衆議院

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第17号 平成21年6月10日(水曜日)

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平成二十一年六月十日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 田村 憲久君

   理事 上川 陽子君 理事 鴨下 一郎君

   理事 後藤 茂之君 理事 西川 京子君

   理事 三ッ林隆志君 理事 藤村  修君

   理事 山井 和則君 理事 桝屋 敬悟君

      赤池 誠章君    新井 悦二君

      井澤 京子君    井上 信治君

      遠藤 宣彦君    大塚 高司君

      金子善次郎君    川条 志嘉君

      木原 誠二君    木村 義雄君

      清水鴻一郎君    杉村 太蔵君

      鈴木 馨祐君    高鳥 修一君

      谷畑  孝君  とかしきなおみ君

      戸井田とおる君    冨岡  勉君

      西本 勝子君    萩原 誠司君

      林   潤君    松本 洋平君

      矢野 隆司君   山本ともひろ君

      若宮 健嗣君    渡辺 博道君

      内山  晃君    岡本 充功君

      菊田真紀子君    郡  和子君

      園田 康博君    長妻  昭君

      西村智奈美君    細川 律夫君

      柚木 道義君    福島  豊君

      古屋 範子君    高橋千鶴子君

      阿部 知子君

    …………………………………

   厚生労働大臣       舛添 要一君

   厚生労働副大臣      大村 秀章君

   厚生労働大臣政務官    金子善次郎君

   厚生労働大臣政務官   戸井田とおる君

   衆議院庶務部長      向大野新治君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 甲斐 行夫君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房総括審議官)         森山  寛君

   政府参考人

   (厚生労働省労働基準局長)            金子 順一君

   政府参考人

   (厚生労働省労働基準局勤労者生活部長)      氏兼 裕之君

   政府参考人

   (厚生労働省職業安定局長)            太田 俊明君

   政府参考人

   (厚生労働省雇用均等・児童家庭局長)       村木 厚子君

   政府参考人

   (厚生労働省保険局長)  水田 邦雄君

   政府参考人

   (厚生労働省年金局長)  渡辺 芳樹君

   厚生労働委員会専門員   榊原 志俊君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月十日

 辞任         補欠選任

  大野 松茂君     渡辺 博道君

  高鳥 修一君     矢野 隆司君

  萩原 誠司君     鈴木 馨祐君

  福岡 資麿君     松本 洋平君

  三井 辨雄君     西村智奈美君

同日

 辞任         補欠選任

  鈴木 馨祐君     萩原 誠司君

  松本 洋平君     若宮 健嗣君

  矢野 隆司君     高鳥 修一君

  渡辺 博道君     大野 松茂君

同日

 辞任         補欠選任

  若宮 健嗣君     山本ともひろ君

同日

 辞任         補欠選任

  山本ともひろ君    大塚 高司君

同日

 辞任         補欠選任

  大塚 高司君     福岡 資麿君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律及び雇用保険法の一部を改正する法律案(内閣提出第六四号)


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     ――――◇―――――

田村委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律及び雇用保険法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、本案に対し、西村智奈美君外六名から、民主党・無所属クラブ、社会民主党・市民連合及び国民新党・大地・無所属の会の三派共同提案による修正案が提出されております。

 提出者より趣旨の説明を聴取いたします。西村智奈美君。

    ―――――――――――――

 育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律及び雇用保険法の一部を改正する法律案に対する修正案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

西村(智)委員 ただいま議題となりました、民主党、社会民主党、国民新党提出の育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律及び雇用保険法の一部を改正する法律案に対する修正案について趣旨説明を行います。

 我が国では、少子化を食いとめ、子供を産み育てやすい環境を整備することが命題となっており、今回の育児・介護休業法の見直しでは、就労している女性そして男性が当然の権利として育児休業を取得し、それによる不利益取り扱いを受けないようにすることが求められています。しかし、政府案は、育児休業制度がある程度軌道に乗っている企業で育児休業を取得できている者に対しさらに制度を拡充するものであっても、育児休業を理由とした不利益取り扱いを受けている人の救済は盛り込まれておらず、不十分な内容となっております。

 とりわけ、昨年秋の経済危機を発端とした景気低迷を受けてふえております、いわゆる育休切りに象徴される育児休業を理由とした解雇、不利益取り扱いの防止策が欠けています。この法案の内容が検討された労働政策審議会雇用均等分科会では、育休切りあるいは介護休業を理由とした解雇や不利益取り扱い等の防止策について議論されていなかったのですから、そうした防止策を法改正に盛り込むことが立法府の責任であると強く感じております。

 次に、修正案の概要について御説明いたします。

 第一に、期間雇用者の育児休業及び介護休業の申し出要件を緩和し、休業申し出時点で雇用期間が現行では一年以上必要であるところ、六カ月以上であれば休業を申し出ることができるようにします。

 第二に、一人親家庭における育児に配慮し、母子家庭及び父子家庭についての育児休業期間及び子の看護休暇を延長することとし、育児休業を子が一歳六カ月に達するまで、看護休暇を一年間に十日、子が二人以上の場合は二十日まで取得できるようにします。

 第三に、父親の育児参加を促すために、母親と父親がともに育児休業を取得する場合の特例として、子が一歳六カ月に達するまで取得できることとします。

 第四に、育児休業または介護休業を理由とした解雇、不利益取り扱い等を防止するために、育児休業または介護休業を申し出た労働者に対して、休業中の待遇、休業後における賃金等の労働条件等を書面で明示することが現行では事業主の努力義務であるところ、義務に変更します。

 第五に、所定外労働の制限、所定労働時間の短縮措置の対象となる労働者を小学校就学前の子を養育する労働者まで拡大します。

 第六に、始業時刻変更等の措置を小学校就学前の子を養育する労働者に対する事業主の義務とします。

 第七に、少しでも早く法改正事項を実施できるよう、紛争の解決、公表及び過料に係る規定は、公布の日から三月を超えない範囲内において政令で定める日から施行することとします。ただし、暫定措置として、常時百人以下の労働者を雇用する事業主については、公布の日から三年を超えない範囲内において政令で定める日まで、一部の項目は適用しないこととします。

 以上が、民主党、社会民主党、国民新党提出の修正案の趣旨及び主な内容でございます。

 何とぞ、御審議の上、御賛同くださいますようお願い申し上げます。(拍手)

田村委員長 以上で修正案の趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

田村委員長 この際、お諮りいたします。

 原案及び修正案審査のため、本日、政府参考人として法務省大臣官房審議官甲斐行夫君、厚生労働省大臣官房総括審議官森山寛君、労働基準局長金子順一君、労働基準局勤労者生活部長氏兼裕之君、職業安定局長太田俊明君、雇用均等・児童家庭局長村木厚子君、保険局長水田邦雄君、年金局長渡辺芳樹君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

田村委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

田村委員長 これより原案及び修正案を一括して質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。新井悦二君。

新井委員 おはようございます。自由民主党の新井悦二です。

 本日は、質問の機会を与えていただきまして、本当にありがとうございます。早速でありますけれども、それぞれ発言通告に従いまして順次質問をさせていただきますので、よろしくお願いいたします。

 それでは、育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律及び雇用保険法の一部を改正する法律案について質問をさせていただきます。

 まず、今私たちの社会において少子化を大きく左右する因子として、就労のあり方があると思います。特に、仕事か育児かのどちらかという選択ではなく、仕事と育児のできる環境を整えることが今の私たちの社会に求められているのではないかと思います。育児を行う女性の就労継続を可能とするとともに、仕事、育児ともに男性と女性が同等に行える環境を整備することが必要であると思っております。

 また、修正案も読ませていただきましたけれども、やはりこれは仕事をする立場の人と、片や企業の立場に立った考えもある程度考えていかなければ、いきなりかなり飛んだ方向だと企業の負担もふえていくのではないかと思いますので、その都度しっかりと検討していかなければならないと思っております。

 まず、女性労働者の継続就業率についてお伺いをいたします。

 女性労働者の継続就業率について、出産一年前に有職だった女性の七割が出産半年後には退職をしており、第一子出産前後の継続就業率は過去二十年間ほとんど変化していないわけでありますが、育児休業制度ができてから二十年間がたったわけであります。現在も女性労働者が出産するならば退職をせざるを得ない状態が続いており、これを解消して実質的に育児休業の取得を可能とし、継続就業率を高めるために、二十年間どのような対策を講じてきたのか、まずお伺いをいたします。

村木政府参考人 お答え申し上げます。

 育児休業法が成立をいたしましたのが平成三年でございます。以来、さまざまな施策を講じてまいりました。育児休業法も数次にわたり改正をしておりまして、例えば、平成十三年には勤務時間短縮等の措置の対象年齢を、それまで一歳までに措置義務がかけられていたものを三歳までとするといった改正を行いました。また、平成十六年には子供の看護休暇を新たに創設いたしました。こういった形で、育児休業法を数次にわたり改正してきております。

 また、休業中の給付についてでございますが、これは平成六年に育児休業給付が創設をされまして、その後、給付率の引き上げや給付期間の延長等を行ってきたところでございます。

 また法律以外にも、さまざまな助成金の支給で企業の支援を行ってまいりました。特に最近では、さきの平成二十年度の補正予算あるいは二十一年度の補正予算において助成金の拡充を図ったところでございます。

 また、こうした取り組みに加えまして、平成十五年に成立をしました次世代育成支援対策推進法におきまして、企業に、みずから従業員の次世代育成支援の施策について行動計画を立ててそれを実施していただくという内容を盛り込み、これは平成二十年にさらに改正をされて、この義務のかかる企業の範囲を中小企業に拡大したところでございます。

 こうした働き方の改正に加えまして、一方で保育サービス等、仕事と家庭を両立するためのサービスについても充実を図ってまいりました。待機児童ゼロ作戦という形で保育サービスの充実を図ってまいりましたが、特に昨今は、新待機児童ゼロ作戦集中重点期間ということで、保育所の整備を急ぐということをやっているところでございます。

 しかしながら、この二十年近くでございますが、なかなか女性が仕事をしながら働き続けるという環境が整わない、また、男性が育児のところにはなかなか参加ができないという問題が解決をしていない状況でございまして、そういったことに対応するためにも、ぜひ、今回の育児・介護休業法の改正法案を御審議いただきまして、成立をいただきまして、さらに施策の充実を図りたいと考えているところでございます。

新井委員 そういうたくさんのいろいろな施策をやってきたかに思うんですけれども、実際、継続就業率がほとんど二十年間そんなに変わっていないということは、やはり毎年毎年きちっとした検証をして、そしてまた本当にそれが実効性のとれたものになっているのか、そしてまた使いやすいものになっているのかということもやはり絶えず考えながら進めていかなければこれもなかなか進まない問題じゃないかと思いますので、ぜひともしっかりと取り組んでいただきたいと思います。

 また、現在、両立支援制度は必ずしも十分とは言えない状況にありますけれども、改正案においてもまだまだこれからではないかと思うんですけれども、そのことについてはいかがでしょうか。

村木政府参考人 先ほども御答弁申し上げましたとおり、今までの制度ではかなり不十分な点があるということでございます。なかなか、子供を産んだ方が勤め続けられないという状況が変わっていないということでございます。

 今回特に、私ども法改正において力を入れたのは、休業はとれても、休業から復帰した後に仕事と家庭が両立できるという見通しが立たないという点でございます。これを、ぜひとも見通しの立つ働き方のスタイルを法律によって導入したいということ。それから、現状では女性が育児や家庭の負担を相当一方的に、多く負担している、ここにぜひ男性が参加できるような足がかりを法律の中に入れたいということでやったところでございます。

 確かに、今回の改正法も、もっとたくさんの内容を盛り込んで、もっと手厚くということもあるわけでございますが、法律で定めるのは最低基準ということでございます。中小企業も守れなければいけない基準でございますので、法律でまずそういう底上げを図りながら、さらに企業に理解をいただいて、法律を上回るさまざまな施策を自主的に、労使でお話し合いをして取り込んでいただけるような形でぜひ進めていきたいと考えているところでございます。

新井委員 ぜひとも、社会全体で取り組む姿勢でやっていただきたいと思います。

 次に、短時間勤務制度と所定外労働免除制度についてお伺いいたします。

 今回、労働者にとってニーズの高いものが利用できるようにしたことはいいことだと思っているんですけれども、短時間勤務制度と所定外労働免除制度の義務化については、よい方向にあると思っております。その他のニーズの割合はどのようになっているのか、そしてまた、その他のニーズへの配慮についてはどのようになっているのか、お伺いいたします。

村木政府参考人 働き方に関するさまざまなニーズでございますが、平成十九年にこども未来財団が実施をした、企業における仕事と子育ての両立支援に関する調査研究という調査がございます。

 この結果で見ますと、今回法律で義務を強化いたします短時間勤務についてのニーズが四一・四%、それから所定外労働免除が二四・九%でございます。これらに対するニーズは非常に強いということでございますが、今回特に強化を図らないその他の制度に対するニーズも、フレックスタイム制度について三三・五%、それから始業、終業時刻の繰り上げ繰り下げ制度に対するニーズが二六・一%ということになっております。

 そういう意味で、フレックスタイム制度や始業、終業時刻の繰り上げ繰り下げの制度、あるいは事業所内託児制度についてもそれぞれにニーズがあるわけでございますが、中には、短時間勤務制度それから所定外労働時間の免除でカバーできる部分もあろうかというふうに思っております。そういった意味で、今回、まず短時間勤務制度と所定外労働の免除の制度を義務的な措置として格上げをし、残りのものについては努力義務として残すということで対応したいと考えているところでございます。

新井委員 私としても、やはりその他のニーズというものもしっかりと理解していただいて、そしてまたこれからの施策に少しでも反映できればいいと思うんですけれども、また、修正案の場合は、措置の義務づけだと事業主に大きな負担になってしまうのかなということもありますので、修正案もそしてまた閣法についても、いい方向に進めていただきたいと思っております。

 また、この制度は三歳までの子供を養育する労働者に対してでありますが、私としてはちょっと意見が修正案に近いんですけれども、小学校入学時まで必要ではないかと考えておるんですけれども、なぜこれは三歳なのか、そのことについて。

村木政府参考人 現行の勤務時間短縮等の措置につきましては、三歳に満たない子については選択的措置義務、三歳から小学校就学の始期に達するまでの子供については努力義務ということにされております。

 働く方の御希望を見ますと、子供を持って働く場合に、子供が小さいときはできるだけ短時間勤務がいい、少し大きくなると短時間勤務あるいは残業のない働き方で、もっと大きくなると残業もできますよということで、子供の成長に従って働き方の希望が変わってくるところでございます。

 先生御指摘のように、せめて小学校に行くまでこういう制度を入れられないか、それからもう一つ、研究会や審議会あるいは関係者の御意見を聞いたときに、やはり小学校一年生に入ったときが本当に大変なんだ、本当は、欲張れば小学校に入って最初のころをぜひカバーしてほしいというようなお話もたくさんあったわけでございます。

 しかしながら、法律で定める最低基準を定めるときに、どういうところに線を引くかということをさまざま議論していただきました。その中で、短時間勤務それから所定外労働の免除については、まず一つには、現在、短時間勤務制度がある事業所は全体の三割強、それから所定外労働の免除制度がある事業所は二割強ということで、対象年齢を引き上げるというよりも、まずどこの事業所でもそういった制度があるという状況をつくることが重要なのではないかということ。

 それから、短時間勤務制度を法律の最低基準として長期間適用するということは、ほかの方が八時間働いておられる中で六時間とか四時間で働く方をつくるということですので、非常に事業主には負担の大きい制度でございますので、これを長期に適用するということは事業主の負担が非常に大きくなるだろうということ。

 それから三つ目といたしましては、短時間勤務制度の利用者というのは事実上女性が圧倒的に多いわけでございまして、女性だけがそういう短時間勤務で、職業生涯の中で長い期間そういった制度を利用するということは女性のキャリア形成に支障を及ぼすのではないかという危惧が、これは労使を通じて、特に女性から声が大きかったのではないかと思いますが、そういったこともあるということで、さまざまなことを勘案しまして、労働政策審議会において、三歳に満たない子に対して短時間勤務や所定外労働の免除の対象とすることにしてはどうかという結論をいただいたわけでございます。

 なお、小学校の始期に達するまでの子供に対してはどちらの制度も努力義務の対象といたしますし、また、先ほど申し上げた就学後ということにも非常にニーズがあるわけでございますので、こういった制度を採用してくださる企業には助成金も用意するというようなことで、これらの制度をあわせて普及を図っていきたいと考えているところでございます。

新井委員 また、いろいろと資料などを読ませていただきますと、中には、これらの制度は子育て支援ではなくて両立支援であり、制度を長期的に、長くするほどよいというわけではないという意見も出ているようでありますけれども、そのような縦割り行政ではなくて、やはり子育て支援と両立支援というのはバランスの問題であると思いますので、車の両輪のように一体となってやっていかなければこの支援制度というものはうまくいかないと思います。

 これについてどのように考えているのか、お伺いいたします。

村木政府参考人 御指摘のとおり、研究会や審議会の議論の中でも常にその議論がございまして、働き方を変えるということは非常に大事だということとあわせて、社会的なインフラの整備をきちんとしてほしい、社会的なインフラの整備ができていない部分がみんな企業の方の負担になるのですかという御意見が企業から大変多く出されております。

 私ども、保育サービスや放課後児童クラブのような社会インフラの整備は本当に大事だと思っております。働き方と社会インフラの整備、これを車の両輪としてしっかり進めていきたいと思っております。社会インフラが幾ら整っても、やはり子育てを自分でする、子供と接触する時間を親が確保できるということは非常に大事でございますので、本当に両輪でやっていきたいというふうに考えているところでございます。

新井委員 次に、長時間労働についてお伺いいたします。

 今、私たちのこの国は恒常的な長時間労働が大きな問題となっておりますが、まず先進国の状態はどのような状態になっているのか。

氏兼政府参考人 お答え申し上げます。

 OECDの統計によりますと、主要先進国における二〇〇七年の労働者一人平均の年間総実労働時間でございますが、我が国におきましては千八百八時間であるのに対しまして、米国が千七百九十八時間、英国が千六百五十五時間、フランスが千四百五十七時間等となってございます。

 各国によりまして母集団それからデータのとり方に差異がありますために、単純に比較することはできないと思いますけれども、我が国の労働者の総実労働時間は、米国と比べますとほぼ同水準でございますけれども、一方で、フランス等の欧州諸国と比べるとかなり長くなっているという現状でございます。

新井委員 やはりこの長時間労働問題についてもしっかりと考えていただかなきゃいけないということと、また、今は本当に二極化していると思うんですね。長い人もいれば、逆に、要するにパートタイムとかそういう働き方のあり方ですから、そういうもので極端に少なくなっている人とありますので、ぜひともそのバランスをよく、また極端に長い人というのは健康上の問題もありますので、そういうことで、この長時間労働というのはこれから、仕事仕事というばかりではなくて、やはり心の豊かさということを考えて、社会全体でそういう考えの方向に持っていっていただきたいと思っております。

 特に女性の場合は、育児と仕事の両立は非常に難しいと思っております。男性についても、子育て世代の長時間労働というのは非常にまた大きな問題となっておると思います。子育てよりも仕事という状態では少子化に歯どめがかからないと思います。

 また、両立支援制度を充実させても、育児を行う女性のための制度という位置づけにならないように、両親による子育てを進めるためには、制度を充実させるだけではなくて、やはり長時間労働を改善し、両立支援制度を利用しない男性も子育てにかかわる状態をつくることが必要であり、子育てを行う労働者の短時間勤務制度や所定外労働免除制度の普及促進とともに、その背景にある労働者全体の長時間労働の是正が必要であると思っております。

 国は、この長時間労働に対してどのような対策を講じていくのか、お伺いいたします。

氏兼政府参考人 我が国労働者の労働時間につきましては、先ほど申し上げましたとおり、平均して千八百時間程度でございますけれども、先生御指摘のとおり、実は、正社員等の長時間労働者とパートタイム労働者等の短時間労働者との間に長短二極化が進んでいるという状況にございます。とりわけ、週六十時間を超えて労働する労働者が、子育て世代である三十代の男性では五人に一人という割合となっているということでございまして、長時間労働の抑制を図ることが重要な課題であるというふうに考えてございます。

 政府におきましては、一昨年の十二月に、政労使の合意によりまして、仕事と生活の調和憲章、いわゆるワーク・ライフ・バランス憲章、それからその推進のための行動指針を策定したところでありますが、その中でも、仕事と生活の調和が実現した社会の一つの要素として、「健康で豊かな生活のための時間が確保できる社会」ということが掲げられているところでありまして、これに向けて政府全体で取り組みを進めているところでございます。

 厚労省におきましても、行動指針において、週六十時間以上の労働を行う労働者の割合の減少でありますとか、年次有給休暇取得率の向上等の数値目標が設定されたということも踏まえまして、例えば、我が国を代表する企業の具体的な取り組み、成果を広く周知するということで仕事と生活の調和推進プロジェクトを展開しておりますし、また、業界団体による業種の特性に応じました仕事と生活の調和推進プランの策定支援、それから、仕事と生活の調和についての相談、助言を行う専門家の養成といったこと、さらには、事業主が長時間労働の抑制に取り組むに当たって指針となる事項を定めました労働時間等見直しガイドラインの周知啓発といった、さまざまな観点からの施策を鋭意推進しているところでございます。

 さらに申し上げますと、来年四月より改正労働基準法が施行されますが、これにおきましては、月六十時間を超える時間外労働に係る法定割り増し賃金率、これは現行二五%でございますが、これが五〇%に引き上げられるということになってございます。あわせまして限度基準告示が改正されまして、限度基準を超える時間外労働につきまして、法定を超える割り増し賃金率を定めること等の努力義務が課せられるということになってございます。長時間労働の抑制に大きく寄与するものというふうに考えてございます。

 今後とも、これらの取り組みを通じまして、長時間労働の抑制に努めてまいりたいと思います。

新井委員 ぜひとも、仕事一辺倒ではなくて、やはり心の豊かさ、そして心に余裕がなければいい子育てはできませんので、しっかりと取り組んでいただきたいと思います。

 次に、保育所などの整備についてお伺いいたします。

 保育所などの社会的インフラの不足も仕事と育児の両立を阻む因子であるわけでありますので、保育所等のインフラ整備は両立支援とリンクして進めなければならないと思っております。

 待機児童数は現時点ではどのようになっているのか。

村木政府参考人 保育所についてのお尋ねでございます。

 保育所入所待機児童数でございますが、平成二十年四月一日現在で一万九千五百五十人、これは五年ぶりに増加になっております。また、二十年十月一日現在の待機児童数でございますが、前年よりも三千人ほど増加をして、四万百八十四人となっております。

 ことし四月一日現在の数字はまだ上がってきておりませんが、恐らくかなりふえているんだろうというふうに思っております。昨今の経済情勢の悪化等によりまして、共働きを希望する御家庭がふえているというようなことが恐らく原因だろうというふうに思っております。

 現在、新待機児童ゼロ作戦を加速化して、平成二十二年度までの集中重点期間において十五万人分の保育所の整備を図るということで、平成二十年度の第二次補正予算におきまして一千億円の安心こども基金を都道府県に創設して、急ぎこの整備を図っているところでございます。

 また、今般の補正予算におきましてもこれを増額しておりまして、特に、賃借で都市部に保育所を整備するとか、それから、少し離れたところにある保育所にあきがある、そういったところにお子さんをバスで運んでいけるような仕組みをつくるというようなきめ細かな工夫もして、足元、何とか待機児童を減らせるように整備を急いでいるところでございます。

新井委員 待機児童を減らす減らすと言っても、実際的にそんなに減っていなくて逆にふえているわけでありますので、この両立支援としっかりとリンクさせて対策を進めていただきたいと思っております。また、どこの自治体も待機児童ゼロ作戦を進めているのでありますけれども、やはり旗を振るだけでは本当に結果が出ないので、ぜひともしっかりとした結果を出すようにしていただきたいと思っております。

 次に、今回の改正案で短時間勤務制度と所定外労働免除制度が義務化されることにより、企業としては代替要員の確保や雇用管理が難しくなり負担がふえることや、これらの社会的インフラ整備のおくれを補うために、これらの制度を過度に充実させ企業に負担がかかることはバランスを欠くことにもつながると思うんですけれども、このことについてはどのように考えているのか。

村木政府参考人 短時間勤務制度や所定外労働免除制度の義務化というのは、先生御指摘のとおり、非常に企業には大きな負担がかかるものだというふうに思っております。

 ただ、今の少子化を考えますと、働き方を変えていくことというのは本当に急いで我が国が取り組まなければならない課題だというふうに思っておりますし、また企業にとりましても、一面で負担がふえますが、一方で、こういう制度がきちんと定着をしますと、育児や介護のためにやめる労働者が減るわけでございますし、また労働者もゆとりを持って生き生きと働けるということがあるわけで、企業にとってもプラスの面もあるということをよく企業の方に理解していただくということも必要かというふうに思っております。

 そうした上で、さらに、特に中小企業にとりましての負担は一番我々が配慮をしなければならないところだというふうに思っておりますので、代替要員を確保して休業取得をさせてその労働者が無事に復帰できる、そういったことを行った事業主に助成をする、あるいは、中小企業で初めて育児休業や短時間勤務をする人が出たときには助成をする、こういう経済的な応援策もあわせて、事業主の取り組みをしっかり支援していきたいというふうに考えているところでございます。

新井委員 これは企業によっても、大企業とか中小零細とあるわけでありますので、これを一律にするということは、やはり零細企業とかそういう小さなものに対しての負担が大企業に比べると大きいように思うので、そこら辺の配慮をしっかりとして取り組んでいただきたいと思いますので、よろしくお願いします。

 次に、出産による退職と企業の意識についてお伺いいたします。

 女性の育児休業取得率は高いけれども、在職中に出産した女性に占める育児休業取得率の割合であり、出産前に退職した女性労働者の人数は含まれていないので、実質的な育児休業取得率はかなり低いと思うんですけれども、継続就業を希望している女性全体の把握はどのようになっているのかお伺いいたします。

村木政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のとおり、育児休業の取得率というのは、女性の場合ですが、現在会社にいる方のうち、出産をされた女性を分母にして、休業をとった女性を分子にして計算をいたします。そうした意味では、育児休業を取得せずに、それよりも前にやめてしまうような方がこの数字の中に入ってこないということで、休業取得率そのものは意味のある数字ではございますが、それだけでは十分でない、仕事を持っていて子供を出産した人がどれだけ就業を継続できるかということが非常に大事な数字になってくるということを私どもも思っております。政策目標としてもそういったものをきちんと取り上げて、最近は施策を進めているわけでございます。

 この数字の把握でございますが、一つ、平成十八年に第五回二十一世紀成年者縦断調査というのがございまして、この調査で、妻の出産後の継続就業意欲について、仕事を「出産した後も続ける」という方が五四・三%、「出産を機にやめる」が二三・八%、「考えていない」が一五・二%という数字があります。同じ調査で、仕事を「出産した後も続ける」としていた妻のうち出産後も同一就業を継続している人というデータがございまして、これが八〇・七%という数字が出ております。

 こういうデータがあると、私どもも、どれだけの人が就業継続を希望して、実際に就業が継続できるかということがとれるわけでございますので、何とかこういった数字を今後継続的に把握ができないかということで、関係方面と今調整をしているところでございます。何とかこういったデータ把握も含めて、継続就業ができる方をふやしていくという政策方針をしっかりとっていきたいと考えているところでございます。

新井委員 継続就業もしっかりとできる、そしてまた、女性労働者が出産前に退職をせざるを得ない状況を改善するということも重要な対策であると思っているんですけれども、その辺はどのように。

村木政府参考人 女性が出産前に退職をせざるを得ないという状況の改善、これは御指摘のとおり、本当に大事なことだというふうに思っております。

 就業継続という観点で見ますと、第一子の出産前後で継続して就業している女性の割合、これは調査によって若干ばらつきがありますが、大体三割台にとどまっているという状況でございます。

 私ども、政策的には、平成十九年十二月に策定をされました仕事と生活の調和推進のための行動指針、いわゆるワーク・ライフ・バランスの行動指針でございますが、第一子出産前後の女性の継続就業率を数値目標にしておりまして、平成二十九年、この計画がつくられたときの十年後の目標でございますが、これを五五%というふうに目標設定をしております。

 こういう目標も定めて、しっかりいろいろな施策を充実していきたいというふうに思っておりますが、とりわけ今回の育児・介護休業法において短時間勤務の制度や残業の免除の制度が義務化をされるということで、育児休業から復帰した後の、仕事と育児を両立させる生活の姿、働き方のイメージがある程度できる、予測が立つ、計画が立つ、無理が減るということは非常に大事なことだと思っておりますので、ぜひ、今回の改正法をてこに、しっかりこの数字が上がるように努力をしていきたいと考えているところでございます。

新井委員 出産を機に女性が退職する背景にはまた、育児と仕事の両立の難しさだけではなく、やはり子育てに対する企業の意識の低さがあると思います。また、今回の法改正による義務づけだけでは実効性が上がらない可能性もあり、単なる法整備だけではなく、やはり企業や管理職、そしてまた社会全体の意識改革を進めていかなければ実効性が上がらないと思います。しっかりと実効性を上げていただきたいと思っております。

 次に、短時間勤務期間中の所得保障についてちょっとお伺いしたいんです。

 短時間勤務制度に関しては、勤務時間を短縮した分だけ収入が減少することになりますが、育児をしながら働くということは、労働人口がふえるのと、子育てのための内需拡大に私はつながると思っているんです。短時間勤務を部分休業と位置づけ、その部分の所得を公的に保障してもよいのではないかと思うんですけれども、そのことについて。

村木政府参考人 御指摘のように、短時間勤務をとりますと収入が減るということで、この所得補てんということが非常に大事ではないかという御意見はさまざまなところで伺っております。

 現在は、育児休業をすれば育児休業給付が支給されるわけでございます。この休業給付の考え方でございますが、育児休業している間に所得保障をしなければ、その職業生活を円滑にするために必要な休業の取得が困難となり、結局、休業をとれずに失業に結びつきかねないということで、休業制度を設けてそれを実効あらしめる、実際に休業をとれるように、そして雇用が継続するようにということで、現在、雇用保険制度で休業前の賃金の五〇%が支給をされているということでございます。

 そういったことを考えますと、短時間勤務をした場合、例えば八時間が所定労働時間であるときに六時間勤務、四時間勤務という勤務をすれば、六時間分あるいは四時間分の賃金は事業主から得ることができるということで、一定の所得保障が労働の対価という形で想定をされるということで、なかなか、やはり雇用保険の所得保障の議論の中からは、この辺の短時間勤務のところの所得の減少を補てんすることは難しいというふうに考えているところでございます。

 そういった枠を超えて、それでも短時間勤務をしっかり普及し、そういう人が所得も下がらずにそういった勤務形態をとれるということは非常に理想でもございます。ただ、それであれば、どういった財源をどれだけ持ってきてそこに充てるかということでございます。これから少子化対策をきちんととっていく、日本がいろいろな面で少子化対策を充実する中で、一つの政策課題として検討していかなければならない課題かというふうに考えているところでございます。

新井委員 やはり財源論になりますと大きな課題があるわけでありますので、ぜひとも、そこら辺のこともしっかりと踏まえて取り組んでいただきたいと思っております。

 次に、男性の子育てについてお伺いいたします。

 夫の家事、育児負担度が高いほど妻の出産意欲が高いみたいでありますが、少子化対策の観点から、父親が育児にかかわることのできる働き方を実現するために、まず、制度改正よりも企業の意識改革が男性の場合は必要ではないかと思うんですけれども、このことについてはどのように。

村木政府参考人 男性が育児にかかわることができるようにするということにつきましては、制度ももちろんでございますが、企業の意識、風土、それから御本人の意識ということも非常に重要な問題だというふうに思っております。

 これまでも、厚生労働省としまして、育児期の男性を対象にしたハンドブックをつくりましたり、企業向けの事例集を作成したりということで、機運醸成に一生懸命努めてきたところでございます。これからもキャンペーンの実施等々をやっていきたいと思っております。

 特に企業の方は、一般的なキャンペーンというときはなかなか振り向いていただけないのですが、大きく法制度が変わるときには、企業の特に労務管理の方々の関心がそこに向きますので、今回の法改正の中に、父親の育児休業取得の促進にかかわるような制度が幾つか入っております。こういったものも契機にして、しっかりと企業へも訴えかけをしていきたいというふうに考えているところでございます。

新井委員 ぜひとも、国も、父親の育児休業を推進できるしっかりとした施策を打ち出して、また男性の子育て参加を後押しするようなメッセージをしっかりと出していただきたいと思っております。

 ちょっともう時間がないので、最後にもう一問だけ、大臣にお伺いいたします。

 今回の改正に当たりまして、大臣の決意と、また今後の両立支援の取り組みについてお伺いして、最後とさせていただきます。

舛添国務大臣 ワーク・ライフ・バランス、こういう働き方の改革、それから子育て支援、そういうことがこれからの活力ある日本の社会をつくっていくというふうに思いますので、今御審議いただいています法律についても、日本のこれからの新しい方向を目指すものであると思いますので、御審議していただいた上で、早急に、次々と施策を展開していきたいと思っております。

新井委員 ありがとうございました。これで私の質問を終わりにさせていただきます。

田村委員長 次に、西本勝子君。

西本委員 自由民主党の西本勝子でございます。

 貴重なお時間をいただきまして、ありがとうございます。

 本題の前に、今般の新型インフルエンザについてでありますが、思いもよらず感染されました方々や、社会生活や経済活動に大きな影響を受けた阪神圏の皆様に心からお見舞いを申し上げます。

 政府は、厳格な水際対策によりウイルスの国内侵入を防いできたものの、五月五日に国内患者が確認されてからは急速に感染が拡大し、国民の多くが免疫を持たないウイルスだけに、全国への感染拡大を心配していたところ、報道では先月十七日をもって流行のピークは過ぎたようで一安心しているところですが、新たに福岡での感染が報告されています。万一、強毒性のウイルスに変化することも排除できないという指摘もあるようですので、今後には誤りなき対応をお願いするところであります。

 政府は、これまでも常に感染状況を確認しながら迅速かつ柔軟に対応してきており、次の対策として冬場の再流行に備えて年内に二千万人分の新型インフルエンザ用のワクチンを製造するようですが、国民の安心を確保するためにも、さらなる増産を期待しています。

 新型インフルエンザの発生以来、第一線の陣頭指揮に当たってきました舛添大臣はまさに獅子奮迅の働きでありまして、寝食を忘れての奮闘ぶりにはただただ頭が下がる思いでありました。これまでの御労苦をおねぎらい申し上げます。今後、この問題がどのような展開になろうとも、強い覚悟で難局に立ち向かっていただくことをお願い申し上げ、質問に移ります。

 今回、当委員会に付託されました育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律の一部を改正する法律案に関して、主に少子化問題についてお尋ねいたします。

 平成十五年に制定された少子化社会対策基本法の前文では、「我が国における急速な少子化の進展は、平均寿命の伸長による高齢者の増加とあいまって、我が国の人口構造にひずみを生じさせ、二十一世紀の国民生活に、深刻かつ多大な影響をもたらす。我らは、紛れもなく、有史以来の未曾有の事態に直面している。」と記述されているのは御案内のとおりであり、少子化の解消は、日本の短期から中長期にわたる将来において、経済を軸とした国力や生活の豊かさなどが維持できるかどうかの大問題であり、我が国の存亡をかけた二十一世紀最大の課題と受けとめているのですが、中にはわき道にそれたような意見もありますので、二問ほど別の角度から質問をいたします。

 少子化社会というのは、これが進んでいる間は当然高齢化率が高くなるわけですので、労働力不足による社会経済に及ぼす影響のみならず、福祉の担い手問題として、年金、医療、健保など社会保障制度の基盤が揺らぐ問題が生じてくるのですが、逆に、少子化社会においては、環境や教育に負荷がかからないといったようなプラス面もあるという話を聞くこともあります。

 厚生労働省の所轄事項では、少子化社会が及ぼす善悪の中で、どちらかといいますと、悪といいますか、社会に与える悪影響が大きく心配されているのですが、もっと広い視野に立った場合、少子化社会から与えられる恩恵といいますか、プラス面はあるのかないのか、舛添大臣はどのようにお考えでしょうか。

舛添国務大臣 これは、日本だけじゃなくて、人類ないし地球全体規模から見て、例えばこの地球というのは何十億人の人口を抱えることができるんだろうか、そういうエントロピーの問題もあります。ですから、一億二千五百万人じゃなくて、江戸時代のように三千万人ということになれば、自給自足もできるかもしれない。

 それから、確かに人口がふえれば環境面の問題が出てくる。今、低炭素社会と言っているのはそういうことであります。人間がふえれば、経済活動、人間の行動、活動がふえますから、その分、環境の汚染とかいろいろな問題が出てくるわけですが、日本社会にとって、また世界全体にとっての問題は、それぞれの人たちが、例えば自分が子供を五人欲しいとか何人欲しい、どういう生き方をしたいというときに、例えば三人目が欲しいなというんだけれども、今の子育て支援策ではとてもやっていけない、今の働き方だと欲しいだけの数の子供が持てない、そういうことが問題であろうというふうに思います。

 それから、年金問題を含めて、やはり少子化の進行ということは日本社会全体の活力という面においても問題でありますので、そういうプラスマイナスを考えて、基本的には、個人が自分の自由な生き方ができる、そして社会全体が保っていける。そういう意味で、それは地球大のことまで広げれば非常に大きな問題になりますけれども、今のようなプラスもマイナスもある。ただ、我々が考えないといけないのは、やはり今後の日本社会の活力ということだろうというふうに思っております。

西本委員 ありがとうございました。まさに日本の今後の活力が一番重要なことだと思いますので、今後とも御指導をよろしくお願い申し上げます。

 国、自治体とも少子化対策に全力を傾注しているときに何で逆行するような質問をしたかと申しますと、実は、ある大学教授の「地球はこれから寒冷化する」という報告書の中に日本の人口について少し気になる記述がありましたので、その一部を紹介して、一問質問をさせていただきます。前後をカットしていますので、理解しづらい面は御容赦ください。

 報告書は次のような内容です。

 一九七二年に発表したローマ・クラブのレポートでは、全世界でこのまま人口増加や環境破壊が続けば、資源の枯渇や環境の悪化によって百年以内に人類の成長は限界に達すると警鐘を鳴らしている。二十世紀の初めに二十億人だった地球の人口は、二十一世紀初頭に六十億人を超えると、瞬く間に六十六億人を突破しており、このままのペースでいけば、二〇五〇年には九十億に達すると見られている。そこに至る前の二〇二〇年ごろから、食料は枯渇し、石油も枯渇すれば、ローマ・クラブが予言した成長の限界に達するというのがこの教授の指摘する二〇二〇年問題です。

 この問題は、地球の面積に限りがある以上、人口の増加と歩調をそろえて食料の生産性も同時に上昇しなければ、飢餓に陥る人が出ることは明白であり、石油については、人口がふえて工業化が進めば、化石燃料は発展のスピードに反比例して減っていく。また、教授の予想どおり地球の寒冷化が始まれば、莫大な量の化石燃料を燃やすことになり、資源の枯渇はさらに加速する。恐らく石油はあと数十年しかもたないことから、化石燃料を少しでも長く使い延ばしながら低炭素社会へと一刻も早く移行していくことが重要で、今、日本の人口はおよそ一億三千万人ですが、化石燃料に頼らない持続可能な社会を構築するには、太陽エネルギーを有効に使う循環型の社会を目指さざるを得ないのですが、このときの日本の適正な人口はせいぜい四千万人程度であり、そこに向かってソフトランディングするためには何をすべきか、我々は熟考しなければならないという内容です。

 この教授は、地球が寒冷化することを前提に、二〇二〇年ごろが世界の成長の限界であって、地球人口におけるキャパシティーは八十億人で、その中の日本については四千万人と述べています。

 大臣は、政治、特に政策を進める場合、学者と言われる方の意見や提言はどのように取り扱うものとお考えでしょうか。また、この報告書についての感想はいかがなものでしょうか。

舛添国務大臣 私も大学で国際政治というのを講じておりましたので、そういうときにこういう問題を常に議論してきて、大変貴重な意見だと思います。

 どうすればこの地球がだめになるかという観点から考えると、人口の大爆発というのがあります。それから、例えば核戦争ということもある。それから、先ほどエントロピーという言葉で申し上げましたけれども、資源の制約というのがある、食料とか石油。

 ただしかし、私は、にもかかわらず人類の英知を信じて楽観的でありたいということを思っておりますのは、例えば、歴史を眺めてみたときに、これまでの人口調整は戦争と疫病なんですね。戦争と疫病で、昔でいうとペストですね、これが人口調整。ただ、今の時代に、戦争をやりましょう、疫病をはやらせましょう、これは断じてそういうことをやってはいけない。だけれども、例えば食料を増産する食料工場のようなものもできますし、病との闘いというのは医学水準の向上ということがある。それから、やはり一定程度の人間の数があるということは、経済活動、イノベーション、こういうことで新しい生き方、生産の方法ということも考えられますので、そういうエントロピーに伴う限界に対して人類が闘ってきたのがこの歴史だというふうに思っております。

 この大きな四つの島から成る小さな日本の中でこれまでの人口を擁してきたというのは、それだけの努力があったからであるわけでありますので、長期的な視点で低炭素社会をつくる、そういうことについては十分聞く必要があるというふうに思いますが、やはり政策として実行するときには、私は、人類の英知を信じながら、我々も努力して新しいイノベーションをやっていく。そして、生き方の改革ということも、今まさにこの法律の趣旨でありますけれども、やらないといけない。

 私は、日本人は相当ぜいたくをしている。私も、戦後すぐは非常に貧しい生活をして、食べるものがないような生活をしていた。今や、これだけ不況だと言っておきながら、どれだけの食料が無駄に捨てられていますか。コンビニで期限切れの弁当がどれだけ捨てられるかというようなことを考えたときに、そういうことをしっかり、いわゆるもったいないという精神でやるだけでも相当資源の無駄が省けると思いますので、これは国民全体の努力を促すためのさまざまな学者の警鐘であるということで、謙虚に耳を傾けたいと思っております。

西本委員 ありがとうございました。

 かつて、ガリレオ・ガリレイが地動説を唱えたとき、その当時の人は彼を気違いだというふうにしたことがございます。私も、この教授の御意見は、何となく今の社会では余り受け入れられない御意見ではないかと思いますけれども、先ほど大臣がおっしゃったように、人類の英知、生き方の改革というものを我々国民もしっかりと見据えて、これから日本の国のために頑張っていかなければいけないということに共感を抱きました。ありがとうございます。

 次に、平成十九年の人口動態統計で昭和二十二年からの出生数の推移を見てみますと、我が国の出生数は、戦後、第一次ベビーブームと第二次ベビーブームの二つの山があったのですが、その後、順次下降線をたどり、平成十七年が最低の出生数で、平成十九年は少し増加したものの百八万九千八百十八人で、最高の出生数から百六十万人も減少し、合計特殊出生率も、人口を維持できる二・〇七に遠く及ばない一・三四となっています。

 この出生数の推移を見てみますと、第一次、第二次のベビーブームの流れからいって、本来ならば平成七年から平成十年ごろにかけて第三次ベビーブームが来なければならないと見るのが自然なのですが、際立った出生数とはなっていません。

 この第三次ベビーブームが来なかった要因はいろいろあるとしても、直接的なものは晩婚化と晩産化と思うのですが、そうすると、第三次ベビーブームをつくる予定だった人たち、つまり団塊ジュニアと呼ばれる人たちの年齢は今三十五歳前後になっていますので、この年齢層の方たちに出産を期待すれば、早期に実行できる方策を用意するべきと考えるのですが、御所見をお伺いいたします。

村木政府参考人 少子化に関しましては、先生御指摘のように、団塊ジュニアがもう三十代後半に入っている、本当に急がなければということが言われるわけでございます。

 この団塊ジュニア世代も含めて若い世代の人が、実際には結婚を希望し、出産を希望し、子育てをしたいというふうに望んでいるわけでございまして、これを何とか実現しなければいけない。さまざまに総合的な施策が要りますが、やはり柱は、働き方の改革、それから子育てを支援するサービスの拡充、この二つだろうというふうに思っております。

 本当に対策を急がなければならないということで、働き方の改革については、とりわけ今回の育児・介護休業法の改正をできるだけ早期に成立させていただいて、早く施行させていただきたいというふうに思っております。

 また、子育て支援のサービスの拡充については、昨年度それから今年度の補正予算で、安心こども基金の創設、拡充によって保育所をできるだけ即効性を持って拡充ができるような対策、それから自治体が創意工夫を凝らして地域で子育て支援を応援できる対策、それから妊婦健診の公費負担の拡充などの施策を補正予算の中に盛り込んだところでございます。

 こういった施策をしっかりと実施して、足元、特に団塊ジュニアの方々という大きな塊が何とか自分たちの希望を実現したいというお気持ちを持ってくださっているわけでございますので、そこにこたえていけるようにしたいと考えているところでございます。

西本委員 ありがとうございました。

 御答弁の中に、私がちょっと一つ懸念することがなかったもので、申し述べさせていただきます。

 これは、ある産婦人科の現場の先生からお聞きしたことですが、確かに共稼ぎ等があって晩産化、晩婚化しつつあるけれども、やはり女性の体というのは出産適齢というのがある、だから高齢化すればするほど女性はリスクを背負っての出産になるということをみんな余り認識していないのではないかというようなことをおっしゃっておりましたので、そういう点についてもこれから啓蒙していく必要がないかと思います。

 次の質問に移らせていただきます。

 政府は、一九八九年の一・五七ショックを契機として次々と少子化対策を打ち出してきました。エンゼルプラン、新エンゼルプランの後、子ども・子育て応援プラン、子どもと家族を応援する日本重点戦略、五つの安心プランであり、自治体と企業においても、次世代育成支援行動計画においてそれぞれ年次目標を定めて取り組んでいます。

 私は、結婚して子供を産むかどうかの個人的自由の問題は別として、子育て世代に対しては相当の政策メニューは出そろっているが、実行段階では効果が上がっていないのが実情ではないかと思っています。今後、それぞれの課題を主体ごとに進めることができたら、必ず成果は上がると信じています。

 ただ、新たなベビーブームというような大きな波になるには、学校、社会、家庭教育を巻き込んでの意識づけが必要かと思うのですが、それらの対策はどうあるべきか、舛添大臣の御意見をお伺いいたします。

舛添国務大臣 これは非常に難しい課題で、西本さんや我々のときはまさにベビーブームで、周りを見れば子供ばかりだったんですが、最近はやはり非常に減っている。おじいちゃん、おばあちゃんが一緒に住んでいないということも、子育てに対する不安というようなことがあるんですね、若い世代。ですから、ではそれをだれが補うかというと、やはり地域社会、地域のコミュニティーでの取り組みが非常に必要だというふうに思っています。我々も、そういうこともいろいろ、触れ合いの機会を設けるようなことはやっております。

 それから、学校においても今四十人学級とかいう話で、我々のときは六十人で、一学年十組なんというようなものがありました。そういうところでやってきたときとさま変わりなんですけれども、やはり子供の数が少なくなると、教育に対する投資が非常に大きくなります。そうすると、たくさんの子供を持つととてもじゃないけれども教育投資のお金が足りないというようなこともあるので、教育システム全体の見直しも必要なときに来ていると思いますから、これは文科省とも協力しながら、さまざまな点でいろいろな政策をやっていきたいと思っております。

西本委員 ありがとうございました。大臣の少子化問題に対する深い見識をお伺いし、また、核家族の問題、地域とのコミュニティー問題、まさに私はそのとおりだと思っておりますので、文科省とも協力して、この二つの点について大いに努力していただきたいことをお願い申し上げます。

 次に、少子化問題は女性だけが考える問題ではないということは社会全体がわかってきていて、そこにはこれまで男性としての問題がどこにあるのかということや男女共同参画という意識が欠けていたことなどは、徐々に改善されつつあると思っています。

 厚生労働省の女性雇用管理基本調査では、育児休業制度の規定がある事業所の割合は、平成十七年度で六一・六%。女性の育児休業の取得率は、平成十九年度で八九・七%まで伸びてきています。

 ところが、東京都が昨年九月に民間企業二千五百社、五千人を対象として実施した調査では、次のような結果が出ています。育児休業対象者のうち、実際に育休を取得した男性社員の割合は女性社員の九〇・九%に対して一・三%で、依然として低い水準であります。また、男性の育児参加については、積極的に参加した方がよいと考える割合が、男性社員で四四・四%と約半数近くであるのに企業側は二六・八%と、考え方に開きがあることがわかったのです。

 このことは、男性の考え方はだんだんに進んでいるのに行動となってあらわれていないことと、企業側の認識も進んでいないということであって、就労と子育てに関してはまだまだ時間を要するものかと心配していたところ、このたび提出されました一部改正法案は、仕事と子育ての両立支援などを進めるために、女性だけではなく男性も含めて子育てをしながら働き続けることができる雇用環境をつくり出す内容となっていまして、間違いなく少子化対策に資するものと考えています。

 特に、このたびの改正により、子供が育てられるという視点で、子供と過ごす時間を夫婦でどうかかわるかといったことを考えることができ、家庭で子育ての楽しみを味わうことができる環境ができるのではないかと期待しているのですが、改正により、現状では希望と現実の乖離が見られているワーク・ライフ・バランスにどのような影響を与えるとお考えでしょうか。

村木政府参考人 先生から今お話がありましたような、男性もワーク・ライフ・バランスをしっかりとって人生を楽しむというようなことも非常に大事なことでございます。

 今回の改正の中に、男性の育児休業の取得を応援するような施策が入っております。子供が生まれて割と早い時期に男性の方が子供を育てる喜びを感じていただけると、その後の家事、育児参加にもかなり大きな影響があるのかというふうに思っております。

 また、短時間勤務制度や所定外労働の免除制度が義務化をされます。このことによって、育児期の限られた方ではありますが、短い時間働く、あるいは所定時間でしっかりと帰っていくという働き方が企業の中で具体的に見えてくるわけでございますので、これは働き方をみんなで考え直す非常に大きなきっかけにもなるものというふうに考えております。

 さまざまな意味で、今回の改正は、男性も女性も、また企業にとっても、ワーク・ライフ・バランスの重要性をしっかり見直していただくための大きなきっかけになるものと考えているところでございます。

西本委員 ありがとうございました。

 このたびの改正で、子育て期においても充実した仕事で責任を果たしながら、家庭や地域社会が豊かに育てていくことの手助けができるものと私は大いに期待しております。

 続きまして、女性の継続就労についてお尋ねいたします。

 育児休業については、男性の問題を除いて一定の成果が上がっているのですが、妊娠、出産を理由に、育児休業をとる以前に退職してしまう問題が指摘されています。第一子出産前後の継続就業率は過去二十年間に大した変化はなく、出産前有職者のうち、出産後の継続就業率は三八%という調査の結果があります。

 男女雇用機会均等法によって働き続けられる職場環境が守られているのですが、実際には職場復帰を断念する女性は少なくないのでありまして、このうち、家事、育児に専念するため自発的にやめたケースが約半分で、仕事と子育ての両立が難しいという理由で退職する女性が約三割いるのですが、このような実態を踏まえ、働く女性の継続就業率の向上についてはどのような対策を考えているのか、お伺いします。

村木政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘のように、第一子の出産前後で継続就業している率が三八%というデータがございます。国として、ワーク・ライフ・バランスのための行動指針におきましても、女性の継続就業を五五%ぐらいまで十年後には上げたいという目標もつくったところでございます。

 もちろん、お子さんが生まれて御自分でおやめになる方もたくさんいらっしゃるわけでございますが、実際には、働き続けたかったけれども無理だったということでおやめになる方もたくさんいらっしゃいます。特に、これは体力がもたなさそうだというようなこととか、それから保育サービスや保育所の開所時間がどうも自分の働き方と合わなさそうだというような、さまざまな理由があって断念をしておられます。

 そういった意味で、これから大事なことは、一つには、女性が子育てをしながら働き続けようと思ったときに、それが実現できるような子育てもできる形の働き方、今回の法改正に盛り込んだ短時間勤務制度ですとか所定外労働をしないといった働き方を実現するということ。それから、女性にだけ負担がかかるのではなく男性も、父親も母親も両方で子育てができるということで、父親が育児に参加できる仕組み。それから、保育サービスがもう少し充実して、社会がそれをサポートする仕組み。こういった三つの方向から、全部について施策を充実していかないとなかなかこの就業率は上がっていかないというふうに思っております。

 今回の改正法、それから保育所を初めとするサービスの充実、こういったことをしっかりやって、何とかこの就業率を上げていきたいと考えているところでございます。

西本委員 ありがとうございます。

 このたびの当該法改正で、男女ともに子育てをしながら働き続けることができる雇用環境は相当整備されるものと信じております。しかし、これは働く者の側にとっての制度が充実するのですが、使用者側がどのように受けとめるかが私は心配です。

 事実、育児休業を取り巻く現状として、労働者からの相談件数を見てみますと、育児休業に係る不利益取り扱いに関する相談は、平成十六年からの五年間は毎年増加しており、平成二十年度については前年を大幅に上回っています。

 このような現状を考えると、法改正による新制度の休暇をとった場合、職場から取り残されたり人事などで不利益な扱いを受けることの心配から、制度はできても休暇の取得率が上がらないという結果になっては意味がないのですが、今回の法改正の実効性を確保するため、使用者側に対する働きかけはどのようにするのか、大臣にお尋ねいたします。

舛添国務大臣 この問題ですけれども、現行法において不利益取り扱いは禁止規定が置かれておりますし、都道府県の労働局長が助言、指導、勧告を行って厳正に対処して、法律違反があれば是正をするということであります。

 今回、改正によりまして義務化される短時間勤務制度、所定外労働の免除制度につきましては、法律に、育児休業と同様に、不利益取り扱いの禁止規定を置くこととしております。

 さらに、今回の改正案におきまして、都道府県の労働局長による指導の実効性を高めるために、まず、育児・介護休業法違反に対する勧告に従わない場合は企業名を公表する。それから、報告徴収に応じない場合や虚偽の報告を行った場合の罰則、これは過料なんですけれども、これに処する。それから、苦情処理、紛争解決の援助のために、労働局長による紛争解決の援助及び調停の仕組みなどを設けるということをしておりますので、法律が成立させていただければ、各労働局におきまして、集団指導、個別指導、あらゆる機会をとらえて改正内容の周知徹底を図りまして、就業規則の規定例などによって資料を提供し、また、相談へも的確に対応して、この法を遵守できるような体制を整えていきたいと思っております。

西本委員 ありがとうございます。積極的に関与していただくことを期待申し上げております。

 たくさん用意をしておったんですが、時間的に余裕がなくなりましたので途中割愛させていただきまして、次に育児休業給付の格差についてであります。

 育児休業給付については雇用保険からの給付ですが、農業、漁業などの家族従事者や短期雇用など、雇用保険の未加入者に対する支援措置はどのようになっているのか、お伺いいたします。

太田政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、雇用保険の育児休業給付でございますけれども、これは、育児休業の間の所得保障をしなければ、その職業生活を円滑にするために必要な休業の取得が困難となり失業に結びつきかねないために、雇用の継続を援助、促進することを目的として行うものでございます。

 労使の共助によります雇用保険制度の趣旨にかんがみますと、そもそも雇用されていない者あるいは被保険者でない者に対しまして雇用保険から支給することは困難であるというふうに考えているところでございます。

西本委員 ありがとうございました。

 妊娠中から出産を経て育児中のいろいろな支援制度は、会社などで働く雇用者に手厚く、農林漁業などの個人経営の専従者などには手薄くなっていると私は思います。御答弁にもありましたけれども、やはり支援制度では職業間の格差を感じるのですが、舛添大臣の御所見を重ねてお伺いいたします。

舛添国務大臣 労働関係の諸法を含めて、雇用されて働いている者を中心にやっておりますので、農業とか漁業、自営業をどうするか、これは社会全体、制度設計全体の大きな問題になるわけなので、自営業の方は雇用されている者と違うというのがまず第一点です。

 ですから、その場合に、先ほど局長から話がありましたように、雇用保険でさまざまなセーフティーネットを組んでいるんですけれども、雇用じゃないですからその手だてがありません。例えば、出産とか妊娠とか育児中の子育てとかいうことについて自営業者を支援するとすれば、どこから財源を持ってくるのか、みんなの税金でやるのかというような話になりますので、そういうことの支援策の具体策は、これは財源問題も含めてよく考えないといけないというように思っておりますので、次世代支援ということから見たときに自営業者の人たちをどう助けるか、これは審議会においても検討を進めておりますし、まさに、年金の話にしてもそうですけれども、国民年金と厚生年金があります、こういうことの一元化というような話も出てきている。こういう次世代支援についてどういう形で社会全体でやるかは今後の検討課題だというふうに思っております。

西本委員 ありがとうございました。

 先般、この質問のレクにお見えになった方の名刺の肩書を見ておりますと、厚生労働省雇用均等・児童家庭局職業家庭両立課、こんなすばらしい課が厚生労働省にあるんですよね。願わくは、この課にもっと予算配分をしっかりとしていただければ、少子化ももっと解消できたのではないかと私は思いました。

 今般の法改正により、子育てが女性だけの負担になる、やむなく退職したり、二人目の出産をあきらめることがなくなることを期待して、質問を終わります。ありがとうございました。

田村委員長 次に、古屋範子君。

古屋(範)委員 公明党の古屋範子でございます。

 先ほどのお二人の委員と若干重なる部分もございますけれども、確認をする意味で順次質問させていただきます。よろしくお願い申し上げます。

 現在、我が国は未曾有の経済危機の中にあります。こうした中で、企業も労働者も生き残るのに必死ということで、ワーク・ライフ・バランスどころではない、そのような声もございます。しかし、危機は同時に価値観を変えていく、そういうチャンスでもあると思います。今こそ、働き方や仕事のあり方を見直して、長時間労働を是正しつつ、企業や社会が活力を取り戻すための取り組みを進めることが肝要であるかと思います。

 ワーク・ライフ・バランスの実現は、労働者本人にとって、子育てしながら働き続けたいとか、あるいは、仕事だけではなく私生活も充実をさせたいといった希望をかなえるだけではなく、企業にとっても、労働者のモチベーション、また定着率を高めて生産性を向上させるといったプラスの効果があると思います。

 さらには、社会にとっても、これから減少していく労働力、とりわけ子育て期の女性の労働力を確保して社会を担う人々をふやすという面、また、出産、子育てと仕事の二者択一、こうした状況を解消する、少子化対策の面においてもプラスの効果が期待されるものでございます。

 かねてより私は、当委員会また別の委員会でも、少子化対策の取り組みの強化、また、仕事と生活の調和基本法の制定についても訴えてまいりました。育児・介護休業法の改正について、早急に行うよう当委員会において舛添大臣にお願いをしてまいりました。

 今般、育児・介護休業法の改正案が国会に提出をされまして、きょう審議されるに至ったことを大変喜んでおります。私といたしましても、今回の改正によって、子育てをしながら安心して働き続けられる社会を一日も早く実現をしたい、こう思っておりますので、よろしくお願い申し上げます。

 まず、仕事と家庭の両立についてでございます。

 育児休業の取得率は女性で約九割に達するということで、制度の定着が進んでおります。しかし一方で、女性が第一子出産を機に離職する割合は依然として約七割ということで高いわけであります。女性が子育てしながら働き続けられる環境はいまだ整っておりません。第二次ベビーブーム世代が三十代半ばを迎える現在、仕事と子育てが両立できるよう、働き方の見直しは喫緊の課題でございます。

 改めて、今回の育児・介護休業法の改正について、大臣の御見解をお伺いいたします。

舛添国務大臣 今冒頭に、古屋さんが価値観の転換が必要だということをおっしゃった。私もそのとおりだと思うので、職員に対して、特に村木局長初め女性職員も多うございますから、定時に帰りなさい、週末はしっかり休みなさいと。厚生労働省は、五時になったら、定時に帰りましょうというチャイム、アナウンスが鳴るんです。ただしかし、国会の事情もありますし、それから新型インフルエンザなんかはやると、もう休みも何もなくて一月近くやりましたから。

 だけれども、価値観の転換はわかってはいるんですが、制度の面から後押ししないと無理なんですね。だから、みんなが一斉に価値観の転換をすればいいけれども、やはり制度の面でのサポートが必要だということで今回の育児・介護休業法の改正ということがあるわけで、やはり環境整備がなきゃ。だから恐らく我が省でも、五時になって、うるさいな、アナウンス聞こえているなというぐらいで、みんなそのまま仕事をしている状況ですから、これは変えたいと思っています。

 そこで、改正案の中身は、短時間勤務制度、これは、出産したりしたら、子育てのときは午前中だけ働きたいということもありますから、こういうものを単独の措置義務にする。それから、所定外労働を免除する。お医者さん不足のときでも、出産が終わった女性医師が戻ってくる条件は、残業嫌だ、こういうことがあるわけですね。

 それから、パパもママも両方育児休業ができるパパ・ママ育休プラスということで、父親にも育児休暇をとってもらおうということであります。

 それから、介護のための短期の制度を入れた。ある程度やっていても、その後ちょっと親のぐあいが悪いというようなことで一日休みたいというときに有給休暇もとり切ったということがあるので、こういうこともやりたい。

 それから、やはり法律違反のときにはきちんと勧告して是正しよう、こういうことを盛り込んでおりますので、そういう制度をしっかりやって、価値観の転換をさらに促したいと思っております。

古屋(範)委員 ありがとうございました。

 厚生労働省のトップであられる大臣がそういう働き方の転換に関してお考えを持っていらっしゃることを非常に力強く思っております。これからまた、それに続く制度がきちんと整っていくよう推進をお願いしたい、このように思います。

 私は、ことしの二月なんですが、エトワール海渡という会社、短時間勤務など非常に先進的な取り組みをしているところに行ってまいりました。

 例えば、小さいお子さんを持っている従業員が朝の通勤ラッシュに子供を保育園に預けてこられるように、育児休業明けから三歳まで八時間の勤務時間に対して三時間短縮を可能としている短時間勤務制度が設けられておりまして、非常に多くの従業員が利用して、長く女性の方も働き続けていらっしゃいます。

 会社の側の意見としても、女性が働き続けられるということは、ここは特に女性のものを扱っているので、母親になって女性は商品に厳しい目を向けるようになるので、女性向けの商品を扱う会社としてはプラスだというお話でございました。

 また、社員の方も、保育園の設備や短時間勤務制度は非常に助かるということで、周りの社員の理解や助けがあっての制度なので、仕事も意欲的にやっている、引き継ぎもきちっとやる、そういう気持ちで多くのことを提案しながら効率的にやろうという意欲があるとおっしゃっていました。

 このように、保育所の送り迎えなどを行う労働者にとって、働きながら子育ての時間を確保できるという点で、この短時間勤務制度は大変重要であると考えます。

 今回の改正では、育児のための短時間勤務制度を義務化する、すべての労働者がそうした働き方を選べるようにすることが盛り込まれております。短時間勤務制度の現状、そして、改正により義務づけられる内容についてお伺いいたします。

村木政府参考人 お答え申し上げます。

 短時間勤務制度でございますが、まず、現行の法律におきましては、勤務時間短縮等の措置ということで、事業主が三歳に達するまでの子を養育する労働者に対して、短時間勤務、それからフレックスタイム、時差出勤、所定外労働の免除、事業所内託児施設の設置等のメニューの中のいずれか一つの措置を講ずるということを義務づけているわけでございます。

 こうした中で、労働者側のニーズを見ますと、特にお子さんが小さいときには短時間勤務を希望する方が多い、少し大きくなると残業のない働き方でもいいというふうに変化をしていくということで、とりわけ短時間勤務をしている方につきましては、仕事と生活時間のバランスについての満足度が非常に高くなっているということがございました。また、実際問題考えましても、育児休業明け、お父さんやお母さんが保育所への送り迎えをゆとりを持ってできる、また、実際に子育てを自分でできるという点で非常に重要だと思っております。

 一方、企業の取り組みはこれまでどうであったかということを見ますと、メニューの中から選択でどれかの措置を選ぶということでございますが、この中では、短時間勤務制度を選んでいる企業が三一・四%と、一番選択をされる割合が高いという現状にございます。

 ただ、この措置は、今の制度でございますと、企業の側がどの措置を自分の企業でやるかを選ぶということでございますので、労働者の側から見たときに、自分が選びたい制度が自分の企業にあるということには必ずしもならないということがあったわけでございます。

 こうしたことを勘案いたしまして、今回の改正法におきましては、労働者からの希望が高く、また意義の大きいこの短時間勤務制度を選択的措置義務ではなくて単独の措置義務、すなわちこの制度は必ず設けなければいけない制度というふうに定めることとしたところでございます。

    〔委員長退席、三ッ林委員長代理着席〕

古屋(範)委員 働く側にとってはさらに短時間勤務制度というものが使いやすくなる、また、子供の成長の度合いに合わせて柔軟な働き方が選べる可能性が出てきたということで、今回の改正案のポイントになるかというふうに思います。

 次に、男性の働き方の見直しについてお伺いしてまいります。

 子供を産み育てたいと思える社会にしていかなければいけないわけなんですが、やはり母親のパートナーである男性の育児参加は欠かせないと思います。公明党でも、もっと男性の育児休業をとりやすくするようにという観点から、かねてからマニフェストにもパパクオータ制の導入というものを掲げてまいりました。

 今回の改正の柱といたしまして、男性の育児休業の取得促進が掲げられており、その中に、父母ともに育児休業を取得した場合に育児休業をとれる期間を延長する、パパ・ママ育休プラスという内容が盛り込まれております。これらの改正の具体的内容について説明をお願いいたします。

村木政府参考人 お答え申し上げます。

 男性の育児参加は非常に大事な課題でございまして、育児休業は特にそのきっかけになる大事な制度というふうに考えております。法律面でもぜひ男性の育児休業取得を後押ししたいということで、今回のパパ・ママ育休プラスの制度の導入を図ったところでございます。

 具体的には、父母ともに育児休業を取得した場合に、育児休業取得可能期間を子が一歳までではなく子が一歳二カ月に達するまでに延長をすることができるという制度でございます。父母、お父さん、お母さんお一人ずつが取得できる休業期間についてはこれまでどおり一年間に限るということで、事業主の負担が余り大きくなることは抑えながら、お父さんが参加をすれば得になるという制度を盛り込んだところでございます。

古屋(範)委員 父親が育児休業をとる場合に、逆のケースももちろんあるんですが、こうした延長期間がとれるということ、これは社会にとっても、育児休暇をとろう、あるいはとった方が得である、とらなければいけない、こういう空気を醸成することにも非常に役立つのではないかというふうに思います。

 私の体験で恐縮でございますが、我が家の夫も企業戦士でございまして、今でも、自慢しているわけではないんですけれども、二年間で子供を三回おふろに入れたということで、年間一・五回ということで、もう少し父親が育児にかかわれたらいま少し状況は変わっていたかなというふうにも思うんですが、ともかく今の若い方々は育児をしたいというお気持ちは大変あるわけですので、こうした制度を一日も早く成立をさせていきたいと思っております。

 女性の育児休業については取得率が約九割になりまして、平成四年に育児休業が制度化をされて以来十五年がたって、ようやく制度が定着をし始めているように思われます。一方で、男性の育児休業を見ますと、取得率はわずかに一・五六%となっております。これは、男性が育児休業をとりたくないと思っている結果このような低い数字になっているのかというと、そうではない。データによれば、約三割の男性が育児休業を取得したいと答えていらっしゃいます。つまり、現在の一・五六という低い取得率は、育児休業をとりたいという男性の希望が十分にかなえられてはいない状況であるということをあらわしております。

 政府は、一昨年の十二月に策定をいたしました仕事と生活の調和推進のための行動指針において、男性の育児休業取得率の目標として、二〇一七年までに一〇%という数値目標を掲げております。現在、非常に遠いというのが現実であります。

 男性の育休取得を促進するために、改めて現行制度を日本の家庭、育休のニーズに合った見直しをすべきであると考え、これまで委員会質疑等で、妻が専業主婦や育児休業中の場合でも育児休業取得を可能にする、あるいはまた複数回に分割するなど機動的に育児休業を取得できるようにする、そして先ほども述べましたように、育児休業を父親が必ず何日か取得する父親割り当て制の導入を図るべきと訴えてもまいりました。今回の改正案におきましては、こうした主張が実現に向け大きく前進したものと評価をしております。

 一方、制度が変わっても、企業の意識が変わり、実態として企業が前向きに取り組まなければ、男性の育児休業取得もふえないと思います。企業の意識改革に向けた取り組みをあわせて行うことが大事であります。

 そこで、こうした目標を達成するために、今回の改正でパパ・ママ育休プラス等の制度を導入すると同時に、男性が育児休業を取得しやすい職場環境づくりや、社会全体として男性の育児参加を進める機運の醸成を早急に進めることが必要であると思います。

 大臣、今後どのように取り組まれていくのか、お考えをお伺いいたします。

舛添国務大臣 昨日も幼稚園児の息子をおふろに入れた私が説得力を高めながら申し上げたいと思いますけれども、やはり制度的な枠組みがないと大変だというふうに思います。

 私なんか、子供が小さいですから、特に、政治家の皆さん方と食事会というのをやりますね、でも大体八時半門限というか、帰り着けば、ぎりぎり子供をおふろに入れられる。そして、きのうは食器洗いをして、おふろの残り水で洗濯をやって、けさ、朝六時にちゃんとごみを出してきました。

 でも、妻も働いていますけれども、子育てはやはり妻の家事負担の方が圧倒的に大きいですよ。ですから、我々は国会議員ですから特別な職業ですけれども、いわゆるサラリーマンから見たときに、やはり制度が必要だというふうに思っております。圧倒的に子育てとか家事に対する男性の参加が少のうございますので。

 それで、職場でいろいろな支援をしないといけないので、特にワーク・ライフ・バランスということをもっと広めたいというふうに思っています。それで、人事とか労務担当者に対してのセミナーもやりたいということと、パパ・ママ育休プラス、これがあると非常に使いやすい。それから、出産後八週間以内の父親の育児休業を促進する。本当に猫の手も借りたいぐらいに赤ちゃんのときは要りますから、それも必要だと思います。

 それで、先ほどおっしゃったように、専業主婦なら夫はいなくていいだろうということではないんですね。専業主婦であったって、それは取得除外なんということをしないで労使協定をちゃんと結びましょうというようなことで、本当にこれは、日本の男が悪いとかだめだとかいうことのレベルを超えて、制度から攻めていかないとなかなか、おれだけきょう早く帰るのか、あんただけ残業しないのかと言われると、子供をふろに入れたくても入れられない事情はよくわかりますので、そういうことで、ぜひこういう施策をさらに進めたいと思っております。

古屋(範)委員 子育て真っ最中でいらっしゃる大臣に、実感を込めて今後の取り組みについてお答えいただきまして、ありがとうございます。

 次に、事業所規模別に女性の育児休業の取得率を見てみますと、五百人以上が八七・三%、百人から四百九十九人までが七九%、そして三十人から九十九人までが七六・九%、五人から二十九人までが五八・五%となっておりまして、育児休業の取得率は規模が小さいほど小さくなってしまうという結果が出ております。とりわけ、過去に育児休業の取得者がいないような中小零細企業においては、働く側も育児休業をとりたいと申し出ることがなかなか厳しい環境にあるのではないかと思います。

 事業所の規模にかかわらず、すべての労働者が育児休業をとって仕事を続けていく、そのためには、特にこうした中小零細企業に対して、育児休業をとりやすい環境を整備していくための支援が必要だと思いますが、この点に関してお伺いいたします。

村木政府参考人 中小零細企業への支援というのは非常に大事なことだと考えております。

 そういった意味で、中小企業が非常に使いやすい助成金制度として、育児休業取得者が初めて出た中小企業に対する助成制度を平成十八年から設けておりますが、これを二十年度補正予算で強化いたしまして、これまで育児休業取得者、最初の一人目それから二人目までを支給対象としていたものを五人目まで拡大する、また二人目以降の支給額も増額をするというようなことをしております。

 また、ベビーシッターのように大変お金がかかる保育サービスを利用した場合に、企業がその利用料の一定額を助成するというような企業もございます。そうした場合の助成金についても、中小企業に対して助成率、限度額の引き上げをしたところでございます。

 こうした助成金といった制度も使って、中小企業に対して、私どももできるだけ丁寧に、制度をつくるための相談、指導、そして実際の利用者が出ることの後押しをしていきたいというふうに思っております。特に、中小企業ですと規定の整備とかなれないことが多いということもありますし、それから、なかなか役所との距離も、日ごろおつき合いがないということもありますので、役所としてしっかりやることはもちろんでございますが、事業主団体とも連携をしてこうした施策をさらにしっかりやっていきたいと考えているところでございます。

古屋(範)委員 ぜひこうした中小企業へのきめ細やかな支援を推進していただきたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。

 最近マスコミなどで報道されておりますけれども、育児休業をとったら解雇されてしまったという相談事案が増加をいたしております。厚生労働省の調査によりますと、育児休業に係る不利益取り扱いで労働者からの相談件数は、平成十九年度、平成二十年度、両者を比較いたしますと、平成十九年度で八百八十二件に対しまして、平成二十年度千二百六十二件と、一・四倍に増加をいたしております。

 今回の改正では、短時間勤務や残業の免除など、子育てをしながら働き続ける上で大変有効な制度が盛り込まれておりますけれども、しかし、せっかくこうした制度が導入をされたとしても、それを使うことによって不利益な取り扱いを受けるといったことがまかり通るようでは、働く側としても安心して使うことができないわけであります。育児休業などの制度を利用したことを理由とする不利益な取り扱いは決して許してはならない、このように思います。その対策についてお伺いいたします。

 また、あわせて、今回の法案においてこうした不利益な取り扱いに対する対策が盛り込まれているのかどうかお伺いいたします。

村木政府参考人 お答え申し上げます。

 育児休業の取得を申し出た、あるいは取得をしたというようなことを理由にした解雇等の不利益取り扱いは、これはもう育児・介護休業法違反であって、あってはならないことでございます。これまでも、都道府県労働局長により、助言、指導、勧告をして厳正に対処をしてきたところでございますが、先生御指摘のとおり、相談も非常にふえているという状況でございます。

 そうした状況を踏まえて、三月に各都道府県労働局長に対しまして、こうした不利益取り扱いの事案への厳正な対応をしていただきたいということで通達を発出したところでございます。

 具体的には、まず労働者からの相談に丁寧に対応すること、それから、違反があった場合には迅速かつ厳正に対応すること、また、未然防止が大事でございますので、新たに非常に簡単なリーフレットを使いまして、企業へ、こういったことはやってはいけないこと、法違反であるということをお示しするリーフレットを配ること、それから相談窓口をぜひ皆さんに知っていただくということで周知を図ったところでございます。

 こうしたことに加えて、さらに、審議会でも、この育児・介護休業法があるということ、それから不利益取り扱いが禁止をされているということは現行の法律でもそうなんですが、そのことがきちんと担保をされるためにはこの担保措置の強化が大事ではないかということを言っていただきまして、いろいろ議論をしていただきました結果、一つには、育児・介護休業法違反に対する勧告に従わない場合には企業名が公表できるということ、それから、都道府県労働局からの報告徴収に応じない場合、あるいは虚偽の報告を行った場合の過料を創設すること、こういったことを盛り込んでいただきました。

 また、苦情処理や紛争解決の援助のために、都道府県労働局長による紛争解決の援助制度、それから調停制度も新たに創設をしていただくという内容を盛り込んだところでございます。

 こうした制度を使うことによりまして、法の実効性を高め、不利益取り扱いに対して迅速に対応することができると考えているところでございます。

    〔三ッ林委員長代理退席、委員長着席〕

古屋(範)委員 ただいま御説明がございましたけれども、法違反に対する勧告に従わない企業についてその企業名を公表するという、実効性確保のための新しい枠組みが設けられております。

 先ほど申し上げましたけれども、育児休業をとったら解雇された、こういったことは絶対に許すべきではないと思います。就職の内定取り消しに関しても同じようなことがございましたけれども、新たな実効確保措置も十分に活用して、法違反に対しては企業名公表を実際に発動して厳正に対応していただきたい、このように思いますけれども、重ねてもう一度お伺いいたします。

村木政府参考人 御指摘のとおり、育休をとったことによって解雇されるというようなことは本当にあってはならないことでございます。

 私ども行政指導の最終目的は、もちろんその方が職場に復帰できることでございます。そういう意味では、粘り強く指導するということは当然でございますが、やはり最終的な手段がないと、粘り強い指導もなかなか効果を、最終的に非常に悪質な事業主だと発揮をできないということもございます。今回、こういう公表制度ということを法案に盛り込んでいただきましたら、これを機動的に活用して、そういった事業主にしっかり対応していくことができるというふうに考えております。しっかりやっていきたいと考えております。

古屋(範)委員 こうした育児休業取得による解雇、これに対して厳正な対処をしっかりお願いいたしたいと思います。

 法律の実効性を高めるために、法律上の規定を設けるだけでなく、それが現場においてしっかりと運用されていくことが必要だと思います。先ほど、育児休業の取得を理由とする解雇の相談が最近ふえているという指摘もさせていただきましたけれども、こうした育児・介護休業法に関する相談、指導は都道府県労働局の雇用均等室で行われているわけであります。ほかにも、この雇用均等室では、妊娠、出産を理由とする不利益取り扱いの禁止、またセクシュアルハラスメントに関する相談といった男女雇用機会均等法に関する業務も行われております。

 この雇用均等室の職員の数というのは、小さい県では四人ぐらいしかいない。非常に小さな規模ではありますけれども、こうした法律の実効性の確保をきちんと行っていくためにも雇用均等室の体制強化が必要なのではないか、このように思いますけれども、いかがでしょうか。

村木政府参考人 大変ありがとうございます。

 雇用均等室は大変小さい組織でございますが、均等法それから育児・介護休業法、パート労働法などの所管をしておりまして、非常に大事な機能を担っていると私ども考えております。特に、こういう不況の時期、育児・介護休業にまつわるさまざまな不利益取り扱い、それから妊娠をしたことなどという均等法関係の案件など、非常にふえているところでございます。

 企業の方にしっかり法律を理解していただくための集団指導、労働者から相談があったときの実際の援助、企業に入っていっての指導、それから、日本の労働者の方はなかなか役所に訴えてくるというところのハードルが高いという現状もございますので、場合によってはそういうお訴えがなくても定期的に企業を回って、法律がきちんと守られているか、規定が整備をされているかというようなことを指導していくということで、さまざまな業務を果たしております。

 御指摘のとおり、大変小さい組織でやっております。これから、こういった分野はいずれも大事な分野でございますので、機能強化をするためには、私どももぜひ体制をしっかり整備していきたいというふうに考えております。人数の点、それから、これは企業に入り込んでいって実態をしっかり見ていくということで大変難しい面もございますので、職員の質の問題も含めてしっかり体制強化を図っていきたいと思っておりますので、御支援をお願いしたいところでございます。

古屋(範)委員 働く女性がふえ、こうしたいろいろな問題、悩みを抱えながら働いている。雇用均等室は、そうした女性たちを守るいわばとりでであると思います。さらに拡充を図るべきだと私自身も考えております。

 ところで、昨年十二月に地方分権改革推進委員会から出されました第二次勧告では、都道府県労働局を廃止してブロック機関である地方厚生局に統合するという案が出されております。都道府県労働局では、雇用均等室だけでなく、個別労働紛争の解決のためのあっせんなども行われておりまして、第一線機関としての役割が期待されるものでございます。

 そこで、安易にブロック化を進めるのではなくて、労働局のあり方についても国民サービスの維持の観点から十分慎重に検討する必要があるのではないか、このように考えますけれども、いかがでしょうか。

森山政府参考人 お答え申し上げます。

 都道府県労働局等の国の出先機関の統廃合につきましては、先生御案内のとおり、三月末に決定されました出先機関改革に係る工程表に基づいて検討することにしておりますけれども、この工程表におきましては、検討の際に、「社会経済・雇用失業情勢の急激な変化への迅速で機動的な対応や、国民に対する直接的な行政サービス水準の維持など、国の事務・権限の的確かつ確実な実施を確保する」ことというふうにされたところでございます。

 この都道府県労働局は、これも先生御指摘のとおり、男女雇用機会均等法等に基づく相談、指導、あるいは個別労使紛争の調整、労働者派遣事業の指導監督等、国民に直接サービスを提供する第一線機関としての機能等を担っているところでございます。

 今後、改革大綱の年内策定に向けまして引き続き議論を行っていくことになりますけれども、こうした都道府県労働局が担っている機能を踏まえまして、利用者の利便性や労働者保護の実効性、また機動的かつ効率的な行政運営を損なわないよう十分に検討してまいりたいというふうに思っているところでございます。

古屋(範)委員 この雇用均等室を初め、働く側にとって必要なものはやはりしっかりと整備をしていかなければいけない、強化をしていかなければいけないと思います。そうした観点でも、私もしっかり支援をしてまいりたい、このように思います。

 最後の質問になりますけれども、子育てをしながら働き続けることができる環境づくり、これまで質問をしてまいりました働き方の見直しとあわせて必要なのが、安心して子供を預けられるよう保育サービスを充実させていくということが大事でございます。

 今回の補正予算で、保育所の賃貸料補助の対象拡大などの措置が盛り込まれております。こうしたものも含めて、今後の保育サービスの充実に向けた取り組みについてお伺いいたします。

村木政府参考人 次世代支援のためには、働き方の見直しとともに、保育サービスの充実は非常に大事だというふうに思っております。

 先生が今触れていただきましたように、新待機児童ゼロ作戦を加速化するということで、補正予算でも、都道府県に安心こども基金を創設して、一般的な保育所の整備はもとよりでございますが、賃貸で保育所を整備するといったような柔軟な方法も取り入れて、できるだけ早期に保育所が整備をされるようにということで一生懸命今努めているところでございます。

 また、これから将来に向けても、働く女性がふえれば保育のニーズというのは非常にふえていくわけでございます。今相当大きな潜在的なニーズがあると私ども考えておりまして、それにこたえていくためには、しっかりした財源確保をしながら、安心して預けられる、質の確保がされた保育をしっかり整備していく、きちんとした仕組みをつくることが大事だろうということで、今、審議会の方でも議論をいただいておりますので、足元で基金を使った緊急の整備と、それから将来に向けては、しっかり財源も確保した上で、質の確保された保育サービスがしっかりと供給される仕組みをつくっていきたいと考えているところでございます。

古屋(範)委員 保育環境が整えば働きたい、自分の能力を発揮していきたい、そういう女性は非常に多いと思います。この安心こども基金の活用とともに、将来に向けての保育サービスの整備というものは非常に重要になってくるかと思います。

 今、日本は人口が減少している、重ねて経済危機であるというかつてない困難な状況にあるわけでございますけれども、国民の将来の不安も大きい。一刻も早い経済の立て直しが求められております。しかし、経済だけではなくて、この子育て支援というものを怠っていけば日本の将来はさらに危うくなる、このように思います。

 国民の安心感をはぐくみながら、将来の日本を見据えた必要な施策、今回の改正案を一刻も早く成立させ、仕事と生活の調和、両立、この実現に向けて着実に進めてまいりたい、このように思いますので、よろしくお願いいたします。

 以上でございます。

田村委員長 次に、郡和子君。

郡委員 民主党の郡和子です。

 きょうは一時間という時間をいただきました。まず冒頭、先輩、同僚議員の配慮に対して感謝を申し上げたいと思います。

 昨年の秋の金融危機以降、経済が非常に厳しい状況になって、それがすぐに雇用状況、失業状況にも反映されるという形になっております。内定切り、派遣切りに代表されておりますけれども、ここに来て育休切りという実態が次々と明らかになってきているところです。私どもは、この育休切りに対しても、今回、せっかく改正法が提出されている中で、しっかりと対応していくということが政治のメッセージとして大きなものであろう、そういうふうに思っているところです。きょうは、そういう観点から御質問をさせていただきたいと考えております。

 妊娠や出産を理由として解雇あるいは退職を強要される、あるいはまた通勤が不可能であるところに配置転換をされる、あるいは身分の変更を迫られる、こういったケースが次々と出ているところです。子育て応援といいながら、こういう育休切りということに対応できなければ、まるで絵にかいたもちにしかならないと思っています。実効性のある対応を今まさに求められているのだと思っております。

 では、冒頭の質問ですけれども、政府の見解をお尋ねしたいと思います。

 病気のために医師の診断書をもって三カ月の休暇をとっていたとするAさん。復帰に問題はないという診断書をもって上司に職場復帰を求めたところ、その上司から、残念ながら君の机はもうないんだ、退職してくれというふうに言われた。どうしても戻ってきたいというのであれば、給料が半分になる契約社員でどうかというふうに言われた。これに合意ができないというケースがあったといたします。

 これは、労働契約法第八条、労働者及び使用者はその合意によって労働契約の内容である労働条件を変更することができるとしておりますので、このケースの場合はこの条項が適用されない状況であって、この変更は無効になる可能性が極めて高いというふうに考えていますけれども、舛添大臣も同じような認識でいらっしゃいましょうか。

舛添国務大臣 これは、今郡さんがおっしゃったように、原則として労働者の合意がないといけません。ですから、一般的に言えば、労働契約法に定められた方法によって行われていないということであります。

 そこから先、具体的にどうするかになると、個々のケースについて、これは裁判所の判断ということになりますが、一般的にはこれは労働契約法第八条に背反しているということだと思います。

郡委員 大臣の認識も同じ認識であるということを確認させていただきました。

 次に、育児休業法についてお尋ねをしたいと思います。

 育休法の第五条で定める育児休業の申し出というのは、それによって一定期間、労働者の労務提供義務を消滅させる効果のある意思表示だというふうに考えています。したがって、育児休業中というのは、労務提供はしなくていいけれども雇用契約というのは引き続き維持されている状態だ、労働契約は維持されている状態だというふうに思うわけです。

 そこで、きょうは資料配付をさせていただいていると思いますけれども、契約社員として働いていたBさんのケース。これが、私どものきょうお配りいたしました資料の一ページから三ページまで、資料一というものです。

 この方は、二〇〇八年の八月一日に出産をされ、社内様式の書類に従って所定の申し出を行って、二〇〇八年九月二十六日から翌二〇〇九年の四月二十日までの取得予定で育児休業を取得したところ、育児休業取得三日目に、十一月九日をもって契約を打ち切るとの通知が届きました。この通知に同意できなかったBさんは、最寄りの均等室に指導を求めたそうでございます。これを受けて、均等室が書面ではないものの会社に対して指導を行ったということでありますが、会社はこれを聞き入れなかった。残念ながら、このBさんは職場復帰がかなわず、二〇〇九年の三月二十日に会社と金銭的な和解をせざるを得ませんでした。

 そこでお尋ねするわけですけれども、育児休業中という労働契約が維持されている状態の中で一方的に契約を打ち切るというのは、今し方確認をさせていただきました労働契約法の八条、これによる合意というのがなされていない、これは適用されないということになりますし、こういった一方的な変更は無効というふうに考えてしかるべきだと思っています。また、育休中の契約の打ち切り、解雇というのは、それが権利濫用に該当するのか否かについて、同じく労働契約法の第十六条、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」これが該当するか否か検討されることになると思うわけですけれども、大臣の認識はいかがでしょうか。

舛添国務大臣 これは二つの法律の趣旨に反しています。一つは、育児・介護休業法第十条がありまして、労働者が育児休業をしたことを理由とした解雇等の不利益取り扱いが禁止されています。まずこれが一つ。

 育児休業を理由としない場合でも、つまりその他のケースでも、労働契約法の十六条は、客観的に合理的な理由を欠く場合は解雇権の濫用ということで解雇無効となりますので、この二つの法律から見て、これは今言ったような問題があるというふうに思っております。

郡委員 私もそのとおりだと思います。しかしながら、提出させていただきましたこのBさんのケースですけれども、均等室が指導してもそれがかなわず、結局のところ和解金で退職を余儀なくされたわけでございます。

 私ども民主党は、ほかの野党とともに、今回修正案、きょうも冒頭趣旨説明をさせていただきました。育児休業切り対策の一環として、労働者が育児休業を取得する際に、育児休業の期間それから休業中の給与、また復帰条件などを会社と書面で確認しておけば、こういった個別労働紛争を未然に防ぐことができるというふうに考えて、現在努力義務規定となっておりますこの書面の提示につきまして、育休法の第二十一条二項ですけれども、これを義務規定にさせていただく修正案を提案させていただいたわけでございます。

 この二十一条二項ですけれども、事業主が、育児休業を申し出た個々の労働者に対して、労働者の育児休業及び介護休業中における待遇に関する事項、それから育児休業及び介護休業後における賃金、配置その他の労働条件に関する事項、施行規則の第三十二条に定める事項、これらを書面で明示することについて、努力義務を課しているわけでございます。この書面のひな形というのも、既にほかの書面様式同様、厚生労働省のホームページにはひな形としてしっかりと掲載をされております。

 ですけれども、これが努力義務規定になっているということで、書面での明示というのはあくまでも、していた方がいいですよというお勧めでしかありません。実際、この書面で明示している企業はどれぐらいあるんですかということを私どもの部会の中でも尋ねさせていただきましたけれども、厚生労働省は、把握していないというようにお答えになっていらっしゃいました。

 なぜ書面で確認をしておくことが大切なのかということです。これはもう言わずもがなだと思います。一番トラブルが起きやすいのが、育児休業に入ってそしてまた復帰をする、復帰する直前に起こってくる場面なんだろうというふうに思いますけれども、育児休業に入るときに、事業主と、育児休業期間がこれだけですよ、この期間です、そしてまた復帰するときにはこの職場でこの状況で戻るんですよということをあらかじめ書面で確認をしておけば、その後、言った言わないといったような水かけ論にもならないわけですし、何よりも、復帰がスムーズにいかなかった場合のさまざまなケースで、この書面が論拠となるわけです、証拠となるわけです。こういうものをしっかりととっておくことこそが、安易な育休切りというのを防ぐ手だてになる、そういうふうに思っています。

 妊娠や出産というのは極めて個人的なことです。しかも、休みをとる労働者というのは、同僚の皆さんたちに迷惑をかけるけれども、申しわけないけれどもお願いしますね、そういう気持ちで休みに入っているわけです。その気持ちにつけ込んで、事業主あるいは上司が、君、子供の手のかかるうちは家庭に入っていた方がいいんじゃないか、こういうふうに言うのが育休切りのそれこそ常套句ですよ。こういうことはあってはならない。それを防ぐためにも、この書面を提示するということがやはり義務的なことにならなければいけない、そういうふうに思っています。

 しかも、この二十一条第二項が義務規定となれば、書面を交わしたか否か、あるいは書面に書かれている内容がなぜ守られなかったのかといったような事実関係というのが、育児休業法五十六条が定める大臣による助言、指導もしくは勧告の根拠となるわけでございます。

 子供を抱えて労働審判、裁判に訴えるというのは、精神的にも、そしてまた物理的にも大変大きな負荷がかかるわけです。行政による指導範囲を広げるということは、育休切りを未然に防止する上で大変重要な意味を持つというふうに考えております。これには、新たな予算措置というのでしょうか、経費もかからないわけです。すぐできることだというふうに思っています。

 この点について、私どもの党所属の議員が委員会で既に取り上げております。きょうは、私どもの資料の二ということで、新聞記事を取り上げさせていただきました。四月八日の日経新聞の夕刊、四月一日の朝日新聞の記事です。これは、「育休復帰 一部に逆風」「退職勧奨/周囲に気兼ね」「両立支援へ社会も変化を」ということでの記事、また、「育休前に書面確認を」というふうに見出しに書いておりますけれども、ここで均等室長のコメントが出されているわけですね。「育休を申し出るときに、期間や休む間の給与、復帰条件などを会社と書面で確認しておくことをすすめる。」というふうにおっしゃった。日経の記事でも朝日の記事でも同じようなコメントをされているわけです。これをぜひ今回の改正案に盛り込むことがやはり重要なことであろうというふうに私は思っています。

 二十一条二項について義務化すること、これは大臣も、均等室長がお話しになっているように、勧めるというふうなお話ですけれども、同じように義務化すべきだとお考えのことと思いますが、いかがでしょうか。

舛添国務大臣 その問いに答える前に、先ほどの神奈川の例でしたか、郡さんの最初の三枚目の資料を見ていてちょっと感じたのは、各労働局がどういう指導をしているのかということもちょっとよく見てみないといけないので、個別の件についてはコメントは差し控えますけれども、労働局における指導の状況、この三枚目の紙なんかを見るとどうかなというようなこともあるので、それも一つ課題とさせていただくということを申し上げた上で、今の問題なんですけれども、これは、おっしゃることはよくわかるんですが、全く逆の面から別のポイントを申し上げますと、一年間休みます、そうすると、職場復帰した一年後に、一年前に、こういう条件、こういう条件、こういう形で働きたいというのを書いたことと、自分自身が状況が変わっている場合がありますね。体のぐあい含めて、それから、一年あればいろいろなことが起こりますから、自分の家庭の状況、夫の状況とかいうことも含めて。そうすると、逆に、書面で細かく決めていることが、フレキシビリティーというか、柔軟性を失って、かえって問題が起こる可能性をどう排除するかというのが一つの問題だと思います。

 ですから、今、育休切りということが問題になっているんですが、逆に言うと、非常に悪らつな経営者がいて、あなた、一年前にこんなことを書いているじゃないのというようなことを含めて、こういう場合のことをどう考えるか。つまり、できるだけ紛争を起こさない、必要な場合には調停をするのはいいんですけれども、そういう観点から見て、逆に、今のようなケースの場合の解決策をどうするか、これは知恵を働かせないといけないと思います。それは、どこまで細かく決めるかということも含めて。

 ですから、柔軟性、つまり、一年ないしそれ以上の時間の先のことについての不確実性に対して、働いている者から見たときの不利益、不利益というのは、働いた者の状況が変わったことに対して生じる不利益について、一年前に決めていることが逆に足を縛っちゃいけないという問題もあるということを御指摘申し上げて、これはよく知恵を働かせて検討しないといけないと思っております。

 もちろん、郡さんのおっしゃることはよくわかった上での話です。

郡委員 今の御答弁は、それであるならば、そもそも努力義務規定も置く必要がないんですよ。書面で確認しておく必要なんてないんですよ。

 今大臣がおっしゃられたのは、働く側が、それはいろいろな状況も出てくるかもしれませんけれども、原則はこういうことなんですよ、労働契約はこういうふうに続いていて、戻るときも、原職復帰が原則なんですよ、それこそ。そこで違ってくる状況があれば、それは個別労使間で、事業主と個人が話し合いをして、合意に基づく変更であれば、それはいいんですよ。そうではありませんか。それを、ということがあるかもしれないから初めにそれをとっておくのはいかがなものかという答弁は、甚だ私は納得のいかないお話だというふうに思っております。

 そして、しかも、例えば大変悪質な事業主がいて、既にこれが育休法違反であり、しかも労働契約法にも違反するということを知り得ながらこういうことをやってくるというふうなことがあったとしても、今回、これを努力義務から義務規定に上げることで足かせになるんですよ。さらに、こういうことをやっちゃいけないんだということの足かせになっていくし、また、万が一、育休法に違反することも御存じない事業主がいるとすれば、これは育休法にも違反します、労働契約法にも抵触するおそれがありますということを周知徹底することになるんですよ。それなのに、今大臣が御答弁になったのは、あたかも働く人の立場を考えたような御答弁でしたけれども、それは全く事実と異なっておりますし、働く人たちの立場に立っていないということを申し上げたいと思います。

 しかも、会社は労働局に対して申し入れ書をもって出しているわけですよ、雇用保険の関係もありますから。育休をとる人が出ました、これこれこういう状況ですというのを書面で出しているわけですね。これに、例えば、育休の期間がどれぐらいである、そしてまた雇用条件についてはこうなっているということを書き加えたもの、これでいいわけですよ。これを、働いている人たち、労働者と取り交わして、しっかり持っておいてもらうことにすれば、これはまた絶対違ってくる、力を持ってくると思うんです。ぜひそういうことをお考えいただきたいと思います。

 今、私も百歩譲って、申し入れ書を出しているのだから、それに書き加えてもいいだろうということを申し上げましたけれども、ぜひ書面での確認というのが重要なことであると思っておりますけれども、大臣、いかがですか。

舛添国務大臣 だから、郡さんのポイントをわかった上でというのを先ほど申し上げたのです。経営状況が大きく変わったり個人の状況が大きく変わったときに一定の柔軟性を担保するシステムをどうするかということを私は申し上げたのでありますから、それはよく議論をして決めていけばいいと思っております。

郡委員 それではお尋ねいたしますけれども、この二十一条二項、努力義務ですけれども、なぜこれを設けたのですか。

舛添国務大臣 努力義務でありましたら、それぞれの会社の状況において取り扱いの通知書を作成したり、ある程度そこに、まさに内容についてのフレキシビリティーがあるわけなんで、義務規定としたときに、では法律化します、では義務規定でどういうフォーマットにしますかということを、義務規定になれば省令や何かできちんと定めないといけなくなります。そうすると、そこまでリジッドにきちっと定めることがいいのかどうなのか。だから、努力義務にしているというのは、それは大まかなところは、育休切りなんということはあっちゃいけないことですから、そのためにやるわけですけれども、それぞれの会社の状況とか個人の状況があるから柔軟性の担保のために言っているので、現実に義務規定にしたときには、それを実効性のある省令にしないといけない。

 私は、だから、では大臣、省令書きなさいといったときに、皆さんのお知恵も拝借しますけれども、どこまで細かく、私が産休が終わったときに、この職場の中のこのポジションにいて、それから働き方はフルタイムでどうじゃないといけないと。しかし、現実を見たときに、会社の経営状況もあるでしょう、それから、個人も、やはり家庭の事情で短時間労働にしないといけないというようなこともあるので、そこを、フレキシビリティー、柔軟性をどう保つかという工夫はしないといけないのでありますから、そういうことのポイントを申し上げているので、大きな方向は間違ってはいません。郡委員と大きな方向は同じなんですけれども、より実効性あらしめて、それから、あえて言えばこういう点はどうしますかということを申し上げているので、それは、お互いの意見をすり合わせて一番いい解決策を、この厚生労働委員会の場でいい案をつくるということが重要だと思っております。

郡委員 二つ指摘をさせていただきますけれども、四月の十四日に参議院で私どもの小林議員が質問したことに対して、今後、こういうことを努力義務と書いてあるわけですから、きちんとやってくださいというのは、指導はしますけれども、今の委員の御提案を受けて、どういう形で、例えば法律改正まで持っていったらいいかどうか、ちょっと検討させていただきたいと思いますというふうに御答弁なさっている。これは、今の御答弁とも矛盾することではないかと私は聞きました。しかも、これは四月十四日のことです。それから二カ月。では、その間検討されて、大臣の今のような御答弁になられたのでしょうか。

 それともう一つ、ここにある新聞の記事になっている均等室長が、休む期間や休む間の給与、復帰条件などを会社と書面で確認しておくことをお勧めする、育休切りが横行している中で、これをさせないためにはこういうことがいいですよ、こういうふうにすべきですねというふうにおっしゃっている。これはどういうふうに考えたらいいんですか。

舛添国務大臣 ですから、小林参議院議員にお話ししたように、いろいろな点を義務化することも含めてよく検討しましょうと。検討して、現場の企業がどういう状況であるか、こういうことも見ていく。

 それで、先ほども申し上げたように、一年前から細かい点まで決められるかということと、義務化というのは一律に義務化するわけですから、午前中どなたかが、古屋さんがおっしゃったのかな、新井さんだっけ、要するに片一方で企業の状況も考えないといけませんよということをおっしゃったと思いますけれども、そのときに、ある意味で今までなかったことをやるわけです。そうすると、どういうフォーマットでこれをやりますかということを含めて、実効的に企業にそれをさせることができるか。

 だから、まず努力義務ということで始めていって、育休法十条それから労働契約法十六条、こういう内容もさらに周知徹底させていって、そういうことの上にやった方がよかろうと。それで先ほど言ったような問題点もありますよということを申し上げておるわけで、これは、まさにそのためにこの委員会を開いてみんなで議論しているわけですから、よく議論をして、どういう形での解決策がいいのか。

 ただ、一つのやり方がすべて一〇〇%正しいということではなくて、そのやり方にはこういう問題点がありますよ、しかし、その問題点の指摘にはまたこういう欠陥がありますよというようなことは、それはまさに国権の最高機関である国会で、与野党を通じてしっかり我々で議論をして決めていくということでいいんだろうと思いますから、虚心坦懐に郡委員の御意見をお伺いして、さらに企業の実態、そういうものも含めて検討した上で、最終的にはこの委員会の場でいい案を得ればというふうに思っております。

郡委員 企業の業績も変わることもあり得るでしょう。それから、労働者の状況が変わることもあり得るでしょう。しかし、それはその時々にお話し合いを持って、こういうふうに変更していきましょう、それが合意が得られればそれでいいんですよ。

 だけれども、休みに入る前に、私の休みはいつまでなのか、しっかりと確認をしたとは言ってくれないとか、もう休みに入ったら戻ってこないものだと思ったとか、まだ続ける気だったのかとか、そういうふうなことを言った言わない、そういうことをなくしていくためにも、やはりこういうふうに書面であらかじめ確認をとっておく。どうしても変更が必要になった場合は、事業主、上司とその労働者間で話し合って合意を得られるように努力をするということが重要なんじゃないでしょうか。

 それをせずして、これはどうなるかわからないからやはり義務規定にするのはいかがなものかというふうなことをおっしゃっている。努力義務に置いておくことも、それでは何のために置いているのか。ただ書きましたというだけにしかすぎないような、そんなふうに聞こえて仕方がありません。

 政府案に新たに、均等法と同様に苦情や紛争の解決の仕組みを設けておられるわけですけれども、これはまさに法違反の対象を広げるということにはなっておりませんで、育休切りの防止策にはなっていないと私は思っています。不十分だというふうに考えています。

 この点は、労使が参加した審議会においても議論がされていなかったというふうに聞いております。厳しい雇用失業情勢にある今こそ、国会がアンテナを高く立てて、感受性をどういうふうに持っているのかというのが問われているんだと思います。政治のメッセージとして、それこそ派遣切りを許さない、内定切りを許さない、そしてまた育休切りも許さないという姿勢を示すことが重要なんだろうと思います。

 日本の女性の雇用形態がM字形になっていて、各国に類を見ない、どんと下がったところをどういうふうに上げていくのかということも重要な課題です。そういう中で、育休切りに遭って泣き寝入りをされている女性たちが多くいらっしゃる。きょう、傍聴席には女性の方々が多くおいでですけれども、働く場において、弱い立場から切られていってしまう。例えば障害を持っている方、例えば病気の方、そして例えば子供を持っている女性、こういったところから切っていかれる。こういうことを許さないという国会の姿勢をしっかり示すことが重要だというふうに思っております。

 大臣、重ねていかがでしょうか。

舛添国務大臣 その点は全く異存はありません。そういう方向で改正をお願いしているわけです。

 ただ、さっきの西村智奈美さんがお読みになった、私は熱心にこれを一言一句聞いていたわけですけれども、そこに「労働政策審議会雇用均等分科会では「育休切り」あるいは、介護休業を理由とした解雇や不利益取扱い等の防止策について議論されていなかったのですから、」と断言調で書いてありますけれども、育休切りという言葉は最近生まれたんです。育休切りという言葉はないけれども、こういうことはきちんと議論されておりますから、そのことは申し上げておきたいと思います。

郡委員 私たちが初めて求めをいたしまして、各地域の均等室がこれまでどういう相談を受け付けてきたのか、そしてその内容はどういうものであったのか、結果はどうであったのかという詳細を出していただくようにお願いいたしまして、出していただきました。そうしましたら、御相談に来られた当人が、残念ながら自分はもう退職せざるを得なかった、指導を受けた会社も、今後はこういうことをしないようにいたしますという回答で、多くの皆さんたち、当事者の救済にはなっていないのです。

 先ほど大臣も均等室の対応のあり方について、私の出した資料の中で少しコメントがございました。この後これも議論をさせていただきますけれども、こういうことを未然に防止するためには、やはり書面で、実際にどういうふうな休業期間であり、休業期間中の待遇はどうであるのか、職場復帰したときはどうであるのか、こういうことの確認をしっかりとっておくこと、これを義務化すべきだというふうに重ねて私は申し上げたい。そして、大臣にもぜひそれを御判断いただきたい、そういうふうに思います。

 今申し上げました均等室の対応についてですけれども、苦情の受け付けですとか紛争解決の仕組み以前に取り組むべきことも数々あるんだろうというふうに思っています。

 平成二十年一月二十三日に厚生労働省の労働基準局長から「労働契約法の施行について」という通達が出されております。この通達というのは、各都道府県の労働局長あてのものなんですけれども、その本文におきまして、「その趣旨及び内容について周知に遺漏なきを期されたい。」というふうにありまして、当然、労働局均等室においてもこれらが周知されているものと考えておりますけれども、いかがでしょうか。

金子政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員の方から御指摘のございました通達でございますが、労働契約法の施行に先立ちまして発出させていただいたものでございます。御指摘のように、各都道府県の労働局長に対しましてその周知徹底を指示したものでございます。

 具体的には、労働局の中で労働基準部、ここが労働契約法の所管ということでは中心になるところでございます。それと労働基準監督署、こうしたところにおきまして、リーフレット等を活用して、法の趣旨でございますとか内容につきまして周知を行っているところでございます。また、あわせまして、働いている方々からいろいろ御相談にあずかる総合労働相談コーナーがございます。こちらにおきましても、相談者の方に対しまして、法の趣旨、内容を説明し、理解の促進に努めているところでございます。

 労働契約法は、今もいろいろ御議論がございましたけれども、いわば働く方の極めて基本的なルールを決めたものでございます。そういった意味で、労働局組織挙げてその普及、周知に努めるというのは当然でございます。労働基準部が中心になりながらも、雇用均等室におきましても、契約法のリーフレットを配置していただくとか、あるいは均等室が主催するセミナーなどにおきまして労働契約法の説明を行っている、こういう状況にあるというふうに承知をしております。

郡委員 はっきり答えていただいていないのですけれども、均等室においてもこれらの労働契約法についてしっかりと周知されているのですか、いないのですか。

村木政府参考人 お答え申し上げます。

 均等室に御相談があった場合、基本的には、特に育児・介護休業法ですとか均等法ですとか、こういった法律に違反をしている場合は、まずそのことの御説明を通常申し上げます。しかしながら、解決の手段にはさまざまなものがあるわけでございますので、労働契約法についても基本的な知識、内容を御説明するということは均等室でもいたしているところでございます。

郡委員 今お答えいただきましたけれども、私が私の事務所で事前にお話を伺いましたときには、雇用均等・児童家庭局それから労働基準局の方々がいらっしゃって、この件についてお話を伺いましたらば、均等室の所管法以外、所管しているのは均等法とパート労働法とそしてまた育休法、介護休業法である、それ以外の情報提供というのは、不十分な知識で誤った情報提供となってしまわないように、労働局企画室やハローワークの総合労働相談コーナーなどの担当部署につなぐということでありました。

 私は、それでは、相談を受けても、あちらです、こちらですと、通り過ぎていくのをただ見守るだけなんですかというふうに重ねて聞きました。縦割りというふうに言われるかもしれないけれども、やはり専門の部署が行った方が間違いがない、こういう説明だったんですよ。つまり、こうした縦割りの対応では、育休切りが横行している中で、均等室は全く適切に対応できないということをあらかじめ当事者の皆さんたちがおっしゃっている。

 今、局長、手を挙げていらっしゃいましたけれども、こういうような対応では、先ほどあった、神奈川の均等室ですけれども、間違った対応でやってしまうんですよ。均等室は何のためにあるのですか。私は大変残念でなりません。

 均等室でも、所管外のこういった労働法すべてをしっかりと把握した上で、民事裁判になった事例などもしっかり提供して、相談に来られた方々に、親身にその方に寄り添って対応すべきところだと思っているのですが、そういった御答弁でございました。

 私は、均等室に対して大変失望しております。まさに、自分のところでやっているのは、育休法ではこういうことになっている、パート労働法ではこういうことになっている、均等法ではこういうことになっている、しかし、ほかのことについては不十分なことで答えられないのでほかに行ってくれ、あるいは、それ以上聞かなければ、そういった不十分なままで会社を指導することになる。これではもはや意味をなしていないというふうに思っています。

 私はこのことについて大変怒りを持っているわけで、次からの質問については、これは労働契約法と深くかかわっている、つまり、育休切りの問題も根本というのは労働契約法の問題であると私は思っておりますので、均等局長からの御答弁はもう結構ですので、基準局長からの御答弁にお願いをさせていただきたいというふうに思います。

 では、基準局長の御所見で、均等室というのは今私がお話を申し上げました自分の所掌する法律の範囲だけということになるのでしょうか、どうなのでしょうか。

金子政府参考人 あらかじめ質問通告をいただいていなかったので、少し雑駁な答弁になることをお許しいただきたいと思いますが、御質問でございますので、お答え申し上げたいと思います。

 私ども労働基準局が所管をしておりますのは、例えば労働基準法、労働契約法もそうなんですけれども、これは職業安定行政も雇用均等行政も含めて、ほとんどの労働者に共通して適用になる基本的なルールを所管しているというふうに理解をしております。

 したがいまして、雇用均等行政だけではなくて、職業安定行政におきましても、あるいは能力開発行政におきましても、基本的なルールを定めているものでございますので、私どもは、そういった意味で、幅広く全体を覆うような形で啓発指導でありますとか周知といったようなことをやっているわけでございます。

 ただ、その一方で、雇用均等行政の方におきましては、それぞれの、今お話がございましたような、育児休業期間中の解雇でありますとか雇いどめといったような問題が出てくる。これは、一般的な問題の上に加えまして育児休業期間中であるというような問題があるわけでございます。これは、育児休業法、介護休業法がございますので、こちらのことと一体となって御相談に応ずるのが、実際に相談する方の利便にも資するものだろうというふうに考えております。

 しかしながら、最終的に労働契約法十六条の適用の関係でどうだということになりますと、細かい裁判例その他ということになれば、なかなか雇用均等室の方で対応できないというケースもあるんだろうと思います。そうしたことにつきましては、総合労働相談コーナーでありますとか労働基準監督署の方を御紹介して、私どもの労働基準関係行政の系統の方で専門的な立場から御相談に応ずるということ、情報提供をしていく、こういったことも、実態、ケースごとに応じては当然出てくるんだろうと思います。

 そうしたことで、全体として有機的に連携する中で相談者のニーズに合った対応をしていく、こうしたことを心がけているところでございますし、不十分な点があれば、それはもちろん改善をしていかなければいけませんが、基本的な考え方としてはそんなことではないかというふうに考えております。

郡委員 今、基準局長から、連携をしていくことを心がけていかなくちゃいけないというふうに御答弁があったわけですけれども、この神奈川均等室の指導書を見ていただきたいと思うんです。Bさんのケースですけれども、「雇用契約について期間の定めのない雇用と実質的に異ならないため」というふうに、これも誤った見解で均等室は会社に交渉をされているわけであります。そしてまた、会社が指導に従わないということで、簡単にこれも打ち切っているわけです。こういう頼りない指導しかできないのが均等室なのでしょうか。本当に残念でならないわけであります。

 今、基準局長は、均等室と連携をするということですけれども、この件で連携がうまくとれていると御判断できますか。

金子政府参考人 今いただいた資料だけで適切なる判断をすることが私にはちょっとできない状況でございますが、欠けている点があるということであれば、雇用均等・児童家庭局の方ともよく相談をしまして、改善すべきは改善していきたいと思っております。

 ただ、一点申し上げたいのは、企業に対する指導ということになりますと、やはりそれぞれ根拠になる法律といいますか、そういった権限といったようなこととどうしても一体のことになるわけです。

 若干話がずれて恐縮ですが、私どもが所管をしております労働基準法でございますと、これは一般の労働契約の上に覆いかぶさるように強行的に適用される法規でございます。しかも、違反には刑事罰がついております。労働基準監督官には大変強い権限が付与されておりますので、こうした法違反に対しましては、我々としては大変強い手段に訴えて是正を求めていくことができるわけでございますけれども、労働契約法につきましては、これは民事のルールでございますから、労働基準監督官のそうした権限行使はできないわけでございます。

 そのかわり、いろいろな裁判例でございますとか民事上のルールについての理解を深めるための啓発指導というようなことについては一生懸命やっていくというようなことで、それぞれ法律のレベル、内容に応じまして対応させていただいておりますので、恐らくという答弁で申しわけございませんけれども、育児・介護休業法の中でのいろいろな啓発ということになりますと、こうした枠組みの中で行われていくということになるのではないかと考えております。

郡委員 なかなか私は理解できないんですけれども、このBさんのケースですけれども、これも、均等室での相談の場面において、労働契約法について周知に遺漏なきよう期されたいというこの通達というのがしっかりと行き届いていて、これに基づいた情報提供というのも当然行われていたと理解していいんでしょうか。それとも、そうではなかったということなんでしょうか。いかがでしょうか。

村木政府参考人 ちょっと個別の案件についてどこまで実際に契約法制についてお話をしたかということは定かではございませんが、基本的には、まず、恐らく育児・介護休業法の違反になるからこういうことができるという御説明をし、それから、労働契約法と同じように、育児・介護休業法の十条の違反でございますと、そうした行為は民事上も無効になりますので、そのことを御説明したというふうに思います。

 実際に労働契約法について均等室にはパンフレット等も置いてございますので、そういったことを説明する、関連情報をお知らせするということは通常のやり方でございますが、この件に関して具体的にどうしたかというところまでは把握をできておりませんが、一般的にはそういうことだということです。

 それで、我々、育児・介護休業法は、基準法のような最終的に非常に強い権限、刑事罰のような権限がございませんので、均等室に来られた後で裁判に行かれる方も多いので、そういった場合に、民事上で闘うときにどういうものが要るかというのは、御相談者がそういう御希望を持っておられるときはできるだけ我々でできるところは情報提供しておりますし、それから、足りないところは関連のところを御紹介したり、そういう方にまた来ていただいたりということで、有機的に連携をしてやるという形でやっているところでございます。

郡委員 パンフレットを置いておいただけではだめですし、当事者の皆さんたちが、間違ったことを言っては不十分なので、あちらこちらに、それぞれにつなげるんだというふうなことを公言していること自体も私は信じられないことでしたし、そういう行政であるならば、均等室の役目というのは何なんだろうと本当に考えたところです。

 均等室は、それこそ所管する法律はありますけれども、先ほどもどなたかお話しになっていました、労働者の、特に女性の立場でとりでになってやっていただかなくちゃいけないところ、それが自分のところでは答えるのが不十分なので、あっちに行ってくれ、こっちに行ってくれ、そしてまた、相談を受けた中でここまでしかできませんでしたということで、泣き寝入りを容認しているようではいけないというふうに思います。

 やはり縦割りの弊害というふうなことだと思います。そういう対応であれば、解決がおくれる一方ですし、話を聞くのはいいけれども、これ以上やっても無理ですよというふうなことになって、皆泣き寝入りをしていくというふうなことにつながるのだと思います。

 厚労省から出していただいた各地域の均等室に寄せられたさまざまな相談のその後の行方、詳しく見てみますと、実際どれだけの女性たちが涙を流しているか、厳しい状況の中でつらい思いをして会社に戻れなくているかということが明らかになっている。これはやはりもう少しきちっとした対応をしてもらわなければいけないというふうに思っています。

 こういう状況の中で、労働契約法違反の可能性が高いという情報提供の取り組みをしっかりしていくということ、これまでもしてきたのかどうかはここでは問いません、してこなかったのだと思いますから、していくということをお話しいただきたいと思います。

村木政府参考人 ありがとうございます。

 私ども、持っている手段、育児休業法、均等法はもちろんでございますが、あらゆる手段を使って労働者の雇用が守られるように、関連の法令についてもしっかり周知ができるように体制を強化してまいりたいと思います。

 それから、先生が例示をしてくださいました先ほどの案件でございます。

 個別の案件について仮定の話はなかなかできませんが、例えば、私どもが何度か指導してもなかなか、幾ら育児・介護休業法違反ですと申し上げても聞いていただけないときに、これ以上言うことを聞いていただけないと企業名を公表しますよというようなこと、あるいは、今切られていて、これは育休をとったから切ったんじゃない、うちの会社は景気が悪くなったから切ったんだというようなときに、実際にうその理由を述べたり、うその書類を出したりということがないようにするというようなことで、今回の育児・介護休業法の担保措置については非常に大きな意味合いを持っていると思います。そういう担保措置の強化もいただければ、またさらにそれも使ってしっかりと指導していきたいというふうに思っております。

郡委員 繰り返しになりますけれども、会社がそれを聞き入れなければ、均等室の指導というのはそれでもう打ち切りになっているんですね。これではだめですよ。

 今お話しになった、勧告に従わなかった事業主の公表をするというふうなことを言われているわけですけれども、では内定切りをした企業の公表というのはどれぐらいになっているんですか。実際の数、考えてみてもわかるとおりに、公表がどれほどの数になるのか、そしてそれがどれほどの効果をもたらすのか、私は甚だ不十分だと思います。

 また、行政機関に虚偽の報告をした場合の二十万円以下の過料、これが含まれているので十分だというような御発言、御答弁だったんだと思いますけれども、これらは均等法と同様の苦情や紛争の解決の仕組みをつくるのであって、違反になる対象を広げるものでもなければ、実際に育休切りあるいは育休後の不利益取り扱いを受けたその方々に対する手当てになっていないんですよ。これでは、私は、今回の改正に当たって防止策が大変不十分であるというふうに思わざるを得ないと思っております。

 実際に子供を抱えて、実はきょうもこの席に、私が例を出させていただきましたBさん、傍聴に来ていただくことになっていたのですけれども、お子さんが熱を出されて、残念ながら傍聴席にはおられませんけれども、小さな子供を抱えて、そしてまたお金をかけて裁判に訴えるというのは本当に大変なお話です。

 昨今の厳しい雇用失業情勢の中にあって、労働契約の一方的な不利益変更、法律違反がまかり通っている状況において、民事の裁判になれば、労働契約法が適用された場合こういうふうになるんですよ、こういうふうになりますよという、これまでの判例も含めて、どこの窓口に行っても情報提供が受けられるような体制づくり、これが必要であろうと思いますし、そしてまた、そうならないためにも、また繰り返すようですけれども、二十一条二項の書面の義務化というのが重要な担保になるというふうなことを考えております。

 それこそが、労働法の世界において、労働契約法制定後、労使双方のニーズにかなうものだというふうに思うわけですけれども、大臣にお尋ねをしたいと思います。いかがでしょうか。

舛添国務大臣 均等室と総合労働相談、育介休法と労働契約法、これは労働局の中の連帯、チームプレーをどうするかという問題であるので、基本的には労働局の中にあるわけですから、不備が起こらないように、一般的なことはきちんと申し上げる、先ほど労働基準局長が御答弁を申し上げましたように、強力な労働基準監督官が入った方がいい場合にはそれを使うということでやっていきたいと思います。

 それで、文書による条件の提示については、既に先ほど申し上げたとおりなので、よく議論をして一番いい形で、しかも現実的な形でできればと思っております。

郡委員 書面のことについて、また繰り返しになりますけれども、しっかりと議論をして、だから議論をさせていただいているのです。それで、そうならない、これまでの打ち切りということがまかり通らないためにも、努力義務になっているのを、それこそお金もかからない、すぐできることなんですよ、これをやっておくことが育休切りの歯どめにつながるんです、直結するんです。

 そういうことをぜひ御理解いただいて、大臣もある部分で御理解いただいているというふうに認識しますよ、ぜひ御決断をお願いしたいと思います。そのためにこうやってやりとりをさせていただいておりますし、私たちも修正案を出させていただいたわけです。

 私どもは、今回の未曾有の危機にあって、雇用危機にあって、経済危機にあって、雇用の現場で厳しい状況でおられる方々に対して手を差し伸べる、解決を図っていくことを政治のメッセージとして強く打ち出すことが重要だというふうに思っているということを重ねて申し上げたいと思います。

 残り時間が五分となりましたけれども、今般新設されます介護休暇について質問をできる限りさせていただきたい、そういうふうに思っております。

 育児休業と同様に介護というのも大変厳しい状況になっておりまして、介護休業をとったがために解雇をされたというケースも今般また明らかになってまいりました。実際、これまである介護休業を取得した方というのは、平成十九年度で七千百人程度でございます。一方で、親の介護あるいは配偶者の看護というようなことで会社をやめたり転職した人というのは、平成十八年の十月から十九年の九月までで十四万四千八百人、およそ十年で一・六倍にも多くなっているんですね。介護をしながら仕事も続けられる体制というのも、やはり多くの皆さんたちが求められているところなのだと思います。

 今般は、新しく介護休暇というものを設けられたということです。これについては大変評価をしたいと思うのですけれども、その介護休暇を取得するに当たって判断基準というのが設けられておりまして、この判断基準について、時間の許す限りお話を伺いたいと思うんです。

 常時介護を必要とする状態というのは、介護保険の要介護状態と同じように考えていいのでしょうか。リンクしているのか、あるいは違うものなのか、お答え願いたいと思います。

村木政府参考人 育児・介護休業法における要介護状態については、介護保険とは別に定めをしてございます。具体的には、「負傷、疾病又は身体上若しくは精神上の障害により、厚生労働省令で定める期間」、これは実際には二週間という割と短期の期間が定められておりますが、「にわたり常時介護を必要とする状態をいう。」ということで、独自に定められているところでございます。

郡委員 介護保険とはリンクしていない全く別のものというふうに理解しました。それだけでもびっくりするのですけれども、その判断基準というのはだれがどういうような手続でおつくりになったのでしょうか。

村木政府参考人 介護休業制度の導入は、平成七年の法改正でございます。その際、平成五年に介護休業について、医学的、法学的見地から、専門家による介護休業制度に関する専門家会合を開催いたしまして、報告書が取りまとめられております。この専門家の報告書に基づきまして、判断基準のもとになる解釈通達をつくったところでございます。

郡委員 では、その判断基準を満たしているということはだれが判断して、だれに書類をつくってもらうというふうになっているのですか。

村木政府参考人 この判断でございますが、事実を証明する書類といたしましては、医師、保健師、看護師、あるいは場合によっては社会福祉士とか介護福祉士とか、こういった専門家の方々の判断をした書面があればよいということにしているところでございます。

郡委員 介護が必要な状態のときに、その介護の度合いを決定するのも時間がかかっているわけですけれども、さらに今おっしゃられた医師や保健師、看護師等の認定基準をもって判断基準にかなう状況を証明する書類を提出しなくちゃいけないということになりますと、せっかくつくられたこの介護休暇というのは実際問題とることが不可能ではないかという危惧を持っているわけです。これについてはどういうふうに思われますでしょう。

村木政府参考人 今回新設をする介護休暇というのは、やはり先生おっしゃるように臨機応変にとれないと意味がないだろうというのは私どもも同じ考えでございますし、今回制度を設けた趣旨もそういうことでございます。

 そういう意味では、これから具体的な申し出方法等々につきましては厚生労働省令で定めることにはなります、労働政策審議会で御議論いただくことにはなりますが、私どもの考え方といたしましては、今あります子供の看護休暇と同様に、休暇を取得する当日に口頭で、対象家族が要介護状態にあって休暇をとりたいということを申し述べることによって休暇がとれる制度にしたいというふうに考えているところでございます。

郡委員 時間が来てしまいましたけれども、せっかく設けられる介護休暇というのが、それこそ絵にかいたもち、取得がなかなかできないという状況にあってはいけないと思いますので、この点についてもこの後いろいろと審議が行われることを期待したいと思います。

 それから、また書面の義務化についてですけれども、働く女性たちが安心して育児にも当たれ、仕事もできるという状況をつくっていくことが重要だという意識、これは共通意識なんだろうと思います。さらに、EUで働く女性たちを支援するということで育児休暇の最低基準を延長したり、また休暇中の賃金も保障額を上げてくるというふうなことが報道されました。これによって、フランスでは合計特殊出生率が二〇〇八年には二・〇%を超えているわけです。我が国では、少しずつふえてきたとはいえ、まだ一・三%台です。

 こういう状況を変えていくためにも、やはり労働現場で産休切りや育休切りなどを許さないための大きな決断というのが求められているんだろうと思います。この後の審議に期待をしたいと思います。

 質問を終わります。

田村委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十一時五十八分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時二分開議

田村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。岡本充功君。

岡本(充)委員 民主党の岡本でございます。

 きょうは、まず、法令の審査に入る前に少し確認をしたいことがありますので、大臣に少しお考えをお聞きしたいと思っています。

 きょうは詳細な質問通告をしておりません。事情は大臣も御承知のとおりでありますけれども、後ほどお話をするとして、大きな枠組みの話をしながら、この審議が今後とも続けられるということを期待して、次回以降に細部も含めて議論していきたいと思っています。

 まず、一つ目の私の大きな関心事は、この法案審議に当たる前に、やはり全体的な社会保障にかかわる費用をどうするのかという話であります。

 骨太方針二〇〇九の素案がきのう出て、消費税を一一年度から毎年一%ずつ上げて一五年度に一〇%にし、さらに引き上げて一七年度に一二%にすれば、二〇二〇年、平成三十二年初めに、安定的に、GDPに対する国と地方の債務残高比率を引き下げることを一つの目標としようという話であります。これは、ある意味、これまで我々がここで議論をしてきた、年金や医療にかかわるこれから必要となってくるお金ではなくて、今の債務の話であります。

 もしそういう意味であれば、社会保障も含めて考えていくとすると、さらに消費税を上げなければいけないということを想定しているのではないかと思うわけでありますが、こういった考えについて、大臣はどういうふうにお考えなのかについてお尋ねしたいと思います。

舛添国務大臣 給付と負担の割合をどうするかという問題に帰結すると思います。

 私は若いころヨーロッパで勉強しておりまして、今でもヨーロッパ諸国と大変縁が深いですけれども、我が日本というのは本当に社会保障が進んだ国であろうかといったら、きょうのテーマの育児の問題にしても、介護の問題にしても、まだまだじゃないかなという気がしているんです。

 したがって、ただ、いつも申し上げますように、お金は天から降ってきませんから、だれかがどういう形かで負担をしないといけない。ですから、こういうサービスをやりますのでそれに幾らかかります、もちろんその前提は無駄を省いたり、いろいろな政府の無駄を含めてこれは省かないといけません。それから、ただお金だけではなくて、例えばNPOの活動とか地域社会で支え合う、こういうこともやった上で、しかしやはり私は、それでもなお足りない部分があると思いますから、それは国民のコンセンサスを得て、何%になるかというのはさまざまな計算の仕方はあると思います。

 しかし、長期的には、例えばヨーロッパだと最低一五%の付加価値税、消費税があることがEU加盟の条件ですから、一気に北欧諸国とまでいかなくても、例えばフランスやドイツ並みにやろうとすれば、私はやはり一五%ぐらいの規模の消費税が必要だと思っています。ただ、直間比率を含めて、今日本の場合は直接税の比率が高いですから一気に一五はいきません、ヨーロッパ諸国は間接税の比率が高いから一五なんですけれども。

 いずれにしても、私は、どちらかというと、負担はふやしても福祉の水準を上げるべきだというふうに思っております。

岡本(充)委員 今回の話はいわゆる財政の均衡を図るための措置であって、ここに社会保障の部分が勘案をされていないのではないかと私は指摘をしているわけで、それが勘案されない中でこの一二%という論議が骨太の方針で出てきて、大臣はこれに、閣議決定をするときに賛成されるんですかということです。

舛添国務大臣 ちょっと御質問の意味がよくわからなかったので。

 長期的に、財政再建という目標をおろしてはいけないと思います。しかし今申し上げたように、社会保障というものをさらに進めていかないといけない。恐らくその一二%の中には、当然そういう要素は入っていると思います。

 ただ、私は、むしろ直近の問題として二千二百億円の削減の問題がございますね。こういう問題については、こういう委員会でも相当皆さんの意見が煮詰まっていますから、そのことについて、まず第一ステップとしてきちんとやるべきだろうというふうに思っています。

 ですから、財政再建だけで一二%と言っているのではないというふうに理解をしておりますけれども、仮に、財政再建だけの議論でやるということは私も反対です。

岡本(充)委員 今後、ぜひ厚生労働大臣として高い識見を発揮していただいて、政府の中でも問題があるのであれば堂々と反対をしていただかなきゃいけないと私は思いますよ。この観点が一つ。

 それからもう一つは、新型インフルエンザ対策についての総括をお聞きしようと思っています。

 これは、まだ中間段階ではありますけれども、ワクチン二千万人分をつくるという報道もなされています。これまでの問題点を大臣なりにお話をいただいた上で、なぜ二千万人分のワクチンにしたのかという根拠をちょっとお聞かせいただきたいと思います。

舛添国務大臣 二千万という数字がひとり歩きしていますが、これは私が理解した限りにおいては、与党のPTに厚生労働省の担当が行ったときに、一つのシミュレーションとしてこういう数字があるということを申し上げたというふうに思います。

 今一番大事なのは、WHOの決定を、御判断を待っていますけれども、季節性のインフルエンザとこの新型インフルエンザのワクチンのつくり方の配合比率をどうするかということが問題なので、これはもうちょっと時間をいただいて、諸外国の識見も入れた上でやりたいと思います。

 それから新型インフルエンザについてですけれども、これは全く初めての体験ですから、我々が一〇〇%うまくいったとか完璧であるというようなことは当然あり得ません。試行錯誤を繰り返しながら、失敗も繰り返しながらやっていく。

 そういう中で、一つは水際作戦。これは一定の成果はあったと思いますけれども、その前に実は中に入ってきた。私は、だから水際作戦を、この網をくぐって入ってくるのはあるよということを言っていたんですが、反省すべき点とすれば、水際作戦を開始する前に既に入っていたのではないか、こういうことも反省しないといけない。

 それから、小学校、中学校に網は、つまりインフルエンザで学級閉鎖等があるところに網は張っていたんですけれども、高校まではきちんと目が届いていなかった、そういう問題があると思います。

 それから、今後、第二波ということがありますから、発熱外来を含めてどうするか。

 それより何より、H5N1を想定したいろいろな行動計画がありました。実際はH1N1で、それほど毒性というものは高くないということなので、そこの修正をどうするか、これは非常に難しい問題で手間取った。それやこれや、まだまだ総括しないといけない。

 そして今非常に私が心配していますのは、盛岡でも出ました、東北でも出ています、私の里の福岡、これはどこから感染したかわからないで、感染源がわからないで東京、関東も含めて出てきているので、ある意味では非常に季節型のインフルエンザに近いような形の対応をしないといけないのかなということも思いながら、ただ、とてもじゃないけれども終息宣言なんて出せる状況じゃありませんから、油断せずに、慎重に事態を見きわめていきたいと思います。

 毎日反省し、毎日見直していって、少しでも一歩でもいい方向をと思っていますので、また、お医者さんでいらっしゃいますから、岡本さんのいろいろな意見も入れながら改善してまいりたいと思っております。

岡本(充)委員 これから審議をする育児・介護休業法も当てはまるんですが、やはり総括があって次の政策が出てくる。すごく忙しいタイミングのときに総括をしろと言うつもりもないし、それは、人、物、金という話をよく大臣は言われる。そのとおりだと思います。しかし、総括をしながら次のステップに入っていくということが重要で、このことについても、これまでのH5N1に対応した行動計画をこれからも堅持していくのかどうかも含め、早急に総括をお出しいただきたいと思うんです。

 どうでしょう、中間的な総括でも結構ですが、お出しいただけますか。

舛添国務大臣 今回やっていて一番隔靴掻痒というか反省というのは、やはり現場の意見が一番なんですね、神戸のお医者さん。私自身、東京でいろいろな指示をしていましたので動きがとれませんでした。

 今度、一月後ぐらいに私自身が関西に赴きまして、大阪、兵庫、京都、滋賀、関連の諸県の知事さんや政令指定都市の市長さんと一緒に、まさに現場の意見も入れた形での反省会を開き、そこに専門家によるシンポジウムのようなことも、今大体百例以上の患者の症例研究をしていますから、それをやった上で反省をやり、そして今おっしゃった行動計画も含めて、今後どうするか。

 とりあえず関西で一月後に、今、国会日程もありますから日程調整をしているところで、これは今私が申し上げた関西の政治のリーダーの方々にも合意いただいているところで、日程調整の段階です。ですから、それを機会として一つの報告を出したいと思っております。

岡本(充)委員 総括をする必要性をお認めいただいたところで、それでは、本題であります育児・介護休業法についての話に移りたいと思います。

 きょうはなぜ質問通告をしなかったかということになるわけですが、六月二日の参議院の厚生労働委員会、大臣も御出席でありましたけれども、この場で、我が党の蓮舫議員からの局長に対する質疑の中で、答弁がなかなかかみ合わずに委員会がとまったという事態がありました。御記憶だと思います。

 そこで、ちょっと改めて確認をしたいんです。厚生労働省としてなのか政府としてなのかはわかりませんけれども、政府参考人としてお越しをいただく局長が、それまでの職にあったときの経緯について説明をするということは、これを厚生労働省として認めないというわけではないのであろうと私は思うんですね。局長のポストにあられる方であれば、「公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である。」という憲法十五条と照らし合わせても、その方がどういったことをされているかを含め、国会で聞くことは何らおかしい話ではないと思うんです。

 御答弁をいただけるように私はするべきじゃないか、厚生労働省としても指導するべきじゃないかと思うんですが、大臣、いかがですか。

舛添国務大臣 私の基本的な立場は、まず、捜査当局が入って捜査をしている、これを重く受けとめて、これに全面的に協力をすべきである、それに予断を許すような形での発言は慎むべきであるということがまず第一。

 それから、国会について言うと、警察や検察や捜査当局ではありませんですから、国民の代表としてさまざまなことを議論しないといけない。そして私は、いろいろな機会にできるだけ、国会議員の皆さん方の御要望があれば、それは参考人として出ていくというのは悪いことではありませんということは言い続けていて、そういう対応をとってまいりました。

 ただ、一番の問題はやはり、捜査当局が捜査を行っているときに、その判断に予断を与えるようなことはやっちゃいかぬというのは私の基本的な意見であります。ですから、当該局長、これは政府参考人として呼ばれるんですから、その局長が今所管していることについては、それはいろいろな御質問があれば答えないといけない。ただ、性格がちょっと違って、捜査にかかわる参考人として来てしゃべるということは、私自身がしゃべっていないわけですから、それはいかがなものかなというふうに思っております。ですから、そこの区別をする。

 ただ、私があの事件が公に出たときに申し上げたのは、これは事態をつまびらかにしたい。つまびらかにしたいのは、捜査当局にまず第一義的にやっていただくけれども、全面的に省を挙げて協力をいたしますということで、書類からヒアリングから全部それは応じますよと。

 そして、私自身の直属の調査チームをつくりました。これは、だれが犯人で、どういう犯罪を起こしたという刑事上のことを我々がやるのではなくて、例えば判この管理、公印の管理というのはどういうふうに我が省でやっているのだ、そんないいかげんに、かぎもかけないで置いているんだというようなことがあれば、これは直ちに改善しないといけないですから。

 ただ、今捜査当局と同時並行で我々がやっていることですので、これも結果が出ればきちんと公表いたしますけれども、今、結果が明らかになるまでは、そういう慎重な態度をとりたいと思っております。

岡本(充)委員 そういう意味では、大臣は局長から事実関係の確認はされて、公印を押していない、もしくは押しているを含め、確認をとられているんですね。

舛添国務大臣 先ほど申し上げましたように、私のもとに調査委員会をつくりました。その調査委員会に今調査をさせております。調査中で、まだ途中でありますので、何らの結果報告は来ておりません。

岡本(充)委員 それは任命権者としてどうかと思いますよ。問題が出て、逮捕者が出ているような事態になって、それはどうなんだということをやはり大臣も確認をするべきではないですか。

 そういう意味では、先ほどお話ししました憲法十五条の「公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である。」これはある意味、すべての公務員に適用されるのかどうか、厚生労働省の職員の方もここに疑義を挟まれておられる方もいるようですけれども、私は、やはりすべての公務員が国民の固有の権利として、選定し、罷免をされるんだという意味で考えています。

 平成十四年六月十四日の東京地裁の判例でも、憲法十五条について私と同様に、個々の公務員について国民に、能力、識見においてしかるべき者が公務員に選任され、またいかがわしい人物が公務員から排除されることを求める固有の権利という具体的権利が憲法十五条により保障されているわけではないんだけれども、それについては、「特定の種類の公務員について、その選定罷免に係る情報を開示することを求める権利を何人かに付与するかどうか、いかなる要件の下にいかなる種類の情報を開示するかは、立法により決せられるべき事柄であり、」こういうふうにされています。

 そういう意味では、国民の代表たるこの国会で、その事実関係、その適否だけでも、別に犯罪の立証をしようと言っているわけではありません、そういう意味では、確認をするということは当然してしかるべきだと思っております。

 そういう意味で、理事会において、委員長、私が指摘をしております参議院の六月二日の委員会におけます答弁の経緯、つまり、政府参考人として呼ばれた者が、その政府参考人たるに適格かどうかを含め、委員が質問したことに対して答弁をしていただける旨の確認をしていただきたいと思うのですが、お願いできますか。

田村委員長 理事会で協議いたします。

岡本(充)委員 ようやく本題に入れてありがたいところですけれども、育児休業法について少し確認をしていきたいと思います。

 当然のことながら、すべての職業にこの法律というのは及ぶわけでありますが、きょうは、まずは隗より始めよで、衆議院の事務局にお越しいただいています。

 私もいろいろ調べておるんですけれども、私どものところにいます公設秘書について、育児休業というのがあるのかなということをふと思ったわけですね。育児休業で休んだら、お休みの期間中も給料がフルで出るということになると、これはどうかという話にもなるかと思います。この辺、どうなっていますか。

向大野参事 お答えさせていただきます。

 先生も御承知のとおり、国会議員のいわゆる公設秘書につきましては、特別職の国家公務員ということになっております。

 こういう公設秘書につきましては、その職務の特殊性あるいは勤務時間の定めがないというような理由から、育児休業とかあるいは介護休暇というものは法制化がされておりません。

 以上です。

岡本(充)委員 ということですと、育児休暇を与えることができないという解釈になるんですか。

向大野参事 基本的に、育児休業とか介護休暇というのは、勤務時間が定められていて、それに対してこういう理由がありますからその部分を解除しますという形になろうかと思います。

 ただ、今申し上げましたように、秘書さんについては、例えば我々でしたら一週間に何時間働きなさいとかいうことが定められているんですが、秘書さんの場合はそういう定めがありません。ですから、そういうものを定めることが難しいというふうに考えております。

岡本(充)委員 育児休業を取得してもらっている間に、出勤をされません。その状況になると、きょうは法務省に来ていただいているんですけれども、それで丸々給与が出ちゃうわけですね。だからといって、そこで解雇をするというのはまさに育児に係る不利益取り扱いになると私は考えています。

 そういう意味でいうと、個別の事案についてはそれぞれの問題があるからお答えしないというのが法務省の御答弁で必ず言われるんですが、それを踏まえた上で、これはやはり法律違反もしくは秘書給与の詐取ということに当たるんでしょうか。

甲斐政府参考人 今お話ございましたように、詐欺罪ということにつきましては、一般論でございますけれども、人を欺いて財物を交付させたということが構成要件になっているわけでございます。

 ただ、今先生の方からも御指摘がございましたけれども、犯罪の成否ということになりますと、やはり捜査機関が収集した証拠に基づきまして個別に判断されるべき事柄でございますので、それについて、成立するとかしないとかということのお答えは差し控えさせていただきたいと思います。

岡本(充)委員 ただ、では一年間、秘書さんが公設秘書であって育児休暇をとった。しかし、育児休暇をとっていたところ、ある日突然検察庁がコンコンとやってきて、おたくの秘書さんいませんね、それじゃ立件ですよ、こういう話になるのは、制度の不備もあり、それぞれの議員の皆さんのところにもかかわる問題でありますし、やはりここは衆議院の方でも改めて何か少し、制度を含めお考えをいただいた方がいいんじゃないかなと私は思うんですけれども、どうでしょう。検討をひとつ加えるおつもりはありませんか。

向大野参事 お答えさせていただきます。

 先ほども御答弁させていただきましたように、秘書さんにつきましては勤務時間がないということで、私どもとしてはなかなか難しいのではないかと思いますが、この育児休暇、あるいは介護も含めまして、国会議員の秘書の処遇につきましては、これは議運で御協議いただくことになっていますので、そちらで御協議いただきたいというふうに考えております。

岡本(充)委員 確かに、そういう意味では議運で取り扱う案件かもしれませんけれども、やはり制度についての、ある意味、ここで議論があったということは議運にも報告を、また事務局の方からもあわせてしていただきたいと思います。

 その上で、今度は厚生労働省の方に、大臣にお伺いするんですが、今回、先ほどもちょっと指摘がありましたけれども、法改正に当たって幾つかの問題点が私はあると思っています。その一つが罰則についてです。法の五十六条の二及び六十八条において、厚生労働省の勧告に従わない場合の企業名の公表、及び厚生労働大臣の求めに応じず、または虚偽の報告をした事業主に対する二十万円の過料という話があるんですね。

 先ほどもちょっとお話をしましたけれども、総括をした上でいろいろな施策を実行していくという話なんですが、他の法令と比べてこの制度はどうかなと。きょう通告していませんから、大臣、そんな紙を見ていただかなくても、大きな議論をしますから心配されずに、私の趣旨は御理解いただいた上で、ちょっと大きな議論をしたいと思います。

 他の法令と私は比較しました。きょうは通告もしていないので、資料も紙もお渡ししていません。いつもなら私は資料を用意して出すんですが、そういう事情で出していないので、委員の皆さんには口頭で大変恐縮ですが、例えば食品衛生法、大臣の所管のところです。それからJAS法、これは農林水産省。また、不正競争防止法、これは経産省所管でありますけれども、法人に対してだと例えば一億円の罰金、また個人に対しては、二年以下の懲役または二百万円以下の罰金や、一年以下の懲役または百万円以下の罰金などというような規定がそれぞれあります。

 例えばJAS法の方でいいますと、二十七条の四号には、「第二十条第二項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は同項若しくは第二十条の二第二項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した者」に対しての五十万円以下の罰金。者に対してですね、罰金です、過料ではありません。それから、二十八条の方には同様にまた、その代理人、代表者、使用人その他の従業者は、五十万円以下の罰金という項目もあります。

 ちなみに、過料といわゆる罰金の差は何なのか。いわゆる行政罰だから過料なんだというけれども、これ自体が本当に効果を持つのか。要するに、いわゆる罰金、刑罰としての科料とそれから過料、こういうお金の区別があるわけでありますが、金額を含め、こういう仕組みも含め、例えばJAS法なんかの場合には、その検査の妨げをしたということをもって今の罰金になりますし、また法人においては一億円の罰金が科せられることもあるわけです。

 先ほども郡委員の方からありましたけれども、名前の公表ということだけで本当に改善がなされるのかということ。ちょっと使用者側に厳しい話からスタートをして恐縮でありますけれども、そこを私は考えているんです。

 ちなみに、JAS法の中で過料があります。それは何かといったら、検査に来た担当者が名札の表示をしなかった場合には二十万円の過料なんです。検査に来た担当者が名札の表示をしなかった場合、これは第三十条に書いてあります、これで二十万円の過料。

 これと同じ程度の罰則でいいのかということを含め、私は、今回はこの法律を出されたということでありますが、速やかに、再度の改正を含め御検討されるべきじゃないかと思うわけですね。

 これで実効性が上がるかどうかをまず見てからと多分大臣は言われるんだろうと思います。しかし、実効性が上がるかどうかというのは大体推測はつくわけですね。ステップが必要だとはいいます、確かにJAS法だって改正を重ねてここまで来た。しかし残念ながら、それ以前のいわゆるペナルティーではなかなか実効性が上がらなかったという反省に立っているわけでありますから、他法令と比較をしてとよく言われるのであれば、こういった法令とも比較をしながら、いわゆるこの罰則規定について考えるべきではなかったかと私は考えるのですが、大臣のお考えを聞きたいと思います。

舛添国務大臣 まず、法律をつくる目的は何か、行政罰の処分、刑事罰、こういうことの罰則規定は何のためにあるか。

 それは、だれかが人を殺した、人を傷つけた、それを捕まえて罰するためにあるのではなくというか、それもありますけれども、やはり抑止ということがあると思うのですね。そうすると、抑止効果を最大限に発揮させるための一番いい方法は何か。例えば、罰金さえ払えばいいのか、ああ、では払ってそれで終わりだというのと、企業名の公表というのは物すごいインパクトがあります。

 それで、私が労働法制の実施を担当していますけれども、例えば派遣切りや何かのいろいろな問題があるときに、これは先般、小池さんや志位さんたちから、しょっちゅう企業の名前を挙げて共産党の皆さん方から言及されますけれども、現実にまず労働基準局が入る、そして是正勧告をやる。相当、ほとんど変わります。

 いよいよ言うことを聞かないときに罰を科しますけれども、要するに変えることが目的なので、育児休業についての、育休切りを含めてそういうことをやらせないことが目的であって、それは企業名の公表というのはすごい効果があっていますよ。あの内定取り消しがまさにそうで、言ってきた瞬間に厳しい指導をしたら、九十何%変わりますからね。ですから、そういうことを考えて、行政の罰というか行政指導の場合は、今回はこういう形がいいだろうというふうに思っています。

 私は、今の日本社会でこれだけマスメディアが発達しているときには、企業名の公表というのはすごい効果があるというふうに思っていますので、しかし、そういうものを実際実施してみて、全く意味がないということになれば、それはまたこの国会で法律を変えればいいわけですから。私はそのように考えています。

岡本(充)委員 JAS法もそういう考えで、企業名の公表を含めやってきているんですよ。しかし残念ながら、罰則を強化せざるを得なかったという事例があるということをお示ししています。

 最後に一点、周知徹底を含め、今回改正法が成立した場合にはしっかりしていただきたいと思います。いろいろな方法で、相談に来られる労働者の側、本当に氷山の一角じゃないか、なかなかそれがとらえ切れない。

 先ほど、均等室だって頑張ってみえるという午前中の質疑もありました。それは頑張ってみえると思う。しかし人数をふやしても、ツールもない。そういう意味で、私はきのう担当者の方とお話ししたんです。やみ夜にカラスが何匹いるかわからないところに、とりに行ってこいという話なんです。カラスがカーとこっちで鳴けば、こっちにいるかなといってやっていく。そうしたら、そこにカラスがいるかどうか、徒手空拳ですよ。何しろそこで、いるかどうかも何匹いるかもわからない中でやっていく。どういうツールがいいかも含め、やはり考えていく必要性があるという点。

 それから、周知徹底、これはきのう担当者の方ともお話ししました。育児休業であれば、例えば母子手帳に広報のパンフレットを挟むとか、いろいろな方法があると思います。そういう意味で、その対象となる方によりターゲットを絞って周知徹底をしていただきたいとお願いを申し上げて、私の質問を終わります。

田村委員長 次に、山井和則君。

山井委員 きょうは、五十分間質問時間をいただきまして、ありがとうございます。

 きょうは育休切りの問題を中心に質問をしたいと思いますが、まず最初の冒頭、一問だけ生活保護の母子加算復活ということについて質問をさせていただきたいと思います。

 といいますのは、私の配付資料の後ろの方、三十七ページにもありますが、昨晩も緊急集会がありました。「子育てを応援してください 子どもに貧困を背負わせないで」。「呼びかけ文」として、「授業料が払えず、卒業アルバムをもらえなかった」「入学式に着ていく学生服の代金を待ってもらっている」「貧困は、大人にとってはもちろん、子どもにとっても背負うには重すぎるもの」であります。

 そして、私たち民主党も、この間、母子加算復活作業チームというものをつくりまして、何とか、子供に貧困の責任はないんだから、とにかく生活保護制度、確かに問題はあるかもしれませんが、やはり子供に罪はない。高校進学を断念した、修学旅行に行くのを断念した、あるいは部活をやめた、あるいは不登校になった、舛添大臣もお感じになっていると思いますが、母子加算が廃止された後、こういう悲劇というのが残念ながら起こっているわけですね。今回、国会が延長されたわけですけれども、与野党を超えて子供の貧困の問題に立ち向かっていく、そういう意味で、私たちが提出した法案では、きょうの配付資料の三十九ページにもありますが、当分の間、母子加算をもとに戻す。一人親世帯の自立支援ということを確かに厚生労働省はその代替措置的なものとしてやっておられますので、その分は差し引いて百八十億、これを何とか、十月一日から一世帯平均二万三千円を戻すことができないのか。

 この被害をこうむっているのは全国で十万世帯、お子さんたちの数が十八万人なんですね。片や、定額給付金を二兆円ばらまいたり、あるいは国立アニメの殿堂百十七億円、ソフトを入れると百数十億円と言われていまして、この母子加算復活とも似たような額であります。

 ぜひともこのことに関しては与野党を超えて、選挙もありますが、そんなことを言っている場合ではなくて、例えば一年後、二年後、母子加算が復活したとしても、もう高校へ行けなかった子供、あるいは不登校になってしまった子供にとっては、後からちょっとやはり削り過ぎましたねといっても、これははっきり言って人生狂ってしまうわけです。

 厚生労働省はこのことに関してはかたい姿勢なわけですが、舛添大臣にお伺いをしますが、本当に母子加算というものはカットして全く問題なかったのか。カットされた十万世帯、十八万人の子供たちがちゃんと高校に行き、あるいは望みどおり、望んでいる人には大学へ進学できたり、今までどおり部活をやっていけたり、修学旅行に行けたり、ちゃんとそういう最低限の生活ができているとお考えなのか。そして、この母子加算復活について、これはこれから国会で速やかに審議すべきだと思っておりますが、見直しの余地というものはないのか、舛添大臣にお伺いしたいと思います。

舛添国務大臣 生活保護を受けておられる家庭の中でも、一つ一つの家庭でそれぞれ状況が違うというふうに思います。だから、基本的にはそれぞれの住んでおられる市町村の福祉の担当の方がきめ細かい対応をしていく、それが必要だということをまず申し上げて、さらに、機械的に一律よりも、そういう多様な形のニーズにこたえるというので、いつも申し上げているように、教育支援費とか就労している場合の支援とかいうようなことがさまざまあるわけです。

 今、数字をちょっと出させてみますと、都市部の母子家庭で、就労していなくても、つまり未就労の場合でも、子供二人の場合に月額約二十七万円、子供が一人の場合は月額約二十一万円、これは年間で概算を出しますと三百二十万円ないし二百五十万というのが税金で給付されているということでありますので、そこそこの水準には行っているだろうというふうに思います。

 そして、私の問題意識は、やはり今全体に格差が広がっている、その広がった格差から出てくる問題は是正しないといけない。ですから、マイナスの所得税というような考え方もこれはあり得るだろうと思います。

 それからもう一つ、こういう問題を考えるとき、ずっと私この問題を考えていて、ちょっと単純化して言うので誤解をしないでいただきたいんだけれども、家族のあり方、母子家庭か父子家庭か両親がそろっているかを問わず、これだけの収入しかなければこれだけの給付というのを一律にやった方が、実は中立性、公平性を保てるんじゃないかなという気もしているんです。というのは、たとえ生活保護の中で両親がそろっていても、ひょっとしたら母子家庭や父子家庭の場合よりももっとひどい状況であるかもしれません。ですから、一番冒頭に申し上げたように、きめの細かい対応をどうできるかということであるので、現状が非常に厳しいということはよくわかっています。それは、全体の格差の是正という中でやっていく。それで、やはり働いていただくのが一番いい。

 これは、私も母子家庭でしたから、ずっと学者としてアメリカの母子家庭の研究をしていました。昔のこういうデータが、私が研究をしていたころなので今は違うかもしれませんけれども、一番子供がしっかり育つ家庭というのは、母子家庭で、お母さんがしっかり働いて、本当に頑張っている家庭の子供というのは一番よく育っている。一番だめに育っているのは、母子家庭で、麻薬にお母さんが手を染めたとかいうような形で、ひどい家庭のが一番悪いというようなデータもあって、だから、母子家庭だから即だめだということではなくて、それは私のアメリカでの研究成果なんです。

 そういうこともあるので、母子加算のことだけじゃなくて全体的に、憲法二十五条で定めている最低の文化的な生活はどのレベルなのか、そして公平性ということからも考えぬといかぬし、では、それをだれがどういうふうに負担するか、これは財源問題を含めて一度きちんと議論をしたいなという気はあります。

 そういうことで、また法案については法案を拝見させていただいて考えたいと思います。

山井委員 舛添大臣がおっしゃるとおり、これは一度きっちり議論しないとだめなんですよ。私は、選挙後に先送りする問題ではないと思います。なぜならば、この二万三千円がカットされて、それによってどういう影響が出ているか。繰り返しになりますが、高校進学は断念した、あるいは不登校になった、そういう事態が起こっているという話を私は残念ながら一部で聞いています。

 やはり、そういう意味では、私たちの法案の今回の趣旨は、当分の間、まさにきっちり議論するまでに一回戻す。そして、舛添大臣がおっしゃったように、今、憲法二十五条が保障する最低限の文化的な生活を母子加算が削られた世帯が本当に送っていることができるのか、それを確認するまでは戻すべきだというふうに思っております。この問題、法改正ではなかったから、これは国会で審議されることなく全廃されてしまったんです。ぜひ早急に審議をすべきだと思っております。

 私自身、政治家になった一つのきっかけが、大学時代六年間、私は母子寮という福祉施設でボランティア活動をしておりまして、そこで本当に貧困なお母さんと子供の姿を見て、何か役に立てないかと思って工学部から福祉に転換したという思いがあります。三十年来、この問題は私はずっと追い続けてきていますので、ぜひとも力を合わせて、与野党を超えてやっていきたいと思っております。

 それでは、本題の育休問題について入らせていただきます。

 私の配付した一ページに、この間、私が直接お目にかかったり、あるいは間接的に話を聞いた育休切りのパターンというものを幾つか書かせていただきました。大きく分けて、育休や産休の取得自体を拒否される場合、厳密に言うとこれは産休切りというものも含まれるのかもしれませんが、それも含めて、妊娠や育休による不利益取り扱いということで、きょうは育休切りと呼ばせていただきます。また、とったけれども結局復帰することができなかった、育休をとったばかりに雇いどめになってしまった、こういうふうなパターンがあるわけです。

 そこで、具体例から話をさせていただきたいと思います。

 二ページ目を見ていただければと思います。この方のケースは、第一子が生まれて育休をとった。復帰しようとしたら、舛添大臣、育休が明けて復帰するのは当たり前の話ですよね、ところが、この三ページに書いてありますように、会社側は「復帰するとは思わなかったし、復帰できないと言ったはず。」と。こんなこと、完全にこれは違法ですよね。育休とったら戻るのは当たり前じゃないですか。ところが、復帰するとは思わなかったし、復帰できないと言ったはず、子供を産んで戻りたいとは勝手過ぎると。えっ、労働者の当然の権利、出産を理由とした解雇は違法であるということをそのお母さんがおっしゃったら、復帰したところで仕事はない、仕事風景を見ているだけですよと。

 結局、居心地は非常に悪かったけれども、この方、私も直接お目にかかりましたが、今までずっとこの会社を自分が支えてきたというぐらい必死になって頑張ってこられたわけですよ。そういう大黒柱なわけです。そういう自負もあったわけですよ。それで、その後、復帰したけれども居心地が悪かった。そして、次、二人目のお子さんを妊娠したと言ったら、では解雇しますとなって、解雇をされてしまったわけです。

 次のページを見てください。解雇予告通知書の中身、これは実物でありますが、「理由 我が国を含める世界的な経済不況」というような理由になっているんですね。だから、これは明らかに、妊娠しましたと言ったら解雇されたわけです。

 私はこの方の話を聞いて非常にショックを受けたのが、御本人が、妊娠がわかったときショックだったと言うわけですよ。首を切られるんじゃないかと。国を挙げて少子化対策をしようとしているときに、妊娠がわかってショックだった。妊娠したら解雇される、こんなことだったら安心して子供を産み育てられないと思うんですね。

 そして五ページ目、この方も直接お目にかかりました。私がお話ししているのは、きょうは全部これは仮名です。二番目はユウコさん、三十九歳の方です。この方も、正社員として十年間その会社を支えてこられました。そして、何とB社で初めて育休をとった、産休をとったわけです。それで、一月末から復職する予定でおられた。そしたら、一月末から復職する予定でいたのに、一月上旬に社長面談。社長はこう言った、休んでいる間に経営不振になった、夜接待に出られるか、今までと同じ条件で雇用するのは難しいので、歩合制にするか、やめるか。

 それでこの方は、今までから大好きだった会社だから事を荒立てたくない。そして、やはり失業保険の問題があるから、せめてもの願いで、では解雇してもらえますかと言ったら、それはできない、自己都合でやめてくれと。自己都合でやめさせられているわけですね。それで、離職票には育児による負担と。

 最後のところに書いてありますが、このように育休切りがふえていくと、子供が欲しいと思っている女性も、仕事がなくなるのが不安で産むことをちゅうちょする、そのうち年齢が高くなり、出産のリスクも高くなり産めなくなるというふうな危険性もあるのではないか。

 大臣、このような現状、特に二番目などは、自己都合で退職しているから育休切りにもなっていないんですよ。勝手に子育てに専念するためにやめたと統計的にはなっているんですよ。でも、こういう泣き寝入りをされている方がごまんといる。そして、こういう方々が不況でどんどんどんどんふえていっているんです。大臣、このような事例に関してまず御感想を、いかが思われますか。

舛添国務大臣 個々のケース、私は全部これを調べたわけではないので、今の山井さんのこの御報告を聞いた限りですけれども、少なくとも、出産とか妊娠とかいうことを理由に解雇しちゃいけないことになっておりますから、こういう状況を改めないといけないと思います。

 そして、私はずっとここのところ大臣をやっていて思っているのは、労働関係の法制に対する認識とか知識とか、それは我々の周知徹底努力も足りないと思いますけれども、余りにもこの国ではしっかりなされていない。年末年始、派遣切りのあのテント村の話なんかが出てきたときに、例えば派遣と請負の違いとか、労働者供給とは何か、そういうのを、メディアもやっとその区別を話し始めた。

 ですから、例えば刑法とか交通違反の法律とか、そういうものをみんな身近に感じているんですけれども、自分たちの仕事というのは、一日のうちの三分の一、仕事をしているわけです、普通の人は。その仕事に関係する法律について、経営者の方も無知である、知らない、労働者の方も同じような状況。だから、これはこういう機会に周知徹底する。

 例えば、泥棒したら、あんた警察に捕まって刑務所入りますよ、これはみんなわかっているわけですよ。それと同じぐらいの認識がないといけないんですけれども、労働省というのはちいちゃな省だったからかもしれないですけれども、ないしは、今でいうと、労働組合に支えられている方の政党が政権をとっている期間が極めて短かったからかもしれませんけれども、ヨーロッパで生活していて日本と比べれば、労働法制についての一般の浸透の仕方が全然違うんですね。私はそれは変えるべきだというように思っていますので、そういうことの一環として、例えば、こういうことはヨーロッパではあり得ない。泥棒したり人を殺しちゃいけませんと同じぐらいのレベルで浸透しているわけですよ。

 ですから、そういうことも含めて、これを機会に、今度の法律の御審議をお願いしたのはそういうことの第一歩とするためにやっているので、派遣法とかさまざまな、今、労働関係の法律を整備したいのはそういうことなんですが、法律はつくったけれども守る人はいない、そしてメディアも取り上げないというのでは話にならないので、一番やはりこれを周知徹底してこういうことをやっていただくのは、例えばテレビメディアがこういうことを、今、山井さんがおっしゃったような報告を流してくれれば、それは一番効きますよ。だけれども、例えばそういうことも含めて努力をしたいなと、社会全体に対する。だから、よくないと思います、よくないと思うその背景を申し上げた。一つそういう背景はあると思います。

山井委員 今、ヨーロッパではあり得ないということをおっしゃいましたが、問題は、舛添大臣がヨーロッパであり得ないと言っていることが日本ではどんどんふえているんですよ。そこが最大の問題なんです。

 周知徹底とおっしゃいましたけれども、だから、まさに午前中、郡議員が質問したように、最大の周知徹底は、労働者の手元に、いつからいつまで育児休業をとっていますよ、その書面を事業主からもらって持つ。事業主も出せば、ああ、これは法律で定まっていることなんだなと、書面一枚渡すときにわかるじゃないですか、どんな勉強不足の方も。また、労働者もそれを持って、ああ、三月三十一日まで育児休業、書面がある、ということは四月一日から私は復帰できるんだなと。一枚あればいいわけです。

 今回、私も何人もの被害者に会いましたが、皆さんがおっしゃっているのは口約束だということなんですよ。そして、皆さんびくびくおびえていられるんですよ、本当に帰れるのかなと。

 そこで、次の方の事例にも入りたいんです。

 次の七ページのアキコさんは、この方もずっとその会社を支えてこられたけれども、この資料にありますように、九月二十六日に育休に入った。そしたら、何と九月二十九日、三日後、会社から一通の郵便が来た。育休に入ったときには子育て頑張ってねと言われていた、だから励ましの手紙かなと思ったら、もう契約を打ち切りますと。育休に入って三日目。こんなことで安心して子供が産めますか。

 そして、もうお一方のマユミさん、この方も仮名ですが、六ページ。この方も、正社員でずっとその会社の中枢を担ってこられた優秀な女性です。

 この六ページにありますように、パソコンで育児休業の申し出を行ったので、書面は手元にない。そして、時々、母子ともに健康です、復職の準備は万端ですと当然ちゃんとメールを送っておられたわけです、休んでいても。ところが、返事は来ない。まさか帰れないということはないだろうなといっても、返事が来ない。そして、春から復職する一カ月前に一通のメールが来て、ここに書いてありますように、「業績不振で仕事がない。復職を延期してほしい。」ああ、そうですか、ではいつまで延期したらいいんですか、「期日は言えない」。春から子供を保育園、当然予約しているじゃないですか。待機児童が多い中で保育園を予約した。保育園はもう二カ月しかリミットがない、二カ月で就労しなかったら、子供が保育園をまた出されてしまう。そしたら本当に就労ができない。何とか二カ月以内に帰りたいんですけれども、上司に、会ってくださいと。会ってくれない。

 それで、この方は均等室に相談されたんです。それで、均等室も、明らかに違法なので勧告しましょうかとおっしゃったんですが、大臣、ここからが難しいところで、やはり今までから自分も中心になって支えてきた会社で事を荒立てたくない、やはりチクったと言われて無理やり帰ったような形になってもいづらくなるということで、指導はしないでくださいと言った。でも、ずっと待っていられたけれども上司は会ってくれない。結局、五月末の期限が来た。

 私のところに電話がありました。山井さん、ごめんなさい、自分からアルバイトを見つけて、自分からもう退職しましたということをおっしゃっていられました。そして、では、大好きだった、ライフワークにしたいとおっしゃっていた今までの仕事と同じアルバイトが見つかったんですかと言ったら、全然分野の違うアルバイトですと。

 そして、おまけに、業績不振と言っているけれども、この会社は十人新入社員を四月に雇っているんですよ。そして、おまけに、この会社には三十人の女性がいて、この方が初めての、第一号の育休をとった人なんですよ。残り三十人は、独身か、結婚していてもお子さんがおられなかった。みんなのパイオニアだったんですよ。第一号だったんです。その方がやはりやめさせられたというか、こう言ったらなんですけれども、これは巧妙ですよ。育休切りじゃないじゃないですか。周りには勝手にやめたと言っているんじゃないですか。

 大臣、余り個別のことばかり言って恐縮ですが、ライフワークでこの仕事を続けたかったという方が仕事をやめざるを得なくなった。大臣、何かこの女性は悪いことをしたんですか、なぜこういうことになったんですか。

舛添国務大臣 山井さんの報告をきちんと今聞いておりまして、大変こういうことがあっちゃいかぬというふうに思いますが、ただ、ちょっと別の観点から物事を申しておきたいのは、一つの法律だけで世の中が完璧に変わるわけではありません。そして、例えば、今のような会社は、物すごく好景気で十人雇ったけれども、人を雇おうにも人がいない、好景気のときにとにかく人手が欲しい、そしたら、恐らく早く産休を切り上げて仕事に戻ってきてくださいと言うでしょうね。もっといい条件であなたを遇しますよと言う可能性はありますよ。ですから、そういうことが一つ。

 それから、私がさっき言ったことにつけ加えて言うと、労働法制の場合は意図せざる結果が出てくることも十分考えないといけないのは、解雇権の濫用はいけない、当たり前です、正しい主張です、ですからきちっとそういうことを言っている。何が起こりましたか。経営者から見たら、解雇しやすい労働力、労働調整をしやすい労働力、派遣に走る。そしたら、今度その派遣の強化ということを後追いしないといけない。だから、やはりこれは全体の経済を底上げする施策をとり、労働者の権利をしっかり守っていってやる。しかし、次から次と抜け穴が出てきちゃったわけです。今、まさに派遣の問題をやっている。

 だから、解雇権の濫用はいけませんよ、労働者の解雇はだめですよとぴっしり、これはだれも反対しません。しかし、それだけではだめなので、さまざまな施策をしないといけないと思います。そういう中で、今回、育休について少しでも前に進めようということであります。

 もうこの基本的な背景は、先ほどの何番目かの例であるように、世界的な不況によってしようがない、そういう理由を突きつけてくるわけで、当然雇用情勢、経済情勢の悪さというのは背景にあると思いますけれども、非常に、いい目的での法律の結果がまたほかの悪い副作用を、そういうことはあっちゃいけないんですよ、あっちゃいけないんですけれども、現実を今の派遣なんかについて見ると、現実にそういうことが起こってきている。

 では、今度はどこに行くかといったら、いや、それならば産業が空洞化しますよということになる。産業が空洞化して全部企業が海外へ出ていったら日本で働きようがないじゃないですか、こういう議論になってくる。

 だから、そういうものの悪循環ではなくて、それをいい循環の中で一つの政策パッケージをどうするかというのはこれからの労働政策に問われているんだろうというように思いますので、近いうちに山井さんが厚生労働大臣におなりになるときは、ぜひそういうことも念頭に置いていただきたいと思います。

山井委員 大臣、幾つかの法案のミックスの問題だとおっしゃって、それはよくわかるんですけれども、私たちが今回この育休法の改正を審議しているのは、まさにこういう今喫緊の課題になっている育休切り、これに対してこの改正法案でどう対応できるのか。

 午前中、労政審での議論ということを郡議員も取り上げましたが、大臣もあのとき答弁されたように、これは非常に新しい話なんですよ。労政審で議論していたときよりも、その後、まさにことしの、年末年始以降のものですから、別に、労政審が育休切りを議論していなかったのはそういう意味では当然の話であって、私たちも労政審の議論が不十分だったと言う気は全くないんです。問題は、今最新にこういうことがどんどんふえているとなったら、国会の場で、労政審の議論に加えて、何か育休切りの防止策を加えねばならないんじゃないかと思うんです。

 そこで、大臣は先ほど周知徹底をしないとだめだとおっしゃったんですけれども、そこなんですよ。

 そこで、私たち民主党も、ここ二、三カ月ずっと議論を続けました。四月十四日に小林正夫参議院議員が、二十一条二項の書面の義務化ですね。きょうの配付資料でも入っておりますが、育児休業の取扱書、この十九ページ、育児・介護休業取扱通知書、これが今二十一条二項で努力義務になっている。これを何とか義務化すべきじゃないかということで、今回の私たちの修正案の一つの最大の目玉となっています。周知を徹底すると口で言うのは簡単なんですよ。問題は、ではどうして周知を徹底するのか。そのために私たち民主党が出した一つの結論が、やはり紙切れ一枚あればかなり違う。

 私も多くの被害者の方々と会ってきましたが、皆さん、本当に心配に思っておられるんですよ。大臣、大体、これは本当に復帰できるかどうかわからなかったら、安心して子育てできますか。安心して子供を産めますか。そのときに、さっきの話じゃないけれども、復帰しようと思ったら、復帰すると言っていたっけ、復帰させるなんて言っていない、そんなこと言われたら人生が成り立たないじゃないですか。

 先ほどのマユミさんのケースでも、育休切りをされたことによって、人生を大きく、はっきり言って狂いましたよ。人生が狂った先輩の姿を見て、後に続く三十人の女性社員が、私も同じように仕事と子育てを両立しようと思えますか。先輩が育休で切られて、子供を産んだら、何か知らないけれどもどんどんどんどん消されていってしまう。一人の問題じゃないんです。だから、この国会で育休切り対策に対して何か私たちが具体的な一歩を示すということは、大臣がおっしゃった周知徹底の上で非常に重要なんです。

 そこで大臣、二十一条の二項、努力義務規定ですが、なぜこういう取扱書というものを発行することを努力義務であれ育休法で入れたんですか。

舛添国務大臣 朝、郡さんとお話ししたのは、言っていらっしゃることは全部わかるけれども、こっち側のデメリットの側面もありますよということを申し上げたのです。

 今言ったようなことを、つまり、休業中の待遇、それから復職後における賃金とか配置、労働条件を休業取扱通知書という形で、これは努力義務でやってくれということを、取扱書自体は省令で明示したわけです。当然、この紙があった方がいいに決まっている。先ほど口頭だと事例でおっしゃったように、後で言ったじゃないか言わなかったじゃないかと。そんなものは残っていないですから。そういう意味で、スムーズにいける。何回も山井さんがおっしゃったように、やはり日本人の場合、この会社にお世話になったので、これ以上事を荒立てたら、労働局が入って解決してもかえっていづらくなるということがあると思うので、そういうことを阻止するというのはいいと思います。

 ただ、二つぐらいポイントがあって、一つは、先ほど柔軟性をどう担保するかという話を申し上げたんですけれども、会社の状況であるとか、特に個人の状況が一年ぶりにどうなっているかの変化についてフレキシブルに対応できる道をどう残すか、これが一つの課題だというふうに思います。

 それから、あとは、今現実に努力義務で休業取扱通知書をちゃんとやっている事業主というのは、今私は細かい何%という数字、後で役所から出ればあれなんですけれども、ほとんど少数だというふうに認識をしておりますので、そうすると、一気に全部義務化、中小企業まで含めてやっていけるのかどうなのか。つまり実効性の問題なんですね、先ほど申し上げたように。

 だから、そこが若干心配なので、大きな方向としては、それは紙を出してもらう方向にどんどん指導して広げていきますけれども、一気に法律で義務化まですることのメリット、デメリット、それと実効性、これを若干危惧しているわけなので、そこはちょっと知恵を働かせる余地があるかな。ただ、大きな方向として、言った言わないというようなことのレベルでとか、それから明確な育休切りとかいうのは、これはあっちゃいけないというふうに思っております。

山井委員 大事なことなので確認しますが、やはり厚生労働大臣としても、今答弁があったように、労使ともに紛争の未然解決、トラブルを防ぐ上でも、紙切れ一枚あった方が望ましいということは思われるわけですね。

舛添国務大臣 それは、後で言った言わないよりも、ぴっしり書いている方がいい。

 ただ、その書いている内容が、先ほどちょっと悪らつだと郡さんに申し上げたんだけれども、子供を一年育ててみたときの自分の体のコンディションとか、そういうことに合ったことにきちんと対応してくれる経営者ならいいけれども、逆に、その書いた紙を盾にとって、いや、あなたはフルタイムと言っているから、それはもう無理だよというようなことでやられても困る。

 ですから、そういうことの柔軟性への担保ということを労働者側に立ってどうするかということと、私は経営者を信じないわけじゃないけれども、とにかく厳しくやったときに抜け道を探す、そして実効性のあるものにならない、これをどう阻止するか。これは現実の問題として、あっちゃいけないことなんですけれども、そういうことを今考えているということであります。

山井委員 午前中の郡議員の質問の中でも出ましたが、東京都の労働局の均等室長の峯岸とも子さんが、三十一ページ、三十二ページに、新聞のインタビューに答えて、こうおっしゃっているんですね。育休前に書面の確認をと。特に昨年秋以降目立っている育休切りに対して、身を守るポイントして、育休を申し出るとき、期間やその間の給与、職場復帰の条件などを事業主との間で書面で確認しておくことを勧めるということを両方の新聞で書いてあるんですね。

 大臣、ここで問題なのは、勧めていただくのはいいんですけれども、勧めても、育休をとる労働者自身が非常に申しわけないなという気持ちで、とらせてもらっているというムードなんですよ、日本のムードでは。非常に下手なんですよ。とらせてもらえるだけでもありがたいなというつつましやかな気持ちが多い日本において、やはり書面でちゃんと書いてくださいなんて言えないですよ。言えないって、それは。

 となると、一人対事業主では言えないから、国会で決めて、本当は欲しいわけですよ、それはみんな。お守りになるし、欲しいわけですよ。ですから国会で、その紙を一枚、何月何日から何月何日まで育児休業をとっておられますねという確認書みたいなものでも渡せば、安心感になるわけです。

 これは繰り返しになりますが、私、今回、何人かの方の話を聞いて本当にショックを受けたのは、復帰する当日まで、本当に帰って働かせてもらえるかどうかわからないと。そんなことあり得ますか、世の中。男の私が言うのも変ですけれども、そんなの嫌ですよ。そうなったら、自分の人生はどうなるんですか。それだったら、もう子供をあきらめようかと思わざるを得ないじゃないですか、そんなばくちみたいな話だったら。ところが、大臣おっしゃるように、復帰できるのは、本来、育児休業法の権利なんですよ。権利なんですけれども、労働者も事業主もそこが十分に周知できていないんです。

 そこで大臣、例えばある女性の方が四月から三月三十一日まで一年間育児休業をとっている、この期間を明示してある書類、これは日本に存在するんですか。

舛添国務大臣 育児休業の開始予定日及びその終了予定日を記載した書面としては、まず、労働者が育児休業を申し出るときに事業主に提出する育児休業申出書があります。それから、育児休業法施行規則第十一条及び第十四条に規定する書面で、これは労働者からの申し出が遅かった場合において使用者が開始予定日の指定を行う書面。それからもう一つ、育児休業等に関する労働者の取り扱いに係る書面のひな形として示している育児休業取扱通知書というもの、これらが存在しております。

山井委員 だから大臣、問題はそこなんですよ。この十八ページ、十九ページの申出書と取扱通知書なんですが、くしくも先ほど大臣が自分で答弁されたように、何社がこれを使っているかわからないし、何人が出しているかも、実態も厚生労働省は把握していないし、大臣がおっしゃるように、ほとんど少数なんですよ。

 ということは、大臣、私も今回驚いたのは、いつからいつまでその女性が育児休業をとっているという書類がないんですよ、ほとんどの会社には。まあ、人事の記録の書面の中には入っているのかも。いわゆる紙としてはないんですよ。それは、紙でないということはどういうことかというと、育児休業は多くの場合、口約束なんですよ。確かに、口約束だったらそれは怖いですよ。口約束だったら、こういう不況の折に、別に会社が悪くなくても、本当に会社がつぶれかかっていたりしたら、戻れるのかなとだれでも思いますよ。

 そこで、大臣にお伺いしたいんです。

 せめて育児休業の期間を、いつからいつまであなたはとっていますねということを、育児休業をとるときには事業主が労働者に紙を一枚渡す。私は、これで育休切りのすべてが解決するとは残念ながら思いません。でも、第一歩。その紙切れ一枚出すことによって、労働者にとってはお守りになる。なぜならば、三月三十一日まで育児休業ということは、四月一日から復帰できるということで、これは育児休業確認書であると同時に育児休業からの復帰の権利書にもなるんですよ、その紙切れ一枚が。かつ、復帰してからの労働条件を細かく書く必要がなければ、期間だけだったら事業主にとっても何ら負担はふえないわけなんです。せめてこういう紙は出すということが私は必要なんじゃないかと思いますが、大臣、いかが思われますか。

舛添国務大臣 先ほど申し上げた申出書とか取扱通知書、これは努力義務でやれということを言っているので、ぜひ出すように、促進をさせるように指導したいと思います。

 それからもう一つ、要するに、いつから育児休業を始めたかというのは、社会保険関係とか給与台帳とか、そういうものの中に当然記載はされます、状況が変わりますから。だから、スタートはわかると思います、社会保険労務関係の方で調べれば。ただ、いつまでで終わるかというのは、これはきちんと明示はしてないので、そこは、今、できるだけ多くの会社が先ほど申し上げたような努力義務を果たしてもらうように促進をさせたいと思っております。

山井委員 大臣、ちょっとここは大事なところなので、ぜひきっちり答弁してほしいと思います。

 今まで努力義務で、ほとんどまだまだ進んでいないんですよ、残念ながら。それをこれから頑張るといったって、頑張るでは全国の女性は私は納得しないと思いますよ。今までも頑張ってこられたんですよ、厚生労働省はそれなりに。でも、この法体系の中では限界があって、普及していないんですよ、その紙が。それに、今、台帳の中には書いているって、そういうことを言っているんじゃないんですよ。育児休業をとった女性が手元に紙を持っていることが大事だと言っているんですよ。

 どうですか、大臣。せめて育児休業をいつからいつまでとっているという紙一枚、やはり本人に持ってもらえるようにするということは大事だと思いませんか。

舛添国務大臣 ですから、口頭じゃなくて紙で双方がきちっと持っているというのが望ましい、それはそのとおりです。

山井委員 そのとおりですよね。現状はそうなっていないんですよ。現状はそうなっていないから、私たちは今回修正案も出して、そういう書面を、復帰後の労働条件があるなしはさておき、とにかく、少なくともいつからいつまで育児休業をとっているという書面を事業主が労働者に出すことをやはり義務づけるべきなんじゃないか。いい会社は出す、でも悪い会社は出さない、それではだめなんです。

 さらに、私たちは今回、二十一条の二項の義務化に関しては、百人以下の中小企業に関しては確かに負担が大きいということで、三年間の猶予期間、経過措置、三年後の実施ということにしております。

 ですから、大臣、改めて御答弁をいただきたいんですが、こういう育児休業確認書、あなたは何月何日から何月何日まで育児休業をとっています、この紙一枚を事業主が本人に出すように義務づけていく、このことについていかが思われますか。

舛添国務大臣 これは山井修正案ですよね。修正案というか、ただ、育休切りに遭っている女性の立場で私が申し上げると不十分なんですよ。労働条件はさておきとおっしゃいましたが、さておいちゃだめなんですよ。今までパソコンをやっていて、パソコンをやりたいといって帰ってきたら営業に回されたら、それなら嫌だということになるから、だから労働条件をどう書くかということが大切なんです。非常に妥協の才がおありになるので、期間だけで山井修正案が出たので、これなら乗ってもいいかなと思わなくもないんですが、もうちょっと議論しましょう。

 ところが、一年たって、出産というのは女性にとって大変大きな仕事ですから、体も大変ですし、生まれてきた赤ちゃんを育ててみてどうだ、その間に自分の連れ合いの状況がどう変わったとかいろいろあるから、やるならば、そのときの労働条件の変更がフレキシブルにできるという担保が片一方である必要がありますよということなんです。ちょっと意地悪に私が言っているので、悪意にとらないでくださいね。山井さんは素直だから大丈夫だと思いますけれども。

 だから、今、一つ最低ここに行こうというのを、修正案的なことをおっしゃったので、それも含めて、私がここで決めるわけじゃありません、私は私の考え、役所の考え方や問題点を言いますから、これは委員の先生方が決める。国権の最高機関で、皆さん方が国民の代表ですから、そこでお決めいただければいいというふうに思います。ただ、非常に重要な問題提起だというふうに思います。

 それで、そこまで言えば、育児休業の期間だってフレキシブルである必要があるかもしれません、本人の状況によって。だから、期間、労働条件、ポスト、労働条件の中にポストとか給与とかそういうことも全部含みますけれども、そういうことに対して、変更があっても、労働者側の意向が十分反映されて不利益にならないような形での紙にするにはどうすればいいか、これがポイントだと思います。

山井委員 半分ぐらい認識は一緒です。

 確かに私の言ったことが多少誤解を招いたかもしれませんが、復帰後の労働条件はさておきというのは、これは育児休業法でそもそも不利益な取り扱いはだめと規定されているわけですから、書くまでもない。そこを不利益な取り扱いをしたら違法になるわけですからね、だからそのことは言ったわけであって。

 ですから、大臣もおっしゃるように、やはり理想は原職復帰ですよ、もとの職に復帰する、ただ、理想の原職復帰を明記できない、確かにそういう事情もあるかもしれないから、そこに関しては育休法の、そもそもの法律に書いてあることだからおいておいて、やはり期間を明示する。問題は、育休をとった人のすべてにその紙が行くように私はすべきだと思うんですね。

 ですから、私はなぜここにこだわっているかというと、労政審でもさまざまな議論があった上で今回の改正案が出てきております。そこの中で予算がかかる大きな修正というのは、それはなかなか予算がかかることは難しい面もあるんじゃないかというのは私もわかります。ただ、問題は、紙を一枚出す、あなたは何月何日から何月何日まで育児休業をとっていますよ、それで、まさに舛添大臣がおっしゃったように、そのことが逆に労働者の不利益にならないような形で出す。この紙切れ一枚ぐらい出すということがこの国会で育児休業切りの、あえて言うならば足がかり、手がかりですよ。足がかり、手がかり、それぐらいができないんだったら、本当に何のために国会が存在しているのかということも私は思うわけです。

 大臣、育児休業の期間を書いた紙をすべての労働者にやはり持たせるべきじゃないか、このことについて改めて答弁をいただきたいと思います。

舛添国務大臣 山井さんも私も最大の問題意識は、育休ということを理由に解雇される、そのことをいかに阻止するかということに尽きますね。

 そうすると、十条を使う。これは、不利益取り扱いはいけませんということを言ってある。それから労働契約法の十六条、合理的な理由のない解雇はだめだと言ってある。こういうものの法の趣旨を貫徹させるためにどういう手をとるか。

 今、山井さんや郡さんがおっしゃったのは、きちんと紙を義務化すること、これが非常に強力な武器になるだろうと。それは認めます。そういう方向で努力はしたい。しかしながら、片一方で、何度も申しますけれども、労働者がそれで不利にならないような担保をつけることと、現実にそういう紙が非常にまだ普及していませんから、一気にそういうところまで持っていくと、今度は政策の現実性として、もっと言うと実現性として本当に可能なんだろうかということもあります。

 ですから、こういうことをちょっと議論して、どういう形で取りまとめができるのか、これは皆さんのお知恵も拝借したいと思います。しかし、今こうしてみんなで真摯にこの問題を議論していること、国会の委員会でこういう議論をしているということ自体、それだって、育休切りは許さないよということの大きな一つの柱になると思いますから、そういうことを含めて、さらに議論を深めたいと思います。問題意識は共有しております。

山井委員 私は、今求められているのは言葉じゃなくて行動だと思うんです。同情するなら紙をくれじゃないですけれども、幾ら頑張りますと言ったってだめなんですよ。やはり、自分の育休の後復帰できるための足がかり、手がかり、お守り、新たにそういう物がないと、国会で育休はだめですねとみんなで議論をしました、頑張ってくださいよと言ったって、これは残念ながらだめですよ。

 ですから、そういう意味では、こういう育休切りについての審議をする以上は、私たち国会は、絶対に育休切りは悪だ、女性の人生を壊すぐらいの悪なんだ、罪悪なんだという明確な意思を、紙切れ一枚という形であれ、私は出していく必要があると思うんです。

 大臣の育休切りは絶対だめなんだという決意がちょっとまだ感じられないんですよ。そこをもっと決意を、育休切りをなくしていくんだという、大臣が責任者なんですから。お願いします。

舛添国務大臣 それは、しっかりした決意を持ってやりたいと思います。物を出した、しかしその物が効果的でないと、有効でないといけないと思うので、その物、ブツと言うと言葉が悪いんですけれども、そのツール、道具についてもう少し議論をしたいと思います。

 しかし、こういう雇用情勢が悪くなる、経済情勢が悪くなるときに、一番弱いところにしわ寄せが行くんです。そして、片一方で少子化対策ということでこども基金一千億円を二千五百億円に上げましたと言いながら、片一方でこういう問題について本格的に取り組まないというのは政府としての責任を放棄していると思いますから、私はしっかりとそういう思いで頑張ってやりたいと思っておりますので、ぜひ委員の皆さん方、党派を超えて御議論をいただいて、そして先ほど民主党、社民党、国民新党の皆さんの共同提案の案も出ております、政府の案も出ております、両方の案をよく審議していただいて、育休切りは許さないんだ、そしてこういう経済情勢の犠牲にしないんだということを法律の形できちんと実現させていただきたいと思っております。

山井委員 もう時間が来たので終わりますが、やはり自戒を込めて言うならば、国会というところには女性の声や子供の声、特に子育てをしているお母さんの声というのはなかなか届かないんです。先ほど郡さんもおっしゃいましたが、実はきょう、育休切りの被害者の方も聞きに来たいとおっしゃっていました。しかし、やはり子供が熱が出たとかそういうことで、なかなか国会に来られないんですよ。

 やはり、不況は不況としても、最も弱い立場にいる子育て中のお母さんや子供を思うお母さんにしわ寄せするということは、これは私たち衆議院厚生労働委員会の責任で何としても阻止をせねばならないと思います。どうかよろしくお願いします。

 ありがとうございました。

田村委員長 次に、高橋千鶴子君。

高橋委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 初めに、大臣に伺います。

 ことしは、七九年に国連で採択された女性差別撤廃条約から三十年目に当たります。

 日本が八五年に批准した同条約には、「母性の社会的重要性並びに家庭及び子の養育における両親の役割に留意し、また、出産における女子の役割が差別の根拠となるべきではなく、子の養育には男女及び社会全体が共に責任を負うことが必要」と明記をされております。「男女及び社会全体が」、こう強調されているところが非常に重要であり、今読み返しても非常に大きな意味が込められているなと思っております。

 しかし、この点が日本においてはまだまだ課題となっているのではないか。今回の法改正でも、仕事と子育ての両立支援、男女ともに子育てをしながら働き続けることができる雇用環境を整備するとあり、目的はいいけれども、実態はなかなか追いついていないと思います。

 よく言われる、育児休業取得率が約九割というけれども、出産を機に退職した人は七割近い。そこからいうと三割にも満たないのが実態であります。まして男性の育児参加は極めて少ない。

 大臣、差別撤廃条約に照らして、現状に対する認識を伺いたいと思います。

    〔委員長退席、上川委員長代理着席〕

舛添国務大臣 先ほど申し上げましたように、私は、まだこの国は改革をする余地はたくさんある、特に社会保障制度について言うと、まだまだ前に進めないといけない課題は山積している。ではどういう方法でやるのか。それは人々の価値観の変化をもたらすために制度設計を変更することも必要だと思いますけれども、そういう問題意識をしっかり持って厚生労働行政に当たりたいと思っております。

高橋委員 そこで、具体的な話を進めていきたいと思うんですが、資料の一枚目を見ていただきたいと思います。これは全労連女性部が、〇七年、妊娠・出産・育児に関する実態調査報告をまとめた中からの資料であります。

 〇一年以降、妊娠、出産した正規労働者一千八百人のデータをとって、その中で五人に一人が異常出産を経験しております。また、過去に流産の経験がありますか、こういう問いがあるわけですけれども、二割が経験をしておる、それも二回以上あるという方が四%を超えている。非常に衝撃を受けました。ここには働き方の問題がやはり大きく影響していると言えるのではないでしょうか。

 二枚目に、母性の保護について法律に明記された権利が取得されていますか、こうした問いに対して、多忙である、代替者がいないので請求しなかった、こういう理由で時間外労働の免除ですとか時間外労働の制限などがとれなかった。あるいは制度、権利を知らなかった、時間外労働の制限について知らなかった、四五%。こういう実態がございます。

 出産を機に退職した女性労働者の退職理由の第一が、体力がもたなそうだったというふうにありますけれども、復帰後の働き方への不安だけではなくて、これまでの働き方が反映されている、とても続かない、そういうことがあるのではないか。だとすれば、母性保護の観点から見ても、もっともっとその意義を強調し、理解を求めていく必要があると思いますが、いかがか。

 先ほど岡本委員からも提案があったんですけれども、私たちも前から提案をしておりました。例えば、母子手帳に育児休業制度の内容あるいは権利について明記をする、これを同封する、そういうことはすぐにもできることだと思いますが、お考えを伺いたいと思います。

村木政府参考人 先生御指摘のとおり、今、育児休業あるいは休業後の働き方だけではなくて、その以前からの働き方、それから妊娠した時期の母性健康管理、非常に大事な課題だろうと思っております。やはり制度を知らないという問題というのは、非常に我々も重要な問題、深刻な問題というふうに受けとめております。

 先生、今具体的に御提案をくださいました。母子健康手帳ですと、妊娠した方は皆さん自治体でそれをもらわれるということで、ここにいろいろなことを盛り込んでおくことは非常に大事だろうというふうに思っております。

 今、母子健康手帳は、記載を必ずするものと任意の記載事項とがありまして、必ず記載をするものについては政省令で、特に母性健康管理に直接にかかわることを書いてございますが、今、任意の記載事項として、働く妊産婦の方に認められたさまざまな制度、育休制度などについても通達の形でひな形、記載例をお示ししているところでございます。

 母子健康手帳にこういう情報を入れていくことは非常に大事だと思っておりますので、引き続き、きっちり記載例にこれを入れて、また改正があれば早くそれを内容に反映できるような形を考えてまいりたいというふうに考えております。

高橋委員 先ほど来、書面を取り交わすのが義務かどうかという議論がされておりましたが、この問題に関しては一切デメリットはないですので、これはもうかっちりとやっていただきたいと思います。

 私は、最初に大臣に女性差別撤廃条約との絡みで一言伺ったわけですけれども、機会均等だ、そんな口実のもとで、あるべき母性保護が逆にないがしろにされてきた、それがこの間の労働法制の改悪の歴史でもあった、やはりそうした思いがあるわけであります。そうしたことも改めてしっかりと、きょうは時間がないですので指摘はしませんけれども、検討課題としていただきたいと思っております。

 ここにもちょっと関係があるわけですけれども、資料の三枚目、四枚目を見ていただきたいと思います。

 先に四枚目を見ていただきたいと思います。これはエクスペディア・ジャパンという旅の会社であります。この会社が、日本を含めた主要十一カ国の有休の取得状況について調査したデータであります。つまり、有休がきちんととれていればもっと海外旅行なんかを利用してくれるだろう、旅行予約サービスなんかをとってくれるだろう、そういう思いで調査を重ねているところだそうです。

 ところが、これを見ますと、日本はまさしく世界で最下位であります。有休の平均付与日数は十五日で、これはアメリカより多いんですけれども、消化をしているのは八日しかない。こういう意味では最下位なわけですね。これはつけておきませんでしたけれども、実は、完全消化した率でいいますと八%にしかなりません。アメリカは六六%、イギリスは七九%と比べても、いかに日本が働き過ぎかということが指摘できると思うんです。

 前へ一つめくっていただいて、資料三に、昨年と比べて有給休暇がとりやすくなったか。感じないというのが七割を超えているんですけれども、その理由が、「仕事が忙しくなった」、「不況、経営状況の悪化で解雇の不安があるため休みにくい」が多いこと、ほかに「派遣切りのため人手が足りない」、「リストラで負担が増えた」という答えがあるのは非常に興味深いと思うんですね。きょう、まさに二極化という問題も言われているわけですけれども、派遣切りの横行と、そして残る社員に対する長時間労働、こうした問題を正面から見ていく必要がどうしてもあるだろうと思うんです。

 そこで、看護休暇の拡充や介護休暇の新設は歓迎するものです。しかし、長時間労働と有休の未消化、この問題が改善されなければ、せっかくの看護休暇をとったとしてもそれは有休に振りかわるだけだ、こうなってしまいますが、どのように取り組みますか。

村木政府参考人 先生御指摘のとおり、年次有給休暇の消化率、本当に日本は低い状況にあると思います。

 もちろん、これをしっかり完全消化ができるようにするということが非常に大事なことではありますが、今回、子供の看護休暇をふやしていく、それから介護についても短期の休暇を設けていく理由の一つには、実際にそういう立場にあるお父さん、お母さん方の中から、やはりまずお給料が欲しいので、子供が病気のときも年次有給休暇から使っていくという方がたくさんいらっしゃいますが、お子さんの病気が重なるとその年休もなくなってしまって、この後、では今度子供が病気になったらどうすればいいのか、自分が休める権利を主張できるものがないという声も聞こえてまいります。

 そういう意味では、もちろん有給の休暇が一番労働者の人にとってはありがたいことではありますが、せめても、子供が病気、それから家族の介護が必要というときに、無給でもいいから堂々と権利として休める、この休暇制度の充実というのは非常に大事なことということで、有休の完全消化とあわせて、こうした制度の充実も図ってまいりたいと考えているところでございます。

高橋委員 今局長がおっしゃったことは、まさに先ほど紹介した調査の中にも出てくるわけなんですね。つまり、年休を使い切っちゃっている人たちというのは、そのすべてを子供さんの病気で呼び出されるとか、あるいは運動会や学校行事、PTA、さまざまなことに費やして、それでも足りなくて、足りなくてというのは、看護休暇は今は五日しかないわけですから、はみ出ているわけなんですね。そういう状態なわけです。

 だとすれば、看護休暇を今おっしゃったような病気だけとしないで、家族のための行事の参加、こうしたものも休暇として認めるべきではないでしょうか。

村木政府参考人 子供を育てることに際して、一番困るのは病気のときということでございますが、この問題をいろいろ議論するときに、ほかにもどうしても親が休みたいときがある。

 特に審議会や研究会の中で声が大きかったのは、子供の健康診断ですとか予防注射でございました。またあわせて、確かに学校の行事というのも一般的に御希望としてはよく聞きますが、必然性の高いものとしてはそういった健康診断、予防注射がまずあろうかというふうに思っております。これは審議会でも、休暇の拡大について、子供の看護休暇の使途についてはこうしたものまで拡大をした方がいいのではないかというお話がございました。

 あと学校の行事等につきましては、健康診断や予防注射ほどの大きなニーズがなかったということと、それから非常に正直に申し上げれば、行事の持ち方も、お父さん、お母さんが働いておられるということを前提にした工夫もしていただきたい部分もあるというようなこともあって、これまでの検討としては、全部ではございませんが、一部、子供の看護休暇の使途の拡大を今回やった方がいいということで、そういう方向で検討したということでございます。

高橋委員 実はこの問題を担当者と議論したときに、結局、病気以外のもので対応できないのかといったときに、それは年休を使ってくださいと言うので、話が堂々めぐりするわけですよね。年休を使い切ってさらに足りないと言っているのに、年休で対応するしかないというのは、今お話があったように、問題意識は持っているんだ、ニーズがあるんだということだったと思うんですね。

 最初にお話をしたように、やはり本当に両立支援ということを考えるのであれば、言われている健康診断もそうですし、もっともっと必要な時間というのがあるんだということを実態に即して対応していただきたい。ここはすぐにでも見直しができることだと思いますので、要望しておきたいと思います。

 さて、次に、先ほど来、三党が出した修正案についての議論がありまして、我々も基本的には賛成をしているわけであります。今回は共産党が入れてもらえなかったということもあるわけですけれども、私たちは党としても修正案を準備しております。その中で、いろいろな項目がある中で非常に絞り込んで、現実的であるということで提案をしておりますので、少し意見を伺いたいと思います。

 育児休業や短時間勤務制度を利用したいという男性は三割を超える。その一方で、実際の取得率は一・五六%にすぎません。男性が育児休業を取得しない理由の大きなものとして、父親の給料が入らないと経済的に困る、これがあると思います。この間の非正規雇用の増大で、夫婦ともに正社員という世帯が減少していること、もともと男性と女性の賃金格差は五割から六割というように、まだまだ大きいのです。そういう中で、休業前賃金の五割しか保障されない中では家計が成り立たない。育児休業の取得をためらうか、あるいはとっても短期間になってしまうのが実態だと思います。

 そこで、今の休業の給付は五割でありますけれども、これに対して、せめて六割をやるべきだと思いますが、いかがでしょうか。

    〔上川委員長代理退席、委員長着席〕

太田政府参考人 お答え申し上げます。

 育児休業給付につきましては、休業を失業に準じた職業生活上の事故ととらえて雇用保険から支給するというのが現行の制度でございます。

 御指摘のように、この給付を六〇%にすることにつきましては、雇用保険制度の中心的な保険事故である失業に対して給付する基本手当の給付率が五〇%から八〇%となっておりますので、この五〇%を上回るということがございまして、失業中の者よりも高い給付率になり得るために、現在の雇用保険制度の中ではなかなか難しいという状況でございます。

高橋委員 なぜ雇用保険より上回るとうまくないんですか。

太田政府参考人 今御指摘の点につきましては、審議会の中でも雇用保険の負担者である労使の議論がございまして、その中で、やはり基本的には失業給付というものが雇用保険の中心的な制度である、そういう中心的な制度の基本手当の給付率が五〇%から八〇%でございますので、労使の議論としても、やはりそういう失業中の者よりも高い給付率になるというのはバランスを失するのではないか、こういった議論がございまして、六〇%にするのはなかなか難しいというコンセンサスがございました。そういうものを踏まえて、五〇%という給付率にしているところでございます。

高橋委員 今のお話は、要するに、どこから金を出すかという議論だと思うんですね。雇用均等の問題でもっと分野を広げなきゃいけないという議論が分科会である一方で、雇用保険の分科会では、それでは金がもたぬぞ、もっと何とか絞り込まなきゃいけないんじゃないか、あるいは、失業保険がベースなんだからそんなものは出せないんだ、そういう議論がされてきたことが今あるんだと思うんです。

 しかし、お金の出し方については、もし雇用保険会計がうまくないというのであれば、それは皆さんが検討すればいいことなんです。私が言いたいのは、復職し、育児しながら働き続けるための制度のはずなんです。それなのに、実際には休みをとると生活ができないから、やっていけないということになるのがおかしい。

 しかし、雇用保険料をこの方たちは払っているわけなんですね、払っている。しようがないわ、じゃ、やめますかといったとしても、出産のため、あるいは育児のために休んでいる人には雇用保険の給付がないじゃありませんか。そうしたら雇用保険料のただ取りになるわけです。

 そういう意味では、やはり続けて働いていく、その先もずっと雇用保険料を払って頑張っていける、そういうふうに考えるべきではありませんか。

村木政府参考人 少子化の問題、それから特に男性が育児休業をとる、女性が継続して就業するということを考えたときに、休業中の所得保障というのは本当に大事な問題だというふうに考えております。雇用保険財政の中では確かにやはり制約があるんだろうというふうに思っております。

 政府の重点戦略会議でこの問題を議論したときに、一つの試算ではございますが、スウェーデン並みの休業給付をしたら幾らになるだろうという試算を実はさせていただきました。財源をどうするか、子育てに関してこれからコストがかかることをいろいろやっていきたい中で、優先順位はどうなるのか、それから、きょうの質疑の中でも出てまいりましたが、自営業の方々とのバランスはどうなんだろうか、専業主婦の方とのバランスはどうなんだろう。

 いろいろな課題があるとは思いますが、安心して休めてまたきちんと職場復帰ができる、そのときの経済的な支援ということは非常に大事な課題であると思っておりますので、今、私どもの少子化特別部会という審議会で大きな枠組みを議論しております。そういったところの議論にもきょういただいた意見などを投げ込んで、しっかり議論をしていきたいというふうに思っております。

高橋委員 午前の部で議論があった自営業者の問題でいいますと、私たちは、前から国保に社保並みの出産手当をすべきだということをずっと要求しております。当然、そういう形で前進をしていくべきなのではないか。

 今回、男性の育児参加を強調するために、パパ・ママ育休プラスなどということを制度としてつくったわけですけれども、参考にしたのはドイツである。そのドイツが六七%の給付である。そうしたことから見ても、何か上物だけまねをするけれども中身が全然違うというのでは、やはり成果が上がらないであろう。そういう立場でしっかりやっていただきたい。

 問いをいっぱい残しましたので、こっちを向いて言いますが、また次の機会をぜひお願いして、終わりたいと思います。

田村委員長 次に、阿部知子君。

阿部(知)委員 社会民主党の阿部知子です。

 本日は、育児・介護休業法の第一回目の審議でございますので、そもそも論というか、この問題を考える場合の基本的な視点について、まず舛添厚生労働大臣にお伺いをいたします。

 一九七二年、いわゆる育児休業法が勤労婦人福祉法という名のもとに誕生し、そして八五年には雇用均等法、そして九一年が現在のいわゆる育児休業法が発足した年であります。この育児休業法から数えても十八年、そもそもの七二年から見れば三十七年たっておるわけですが、はてさて、私は、今回の改正法案で厚生労働省からいただきました資料を見ましても、やはり本当にこれでどうなるんだろうかととても懸念することがあるわけです。

 厚生労働省がおまとめになった短い文章の中にも、第一子出産前後の継続就業率は過去二十年間に変化がないというおまとめであります。過去二十年間に、出産を境として、就業が継続されている者、逆に言うと約七割の方は今もって、二十年たっても出産の半年後には退職する。六二%かもしれませんし、多少の誤差はあるでしょうが、ほぼ二十年間この構造が変わらない。そして、出産後半年たつと常勤の方が四七・六%、さらに五年たちますと常勤は三分の一ということでございます。いかに法律があっても、この遅々たる歩みでは時代の大きな状況変化に追いついていけない。

 そこで、まず大臣の政治家としての意思をお伺いしたいのですが、今、政治の中においては、例えば環境問題を論じますときにも、やはり目標値をきちんと設定して、そこから逆規定していかないとなかなか大きなチェンジはできないという時代であります。

 二十年たっても、出産を契機に七割の女性が離職していく。その前にやめちゃう方ももちろんあるんです、後ほど取り上げますが、育休切り等々でお産の前からあきらめねばならないという女性もいるわけですから。逆に言うと、出産を契機に働き続けられる方の数が極めて少ない状況を大臣はどうごらんになって、また時代の問題としては何が一番問題とお考えになるかを、まず冒頭、一点お願いいたします。

舛添国務大臣 今は経済雇用情勢が非常に厳しい、したがって育休切り、派遣切りのようなことが起こっておりますけれども、要するに、長期的に見たときに人口減少社会の傾向が、合計特殊出生率一・三七では今でもまだありますから、女性の労働市場への参加ということは絶対必要であるし、それから、女性の能力を最大限に引き出すということも社会にとって非常にプラスになる。そういう中で状況が改善しないというのは、これは困ったものであるわけですから、さまざまな政策を動員してそれをやっていかないといけない。

 それは、午前中も申し上げましたけれども、例えば三世代、つまりおじいちゃん、おばあちゃんたちが同居している、そういう中においては、かつてはむしろ働きに出やすかった。だけれども、そうじゃない夫婦だけの世帯のときに、では、だれが子供の面倒を見るんですか。それはやはり保育所の充実、さまざまな環境整備というのはどうしても必要だと思っていますので、特に子育て支援、これがおくれてきたのを今取り戻すべく努力をしている最中であります。

阿部(知)委員 私が一見抽象的に見えるこの問いを大臣にお伺いしたのは、今、世界的に見ても、あるいは特に労働問題で日本よりは少し先を行く、先ほど大臣が御紹介のEU、ヨーロッパ諸国をとってみても、女性の生涯にわたる低賃金とそれが帰結するところの低年金、さまざまな社会保障政策において、女性の貧困という問題が実は大きな時代テーマになっているんだと私は思うんですね。

 年末に大臣が御尽力いただいたいわゆる日比谷の派遣のテント村問題では、メディアに見えるものが男性の方であった率が高いわけですが、実は、この社会に深く静かに進行しつつあるのはやはり女性の貧困化、それは生涯にわたる貧困。すなわち、仕事が途中で中断する、あるいは非正規になる等々によって生涯賃金も少ないですし、当然、その方が暮らしていけるだけの将来の年金を持たないという問題なのだと思います。

 それゆえに、私は、この育児休業という問題を単に出産という点だけにとどめるんじゃなくて、女性全体の働き方、賃金の問題の中で、当然権利として産むことを選び取る権利がどう担保されるかということに、この際、視点を変えて、時代目標を逆に目標設定からおろしていくというふうにした方がいいんじゃないかとこのごろ思うのですね。

 何でこういうふうに思うようになったかというと、実は、EUでは、五十五歳から六十四歳の女性の雇用率を最低五〇%に上げるという行動計画を二〇一〇年までに、EU指令の中でとっておるわけです。女性全体の雇用率は最低六〇%。これは、時代をどう読むか、敏感にどう読んでいくかというときの私はキーポイントだと思うんです。そこにあって、出産を契機に七割の方がやめていってしまっていたら、その後、当然、再就職も難しい、先ほど言った低賃金になる。これでは、この次の時代自身がもたないのではないかという問題意識であります。

 大臣には、特にヨーロッパのこと等もお詳しいですから、もう十分おわかりと思いますので、この点、日本でも例外ではありません。今でも例えば農村部で、国民年金で三万円、四万円の女性たちのいわば貧困というか問題が大変深刻な事態ですから、これを繰り返すことのないような、先取りした政策をぜひお願いしたい。

 そうした観点に立って、今回の法改正についてお尋ねをいたします。

 これまでとられてきた二十三条に基づく七つの選択的措置義務のうち、二つを義務に位置づけて、そして残る五つは努力義務に引き下げました。内容は先ほど御質疑がありましたので繰り返しませんが、この中で特に私が気になるのは、五つの努力義務に引き下げられた中に実は保育所があるわけです。企業は、例えばフレックスタイムをとるとか、あるいは労働時間の短縮をするとか、所定外労働の禁止をするとか、前は七つの選び方のうち、その一つが保育所でした。

 実は、保育所問題は、先ほど村木さんの御答弁でも、今度の安心こども基金で十五万人とか言われておりますが、それでもまだまだ足りない。そして実は極めて、一番と言っていいほど私は深刻なんだと思うんです。労働時間を縮めてもらっても、私自身もそうやって働いてきましたけれども、預ける場所がまず本当にないんですね。本当にこれは苦労いたします。

 そこで、施設内の保育所を努力義務におろすということが、私は何も努力義務にしなくても、選択的に二プラス一とか置いておけば十分いいじゃないかと思うわけですよ。大臣、それくらい実は数値的にはまだ充実していないんです。これまでの七つのうちの一つでも、一番施策として取り上げられていない、だけれども、絶対になくちゃどうにもこうにもならないということですね。

 例えばですが、省庁でも文部科学省には施設内保育所があると聞きました。さて、厚生労働省はいかがでしょうか。優秀な女性職員もおられるし、男性職員も遅くまで働いてもらって申しわけないし。でも私は、まず隗から始めよ、文科省にできるんだったら厚労省だってできるかもしれないと思うわけですが、大臣はどんなふうにお考えですか。

舛添国務大臣 私は、ちょうど国会議員になってから生まれた子供がいますから、本当に保育で苦労したので、参議院の中にないのはおかしいじゃないかと言って、そうしたら、それは議院運営委員会の話だからと。私も、まず隗より始めよと言ったら、御高齢の議員の方が多くて、おまえはその年でつくるとは何事かみたいな話をされちゃって、ちょっと消えちゃったんですけれども。

 ただ、前置きは半分冗談としても、問題はこうなんです。

 では、自分の子供を厚生労働省に連れてくるかだけれども、満員電車に揺られて朝忙しいときに連れてくるなら、駅前に保育所があったらそこに置いて、自分のうちから歩いて五分ぐらいの駅前、それの方がいいだろうという感覚なんです。それで、あしたの国会答弁を書かないといけない、真夜中までお母ちゃんどうしているのということになって、それは、山井さんの答弁を書くのに、あなた、夜中の十二時に子供が帰れないじゃ、これはやはりかわいそうだから、そうしたら、だんなの方がサラリーマンで、駅前で連れて帰る方がいいので、こっちの方がいいような気もします。

阿部(知)委員 確かに、駅型保育の充実はお母さん方の声も高いです。でも、私の今の質問、ちょっとよく聞いていただきたいんです。

 文部科学省だって満員電車に乗ってくるんだと思うんですよ。省庁の中で文科省が先で厚労省がないというのは、こういう子育て支援の旗を振りながら、あんたのところどうなってるのよと言われかねないのじゃないか。

 私は何も、恵まれたところだけ施設内保育所があればいいとは全然思わないけれども、それでもやはり大前提なんですよ。働くということの前提の保育施設が余りにも乏しいです。駅型保育も充実してほしいし、もっと無認可にも手厚い補助をしてほしいし、そして待機児童は何と六十万とか九十万とか試算されていますでしょう。本当に今は、ライフスタイルというか、考え方を変えてモデルを変えるくらいの格段の取り組みがないといけないと思います。

 なぜ文科省にあって厚労省にないのか、もし御答弁があれば。

舛添国務大臣 参議院につくろうとして私が先輩の議員に怒られたもう一つの理由は、おまえ、ばかなことを言うな、国会議員だけ先にそんな優遇措置をとったら徹底的に国民にたたかれるぞと。

 厚生労働省だけ先にしたら、まず隗より始めよということと、何でおまえたちだけ特権的に先にやるんだ、そういう声が必ずメディアは、たたこうとして構えているメディアがいますから、何をやってもけちをつければいいと思っている人たちがいるんですよ、よくおわかりだと思います。だから、そういう点についてもやはり考えないといけない。

 私は大賛成ですよ。大賛成ですけれども、半分の危惧はそこなんですよ。何で中小企業にないのに、おまえ、厚生労働省だけ先につくるんだ。だから、こういうような足の引っ張り合いみたいなことをやらないで、厚生労働省がつくったね、じゃ、うちの会社もつくろうね。どうか、こういういい雰囲気を阿部先生とともにつくりたいと思います。

阿部(知)委員 おっしゃるとおりです。

 今の政治はビジョンがやはりなくて寂しいです。批判だけはできても、その次をお互い提案しないと。お互いだと私は思います。そこをしっかりやっていける政治かどうか、少子化問題はそのいい試金石なんだと思います。よもやメディアの人も、厚労省に保育所をつくったからってたたきはしないですよ。(舛添国務大臣「どうかな」と呼ぶ)大臣、そんなところでこの論議をしたくはないので。でも、それくらい、だって九十万人、ほかにも保育施設を大臣がつくると言えばいいんですよ。それで解決するじゃないの。

 同じことで言わせてもらいますと、EUの第六次行動計画、ジェンダー平等行動計画では、ゼロから三歳児の子供の三三%が保育所に入れるようにするという計画なんですね。これも数値をぼんと出しちゃうんですよ、そこまでみんなでやろうという。

 私は、今の政治がもしひがみとかやっかみに陥るとしたら、やはり目標が明確でない、国民へのメッセージが明確でない、そして、やるべき一番厳しいところに手をつけないからだと思います。この問題だけは、時代の大きな試金石ですから、大臣にはまた深く考えていただきたい。

 そしてもう一つ、あと五分になってしまいました、本当はあとまだ四題もありますが、ちょっとそれでは飛ばさせていただきまして、今度は有期労働者の育児休業というところに行きたいと思います。

 大臣のお手元に、育児休業給付の期間雇用者の支給状況というのをお配りしてございます。二〇〇四年の法改正で、いわゆる有期労働の皆さんにも育児休業が取得できるという制度が発足いたしまして、ここでごらんのように、平成十七年度から十八、十九と一番右端を見ていただきますと、期間雇用者の中でも育児休業をとれる機運が少しずつではあれ高まってきていたのかに思います。

 しかし、ちょっと時間がないので言ってしまいますが、何と、平成二十年度はがくんと減って四千八百二十三。その前年度が六千五十二です。私は、この数値は誤差範囲を超えて意味があるし、大変に憂うべき事態なんだと思うんです。

 きのう省庁にお願いして、上半期と下半期も分けてみてくださいと言いましたところ、下半期の方がよりさらに減っているわけです。せっかく法律もできた、有期雇用の皆さんにもとっていただきたい、だけれども減っていってしまっています。

 このことについて、大臣は一体これをどう見るのか、この点についての御所見をちょっと伺わせていただきたいです。

舛添国務大臣 それは基本的に、経済情勢、雇用情勢の悪化が背景にあると思います。

阿部(知)委員 経済情勢、雇用情勢の悪化はだれしもそう思っているんです。でも、それで急速にこれだけ減ってしまうということの中には、先ほど来、例えば高橋議員もお尋ねでありました、もともとの労働者の労働現場における諸権利の履行、当然、権利として育児休業はあるわけですから、それがうまく取得できない状況がある。だって、景気が悪くなるのは労働者側のせいじゃないですから。景気を理由に首を切るのは事業主の側ですよ。しかし、それを守るためにも育児休業法とか男女雇用均等法とか法律ができて、その法にのっとってせめぎ合っていくわけですよ。これじゃ負け続けになってしまいますね。

 大臣、景気が悪いのはみんなそう思っているんです。だけれども、その中でも、やはり権利としてこれが取得されるために何をすればいいかということなんだと思います。

 私は大臣にちょっと次のページをあけていただきたいんですけれども、ここには育児休業法五十六条に基づく助言、指導件数というのを各都道府県別に挙げてもらいました。これを見ましても、助言、指導、勧告となっている中で、非常に都道府県のばらつきがございます。

 例えば、宮城県などは千三百二十四の助言で、指導が八百二十七、秋田も同様に、比較的指導の件数が多うございますが、東京とか千葉とかは非常に指導も少ない。これは、私も各地方労働局で聞いたわけではございませんけれども、雇用均等室の仕事としてやはり見直してみる必要があるデータではないか。大臣が言ったように、これは景気が悪いからどんどんとれないんだよと言われちゃったら、もう何もこんなところで今法改正したってしようがないよとなっちゃいます。

 現実に、これは一部のデータです、例えばそのほかにも育児休業法違反でいろいろな助言に入った例とか、あるいは雇用均等法に基づいて、出産とか妊娠を契機にいろいろ不法なことが起きて指導、助言が入った例も厚労省から挙げていただいておりますが、私が思いますに、やはりこれは雇用均等室がいかにワークしておるか、その仕事内容、人員は果たしてどうなのかということについて、厚生労働省として真剣な見直しをまず大臣にお願いしたいんですね。それが一点。

 それと、今回の法改正では、実は育児休業法においても雇用均等法と同じような調停制度を入れると言われていますが、現状の仕事量と、どんなことをしているかわからなくて人員はどうなるんだろう。やはり人が担うわけですから、この点について、大臣、どうお考えでしょうか。二問続けてお願いします。

舛添国務大臣 ちょっと真っすぐお答えすることにならないかもしれませんが、今、厚生労働省の分割の議論が出たり引っ込んだりしていますけれども、私が申し上げているのは、きょう一日の議論を通じて、仮にその議論からだけ分割論を言うとすれば、労働省というのを強力な役所にして独立させる、そして、そのトップにつく大臣というのは超重要閣僚がつく、そして、今言ったような手足になるところも徹底的に人をつけてやっていくということはある意味で必要だというように思っています。

 私は、かねてから言っているように、分割案は二つでなくて三つで、一つは年金省を独立させる、そして医療や今の厚生省、そして労働省。ずっと議論をしているように、なぜ労働法制についての定着がないかといったら、労働省が弱かったんですよ。マイナーな省庁であり続けてきた。今、こういう時代において労働省の役割というのは極めて大きくなっております。

 だから、私が仕事が大変だから三つに分けたらとか四つに分けたらとか、そういうレベルの話じゃないんですよ。国民のために何をすればいいかというときに、今皆さんがごらんになっている、この阿部さんの表を見てもわかるように、これだけのばらつきがある。では、均等室をどういうふうに改革していくのかという問題もありますし、二番目の問題にしても、それは人の手当てということがあるので、ぜひそういう形で、国民のためになるような霞が関の再編ということを考える必要がある。

 きょうの議論で私が思ったのは、今の阿部さんの話も聞いていてそうですが、やはりせっかく国会の場でつくったすばらしい労働法制の一連の体系があるわけですから、これをインプリメント、具体化するための強力なマシンが必要だな、そういうふうに思っております。

阿部(知)委員 大臣のお考えを御披瀝いただきまして、ありがとうございます。人員の配置等々、引き続いて聞かせていただきます。

 ありがとうございました。

田村委員長 次回は、来る十二日金曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時六分散会


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