衆議院

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第24号 平成22年5月28日(金曜日)

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五月二十七日

 藤村修君委員長辞任につき、その補欠として鉢呂吉雄君が議院において、委員長に選任された。

平成二十二年五月二十八日(金曜日)

    午前九時三十二分開議

 出席委員

   委員長 鉢呂 吉雄君

   理事 青木  愛君 理事 石森 久嗣君

   理事 内山  晃君 理事 黒田  雄君

   理事 中根 康浩君 理事 大村 秀章君

   理事 加藤 勝信君 理事 古屋 範子君

      相原 史乃君    石津 政雄君

      石原洋三郎君    磯谷香代子君

      大西 健介君    岡本 英子君

      勝又恒一郎君    金子 健一君

      川越 孝洋君    菊田真紀子君

      郡  和子君    斉藤  進君

      園田 康博君    田名部匡代君

      田中美絵子君    長尾  敬君

      仁木 博文君    初鹿 明博君

      樋口 俊一君    藤田 一枝君

      細川 律夫君    三宅 雪子君

      水野 智彦君    宮崎 岳志君

      室井 秀子君    森岡洋一郎君

      山口 和之君    山崎 摩耶君

      山井 和則君    和嶋 未希君

      あべ 俊子君    井上 信治君

      北村 茂男君    菅原 一秀君

      田村 憲久君    武部  勤君

      橘 慶一郎君    永岡 桂子君

      長勢 甚遠君    西村 康稔君

      松浪 健太君    松本  純君

      坂口  力君    高木美智代君

      高橋千鶴子君    阿部 知子君

      柿澤 未途君

    …………………………………

   議員           園田 康博君

   議員           郡  和子君

   議員           藤田 一枝君

   議員           中根 康浩君

   議員           三宅 雪子君

   議員           阿部 知子君

   議員           田村 憲久君

   議員           松本  純君

   議員           大村 秀章君

   議員           加藤 勝信君

   議員           高木美智代君

   厚生労働大臣       長妻  昭君

   厚生労働副大臣      細川 律夫君

   厚生労働副大臣      長浜 博行君

   厚生労働大臣政務官    山井 和則君

   厚生労働大臣政務官    足立 信也君

   経済産業大臣政務官    近藤 洋介君

   政府参考人

   (厚生労働省職業安定局長)            森山  寛君

   厚生労働委員会専門員   佐藤  治君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月二十七日

 辞任         補欠選任

  相原 史乃君     鉢呂 吉雄君

  藤村  修君     相原 史乃君

同月二十八日

 辞任         補欠選任

  岡本 英子君     金子 健一君

  田中美絵子君     磯谷香代子君

  樋口 俊一君     石津 政雄君

  福田衣里子君     和嶋 未希君

  細川 律夫君     森岡洋一郎君

  山口 和之君     石原洋三郎君

  棚橋 泰文君     橘 慶一郎君

  長勢 甚遠君     北村 茂男君

  松本  純君     井上 信治君

  坂口  力君     高木美智代君

  江田 憲司君     柿澤 未途君

同日

 辞任         補欠選任

  石津 政雄君     樋口 俊一君

  石原洋三郎君     山口 和之君

  磯谷香代子君     田中美絵子君

  金子 健一君     岡本 英子君

  森岡洋一郎君     細川 律夫君

  和嶋 未希君     勝又恒一郎君

  井上 信治君     松本  純君

  北村 茂男君     長勢 甚遠君

  橘 慶一郎君     永岡 桂子君

  高木美智代君     坂口  力君

  柿澤 未途君     江田 憲司君

同日

 辞任         補欠選任

  勝又恒一郎君     川越 孝洋君

  永岡 桂子君     棚橋 泰文君

同日

 辞任         補欠選任

  川越 孝洋君     福田衣里子君

    ―――――――――――――

五月二十七日

 障害者自立支援法等の一部を改正する法律案(田村憲久君外四名提出、衆法第一七号)

 障害者自立支援法の廃止を含め障害保健福祉施策を見直すまでの間において障害者等の地域生活を支援するための関係法律の整備に関する法律案(園田康博君外六名提出、衆法第二三号)

は本委員会に付託された。

五月二十八日

 障害者自立支援法等の一部を改正する法律案(田村憲久君外四名提出、衆法第一七号)

 障害者自立支援法の廃止を含め障害保健福祉施策を見直すまでの間において障害者等の地域生活を支援するための関係法律の整備に関する法律案(園田康博君外六名提出、衆法第二三号)

は委員会の許可を得て撤回された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 独立行政法人地域医療機能推進機構法案(内閣提出、第百七十三回国会閣法第八号)

 障害者自立支援法等の一部を改正する法律案(田村憲久君外四名提出、衆法第一七号)

 障害者自立支援法の廃止を含め障害保健福祉施策を見直すまでの間において障害者等の地域生活を支援するための関係法律の整備に関する法律案(園田康博君外六名提出、衆法第二三号)

 障害者自立支援法等の一部を改正する法律案(田村憲久君外四名提出、衆法第一七号)及び障害者自立支援法の廃止を含め障害保健福祉施策を見直すまでの間において障害者等の地域生活を支援するための関係法律の整備に関する法律案(園田康博君外六名提出、衆法第二三号)の撤回許可に関する件

 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出第六〇号)

 厚生労働関係の基本施策に関する件

 障がい者制度改革推進本部等における検討を踏まえて障害保健福祉施策を見直すまでの間において障害者等の地域生活を支援するための関係法律の整備に関する法律案起草の件


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     ――――◇―――――

鉢呂委員長 これより会議を開きます。

 この際、厚生労働委員長として、一言ごあいさつをさせていただきます。

 本委員会は、年金、医療、介護、社会福祉、高齢化・少子化対策、労働問題など、国民生活に密着した課題を抱えており、委員長就任に当たり、改めて責任の重さを痛感しております。

 ここに委員各位の御指導と御協力をいただき、適正な委員会運営に努めてまいりたいと存じます。

 何とぞよろしくお願い申し上げます。(拍手)

     ――――◇―――――

鉢呂委員長 第百七十三回国会、内閣提出、独立行政法人地域医療機能推進機構法案を議題といたします。

 本案に対する質疑は、去る二十六日に終局いたしております。

 この際、本案に対し、青木愛君外四名から、民主党・無所属クラブ、公明党、日本共産党及び社会民主党・市民連合の四派共同提案による修正案が提出されております。

 提出者より趣旨の説明を聴取いたします。古屋範子さん。

    ―――――――――――――

 独立行政法人地域医療機能推進機構法案に対する修正案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

古屋(範)委員 ただいま議題となりました独立行政法人地域医療機能推進機構法案に対する修正案につきまして、民主党・無所属クラブ、公明党、日本共産党及び社会民主党・市民連合を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。

 地域医療において重要な役割を担っている社会保険病院等については、本法案により、新たに設置される地域医療機能推進機構のもとで存続されることになりますが、平成二十五年四月以降は、現在の病院の運営委託先には委託を続けられないこととなっており、機構が直接病院を運営することになります。しかし、単独で運営を委託している四つの社会保険病院については、それぞれ個別の事情もあり、現在の病院の機能、体制を維持したままでの機構への移行は困難ではないかとの懸念があります。

 そこで、地域医療の確保を図るという法案の趣旨を確実に達成するため、これらの病院について、個別の事情に応じて平成二十五年四月以降も引き続き現在の委託先に運営を委託できるようにする道を開く必要があると考え、本修正案を提出した次第であります。

 修正の要旨は、地域医療機能推進機構は、施設の運営を、年金・健康保険福祉施設整理機構の委託を受けて当該施設の運営を行っている者に委託した場合において、地域において必要とされる医療等を提供する機能の確保を図るためにその者が引き続き運営を行うことが適当である施設として厚生労働大臣が定めるものについては、平成二十五年四月一日以後もなお、当該施設の運営をその者に委託できるものとすることであります。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

鉢呂委員長 以上で修正案の趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

鉢呂委員長 これより原案及び修正案を一括して討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 まず、青木愛君外四名提出の修正案について採決いたします。

 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

鉢呂委員長 起立多数。よって、本修正案は可決されました。

 次に、ただいま可決いたしました修正部分を除く原案について採決いたします。

 これに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

鉢呂委員長 起立多数。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

鉢呂委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

     ――――◇―――――

鉢呂委員長 田村憲久君外四名提出、障害者自立支援法等の一部を改正する法律案及び園田康博君外六名提出、障害者自立支援法の廃止を含め障害保健福祉施策を見直すまでの間において障害者等の地域生活を支援するための関係法律の整備に関する法律案の両案を一括して議題といたします。

 提出者より順次趣旨の説明を聴取いたします。加藤勝信君。

    ―――――――――――――

 障害者自立支援法等の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

加藤(勝)議員 ただいま議題となりました障害者自立支援法等の一部を改正する法律案につきまして、自由民主党・無所属の会及び公明党を代表して、その提案の理由及び内容の概要を御説明申し上げます。

 平成十八年四月から施行されている障害者自立支援法につきましては、同法の附則に施行後三年を目途とする検討規定が定められております。我々の政権下におきましては、与党主導のもと社会保障審議会において、地域における自立した生活のための支援等の課題について議論を重ね、改正案を取りまとめ、昨年の第百七十一回国会に閣法として提出していたところであります。その内容は、利用者負担の見直し、障害者の範囲及び障害程度区分の見直し、相談支援の充実、障害児支援の強化等制度全般にわたるものであり、関係者の皆様からもその成立が強く期待されていたものでありましたが、委員会に付託されることなく、解散となってしまいました。

 しかしながら、この改正案は、障害者施策推進のために極めて重要な内容であることから、我々は、これを改めて提出すべく検討してまいりました。検討に当たっては、より一層障害者等の関係者の皆様のニーズに合ったものとするため、数次にわたり意見を聴取する機会を設けました。本法律案は、それらの意見を可能な限り反映したものであります。

 以下、この法律案の主な内容につきまして御説明申し上げます。

 第一に、障害福祉サービス等の利用者負担について、利用者の家計の負担能力に応じた負担が原則であることを明示することとしております。

 第二に、発達障害者が障害者に含まれることを明示するほか、障害程度区分の名称及び定義を見直し、障害の多様な特性その他の心身の状態に応じて必要とされる標準的な支援の度合いを示す区分であることを明確化することとしています。

 第三に、相談支援体制を強化するため、地域における相談支援の中核的な役割を担う基幹相談支援センターを市町村に設置できることとするほか、利用者がより適切なサービスを利用できるよう支給決定手続を見直すこととしております。

 第四に、障害児ができるだけ身近な地域で支援を受けられるようにするため、現在、障害種別に分かれている障害児の施設について、障害種別を超えた利用ができるよう一元化するとともに、通所による支援の実施主体を市町村とすることとしています。

 以上は昨年の閣法にあった事項でありますが、このほかに次の三点を加えることとしております。

 第一に、目的規定等に含まれている「その有する能力及び適性に応じ」という表現は、能力や適性に応じたサービス量しか支給しないように読めるとの指摘があったことから、必要な人には必要なサービス量をきちんと支給するという理念が明確となるよう、この文言を削除することとしております。

 第二に、成年後見制度利用支援事業を、その事業の重要性にかんがみ、市町村の地域生活支援事業の必須事業に格上げすることとしております。

 第三に、児童デイサービスについて、利用年齢を延長してほしいとの要望があったことから、二十歳に達するまで利用できるよう、特例を設けることとしております。

 なお、この法律は、一部を除き、平成二十四年四月一日から施行することとしております。

 以上が、本法律案の提案理由及び内容の概要であります。

 何とぞ、御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。

鉢呂委員長 ありがとうございます。

 次に、三宅雪子さん。

    ―――――――――――――

 障害者自立支援法の廃止を含め障害保健福祉施策を見直すまでの間において障害者等の地域生活を支援するための関係法律の整備に関する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

三宅議員 ただいま議題となりました民主党・無所属クラブ、社会民主党・市民連合及び国民新党提出の障害者自立支援法の廃止を含め障害保健福祉施策を見直すまでの間において障害者等の地域生活を支援するための関係法律の整備に関する法律案につきまして、提出者を代表して、その提案の理由及び内容の概要を御説明いたします。

 障害保健福祉施策につきましては、現在、障がい者制度改革推進本部やその下部組織である総合福祉部会等において、障害当事者の方々を交えて、障害者自立支援法の廃止を含め、鋭意議論が進められているところであります。しかし、その見直しが実施されるまでの間にも障害者や障害児の皆様の暮らしは続いているのであり、地域生活を支援するための施策を整備する必要があることから、抜本見直しまでの間におけるつなぎとして、ここにこの法律案を提出することとした次第であります。

 以下、この法律案の主な内容につきまして御説明申し上げます。

 第一に、この法律は、平成二十五年八月までに障がい者制度改革推進本部等における検討を踏まえて障害者自立支援法の廃止を含め障害保健福祉施策を見直すまでの間において、障害者及び障害児の地域生活を支援するため、関係法律の整備について定めるものであります。

 第二に、障害福祉サービス等を利用した場合の負担について、利用者の家計の負担能力に応じたものとし、障害福祉サービス等に要する費用から利用者の家計の負担能力に応じて定める額を控除した額を給付することを原則とすることとしております。

 第三に、発達障害者が障害者に含まれることを明示することとしております。

 第四に、相談支援体制を強化するため、地域における相談支援の中核的な役割を担う基幹相談支援センターを市町村に設置できることとするほか、利用者がより適切なサービスを利用できるよう支給決定手続を見直すこととしております。

 第五に、現在障害種別に分かれている障害児の施設について、障害種別を超えた利用ができるよう一元化するとともに、通所による支援の実施主体を市町村とすることとしております。

 第六に、政府は、障害保健福祉施策を見直すに当たって、難病の者等に対する支援及び障害者等に対する移動支援のあり方について必要な検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとすることとしております。

 なお、この法律は、一部を除き、平成二十四年四月一日から施行することとしております。

 以上が、本法律案の提案理由及び内容の概要であります。

 何とぞ、御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。

鉢呂委員長 ありがとうございます。

 以上で両案の趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

鉢呂委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。田名部匡代さん。

田名部委員 民主党の田名部匡代でございます。

 きょうは、久しぶりの質問でございますし、また十五分という短い時間でありますので、どうぞ答弁者の皆さん、よろしくお願いを申し上げます。

 自立支援法が成立をしたのは二〇〇五年でありました。私が二期目の当選をさせていただいてすぐに、この審議が始まりました。大変、私も、今でもそのときの審議を明確にというか鮮明に覚えています。国会で議論をする法律や制度の一つ一つが国民の生活や命をも左右する、大きな責任を負っているんだということを強く感じましたし、あのときには、全国から多くの障害者の皆さんが国会の前に集まって反対の活動をした、抗議活動をされた、そんな中での成立でありました。

 その後、二〇〇七年、民主党は、障害者自立支援法によって危機的な状況になっている障害者の皆さんの生活を何とか守りたいということで、応益負担廃止ということを柱にした新たな法案を提出しました。そして、幾つかの提言をしました。

 そんな中で、昨年、政権交代が実現をして、三党連立政権下で、障害者自立支援法は廃止、制度の谷間がなく、利用者の応能負担を基本とする総合的な制度をつくるんだという合意がなされたわけであります。

 しかし、今回、法案が提出されたことによって、多くの全国の障害者の皆さんが不安を感じていらっしゃるし、また不信感を持たれているのも事実であります。

 ここで、確認をさせていただきたいと思います。

 現政権下で合意がなされた、自立支援法は廃止、応益から応能へ、制度の谷間がない、このことはしっかりと守られるんでしょうか。そして、あわせて、これまで民主党がずっと言ってきた、現場の声を、当事者の声をしっかりと受けて法案をつくっていくんだということ、このことも守られるのかどうか。大臣と、また与党の法案提出者の方にお伺いをいたしたいと思います。

長妻国務大臣 今おっしゃっていただいた御質問ですけれども、この政権の方針は全く変わっておりませんで、連立政権合意においても、制度の谷間がなく、利用者の応能負担を基本とする総合的な新たな制度をつくることということを、遅くとも平成二十五年八月までに実施するという方針は変わっているわけではありません。

 そして、多くの当事者の方の御意見もお伺いをして新しい法制度をつくっていくという、その議論の仕組みももちろん変わったわけではございませんで、ことしの四月から、障がい者制度改革推進会議のもとに総合福祉部会を設置して検討を開始しておりまして、多くの皆様方の御意見を聞いて、今度は本当に皆様が使いやすく、そして、その制度のもとに安心してお過ごしになっていただく、そういう制度をつくっていきたいというふうに考えております。

園田(康)議員 ありがとうございます。

 おっしゃるとおりでございまして、私どもは、今回の自立支援法の見直しは、やはり何といっても、連立政権合意、三党合意の中でも、あるいは国会の議論の中でも、応能負担をやるべきだ、そして、それを基本として当事者の方々と御一緒にこの制度をつくり上げていかなければいけない、今大臣からも御答弁をいただいているわけでございますけれども、その方針に一貫して変わりがないということはまず申し上げておきたいというふうに思っております。

 さらに、つけ加えて申し上げさせていただくならば、今回の制度改革推進本部、そして推進会議、あるいは総合福祉部会という形で当事者の方々が鋭意、この二十五年の八月までにという期限の中でしっかりと議論をしていただいている。そして、私ども立法府の中においても、そのことをしっかりと踏まえて議論をさらに深めていく必要がある。このことは、国会の中での合意形成を、やはり私たちも与党、野党を超えてやっていく必要があるというふうに考えているところでございまして、その点では、一貫してその方針には変わりないということは申し上げておきたいというふうに思います。

田名部委員 ありがとうございました。

 私たち、野党時代から、当事者の声をしっかり聞くんだということ、そしてその声を随分多くの全国の団体の皆様から、当事者の皆様から聞かせていただいてまいりました。その中で、自立支援法では生きていけないという苦しみの声をたくさん聞かせていただいてきました。

 そんな中で新政権が発足をして、この合意がなされたことは必ず守っていただきたいということ、そしてその声を聞くために障がい者制度改革推進会議、こういったものがつくられたわけですので、今回、ある意味、全国の障害者の皆さんが不安や不信を感じていらっしゃることは、当事者の声を聞くと言ったじゃないか、そのことが本当に議論の中に取り入れられるのか、自分たちの声はまた聞かないまま法律がつくられてしまうんじゃないかということだと思います。

 ですから、大臣初め、できたこの推進会議の皆さんにも、しっかりと今回の法案の改正の中身を御説明していただきながら、二十五年までに総合的な福祉政策をしっかりつくるんだ、その中では今回合意がされたことは必ず守るんだということをお話ししていただきたい、そのように思っております。

 また、これが、内閣府だ、どこどこ会議だ、厚生労働省だという、今までのような縦割りの弊害がないように、しっかりと一つになってこのことに取り組んで実現をさせていただきたい、そのように思っております。

 次に、与党の法案提出者にお伺いをしたいんですけれども、今回、この改正がなされることで、今まで行われていたサービスが低下をするだとか負担がふえるだとか、そういったことがあるのか、今回の改正によってどういう点が変わるのかということをお聞かせいただきたいと思います。

園田(康)議員 ありがとうございます。

 今回の法律の改正というものは、まず第一に、先ほど申し上げましたように、応能負担、必ず負担能力に応じた負担というものを原則とするということを法律上きちっと明記をさせていただくということでございます。

 そして、障害の範囲については、先ほど提出者からもありましたけれども、発達障害者、今までこれが明確になっていなかったわけでございますので、この点を法律上きちっと明確化していくという形になります。

 なお、高次脳機能障害の方については、これはまだ法律上ではありませんけれども、告示等を通じてこれも範囲の中にといいますか、今でも精神疾患の中に含まれるわけでございますけれども、それを踏まえて、今後運用の改善がなされていくだろうということが考えられるところでございます。

 そのほかに、市町村に総合的な相談支援センターを設置できることや、あるいは地域移行を支援するための相談事業を充実するといった相談支援の強化も盛り込まれているところでございまして、また、今障害種別ごとの障害児の方々の施設を一元化させて、より身近な市町村の中でしっかりと支援をしていくということがここの中で明らかになっていくというふうになっております。

 それから、グループホーム、ケアホームを利用する際の助成制度も新たに創設をさせていただくということで、いわば障害者の方々の地域生活支援がより強くなっていけるものだというふうに考えております。

 なお、検討条項の中に、まだまだ不十分な点はやはりあるというふうに思っております。したがって、今推進会議あるいは総合福祉部会の中で議論をされているところでございますけれども、難病の方々を、ではどういった総合福祉法の中に入れていくのかというところは、まさしくその中で議論をしていただく形になっていくだろうし、また、移動支援の部分についても、これも今当事者の方々も含めて議論をしていただいているということでございますので、これもしっかりと、今回の法律上、ちゃんと政府がやるようにということで、検討条項を設けさせていただいております。

田名部委員 ありがとうございました。

 二十五年の総合福祉法というものが成立をするまでの間、今のままで、やはり不十分なことをそのままにするよりは、その間だけでもしっかりと足りない支援をしていくということは、私は大変重要なことだと思っています。

 そして、そのことを多くの全国の障害者の皆様にも御理解をいただいて、二十五年には、この約束を守りながら実現していくんだということをしっかりと私たちも伝えていかなければならない、そんな思いであります。

 次に、大臣にお伺いをいたしたいと思います。

 前回、公明党の高木先生から御質問があったと思うんですけれども、地域移行は進めていくのかどうかということで、大臣、そのときの御答弁、しっかりと進めていくんだということを御発言されております。これは、総合福祉法の目指す地域移行ということとも軌を一にするものでありまして、しっかりとこのことは進めていただきたいと思うんですが、現在、この新体系のサービスへの移行状況というのがどうなっているか、その現状をお聞かせください。

長妻国務大臣 調査をいたしまして、最新の数字が出ましたけれども、先月、四月一日現在で、新体系サービスへの移行率が五四・二%ということで、昨年の十月一日現在の四五・四%から八・八ポイント上昇しているということであります。

田名部委員 ありがとうございました。

 これを進めていくに当たって、二十五年までの間、しっかりと予算措置というものも行っていかなければならないと思います。

 山井政務官にお伺いをいたしたいと思います。

 野党時代、厚生労働の理事として大変御活躍をいただく中で、何度も涙を流しながら障害者の皆さんの立場に立った御質問をされていたことを、今でも私も鮮明に覚えています。そして、山井政務官が先頭に立って、全国の障害者の皆さんの声を受けてきた。そのことを踏まえて、これからもぜひその立場に立った取り組みをしていただきたいと思うんですが、そのためには、何といっても予算というものもしっかりと確保していっていただかなければなりません。

 この地域移行についても予算措置というものはしっかり行われるのかどうか、その辺についての対応をお聞かせいただきたいと思います。

山井大臣政務官 田名部委員にお答えを申し上げます。

 障害者自立支援法の廃止、これは政権交代の大きな眼目の一つでありました。ただ、やはり非常に大きな法律でありますので、法改正をするためには、来年の通常国会ではなく再来年の通常国会になってしまいまして、実施は、自立支援法違憲訴訟の原告、弁護団との基本合意に書きましたように、平成二十五年の八月からの実施ということになります。となると、その間できることに関しては少しずつ着実に改善していかないと、やはり私たちは約束を守っていないということになるのではないかと思います。

 そういう意味では、ことしにおきましても、四月より低所得の障害のある方の福祉サービス等にかかわる利用者負担を無料としたことや、その他、児童デイサービスの事業所において、障害のある児童を育てた子育ての先輩の方々による相談等の体制整備を行う場合の支援を可能としたりしております。

 これからも、地域移行の支援のための予算獲得に向けて全力で力を振り絞りたいと思っておりますし、そのためには、政府がそういう予算を要求する際には、またこれからも部会や推進会議の方々の要望を、今度も六月一日に部会から要望をいただくことになっておりますので、その方々とも議論をしながら、とにかく、財源確保をするのはなかなか大変でありますが、全力で頑張ってまいりたいと思います。

田名部委員 ありがとうございました。

 現政権下で約束がなされた合意というものはしっかり守っていただくということ、それは大臣からも御答弁をいただきました。そして、推進会議、部会等の当事者の声はしっかりと聞いていくんだ、それを踏まえた議論をするんだということも御答弁をいただきました。ぜひそのことはお約束をしていただいて、しっかりと、この国全体で、与野党関係なく、その枠を超えて、日本の障害者施策はどうあるべきか、そのことをみんなで取り組んでまいりたいと思います。

 きょうはありがとうございました。

鉢呂委員長 田名部匡代さんの質疑を終了いたします。

 次に、阿部知子さん。

阿部委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。

 本日議題となりましたこの障害者自立支援法、与党案では、二十五年の八月までの時限立法というものを提案しておりますが、それであっても、実はきょうは、大変に障害者団体からの異論、そして抗議の声が強い中で審議が行われます。傍聴申込者は二百名を超したというふうにも聞いております。それだけ障害当事者の皆さんが懸念され、事の成り行きを見ているきょうの審議だと思います。

 冒頭、長妻大臣にお伺いいたします。

 長妻大臣は、なぜ障害者自立支援法は廃止されねばならないとお考えになり、また、私どもが野党であったときに、その審議の中から学んだこと、最も大臣にとって大事だと思うこと、一つで結構です、お答えください。

長妻国務大臣 まず、なぜこの障害者自立支援法を廃止しなければならないのかということは、いろいろ論点はありますけれども、一つは、応益負担ということで、障害が重い方ほど負担が大きいということでございます。

 そして、その自立支援法の法案成立等で学んだことは、最も重要なことは、当事者の方の御意見をきちっと聞いて、どういう状況に置かれておられるのか実態把握をする、その法案が施行された後どういうふうに状況が変わるのか、それも実態把握をして、法案を立案し、審議をする、その重要性を学んだというふうに考えております。

阿部委員 当時の象徴的な言葉で、私たち抜きには私たちのことを決めないでと言われて、これは、実は私は医者ですので、大変に耳の痛い言葉なんですね。医師としてこの治療法がいいと思うけれども、それは受け手の患者さんにとって、その方の人生にとって、どういうところに位置して、本当にそれをその方が選ばれるのかどうかによって、よいものでも結果的によくなくなるかもしれないんですね。

 この障害者自立支援法は、やはり大きな物の考え方の転換点にあるんだと私は思うんです。単にムード的に、気持ち的に、何で無視してこんな国会審議を進めるのよ、そういう思いがあるだけではなくて、皆さんが、先ほどの田名部さんもそうでした、少しよくなるんだから、御答弁もそうでした、少しよくなるんだからと。でも、そのよくなっていくという方向と今ここで審議されているものが、本当に障害者の望む自己決定、自分たちの障害を自分たちの人生の中に抱えて生きていくためのものになっているかどうかという点について、次にお伺いをいたします。

 十五分で全部を聞けないので、例示をしてお伺いをいたします。

 今回私ども、私も与党の提案者の一人として、重度の視覚障害者の方の移動支援というものを、個別支援といって、特に重い方についてその支援を負担する、もっと楽にしてさしあげようという形で提案をいたしました。

 しかし、この間、障害者団体の皆さんが障がい者制度改革推進会議などで話してこられたのは、その症状の重さいかんではなくて、自分が移動したい、自分がこうしたいと思ったときに、その自分の意思がどのようにサポートされるかという問題であるというふうに提案されてきたと思います。

 今の体系は全部、重い方が大変だからやってさしあげよう、これも間違ってはいないのです。でも、今、障がい者制度改革推進会議、五十五人おられますから多様な意見があると思いますが、そこで提起されている本質的な問題は、その方が社会参加をしたい、あるいはその意思を持ったときに、何が足りないか、例えばそれは見守りながら通学を支援することであったり、いろいろなケースがあると思うのです。ここを転換してくれ、重いからお助けしましょうではなくて、自分たちがこうしたいから、その意思にのっとって、足らざる部分を助けをしてくれということなんだと思います。

 長妻大臣はどうお考えでしょう。

長妻国務大臣 今おっしゃられた移動支援ということでありますけれども、確かに、重度の方にのみ移動支援というのを充実させていくという考え方というのは、一概にそれは適切だとも言えないのではないかという御指摘は私も理解をするところであります。

 今回の法案、議員立法でございますけれども、重度の視覚障害者に対する移動支援は、同行援護として、これはきちっと位置づけることになっていると承知をしております。

 今後の、今おっしゃっていただいたような支援のあり方については、実施状況を踏まえて検討すべき課題だというふうに考えております。

阿部委員 私が申し上げたのは、移動の支援とは、単なるこの者をここに移動する支援ではないんですね。社会参加ということの支援の一環として多様に考えてほしい、それが障害者の願いなんです。それを、私どもは、やはり重い方を先に助けてあげようと思います、それは常識だから。でも、そうではないんだ、違う体系を、長年のその体系を打破してほしいというのが障害当事者の思いだということを、ぜひ、きょう審議に参加された各議員と共有したいと思います。

 そして、そうした御自身の意思を本当にサポートしていくために何が必要か、それは当然お金の問題も出てまいります。

 皆さんのお手元に「移動支援事業 都道府県別の事業費」というものを上げてございます。移動支援を実施している自治体数を聞くと、八十数%は実施していますと出てきます。しかし、ここにごらんいただくように、そのおのおのの自治体が実施している金額は、例えば例をとりますと、富山県の一千四百万円から大阪府の六十七億三千百万円まで、非常に幅がございます。これが現実であります。

 移動支援は、もちろん、例えば富山も大阪もしていると集計には出ます。でも、もしも富山県の、例えばです、富山県だけが悪いわけではないので恐縮ですが、その規模でいうと、ほとんど、さっき言った、行きたいところをサポートしてほしいという思いは実現されません。

 こうした実態について大臣はどう考え、どう善処していかれますか。簡単に聞くと、移動支援事業の地域間格差、そして、今度の法律では地方にゆだねられる部分が多くなります。しかし、先立つもの、それから体系、さっき言った、それが重いもの順よというと、当然いろいろな意思があるときに、それは酌み入れられなくなります。この問題も生じてまいります。

 まず、格差についてどう思うか、これを是正するために厚生労働省の大臣として何をなさるか、お伺いいたします。

長妻国務大臣 今おっしゃっていただいたように、移動支援には自立支援給付と地域生活支援事業がございますが、地域生活支援事業のお話だと思いますけれども、これについて、確かに地域間の格差というものがございます。

 これについて、国としても補助金、平成二十二年度は四百四十億円、予算措置をしておりますけれども、今、具体的な金額をお示しいただきましたけれども、今後、きょうお尋ねもございましたので、具体的にどういう格差があるのか、個別事例も含めて検証をしていって、それが一定の許容範囲を超えた格差となった場合はどういう対策が必要なのか、それについて検討してまいりたいと思います。

阿部委員 大臣の御発言はありがたいと思いますし、そのとおりだと思います。だからゆえに障害者団体は、その調査をしてから必要な施策に手を打ってくれ、立法化してくれというお声なのです。ここに生じた悲しいねじれだと私は思います。本当にそれは障害者から見てどうかということで、その視点で調査し、施策してくれという思いでありますから、今大臣の御答弁をいただきました。

 現状のさまざまな地域支援サービスがございます。例えば手話の問題、これも手話をやっていただく方を自治体がキープしておくには、とてもとてもその財力も、また人材も足りません。そうしたさまざまな問題がありますから、どこから手をつけるか、そのこと一つ考えるにも実態調査というのは不可欠ですから、ぜひ大臣にはそのことで頑張っていただきたいと思います。

 続いて、きょうのこの法案の中にもありますが、支給決定のプロセスについてということで、ここもまた障害者団体の方が強く懸念されているところです。

 介護保険などと違って、障害者自立支援法における支給決定においては、サービス利用計画というのは、支給が決定されてから、その後、利用計画が立ちます。今度これを、いろいろな方がもっとサービス利用計画を利用できるようにしよう、それはいいことだと思って立法府は出しているのですが、しかし、そうは受けとめられない。なぜかと申しますと、このサービス利用計画を、十分、当事者の側に立ってサポートする体制がどうなのかということであります。

 端的に伺えば、例えばソーシャルワーカーがきちんと配備されて、その方の、例えば病院から退院された、あるいはひとり暮らし、御家族がない状態、そしてその後の支援などで何をどう組み立てていくか。これは逆に、そういうきっちりしたサポーターがいないと、支給量の決定がサービス量を決める逆転現象が起きかねないということであります。

 人材をきちんと配置して、サービス利用計画が当事者のためになるような体制はどう担保されますか。山井政務官にお伺いいたします。

山井大臣政務官 今阿部委員が御指摘された、サービス利用計画と自己決定との関係というのは非常に重要であると思っております。

 現状のサービス利用計画は、障害のある方のニーズや意向などを踏まえて作成されておりますので、自己決定を尊重しているというふうに思っておりますが、しかし一方では、阿部委員もおっしゃるように、先に支給決定というものがあるので、自己決定がおろそかになっているのではないかという批判があることは私も承知をしております。

 そういう意味では、今阿部委員がおっしゃった、自己決定の支援ということをどうしっかりサポートしていくのか、そのことについては私たちも検討していきたいというふうに思っておりますし、総合福祉部会や推進会議の御意見もお聞きしていきたいと思っております。

阿部委員 福祉分野の人材不足は極めて深刻だと思います。虐待問題でもそうですし、障害のある方のこういう日々の生活の支援問題でもそうであります。このことは厚生労働省が大きくかじを切らねば、絶対に、障害者が望む、私たちのことを私たち抜きに決めないでということを担保することができませんので、ぜひよろしくお願い申し上げたいと思います。

 時間の制約で、あと、私の考えを述べさせていただきます。

 現在でも極めて地域格差が大きい中、今与党にあっては、地域主権といううたい文句のもとに、地域主権推進一括法というものが参議院で可決され、今度衆議院で審議入りを待つ状態です。

 しかし、これは、さっきの地域間格差というものがある限り、私は、特に福祉分野においては、本当に何をどうサポートしていけばそれが可能になるかということは極めて大きな問題であると思っています。そして、あわせて、今回の立法は、私は与党の一員として、あくまで時限立法として出させていただきました。それは、障害の方々が一方で一生懸命会議しているのに、私たちの出すものがそのこととそごを来してはいけないという点であります。

 園田さんに伺います。時限立法であることの意味をお教えください。

 これで終わりです。

園田(康)議員 ありがとうございます。

 今、時限立法とおっしゃっていただきました。まさしく長妻大臣がおっしゃっておられるように、そしてまた与党としてもお約束をさせていただいているように、この自立支援法は平成二十五年八月までに新たな総合福祉法にかわります。そして、自立支援法は廃止になります。

 したがって、それまでの間の障害者の当事者の方々の地域生活をしっかりと守っていく、支援をしていく、そういう法律であるということを最後に明示させていただきたいと存じます。

阿部委員 それが明記されない法案には反対をいたします。

 ありがとうございます。

鉢呂委員長 次に、菅原一秀君。

菅原委員 おはようございます。自民党の菅原一秀です。

 今、この場に立ちまして、この改正法案、ようやく審議が始まって方向性が見出せる、非常に遅きに失するとも言えましょうし、そしてまた大事なことだ、こう思っております。

 そもそも、この障害者自立支援法、まさに障害を持つ方々が施設から地域に出てともに共生をしていく、そしてまた可能な限り自立できるように支援をしていく、こういう理念、そしてそれをまたブレークダウンして具現化した法であったわけであります。

 ところが、施行後、現場そしてまた障害を持つ方々の声は、さまざまな論点、課題、問題点がありました。

 したがって、これを昨年の二月、私どもは、当時の与党のこの問題に関するPTのメンバーとして、田村さんや高木さんとともにこの見直しの基本方針を取りまとめをいたしまして、昨年の三月には、政府の提案として、利用者負担を応益から応能負担に、そしてまた障害児の支援の充実、こういった内容を盛り込んだいわば障害者自立支援法の改正案を提出したわけであります。ところが、通常国会において審議されないで、結局、解散になって廃案となってしまった。非常にじくじたる思いで今日まで来たわけであります。

 その一方で、民主党の方は、マニフェストにも、障害者福祉施策については、まず障害者自立支援法を廃止して新たな制度を創設する、このように銘打っているわけであります。しかしながら、新たな制度といいましても、施行後、この制度を全国の自治体、区市町村とともにいわば具現化し、また実効あらしめる中で、これをまたもとに戻す、あるいは抜本から変えてしまうということにおいては、なかなか時間がかかることでもあり、ましてや今後、難病患者を福祉サービスの対象とする、こういった論点も当然あろうかと思います。

 しかし、そうなると、非常に財源的な厳しさも増してくるわけでありまして、その意味においては、まずは現場で求められている声に対して早急に対策を講ずるということが一番大事なことだ、こう思っております。

 そこで、改めて自公の提案者に、この改正案を出した理由を簡単に、明確に述べていただきたいと思います。

田村(憲)議員 菅原委員の御質問にお答えをいたします。

 今委員おっしゃられましたとおり、この障害者自立支援法、十八年の四月に施行をしたわけでありますが、その後、関係者の皆様方からいろいろな御意見を賜りました。

 成立してすぐではございましたけれども、十月には特別対策、そして十九年の十二月には緊急対策等々で、利用者の方々の負担の軽減でありますとか事業者の方々の支援をしてきたわけでありますが、一方で、法附則の方で、三年後の見直し、検討規定がございます。そこで、昨年の二月に、自民、公明、当時与党でございましたけれども、プロジェクトチームを立ち上げまして、そして報告書をつくった上で改正案を提出したというわけでございます。

 中身的には、今もお話ございました。大きなところでいいますと、やはり、応益負担というようなことを大変おしかりをいただきました。上限等々はございましたけれども、これは、確かにおっしゃられるとおり、大変な誤解を招くし、基本的に、法文の中に能力に応じたという文言を入れて応能負担を明確化していこうということで、二十九条の三項に「家計の負担能力その他の事情をしん酌して」ということで、応能負担というものを明確に、哲学の転換を図ったところでございます。

 他にも、各現場からいろいろな多くの御意見をいただきまして、それを盛り込んだわけでございますが、今、総合福祉法、現与党の方で議論が始まっておるようでありますが、この再提出をする中において、我々自民党も、また公明党さんも、さらに各団体から御意見を聴取させていただきました。その中で、やはり総合福祉法、まだ先のことであるし、議論、これはまだスタートしたばかりである、どうなっていくかまだわからない中において、とにかく今この現状を少しでも改善してもらわなければ、あすからのそれぞれの御生活の方に不安があるということもございましたので、そういう意味で再度提出をさせていただいた。

 なお、三点にわたりまして、新たな部分もつけ加えさせていただきながら提出をさせていただいたというような趣旨でございます。

菅原委員 民主党案並びに自公案、ともに法文を読んでみますと、おおむね同じくする考えが見受けられます。

 ただ、その一方で、それぞれまた特色もあるやに感じているわけでありまして、そこで自公提案者に確認、お尋ねをしたいと思うんですが、今回、この法案の中に成年後見制度の利用支援事業を地域生活支援事業の中で、今までであれば任意の事業としてやってきたわけでありますが、これをきちっと必須の事業として行うべきである、こういう旨の条文がございます。このほか、これにかかわる、またその他、今回この法案に新たに追加したものに関して、明確にお示しをいただきたいと思います。

田村(憲)議員 三点ほど追加をさせていただきました。

 まず第一点は、今委員がおっしゃられました成年後見制度、これを地域生活支援事業の中に必須化しようという部分でございまして、もう御承知のとおり、成年後見制度は、障害者の方々の権利擁護でありますとか虐待の防止という意味で大変大きな役割があろうと思いますが、今まで任意事業でございましたので、各自治体の状況を見ますと、去年の四月の時点で四割にこの実施状況がとどまっております。そういう意味で、ニーズを考えたときに、これを必須事業化するということで、より多くの方々にこの成年後見制度を御利用いただきたい、こういう思いでこの点を盛り込ませていただきました。

 第二点は、児童デイサービス事業についてでありますけれども、現在は十八歳未満となっております、満十八歳になるまで。そうなりますと、特別支援学校の高等部三年生、途中で、十八歳になられますと、この児童デイサービスが受けられなくなってしまうという問題が起こっております。そこで、これを二十歳に到達するまでというふうに書きかえさせていただいております。

 三点目は、その有する能力及び適性に応じてという文言が使われておるんです。例えば、この第一条の中に「障害者及び障害児がその有する能力及び適性に応じ、自立した日常生活又は社会生活を営むことができるよう、必要な障害福祉サービスに係る給付その他の支援を行い、」というふうに書いてありますが、この文言がございますと、能力及び適性に応じた自立に向けたサービス量しか支給されないようにやはり読めるという御指摘をいただきましたので、この文言を削除させていただきました。

 以上三点でございます。

菅原委員 非常に大事なポイントでありまして、この障害者自立支援法、いわば机上の議論であっては当然だめだ。また、私どもも現場に赴き、実態を把握し、また団体の皆様、障害を持つ方々からその声を真摯に受けとめて、それを法律にちりばめていく、これが国会の役割であろうと思っております。

 その今の御指摘を踏まえれば、今後この方向性が、一定方向が出されたとしても、実態に合わせて常にチェックというものが大事ではないか、こう思っております。

 さて、障害程度区分ということが論点としてございました。これは、自公案においては、障害支援区分に改めて、そしてまた障害程度区分の見直しということで銘打ってございます。

 御案内のとおり、ずばりこの障害程度区分というのは、いわゆる介護保険の要介護認定、これをもとに制度設計されたという背景があると思います。しかしながら、身体であればそれなりの明確化ができる、しかし一方で、知的ですとか精神ですとか、例えば調子のいいときとそうではないときがあるわけですから、一律に程度区分を設けることによって、結果的に本当に適切なサービスが受けられない、こういう解析といいましょうか、これまでの足跡があると思います。

 したがって、私どもは、当然これは見直しをしなければいけないという議論を踏まえてきたわけですけれども、政府側にお尋ねをしたいのは、この点、現状でどう対応されるのか、お示しをいただきたいと思います。

山井大臣政務官 菅原委員にお答え申し上げます。

 まさに菅原委員御指摘のように、障害程度区分というのは、残念ながらこの自立支援法、当初からの大きな問題点と言われておりまして、介護保険をモデルにしたことによって、知的、精神の方々に対しては非常に軽く出てしまう。そのために、ここ数年、そういう問題点をどう減らせるかという努力をしてきたわけではありますけれども、まだまだ十分な点には至っておりません。

 このことに関しては、これからも制度改革推進本部や総合福祉部会の大きな論点となっていくと思いますので、将来的には当然これを改正していきたい、変えていきたいというふうに考えております。

菅原委員 政府側もそういうような御答弁でございますので、ぜひともお進めをいただきたい。

 また、共通項のもう一つに、障害者がグループホームやケアホームに入居する際の家賃を補助する仕組み、これを設けているわけでございます。この点、どのような制度を導入するのか、そしてまた、その補助の水準についてお考えがあれば教えてください。

田村(憲)議員 このグループホーム、ケアホームの問題は、実は、自立支援法をつくる当初からかなり議論をしてきたところであります。

 現行法ですと、低所得の施設入所者の方々は、手元に実費負担部分を除いて二万五千円残るようになっておりますが、グループホーム、ケアホームの方はそのような規定がございませんので、これはそのままお支払いをいただいておるということであります。

 しかし、現行はそうであるのですが、地域支援ということを考えた場合に、このグループホーム、ケアホームの役割、これは大変重要なものがありますから、そこに移っていただくためには、この実費負担部分をどうするのかというところをクリアしないとなかなか進んでいかないであろうということも考えまして、例えば、実費に係る部分に関して何か補足給付ができないかということで、法文の中に入れさせていただきました。

 実際問題どれぐらいかということは、家賃の額、こういうものを政府で検討いただいて調査をしていただいて、必要なものを給付するという形にしてまいりたい、このように思っております。

菅原委員 最後にお尋ねをしたいと思います。

 障害者の皆さんの実際の声として、移動にかかわる支援をぜひ拡充してほしい、さまざまなお声をいただいているわけであります。

 今回のこの法案にも、重度視覚障害者に対する移動支援については、同行援護ということで、個別給付とされております。大変このことは重要でありまして、移動支援ということで見ますと、民主党案の方にはその検討規定が設けられているんですが、自公案の方にはこれがないんですね。あれだけさんざん議論をしたわけでありますから、ぜひこの障害者の移動支援についても盛り込むべきだ、こう思うんですが、この点を田村さんに確認したいと思います。

田村(憲)議員 重度の知的障害のある方々や重度の肢体不自由の方々に関しましては、現行法の中で自立支援給付の中に入れてあるわけでありますが、今回、今言われましたとおり、同行援護という形で、重度の視覚障害者の方々に関して、これを給付対象にしようということを盛り込ませていただきました。

 一方、地域生活支援事業の中で今やられております移動支援に関しまして、もっと幅広く検討すべきではないかというのは、我々も議論をしてまいりました。

 今回の法案には種々の理由で我々は入れていないんですが、ただ、与党提出の附則の中でこれを入れていただいたというのは大変大きな意味があると我々は思っております。実現するためには非常に大きな壁がございます、正直言いまして。これは、財源的な問題も含めて大きな壁があろうと思います。これを与党の中に入れていただいた、これは我々も全面的に賛同する部分でございまして、協力してこういうことが実現できるように努力をしてまいりたいというふうに思っております。

菅原委員 これで終わりにしますが、大変重要なことでありますので、ぜひお進めをいただきたい。同時に、この自立支援法の改正と同時に、やはり今回俎上に上がったけれども先送りされてしまいましたハート購入法並びに障害者の虐待防止法、これに関して、早急に俎上に上げていただいて、しっかりと議論を進めていただきたい、このことを最後に申し上げて、終わります。

鉢呂委員長 次に、高木美智代さん。

高木(美)委員 公明党の高木美智代でございます。

 私は、公明党障害者福祉委員会委員長を務めております。また、先ほどお話ありました、自民、公明、当時与党PTの副座長を務め、この障害者自立支援法の改正に取り組んでまいりました。本日、どうあれ、障害者自立支援法の改正案、自公案そして与党案が審議の運びとなり、懸命に取り組んできたこの四年間を思い起こしますと、私は、きょうは一歩前進をする大事な日である、まさかここまで来るとは思わなかったというのが実感でございます。御尽力くださった方々に感謝を申し上げたいと思います。

 昨年九月、長妻大臣は、遅くとも平成二十五年八月までに、障害者自立支援法を廃止し、障害者総合福祉法を実施するとおっしゃったわけでございます。それでは、今現に障害者の方々の地域生活が困難を来していらっしゃるその現状を三年間も放置することとなってしまう、この危機感を恐らく共有していただき、政府提出の閣法を今回、議員立法として引き取りまして、自公案を提出いたしました。そしてまた、与党案も提出されましたことを私は感謝申し上げる次第でございます。

 我が党の埼玉県本部では、障害者自立支援法の総点検運動を実は行いまして、昨日、その結果の発表が行われました。やはり自立支援法を、あってよかったという人が半分、また、改善してほしいという方がさらに半分、改善する余地が多くあるという内容でございます。そうした現場の状況。

 そしてまたさらに、昨日、私は、日本身体障害者団体連合会の緊急要望をいただきました。緊急的な対応として、障害者自立支援法の一部改正を実現し、障害者が地域で安心して生活できる環境が一歩でも進むことを切に要望いたします、このようにございます。私は、一歩でも進むことを切に要望いたします、この気持ちを多くの方が共有され、本日に至ったと承知をしております。この上は、速やかな成立を心から願うものでございます。

 本日は、私は提案者でもあり、若干自問自答のような形になりますが、この場をおかりいたしまして、またこの自立支援法の詳細をまだ御承知ない議員の方がもしいらっしゃったらと思いまして、私どもの考え方、そしてまたこれまでの取り組みにつきまして少し述べさせていただき、大臣に一、二点、質問をさせていただければと思っております。

 この障害者自立支援法、障害者が地域で普通に暮らすことや、自立と共生の社会づくりを目指して、知的、身体そして精神、この三障害の一元化、また選択可能なサービスの提供など、障害者の方にとりましてメリットももたらしました。しかし、その一方で、利用者負担の問題など、多くの課題が残っております。国や地方の財政負担が義務化したということは、あの破綻した支援費の中から大きな方向転換であったと思いますが、原則一割負担が導入をされてしまった。

 こうした大幅な制度変更、そしてまた残った課題に対しまして、我が党は、当事者団体の意見を適切に反映してほしい、このことを強く要望しながら、障害者団体と意見交換を重ね、サービス利用の応益負担の導入や公費負担医療制度の利用者負担の見直しに当たっては、低所得者に対する十分な配慮ということを強く求めてまいりました。毎日のように多くの障害者団体の方たちから広く御意見をお聞きしながら検討を行い、政府・与党に働きかけ、障害者自立支援対策臨時特例交付金を確保しまして、基金を積み、今日まで財政措置を講じてきたわけでございます。

 その第一回目は、十八年四月一部施行後の八月十五日でした。冬柴幹事長、浜四津代表代行を初め、緊急要望を大臣に対して行いまして、これを受けて、十八年度補正予算によりまして九百六十億を確保し、利用者負担の軽減、また事業者への激変緩和措置などを実施しました。また、平成二十年、緊急措置といたしまして六百五十億円、翌年二十一年、千四百二十五億円と連続してこうした対策を講じ、利用者負担のさらなる軽減、また障害児世帯の負担軽減、事業者への激変緩和措置を実施してまいりました。この二十一年のときは、介護分野と歩調を合わせて、職員の処遇改善に取り組む障害福祉事業者に助成を実施したわけでございます。

 あわせて、利用者負担の軽減につきましては、当事者の方たちからの御意見と要望を踏まえまして、たび重なる上限額の引き下げを行ってまいりました。そして、措置を受けるための要件も改善をしてまいりました。

 このようなことをさせていただいたことを簡潔に御報告いたしますが、二十年七月、所得認定が世帯単位であったのを、本人及び配偶者のみの所得で判断するという個人単位に変えました。また、二十一年四月、障害福祉サービスの報酬改定では、平均五・一%引き上げ、また自立支援医療の負担も軽減。また、七月、これまでの資産要件を撤廃いたしました。

 さらに、我が党の北海道の議員から要請がありまして、札幌市長からのヒアリングをもとに、入所施設利用者が心身障害者扶養共済給付金を受け取る際に、収入認定から除外すべきだ、手元金二万五千円に加算すべきだ、このように主張いたしまして、改善をいたしました。また、十月、身体障害者もグループホーム、ケアホームを利用できるように拡充。

 また、昨年の四月ですが、町田市の障害者からの要請を受けまして、精神通院医療申請の際に、診断書の提出を毎年から二年に一回に改善をいたしました。また、御自身が、お母様ですが、重度の障害を持ち、子育てが困難な方たちからの陳情を受けまして、在宅介護サービスに子育て支援のメニューを追加し、重度の障害があられてもしっかりと子育てができるという環境もつくらせていただきました。

 このようなきめ細かな対応を行い、実現したわけでございますが、まだまだそれでも課題は多く、当事者の方から、まだ御意見を伺っていないとさまざまおしかりを今いただいているわけでもございますが、ただいま大臣からもお話ありましたように、制度改革推進会議で今検討をされているところでもあり、一歩、ともかくその準備のために階段を上がるという、そんな決意でおります。

 現在、昨年一月ですが、利用者負担も平均一割から二%になったとも伺っております。また、ことしの四月、長妻大臣、山井政務官の御努力でしょう、低所得の方につきまして、障害福祉サービスと補装具の利用者負担を無料化、百七億円を確保というお話も伺いまして、ただ、私、四百億とおっしゃっていたのが百七億、やっぱり財源を確保するのが本当に大変なんだなということを改めて痛感をした次第でございます。

 一方で、平成十九年ですが、新たな連立政権合意に、公明党の主張によりまして、抜本的な見直しを検討するとともに、障害者福祉の基盤整備の充実を図る、このように盛り込まれたことによりまして、与党PTが平成十九年十月に設置となり、我が党は原案を提示し、十二月に報告書、また二十一年二月、基本方針をまとめたわけでございます。

 当然、介護との整合性が考慮された当初の仕組みを解消いたしまして、障害者の方たちが、社会参加、そしてまたそれぞれの能力が発揮できる、さらには就労支援、こうした流れを障害者福祉の原点に立ち返って見直しを行ったものでございまして、その中には我が党の多くが盛り込まれております。

 この基本方針、詳細にきょうは読み上げさせていただきたいところでございますが、時間の関係もございますので割愛をさせていただきます。この内容に盛り込まれましたさまざまな課題と認識をしている部分、そしてまた今後、これは与野党問わず検討を進めなければいけない部分、また当事者の方からさらにお声を伺わなければいけない部分、数多くございますもので、ぜひとも目を通していただきたいと思います。

 私は、今後の課題は、やはり障害者の方にとりまして所得保障をどのようにしていくかということが、地域で普通に暮らすといいましても、大きな課題であろうかと思います。障害年金の引き上げも我が党は提案をさせていただき、坂口副代表を中心に今法案化に向けて準備をしております。しかしながら、この年金につきましても、無年金の方、いかに支給要件の緩和に努力をいたしましても、どうしても制度の谷間に落ちる方を救済するという抜本的なことはできません。

 また、例えば発達障害の方など、軽度の発達障害の場合、またその他の障害の場合、就労できない、その間の所得が得られない、こういう方たちが年金では救済できないという状況があります。私は、当然、年金の引き上げ、そしてまたさまざまな住宅手当制度、グループホーム、ケアホーム、これは今回盛り込んでいただきましたが、さらに福祉ホーム等を加えまして、こうした住宅手当の拡充。

 さらには、私は、年金というよりも障害者の手当制度として第二のセーフティーネットを創設すべきではないかという必要性を痛感しております。就労ができた場合、ある程度の所得があればその手当を受け取る必要はない。しかし、一たん解雇されたり、今もさまざまな経済的な事情で苦しんでいらっしゃる方が多くいらっしゃる。そうなった場合、手当を受けてその間何とか生活をし、そしてまた次に希望を持つことができる、このような制度をつくらなければならないと思っております。まず、年金の加算、そして無年金者の残る二類型の救済、これを急ぐための法案を今つくりました。提出をしてまいりたいと思っております。

 しかし、こうした流れも、財源措置も、税制を含む社会保障制度一体改革の際に障害者の方たちがそこに取り残されませんように、私どもは、しっかりとアピールをしながら、また法案化等々で説明をさせていただきながら、また何よりも国民の皆様に広い合意をいただきながら進めていかなければならないと思っております。

 最後に、大臣に質問をさせていただきます。ただいまのような、このような取り組みの内容、そしてまた、これから大臣が課題であると思っていらっしゃる点、答弁を求めたいと思います。

長妻国務大臣 一つの原点は、ことしの一月七日の「障害者自立支援法違憲訴訟原告団・弁護団と国(厚生労働省)との基本合意文書」というのを私も持っておりますけれども、そこに書いてあることをきちっと実行していく。その前提として、やはり当事者の御意見をきちっと聞いていくということも含めて、ここに書いてあることを我々政府として一つ一つ履行するということに尽きるのではないかというふうに考えておりますので、今後とも御指導賜りますようよろしくお願いします。

高木(美)委員 与党PTが立ち上がってから、こうした改正案が今日に至るまでに約二年半かかっております。そのことを考えますと、この制度改革推進会議、今十分な精力的な御議論をされていらっしゃる、心から敬意を表します。

 しかしながら、拙速な議論は私はやめていただきたい。やはり次に大きな変更をするときは、これでいくのだ、このような形がきちっと提示できますように、そしてまた、決まってすぐ、さあ施行、こういう自立支援法の二の舞を踏まなくて済みますように、十分な周知徹底期間を経て、あなたの場合はこのようになります、行政はこのように動きます、市町村の役割はこう、都道府県の役割はこう、国はこうする、こうしたことが総合的に提示をされ、国民にもわかりやすく説明されますように、時間をかけて丁寧に行っていただきますことを要望させていただきます。

 あと一分ございますので、これは大臣にお願いでございますが、重度心身障害児につきまして、たび重なる陳情を受けております。

 実は、最近、妊婦のたらい回し出産防止のために、NICUをできるだけ早くに退院させるという動きがあります。それにつきまして、在宅に移るわけですが、障害児の在宅医療、介護の基盤整備がおくれているという状況があります。大変困っていらっしゃる。医療も必要、また介護も必要、訪問入浴もしてほしい、お母様たちでは手に負えない、レスパイトもある、そういう中で支援体制の整備が急務でございます。自治体によりましてはやっているところもありますが、三年で切られてしまうという声もあります。この中に、例えば、重度訪問介護サービスにつきましては児童も使えるように検討していただけないか、このような要望もありました。

 ぜひとも、今在宅で重度の障害児の方たちを介護していらっしゃる、看護していらっしゃる、その支援体制を早急に整備していただきたいということを大臣に要望申し上げたいと思います。

 もし御答弁いただけるようでしたら、お願いいたします。

長妻国務大臣 私も重度の障害者施設へお邪魔いたしましたけれども、やはり今おっしゃっていただいたように、在宅の支援ということで、例えば通園事業は今補助事業なんですけれども、これを何とか法定事業とならないかという声も数多く聞いております。

 今回の改正法案ではそれが盛り込まれているということを承知しておりますので、いずれにしましても、それだけではなくて、十八歳未満と十八歳以上と、障害者の方に対する法律が違うというようなことで、お医者様がかわってしまったりというお悩みも聞いておりますので、そういうことも含めて、我々としてこういう御心配がないように取り組んでいきたいというふうに考えております。

高木(美)委員 今の件は、再度また質問をさせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

鉢呂委員長 次に、高橋千鶴子さん。

高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 時間がありませんので、早速、自民党の提出者に最初に伺います。

 自民、公明の改正案は、与党時代に出された法案と基本的に同じものだと思います、若干の追加があるのは承知をしておりますが。自民党さんの立場は、障害者自立支援法をいずれ廃止するという立場でしょうか。それとも、制度の枠組みは残して修正を図る立場ですか。

田村(憲)議員 自立支援法の経緯は先ほどお話をさせていただいたとおりでございます。先生、時間もないと思いますので、端的にお答えいたします。

 我々は、これからの、今与党・政府が考えておられます総合福祉法がどういうものになるかよくわかりませんが、少なくとも福祉サービスをどのような形で提供していくか、就労サービスも含めてでありますが、そういうものに関して、今の自立支援法という枠組みを廃止するという意味でこれを出したわけではございませんで、足らざる部分をしっかりと直しながら、障害者の皆様方の御意見をいただきながら、これを改正の中でよりよいものにしていこう、そういう方針でございます。

高橋(千)委員 まず、確認ができました。

 自民、公明の案は、自立支援法の枠組みを廃止するものではないということであります。

 与党は、自立支援法を廃止し、この一月、自立支援法違憲訴訟原告団と和解し、基本合意を結んだ。廃止しというか、廃止を公約し、基本合意を結んだと思います。制度改革会議が立ち上がり、精力的な検討を重ねているところでありますが、二〇一三年八月までに廃止するという立場を変えたのですか。大臣に伺います。

長妻国務大臣 先ほども、この一つの原点が、原告団、弁護団との基本合意文書というのを国として責任を持って交わしたわけでございまして、そこにも、「国は、速やかに応益負担制度を廃止し、遅くとも平成二十五年八月までに、障害者自立支援法を廃止し新たな総合的な福祉法制を実施する。」こういうことが明記されているところであります。

 事実、実際今、障がい者制度改革推進会議やその下の総合福祉部会で当事者の御意見も聞きながらその作業を進めているということで、方針は変わっておりません。

高橋(千)委員 自民党さんは、枠組みは維持なんだと、そして与党は、廃止という立場は変わっていないんだとおっしゃっているんです。

 そうすると、それを一本化するというのはどういうことになるのかということなんです。つなぎだからとおっしゃるかもしれません。しかし、では、施行日が二〇一二年四月というのはなぜですか。つなぎといいながら、二年も待たなければならない。おかしくはありませんか。民主党の提出者に伺います。

園田(康)議員 今回提出をさせていただいている法案をもう一度よくごらんいただきたいと存じます。三つの法施行日となっております。すなわち、この法律改正案が施行される日は、まず法律の公布日が一点、それから公布日から起算して一年六カ月以内、これが二つ目、三つ目に二十四年四月一日というのが出てまいります。

 この二十四年四月一日というのは、先ほど公明党の高木委員からも御発言があったように、自立支援法の制定過程の中で、いわば法律が制定されてから施行されるまで、かなりの短い期間でやってしまったというところが一つの反省材料ではないかなというふうに私は考えておりました。したがって、きちっと制度を制定され、周知し、そして実施に至るまでの間というのは、その周知期間というものをしっかりと置いていかなければいけないのではないかというふうに考えているところでございます。

 御指摘の二十四年四月一日というのは、先ほど阿部委員からも御指摘があった、支給決定プロセスの見直しのところの部分あるいは障害児の支援の部分でございまして、これは、市町村の方々に今後の政省令をもって周知していき、そして制度を整えていかなければいけないとなると、混乱を来してはならないという意味で、幾つかに施行日が分かれているということでございます。

 なお、発達障害の障害の範囲については、公布日からすぐ施行されるものだというふうに考えています。

高橋(千)委員 つなぎの法案を周知するためにまた一定の時間がかかるのだと。新しい法案をつくるために今改革会議が検討していて、当然その周知の期間などがかかりますね。そういうことが二重三重に重なってくる、一体これはどういうことになるのかということがあるわけです。

 民主党さんの案には「廃止」という言葉がございます。「廃止を含め」という表現でありますけれども。それから、先ほど阿部委員の質問に対してお答えになっていたように、二〇一三年八月の廃止までの期限、時限立法であるという説明がございました。では、これから出てこようとしている、自民党さんの提案と一緒にしたいという一本化案には、その時限立法は含まれません。どうしてですか。

園田(康)議員 委員御指摘の、一本化と言われるものは、恐らく合意がなされた後の、委員長から提出される合意案であろうというふうに思っておりますけれども、ここにおいては、先ほど御指摘いただいたように、私どもは、平成二十五年八月までの間において、制度改革推進本部等の議論を踏まえて、そしてきっちりと新しい総合福祉法をつくっていく、この方針を明確にお示しさせていただいている法律案でございます。

 一方、野党案、自公から提出されている法案は、従前の自立支援法の改正という位置づけの中で、幾つかの追加項目があるというふうに承知をさせていただいているところでございます。

 したがって、今私どもは、与野党の真摯な検討とそして議論を重ねさせていただきまして、私どもから申し上げたのは、やはり当事者の方々が議論をしていただいている、そしてその推進会議と総合福祉部会等の会議を踏まえずに新しい法制度をつくるというのは、絶対にこれはまかりならぬということを申し上げさせていただいているところでございます。

 先ほど高木委員からも、推進会議等でしっかりと議論を踏まえていただいているという御発言がございましたけれども、これは、広く国会内においても、野党の皆さん方もようやく御理解をいただいてくるような形になってきたというふうに思っておりますので、そういった点では、私は、方向性は与野党一致できるものではないかというふうに考えております。

高橋(千)委員 よくわからないんですね。

 だとしたら、こうした機会を何度も重ねて、検討会議の議論を我々が報告を受けたりとか、あるいは当事者の声を聞いたりして、我々が今できることは何なのか、急ぐべきことは何なのかということをやるべきではないか。結論ありきではやはりおかしいのではないかと思うんですね。

 皆さんのお部屋にも、先ほど紹介があった、ことしの一月の基本合意を結んだ自立支援法違憲訴訟原告団の皆さんを初め、全国の団体の皆さんから強い抗議声明が寄せられていると思います。私がここに来るまでの間に数えただけでも、三百七十通以上のファクスが来ています。

 私は、両党とも、両党ともというか、提案者の皆さん、多分よかれと思って提案されたとは理解できますし、内容自体が、少なくとも改悪ではない、改良されている部分があります。では、それでも反対の声が強いのはなぜだと思いますか。

園田(康)議員 ありがとうございます。

 御指摘の違憲訴訟団の方々からの緊急抗議声明というものが出されているではないかということですけれども、昨日、私もその原告団の一部の方ではありましたけれども、お目にかからせていただきました。私からも真摯に御報告をさせていただいた後に、御意見をちょうだいいたしました。

 その中身につきましては、自立支援法を廃止して、平成二十五年八月までに、制度の谷間をつくらない新しい法律を当事者の意見を十分に聞いてつくるとした国及び与党の姿勢に真っ向から反するものではないかという御指摘もいただいておりましたし、また、内容面においても、改正法案は私たちが願う改正とはほど遠く、基本合意文書の水準を大きく下回るものであるという御意見もいただきました。

 昨日のお話の中で、一つちょっと私、誤解をされていらっしゃったなというふうに、これは私どもの説明不足があったというふうに反省をさせていただいておりますけれども、例えば、自立支援医療の部分も、今般の見直しの中で応能負担化をさせていただいております。平成二十二年度の予算の中においては、低所得者一、二の方々には福祉サービスと補装具だけの無料化をした、残るは自立支援医療の部分ではないかということは、私どもも宿題として、喫緊の課題だということで、基本合意文書の中にももちろん入っておりました。

 したがって、今般のこの見直しの中において、二十九条三項だけではなくて、五十八条においてもきちっと、自立支援医療の部分、ここも応能負担化の条文はしっかりと入れさせていただいて、さらに私ども、立法府の立場で今後政府にこの働きかけを、求めていくということは大変重要なことではないかなというふうに思っておるところでございます。

 いずれにいたしましても、地域で生活する障害者児の方々の生活をしっかりと支援していく、一歩でも前に進めていきたいというところを、今後、当事者の方々にも、私どもの与党、あるいは与野党を超えて、立法府としての責任としてお伝えをしていくことが大変重要なことであろうというふうに思います。

高橋(千)委員 済みません、この通告、自民党さんにもしていたんですが、時間の関係で省略をいたします。

 今、園田委員から、原告団の皆さんにもお会いしましたと。そして、抗議されている中心部分についてお話をされたと思うんです。それは、多くの皆さんがやはり受けとめてくださっているはずなんですね。なのに、なぜこういう進行なのかと。やはり中身ではないんだということをわかってもらわなければならないわけです。

 今、医療の問題を御説明されました。医療の問題が解決すればそれでいいということではありません。確かに、説明の中には医療も同様の措置とするというふうに書いてございます。でも、例えば自民党さんが出した案の中には、「利用者負担の規定の見直し」ということで、「累次の対策により、負担上限額は大幅に引き下げられており、実質的に負担能力に応じた負担になっているが、法律上は一割負担が原則となっている。」つまり、実質的に負担能力に応じた負担になっている、現行このように評価をされております、自民党さんの説明ペーパーで。しかし、これと同じことを、鳩山総理も我が党の志位委員長の代表質問に対して答えております。現状が実質的に負担能力に応じた負担であると。

 ですから、今回、法律に応能負担と明記するということは、応益負担を撤回するとイコールですか。

園田(康)議員 当然ながら、旧政権下の方々は少し耳の痛い話かもしれませんけれども、応益負担というものは、これでまず撤回をされるというふうに私は思っております。そして、これから、旧政権下の方々もいろいろ反省をしながら、特別対策であるとか緊急措置であるとか、いろいろ策を講じていらっしゃった。この努力というのを私も当然認めさせていただいているところでございますし、大変ありがたい形をやっていただいた。

 まだまだ、今回のこの法案のあり方でも実は不十分であるというふうに私は思っております。したがって、応能負担というもののあり方を含めて、まさしく今、推進会議並びに総合福祉部会というところで当事者の方々に御議論をいただいて、そして、先ほど来お約束をさせていただいているように、平成二十五年八月までに新しい総合福祉法ができていくんだというこの流れというのは、幅広く合意をしていただけるものではないかというふうに思っております。

高橋(千)委員 一言、自民党さんにも確認してよろしいですか。

田村(憲)議員 一言で申し上げれば、応能負担にこれでなる。明確にここに応能負担と書いたということでございます。(高橋(千)委員「応益負担の撤回ですか」と呼ぶ)今まで応益負担であったかどうか。これは、なかなか言葉、明確に難しいですが、応益負担であるというような誤解といいますか、そういうふうに思われた部分があったというのは事実であろうと思います。

高橋(千)委員 やはり、ここに見解の相違があったのではないか。応益負担の撤回とは、やはり自民党さんはおっしゃらなかった。ですから、そこで一本化するということは、まだそこまではたどり着いていないということであります。それから、総合福祉法、仮称ですから、これから新しい法律が目指しているものはそれだけではないということは、もう御存じだと思います。

 最後にお話をしたいと思いますけれども、私が先ほど来、なぜ抗議がこんなにも来ているのかということの中身、それはもう皆さんが一番よく御存じのことだと思うんですね。私たちのことを私たち抜きに決めないでと。そのスローガンがまさに踏みにじられている、基本合意が踏みにじられているということに怒っているわけであります。

 元原告の方から寄せられている手紙を一部だけ御紹介したいと思います。

 今国会に提案されるとの報道に接し、憤りで胸がつぶれそうです。

  一月七日に国と私たちが合意した基本合意文書は、歴史的な内容をかち取ることができたと思っています。

  障害福祉は基本的人権の行使を支援するものと明言したことは特筆すべきことであり、福祉行政はすべての国民の基本的人権の行使を支援するものへとつながっていく一歩をかち取ることができたと運動の成果を誇りに思いながら、これからが本番だと思ってきたところです。

  しかし、合意文書を一緒に練り上げてきた与党の今回の動きはどういうことなのでしょうか。これまでの反省を踏まえ、二度と同じ過ちをしないと、そして、新たな法律を当事者、関係者一緒につくっていくと、残された緊急課題もあると、それらを基本合意文書で確認したことをいとも簡単にほごにしようとする今回の動きは、到底承服できるものではありません。

 埼玉の元原告のお母さんから寄せられています。

  私どもは、自立支援法が廃止されて、権利条約をも見据えた、真に障害者も安心して暮らせる法律ができることを願って、寒い日も大雨の日も、車いすを押して地裁に通いました。

  そして、一月七日締結された基本合意文を信じて、制度改革推進会議や総合福祉部会に大いなる期待を持って、傍聴にせっせと通っております。

  ところが、国民が沖縄の基地に気をとられている間に、私どもが推進会議を見守っている間に、他方で、訴訟団との基本合意や推進会議、部会を無視したこのようなやり方には、不安を通り越して、失望と怒りの気持ちを禁じ得ません。

 こうした怒りの声が多数寄せられている。それはもう皆さんも御存じだと思うのです。この原則をどうして踏み外すのでしょうか。

 昨年の一〇・三〇の大フォーラムを私は忘れることができません。長妻大臣が、大臣として初めて出席をされました。そして、原告の皆さんを初め、全国から集まった障害者運動の皆さんに謝罪をして、新しい法律を皆さんと一緒につくると約束をしたわけです。隣で山井政務官が、肩を震わせて泣いていました。私も、本当に一緒に感動して、本当によかったと思いました。そういう気持ちを踏みにじることにならないのか、当事者を抜きにした議論をやめるべきではないか、重ねて伺います。いかがですか。

園田(康)議員 御指摘ありがとうございます。

 私どもの考え方の中で、先ほど来真摯にお話をさせていただいております。高橋委員がおっしゃるように、自立支援法の制定過程の中で、私も二つのことを学ばせていただきました。

 それはやはり、当事者抜きで法制度改正といいますか、そういったことをやるべきではないということ。それから、法律が施行されてから、その周知期間、混乱をつくらないために、きっちりとした準備期間を置きながら皆さん方と御一緒につくっていく、そういう姿勢というものは必ず守っていかなければいけない。

 私は、今でもその気持ちは変わっておりませんし、先ほど来お話をさせていただいているように、平成二十五年八月まで、新しい総合福祉法ができていくそのプロセスをきっちりと、今でも制度改革推進本部、そして会議、そして部会という形の中で議論をしていただいているわけであります。そして、その方向性をしっかりと、私ども与党も、あるいは国会として、立法府として踏まえながら今後も進んでいくというところを今回の法律で明確にさせていただいている。このことは、高橋委員も御理解をいただけるものだというふうに私も思っております。

 ぜひ、御理解をいただいた後に、私も、足らず前のところはもっともっと当事者の皆さん方や、あるいはさまざまな関係者の方々にもお話をさせていただいて、しっかりと同じ道を歩んでまいりたいというふうに思っております。

 どうぞよろしくお願いを申し上げて、私からの答弁とさせていただきます。

鉢呂委員長 高橋委員に申し上げます。

 申し合わせの時間が来ております。

高橋(千)委員 終わります。

    ―――――――――――――

鉢呂委員長 この際、お諮りいたします。

 田村憲久君外四名提出、障害者自立支援法等の一部を改正する法律案及び園田康博君外六名提出、障害者自立支援法の廃止を含め障害保健福祉施策を見直すまでの間において障害者等の地域生活を支援するための関係法律の整備に関する法律案につきまして、それぞれ提出者全員より撤回の申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

鉢呂委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

     ――――◇―――――

鉢呂委員長 厚生労働関係の基本施策に関する件について調査を進めます。

 障がい者制度改革推進本部等における検討を踏まえて障害保健福祉施策を見直すまでの間において障害者等の地域生活を支援するための関係法律の整備に関する法律案起草の件について議事を進めます。

 本件につきましては、先般来理事会等において御協議願っておりましたが、お手元に配付いたしておりますとおりの起草案を得た次第であります。

 その起草案の趣旨及び内容について、委員長から御説明申し上げます。

 本案は、障がい者制度改革推進本部等における検討を踏まえて障害保健福祉施策を見直すまでの間において、障害者及び障害児の地域生活を支援するため、関係法律の整備について定めようとするもので、その主な内容は次のとおりであります。

 第一に、障害福祉サービス等を利用した場合の負担について、利用者の家計の負担能力に応じたものとし、障害福祉サービス等に要する費用から利用者の家計の負担能力に応じて定める額を控除した額を給付することを原則とすること。

 第二に、発達障害者が障害者に含まれることを明示すること。

 第三に、相談支援体制を強化するため、地域における相談支援の中核的な役割を担う基幹相談支援センターを市町村に設置できることとするほか、成年後見制度利用支援事業を市町村の地域生活支援事業の必須事業とすること。

 第四に、現在障害種別に分かれている障害児の施設について、障害種別を超えた利用ができるよう一元化するとともに、通所による支援の実施主体を市町村とすること。また、児童デイサービスについて、二十歳に達するまで利用できるよう、特例を設けること。

 第五に、グループホーム、ケアホームの利用に伴い必要となる費用の助成制度を創設すること。

 第六に、政府は、障害保健福祉施策を見直すに当たって、難病の者等に対する支援及び障害者等に対する移動支援のあり方について必要な検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとすること。

 なお、この法律は、一部を除き、平成二十四年四月一日から施行することとしております。

 以上が、本起草案の趣旨及び内容であります。

    ―――――――――――――

 障がい者制度改革推進本部等における検討を踏まえて障害保健福祉施策を見直すまでの間において障害者等の地域生活を支援するための関係法律の整備に関する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

鉢呂委員長 本件について発言を求められておりますので、これを許します。高橋千鶴子さん。

高橋(千)委員 私は、日本共産党を代表し、ただいま議題となりました障害者自立支援法の一部改正案について反対の意見表明を行います。

 ことし一月七日、政府は、障害のある当事者が社会の対等な一員として安心して暮らすことのできるものとするために最善を尽くすことを約束し、障害者自立支援法違憲訴訟原告団、弁護団と歴史的な基本合意を結びました。これに基づき、障がい者制度改革推進会議が設置され、当事者参加のもとで、二〇一三年八月の障害者自立支援法廃止とその後の新法成立へ向けて精力的な協議が始まっており、国連障害者の権利条約にふさわしい総合的な新法が期待されているところです。

 しかし、今、和解を心から喜んだ原告らが、あの謝罪と約束は何だったのかと怒りの声を上げているのです。

 反対の最大の理由は、基本合意を踏みにじり、当事者参加の原則、改革会議の協議を飛び越えて国会が決めてしまうというやり方に対してです。

 この間、委員会が長く不正常な状態が続いていたにもかかわらず、本法案に限って与野党合意が成り立った背景には、選挙を前にした党内事情や、この後に控えている労働者派遣法の強行採決への環境整備という与党の思惑もあり、障害者の問題が政争の具にされているのではないか。強い怒りを表明するものです。

 なぜ今、改正案なのですか。旧与党時代に自民、公明が提出した改正案は、一定の改良ではあるとしても、自立支援法の枠組みは維持するための法案です。廃止を掲げた与党が、なぜその自民、公明案と一本化を図ることができるのか、理解できません。

 障害者自立支援法三年後の見直しとしてつくった旧与党案と、廃止までの部分修正である与党案が本来合体できるはずがないのです。互いに一本化を優先する余り、廃止を前提としていることがあいまいにされ、時限立法であることすら明記することができませんでした。一方、最大の争点だった応益負担については、応能負担を原則とするとしながら、現在でも実質応能になっているという旧与党の言い分を受け入れており、実際に能力に応じた負担の程度は、時々の政府の判断にゆだねられているのです。

 やはり、基本合意が最初に指摘しているように、契約制度、程度区分で障害の程度と利用量を決定し、その利用量に応じて定率の負担をするという仕組みそのものを変えて、憲法に即した福祉の制度でなければならないという、そのためにこそ議論を重ねるべきだと思います。

 最後に、廃止までのつなぎ法案だといいながら、施行日は二〇一二年四月と、最長であと二年もあるのは矛盾しています。また、廃止までの時限立法と明確にすべきです。与党が廃止をためらい、自立支援法延命こそがねらいではないかと強い懸念をぬぐえません。

 以上、本法案は廃案にし、きょうの議論を生かして、改革会議の議論の充実と当事者参加を貫いた立法を強く求めて、発言を終わります。

鉢呂委員長 以上で発言は終わりました。

 お諮りいたします。

 お手元に配付いたしております草案を障がい者制度改革推進本部等における検討を踏まえて障害保健福祉施策を見直すまでの間において障害者等の地域生活を支援するための関係法律の整備に関する法律案の成案とし、これを委員会提出の法律案と決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

鉢呂委員長 起立多数。よって、そのように決しました。

 なお、ただいま委員会提出と決しました法律案の提出手続等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

鉢呂委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

     ――――◇―――――

鉢呂委員長 内閣提出、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として厚生労働省職業安定局長森山寛君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

鉢呂委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

鉢呂委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。あべ俊子さん。

あべ委員 自由民主党、あべ俊子でございます。

 新委員長御就任、大変おめでとうございます。

 新委員長からのごあいさつの中に、適正な委員会運営に努めるというお言葉がございました。これは、どんな法案であっても、必要であれば十分な審議を尽くし、強行採決は行わないという理解でよろしいでしょうか、委員長。

鉢呂委員長 適正な委員会の運営に努める、その言葉どおりでございます。

あべ委員 まず初めに、労働者派遣法改正案、これまでの各党、全体の流れの中で、私は、今回、このいわゆる派遣法に関しての改悪法案とも言える法案は見送られるのかなという雰囲気を感じておりました。ところが、急にこの法案が上がってきたのは、小沢幹事長の天の一声で変わってきたのではないかと感じるのは私だけでしょうか。

 また、前藤村委員長、健康不安で辞任をされました。さまざま法案が急に上がってきて、その法案を強行採決することをお嫌である余りに健康不安になられたのではないかと心配をしているところでございます。

 委員会理事会での決議、委員長職権で委員会が続けられていることに関して、議会制民主主義崩壊の危機を感じるのは私だけではないと思います。

 さて、法案の方の質問に移らせていただきます。

 大臣、今回の派遣法改正案の大きな目的は、一言で何でしょうか。

長妻国務大臣 人間が人間らしく働ける環境を整備するということであります。

 これまで、自民党政権のもと、雇用の規制緩和という美名のもと、物には限度というものがございます、日雇い派遣のような形態も認め、本当に、直接雇用でないわけでして、労務管理も含め管理が甘くなる、そういう問題が数々指摘をされたわけであります。

 詳細には、大きく三つ問題点がございます。

 業務量の減少に伴って、派遣先による就業機会の確保の努力がほとんど見られないままに派遣契約が解除されてしまう。これは、直接雇用とはまた違う、派遣先は直接雇用をしていないわけでありますので、そういう安易な解除がある。

 そして、二点目としては、派遣契約が派遣先の都合で解約されたにもかかわらず、解約に伴う損害賠償あるいは休業補償等がほとんどなされない。派遣先と派遣元の契約が契約期限の前に解除される場合や、あるいは派遣元が派遣労働者の雇用を解除する場合など、いろいろありましょう。

 三番目としては、派遣労働者の雇用に最も責任があるはずの派遣元事業主において、雇用維持の努力が不十分であった等々の問題点があったと考えております。

あべ委員 今大臣がおっしゃった内容と今回のいわゆる派遣の改正法案は、根本解決には全くなっていないというふうに私は思います。

 特に、派遣というのは、派遣の働き方そのものが問題ではなくて、これは一つの働き方であって、解雇をいつされるかわからない、またさらには、解雇された後のセーフティーネットの問題というのが一番大きな問題であるというふうに思います。

 そうした中におきまして、派遣、いわゆる無期雇用型派遣と登録型派遣がございますが、これは労働者や経営者が置かれる立場が全く違うものであります。

 いわゆる無期雇用型派遣の場合は、無期雇用ですから、派遣元の会社は仕事がなくても給料を払います。景気や派遣先のいわゆる業務の変動リスクを派遣会社が引き受けるというものです。また、派遣会社は労働者の教育訓練に対するインセンティブがあります。これは、顧客数をふやしたいということであります。

 一方、登録型は、景気変動による解雇リスクを労働者が負うという問題でありまして、今回与党から提出されました労働者派遣法改正法案、日雇い派遣の原則禁止、登録型派遣の原則禁止、製造業派遣の原則禁止など、行き過ぎた規制緩和を是正し、労働者を保護することを目的としているかもしれませんが、派遣労働の最大の問題である雇用の安定、これらの改正だけで派遣労働問題の根源にある不安定さが決して解消されるとは思えない。また、登録型派遣だけを改正することは、労働者保護といいながら、雇用契約の問題をごまかしているとしか思えません。

 大臣、今回の法案でどれぐらいの人が仕事を失うかもしれないというシミュレーション、見積もりを出されているのでしたら、数値を出していただきたいと思います。

長妻国務大臣 どのぐらいの方が今回の法案によって仕事に影響が出るのかということでございますけれども、その対象となる方の人数というのは、この前も最新の数字を発表させていただいたわけであります。

 こういう形態といっても、常時雇用、一年以上の雇用の見込みのある場合は、これは派遣元がしっかりと雇用していただくという前提で派遣というのはあり得るわけでございますので、我々としては、直接雇用への転換も含め、雇用が失われないように努力をしていくということであります。

 そして、雇用政策全体、この法案だけで全体の雇用の安定が図られるのかということではもちろんございませんで、やはり雇用の安定が図られるには、まず雇用のパイをきちっと拡大する、そして直接雇用も含めた非正規雇用の問題にもきちっと向き合っていくということも必要であるのは言うまでもありません。

あべ委員 大臣、質問にお答えください。それ以外のところは聞いておりません。

 今回の法案でどれぐらいの人が仕事を失うと見積もられているのか、数字を御自分でおっしゃってください。

長妻国務大臣 そういう見積もりは、我々はしておりません。そうならないように努力をしていくということであります。

あべ委員 それは余りにも無責任でありますし、今回の改正法案で何人が影響を受けるかという数値は、大臣、御承知のはずでございます。大臣、それはどれぐらいの数が影響を受けるというふうに聞いていますか。

長妻国務大臣 今申し上げているのは、この法案の対象となる労働者の人数ということでありまして、それが約十八万人ということになっておりますけれども、これについては、雇用が失われないように、直接雇用に転換されるようにということで我々は取り組んでいくということでございまして、直ちに雇用が失われるということは考えておりません。

あべ委員 長妻さん、この景気の悪いときに、直接雇用ができるほど今企業は余裕があるというのは余りにも、この法案そのものがタコつぼ法案で、日本の全体の景気を全く理解していないとしか言えない。

 十八万人が影響を受けるかもしれないけれども、これは直接雇用になるという保証を、大臣、この改正案とともに出されるんでしょうか。

長妻国務大臣 これは、規制がなされると直ちにその方が雇用が失われるのかどうか。当然、会社というのは需要があるからそういう労働者を雇っておられるわけでありまして、派遣元の派遣会社につきましても、常時雇用の派遣は我々は認めているわけでございますので、そういうところに転換をする、あるいは、雇用のニーズがあるということであれば、直接雇用に転換する。

 では、その払う直接のお給料という意味でいうと、直接雇用の場合は企業が労働者に直接払う。派遣の場合は、当然、マージンを派遣会社が中間でいただくわけになりますので、事業主の払うお給料はその部分が上昇するということにもなりますので、我々としては、直接雇用を支援するそういう政策も、例えば派遣労働者雇用安定化特別奨励金、派遣労働者を直接雇用する事業主に対する助成制度の活用ということで、いろいろな政策も用意をして、労働者の方が直接雇用に転換するようにということで取り組んでおります。

あべ委員 では、この非常に景気の悪い状態でございますから、一応、今回の改正法案で十八万人影響を受けるけれども、今出されている大臣の政策をもってして何人ぐらい救えるかというシミュレーションをきちんと責任を持って出すべきではないですか。

 国民が今非常に不安に思っているのは雇用問題なんです。大臣、ここのところをしっかりと精査しないでこの法案だけを出したら、本当に大臣の思っていらっしゃる夢物語が実現するか、全くわからないじゃないですか。長妻さん、この辺は責任は持てますか。

長妻国務大臣 これはあべ委員にも本当にお尋ねしたいぐらいですけれども、本当に日雇い派遣ということが、景気が悪いから日雇い派遣を認めて、それで雇用が拡大するというふうには私は思えません。我々としては、雇用に影響を与えないように、いろいろな施策を使ってそれを下支えするということでございます。

あべ委員 長妻さん、具体性が欠けるのは長妻さんのお言葉でありまして、何度も申し上げますが、労働者派遣の最大の問題は、雇用の安定さの問題なわけであります。

 ですから、解雇ルールがしっかり守られるということがなければ、いわゆるこの派遣問題、例えば、派遣というのは働き方の一つの形態でありますから、これを続けたいという方も実際いらっしゃることはいらっしゃる。しかしながら、非常にお困りの方の最大の問題点は、その方々が解雇されたときのセーフティーネットの問題、さらには解雇ルールが明確になっていないということなんです。ですから、そこのところを整理しないで、この改正法案を余りにも乱暴な形で出してくる理由が私には全くわからないということでございます。

 特に、この常時雇用ということの定義の部分、期間の定めのない雇用が入っているということは、長妻さんも御存じだと思いますが、常時雇用で期間の定めなく雇用されている人は四割なんです。この常時雇用の定義の部分をしっかり変えていくのも重要だというふうに長妻さんは自覚をしていらっしゃらないのでしょうか。

長妻国務大臣 常時雇用ということについては、一年以上の雇用の見込みということでございますけれども、これに関しては派遣はできるということになっておりますし、今回の派遣法は、もちろんいいかげんにつくったわけではございませんで、その前提には、労働者側、使用者側が同じテーブルで真摯に話し合って合意をした上で、我々も法案を作成して国会に提出するということにしております。

 これは、公布の日から三年以内の施行ということで、製造業派遣の原則禁止、登録型派遣の原則禁止、そして登録型派遣の一般事務については公布から五年後に原則禁止ということで、一定の猶予期間も設けておりまして、その間に我々としては、雇用を転換して、その方々の職が失われない、そういう施策をして下支えをするということであります。

あべ委員 この常用雇用に関しましては今回例外とされておりますけれども、いわゆる期間の定めなく雇用されている労働者だけではなく、過去一年を超える期間について引き続き雇用されている方、また、採用時から一年を超えて引き続き雇用されると見込まれる労働者といって非常にあいまいな形になっていることは、長妻さんは多分わかっていらっしゃるんだと思います。ですから、雇用の安定性ということを考えたときに、この定義づけもしっかり見直しをしなければいけないということを申し上げているわけであります。

 猶予があるから大丈夫なのか。しかしながら、本当に製造業、さまざまなところは、この改正法案が通ったら採用がしにくくなるということで、違う方向に転換をしている。正社員になったらいいというふうに長妻大臣はおっしゃいますが、それをパート、アルバイトに全部差しかえてしまっているという現実を、大臣の方は、また厚生労働省はデータとしてお持ちなんでしょうか。

長妻国務大臣 パート、アルバイトに差しかえてしまっているということでありますけれども、我々としては、派遣の労働者の方々が、それはできれば派遣元に常時雇用されるということでもまずはいいでしょう。あるいは、派遣労働者の方が派遣先の正社員になるということは、これは一定の一つの理想、あるべき姿ではあると思いますけれども、何も、派遣の方がパート、アルバイトになったからそれは悪いという考え方ではなくて、やはり我々は、より直接雇用の促進をしていくという考え方もこの法案の根底にはあるわけであります。

 例えば、同じ非正規雇用にしても、派遣元の非正規雇用、あるいは直接雇用の非正規雇用。

 事業主が指示をして、かつ事業主が雇い主ということで、就業規則や労務管理というのは、目の前の事業主が働いている方に直接指導するということで、いろいろな面でそれは配慮ができる。

 ただ、派遣の場合でありますと、例えば、派遣先の会社の方にとっては派遣の労働者というのは、指示は自分はいろいろするけれども、それを雇っているのは、また別のところにある会社が雇って、労務管理も離れた会社がやるということで、非常に安易な解約、あるいは労務管理が行き届かないのではないか、こういう問題意識も法案の背景にあるわけであります。

あべ委員 長妻さん、聞いていないことまでお答えにならなくて結構でございますので、聞いていることだけお答えいただきたい。

 私は、パート、アルバイトが問題であると言っているのではなくて、常用雇用を禁止の例外としていることに対して、常用雇用でも非常に雇用が不安定であるという観点でございまして、派遣先会社と派遣の契約を解除すれば、常用雇用の派遣でも七六・七%の労働者が解雇されるとされているわけであります。

 すなわち、常用型でも登録型でも、派遣先企業が派遣契約を解除すれば解雇されるという不安定さは一緒なわけであります。常用型にすれば雇用が安定するという根拠はどこにもないということをしっかりと大臣としてわかっていただきたいし、ここのところをしっかりといわゆる改正案の中に入れていくことこそが大切なのではないかと言っているわけです。

 今のいわゆる改正案では余りにも未熟過ぎて、この派遣労働問題の根本の部分を全く変えていない。逆に、派遣で働いている方々十八万人に対する影響と、さらにはそれを雇用する側の影響が余りにも大き過ぎる。この法案は、余りにも未熟であります。

 特に、今回に関しましては、先ほど申し上げた、職を失った場合のセーフティーネットの部分をどうすればいいのか。全員が正社員という社会は現実的ではありません。そのバランスをどうつくっていくかでありまして、派遣という働き方を選択している中、この働き方の多様性を否定する法案ではないんでしょうか。

 大臣、この働き方の多様性に関してお答えいただきたい。

長妻国務大臣 これは、日雇い派遣が認められるときの議論でも雇用の多様性という言葉は聞いたことがあるわけですけれども、雇用の多様性という意味で、我々は、派遣の一から十まですべてをこの法案は禁止しているということではございません。専門二十六業務もございますし、常時雇用される派遣元の方は派遣はできるというふうに考えておりますけれども、そういう意味では、いろいろな働き方というのはこの法案で否定されるわけではありません。

 ただし、繰り返しになりますが、日雇い派遣に代表されるような、安易に解雇ができる、しかも、目の前の職員を解雇するときに、本当に自分が雇っている人間であれば、多少これは良心の呵責というか、手続に従ったとしてもそういうものが発生して、次の就職先も含めてどういうふうに手当てをしようか、どういうふうに切り出して、どういう手厚いその後のフォローをしようかと考えるわけでありますけれども、やはり派遣でありますと、目の前の方にやめていただくときに、派遣会社に言えばその方が契約打ち切りということで、直接解雇するわけではありませんので、精神的負担あるいはその後のフォローというのも雇う側は考えるのが直接雇用に比べると低まっていくのではないかということで、事実、派遣村と言われるものもできたわけでございます。

 そういうことに対して、我々としては一定の、今おっしゃられた雇用の多様性というかそういうものは確保しながら、例えば最低限のものについてはやはり規制をする必要があるという思いで、労働者そして経営者側も議論をいただいて、その前提には、我々は丸投げをしたわけではなくて、そこに一定の考え方をお示しして、その範疇の中で御議論いただきたいということで、激論もありましたけれども、ぎりぎりまとめていただいた案がこちらの案でございます。

あべ委員 ですから、働き方の問題ではなくて、すなわち雇用の安定性の部分が問題だと何度も申し上げているわけです。長妻さんもそういうふうにお答えになっていながら、この法案と全く乖離した形なのはなぜなんでしょうか。いわゆる解雇における透明性が必要だと私は何度も申し上げているわけです。

 労働契約法、二〇〇八年に出たものに関しまして、解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当でない場合は、権利を濫用したものとして無効としていますが、具体的な基準の明記がないということで、判例法の依存は変わらないというところが問題なわけです。

 解雇権の濫用として、解雇の必要性、解雇回避努力、被解雇者の公平な選定、組合との協議、こういうことが、しっかりと公平性に重点を置く規制にすべきであります。すなわち、整理解雇の際の金銭補償、再就職支援に重点を置くべきでありまして、労働契約法の本来の目的は解雇ルールを明確化することであって、働き方が、これがいいとか悪いとかする弾劾の問題ではないわけです。

 大臣、解雇ルールを明確にすることを今回の改正案に入れなければ、この改正案は全く意味をなしませんが、いかがでしょうか。

長妻国務大臣 今のお話につきましては、派遣というよりも労働契約法、つまり、これは解雇、正社員も含めた解雇はどうあるべきかという前提条件のお話だと思います。

 今おっしゃられたような、透明性を高める、そして、まずは今の法律についてきちっと遵守させるように、我々としてもきちっとした監督をしていくというのは大前提でございますけれども、これについて、おっしゃられたような、透明性を高めるとかそういう改善するべき点があれば、我々もそういう御意見を聞いて、これをさらに国民の皆さんの理解を得られるような形で変えることができるかどうか、検討をしていきたいと思います。

あべ委員 今、本当に景気が悪い中でございまして、企業が国を選ぶことができる時代になっているということは大臣も御承知だと思いますが、今回の派遣労働の禁止により、派遣労働に依存している企業が安い労働力を求めて海外に拠点を移そうというふうに騒がれていることは御存じだと思います。

 今回の法案が成立した場合、どれぐらいの中小企業にどういう影響を与えるか、数値を出していらっしゃるのであれば教えてください。

長妻国務大臣 今おっしゃられた点というのは、派遣というのが規制をされて、それを利用している企業が安い労働力を目指して海外に行くのではないかというお話であります。

 確かにそういう御指摘があるのは承知をしておりますけれども、そう単純な話なのかどうかということでございます。やはり労働力の質ということもありますし、あるいは、それはどういう質の労働者がどういう技術を使って仕事をしていくのかということにもよるわけでありますし、直接雇用に切りかわるということも企業としてはとれるわけでありますし、派遣の事業すべてが禁止になるわけではなくて、派遣元との契約が一定の安定性を確保した契約であれば派遣が可能となるという法案でございます。

 いずれにしましても、我々としては、そういうことが起こらないように、これから雇用の安定化もきちっと図り、あるいは経済産業省も含めて中小企業対策というのはとり行っているところでありますので、各省庁連携をして、中小企業への支援、あるいは中小企業の動向ということについても注視をしていきたいと考えております。

あべ委員 本当に今回の法案で、この日本の経済に与える影響、確かに労働者を守っていかなきゃいけない、働き方をしっかりとしていかなきゃいけないというところもわかりますが、両方守らなければ、企業が海外に出てしまえば、逆に言ったら根本の雇用をなくしてしまうということになるわけです。

 そうした中におきまして、どうも常用代替防止がこの法案の目的でしかないような気がします。労働組合の支援団体を持っている皆さんが正社員保護をしたいのか。しかしながら、正社員に移行させるという話よりも、逆に、この景気の悪いところであるから正社員をもっと働かせろという企業も出ているわけであります。

 そうした中におきまして、今、三菱UFJリサーチ&コンサルティングの調査部の話では、企業の雇用過不足感と労働分配率の試算をしたところ、全雇用者の九・二%、五百万人が余剰となっている段階と言われている中、直接雇用、直接雇用と、今の日本経済の状態を全く無視したような夢物語を言っていることは、私は今回の改正法案を出すことは全く納得ができない。

 何回も長妻さんがおっしゃっているように、雇用の安定性であれば、解雇ルールの部分をしっかり今回の改正法案の中に、また別法案で出していくことがまずは先決なわけであります。

 大臣、このことに関して、安定性、安定性と言うのであれば、解雇ルールに関しては今後どうなされるおつもりか、お聞かせください。

長妻国務大臣 安定性という意味では、今回のお願いをしている法案については、一年以上の雇用見込みということが書いてあるところでございます。

 今回の法律で何か日本経済が大変な状態になるというお話もありますけれども、基本的には、これまで、例えば登録型派遣でいえば、派遣会社が労働者を雇って労働者を派遣する、そして、派遣元と派遣先の契約、あるいは向こうの、派遣先の都合でその契約が切れたときに、派遣元はその労働者を解雇する、こういうようなこともあったわけでございますけれども、今後は、やはり一年以上は、派遣先と雇用契約が切れたとしても、別の派遣先を探す、あるいは派遣元の企業で働いていただく、こういうようなことは最低限確保していこうというような、ごく常識的な法案であるというふうに私は考えております。

 そういう一年という期限すら確保できないとなると、非常に雇用が不安定になるということで、そういう意味では、一定の雇用の安定という対策もこの法案の中に入っているということでございます。

あべ委員 今の経済状況を長妻さんが理解しているとは全く思えない。派遣労働者が置かれている状況と、雇用を創出しなければいけないというときに、全く逆行するような、また、雇用の安定ということであれば、正規と非正規、無期雇用と有期雇用の全体ビジョンの議論をすべきであって、今回の改正法案はこの問題に対して全く意味のあるものではないということは申し上げたいというふうに思います。

 今回の労働者派遣法改正案、これは派遣労働者の問題の根本解決には全くならずに、逆に言いましたら派遣切り法案と言っても仕方がないほどの改悪法案に関しまして、特に民主党の皆様におかれましては、採決要員として何ら問題意識を感じることもなくお座りになっていらっしゃる、このことに対して非常に違和感を感じるものでございます。

 私の質問時間は終わりましたので、これで終わります。

鉢呂委員長 次に、松浪健太君。

松浪委員 自由民主党の松浪健太であります。

 派遣法の改正案について質問をする前に、今、国会を取り巻く状況は大変重苦しいものがあるかと思います。

 委員長がかわられました。この委員長がかわる経緯は、国民の皆さんはその真実を知っておられると思います。私どもも、強行採決が目の前にあるという前提を持って質問することのむなしさに、身が震える思いであります。

 委員長におかれましては、まずお伺いをいたしたい。

 藤村委員長はさまざまな思いを持っておられたと思います。藤村委員長は辞任をされました。委員長は、藤村前委員長の思いをしっかりと胸にとらえて、そしてこれから適正な運営をされるのか、またその適正な運営の中には強行採決は含まれるのか、まず伺います。

鉢呂委員長 委員長に対する御質問でございます。

 私は、冒頭の就任ごあいさつでもお話をしましたが、委員各位の御協力、御支援をいただいて、適正な委員会運営に努めてまいります。

 以上でございます。

松浪委員 委員長としては非常に月並みと申しましょうか、私は、本当に国民の望む公正中立を委員長には行っていただきたいと思います。

 そして、大臣、副大臣、政務官に伺います。

 藤村委員長、一応体調不良で引かれたということになっております。しかし、私、新聞記者をやっておりました。各紙が報道いたしております。党内では強行採決に慎重な藤村氏が身を引いたとの見方も出ているというような書き方をする。こういう書き方を新聞記者がするときは、通常は、民主党の皆さんで多くの皆さんが、藤村委員長はということをおっしゃった上で、こういう報道になるわけであります。

 こうしたことを踏まえて、大臣、副大臣、政務官、藤村委員長の思いにいかなるお考えをお持ちか、伺いたいと思います。

長妻国務大臣 藤村委員長におかれましては、本当に適切な委員会運営に努めておられるということで、本当に私が尊敬する議員の一人でございます。

 ただ、今回のおやめになった経緯というのは、私も健康上の理由というふうにしか聞いてございませんで、それ以上のコメントはできないわけであります。

細川副大臣 私は、藤村委員長を尊敬いたしておりまして、これまでの委員会運営については、大変立派な運営だったというふうに思っております。

 今回の辞任につきましては、私は藤村委員長から直接お聞きをいたしましたけれども、健康上の問題で辞任をする、こういうふうに言われましたので、そう私は受け取った次第でございます。

山井大臣政務官 松浪委員にお答え申し上げます。

 藤村委員長、藤村衆議院議員は、私の最も尊敬する、本当に大変お世話になった議員でもあられます。

 例えば、政権交代前には、藤村先生が厚生労働のNC担当で、私がその副をさせていただいておりまして、本当に、藤村先生のリーダーシップのもと、医療、年金、福祉、子育て支援、雇用の民主党のマニフェストをつくらせていただきました。まさに、そういう厚生労働関係の藤村先生が中心になってつくられたマニフェストが、政権交代の一つの大きな推進力にもなったと思います。

 特に二点申し上げますならば、肝炎対策に関しては非常に力を入れられまして、選挙前には成立させられなかった肝炎対策基本法を、委員長としてリーダーシップを持って、見事、与野党の方々と一緒に、委員長提案で肝炎対策基本法を成立させられましたし、特に、あしなが育英会の活動を大学卒業後もずっとされてきて、子供の貧困への取り組みがすばらしかったと思います。その点では、今回、高校授業料実質無償化や、また母子加算復活、児童扶養手当の父子家庭への支給など、子供の貧困を解決するための本当にリーダーシップをとってこられました。

 そのような藤村先生が今まで委員長をこの委員会でしてくださったこと、おかげで子ども手当法案という重要な法案も通していただきました。そのことには非常に感謝をしております。

松浪委員 国民は、よく政治を見ております。今までも、自民党の議員でも、体調不良を理由に多くのことを隠してきた。体調不良というと、その体調不良ということ、これ、常道ですからね。ですから、実際問題は、この体調不良ということの裏に、恐らく民主党の皆さんで、体調不良といって、その体調不良の内容を確認した方はいらっしゃらないと思います。国民がしっかりと現実を見据えて事実を見ていることを、皆さんには真摯に受けとめていただきたいと思います。(発言する者あり)

 大変軽いやじが飛んでおりますけれども、これはそれとして、今回の派遣法につきまして御質問いたします。

 私もこれまで多くの文献を読んで、そして、この派遣法の改正案、今回質問をつくってまいりましたけれども、前提が変わりました。

 ほとんどの文献においては、二〇〇八年六月の政府の発表した二百万人という数を基本に、これまでの議論が組み立てられてまいりました。そして一昨日に、私もちょうどこの……(発言する者あり)委員長、よろしいですか。

鉢呂委員長 はい、どうぞ。

松浪委員 一昨日に出た状況によりますと、私も、このリーマン・ショックの影響が、派遣切りの影響がいかに強かったのか、その数字をまざまざと見て愕然といたしました。二〇〇八年六月には二百万人おったという派遣労働者の数が、約百八万人の状況になっております。これまで法案改正を皆さん続けてこられて、その中で本当に、この二年間で派遣労働者が約半分になってしまった。その背景をまずしっかりと踏まえて議論をしなければ、もう議論の前提自体が崩れているのではないかなというふうに私は感じるわけであります。

 一昨日、その内訳を見せていただくに、余りに状況が違う。これであれば、新たな規制対象者の割合というのは、先ほどあべ議員の質問にもありましたけれども、もう一度しっかりと、どれだけの方が規制対象者なのかということを政府はお考えになっているのか、まず確認したいと思います。

森山政府参考人 お答え申し上げます。

 先日発表いたしました平成二十一年度の労働者派遣事業報告の集計結果でございますけれども、これは速報値でございますけれども、これでいきますと、二十一年六月一日現在の派遣労働者数は約百八万人、先生が今おっしゃったとおりでございます。そのうち、今般の改正法案の規制の対象となる派遣労働者数は約十八万人でございます。

 その規制の対象となる十八万人の内訳につきましては、製造業務派遣の原則禁止の対象となる労働者が約六万人、それから登録型派遣の原則禁止の対象となる労働者が約十二万人ということでございます。

松浪委員 表向きの数字はそうなるわけでありますけれども、今回、常用雇用というものが禁止対象から除外をされているところがありまして、実際、一年間という見込みがあれば常用雇用とみなされるとあるわけでありますけれども、これはあくまで、雇う側が一年以上やるんだということをしっかりと宣言すればいいというだけでありまして、その後ろに何の保証もないということであります。

 こうした状況についてはどのようにお考えになっているのか、また、どういう対策が打ち得るのか、実効性を伺います。

森山政府参考人 お答え申し上げます。

 常時雇用の関係でございますけども、先ほども議論になりましたけれども、これは大きく二つございまして、期間の定めなく雇用された者、それからまた、有期の場合、反復更新された場合に一年を超えて引き続き雇用されると見込まれる者ということがこの常時雇用の定義でございます。

 私ども、今回の法律におきまして、この常時雇用という概念、中心の概念でございますので、この見込まれるという点につきましてはしっかりと、契約等でそれがはっきりと見込まれるということが認められる、そういう内容にしていかなきゃならぬと思っていまして、そういうところの対策を、この法律が通りましたならば早速始めたいというふうに考えているところでございます。

松浪委員 この点、非常にあいまいな部分が多くて、抜け道の可能性が非常に指摘をされるわけであります。

 今回、このように状況が、派遣をめぐる状況がこの二年間で激変した。半分になるというのは本当の異常事態であります。こうした半減したという状況を、今回の派遣法、今まで民主党を応援してきた皆さんが、今、ちまたに、国会の外に出ると、強行採決反対だという声を大きくかけていらっしゃる。私ども自民党とはもちろんアプローチの仕方は違うわけでありますけれども、しかし、これでは労働者をめぐる状況はよくならないんじゃないかという認識だけは私は共通しているんじゃないかなというふうに思います。

 それはなぜか。

 私は、かつてパートタイム労働法という法律を本会議場で代表質問させていただいたときに、非正規と正規という言葉自体の定義がおかしいんじゃないかということを指摘したことがありました。正規というものと正規にあらずというものを分けているというこの概念自体が、もちろん、もう適切ではないのではないかと。ただ、これは言葉遊びで終わらせてはだめだと思います。非正規という言葉を、幾ら非正規にかわる耳ざわりのいい言葉にしても、労働状況は変わらないと私は思います。

 ここに水がめがあって、今、日本をめぐる雇用というこの水がめは、大きさは変わらないわけであります。そして、今不況で、この水がめの水はこれから少なくなろうとしている。そして、残念だけれども、正規雇用という水よりも、この上の方にある派遣という水については出したり入れたりがやりやすいということで、この問題が、派遣切りの問題も大きくなってきたわけであります。

 この水がめ全体の水をどういうふうにするのかということを議論することなしに、上澄みの派遣というところだけをさわってしまっても、結局は、派遣、パートタイム、いろいろありますけれども、非正規という枠の中だけで皆さんは水を入れかえようとしている。これはやはり、正規雇用というものがありますけれども、この正規雇用という水も一緒に議論をしないと、派遣法改正だけで、今、小手先の改正をして状況がよくなるとは、路上にいる皆さんも、そして我々も思えないわけであります。

 そして、今回特に、施行まで、普通、つくれば半年ぐらいで施行するものですけれども、そこから三年あります。三年あるからやりますというのであれば、今、何も強行採決を急ぐ問題ではない。もっと大きな議論をして、そしてその中でこれを一つの課題としてやるのであればわかりますけれども、全体のパッケージ、水がめの水の話をしないで上澄みの話をするというだけでは、私はやはり非常に不十分なんだと思います。

 ですから、大臣には、こうした働き方の移動がその上澄みだけで本当に進んでしまっていいのか、それにかわる対策はお考えでないのか、大きな意味でのビジョンを伺います。

長妻国務大臣 日雇い派遣のような、かなりの自民党政権での雇用の緩和というときも、結局、大きな話で、国際競争力とかあるいはグローバル化への対応、雇用の多様化などなどの議論もいろいろな方面からもあったというふうに承知しておりますけれども、その結果が、これほどまで雇用が、派遣で登録型、日雇いということで非常に問題があるということになったわけであります。

 そして、今おっしゃられた水がめの、雇用の一つのパイということで、雇用のパイをまずは拡大するというのがもちろん重要なことでございます。これについては、我々は新成長戦略、厚生労働省の分野では特に介護という分野が一番雇用波及係数が高い分野で、そして今、人手が不足しているという分野でありますので、そういうものも戦略的に拡大して雇用の受け皿になるような、そういう取り組みも必要であるというふうに考えておりますが、その中のパイで、いろいろな働き方がある中で最低限度の雇用の安定を図っていくということは重要であります。

 今回の法律も、経営者側も御理解、了解をいただいて、国会に労使ともに御了解のもと出させていただいているということでございますけれども、やはり猶予の期間は必要であるという御論議の中で、こういう期間を設けさせていただいているところであります。

松浪委員 私が今申し上げたのは、猶予の期間をそんなに長くするのであれば、もう少し現状を、おとつい出たばかりのこの劇的な数字を踏まえた上で抜本対策を踏まなければ、幾らこれから雇用が生まれる、雇用を新成長戦略で生むと言っていても、そこに対して実効性というものが問われるわけであります。これは、実効性が本当に伴うというような論評というものは今のところ余りにないのではないか、そのことに真摯に耳を傾けていただきたいと思うわけであります。

 そして、先ほどから、中小企業は国外に出ることができないという声も上がっておりました。そのとおりであります。中小企業は外に出られません。そして、中小企業は結局はつぶれるしかないんです。その分は、海外に移転をする、雇用がなくなるという縮小の悪循環に陥るということもあるわけであります。

 皆さんも、地元で中小企業の皆さんのところを回っていたらわかると思います。本当に中小企業の皆さん、この派遣法改正で、結局、アルバイトに切りかえるとかそういうところでしか対応しようがない、何とかごまかすしか対応しようがないんだよ、そういうふうにおっしゃる中での規制強化だということを何とか皆さんには、政治家ですから、本当に現場の中小企業の経営者の皆さんの血のにじむような声に耳を傾けていただきたい。

 そして、労政審でも、中小企業側からは、製品のサイクルが短くなる、生産現場の労働需要の上下の激しさというものが厳しくなる、多くの中小企業で自前で人員をそろえることは困難だということが出ているわけでありますから、これは、三年の猶予で、本当に不況に苦しむ中小企業に対してどこまでの対応を求めるわけですか。

細川副大臣 これは、派遣の期限というのが三年ということになっておりますので、まず三年のうちに、もっと早目にやっちゃうと解雇になりますから、まず三年の猶予が必要ではないかというふうに思います。

 それから、委員は中小企業のことを本当に心配されております。私もよくわかりますけれども、常時雇用については派遣も認めているわけでありますから、派遣元が常時雇用にしてもらって、そしてその人を派遣していただくというようなことになりますから、御心配されるよりは、その方にどんどん進んでいくんじゃないかというふうに私は思っております。

 それから、その他の対策として、中小企業の皆さんに対しては、派遣から直接雇用に転換をしていくための制度というものもつくって、それでいろいろな、資金を援助するという派遣労働者雇用安定化特別奨励金という制度をつくりまして、中小企業と大企業にはそれぞれ違った助成金ですけれども、期間の定めのない雇用をしていただければ中小企業には一人百万円、それから、有期でも六カ月以上の有期ならば一人五十万円の補助金を出すというようなことで、経済的にもしっかり援助しながら派遣先にきちっと雇用していただけるような仕組みもつくって、中小企業も当然守りながら、派遣労働者も安定して働けるような制度もつくっているところでございます。

松浪委員 ちょっと楽観が過ぎるなという印象を持たざるを得ません。

 今回の法改正によりまして、派遣労働者の賃金決定において、同種業務の労働者との均衡を考慮するというふうにありますけれども、具体的にどのような措置を講じるわけでありますでしょうか。簡潔にお願いします。

細川副大臣 これは、今回の法律におきまして、派遣先の同種の労働者とそれから派遣労働者との賃金を均衡にする、こういう規定です。

 そこで、これはなかなか難しいところでありますけれども、私どもが考えておりますのは、指針をつくってしっかりやっていかなければと思っておりますが、先に私どもは労政審にかけまして、審議会で労使の皆さんの代表の方にしっかり議論もしてもらおうと思っております。

 その指針の中で検討していただくのは、派遣先の働いている人たちの基本給は幾らなのか、それから役職手当はどうなっているのか、あるいは家族手当を考慮するかどうかというようなことを派遣労働者と比較をしながら基本給なんかも考えていくというふうにしておりまして、そういう指針をつくりましたら、その指針に基づいて、派遣元の企業などについてしっかり指導していきたいというふうに思っております。

松浪委員 今伺っても、なかなかはっきりとした実効性というのは見えないわけであります。

 当然ながら、先ほど申し上げたように、水がめの中の水の量は変わらないわけでありますから、これはその賃金の差を均衡させる。例えば、ここに四月の週刊ダイヤモンドの記事で、連合傘下の全産別組合が開示した正社員の月収と派遣の職種別時給の対照表のようなものがあります。こうした調査をしっかりと行った上で、どれぐらいが相場なのかということは数値をきっちりと決めていくことが大事だと思います。

 そして、冒頭申し上げましたように、やはりこれだけで時給を上げろというのは無理な話であります。パイの、水は一緒ですから、その間をどういうふうにならしていくのかという、これまでの既得権とは言いませんけれども、それは正社員は大事ですけれども、やはりその間に切り込むようなしっかりとした仕組みがないと、実効性がないと言わざるを得ないのではないかと私は思います。

 それでは、次の質問に移ります。

 今回、直接雇用みなし制度というものが導入をされておりまして、この違法性をチェックするのは、労働者派遣事業の指導監督を行う需給調整指導官ということになるわけでありますけれども、この指導官の数が余りに少ないということが指摘をされております。

 一人当たり、実際どれぐらいの事業所を担当されるんでしょうか、伺います。

森山政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま御指摘されました需給調整指導官でございますが、この指導官が労働者派遣事業の指導監督等に当たっているわけでございます。

 二十一年度の数字でございますけれども、二十一年度の指導監督実施件数、これは一万二千二百八十四件でございまして、そして二十一年度の需給調整指導官数でございますけれども、これは四百四名でございます。そういう人数の中で指導監督をやってございまして、それを割り算いたしますと、一人平均三十・四件ということになるわけでございます。

松浪委員 三十・四件、一万二千の指摘のうちで一人これだけのことをやっているというわけでありますけれども、私は、一人が担当するそのエリアの事業所というのはどれぐらいの数になるかということを申し上げたんですけれども、それのお答えというので。

森山政府参考人 お答え申し上げます。

 担当のエリアでございますけれども、先ほど申し上げましたように四百四名ということで、全国でいきますと大変な、人数が限られておりますので、これは各地の労働局に配置をしておりまして、担当としましては、それぞれの都道府県を担当しているというものでございます。

松浪委員 事業所の数、派遣元、派遣先を入れていくと、一人がすさまじい数になるという指摘をさまざまなところでされているわけでありますから、これは私は、正直、本当にこのみなしの違法性のチェックというには余りにほど遠い、非現実的な状況だと、局長もうなずいていらっしゃいますけれども、言わざるを得ないわけでありまして、この雇用みなし制度の実効性というものについても、やはりかなり厳しい目が向けられているということを実感をいただきたいと思います。

 このみなし後の取り扱いというものについても、これがはっきりしないというか、不備があると思います。

 松下PDP事件というのがございました。偽装請負が発覚をした、その後どのような手続がなされたのかということを、皆さんはもう一度思い出していただきたいと思います。

 松下PDP事件で、偽装請負が発覚をした、その後、企業はさまざまな訴訟もあり、直接雇用をしたわけであります。雇用者との間であれだけしっくりこなかったということはいろいろ考慮の余地はあろうかと私も思いますけれども、実際は、半年後には雇うことをやめてしまった。

 こうした実情が現在でもまかり通っているということは、直接雇用をしても、実効性というところには疑問を持たざるを得ないと思います。そこまでして、今回、直接雇用のみなし規定はそこまで実効性を発揮するんでしょうか、伺います。

細川副大臣 現行法でいきますと、御指摘のような松下の事件などにつきましては、労働局が松下の企業に対して直接雇用にしてほしいと、こういう推奨をするようなことしかできないんですけれども、今度の改正案では、違法な派遣があれば、派遣先から派遣労働者に対して雇用契約の申し込みがあったものとみなす、こういうことになります。

 それに対して、派遣労働者の方で、引き続きそこで働きたいか、あるいはそこでやめたいか、こういう選択ができまして、そこで今後も働きたいということであれば、その申し込みを承諾するということで契約が成立していくというようなことで、そこは法律上きちっと雇用契約が、直接そこで働けるということになりますから、これは法律でそういうふうに決めますから、実効性はもちろんある、こういうことであります。

松浪委員 先ほども指摘させていただきましたように、チェック体制の大変手薄なものがございます。そして、今のPDP事件のようなこともございます。これについて、逆説的なことも十分考えられるということは重々に認識をしていただきたいと思います。

 時間も参りました。

 最近やはり、かつて社民党の阿部議員も、先般、一カ月ほど前ですか、この厚生労働委員会でも大臣に対してもおっしゃったと思います。国民の声に耳を傾けて、心のこもった答弁を願いたいというふうに思います。

 特に、山井政務官、私も政務官の経験がございます。政務官は、ラインじゃなくてスタッフであります。大臣、副大臣が答えにくいなというようなことは、ちょっとどつかれてでも言うても、与党として、私らはちょっとぐらいそれはどつき返すかもしれませんけれども、でも、国民の皆さんは、そこが山井さんらしいなということで熱く見守ってくれると思いますので、本当に、余りに通り一遍な答弁だけでこの委員会をやることに対しては、これからどうぞ御配慮をいただきますようお願い申し上げまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

鉢呂委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時十八分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

鉢呂委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。大村秀章君。

大村委員 自由民主党の大村秀章でございます。

 それでは、午前中に引き続きまして、午後、いただきました時間の中で質問を続けさせていただきたいというふうに思います。

 まず冒頭、午前中に、障害者自立支援法の改正法案、与野党で合意をいたしまして、障害者制度の、障害保健福祉施策の関係の法律の整備に関する法律という形で、この委員会で委員長提案ということで可決を見たということは、大変関係者の皆様に心から敬意を表する次第でございます。

 昨年来、ちょうど一年前は、私ども、政府提案、閣法でこの障害者自立支援法の改正案を出させていただきました。それがずっと、一年有余を経て、今回こういう形で合意を見たということに、協議を重ねていただいた関係者の皆様に心から感謝を申し上げる次第であります。

 内容は、もう既に御案内のとおり、障害者福祉施策の現場で頑張っていただいている皆さんの御要望を、今の時点のものを集めてきたということだというふうに認識をいたしております。そういう意味で、利用者負担の軽減とか、相談支援の充実とか、障害児のサービスの強化とかいったことが盛り込まれております。

 ぜひ一日も早く成立させて、さらに施行に向けて、厚生労働省そしてまた関係自治体、関係者の御努力をお願い申し上げたいと思います。まず冒頭、その点を申し上げたいと思います。

 さて、それでまず、質問に入る前に、これは同僚議員からも質問させていただいておりますが、委員長が昨日交代をしたというこの経過につきまして申し上げざるを得ないと思います。

 この時期の、通常国会をやって、これから終盤国会、それも、与党側からの強い要求でといいますか要請で、申し入れで、労働者派遣法の審議を実質的にきょうから始めようというところで、そのやさきで委員長が交代をされたということは極めて異例だというふうに言わざるを得ません。

 お聞きをいたしますと、労働者派遣法の改正、本来であれば、これは重要広範議案でありますから、何十時間、三十時間、四十時間、十分審議を重ね、そして参考人の質疑もやって、それで、総理にも来ていただいてここで質疑をして終局を図るというのが、これまでの慣例といいますかルールでございました。

 しかしながら、会期、残り六月十六日までを考えるとそうもいかないということをだれかが言い出して、どうも強行採決、来週には強行採決するんだというふうに漏れ伺っております。それに対して藤村前委員長が、それはいかぬ、それは適当でない、そういう強行採決でやっていくということは賛同しかねると言った途端に首になったというような話が漏れ伝わってきております。

 その上で、藤村委員長を更迭して、その次は城島さん、特別委員長に決まったという報道が流れました。しかし、どうも、特別委員長と常任委員長を兼ねるというのはいかがなものかということでそれがつぶれ、次は小平さんという名前が出てきました。小平さんは、強行採決のための委員長なんか嫌なこったということで固辞をした。そうしたら、だれになるのかなと思ったら、鉢呂さんがこの火中のクリを拾ったというようなことの報道が流れてきているわけでございます。

 そうなりますと、鉢呂委員長は、まさに労働者派遣法という大変重要な法律をほとんど審議もせずに打ち切って強行採決をするために委員長になった、そういうふうに報道されているわけでありますが、これについては、鉢呂委員長、これは事実でございますか。いかがですか。委員長、お答えください。

鉢呂委員長 委員長に対する御質問でございます。

 皆さんも御承知のとおり、藤村前委員長は体調不良ということで、昨日の衆議院の本会議で許可をされまして、そして、皆さんの選任をいただいて、鉢呂吉雄が厚生労働委員長として今務めさせていただいておるところでございます。

 以上でございます。

大村委員 それでは、またお尋ねいたしますが、私が今申し上げました、これは重要広範議案でございます。

 私、これまでの厚生労働委員会、もう何年もおりますから、大体相場観というのはある程度ありますけれども、私が申し上げた、大体三十時間、四十時間ぐらいやって、参考人を、これだと多分一回じゃ済まないから二度ぐらいやって、さらに総理質疑をやって、それで質疑の終局を図っていくということが本来あるべきルールだと思いますけれども、三十、四十時間の十分な審議と、総理出席と、そして参考人質疑、これについては、委員長、お約束いただけますか。お答えください。

鉢呂委員長 委員長に対する重ねての御質問でございます。

 厚生労働委員会理事会で協議をして行われるべきものである、このように思います。

 以上です。

大村委員 そのことと裏腹ということでありますが、あわせてということでありますが、そういう重要な法案だから十分な審議をしなきゃいけない。であれば、もう今報道で流されているのは、来週の水曜日、次回に審議を打ち切って強行採決するんだということが流れております。これについてはいかがですか。これは事実ですか。

鉢呂委員長 委員長に対する御質問でございますけれども、重ねて申し上げますが、理事会で協議をすべき問題である、このように思います。

大村委員 再度尋ねます。

 強行採決をしない、円満に質疑をする、審議を進めるということをお約束いただけますか。

鉢呂委員長 重ねて申し上げますけれども、理事会の協議に基づいて委員会が行われるべきものだ、このように考えます。

大村委員 委員長は、冒頭のあいさつ、そして先ほど理事会でも、そして委員会の冒頭でも、適正に審議を進めると言われましたが、円満にとは言われませんでした。それはやはり、来週も強行採決するからとても円満なんて言えない、こういうことでございますか。

 円満に審議を進めるというのは、普通、委員長の最初のあいさつではそう言われるんですけれども、いかがでございますか。円満に審議を進めると言われませんか。もう一度お答えください。

鉢呂委員長 委員長に対する御質問でございます。

 本来、大変貴重な時間でありますから、政府に対する質疑だと思いますけれども、重ねての御質問でございますけれども、冒頭、就任ごあいさつにありましたように、委員各位の御協力をいただいて、適正に委員会運営をさせていただきます。

 以上です。

大村委員 残念ですね。先ほど来からの委員長の発言で、円満にということが一言もない。最初からけんか腰だというふうに言わざるを得ません。そういうことでこの委員会が、この審議が進んでいけるのかということを、極めて問題だということを申し上げたいと思います。

 今回の委員長交代の一連の流れ、これはまさに国会軽視、厚生労働委員会軽視と言わざるを得ません。こういうやり方を、何でこんなやり方で、そして来週強行採決されるのか、極めて遺憾だ。徹底的に審議を進めていく、そのことを強く申し上げて、質問に入らせていただきたいというふうに思っております。(発言する者あり)

鉢呂委員長 委員各位に申し上げますけれども、発言者の発言を妨げるような、御静粛な形でお聞きをいただきたい、このように思います。

大村委員 それで、まず冒頭、B型肝炎についてお聞きをしたいというふうに思っております。

 この点につきましては……(発言する者あり)ちょっと静かにさせてください。ちょっとうるさいよ、あなた方。まじめにやりなさい。

 B型肝炎についてお聞きをしたいというふうに思います。

 昨日、B型肝炎訴訟の原告団、弁護団の皆さんが厚生労働省前で抗議集会を行い、各政党に面談を申し入れ、行動を行いました。これは各党、皆さんお受けになったことかと思います。その際、私ども自民党の方にも午後、お越しをいただきまして、協議、意見交換をさせていただきました。

 この原告団、弁護団の皆さんのきのうの集会、そしてまた要請の趣旨は、とにかく、裁判での和解協議は七月の六日ということでございますから、そこまでまた二カ月先延ばしをするのではなく、直接、この原告団、弁護団と協議の場を設けてほしいということを、先週五月十八日、原告団、弁護団が厚生労働省に要請をし、期限が、厚生労働省に対しては一昨日、五月二十六日、総理に対しては昨日ということでございましたが、ゼロ回答であったということでございました。協議の場を持っていただけないということで、大変残念だ、極めて遺憾だということで、きのう、原告団、弁護団の皆さんが大変憤っておられたわけでございます。

 重ねてといいますか、改めてといいますか、この場でお伺いをさせていただきたいと思います。

 長妻大臣、この原告団、弁護団の皆様が、また先週に引き続いて今週も、昨日も上京され、集会を持たれました。直接協議の場を設けてほしい、直接意見を聞いてほしい、直接意見交換をさせてほしいというこの原告団、弁護団の要求に対して、どういうふうにお答えになりますか。お答えください。

長妻国務大臣 これにつきましては、私どもとして和解協議に入るということを決めまして、裁判所を仲介として誠実に協議に臨んでいくということでございますので、そういう枠組みの中で真摯に対応していきたいというふうに考えております。

大村委員 協議の場を設ける気はありませんか。もう一度お答えください。

長妻国務大臣 そういう意味では、裁判所を仲介とした和解の協議の場という中で、協議を誠実にさせていただくということであります。

大村委員 大変残念でなりません。そのことについて引き続き、これは原告団、弁護団の皆様の声もいただいて、また要求をしていきたいというふうに思います。

 そして、あわせて、きのう、原告団の皆さんが言われていたのは、五月十四日の和解協議、それは三月十二日ですから、二カ月あった。その間、いろいろな具体的な解決策、その一部でも示されるのではないかと思っていたら、ただ単に協議に着くということだけであった。そうしたら、次が七月の六日だ、また二カ月。要は先延ばしではないかということを言われているわけでございます。

 私は、先週の面談の場でも申し上げました。一日も早い解決策、救済策を、これは政府が責任を持ってまずその案をつくる、そして関係者で議論をするというのが解決への方向、方策でございます。

 したがって、一日も早く解決策、救済策を示すべきだ、それもこの六月十六日の国会の会期末までに示すべきだということを申し上げておきましたが、きのう、原告団、弁護団の皆さんからお聞きをいたしましたら、二カ月先の七月六日の裁判でのいわゆる和解協議の中でも、全部の論点、いわゆる論点が幾つか当然あると思います、和解に至る過程においては。その金額は幾らにするだとか、どこの範囲がとか、どういうふうに具体的に進めていくのかという論点がたくさんあると思いますが、どうも和解協議の場で、国の対応は一部の論点、認定基準だけ、一部分だけを七月六日に出す。それでは、そこをやった後、ほかの論点も、では、またそれは次ね、それは次ねということで、どんどんどんどん先延ばしにされてしまうのではないかという不信の念を持たれているわけでございます。そういうことがないように、やはり直接話し合いをさせてほしいというふうにも言われているわけでございます。

 お聞きをいたします。

 この七月六日が次の和解協議の場ということでございますが、その際に、認定基準だけの、その一部の論点だけを示して、あとはまたその次、次というふうに先延ばしをされるということを非常に懸念、危惧されておるわけでありますが、七月六日には、そういうことではなくて、すべての論点についてこうだというような救済策、解決策というものを当然お示しになるというふうに思っておりますけれども、その点についてのお考えをお聞きしたいと思います。お答えください。

長妻国務大臣 どういう形でその期日にお示しをするかということについては、これは本当に大きな問題で、我々も和解協議を誠実にとり行っていくということを政府全体で決定して、政府全体で取り組むということでございますので、どういう形で提示をしていくかということは、今まだ政府全体で決定をしていくという途中であります。

大村委員 私が申し上げているのは、個々の具体的な中身まで今言えと言っているわけではないんですね、今申し上げたのは。

 要は、原告団の皆さんが、認定基準だけを六日に示す、そういう協議の中での国の発言であったと。それではほかの論点はどうするんだ、先送りですかと。それではどんどんどんどん先へ行ってしまうじゃないか、それは困るんだというふうに言っているんです。

 ですから、今協議中だというふうに言われましたが、個々の具体的な中身まで今ここで示せとは言っておりません。ここの論点を一応一さらい、こういう論点がありますねということで、全体像で、当然のことでありますけれども、次の協議のときには示すという理解でよろしいですね。お答えください。

長妻国務大臣 それも含めて、どういう形で期日にお示ししていくのかということについては、政府全体で協議をしているということであります。

大村委員 何もお答えいただけないということでございます。大変残念でなりません。先週の五月十八日の面談の場での、あの木で鼻をくくったようなごあいさつ、発言と合わせて、この問題に対して真剣に取り組もうという誠意が感じられません。

 私は、今回のこの一連のものを、もう三月十二日に和解の勧告があった、五月の十四日が期日だ、次が七月の六日、二カ月、二カ月といく。そういうことではなくて、一日も早く具体的なプラン、案を出して、そして協議に入るということでないと、いつまで、どこまでかかるかわからないということになってしまうと思います。

 C型肝炎のときも、十月に和解が始まって、大体十二月、二カ月ぐらいである程度の具体案を示して、その中で、議員提案で与野党一致で救済策ができたわけでございます。そういう意味では、今の一連の、全く何も答弁をしない、そういうまさに不誠実な対応では、私は極めて遺憾だと言わざるを得ません。引き続き、この点はきちっとただしていきたい、そのことを申し上げておきたいと思います。

 次に参ります。

 続きまして、きょうは派遣法でございますが、まずその前に、最低賃金についてお聞きをしたいと思います。

 民主党のさきの選挙での労働関係で主張されていた点は、この派遣法の問題と、やはりもう一つは最低賃金の引き上げという論点といいますか、ポイントがあったというふうに思います。

 最低賃金につきましては、これは今から三年前、安倍内閣のときに、成長力底上げ戦略というのをつくって、この最低賃金の引き上げ、中小企業の生産性の向上と最賃の引き上げをセットでやろうということで対応をしたのが、ちょうど三年前でございます。

 私、当時、内閣府の副大臣をやって、その担当をやっておりました。関係の省庁から集まっていただいて、何とか最低賃金を引き上げられないかと。ただ、最賃だけ引き上げて、企業の生産性の方が上がっていかないと、企業の負担だけがふえて、結果、地方の方でそれはもたないということになって、逆に企業の倒産とか雇用が減るとかいうことにならざるを得ないといったことが、当時からずっと言われてきているわけでございます。

 そういう中で、今回、民主党のマニフェストの中で、最賃の八百円の引き上げ、最終的には千円というようなことが書かれているわけでございますが、これについての具体的なロードマップは描かれておりますか。今の現状をお聞かせください。

長妻国務大臣 今の御指摘というのは、最低賃金の引き上げのロードマップといいますか、その予定ということでございますけれども、これについては、まず、我々といたしましては、地域の実情、あるいは雇用、経済への影響をかんがみて、労使関係者と調整を行って進めていかなければならないというふうに考えております。

 最低賃金の全国平均、時間当たりの千円への引き上げについてでございますけれども、その際に重要なことは、やはり中小企業に対する対応策、対策ということでございまして、今どういう対策が必要なのかということもあわせて調査をしているところであります。

大村委員 これは、今調査をしておられると言われました。私、きょうはこれを聞き出すと多分、相当時間をかけて十分議論したいテーマなんですが、一つ申し上げますけれども、この最低賃金、やはり対策をある程度のものを講じないと、講じなくていきなり上げると、地域の、特に地方の中小企業がもたない、そのことによって海外への企業移転が進んでしまう、そのことで逆に雇用が失われてしまう、そういう懸念がある。

 その認識については共有いたしますか、いかがですか。一言お答えください。

長妻国務大臣 これはもう、おっしゃる点については、やはり雇用への影響、そして特に零細、中小も含めた企業が、何もそういう企業に対する配慮なしに最低賃金を上げるということになりますと、当然負荷がかかって、いろいろ懸念される事態が起こってくるというふうに考えておりますので、そういう状況も見ながら、支援策とあわせてやる必要があるというのは、御指摘のとおりだと思います。

大村委員 それで、きょうは、経産省の近藤政務官にお越しをいただいております。

 まさに、この点、私は三年前にこの問題に取り組んだときから、正直言って、これは本当はもっともっと上げたいという思いがありますけれども、それまで、ほとんど、一円とか三円とか五円ぐらいしか上がっていなかったのが、十四円、十六円、十円、こういう形で、最低賃金の上がり方としては大きい上がり方がこの三年ぐらい続いている、これは一つの成果だなと思っておりますが、これをやっていく上において、やはり中小企業の生産性の向上ということとセットでやってきたのは御案内のとおりでございます。

 やはり、働く場を確保しながら、企業の生産性を上げながら、その果実をできるだけ最低賃金の引き上げというところに持っていきたい、その認識はもうみんな共有しているんじゃないかと思います。

 きょうは、近藤政務官、お越しをいただきました。中小企業の生産性を、特に地方の中小企業の生産性をどういうふうに上げていくのか。こういう中小企業も含めて最賃の引き上げに持っていけるように、どういうふうにやっていくのか。その点について、今やられていること、それからこれからやろうとされておられること、お聞きしたいと思います。お答えください。

近藤大臣政務官 大村先生にお答えいたします。

 最低賃金の引き上げに当たって中小企業の生産性向上が必要だろうというこの御指摘、その点においては全く認識は同じかな、このように思って聞かせていただきました。

 最低賃金を引き上げるためには、まずもって中小企業の賃金支払い能力が高まることが前提でございます。そのためには、売り上げを伸ばすということ、そして生産性を上げてもらうこと、そして、コストを縮減して利益をふやすことが必要なわけであります。

 売り上げを伸ばす観点からは、これは資金面での農商工連携やさまざまな販路開拓事業をやっておりますし、今後も強化していきたい、このように考えておりますし、生産性の向上策としては、設備投資減税、IT投資に対するリース助成などに取り組んでいるところであります。

 また、コストを削減し利益をふやすための応援策としては、全国八十四カ所に設置した中小企業応援センターによる経営支援策、さらには下請取引の適正化、こういう景況感、中小企業にとっては今まだまだ厳しい経営環境にありますので、下請取引の適正化がこれまた重要であろう、こう考えています。

 公正取引委員会が第一義的には取り締まり官庁かと思いますが、中小企業庁も取り締まり官庁として、中小企業が適正な利益を保持できるよう取り組んでまいりたい、このように考えております。

 独占禁止法で優越的地位の濫用に罰則が今度入ることになりましたので、こうしたことも政府全体としてしっかりと、最低賃金が支払えるように、その引き上げになるような取引の適正化を期待しているところでございます。

 また、本年一月に、厚生労働省の細川副大臣と当省の増子副大臣による検討チームを設置いたしました。まずはしっかり実態調査を進めて、引き上げる場合に必要となる中小企業支援策を強力に進めてまいりたい、このように考えております。

大村委員 要は、今言われたように、中小企業の生産性向上につきましては、中小企業生産性向上プロジェクトというのを平成十九年度から昨年度まで三年間やってきた。さらに引き続きの施策も今進めておられるというふうにお聞きをいたしております。ぜひそれを進めていただきたい。それをやって、とにかく両々相まってやっていかないと、最低賃金、なかなか思い切った引き上げができないというふうに思います。

 そのためにも、やはり、これを引き上げたときにどういう影響があるのか、影響といいますか、むしろ地方の中小企業に対する悪影響といったらいいと思いますが、その点について、事務方の方に、そういうデータはないのかと。

 特に、地方の中小企業の関係の皆さんが、最低賃金がいきなり八百円になったら、これはとてもやっていけないということを方々で言われているのは事実でございます。私は、ぜひ何とか少しでも引き上げができるようなことをやれないかというふうに思っている一人でありますから、この点について申し上げているんですけれども、こういったことをやるときに、特に影響を受けそうな地方の、それも中小企業の、特に全国一番下のレベルの最低賃金のところ、低いレベルのそういった県の中小企業について、ざっくりしたデータでもいいのでそういうデータはないかと言ったら、いや、まだ今ないんだということでございました。

 こういう施策をやっていく上においては、やはりまずデータが必要だと思いますが、地方の中小企業の最低賃金を引き上げた場合、例えば、今全国平均は七百十三円でありますが、では、これを五十円引き上げたらどういう影響があるか、百円引き上げたらどういう影響があるか、それについてのざっくりしたデータでもいいですから、それについては、今はないということでありましたけれども、早急に調べるということでよろしいですか。大臣、お答えください。

長妻国務大臣 まず、時間給が八百円未満の労働者というのは全労働者の一割弱、八・八%でございます。そして、企業の規模別でいうと、五人から九人の従業員を抱える企業のうちの一六%が八百円未満の労働者を抱える。十人から二十九人の従業員を抱える規模の企業では、その企業のうちの一四・七%が八百円未満の労働者を抱える。

 地域別の統計もございまして、八百円未満の労働者の割合というのは、沖縄が三二・四%、宮崎県が二四・二%、青森県が二三・七%ということで、高い状況であります。東京都は一・三%ということでありますので、賃金はかなり格差がある。九州、東北地方などが厳しいといいますか、八百円未満の労働者の割合が高い。

 業種別には、小売業、一般飲食店、食料品製造業が八百円未満の労働者が多いのではないかというような分析をしておりますので、こういうところにどういう影響が出て、あるいは影響をカバーする支援策というのはどういう支援策が必要なのかということについて、二十二年度予算において所要の予算約一億円を調査の費用として計上しておりますので、そのお金を大切に使って、賃金実態や引き上げのための課題についても、中小企業、地方自治体の調査をしていきたいというふうに考えております。

大村委員 やはり、今言われた、地方の中小企業に影響が大きいというのはだれが見てもわかるわけでありますから、この施策をやっていく上においては、やはりデータを、それも具体的なデータを集めて、把握して、そしてそれを前提に議論をしていかなきゃいけないというふうに思います。要は、決してそれを、えいやで、見切り発車でやってはいけないということだと思います。

 そういう意味で、今、データを、予算もとってというふうに言われましたが、では、これは二十二年度予算で、今年度ずっと一年ぐらいかけてやって、成果が出てくるのは今年度末です、来年度の頭ですというのでは、一年議論がそのまま寝ちゃうわけですね。ですから、私は、これをぜひこの場で確認したいと思うんです。

 その調査をできるだけ早く前倒しにやっていただきたいということ、そして、やっている間でも、できるだけ早い段階で、その一部でも、ざっくりしたものでもいいから、どこかのスポット、例えば何々県をモデルにしたらこうでしたとかいうものでもいいので、できるだけ早く示していただきたいというふうに思うんですが、ぜひ早く示していただきたいということと、その点について、もし可能であれば、いつぐらいまでならざっくりしたものでも示せるかということについて、今ここで長妻大臣、お答えいただけますか。

長妻国務大臣 やはり一番重要なのが現状把握能力だというふうに申し上げておりますので、その現状把握をするための調査でございますが、できれば概算要求にも結びつけたいわけでございますので、夏ぐらいには中間取りまとめということで発表できるように取り組んでいきたいと思います。

大村委員 夏というのはいつごろですか。夏といっても幅がありますけれども。

長妻国務大臣 概算要求に間に合うとすれば、概算要求がこれは前政権と多少時期が前後しましょうが、八月以降だというふうに思います。

大村委員 私が事務方からもらったこの資料だと、六月ぐらいから郵送調査をやって、調査結果は七月中旬ごろまでに取りまとめて概算要求に反映させる、こういうふうに書いてあるんですけれども、それを八月と言われたのは、この七月中というのと八月、この違いは何かあるんですか。お答えいただけますか。七月中でできませんか。今言われたことがちょっと違うので聞いているんですけれども。

長妻国務大臣 そういうスケジュールで当初進んでおりましたけれども、今、若干事務的なおくれが出ているというふうにも聞いておりますので、八月以降というような御答弁を申し上げたわけであります。

大村委員 要は、私が説明を受けたのは七月中というふうになっているんですが、こういう説明を受けて、紙に書いてあるんですけれども、それがまたきょうの答弁で一カ月ぐらいずれるわけですか。それは何か理由があるんですか。

 いや、これでぐちぐち聞く気はありませんが、いただいたものと違うので、委員会の答弁とこれが違うというのは、ちょっと僕はどうかなと思いますが。このほんの一週間か二週間で、連休明けにこれを聞いたんですけれども、そんなものでそんなに違うものですか。いかがですか。もし何か事務方であれだったら、よく聞いてお答えいただけますか。

長妻国務大臣 今私が申し上げたとおりでございまして、安全を持ってその時期を申し上げるとすれば八月以降というふうに申し上げております。それは、それより以前に集計がまとまれば、もちろん、まとまり次第公表していくということであります。

大村委員 むしろ、これはできるだけ早く、どこかのモデル的なところでもいいからやはり示していただきたいということを申し上げたいと思います。

 資料をもらって確認のために答弁を求めたら違うなんということは余りよろしくないというふうに思いますから、そこはぜひ、こういう調査をかけるのだったらきちっとタイムスケジュールをつくって、それも概算要求に間に合わせるのだったら、できるだけ早くやるということを強く申し上げたいと思います。これはまた、いずれかの機会でフォローしたいと思います。

 我々も、とにかく最低賃金はできるだけ引き上げていきたいというふうな思いがあるから聞いているので、ただ、そのロードマップをきちっとやらないと、これはこの後聞きますが、今回の派遣法の規制強化よりも、地方の中小企業にとっては、これをいきなり民主党のマニフェストにあるように八百円とか千円に法律の方で強制的に引き上げるなんてことをやられたら、地方の中小企業はもうバンザイだ、非常にその副作用が大きい、悪影響は大きいんだというふうな声がどんどん来るから聞いているので、ぜひその点について調査をしっかりやって、それも早く早くやってお示しをいただきたい、このことは強く申し上げておきます。

 それでは、派遣法の方に参りたいと思います。

 派遣法を同僚議員からも何点か質問をさせていただきました。まず一つ、労働契約の申し込みみなし規定ということについてお聞きをしたいと思います。

 今回の法律改正の中、幾つかの論点があるわけでございますが、今回、違法派遣に対してこの労働契約の申し込みとみなすという規定が創設をされました。

 法制度的なつくりからして、ヨーロッパの方にもある、フランスとかドイツにもある、そういったところは、いわゆる派遣というのはむしろ職業紹介のそういう法制だから、このみなしというのがそのまますんなりなじむんじゃないか、しかし日本の場合は、これは法律が労働者供給事業のつくりになっておりますから、これで申し込みとみなすというのはちょっと無理があるんじゃないかというような、まあ、法制的な見方は現にあると思います。

 あると思いますが、それはそれといたしまして、私は、むしろ現場の方から、やはり、労働契約のみなし規定を置かれることによって、いわゆる限界線のところ、限界ラインのところでどっちに行くかわからない、したがって、そんなことがいきなり、県の労働局に入ってこられて、いや、これは違うぞ、違法派遣だから契約の申し込みをしたことにみなすということに当たるぞというふうに言われたら、かなわないと。だから、もう逆に、雇用といいますか、この派遣の受け入れをやめるんだというようなところが出てくるという懸念を言われる方が結構おられます。

 例えば、派遣期間の三年を超えてもやれるという、期間の制限のない二十六業務の派遣で、これは、二十六業務の派遣の中でその付随業務が一割を超えると、そうでない、二十六業務ではないということになるわけでございまして、それが例えば事務用機器操作など一般事務と厳密に区分することがなかなか微妙なところで一割を超えていた、超える超えないというのは本当に微妙なところだと思いますが、そういったところがあると、派遣先の方では適法と認識していても、いきなりみなしだというふうにされる。

 それでは、そういう可能性があるのだと、もうおいそれと派遣を受け入れていられない、この改正法の施行前にそういった派遣を受けるのをやめる、むしろそういう、雇用の場が失われるというような懸念を言われる方がおられます。ですから、直接雇用のこのみなし規定がかえって雇用を不安定にするのではないかというふうにも言われております。

 私、この点についてお聞きしたいのは、このみなし規定というのは、その会社にとっては、いきなり労働当局が来て、これはみなしだ、直接雇えというふうに言われて指摘されてはたまらぬ、だから、その線引きが不明確なら、もうこれ以上派遣を雇えないというようなことが起きるんじゃないかというふうに言われています。

 その線引きについて明確にできるのかどうか、この点についてまずお聞きしたいと思います。

長妻国務大臣 まずは、これまで、専門二十六業務というのがどういう業務かというのは、規定はもちろんありましたけれども、その中身についてわかりにくいという御指摘もありましたので、ことしの二月八日に通知を出させていただいて、この二十六業務についての解釈を詳細に出させていただきました。例えば、事務用機器操作については、「文書作成ソフトを用い、文字の入力のみならず、編集、加工等を行い、レイアウト等を考えながら文書を作成する業務」などなど、そういう数項目に及ぶ、それぞれの一定の定義を出させていただきました。

 そして、そのプランに基づいて、ことしの三月及び四月に、全国で八百九十一件の指導監督を実施しましたけれども、これについていろいろな違反がございました。そして、企業からの個別の問い合わせというのもございましたので、今月の二十六日に、質疑応答集として、さらに詳細な応答集をまとめまして、都道府県の労働局に出させていただきました。

 この質疑応答集を踏まえて派遣元事業所や派遣先で対応いただければ、法違反になるかどうかについて一定の解釈というのができると思いますので、これを広く周知して、適正に専門二十六業務派遣が行われるように指示をしていきたいというふうに思います。ちなみに、この質疑応答集は、本日の朝十時に厚生労働省のホームページに掲載をいたしました。

大村委員 要は、この二十六業務の応答集とかいろいろな疑義応答集、それから、そもそもの派遣事業の業務取扱要領というこんな分厚いもの、その解釈通達というのはどのぐらいあるんだと言ったら、こういうのが次から次へと出ていますと。こんなに厚いんですね、こんなものとこんなもの。要は、こういったものを一々一々つくっていって線引きをする、でも、これは人間のやることですから、さらにさらにマージナルなところがいっぱい出てくるわけですね。

 ですから、そういう意味で、そもそも派遣事業の、これだけの解釈通達がないと運用できない、それも、いきなり県の労働局がどんと来て、こらこら、これは違うぞというようなことで、違法だなんて言われるようなことがあってはたまらぬという中で、今回のみなし規定というのがさらにこの解釈通達をまたふやし、そしていわゆる裁量行政をふやしていくんじゃないか、極めてその扱いが不透明じゃないかという声が、派遣といいますか、現場で実際派遣労働者を受け入れている企業さんの方でそういう声が出ているのは事実でございます。

 そういう意味で、私は、今回のみなし規定の制度、法のつくり方もやはり若干問題があるんじゃないかと思いますし、それ以上に、これだけの通達をやって、それでもまだ線引きが不明確だ、こういう、いわゆる行政がこれだけの解釈通達をつくり、それでもまだこれからふえていくだろう、そして、線引きが難しい、裁量行政じゃないか、そういったものをこれだけの行政コストをかけてやっていくということが本当にいいのかというふうに思えてなりません。

 今回の、こういった行政のツールがなきゃできないというこのあり方について、長妻大臣、いかがですか、こういったのは適当じゃないと思いませんか。

長妻国務大臣 これは、もちろん一つの事業所で、専門二十六業種、全部二十六種類を一つの事業所で受け入れているところはないわけでございまして、そこが受け入れている職種について、詳細な定義というかそういうものをよく読んでいただいて、まずは自主的にそれを遵守いただく。そして、それについて違反等があればみなし規定ということになるわけでありますけれども、それについても、当然その違反というのが確認をされればの話でありますので、まだ確認もしないうちにそんなことを御指示するということではもちろんございませんので、まずは自主的に、そういう枠組みの中ということを御理解いただき、それを守っていただくというのが前提であります。

大村委員 私が聞きたいのは、要は、行政が、特に労働基準監督署、労基署、それから労働局といったところが個々の企業に、特に今回、派遣の場合は労働局が個々の企業にお聞きをしたら、五年に一回は行くと。派遣事業者に行って、受け入れているところにも行くということで、指導をするんですというふうに言っておられましたが、こういった解釈通達と、それから全国の労働局の需給調整課ですか、そういったところで常に目を光らせていないと、この制度は運用できない。

 膨大なコストと、膨大な、まさに人間がつくるこういった基準を微に入り細に入りつくっていかなきゃできない、これだけの行政コストをかけなきゃできないというこの制度というのを、私は、長妻さんがずっと行政改革の点で、やはりこういう仕事が、本当に仕事のための仕事じゃないか、こんなやり方がいいのかというのをよく言っておられたというふうに認識しております。

 この規定、制度を法律解釈通達に沿ってやるんだということの答弁じゃなくて、そもそも、こういうことをやらないと運用ができない、それでもって派遣の、受け入れているところ、派遣元、派遣先も含めて非常に、労働省の解釈通達で右へ左へ右往左往しているというような実態があります。そういった点について、いかがですか。こういうのは改善しなきゃいけないと思いませんか。その点についてお答えいただけませんか。

長妻国務大臣 専門二十六業務というのは、派遣という性格上、これについては例外的に派遣の原則禁止を適用しないというものでありまして、それは雇用にも資するし、事業主の事業活動にも資するということであります。

 そして、この取り締まりといいますか、今おっしゃっていただいた需給調整指導官という方々、労働局の職員がチェックをするのでありますけれども、ただ、これは限られた人数でありますので、本当に厳密にやろうとしたら、一事業所に一人張りつけるぐらいの話でありましょうけれども、行政ですべてやってしまうと、これはもう公務員が幾らいても足りません。

 原則は、基本的に、ああいう細かな定義を出させていただいて、自主的にそれを守っていただくということがまず原則でありまして、そこで違反が疑われる事案が発見されたときには指導する、こういうようなことで、まずは自主的にそれを遵守いただくということで、このみなし制度というのは、これは要望もかなり多くいただき、労使ともに合意をしてつくらせていただいた制度でありまして、問題のあるような派遣であれば、派遣先がその派遣の労働者に対して雇用の申し込みをしたとみなすと。ですから、派遣の労働者は、本人が同意すればそこでそのまま雇われる、そういう非常に重要な制度、今回のお願いしている法案の根幹の一つだと私は思っております。

大村委員 いやいや、このみなし規定の話を聞いているんじゃなくて、みなし規定の話は、法律の仕組み方はちょっと私も疑問があるということは申し上げましたが、そうじゃなくて、その制度自体のマージナルなところ、限界のところが非常にわかりにくい。そもそも、この派遣制度自体の、これだけのものをやってつくらないと運用できないということについて、私は、やはり改善の余地が大いにある、余地どころか改善しなきゃいけない、もっともっとわかりやすく透明にしなきゃいけないということを申し上げているのでございます。

 その点について、いわゆる二十六業務じゃなくて、派遣制度そのものについてこれだけの通達をつくって、それも、毎回毎回、聞かれちゃ変え、聞かれちゃ変え、全国に担当部署を置いて、派遣業者をぐるぐる巡回して回っていってようやく、モグラたたきじゃありませんけれども、ぽこぽこぽこぽこ、だめよ、これはだめよと言って回っていかなきゃ運用できない、こういう制度のあり方というのは、私はちょっと、これはやはり行政コストの問題としていかがなものかというふうに思わざるを得ません。この点についてもう一度聞きます。これについて改善をする必要があるというふうにお思いになりませんか。

 近藤政務官、済みません、もう結構です。ありがとうございました。さっきのところでお帰りいただかなきゃいけなかったのを、済みません、失念をしておりまして。ありがとうございました。また中小企業政策をしっかりやってください。

 それで、最後のところでございますが、こういう派遣制度のあり方、これについては改善をしなきゃいけない、もっとわかりやすく透明で使い勝手のいいものに派遣制度のあり方というのを見直すべきだ、改善をすべきではないかと思いますが、この二十六業務ということに限るのではなくて、こう思いますけれども、その点についてはいかがですか。一言で簡潔にお答えください。もう時間が来ているので。

長妻国務大臣 これは、専門二十六業務というのは、さっき申し上げたニーズがあるわけでございますので、これについて、本当に自主的に事業所がQアンドAも見ていただいて、それを守っていただければ、極論すれば取り締まる人は要らなくなるということでありますが、当然そういうことにはなっておりませんので、必要最小限の四百三十一人の需給調整指導官ということでありまして、この数が多いか少ないかはいろいろ議論はいただいたところでありますけれども、必要最小限の人数でそういう違反が疑われる事案について効果的に指導するということで、大前提は、自主的にそれを守っていただくということであります。

大村委員 そういう観点で聞いているのではなくて、私は、今回、こういう派遣法の運用が、運営がここまでやらなきゃいけないという、この制度のあり方といいますか仕立て方がやはり問題だろうと。要は、予測可能性がない、民間にとって予測可能性がない。行政が白と言うのか黒と言うのかよくわからない、聞いてみなきゃわからない。聞いても、前は白だったのに今度は黒になったとか、そういう話をよくよく聞くんです。

 ですから、その一環としてみなし規定を入れた場合、その限界線がどうもぼやけている、そういう状況にもかかわらず、このみなし規定というきつい規定を入れると、ますます派遣制度というのが、そういう方向で使い勝手が悪い、そして裁量行政の何か見本みたいになっていくんじゃないか、そういう声を聞くものですから、そもそものあり方として改善をしていただきたい。

 そして、そういう中でいくと、このみなし規定というのは、今回これを入れるのはいかがなものかということを申し上げているのでありまして、これは引き続き申し上げていきたいと思いますし、今回、規制の強化のことでありますが、派遣制度の、こういう通達から陣立てからしないと運用できないということをそもそも見直す必要があるということを強く申し上げておきたいと思いますし、これからも申し上げていきたいと思います。

 そこで、厚生労働省が三月十八日にホームページに公表したもので、規制影響分析書というのがございます。これは、新たな規制といいますか、規制の新設改廃をした場合に、総務省の行政評価局にこれを提出して、ホームページにアップをするというふうに聞いております。

 三月というふうにお聞きをしておりますが、この派遣法の規制について、今回この規制をすることによって、「便益及び費用の分析」というのがございます。特に、「想定される費用」というのが規制影響分析書の二枚目にあるわけでございますが、「想定される費用」のところでございます。遵守費用、これは法律を守るために必要な費用ということでありますが、そこには休業手当等の費用が発生する、いわゆる派遣先が確保できない場合でも、派遣労働者の雇用を維持するために休業手当等の費用が発生するということでございますが、法律を守るために規制強化して発生するというのは休業手当だけですか。これしか想定していないということですか。ほかにはありませんか。お答えください。

長妻国務大臣 これは今おっしゃっていただいた規制影響分析書ということで、労働者派遣の原則禁止の規制ができたときのコスト、想定される費用ということでありますけれども、これについては、派遣元事業主は休業手当等の費用が発生するというふうに書いてございまして、代表的なものとして休業手当というふうに書いたわけであります。

 それ以外に想定されるとすれば、一年を超える見込み、常時雇用ということを申し上げておりますので、能力の引き上げが必要になることから、派遣元事業主が教育訓練をする際に生じる研修の費用などもある可能性がある、あるいは、派遣元事業主が派遣労働者を常時雇用するためには派遣先を常に確保しておく、派遣先が契約が切れそうであれば次の派遣先も確保しておくということも必要となりましょうから、新たな派遣先を探すための費用等々、あるいは、登録型派遣の原則禁止に伴って、派遣元事業主が派遣労働者を解雇する場合に必要となる解雇予告手当というのも遵守費用に含まれるというふうにも考えるものであります。

大村委員 今回の法律が施行されて、これは同僚議員からもずっと質問がありました。私もこの間、決算行政監視委員会でも質問をいたしました。やはり禁止の対象になる方が昨年度の調査では四十四万人、今回は半分ぐらいに減ったというふうなことも聞いております。

 いずれにしても、何万人の方が失業の危機、いわゆる働くことを禁止されるわけですから、当然そこで働いていた方は、全員が全員、すぱっとはまれば、次のところに行ければいいわけでありますけれども、そうでない可能性が非常に想定される。当然失業の危険性といいますか可能性もあるというふうに思われるわけであります。

 これはあれじゃないんですか、この法律を施行し法律を守るために、これは休業手当と書いてありますが、失業した場合の失業手当とか、そもそも失業が発生するということがこの遵守費用に位置づけられるのではないんですか。この点はいかがですか。失業手当は入りませんか。また、失業そのものがこの費用に入りませんか。

長妻国務大臣 これについては、今回、派遣の規制の対象者となる方が前回の調査よりも、これは景気の影響というのが大きいと思いますけれども、大幅に減ったということでございまして、規制の対象となる方が全部仕事がなくなるということはもちろんございませんし、我々としては、それが直接雇用に転換される、あるいは派遣元事業所が常時雇用、一年を超える見込みのある雇用に変えていただく、こういうような手はずを支援させていただいて、そういうことがないように努めていきたいと考えております。

大村委員 いや、努めていきたいということではなくて、同僚議員も申し上げておりましたが、私もこの間の委員会でも申し上げましたが、施策をやる場合に、やはりこういった可能性がある、こういった悪影響があるということが予想されるのであれば、それに対する対策を講じていかなきゃいけないと思うんですね。これをやっても全然悪い影響はないんだというふうに言ってしまったら、もう後の対策は出てこない。

 ところが、民間の有識者とかいろいろな方は、この規制によって失業がふえる、雇用が失われる、そういうことを、ありとあらゆるところの評論家そしてまた有識者の方が、学者の皆さんも含めて、言っておられるわけでございます。そういう意味で、役所が出したこの規制影響分析で、法律を守ることによる費用に失業手当とか失業というのが全然入っていない、私はまさにこれは強弁じゃないかというふうに言わざるを得ないと思います。

 では次に、行政費用について聞きます。

 行政費用は、その下にありますけれども、派遣先とか派遣事業者、派遣労働者に対して周知するための費用が発生するというふうに書いてありますけれども、これは周知費用だけですか。私、端的に聞きますよ。要は、派遣で禁止される方々に別の仕事に移っていただく、そういうときに、行政は当然、職業紹介とかハローワークとかそういったところを活用して次のところに行っていただくということをやるんじゃないんですか。行政費用にハローワークでこういう方々を紹介するということは一切入らなくていいんですか。これは端的にお答えください。

長妻国務大臣 これは、分析書には、「行政費用」として、「派遣元事業主、派遣先及び派遣労働者に対して周知するための費用が発生する。」とありますけれども、これについて、追加的に雇用対策というのが必要となる場合もあるという可能性はあります。そのときに、今回の規制の施行によって、先ほど申し上げましたように、すぐに生じるものではないということで、この費用については行政費用としては挙げなかったということであります。

 先ほどから申し上げておりますように、これは公布から三年以内の施行ということで、製造業の原則禁止、登録型派遣の原則禁止、五年の猶予がありますのは登録型派遣の一般事務の原則禁止ということで、その期間の中で、基本的には我々は、そういう労働者が、何か解雇あるいは規制を原因とした取り扱いがないように、その一定の期間の中できちっとそれを現状把握して、注視して、その方々が規制によってそういう状況になるような場合については、追加的に雇用対策、今も補助金がございますけれども、それを上乗せして強化する等々のことが必要になる可能性はあるというふうに思いますけれども、今、確定的には言えないということで、ここには挙げていないということであります。

大村委員 ちょっと強弁だと思いますね、それは。要は、あなたの説明だと、ここに書いてある、とにかく法律の周知だけが行政費用でとしか言われない。三年猶予期間があるんだからその間に、今、あなたの言い方だと、その間に自分で仕事を見つけてこいというふうにしかとれないんですね。

 私は、そこで現に働いている人がいる、しかし法律でもってこの働き方は禁止される、では、猶予期間があっても、その間に、ではそういう人たちにやはり次の仕事に移っていただこう、当然、厚生労働省には、ハローワーク、職業紹介のところがあるわけですから、その職業紹介がこういった機能を使って、そういった方々に新しい職に行っていただこうということになるんじゃないんですか。

 それはしないんですか、そういうのは。何か、そういう可能性があったらそのときに追加対策を考えますという、非常に私は、これはちょっと問題だというふうに言わざるを得ません。要は、この規制で働き方を禁止しておいて、その後のことを考えないということをはしなくも今言われたというふうに言わざるを得ないわけでございます。

 先ほどの同僚議員の質問の中でも、いわゆる四十四万人の方が、この働き方が禁止された、そのときの、その人たちが失業したらどうなるのか、そのシミュレーション、予測は、それについても全くお答えにならない。現に、その人たちは失業しないんだとしか言われない。そんなことないですよ、現にそこで働いているんですよ、その方々は。働いている方々の働き方を禁止しておいて、その方々がどこに行くかを全く、予測も、シミュレーションも、対策も打たない。

 それから、厚生労働省が発表しているこの資料では、行政費用は周知費用だけだと。ハローワークというものがありながら、そういったもので職業紹介をしていくという費用を全く入れない。私は、これは、ただ単に規制を強化して、あとはもう自分たちで自由にやれというふうに言っているのと等しいと言わざるを得ません。やはり、そこで働いている人たちが、きちっとそのまま、引き続き職が得られるように、雇用を確保できるようにやっていく必要があると思います。

 そういった点、まだ不透明でありますから、引き続き、この点についてはこの委員会でしっかりとたださせていただきたい。来週の強行採決ということが言われておりますが、そんなことは絶対に認めない。さらに引き続き、重要広範議案でありますから、この後の理事会で、総理の出席も、そして参考人の質疑もしっかりと要求をしていきます。

 以上です。

鉢呂委員長 次に、坂口力君。

坂口(力)委員 半日間休ませていただきまして、委員を交代してもらっておりましたら、出てまいりましたら委員長が交代になっておりまして、世の中の移り変わりの早さを感じるわけでございます。

 前委員長も、非常にまじめに、よくおやりをいただいたというふうに思っております。政治家というのは、病気になりましても病気でないと言い張らなきゃならないときもありますし、病気でなくても病気だと言わなきゃならないときもあるし、なかなか複雑なものでございますが。

 委員長、鉢呂委員長は国対委員長もお務めになりましたベテランでございますしいたしますから、現在の国対委員長が何と言おうと、あるいは幹事長が何と言おうと、毅然としてひとつやり抜くということでよろしくお願いを申し上げたいと思います。

 さて、委員長に対する小言はそれだけでございますが、けさからこの派遣法に対するファクスが、物すごい数のファクスが来るわけですね。私の部屋のファクスは古いものですから、詰まって動かなくなるほどたくさんのファクスが来る。非常に関心が深いんだ、それだけ関心が深いんだというふうに思っております。

 中を拝見してみますと、いろいろですけれども、今回の派遣法というのは中身が抜け穴だらけだ、これでは派遣法の改正にはならないという趣旨のものもあれば、あるいはまた逆に、この改正法をやってもらったら我々中小企業はやっていけなくなるという逆の御意見の方もありますし、反応はさまざまでございます。

 そうした中でございますので、これはしっかり議論をやっていかなきゃならないというふうに思いますが、確かに、今回の法律案を見ておりますと、表面、一通り見ただけでは、これはかなり改正をされた、今までのものに比較をいたしますと非常に改正されているというふうに思うんですが、しかし、よくよく見るとそうでもない、抜け道も確かにあるということも事実でございます。

 私は、どの法律を改正するときもそうだと思うんですが、この法律も、法律の中だけを見ておりますと、それは一歩前進の面も多いというふうに思いますけれども、しかし問題は、働く人たちの労働環境、労働条件というものが改善をされるかどうかということが一番の中心だろうというふうに思います。

 それで、この派遣法という法律の中だけではなくて、もう少し広い範囲で見たときに、派遣法が厳しくなって、そして余り派遣切りだとかそういうことができないようになる。そうすると、雇う側からすると、この派遣の中だけではなくて、どんな雇い方を今度はしてくるのだろうかということを考えましたときに、一番考えられるのは、一つは、請負業と派遣業との間が一体どうなるのかということでございます。

 かつては、派遣業がなかったときには皆、請負業だったわけですね。どこの自動車の製造工場に行きましても、それぞれの部分部分で何々組と言われるような請負業の人たちがそこへ入ってきて、そしてお仕事をなすっていた。偽装だとかなんとかというようなことが言われたりするようになってきて、そして派遣、派遣という働き方ができてきて、派遣の方にかなり移っていったと思うんですけれども、移りましたら移ったで、今度は派遣のいろいろの問題点も出てきた。

 今度は派遣を、もう少し権限を圧縮すると申しますか、派遣の範囲を狭めて、余り派遣ができないような形にしていこうということになりますと、やはり、またもとの請負業の方に戻っていく可能性があるのではないか、こういうふうに実は思っているわけです。

 それで、きょうは初回でありますから、余り具体的なことを申し上げるのではなくて、大枠のところのお話を少しさせていただきながら、そして御意見をお伺いしたい、こういうふうに思います。

 請負業というのは、外でやっておりましたらこれは下請ですね。下請企業ということになります。しかし、企業の中へ入ってやっておりましたらこれは請負業という感じになる。外と中で分けるだけでは、それは分けられない部分もありますけれども、中でやっている場合には大体、請負業ということでやっていたケースが多い。

 そうしますと、今まで派遣でおやりをいただいていた皆さん方が、派遣は厳しくなるから、今度はまたもとの請負業だというので、請負の方にかわっていかれる。請負に戻られた労働者の皆さん方は、派遣のときと一体どれだけ労働環境がよくなったのかといえば、これはなかなか、そうはよくならないんだろうというふうに思うんです。

 そこで、きょうお聞きしたいのは、中でやっている請負業とそれから派遣とを比較したときに、どんな違いがあるのか。

 例えば正規雇用率というのは、これは派遣業と請負業とどんな違いがあるのか、あるいは平均手取り賃金というのは、これは請負業と派遣業と一緒なのか、違うのか、そういうことを少しお聞きしたいと思うんです。

 そうでないと、派遣の改正案を出して、ここはでき上がったけれども、しかし、派遣の外で今度は仕事をおやりになる方が全然よくならないというのでは、これは働く皆さん方にとって前進にならないわけでありますから、そこのところはこれからどうしていくかという大きな問題があるというふうに思っておりますので、ここは、きょうは大臣、副大臣に、いずれでも結構でございますから、それぞれ、得意とするところは得意とする方にひとつお答えをいただくということで結構でございますので、お答えをいただきたいというふうに思います。

 まず最初に、派遣業と請負業の間に、先ほど言いました正規雇用率、これはどれぐらい違うのか、違わないのか、あるいはまた、請負業の場合にはなかなか統計のないものもございますから、比較にならないのか、そうしたことも含めて、ちょっとお答えをいただきたいと思います。

細川副大臣 坂口委員の御質問にお答えしたいと思いますが、派遣の規制が強くなっていくと派遣から請負の方に移動するのではないか、移動したときに派遣と請負の関係でどのように違うかということで、まずは、派遣業と請負業の間での正規雇用率がどう違うのか、こういうことの御質問でございますけれども、結論から申し上げますと、正規の雇用率というのは把握をいたしておりません。まことに申しわけないと思いますが。

 というのは、正規雇用というものについては法律上規定がなくて、そういうことで派遣と請負の中で正規の雇用ということでの統計というものがございませんので、まことに申しわけないんですけれども、それについての把握はしていないということでございます。

坂口(力)委員 いえ、断っていただく必要はないんです。これは前からなかったんです。請負業というのは、言ってみれば一般の企業ですから。だから、請負業だけの法律というのは存在しないし、一般企業としての各種労働法規がかかっているだけでありまして、請負をしているところだけの統計というのはなかなかとりにくいことも事実なんですね。

 インターネットで調べてみますと、例えば電機ですとか自動車ですとか、特別な部分の企業体のところについての統計というのは、それぞれおやりになって、出しておみえになるところがあるんですね。ですから、ある程度はあるんだろうというふうに思いますけれども、はっきりしたところが、とにかくここはわからない。

 だから、派遣業で正規雇用の人がどれだけあったのか、派遣業を厳しくしたら、今度はそれが、働く人たちは請負業に行って、そして、そこでよくなるのかどうかということも、今までの統計がないということになりますと、これはなかなかつかみにくいということも事実でありますから、ここは何か特定してもいいと思うんですがね。自動車産業なら自動車産業、あるいはもう少し広めて製造業なら製造業、あるいは電機製造業なら電機製造業、それは狭めてもらってもいいと思いますけれども、そこで一体どうであったのかということは少しやはり把握をしてもらわないと、今回の改正案で結果がよくなるのかどうかということがつかみにくいということがあります。

 これは二〇〇七年の七月に出ております製造業請負事業の適正化に向けてのガイドライン、これは厚生労働省がお出しになったんだと思うんですが、出ております。

 この中にもいろいろなことが書かれておりますが、この中に書かれておりますことは、請負労働者の雇用の安定と待遇の改善を図ることが大切である、請負事業主向けのガイドラインと発注者向けのガイドラインが策定されるといったようなことが書いてあって、そして、請負労働者には若年労働者が多いこと、それで製造現場で大きな役割を果たす働き方をしていること、これら製造業の請負事業で働く若年労働者が、技術、技能を蓄積しなければならないといったようなことが書いてあって、そうして、この請負労働者はそれ以外の労働者に比べて早期に離職に至る傾向が強い、短な期間でやめていく人たちが多いということが出ている。

 だから、ガイドラインというのも出して、しっかりやるようにということなんだろうというふうに思うんですが、その離職が多いというのは、やはりそこに労働条件が悪いということがあって、やめていく人が多いんだろうというふうに思うわけです。

 ですから、少し、請負業に対する新しいガイドラインも出されるというお話も聞いたことがございますが、その点をしっかり踏まえて、新しい法律ができたらどうなるかということがわかるようにしていただかないと、あるいはまた、少なくとも過去にはどうであったかということを把握してもらわないと、この派遣法を改正するのがいいのか悪いのかということの結論がなかなか出てこないということでありますので、ひとつ、そこはしっかりおやりをいただきたいというふうに思います。

 もう一つ、派遣業労働者と請負業労働者は、平均の手取り賃金の差というのはあるんでしょうかね。これは、手取り賃金というのは同じぐらいなのか、それとも違うのか。その辺は何かありますか。

細川副大臣 派遣業と請負業者の賃金の違いについての先生のお尋ねでございますけれども、これはちょっと古い統計で失礼でありますけれども、平成十七年の調査でありますが、製造業の請負で働く労働者については、時給については千十九円、平均月額給は二十万五千円というふうになっております。

 一方、そのときの調査におきまして、派遣で働く労働者については、その賃金について、平均的な時給は千二十二円でありまして、平均月額給については十八万九千円ということになっておりまして、多少違いはありますけれども、労働条件で大きな違いはないのではないかというふうに考えております。

坂口(力)委員 この表は私ももらったんですが、この時給額で見ると、一時間当たりで見ますと、派遣の方は千二十二・一なんですね。請負の方は千十八・七なんですね。若干の違いがある。これも派遣の方が高い。ところが、月収で見ると、派遣が十八・九万円で、請負の方が二十・五万円で、これは一体何を意味するのかよくわかりませんが、時間単位で見ると派遣の方がいいけれども、一カ月の給料で見ると請負の方がいいという結果になっていて、いずれにしても、大きな差はありませんから、差がないと言った方がよろしいのではないかというふうに思います。

 そういたしますと、これは、賃金におきましても、派遣にお見えになった皆さん方が、派遣業をやめたところが請負業になって、請負業になったとしても、賃金がえらい上がるわけではなさそうだということが言えるのではないかというふうに思います。

 もう一つお聞きしますが、派遣業の方のマージン率というのが問題になりまして、派遣をおやりになっているところが、いわゆるピンはねというと言葉は悪いですけれども、派遣先から受け取った額の中からどれだけを派遣元が取って、そして働く人たちにどれだけ渡しているのかということが議論になって、いわゆるマージン率というのが問題になる。

 これは、派遣の方は大体出ているというふうに思うんですが、請負の方は、これはどれだけかということがわかるのか、わかっていないのか。もう一度御答弁いただきます。

細川副大臣 派遣と請負につきましては、雇用の形態というのが全く違う形態でございまして、これまでいろいろ問題になってきたのが、派遣業におきます派遣先からもらった料金と派遣労働者に対する支払いとの差がどういうふうにあるのかということでマージン率が大変問題になって、そのことについての調査はございますけれども、この請負業につきましては、そういう意味で、これまでマージン率というような形で把握したことはございませんので、どういう差があるかということはちょっと比較ができないところでありますけれども、この派遣につきまして、一般労働者派遣事業と、それから特定派遣事業についてのマージン率は少し違っておりますけれども、このことについては御説明しましょうか。

 では、御説明いたします。

 常時雇用をしている派遣業、これは特定労働者派遣事業でありますけれども、このマージンは八千二百五十五円、派遣料金の三五・四%。それから一般労働者派遣事業、これは五千九十四円でありまして、派遣料金の三一・二%のマージン率になっているところでございます。

坂口(力)委員 そうしますと、今お聞きしますと、派遣の方は三五・四%のマージン率、一般労働者のもので三一・二%、三〇%台前半から真ん中ぐらいなところのマージン率だということがこれでわかるわけですけれども、同じようなところで働いている請負業のところ、これは働き方が違うというふうに言われます。

 しかし、自動車産業なら自動車産業の中で働きます場合に、そうしますと、そこで必要な機械器具等は、いわゆる請負業をする方が持たなければならないとか、お金の用意をしなきゃならないとかいうことは、それはあるでしょう。しかし、派遣先にしろ、請負先にしろ、その企業から一人当たり幾らもらうというのは、大体同じようにもらっているんだと思うんですね。

 それで実際、どれだけ渡しているかということがあるわけでありますから、請負業の方もマージン率というものはあると思うんですね。だから、そこがわからなければ、派遣業を厳しくしました、そうしましたら請負業になりました、請負業に行きましたらマージン率がさらに下がりましたというのでは、働く人たちはたまったものではない、こういうことになりますね。ここも少し私は調べてもらわなきゃいけないと思う。

 だんだん時間がなくなってきましたので、もう一つだけお聞きしておきますが、今度は社会保険への加入ですね、社会保険への加入が一体どうなのか。

 これは、派遣業の方は多分お調べになっているというふうに思いますが、請負業の方も、請負業の方はそれぞれの独立した企業でありますから、本来ならば全部入っていなきゃならないわけでありますけれども、入っていないところもあるということが厚生労働省から出されましたこの資料の中にも指摘されておりますので、多分そういうところもあるのではないかというふうに思います。

 ここに比較するものがあるのかないのか、もうちょっとだけ答えてくれますか。

細川副大臣 製造業の請負で働く労働者につきましては、これは十七年の調査でございますけれども、社会保険への加入状況について申し上げますと、雇用保険は九一・二%、それから健康保険は八二・五%、厚生年金については七六・〇%となっております。

 一方、そのときの調査におきまして、製造業のみじゃなくて全体ですけれども、派遣で働く労働者については、雇用保険は八八・七%、健康保険は八五・一%、厚生年金は八二・四%となっておりまして、社会保険への加入状況については大きな違いがないのではないかというふうに考えております。

坂口(力)委員 これは両方比較をしてみますと、一番最初の九一・二%というのは雇用保険ですか。そうしますと、雇用保険に入っているのは、派遣の方は八八・八%、それから請負が九一・二%。雇用保険は派遣の方ももっと入っているというふうに思いますけれども、かえって派遣業の方が少ないんですかね。三つの数字を並べてみますと、どっちもどっちというぐらいな程度ですね。ですから、いずれも一〇〇%ではない、よく似たものということになりますね。

 それで、もう時間がなくなってくるわけですが、こういうふうに幾つかの点で派遣とそれから請負というものとを比較したときに、比較のできる数字のあるものもあるし、ないものも存在する。そうすると、今般のこの法律改正で、もしこれが通ったといたしましたときに、働く人たちが、本当にその働く条件が一体よくなるのかどうかということがわかりにくいですね、今の状況では。ということになりますと、この法律改正というものの意味が問われることになってくる。ここは少し整理をしていただく必要があるのではないかというふうに思います。

 請負業全体で見るということはなかなか困難だと思いますけれども、特定の部分に限ってでもいいからひとつ調べていただいて、比較をしていただいて、製造業なら製造業の中でどうなのかといったようなことを少し出していただいた方が、出していただいた方がじゃなくて出してもらわないと、きちっとした整理ができないということでございます。

 この続きは次のときにお聞きをさせていただきますので、きょうはこれだけにさせていただきます。

 ありがとうございました。

鉢呂委員長 次に、高橋千鶴子さん。

高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 労働者派遣法について、本会議で代表質問を行ったのは四月十六日でした。それから一カ月半近くたって、きょうがようやく第一回目の委員会質問であります。それなのに、与党内からは早くも採決日程などが聞こえてきています。派遣法の抜本改正を強く求めてきた全国の労働者や派遣切りされた人たちのためにも、徹底審議をするよう、この場をかりて強く求めたいと思います。

 さて、最初の質問は、資料を一枚だけお配りしておりますが、先ほど来既に話題になっております、今、最新の資料で、派遣労働者数百八万人中、今回の製造業派遣と登録型派遣の原則禁止などによって規制の対象となるのは十八万人にすぎないということであります。このデータが出るまでは、四十四万人がその対象になるということが言われていましたが、今や十八万人で、全体の一六・七%にすぎません。

 例外の方が多いということをどう見ますか。これでは何のために派遣法改正をやろうとしているのかわからなくなりますが、大臣の見解を聞きたいと思います。

長妻国務大臣 全体の派遣も半減をしたということでございます。これは、ちょうどこの調査が、前回お示ししたものと今回のものが、調査の時点のちょうど真ん中にリーマン・ショックがありまして、景気の影響で全体も半減し、規制の対象の方も半減をしたということでありまして、景気変動が大きいと思います。

 そして、例外の方が多いという御指摘でございますけれども、我々は、全体のボリュームを見て判断するということも当然ございますけれども、それと同時に、やはり最低限の安定的な雇用を維持していく、こういう必要不可欠なものについて、労使で合意をしていただいたものについて行き過ぎた労働規制緩和を一定程度戻していく、こういう発想で法案をお願いさせていただいている、こういう趣旨でございます。

高橋(千)委員 今、行き過ぎた規制緩和を一定程度戻していくというお話でありましたけれども、ほんのちょっとだなという気がしますね。派遣という不安定な働き方をやめさせてと言っているのに、何か聞いていますと、派遣でちゃんと働けるように、そう言っているように聞こえるわけです。やはり、それは違うだろう。

 先ほど来、自民党の皆さんなどは、規制すると派遣切りが起こって失業者がふえるじゃないかというようなお話があるわけですけれども、もう既にいいだけ切られてしまったわけですね。大手の自動車産業などは派遣労働者がいなくなるくらい切ってしまった中で、今規制すると切られるだろうか。本当はそういう議論ではなくて、派遣切りされた皆さんが、もうこのような派遣という働き方、物扱いされる働き方をやめさせてほしい、そのことを訴えているということをちゃんと受けとめて、それにふさわしい改正でなければならないということをまず指摘しておきたいと思うんです。

 そこで、まず、今回、常時雇用される者を規制の対象外とするとしております。そうすると、常時雇用だけの特定派遣業と、登録型、常用型の両方ある一般派遣という区別が意味がなくなると思います。そうであれば、この際、区別をなくし、すべて許可制にするべきではないでしょうか。

長妻国務大臣 今現在は、御存じのように、専門二十六業務について許可制ということになっておりますけれども、それ以外は届け出制ということでありますが、これをすべて許可制という御趣旨だと思います。

 これについては、今回の法案でもそれは書いてございませんのは、それをすべて許可制にいたしますと、一定程度の自由な経済活動あるいは自由な労働市場、当然、規制というのはきちっと今回かけるわけでありますけれども、それについて、やはり強過ぎて、経済活動あるいは労働市場について制約をかけ過ぎるのではないかというような懸念も出てくるところでありますので、今回はそれは盛り込んでいないわけであります。

高橋(千)委員 今の区別の問題も含めて、一切検討が今後なされないんですか。もう一度。

長妻国務大臣 これについては、すべて許可制にいたしますと、先ほど申し上げましたように、非常に、自由な労働市場あるいは経済活動について、今回も一定程度の規制をかけるわけでありますけれども、それについて規制が過度になるという懸念もございますので、今の時点では検討はいたしません。

高橋(千)委員 今後の検討でさえもないということでありました。

 私は今、大臣の答弁に本当にがっかりしたんです。改めて自由な経済活動ということが強調されまして、正直言って、どれもこれも規制が緩いわけなんですよ。いわゆる禁止するところも例外があるし、今の事業所のところでも、許可制には全部はならないのだとお話ししている。あるいは、この後出てくるみなし雇用の問題ですとか、労働者の保護の問題にしても、全体として緩いんだ。では、どこかで厳しくするものがきちんとなければ救いがないじゃないかということを私は言っているわけなんですね。この点は、重ねて要望にしておきたいと思います。

 続けます。

 そもそも、九九年に労働者派遣が原則解禁になったときも、製造業派遣は二〇〇三年まで禁止業務として残ったわけで、その後解禁になったわけですけれども、その理由は何だったでしょうか。政府参考人に確認したいと思います。

森山政府参考人 お答え申し上げます。

 先生今御指摘ありましたように、平成十一年の派遣法改正では、このときには原則自由ということにしたわけでございますけれども、製造業務の派遣につきましては、いわゆる製造業務で働く方の我が国の労働者に占める割合の大きさ、あるいはまた我が国の労働者の労働条件の決定に与える影響の大きさ、こういうものを勘案いたしまして、激変緩和の観点から、当分の間、労働者派遣事業を行ってはならないというふうにしたところでございます。

高橋(千)委員 今、製造業の労働者の割合が大きいことや影響の大きさというお話がありました。そのほかにも、偽装請負の問題が既にあったと思いますし、雇用責任があいまいだということなども指摘をされたのではないかと思うんですね。

 とりわけ、二〇〇三年の解禁後からわずか三年間で、製造業の労災が九倍にもなった。こういう結果に示されるとおり、矛盾が集中的にあらわれたのではないか。私は、改めてこの原点に戻って、製造業派遣はきっぱりと禁止をするべきだ、このように思っております。

 そこで、象徴的な事例を一つ紹介したいと思います。

 昨年の十二月二十一日、東京高裁は、七名の女性が争っていた資生堂と請負派遣会社アンフィニの非正規切り事件について、横浜地裁が十月九日仮処分申し立ての却下をした決定を取り消して、労働者に賃金支払いを命ずる逆転勝利決定をいたしました。

 資生堂とはだれもが知っているあの大手化粧品メーカーでありますが、花形商品である口紅をつくっているのは資生堂鎌倉工場ただ一つであります。その鎌倉工場で働いていた女性たち、人によって違いますけれども、大体八年間くらいですね、幾つかの派遣会社と派遣契約を繰り返します。そして、〇六年から、資生堂が誘致した派遣会社であるアンフィニの派遣社員となって、派遣契約を結びます。これを長く続けると契約の期間制限に触れるということで、今度は請負に切りかえて、同じアンフィニの請負社員となる。結局、ずっと同じ工場でずっと同じ仕事をしていたわけであります。

 昨年十二月末までの一年契約だったにもかかわらず、突然四月に、五月いっぱいで契約を打ち切るという新しい契約書に無理やり、仕事中呼び出されてサインをされました。二十二名の指名解雇でありました。たった一日休んだだけで、出勤率が悪い、こんな理由をつけられるなど、明らかに不当解雇でありました。

 彼女たちは、フルタイムで働き、今やラインリーダー、サブリーダーとなって後輩を指導し、正社員と一緒にリーダー会議に参加をして、指揮命令も当然受けています。まず、このような事例は既に直接雇用の対象になると思いますが、いかがでしょうか。

長妻国務大臣 今おっしゃられた個別事案についてはお答えは差し控えたいと思いますけれども、一般の例、一般的見解で申し上げますと、まず、今、一つは期間の問題でございます。

 基本的には、派遣可能期間を超えて引き続き労働者を使用するときは、派遣先は、派遣元から派遣停止の通知を受けた場合は、派遣労働者に雇用契約の申し込みをしなければならないというようなことがございます。

 この派遣元からの通知がなければ、派遣可能期間を超えて派遣を受け入れた場合であっても雇用申し込み義務は生じないということでありますけれども、今回の法案ではみなし規定がございます。これについて、例えば偽装請負だというふうになりますと、派遣先が雇用申し込みをその労働者にしたとみなされますので、労働者が拒絶しない限り、同じ条件で雇われるということになろうかと思います。

高橋(千)委員 明らかにこれは偽装請負でありまして、みなし雇用の対象になるのかなというふうに、今の大臣の答弁を聞いていても、それは個別だからということでお答えできなかったと思いますが、確認できたのかなと思います。

 先ほど来、坂口委員が請負と派遣の違いなるものをいろいろ御質問されておったわけですけれども、今後、製造業派遣が原則禁止になるということで、請負に切りかえるというところも多いかと思うんですね。

 このアンフィニの場合は、まさにそれを先取りしているわけです。同じ会社なんですね、派遣会社であり、請負会社である。ですから、会社の中には指導できる者はありません。本来ならば、自己の雇用する労働者という言葉があるわけですけれども、自分たちが技術を持ってその口紅の製造の仕方を教えることはできないんです。

 ということは、派遣社員だった原告らが同じ仕事をやっていたという技術があるからこそ仕事を続けることができる、請負として成り立っているわけです。でも、工場の中で完結しなければ請負にはなりません。ですから、どうしているかというと、彼女たちが使っている二つのラインだけを、二つだけリース契約を結んでいる。瞬間契約みたいなものですけれども、そうやって、請負なんだということを言っている。これは、もう本当に法抜けのような実態ではないのかなと思います。

 それで、こういうことが繰り返されることをどう思うかということなんですね。雇用調整がしやすい労働者を確保したいがために、あの手この手で法抜けをしようとする、やはりそういうことをちゃんと食いとめなければならない。今回、常時雇用を例外とするだけで、こうした根本問題が解決されるでしょうか。

長妻国務大臣 今回の規制があって、派遣からいろいろな労働者の、規制対象の方の移動が起こるということを我々も支援していきたいと思います。

 本当のきちっとした請負に移っていただくということは、直接雇用でありますので、私は望ましいと考えておりますけれども、今おっしゃっていただいたように、偽装請負ということが規制がかかるから、それを先取りする、あるいは三年後、五年後の規制後にそれをそのまま移行してしまうというようなことがないように、移行期間についてもきちっと我々は監督体制を整備して、また新たな監督の手法が必要であれば、それも研究していくということであります。

高橋(千)委員 資生堂は、昨年三月の決算で百二十一億円の収益を上げて、株主配当も増配、二百一億円を出す優良企業であります。有名女優さんを一堂に集めて出演させているあのシャンプーのコマーシャルが大変有名でありますけれども、実は、広告費だけで五十億円使っているんですね。ランキング一位だと。ですから、わずか二十二名、時給千円前後の社員たちを解雇しなければならないほど厳しい経営状況でないのは明らかなわけですね。やはり、こういうことがもうまかり通らないようにしていかなければならないと思うんです。

 これから先は個別の話ではありません。今のは象徴的な事例としてお話をしましたけれども、しかし、通しで見ると、やはり派遣先の都合ということがあると思うんですね。やはり、派遣契約というのは間接契約なので、派遣先の企業が、自分が雇用をしているのではないから責任がないのだよと逃れられる。これが一番の問題になっている。

 だけれども、今の資生堂の例がまさにそうであるように、派遣元の会社あるいは請負の会社が何度かかわっている。だけれども、同じ労働者がそこから出てきて、同じラインについて同じ仕事をしている。これは、明らかに派遣先の企業の側の論理なわけですね、必要だと。技能の継承ということがうたわれているわけですから。そういう実態にある。

 そうすると、当然、雇用契約を結ぶに当たっての意図が派遣先にあるんだ、責任があるんだ、こういう問題意識はあるでしょうか。

長妻国務大臣 技能の伝承あるいは継承ということで、もうずっと派遣で働いている人にさらに長い間働いてもらって、例えば三年を超えても派遣で働いてもらいたいというような、派遣先のそういう意思というのはある場合があるのではないかというふうに思います。

 そういう意味では、我々としてはそれについても、現行法でも違反でございますので、さらに改正法案ではみなし雇用制度の対象にもなりますので、これらの制度を使ってそういうものを是正していきたいと思います。

高橋(千)委員 今、派遣先の意思があることが多いだろうということをお認めになったと思います。

 それで、やはりそういう目で見た場合、今お話しされたみなし雇用というのは非常に大きな意味があると思うんですね。ただ、これはみなし雇用だ、直接雇用契約が成立したとみなした場合、直近の契約が三カ月だったら、三カ月直接雇用されれば、それでもう無罪放免になっちゃうわけですね。午前に松浪委員が紹介した松下PDPの事例も、まさにその事例でありました。

 しかし、今、全国で七十件くらい裁判が闘われています。違法状態がはっきりした場合、確かに契約は直近では三カ月だけれども、ずっと更新して何年も働いてきたということがわかっている、だったら、三カ月でよいということはやはりおかしいんじゃないでしょうか。

 私たちは、期間の定めのない雇用にすべきだと思っております。少なくとも、この状態に即して雇用契約は成り立つべきだ、つまり、三カ月だったから三カ月ではなくて、これまでの雇用の実態に照らしてみなし雇用にすべきではないかと思いますが、いかがですか。

長妻国務大臣 まずは、今回お願いしている法案のみなし雇用の制度は、そのとき、違法状態ではありますけれども、その契約条項と同じ雇用で申し込むとみなすわけでありますけれども、やはりそれは実質的なことも判断をしていくということが重要であるというふうに考えております。

高橋(千)委員 今、実質的な判断が重要だということが確認できたと思います。

 〇八年九月二十四日の労政審建議「労働者派遣制度の改正について」、今お話しした違法派遣是正のための派遣先での直接雇用について、「従前以上の条件で雇用契約を申込むことを勧告できることとすることが適当である。」という建議がございました。それがみなし雇用という形で発展したことは評価をいたしますけれども、この時点でさえも、従前以上の条件、今よりもよい条件にすべきだという勧告がされていたわけですから、そういう立場に立って見直しをしていただきたい、このことを指摘して、終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

鉢呂委員長 次に、柿澤未途君。

柿澤委員 みんなの党の柿澤未途でございます。

 きょうは、重要法案であります派遣法の私の第一回目の質疑ということでございますが、きょうの私の持ち時間はわずか十分でありますので、個別の項目については次回の質疑に送りたいと思います。

 派遣法、派遣切り、格差社会、さまざまなことが言われてきましたけれども、この法案においては、だれが悪いとか、だれが苦しめられているとか、こういう議論ではなくて、徹底してデータに基づく、法案の中身の冷静な、冷徹な議論が必要なのではないかというふうに感じております。

 それで、お尋ねを申し上げたいんですけれども、派遣法を改正すれば、当初の資料では四十四万人、今言及がありましたように、十八万人の方々が今の働き方ができなくなるわけです。非常に不安に感じている部分もあると思います。法を施行した場合、そうした方々、四十四万人でも十八万人でもいいですけれども、これはどうなるというふうに考えておられるんでしょうか。まず、それを伺いたいと思います。

長妻国務大臣 まずは、先日発表しました、今回の法案で規制の対象となるだろう派遣労働者の数というのは、前回の調査より半減いたしましたけれども、これは、ちょうどその途中にリーマン・ショックがあったということで派遣全体の数も半減しておりますので、そう推察されるのではないかということであります。

 では、今回の規制の対象となる方々というのは、基本的にその働き方というのができなくなるわけでございますが、まずは、先ほど来申し上げましたように、猶予期間というのが三年ないし五年あるということで、その間、我々としては、そういう方が派遣のままでも、派遣元から一年以上の雇用見込み、常時雇用というような形で雇っていただくことを後押しする。あるいは、先ほど来話が出ておりますけれども、請負という形で移行するということも直接雇用でありますし、派遣先に直接雇っていただくということも重要でございますので、その猶予期間の中で、そういう方々が今申し上げたような形で、職を失わないような、そういうサポートを我々としてはしていく。

 具体的に、今もあります制度としては、派遣労働者雇用安定化特別奨励金ということで、派遣労働者を直接雇用する事業主に対する助成制度というのも今あるわけでありますので、それらを使って下支えをしていきたいと思います。

柿澤委員 鳩山内閣そして長妻大臣の方針による法改正によって、十八万人の方々は、時期はともあれ、一たんは失業というか、働く場か働き方の選考を強いられるわけですよね。ですので、そういう方々に対して、不安を抱く必要はない、ほとんどの人は今の職場、希望する職場で働き続けることができる、あるいは正社員なり直接雇用なり、そういう手だてをきちっとやるよ、こういうことをもっとクリアに約束すべきではないかと思いますが、どうでしょうか。

長妻国務大臣 これは、まず一義的には、雇用というのはもちろん言うまでもなく景気の影響を大きく受けますので、今後、これら派遣の方々、我々としては新成長戦略などで雇用のパイを広げていきたいというふうに考えております。

 ただ、いずれにしても、今回の法案の規制の影響で職を失うということはあってはならないというふうに考えておりますので、それらの方々がそうならないような対応を、先ほど来申し上げているような、ほかの形態、あるいは同じ形態でも常時雇用などなどに移行できるように我々も後押しをしていくということを申し上げております。

 いずれにしても、今回の法律は、今のお話ではマイナス点を言われましたけれども、もちろんプラスの点として、やはり直接雇用をするということで、労働者の顔を見て、そしてその顔を見る人が雇う雇用主であるということでありまして、労務管理もより適切にできるということを目指しているところであります。

柿澤委員 本当にそういう方向に向かうんでしょうか。

 まず、この法改正によって正社員化が進むのかということでありますけれども、日本生産技能労務協会が去年行った調査では、派遣社員を雇っている企業のうち、派遣法改正後、正社員を雇いたいという声は全体の一〇%にすぎなかった。今進んでいるのは、派遣の請負化じゃないでしょうか。ことし三月、人材エージェント企業を対象とした調査というのがあるんですけれども、これを見ると、派遣法改正に伴う事業転換、変更についての項目で、四九%が業務請負の強化ということを人材エージェント企業は挙げている。

 今、ホームページとかで見ると、労働局が教えない本当の請負化セミナーとか、要は、派遣を転換して請負にするノウハウを伝授する、そういう講習会というかセミナーが山のように出てきます。

 請負は、いわゆる法の網がかかっていない、だれでも行える、そして労働契約、雇用契約でないため労働基準法が適用されない、こういうことが言われています。この派遣の請負化というのは望ましい方向なんでしょうか、お尋ね申し上げます。

長妻国務大臣 これは、先ほど来の御議論を聞いておりますと、派遣が請負になるのは似たようなものなんじゃないかとか、あるいは派遣が非正規雇用で直接雇用されるのは似たようなものではないかというお話がありますけれども、我々の基本的な考え方というのは、やはり直接雇用を基本としていきたいということがこの法案の根本的な理念であるわけであります。

 つまり、目の前にいる労働者を雇用する、しない、あるいは働いている途中で解雇をするということは普通は雇用主がやるわけでありますけれども、目の前の労働者が派遣であれば、自分は雇用していないので、ある意味では安易に契約を切るということがないように、やはり直接雇用ということが雇用の安定や労務管理についても資することであるというふうな考えであります。

 派遣労働者が、それは一番望ましいのは正社員に雇われる、本人の希望にもよりますけれども、ということでありますが、その方が請負あるいは非正規で直接雇用をされるということは、一概にそれは何か同じようなものだというような受けとめは我々はしていないということであります。

柿澤委員 大臣、私は、派遣の請負化が進むと、むしろこれは、もっともっと労働者は、場合によっては不安定かつ非常に危うい環境で仕事をしなければいけないということに結果的になってしまうのではないか、こういうことを懸念して申し上げているわけであります。

 派遣労働者の、今派遣で働いている方々のこれからの待遇の改善や雇用の安定化、こういうことを目指してこの法改正が行われているというふうに思っていますので、そういう意味で、直接雇用ならいいんだということにはならないのではないかと申し上げておきたいと思います。

 だれのために派遣法改正をやっているのかということを最後に伺いたいと思います。派遣労働者がそれを望んでいるのかという問題です。

 経済産業研究所が四月に発表した派遣労働者対象のアンケート、その抜粋をお配りしていますけれども、登録型派遣の原則禁止に、賛成わずか一〇%、反対三四・二%。なかんずく、日雇い派遣の方が登録型派遣禁止に、賛成一二・八%、反対四二%。登録型派遣を続けたいと思っているかという項目、日雇い派遣の方々では五一・三%、常用型派遣に転換したいと思っている日雇い派遣の方々はわずか一四・一%です。日雇い派遣の方々が、登録型派遣の原則禁止の法改正に大部分が反対であり、これまでどおりのワークスタイルで働き続けたい、そういう意向がこの調査では読み取れてしまうのではないでしょうか。

 政策転換による失業の不安についてもそうですけれども、政策転換による失業の不安が大きい、四〇・四%、そして、不安を感じていない、わずか九・六%。今までどおりで必ずしも悪くないんじゃないか、失業してしまうかもしれないような余計な法改正はしないでくれ、この数字を見ると、派遣労働者の皆さんがこう言っているようにしか見えないように思います。

 経済産業研究所のこの数値を踏まえて、一体これはだれのために法改正を行おうとしているのかということを最後にお伺いしたいというふうに思います。

長妻国務大臣 今回の法改正は、言うまでもなく、労働者のための改正だというふうに考えております。

 今おっしゃられた統計については、登録型派遣の労働者二百四十人に聞いて、複数選択ということであります。

 ただ、今おっしゃられたような数字というのも我々も受けとめる必要があると思いますのは、こういう方々が、規制が成ると、非常に自分たちが将来どういう、解雇されてしまうのではないのか、こういう御不安を持っている方が多いというふうに解釈すれば、我々としては、そうならないような、先ほど来申し上げているような対策をとっていくということであります。

 しかも、登録型派遣ということで労働者の方に聞いておりますけれども、これについても、登録型派遣すべてが禁止されるというふうに思っておられる方もいらっしゃると思います。そうではありませんで、登録型派遣の中でも、一年以上の常時雇用の登録型派遣は禁止をしないわけでございますし、猶予が三年あるということでありますので、我々としては、その間にそういう御不安がないような政策、対策を打っていきたいというふうに考えております。

柿澤委員 時間も過ぎておりますので、そろそろ終わりにしなければなりませんけれども、まさにそういう意味で、前段で、この対象となる方々に対して明確なコミットメントというかメッセージを送る必要があるのではないかということを申し上げたつもりです。

 施行は三年、そしてプラス二年、こういうことだ、あるいは、すべてが対象になっているわけじゃないという話をされますけれども、こういう話をされるということ自体が、今回の法改正のあり方が、全体的な派遣労働のあり方の抜本的な見直し、レビューになっていないことのあらわれに思えてしまいます。

 そういう意味で、そのことを最後に申し上げさせていただいて、次の回でまた質問させていただきたいと思いますので、きょうはこれで質問を終わらせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

鉢呂委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時十一分散会


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