衆議院

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第14号 平成23年5月24日(火曜日)

会議録本文へ
平成二十三年五月二十四日(火曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 牧  義夫君

   理事 郡  和子君 理事 中根 康浩君

   理事 藤田 一枝君 理事 柚木 道義君

   理事 渡辺  周君 理事 加藤 勝信君

   理事 田村 憲久君 理事 古屋 範子君

      青木  愛君    石毛えい子君

      石森 久嗣君    磯谷香代子君

      稲富 修二君    大西 健介君

      岡本 充功君    勝又恒一郎君

      木村たけつか君    工藤 仁美君

      斉藤  進君    田中美絵子君

      竹田 光明君    玉木 朝子君

      仁木 博文君    初鹿 明博君

      花咲 宏基君    樋口 俊一君

      平山 泰朗君    福田衣里子君

      藤田 大助君    宮崎 岳志君

      山尾志桜里君    山口 和之君

      山崎 摩耶君    吉田 統彦君

      あべ 俊子君    鴨下 一郎君

      菅原 一秀君    棚橋 泰文君

      谷畑  孝君    西村 康稔君

      松浪 健太君    松本  純君

      坂口  力君    高橋千鶴子君

      阿部 知子君    柿澤 未途君

    …………………………………

   厚生労働大臣政務官    岡本 充功君

   参考人

   (東京大学名誉教授)

   (社会保障審議会会長)

   (社会保障審議会介護給付費分科会分科会長)    大森  彌君

   参考人

   (財団法人日本訪問看護振興財団常務理事)     佐藤美穂子君

   参考人

   (一般社団法人日本介護支援専門員協会会長)    木村 隆次君

   参考人

   (東京介護福祉労働組合書記長)          田原 聖子君

   参考人

   (立教大学コミュニティ福祉学部福祉学科教授)   服部万里子君

   厚生労働委員会専門員   佐藤  治君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月二十四日

 辞任         補欠選任

  岡本 充功君     山尾志桜里君

  長尾  敬君     勝又恒一郎君

  三宅 雪子君     磯谷香代子君

  高橋千鶴子君     赤嶺 政賢君

  江田 憲司君     柿澤 未途君

同日

 辞任         補欠選任

  磯谷香代子君     三宅 雪子君

  勝又恒一郎君     木村たけつか君

  山尾志桜里君     藤田 大助君

  赤嶺 政賢君     高橋千鶴子君

  柿澤 未途君     江田 憲司君

同日

 辞任         補欠選任

  木村たけつか君    花咲 宏基君

  藤田 大助君     岡本 充功君

同日

 辞任         補欠選任

  花咲 宏基君     長尾  敬君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 介護サービスの基盤強化のための介護保険法等の一部を改正する法律案(内閣提出第五〇号)


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     ――――◇―――――

牧委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、介護サービスの基盤強化のための介護保険法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 本日は、本案審査のため、参考人として、東京大学名誉教授・社会保障審議会会長・社会保障審議会介護給付費分科会分科会長大森彌君、財団法人日本訪問看護振興財団常務理事佐藤美穂子君、一般社団法人日本介護支援専門員協会会長木村隆次君、東京介護福祉労働組合書記長田原聖子君、立教大学コミュニティ福祉学部福祉学科教授服部万里子君、以上五名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。

 本日は、御多用中にもかかわらず本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただき、審査の参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願い申し上げます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 最初に、参考人の方々から御意見をそれぞれ十五分以内でお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。

 なお、発言する際は委員長の許可を受けることになっております。また、参考人は委員に対して質疑することができないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。

 それでは、まず大森参考人にお願いいたします。

大森参考人 おはようございます。

 時間が十五分でございますので、文書を用意してきてございますので、恐縮ですけれども、国会では読み上げてはいけない習慣があるかもしれませんけれども、正確を期するために読み上げさせていただきます。ただ、ちょっと私、早うございますので、できるだけゆっくりお話し申し上げます。

 私は、現在、社会保障審議会に設置されております介護給付費分科会の会長を仰せつかっております。御案内のとおり、来年度、介護報酬と診療報酬の同時改定が行われまして、その準備作業に現在入っております。ぜひとも改正法案の早期成立をお願いしたいという立場から、以下、改正法案に含まれております介護政策の意義について、若干お話し申し上げたいというふうに思います。

 二〇〇〇年度に創設されました介護保険制度は、十年を経まして、高齢者の暮らしを支える社会保障制度の一つとして着実に定着してきたと言ってよいと思います。私どもといたしましては、問題点を確かめつつ、これをさらに充実強化していくために、今回の改正は「介護サービスの基盤強化のため」としております。その中心が地域包括ケアシステムの構築でございます。

 地域包括ケアシステムとは、厚労省の地域包括ケア研究会が二〇一〇年三月に打ち出した考え方でございまして、次のような定義になってございます。「ニーズに応じた住宅が提供されることを基本とした上で、生活上の安全・安心・健康を確保するために、医療や介護のみならず、福祉サービスを含めた様々な生活支援サービスが日常生活の場」、これを日常生活圏と呼んでいますけれども、「で適切に提供できるような地域での体制」のことを意味する、こうなっております。

 この報告を受けまして、お手元の資料三、四ページを開いていただきますと、介護、医療、予防、住まい、生活支援という五つの視点で、利用者の必要に応じた適切な仕組みの組み合わせによって、サービスが切れ目なく継続的に提供される体制を築いていくというふうに考えてございます。

 現在、厚労省と国土交通省が、住宅と介護サービスを結びつけて、高齢者にとって安心の暮らし場所をふやしていく政策を進めてございます。特に、急速に高齢化が進む首都圏などの大都市地域においては、早急な取り組みが必要ではないかと考えます。

 この地域包括ケアシステムを構築していくための新サービスとして打ち出されていますのが、お手元資料の法律案の概要の七ページにございますような定期巡回・随時対応型訪問介護看護のサービスでございます。これが今回の改正の最も重要な目玉というふうに言っていいと思います。

 介護保険は、十年の実績を経てなおかつ改善、改革すべき点が少なくございません。その最大のものは、在宅サービスが依然として不十分ではないかという点でございます。

 介護保険法では、介護保険の目的は、要介護の人々が尊厳を保持しつつ、その有する能力に応じて自立した日常生活を営むことができるよう、必要な保健医療サービス及び福祉サービスに係る給付を行うこととされていますが、この保険給付の内容及び水準は、被保険者が要介護状態になった場合においても、可能な限り、その居宅において、その有する能力に応じて自立した日常生活を営むことができるように配慮しなければいけないということになっていまして、法律全体の立て方は、在宅ケアを重視するということになってございます。

 二〇一〇年二月二十四日から三月三十一日までに厚労省が実施いたしました介護保険制度にかかわる国民の皆様からの御意見募集がございまして、この集計によりますと、介護が必要になった場合に、家族に依存せずに生活できるような介護サービスがあれば自宅で介護を受けたい方が四六%、自宅で家族の介護と外部の介護サービスを組み合わせて介護を受けたいという方が二四%ございました。この在宅サービスの希望にいかにこたえるかが現下の基本課題ではないかと考えられます。

 しかし、実際は、在宅サービスの利用者のうち、訪問介護サービスの利用の実態を見ますと、生活援助サービスは、どの要介護度を見ましても週二回使うのがパターンでございまして、身体介護を見ますと、要介護の五で一日一回となっています。この訪問介護の利用率で、要介護四とか五の重度の要介護者の生活を支えることができるはずはありません。しかも、要介護の三から五の在宅サービスの利用者のうち、約五五%が二種類以下のサービスしか利用していないということも判明してございます。

 この実態を改善していくためには、訪問系サービスを、一回一時間とか一時間半とどまるような滞在型から、できるだけ短時間で介護と看護が組み合わされるような定期巡回・随時対応型へ転換させていく必要があると考えます。その際、ケアマネジャーが利用者のニーズに適応するサービスメニューをきちっとつくっていかれるような環境条件も強化しなければならないと思います。特に、ケアプランが要介護度に応じた介護サービスの標準化を促進する内容であるような改善が強く望まれるところでございます。

 定期巡回・随時対応型介護看護の成否といいますのは、今後の介護保険サービスの行方を決めていくほど重要なものだと私どもは考えています。これとともに、大規模施設のサテライト化、個室ユニット化、つまり、施設から生活の場への促進であるとか小規模多機能型の居宅介護の充実強化が求められていると考えられます。何よりも、人々が住みなれた場所で介護、医療サービスなどを継続的に使えるような体制を築くことが不可欠ではないかと思います。

 このような在宅サービスの充実強化を目指す背景には、介護保険サービスモデルの変化が起こっているということが基本認識でございます。これについて若干お話し申し上げたいと思います。

 日本の高齢者人口の推移の特色といいますのは、高齢化の進展の速さと同時にその高齢化率の高さ、つまり、高齢者数の多さにございます。現在約二千九百五十万人ございます高齢者人口が、二〇二五年には約三千五百万人に達するものと推計されています。その間、幾つか重視しなければいけない変化が想定されているわけでございます。

 第一に、現在、第一号被保険者数は約二千九百万人でございますけれども、このうち要介護認定者数は五百二万人でございます。サービス受給者数が四百十七万人でございますので、介護サービスを受けている人の比率は約一四%でございまして、八割以上の高齢者が元気なのでございます。したがいまして、広く高齢者介護サービスのモデルを介護プラス予防モデルへ充実させる必要がございます。できる限り要介護状態にならないための予防の取り組みこそが一層必要になっていると考えられます。健康寿命を延ばしまして、元気高齢者が地域社会を支えていく施策が非常に重要になっているのではないかと考えます。

 第二番目には、平成十九年推計では、世帯主が六十五歳以上である高齢者の世帯数は約千五百六十八万世帯でございますが、二〇二五年にはこれが約一千九百一万世帯まで増加するというふうに見込まれてございます。そして、二〇二五年には高齢者の世帯の約七割はひとり暮らしあるいは高齢夫婦のみの世帯が占め、そのうち、ひとり暮らしの世帯の増加が著しくて、約六百七十三万世帯に達する見込みでございます。こうしたひとり暮らし、高齢夫婦のみの高齢者の介護サービスのニーズにどうこたえていくかということが非常に大きな課題ではないかと思います。

 したがいまして、家族同居モデルから家族同居プラス独居モデルへサービスモデルを転換するということは避けられない、それこそが実は、最初に申し上げました地域包括ケアシステムの確立という重点政策と不可分の関係にあると私どもは考えてございます。

 第三番目は、認知症高齢者数でございますけれども、二〇〇二年現在で約百五十万人でございまして、二〇二五年に約三百二十万人になると推計されています。二〇〇二年九月現在の状況を見ますと、要介護者の二分の一、約半分の方々に認知症の影響が認められておりまして、この数は急速に増加してございます。したがいまして、介護サービスのモデルを身体ケアモデルから身体ケアプラス認知症モデルへと明確に転換させる必要があるということは明らかでございます。

 現在、認知症高齢者に対する有効な介護サービスの開発が立ちおくれていると思われます。このことが認知症高齢者の要介護認定に困難を生み出していると私は見ています。要介護度の判定は、心身の状況の重篤度ではなくて、介護の手間がどれだけかかるか、すなわちケア投入必要量で決めてございますが、認知症高齢者に対する介護の手間が推計できなければ、要介護度に応じた標準的なサービスを構成しようがないわけであります。

 今回の法改正でも、認知症研究の推進が組み込まれてございますけれども、サービスモデルといたしましては、例えば周辺状況に応じてどういうサービスを行えばこの方々が安心して暮らせるかというきちっとした認知症サービスモデルの設計が不可欠ではないかと考えます。しかも、認知症になりますと御自分の権利擁護がなかなか難しくなりますので、私どもといたしましては、何とかして市町村における市民後見人の養成と活用の仕組みをぜひとも立ち上げ、権利擁護の充実を図っていきたいと考えてございます。

 介護給付費分科会は、年末の国の予算編成の一環としまして、介護報酬の改定率は国の方で決めますので、それを受けまして基準であるとか報酬額の審議をいたしますが、何と申しましても、膨らみ続けている介護保険の総費用をどうやって賄っていくのか。しかも、このたびの東日本大震災からの復旧復興に係る膨大な経費を考えますと、介護サービスの充実強化に必要な財源をいかに確保するかということは、ほとんど至難のわざではないかと考えます。

 介護保険は、高齢者の介護を社会全体で支える仕組みでございまして、自立支援、利用者本位、社会保険方式を根幹的な要素としてございます。現状分析に立って介護サービスの開発と質、量の確保を図っていくことを前提にいたしまして、必要な経費を社会全体で負担していかなければならないと考えます。高齢者、特に後期高齢者の自然増だけからでも介護の費用は増大してまいります。介護保険の総費用は年々増加していまして、二〇一〇年度予算では約八兆円に近づいています。多分、二〇二五年ごろには二十兆円になるものと想定されます。

 二〇〇九年夏の総選挙の結果誕生いたしました民主党中心の政権は、社会保障費の自然増を年二千二百億円抑制するとした経済財政運営の基本方針、いわゆる骨太方針を廃止いたしまして、年金、医療、介護など社会保障制度の機能強化を約束いたしてございます。このためには、できるだけ早く社会保障の体系的な将来ビジョンとそれに必要な財源確保の見通しを示していただく必要がございます。その大局的な見通しのもとで初めて、最初に強調いたしました地域包括ケアシステムを実現していく手だてを確かなものにすることができると考えています。

 介護保険は、発足当時から、歩きながら考えると言われてまいりましたように、この十年間、制度と運用に幾つかの変更がございました。そのうち、六十五歳以上の方々にお願いしてございます第一号保険料について見ますと、三年ごとに見直されているわけでございますけれども、全国平均では、一期が二千九百十一円、二期が三千二百九十三円、三期が四千九十円、四期が四千百六十円となっています。二期は二〇〇三年の、三期は二〇〇六年の報酬改定の結果なのでございますが、その間はいわゆる小泉構造改革が進められまして、報酬引き下げと同時に保険料が引き上げられました。

 四期に異変が起こりまして、それまで制度の持続可能性を理由に介護報酬を引き下げてきたわけでありますけれども、介護従事者の不足が政治問題化いたしまして、処遇向上を主目的といたしました介護報酬プラス三・〇%アップが実現いたしまして、しかも、経済緊急対策ということで、国費を投入することによって保険料のアップを抑制いたしました。したがいまして、三期から四期への引き上げ幅が小さいのは、その結果でございます。

 四期においては、介護報酬三%アップだけでございませんで、介護人材の確保ということで、介護職員処遇改善交付金にも国費を投入してございます。この国費投入による保険料上昇の抑制措置がなくなれば、介護保険料の上昇は避けられないはずでございます。なぜならば、介護財政は共助という思想に基づいて社会保険方式を基礎にしているからでございます。介護報酬と診療報酬の同時改定を迎えます二〇一二年度に向けまして、公費と保険料の関係のあり方、国と地方の分担、安定的な財源の確保をどうするかということが極めて重大な課題であると考えます。

 報酬改定に当たりましては、私どもは、まず賃金や物価の上昇率を勘案いたしまして、事業者における一定の収益の確保、介護従事者の給与等の処遇、介護サービスの値段としての社会的に妥当な水準、被保険者の保険料負担の水準、利用者負担、保険者としての市町村の意向、そして特定サービスに係る政策誘導というように、たくさんの要素を総合的に考慮しなければなりません。

 仮に、今回の法律改正に基づいて介護報酬を決める場合に、国民の皆さん方に新たな負担をお願いするとすれば、介護保険サービスはこんなふうに改善され充実されるということを明確に打ち出す必要がございまして、今回の法律改正は、自立支援という介護保険の理念に忠実に、こうした期待にこたえていくための内容を持っていると私は確信してございますので、一日も早い法案の成立を切望してやみません。

 以上でございます。ありがとうございました。(拍手)

牧委員長 ありがとうございました。

 次に、佐藤参考人にお願いいたします。

佐藤参考人 皆様、おはようございます。私は、財団法人日本訪問看護振興財団常務理事の佐藤です。

 このたびは、社会福祉士及び介護福祉士法一部改正案について自分の意見を述べる機会を与えてくださいまして、本当にありがとうございます。

 お手元に簡単な資料を配付してございますので、それもあわせてごらんいただければと思います。

 私の団体は、全国七団体の一つといたしまして、介護職員のたんの吸引等の試行事業を実施しました。在宅で実施しました。なぜ実施したかと申しますと、私どもの訪問看護ステーションでは、人工呼吸器を使用している人、それから喀たん吸引の中でも特に気管カニューレのような人が多い、さらに、医師や看護師、そして介護職員との連携についてどうあればいいかということを中心にこの事業を実施しました。

 私の目的としましては、とにかく在宅療養者、重度障害者は医療ニーズを伴った方が多くなってくる、そうした場合に、その人たちがよりよく生きるということをサポートすることを共通の目標として、医師等との連携のもと、看護と介護がチームで安全にたんの吸引等を行うことになるにはどうしたらいいかということを考えることとします。それについて意見を述べさせていただきます。

 結論ですけれども、在宅における喀たん吸引等の実施につきましては、特に登録については安全体制などがあるんですけれども、実施に伴う安全管理が非常に重要であるということ、それから、在宅における人工呼吸器装着者、気管カニューレの吸引については特定の人が行う、そして特定の者を対象とした研修で対応すべきではないかということです。

 初めに、二十人の受講者に十人の指導看護師が実施しました試行事業を御紹介したいと思います。

 研修で実施しましたケアの内容は、たんの吸引、口腔内、鼻腔内、そして気管カニューレ。さらに経管栄養、胃瘻。腸瘻はしませんでしたけれども、経鼻、半固形。たんの吸引、人工呼吸器装着者でした。

 基本研修や演習などはスムーズにいったんですけれども、実地研修に大変大きな課題を残すことになりました。非常に対象者の負担が大きかったです。特に、ステーションとの信頼関係があるから二十四人の対象者を確保できましたけれども、プライベートの場で、しかも家族のいる前で、介護職員も看護師も、そして利用者も、大変な緊張を強いられた実地研修でした。

 実地研修における問題点を整理しましたので、ここで御紹介します。

 人工呼吸器装着者、気管カニューレの吸引の研修については、在宅では研修実施可能な対象者が非常に限定されており、実地研修では回数不足となり、試行事業には進めないケースが多くありました。

 在宅療養者でたんの吸引や経管栄養などを要する対象者というのは、病状が非常に不安定で重症者が多いこと。実地研修を受け入れた方のうち、期間中に三人亡くなり、また、二人は入院をしたという状況でした。ですから、予定されていた実地研修が、なかなか回数を確保できなかったということになりました。

 また、人工呼吸器装着者は、特定の介護職員に吸引等のケアを受けている状況があります。

 受講者に同行する指導看護師と受講者と対象者のマッチングが非常に困難でした。例えば経管栄養です。一日に三回しか発生しません。そのうち朝と夜は家族が行うと、昼を特定の介護職員が入っている場合、担当を奪ってまで、仕事を奪ってまで実地研修にかわるわけにはいきませんでした。ですから、対象者の方が、午後の三時ぐらいに、水分補給のためにわざわざその時間を設けて、実地研修に協力してくれたという状況もありました。

 施設では一定のマニュアルに沿ってできますけれども、在宅では、一人一人、対象者の状況、療養環境、そして医師の指示に基づくさまざまな医療器材、医薬品等が異なっております。そういう中で、家族のやり方もそれぞれです。訪問看護師がかかわって、その判断が不可欠な状況で行いました。

 次に、ケアの試行について御紹介します。

 当初の計画は、訪問介護事業所が対象者を選定し、安全管理体制やマニュアルを整備して、医師の指示を得て、看護師が試行に関する相談を受ける体制で計画、そして、最初に看護師同行で三回実施し、三人に三回行うということでした。しかし、結果的には、対象者の安全の確保という点から、訪問看護ステーションで対象としている人にケアの試行をせざるを得ませんでした。

 ケアの試行における問題点ですけれども、在宅では、吸引などの対象者がもともと訪問介護事業所には少ない、ニーズがないということがあります。それから、対象者を確保できないために、訪問看護利用者にケアの試行を行っておりますけれども、規定の回数をなかなか確保できないケースが多くなってまいりました。

 また、受講者への指導内容が正しく試行されているか、確認と判断を訪問看護師が行う必要性がありました。例えば、家族に言われるままに、吸引時の消毒方法など、清潔、衛生管理が簡素化されているような例が見受けられました。

 最後に、提案を申し上げます。

 一つは、在宅における喀たん吸引等の実施に伴う安全管理体制を整備することです。

 どのようにするかといいますと、医師、訪問看護師が利用者の状態に関する情報を共有し、緊急時対応の取り決めを行うこと、そして、介護福祉士が喀たん吸引等を実施する場合、定期的に訪問看護師が訪問し、必要時、主治医に相談すること、さらに、緊急事態や異常が確認された場合には、訪問看護師が、あるいは訪問看護師が判断できない場合は主治医が状態を確認して安全を担保すること、このようなことが必要と考えます。

 次に、もう一つは、在宅における人工呼吸器、気管カニューレの吸引についてですけれども、これにつきましては、喀たん吸引のうち人工呼吸器、気管カニューレの内部吸引については、安全管理の観点と、対象者が非常に限られている、少ないということから、当分の間、介護福祉士の喀たん吸引の行為範囲から外して、特定の者を対象とした研修で対応すべきではないかと思います。

 今回受講された皆様方は、本当に熱心で、それなりに経験もおありの方が多く、大変貴重な体験を私どもはさせていただきましたが、一方で、本音を申しますと、私たち看護師の免許を持っている者が、例えば潜在看護師の者がこういうことを二、三時間の研修で行うということであれば、時間も短縮し、そして安全も確保できるのではないかということを痛感いたしました。

 改正法案では、喀たん吸引は診療の補助とされておりますけれども、呼吸ケアの一部を看護師不足のために補うということではないかと思います。これは、診療の補助というよりは療養上の世話といいますか、看護がすべきことを担っていただくということで整理ができるのではないかということを感じております。

 私どもの今回の研修の試行結果について、これで発表を終わりますが、最後に、医学・看護学教育を受けて免許を持っている看護職員は百五十万人以上いると言われています。訪問看護ステーションや介護保険施設では看護職が不足しております。何とかこういう施設に看護師を誘導し、そして、当該分野の看護の充実をぜひ政策課題として鋭意取り組んでいただきたいと思います。私どもはそれにこたえるように日々努力をしてまいりたいと思いますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。(拍手)

牧委員長 ありがとうございました。

 次に、木村参考人にお願いいたします。

木村参考人 おはようございます。日本介護支援専門員協会の会長をしております木村でございます。

 私どもは、ケアマネジャーの職能団体でございまして、今般の介護サービスの基盤強化のための介護保険法等の一部を改正する法律案に対して意見を述べさせていただける機会をいただきまして、ありがとうございました。

 時間もありますので、早速、お手元の資料をポイントのみ説明させていただきます。

 昨年の五月に、OECDの上席医療分析官が日本にやってまいりまして、日本の介護保険のすぐれたところを調査研究して帰ったところであります。その核となっているものは、ケアマネジメントをケアマネジャーがやるという、十年前からのこの介護保険スタートからの仕組みであります。これをうまく回すことで、結果的に高齢者が地域で安心して暮らせる地域づくり、安心づくりができると考えております。

 昨年度の議論でありましたが、このケアマネジメントに対してケアマネジャーが在宅側で仕事をする場合、利用者様から負担をいただく、そういうお話がありましたが、今般の法律案には載っていない。逆に言いますと、利用者負担を導入しますとこのケアマネジメントを使える方と使えない方がいる、こういうことであります。今のまま負担なしで、だれもが要介護認定を受けた場合にケアマネジャーによるケアマネジメントを継続するということをこの後もお願いしたいと思います。

 それがきちんとやられることで、今騒がれております社会保障費の財源の問題でございます。ケアマネジメントがうまくいきますと、この財源が効率的に効果的に動くと承知しておりますので、そのことも含んでいただければと思います。

 きょうは、十二項目ほど、お願いも含めてお話をさせていただきたいと思います。

 二ページに参ります。

 阪神・淡路の大震災があったのは十七年前でございます。そのときには日本に介護保険がありませんでした。ということは、ケアマネジャーも存在しませんでした。その後、中越地震、能登半島沖地震等々があり、また山口での洪水等がありましたが、我々ケアマネジャーがその際、地域の高齢者の安否確認等々、また今般の東日本大震災の津波もありましたが、車も流され、事業所も流された中で、徒歩で高齢者の安否確認等をした仲間たちがいます。これは、日本に介護保険を導入したことのメリットというか、別の意味のメリットがあるということも御承知いただきたいと思います。

 二つ目に、ケアマネジャーの国家資格でございます。今現在、ケアマネジャーは県の任用資格で運用されております。今ほど来話しましたとおり、非常に重要な社会保障の中の介護保険制度の中における中枢の中枢の仕事をしているケアマネジャーでございますが、立場というもの、そういうことを考えますと、早期に国家資格化をしていただきたいと考えております。それには、身分法を制定し、大学教育を制定し、そして、今の若い人たちが、今でも独立経営できますが、やろう、なってみようという気持ちになるには国家資格化というのが重要だと考えます。

 では、今回の法案に対しての意見、それから周辺の関係のことをお話しさせていただきます。

 三番目に記載させていただいているのは、介護保険は、三年に一回、市町村における介護保険事業計画において保険料等々の算定等々をやってまいりました。今般、ことし第五期計画の準備に市町村が入っているわけでございますが、昨年十月、厚生労働省さんの方から、ここに記載されている日常生活圏域ニーズ把握調査について、各市町村に手法をお知らせしたところであります。

 私は青森市でありますけれども、東北周辺の青森市規模の自治体に確認しましたところ、予算の問題、手間の問題で、厚生労働省さんがやろうとしている日常生活圏域ごとの調査分析というものがなかなかうまく進まないと。これは、私はこの調査がだめだと言っているんではなくて、やはり先ほど来言っている財源の問題、それから地域に住まれる高齢者の問題、特に認知症、それから在宅医療の推進等々、そういうことをセットしていく上で、地域に住まれている住民の方々の分析が必要で、それがあって初めて計画が立てられるものだと考えております。

 無駄な財源をどんどん出していくよりも、その地域、日常生活圏域、もっと言うなら中学校学区ごとに分析をして、将来を見越した形で基盤をつくっていくということが必要なわけでありますので、ぜひ、全市町村がきちんとできる財源確保、それから手法をもっと教えていくべきと考えます。記載しましたが、そのことによりまして、認知症の方々の支援策がきちんとできる、医療サービス、住まいに関することがきちんと計画できるということで、大変メリットがあると思います。

 四つ目であります。

 二十四時間対応定期巡回・随時対応型サービスの創設ということは、先ほど来、大森分科会長さん、先生の方からお話がありましたが、団塊の方々が二〇二五年を迎える、今の状況からそこに行くのに、単身重度な人たちを地域でどう支えるか、こういう意味では大変創設しなければいけないサービスと考えます。

 しかし、法案にあるとおり、このサービスは大きく分けて二つあると思います。一つは、訪問介護サービスの中に訪問看護が入り、一緒にやっていくというセット、また別に、訪問介護サービスと外づけで訪問看護が行く、こういう二つのスタイルだと私は法案を読みました。

 そこで、きょうお話ししたいのは、訪問介護の中に訪問看護が入っていくところの危惧することをお話ししたいと思います。

 モデル事業の数字を見ますと、四十五人程度の利用者さんに対して、介護職員、常勤換算で二十二・八、看護師一・七一、相談員一、オペレーター一というようなシミュレーションが出てまいりました。

 何を申し上げたいかといいますと、訪問看護ステーションの人員基準は二・五であります。ここでお願いしたいのは、まず、中に取り込んだ場合でも、訪問看護師の数は当然ステーションの基準を満たすような形にお願いできないかということであります。

 また、私どもケアマネジメントする側から見ますと、ヘルパーさんと訪問看護師さんがどんどん巡回していくわけでありますが、これをケアマネジメントしていく中で、本来はケアマネジャーが指揮者としてケアプランを立て、そして各サービスが動いていくという仕組みがありますが、さもすると逆の現象が起きるのかもしれないということを危惧しております。ですので、本来の、事業所のケアマネジャーがきちんとケアプランを立て、これらのサービスが一サービスとして、従来どおり連携を緊密にしていくということを基準等々でやっていくべきと考えております。

 そして、もう一つ、訪問看護が訪問介護の中に入っていく中で、訪問看護の医師からの指示書の出るタイミング、この辺のところも、いつのタイミングで出るかということが重要になると思いますので、補足しておきます。

 五番目に、複合型サービスの創設であります。

 これも、原案では小規模多機能型プラス訪問看護ということでありますが、これを導入するに当たっての背景をいろいろ、数字を介護給付費分科会で見させていただきましたが、医療ニーズを追いかけられないという話であります。

 しかし、私は薬剤師でありますが、この医療ニーズの中で五八・二%が服薬援助と服薬管理であります。これは、薬剤師が居宅療養管理指導で自宅に訪問することができるようになっておりますので、現状でもそれは可能ではないか。また、浣腸とか摂食、嚥下、合わせて一〇%程度でありますが、これも訪問看護師がそのマネジメントの中で行けばいいのではないかと考えるわけであります。

 ただし、それを外づけで動かした場合に、利用者負担が、小規模多機能の場合は定額払いでありますので幾らサービスを使っても負担は変わらないわけでありますが、訪問看護外づけ、居宅療養管理指導外づけだとやはり負担等々があるということで、多分そういう意味で内づけというのをしようと考えているのではないかと思います。本来の今あるサービスをうまく組み合わせながらマネジメントしていくということ、それから、これからこれをセットした上でケアマネジャーの設置を、今は小規模多機能型は多機能型の中にケアマネジャーを設置しておりますが、それを外に出して、今ほど話したように訪問看護とか居宅療養管理指導をうまくマネジメントしていく、そういういろいろな工夫が必要なのではないかと考えます。

 先ほどの二十四時間型と同じで、訪問看護がサービスに入りますと、やはり指示書の問題が出てまいります。ここのところもしっかり考えなきゃいけないことだと思います。

 次に、六番であります。

 介護予防・日常生活支援事業の導入でありますが、これはざっくり話をさせていただきます。今、予防給付は介護予防側の事業所、これは地域包括支援センターの中で指定される形になっております。そこは従来のケアマネジャーの事業所に委託することができるようになっておりますが、今回は地域支援事業側を使うという形になりますと、委託はできなくなると思います。逆に言いますと、地域包括支援センターの三人の職員が、今予防プランで忙殺されているというのに加えて、さらに仕事が大変になるのではないかと考えます。

 提案させていただきたいのは、ここに記載しております、指定介護予防支援事業者にはケアマネジャーを常勤というか非常勤で結構なんですが、専任で配置して、そこに予防プランを専任でつくらせ、そしてさらに保健師、社会福祉士、主任介護支援専門員に加えて認知症対応の担当者等を配置して、このサービスをうまく動かしていく。さらには、地域支援事業をうまく動かし、また地域の医師会、ケアマネジャー協会等々、施設の団体等々と連携をとって、まさに日常生活圏域の安心できる地域づくりを推進するということを提案させていただきたいと思います。

 七番は、高齢者の専門賃貸住宅において、運営主体が訪問介護サービス、ケアマネジャー等々を持って、内側で必要のないサービスが提供されている部分も仄聞します。そのようなことがないように、ぜひ、公正中立なケアマネジメントができる、そういう体系にしていただければと思います。

 時間が押してまいりましたけれども、次に参ります。

 八番は、現場では、ショートステイの活用がうまくいかない、レスパイト等々それから緊急時の泊まりのところがないということでありまして、提案でございますが、有床診療所の空きベッド、それから小規模多機能の中にあります宿泊機能のあいているところを随時使えるような柔軟な利用ができるようにお願いできないかと思います。

 九番には、介護報酬の考え方についてでありますが、一言で言いますと、本当の意味で自立支援をしてやろうということで頑張っている事業所に加算評価していただきたいということであります。

 次、十番であります。

 今、利用者さんは入退院を繰り返しているわけでありますが、その都度アセスメントを最初から受けて、情報がつながっていかない、そのたびに不安だということであります。ですので、そのつながりのところをうまくやるという仕組みをつくっていただきたい。

 また、退院直後、要介護認定が三十日以内に返ってくる予定が、四十日、五十日かかっている状況で、介護サービスが使えないという現状もあります。そこは仕組みの問題でありますので、退院時の調整で、必要なサービスはすぐ入っていくということが大事だと思います。特にリハビリテーションは、入院しているときに歩行がきちっとできるようになって、退院直後からサービスが受けられない、そして歩けなくなると、その後膨大な費用がかかってくる、医療費、介護費ですね。一番かわいそうなのは、本人が歩けなくなる、そのようなことを防ぐ仕組みをするべきと考えます。

 さらに、十一番に関連しますけれども、老人保健施設に入所しますと、定額払いでございますので、本来はきちんと薬を使えるのでございますが、高額な薬剤を使いますと収益が落ちる等々のいろいろな原因があると思いますけれども、高薬価の薬は使われない。特にアリセプト等々、これは認知症をおくらせる薬であります。そういうものを使えないというのは、施設経営者が悪いのではなくて仕組みの問題だと思っております。どこに入所してもどこに住んでも必要な医療サービスはきちんと受けられる、そういうふうなことをお願いしたいと思います。今、六年に一回、診療報酬、調剤報酬、介護報酬、一緒に改定をするところでございます。財源確保等々も一緒に考えていただければと考えます。

 最後に、いろいろマスコミ等々の論調を聞いていますと、東日本大震災があるのだから、社会保障費を抑制して、ここは社会保障に従事する専門職のみんなは我慢しろという声が聞こえてきておりますが、私は全く逆だと思っておりまして、四十三兆からの社会保障費は特に地方の財政を支えているのであります。また、人件費も支えているのであります。ですから、そこはきちんと入れていただいて、その給与に転換して、税を回収してまた動かしていくということをぜひお願いしたいと思います。別途、東日本大震災に関しては復興費をセットしていただきたいと思います。

 長くなりましたが、十二項目、よろしくお願いいたします。ありがとうございました。(拍手)

    〔委員長退席、郡委員長代理着席〕

郡委員長代理 ありがとうございました。

 次に、田原参考人にお願いいたします。

田原参考人 東京介護福祉労働組合書記長の田原です。このたびは、意見陳述の機会を与えてくださいまして、ありがとうございます。

 東京介護福祉労働組合は、日本自治体労働組合総連合に加盟する自治体及び関係労働組合として、介護、福祉の公共サービス向上の活動を行っています。また、登録、非常勤など雇用体系にかかわらず、介護、福祉職場で働く介護関係労働者で組織している労働組合です。

 今法案の審議に際しましては、まず法案は凍結して、被災地の介護関連サービスのめどが立った上で十分な審議を行うことを意見いたします。

 東日本大震災では、約三万人の方が死亡、行方不明となり、被災した方々は十三万人を超えています。中でも、高齢者は約六五%を占めています。震災が引き金になった発病や病気の悪化などで亡くなる震災関連死と見られる例が相次いでいます。燃料不足の体育館で避難生活、浸水で停電した病院に入院等、老齢による虚弱や疾患を持った高齢者にとって、衣食住すら整わない余りにも厳しい生活は、国、自治体の責任で一刻も早く改善することが求められています。

 しかし、政府は、今法案を提出しました。趣旨は、地域包括ケアシステムを推進して、国の責任は保障ではなく支援に歪曲するものです。また、介護福祉士等による喀たん吸引等の実施によって、介護労働者から福祉の労働者性を奪い、職種、職能の範囲を超える労働強化が明確になるなど、今後の高齢者の介護保障にとって重大な問題が含まれています。

 今、政府が行うべきは、被災地住民に仕事をつくって生活再建に向けた希望をもたらすことと社会保障充実です。その上で、制度改正は十分に時間をとってしっかりと審議して決定すべきであり、性急に行えば、被災地の高齢者こそが介護サービス利用が難しくなりかねません。

 まず、被災した高齢者、家族への介護関連保障で、国が財源を保障して実施すべき項目について申し上げます。

 一つ目は、区分支給限度額に限定せずに、被災した高齢者が住居する地域の介護サービスを工夫して、必要な介護サービスを提供することです。

 被災当日にデイケアを利用していた高齢者が、家が半壊して帰れなくなり、三月だけで二万八千四百円の自己負担が生まれるなど、デイサービスやショートステイを利用していた高齢者がそのまま入所して負担増を求められています。

 また、震災後に身体状況が悪化して、認定申請、再申請をする高齢者が急増していますが、岩手県のある自治体では、四月に一度認定審査会を行ったものの、五月はいまだ開催されていません。したがって、ケアマネジャーは、予定した要介護認定が出されるかわからないために、必要な介護サービスがつくれない状況です。

 被災地の介護現場を悩ませているのが、市町村職員も被災している自治体が厚生労働省からの事務連絡等を解読できないために意味をなしていないことです。

 私たちの組合から被災地の介護関係組合のケアマネジャーの仲間に事務連絡の内容を伝えても、市に聞いたらわからないと言われて、職場の上司に相談するとわからないことはしないでと言われています。必要だと思うからやろうとしていることは認めてほしいというのが、被災地の介護現場の実態です。今後の事務連絡は、区分支給限度額を超えた場合は国が負担する、現場の裁量で行うこととして、命が救われた高齢者の介護を保障することが必要です。

 二つ目は、自治体ごとに県立病院、診療所を設置すること。三つ目は、人口二十万人ごとに県立保健所を設置すること。四つ目は、旧自治体ごとに県立の特養ホーム、障害者施設を設置することです。

 この間の公立病院統廃合によって、介護保険の主治医が眼科医、脳梗塞で救急車で運ばれた日に二週間後に退院を求められるなど、医療崩壊している地域ですから、民間任せにせず、公立病院を早急に建設することが重要です。

 さらに、炊き出し、救援物資の管理や仕分けなど被災地住民に欠かせない業務は、ボランティア任せにせずに、住民を雇用して生計費の安定を行うことが二十代、三十代の住民から求められています。収入を得ることによって、これからも生きていく希望を持つことや同じ地域で生活する住民の仕事をすることは、一日の充実感につながると考えます。

 次に、今法案の中心的課題について意見を申し上げます。

 法案提出に向けて、介護給付費分科会等でさまざまな協議がなされてきました。要介護認定については、認定が厳しく出るケースが多く、介護サービス抑制になっているために、廃止、簡略化の意見でした。

 しかし、二月七日に行われた分科会に提出された区分支給限度額に関する調査結果の概要は、基準額の七―九割程度のサービス利用をしている者の実態を把握するものですが、調査の内容を市町村におけるケアプランの点検者による評価をしています。現行制度では、対応する担当職員がいないため、調査を担当した専門官に、どこの自治体のどこの担当部署の職員が行ったのかと問い合わせると、個人的に依頼したので伝えることはできないということでした。

 実例として出されているケアプランは、六十代で寝たきり状態の利用者に日常生活自立度の状況を回復するプランの必要性も考えられるという、利用者の状況把握もなく、リハビリ等のサービス不足として断定するなど、極めて問題が多い調査です。

 何より問題なのは、まとめとして、区分支給限度額については、まず、ケアマネジャーの実態を踏まえた上で議論すべきではないかと明示して、制度維持ありきの不条理な結果です。介護現場は憤っています。要介護認定は廃止をすべきです。

 医療行為については、本来の福祉業務とは異なるため反対であり、現場の意見を踏まえて慎重に議論すべきであると考えます。しかし、実施する場合には、五つの項目への対応が不可欠です。

 一つ、新たな業務拡大であり、業務を行う介護労働者の賃金水準を示すことです。

 二つ、介護職員の配置基準を見直すことです。認知症グループホーム等小規模事業所は、一人勤務であることが少なくありません。一人の介護職員が認知症の利用者を抱えながらたんの吸引を行うことは、認知症の利用者から目を離すことになり、かえって介護事故が起こりかねません。

 三つ、喀たん吸引等の研修については、個々の労働者の意思を尊重して行うことです。研修を行うといっても、介護労働者にとっては医療の専門的知識、技術は乏しく、安全性の面から否定している者が多くいます。施設長や所長などの意向に任せず、個々の労働者の意思を尊重する制度にすることが必要です。

 四つ目、診療の補助として医師の指示のもとに行う業務であるから、すべての事業所、どの勤務帯にも医師及び看護師を配置すること。

 五つ目です。医療事故があった場合の事業所及び労働者保護制度を設けることです。

 前回の法改正で介護職員処遇改善交付金が設けられ、離職率が低下しました。今回の医療行為解禁は、申し上げた内容が整備されなければ、もう一度離職率が増加することになると直感をしています。

 昨年十月の介護職員処遇改善交付金の改正で、キャリアパスという人事考課制度が導入されました。今後は段位制が検討されています。キャリアが上がったときの賃金は示されずに、福祉職場に成果主義や競争を持ち込み、介護職員のチームワークを壊して介護サービスの低下を招いています。特養ホームの施設長などの中には、これを悪用して、ベテランは正規職員にしない、非正規で不安定な労働者をふやすなどが多々あります。介護はチームワークや経験が物を言う仕事ですから、キャリアパスはすぐに廃止していただきたい。そして、将来に希望が持てる賃金水準を決めて、必要な国の補助金を出していただきたい。

 白い冊子を配付させていただいておりますけれども、これの三十二ページ、三十三ページをごらんください。介護労働者が安定して働き、安心できる介護保障を実現するための政策を記述しています。東京二十三区の昨年度の給与表から試算したものです。2類、短大卒は、公立保育園の保育士の一年目、介護福祉士養成校の卒業者が格付できます。時給換算すると千九十七円で、労働組合の系統を超えて要求している最低賃金千円をわずかに超えるだけです。ヘルパーも施設職員も、どこの事業所で働いてもこの水準の賃金を保障するようにしていただきたい。

 今法案で唯一、労働組合として好意的にとらえていることがあります。事業所に対する労働法規の遵守の徹底です。

 賃金不払い、割り増し賃金不払い、最低賃金不払いの事業場違反率を示していますが、労働安全衛生法と育児・介護休業法も重視していただきたい。利用者は重度化しており、介護リフトの活用や職員配置の増員が求められています。さらに、小規模施設では、一人夜勤であるために、労働安全衛生法で定められている休息時間をとることができません。そのための離職や体調不良が深刻な問題になっています。近年増加している宿泊デイサービスも同様ですので、労働基準監督署からの指導と、制度での配置基準の見直しは、喫緊の課題として実施していただきたい。

 以上、多岐にわたって意見を申し上げました。今法案をこのまま成立させることは、高齢者から介護を奪い、介護労働者から福祉の仕事を奪って離職に追い込むことになりかねません。最後に、改めて、今法案は凍結をして、被災地の介護関連サービスのめどが立った上で十分な審議をすること、これを強く申し上げて、意見といたします。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔郡委員長代理退席、委員長着席〕

牧委員長 ありがとうございました。

 次に、服部参考人にお願いいたします。

服部参考人 皆さん、おはようございます。立教大学の服部でございます。

 私は、平成十一年、十二年ほど前に東京の渋谷区で渋谷区第一号のNPO法人を設立いたしまして、居宅介護支援、ケアマネジメントだけの事業をやってまいりました。私も非常勤のケアマネジャーの一人として、ずっと在宅のプランをつくってまいりました。その意味から、きょうは、在宅を中心にして、今回の介護保険法の改正に関して、現場の実態と意見を申し上げさせていただきます。

 お手元に、パワーポイントの形の資料と、全国二千名のケアマネジャーさんからいただきました、介護保険の未来を考えるケアマネジャーの会の資料を用意させていただきました。きょうは、パワーポイントの資料を中心にお話をさせていただきます。

 まず、介護保険の利用者は、昨年の段階で二倍になりました。介護保険が入って二倍になりました。どこで介護サービスを利用しているかということでございますが、その七二%は自宅でございます。予防も介護も含めて、自宅でサービスを利用されている方が全利用者の七二%でございます。

 二枚目のパワーポイントを見ていただきますと、その自宅でサービスを利用されている方の要介護度がどのようになっているかというのが二枚目でございます。要支援一、二の予防給付が約三割です。そして、要介護度一が二一%、要介護度二が二一%、あわせて、自宅で介護保険を利用されている方は七割以上が要支援から要介護度二、いわゆる今軽度者と言われているものでございます。要介護度五と認定された方は、既に六割は施設入所です。要介護度四と認定された方も半数は施設入所をしております。このような実態で、在宅で介護保険を利用されながら生活をしている人は非常に軽度者が多い、国で言うところの軽度者ということでございます。

 では、どのような理由で介護保険を利用されているかということですが、その下の国民生活基礎調査のデータによりますと、四人に一人は脳血管疾患、脳溢血、脳梗塞、脳出血でございます。そうしますと、ほぼ片麻痺というものが起こります。歩行ができにくい、嚥下ができにくい、または寝返りができない等々の問題が出てまいります。

 そうしますと、たとえ軽度で室内は伝わり歩行ができたとしても、台所に立って料理をするということや、狭いトイレの中でかがんで掃除をしたり、またはおふろ場のすのこを上げておふろ場を掃除したり、片麻痺でつかまりながら掃除機を使うということが、実質困難であります。そのような方々が掃除や洗濯やまたは調理を専門の介護職から受けることがどうして介護保険のサービスであってはならないのでしょうか。このような生活を支えることが基本であると私は思います。

 特に、そういうものがなければ、例えば酒屋さんからインスタントラーメンを大量に買い込むとか、または、在宅から通院が非常にできにくいということでまともな薬が飲めない、または、薬をもらったとしても、超高齢の方で十分な服薬管理ができない。そして、昨年のような場合ですと、熱中症で亡くなることすらある。そして今は、ノロウイルスやまたは寒さによるインフルエンザによる感染。

 こういうことで、ちょっと専門職が入って予防をすれば、体調チェックをすれば、まともな食事を提供すれば、またはごみまみれの中でぜんそくの人が暮らすような状況を解決すれば救われる状況、改善できる状況が、やはり専門職の生活援助が入ることによって支えられているというふうに私は思います。

 その意味で、今回、生活援助に関しては、軽度者は地域支援事業ということが言われておりますけれども、これは在宅の多くの高齢者の悪化につながるというふうに私は思います。

 また、介護が必要になる原因の二番目は認知症、三番目は老衰でございます。これらの方々は、在宅の中で自己の生活管理が十分できないということで、軽度者であったとしても、その方の命をつないでいくということに専門職が入ることの意義がございます。そのことも含めて、介護保険の対象であると私は思います。

 そのほか、今回の介護保険法の改定に関して具体的に意見を申し上げます。

 まず、今話題の定時巡回・随時対応型の訪問介護看護でございますが、これは厚生労働省に質問したところでは、地域包括エリアごとに、つまり地域包括支援センターのエリアごとに、基本的には一社を指定するということでございます。これであっては利用者が選択することができないということで、介護保険の選択制というものが失われてしまいます。

 また、看護、介護ということを入れていく要件として、看護がなかなか入らないからということが言われております。私も元看護職でございますが、在宅で介護と看護の割合を見れば、圧倒的に介護が在宅の生活の中のサポートの中では主要であります。そして、その中で専門的な対応に関して、看護も医療ももちろん大切であります。

 看護が入りづらいということはケアマネジャーの責任ではなくて、主治医がしっかりと、この人に訪問看護が必要であるということをケアマネジャーに伝えていただく。そうすれば、それを拒否するケアマネジャーはいないだろうと私は思っております。

 また、今回問題なのは包括単価。一カ月まとめて、この介護度なら看護、介護で幾らということが決められます。そして、それは介護度別の限度額の中でその金額が決められます。そうすると、一方では必要なサービスは同じ単価で受けられるということが言われておりますが、実態は逆でございます。

 平成十八年に予防訪問介護、予防通所介護というのが入りました。そのときは、その総額の枠内で、今までのサービスの時給に計算をした数しか入っておりません。ですから、訪問介護に関しては一時間半。全国どこでも一時間半。まして、五週ある週、一カ月に同じ日が五週ある週は行かないということまで当初言われておりました。

 これはある意味では、サービスを提供する事業者は、入ったヘルパーさんにお金を払わなければいけない、それを削減するわけにはいかないというその結果として、結局は、各回数というのは今の介護報酬の、報酬ごとの限度額の枠内に抑えられてまいります。結果として利用回数が制限をされるということであります。

 この報酬に関して、マルメと言われる定額報酬を導入することが結果としてその枠内でしか利用できないということで、それをはみ出れば自費になる、ないしは我慢せざるを得ない。また、考えられることとすれば、看護に関しては医師が指示を出せます。そうすると、その結果として、例えば夜間入ろうと何時間入ろうとどういうケアをしようと、今回は単価は一緒であります。そうした場合に看護が中心にならざるを得ない、私は看護が中心にならざるを得ない利用者もいると思います。

 でも、圧倒的な在宅の利用者を見ていただきますと、軽度者が多い中で、やはりこの人に何が必要なのかということをしっかりケアマネジャーがアセスメントをして、それに即したサービスが提供できる、そのためには包括単価というのは非常に問題があるというふうに思います。

 また、ケアマネジメントも、今まででしたら、この利用者にこの時間にこのサービスが必要だということで働きかけて、それが入っておりました。ところが、一社まとめて一つの事業所から提供されますと、その事業所の判断、事業所の意向で結果としてサービスが決まるということにつながりかねない、このような危惧を持っております。

 次のページを見ていただきますと、「自宅の看取りが困難な理由」というのを厚生労働白書で載せております。それの七八・四%、「介護してくれる家族に負担がかかる」。左の、医師が足りない、訪問看護が足りない、これの何倍も、介護負担が在宅のみとりができない理由になっております。

 たとえ毎日訪問看護師さんが入っていただいて一時間、三日に一度往診の医師が入って三十分、でも、あとの二十何時間はだれが食事をし、だれが薬を飲ませ、だれが体をふき、だれが向きを変え、褥瘡を予防していくのか。圧倒的に介護が必要であります。この実態の現状を見ても、今回、介護というのが非常に軽くみなされていくことに対して、大変な危惧を持っております。

 あわせて、今回、高齢者住まい法が既に可決をしまして、施行を待っているところであります。この前提としては、今いる在宅の方、施設の方が高齢者住宅に移り住み、そこにサービスを併設させて、そこからサービスを提供するということが前提に考えられております。

 ところが、高齢者は持ち家率が高いんです。一般的に六〇%と言われる中で、高齢者の持ち家率は八〇%であります。家があるということは、居場所があります、やることがあります。こういうものを、移り住むことによって死ぬまで家賃を発生させるということが本当に妥当なことでしょうか。

 そこで、サービスを隣に併設するということを考えると、そこのサービスが入るということで、ある意味では効率的かもしれません。でも、利用者が選べるという、ここの生活に対する個別性というものが失われてしまうのではないか、このことに危惧を覚えます。

 特に、昨年、診療報酬では、一つの建物の中に二回往診をすれば単価を三分の一にする、訪問看護も訪問リハビリも単価を下げるということが導入されました。それを考えると、今回のことは、結果として、隣にいる、または、まとめて食事を提供する、順番に排せつ介助ができる、順番におふろに入れることができるという効率性から単価を下げられるということで、実質、サービス事業者にとっても非常に厳しい経営になるのではないか、このようなことの危惧を考えます。

 したがって、この中においても、包括単価の見直し、そして地域のサービスからも選べるという、この自由性を奪ってはならないと思います。

 五ページのところに、小規模多機能と訪問看護の複合型ということが今回言われております。なぜ小規模多機能がふえないか。それは、経営が苦しいからであります。

 現在の小規模多機能の利用者の平均要介護度が二・二から二・三、それは、在宅の認知症の方とかまたは老老介護の方にとって、軽度であっても在宅が暮らしづらい、その方にとって非常にいいサービスである。しかし、重度の方、要介護度五、要介護度四の方がこれを利用するとなりますと、限度額と毎月の定額報酬の差が少ない。その結果として、訪問看護を必要数を入れると自費が出るという、この実態でございます。これの中で、さらに看護も入れて包括単価をすれば、結果としてデイサービスやお泊まりや介護が影響を受けるということで、問題の解決にはならないだろうと私は思います。

 したがって、主治医が認めた場合は訪問看護を医療保険で対応する、こういう対応が妥当であろうというふうに思います。

 次のページを見ていただけますでしょうか。

 特別養護老人ホームで待機している方に、何があれば在宅が継続できるかという質問をさいたま市が行っております。必要なときに利用できるショートステイがあれば在宅できる、在宅サービスの量がふえれば、または在宅で受けられる認知症系のサービスが、医療系のサービスが。どんな理由があっても在宅不可能というのが四二%。四割ぐらいの方は、在宅サービスの充実があれば在宅ができるというふうに言っております。これが特養の待機者の実態でございます。

 下のデータを見ていただきますと、一人当たりの一カ月の介護費の単価でございます。居宅は十万三千円、施設は、それぞれ三施設ありますけれども、三十万。この実態を見ると、もちろん施設は二十四時間対応ですので、お金がかかるのは当然であります。しかし、より長く在宅でいることができれば、介護報酬もその分少なくて済むわけであります。今、在宅が暮らしづらくなっているというこの現実に、私は、今回の介護保険の改定では目を向けるべきではないか、このように考えております。

 次のページに参ります。

 在宅重視の介護保険の充実。独居だから在宅をあきらめるということではなくて、在宅で要介護者があきらめずに暮らす居場所がある。家具ももちろん持っています。その中で、使いやすい、使えるようなサービス、例えば、厚生労働省も言っておりましたリバースモーゲージも含めて、自宅と地域と介護保険と医療、この総合的なケアマネジメントをしていくこと、このことを再度私は問題提起をしたいと思います。

 一番最後、残された時間で一つ申し上げたいのは、二枚おめくりいただきますと、郡山市の介護保険課の事務通達というのがございます。

 これは何かといいますと、被災地で、福島県でございます、今回の被災の結果、サービス事業所もその職員も利用者も被災をしております。そこで、先ほど言われたように、ガソリンがないです。動く手段がない。十二日の朝には、朝の五時ぐらいからガソリンスタンドに人が並んで、避難のためにガソリンを満タンにする、一週間分のガソリンが午後の二時にはなくなる、こういう実態でございました。

 その中で、訪問介護事業所がなかなか利用者のところにガソリンがなくて行けない。歩いて行く、自転車で行く、または、そこにいろいろなものを、おむつや何かを届けるということで苦労している実態があります。それに対して、ガソリンがなくなったのは事業所の責任だから、包括単価、一カ月の予防の方に対する月の包括単価を日割り計算で返させるということを厚生労働省はやっております。

 これは、被災地の介護事業所が自分たちも被災しながらその利用者のためにやって、それでもなおガソリンがなくなったというのは、その事業所の責任ではございません。こういうことが実際行われているということに対して、やはりもっと被災地に支援の目を向けていくということ、これをすべきではないか。

 このことを最後にこの中で御提案をして、私は、もっと在宅重視ということで、今回の介護保険法に関して、今の制度の中でも、包括単価をやめることによって、またはサービスを利用者さんが選べるようにすることによって、まだまだ改善の余地があるというふうに考えます。ぜひ一考をお願いしたいと思います。

 どうもありがとうございました。(拍手)

牧委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の方々の御意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

牧委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。藤田一枝さん。

藤田(一)委員 おはようございます。民主党の藤田一枝でございます。

 参考人の皆様には、本法案並びに介護保険制度について貴重な御意見をお述べいただきまして、ありがとうございました。それぞれの御意見を参考にさせていただきながら本法案の審議にこれからまた当たらせていただきたい、このように思っているところでございます。

 きょうは、大変限られた時間でございますので、早速質問に入らせていただきます。

 まず最初に、大森参考人にお尋ねをいたします。

 参考人からは、今回の改正案の制度的意義についてお話をいただきました。民主党の介護保険制度改革ワーキングチームで議論をしてきた内容とも重なる部分も大変多く、心強く拝聴したところでもございます。そして、本法案の名称ともなっている介護サービスの基盤強化、この基盤強化の中心が地域包括ケアシステムの確立だ、こういう御指摘でございました。

 介護保険制度、十年間、振り返ってみますと、先ほどから参考人の皆様もそれぞれ御指摘でございますけれども、サービス提供体制、そしてサービスの量、こうした問題は格段に増加をいたしましたけれども、しかし、その質がどうだったのか。とりわけ在宅サービス、訪問介護サービスというのが、中度あるいは重度の要介護高齢者、そしてまた認知症高齢者、そしてその家族のニーズに本当にこたえ切れてきたのかといえば、残念ながらそうではなかった、こういうことではないかと思います。だからこそ施設志向というものが増大をし続けている。そして、介護保険に対する不満というものもそれなりに膨らんできていた。これが現状ではないか、このように認識をいたしております。

 したがって、今回の法改正によって、訪問系サービスを滞在型から定時巡回・随時対応型に転換させる、そして、その地域の医療や介護などさまざまなサービスを利用者の状態に合わせて組み合わせていくことで、地域での生活を支える地域包括ケアシステムがこれからの介護サービスの方向性である、このことについても同感でございます。その意味で、今回創設される二十四時間地域巡回型訪問サービス、このサービスに大きな期待が寄せられているわけでありますし、また、今後の介護保険の行方を決めていくことにもなろうかというふうに思います。

 しかし、そうはいっても、まだまだ課題は山積でございます。本当に中身がよく見えていない、これも事実でございます。日常生活圏域三十分以内といっても、地域事情はさまざま。サービス対象者の範囲はどうなるのか、軽度者は外されないのか、人材の安定的確保は大丈夫なのか、報酬体系のあり方はどうなるのか。今お話もありましたが、包括定額払いで本当にいいのか。ケアマネジメントのあり方はどうなのか。参考人の皆様からもいろいろと指摘がございました。さまざまな懸念が現在出されているところでございます。

 しかし、このシステムをやはりしっかりとつくり上げていくということが大事だ、これは基本であろう、このように思っておりますが、そのことを前提にしながらお尋ねをいたしたいと思います。

 今指摘をされているこうした問題点あるいは課題を解決してこのシステムをつくり上げていくために、来年は診療報酬と介護報酬の同時改定、こういう時期を迎えるわけでございますが、特に、どういう視点に立ってこの問題を、制度設計を考えていくべきなのか。特にどういう点に留意をしなければいけないのか。こうしたことについて、大森参考人の御所見をお聞かせいただきたいと思います。

大森参考人 どうもありがとうございます。

 大きな御質問でございますので、簡潔にお答えできるかどうかわかりませんけれども、一部には、今回は同時改定を見送れという御議論がございますけれども、介護保険の方から見ますと、先ほど私も強調したように、実は、現在の、公費を投入している介護報酬の実態をこのまま放置して三年間続けることは不可能です。したがいまして、給付金問題をどうするか。それから、強調しましたように、新しい在宅サービスの充実強化のためには、ぜひとも今回の新しいサービスの導入をしたい。これにもお金がかかるわけでございまして、したがいまして、何としてでも、この法律に基づいて介護報酬の審議に入りたいと切に願っているわけでございます。

 いろいろ、介護保険給付費分科会もたくさんの方々が出席でございまして、委員よりもギャラリーの方が多いという実態でございまして、大変でございます。私自身はもともと、会長職というのは自分の意見を何か実現するわけでは全くありませんで、皆さん方の御意見をまとめて、諮問があれば答申を出す立場にございますけれども、一つは、繰り返しますけれども、ぜひとも介護報酬は今回改定させていただきたい。その際、政府及び国会の皆さん方が、一体、全体を見ていただいて、改定率をどういうふうにお考えになるのかということでございますけれども、個人的な希望でいえば、でき得ればプラス改定にしたいなと思っていますけれども、本当にそういう財源の調達が可能になるかどうかということについて十分お考えいただけないかなと思っています。

 それからもう一つ、長期的に見まして、いろいろ御意見があることは私ども承知しているんですけれども、現在の社会保険方式と呼ばれますのは、財源構成でいいますと、保険料プラス、利用料もございますけれども、公費が半分入っているわけでして、公費のそのまた半分は国費で、半分が地方でございますので、我が国のこの保険制度というのは、少し言葉が強うございますけれども、相当じだらくな制度でして、純粋型の保険制度ではないんです、もともと。しかし、この保険制度の最大の意味は、認定を受けまして、認定を受けますと要介護度に応じて支給限度が決まる。これは、それまでサービスが使えるという権利保障になっているわけです。

 そのためには、要介護認定というものが全国的に公平、客観的になされなきゃいけませんで、これを揺るがせたら介護保険制度は根幹から揺るぎますので、したがいまして、これはぜひとも維持しつつ、今御指摘のあったようなことについて一歩一歩改善していくのが実態的なやり方ではないかと私は考えていますので、繰り返せば、ぜひともこの法律を通していただきまして、御指示をいただいて、これに即してこう考えろということであるならば、場合によったら国民の皆さん方に若干御負担を願う、あるいは、一部のサービスにつきましては少し辛抱していただくということがあるかもしれませんけれども、それは全体のバランスの中で考えるということになるもの、そう承知しています。それでよろしゅうございましょうか。

藤田(一)委員 ありがとうございました。

 続いて、服部参考人にお尋ねをしたいと思います。

 参考人からは、まず、この地域包括ケアシステムについて大変厳しい御指摘もございました。しかし、選択をできるようにする、あるいは自由度を高めていく、もちろん必要なことであろうと思いますし、そしてまた自立支援のための生活援助というのが必要だということも当然であろう、このようにも思っております。

 いずれにしても、在宅介護、在宅での生活というものをいかに充実させていくのかということが本当に待ったなしの課題であるわけでありまして、そのために、これも来年の同時改定、こういう非常に大きな山を迎えるこのときにどのような政策を優先させていくべきなのか、御意見をお聞かせいただければと思います。

服部参考人 ありがとうございます。

 特に、今まで在宅を支えていたのは、訪問介護というのが、老人福祉法ができた四十年前から在宅を支えておりました。ところが、平成十八年の制度改定以降、訪問介護の利用者の総数が減っているんです。介護保険の利用者がふえているにもかかわらず、減っているんですね。

 それはなぜかというと、先ほど御指摘にありましたが、訪問介護は今、滞在型にはなっていないんです。訪問介護の利用者で一番多いのは三十分なんです。三十分の身体介護が一番多い。次が、一時間の身体介護なんです。かつての滞在型というのは、もう十年ぐらい前の話であって、その中で、必要なサービスを受けるというふうになっております。ところが、残念ながら、一時間半を超えた生活援助というのはただになっていますし、一時間半を超えた訪問介護は単価が半分です。そして、一度入ったら次まで二時間あけなければいけない。または、御家族がいれば、同じマンションの中で上と下であっても、また同じ敷地で建物が別でも生活援助を受けられないという、とてもとても縛りが多いんですね。

 やはり一つは、訪問介護を利用者の実態で、サービス担当者会議で、医師も含めて、この内容が必要だということが判断できれば、それをしっかりと利用できるようにする。今みたく利用者が五年前からどんどん減っているという、このやはり在宅が暮らしづらい状況を改善するということがまず一つではないかなと。

 それと、あとは、そのためにはやはりケアマネジャーさんは、介護保険だけでは人は生きていかれません。もっと、お隣近所さん、または地域のさまざまな資源を導入する、そういうところにもっともっと力を入れていいだろうというふうに私は思っております。

藤田(一)委員 ありがとうございました。

 時間があと五分を切っているということでございますので、続いて、大森参考人に簡潔にお尋ねをしたいと思っております。

 今回の介護保険制度の改正、この法案の中には、市町村の役割、責務というものを大変重視していくというか、その内容が盛り込まれております。そこで、今後の介護保険制度の市町村の役割、責務というもの、そもそも介護保険制度は地方分権の試金石とも言われてきたわけでございまして、そういう意味で、今後の市町村のあり方というものについてお聞かせをいただきたいということが一点。

 それからもう一つは、今非常に高齢者の貧困であるとかあるいは生活困窮、こういうことが問題になってきております。介護サービスの利用限度額、支給限度額の半分程度、これは別に、生活が苦しいということだけが問題ではないわけでありますけれども、そういった一割負担の問題も影響があるのではないか、このようにも言えるわけでございます。

 あるいは保険料が未納だったり、あるいは介護保険そのものにアクセスできていない、こういう状況も多々見受けられて、この間も補足給付のあり方ということについてはいろいろな議論があったということだと思いますけれども、本当に社会的な扶助あるいは福祉の機能というものがきちっと働いていかないと、介護保険そのものの形というものがゆがんでしまうのではないか、こういうことではないかと思っています。介護保険とサブシステムの組み合わせということについて、御所見をお伺いできればと思います。

大森参考人 どうもありがとうございます。

 きょう、私のお話の中に市町村のことが入ってございませんで、的確な御質問をいただきましてありがとうございます。

 我が国の介護保険制度といいますのは、地域保険制度になっていまして、市町村が保険者でございます。市町村が保険者である役割というのは、まず、要介護認定という重要責務を負っています。それから、三年間にわたりまして、特に六十五歳以上の方々の保険料を幾らにするかということは自治体の条例で定めることになっていますので、条例は議会の皆さん方の議決ということになっています。そのためには、各自治体で、住民参加を前提にしまして、介護保険事業計画というのを立てます。

 その際、今回は特段にいろいろ、所在が不明の方々も出ましたものですから、できれば悉皆調査をしてもらいたい、どこにどういう方々がどういう暮らしをしているのかということを市町村が把握した上で必要なニーズにこたえていくような、そういうことをしていきたい。

 そのときに、実は、介護保険が始まりまして、当初私どもは、市町村が行う社会福祉サービスと介護保険サービスとは異質なもので違うんだけれども、この二つが合わさって全体の生活の条件が改善されるものと考えていたんですけれども、やはり、介護保険制度が導入されまして、市町村が、どちらかというと、それで済んでしまうんじゃないかということで少し引いたんだと思います。

 改めて地域包括ケアみたいなものの中に介護保険サービスと社会福祉サービスをセットにして全体の充実を図ってもらう、その第一義的な責任は私は市町村にあるものと思っていますので、市町村の特段の役割というのが重要ではないかと思います。

 ただし、市町村の皆さん方にこれを言いますと、いろいろなことを押しつけるとおっしゃいますので、できるだけ市町村の身になって、無理のないところでいろいろなことをやっていただくことになるものと思っています。

 それから、実は二番目の話は大きいお話でございまして、ホテルコストをどうするかと検討したときに、基本的に言えば、ホテルコスト、要するに、住まいの経費とか食事の経費はみんな御自分で出すのが当たり前でしょうということになりまして外に出したんですけれども、特養の中に暮らしている方々が相当程度低所得者の皆さん方が多うございますので、これをどうするかというときに、補足給付というのは入れてしまいました。一体、補足給付のあのお金が介護給付費から出るのが本当に正しいのか、それともあれは外に出して別建てで行うのが正しいのかということは依然として重要な課題になっていまして、直ちには出せないんですけれども、この問題については引き続き私どもは重要課題ではないか、そう思っています。

 以上でございます。

藤田(一)委員 ありがとうございました。

 時間が来てしまいまして全部の参考人の皆様にお尋ねできなかったこと、おわびを申し上げまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

牧委員長 次に、あべ俊子さん。

あべ委員 自由民主党のあべ俊子でございます。

 本日は、参考人の皆様、現場の声を聞かせていただきまして、大変ありがとうございました。

 特に、今回の介護サービスの基盤強化のための介護保険法の一部改正、私ども、これは必要な改正であると思っております。必要な改正でありながらも、やはり幾つか疑問点も出ているわけでございまして、このやや心配な部分に関して質問をさせていただけたらというふうに思います。

 特に、介護保険法、この介護保険の点数とさらには診療報酬の一体改革、六年に一度、このことを控えている中で、今回の改正がどう行われるかということは非常に重要なことであると思っております。

 まず、大森参考人に質問させていただきたいと思います。

 先生がおっしゃいました、家族モデルから独居モデルに介護保険を考えていかなければいけない、おっしゃる意味、本当にそうでございまして、特に私も独居老人予備軍といたしまして、特に女性が独居老人は多いわけでございますが、この家族モデルを早く転換していかなければ、これからの社会、本当に不安だと思っております。また、参考人がおっしゃいました認知症の高齢者ケア、この介護の手間の部分をしっかり見ていかなければいけないということも確かであります。

 そういう中で質問させていただきますが、私、いつも懸念をしておりますのが、その患者さんまたは利用者の皆様が、ADLが下がるまたは重症度が高くなるにつれその点数が上がるということがありまして、すなわち、こちらがケアをして、その入居者、サービス利用者の方々の状態がよくなると点数が下がるということは非常に矛盾ではないか。ほうっておいてしまっても点数が上がるのか。それは必要な、またさらにはどうしても仕方がないものだったのかという区分けが非常に難しいと思っておりますが、私は、ぜひとも、一生懸命ケアをして状態が維持改善した場合には御褒美が出るという仕組みが必要だと思っております。

 大森参考人にお聞きいたします。このことに対して御意見をお願いいたします。

大森参考人 非常に大事な御指摘でございまして、例えばデイケアに通った人が、デイケアでその人のニーズに応じて日中暮らせる、そのことが夜の暮らしに好影響を及ぼしていって、結果としては要介護度は持続するかあるいは悪化しないというようなケースがございます。

 私は、そういうようなデイサービスの事業者に対しては、そうではないところと比べてある種の差をつけてもいいと思うんですけれども、その場合は、こういうふうにしたからこうなったということについての評価、効果の評価をきちっといたしまして、どこに行ってもきちっと説明できなきゃいけませんものですから、それを持続的に今検討をずっとやっているんですけれども、できればそういう方式で、それをどういう加算でやるのかとか残っていますけれども、その方向を目指すべきだと私自身も考えています。

あべ委員 大変力強い御意見をいただきまして、ありがとうございます。

 本当に、現場の方々が一生懸命やるほど収入が下がっていく。仕方がない重症化、さらにはADLの低下以外の部分で、やはり御褒美という部分をもっと考えていただければ、諸外国では、アウトカム、さらにはリスク因子の計算によって、患者さんもしくはサービス利用者の状態が本当に仕方のないものだったのか、そういうことを確かに確認していく方法がございまして、この検討もぜひ厚生労働省の方でもお願いできたらと思います。

 また、次に佐藤参考人に質問をさせていただきますが、いろいろお話を聞かせていただきました中で、二点質問をさせていただきたいと思います。

 たんの吸引の安全性を確保するために何が最も重要であるか。また、二点目といたしまして、そもそもなぜこのような法改正が行われるようになったのかということの二点を簡単にお聞かせください。

佐藤参考人 御質問ありがとうございます。

 最初の、特に在宅での安全管理に最も重要なものは何かということでございますけれども、先ほども申しましたように、在宅というのは、療養者、そして私どもかかわる者、医師、介護職員など、本当にさまざまで、個性的です。

 そういう中で、どうやって安全を確保するかということになりますと、登録基準で安全管理体制が整っているというだけでは、とてもじゃないけれども安全は守れません。したがいまして、それぞれの療養者に応じて、私どもかかわる者がお互いに計画、私は訪問看護計画書などをしっかり土台にすればいいと思っているんですけれども、そういう計画書に基づいてそれぞれが役割をしっかり果たす、そして定期的にそういうことを確認し合う、そういう仕組みが必要ではないかと思っています。

 今後、もし法案が通れば、介護福祉士が診療の補助行為を行うということになれば、訪問看護ステーションに配置基準の一人として、職種としてそれを配置できるということもあるかもしれません。そうでなくても、提携するという形でもいいですけれども、医師の指示書に基づいて訪問看護ステーションは看護を提供します。そして、看護計画を立て、その中で療養者の安全を守りますから、介護職員とはその訪問看護計画を共有し、情報を共有することによってかかわっていくという仕組みができれば、最も安全が守れるのではないかと思います。

 それから、気管カニューレなどですけれども、この人たちにつきましては、先ほども申しましたように本当に個別性があります。それから、参考人のお一人がおっしゃいましたように、介護職員につきましても、みんなそれぞれに不安を持っていたり、技量などの差がありますので、私どもはその人たちと一緒にかかわりながら、今回のたんの吸引等の研修事業で行うような形ではなくて、もっと実際は数カ月かけてしっかりと信頼関係を保ちながら、その介護職員の技量を私どもは判断しながらかかわっていく、そういうプロセスを大事にすることが最も重要ではないかと思います。

 もう一つの質問につきましては、なぜこのような背景になったかということですけれども、私が考えますのは、医療ニーズを伴う要介護者が増加してきた。特に、二〇二五年につきましては、もっともっと大変な状況になるということが前提になっていると思います。

 そもそも諸外国と違う点は、私どもの在宅ケアというのは、訪問看護ステーションとそれからホームヘルパーステーションが別々の組織、経営母体として行うということが、基本的には海外と違っております。ですから、介護の福祉と看護という医療とが一体的になってこなかったことが一つの原因ではないかと思います。

 また、在宅医療は家族がケアをするということの前提に成り立っていると思います。そういう前提に成り立っていること自体が、今、家族介護力が低下し、独居高齢者がふえている中で、家族にかわってそういう介護の人たちがかかわらなくてはいけなくなったのではないか、そんなふうに私は分析しています。ですから、もっともっと訪問看護が指導ではなくて直接的にかかわるような、そういう在宅医療を担う仕組みとして日本で発展していればこういうことにならなかったのではないかというふうに感じております。

 在宅で訪問看護を充足するためには、もっともっと私どものステーションの方に、あるいは介護施設の方に看護職員が移動するようなインセンティブをぜひつくっていただきたいと思っています。

 以上でよろしいでしょうか。

あべ委員 ありがとうございます。

 いずれにいたしましても、私は、介護保険の法改正に向けて、サービス利用者中心の安全が確保できる、さらには安心できるというものが一番大切であるというふうに思っております。

 次に、木村参考人にお尋ねいたします。

 特に、ケアマネの方々からさまざまお話を聞かせていただいておりまして、その業務の煩雑さ、大変さを聞いているわけでございますが、木村参考人がおっしゃった中で公正中立なケアマネ、私はこれは非常に重要なことであると思っております。特にサービス提供と分離をしていくということがサービス利用者にとっては非常に重要だと思っておりますが、このことに対してぜひコメントをいただけたらと思います。

木村参考人 現在、ケアマネジャーが完全独立している事業所というのは、全体の一〇%ぐらいです。九割が併設サービスを持っています。訪問介護を持っていたり、デイサービスを持っていたりということであります。ここまで十年、併設サービスでやってきて、今から申し上げることは急激にはできないと思うんですが、一番いいのは経済的にも事業所が独立する、それから構造的にも独立する。

 そもそも私らが申し上げているのは、機能的にフェアに利用者の立場に立って、自分のところの事業所だから優先的に入れるとか、そういうことではない仕組み、そういうことをやっていかなきゃいけないと思うんですが、いろいろなところでよくこのことは聞かれまして、経済的、構造的独立ができれば一番いいんだけれどもとなりますが、やはり所属法人等から急に離れてどうこうということは、この制度は急激に変えることはかなりきついと思いますが、何年かかけてそういう形の経済的、構造的、機能的独立をしていく仕組みにしなければいけないと感じているところであります。

あべ委員 ありがとうございます。

 私は、木村参考人がおっしゃいますように、経済的、構造的ケアマネの独立、自立ということは、今後の介護サービスにおける質の担保さらには利用者の安全、安心に非常に直結するものだと思いますので、これは本当に参考にさせていただきながらこれからの審議も進めてまいりたいと思います。

 最後に、ちょっと私の持ち時間がなくなってまいりましたが、服部参考人にお尋ねいたします。

 必要な介護サービス、本当に必要なものは私はしていかないといけないと思っております。私も難病の母を自宅に抱えておりまして、しかしながら、私ができることを全部やってしまうと自立を阻害してしまいますので、できる限り心を鬼にして、その母にさまざまなことをやってもらいたいというふうに思っておりまして、仕事をあえて、家事に関しても母にしてもらっているわけでございます。

 しかしながら、在宅にいるということは非常に大切であります。入院中の母も、自宅に帰りたい、自宅に帰りたいと何度も言っておりました。しかしながら、自宅にいるということのその自宅でありますが、特に私のように岡山県の中山間地区にいる者に対しましては、自宅にいるということがサービスを受けるということと、特に参考人がおっしゃいましたリバースモーゲージ、お金を出してもだれももらってくれないような山奥にある家に対してリバースモーゲージは私は非常に難しい部分があると思っています。

 一言だけお尋ねいたします。

 自宅というのは、ずっと住んできた自宅だけを指すのでしょうか。それとも、ある意味スウェーデン方式のように、ある程度介護が必要になったときには移動するということも含めた自宅でよろしいのでしょうか。一言お答えください。

服部参考人 ありがとうございます。

 私は、利用者が選べれば後者でも構わないと思っております。ただ、そこに行かなければサービスが実質受けられないような状況にするのはよくないなというふうに思っております。

あべ委員 簡潔なお答えをありがとうございました。

 今回の介護保険の改正法は、私は必要な法案であると思っております。しかしながら、幾つか懸念事項がありますので、このことに関してはこれから審議を進めていきたいのと、また、介護保険の改正に関しましては、私は選択と集中が必要であると思っております。国民の安全、安心をどう担保していくのか、今回の法改正に、また次の介護保険の改定にかかっていると思いますので、ぜひともこれから審議を進めて頑張ってまいりたいと思います。

 参考人の皆様、大変ありがとうございました。

牧委員長 次に、古屋範子さん。

古屋(範)委員 公明党の古屋範子でございます。

 きょうは、参考人の皆様、国会においでいただき、貴重な御意見をいただきましたこと、心から感謝を申し上げたいと思っております。

 公明党は、昨年の二月に、新・介護公明ビジョンというものを発表いたしました。十二の提案をいたしました。その中で、「二十四時間三百六十五日訪問介護サービスの大幅な拡充で、在宅支援の強化を目指す。」このことを柱の一つとして掲げております。

 改正案の二十四時間対応の定期巡回・随時対応訪問介護看護の創設は、今回、介護保険法改正の中心となるものと思っております。地域包括ケアシステムを実現するために、これはやはり非常に重要な政策であろうと思っております。私どもの提案とこれは相通ずると評価をいたしております。

 高齢者が住みなれた地域で、また安心して老後が暮らせる社会を目指していく。二〇二五年の姿を前提として、二〇一二年の介護保険制度改正では、抜本的な制度設計の見直しが必要となってまいります。

 二十四時間対応の定期巡回・随時対応訪問介護看護に関しましては、先ほど木村参考人、現場からの御意見をいただきました。さまざまな課題があることをお伺いしました。医療と介護の関係性、またエリアの問題もあろうかと思います。非常に遠く離れていて、通うのに非常に時間がかかるというようなところで、実際にこれがどう行われていくのか。また、重度の方は訪問対応してほしいというコールをどういうふうにしていくかなどなど、実際、いろいろ考えますと、プライバシー等の問題ですとか同居家族の問題、現実にこれを行っていこうとすると、いろいろな課題が見えてまいります。

 そこで、この二十四時間対応のサービスを実効性あるものとして、また普及させていく上で何が重要であるか、どうしていけばいいか、それに関して御意見をいただければと思います。

木村参考人 ただいまの質問ですけれども、実際、この二十四時間型のものは、やはり大都市圏の中では非常に活用されるものだと考えております。地方都市では、移動距離で大変な時間ロスといいますか、そういうふうになると思いますので、地方都市の場合は地方都市で、今の訪問介護とか看護をうまく組み合わせて、ケアマネジメントの中できちっとやっていけばいいと考えています。大都市圏で、これだけの、先ほど人数を申し上げましたけれども、介護職員が二十三人程度、看護ができれば三人以上欲しいなというようなことで、ある程度大きな規模で大都市圏はうまく回ると思います。

 私は、このサービスを聞いたときに、前回の改定で、夜間対応型の訪問介護というものを導入した。夜間対応型の訪問介護を導入したんですけれども、これがなかなかうまくいっていない。

 実際、私は、青森市の地域密着型のサービスを指定する委員会に所属しております。昨年の夏過ぎに、一社、青森市内全域をカバーしている夜間対応型の訪問介護の事業所から休止届が出てまいりました。その理由は、利用者がほとんどいない。どうしてなんですかということを審議の中で問いましたら、夜間、赤の他人というか知らない人がかぎを持って入ってくるというのはどうなのか、こういうことが出ているわけであります。

 ただ、私は、これは夜間で担当がそういうふうになっているということであると信じておりまして、今度の場合は、日中からきちんと顔の見える関係で巡回していって、そして担当制とかを当然決めていかなきゃいけないんだと思うんです。それで、この人とこの人が回るし、もし医師の指示書が出ていれば、看護師さんでもこの人とこの人が回るんだよという安心な状態を見せてあげて、そして契約という形、当然その窓口はケアマネジャーがやっていって、そういう信頼関係というか、それをきちっとできる仕組みをつくっていくことが大事なのではないかと考えているところであります。

 以上であります。

古屋(範)委員 ありがとうございました。やはり、顔の見える関係、お互いに一対一の信頼関係を築き上げていく、これがこのサービスを実効性あるものにしていく上で必要である、こういう御意見だったと思います。

 ありがとうございました。

 この二十四時間対応の定期巡回・随時対応訪問介護看護の制度を運用していく上で、もう一つ問題になってくるのが人材の確保であろうと思っております。これは、介護人材が必要であるとともに、看護師の存在が非常に重要であると思っております。

 先ほど、佐藤参考人が最後に触れていらっしゃいましたけれども、看護師百五十万人がいて、訪問看護ステーション、こちらになかなか人材が誘導されていかないというふうにおっしゃっていました。在宅医療の拡充というものは、我が国にとって不可欠であると思っております。私も、半日なんですが、医師と一緒に、了解を得まして、訪問医療の現場を歩かせていただいたことがあります。その主役はやはり看護師さんだというふうに感じました。

 ただでさえ看護師不足が叫ばれている中で、医療と介護が連携をして、訪問看護ステーションの拡充をし、二十四時間対応のサービスを実行していくために、看護師の確保について何が一番必要か、それについてお伺いしたいと思います。

佐藤参考人 訪問看護についての御質問、ありがとうございます。

 私ども訪問看護ステーション、今、全国で五千七百十数カ所あるんですけれども、零細で、いわゆる働きやすい職場環境にはなり得ていないところが非常に多いです。ですから、今度の二十四時間の巡回型のサービスがもしできたとしたら、そこが本当に働きやすい、やりがいを持って働きやすい職場になること、これが非常に重要ではないかと思います。

 その一つとしては、自分たちが主体的に判断して実際のケアが提供できるようなこと。それから、それに対する評価ですね。やはり給与の面でもきっちりと評価してもらって、病院との格差が一カ月数万円のような格差が生じて在宅で働かなくてはいけないような看護職の、そういう処遇の問題をもっともっと改善していただけるような、そういう政策を展開していただきたいと思います。

古屋(範)委員 ありがとうございました。給与も含めて働きやすい環境づくりをしていく、これが喫緊の課題であるということでございました。

 ありがとうございます。

 次に、大森参考人にお伺いをしてまいりたいと思います。

 最後に介護職員の処遇改善について少し言及をされていました。自公政権のときに、介護職員の処遇改善、これは重要課題であるということで、三%の報酬改定、そしてその後は介護職員の処遇改善交付金を積みまして累次の改善を進めてきた途上にあると言えるかと思います。

 今後、介護職員の処遇改善をさらに充実していかなければいけないと考えますが、今後の方向性について御意見があればお伺いしたいと思います。

大森参考人 既に、三%アップとそれから交付金で、各事業所はそこで働く方々の処遇の中に入れ込み始めていまして、ということは、今後も給付金は外づけで続くのか、中に入るのか。既に中に入り始めています。しかし、待っている事業所もありまして、これからどうなるのかと不安げに待っています。

 したがいまして、そのことについてしっかりしたある決定がなされませんと、これは動かないんじゃないかと思うんですね。その点でいいますと、これが多分、今回の財政問題を考えるときに最大問題になるんじゃないか。ここは私どもの一存で決められるのか、政府及び国会の皆さん方がお決めくださるのか、やはりそれの調整問題があるなと見ているんですけれども、そこが一番悩ましいかなと思っています。

 きょうはその程度でございますけれども、よろしゅうございましょうか。

古屋(範)委員 ありがとうございました。これからやはり財源の問題も含めて、これは大きなポイントになってくるだろうというふうに思っております。高齢者が増加をしてくる、また二〇二五年には団塊の世代が七十五を超えてくる、介護人材の確保が急務であるということを考えますと、この点は皆が考えていかなければいけない最重要の課題だろうというふうに思っております。

 ありがとうございました。

 次に、服部参考人にお伺いをしてまいります。

 最後の結論部分で、それでも在宅の介護をあきらめないというふうにおっしゃっていました。自宅プラス地域プラス介護保険、医療の総合的なケアマネジメントを提案していらっしゃいます。

 私たちも昨年十二月、新しい福祉社会ビジョンというのを公明党が取りまとめをいたしました。そのテーマは、支え合いの社会ということでございます。やはり高齢者の住宅政策、これは日本においては非常に貧弱であると言わざるを得ないと思っております。住宅政策を拡充し、そして共助、支え合い、そして地域社会の構築、そこに介護、医療がプラスをして、それぞれの人に合った、そしてそのときに適合した切れ目ないサービスが提供できる、これが理想である。私も先生のおっしゃることに非常に共感を覚えました。

 最初、在宅で介護を利用している方の七一%が要支援から介護二であるという数字を示してくださいました。介護保険の目指しているものは、重度化を予防するということだと思っております。ですので、私も、軽度からの生活援助というのは重要であると考えております。

 今回、軽度者に係る給付の見直しはなされなかったわけなんですが、この課題は先送りとされてしまいました。軽度者に係る給付のあり方、これについてもう一度御意見をいただければと思います。

服部参考人 ありがとうございます。

 軽度者に関しては、例えば二割給付にするとか介護保険から外すというような、一部言われていたことは行われませんけれども、市町村の判断で要支援の方の予防給付を地域支援事業にかえていいということが今回の中に盛り込まれております。これは多分、来年されるところは少ないと思うんですけれども、そういう道が開かれますと、漸次そのような方向になっていくと、本当に必要な給付が受けられるかということに関しては若干疑問があります。

 では、どうしたらば在宅で暮らし続けることができるかということに関しては、やはり介護保険のサービスで生活全体を見ることはあり得ないので、本当に専門職が入るところ、それは医療に関しても看護に関しても、軽度でも看護が入らなければいけない状況もございます。それをトータルで見られるそこのケアマネジャーがどうトータルで見るケアプランをつくることができるか、ないし、それをつくるために他職種とさまざまの連携をする力を持つことができるか、やはりここにかかっているのではないか。

 決して生活援助だけをふやせばいいとか介護サービスを介護保険だけでふやせばいいと私も思っておりません。おっしゃるような意味での地域の支え合いということも、または市町村の独自な支え合いということも含めて、その人一人一人の状況に何が必要かを見きわめていく力と、必要なものをコーディネートすることができる実践力、これがやはり今まだ発展途上じゃないかなというふうに考えております。

古屋(範)委員 服部参考人、ありがとうございました。

 皆様の御意見を参考にしながら、また介護について議論を深めてまいりたいと思います。本当にありがとうございました。

牧委員長 次に、高橋千鶴子さん。

高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 きょうは、五人の参考人の皆さん、貴重な御意見をいただきまして、本当にありがとうございました。

 早速質問に入りたいと思います。

 最初に、佐藤参考人に伺いたいと思うんですけれども、介護職員等によるたんの吸引等の実施のための試行事業ということで詳細な報告をいただきまして、非常に知りたかった情報がいただけたということで、感謝を申し上げたいと思います。

 法律は、介護職員等によるたんの吸引等の実施を可能とするということになっておりまして、たんの吸引については明確に書いているわけですけれども、後は「等」ということで、その後の医療行為については省令で拡大をするということになっているわけであります。

 そうすると、この問題一つをとってもいろいろな課題が見えてきて、もっともっと検証しなければならないと思うんですが、その先についてはチェックどころか省令で拡大できるということに対して、「等」の部分についてどのように思いますか。

 それと、先ほどのあべ委員の質問とも結局重なるのじゃないかなと思うんですけれども、やはりその動機が、看護師不足、あるいは、訪問看護がもっと位置づけられなければならないところを介護で補うという発想ではないかというふうに思いますけれども、御意見をいただきたいと思います。

佐藤参考人 ありがとうございます。

 今私どもが試行事業を行ったのは、喀たん吸引と経管栄養、それは胃瘻。腸瘻はしませんでしたけれども、胃瘻と鼻腔栄養でした。

 ただ、そのときに、やはり必要性は確かにある、今後必要性はあると思うんですけれども、やみくもに拡大するということについては、私はどうしても不安が残りました。

 ですから、今回、喀たん吸引は命にかかわることですから、たんが詰まったら死んでしまう、そういう状況ですからこれはやむを得ないことだと思いますけれども、例えば経管栄養などは、定期的に発生するのであれば、御家族ができることの補いということであれば、それはそんなに問題ではない、私どもの訪問看護師がやってもそれはできるのではないかと思います。

 今後、例えばストマとか褥瘡とかいろいろなことに広がっていくことにつきましては、それぞれに試行事業をしっかりしていただいて安全を確認し、連携のあり方を確保してやっていただきたいと思います。

 それから二番目につきましては、私どもではちょっとお答えできる状況ではないかと思います。済みません。

高橋(千)委員 ありがとうございました。

 今後の拡大について、やはり一つ一つ検証が必要であるということだったかと思います。

 続けて、田原参考人に伺いたいと思うんですが、今の件については、やはり介護労働の側で見ると、もともと介護の労働条件という問題があるのに、さらに負荷が加わって、離職がふえるとかそういう深刻な状況があるのではないかという指摘があったかと思います。

 今の「等」の部分について、もし補足があればお願いしたいと思います。

田原参考人 一言で申し上げると、本当に怖いという、今、法案の中身で出されているものがありますが、中身も広さもどこまでいってしまうのかというところが怖いという一言で、今回の医療行為については、繰り返しになりますが、基本的には業務拡大であり反対なんですけれども、それでもやるというのでしたら、ここまでというのをとにかく決めていただきたい。それで、医師の指示のもとで行うのですから、その団体というふうに申し上げると医師会というふうになるのかもしれませんけれども、医療関係団体がこれならという了解が得られる形の最小限にとどめていただきたいというところです。

高橋(千)委員 ありがとうございました。

 次に、服部参考人に伺いたいと思うんですけれども、七割が在宅であり、七割が軽度者である、そういうデータを踏まえて訴えられたということを非常に重要だと思って聞いておりました。

 そこで、生活援助の重要性についてお話をいただいたと思うんです。私自身もこのことを繰り返し取り上げてきたものでありますから、本当に審議会の中では、単なる家事援助というんですか、非常にこれを低める考え方が盛んにされたのかなと思っておるわけです。やはり、これがむしろもっと大事である、そして、それを外すことが逆に介護にとって重度化につながるですとか、そうしたいろいろな問題があると思うんですけれども、補足いただきたいと思います。

服部参考人 ありがとうございます。

 既に、データとしては生活協同組合等から、生活支援が入ることによってどう維持してきたのかというデータも出されているかなと思います。

 よく言われることは、あなたでも洗濯、掃除をやってもらったら助かるでしょうというようなことが言われるんですけれども、介護サービスを利用されている方、半分以上が八十歳、八十五歳以上なんですね。しかもその方は、何らかの疾患で、御自身が、保険者が介護が必要というふうに認めた方ですので、その手がなければ、食事をまともにする、それから環境を整えることができないという状況の中で、それも含めて必要なケアを受けるということで生活が成り立つ。これは、一般の健康な方が生活が成り立つということではなくて、命とか、生きていくことの基礎ができるんだろうと私は思っています。

 しかも、そのことに関しては、大きなお金が使われているわけではありません。その意味で、全体のケアプランの中にそういうことも含めていくということで、これだけを利用すればいいとは思わないんですけれども、それを医師も看護職も介護職も入ったサービス担当者会議の中で認めて、もしそこが必要だということになれば、そのことについてまで、それだけ取り上げて抑制をするということがあれば、在宅がもっと暮らしにくくなってしまう、結果として重度化につながるというふうに考えております。

高橋(千)委員 大変ありがとうございました。

 そこで、もう一度田原参考人に伺いたいと思うんですけれども、やはり、今回の法案の争点が、軽度者を介護から外してしまう、ヘルパーの仕事の専門性を、ボランティアでもよいではないか、そういうところに行き着くのではないかと思っているんです。やはりそれが専ら財政的理由に支配をされているのかなという問題意識を持っております。

 今の服部参考人に対する質問ともかかわるわけですけれども、そういうことも踏まえながら、介護職の専門性についてさらに補足をしていただきたいと思います。

 それと、いただいた資料の中で、皆さんが出している要望があるんですけれども、その中に四番として、「外出・文化レクリエーション業務に介護報酬を設定して賃金支払いを」という要望がございます。これは、やはり介護の現場では、いろいろな制限、できること、できないことと制限があるんだけれども、そうではなくて、もっと必要なものというのがあるんだという、現場から発した提言ではないのかなと思って伺っていましたので、一言、補足いただければと思います。

田原参考人 軽度者の問題については、私どもも非常に危機感を持っているわけです。ヘルパーの専門性をこれだけ否定された政策はないなと。

 やはり、日常のかかわりの中で、精神状況や身体状況の変化、無論、家族の状況というのは、これはこういう介護関係団体は必ず言うことですけれども、それによって必要なサービスをケアマネジャーや場合によっては保健師のような専門職につなぐ。そういう意味では、サービスのかなめはケアマネジャーかもしれませんが、利用者の隣にいるのはやはり在宅ではホームヘルパーだろうというところで、ここを外してしまったら、暮らしが成り立たなくなってしまって、在宅を進めるといいながらかえって施設利用をふやしていく、こういうことになっていくだろうと思います。

 それともう一点、実は、出していただいた資料の一番後ろに、三十六ページですけれども、「東京二十三区のひとり暮らし高齢者 見守り施策一覧」というのがあります。

 これは、昨年度の、夏の所在不明問題が起こったときに、八月のところで、電話調査による二十三区の各自治体のいわゆる見守り施策、社会福祉協議会等のところで、各自治体に問い合わせたところなんですけれども、この十年間、介護保険が始まってから、介護のことは介護保険でということで各自治体とも大分削減をしていまして、今回の法案では地域支援事業とあわせてこの予防をということですけれども、そういう状況に各自治体がなっていないなということを、ケアマネジャーやホームヘルパーを組織している労働組合としての、これは東京だけの調査ですが、そういう意味でも非常に実感をしています。

 それから、三十二ページに戻って、四項目めのところに「外出・文化レクリエーション業務に介護報酬を設定して賃金払いを(サービス残業の撤廃)」というふうに記載されていますが、これは、いろいろなところで、認知症のケアを中心に、外出や散歩、こういうものが非常に認知症の予防やあるいは介護予防に効果的であるということが科学的にも出されていますが、実は、介護報酬がこの十年間、つけられていないんですね。

 だから、やりたくてもできない、介護報酬がないから人手も不足をしているというところがありますので、今後の報酬改定については、ここの部分も、前回の加算などということではなくて、しっかりと報酬設定をしていただきたいというふうに思っています。

高橋(千)委員 ありがとうございました。

 残りの時間で、大森参考人と木村参考人に同じ質問をしたいと思います。それは、介護予防と日常生活支援総合事業をどう振り分けるのかという問題であります。

 先ほど来、軽度者外しではないかということを言ってきたわけですけれども、実際には、その介護予防の枠というのは、給付の枠というのは前と変わらないわけですので、そこに入ってしまうと、もうあふれちゃうよという自治体の声もございます。しかし、受け皿もどこにでもあるというわけでもありません。

 そこで、もし振り分けをすることによっていろいろな問題が起きたときに、それは全部自治体の責任になっちゃうのかしらということもございます。先ほど、木村参考人からは、ニーズ調査が十分にできていないということもございました。ですから、どういう給付をふやすべきなのか、あるいはそういう支援事業に対してはやはり介護できちっとやるべきなのか、そうしたことも含めて、振り分けについて伺いたいと思います。

大森参考人 介護保険制度を創設したときに、虚弱老人と当時は言っていまして、この方々をどういうふうにするか。当時、ある種のサービスを受けていたものですから、この方々を介護保険のサービスの外に置くのはとても国民の理解が得られないということで、組み込んだわけですね。

 一番悩ましいのは、実は、諸外国ではほとんど、日本のような軽度者を介護保険の制度の中に入れていませんので、そういう国際的な視点の議論も一つございますし、それから、実は、介護保険で行うサービスと社会福祉のサービスは違うものなんですけれども、これがなかなか、現実にはこの区別が難しゅうございます。だから、身の回りのお世話をするということを本当に介護保険でやるべきかどうかというのは、当初からございます。

 しかし、これを今後どうするかということでございますけれども、現在の私の判断は、少なくとも今までは要介護認定制度の中で軽度者についても認定してきましたから、ということは、介護保険の事項が発生しているという認定でこのサービスをやってきましたから、これを直ちに外に置くとか、今回の法律改正で総合事業をやるからこの方々を切り捨てるなんということはありませんので、その御心配は要らないと私は思います。

木村参考人 私も大森参考人がおっしゃったとおりだと思っておりまして、むしろ、私は、これをチャンスに、先生方は御存じだと思いますけれども、介護保険法二条二項には、保険給付の目的が記載されています。介護の状態を悪化させない、またはそういう状態にならないために保険給付されると記載されています。そのために要介護認定という事項としての判定をして予防給付ということがあるわけであります。

 必要なのは、そこはその趣旨にのっとって保険給付しているサービスを使えばいいわけでありまして、配食サービスとか見守り、買い物、これらはほかの制度でやればいいことだと思っておりまして、合わせて一本という形ですね。ですから、総合事業を使いながら、いわゆる本体の自立支援のところの給付のサービスを入れつつ、生活していく上での食事それから買い物、見守り、そういうところを市として総合事業で支えていく形にしていくという考え方でいいんだと思うんですね。

 振り返りますと、老人保健事業があったときに、自主財源がなくて市町村がそのような事業ができないということもあり、介護保険法改正を何回かやってくる中で、財源として総合事業等々に保険料と税を少し入れて今までやってきたということがありますので、私はむしろ、本体、何でも介護保険で見るというものを、今回、総合事業を含めて、本当に地域で暮らすということに持っていくための道筋をつくるための方向性じゃないか。そこに、あくまでも保険者が判断すると記載されておりますし、軽度者切りとは私は考えておりません。

 以上です。

高橋(千)委員 残念ながら時間が来たので終わります。もう一回くらいやりたいと思います。よろしくお願いいたします。

牧委員長 次に、阿部知子さん。

阿部委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。

 本日の参考人の皆様のお話、この法案の審議に当たっても大変参考とさせていただける部分が多いと思います。

 まず冒頭、田原参考人がおっしゃったように、私も、今回の東日本大震災プラス原発事故ということの中で、今この枠組みを決めていくことが本当に妥当なのかどうかというのは、実に大きに疑問であります。

 なぜならば、おとといですか、被災地に、また避難所に行ってまいりましたけれども、避難所を見ておりますと、御高齢者が今震災関連死とか言われる状況になる前段階で大変に弱っていっているのが日に日に、毎週毎週行くごとに目に見えるわけです。もちろん、介護認定は認定作業そのものがおくれておりますし、被災認定すらおくれている中で、しかしながら、時は待ってくれず、御高齢者には年齢がかぶさり、プラス今のような不幸な事態がかぶさっているということを見ると、きょうも話題になっておりました虚弱な方あるいは介護予防と一口に言われている部分を実は国全体として持ち上げていかなきゃいけないし、その一番のモデルは東北地方なんだと思うんです。そこが本当にうまく運べば、どんな厳しいときでも、日本の介護保険と言われる仕組みやあるいは先ほど木村参考人のおっしゃった老人保健事業で取り残してきた部分が私は救い上げられるんじゃないか。

 では、今回の改正がそういうふうな段取りになっているかというと、残念ながらどっちつかず、中途半端かなと思いますので、その私の懸念を払拭していただくべく、参考人の皆さんにはお答えいただきたいと思います。

 まず大森参考人に伺いますが、日常生活支援総合事業、これが今私が申しました高齢期にありがちなさまざまな問題を介護認定以上に実はトータルでどう支えていくかという視点に立ったものであるとは思います。でも、二〇〇六年の介護保険の改正でもございましたが、要支援一、二を分けて、例えば筋トレマシンに乗るとか口腔内清拭をするとか、逆にメニューが限られてきたことによって、要支援一、二の方にとっては、介護保険というものが自分に本当に役立つものかどうかという疑念が生じたのではないかと思います。

 今回の日常生活支援総合事業でございますが、そもそもは、これらは介護保険財源を使うよりも、本来の国の予防保健行政、トータルな健康増進行政として考えられるべきではないか。逆に、限られた介護保険の財源を使っていくことによって、どちらも手薄になってくるように思います。重い方、要介護五でも十分、一〇〇%使っている人はいない。それから、軽い方と言われる方も、本当にこれで健康増進できているかというと、そうではないと思います。もちろん財源トータルの問題はありますが、ここの財源を介護保険に求めるべきかどうかということで一点お伺いいたします。

大森参考人 私が知っている市町村の介護担当でしっかりしている職員の中には、今先生がおっしゃったような御意見がありまして、生活支援事業というのは介護保険の外なんじゃないか、これを組み込んだから問題が起こったのではないか、明白に切り離すべきだという御議論がございまして、結構傾聴に値すると私も考えています。

 その際は、軽度者についての従来の介護保険サービスというのをどうするのか。やはり現場の皆さん方がどういうふうにするのが一番動きやすいか、実際には利用者にとって何が望ましいかという判断でございますけれども。

 私は、将来は今御指摘のような方向性はあり得ると思っているんですけれども、今回はどういう考え方に立っているかというと、従来の包括支援センターの介護予防プランプラス支援事業を全体として組み合わせるようなものが可能ですよということを選択肢をふやす形で仕組んでいることでございますので、今回はこれでいって、将来、もしかしたらそういう方向性がある。それは現場の意見を聞いていくと、そういうことは十分ながらあり得るんじゃないか、仕分けをするということがあり得ると思っていますけれども。

阿部委員 日本が他国にないスピードで高齢化を迎えておりますし、介護保険のところで切り取ることによって逆にその本来のサービスが縮小するということを私は懸念しておりますので、また引き続き御検討のほどよろしくお願い申し上げます。

 佐藤参考人に伺いますが、今回の二十四時間対応のいろいろなサービス、いわゆる二十四時間対応の定期巡回・随時対応サービスの創設ということがございますが、この中で、五千余りの訪問看護ステーション、おっしゃるように経営規模というか運営規模も弱体ですし、逆に、今回の改正は、この訪問看護ステーション、せっかくここまで頑張ってこられたものにとっては、その芽を摘みかねないものになるのではないかと私は正直言って懸念します。

 それで、今回の震災対応で、例えば東北地方だけは一人訪問看護ステーションでもいい、これはある種の規制緩和、そういうことも認めようということが出てくるくらい、訪問看護ステーションというのは、本来もっといろいろな応援をして、やりやすくして、頑張っていただいて、星の数ほどというふうに思うわけですが、このあたりの兼ね合い、訪問看護ステーションを本当にエンパワーしていけるものなのかどうかということについてお考えを伺います。

佐藤参考人 訪問看護ステーションを本当にエンパワーしていけるものかどうかということは私自身も不安を感じているところです。小規模多機能プラス訪問看護もそうですし、今度の二十四時間定時巡回の方も、すべて地域密着型で、しかも包括払いとなりますと、訪問看護ステーションという言葉での今までの活動がどうも陰に隠れてしまうような、そんな懸念を持っております。

 それから、私どものサービスというのは高齢者ケアが中心になっておりますけれども、医療も対応しています。ですから、地域密着で、例えば今上がっています二・五人ではなくて一・七人のような基準で看護を置いて、それで訪問介護看護の巡回をやるということになると、健康保険法等、医療の方の訪問看護は二・五人以上を基準にしないと報酬は支払われないということになっていますので、その辺のところが、介護だけやるような訪問看護になってしまうような、そんな懸念もあります。

 ですから、訪問看護ステーションは訪問看護ステーションとして、しっかり単独型でも規模を大きくして、さまざまな基幹型のステーションにし、予防からリハビリテーションまで行うような、そういう発展形を私は期待しているところです。

 また、介護予防という意味では、以前は訪問指導事業を老人保健法でやっていました。それで、私どもの方では、地域包括支援センターの機能強化ということで、最近、訪問型の介護予防が数が減少しているということから、訪問看護ステーションがその役割を担うことを試行しました。とてもいい結果が出ております。なぜかといいますと、生活習慣病の健康管理、予防にかかわることが訪問看護ステーションではできたからです。

 以上です。

阿部委員 訪問看護ステーションのニーズは、今御指摘のあったように、御高齢期のみならず、いろいろな御病気を抱えて呼吸管理をしている方とか含めて、やはりトータルに非常に重要と私は思います。今回の改正がそうしたものを隠してしまうのでは本末転倒と思いますので、私もなお、これは質疑の中で求めていきたいと思います。

 木村参考人に伺います。

 よくサービス利用者さんに聞くと、ケアマネジャーさんは、自分たちのケアプランのやりやすいプランばかり出してくるんだよねと。これは木村さんだからちょっと平易な言葉で言いますが、そのあたりの、今、介護保険をやってきて十年ですね。本当に利用者本位かどうかというあたりで、では、どうすればケアマネジャーさんたちももっと利用者本位になれるのか。例えば、よく言われるのは、ケアマネジャーさんの事業所からの自立でありますけれども、そのあたりで御意見があればお願いいたします。

木村参考人 今までは、本来は居宅介護支援事業の支援費は事業所に入るという形で当然やってきたわけであります。ところが、議論は個人ケアマネジャーに向けての話であるわけですね。要するに、Aさんがケアプランをつくってどうだこうだという議論がすごくあったと思うんですね。

 私ども、今、やはり事業所としてどういうプランを提案できるかということをもう一回立ち返ってやらなきゃいけないと考えています。

 それは、前回の報酬改定で、主任介護支援専門員が一人、ケアマネジャーが常勤で二人以上いるところに特定事業所加算というものをつけて、一人開業のところから、三人、それから四人、五人、そういう形に持っていったときに、やはり事業所の中で多くのケアマネジャーの目が入って、アセスメントがきちんとできて、いろいろな角度から指摘があって、その御利用者様に対していいケアプランが提案できている、そういう声がかなり上がってきているわけです。

 また、それができないところでも、周辺の、例えば医療サービスを行っている訪問看護事業所とかドクターから指摘いただいたものをきちんと連携をとってやっている、そういうふうなことを今の時点でもっと強化してやっていくと、何かというと、個人でつくったケアプランではなくてチームでつくったケアプランということで提案して、利用者さんに御理解していただく。その中で経済的負担とかは当然考慮をしていくという形になると思いますので、そういうことが非常に大事だと思います。

阿部委員 ありがとうございます。時間が短くてごめんなさい。

 服部参考人に伺いますが、今度、いわゆる月の包括単価、マルメになることによって、先ほどサービスの低下が起こるのではないかという御指摘がありました。私も、これは非常に、さっきの定期巡回・随時対応型訪問介護看護というややこしいものの一番の問題なんだと思うんですが、これが入った場合に、例えば今までの通所介護、デイサービスに行くとか、あるいは訪問介護、これらがトータルのマルメ管理の中で抑制されてしまったら本末転倒、利用者にとっては、逆に、在宅で家にじっとしている、待つしかないとなってくると思いますが、このあたりについてお願いいたします。

服部参考人 基本的には、介護保険で支えるということにお金を使うことが誤りだというふうになってしまうと、本当に限られたものしか行かないだろう。そのことを支えることによって、例えば医療費に関してもほかの費用に関してもトータルで見られるのではないかというふうに思います。

 今回、包括単価が入ったときに、その単価の枠内でしかサービスが提供されません。今までだったら、深夜だったら幾らとか、時間が何分なら幾らとか、重度の人にこう対応すれば幾らとかというふうについていたものもつかないです。そうすると、その単価の中で、必要性がもっと高まっても、介護度別の単価は固定になってしまえば、必要があっても、その限度の枠内、限度というのは、介護度別限度額の中にさらにもう一つ限度ができますので、その枠内でしか結果として提供できない。または、そのことは、予防訪問介護とか予防通所介護でもう全国で明らかになっています。

 ですから、結果として、サービスが必要なものが提供されなければ、劣悪になるか、ないしは自己負担をしなければいけない。お金があれば自己負担できるけれども、そうでなければ受けられないということ。それから、限度額をさらにぎりぎりまで上げれば、結果として他のサービスが入らないということで、これも問題であるというふうに思います。

 あと、最後に一つですけれども、包括単価はケアマネジメントも形骸化させます。今まで、介護度で、これを利用すれば幾らとなっていましたら、ケアマネジャーが給付管理をするとか、こういう意味も全く配慮されないということで、非常に危険だと私は思っております。

阿部委員 まだまだお聞きしたいですが、時間の制約で田原参考人には伺えませんでした。でも、とてもいい御指摘をいただきました。ありがとうございます。

 終わらせていただきます。

牧委員長 次に、柿澤未途君。

柿澤委員 みんなの党の柿澤未途でございます。

 きょうは、五人の参考人の皆さん、大変貴重なお話をありがとうございました。

 今回の介護保険法改正に当たって、先般、質疑でも取り上げさせていただきましたけれども、二十四時間対応型の定期巡回・随時型サービスというのが導入をされるんですけれども、これまで二〇〇六年の介護保険法改正から行われてきた夜間型のサービスがどの程度利用されてどういう成果が上がったのかということを総括なしに、二十四時間型をやれば今度は成功するんだ、こういうことで本当に実効が上がるのか、この点を私は大変危惧いたしております。

 質疑でも取り上げさせていただいたんですけれども、福岡県の大牟田市で、〇六年から国の補助をもらって、九千万使ってテレビ電話を三百台入れて、それで夜間型の対応型サービスをやった、これまで五年間で利用がたった三件だった、こういう話があるぐらいですから、本当にこれを、夜間限定だと昼間はほかの人に頼まなきゃいけないから、二十四時間、一気通貫でお願いをすればこれはニーズが出てくるんですよ、こういうふうに厚生労働省は説明をしているわけですけれども、本当にそういうふうになるのかどうか。

 そういう意味では、はっきり言えば、二十四時間型の定期巡回型のサービスにこの日本の社会においてはっきりとしたニーズがあるのかということは、現時点では実証されていないというふうに私は思います。もちろん、地域包括ケアの考え方はいい、これは私も同意をいたします。考え方はいい。考え方はいいと言うけれども、しかし、どんなによい器でも、中身が空っぽでは仕方がないわけです。理念がいいからということでこれは正当化をされないというふうに思います。

 そういう点で、この地域包括ケアの考え方そのものを社会保障審議会等でつくるに当たっての議論に参加をされてこられた大森参考人と、また、この地域包括ケアの考え方についていろいろな御意見をきょう聞かせていただきました服部参考人に、この点について、このやり方で実効が上がるのかという点でどのようにお考えになるか、御意見をお伺いしたいと思います。

大森参考人 いつも言われていまして、考えながら、走りながら、また考えるということでありまして。

 一つは、きょう強調しましたように、やはり在宅サービスは非常に不十分でして、私は施設ケアも重要だと思っているんですけれども、見ていますと、在宅サービスが使い勝手が悪くてニーズに応じられないために施設に流れていくというこの構造をどこかで転換すべきではないかと考えます。そのために今回新しいサービスを導入しているわけで。

 御指摘は、うまくいくのかどうかと。一応は、モデル事業で走らせていると同時に、この構想を考えたときに、既に民間の方でこういう形でやっているところのケースなども勉強しています。その場合はどういうふうに人の配置が必要か、どういうニーズならば応じられるかという一応の下準備をしながらこの制度設計をしてございますので、多分、数年先に、三年先に、今先生御指摘のように、本当に実効性が上がったかどうかということについて御指摘があるかもしれませんけれども、少なくとも、これに乗り出すときに、これならば在宅サービスが確保できるという確信なしにこれに乗り出せるということはないと私は考えていますので、必ずや実現してみせたいというふうにお答えいたしたい。若干私の希望も入っていますけれども、そんなふうに考えています。

服部参考人 ありがとうございます。私も危惧をしております。

 まず、前提として、今までの夜間訪問介護は、お昼は全然違う事業所が入っているということは普通ないです。それは認識として間違いです。ケアマネジャーさんはお昼の事業所さんと夜もやっている事業所、夜やっているところはお昼もやっていますので、ほとんどやっています、それは。ですから、別な人が入っているという実態ではありません。

 私も自分のケアプランに夜間訪問介護を入れたことがあります。何が起きたかというと、限度額をオーバーするんです。夜間必要な人は、月曜日だけ必要とか水曜日だけ必要なことはなくて、月曜日から金曜日まで、家族がいないときに必要だというのが実質なんです。そうすると、限度額を、一日包括単価ですから、その二十何日を使うと限度額をオーバーしてしまって、利用者さんの負担があっぷあっぷになってしまうということ、これが実態だと私は思います。

 したがって、二百カ所ぐらいしか全国にいっていないので、その検証が、先ほど言われたような、お昼と同じ人が行かないからというのは全く実態と違うというふうに思っております。

 では、何が問題かというと、やはり報酬だと私は思うんです。夜間必要な人がいないかというと、います。量的にはそれほど多くはないかもしれません。でも、夜間必要な方もおられます。今、夜間入ると、やはり四割アップ、五割アップしてしまうので、結果として、報酬との関係において限度額をオーバーしたり自己負担がふえてしまうというのが実態です。そういう意味においてショートステイがどんどん利用されるというのが現実的な問題です。

 ですから、ある意味では、夜間必要な状況の人に介護度六をしていくとか何らかの形で対応していかないと、在宅で暮らし続けるということは難しくなってしまうんではないか。

 そういう意味において、二十四時間型がサービスとして悪いサービスだと私は思わないですけれども、今やっているのは、本当に人材も豊富だし、一日に四回も行けますとかとデータを出していますけれども、現実に報酬が出たらそうはいかないだろう、その中でも本当に在宅が支えられるかというと、単価との関係で非常に難しくなるというか、実質足りなくなるのではないかということを現場の声からすると危惧をしております。

柿澤委員 今、大森先生とまた服部先生から両論を聞いたような形になりました。服部先生の方は、御自分も実際にサービスにかかわられている立場から、この夜間対応、二十四時間対応をやると、これはもう大変な、お金がかさむというか、利用者の負担が大きくなる、そこで、やはり報酬の部分についてもっと同時並行で手当てをしないと、なかなかこれは、どこかを切らなければいけなくなるという実態的なお話をいただきました。大森先生の方は、これでやってみて、そして成功を期してこれから走り始めるわけだから、こういうお話でありました。

 これまでやってみて、実際にいろんなひずみや問題点が生まれて、実は介護保険制度全体に対する信頼感を低めてきたこともあるんではないかというふうに思うんです。もちろん、すべてが計画どおりにいくはずがない。それは当然のことでありますけれども、例えば大森先生がいみじくもこの介護保険制度の根幹にかかわる問題としておっしゃられた要介護認定の問題。要介護認定が公平でまた客観的な基準に基づいて適切に判定結果が出る、こういうことであることが介護保険制度のやはり根幹だと思いますけれども、要介護認定でいえば、二〇〇九年の一次判定ソフトの問題で、今までとは全然違う軽度の判定が出てしまって、認定調査のルールを再改定、再々改定、再々々改定して、さらにソフトもつくりかえる、こういう混乱があったわけです。

 こういう形で、残念ながら、今までの要介護認定の調査と認定のやり方そのものが要介護認定というシステムそのものに対する信頼性を低めてきた嫌いがあるというふうに思いますが、これは大森参考人と、先ほど来、私の話を何かうなずいてずっと聞いていただいていますので木村参考人に、もしよかったらお話を伺いたいと思います。

大森参考人 要介護認定にちょっと手をかけたときにいろんなことが起こりまして、一つは厚労省の失態でございました。それを反省して、修正をして、その後はばらつきがほとんどなくなっていますので、したがって、現在動いている要介護認定制度は正常に機能していると思います。

 したがって、そこから学ぶべき教訓は、仮に根幹的な制度の一部でも、手をかけるときには十分調査をし、意見を聞いた上で慎重にやるべきである。その教訓は私ども、得ていますので、二度と再びああいうことはないというふうに思っています。

木村参考人 その問題が出た後、検討会の委員をやっておりました。あのときの状況というのは、テキストの変更それから調査員の教育、その辺の周知の期間が全く足りなかったと思います。ですから、要介護認定は揺らがないものにしなければいけないと思っておりますし、それを変更するときには十分な時間をかけて周知しながら変更していく、そういうことが必要だと感じました。

 今の状況は前の前の状況とほとんど変わらない状況に数字が出ておりますので、大丈夫だと思います。

 以上です。

柿澤委員 走りながら考えるということがもたらすひずみの一つの例だということで取り上げさせていただいたところです。

 今回の二十四時間対応型の巡回サービスについては、これはケアマネさんと事業所の共同マネジメントだというんですけれども、このままだとケアマネジャーの出番が限りなく少なくなるのではないか、こういうふうにも懸念をされているわけです。

 二十四時間サービスは、居宅介護支援事業と違って、ケアマネさんとは別の継続的なアセスメントやモニタリングの担い手として看護職員が想定をされています。看護職員にある種、全体のマネジメントの主導的な役割を与えた形になっていると思います。しかし、先ほど来取り上げられているとおり、事業モデルのシミュレーションとしては、介護職員二十二・八人に対して看護職員一・七人ということで、これはできるのかという懸念があると思います。

 一方で、こうした形になったということについては、やはり今までのケアマネジャーのつくったケアプランで例えば医療系のサービスの利用率が非常に低いとか、こういうこれまでのケアマネジャー中心のケアプランのあり方に対するさまざまな反省というか、そうした検証の結果にも基づいているのかなというふうにも推察をいたします。

 そういう点で、まず、この人員基準で看護の方々が継続的なアセスメントやマネジメントの役割を訪問看護をやりながら担っていくことができるのかということは佐藤参考人に。そして、ケアマネジャーのケアプランのあり方がこれまでいろいろと、医療系のサービスの少なさなどが問題になってきた、こういう点でこうした形がつくられたと思いますけれども、この点についての御意見を木村参考人にお尋ねをさせていただきたいと思います。

佐藤参考人 訪問看護師として活動する、それは一・七で活動するということと、それから包括的なマネジメントといいますかオペレーター的な役割を訪問看護師が担うという、この二つが両立できるかということなんですが、それは大変厳しい状況になるのではないかなと懸念しています。

 ただ、看護師の場合には全人的に総合的に医療から福祉まで判断できるような基礎教育を持っていますので、そういう人たちがそこにかかわって包括的なマネジメントをしながら振り分けをするということは非常に大事な役割ではないかと思います。

 以上です。

木村参考人 今まで介護保険部会等でも指摘がされた、今ケアマネジメントの中で医療ニーズを酌み取っていないのではないかという指摘があったわけでありますが、当協会が昨年度に調査をやりました。

 結論として、きちんと医師または看護師らと連携をとって、そのアセスメントに基づいた中で御指摘いただいてやっていくと大丈夫ということでありました。基礎資格でも御指摘いただいたんですが、私どもの調査では、今現場では介護福祉士基礎資格の方が五割を超えているという話で、だから医療ニーズが酌めないんだという話が出ていたわけでありますが、その調査結果ではそのようにはなっていません。要するに、利用者さんを見て、医療が必要だということを複数以上の人たちできちんとアセスメントしていったものには、きちんとサービスは入っているわけですね。ですから、元資格が福祉職、介護職だからだめだではないということだけは話をしたいことと、そのことと今回のことは私は結びついていないと信じております。

柿澤委員 考え方はいいんだと思います。看護の皆さんも入って、総合的なアセスメントをやって、その人に合ったサービスを提供する。まさに地域包括ケアの考え方そのもので、考え方はいい。考え方はいいけれども、実際に利用者のためになるようなサービスになっていくのかというところがこれからの検証を待つことなんだと思います。

 そういう意味で、きょうはいろいろな角度からの御意見をお伺いさせていただいて、審議の今後の参考になると思います。本当にありがとうございました。

牧委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。

 参考人の方々には、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。(拍手)

 次回は、明二十五日水曜日委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時四十一分散会


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