衆議院

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第3号 平成22年9月8日(水曜日)

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平成二十二年九月八日(水曜日)

    午後一時開議

 出席委員

   委員長 鉢呂 吉雄君

   理事 石森 久嗣君 理事 内山  晃君

   理事 黒田  雄君 理事 中根 康浩君

   理事 大村 秀章君 理事 加藤 勝信君

   理事 古屋 範子君

      相原 史乃君    石田 三示君

      磯谷香代子君    大西 健介君

      大西 孝典君    岡本 英子君

      郡  和子君    斉藤  進君

      園田 康博君    田名部匡代君

      田中美絵子君    玉木 朝子君

      中林美恵子君    長尾  敬君

      仁木 博文君    初鹿 明博君

      樋口 俊一君    福田衣里子君

      藤田 一枝君    細川 律夫君

      三宅 雪子君    宮崎 岳志君

      室井 秀子君    山口 和之君

      山崎 摩耶君    山井 和則君

      あべ 俊子君    伊東 良孝君

      菅原 一秀君    田村 憲久君

      棚橋 泰文君    永岡 桂子君

      長勢 甚遠君    松浪 健太君

      松本  純君    坂口  力君

      高橋千鶴子君    阿部 知子君

      柿澤 未途君

    …………………………………

   厚生労働大臣       長妻  昭君

   総務副大臣        渡辺  周君

   厚生労働副大臣      細川 律夫君

   厚生労働副大臣      長浜 博行君

   法務大臣政務官      中村 哲治君

   厚生労働大臣政務官    山井 和則君

   厚生労働大臣政務官    足立 信也君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房年金管理審議官)       石井 信芳君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房統計情報部長)        高原 正之君

   厚生労働委員会専門員   佐藤  治君

    ―――――――――――――

委員の異動

九月八日

 辞任         補欠選任

  大西 健介君     磯谷香代子君

  菊田真紀子君     中林美恵子君

  福田衣里子君     大西 孝典君

  水野 智彦君     石田 三示君

  武部  勤君     伊東 良孝君

  江田 憲司君     柿澤 未途君

同日

 辞任         補欠選任

  石田 三示君     水野 智彦君

  磯谷香代子君     大西 健介君

  大西 孝典君     福田衣里子君

  中林美恵子君     玉木 朝子君

  伊東 良孝君     永岡 桂子君

  柿澤 未途君     江田 憲司君

同日

 辞任         補欠選任

  玉木 朝子君     菊田真紀子君

  永岡 桂子君     武部  勤君

    ―――――――――――――

八月六日

 一、国民年金及び企業年金等による高齢期における所得の確保を支援するための国民年金法等の一部を改正する法律案(内閣提出、第百七十四回国会閣法第四一号)

 二、予防接種法及び新型インフルエンザ予防接種による健康被害の救済等に関する特別措置法の一部を改正する法律案(第百七十四回国会内閣提出第五四号、参議院送付)

 三、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出、第百七十四回国会閣法第六〇号)

 四、障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律案(馳浩君外四名提出、第百七十三回国会衆法第六号)

 五、国等による障害者就労施設からの物品等の調達の推進等に関する法律案(田村憲久君外六名提出、第百七十三回国会衆法第一二号)

 六、厚生労働関係の基本施策に関する件

 七、社会保障制度、医療、公衆衛生、社会福祉及び人口問題に関する件

 八、労使関係、労働基準及び雇用・失業対策に関する件

の閉会中審査を本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 厚生労働関係の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――

鉢呂委員長 これより会議を開きます。

 厚生労働関係の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として厚生労働省大臣官房年金管理審議官石井信芳君、大臣官房統計情報部長高原正之君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

鉢呂委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

鉢呂委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。三宅雪子さん。

三宅委員 民主党の三宅雪子でございます。

 本日は、所在不明高齢者について質問をさせていただきます。

 ことし七月二十八日に足立区で百十一歳の方が白骨化死体で発見され、その際に年金の不正受給等々が発見されて以来、実はまだ一カ月半しかたっておりません。この間、さまざまな報道があったため、私は大分時間がたったと思っていたんですけれども、この間わずか一カ月半でございます。

 民主党はその間、いち早く対策検討チームを立ち上げて、この問題の実態把握や、そして各省への要望項目を取りまとめてまいりました。私自身は、足立区の担当者の方、民生委員の方といった現場の方とお会いをして現場の生の声を聞いてきたわけでございますが、この問題の全体像が浮き彫りになるにつれ、さまざまな深刻な問題が横たわっていることがわかってまいりました。

 そこで、長妻大臣に御質問をさせていただきます。

 イギリスのタイムズ紙が、高齢者が暮らしやすいと言われていた日本の評判はもはやぼろぼろだ、日本の国民は正直で役所の記録は正確だと世界でも信じられていた、気がつけばどちらも信用ならないことがわかったと酷評しています。

 実は、平成十七年、荒川区で同様の問題がございました。しかし、このときに厚生労働省では、これを特別なケースと考えて十分な調査をしていなかったわけでございます。私は、このときにもっともっと真剣に取り組んでいたら、このような現在の所在不明高齢者問題という日本の社会の深刻な現実を象徴する問題が早く解決したのではないかと残念でなりません。

 大臣は、このことをどのように考えていらっしゃいますでしょうか。御所見をお聞かせ願いたいと存じます。

長妻国務大臣 非常に大きな問題だと考えておりまして、これまで行政は、ひとり暮らしの高齢者の方々は、これは見守り、見回りが必要であるということで、各自治体もいろいろ施策をとってまいりました。

 ただ、今回のケースで、やはり我々も意識を変えなければならないのは、御家族と一緒に住んでいるという方々はある程度、おひとり暮らしのお年寄りよりは大丈夫ではないかと。ただ、住んでいると思っていたはずの高齢者が一緒にお住みになっておられない、しかも御家族は行方も把握をされておられない、こういう事態、非常に考えを改めて対策を打たなければならない事態になっているというふうに考えております。

 特に、雇用、終身雇用、企業が一定のセーフティーネットの役割を果たしていたものが非正規雇用の増加などで崩れつつあるし、あるいは御家族という形態も、結婚をされない方が非常にふえておられるというようなこともあり、そういうものの影響で今回のケースというのがこれだけマスコミにも取り上げられたんだと思っております。

 我々としては、特に医療情報、一定の高齢者の方で、一年間お医者さんに行かない、歯医者さんにも行かないということは普通は余りあり得ないわけでありますので、そういう方の情報をとって、それを市町村と共有して、あるいは年金の部局とも共有して対応をとっていくということなど、幾つかの対応策を速やかに実施していこうと考えております。

三宅委員 大臣、どうもありがとうございました。

 この足立区、杉並区の事件を受けまして、同様のケースが果たしてないのか、全国の自治体が一斉に調査を始めました。そして、皆様も報道等で御存じのとおり、住民登録上、多くの百歳以上の所在不明者が発見され、その後、戸籍におきましては、二百歳などと大変な年齢の方も発見されております。まさに何万名の方が記録を抹消されないで放置されていたことが判明したわけでございます。

 住民登録上と戸籍上のことは混同されがちでございますが、私は、その上で、何よりも正確な実態の掌握が大切だからと、厚労省や総務省に、平成二十一年度の調査では四万三百九十九人おられた百歳以上のうち、本当は所在不明の方は何名いらっしゃるのか、お伺いいたしました。しかし、年金にかかわらない部分ではわからないと、はっきりしたお答えは厚生労働省からはいただけませんでした。私は、非常に残念ではあったんですけれども、全国の市町村では百歳以上の所在不明高齢者の確認を一斉に行っています。そのことが国のデータと連動していない、そして、取りまとめていない、発表されない、それはよくないのではないかと思います。

 ですから、先日発表になった八十五歳以上の八百サンプルでの調査結果では、所在不明者はおよそ三・五%の二十七人だったと報告をされています。そのデータにつきましては、もちろん、そのまますべてのことに当てはまるとは限らないわけでございますが、それでも調べれば、三百七十八万人以上もの八十五歳以上の高齢者の方に全然当てはまらないかといえば、私は、所在不明高齢者はもっともっといるのではないかと疑問に思ってしまうのです。

 質問の通告をしないで大変恐縮なんですが、大臣はこの数字を聞かれたときにどのような感想を抱かれましたでしょうか。

長妻国務大臣 今おっしゃっていただいたのは、八十五歳以上を分母とした八百件のサンプル調査のお話だと思いますけれども、これは前提がございまして、一般の高齢者、八十五歳以上全部から八百件ということではございませんで、現況届を確認している年金の方々ということで、つまり、住基ネットで通常は年金の支払いは確認するんですが、住基ネットと日本年金機構が持っている記録が突合できないという方々については直接日本年金機構から郵送物をお送りするということで、その方々というのは、非常に住所等の変更届というのがきちっと出されていない集団の可能性がある方をピックアップして、それだけの二十数人の方が行方がわからないということになっていたわけでございます。

 それにいたしましても、やはり現況届に、ある意味では本人じゃない方がお書きになって、こちらに戻ってきたから年金が支払われているということでありますので、これは速やかに確認をして、一時停止をしていくというような措置をとらなければならないというふうに考えているところであります。

 そしてもう一つ、今の趣旨の質問で申し上げますと、先ほどの医療情報の話で進展がございまして、後期高齢者医療制度は千七百の自治体が保険者じゃありませんで、四十七の広域連合が保険者ですので、そこから一年間医療を受けておられない高齢者の方々、七十六歳以上の方のデータをいただきたいと四十七都道府県に申し上げましたら、まず第一号として、埼玉県の広域連合から九月七日に情報提供がございまして、約一万七千人の方が七十六歳以上で一年間医療を受けておられないと。

 埼玉県の被保険者数の約三%の方でございましたので、これは日本年金機構にもこの情報をいただき、あと聞いておりますのは、この広域連合の一万七千人の情報は既に県内の全市町村に埼玉県広域連合から情報提供がなされているというふうに聞いておりますので、この方々は、全部が全部じゃありませんけれども、本当に行方がわからない方もおられるんではないかということで、こういう全国的な取り組みを進めていきたいと思っております。

三宅委員 ぜひ進めていただきたいと思います。ありがとうございます。

 今回の問題は、年金は厚生労働省、そして住民基本台帳は総務省、戸籍は法務省、身元不明の方の扱いは警察庁と、多くの省庁にまたがっていて、縦割り行政の弊害が指摘されるところではございますが、五大臣会議等々でそれは積極的に問題解決に向けて話し合いを続けていただきたいと思います。

 大臣もおっしゃっていたとおり、現在の福祉サービスを含むすべての基本となっているものが住民基本台帳でございます。その住民基本台帳自身が間違っていると、私は、社会システム全体が崩れてしまうんではないかと考えております。やはり、今回の所在不明問題と住民基本台帳の関係を考えれば、行政の怠慢と言われても仕方がないと思っています。

 現在、日本は申請主義が行われているわけでございますが、このやり方だとおのずと限界がございます。今後、同じような問題を起こさないために、住民基本台帳をどのように整備していくのか、総務省の考えをお聞かせください。

渡辺副大臣 今の御指摘の点でございまして、国のそれぞれの、委員が指摘されたような役所の縦割りの弊害、今おっしゃられました。もうそれ以前の問題で、調査をした地方自治体のそれぞれの部署、高齢者を担当する部署と住民基本台帳を統括している、所管している部署のその連携すらできていなかった。地方の役所の中の縦割り、こういうものも、今回、事態が重くなった一つの理由だろうと思っております。

 私の選挙区でも、黒船来航のころに生まれた方がいまだに戸籍上は生きているというような事案なんかがわかりまして、今おっしゃったような申請主義の限界を指摘するということは私も実は同意できるところもございますが、現実問題として、現状ではあくまでもこの申請主義をベースにしながらも、八月三十一日に原口総務大臣の指示のもとに、各自治体に対して、自治体の対応の中で、住民基本台帳法の中で調査を定期的に行うということになっております。それが通り一遍の調査ではなくて、事件性がある場合には関係機関にやはり連絡をしなさいと。そしてもう一つは、本人を確認、この高齢者問題が発生している、所在不明問題が発覚したという事案を重く受けとめまして、この通知の中では、とにかく、今般の所在不明問題の事案も考慮に置いて、念頭に置いて調査をすべきであるということも通知をいたしました。

 今回、十月から国勢調査が行われますけれども、この国勢調査の中で、これは調査結果というのは調査の目的以外に使えませんが、ただ、調査をしていきますと、調査区の一覧表の中では調査区の地図というものが結果的にでき上がってまいります。その中には、廃屋であるとか空き家であるとか、あるいは更地になっていた、そもそもなくなっているという、現状と照らし合わせてそぐわない現実が見えてくる。現状と一致しないものが出てきた場合には、こうした地図情報等の活用も検討しなさいということを出しています。

 またそれから、総務省の中で、本人しか受け取れない、本人限定受取サービスという郵便システムがあります。ただ、これはコストがかかりますけれども、本人あてに出しても戻ってきてしまう、そういう場合には、やはり調査の考慮に入れるようなことも検討できますよということを通知したところでございます。

 少々長くなりましたけれども、現在は、この申請主義をベースにしながらも、ただ、この住民基本台帳法に基づく調査ということにつきましては、もっとアンテナを広げて、さまざまな、厳重に把握できるような形で通知をしているというところが現在でございます。

 ただ、委員の御指摘を重く踏まえまして、今回の問題、地方自治体において、第一義的に対応すべき自治体の役所の中ですら縦割りだったということを重く受けとめまして、厳しく指導していく立場でございます。

 以上です。

三宅委員 力強いお言葉をありがとうございます。

 それでは、山井政務官に質問をさせていただきます。

 現在、日本は世界一の長寿国家でございます。日本の高齢者は本当に幸せなんでしょうか。地域での人間的なつながり、そしてきずなの喪失がついにここまで来てしまったと日々心を痛めるばかりで、百歳を超えて生きていらっしゃる方の所在確認ができない今の社会、本当に悲しいことだと思います。高齢者の社会的孤立をこれ以上招かないために、新しい地域づくり、コミュニティーの再生について真剣に考えていかなければいけないときが来たと思います。このことについて厚労省はどのように取り組まれるのか、考えをお聞かせください。

山井大臣政務官 三宅委員にお答えを申し上げます。

 三点お答え申し上げたいんですが、まず一つは、このような、地域で援護を必要とする高齢者などを把握して支援の方法を考えていくという、そのための地域福祉計画の策定が重要だと考えておりますが、まだ、策定済みの市町村が約半数にとどまっておりますので、八月十三日に、これらの問題についての点検、見直しを依頼する通知を発出し、あわせて、今後、先進的なすぐれた事例を収集し、自治体に提供しようと考えております。

 それと二つ目は、社協や民生委員、ボランティア、民間事業者などが行政と連携して地域を支える福祉の地域づくりのモデル事業として、安心生活創造事業というのを今、全国の五十八市区町村で行っております。

 そして三点目になりますが、介護保険についても、これからは、ひとり暮らしを含めた孤立化のおそれのある単身高齢世帯、夫婦のみ世帯の生活支援というものを介護保険の基本目標にも加えて、孤立化を防ぐ地域づくりをしていきたいと考えております。

三宅委員 どうもありがとうございます。

 再び山井政務官に質問でございます。

 特にこの所在不明高齢者では、たくさんのボランティアの民生委員の方が走り回って活躍をされていらっしゃいます。特に、定年前に何とかこの問題を解決したいと奔走された足立区の民生委員さんの勇気には心から敬意を表する次第でございます。差し当たって、地域社会のコミュニティーの再生がそう簡単でない以上、超高齢化社会での民生委員の方々のお仕事はますます重要になってくると思います。この民生委員の方々が適切な個人情報を取り扱えるようにすることや、また、待遇改善、民生委員の皆さんが活動しやすい環境の整備を進めていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

山井大臣政務官 大変重要な御質問をありがとうございます。

 これについては、やはり民生委員の活動に必要な個人情報が地方自治体から、特に最近提供されていない等、地域における要援護者の状況の把握や支援が困難となってきております。そこで、今までからも、三宅委員からも厚生労働省に何度も要望、御指摘がございましたので、このたび厚生労働省としては、民生委員に対する市町村の情報提供状況に関するサンプル調査を行うことに決めました。

 具体的には、市町村に対する調査を行いまして、民生委員に対してどのような情報を提供しているのか、個人情報を提供していない場合には、その理由あるいは事情、個人情報保護条例については見直しの予定。また、民生委員についてのサンプル調査では、市町村からどのような情報を得ているか、現在得られていない情報で活動するに当たって必要な情報は何か。これらのサンプル調査を早急に行いまして、調査結果を十月中に公表したいと考えております。

三宅委員 どうもありがとうございます。

 時間が来ましたので、最後に一言申し上げたいと思います。

 皆さんも覚えていらっしゃると思いますが、昔、きんさん、ぎんさんという百歳の双子が全国で人気者になりました。私も、家族に囲まれて幸せな暮らしを送っているお二人の姿をコマーシャルで見るにつけ、本当に温かい気持ちになった覚えがございます。ぜひ、またそういった温かい社会を長妻大臣を中心に築いていただきたい、そのことをお願い申し上げ、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

鉢呂委員長 次に、初鹿明博君。

初鹿委員 民主党の初鹿明博です。

 きょうは台風も来て雨が降っておりますが、本当に連日暑いですよね。いつになったら秋が来るのか、そんなふうに皆さんも思っているのではないかと思います。でも、九月というと通常だと秋なんですよね。

 ところで、長妻大臣、ことしの二月の十九日、私そして山崎摩耶議員が療養病床について質問をさせていただきました。その際に大臣は、ことしの夏ごろまでには調査の結果が出てまいりますので、その結果を踏まえて今後の方針を決定するということであります、そう答弁されているんですね。通常だと、もう九月、秋ですから、そろそろ調査結果が出ているころではないかと思いますが、調査結果はどのようになっているのか、出ているならお答えいただけますか。

山井大臣政務官 初鹿委員にお答え申し上げます。

 先ほど御指摘いただきましたように、初鹿議員、山崎摩耶議員からも御指摘をいただいておりまして、今現在、調査をやりました。

 介護療養病床から他の施設等への転換実績、転換予定、そして二番目に介護療養病床に入院している患者の状態像について調査しましたところ、まだ速報でありますが、介護療養型病床から他の施設等への転換実績については、約二万床が転換しましたが、介護療養から医療療養病床へ転換した実績が約一万八千床、介護老人保健施設等の介護施設への実績が千床、つまり九割ぐらいが医療療養の方に転換していったということがわかりました。

 また、今後の介護療養病床の転換意向を聞きましたところ、未定が約六〇%、医療療養病床への転換が約二〇%、介護老人保健施設への転換が約一〇%でありました。

 また、介護療養病床に入院している患者の状態像については、高度な医療を必要としない医療区分一の患者が約七〇%、高度な医療を必要とする医療区分二または三の患者の割合が約三〇%でありました。

 また、医療療養病床の患者の状態像は、医療区分一の患者が約二〇%、医療区分二または三の患者の割合が約八〇%でありまして、介護療養病床に入院している患者さんと医療療養病床に入院している患者さんとの状態像から、機能分化が進んでいることがわかりました。

初鹿委員 ただいまの調査結果を踏まえて、今後どのような方針で臨んでいくのか。長妻大臣、お答えください。

長妻国務大臣 今、山井政務官から答弁を申し上げましたけれども、本来、当時は、介護療養病床を廃止して、その病床の方々が老健施設などに転換をしていただく、こういう想定だったわけですが、現実は逆に、病院の中の医療保険のベッドである医療療養に戻ったというか、表現は別として、本来の行政の意図とは異なるような状況になり、かつ、六割が介護療養病床から今後の転換意向は未定だということがわかりましたので、私どもといたしましては、平成二十三年度末までに介護療養病床を廃止するというのが今の既定路線で、法律に規定をされている流れでありますけれども、それについては困難であるというふうに今回の調査を見て考えざるを得ません。

 今後、通常国会での法改正が必要になると思っておりまして、猶予も含めて方針を決定していきたいと思っております。

初鹿委員 法改正ということですから、ぜひ野党の皆さんも御協力いただきたいと思います。

 それでは、次の質問に入ります。

 私も、三宅議員と一緒に、所在不明高齢者問題の対策チームの呼びかけ人となりまして、この問題について調べてまいりました。五年前、荒川で同様なケースがあったということは、先ほど三宅議員からもお話がありましたが、そのとき厚生労働省は、それまで発表していた長寿番付を発表するのを翌年からやめるということしかやらなかったんですね。前政権は、やはり命に対しての大切さというのが希薄だったのかなというふうに感じざるを得ません。私たち民主党は、命を大事にする政治を行うということを打ち出しているわけですから、ぜひしっかりと対応していただきたいと、まずはお願いをさせていただきます。

 そこで、私からは、ちょっと細かい話になりますが、年金の不正受給を防ぐための事務的なお話に入らせていただきたいと思います。

 先ほども長妻大臣からお話がありましたが、後期高齢者医療の給付の状況というのを年金機構に提供して、それによって、本当に年金を受給しているかどうか、医療も受けていないのにしている場合は本人確認をしていく、そういう方法で所在不明かどうかを確認する、そういう方針を出されました。これから進んでいくことと思います。

 このやり方ですと年金の不正受給は恐らく見つけられると思うんですが、では逆に、今回問題となっているのは、実際にはいないのに住民票に残ってしまっているというケースなわけですね。ここが一番の問題なんだと思います。そこの部分は年金機構だけではわからないわけですね。

 ところが、先ほども、市町村にも医療情報は提供するということでした。埼玉県で一万七千人ということです。市町村がさらに介護保険も使っているかどうか調べて絞り込んでいけばもう少し減るでしょうけれども、私は、医療保険を受けていない、病院に行っていない、年金も受けていない、そういう人の方が実際に生存していない率は高いんじゃないかなと思うんですね。

 ですから、年金機構が一回もらった情報で精査をして、年金も実はもらっていなかったということがわかったら、その情報を市町村に渡すということをすることによって、市町村としては、医療も介護も、そして年金ももらっていない、そういう絞り込みができて、そこに本人確認に行けばいいというようになるんだと思うんです。その方が、市町村としては手間も省けるし、本人確認できる確率が高くなる、それによって住民票の精度が上がると思うんですが、この年金機構が一回受けて調べた結果、年金も受けていないということがわかったその情報を市町村にまた戻すということについて、やった方がいいと思うんですけれども、その件について御所見を伺います。

長妻国務大臣 まず、今の御指摘でございますけれども、一年間医療を受けていない七十六歳以上の高齢者、これについては広域連合の協力が得られますので、もう埼玉県では先行して始まっておりますけれども、今後始めていきたい。つまり、年金にかかわらず、自治体、市町村には、七十六歳以上で一年間医療に、あるいは歯医者さんにも行っていない方の情報が流れるようになっておりまして、埼玉県では既にその情報が流れているということであります。

 今のお尋ねは、その情報のうち、年金を受給していない人で一年間医療にかかっていない人というのを集中的にということでありまして、これについても、今まで、日本年金機構に対して自治体から問い合わせがあって、この方は年金を受給しているのかしていないのかという問い合わせのときに、日本年金機構が個人情報というようなことで情報を出していないということがあったんですが、それは個人情報保護法の目的内であるから、一定の要件で情報を出すようにということで指示をして、こちらも文書で日本年金機構に通知を出しております。

 これは、自治体にそういうニーズがあれば、それを日本年金機構に言っていただければ、どの方が年金を受給しているのかしていないのかというような形でお出しをする、こういうような仕組みを検討していきたいと思っております。

初鹿委員 やはり、住民票を持っている自治体にできるだけ情報が集約されていく方が、直接住民とのかかわりも深いわけですから、より効果が出るのではないかと思いますので、その辺を考えてぜひ御対応をよろしくお願いいたします。

 次に、今度は、住民基本台帳のネットワークと年金機構のデータのやりとりの仕方と、またそれに伴うことについてちょっと質問をさせていただきます。

 現状ですと、二カ月に一回、住民基本台帳の情報と年金の情報を突合させて、死亡している場合は、これを死亡したということで年金の方でその処理をしていくということでございますが、二カ月、来年の四月から一カ月ということになるわけですが、やはりどうしてもタイムラグが出てしまうと思うんですね。突合した次の日に亡くなった方がいた場合に、その死亡届の連絡が年金機構に行くまでの間に年金が振り込まれてしまう。そうなると、遺族の方はそのもらった年金を過払いだということで戻さなければならないですね。これはちょっと手間だし、もう少し早く亡くなったという情報が年金機構の方に伝わらないのかなというふうに思うんです。

 そこで、私からの提案ですが、死亡届、皆さんに資料として一番下に出させていただきますが、まず、お亡くなりになったら、自治体の方に死亡届を出しに行くわけです。そのときに、死亡届に、亡くなった方が何の年金を受給していたのか、そういう記載欄があれば、自治体の係の方がそれを見て、まず最初に年金機構、または共済組合の場合は各組合に連絡を一本入れる。その連絡が行った時点で、年金機構なりがその連絡を受けて年金の支給を一時停止するということができるんじゃないか。それをすれば、例えば、年金機構の方に死亡届を出し忘れているような方もたくさんいらっしゃるようなんですが、そういう人に対して死亡届を出してくださいというアプローチもできるし、場合によっては遺族年金を受けられるのにその手続をしないままになっている人もいると思います、そういう人に対しても手続ができるんですよということが伝えられるようになるんだと思うんですね。

 死亡届を見ますと、人口動態調査にも用いられますということで、厚生労働省からの申し入れがあれば死亡届に記載をする欄を設けることはできるように伺っているんですが、この件について法務省の御見解をお伺いいたします。

中村大臣政務官 今議員おっしゃったように、年金行政を所管する厚生労働省から死亡届の様式変更について協力依頼があった場合には、適切に対応をいたします。

初鹿委員 ぜひ厚生労働省の方から法務省の方に協力依頼をしていただいて、そしてまた、市町村の方にも、これに基づいて年金機構や共済組合にも連絡を、一本電話を入れれば済むことなので、それをぜひやっていただくように通知を出していただければと思います。

 また、年金機構についてのお話をしてまいりましたけれども、年金機構だけじゃなくて、共済組合があるわけですね。こちらは厚生労働省の所管ではないということで、それぞれの所管から何らかの指導がないと同じような対応が進まないのではないかと思うんです。しかし、それではやはりいけないのだと思いますので、厚生労働省が年金機構に医療の情報を出すその情報というものを共済年金の方にも同じように情報提供ができるようにするべきだと思いますが、いかがでしょうか。

石井政府参考人 お答え申し上げます。

 今回私どもが行おうとしております取り組みは、七十六歳以上の方の後期高齢者医療制度の医療情報と国民年金や厚生年金の受給者情報とを突き合わせをしようということでございます。

 そして、この取り組みにおきましては、共済年金の受給者の方でありましても、現在七十九歳以下の方、正確に申し上げますと昭和六年四月二日以降にお生まれになった方でございますが、こうした現在七十九歳以下の方につきましては、基礎年金の受給者でもあります。

 したがいまして、日本年金機構におきましては、こうした方につきましては生存確認の対象者ということで調査を行いまして、調査の結果生存が確認できない場合には基礎年金の一時差しとめなどの措置を行う、こういう方針でございます。そして、その結果につきましては共済組合に対しても情報提供をさせていただこう、こういう考え方でございます。

 一方、現在八十歳以上の方、正確に申しますと昭和六年四月一日以前にお生まれになった方でございますが、現在八十歳以上の共済年金の受給者の方の中で国民年金や厚生年金の受給者ではない方、こうした方は、委員御指摘のとおり、日本年金機構が行います生存確認の対象外ということでございます。

 こうした方につきましては、共済年金の給付適正化という趣旨で、共済組合から日本年金機構の方に情報提供の御要望が寄せられるということが想定されます。私ども、こうした御要望に対しましては、広域連合から御提供いただいた情報を共済組合の方に提供することについて広域連合の方でどういうお考えかということを伺う必要があると思います。こうした調整を要する点もございますので、今後関係者の御意見を伺いながら検討してまいりたい、このように考えておるところでございます。

初鹿委員 ぜひしっかりとした対応をお願いいたします。

 このように、行政各部局の連携を強めたり年金のこういう調査をしっかりやったりすることによって、不正受給を防止したりするということはかなり可能だと思うんですね。

 ところが、今回問題となった最初の例は、自宅でミイラでそのまま四十年いた。これは本当にまれなケースかなと思っていたら、調べていくと、もう四十年前に亡くなって、骨のまま自宅で持っている方もいたというように、亡くなったことを隠している。これはなかなか見つけることは難しいんだろうと思うんですね。

 ただ、ここで我々は考えなければいけないのは、恐らく皆さん、悪いことだろう、悪いことをやっている、そういう意識はあったと思います。しかし、悪いことをやっているとわかっていながら、しかも亡くなっているのに死亡届も出さずに年金を受け続けてしまったその背景はどんなものがあるのか、どうしてそういうことが起こってしまったのか。大臣はどのようにお考えですか。

長妻国務大臣 まず申し上げたいのは、戸籍法という法律で、死亡届を御家族や同居者が出さないとこれは罰則がかかるというルールになっているということです。

 ただ、先ほどの質問でありますけれども、やはり心理的に、本当に生活が苦しい方が、親が死んで死亡届を出せば年金がとまる、そうすると、この年金のお金がなければ自分はどうこれから生きていけばいいのかというふうなお考えの方もいるかもしれません。ただ、その場合、やはり相談をしていただきたいということでありまして、これはなかなか現実は相談相手がいないというケースも多いと思うんですけれども、自治体にも相談の窓口はございますので、そういう意味では、関係の部局に相談をして、本当に要件が合えば当然生活保護というようなこともあり得るわけでありますので、何しろ、亡くなったのに年金を受給するというのは、これはもう法律違反でありますので、いろいろな御事情がある場合は、ぜひ相談をしていただきたいということを申し上げたいと思います。

初鹿委員 時間も過ぎているので、最後に一つ。

 やはり、今大臣もおっしゃったように、貧困というのが背景に恐らくあるんだと思います。ですから、これは貧困対策というのをしっかり行っていくことが重要だと思います。

 百歳のお子さんということになると年金をもらっている方になるわけですが、そういう方が親の年金を頼らなければならないというのは、無年金であったり、もらっている年金が著しく低いという問題だと思います。また、五十代の方もいました。そういう方については、やはり失業であったりして生活が困窮しているということだと思います。

 ですから、やはりこれは、突き詰めるところ、貧困問題をどう克服していくかということになると考えますので、この貧困に対してこれからどのように取り組んでいくのか、ぜひ決意をお伺いさせていただいて、私の質問を終わらせていただきます。

長妻国務大臣 私は、この政権は本当に貧困問題にきちっと取り組む政権だというふうに考え、それを実行したいと思います。

 まず、相対的貧困率というのを国として初めて公表をして、その貧困率を改善していくということが何よりも重要だということ。そして、厚生労働省の分野でいえば、ハローワークなどを中心に、職業紹介のみならず、あした住むところが不安であるという方の相談にも乗ったり、あるいは住宅手当という手当の要件も緩和をしたり、そういう意味では、生活保護の母子加算を復活したり、あるいは児童扶養手当を父子家庭にも支給させていただくなどなど、この相対的貧困率あるいは一人親の貧困率、これらの数字も見ながら行政を運営して、貧困問題にも力を入れて取り組んでいくという強い姿勢を見せて、姿勢のみならず実行していきたいというふうに考えております。

初鹿委員 ありがとうございました。終わります。

鉢呂委員長 次に、あべ俊子さん。

あべ委員 自由民主党、あべ俊子でございます。

 非常に厳しい政局の中、このような質問時間を与えていただきまして、大変ありがとうございます。

 今、特に、前回質問がございました中で、介護療養病床の再編成について質問させていただきたいと思います。

 先ほど大臣のお答えに、簡単なデータが出た、それに対して猶予を含めて検討したいというお答えがございました。何を言っているのかさっぱりわからなかったというのが結論でございまして、長妻大臣にお尋ねいたします。先般の衆議院選挙のマニフェストに、介護療養に関しましてどのように書いてあったか教えてください。

長妻国務大臣 マニフェストには、「療養病床、グループホーム等の確保により、介護サービスの量の不足を軽減する。」「当面、療養病床削減計画を凍結し、必要な病床数を確保する。」というふうに書いてあります。

あべ委員 そうですね。

 実は、十一月二日の長妻大臣の答弁にも、この介護型療養病床に関して凍結しようと考えているというお答えがございました。ところが、五月十一日の答弁では「廃止ありきではない」、このようにトーンダウンしているわけでございますが、今回の調査を踏まえた、猶予を含めた検討というのはどういう意味なのか、大臣、お答えください。

長妻国務大臣 まず、先ほども介護療養病床の調査の結果を申し上げましたけれども、これは、前政権において介護療養病床を廃止するというような決定がなされ、しかも、廃止をして、その後その方々をどこで受け入れるのかということが明確でないまま廃止を決定して、かなり不安が広がった。我々、実態把握調査をいたしましたら、やはりそれを裏づけるような調査結果が出ましたので、この廃止ということは、平成二十三年度末までというのが前政権で決まったわけでありますけれども、その時期までに廃止するということは困難だ、こういうふうに調査結果を見て判断をしたところであります。

 その意味で、この平成二十三年度末までに廃止というのは法律に書いてある事項でありまして、法律を変えなければ廃止になるわけでございますので、来年の通常国会での法改正を含めて、我々は法改正が必要になると思っているということであります。

 では、その廃止をしないということになるとどうするのかということでありますけれども、一定の期間、猶予の期間を置いてそれから廃止をするのか、あるいは廃止そのものをやめて存続するのかということについては、検討をしていきたいというふうに考えておりまして、いずれにしましても法改正は必要になるというふうに考えているというのが先ほどの答弁でございます。

あべ委員 すなわち、二〇一一年度にこの介護療養に関しましてはいわゆる期限が切れてしまうわけでございますが、これを単純延長される、もしくは、その法改正ということの意味が幾つかあるんだと思っておりますが、私は、二〇一一年度の部分の法改正を抜本的にするには間に合わない、政府の空白期間が非常に長過ぎている中、また内閣も大幅に動くかもしれない中で、非常に厳しいと思っておりますが、大臣は、二〇一一年度の単純延長ということをお考えでしょうか。

長妻国務大臣 ですから、これは先ほども答弁申し上げましたとおり、法律の改正はしなければならないというふうに考えておりますが、その中身については、今後、さらに調査結果を分析して、御意見も聞いて検討をしていくということであります。

あべ委員 調査結果を今ラフな形で見たときに、いわゆる患者さんがしっかりと分かれてきているという結果も出ていると思いますが、そうすると、このまま介護療養を続けていくということ、そうすると先に転換を図ったところに対して非常に不合理な問題が出てくると思いますが、その辺は大臣はどうお考えでしょうか。

長妻国務大臣 ですから、いろいろな御意見がありますので、そういう御意見も我々も謙虚に耳を傾けて、その法律改正の中身について検討して決定をしていきたい。

 ただ、いずれにしても、平成二十三年度末に介護療養病床を全廃するということは、これはもう困難だということであります。

あべ委員 全廃することは、政府の態度が非常にあいまいな期間が続きましたので、それは経営されている方々も様子見をされているわけでございます。

 ですから、私が申し上げたいのは、大臣が野党であった時代に凍結しようと考えていたことは、凍結もまだ結論が出せない段階、すなわち、大臣になられてから勉強したら、凍結も難しそうだけれども全廃も難しそうだということなんでしょうか。大臣、お答えください。

長妻国務大臣 今の御議論というのは平成二十三年度末までに介護療養病床を廃止するということをどんどん推し進めれば本当にそれが転換になったのではないかというような御趣旨であるとすれば、それは、そう行政が推し進めて、行政的に、時代の流れと逆行したような発想をする行政はなかなか容認されないというふうに思っておりまして、今回もそれが一つの原因であるというふうに考えております。

 いずれにいたしましても、法律を来年提出する、その中身については、我々としては、検討事項として幅広く議論をして決定をしていきたいということでありまして、何しろ、二十三年度末という期限を区切って廃止をするということについては、これはできないというふうに判断しているということであります。

あべ委員 私は大臣に、マニフェストの中で全廃というか、廃止を撤回するということをマニフェストで進めていたにもかかわらず、結局、凍結することもできずに、検討してみたら、調査結果がよくわからなかったと。

 ですから、私が申し上げたいのは、大臣が野党で一生懸命ミスター年金として頑張っていたときに書かれたマニフェスト、これは勉強不足であった。今、大臣になって初めて検討を始めて調査をしてみたら、何か、凍結できるのか全廃できるのか、ただ、この法案が今回切れてしまうからとりあえずこれだけはやらなきゃいけないけれども、話を聞かなきゃわからないという野党時代の勉強不足をそのまま出されているのではないかと思うのですが、大臣、いかがでしょうか。検討大臣と言われないように、せめて、あと一週間か二週間かわかりませんが、しっかりお答えを出していただきたい。

長妻国務大臣 私自身も全く野党時代と趣旨は変えたつもりはありません。

 つまり、野党時代も申し上げていたのは、受け皿論なしに廃止をするというのは乱暴ですね、こういうことを申し上げていて、期限を区切って廃止をするというのは問題があるのではないかということを一貫して申し上げておりまして、今回の答弁もその流れに沿ったものを申し上げているところであります。

あべ委員 期限を決めてやるのが無理だったら、期限を決めなかったら受け皿ができるというふうに大臣はお考えなんですか。何か、何も決まっていないように、この一年間、前政権、前政権とそればかりを盾にとって、御自分の時代に一体何を進めてきたのかよくわからないんですが、大臣、期限を決めなかったらどれぐらいの期間で受け皿をしっかり整備できるのか、教えてください。

長妻国務大臣 ですから、今申し上げましたように、二十三年度末というのは困難であるので、それは法律を出すということであります。

 法律の中身については、来年の通常国会でありましたら年末までにきちっと議論を確定させなければなりませんので、その中で議論を確定させていくということであります。

あべ委員 来年の通常国会にお出しになるのなら年末までに確定をするとおっしゃっていましたが、また検討だけを確定されても困るわけでございまして、次の内閣がどうなるか全くわかりませんが、ぜひともここのところは、高齢者が、またその高齢者を支えている皆さんが、この国は一体どっちの方向へ行くのか、よくわからない、いいかげんにしてくれということがさまざま悲鳴が上がっております。高齢者にとっても、また国民にとっても、政権がどちらかではなくて、うろうろするのをやめていただきたいということを言っているわけであります。

 高齢者対策、私は、これは大きく変わるものではないと思っております。ですから、検討、研究、調査結果、ヒアリング、これだけを続けていって、結論がいつまでも出されないということが一番困るわけでありますから、まあ、大臣、来週、再来週どうなるかわかりませんが、ぜひともしっかり頑張っていただきたいというふうに思います。

 次の話題に移りたいというふうに思います。

 B型肝炎訴訟に関してでございます。私は、これに関しましては、さまざま対応が何でこんなにはっきりしないんだろうと思っているところでございますが、また、その訴訟の中からさまざまなB型肝炎の被害者の方から大きな声が上がっているところであります。

 三点、大きくございまして、一つは、無症候性のキャリアについての支給の問題。これは、不安があるのに対して全くその支給がないのかという声もございます。

 私が特に大きいなと思っておりますのが二点目と三点目。二点目が、いわゆる賠償額についての、薬害肝炎に比較して、因果関係が不確実であるということで低額にしようとしているのではないかという懸念でございます。

 さらに三点目ですが、予防接種、これが母子手帳あるいはいわゆる予防接種台帳を必要として、被害者が多数存在するにもかかわらず、それがなければだめという切り捨てをしようとしている、ここの部分が非常に問題だと思っておりますが、大臣、これに関しては、特に二番と三番に関しまして、結論的に大臣がどうお考えか、ぜひお聞かせいただきたいというふうに思います。

長妻国務大臣 まず、B型肝炎の問題は政府全体としてきちっと取り組んでいく問題であるということで、関係閣僚との打ち合わせというのも頻繁に開かせていただいているところであります。

 そして、今回国として提案をさせていただいたものでありまして、予防接種台帳というものに、もちろんそれもこだわるものではありませんで、あるいは接種痕にかかわる医師の意見書などなどであっても可能とするというようなこと。

 そして、和解金額については、平成十八年の最高裁判所判決を踏まえた水準というようなことも申し上げ、ただ、その判決では肝硬変、肝がんというのは入っておりません。我々は、慢性肝炎よりも、当たり前の話ですが、肝硬変、肝がんの方が重いというのは間違いのない事実でございますので、そういう意識のもと、こういうお話を申し上げているところであります。

 そして、無症候性キャリアにつきましても、我々としては、発症した際には一時金を支給させていただき、その前については、その対象の方々に対して、定期検査費の助成等、三つの助成策をさせていただくというようなことを提案いたしました。

 そして、原告の皆様方からは今月の十五日にそれに対する御意見をいただき、それを受けて私どもとしてもお話を申し上げるということで、今、和解の途中でございますが、途中の議論としては今のような形になっているということであります。

あべ委員 大臣がおっしゃった平成十八年最高裁の基準を踏まえた合理的な水準、これは、慢性肝炎とキャリアに共通する、持続感染者になったことについての精神的損害だけを評価したものでございまして、それ以上の損害については含まれていません。それを考えたときに、これを正当に評価して損害額を算出するというお考えがおありでしょうか、おありではないのでしょうか。お答えください、大臣。

長妻国務大臣 私どもが申し上げておりますのは、平成十八年最高裁判決を踏まえた水準ということを提案させていただいておりまして、この最高裁判決の中には、今おっしゃっていただいたように、肝がんとか肝硬変はそもそも判決の範疇にはございませんでしたので、それについては別途話し合いをするということであります。

あべ委員 別途話し合いということは、もう一度お聞きしますが、ここの部分の最高裁判決に関しては、精神的損害だけを評価したものだと言われています。すなわち、そこに含まれていない損害に関しては正当に評価して算出するというふうなことをお考えでしょうか。お答えください。

長妻国務大臣 これは相手との話し合い、真摯に我々も話し合って早くの解決を目指していくというような姿勢で内閣挙げて取り組んでおりますので、今後とも裁判所の和解協議の中で議論をしていくべき論点になると思っております。

あべ委員 このことに関しては、要するにお答えができないということだと思っております。

 また、接種痕に関して、接種痕もしくはこの台帳ということでございますと、接種痕が残らない予防接種があったときに、大臣、これはどうされるんですか。見捨てられるんですか。

長妻国務大臣 これも、今おっしゃっていただきましたけれども、実際に論文等で、接種をしたけれどもその接種痕が消えるというような方もいらっしゃるというようなことも明らかになっております。そういう方々もいらっしゃるということでありますので、これらについては、今後、和解協議の中で、全体の議論の枠の中でこれについてもよく話し合っていきたいと思います。

あべ委員 このB型肝炎の方々、被害者は本当におつらい思いをしていらっしゃいますので、ぜひとも、早急な結論をしっかり出していただき、この救済をお願いしたいというふうに思うところであります。

 最後の質問になりますが、ジェネリックの処方について質問でございます。

 このジェネリックに関しまして、品質管理の問題、薬害事象の問題、さらにはその責任の所在というところで、特に地方の病院からさまざま問題点が挙げられているところでございますが、特に品質管理の問題。これは、ジェネリックを出すに当たって、本当に効果が、ジェネリックだからといって、製造過程も違う、メーンのいわゆる薬剤の中身は一緒であったとしても、それ以外のものが違っているときに、品質の管理が今十分されていると大臣はお考えでしょうか。

長妻国務大臣 医師が先発医薬品を適正に処方して、そしてこの変更不可の署名のない処方せんである場合、薬剤師が処方の範囲でジェネリックに変更したときは、医師や薬剤師に副作用の責任は生じないと思っておりますので、そういう考え方で今実際に運用されているのではないかというふうにも考えております。副作用の場合はPMDAの救済対象になるというのは言うまでもありません。

あべ委員 そうすると、今回のそのジェネリックの処方に関して、医薬品の副作用健康被害救済制度の対象になっていることはわかりました。

 医師が先発品でなくジェネリックを使っていいというふうにチェックをします。そうすると、調剤薬局が十種類ぐらいあった中で自分たちで選びます。これは報告の義務がないとされています。後から報告する調剤薬局もあります。また、薬を出す段階で医師に相談する調剤薬局もあります。

 今の大臣のお答えですと、ジェネリックを出すのであれば、医薬品の副作用健康被害救済制度の対象であるから、医師も薬剤師もその薬剤被害に関しては責任を負わなくていいということでしょうか。

長妻国務大臣 先ほど答弁を申し上げたとおりでございまして、医師がまず先発医薬品を適正に処方する、これはまずもちろん大前提でありますし、薬剤師がその先発医薬品の処方についての範囲内で後発医薬品、ジェネリックに変更をしたというときについては、医師や薬剤師に副作用の責任は生じない、こういうことであります。

あべ委員 そういうことが、例えば平成十八年の十月に、厚生労働省保険局医療課長がシンポジウムで、多くの選択肢がある中で、選択した責任は薬剤師が負う、また、製品の承認審査が間違っていれば行政、メーカーも責任が問われるという議論が行われると思うというふうに見解を示しています。

 そうすると、非常に問題なのは、ジェネリックという医薬品の検査、承認がまだまだ甘いのではないか。諸外国の例を見てみますと、ジェネリックを出すに当たって、その品質、さらにはその副作用データがどのようであるかということがもっともっと整備されているのですが、ここは私は日本においてジェネリックを促進するにおいての大きな課題であると思いますが、大臣はどうお考えでしょうか。

長妻国務大臣 先発医薬品とジェネリックを比べて、検査、承認がジェネリックは甘いのではないかというようなお尋ねだと思いますけれども、私自身はそういう意識は持っておりません。いずれにいたしましても、先発も後発についても、安全性も含めてきちっとした承認というのが言うまでもなく重要なわけでありますので、それが担保できるように我々としても取り組んでいきたいというふうに考えております。

 そして、もう一つ、平成二十四年度までに後発医薬品の数量シェアを三〇%以上というような政府の目標というのがございます。これに向けて、やはり後発医薬品の安心使用促進アクションプログラムというようなものについても政府として取り組んでおりまして、後発医薬品の安定供給、品質確保、後発品メーカーによる情報提供、使用促進にかかわる環境整備、医療保険制度上の事項に関し、国及び関係者が行うべき取り組みを明らかにするなどなど、今おっしゃっていただいた承認についても怠りなきよう取り組んでいきたいと思っております。

あべ委員 ありがとうございます。

 特に、処方してジェネリックというふうにしているドクターたちが非常に不安を抱いておりますので、ここは情報をしっかりと整備しながら開示をしていただきたい。特に、その処方する側の医師の立場を考え、これで大丈夫なんだろうかという不安を払拭し、自分が責任を負わないからということでなくて、国民の安全と安心を守るために、薬剤のあり方ということで、ぜひともこれは進めていただきたいと思います。

 時間になりましたので、質問を終わります。お忙しいときに御答弁ありがとうございました。

鉢呂委員長 次に、田村憲久君。

田村(憲)委員 大臣、八月三日ですか、予算委員会で大臣に御質問をさせていただいて以来、一カ月ちょっとぶりでございます。

 冒頭、ひとり言でございますけれども、私、やはりちょっと不満なんですね。三カ月前に皆さんが代表選で決められた総理大臣、それを、またこの一番重要なときに代表選を三カ月でもう一回やって、それで、本当を言うと、国会がもう開いていろいろな議論をしなきゃならぬときに、こういう閉中審査というような、言うなればイレギュラーなやり方でこういうような議論をしなきゃならぬということに対して、非常に不満を持っております。早くお決めをいただいて、国会が安定して開けるように、ぜひともお願いをいたしたい。ひとり言でございますから、答弁は要りません。

 さて、その予算委員会のときにも実は話をさせていただいたんですが、子ども手当の議論。あのときは、うわさでは事項要求であろうという話でしたけれども、概算要求の中で、これがやはり事項要求というような形で入ってまいったようでございます。

 私、ちょっとこの事項要求の出し方というのがよくわからなくて、子ども手当という項目だけ上がって要求をしているのかどうかよくわからないんですが、子ども手当は、要は、今年度は現金で給付をしていますよね。いろいろな御議論の中で、現金と現物を組み合わせていきたいという議論が至るところで出てきております。そういうものを事項要求で上げるときに、どういうような要求の仕方をされておられるのか、どんな形で事項要求されておるのか、ちょっとお聞かせをいただければありがたいと思うんですが、大臣、どうぞ。

長妻国務大臣 事項要求につきましては、子ども手当の上積み部分について、その部分の現金、現物についての事項要求、数字が入っていないということであります。実際にそれぞれの金額を確定し、中身を確定するのは、これから年末にかけての予算折衝の過程で確定をしていく、こういうことであります。

田村(憲)委員 いろいろなところで、満額確保したいというようなことを大臣はおっしゃっておられたと思いますので、厳しい中でしょうけれども、思いとしては、事項要求、満額を確保するつもりで要求をされておられるんだと思うんです。

 ただ一方で、今の話ですと、現物と現金給付と二頭立てで事項要求を出しているというようなお話、金額は入っていないけれども、こういう話だったと思うんですが、その制度設計をどうするかという議論は、再来年度から配るものはいろいろな案が出てきておりましたよね、こういうようなパッケージにして出すみたいな。でも、来年度どう配るかというのは、まだそこまで決まってきていないんだと私は思うんですよ。

 すると、地方にしてみれば、やがてまた半年を切ってくるんですよね。配るのは地方ですからね、事実上。そうすると、そろそろどういう形で、しかも、今度は現金だけじゃありませんよ、現物サービスもその中に入ってくる。言うなれば、多分地方はそれを提供するんでしょうね。それをどうやってやるのかというのをそろそろ、予算は幾らかというのは事項要求で決まるんでしょうけれども、その仕組みはそろそろ皆さんお示しをいただいてこないと、これは去年とまた同じですよ。去年も、最後の最後まで、どうやって配るのか、負担はどうなるのか、こんなことが決まらずに地方は泣いたわけですよ。

 ですから、どういうような仕組みで地方にこのお金を渡して、現金と現物を、どのようなルートでお金が流れていくのかぐらいは、頭の中にイメージとしては、今大臣、お持ちだと思いますので、イメージの中であれば御説明ください。

長妻国務大臣 まず、ことしの参議院選挙のマニフェストで、子ども手当、「上積み分については、地域の実情に応じて、現物サービスにも代えられるようにします。」と。現物サービスの例としては、保育所定員増とか保育料軽減とか、いろいろなことをここで書かせていただいているところであります。

 その意味で、今、詳細にそれが金額も含めて決まっているわけではありませんので、これは、皆様からも御指摘をいただき、あるいは政府の中でも、財源というのが大変厳しい中でありますので、全体の財源との兼ね合いもありますので、それも調整した上で、それを年末の予算編成で決めていくということであります。

田村(憲)委員 金額の決定はそれでいいと思いますけれども、どのような形で、現金はことしの実例があるんでしょうけれども、現物の方が、お金が流れていって、どういうサービス、それがどのような形で使われるのか、こういうことは、そろそろ仕組みは地方に提示できるようにしていただかなきゃならぬと思いますが、早急にこれはつくっていただきたいというふうに思います。

 この議論をずっとやっていても次へ進めませんので、この議論はこれぐらいにしておきます。

 一方で、当然、お金の部分も地方は心配なんですね。今回の概算要求を見ますと、既存の部分は、地方負担は今年度と同じように予算の中に計上してありますから、地方に見てもらうというような話なんだと思いますね。それはまさに、今までの児童手当部分、児手の部分ですよね。では今度、事項要求で上乗せの部分、ここに関しては、今大臣、地方に負担をしてもらうつもりなのか、それともこれは全額国が出すつもりなのか、ここは大臣としてどうお考えなんでしょう。

 そしてもう一点、では、既存の部分は、今回概算要求で、前回、今年度と同じように地方にそのまま見てもらうという形になっていますが、これも地方は納得しているわけではないんですね。今年度、つまり昨年度ですね、議論の中でいたし方なく、時間切れでこれは甘んじているんです。今、地方の首長さんの中には、まだまだ不満がいっぱいあって、ちゃんと話し合いをしてくれという方々もおられます。この部分は、地方とはもういろいろな議論をして、ここは去年と同じように見てくださいよという確認はとられておるのか。

 二点、お聞かせください。

長妻国務大臣 まず、後者の件でありますけれども、今の一万三千円部分については、これは概算要求で入れさせていただいているんですが、今と同じような負担ルールで仮置き的に要求をさせていただいたということでありまして、これについては、概算要求の作成過程で、全国知事会にも、私が直接会長にお電話を申し上げ、全国市長会あるいは全国町村会の会長にもお電話をして、そういう説明を申し上げたところであります。

 そして、この上積み部分の財源についてはどうなんだということでありますけれども、先ほども、その前の質問で触れていただきましたが、これも年末にかけて、新システムということで幼稚園と保育所を一体にする、一つにする、この議論も年末までにある程度の結論を出して、これは来年に法律を出すということでありますので、そことの関連性も出てくる話でありますので、上積み部分については、どの財源でどういう形でやるかというのも年末までの検討事項になるということであります。

田村(憲)委員 何か不可解な答弁だったんですが、保育所と幼稚園を一緒にするからここのお金はまだ決まらないんだみたいな、何かそんな話だったんですが、それはそれで、来年度、予算は計上しているわけですよね。保育所の運営費の方は予算は計上されていますよね。だから、そういう意味からすると、何を言っているのかちょっとよくわからないんですけれども。

 私は、大臣の思いとして、基本的には我々としては市町村には負担をお願いしないんだ、いや、するんだということをここで思いとしてお答えいただきたい。そして、その後、財務省とのいろいろな調整の中でこれはどうなるかというのはまた別の話なんでしょうけれども、大臣は、去年はそこは比較的明確に物事をおっしゃられておったと思うんですよ、地方負担に関しては。なぜことしは言われないんですか。ちょっとお考え方が変わってきたんですか。どうでございましょう。

長妻国務大臣 上乗せ部分の財源をどうするかということでありますけれども、これについては、繰り返しで恐縮でありますが、現金と現物をどの比率で、では現物はどういう、先ほど例示的なマニフェストをお読みいたしましたけれども、どの部分をどれだけそこに組み込んでいくのかということについて具体的にこれから詰めていくということになりますので、なかなか確定的に、その財源はどこが、どの財源を充てるということは、まだ申し上げる段階ではないということであります。

田村(憲)委員 どんどん時間はなくなっていくので、また地方が大変な苦労をしますよ。早く代表選を終わっていただいて、そういうところも詰めていただきたいなというふうに思います。

 もう一点、例の、外国人の外国に住まわれているお子さんの件に関しては、皆様方も国内居住要件をかけるということをマニフェストにお書きになられておりますよね。ですから、そういうものに関しては来年度から、来年度と書いてあります、二〇一一年度からと書いてありますから、そういうような問題は起こらないように、そういう約束を参議院選挙で国民の皆さんとされました。

 しかし、今回の概算要求には、実は子ども手当分は去年のままの数字をそのまま、通年度ということで若干ふえた部分はありますが、置きかえておりますから、外国人の外国に住まわれておられるお子さんの分を削減した予算にはなっておりませんが、これは何か意図があるんですか。

長妻国務大臣 これは別に意図があるわけではありませんで、今おっしゃっていただいたように、来年度からは国内居住要件を課すということはそのとおりであります。

 ただ、その部分をきちっと計算して除外していくということになりますと、概算要求は八月末が締め切りでありまして、今、実態把握ということで、自治体にもいろいろなデータのお願いをしておりますので、まだそれがなかなか、正確性を期したものが我々ないということなので、ただ、全体の支給から見ると非常に大きな金額ではありませんので、概算要求ということなので、そういう形で出させていただいているということであります。

田村(憲)委員 国内居住要件をかけるということでございますから、これは我々も本当を言うともっと早く、今年度中にもおやりをいただきたい話なんですけれども、なかなか忙しいようでございますから、とにかく来年の四月からはぜひともこういうような問題が起こらないように対処をしていただきたいというふうに思います。

 心配なのが、実は予算委員会のときにも話したんですが、お金がないので予算を組めないんですよね、このままでいくと今の政府は。例の一割削減だというので特別枠をつくった、しかし一方で、税外収入は去年のように十兆六千億円は多分確保できないであろう。すると、どこから最後お金を出してくるんだというときに、実は積立金といって、埋蔵金じゃない積立金からお金を出してくるおそれがあるんじゃないか、こんな心配をさせていただきながら、予算委員会でも財務大臣にも質問をさせていただきました。

 例えば、厚生労働省でいえば、年金の積立金ですよね。これは使いませんねと言っても、原則使わないというので、絶対使わないとはお答えにはならなかったんですね。多分、大臣、そのときにお聞きになられていたと思います。あと、労働保険もございますよね。労働保険も、多分、労災保険は八兆円ぐらいの積み立てがあるんだと思います。ただ、これも必要なお金でございますから、埋蔵金ではないと我々は認識しております。雇用保険の方はもうお金が足らないから公費を入れたという話でありますから、そういう意味ではこれも使えないのであろう。

 これは、たとえ財務省がどんな要求をしてきても取り崩させない、もしくは貸さない。年金積立金は以前貸したことはあるようでありますが、これは我々の政権のときだと思うんですけれども、返ってきていないらしいですね。返ってきていないものは貸しちゃったら大変になるというのは当たり前の話でありまして、どうか大臣、貸せと言っても貸さない、積み立ては崩させない、ここでそのお誓いをしていただきたいなと思うんですが、いかがでございましょう。

長妻国務大臣 今おっしゃっていただいたように、前の政権の方では、年金の国庫負担の繰り入れを延ばすということによって、結果として三兆円分、年金から一般会計が金を借りているようなことが今も続いておりまして、そういうことについては、これは問題があるのではないかというふうに考えております。これは野田財務大臣も当時、田村委員の質問で、答えとしてこういうふうにも答えているんです。「現実的に年金を取り崩すということは、これは基本的には年金制度の信頼にかかわることだ」というようなことも申し上げているところであります。

 やはり、確かに年金の積立金や労働保険特会にはお金は一定程度ありますけれども、そのお金というのは当然、目的を持って払っていただいているお金で、それは何に使うかということももちろん決まっているわけで、仮にそれを変えるにしても、これは法律を通す必要が出てくるわけでありますので、そこまでして、そういう限定したものを別のものに使うということについては、私としては、それを直ちに容認をしていくということは考えておりません。

田村(憲)委員 取り崩しだけじゃなくて貸し出しも、大臣は職をかけてそれを拒否していただきたいというふうに思います。大切な年金の、言うなれば支払いの原資でございますから、しっかり確保していただきたいというふうに思います。

 さて、概算要求を見ておりますと不可思議なことが幾つかありまして、例の年金通帳というものを大臣は肝いりでおっしゃっておられて、年金をメーンに御活躍をいただいてきた大臣でありますから。それが、本年度の予算でも、当初、概算要求に出てきた金額から大幅に減ったわけですよね。これが来年度の予算、概算要求でどうなったかといいますと、なくなっているんですよ、年金通帳という項目が。年金ネットという項目ではお金が上がっているんですけれども、年金通帳はなくなっている。

 年金通帳はもう大臣、あきらめたと。あれは、何かこんな写真入りで、こんなのをつくって皆さんに配って、どこでもATMで残高証明みたいに記録を出せばだれでもすぐわかりますよ、便利になりますよといって、大臣は選挙のときもテレビを中心に訴えられたわけですよね。でも、これはやはり間違っていたから断念をするというふうに我々は受けとめさせていただいていいんですね。いかがですか。

長妻国務大臣 これも、昨年も国会でも答弁を申し上げたと思うのでございますけれども、来年の概算要求でも年金通帳に対する調査経費を計上させていただいているんですけれども、つまり、今週も年金記録回復委員会でデモンストレーションをいたしましたが、まずは、インターネットで自分の年金の見込み額もわかるように、そして、今は郵便でIDをとるという、非常に時間がかかるようなやり方でありますけれども、ネット上ですぐにパスワードを取得してそれを見られる仕組みをまずはつくっていく。

 そのときに、お年を召した方が、なかなか御自宅でインターネットということにはならない方については、これは郵便局あるいは自治体にパソコンを置いて、そこに補助員がついていただいて、お求めに応じてその方の年金記録をそのまま打ち出していくというような仕組みというのを考えております。

 その仕組みの第一弾のスタートが今年度中に始まりますので、それを、利用者の方も含めて、年金通帳についてはどういう形態が適正なのかどうか、さっき申し上げた調査経費を使ってこれについての調査、アンケートをして、そして年金通帳の制度設計をしていく、こういうことになっております。

田村(憲)委員 では、年金通帳と書けばいいじゃないですか、概算要求に。何で年金ネットという名前に変わっちゃったのか。いつの間にか呼び名までなくなっちゃったんですよね。六千万円か何かの調査経費、我々これを見ていて、アンケートか何かいろいろして、やはりこんな形態は要らないよという、やめるアリバイづくりのために六千万円を調査経費として計上したら、こんな無駄はないんですよ。

 だから、もうそれはやめる、年金通帳はやめます、私はいろいろなことを言ったけれどもこれはやはり余りよくないと認められて、やめると宣言していただいた上で、年金ネット、これは我々が以前からやろうとしていたものとよく似た形態ですから、これにかえますと言っていただければいいのに、もう姿も何もないものをいつまでも、何か犬を猫と言っているみたいな、そんなことはやめた方がいいと思いますよ。

 これは年金ネットであって、年金通帳じゃないんですよ、あなたが以前おっしゃっていたような。だから、もうそれはやめました、五百何億円かけるような、そんな年金通帳じゃありませんとはっきりおっしゃっていただければいいんですけれども、なぜ言わないんですか。

長妻国務大臣 これは、来年度の概算要求にも年金通帳という言葉はちゃんと入っているところでありまして、基本的に、何しろ、いつでも自分の記録が確認できるということが重要なわけであります。そして、御自宅のインターネットでは、インターネットのできる方はそこで確認ができるような、今以上に簡単に確認できるような措置、そして、今は年金見込み額はなかなか表示できませんが、これも表示できるような措置をするということをして、それで、それ以上に、どこでも確認できるような形態というのはさらにどういう形態が必要なのかというようなニーズ調査をした上で年金通帳のあり方というのを決めていくということであります。

 当然、自宅でインターネットで、パスワードまで自分でとって、どんどん検索してそれを表示できるという方は、かなりお年を召した受給者の方等々は難しい方もいらっしゃいますので、特にそういう方の御意見を聞いて、さらに、いつでもどこでも自分の記録が確認できる、そういう仕組みはどうあるべきなのか、これについて検討していくというような経費を入れさせていただいているということであります。

田村(憲)委員 だから、我々がやってきたことを改良されているということであって、あなたが初めおっしゃっていた年金通帳というものとはもう似て非なるものになってきておるし、多分その方がお金もかからないと思いますよ。だから、そういう選択をされた、以前言われていたような形態はやはり今の時代、間違えていたということをはっきりとお認めをいただいた上で、前政権が進めてきたものをよりよいものにして、年金の受給者また年金の被保険者の方々の利便性に資するというふうにお答えをなされればいい話であって、何ら、私は新しいものをつくったというように自慢をされる話ではございませんから、そこはそのようにちゃんと誠実にお答えをいただきたいというふうに思います。

 ほかにもこの年金の問題は、例の紙台帳との突き合わせの問題、これも来年度の概算要求八百七十六億円、何か二割五分から三割ぐらいこの金額で突き合わせを進めるという話があるようでありますが、きょう、自民党の部会で、このペースでいったらどれぐらいお金がかかるんだと何度お聞きをいたしましても答えが返りませんでした。

 今ここで大臣にお聞きをしても多分答えが返ってこないと思うので、これは次の委員会といいますか、今度の臨時国会のときになるんですかね、そのときまでにぜひとも、幾らぐらい、それは今の時点で計算できるわけですから、ではすべてやったら幾らだということは計算すればわかるはずですよね。だから、お出しをいただきますように要望させていただきたいというふうに思います。もう答弁はいいです。そのときにお答えください。

 さて、今、多剤耐性の菌によります院内感染の問題が非常に大きな話題といいますか注目を浴びております。帝京大学のみならず、報道で、NDM1ですか、独協医大の方でもそういうものが、非常にスーパー細菌のようでございますけれども、抗生物質がほとんど効かない、そんな細菌が日本で初めて見つかったというような報道もなされております。

 大臣も、これは大変だということで、対応をということをきのうニュースで言っておられたのを見ておりますけれども、この帝京大学の案件、いろいろと調べてみますと、もう少し早く報告があってもよかったのではないかというような報道があるわけですね。八月四日に厚生労働省及び東京都による定例の立入検査、これは特定機能病院に対する立入検査だと思いますけれども、ここでも特段の報告はなかったと。その後、九月の二日に報告が上がったということになっておりますけれども、大臣は最近、この帝京大学医学部の附属病院、いつ行かれましたか。行かれたことありますか、最近。

長妻国務大臣 この前の月曜日ですので、八月三十日の夜、救急医療を視察に行くということで参りました。

田村(憲)委員 そのときにはこの話は大臣は、御報告はなかったんですか。これを見ていると九月の二日に報告というふうになっていますけれども、現場に行かれて、大臣は何の話もお聞きにならなかったんですか。

長妻国務大臣 これは、事前にもそういう話があるというのも聞いておりませんし、向こうに視察に行ったときも、救急医療の話、その現場を見に行って、その意見交換をして、当然こちらも事前にそういうことはわかりませんでしたし、向こうからもそういう話は一切なかったということであります。

田村(憲)委員 そうだとしたら、これは帝京の方が悪いのかどうかわかりませんけれども、でも、大臣も視察をされて、しかも、この院内感染の問題、多剤耐性菌の問題が、やはり、ここだけじゃないわけですよね、昨今ふえてきているわけですよ。当然、行けば、そういうふうなことを総合的に議論する、した上で向こうが隠したというならばこれはまた大きな問題だと思いますけれども、そういう議論もなしに、ただ救急救命を見て、それで帰ってこられたということなんですか。

長妻国務大臣 これは、もし私どもがそういうことがあるというのを知っていれば、知っていた上でそこに行ったとすれば、これはもう当然その話題が中心になるというふうに思いますけれども、そういう報告も事前にはありませんで、向こうからもそういう話がないということでありまして、我々としては、救急医療ということでお邪魔をして、その情報提供というのはなかったということであります。

田村(憲)委員 不可思議というか、何の報告もなかったというのはにわかに信じがたい話なんですけれども、大臣が聞いていなかったんでしょうから、聞いていれば大臣もみずから発表されておるでしょうから。しかし、あれだけの死者、直接因果関係があるかどうかはまだわからないようでありますが、可能性はあるということでありますから、あれだけのお亡くなりになられた方がおられて、大臣が報告を受けていないとすれば、厚生労働省がなめられているのか、大臣がなめられているのか、よくわかりませんが。

 その後に出ました、九月の六日の事務連絡というものの文書を厚生労働省から私、先日いただきましたが、ここでも相変わらず、「多剤耐性アシネトバクター・バウマニによる院内感染を疑う事例を把握した場合には速やかに貴課あてに報告するよう指導するとともに、貴課より当課あてに情報提供するようお願いいたします。」こういう文書が流れているわけですよね。

 そういうことからすると、お願いじゃなくて、やはりこれはもっと厳しくこういうものに関しては指導をしていかなきゃならない。ましてや、大臣が行っているのに言わなかったとすれば、これはちょっと問題がある話ですよ。だから、もっと厳しく指導していかなきゃならないし、その後、大臣のいろいろなお話を聞いていると、これは危機感を持って対応するという話なので、ちょっと今のこの対応では私は手落ちがあるのではないのかなというふうに思うんです。

 これからこの問題、多分まだまだ広がっていく可能性がありますし、新しい、新種のものも出てきておるようでございます。どうか、厳しい対応というか、しっかりと義務化に近いような形で報告が上がるような、そんな対応をしていただきたいと思うんですが、大臣、何か今思いはありますか。

長妻国務大臣 この報告については、先ほども触れていただきましたけれども、厚生労働省と東京都が定例の立ち入りを八月上旬にしていて、実はそのときに厚生労働省、当方からも、院内感染の体制が薄いんじゃないか、こういう議論をしているわけでありまして、本来であれば、遅くともそのときに向こうから、実はこうこうこうだという話があってしかるべきだというふうに思いますが、一切それがなかったというのは非常に私ども遺憾に思っているところであります。

 今後、今のお読みいただいた通知にしても、アシネトバクターという菌でありますけれども、これが多剤耐性菌になったわけでありますが、これはもう昨年一月に全国に通知を出して、情報提供をしてくださいと言っております。ただ、それをさらに徹底させるために、今週も同じ通知にプラスして、さらに強く情報提供を求めるという通知をもう一度出させていただいておりますので、我々の依頼におこたえをいただいていればもっと早く情報が上がっていたんではないかというふうに考えております。

田村(憲)委員 もう時間でございますので終わりますが、そのときに、定期的な立入検査のときにちゃんとそこの点は問題があるというふうに厚労省として気づいていたのならば、大臣が行かれたときにそのことをもう一度確認するのが大臣の職務だと私は思いますよ。それはやらずに、その二日後か三日後にこんなことを報告されているということでは、やはり大臣の対応も問題があったということを指摘させていただきながら、私の質問を終わります。

鉢呂委員長 次に、古屋範子さん。

古屋(範)委員 公明党の古屋範子でございます。

 民主党代表選が行われている中、多くの課題が発生をいたしております。ただいまも指摘にありましたけれども、多剤耐性菌の問題、公明党の坂口元大臣も非常に懸念を持っております。帝京大学での院内感染また新種のNDM1という菌等々、口蹄疫問題を振り返りましても、初期対応の甘さと申しますか、危機意識の欠如から甚大な被害が発生をいたしました。ぜひこの問題にも危機感を持って全力で取り組んでいただきたい、このように思うわけであります。

 また、今、日本は急速な円高、株安に見舞われております。民主党政権が発足をして以来、経済無策が日本経済を沈没させかねない、このような状況であります。こうした長引くデフレから脱却するためにも、抜本的な経済対策が必要であると考えております。中小企業の悲鳴にも似た現場の声をぜひ真摯に受けとめていただきたい、このように申し上げたいと思います。

 公明党は、こうした急激な円高、株安の現状を踏まえまして、デフレ脱却に向けて、九月二日、円高対策・デフレ脱却に向けた緊急経済対策を取りまとめて発表いたしました。本日、この公明党の緊急経済対策を中心に質問してまいります。

 その前に一問、社会保険病院について質問してまいります。

 八月の六日、RFOの期限二年延長という議員立法が成立をいたしました。これを受けまして、私も八月の二十三日に川崎社会保険病院に行ってまいりました。川崎市議団とともに参りまして、山本泰久院長から、存続問題また医師不足問題について現状、御意見を伺ってまいりました。

 この川崎社会保険病院、婦人科また耳鼻科が閉鎖をされております。また、人工透析科も今診療が行われていない、要するに医師がいなくなってしまった、去ってしまったわけであります。広い部屋に人工透析の機械が二十ほど置かれておりまして、患者が一人もいない、そうした病室を見るにつけ、根底には確かに医師不足問題がありましょう、しかし、社会保険病院の存続、その受け皿というものが今明確な道筋が示されていない、こうしたところからやはり医師また職員の不安が非常に広がっているという現実があるわけであります。

 こうした問題に対しまして、当然、この受け皿となります、社会保険病院存続のための新機構設立法案、こうしたものを早期に提出していただき、成立を目指すべきだというふうに考えております。大臣のお考えを改めてお伺いしたいと思います。

長妻国務大臣 まず、RFOの二年間延長の法案を通していただきまして、これについて私の名前で、それを通していただいた直後に全国の社会保険病院、厚生年金病院にお手紙を出させていただいて、二年延長するということと、あとは、譲渡に当たっても必要な医療機能が維持されて地域医療が確保されるというのが前提であり、あるいは地元住民や自治体の理解が得られるというのも前提であります、こういうようなことも申し添えてお手紙を出させていただいたということであります。

 そして、二年延長していただいたわけでありますので、その中で譲渡していくもの、当然受けるべき法人がなければなりませんけれども、ただ、その過程でも、一体的に病院機能が運営され、そしていわゆるガバナンスというものがきちっと働いていって、地域の期待にこたえる医療を実現していくということを検討する中で新たな枠組みが必要になるということであれば、これについては我々も新たな枠組みをつくっていくというようなことを進めていくというふうになると考えております。

古屋(範)委員 人工透析の患者の皆さんは週に何回も通院をしなければいけない、そのために病院の近くに引っ越してこられた方さえいらっしゃるわけなんですね。今、何度も、地域医療を守る、このことをおっしゃいましたけれども、ぜひそのために、受け皿となります新機構、この法律成立に向けて最大限の努力をしていただきたい、このことを要望しておきたいと思います。

 次に、猛暑対策についてお伺いいたします。

 記録的な猛暑が続いております。きょうは雨が久しぶりに降りましたけれども、マスコミの集計では、熱中症がきっかけと見られる死者が、梅雨明けした七月十七日から八月の三十日までに、全国で少なくとも四百九十六人に上ると言われております。また、消防庁によりますと、五月三十一日から八月二十九日までに救急搬送された人は全国では四万六千七百二十八人、病院に搬送された直後死亡を確認された人が百五十八人に上った、そうした救急医療の結果も出ております。気象庁の統計では、八月の平均気温がほぼ全国で戦後最高を記録する猛暑となっております。九月に至っても暑い日が続いているわけであります。

 そこで、熱中症被害が全国で相次いでいることを踏まえて、私たち公明党では、九月一日、九項目にわたります猛暑対策ビジョンというものを発表いたしました。救急医療活動の強化ですとか、熱環境の周知、学習及び啓蒙強化、あるいは小中学校のエコスクール、クールスクール事業、あるいは農作物、畜産等の分野での対策、ヒートアイランド対策などなど掲げたところでございます。今回の猛暑を熱被害と認識して本腰を入れた対策が必要であるということを訴えております。

 今回の熱中症での死者は、平成十六年の新潟の中越地震あるいは台風二十三号による死者、行方不明をはるかに上回る数でありまして、そう考えますと大規模災害にも相当すると言ってもいいかと思います。政府として早急に猛暑、熱中症対策に取り組むべきと考えますけれども、いかがでしょうか。

足立大臣政務官 熱中症につきましては、これは中心となるのは今のところは環境省でございまして、関係省庁の連絡会議というものがございます。年に一回開催しておりますけれども、消防庁、文部科学省、厚生労働省、気象庁そして環境省。ちょっとこういう見せ方で失礼ですが、熱中症環境保健マニュアル二〇〇九、こういうものも作成されております。

 そんな中で、では厚生労働省としての取り組みはどうなんだということでございますが、これは一般的に、水分補給等の啓蒙は必要なことだと思います。そして、あとは、私たち厚生労働省としては、保健所等の地域に対すること、それから職場に対すること、そういうふうに今のところは対策が打たれているところでございまして、まさに今回、九月三日、残暑が非常に厳しいという中で、特にお年寄りの熱中症にかかりやすい方に対して再度の注意喚起をするために、自治体に対して事務連絡を発出いたしましたし、職場につきましては、職場の中で熱中症による災害の発生状況を逐次報告したり収集したりして、職場環境を守るというようなことに取り組んでいるところでございます。

 以上でございます。

古屋(範)委員 九月三日の通達ということですので、非常に遅かったと言うしかないというふうに思っております。こうした温暖化が進む中で年々猛暑が続くのではないかということが予想される中で、ぜひ、ことしもさることながら、来年に向けても、省として、特に大臣がステートマンとなって国民に多くのメッセージをしっかり発信していただきたい、このように考えております。

 今回熱中症で亡くなられた方々の中で、やはりひとり暮らしの高齢者で、空調設備のついていない部屋で窓を閉め切ったまま部屋の中で夜間亡くなられていた、こうしたケースが大半であったと伺っております。

 こうしたひとり暮らしの高齢者につきまして、熱中症での死亡問題だけにとどまらず、先ほどから委員の質疑にも出てまいりましたけれども、生存していれば百十一歳ということで白骨死体で発見をされた、あるいは百歳以上の高齢者が相次いで所在不明となっている、このような問題が大きくなっております。

 厚生労働省が実施した調査の報告、先日、公明党の部会でもお伺いいたしました。調査結果から推計した場合に、全国で八百人程度の所在不明、年金を受給している可能性があるということでありました。この背景には、家族のあるいは地域の関係が希薄になっているということが指摘をされておりますけれども、行政の側の課題というものも浮き彫りになったと思います。まず、住民基本台帳を実態に即したものとする体制整備、また個人情報の保護の問題、さらに台帳や戸籍、社会保障の各部局の連携の悪さ、こうしたものが問題が起きた要因の一つと指摘をされております。

 厚労省がこの三日、高齢者世帯の個人情報について、介護保険の総合相談などをしている地域包括支援センターなどと積極的に共有するよう都道府県に通知をされています。個人情報の管理を一元化し、一体的な運用ができるシステムの構築が必要となってまいります。不明問題で浮き彫りとなった、家族と一緒に暮らしているはずの高齢者が実はいなかったというような状況を把握していく必要があります。

 そこで、民生委員、児童委員や老人クラブ、社会福祉協議会、さらに警察、消防など関係団体が別々に活動するのではなくて、市町村の地域包括支援センターを中心に連携を強めて、地域全体で高齢者を支援するネットワークづくりというものが大切かと思います。この地域包括支援センターは、地域に適した活動を行っていく必要もあるかと思っております。

 この重要な役割を担う地域包括支援センターへの財政的、人的支援というものも積極的に行う必要があると考えております。また、地域の担い手たる民生委員の皆さんの待遇改善、定員増加、活動に必要な個人情報の提供など、こうした民生委員さんが活動しやすい環境づくりが必要かと思います。この二点についてお伺いいたします。

山井大臣政務官 御質問ありがとうございます。古屋委員にお答えを申し上げます。

 地域包括支援センターは、現在、ブランチを含めて七千カ所ございまして、将来的には中学校区に一カ所、約一万カ所整備していきたいと思っております。

 この地域包括支援センターが地域の高齢者の孤立化などを防ぐ一つのキーステーションになるということは、先日、日曜日のNHKスペシャルでも報道されておりまして、その割には十分な情報が地域包括支援センターに知らされていないということが問題になっておりました。

 そのような指摘を踏まえまして、九月三日には都道府県を通じて個人情報の共有方法に関する事務連絡をお送りしまして、地域包括センターに対して適切な情報が市町村からも行くようにということを一つ対応を講じました。

 それとともに、地域包括支援センターでの見守り活動というものを強化していくために、平成二十三年度予算の概算要求においても、見守り活動等の支援のネットワークの構築を行うモデル事業として、全国五十カ所で実施の事業を要求いたしました。

 さらに、地域包括支援センター、おとついも私、行ってまいりましたが、現場からは、介護予防ケアマネジメントに非常に多くの労力と時間がかかっているという御指摘もございます。そういうことも踏まえまして、本年八月より、要介護、要支援状態になる前の方の介護予防ケアマネジメントにおけるケアプラン作成を簡略化するなどして、少しでも業務を縮小しまして、地域のネットワークづくりに対して包括センターがしっかり取り組めるように環境づくりを進めておるところであります。

古屋(範)委員 政務官が今おっしゃった点なんですが、地域包括支援センターの業務というのは非常に多くて、本来行うべき単身高齢者への家庭訪問など、なかなかそうした業務に全力を挙げることができないというような実情もございます。ぜひこうした支援をさらに拡充していただきたいと思っております。

 先日、私も、和光市内にあります高齢者専用賃貸住宅、リーシェガーデン和光というところを訪問してまいりました。この和光市は、先駆的な高齢者施策に取り組んでおります長寿あんしんプランというものを策定しております。孤独死がほぼゼロという市でありまして、七万人という割と小さな市ではあるんですが、スクリーニング調査というものを行いまして、高齢者にスクリーニングをする。返信があったところはとりあえず大丈夫、返信がなかったところには徹底した家庭訪問を行っていく。市の職員、民生委員さん等が月一回とかあるいは週に一回訪問して状況掌握をしていくということでありました。

 こうした徹底した取り組みをされていまして、地域の高齢者の状況というものを非常に詳細に掌握した上で、市の福祉計画というものを立てていらっしゃるんですね。同じ市の中でも、当然、地域によってかなり実情の差、高齢化率にしても相当な差があるということであります。そうしたニーズとか偏在性に合わせて、施設が集中したり乱立したりしないように非常にうまく機能させていらっしゃいました。

 そこで、住宅政策もここでは非常に充実をしているんですが、高齢者専用賃貸住宅、またケアハウスの整備、あるいは家賃補助、こうしたものも、財政にゆとりがあると言えば言えるんですが、大きくしっかり補助をされていました。高齢者一人一人が本当に必要としている福祉を必要な人に届けていこうという徹底した取り組む姿勢、これを国としても学んでいくべきだろうと思っております。

 こうした地域福祉計画は、昨年度末で全国五一・四%の自治体が策定をしていないということであります。そこで、公明党の緊急経済対策の中にも盛り込んでいるんですが、市町村の地域福祉計画の策定促進、あるいは孤独死ゼロを目指しまして独居老人を地域で見守るなど、地域全体での高齢者を支援するネットワークづくりのために、高齢者支援体制整備モデル事業、こうしたものを創設し拡充していくべきだと思いますけれども、この点はいかがでしょうか。

山井大臣政務官 古屋委員、御質問ありがとうございます。

 先ほど少し、民生委員の方の答弁が十分できておりませんでしたので、一つだけつけ加えさせていただきますと、やはり民生委員の方に十分な地域の個人情報が伝わっていないということがございますので、それを踏まえまして今回サンプル調査を行っております。それで、市町村がどのような情報を民生委員さんに出しているか、また民生委員さんはどのような情報が欲しくて、そしてどのような情報が伝わっているか、それを十月中に発表して、今後、今おっしゃいましたように、民生委員の方々がより孤立化防止のために働きやすいような支援をしてまいりたいと思っております。

 そして、今御質問いただきました見守り等の支援体制でありますが、御指摘のように、地域福祉計画はまだ五四・八%の市区町村が未実施になっておりますので、八月十三日には、未策定の市区町村に対する策定と策定済み市区町村に対する点検、見直しを依頼する通知を発出いたしました。

 また、第二に、新しい公共の一つの形態としまして、社協や民生委員、ボランティア、民間事業者などが行政と連携して支える福祉の地域づくりのモデル事業として、安心生活創造事業を全国五十八市区町村で実施をしております。

 また、御指摘いただきました高齢者住宅につきましては、先日も菅総理から、新しい三本柱ということで、二十四時間体制の巡回ホームヘルプ、そして二番目に高齢者住宅の整備、三番目に認知症の方々の見守り整備ということで、公明党からアドバイスをいただきました介護ビジョンというものをしっかり踏まえながら、施設の不足、在宅の不足、賃金の引き上げ、こういうふうなことをしっかり踏まえながら、地域づくり、そして介護保険の改善に取り組んでまいりたいと思います。

古屋(範)委員 こうした家庭、地域のあり方が大きく変化している時代における新たなリスクに対応する高齢者施策、これをさらに推進していただきますようお願いしておきたいと思います。

 新しい福祉ということで、さまざまな新しいリスクに対応した政策を提案しております。例えば、きょうの毎日新聞にも社説に「自殺・うつ対策」ということで出ておりますけれども、公明党としては、二〇〇八年の七月に総合うつ対策というものを提案しております。また、今回の新しい福祉の中でも、うつ対策というものに非常に力を入れ、重点政策に掲げております。

 ここにもございますように、年間経済的損失推計、日本において二・七兆円ということであります。イギリスでは一・七兆円ということでありましたので、それ以上の額になります。また、こうした自殺やうつ病がなくなった場合、国内総生産を約一・七兆円引き上げるという試算をされているようであります。大臣の御指示で調査をされたと伺っておりますけれども、うつ病で悩んでいる方々、推定で二百五十万人とも言われております。それに対する施策というものはまだまだこれからであろうというふうに思っております。

 この四月から認知行動療法が診療報酬の対象となったということで、うつに大変有効であると言われておりますこの認知行動療法に対する関心が高まっております。しかし、受けられる医療機関が少ない、専門医が不足をしているということが大きな課題です。

 私たちも、この認知行動療法の研修を行っている国立の精神・神経医療センター、こちらに八月の二十三日に山口代表とともに行ってまいりました。六十人の募集のところ三百八十人の応募があり、非常に多くの応募があったということで、教室にぎりぎり八十人まで詰め込んで真剣に研修を行っていた、その様子を見させていただきました。同センターの樋口輝彦総長らとも意見交換をさせていただきました。

 日本の実情は、ここでそのとき行っておりました基礎的な研修というものがありますけれども、さらにその上のスーパービジョンという、患者を観察しながらの実地指導というものはほとんど行われておりません。

 この精神療法、この基礎的な研修だけでは不十分でありまして、研修を二日間受けて心臓の手術をやってこいというようなもので、もっともっと深い研修というものが必要だそうです。米国では六百時間から三千時間の実地指導を必要としていまして、スーパービジョンなしで認知行動療法の臨床が行われるということは先進国では考えられないということです。人の心に触れる認知行動療法には危険性もあるということで、こうした指導が不可欠であります。

 しかし、このスーパービジョンの指導を行える指導者というものも非常に限られているのが現状です。こうしたスーパービジョンの指導者の確保、また厳しい実地指導を受けたCBT臨床家育成のためのエビデンスに裏づけられた治療技法研修システムを全国レベルで充実させていくための研修制度の確立が重要であります。

 二十三年度の概算要求で、認知行動療法、九千八百万円の予算が要求をされております。うつに有効な認知行動療法の体制整備として、もっともっと予算を確保しなければいけないのではないか。イギリスでは三年間で三百六十億予算を確保していることですので、複数年にわたる十分な予算の確保が必要だと思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。

長妻国務大臣 まずは、古屋委員初め、国立精神・神経医療研究センターに御視察に来ていただきましてありがとうございます。

 ことし八月、先月から認知行動療法研修を始めておりまして、今年度計三回を実施予定としております。こういう研修事業についても、平成二十三年度概算要求でも、受講生への継続的な指導を行うなど、大幅に拡充をしているところであります。

 当然、うつの治療というのは、薬というのも有効でありますけれども、さらに日本では認知行動療法というものがもっと普及してもいいのではないかということで、ことし四月にも診療報酬で認知行動療法については一日につき四百二十点ということで、新たにそういう診療報酬も入れさせていただいたところであります。

 認知行動療法を実際にできる人たちが、医師、臨床心理士、看護師などなどの研修を通じてふえていって、今おっしゃっていただいたように、これも、薬は使えませんけれども、対話をする中での治療でありますので、やり方によっては逆効果になることもあるわけでありますので、十分な研修が必要不可欠であるというふうに考えております。これについても、二十三年度概算要求できちっと要求をして確保していきたいと思っております。

古屋(範)委員 医師だけではこの認知行動療法、行えるとしても、非常に患者数が多いわけですので、一回三十分、医師が治療を行うのは非常に難しいというのが現状だと思います。

 そこで、よりよい診療をするためには、医師だけではなくて看護師、あるいは精神福祉士、心理士、さらに精神対話士など多くの専門職の方々の協力というものが不可欠であろうと思っております。しかし、この部分にはいまだ保険適用はなされていないわけであります。こうした心理士など多職種を加えたチーム医療をしっかり確立をしてみんなで当たっていくことが必要なのではないかと思いますが、チーム医療に対する保険適用の拡大、こうしたことに関してどのようにお考えか、お伺いいたします。

足立大臣政務官 先ほど大臣から、認知療法、認知行動療法を今年度の診療報酬で初めて新設した点がございました。同じように初めて今年度、チーム医療というものを評価しようということで、栄養サポートチーム加算、そして呼吸ケアチーム加算、委員がおっしゃるように、一人のスキルを上げるのには相当時間がかかりますが、チームで対処しようという方針でございます。

 しかし、やはりそこには、私は、では一人になってしまったときにその人がしっかり対処できるか等々、どういう形で技術の標準化とかガイドラインを策定していくかということも大事だと思います。しかし、私は、これは野党時代から私自身も指摘していることですので、専門家等の意見を聞きながらぜひ前向きに検討したいと思っております。さらに進めたいと思います。

古屋(範)委員 こうした心理療法に専門性を持っている心理専門職の方々の資格を国家資格としていく、このようなことも検討していく必要があるというふうに考えております。

 また、家に引きこもっている、あるいは医者に行きたくない、日本では受診率が約四分の一と言われておりますので、残りの方々は医療機関に受診をしていないわけであります。そこで、アウトリーチ、訪問支援が必要だというふうに考えております。当事者中心の精神医療体制の実現を目指すアウトリーチの活動、体制をつくることが急務であります。

 概算要求の中で、アウトリーチ体制の確立として十六億円要求されております。この体制整備、どのようにやっていくのか。また、臨床心理士などの心理職、精神対話士などメンタルヘルスに関連する資格を持った方々もこのような場面で大いに活用すべきと思いますけれども、この点はいかがでしょうか。

長妻国務大臣 いわゆるうつ病や引きこもりの方に対するアウトリーチ、訪問支援でありますけれども、診療所に来ていただいてそこで治療を受けるということももちろん有効でありますけれども、御自宅に赴いて、どういうような環境で生活されておられるのか、そして、御自宅でくつろいだ中で、そこで例えば認知行動療法をする、あるいは御相談に乗るということは非常に有効であるということが実証されておりますので、チームで訪問をして支援をしていく、お医者さんのみならず専門家が訪問をするというようなことについて、新たに、二十三年度の概算要求で、精神障害者アウトリーチ推進事業という形で要求をさせていただいているところであります。

 これは、保健師、精神保健福祉士、臨床心理士等のチームで訪問をして、医療や生活支援、どういうサービスを提供する必要があるのか、そういう御意見も聞きながら相談に乗っていくということでありまして、やり方によっては非常に効果が高いということがヨーロッパ諸国でも言われているところでありますので、我々としては、これについても力を入れていきたいと思っております。

古屋(範)委員 ITなども利用して、こうしたうつ対策、認知行動療法等、精神科医療の充実というものを求めまして、質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

鉢呂委員長 次に、高橋千鶴子さん。

高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 最初に、B型肝炎訴訟の和解協議について伺います。

 九月一日に示された国の考え方では全く不十分であり、被害者の多くが切り捨てられると、強い怒りの声が上がっています。特に、未発症の持続感染者を救済対象にしないということは、五百十一名の原告のうち二割が対象となりません。札幌地裁で救済範囲を広くとらえる方向で判断するべきと和解勧告が出されたのは三月十二日、既に半年が経過しているのに、結局切り捨てとは、余りにもひど過ぎます。

 無症候性キャリアであることは、差別や偏見と闘い、発症すればがんになることもあるなどと宣告されて精神的にも不安と苦痛を背負ってきたこと、一般の人よりも多くの検査を受け続けなければならない、そういう負担などについてどう考えているのか、まずお答えください。なぜ無症候性キャリアが対象から外されるのかお答えください。

長妻国務大臣 これは、対象から外すということではありませんで、発症した場合はもちろん一時金の支払い対象でありますし、発症前についても、三つの対策、助成をさせていただくということを申し上げたわけであります。一つは定期検査費用の助成、そして母子感染予防医療に要する費用を助成させていただく、同居の家族等に対するワクチン接種に要する費用を助成させていただくというようなことについて提案をしたところでありまして、無症候性キャリアの方々を救済から外すということではありません。

高橋(千)委員 例えば、新潟の原告の女性は、妊娠した際にB型肝炎のキャリアであることを告げられました。入院中はほかの方と同じ部屋には入れてもらえず、授乳のときも別行動にされて、赤ちゃんのベッドも、ほかの赤ちゃんとはほかのところに置かれたそうであります。私の体の中にウイルスが存在する限り、病気に対する不安は一生続くのだと訴えています。

 また、原告の多くは、娘さんや息子さんがキャリアとして結婚や交際をためらわなければならない、人生を既に狂わされているという現実に直面し、自分を責めていらっしゃいます。

 こうした皆さんに対して、発症したら一時金が出るからね、そういうことで救いになるでしょうか。

 そもそも、〇六年の最高裁判決の原告は、慢性肝炎四名、キャリアが一名でした。札幌高裁は、B型肝炎ウイルス持続感染者、これはキャリアのことですが、あるいはB型肝炎患者にとって、持続感染者であるということは、そのこと自体が生存に対する重大な脅威となり、一生涯解放されることのない不安と苦悩を持ち続けることを意味するとの控訴人らの主張は十分に肯認できるとして、全員に慰謝料として五百万円を相当としました。

 先ほど、あべ議員の質疑の中であったとおり、この時点では肝がんや肝硬変などの方はおりませんので、そこの損害については全く触れておりませんから、これはまた別なわけですけれども、ただ、このときの原告の皆さんが、慢性肝炎もキャリアも共通する苦痛に払わせるんだ、責任を果たさせる、そこにポイントを置いたということがやはり肝心なことだと思うんですね。

 そのことを考えれば、やはり最高裁の判例よりも後退することにならないのか、伺います。

長妻国務大臣 十八年の最高裁判決では、このキャリアの原告の方は予防接種を受けたときから提訴まで二十年を経過しておらず、裁判所における裁判では、除斥期間というのが争点となっていなかったということもあってか、この請求が容認をされたというふうに聞いております。

 先ほど申し上げましたように、キャリアの方についても、我々としては、発症をしているのかどうか、その検査をしていただく費用を助成するなどなど、先ほど申し上げました対策をさせていただくということであります。

高橋(千)委員 最初に、いや、キャリアの方は発症したら一時金が出るんですから、省いたつもりはありませんとおっしゃいました。でも、今二つ目の質問に対して、結局、除斥期間を過ぎているのだということをおっしゃったと思うんですね。

 そうすると、私が聞いているのは、発症したら払うじゃだめでしょうということなんですよ。最高裁で言われたのは、発症するかどうかはだれもわからないわけで、その間の精神的な苦痛に対して償うということが、結局、今回は除斥期間ということでやられていないじゃないかということを指摘しているわけです。

 しかし、この二十年というのは、やはり、先行裁判が提訴されてから既に二十年が過ぎているわけです。国が責任逃れに時間を費やし、その間も、ウイルス検査の受診率を引き上げる努力もなく、謝罪も救済のためのアクションも一切起こしてこなかったという中で二十年が過ぎたのであり、原告らには何の責任もありません。このことをもう一度確認したいと思うんです。

 九月一日の「和解の全体像に関する国の考え方について」では、「救済の方法や内容等については、それが結果として国民の負担に結びつくことから、国民の意見を聞きながら、全体として広く国民の理解と協力を得られるような合理的なものとしていく必要がある」と述べています。つまりは、お金の枠がまず先にあって、その中でしかできないからあきらめてくれと言っているのと同じです。国民の理解という言葉を引き合いに出して国の責任をあいまいにすることになりませんか。

長妻国務大臣 このB型肝炎の問題は、総理も入ったところでの議論もありましたし、関係閣僚も鋭意議論をして、そして和解協議にも真摯に対応して、本当に早期解決を目指していくという共通認識のもと、取り組ませていただいているところであります。非常に重大な問題であるという認識は同じであります。

 その中で、今申し上げましたような、キャリアの皆様方に対しては、救済を何らしないということではありませんで、費用等の助成をさせていただく。そして、全体の議論といたしましては、これまで母子手帳ということに国はこだわっておりましたけれども、そういうことではないというようなことで我々考えているところであります。

 当然、相手との話し合いでありますので、我々として、そういうことをまず御提案をして、そして今月十五日には原告の方からまた御意見をいただき、そしてまた私どももそれを受けて話し合いを真摯にさせていただくという過程、プロセスの段階に今あると思っておりますので、我々は、早期な解決を目指して取り組んでいくということで今、内閣挙げてやっているところであります。

高橋(千)委員 御提案の中身がまだ全部ではないわけですよ。ですから、早く協議のテーブルに着いてほしいということを言ってきたわけじゃないですか。それで今、半年待たせてこの提案では、納得できるはずがないわけです。新たに十五日までにということが一つ言われておりますけれども、もう一度、どういう気持ちでキャリアを宣告されて、それはもう発症した方が一番わかっているわけですけれども、キャリアと宣告されてからの苦しみというのがどういうものだったのか、そして、そういう方も含めて救済するということに意味があったという、札幌の闘いから判決が出た最高裁の教訓をもう一度学ぶべきだ、このことを繰り返し訴えたいと思います。

 ここは、もう残念ですが時間がないので、要望にしたいと思います。

 次に質問したいのは、資料の二枚目を見ていただきたいと思います。これも、次の問題もどうしても言わなくちゃいけないものですから。

 所沢にある国立障害者リハビリテーションセンター、国立光明寮、視力障害センター、これは函館、塩原、神戸と福岡の四カ所、国立保養所、重度障害者センター、これは伊東と別府の二カ所、そして所沢にある秩父学園という国立知的障害児施設、八カ所の施設を総合して国立更生援護機関と呼んでおりますが、資料にありますように、昨年の三月末に国立更生援護機関の今後のあり方に関する検討会の報告書が出され、那須塩原の視力障害センターは二十四年度末で廃止、伊東の重度障害者センターが二十五年度末で廃止をされ、それぞれが所沢の国立センターに統合されることになりました。

 昭和二十一年にスタートした、もとは那須の御用邸だったという那須塩原のセンターは、人生の途中で視力を失った方たちが、はり、きゅうなどの資格を身につけ、社会に復帰できるための養成施設また生活訓練施設であり、三千人の卒業生を世に出してきました。守る会の皆さんが国会に陳情に来られて私も初めてこのような施設があるということを知ったわけですが、大変すばらしいと思った瞬間、それがもう廃止だという事情を知って本当に驚きました。八月に塩原と所沢そして伊東の各センターに行って現場を見てまいりましたけれども、ますます、なぜ廃止なのか、こう思っているんです。

 まず、端的にお答えください。

 この塩原視力障害センター、八月に専門課程の募集を打ち切っております。廃止が決定的になったわけです。そして、伊東にある重度障害者センター、二十五年に廃止。だれがいつの時点で決定しましたか。

山井大臣政務官 高橋委員にお答えを申し上げます。

 私も、先日、この二つのセンターの利用者の方々から、ぜひ存続をしてほしい、そういう要望を受けさせていただき、さまざま現場の方々がお困りになっているお話を聞かせていただきました。

 今御質問の件ですが、高橋委員も御指摘のように、総務省の減量・効率化方針において、平成二十年度中に検討するということに平成二十年の三月になりまして、そして、平成二十一年八月、昨年の八月の次年度の組織・定員要求に盛り込んだことを受けまして、昨年の九月に、厚生労働省障害保健福祉部施設管理室から所管の国立施設に対し、事務連絡として発出をいたしました。

 そして、私自身としましては、ことし六月に、来年度の組織・定員要求の検討に当たって、塩原の視力障害センター及び伊東重度障害センターの計画的な統廃合を含む国立更生援護施設の見直しの考え方について担当部局から説明を受けました。

 また、ことし八月に、共産党の田村智子参議院議員から提出された質問主意書に対しまして、センターの統廃合の方針を決定していること、改めて検討をやり直すことは考えていない旨の答弁を内閣として行いまして、この質問主意書の答弁の段階においては、当然、政務三役が了解したということでございます。

 きょうも多くの方々が傍聴にお越しをいただきまして、私も非常に心苦しい点はございますが、やはり国立障害者リハビリテーションセンターと利用者の出身地域が重複していることや利用者の減少傾向、そういうものを総合的に判断して、効率的な施設運営を図るためにやむを得ないものと考えておりますが、円滑な移行がなされるように準備を計画的に進めてまいりたいと考えております。

高橋(千)委員 まず、資料の三枚目をごらんいただきたいと思います。

 九月十八日に、今お話の中に出てまいりました事務連絡、厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部企画課施設管理室が出したものであります。これは「見直しの方向性について」とありますが、今、山井政務官はあえておっしゃらなかったんですけれども、あり方検討会というのをわざわざ開いているわけですよね。

 その検討会の中では、最終的な結論というのは、どこの施設をいつまでにとか、どこにとか、統廃合については具体的なことは書かれていないし、決まっていないわけです。強いて言えば「統廃合を含む再配置を考えるべきである。」これだけなんですね。五回の議論を見ました。議論の中では、とにかく国立センターの役割をどう高めるのか、民間と違いをどう出すのかということで、非常に前向きな議論がされていたと思うんです。組織をどうするのか、統合するのか廃止するのかとか、そういう議論はほとんどというか全くなかったわけです。そういうときの、そもそも出されたたたき台自体が、考える時期に来ているというだけであって、廃止するなどということは書かれていないわけです。

 それがいきなり九月十八日の事務連絡において、この次のページをめくっていただきたいと思いますけれども、塩原は廃止、伊東も廃止ということが、初めて名前と期日が出てくるわけですね。一片の通達で決められたわけです。九月十八日といえば、長妻大臣が就任されたのが十六日で、山井さんが政務官に決まったのが十八日であります。当日であります。まさか、どさくさに、政務官が気がつく前に出されたのかなと思わざるを得ないわけです。当然御存じなかったと思いますけれども、組織の統廃合という重大な決定をこのような一片の通達で、事務連絡で決めるという考え方、よろしいのですか。

山井大臣政務官 高橋委員にお答えを申し上げます。

 多くの利用者の方が利用している施設でありますが、それに関しまして、私たちも、この所沢にあります新しい施設、ここは隣に病院もあるわけでありますから、リハビリテーション医療やさらには就労支援などを一貫して、さらによい自立支援に向かって充実をしていきたいというふうに考えております。

 先ほどとも重なりますが、私としては、今年の六月にこのような統廃合の方針の説明を受けまして、それで了とさせていただきましたし、政務三役としましても、質問主意書に対しまして、ことしの八月、その方針を見直さないということで回答をさせていただきました。利用者の減少やその出身地域が重複しているということを総合的に勘案したことでありまして、これらの国立更生援護施設の見直しの方針について、所管の部局の事務方から内部組織である各国立施設に事務連絡において伝達することについては、特に問題があるというふうには認識はしておりません。

高橋(千)委員 ちょっと、その事務連絡の問題について、何の問題点も考えていないと。そもそも、政務三役が通達の中身もちゃんと検討するということが当時方針として出されたと思うんですね。そういうこともすっかり忘れて、もう結論が出ちゃったからしようがないやという、本当にそれでよいのかということなんですよ。

 普通に働いていた方が成人してから視力を失うということは、やはり本当に、想像以上にショックも大きいと思うんですね。見えなくなった当時、自分が全部否定された気がしたと訴えた女性もいました。高校を出て働き始めた途端難病になって、見えなくなり、引きこもりになったという青年もいました。また、三十一歳のトラックの運転手だった長井さんという方は、センターにたどり着くまで丸一年かかっています。せっかく働きたいといってハローワークに通い詰めても、あなたの仕事はない、絶望的ですよと言われ、お母さん、お父さんに助けてもらえばと言われます。やっとセンターのことをお医者さんから教えていただいて、役所に行くと、自立支援法で六万円の利用料だと言われて、それは出ないと言えば、やはりお父さん、お母さんに助けてもらえばと言われるわけですね。でも、よくよく調べたら、ちゃんと減免制度があって、そんなにお金を出さなくても利用できるというのがやっとわかってわかって、たどり着くのに一年かかっている。

 だから、そういう、教えることもしないで、宣伝もしないで、まして目も見えない人にパンフ一枚よこして、それで利用が減っているから廃止だ、そんな理屈が成り立つわけないじゃないですか。それをどうしてあなたは認めるんですか。

 もう一つ言えば、時間がないのでもう一つくっつけて言いますけれども、伊東の重度センターは利用が減ってはおりません、努力でふえています。しかも待機者もおります。何でやめるんですか。

山井大臣政務官 高橋委員のお怒りも含め、また、先日も、私も政務官室で直接、利用されている方々から、この伊東のセンターや塩原のセンターがどれほど重要な取り組みを今までされてきて、また本当に、先生方、職員の方々、そして利用者の方々がそこに愛着を感じておられるということも、私も強くお話を聞かせていただきました。

 ただ、これ、つらいのは、統廃合というのは、いつかの時点で統廃合をせねばならないわけでありまして、私たちは、国立障害者リハビリテーションセンター、これは所沢にあるすばらしいところでありますし、隣に病院もありますし、就労支援もしっかりやっていくつもりでありますから、今後、新しく利用される方々に関しましては、今まで以上にいいサービス、いいリハビリというものを提供していきたい、そういう思いで考えております。

 ただ、そのはざまとなられる方々には、今まで利用していた施設が変わってしまう、そういう混乱というものはどうしてもあるかもしれませんが、そのことに関しては最小限となるように、しかし、視覚障害者や脊髄損傷の方々には、今後、新しい施設でよりよいリハビリを、また職業訓練を受けてもらえるように、全力で頑張りたいというふうに考えております。

高橋(千)委員 少なくとも、そのいつかは今ではないと思います。

 資料の四枚目につけておいたように、平成二十二年度からの新たな定員合理化計画では、最低でも六十九名の合理化を行う必要があり、現在の八施設を現状のまま維持することでは合理化への対応が困難であること、結局これが最大の理由なわけですよ。これを統合すればここが六十九名削られる、そういう机上の計算ではないですか。

 だけれども、総務省だって、一律にやっているわけではなくて、本当に必要なものはめり張りつけることは認めているはずなんです。必要だと言えばいいじゃないですか。少なくとも障害者自立支援法を廃止すると決めているわけですから、新しい障害者福祉法、総合的な福祉法ができる、そういう中でますますこの施設は必要になってくるわけですよ。その中で改めて検討すればいいじゃないですか。そこまで廃止の決定を見送るべきだ、このことを重ねて指摘をして、終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

鉢呂委員長 次に、阿部知子さん。

阿部委員 社会民主党の阿部知子です。

 私も今の高橋さんの御質問と同じ趣旨ですので、続けて御質問をさせていただきます。

 今お尋ねのあった塩原の障害者のための視覚訓練センター並びに伊東の頸椎損傷、脊椎損傷のための訓練センターの廃止をめぐる問題は、厚生労働行政にとって、また障害者施策にとって、取り返しのつかない禍根を生むと思います。

 私は、共産党の高橋さんもそうですが、私ども社民党も、かつて野党であった民主党の皆さんと、特に障害者施策については思いを一にしてずっと歩んできました。そして、今の山井さんの御答弁も、きょうは十五分です、もっと私に時間があれば丹念に反論したいと思います、考え直していただくために。ただ、時間が十五分ですので、舌足らずになるやもしれませんが、それでも精いっぱい訴えていきたいと思います。

 今、山井さんのお話は大体伺いましたので、私の御質問は長妻厚生労働大臣にお願いいたします。

 一番目、通達行政のお話であります。

 山井さんは、九月の十八日の事務連絡、世で言う通達を知ったのが本年六月で、説明を受けたと。まあ、ここは政権交代が慌ただしかったときであり、恐らく、正直なところ六月までは余り内容を御存じなかったのではないか、無理もないことだと思います。

 しかし、一たび通達行政が誤れば何が起きるか。ちょうどきょうは公明党の坂口元厚生労働大臣がおられますが、私たちが問題にした、原爆投下による被爆者が韓国あるいは朝鮮、国外に出た途端に被爆者としての扱いを受けなくなる、いわゆる四〇二号通達という通達がございまして、これが一九七四年に厚生労働省の事務方が通達を出されて、そういう通達後、行政が三十数年、四十年近くにわたって続いて、結果的に違憲判決を受けて、そして、もちろん坂口元大臣の本当に本当に政治家の一生をかけた御尽力があったと思いますが、これを廃止というか、この通達を廃止に持っていきました。

 障害のある人が、自分の望む場で訓練を受け、社会復帰するということは当たり前の権利です。さっき山井さんは、こっちにつくったんだから、こっちは廃止だけれどもあなたたちはこっちでよりよいものがやれるからと。これが本当に障害者行政にとって、当事者の選択と、そしてよりよい地域生活に向けた障害者権利条約の理念を本当の意味で体現したものであるかどうかです。

 長妻大臣も、山井さんと同じように、この事務連絡を受けてどのように判断されたのか、まず一点お伺いいたします。

長妻国務大臣 これも先ほども答弁ありましたけれども、質問主意書というのが共産党の田村参議院議員からも出てまいりまして、そこの答弁ぶりについても、よく私どもも判断をして、その答弁でいいということでサインをしたところであります。

 先ほど来、山井政務官も答弁をしておりますけれども、これは機能を全くなくしてしまうということではもちろんありませんで、塩原の視力障害センターにおきましては、定員、利用者の方々が年々減っている中で、所沢の方でその機能を担っていただく。そして、伊東の重度障害者センターについては、利用者は横ばいではありますが、所沢のリハビリセンターにその機能を担っていただくことでより手厚い支援ができるような形に持っていきたい、こういうようなことでこれらの判断をさせていただいているところであります。

阿部委員 長妻大臣も、障害者施策において、障害者の皆さんに、自分たちの声を聞かないで、自分たちのことを抜きに自分たちのことを決めないでと、これが一番だと言い続けてこられたはずです。よもやお忘れではないと思う。であれば、先ほど大臣がおっしゃられた共産党の田村智子さんへの答弁書の中で、私は、大臣は知っていて、本当に内容がわかっていてこれに賛意を表したんだろうかということを具体的にお尋ねさせていただきます。

 そうした、当事者性がないじゃないかという田村さんの質問に対して、御指摘の、あり方検討会にはそういう障害者が入っていないということだが、例えば、五つくらい団体名を挙げて、障害者団体の代表者に委員として御参加いただいているところであるからいいんだという御答弁であります。どの団体かは、大臣よく読んで、答弁ぶりがわかっているとおっしゃいましたから。

 では伺いますが、この五つの団体、その中で、いわゆる障害当事者が出ておられるのはどの団体であり、その方はこの検討委員会でどんな意見を述べられているか、そこまで長妻大臣、読まれましたか。御質問いたします。

長妻国務大臣 この国立更生援護機関の今後のあり方に関する検討会には五つの障害者団体の代表者が委員として御参加いただいておりますが、その方本人は障害者の当事者ではありません。団体の代表者でございます。財団法人全日本ろうあ連盟、財団法人日本障害者リハビリテーション協会、社会福祉法人日本身体障害者団体連合会、社会福祉法人日本盲人会連合、日本発達障害ネットワークであります。

阿部委員 果たして、それでいいのでしょうか。

 五つの団体のうち実はお一人は、聾唖者団体の代表の方は御自身が聾唖者であります。五団体のうちお二人は厚生労働省の天下ったお役人であります。私は、役人だから悪いというのではない。でも、大臣もおわかりかと思います。当事者と、例えば自分が目が見えない、耳が聞こえない、必要とするもの、何が自分にとって必要かという切実さ、そしてそのサービスの不足、実感するものが違います。

 例えば、聾唖の方がたったお一人この検討会で、まさに当事者はこの団体一つですが、この方は聾、耳が聞こえないわけですが、そのサービスについて、「聞こえない人のための施設はまだまだ十分ではないと思っております」と。恐らく、お目の見えない方に聞いたら、見えない自分たちのための訓練施設はまだまだ不十分だときっとお答えになったと思います。それを私は、山井さんのところに当事者をお連れして、この検討会では一切聞かれることのなかった当事者の声を聞いていただきました。そういう施策を進めていいんだろうか。

 私は、検討会の全文を読ませていただきました。でも、随所に、その当事者であるお一人が言われることと進められ方の間には溝がありました。そして、結果的には、高橋さんのおっしゃったように、あり方検討会は、その結論を政治にゆだねました。

 果たして、政治のなすべきことは何でしょうか。この内閣になって、障がい者制度改革推進会議ができて、しかし、その答弁書には、これは個別のことは扱わない制度改革推進会議だと。具体的な人間のニーズの声がなくて施策なんかできないじゃないですか。

 大臣は、少なくとも、このことを決断される前に、あなたが野党であったころなら、当事者にお会いになったと思います。今からでも結構です。障害者団体、その代表者として厚労省の天下りの人が発言するのではなくて、サービスを利用している方に会う、それがせめてあなたの大臣としての誠意だと思います。

 もう一つ続けて言わせていただきます。

 果たして、ニーズ調査はなさいましたか。利用量が減った減ったと、減るようにしたのが障害者自立支援法だったり、あるいは、頸椎損傷については、さっき高橋さんもおっしゃったけれども、待機者がいてまだまだ足りないんですよ。自分がもし頸椎損傷になって、リハビリの先もない、待っている間、絶望的な人生になりますよ。

 私は、本当に、これから障害者権利条約を我が国は批准していこうとするやさきになぜこんな愚かな施策に踏み込むのか、過ちは正すに恥ずべきことはないと思います。

 大臣にはお願いがあります。二つ。障害当事者と会っていただきたい、とことん話していただきたい。そうでなければ、ただ逃げで、言葉だけで、官僚の通達行政の上塗りをする、そういう民主党であってほしくはない。

 もう一つ。お目の悪い方のニーズ調査、頸椎損傷のニーズ調査をしてほしい。目が悪くなってどこに行けば訓練を受けられるか、知らない人の方が本当に多いんです。アメリカでは、例えば目が見えなくなった、頸椎損傷になった、医師がそれを申し出て行政につないで、その人のサービスをどういうふうに組み立てていくか連携しています。もちろん、山井さんのいたスウェーデンなどでは、中央に一カ所集めるのじゃなくて、ランスティングと呼ばれる二十幾つの県ごとに訓練施設があるんです。あなただってずっとやってきたはずだ、知っているはずだ。なぜこんな愚かなことをするのか。大臣、二つのお願いについて御答弁お願いします。

長妻国務大臣 まず、目の御不自由な方あるいは頸椎損傷の方がどこに行けば的確、適切な対応がなされていくのかということについてもっと周知を徹底させようということについては、これについては徹底をしてまいりたいというふうに考えております。

 そして、今回の件につきましても、今回の決定について、具体的にこういう形で移行するということをさらに丁寧に、今二つの施設におられる方々に対して意を尽くして説明をさせていただいて、所沢でも同じ機能を実行していくわけでありますので、それについても、どういう形で、あるいはどういう設備の中で、あるいはどういう職員体制の中で万全を期して所沢に統合するのかということについて、十分皆様方が御理解いただけるように、さらに懇切丁寧な説明というのを心がけていきたいと考えております。

阿部委員 大臣、五ページ目の資料を見てください。これは頸椎損傷の方の、今、伊東と別府と国リハでやっているものの数ですよ。百二十名前後でずっと推移しています。しかし、頸椎損傷の発生数からすれば、今でも足りないんです。

 今の計画は、伊東をやめて国リハに移すということです。総量がふえるわけじゃないんです。七十、七十で百四十が上限でしょう。いろいろな学術試算がありますが、少なくとも三施設で二百十くらいが最低必要であろう、最低ですよ。今、待機者がいるんだから。それをしてニーズ調査をやっていないというんです。そして、どこに行ったらいいかわからない方が大半なんですよ。今これを閉じることは、本当に、頸椎損傷の人のリハの、あるいは社会復帰の、あるいは就労支援の場を奪うことになるのではないか。

 実は、同じようなデータは視覚障害についても出すことはできます。障害者自立支援法で自己負担額がふえました。それによって、もうできないなと思われる方がふえたという背景があります。先ほど来申します。時間がありませんから、言えません。でも、大臣は、さっきお答えにならなかった。当事者にお会いになるべきでしょう。ニーズが何であるのか、誠心誠意やっていただきたい。大臣、最後に一言お願いします。

長妻国務大臣 これはまず頸椎損傷のお話がございまして、所沢でその機能を担っていくということでありますけれども、所沢の定員の数というのをまだ決めているわけではありませんので、今、阿部委員の御指摘も踏まえて、その定員が、本当に世の中のニーズに合致するような定員はどういうレベルであるのかということについても、当事者の方の御意見も聞いて、そして、二つの施設の方々には、所沢への機能集約について、さらに懇切丁寧な説明をするというようなことを努めていきたいと思っております。

阿部委員 それでも障害者の権利条約の精神は守られません。身近なところで訓練ができるということ、資料をつけてありますから、よくお読みになって、逃げることなく頑張っていただきたいと思います。

 終わります。

鉢呂委員長 次に、柿澤未途君。

柿澤委員 みんなの党の柿澤未途でございます。

 今、民主党代表選挙が行われているわけですけれども、その中で菅総理は、一に雇用、二に雇用、三に雇用というお話をされています。若年者の雇用が特に厳しいということで、八月二十四日だったと思いますけれども、内閣に新卒者雇用に関する特命チームというのを発足させている。三十日発表の追加経済対策の柱として、新卒者就職応援プロジェクト、また、新卒者体験雇用等の拡充が打ち出されています。

 この新卒雇用についてまずお伺いをしたいというふうに思うんですけれども、二〇一一年三月卒業予定の大卒求人倍率に関する民間調査があります。よく新卒倍率と言われるものなんですが、それによると、二〇一一年三月卒業予定の大学生、大学院生対象の求人倍率は、前年の一・六二倍から一・二八倍に低下をすると。ただ、低下をしたとはいっても、一・二八倍もあるとも言えるというふうに思うんです。現に、前年の二〇一〇年の一・六二倍という数字は、実は過去十五年で四番目に高い数字だったというんですね。

 一方、中途採用や転職の倍率はどうかといえば、七月の有効求人倍率は〇・五三倍です。それに比べて一・二八倍ですから、言ってしまえば、新卒者は特別に求人倍率が高いとすら言える、こういう数字なんではないかというふうにも思えます。

 では、何でこんなに、新卒雇用が大変だ、就職できないということになっているのかといえば、これは要するに、若者が中小企業に見向きもしてくれない、こういうことなんじゃないかというふうに思うんです。

 きのう菅総理もテレビで言及していたようですけれども、社員五千人以上の大企業になると、新卒倍率は〇・四七倍になります。片や、三百人未満の中小企業の新卒倍率は実に四・四一倍ですね。一千人以下の中堅企業まで枠を広げても、全体平均で一千人以下の企業で何と二倍以上の新卒倍率があるんです。これは現場の声を聞いても全く同じで、中小企業の皆さんは、全く学生が来ないとか、辞退されて困っている、こういうことを言っている方々が圧倒的に多いように思います。

 今、中小企業は人を採りたいんですよ。しかも、大手が採らないからいい人材が採れるといって、むしろ若い人たちが中小企業を目指してくれることを望んでいるんです。就職氷河期といいますけれども、しかし、この氷河というのは、大手の有名企業に対してのみなんじゃないかというふうに思うんです。

 そういうことで考えると、今、特命チームまでつくって新卒者雇用と言っていますけれども、しかし、学生が探しても探しても就職口が見つからない、こういうイメージとはちょっと違って、むしろ、どうやって中小企業に若者が就職しよう、こういう気持ちになるかどうか、このことが実は一番必要な対策なんじゃないかというふうに思うんです。

 ところが、今回の対策では、インターンシップとかトライアル雇用とか、過去にも行われてきた政策の拡充が非常に中心になっているような気がしますし、なおかつ、これは雇う側に対して補助金を出すというインセンティブが中心の対策だというふうに思います。

 でも、これでは問題は解決しないと思うんです。雇う側は来てほしいんですから。しかし、学生がそちらの方になかなか顔を向けようとしない、こういう状況なんだと思いますから、学生が中小企業への就職を選ぶように、例えば、中小企業に就職すれば、勤続年数に応じて、連続休暇一週間を一年勤続すれば与えるとか、二年勤続すれば二週間与えるとか、こういう形で、中小企業に就職をした方がある意味では個人として非常にありがたい特典がある、こういうぐらいの対応を、むしろ就職する側のニーズに合わせて行っていくべきではないかと思うんです。

 そういう意味では、今、新卒者対策として政府が行おうとしている政策と、現実のニーズのあり方というのが合致していないというふうに思いますけれども、いかがお考えになるか、御答弁いただきたいと思います。

長妻国務大臣 今おっしゃっていただいた、一言で言えばミスマッチというのが非常に大きいと考えております。求人倍率四倍以上というのは、これは一人の学生に対して四社が欲しいと言ってくるということでありますので。ただ、逆に、大企業は今言及されたように非常に人の採用が絞られているということであります。

 そこで、両面の考え方があるということで、これは十日に発表する経済対策でも盛り込む予定にしておりますけれども、一つは、トライアル雇用というのも、今までは新卒は一カ月ということがなされておりましたけれども、今後は、新卒のみならず、新卒及び、既卒でも三年以内の既卒については新卒とみなしてトライアル雇用を三カ月していこうということで三カ月、一カ月ごとに十万円ずつ、雇用をしていただいたところには助成をする、そして、正社員として定着をしていただいたときにはまた一定の金額を助成する。

 これは、学生にとっても、それは業種にこだわらず大企業だけを受験というか、入社の面接をするという方々もいらっしゃるわけで、そういうトライアル雇用という枠組みの中で、中小企業にそこで入って働くと、意外に、予想していたよりも非常に働きがいもあるし、風通しもいいし、あるいはアットホームな雰囲気で自分に合っているということで、ある中小企業は、このトライアル雇用を利用してもう二十人も正社員を採用したという企業もあるわけであります。学生の側にとっても、そういうところで体験をしていただく。

 そして、もう一つはジョブサポーター、新卒の方をサポートする方々、主要ハローワークに九百人配備しておりますが、それを倍増していくということも今取り組んでいるところでありまして、そういう方々も、中小企業の魅力というのを学生の皆さんに申し上げていく、こういうような役割を担っていただくということで取り組んでおります。

柿澤委員 私が申し上げた視点を余りとらえていただいていないようにも思います。

 また、今言ったトライアル雇用とかジョブサポーターとかいうのは、旧政権時代から行われてきたことのある意味では拡充なわけです。これは、結果がある意味では出てこなかった政策をさらに少し色をつけて積み増してやろうと。これでは私は結果が出ないというふうに思うんです。あらかじめそれを予告しておきたいというふうに思います。

 続いて、今月発表された平成二十一年若年者雇用実態調査、これも雇用の問題、一に雇用、二に雇用といういいタイミングで出てきたものだというふうに思います。

 朝日新聞の記事を資料としてつけさせていただきましたが、これを見ると、非正社員の六割、正社員になれずと見出しにあります。学校卒業後に非正社員として就職した人のうち六割はその後も非正社員として働いていることがわかった。もう一つ、フリーターを正社員に採用した事業所は一一・六%にとどまった。こういうことを総合すると、若者は新卒で就活しても就職先が見つからない、フリーター等の非正社員で働き始めても正社員に登用されるチャンスはほとんどなくて厳しい状況である、こういうふうに印象が焼きつけられますけれども、これは、数字を見て果たして本当にそうかというふうに思うんです。

 資料を一枚めくっていただいて、もう二枚、裏面ですけれども、表の二十一を見てもらいたいんです。若年労働者が正社員として就職しなかった理由、今言ったようなイメージの、求職活動は行ったが採用されなかったというのは二二・四%です。これがよく語られる就職氷河期のイメージ。ところが一方で、内定はあったが自分の希望する条件でなかった、五・七%、自分の希望する企業で求人がなかった、一四・九%、正社員として仕事につく気がなかった、一六・七%、資格、技能を身につけるため勉強したかった、一三・九%。要するに、自分の側の事情で正社員にならなかったのが五一・二%もいるんですよ。

 さらに、上の表二十を見ていただきたい。卒業後一年間で正社員以外で、非正社員で就職した人の三五・三%までが正社員になっている。新卒で就職しなかった、できなかった無業者の方も、一年後には三五%が正社員の職にありついているんです。これで新卒者の雇用が厳しいということが本当に言えるのか。そして、新卒で就職できないと正社員の門戸が閉ざされてしまう、結果、新卒就職の勝ち組、負け組の格差が固定化して増大する、こういう固定観念が本当に正しいのか。数字を見ていると、ちょっとわからなくなってくる気がするんですね。

 さらに、フリーターを正社員に採用した事業所は一一・六%しかなかった、これはどうか。これは表の九、今見ていただいたグラフの後ろ側ですけれども、これを見ていただくと、フリーターを正社員に採用した事業所は一一・六%にとどまった、少ないというけれども、それ以前に、正社員の採用予定があった事業所自体が全体の四八%しかないんです、半分しか。つまり、正社員の採用予定があった事業所を分母にすれば、二四%の事業所はフリーターを正社員採用しているんです。中でも、宿泊、飲食サービス業は四三%、正社員の登用を行っている。さらに言えば、正社員採用予定のある企業の今でも八割が、フリーターでもオーケーですよということをこの調査で答えているんです。

 これをもって非正社員の方に、結局新卒で正社員になれなかったとしても、正社員になる道が閉ざされているというふうに言えるでしょうか。

 しかも、政府は、フリーターの正社員化というと、例えば専門知識や技能が不足しているとか職業経験が不足しているとか、こういうことを言って、ある種職業教育みたいなことに力を入れようということをされますけれども、この調査、ちょっと資料をつけ忘れましたけれども、フリーターを正社員に採用する場合に事業所が何を評価しているかというところがあるんですけれども、そこを見ると、そういう専門性を重視しているわけではなくて、職業意識、勤労意欲、マナーや社会常識、こういういわば基本的な基礎訓練の、プリミティブな部分を見て採っているんです。

 これを見ると、フリーターやあるいは無業者の皆さんに専門性を身につけさせる、それによって正社員就職の道を開こうという今の政府の政策の方向性が、いわばあさっての方向を向いているんじゃないかという気もするんですけれども、このことについてはいかがお考えになりますでしょうか。

長妻国務大臣 冒頭、新卒者の対応が前の政権の焼き直しではないかというお尋ねもありましたけれども、やはりそれを強化して、有効であればそれを採用するということで、御提案の、例えば中小企業に就職をしたら一年目は何週間休める、二年目は何週間休めるということを、国家権力というか国が中小企業に指示をしてそういうことをやらせるというのが果たして今の日本の行政になじむかどうか。それは中小企業それぞれがお考えになって、そういう手段をとるということもできるわけであります。

 そして、今のフリーターに対する固定観念、確かに政府は、フリーターの方々がどういう状況にあって、そしてなぜ就職できないのか、就職ができる機会があるにもかかわらず、そこに臨んでいない場合はなぜなのか、そういうことをデータに基づいてきちっと分析する必要があるというのは御指摘のとおりだと思っております。

 そして、今御指摘いただきましたように、これも調査をいたしましたところ、正社員の求人にフリーターが応募してきた場合、何を重視するかということで、職業意識、勤労意欲、マナー、社会常識、組織への適応性ということで、何も専門知識があるとか働いた経験を重んじるとか、そういうことの前提、そのもうちょっと前の段階の話が重視をされているというふうに考えておりますので、今、基金を使った職業訓練でもそういうマナーのようなもの、社会常識に近いようなものを講習するような、そういうコースも用意してありますので、今御指摘いただいた点も踏まえて我々も取り組んでいきたいと思っております。

柿澤委員 あえて数値を示して申し上げさせていただいているのは、この雇用の問題であるとか、あるいは厚生労働行政全般にあるかもしれません、語られているイメージと数値が語っている実際はかなり乖離をしている場合が多いというふうに思うんです。そして、イメージに基づいて政策を打つと、結果的に間違った方向の政策が行われて、そして救うべき対象の方々が結局は救われない、こういうことになってしまうんではないかと思うんです。

 さまざまな議論でこのような光景をこの一年間見てきたような気もしますので、そういう意味では、エビデンスベースドなしっかりとした議論をこうした雇用の問題についても行っていく必要がある。臨時国会では、秋に恐らく派遣法の議論もまた出てくるでしょう。こういうときにも、やはりこうしたエビデンスに基づいた議論を行っていかなければいけないというふうに思います。そうしたことを最後に申し上げさせていただいて、きょうの質問を終わらせていただきたいと思います。

 どうもありがとうございました。

鉢呂委員長 本日は、これにて散会いたします。

    午後四時六分散会


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