衆議院

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第16号 平成23年5月27日(金曜日)

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平成二十三年五月二十七日(金曜日)

    午前十時開議

 出席委員

   委員長 牧  義夫君

   理事 郡  和子君 理事 中根 康浩君

   理事 藤田 一枝君 理事 柚木 道義君

   理事 渡辺  周君 理事 加藤 勝信君

   理事 田村 憲久君 理事 古屋 範子君

      青木  愛君    網屋 信介君

      石毛えい子君    石森 久嗣君

      稲富 修二君    大西 健介君

      大西 孝典君    岡本 充功君

      工藤 仁美君    小宮山洋子君

      斉藤  進君    田中美絵子君

      竹田 光明君    玉木 朝子君

      中後  淳君    中屋 大介君

      長尾  敬君    仁木 博文君

      初鹿 明博君    樋口 俊一君

      平山 泰朗君    福田衣里子君

      皆吉 稲生君    宮崎 岳志君

      山崎 摩耶君    吉田 統彦君

      渡辺 義彦君    あべ 俊子君

      鴨下 一郎君    菅原 一秀君

      棚橋 泰文君    谷畑  孝君

      永岡 桂子君    長勢 甚遠君

      松浪 健太君    松本  純君

      坂口  力君    赤嶺 政賢君

      阿部 知子君    柿澤 未途君

    …………………………………

   厚生労働大臣       細川 律夫君

   厚生労働副大臣      小宮山洋子君

   厚生労働副大臣      大塚 耕平君

   文部科学大臣政務官    笠  浩史君

   厚生労働大臣政務官    岡本 充功君

   政府参考人

   (厚生労働省雇用均等・児童家庭局長)       高井 康行君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局長)           清水美智夫君

   政府参考人

   (厚生労働省老健局長)  宮島 俊彦君

   厚生労働委員会専門員   佐藤  治君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月二十七日

 辞任         補欠選任

  工藤 仁美君     中屋 大介君

  樋口 俊一君     大西 孝典君

  三宅 雪子君     渡辺 義彦君

  山口 和之君     皆吉 稲生君

  西村 康稔君     永岡 桂子君

  高橋千鶴子君     赤嶺 政賢君

  江田 憲司君     柿澤 未途君

同日

 辞任         補欠選任

  大西 孝典君     樋口 俊一君

  中屋 大介君     工藤 仁美君

  皆吉 稲生君     網屋 信介君

  渡辺 義彦君     中後  淳君

  永岡 桂子君     西村 康稔君

  赤嶺 政賢君     高橋千鶴子君

  柿澤 未途君     江田 憲司君

同日

 辞任         補欠選任

  網屋 信介君     山口 和之君

  中後  淳君     三宅 雪子君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 介護サービスの基盤強化のための介護保険法等の一部を改正する法律案(内閣提出第五〇号)


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     ――――◇―――――

牧委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、介護サービスの基盤強化のための介護保険法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として厚生労働省雇用均等・児童家庭局長高井康行君、社会・援護局長清水美智夫君、老健局長宮島俊彦君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

牧委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

牧委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。樋口俊一君。

樋口委員 おはようございます。

 介護保険法の質疑に入る前に、一点だけちょっと、本年の五月末に経過措置の期限が来ます一般用医薬品のインターネット販売について質問をさせていただきます。

 二〇〇九年の六月一日に改正薬事法が施行されまして、二年間の経過措置ということで、インターネットについては三類のみ販売できるという厚生労働省の通達が出ました。その期限がこの五月三十一日に切れるわけでございます。その後の厚生労働省のお考えについて、まずお聞かせいただければと思います。

岡本大臣政務官 おはようございます。

 今、樋口委員から御指摘がありましたように、一般用医薬品のうち第二類医薬品等につきましては、離島居住者及び継続使用者に限り、本年の五月末までの間、郵便等販売を行うことができるとした経過措置を設けているところでございます。

 今回、平成二十二年十月から十一月の利用状況を調査したところ、相当数の方が経過措置に基づき郵便等販売を利用していることがわかりましたことをもって、本日、経過措置を平成二十五年五月三十一日まで二年間延長したところでございます。

樋口委員 引き続き同じ措置を二年間続けられるということでございます。この二年間は何だったのかなという気はいたしますけれども、ぜひ、この二年間かけてでも、しっかりとインターネット問題についての厚生労働省の考え方をお示しいただきたいというふうに思います。

 実は、私の地元大阪の先週五月二十一日の読売新聞大阪版に、インターネットの通販業者が違法行為を行っている、こういう記事が載っておりました。インターネットでは、先ほど岡本政務官から御答弁がございましたように、三類だけでございますが、いわゆる医療用医薬品からスイッチした一類もこの業者さんが売っていたということでございます。なおかつ、大阪府も再三にわたる業務改善命令を出しておられたんですが、それにも従わなかった。大阪府警の方へも薬事法違反容疑で告発をしました。なおかつ、きょうも、私、ホームページを開いたら、まだこういうふうな形で販売をしているんですね。

 この件について、厚生労働省のお考えをちょっとお聞かせいただけますでしょうか。

岡本大臣政務官 御指摘の事案につきましては、大阪府によりますと、大阪府内のこの薬局、インターネットで第一類の医薬品等の注文を受け付け、薬剤師による対面での情報提供を行うことなく、そして郵便等で注文者に送付している事例でありまして、薬事法に違反する行為だと考えております。

 当該薬局に対しましては、大阪府が二度業務改善命令を出すとともに、それでも改善が見られないため、今御指摘のとおり、大阪府警に告発を行いましたが、現在も依然として改善をされていないとのことでありまして、大変遺憾に考えております。購入者の方々にとりましても、医薬品が適正に使用されていない状態が続いているおそれがありまして、これも保健衛生上問題だというふうに考えております。

 厚生労働省といたしましては、これまでも大阪府に対しまして、本件の違法性の判断について相談に応じるなど協力を行ってまいりましたが、今後とも、必要な協力をしつつ、しっかりと連携をして対応してまいりたいと考えております。

樋口委員 岡本政務官から、力強い御指導をいただくということでございましたが、先般の三月六日、行政刷新会議の規制仕分け、これを私も傍聴させていただきました。そのとき、行政刷新側の関係の方々から、インターネット業者は非常にコンプライアンスをきちっと守っている、こういう発言があったわけでございます。しかし、実態としてはこういう形で違法行為を行っているわけでございますから、これは非常に問題であるということ。

 それから、インターネットというのは、たまたまこれは大阪府がきちっと行政指導をなさっておられますけれども、購入するのは北は北海道から南は沖縄まであるわけでございますので、これはやはりしっかりと厚生労働省、ちょっと事前通告はしておりませんけれども、インターネット業者に対してもそうなんですけれども、いわゆるプロバイダーに、何らかの形でこれを削除する、そういう指導ができないのかどうか、この辺ちょっと御回答いただけますでしょうか。

岡本大臣政務官 御指摘のとおり、プロバイダーに対して削除要請を行うというのも一つの考え方だと思います。現時点では削除要請は行っておりませんけれども、今後、この薬局の許可権者であります大阪府と連携をしつつ、プロバイダーに対して協力の要請を行っていきたいというふうには考えております。

樋口委員 店頭ではしっかりと薬事法に従った形でお薬の販売をしております。実は、このホームページを見ますと、売れ筋ランキング二位にエスエスブロン液を十個までと。なぜ十個までなのかというと、これは乱用を奨励しているような形なんですね。こういう悪質な業者には、ぜひ厚生労働省としてもしっかりと行政指導をしていただくようにお願いをしておきたいというふうに思います。

 それでは、介護保険法に関連する質問をさせていただきます。

 きょうは笠文部科学政務官お見えになっておられますので、まず最初に政務官への御質問をさせていただきます。

 今般、東日本大震災が、大きな震災が起きました。国の方もいろいろな対応をされているやに思います。その中で、これからの介護を担う人材、まさに菅総理も、介護あるいは医療というものがきちっとした産業として成り立っていく、成長産業という位置づけをしておられるわけでありまして、他の製造業と違って、やはり人材というのが大変重要な位置づけになってくるわけでございます。

 そこで、被災をされている専門学校生、東北地域にも介護に関連する専門学校は多くあると思います。そこで被災された生徒さんたちは、授業料も払えないというふうな状況になってきておられる方もいるわけでございまして、この人たちに引き続いて勉強していただくというために、授業料の免除だとかあるいはその他の助成等々、文部科学省の方で何かお考えがあるのかどうか、ちょっとお聞かせいただければと思います。

笠大臣政務官 ただいま樋口委員の方から御指摘ありましたように、専修学校、専門学校、この授業料のしっかりとした減免が何とかできないかということで、私ども今検討しているところでございます。

 これまで、一次補正において、無利子奨学金の拡充あるいは奨学金の返還のいろいろな条件を緩めていく、そういったことはもう既に措置をしているところですけれども、何とか専修学校に学ぶ学生の皆様方の授業料をしっかりと支援していけるように、前向きに検討してまいりたいというふうに思っております。

樋口委員 無利子の奨学金というお話がございました。奨学金といいますと、やはりまたお返しをしなきゃならないということでございまして、その前提には、やはり職業につかなきゃならないということもございます。そういった中で、そういう職場の確保という問題もあるわけでございますから、この短期間の中でのそういった先ほど私が申し上げたような措置をぜひとも御検討いただければありがたいなというふうに思っておりますので、よろしくお願いしたいと思います。

 笠文部科学政務官には、大変お忙しいところお越しいただいております。今終わりましたので、どうぞお帰りくださいませ。

 さて、今回の介護保険法の一つに、介護予防という観点がございます。日常生活支援総合事業という切り口でございますけれども、この日常生活支援総合事業に対して市町村の地域包括支援センターの方で採択するわけでございますけれども、いわゆる要支援認定者のお考えといいますか、今までの支給の部分とこの事業の部分の選択を地域包括センターの方でされるわけでございますが、いわゆる受ける側の要支援資格者、認定者の意思というものがどういう段階で反映されているのか、この辺の仕組み、あるいは運用面での御説明をいただければと思っております。

岡本大臣政務官 御指摘の介護予防・日常生活支援総合事業におきましては、地域の実情に応じて、多様なマンパワーや社会資源の活用等を図りながら、要支援者等に対して介護予防や配食、見守り等の生活支援サービスなどを総合的に提供する、こういった事業でございます。

 この事業の対象者につきましては、市町村、地域包括支援センターにおいて決定をするわけでありますが、その際には、本人の御意向を十分に尊重しつつ、利用者の状態像をしっかり把握して適切なケアマネジメントに基づいて判断されるもの、このように考えております。

樋口委員 ぜひその適切な判断というものを、できる限り要支援者の考えが反映するようにお願いをしておきたいというふうに思います。

 次に、ケアマネジャーの問題に入らせていただきます。

 先般、二十四日の参考人質疑で、日本介護支援専門員協会の木村隆次会長さんもおっしゃっておられましたけれども、いわゆる任用資格から国家資格へお願いをしたい、こういう御依頼がございました。

 国家資格となりますと、さまざまなハードルがあるやに思います。身分法という形の何らかの法律をつくる必要があるのではないか、あるいは実務実習を含む、大学の教育課程と同じようなさまざまな教育を受けていただかなきゃならないとかいうふうな一定のさまざまなハードルを設け、整備をしていかなきゃならないというふうに思うわけでございますが、このケアマネジャーの国家資格についてどのようにお考えか、お聞かせいただけますでしょうか。

宮島政府参考人 ケアマネジャーの国家資格化についてのお尋ねでございます。

 ケアマネジャー、これは要介護者の方に適切な介護サービスが提供されるように支援するということで、その役割というのは非常に重要なものであるというふうに思っております。

 昨年十一月の社会保障審議会介護保険部会の意見書で、より良質で効果的なケアマネジメントができるよう、ケアマネジャーの資格のあり方、研修カリキュラムの見直し等の課題について別途検討の場を設けて議論を進めるよう指摘されたところでございます。

 こうした議論も踏まえ、まずケアマネジャーの今の実態把握ということを進めておりまして、利用者の状態像、ケアプランの内容、事業所の状況、三つの視点から今調査を行っております。そして、この調査の結果を分析、検証しながら、ケアマネジャーの研修、養成のあり方について具体的な検討をしてまいりたいと考えておるところでございます。

樋口委員 今、宮島局長から、御検討いただいているということでございますので、ぜひ前向きにお考えいただければと思いますが、ケアマネジャーだけでなく、いろいろな医療関係も含めさまざまな専門職の方々がふえておりますので、そういった社会的位置づけをどう担保していくかということも踏まえた中での御検討をぜひよろしくお願いしたいと思います。

 次に、たんの吸引行為についてお伺いをさせていただきます。

 今回の介護保険法改正におきましては、これまで長い間、医療法の解釈と運用の現場の実態が即していない、こういう指摘がありまして、このたび、医師、看護師以外の介護福祉士、あるいは介護職員の一定の基準を満たした方たちへのたんの吸引というものが認められたわけでございますけれども、このたんの吸引という医療法に定める医療行為を介護専門職の方たちに認める論拠について御説明いただけますでしょうか。

細川国務大臣 介護職員などによりますたんの吸引等につきましては、これまでは、介護の現場におきまして、実質的には違法性が阻却されるという解釈のもとで運用がなされてまいりました。このことにつきましては、安全性の担保とか、あるいはそういうことでは不安定ではないか、こういうことが指摘をされてまいりました。

 そのため、これまで検討会を設置して検討してまいりました。これは、介護職員等によるたんの吸引等の実施のための制度の在り方に関する検討会を設置いたしまして、ここで、医療関係者、介護関係者、あるいはサービスの利用者、学識経験者、こういう皆さんで議論を進めていただいた、こういう経過でございます。

 今回の法案では、この検討会の議論を踏まえまして、たんの吸引等に関する講義や実務についての教育、そしてまた研修を受けました介護職員等が、医師それから看護師等と連携体制等の安全確保措置を講じた事業所でたんの吸引等を行うことを可能とする、こういうことにした次第でございます。

樋口委員 今までの経緯については理解をしたわけでございますけれども、これから、例えば看護師の方々がナースプラクティショナー、特定看護師という資格、医療行為の職を広げていこうという動き、あるいは、私も、一昨年の新型インフルエンザがはやったときに、実はアメリカに視察に行かせていただいたことがあったんですが、アメリカではドラッグストアで薬剤師が予防接種をしている。こういうことで、今の日本の医療の医師不足、偏在といったものをいろいろな医療人がカバーしていく、こういう動きをぜひしていかなきゃならない。

 こういった意味でも、今回の介護福祉士のたんの吸引という医行為を認めていただいたというのは一歩前進かと思いますが、いろいろな形でのそういった展開についてもぜひ御検討いただければというふうに思っております。

 さて、もう時間が来ましたので、最後に、また東日本大震災のことに関連して質問をさせていただきます。

 私も何回か被災地を訪問させていただきました。宮城県の亘理町の亘理中学校の避難所を訪問させていただいたときに、避難をされておられる被災者の方といろいろなお話をさせていただきました。被災後のなかなか大変な時期だったこと等もあるんでしょうけれども、県や市町村にいろいろと相談をしても全く受け付けてくれないと。確かに、県や各市町村も、役場の方たちが被災をされているということで、十分な対応ができていないということも一方ではあるかもわかりません。

 そういった中で、今回、被災者に対しての特例免除措置というものが認められました。介護保険サービスの利用負担、あるいは医療費の一部負担というものが認められています。しかし、この免除措置というのが徹底されていないんですね。あるのに使い切れていないという部分があります。先ほど申し上げましたように、自治体のそういう機能が非常に落ちている状況でもありますので、ぜひ厚労省として何らかのバックアップというものが必要ではないかというふうに実感をしてまいりましたので、その点についての御答弁をいただければと思います。

岡本大臣政務官 委員御指摘のとおり、さまざま通知を出してまいりましたけれども、必ずしも市町村に十分伝わっていなかった、こういう御指摘を受けているところでありまして、これまで発出した通知を取りまとめてお示しをしたり、また、パンフレットを作成してわかりやすくお示しをさせていただくなど対応をとっていく、引き続き周知の徹底に努めていく、こういう姿勢で臨みたいと考えております。

樋口委員 ぜひよろしくお願いします。

 時間が来ましたので、終わります。ありがとうございました。

牧委員長 次に、田中美絵子さん。

田中(美)委員 おはようございます。民主党の田中美絵子でございます。本日は、質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 まず冒頭に、東日本大震災でお亡くなりになられました皆様方に心からお悔やみを申し上げますとともに、被災されました方々に対しまして心からお見舞いを申し上げる次第でございます。

 それでは早速ですが、質問に入らせていただきます。

 まず、この震災に関しまして、親族里親制度についてお尋ねをいたします。

 五月二十五日の毎日新聞の報道によりますと、今回の震災で両親を失った十八歳未満の子供は百五十五人ですが、親族里親制度については、正式な申請は三件にとどまり、認定に至ったのは二十三日に決定した岩手県の二件のみと伺っております。このように親族里親制度の活用が進まない原因といたしまして、提出書類をそろえて面談する手続への負担感もあるかもしれないとの指摘もございます。また、現在、この制度の利用を考える方は、親族自身が被災して、生活再建の見通しが立たない方が多いのではないかと思います。

 このような現状を踏まえまして、親族里親制度の活用を促すような厚労省の取り組みについて御説明願います。

高井政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の親族里親の関係でございますけれども、今回の震災で両親を亡くした子供につきましては、児童相談所が調査、把握に努めております。把握した際には、児童相談所から親族に対しまして、親族里親制度等について説明をしてきているところでございます。また、厚生労働省といたしましても、親族里親につきまして生活支援ニュースに掲載して、避難所で掲示、配布する等によって周知をしているという状況でございます。また、自治体におきましても、独自にパンフレットをつくったり、広報誌を配布して周知をするというようなことを進めているというところでございます。

 御指摘の、申請数が少ない理由でございますけれども、自治体からお聞きしておりますところでは、幾つか理由がありまして、まだ親族の生活が落ちついていないとか、だれが養育するか、話し合いがこれからというような状況、あるいは里親として金銭を受給することにちゅうちょする人がいるというようなことが挙げられているところでございます。

 申請手続につきましては、できる限り負担が軽減されますように、児童相談所の職員が訪問して提出する書類について説明して、後日、郵送で提出できるようにするということでありますとか、児童相談所だけではなくて市の窓口でも受け付けるというようなことで軽減を図っているところでございます。

 今後とも、この制度の活用を図っていくように周知に努めてまいりたいと思っております。

田中(美)委員 ありがとうございます。

 現在、各県や各市町村において、震災孤児に対しましてさまざまな支援をされていることと思います。国としても可能な限りの努力をされていることと思いますが、今後も長期的、継続的な視点に立った支援に取り組まれますことを御期待申し上げます。

 次に、義援金に関して質問をさせていただきます。

 国内外から寄せられている義援金は既に二千億以上と大変な額に上っておりますが、その義援金がなかなか被災者のお手元に届かないとのお話を耳にしております。なぜ被災者への配分に時間がかかっているかということに関して御説明をお願いします。

清水政府参考人 義援金の配分についてのお尋ねでございます。

 今回の震災、大変被害が大きかったわけでございまして、被害も多数の都道県にわたっております。その間の配分ルールがなかったということが一つ、発災当初におきまして日赤等の義援金受け付け団体から県レベルへの送金がおくれたということがございます。

 もう一つ、被害の全容がまだ確定してございません。まだ罹災証明の発行手続等が進行中という状況がございます。

 それから三つ目でございますが、配分事務を行います市町村も被災しておって行政機能が低下している、このような事情から、義援金が被災者のお手元に届くのに時間がかかっているというふうに私どもは見ておるわけでございます。

 もちろん市町村におきましても、速やかに被災された方々に義援金が届くようにいろいろとお考えいただいていると思っておりますけれども、私どもとしても、自治体にお願いしてございます。例えばでございますが、その市町村におきます被害全容の判明を待つことなく、被害がわかった一部の方からでも配付していただきたいといったようなお願いをしているところでございます。

 また、大臣からの御指示がございまして、やはり市町村のそういう実態をしっかり把握すべきであるということでございましたので、それを受けまして、私どもの本省の職員と地方自治関係の総務省の本省の職員とがペアになりまして現地入りすることにしてございまして、本日は岩手県、それから三十日月曜日には宮城県に伺って、いろいろと支給事務の実態把握をして、必要であれば他自治体からの応援を求めるといったようなことも検討していくということにしてございます。

 今後とも、私どもとしましても、必要な側面支援をしっかりとやってまいりたいと考えてございます。

田中(美)委員 ありがとうございます。

 私は、義援金の配分に時間がかかったのは、一度に幾つもの県が被災する大規模災害が想定外で、義援金をどう配分するか決められずに時間を費やしたことが最大の原因であると思っております。

 そこで、今後へ向けた話でございますけれども、今回のような広域災害が発生した場合、今回、厚労省の支援で開いた義援金配分割合決定委員会のように、関係各県を一度に集めて配分を決める仕組みと、国として支援に当たる事務局とをあらかじめきっちりと制度化しておくことが、大規模災害時に迅速に義援金の配分を開始するためには必要ではないかと思いますが、いかがでしょうか。

清水政府参考人 御指摘のとおりでございまして、ただ、義援金は皆様方からの自発的な意思に基づくものでございまして、それを託されているところは日赤などの受け付け団体でございますから、国が直接介入して使途を定めるといったことができる、そういう立場ではないと考えてございます。

 ただ、側面支援は私どももできる限りやってまいりたいと考えてございますので、例えばでございますが、先ほど申し上げたこと、あるいは義援金配分割合決定委員会という、これは日赤が設けたものではございますけれども、そういうものに協力するといったことはやっておるわけでございます。

 今後とも、いずれにしても義援金が被災者のお手元に早く届くということが重要であると私どもも考えてございますので、しっかりと側面支援をやっていくということを私ども考えてまいりたいと思ってございます。

田中(美)委員 ありがとうございます。

 被災者の方の立場に立てば、とにかく一日でも早く現金を必要とされているわけでございます。ですから、一刻も早く被災者のもとに届けられるようにしていただくことをお願いいたしたいと思います。

 それでは、本日の議題であります介護サービスの基盤強化のための介護保険法等の一部を改正する法律案についての質問に入らせていただきます。

 介護保険は、施行から十年が経過をし、高齢者の抱える課題も多様化している状況でございます。そこで、これらの課題に対応するために今回の改正案が提出されたものと思いますが、確認のため、本改正案の趣旨について、細川大臣、御説明願います。

細川国務大臣 今回の改正案の趣旨でございますけれども、現在、高齢化がどんどん進んでおります。ひとり暮らしの高齢者が増加をしている、これに加えまして要介護度が重度化している、こういう中で、やはり高齢者の方が住みなれた地域で自立して生活ができるように、医療とか介護、予防、住まい、そして生活支援サービスが切れ目なく提供できる、そういう地域包括ケアシステムの構築を進めていくということが必要だと判断をしたところでございます。

 そのために、今回の改正案では、二十四時間対応の定期巡回・随時対応型サービスの創設、介護職員等によるたんの吸引等の実施、市民後見人活用によります認知症対策の推進、それから財政安定化基金の取り崩しによります介護保険料の上昇の緩和、あるいはまた介護療養病床の廃止期限の猶予等、地域包括ケアの推進と、そしてもう一つ、平成二十四年度から始まります第五期の介護保険事業計画に向けての必要な事項の見直し、こういうことを盛り込んでいるところでございます。

田中(美)委員 ありがとうございました。

 ここで、介護予防・日常生活支援総合事業についてお伺いさせていただきたいと思います。

 これは、自立、予防、切れ目のないサービスの提供という本改正案の趣旨にかなった制度と思います。しかし、この制度に対しましては、予防給付と比べて利用料の増加やサービス水準の低下を懸念し、軽度者への介護サービスの切り捨てではないかといった意見も示されております。

 この点につきまして、この介護予防・日常生活支援総合事業の導入による軽度者への介護サービスへの影響について御説明願います。

岡本大臣政務官 先ほども樋口委員より御指摘がありましたけれども、やはり支援が必要な方と非該当の方の切れ目のないサービスをどう提供していくかというのが一つ課題でありまして、今回この事業を始めるに当たって、一つの克服するべき課題として総合的なサービスの提供というものがあったというふうに考えております。

 この総合事業については、先ほども御答弁をいたしましたけれども、御本人の意向をしっかり尊重して、どういうサービスを提供するか、従来どおりの予防給付を受けることも可能であるということをしっかりお伝えした上でその決定をしていくということになろうかと思います。

 軽度者へのサービスの切り捨てにつながるという御指摘は、こういった観点をもってしても当たらないというふうに考えておりまして、適切なサービスを利用者の皆様に御利用いただきたい、このように考えております。

田中(美)委員 ありがとうございます。

 自立や社会参加意欲の高い方には社会参加や活動の場を提供し、その能力を発揮していただいた方が自立支援と尊厳の保持となりますので、この制度はそういった意味で望ましいものと思います。しかし、どのような制度であれ、実際に運用してみるといろいろな問題が生じてくるものでございます。懸念される軽度者への介護サービスの切り捨てとならないよう、適宜運用状況をチェックし、問題点があればすぐに改善していくことが必要であり、この点を改めて申し上げたいと思います。

 次に、社会福祉士及び介護福祉士法の一部改正の中の、介護福祉士及び研修を受けた介護職員等によるたんの吸引等の実施について質問いたします。

 この点につきまして、以前、地元の特別養護老人ホームより、吸たん、胃瘻管理などは介護職員による対応をしなければいけない状況であり、現場は切迫しているため、医療緩和における体制を現場に沿って具体化し、体制整備を早急にお願いしたいとの要望を受けたことがございます。

 吸たん、胃瘻管理は原則医療行為であり、患者の安全性を最優先すべき事項であるということは十分承知をいたしております。しかし、現状は介護職員等が実質的違法性阻却論により行っている、つまり、この方たちがいなければ回っていかない状況であろうと思います。このような状況を踏まえまして、今回の改正により、介護福祉士及び一定の研修を受けた介護職員等が一定の条件のもとにたんの吸引等の行為を実施できるとしたことは評価できると思います。

 ただ、介護福祉士を除く介護職員等は研修を受ける必要があり、その研修の具体的な内容は、平成二十二年度に実施された試行事業の結果等を踏まえて検討することとされております。この研修が余りに長いものですと、働きながら受講することが困難であり、実質的に認めないことと同様ともなりかねません。

 そこで、この研修の具体的な内容、まだ決まっていない状況でしたら、方向性について御説明を願います。

岡本大臣政務官 委員御指摘のとおり、これまで運用で行ってまいりましたことを法改正によってしっかり安全性の確保を図っていこうという観点でありまして、必要な研修をしっかりしてもらうということが求められるわけでありますが、昨年来やってまいりました試行事業で得られた結果、そしてその実施した内容、こういったものを踏まえながら決めていくこととなります。

 試行事業では、基本研修を講義五十時間、それからシミュレーターを用いた演習を行っておりますし、また実地研修では、介護老人保健施設等におけるたんの吸引の実習も行っていただきました。こういったことをもって、一定の技術が得られたという評価に至っているところでございます。

 安全を確保しつつ、そして、実際にその研修を受ける方の身にも立つ研修にならなければいけませんので、委員御指摘のように、働きながら研修ができるような配慮をする必要があるというふうに考えています。その一つといたしまして、御自身が働いていらっしゃるような老人保健施設等のいわゆる事業所が登録研修機関になれるようにしていくということも一つポイントだろうというふうに思っております。

 いずれにいたしましても、これから試行事業の内容をさらに踏まえて決めていくことになってまいります。

田中(美)委員 ありがとうございます。

 また、この特別養護老人ホームからは、現在の介護保険制度は現場の声が反映されておらず、制度見直し時にはぜひ現場職員の声を聞いて反映させるような施策を求めますとの要望もいただいておりますので、ぜひこの点も前向きな御検討をお願いいたします。

 続きまして、介護サービス事業者に対する労働法規の遵守の徹底について質問をさせていただきます。

 本改正案では、介護サービス事業者における労働法規の遵守の徹底を図っております。しかし、介護サービス事業者において労働法規違反が多いのは、人手不足や介護報酬が十分でないことも原因に挙げられると考えられます。そうであるならば、労働法規の遵守を求めるだけでなく、介護人材の確保や介護報酬の引き上げといった介護現場のさらなる処遇改善が必要であると考えますが、この点に対する政府の取り組みについて御説明願います。

岡本大臣政務官 委員御指摘のとおり、民主党もかねてより、介護職員の待遇改善というのは大変重要で、その中でも賃金の改善というのを目指していくべきだ、こうお話をしてまいりました。

 マニフェストにもそのことを盛り込んでいるところでありまして、その内容に沿って、我々も、平成二十三年度末で終了いたします介護職員処遇改善交付金、これを二十四年度以降、どのように処遇改善につなげていくかの議論の中で、そのこれからのあり方、またさらに、介護報酬の改定をする中で職員の処遇改善をどうとらえていくのか、こういった観点も含め、これから先議論をし、年内には結論を得ていく、こういったことになろうかというふうに思っております。

田中(美)委員 ありがとうございました。

 介護保険制度は、国民の老後の安心を支える重要な仕組みでございます。そのような重要な制度を支える介護労働者の方の処遇改善もまた同様に重要な課題であると考えられます。

 地元からも、介護報酬に関しまして、平成十八年の制度改正、平成二十一年度の介護報酬改定において加算取得による報酬の安定化を図り、加算でつないでいる現状であるが、加算単位も小さい割に書類作成などの事務量が多く、報酬として見合わないのが現状、来期の平成二十四年、制度改正はあるが、施設運営の安定化を図るためにも、加算単位のアップもしくは介護報酬のベースアップと各種加算の算定における必要な書類の簡素化を求めますとの要望を受けております。

 厳しい財政状況ではございますが、今後もぜひ介護労働者の方の処遇改善に前向きに取り組んでいただくことを期待いたしまして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

牧委員長 次に、竹田光明君。

竹田委員 おはようございます。

 最初に、質問の機会をいただきまして、本当に御礼申し上げます。厚生労働委員会で初めての質問をさせていただきます。(発言する者あり)ありがとうございます。

 冒頭、被災された方々に心からお見舞い申し上げます。

 私の信条は、命に格差なし。命には格差があってはいけない、このことを信条にしております。私のポスターにも名刺にも、赤く大きな字で書いております。

 どうしてかと申し上げますと、私の次女が約二十年前に、九百グラムの超未熟児で生まれました。立川の病院で生まれて、その病院では処置ができない。小児病院の先生に来ていただこうと、ドクターカーで来ていただいて、夜中の二時ごろに、九百グラムですから、一キロのお塩より小さい、本当に小さい子供を見て、その専門の先生と救急車に乗って病院を移るときに、お世話になった立川の病院の先生と看護婦さんが真っ暗な中来てくれて、赤ちゃん、生きて帰ってこいよと、名前がないので、赤ちゃん、生きろよと、こう叫んでいただいて、その中で泣きながら救急車に乗って小児病院に移っていった。そのことが今でも思い出されます。

 八王子の小児病院に行きまして、六カ月間入院いたしました。その間、NICUに入っていましたが、どんどん隣の子供たちが死んでいく、きのういた子がいなくなる、そういう状況を毎日見ておりました。

 六カ月がたち、病院の方から、お父さん、大変だから、一生この子を療養病院で預かってもらったらいかがですかという言われ方をしました。でも、どうしてもうちに連れて帰りたくて、何とかうちに連れて帰りたい、そのことを申し上げてうちに連れて帰ったんですが、やはり、三日いれば一週間入院するとか、入退院を繰り返してしまいます。

 そのとき病院の先生に、これはどうしたらいいんでしょうかと改めて御相談したら、目と肺に障害があるから、酸素をコントロールして医師がずっと診ていれば、この子は生きる可能性があるかもしれないと言われたので、では、ぜひ入院させていただいて、この子の健康管理をしてほしい、そう申し上げましたら、予防のための入院はだめなんだ、この子の生命力があれば生きるかもしれないけれども、現状はだめですと言われました。

 本当に絶望的になったんですが、そのときに思ったのは、では、自分のうちに病室をつくればいいんじゃないかと考えまして、酸素の設備をつくって、NICUと小児科の看護婦さんを探してきていただいて、自分のうちを病室にしました。僕、まだ三十代で、非常にお金のないときだったんですが、今月生き延びた、今月も生き延びたと、本当にお金に苦労しながら三年間やってまいりましたら、何とか普通の子みたいな生活ができるようになり、普通の一般の幼稚園に入園することができました。

 入園したときに本当にうれしくて涙が出たんですが、そのとき思ったのが、一緒に病室にいた子供たち、どんどん亡くなっていった子供たち、また、三年間毎週のように病院へ行きますと、最初はお父さん、お母さんで来られたのが、途中からお父さんが逃げてしまってお母さんだけで来られたとか、家庭崩壊をしていく、そんな実情を見ていて、そういうお父さん、お母さんの顔を思い出すと、うれしい反面、複雑な思いがいたしました。

 そのことから医療に関心を持つようになり、十五年前から地元の医療法人の、二百六十五床の総合病院と百十五床の老健を経営する法人の役員を務め、医療にかかわってまいりました。医療の方にお世話になったから恩返しをしたいという思いで経営にかかわっていますので、十五年間、一円たりともいただかず、無報酬で働かせていただいております。

 その役員会で感じるのが、何でお年寄りをいじめるんだろうと。十五年間感じたのが、この国はお年寄りに冷たいんじゃないか、高齢者は功労者なのに、どうしてこんなに冷たいんだろうと思って、もっと子供にもお年寄りにも優しい政治にしてほしい、そういう思いから政治を目指すきっかけになりました。

 長くなりましたが、それでは、介護サービスの基盤強化のための保険法を改正する法律案についてお聞きさせていただきます。

 まず実感いたしますのは、たび重なる制度の変更です。介護保険制度は平成十二年四月にスタートしましたが、この十一年間、二百二十七回、課長通達以上の制度変更が行われています。たび重なる制度変更は、意味があってなされていると思いますが、現場にとりますと大きな負担にもなっております。やはり、現場の方も働きやすい、また介護を受ける老人にもわかりやすい、そういう制度が必要だと思いますが、二百二十七回も制度が変わっている、そのことについてどう思われるか、お聞かせいただきたいと思います。

細川国務大臣 委員からは、御自分のいろいろな経験から貴重な御意見、ありがとうございます。

 介護保険につきましては、委員が今御指摘のように、創設以来十年を経過いたしまして、時々のいろいろな課題に対応するということで、この制度そのものの改正などが重ねられてまいりました。その中で、やはり、御指摘のように、いろいろな通知が多くて、そこには重なるようなものもあったりいたしまして、これは事業者の方もあるいは利用者の方も、いろいろとそういう通知を見まして、なかなか難しく、理解しがたいような場面もいっぱいあったというふうに私は反省をいたしております。

 そういう意味では、介護保険というのは国民にとって大変身近な制度でございますから、まず国民の皆さんにしっかり理解していただけるようなものにすることが重要だというふうに考えております。これまでも、厚生労働省のホームページの活用などをいたしまして、国民の皆さんから意見募集などもいたしまして制度の改善などもいたしておりまして、わかりやすい情報提供には努めてまいりましたけれども、しかし、反省すべきところは反省しなければというふうに思っております。

 今後とも、現場の方々やあるいは利用者の皆さんがより理解しやすいような工夫をしながら制度の運用を図ってまいりたい、このように考えているところでございます。

竹田委員 ぜひ、介護を受けるお年寄りにわかりやすい、安心して制度を受けられる、そういう形にしていただきたいと思います。

 では、具体的に、今回の改正について質問に入りたいと思います。

 介護療養病床の取り扱いについてお聞きいたします。

 介護療養病床は、平成二十三年度末で廃止が決定されていましたが、廃止の期限はさらに六年間の延長となりました。私、個人的には、移行がスムーズにいかないいろいろな理由があると思うんですが、二つ、大きな点があると実感しております。

 まず一つは、利用者の状態の点でございます。

 介護療養病床の患者さんを介護療養型老健に移せないという実情があると思います。本当に医療の行為がもっと必要で、寝たきりでとても老健では対応できない、そういう現実があると思います。約二年前になりますが、今の菅総理に、この現状を見ていただこうと思いまして、私どもの法人にも来ていただきまして、寝たきりでとても老健に移せない、そういう状態の患者さんを見ていただいたこともあります。これが一つの大きな原因になっていると思います。

 また、もう一つは、単価の問題もあると思います。

 一人当たりの平均的な費用が、介護療養病床だと四十一万六千円、介護療養型老健ですと三十七万二千円、従来の老健ですと三十一万九千円。中には、二つぐらい施設をやっていて、移せるのに、わざわざもうからない方には移さないという方もいるのではないか。こういうことも考えられて、なかなか進まないのではないか。

 しかも、移行先となる介護療養型老健施設がどれだけあるかというと、介護療養病床は今約八万床です。介護療養型老人保健施設が約四千床。八万に四千分しか準備がないところに移れというのは、これは無理があるのではないでしょうか。既存の老人保健施設に加え、介護型老人保健施設等、こういう制度の乱立というか、それも現場の混乱になっていると思います。

 事実上受け入れができていないこういう状況について、どういうふうにお考えでしょうか。

宮島政府参考人 介護療養病床についてのお尋ねでございます。

 介護療養病床は、これまでの方針、二十四年三月までに老人保健施設などに転換していただくということでございますが、御指摘のとおり、現在八・六万床で、転換が進んでいないということでございます。

 二十二年に実態の意向調査、転換意向調査を行いましたところ、未定の理由は、二十四年の同時改定の方向性を見てから判断したいということとともに、転換すると利用者に十分な医療的ケアが提供できなくなるんじゃないか、あるいは建物改修などの懸念があるというようなことでございました。

 今後は、今回の改正では転換期限を六年延長するということでございますが、医療が必要な人への対応ということもありますので、平成二十年に創設されました介護療養型老健施設などにおける医療のニーズが高い方への対応のための介護報酬上の評価、あるいは転換支援策としての補助金や融資などを進めて、そういうものの充実によって転換策を進めてまいりたいということで考えているところでございます。

竹田委員 ぜひ、介護難民、医療難民と言われるような方が生じないように、きめ細かい対応をお願いしたいと思います。

 続きまして、二十四時間対応の定期巡回・随時対応型訪問介護看護について質問させていただきたいと思います。

 今回の改正のキーワードとも言える地域包括ケアシステム、最重要課題と取り上げられております。二十四時間対応の定期巡回・随時対応型訪問介護看護のサービス体制を聞いたとき、本当に個人的には、すばらしい、これはぜひ実現してほしい、そう思いました。また、さまざまな利用者のアンケートでも、二十四時間のサービス提供はいつも上位に来ております。と同時に、今まで質疑でも多々ありましたが、本当に実現できるのか、定期巡回サービスはすばらしいけれども、同時に、だれが提供するのかという疑問も持ちました。

 市町村とか地域とか、行政が直接行うわけではありませんし、都心のように多くの業者がいる地域であれば可能でしょうが、例えば私の地元のようなところでは、業者の数は限られております。また、地域包括センターも、目の前の業務で手いっぱいで、とても新たな業務に対応できない、そういう実情があります。行政から、いいサービスだからやってほしい、そう言われても、できない、無理だという声もあります。この対応、制度設計は、今後の大きな検討となります。

 まず、職員の確保についてお聞きいたします。

 事業者への支援が行われたとしても、実際に訪問介護を担うには、スタッフの確保が第一でございます。実際には女性の非正規労働者が多いし、ただでさえ重労働、低賃金、危険が伴う夜間の労働。介護スタッフの確保はこの制度の根幹にかかわると思いますが、個人的には大変じゃないかと思いますが、厚労省は、訪問介護するスタッフの確保は可能であると考えているのか、また、どのような支援を考えているのか、お聞かせください。

岡本大臣政務官 委員御指摘のように、介護労働者自体が大変今処遇改善を求められている中でありまして、二十四時間、夜も対応するというのはなかなか難しいんじゃないか、こういう御指摘だろうと思います。

 そういった中、我々としても一つアイデアを出すとすれば、例えば老健施設の職員に兼務を認めて、その方が勤めているところに電話がかかってくる。そして、必ずしも、随時対応といっても、電話でお話をすれば一定程度お困りのことが解決するということもありましょうし、もちろん、行かなければならないということになりますと、職員に行っていただくことになるわけでありますけれども、まず一次的にそういった利用者さんからのお話を受ける方を例えば兼務で認めるということも一つの方法かと思います。

 二十四時間型のサービスをすることで、介護職員の常勤型雇用がふえるといったこと、また処遇改善に期待が持てるという声もあるという一方で、利用者の生活を包括的に、そして継続的に支えることが介護事業者の専門性の向上や、やりがいの醸成につながるといった指摘もあるところであります。

 具体的にどういう人員配置でやっていくかも含めまして、これから介護給付費分科会で検討していく、こういったことになろうかというふうに考えております。

竹田委員 ぜひ、きめ細かい対応を御検討いただきたいと思います。

 今までの数々の質疑で、この法案の必要性はもう十分確認できたと思います。介護保険が今後ますます重要になるのは間違いない。しかし一方、介護事業を含む社会福祉関係の事業は、全産業と比較しても労働基準法令の違反が多いとも言われております。時間外だとか休日だとか、そういう発想では仕事ができないのが介護サービスです。

 私どもの法人でも、八年前の大雪の大みそかの日に、おじいさんがお正月は家へ帰りたいと言ったら、家の方が旅行に行くからだめだと言われて、私どもの施設でそのままお預かりしたんです。そうしたら、大みそかの夕方に病院から抜け出してしまい、いなくなってしまったんです。職員も、もう二百人ぐらいの職員が、雪の中、大みそかの夜、捜し回っても見つからなくて、見つかったのが中野でした。私どもの職場は東村山にあって、中野まで、家に帰りたいと思って、そのおじいさんは歩いていったんです。捜し回って、捜しているうちにもう年が明けてしまう。それが今の介護の現場であります。

 余りにも、病院も老健も忙しい。どうすればいいんだろうと皆で話し合いまして、やはり解決するにはもう、一つしかないだろう、お年寄りに元気になってもらおうと。そのために、リハビリセンターをつくろうと思いまして、三百坪のリハビリセンターを私どもでつくりました。パワーリハビリも多摩地区で一番先に導入し、とにかく元気になってもらって、病院に来てもらわない、そういう地域をつくりたいと思ってやっております。

 そのことが、たまたま四年前、敬老の日の天皇陛下の視察で、私どもの法人に行幸いただきまして、見ていただいたこともあります。

 一次救急というのは割と光が当たっていませんが、非常に大事なところであり、そこが介護を担っていると思います。

 最後に、今回の改正、また一次救急のことを含めて、お年寄りが安心して暮らせる社会をつくるために、大臣の意気込みをお聞かせいただきたいと思います。

細川国務大臣 委員からは、みずからの経験から貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございます。

 介護保険は、創設からちょうど十年を迎えて、節目を迎えております。高齢者の生活を支える制度として、この十年で国民に大分定着をしてきたところでございます。

 今後一層、高齢化が進んでまいります。その中で、介護費用の増大とか、それに伴う介護保険料の上昇、あるいは都市部における急速な高齢化の進展、認知症を有する人あるいは単身高齢者のみの世帯の増加というような問題とともに、お話がありましたような、介護人材の確保ということが本当に重要な課題であるというふうに認識をいたしております。

 質の高い人材の確保は介護保険制度のかなめでございまして、私としても、処遇の改善などを含めて、今後、介護給付費分科会での議論を初め、今回の法案の実施に向けた検討の中で、介護現場の皆さんがやりがいを持って働けるように努めてまいりたい。そして、この介護保険制度がお年寄りの皆さんにとって本当によかったと思えるような、そういう制度にぜひ頑張ってやってまいりたい、このように考えているところでございます。

竹田委員 ありがとうございます。

 先ほど、天皇陛下においでいただいたということは、誤解を招くといけませんので、その発言は削除させていただきたいと思いますが、大臣初め政務三役、厚労省の皆様には、今後とも頑張っていただいて、ぜひ安心して暮らせる社会をつくっていただきたい。そのようにお願い申し上げて、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

牧委員長 次に、田村憲久君。

田村(憲)委員 おはようございます。

 中一日で大臣とまたこうやってお会いができて、先般の水曜日の積み残し、十数問あったんですけれども、質問させていただくわけでありますが、まず冒頭、ちょっと通告をしていない質問を一つさせていただきたいというふうに思います。

 民主党政権が誕生した幾つかの原動力はあるんだと思うんですが、マニフェストの金看板子ども手当もそうでありましょうし、ほかにもいろいろな医療制度改革、介護制度の改革があると思います。その中で、やはり、一番とは言いませんけれども、それよりもさらに国民的に注目度が当時高かったのが年金の記録問題であったわけですよね。

 前の大臣である長妻さんが、野党のときから、とにかくこの問題、徹底して調査をされ、追及をされ、いろいろなことがわかってきた。それはそれなりに我々も評価をいたしているんです。評価できないところもありましたけれども。そんな中で、紙台帳全件、これは照合するんだ、突合するんだ、そして訂正するんだ、それをしなければ年金に対する国民の信頼は回復されない。そして、政権をとられて、我々はそう簡単じゃないですよと言いながらも、工程表をつくってそれを実行する。実際問題、思ったようには進んでいないようでありますけれども、それでも、四年間というものを区切って進んでこられてきているわけですよね。

 そんなことを思いながら、どれぐらい進んできておるのかななんてことも我々もいろいろと見てきていたわけでありますが、きのうの毎日新聞の記事で、「年金全件照合断念へ」というような記事がぽんと載りまして、これは本当だったら大変だなと思って、きょうはこうやって急いで大臣に質問をさせていただくわけなんです。

 ここで、「七億二千万件の紙台帳の全件照合を断念する方向で検討に入った。」理由は何かといいますと、これはやってみますと、大体それにかかる費用、コストというものが、実際年金の上がる金額よりもかかっちゃう。コストの方が余計かかっちゃうから、便益よりもコストがかかっちゃうので断念の検討に入ったというふうな記事になっているんですけれども、大臣、検討しているんですか。

細川国務大臣 今委員が御指摘になりました年金記録と紙台帳との照合、これが不整合がいろいろありまして、これは全件やっていくということで、特に二十二年度、二十三年度、集中的にやっていく、こういうことで進めております。そして、一期四年のうちに全件照合するということで進めてまいりました。

 しかし、その進める過程で、節々で、この照合については国民の皆さんにも公表もしていく、こういうことも私どもの方としては申し上げておりまして、今回、サンプル調査をいたした結果も公表をいたしたところでございます。そういう中で、費用対効果も、国民の皆さんのいろいろな議論もお聞きをいたしながら進めてまいります、こういうことを申し上げてきたところでありまして、今委員が新聞記事を紹介して、一部断念かというような御指摘がございましたけれども、そんなことは今決めているわけでは全くありません。

 しかし、今進めている中で費用対効果のような問題などあるとすれば、これは国民的な議論のもとで検討はしていかなければいけないということでありまして、今そのようなことを、方向を決めたとかいうことは一切ございません。

田村(憲)委員 すると、そのコスト、それから便益、こういうものを比較して、これは国民的にもちょっとどうなのかなというような声が、何をもって国民の声とするかというのは難しいんですけれども、断念することもあり得ると。検討はするということですね。断念は絶対しないのか、全部やり切るのか、それとも、今検討をするというようなお話、考えているんだというお話がありましたから、場合によっては断念することもあるということなのか、そこのところをはっきりしてください。

細川国務大臣 これは先ほども申し上げましたように、その時々に、年金の記録と紙台帳の照合の結果というのを公表していく、そして、国民の皆さんにもよく知ってもらい、それから費用対効果のようなものもあれば議論をしていただく、こういうことをずっと言ってまいりました。だから、その議論の段階だというふうに思います。

田村(憲)委員 絶対やるというわけではないということですね。全件照合を絶対やりますというわけではないというふうに理解をしていいわけですね。

 大臣、もう一回お願いします。

細川国務大臣 絶対という言葉を使われますとなかなか答えにくいわけでありますけれども、議論はしていくということについては、これは委員も御理解がいただけると思っております。

 これまでも、前の大臣もこの答弁をずっと再三繰り返してまいりましたけれども、節目節目で突合状況を公表する、そして、いろいろな費用対効果などについても国民的な意見を聞きながら議論はさせていただく、こういうことを言ってきたところでありまして、今、その議論の過程ということになろうかと思います。

田村(憲)委員 議論の結果やめることもあり得るというふうなことでいいんですね、大臣。議論の結果やめるということもあり得る、そういうことでいいんですね。今のお話だとそうですよ。国民的議論があって、そこでやめるという声が仮に多い、多いというのをどうやって判断するのか難しいんですが、多ければそれはやめるということもあり得るということでいいんですね。ちょっとそこを答えてくださいよ。

細川国務大臣 だから、私が申し上げているのは、今は議論の過程、議論をしていく、こう申し上げておるところであります。

田村(憲)委員 水かけ論になるからもうこれ以上はやめますが、多分やめることもあり得るということですよね。

 私はそれがいいとか悪いとか言っているんじゃないんですよ。それは普通に考えればそういうこともあり得るんでしょう。ただ、マニフェストには全件照合と書いてあるんですよ。(発言する者あり)今、民主党の委員の席からもお声が出ているように。ですから、そのときには、やはりマニフェストをまた変えると。

 いや、大臣、おつらいのはわかるんです。長妻前大臣がいろいろなことを言われたりする中で、それがマニフェストに入っていって、そのツケを全部負っているのは大臣ですから、おつらいのはわかりますが、しかし、公党がやはりマニフェストという形で約束をしたものでありますから、それは、もし方向を変えるときには、ここに長妻さんが来ていただいてどういうことだったのかというような御発言をいただくなり、大臣がそれなりのけじめをつけていただくなり、それは必要なことだと思いますから、私はあえてここでそれを申し上げておきたいというふうに思います。

 これ以上は質問いたしません。きょうは介護の質疑でございますから、そちらの方に入らなきゃいけないものでありますから、積み残しが残っておりますので。

 まず、先ほども竹田委員からお話がありましたけれども、介護療養病床、介護型の施設ですね、これは。介護型療養病床、これの議論をしたいんです。

 資料があると思います。私の資料、一枚紙を見ていただくとわかると思いますけれども、これを見ていただきますと、介護療養型の老人保健施設、これは転換老健と言われているものでありますが、これに約四千床移った、こういう話でありますが、もともと十二万床あった介護療養病床が今八万六千床。これを計算すると、差が合わない。さあ、どこに移っているんでしょうという話でありまして、残っているところの数万床はどこに移ったんですか。

宮島政府参考人 転換の状況というのはもう少し複雑な形になっておりまして、介護療養病床から医療療養病床への転換が二・五万床、それから介護療養病床から一般病床へ転換したのは四千床、〇・四万床。一方、今、田村委員からありました、介護療養から老健に転換したのは四千床程度です。それから、医療療養から老健に転換したのが三千床、一般病院から老健に移したのは千床、そういうような状況でございます。

田村(憲)委員 すると、一番多く移ったのは医療療養病床に、医療型の療養施設にかわったという話ですね、二万五千床が。これ、何かよくわからないんですよ。もともと、介護をつくったのは、医療から介護の方に移すというのが目標だったわけです。そして、そのちょうど中間点にこの医療型の療養病床と介護療養病床というのがあった。介護療養病床をなくそう、こういう方針で、これは多分ベッド数をなくせというような至上命題もあったんでしょう。それで、これの転換を図るように誘導策を厚労省が考えた。そして、医療療養病床に最も移っているというのは、これは介護から医療の世界に移ったということですかね。

 しかも、金額的に見ると、医療療養病床は四十九万円、介護療養病床が四十一万六千円ですから、これは費用の面でもかかる方に、いや、それが悪いというんじゃないですよ。本当に必要なものならば医療療養病床に移ってもいいんですけれども、そういう意味では、これは移したらいいというものじゃないんですよ。

 ところが、本来、なぜこういうことになったか。これはなぜこういうことになったんですか。なぜ、あなた方が移そうとしている介護療養型の老人保健施設、老健に移らなかったんですか。理由は何かありますか。

大塚副大臣 そもそも、これは問題意識を共有させていただきたいんですが、やはり医療がだんだん充実をしていく中で、社会的入院というものが問題になって、そして、そうであるならば、医療と介護を切り離して介護制度をつくりましょうということで、この大きな流れは、多分だれも反対はないと思うんです。

 ところが、今先生がおっしゃるように、その介護制度ができた後も介護療養病床があって、それをやはり制度の大きな方向に向かって切り離していこうとしたところ、なぜかその社会的入院の基盤になっていたものが医療療養病床にかわるというのは、これは現象としてどういうことなのか。

 一つ考えられるのは、地域医療計画あるいは各お医者さんの皆さんのベッド数に対する、いわば、言葉を選ぶのがなかなか難しいんですが、手放したくないという、もしそういうお考えで、各病院が自分たちの病床を医療の世界から切り離すぐらいならば、医療療養病床に切りかえて自分たちのところに置いておきたいということかもしれないなと思います。

 ただ、いずれにしても、介護保険制度をつくった当初の目的、そして医療は、やはり急性期を中心に本当に医療が必要な方々の医療として整え、そして介護は、なるべく介護に至らなくてもいいような予防も整えつつ、必要なベッド数、介護に必要なインフラを整備するという、その大きな方向を目指すべく、今の現象についても原因はちゃんと整理しなきゃいけないと思います。

田村(憲)委員 まあ、一番の理由は、採算が合わないということなんだと思うんですよ。介護療養型の老人保健施設、これが三十七万二千円。状況を見ると、いろいろと我々が当時与党のときに老健局と話をして、かなり介護療養病床に近いスペックに持ってこなければ、一生懸命やっているところは質が担保できないから移らないよとやったんです。

 実質的には、介護職員、看護職員をふやしてきた。ところが、医師が一プラスアルファなんですね。二にはいかない。一人で三十七万円。確かに、若干、一プラスアルファは減ったという話なんですが、それで四十一万六千円から三十七万二千円ですから、これだと、必要な病床数を掛け合わせて果たして採算が合うかという話なんですよね。合わないから、やはり移らない。実際問題、移って、損したとは言いませんけれども、厳しいという声が結構あるんですよ。

 私は当時から、一つは、全く同じスペックをつくるべきだという話をしたんです。もちろん、全部が移っちゃいけませんよ。全部が移っちゃいけないけれども、質のいい、そういうような介護療養病床、サービスのいい介護療養病床は、介護療養型の老人保健施設、ここに移ったときも、医師三人、介護職員十八人、看護職員十八人、こういうようなものがあってもいいじゃないか、こういう話もした。それから、そもそも単価をもうちょっと上げる必要があるんじゃないか、こういう話もした。

 さんざんやりましたけれども、老健局長、なかなか私の言うこと聞いてくれなかった。こうなりますよと私言ったんですよ、こうなりますよと。言ったのになかなかやってもらえなかった結果が、政権がかわった後ですけれども、やっぱり出てきたという話なんです。

 老健局長、これから介護報酬改定をするときに、何としても今度は転換させなきゃいけないんですよ、期限切って。今度来てもまただめだったというのでは、これは困るんです。我々の今までのいろいろな忠告をなかなか聞いていただけなくてこんな結果になったんですが、今までの反省も含めて、次の介護報酬改定で、どういうような思いを今持っておられ、どういうようなお考えがあるのか、お答えください。

宮島政府参考人 先ほど御紹介した転換意向の調査というものの未定の理由の一つが、意外と多かったのは、平成二十四年度の医療、介護報酬同時改定の方向性を見てから判断したいというようなことがありました。

 今、田村委員の方から御指摘がありましたように、介護療養病床と転換老健の間の介護報酬、これをどのように設定するかというのは、今後の介護報酬改定、給付費分科会での議論の中で取り上げられていかなければならない課題だと思っております。

 今回、六年間延長したということですが、基本線は、老健施設などに円滑に転換していくという、ここは変わっていないわけですので、補助金の仕組みあるいは融資の仕組み、これらも見直しながら進めてまいりたいというふうに思っております。

大塚副大臣 いずれにしても、適正な方向にいくように御相談を皆さんとしながら進めていきますが、一つ、先ほど御指摘いただいた数字の理解なんですけれども、医療療養病床に行くということは、これは、一人当たりの費用がかかるわけですから、逆に病院側からすると採算が合わないわけですね、コストが高いわけですから。

 だから、本当は介護の方に、右の方に行けば行くほど採算がとれるわけですから、ということは、要は、医療療養病床にしながら事実上介護的な扱いをすれば、それだけそこに人手がかからないわけだから採算がとれる。ということは、これは推測ですよ、推測ですが、医療療養病床という形にしながら、事実上介護と同じような状態で運営をしておられる病院があるのかもしれないなということも含めて、よく検討させていただきます。

田村(憲)委員 それだったらそれでまた問題なんですけれども、いずれにしても、局長、私、二年半前の介護報酬改定のときにも同じ話を聞いたんですよ。報酬改定を待ってみんな考えているんだ、こういう話だったんです。ところが、報酬改定した結果も移っていないわけですから、前回の報酬改定は失敗だった。これは我々が政権のときだから、我々は責任あるんですよ。だけれども、最終的には行政が、こういうような状況で我々の忠告というものをやはり実行していただけなかった。

 今回、同じミスは許されませんから、よほど心して介護報酬改定をちゃんと決めていただかなきゃ困るということでございますので、そこは大臣よろしく、何か意気込みがあれば最後にお聞かせをいただいて、私の質問を終わります。

細川国務大臣 今回の改正案で六年間延長ということでございます。その間に移転をする、転換をしていく、こういうことでありますから、これは委員の御指摘のことも十分考慮しますし、今老健局長の方からもお話がありましたように、これは今度、医療と介護の同時改定がございますから、そこで十分考慮しながら結論を出していきたい、このように考えております。

田村(憲)委員 ありがとうございました。

牧委員長 次に、古屋範子さん。

古屋(範)委員 おはようございます。公明党の古屋範子でございます。

 初めに、ケアラー、介護をしている人への支援についてお伺いをしてまいります。

 このケアラーというのは、高齢者だけではなく、身体、知的、精神などの障害を抱える人の介護、あるいは難病の方を看病している、あるいは病児、障害児、引きこもりなどの家族や知人の世話をしている、気遣いをしている、多様なケアの役割を担っている人を想定しております。これがケアラーでございます。

 昨日なんですが、日本女子大の堀越栄子先生に来ていただきまして、このたび、ケアラー連盟が介護者サポートネットワークセンター・アラジンと二〇一〇年度に実施をしたケアラー支援のための調査の結果をお伺いいたしました。

 この報告書では、ケアラーのいる世帯というのは五世帯に一世帯という結果が出てきました。非常に多いです。また、四人に一人は複数の人をケアしている。二人以上ケアをしなければいけない。中には、一人で五人をケアしているという方もいらっしゃいました。

 このケアを担っている人というのは、非常に生活の制約を受けている。また、夜も、朝までぐっすり眠ることができないなど、さまざまな精神的、経済的、肉体的な負担を負っていらっしゃる。これがケアラーで、また孤立感を深めている、このようなことも明らかになりました。

 このケアラーの年齢層なんですが、四十歳未満から八十歳代まで、各世代に幅広く分布をしています。特に四十歳未満の、ヤングケアラーとおっしゃっていましたけれども、若い世代でケアラーという方が六・五%もいる。要するに、親あるいは祖父母、下手をすると曾祖父母までケアをしなければいけない、非常に負担を負っていらっしゃるということでございます。

 公明党が行った介護総点検でも、こうした介護をしていく、これは高齢者でありましたけれども、経済的、精神的、肉体的な負担が非常に重い、こういう結果が見てとれました。

 このようなケアラーの実態、生活への影響。ケアラーを総合的に支援する仕組みが国としても必要である、このように感じました。この調査結果をもとに、法制化も急ぐ必要があるとして提言をまとめていらっしゃいます。

 介護をしている家族、ケアラーへの抜本的な支援、また、この報告書の中でも提言しているんですが、ケアラーへの対応策は震災復興の構想にもふさわしいものであると思っております。日本の今後の生活支援モデルとなるよう、被災地の仮設住宅等におけるサポート拠点に、アウトリーチ、また心のケアも入れていただいております。大変ありがたいと思っております。さらにこうした介護者、ケアラー支援の機能も備えるべきではないか、できればケアラー専門員などを置くなどして支援をしていくべきではないか、このように考えるんですが、いかがでしょうか。

細川国務大臣 委員からは、ケアラーについてのいろいろな支援体制を構築しなければいけないんじゃないか、こういうことの御提案をいただきました。

 これは私どもの方としてもいろいろと検討していかなきゃというふうには思いますが、震災でのいろいろな、ケアラーの皆さんへどのような支援が行われるか、こういうことにつきましては、これは補正予算で、地域支え合い体制づくり事業ということで七十億円計上いたしておりまして、ここでサポート拠点の設置と運営を推進しているところでございます。

 そこで、この事業を活用いたしまして、被災地のケアラーの皆さん方の相談、支援の取り組みといたしまして、一つは、そのケアラーの皆さんの所在とニーズをしっかり把握をいたしまして、いろいろな情報の共有、これは行政あるいは医療機関ともに情報の共有をする仕組みづくり。二つ目には、この震災によって生活環境が激変いたしておりまして、ケアラーの皆さんも孤立しがちでございます。そういうケアラーの皆さんのサポート体制と、それから家族介護者のネットワークづくり、これらを地域の実情に応じまして進めていきたいというふうに考えております。

古屋(範)委員 ありがとうございます。

 所在、ニーズ調査をしてくださって、ネットワークづくりなどもつくっていかれるということでございますので、このサポート拠点が非常に多くの機能を担っていくことになると思うんですが、ぜひこれを成功させていただきたいと思っております。よろしくお願いいたします。

 次に、介護職員の処遇改善についてお伺いをしてまいります。

 団塊の世代が七十五を超える二〇二五年には、現在の二倍の介護職員が必要だと言われております。

 公明党で一昨年行いました介護総点検の中で、介護職員として働いている方々へのアンケートを行いました。この中で、働ける限り介護の仕事をしたい、続けたいと答えた方が七割いらっしゃいました。仕事にやりがいを感じているということがよく伝わってまいります。しかし、同時に、心身の負担が大きい、また、業務の内容に対して収入が低いと答えた方も八割に上りました。介護を敬遠する理由として、全産業の平均の六割から七割程度という低い給与水準が問題となっているわけでございます。

 さらに、介護職員だけの賃金引き上げではなく、ケアマネとか事務職員、また給食の担当の方々、多職種で、やはりチームでケアをしているわけですので、こうした職種間のバランスを考えることも必要だと思っております。対象職種も広げるべきだと思っております。

 質の高い介護サービスを安定的に提供していくためには、待遇改善とあわせて、専門性を高める取り組みも欠かせません。

 今回の法案では、実務経験者の研修等の実施について三年の先送りとしています。質の向上へ疑問も残される中で、たんの吸引等の医療行為を不安定なパート職員も多い介護現場へ導入するなど、多くの課題が残っていると思っております。

 菅内閣は昨年六月に、菅総理、雇用、雇用と叫んでいらっしゃいました。閣議決定をした新成長戦略では、医療、介護分野での雇用の創出を掲げて、勤務環境や処遇の改善による介護従事者の確保が盛り込まれたわけでございます。

 厚労省は、二〇〇九年度の介護報酬改定で三%引き上げを行いました。さらに、二〇一一年度までの措置として、一万五千円引き上げる交付金制度を導入するなど、介護職員の賃金のアップを図っております。しかし、民主党のマニフェスト、介護職員の賃金四万円アップには全く届かない現状でございます。

 交付金制度は二〇一一年で終了しますけれども、今後はどうするつもりなのか。この介護従事者の処遇改善について、財源の確保、また、ケアマネ、事務職員など対象の職種を広げるべきである、これについてのお考えをお伺いしたいと思います。

細川国務大臣 介護分野での人材の確保というのは、これは大変重要な問題でありまして、しかも今、介護職員の労働条件はよくないと言われておりまして、その処遇改善というのはどうしてもやっていかなければというふうに私どもも思っております。

 これまで、委員が御指摘のように、介護報酬のアップとかあるいは交付金も合わせまして二万四千円ぐらいのアップが出ております。

 さらに、では来年からどうするのかということにつきましては、ことしの暮れには介護報酬の改定がございます。そこで決めていくのか、それとも、これまでどおり、その処遇改善の交付金によりまして改善をしていくのか、これは二通りあると思いますけれども、どのような形でやるかということにつきましては、ことしの暮れまでに、この職員の処遇改善に向けて検討をしてまいりたい、このように思っております。

古屋(範)委員 社会全体で高齢者介護を支える仕組みとしてスタートしました介護保険制度、十一年目を迎えまして、さまざまな課題が残っております。

 今回の改正、細部の項目を見ますと、果たして今後十年後の高齢社会はどうなるのか、介護保険を他の社会保険との関係でどのように位置づけていくのか、あるいは、恒久的な財源確保とのバランスをどうするのか、こういうことにはなかなかこたえ切れてはいないという疑念が残ります。

 現在の介護保険制度が抱える課題、これは非常に根が深いと思っております。目先の予防だけではなく、今後十年の高齢社会はどうなるのか、介護保険を他の社会保険との関係の中でどう位置づけるのか、恒久的な財源確保とのバランス、こうした介護保険制度の方向をさらに明確に示していただきたい、このことを要望して、質問を終わります。

 ありがとうございました。

牧委員長 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。きょうは、よろしくお願いいたします。

 今回の法案からは利用者負担増は削除されておりますけれども、引き続き検討されている問題があります。関係者も大変懸念をしている事項でありますが、その一つが、特別養護老人ホームなどの多床室の減価償却費相当を居住費として徴収する問題であります。

 社会保障審議会介護保険部会に出された資料によれば、多床室の室料負担は月五千円の増額ということになるわけです。多床室の減価償却費の導入、これは行うのでしょうか。

細川国務大臣 特別養護老人ホームの居住費につきましては、平成十七年の改正におきましては、個室については居住部分の減価償却費相当額と光熱水費のいずれも利用者負担となりまして、多床室につきましては光熱水費のみが利用者負担となったところでございます。

 これにつきましては、昨年の介護保険部会で取りまとめられました「介護保険制度の見直しに関する意見」の中で、多床室につきましては、低所得者の利用に配慮しつつ、減価償却費相当額を保険給付対象外とする見直しが必要であるという意見が出ました。一方、居住環境を考慮して、居住費については現状の光熱水費相当を維持すべきである、こういう意見も挙げられたところでございます。

 この点につきましては、ことしの秋から暮れ、次期の報酬改定に向けて介護給付費分科会等において御議論をいただく、こういうことになっております。

赤嶺委員 議論をしていく、結論は出ていない、そういう話になるわけですが、今大臣もおっしゃいましたように、食費、水光熱費の利用者負担が導入されて、特別養護老人ホームの個室化、ユニット化が進んでいく中で、低所得の高齢者は、在宅での生活が困難になっても、利用料が払えないため、入居をあきらめ、特養の待機者にすら数えられない、待機者にもなれない、こういう悲鳴が上がっております。これ以上の負担増はやめるべきだ、こういうことを多床室の室料負担の問題についても申し上げておきたいと思います。

 もう一つは、施設入所者の低所得者を対象とした補足給付についてであります。

 補足給付について、家族の負担能力を把握し、勘案する仕組みを導入する問題があります。補足給付の支給要件の厳格化で、資料を見ますと、総額二十億円程度の負担増になると試算をされております。

 大臣は、昨年十二月二十四日の介護保険法改正に関する会見で、今回は利用者負担については上げないということでやる、このように明言をされておられます。であるのであれば、低所得者の負担増となる支給要件の厳格化はやめるべきではないかと考えますが、いかがですか。

細川国務大臣 この補足給付につきまして家族の負担能力を勘案すべきかどうかにつきましては、審議会の介護保険部会におきまして、補足給付の低所得者対策としての趣旨を徹底する観点から、保険者である市町村の判断により、可能な範囲で家族の負担能力を把握して、これを勘案して補足給付の支給を判断することができる仕組みとすべきだ、こういうことが指摘をされているところでございます。

 一方で、保険者、これは市町村によって補足給付の対象となる者に違いが生じる、こういうことも想定をされることから、慎重な検討が必要である、こういう意見もまたございます。したがって、私どもとしたら、これらの意見を踏まえまして、今後、社会保障改革の議論を通じて将来的なあり方を検討してまいりたい、このように考えているところでございます。

赤嶺委員 これも厳格化されることによって、低所得世帯は本当に施設入所をあきらめなければならなくなる、こういう事態が容易に想像できます。今でも、限界を超えた介護に疲れ切って、介護離職、そして虐待、ひいては介護心中、こういうことも起きているわけですから、私はこれを助長するようなこれらの負担増はやめるべきだと強く申し上げたいと思います。

 介護の実態なんですが、最近、ケアマネジャーの方から聞くのは、ケアプランはどのような支援が必要かで計画を立てるのではなく、幾ら払えるかによって決めざるを得ない。ケアマネジャーに五千円を渡して、これでケアプランをつくってほしいというケースが少なくない、こういう話をよく聞きます。

 実は、全日本民医連も「介護保険十年」検証事例調査報告書というのを出しておりますが、この中でも共通した話として出てまいります。

 この全日本民医連の検証事例調査報告の中の一つに、私の沖縄の民医連の調査した事例、大体共通しておりますので、これを紹介したいと思います。

 八十七歳の要介護五の女性が在宅で生活し、同居家族が介護を担っているけれども、全介助、そして胃瘻管理と吸引が必要な状況である。全身の硬直が強く、おむつ交換も一人では困難で、週二回のデイケア通所と週一回の訪問入浴を利用している。介護者は、自宅で孫と就学前の子供を預かり生計を立てており、介護も行き届かない状況ですが、ヘルパーや訪問入浴などを利用すると支払いができないとの理由で、今以上のサービス利用を控えている。

 その事例の聴取に当たった職員は、このように書いてあります。国庫負担を増額し、利用料の費用負担軽減を図る必要があります。こういう事例がずっと並んでおります。

 介護保険十年を検証したときに、高い保険料を払い続けながら、お金がないために必要な介護を使えないという事態、これを根本的に見直すことが今求められているのではないか、このように思いますが、大臣、いかがですか。

細川国務大臣 この介護保険制度につきましては、国民の皆さんが支え合いという考え方によって、共助の仕組みということで、保険料やあるいはサービスの利用者負担をお願いいたしているところでございます。したがって、生活保護の受給者につきましては負担もしていただかないというようなことでありますし、低所得者については保険料や利用者負担を軽減するというような措置を既に講じているところでございます。

 そして、高齢者につきましては、高齢者の所得というのが公的年金が中心である一方で、今後の給付費が大変増大をしていく中で、介護保険料も上昇が見込まれる。こういうことも踏まえて、低所得高齢者の負担につきましてはいろいろな問題がございますので、社会保障改革の議論等を通じまして将来的なあり方を検討していく、こういうことにいたしているところでございます。

赤嶺委員 いろいろな軽減制度はあっても、現に悲鳴が上がっているわけですから、ぜひ必要な介護サービスをお年寄りが受けられる、所得の低い人でもきちんと受けられる、人間らしい尊厳が守られるような、そういうことを強くこれからも求めて、質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

牧委員長 次に、阿部知子さん。

阿部委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。

 介護保険が始まりましてから十年。今回の改正は、またさらに利用者にとってはわかりづらく、また利用制限も加わり、先ほどの赤嶺委員のおっしゃったような低所得者の問題も解決されず、加えて介護労働者にとっても明かりが見えない、非常に問題が多い改正だと思います。

 具体的にお伺いをいたします。

 まず、この前お伺いいたしました介護予防・日常生活支援総合事業についてです。

 時間がございませんので、お手元の、お配りしました資料をごらんいただきたいと思います。今度設けられました介護予防・日常生活支援総合事業では、いわゆる要支援一、二の方が予防給付を受けておられることと加えて、この方々は地域支援事業も受けられるのかどうか、一言でお願いします。

大塚副大臣 これは受け得るとは思いますが、極力重複のないようにいたしたいというふうには思っております。

阿部委員 そこが極めて利用者にとって不安なわけですね。今まで予防給付を受けておられた方が、今度この地域支援事業に行くことによって、旧来の予防給付すら受けられなくなるのではないかと。このことに一度として明確にお答えがありません。今の大塚副大臣のでも、受け得るが、その先はてんてんてんなんですね。予防給付というのは、保険制度に乗っかった権利であります。すなわち、わざわざ認定を受けているわけです。その権利まで脅かされるのであれば、保険制度そのものの根幹が揺らいでまいります。

 細川大臣、私は今の答弁に納得できません。そんなことのためにこの制度、新しいものをつくるなら、これは給付抑制ではありませんか。そもそも、この上段の予防給付は保険事業です。下段の地域支援事業は保険事業ではありません。保険事業を受けることと保険事業外のものを受けることが並列しなければ、全く意味がないではありませんか。大臣、明確にしてください。

大塚副大臣 阿部委員のお気持ちは共有をしております。ここは大事なところですから、きちっとお答えをさせていただきます。先ほどももちろん、端的にとおっしゃられましたので、端的にお答え申し上げました。

 本人の御意向を尊重しつつ、利用者の状態像に応じて、従来どおりの予防給付をお受けいただくことは可能であります。要支援者が予防給付を受けつつ、総合事業のサービスを利用することは可能であります。ただし、例えば総合事業と予防給付の両方からホームヘルパーの派遣を受けるなど、重複して同じサービスを受けることはできないというふうに考えております。

阿部委員 基本は御利用者の選ぶ権利、選べるということで介護保険は始まったわけですから、今の大塚副大臣の御答弁を前向きに受けとめて、次の質問に移らせていただきます。

 お手元に「介護予防事業対象者及び事業参加者の推移」というのがございます。これは何を言っているかというと、先ほどの一枚目の地域支援事業のうち、介護予防事業と特定高齢者事業と呼ばれたものの推移でありますが、特定高齢者並びに高齢者人口に占める割合を見ても、非常に利用率が悪い。高齢者人口の〇・五%しか利用されません。すなわち、この事業は、これまで事業としてありながら、十分な充実を図られてこなかった。下に事業費がございます。そうはいっても、平成二十二年度までには六百二十八億がここに使われてまいりました。

 この事業、なぜ推進がはかばかしくなかったかというと、利用者に自己負担を強いるとなかなか来てくれない。先般お伺いいたしました、特定高齢者はこの事業を利用するのに幾らお払いですかと。昨日資料をいただきましたが、毎回三百円から五百円、あるいは三カ月で六千円とか一万二千円とか。その額にたえない人はなかなか、特定高齢者であってもこの事業を受けられない。そして、資金力のある自治体はこれを無料にすると。自治体に投げたがために、非常にまだらになった事業であります。

 今回の改正でも、私は、そのまだらをそのまま引き継ぐのではないかと大変懸念しております。すなわち、どこに住んでも、その方の健康をパワーアップ、エンパワーしていくための施策がなければ介護予防事業ともなりません。

 そして、三枚目の資料を見ていただきたいですが、では今度、この件についてどんな予算編成があるかであります。今年度ではありませんが、ごらんになるように、介護予防事業についての予算づけは、平成二十二年で七百五億、平成二十三年度は六百二十一億というように、実績値を下回った予算しかつけられておりません。実績を下回る予算しかつけないまま次の事業に移行するということは、厚生労働省の方針の揺らぎと、私は、本当にこの事業が充実していけるのかどうか、非常に疑念を持ちます。いかがでしょう。

大塚副大臣 恐縮です。三枚目の資料というのがちょっと我々の手元にありませんでした。いや、今いただきました。大臣用にちょっと一部いただければ。済みません、恐縮でございます。

 まず、行おうとしている事業に対して十分な予算がついていない、これで本気でやる気があるのか、基本的にはそういう御質問だと思います。

 それは、極力そういう御懸念に対応できるように予算をつけていく努力は我々もいたしたいと思います。ただ、先ほど、その前にお取り上げになった二次予防の事業の件もそうなんですが、結局、財政力のある自治体によっては、利用料は大変低いし、あるいは無料でも可能だと。

 この点は、実は前回、坂口元大臣からも御指摘いただいた、例えば二十四時間サービスが本当に過疎地で可能か、都市部と過疎地では介護サービスの形態は違うじゃないかという御指摘ともこれは連動しているところでありまして、やはり各自治体が、それぞれの自治体のいわば医療、介護、そして予防の実情に即した、財政力に見合い、かつ地域の実情に見合った施策を行っていただけるかどうかにひとえにかかっておりまして、これを全部均一にやろうとすれば当然いろいろな問題が起きますので、その点はぜひ一緒にお考えをいただければと思います。

阿部委員 残念ながら、質問への答えになっていません。実績値を下回る予算をつけたのはなぜですかときのう厚労省に聞いたら、来年度は予算を上げますと。要は、一つのことをやるのにふらふらふらふら方針が定まらないということが問題なのであります。

 また、今おっしゃったまだらの状態をどうするかというのは、そもそも地域の予防保健事業というのは、やはり国として本当に責任を持って財源をつけてやるべきところを、介護保険に頼り、自治体力に頼ってやっていることの証左であると私は思っています。

 時間がないので、最後に一問だけ。宿題を投げさせていただきました、郡山でのマルメ、包括に対して、三月十一日地震があったので、三分の二返しなさいというお話です。

 この事業所は、訪問介護や予防訪問介護などを提供しておりましたが、震災のときにはたくさんの被災者を受け入れて、その地域の拠点になりました。拠点であるということは、それだけの実は日常的な活動をしている。だけれども、後から、地震だったからあのとき全部やれなかったでしょう、返しなさいというのは、利用者が受けていないのに負担をされるのは申しわけないという理由だときのう伺いました。

 では、利用者にそのいただいたお金は返されたのかが一点。それから、今後とも、自然災害があって、包括でやっていたらもうやれなくなって、自然災害ですよ、それにもかかわらず何の配慮もないのか。この二点だけ、端的にお願いします。

大塚副大臣 これは端的になかなか言いにくいことで、ちょっと一分ぐらいお時間を下さい。

 まず、先生の御質問で、私も、仮に被災地で被災された事業者が大変厳しい状況の中でそういうことを行政から言われていたとすれば、大変心苦しいということで、こちらでうなずかせていただいておりました。

 その上で、私も確認をいたしましたところ、被災された方というイメージではなくて、実際に包括払いで、例えば四回のサービスをするために受け取っていたけれども、そのサービスの対象者が被災されていなくなって、二回しかサービスを行えていない、したがって、残りの二回分は調整させてほしい、こういうような話でございました。

 そのことはそのこととしてやはりきちっと対応しなければなりませんが、今先生がまた新しい状況説明をしてくださいましたが、その事業所が被災された皆さんを受け入れて、そのこととは別に大変な拠点として活動していたのに、それは余りに無慈悲な対応ではないかということですので、二つの問題がそこに入っております。

 いずれにしましても、福島県、それから郡山市、全国介護事業者協議会、日本在宅介護協会に確認をしましたところ、日割りの取り扱い自体について、何かこれが大きな問題だというふうに制度として言われているわけではありませんので、ぜひもう一度、具体的にどのような事業者からの御指摘なのかをしっかり承って、介護制度の問題と、そして被災者を受け入れて頑張っていただいたという問題を峻別して、しっかり対応させていただきます。

阿部委員 私が申し上げたいのは、包括がある日日割りになったり、既にもう契約として取り交わされたものがカットされれば、事業所はそれまで抱えていた人の給与も払えないという状態になってまいります。極めて不安定です。介護基盤の強化のためを一方で言いながらこうした対応があるということの問題。でも、副大臣はおわかりいただいたようですので、少し詳しく実際にお話を詰めさせていただきます。

 ありがとうございます。

牧委員長 次に、柿澤未途君。

柿澤委員 みんなの党の柿澤未途でございます。

 きょうは、まず、被災地における訪問看護の一人開業の規制緩和について取り上げさせていただきたいと思います。

 本委員会で、私も、ナースの一人開業については累次取り上げてまいりました。訪問看護ステーションがなかなかふえてこなかった、また、五十五万人もの潜在看護師が全国各地に存在している、こうした実情から、常勤換算二・五人を緩和して一人開業を認めることで訪問看護の担い手をふやして、高い専門性を有する看護師から、また一方で地域の見守りをする、そういう世界まで在宅療養を支える基盤を総合的に厚くしていくべきだ、こういうことを申し上げてきたつもりであります。

 こうしたことが行政刷新会議の規制仕分けで取り上げられたりもしたわけですけれども、今回、震災発生後、厚労省は、被災地に限り訪問看護ステーションの開業基準を一人に緩和するということを決めました。そのねらいについてお伺いをしたいというふうに思います。

大塚副大臣 先生御指摘のとおり、市町村の判断により看護師一人による開業を四月の二十二日付でやっていただくことも認める方向で対応いたしております。もともとこれが、被災地に限らず、規制改革の一つのテーマになっていることも承知をしております。その点についてはまだ結論が出ておりませんが、被災地では、やはり被災地を離れずに被災者の方に頑張りたいという、その地でかつてあった病院で働いていたような看護師さんたちもいらっしゃいますので、そういう方々たちに御活躍いただけるように対処したものでございます。

柿澤委員 これは、設置にかかわる届け出というか、そうした部分については手続をなるべく煩雑でないものにしていただきたいというふうに思うんです。そうでないと、結局使われませんでしたと。何か、これを認めた社会保障審議会の議論の中では、結果的に特例的に認めても全く使われない可能性もあるじゃないかとか、こういう話がどうも出ていたようでありますので、私は、大塚副大臣が規制仕分け、当時の議論でこの問題については比較的積極的な姿勢を見せておられた印象を持っておりますので、そういう意味で、震災被災地においてどのように在宅療養の基盤が確保され、また確保されなかったのか、そして、今回の訪問看護ステーションの特例的緩和の成果を検証して今後につなげてほしいというふうに思っております。

 続きまして、介護者への支援についてお伺いをします。

 先ほど、古屋先生からるる、介護者が置かれている実情というものが言及をされました。

 認知症の人と家族の会というのがこのほど在宅介護の実態調査を行いましたが、これはもう明らかでありまして、今まで年齢構成としては四十歳以下の若い介護者もいたわけですけれども、今や、六十歳以上が五八%まで上がっている。家族のだれが介護しているかについては、かつては子の配偶者、これはつまり嫁ですね、お嫁さんが三割以上だったのが一割に減少して、一方で、配偶者、つまり年老いた妻や夫が連れ合いを見ているというのが、倍以上の五〇・五%になっている。お嫁さんから老老介護へというシフトが鮮明になっているわけです。そうした状況の中で、介護を積極的に続けたい、こういうふうに思う家族の割合は減っている。そして介護への意欲は減退している。家族の疲弊や負担感が重くなっていることを感じさせられるわけであります。

 そうした中で、介護する家族に対する支援は、これは十分とは言えない状況が続いていると思います。そうした中で、最近ではお泊まりデイサービスみたいなものが出てきて、これは介護保険の外側で全国二千カ所にも広がっている。高い理念を掲げた在宅介護のサービスが実質的には機能していない。家族が疲弊をして、要介護者を抱え切れずに、預かってくれるところがどこかないか、どこかないかと探している、こういう状況になってしまっていると思います。

 こうした現状をこのままにしておくと、本当に在宅介護というそのものが崩壊をしていきかねない、こういう現状でもあると思いますので、今まで、結局、要介護者を支えることが家族を支えることにつながるという考え方が非常に強かったというふうに思いますが、これから、介護を行う家族に対する支援というのをやはり直接的にも考えていかなければいけないというふうに思います。

 そうした点について、厚生労働省のお考えをお伺いしたいと思います。

宮島政府参考人 家族介護支援をどのように進めるかという御質問でございます。

 御指摘のとおり、家族介護者の介護負担は重くなってきているというふうに思っております。第五期の介護保険事業計画に向けまして、今、各市町村で高齢者生活ニーズ調査というのを進めておりまして、その中では、要介護者のいる家庭状況なども調査をするということになっております。

 それから、平成二十二年度補正では、地域支え合い体制づくり事業というのを設けておりますが、この中で、各地において家族介護者間のネットワークづくりや家族介護者の支援というのを取り組んでいただきたいということで、その他、家族介護教室の開催あるいは交流の促進など、そういった取り組みを今後進めてまいりたいと考えているところでございます。

柿澤委員 今、ニーズ調査をやって、また家族介護者のネットワークづくりの支援を行っているんだという話でありましたが、いささか悠長な、そうした印象も持つ答弁のように思います。これは非常に難しい問題で、何がソリューションであるかということは非常に難しい。これは私も理解をするところでもありますけれども、しかし、このままの状況を放置していくと、本当に家族の方々の疲弊によって、介護保険、また在宅介護のシステムそのものが崩れていきかねない、こういう状況ではあると思いますので、ぜひお取り組みをお願いしたいと思います。

 最後に、生活援助についてお伺いをします。

 在宅介護における生活援助については、二〇〇六年の介護保険法の改正に伴って、訪問介護の生活援助サービスは制限が加えられました。これによって、同居家族がいると生活援助が受けられない、こういう感覚が広がってしまった部分があります。その後、日中独居や老老介護のような実情が認められれば、同居家族がいても必要に応じて生活援助のサービスを提供できる、受けられるという見解が改めて示されているわけであります。これは当然のことだというふうに思います。

 今回の介護保険法改正案、二十四時間対応型地域巡回サービスの話を、私も何度もこの間取り上げてきました。そして、一方で国土交通委員会の方では、私はそちらもやっていますので、高齢者住まい法の議論もさせていただきました。まさに定常的な見守り、生活援助というのが非常に重要だということは、こうした法改正の基本的な視点にもなっているかと思います。

 この現場でサービスをやっている方々の意見を聞いてみると、生活援助のメニューに、六十分未満、九十分未満だけではなくて三十分未満の枠を設けてもらいたい、こういう声が結構あるんですね。

 頻繁に伺って、例えばお掃除や洗濯物を干す、こういう生活援助を行っても、実は、三十分もかからずに終わってしまう、時間が余ってしまうという場合があるんだというふうに言うんです。六十分未満でこれを請求すると、結果的に、使われない時間がたくさん出てきている中で請求を行うことになってしまう、非常に利用者にとって、そういう意味では不利ということになってしまっているのではないかという指摘があるんです。

 そこで、生活援助に三十分未満という新しいメニューを設けてほしい、こういう声が現場の声としてありますけれども、対応をいかがお考えかというふうにお伺いしたいと思います。

細川国務大臣 この生活援助につきましては、掃除とか洗濯とか、そういう比較的時間がかかるということが想定されるということで、これまでは三十分未満は報酬を設定していないところでございます。

 ただ、今委員からも御指摘がございました、これにつきましては、審議会の介護給付費分科会で検討してまいりたい、このように考えております。

柿澤委員 検討してまいりたいというのは大変前向きな姿勢だというふうにお受けとめをさせていただきたいと思います。

 やはり二十四時間の中で、頻繁に見守りをし、様子を見に行きということをやっていく一環として、そういう意味では、少し短時間になっても行って、そしてその範囲の中でサービスを行って、六十分未満が三十分未満になれば二回行けるようになるわけですから、そういう意味で、今の法改正の流れでいえば、こうした検討があるべきだというふうに思っております。そのことを重ねてお願いを申し上げまして、時間超過しておりますので、質問は終わらせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

牧委員長 以上で本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

牧委員長 この際、本案に対し、柚木道義君外二名から、民主党・無所属クラブ、自由民主党・無所属の会及び公明党の三派共同提案による修正案が提出されております。

 提出者より趣旨の説明を聴取いたします。田村憲久君。

    ―――――――――――――

 介護サービスの基盤強化のための介護保険法等の一部を改正する法律案に対する修正案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

田村(憲)委員 ただいま議題となりました介護サービスの基盤強化のための介護保険法等の一部を改正する法律案に対する修正案につきまして、民主党・無所属クラブ、自由民主党・無所属の会及び公明党を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。

 修正の要旨は、社会医療法人について、特別養護老人ホーム及び養護老人ホームの設置を可能とする旨の規定を削除するとともに、その他所要の規定の整理を行うものであります。

 何とぞ委員各位の御賛同をよろしくお願い申し上げます。

牧委員長 以上で修正案の趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

牧委員長 これより原案及び修正案を一括して討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、順次これを許します。赤嶺政賢君。

赤嶺委員 私は、日本共産党を代表して、介護サービスの基盤強化のための介護保険法等の一部を改正する法律案に反対の立場で討論を行います。

 初めに、東日本大震災の被災地では、多くの高齢者が厳しい避難生活を強いられ、震災関連死が危惧される状況にいる今、被災地の介護体制再建にこそ全力を尽くすべきです。全国の介護関係者が被災地の支援に力を注ぐ中で、法案の内容も周知せずに成立を急ぐことに抗議するものです。

 修正案には賛成ですが、法案の重大な問題を変えるものではありません。

 以下、反対の理由を述べます。

 第一に、介護予防・日常生活支援総合事業は、軽度の高齢者が、必要な介護給付を利用できない仕組みをつくることです。

 総合事業は、介護保険で定められた人員、運営などの基準も適用されず、サービス内容、料金などすべて市町村任せです。専門のヘルパー派遣をなくしたり、利用料の高い業者任せにすることも可能で、サービスの質が担保されません。

 利用者の意思が尊重される保障はなく、希望に反し介護給付が取り上げられることも否定できません。

 第二に、療養病床の廃止は、医療措置の必要な高齢者から医療、介護、生活の場を奪うものであり、撤回すべきです。

 第三に、介護職が行う医療行為を法改正なしに拡大する仕組みをつくることです。

 今回の改正は、将来の拡大を視野に入れた仕組みをつくるもので、たん吸引、経管栄養にとどまらず、今後の拡大は必至です。その行為によっては生命にかかわる医療行為を他職種に肩がわりさせることは重大な問題があり、慎重な検討が必要です。高齢者の安全のためには、医療体制の充実こそが求められます。

 介護保険十年に当たり、保険あって介護なしと言われる制度の問題点を検証し、だれもが安心して利用できる公的介護制度へ抜本的に見直すことを求め、討論を終わります。

牧委員長 次に、阿部知子さん。

阿部委員 私は、社会民主党・市民連合を代表して、介護サービスの基盤強化のための介護保険法等の一部を改正する法律案並びに修正案について、反対の立場から意見を述べさせていただきます。

 今回の改正案は、医療、介護、予防、住まい、生活支援サービスが連携した要介護者等への包括的な支援の推進が主題となっています。高齢者が地域で安心して暮らし続けていくために、地域包括ケアの理念は非常に重要です。しかしながら、本改正案は、その理念が実現できる改正とは言えず、むしろ、在宅の高齢者の暮らしを困難にしたり、要支援認定者が介護保険を利用する権利を奪われかねない危険もあります。

 まず、地域支援事業に介護予防・日常生活支援総合事業を設け、介護予防事業の対象を要支援認定者に拡大し、市町村の判断によって行うとしていることです。市町村が同事業を導入した場合でも、要支援認定者が従来どおりすべての介護予防サービスをみずから選択し、利用する権利が保障されるのか、とりわけ利用者のニーズの高いホームヘルプなどの制限が危惧されます。

 そもそも、切れ目のないサービスの名のもとに介護保険認定者に対する介護給付と介護保険対象外の人に対するサービスを同一の事業の枠内として扱うこと自身に無理があり、介護保険制度の保険原理を崩すことにつながりかねません。

 また、財源の確保にも非常に困難があります。新事業のもたらすものは、本来の介護予防事業の方向性をも誤らせ、高齢社会に必要な地域保健のあり方を遠ざけかねません。

 また、今回、地域密着型サービスとして定期巡回・随時対応型訪問介護看護を追加するということですが、この事業が実際に機能できるのかどうか、全く見えません。

 加えて、包括定額払い方式となれば、報酬は介護度別の利用限度額の枠内に抑えられるため、結果として通所リハビリや訪問介護など他のサービスが制限され、QOLの低下が予想されます。また、枠外のサービスは自費か利用制限するしかなくなります。さらに、看護職に主導的な役割を与える形になるため、介護保険の柱の一つであるケアマネジメントの形骸化につながりかねません。

 高齢化社会における社会保障の一つの柱である介護保険制度をより使い勝手をよくすることは、社会的な要請です。しかし、今回の改正は、そうした社会的な要請に全くこたえていないばかりか、むしろ、保険制度として定着してきた介護保険制度を変容させかねないものであり、大きな問題が含まれていると思います。

 なお、修正案は、こうした根本的な問題を回避したものであり、賛成しかねます。

 最後に、サービス内容を向上させるためには、利用者にとって複雑になり過ぎた認定のあり方を見直し、必要な介護サービスの提供に向けて公的な負担をふやしていくことも必要であると考え、最後にこのことをつけ加えて、私の反対討論といたします。

牧委員長 以上で討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

牧委員長 これより採決に入ります。

 内閣提出、介護サービスの基盤強化のための介護保険法等の一部を改正する法律案及びこれに対する修正案について採決いたします。

 まず、柚木道義君外二名提出の修正案について採決いたします。

 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

牧委員長 起立多数。よって、本修正案は可決されました。

 次に、ただいま可決いたしました修正部分を除く原案について採決いたします。

 これに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

牧委員長 起立多数。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

牧委員長 この際、本案に対し、渡辺周君外二名から、民主党・無所属クラブ、自由民主党・無所属の会及び公明党の三派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者より趣旨の説明を聴取いたします。古屋範子さん。

古屋(範)委員 私は、民主党・無所属クラブ、自由民主党・無所属の会及び公明党を代表いたしまして、本動議について御説明申し上げます。

 案文を朗読して説明にかえさせていただきます。

    介護サービスの基盤強化のための介護保険法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  政府は、本法の施行に当たり、次の事項について適切な措置を講ずるべきである。

 一 介護職が喀痰吸引等を実施するに当たっては、知識・技術の十分な習得を図るとともに、医師、看護師その他の医療関係者との連携のもとに、安全管理体制を整備し、その上で実施状況について定期的な検証を行うこと。

 二 介護職員等の処遇改善については、財源を確保しつつ、幅広い職種を対象にして実施するよう努めること。特に、介護領域における看護師の重要な役割に鑑み、介護保険施設や訪問看護に従事する看護師の確保と処遇改善に努めること。

 三 介護サービス情報の公表制度については、適正な調査が実施されるよう、都道府県、指定情報公表センター、指定調査機関その他の関係者の意見を十分に踏まえつつ、ガイドラインの作成等必要な措置を講ずること。その際、事業者より申出がある場合には積極的に調査できるよう配慮するとともに、指定調査機関・調査員の専門性を活用すること。

 四 定期巡回・随時対応型訪問介護看護や複合型サービスについては、医師、看護師、介護職員間の司令塔づくりを含め、円滑な実施体制の実現を図ること。

 五 介護予防・日常生活支援総合事業については、その創設においても要支援認定者が従来の介護予防サービスと同総合事業を選択・利用する意思を最大限尊重すること。また、国として財源を確保し、各市町村のニーズに応じて適切に実施するよう努めること。

 六 介護療養病床の廃止期限の延長については、三〜四年後に実態調査をした上で、その結果に基づき必要な見直しについて検討すること。

以上であります。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

牧委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

牧委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。

 この際、細川厚生労働大臣から発言を求められておりますので、これを許します。細川厚生労働大臣。

細川国務大臣 ただいま決議されました附帯決議につきましては、その趣旨を十分尊重いたしまして努力してまいります。

    ―――――――――――――

牧委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

牧委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

牧委員長 次回は、来る六月一日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時十九分散会


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