで、例えば、もう十年もすればお年を召されてお医者さんを引退されるわけですから、もっとゆっくりできないか、こういうような陳情を各地で受けていますので、状況は非常によく理解をしております。

 だから、地域の医療を崩壊させない形で、それまで代行請求とかいろいろなお手伝いをし、また軽減措置も考えていきたいというふうに思っております。

内山委員 医療機関に対して、レセコンの導入と同時にオンライン化のための光ファイバーを引きなさい、こういうことも言われているようであります。しかも、光ファイバーも、安くて、今使っているものではなくて、特定の会社のものを引くようにと指導されているということを聞きましたけれども、これはどのような経緯からそのようなことになったんでしょうか。お尋ねをしたいと思います。

水田政府参考人 お答えいたします。

 レセプトのオンライン請求を導入いたしましたのは平成十八年四月でございましたけれども、その当時は、医療関係団体からセキュリティー確保への強い懸念が示されたことなどから、回線を閉鎖的なネットワーク、ISDN回線あるいはIP―VPN回線に限定していたということがございました。このために、回線を供給できる業者が限られていたわけでございます。

 しかしながら、医療情報システムの安全管理に関する検討が進められる中で、閉鎖的なネットワークのほか、暗号化した通信経路を確保したインターネット回線を用いる方式についても安全性が確認されたところでございます。これはより安価だということもございます。

 このため、現在では、御指摘のような特定の業者に限定されているというようなものではございません。

内山委員 今の説明はわかりましたけれども、それでは、オンライン回線までなぜ医療機関に引かせる負担を求めるのか、その根拠をお尋ねしたいと思います。

水田政府参考人 お答えいたします。

 レセプトの原則オンライン化につきましては、一方で高齢化等によりまして医療費が増大しているという背景がございます。その中で、医療機関のみならず保険者や審査支払い機関におきましても医療保険事務の効率化を図るということは必要なことだと思っておりますし、また、このオンライン化によりまして医療サービスの質の向上に寄与するということもあろうかと思っております。

 この質の向上という点について申し上げますと、従来、限られた範囲で行っていたレセプトの分析調査、これは年一回、六月のレセプトにつきまして、どんな診療報酬上の項目が使われたかというのをサンプル調査をしているわけでありますけれども、それが迅速に全数で把握されることになりまして、診療報酬改定に係る正確な政策論議が可能になる、こういったこともございます。

 正確なエビデンスに基づく議論あるいは政策を通じて、医療サービスの質の向上に資するものと考えておりまして、こうした目的を達成するためにこのオンライン請求を進めているわけでございます。

内山委員 今の御説明では、医療機関にオンライン回線まで費用を持たせるという理由にはならないと思うんです。それはあくまでもデータを収集する方の論理じゃないですか。

 もう一度答弁を求めます。

水田政府参考人 オンライン請求につきましては、先ほど御指摘のFDでありますとかその他の電子媒体で行う請求に比べまして、次のようなメリットがございます。

 一つには、形式的なエラーが事前にチェックできますので、同月中にエラー修正の上、再請求が可能となり、支払いの早期化につながること。二つ目は、診療翌月の五日から十日の十七時以降あるいは休日も受け付けが可能になるほか、エラー修正後の再請求が十二日まで可能となるなど、受け付け時間が拡充されるということがございます。それから、電子媒体の搬送の手間や、紛失等の事故を回避できますし、審査支払い機関側でも受け付けや電子媒体内の情報を機械に読み込ませる作業が不要になるなど、医療機関や審査支払い機関の事務の効率化が図られるということがございます。さらに、社会保障カード、この導入を検討しているわけでございますけれども、これで、オンラインでの医療保険資格確認、あるいはレセプト等への自動転記が可能になるということでございます。医療費の過誤調整事務が軽減されるなど、事務コストが軽減できるということでございますので、オンライン請求には固有のメリットがあると思っておりまして、こういったオンライン請求への移行を進めているところでございます。

 なお、引き続きFDあるいはMOといった電子媒体による請求をしたいという方につきましては、事務代行者を介してのオンライン請求、代行請求の一つの形態であります代行送信を利用して請求することも認めているところでございます。

内山委員 情報漏えいの危険についてお尋ねをしたいと思います。

 診療報酬明細書には、患者の氏名、性別、生年月日のほか、医療機関で診断された病名、受けた診療内容等の診療情報が記載されております。オンライン請求の場合、診療報酬に関するデータは医療機関から審査支払い機関に送られ、審査の後、保険者にデータ送信される流れですけれども、この過程で診療情報が漏えいする危険はないんでしょうか。答弁を求めます。

水田政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のとおり、レセプトのオンライン請求におきましては、患者の氏名でありますとか傷病名等、慎重な取り扱いを要する個人情報を伝送することになるわけでございます。

 このために、レセプト上の個人情報を適切に保護することを目的といたしまして、国として、オンライン請求におけるセキュリティーの基本的な考え方を示したガイドラインを策定しております。さらに、このガイドラインに即した安全対策の規程を、医療機関、薬局、審査支払い機関、保険者それぞれが作成するように求めているところでございます。

 また、請求に当たって用いるネットワーク回線につきましても、先ほど申し上げました閉鎖網か、暗号化した通信経路を確保した上でのインターネット回線に限定しまして、第三者からの不正アクセス等を排除しているところでございます。

内山委員 いろいろ防止策をやっているというところでありますけれども、住基ネットでもインターネット上への流出など情報漏えいの事件が現に発生をしておりまして、もしデータの送信過程で情報漏えいが発生した場合に、責任は一体だれがとるのかということをお尋ねしたいと思うんですが。

水田政府参考人 それは、まず、その情報漏えいというのは一体どこで起こったのかというところで決せられるべきものだと思っております。ただ、先ほど言いましたような回線について、専用回線あるいは暗号化された回線を使っておりますし、それから、審査支払い機関におきましては二重のファイアウオールを設置するということもしておりますので、まず考えられないなと思っておりますし、現在、既に三万カ所、三万件の医療機関、薬局からオンライン請求をいただいておりますけれども、今のところ順調にいってございます。

内山委員 順調というお話でありましたけれども、去年、二〇〇八年の五月に大規模なシステム障害が現に発生をしているじゃないですか。このシステム障害は、八時間、ネットワーク接続が不可能になっておりまして、大体二日ぐらいトラブルが起きていたと。こういうやはりシステムの脆弱性というのが現にあろうかと思うんです。

 情報漏えいの対策は本当に万全ですか。もう一度お尋ねをしたいと思います。

水田政府参考人 その点に関しましては、私ども、医療・福祉情報に関する専門家から成りますコンソーシアムの技術的サポートをいただいておりまして、そこでさまざまな検証をいただきながら、万全の対策を進めているところでございます。

内山委員 例えば、レセプトのオンライン請求をしてほしくないという患者さんがいた場合に、医療機関はどのように診療報酬を請求することになりますかということをお尋ねしたいんです。

水田政府参考人 その点に関しましては、これはまさに請求省令で医療機関と審査支払い機関、保険者の関係を律するものでございますので、患者の意思そのものはその中には反映されないことになろうかと思います。

内山委員 国民は、自分の受けた医療に係る情報がオンラインにて伝達されるようなことは知らされていないわけでありまして、また合意を得ていないわけであります。このような内容は国会の審議を経て決定されるべきじゃないんだろうか、非常に重要な変更であろうと私は考えています。

 みずからの傷病等の情報が漏れやすいオンラインに置かれることを受忍せよと強要することにならないか、患者の憲法上の権利を侵害することにならないだろうかと思うんですけれども、大臣、いかがでしょうか。

舛添国務大臣 そこまで言えるかどうかということでありますので、基本的には、二重のファイアウオールを設けるなどしてセキュリティーをきちっと確保する。その上で、全体の医療の効率化、それから例えば、匿名化しますけれども、このシステムによって、経年的に、ある患者がどういう形で病状が悪化していったか、そのためにどういう手当てをやればいいか、そういう全体を見たときに、セキュリティーが簡単に破られるのなら別ですけれども、そうじゃなければ、全体として、本人そして社会全体にとっても公共の福祉を上げることになる、そういう判断であるから、憲法上の背反はないというように思っております。

内山委員 レセプトのオンライン請求義務化は、患者の視点に立った、安全、安心で質の高い医療が受けられる体制の構築というところにあろうかと思うんですが、例えばデータ漏えいとか、オンライン請求の多大な費用とか、いろいろな問題を生じさせてまでレセプトのオンライン請求を義務化させる必要はないんじゃないかな、オンライン請求と手書きによる請求を併存させれば足りるんじゃないかな、こう思うんですけれども、大臣、いかがでしょうか。

舛添国務大臣 ただ、これはさまざまな観点から、先ほど肝炎の話がありましたけれども、韓国の場合はこういう問題が起こらなかったのはなぜかというのは、ソーシャル・セキュリティー・ナンバーがあることにもよりけりなんですけれども、やはり、きちっとこういうカルテの電子化、オンライン化を進めることによって、正確に、個人まで特定できなくても、ある病院でフィブリノゲンという投薬があったよというのは比較的早くわかるというようなメリットもありますし、それから、何といっても、今月の請求分、一億何ぼというレセプトが来るわけですけれども、それを一気に処理できる、それはコストも下がる。そういうこと全体を考えたときに、やはり医療の効率化もやらないといけない。

 私も随分、二千二百億円の削減に反対をしてやったときに、政府の部内で、しかしながら厚生労働省はまだ効率化の努力が足りないじゃないかと。その最大のシンボリックな問題がこの問題であって、先般、当時の大臣をやっていた大田弘子さんが、ある新聞に、またぞろ抵抗派がこの義務化に反対する、ひどいじゃないかという原稿を書いておられましたけれども、それに全部賛成しないにしろ、そういう意見が片一方でございます。

 したがって、我々は効率化もちゃんとやります、しかし国民の生命を守りますということの政治的な意味でも、政治的な意味でやっているわけではありませんが、今のような意見に対するきちんとした反応としても、これは、すぐ地域医療を崩壊させちゃいけません、その配慮をしながらやはり前に進めていくべき課題じゃないだろうかと私は考えております。

    〔西川(京)委員長代理退席、委員長着席〕

内山委員 先ほど政府参考人の方から事務代行者という話が出ましたけれども、この事務代行者について、どのようなものか詳しくお尋ねをしたいと思います。

水田政府参考人 事務代行者といたしましては、日本医師会、歯科医師会、それから薬剤師会という関係団体を想定しているわけでございます。ただ、その場合、現実の事務処理につきましては第三者にも委託できるという体制で、現在、具体的なシステムのあり方について相談、協議を重ねているところでございます。

内山委員 このレセプトオンライン請求義務化は、二〇〇六年の四月の厚生労働省令百十一号で導入され、義務化をされたと思います。その第一条でレセプトのオンライン請求義務化を定めて、第四条で療養の給付の請求の代行という規定が設けられました。「医師、歯科医師又は薬剤師を主たる構成員とする団体で、医療保険の運営及び審査支払機関の業務運営に密接な関連を有し、かつ、十分な社会的信用を有するもの」がレセプトオンライン請求事務を代行するものとして定義をしていると思いますが、事務代行者について、省令百十一号の第四条以外に制度の内容を定める規定が全く何もありません。政令第四条の事務代行者はだれが認定をするんでしょうか、お尋ねをします。

水田政府参考人 具体的な認定ということに関しましては、先ほど御紹介がありました請求省令第四条に関する団体はどこかということは、解釈上、先ほど答弁申し上げましたように、具体的には三師会、このように私どもは解釈しているということでございます。

内山委員 それでは、今おっしゃった三師会を想定しているということですけれども、これらの団体を事務代行者と認定する権限はだれが持つんですか。

水田政府参考人 特に法律上認定という行為はございませんけれども、事実上そういった取り決めがなされれば、それを私どもとして認めるということになります。事実上の行為としてそういった契約があれば、支払基金なり国保連がそこと契約を結ぶことを我々として認めるという手順になろうかと思います。

内山委員 我々とはだれですか。

水田政府参考人 所管の組織たる厚生労働省保険局でございます。

内山委員 保険局のサイドで権限を持って認めるということなんですか、大臣ではないんですか。

水田政府参考人 先ほど申しましたように、特に法律上認定という行為があるわけではございません。まさに省令で書いてある状態と支払基金なり国保連がなした契約が合致するかどうか、事務的に私ども保険局として判断するということでございます。

内山委員 この事務代行者のところをきちっと明確に浮き彫りにしておかないと後で大変な問題になるんじゃないかなと思って心配をして、今くどく質問をしているわけでありますけれども、三師会は社会的な信用を十分有すると。これだけでは、認定の基準としてやはり非常に具体性を欠いているんじゃないのかな。さらに、第三者に委託もできるなんという話ですと、そこからの守秘義務とかこういったものが一体どうなるんだろうかと、さらに危惧をするんですけれども、いかがでしょうか。

水田政府参考人 その点につきましては、まさに医療機関、薬局の便宜ということも考えて、三師会みずからがやる方法、さらに、実務そのものは委託する方法もあろうかと思っております。

 具体的に、守秘義務あるいは情報の取り扱いにつきましては、それは契約上明文化されますし、さっき言いましたガイドラインに基づくセキュリティーポリシーを遵守していただくということは、これは当然の前提でございます。

内山委員 さらに、くどいようですけれども、もう何点かお尋ねをします。

 事務代行者の権限とか所掌事務とか、こういったものはどうなりますか。

水田政府参考人 所掌事務とか権限と申しますか、医療機関、薬局が行うべきオンライン請求を当人にかわって行うわけでございますので、まさに、当人にかわって行うというのがやるべき事柄でありますし所掌事務でありますし、権限は、本人に成りかわって行うわけでありますし、そこと依頼主との関係というのは契約で律せられるべきものと考えております。

内山委員 同じように、事務代行者に対する認定権者の監督権、こういうものはどうなりますか。

水田政府参考人 それにつきましては、先ほど言いましたガイドラインを、そもそもこういった医療に関する個人情報、レセプトオンライン請求に関するガイドラインをつくることにしておりますので、その遵守状況につきましては、やはり私ども保険局として監督することになろうかと思います。

内山委員 もう一点、事務代行者に不祥事が発生した場合、認定の取り消し事由等はどうなりますでしょうか。

水田政府参考人 特に不祥事が起こるということを前提に考えていないわけでありますけれども、まさにそれは不祥事の態様によって責任の所在が決まるものと思っております。

内山委員 今、ガイドラインをおつくりになるということですけれども、そのガイドラインというのはどの程度できているんですか。タイムスケジュールをちょっと公開していただけませんか。

水田政府参考人 レセプトのオンライン請求に関するガイドラインについてという通知を、平成十八年四月十日に、私ども保険局総務課長通知で関係機関に周知をしておりまして、現在は、これに基づきまして、代行請求を行うべき方につきまして、それぞれの規程をつくっていただきたい、代行請求を行う場合にはそういったセキュリティーポリシーをつくっていただきたい、こういうお願いをしているところでございます。

内山委員 ガイドラインはもうできているんですか。(水田政府参考人「四月十日」と呼ぶ)四月十日にできているんですか。(水田政府参考人「十八年の」と呼ぶ)

田村委員長 勝手にやりとりはやめてください。

内山委員 失礼しました、委員長。

 事務代行者は、膨大な数の患者の医療情報を大量に扱う、先ほども申し上げたところでありまして、国民のプライバシー、個人情報の最たるデータを扱うことでありまして、こういうことを実は国会で審議していないんですよね。こういうのを政省令で定めていくというのは国会軽視じゃないかと考えているんですけれども、大臣、いかがでしょうか。

舛添国務大臣 釈迦に説法ですけれども、法律の委任を受けた省令ですから、それは憲法上もやれることにはなっております。

内山委員 国権の最高機関である国会が制定する法律に基づいてすべての行政活動が行われなければならないんじゃないんですか。レセプトのオンライン請求義務化について、省令の改正というもので、行政内部の手続だけで行われるんじゃないですか。これは憲法四十一条違反ではないのか。オンライン請求は、国会を唯一の立法機関と定めた憲法四十一条に違反する違法な制度じゃないかというふうに言っているんですけれども、大臣、どうでしょうか。

舛添国務大臣 先ほども申し上げましたように、この件については、健康保険法上、手続などの診療報酬の請求に関する細目が厚生省令に委任をされている。したがって、法律学的に言うと、省令で規定することについての法令上の問題はない、先ほどのをもっと具体的に言えば、そういうふうに思っております。

内山委員 他の制度との比較で、個人情報保護法というものがあります。個人情報保護の推進のため、認定個人情報保護団体という制度が導入されています。当該団体の認定権者は主務大臣でありまして、団体の業務、欠格事項、認定の基準、報告徴収権、業務改善命令、認定の取り消しなどが国会の定める法律によって定められています。しかし、オンライン請求についての事務代行について、法律によるべき部分、国民の代表である国会で決定されたことがありません。ここが大きく違うところだ、こう指摘をしているわけであります。

 オンライン請求義務化の根拠となった厚生労働省令百十一号は、診療報酬請求の方式を、旧省令一条の紙媒体等による請求方式から、新省令一条でオンライン請求義務化に変更する方式をとったが、事務代行者は、旧省令にこのような制度が存在しないために、新省令四条でいきなり新設されたということですね。国民の医療情報という重大な情報を取り扱う機関の新設について、個人情報保護法の場合と同様に、法律によってその制度の基本事項を定め、その上、法律の委任に基づいた省令により具体化するのが当然ではないでしょうか、こう言っているわけです。

 しかし、オンライン請求義務化を国会で議論せずに政省令改正で強行した結果、事務代行者についてもいろいろと矛盾が出ているわけでありまして、制度の議論を国会でさらに練る必要があるんじゃないか、こう思うんですけれども、大臣、どうですか。

水田政府参考人 お答えいたします。

 まず、代行請求機関でございますけれども、これは通常、個人情報保護法におきます個人情報取扱事業者に当たると考えられますので、個人データの漏えいや減失を防ぐための安全管理措置、あるいは従業者、委託先の監督など、法令上の義務を負うことになるわけでございます。

 先ほども申し上げましたガイドラインあるいは個人情報保護法令を踏まえまして、代行請求機関を含めた関係機関における個人情報の保護につきましては、国としても適切に指導していきたい、このように考えております。

内山委員 少し飛ばして質問をしたいと思います。

 請求システム開発、電算システム開発を行っていると思いますけれども、その請け負った会社と費用について答弁を求めたいと思います。

水田政府参考人 レセプトオンライン化のための補助金の執行についてのお尋ねでございます。

 これは、審査支払い機関におけるシステム開発に要する経費につきまして、国民健康保険中央会及び社会保険診療報酬支払基金に対しまして、平成十八年度に約三十億円、平成二十年度に約十六億円を助成したところでございます。なお、平成十九年度については助成は行っておりません。

内山委員 これはどういう費用に使われたのか具体的に聞きたいんですけれども、審査支払い機関の何にこのお金を充てているんですか。

水田政府参考人 これは基本的には、先ほど申しました国民健康保険中央会及び支払基金、この審査支払い機関で共通して開発しなければならないソフト等でございまして、十八年度におきましては、医療機関等を識別するための認証局の設置に関するもの、それからネットワークの構築、三点目がレセプトデータを送受信するためのウエブサーバー等のハードウエア、それから関係するソフトウエアの開発でございます。

 それから、平成二十年度の調達についてでございますが、これは、歯科レセプトをオンラインで受け付け可能とするソフトウエア開発でございます。と申しますのは、医科と調剤につきましては既にオンラインで受け付け可能になっておりますけれども、歯科につきまして、二十年度にこういったソフトウエアの開発に関する調達を行ったということでございます。

内山委員 さきに厚生労働省が開発した電算ソフト、レセスタとの関係はどういう関係になるんですか。

水田政府参考人 ただいま申しましたように、補助金助成で行ったものは、審査支払い機関がオンライン請求を受け付けるためのシステムの開発をしたものでございます。

 それに対しまして、平成十七年度にレセプト文字変換ソフト、通称レセスタと言っておりますけれども、これは、医療機関なり薬局サイドにおきましてレセプトの文字データを電子請求できる形に変換するソフトでございまして、医療機関サイドのシステム開発でございます。

内山委員 このレセスタの普及状況はどうですか。

水田政府参考人 レセスタの利用状況でございますけれども、平成二十一年二月現在、申し込みをした医療機関数は二百五医療機関でございます。これにつきましては、冒頭御指摘ございましたけれども、レセプトコンピューターに既にこういったデータが盛り込まれるということが最近、通常になっておりまして、レセスタそのものの利用はこの二百五医療機関となってございます。

内山委員 幾らかけたか後で聞きますけれども、二百五というのは余り普及していないんじゃないかなと思うんですけれども、費用対効果で何かもったいないんじゃないですか。

水田政府参考人 この文字変換ソフトにつきましては、もともと各ベンダーがそれぞれ開発していたものにつきまして、それを共通の変換、どのタイプでありましても変換できるようにする、こういうソフトなわけでございますけれども、これを私どもが無償で提供したということをきっかけといたしまして、レセコンメーカーにおきまして電子レセプトを作成可能とするレセコンの開発や販売が進んだということになったものと考えてございます。その結果として医療機関への導入が図られまして、その結果、レセスタへの利用が少なくなったものと考えております。

内山委員 費用は幾ら開発にかかりましたか。

水田政府参考人 契約金額は十三億一千二百五十万円でございます。

内山委員 これまで、審査支払い機関とかレセスタの開発とか、いろいろお金をかけておるわけですけれども、当の医療機関には、レセコンを入れたりオンライン化するための経費の補助は全くないわけであります。初診料にIT加算というのが三点ほどつくだけで、経費負担をもう少し、こういうところをかけるんであれば、医療機関そのものに初期投資に当たる部分の設備費用を賄うような補助をするべきじゃないかと思うんですけれども、いかがでしょうか。

水田政府参考人 お答えいたします。

 基本的には、私どもの考え方といたしましては、レセプトの本質は請求書の明細でございますので、その作成にかかる費用はこれまでも医療機関において御負担をいただいてきたところでございます。また、医療機関におきましてもさまざま、レセプトの印刷、編綴、あるいは請求事務時間のコスト、こういったものが削減できるとか、形式的なミスが減るとか、そういったメリットがございます。

 そういったことで基本的には医療機関の御負担でお願いをしておりますが、やはりこの普及促進という観点から、オンライン請求をみずから行うことが困難な方々を念頭に置きまして、その負担軽減、あるいはその代行業者の利用の負担の軽減、こういうことについて、冒頭申し上げましたように、今後検討したいと考えております。

内山委員 時間がなくなりましたのでちょっと飛ばして聞きますけれども、オンライン請求によるレセプトデータは、医療機関から医療費の請求に使うことしか患者の了承をとっていないわけでありますけれども、医療費の請求、支払い以外に使うという目的があるようですけれども、目的外使用にならないんでしょうか、お尋ねをしたいと思います。

水田政府参考人 お答えいたします。

 電子化されたレセプト情報につきましては、今後、国において全国規模のデータベースの構築を進めることとしてございます。

 その根拠は、高齢者医療確保法第十六条がございまして、その規定に基づきまして、国が、医療費適正化計画の作成、実施及び評価に資するために、医療費等について調査及び分析を行い、その結果を公表すること、そのために国が医療保険者等からレセプトデータの提供を受けることによるものでございます。

 さらに、このレセプトデータの一義的な利用目的は医療費適正化計画の作成等に資する調査分析でございますが、これ自体、公の情報でございますので、その活用のあり方につきまして、医療サービスの質の向上等のためのレセプト情報等の活用に関する検討会を設けまして、ここでその利用、活用について検討をお願いしたところでございます。

 ここでの結論といたしましては、学術研究の発展に資するような研究等、公益性が確保されるものであれば他の目的での利用も考えられるというふうにされているところでございます。

内山委員 質問主意書等への答弁を見ますと、レセプトオンライン請求はすべての医療機関が対応できると答弁をされているわけでありますけれども、現時点でもその認識に変わりはないんでしょうか、お尋ねをします。

水田政府参考人 これは、先ほど来申し上げておりますように、みずから請求する場合と、それから事務代行者を介したものがあります。

 したがいまして、パソコン操作ができないという方の場合は、理論的に整理をいたしますと、代行請求によって対応は可能なものであると考えております。

内山委員 三月、先月に閣議決定されたのかどうか大臣にちょっと確認しますけれども、規制改革推進三カ年計画で、レセプトオンライン請求義務化に関して、地域医療の崩壊を招くことのないような配慮との文言が加えられたと思いますけれども、その具体的内容についてお尋ねをしたいと思います。

舛添国務大臣 これは、昨日、三月三十一日に閣議決定されまして、この文言は、「レセプトオンライン請求化に関して、平成十八年の厚生労働省令について」「オンライン請求化の期限が努力目標ではなく義務であること。」「義務化において原則現行以上の例外規定を設けないこと。」「義務化の期限以降、オンライン以外の手法による請求に対して診療報酬が支払われないことを、医療機関・薬局に周知徹底する。」その後に、今おっしゃった、「その際、地域医療の崩壊を招くことのないよう、自らオンライン請求することが当面困難な医療機関等に対して配慮する。」この文言がつけ加えられました。

内山委員 具体的なものは、まだこれからということでしょうかね。

舛添国務大臣 これから、与党の皆さん方も含めて検討してまいりたいと思っております。

内山委員 時間が来ましたので、これで終わります。ありがとうございました。

田村委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時十七分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時二分開議

田村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。岡本充功君。

岡本(充)委員 まず冒頭、前回私が質問をさせていただきました独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構の理事長の給与について、一点、訂正をさせていただきたいと思います。

 役員給与規程が私の手元にもありましたが、附則の第一条に「この規程は、平成十五年十月一日から施行する。」とあり、第三条に理事長の給与は九十四万四千円と書いてありました。結果として、私が委員会で、九十四万四千円の給与が、今本俸月額百一万一千円になっているのではないかと指摘をしましたが、これは、どうも規定が大変わかりづらかったわけでありますけれども、附則の第三条に「常勤役員の本俸月額は、当分の間、第四条の規定にかかわらず次の各号に掲げる役職の区分に応じ、当該各号に定める額とする。」というふうになっておりまして、この点について修正をさせていただきたいと思います。

 また、これが大変わかりづらいと思っておりますので、厚生労働省におかれましても、この規定の見直しをぜひ行っていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

岡崎政府参考人 高齢・障害者雇用支援機構の役員の報酬規程でございますが、今先生の御指摘のような中身でございます。

 これ自体につきましては、一般の法律の改正の考え方と同じでやっておりますので、この書き方自体難しい面もありますが、ただ、これはやはりわかりやすく示すというのが必要だろうというふうに思っていますので、ホームページでの書き方等については工夫をするようにしていきたい、こういうふうに考えております。

岡本(充)委員 ぜひお願いします。

 それで、通告をしておりませんでしたけれども、きょう、私、共同通信のニュースを見てびっくりしたわけですけれども、私が平成二十年の五月十六日、本委員会で指摘をしました国立循環器病センターの部長の勤務実態、これについて新聞報道で知ることになったわけでありますけれども、厚生労働省で処分を行った、こういうふうになっています。

 この処分についてでありますけれども、私、当時の委員会で外口医政局長から、「まだ断片的な情報しか私どもは把握しておりませんので、ここはもう少しよく調べさせていただきたいと思います。」と答弁を受け、さらに舛添大臣から、「少し細かく精査した上で、国家公務員としての職務の使命にもとるようなことがあれば、それは厳しく対処をしたいと思っております。」との答弁を得、さらに外口医政局長は、「外来診療を制限して出張や講演会出席に出向くことはないということは、その周辺の方から聞いておりますけれども、これも含めて、疑念を持たれないように、改めてよく調べたいと思います。」と言っておきながら、これは何の報告もなく、また、私は報道を受け、本日十一時にどういうことかという話をしましたら、すぐに説明に伺いますと言いながら、この一時に至るまで説明がない。

 私は、この委員会に対して大変不適切な対応だと思うわけでありまして、大臣、まずこれについて弁解があればお答えいただきたいと思います。

舛添国務大臣 委員の御要望に対して、きちんと資料を提出すると言っておきながら、時間どおり来ないというのは大変遺憾なことでございますので、これは厳しく注意を申し上げて、委員には省を代表して謝罪を申し上げたいと思います。

岡本(充)委員 では、この処分の内容を局長から御答弁いただけますか。

外口政府参考人 まず最初に、岡本先生への報告がおくれましたこと、まことに申しわけありません。おわび申し上げます。

 当該処分事案の内容でございます。

 これは、国立循環器病センターの部長の贈与等報告書においての調査を国家公務員倫理審査会と厚生労働省共同で行いまして、平成十八年度第三・四半期分について集中的に調査をし、処分を行ったものであります。

 この期間にかかわる贈与等報告書におきましては、講演等の件数が合計六十九件、講演料等が合計九百三十万円でございました。

 詳細に調査した結果、確認された主な違反行為は、実際に行った講演時間よりも多い講演時間数を贈与等報告書に記載し、基準を上回る報酬を受領していたもの、講演会の際に、一人当たりの飲食代が五千円を超える意見交換会に出席し、飲食をしたにもかかわらず報告書を提出しなかったもの、講演等に伴う交通費等と評価することができないものを依頼元に負担させていたもの、一部勤務時間内に講演等を行っており、職務専念義務に反していたものでありました。これらの確認された違反行為により、当該期間に関して報告された講演料等約九百三十万円のうち約二百万円は事実と異なる報告をして、基準を超えた報酬を受けていたものでありました。

 これに対しまして、国立循環器病センター病院の当該部長に対しまして、減給六月、俸給月額の十分の二、また、管理監督者に対する矯正措置として、国立循環器病センター病院長に対して文書厳重注意、また、運営局長であった者についても文書厳重注意の処分を行ったものでございます。

岡本(充)委員 二百十万円が問題だったといって十分の二を六カ月の懲戒が果たして懲戒となっているのかどうか、私は金額的に考えても必ずしもこれが懲戒になっているのかどうかわからない。二百十万円を返してもらったわけではないですよね。それでいいのかどうか。

 それから、私が国会で指摘をした十八年のこの時期だけではなくて、ほかの時期も調べるべきだと私は言っているんです。ほかの時期もぜひ調べて、それから、私はほかの問題についてもあの委員会で資料を皆さんにお配りして指摘しています、そういうものについても調べるということをお答えいただけますでしょうか。

外口政府参考人 今回の処分につきましては、先ほど申し上げました十八年度第三・四半期分を中心に精査いたしました。そして、当該部長に対しまして実際に意見を聞きまして、その前後についても同様のような処理状況であったということを伺いまして、そういったことを含めて、国家公務員倫理審査会と協議をして今回の処分を決めたものでございます。

岡本(充)委員 大臣、ぜひこれは調べるというふうにお約束いただけませんか。この時期だけじゃないんじゃないですか、また、ほかの人にも疑念があるんじゃないかと私は指摘をしているわけで、それも含めて調べていただけないと、この話で、しかも十分の二、六カ月の減給で、二百十万円が問題ある収入だったということであれば、本当に金銭的に懲戒となっているのかどうかの疑念もあります。そういうことも含め、もう一度精査をお願いしたいと思います。

舛添国務大臣 職務に忠実にやってもらわないといけないので、いささかでも国民に疑念が持たれることがあってはいけないと思いますので、これはしっかりと精査をさせていただきます。

岡本(充)委員 ぜひ、その精査ができましたら、次こそはきちっと報告をしていただきたいと思います。

 それで、本題の質問に入ってまいります。

 まずは、先般の雇用保険法の改正のときに私が質問をしまして、残念ながら答弁が十分でないという指摘をしたまま終わってしまいました件について、皆様方にきょうも改めて資料をお示ししてお話をしていきたいと思います。

 まず、前回も指摘をさせていただきましたけれども、日雇い労働者に対する日雇労働求職者給付金、この給付金の根拠について聞きたいと思います。

 十四ページ、最初から後ろの方で恐縮でございますが、一級、二級、三級、四級のそれぞれの日額がこのように決められておりますし、また、一枚お戻りいただきまして、十三ページには、賃金日額区分、さらに印紙保険料額、こういった数字が出ております。

 それぞれの根拠、算定の数式でも結構です、お答えをいただきたいと思います。

太田政府参考人 お答え申し上げます。

 給付金日額と賃金日額区分あるいは印紙保険料額の根拠等でございます。若干、テクニカルな問題もありますので、お時間をいただきます。

 まず、基本的には、給付日額が基本でございますけれども、この設定につきましては、昭和二十四年の制度発足当初の決まりがございまして、当時の日雇い労働者の平均賃金、二百三十円でございましたので、その六〇%に相当する額として百四十円を給付日額として設定しております。この額が基本となりまして、現在まで続いておるものでございます。

 その決め方、給付日額の決め方でございますけれども、平成六年までは、受給者に占める上位等級の受給者の割合と下位等級の受給者の割合が著しく不均衡となって、上位等級の受給者の割合が大幅に上回ることとなった場合に、上位等級の給付金日額を下位等級の給付金日額にスライドさせて、上位等級の日額は、その下位等級の引き上げ比率に応じて引き上げることとしたところでございます。

 例えば、具体的に昭和五十三年の改正のケースで申し上げますと、一級、二級、三級、それぞれ二千七百円、千七百七十円、千百六十円となっておりましたけれども、このスライドの場合、新二級を前の一級の二千七百円にする、新三級は前の二級の千七百七十円となる、新一級が、新しくつくるわけでございますけれども、これは新二級の引き上げ比率一・五三倍、これは二千七百円を千七百七十円で除したものでございますけれども、四千百円とする。こういう形でスライドした形でやっているところでございます。

 ただ、平成七年以降は、このやり方を変えまして、平均定期給与額が平成六年九月の平均定期給与額の百分の百二十を超えるか百分の八十三を下回るか、この一定の枠の中で継続すると認められた場合には、それ以上はみ出した場合に日額を変更するとされたわけでございます。ただ、現在の第一級の日雇い給付日額につきましては、平成七年に、当時の平均定期給与日額の上昇率を勘案して、六千二百円から七千五百円に引き上げたものでございます。

 次に、保険料設定でございますけれども、これは、もともと収入と支出が均衡するように設定したものにつきまして、賃金給付日額のスライドに合わせてスライドして保険料を動かしてきたというものでございます。

 最後に、賃金日額の区分でございますけれども、これは、制定当初の一般の被保険者と同様に給付率がおおむね六〇%前後となるように設定した上で、給付日額のスライドと合わせて賃金日額の区分についてもスライドをさせてきたものでございまして、現在の第一級と第二級の区分でございます一万一千三百円につきましても、平成七年に、第一級と第二級の給付率がおおむね六〇%前後となるように設定されたものでございます。

岡本(充)委員 常勤雇用の方のいわゆる雇用保険の保険料率と比べて、この印紙保険料額というのは異なると私は思うわけでありますけれども、今般の法改正を受けてもこの部分を改正しなかった、もしくは同じような料率にしていない理由は、では一体何なんですか。

太田政府参考人 お答え申し上げます。

 基本的に、日雇いの雇用保険の給付日額、賃金の日額区分、あるいは保険料の金額の見直し、それぞれ平成六年以降行っていない理由ということでございますけれども、給付金日額と賃金日額区分の変更につきましては、これは雇用保険法四十九条第一項におきまして、平均定期給与額が平成六年九月の平均定期給与額の百分の百二十を超えるかあるいは百分の八十三を下回ることが継続すると認められた場合、その上昇、低下の比率を基準として変更するというふうにされているところでございます。これまでは、この百分の百二十と百分の八十三の枠におさまっているということで、要件に該当することがなかったということで変更されていないところでございます。

 したがいまして、保険料の金額につきましても、これは労働保険の徴収等に関する法律二十二条第四項におきまして、給付金日額の変更の比率に応じて変更するとされているところでございまして、給付金日額あるいは賃金日額区分が変更されておりませんので、保険料の金額も変更されていないという状況でございます。

岡本(充)委員 いや、料率が違う理由は何ですかということを私は聞いていて、今回の法改正で常勤雇用については料率を変えようとしたにもかかわらずこの料率については変えなかった理由は何なんですかということを聞いているんです。

太田政府参考人 保険料の設定でございますけれども、これはもともと、昭和四十七年以前は収入と支出が均衡するように設定されておりました。したがいまして、二五パーミルから三〇パーミルということで、給付の日額のスライドに合わせて設定していたものでございます。

 昭和四十七年からは、一般の保険料率、当時一・三%でございましたけれども、それを勘案しつつ設定して、日雇い保険の場合にはそれに上乗せして労使折半で保険料をいただいているものでございまして、その保険料設定につきましては、当時の保険料率をその後の給付日額のスライドと合わせて同様にスライドさせていたところでございまして、一般の保険の保険料率と日雇い保険とは性格が異なるということで保険料率が異なっているものでございます。

岡本(充)委員 どう性格が異なるんですか。

太田政府参考人 日雇い保険につきましては、一般の保険料をいただいた上で、その収入と支出が均衡するように、また別途労使折半で保険料を徴収しているというものでございます。

岡本(充)委員 委員長、これは答弁になっていないのがおわかりいただけると思うんですね。きちっと答弁を整理していただきたいと思いますので、それまで、もしあれでしたら、私はお待ちしますが。

太田政府参考人 日雇い保険の場合には、その日雇いのグループの中で基本的にできる限り給付と負担のバランスをとるということでございますけれども、一般の被保険者よりも給付と負担との関係が、給付がかかるということでございますので、一般の保険料に加えた上で日雇いの保険料を徴収している。その給付と負担との関係で、一般よりも日雇いの方が経費がかかるということで、別途また収入と支出が均衡するように徴収しているということでございます。

岡本(充)委員 どういう経費がかかるんですか。

 私が言いたいのは、日雇いの皆さんがそれぞれ大変厳しい、日雇い派遣もそう、日雇い労働者もそう、大変厳しい経済状況の中で仕事をされている方が多いと思うんですよ。今回、そういう意味で保険料率を下げるというようなことに取り組むのであれば、ここもやるべきじゃなかったかということを私は指摘をしているわけです。

 経費がかかると言いますけれども、実際にこの根拠となるような経費がどういうふうに算定されたのか明確に示せるんですか。私は、それを示せるのなら今答弁を求めますが、示せないのなら後刻改めてお答えをいただきますが、どうですか。

太田政府参考人 今、具体的に日雇い保険の収支につきましては、通告いただいていませんので、調べた上でお答えを申し上げたいと思いますけれども、収入よりも支出の方が多いということで、基本的には日雇い保険の中での収支バランスがとれないということで、一般の保険から持ち出しているところでございますけれども、具体的な数字につきましては、調べてお答えさせていただきたいと思います。

岡本(充)委員 通告はないと言われていますけれども、根拠について私は聞きますよということを通告していますから。これが何でこの料率なんですか、何でこの金額なんですかということを私は聞いているわけです。

 それで、結局のところ、前回も指摘をしましたけれども、これは日雇い派遣の方に特化して言うと、全国でこの印紙を張る手帳を持っている方が四名、実際失業給付を受けている方が一名、そして印紙の購入のための通帳発行を受けている事業者が八社だ、こういうふうに前回私は説明を受けました。

 全国でその数です。日雇い派遣の皆様方も、それぞれ仕事がないときに、このシステムに乗って給付金を受けたいだろうと私は推測をするわけです。これをもっと周知を徹底するなり、これは結局、周知徹底も不十分なわけですね、これではいけないんじゃないかという指摘を私はさせていただきたいと思いますけれども、対策はどのようにとっていただけますでしょうか。

太田政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のとおり、日雇い派遣労働者の方々が日雇労働被保険者手帳の交付を受けていただくことが最も重要でございますので、日雇い派遣労働者の方に周知を行うことが重要であると認識しているところでございます。

 このため、厚生労働省といたしましては、まず、派遣元事業主に対しまして、労働者派遣事業の指導監督を行っている需給調整部門とも十分に連携しながら、その雇用する日雇い派遣労働者へ日雇労働求職者給付金制度の周知を行うように指導してきたところでございます。

 また、昨年十二月には、日雇い派遣労働者の方に周知が行き届きますように、派遣元事業主から日雇い派遣労働者に対する、例えば携帯電話等を活用した周知などを行うよう取り組んでいるところでございます。

 いずれにいたしましても、さらにこの周知徹底が必要でございますので、特に日雇い派遣労働者の方に本制度を有効に活用していただけるように、派遣労働者の方が失業認定の前日に派遣元事業主から交付を受けることとされております派遣契約不成立証明書の取り扱いにつきまして、三月十九日に通知を出しておりますけれども、交付時期を弾力化するなど、使い勝手の向上を図るように指示しているところでございます。これは労使の要望も踏まえてこういう取り扱いをさせていただいているところでございまして、引き続き制度活用に向けて取り組んでまいりたいと考えているところでございます。

岡本(充)委員 前回も質問しましたけれども、手帳の取得に住民票が必要だとか、運転免許証だとか健康保険証だとかという話だと、なかなか手帳が取得できづらい。だからといって、同じ人が二カ所で受け取ってはいけないとは言うけれども、結局、一日働いて印紙が一枚もらえるかどうかの話でありますから、基本的には、もちろん印紙の売買等をしていることがあってはならないわけでありますけれども、そこの担保は、きちっと印鑑を押させる。

 通帳は、これは皆様方にお配りをしました資料の二ページからずっと始まりまして五ページのところに、印紙を張って印鑑を押す、こういう仕組みになっていることをお示ししています。そういう意味では、きちっと事業者がここで印鑑を押せば、この印紙を不正にだれかとやりとりすることは防げるとか、対策があるはずです。こういうことに万全を期して、私は、より弾力的に、日雇い労働者の皆さん、とりわけ日雇い派遣の皆様方にもこの制度を適用していくべきじゃないかということを言っているわけです。

 ちなみに、ちょっと制度の中身についてもう一、二点聞きたいと思いますので、これは三重労働局のホームページからちょっといただいてきた資料でありますけれども、九、十ページのところであります。

 前回も聞きましたが、各週のうち、日曜から土曜のうち、最初に働かなかった日には給付金が支給されない理由は一体何なんですか。

太田政府参考人 お答え申し上げます。

 日雇労働求職者給付金につきまして、各週、これは日曜日から土曜日までの七日間でございますけれども、七日につき日雇い労働被保険者が職業につかなかった最初の日につきましては支給しないことということで、これは雇用保険法の第五十条の第二項でそのような規定がございます。

 こういう規定がある理由でございますけれども、これは、失業状態にあることを確認するとともに、失業後直ちに給付を行うことによる乱給を防止するために、法律上こうした仕組みとしているところでございます。

 これは、一般の基本手当の場合には待期期間七日というのがございますけれども、それに相当するものとして最初の日が位置づけられているというものでございます。

岡本(充)委員 必ずしもこれは各週である必要はないと私は思うんですね。

 それから、ホームページからいただいたこの資料を見ると、いわゆる日雇い派遣労働被保険者と一般被保険者、この定義がかわる可能性があります、そういう趣旨のことが書いてあります。十ページの上から四つ目の丸のところであります。これは、例えばこの話だと、週二十時間を超える月が二カ月続いて、一般ですよという話に切りかわり、しかし、その月が一カ月で終わって、また日雇い派遣労働者に戻った場合、前月はこの通帳に対しての印紙の貼付がないことになります。結果として、給付金が受給できないという不利益をこうむることになりはしないかという懸念を持つわけでありますが、この対策はとられているんでしょうか。

太田政府参考人 雇用保険制度につきましては、労働者が失業した場合に必要な給付を行うことによって、生活の安定を図るということ、あるいは求職活動を容易にするということでその再就職を促進することを目的とする制度でございます。

 その中で、今お話のございました日雇い労働者につきましては、その就労実態、賃金の支払い関係等の特殊性に対処して、その生活実態にふさわしい求職者給付を行うことができるように、一般被保険者とは全く異なった特別の制度を設けているところでございます。

 したがいまして、一般被保険者であった者が、その後日雇い労働被保険者となって、直ちに日雇労働求職者給付金を受給できるというふうな仕組みにはなっていないところでございます。

岡本(充)委員 でも、それは不利益になりますよね。

 要するに、日雇い派遣労働被保険者として二カ月働きました、二十時間を超えて二カ月です、私、週に二十時間を超える勤務を二カ月続けてやって、印紙もたまりました、しかし、あなたはきょうから一般被保険者ですよという話になる。しかし、一般被保険者として、例えば三カ月、四カ月就労した後、いや、やはりあなたは日雇い派遣労働者になりましたよと、そこで変更される。

 そうしたら、この人は、結局トータルで五カ月も働いていても、結果として、それ以降、仕事がない日にこの給付金すら受けられないということになる。これまで働いてきて、印紙を張ってきた、それも全部ふいになってしまう。また、一般被保険者として本来受けられるはずであったであろう常用雇用としての雇用保険の適用も受けられない。こういうはざまに落ちるんじゃないんですか、この不利益についてはどのように回避をされるんですか。これを繰り返したら、この人はずっともらえませんよ。

太田政府参考人 お答え申し上げます。

 日雇い労働被保険者の求職者給付制度でございますけれども、これは、保険料の納付につきましては、事業主は、他の被保険者の場合と同様に一般保険料を納付するほかに、この日雇い労働被保険者に賃金を支払う都度、その賃金日額に応じて印紙保険料を納付しなければならない、一方で、日雇い労働被保険者が失業した場合の日雇労働求職者給付金につきましては、失業の日の属する月の直前二カ月間に通算して二十六日分以上の印紙保険料が納付されていることを受給要件としているという、特別の制度を設けているわけでございます。

 こういう特別の制度でございますので、今お話のございましたように、一般保険料のみを納付している一般被保険者の被保険者期間をもって日雇労働求職者給付の受給資格があるとするような制度にはなっていないということでございます。

岡本(充)委員 それだと、だから、日雇い労働者として週二十時間二カ月働いて、三カ月間、一般の常用雇用ですよといって雇用保険料を払って、またそこから、あなたはやはり日雇い扱いになりますよ、また手帳に印紙を張って、二カ月働いて、やはり一般ですよと。この人は、ずっと働いているけれども、結果として一銭も雇用保険をもらえないというはざまに落ちるんじゃないんですか、その対策はどうなっているんですかと聞いているんですから、それについて端的にお答えいただきたい。

太田政府参考人 今お話のございましたような、日雇いから一般の場合には、受給資格を満たせば通算が可能でございます。例えば、直近二月の各月に同一事業主に十八日以上雇用された場合は、これは、日雇いの方でも原則として一般被保険者にするということでございますので、通算が可能でございます。

 こういった仕組みをとっておりますのは、できる限り日雇いの方も常用で一般の働き方をしていただきたいという形で、こういう特別の仕組みをつくっているところでございます。

岡本(充)委員 いや、局長、十八日働いて、印紙を張ったその手帳、これをもって一カ月の一般被保険者の雇用保険料を払ったとみなすわけですか。違うでしょう。

太田政府参考人 今の制度は、これは直近二月の各月ですね、同一事業主に十八日以上雇用された場合は原則一般被保険者ということでございます。日雇いの場合には事業主が全部違っているわけで、違っている場合にはこういう扱いにはなりませんけれども、同一事業主に十八日以上雇用されていた場合には原則一般被保険者になって通算をするということでございます。

岡本(充)委員 ちょっと、委員長、整理してもらいたいんです。

 結果として十八日以上同じ事業主に雇用されるということはあり得るわけですよ。だから、ずっと百五十円ずつ払って手帳に張ってきた、印鑑を押してもらってきた、この金を払ってきた。しかし、この手帳二カ月分をもってしても、一般の常用雇用、あなたはもうそうですよといって切りかわってしまったら、この手帳はもう一般の雇用保険を二カ月払ったことにはなりませんよねと。それは、なるというふうに算定してもらえるんですか。

太田政府参考人 お答えを申し上げます。

 先ほどこうしたお答えをしましたとおり、直近二月の各月に同一事業主に十八日以上雇用された場合には、これは原則一般被保険者の扱いをするということでございます。

岡本(充)委員 全然違う制度だ、制度の仕組みが違うと言っておきながら、では、その張った印紙の金額と一般雇用保険の被保険者としての保険料と違うわけですから、払っている金額が違うのに同じ制度になるというのは矛盾が生じるんじゃないんですか。

 そしてまた、逆に、一般雇用、一般被保険者であった方が日雇い派遣労働被保険者にまた切りかわった場合は、この一般の雇用保険被保険者としてのこれまでの蓄積はそこでリセットされてしまう、そこは間違いないわけで、そういう形で雇用形態が変わっていくのに柔軟に対応できていないのではないかという指摘をしているわけです。

太田政府参考人 一般の保険と日雇いの保険というのは制度の立て方がありまして、それぞれ特別の制度、日雇いについては特別制度を設けているわけでございますけれども、基本的に、働き方としては、我々、日雇いという形よりも一般の形で常用で働く方が望ましいと考えております。

 したがいまして、先ほど来からお答えしていますとおり、日雇いの保険であっても、同一事業主に十八日以上雇用された場合には原則一般の被保険者の扱いをして、通算して受給資格を満たせば一般の保険を適用するというような扱いにしているところでございまして、それは、基本的に、日雇いという働き方よりも、一般の働き方の方が望ましいという考え方からこのような制度設計をしているところでございます。

岡本(充)委員 委員長、整理をしてくださいよ、もう時間が来ちゃうので。

 私が言っているのは、要するに、切りかわっていったら、結局、最終的にはもらえないですよねと。さっきの話で、二カ月日雇い派遣をやって、三カ月常用雇用になりました、また二カ月日雇いです、こういう方は、いつまで働いても、結局、どの時点でも雇用保険はもらえないんじゃないんですかと。二カ月日雇い派遣、三カ月、あなたは一般被保険者、二カ月また日雇い派遣、こういう形で雇用形態がスイッチした場合、この人は、では一体どこの時点でやめれば、どこの時点で仕事がなくなったときに雇用保険がもらえるんですか。もらえないんじゃないんですか。

田村委員長 日雇い給付も、それから一般の雇用保険ももらえない、六カ月に満たなくてもらえないというような場合もあるんですよねというような趣旨の御質問だというふうに思いますが、それに対してお答えください。

太田政府参考人 日雇い保険につきましては、直近二月で通算して二十六日分以上の印紙保険料が納付されていることを受給要件としているわけでございますけれども、一般の被保険者が例えば期間が二カ月で、その後、日雇いの保険期間が一月、こういうような場合には受給資格はございません。(岡本(充)委員「二、三、二、三ですよ、ちゃんと答えてください」と呼ぶ)

田村委員長 太田局長、二カ月、三カ月、二カ月と。二カ月日雇いで、三カ月が一般に入って、二カ月、通算しても六カ月に足らないからその時点ではもらえない。それでまた二カ月日雇いになってという場合に、今の二カ月の基準に満たない場合はもらえないパターンがありますかという御質問だと思いますが、はい、局長、どうぞ。

太田政府参考人 今のように、日雇いが二カ月、一般が三カ月、日雇いが二カ月というようなケースですと、受給資格を満たさなくてもらえないケースが出てまいります。

岡本(充)委員 大臣、そういうことです。大変ややこしい話なんですけれども、こういう制度ですよ。ですから、もうぜひ、見直すべきところはここにもあるんですね。大臣、ちょっと制度設計をもう一度検討してもらって、こういう方もきちっとすき間なく雇用保険がもらえる、この人は、二、三、二、三とずっと働いているわけですから。二十六日以上、二カ月通算で働いて、しかもその後三カ月は常用雇用をして、また日雇いにならざるを得ない、こういう方がずっともらえない、ずっと働き続けても。ここはやはりちょっと制度設計を見直すべきじゃないか。ぜひ大臣の前向きな御答弁をいただきたいと思います。

舛添国務大臣 本来的には、日雇い労働のような働き方ではなくて、常用雇用の方向を目指すという大きな目標に向かって動きたいと思いますが、今のような問題点、これ、委員と局長のやりとりを聞いていましても、さまざまな矛盾のような感じがいたしますので、検討させていただきます。

岡本(充)委員 最後に一点だけ。きょうは聞けませんでしたけれども、新型インフルエンザのことについて一つだけ聞かせてください。

 私、午前中の災害特別委員会では聞けませんでしたが、この国において、やはりマスクの需要が新型インフルエンザの流行が起こったときに大変重要になると思います。今現在、マスクの流通量がどのくらいあるかは別として、一人一日三枚で、少なくとも二週間分備蓄をしようと思えば、これが一人でも五十枚ぐらい必要になるわけでありまして、これを一遍に皆さんが下さいと言ってドラッグストアに押しかけると、とてもじゃないけれども在庫が足りないという状況になると思います。

 そういう意味では、日ごろからの備蓄を含め、きちっと啓蒙していくなり、また、ある程度必要とされるような職域、職種の方向けにきちっと備蓄をするよう、企業なり、また会社なりに言うなり、また、例えば、午前中の質疑でもありましたけれども、パンデミック期に鉄道に乗る場合には必ずマスクをつけてもらうようにするという意味では、各駅に配備ができるようにするなど、そういった取り組みをしていく必要性が高い、その取り組みの準備をぜひ行っていただきたいと思うわけですが、御答弁をいただいて、質問を終わりたいと思います。

中尾政府参考人 新型インフルエンザ発生時に使用するマスクにつきましては、昨年十一月に新型インフルエンザの専門家会議におきましてまとめられました「新型インフルエンザ流行時の日常生活におけるマスク使用の考え方」におきましてお示しをしております。この中で、不織布製マスクについて、新型インフルエンザ流行前に流行期間に応じたある程度の備蓄を推奨することとしておりまして、一つの目安といたしまして、これらのマスクを、一人当たり二十ないし二十五枚程度を家庭において備蓄することを推奨しております。

 また、各企業等におきまして、業務継続計画をつくるということもこの中で述べておりまして、今後とも、マスクの備蓄につきましては、必要な周知徹底を図ってまいりたいと考えております。

岡本(充)委員 終わります。

田村委員長 次に、柚木道義君。

柚木委員 民主党の柚木道義でございます。質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 きょうは、医療、介護の問題につきまして、大臣を中心に質疑をさせていただきたいと思います。資料はまだお手元には行っておりませんか。今お配りをいただきますが、まず冒頭、救急医療の問題、産科救急の問題をお伺いさせていただきたいと思います。

 大臣のお手元には資料は届いていますでしょうか。資料一ページ目ですが、平成二十年度、救急搬送における医療機関の受け入れ状況等の実態調査。二回目ということでございますが、その資料を一ページ目、二ページ目、そして三ページ目とおつけしております。

 これをごらんいただければわかるんですが、一ページ目、照会回数四回以上の事案の推移は、下を見ていただくと、重症以上の傷病者の搬送事案、また小児傷病者搬送事案については、十九年度よりも二十年度の方が件数はふえております。産科、周産期については、この間大変に社会問題にもなる部分もございまして、件数としては減っておりますが、この後申し上げますが、まだまだ安心できる状態にはないということでございます。

 二ページ目をごらんいただきますと、救命救急センター等における救急患者受け入れ率ということでございまして、ワーストワン、ツー、スリーという言い方は、余り言いたくない言い方ですが、実は、一番目はこの間大変問題になってまいりました奈良県、平均が九三%であるにもかかわらず、何と五二・八%、群を抜いて悪い数字でございます。二番目が東京都で七二・四%、三番目が宮城で七六・四%ということになります。

 続いて三ページ目を見ていただくと、今度は、照会回数四回以上または現場滞在時間、救急車が出発できないというか入れない時間が三十分以上の場合。この網かけの部分が全国平均を上回るということですから、悪いということでございまして、首都圏、関西圏、先ほどの宮城も入っていますね、こういう状況になっているということでございます。

 それで、四ページ目を見ていただくと、せんだって、二十一日土曜日、奈良県生駒市で発生をしました救急事案について。六十三歳の男性の方が、最終的には七件目の搬送先、これは大阪になっておりますが、受け入れられましたがお亡くなりになられるという大変痛ましい事例でございます。

 結果的にどうだったかは別として、七件もかかってしまったという部分について、奈良県におきましては、二〇〇六年、妊婦の方がお亡くなりになって、二〇〇七年には死産をされた事例、そして今回、こうして男性の方が亡くなられるということで、まさに、先ほどの実態調査の数字が反映をされているという言い方になってしまおうかと思います。

 そこで、五ページを見ていただくと、実は六回目までの医療機関、私がお聞きしましたところ、正確にはまだヒアリング中と聞いていますが、四回目と五回目、もしくは四回目と六回目につきましては、これは同一の医療機関で二次救急と三次救急、それぞれの受け入れ先に問い合わせがあってというようなことも伺っております。この間、まさに、いわゆる救急と、産科でも産科救急の連携が言われていたり、あるいは今回の場合は二次と三次との連携についても、本当にどうだったのかというようなところの検証が今後待たれると思います。

 そこで、こういうことにならないようにするために、きょう消防庁の方にもお越しをいただいておりまして、これは総務委員会での今後の案件になりますが、消防法の改正について、国会審議が今後進めばという前提でお聞きをしたいんです。

 この改正案の中には、救急搬送受け入れに関する協議会の設置であったり、また、受け入れ困難事例、まさに今回の奈良のような場合ですが、その場合の実施基準を明確に策定するということが盛り込まれる予定だと伺っております。

 そこで、この場合にも、当然厚生労働省と消防庁との連携が、各都道府県に対していろいろな形でのやりとりが必要になってこようかと思います。消防庁の方にきょうお越しいただいておりますので、こういった取り組みを厚生労働省とどういった形で連携を図っていくのかについて、端的にお答えをいただけますでしょうか。

株丹政府参考人 お答え申し上げます。

 救急搬送の質の向上を図るためには、消防機関と医療機関が連携をいたしまして、円滑な救急搬送・受け入れ体制を構築するということが不可欠だというふうに思ってございます。

 今御指摘ございましたけれども、総務省消防庁といたしましては、消防と医療の連携を推進するため、消防法の一部改正法案を今国会に提出させていただいているところでございます。

 具体的な内容でございますけれども、二点申し上げますと、救急搬送及び医療機関への受け入れに関します実施基準を都道府県で策定していただきたい。それからもう一つ申し上げますと、消防機関や医療機関の職員などで構成されます実施基準の策定のための協議、あるいは救急搬送に関します連絡調整を行う協議会を設置していただきたい、こういう法律の内容でございます。

 実施基準というものを申し上げましたけれども、その中で、特に、受け入れる側の医療機関がなかなか速やかに決まらない、こういう場合であっても受け入れ医療機関を確保するために、消防機関と医療機関との間の合意を形成するための基準、こういうものも定めていただきたいというふうに法案の内容としてなってございます。

 総務省消防庁といたしましては、厚生労働省と一緒になりまして、消防と医療の連携が強化されるように今後とも努力してまいりたいと考えてございます。

柚木委員 今、二点お答えをいただきました点は、例えば東京都なんかでも、この間、墨東病院のこともあったりして、東京ルールと言われるようなものを都の協議会の中でも検討、実施をしていくということでやっていますが、舛添大臣、やはりこの消防庁との連携というのは大変重要になってくると思うんですね。そこで、ぜひ、そういった部分をしっかり進めていくという観点から御答弁をいただけますでしょうか。

舛添国務大臣 私のもとの検討会で、この救急医療も相当検討しました。そのときに、東京消防庁がすばらしいデータを時々刻々持っているんですが、それを定期的にというか継続的に厚生労働省が活用する体制が整えられておりませんでした。したがって、これは今やれるようになっております。

 それから、私のもとにあります厚生労働省の改革推進室の中に各省から併任をかけて来ていただいていますけれども、まさに消防や救急医療の部署に勤めていたことのある総務省の職員を、併任をかけまして私のもとに置いております。そういう意味で、総務省と連携をしながら、消防庁の協力も得ながら、救急医療をやっていくという体制をさらに進めていきたいと思っております。

柚木委員 ありがとうございます。ぜひお願いをいたします。

 続きまして、資料の六ページ目をごらんいただくと、大臣、まさに精力的な取り組みをいただいておるわけですが、安心と希望の医療確保ビジョンですね。ただ、この中に、消防法改正ももちろん重要なんですが、その他にもいろいろな取り組みが必要で、一つには、今回、医師の数を一・五倍ふやしていくということでございます。

 そもそも、診療科ごとに、本当に労基法を遵守できるような医師数、医師を養成するということが本来望ましい。そういったことで考えますと、下線を引いておりますが、「必要な医師数について推計し直すべきである。」という中間取りまとめがございますが、例えば産科なら産科、あるいは小児科なら小児科、各学会からもそういった試算は出ております。

 今年度予算についてもいろいろな取り組みがありますし、診療報酬の昨年の改定にもいろいろな救急加算がございますが、そういったことを実施していく中で、やはり診療科ごとに労基法を遵守できる医師数というのが何人なのかというのを、少なくとも目安としての目標数ぐらいは調査、試算をし、そして今回、愛育病院の問題もありましたよね。そういうこともありますから、やはり養成する医師数を診療科ごとの、労基法を遵守できる一つの目安に基づいてさまざまな施策を行っていくということで、ぜひ大臣、これについて御検討いただけませんでしょうか。

舛添国務大臣 委員の資料の六ページ目の下線を引いた後に、高齢化の状況とか患者の診療動向、女性医師の増加云々ということで、さまざまなパラメーターをできるだけ考慮してということでこの専門的な推計を行う予定でございます。

 ただ、診療科ごとというのはなかなか難しくて、例えば、愛育病院だと何人いれば当直がちゃんとできますよというふうなことができるので、そういうのを積み上げていって、専門医がどれだけいればいいか研究することに対して、きちんと予算でバックアップする体制を二十一年度予算において組んでおりますので、そういう方向で数字がどういう形で出るか、これは研究を進めたいと思っております。

柚木委員 ぜひこの問題は、この数年、私が国会に出させていただいて以降も本当にずっと問題になっていることなので、先ほどの調査の結果に基づく早期の具体的な、数値化したものでの目標達成に向けての努力を重ねてお願いしておきたいと思います。

 続きまして、救急あるいは産科救急、それぞれ、例えば救急であれば、鳥取県だったと思いますが、大学病院でしたか、救急医の方が集団で辞職を申し出られたり、産科についてもこれまで申し上げているとおりの状況で、そういったことをかんがみるときに、与党の中からも、追加経済対策の中で病院勤務医、救急、産科等、そういった財政支援をやるべきじゃないかということが検討されているというようなことも聞いております。

 今後そういった議論の進捗がなされていくということだとしたら、私はぜひお伺いしたいんですが、では具体的に、例えば分娩手当金という仕組みがございます。あるいは救急勤務医手当というものもございます。ですから、今年度中に、場合によってはそういった手当金、勤務医手当が増額をされ得る、そしてそれによって、今の本当に喫緊の、命にかかわる事態の改善につなげていく、それぐらいの、ことしじゅうにできることをさらにやるんだ、そういう部分での大臣の御決意をお聞かせいただけませんでしょうか。

舛添国務大臣 昨日、総理から新しい経済対策について記者会見がございました。その中で、生活者の安心を確固たるものにする、すなわち雇用や社会保障、子育て支援などの充実が求められていると存じますとおっしゃっているんですけれども、社会保障の中には当然医療が入ります、救急医療も入りますので、その点も踏まえまして、また、昨日、自民党の日本経済再生戦略会議でも、地域医療の再生と最先端医療技術の革新という項目がありますから、総理と与党がこういうプログラムについて言及なさっていますので、私も、その経済対策の中で、今委員がおっしゃったようなことが実現できるように最大限の努力をしてまいりたいと思っております。

柚木委員 ぜひよろしくお願いいたします。

 もう一点、この間も議論になっております、いわゆる公務員という立場のお医者さんの兼業規制の部分について、資料の七ページ目、八ページ目。

 八ページを見ていただきますと、こういう記述がございます。「医師が必要に応じて、複数の医療機関で医療行為を行うことができ、かつ、その活動が適切に評価される環境を整備するため、公務員である医師の兼業規程の運用を周知するとともに、その支援策を検討する。」とございます。

 国立病院については、機構になった関係で兼業が可能となるということも聞いておりますが、県立、市立病院等では、なかなかその進捗については十分ではないということも聞いております。

 そこで、改めて大臣の方にお願いをしたいのは、こういった兼業の規制の緩和についての周知の徹底、拡充を願いたいというのが一点。そしてまた、派遣元病院となるのは主に大学病院とか県立病院等だと思いますが、そういった地域の派遣元病院への例えば補助金支給などの具体的な支援についても、ぜひ、さらなる、まさに追加経済対策も含めて行っていただきたいということでございまして、この二点についてお答えいただけますか。

舛添国務大臣 これは、この検討会でずっと議論がありまして、今独法になっても、あのときは国立病院ですね、同じ公務員が隣の病院に手伝いに行けないというのは何だということで、これは緩和するということで周知徹底をしていきたいというふうに思います。

 さらに、平成二十年度の補正予算と二十一年の予算において、派遣元の医療機関における逸失利益に対する助成を追加するということで、医師を相互に派遣するような支援体制をさらに充実させていきたいと思います。せっかく持てる医療資源というのは有効に活用した方がいいと思います。それがこの提言の中身だと思いますので、それを実現させたいと思っております。

柚木委員 よろしくお願いいたします。

 続きまして、先ほど午前中の質疑で桝屋委員がかなり細かくやりとりもされておられましたが、火災事件が発生しました群馬の「たまゆら」の件について、私からも幾つかお尋ねをさせていただきたいと思います。

 まず、資料の九ページ目、十ページ目。先ほどの山井委員とのやりとりで言われていたのは多分このことだと思うんですね、大臣がおっしゃったのは。今回の報告結果、五百七十九件という部分ですね。そして、次のページにもその詳細な数字がございます。

 大臣、私もこれを見ると、特にこの二ページ目を見ると、二年前に調査をして三百七十七だったものが、今回さらに調査を進めると、五百七十九ということで数字がふえている。三百七十七だった部分が、この二年間の中で、百九十五施設については届け出が済んだということで移っているんですが、数字上見ると、逆に言うと、百八十二施設は依然として、有料老人ホームに該当し得る施設であって届け出が行われていないということでございます。

 ちなみに、「たまゆら」の場合は、十番、群馬県の中の、二年前にわかっていたにもかかわらず、つまり十二件の件数に含まれていたにもかかわらず、今回こういうことになってしまったということを考えると、まず指摘をしておきたいのは、一義的には自治体にいろいろな指導監督責任はおありでしょう。しかしながら、全体的な厚生労働省としての指導監督責任、これが不十分だったと言わざるを得ない。さらには交付金の増額等、大臣、積極的に取り組まれておるわけですが、しかし、この二年間について施設整備をしてこなかった、そういった責任についても私は大きいものがあると思います。

 ですから、こういう認識に基づいて施策を進めていただきたいと思うんですが、まず、今回の「たまゆら」の件で、大変混乱をしている捜査なり、あるいは今後の「たまゆら」への指導監督の部分も含めて、その一つの要因となっているのは、有料老人ホームの定義というものについて、なかなか、いろいろな議論が出ているということでございます。ただ、ちょっと資料に間に合わなかったんですけれども、きょうの新聞を見ますと、「たまゆら」は有料老人ホームに当たるというふうに厚生労働省が昨日見解を示されておられるようでございます。

 そこで、私は、大臣にぜひ取り組みをお願いしたいのは、自治体の中では、千葉県なんかもそうだと思いますけれども、具体的なそういう独自指針を策定して、明確にホームとしての定義を行って、そして、いろいろな意味での指導監督を行っていっている自治体もございます。今回厚労省として「たまゆら」にこういう定義をされたということは、一つの方向性を示されているのかなというふうに私は受け取ったんですが、ぜひこういう定義、指針ですね、これを全国各都道府県に周知徹底をいただけませんでしょうか。さらには、市町村から県あるいは厚労省へと情報提供、報告義務等、こういう同じことが起こらないように、しっかりこういった部分についてもお取り組みをいただけないか。

 このホームの定義についてという部分にまずはお答えいただけますか。

宮島政府参考人 定義につきましては、平成十八年六月二十日に、老人福祉法が改正された当時に、基本的には、入所要件を専ら高齢者に限らないで、高齢者以外の者も当然に入居できるようなものは老人ホームに当たらないということです。

 ただ、入居要件で高齢者以外の者も入居できるとしても、意図的に高齢者を集めて居住させているというのは、これは確認が必要だということで全国に示しているところでございます。

柚木委員 では、もしよかったら次の質問とまとめて先ほどのも触れていただきたいんですが、そういう全国への周知徹底そして情報提供、報告義務等、大臣からも答弁いただきたいんですが、そういうことも一つ必要だと思います。

 さらに、先ほど桝屋委員とのやりとりでもお答えになられていましたが、今回のこういった事件の再発防止に向けて、まずは届け出を促進してということをおっしゃっていました。防火安全体制を整備してということも、スプリンクラーの話の中でも出てまいりました。

 それでも、そういう届け出がなかなかなされない場合には、私は、やはりこれは老人福祉法第四十条の罰則規定の適用というのも、これを適用することによって、実は余り予期せぬふぐあいも出てくるような話も聞いていますが、しかし、ここは厳格にこういったものを適用していくことが必要だと思います。

 それから、もう一つも重ねて伺いますが、今回のこの調査を見てみると、やはり東京都が一番無届けの施設が多い。首都圏に集中しているということでございますので、今後の交付金の拡充というような取り組みについても、大臣として、どういう受け皿整備にどういった整備計画で臨んでいくお考えであるのか。さらには、国交省とも連携して、いわゆる低所得者でも入れる高齢者向けの住宅整備というのも同時に進めていただくことも必要かと思いますが、今後どういう形で交付金事業の拡充について展開をお考えであるのか。その方向感で結構ですからお答えをいただき、まとめての答弁で恐縮ですが、お願いできればと思います。

舛添国務大臣 最初の、指導を徹底するというのは、これはぜひ必要なことでありますし、基本的には都道府県や市町村で細かく対応してもらわないといけないので、連携を強めていきたいというふうに思っております。

 それから、二番目におっしゃったように、必要なら法の適用をして厳重に取り締まるということ、これも必要に応じてやっていきたいというふうに思っております。

 それから、交付金のような形で全体の底上げをどうするか。これは、先ほど申し上げました経済対策の一環という形で位置づけることも不可能ではありませんので、少しこれは、特に東京が地価が高いということでこういうことが起こるわけですから、この問題を含めて、そしてまた生活保護者が今度は入ってきましたから、生活保護の方からきちんと巡回するというようなことも含めて徹底してまいりたいと思っております。

柚木委員 よろしくお願いをいたします。

 続きまして、ちょっと時間が押してきたので前後しますが、今回のようなこういう無届けの施設がたくさんふえる要因になっているのも、交付金事業の拡充が必要なという意味で、事業所の運営が大変厳しいということが要因であるわけです。

 実は、そういう観点からいうと、きょう資料の十二ページ目におつけをしております介護報酬の地域間格差というのも、これは今回の改定で都市部についてはかなり配慮された形になっていると思うんですが、私の地元岡山県の事例で恐縮ですが、私は倉敷市というところなんですが、すぐお隣に岡山市という市がございます。

 この見直しの基準、人勧の公務員給与等の資料はきょうおつけしておりませんが、そういった部分からいうと、実は岡山市と倉敷市というのは、岡山が乙地というところにカテゴライズされておりまして、倉敷はその他に区分されているんですね。しかし、これは実際には、きっちりと見直しをしていただくと別々の区分にはならないだろうということを私は地元の方からお伺いをしているんです。

 今回はそこまでの見直しが、いろいろな時間的な部分もあってなされていないというようなお話を厚労省の方からお聞きしましたが、ぜひ今後、次回改定に向けて、やはりこういった部分まで丁寧に改定作業を行っていただきたいと思うんですが、これについては、老健局長、お答えいただけますか。

宮島政府参考人 今御指摘いただきましたように、乙地は三%から五%に上乗せはありました。その他は変わっていません。

 地域区分ごとの上乗せや見直しを今回行いましたが、この地域区分そのものの見直しということになりますと、これは改めて地域ごとの人件費の動向を把握する必要があります。

 それで、このことにつきましては、昨年の介護給付費分科会の審議報告で、地域区分のあり方そのものについて検討するということで、次期三年後の介護報酬改定に向けて、区分のあり方について検討したいというふうに思っております。

柚木委員 ぜひよろしくお願いをいたします。

 続きまして、先ほど午前中の質疑で、山井委員からも肝炎対策についての質疑がございました。私からも、重複しない形でちょっと幾つかお伺いをさせていただきたいと思います。

 きょうは傍聴席に、午前中からずっと患者団体の皆さん、原告団の方、お越しいただいております。そういう皆さん方が、新年度になって、本来であれば、よし、また新しい年度、気持ちを入れかえて頑張っていこうというときにあって、なかなか晴れやかな気持ちになれない。そして、なぜそういうことになっているのか、これを私たちはやはり、年度を改めて思いを新たにしなければならないと思っております。

 そこで伺いますが、まず障害者手帳の交付について、厚生労働省内に肝機能障害の評価に関する検討会、第三回まで行われていて、そして、肝機能障害の皆さんへの身体障害者手帳の交付が検討されているというふうにお聞きをしております。

 細かいことは申し上げません、ぜひ早期に結論をお出しいただいて、手帳の交付をお願いしたいと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

舛添国務大臣 これは、昨年の夏に、肝炎の全国の原告団、弁護団の方との定期協議がありました。そのときに、私の方からもそういう要望に対して、ウイルス性肝炎に起因する肝機能障害のうち、どれが身体障害に位置づけることができるか検討しようということで、今委員御指摘くださった肝機能障害の評価に関する検討会を開催しております。これは今、ヒアリングを行い検討を進めておりますので、今委員おっしゃったようになるべく早くということで、できれば夏ぐらいをめどには結論を出したいと思って、少し議論を加速化させたいと思います。

柚木委員 ありがとうございます。

 ぜひ、夏に必ず結論を出して、そして皆さんに対してしっかり御報告できるようにということでお願いをいたします。

 続きまして、肝臓移植手術、これは肝臓にかかわらず移植手術が行われた後の、例えば免疫抑制剤を使っての治療等というのがあるわけです。

 私がお伺いした中では、ちょっと比較することがどうかとも思うんですが、腎臓移植の場合には、そういった移植手術後は自立支援医療の対象となって治療費の支援を受けられる。しかしながら、肝移植については現在はその対象ではない。同じ肝炎でも、劇症肝炎については難病の範囲内での医療費助成が受けられるということでございます。

 これについても先ほどの障害者手帳の交付の部分と重複をしてくるんだと思いますが、ぜひ、肝移植手術後の治療についても、大変経済的にも、もちろん身体的にも厳しい状況の中で、臓器ごとにいろいろな区分があるというのも、特にこの肝臓、腎臓の部分については、私は、この壁は乗り越えていただけるんではないかというふうに、この間の議論をお聞きしていると思うんですが、これについても、ぜひ大臣、前向きに御検討いただけませんでしょうか。

舛添国務大臣 肝移植を受けられた方々のうちで、先ほどと同じようなことになりますけれども、要するに、そういう医療を提供されたことによって確実に障害の除去や軽減が見込まれるということであれば、御指摘の更生医療というか自立支援医療の対象として医療費の一部の公費負担ができるわけですから、これも先ほど申し上げました検討会の中で今検討させていますので、夏ぐらいをめどに答えを出したいと思っております。

柚木委員 ありがとうございます。重ねてよろしくお願いいたします。

 もう一点、肝炎対策について伺うんですが、これは必ずしも肝炎対策に限定ということではなくて、一般的にということでお聞きいただければいいんですが、高額療養費制度、御承知のように、月ごとの上限の規定がございまして、それ以上については患者負担にならないようにということでございます。

 ただ、先ほどの肝移植後の免疫抑制剤の治療費が、実は年間四、五十万かかるんですね。例えば、月八万円かかってそれで治れば、要はそれで負担は済む。しかしながら、月単位でいうと、高額療養費にひっかかるという言い方はあれですが、かからない、対象にならない。しかし、年間で四、五十万ということを考えると、総額ではそちらの方が高額の療養費ということになってしまうわけでございます。

 ですから、これは肝機能疾患治療にかかわらず、大臣、この高額療養費制度というのは、もっと治療実態に即した形で運用されるような改善がなされるべきではないかと私は思うんですが、ぜひその改善について御検討いただけませんでしょうか。

舛添国務大臣 一般の方だと大体八万ぐらいが月額の限度になっていますけれども、月額にしているというのは、レセプトの処理が月単位になっていて、十二カ月分まとめてどうだというのは、事務処理の問題があったりとか、こういう不況のときに保険者がなかなかそこまで見たくないというのもあったりして、そういう問題をクリアしないといけないと思いますけれども、どういう形で高額の医療に上限を設けるかというのは、今のあり方以外にもさらに患者さんのためになるようなことがあれば、例えばこの委員会なんかで知恵を働かせて検討することは決して悪いことじゃないと思いますので、少し検討をさせていただきたいと思います。

柚木委員 ありがとうございます。

 ぜひ、将来的には健保法の改正なんかも視野に、社保審の医療保険分科会になるんでしょうか、できればそういったところで、今言われたような御検討を大臣のリーダーシップで進めていただきたいということをお願いしておきたいと思います。

 続きまして、介護老人保健施設においての医療行為について、実は前回か前々回でしたかお伺いをさせていただいたんですが、ちょっと観点を変えて、同じ質問ではあるんですが、お伺いをしたいと思います。

 資料の十三ページをお開きいただけますでしょうか。これは、実は、私の地元岡山県の老人保健施設協会の皆さんにいただいた参考資料というメモなんですが、前回も透析患者さんについてということで少しお話をして、もちろん透析にかかわらず、認知症の治療薬のアリセプトの話もさせてもらいましたが、その他の部分も含めてということでお伺いをしたいと思っているんです。

 これを見ていただくと、大臣、これは岡山県の状況ですが、全国で二十七万人、岡山県では四千百七十七名ということになっています。この中で、患者の生活環境のところを見ていただきますと、実は老健ではゼロ名となっているんですね。在宅が約九割、残りの施設が約一割。一割ですから約三百名強ということになるんですか、そういうことでございまして、その老健において、例えばHD、CAPDの治療を行う場合に、それぞれ六万三千五十円、あるいは八万二千円から十二万二千円が施設の持ち出しになってしまうというふうなことをお聞きしておるわけでございます。

 先ほど長崎委員も、腎疾患について大変意義のある御質問、やりとりをされておられましたが、そもそもは医療保険財源から算定されていた医療行為が、徐々に介護施設における介護保険の全体の中で、幾つかのものは医療保険から算定できるようになっていますが、そうでないものもある。実はこの透析についても、ここに書かれているような状況があるということでございます。

 そこで、お願いをしたいのは、透析のみならずほかにも、抗がん剤でも注射による部分であったり、アリセプトでもそうですが、その他リウマチとかいろいろありますが、老健施設において行われる医療行為について、特に薬代が高くかかるような疾病については例えば介護報酬の点数設定そのものを高くしていただいて、少なくとも施設の持ち出しといったことにならないようにすることを、例えば一二年度のダブル改定とかいう、どこかをめどに、これはぜひ行っていただけないか。

 そうじゃないと、医療行為が、だんだん介護施設、もちろん在宅へという方向ですが、受けられない、まさにそういう医療難民というような方がますますふえてくるということでございますので、一つの具体的な提案としては、介護報酬の点数設定を高くするということをぜひ御検討いただけないでしょうか。

舛添国務大臣 介護に携わっている方、それから、そこで介護を受けている方の御家族の話をよく聞きますけれども、やはりアリセプトの問題が一番多いですね。ですから、これは介護報酬全体の包括の中に入っているので、どうしても、この費用を何とか見てくれないかと。

 そういう中で、委員御承知のように、インターフェロンとかモルヒネとかの薬剤や医療行為については認められて、腎臓でも、エリスロポエチンとかダルベポエチンという注射薬とかいうものは、これは人工透析を含めて認められているわけであります。

 ですから、長期的な課題としては、介護保険で見るものと医療保険で見るもの、どこかで垣根が取れないかなと私なんかは思いながら、しかし、それぞれはまた保険者の数も範囲も違いますから、そう簡単に統合はできません。

 しかし、そういう中で、今言ったような御要望がたくさんあるというのはわかっていますので、これは次の介護報酬のときにどういう形で処理できるか、確かに高額のものは本当に診療報酬で見ていくべきだと思いますので、恐らくアリセプトなんかが非常に中間的というような感じがするので、これは検討させていただきたいと思います。

柚木委員 ありがとうございます。

 そういう意味では医療保険適用の一部拡大という部分も、両方、両にらみでの取り組みをいただけるということで今理解をしましたので、ぜひよろしくお願いをいたします。

 続きまして、私からもこの間、介護認定基準の変更についてお尋ねをしてまいりましたが、これは先ほどの山井委員とのやりとりの中で、私も、これだけ混乱している状況の中で、しばらく凍結した上で、実際に新マニュアルになっての調査を行ってからでも全く遅くないと思うんです。しかし、今もう既に新年度に入っている中で、私も凍結ということはお願いしたいという前提ですが、しかし始まっているということを考えると、幾つか具体的に、現実に即した対応の御質問もさせていただきたいと思います。

 一つは、今回、一割負担で利用できる限度額の引き上げがない一方で軽度化されるということになると、総体でのサービスが低減をされるということで、そしてまた介護報酬引き上げという部分では、利用料負担がふえるのにもかかわらずサービス抑制ということになって、ダブルパンチだということでございます。

 これは大臣、ぜひ何らかの、まさに温かみのある対応といいますか経過措置というか、限度額の引き上げをするとか、あるいはサービスが減るという部分について多少弾力的な運用をするとか、何か、事前の検証はやらない、まずやらせてくれ、その後でということであっては、余りにも利用者の方にとって冷たい対応だと思うので、何らかの知恵を絞っていただいて、このダブルパンチの部分についての軽減策、ちょっと御検討いただけませんか。

舛添国務大臣 我々の事前のモデル事業や研究事業でも、一割から二割が軽度に判定される可能性があるということですから、その場合、午前中、山井議員にも申し上げましたけれども、審査結果に不服があれば、これは再審査ということで請求できますので、これがあったときに、迅速かつ丁寧に、心を込めて自治体の方で対応をしてもらいたいということを徹底させたいというふうに思います。

 例えばそういうことをやり、そして一次審査だけじゃなくて二次審査で、例えば特記事項についてきちんと調査員の方にも書いていただく。例えば、火の不始末について項目から外していますけれども、二次審査できちんと見られるわけですから、そういう総合的なきめの細かい対策をとるように指導を徹底したいと思います。さらに、その上で検証をきちっと公開の場でやっていって、皆さん方が思っている懸念が現実のものにならないように努力をしてまいりたいと思います。

柚木委員 まあ、そうなんですけれども、それが現実のものとなったときの、今の不服審査の部分ですが、六十日から九十日、裁定までかかるわけです。それについても、都道府県に周知するだけじゃなくて、それこそ審査、裁定についても増員して、財政支援をしてでも、年金については二千人増員だったと思いますけれども、やはりこういう部分を、自治体にやれということだけじゃなしにちゃんと支援もする。そして、不服審査の部分についての裁定も短縮しますよ、六十日から九十日かかる部分を何とか三十日から六十日ぐらいの中でやろうとか、そういう部分について具体的に支援をするということも、あわせておっしゃっていただけませんか。

舛添国務大臣 先ほど不服審査の場合しか申し上げませんでしたけれども、もう一つ、要介護状態の区分変更申請というのがございますので、私は三と認定されたけれども四のはずだという区分変更の請求をしていただければ、その効力は変更申請の日からさかのぼってできます。

 それから先ほどの、日にちがかかることについて、不服審査についても迅速化するように全力を挙げたいと思います。

柚木委員 最後に、介護報酬三%引き上げ、これでは月二万円も給料は上がらない。

 そこで、与党の中でも追加経済対策の中で、たしか月一万五千円ぐらいは何とか、三年間で六千億ぐらいでしたか、単年度で二千億ぐらいになるんでしょうか、実質六%引き上げぐらいに該当するんでしょうか、そんな案が議論されているように聞いておりますが、私たち民主党は、政府案と合わせて一割プラスというものを法案として出しているわけですよ。

 ですから、これは、まず与党の皆さんにもこの法案の審議、そして採決をするというような形の御協力をお願いするとともに、大臣にお願いしたいのは、三年だけやっても意味がないんですね。ぜひ、これは継続して、つまりは次回改定以降も当然報酬が、少なくともそこでまた下がることがあっては意味がないので、そういった継続性のある取り組みになるということを、これはちょっと方向性を、御決意をいただいて、質疑を終わりたいと思います。よろしくお願いいたします。

田村委員長 舛添大臣、時間が経過しておりますので、簡便によろしくお願いします。

舛添国務大臣 介護の認定も五年置きに見直す、しかしながら、毎年これはきちんと見直しております。そして、今申し上げたことも三年後にまた見直していって、基本的に大事なのは、社会保障のセーフティーネットをきちんと張りめぐらすことなので、必要な措置はとりたいと思います。

柚木委員 以上で終わります。ありがとうございました。

田村委員長 次に、高橋千鶴子君。

高橋委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 生活保護の母子加算が、今年度、つまり今月から全廃されることになりました。平成十七年度から段階的に削減されてきたものであり、例えば母子加算一級地、十六年度は二万三千二百六十円だったものが、一万五千五百十円になり、昨年は七千七百五十円、そしてことしゼロとなります。これ以上生活を切り詰めるところはないのだと頑張っている全国の母子世帯を打ちのめす今回の削減は、きっぱりやめるべきだと思います。

 端的にお答えください。今回、削減の対象となる母子世帯は、これは母子世帯と呼んでいますが父子世帯も入っております、全部でどのくらいですか。

阿曽沼政府参考人 お答えをいたします。

 平成二十一年四月から母子加算が廃止される世帯数は、約五万世帯でございます。

高橋委員 今の五万世帯というのは、いただいた資料は、いろいろ高校の支援が入っていたりとか、そういうのを全部合わせて十万五百世帯になりますよね。間違いありませんね。

阿曽沼政府参考人 全体で十万世帯ございまして、そのうち、今母子加算を受けておられる方が五万世帯ということでございます。

高橋委員 出だしから小さく見えないように、十万五百世帯からスタートしているのだということをまず確認させていただきました。

 そこで、資料の一枚目、これはひな形ですけれども、「福祉事務所からのお知らせ」ということで、こういうお手紙が、既に四月ですので来ているはずであります。十五歳以下の子供を養育される母子世帯等の方へ、平成二十一年四月から母子加算はなくなりますと。これを見ただけで、もうかなりの衝撃を受けているかと思います。その下に、ただし、働いている方や市が策定した就労支援プログラムに参加するなど働くための訓練をしている方には、就労自立を支援するため、毎月五千円から一万円の給付金が支給されますと。その内訳は真ん中に書いてありまして、就労収入が三万円以上の場合が月額一万円、三万円未満の場合あるいは働くための訓練をしている場合が月額五千円となっております。

 そうすると、まず、それ以外の方、つまり就労阻害要因のある母子世帯がどのくらいあるのか、そして、この方たちは何もなくなると思いますが、生活が困難な方に一番厳しい仕打ちになるのではないか。この点いかがでしょうか。

阿曽沼政府参考人 ちょっと今申し上げますけれども、平成二十年十一月末現在の調査によりますと、母子加算が廃止される約五万世帯のうちで、就労中あるいは職業訓練中の世帯は約一万世帯でございます。したがいまして、これらの世帯はひとり親世帯就労促進費五千円の支給対象になります。

 それから、就労阻害要因のない未就労世帯が約一万世帯ございます。こういう世帯に対しましては、就労支援プログラムを実施するということによりまして、ひとり親世帯就労促進費の対象となるように支援をしたいと思っております。

 したがいまして、御指摘のそれ以外の世帯ということでございますが、病気や障害などによって就労ができない、障害とか傷病がある世帯、あるいは、育児、介護その他で就労阻害要因のある世帯につきましては、トータルで約三万世帯残るということでございます。

高橋委員 済みません、先ほど先に資料の二枚目を見てからお話をすればよかったと思うんですが、生活保護を受ける母子世帯等の自立に向けたステップアップ支援ということを厚労省が掲げておりまして、最初に、お話しされた一万人、この方たちが未就労の母子世帯ということで、就労支援を行って、いわゆる五千円ないしは一万円の対象にしたいということですね。ですから、今働いていない方は一たんゼロになるということがまず一つあると思います。

 それから、残りの三万世帯が、今お話があったように、就労ができない何らかの要因がある、障害や疾病のある方たちが結局何もなくなるのだ、ここが非常に大きな問題なんだと。一番大変な人が一番減らされて、もうこれは上がる見込みがないということ、なぜここまでするのかということなんです。

 厚労省が削減の根拠にしている平成十六年社会保障審議会福祉部会の生活保護制度の在り方に関する専門委員会報告書において、これがいわゆる自立、就労支援策を活用することにより労働市場への積極的な再参加を目指すということで、就労、自立、これを目指すために、そこをやる人たちには一定の手当を出すのだということが今回施策に盛り込まれたと思うんですね。

 ただ、この報告書には何と書いてあるか。ここで言う自立支援とは、社会福祉法の基本理念にある、利用者が心身ともに健やかに育成され、またはその有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるように支援するものを意味し、就労による経済的自立のための支援のみならず、それぞれの被保護者の能力やその抱える問題等に応じ、身体や精神の健康を回復、維持し、自分で自分の健康、生活管理を行うなどの日常生活自立支援や、社会的なつながりを回復、維持するなど社会生活自立支援をも含むとして、基本的視点に明記されているのではありませんか。

 就労だけが自立ではありません。就労自立にだけ加算して応援するのはおかしくはありませんか。

阿曽沼政府参考人 社会保障審議会の生活保護制度の在り方に関する専門委員会におきましては、結論から言いますと、一律機械的な給付を見直し、世帯の自立に向けた給付に転換をすべきである、その際に支給要件とか支給金額を見直すということでございます。

 それで、先生から御指摘いただきました二ページの資料でございますが、確かに、現状において就労阻害要因のある母子世帯等ということで、障害とか傷病を持っていらっしゃる世帯については、右に書いてございますように、障害者加算とか医療扶助の給付をやります。その他の世帯で就労阻害要因があると言われるような世帯につきましては、その把握とそれに対するケースワークでの支援、例えば保育所とか介護サービスを使う、それから、子供の教育費等についてはそういう支給をすることで対応したいということでございます。

高橋委員 そんなこと、今から新たにやるような言い方をしないでくださいよ。障害者加算とか医療扶助というのはもともとあるものなんですよ。あるもので対応してくださいということで、これから何か支援が新たにふえるわけではないのです。そこはごまかさないでいただきたい。

 母子加算がなく、就労で一万円になる、私はこれだけも別にいいとは思いません。とても十分でないのは言うまでもありません。そもそも、自立しろ自立しろと言うけれども、もともとは自立して働いてきた人がぎりぎりまで頑張って保護にたどり着いている、これが現実ではないかと思うんです。

 大臣にお答えいただきたいと思うんです。

 きょうも、同時進行で、母子加算の廃止に反対する集会が開かれました。その中でも寄せられた声、月収二十から二十三万あって、頑張って働いていたシングルマザーが、子供が学校に入り、さまざまな環境の変化があって、転職などもあり、うつになった。それで保護課に行くんですけれども、倒れたらすぐ保護しますからと言われる。なので、また頑張って働くわけですよね。だけれども、結局、体を壊し、心も壊し、子供は引きこもりになりと、そういういろいろなことになって、ようやっと保護にたどり着くわけです。だから、もともと自立していた人が、そういういろいろなハンディを抱えて今やっとたどり着くときに、自立しなければ加算を減らす、これは全然逆さまなことではないでしょうか。本当に今国民の実態が苦しくなっている、だからこそ、低い方にどんどん合わせていく負のスパイラルをきちっと断ち切る、そういう立場に大臣が立つべきではないか。

 今回の削減策、三十七億三千万円だということです。大きな経済対策というのも大事ですけれども、このささやかな額が命綱だと言っている方たちのために維持するべきではありませんか、大臣。

舛添国務大臣 困っている人を全力を挙げて支えていく、あらゆる手段を使って支えていく、そのことは原則であります。

 ただ、なぜ母子加算の廃止という話になったかというと、生活保護の母子家庭と一般の母子家庭の消費水準を見たときに逆転してしまったということが前提にあって、公平性の観点ということからきたわけですから、それはそれで一つの配慮はしないといけないと思います。

 そして、就労支援、それから子供が高校生ならばそれの就学支援、医療や障害者の支援、そういうものを含めて全体的に支えていく必要があると思いますし、今おっしゃったような大変気の毒なケースについては、窓口の市町村を含めて、きめの細かい対応をしていきたいと思いますし、さらに何かできるかということについては検討させていただきたいと思います。

高橋委員 一般世帯との所得の問題については、生活保護基準の引き下げの問題でもやはり問題になったわけです。だけれども、そのときは、やはり一般世帯の方に区分をされているシングルマザーの方たちが、本当に切り詰めて頑張っている自分たちがそれでやっていけているんだから生活保護も切り下げましょう、そんなふうに利用されるのは我慢ができないと逆に怒っているわけです。なぜかというと、これが最低基準だということを国が認めるわけですから、そこに合わせてすべての制度が、いわゆるさまざまな減免制度なども引き下がってしまう、そういう問題なのだということで、皆さんが反対に立ち上がっている。まして、その基準を求めた検討会の中でも、先ほど言ったように、就労だけが自立ではないと言っているわけです。

 そうした点から、やはり今、いろいろな要因があって、頑張ってきたけれども働けない人たちが一番困るような廃止ということはやるべきでない。そして、今大臣、検討されると言いましたから、復活も含めて検討されることを重ねてお願いしたいと思います。

 次に参ります。

 先ほど来話題になっております群馬県渋川市の静養ホーム「たまゆら」で起きた火災事件に関連して伺いたいと思います。

 まずは、お亡くなりになられた十名の方々に、心から御冥福をお祈りしたいと思います。

 助かった方たちも、同じ法人が経営しているところですけれども、御近所の一軒家に皆さんおいででいますので、今後の対応方よろしくお願いしたいと思います。

 今週の日曜、月曜と現地に行ってまいりました。本館、別館、別館二というように建て増しを繰り返し、建築確認も行わない。消防から、渡り廊下があるから防火設備をと指摘されると、廊下をカットしてしまう。このような法抜け行為を次々と行っていました。また、一部を別法人に売却し、有料老人ホームの看板が立っておりました。両隣、片っ方は全くの民家でありますけれども、ほとんど損傷がなかったのが奇跡のように思いました。

 亡くなられた方は五十五歳から八十五歳、うち六名が墨田区の被保護者であります。また、二十四日には、県が前橋市にある同法人の施設「花みずきたまゆら」を現地調査しております。ここでも、墨田区から四名の方がいらっしゃいました。しかし、全体で見ると、墨田区だけではなく、文京区、あるいは横浜、群馬県内の他市からの入所者もいらっしゃいます。

 都会の都合で生活保護受給者を地方に集めていることや未届け施設であることなどの指摘がこの間されてきたところでありますけれども、大臣は、こうした痛ましい事故が防げなかった要因についてどのように考えていらっしゃるでしょうか。

舛添国務大臣 一つは、群馬県がもっと頻繁に立ち入りをするというようなことで適当な指導をやっておけばなと。あれはたしか、火災が起こったのは十九日ですから、二十三日にはこれをちゃんと指導する予定だった、そしてこの四月一日からスプリンクラーの設置を含めて新しい制度ができましたので、本当にわずかのことでこういうことになったのは残念で仕方がありません。

 それから、生活保護者が墨田区から受給しているわけですから、やはりこれは、入所後少なくとも年に二回ぐらいきちんと、どういう状況になっているか、施設を訪問して実態を確認すべきなので、そういうことがやられていなかったということ。

 今申し上げたように、指導の徹底ということと、最低年二回ぐらいの巡回をして、訪問して調べなさいということを徹底的に指導して、二度とこういう悲しい事故が起こらないようにしたいというふうに思っております。

高橋委員 何かそういうことだけでお話しされるとは正直思っていなかったので、ちょっとどうかなと思いました。

 特に、群馬県がもっと頻繁にとおっしゃいましたけれども、厚労省がこの「たまゆら」は有料老人ホームであると認定をされたのは、先ほど柚木委員の指摘にもございましたように、未届けの有料老人ホームに該当し得る施設五百七十九件という発表をした昨日であります。それまでは、有料老人ホームに該当するかどうかはわからないと厚労省自身も言っていたわけですから、県が頻繁に立ち入りできる権限はなかったわけです。今回、運営状況確認票というものを施設に送り、二度三度と追及する中で、ようやっと確認票が出てきた。そこには非常につじつまの合わないことがある。そういう中で、任意の調査に踏み切るというのがやっと三月二十三日の実態であった。こうしたことをやはり踏まえる必要があるのではないかと思います。

 そこで、例えば、平成十八年の四月から、老人福祉法の改正で、有料老人ホームの要件を緩和したわけですよね。その前後に、重要な情報が幾つか寄せられておりました。

 例えば、私、手元に持ってありますけれども、「違法NPO施設「たまゆら」について! 関係自治体への警告!」というものを送った方が御近所にいらっしゃいます。八月三十一日付。この方は御近所なので、収容者のお一方、八十歳の方が散歩に出た途中倒れて、救急車を呼んだんですね。だけれども、「たまゆら」に電話をしても来てくれない。そこで、直接行ってみたら、食事当番がたった一人いるだけで適切な処置がとれなかった、そういうことを指摘しているわけです。この通報は、墨田区、江戸川区、江東区など、関係あるだろうと思われる区に通報したとおっしゃっています。

 また、渋川市というところは合併しているんですね。二月にしていまして、市が届け出の必要な施設ではないかと県に照会したと言っております。また、七月には、県は、生活保護者を集めた居住施設があるよ、そういう情報を得て、これがまた所管が違っていまして、NPO・ボランティア課というのがある、そこにどうなっていますかということを求めている。結局、県施設の運用改善を提案しているNPO法人があるんですが、そこの岸さんという方が、市にも県にも十分な介助がされていないよということを通報していた。

 こういう重要な情報が住民の方や法人の方から寄せられていた。いろいろなことを言ったり見たりしているわけですよ。だけれども、それは結局、有効な手だてにならなかった。市に言うと、権限がないと言ったり、あるいは、所管でないからわからない、そういうことがあるわけですよね。そうすると、情報の共有、県と市、あるいは同じ県、市の中でも課がいろいろ違う、そういう横の連携が絶対必要だと思いますが、いかがでしょうか。

舛添国務大臣 横も縦も含めて厚生労働省と自治体との連携が必要だということは、それはもう委員のおっしゃるとおりであります。

 ただ、医療や介護の現場は、基本的にはその現場である自治体にしっかりしてもらわないといけない。我々は、指導し、通達を出し、やりますけれども、これは全部厚生労働省が入ってやれといったら、あと何千人、何万人、人員をふやしてもらわないといけなくなっちゃいますから、我々もきちんと連携をとってやりますけれども、ぜひ自治体の皆さん方にも、現場ですから、しっかりとやっていただきたいし、そのために必要な指導を行いたいと思っております。

高橋委員 自治体にしっかりやってもらうためには、その権限を与えなければなりません。

 平成十九年三月二十日、老健局通知で「有料老人ホームの届出促進等に関する総合的な取り組みの徹底について」、この中で「対象施設の把握推進に当たっては市区町村の協力も不可欠である。」と。平成十九年ですから、二年前に明記をされているわけです。でも、現実には全然やられていないわけです。

 だから、例えば県が立入調査をやるとしても、市に同行してもらう、市が一番身近で情報をよくわかっている、だったら、市が一定の権限を持つとか、そういうこともやったらいいんじゃないでしょうか。消防でも、消防の立場で査察もしております。あるいは、本来なら建築確認がやられているべきだった、そういう部局の問題もある。あるいは、虐待防止法ということもございます。

 そういう点で、市がそこで遠慮するわけではないのだということは明確にする必要がある。二年前に既に通告しているわけですから、そうした立場に立つべきだということで、もう一度お願いします。

舛添国務大臣 厚生労働省の指導通達、これをきちんと実行していただくように、各自治体にさらに徹底をしたいと思いますし、都道府県の知事と私との定期協議の場もありますので、そういう場を使いましてこれは徹底したいと思います。

高橋委員 そこで大臣、今度、補正予算で、介護職の賃上げ、あるいは施設整備を含め一兆円投入だということが報道されています。それで、大臣は、先ほど来の議論でも、施設が不足しているのでふやしたい、交付金を活用したいということを述べておられます。

 そこで、一体どのようなところに、施設にも種類がたくさんございますし、整備費はこの間交付金化されて、都道府県の補助はないわけであります。自治体の財政難とか、法人はやはり介護報酬との絡みで何がもうかるかということを考えざるを得ない側面がございます。どこに支援をするつもりですか。

舛添国務大臣 例えば、ふえ続ける介護の必要な御老人の方々をどこでどういうふうに見るか。在宅というのが一つの手であるし、施設介護でも、大規模なものがいいのか、グループホームのような小規模なものがいいのか、いろいろな意見があると思います。

 そしてまた、それぞれの施設に対してのどこに支援をしてもらうのが一番いいのか。ただ、よく言われるように、その数をそのままうのみにするわけじゃありませんが、特養の待機者が三十八万五千人ということもあります。ですから、今回の悲劇のようなことが起こらないためには、施設も含めて介護のキャパシティーを相当高める必要があると思いますので、具体的にどこにどうするかというのは、今与党の方でも検討を進めていただいていますので、そういう議論を踏まえた上で、さらに検討を進め、財源的な措置もできればやりたいと思います。

高橋委員 そこで、今回の悲劇が起きないようにということで、やはりそういう方たちの受け皿として施設がなかなかなくなってきたことがまた一つ問題があるのではないかということで、幾つか伺ってみたいと思うんです。

 資料の三枚目にありますけれども、これは総務省の介護保険事業等に関する行政評価・監視、昨年の九月に出されました。高専賃の登録件数の推移ということで、平成十八年三月末では九十八件、それが二十年の三月末には七百八十三件と、八倍にもなっているわけです。そのうち、介護のサービスを提供しているのが三十三件から二百三十七件と、七倍にもなっております。

 総務省が指摘をしているのは、高専賃というのは国交省の所管でありますけれども、住まいであるというところに重きがあるものですから、二十五平米以上で、トイレ、洗面、前払い家賃の保全措置など要件を備えていれば、有料老人ホームとしての規制が適用されないのだと。そうすると、介護などのサービスを提供しながら、有料老人ホームとしての規制が適用されていない、高専賃に対して行政の関与が薄いのではないかという指摘をしております。

 ですから、厚労省としては、ここはやはりきちんと規制ができるようにするべきではないかと思うんです。一方で、今回の事件があって、ああ、未届けだったねという話になって、有料老人ホームの届け出や規制が強まれば、では高専賃を名乗ってまた規制を逃れるというふうなことになっては困るわけです。そういう点で、いかがでしょうか。

宮島政府参考人 お答えいたします。

 必要な住戸面積が確保されているなど一定の要件を満たす高専賃、これは確かに有料老人ホームの定義から除外されています。

 総務省からは、このような規制の対象とならないものについて、都道府県の指導監督権限の強化を図るべきという指摘を受けております。

 それで、今国会に、国土交通省と厚労省の共管で、国土交通委員会の方に、高齢者の居住の安定確保に関する法律の一部を改正する法律案を提出しておりますが、この中で、高専賃について、登録基準の設定や指導監督の強化に係る規定も盛り込まれております。

 さらに、規制の内容、実態を踏まえ、高専賃に対する老人福祉法上の取り扱いをどうするかというのが今後の検討課題というふうに思っております。

高橋委員 今、法案に、今国会、所管が違うわけですけれども、非常に密接な関係があります。そこの中に指導監督、規制を強める検討がされるというお話でしたけれども、その説明を受けたんです。だけれども、介護に着目をした監督とは必ずしも法案からは読み取れないわけです。

 そういう立場で厚労省がやはり国交省と整合性をとらなければだめだ、そういう立場でよろしいですか。

宮島政府参考人 厚生労働省としては、国交省との連携はもちろんでございますが、今の御指摘の点を踏まえまして、老人福祉法上どういうふうな取り扱いをするかという検討をしてまいりたいと思います。

高橋委員 そこで、資料の四枚目を見ていただきたいと思います。

 介護老人福祉施設、いわゆる特別養護老人ホームは、平成十五年の五千八十四カ所から五千八百九十二カ所にふえておりますが、そのうちユニット型が七十五カ所から千四百三十九カ所にもなり、割合で二四・四%になっています。ですから、予算措置も、言ってみれば、ユニット型しかつくっちゃだめよということがあり、急激に伸びてきたし、割合も高まってきたのは当然のことなわけです。

 厚労省は、平成二十六年度までに、特養のうち、ユニット型を七割、介護三施設で五割を目指すとしています。しかし、ユニット型では生活保護受給者が入れないではありませんか。

宮島政府参考人 今の御指摘のとおり、生活保護受給者は、ユニット型ということで、介護補助の対象にならないということでございます。

 ユニット型については、今は二割程度ですが、将来七割ということを目指して、今後の施設のあり方を考えていくと、一つは、痴呆性老人の方の介護をどうやっていくかという問題があるということ、それから、今の団塊の世代が高齢化していったときに、どういうような居住空間というかそういうものを希望するかというようなことを踏まえまして、このユニットを進めていくということで考えているところでございます。

高橋委員 大臣、どうですか。先ほど来お話ししているのは、この不幸な事件を繰り返さないように施設をふやしたいとおっしゃっています。だけれども、生活保護世帯が、結局行くところがなくて、あのような施設に行って、今回のような事件が起きた。だけれども、厚労省の方針としてユニット型にするんだと言っている。生活保護世帯は入れない、そういうところばかりふやしてどうするんですか。

 私は、ユニット型が悪いと言っているのではありません。しかし、これだけでは、結局入れない人が出てくるということなんです。政策的に生活保護世帯、低所得者を締め出してきた、現実にそういうことになります。

 ですから、ユニット型にも入所を認める。あるいは、多床室がよいのだ、ひとりぼっちはむしろ寂しいという声も現実にあります。柔軟に多床室とユニット型を組み合わせる、こういうことがあってもよいのではありませんか。一言お願いします。

舛添国務大臣 どちらがいいかというのは、今委員おっしゃったように、一人だと寂しいという声もあります。ただ、やはりいろいろな意味で、特に認知症の場合は一人であった方がいいなと私も思う場合もありますし、そこはいろいろ御議論しないといけないと思いますし、本当に困った人たちにさまざまなサービスをどういう形で提供するか、これは大きな課題だと思いますので、そういうことも含めて、施設整備のあり方は皆で検討していきたいと思います。

高橋委員 これではまた法の抜け穴ができてしまいますから、この点はしっかりと検討していただきたい、改善していただきたいと訴えて、終わります。

田村委員長 次に、阿部知子君。

阿部(知)委員 社会民主党の阿部知子です。

 本日は、一般質疑ということもあって、与党、野党の理事の御好意で、私どもの会派に三十分のお時間をちょうだいいたしまして、ありがとうございます。ふだん駆け足でやっておりますことが多いので、きょうは、少し考える論議というか、じっくりした論議が行えるような質問を二題にわたってお願いしたいと思います。

 一問目は、いわゆる新型インフルエンザ対策についてでございます。

 これについては、政府を挙げて、例えば二月十七日にも御報告のありました関係省庁対策会議等々で、特にパンデミックと呼ばれる流行が爆発的に来た場合にどうするかという対策をめぐっての会議もあると思いますが、私は、いずれにしろ、こうした感染症というものについては、ハンセン病についてもまたきちんとした新たな取り組みをということでございましたが、国民がその実態、何が本体であるかということをよく知る、国民が知るということが、まず第一の、対策の原点なんだろうと思うんです。

 その意味で、半年ほど前でしたか、流行に備えてプレパンデミックワクチン、まだ大流行にはなっていないけれどもそれに備える、プレ、前段階のパンデミックワクチンということの治験、治療実験において使われている同意書が、パンデミック、プレパンデミックの概念の混同があって、同意書をとるときに、同意される患者さんや、子供さんについては親御さんが、そこを誤解しかねない。パンデミック、大流行に備えるワクチンなんだと思ってサインをなさるということもあるだろうからこれは是正してくれということを申し入れて、しかるべく、同意書については徐々に是正されてまいりました。まだ完全ではないと思いますが、しかし、少なくとも誤解を招くことが少ない方向に、国民の持てる知識を正しくしていくということは厚生労働省行政の根幹かと思います。

 そうした流れの中で、さて、昨年の八月から多分十一月までの間に行われました六千人に対しての、同じようにプレパンデミックワクチン、大流行ではないけれども、パンデミックに備えてそれまでの間使えるかもしれないワクチンの六千人の接種計画というものがございまして、その中間報告なるものが、これまたメディアも通じて発表されました。私はこれを見て、またかというか、何でだと思うような用語の混乱がいまだに続いておりますので、冒頭、一問目はこれからお願いしたいと思います。

 皆さんのお手元に、ここには、二〇〇九年の一月十九日に代表研究者の庵原さんからメディア向けにレクチャーされたものの表紙を持ってまいりました。表紙の表書きは「新型インフルエンザプレパンデミックワクチンの安全性・免疫原性および交叉免疫性に関する研究」ということで、これ自身は以前よりも改善されて、よろしゅうございますが、そして下を見ていくと、「本臨床研究の目的」というところがありまして、ここではまた、沈沈降新型インフルエンザワクチンの株を対象に云々して副作用の出現頻度を確認しと。これだけ読みますと、新型インフルエンザワクチンをまた打って、その安全性を見たかに思われてしまうわけです。

 では、何でこんなことが起こったのだろうとここでまた考えましたところ、現状発売されているプレパンデミックワクチンの名前そのものが新型インフルエンザワクチンとなっているのであります、認可の段階から。本来はこれはプレパンデミックワクチンなのでありますから、新型インフルエンザワクチンそのものではないわけです。でも、その名前で認可されるということ自体が、これがまた混乱のもとになる。

 ちなみに、厚生労働省は御存じでしょうか。当時のこの治験の新聞並びに副作用を報じた新聞のほとんどが、いわゆる新型インフルといううたいで、備蓄ワクチンとなっていて、全部新型インフルという形でメディアが報道いたします。

 メディアは、今、国民と行政をつなぐ、逆に言うと最大のパイプであり、時に問題をはらんでいると私は思いますが、なぜそれではメディアがこういう書きぶりになってしまうんだろうと見ると、そもそもプレパンデミックワクチンに、新型、沈降型でも何でもいいんです、沈降型、新型インフルエンザワクチンと命名して許認可したところに問題があるのではないかと思いますが、その点について御答弁をお願いいたします。

    〔委員長退席、三ッ林委員長代理着席〕

高井政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘のワクチンでございますけれども、H5N1型で一定の有効性が認められるということで承認しているものでございます。

 御指摘のように、新型インフルエンザについては、人が経験したことがないHAまたはNA亜型のウイルスが流行したときにこれを新型インフルエンザと呼ぶと定義されておりますけれども、このワクチンにつきましては、今申し上げましたH5N1型が新型インフルエンザを引き起こす可能性が高い亜型として国際的に対策が進められていることから、販売名の中にH5N1株と明記した上で、新型インフルエンザワクチンという用語を用いて承認したものでございます。

阿部(知)委員 しかし、そういうふうに承認したことが、先ほどのメディアの報道も含めて、誤解を生んでいくわけです。

 これは、例えばモックアップワクチンといって、そうした新型のはやるウイルスに備えるワクチンという言い方もできるわけです。日本ではモックアップと言いませんが、こうした命名を使うところもあります。日本ではプレパンデミックと言っているので、そこに一文字入れるだけでも新型インフルエンザワクチンではないんだと予想して、可能性が高いかもしれないワクチンとしてこれは安全性が確認されているにすぎないわけです。

 私は、先ほど申しました、感染症にあっては国民の正しい知識の共有というのが大前提であります。これは、パニックを起こさないためにも大前提であります。こうした認可をめぐっても、私は、厚生労働行政のワクチン行政におけるある種のずさんさがあると思います。

 これは後ほど大臣に伺いますが、検討し直していただきたい。こういう名前を間違うことが過大な期待を抱かせるわけです。正しく命名して、プレパンデミックワクチンで十分であります。だって、新型インフルエンザがはやってからしか、そのはやった株を用いてしかワクチンはつくれないんだということを国民に知ってもらわねばならないんです、大臣。よくおわかりだと思います。これからはやるかもしれない、しかし、そのはやった株を使ってしか新型インフルエンザワクチンはつくれないのです。そのことを国民に知ってもらわねば、それに六カ月とか一年かかる、その間にこのプレパンデミックワクチンは使えるかもしれない、そういうものであります。峻別せねば、混乱は増大いたします。

 後ほど大臣に御答弁の時間をいただきますので、ちょっと幾つか先に行かせていただきます。

 そして、このワクチンに関しては、いろいろな意味で、これはもう明確にした方がいいと思う部分があります。

 そもそも、今、不活化ワクチンで、中和抗体という、ウイルスに対して抗体をつくるタイプのワクチンは、発症予防ではあっても感染予防ではないんですね。このワクチンを打っておけば、インフルエンザ新型ではないにしても、その間のインフルエンザにかからないというのではなくて、軽症化するか、発症を、要するに感染はしたんだけれども病気になることの程度を低める。発症予防とか重症化予防といいまして、これは感染とは違うんですね。

 これは、ちょうど一年前、感染症の審議のときに随分私も問題にしましたし、感染症にあっては、感染しているということと、発症する、あるいは重症化する、これも明確に区分すべきだと。ここについても、混乱が生じがちな説明が随所にあります。これについてはどうでしょうか。

    〔三ッ林委員長代理退席、委員長着席〕

高井政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のように、このワクチンにつきましては、H5N1型に対する抗体価等から見て、症状の軽減化と致死率の低下等、いわゆる重症化予防効果が期待できると考えております。

 通常のインフルエンザワクチンにおいても、感染防御ではなく、重症化防止を目的としていることを考えれば、このワクチンについても重症化の防止を期待するものと考えております。

阿部(知)委員 私がお願いしたいのは、そうした科学的な知見を正しく国民に伝えていただきたい、過大広告はやめていただきたい、それが混乱のもとであるということであります。

 続いて大臣にお伺いいたしますが、この六千人への治験が一応終わり、中間報告が出た段階で、八例の有害事象、例えば、打った後、発熱したり、あるいは、もともと心臓が悪かった方に不整脈が出たり、若い女性がクモ膜下出血したりと。直接ワクチンと関係あるかどうかは別にして、有害事象が八例あるということで、今、追加調査をなさっているそうであります。

 今、新型インフルエンザについてはフェーズ3と呼ばれる段階で、まれに人に感染したという鳥から人への感染がある段階で日本が六千人の集団接種に踏み切ったということは、世界に例がありません。なぜ例がないかというと、一九七六年にアメリカで同じように、ブタ型インフルエンザというんですが、ワクチンを打ったところ、ギラン・バレーという神経麻痺の副反応がたくさん出て、訴訟が多発して大変であった。やはり、危機がどこまで迫っているかでどの程度リスクのあることが許されるかという、危機と安全性のてんびんが常にワクチンの行政の根本であります。

 次に一千万人計画というのがここには控えているわけですが、大臣は、これに踏み込む以前にあって、一には正しい国民への情報の周知、ワクチン名もしかるべく変えていただく、そしてさらに、やはり副反応を見て、ここで進むかとまるか、判断のときだと思います。そうしたことも含めて、大臣に御答弁をお願いいたします。

舛添国務大臣 この新型インフルエンザの問題は、いつでしたか、NHKがシミュレーションドラマのようなものをつくりましたし、国立感染研究所の研究員の中でもいろいろな意見の方がおられて、とにかく一刻も早くもっと大々的な準備をしないと大変なことになる、この国会の衆参におけるさまざまな委員会での質疑においても、こんな程度では足りませんよ、もっとやりなさいという意見もあれば、今の阿部委員のような、安全性をきちんと確保してからという意見もございます。

 そして、まず後者から申し上げますと、今月中にフォローアップの研究報告が出ますので、これを踏まえた上で副作用事例かどうかを確定する、そういうことを含めて専門家の間で広く検討して、さらに進むかどうかということは慎重に考えたいと思います。

 それから、私も、そういう名前でプレパンデミックワクチンが承認されているということは、薬品名までは知りませんでしたので、こういうことについて、変えることが可能かどうか検討させていただきたいと思います。

阿部(知)委員 前向きな御答弁をありがとうございます。

 私は、副作用の問題もこれあるけれども、特に、まだ現段階が鳥からまれに鳥を扱った人への伝播段階であるということで、本当に一千万人も踏み込む時期かどうかという判断を大臣にさらにお願いしたい。

 私がそう申しますには、では本当に何もしなくていいのかというと、やはりそうではなくて、しかるべく対策を打つべき、本筋の王道が踏まれていないのではと思うからであります。

 次のページをごらんいただきたいと思います。

 実は、インフルエンザ、特に新型というのは、大きな流行を起こし、スペイン風邪、香港風邪、アジア風邪、これまで三回にわたってたくさんの患者さんやあるいは死者を出したということで問題になっている、通常の人間のインフルエンザの中で非常に伝染力と流行範囲が広いものをいうわけです。

 では、過去の経験から私たちは何を学ぶべきかということで、ここに、香港ウイルスとスペイン風邪を起こしたスペイン・ウイルスの機序が最近明らかになってきましたので、これを御紹介したいと思います。

 下に世界地図がございまして、ここを見ていただきますと、渡りガモ、そもそもインフルエンザのA型ウイルスというのはカモの腸内に生息している常在であります。ずっとそこにいるわけです。この渡りガモから水辺にすむアヒル等々に、これは、カモが出したふんが水の中に入り、そこにすむアヒルがそれを食べるという形で繁殖し、さらにここから豚にうつります。この豚は、実は、同時に人間からのインフルエンザにもかかるという特別な存在なのであります。鳥のインフルエンザに対するレセプター、感受性を持ち、人のインフルエンザに対する感受性を持つ豚、この豚の中でトリ型とヒト型のインフルエンザが集合体をつくったときに新しい香港ウイルス型ができた。これは、ウイルスを丹念に追った知見であります。

 この香港ウイルス型は、例えばここに書いてあるH3N2、ウイルスの表面にある糖たんぱく質の構造でHとNを分けていくわけですが、今の新型インフルエンザワクチンと称しているものはH5N1ですが、かつてはやった香港ウイルスはH3N2であります。しかし、これがどこの由来かというと、さっき言った、水辺のアヒルから鳥、鶏にうつり、あるいは豚にうつり、そして人から豚にうつり、豚の中で集合体を来してH3N2となった。

 一九一八年のスペイン風邪も、実はこれと同じように、NとHの亜型をたどると、このカモが、北アメリカの中で発症した豚から来るウイルスではないかと言われているわけです。

 そして、その上段を見ていただくと、カモ、アヒル、ガチョウというのが左側、人というのが右側、これが豚の気道の粘膜で出会って集合体ができる、もうこうした結果も出ているわけです。

 では、今我が国がやっていることは何かというので、次のページを見ていただきたいと思います。

 これは厚生労働省の私どもに下さいますいろいろな資料の中から選んできた図でありますが、ここにはちょっとカモはいなくてアヒルから始まるのですが、アヒルから鶏に行き、鶏から上と下の段の人に行き、人から人へ、人から人へというのが両サイドにかいてあります。真ん中に、鶏から豚に行き、その上に小さく、人から豚に行き、豚を介して人というルートもあるわけです。

 今のH5N1とは何を追っているかというと、鶏から人に行き、人に行くというところを追っているのですが、しかし、鶏から人に行くときの感染には特徴があって、ある家系的な特徴があるということがわかってまいりました。家族内でも、親子に伝播するけれども御夫婦には伝播しない。となると、受けた人間側にトリ型ウイルスに対する感受性の高い人がいて、それが今のH5N1になっている。しかし、あまねく広くだれにもうつしているものではまだないわけです。この段階で何をなすべきかなんです。

 この場合は、疫学調査と申しまして、まず、本当はカモから始まるんですけれども、少なくとも豚のフォロー、それから人間。実は、ことしは物すごくインフルエンザが多うございました。クリニックで外来をやっていても、次から次に発熱の方が来られて、受付の人もお医者さんもインフルエンザにかかってしまうくらい多かったけれども、人の流行をどうやって抑えていくのかと豚をフォローするということ、もっと言えば、生態系全部、家禽類全部の疫学的なフォローアップをして、何型が来るかをウオッチしなきゃいけない段階なんだと思うんです。

 大臣、一気にしゃべって恐縮ですが、やはりこれはこの国の対策の本質ですので、今私は本当は健康局長に振らなきゃいけないんだけれども、時間がなくなってしまったので、大臣に。きょう、もしかして、そういうことも初めて、ああ、そうか、言われていることはこうかと思われたかもしれません。農水省とも協力し、厚生労働省も環境省もあるいはWHOも、これは全部やらなきゃフォローできないんです。ここの対策を過つことのないようにやっていただきたいが、いかがでしょうか。

舛添国務大臣 阿部さんと私が同級生だということを言って昔の委員長にしかられたことがございますけれども、何か我々が学生時代のことを思い出して、理3の授業を受けているような気がいたしまして、大変教えられました。

 こういうことを含めて、厚生労働省に足りないところ、また農水省を含めて、これは政府全体でインフルエンザ対策をやらないといけないので、全力を挙げて取り組みたいと思います。

阿部(知)委員 ありがとうございます。

 あと一つだけ、発熱外来というものについてお答えいただきたいです。

 先ほど申しましたように、対策として抜けているのは、現状の人インフルエンザのワクチンは、去年は二千万本も使ったんですけれども、発症は多少は予防できている、赤ちゃんのインフルエンザの脳症も少なかったかなと思うけれども、実は、やはりさほどにインフルエンザの予防ワクチンの発症予防効果も高くはない。この部分の開発ですね。あと、発熱外来と言われても、もしパンデミックになんかなって全部来たら、どんな病院機能だってパンクしちゃいます。まず最初に、どんなに予防しても、お医者さんと看護師さんは全部やられて、そしてだれもいない状態になります。

 どうやってこの発熱外来をさばくかというか、前さばきが必要と思いますが、それについて短く御答弁ください。

上田政府参考人 本年二月に策定しました医療体制に関するガイドラインにおきまして、既存の医療機関に専用外来を設置する形態が望ましいんだけれども地方の特性に応じて柔軟に対応すること、新型インフルエンザ以外の疾患の患者と接触しないように入り口などを分けるなど院内感染対策に十分配慮すること、感染対策が困難な場合には施設外における発熱外来設営などを検討すること、実際の運用を確認するため事前に訓練などを重ねておく、このようなことを示したところでございます。

 今、WHOの方で、こういう新型インフルエンザがパンデミックになったときに、その重篤性と感染力の調査について評価をして早く関係国に知らせる、そういうことを踏まえて発熱外来の運営も考えていかなければならない、このように考えております。

阿部(知)委員 現実的に対応が可能で、なおかつ、たくさんの人がそこに集えば必ず感染は蔓延するんですね、ここを本当にわきまえた対策なりを地方の市町村にもおろしていただかないと、発熱外来をつくれと言われても、実は、機能しないどころか、そこが感染拡大源になりますので、なおよろしくお願いしたいと思います。

 二題目ですが、実は、三月二十七日、東京女子医大での、平柳明香ちゃんというお嬢さんが八年ほど前に亡くなられたことの刑事裁判の二審判決がおりました。

 すごく簡単に言うと、この平柳明香ちゃんは、女子医大で、人工心肺というものを回して、心房中隔欠損という、子供の心臓の病気としては決してその手術で死んだりはしないだろうと思われているような御病気で手術を受けて、この人工心肺が詰まったために脳が虚血になり亡くなったのではないかと言われている事案で、皆さんのお手元の四ページ目に事件の経過が書いてございます。二〇〇一年の三月に事故が発生して二〇〇九年の三月に二審判決がおりるまで、院内の調査委員会、院外の調査委員会、学会の報告、一審判決、二審判決と五回にわたっていろいろな判断、評価が行われたわけですが、どれ一つとして同じじゃないんですね。

 結果的に見て、親御さんは、では、なぜ娘は死なねばならなかったのか。刑事裁判として検察が告訴しても、結局、予見ができないから無罪であるというふうな判断になるけれども、無罪であるということと何が起きて子供がそうなったんだろうということは全く違う。

 これは大臣もよくおわかりと思いますが、医療事故調査委員会というものの必要性は、こうした刑事罰か否かで問うのではなくて、何が起きて、何が対策されれば、患者さんにも医療者にも、また次の不幸も防げるか。そういう道が全く今開かれていないんですね。

 次のページを見ていただきますと、ここには、この間、司法の判断が下った三例。杏林大学で四歳の男の子がわたあめの割りばしをのどに突いて亡くなり、しかし、これについても、耳鼻科のお医者さんが見て予見が不可能であったろうと。しかし、子供は死んだわけですね。女子医大は、今お話しいたしました。あるいは、三番目の大野病院は、これはもう皆さん有名ですから。

 しかし、これらいずれも、医師を刑事罰で裁くことは適切でなくとも、さっき言った何が起きたかということにおいては、依然としてやみの中であります。私は、こうした事態が長く放置されることは、患者さんにとっても医療現場にとっても限界に近くなっていると思います。

 そこで、お尋ねをしたいですが、これも時間の関係で詰めて申しますが、この中で特に目立つのは、例えば割りばし事件でも東京女子医大事件でも、カルテが改ざんされているわけです。確かに刑事罰には問われないかもしれない、しかし、何かが起こって診療録が改ざんされてしまったら、やみは広がるばかりで、真実が消える、不信が高まる、そして刑事罰もないとなってまいります。

 ここで、大臣に二つのことをお願いしたいです。

 一つは、事故調査委員会というものを、こうした警察やあるいは厚労省の行政処分とは別に、本当に何が起きたかの調査に特化して進める。これは、いろいろな意見があります。でも、私は、事実は何かというところが解明されないと、本当に不幸は拡大する。

 例えば、福島県の大野病院でも、お医者さんが、続けて出血が起きているときに看護師さんたちはとめていたんですね、これ以上進んだら危ないと。しかし、これは刑事罰ではなかった。でも、私はチームワークの問題なんだと思います。解決されるべきことがあると思うんです。

 調査委員会は、一人一人の罰を問うのではなくて何が起きて何が対策されるべきかを求める場だということと、カルテ改ざん等々は、やはり医道審議会できちんと、そうした事実がわかった場合に、もちろん、医師を教育する、再発防止をする、あるいはカルテ改ざんはしていけないと法改正をする手だってあるんです。大臣、いかがでしょうか。二問お願いします。

舛添国務大臣 医療事故の患者さんないし亡くなられた患者さんがいればその家族の方々、しょっちゅういろいろな議論をしておりますけれども、何が欲しいですかというときに、補償してほしいとかいうことよりも、一番は真実が知りたい、これが一番多い声でありますので、ぜひそれが可能なような形にしたいと思いますし、医療事故の調査委員会をどう設けるかというときにもその視点が大事だろうというふうに思います。

 そして、私が心しているのは、医療サービスの提供者と受け手、両方の声に公平に耳を傾けることです。福島県の大野病院の例だと、医療提供者の声が圧倒的に多かったような気がします。しかし、私は亡くなられた気の毒な妊婦さんのお父様にもお会いしてその声も聞きましたし、今の委員がおっしゃったようなお話も聞いております。ですから、医療サービス提供者、受益者、両方の声をよく聞いた上でどうするかということを考えたいので、まだ最終結論に至らなくて、なぜ早くしないんだという意見もありますが、そこは慎重に進めて事故調査委員会の結論を出したいと思っています。

 それから、カルテ改ざんその他について、これは医道審議会を含めて、どういう形で、こういうやってはならないことをやった医師や看護師がおれば、どう対応するかということについては検討させていただきたいと思います。

 それともう一つは、これは裁判の場合も今言われていますように、検察の取り調べがおかしいんじゃないかということで、鈴木宗男議員なんかは可視化というようなことを言われていますので、医療の現場を、診療行為を可視化するとはどういうことなんだろうか、プラスマイナスあると思います、検討を進めさせていただきたいと思います。

阿部(知)委員 前向きな御答弁、ありがとうございます。

 実は、東京医大では、手術を全部ビデオに撮っておくとか、あるいは同意をビデオに撮っておくとか、そういうことで可視化を進めているという取り組みもあるそうです。大臣には、ぜひ御尽力いただきたいと思います。

 ありがとうございます。

     ――――◇―――――

田村委員長 この際、お諮りいたします。

 第百六十九回国会、後藤茂之君外三名提出、あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律等の一部を改正する法律案につきまして、提出者全員より撤回の申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

田村委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

     ――――◇―――――

田村委員長 あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律等の一部を改正する法律案起草の件について議事を進めます。

 本件につきましては、先般来各会派間において御協議をいただき、今般、意見の一致を見ましたので、委員長において草案を作成し、委員各位のお手元に配付いたしております。

 その起草案の趣旨及び内容について、委員長から御説明申し上げます。

 国民の保健医療に直接的にかかわるあんまマッサージ指圧師、はり師、きゅう師、歯科衛生士、診療放射線技師、歯科技工士及び柔道整復師は、国民の健康保持に大きな役割を果たすものであることから、その免許付与者は厚生労働大臣とされているところです。しかしながら、医療関係職種のうち、医師、歯科医師、薬剤師、看護師等の資格試験については、法律上、国家試験と明記されている一方で、これらの七職種については国家資格であるにもかかわらず、法律上、試験の名称が国家試験とされておりません。

 これらの業務に携わろうとする者が今後とも国民の信頼になお一層こたえていくためには、国家資格に係る業務に携わる者としての使命感を高め、その資質向上を通じてこれらの業務の適正遂行を図る必要があります。

 本案は、このような状況にかんがみ、これらの資格に係る試験が国家試験であることを明確にするため、その名称を国家試験と法律上明記する措置を講じようとするものであります。

 なお、この法律は、平成二十一年九月一日から施行することとしております。

 以上が、本起草案の趣旨及び内容であります。

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 あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律等の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

田村委員長 お諮りいたします。

 お手元に配付しております草案をあん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律等の一部を改正する法律案の成案とし、これを委員会提出の法律案と決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

田村委員長 起立総員。よって、そのように決しました。

 なお、ただいま委員会提出と決しました法律案の提出手続等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

田村委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

     ――――◇―――――

田村委員長 内閣提出、国民年金法等の一部を改正する法律等の一部を改正する法律案、長勢甚遠君外九名提出、社会保険の保険料等に係る延滞金を軽減するための厚生年金保険法等の一部を改正する法律案、長妻昭君外六名提出、厚生年金保険の保険給付及び国民年金の給付の支払の遅延に係る加算金の支給に関する法律案、第百六十八回国会、後藤茂之君外三名提出、国民年金事業等の運営の改善のための国民年金法等の一部を改正する法律の一部を改正する法律案及び第百六十八回国会、参議院提出、国民年金事業等の運営の改善のための国民年金法等の一部を改正する法律の一部を改正する法律案の各案を議題といたします。

 内閣提出、国民年金法等の一部を改正する法律等の一部を改正する法律案、長勢甚遠君外九名提出、社会保険の保険料等に係る延滞金を軽減するための厚生年金保険法等の一部を改正する法律案及び長妻昭君外六名提出、厚生年金保険の保険給付及び国民年金の給付の支払の遅延に係る加算金の支給に関する法律案の各案につきまして、順次趣旨の説明を聴取いたします。舛添厚生労働大臣。

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 国民年金法等の一部を改正する法律等の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

舛添国務大臣 国民年金法等の一部を改正する法律等の一部を改正する法律案について、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。

 平成十六年に成立した年金制度改正法においては、長期的な負担と給付の均衡を図り、制度を持続可能なものとするため、基礎年金の国庫負担割合を平成二十一年度までに二分の一に引き上げることとされております。

 この法律案は、これを踏まえ、平成二十一年度からの基礎年金の国庫負担割合を二分の一に引き上げるための所要の措置を講ずるものであります。

 以下、この法律案の主な内容について御説明申し上げます。

 第一に、国庫は、平成二十一年度及び平成二十二年度については、現行の基礎年金の国庫負担割合に基づく負担額のほか、財政投融資特別会計から一般会計への特例的な繰り入れを行い、当該額と国庫負担割合二分の一に基づく負担額との差額を負担することとしております。

 第二に、所得税法等の一部を改正する法律附則の規定に従って行われる税制の抜本的な改革により所要の安定財源の確保を図った上で、基礎年金の国庫負担割合の二分の一への引き上げを恒久化すること、その他所要の措置を講ずることとしております。

 このほか、関係する法律の改正について所要の措置を行うこととしております。

 最後に、この法律は、平成二十一年四月一日から施行することとしております。

 以上が、この法律案の提案理由及びその内容の概要でございます。

 何とぞ、御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。

田村委員長 次に、長勢甚遠君。

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 社会保険の保険料等に係る延滞金を軽減するための厚生年金保険法等の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

長勢議員 ただいま議題となりました社会保険の保険料等に係る延滞金を軽減するための厚生年金保険法等の一部を改正する法律案につきまして、提出者を代表して、その提案の理由及び内容の概要を御説明申し上げます。

 厚生年金や労働保険などの社会保険においては、事業主等が保険料の納付義務を負っております。しかし、現下の厳しい経済社会情勢の中、社会保険の保険料等の期限内の納付が困難になっている事例が多くあると推定されます。このような場合、年一四・六%の割合で課せられる延滞金は、事業主等にとって大変重い負担となっております。こうした事業主等の経済的負担の軽減に資するため、国税徴収の例を参考にし、社会保険の保険料等に係る延滞金の割合を納付期限から一定期間軽減する措置を講ずることとした次第でございます。

 以下、この法律案の主な内容について御説明申し上げます。

 現行では、年一四・六%の割合で徴収している社会保険の保険料等に係る延滞金のうち、広く事業主が負担・納付義務を負っている厚生年金保険料、健康保険料、児童手当拠出金等に係る延滞金については、納付期限の翌日から三月を経過する日までの間、労働保険料等に係る延滞金については、納付期限の翌日から二月を経過する日までの間、それぞれ年七・三%に軽減することとしております。

 ただし、当分の間、日本銀行が定める基準割引率に年四%を加算した割合、平成二十一年は四・五%でありますが、これが年七・三%に満たない場合は、その割合とすることとしております。

 なお、この法律は、一部を除き、平成二十二年一月一日から施行することとし、延滞金の軽減措置は、施行日以後に納付期限の到来する保険料等に係る延滞金に適用することとしております。

 以上が、本法律案の提案の理由及びその内容の概要であります。

 何とぞ、御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。

田村委員長 次に、内山晃君。

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 厚生年金保険の保険給付及び国民年金の給付の支払の遅延に係る加算金の支給に関する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

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内山議員 私は、ただいま議題となりました、民主党・無所属クラブ、社会民主党、国民新党提出の厚生年金保険の保険給付及び国民年金の給付の支払の遅延に係る加算金の支給に関する法律案、いわゆる年金遅延加算金法案につきまして、提案者を代表して、提案理由及び趣旨を御説明申し上げます。

 二〇〇七年二月に五千万件の未統合記録の存在が明らかになったことを発端とする年金記録問題は、問題発覚から二年余りが経過したにもかかわらず、いまだに新たな事案や疑念が次々と生じ、極めて深刻な状況に置かれています。

 それにもかかわらず、年金記録問題に対する現在の政府の取り組みでは、いたずらに時間が経過するばかりで、被害者の救済が全く進んでいません。

 こうした状況の中で、年金記録が訂正された場合であっても、過去にさかのぼって正しい年金額が支払われるのは、半年から一年以上かかると言われています。その上、現行法では、年金支給のおくれに対しては何らの金利も付されていません。その一方で、保険料の延滞納付には一四・六%という高金利が付されており、国民の側のみが不利益をこうむっています。

 年金とは、現役を退いた後の生活の糧であり、記録の漏れや誤りが見つかったら、まとめて支払えばそれでよいというものではありません。年金記録が適正に管理され、当初から正しい年金額が支給されていたならば、その受給者の方の生活は大きく変わっていたかもしれません。本来、支給されるべきときに受け取れず、大幅におくれて支給されること自体が、受給者の方にとっては多大な損失であります。せめて、記録訂正によって支給される年金額が、現在価値に見合う額となるようにする必要があります。そこで、本法律案は、過去に遡及する期間の物価上昇率等を勘案して、加算金を支給できるようにするものです。

 以下、法案の概要を御説明申し上げます。

 本法案が加算金を支給する対象は、受給権者について年金記録の訂正が行われた上で年金が支払われる場合に、受給開始時に遡及して支払われる過去分の年金給付とします。

 加算金の率は、本来支給される年金が支給されていた場合と同じ経済的立場に置く観点から、物価の状況を勘案して政令で定めるものとし、その財源は年金特別会計から支出し、初年度の財源規模としては最大で七百億円と見込んでいます。

 また、加算金の支給を含めて適正な年金記録に基づいた年金の支給業務が円滑かつ迅速に遂行されるよう、国が人材の確保その他必要な体制の整備を図ることを定めています。

 この法律の施行は、公布の日から起算して六月を超えない範囲内において政令で定める日とします。

 以上が、本法律案の提案理由及びその概要であります。

 舛添厚生労働大臣は、本年一月の予算委員会において、この問題について対応を検討すると答弁されましたが、厚生労働省・社会保険庁ではほとんど検討されておりません。被害者となった受給権者の立場に立ってみれば、本法案による加算金の給付は当然の権利であります。

 与野党を超えた議員各位の御審議と御賛同をお願い申し上げます。

田村委員長 以上で各案の趣旨の説明は終わりました。

 この際、お諮りいたします。

 第百六十八回国会、後藤茂之君外三名提出、国民年金事業等の運営の改善のための国民年金法等の一部を改正する法律の一部を改正する法律案及び第百六十八回国会、参議院提出、国民年金事業等の運営の改善のための国民年金法等の一部を改正する法律の一部を改正する法律案の両案につきましては、第百六十八回国会におきまして既に趣旨の説明を聴取しておりますので、これを省略いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

田村委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

 国民年金事業等の運営の改善のための国民年金法等の一部を改正する法律の一部を改正する法律案(第百六十八回国会、後藤茂之君外三名提出)

 国民年金事業等の運営の改善のための国民年金法等の一部を改正する法律の一部を改正する法律案(第百六十八回国会、参議院提出)

    〔本号末尾に掲載〕

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田村委員長 次回は、来る三日金曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時三十四分散会


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