衆議院

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第18号 平成22年4月14日(水曜日)

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平成二十二年四月十四日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 藤村  修君

   理事 青木  愛君 理事 石森 久嗣君

   理事 内山  晃君 理事 黒田  雄君

   理事 中根 康浩君 理事 大村 秀章君

   理事 加藤 勝信君 理事 古屋 範子君

      相原 史乃君    稲富 修二君

      小原  舞君    大西 健介君

      岡本 英子君    加藤  学君

      金子 健一君    菊池長右ェ門君

      京野 公子君    工藤 仁美君

      郡  和子君    斉藤  進君

      園田 康博君    田名部匡代君

      田中美絵子君    津島 恭一君

      長尾  敬君    仁木 博文君

      初鹿 明博君    樋口 俊一君

      福田衣里子君    藤田 一枝君

      細川 律夫君    三村 和也君

      三宅 雪子君    水野 智彦君

      宮崎 岳志君    室井 秀子君

      山口 和之君    山崎 摩耶君

      山井 和則君    横粂 勝仁君

      あべ 俊子君    菅原 一秀君

      田村 憲久君    武部  勤君

      棚橋 泰文君    長勢 甚遠君

      西村 康稔君    松浪 健太君

      松本  純君    坂口  力君

      高橋千鶴子君    阿部 知子君

      柿澤 未途君

    …………………………………

   厚生労働大臣       長妻  昭君

   厚生労働副大臣      細川 律夫君

   厚生労働副大臣      長浜 博行君

   総務大臣政務官      小川 淳也君

   厚生労働大臣政務官    山井 和則君

   厚生労働大臣政務官    足立 信也君

   政府参考人

   (厚生労働省保険局長)  外口  崇君

   厚生労働委員会専門員   佐藤  治君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月十四日

 辞任         補欠選任

  岡本 英子君     三村 和也君

  菊田真紀子君     稲富 修二君

  園田 康博君     横粂 勝仁君

  田名部匡代君     津島 恭一君

  福田衣里子君     金子 健一君

  藤田 一枝君     工藤 仁美君

  山口 和之君     菊池長右ェ門君

  江田 憲司君     柿澤 未途君

同日

 辞任         補欠選任

  稲富 修二君     加藤  学君

  金子 健一君     福田衣里子君

  菊池長右ェ門君    山口 和之君

  工藤 仁美君     藤田 一枝君

  津島 恭一君     田名部匡代君

  三村 和也君     岡本 英子君

  横粂 勝仁君     京野 公子君

  柿澤 未途君     江田 憲司君

同日

 辞任         補欠選任

  加藤  学君     小原  舞君

  京野 公子君     園田 康博君

同日

 辞任         補欠選任

  小原  舞君     菊田真紀子君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 医療保険制度の安定的運営を図るための国民健康保険法等の一部を改正する法律案(内閣提出第二八号)


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     ――――◇―――――

藤村委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、医療保険制度の安定的運営を図るための国民健康保険法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、本案に対し、青木愛君外一名から、民主党・無所属クラブ及び社会民主党・市民連合の二派共同提案による修正案、大村秀章君外一名から、自由民主党・改革クラブ提案による修正案並びに古屋範子君外一名から、公明党提案による修正案がそれぞれ提出されております。

 提出者より順次趣旨の説明を求めます。青木愛君。

    ―――――――――――――

 医療保険制度の安定的運営を図るための国民健康保険法等の一部を改正する法律案に対する修正案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

青木委員 ただいま議題となりました医療保険制度の安定的運営を図るための国民健康保険法等の一部を改正する法律案に対する修正案につきまして、民主党・無所属クラブ及び社会民主党・市民連合を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。

 修正の要旨は、原案において「平成二十二年四月一日」となっている施行期日を「公布の日」に改めることであります。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。(拍手)

藤村委員長 次に、加藤勝信君。

    ―――――――――――――

 医療保険制度の安定的運営を図るための国民健康保険法等の一部を改正する法律案に対する修正案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

加藤(勝)委員 ただいま議題となりました医療保険制度の安定的運営を図るための国民健康保険法等の一部を改正する法律案に対する修正案につきまして、自由民主党・改革クラブを代表して、その趣旨を御説明申し上げます。

 後期高齢者医療制度の廃止をマニフェストに掲げて政権の座に着いた民主党中心の鳩山連立政権は、これを直ちに廃止するとの国民との約束を翻したばかりか、制度の廃止とセットである新たな高齢者医療制度は検討中と先延ばしにし、明らかなマニフェスト違反を続けております。

 このような中で、今回の改正案では、協会けんぽの急激な財政状況の悪化を受けて国庫補助率を引き上げようとしましたが、必要な財源が足らず、後期高齢者医療制度の基本である支援金に総報酬割をなし崩し的に導入して、健保組合等に財源の肩がわりを一方的に押しつけようとしています。このようなことに対して健保組合関係者は、当然のことながら強く反発しております。

 後期高齢者医療の支援金制度を改正するならば、少なくとも新たな高齢者医療制度の骨格を示すべきです。このような理念のない制度改正は直ちに撤回すべきであります。

 また、サラリーマンの給与収入が大幅に減少し、今後数年間においても改善する見通しが立たない中で、今回の改正案では、協会けんぽの保険料率について、平成二十二年度には一・一%、年額にして一人当たり約四万二千円の負担増になります。さらに平成二十四年度にかけて一%弱という大幅な引き上げを認めており、その上、保険料率の法定上限までも千分の百二十まで引き上げようとしています。保険財政の悪化に対して、保険料引き上げの先行で対応しようとすることは、長引く不況で苦境にあるサラリーマンにとって不適切な対応であり、国民の生命、健康に直結する医療保険の保険料負担を際限なく引き上げようとする今回の改正は、到底納得できるものではありません。

 まずは、協会けんぽに対する国庫補助率を法定上限である二〇%まで直ちに引き上げるべきであり、負担増にあえぐ中小企業に対しては、国の責任においてその負担を抑制し、国民皆保険を堅持していく姿勢を示す必要があるのではないでしょうか。

 その上で、現下の厳しい社会経済情勢に対応すべく、医療保険全般にわたる財政のあり方について、早急に検討を行うべきと考えております。

 本修正案は、このような考え方のもと、小手先の改革による負担のツケ回しをやめ、サラリーマンの方々等の保険料負担については現状の負担水準を維持するための必要な費用は国庫が負担するとともに、保険財政の立て直しに向けて、高齢者医療のみならず医療保険制度全般について早急に検討を行うなど、国民皆保険の堅持に向けて国があらゆる努力を尽くしていこうとするものであり、その主な内容は以下のとおりであります。

 第一に、被用者保険の後期高齢者支援金への総報酬割の導入を取りやめること。

 第二に、平成二十二年度において、協会けんぽに対する国庫補助割合を二〇%に引き上げること。

 第三に、国庫は、平成二十二年度において、協会けんぽの保険料率を平成二十一年度の保険料率と同率に据え置くことができるよう、平成二十一年度末の借入金残高の全額の償還に要する費用を含め、協会けんぽの事業に要する費用に充てる財源の不足額を補助すること。

 第四に、協会けんぽの保険料率の上限の引き上げを行わないこと。

 第五に、政府は、平成二十二年度において、高齢者の医療費の負担のあり方、協会けんぽ財政のあり方を初めとする医療保険全般の財政のあり方について、各医療保険や国の財政状況等を勘案して検討を行い、その結果に基づいて所要の措置を講ずる検討規定を設けること

等であります。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。(拍手)

藤村委員長 次に、古屋範子君。

    ―――――――――――――

 医療保険制度の安定的運営を図るための国民健康保険法等の一部を改正する法律案に対する修正案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

古屋(範)委員 ただいま議題となりました医療保険制度の安定的運営を図るための国民健康保険法等の一部を改正する法律案に対する修正案につきまして、公明党を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。

 私どもは、現在の厳しい社会経済情勢において、財政状況の悪化に苦しむ市町村国保を初めとする各医療保険制度に対して、国等が財政支援策を講じて、できる限り保険料の上昇を抑制しようとする本法律案の基本的な姿勢については、一定の評価をするところであります。

 しかし、後期高齢者医療制度の廃止を掲げ、政権交代を果たした鳩山内閣におきましては、後期高齢者医療制度の廃止を新たな高齢者医療制度の創設と同時に行うとの方針転換を行いました。このため、来年の通常国会への法律案提出を目指し、政府内で新たな高齢者医療制度の検討が行われているところでありますが、このような中で、突然、後期高齢者支援金の一部に総報酬割を導入し、協会けんぽの財政支援のためとはいえ、それによって健保組合等の方々に負担を肩がわりさせるという提案については、到底納得が得られるものではありません。これまで、医療費の適正化等に積極的に取り組み、医療保険制度を支えてきた健保組合の役割、努力を無視することになります。

 主に大企業の従業員を対象にしているとはいえ、健保組合の財政状況は悪化の一途をたどり、今年度では約九割の組合が赤字になると見込まれる状況であり、協会けんぽの負担軽減分を一方的にお願いすることは適切な選択とは言いがたいのではないでしょうか。

 私ども公明党は、このような状況にかんがみ、国民皆保険を支えてきた健康保険組合の関係者、加入者の方々の努力にも報いるべく、後期高齢者支援金の一部の算定方法に総報酬割を導入することをやめ、一方で、保険料負担の増加について協会けんぽの加入者の方々について理解を得られるよう、協会けんぽの国庫補助率の引き上げについては原案のとおりとして、必要な財源は国が負担すべきと考え、本修正案を取りまとめたところであります。

 本修正案の概要は以下のとおりであります。

 第一に、被用者保険の後期高齢者支援金への総報酬割の導入を取りやめること。

 第二に、政府は、財政力の弱い健康保険組合の後期高齢者支援金及び前期高齢者納付金に係る負担の軽減を図るため、高齢者の医療に要する費用に係る国庫負担のあり方について検討を行うこととする検討条項を設けること。

 以上であります。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。(拍手)

藤村委員長 以上で各修正案の趣旨の説明は終わりました。

 この際、大村秀章君外一名提出及び古屋範子君外一名提出の両修正案について、国会法第五十七条の三の規定により、内閣の意見を聴取いたしたいと存じます。長妻厚生労働大臣。

長妻国務大臣 衆議院議員大村秀章君外一名提出の医療保険制度の安定的運営を図るための国民健康保険法等の一部を改正する法律案に対する修正案及び衆議院議員古屋範子君外一名提出の医療保険制度の安定的運営を図るための国民健康保険法等の一部を改正する法律案に対する修正案につきましては、政府としてはいずれも反対であります。

    ―――――――――――――

藤村委員長 この際、お諮りいたします。

 原案及び各修正案審査のため、本日、政府参考人として厚生労働省保険局長外口崇君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

藤村委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

藤村委員長 これより原案及び各修正案を一括して質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。高橋千鶴子君。

高橋(千)委員 おはようございます。日本共産党の高橋千鶴子です。

 きょう、初めてトップバッターを務めますので、よろしくお願いをいたします。

 一昨年の十一月十九日の本委員会における後期高齢者医療制度廃止法案、あの質疑の会議録を改めて読み直しました。衆議院でこの法案が審議をされたのはたった一回であり、残念ながら、昨年の解散・総選挙で廃案になりました。しかし、当時、長妻大臣も山井政務官も激しく政府を追及し、直ちに廃止を求めておりました。

 今さら一々、このときこう言ったじゃないかということは申しませんけれども、余りにも変わり過ぎたのではないかと残念でなりません。本当に廃止するつもりがあるのだろうか、いや、もともと廃止するつもりはなかったのではないかと、この間の議論は疑問を持たざるを得ません。

 あるいは、このときの議論が一回で終わってしまった原因は、廃止後の制度設計についてまでは提出した各党がすり合わせをしていたわけではなかった。まず一たん戻そうということが目的であったわけですけれども、議論がそこに入ってしまい、民主党さんはみずからの案を盛んにお話しされました。都道府県単位で一元化というような、新しい制度をつくりたいということが主張されて、聞いていると、当時の舛添大臣の私案とどこが違うのかなということもわからなくなりました。これでは、昨年あれほど後期高齢者医療制度廃止に期待を託した有権者の思いにどうこたえるつもりなのか、やはり納得がいかないわけであります。

 そこで、まず最初に大臣にお聞きしたいと思うんですが、一昨年、私ども野党四党が提案した後期高齢者医療制度廃止法案は、参議院で可決をされました。その当時、民主党の提出者などは繰り返し医療費抑制ありきが問題なんだという指摘をしておりました。私も同じ認識でありますが、大臣は今も同じ認識であるということでよろしいでしょうか。

長妻国務大臣 私は、今もそういう懸念があるという認識でございます。

 そして、この後期高齢者医療制度にかわる新しい制度ということでございますけれども、先ほどもお話ございましたが、我々は選挙前のマニフェストでも、四年以内に後期高齢者医療制度を廃止するというのを工程表の中で明記しているところでございまして、そのマニフェストの工程表に従って今検討を進めているということであります。

高橋(千)委員 懸念があるという表現はなかなか微妙であって、医療費抑制ありきと言い切れるのかどうかというところが、ちょっとやはり含んでいるのかなという気がするんですけれども。

 しかし、医療費抑制の懸念があるということでありますので、その当時非常に問題になった、また提出者の方も繰り返しお話しされたのが、医療費適正化計画の問題でございました。高齢者の医療の確保に関する法律の第一条「目的」、高齢者の心身の特性に合わせ、適切な医療の確保を図るため、医療費の適正化を推進するための計画を設けるべきである、こういう一項があったわけですが、この部分を削除する、ここがやはり政府の姿勢を示すことになるかと思うんですけれども、いかがでしょうか。

長妻国務大臣 新しい医療制度は、来年国会に法律を提出するというスケジュールで進んでおりますので、今おっしゃられた点も検討事項になっております。

高橋(千)委員 検討とおっしゃいましたけれども、制度の細かい設計というのはこれから法案を出すに当たって皆さんいろいろ詰めていくところがあるんでしょうけれども、これは基本の思想の問題でありますから、医療費適正化計画が少なくとも高齢者の医療の確保ということで、医療費抑制が目的なのだということはきっぱり取るのだということが宣言されてもよろしいのではないか、これは思想の問題ですから。いかがですか。

長妻国務大臣 私も、必要な医療をあえて抑制する、これはあってはならないことだというふうに思います。

 医療費の適正化という言葉がいい悪いは別にいたしまして、今私が申し上げた発想でありますが、例えば、健康診断を充実して、そして健康になっていただく。健康のまま生涯過ごしていただく方がふえれば、結果として医療費の抑制になる。こういうような健康でお過ごしいただくための努力をしていく、こういうような発想は重要でもありますし、そして、レセプトの点検等でもございますけれども、だれが考えてもこれは必要以上に過剰な医療である、こういうものも見直すということは必要でございますけれども、冒頭申し上げましたように、必要な医療が削られるというようなことはあってはならないということであります。

高橋(千)委員 今大臣がおっしゃった二点は、当然のことだと思うんです。健診を充実させて、早期発見、早期予防といいましょうか、医療費適正化に結びつくというのは当然のことであります。

 また、無駄な医療がないのかということは、それは点検も必要なことかと思うんですね。例えば、様子を見ましょうといって一月分のお薬を渡されるとか、そうした過剰な投薬ですとか、さまざまな指摘はあったと思うんです。

 ただ、これは、いずれにしても、高齢者に限った問題ではない。医療費適正化に対して、絶えずそういう目を持ち計画を組んでいくことは、ある意味必要なことかもしれないけれども、高齢者に限ってやるべきではない。これはどうですか、一致できますね。

長妻国務大臣 高齢者だけにやるということではないと思います。

高橋(千)委員 私が確認したかったのはそこなわけです。結局これは、高齢者の医療の確保に関する法律、この中で論じられていることなので、違うのではないかということが言いたかったわけです。

 その具体的な中身について、資料の一に、これは厚労省が一目でわかるようにつくってくださった資料でございます。高齢者の医療の確保に関する法律第八条第一項の規定に基づき定める医療費適正化計画の中身に対する告示、その目標を示したものであります。

 例えば、医療費の動向、これはまず現状認識の部分ですけれども、年間三十三兆円で三分の一が老人医療費だ。年間約一兆円の伸びである。あるいは、平均在院日数と一人当たり老人医療費との相関性は高いということで、やはりこの計画が、高齢者の問題と医療費のいわゆる抑制の課題というのがリンクしているということがここの表現だけでもわかるのではないかと思います。当時、メタボ対策で二兆円、在院日数の短縮やベッド数の削減で二兆円、計四兆円の医療費を削減するということがうたわれていたのではないかなと思っています。

 例えば、〇三年の九月十一日に、老人医療費の伸びを適正化するための指針がやはり厚労省告示で出されております。そのときに、これはもっとわかりやすく目的を書いておりまして、「老人医療費は、高齢者人口の伸びを上回って伸びており、国民医療費の四割に達しようとしている。」「高齢者の受診率は極めて高く、一人当たり老人医療費は、老人医療受給対象者以外の者の一人当たり医療費の約五倍となっている。」と指摘をして、具体的に何をやるかということで、健診、指導、介護予防、リハビリ、在宅ケア、療養病床転換などがさまざま記されているわけです。

 これらのことが、考えてみれば、この間の法改正でさまざま具体化をされてきたのだなと思いますし、この適正化計画に盛られている特定健診の問題ですとか、療養病床の再編成ですとか、こういう形で具体化されているんだなというふうに思うわけです。

 ただ、〇三年当時四割だった老人医療費の割合、現在三分の一ということですけれども、ここ十年くらいで老人医療費はほとんどふえておりません。これはもう当然御存じのことだと思います。また、一人当たり七十五万円以上あった老人医療費も、〇八年でいいますと七十一万強ということで、着実に一人当たりで見ても減っているわけですよね。ですから、老人医療費が物すごくふえていくという前提すらも変わってきていると言えるのではないかと思います。

 そうしたことを踏まえまして、〇八年からの五カ年計画で、ことしがちょうど中間年に当たります。適正化計画を進めるというのであれば、この中間年に当たって、評価などさまざまなことをやると思いますが、どのようにするのでしょうか。

足立大臣政務官 お答えいたします。

 委員が御指摘の、老人医療費はそれほど伸びていないのではないかという指摘は、当を得ていると思います。この十年、介護保険導入以降は約十一兆円を前後しているような状況で、高齢者人口の増加を考えると、一人当たりの医療費はやはり減少傾向にあって、老人一人、そして若人一人のその差は非常に狭まっているというふうな認識は持っております。

 そんな中で、中間年度で見直しをするか。今、委員の資料をもとにお答えいたしますと、委員も御指摘のように、特定健診それから保健指導について、この賛否は別といたしまして、これによってがん検診等ができなくなったというような賛否は別にいたしまして、それは是正しましたから、メタボリックシンドロームの予防ということについては私は重要なことだと思いますし、それから、平均在院日数についてはかなり縮小、減少されてきまして、大きな病院等はもうほぼ限界に近いところまで来ているという認識もあります。ただ、一部はまだ長いということもありますので、国の計画そして都道府県の計画を立てる、この点はいいんだろうと思います。それから、療養病床の病床数については、これは機械的な削減計画というのは凍結いたします。ということも含めて、中間年でありますから、必要な見直しは実施いたします。

高橋(千)委員 ありがとうございます。具体的な目標に対しての一定の検討過程を今お話ししてくださったと思います。具体的でありがとうございました。

 そこで、〇六年の改正時も反対が多かったし、私自身も指摘をしているわけですけれども、高齢者の医療の確保に関する法律第百二十条第二項、特定健診などの実施及びその成果に係る目標の達成状況を勘案して、後期高齢者医療制度への支援金、この調整率を、プラスマイナスで一〇%の幅でつけるということが決められました。もともと制度の違う支援金を、ペナルティー、政府に言わせればインセンティブというわけですけれども、これは絶対やめるべきである、筋も悪いということが言えると思うんですね。

 今、幾つかお話があったわけですけれども、例えば、特定健診の実施率七〇%以上とあるわけですけれども、その参酌標準との差で、どのくらい達成できなければ一〇%まで減額されちゃうのかという、一つの指標をどうするのかですよね。例えばメタボ該当者とその予備軍の割合、そのメタボ自体の指標が問題ではないかということが今既に言われているわけですけれども、そういう出てきた数値と減額との関連ですよね。これはまだ詳細が明らかにされていませんけれども、どのように考えているのか。そもそも、後期高齢者医療制度は廃止すると言っているんですから、やらないと言ってくれれば一番いいわけですけれども、どのように考えていますか。

足立大臣政務官 どうなるのかという点と、どう考えているのかという二点だったと思います。

 これはどうなるのかにつきましては、もともとの、議員はペナルティーとおっしゃいましたけれども、この参酌のところは二十五年度からの実施になっておったので、今、そのもともとである後期高齢者医療制度はそれまでに廃止をして新しい制度に二十五から移行するということも考えると、どうなるのかということについては、その点については、二十五年からの施行はないということですね。

 それで、どのように考えているのかということも御質問があったわけですけれども、私は、全体的な標準といいますか、これくらいは健診をちゃんとやってほしいんだということの中でそれができていないところについては、国の計画も必要ですし、やはり都道府県レベルの計画でしっかりそこのところはやっていただくようなことを、市町村だけではなく、もっと広域連合そして都道府県の関与を強くして、しっかりやってもらいたいという形の整理になるんだろうと思っております。

高橋(千)委員 まず、平成二十五年からはないということが確認をされました。今の、しっかりやってもらいたいというのは、形が違うけれども何らかの、私たちでいうとペナルティー、皆さんでいうとインセンティブのようなものを、これは検討の余地はあるということでよろしいですかね。

足立大臣政務官 期待した答弁ではないかもしれませんが、これはまさに、今検討しております新しい制度の中の検討項目の一つでございますので、しっかりその点は考えていきたいと思っております。

高橋(千)委員 最初に私が、医療費適正化計画を高齢者の中に位置づけたことをやはりやめてほしいということをお話ししたわけですけれども、結局、廃止といいながら個々の検討項目が残るということに対して、今、懸念を幾つか述べさせていただいたということであります。これはやはりきっぱりとやめていただきたい。検討の中にあるということでしたけれども、やめていただきたいということを重ねて指摘をしたいと思うんです。

 それで、先ほど健診の問題がございましたけれども、目標は実施率七〇%以上ということですが、資料の二枚目に、今、保険者ごとの実施状況ということをまとめたものをつけておきました。市町村国保は二八・三%であります。健保組合でさえも五九・八%にとどまっております。これは、被保険者は七五%、被扶養者は三二・五%ということで、そこがやはりトータルすると厳しくなるということになると思うんですけれども、これで見ると、達成したところは一つもないというのがはっきりしていると思うんです。

 私は、〇六年の審議の際に、被用者保険の被扶養者についても、結局、今回義務化されたことによって受診率がカバーできるだろうかということを指摘しています。実数で、国保課が積み上げた数字でいきますと、これは下手すれば一割くらいしかカバーできないんじゃないのかという指摘をしたわけです。これで見ますと、協会けんぽの被扶養者が一一・二%というところから見ても、当たらずとも遠からずの指摘ではあったのかと思うわけです。

 当時、厚労省は、国民生活基礎調査では四七・九%という実績がございますと。つまり、市町村が行っている健診で受けてもらっているし、そのようにするんだということを言っていたはずです。しかし、それでもこの全体、三割台は低過ぎると思うんですね。保険者が市町村などと契約を結んでやっていく、その複雑な制度設計がこうした実態につながっているのではないでしょうか。

 健診率については、上げたいというのは先ほど来おっしゃっているんでしょうから、これは二年半で飛躍的に改善するとは思えません。どのように取り組むでしょうか。済みません、通告していないけれども、ぜひお願いします。

長妻国務大臣 この健診率を上げるというのは、我々も、例えばがんの検診などでは検診率五〇%という数値目標を掲げておりますが、すべての健診について数値目標を掲げているわけではありません。

 これについては、今お配りしていただいたもので見ますと、被扶養者の方々が被保険者に比べてかなり低いということもございますので、そういう方々にどういう周知をするのかということも一つの課題だというふうに考えておりますので、これまで以上に、被扶養者の方向けの広報体制やあるいは周知の仕方についても、保険者とともに御相談をして、国としてどういう支援が必要なのかということも検討していきたいというふうに考えております。

高橋(千)委員 もともと指摘してきたことが現実になる中で、ペナルティーだけが起こっていくということはやはりできないことですので、やはりこれは制度的な問題、課題でもあったということで、今周知徹底ということでお話をされましたけれども、具体的な取り組みをぜひお願いしたいと思います。

 次に、同様な件ですけれども、同じ、高齢者の医療の確保に関する法律の第十三条で、「都道府県は、」と、目標の達成のために必要があると認めるときは、厚生労働大臣に対し、診療報酬に関する意見を提出できるというふうに書いてある。また、第十四条では、今度は主語が「厚生労働大臣は、」となっていて、医療費適正化のために必要があると認めるときは、地域の実情を踏まえつつ、他の都道府県と異なる診療報酬について協議することとなっています。つまり、都道府県ごとの診療報酬が変わってもよいのだという趣旨が盛り込まれたわけであります。

 これについては、〇八年十一月の、先ほどお話しした廃止法案の審議をしたこの委員会で、提出者の一人である国民新党の自見庄三郎参議院議員は、五年たって、都道府県で医療費がオーバーした場合は、診療報酬を都道府県に限って下げていい、制限医療をすることと、非常に端的に説明をされております。

 実は、地域によって報酬単価が違うというのは、既に介護保険ではやられていることなわけですよね。地域格差を広げるから撤廃してほしいという現場の要望も強いわけであります。これについても、五年後考えるというだけではなくて、都道府県ごとに診療報酬を変えるということは、皆保険である根幹にかかわる問題でもありますので、やはりやめるということをきっぱり言ってほしいと思うんですが、いかがでしょうか。

足立大臣政務官 今の御質問は、診療単価を変える、あるいは下げるということについてはと、かなり限定的なことだったと思うんですが、まず、全体のお話ですと、やはり先ほどの平均在院日数とか効率的な運用とか運営とか、そういうことについては、評価は当然あるだろうと私は思います。

 そして、一点単価を切り下げるということは、全く政府としては想定はしておりません。では、例えばどういうことかというと、在宅医療への支援であるとか、その方向性について合理的に充実を進めているというようなことを評価するのはあるであろうと思いますが、重ねますけれども、一点単価そのものを引き下げるというような考えは持っておりません。

高橋(千)委員 一点単価を引き下げとかそういうことではないということは、まず確認ができました。

 ただ、前段の効率的な運営というのも、在院日数の短縮というのは、数字だけで見ますと、これは効率的である、医療費抑制の適正化の効果が上がっているというふうに見られるかもしれませんが、我々にしてみると、それは追い出しにつながる危険性をはらんでいるわけでありますので、それが診療報酬の、では一点単価でないとすれば加算とかそういう形になるのかもしれませんけれども、それが逆に地域格差ですとかさまざまなことに広がっていくのではないかということは、一言指摘をしたいと思います。

 続けたいので、次に行きます。

 それで、協会けんぽ、かつての政管健保が民営化されているわけですけれども、主として中小企業のサラリーマンが加入し、約三千五百万人を擁している。昨日の参考人質疑でも、この協会けんぽの厳しい財政状況が説明されました。今回の保険料率の値上げで、年収三百七十四万円のサラリーマンの場合、保険料は年四万二千円。介護保険料率も上がりました。一・一九%から一・五〇%。これはトータルで五万三千六百円、労使折半なので二万六千八百円の負担増であります。ここ十年以上雇用者報酬が下がっている中での値上げは、大変厳しいものであると思います。

 それで、単年度で収支均衡するべく、特例として、市中銀行からの借り入れ等、三年間でこれを返済していくということでありますが、国庫補助を一三%から一六・四%に引き上げる措置も三年間の措置であるわけです。

 これらが破綻した場合、どうなるのか。お願いします。

長浜副大臣 協会けんぽの財政状況の厳しさは、御説明をされたとおりであります。また、先ほど提出された修正案二つを拝聴しておりましても、大変厳しい経済情勢下、財政情勢下における国庫の負担部分をふやしたらどうか、こういったところにおいても先生の御指摘は裏づけをされているところであります。

 と同時に、厳しい国家財政の中において、御説明ありましたように、さまざまな手法、三分の一の総報酬割の導入、しかも、国庫財源としての六百十億、真水での投入、あるいは、今お話がありましたように、三年間に分けての、四千五百億の累積されたもの、これを毎年補完していく、こういったシステムを入れながら、三年間に限り一六・四%ということで、御納得をいただきながら進めているところでございます。

 基本的には、厚労省の立場としましては、この三年間の暫定的な措置でありますけれども、こういった状況の中で協会けんぽの財政状況を注意深く監視をしながら、この三年間で財政健全化へのスキームをとっていきたいというふうに思っている次第でございます。

高橋(千)委員 注意深く見守っていくということで、妙案は全くなかったかなと思っております。

 三月二十六日付、北海道医療新聞によりますと、北海道病院協会は、ことしの十月一日に、六十の事業所、約一万一千八百四十人による健保組合の設立を決めたと報道しております。

 その理由が、協会けんぽの保険料率が都道府県の医療費を加味して設定されると決まったのを受けて、より低い保険料率を実現できる健保組合の設立を検討してきた結果であるというふうに書いているわけです。北海道の保険料率は九・四二%となり、全国で一番高いわけですが、今後も上昇を見込みということで、少しでも低い方にしたいということなわけであります。

 この都道府県の保険料率については、激変緩和措置をとってきたとはいえ、最終的にはやはり医療費と保険料がリンクする仕組みなわけですよね。そうすると、もともと中小零細の事業者が集まっている協会けんぽでありながら、その中から一定の力があるところ、今のようなところが抜けていくと、ますます零細なところだけになって、運営は大変困難になるのではないか、この認識についてと、そういう点で、やはり保険者機能を維持するためには、国庫補助を本則の二〇%にして保険料率の上限を抑えるという正攻法でいくべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。

長浜副大臣 先ほど、一義的には御説明をしましたように、国庫の財源の状況と、それから、今おっしゃられました被用者保険の中での協会けんぽとあるいは健保連、組合健保の方、こういったバランスの問題があるというふうに思っております。

 今先生が御紹介された北海道のケースというのは、おっしゃるとおり、協会けんぽから組合を立ち上げて健保連の方に入っていくという事例でありましたが、たしか、前回か前々回の質疑のときには、むしろ大企業で健保連、組合健保をつくっておられる方が、やはり料率の問題等々含めて協会けんぽの方へ移行する、こういったケースも今起きているわけでございます。

 協会けんぽより高い保険料率を設定しながら健保組合を維持しているというところは、平成二十年度の決算で二百七十六組合が存在をしているわけでございます。単年度の報酬が高いだけでは、長期にわたる安定した事業運営の見通しや保険者としての自主自立、先生がおっしゃられた保険者機能の発揮でありますが、こういった責任を負う部分が事業者になければ、保険主体を移るといったらいいんでしょうか、組合を設立するという意味においては、設立検討はなかなか行い得ないというふうにも思っております。

 単に保険料率のみに注目することはないわけでありますけれども、御指摘のポイントも含めまして、協会けんぽとあるいは健保連との間の動き、これも注意深く見てまいりたいと思っております。

高橋(千)委員 健保連においても、現在、二十三組合くらいでしょうか、既に解散をして、財政的にも大変であるということで協会けんぽに移っている。逆に今度は、事業所が、とてもじゃないが事業主負担は払えないよということで国保に流れているということが指摘をされているわけですよね。ですから、こういういわゆる本来の産業間の一つの特徴ある保険者機能ということを保てなくなって、流動化するというのでしょうか、これを政府はよしとするのかということが問われてくると思うんですよ。

 そういう形で、何もしなければだんだん一元化に近くなっていく、まさかそんなことを思ってはいないと思いますけれども、やはりそこはしっかり問題意識を持っていただきたいと思います。

 それで、資料の三につけておきましたけれども、昨年の十二月に、協会けんぽが制度改正検討要望ということで、傷病手当、出産手当の支給割合の見直しなどを求めているわけです。これもやはり、今言っているように、財政が厳しくなって、給付をどこかで絞れないかという動機から出されたものだと思いますね。

 この扱いがどのようにされたのか。また、負担が大きくなれば、こうした給付の見直しという問題は絶えず起きてくるのかなと思いますが、どのように考えるか、伺います。

長浜副大臣 今御指摘の部分というのは、大変、社会保障制度とか福祉の概念というのは、困った方々、その方々を何とか救済しなければいけないということでさまざま知恵を出していくわけです。

 多分関連する質問もあるかもしれませんけれども、今御指摘の部分も、全くよかれと思ってやった部分でありますけれども、例えば、この先生の資料によれば、近年、保険加入時に高い報酬等級を設定後、期間を置かず休職したとして高水準の疾病・出産手当を受給する事例が生じており、詐欺としての立件の例もある、こうした事例への対処方法、こういうことでありまして、本来ならばけがをされたときに支給するべき疾病給付金とかあるいは出産の手当などを、期間が定められていないものですから、あえて直前に入って、そして高い給料を決めて、翌日からそういう状況の中において休ませていただく、こういういわゆる本当ではない部分においての被害が生じたことから、こういったことが協会けんぽの側から問題提起をされたことは事実でございます。

 厚労省としては、こうした要望を受けて、社会保障審議会医療保険部会においても検討しましたけれども、とりあえず本年度においては、こういった制度を、改正するという制度を見送りまして、むしろこの原因であるところの不正受給の対策、ここに注意を払っていこうというふうに決めております。

高橋(千)委員 不正受給については、きちんと対策をとればいいと思います。今のお話だと、とりあえずが何かまだ残っているのかな、今後の検討課題が残っているのかなということをちょっと思いました。やはり保険者機能というのは、昨日の参考人質疑でも随分議論されたわけですけれども、やはりそこが詰まっていくと、こうしたせっかくある制度の見直しにつながっていくということに対して、非常に懸念を持っているということを指摘させていただきたいと思います。

 最後に一点質問したいんですけれども、京都府が、全国に先駆けて国保の一元化を昨年提案しております。政府は今回、広域化方針を法案に盛り込んでおりますが、その先進例として評価をするのでしょうか。先ほど、診療報酬の話を随分質問いたしましたけれども、京都府のこの提案は、診療報酬決定権限を府に任せてもらいたいということを強調していると思います。率直な感想を伺います。

足立大臣政務官 委員が今、後半部分におっしゃった視点でいうと、先ほどの答弁でもありますように、そこについては、それを推進していくということではないと思いますが、私どもも、また先日来の質問でも、市町村国保の範囲というものについては、広げなければ公平性それから平等性ということについてもやはり課題であるという認識は持っておるわけでございます。現在も、市町村で見た場合に、保険料が五倍の水準差があるということでございますので、都道府県の判断で今行われている共同事業等を、範囲を広げるとかそういうことはやるべきであるというのを今回の法律案に盛り込んで、都道府県の関与の度合いを強めたいと思っておりますけれども、診療報酬単価を変えていくというようなことは考えていないということでございます。

高橋(千)委員 当時の国保新聞には、厚労省の国保課長が、都道府県の役割というものを前向きにとらえた意欲的な提案内容だ、前向きに支援を検討したいということを述べております。ですから、政府が進める制度改革の中の一つのモデルとしているのかなということを懸念しているわけです。しかし、私は、都道府県が役割を発揮するというのは大事なことだと思います。ただ、広域化を進めることによって、それが皆保険に何か穴をあけたり、それが医療費抑制のツールになるのでは困るのだということが指摘をしたいわけであります。

 まだまだ議論したいことがございます。けさの理事会で採決が提案をされましたが、審議を続けるべきだということを指摘して、終わりたいと思います。ありがとうございました。

藤村委員長 次に、仁木博文君。

仁木委員 皆さん、改めましておはようございます。民主党・無所属クラブの仁木博文でございます。(発言する者あり)ありがとうございます。

 ただいま議題となりました医療保険制度の安定的運営を図るための国民健康保険法等の一部を改正する法律案及び自民党の修正案について質問いたします。

 まず、健康保険のことを論ずる前に、保険というのは、偶発する事故に対して、多数の者が金銭を出し合い、その資金を事故当事者に給付する制度でございます。特に、この健康保険に関しましては、専ら、公的な場合、現物給付が多うございます。あのアメリカ合衆国でも、このたび、オバマ政権のもとで健康保険改正法が通り、先進国の中でおくれておりました国が皆保険制度に向かって進み出しました。我が国に根づいたこの大切な皆保険制度を、今後、守っていかなければいけません。

 全国健康保険協会や健保組合に対する支援について質問していきたいと思います。

 まず、全国健康保険協会は、お渡ししました資料にもございますように、平成二十年度財政収支はマイナス二千二百九十億円、そして平成二十一年度の財政収支はマイナス六千億円と、非常に厳しい状況であります。今回の法案により、平成二十四年度まで、国庫補助金の一六%引き上げや単年度収支均衡の特例など、財政再建のための特例措置が講じられまして、その結果、二十四年度まで三年間で財政再建が達成できるよう、協会けんぽにおいて適切な運営に取り組んでいただきたいと考えます。協会けんぽは被用者保険のセーフティーネットの役割も果たしておりまして、政府としても、安定的な運営が図られるよう注意していく必要があると思います。

 また、組合健保に関しましては、高齢者医療への拠出金負担等によりまして、全体として財政状況が厳しくなってきております。特に、財政力の弱い健保組合には配慮していく必要がございます。今回の法案による後期高齢者支援金の総報酬割導入のほかに、平成二十二年度予算におきましては、拠出金負担軽減策として、財政支援を百六十億円から三百二十億円と倍増されていますが、引き続き健保組合への負担軽減を図っていく必要があると思います。

 そこで、長妻大臣にお尋ねします。

 全国健康保険協会の財政再建期間である平成二十四年度までにおいて、この協会けんぽや組合健保の財政状況、そして社会情勢等を勘案しまして、制度の安定的な運営を図るため、財政支援等を行っていくべきと考えますが、いかがでしょうか。

長妻国務大臣 今のお尋ねでございますけれども、平成二十四年度までの全国健康保険協会の財政再建のための特例措置の期間において、全国健康保険協会及び健保組合等の財政状況、社会経済の情勢の推移等を勘案し、制度の安定的な運営が図られるよう適切な財政支援その他の所要の措置を講じてまいります。

仁木委員 また、高齢者医療制度を初めとした保険医療制度の今後のあり方について、質問させていただきたいと思います。

 現在、長妻大臣のリーダーシップのもと、グランドデザインといいますか、高齢者医療制度改革会議におきまして、ポスト後期高齢者医療制度、つまり、後期高齢者医療制度廃止後の制度について議論が進められております。そして、来年の通常国会への法案提出、本格的な実施というのは平成二十五年四月からの新制度移行ということを予定されていると承知しております。

 高齢化の進展によりまして、高齢者の医療費は増大し続けるものと考えられております。高齢者の医療費をどのように負担していくのか、新たな制度における大きな課題と考えます。このことは、高齢者と若い人との間で負担の分かち合いの方法が、つまり、今の騎馬戦状態から将来は肩車の状態に突入するわけでございまして、後期の負担のあり方については、高齢者の方々はもとより多くの国民が納得し、安心と信頼を得られる制度とするべきであると考えます。

 平成二十五年度に新たに高齢者医療制度がスタートする予定でございますが、平成二十五年度以降の高齢者医療制度を初め医療保険制度のあり方については、幅広く関係者の意見を踏まえ、十分な検討を行い、国民の理解が得られるようにするべきであると考えますが、長妻大臣、いかがお考えでしょうか。

長妻国務大臣 平成二十五年度以降の高齢者医療制度を初めとする医療保険制度のあり方については、国民の理解が得られるよう、医療保険者、被保険者、地方公共団体、事業主等の幅広い関係者の意見を聴取し、十分な検討を行ってまいりたいと思います。

仁木委員 ありがとうございます。

 また、私は浪人中、多くの有権者に対しまして、崩壊した地域医療を立て直しますと訴えて戦いました。民主党政権になって、多くの国民が、崩壊した医療が立て直ってほしいと思っております。

 一方、市町村国保という立場で申し上げますと、その町に行きますと、例えば常勤の整形外科医や小児科医、産婦人科医がいない地域があります。したがって、その地域に住むお年寄り、特に例えば年金暮らしのお年寄りは、介護保険料や国民健康保険料を引かれ、残り数万になった状態で、バスやタクシー、つまり時間やお金をかけて診察と処方を受けに行かなければいけない状態が起こっております。隣の町まで出かけていくんです。

 こういった現状というのは、原則は健康保険である以上、保険者がその現物支給が十分できる体制をつくらなければいけないと考えるわけでございまして、このことに関しまして、私は、前の厚生労働委員会でも質問させていただきました。足立政務官の方からは、こういった実態調査のために診療科目別そして地域別のドクターの偏在について調査してくださるとおっしゃられました。いつごろその結果が出まして、そして、その結果に基づいてどのように医師を配置していかれるのか、教えていただきたいと思います。

長妻国務大臣 まず結論から申し上げますと、その調査は夏過ぎまでには公表をしていきたいというふうに考えております。

 この調査は、今までいろいろ医療過疎地等の話がありましたけれども、では具体的にどういう状況なのかというのが、きちっと現状把握が十分なされていたかというと疑問に思う部分もありますので、今回、かなりきちっと、大規模に、都道府県を通じて地域の医療不足の実態を数値で把握していこうということを取り組みます。そして、夏過ぎまでには公表して、その結果どういう施策が打てるのか。

 まず一つは、この地域枠という、今も、医学部の学生さんの中の一定の方、つまり卒業してその地域で必ず働きます、お医者さんとしてその地域で診療しますという方に限定をして奨学金をお貸しする、そして、仮にその約束を破ってその地域におられなくなってしまったら、その奨学金は返却を求めるという措置でございますけれども、こういう措置をさらに拡充していく必要があるのか否かというような検討もありましょうし、あるいは、これは慎重に考えなければなりませんけれども、地域のある程度の数値目標、お医者様の数をこの地域では、なかなか強制力を持たせるというのは難しいわけでございますけれども、そういう目標値を掲げて政策誘導をしていくなどなどの取り組み。

 そして、ベースにあるのは、診療報酬を、そういう地域医療再生のために、今月から始まります新しい診療報酬体系の中でも我々はそういう措置をさせていただいたつもりでございますけれども、そういうものも含めた対策を練っていく、その前提となる実態把握をきちっとしていこうということであります。

仁木委員 大臣、ありがとうございました。頼もしい、そして期待の持てる御答弁でございました。

 本当に、医師を養成して派遣していく、これはまさに、今までは大学の医局が専らやっておりましたが、私は、この問題は究極はやはり政治のマターだと思っております。政治がしっかりとして地域医療再生のために頑張っていくべきだと思っております。

 続きまして、自民党の修正案に対しまして質問させてもらいたいと思います。

 このお渡ししました資料の裏面、政府管掌健康保険及び協会けんぽの単年度収支決算の推移の表をごらんになってください。

 平成十四年度、この時点でも、単年度収支で六千百七十億円の赤字が出ております。そして、これに対しまして当時の政権下で行ったことというのは、いわゆる給付を少なくして医療費抑制ということで、診療報酬マイナス改定、マイナス二・七%ということになっております。翌年の十五年度のことを見ておりますと、多分これで足りなかったと思うんですけれども、結局は国民に負担を増すという形で、ボーナスにもこの保険料を賦課しまして、そしてまた、本人の窓口負担も三割に上げるというようなことを行っております。そして、最近の状態では、平成十九年度、千三百九十億円の赤字、そして、続く二十年度は二千二百九十億円の赤字になっております。

 今回、私たちの国庫引き上げ、国庫補助率以上の二〇%という数字を出されておりますけれども、この時点でやっていなかったにもかかわらず今やろうとされる、このことに対して、そして、この間に行われてきたことは、皆さんも御存じのようにいわゆる骨太の方針ということで、社会保障費二千二百億円の毎年削減、これによって現場がどんどんどんどん疲弊してしまいました。つまり、私が先ほど申し上げた地域医療の崩壊も、この給付の抑制に終始した結果だと言っても過言ではございません。

 そういうふうなことをしておきながら、今回、野党になられた状態で二〇%に国庫補助率を上げるべきだというその根拠をお示ししていただきたいと思います。

大村委員 仁木委員にお答え申し上げます。

 私ども自民党政権のもとで、昭和三十六年、国民皆保険制度が導入をされました。その国民皆保険を守るために、昭和五十八年、老人保健制度を導入し、保険者間の財政調整をきかせてきた。その後、市町村国保の安定をさせるためのいろいろな、さまざまな事業、財政共同化事業等々をやってきた。そういった中で、今言われましたように、協会けんぽも含めまして財政面の支援、保険者間の調整をやってきた。とにかく国民皆保険を守るということで着々とこういったことをやってきた。そういう点で、仁木委員、やや少し御理解が足らないんではないかというふうに申し上げておきたいと思っております。

 その上で、皆さんが提案されておられる今回のツケ回しの法案について申し上げたいと思います。二年前と全く状況が違うということを申し上げたいというふうに思います。

 まず、二年前は二千二百億円のシーリングがあり、一千億円をこれで生み出すということでもありました。しかし今は、この二千二百億円というシーリングは、昨年の七月、私どもの自民党政権のもとで、これはもう撤廃をしております。これは今、ありません。そして今の政権でも、ない。

 しかしながら、一方で、民主党の医療政策、これは私、本会議でも予算委員会でも申し上げました。これは七つの大罪ということで申し上げましたが、あなた方は三千億円も医療の予算をカットしている。そういう中で、そういう予算があるなら、なぜ今回、ツケ回しをするのではなくてこういったものをつけないのかということを申し上げておきたいと思います。

 また、子ども手当で五・四兆円も、その財源の手当てもなくやる、そういうことであれば、やれるのではないかということを申し上げておきたいと思います。

 それから、財政状況も経済の状況も全く違うということを申し上げておきたいと思います。

 この年間総報酬額は、私も資料を提出いたしておりますが、平成十九年度から二十二年度につきまして、総報酬が実に三十五万円以上も落ち込んでいる。そういう中で今回このツケ回しをするということになりますと、これはまさに、賃金が下がるのと合わせてダブルパンチというふうに言わざるを得ない。まさに勤労者いじめそのものでございます。

 そういう意味で、こういう中で、関係者はみんな反対だ、健保連も反対だということを言っておるわけでございます。そういう中にもかかわらず、皆さんは今回、これを強行採決、この後強行採決をしよう、問答無用で強行採決しようとされておられるわけでございます。

藤村委員長 大村君、仁木君の時間が過ぎておりますので、手短にまとめてください。

大村委員 したがって、私が申し上げたいのは、あなたが冒頭言われたのは、国民皆保険制度を守っていく、関係者の幅広い議論を経て国民の理解を得られる努力をするんだというふうに言っておられますが、皆様方民主党がやろうとしていることは全く真逆のことだ、反対だということを申し上げたいというふうに思っております。

 なお、協会けんぽについても、そういう意味で、私どもは、この厳しい財政の状況の中で、皆さんが三千億円も医療予算をカットする、五・四兆円も財源もなく子ども手当をやるということであれば、これは十分、まず二〇%に上げて国庫で負担をしてやっていく、そのことが筋だということを申し上げておきたいと思います。

 以上。

仁木委員 いずれにしましても、当時の自民党政権というのは、本当にいつまでも政権が続くような状態であったと思います。つまり、為政者としての責任がある、現場をもっともっと知っている責任があったと思います。これだけ給付に伴うお金を絞っていきますと、現場が疲弊して、本当に医療を受けられないような医療崩壊が進むということを本当に知っておく必要があったと思います。

 今の説明ですと、まさに私が思うには、国家財政規律の数字を重んじるがために、国民の命と健康をないがしろにしてきたと言っても過言ではないような状態だということを私は感じました。当時の厚生労働副大臣をされていたあなたに、本当にそのことに対して責任を感じていただきたいと私は強く思っております。

 民主党政権になりまして、本当に政権がかわりました。国民の命と生活が第一の、そういう政権でございます。

藤村委員長 仁木君、時間が過ぎておりますので、まとめてください。

仁木委員 皆さんとともに頑張っていきたいと思いますので、今後ともよろしくお願い申し上げます。

 これで質問を終わりたいと思います。

藤村委員長 次に、阿部知子君。

阿部委員 政権交代を受けた激しい御論議の後でありました。しかし、国民から見れば、やはり後期高齢者医療制度の問題をとっても、御高齢期も含めて、どうやってきちんと、人間が尊厳を持って権利である医療を受け、その寿命を全うできるかという問題は、実は私は、今の厳しい経済状況の中で、与野党の別なく、本当に真剣に考え直してみないといけない時期だと思います。

 失われた十年と言ってもいいような、医療政策の分野でもそうでした。医療費をどうやって抑制するか、そのためには御高齢期を、はっきり言って、なるべく治療も受けないで、亡くなってほしいとまでは言いませんが、受けないで、医療資源を使わないでほしいとするような医療費抑制策が二千二百億円でした。そのことでまた自民党政権も苦しまれたと思います。いろいろな批判も受けられた。しかし、今、新政権になって、私ども与党側ですが、やっぱりこの問題に立ち向かうのに本当に厳しい状況があります。

 私は、きのう、参考人の御意見を聞いていながら、実は各党派で推薦をいたしましたが、どこの党派といわず、問題はかなり収れんをされてきておって、そのことにまじめにこの委員会がこたえていけば、きっと国民の納得するものが手に入る。あきらめてはいけないし、あきらめないで御一緒にやっていこうと思います。

 その意味で、きょうは、私は、後期高齢者医療制度を冒頭に取り上げます。

 私は、かつて野党だったとき、激しくこれに反対し、今も即時廃止がいいと思っております。これは民主党の皆さんとは違います。また、きのうの参考人の中にも、そういう御意見は少のうございました。しかし、後期高齢者医療制度、せんだって、尊敬する坂口元厚生労働大臣が、何がいけないんですかと長妻さんにお聞きになりました。私は、この後期高齢者医療制度は、御高齢期にとって最も大事な健康管理、保健指導、健診などを、ある意味ではぷっつりと切ってしまったことに最も問題があると思います。

 きょう、皆さんのお手元に、健康診査の充実ということで、厚生労働省が最近つくられた資料がございます。これは批判を受けて、後期高齢者医療制度では広域連合が保険者ですから、ほとんど、健診というものについての取り組みは極めて少なかった、人間ドックもなくなったなどで、政権としても、また前政権としても見直されて、健診の受診率が平成二十年度は、その始まる前の二六%に比べて二一%に下がったから、予算づけをしてどんどん上げていきましょうということで、二七%というふうに、これは受診率ですが、改善するための予算措置をつけられた。これで解決しているでしょうかというのが、きょうの私の質問の第一番目です。

 資料の三枚目を開いていただきたいと思います。

 三枚目は藤沢市の例ですが、どこの市町村でも一緒です。特定健診と呼ばれるもの、これは実は御高齢期の後期高齢者も受診されるところとなりましたが、しかし、今でも、この瞬間にも、七十四歳以下と七十五歳以上には違いがございます。この1と2、詳細な健診項目という方は、1において異常が出た方が、2の例えば貧血検査あるいは心電図、眼底検査などを受けられるかどうかというお話であります。

 まず冒頭、細川副大臣にお願いいたします。

 これは各市町村によって異なってしまいました。1まではやるんです。異常が出たときに2を受けたいと思うと、市町村によってばらばら、全く違います。

 ちなみに、貧血検査、眼底検査あるいは心電図検査で、市町村の実施率というものについて、細川副大臣に冒頭お伺いいたします。もしおわかりでなければ、私が数値を言わせていただきます。

細川副大臣 お答えいたしますが、受診率が低下をしていることなど、これは委員御指摘のとおりであるというふうに認識をしておりますが、今の具体的な市町村でのあれは質問の予告がなかったので、ちょっと私の方では答えられません。

阿部委員 実施率ですが、貧血は三三%、心電図は二九%、眼底は二三%の市町村しか実施していません。1で項目を満たし、異常だから健診をしたいと思っても、市町村自身がやっていないんです。そうなると、どうなるか。自費とは言いません、自分で健康保険を使ってやられるわけです。七十五歳以上の方だけです。これは、今まで基本健診、老人保健制度の基本検査においてはすべて項立てされて、それも含めてクリアすることが目標になっておりました。

 老人保健制度という名は、保健のケンは、医療保険の険じゃなくて健康の健です。この概念は、健康に生きていただくために、四十歳以上の方に予防保健を頑張ろうということでした。私は、制度的には問題があると思います。ただ、理念的には、やっぱり大きな転換点だし、高齢社会に向かって、それがなければ、だれがどう考えたって医療費は高騰してまいります。抑制のためでなく、また健康のためにも、健康の健診、そのフォローは絶対的に必要です。

 次に伺います。

 では、七十五歳以上の方と七十四歳以下の方で、七十四歳以下の方は、いわゆるメタボ健診などを受けて、異常があれば特定保健指導というものがございます。これはいいか悪いかは別として、私はもっと糖尿病などにターゲットを絞った方がいいと思いますが、とにかくそのチャンスがあるわけです。しかし、御高齢者は、もちろんこれはありません。特定保健指導、例えば食事をどうする、カロリーをどうする、全くありません。では、だれがこの七十五歳以上の方の健康管理に責任を持つでしょうか。

 ちなみに、十九年までの老人保健制度の中でやられていて、これもおわかりだったら御答弁いただきたいですが、七十五歳以上の受診された方の要医療率と要指導率についてはどうでしょうか。これももしかして、私にけさ資料が来たので、御存じないでしょうか。

細川副大臣 申しわけありませんけれども、通告がなかったので、ちょっと答えられません。ぜひ、通告をしていただけたら答えられると思いますので、よろしくお願いします。

阿部委員 実は、通告はしたのですが、お返事が遅くて、なかなかそろわなかったんだと思います。

 でも、副大臣には申しわけないので、私から数値を申し上げますと、七十五歳以上の方で老人保健制度下の基本健診をお受けになると、何と、六五%が要医療、三割近くが要指導であります。普通に考えれば、七十五歳以上で健診を受けに行こうかなと思うのですから、どこかの自覚がある方だということで、要医療が六五であってもいいと思います。

 でも、要指導の三割が、今回、今の制度の中では抜けてしまいます。要指導の方を要医療にしないための取り組みが、七十五歳を過ぎるとぷっつりなくなるんです。私は、このことはどう考えても、一千三百万人の後期高齢者と区分けされた方々について、各市町村、自治体が、住民ですよ、税も払っていますよ、そこに住んでいる仲間ですよ、しかし、そこからないんですね。このことをぜひ即刻是正していただきたい。

 私の提案は、老人保健制度に戻せということです。制度的な問題があることは存じています。しかし、理念的に、どうやって全体で予防保健をやっていくかというその考えをとります。もし民主党の皆さんがそれをなさらないのであれば、この抜けてしまった七十五歳以上の方の健康管理について、だれが責任者で、だれが実施して、どうそのデータを集積していくのか。これについて、では今度、山井さんでお願いします。お返事、お願いします。

山井大臣政務官 阿部委員、御質問ありがとうございます。

 確かに、この後期高齢者医療制度は、七十五歳という年齢でその取り扱いに差をつけてしまうということが根本的な問題点でありまして、その中の象徴の一つが、今、阿部委員が御指摘の特定保健指導のことであると思っております。

 このことに関しましては、厚生労働省としては、現時点では、各市町村に対して、健康相談等の体制の確保を要請する、あるいは、広域連合が高齢者の健康づくりのために実施する健康教育、健康相談、運動教育等について財政的な支援を行ってきたところでありますが、阿部委員御指摘のように、この部分は非常に弱くなっていると思いますし、阿部委員の御指摘はすぐに何とかできないかということだと思いますので、平成二十年度の健診受診率の低下を踏まえて、すべての広域連合において健康診査受診率向上計画を策定するなどやってはまいりましたけれども、今後、高齢者の方々、専門家、現場の職員の意見も伺いながら、後期高齢者医療制度の見直しの論議と並行して検討させていただきたいと思っております。

阿部委員 私が言っているのは、待てないということなんです、人の一生は。その瞬間にも、御病気というのは襲ってくるかもしれないんです。四年間待てというのは、その四年の一日一日の重みをどう考えておられるかです。

 山井さんに答えてほしいのは、健診をして、その結果をどう生かして、本人にどう返して、より健康に日々を生きてもらうかということを、もし皆さんが即刻廃止しないのであれば、今どうできるかを真剣に考えていただきたいんです。

 これは、市町村だって、ここの住民、この高齢者は、自分たちの市町村の保険者のカバーする範囲じゃありません。では、広域連合がこの方たちの健診のデータを含めていろいろな管理ができて、その方のよりよき健康な日々に指導できるか。できません、大き過ぎるから。

 だったら、もし廃止されないんだったらどうするのか。そして、そもそも後期高齢者医療制度の制度改革の中で最も抜けたるものは、費用負担がどうか。これは対立も生みます。だけれども、理念がありません、哲学が。

 大体、去年の十一月三十日、この会議、山井さんも御出席であったと思いますが、そこで日本福祉大学の近藤先生が御指摘でありますが、そもそも、集めたお金でどういう医療を提供するのが世界一の高齢化の進む日本の今後に対応できる制度になるのかという議論が全くない、とても心配だと。基本的な考え方六点についても保険財政の話ばかりで、この六点は長妻大臣がおっしゃいましたが、財政の話ばかりで、医療の中身、今後の高齢社会に対応できる日本の医療をどうすべきかがないんですという指摘なんですね。

 医療費抑制で語るは間違っています。しかし一方で、では、どうやって高齢期、超高齢社会を本当に健康管理していけるか。そこが抜けると、画竜点睛の制度いじりになります。

 きょうはもう、時間の関係でもう一つの質問がほとんどできない状態になりましたので、これは山井政務官にお願いです。高齢者医療制度の改革の会議の中で、今言った視点にのっとった論議をぜひしていただきたい。そうなれば当然、健診なり予防保健なりをして、そこでより健康に生きていただくための制度設計はどうあるべきかというのが出てくるんだと思います。御答弁お願いします。

山井大臣政務官 阿部委員にお答え申し上げます。

 非常に重要な御指摘であると思います。根本的な制度改革は、確かにこれは時間がかかりますが、やはり、この後期高齢者医療制度の中で七十五歳以上で不利益をこうむっておられる部分に関しては、急げる部分は当然急いでいかねばならないと思っております。

 この検討会の中でという形になるかどうかわかりませんが、とにかく並行しまして、今阿部委員御指摘の、特定保健指導に相当する健診後のフォローの実態をまずどう把握するか、そしてそれをどう是正していくか、検討してまいりたいと思います。

阿部委員 理念なき制度は必ず失敗しますから、高齢社会を本当に健康に生きるため、御努力いただきたいと思います。

 終わります。

藤村委員長 午前十時五十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十時十七分休憩

     ――――◇―――――

    午前十時五十分開議

藤村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。古屋範子君。

古屋(範)委員 公明党の古屋範子でございます。

 まず初めに、医療関連で二問、質問してまいります。

 近年、睡眠時無呼吸症候群の増加が指摘をされております。この症候群、日中に眠気を引き起こすということで事故が発生をしたりもしております。また、心血管疾患などのリスクも高めるというふうにも言われております。

 専門外来も拡大をしてきておりまして、治療に用いられますCPAP、シーパップというそうなんですが、この保険請求につきましては一カ月に一回受診することが必要とされております。

 しかし、状態がかなり安定をしている場合には、一カ月に一回受診をしなくてもよいのではないかというふうにも思います。薬剤投与の長期化などに倣いまして、二カ月に一回ですとか、もしくは三カ月に一回の受診で可能になるようぜひとも見直しを行っていただきたい、このように思いますが、いかがでしょうか。

長妻国務大臣 これに関しては、睡眠時無呼吸症候群でありますけれども、睡眠時に無呼吸、十秒以上呼吸が停止するのが五回以上ある病態を総称的に指すということでありますけれども、今御指摘の点は、今月から始まりました診療報酬の中でもどうするかという議論がありまして、これは日本呼吸器学会より同じような御提案もございまして、そして医療技術評価分科会のもとに設置された呼吸器関係の専門家から構成されるワーキンググループで議論をいたしました。

 その結果、この睡眠時無呼吸症候群については、やはり少なくとも一カ月に一回は、状態が改善しているかどうかを確認するとともに所要の指導を行うことが必要である。確かに、安定しているのか、安定しているように見えるのかということもありますので、これはいろいろな御意見はありましたけれども、結論としてはそういう結論となったわけで、今回の診療報酬では一カ月に一遍というような限定で報酬をするということとなったところでございます。

古屋(範)委員 今回の診療報酬改定の過程で、ワーキンググループでは議論になった点であるということでございました。

 こうした方々も、実際には働いていらっしゃる方々も多いわけですし、仕事を休んで月に一回受診に行くというのもなかなか大変なことだろうというふうに思います。ぜひ、この課題につきましては次期の改定に向けて前向きな検討を引き続きお願いしたいということを要望しておきます。

 それからもう一問、パルスオキシメーターの流通についてお伺いしてまいります。

 このパルスオキシメーター、体に針を刺したり切ったりもすることなく、SpO2、経皮的動脈血酸素飽和度の測定を行うことが可能でありまして、これにより心肺機能が常時正常であるかを知ることができるということで、患者の呼吸リハビリの継続あるいは病状の自己管理などに有用なツールとされております。

 医療機器というものの区分なんですが、一つは一般医療機器、クラス1ということで、リスクは極めて低い。この中には、メス、ピンセットあるいは家庭用の救急ばんそうこうなどが含まれております。また、もう一つは管理医療機器、クラス2ということで、リスクが比較的低いということで、エックス線の撮影装置ですとか家庭用のマッサージ器、磁気治療器などが含まれます。三番目の高度管理医療機器、クラス3、4、これはリスクが非常に高いという区分で、人工呼吸器、透析器、コンタクトレンズ、ペースメーカー、このような分類になっております。

 このパルスオキシメーターを製造販売していることに関しましては、管理医療機器の製造販売を対象とした第二種医療機器製造販売業の許可が必要となっております。製品ごとに、クラス分類に応じた承認もしくは認証の取得、届け出を要しております。パルスオキシメーターは、指定管理医療機器として、国の指定する第三者認証機関による認証が必要とされております。

 しかしながら、パルスオキシメーターは、血圧計ですとか体温計と同様に、人体に危害を及ぼす可能性が極めて低い、安全な測定機器でありまして、この1の一般医療機器に分類されてもよいのではないか、このように考えております。

 現在、パルスオキシメーターの価格が比較的高く、その購入に当たって患者団体から助成制度の創設が要望されております。そこで、この医療機器の区分を見直して低価格化を図るべき、このように考えますが、いかがでしょうか。

長妻国務大臣 今、パルスオキシメーターの説明をいただきましたけれども、おっしゃられたような使い方と同時に、例えば、人工呼吸器を装着して呼吸補助を受けている患者さんに対して、本当に人工呼吸器がきちっと作動しているのかどうかというのを、このパルスオキシメーターをその患者さんにつければ患者さんの呼吸状態がわかりますので、呼吸がなされていないという状況が、そこでアラームが出れば人工呼吸器のふぐあいだと推定するということで、ある意味で、確かに血圧計と同じ側面の使い方もあるわけでありますけれども、今申し上げたような使い方でありますと、これは最悪の場合、命にもかかわる状況になる危険性もある、可能性もあるということも言えるのではないか。

 そして、今御指摘いただきましたように、日本国の医療機器というのはクラス1、2、3、4と四種類に分類して、四番目が一番厳しいチェックがなされて、一番低いのがクラス1ということで、今おっしゃられたメスとかピンセットとか、これは承認というのは必要ないわけであります。

 今おっしゃっていただいたものはクラス2ということでありますが、これを例えばクラス1に下げますと、承認が不要ということになります。そういう意味では、使い方によっては命にかかわるような使われ方も今実際なされているという現状にかんがみると、これを直ちにクラス1に下げるのは困難であるというふうに現状では考えております。

古屋(範)委員 大臣、命にかかわる使用方法もあるという御説明でございました。

 一方で、こうした機器が広く低価格で普及をしていくということは多くの人々の健康に資するものでもありますので、こうした使用用途の別もございますので、ぜひ前向きな御検討をお願いしたい、このように思っております。よろしくお願いいたします。

 では次に、高齢者が安心をして、また尊厳を守って暮らしていける社会の構築ということで、介護、医療にも関連をいたします高齢者の問題について質問してまいりたいと思います。

 私は当選以来、高齢者虐待防止の問題に取り組んでまいりました。平成十六年に高齢者虐待防止対策のワーキングチームを立ち上げまして、当時、日本高齢者虐待防止学会の田中理事長を初めといたしまして、多々良先生ですとか高崎絹子先生、専門家をお呼びし、さまざまな勉強会を行いながら、また、視察、関係団体のヒアリングも行ってまいりました。

 こうした中で、高齢者虐待の問題は私たち政治家が責任を持って取り組むべき課題である、このように訴えまして、与野党の皆様にも御協力をいただきながら法制化を進めることができた、このような経緯がございます。

 そして、この春で、高齢者虐待防止法が施行されて四年になります。数々の課題も浮かび上がってまいりましたので、この件につきまして、まずはお伺いをしてまいりたいと思います。

 厚労省で昨年発表いたしました調査結果によりますと、高齢者に対する虐待件数が平成二十年度で、家庭内で一万四千八百八十九、前年度比一二%増となっております。また、介護施設内での虐待は七十件ということで一三%増に上りまして、十八年度の高齢者虐待防止法施行から二年連続で増加をしていることがわかっております。これとともに、市町村への相談、通報件数も、両者ともに増加をしております。法施行後三年を過ぎまして、住民や施設事業者などに理解が進んだ、そういうことが言えるかと思います。

 高齢者虐待防止法が議員立法で成立をしまして三年目に入りましたが、この間、地域包括支援センターが整備をされまして、虐待防止、早期発見、権利擁護のためのネットワークも少しずつではありますが形となってきました。また、都道府県の虐待状況調査、公表、立入調査の取り組みなどもあらわれております。反面、数々の課題も浮かび上がってきていることも事実であります。

 大臣に、まず、高齢者虐待への御認識、そして法制化の成果について、御見解をお伺いいたします。

長妻国務大臣 これについては古屋委員が長年取り組んでおられるということで、これは民主党の議員からもよく聞いておりまして、まずは敬意を表します。

 これは、施行されて約四年が経過をしたということで、そういう意味では、今数字もおっしゃられましたけれども、実態の把握というのはある程度できるようになってきたということであります。通報件数も相談も増加をしているということでございます。

 その一方で、いろいろな御議論の中で、やはり六十五歳以上ということ、あるいは医療機関においての虐待はどうするのか、あるいは立入調査についても、おそれではいいのかだめなのか、いろいろな論点が、これは国会議員の中でも言われているということは承知をしております。

 厚生労働省としても、今はこの法律の範囲内で、さらに高齢者虐待の防止に努めて高齢者の権利擁護をしっかり図っていきたいというふうに考えております。

古屋(範)委員 大臣から、幾つかの論点、御指摘がございました。私たちも、最初に法律をつくるときにもさまざま議論になった点でございます。今回、改正をしていきたいという意向もありまして、当初の論点も含めて、今議論をしている最中でもございます。

 その中で、虐待の定義ということについてなんですが、法の附則に、施行後三年を目途として、施行状況を勘案して検討を加え、必要な措置を講ずるということを当時定めまして、今、有志の議員のメンバーで検討を行っているところでもございます。

 虐待の定義ということなんですが、これは当時も非常に議論になった点であります。高齢者の虐待というのは、加害者と被害者、こういう立て分けをするのが非常に難しい案件であります。また、児童虐待と違いまして、両者ともに大人であるということもございます。そういう上で、犯人捜しをする、加害者を見つけて罰する、それが目的ではないわけであります。

 その中で、五種類の定義を当時、類型として立てました。身体的虐待、高齢者の身体に外傷を生じ、または生ずるおそれのある暴行。また、ネグレクト、高齢者の介護や世話の放棄、放任。また、心理的虐待、心理的に著しい外傷を与える行為。そして、性的虐待。最後に、経済的虐待。この五つであります。

 アメリカにおいては、こうした法律は日本よりも先にできておりますけれども、アメリカの州法の中で、セルフネグレクトというもの、本人が全く生きる意欲を失ってしまう、自分は生きていても価値がない、死んだ方がいい、そのような状況に陥ってしまう、そういう者を放置してしまうということも定義に入れております。なかなかこれも難しい点があろうかというふうには思いまして、当時は類型に入れなかった経緯がございます。また、身体拘束、向精神薬の投与など、どこまで虐待とするのか、それも非常に難しい点だったと思います。

 今回、虐待防止法を見直すに当たりまして、このセルフネグレクトを虐待類型の中に新たに追加すべきだというのが私の意見であります。

 セルフネグレクトは、みずからの権利利益を侵害して、自分自身の生命、健康、生活を損なうままに放置している状態でありまして、これは、老人福祉法に基づく、やむを得ない事由による措置の対象として救済をされる道はあるにはあります。しかし、セルフネグレクトの状態にある高齢者の側から積極的に支援を求めるということは非常に考えにくいわけであります。

 そこで、まず、セルフネグレクトの状態にある高齢者について、これを国としてしっかり把握して対応しているのかどうか、この点についてお伺いいたします。

山井大臣政務官 古屋委員、御質問ありがとうございます。

 思い返せば四年前、本当に公明党として、この高齢者虐待防止法の原案を中心になってまとめられたのが古屋委員でありまして、当時私も、園田議員を中心に、一緒になって民主党案を、うちの事務所の上で、秘書なんかも事務局になってもらいまして、つくって、それで与野党協議をしてこの法案ができ上がったわけであります。

 しかし、三年後の見直し規定が入っておりますように、やはりこの虐待の問題というのはなかなか表に出ない問題でありまして、今、その見直しが必要だということで、党派を超えて議論をしていただいているところだと思っております。

 お尋ねのセルフネグレクトについてですが、定義自体は明確ではありませんが、みずから介護サービスを受け取ることを拒否している方、あるいは認知症のために介護サービスを受けることが困難な方は、いわゆるセルフネグレクトの状態にあると考えられます。

 厚生労働省としては、今年度から実施する、日常生活圏域ニーズ把握手法のモデル事業において、ひとり暮らしや引きこもりの高齢者の状態像やニーズの把握手法を検討することとしており、こうした事業等の展開により、セルフネグレクトの問題について検討してまいりたいと考えております。

古屋(範)委員 ありがとうございました。

 モデルケースとして、こうしたケースをこれから把握する努力をしていくということでございます。これからますます独居老人がふえていくと思いますし、現在、孤独死も増加をしているという状況であります。そういう中で、高齢者がみずから生きる意欲を失ってしまう、こういう状態、だれかが働きかけていかなければいけないんだと思います。これは、介護の問題とも重ね合わせまして、積極的な現状の把握に努めていただきたいと思っております。

 このセルフネグレクトなんですが、これからモデルケースとして行っていくということでありますけれども、もっともっと積極的な介入が必要ではないかと考えております。今おっしゃったように、認知症の高齢者も非常に急増しているというところから、これを放置するというわけにはいかないと思っております。

 セルフネグレクトを虐待防止法の定義に追加することによって、通報義務の範囲に含まれることとなり、その通報により、ある程度顕在化が図れるのではないか、市町村の措置に導かれることが期待をされる、有効な解決策につながってくると思っております。

 この虐待の定義にセルフネグレクトを加えることについて、政務官はどのようにお考えか、お伺いいたします。

山井大臣政務官 古屋委員、御質問ありがとうございます。

 セルフネグレクトは、家族や介護従事者の手による虐待とは異なり、加害者が存在するわけではないことから、身体的虐待や経済的虐待とは同じ虐待の類型の中には入らないとは考えておりますが、私もつらい経験がありまして、私の知り合いの寝たきりの高齢者の方が、御主人が介護疲れで亡くなって、ひとり暮らしになられて、それからもう生きる意欲を失われてしまって、結局、最終的にはホームヘルプも食べることも拒否してしまわれて、そのまま亡くなってしまわれたというケースが身近にございました。

 そういう意味では、本当にこういう方々をある意味で放置するというのも、やはり何とかならないかという気もしますので、先ほど申し上げましたモデル事業での実態把握にまずは努めていきたいと思いますし、このあたりはまさに超党派の議連の中でも御議論いただければと思います。

古屋(範)委員 行政の側としてもそうした実態把握にしっかりと努めていただきたいというふうに思っておりますし、私たちは議員立法、改正の段階で、これは定義に含めて今後対応していく必要がある、私自身はこのように考えております。

 また、昨年の三月なんですが、ちょうどもう一年になりますけれども、群馬県渋川市の高齢者入所施設、静養ホーム「たまゆら」で火災が発生をいたしました。十名が死亡するという非常に痛ましい事件でございました。また、墨田区が入所者十五名を同施設へ紹介していたということでありまして、入所者の多くは都内自治体から生活保護を受けている受給者でありました。

 静養ホーム「たまゆら」は、実態は有料老人ホームですが、老人福祉法に基づく届け出をしていない、いわゆる無届け施設でありました。このような無届け有料老人ホームあるいは住宅型の有料老人ホーム、この環境の劣悪さ、あるいは身体拘束、虐待など、問題事例もあるということを指摘されております。有料老人ホームの約一割に達する三百七十七施設もの無届け施設が存在をしているとの指摘もされております。

 厚生労働省は、無認可あるいは無届け施設の数、そしてこの中にある虐待の数を把握して対応されているのかどうか。また、この無認可、無届けの施設は第二条二項「養護者」に含まれるものではないか、この点についてお伺いいたします。

山井大臣政務官 古屋委員、御質問ありがとうございます。

 有料老人ホームに該当し得る施設であって、老人福祉法に基づく届け出が行われていないものについて申し上げますと、昨年十月末現在で三百八十九施設であると認識しております。

 そして、老人福祉法に定める有料老人ホームに該当するのであれば、高齢者虐待防止法では、届け出の有無にかかわらず、養介護施設従事者等による高齢者虐待に該当することになります。したがって、そこで生じた虐待について、通報義務が課せられます。また、当該施設について、高齢者虐待の防止を図るために措置を採用すべきと命ずるなど、都道府県知事が適切に指導監督を行っていくこととなります。

 なお、仮に高齢者虐待防止法で定める施設に該当しないところで虐待が行われた場合であっても、委員御指摘の同法第二条第二項で規定する養護者による虐待事案に該当し得るものであり、通報義務などがかかることになります。

古屋(範)委員 養護者に該当するというお答えでありました。

 しかし、やはりその辺の周囲の認識といいますか、また当事者におきましても、私は、今後改正の中で、こうした無届け施設もこの中にはっきりと明示をしていかなければいけないのではないか、このように考えております。

 現行法でも十分そこに対応できるというお答えであったと思いますので、ぜひ、こうした痛ましい事件が連続しておりますので、無届け施設、ここに対するこうした火災の再発防止には強く取り組んでいただきたい、このことを求めておきたいと思っております。

 それから次に、医療機関における虐待についてお伺いしてまいります。

 これは非常に、法律を最初につくるときにも議論になった点であります。盛り込んではいないわけでありますが、医療機関における高齢者虐待について、厚生労働省としては把握をしていらっしゃるのかどうか。この点についてお尋ねいたします。

山井大臣政務官 古屋委員、御質問ありがとうございます。

 現在の高齢者虐待防止法における高齢者虐待の定義には、医療機関のうち、介護療養型医療施設の業務に従事する者による高齢者虐待が含まれております。高齢者虐待防止法に基づく対応状況等に関する調査によると、介護療養型医療施設に関して高齢者虐待の事実が確認されたのは、平成十九年度は二件、平成二十年度はゼロ件であったという結果が出ております。

 その他医療機関における高齢者虐待の状況について網羅的に把握しているものではありませんが、医療機関や医療従事者は、高齢者虐待防止法上、高齢者虐待を行う側ではなく、高齢者虐待を早期に発見する側として位置づけられてきたものと承知をしております。

古屋(範)委員 介護療養型に関しては掌握をしていらっしゃる。そのほかに関しては、虐待が発生したかどうかというのは現実には把握はしていないというお答えなんだろうと思います。

 先月なんですが、兵庫県の病院で女性の入院患者、八十五歳の方なんですが、肋骨を折られた。当時の担当看護師、二十六歳の方なんですが、逮捕されました。医療関係者による入院患者への暴行事件を改めてクローズアップさせた案件であると思います。病院内での高齢者虐待というものを印象づける事件であったと思います。それも、被害者は一人ではありませんでした。立て続けに六人も肋骨を折るということでありました。それでも働き続けるという信じられない事件が起きたわけであります。

 また、報道によりますと、病院での被害、二〇〇七年、北九州市の病院で、女性看護師が認知症患者二人のつめをはがして傷害罪に問われた。これで一審で有罪判決を受けております。それから、群馬県太田市の病院でも、男性看護師が当時六十七歳の男性患者の頭をけるなどして死亡させた。傷害致死罪で一審有罪判決を受けております。そのほか、病院内での被害というものは恐らく表面化していないのではないか、このように予測をされます。

 私のもとにも、病院での虐待と思われる事態に遭遇して、どうしたらいいかといったような相談が寄せられております。

 例えば、同じ病室のおばあちゃんが、介護する職員によっておしりをたたかれたり、ひどいことを言われたりするのを何度か目撃した。私の母もこの病院にお世話になっている手前、何も言えずじまいでした。時々、母は水分を余りとろうとしない。なぜかといいますと、水を飲み過ぎると怒られてしまう。多分、おむつを交換するときにそんなことを言われるんだろうと思います。この病院の介護職員による行為について、一体どこに相談をしたらいいのかという問題であります。

 介護療養型医療施設については、今おっしゃいましたように、高齢者虐待防止法第二条五項一号におきまして規定をされているわけです。しかし、その他の医療機関についての規定はございません。法律制定の過程で、医療施設を含めるかどうか、あのときも大きな議論になりました。やはりこれは、漏れなく高齢者の尊厳を守る趣旨から、除外すべきではないという意見が寄せられております。

 もちろん、現行法においても、医療機関における高齢者虐待については、医療法の規定に基づいて、国、都道府県知事、保健所を設置する市の市長または特別区の区長による監督権限の行使が可能でありまして、医療法を中心とした制度の枠内で処理されるという原則は守られるべきと思っております。

 しかし、医療機関による虐待を明確に規定することによりまして、通報の範囲が拡大されて、高齢者虐待の防止に資する、このように考えますけれども、この点についてどうお考えになりますでしょうか。

山井大臣政務官 古屋委員、御質問ありがとうございます。

 確かに、四年前の議論のときにも、医療機関を含めるかどうかが大きな論点になったり、また、高齢者虐待防止法は正式名称は高齢者虐待防止・養護者支援法、つまり、介護する人を支援することなくしては根本的には虐待は防止できない、そういう理念のセットの法案になっておりますが、そのこととともに、この医療機関を含めるかどうかが大きな論点になりまして、まずは含めずにスタートして、見直しのときに議論をしようという宿題になっていたというふうに承知をしております。

 現在、仮に医療機関において医療従事者による高齢者虐待があった場合には、高齢者虐待防止法ではなくて、医療法の規定に基づき、医療機関の開設者、管理者が適正な管理を行っているか等について都道府県等が検査をし、不適正な場合には指導等を通じて改善を図ること、そして、各都道府県等に設置されている医療安全支援センターが、医療に関する患者、家族からの苦情、相談等に対応するとともに、医療機関等に対する助言等を実施することといったような対応などが考えられます。

 高齢者虐待防止法においては、既に介護療養型医療施設が対象となっておりますけれども、それ以外の医療機関も対象とすることにした場合には、高齢者の入院の多少にかかわらず対象とするのか、お子さんがたくさん入院している病院はどうするのかとか、そして、治療に伴う必要最低限の自由の制限との関係の整理をどう考えるのかといった論点も考えられるところだというふうに思っております。

 これは、もう委員御存じのように非常に大きな議論でありますので、政府としてもここは当然議論をせねばならないと思っておりますが、議員の議連の方々の中でも御議論をしていただければと思っております。

古屋(範)委員 高齢者の入院患者が非常に多いということから、医療関係者の方々も非常に御苦労なさっていることと思います。そういうことも勘案しなければなりませんし、関係団体の御主張もあろうかと思います。そういうことも配慮しながら、しかし、何らかの形で前進をさせていきたいと思っておりますし、今後、私たちもしっかりここの議論を深めてまいりたいと思っております。

 それから次に、市町村の体制整備についてお伺いをしてまいります。

 高齢者虐待防止法が機能するためには、市町村の体制整備が不可欠であります。

 さきの調査結果からもわかったことなんですが、法施行後、対応が進んでいる市町村とそうでないところ、非常に差が大きくなっております。マニュアルなど整備がないところが五三・八%、さらに、市民啓発なども進んでいないところも一四・八%あることがわかりました。こうしたところでは、仮に虐待があったとしても、虐待であると認識をされず、対応するところまでは結びついていない。家族の中の問題だろう、そのような考え方がいまだにあるのではないかというふうに思います。

 私の住んでおります横須賀市では、全国に先駆けて、平成十三年から、高齢者虐待防止のために、地域の高齢者の介護にかかわる関係者によるネットワーク事業が開始をされました。保健所、社会福祉協議会、長寿社会課、医療機関、在宅介護支援センター、民生委員、老人福祉施設、介護保険サービス提供事業者、また警察、ケアマネジャー、地域の関係機関がそれぞれの役割を生かしまして、協力連携をとりながら支援していくネットワークができました。こうした中で、虐待のサインを見逃さないというようなきめ細やかな事業を行っております。

 こうした横須賀市の取り組みのように、ネットワークの構築は非常に重要な課題であることが実感をされるんですが、一方で、調査結果から、全国の関係機関介入支援ネットワークの構築の取り組みを見ますと、五八・九%がまだ実施をされていないということがわかっております。関係機関が連携をして、高齢者と介護者の双方をきめ細やかに支えていく体制づくりが重要であると考えております。

 また、この調査結果から、経済的虐待が三千八百二十八件と、前年度から一二%ふえております。全体の二五・七%を占めておりまして、現場の福祉関係者からは、やはり景気の悪化、こういうものが影響して経済的な虐待、年金を奪ってしまう等々、こうした虐待がますますふえるのではないか、懸念の声が発せられております。

 引きこもりの子供に年金などを勝手に使われ自分の生活もままならない、あるいは実家で子育てをするというシングルマザー、あるいはうつ病で就労できない子供を高齢者が面倒を見ているケース、非常に、家族による経済的虐待、経済的依存、いわゆるパラサイトといいますが、家庭内の問題もありまして、第三者が立ち入りにくい問題であります。行政や地域社会が高齢者の困り事を吸い上げる工夫、あるいは失業や引きこもりなどの対策を講ずる関係機関の連携も必要だと思います。

 そこで、厚労省は平成十九年から、高齢者の権利擁護等推進事業のメニューの一つとして、権利擁護相談支援事業の予算も盛り込んで、ネットワークの構築の支援の取り組みを進めていらっしゃいます。この取り組みが全国の市町村に展開できるよう、来年度もこの予算を確保あるいは増額してさらに推進していただきたい、このように考えております。この点、いかがでしょうか。

山井大臣政務官 古屋委員、御質問ありがとうございます。

 高齢者の権利擁護等推進事業は、都道府県における高齢者の権利擁護のための取り組みを推進する事業であり、具体的には、都道府県が、高齢者の権利擁護に関し、弁護士や社会福祉士等の専門職による相談窓口を設置したり、虐待者と被虐待者とを離して一時的に施設等において保護する際に市町村間の調整を行ったりする場合に、要した費用を補助するものであります。

 この事業においては、全都道府県で展開するだけの予算を確保しているものでありますけれども、実施をするか否かは都道府県に任されております。今後とも、都道府県の意見を聞きながら、高齢者虐待の防止や対応に役立つ施策を展開してまいりたいと思いますし、必要な予算はしっかり確保してまいりたいと思います。

 また、委員のおっしゃった横須賀は、高齢者虐待防止についても、そして権利擁護についても日本のモデル地域でありまして、私もヒアリングで勉強させていただいたことがあります。

古屋(範)委員 経済的な虐待も増加をしていく、あるいは一定の資産というものがあれば弁護士等を雇うということも可能なんでしょうが、わずかな年金もそうした中で奪われてしまうというような案件もございます。やはりそこには、こうした高齢者の権利擁護、それは高齢者自身もそうした概念をしっかりと持っていくということも重要でありますけれども、周りでこうした意識啓蒙、あるいはこうした事業の推進ということがまずは重要かと思いますので、そうした予算の確保、事業仕分けにめげず確保していただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 次に、立入調査についてお伺いいたします。

 防止法の制定で、最も注目をされましたのが立入調査であります。しかし、法の規定では、立入調査の要件を「高齢者の生命又は身体に重大な危険が生じているおそれがあると認めるとき」と定めておりまして、強制的な権限行使が現場で非常に困難である、本当に対応できるのかどうかの判断に苦労していると伺っております。

 早期に高齢者虐待を発見して、虐待を受けている高齢者を適切に保護するために、この立入調査の要件を児童虐待防止法と同様に、高齢者虐待が行われているおそれがあると認めるときとすべきではないかとの関係者の御意見をいただいているんですが、政務官、この点に関してはどのような御見解をお持ちでしょうか。

山井大臣政務官 古屋委員、御質問ありがとうございます。

 本当に、四年前の議論の積み残しの課題が今改めて議論になっていることを痛感しております。

 高齢者虐待防止法では、家族などの虐待によって高齢者の命や体に重大な危険が生じているおそれがあるときに限り、市町村がその高齢者の住居に立ち入り、必要な調査または質問をすることができることとされております。

 そして、このことについて当時も議論になりましたのは、委員御指摘のように、これは児童虐待防止法の立入調査のハードルよりも非常に高くしてあるわけですね。その理由は、子供の虐待のときにはいち早く家の中に入らないと命が危険だ、ところが、高齢者虐待防止の場合には高齢者と介護している大人同士の関係なので、少しハードルが高くてもいいんじゃないか。逆に、介護疲れの介護者が弱って近所で介護をちょっと放棄みたいにしていたら、急にほかの人が家の中に入ってきて、ちゃんと介護しなさいと言うようなことが起こっては問題になるのかどうかとか、そういう児童虐待防止とちょっと同列に議論できないところがあるのではないか、そんな議論を四年前にしたことを覚えております。

 ですから、そういう意味ではかなりハードルを高くしてありますので、このハードルが高過ぎて結局発見がおくれているではないかという批判も当然あると思います。このようなことを、政府としてもそろそろ見直しの時期でありますので議論をしてまいりたいと思いますが、また超党派の議員間でも、私たち政府にまず実態を把握する責任があるわけですから、今までのこの三年間の取り組みの中でハードルが高過ぎたのかどうなのか、そういうことも把握しながら、また議員の先生方とも議論をしていきたいと思っております。

古屋(範)委員 児童虐待防止法の方は、より多く通報されるようにそのような規定をされていながら、やはり死亡事件が後を絶たない、一方ではそういう問題も残されているわけであります。

 高齢者の方は大人同士であるということもありましたし、当時は、例えば嫁しゅうとの争いをすべて通報されたらどうなるのかとかまじめに議論したこともございましたが、やはりそこのところを、大人同士とはいえ、時代も違い、家族状況も変化をしている中で、どうしても法律による介入というものが必要になってきた時代だというふうに思います。ですので、私たちも、今議論している最中ですが、やはり少しずつ強化をしていく必要があるのかな、このような考えを持っております。

 次に、最も重要な点であります養護者への支援についてお伺いをしてまいりたいと思います。

 家族介護者、養護者への支援が非常に重要であるというふうに思っております。

 今回、公明党も介護総点検運動というのを行いまして、要介護御本人、また家族への調査も行いまして、やはり家族にとっては非常に介護の負担というものが重い、これはもう心身ともに、身体的にも精神的にも、あるいは経済的にも大きな負担である、このような調査結果が出てまいりました。

 私たち、この介護総点検の中で、高齢者が介護を受けている場所、これは七割強が自宅であります。やはり自宅の方が多いわけなんですね。潜在的には、住みなれた我が家で介護を受けたいと願っている高齢者が多いのではないかと思っております。しかし、家族が介護する意思があっても、実際には疲労こんぱいしてしまう、精神的にも限界に達してしまって、結局は高齢者へ、暴力ですとか介護放棄など高齢者虐待がふえている、こういう現状がございます。

 自宅で介護する四分の一にうつ状態が疑われる、いわゆる介護うつの問題がございます。また、七十代の高齢者を介護する家族の半分以上が七十歳以上ということでありまして、いわゆる老老介護、この実態も深刻であります。

 そこで、虐待防止とともに重要なことは、先ほど政務官もおっしゃいましたように、高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援というこの法律の名称にもありますように、養護者への支援が非常に重要であります。

 私たちが行ったアンケートで、自宅で介護を受けている人のうち、困っていることは、介護する家族の負担が大きい、これが三五・八%と最も多くありました。本人や家族のぐあいが悪くなったときに一時入所できる施設がない、これが一八・八%と続いておりました。これは非常に、介護する側もいつ病気になるかわからない、病気になっても高齢者を預ける先が全くない、あるいは冠婚葬祭においても同じようなことが言えるかと思います。そして、在宅介護は家族の負担が重い、緊急時に入所できる施設をふやしてもらいたい、これが切なる声でありました。

 家族に休息をとってもらうために、ショートステイあるいはデイケアなど一時的に施設に預かってもらうこと、あるいは短期間病院で預かってもらうレスパイトケア事業、この大幅な拡充が必要であると思っております。また、いつでも、どこでも、すぐに対応してもらえる相談窓口の整備も必要であると思います。

 虐待防止法には、養護者への支援として、市町村に、養護者負担軽減のため、養護者に対する相談や助言、さらに、緊急の必要がある場合、高齢者が短期間養護を受けるために必要となる居室の確保、この規定を設けております。これは、政務官が当時、強く最後まで主張された点でありました。

 私は、この措置を拡充して、要介護者の人数に応じて各自治体が一定程度の緊急時の受け入れ空床を確保しておくこと、また、介護の悩みに答えるために二十四時間の相談窓口を整備すること、これが必要なのではないか、このように思いますが、いかがお考えでしょうか。

山井大臣政務官 古屋委員、御質問ありがとうございます。

 古屋委員まさに御指摘のとおりでありまして、要は、虐待を受けた高齢者をどう守るかということはある意味で次善の策であって、この法律の趣旨というのは、いかに虐待そのものを未然に防ぐかというのが最大の眼目でありまして、その意味でも、養護者そして介護者の支援というのは一番重要なポイントだと思っております。

 このため、デイサービス、在宅サービスの充実や、コールセンターによる電話相談支援、権利擁護に関する専門相談窓口を設置する事業についても、都道府県への助成を実施しております。さらに、被虐待高齢者を保護するための居室の確保については、緊急ショートステイを活用する場合、宿泊可能な施設における一時的な保護など、さまざまな方法が考えられるということを思っております。

 そして、やはり今の高齢者虐待に象徴される介護保険の問題というのは、介護施設が満杯であってなかなか入れないということとも絡んでくると思うんですが、介護施設が足りないということは、裏返せば、それだけ在宅福祉の充実が不十分だということも裏返して言えると思います。

 その意味では、今までのサービスが使い勝手が悪かったのではないかということで、同居要件を緩めたり、あるいは余りにも現場の権限、ケアマネジャーさんやホームヘルパーの権限がやはり縮小され過ぎていたのではないか、また、公明党さんも御主張のように、書類が多過ぎて本当に高齢者のために使える時間が現場で減っているではないか、そういうことについても改善の取り組みをしてまいりたいと考えております。

古屋(範)委員 家族への支援というのは非常に重要だと思っております。

 施設の拡充ということももちろん重要なんですが、家族が介護をしたいという意思を持っている方もいらっしゃるでしょうし、北欧諸国の介護制度などを見てみますと、意外と、家族あるいは周辺の人々が介護にかかわっているという比率が思いのほか高いわけなんですね。ですので、そうした場合、やはりさまざまな側面から介護している家族を支援していくということが不可欠であろうというふうに思っております。二十四時間、また三百六十五日、あるいはいざというときに家族を支援していく体制づくり、これが急務であろうというふうに思っております。

 また、養護者への支援、また虐待をしない環境づくりということが非常に重要だというふうに思っておりますが、行政としても、特に在宅介護をしている方々への支援、これをしっかり行っていただきたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。

 また、施設で働いている介護職への支援も必要だというふうに思っております。

 介護現場で、全国的に今深刻な介護従事者の不足ということが問題となっております。特に、若い介護者の、非常に志を持って介護職についたにもかかわらず、低賃金のために結婚ができない、家庭も持てない、悩んだあげくに離職をしてしまうというケースが後を絶ちません。

 今回、私たちも、介護職についてみたいかという街角アンケートを行ってみまして、希望が持てましたのは、十代の方々の答えの中に五割は、介護職についてみたい、そう答えた方がいらっしゃいました。ですので、そういう芽を摘まないように、私たちも介護職の処遇改善というものを行っていかなければいけない、このように考えております。

 介護現場のスタッフが心の課題を多く抱えている、これでは利用者に対するケアの質にも大きな影響が出てまいります。適切なケアを提供できないだけではなくて、逆に、やむを得ず虐待まで発展してしまう、このようなケースもあるわけです。

 こうしたスタッフの介護現場におけるストレスの要因として、夜勤等の不安や仕事内容の割に賃金が低い、休息時間がとりにくい、人手が足りない、ケアに不安がある、利用者同士のトラブルに対応できない、非常に多様な理由が挙げられております。また、研修の重要性が指摘されながらも、スタッフ不足のために、結局は日常業務に追われてこうしたものにも参加ができない、そういうところまで追い込まれてしまうのが実情なんです。

 介護現場において高齢者虐待が起きないようにするために、現場の介護職員が余裕を持って働くことができる環境の整備、また必要な知識、技術を計画的に習得できる研修への参加、そして、高い倫理性と介護技術を持った人材が求められ、力を持った人材が介護現場に入ってくるような制度設計も必要です。

 介護現場における高齢者虐待への防止対策、介護従事者への支援について、お考えをお伺いいたします。

山井大臣政務官 古屋委員、御質問ありがとうございます。

 在宅での家族の介護者のみならず施設の介護者も、本当に肉体的な疲労、精神的な疲労に悩んでおられる方も多いと思っております。

 介護施設従事者について、ストレスを適切にマネジメントし、入所者に対する虐待を未然に防止していくことが極めて重要であるため、この従事者に対しまして、単独で高齢者虐待の防止を図るための教育を行えるようにすることが効果的であるというふうに考えております。このため、平成二十年度には、認知症介護研究・研修仙台センターで、介護職員による高齢者への虐待防止を図るため、ストレスマネジメントの教育システムなどを開発いたしました。

 また同時に、やはり根本的な問題ですが、今やっておりますように、賃金を引き上げていって、それで一生の仕事として誇りを持って働いていけるようにしていくということも必要であると考えております。

古屋(範)委員 介護現場では非常に御苦労されていると思います。私の身近にいらっしゃる方も、認知症の高齢者に介護をしようとしたら、いきなり非常に大きな力で何発も殴られたという方もいらっしゃいまして、非常に御苦労されている。そうした方々への支援、これは不可欠であると思います。ぜひ、さまざまな事業の推進をよろしくお願いいたします。

 また、都道府県の役割強化についてお伺いしてまいります。

 市町村が大変に苦労している、この中で、短期養護を受けるために必要な居室の確保、病床の確保、あるいは、狭い行政区内では、せっかく病床を確保してもすぐ見つかってしまうという可能性もありまして、高齢者のシェルターとして秘密性をどう確保するかという問題もあります。

 都道府県の役割、これは助言、援助にとどまらず、市町村では対応できないこうしたシェルターの確保など、具体的な責任を都道府県に義務として課すべきではないかと思いますが、この点はいかがでしょうか。

山井大臣政務官 古屋委員、御質問ありがとうございます。

 高齢者虐待防止法においては、虐待の通報があった際の対応は基本的には市町村となっております。しかし、市町村が行う措置は広域に及ぶことも考えられ、都道府県は、市町村相互間の連絡調整、市町村に対する情報の提供などを行うとされております。

 緊急ショートステイのベッドなどに関しましても、あいているところ、あいていないところあるわけでありまして、こういうふうなことに関しましても、高齢者の権利擁護等推進事業において、虐待を受けた方を施設に入所させる際に市町村間の調整を行ったりする場合など、都道府県に対して補助を行っております。

 また、認知症の方に介護を行う従事者を対象として都道府県が研修を行う場合に、高齢者の権利擁護に関する講義を開催するよう、標準カリキュラムを示しております。

 今、高齢者の虐待防止に関しましては、各市町村などが、高齢者虐待防止、同時に養護者支援窓口をつくっておりますので、ぜひとも、虐待が起こってからではなく、虐待が起こる前に養護者が気軽にそういう相談窓口に来られるような、そんな体制をつくってまいりたいと考えております。

古屋(範)委員 時間が残り少なくなりましたので、最後の質問に参ります。

 今回の法案の後期高齢者支援金につきまして、被用者保険グループでの総報酬割の導入についてお伺いをしてまいります。

 今回の改正によりまして、健保組合等の後期高齢者支援金の支出が増加をすることとなります。景気の悪化によりまして厳しい財政運営が続いているのは、健保組合においても同じであります。協会けんぽの国庫補助を削減してその負担をサラリーマンに肩がわりさせる本法案は、国が果たすべき責任を放棄している、このように考えます。

 健保組合は、二十一年度に六千百五十億円もの赤字が見込まれております。不況のために、この赤字額はさらに膨らむと予測をされております。これ以上の負担に耐えられるのか。前期高齢者納付金の負担が重くのしかかって、解散に追い込まれている組合もあります。組合制度の存続にかかわる問題であります。保険者間の財政調整については、保険者機能を低下させないために、必要最小限度にとどめるべきと考えます。

 今回、後期高齢者支援金の算定方法に総報酬割を導入した見直しは、結果的には単なる国庫補助のつけかえと言わざるを得ません。さらに、新たな高齢者医療制度の検討段階にあるにもかかわらず、今回の改正で後期高齢者支援金の算定方法を見直す、これは理由が明確になっていないわけであります。

 公明党では、この被用者保険の後期高齢者支援金への総報酬割の導入を取りやめて、これに伴う協会けんぽの負担金は従来どおり国庫から補助すべき、このように考えております。大臣、この点、いかがでございましょう。

長妻国務大臣 まず、これは昨年の年末にかける予算編成の中で非常に、財政当局も含め政府内でもぎりぎりの判断をしたわけであります。

 協会けんぽの財政が急速に悪化する中で、ほっておけばかなりの保険料の急上昇があるというような中で、まずは国庫補助率を三年間に限り本則にあります一六・四%に引き上げる、こういう措置は当然だということで、させていただいた。それでも保険料の上昇というのがかなり極度にありますので、それを抑えるということで、総報酬割導入によって、これは健保連の皆様とも、何度も足を運び、御理解を得るべくお話を申し上げたということでございます。

 これは、満年度、平年度ではトータルで一千八百億円の支援措置でございまして、国庫では九百二十億円、総報酬割導入による捻出では九百十億円ということで、そういう意味では、協会けんぽの支援という目的の中で、国あるいは総報酬割というような仕組みの中で財政的な支えをさせていただきたいということで、我々、ぎりぎりの判断をさせていただいたところであります。

古屋(範)委員 後期高齢者医療制度の廃止をマニフェストで掲げたにもかかわらず、それをそのまま温存し、まして、今回、国庫補助の分を肩がわりさせる、こうした本法案の改正に関しましては反対である、このことを再度申し上げ、質問を終わります。

 ありがとうございました。

藤村委員長 次に、柿澤未途君。

柿澤委員 みんなの党の柿澤未途でございます。

 きょうは、まず、年金担保融資のことについてお伺いをいたしたいと思います。

 公的年金というのは前借りができるんですね。公的年金を二百五十万円まで前借りできる、国の年金担保融資制度というのがあります。厚生年金や国民年金を受け取っている人が利用できる年金担保融資、これは一回に十万から二百五十万まで、年金の年額の一・二倍まで借りられることになっています。

 もちろん、厚生年金や国民年金また労災年金などの公的年金を担保にとって融資をするということになると、後で生活困窮に陥るおそれがありますので、これは原則として法律で禁じられているんですけれども、厚生労働省傘下の独立行政法人福祉医療機構だけ、年金を担保にとって融資をするということが認められています。

 返済は融資を行った翌々月から始まって、これはしかも、年金から基本的には天引きで返済が行われるということになるんですね。返済は年金から天引きということになるので、これは貸している側の福祉医療機構からすれば、全く取りっぱぐれがないというか回収コストが全くかからない、天引きですから。そういうこともありまして、非常にこれは審査が緩かったということが言われています。

 昔ですけれども、新聞報道などもされていますけれども、年金をこの年担で前借りして車を買っただとか遊興費に充てただとか、こういうことが続出をして、結局、前借りで年金を全部使っちゃって、そうするとどうなるかといえば、生活費に困ってしまう。年金を受給する年代になって、受け取れる年金がもう既に前借りで使っちゃっていますからなくなっちゃって、それで結果として生活困窮に陥るということが非常に多く見られたということであります。

 そういう人たちがどうなったかというと、みんな最後は生活保護に行っちゃうんですね。二〇〇八年ですけれども、この年金担保融資を利用した上で、結局それを使ってしまって、最後に困って生活保護を申請した、こういうケースが五千百八件あったそうですけれども、そのうち四千九百八件、九割近くというか、もうほぼ一〇〇%が受給を認められています。

 こういう形で年金を前借りして生活保護を受給するとなると、年金を受け取り、なおかつ生活保護ですから、二重受給となってしまう。どうしてこんなことが行われているのかなというふうに思うんです。

 まず、そういう意味で、制度としてなぜこういうことが行われてきたかということについて、年金担保融資の趣旨をお伺いしたいと思います。

山井大臣政務官 柿澤委員、御質問ありがとうございます。

 年金担保貸付制度は、昭和五十年の創設以降、年金を受給されている方が、急な入院や冠婚葬祭などのために、どうしてもお金が急に必要であるが手持ちの現金がないといった場合に、年金の受給権を担保として小口の資金を低利でお貸しする制度として定着しておりまして、毎年二十一万人の方に御利用いただいております。

 この制度は、高齢者の皆様の主要な収入源である年金の受給権を担保にすることは法律上禁止されておりますが、医療費などの一時的な資金需要が生じた場合に、一般の金融機関からの融資を受けにくい高齢者の方が、貸金業者から高利で借り入れを行い生活困窮に陥る事例が見られたことから、そうやって生活保護になっても逆に困るというようなこともありまして、それらの方々が利用しやすい融資制度として創設をされたものであります。

 本来禁止されている年金受給権を担保とする貸し付けは、例外として行われているものであることから、独法の福祉医療機構が実施主体となり、ここから業務の委託を受けた金融機関を窓口として行われております。貸付限度額は十万円から二百五十万円までの範囲で、貸付金利は年一・九%、返済は二カ月ごとに支払われる年金から一定額を返済するものであります。

 柿澤委員が御指摘の、年金を担保にしてお金を前借りしておきながら結局生活保護を受けちゃっているというのは二重取りじゃないか、そういう問題意識は私自身も共有をしております。

柿澤委員 最後に、年金を前借りして使っちゃった上でなおかつ生活保護にその方々が流入をしてくるということについては、やはり非常に問題があるというふうなことで、問題意識を共有してくださっていると山井政務官から御答弁をいただきました。

 これについては、生活保護の実務を担っている自治体の方からは、もう悲鳴に近いクレームが来ています。これについて、福祉医療機構が本当にこんな緩い審査でどんどん年金の前借りを認めてしまって、そして、例外といいながらさっき言ったような実態ですから、結果として自治体がやっている生活保護に流入していくというのは、本当に自治体からすると受け入れられないということなんだろうと思います。

 こうした自治体の強いクレームの声にある意味では応じて、独立行政法人福祉医療機構もさすがにこの年担融資のあり方を多少見直しを行ったところでありますけれども、この見直しの内容についてお尋ねを申し上げたいと思います。

山井大臣政務官 柿澤委員、御質問ありがとうございます。

 この議論は、本当に今までからずっと指摘をされております。そういう指摘に基づきまして、福祉医療機構において、年金担保貸付事業の在り方に関する研究会を設置して、平成二十年一月から七月にかけて研究会を開催しました。この研究会の報告を踏まえ、可能なものから実施していくという考え方で、ことし二月から四つの点の見直しを行っております。

 一つ目は、借り入れ申し込み時に、借り入れの理由、必要金額及び緊急性等を御記入いただく等の貸付審査の強化、緩過ぎだという批判に対してこの貸付審査を強化するということが一点。二点目は、年金が少しでも手元に残るように、支給される年金のすべてを返済に充てることができないようにする、できるだけ生活保護になりにくいようにする。三番目は、返済中に生活困窮に陥った方の負担を軽減するため、返済額の途中変更を認める。四番目、一回当たりの返済額を抑えるため、返済回数の増加、最大十二回から十五回に増加を認めるというような見直しを行っております。

 なお、研究会の報告においては、例えば、貸し付けの審査に際して信用情報機関に利用者の借金の有無を一つ一つ照会するなどの案も検討すべきといった、より厳格な案も提起をされておりますが、同時に、その場合には、真に必要とする方への貸し付けが行われない事態を招くのではないかといった、そんな視点からも検討する必要があるということも指摘されておりまして、引き続き慎重な検討が必要と考えております。

柿澤委員 今から質問しようとすることを後段の答弁でお答えをいただいてしまったような形になったんですけれども、今回、見直しを行ったということなんですけれども、しかし、今聞きましたか。見直しの第一に挙げられているのが、年金担保融資を受けるに当たって、何に使うのか、理由と使い道を書く、これが審査の厳格化だというわけです。こんなことで、本当に今までのあり方を変えていくことができるのか。

 その一方で、福祉医療機構が設置をした有識者会議の中で検討された、例えば、利用者本人ではなくて利用者の支払い先に融資金を振り込むとか、あるいは信用情報機関に照会を行うとか、こういった措置については今回行うことが見送られております。

 そういう意味で、先ほど山井政務官が御答弁をされたとおり、これは、年金を前借りしてしまう、将来の老後の生活の糧を先食いしてしまうという、本当に例外中の例外として認められるべきものでありますので、この審査は極めて厳格なものでなければならないというふうに思いますが、今回、見直しについては、有識者会議をせっかくつくって検討された内容の一部は見送りになってしまったわけです。

 こういう形で行われているということが、この見直しによって、先ほど申し上げたような年間五千人近くもの方が年金前借りを全部使い切ってしまって生活保護に流入している、こういう実態をしっかり変えていくことができるのかどうか、年担の安易な利用に歯どめがかかっていく状況になるのかどうかということについてお伺いをしたいと思います。

山井大臣政務官 柿澤委員、御質問ありがとうございます。

 実は私も、この質問を受ける前からこの年担には同様の問題意識を持っておりまして、私自身、いろいろ担当課と議論をしておりました。

 一番極端な意見は、そもそも年担はおかしいんじゃないか、年金を担保にお金を借りること自体が、福祉医療機構であろうがおかしいんじゃないかという議論もあるんですね。もうなくすべきだというのも一番極端な意見としてあります。片や、ただ、なくした場合、急な入院とかで本当に困窮してしまった人が高利の金融業者に行かざるを得なくなる、やはりなくしてしまうのはいかがなものかという議論もあったりはします。

 ただ、一つの方向性を言えば、今回かなり厳しくした方向性を打ち出したわけですが、柿澤委員が御指摘のように、まだ十分に厳しくなっていない。つまり、これによって前借りしてお金を使って、結局は生活保護になって二重取りになるというような実態が減らないのであれば、やはりこれはさらに厳しくしていくということが私は当然必要ではないかというふうに考えております。

柿澤委員 今の御答弁は、二〇〇九年度、二〇一〇年度、こういう制度変更というか見直しを行った以降もこの実態をしっかり調査して、把握して、そして対応を検討するということでよろしいですね。

山井大臣政務官 柿澤委員にお答え申し上げます。

 おっしゃいますように、この問題は、やはり今生活保護が非常にふえて、市町村からも悲鳴が上がっております。そういう中で、この年担をどうするかというのは非常に重要な問題だと思いますので、実態を把握して、今までの問題点をどう解消するかということは引き続き検討してまいりたいと思います。

柿澤委員 これに関しては日弁連も、今回の見直しは問題を根本的に解決するものではないということで批判をしております。その一方で、社会福祉協議会、社協が扱う生活福祉資金貸付制度というのが見直されて、年金生活者も利用しやすくなっている。こういうことで年担が存続すべき目的はなくなったということで、日弁連としては、この年担融資制度の廃止を提言しております。

 また、これは聞き及ぶところによると、福祉医療機構は今の独法仕分けの対象にもなっていて、その中でこの年担融資について、廃止も含めたいろいろな多角的な検討の俎上に上っているというふうにも聞いております。

 今申し上げたように、本来、それは公共的な使命を帯びているといっても、独法にだけ年金を担保にした前借りが認められていて、それを独立行政法人が一手に引き受けて行っている、この事業のスキームそのものにも、私はどうしてこういうことになっているのかなというふうなことも多少感じております。

 その意味で、ここまでの山井政務官とのやりとりを聞いてこられて、私は、この年担融資制度というのはいっそ廃止をして、今申し上げたような生活資金の無担保貸し付けに制度を拡充して移行していくべきだというふうに考えますけれども、長妻大臣、御答弁をいただけますか。

長妻国務大臣 まず、先ほど来山井政務官も答弁申し上げましたけれども、ほかの金融機関は年金の担保融資というのは禁止をしておりますが、なぜここの独法だけそれができることになっているのかということでありますけれども、本来の趣旨は、必要最小限の、最後のセーフティーネットの役割を果たしていくというのも一つの趣旨だったわけでございます。

 つまり、ほかの行政サービスでは年金受給の方が、例えば、入院をして非常に医療費がかかる、あるいは建物、住宅が雨漏りがあるなどなど修繕をしなければいけないけれどもその費用がなかなかないとか、あるいは冠婚葬祭費、あるいは急な必要不可欠の出費があるときに、ほかの行政サービスがあればそれを活用していただくわけですが、それもない場合どうするのか。

 つまり、ある意味では行政サービスの一つの穴をふさぐセーフティーネットとして機能するというそもそもの趣旨で私はこれがあるんだというふうに考えておりますが、今御指摘いただいたように、そもそもの趣旨に合致した融資状況があるのかどうかというのをやはり再度きちっと確認する必要があると私も感じておりますので、本当に、どういう使途なのか、あるいはほかに受けるべきサービスがないのか、必要不可欠なものなのか、これをある意味ではさらにサンプル調査的に確認を、実態把握をして、この事業自体を今後どうするのか。

 先ほど御指摘いただいた社会福祉協議会でもそういう融資制度というのが充実しつつありますので、そういう行政の制度を組み合わせれば、本来の、ここで機構がやっている目的が達せられるのであれば、それは非常に必要性が低い、あるいはなくなるということも言えるわけでありますので、どこまでそういう整備、ほかの制度との整合性がとれているのか、いま一度きちっと確認をしていきたいというふうに考えております。

柿澤委員 私は、年金生活者の最後のとりでをなくせと言っているわけでは決してありません。しかし、二〇〇八年度末の融資残高でいえば、三十四万件、計一千九百億円が年担融資の規模としてあるわけでして、本当に厳格な中でそういった審査が行われているのかなということについては、いささか疑問に感じているわけであります。

 長妻大臣初め山井政務官、皆様方の今後のお取り組みを御期待申し上げまして、次の質問をしたいと思います。

 国保組合について、多少お伺いをいたします。

 東京都と厚生労働省が、無資格者が多数加入をしていたということで、二月に、全国建設工事業国民健康保険組合、通称建設国保ですけれども、この本部と徳島支部に国民健康保険法に基づく立入調査を行っています。また、報道を見ますと、三月には、この建設国保の埼玉県建築支部にも立入検査に入っております。三月に入ってからの報道だと、何かこの建設国保について、多額の補助金を受領しながら不正加入が各地で多数見つかっているということで、会計検査院が担当者を派遣して、実地検査に入るということが言われております。

 ここまでいろいろな形で報道されてきましたけれども、厚生労働省、また東京都も入っておりますけれども、この国保組合、建設国保に対する立入検査の状況についてお伺いをしたいと思います。

長浜副大臣 全国建設工事業国保組合における無資格加入問題に関する御質問でございました。

 この組合の一連の無資格加入問題の報道等を受けまして、本年一月以降、東京都及び関東信越厚生局が、同国保組合の本部、徳島県及び埼玉県の支部に実地検査を実施したところでございます。組合本部には二月の九日、十日及び三月十二日、徳島県支部には一月二十五日から二十八日の三日間、埼玉県建築支部には三月九日でございます。

 先ほど委員が言及をされた会計検査院は、三月の十七日、十八日、会計検査院が組合本部を検査。四月中に、組合が東京都に全国調査の結果を報告する予定となっております。

 特に、徳島県支部の実地検査においては、支部の職員から聞き取りを行うとともに、抽出した二十五名の加入者に面談した結果、建設業関係に加入当初から従事していないことが明らかな者が二十五名中十二名確認をされているところでございます。

 また、埼玉県の支部の実地検査においては、法人事業所であるにもかかわらず、個人事業所として加入している疑いのある事例が数件見られたところでございます。

 このような実地検査の結果も踏まえ、現在、東京都が同組合本部に対し、全国調査を指示しているところであり、早急に無資格加入者の実態を明らかにすることとしています。

柿澤委員 立入検査の今判明している状況を御説明いただきましたけれども、加入当初から無資格だったという人がサンプル調査二十五名のうち十二名、半分、もともと無資格の人が加入をしていたということであります。

 また、これは報道ではありますけれども、例えば北海道の札幌の方で、やはり建設国保、従業員の分割をして、個人事業主を装って加入していたのが三百近くとか、法人隠しの疑いがあるのが六百社に上ったということが言われています。

 どうしてこういうことが起きるのかといえば、これは、会社の保険料の事業主負担をどういうふうに回避するかというインセンティブが働いているというふうに思います。法人などには、協会けんぽとセットで厚生年金に加入をする、こういう加入義務があるわけで、いずれも、厚生年金も協会けんぽも保険料を事業主の折半で負担するわけです。小規模の個人事業所であれば、建設国保と国民年金のセットでこれを選択することができて、これはいずれも事業主負担がない。

 それで、協会けんぽとか厚生年金の加入義務は九七年に大変厳格化をされて、法人事業所などが原則としてこういう組合に加入をできないということになりました。協会けんぽについては加入を免除する例外規定があって、国保組合に残ることができたんですけれども、厚生年金への加入は避けられない状況になりましたので、この九七年を境に個人事業所のある種の偽装が急速に広がったということが言われております。

 これは、実は協会けんぽそのものの財政収支にも大きくかかわってくる問題で、こうした実態を明らかにし、そして対処を進めていくことが、実は協会けんぽの財政の収支改善にもつながっていく面があろうかというふうに思っております。

 そういう意味で、これからの厚生労働省としての、建設国保にあらわれたようなこうした問題に対する対処の方針ということについてお尋ねを申し上げたいと思うんですが、ぜひよろしくお願いいたします。

長妻国務大臣 まず、今お尋ねの全国建設工事業国保組合、建設国保に対しては、先月の交付金について、国庫補助を五・一億円カットいたしました。そして、今長浜副大臣からも御答弁申し上げましたように調査をしておりまして、全容が判明して実態が明らかになり次第、行政処分に加えて国庫補助を返還させる、こういう措置をとっていきたいと思います。

柿澤委員 一方で、国保組合全般については、先日、東京都が都議会の答弁で、これから国保組合、都が認可をするものの全部について実態調査に乗り出す方針を明らかにしております。

 都が認可する国保団体というのは、二十三万人加入していて、それに六十八億円の補助金が投入をされているそうでありますけれども、国保組合の中には、まさに中小零細の皆さんの命を守るといいますか、暮らしと医療のまさに最後のとりでになっている、そういう重要な役割を果たしているところもある。一概に、すべてが建設国保のようなことではないということは理解をしておりますが、実態を調査し把握する、この東京都のような取り組みは、やはりこの際、必要ではないかというふうにも思っております。

 この点について、厚生労働省として国保組合全般にわたる調査を、この際、東京都のように行うという方針があるのかどうか、お伺いをしたいと思います。

長妻国務大臣 国保組合に関しましては、我々、政権交代後、財政の調査をいたしまして、それぞれ今まで公表していない指標もお出しをして、チェックできる体制を一定程度整えているというふうに考えております。

 そして今回は、まさに無資格で加入するというような問題が報じられ、我々としても調査をしておりますので、仮にほかの国保組合でそういうような御指摘があれば厳正に対処をしていくということで、まずは財政面でのチェックというのを体制を整備していくということであります。

柿澤委員 これは一月に、まさに長妻大臣おっしゃったように、国保組合に補助金として出ている補助の割合、また額についてお出しになられました。中には、補助率が七〇%を超えている、五五%の上限を大幅に超えている組合がある。五五%を超えている組合自体も十九あるということが言われております。

 協会けんぽの財政が大変厳しいということが言われ、今回こういうふうに財政措置が行われ、また肩がわりなども求められるわけですけれども、しかし一方で、多額の積立金を持ちながら、入院費無料、また一部には外来の医療費も無料のところもあるというふうにも聞きます。こうした実態が果たして負担と給付の公平性、国民全体の中での公平性から見て本当に正当化できるものなのかどうかということについては、やはりしっかりとしたチェックをしていかなければならない点もあるのではないかというふうに思います。

 これからの、まさに納得、理解をして、国民がひとしく負担をする、こういう医療保険制度のあり方を実現していくために、ここは見過ごすことのできない問題をはらんだところだというふうに思っておりますので、お取り組みをこれからもお願い申し上げまして、質問を終わりとさせていただきます。

 ありがとうございました。

藤村委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時十八分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

藤村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。田村憲久君。

田村(憲)委員 自民党の田村でございます。

 午後から一時間ほど大臣といろいろな議論をさせていただきたいということで、よろしくお願いをいたしたいと思います。

 まず冒頭、この国民健康保険法とは直接関係ありませんが、先般、子ども手当、法律が通りましたけれども、最近、原口総務大臣が、子ども手当の満額支給はどうなんだろう、そんなお金があれば、地域主体に、裁量権を持たせて子育てサービスを充実させた方がいいんじゃないか、こういうことをおっしゃっておられます。

 中身で我々も賛成の部分と反対の部分がありますので、どんな子育てサービスを充実するためにこのお金を使うのかというのがわからないから、なかなか評価しづらいんですけれども、ただ、我々も、子ども手当満額支給ということに関しましては、ちょっと余りにもこれは金額が大き過ぎるんじゃないか、そんなお金があるのなら、今厚生労働省さんがいろいろと検討しているプランを実行するためにお金を使っていただいた方が、子育てのためにお金を使っていただいた方がいいんじゃないのかなという思いがあるんです。

 この原口大臣の考え方、発言に対して、長妻大臣、私もそう思うなと今思っておられるのか、それとも、いやいや、子ども手当は満額支給をしようとまだ思っていますよというふうにお感じになられておられるのか、どうでございましょう。

長妻国務大臣 私としては、基本的にマニフェストどおり、平成二十三年度、子ども手当を実行していこうというような考え方であります。

 その一方で、全体の現物給付をどうするのかという議論は、これは今の話とは別に、子ども・子育て新システム検討会議、簡単に言うと、幼保一体化、そして地方と国の保育や子育てに対する役割分担を見直すというようなことで、今度、四月二十七日に初めて大臣級の会合があるということで、そこで現物給付はどうあるべきというのは議論しますが、現金については、冒頭申し上げましたように、平成二十三年度はマニフェストどおりに実行するよう、政府全体でよく議論して結論を得ていこうというふうに考えております。

田村(憲)委員 これは集中審議のときに総理とも御議論をさせていただきましたが、中期財政フレームができ上がるときとほぼ同じ時期に、それを満額支給するかどうか、財政的にかなり大きな分野を占めますので、当然その中に含まれているかどうか、金額をどうするのか、そんなことを発表される、意思を表示されるということであったろうと思います。当然、現物給付の方もかなりのスケールでお金がかかるわけでありますから、その中に入ってくるのかなというふうに思います。楽しみにさせていただきたいと思います。

 今、幼保の一体化という話がありました。きょうはこの議論をしませんが、一元化と言っていただかなかったというのは大変私どもうれしく思っておりまして、一体化というお言葉をお使いになられた、これは正しいというふうに思います。幼保の一体化、一元化、どういうことなのかというのは、また別の機会に大臣と、その考え方というものは議論をさせていただきたいと思います。

 こういうふうに、鳩山内閣というのは、長妻大臣はそういうお考え方である、一方で、原口大臣は満額支給するのはどうかななんてことを言われる。内閣の中で、非常に大きな、民主党政権の目玉の政策に関して結構意見が合わない、こういう特徴がございます。もちろん、今までの自民党政権の中でもそういうことはございましたから、それがすべて悪いと言うつもりはないんですが。

 そこで、仙谷大臣もいろいろなことを言われておられまして、閣僚が十七人体制、少ない、もっと閣僚をふやした方がいいんだ、こうおっしゃられた。そしてその中で、長妻大臣、厚生労働大臣がやり玉に上がっているんですね。利害相反関係に陥らざるを得ない事柄を一人の閣僚で役割をあわせ持つのはいかがなものか、厚生労働大臣を分けろと。厚生労働という形、年金担当だとか労働担当だとか、いろいろな分け方があるんだと思うんですが、そういう発言というふうに受けとめさせていただいておるんです。

 大臣も、本当に幅広い業務を所掌されて、大変だと思いますよ。これに関して大臣、今、それはそのとおりだ、幾つか、だれかおれの仕事を持っていってくれというふうに思われておられるのか、いやいや、厚生労働は今、省庁再編してうまく回っているので、これからもこの枠組みの中で続けさせていただきたいというふうに思っておられるのか、いかがでございましょう。

長妻国務大臣 私自身は、与えられた職責、立場の中で全力を尽くすということでございまして、もちろん、今こちらにも出席しております政務三役、それぞれ得意分野がある方がついてもらって、ある意味では役割分担をして厚生労働行政に取り組んでいるということで、今はそれで我々は全力を尽くしているということであります。

 ただ、一つ、厚生労働行政の中で私が感じていることは、厚生労働行政の中には、規制をかける、ある意味では取り締まる部分と、それを推進する部分、例えば、医療でいうと、医療を推進する部署と医療を厳しくチェックする部署もありましょう。労働でも、推進するところ、チェックするところ、いろいろな分野で、推進役とブレーキ役が一つの組織で混在しているということに関しては、いろいろこれは議論があるんじゃないか。

 大臣を何人置くということとは別に、そういう役割を多少明確に区分していくというようなことは、中長期的に考えてもいいのではないかと思いますけれども、今の段階では、政務三役と協力をして、こういう体制で全力を尽くして厚生労働行政をとり行っているということであります。

田村(憲)委員 これは、考え方はいろいろあろうと思いますが、我々も、厚生労働行政、労働と厚生が一緒になって非常に相乗効果が出た部分もあろうと思います。そういう意味で、当分の間、今の体制でいっていただいた方がいいのではないのかなと、私は個人的には思っております。せっかくそういうポジションに、大臣または副大臣、政務官、おつきになっておられるわけでありますから、こういうことが言われないように、しっかりと頑張っていただきたいなというふうに思います。

 さて、今般の法律に関して御質問をさせていただきたいと思いますが、きのうも参考人の皆さんからいろいろな御意見をいただきました。いろいろな方面からの御意見がございましたので、もちろん、それぞれ背負っておられるものが違いますので、皆さんの意見が同じだったわけではございませんが、やはり健保連の方々からしてみれば、今回のこの制度改正、本格改正に至るまでの間の応急処置だという話になろうと思いますけれども、不満も非常に多いということでございました。

 もちろん、市町村国保に対しては、今までのように高額医療費共同事業でありますとか保険財政共同安定化事業等々含めて、保険基盤安定制度等々を延長して国保財政をしっかり守ろう、これは我々も評価をしております。

 一方で、協会けんぽが、非常に財政が厳しくなって、このままほっておいたら保険料が一挙に上がる。ですから、八・二%から九・九%まで上がりそうだということで、それを何とかしなきゃならない。言うなれば、今入っている一三%という国庫補助率、これを本則の一六・四%まで引き上げるためにはどうしたらいいんだということで頭をひねられたんだというふうに思うんです。

 それは、負担を背負わされる側の方からしてみれば、やはり理屈が合わぬものは理屈が合わぬとおっしゃられるのは当たり前でありまして、二十年度の改正のときにも、健保連の方々には負担をお願いするということを、我々がこれは頼みましてやりました。そのときもいろいろありましたよ、議論は。しかし、最終的にはちゃんと御理解をいただいて、やむなしということで納得をいただいて、賛成とは言わないけれども、この保険医療を守るためだからということで御理解をいただいた。

 しかし、今回は、金額はそのときから比べると少ないんだと思うんですよ。でも、金額の問題じゃないと。三百三十億円、これは、総報酬方式に変えて、そして協会けんぽの肩がわりをする。協会けんぽというよりかは、それの国庫の負担部分を肩がわりするということになったわけですよね。

 きのうも私どものところに地元の健保連の方々が来られまして、健保組合の方々が来られて、どうしても納得いかないんだと言われるんですよ。だって、今、高齢者の医療制度の改革会議をやっているわけでしょうと。そこでいろいろな議論をして、どういうようなプランがあるかというのを幾つかに類型分けして議論している最中に、あたかもその中の一つの例示のような財政負担、これを今回急に入れてきた、それが言うなれば、総加入者数でやるのではなくて、総報酬でリスクを分散しようという方式ですよね。これがやはり納得できない、急に出てきた話だと。これは、確かに言われるとおりだろうと思うんですよ。

 これは、一六・四%、最低の本則に戻すという国庫の補助率、それからキーワードとして、そのために一千二百二十億というお金が必要だ、こういうキーワードがありますよ。そのために六百十億円ずつ、肩がわりしてもらった六百十億円と、それから国から純粋に出す六百十億円、千二百二十億円の内訳ですね。こういうキーワードが幾つかあるんですが、そもそも、このスキームをつくるのは一体どれが所与だったんですか、どの数字をもとにこういうようなスキームをお考えになられたんですか。

長妻国務大臣 まず、これは言うまでもないことでありますけれども、協会けんぽの保険料の上昇が非常に、かつてないほどの上昇になるというようなことで、これをまず抑えていこうということです。

 総報酬割という話にするからには、もちろん国庫の部分もやはりきちっとふやす必要があるということで、これは今までは本則ではなかったわけでありますが、本則でも一番低い本則であります一六・四をまず確保する、一六・四パー、国庫補助を。その国庫の金額に加えて、それだけでも協会けんぽの上昇というのはまだまだございますので、それについては総合的に考えて、そして結果的には、それと同額のお金を総報酬制にすることで健保から支援をいただく、こういうようなことになったわけでございます。

 これはるる説明しておりますけれども、総報酬割というのは、すべての健保連の配下の組合にマイナスということではなくて、財政力の弱いというか、収入の少ないところはかえって総報酬割で負担が減るということはありますけれども、全体としては、おっしゃるように、健保連の配下の組合トータルでは負担増になるということでございますので、これについては、役所、そして長浜副大臣を中心とする政務三役、私も健保連にお邪魔をして理解を求め、説明をしてきたわけであります。

田村(憲)委員 今の点も、きのうのお話の中では、健保連の方は、それは五百ぐらい、三分の一ぐらいは負担が下がるところがあるという話は言われるけれども、しかし、それで納得すべき話ではないですよねと。そもそもスタートのボタンのところがかけ違えている話で、全くもって納得しない中で無理やりやらされていることに対して、非常に不満をお持ちでございました。

 それはそれでいいんですが、今の大臣のお話ですと、一六・四%という本則ですよね、国庫負担率の。これは言うなれば、一番初めに、協会けんぽの保険料がほうっておいたら急激に上がるから、八・二から九・九ぐらいまで上がるから、それを九・三四ぐらいに抑えるために、ではどうしたらいいんだと考えたら、一六・四%まで、大体本則の最低ぐらいまで、本当はもっと上げたいけれども、そこまでまず戻せば一千二百二十億円かかる。それぐらい入れれば、大体保険料の上げ方は、上がるけれども耐えられる範囲内での上がりになるであろう、上昇でとまるだろうと。

 その一千二百二十億円、これは、本来ならば全部国費で出せばいいわけですよね。そうすれば、別に健保組合、共済に依存する必要はないので。そういうことでしょう。ところが、そこでなぜかしら同じ六百十億円、約半分、たまたまなのかどうなのか、頭のいい財務省のお役人が、何か、やはり厚生労働省等々に、これぐらいだったら健保連も出すんじゃないか、理屈づけあるよということで知恵を授けたのか、それとも後ろの厚生労働省のお役人の皆様方がそういう発想になったのかよくわかりませんが、半分ずつ持ちましょうという話になった。多分こういう順序でこれが決まっていったのかなというふうに思うわけですよ。

 後期高齢者部分の協会けんぽの国庫の負担率、今でも一六・四%ありますよね。これは言うなれば、財政力というか、それぞれの収入によって差があるから、被用者の中で協会けんぽの方々は中小零細が多いから、収入が少ないから、だからその分は国がある程度面倒見なきゃいけないねというので見てきた部分。それが総報酬制になれば、報酬に応じて負担をするわけですから、ここはもう国費から入れなくていいよねと。これがちょうど六百十億円ですよね、それと真水で入れる六百十億円、合わせて千二百二十億円と。

 何かうまく数字が合ったなと思うんですけれども、よほどやはりお役人の方は頭がいいんだと思いますよ。でも、これはやはりどう考えても、本来は国費で入れるべきでしょう。

 シーリングを外したんですよね。シーリングを外そうというのは、このままでいったら医療が崩壊するという話の中でやられたわけでありまして、シーリングを外したけれども、結局、何か知らないけれども、どこかの保険者に負担が行っちゃったという話だと、よくわからないんですよ。税金を入れられる余裕があるのならば、ここに入れた方がよかったんじゃないか。少なくとも残り六百十億円、国費で入れていれば、健保連の方々はこんなことは文句言わなくて済むんですよね。

 大臣、そこを、なぜこの六百十億円を健保連の方に総報酬制でツケ回しをされたんですか。

長妻国務大臣 これは、今御指摘いただいたように、国の財政が厳しい、こういう背景ももちろんあるわけでございますけれども、ただ、もう一つの発想としては、やはり総報酬割を導入することで、逆に言うと、これは収入の少ない組合にとっては負担は軽くなるということで、そういう考え方をこの際とらせていただくというようなことも背景にあるわけでございます。

 そして、シーリングの話でありますけれども、これはシーリングを廃止したということでございまして、例えば、診療報酬に関しては、これはネットでプラスということもさせていただいておりますし、子ども手当やあるいは母子加算なども、そういう意味では、我々としては、シーリングという発想ではない形で措置をさせていただくということで、それぞれの政策判断をさせていただいているということであります。

田村(憲)委員 診療報酬のお話になるとまた前の話に戻っちゃいますので、本来医療のシーリングはマイナスシーリングだったんですよと前から私は申し上げておりますけれども、きょうはその話はしません。

 子ども手当だ、何だかんだというような、我々が反対している、しかも巨額な政策を皆様方が導入したがために、結果的には、医療をもっと手厚くするんだと言っていたところに実は手厚くなっていなかったという証拠なんですよね、これは。たかが六百十億円と言ったら怒られちゃいますけれども、六百十億円、今年度出せていれば、これは健保連からこんなに、何も相談を受けていないのに、いや相談を受けたけれども納得もしていないのに、こんなことを勝手に決めやがってなんて言われないわけですよ。

 しかも、今、総報酬割にしたから下がるところがあるんだ、だからいいじゃないかみたいな話を言われますが、そんなのは健保連の方々が決めればいい話で、中でもませるような話を勝手に政府がやっちゃうと、あそこはあそこで、やはりまた中の議論がおかしくなっちゃうんですよ。

 それはやはり代表者とちゃんと話をしていただいて、負担が上がるところもあるんですから。下がるところがあるからそれでいいじゃないかって、三分の二、上がるんですよ。そういう無責任な議論はやられない方がいいと思いますよ、大臣。

 では、聞き方を変えます。

 八・二から九・九%に協会けんぽの保険料率が平均的に上がる、これを防ぐためだという話でありますが、自然体で八・二から九・九に上昇する、その要因の分析はどうなっていますか。

長妻国務大臣 今おっしゃったように、上昇があるわけでございますけれども、これは要因といたしましては、まずはその加入されている方の年齢、収入、あるいは医療費、こういう要素が組み合わさって今のような結果になっているというふうに考えております。

田村(憲)委員 詳しい通告はしませんでしたが、これは以前、私が厚労省からお聞きをさせていただいた内容なので、あえて大臣に確認をさせていただいたんですけれども、これは一・七上がっているんですけれども、要因分析を見ますと、近年の高齢化等による給付の伸びで〇・三%。給与の落ち込み、新型インフルエンザ等々、これは中身がどう分かれているのかわかりませんが、合わせて〇・五%。今大臣が言われた、所得が下がっているから保険料が上がらないという部分だと思います。そして準備金の枯渇、これが四千五百億円の償還、それから繰り入れが、当然この分がなくなりますから、これを合わせて〇・九。一番大きいのはここなんですね。

 つまり、これを見ると、もう構造的に協会けんぽは財政がもたないという話なんですよ。そうですよね。これを見ると、どうしてもそういう話になるんですよ。これ以上保険料を上げられないという話になりますと、もう収入がないわけでありまして、こんなことをいつまで続けるんだという話になってくるわけであります。

 もちろん、そのために、皆さんは三年後を目指して医療保険制度全体を見直すという話になるのかもわかりません。この中には、当然、後期高齢者医療制度への支援金というのが大変大きい負担になっていますし、前期に対する拠出金も大きいという話になっていますから、そこで帳じりを合わせるという話になるのかもわかりません。

 でも一方で、医療保険制度というのは魔法はないんですよね。どうやってこれからの高齢化に、高齢化だけじゃないんでしょうけれども、医療の高度化もあるんでしょうけれども、ふえていく給付費というものを支えるかというふうになると、まあ給付を切るという方法はありますよ、サービスを切るというのが。でも、これは皆さん方が望んでいる方向じゃありませんよね。逆に診療報酬を上げるという方向ですから、これからも給付は伸びるという前提、無駄はなくすということは前提であろうと思いますけれども、方向としては伸びていく。

 すると、一つは税金ですよね、公費。公費をふやす、これが一つでしょうね。それから保険料。保険料は今上がるから困ると言うんですけれども、しかし保険料を上げざるを得ない。もっと保険料を上げましょう、協会けんぽも国保も他の健康保険も保険料を上げましょう、これが一つでしょう。それから、あとは自己負担ですよね。これを三割からさらに上げましょうなんという、それが保険と言うかどうかは別ですけれども、そういう方法でお金を取る。もしくは保険者間で負担のツケ回し、今回のような話ですよ。でも、これもやがて限界が来ますけれどもね。どれかしかないんですよ。

 大臣は、端的に、この中で、ベストミックスということも当然あるんだろうと思うんですけれども、主にこれからやらなきゃいけないことはどれだというふうに思われますか。

長妻国務大臣 今おっしゃられたように、増大する医療費の財源というのは、端的に言うと、患者さんの自己負担、保険料、そして公費、大きくはこの三つでございます。

 その中で、やはり自己負担をこれ以上ふやすというのはなかなか想定しにくいということになりますと、これは公費と保険料ということになります。それぞれ納得できる形で、その二つについて配分をお願いしていくということが必要だと思います。

 その納得という一つは、後期高齢者医療制度のように七十五歳以上だけ別グループの保険に分けて、つまり保険料の上昇スピードがかなり異なっていく、こういうような保険料負担というのは、これはなかなか理解が得られないのではないかというようなことで、ある意味では、老いも若きも保険料の負担の上昇スピードというのは基本的には同じようにしていく、その上で公費もふやしていくということが必要だと思います。

 私どもとしては、永久に消費税は上げないということを申しておるわけではありませんで、一期の中ではそれは議論はするけれども上げないということ、ただ、それ以外の税制、あるいは保険料のあり方、保険料でも、所得の多い方々の保険料をどうするか、これは議論の余地があると思います。

 今申し上げたようなそういう中長期の計画の中で、税制そして保険料のあり方も議論をしていくということであります。

田村(憲)委員 消費税を上げるシフトに今民主党は変わりつつあるなんという記事をよく新聞等々で見ますよ。私は、とんでもないなと思うんです。仙谷さんが、今度の選挙の争点にするんだみたいな、次解散するときの、こんなことをおっしゃられていますけれども、とんでもないですよね。

 だって、無駄を省けば二十兆円ぐらい出てくるというのがあなた方の選挙前のマニフェスト、マニフェストの中にはそこまでは書いていなかったですけれども、口でおっしゃってこられたことですよね。これは小沢当時代表までおっしゃっていたことで、二十兆円出してから消費税を上げろよと我々は言いたいですよ。

 だから、急にここで、我々民主党は次の総選挙に向かって消費税を上げるんだ、国民の皆さん、賛成ですか、反対ですかなんという選挙が行われちゃったら、多分もう国民はだれも政治を信用しないという話になろうと思いますから、よほど慎重にこの消費税の議論はしていただかなきゃ困るなと我々は思うんです。

 やはり、公費をふやさざるを得ないということは、もう大臣、今認めざるを得ない状況になってきたんだと思うんですよね。だけれども、実際問題は、今回は公費、六百十億円もふやせなかったんですよ。だから、これは健保連の方に、また共済の方にツケ回しせざるを得なくなっちゃった、納得もされていないのに、こういう話なんですよ。

 だから、私は、これはよほどちゃんとしたことをこれから考えていかないと、医療というのは本当にもつのかなと思いますし、それから、公費を入れるにしても、やはり入れ方というのがございますので、その点をよく制度設計を考えていかなければ、これは困っちゃうんですよね。

 野方図に入れられないんですよ、保険者はそれぞれ違いますから。まあ、一体化しちゃえば、保険制度を一本にしちゃえば別なのかもわかりませんけれども。当然、これは国保に入っている公費、それから協会けんぽに入っている公費、健保組合にも若干入っております。それぞれ公費の入れ方が違いますから、こういうのは非常に難しい。

 だから、そういう意味で、どういう制度設計をするかというので、我々は後期高齢者医療制度というのを一つ考えたんですね。あれは五〇%と書いてあります、スタートは。しかし、五〇%をいつまでも続けるというつもりでも我々はなかったんです。負担の割合が非常にわかりやすくなった。だから、あれを、例えば公費をふやしていけば、当然、後期高齢者医療制度への支援金、それぞれ抑えられてまいりますから、そうすると、各保険者の保険料を抑えられるな、そんな意味合いのあった制度設計なんです。公費の入れ方が非常にわかりやすい。こういう制度でもあったんです。

 選挙でこれを廃止すると言われて、まだ廃止されておられません。これから廃止に向かって準備をされておられる最中だと思いますが、改めて、今若干、私の質問に先走って大臣はお答えになられたと思いますが、後期高齢者医療制度、どこがだめなのか、そして、どの部分はまあいいと認めるのか、これをそれぞれ端的にお答えいただけますか、大臣。

長妻国務大臣 どこの部分が問題があるのかというのは、さっきも申し上げましたけれども、七十五以上の医療費がかかりやすい方を別保険にすると。事実としても、その七十五以上のグループの保険料の上昇スピードが速いという事実もあるわけでございます。

 そしてもう一つは、七十五歳以上だけに着目した診療報酬体系がセットで導入されたということで、これは、医療費が七十五歳以上はかかり過ぎるから、そこを一つのターゲットにした集中的な抑制政策であって、必要な医療が受けられにくくなるのではないか、こういう懸念があった。

 そして、年金からの天引きというのもありました。制度がすばらしくなったということではないわけでありますのに、天引きがあるということ。

 そしてもう一つは、自分が今まで入っていた保険から強制的に離脱をして七十五以上の保険に入るということで、例えば、主体としては国保に入っている方は、市町村から人間ドックの助成のサービスを受けていたけれども、それが今度は強制的に、後期高齢者、七十五以上の人はそこの保険に入り、広域連合という市町村じゃないところが保険者になって、サービスが違いますので、今まで受けていた人間ドックの助成が打ち切られる、こういうようなことがあったということでございます。

 何しろ年齢に着目した別保険というところについて、いろいろ問題があったのではないかと思います。(田村(憲)委員「いいところは」と呼ぶ)

 いいところということでありますけれども、これは医療のある意味では問題点をいろいろ浮き彫りにしたということではないかと思います。

田村(憲)委員 これではいいところがないみたいな話じゃないですか。少なくとも負担の明確化、わかりやすくなったでしょう。そういうところはあるぐらいのことを言ってくださいよ。若人がどれぐらい、公費はどれぐらい、高齢者がどれぐらいというのが。それぐらいのことは言ってほしいなと思いますけれども、反対している皆さん方ですから、言いづらいのかもわかりません。

 ずっと、制度が導入される寸前も、ここにおられる山井政務官、当時山井委員がかなり厳しいことをばあんとここで言われておられました。今大臣が言われた部分、高齢者を抜き出しにした保険だから、そんなものはもたないんじゃないか、こういう議論が当時ありました。

 もちろん、高齢者を抜き出しにして、高齢者だけでやれというのならこれはもちませんが、その中で、公費を五割入れて、若人は四割、高齢者が一割、こういうことでありますから、みんなでこれを支えようという発想であったことは確かなんですよ。だから、高齢者だけ抜き出しにして、おまえら勝手にやれという制度ではまずないということは、これはもう御理解いただいていますよね。そうじゃありませんよね。もたないという制度じゃないんですよ。もつための制度設計をしてあったんです。

 ただ、そのときの議論でこういう議論がありました。平成二十年に一割だった後期高齢者の、要するにみずからの保険料、七十五歳以上の方々の全体にかかる保険料の割合、これが約一割。これが、若年層が減少しますと、その減少した若年層は当然負担が重くなりますから、今は少子化ですからね、それを全部若年層に持てといったら大変だ。その負担がふえる二分の一部分は後期高齢者の方々に面倒を見てもらおう。だから、一〇%が平成二十七年には一〇・八%まで全体として割合が上がる。一割じゃないじゃないかなんて特にそのとき言われましたよ。

 これは考え方なんですね。どういうことか。介護保険というのは全部お年寄りに行っちゃっているんです。介護保険というサービスは、もちろん基本的には六十五歳以上しか受けられません。だから、若い人たち、現役世代は、六十五歳未満の方々は、当然のごとくそれの対象にならないわけでありまして、サービスはないわけであります。しかし、若者の人口が減っていく、お年寄りの割合がふえてくる。そのお年寄りの割合がふえた分だけ、全体の給付の中の保険料の総額の比率も上がっていく。だから、人口に対して負担が変わらないという言い方がいいのかな、こういう話なんですよ。

 一方で、後期高齢者医療制度というのは違うんです。これは現役の方々の医療サービスもついているものですから、何かよくわけがわからなくなっちゃうんですが、七十五歳以上の方々だけの医療サービスに着目しますと、若人の方々が減った分を、先ほど言ったように、介護保険は全部お年寄りがその負担を見なきゃならないですよね。ところが、若人が減った部分の半分しかお年寄りは負担をしないんですよ。若人減少部分の二分の一、この保険料負担増をお年寄りが引き受けるという話ですから。だから、七十五歳以上の後期高齢者医療制度、医療サービスだけに着目すれば、これは介護保険よりかはお年寄りに優しい負担なんです。

 大臣、わかりますか、言っている意味。大臣、わかりますか。理解したか理解していないかだけ、ちょっとお答えください。

長妻国務大臣 そういう仕組み、若人の方々は人口が減少します、そして医療費の伸びというのは、一般的には七十五以上の方の方が多い。ただ、人口が減少して、そして固定されている若人の支援金が、そうなると若人の伸びがかなり大きくなるということで、その部分のリスクを高齢者の方と分かち合う、こういう仕組みがあるのは承知しておりますけれども、その仕組みが入っていることで、今回も現実的に七十五歳以上の方の保険料の伸びが若人よりも高くなるということでありまして、私は、老いも若きも一定の同じような伸びを確保する、年齢で区分しないということが重要だということを申し上げております。

田村(憲)委員 もう一回整理します。

 私が言っているのは、要は、後期高齢者に限って言えば、七十五歳以上の医療サービス、これをだれが負担するか、その負担の分け合いをどう考えるかという議論。それから、介護保険、これは当然、対象者、六十五歳以上からしか基本的にサービスは受けられませんから、この方々の介護サービスというものの負担を若人とお年寄りがどう分け合うか、こういう議論をしているんです。

 先ほど言われたとおり、介護保険の方は、要するにお年寄りの数が伸びた分だけ、全部お年寄りがその負担は自分たちで見るんですね、当然お年寄りの数がふえていますから。こういう制度です。

 一方、後期高齢者医療制度の場合、ここだけのサービスですよ、ここだけの部分は、本来は、若人が減った部分は、お年寄りがふえているんですから、全部お年寄りが見なきゃいけないんですけれども、割合がふえているんですから、保険料を払う人たちの数がふえているんですから。

 しかし、その二分の一だけをお年寄りが見ればいいんです。だから、若人は減ったのに、その二分の一は、自分ら、若人、本来は関係ないんですよ、お年寄りがふえていて若人は減っているんですから。だけれども、若人はその面倒を半分は見ましょうよという話であって、分け合っているんですよ。

 ここだけを見れば、後期高齢者医療制度のサービス、介護保険のサービス、これにかかる費用、これだけを見れば、その負担は後期高齢者は若人と半分ずつ、高齢化の伸びに対する負担は半分ずつ負担しましょう。一方で、介護保険の方は、全部お年寄りがその面倒を見ている。なぜならば、比率が変わっていくから。若人が減れば、要するに若人はその減った比率の中で負担をする、こういう話であります。

 だから、後期高齢者医療制度の方が優しいんですよと。優しいというのは、お年寄りに優しいんですよ、こういうことを言っているんですが、そこは御理解をいただきましたかということを聞いているんです。

長妻国務大臣 今おっしゃられたのは支援金の制度のことだと思いますけれども、後期高齢者医療制度は、確かにおっしゃるように、一定の比率を決めて、若人から四割、公費が五割とかありますけれども、ただ、保険料の上昇に着目はしていないんですよね。つまり、そういう仕組みがあるけれども、それが結果としてどういう保険料になるのかというところの、ある意味では結果の平等性というか、そういうところは着目が薄いのではないか。つまり、だからこそ、今回も七十五以上のグループの保険料の上昇スピードが若人よりも高い状況になっている。

 介護保険は、これは御存じのとおり、六十五歳以上の保険料については、六十五歳以上の高齢者と四十歳から六十四歳までの現役世代の一人当たりの、平均ですけれども、平均保険料額は同じ金額になるという仕組みになっています。結果として平等になる仕組みになっているところでありまして、我々も新しい制度を考えるときに、基本原則としては、結果として、老いも若きも保険料の上昇スピードが一定程度同じになるということが必要ではないかということを申し上げております。

田村(憲)委員 大臣の言われていることはわからなくはないんです。ただ、私は、後期高齢者の医療というものをどこが背負うかということを考えたときに、どういう負担の割合になっているかという話を今確認したわけであります。

 そして、大臣が今言われたことは、ちょうど当時、国保を中心に皆さん議論されておられました。国保で若人が平成二十年から平成二十七年にどれぐらい伸びるか。平均的に二三%ぐらい、若人は国保の保険料が伸びる。こういうことを厚生労働省が当時、あなた方の質問で答えております。それに対して後期高齢者の方々はどれぐらい伸びるか。三八%増加する。だから、後期高齢者は保険料が三八も増加して、若人は二三、おかしい。

 これは、今言われた、若人まで含めて給付と保険料を考えれば、当然、若人から外れたお年寄りだけですと伸び率が大きい。一方で、お年寄りが抜けた若人も、もちろん支援金は払いますけれども、全体で見ると、若人は自分らだけで給付の負担を保険料として払いますから、それほど伸び率が高くないという話になって、今大臣が言われたようなお話になろうと思うんですが、これは国保の話ですよね。

 そもそも後期高齢者医療制度は、国保が厳しいというのも理由にあったんです。だから後期高齢者医療制度を入れて、前期高齢者の制度がありますよね、ここで国保は大幅に救われる。後期高齢者の方は余り国保は救われない、保険料がもらえないから、逆にマイナスの方が多いです。保険料がなくなった部分は国保にとってはマイナスなんですけれども、それ以上に、今まで退職者拠出金しかなかった前期の部分、これが合算になって、昔の老人保健制度と同じような負担になりますから、まあ公費は入っていませんけれども、これで要は国保は財政的に助かる、こういう話だったんですね。健保組合なんかは結構負担がふえた、こういうのが全体の構図です。そうなると、そもそも国保は負担が下がっているんですよ、この制度になったら、後期高齢者医療制度になったら。

 だから、要するに、平成二十年度から二十七年度の国保の若人の保険料の伸びを後期高齢者の保険料の伸びと比べるのはおかしくて、本来はこれは、老健制度のままでいった場合にどれぐらい若人と高齢者に差が出てくるかということを比べませんと、もともと後期高齢者医療制度は国保に優しいんですから、優しい中の国保での若人とお年寄りを比べたって仕方がないですよね。後期高齢者医療制度を導入したお年寄りの伸びと、そうじゃなかった場合の伸びとを比べなきゃいけないでしょう。

 言っている意味わかりますか、大臣。わかりますか。

 では、それは試算として出されていますか。いや、きのうちょっと役所の方には出してくれと頼んだんですよ。

 言っている意味わからない、大臣、わかりますか、ちょっと質問の仕方が悪かったかな。

 では、足立政務官、どうぞ。

足立大臣政務官 今、試算ということですので、そこの正確な数値というのはなかなか難しいと思うんですが、老健制度の場合を言いますと、これはもう委員当然御存じのように、高齢者も現役世代と同様にそれぞれの保険に入っておりますから、高齢者と現役世代というふうに分けて考えた場合に、保険料の伸び率は同じですね、老健制度の場合。

 それに対して、この後期高齢者医療制度では、若年層というか高齢者じゃない方と高齢者の方を比較していくと、さっき大臣が答弁で申しましたように、高齢者の医療費の伸びが高い場合は高齢者の保険料の伸びが高くなる、若い人と比べると。もう一つは、先ほど人口の変化のことがございましたけれども、現役世代の人口が減少すると後期高齢者の保険料の負担割合が高くなるという仕組みがある。

 ちょっと簡単に繰り返します。老健制度だと、それぞれの保険ですから、若い人と高齢者の方の伸びは同じ、後期高齢者で若い方と高齢者の方を比較すると、高齢者の方の伸び率が高い、そういうことだと思います。

田村(憲)委員 ちょっと論点が多分違うと思うんですよ。

 先ほど、初め、国保の中で比べたら三八%と二三%という議論に対しては、多分、今試算されたのはそれだけじゃなくて、国保以外の若人とそれから後期高齢者に入っている方々と比べてもやはり同じような傾向が出るんじゃないですかというお話の説明であったと思うんですが、私は、そもそも後期高齢者医療制度じゃなかった場合と比べてどうだったのかというのを見ないとこの議論はできないんじゃないか。

 なぜならば、国保の若人というのは、これは多分、ここに書かれている二三%というのは、もし昔のままの老健制度だったら、若人はもっと保険料が上がっているんだと思うんですよね。国保が楽になっている分だけ、若人も助かっているはずですから。だから、それとの試算をちゃんと出していただかないと議論が公平じゃないということを言わせていただいたんです。

 これはまた今度で結構なので、役所の方、ぜひとも試算をしていただいて、お教えをいただきたいと思います。

 それともう一点、今若人全体の話はありましたが、しかし、一方で非常にわかりづらいのは、やはり被用者と国保で違うんですよね。被用者の方は企業が半分保険料を払っていますから、実質的に自分が払っている保険料というものがどう出てくるのかというのは非常にわかりづらい。もちろん、国保の方も公費が入っていますから、そこら辺のところとの合算の仕方が非常に難しいんですけれども、全体をもう一回整理して議論をさせていただく必要があろうと思いますので、一度これに関しては、私の方から役所の方をお呼びして、細かい精緻なことを指示させていただきたいと思います。それに対する資料を要求させていただきますので、お願いいたしたいというふうに思います。

 というふうに、非常にわかりづらい、皆さんの言われていることもわかりづらいし、こちらの言っていることもわかりづらいんだと思うんですけれども、負担ということを考えた場合に、後期高齢者医療制度というものが、本当にあなた方が言っているほど後期高齢者の方々の負担が極度に重いのかというと、そうでもないんじゃないのかというのが我々の考えである。若干多くなっているだろうけれども、そうでもない。では、それを抑えるためにはどうしたらいいんだ。だから公費をふやしましょうというところに最後は返ってくるわけですよ、その部分を公費をふやせばいいじゃないですかと。

 つまり、私は何が言いたいかというと、今、例の高齢者医療改革会議ですか、ここでいろいろな案が出ています、四つ出てきましたよね。そのうちの三つは、既にもう大体十年以上も議論をされてきた案ですよ。突き抜け方式、これも議論してまいりました。それから独立方式というのは、後期高齢者、七十五歳で切るのか六十五歳で切るのかという話だと思います。それから今回、リスク構造調整方式と一体型をあわせたようなものが出てきました。昔はあれ、一体型とリスク調整型で分かれていたんですけれども、これを一緒にしちゃいまして、初めはリスク調整でやりながら、最終的には保険者を一本にしちゃおうかというのが出てまいりました。

 だから、この三つはもう今まで議論をされてきましたから、多分、もう余り議論の俎上にのらないと思うんですよ。これはだめだという議論で結局外されちゃったわけですからね。すると、残るのは何か。国保で見るというのが、宮武方式というんですか、あれが出てきました。

 ここで、宮武方式でいくんですかと聞いても、今議論を始めたばかりなのでという答えになると思いますので、宮武方式に関しては、大臣、どういう評価をされているんですか、今の現時点で。

長妻国務大臣 実は、きょうもこの委員会が終わったら改革会議がありますけれども、今までいろいろな委員の方々に、それぞれ案を発表していただきたいということで、発表があったのが四つの案ということでございまして、もちろん我々、どれがいい、悪いという評価もまだしておりませんし、どれを採用するということもございませんし、これからも議論を続けるということです。

 今言われたのは、宮武委員が出された、いわゆる高齢者医療と市町村国保の一体的運営を図る案ということが言われているこの概要を、意見を表明されたという段階でございますので、私どもとして、これがいい、悪いと論評するまでの情報あるいは確認というのはまだしておりません。

田村(憲)委員 わかりました。

 ちょっと話を戻しますけれども、後期高齢者医療制度に対して、先ほどの若人との負担という問題、後期高齢者の方に負担が過重にかかっていって保険料の伸び率が上がっていくという話がありましたが、先ほど私が言いましたとおり、公費をふやせば、これを抑えることはできます、高齢者の保険料の伸びを抑えることはできますよね。それをやれば、今の後期高齢者でも今の部分に関してはクリアができる、それでもいいというふうに大臣はお思いですか。

長妻国務大臣 私がこの後期高齢者医療制度について申し上げているのは、何しろ七十五歳以上のグループを一つの保険にしたことで、若人と保険料の上昇スピードが違ってしまうということです。

 今、委員が御指摘いただいたのは、では、七十五以上の人に税金をつぎ込めばいいではないかと。そうすると、例えば、税金というのは基本的に、日本国は単年度予算ですから、毎年毎年、保険料の伸びをある意味では予測をして毎年予算措置をして、若人と同じような伸びにまで下げるように入れていくということも考えられなくはないと思いますけれども、本当にその単年度予算で、毎回毎回、予算がきちっと通って、本当に同じことが担保できるのかということもありましょうから、そうであれば、保険を別に分けずにやっていくというやり方があるのではないかということであります。

田村(憲)委員 いや、それはできるんですよ、今医療保険はそれをやっているんですから。そんな全部予想どおりにいかないんだから、最後、補正を組んで、義務的経費にしてちゃんと帳じりを合わせているんでしょう。だから、そんなことは当然できる話で、要するに、高齢者の保険料の負担を一定程度で所与のものとして決めちゃえば、あとはその残りの部分を税で見るという話になりますから、やれないことはないんですよ。それはやれるはずなんです。

 だから、それは制度設計だと思うんですけれども、要は、今の大臣の話ですと、高齢者と若人の保険料の伸びさえ一緒ならば、後期高齢者医療制度というものは否定するものじゃないよと。ほかにもありますよ、今まで言われてきたいろいろな問題点。我々も改正してまいりましたけれども、問題点はいろいろとまだ残っていますが、それも直せないものじゃありませんよね、修正はできるものですよね、哲学の話じゃありませんから。そういうものを一つ一つ我々は直してきたんですね、この後期高齢者医療制度をたたかれ出してから一年ぐらいかけて。大分穴は埋めてきましたよ。

 だから、そういう穴さえ埋まれば、後期高齢者医療制度でも別に問題ないよねというふうにお考えになられているのか、いやいや、そもそも後期高齢者医療制度は、もう選挙でおれたちはやめると言ったから、絶対これは嫌なんだ、やめるんだというふうに思われておられるのか。

 というのは、これはきのうも参考人の方々は、私が今話したのと同じような話をたくさんの方がされました。急に医療制度が変わっちゃうのは困ると。だから、悪いところは直していただけばいいじゃないですか、そして、今のスキームを残したまま医療制度を継続性を持ってやっていただきたい、そういう参考人の方々の意見は多かったんですよ。

 だから私は聞いているので、今大臣が言われたような問題点さえクリアできれば、この後期高齢者医療制度をそのまま維持しながら、修正しながら医療制度が走るということでもいいと思っておられるんですかということを聞いているんです。

長妻国務大臣 我々も、それはつぶさに見て、微修正で改善できれば微修正で改善するということでやりますけれども、今の後期高齢者医療制度はそういうレベルではないんですね。

 つまり、もう一つは、私、先ほど問題点で申し上げませんでしたけれども、広域連合というところが保険者になるということで、やはりそこのトップの方というのは、それは住民から直接選ばれた方でもありませんし、保険者機能という意味で、どれだけそれが有効になっていくのかという問題点も指摘をされている。

 そして、先ほど申し上げたいろいろな問題点がある中で、これはもう微修正というレベルではなくて、やはり一たん廃止をして新しい制度を走り始めるということにしなければならない。政権交代した後も、我々はいろいろ検討しました。そして、マニフェストと基本的には同じ結論になったということで、我々としては、来年に法律を提出すべく今検討をしているという段階であります。

田村(憲)委員 保険者の話が出てまいりましたけれども、保険者、これを見ていると、出てきている四つの案でも宮武案が一番有望だと言われていますが、これもやはり「広域連合を活用し、」なんということが書いてあるんです。だから、では、この四つの案でもだめなのかなと。

 改めて、この最後のページ、私の資料を見ていただくと、リスク構造調整ができるのなら、もうやっていたと思いますし、それから、二番はもう無理でしょう、大臣。これは完全に独立方式だから、七十五歳で切るか六十五歳で切るかという話でしょうから。これは大臣、一つずつ詰めると、大臣が言われていたものとは、全くだめだという話になると思うんですが、これはどうですか。二番の独立方式、大臣としては、これもあるかなと思われていますか。

長妻国務大臣 これは検討会で検討しておりますから、これはそれぞれの委員が公開された案ですけれども、ただ、我々が検討会にお願いするときの、最終的な結論を導く前提としては、年齢で別枠の保険で区切るのはやめましょう、これは申し上げている原則でありますので、最終的な結論のときに、そういうことにはならないというふうに考えております。

田村(憲)委員 明確に今、二番の対馬案はないというふうに言われたんだと思います。

 宮武案だって、これは国保の中に入れていますけれども、勘定は別なんですよね。これは多分、前期高齢者勘定と後期高齢者勘定と、それから現役勘定に分かれちゃうんですよ。保険ではないかもわからないけれども、勘定が分かれちゃうということは同じ話になっちゃいますから、だから、これもなくなっちゃうという話になるんだと思うんです。

 そうすると、この中で選べるものがないという話になって、新たな案を早くおつくりにならないと間に合わないという話になると思いますので、大臣、どうですか、この四番。四番も勘定別になっちゃうと、勘定が分かれちゃうから保険者別と同じ話になるということで私は認識を持っているんですが、同じ共通認識でよろしいですか。

長妻国務大臣 何か、この場でもう結論を出されようとされているのかどうかわかりませんけれども、これは四つの案が出て議論をして、まず、まだその四つの案のどれかに決めるということが決まったわけでもないわけであります。

 そういう意味では、議論の途中をマスコミにフルオープンにして、皆さんに全部、記者の方にも公開をし、ホームページでも全部これを表に出させていただいて、議事録を読んでいただければ、さまざまな、それぞれの案についても意見が出ているところでございますので、そういう意見もよく聞いて、法案を出して、法案をお願いするときには、この委員会でもいろいろな御指摘をいただく、こういうようなことになろうかと思います。

田村(憲)委員 原則は六大原則というのを出されましたけれども、六大原則はもともとあってないという話ですから、だから私は今そういう話をしたので、あってないものが早くもこの中に幾つも出てきていること自体がちょっとよくわからないですよね。大臣の原則がありましたよね、六つ。あれにのっとってやってくださいと議論をしているわけでしょう。

 なのに、初めからこの別建て案があったりだとか別勘定案があったりだとか、さっぱりわけがわからない状況なので、あともう残すところ三年ぐらいしかありません。日にちが迫ってきているので、早く我々に、我々もある程度議論したいですからね。検討もしたいですよ、これだけ大きく国民の皆様方の医療保険制度を変える、そういう事象ですから。だから、なるべく早くわかるように、大体アウトラインだけでも出してきていただけるとありがたいなというふうに思います。

 最後に、年金の天引き、大分やられました。これも我々が選挙に負けた一つの理由だと思います。最終的には選択制にしたんですが、介護保険の方は天引きが残っているんですよね。我々は、介護保険の方の天引きも、実は議論をしていたんですよ。後期高齢者医療制度だけ天引きを事実上選択制にしちゃいまして、介護保険はそのまま天引きを残しているというのは果たしていいのかどうなのかと。

 実は、住民税の方も天引きが始まっちゃっていまして、これは総務省の話でありますから直接厚生労働省ではないんですが。あれだけあなた方は、年金の天引き、だめだ、だめだ、だめだと言ってきたんですから、介護保険料の天引き、これもおやめになられるおつもりがあるのか、でないと整合性が合わないという話になると思うんですが、最後に一点、大臣にその点をお聞かせいただきまして、私の質問を終了させていただきたいと思います。

長妻国務大臣 今おっしゃっていただいたように、後期高齢者医療制度では保険料の年金からの天引きというのは選択制になっているということでありますが、介護保険は選択制ではなくて天引きということであります。

 これについては、介護保険制度というのは十年前から天引きでありまして、十年前の段階で、新たな制度が入るということで、ある意味では国民の皆さんにもプラスの側面があった制度の中で天引きというのが始まり、そこで後期高齢者医療制度に比べては、年金からの天引きに苦情が、それに比べれば多く来ているということでもございませんし、天引きについても一定程度定着しているというふうに考えておりますので、介護保険の件については、今直ちに検討するということではありません。

田村(憲)委員 ありがとうございました。

 苦情がふえたのはあなた方が火をつけたからでして、そういう意味では、ちょっと今のお話をお聞きしていますと納得いかない部分がありますけれども、これにてきょうの質問は終了させていただきます。

藤村委員長 次に、松本純君。

松本(純)委員 自由民主党の松本純でございます。

 医療保険制度の安定的運営を図るための国民健康保険法等の一部を改正する法律案について、これまでの確認とともに、たくさんの質問を用意いたしました。ややこしい質問は私にはありませんので、長妻大臣には明快な御答弁をお願い申し上げたいと思います。

 まず、医療保険制度全体についてのお尋ねでありますが、去る三月二十三日、米国のオバマ大統領は連邦議会で成立した医療改革法案に署名をし、国民皆保険体制の実現に向けたアメリカの歴史的な大改革が行われることになりました。懸案の公的医療保険制度の拡大は見送られましたが、国民の民間保険加入の義務化、中低所得層の保険料負担の軽減のための税額控除、従業員の保険料を負担する小規模企業への税額控除、低所得者のための医療扶助制度でありますメディケードの拡充が行われることとなりました。

 これによりまして、今後十年間で三千二百万人が新たに保険に加入する一方、約九千四百億ドル、約八十五兆円の財政負担が行われることとなりました。これは、低所得者層の医療費負担に対し、巨額の連邦政府による負担、すなわち所得格差については国庫負担を投入しようとする考え方によるものであると思いますが、このようなオバマ大統領初め米国の取り組みについて、大臣の所感を伺わせていただきます。

長妻国務大臣 アメリカでは、これは開拓時代からの伝統といいましょうか、社会保障でいうと、自助、共助、公助という三つの段階でいう自助というものが大変重んじられる国であるということで、今まで保険拡大に拒絶反応がアメリカ国民の中にも多かったんではないかと思います。

 ここでかじを切ったということは、アメリカも皆保険に向けてかなり大きな歩みを始めたということで、今おっしゃられた方々が保険に入りますと保険加入率がアメリカで九四%になる、ほとんどの方が加入、皆保険に近い状況になったということで、これもアメリカとして、自助で賄い切れない部分は大胆に共助を活用しよう、こういう発想に切りかわってきているんではないかというふうに考えております。

松本(純)委員 我が国は世界に誇る国民皆保険制度を確立しておりまして、この点においては米国より前を走っていることになるわけであります。

 今大臣がおっしゃいました共助という切り口でありますけれども、鳩山内閣は財政に関する方針として、コンクリートから人へという大きな旗印を掲げられております。社会保障への取り組みの基本方針ととらえておりますが、いかがでしょうか。今回提出の法案についても、コンクリートから人へとの方針に基づいて策定されたものと理解しておりますが、いかがでしょうか。

長妻国務大臣 ある意味ではこれは厚生労働省の所管ではございませんが、公共事業を廃止するもの、削減するものは大胆に削減をしていくということと裏腹に、コンクリートから人へということで、今回の法案につきましても、協会けんぽ、今までも本則の国庫負担に戻すという議論はたくさんありましたけれども、それがこれまでできなかったということでございます。

 今回は、本則に国庫負担を戻すという結論を盛り込んだ法案でございますので、大きく言えばそういう話の一つの筋ではないかと思います。

松本(純)委員 今回の法案を見ますと、医療の平等性、長寿化と乳児死亡率の低さなどから世界一と評価されてきた我が国の国民皆保険体制の今後に大きな影響を及ぼす内容が含まれているのではないかと思うのです。

 この法案は、サラリーマンに扶養されていた高齢者の保険料軽減のための措置を定めた高齢者医療確保法改正案、協会けんぽの保険料軽減のための国庫負担割合を一六・四%に引き上げて、その財源に充てるために後期高齢者支援金の三分の一について総報酬割を導入することをねらいとした健康保険法等改正案などを一体とした法案である。

 協会けんぽの国庫補助率、本則では一六・四%から二〇%となっており、附則で一三%となっていると承知しておりますが、なぜ附則で規定しているのかということをまず確認させていただき、またさらに、今回一六・四%も附則にしているのはなぜなのでしょうか。本来、本則に規定すべきであると思うのですが、いかがでしょうか。

長妻国務大臣 これにつきましては、御存じのように、きょうお願いしている法案でございますけれども、これは二十二年度から、今年度から二十四年度まで三年度の特例措置の一つとして行われるということで附則に書いてございます。同じほかの特例措置としては、後期高齢者支援金三分の一への、先ほど来議論になっております総報酬制の導入なども入れさせていただいておりますので、これを附則として書かせていただいているということであります。

松本(純)委員 この法案は、協会けんぽ国庫負担を法律附則の一三%から一六・四%へ引き上げるための所要財源の半分に関し、後期高齢者医療制度における支援金の三分の一について総報酬割を導入し、これによって軽減される国庫見合い額を平成二十二年度から三年間にわたって充当するというものであります。当初原案に比べれば減額されたとはいえ、極めて遺憾なのではないかと思っております。

 昨年十一月中旬までは政府はそのような考えは持っていらっしゃらなかった、具体的に検討を行っていなかったということは審議会でのやりとりからも明らかであります。しかるに、十二月に入って突如、財源対策の観点から、十分な議論もなしに、多くの関係者の反対や危惧を押し切って予算の中に織り込み、法案化したのは、国民目線から見ても異常であると言わざるを得ません。

 そこで、民主党のマニフェストにはそのような考えがもともと盛り込まれていたのかどうか、大臣にお尋ねします。

長妻国務大臣 これについては、協会けんぽの急速、急激な財政悪化というのは、マニフェストの公表以降、秋の段階でそれが顕在化して具体的に判明をしたというものでございまして、我々としては、そういう事態を受けて検討を始めたということでございます。

松本(純)委員 後期高齢者医療制度は、鳩山内閣の公約としては廃止されることとしておりまして、高齢者医療制度改革会議が設置され、昨年十一月から検討が始められ、夏ごろを目途として中間報告が取りまとめられる予定と聞いております。

 昨年十二月中旬までの間、その間にどのような議論があり、どのような結論、どのような合意が得られていたのか、お聞かせください。

長妻国務大臣 今のは総報酬割の導入の経緯のお尋ねだと思いますけれども、これについては、後期高齢者の検討をする改革会議ではございませんで、医療保険部会で、昨年十一月以降三度にわたって御議論をいただいたということでございます。そこで、総報酬割についてさまざまな意見が出て、我々は、その部会の御意見を聞いて今回判断を申し上げたということでございます。

松本(純)委員 こうした時期に、こうした段階のときに、後期高齢者支援金の負担方法の一部分だけを取り出した改正法案の提出をする。その提案から決定に至る経過も極めて短期間であり、費用負担者に対する十分な説明を行う時間的な余裕もなく、また納得も得られていないのではないかと思うところであります。

 協会けんぽの国庫負担引き上げ財源に充てるねらいが明白なこの法案、社会保障制度を国の責任で維持発展するとした民主党のマニフェストに反し、政策の整合性を欠くものと言わざるを得ませんが、いかがでございましょうか。

    〔委員長退席、中根委員長代理着席〕

長妻国務大臣 これについては、今引用されたのが「国の責任で社会保障制度を維持発展」というところだと思いますけれども、「国の責任で」というふうに書いてあるところでございます。

 今回につきましても、国庫負担もございますし、そして国の責任で、今申し上げた部会でも御検討をいただき、そして健保連の皆様方にも御理解をいただくべく我々としてはお話を申し上げ、そしてそういう法案を今回、国会に提出をして御議論をいただいているということで、まさに国としても責任を放棄せず、そういう対応をしているということでございます。

松本(純)委員 世界で最も効率的で平等だと高く評価されている我が国の医療保険制度でありますが、厳しい経済状況下、医療への財政支出抑制の動きが続き、公費で負担すべきものを他者の保険料に転嫁されることの繰り返しを、公費削減のつじつま合わせの肩がわりとして強く批判してこられたのは民主党さんだったのではないでしょうか。この点、大臣はどのように受けとめられますか。

長妻国務大臣 これは、健保連、健保の皆様方にもこれからも折に触れて御理解をいただくということ、そして我々の考え方を今後とも伝える努力を怠りなくしていくということは、言うまでもないことであると思います。

 その中で、非常に財政が厳しいということもありますので、厚生労働省としても、省内事業仕分けというものも定期的に組織の中に埋め込んでいく。保険料や税金が少しでも無駄がないような、そういう取り組みが自発的、恒常的に組織の中に埋め込まれていくというようなことがなければ、他者に負担を求めるということはできないわけでございますので、その取り組みについても厳しく省内でやっていくということであります。

    〔中根委員長代理退席、委員長着席〕

松本(純)委員 後期高齢者医療制度を廃止し、新たな制度を構築するという高齢者医療制度改革の前段階で、この法案提出ということになります。特に、後期高齢者支援金制度における三分の一の総報酬割の導入は、財源対策、保険料肩がわりを安易に進めようとするためのものであり、医療保険制度における負担のあり方、公費と保険料負担の関係など、制度の根幹にかかわる重要な内容の変更であると思います。

 保険者の財政力に応じた総報酬割による負担とは、コンクリートから人へとの方針とどのように関連するのか、十分な審議なしに、なぜこのような法改正を行うのか、伺います。

長妻国務大臣 やはり、人へということで、社会保障、今これだけの経済の状況やこれまでの社会保障が疲弊をしてきたという経緯を見ると、その部分の立て直しというのは必要だ。

 その中で、協会けんぽが急速、急激な保険料上昇に見舞われるという事態になったわけでございますので、その中で国庫の負担も引き上げ、かつ、健保連の皆様方にも、健保連にとっては大変厳しい案であるということであったと思いますけれども、我々もそれをお願いし、そして今回の法案の提出というふうになったわけでございます。

 保険料の急上昇を抑えていくという目的に沿って、我々は誠心誠意、何とか御理解いただくべくお話を申し上げてきたつもりでございます。

松本(純)委員 しかも、総報酬割の導入を支援金の三分の一だけについて行うというのは、どういった考えのもと行われたのでしょうか。大臣にお伺いします。

長妻国務大臣 これは、三分の一ということになりますと、国庫の部分と、総報酬割を導入させていただいたところで捻出される財源とがちょうど半々ずつになるということで、一緒に協会けんぽについて保険料の上昇を抑えていこう、こういうようなこととなったわけであります。

松本(純)委員 協会けんぽの財政状況が逼迫しているから保険料の引き上げを抑制するということではなく、コンクリートの財源を削って充てるとか、国庫補助率をさらに引き上げるとかという手があったのではないでしょうか。いかがでしょうか。

長妻国務大臣 これは政府全体で、今おっしゃられたようないわゆるコンクリートに当たる部分の財源については、平成二十二年度予算で申し上げますと、一般会計の歳出総額から公共事業関係費を約二割弱削ったということでございます。これについても、政府全体で、必要性の低い事業、不要不急の事業については厳しく見直しをするということで、その部分を削ったわけでございます。

 厚生労働省としても、例外ではございませんで、政権交代以降、これは第一次の補正の停止というものもございますけれども、そういうものもすべて足し上げると一・二兆円のカットをさせていただいたということで、その努力というのはしているつもりでございます。

松本(純)委員 政府は、後期高齢者医療制度を廃止するとしながら、その制度を利用しようという考え方は矛盾していると思うのですが、いかがでしょうか。

長妻国務大臣 この総報酬割という考え方そのものが、イコール、後期高齢者医療制度とリンクをしているというわけではございません。そして、この総報酬割については、先ほど申し上げましたように、三年間の特例措置として導入をしたということでございます。

 これとは別に、後期高齢者医療制度にかわる制度については、今、改革会議の中で議論、検討しているということであります。

松本(純)委員 次に、健康保険組合、健保組合等についてお尋ねします。

 健保組合は、平成二十二年度、六千六百億円の赤字と聞いています。負担する余裕などないのに、肩がわりさせるというのが今回の法案の内容であると私は理解をしております。健保組合や共済組合に対して国庫助成があるとのことでありますが、どのようになっているのか、お尋ねいたします。

長妻国務大臣 これも厚生労働省として、健保組合に何も国庫補助がないわけではございませんで、今御指摘いただきましたように、例えば財政が逼迫している組合に対し保険給付費の一部を補助するということで、平成二十二年度は二十四・四億円の予算がついております。

 そして、前期高齢者納付金等の負担が増加する組合等に対する支援については倍増するということでございまして、これが平成二十二年度は三百二十億円の予算をつけさせていただいているということであります。

 そのほか、特定健康診断や保健指導の実施に対する補助金が五十二億円、事務費の補助金が四十億円、出産育児一時金の引き上げに伴う健保組合の負担増の一部に対する補助ということで、平成二十二年度四十六億円などなど、補助というのは国もでき得る限りしているところであります。

松本(純)委員 先ほどのお答えで、協会けんぽへの特例措置が三年間とのことでございます。一方、平成二十三年度、二十四年度については、健保組合や共済組合に対する国による財政支援が明確になっていないと思うのでありますが、平成二十三年度、平成二十四年度の国庫助成をどのようにするのか、明確にお答えをいただきたいと思います。

長妻国務大臣 先ほども、平成二十二年度の予算で、高齢者医療への拠出金負担の軽減を図るために総報酬割を一部導入することに伴って、前期高齢者納付金等の負担が増加する組合等に対する支援というのを行っていると申し上げましたけれども、それ以外、先ほど申し上げました支援も、基本的には、平成二十四年度までの間、同様の事業を継続していこうというふうに考えております。

松本(純)委員 特例措置の三年間とこの国庫助成というものが、双方が相まって歩んでいくという理解をさせていただいてよろしいわけですか、よろしいわけですね。ありがとうございます。

 今回の支援金の三分の一の総報酬制を導入することにつきまして、この三年の間に三分の一をさらに引き上げるということはよもやないと思うのでありますが、大臣にお尋ねいたします。

長妻国務大臣 今回、三年間ということで法律をお願いしているところでありますので、今回の特例措置の枠組みの中で協会けんぽの財政再建を図っていくということにしております。

松本(純)委員 今回の肩がわり案は、まさに取りやすいところから取るという内容で、経済情勢の悪化からサラリーマンの給与は大幅に減少しております。その上、高齢者医療制度の負担増によって保険料を引き上げていくと、サラリーマンの家計は大変なことになってまいります。

 健保組合の存在価値をどのように考えていらっしゃるのか、我が国の医療保険制度の牽引力となってきた健保組合はもう要らない存在であると考えていらっしゃるのか、大臣の組合に対するお考えを聞かせていただきたいと存じます。

長妻国務大臣 保険者機能というふうに言ったときに、やはり健保組合というのは、非常にすぐれた保険者機能を発揮していただいている組合も数多くあるというふうに理解をしているところであります。その意味で、この国庫補助についても、財政が逼迫している、窮迫している健保組合への国庫補助、あるいは前期高齢者納付金の負担が著しく増加する組合に対する支援などは、国庫として補助をするということは引き続き実施していこうというふうに考えております。

 やはり健保組合については、そういう意味では非常に重要な枠組みであり、保険者機能を発揮できる、ある意味では、同じ職場というものもあって、目が届きやすいということもあるのではないかと思いますけれども、そういう強みも発揮した保険者機能というのは、我々も、あるいはほかの組合にとっても参考になるような事例がたくさんあるというふうに考えております。

松本(純)委員 アメリカでも、今後、効率的で公平な医療費管理と事務処理システムの実現が課題となっていくことは避けられません。保険者機能の発揮なしに医療の質の向上と効率化は達成できないことは、我が国の医療保険の歴史をひもとけば明確であります。

 保険者機能を安定的に、地道に発揮できる体制こそ望まれるものと考えておりますが、大臣のお考えをお伺いいたしたいと思います。

長妻国務大臣 やはり保険者機能というのは大変重要でございまして、全く健康保険を全部平等にするということであれば、極端に言えば、日本国じゅうを一つの保険にするということが一番平等ではないかという議論もあるわけでありますけれども、健康保険は年金と違って、保険者機能というのが非常に重要だということで、直ちにそういうことにはならないということであります。

 保険者機能と言ったときに、組合員が、皆さんが健康で過ごしていただく、こういうことに取り組めば結果として医療費も下がっていく、こういうことが保険者機能の基本だと思います。その意味での、健康教育や健診や保健指導、健康づくり、あるいは医療費を通知して御理解をいただいたり、レセプトを点検したり、後発医薬品の使用を促進したり、いろいろな手段を使って健康でいていただく、結果として医療費も下がる。これが望ましい保険者機能であると考えております。

松本(純)委員 ありがとうございます。

 次に、市町村国保についてお尋ねしたいと思います。

 我が国の国民皆保険制度を支える仕組みの一つである国民健康保険は、急速な高齢化の進行や団塊世代退職者の増加、医療技術の高度化や、新型インフルエンザのような突発的な新型疾病の流行により、年々医療費が膨らんでいる一方で、長引く雇用情勢の悪化や景気低迷の影響により、低所得者の加入や保険料滞納者の増加等による保険料の収入の伸び悩みが懸念されております。

 そこで、市町村が運営する国民健康保険が現在どのような状況にあると大臣は理解されておられるのか、お伺いいたします。

足立大臣政務官 財政状況ですので、私の方からお答えさせていただきたいと思います。

 平成二十年度の国民健康保険の財政収支については、これは市町村で独自に一般会計からの繰り入れ等やられているところがありますけれども、それを除いた実質的な収支で見た場合に、約二千四百億円の赤字というふうになっております。これは、平成十九年度よりも約一千二百億円改善してはいますが、依然として厳しい状況であることに間違いはありません。

 背景といたしましては、加入者の平均年齢が高く所得が低いという、国民健康保険が抱える構造的な問題がございます。それから、当然のことながら、平成二十年秋以降の急激な景気の悪化というもの、失業者の加入がふえておりまして、このことも要因の一つとなっております。

 以上です。

松本(純)委員 ただいまのお答えのように、多くの保険者が厳しい財政運営を強いられているとのことでありますが、失業者は依然高水準で推移しており、今後、雇用情勢がより厳しくなる懸念もあります。引き続き低中間所得者層の増加も見込まれるため、市町村国保の運営状況がさらに悪化することが予想されるわけであります。

 国は、保険者に対してどのような財政支援を行おうとしているのか、改めてお伺いします。

足立大臣政務官 まず、前政権から行われておりました財政基盤強化策、暫定措置でございましたけれども、これを四年間延長するということでございます。

 その内容は、第一に、所得の少ない方の数に応じて、国、都道府県、市町村が財政支援する措置。第二に、一人一カ月八十万円を超える高額な医療費の負担を市町村が共有する事業に対して、国と都道府県が財政支援する措置。そして、市町村国保に対しましては、今申し上げました措置を含め、本年度から四年間、毎年度、国、地方合わせて約二千五百四十億円の公費を充てることとしております。

 一世帯平均、年間約一万二千五百円の保険料の引き上げ抑制効果が見込まれますということ。それが今の財政基盤強化策の延長ということでございます。

 今回の法案のさらに追加の中身につきましては、次の質問でよろしいでしょうか。では、次にします。

松本(純)委員 ありがとうございます。

 今回の改正案は、これまでの暫定措置であった国保財政基盤強化策がさらに四年延長されるということでありますが、これだけで、国保財政が窮している状況が改善をされ、各保険者が抱える赤字がなくなるとは思えません。また、国保に加入している方々が抱く保険料の負担感が軽減するとも思えないのであります。

 今日の市町村国保の厳しい財政運営は、国民健康保険制度が抱える構造的な問題に起因すると考えておりますが、今回の法改正の内容は、こうした構造的な問題を解決するものではないのではないかと思っております。今回の財政支援策の延長が、現行の国保制度を維持するために具体的にどのような運営の改善につながることになるのか、お尋ねいたします。

足立大臣政務官 これまでも、市町村、保険者等が例えば高額な医療費の負担を共有するという形の事業もやってまいりましたけれども、委員が御指摘のように、市町村であるその範囲においては、非常に財政基盤が弱い市町村が存在するということで、保険料の格差等も約五倍であるというような状況をかんがみまして、やはり市町村国保の都道府県単位での広域化を図っていく必要がある。

 そういうことの中で、今回の法案では、まず第一に、地域の実情に応じて都道府県が市町村国保の広域化を支援するための方針、これは広域化等支援方針と申しますが、それを策定することができるということ。そして第二に、高額な医療費を市町村が共同で負担する事業の対象となる医療費の範囲、この範囲を都道府県の判断で拡大することができるようにしている。

 そのような改正を今回行いまして、都道府県の主導によって市町村国保の広域化を促進していこう、そのような法案の内容になっております。

松本(純)委員 それでは次に、被用者保険と国民健康保険の一元化についてお尋ねいたします。

 民主党のマニフェストでは、「被用者保険と国民健康保険を段階的に統合し、将来、地域保険として一元的運用を図る。」とされています。これは、年齢構成や所得分布、医療費の状況が異なるさまざまな医療保険制度を一つにまとめようとするものと理解しておりますが、どのような運営単位、財政単位となるのか。平成二十五年四月に市町村国保がどのような姿になっているのか見えないため、市町村の現場では次第に不安が広がっていると伺っております。

 また、新制度を創設するにしても、新制度についての十分な周知期間や、円滑に運営するためのシステム開発に十分な時間が確保されているとは考えにくく、性急な制度改正になってしまうのではないかとの懸念があります。

 国保の運営者である市町村においては、ひとときも途切れることなく、日々国保を運営していかなければなりません。制度改正を急ぐ余り、運営者にしわ寄せが行かないような配慮が必要なのではないかと思います。

 現場の混乱を招かないためにも、国民と直接接する保険者である自治体の意見を十分に取り入れるとともに、十分な期間を設け、真に国民の健康と安全を守る医療保険制度を検討すべきであり、さらに、国保を運営する市町村と国の双方からより多くの支持を得られる、わかりやすい制度とすべきと考えますが、どのようにお考えでありますか。

長妻国務大臣 まずは段階的な措置として、市町村国保の広域化につながる見直しを行っていきたい。先ほど足立政務官も申し上げましたような、広域で市町村に一定の権限を持たせるということが第一段階でございます。

 そして、後期高齢者医療制度にかわる制度でも、今申し上げた発想を打ち出していきたいということでございまして、これは、おっしゃられたように、市町村や国民の御意見も丁寧に聞きながら、我々は、大規模なアンケートといいますか、国民調査というような手法を取り入れてやっていこうというふうに考えておりまして、その調査の専門家の方も、この前も厚生労働省に来ていただき、いろいろ御指導をいただいたわけでございます。

 いろいろな新しい制度を入れるときに、やはり国民的合意、そして専門家の皆さんの意見を集約する、それもきちっとやっていきたいと思います。

松本(純)委員 次に、安定財源の確保とこれからの医療保険制度についてお尋ねします。

 本年度中に新たな高齢者医療制度の法案の骨格がまとめられ、また、社会保障番号制度化論議も進展するという大事な年であると認識をしております。

 前政権下においては、社会保障国民会議が平成二十年十一月に最終報告書をまとめております。そこでは、目指すべきは、中福祉・中負担の社会保障制度を提案するとともに、安定財源のあり方にも具体的に言及をしております。世界に誇る我が国の財産である国民皆保険制度を堅持していくためには、アメリカのオバマ改革の例を出すまでもなく、必要な公費財源確保が前提になってまいります。

 新たな高齢者医療制度の構築に当たっては、国の負担及び地方自治体の負担、高齢者及び現役の負担をどのように組み合わせるかについて、新たな高齢者医療制度をどのように構築するつもりなのか、大臣の基本的な考えをお尋ねしたいと思います。

長妻国務大臣 今、前段でお話があった中福祉・中負担ということでありますけれども、私も、そういう前の政権のお話を聞いていつも疑問に思うのは、中というのは何に比べて中というふうに言われておられるのか、そして、中というのは、財政規模が中ぐらいということなのか、給付費か、それはどういう、幾らぐらいなのか。中福祉・中負担ということは非常に抽象的であるというふうに考えております。

 いずれにしても、医療費については、窓口負担か保険料か公費か、この三つの組み合わせしか基本的にはないわけであります。もちろん、成長戦略等々で税率を上げずに税収をふやすという工夫もしなければなりませんけれども、今の組み合わせを公平感を出してやっていくということが重要ではないか。

 その中で、例えばお年を召した方を一定の年齢で区切って、そこだけ保険料の上昇スピードが変わってくるということになりますと、それは、保険料が若人の方も上がるにせよ、その上がりぐあいの差があるというようなことについて、世代間でいろいろ御疑問を持つということがあってはなりませんので、やはり一定のコンセンサスを得て、老いも若きも、基本的に同程度の上昇スピードで保険料を負担していく。

 あるいは、高齢者を特にねらい撃ちするような、医療抑制になりかねない診療報酬体系を七十五歳以上だけに入れるというような、公平感ということにも配慮しながら進めていく必要があるというふうに考えております。

松本(純)委員 今、大臣の御答弁の中に、中福祉・中負担のイメージが、何をもって中福祉か理解がしにくいということでございますが、国民負担率でいうと、我が国はどの程度にあるとお考えですか。

長妻国務大臣 国民負担率ということでいうと、これは先進国で比較すると、日本はかなり低い部類に入ると思います。

 そこに、負担率というときに、例えば借金が日本国はありますので、その一人当たりの借金額も上乗せしてみる、あるいは、例えば住居費あるいは公共料金が日本国は高いというふうに言われておりますので、これも世界で平仄を合わせて積み上げてみると、またそれがどういうふうに変化するかということも、我々としては認識をしなければならないと思いますけれども、国民負担率と言われているものについては、それだけでいうと、日本国は先進国の中で低い部類に入ると思います。

松本(純)委員 潜在的負担率でいうと、四〇の真ん中よりちょっと上ぐらいまで行っているのではないでしょうか。他の国々、米国あるいはヨーロッパ、特に北欧など、それぞれの国の状況を見てみると、その負担率と同時に提供しているサービスのバランスというものを見ると、おおむね国の形というのが見えてくるような気もするわけでありますが、決して日本は低いところにあるとは思っておりませんで、この負担率そのものは、潜在的なもので見れば、もう間もなく五〇%を超える、その前後にあるというふうに私は見ているところであります。

 そんな状況の中にあって、これからもサービスの提供はもちろん大事なことでありますが、あわせて、まさに国民負担がどこまで許されるのか、どういう国の形をつくっていくのかということを、国民の皆様にもわかりやすく示していく責任が長妻大臣にはあるのではないかと私は思っております。

 ただ、中福祉の言葉のイメージ、意味がわからないと言うだけではなくて、さらに突っ込んでの議論をしっかりやってほしいなということを今感じたので述べさせていただきました。

 続けます。

 三年後の新高齢者医療制度発足までの間に安定財源が確保されている必要がありますが、大臣の覚悟はありますか。

長妻国務大臣 やはり公費についての議論もあるわけでございますので、この新しい後期高齢者医療制度がスタートするというところに関しては、我々としては、税制あるいは保険料のあり方などなどを議論して、そこで一定の財源を捻出する、そういう努力をする必要があるというのは私も心得ております。

松本(純)委員 今回の法案におけるこのような対応では、我が国医療制度全体に対する国民の不安と不信を払拭することにならないのではないかと思うのです。

 政府は、我が国の高齢者医療制度を含め、医療制度全体の体系、医療費における保険料負担と公費負担の位置づけ、制度間、保険者間の格差是正の基本理念と、公平で納得できる方策といった見取り図と展望を示すべきではないかと思いますが、大臣はいかが考えていらっしゃいますか。

長妻国務大臣 まず、今おっしゃった点でございますけれども、給付の平等と負担の公平というのは先ほども申し上げました。

 その中で、やはり医療でいいますと国保ということで、市町村単位、目配りがきくという意味では、小規模というのは保険者機能という意味ではメリットはありますけれども、その一方で、保険料率について非常に地域間格差が生まれやすいというある意味ではデメリットもございますので、一定の広域化の流れというのは必要になってくるというふうに考えております。

 いずれにしても、これは保険料、公費、窓口負担しか財源というのはないわけでございますので、この中で、国民の皆さんが公平に感じ、ほかと差がつき過ぎているな、こういうことの御認識ができるだけない、そういう制度にしていきたいというふうに考えております。

松本(純)委員 全体の体系が示された上で、それに基づいた十分な国会審議が行われてこそ、我が国の社会保障システムに対する信頼が生まれてくると考えます。

 医療と医療保険制度を俯瞰した徹底した国会審議を望みますが、大臣の決意をお聞かせください。

長妻国務大臣 来年、まず後期高齢者医療制度にかわる新しい制度の法案を国会に出してまいりますので、その中の前提として、では、全体の医療制度あるいは医療の位置づけはどういう形になるのかということも一緒にあわせて我々議論できるようにしてまいりたいというふうに考えております。

松本(純)委員 結論といたしまして、私は、政府の基本政策である後期高齢者医療制度にかわる新制度が決定されるまでの間は、単なる財源対策としての国庫負担の保険料肩がわり案は撤回されるべきであると思います。

 最後に、真に効率的で質の高い医療が保障される社会保障システムの実現に向けて、医療費における安定財源の確保に向けた大臣の決意を伺って、質問を終わります。

長妻国務大臣 これだけの借金を抱えており、少子高齢社会に先進国でも最も早く今なっているわけでございますので、その意味では、税制の改革、保険料のあり方の改革、こういうものを通じて、そういう財源を確保する努力を今後ともしていきたいと思います。

松本(純)委員 ありがとうございました。

藤村委員長 次に、大村秀章君。

大村委員 自由民主党の大村秀章でございます。

 時間の範囲内で質問をさせていただきたいと存じます。

 それでは、まず、医療保険に入る前に、昨日の新聞記事を資料提出とさせていただいております。これは、先ほど同僚の田村議員からも指摘がありました、子ども手当についての記事でございます。

 「全額現金給付見直しも」ということで、総務相が、原口総務大臣が今週の月曜日に日本記者クラブで記者会見をし、「使途 地方に裁量」ということでございまして、全額を現金で給付する方式を改めて、地方自治体の裁量で財源の一部を保育所などのサービス給付に使えるよう見直すことを検討していることを明らかにしたということでございます。

 原口氏は会見で、現金給付とサービス給付のバランスはとても大事と指摘をし、二万六千円を丸々子ども手当で給付するか、地方の自由度を許容してサービス給付とするか、あるいは組み合わせるか検討していると述べたということでございまして、これは、先月私どもが、この委員会で私が申し上げたことでもございます。

 子育て支援を現金給付でやるのか、それとも保育サービスをどのくらいやるのか、そういったことを、本来あるべき姿を、財源を確保しながら、財源をにらみつつ、それを拙速でやるのではなくて、一年ぐらい与野党で協議機関をつくってあるべき姿を検討してやるべきではないかということを申し上げましたが、全くゼロ回答で、強行採決をされたわけでございます。全くゼロ回答で強行採決をされた。にもかかわらず、その後、関係閣僚からこういった話がしゃあしゃあと出てくるということは、極めて遺憾千万でございます。

 そしてさらに、原口総務大臣は、橋下大阪府知事らが地方代表として加わる政府の地域主権戦略会議で具体策を決める方針を示した、こういうふうに書かれております。これはどういうことでございましょうか、大臣。

長妻国務大臣 私もこの件は直接総務大臣からお聞きをしておりませんので、報道の範囲ですけれども、これは、地域主権戦略会議というのがございますので、例えば社会保障全般についても、国の役割そして地方の役割どうあるべき、その役割分担を見直す、見直さない、そういうような議論もされる会議であるというふうに承知をしておりますので、そこでそういう子育て関係も議論があるのではないかというふうに考えております。

大村委員 ここで議論をして、子ども手当の中身を変えるということを議論して決めるということで理解してよろしいですか。

長妻国務大臣 先ほども申し上げましたけれども、ここは国と地方の役割分担を議論する場だというふうに考えておりまして、その意味では、社会保障のみならず公共事業なども含めた役割分担の議論がここでなされるものだというふうに考えております。

大村委員 役割分担の議論はわかるんですけれども、子ども手当をこうするんだという中身についてはここで決めて、厚生労働省としては、長妻大臣としては、これはこちらの方にお任せをする、こういうことですか。

長妻国務大臣 子ども手当に対する子育て政策の国の部分については、地方も含めて厚生労働省が所管をしておりますので、子育て政策全般については厚生労働省が所管である。ただ、役割分担ということの議論はこの会議でも議論をするというようなことだと承知しております。

大村委員 要は、先月、委員会で議論をし、さらにもっとこれは十二分に、子ども手当も含めて子育て支援については課題がたくさんある、議論をしなければならない論点がたくさんある、したがって、もっともっとこの厚生労働委員会で、ここの所管ですからしっかり議論をしてやっていこうということだったにもかかわらず、その議論を打ち切って強行採決をされたわけでございます。

 それが、強行採決をした後に、法律が通った途端に、根っこから見直すような発言が次から次へと出てくるということは、私は極めて遺憾だというふうに言わざるを得ないと思います。極めて不誠実、ふまじめだということを申し上げざるを得ないというふうに思っております。

 こういうことを、法律が通った途端に、そして四月からこの制度がスタートした途端に、全く根っこから見直す、来年はこうするんだということを言われる、まさに国会軽視も甚だしいというふうに言わざるを得ません。そういった発言が次から次へ出てくる、まさに今の鳩山内閣は学級崩壊状態と一緒だと言わざるを得ないというふうに思います。そのことを強く指摘させていただきたいというふうに思います。

 なお、この記事には後ほど、ここにありますように、仙谷国家戦略担当大臣は「満額支給の財源の一部を学校給食費や保育所増設に振り向けることに理解を示しており、」ということも書かれておりますし、野田財務副大臣は満額支給は困難という認識を示しているということでもございます。

 閣内にいる方々がこのように自由闊達にといいますか自由自在に、好き勝手にこういうことを言われるということで、本当にこの制度はあなた方がここで強行採決をしてまで押し通すということに値するものだったのかどうかということを言わざるを得ないというふうに思います。

 そういう意味で、これは、先ほどから質問をしても、国と地方の関係を議論するんだということしか言われないわけで、もうこれ以上言っても、今この段階ではあなたから実のあるような答弁が出てこないだろうというふうに思います。そういう意味では、これはまた別の機会にしっかり取り上げたいというふうに思います。

 こういった形で議論が、要は、生煮えでそれを強行採決された、議論を生煮えでふたをして強行採決されたということについて、極めて遺憾だということをまず申し上げたいというふうに思っております。これはまた別の機会にしっかりと追及をいたします。

 さて、医療保険の法案について質問をいたします。

 まずは、市町村国保について申し上げたいというふうに思います。

 これは私、さきの衆議院本会議でも申し上げました。昭和三十六年、私ども自民党政権下でこの市町村国保をつくって国民皆保険を完成させたということでございまして、まさに国民皆保険の一番のベース、かなめがこの市町村国保だと思います。そういう意味で、大変大事な、まさに国民皆保険の最後のとりでというのが市町村国保だと思います。

 その市町村国保について、まずは、やはりその状況、現状がどうなのかということをきちっと把握しなきゃいけないと思いますが、この市町村国保についての状況はどのように把握をしておりますか。

足立大臣政務官 できるだけ松本委員への答弁と重複しないように努めます。

 財政状況でございますが、まずこれは、市町村の一般会計からの繰り入れというのが平成二十年度は二千五百八十五億円ありますが、これを除いた場合の実質的な収支で見ますと、約二千四百億円の赤字です。平成十九年度、一年前は二千五百五十六億円の繰り入れがありまして、三千六百二十億円の赤字ですので、この一年間では約千二百億円改善はしているというのが今の状況でございます。

大村委員 いや、そういうことじゃなくて、財政状況とか現状はまた後ほど聞きますけれども、調査をどういうふうにやっているか。

 いわゆる物事、課題に取り組むときに現状をどういうふうに把握をするのか、どういうふうに調査をしているのか、どういうふうに把握をしているか、そのことをお聞きしたのでございますが、これは通告してありますけれども、そんなに政策的な話じゃなくて、現状をどういうふうに調査しておられるのかということをお聞きしておるんです。

足立大臣政務官 調査で不十分という指摘があるかもしれませんけれども、厚生労働省の保険局で、各市町村の国保の方から上がってくる報告を毎年度年報としてまとめておりまして、市町村からの報告に基づいている調査だということです。

大村委員 要は、私は、まず冒頭申し上げたいのは、本題の方に入る前というか前提に申し上げたいのは、これは、いわゆる課題に取り組む、いろいろな課題がたくさん政策ごとにあると思います、そういったことに取り組む上において、やはりまず調査を、その対象をどういうふうに現状を把握し分析をしていくかということになるんだろうと思います。

 今政務官が言われたのは、私、手元に持っておりますが、国民健康保険事業年報というのがありまして、これは、全市町村にこういういろいろなデータを、個票で調査を投げて、それを集めてきて、十九年度を平成二十一年九月、これぐらい大部のものになるとそのぐらい時間がかかるんだろうと思いますけれども、昭和二十九年度から営々とこういう形でやってこられた。これはこれで一つ、やはり分析をするいわゆるデータとして、これはあっていいんだろうというふうに思いますし、このことについてとやかく言うつもりはありません。

 ただ、こういう調査、これは確かに毎年毎年ずっとやってきた。言葉はあれですけれども、平板と言ってはなんですが、とにかくずっとやってきたということでありまして、そういうことではなくて、私が申し上げたいのは、後ほどまた、もう一回議論をしたいと思いますが、いわゆる市町村国保が抱えているいろいろな課題があります。要は、例えば、国保の保険料が五倍ぐらい開いているとか、収納率が恒常的に低い市町村がある、一般会計の繰り入れをしているところがある、また、市町村によって、いわゆる職のない方の割合が非常に高いところがあるとかいったことで、やはり財政的にも非常に厳しいというところがあるわけでございます。

 だから、そういう意味で、私は、まず調査のやり方として、これはこれとして否定はいたしませんが、もう少しポイントを絞った、いわゆる課題にフォーカスしたような、そういう調査をしたらどうかということを、これは事務方、保険局にも申し上げておりますが、そういった点について、これでとまるのではなくて、もう一歩踏み込んだそういう調査を、課題を設定した上での調査をしたらどうかということを申し上げておりますが、それについてお考えはありますか。あったらお聞かせをいただきたいと思います。提案という意味でとらえていただいても結構ですが。

長妻国務大臣 今の御提案でございますけれども、私も、いま一度市町村国保について、今お手元にある資料以外、例えば課題別あるいは論点別、問題別、そういうふうな調査が過去なされたかどうかは確認をして、もしそういう調査がなされていないということであれば、これは国保、市町村についてもどれだけ調査の負担があるかどうかというのも検討しなければなりませんけれども、ある意味では市町村国保の課題というようなことに特化した、ある意味では御意見を伺うような調査ができないかできるか、これは検討してみたいと思います。

大村委員 今、長妻大臣から、市町村国保の課題について、そういったことを検討して、できるかどうか検討したい、こういう御答弁をいただきましたが、そういうことでいいと思うんですが、要は、私が申し上げているのは、課題を設定し、むしろ構造的な要因、構造的な要因があると思うんですね。

 先ほど申し上げたその地域での職業の状況だとか、いわゆる無職の方が、全体平均五割を超えておりますけれども、それが非常に高いところがあるとか保険料が高いところがあるとかというふうな、そういったところを、市町村国保が抱えている構造的な要因ごとにそれにスポットを当て、フォーカスを当てて、それをまず課題を設定していただいて、それについて同じような悩み、課題を持っている市町村を幾つか拾い上げ、ピックアップして、そういった構造要因を分析したらどうか。そういったことをやらないと、この調査、これだけの調査だけではやはり課題が見えてこないのではないかというふうに思います。

 したがって、今長妻大臣からそういったことを検討したいという答弁をいただきましたが、もう一度申し上げますけれども、ぜひこれについて、いきなり課題も設定しないですぐ調査しろとまでは言いませんが、ぜひその課題を、構造的な要因を分析し、そういった課題を設定して調査を、これをさらにもう一歩踏み込んだ調査をしていただきたいというふうに思いますけれども、その点についていかがでございますか。もう一度同じような答弁で結構ですが。

足立大臣政務官 委員御指摘のとおりだと思います。

 全国普遍的に共通に抱える問題、あるいは、あるグループ、グループで似たような抱える問題、そしてまたその地域だけの特殊な事情というようなものは確かにあるんだと思います。それはやはり層別して検討する必要があると思いますし、このデータの中からでも、そういう目でターゲットを絞って分析すれば可能ではありますが、もちろん、委員の御指摘はそのとおりだと思いますので、十分これから調査の仕方も検討していきたいと思います。

大村委員 ぜひその点について一度課題を整理していただいて、それをまた、別に今すぐ課題を整理して見せろとまでは言いませんが、せっかく今法案を審議しているわけでありますから、これに合わせまして、できるだけ早いうちにちょっと課題を整理していただいて、またこの委員会とかそういったところに事務方からでも結構ですが、お示しをいただけるとありがたいというか、それがまた有益な議論になると思いますので、そういったことを示していただきたいと思いますけれども、いかがでございますか。できるだけ早くそういったことを整理してお示しをいただけますか。お答えいただきたいと思います。

長妻国務大臣 今お願いしている法案にも今度新たに、都道府県が策定できる広域化等支援方針について、都道府県が市町村の国保の保険料の状況や医療費の動向、収納対策の現状等を分析するということとされておりますので、そういう、市町村にとっても資するような資料を国が収集できるかどうかも含めて検討していきたいというふうに考えております。

 そして、その検討の結果、今、論点別あるいは課題別の調査ということを実施することになった場合は、これはもちろん公表をさせていただくということでありますが、まず、その調査ができるかできないかということを検討させていただきます。

大村委員 いや、私は、そんなひねったような話を聞くつもりはなかったんですが、足立政務官が前向きにそういった課題ごと、論点ごとに整理したいというふうに言われましたので、では、そのことをできるだけ早く示してくださいねということを確認したかったんですけれども、この話だけで時間を費やすつもりはありませんが、今の話を聞くと、何かこの法律が通って、県に対して広域化の指針を示すときにそういったことがいろいろ議論になるから、そのときにあわせてやるということになると、何かもう、何カ月も半年もずっと先のような話に聞こえるんですけれども、それでは私は問題解決が進んでいかないというふうに思います。

 そういう意味では、もう一回聞きますけれども、こういった調査はやはり大事だと思いますので、これはこれでいいと思いますが、これをさらに論点、課題ごとにフォーカスして、それをどういうふうに調べていくか、そういう目的意識を持った課題設定をした調査をぜひやっていただきたいということを提案しているのでありますけれども、その論点整理とか課題設定、そういったことについて、先ほど足立政務官はやりたいというふうにお答えいただきましたが、そのことを確認したいと思いますが、いかがですか。

長妻国務大臣 今も申し上げましたけれども、市町村国保の負担等も考えて、そういう論点の調査、どういう質問が適切なのか否かというのも含めて、我々、その調査手法についてのアドバイザーもお願いをしておりますので、一度その先生方にも相談をして、どういう調査手法があるのか、国保の市町村の御負担はどの程度なのか、そういうことも勘案して検討してみたいと思います。

 これについては、恒常的に毎年毎年そういう調査をそういう本にまとめてやるかどうかというのは、まだ今のところここで明言できませんけれども、一度テンポラリーに、そういう課題を、どういう状況になっているのかというようなことを聞くということについて検討するということでありますけれども、これは前向きに検討していきたいと思います。

大村委員 毎年毎年同じことについてずっと継続的にやっていく、恒常的にやっていくということは、確かに限られた人員と予算ですから、そこまでは必要ないと思いますが、今言われたことで、もうちょっとそれを早めて、できるだけ前倒しをしてやっていただきたいと思いますので、それは今、検討するというふうにお答えいただきましたので、ぜひ前向きに、積極的にやっていただきたい。そのことはまたこれからもお聞きをしていきたいというふうに思います。

 そのことについて、また後ほどもう一回お聞きしますが、次に参ります。

 そのこととも関連するんですが、先ほど私申し上げました、市町村国保の課題がいろいろあります。財政の状況は先ほど足立政務官からお聞きをいたしましたが、その中の大きなポイントとして、収入のうち保険料についてお聞きをしたいと思います。

 保険料の算定方法というのはいろいろありまして、二方式、三方式、四方式があって、その中で特に、それを受けて、保険料の格差というのは五倍近くあるわけでございます。この保険料の市町村の格差についてはどういうふうに受けとめたらいいのか、このままで仕方がないということなのかどうか、いかがでございますか。お考えをお聞かせいただきたいと思います。

足立大臣政務官 負担と給付のことを考えると、この格差をそのままでいいということは絶対にあり得ないことでございます。

 その中で、各市町村ごとに、二つの方式、三つの方式、四つの方式と、保険料徴収そして保険料額の設定のところがいろいろございますけれども、私は、できるだけ方式としては統一性を持ったものの方がよろしいのではなかろうかということがありますのが一点目。

 それから、やはり何といっても範囲が、市町村であるということの範囲の狭さといいますか、やはり広域化は何としても図らなければ負担の平等性ということについてはなかなか担保できない問題で、大きな問題だと認識しております。

大村委員 今のお話をお聞きいたしておりますと、この格差は縮小した方がいいというふうに受けとめてよろしいですか。

足立大臣政務官 はい、そのように思っております。

大村委員 だとすると、話がこの点とはちょっと変わるかもしれませんが、格差を縮小するという点では、後期高齢者の医療制度によって、七十五歳以上のいわゆる保険料の格差というのは、国保に加入していた方では五倍から二倍近くまでこれは縮小したということなんですね。その点については、これは選挙前でございますが、民主党のマニフェストにも書いてありましたが、もし高齢者医療制度を廃止してもとの老人保健制度に戻すということになると、格差は五倍に拡大する、二倍まで縮小したのが五倍に拡大するということになりますけれども、それはそれで仕方がないということですか。

足立大臣政務官 今の委員の前提で、後期高齢者医療制度を廃止してもとの老人保健制度に戻した場合というふうにおっしゃいましたけれども、我々の政権公約の中では、もとの老人保健制度に戻すというように書かれているところはないと思いますし、今まさに、後期高齢者医療制度を廃止した後の新しい制度について議論をしているところでございます。

大村委員 しかし、これは県ごとに統一をしたので二倍近くまで縮小した。これを、今皆さんが考えておられる、何を考えておられるかというのを言わないのであれですけれども、これをもしばらけさせたらもう一回格差は拡大をいたしますけれども、それはそれで仕方がないということでよろしいですか。

足立大臣政務官 お答えいたします。

 先ほどの質問の中でもございました六条件というものの中に、これは広域化を図るということが一つの条件としてございますし、そこで国民健康保険の負担に対する配慮を行うというような記載もございますから、その六条件を考えると、今委員が、最終的に負担の保険料の格差がまたもとに戻る、あるいは格差が大きくなってもいいんですかということは、我々はそうならないように制度設計を考えるというふうに今やっているところでございます。

大村委員 正直言って、中身を示さずに、ただそういうふうにしたいんだと言われても、これは答弁としてそのままに受けとめるというわけにはいきません。

 そういう意味で、私は、この点についてやはり格差を是正していく、そして、この後申し上げますが、保険料が特に高い市町村が格差という点で問題になっているというふうに思います。そういう意味で、これについてやはり格差を是正する、そして、特に保険料の高い市町村について、そういったことについて額をできるだけ抑えていく、そのためにはさらに公費を投入していくということに踏み込まなければならないというふうに思いますが、大臣、いかがでございますか。

長妻国務大臣 これは委員にも提出した資料と聞いておりますけれども、格差の保険者別、市町村ですね、上位・下位十というのがありますけれども、そういう格差があり過ぎるのではないかというような御指摘もいただいておりますので、いずれにいたしましても、公費の投入というのは一つの大きな課題であるというふうに理解をしております。

大村委員 少し例を申し上げますと、特に保険料が高い市町村というのが幾つかございます。

 例えば、きのうの参考人の方の資料で、これは立教大学の芝田さんでございますか、この方が、いわゆる埼玉県内の年間所得二百万円に対する保険料ということで、さいたま市が三十二万八千円、保険料負担率が一六%、越谷が三十四万六千五百円、二百万のうちそのくらいの割合だということも示されておられました。

 午前中は、これは社民党の阿部さんの資料でございますが、甲府市が、これは所得が二百五十万で四十五万円、二百万だと三十二万円というような資料もございました。

 また、毎日新聞が二〇〇八年にやった調査によりますと、世帯所得二百万円で、四十代夫婦と未成年の子二人の四人家族というモデルでは、最高額が大阪府寝屋川市の五十万四千円というものでございました。

 などなど、私は、やはり市町村国保が国民皆保険の一番のベース、最後のとりでだということを、常々そういうふうに思っておりますし、そう申し上げておりました。どういうふうにこの市町村国保を支えていくのかということが日本の国民皆保険を支える一番大きなポイントだというふうに申し上げてきたわけでございますが、そういうことからすると、こういう高い保険料について、これをできるだけ安くしていく、是正をしていく、そういったことについて、もう市町村の負担だけではなくて、これは思い切って国費も含めて公費を投入していく必要があるのではないかというふうに思いますけれども、その点について、大臣、いかがでございますか。

長妻国務大臣 この市町村国保の格差と、財政基盤が脆弱な保険者もたくさんあるということでありまして、これはもう前政権からの引き続きでもございますけれども、二千五百四十億円の税金を市町村国保に投入いたしまして、今回のこの法案による保険料上昇抑制というのを市町村国保にも実施をしているということでございます。それについても、さらなる見直しが必要なのではないかという御指摘もございます。

 私どもとしては、広域化に向けた取り組みということで、今回の法案の中にもその一部を盛り込み、新しい高齢者医療制度の中でも広域化の取り組みというような方向で考えていきたいというふうに今検討しております。それと、公費の投入、こういう御指摘も多々あるということも理解をしておりますので、それも大きな論点になると思います。

大村委員 今回の提案されている法案の中で、いわゆる国保の財政の基盤強化事業というのは、私どもがこれまでやってきた施策の延長ということですから、これはやっていただくということで、あえてこれに反対するということはいたしませんし、結構だと思います。

 先ほどの答弁でも私は申し上げましたが、昭和六十三年から私どもがやってきた保険基盤の安定制度でありますとか、高額医療費共同事業、平成四年からは国保の財政安定化事業、それから、平成十八年から保険財政の共同安定化事業、三十万円以上のものの費用負担の調整といったことを累次やってきたということは、これはこれからもやっていかなければいけないというふうに思いますが、今回これを提案するのであれば、今こういった現状がある、市町村国保はこういう現状だということであれば、私はたびたびといいますか、これまでも何度も申し上げておりますが、皆さんは医療関係予算を三千億円もカットされたわけでありますから、その三千億円のカットすることがあるのであれば、なぜこの市町村国保のところにこういった形で突っ込まないのかということを申し上げたいというふうに思います。

 今回の、これまで我々がつくってやってきたものの継続だけではなくて、さらに踏み込んだ市町村国保への公費の投入、追加の財政支援、これについてお考えはありませんか。

長妻国務大臣 先ほど医療費をカットと言われましたけれども、ぜひ、ふやした部分も言及をしていただければというふうに考えておりまして、これは、診療報酬の医療の本体部分については、今おっしゃられたものを上回るような増加もさせていただいているところでございます。その中で、公費をふやす、そういう御指摘は数々いただいております。

 これは財政の問題もございますので、大きな論点だと我々は理解をしておりますけれども、政府全体で今後議論する課題であるというふうに考えております。

大村委員 いやいや、それは政府全体で議論する話ではなくて、この医療保険財政というのは厚生労働省が、あなたが所管しているわけですから、そこのところは厚生労働省としてこういうふうにやっていくんです、こういうふうにやりたいということで検討すべき課題だというふうに思います。政府全体という話で逃げるというのは、私はいかがなものかということを申し上げざるを得ないと思います。

 この点でさらに申し上げますが、やはり市町村国保で特に手当てをしなきゃいけないということは、先ほど来私が例を挙げましたが、いわゆる所得の少ない方々、低所得の方々に対する保険料負担が、やはり年間の所得が二百万ということになりますと、年間の収入は、いろいろな控除等を引きますと三百十万円ぐらいだろうと思いますが、それで親子四人で年間五十万というのは、やはりこれは高いというふうに私は思います。

 したがって、まずは市町村国保の財政の安定、財政支援ということでも、特にその中でもこの低所得の方々をピンポイントに、やはりここに公費を投入して保険料負担を軽減していくということについて検討するお考えはありませんか。いかがですか、長妻大臣。

長妻国務大臣 低所得の方ということでありますけれども、今現在も保険料の所得割は、比率でいえば、低所得の方が負担の絶対額は少ないということでございますし、それと、市町村国保の保険料格差については、一般的には公費負担は所得水準に応じて、所得が低いところに手厚くなっているということでありますので、これからも、ただ先ほど来、実態の把握という御指摘もございますので、特に低所得者の方の各国保の市町村における実態も、先ほどの調査なども活用して把握をする努力をしていきたいと思います。

大村委員 そこのところを私は強く申し上げたいんです。市町村国保のうち、全体の財政支援というのは、やはりこれを前のものに加えてさらに検討をしていただきたいということを申し上げることと同時に、特にその中でも所得の少ない方、低所得の方の保険料負担を軽減するということについて今すぐ検討していただきたいということ。それと、そのためにやはり実態を把握しなきゃいけませんので、先ほど申し上げた市町村国保の調査、さらに、課題設定をした調査の中で、まず、今長妻さんが言われたように、この低所得の方について、そこにフォーカスを当てて、その実態の把握調査とそれに対する対策を講じていただきたい。

 これについて、どういうふうな調査をするか、どういうふうな課題を設定するか、それから、どういうふうにこの対策を打つか、これについて今すぐ検討を始めていただきたいと思いますが、始めていただけますね。お答えください。

長妻国務大臣 この調査については、先ほど申し上げましたように、検討事項とさせていただきます。

 そして、低所得の方ということでございますけれども、一つは、今回の法案の中にも一定の考え方があるのは、保険料の滞納世帯であっても、今までは中学生以下の方の保険証を取り上げることはしないということになりましたけれども、今回の法案では、高校生世代以下の方については保険証を取り上げることはしないという措置が盛り込まれているということ。

 そして、この法案とは別に、失業された方、期せずして失業された方は、その翌年の国保の保険料が勤務しているときの所得にかかって、収入がないのに大変な保険料を払わなければならないということもございましたので、これについては前年の所得を七割引きにして、三割で所得をカウントした上で国保の保険料をいただく、こういう措置も始めましたので、ある意味では保険料が半分程度になるのではないかということで、一部でございますけれども、低所得の方々への対応というのも我々は進めているつもりでございます。

大村委員 この法案に書いてあるといいますか、そういったことを聞いているのではなくて、今までやってきたことではなくて、そのさらにもう一歩踏み込んで、特に構造的な要因を分析してやっていく中で、この低所得の方の構造を分析し、対策を講じていただきたいということを申し上げているのであります。

 もう一度聞いても同じような答えだろうと思いますが、ぜひそのことは、また次のといいますか、これからもそういったことについてフォローしていきたいというふうに思いますので、至急検討し、また、できるだけ早い機会に、事務方でも結構ですので、その検討状況を教えていただきたいということを申し上げておきます。

 それから、この市町村国保については、法定外の一般会計繰り入れが三千七百億から三千八百億円ぐらい毎年毎年あるわけでございますが、これも特定の、大体政令市という大きなところが多いのかもしれませんが、特定のところにもう固定化しているのではないかというふうに思いますけれども、この点についてどういうふうに見ておられますか。これについての要因というのは、そういうのは分析したことがありますか。いかがですか。

長妻国務大臣 これは年度末の赤字補てんなどで、これは一定のルールがあるわけでありますけれども、そういうものを補てんするということで、市町村が一般会計からそれを埋めるというような対応をしているのではないかと思います。

大村委員 これが恒常的になっているというのは、私はやはり問題ではないかと思います。

 したがって、低所得の方への対応、それから、まさにこういう恒常的に一般会計繰り入れがある。例えば、大阪市だと毎年百七十六億円、川崎市で百十四億円、私の地元名古屋で百九億円とか、いわゆる百億円を超えるオーダーで一般会計繰り入れをしないと国保財政がもたないというのは、これはやはり、これが毎年毎年続いていくというのは、どう考えても、これが正常な姿だとは思えません。

 したがって、この構造も、低所得の方もあわせて、一般会計繰り入れが恒常的に、それも巨額に行われている、このことについて、やはりそこにスポットを当てて、フォーカスを当てて、要因を分析し、対策を講じ、その上で、これはもっともっと国が応援したらいかがかというふうに思いますが、いかがでございますか。

長妻国務大臣 確かに一般繰り入れが、例えば、あらかじめ想定された範囲内で予算の中にあって、そして繰り入れていくというケースと、途中で予期せぬ赤字、赤字で急遽一般会計から繰り入れる、いろいろなケースがあると思いますけれども、それが恒常的に続いていくということについて、我々としてもそれは何らかの対応が必要になってくるのではないかというふうに考えております。

 要因分析ということでございますけれども、やはり、所得水準の高い低いということで、高い場合は公費負担が比較的少ない、しかし、それでもかなり赤字が出てしまうということや、あるいは保険給付費がかなり上昇していくなどなど、保険者ごとにその要因というのは異なると思いますけれども、冒頭申し上げました、その調査の中の論点整理で市町村の構造的な問題も聞けるかどうか、それも検討していくということであります。

大村委員 これは、一般会計繰り入れの率が高いところは、ちょっとばらつきが若干ありますが、小さな村とかそういったところもありますが、一般会計繰入金の金額が大きい保険者は、大阪、川崎、横浜、札幌、名古屋、それから足立区、大田区等々に、大体三大都市圏に集中しているわけですね。

 ですから、それも百億円を超えるオーダーのところが六つもあるわけでございますから、これは臨時的な、そんな要因じゃないと思います。まさに構造的な要因としか考えられないわけでありますから、先ほどの低所得のものとあわせて、こうした一般会計繰り入れがこれだけ巨額にもう固定化している。これについては、やはりそこに課題設定、フォーカスを当てて、しっかり要因を分析していただいて、その対策を早急に講じていただきたいということを申し上げておきたいと思いますが、その点、お約束をしていただけますか。いかがですか。

長妻国務大臣 これについても、先ほど申し上げましたその調査の中で可能かどうかも検討していきます。

 もう一つの論点としては、確かに今おっしゃられたように、一般会計繰り入れの金額が大きい保険者、これは絶対金額でベスト十というのを並べてみましたけれども、大阪市や川崎市、横浜市ということで、大阪市は百七十六億円などなど、百億円以上のところが六つございます。

 これも一つ一つ要因を見ていくということも重要だと思いますけれども、もう一つは、これはもう当たり前の話でありますけれども、保険料を上げれば一定のものは解消できるわけでございますが、それはやはり自治体の判断で、保険料を上げないという政策判断もされておられる自治体もあるのではないかと思いますので、そことの関連性というのも見ていく必要があるのではないかというふうに考えております。

大村委員 ぜひこの点も含めまして、やはりどういった課題を設定し、どういうふうにやっていくかも含めて、できるだけ早い機会にそれを整理していただいて、またお示しをいただきたいと思います。これは事務方の方にまたその点についての説明を求めたいと思いますので、その上で、また次の機会に質問をさせていただきたいと思います。

 そこで、総務省の政務官にお越しをいただいております。

 こうした国からの財政支援をふやすのであれば、やはり地方財政措置をふやしたらどうかという声がございます。特に地財措置をふやすことによって、これは一般財源ですから、できるだけきめ細かく、さっきの低所得の方の保険料負担の軽減ということもございますが、地財措置でもってさらにきめ細かく、各市町村段階で低所得の方の保険料負担を軽減する、そうした措置も講じるような手当てをしたらどうかという声もございます。

 この点について、政務官、いかがでございますか。

小川大臣政務官 これは国、地方あわせての取り組みがやはり必要だろうというふうに、重要な問題意識をいただいているというふうにお聞きいたしておりました。

 現在のところ、恒久的な措置としては、市町村間の財政力をならすための都道府県の調整交付金、これが五千億余りでございます。それから、低収入者向けの保険料負担の軽減、これに三千億余り。そして、暫定措置として今回延長を御審議いただいておりますが、保険者の支援のための制度、また高額医療費の共同事業、さらには市町村単独で行っておりますものが、合わせて二千億円余り。合計で一兆円近い地方財政措置を行っているというのが現在の状況でございます。

 これを前提にして今御質疑の中で御指摘のような状況があるわけでございまして、これは国、地方あわせて考えるべき問題意識だというふうに受けとめさせていただきたいと思います。

大村委員 やはり国民の健康を守る一番のベースである国民皆保険のベースとなる市町村国保ですから、これはぜひ、国、地方のいろいろな協議の場があると思いますが、そうした場においても、この地財措置、地方における財政措置をふやしていくということについてもぜひ検討をいただきたい、そのことを申し上げておきたいと思います。

 そして、時間がそろそろやってまいりました。最後に、今回の法案の一番大きなポイント、私どもが反対せざるを得ないということの、健保組合に対するツケ回しについて申し上げたいというふうに思っております。

 午前中の答弁でも私、申し上げましたが、今回、この一年、二年で一番大きく違ってきたのは、やはりリーマン・ショック後の経済状況が全く違うということでございます。

 お手元に資料をお配りしてございます。特にこの中で、健保組合の標準報酬月額が、平成十九年度の三十七万円をピークに二十二年度は三十五・九万円ということで、三・一%の落ち込み。それから、特に賞与が落ち込んでおりまして、平均標準賞与は、十九年の百十七万五千円が二十二年に九十五万九千円ということで、一八%の落ち込み。あわせまして年間の総報酬額は、十九年度の五百五十七万一千円が五百二十二万円ということで、実に三十五万円、六・三%の落ち込みということでございます。

 こういう中で今回のツケ回しを強行いたしますと、例えば私の地元の健保組合では、被保険者一人当たり、年間二万円を超えて三万円近い負担増になるというような、そういった組合もあるというふうに聞いております。したがって、年間の収入が減っていく中で、さらにこれで三万円近い負担増ということになりますと、まさにダブルパンチでございます。そういう意味で、今回のものは、まさに勤労者いじめそのものというふうに言わざるを得ません。

 そして、こうした状況を反映して、健保組合の財政も極めて悪化をいたしております。この資料にもありますように、平成二十年度で三千億円のマイナス、二十一年度で六千二百億円のマイナス、それから二十二年度で六千六百億円のマイナス、赤字ということでございます。

 こうした財政悪化を受けまして、御案内のように、三百五十二の健保組合が保険料率の引き上げに踏み切る。それでも赤字だ。赤字組合は九割。まさにこれも、財政面から見ても勤労者いじめそのものと言わざるを得ないわけでございます。

 先ほど来、同僚議員への答弁を聞いておりましても、長妻さんは、健保組合というのは日本の医療保険を支え、リードしてきたんだといいながら、しかし、やることは、これだけ総収入が、年間収入が平均三十五万円も下がっていて、その上で三万円近いような負担増を強いるということ、これはやはり私は大きな問題ではないかと言わざるを得ません。こういうのを見ていくと、民主党マニフェストには、どうせ一元化するから健保組合なんか要らないんだと、まさにそういったような対応ではないかというふうに言わざるを得ないと思います。

 こうしたことから、健保連は、二年前は苦渋の選択としてやむを得ないというような対応でありましたが、今回は断固反対だと。理がない、筋が通らないということで反対をいたしております。その証拠が、一番のいい例が、負担減となると言われている五百九十二の組合のうち、二百九十の健保組合が反対決議をしているわけでございます。

 そういったことを踏まえますと、我々は、今回のようなツケ回しをするのではなくて、協会けんぽに対する国庫補助率を法定上限である二〇%まで戻して、まず国が責任を果たす。その上で、全体をどういうふうに、今後、医療保険の財政、医療保険制度をこういうふうに持っていくから、その上で負担の分担をお願いしたいということを本来やるべきではないかということを申し上げざるを得ないと思います。

 そういう意味で、今回のツケ回しをして、勤労者に負担を押しつける、一方的に負担を押しつける。我々は、まだまだこれは審議不十分だ、先ほど申し上げた市町村国保の話とか、低所得者の負担軽減の話とか、また、恒常的に一般会計から繰り入れている問題だとか、いろいろなことがありまして、まだまだ十分議論をして、多くの国民の皆さんの理解を得てやっていく必要があるということを感じております。

 そういう意味で、まだまだ議論を尽くしていかなきゃいけないということでありますけれども、きょうこの後、民主党初め皆さんは、この法案を強行採決しようとしているわけでございます。子ども手当に続いて、また今回も強行採決をして、一方的に負担を勤労者そして国民に押しつけようとされておられます。私は極めて遺憾だというふうに思います。

 この点について、今回、この後強行採決をされるんでしょう、強行採決をされても、我々は多くの勤労者そして国民の皆さんとともに、断固、引き続き反対運動を展開していきたい、そのことを強く申し上げておきたいと思います。この法案、特にこの健保組合のツケ回しについて断固反対だということを申し上げて、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

藤村委員長 次に、加藤勝信君。

加藤(勝)委員 法案に関する質問をする前に一問だけ、子ども手当のことについて確認をさせていただきたいと思います。

 先日の議論の中で、外国人の海外にいる子供に対する子ども手当の支給に関して、監護について、少なくとも年二回以上子供に面会が行われ、子供の生活について通常必要とされる監督、保護の実質が備わっているもの、こういうふうに通知が出されているわけであります。

 それにもかかわらず、七日の児童局長の答弁においては、従前の児童手当を支給される者においては四月の段階で申請したものとみなされ、現況届が出た六月時点で要件に該当しないということが発生した場合であっても、六月以降分の支給は取り消すけれども、四月、五月分については支給しっ放しにしておくという、本当に驚くべき答弁がありました。

 子ども手当ということで方向が変わったにもかかわらず、逆に言えば、そうしたところに国民の払っている税金を投入すべきではないにもかかわらず、それを放置しておくというのはまさに無駄そのものではないのか、こういう思いを新たにしたところであります。

 そこは指摘をしておきまして、もう一点。

 児童養護施設等の子供さんに対して、安心こども基金について運用するということでありまして、先般、二十二年度における施設入所児童等への特別支援事業運営指針というのが出されたわけであります。

 私は従前から、やはりこれは施設内において、子ども手当の受給対象の子供さんとそうでない子供さん、今回の支援事業は受給対象でない子供さんを対象にするということになると、施設内において、受給対象であるけれども、逆に言えば親がもらっているけれども、その手当を施設の方に預けるということはまず考えられない。こういう話を聞くと、施設内で、支給対象になっている子供さん、そして、支給対象にならないけれども、今回特別支援事業でいわば実質的に支給される子供さんとの間に差異が生まれて、養護施設の中の運営には非常に問題が出てくるのではないか。

 そこは柔軟な対応をお願いしたい、こういうふうに申し上げていたのでありますけれども、この運営指針を見ると、「事業実施者は、対象児童ごとに、当該児童に係る特別支援事業費を管理し、助成額及び支出の内容を明らかにしておかなければならない。」さらに、「特別支援事業費の対象経費は、対象児童に係る物品等の購入に係わる経費の他、対象児童の趣味、会食、旅行等の活動に要する経費とする」という非常に細かい規定になっているわけであります。一般の子ども手当については、次世代の社会を担う子供の健やかな育ちを支援するという趣旨に従って用いなければならないとされている規定と比べると、非常にリジッドでバランスを欠くのではないか、こういう思いも強くするわけであります。

 そこで、大臣にお伺いをしたいのでありますけれども、安心こども基金の事業の対象になる子供と、対象にならずに、そして親に支給されている子ども手当を施設にも届けられない子供、この二人がいた、こういう子供について、大臣は、一体施設はどう対応すればいいかと。

 施設において、寄附金がたくさんあれば、その寄附金を使うという手もありましょうけれども、一般的に児童養護施設、この間も代表の方々とお話をさせていただきました、そんな余裕がある施設でないところもたくさんあります。そうすると、施設内の子供さんについて明らかに差別的な取り扱い、一方は、毎月一万三千円分のお金が入ってくるから、それによって今申し上げたことができる、他方は、親がもらってしまって、子供にはないからできない。そうすると、その子は映画館には行けるけれども、さっき申し上げた後者の子供さんは施設の中に残っておく。本当にそんなことを施設でしていくべきだと考えておられるのか。あるいは、では、逆にその子も連れていこうとすれば、どこかからお金を出してこなければいけないわけでありますけれども、一体どうやってそのお金を捻出すればいいのか。

 大臣が施設のまさに園長さんというか責任者であったら、一体この事態にどう対応されるのか、その点をまずお伺いしておきたいと思います。

長妻国務大臣 子ども手当の、今、施設への支給の話でございますけれども、まず、児童手当については、今おっしゃられたようなケースでは支給されないということで、やはりそういうことについて何とか対応していこうということで、同額を基金から支出させていただくということにさせていただいているわけで、我々は、少しでもそういう方々に対して支給範囲を広げていこう、まずこういう姿勢のもと取り組んでいるということを御理解いただいた上で、今の御質問でございますけれども、確かに私どもも、山井政務官初め、実際の施設の幹部の方などと意見交換をさせていただいて、いろいろな課題があるというのは承知をしております。

 その中で、親御さんにお金が渡るケース、そして親御さんがおられない方は施設にお金が渡るということで、あくまでもそのお子さんの育ちに着目したお金の支給だということでございまして、その中で、そのお子さんの希望をよく聞いて、そしてそのお子さんに対する支出ということを取り扱っていただくわけでありますけれども、ほかの子と差がつくというのが非常に明確にわかるような形の使い方というのはなかなか、ほかのお子さんから見て心理的な影響もございますので、そうならないような使い方というのも我々はお願いをしているところでございまして、大変配慮をするということがあるわけでございますので、施設の幹部の方とも、今後とも問い合わせ等にもきちっと対応していきたいというふうに考えております。

加藤(勝)委員 いや、そういうこともあるから、余り詳細な書きぶりはやめた方がいいんじゃないんですか。

 要するに、趣旨を徹底して使ってくださいということで、子ども手当がそもそもそうですから、そういう程度でいいんじゃないんですかということを従前から私は申し上げてきたにもかかわらず、この通知では書いていますけれども、物品の購入、趣味、会食、旅行等の活動に要する経費と。今、大臣はわからないようにと、こんなことをやったらわかるじゃないですか。旅行に連れていってあげる、あるいは旅行へ行ってこいとお金を渡す、物を買う。はっきりわかってしまうんですね、こういうお金の使い方というのは。

 だから、私は、何でそんなところまできめ細かにやるのか、そこはざっくりしてもよかったんじゃないか、まさに今大臣のおっしゃったような形でよかったんじゃないんですかと。それをこんなにきめ細かく書いたら、本当に施設の責任者は非常に頭を結わくと僕は思いますよ。

 一般的に彼らが希望したのは、逆にそこでお金を使うといずれにしても差別的な形になってしまうから、むしろ、こういう子供さん方は卒業して社会に出たときにやはり支度金とかいろいろ要るわけですね、そういう部類の一部に充てさせてもらったらありがたいよねと書いてあるんだけれども、「金銭給付を除く。」と書いてあるわけですね。一体どうしろというわけですか。

 この辺は本当に施設の方はこれから勉強しなきゃいけないと言っておりましたけれども、ちょっと余りにもこの通知の中身というのは細か過ぎて、本当に施設の方の立場あるいは施設の実態に全く配慮していない、私はこういうふうに思うんですけれども、大臣、いかがですか。

長妻国務大臣 これについては、ひょっとするとこれまでの児童手当というのは、そういう問題があるからかどうかわかりませんが、そういう代替措置がなされていないということだったのかどうかわかりませんけれども、そこは支払われていないということだったわけでございますが、それに見合う同じお金を、やはりこの子育てというか子ども手当の趣旨からいって払うべきだということで、私どももそういう制度設計をさせていただいたところであります。

 その中で、非常に悩ましいのは、これは基金ということでございますので、それが将来にわたって貯蓄を認めた場合、そのお金が確実にお子さんに渡るのか否か、あるいは施設としても、管理をすることについて、それが負担になるのではないか、いろいろな論点があったわけでございまして今回のような考え方となったわけでありますが、当然、この考え方の範囲内でそれぞれの施設の幹部の方にいろいろ御配慮をいただいて、また、御疑問がある場合は、我々も対応の窓口をつくっておりますので、そこで我々も見解を申し上げていくという体制にさせていただいております。

加藤(勝)委員 この問題、これ以上議論したところで仕方がないかなという感じがするんですけれども、ただ、一点、最後にお願いをしておきたいと思うのは、確かにこの通知は通知としてありますけれども、やはり、実際の施設の状況、そして彼ら責任者の方々が何に本当に心を配っているかということをよく踏まえて対応していただきたい。そうでないと、こういうものは、後で調査が入ったり何やかんやとかそういう話、もちろんきちんとした支出はしていただかなきゃなりませんけれども、今言った、彼らが本当に何を考え、どういうことをしていかなきゃならないか、その点を十分配慮した運用というんでしょうか運営をぜひお願いしたいと思いますけれども、よろしくお願いいたします。

 それでは、本論に入りたいと思います。

 まず、資料でお配りをさせていただいております「高齢者の医療の確保に関する法律に関する検討条項」という縦長の紙を、きょう、資料として提出させていただいております。

 これは条文の解釈なので局長にお伺いいたしますけれども、この健康保険法等の一部を改正する法律の附則という形になっておりますけれども、「検討」で、第二条の第一項と第二項。第一項は、るる書いてありますけれども、規制のあり方についてということなんですね。それから、第二項は高齢者医療制度についてということになっているんですが、この第一項と第二項、それぞれどういう関係で、どういうことを検討しようとしているのか、そこをまず御説明いただきたいと思います。

外口政府参考人 附則二条の第一項、第二項、両方とも見直し規定でございますけれども、第一項は規制のあり方について検討するものであり、第二項は制度の内容全般について検討するものであります。

 なぜ内容全般に加えて第一項であえて規制のあり方について検討することが入っているかということでございますけれども、これは規制改革を推進するという観点から、新たな規制を入れたときには一定期間経過後に見直す、そういう見直し条項を別途盛り込むという考え方がございますので、それで、これがあえて二つ書いてあるということでございます。

加藤(勝)委員 ということは、高齢者医療制度そのものについては第二項というふうに基本的に考えておけばいいということですね。

 そこで、では第二項についてお伺いをしたいと思うんですけれども、第二項の「高齢者医療確保法による高齢者医療制度」、この高齢者医療制度とはどういう制度を指しておられるんですか。

 もう一回申し上げますけれども、第二項の「高齢者医療確保法による高齢者医療制度」、これは何を指しておられるんですか。

外口政府参考人 後期高齢者医療制度、それから前期の高齢者医療制度、そして適正化についても入っております。

加藤(勝)委員 今の御説明にあるように、後期と前期と適正化、三つが入っているということでありますけれども、今、後期については新しい高齢者医療制度の創設、これは前期のことも含まれるのではないかと思いますけれども、政府においては、今年中に取りまとめをして、来年の通常国会、いただいた資料で一月と書いていましたけれども、法案を提出して、法案の成立を図って、二十五年四月から具体的に施行していきたい、こういうスケジュールを明示しておられると思うんですが、そのスケジュール観とこの二項を見ると、少しずれがある。少しというか、かなりずれがあるような感じがするんですね。

 というのは、ちょっと傍線を引きましたけれども、第七条の規定の施行というのは、これは上にありますけれども、平成二十年の四月でありますから、したがって、施行後に五年というのは平成二十五年を目途として検討が加えられるということですから、二十五年にかけて検討します、こういうふうに読むべきだろうと思うんですね。

 それに対して、先ほど申し上げた、少なくとも新しい医療制度は二十二年中に結論を出す、こう政府が言っておられるわけですから、そういう観点からすると、政府の御意思、今、長妻大臣のもとでおやりになろうとしている意思をはっきりと示していくためには、むしろ逆にこの二条の二項こそ改正をして、皆さん方のその姿勢を示すべきではないかと思うんですけれども、何ゆえにここを変更されなかったんですか。高齢者医療確保法そのものについては、たしか今回の法律の第三条において一部改正ということをしているにもかかわらず、私は一番大事な部分だと思いますけれども、何でこのことをこのまま放置されていたんですか。大臣にお伺いいたします。

外口政府参考人 御指摘の点につきましては、施行後五年を目途に検討を加え、必要があるときは所要の措置を講ずるべきというものでありますけれども、現在、結果としてこれを前倒しして検討を進めている状況にありますので、あえてこの規定を変更する必要はないと考えております。

長妻国務大臣 まさに委員がおっしゃられたようなスケジュール観でこの新しい制度が進んでおりまして、この今の条項よりもかなり早く見直しを、ある意味では、後期高齢者医療制度を廃止するということでありますので、見直しどころか廃止ということが急ピッチで進んでいるということでございますので、これはあえてこの規定を削除する必要がないというふうに考えております。

加藤(勝)委員 いや、別に削除しろと言っているんじゃないんですよ。今おっしゃることをしっかりと姿勢をあらわすのなら、その旨をきちんと修正して書くのが筋ではないんですか。

 やはり、申しわけないけれども、これまで民主党はいろいろやっておられますけれども、言っていることと実態は随分違ってくるわけでありますから、むしろ、みずからやるということを明確に、これは閣法ですから、政府として意思を示すのなら、この第二項、今おっしゃる廃止も盛り込んで、しっかり書くのが本来の姿じゃないんですか。

長妻国務大臣 先ほど申し上げたことで、あえて規定を削除する必要もありませんし、書き込むということでありますけれども、その考え方でいきますと、例えば、今後政府として予定をしているものについて法律に書き込むべきだという議論になるというのは、少し違うのかなと思っております。年金制度も大きく改革いたしますけれども、改革前に、それをするというような意思を今現行法の中に書き込んでいくということにはならないのではないかというふうに考えております。

加藤(勝)委員 それは、法律の改正を出したり、タイミングがありますから、そういうものがないときにあえてそれだけを改正するということはないと思いますけれども、今回は、皆さんが出している改正案には、第三条といってわざわざ条立てをして、高齢者医療確保法について、こことこことここを変えますとわざわざ書いてある。にもかかわらず、一番大事な部分を明確にしない。やはりそういうところをしっかりするというところが、後から申し上げますけれども、まさに小手先だけで物を進めていく、こういう感をぬぐい切れないことにつながっているということをまず指摘させていただきたいと思います。

 その上で、今後の医療保険あるいは保険料率であります。

 先ほど大村委員からも御指摘がありました、本当に中小企業の給与所得、ここ十年間余り上がっていないし、特に去年、相当下がっておりますね。そして、来年というか今年度になるんでしょうか、見通しの中で、さらに雇用者報酬は〇・七%減少するという政府の見通しがあるわけであります。

 先般の雇用保険のときにも申し上げましたけれども、一連の、今回の中小企業の方でいえば、協会けんぽの保険料率が一・一%も上がること等々、結果的に四万円の負担増になるというわけでありますけれども、大臣は、本当にこれだけ給与が下がっている中でこうした負担増を求めていく、これはどういうふうに思っておられるんですか。

長妻国務大臣 今、本当に景気状況が、数字的には一定の改善が見られるものの依然として厳しいということの中で、何もこれは対応をしなければ、いずれにしても保険料の上昇というのは非常に大きなものになったわけでございますので、いろいろな御協力もいただき、国費も投入をして、これをできる限り抑えていくということでございますが、それにしても上昇になってしまうということについて御理解をいただくべく、今、広報も含めてお知らせをしているところであります。

加藤(勝)委員 要するに大臣は、中小企業のそれぞれの所得の方が給料が下がっている中で四万円負担を求めていくということと、例えば子ども手当、それとの比較ですよね。これは、予算の中というのは財源が決められているわけですから、どっちを優先するかというときに、子ども手当を優先して、働く方々、給与は下がっているけれども、そのお父さんの分は四万円、子供のない方あるいは子ども手当の支給がない方ももちろん含まれますけれども、四万円は当然だ、こういう判断をされた、こういうことですね。

長妻国務大臣 もう一つお考えいただきたいのは、午前中も質問がございましたけれども、肩車と騎馬戦という話でございます。やはり、少子高齢社会ということで、少子化が進みますと結果として社会保障の担い手が少なくなってしまうということで、通常の上昇スピードに加え、若人、現役の方の減少が急ピッチで進んで、さらにさらに保険料の負担が上がっていくということになりかねないわけであります。

 今まで、自民党政権下でいろいろな議論がありましたときに、やはり子供にかける予算というのは、ほかに緊急なことがあるからこれは後回しにしましょう、こういう議論があって、結局、結果として、先進国の中で、GDPの比率で非常に低い子供に対する予算になり、そして、結果的に少子化の流れが加速し、結果的に先進七カ国では合計特殊出生率が最低になる、こういうようなことでございます。

 社会保障の担い手論というのも、これは中長期の課題ではありますものの、確かに目先だけ考えるとどちらがいいかということの議論になりがちでございますが、そういう少子化も含めた対応も日本国はとる必要があるという判断をしております。

加藤(勝)委員 子ども手当のときに、政策目的は何ですかといったときに、大臣は少子化対策だとおっしゃいましたか。違うでしょう。やってみなければ効果はどうなるかわかりませんとおっしゃったじゃないですか。

 全く、だからそこは我々は、むしろこういう厳しいときほどやはりまず働く方の生活、お父さん方の生活、お父さんが、要するに給料をしっかり持ってきてもらう、家庭の収入を確保する、当然そっちの方が大事だ、こういうふうに判断をすべきじゃないんですか。しかも、子ども手当というのは、大臣がおっしゃったように、本当にその政策効果はどうなるかわからない。ここの委員会でこれは明言をされました。そんなわからないものよりも、明らかに生活の質につながる、こういうものをしっかり手当てするのが私は政治ではないのかと。

 皆さんの民主党政策集インデックス二〇〇九医療政策詳細版の「後期高齢者医療制度の廃止と医療保険の一元化」の部分で、若年者についての、「現行水準の概ね維持」と書いてあるじゃないですか。中小企業の協会けんぽ八・二%を最終的に一〇%までしてでも、これはその負担の現行水準をおおむね維持する、これが大臣の感覚ですか。

長妻国務大臣 今回お願いをしている法律は、先ほど来答弁を申し上げておりますけれども、三年間の時限措置、そして、協会けんぽが非常に保険料がまれに見る上昇をする、こういう緊急の、喫緊の事態になりまして、それに対応するということで、国費投入や健保連等へのお願いなど緊急対応ということでやらせていただいているところでございまして、私どもとしては、これは暫定的なものとしてお願いをしているということであります。

加藤(勝)委員 ということは、二十五年になったら八・二%まで下がるということですか。

長妻国務大臣 暫定的と申し上げましたのは、これは総報酬割、あるいは本則に戻す、本則といっても一番下の方でございますけれども、その措置について三年ということを申し上げたところであります。

加藤(勝)委員 いやいや、緊急的な対応とおっしゃったじゃないですか。緊急的というのは、一時的に上げて、また下げる、そういうのが緊急的だと私は思いますけれども、今の大臣は単に今回は三年間の措置を講じたと言ったにすぎないわけで、それ以降、普通は、緊急的であれば、もとに戻る、こういうふうに解釈いたしますけれども、もう一回確認いたします。

 大臣、二十五年以降は、中小企業の皆さんの保険料、働く方の保険料は八・二%程度に下がる、こういうふうに理解していてよろしいんですね。

長妻国務大臣 これは先ほどから質問でもございますけれども、後期高齢者医療制度にかわる新しい制度の法案というのを来年提出する予定でございますので、そこの中でも議論がある可能性もございます。

 私どもとしては、この三年間の措置としてこの法案でお願いを申し上げているところでありますけれども、それ以降について、もう全く何もやらないということを今決めているわけではございません。この措置については三年間ということで、それ以降については、それ以内の景気状況やあるいは保険者の財政状況なども勘案しながら判断をしていく、そして、新しい制度の法案も来年出ることになりますので、それで再度の財政計算というのも整っていくというふうに考えております。

加藤(勝)委員 このというのは、多分、私と大臣、違うんだと思うんです。

 私はさっきから申し上げているのは、保険料率が二%近く上がるということを言っているんです。この点が緊急的なことだと私は受け取ったんですが、これはまた八・二、三%に戻る、戻していく、戻していきたい、こういう思いを持っている、そういうことでよろしいんですか。

長妻国務大臣 それは、できる限り保険料は低いにこしたことはない、そういう対応というのは必要であるという基本的な認識はどの保険についても持っているところでございますが、これについて、三年後、ではどういう姿になるのか、これは、財政の状況、景気の状況、標準報酬月額の状況、医療費の増大状況、いろいろな状況を勘案して判断をしていくということであります。

加藤(勝)委員 いや、だから、それは当たり前のことなんですよ、そんなことは。

 だから、どういう意向を持っておられるか。水準として、一時的には上げるけれども、本来八・数%程度、そういうものを念頭に考えていくのか。いやいや、一〇%というところからスタートするのか。これは全然話が変わってくるわけであります。

 今回の協会けんぽの保険料率、今の保険料率の場合、一般保険料率は今でいうと、二十一年度でいえば八・二%ですけれども、実際、自分たちの医療費に係る分と拠出に係る分、これは分けて出すようにしているわけですね。二十一年度について言うと、要するに、拠出金の相当分が三・二%、自分の自己医療費相当分は五・〇%。二十二年度になると、トータル平均九・三四%ということになりますが、このうち拠出金相当は三・五%ということは、〇・三%しか上がらないんです。ところが、自己医療の相当分が五・八四%と、〇・八四%上がるんですね。

 そうすると、ここだけ見ると、拠出金の問題よりは、自分たちの自己医療の部分の上がり方が非常に大きい。しかも、この五・八四というのは、国庫補助率を多分一三から一六・四%に上げた上でもここまで上がっているということですから、これは単に高齢者医療の問題だけではない。というよりは、むしろ自分たちの医療制度そのものが大変な問題になってきている。私はこう考えるべきだと思うんですね。

 そういう意味でいうと、今回の附則二条で「平成二十四年度までの間に検討を行い、」なんて、こんな悠長なことを言っているわけですね。検討を行うんですよ、二十四年度までですよ、ということは、それからやったら、までですからもっと早くやるとおっしゃるのかもしれないけれども、それなら、二十二年度中とか、もっと時限を区切ってしっかり出されるべきじゃないんですか。何で二十四年度までなんて悠長なことを書いているんですか。

長妻国務大臣 これは、先ほど申し上げました総報酬割等の措置、これは三年ということを申し上げておりますので、その三年以内ということでございます。

 そして、今協会けんぽの分析をしていただいたわけでございますけれども、やはりもう一つの要因としては、報酬がこの景気低迷の中下がってきている、そして結果的に、そこから保険料を徴収するには率を上げなければ絶対金額が確保できない、こういうような悪循環に陥っているというところでございます。

 先ほども申し上げましたけれども、今、有効求人倍率や失業率も数字的には一定の改善が見られておりますので、我々としても、新成長戦略も含め、予算の執行も今月から始まりましたので、それで景気の回復を早めて、賃金の上昇を図っていくということも含めて取り組んでまいりたいと考えております。

加藤(勝)委員 いや、甚だ無責任な発言ですよ。

 だって、二十四年までは財政収支、二十四年に一〇%ぐらいになるというわけでしょう。しかも、二十五年度だけ考えたら、要するに四千五百億円、二十一年度に発生したこの借金、この返済は多分消えましょう、しかし、それ以外の要因というのはほとんど変わらないわけでしょう、今の状況では。それでも大臣は、二十五年ぐらい、民主党の政権はうまくやるから、所得が一割も二割も上がる、こういうようにおっしゃるんですか。

 やはり物事を考えるときは非常に慎重に考えるべきだと前からおっしゃっておられるわけですから、ということになれば、こういう状況がある程度続くという前提でどういう対応を考えたらいいんだということを、これは、先ほど申し上げた高齢者に対する拠出金だけでなく、協会けんぽそのものの医療費のあり方といいますか医療負担とも絡むわけでありますから、そんなに悠長なことを言わずに、二十二年度中に検討をする、こういうふうに言ってください。

長妻国務大臣 まず、この協会けんぽについては、国庫負担が引き下げられたということで大変苦しい状況が続いてきて、前政権ではそれを引き上げというのはなかなか、二千二百億円の社会保障費のカットということもあってできなかったわけでありまして、私どもとしては、そういう縛りをなくして、まずは本則見合いに国庫をふやす、こういう決断をさせていただいたところでございます。それについてもいろいろ御批判もいただいているところでございますが、まずはそういう対応をして、できる限り保険料の上昇を抑えていく、こういう措置をまずさせていただきたいということで、前政権からのこの社会保障の抑制策、これを転換する第一歩とさせていただきたいと考えております。

加藤(勝)委員 何を言っているかよくわかりませんけれども、我々政権の中で、悪いけれども、保険料率を二%も上げるような話をしたことはありませんよ、大臣。せいぜい、先ほど資料がありましたけれども、総報酬、これまで月ごとの賃金からボーナスを入れたことに伴って若干負担が上がった、〇・何%と書いてありました。しかし、一年間で一・一%も、三年にかけて二%も上げるような話はしたことがない、少なくとも保険料については。

 それを今やろうとしているんですから、大臣、それを今やろうとし、しかも、その後もとに戻ればいいですよ。過去の借金が相当あった、自民党政権の時代にこんなに借金をつくっちゃったからこれを解消しなきゃならないけれども、それが終わったらどんと下がるんだというのだったらまだわかるけれども、そうじゃないわけですよ。ということは、やはりきちんとこの問題にしっかり答えを出していかなければ、さっき言った、健保組合の問題は後で触れますけれども、医療制度全般にかかわる話ですから。

 私が申し上げているのは、何で二十二年度中に検討するとおっしゃれないんですかと。法案を変えろと言っているわけじゃないんです。二十二年度中に検討する、そうおっしゃれば、大臣、指示できないんですか。

長妻国務大臣 まずは三年間で我々としては財政の改善を図っていく取り組みをしていくということを考えておりまして、その三年間の中で今申し上げたような措置をお願いしている。三年間で財政の改善を図っていくということで取り組んでまいりたいということであります。

加藤(勝)委員 いや、だから、その財政の改善が、保険料率が二%も、しかも給与がこれだけ厳しく下がる状況の中でお願いをするのであれば、少なくとも、三年後以降はこうしていきますよ、そういうことを示していくのが大臣の責任じゃないんですか。しばらく、三年間は申しわけない、しかしその後はこうやってやりますよと、それが大臣の仕事じゃないんですか。

 もう一回確認しますけれども、それでは、この議論、少なくとも協会けんぽに対するあり方については二十二年度中に答えを出さない、二十四年度まで悠長に議論していきますよ、こういうことですね。

長妻国務大臣 悠長に議論するということではありませんで、これは三年の、一つの枠組みの中で我々としては一定の措置を法律で今お願いしているところでございまして、総報酬割、あるいは本則見合いに国庫負担をふやす、こういう措置をして、三年間の中で我々としては財政再建を図っていくべくサポートをしていく、こういうことを再三申し上げているところであります。

加藤(勝)委員 要するに大臣は、中小企業で働く方々の保険料を二%も上げておいて、後はもう知りませんよ、まさにそういうことを言っているのと一緒じゃないですか。三年後、四年後どうなるかわかりません、しかも検討も、そういうことを心配して今年度やるんじゃなくて、当面やりませんと。全く無責任な対応であります。

 これは大臣が言えばできる話でしょう。しかも、これだけの状況になってきているわけです、これはリーマン・ショック後のいろいろな状況もありましたけれども。やはりここは、私は、単に高齢者だけの問題じゃなくて、さっき申し上げたように、働く方々の医療制度自体もかなりがたがきている、この認識をやはり共有、我々も持っているし、したがって、大臣に早く議論してほしいし、きちんとした答えを出してもらいたいから言っているわけでありますから。何でそれができないんですか。

 しかも、二%というのはとんでもない負担率ですよ、大臣、言っておきますけれども。これをお願いしておきながら、三年間かけて検討したら、実体にするまでには、その検討した結果を実現するまでにはまた何年かかかるかもしれない。そうじゃなくて、二十四年度以降にはきっちり答えを、実効的な対応をするから、だから今年度中は、自分が責任を持ってこれからのあり方を議論するから、だから二%、あるいは今年度一%を我慢してくださいというのが大臣の真摯な態度じゃないんですか。それもしないで、負担だけお願いします、それは余りにも無責任だというふうに思います。

 もう一回確認します。大臣、本当に検討する気がないんですか。

長妻国務大臣 まず申し上げたいのは、我々は国費を投入させていただいているんですね、一三%国庫負担ではなくて。ただ、おっしゃるように、中小企業の職員の皆さん、そして御家族の皆さんが協会けんぽに加入されておられます。我々も、でき得る限り保険料の上昇を抑える措置を、省を挙げて、そして政府を挙げて取り組んでまいったつもりで、そして今回法案をお願いさせていただいている。ただ、それにしても保険料は上がるということについては何とか御理解をいただきたいということで、我々も広報などを通じてそれを周知させていただいたところでございます。

 その中で、三年間の措置として、るる今何度も申し上げた措置をこの法案に盛り込み、その三年間の中で財政の再建策、これも、協会けんぽとともに、国もサポートをしながら、それを議論し決定をしていく、こういうスケジュールでさせていただいているところでございまして、それは、一年ですぐに財政再建ができるということであればそういうことも考えられましょうが、ただ、一年で、本当にその期間で財政再建ができるかというと、それはやはり三年間の時間をかけてやるべきである、こういう結論になって、その法律を今お願いしているところでございます。

加藤(勝)委員 要するに、理解を求めるって、どうやって理解を求めるかわかりませんけれども、それは、自分がこうやって汗をかくから、その分待ってくれ、我慢してくれというので初めて理解が進むんじゃないんですか。大臣、どうやって理解を求めるんですか。単に一・一%上がりますよという広報を打つわけですか。それじゃ理解は進まないと私は思います。

 そしてもう一点、全く理解がないのが、この間、参考人陳述でありました健康保険組合連合会の方々であります。通常、こういう特に利害、負担を求める場合には、先ほど二十年の話もありました、苦渋の選択だけれどもやむを得ないというのを大体関係者はこういう場でおっしゃる、また、そこまでいろいろな努力をして初めてそういう案を出してくるというのが少なくとも私どものときの常識だったと思いますけれども、今回は、苦渋の選択だから仕方がないどころじゃなくて、断固反対する、抗議をする、こういう主張をずっと繰り返し、きのうもおっしゃっておられたわけであります。

 大臣は、こういう状況の中にもかかわらず、これ以上説得したり、まあ、しようがないからわかりましたという言葉もなく、これを実現していく、こういうことですか。

長妻国務大臣 これについては、我々はもう法律を出しているからそのままお願いしますということではなくて、今後も、きのうの参考人のお話も聞いておりますので、我々としては、丁寧に御説明を必要に応じてしていくという姿勢は崩していないということであります。

加藤(勝)委員 いや、説明をするといったって、その主張だとだめだと向こうは言っておられるわけだから、それに加えて何かプラスアルファをしなければ通常は交渉というのは先に進まない、理解は進まない、私はそう思いますけれども、大臣は、もう全然、単に同じことをオウム返しのようにおっしゃる、こういうことですか。

 そうすると、ちょっと別の質問をさせていただきますけれども、今回、いろいろな経緯でこの姿ができ上がったと。さっきも田村委員等同僚の御指摘がありました。

 この間、その推移を見ると、当初は協会けんぽの補助率について事項要求していましたよね。そして、十二月四日の段階で急に総報酬割というのを出してきて、この資料を見ると、これは三分の一じゃなくて全部でしたから、協会けんぽの負担額マイナス二千五百億、健保組合プラス一千四百億、共済組合プラス一千億、こういう非常に規模の大きい案を出されたんですが、この規模の大きい、この全額というのは一体どういう視点で出されたんですか。このお金をどういうふうに使おうと思ってこういう案を、医療保険部会ですか、ここに提出されたんですか。

長浜副大臣 今のお問い合わせは、医療保険部会で数度にわたる議論のときの案のことをおっしゃっておられるんでしょうか。(加藤(勝)委員「はい」と呼ぶ)

 ですから、さまざまな財政的な制約の中におけるのが一つ。それから、被用者保険、保険制度のあり方を含めて、今加藤さんがおっしゃられた部分は、多分、昨年の十一月以来、三回ぐらいにわたって議論された中での案だというふうに理解をしております。

加藤(勝)委員 だから、私が質問したいのは、私がいただいたのは、十二月四日に出した骨子案というのをいただいていますけれども、この規模というのは、何を想定してこういう規模のものをお出しになられたんですか。

長浜副大臣 ですから、まさに今議論にあるところの財政の負担をどう考えるかということの中において、突然総報酬割が出てきたという議論ではなくて、社会保障審議会の中にも議論は出ておりましたし、今加藤さんがおっしゃった医療保険部会の中においても、総報酬割の考え方に基づく、フルで言われた場合と、二分の一、三分の一というような形での総報酬割の議論は出ていたというふうに思います。

加藤(勝)委員 いやいや、それは、最初から総報酬割にすれば何ぼになるとか、そんなのはわかる話で、にもかかわらず、何でこれ、この骨子案というのは政府から出したんでしょう。私はそういうふうに聞いたんだけれども。

 そうすると、何でわざわざ政府がこういう骨子案を、しかもこれだけの規模、先ほど申し上げた、協会けんぽは二千五百億円減りますとか、こういう規模感、私が申し上げたのはこの規模の話を言っているんですけれども、これだけのものを出されたんですか。一体どういう意図があったんですか。あるいは、これによって、どういう形で協会けんぽの補助金をこれだけ減らそうと考えたんですか。そこの考え方をお聞きしているんですよ。

 一体、これによって何をしようとされたのか。単にこれだけのことを議論したわけじゃないと思うんですね。流れは、もともとあったのは、中小企業の協会けんぽの補助割合をどうするか、こういう議論の中でこれは出てきているはずですから。ということは、これによって一体どういうことを、国庫補助についてあるいは協会けんぽの経営について実現をしようとしたんですか。

長浜副大臣 特に財務部門に詳しい加藤先生の質問ですから、御理解の上という部分だと思いますが、その総報酬割の議論というのは、医療財源の中における負担割合を、後期高齢者の部分の中における均等割から総報酬割にした場合の、どういうパターンになるかということをまさに議論をしているとおりだと思います。

加藤(勝)委員 だって、予算編成の中でこのこと自体議論になっていなくて、メーンはあれでしょう、協会けんぽの国庫補助率をどうするかという議論の中での、これを一つだ、こういうふうに私は認識しているんですけれども、それは違うんですか。

長浜副大臣 ですから、医療部会の中の議論はそういった形で、先ほど田村先生の議論だったかしら、要は、十二月の末のところでたまたま財務当局との数字が、合わせてということじゃなくて、これはもう加藤さん御存じのように、たまたまじゃなくて、ぎりぎりの財務当局との交渉の中における数字が三分の一総報酬割という形になっただけで、議論の過程は、今加藤さんが提示をされたとおり、事前に何回も関係者が、もちろん、あれは平井会長ではないと思いますけれども、対馬専務理事等々も出席をされている部分の中において議論されてきた経緯もあります。

加藤(勝)委員 いや、私がお伺いしたかったのは、その議論のプロセスがよくわからないなと。

 要するに、協会けんぽをどうしますかという話があって、それから、もう夏ぐらいからこの総報酬割の議論が並行して走っているなら、それはよくわかりますよ。でも、この話というのはほとんどなかったです、少なくとも九月、十月の予算要求のときには。そして、十二月、あるいは今のお話で十二月の終わりごろなのかもしれません、こういう部会で具体的に案が出てきた。しかも、その規模はこんなに大きい規模ですから。

 私の財政当局の考え方を言ったら、ああ、こんなにやってくれるんだったら、二千五百全部抜けますよ、国庫負担、こういう議論にどっちかというとなりがちですよね、こういう話は。にもかかわらず、何であえてこういうのを出されたんですか。それだったら、最初から三分の一とか四分の一とかとお出しになって、いや、最初四分の一出したけれども、最後三分の一まで取られちゃった、これはわかりますよ。でも、最初に何でこんな話までどんと出てきたかというところが私には腑に落ちない。どういうプロセスだったのかということをお聞きしているんです。

長浜副大臣 ですから、申し上げているように、あえて特定の意図は持っていないんです。ある形があって、それを四分の一とか五分の一、それがだめだったら三分の一まで、まさにおっしゃられた言葉でいえば取られちゃったとか、そういう作為的なことをしているんじゃなくて、全体観としてはこうですよ、それが二分の一になればこうなりますよという、多分バリエーションの話に展開をしたんだと思います。

加藤(勝)委員 いやいや、普通、そういうのであれば試算で出すんですよ。全部総報酬割になったら幾らですか、二分の一なら幾らですか、試算を出して、それを横っちょに置いておくというのはわかるんだけれども、これは骨子案と書いてある、骨子案。こういう考え方でいきますよということでしょう、骨子案というのは。一つの案ですよ、案ですよということですからね。今のは、だから、案ですよということを出したのは何でなんですかと。今申し上げた、試算で幾らか計算するというのはわかりますよ。これは何なんですか。

長妻国務大臣 これは突然のお尋ねでございましたので、今この保険部会の資料をこっちに持ってこさせましたけれども、今の議論でございますけれども、この総報酬割については、今の保険部会で三回ほど議論をしたということでございます。

 それについて、いろいろな論点が、議論がなされたということでございまして、一つは、国庫補助率を引き上げる、そしてもう一点目は、単年度の財政均衡の特例、財政健全化の計画をする、そしてもう一つが、今御議論いただいた被用者保険内の費用負担のあり方の見直しということで、何も、これが一本で出してきて、それで何かごり押しをするという話ではもちろんございません。

 その中で、一つのシミュレーションとして、二十二年度概算要求ベースで、「総報酬割導入による後期支援金の負担額の変化(推計)」というような資料で、これは三分の一ではなくて、すべてを総報酬割にしたときはどういう状況になるかということを申し上げているところでございまして、そういう一つの参考の資料としてこれを御議論いただいたということであります。

加藤(勝)委員 突然って、私はずっとさっきから申し上げているんですから。何で協会けんぽの負担、保険料が上がる、大臣から言えばこれに抑えたということなのかもしれませんけれども、そのことを確認したいがために申し上げ、突然といったって、別に数字を聞いているわけじゃないんですよね。考え方のプロセスですから、当然そのことは大臣もわかっておられるでしょう。そして、最後に多分大臣交渉をして、この結論になったんだと思いますけれども。

 ということは、逆に言えば、ここにあるように、協会けんぽの負担額は二千五百億削りたいですね、そんな数字があったんじゃないんですか。ところが、最後、押し切られちゃったですね、私はそういうことをお聞きしたいんですが、大臣、財務大臣とどういう議論をされたんですか。

長妻国務大臣 私が突然と言いましたのは、この審議会の中で、例えば、この十二月八日の審議会の中でこういう全体の数字はどういう位置づけなんだというお尋ねがあったので、それは、事前にもしそういう審議会のお尋ねがあるというふうに通告をいただければ、これはスムーズに答えられたということを申し上げているところでありまして……

藤村委員長 長妻大臣、時間が過ぎておりますので、短く。

長妻国務大臣 はい。

 そういう意味で、私は突然のお尋ねと申し上げたところでございます。

 財務大臣との協議でございますけれども、財務大臣とは、これは全体の予算の最終的な協議の中で、今回お願いしているような形で協議をしたということであります。

藤村委員長 加藤君、時間が来ております。

加藤(勝)委員 いやいや、そうじゃなくて、大臣はどういう主張をされて、財務大臣はどういう主張をされて、最終的にこういうふうになったかということをお聞きしたい。

 少なくとも最初に、では、最初から、六百五十億でいいです、六百五十億じゃないや、六百五十億でしたかね、真水は。最初からそれでいいですよと、大臣、交渉したわけじゃないでしょう。もっと違う数字で交渉されたんじゃないんですか。そのことを教えていただきたい。

長浜副大臣 下交渉は私の方でいろいろやらせていただきましたけれども、思いは同じです。ですから、できれば多くの国費を投入しながらこういった医療、介護、年金の部分においての支出をしたいというのは、多分ここにいらっしゃる皆様すべて同じだというふうに思っております。

 それで、たび重なる交渉の中においての最後の結論の段階で大臣に出ていただく、こういうことでございます。

藤村委員長 加藤君、時間が過ぎておりますので、取りまとめをしてください。

加藤(勝)委員 だから、大臣はどういう思いで、やはりそれは大臣が、やはりこういうことになっているわけです。大臣は一・一%まで抑えたとおっしゃるけれども、一般のサラリーマンから見たら一・一%も上がるんですよ。それに対して大臣はどれだけ体を張って頑張ったかということでしょう。そのことをしっかり皆さんに説明しなければ、大臣のおっしゃっているようにだれも納得もしませんよ。

 だから、具体的にどうされたんですか。事務交渉、下交渉はいいですよ。大臣は当然、これだけの重いものを持っているわけですから、財務大臣とさしで話をされていると思いますよ。そのときにどういう立場でどういうことを御主張されたんですか、大臣は。結論は、それはいろいろあってこうなったんでしょう。結論はそうだけれども、大臣はどういうことを、どういう話を持っていったんですか。

 そのことをしっかり明示していきながら言わなければ、負担をするサラリーマンの皆さんだって納得できませんよ、幾ら大臣が説得、説得と言ったって。これは、自分はこれだけ努力する、そしてこれからもこういう努力をすると言うから、みんな納得するんじゃないんですか。

 その点を、今言った、財務大臣と具体的に議論をしたときに大臣はどういう主張をされたんですか。

藤村委員長 長妻大臣、時間が過ぎていますので、端的に簡潔にお答えください。

長妻国務大臣 これは、もうでき得る限り保険料の上昇を抑えたいという思いはあるわけでございます。その中で交渉をして、そして結果的に今回の法律でお願いしていることになったということでございます。

藤村委員長 加藤君、時間が過ぎております。終わってください。

加藤(勝)委員 いやいや、大臣、国民の皆さんは、一体大臣はどういう案をぶつけているんですかと。最初に大臣が財務大臣とさしでやるときに、どういう打ち出し案を具体的に出したんですか。何でそのことを言えないんですか。抽象的な話でいっているわけですか。違うでしょう。普通はこういう案をぶつけていくわけですよ。その後いろいろ議論があって、最後はこうなった、これはわかりました、結論は。ただ、最初、どういう姿勢でどういう具体的な案をぶつけたんですか、大臣は財務大臣に対して。それを明確に言ってくださいよ。そうじゃなかったら一般の、負担すべき国民の皆さんは理解できないですよ。それを言ってくださいよ。

藤村委員長 加藤君、時間が過ぎています。質疑はこれで打ち切ってください。

 最後の答弁を長妻大臣。

長妻国務大臣 これは先ほども申し上げましたけれども、保険料の上昇というのは極力抑える、こういう基本姿勢でお話をして、そして結果として今回の形になったということでございます。(発言する者あり)

藤村委員長 中根康浩君。

中根委員 動議を提出いたします。(発言する者あり)

 本案の質疑を終局し、討論を省略し、直ちに採決されることを望みます。

藤村委員長 ただいまの中根康浩君の動議に賛成の諸君の起立を願います。

    〔賛成者起立〕

藤村委員長 起立多数。よって、そのように決しました。(発言する者あり)

 採決をいたします。

 古屋君外一名提出の修正案に対して賛成の諸君の起立を願います。

    〔賛成者起立〕

藤村委員長 賛成少数。よって、本案は否決をされました。(発言する者あり)

 次に、加藤君外一名提出の修正案に対して決議をいたします。

 賛成の諸君の起立を願います。

    〔賛成者起立〕

藤村委員長 賛成少数。よって、本案は否決されました。(発言する者あり)

 次に、青木愛君外一名提出の修正案について採決をいたします。

 本案に賛成の諸君の起立を願います。

    〔賛成者起立〕

藤村委員長 起立多数。よって、本案は可決いたしました。(発言する者あり)

 次に、医療保険制度の安定的運営を図るための国民健康保険法の一部を改正する政府案、修正部分を除く原案に賛成の諸君の起立を願います。

    〔賛成者起立〕

藤村委員長 起立多数。よって、そのように決しました。(発言する者あり)

 本委員会の、委員会報告については、委員長に御一任願いたいと存じます。

 賛成の諸君の起立を願います。

    〔賛成者起立〕

藤村委員長 起立多数。よって、そのように決しました。(発言する者あり)

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

藤村委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとして、本日は、散会いたします。

    午後四時四十四分散会


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