衆議院

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第7号 平成21年4月3日(金曜日)

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平成二十一年四月三日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 田村 憲久君

   理事 上川 陽子君 理事 鴨下 一郎君

   理事 後藤 茂之君 理事 西川 京子君

   理事 三ッ林隆志君 理事 藤村  修君

   理事 山井 和則君 理事 桝屋 敬悟君

      赤池 誠章君    新井 悦二君

      井澤 京子君    井上 信治君

      遠藤 宣彦君    大野 松茂君

      金子善次郎君    亀井善太郎君

      川条 志嘉君    木原 誠二君

      木村 義雄君    清水鴻一郎君

      杉村 太蔵君    高鳥 修一君

      谷畑  孝君  とかしきなおみ君

      戸井田とおる君   長崎幸太郎君

      西本 勝子君    萩原 誠司君

      林   潤君    福岡 資麿君

      馬渡 龍治君    盛山 正仁君

      市村浩一郎君    内山  晃君

      岡本 充功君    菊田真紀子君

      郡  和子君    園田 康博君

      長妻  昭君    細川 律夫君

      三井 辨雄君    柚木 道義君

      福島  豊君    古屋 範子君

      高橋千鶴子君    阿部 知子君

      糸川 正晃君

    …………………………………

   厚生労働大臣       舛添 要一君

   総務副大臣        倉田 雅年君

   厚生労働副大臣      大村 秀章君

   厚生労働大臣政務官    金子善次郎君

   厚生労働大臣政務官   戸井田とおる君

   政府参考人

   (内閣法制局第四部長)  近藤 正春君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 中島 明彦君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 小原 雅博君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長)    木倉 敬之君

   政府参考人

   (厚生労働省老健局長)  宮島 俊彦君

   政府参考人

   (厚生労働省年金局長)  渡辺 芳樹君

   政府参考人

   (社会保険庁総務部長)  薄井 康紀君

   政府参考人

   (社会保険庁運営部長)  石井 博史君

   厚生労働委員会専門員   榊原 志俊君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月三日

 辞任         補欠選任

  とかしきなおみ君   馬渡 龍治君

  冨岡  勉君     盛山 正仁君

  三井 辨雄君     市村浩一郎君

同日

 辞任         補欠選任

  馬渡 龍治君     とかしきなおみ君

  盛山 正仁君     亀井善太郎君

  市村浩一郎君     三井 辨雄君

同日

 辞任         補欠選任

  亀井善太郎君     冨岡  勉君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 国民年金法等の一部を改正する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出第一九号)


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     ――――◇―――――

田村委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、国民年金法等の一部を改正する法律等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として内閣法制局第四部長近藤正春君、外務省大臣官房審議官中島明彦君、大臣官房参事官小原雅博君、厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長木倉敬之君、老健局長宮島俊彦君、年金局長渡辺芳樹君、社会保険庁総務部長薄井康紀君、運営部長石井博史君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

田村委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

田村委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。清水鴻一郎君。

清水(鴻)委員 自由民主党の清水鴻一郎でございます。

 きょうは、国民年金法等の一部を改正する法律等の一部を改正する法律案の質疑のトップバッターとして、同僚の皆様の御理解を賜りまして質疑させていただきますことを感謝申し上げたいと思います。

 まず最初に、年金の問題、これは社会保障そのものの根幹の問題でございます。私も何回か舛添大臣にお伺いもしましたし、いろいろな場所でも、麻生総理も、私は公式の場で質問をしたことはございませんけれども、お話をする中では、二〇〇六で示されました例の社会保障の二千二百億自然増の削減というのは無理があるなということをあらゆる場で幹部の方々にお聞きするわけでありますけれども、舛添大臣も何回かそういうことをおっしゃっています。

 先日も、参議院の予算委員会で野党の方の質問に対して与謝野財務・金融担当大臣も、やはり二千二百億削減は無理があるというような認識を示されたということでございます。しかし一方、二〇一一年度のプライマリーバランスをゼロにするということに対しては無理がある、もう旗はぼろぼろだ、だけれども旗を掲げていく必要はあるんだというようなこともおっしゃっていた。しかし、ぼろぼろの旗では国民も、幾ら旗を立ててもそれ自体が信頼がなければ余り意味のないことだというふうにも思いますし、むしろここは、今いろいろな調査でも舛添大臣に対しては非常に大きな期待がございます、そういう中で、厚生労働担当大臣としては、二千二百億、私が必ずはっきりと撤回するということを麻生総理に体を張ってでもやるんだ、そんなメッセージがないと。

 社会保障の関係者、医療関係者を中心に、私も、もうこれは事実上、例えば二十一年度でも実際上はなくなっているよと。特会の千四、五百億ですか、崩した。また、道路特定財源を社会保障に使えるようになった、大変新しい道もついてきているわけですね。そしてジェネリックで二百二十億ですか、その努力はありますけれども、ほとんど二千二百億削減というのは有名無実になっている。ここでははっきりと、撤回をして社会保障をしっかりやっていくということがまずやはりメッセージで伝わらなければ、いや、来年のことが心配、来年はあれだけれども再来年が心配だよと、いつまでも不安をあおっている。これは余り得策でもないし、ここは舛添大臣、ちょっとどうですか。次のトップリーダーとして一、二位を争うぐらいのいわば人気といいますか、そういう状況であります。そういうことも踏まえて、ここは体を張ってとめると言っていただけませんか。

舛添国務大臣 二十一年度の予算編成過程におきましても、内閣の中にあって、これはもう二千二百億は限界である、社会保障の手当てをきちんとしないとだめだということは相当強硬に申し上げてまいりましたし、麻生総理にもそれは申し上げるし、財務大臣との折衝のときもそうしました。

 その結果、委員おっしゃったように、二百三十億円というジェネリックでの削減はありますけれども、あとの六百億、これは道路関係の議員の皆さん方にも陳情をして、一般財源化した六千億の一割をここに回してもらう。それから、骨太の方針のところにも、社会保障や医療、こういうことは例外であるということを書いていただく。さらに、千三百七十億円というのを特別会計から捻出するということなんで、事実上、そういう意味では、今年度の予算編成過程においてはそういう方向にかじが切れたんだろうというように思っておりますが、法律的なこと、それから全体の今までの流れの中で、きちんとかじを切り直すなら直すでこれはやはり一定の手続はとらないといけないというように思っています。

 それと、今のこういう非常に厳しい経済情勢、雇用情勢ですから、プライマリーバランスのお話を先生はなさいましたけれども、私は財政再建至上主義ではいけないんだろうと思っています。財政は再建されたけれども国民は皆さん倒れてしまったというのでは何にもならないので。私は日本人の能力を信じていますから、多少の借金がふえたって、また元気になり、経済を活性化して、それは十分払えるだけの力はあるし、しかも、国債というのはほとんど日本国民が持っていますから。そういう意味で、財政をルーズにしていいということは申し上げませんけれども、財政再建至上主義で国民を殺すというような愚は避けないといけないというように思いますので、そういう方針で今後とも努力はしていきたいと思います。

清水(鴻)委員 ありがとうございます。

 ここは、今申し上げましたように、やはり国民に対しても百年に一度の危機でございます。そして、やはり社会保障はセーフティーネットがあってこその安心でありますから、少なくとも、社会保障の二千二百億削減していくんだということを一日も早く正式に撤回するというようなことが大変望ましいと思いますし、その努力をぜひ期待したいと思います。

 これはやっていれば切りがないので、ぜひそういうふうにやっていただきたいということを強く要望しまして、このことについては終わらせていただきます。

 次に、この間、予算委員会の分科会でも実は質問をさせていただいたんですけれども、今度、基礎年金の方の税を三分の一から二分の一に上げる、つまり、税負担、税での負担を大きくしていくわけでありますけれども、いわゆる国民負担率でございます。

 先日、予算委員会の分科会で、私が大臣に、中福祉・中負担というのは大臣としてはどんな負担率、もちろん負担があって給付があるわけですから、給付のメニューがしっかりして、こういう給付だからこういう負担をしてくださいというのが筋でありますけれども、少なくとも、中福祉・中負担というのは、諸外国、欧米諸国の例を見ても、アメリカは非常に特殊な国でございますけれども、ヨーロッパ諸国等を見ましても、負担率もかなり上がってきています。

 ただ、この間私は、日本もほぼ四〇%を現在負担していますし、それを超えてくるという状況でございますけれども、もちろん、表の、いわゆる国債を含めた負担もありますし、実際、保険料あるいは税で負担している直接的な負担と両方ありますけれども、少なくとも、四〇%前後に来ているという状況の中でお伺いしたわけです。私は、やはり五〇%というのは負担しなければならない一つのめどかなというふうに思うんですけれども、この間大臣は、実は、大体四〇%ぐらいかなと答弁していただいていますね。五〇%を超えるのはちょっと日本では難しいんじゃないかという御答弁をいただいている。

 私は、五〇%はやはり負担、そのかわりメニューはしっかりする。ヨーロッパ諸国の例を見てもほとんどの国がそういう状況になっています。その辺のところをもう一度確認をさせていただきたいと思うんですけれども、大臣、お願いします。

舛添国務大臣 基本的には、低福祉・低負担、高福祉・高負担、中福祉・中負担ということだろうと思いますが、現下の経済情勢の中で国民負担率を上げるのはやはり非常に厳しいだろうという気はしています。ただ、最終的には国民のコンセンサスですから、スウェーデンのように消費税が二五%、しかし、まさに高負担ですけれども高福祉、これがいいということであればそれでいいんだろうと思います。

 ただ、これから先は若干知恵を働かせたいと思うのは、それは、理想は低負担で高福祉が一番いいわけです。例えば中福祉・中負担と総理はおっしゃっていますけれども、負担の中に何が入るかというときに計算する式は、保険料と租税ですね。お金で計算できるものです。だから、理想的なことをいえば、例えば、地域コミュニティーにおいてみんながボランティア活動をするような形になれば、金銭的な負担はありません。統計上は出ません。それは、本人がボランティア活動をやることで時間がとられる、それを負担でお金に換算すれば別ですよ。

 だけれども、今からのもう一つの方向は、できるだけそういう金銭的な負担を減らして、しかし福祉の水準は維持するというのは、やはり介護にしてもそうですけれども、地域の介護力を上げる。地域の介護力を上げるためにボランティアの皆さん方に参加していただいて、ただというわけにはいかなくても、そういう意味で金銭的なコストを下げていくという方向もあろうかと思っていますので、そういうことも模索しながら、できるだけ国民の負担率は低くて、できるだけ高い福祉を実現したいというふうには思っています。

 ただ、それは口で言ってもなかなか難しいことはわかった上でそれを申し上げておきたいと思います。

清水(鴻)委員 国民負担率と給付の関係というのを実際資料で見ますと、大臣がおっしゃるように、低負担・高福祉がいい、これはもちろんそうでありますけれども、それはある意味では理論的にも成り立たないわけですね。やはり負担があって給付が伴う。もちろん、おっしゃったようなボランティアの方をどう活用するかとか、いろいろなそういう社会をつくっていくという、それは大事なことだと思います。

 しかしながら、やはり一定の負担があって給付は成り立つということでありますから、イギリスでも負担率はほぼ五〇%になりましたし、もちろんドイツは五八%までいっています。フランスは六六%。スウェーデンとかは七〇%を超えている。これは特殊であります。給付の方を見ると、GDP比でありますけれども、残念ながら日本は一〇%台の後半。アメリカが一〇%台の半ばで、あとは、ヨーロッパ諸国は全部給付率も二〇%を超えている。特にドイツ、フランス、スウェーデンあたりは、もう三〇%近い給付率になっている。

 残念ながら、これは多少の努力をする幅はあると思いますけれども、そこのところは負担と給付の関係ということもしっかりと念頭に置いて、そのかわり、しっかりしたメニューを。負担をお願いするについて一番国民が疑念を抱くのは、負担があって給付がないんじゃないかと。やはり給付があって次に負担が来るという順番をしっかりと構築していただければ、日本の国民はそこは理解して、むしろ、安心のための負担であれば御理解願えると。

 ただ、今の場合は非常に中途半端だ。負担が結構あるような気がしている、だけれども、給付が、安心、安全がはっきりと担保されていない。年金の問題、高齢者の医療制度の問題もそうですよ、そこにやはり不安がある。その印象がある限り、例えば幾ら給付金を配っても、なかなか使う気にはなれないということになると思います。そこのところはやはりしっかりと構築していただきたいということをお願いしておきたいと思います。

 次に、いよいよ年金そのものの問題に入らせていただきますけれども、基礎年金国庫負担が二分の一になるという中で、まさに今申し上げましたけれども、社会保障の公費負担における年金の占める割合というのは、これは当然大きくなりますよね。今までだと、医療が八兆台、年金が七兆台とか、大きなものとしてそういうふうにありましたけれども、これで、そのバランスというのは年金の占める割合が大きくふえるわけであります。

 その中で、今後、年金、医療、福祉等の社会保障、そういうものの公費負担の見通しは、例えば先ほどの二千二百億、これでまだ一応旗はあるんだみたいなこともあれば、これは非常に難しい問題だと思いますけれども、将来の公費負担の見通しについてはいかがですか。お願いします。

舛添国務大臣 この数字ですけれども、今度二分の一に引き上げをするということで計算しますと、これは対国民所得比ですけれども、平成十八年度は七・七%だったものが平成二十七年度で八・九%になる、そういう数字が出ております。

清水(鴻)委員 それは年金の占める比率ということですか。

舛添国務大臣 今の数字は、対国民所得比で、年金、医療、福祉等のすべての社会保障の公費負担の割合です。

 ですから、内訳をいいますと、平成十八年度、先ほど七・七と言いました。そのうち年金が占めるのが二・二、医療が三・〇、その他福祉等二・四。それが二十七年度になりますと、全体八・九ですが、その内訳が、年金が二・八、医療が三・四、福祉等が二・七ということで、これは全部、もちろんパーセンテージは上がります。

 そういう中で、どうでしょう、相対的に年金の比率が少し上がっている、そういう感じでございます。

清水(鴻)委員 これから年金の占める割合、これは、今のお話を聞きますと、やはり医療も相当分上がっていって、依然として医療の方が税負担が重いということだと思いますけれども、全体としての社会保障の中でのバランスというのはこれでいいのかどうか、これはまた検討をさせていただきたいと思います。

 では、基礎年金国庫負担を二分の一にする。これは、二年間、実は財政投融資特別会計から一般会計への特例的な繰入金を活用して必要な財源をつくる。一方、二十三年度以降は、税制の抜本改革によって安定財源を確保することというふうにされています。ただ、はっきりとは財源が今のところは確定されていないわけであります。

 三年後には抜本改革ができる環境にあるかどうかは、大変まだまだ不透明でございます。全治三年という麻生総理の言葉もございますけれども、実体経済を見れば、私も医者でありますけれども、全治というのは一応見込みで書くんです。三週間で治る予定だったけれども、さらに二週間必要だというような診断書を後で書き加えることもあるわけです。

 今、三年間でということですけれども、大変厳しい環境の中で、基礎年金国庫負担二分の一を維持するための財源というのをどうしていくか。抜本改革といっても、例えば消費税を上げるような環境もないというような中で、だけれども、これは二分の一を二年間でやめるというわけにもいかない。二十三年度以降の見通しについて舛添大臣としてはどうお考えですか。

舛添国務大臣 まず、それは中期目標もありますけれども、例えば消費税という形で安定財源をきちんと確保できれば、この二分の一はずっと恒久化できます。しかし、今委員がおっしゃるように、それに至らなかったときはどうするかは、今回やったように臨時的な財政措置を講じてやっていくので、たとえ恒久的な安定財源が例えばある年度に確保できなくても、そこは今言った臨時的なもので穴埋めをするということは決まっていますから、二分の一というのは、今回それで決まればずっと続いていくということの御理解をいただければと思います。

清水(鴻)委員 わかりました。

 たとえ消費税を上げるような環境になくても何とかするんだ、特例的なことをやってでもと。ただ、いつまでも、いわば特会をといったって、それは限界もございまして、やはりはっきりした財源の根拠がないというのは大変不安であると思います。

 これは、実はほかの問題でもございまして、例えば妊婦健診の問題がありますね。十四回になった、安心して子供を産める環境をつくりましたよということを我々も地元で申し上げていますし、あるいは、出産一時金、三十八万円が四十二万円に上がって、子育てに対して我々もしっかりとサポートしたいということですよと言っているんですけれども、実は、あれも財源的な措置、二年間というようなことがございます。

 これはやはり、一回やったものを二年間でもとへ戻して、妊婦健診十四回、済みません、財源手当てが厳しいのでまた五回にするということもなかなか厳しい、実際はできない。そのことがまた、いわゆる市町村を初めとした前線で実際やっておるところは、地元負担もあるわけですからちゅうちょして、十分な、十四万幾らという満額を出していないところもある。それはいずれ、もしも二年後どうなるかわからないときに満額を出したら、地元としてもたないという話も実際にあるわけですね。

 そういう環境でございますので、ぜひ、そこのところは、三年後以降もしっかりした構築をしていくということを、財源の手当てをしていくという根拠をしっかり示して、これは恒久的なものだということを、他の施策も含めて、しっかりと大臣には努力をしていただきたいと思います。

 それから、基礎年金。今いろいろな中で、この間もありましたけれども、新聞報道等を見ましても、例えば、五〇%を給付するという目標がありきじゃないか、それを算出する根拠が少し甘いんじゃないかということも報道されています。出生率なんかは割とあれでありますけれども、例えば賃金の年二・五%上昇でありますとか運用利回りが四・一%でありますとか、つまり、かなり甘い前提のもとに五割を維持するというようなことが計算されているんじゃないかと。

 つまり、国民にとりましては、我々もよく年金ということを若い人に言いますと、将来破綻する、今払っても将来もらえないんじゃないの、清水さん、もうそんなの払えませんよというようなことも言われてしまう。いや、そんなことないですよ、国がやっている以上、国がつぶれない以上絶対に大丈夫です、民間との比較というのはまた別でありますけれども、少なくとも民間の保険よりもしっかりしたものだし、国が存在する以上絶対そんなことはないですよと申し上げるんですけれども、そこのところがなかなか御理解を賜れない。それが例えば徴収率の甘さにもつながっていると思います。六〇%台。八〇%の徴収率というのも、努力をするといっても何も根拠がない、一生懸命努力をしますと言うだけで八〇%に行くとも思えない。

 そういう中で、例えば税方式というのが検討されたこともございますよね。その税方式だと、確かにいろいろな形で、年金に対する徴収率の問題もクリアできてむしろいいんじゃないかという話もございます。

 ただ、そういう中で私が考えるに、まず、これを全部税方式にすると、半分でも十兆からのお金がかかる、全部すると二十兆からかかる。とすると、消費税だけではありませんけれども、消費税で仮に換算すると八%とか九%をすべて年金に充てなければいけないというようなこともあって、その辺のところはちょっと今の現状においては非現実的なところもあるのかなというふうに思います。

 このことについて、基礎年金の税方式と、それから今の前提を含めた問題についての大臣の見解をお伺いしたいと思います。

    〔委員長退席、西川(京)委員長代理着席〕

舛添国務大臣 税か保険料かというのはずっと議論があります。もちろん、記録問題とか未加入問題、それから徴収コストが低くなるとか、いろいろな税方式のメリットはありますけれども、現行の制度を変えるときの経過措置とか、それから、やはり日本は自助、共助、公助という三本柱が社会保障ですから、そういう自助というような概念とどう関連してくるだろうか。特に、今までこつこつと支払ってきた方々、そして今受給者の方々は、今度これから消費税でやりますよというと、また払うのかいな、こういう話になりますし、財源の問題もありますから、そこはいろいろな議論があっていい。

 ただ、単純に税だけとか保険だけというのではなくて、皆さん、メディアも含めていろいろないい案を出しておられますから、それは国民的な議論をして、コンセンサスが得られれば一つの方向を考えていいと思っております。

清水(鴻)委員 ありがとうございます。

 確かに、大臣おっしゃるように、固定することはありませんけれども、ただ、やはり消費税だけで考えると大変難しいなと思います。例えば、今の国民年金の保険料に当たるようなものを保険年金税として徴収するとか、あるいは企業の負担も企業保険協力税とかそういう形で、消費税だけではなくて、今の保険料に相当するようなものを税で集めるというようなことも検討し得るかなというふうには思います。

 その辺のところは、将来に向けて、今二分の一でありますけれども、どんどん、それを維持するために、三分の一が二分の一になり、例えば将来三分の二になるというようなことであれば、税で一定賄っていくというようなことも、むしろ公平性が担保されるという考え方もございますので、中長期的な検討課題としては検討する意味があるのかなというふうに私は思いますので、また大臣のもとにおかれましても、ぜひ検討を続けていただきたいと思います。

 しかし、今現在の制度の中で、少なくとも、例えば大学生に二十から、もちろん働いておられる方もいらっしゃるわけですけれども、実際収入がないという状況の中で、アルバイトをしながら何とか学校に行っているんだという中で、保険料を支払わなければいけない状況が起こってきます。もちろん、支払いを猶予する制度等ありますけれども、今目の前の千円、つまり食事代が重要で、若いときから保険料を最低二十五年間、二十の人からいえば四十年とか四十五年後のことを考えて支払うというのはなかなか難しい問題があると思います。

 だけれども、二十から入るメリットは何かあるんですかと聞かれてしまう。実はあるんですよね。障害年金の問題とかあるんですけれども、ほとんどそのことが周知徹底されていないし、どういうことが起こった場合にどれだけの障害年金が保障されているんだというようなことも、なかなか、PR不足も含めてあるなということでございます。

 そこで、私はやはり、今の年金に、保険料を払うことによって、どんな年代の人にどういう保障があるんだというふうなこともしっかりPRしていくべきだと思うんですけれども、大臣、その辺のところはいかがですか。

    〔西川(京)委員長代理退席、委員長着席〕

舛添国務大臣 かつては学生が免除されていたのに、ある段階で二十が入ってきて、あのときもいろいろな議論があって、親のすねかじりをやっている人からも取るのかいねというのはありました。ただ、先ほどおっしゃった障害年金の話との絡みもあって二十からということ。

 ただ、保険料を払えない方は免除期間があるわけですから、今の段階でまたもう少し支払いを猶予するような年齢、例えば二十五とか決めるのは、ちょっとまだ、今はそれは不適当かなというように思っていますので、むしろ、免除制度をよく利用していただくということだろうと思っています。

清水(鴻)委員 その辺のところ、PRの方法も含めて、やはり民間の保険とかは工夫していますね。その辺のところは、やはり厚労省の方もしっかりと勉強していただきたいなと思います。

 ただ、今申し上げましたように、諸外国に比べても、二十五年間払わないといけないというのはやはりちょっとハードルが高いかなと思います。今のこの社会状況の中で、いろいろな変化が起こる中で、二十五年間というのはちょっと長過ぎるんじゃないかなと。そういう意味で、制度加入へのハードルを下げること、そして少しでも払っていけば払った分は自分に対してちゃんと保障があるんだというようなことを含めて、この二十五年間の受給資格の要件の緩和、つまり短縮、そういうことについて大臣のお考えを聞きたいと思います。

 それから、もう一点、続けていきます、ちょっと時間も押してきましたので。

 同じように、厚生年金には育児休業期間中の保険料免除制度なんかができましたよね。育児休業中は払わなくていい。その分も、実際に後で払うというのじゃなくて、その間はもう払ったことになるという、いわば保険料の免除制度がございます。しかし、国民年金というのは、仕組みも違うということはもちろんございますけれども、そういう方法がない、仕組みがない。また、中小企業では育児休業が非常にとりにくい状況がありまして、仕事をやめてパートに切りかわる、それで厚生年金での支援措置は受けられないというようなこともございます。

 今後、国民年金におきましても、やはり厚生年金に倣って、育児に着目して、そういう支援措置、育児休業、育児期間中の免除規定とか、そういうものをつくっていけないのかな。少なくとも受給資格の年限を短くする、十年払えば一定保障されていくんだよ、それで入りやすくなる。そしてまた、育児休業なんかに関しても、厚生年金のような制度をつくることによって、途中で途絶えてしまうことも防ぐというようなことについての検討をしていただきたいと思うんですけれども、その可能性を含めて、大臣、いかがですか。

舛添国務大臣 第一点目ですけれども、二十五年を短くできないか、いろいろな議論があります。そのために、免除期間も受給期間に認める制度とか、六十五歳まで任意加入できる道を開くとか、それでも足りない方は七十歳まで特例としてやるということで、何とか皆さん二十五年を満たされるような制度的な枠組みはつくってありますけれども、常に問題は、では、まじめにこつこつ払ってきた人との比較をどうするかとか、逆に、短縮していいというときに、年金の額が下がりますね、二十五年しっかりやった人と十年とでは。やはり二十五年しっかりやったから一定の生活ができるだけの年金がもらえる。単純計算すれば、十年だと二分の一以下ですから、今の額は。税か何かの負担がない限り、半分以下になるわけですから。

 それで、先ほど申し上げた、ずっとこつこつ今まで頑張ってきた人との公平さをどうするか、それから、やはり財源の問題をどうするか。というのは、先ほど言った、税でどう補てんするかという話が出てくるので。ただ、これも大きな検討課題であることは確かなので、今のような問題点を踏まえた上で、それはやはり国民的なコンセンサスを得て、二十五を例えば二十にとりあえずしましょう、段階的に十五までしましょうと。ただ、そのときには、今申し上げたようなマイナス点に対する対応をきちんと考えた上で答えは出るんだろうと思っております。

 それから、もう一つの、育児休業期間中の保険料免除制度があるんですが、厚年にはあって国民年金にはない。最大の問題はやはり財源をどうするかということで、厚年の場合は、働いている人たちがまた働く意欲を持って保険料を払ってくれるという前提でやっている。国年の場合、今言った財源ということと、育児のような支援策を年金制度を使ってやるのがいいのかどうなのか。特に、厚生年金の場合は企業負担が半分ありますから。ところが国民年金の場合は国民みずからがやるわけなので、ほかの施策でそちらを育成する方が適当かなと思っていますが、この問題についても、今言った問題の指摘はいろいろなところでありますから、これは今後の検討課題であるし、まさにそれを検討しているというところでございます。

清水(鴻)委員 確かに大臣おっしゃるように、例えば十年で額は半分以下になる問題はあります。しかし、今、二十五年以上払わなければいけなくて、払わない人は無年金になってしまう。ゼロか一〇〇じゃないかもしれないけれども、ゼロか一〇〇かということよりも、少なくとも制度として、十年なら十年で一定の年金がもらえるんだと。また国も、その施策として、いきなり一〇〇かゼロかで、どうしてもだめならあと生活保護に行ってくださいというのは、僕は施策としては余り賢くないんじゃないかなと。

 やはり段階もある。例えば十年しか払えない状況があったかもしれないけれどもやはり十年間は払って、少しでも、自助も含めた共助、税も入っていますから、自助、共助、公助もあるんですけれども、そういう努力をする、どこからでもできるんだということ。あるいは、途中で何か非常に状況が厳しいことになったとしても、途中で何か破産したりいろいろなことがあるけれども、払ったことが、十年払ったらそれはそれなりに報われるんだと。

 やはりこれは、少ないからとか半分になるからというようなことではなくて、期間に合わせて、そしてまた、それの足りない分についてどうしていくかというのは確かにセットで考えていく必要はありますけれども、僕は、少なくともまず最初に、入ろうとか払い出そうと思うインセンティブを若い人にもやはりつけないとこれはだめだと思うんですよ。それに二十五年というのは余りにも期間が長いんですよ。僕だってあと二十五年生きているかどうかとか言われたら、もうほとんど無理かなと思うわけですよ。だから、やはりこれはしっかりと、制度としてつくるときには難しい点もあるかもしれないけれども、少なくとも入る努力をする、それをつけるためにも、僕は期間の問題を積極的に検討していただきたいなと。

 それから、おっしゃったように、年金で、妊娠といいますか育児休業というようなものをどうするか、別のところで支援していけばいい。確かにそうなんですけれども、どこかで出しても、育児そのものに使ってしまって、それを年金の方に払っていくという、なかなかそこまで余裕がないかもしれない。はっきり年金制度そのものを考えれば、やはり年金に対しての免除をしっかりしていけば、年金としてのつながり、あるいは年金の加入率も含めて維持できる。

 そこで途絶えてしまったら、もう途絶えちゃったと。育児の間でも払えなかった、あるいは、お金をもらっていた、育児手当をもらっていたけれども、やはりそれを年金まで持っていけなかったと。それよりは、つながっていることによって、育児が終わったときにまた、これはつなげてもらっているんだ、つながっているんだという中で、次払っていこうと。

 一回途絶えたらもうこれやめちゃおうということになるよりは、厚生年金は確かに企業が半分持っているけれども、ある意味で国民年金は半分税で持っているわけですよ。そこのところを考えれば、厚生年金は企業が半分持っている、国民年金は国が半分税で持っているということから考えれば、そういう工夫は僕はあってしかるべきだと思いますので、ぜひ検討していただきたいなと。

 そういうことによって、やはり国が、国民年金に対しても、期間の問題で、入りやすい、そして続けやすい環境を国も努力してつくっているんだ、かつまた、少子化対策として、子供さんをつくっていただいても、そこを年金の面でもサポートしているんだというようなメッセージを与えていくことにおいても、私は大変メッセージ性のあるものだと思うのです。大臣の今の答弁を聞きますと、難しいなとかほかの制度がいいなと、やや消極的かと思うんですけれども、そこのところを僕としてはもう一度、しっかりと前向きな答弁をいただきたいなと思うんです。

舛添国務大臣 制度設計の問題で、二十五年というのを固めた上で、それに満たない人にいろいろな免除期間を設けたり、特例を設けたりしてやるというのは一つの考え方で、それを先ほど申し上げました。もう一つは、今委員がおっしゃったように、そうではなくて、制度設計自身を改めて、五年とか十年とか十五年とかいう形で、それに比例して年金額は下がりますよ、しかしそれはそれでいいじゃないですかと。そういう考え方もあるということはそのとおりでありますので、どちらをとるかというのは、これは今から検討しないといけない。

 ただ、私が申し上げたのは、後者の制度設計をしたときの問題点はこうありますよということでありますし、厚年の場合は育児期間のを免除期間という形で使っているわけですね。だから、そこは今、免除期間という発想が育児の場合は厚年で入っている。では、国民年金も同じようにやりますかと。そこでやはり、事業主の負担とサラリーマンの負担ということ、被用者年金と国民年金、これが一元化をするときの一番の大きなネックになるんですね。だからここの問題も同時に片づけて、やることに消極的ではなくて、二つの考え方があります、しかしこれは、議論をして国民のコンセンサスが得られればやれるわけですから、そういう方向で真摯に検討したいと思います。

清水(鴻)委員 ありがとうございます。

 いろいろ減免措置であるとかなんとかで、実際は二十五年に満たないけれどもこの間は減免措置があるとかと、何かおまけしてもらっておまけしてもらって何とか資格を得るというよりは、十年で一応有資格者だということで胸を張ってもらう中で、プラスしていけば加算していけるんだというものが、むしろ精神衛生上もいいんじゃないかなと思いますので、検討をよろしくお願いしたいなと。特に育児の問題も、確かに厚生年金との違いはありますけれども、検討していただける課題ではないかなと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。

 最後に、年金の未納、未加入問題、これはマスコミの報道等を通じても、大変未納者がふえていて、先ほどもちょっと申しましたけれども、この制度自体が破綻するんじゃないかという不安が広がっています。

 我々は常々、現行の制度は、保険料が納められなければその分給付が出ないということでありますから、年金財政が必ずしも納付率だけでコントロールされるものではなくて、納付率が低いから破綻するというものではなくて、基本的には、国が存在する限り年金制度というのは破綻することはないというふうに申し上げているんですけれども、保険料納付率が年金財政に与える影響について、最後にお伺いしたいと思います。

渡辺政府参考人 お答え申し上げます。

 現在の年金財政に与える影響というようなことを考えますと、先般の財政検証でも示しましたように、何よりもまず二分の一の国庫負担を約束どおりする、それができない場合のマイナスの財政影響を考えますと、このことが一番大きなポイントであると思っております。

 そういうことに対比いたしますと、今御指摘の年金保険料の未納者がふえることによる年金財政への影響というものは極めて微々たるものであると考えておりますが、今おっしゃっておられるのは、特に国民年金の財政、これが確かに脆弱性が高いわけでございますが、そういう中で、昨年五月に行われた社会保障国民会議での試算結果で見ましても、納付率が現状から一五ポイント前後変化したとしても、所得代替率に与える影響というのは一ポイント未満というような試算も出ておりますので、冒頭申し上げましたような国庫負担の約束をしっかり実現するという重大性に比べますと、そしてまたその他のさまざまなファクターと比べましても、それほど大きな財政影響のあるものではないと思っております。

 それは、未納は将来的には給付につながらないということからくるわけでございますが、しかしながら、この問題は大変大事な問題だと考えておりまして、世代間の支え合いという賦課方式を基本とする年金制度でございますから、制度に対する信頼を大きく損なう原因がやはりこの未納という問題にあると思います。将来の無年金者、低年金者を増加させかねないということでございますので、徹底した収納対策それから広報啓発、その上でさらに、制度的には、本法案の附則の検討規定にありますように、基礎年金の最低保障機能の強化その他の措置ということでございますが、そういうことに関する議論を進める中で、無年金、低年金問題の解決の道筋を探っていくべきものだと思っております。

清水(鴻)委員 ありがとうございました。

 もちろん、納付率を上げてもらうということは大事でありますけれども、納付率だけによって破綻するものではないということも十分わかりました。

 社会保障、これはやはり我々の国、どこの国でもそうですけれども、社会保障がしっかりしなければ国は荒廃します。そういう意味で、第一番に社会保障をしっかりと構築して、その後は、やはり景気でも何でも、社会保障がしっかり構築されることが大事だと思いますので、舛添大臣におかれましては、今申し上げた点も踏まえてしっかりと頑張っていただきたいということをお願いいたしまして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

田村委員長 次に、林潤君。

林(潤)委員 自由民主党の林潤です。

 本日は、質問の機会をいただき、ありがとうございます。まず、年金行政の先頭で解決に取り組んでいる大臣初め皆様の御尽力に敬意を表するとともに、地元より国会に送っていただいている神奈川四区の皆様に心より感謝を申し上げ、質問を始めさせていただきます。

 今回は、国民年金法の一部を改正する法律案についてですが、政治家の本来の役目とは、安心と信頼のできる年金制度をつくることであります。しかし、私が思う年金問題の最大の問題点というのは、年金の制度が余りにも複雑なことから、専門家や官僚、あるいは我々政治家、マスコミなど一部の人間だけに任されてきたとされる一方で、多くの人々が個別の事象のみにとらわれ、直観的で、そして一例を大きく扱う議論をするような二極化の現象が生まれまして、その結果、誤解も含めて国民全体が年金に対して不安と不信にさいなまれる、こうした不幸な結果を招いたことであります。

 例えば、五年前、議員年金のことや、政治家や芸能人の未納が問題になったとき、あるいは年金記録に社会保険庁のさまざまなスキャンダルが明るみに出たとき。確かに、あってはならない、けしからぬことだと思います。国民の怒りも当然であります。しかし、これが果たして年金問題の本質かという議論はほとんどされていなかったように思うわけであります。

 つまり、社会保険庁の不祥事に代表される一連の組織運営の問題と、安心と信頼に満ちた年金制度の改革をいかに断行するかという問題は、切り離して考えるべきであります。

 確かに、平成十六年の改正で、将来の保険料負担の上限も決めまして、負担と給付の自動調整の仕組みなど、一定の方向性も打ち出せました。しかし、それから五年がたちました。社会保障国民会議の最終報告でも、基礎年金の最低保障機能の強化が提言されました。経済団体や新聞社などからも、公的年金のあり方についてさまざまな見解が語られました。

 にもかかわらず、国民の間には、将来年金がもらえるのか、いや、払った分さえも戻ってこないのではないか、あるいは、年金制度は破綻してしまうのではないか、こういった漠然とした不安が誤解も含めて厳然として存在することも事実であります。

 年金制度は破綻しているのかという誤解に対しましても、年金財政は現在もそして将来も破綻をしない、未納は年金制度を崩壊させるのかという問いに対しても、未納があっても財政そのものとはリンクしない、年金制度自体は崩壊しない、あるいは、世代間で格差があり過ぎるのではないか、こうした不満に対しても、若い世代も、受給している世代と比較すれば不利ではあるものの、払い損はない、厚労省としては、国民に胸を張って、そして堂々とそうした事実をしっかり伝えられるような不断の取り組みが必要だと思うわけであります。

 こうした前提を踏まえまして、平成十六年の改正を受けまして今回の基礎年金国庫負担割合の二分の一への引き上げがなされますが、その意義はどこにあるのか、また国民にとってのプラス面とともに、大臣に見解をお聞かせ願います。

舛添国務大臣 今委員御指摘のように、この十六年の年金制度改正、これは、安定的な年金制度、サステーナブルというか持続可能な年金制度を構築するということでやったわけでありまして、そのためには、どんどんどんどん保険料が上がっていくんじゃそれは耐えられないということでありますし、それから今度は給付の水準も、保険料は上がったわ、もらうお金は少なくなるんじゃこれも大変だ、そこはそうならないようにしようということと、積立金がありますから、これも活用する。

 そして、今御審議いただいている法案でございますけれども、三分の一の国庫負担を二分の一にするということです。

 それによって、やはり世代間の負担の公平、これは積立方式じゃなくて賦課方式ですから、私たちは今私たちの親の世代を支えている。私が年金生活者になったときに、恐らく林さんが頑張って働いてくれて支えてくれる。そういう世代間の助け合いということですけれども、今少子化で、若い人たちの数が減っていく、どんどんどんどん若い人たちの負担がふえていく。例えば、四十になれば今度介護保険料というのがそこに入ってきますから。四十はまだ若いと思います。したがって、そういう現役世代の負担が余りに大きくなると、活力は保たれなくなります。

 そういうことを踏まえまして二分の一にするということで、国民に対するお約束でございますから、ぜひこの法案を成立させていただき、そして国民が安心する持続可能な年金制度をつくっていきたいと思っております。

林(潤)委員 ありがとうございます。

 大臣の御答弁のとおり、確かに大きな意義はあると思います。しかし、いろいろな問題が指摘されているのも事実であります。

 すなわち、国庫負担を二分の一にいたしましても、国民年金保険料は一万六千九百円で定額制、厚生年金保険料は一八・三%を上限にしておりますけれども、今後本当に引き上げが必要でないという説得力がまだまだ国民に浸透していないのではないかということ。

 それから、ちょっと関連で一つお聞きしたいんですけれども、先ほど二分の一ということで、今法案の審議そのものが二分の一でありますが、この保険料と租税が半分ずつである、これがどういう理念に基づく制度なのか、本当に五〇%ずつでなければいけないというこうした根拠を私は明確にすべきだというふうに思っているわけであります。

 正規の質問ではなくてちょっと派生しているんですけれども、どういう理念に基づくかをお答えいただきたいと思います。

舛添国務大臣 後者の方の問題から申しますと、恐らく、日本というのは、例えば中福祉・中負担という言葉にしてもそうで、何事にも両極端ではなくて、やはり中庸というか、真ん中、真ん中というふうに来るだろう。そうすると、全部保険料負担だけでやるというのはこれも大変だ、しかしまた、全部税負担だけでやるというのはどうかなとなると、やはりフィフティー・フィフティー、そういうことだろうと思いますから、介護保険料も年金も医療保険も、全部フィフティー・フィフティーです。

 そうすると、国民にとって負担は変わらないわけですよ、税金で払おうが保険料で払おうが。ただ、理念としてはやはり違うものがあって、自助、共助、公助という先ほどの社会保障の三本柱でいったときに、例えば介護保険を入れるときに全額税方式でやるかというのはあったけれども、例えば特養に昔入っておられる方、こういう方々が、お上が何か恵んであげるような形で行政の措置として入れる、そういうことじゃなくて、私はちゃんと払っているんだ、介護保険料をちゃんと毎月毎月四千円なり五千円なり払っていますよ、したがって、堂々と権利として胸を張って入りますよと。何となく、行政措置だと、何か恵んでもらっているという、そういう気になる必要はないんですけれども、どうしても日本人の場合、そういう後ろめたさみたいなのになるんですね。

 だから、保険料でやるときは、権利だと堂々と胸を張って、私は払っているんだから、当然、共助の概念でみんなで助け合う保険でやっているという、これの方がいいよということで、結局、保険料制度というふうになったんだと思います。

 ですから、そういう側面と、しかしやはり最後のセーフティーネットは税でやるというのを考えると、フィフティー・フィフティーということだと思います。

 それで、そこから先は、例えば五対五というのを、税の割合を六にして片一方を四にするとか、七、三にするとか八、二にする、それが最後、十、ゼロということになれば、まさに税方式ということになるので、これはその時々のやはり国民のコンセンサスを得ていけばいいので、大きな年金制度の改革をどうするかというときに、やはりその議論は一つは入るので、それは税か保険かという理念の闘争でもあると思います。

 それから、今法律をやっていただいているんですが、これはやはり最終的には恒久的な財源、安定的な財源、例えば消費税、こういうものがきちんと導入されることを前提にしているんですが、それまでの間は、今年のようにつなぎの臨時的な措置でやる。ただ、二分の一ということは、これはもう十六年改正で国民に対するお約束ですから、その公約をきちんと守る、手段について臨時的なことも使ってやる、こういう御理解をいただければと思います。

林(潤)委員 わかりました。

 そういう中で、大臣の、コンセンサスがあればいろいろな方法を今後やはり検討していくというような柔軟な考えも理解することができました。そしてまた、払っているという矜持の問題、それも理解することができました。

 実は、私、社会保障国民会議におります権丈教授の後輩で、そのゼミに入っております。いろいろな形でこうした会議の議事録の様子やその他を見ておりまして、二分の一の租税論者だというような話と、保険料方式のレッテルを張られたら困るなとか、そんなようなことが出ていまして、昔を思い出しながらちょっと笑って読んでいたんですけれども。

 そういった考えを理解する上で、やはり今回のこと。この現行方式が、かなり改良に改良を加えられてきて、不安なようですぐれている。今回質問するに当たって、かなり誤解もあったということ、それから国民の理解が浸透していない、こんなことを本当に痛感をしたわけなんですけれども、先ほど大臣、もう既に財源の問題にも少し消費税だと触れられました。やはり、平成十六年の改正で今回一番課題となっているのが、独自の財源がないという基本的な問題解決ができていないことです。これが一番重大です。

 それで、十六年改正では、国庫負担割合の引き上げと税制の抜本改革とはセットになっています。あえて抜粋させていただきますけれども、「特定年度については、平成十九年度を目途に、政府の経済財政運営の方針との整合性を確保しつつ、社会保障に関する制度全般の改革の動向その他の事情を勘案し、所要の安定した財源を確保する税制の抜本的な改革を行った上で、平成二十一年度までの間のいずれかの年度を定めるものとする。」とあります。

 この規定どおりにしっかりこれを実行しているんでしょうけれども、やはり独自の財源というのは、ある意味政治決断でもありますし、そろそろ先延ばしすることも許されないんじゃないか、政治責任、政治決断として断行しなきゃいけないんじゃないか、そんなことも思います。

 先ほどは消費税という言葉が出ましたけれども、つまり、二分の一引き上げの恒久化に向け、税制の抜本的改革により所要の安定財源を確保するということなんですけれども、この消費税の具体的な今のビジョンなどについてお聞かせ願います。

舛添国務大臣 法律で何年度までに目指すと書いても、経済情勢がどうであるとか政治情勢がどうであるとかいうことがあって、とりわけ経済情勢が今非常に厳しい、こういう中で、消費税を上げますかというのは、それはもう論外だと思います。むしろ、まさに逆に定額給付金を配るというような政策をやっているわけですから。

 そういうことを考えると、国民所得、GDP五百兆円の六割の三百兆円というのは個人消費ですから、個人消費の足を引っ張るような政策は絶対に経済を活性化させません、幾ら設備投資をしようが何をしようが。したがって、今のような状況で、これは私も含めて、私は消費税を議論すべきだと思いますけれども、今やるんですかといったら、それはとんでもない、逆の政策をやらないといけない。

 したがって、今は経済回復というか、それに全力を挙げる。そして、例えば三年という、工程表もそうですけれども、そういうものを目安に置いて、そしてそこで景気も回復する、国民にきちんと説明をして納得をいただいてそこに踏み切るということだと思います。

 ただ、ぜひ国民の皆さんにも御理解いただきたいのは、何度も先ほどからの議論でも、特に厚生労働委員会では、セーフティーネットの拡充が極めて必要である、そのことをしっかりすることがむしろ国民に安心を与え、景気の回復につながるという議論があるわけですから。お金は天から降ってきません。セーフティーネットを張りめぐらすコストはみんなが負担しないといけない。

 みんなが負担するとすればどういう税であるかの議論はあるにしろ、例えば消費税ということ。これを一%上げます、二兆五千億円税収が入ります。これを上手に使うことによって、先ほどの議論でいうと、セーフティーネットを拡充させて、社会保障に使うわけですから、それで二・五兆円が五兆円にも六兆円にも十兆円にもなって、リターンとして来ますよ、こういうことを我々はきちんと説明をし、そしてそれを国民に納得していただく。そして、その旗を掲げて選挙で戦ってマジョリティーをとれる、こういうことをやらぬといかぬと思いますから、そういう努力はしないといけない。

 消費税は絶対上げません、税の負担は全くふやしません、しかし、どんどん福祉を上げていきます、それは不可能ですから、もしそういうことを掲げる方々がおられて、選挙で戦うなら、私は堂々と論戦して、どっちが正しいんだ、国民の皆さん判断してください、そして勝っていく、そういうことだと思います。

林(潤)委員 先ほど国民の矜持というのがあったとおり、それこそ私は政治家の矜持だと思います。口に苦いこともしっかり言って、財源のことも安定的に確保した上で、そして国民に堂々と信を問うような、そういう先陣に立って、政府の、厚生労働省の最高責任者として断行していただきたい、こういう思いを持っております。

 この平成十六年の改正で、年金財政の長期的な給付と負担の均衡が確保され、持続可能な年金制度になったとされていることですけれども、あくまでもされている、にもかかわらず、特に若い世代の国民に信頼や安心感を得られているようには感じません。私も、講演に行ったり、学生に対して講義をしたりすることがありますけれども、後の反応を聞いてみると、破綻はしない、若い世代も多少不利にはなるものの必ず返ってくる、そういう話をしっかりしてはいるものの、その場はわかった感じなんですけれども、後で見ると、いや、でも、やはり人口構造が変わるから、それはそうならないんじゃないですか、そんな問いをいろいろ聞いておりますと、まだ十分に深まっていないのかな、そんな思いをいたします。

 そしてまた、改正後に、新しい将来人口推計が出ました。合計特殊出生率も低下をしまして、少子化がまたさらに進んでいく。私は昭和四十七年の団塊ジュニアと呼ばれる世代ですけれども、その世代が後期高齢者に入ります大体二〇五〇年ごろ、二十一世紀の半ばですけれども、六十五歳以上の高齢化率は、どんな甘い推計でも大体四〇%前後になるというふうに見込まれています。そして、年金の収支バランスが最大の危機を迎えるのもそのぐらいの時期とされているわけであります。

 日本社会が逃れられない運命とはいえ、保険料の上限が法定されているものの、一方で、給付水準の下限というものは法定されているわけではないわけであります。破綻させないために給付を抑え続けられるとすれば、老後の生活を支えるのに十分な給付を受けられるのか。こうした事実を積み重ねるだけでも、三十年、四十年考えれば、やはり年金の将来は不安になって無理はないのではないか、私自身、そう考えざるを得ないというときもあるわけであります。そして、保険料は払い損ではないか、将来破綻するので若い世代は年金受給できないではないか、こういう誤解が不安に拍車をかけています。

 このように、特に若い世代に年金に関する正確な理解が深まらない、不安が広がる現状について、大臣は、どんなことが理由と考えられまして、今後国としてどんな手だてをすべきと考えますか。御見解をお聞かせください。

舛添国務大臣 やはり一つは、今一生懸命取り組んでいますけれども年金記録問題、こういうことで、国家そのもの、政府そのものに対する不信感が出てきている。

 それともう一つは、逆に、こういう問題が出てきてやっと国民の皆さんが年金というものに注目し、今ねんきん特別便をお送りして、きょうからねんきん定期便が行きます。そうすると、皆さん方、受け取られて、ああ、自分はこれだけ掛けていたのか、こういう勤め先に行っていたのか、どこが欠けている。今度は標準報酬月額もそこに入ってきますから。

 ただ、こういうものは、もっと早くからというか、国民の認識の間で、ないといけない。私は、三十年前に、三十のときにフランスというかヨーロッパから帰ってきました。帰ってきて、何が違うかというと、例えば、我々はそのときに年金の問題なんて絶対話したことなかったです。それから、私たちの先輩の、もう六十前後になる人たちが集まった中に私がいたときに、年金問題を話す六十ぐらいの人というのはばかにされていた。何だおまえ、まだ年金なんかを頼りにしているのというような感じで、いかによく働くかということで、まあ、高度経済成長時代というような背景もありましたけれども。

 ところが、私がおったフランスなんかは、特にヨーロッパ、つまり日本はヨーロッパが百五十年かかって動いていった高齢化のスピードを一気にやったわけですから、だから、ずうっと高齢化が進んでいるところでは、年金というのは、定年退職する、特に、一日も早く定年退職して早く年金生活者になりたいという人がヨーロッパでは基本的ですから。そうすると、この人たちの生活の糧なので、例えば職業カテゴリーの中に年金生活者というカテゴリーがあるんです。政党の中にも年金生活者の政党というものがある。

 そういうところで若いとき生活していたので、何をやっていたかというのは、毎年自分の年金をチェックする。政府を信じていない、どこか間違いないかというのは国民みんながチェックする。それは、ソーシャル・セキュリティー・ナンバーがあることもありますよ。そうすると、日本で起こったようなああいう記録問題というのは起こりようがないんですね。

 そういう風土からぽんと来て、年金の話を若いくせにやるとは何事かみたいなところだったんです。だけれども、今、時代がこういうふうになりました。

 だから、よくこれは若い人も議論していただいて、やはり世代間の公平ということがもう一つ大きな問題があると思います。ですから、そうすると、最終的には賦課方式ではなくて積立方式にするのかねということになるけれども、やはり、営々と築いてきた世代間の助け合い、年金というのは社会全体が親に対して仕送りをする。私が若いときは、年金制度がなかったですから、親に仕送りしていました。今は、社会全体で仕送りする。そういういい面も、つまり共助という側面を、もっと言うと社会的連帯という側面を強調すれば、積立方式というのもどうかなと思いますから、よくこれは議論して。

 そして、はっきり言えることは、民間の保険会社に積み立てるよりは、半分税金が入っていますから、はるかにリターンがいいことは確かなんです。だけれども、不幸にして早く亡くなれば、それは遺族には行きますけれども、これはみんなの助け合いですから、それは保険という意識も持ってもらわないといけない。

 だから、やはり一日も早く国民のコンセンサス、特に若い世代のコンセンサスを得て、払えばちゃんとリターンがありますよ、そして老後の安心につながりますよ、我々も全力を挙げます、どうか皆さん、未納ということはやめて、しっかり払ってくださいよ、こういうことをやるべきだし、それは我々もやりますけれども、国民の代表である国会議員もぜひ地元でそういうことを、今、林さんがおやりになっているような活動をお続けいただきたいと思います。

林(潤)委員 大体、私が思いますに、啓発、それから理解を深めていくには、今以上に、それこそ小中学校の義務教育も含めて、大学生になれば、二十になればちょうど取られるようになってくるわけであります。私も、取られたのが何年前かなというふうに本当に思い出しますけれども、大学時代、あえて年金を払っているという意識が余りなかったと思います。それを考えますと、やはりそういう時期からちゃんと、公助、共助でやっているんだ、助け合いなんだというところを何かもうちょっと小さいときに教え込めないかな、そんなことを思っておりますので、国としてしっかりやってもらいたいと思います。

 こうした中、昨年の十一月にも社会保障審議会の年金部会が中間的整理をまとめまして、社会保障の強化の工程で、特に低年金、無年金対策の推進ということを重点課題として取り上げました。また、同時期に出された社会保障国民会議の最終報告でも、無年金、低年金問題への対応を指摘しております。それによると、現行の納付率で将来無年金者が大きく増大することは考えにくいとはいえ、将来にわたって継続的に高齢者の一定割合、大体二%の無年金者が発生する、未納対策の徹底とともに、最近増加しつつある生活保護者の状況にもかんがみ、基礎年金の最低保障額の設定、弾力的な保険料追納等の措置を検討すべきであるというふうにあります。

 つまり、例えば、現在二十代の人が未納だからといって三十代も四十代もずっと未納とは限らないわけでありますけれども、年金制度自体にドロップアウトしてしまった人たちが年をとったときにまともな金額の形で基礎年金を受け取ることができない、こんな見込みになってしまいます。その一部が生活保護に頼らざるを得なくなりますと、生活保護費が、国庫負担が増大し、結果として、まじめに保険料を払ってきた人が支払わなかった高齢者に自分たちの税金で経済支援をするから不公平だ、こんな指摘もありますけれども、それは本当かということは私は思っています。

 ある専門家は、生活保護に頼るお年寄りが将来百万人以上になる、こんなおそれも指摘しております。本当でしょうか。現在、百四十万人以上、生活保護者の方がいらっしゃいまして、半数が六十代以上であります。私が思うに、彼らが若いときに、昭和六十年以前は納付が任意だった時代ですから、払わない人はもともと年金制度でカバーできなかったわけであります。そういう理由から、強制加入の現在では、強制加入の制度前と比べますと無年金、低年金はむしろ少なくなるのではないかと推測をしています。

 結果、警鐘されるほどの事態にはならないのではないかと考えますけれども、国はどの程度増加をすると見込んでいるのか。また、無年金や低年金が増加すると生活保護費が増大をすると考えられますけれども、その増加をどの程度見込んでいるのか。お聞かせください。

渡辺政府参考人 将来の見通しについては、なかなか推計も難しい点がございますが、ただいま先生御指摘の中にもありましたように、幾つかの切り口で考えております。

 一つは、社会保障国民会議でも、思い切った推計といいますか、これまでのトレンドを踏まえた見通しを出しておりますが、御指摘のとおり、六十五歳以上人口はどんどんふえてはいるけれども、無年金者数の比率というのは二%前後ぐらいではないかという一つの見方がございます。これはマクロ的な見方だと思いますね。

 それからもう一点、本会議で大臣からもちょっと指摘させていただきましたけれども、国民皆年金が実現した昭和三十六年のころ、ちょっと私の今手持ちの資料で見ますと、お年寄りだけというふうに考えてもよろしい高齢者世帯の中に占める生活保護を受けておられる世帯の比率というのは、何と二三%以上あった。四世帯に一世帯が、高齢者世帯では生活保護を受給されておられた。それが皆年金を実現したときの日本の国の姿であったわけでございます。

 それから、ようやく今、国民年金も満額をもらう人が当然のごとく出てくる、四十五年以上たった時代でございます。その間に、まだ成熟化の途上にありましても、高齢者世帯に占める生活保護率というものはどんどん低下してまいりまして、二十年ぐらい前から、大体四、五%ということで、高齢者世帯の中に占める被保護の率というのは四、五%で推移しております。直近でも五%台だと承知しております。

 そういうことで、なお成熟していなかったときの年金制度でも、大きないわゆる防貧機能というものを果たしてきたものである。これもマクロ的な話でございます。そういうふうに理解をしております。

 今、成熟化した、満額年金が期待できる、そして、こつこつ掛けてこられた方が実際に満額年金をもらう時代になってきておりますが、そうした中でございますので、引き続き、こういう大きな年金制度の防貧機能というものを維持していくことが大変重要でございますが、御指摘のように、将来を、どの程度無年金者、低年金者を予想するか、また、生活保護費の増加分を推計するかというのは大変難しいのですが、私どもの社会保障審議会では、さはさりながら、やはり、成熟化した年金制度のもとでその原点を思いいたせば、その中で無年金、低年金という状態に陥っている、低所得で高齢期を迎えておられる方々ということを考えれば、年金制度としてなお一層の検討の余地があるのではないかというふうに御指摘を受けているところでございます。

林(潤)委員 とはいえ、いたずらに年金制度からドロップアウトさせやすい仕組みは極力排除するのが制度の基本であると言えるのではないでしょうか。中でも、現在二十五年とされております受給資格年数の見直しを行うべきだと考えます。

 現在、保険料を払いながら二十五年の期間を満たせない人が、六十歳未満で四十五万人、六十から六十四歳で約三十一万人いると推定されています。例えば十年程度とするならば、一方で、払わない自由という逆選択やモラルハザードが進むことも懸念をされますが、二十五年に一カ月でも欠けると年金は掛け捨てになってしまうのは、払う意思がある人にとっては、やはり救済したり代替となる制度が必要だと考えます。大臣の見解をお聞かせください。

舛添国務大臣 これは先ほど清水さんともお話をしましたけれども、二十五年を守って、さまざまな免除期間、空期間のようなものを設け、特例を設けてやるか、それと、今、やはり長いんじゃないかという意見がたくさんありますから、段階的に二十年とか十五年とかやっていくか。そのときに、こつこつ二十五年頑張って払うんだというのに比べて、十年だったら、どうせ年金の額も少ないし、まあ払わなくていいやというようなことになると、年金を払わない人がふえちゃいますと年金制度の根幹にかかわることになるので、そういうことを阻止しながらきちんと今の制度ができるか。

 これは、問題意識はありますので、検討は十分しないといけないし、検討課題の中にも年金制度の審議会の中で上がっておりますので、きちんとこれも議論していきたいと思っています。

林(潤)委員 やはり、二十五年を満たせないとわかった時点で、もう払う気がなくなってしまうということもあると思います。

 そこで、そもそもこの未納とは、年金制度全体にとってどのように問題であるのかという問いになります。納付は義務であり、反社会的だからいけないというモラル論の主張があるとしても、私は、未納が本人にとって損か得かというような要素は意外に重要ではないかと感じています。

 つまり、義務ではあるけれども、将来破綻してもらえないかもしれないから損であるという考え方が多数派である限り、年金制度の信頼は取り戻せません。本来であれば、未納は自分の将来の年金が減ることであり、逆に、未納によってほかのだれかが得をしていることになるわけであります。

 そして、未納の解消が保険料収入をふやし、年金会計に寄与するというのは本当かどうか。単純計算でいっても、およそ三五%の未納で一兆数千億の保険料収入減となりますが、毎年の保険料の給付が約六千億円増加となっています。つまり、数字上でいえば、未納が限りなくゼロに近づいたとしても、年金会計上はそれほど収支にとってプラスにならないということが言えるのではないかということであります。

 さらに、基礎年金全体の中で年金全体の保険料収入が二十七兆円以上になりますけれども、未納の金額自体が占めるパーセンテージは四%ほどでありまして、見かけの納付率の数字ほどではありません。だからといって、未納がふえる傾向は決してよいことでは全くないのでありますけれども。

 そこで、未納者がふえることによります年金財政への影響はどのようなものか、お聞かせください。

渡辺政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほども少し触れさせていただきましたが、年金保険料の未納者がふえることにより年金財政にどういう影響が生じるかという点につきましては、昨年五月に、先ほど御指摘いただいた社会保障国民会議において一定の試算結果が出されております。納付率が九〇%の場合、所得代替率でいって〇・二%ぐらいプラスになるか、納付率がマイナス一五%の場合、所得代替率でマイナス〇・五%ぐらいになるかというような試算であったわけでございます。

 いずれにしても、一五ポイントぐらい変化しても一ポイントに満たない所得代替率の変化ということでございますので、年金制度における他のさまざまなファクターに比べますと比較的小さな影響にとどまるものである、これが年金財政への影響であると思っております。

林(潤)委員 低年金と無年金者を減らしていく取り組みには、保険料納付によっても柔軟な仕組みとすべきであり、例えば、時効の期限である二年を超えても保険料を納付することができます事後納付の仕組みの導入を検討すべきではないかと考えますが、大臣の見解をお聞かせください。

舛添国務大臣 これは要するに、委員が思っていらっしゃるのは、二年までしかさかのぼって払えませんが、そのことであれば、ほかのこの日本の国の全体の制度として、確かに保険料を、事後でも、今払えないから二年後、三年後ということになったときに、むしろ払うインセンティブがなくなってくるんじゃないかという、つまり、普通の人だって、非常に苦しいけれども頑張って、本当は一万六千円払うのは国民年金でも大変だと思っていても、何とか頑張って払いましょうというようなことで頑張ってやっている。ところが、いつでもそのうち楽になったときに払えばいいよということになっちゃうと、ずるずるずるっと払わないでおいて、結局、ああ払えなかったとなるので、やはり二年というのをある程度決めているというのは意味がある。

 ただもちろん、非常に生活が苦しいというようなときは免除制度があるわけですから、これを周知徹底して、そしてそれを利用していただくという方向がいいんじゃないかというふうに思っております。

林(潤)委員 確かに二年の意味というのはわかりましたけれども、その分、免除制度の周知徹底、これが私はまだ足りていないんじゃないかと思います。つまり、条件を満たしているのに、免除制度を申請していないで、一生懸命無理に払っている人もいるかと思います。そういう方にも、免除にはなるんですよということをやはり丁寧に教えてあげられる、そういう行政が必要だと思っております。

 つまり、年金制度は、法律で決まっているからという義務論や、払わないと正直に払う人が損をして成り立たないとする単純なモラル論でとらえるよりも、第一に、公的年金に加入することは、単に保険料を払うだけではなく、お互いに助け合う共同システムに参加する社会的意義があるという社会的意義論、第二に、本人にとっても得であり、掛けた分だけはしっかりと元が取れるという損得論、そして第三に、日本国家が解体しない限り破綻はあり得ないことというこうした破綻否定論で、年金の意義とメリットを深く国民に理解してもらうことによりまして、そうした周知を国としてきちんとする必要があると考えます。

 最後に、社会保障カード、ほとんど時間がないので、要望だけ言わせていただきます。

 二〇一一年を目途に社会保障カードを導入することになっておりますけれども、私は、これは日本の社会保障制度の歴史にとっても画期的なシステムになり得るのではないかと思っています。今、年金記録の問題が深刻であります。もちろん五千万件の未統合記録、八・五億件の紙台帳の突き合わせ、国民にとっては、国だと思って信用して払ったのに、勤めた記録は正確ではない、いざ受給する段階で間違いがあるならば、それは根底から信用が覆されることになります。

 しかし、二〇一一年を目途に社会保障カードを導入するならば、こうした記録に関する信頼を取り戻すチャンスとしては、私は、確実で安心、かつ便利なカードとしてぜひ機能するようにやってもらいたいと思っているわけであります。私は、このカードに期待をかけております。

 聞いたところによりますと、現在、ねんきん特別便で調査をしたところ、七千万人から回答があったと聞きました。今、三千万人が未回答で、約八百万人が調査中だと聞きましたが、受給者と被保険者のすべてに社会保障カードを行き渡らせるときまでに、しっかりと年金記録を確認し、年金記録の早期解決を図るべきだと私は思っております。

 社会保障カードの導入に向けた検討状況、これは最近では、見ることができるだけではなく、クリックして手続もできる構想があると聞いております。こうした、社会保障を乗り越えて、将来、ほかの役所の資料も申請することができるような、こんな身近なものになってくれば、記録の問題もまた信頼の方向に向かうんじゃないかと思います。

 もし時間が許せば、ちょっと大臣、その決意を一言だけお聞かせください。

舛添国務大臣 その前に、私はさっき、ちょっと不正確な数字を言ったんですが、国民年金の月の掛金がこの四月から一万四千六百六十円になりました。だから、二百円ちょっと上がったんだと思います。ちょっと議事録、先ほど正確な数字を言わなかったので、それを直しておいていただきたいと思います。

 今の社会保障カード、これは、安定した社会保障制度を構築するための基盤です。先ほどちょっと申しましたけれども、フランスでもアメリカでもソーシャル・セキュリティー・ナンバーというのがあって、これが、例えば複数の年金番号なんかがないもとになって、記録問題のような不正を起こさない一つになっているので、ぜひこれは一日も早く整備をしたいと思っております。

林(潤)委員 これは医療などにも役立つと思います。しっかり健康管理することで医療費の抑制などにもつながると思いますので、ぜひ有機的、総合的に取り入れて、限られた短い時間ですから、本当にこれはきちんと検討していきたいと思います。

 それをお願いいたしまして、質問を終わらせていただきます。

田村委員長 次に、古屋範子君。

古屋(範)委員 公明党の古屋範子でございます。

 きょうは、法案の質疑の前に、この四月から行われた介護認定方法の見直しについてお伺いをしたいと思っております。

 この四月から、介護保険の要介護認定の調査方法が見直されることとなりました。要介護認定は、お年寄りの心身の生活の状態を調査して、介護の必要な度合いを判定する、判定結果によって介護保険で受けられるサービスの上限額が決まるという、当事者にとって非常に大事なものでございます。

 厚労省が昨年十二月に示した新しい判定方法につきましては、利用者から、多くの人が実態より軽く判定されるおそれがあると強く反発を受けまして、一部を修正し、三月二十四日に全国の自治体に通知が出されております。初めに、この要介護認定方法の見直しを行った理由、また判定方法が一部修正となった経緯についてお伺いをいたします。

 また、利用者の不安が生じないよう、この新認定方法については十分な説明を行うことが重要であると考えます。新たな通知が出されてから四月一日まで、大変に短い期間で、今回の見直しの内容や趣旨について関係者への周知など対応ができたかどうか、これについてもお伺いをいたします。

宮島政府参考人 お答えいたします。

 今回の要介護認定の見直し、これは二点あります。

 第一は、認定調査員のテキストの見直しに係るものですが、これについて、身体状況が変わらないのに、認定の結果、要介護度が軽度に判定されて、その認定にばらつきがあるのではないかという批判があったものにこたえるものです。

 これまでの認定調査で、実際に介助が行われていない場合について調査結果にばらつきがあったということですが、これは例えば、ある方について、移動とか移乗、食堂に行くとかあるいは車いすに移乗するということが行われていないと、これは認定調査員が、仮に移動、移乗が行われたとしたら、この人の状態から見ると、これは一部介助で済んじゃうんじゃないかとか、いや、これはどうも全介助なんだろうなということで、想定して記載してしていたものですから、そこにばらつきが生じていたということです。

 これからは、そういった場合に、その移動、移乗が、行為自体が行われていないということは通常考えられない、むしろ、不適切ではないかというようなことなので、むしろ介助されていないという選択をしてもらって、特記事項の方で、介護の不足あるいはネグレクトの疑いがあるというようなことを書いていただいて、二次判定の方できちんと判定してもらうというようなことに改めたというのが第一点目の見直しでございます。

 第二の点は、最新のケアを踏まえて介護の手間をきちんと反映するというものです。

 介護の手間のコンピューター判定というのは、これはタイムスタディー調査というものに基づいて行っています。これまでの介護の判定は、平成十三年のタイムスタディー調査に基づいて介護の手間をはかっております。このタイムスタディーを平成十九年に再度行いまして、十九年ベースのものに置きかえるということです。

 なぜこういうことをするかというと、例えばおむつの着用ということについて言うと、昔は、おむつの着用をして寝ていればいいというかそういう考え方でしたけれども、今は、おむつはむしろ排せつ誘導介助ということで、尿意を聞いたりトイレに付き添うということで、トイレに行ってやってもらうというようなことに変わってきています。そうすると、ケアの量が増加しますから、そのケアを反映しなきゃいけないということで、十九年にタイムスタディー調査を最新の介護状況を踏まえるということで行った、こういう二点の見直しを行ったということでございます。

 それで、先ほど、三月下旬に直したところがあるという御指摘がございましたが、これは認定調査員のテキストに係るもので、これを、パブリックコメントとか関係団体から御意見をいただいた中で、認定調査項目の選択肢の選び方の明確化に係るものです。

 例えば、買い物のところで、認知症の方が一応買い物はできるというと、それはできるについてしまうんじゃないか。だけれども、実際は、買い物ができるといっても、買い物で確かに買ってくるけれども、ジャガイモばかりいっぱい買ってきているというふうになると家族が返しに行かなきゃいけない、そういうのはやはりできるじゃなくて一部介助なんじゃないかというようなことの指摘を受けました。

 あるいは、文言の見直しで、先ほど介助されていないケース、移動、移乗で言いましたけれども、そこの選択肢が、「介助されていない」じゃなくて、これまでの文言で「自立(介助なし)」というようなことで、非常に誤解を与えるというようなことで、ここはやはり「介助されていない」に変更をするというようなことを三月下旬の変更で行いました。

 これらの対応の周知徹底ということでございますが、これは、認定調査員と認定審査会委員のテキスト、それから主治医の意見書記載の記入手引、三月中には市町村に送付しております。また、都道府県の認定調査員、認定審査会の委員及び主治医に対する研修で、より適切な記載や判定をしていただけるように、これも事務連絡を発出しておるところでございます。

 いずれにしても、利用者に対して十分説明を丁寧に行うということとか、認定方法の切りかえ時期に生じる利用者からのさまざまな御意見、これは以前にも増して迅速かつ丁寧に対応することを関係自治体に対して依頼するなど、十分な取り組みを行っていきたいと思っております。

古屋(範)委員 よりばらつきがなく公平な認定を行う、また、寝たきりにさせないための介護認定の見直しであるという御趣旨のお答えであったかと思います。

 今回の見直しによりまして、これまでの要介護度と比べて新基準では軽度に判定されやすいのではないか、全体として要介護度が低くなってしまうのではないか、こうした不安が一部広がっております。

 判定結果が軽くなってしまうと連日の新聞やテレビの特集などでも報道されておりますが、利用者の不安というものはさらに膨らんでしまうというふうに思います。軽度へ判定を誘導しているとしか思えない基準の見直しも不透明で、見切り発車だと批判を強めている団体も中にはございます。

 また、厚労省が行った判定の新基準を当てはめたサンプル調査では、要介護度が低くなった方が二〇%、高くなった方が一七%、全体としては変わらないとされております。しかし、新基準でサービスが低下する高齢者には影響があり、個々の生活者への目配りを忘れてはならない、このように思います。

 さらに、要介護認定は、一次判定だけでなく、コンピューターで判定できない詳細をチェックする専門家から成る審査会の役割が非常に重要でございます。この審査会で総合的に判断できるものとされておりますが、二次判定にかける時間は十分ではなく、認定調査の特記事項や主治医の意見書をしっかりと見て的確に判断することは難しいとの意見が現場からも出ております。

 介護認定の変更は、利用者に大きな影響をもたらすわけでございます。今回の要介護認定見直しによる利用者の不安を払拭するような取り組みをしっかりと行っていただきたいと思いますけれども、大臣、この点、いかがでございましょうか。

舛添国務大臣 新しい介護認定基準について、今委員がおっしゃったようにさまざまな批判が寄せられています。真摯に、謙虚に耳を傾けて、改善すべきはするということで取り組んでいきたいと思いますし、周知徹底していないところは、これはパンフレットをいろいろな市町村その他の窓口に置くなどして徹底をさせていきたいというふうに思います。

 しかし、介護認定基準を、例えば要介護三を二にされて困るじゃないかということで不服があれば、不服の審査請求ができますし、それとともに、市町村に対してそれより前に、とにかく区分変更、これは不満であるから変えてくれ、それで、例えば、きょう申請して、よく判定すると、特にこれはコンピューターソフトで一次は出るわけですから、二次判定でよく見ると、いや、確かにやはり三であるべきだという判定が下れば、申請したその日から効力を発しますから、戻すことはできます。

 ただ、ある制度を変えるときに、全部悪くするために変えるようなばかなことはするつもりはありません。さまざまな問題点は指摘されていますけれども、こういう意図でこういうことのためにやっているということは先ほど局長が説明したとおりであります。低くなられる方も二割おられれば、逆に重く見られる方も二割ほどおられる、六、七割が大体変わらないだろうということなので、そういうことについて、これは十分な説明をしますけれども、事後検証をちゃんとやる。しかも、公開の場でやる。それで必要ならば変えていく。

 そして、この四月の終わりにも検証のための検討委員会を立ち上げたいと思っております。その中には、介護の問題に取り組んでおります樋口恵子さんとか高見さんとか、こういう方々にも入っていただく。どうしても役所仕事というのは、何もかも大臣の直属で全部やるわけにいかないものですから、そうすると、局内でやるときには、自治体の関係者を集めれば住民の声を持ってくるだろうからそれでいいだろうという、そこが間違っている。やはり、利用者を最初から入れて、いろいろな団体の方も入れて、謙虚に声を聞いてやるということが必要なので、そういうことはきちんと指示をし、正すべきは正して、新しい検証委員会では、それでみんなで悪ければすぐ直していく、そういう形で少しでもいい介護の制度に持っていきたいと思っております。

古屋(範)委員 ありがとうございました。

 やはり、利用者にとって、また家族にとっては、どのような変更があったのかわからない、理解されていないというところが大きな原因だろうかと思います。今回の変更の意義、また目指す方向性、そして、大臣がおっしゃったように、市町村の区分変更申請などもできるんだ、このようなこともしっかり周知徹底を行っていただき、そして今回の見直しの検証を行い、さらに次へのよりよい改善に向けて取り組んでいただきたい、このように思っております。よろしくお願い申し上げます。

 では、法案の質疑に入ってまいります。

 先ほどのお二人の委員の質問とも重なる部分もございますけれども、基本的な事項を質問してまいります。

 基礎年金国庫負担二分の一への引き上げ、これはぜひとも実現をしなければならないことでございます。今回の法案の基礎年金国庫負担二分の一への引き上げ、これは年金財政の長期的な安定性を確保するための重要な柱の一つでございます。

 年金制度につきましては、平成十六年度改正におきまして、将来にわたり持続的で安心できる年金制度を構築するために、平成二十九年度以降、厚生年金一八・三%。国民年金一万六千九百円という保険料の上限を固定する、また、負担の範囲内で給付水準を自動調整する仕組み、マクロ経済スライドの導入、また、積立金の活用、そして今回、法案で実現を目指しております基礎年金国庫負担二分の一への引き上げと、給付と負担の両面にわたる見直しを行い、新たな年金財政のフレームワークが構築をされたわけでございます。持続可能な年金制度の構築のためには、これらすべてが実行されることが不可欠であります。

 現在の厳しい財政状況の中で、さらに経済状況が悪化をしている。平成二十一年度及び二十二年度の二年度につきましては、財政投融資特別会計の積立金等を活用して基礎年金国庫負担二分の一への引き上げを行うことは極めて大きな意義があり、二十一年度当初からの実現が図れることは大いに評価したいと思っております。

 与野党が対立する国会情勢ではございますが、本法案の成立が困難になれば、平成十六年度改正に規定をされている特定年度が定まらず、二十一年度以降の国庫負担率の明確な法律上の規定を欠き、国庫負担率がどうなるのかあいまいなままとなります。さらに、財源の手当てができず、さらなる年金積立金の取り崩しがふえることとなれば、年金財政に与える影響は大きいと言わざるを得ません。今回、何としても基礎年金国庫負担二分の一への引き上げを実現しなければ、安心の年金制度の構築はできない、このように思います。

 そこで、改めて実現への御決意を大臣にお伺いいたします。

舛添国務大臣 今、委員の方から、平成十六年の年金制度改正の四つの柱について丁寧に御説明いただきましたけれども、まさにそのとおりで、とにかくわかりやすく言えば、これは、どんどん保険料が上がるというのはたまりませんよ、それはそうですねと。それから、給付もどんどん減らされるというのでは、それは老後の生活は成り立ちません。だから、そのときの現役サラリーマンの平均の二分の一は維持しましょうということである、そういうことのために、十六年改正では国庫負担を三分の一から二分の一にということですから。

 先ほども申し上げましたけれども、やはり世代間の公平、現役世代がもう保険料を払うのは嫌だよということであっては世代間の連帯も保てませんので、そういう意味では、ぜひ二分の一のこの法案を実現させていただいて、将来に向かって安定的でより持続可能な制度の構築ということをやりたいと思います。ぜひ一日も早い成立をお願いしたいと思います。

古屋(範)委員 ありがとうございました。大臣の御決意を伺うことができました。

 次に、国民年金の保険料免除制度についてお伺いをしてまいります。

 近年、テレビまたマスコミ等で連日のように報じられてまいりました年金問題の大半は社会保険庁の失態などばかりで、実は、肝心な年金制度の根幹の仕組みを報じたものというのはほとんどなかったと記憶をしております。こうしたネガティブキャンペーンのような報道が続けば、多くの国民は年金制度そのものに不信感を抱いてしまうわけです。どうせ掛けてももらえない、先のことなどどうなるかわからない。より多くの未納者がふえているというのが現状であります。

 しかし、だれにでも老後は訪れるわけです。私もここを声を大にして申し上げたいのですが、民間の個人年金保険と比べても、公的年金である国民年金の優位性というものは不動であると思います。

 民間の個人年金は、その募集から運用に当たって多くの人件費もかかります。また、コマーシャルなども当然行っているわけで、すべて保険料から賄われ、その上に利益も出さなければならない。

 これに対しまして、公的年金は、これを運用する人間の人件費は基本的には税金で賄われ、さらにその上、三分の一の国庫補助がございます。また、掛けた保険料の全額が、税法上、所得控除される仕組みにもなっております。さらに、国民年金制度においては、経済的な理由等で国民年金保険料を納付することが困難な場合、本人の申請により保険料の納付が免除、猶予となる保険料免除制度や若年者納付猶予制度などの救済制度もあるわけです。

 そこで、こうした免除制度にはどのようなものがあるのか、また、今回の改正で免除期間がある方々が受け取る年金の額は満額二分の一になるのかどうか、わかりやすく御説明をいただきたいと思います。

渡辺政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御承知のとおり、老齢基礎年金について申しますと、二十から六十歳までの四十年間、四百八十月加入することにより、満額の年金、二十一年度ベースで月額六万六千八円でございますが、これが支給される仕組みというのが基本でございます。

 御指摘の免除というのは、低所得等の理由により、通常の保険料、今でいいますと月額一万四千六百六十円を納付できない場合に、所得に応じて、きめ細かな多段階の保険料免除の仕組みをとっているというのが免除制度でございます。例えば、全額免除を受けた期間については国庫負担相当分を支給するということになっております。

 現行法でございますが、国庫負担二分の一という道筋をつけているわけでございますけれども、二分の一のための恒久財源が確保されるまでの間は三分の一とするという計算の仕方をしておるものですから、今回の法律案におきましてそこを改め、残念ながら恒久財源確保という状態ではない二分の一でございますが、この二十一年四月から、モデル的に四十年間免除で計算いたしますと、全額免除の場合でいうと、従来でいえば税部分だけの月額二万二千円の年金給付水準であるものを三万三千円に引き上げるという効果が発生する、この仕組みを直ちに実施するということを盛り込んでおるわけでございます。

 詳しい御説明をということでございましたが、そのほか、四分の一免除、半額免除、四分の三免除、それぞれ四十年計算でいきますと、五万五千円、四万四千円、三万三千円というものが、今度の改正案でいうと、五万八千円、四万四千円が五万円、三万三千円が四万一千円というふうに保障水準を引き上げるということが内容となっておるものでございます。

古屋(範)委員 詳しい説明をありがとうございました。二十一年四月から、二分の一への引き上げに伴っていくという理解でよろしいかと思います。

 今御説明をいただきました保険料免除制度、収入が厳しく、現在、支払いたくても支払えない状況にある方々にとっては大変にありがたい制度でございます。そして、今回の改正によって、国庫負担の割合が二分の一に引き上げられることにあわせて、保険料免除期間の額についても二分の一と算定される、基礎年金の最低保障機能が改善されることとなるわけでございます。保険料未納の方々をそのままほうっておくようなことはせず、せめて、こうした免除制度、猶予制度を大いに利用すべき、情報を広く発信して、国民の皆様の周知徹底を図っていただきたいというふうに考えます。

 この免除制度でございますが、現在、本人の申請以外では認めておりません。そのために、保険料を納付していない方が免除手続をしていなければ、万が一事故や病気等で障害者になったとしても、障害年金はもらうことはできません。また、この期間は未納扱いとなり、保険料未納のまま長い間放置しておきますと、国民年金の保険料納付期間の二十五年という要件が物理的に満たせなくなる。老齢年金も受け取れなくなるおそれがございます。

 しかしながら、この免除制度について理解している国民はそれほど多くないのではないか、そのような気がいたします。十九年度の保険料納付率が六三・九%ということからも、これ以外の免除該当者の方々は、情報を入手して必要な手続をとることが苦手という人が少なくないのではないかと推測されます。

 平成十六年の年金制度改革によりまして、社会保険事務所が個人の所得情報を把握できるようになったわけです。本人に断りなしに免除手続をするのではなくて、社会保険事務所から該当者本人にきちんと制度を説明し、同意を得ることができたら、手続を代行するなどの支援が必要ではないかと考えております。昨年十一月の社会保障国民会議の最終報告にも、未納問題への対応として、低所得者についての免除制度の積極的活用がうたわれています。

 この際、免除手続代行について積極的に検討していただきたいと思うんですが、厚労省の御見解を伺います。

石井政府参考人 お答え申し上げます。

 国民年金制度、先ほど来御議論ございますように、これは、所得に関係なく、二十から六十歳までの方々が加入する制度ということで、負担能力が乏しい方々については、免除制度を的確に適用していくことを通じて受給権を確保していくということが重要と思っております。

 そこで、これも今し方お話があったわけでございますけれども、十六年の制度改正によりまして、私どもの方に市町村より所得情報を提供していただくということが可能になりました。したがって、個別の対応としては、これが一つの大切な手段ということになっているわけでございまして、未納者の方々の中で、市町村からお受けした所得情報を見て、これは免除等に該当するのではないかと思われる方々に対しましては、文書あるいは電話、戸別訪問、そういうような方法で届け出の勧奨を実施しております。

 それから、そういう個別の取り組みと並行いたしまして、毎年発送しております納付書に免除制度を含む制度全体の周知用のチラシを入れるとか、それから、免除制度について詳しく記載させていただいたパンフレットを事務所等の窓口に設置するとか、社会保険庁のホームページに掲載するといった周知も図っているわけでございます。

 こういうような取り組みと必ずしも同列ではございませんけれども、一つの取り組みとして、免除等の申請については毎年行うこととされておるわけでございますけれども、全額免除あるいは若年者納付猶予の承認を受けた方については、平成十八年の七月から、あらかじめお申し出をいただける場合には、翌年度以降も、所得要件を満たす場合には申請書を提出することなく承認を受けられる、そういう仕組みの導入が図られてございます。

 申請手続の簡素化ということでございますけれども、こういう簡素化の方法もあるんだということもあわせて周知をしていきたいというふうに思っております。そういうようなことで、免除手続の勧奨を徹底してまいりたいというふうに思っております。

 代行ということに関してでございますけれども、これも、先生御承知のように、私ども社会保険庁の非常に大きな反省をしなければいけない出来事が、十八年の夏でございますけれども、報告書という形で各方面に御報告させていただきました。

 その過程でわかりましたのは、私ども組織におけるコンプライアンスが必ずしも十分ではなかったということが原因でございますけれども、代行ということを職員が少し広く解釈してしまって、それで、例えば本来委任状をちょうだいすべきところをはしょってしまった。

 そういうことで、現在は、代理ということでお受けする場合にも、御本人の委任状というものをきちんと添付なさっているかどうか、お持ちなさっているかどうか、そういうような確認行為をきちっとさせるようにしてございますけれども、そういうような日ごろにおける事務の作業の中で、きちんと定着をし、そして、代行ということについて、皆様方のコンセンサスといいましょうか、そういうものが整った段階で、改めて考えてみたいというふうに思う次第でございます。

古屋(範)委員 これまでのそうした反省の上に立って、本当の意味で国民の側に立ったこうした免除手続の勧奨、そして、これも不断に、手続がしやすくなりますよう見直しをよろしくお願いしたいというふうに思っております。

 次に、特定年度が平成二十三年度以降となった場合についてお伺いをしてまいります。

 基礎年金の国庫負担二分の一を恒久化することとなる特定年度につきましては、本法案において、所得税法等改正案の附則に規定された税制の抜本改革を前提として定めることとなっております。しかし、今般の国会の情勢において、税制の抜本改革の実施時期がもしかしたらおくれるという可能性は否定できないわけであります。

 特定年度が平成二十三年度以降になった場合、法律上の手当てがなければ現行の負担割合を戻すというふうな事態が生じかねず、また、保険料免除期間を有する者の老齢年金の算定や年金財政に大きな影響があると考えられます。

 そこで、特定年度が二十三年度以降になった場合、どのような措置を考えていらっしゃるのか、お伺いをいたします。

渡辺政府参考人 今御指摘の点につきましても、さまざまな議論があり、今回の法律案の中にこうしたルールが書かれております。そのもとになりましたのは、年末、与党におきまして、政府と中期プログラムの御議論をいただきましたときに、非常に大きな論点の一つとして今の御指摘の点があったように承知しております。

 御提案申し上げておりますのは、ちょっと厳密に言うと、特定年度の前年度が平成二十三年度以降になる場合ということでございまして、大変恐縮でございますが、要は、税制の抜本改革の年度が、平成二十三年度とならず、二十四年度以降になった場合ということでございます。

 その場合にも、それまでの各年度におきまして、国庫負担二分の一と、既に財源措置されている、これまでも財源措置されてきた三六・五%との間の差額については国庫が負担するようにするため、臨時の法制上、財政上の措置を講ずるもの、中期プログラムの閣議決定においても、そしてこの法律案の中でも、そうしたことがはっきりと明記されている。

 こうした経緯も踏まえまして、二度とまた三分の一に戻るというようなことがあってはならないというふうに考えておりますので、そのように臨ませていただきたいと考えております。

古屋(範)委員 二分の一という国庫負担をしっかりと堅持していくということであろうかと思います。

 次に、年金制度の課題についてお伺いをしてまいります。

 昨年十一月に取りまとめられました社会保障国民会議の最終報告では、毎年二千二百億円の社会保障費削減という方向を転換して、社会保障の機能強化に重点を置いた改革の必要性があると明記をされております。これを受けまして、昨年十二月に出された社会保障の機能強化の工程表では、年金制度について、基礎年金の国庫負担二分の一の実現のほか、基礎年金の最低保障機能の強化と社会の構造変化への対応を掲げて、低年金、無年金者対策の推進、在職老齢年金の見直し等を明記し、制度設計、検討を経て、法改正、そして実施に移すことが示されたわけでございます。

 今後の年金制度の課題は、低年金、無年金の方の所得保障をどのように行っていくのか、また、生活保護に比べて明らかに低い老齢基礎年金の給付水準、これをどう見直していくかであると思います。

 高齢者世帯の年間の所得分布を見てみますと、百万円未満が一五・七%。六世帯に一世帯が百万円未満であります。また、百万円から二百万円未満、これが二七・一%。特に、高齢の女性単独世帯の所得の低さは際立っております。三世帯に一世帯は年間所得が百万円未満。五十万円未満という世帯も三十五万世帯ございます。

 所得が十分でないために生活保護を受ける高齢者がふえております。平成十七年調査で、全保護世帯の三八・七%となっております。日本の年金制度が、高齢者の貧困を防ぐという意味において、十分に機能していないのではないかと思われます。

 昨年九月、公明党は、年収二百万円未満の低所得者に対する老齢基礎年金の加算制度の創設、また、年金の受給資格期間十年への短縮など、新たな年金改革の政策を打ち出しました。

 昨年十一月に取りまとめた社会保障審議会年金部会の中間整理におきまして、基礎年金加算制度の創設に通じる低年金、低所得者に対する年金給付の見直しを初め、基礎年金の受給資格期間現行二十五年の短縮、また、二年の時効を超えて保険料を納めることのできる事後納付の仕組みの導入など、私たちが年金制度の一層の改善に向けて取り組んできた内容が盛り込まれたと思っております。

 高齢期の所得保障を充実させる、この観点から、一定の所得水準以下の方に対して税財源で基礎年金に一定の給付を上乗せする加算年金制度の創設をするのが現実性が非常に高いのではないか、このように考えますけれども、いかがでございましょうか。

舛添国務大臣 今後の年金制度改革の方向についての御議論ですけれども、これはさまざまなポイントについて議論する必要があると思います。

 基礎年金の最低保障機能をもう少し高める、六万六千円でやっていけるんですかと。それを一気に引き上げて八万とか十万とかになれば、それは安心です。ただ、財源をどうするかという問題がありますから、ここは、財源議論をきちんとして、安定的な財源を得るということを前提に、その問題もやはり重要な検討項目としていきたいというふうに思っていますので、今おっしゃった加算制度を創設することによって基礎年金の最低保障機能を強化するというのも一つの方法であろうと思っております。

古屋(範)委員 やはりそこはしっかり、生活保護に陥らない、その手前での年金の機能強化ということを行っていかなければいけない、このように考えております。

 先ほども議論がございましたけれども、我が国は、二十五年分の保険料を支払わないと年金がもらえない、諸外国に比べても非常に長いということがございます。これを十年に短縮して、年金の受給資格が確実に発生するようにしなくてはならない、このように考えます。

 六十五歳以上で、今後七十歳まで任意加入しても無年金になってしまう方が四十二万人もおります。

 公明党としても、無年金者を出さないよう、追納期間の延長、また受給資格期間の短縮を早期に実施すべき、このように考えております。今回の改正案におきましても、附則第二条に基礎年金の最低保障機能強化等についての検討規定が盛り込まれたことは、今後の政府の取り組み姿勢を示すものとしてその実現が期待をされます。

 この受給資格期間の短縮、また追納期間の延長について、ぜひ取り急ぎ検討を行っていただきたいと思いますけれども、この点はいかがでしょうか。

舛添国務大臣 先ほど来の議論でもありましたように、受給資格期間の短縮、それから追納期間の延長、それぞれプラスはあると思います。ただ、幾つかの問題点を先ほど私も指摘しましたので、その問題点も踏まえた上で、これは重要な検討課題なので、政府としましてもまた皆さん方と検討していきたいと思っております。

古屋(範)委員 最後の質問になります。

 厚生年金保険の適用基準を、通常の就労者の所定労働時間、所定労働日数をおおむね四分の三以上としている点につきまして、これは昭和五十五年以来、通常の就労者の所定労働時間及び所定労働日数のおおむね四分の三以上の就労者については、原則として健康保険及び厚生年金保険の被保険者として取り扱うべきものであることとされております。この適用基準が通常の就労者の四分の三ということは、すなわち正規労働者を対象としていることがわかります。

 現在、派遣切りが大きな問題となっておりますけれども、日本経済が第二次産業から第三次産業へと産業構造が変化をしている、非正規労働者の増大など労働市場の構造も大きく変化をしている、こういうことから考えますと、この昭和五十五年以来続いている厚生年金の適用基準も考え直すときに来ているのではないか、そのように思います。このように厚生年金への加入条件が現在の雇用実態から乖離した結果、雇用者でありながら国民年金に加入せざるを得ない、こういう働く人々が多くいる現状は変えていかなければならないのではないか、このように考えます。

 普通に働いている人が老後の安心を確保するために本来の厚生年金制度に加入できるよう、またその適用基準を雇用者の労働条件に適合する必要があると考えますけれども、この点につきまして御見解をお伺いいたします。

渡辺政府参考人 御指摘の点につきまして、私どもの社会保障審議会の報告におきましても、まず基本的に「賃金により生計を営む被用者については、パート労働者や非適用事業所の被用者等を含め、できる限り厚生年金を適用し、報酬比例部分を含めた年金権の確保を図り、その老後の生活の安定を図ることが求められている。」という認識、私ども政府も共有しているところでございます。

 他方、この問題につきましては既に被用者年金一元化法案で一定程度の改善を御提案申し上げておりますが、その背景には、ある基準点をつくって御提案申し上げておりますけれども、国民年金の自営業者等第一号被保険者の方々の保険料負担との乖離というものが大きく発生することのないような配慮という点も必要なことから、社会保障審議会では、先ほど来御議論いただいております全体としての基礎年金の最低保障機能強化、こういう底上げの議論の中で、そうしたボトルネックというものを少し改善していく可能性を検討すべきじゃないか、こういうふうにも指摘されておりますので、今提案している法案のほかにも、さらにそうした検討を深めてまいりたいと考えております。

古屋(範)委員 国民が安心できる年金制度の構築を求めまして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

田村委員長 次に、長妻昭君。

長妻委員 民主党の長妻昭でございます。

 本日は、質問の機会を賜りましてありがとうございます。端的に御答弁賜れば幸いでございます。

 我々は、特に、無年金の問題というのも非常に重要だと。日本は皆年金の国だと言っておきながら、社保庁の発表によると、今、百十八万人が無年金、全く年金を受けられない、こういう現状であります。しかもその中には、社保庁のミスやあるいは宙に浮いた記録のために、本来は無年金じゃなくて済むのに無年金にさせられている方がたくさんいるから、それを調査してくれ、サンプル調査してくれと何度も何度も申し上げましたけれども、それは必要ないの一点張りでございました。

 そして、やっと政府は、以前、数十人が社保庁のミスなどの理由で、実は年金が受給できたのに無年金にさせられていましたと、こういう数十人という資料を出してまいりましたけれども、聞きましたら今度はそれがふえて、五千万件の宙に浮いた記録の中を統合したら、千八十人もの方が無年金から年金受給者に切りかわったというような報告が社保庁からございました。

 この千八十人というのは、一人単位でいうと、具体的に何人でございますか。

舛添国務大臣 済みません、ちょっと最後の御質問の意味がよく受け取れなかったので、もう一度おっしゃっていただけますか。

長妻委員 政府からいただいたこの閣僚会議の抜粋の資料によると、本人の記録と確認できた三千六百人のうち、約三割が無年金から受給権が発生したと言われていまして、約三割というと千八十人なんですが、正確に言うと、この約三割というのは具体的にどのぐらいの人数なんですかということです。

舛添国務大臣 今委員おっしゃったように、約三割というのは千八十人という数字だと思います。

長妻委員 そうすると、千八十一人でもなく千八十人という、これは確定数字ですね、今の時点で。

舛添国務大臣 今、住基ネットを動かしてやっているので、最終的な結果ではありませんけれども、大体千人前後ということです。

長妻委員 これは人生が狂わされているんですね。大体じゃなくて、具体的に今何人なんですか、受給権が戻った正確な人数というのは。

舛添国務大臣 これはもう委員御承知のように、住基ネット調査によって生存者と判明した人たち、そしてこれを今細かく見たときに、委員のこの資料にありますように、五千四百人について見れば、統合済みは千二百人で、本人の記録の三千六百人のうちの、新たに受給権が発生した人が約三割で千八十人という今の段階での数字が出ているということです。

長妻委員 非常に不可解なんですが、約三割というか、これはもう戻ったわけですよね。詳細は何人なのかということをお聞きしているんですが、その詳細の数字がないのに何でこの約三割というのがわかるのかというのがちょっとまゆつばというか、そういう気がするので聞いているんです。

舛添国務大臣 だから、約千人とか千八十人という数字を出して、今細かい集計をしていますので、きっちり、例えば千八十三人とかいうところまでの数字がぴったり出たら、その段階で出します。関係閣僚会議において、今出ている現在の数字ということで、約という形で出しているわけです。

長妻委員 そうすると、もう一回舛添大臣の口から、この千八十人という方はどういう方なのか説明いただけますか。

舛添国務大臣 住基ネットの調査をやっています、これはよろしいですね。

 それで、年金記録の確認の知らせを送付した約二万五千人のうち、御自身の記録であると回答した人が約九千人であって、そのうち記録調査が終了した人が五千四百人。その中には、新たに受給権が発生した人が約千人いるということであります。ですから、住基ネットを回してみて、この新しい形での受給権が発生した千とか千八十という数字を今申し上げているのは、そういうことでございます。

 ですから、今、回答した九千人のうち五千四百人が終了していますから、恐らく委員の御質問の意味は、九千から五千四百人を引きますからまだ三千六百残っているだろうと。これは今から調査をしていきますから、今からやってみないとわかりませんが、もしそのまま三割ということで、つまり、五千四百で千人という比率をそのまま九千人で比例した数字で言うと、それは約千七百人ということだと思います。

長妻委員 すごい数字ですね。

 実は、五千万件の未統合記録を統合して、無年金から受給権が発生したこの千八十人のうちで、時間がないというので、では十人の方をピックアップして詳細のデータをくださいと、昨日の晩まで、昨日中にいただければきょう配付資料でできるというふうに申し上げましたら、けさの理事会の後に出てきましたので配付資料にはできませんでしたけれども、ここに十人分が出てまいりましたが、舛添大臣、概要を説明いただけますか。

舛添国務大臣 えっという声が上がりましたけれども、きのうの夜のお話ですから、それはそんなにすぐできる話ではないので、一生懸命やって出てきたということです。

 その概要を御説明申し上げますと、これは皆さん方のところにはまだ資料が行っていないということですね。(長妻委員「間に合わなかった」と呼ぶ)間に合わなかったということですね。済みません。

 それで、これは十名ピックアップしました、任意に抽出した。その特色を言いますと、女性の比率が多い。つまり十人のうち七人が女性です。それから、厚生年金か国民年金かという種別について言うと、十人のうちの八人が国民年金であります。それから、いわゆる免除期間ですけれども、免除期間が国民年金の方の方が多いというのが、このピックアップした結果の大体の中身であります。

長妻委員 この資料を拝見しますと、例えば八十歳の女性は、全く年金がもらえなかったのが、今回、三百三十三カ月分が宙に浮いていて、これは五千万件の一件ですけれども、これが戻って、過去から見ると一千万円以上取り戻したことになる。

 これは人生を返してほしいと思っておられる方も多いと思うんですが、例えば七十五歳の女性は、三百八十二カ月分が抜けていて、受給資格がなくて無年金にさせられて、この方も七百万円以上が戻る。

 男性では、例えば六十歳の男性で厚生年金の加入でございますけれども、三百十九カ月分が抜けていて、これが戻って、今までは受給がゼロだったものが、一年間に八十五万円が今後もらえる。

 こういうような方が千八十人もいる。だから我々は前から、サンプル調査をして、この千八十人というのも氷山のほんの一角だというふうに私は思います。

 そして、二ページの資料でございますけれども、以前、民主党の部門会議に出していただいた資料でございますが、五千万件の中で、十年以上の長期にわたる記録で抜けているものというのが判明しただけでも二十六・五万件ある。ということは、可能性としては、十年の記録がごっそり抜けていると、日本の二十五年ルールあるいは二十年ルールという、世界でも類を見ない、最も厳しい受給資格の期間があるわけでございまして、十年すっぽり抜けていると、先ほど言った、全く無年金になっている可能性が高い方の集団であると私は思いますので、この二十六・五万件、全員に郵便を送った上、回答がない方は戸別訪問などをするというような丁寧な対応をしていただきたいんですが、いかがですか。

    〔委員長退席、三ッ林委員長代理着席〕

舛添国務大臣 これは委員がおっしゃるとおりなので、どういう形でやれるか詳細は検討したいと思いますけれども、そういう方向でやりたいと思います。

 それで、さっきの十人抽出した例で、これはまさに私の姉も全くそうだったんですけれども、やはり制度が複雑で、自分は掛けた月が足りないからもう当然権利がないと思っていた。それで社保庁の事務所に行ってみると、いや、実は空期間というのが計算されるので、あなただってありますよということで復活したということがありました。

 女性が多いというのは、配偶者の収入がありますし、そういうことがあるので、やはりこれは申請主義に基づく問題点もいっぱいあると思いますから、大きな年金制度改革の中で、こういう問題について制度設計をどうするかを考えないといけないというふうに思います。

 救済について、今おっしゃった二十四万件は、そういう方向で作業を進めたいと思っております。

長妻委員 いつも制度の中で議論するとか言ってごまかされておられるんですが、私が予算委員会でも何度も申し上げているのは、これは絶対あきらめないというふうに申し上げているのが、百十八万人いるんですよ、無年金の方が。

 だから、百十八万人全員調査しろと言ったら、社保庁はそれはもう物理的に無理だと言われるので、では、百十八万人の中から三千人をピックアップして、そして三千人の方の中で、社保庁のミスで実は年金受給者だった方の割合が何%あるのか、その割合が出れば、日本全体のそういう本当にお気の毒な、国の責任でそういう不幸な目に遭っている方のトータル人数の概要がわかって、政府も本腰を入れて取り組むようになるんですよ。

 今まで全部そういうやり方で、徐々にですが前に進んできたわけで、百十八万人の無年金者の三千件のサンプル調査、これはぜひしていただきたい。しない理由はないと思うんです。

舛添国務大臣 ここは毎回、長妻委員と平行線なんですけれども、要するに、やらないと言っているんじゃなくて、サンプル調査をする時間と手間と人がいれば全数調査をやっていく。それで、具体的に、今まさに出てきたのは住基ネットを回してやっている。

 いつも申し上げているように、二つの車輪でやっているわけです。一つは、特別便とか定期便とかさまざまなものを送って、国民の皆様の協力を得て、自分が一番よく知っているわけですから、自分の過去の人生なので、それできちっとチェックをしている。それからもう一つは、データについて、それは定期便とか特別便で落ちているのがある、だから住基ネットを回す。

 そういうことで今解明作業をやっているわけですから、サンプル調査をやって、ああ何件、そんな手間暇があったら、一人でも早く、一人でも多くを救う、そういう形で百十八万についてもやっていきたいと思っています。あきらめるなんてことは一度も言っていないし、そのために人員も、それは限られた人員でやっているわけですから、人員もふやさないといけない、予算もふやさないといけない。

 そういう方向でやっていますから、私は、まさにあなたとそこが違うのは、サンプル調査をする手間暇があれば、一人一人、一人でも多くを一日も早く解明する、そちらの方が先だと思っておりますから、今、まさにそれを二つの車輪を回しながらやっているところでございますので、国民の皆さんの御協力をいただきたいと思っております。

長妻委員 いや、私は想像すると、ひょっとすると、ホームレスになっておられるお年の方で、実は無年金じゃなかった方がいるかもしれないということで、大変な問題なんですよ、これは。何でサンプル調査をしないのか。これは絶対あきらめませんから、毎回質問しますので、ぜひやってください。

 そして、もう一つ大きな日本の国の年金制度の問題で、障害年金、これは私の事務所にも、多分皆様の事務所にもかなり多くの御相談というのが来ていると思うのでございます。

 障害年金の制度が非常にわかりにくく問題が多いということで、ちょっと調査を依頼して調べてみましたら、三ページ目でございますけれども、例えば、本来は障害年金の該当者で障害年金を受給できるのに、いろいろな原因で受給していない方が非常に日本は多いんじゃないか。

 ということで、障害者手帳を交付される方の基準と、障害年金を受給される方の基準というのは全く違うんですね。一級、二級でも全く違う基準になっているので、これをどうやって比べようか、こういう複雑な制度が問題なんですが、ただ、目、視覚障害の方に関してはほぼ一致していましたので、それをサンプル的に調査いたしました。

 つまり、障害年金を受給している一級の一号の方といいますのが「両眼の視力の和が〇・〇四以下のもの」ということであります。そして、では、障害者手帳を交付されている方のうち、同じように両眼の視力の和が〇・〇四以下のもの、こういう方は何人おられるのかというと、障害等級で一級と二級を足すとそういうふうになりますので、それが二十三万五千三百六十件もあった。

 これは単純に、全く一〇〇%イコールではないんですが、ほぼイコールでありますので、そうすると、推計すると十万人もの方が、本来は障害年金を受給できるのに受給申請をされておられないという推定も成り立つと思いますので、そういう方が本当にどういう状況になっているのか、これも調査していただきたいと思うんです。

 私の事務所も含めて、すごく苦情というか、こういう制度を知らなかった、そして申請したら、五年より前はもう時効で切られてしまった、こういう苦情もいっぱいありますし、あるいは、障害手帳と障害年金の基準が違うし、診断書も違うので全くわからなかった、こういうこともありますので、ぜひ調査をしていただきたいと思うんですが、いかがでございますか。

舛添国務大臣 今委員御自身おっしゃったように、二十三万五千人と十万の差が、すべてどういう理由かというのはちょっとわからないと思いますけれども、これは、障害者手帳の交付をする窓口、その他相談窓口なんかで周知徹底をするとともに、どういう状況であるか、これは調査をしてみたいと思います。

長妻委員 そして、もう一つ障害年金で、厚生年金の障害厚生年金と国民年金の障害基礎年金、これは全然その対応が異なるんですね。

 障害基礎年金、つまり国民年金の障害年金は、三級というものは一切障害年金が出ない。障害厚生年金は三級が出る。三級というのはいっぱいありますけれども、例えば「おや指及びひとさし指を併せ一上肢の四指の用を廃したもの」、こういう方々は三級ですが、厚生年金に入っている方は障害年金が出るけれども、国民年金だと出ない。

 そして、この障害年金の認定はどういうふうにやるかというと、たった一日の話なんです。一日といいますのは、障害の後、初めて医師の診断を受けた日、その日にどの制度に入っていたかで決まるんです。たった一日、その一日に入っていた制度。

 国民年金にたまたまそのときは入っていた、例えば会社を転職して就職を探していたとき、これはもう障害基礎年金になってしまう、たまたま会社に勤めていれば障害厚生年金になるということで、これだけ差があるというのはいかがかと思うんですが、これを統合していただけませんか。障害基礎年金も三級が出るという形で合わせていただきたいと思うんですが、いかがですか。

舛添国務大臣 これはこの問題だけじゃなくて、今、被用者年金でサラリーマンと公務員がいる、それから国民年金という、ある意味で三つになっている。実はそれの反映でありまして、そもそもの制度設計が厚生年金の障害、国民年金の障害で何が違うかといったら、結局、上乗せ部分を設けていくときに、基礎年金、これはしっかりやりましょうよ、それで二階建て、場合によっては三階建て。だから、その発想でいうと、生活の支援であるという意味では一級、二級、ここまではおっしゃるとおり国民も厚生年金も同じです。

 例えば二階建て、三階建てという発想で来たときに、なぜ三級も設けているか。厚生年金の場合には日常生活云々という書き方じゃなくて、三級については「労働が著しい制限を受けるか、又は労働に著しい制限を加えることを必要とする程度」のものという、これは国民年金と、まさに事業主が入っている雇用年金の発想の違いですけれども、労働という観点を入れて上乗せをやっているわけです。

 ですから、統合するという委員の問題意識はよくわかるんですが、私は、やはりその前提としては今の三つの年金制度が根幹にありますから、そこだけを今言ったように単純に統合できるのか。つまり、もっと言うと、保険料の払い方にもつながってくる。だから、最終的にはそこまで入れた議論が必要だというふうに思いますが、問題意識はきちんと受けとめて、どう対応できるか考えてみたいと思います。

長妻委員 今はもうそういう時代じゃないんですよ。つまり、今は転職がある時代なんですよ。転職がない時代であればそういう発想もあるのかもしれませんが、例えば、会社にずっと勤めていて、その後フリーになって国民年金になるとか、そういうのがしょっちゅうあるわけで、そうすると、一生国民年金の方というのはもう少ないわけです。だから、我々が言うようにすべての年金制度を一元化するということも、こういう不平等を是正する一つの方策になるわけであります。

 ですから、今の言い方というのは、自営業の方というのは生活支援でいいんだ、国民年金は。ただ、自営業だけじゃなくて、今はパートさん、アルバイトさんも国民年金に入っています。ただ、厚生年金は労働力まで見て障害年金を払うんだと。自営業の人だってパートの方だって、今は労働していますよ。それは理屈が立たないじゃないですか。では、国民年金で、労働している自営業の方、パート、アルバイトの方の労働はいいんですか。

舛添国務大臣 よく人が言っていることを聞いてもらわないと、きちんと説明をしたじゃないですか。なぜそういう制度の組み立てになっているかというお話を言っているので……(長妻委員「昔とは時代が違う」と呼ぶ)いや、私だって、ころころ転職していますよ。それはあなた、厚生年金のときの方がはるかに有利だけれども、国会議員になったら議員年金があったけれども、これはみんなでやめたので、今は国民年金ですよ。

 ですから、それは個々人がどの制度にあるかによって制度は違う。被用者のときは半分は事業主が払うわけですから。そういう制度ではないので、大きな制度設計の中で考えないといけない、目の前で困った人をどうするかは考えないといけないけれども。

 統合しませんかとおっしゃったけれども、統合する前提として、こういう原理原則で成っているので、したがってそれをよく考えてやりなさいと。(長妻委員「時代が違う」と呼ぶ)

 それは、時代が違うと言ってしまえば全部、あなた、それならポータブルの年金制度にしないとだめですよ、離婚しようが再婚しようが何しようが……(長妻委員「我々民主党の制度はそうですよ」と呼ぶ)だから、そういうことにしないといけないでしょう。だからそういう議論をしましょうと言っているのに、あなた、時代が違うからおかしいとか、そう簡単に言わないでくださいよ。

長妻委員 ちょっと、理論派の舛添大臣としては答弁が余り論理的でなかったんですけれども。

 診断書も違うんですよ、障害手帳の診断書と障害年金の診断書。項目も認定基準も違うのはわかりますよ、ただ、ダブり部分は一枚にして、基準が違うのは別枠にすればいいのに。届け出るところも違うんですよ。こういう非常に不親切な申請。では、診断書も含め、届け出窓口の一元化、これは大臣、どうですか。

舛添国務大臣 制度がなぜでき上がっているかというのは、それぞれの制度の発足の原理原則からして違う、認定基準も違う。

 ただ、もちろん、雇用の問題でもワンストップサービス、これではるかに便利になる。そういうことは今から心がけていかないといけないので、それぞれの窓口の連携というのは図っていく。それは努力はいたしますけれども、一気にというと、先ほど申し上げたように、過去になぜそうなったかという理由をきちんと説明をし、その上で、しからばどういう論理で変えることができるのか、そういう議論をきめ細かくやらないといけないと思いますけれども、連携を深めてより便利にする、こういう努力はしたいと思います。

長妻委員 今私が申し上げているのは、今の制度には、制度ごとに分立するというのはもう限界があるという一つの例なんですね。

 世界の年金改革の流れは三つありますけれども、その一つに、ライフスタイルの変化にも柔軟に対応できる、これが世界の流れなんですが、日本は転職するたびに制度が変わっちゃう。全然ライフスタイルの変化に対応できない。こういう時代おくれのことをぜひ認識をしていただいて、我が党は、先ほどポータビリティーのような話がありましたけれども、個人単位ですべての方が年金制度に入って、どんな職業でも同じ年収であれば同じ受給額、それで、最低保障年金を一定の所得以下の方に上乗せする、こういう制度を提唱しているんですが、政府はかたくなに拒まれておられる。

 そしてもう一つ、総務省の第三者委員会なんですが、これも一つ問題がございますのは、私も全国から指摘を受けてかなり問題だと思いましたのは、総務省の年金記録回復の第三者委員会で、非あっせん、あなたの言い分は認められませんというふうに言われたときに、社会保険審査会にそれをもって審査請求するということが今できるんでしょうか、できないんでしょうか。

倉田副大臣 年金記録第三者委員会のあっせんというものの法的な性格をまず御理解いただくのが先決だと思いますので、述べさせていただきます。

 そのあっせんというのは、総務省設置法の第四条第二十一号の、各行政機関の業務に関する苦情の申し出についての必要なあっせんに関することとの規定に基づいております。

 そして、このあっせんという行為は、申し出人と関係行政機関等との間に介在をして、苦情が自主的に解決されるように促進する行為と解されておって、直接的に法的な効果を生じさせるものではありませんので、行政処分ではない。したがいまして、委員がお尋ねになっている行政不服審査法の不服審査とは無関係な存在であります。

    〔三ッ林委員長代理退席、委員長着席〕

長妻委員 では、同じ質問を舛添大臣にも申し上げます。今の、お答えいただけますか。

舛添国務大臣 これは、ぜひ具体的に、こういうケースはどうだということをお示しいただくと、よりコンクリートな議論ができると思いますけれども、今総務副大臣がお答えになりましたように、第三者委員会に対して年金記録の確認申し立てを行う、しかし、そのことが、第三者委員会で不服をやっているんだからほかのことをやっちゃいけないというわけじゃないので、社会保険審査会の不服申し立ても同時にできるわけですから、やはり法に基づいて六十日以内というのは、これはそのとおり法を施行しないといけないというふうに思っております。

長妻委員 つまり、ぜひ変えていただきたいと思いますのは、社会保険審査会というのは行政処分に対する異議を申し立てるところでございまして、第三者委員会というのは法的根拠のない組織で行政処分でもないので、そこでそういう判断が下ったときに、肝心の本体である厚生労働省の社会保険審査会には申し立てができない、こういうことになっているわけであります。

 ただ、申し立てができるのは、裁定という、これは年金を受給するときに申請を出して、あなたの年金は幾らですよと、この裁定処理は行政処分なので、それの不服というのはできるんです。ところが、その行政処分を知った日の翌日から六十日以内に審査請求しないとだめだという規定があるんです。

 つまり、裁定が出て一たん年金を受給した、でも、私はこれは記録が抜けているから、この裁定では不満だからというので第三者委員会に申し立てるわけですね。そうすると、第三者委員会に申し立てているうちに当然六十日過ぎちゃいますので、そこで非あっせんが出ても、一番初めの裁定に対して異議をもう言えなくなってしまう。

 本来は社会保険審査会でやるべきものを第三者委員会ということで政府がつくられたのに、その本丸のところができないということになるので、例えば、社会保険審査会は、第三者委員会の非あっせんの結論を受けて審査請求することができるものとする、このケースは六十日以内の規定は適用しない、こういうことを、ぜひ考え方を検討していただきたいと思うんですが、いかがですか。

舛添国務大臣 恐らくその前に、最初は社保の事務所に来るわけですから、第三者委員会にかかる前に、同時にこの不服審査、これは六十日の期限ですから、ぜひ、今すぐ同時進行でおやりくださいということを例えば御説明申し上げるというようなことをまず考えぬといかぬと思います、第一歩として。

 行政不服審査について、全体の、憲法のもとにおけるこの日本国法律体系の中で、今長妻委員がおっしゃったようなことを第三者委員会だけについて特例でやれるかどうか。一般的にはなかなか難しいと思いますが、ちょっと法的な側面は検討させていただきたいと思います。

長妻委員 そしてもう一つ、今政府が、百年安心というふうに今の年金制度を言っている根拠は、五年に一度の財政検証という計算に基づいております。ことしが五年目でその検証をしたら、モデル世帯で、中位ではなぜか所得代替率が五〇・一という、まあ、つくられた数字のような気がするような、五〇パーを下がるとこれは法改正しなきゃいけなくなるので、五〇・一という数字が出て、本当に正直な数字を出して国民的議論をすべきと思うんです。

 それについて、例えば労働力率というものも年金にとって重要です。そうすると、三十代前半の女性の労働の参加者が二〇%も二〇三〇年になるとふえる、こういう根拠に基づいて計算をしているんです。

 その根拠の一つが、この六ページ目に配付をいたしましたけれども、男性の家事分担割合。つまり、家事を手伝う御主人がふえる、その比率も手伝う時間も長くなる。二〇〇五年は一二・二%、つまり女性が家事をする時間を一〇〇とすれば、そのうち男性が一二%手伝っていたものが、二〇三〇年には三倍ぐらい、三七・二%に手伝う比率が上昇する、こういうふうに言っているんですが、この根拠は何なんですか。

舛添国務大臣 こういうものはすべて、そこにありますように、労働経済学者を中心とする研究者たちが雇用政策研究会というところで検討をした結果、そこに御指摘のようなさまざまな推定をしているということです。

 根拠は、その学者たちの意見は、労働時間の短縮、男性の意識変化などによって、二〇〇六年の一二・二%から三七・二%に上昇するという見通しを言っているわけで、シミュレーションをするときに、何らかのデータを使わないとそれは当然できないですから、そういう中でこういう研究会のデータを使ったということであります。

長妻委員 これは、一つ一つ前提数字を検証するとびっくりするんですね、これだけじゃなくて。

 例えば今の家事分担割合は、私が初めに厚生労働省に聞いたら、これはあるシンクタンクに外注しているのでわかりませんという答えが来たので、いや、それは調査してくださいと言ったら、ではシンクタンクに聞いてみますということで、厚生労働省の方が聞いたところ、こういう答えでした。

 下に、ノルウェー、スウェーデン、ドイツ、フランス、イギリス、アメリカ。スウェーデンが三七・九%、ノルウェーも三七%なので、ここは理想の社会だろう、だからこのぐらいに近づけようという願望もあるんだ、こういういいかげんな前提なんですよ。

 大臣、これ本当ですよ。いかがですか、こういういいかげんな前提。

舛添国務大臣 いや、私も学者をやっていましたから、いろいろこういうような研究もやりました、例えば合計特殊出生率をどういうふうに出すかということも含めて。

 ただ、この五年ごとの検証は、さまざまなデータを同じモデルを使ってやることによって数字を出してくるというので、例えば、ことしだけはどうしても五〇をクリアしたいために経済のデータで違うものを使うということじゃなくて、経年的、つまりこの場合だと五年ごとに数字を出していくということですから。それは、そうするとすべての予測というのが成り立たないことになりますから、一定の予測であって、それはもう、そこまで言うと何にも将来見通しはできなくなるんじゃないですか。

長妻委員 いや、舛添大臣、物には限度というのがあるんですよ、限度。それは予想ですから、私も方程式を全部出して、間違っていたら全部けしからぬなんて、そんなことを言うつもりはありませんけれども、これは根拠が、本当なんですよ、一二・二パーから三七パーに三倍、日本の男性が家事を手伝う時間の比率が長くなるわけですよ。

 それはなぜかと聞くと、いや、スウェーデンとかノルウェーは三七パーだから、この理想の社会に日本もなるという願望、目標があるからこうするんだ、この数字でいくんだということで、こういういいかげんな計算、前提を置いて年金の財政検証というのを、検証という言葉があるわけで、これは限度を超えているんじゃないかということなんですけれども、どうですか。

舛添国務大臣 私たちの政策の方向としては、ワーク・ライフ・バランスということをやっております。そして男性も育児に参加する、家事に参加する、そういう社会を目指そう。

 そういう方向で、目標としては、二〇三〇年の世界で男性の寄与率はどれぐらいであった方がいいでしょうかといったら、私もこれぐらいの数字を挙げますよ。(長妻委員「だから、根拠があればいいんですよ、根拠が」と呼ぶ)いや、根拠というのは、こういうのは、じゃ、あなた出せますかということになるんですよ。

 ですから、これは、こういう研究者がシミュレーションとして一つ出したのを使っているし、その政策の方向が、私たちがやろうとしているワーク・ライフ・バランスや男女雇用均等というようなことと全く違う方向で出してあれば、それは私たちが目指している方向じゃない方向の数字ですから、それは違うと思いますよ。ただ、これはだから、シミュレーションというのはそういうものだということ。だから、どこまでが限度で、物には限度がある、じゃ、三七・五ならおかしいけれども二七・五ならのめるのか、そういう話になるわけです。

長妻委員 いや、大臣ちょっと、全然おわかりになっておられないですね。

 私は予想するのが悪いというんじゃなくて、根拠があればいいんですよ、根拠が。例えばワーク・ライフ・バランスというのであれば、では、二〇三〇年に男性の仕事以外の時間がこれだけふえる、これだけふえるからある程度こういうふうになるんですよ、こういうバックデータというか、ある程度の根拠があれば私もまあそうなのかなと思いますが、何にもなくて、理想に近づくんだ、こういう話をレクのときに説明されるから申し上げているんです。

 そしてもう一つ、例えば国民年金納付率、これも驚くんですね。

 四ページをごらんいただきたいと思うんですが、これは平成二十年度実績ということで、ことしの一月末の国民年金の納付率が六〇・九パーなんですよ。ちょうど一年前の一月末でいうと六二・八パーで、下がっているんですね。

 ところが、平成二十一年度からこれが八〇%になるということなんですよ。平成二十一年度に八〇%で、ずっと八〇で推移するという前提で財政検証の計算がなされているんです。八〇パーにしなきゃいけない理由は、私が疑うのは、これを例えば七〇パーに設定してしまうと所得代替率が五〇パーを割っちゃうんですよ、これは確認しましたけれども。これはまずいことになるというふうに思われたのかどうか。

 これを八〇パーにするというのは、当然、例のずっと言われている、財政検証の計算の前提は経済前提専門委員会にちゃんと諮ってやっているんだと言われているんですが、この平成二十一年度は国民年金納付率が八〇パーというのは間違いなく諮ったんでしょうね、前提委員会に。

舛添国務大臣 そちらの問題にお答えする前に、さっきの男性の寄与率ですけれども、先ほど私が申し上げたワーク・ライフ・バランスや何かで数字を出せというなら、例えば男性の育児、家事関連時間というのは、二〇〇六年が六十分というのを、二〇一七年に一日当たり二時間三十分にふやすというようなことがあり、そこで、二〇三〇年のシミュレーションをそれでやると、労働時間が月間で一〇%減少して、それで十八時間の減少になる。男性の意識変化が一〇・六%、女性の家事負担減が一二・一で、それを積み上げて三七・二ということなので、研究者が出したデータはそういうことですから、その細かい数字からいってもそこが出せます。

 それから次の、八〇%、これは要するに社会保険庁の目標として、平成二十一年度以降における納付率を八〇%にする。もっと、それ以上上げるぐらいに全力を挙げてやらないといけないわけですから、それについて、努力目標でやっています。

 ただ、もちろん委員が言うように、これが仮に八〇にいかなくて、例えば六〇というようなことになれば、それは数字は下がりますよ。(長妻委員「前提委員会にはかけたんですか」と呼ぶ)

 これは財政検証の前提委員会に諮るということではなくて、これは、ちょっと待ってください。まず納付率については、先ほど言ったように目標だということで、私、ちょっとこれは正確なところを、間違っていれば、ちょっと事務方がわかればあれですけれども……。わかりました。

 経済データについては前提の委員会ですけれども、先ほど言ったように、これは行政の、社会保険庁の目標ですから、そこでの審議をする内容じゃありません。

長妻委員 これは私は本当にびっくりするんですね。つまり、財政検証の前提数字はいろいろあるけれども、今までは、おかしいんじゃないかと言うと、いや、それは、専門家の経済前提専門委員会ですべて前提の数字はチェックをいただいて、御議論をしていただいていますという話だったんですが、そうすると、国民年金保険料の納付率はそこで審議をしていない。審議したら、多分通らないでしょうから。

 これは、国民の皆様方も私どもも、中立的というか、本当に確率の高い前提に基づいて計算をするというのが年金の良心的な、国民の皆様に提示する、巨額な税金をかけてこれは計算するわけでありますので、今の政府の姿勢は、今の政府の願望というか政策目標が全部一〇〇%達成したとすれば、あるいはバラ色の社会になったとすればこうなるという数字を出されておられるので、私はそれは税金の無駄遣いだと思いますよ、そういう形で巨額の税金を使って年金の計算をして、非常にげたを履いた数字を示すというのは。

 これは、厳しくても本当の数字を、固めの数字を使ってお見せすることで国民の皆さんも、これじゃもたないんじゃないか、これじゃ制度を変えなきゃいけないんじゃないかという議論がまじめに起こる、そういう機運が高まる、こういうことで進むんだと私は思います。

 その中で、特に申し上げたいのは、今の国民年金のままで本当に大丈夫なのかということなのでございますが、私、興味深い議論を、この資料にも十ページにつけさせていただきました。

 平成十八年の三月に、予算委員会の分科会で、当時の川崎二郎厚生労働大臣と質疑をいたしました。そのときに、私は、年金というのは本当に最低限の生活を保障できるんでしょうか、そういうものなんでしょうかと聞いたときに、川崎大臣が、「国民年金については、若い時代から、いやまた先祖様からもあるかもしれません、ストックというものと年金というものを組み合わせて生活を送っていく、」こういう発言をされておられる。

 つまり、国民年金は自営業の方が多いので、先祖から引き継いだ店舗とか土地とか何とか、ストックがあるから、それと合わせて国民年金は使うから、国民年金は少ないということを言外に言われていると思うんです。

 これもちょっと時代が、これは平成十七年が最新ということなのでこの資料を使わせていただくんですが、(パネルを示す)今国民年金に入っている被保険者の方の状態を見ると、自営業の方は、家族従事者も含めると三割を切っているんですよ。アルバイト、パートの方とか常用雇用の方がもう四割近くになっている。無職の方は日本では国民年金なんです。そうすると三割が無職の方ということで、決して自営業の方が中心の年金ではなくなっている。

 そしてもう一つは、麻生総理も、ここにつけましたけれども、中央公論という月刊誌で、総理になられる前にこういうことを言われているんですよね。「「国民皆年金」という謳い文句は、もはや死語だ。学生や失業者にも一律定額の保険料の負担を求めるのは、酷であり、未納問題の解消は難しいと言わざるをえない。」私はこのとおりだと思うんです。

 つまり、一定額というのは国民年金のことでございますけれども、ちょっと試算をしてみますと、先ほど舛添大臣が言われたように、今、国民年金の月額、定額保険料は一万四千六百六十円です。例えば厚生年金の保険料は、労使合わせて一五・三五%。そうすると、従業員だけでいうとお給料の七・六七五%。そうするとどういうことが言えるかというと、厚生年金でいえば、仮に年収が二百三十万円の従業員は国民年金と同じ年金の負担になるわけです。ところが、年収が二百三十万円を切ると厚生年金よりも負担が高くなるんです、定額ですから、年収が低ければその比率が上がるので。ですから、若い人が払いにくくなるというか、払えなくなっちゃう。

 先ほど、世界の年金改革の流れを三つ申し上げましたが、そのうちの一番目が、若い人も無理なく払える年金制度というのがイの一番に来るわけでありまして、我が党が言うように、その部分も報酬比例にして保険料を集めるということが必要である。

 そして、もう一つ国民年金の問題で申し上げますと、八ページでございますが、こういう資料を厚生労働省につくっていただきましたけれども、一番上が、東京に住んでいる老齢基礎年金、これは国民年金のみの方の、今現在、平成十九年度末現在の受給額の平均です。四万八千七百七十六円。そこから、例えば長寿医療制度の保険料月額、これは全国平均なので東京平均ではありませんけれども、五千円ぐらい。介護保険の保険料月額、四千円ぐらい。一万円ぐらいがここから引かれる。つまり四万円ぐらいが、大体、東京の国民年金だけの手取り年金だと思います。

 では、一方で、生活保護の基準額、これも東京を調べていただきましたけれども、住宅扶助の上限額だとすると、一カ月十三万四千五百二十円。生活保護は、医療保険、介護保険は本人負担がありませんので、手取り年金と比べると三倍ぐらいに格差が広がってしまうんです、三倍。

 こういう現状があると、やはりどうしても国民年金を払う意欲というのが減退をして、それは結果的に国の財政を圧迫すると私は思うんです。生活保護というのは全額税金なんですよ。できれば自助努力で保険料を払っていただいて、払いやすい形にして、そしてそこで生活していただくというのが、これは国民の幸せにとっても財政にとっても一番いいことなんですけれども、こういう問題がある国民年金を一元化しないでそのまま百年いくというのは、どう考えても私は理解できないんですが、いかがでしょうか。

舛添国務大臣 まず、生活保護制度というものと年金制度はそもそも違いますから、単純にその金額の多寡だけで比べて議論するのはちょっと、留保は一つあります。

 ただ、今委員がおっしゃったようなことは、私は各地で、例えば選挙のときなんか回っていても、いや、生活保護の方がはるかに受給額が高いんじゃ、もうあほらしくて年金の掛金は払わないよ、こういう声がたくさんあることもまた事実です。さっきの川崎さんの意見は、恐らく、生活保護と比べたときの比較でそういうことをおっしゃったんだろうと思います。

 ですから、そのための財源、これをどうするかの具体策がないと、理想はそれは非常にいいと思います。六万六千円でやっていけますかというと、これは基礎年金ですけれども、それはなかなか大変だろうし、東京のような大都会だと家計費もかかりますから、それは一つ国民的な議論をやらないといけませんが、やはり安定的な財源を確保していくにはどうするのか。

 それからもう一つは、世代間の負担の公平という、つまり今委員がおっしゃったように、若い世代に対して、余り負担感を持たないようにということをおっしゃいました。逆に、高齢の方々の平均の受給額を上げるということならば、賦課方式というのを前提にするならば、そこはどうするのか。つまり、負担を若い人に対して少なくする、しかし、例えばこの四万八千円を倍にするとすれば、ではその財源をどこから持ってくるのか、こういうこともやはりきちんと議論はせぬといかぬだろうと思っています。

 問題意識については、共通の問題意識はございます。

長妻委員 いずれにしましても、やはり国民年金をこのまま単独で続けて制度を分立していくというのは、これは一元化という方向を確認し合わないと、もう本当に行き詰まる。

 例えば九ページでございますけれども、この資料のいろいろな読み方もあると思いますけれども、事実としては、被保護者、つまり生活保護を受けている方が、平成十八年、全体で百五十一万三千人おられた。その生活保護を受けておられる人のうちの年金受給者は三十八万一千人おられる。二五%。つまり、日本全体の生活保護を受けている人の四人に一人が年金受給者だ。つまり、年金だけでは生活できないという方がこれほどおられるということ。

 そして、消えた年金問題に関しては、我々は本当に国家プロジェクトで取り組んでいただきたいと申し上げているんですが、なかなか政府は腰を上げない。

 その中で、ちょうどきょうから、ねんきん定期便というものが誕生月に全被保険者の方に郵送されるということで、これは、我々が申し上げていた標準報酬月額を入れろということで、また送るという二度手間になりましたけれども、そして年金の受給額もここには入っているということなんですが、特に、我々は、レッドレターにしてくれと申し上げたんです。

 つまり、五千万件の宙に浮いた記録の該当者に当たる方でまだ措置がなされていない方や、あるいは標準報酬月額の改ざんなど、消された年金問題に該当する可能性のある方はレッドレター、赤い封筒にしてほしいと申し上げたんですが、なぜかその方にはオレンジの封筒になったということで、オレンジの封筒は全員に送られるわけではありませんので、これに該当する方は要注意だということなんです。

 ところが、十七ページにありますけれども、この封筒の表面には、これはオレンジのものなんですけれども、あなたは特別にオレンジなんです、みんなにこの色の封筒を送っているわけじゃないという文言がないので、またこの封を見過ごしてしまう方がおられるんじゃないかという懸念を持つんですが、その点、大臣、いかがでしょうか。

舛添国務大臣 これはカラー刷りじゃないですが、「大切なお知らせです!」のところは赤字で大書特筆をしております。それから、NHK含め報道機関もよく報道してくださって、きょうからこれは始まりますよ、水色とオレンジ色がありますよということを言っておられますし、ぜひメディアの方にも御協力いただいて、周知徹底したいと思います。

 それから、今、こういう封筒とか中身についてホームページでパブリックコメントを求めて、皆さんが読んで読みにくかったら、ぜひお知恵拝借ということでやっておりますので、まあ、真っ赤じゃなくてオレンジですけれども、十分これは周知徹底していきたいと思っております。

長妻委員 そしてもう一つ、きょうも、私の質問の前に二十五年ルールの見直しなどいろいろ出ましたけれども、これをまとめてみました。(パネルを示す)これは政府にチェックもいただいたので正しいものなんですが、配付資料にもございます。

 昨年の末に、政府は、例えば主要項目だけでも年金に関して七項目を見直していこう、こういうふうに言われたんですが、これは基本的に、我々民主党の年金一元化法案が成立すれば解消できるものなんですけれども、ただ、パッチワーク的に徐々に改善するという政府の姿勢をここで明言されているわけです。

 ところが、これは期限とか財源を聞いても、なかなか官僚の方から明確な御答弁がないんですけれども、こういう「低年金・低所得者に対する年金給付の見直し」、これは我々が言う最低保障年金をすれば解決できるんでしょうけれども、「パート労働者に対する厚生年金適用の拡大等」とかこういう項目があるんですが、この中で、一つでも期限、財源が決まっているものがあるんでしょうか。

舛添国務大臣 これを、まさに今一つ一つ議論していこうということで、それは長妻さんがおっしゃっている民主党の案もありますけれども、私が先ほど来言っているように、財源の問題をどうするんですかと。

 それから、やはり制度の発足以来の由来がありますから、それは一元化というのは、私も最終的にはそういう方向になればいいと思っていますよ。しかし、保険料の支払い方法、事業者とサラリーマンを含めて、まずはこの被用者、つまり公務員と民間のサラリーマン、そこから一緒にしていく。そして、余りにも溝が深いものをどう一緒にするのか。

 そんなに一気にできれば、これは、ある制度からある制度に変わるというのは、全員がそれでプラスではなくて、必ずマイナスを受ける人が出てくる。そのための経過措置とか特別措置とか、なぜこれだけ仕組みが複雑になったかというのは、まさに政治の要求、つまり国民の要求で、ここは細かい手当てをしてください、こうしてくださいというので、悪い言葉で言うと継ぎはぎだらけの建物になっているわけです。

 だけれども、それはそれなりの意義がその時々にあったので、意義がなくなったものはなくしていく。先ほど来おっしゃったように、時代に合わせて変えていく。ですから、それは一気にということではなくて、そういう制度改革によって損害をこうむる人をできるだけ少なくするような方向でやらないといけない。スウェーデンのように一気に消費税二五%ということをやれるなら、それは大きな改革も財源的には可能かもしれませんが、しかし、これは国民の声をよく聞いて、そして与野党含めてよく議論をして、少しずつ前に進めるしかないというふうに思っております。

長妻委員 少しずつ前に進めるということでこういう案を出してきているのに、財源も期限もいまだにわからないというのと、十五ページ目に、これは厚生労働省の年金局が作成した資料ですけれども、二十五年ルールというのは、日本は二十五年、アメリカは十年、イギリスはなし、ドイツは五年、フランスはなし、スウェーデンはなしということで、これも非常に年金に対する支払い意欲を減退させているんではないか。

 先ほども私の前に質問が出ましたけれども、例えば、私のところによく来るお便りの中には、御高齢、一定の年齢以上の方で、ずっと払っても二十五年には満たない、受給資格がない、取れないというのはもう判明している方だけれども、会社にパートとかあるいは正社員で勤めると、自動的に給料から厚生年金の保険料が天引きされるわけですね。これは全く無駄というか、その方にとっては受給できないんだけれども、天引きですから、天引きされるというのは非常に悲しい気持ちというか、そういう複雑な気持ちだというお便りもいっぱいいただいておりますので、一つ一つ見直すのもいいんですけれども、やはり大ぐくりに年金改革をしなければならないと思います。

 最後に、舛添大臣に、この二十五年のルールに絞って、御決意というのは何かあるのでございますか。

舛添国務大臣 例えば二十五年を十年にするというときに、先ほども申し上げた、一つは低年金をどうするか。これは、本当に十年しかやらないという人と、とにかく苦しくてもこつこつ二十五年やった人との公平性の問題もあります。そして、最低の保障レベルをどこに置くかというときに、最低の保障ということは要するに国民全体のコンセンサスを得ないといけませんから、ここはもう少し議論を深めて、国民的な議論をやる必要があると私は思います。ただ、これは今委員がおっしゃったように、私はできるだけ早くこの問題についても議論をしたいと思います。

 ただ、建物でいうと、大きな全体の中のどこか一つだけをつまみ食いという形ではやはりだめだと思いますから、そうすると今委員おっしゃったように、本格的なということになります。だけれども、これはまさに経過措置をどうするのか、そして、とにかく歯を食いしばって、どんなに苦しくてもこつこつ払ってきた方々の不満もそこに出てくると思います。

 こういうことに対しても、政治は、バランスのとれた感じで配慮しながら前に進める必要があると思います。ですから、そういう意味では遅々たる歩みかもしれませんが、大きな荒療治をやって泣く人が出るよりも、これは今言ったような方式の方が確実じゃないかと私は思っております。

長妻委員 個別個別に変えていくというのはもう限界に来ていると思いますので、トータルで年金を一元化して、最低保障機能をつける。世界の三つの流れの三番目は、最低保障機能がある年金ということでございますので、ぜひ抜本改革をしていただきたい。皆様がしないのであれば我々が政権交代で実行するまででありますので、よろしくお願いをいたします。

 ありがとうございました。

田村委員長 この際、休憩いたします。

    午後零時五分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時五十四分開議

田村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。郡和子君。

郡委員 民主党の郡和子です。

 予定よりもちょっと早く始められて、予定よりも早目に終了すればいいなということを考えながら質問に立たせていただきます。

 午前中の長妻委員からの指摘にもありました、障害を持った方々の公的年金制度について、私からも指摘をさせていただきたいと思います。

 障害をお持ちの方の公的年金制度は、障害基礎年金と障害厚生年金の二つの制度がございまして、きょう皆様方にお配りをさせていただきました私の資料にも、資料の一と二にございますけれども、障害基礎年金の一級、二級、それから厚生年金の方の三級という資料も盛り込ませていただいたところです。基礎年金については一級と二級があり、厚生年金の方には三級という稼得能力の減退を加味したものが設けられております。

 稼得能力の低下を補っているこの障害厚生年金三級を受給しておられる方の数、また何%ぐらいなのか、初めにお尋ねしたいと思います。

石井政府参考人 お答え申し上げます。

 お尋ねは、厚生年金の三級の障害年金受給権者の数ということでございますけれども、平成十九年度末現在で約二十三万六千名でございます。

 それから、平成二十年版の障害者白書によりますと、障害児者数は約七百二十四万人というふうになっていると承知しておりまして、これに対するただいま申し上げました三級の障害年金受給権者の方々の数の比率は、単純に計算しますと三・三%ということになります。

 なお、障害児者七百二十四万人との対応ということであえて申し上げますと、厚生年金、国民年金の障害年金のほかに、国共済とか地共済、それから私学共済、こちらの方で障害年金を受けている方々が多数いらっしゃいまして、合わせると百八十五万一千人という数字になりますので、あわせてそちらの方の比率ということで申し上げれば、障害児者合計七百二十四万人に対しては約二六%になる、かような状況でございます。

郡委員 三級を受給されている方は三・三%であって、全体を見ても二六%、この数字を胸を張ってお答えになられましたが、そういう数字ではないと思うんですね。

 障害厚生年金にある三級というのが障害基礎年金にはないわけなんですけれども、きょうの私の資料の、肝疾患による障害の障害認定基準というところを見ていただきたいと思います。資料の二の二です。

 これによりますと、肝臓障害の場合をここにつけさせていただいたわけですけれども、例えば、障害基礎年金の対象の人はこれを見ますと一級、二級ですね、「一般状態区分表のオに該当する」。オをごらんください。「身の周りのこともできず、常に介助を必要とし、終日就床を強いられ、活動の範囲がおおむねベッド周辺にかぎられるもの。」これはもう寝たきり状態ということです。肝疾患を患っている方で一級の障害基礎年金を受け取るには、末期状態でなければ受けられないということなんだろうと思います。

 障害基礎年金には三級という区分がないのはなぜかということを前もってお尋ねをいたしましたら、先ほど大臣も午前中の審議の中でもお答えになっていらっしゃいましたけれども、基礎年金というのは日常生活の能力の制約に着目して給付を行っているんだ、障害厚生年金の方は、民間の被用者を対象にして、基礎年金の上乗せ給付として、労働能力の喪失という観点に着目して年金を支給するのだというふうに説明をされております。

 長妻委員もこの点については指摘をしておりました。民間の被用者を対象にというわけですけれども、障害厚生年金は、一般企業に就職をして社会保険適用中に障害を負った方に限定されるもので、大勢の方々、例えば二十前に障害を発症した方、それから一般企業に就職していない、社会保険に入っていない障害者の方、自営業の方、そしてまた社会問題化しているパートや派遣、こういった方々はこれは受けられないわけです。もともと対象範囲が狭まっているということです。

 そしてまた、私のお配りしました資料の三をごらんいただきたいと思います。

 日本の障害の範囲ですけれども、国際的に障害年金の対象者を比較してみましても、日本の障害者年金を受給している範囲というのは大変狭まっております。あのと言うのもあれですけれども、あのアメリカと比べましても二分の一程度でございます。生活保護の受給者の中で傷病者が全体の三割程度を占めていて、稼得能力の減退を加味しますと、本来は障害年金を支給すべき方々がこの中にも大勢入っておいでなのではないか。年末年始に行われたあの派遣村でも、こういった御相談が多々寄せられていたというふうに聞いております。

 障害を持った方々の所得保障があれば、体調やその障害の程度に合わせて少しでも、幾らかでも、五万でも十万でも自分で稼いで、そして残りの分を年金で補てんしながら自立生活、そしてまた将来に向けた生活設計というのが描ける方が多いんだろうと思います。稼得能力に制限のかかる障害を持つ方に対しては、制度的な格差を解消して、広くセーフティーネットを再整備するということが急務だろうというふうに思っております。

 障害基礎年金においても、先ほどは、統合するのはすぐには難しいというお話でしたから、それであるならば、障害基礎年金においてもこの厚生年金と同じ三級に相当する基準を設けるべきだと思いますけれども、いかがでしょうか。

 そしてまた、今後年金の一元化を図っていく上で、今の一級、二級の基準に合わせて、すべての障害において、この稼得能力の減退についても加味できる基準というのをこの際新たに設けるべきだと思いますが、いかがでしょうか。

    〔委員長退席、三ッ林委員長代理着席〕

舛添国務大臣 これは午前中、長妻委員にもお答えしましたけれども、もともとは、六十年の改正の前は、厚生年金は日常生活の便というような基準じゃなくて、全部労働絡みの話でありました。これを六十年の改正で、一級、二級はほぼ国年と厚生年金の障害年金、同じような表現になって、先ほど私が説明しましたように、いわば二階建て、三階建ての部分でこういうふうになりました。

 確かに、いろいろなセーフティーネットを拡充していく、複層化していくということは、十分今後の方向としては考えないといけないというふうに思いますし、そのための財源の措置も、これは何とかひねり出すということを考えないといけないんですけれども、ただ、私が申し上げましたように、どうしてもそこに国年と厚生年金の二つのそもそもの制度の違いがあって、保険料の負担の違いがあったりしますから、そういうことも加味しながら、これは全体の年金制度ですから、制度設計をどういうふうにするかということを考える中でやる必要があると思いますが、これも十分検討すべき課題として検討させていただきたいと思います。

郡委員 お答えになっていないです。

 今、厚生障害年金の方では三級という認定基準がもう設けられているわけです。障害基礎年金の方には一級、二級しかないので、すぐにでも三級という新しい区分を設けるべきではないですか、これはもう設けられるのではないですかということをまず一点お尋ねいたしました。それにもお答えになっていただいていません。

 また、年金一元化に向けてどういうふうになさっていくのかということについても明確な御答弁がございませんでした。

舛添国務大臣 後者の方から言うと、被用者年金のまず一元化をして、そして長期的な課題として年金制度の一元化を図る。

 したがって、最初の問題は、これは今ここで私が、では、すぐ三級を設けましょうと言える話ではなくて、さまざまな問題点も指摘した、制度のオリジンについても説明をした、そういう中でこれは議論を進めていきましょうということであります。

郡委員 障害基礎年金の二級というのは老齢基礎年金の満額と同額になっています。

 この点について、〇八年十月三十一日の社保審の障害者部会で、年金課が、年金制度は基本的に稼得能力が低下した方に対する給付として給付されます、そういう意味で、老齢基礎年金は高齢になったことによる稼得能力の低下ということであり、障害基礎年金についても、稼得能力の喪失、高齢になったことによる稼得能力の喪失が、障害によってある意味若い年代からきたということの考え方で基礎年金を給付しております、そうしたことからこれまでの考え方は額を同額にしてございます、もちろん、その障害基礎年金と老齢基礎年金、必ず同額でなければいけないのかについては議論はあるところかと思いますけれども、当然、障害基礎年金だけを上げるということになれば、高齢者側の方にも、逆に、なぜそのままなんだという議論もあるかと思いますし、そこは十分な議論が必要かと思っています。

 これは自立支援法等の改正を見込んでの議論だったんだろうと思いますけれども、その社保審の報告書には、自立支援法の見直しについて、障害者の所得保障というのは、稼得能力の低下を補うとともに、障害があることによって起こる特別な負担を軽減することが自立生活に必要不可欠というふうな考え方が示されておりまして、与党のこの問題のPTでも、障害者の基礎年金については上げていくというようなことが伝えられているところであります。

 政府として、この社保審の御意見、与党のPTの御意見、そしてまた社会保障全般の見直しをしていく上で障害者の所得保障、とりわけ障害者年金のあり方についてしっかりと議論をされるというふうに理解してよろしいのでしょうか。

木倉政府参考人 今御指摘の社会保障審議会障害者部会の中では、今報告の一部も引用いただきましたけれども、障害者の生活の安定を図る観点から、所得保障のあり方について大変幅広い御議論をいただきました。中でも、障害基礎年金については、その水準の引き上げを図るべきでないかなどの意見が多く出されたところでございます。

 報告書の中では、今後の所得保障施策全体のあり方につきまして、このような意見を紹介した上で、社会保障制度全般の見直しに関する議論との整合性などが必要、これを踏まえてさらに検討すべきであるという御指摘をいただいているところでございます。

 これを受けまして、今御指摘のように、自立した生活を支えていくために必要不可欠なものという観点を踏まえながら、今の財源の問題も含めまして、より幅広い観点から検討を進めてまいりたいというふうに考えているところでございます。

郡委員 どういうふうな御意見のまとめになるのかわかりませんけれども、稼得能力の低下を補うという観点のみならず、障害者の安定を図って自立した生活が営めるように、こういう観点からこの障害者年金のあり方というのを見直すべきだというふうに思っています。その点についても確認をさせてください。

    〔三ッ林委員長代理退席、委員長着席〕

渡辺政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど木倉部長から御答弁申し上げましたことの延長になりまして恐縮でございますが、障害者の方々の所得保障のあり方というものを年金制度だけで考えるかどうかということも含めて、幅広く障害者の施策の御議論があったように承知しております。私ども年金関係でいいますと、そうした点も踏まえて議論すべきではないかということを、社会保障審議会の年金部会においても報告を受けております。それが一点でございます。

 それから、先ほど先生もおっしゃられた中にも、私どもの関係者が障害者の部会で説明させていただいたとおり、老齢基礎年金とまず基本のところを一致させた仕組みになっているわけでございます。それは、障害年金というものをそもそも老齢年金を定める制度の中で設けておくべきかどうかという点についても、根本的な議論は諸外国を含めてあるわけでございます。

 御指摘のように、障害者に対する所得保障、あるいはその形態が年金であるか否かにかかわらず、それは老齢年金の制度と一緒である必要があるのかないのかという議論がもともとの議論としてあると思います。我が国の歴史的な経緯の中では、そこについての結論というものを私どもはまだ得ていないわけでございますが、長い年金の歴史の中で、特に老齢年金を制度として立ててきた年金の歴史の中で、障害者についても老齢年金と同様の扱いをするということをまず基礎に置いて、その障害の重い方々についてそれを加算していく、こういう対応をしてまいりました。

 そういった方向と、それから今後の年金の一元化の議論、その中に改めて障害年金というのをどのように位置づけるのか、こういう点については、私たちもさらに勉強を深めてまいりたいと考えております。

郡委員 先ほどお話もあったように、障害を持っておられる方々で、公的な年金を受け取っておられる方々は二六%ほどでしかございません。障害厚生年金の方では三%なんですね。これをもっと広げてほしいということをお願い申し上げました。今、障害者の中でも、公的年金を受けられている方、受けられない人、大きな差別が存在しているということも認識をしていただきたいと思います。

 次の質問に入ります。

 厚生年金のあの不適正な記録の改ざん、訂正、そしてまた国民年金の不正な納付免除申請手続、見かけの納付率のアップということがございました。この不正な手続を行った動機として、将来の無年金者をつくらないためだった、将来の無年金者を減らすためだったというふうな言いわけがこの委員会でも言われたことがあったように記憶しております。しかし、今、保険料を払う意思があって、そしてまた加入を望んでいても、そこから排除され、無年金者とされてしまっている方々が存在しております。在日無年金障害者・高齢者の皆さんたちです。

 坂口元大臣が救済の対象として念頭に置いていた無年金障害者のうち、被用者の被扶養配偶者及び学生については、特定障害者に対する特別障害給付金の支給に関する法律というのがつくられることによって給付金が支給されることになりました。全額国庫負担によるものです。しかし、なおこれらの救済措置が講じられないまま、在日外国人の無年金者が相当数おいでになっています。この問題について次に取り上げさせていただきたいと思います。

 簡単に過去の経緯を御説明申し上げます。きょう配付してございます資料の四ページからになります。

 一九五九年の国年法の創設に当たって、国籍要件というのが設けられたことによってこの外国人の無年金者の問題が出たのだ、そういうふうに思います。在日外国人は、一九八一年、昭和五十六年の国籍要件の改正まで、国民年金に加入していなかったのではなくて加入できなかった。保険料を納付してこなかったのではなくて、納付したくてもさせてもらえなかったわけであります。そして、一九八一年の難民条約の批准に合わせて、八二年に国民年金の国籍要件を撤廃した際にも、無拠出制年金に関する経過措置がこれらの皆さんたちに設けられなかったことによって、現在も無年金のまま放置されております。

 一九八六年の基礎年金制度創設に伴って、国籍要件撤廃以前の時期について、いわゆる空期間により受給権を得ることができたという人もありましたけれども、その時点で六十歳を過ぎていた方、この方々はまた放置をされたわけでございます。そしてまた、撤廃された八二年に二十以上であった在日外国人の障害者についても、同じような経過措置がとられずに無年金状態が続いている。

 一九五九年の国年法の発足当時にも、既に七十歳を超えていた高齢者の方、それからまた二十歳を超えていた障害者の方々がいらっしゃったわけですけれども、日本国籍の日本人に対しては無拠出年金として経過措置をとりました。一九五九年十一月から老齢福祉年金及び障害福祉年金、今の障害基礎年金ですけれども、これらが支給されております。つまり、保険料を徴収される六一年四月以前に、既に経過措置として無拠出制の年金支給が行われたわけです。日本人に対してはこのような措置がとられた。

 政府、厚労省が、国民年金に加入せず、保険料を納付してこられなかった方々についての経過措置をとって給付を行っているそのほかの例をここで次に挙げさせていただきます。

 資料で配付いたしました。資料の六ですね。小笠原、沖縄、そして中国残留の帰国者、拉致被害者に対する救済措置です。直近では、一昨年十一月の中国残留邦人の帰国促進・自立支援法改正案の成立によって、この方々へも特例措置が講じられております。国民年金に加入していなかったり、保険料を十分納付できなかった方に対しての特別な措置です。これらの方々に対するこれらの措置というのはすべて、自己の責任によらずして無年金になったので、政府はこれに対して特別な経過措置を設けたのだというふうに思っております。

 であるならば、自己責任によらず無拠出年金を受給できない在日外国人障害者・高齢者の経過措置もあってしかるべきだというふうに私は考えます。不幸な戦争、そしてまた大陸進出、また植民地化政策という特殊な歴史を背負って生きてこられた、その背景は共通しております。

 次に、特例措置を約束しながら、これまで何も行ってきていないということを指摘させていただきたいと思います。

 一九八一年二月二十八日、国際人権規約批准の後、そして難民条約の締結直前に、当時の園田厚生大臣が予算委員会の席でこのように御答弁なさっています。韓国から来た人、「不可抗力で本人の責任はないわけでありますが、そこに経過措置というのが出てくるわけであります。」「年金法の改正の中でそういう問題は考えていかなければならぬ。」日韓協定によって「内国民と同様の資格を得られた方々に対する経過措置でありますから、それはなるべく早い時期にいまの御趣旨に従ってやります、」と表明されている。

 さらに、八二年の四月八日、衆議院の社会労働委員会におきまして、中国残留邦人や日本に永住している在日外国人が無年金者にならないよう措置を求められて、当時の森下国務大臣はこのように答えられております。「皆年金に参加していただくための特例的な措置を考えてみたい、早急に検討したい」。

 これらの答弁からもう既に四半世紀過ぎておりますけれども、在日の高齢の方々、無年金障害者の方々に対しては何の措置も講じられておりません。

 人権の世紀と言われた二十一世紀になってようやく、こうした不当な扱いを打開する具体的な試みが政府内から出てまいりました。いわゆる坂口試案と呼ばれるものでございます。当委員会の皆さん御承知のように、二〇〇二年の七月に、当時の厚労大臣だった坂口さんが、無年金障害者に対する救済案である坂口試案を発表されました。それを契機に、特定障害給付金法が制定されて今日に至るわけですけれども、ここでも在日無年金障害者・高齢者は排除されております。

 なぜ、この特定障害者給付金の対象者から在日無年金者は除外されているのでしょうか。拠出制年金制度の中では特別な措置が当面無理だとしても、こちらでは対応できたのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。

渡辺政府参考人 今御指摘の特定障害給付金のことでございますが、今御指摘いただいた平成十四年七月のいわゆる坂口試案が公表された後、超党派の議員連盟で御議論が深められ、福祉的な措置としての給付を行うための法案が、平成十六年の六月ですが、同じ月に与野党からそれぞれ法案が提出されたという経緯でございます。

 その際に、与野党の法案の中身が今おっしゃられた点などで異なっておったわけですが、与野党のそうした議員立法の法案の背景にある判断につきまして行政の立場の私から申し上げるということは、これはよほど慎重でなければいけないわけでございますが、客観的に見ますと一つ御説明できるかと思っております。

 与党案と野党案では、在日外国人の無年金障害者の方を給付の対象とするか否かなどの点で違いがありましたが、与野党による調整の結果、与党案に附則第二条として外国人無年金障害者に係る検討規定を追加するということで合意がなされ、修正がなされ、そして与党案をベースとした法案が全会一致で成立したというふうに承知しております。

郡委員 私まだ議員になっておりませんので、その辺の詳しいところというのは調べてみました。

 そもそも、与野党の議員立法になるその前にあった坂口試案は、「学生など任意加入であった者を中心に救済する案も存在するが、福祉的措置をとるためには立法化が必要であり、法制上からも対象者は無年金障害者をすべて同様にとり扱うことが妥当であるとの結論に達した。」というのが当時の坂口大臣のお話でございました。

 ところが、こういったことになったわけですけれども、当時、当委員会で坂口大臣が答弁で、無年金障害者に対する福祉的措置についてこんなふうなことを話されております。政府のたしか内閣法制局だったかと思いますけれども、一部だけするというわけにはいきませんよという話だったと記憶いたしておりますというふうなものであります。

 当時、坂口厚生労働大臣が試案を検討されていた過程で、法制局は坂口大臣に対して、一部じゃだめなんだよ、全部じゃないとだめですねというようなことを指摘したんじゃないですか。そして、現状ではその一部のケースに対してのみ福祉的な措置がとられているわけですけれども、内閣法制局の見解はどうでしょうか。きょうは内閣法制局の方にも来ていただいています。

近藤政府参考人 お答えいたします。

 お尋ねの件でございますけれども、昨日お話を伺いまして、これは、二〇〇二年の七月に当時の坂口厚生労働大臣が試案を示しておられて、その近隣のことだということで、当時のそういう事実があるかを調べてまいりましたけれども、残念ながら、内閣法制局が、一部だけするというわけにはいきませんよというようなことを指摘したという事実がちょっと当時の関係者からは確認ができませんで、どういう経緯の問題で大臣が御指摘をされたのか、ちょっと今の段階では確認ができておりません。

 それから、特別障害給付金の法案について、今御指摘のような形で、学生の方あるいは主婦の方に限られて対象となっておるということについてどうかというお話もございました。

 先ほど年金局長の方からも御答弁ございましたように、この国会において、まさしく立法をどうするかというところで議論がされ、立法政策として御判断されたということでございまして、政府、私ども内閣法制局として御意見を申し上げるということは差し控えさせていただきたいと思っております。

郡委員 坂口大臣は、ですからおっしゃっているんです。

 私が、政府のたしか法制局だったと思いますけれども、お聞きをしましたときに、それをするんだったら一部だけするというわけにはいきませんよという話だったというふうに記憶をいたしております。そんなことから、やるんだったら、それじゃ、全部やらなければならないんだなということでああいう表現に実はなっているわけでございます。

と、はっきりこのようにお答えになっていらっしゃいます。

 ところで、二〇〇四年十一月十九日の厚生労働委員会で、この給付金の法案を審議する中で、当時の尾辻大臣が、在日外国人の無年金者の実態調査ということは実は行っていないのだということを御答弁されました。法案が可決すれば、検討規定があるので、その検討の中で必要があれば実態について把握の努力をする、「実態の把握に努めてまいります。」というふうに述べられております。

 与党の議員立法の提案者であった長勢甚遠議員も、私どもは広い範囲の方々を対象にした法律を出させていただいたわけで、民主党の在日の無年金障害者に対する実態調査の要望については、「検討に早急に入ってもらうよう」「政府に十分要請をしていきたい」というふうに述べられております。

 そこで、在日外国人の無年金障害者と高齢者の総数及び年齢別、性別、所得階層別の人数、職業、居住環境その他の生活実態はどうなっているのでしょうか。例えば障害者自立支援法という法律では、この障害基礎年金の収入が前提となって制度設計がされているわけですけれども、こういった在日の無年金の方々、サービス料の自己負担はどんなふうになっているのか、困窮度などについて実態を把握されているのかどうかお尋ねします。

木倉政府参考人 現在の障害者の関係で、私ども、国籍がいずれかということを問わず、障害者の方々の実態を把握させていただくということをさまざまな調査でやらせていただいておりますが、これにつきましては、その調査の中で、年金等の受給の状況も確認をさせていただいている。その中で、先ほどから御指摘のような、五十六年以前の時期に障害を負っていらっしゃって障害年金を受けられていないというようなことの調査事項も盛り込ませていただいているところでございます。

 ただ、御指摘のような在日外国人の方だけでの、年金を受けていない障害者あるいは高齢者という数そのものにつきましての、それだけを取り出した状況ということは把握ができていないところでございます。

 なお、今御指摘の障害者自立支援法におきましては、外国籍かどうかにかかわらず、福祉サービスを御利用いただく際に、現在の法律の規定にあります、その自己負担の額が家計に与える影響等の事情をしんしゃくして負担上限額を定めるということになっておりますので、利用者の方々からその所得の状況も提出いただきまして、それに応じて、負担能力に応じた負担上限という仕組みの中で御利用いただくというふうにさせていただいているところでございます。

郡委員 つまりはやっていないということですね。委員会の中で、在日外国人の無年金者の実態調査について、やるというふうにお答えになっているけれども、これについてはやっていないということですね。障害を持った方々全体については調査しているけれども、ここで議論になってお約束のあった実態調査についてはやっていない、そういうお答えだったのだろうと思います。

 特定障害給付金法の附則二条、先ほども出てまいりましたけれども、「日本国籍を有していなかったため障害基礎年金の受給権を有していない障害者その他の障害を支給事由とする年金たる給付を受けられない特定障害者以外の障害者に対する福祉的措置については、」「今後検討が加えられ、必要があると認められるときは、その結果に基づいて所要の措置が講ぜられる」というふうになっております。附帯決議と附則もここで書き加えられました。

 二〇〇六年四月には、川崎厚生労働大臣が、「様々な議論を踏まえて引き続き検討すべき課題と、こうして整理をいたしております。鋭意検討を続けてまいりたい」と答弁をされているわけですけれども、実態も把握しないで、なぜ検討ができるのですか。

 それでは、どういう人たちがこの鋭意検討というのを、いつから、どのようになさっているんでしょうか。

渡辺政府参考人 議員立法における附則の検討条項に基づく、その後の検討の状況を今お尋ねになったと承知しております。

 もとより、この議員立法自身が、超党派の議員連盟が中心となって推進され、国会に提案され、そして議論の結果、可決、成立し、今日に至っているわけでございます。

 この附則二条の規定におきましても、そうした背景を勘案いたしますと、単に政府だけがということではなく、そもそもの提案者であられます立法府を中心に、その他の関係者の方々の御議論を踏まえ、政府として、それに呼応するように検討を進めていく、こうした基本的な態度に私どもはよらざるを得ないというふうに考えております。

郡委員 今のわかりませんでした。議員がやれということをおっしゃったんですか。

渡辺政府参考人 行政府の者が国権の最高機関に物を命ずるとか、そういうようなことではまことにございませんので、やれとかいうお話ではございません。

 議員立法でございますので、その議員立法をさらに拡大する御検討は、当然、関係の議員の先生方でなされる、現に議員連盟の方々が活発に活動しておられるということを承知しているということを申し上げております。

郡委員 随分ひどい答弁ですね。

 確かに、議員立法であるこの法律の検討条項には主語はありません。だけれども、国会議員も含めて検討するというふうなことはあるんだろうと思いますけれども、制定された法律で検討が加えられるというふうになっている場合は、政府として検討するんじゃないのですか、行政としても。

渡辺政府参考人 言葉が過ぎたかもしれませんが、従来から、議員立法について修正、改正する際には、そもそもやはり院の発議の問題でございますので、私どもとしては、第一義的に議員の先生方による改正という動きがあるものだというふうに承知しております。この法律制定のときも、そうした議員みずからによる提案という機運の中で提出され、でき上がったものと承知しております。

 法文で検討規定があるというのは、法律における検討規定は、それは政府に対する検討規定であるという一方的な解釈は必ずしも成り立たないので、みんなの検討規定であるというふうに考えております。

郡委員 ちょっと待ってください。全く人ごとのような御答弁をされていますけれども……(発言する者あり)そうですね、内閣法制局がおいでですので。

 こういうふうに議員立法で立法された場合、附則や附帯決議が付された場合、検討するというのは、その議員が検討するということになるわけですか。どうなんでしょうか。

近藤政府参考人 突然のお尋ねでございますが、法律のあて名がだれになっているかということで、確かに、だれがこれを検討するかとは書いてございませんけれども、基本的には国として検討しろということの御趣旨でおつくりになったんだろうと。

 国ということになりますと、行政府もあるいは立法府も含めて国でございますので、そういう意味では、立法府並びに内閣全体において検討を法は命じているというふうに理解をしております。

郡委員 大変よくわかるし、私もそういうふうに理解をしておりました。今の役所の答弁は大変びっくりしています。つまり、自分たちが全く検討していないので、そのような苦し紛れの答弁をつくってこられたのですか。

 実は、きのう私のところで役人の方とお話をさせていただいたときに、こんなふうにおっしゃっていましたよ。関係者の陳述、国会での質問、日韓局長協議、国連人権規約に関する委員会からの勧告を受けたときなど、折々に検討しているということでありました。では、その場その場の検討というのが検討なんですかと私は聞きました。いや、課内にございますというふうにおっしゃいました。これまでも折に触れて検討をしている、そして検討した結果、さまざまな課題があって難しい。ならば、これまでやってきたその検討課題を全部出してくださいと申し上げました。そしてきょうの答弁ですよ。何でしょうか、これは。これはもう、この先質問できません。

田村委員長 質問ができないというのは、質問を打ち切るということですか。

郡委員 では、もう一度お尋ねいたします。

 つまりは、そのような検討はしていないということなのですね。

渡辺政府参考人 言葉が十分ではなかった点があろうかと思います。その点についてはまことに申しわけございません。

 立法府、行政府、それからさまざまな関係団体を含めてみんな、この国の検討規定というものを大事に検討していかなければならないということを申し上げるつもりでございましたが、少々言葉足らずだった点はおわび申し上げます。

 私ども、この問題は、残された課題として非常に重く受けとめております。したがいまして、さまざまな国会の審議、あるいは議連での活動への参画、あるいは国際的な協議での話題への対応、その他さまざまな御意見について私ども真摯に耳を傾けていく、気をつけてさまざまなきっかけというものを逃さないようにしていく、そういう緊張感を持った検討状況が引き続いているというふうに、私ども真剣に考えておるところでございます。

郡委員 大臣、どうですか。今の年金局長の御答弁、そしてその前の、広く議論をする附帯決議、附則に付されたことは、これは自分たちのところだけでやるんじゃないんだという、その言葉は全然撤回をされていませんよ。どうですか。

舛添国務大臣 無年金の障害者をどうするか、その中で例えば在日の方々がおられる。こういう方々の、例えば地方レベルにおける参政権の問題があったり、さまざま今、こういう方々の権利、御主張についてどう配慮するかということは検討課題であると思います。

 片一方で、議員連盟、超党派で南野さんとか谷さんなんかが中心になっておやりになっているのはよく承知しております。そういう活動を支える、そして、行政府としてもこういう問題に真摯に取り組んでいくということで、先ほど来の議論を聞いていて、例えば在日外国人登録をしている方々にどういう形で当たって今のことができるのか。それからもう一つ、これは韓国だけに限ってみますと、在日韓国人の方々の大きな団体がありますから、こういう方々に少し実態調査をお願いするかなというようなことを思いながら、何らかの手が打てないかというのをちょうど考えていた次第であります。

郡委員 大臣、今そういうふうに御答弁されましたけれども、各自治体の中では、御自分の自治体に無年金で大変困窮された方々がおられるので、独自に給付金を支給している自治体が既に幾つもあるんですよ。こんなのは調べればわかりますよ。もちろん担当部局でも知っていますよ。それなのに、そこにも調査していない。これはやはり行政の怠慢だとしか思えません。しっかり検討するというふうに御答弁しているのですから、していただかなくては困ります。

 それと、ちょっと質問時間がなくなってきましたので少し飛ばさせていただきますけれども、日韓局長級会合というのを毎年開いておられます。その中でも、外交の場でも政府は検討するというふうにお答えになっていらっしゃいます。

 在日韓国人の法的地位及び待遇に関する日韓局長級協議において、繰り返しこの問題が議題に上げられています。この協議は一九九一年から毎年一回のペースで開催されておりまして、開催されなかった九七年を除いて、計十七回開かれているんですけれども、外務省は、二〇〇六年三月三十日の参議院の厚労委員会で、韓国側からの救済、待遇改善の要望を受けて、「関係のところともずっと協議をしてきております。」というふうに答弁をされました。

 それから、私どもの知り合いがこの局長級の会合の議事録を情報公開でとらせていただきましたけれども、黒塗りになっていて全く見えなくなっていました。肝心のものを、今探してもちょっと見つからないのですけれども、もちろん皆さんにはお配りできませんでしたけれども、肝心のところが黒塗りで、しかも一ページ抜けておりました。

 何が語られたかということで、張り出しの要旨には、この問題について韓国側から強く要請があったということが書かれているのですけれども、日本側からどういうふうな回答をしたのかは全くはかり知ることができません。

 そこで、きょうは外務省にも来ていただいておりますけれども、この法案が可決した後の二〇〇四年十二月九日の協議については、韓国側の要望に対してどのようにお答えになったんでしょうか。

 そしてまた、私が今申し上げました資料提出、情報公開でいただいたもの、黒塗りになっている、ページが一枚抜けている、これについても、なぜ経緯を明らかにできないのでしょうか。

 そしてまた直近の、ことしの三月二十四日に東京で開催されたこの協議において、無年金問題についてどのように言及され、どのように回答されたのでしょうか。

小原政府参考人 お答え申し上げます。

 開示の件でございますが、これは非公開を前提とした相手国との協議に係る情報でございまして、その前提で、情報公開法に基づきまして開示できる部分は開示した上で、公にするということによって相手国との信頼関係が損なわれるおそれ等がある部分につきましては不開示とした次第でございまして、その部分、黒塗りとなっているということでございます。

 いずれにしましても、今御指摘ございましたように、日韓両国間では、平成三年以降ほぼ毎年、これまでに計十七回、局長級協議を実施してきております。

 御指摘の二〇〇三年の十二回、それから二〇〇九年の第十七回の協議を含めまして、韓国側からは、無年金状態に置かれております在日韓国人の障害者あるいは高齢者の方々への対応につきまして取り上げられてきております。日本側からは、日本の制度の現状等につきまして説明してきております。これに対しまして韓国側からは、無年金在日韓国人障害者問題を含めまして、今後とも、在日韓国人をめぐる状況への対応に一層努力してほしいといったような表明がございました。

 以上でございます。

郡委員 ですから、どのようにそれに対してお答えになったのですか。韓国側からのその御要請に対して、どのように日本政府として答えられたのでしょうか。この協議には厚労省からも出席していますけれども、では、厚労省からお答えいただけますか。

渡辺政府参考人 今御指摘のございましたように、平成三年以降、十七回の日韓局長級協議が実施されてきております。

 二〇〇三年の十二回、二〇〇四年の十三回、二〇〇九年の十七回を含めて、無年金状態に置かれている在日韓国人の障害者、高齢者の方々への対応について韓国側から取り上げられてきております。日本側から、日本における制度の現状等について説明をしておりますが、それ以上の詳細については、先ほど外務省からお話がありましたように、非公開を前提としたやりとりであることから、お答えは差し控えさせていただきたいと思います。

郡委員 では、以前の答弁にあった、国会の中で検討を続けているというような答弁もできないわけですよ。違いますか。検討もしていないわけですね。では、検討していないというふうに答えているから答えられないということですか、別に考えれば。だから開示できないということなんですか。

渡辺政府参考人 ただいま申し上げましたように、日本側から制度の現状等について説明をしてきておるという中に、制度の現状のほか、国会での議員立法の状況、その検討の要請等々も含めて説明をし、私どもとして、それらを踏まえて国としての検討を続けているという旨を言っておりますが、それ以上の詳細についてはという意味で、先ほどお答えを差し控えさせていただきました。

郡委員 いずれにせよ、実態も把握していないし、何の検討もしていないのだということが前段のところで明らかになったわけで、対応は全く無責任なものでありますし、責任逃れ、責任放棄も甚だしいということを申し上げて、まだまだ質問したかったのですけれども、いずれ機会があればということにさせていただきます。

 質問を終わります。

田村委員長 次に、園田康博君。

園田(康)委員 民主党の園田康博でございます。

 引き続きまして、国民年金法の一部改正の一部を改正する法律案につきまして、質問を続けさせていただきたいと思います。

 冒頭、先ほどの年金局長の御答弁に、質問ではありませんけれども、ちょっと私も一言だけ申し上げておきたいと思います。

 先ほど、郡委員からの質問に対しまして、議員立法は一義的には国会議員がその検討という形で行うものであるという御発言の趣旨があったわけでございますが、私から言わせれば、法制局さん、もういなくなってしまいましたけれども、大臣も学者でいらっしゃいますから、法制学上の、講学上の話はもう重々御存じだと思いますけれども、国会で議論をされた、そしてでき上がった法律に関しては、それは議員の立法であろうが閣法であろうが、その提出元は関係ないはずであります。できた法律に従って、国会がその法律をきちっと今度は行政府たる各省庁に対して、これに忠実に執行せよという形の意見が下されるものだという形になっているわけでありますので、それが議員がつくった法律だから、あとは議員が全部やらなきゃいけないんですよというような話ではないんだということだけ、一言だけ私は申し上げておきたいと思います。もう根本的な法学上の、憲法上の問題であろうというふうに思いますよ、私は。

 さて、今般のこの国民年金法の改正でありますけれども、これは、まず平成十六年の改正からスタートするわけだろうと思って理解をさせていただいています。

 すなわち、今般、基礎年金の国庫負担分につきまして三分の一から二分の一に引き上げる。そして、これは、平成十六年の改正の附則の十三条とそれから十六条、もとを正せば八十五条の規定から成るわけでございますけれども、すなわち、このときの十六条でいきますと、「平成十九年度を目途に、政府の経済財政運営の方針との整合性を確保しつつ、社会保障に関する制度全般の改革の動向その他の事情を勘案し、所要の安定した財源を確保する税制の抜本的な改革を行った上で、平成二十一年度までの間のいずれかの年度を定めるものとする。」という形でこの十六年の改正が行われ、そして、恐らく十九年から二十年にかけてさまざまな議論がなされて、今般この特例的な措置として改正案が出されてきたものだというふうにまず私は理解をさせていただいております。

 すなわち、本来であるならば、税制法上の抜本改正を行って、そして社会保障全般の見直しも行って、この二十一年度からいわば国庫負担の二分の一もきちっと財源が確保された上でスタートをさせなければいけないんだということが、この十六年の改正のときに、大議論の末、これがまず施行されたという形であったわけです。

 この間五年余りでありますけれども、恐らく、この税制の抜本改正あるいは社会保障制度全般の見直しというものがなかなかできにくい政治状況であったというのは、私も認めさせていただいております。それはどこに責任があるかというのはきょうは申し上げるつもりはありませんけれども、さまざまなこの国会状況、国政の状況の中において、抜本改正というものの議論がなかなかできてこなかった。だからこそ、今般、この改正案は、もうスタートしてますけれども、この二十一年度とそれから二十二年度、これにおいては特例的な臨時的な措置でまずは切り抜けようというふうに私は理解をさせていただいておるわけでありますけれども、まず、その所見でよろしいかどうかということを大臣から御答弁いただきたいと思います。

舛添国務大臣 基本的にはそのとおりだと思います。

 抜本的な税制改革をし、安定的な財源を確保して、二十一年度までに三分の一を二分の一にするというのが規定でございますけれども、今委員もおっしゃった、さまざまな経済状況、政治状況があって、前提条件が整わない。

 しかし、一番大きな目標は、持続可能な年金制度にするために、やはり二分の一の国庫負担、これは国民に対する約束である、これをおろすわけにはいきませんということで、その前提条件について、恒久的な財源が確保されるまでは、さまざまな知恵を働かせて臨時的な措置をとる、そういうのがこの法案の趣旨だということの了解で間違いないと思います。

園田(康)委員 そうしますと、今大臣もおっしゃっていただきました恒久的な財源を用意しなければいけないということが前提に、今度はこの国会でもやらなければいけないというふうに思うわけでございます。

 今般の法律は、二十一年度と二十二年度、この二つの年度の特例的な措置として設けられているわけでありますけれども、そうすると、では二十三年度以降はどうなるんだという議論をまず私からは指摘させていただかなければならないのでありますが、今大臣がおっしゃった恒久的な財源をつくるために、いつこの大目的を達成しようというふうに考えておられるのか、お伺いをしたいと思います。

舛添国務大臣 これは、三月二十七日に成立しました所得税法等の一部を改正する法律がございます。その中の附則の規定でこういうのがございます。「平成二十年度を含む三年以内の景気回復に向けた集中的な取組により経済状況を好転させることを前提として、遅滞なく、かつ、段階的に消費税を含む税制の抜本的な改革を行うため、平成二十三年度までに必要な法制上の措置を講ずる」と。

 したがって、こういう附則がきちんと所得税法改正案にあるわけですから、これに基づいて粛々と税制抜本改革をやるということだというふうに思います。これが大原則だと思っております。

園田(康)委員 そうしますと、二十三年度までに、この三年以内に、景気の動向も踏まえながら、景気は回復するんだというのが今の麻生総理も含めた内閣のお考えであろうというふうに思っております。なるべく早く経済状況は好転をさせなければいけない、それは私もそのように考えておりますし、また、それに向けて全力を尽くしていかれるのは当然のことだろうというふうに思います。

 では、そうなりますと、これは私の指摘というか、考えだけ申し上げておきたいと思うわけでありますけれども、ことしの九月までには私どもの任期が切れる、衆議院の任期が切れるわけでありまして、必ず総選挙が行われる年でございますので、その後の政治状況がどのような形になるかはまだだれにもわからないわけであります。したがって、どの政党がどういう結果になろうが、それはきちっと、二十三年度に向けて、この国会では、国の責任として、政府と国会の責任として、二十三年までにはきちっとした年金の財政というものを、決着をつけなければいけないんだろうというふうに思っておりますので、ぜひその点は、大臣も含めて、これから鋭意私たちも努力をさせていただきたいというふうに思っております。

 その財源がどのような形になるのか、あるいはその中身がどういう形になるのか、それはこれからの大きな議論だろうと思っております。本当だったら、私も、当選させていただいてからこの五年間、一期、二期と過ごさせていただきましたけれども、やはり社会保障全体の、いわゆる国民会議をつくっておられるわけでありますけれども、しかしながら、もっともっと議員の間のそういう議論というものをきちっとやはりやらなければいけなかったんだろうなというふうに思います。それは、衆議院と参議院両院で会議体が持たれた時期もありましたけれども、なかなかその中でもきちっとした答えが出なかったというところでありますので、一度その反省に立ち返って、私たちももう一度そういう議論ができるように努力をしたいというふうに思っておりますので、よろしくお願いを申し上げます。

 さて、それにつけて、私自身、ちょっとこの間取り組ませていただいた財政法の関係、財政投融資、今回は財政投融資特別会計からの繰り入れという形で二兆三千億円の財源が盛り込まれたわけでありますが、それよりも以前に、ずっと指摘をさせていただいておりました厚生保険特別会計の中の業務勘定、この問題で、やはりこれも厚生保険特別会計のお金を使ってさまざまな事業が行われていたわけでございます。御案内のとおり、業務勘定には特別保健福祉事業資金というものが盛り込まれておりまして、いわゆる厚生年金の基金から一兆五千億のお金がこの中で運用されていたという状況がありました。

 一方、この間、昭和五十七年から、繰り延べ措置というものがずっと行われていた時期がございました。一たんそれはお金として、隠れ借金というふうに指摘をされていたわけでありますから、これが返済されることもありましたけれども、六十一年、六十二年、六十三年、そして平成元年と、一兆三千四百八十億円、これが繰り延べされていたという形がございました。利息も含めて一兆三千四百八十億円でございました。

 これに関して、今回、平成二十一年度の予算の審議の中で、いわゆる社会保障費の二千二百億円削減、これをやめるための財源としてこのお金が、厚生年金保険に返すかわりに、その余り分を二千二百億円の中に、一千四百億円分だったと思いますけれども、盛り込んだという状況がありました。

 この件について、この間の利息額というものは実績ベースでどのぐらいになったのか、あるいはこの間の元本は幾らであったのかということを再度御答弁いただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

石井政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいまお尋ねのありました特別保健福祉事業資金の関係でございますけれども、それに係ります厚生年金保険の国庫負担につきましては、昭和六十一年度から平成元年度までに繰り延べられた実績額を積み上げますと、厚生年金勘定へ繰り入れる元本となる額でございますが、六千百二十九億円ということでございます。

 また、国庫負担の繰り延べ時から現時点、返済予定は平成二十二年三月末ということでございますけれども、その時点までの利子相当額は七千三百五十一億円というふうになってございます。

園田(康)委員 今お聞きいただいたように、きょうは、時間がなくて資料として御提示できなかったのでありますけれども、私のところには今運営部長が御答弁いただいた内容をいただいております。すなわち、昭和六十一年度から平成元年度までの繰り延べ額の合計が六千百二十九億円。それに、六十一年からの利息分が七千三百五十一億円で、足して一兆三千四百八十億円ということでございます。

 ところが、よくよく聞いてみますと、繰り延べの当初の予算額が、例えば昭和六十一年度は、実際に実績で繰り延べされた額は一千三百五十五億円だったんですが、予算としては三千四十億円も計上していたんですね。それから、六十二年度は、予算ベースで三千六百億円、それに対して実績ベースは千七百二十八億円。六十三年度は、予算ベースでやはり三千六百億円、それに対して実績ベースが千八百八十九億円。見積もりと実績とでかなりの差があったんだということであります。

 この点は、細かく指摘をしておくとかなり時間がかかる作業だと思っておりますので、今回は、大甘に見るわけではありませんけれども、これだけのずさんな見積もりをして、これだけお金が必要なんですよというふうに予算を立てておいて、実際はその半分ぐらいのものしか使っていなかった、使う必要がなかったんだというこの差額、この間の差額というものを私はもう少しシビアに見ていただきたい。予算を計上するときにはシビアに見るべきではないのか。これはきちっと返すためのお金ですから、いわゆる借金ですから、本来返さなければいけないものを繰り延べしていたわけでありますから、当然ながらそのベースというものはきちっと見て運営をしていかなければいけないのではないのかということだけ指摘をさせていただきたいと思います。

 ちなみに、きのうのレクのときにはちょっと私確認しておりませんでしたけれども、これ以外にもう繰り延べはありませんか。借金しているものはありませんか。もしあったならば全部教えてほしいんですけれども、いかがでしょうか。ごめんなさい、突然に。

石井政府参考人 お答え申し上げます。

 ちょっと急なお尋ねで、手元に答弁の御用意がございませんけれども、厚生年金保険と国民年金それぞれ、年金にかかわる国庫負担の繰り延べ額、この未返済分というのがございまして、厚生年金の分で申し上げますと合計額で二兆六千三百五十億円、それから国民年金の方でまいりますと四千四百五十四億円、こういうような金額になってございます。

園田(康)委員 失礼しました。きのうちゃんとレクをしておけばよかったんですが。

 厚生年金保険では、確かに、平成七年から十年までの間の繰り延べの額としては二兆六千三百五十億円。これは本来ならば厚生年金に戻っていかなければいけない、繰り入れられなければいけないわけであります。これがまだ返済をされていないという事実。それから、今、突然に聞いてごめんなさい、国民年金の方では四千四百五十四億円ということでありますね。

 やはり、こういう措置をずっとそのまま引きずるわけにはいきませんから、抜本改正をしていくという形であるならば、早くこれをきちっともとの年金勘定に戻す、その努力をしていただきたい。きょうはもう指摘だけにとどめておきます。よろしくお願いします。それはまたいずれ知恵を絞っていかなければいけないんだろうと思います。

 さて、次の質問に移らせていただきます。

 今回の年金資金の運用状況が、昨今の経済状況あるいは運用資金の株価の動向も含めて、大変厳しい状況であるんだという形であります。午前中の長妻委員の質疑でもお取り上げでありましたけれども、年金の支給に関して、現役世代の平均年収の大体五〇%を維持するんだ、五〇・一%を維持するんだという形の法律のでき方になっております。そのために、この年金資金の運用というものは、将来的には大変重要な位置づけになってくるのかなというふうに思っております。

 ただ、この間の運用状況を見ますと、必ずしも平たんで、かついい状況ではなかったということであります。御案内のとおり、先般、昨年十月から十二月、五兆七千億円の年金運用損で、株安になって、それが大変響いてしまったという状況でございますけれども、この年金の財政計算の前提となっている物価上昇率あるいは賃金上昇率、運用利回り、経済成長率、それぞれどのようになっていらっしゃいますでしょうか。

渡辺政府参考人 法律に基づき五年に一度実施することが義務づけられております財政検証を、前回の平成十六年二月に次いで、今般、平成二十一年二月に公表させていただきました。

 この財政検証は、おおむね百年を見通しての数字をつくっておるわけでございますが、そうした長期的な平均の姿といたしまして、物価上昇率については一・〇%、実質経済成長率が〇・八%、実質長期金利が二・七%という基本的な数字を想定した上で、運用利回りにつきましては、賃金上昇率を上回る部分である実質的な運用利回りを一・六%と見て、名目で四・一%としております。こうなりますのは、賃金上昇率が、物価上昇率一%と、将来の被用者数の変化率マイナス〇・七%を加味して、名目で二・五%ということを置いていることから、実質的な運用利回り一・六に加えて四・一%としているところでございます。

園田(康)委員 今回、御案内のとおり、昨日日銀の短観が出たわけでございます。これだけをもって判断をするわけにはいきませんけれども、大臣ももう御案内のとおり、この雇用状況から、大変厳しい経済状況になってきているということであります。だからこそ、不況対策というか、経済対策をやらなければいけないわけでございますけれども、その中で、ずさんとは言いませんけれども、余りにも楽観的な見通しに基づいてこの数値計算、財政計算がなされているのではないのかなというふうに思います。ただ、長期的に見れば、先ほどの話ではありませんけれども、こういう状況で推移をしてもらいたいという気持ちはわかりますけれども、しかしながら、今の現状の中でそれが果たして言えるものであるのかどうかというところは、もう少しお考えをいただきたいというふうに思います。

 そこで、運用実績でありますけれども、マイナスになった去年の分があります。いろいろ聞きますと、海外、諸外国の状況においては、この運用の形、基本ポートフォリオの考え方、その割合あるいは内容を、さまざまな組み合わせの中で方式を考えておられるわけでございます。我が国においても、このパッシブ運用、アクティブ運用のやり方というものを、少しでも安定的なものに結びつけていかなければいけないということで、パッシブ運用を中心に考えられてきているわけでございますが、まだアクティブ運用での二割弱が残っているというか、すぐさま私もこの株式運用の方式をやめろと言うつもりはありません。しかしながら、昨今の状況を考えたときに、もう少しこの点も見詰め直して、今局長がおっしゃっていただいたように、今年度、また五年目の見直しがあるわけでございます、したがって、大臣からもこの点は慎重に見直していくようにというような御提案でもいただけないかなというふうに思うんですが、いかがでしょうか。

舛添国務大臣 株の運用は非常に難しくて、つい一、二年前というのは逆の議論が行われていました。カルパースなんか見ますと非常に収益が高い。オーストラリアもそうです。何だ、国民の百五十兆円ものお金をこんな下手くそな運用で、これをやればどんどんお金を生み出すじゃないかという議論がありましたけれども、今全く逆になって、パッシブの比率がたしか八割ぐらい。これが非常に安定運用でいいということもあると思います。

 だから、単年度ごとに見ると今のようなところはどこも赤字で、日本の年金運用は、昨年で、四月―十二月だったと思いますけれども、たしか六・九、七%ぐらいのマイナス。しかし、カルパースとかいうのは二十数%だったと思っていますから、落ちるときはがっと落ちる。今度景気がよくなると、恐らく同じ、もっともうけろということは出てくると思います。

 ただ、長期的に見たときの運用益をどう図るかという改革の議論は、私は放棄してはいけないと思っていますから、例えば百五十兆あっても、一割、十五兆とか、もっと少なくて十兆でもいいです、それだけは非常にアクティブな運用をしてみるとかいうような、あれだけ大きなものを一つでやることよりも、分散するという方法もあっていいと思うので、今は本当に緊急事態ですから、ちょっと景気回復の兆しが見えたら年金運用の仕方をどうするか。

 それで、私が年金運用の委員を任命する権限がありますので、先般、そういうことのよくわかった、それはこういうことなんですよ、厚生省の役人がそこに入る、あなたきのうまで何していましたかといったら、保育園の担当でしたと、それは株がわかるはずないですよ、ですから、本当のそういう専門家を入れる必要があったので少し入れて、あのメンバーも変えていきますので、これはまた議論をしたいと思います。

園田(康)委員 ぜひお願いを申し上げたいと思います。

 おっしゃるとおりで、景気のいいときはどんどんどんどんアクティブに運用するんだというような議論になり、たしか平成十三年のときは、やはり今と同じ状況でがたんと下がって、そのときは一斉に、やめろ、こんな運用はやめるんだというような議論が国会内部でも起きたということですから、私は、だからこそ、一概にすぐさまやめろという議論はするつもりはありませんけれどもというふうに考えました。

 だけれども、その前提の中においては、大臣もおっしゃっていただいたように、人の選定も含めて運用のあり方、仕方、それから内容、ここも再度検討をして、この百年に一度の経済危機だと言われている状況の中でどのような手法が今後も見通しとしていいのかということは少しお考えをいただきたいということだけ御指摘をさせていただきたいと思います。

 さて、残り少なくなりましたので、最後の一、二問の質問をさせていただきたいと思います。

 確定拠出年金制度、これは法改正がこの国会にも出ているというふうに理解をしておりますけれども、いわゆるスーパー四〇一kという個人資産的な要素、これをきちっと、制度を育てていかなければいけないというふうには私も思っております。

 ただ、やはり今般の厳しい経済状況の中で、資産運用が個人に任されたといっても、これが自己責任になってしまうということは、そこで突き放すというのも少しどうかなというふうに思っておりますので、もう少しこの制度を弾力的に運用ができるような形の法改正をしていく、これは私もいい方向ではないのかなというふうには思います。

 その中でもう一つだけ問題点としては、今の企業型から個人型、もし仮に企業をリストラされてしまった、それまでは企業に払っていただいていた分が、今度その企業から出ていくわけですから、個人型の拠出年金の方に持っていかなければいけない。そして、自分のお金で拠出をして運用するという形になっていくわけであります。

 そのときに、中途解約ではありませんけれども、通常はずっと自分で積み立ててきたというふうに考えているわけなんですよ。そして、その会社をやめるというか、途中でこの状況の中でリストラされて、あるいは中途退職しなければいけない状況に追い込まれて、そして、当座の、一時的なお金としてこれを生活資金として使いたいんだという考え方もやはり個人としてはあるんだろうなと。

 制度としてはちょっとそれは違うんだろうというふうには思われるんですけれども、しかし、個人としては、自分で将来の生活資金の糧としてそれを払ってきた、あるいは企業に払ってもらってきた、それは、企業のために一生懸命働きながらそれをずっとやってきた。それがこの経済状況の中、倒産あるいはリストラ、そういう形になって、余儀なくそういった離職せざるを得ない状況になってしまったときに、すぐさまお金があればいいですよ、でも、退職金なら退職金がなかなか払われないという状況の中で、一時的な個人資金としていわば取り崩して使いたいという場合もあるのではないか。

 そういう場合が往々にして出てくる可能性もあるんだろうなというふうに私は思うんですが、ここをこの確定拠出年金制度の中にある一定程度認めるような、法改正ではありませんけれども、そういう運用が今後考えられないかどうか。ぜひこの点は大臣にも御検討をいただきたいと思うんです。先に局長に答弁していただいた後に、大臣からも御答弁いただきたいと思います。

渡辺政府参考人 簡単に申し上げますが、確定拠出年金制度は、御承知のとおり、今、広い意味での社会政策の一環として、老後の所得確保に係る自主的な努力を支援する年金制度である、したがって税制上の優遇措置をつけるということでございますが、そういうことであるがゆえに、原則として年金資産の中途引き出しは認めていないというのがその大きな特徴となっておるわけでございます。

 もちろん、個人資産額が極めて少額の方については、運用を続けても手数料倒れしてしまうというようなことでの中途引き出しを認めている例はありますが、そうした制限を超えて一般的に中途引き出しを認めていくというのは極めて困難であろうと思っております。

 なお、現在提出させていただいておる被用者年金一元化法とあわせて御提案申し上げております。退職により企業型確定拠出年金の加入資格を喪失された方々が個人型に移換した後、さらに、少額の資産額であり、掛金を二年以上拠出していないというような要件を満たす場合には脱退をできるように認めていく。一部でございますが、そういうところは手だてを講じようとしておるわけでございますが、一般的にこの中途脱退ということは税制の優遇とぶつかるというふうに理解をされているため、非常に困難だというふうに考えております。

舛添国務大臣 一つは、やはりポートフォリオの選択は個人の自由であるということと、ハイリスク・ハイリターン、ローリスク・ローリターンで、確定拠出というのは、今言った、自己運用にすればするほど、それは自分が責任を負わないといけないので、結論からいくと、気持ちはよくわかりますけれども非常に難しいなと。あえて突き放して言えば、それならきちんと貯蓄をしておけばいいじゃないの、郵便であれ銀行であれ、貯蓄というのはいつでも引き出しできますよ、こういうことになろうかと思います。

園田(康)委員 またこの議論は引き続きさせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

 ありがとうございました。

田村委員長 次に、高橋千鶴子君。

高橋委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 年金財政を考える上で、担い手の問題、どうふやしていくかは不可欠の課題だと思います。

 十九年度の労働者派遣事業報告では、派遣労働者が三百八十一万人で、過去最高を記録しました。一方、この六月までに十九万二千人の非正規労働者が解雇、雇いどめされ、うち十二万五千人以上が派遣労働者だといいます。さらにふえることが言われているかと思います。先般まで雇用保険法の改正で、少しでもこうした非正規の労働者のセーフティーネットとなれないかということの議論をしてきたわけですけれども、年金となるとさらにハードルが高くなるかと思います。

 資料の一にあるように、原則二カ月を超える期間を定めて使用される労働者、所定労働時間がおおむね通常労働者の四分の三以上である場合、派遣元で健康保険と厚生年金に加入することになっており、この資料では約七十三万人とありますけれども、未適用事業所が大変多いということもうかがえるかと思います。実際、どれだけの派遣労働者が年金制度に加入しているでしょうか。

石井政府参考人 お答え申し上げます。

 厚生年金保険におきます派遣労働者数のお尋ねでございますけれども、その派遣労働者数、把握している派遣労働者数でございますが、実は、そのような仕組みになってございませんので、正面からの把握数値というのはございません。

 ただし、厚生年金保険に適用されている事業所のうち主として労働者派遣業を営んでいる事業所に使用されている被保険者の数ということで申し上げれば、平成二十年九月一日現在で九十三万人というふうに把握させていただいております。

高橋委員 九十三万人ということで、非常に割合はまだまだ少ない。

 本当であれば、この図にあるように、厚生年金に入れない労働者は国民年金に入ることになっているわけですけれども、もう十分検討されてきたように、細切れの契約を繰り返し、例えば待機の期間があったら国民年金に入らなければならない。そうすると、みずから手続をして、例えば一カ月とか、そのわずかな期間の保険料を払い、ずっと切れ目なく年金をやって二十五年ルールをクリアするというのは、だれが考えてもかなり厳しいのではないかということはうかがえると思うんです。

 社会保険庁の〇七年十二月データによると、現在、年金受給年齢である六十五歳以上で無年金者は四十二万人、六十五歳未満では七十六万人と推計されております。今後、年長フリーターの増加や不安定雇用、そして失業の増加に歯どめがかけられないと、将来の無年金者が大きく膨らむのは避けられないと思いますが、いかがでしょうか。

舛添国務大臣 一つは、例えば派遣切りに遭う、もう生活も大変だ、そういう方に対しては、さまざまな段階での免除措置、月の国民年金一万四千六百六十円、とてもじゃないけれども払えない、これは免除措置をまず活用していただく。

 それから、先ほど来の議論にありますように、結局、二十五年というのをどうするかということを制度設計の問題として議論すべき時期に来ていると思いますから、今委員がおっしゃった観点からも、この議論は必要だと思っております。

高橋委員 さまざまな免除制度ですとか追納ですとかあったとしても、さっき言ったように非常に細切れである。そうした方たちが後でも救済される、確実につながっていく、そういうことは本当に、よほど気をつけていかないと、みずからの努力ではなかなか困難であろうという点では、それは、二十五年ルールをどうするかという以前にまずやっていただきたいと思います。

 それと同時に、もう言うまでもないことでありますけれども、こうした働き方の問題をやはり全面的に、派遣法の見直しが今国会に出されているわけですけれども、全面的に取り組んでいくことがやはり必要なのではないかと思っております。

 そこで、九九年の財政見通しでは、二〇一〇年の保険料収入を三十四兆二千億円と見込んでおりました。それが、〇九年の、先ほど来話題になっている財政見通しでは十兆円の不足という事態になっております。これらの要因としては、やはり賃金の低下による標準報酬月額の減少ですとか、保険料収入そのものの減少、厚生年金から国民年金への異動、こうしたことが要因と思われますけれども、どのように見ていらっしゃるでしょうか。

渡辺政府参考人 なお厚生年金、国民年金ともに積立金から取り崩しをして給付を賄うという構造を続けております。かつての見通し、それから、つい先日出しました見通しということで見ましても、その状況に当面は大きく変わりございません。

 ただ、この間、十六年改正で定められた保険料率の計画的な引き上げをお願いしており、この四月にも国民年金の保険料の引き上げをお願いしておりますが、そうした保険料の引き上げと、また経済等の回復を待って運用環境の改善という両面で財政の均衡を中期的に図っていき、また、本当に積立金を計画的に取り崩して安定化させていくということのできる局面を二〇五〇年以降迎えてまいりたい、こういうふうに考えております。

 そうした見通しでございますが、当面なお基金を取り崩さなきゃいけないということの背景には、たとえそれが運用でカバーできる範囲内であったとしても、おっしゃるように、賃金の伸び悩みというようなことが背景に影響しているという点は私どもも承知しておるところでございます。

高橋委員 伸び悩み程度の話では多分ないのであろう。先ほども、将来の無年金者が大きく膨らむという点についても明確なお答えがなかったと思うんですけれども、かなりシビアに見る必要があるのではないか。財政見通しが甘いじゃないかということが先ほど来指摘をされているわけですよね。今も答弁の中で、なお積み立てから取り崩して給付をしている現状だとお認めになっている一方で、わずか五年後には三十一兆七千億円、〇六年の財政見通しより九千億円も改善されるというふうに見込んでいるのは、これは非常に飛躍しているのではないか。

 ですから、うんと先に向かって希望を膨らますのはいいけれども、しかし、つくった先からもうほとんど見通しがない、こういう立場ではやはり問題である、これを私からは指摘させていただきたいと思います。

 そこで、今回の法案は、基礎年金の国庫負担を二分の一にするというものであります。先般成立した所得税法等の一部を改正する法律附則第百四条に、「基礎年金の国庫負担割合の二分の一への引上げのための財源措置並びに年金、医療及び介護の社会保障給付並びに少子化に対処するため」、中飛んで、「段階的に消費税を含む税制の抜本的な改革を行うため、平成二十三年度までに必要な法制上の措置を講ずるものとする。」と明記をされております。そこで、財源は消費税が有力なのであろうということ、それから社会保障目的ということで、並びにということでいろいろなことを言っているわけですから、今言われている単に二分の一だけでは済まないということを意味するのだろうというふうに読めるわけであります。

 そこで、基礎年金の二分の一だけを消費税にすれば二兆三千億円、ちょうど一%増に当たるかと思っております。年金制度全般の見直しがさまざまに言われる中、基礎年金を全額税方式ということもよく言われているわけです。

 そこで、仮に基礎年金を全額税方式にすれば、消費税、何%ふやすことが必要でしょうか。それから、そのうち事業主負担がどのくらい今より減ることになるでしょうか。

渡辺政府参考人 昨年五月に、官邸に設けられました社会保障国民会議における定量的シミュレーションが行われ、公表されております。そうした中で、今の御質問にそのままかどうかは私もちょっとよくわかりませんが、基礎年金を一定の前提を置いて税方式化した場合における移行パターンごとのシミュレーションが行われていると承知しております。

 そこでのマクロ計算の方では、現行制度を税方式化した場合、二分の一国庫負担分を除いた、さらに追加的に必要となる財源の規模と消費税率換算が示されております。切りかえ時点は二〇〇九年度とされております、その計算上でございます。

 過去の保険料納付状況に関係なく基礎年金を満額税方式で給付するケースAでは追加財源の消費税率換算が五%、過去の保険料未納期間があれば、それに応じて基礎年金給付を減額するというケースBでは追加所要財源が消費税換算で三カ二分の一、三・五%と申しましょうか、過去の保険料を納付していただいた実績を評価して、それを加算して給付するケースCの税方式では追加所要財源が消費税換算で八カ二分の一、八・五%とされております。

 そのシミュレーションの中では、さらに、現行制度における基礎年金を仮に税方式とした場合に、同じく二〇〇九年度において減少する厚生年金の事業主負担分は三兆円程度とされております。

高橋委員 今、社会保障国民会議のシミュレーションをもとに御答弁をいただきましたので、資料の二枚目にその総括表をつけさせていただいたわけですけれども、今のお話があったように、税方式に今の制度のまま移行した場合、あるいは未納分を考慮した場合、あるいは加算した場合と、さまざまケースがあって、一番少なくて九兆円、三・五%から、一番多くて三十三兆円、一二%増ということがシミュレーションをされて、しかも、その後の年度ではさらにふえていくということが言われていると思います。

 そこで、資料の三を見ていただきたいんですけれども、そのうち、これは今言った四種類のシミュレーションに沿って、さまざまな所得階層に応じて、あるいは勤労世帯の場合とかさまざまな場合の、保険料の負担の軽減、あるいは消費税による負担の増との比較ということがあって、そのうちの一番ボトムのB、要するに未納分などを入れませんよという形でのものを今ここにお示しさせていただきました。

 これを見ると、夫のみ働いている世帯、これは平均が一応五十万ということになっておりますけれども、保険料が七千円減って、消費税分が九千円から一万円くらいの増になるであろう。共働きの場合は、一万一千円減って、消費税分が一万円から一万二千円分の増になるであろう。このような、矢印が下を向いている、上を向いている、こういう図があるわけですよね。

 そうすると、これはシミュレーションによって幅が違いますけれども、共通していることがございます。それは、一つは、勤労世帯は、保険料が安くなるよりも消費税の負担分が上回っている。二つは、年金世帯は、保険料を払い終えていますから、みんな負担増になる。三つ目は、企業は皆下がる。そして四つ目は、所得の低い方が実収入に対する増加率が高くなる。

 この傾向は当然共通すると思いますけれども、いかがですか。

渡辺政府参考人 このシミュレーションについては、さまざまな方面からいろいろな感想も出ていることは事実ですが、御指摘いただいた共通点というのは、私ども見る限り、そのとおりであるというふうに思っております。

高橋委員 そこで、大臣に伺いたいんです。

 経団連がこれまでも、消費税率の引き上げと法人税の減税を求めてきたことは周知の事実だと思います。先ほど紹介した所得税法の附則の中にも、「法人の実効税率の引下げを検討する」とちゃんと盛り込まれております。経団連が三月十七日に発表した「今後の財政運営のあり方」、これによりますと、世界経済が同時不況に陥っている、雇用情勢も急激に悪化している、政府に対しては雇用のセーフティーネットの拡充を求める、一方、二〇一五年までに五%増、二五年で追加的に必要となる公費として一二・五%の消費税の増を求めております。

 大量首切りをした企業、これは大企業を指して私お話ししておりますけれども、今日の雇用失業情勢の中でも、非常に大変な失業者を出している企業が、年金保険料では丸々負担減になる、その上、法人税の減税も求めている、セーフティーネットは政府にやれと言う、これは余りにも身勝手過ぎるのではないでしょうか。

舛添国務大臣 先般、三月二十三日の午前中に政労使合意を結びました。御承知のとおりです。その中に、どのような経営環境にあっても、雇用の安定は企業の社会的責任であることを十分に認識し、個々の企業の実情に応じ、成果の適切な分配や労働者の公正な処遇に配慮しつつ、雇用の維持に最大限の努力を行うという、経営者が取り組むべき課題が書いてあるわけであります。

 これはきちんと努力をしてくださいよということを私も申し上げましたし、我々は、例えば雇用調整助成金を使って、何とか雇用を守るということをやっておりますので、こういう時期こそ、経団連を初めとして、経営者がしっかりとした社会的責任を果たすべきだというふうに思っております。

高橋委員 少なくとも、事業主負担を今なくすという議論にはならないということでよろしいでしょうか。

舛添国務大臣 例えばワークシェアリングの議論をしていますけれども、これは、働く人も、そしてまた経営者も本当に努力をしていかないといけないし、そのために、我々は雇用調整助成金をさらにうまく活用するということを考えております。

 先ほどのシミュレーションだと、まさに全額税方式にしたときにこういう問題が起こるということですし、御高齢の方は、一生懸命積み立ててというか掛金を掛けて今もらっているのに、消費税から取られるならばまさに二重の負担になる。こういう問題をクリアしないといけないから、民主党の皆さんが言うように、はい、すぐおやりくださいと長妻さんはおっしゃったけれども、すぐはやれませんよということであります。

高橋委員 そこで、最後に、今大臣がくしくもおっしゃった、年金受給者、これまで払ってきた人たちが丸々増税になるのはやはりおかしいのじゃないか、これは一言だけ言わせていただきたいと思います。

 〇三年の物価スライドによる年金給付費削減三千七百億円、これを皮切りに、この間、給付は六千百億円削減されております。その一方で、年金世帯がねらい撃ちされた、例えば公的年金等控除の縮小とか老年者控除の廃止などだけで見ても、負担増が四千億円ですから、合わせて実質一兆円、年金所得が減らされたことになるわけです。今年度は、消費者物価指数が一・四%上がったにもかかわらず賃金が下がっている、それから、二〇〇〇年から〇二年までに年金額を下げずに据え置いてきた一・七%分があるから、それで相殺ですよということで、年金額は残念ながら据え置きにされました。

 これは逆ではないか。実態に合わせてふやすこと、せめてこの際、老年者控除の復活などを求めていくべきではないでしょうか。

舛添国務大臣 高橋さんの御意見は御意見として賜りますが、逆にもう一方では、世代間の負担の公平ということを考えたときに、若い世代のことを考えればどういう政策になるか、そちらのバランスも考えながら、全体のかじ取りを行っていきたいと思っております。

高橋委員 次、また続きをやりたいと思います。

 ありがとうございました。

田村委員長 次に、阿部知子君。

阿部(知)委員 社会民主党の阿部知子です。

 本日は、私にいただきましたお時間、二十分でありますので、年金の制度設計等々の本質的な問題は次回に回すこととさせていただきまして、いわゆる行政サービス、公共サービスとしての年金の業務の信頼性にかかわる何点かについて御質疑をさせていただきます。

 年金問題は、今ほど高橋委員と舛添厚生労働大臣のお話にもあったように、中長期的に制度設計をどうするかということも同時に並行しないと本当の安心、安全は来ないわけです。この間、それにしても公共サービスのあり方が余りにもひどいんじゃないか、指摘される社保庁のさまざまな実態ということでありますが、それもちょうど来年の一月から日本年金機構に変わりますので、一体その組織は大丈夫であろうか、これもまた国民の大きな疑念、懸念のもとであります。

 私は、きょう、第一点は、いわゆる市場化テストにのっとって行われてまいりました国民年金の未納対策について、このまま進んで本当に納付率が上がるんだろうか、これはやめて、考え直していただきたいと思うのが一点目でございます。

 きょう、皆様のお手元に「国民年金保険料収納事業の市場化テスト」と書かれたものがございまして、平成十七年度から二十一年度まで、十七年度五カ所であったものを、十八年度三十五カ所、十九年度には、ここからは公共サービス改革法という法にのっとって九十五カ所、百八十五カ所、そして年金機構の発足時には三百十二、この収納業務は全部を市場にある意味で任すというか、民間に任すという計画でございます。

 しかし、これはそもそも、ページの二をおめくりいただきますと、この間、市場化テストの結果というものが出ているのは、実は平成十八年七月から平成十九年九月までと、平成十八年十月から十九年九月までという形の仕切りで、三十五カ所が市場化テストを受けましたが、実に、従来、社会保険事務所でやっておった収納を目標値といたしまして、それに対してどのくらい徴収されたろうというのを見ると、下の二段でございますが、従来の八八・三%。何か八八とか聞くと高いかなと思うけれども、これは一〇〇ないし一二〇、一三〇に行かねば、こうした市場化テストとしては、今までを上回る公共サービスになったというふうには言えないものなのではないかと思います。

 これは、厚生労働省・社会保険庁に伺いますが、これがそもそも市場化テストにのっとって次に拡大していいと判断される理由、目標の八掛けでどんどん落ちていって、事業所も全部これまでの八割になったら納付率は下がる一方でありますが、この点についてはどうお考えであるかということを、一問目、お願いいたします。

石井政府参考人 お答え申し上げます。

 今先生から御指摘ございましたように、平成十八年七月から実施しております三十五カ所の事務所を対象としたモデル事業の結果を見ると、御指摘のとおりのことでございます。

 その要因を、私どもは次のように分析しております。一つは、民間事業者が戸別訪問より電話督励を優先させるという傾向が強いということ、そのことによって納付月数獲得に向けた取り組みが十分な形になっていないということ。それから、地域を管轄いたします社会保険事務所との情報交換あるいは協力連携という点において、不足というものがあったのではないかということでございます。

 しかしながら、市場化テストは、民間事業者の創意工夫あるいはそのノウハウを活用することによって、短期に納付率の向上を図るとか、あるいはコスト効率よくサービスの提供を行うということを目的として導入されたものでございます。したがいまして、この目的の達成を目指しながら対象箇所の拡大を図ることが重要というふうに考えております。

 このための対応でございますけれども、今申し上げたような実施状況の評価で明らかとなった問題点、改善すべき点につきまして、これは逐次見直しを図ることによりまして順次拡大し、そして、本格実施に当たっては、民間事業者に対して適切な指示、指導を行うとともに協力連携をきちんと強化するということ、それから未納者情報の提供の早期化を図る、そういったようなことによって納付実績の向上が図られるように努めてまいりたいというふうに思っております。

阿部(知)委員 普通、常識的に考えれば、従来の目標の八割、まあ九割と多目に言ってさしあげてもいいです、それしか達成せず、下の口座振替に至っては七・二%。要するに、納付月数でも減るし、実際に口座振替に至っては七・二%、これをもって次の段階に拡大していくというのは非常識なんだと私は思いますね。

 今の御答弁は、これまではもしもし電話だけだったから戸別訪問もいたしましょうということですが、しかし、それを見る前に、どんどんどんどん最終的に三百十二カ所まで決められているわけですね。とまらないわけですよ、これは。

 大臣にお伺いいたしますが、大体、午前中の質疑の中でも、国民年金の納付率八〇%という数値設定は、これは男性の労働時間と一緒かもしれません、絵そらごとだと。だって、もうはるかにどんどんかけ離れていっている。そして、今のこの市場化テストの実績をかけ合わせたら、またまた乖離していきますよ。余りに本当の姿を反映しない目標は、国民にとっても信頼を失う何よりの年金業務になると私は思うんです。

 大臣、今の八〇%という数値設定は、これを見ると平成十五年になっているんですね。その間、予定よりも納付率が少しよかったのは平成十七年だけで、あとは目標はどんどん遠くなる、どんどんどんどん遠くなる。この辺で一回見直されたらどうですか。

 それと同時に、こんな市場化テストは、もともとの法の精神にのっとっていないですよ。いいでしょうか、公共サービスの改革に関する法律は、「公共サービスの質の維持向上」ですよ。集めてこられなきゃ維持でもないし、前よりもっとよくなきゃ向上じゃないんですね。にもかかわらず、全部丸投げして、目標は遠くはるかにかすんで、これでは、私は、いかに舛添大臣といっても国民の人気は得られないと恐縮ですが思います。

 目標設定の再考を促しますが、いかがでしょうか。そして、市場化テストについてもお願いします。

舛添国務大臣 市場化テストは、これは公共サービスをいかに改革していくかということで、その大きな精神は結構だというふうに思います。

 ただ、例えば、ハローワークというのをこの市場化テストにかけたって、それは今のハローワークの方がはるかに効率的だという結果が出るわけですよ。ですから、本当に官というか政府がやらないといけない仕事は何なのか。ただ漫然と、効率が悪かったりして、国民の皆さんが、いわゆるお役所仕事、窓口で待たされる、こういうことを回避するためにやっていることでありますから。

 それとともに、私が申し上げましたように、やはりどうしても官でなければならないものということをしっかり決めて、民にできるものは民にということもあるけれども、民ができないから官がやるんだ、そういう発想も今必要だと思っています。

 それから、八〇%について言うと、これはもうおしかりは受けます。たしか十七年度で七二・四%ですが、今の状況で非常に厳しいことは確かです。

 ただ、さはさりながら、高い目標を掲げてやるということの悪いこともないと思うので、何かこれを、では今、阿部さんだったら何%なら、私が八〇を直して七〇と言うんだったら信頼性があるからいいと言われるのかどうなのかということがあるので、財政検証の問題は、それはどのパラメーターを使うかでいろいろありますけれども、それぐらいのお答えに今はとどめさせてください。

阿部(知)委員 大臣、問題は抽象的なことじゃないんですね。市場化テストをやって、確実に納付率が悪くなっているんですよ。それをこれ以上進めたらどんどん遠くなるでしょうと私は具体的にお尋ね申し上げたんですね。民がやった方がいいものはありますよ、それは。だけれども、やることによって納付率が下がっちゃったら、それは元も子もない、本末転倒。

 そして、大臣は、平成十八年の九月、総務省行政評価局の社会保険行政に対するいろいろな評価の中にも、ちゃんと数値目標を挙げて、それを、例えば中長期的な収納率の数値目標及びそれを達成するための具体的対策等を内容とする行動計画を出しなさいと総務省からも言われているんですよ。

 余りに漫然とかけ離れた目標を掲げて国民の信頼を失うということは不幸だと私は思います。この市場化テストの見直しを、大臣には抽象的じゃなく具体的にお願いしたいと思います。

 そして、次に、実はこの組織は来年一月から日本年金機構に移るということです。今度移る日本年金機構では、これは大臣にお願いしますが、そもそも、これまでの年金記録の回復問題、膨大な作業量でもあり、国民の不信の大もとにもなったことでありますが、この業務は日本年金機構に引き継がれるという認識でいいのですか。大臣、簡単にお願いします。

舛添国務大臣 全力を挙げて今解決していますが、残された問題は引き継がれます。

阿部(知)委員 私は、引き継がれるという大臣の言葉を聞いて、安心すると同時に、それではこの書きぶりは何だろうと思うことがあります。それは、皆さんのお手元の三枚目の資料であります。

 これは日本年金機構の当面の業務運営に関する基本計画の要点といって、一体ここの新しい機構には何人人数が必要か。正職員で一万八百八十、そのうち、実は、正職員の人を千四百人有期雇用に回している、有期が六千九百五十人。この人数の中には、今大臣がおっしゃった年金記録の回復のための人員は含まれないんですね。下にちょこっと「年金記録問題への対応は、まずは既定人員の枠内で工夫し、対応困難な場合でも、できる限り外部委託、有期雇用の活用等で対応。」となっているんですね。

 でも、大臣がみずからかかわられているように、十年計画で、次のページは、一体何年で年金の紙データとの突合、これをやるべきかどうかも今論議にした方がいいと私は思っていますが、右から二番目の図を見ていただくと、ここには、約十年で実施したとして、正職員が約三百人くらい、二百八十、そして非常勤も合わせれば五、六千、もっとでしょうか、六千になるでしょうか。お金は二千二百億、これだけ膨大な数が要るわけですよ。今の新しく発足する年金機構の業務の合間を見て、片手間でおさまる仕事量ではないじゃないですか。

 私は、新しい年金機構に関するさまざまな会議があって、そこで業務の引き継ぎがどのように話され、そのための人員の見積もりがどう配置されたかがしっかりしなければ、結局は、本当のところ、この業務を担うのはだれであり、どうなっていくのかということが大変に懸念されるわけですよ。大臣は、この一万八百八十人の中に基本的には年金記録の回復にかかわる人の人数は入っておらず、兼業でやることだったということは御存じでしょうか。そして、この体制でいいですか。申しわけないけれども、大臣にお願いします。

舛添国務大臣 当然私はかかわってきていますから、基本的には通常業務を行う、そしてその枠内で行うということは、これはそういうふうに規定をいたしました。だからこそ、先般の年金関係閣僚会議でも、これが発足するまでに一定の区切りをつけるだけの年金記録の処理を行うということで、一万人体制ということを申し上げているわけであります。

 そして、最終的に私が指揮監督できますから、厚生労働大臣が指揮監督できますので、今、どれだけの業務が残るか、そして必要な手当てというのは、それは枠外も含めて、政府として当然責任持って考えますので、この枠内でやるから年金記録問題を放棄するとか、そういう発想で出ているわけではありません。

阿部(知)委員 今の大臣の御答弁には恐らく勘違いがあると思います。

 年金記録の回復の方は、最後のページにお見せしたように、これは紙台帳との突合も含めて、今あるオンラインの中のデータを正しくしていくための人数が、十年間にわたって正規の職員約三百人という話なんです。

 今大臣がおっしゃった一万人体制は、第三者委員会で救済の申し出をされて裁定を受けるんだけれども、第三者委員会からあっせんを受けて、そして今度は社会保険庁で再裁定をしていくんです。そこが今膨大にたまって、待ち時間が平均すれば二年くらいになっているわけです。そこでお亡くなりになる方もいるので、そっちの体制を一万人にいたしましょうということなんです。

 ここには二つの残された問題があるんです。前者の、記録を正しくしていくかどうか、こちらにかかわる人数は、私は、入っていないんじゃないのと。これは今後十年の計画です。大臣の御答弁は、できれば新しい機構ができる前に再裁定部分は何としてでも早くに終わらせねばならないという決意なんだと思います。ここには二つの別途の問題があり、おのおのに人はかかるわけです。

 大臣、ここで確認したいですが、今大臣に言っていただいたとおりに、新しい年金機構に移るまでの間に再裁定で長時間お待ちになる人はなくなる、これは明言していただけますか。皆さん必死だし、お亡くなりになる方も出るんです。私は、そちらは今ある人員をぎゅっと突入してやっていく。救済が第一なんです、もうここまで来たら。ここに一番力点を置くべきだと思いますから、その点はそう考えて、お約束していただけますか。

舛添国務大臣 これは、夏をめどに、三カ月に短縮するということで、そのために多くの人員を投入しようということであります。

阿部(知)委員 私は、この間の社会保険庁の業務のあり方を見ていると、いろいろな業務がたくさん降りかかってきていることもあるんですが、それをきちんと仕切って、必要な業務量と、いわば優先順位を立てていくということが、大臣は常におっしゃいますが、しかし実現されていないように思います。

 日本年金機構の発足前に、私は大臣にぜひやっていただきたいことがあります。

 先ほど私が御紹介した平成十八年九月の総務省行政評価局の、これは厚生年金保険に関する行政評価・監視なのですが、何が主眼点かというと、適用漏れ事業所が膨大で、それを社保庁は把握しておらず、把握するためのさまざまな取り組みも全くおくれておるという指摘が二年近く前になされたわけです。

 私は、今回の日本年金機構のいろいろな、どんな組織にするかということを読んだ中に、一行たりともこの総務省から受けた行政評価局の指摘について前向きにこたえたものがない、触れたものがない。大変に懸念します。かつ、総務省という厚労省とは違う省庁がこの厚労省の年金の処理の仕方はおかしいよと指摘されて、無視して突き進んでいいとも思えません。

 年金機構の発足前に、この総務省の指摘、四点にわたって基本的に大変いい指摘をしています。それの進捗状況、どういうふうに取り組まれるのか。その業務が当然次の年金機構に残るんですよ。残る、当たり前なんです。だって、未適用事業所数だってまだまだ膨大です。かつて、この総務省の指摘では約六十三万から七十万事業所が未適用、そして人にしたら二百六十七万人が加入していない。そこから一体どこまで進捗したのか、どこまでにどんな人数で何をやるのか。この次で結構です、ぜひ御答弁いただきたいですが、いかがでしょうか。

舛添国務大臣 新しい組織は、設立委員会でどういうふうにやるかというのを練っておりますし、それができた暁には、今の総務省、その他外部からいろいろな批判がありますから、それにこたえられるような組織づくりをしたいというふうに思っておりますので、今の阿部委員の意見を参考にさせていただきたいと思います。

阿部(知)委員 では、また次回、引き続きよろしくお願いします。

 終わらせていただきます。

田村委員長 次回は、来る八日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時五十七分散会


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