衆議院

メインへスキップ



第10号 平成24年4月17日(火曜日)

会議録本文へ
平成二十四年四月十七日(火曜日)

    午前九時四十四分開議

 出席委員

   委員長 池田 元久君

   理事 岡本 充功君 理事 長尾  敬君

   理事 長妻  昭君 理事 柚木 道義君

   理事 和田 隆志君 理事 加藤 勝信君

   理事 田村 憲久君 理事 古屋 範子君

      相原 史乃君    井戸まさえ君

      石森 久嗣君    磯谷香代子君

      大西 健介君    工藤 仁美君

      斉藤  進君    白石 洋一君

      田中美絵子君    高井 崇志君

      竹田 光明君    玉木 朝子君

      仁木 博文君    西村智奈美君

      橋本  勉君    初鹿 明博君

      樋口 俊一君    福田衣里子君

      藤田 一枝君    藤田 大助君

      三宅 雪子君    水野 智彦君

      宮崎 岳志君    山口 和之君

      山崎 摩耶君    吉田 統彦君

      鴨下 一郎君    菅原 一秀君

      棚橋 泰文君    谷畑  孝君

      永岡 桂子君    長勢 甚遠君

      松浪 健太君    松本  純君

      坂口  力君    高橋千鶴子君

      小林 正枝君    阿部 知子君

      柿澤 未途君

    …………………………………

   国務大臣

   (社会保障・税一体改革担当)           岡田 克也君

   厚生労働大臣       小宮山洋子君

   総務副大臣        大島  敦君

   財務副大臣        五十嵐文彦君

   厚生労働副大臣      西村智奈美君

   厚生労働副大臣      辻  泰弘君

   厚生労働大臣政務官    藤田 一枝君

   厚生労働大臣政務官    津田弥太郎君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房少子化・青少年対策審議官)    伊奈川秀和君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房政府広報室長)          別府 充彦君

   政府参考人

   (厚生労働省保険局長)  外口  崇君

   政府参考人

   (厚生労働省年金局長)  榮畑  潤君

   厚生労働委員会専門員   佐藤  治君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月十七日

 辞任         補欠選任

  樋口 俊一君     高井 崇志君

  三宅 雪子君     磯谷香代子君

  江田 憲司君     柿澤 未途君

同日

 辞任         補欠選任

  磯谷香代子君     三宅 雪子君

  高井 崇志君     藤田 大助君

  柿澤 未途君     江田 憲司君

同日

 辞任         補欠選任

  藤田 大助君     井戸まさえ君

同日

 辞任         補欠選任

  井戸まさえ君     樋口 俊一君

    ―――――――――――――

四月十七日

 地域社会における共生の実現に向けて新たな障害保健福祉施策を講ずるための関係法律の整備に関する法律案(内閣提出第六八号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 地域社会における共生の実現に向けて新たな障害保健福祉施策を講ずるための関係法律の整備に関する法律案(内閣提出第六八号)

 厚生労働関係の基本施策に関する件


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

池田委員長 これより会議を開きます。

 厚生労働関係の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として内閣府大臣官房少子化・青少年対策審議官伊奈川秀和君、大臣官房政府広報室長別府充彦君、厚生労働省保険局長外口崇君、年金局長榮畑潤君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

池田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

池田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。白石洋一君。

白石委員 おはようございます。民主党の白石洋一でございます。

 きょうは、新しい年金について考えてまいりたいと思います。

 年金を新しくする際に、やはり大きな絵姿から考えていく、目標そして定義というのをいま一度明らかにして、そこから敷衍していく、演繹していく、もし迷ったらそこに立ち戻る、こういうことが大事ではないかなというふうに思うわけであります。

 そこで、大臣にお伺いします。

 そもそも公的年金というのはなぜ必要なんでしょうか。お願いします。

小宮山国務大臣 おはようございます。よろしくお願いいたします。

 もう白石委員は十分御承知だと思いますけれども、今、家庭の状況ですとか社会経済の状況とかがいろいろ変わっている中で、私的にやっていくだけではとても高齢期の生活が安定をすることはできない。そういう中で、一人一人の力で備えることも必要ですが、世代を超えて支え合うという形で高齢期の生活が安定できるようになる、そのためにやはり年金制度はその時代に合わせた形で必要なのだというふうに考えます。

白石委員 ありがとうございます。

 貯金したらいいんじゃないか、そういう考え方もあるわけでありますけれども、長生きリスクに備えさせると強制的に保険料を積み立てさせる、いわば政府のおせっかいですね、個人の生活にある程度介入し、立ち入って、そして老後を最低限の健康的な、文化的な生活ができるようにするということじゃないかなというふうに思うわけであります。

 そこで、お手元にお配りした資料でありますけれども、この一枚目のところに、年金の目的、仮置きですけれども、書いてみました。新しい年金というのは、勤労所得を、働けなくなったときに、最低保障金額以上で、相当割合代替するものであるということであります。

 これをもう少し分解すると上の表であります。横軸は時間、現役時代から退職時代、引退時代であります。そして縦の軸は所得の種類、上のところは勤労所得、汗水垂らして、額に汗して働く、これは、いずれは体の都合で働けなくなる、それに対して代替するのが年金であるということであります。一方、それ以外のカバーされない部分、不労所得でありますが、例えば不動産賃貸であるとか金融資産からの利子、あるいは株式からの配当あるいはその売却益、こういったものはカバーされない。なぜならば、一生涯、ずっとここからキャッシュフローが生まれてくるからということになると思うんです。

 ここを確認したら、必然的にどういうことかというと、所得テスト、年金テストというところがありますけれども、所得テストではなく年金テスト、つまり、現役時代に働いていた所得を代替するのが年金であるということで、必然的に導き出されるのではないかなというふうに思うわけであります。

 そうすると、では資産家の家に生まれたぼんぼんはどうなんだ、こういった話がありますけれども、それはカバーされない。不労所得については、最後は所得税そして相続税で社会に還元してもらう、こういうことではないかなというふうに思うんです。

 それで、次にお伺いするのは、今でも公的年金制度はあるわけでありますけれども、今なぜ新しい年金制度を導入しようということでしょうか。この点についても答弁をお願いします。

小宮山国務大臣 特にこれは与野党を超えた認識だと思うんですけれども、国民年金が、制度がもうもたなくなっている。特に、国民年金は、資産もある自営業の方が主体ということだったのが、今自営業の方は三割しかいらっしゃらない。非常に低賃金の非正規の方が四割、そして無職の方が三割ということで、そういう中で、この制度ではもたないと考える若い人たちが、特に今半数以上が保険料を納めていない。

 ここのところを何とかしないと無年金、低年金を解消できないということで、特にこれから年金に加わろうとしている若い人たちにとって持続可能だと信頼してもらえるような年金制度にするためには、新しくつくりかえる必要があるのではないか。そういう形で、新しい年金制度をそもそも民主党の中では考えたというふうに承知をしています。

白石委員 ありがとうございます。

 国民年金について非常に問題意識があるということでございます。私もそう思うわけであります。

 国民年金というのは、もともと自営業のための年金でありましたが、今満額で六万六千円。しかしながら、基礎年金と言いかえてもいいと思いますけれども、基礎年金のみを受給している方々の平均が五万円を切っている。そんな中で、一号もあり三号もありですから、一号だったらもっと低いんじゃないかな。一号を中心に、勤労世代を終えた方々の国民年金、基礎年金のみを受給している方々というのは月額五万円以下。

 そんな中で、まず、特例水準の解消ということが控えております。ことしの十月から、そして来年四月、再来年四月、それぞれ〇・九%、〇・八、〇・八と、過去の物価スライドの引き下げを先送りしてきた部分を解消する。さらに、二〇〇九年の財政検証のときには、二十六年間、マクロ経済スライドで〇・九%ずつ水準を引き下げる。こうなったらどういうことになるのかということであります。

 そうすると、それでなくても低い基礎年金のみを受給している方々、そこから〇・九%を二十六年間、二割強また引き下げられるということであります。フルでもらっている今の六万六千円、特例水準解消後六万四千円、そこから〇・九%を二十六年間、五万数千円レベルになってしまう。

 しかも、国民年金を受給している方々は非常に状況が悪い。払いたくても払えなかった方々、あるいは、安易に考えていて、納めていなかった方々もおられるんでしょう。しかし、長生きする、それは喜ばしいことですけれども、そのときの生活はどうなるかということであります。

 基礎年金というのは、基礎的な消費支出を賄うということが期待されております。では、本当に賄われているのかということなんですけれども、私は、その物差しは、高齢者の単身世帯を見るべきだと思うんです。

 高齢者の単身世帯がこれから急速にふえていくことが予想されております。今時点で一般世帯は五千万世帯ある。二〇三〇年も同じぐらいであります。これはちょっと手元の資料にはつけていないんですけれども、二〇三〇年にも五千万世帯であります。

 しかし、その構成でありますが、単身高齢者の世帯というのは現在四百六十六万世帯、九%であります。それが二〇三〇年には七百十七万世帯、一五%。一・五倍に伸びるということですね。この方々がしっかりと生活できるようにしていく、このことを考えてあげなければいけないんじゃないかなと思うわけであります。

 特に、この中でも東京都心にお住まいの方、都会の方々、生活費、高いです。そして、住居費も高い。若いときに持ち家を持たなかった、持てなかった、こういった方々がどうするのかということをやはり考えていかなければならないというふうに思うんですね。

 それで、基礎的な生活、最低限の生活といえば、生活保護が一つの制度としてあるわけであります。その生活保護の制度で、今どういう状況になっているのかということなんですけれども、先ほど申し上げました、単身の高齢者世帯の生活扶助水準というのは全国平均で七万五千円であります。それが東京都心、大都市になると八万円であります。そして、生活保護を受けていらっしゃる方はほとんど持ち家をお持ちでない。九五%が借家住まいでありますから、ほとんど住宅扶助を受けなければならない。その方々、全国平均で住宅扶助三万円、都心では五万円であります。ですから、全国平均でいえば最低限の生活というのを賄うために十万五千円、都心では十三万円、これぐらいは必要だというところになっているわけであります。

 そんな中で、今の国民年金はフルで六万六千円、でも平均は低い。さらにこれから下がっていく見込みがあって、さらに私が心配しているのは、年金が下がった、下がったとよく言われるんです。その下がった理由をよく聞いてみると、天引きされている介護保険料、これがじわりじわりと上がっていっているわけですね。

 今、これは市町村によって違うんですけれども、基準保険料というのは今年度から月額五千円になりました。加えて、後期高齢者医療制度の保険料、これも払わなければなりません。これも月額五千円程度であります。

 それが、二〇一五年、つまり、団塊の世代の方々がほとんど六十五歳以上になった。六十五歳以上になるというのは、要介護の方々が二十五人に一人になる、医療費も、平均が、それまでは年額十五万円だったのが年額五十万円に上がるということであります。そのときに、月額、それぞれ、介護保険料、そして後期高齢者医療保険料、六千円ずつになっていきます。

 さらに、二〇二五年、つまり、それらの団塊の世代の方々が七十五歳を超えていったとき、そのときには七十五歳以上というのは要介護というのが四人に一人。そして、医療費一人当たり年間八十万円を超えるわけです。そのときには、介護保険料は月額八千円、そして医療保険料、後期高齢者医療保険料というのは七千円になるということであります。

 もちろん、低所得者向け、世帯の全ての構成員が非課税である方々には特に軽減措置というのはあるわけでありますけれども、でも、基準がじわりじわりと上がっていって、それらは天引きされる。本当にやっていけるのかということなんですね。

 では、このところで、大臣、もし何か御感想があればちょっと。

小宮山国務大臣 どこの部分をお答えしていいかということなんですけれども、先ほど言われた最低保障年金という考え方のもとには、今いろいろるる御説明なさったような状況の中でも、高齢期になって少なくともこれだけの受給ができるという、そのことが人生の生活設計の上で必要だという考え方かというふうに思います。

 それから、生活保護については、やはり必要性に応じてやってきた結果が今の形になっているんですが、今、厚労省の中でも、特に低所得の方への対応ということで、今回も税制の関係で、簡易な給付措置とかいろいろ考えていますし、給付つき税額控除ということも考えていますが、厚労省としては、総合合算制度などを考える中で、一つは、やはり、最低保障機能をきちんとつけるということであれば、生活保護、これは仕組みは違うわけですが、仕組みが違うから整合性がなくていいということではないので、生活保護も含めた、これからの超高齢社会になっていく中で、横断的に、少なくとも国民の皆さんに納得していただけることを考えなきゃいけないということで、そうしたこともこれから検討していきたいというふうに思っていますので、ぜひ、党の方でもそういう御検討もいただければと思います。

白石委員 ありがとうございます。

 生活保護との整合性、つまり、最低限の生活を賄うにはどうすればいいか。生活保護との連動性、整合性、これは、二〇一〇年六月の「新たな年金制度の基本的な考え方について」も、生活保護との整合性を留意していくというふうにとっております。

 ですから、新しい年金の、最低保障年金の水準を決める、そして、その水準がその後どう動くかというところについても、これは公助の部分ですから、保険方式とはいえ、ここは全額税方式で公助の部分ですから、やはり、生活保護との連動性、整合性、リンクというものを考えていただきたいな、このように思うわけであります。

 今本当に、国民の皆さんに消費税の負担をお願いしようかというときに、不公平というところに非常に敏感であります。厳しい見方で見ております。

 一つは、保険料を払うべきなのに払っていない、あるいは税金もそうです、そういったところをしっかりと、きっちりと取っていくということ。そして、官民格差のところについても厳しい。そして三つ目は、生活保護と年金受給者との不公平感、この辺もしっかりと解消していくことが必要なんじゃないかなと思います。

 それで、時間の都合もありますので、お手元の資料で、スウェーデンの年金改革について、これを私御説明して、その日本に対する示唆というのを考えてみたいと思うわけであります。

 最後のページであります。

 スウェーデン、まず、年金は何とかせねばならぬという問題意識はあった。しかし、それはずっと積年の課題であったわけであります。

 三十年間、社民党というところが政権党であったんですけれども、一九九一年、総選挙があって、政権交代が起こったということであります。

 その直後、このときは与野党全七党の代表で年金ワーキンググループというのをつくった。与党は保守中道政党ですけれども、野党の方も入って、合意形成のプロセスのルールとしては、利害関係者はメンバーに入れないで、議員だけでグループを構成し、そして、議論はクローズドでやる。そして、合意後、一カ月とかそれぐらいたったらオープンにしていくということを合意した。

 そして、もう一つは、この合意事項については選挙の争点にしないということも合意して、そして議論を詰めていって、過程で二党は離脱して五党になったんですけれども、九四年ですね、その五党合意をもとに政府案をつくってガイドラインにして、それを国会において決定した。そして、九四年、施行グループというのを、発展的な解消をして設置した。

 その後、九四年に総選挙を行って、そのときに、先ほど申したように、年金については選挙の争点にしなかったということであります。争点にせずして総選挙を行ったら、また政権交代が起こったということであります。

 しかしながら、劇的なのは、政権を奪還した社民党においても、五党合意、戦略的ガイドライン、この方針をもとに最終合意をし、九八年に法案を可決、そして九九年に施行、そして、二〇〇三年から給付が開始されたということであります。

 年金というのは、非常に長い期間を置いて変えていく。既存の制度だと非常に利害関係があって難しい、だから新しい制度だ。でも、その新しい制度をつくっても、つくった人は世の中にいないかもしれない。でも、日本、高齢者の数がピークを迎えるのは三十年後、そして高齢者の比率が四〇%を超えてピークを迎えるのが二〇七〇年、これを我々はどうするかということを与野党で考える必要があると思うんです。

 この点、大臣、感想をお願いします。

小宮山国務大臣 スウェーデンで、やはり政権交代をしても年金制度は持続可能でなければいけないので、超党派でテーブルをつくって合意をし、政権がかわってもそういう形で改革を進めたということは、本当に示唆に富むと思いますし、日本でもぜひそういう形になっていくように願っています。

 このことについては、もう亡くなりました今井澄議員、当時自民党では、今はいらっしゃいませんが津島議員など、超党派で、関係した議員をお呼びして勉強会をして、私も参加したことがございますが、本当にこれは学ぶべき点が多いと思いますので、今回もぜひ、どのように年金制度をつくっていくかについては、与野党でそれぞれ考えを持ち寄って、政権交代をしても、その新しい考え方に基づいて持続可能なものをつくっていく、そういう形になっていくように願っています。

白石委員 これにて質問を終わります。ありがとうございました。

池田委員長 次に、和田隆志君。

和田委員 民主党の和田隆志でございます。

 早速質疑に入らせていただきたいと思います。

 今般、社会保障と税の一体改革に関する諸法案が、閣議決定の後、国会に提出されました。私どもも、与党側の一員として真摯に検討してまいりましたし、きょうテーマに挙げさせていただきます被用者年金の一元化の部分につきましては、自公政権時代にも、本当に政権にいらっしゃった方々、またその当時の与党の方々、大変な御努力をいただいて、その当時の関係者の意見をまとめられたことには敬意を表しつつ、質問させていただければというふうに思います。

 私ども、今回、政府・与党一体となって閣議決定いたしましたその法案の中身、数年前に前政権下でまとめられたものをある程度採用しつつも、将来のあるべき姿をにらんでは、私どもなりの考え方を持って当たりたいというふうに思っています。しかし、いずれにしましても、被用者年金の一元化というのは、ここの立法府に集まっている人々にとりまして、有権者の御意向を踏まえた上で、ぜひ実現していきたいテーマだと思っています。

 そこで、まず厚生労働大臣にお伺いいたします。

 今般提出していただきました被用者年金の一元化法案を含め、年金改革全般につきまして所管される厚生労働大臣としては、年金制度のあり方も語っていただきたいんですが、その手前に、後から申し上げますが、有権者の方々から、今の年金制度は、自分が得た給料、賃金から保険料をある一定割合で徴収される仕組みだと。そうだとすると、そのいただく賃金について、いろいろな感覚を持っていらっしゃいます。こういったところも含めまして、今の働いていらっしゃる方の環境も含めて、どのようなあるべき姿を実現すべきと考えていらっしゃるか、御答弁いただきたいと思います。

小宮山国務大臣 今回の社会保障と税の一体改革でも、一人一人がしっかりと働くということをまず前提に置いて、ディーセントワーク、ちゃんと人間らしく働いていくということを前提に、全員参加型の社会ということもこの一体改革の中に盛り込んであります。

 そして、年金制度についても、ずっと私どもも、働き方とかそれからライフスタイルの選び方によって不公平にならないように、どんな生き方をしても公平な制度にする必要があるというふうに考えていまして、そういう中で、民主党は、全ての国民が一つの制度に入るという新しい年金を考えてきたんだと思っています。

 その方向に沿って、今も、前の白石委員の御指摘もあったように、できれば超党派で、将来に向けてはきちんとした形を考えていきたいと思いますし、ただ、移行するにしてもそれは時間がかかりますので、現在の年金制度の中でも、例えば、非正規がふえている中で、短時間労働者に社会保険の適用を拡大するとか、そうした中の一つとして、まず被用者年金の一元化、これを国民の皆様にも納得していただける形で進めていく必要があると考えています。

和田委員 今御答弁いただいたところを我々も考えて取り組んでいるのでございますが、ぜひ、きょう御出席の副総理も含めまして、こういったお話をちょっとお聞きいただければと思います。

 私自身、与党の年金ワーキングチームの担当をさせていただいている中で、この数カ月、働いている方々からいろいろな御意見をいただきました。その中にこういうのがございました。

 その方は、現在五十一歳、御職業としては、ある市のごみ収集車の運転手をされていた。そして、昨年度から、つまり一年前の四月から、いろいろ市の財政が厳しい折から、そういった業務が外部委託に出された。そして、民間の業者の方に移籍されたんだそうです。そこで、移籍された後も、実は、同じ収集車を、ペンキの色を塗りかえて、ある民間会社の名前をつけて業務に従事されている。

 つまり、ここで私が本当にすごいなと思ったのは、全く同じ車を、全く今までと同じように運転されておられる。非常に世の中に必要な仕事でございます。それは確かでございますが、その方御自身が語っていただいたこととして、その市に勤務していたときの自分の給料は約五十五万円あった、そしてその後、先ほど申し上げたように、移籍した後、民間企業で働いている中で、給料としては何と二十二万円ほどであったと。つまり、五分の二になったということでございます。

 その方は非常に奇特な方で、それを、非常にふんまんやる方ない気持ちもおありだろうと思いますが、どうも、同じ仕事をされていた方々の中で集まってお話をされたことがあるそうで、まだ同じ公務に携わっている仲間もいらっしゃる。しかし、そうやって、いろいろな事情の中で、民間の方に移籍されて同じ仕事をやっていらっしゃる人もある。

 そういった中で、たまたま私の知り合いがその中に数人いらっしゃったんですが、これから先、国会では年金制度の改革に取り組むそうだ、与党も野党も含めてそれを考えていらっしゃる、その年金制度は、いただいた給料から保険料率を適用されて保険料を払っているわけですが、おのずと、給料が違えば保険料が違います、保険料が違えば、その部分に反映される将来の年金額が違う、しかし、本当にそのままでいいんだろうか、このような問題提起をいただいたんです。

 我々、年金制度の改革の部分で取り組める部分にかなり限界があることも承知いたしておりますが、しかし、働いていらっしゃる方々の周囲でそんないろいろな変化が起きている中、私たちは、それをそのまま通り過ごしていいんだろうかという問題意識を持って聞いた次第でございます。

 そういった意味におきまして、これから先の年金制度改革におきまして、各党がいろいろな意見を持ち寄っていいんだと思いますが、本当に働いていらっしゃる方々のいろいろなお仕事の状態で、全く一緒の仕事をしているという場合は極めてレアケースだと思いますが、ある程度同じような仕事の中で、ある程度同じような待遇が用意されて、その後にいろいろな保険料率が適用されて年金制度の組み立てが行われる、こういうふうに考えていかないと、私たち、どうも国民の皆様方の信頼を得るに足らないのではないかという問題意識を持ちました。

 以上、御報告申し上げておきますので、ぜひ、これから先、いろいろな制度の組み立てを考えていただくときに、そういったところも視野に入れていただければというふうに思っています。

 次に移りたいと思います。

 今回、被用者年金一元化法、この中身を含んだ国会への提出でございますが、これについて、先ほど申し上げたようなことも含みますが、厚生労働大臣は、その中でも現行の厚生年金制度を所管していらっしゃいます。

 今回、一緒になる方々の対象人員を考えてみると、厚生年金制度には約三千四百万人、相手となります共済年金制度には四百万人強、これぐらいのボリューム感の違いがございます。私ども、本当に三千四百万人の方々が一緒になっていただいた後、納得できる世界をつくる必要があるんだと思いますが、この点について厚生労働大臣の御所感をいただきたいと思います。

小宮山国務大臣 今御説明いただいたことも含めて、官民の格差ということを言われていると思うんですけれども、特に、今度新しくつくる、公務員が特権的だというふうに世の中から見られている新しい三階部分をどう構成するかということだと思いますが、企業年金の中にも、掛金の拠出ですとか給付の方法にはさまざまな形態がございますので、そこで国民の皆様に納得していただけるような新しい形をつくっていく必要があると思っております。

 副総理のもとに有識者会議がつくられて、そこで議論をされると承知をしていますけれども、国民の皆様が御理解いただけるような仕組みをできればつくっていきたい、そういうふうに思います。

    〔委員長退席、長妻委員長代理着席〕

和田委員 そこで、先般、それを研究していくために、政府全体としては、人事院という機関がありますので、人事院の調査を受けて、これから、先ほどお話に出ましたとおり、副総理のもとに置かれました有識者会議の検討が始まります。

 私ども、年末に与党を挙げて大議論した結果、人事院調査のいろいろな調査手法にはまだまだ問題点があるのではないかという意識を持っています。そのため、大綱にも、人事院調査等と一文字をつけまして、いろいろな要素を加味して考えていっていただきたいというふうに思っています。

 さて、まず初めに、この人事院調査を依頼されたのは財務大臣と総務大臣です。その結果を受け取った財務大臣、総務大臣として、現在、この調査結果についてどのような所感を持っていらっしゃるか、それぞれ副大臣にいらっしゃっていただいていると思います、お答えいただきたいと思います。

五十嵐副大臣 お答えをいたします。

 三月に公表された人事院の調査では、御承知のとおり、公務員の退職給付全体が民間の退職給付を約四百万円上回っているという結果が示されました。

 この官民の格差を埋める必要があると感じておりますが、その方法についてはいろいろあろうかと思いますので、岡田副総理のもとで開催をされます有識者会議の議論を踏まえて、各省庁と連携しつつ検討してまいりたい、こう考えております。

大島副大臣 和田委員にお答えをさせていただきます。

 先ほど五十嵐副大臣からも御指摘がありましたとおり、公務員の退職給付全体と民間の退職給付全体、四百万円の格差があります。

 人事院からは、官民均衡の観点から、民間との格差を埋める措置が必要ということと、退職給付の見直しに当たり、国家公務員の退職給付が終身年金の共済職域と退職手当から構成され、服務規律の維持等の面から重要な意義を果たしてきた経緯や、民間では企業年金を有する企業が過半を占めていることを考慮した対応という見解が示されています。

 副総理のもとで開催される有識者会議の議論も踏まえて、各関係省庁とともに検討していきたいと考えております。

 以上です。

和田委員 今の御答弁をお聞きしておりますと、それぞれ両省としても、官民の格差を埋めることは必要という判断は、人事院の報告のとおり受けとめていらっしゃるようにお伺いいたしました。

 これから先は、どのように埋めるかでございます。その際に、今のこの局面をぜひ両省並びに全政府でお考えいただきたいというふうに思います。

 それは、私ども、今般、年金制度改革法案をまとめるに当たって、与党の中でも随分議論させていただきました。実は今回、法案の中には、与党から御提案申し上げ、政府部内でも御検討いただいた結果として、年金の特例水準の解消を内容に盛り込みました。

 当然のことながら、ぎりぎりの生活をされている年金受給者もいれば、高額の年金受給者の方々もいらっしゃいます。年金の特例水準の解消には、一律に特例水準を解消させていただくという、非常に皆様方には御説得申し上げなければいけない内容を含んでいます。

 さらに言えば、高額受給者の方々には、基礎年金の国庫負担の部分まで、ある一定金額以上の所得がある方々には削り込ませていただく。つまり、財政資金として本来既裁定されている、つまり支給すると決まっている金額の中でも財政資金を幾分か削らせていただくという決断をして、盛り込んでいます。

 つまり、このように、年金受給者の方々の本当の意味でのあるべき権利というものは、私ども、本来もうちょっと広くとってもいいのかなと思いますが、今般は、社会保障制度の将来をにらみ、消費税の税率アップもお願いしながら、どうしても、できるだけ調整させていただくという視点に立っています。

 こんな中で、本当にこれから先、職域部分について結論を得るときに、私たちが今までどおり、事業主負担とはいえ、財政資金を張りつけるような方法があってよいのかどうか、少なくとも与党の中では、相当疑問視する意見が出ました。

 現在、政府の中では、財務省、総務省さんは税制改革も担当されている省庁でございます。消費税についても、国税と地方税がございます。ぜひ、そういった税制改革をお願いする大臣のお立場を含めて、この部分について、現況、答弁できるところをしてください。

五十嵐副大臣 新たな年金制度の三階建て部分については、大変難しい問題があると思います。

 退職金と年金にして出す部分とのバランスの問題とか、あるいは民間と公務員との退職金のバランスの問題というようなこともございますので、これは慎重に検討をしなければならない。事業主負担をどう扱うかという先生御指摘の問題も、当然、その中に含まれて、検討していかなければならない課題だろう、こう思っております。

 いずれにしても、岡田副総理のもとで開催される有識者会議の議論をよく見守ってまいりたいと考えております。

大島副大臣 先ほど御答弁されました五十嵐副大臣と内容はかぶる面が多いんですけれども、新たな年金のあり方については、岡田副総理のもとで開催される有識者会議において、退職給付の一環として、先ほど御指摘ありました事業主負担の扱いも含めて、専門的な知見を交えながら、国民的な観点に立った御議論が行われるものと期待をしております。

 同会議の議論も踏まえて、関係省庁とともに検討してまいりたいと考えております。

 以上です。

和田委員 いろいろな省庁のいろいろな利害が絡みますが、ぜひ、政務三役にお入りいただいている先生方には、政治家として、国民の皆様方の御納得をいただけるような結論を導いていただくよう、努力をお願いしたいと思います。

 最後に、提出資料を見ていただければと思います。

 最初のページが、人事院調査を、横だったものを縦に私どもの事務所で描きかえたものでございます。

 先ほど来お話が出たとおり、この退職給付という言葉には、いわゆる退職したときに受け取る退職金と、その後、年金としてずっと、人生を暮らす間に受け取るものとが、現在価値に引き直された柱として今までも比較されてまいりました。

 副総理のもとで有識者会議を設置していただく検討材料は、この柱の高さだというふうにお聞きしております。つまり、この二つの要素を総合的に勘案されるんだというふうにお聞きしておりますが、これを見ていただきますと、一目瞭然、濃い色の柱の高さが全然違います。薄い色のところの高さがまた相対的に違います。しかし、こういったことを年金の一元化を図っていく際に国民の皆様方の御理解をいただくためにはどう変えていったらいいのか、ぜひ真剣に御議論いただければというふうに思います。

 裏側を見ていただければと思います。

 裏側は、先ほど申し上げたとおり、人事院調査等と一文字を入れた理由を記すために挙げたものでございます。細かいことは申し上げませんが、各機関、いろいろな調査を行っていただいておりまして、押しなべて言いますと、人事院調査よりはかなり格差が出ているような風情が醸し出されています。

 いろいろな要素が複雑に絡んでおりますので、それらについては、与党側でも、また政府側でもしっかり勉強していただければというふうに思います。

 最後に、副総理、これから有識者会議を設置されて検討されていく中で、どんなことを中心に、どんな視点で取り組んでいかれようとされているか。

 また、時間がございませんので一緒に質問させていただきますが、先般、副総理は、政府の中でリーダーシップを発揮されて、新規の公務員採用を大幅に抑制されました。新しく公務員に、夢を持って入ってこようとしている人間にとりましては、かなり痛みを感じる政策でございます。

 その若い学生からお聞きしたのでございますが、その人から見れば、自分たちも国民の一人として痛みを分かち合う必要はあるのかもわからない、しかし、そうだとすれば、今現役で公務員で頑張っていらっしゃる方々、公務員を退職して余生を送られる方々にも、ぜひとも国民の一人として痛みを分かち合っていただきたいと考えるが、副総理のお考えはどうなんだろうか、このような御質問を私自身がいただきました。

 ぜひ、先ほどの有識者会議の検討の視点も含めて、お答えいただければと思います。

岡田国務大臣 二問御質問いただきました。

 後者の方からお答えさせていただくと、かなり思い切った採用抑制をさせていただきました。いろいろな御批判もあることも承知しております。しかし、私としては、総人件費抑制のためにできることは全てやる、そういう思いの中で進めてきていることの一つでございます。したがって、それだけではなくて、例えば、四十代、五十代の皆さんに希望退職を募って、そして早目にやめていただくということも今制度設計中でございます。

 それから、今委員がいろいろ御指摘になったことは非常に興味深いわけですが、有識者会議のもとでこれから議論してもらうわけですが、一つは、この人事院調査そのものが問題がないのかどうかということの検証も当然必要であります。

 そういったことについては、党の側でもいろいろ御議論いただいていると聞いておりますので、ぜひいろいろな御指摘をいただければ、そういったことについても議論してみたいというふうに考えております。

 あわせて、職域加算の部分をどうするか。現在四百万の官民格差があるということですが、これを是正していく中で、この職域加算の問題というのも議論されなければなりません。

 ただ、一つ、よく誤解があるのは、この四百二万という数字が正しいかどうかは、これは先ほど申し上げたとおりで検証が必要かもしれませんが、この四百二万の中には、この図にも示されておりますように、退職金だけではなくて、年金の部分も含まれて四百二万という格差になっている、つまり職域加算の部分が入ってこうなっているということでありますので、一部にありますように、職域加算の部分を廃止すればその分財源が助かる、こういう議論があるわけですが、それは多分適切ではない。

 つまり、四百二万の官民格差をなくすという、その中にそういったことも含まれているわけでありますので、あとは、四百二万のこの官民格差をなくしていく中で、退職金の部分とこの職域加算の部分をどういうふうに考えていくのか、これが有識者会議での議論のテーマになるというふうに考えております。

    〔長妻委員長代理退席、委員長着席〕

和田委員 いろいろな視点を持っていただいているようでございますので、くれぐれも、先ほど論点として出しましたように、今回の一元化は、かなり多数の民間企業に働く方々にとって、どういう結論になるのか、すごく注目されている案件だということをぜひ視点に置いて取り組んでいただければと思います。

 これから先も、与党・政府一体となってこの案件に取り組んでいき、与党側からもしっかりと提言を申し上げることをお誓い申し上げまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

池田委員長 次に、田村憲久君。

田村(憲)委員 自民党の田村でございます。

 きょうは副総理もお越しをいただいての審議ということでございますが、まず初めに、この委員会といいますか、厚生労働省でありますけれども、副大臣、牧副大臣が辞任をされまして、西村智奈美副大臣が新たに就任をされました。

 副総理、牧副大臣の辞任、これをなぜ受理されたんでしょうか。総理を補佐されているという意味からして、なぜ牧副大臣の辞任を受理されたのか、お答えいただきたいと思います。

小宮山国務大臣 私の方から先に、私の省のところですので、事実関係を申し上げますと、三月三十日金曜日の夜に、牧副大臣から、一身上の都合によりということで辞職願が提出をされました。大変これは重いものなので、官房長官が本人から事情を聞くということで、慎重な取り扱いをいたしました。政治家の判断であり、辞意がかたいということが確認をされましたので、三日の夜に辞表を受理することになりました。

 これだけ時間を要したのは、それぞれの事情を直接官房長官が伺って確認をする必要があったためで、そうした処理の仕方については本人の希望もあったというふうに私は聞いています。

田村(憲)委員 形式的な話はそういう話なんでしょうけれども、いろいろと伝えられているところ、また我々野党が、皆様方の党内のいろいろな事情を仄聞させていただきながら、その後いろいろな活動に出たわけですね。

 それは、消費税の絡む一体の法案が閣議決定され、出てくる。これに対して快く思っていなかった副大臣それから政務官等々の方々が一斉に辞表を出されたわけですよ。そして、それに対して、我々野党、特に自民党は、そのような閣内が一致していないような、そういう内閣のもとで委員会審議できない、こういうようなお話をさせていただいた。結果、受理せざるを得なくなった。これが大体のところの流れであったというふうに我々は理解いたしております。

 そこで、お聞きしたいんですけれども、資料を見ていただきますと、ちょうどこれは西村副大臣が就任されたときの写真だと思いますが、ここに書いてある三段目のところであります。六日にやった記者会見、専門紙に対する記者会見のようでありますけれども、「その上で」の後、「二〇一四年四月からの段階的引き上げということになるので、そこは今こういう経済状況で上げることはないと確信している」と発言をされたというふうに、これはネットのニュースでありますけれども、薬事日報というところのニュースだと思うんですが、これには書かれております。

 西村副大臣、記者会見でこういうような御発言をされたんですか。

西村副大臣 御質問をいただきまして、ありがとうございます。

 確かに、文字上に起こしますと、こういう発言、議事録にございまして、ただ、強調したかったところは、この記事で書かれておりますところの前段部分、つまり、社会保障制度改革のためにはやはり安定財源が必要であるという立場に立ちますので、それは国民の皆さんに、行政改革、政治改革をきちんとやりながら、先送りできないということを説明してきたところですと。なおかつ、政府の成長戦略、また金融政策等々も含めてやっていく中で、消費税の増税は政府・与党の責任としてやり切るということが必要なのではないかと思っております、こういうふうに、その部分を挟んで、前後で話しております。

 これは就任した日の各記者クラブへの挨拶の中で、行きましたら、一つのクラブの中で、消費税についてどうですかという質問が出ましたので、それに対してお答えする中で答えたものですが、ほかの専門紙では、私の、今、田村委員が御指摘くださった部分、ここについては、恐らく意味がわかりにくかったんだと思うんですが、そこだけ省かれて、前後の、私が今申し上げた発言のみ記載しているという記事もございまして、私といたしましては、ちょっとわかりにくい表現方法をしたということで、そこは、今後こういうことがないようにというふうに反省をしております。

田村(憲)委員 いや、わかりにくいとかわかりにくくないじゃなくて、ここには、二〇一四年四月からの段階引き上げ、これは八%に上げる段だと思いますが、「今こういう経済状況で上げることはないと確信している」と答えているんです。ですから、その前後はどうでもいいんです。

 ここが大事な話で、一応、閣議決定された内容、法律には上げると書いてあるわけですよ。それが、上げることはないと確信していると言ったとすれば、これは大問題なんです。前段、後段は関係ないんですよ。これをあなたはおっしゃったのかおっしゃっていないのかを御確認させていただいているんですよ。

西村副大臣 先ほども申し上げましたけれども、私が申し上げたかった趣旨は、社会保障と税の一体改革は先送りができないということであります。

 文字に起こしますと、確かにこういうふうに申し上げてはいるんですけれども、これは文脈で、二〇一四年の四月からの段階的引き上げということになるので、今ではないということを強調したということでございます。

田村(憲)委員 では、二〇一四年四月、八%に引き上げるということに対しては当然賛成だということでいいんですね。

西村副大臣 野田内閣の一員として、私は政府方針に賛成でございます。

田村(憲)委員 だから、そう言ってくれればいいんですよ、初めから、これは間違えていると。

 私の趣旨は、もしこれが書いてあるとおりだとすれば、これはまた不一致だという話になりますから、我々、委員会、あしたからできなくなっちゃうんです。だけれども、今の話だと、これを書いた人が副大臣の気持ちをそんたくできなかったということで、その方がちょっと誤って書いたというふうに言われるわけであって、あなたはまさに二〇一四年の四月から引き上げるということに賛成だということでありますので、そういう意味で、あしたからの委員会はできるということになったんだというふうに思います。

 時間がございませんので、次に進みたいと思いますが、副総理、後期高齢者医療制度、これは廃止法案は出されるんですか、出されないんですか。これは大臣に聞いたらいいのか、ちょっとよくわからないんですよ、どこに出てくるかわからないから。

小宮山国務大臣 済みません、先に申し上げさせていただきますけれども、厚生労働大臣主宰の高齢者医療制度改革会議で検討が進められまして、最終的な取りまとめが二十二年の十二月に行われました。

 これについてさまざまな御意見が出されてはいますけれども、これを踏まえて高齢者医療制度の見直しを行う。今回まとめました大綱の中でも、関係者の理解を得た上で、廃止に向けた見直しの法案を提出するとしておりますので、今提出できる方向で関係者の合意を得る努力をしているところでございます。

田村(憲)委員 提出するということを言われたんだと思います。厚生労働委員会に出てくるのか特別委員会に出てくるのか、それはよくわかりませんけれども。

 すると、これは高齢者医療制度の肝なんですよね。つまり、後期高齢者医療制度という制度を廃止するという話になれば、これは大きく高齢者医療制度が変わります。そうすれば、これは社会保障と税の一体改革に絡んでくるので、この法案が出てこないことには消費税の引き上げということと一対にならないという話になりますから、これは、特別委員会で議論をしても、この法案が出てくるまで、つまり廃止法案が出てくるまでは消費税を上げるということにできないという話になると私は思うんですよ。これは、副総理、それでいいんですよね。

岡田国務大臣 まず、後期高齢者医療制度の廃止の問題は、今厚労大臣が答弁されましたように、厚労省内でいろいろ御努力をいただいているところだというふうに考えております。

 特別委員会での議論について、委員の御指摘ですが、そういう御意見もあるいはおありかもしれませんが、基本的にはそれは各党間で話し合うこと、まさしく今国対ベースでいろいろな特別委員会について議論しておりますし、特別委員会が設置されれば、その責任者間で議論がなされることだというふうに考えております。

田村(憲)委員 いや、副総理、私がお聞きしているのは、後期高齢者医療制度というものを廃止して新しい高齢者医療制度をつくるということは、私は社会保障制度の中の大きな柱になると思っているんです。

 ですから、これが出てきて議論をされて一定の方向を見ない限りは、これは社会保障と税の一体改革というものがなされたというような話にはならないというふうに思うんですが、同じ認識で結構ですねということをお聞きしているんです。

岡田国務大臣 特別委員会を設置して社会保障・税一体改革について議論をするということについては、昨日の国対委員長間でかなり方向性は出たのではないか、各党、共産党を除いて、そういう方向で大体合意されたのではないかと私は伺っております。

 その特別委員会でどういう内容を盛り込むかということも、基本的には、それは各党間で話し合われることであって、そのうちの後期高齢者の関係が入っていなければ審議ができないとかできるとか、そういうことも、ここで決めることでは私はないと思います。

田村(憲)委員 いやいや、政府の方針として、社会保障と税を一体改革でやるというのは、消費税を上げる限りは、社会保障が持続可能であって国民に一定程度の安心感を与えられるということが当然セットになっている話だと私は思っているんですよ。

 聞き方を変えます。

 それでは、消費税を上げるための条件として、この後期高齢者医療制度を廃止して新しい高齢者医療制度をつくるということ、これは必須の条件となるというふうに思っておられますか、思っておられませんか。

岡田国務大臣 委員のその御意見は御意見としてわかりますが、基本的にはこれは各党間で話し合うことで、ここで何か、こういう条件だとか、そういう話では私はないというふうに思います。

田村(憲)委員 いや、おかしいですよ、それは。政府として消費税を上げるというのは、これは国民に税の義務を課すわけですよ。それだけ大きいことをやるには、あなた方は、社会保障というものを、やはり安定的に国民の皆様方に安心感を与えられるような制度にするということが前提だというふうに考えてこられたはずなんですよ。答弁でもいろいろなところでそういう答弁をされていますよ。

 であるならば、その中の一つのメニューとして、この後期高齢者医療制度、これはあなた方がさんざん、我々自公でつくったときに、非難をされた。もともとは、あなた方も、これに対してはそれなりの理解を得ながら我々はつくってきたんですけれどもね。でも、急遽、成立した後、ころっと態度が変わって、非難に変わった。そして、政権をとった後、マニフェストにも入れたんですよ、これを廃止すると。

 その後、社会保障と税の一体改革だといって、マニフェストに何にも言っていなかった消費税のことを、いきなり上げるということを打ち出して、そのときに、やはり消費税だけじゃまずいからというので、この社会保障全体の安心、安定というものをつけたわけでしょう、セットとして。

 その中で、この後期高齢者医療制度を廃止して新しい高齢者医療制度をつくるということは、これはその必須条件になっているのかなっていないのかというのは、これは国会が決める話じゃなくて、あなた方が、政府が消費税を上げるという法案を出すのに際して、心構えとして示すべき話じゃないんですか。それを国会が決めるなんて無責任な話をしていいんですか。

岡田国務大臣 社会保障・税一体改革の中で、確かにタイミング的には今回法案が出ていないわけですから、タイミングがずれているわけです。そのことをもって私は社会保障・税一体改革が議論ができないというふうには考えておりません。

田村(憲)委員 そういう話ですか。結局は、消費税は上げたい、ほかのが決まらなくても消費税は上げたい、これが政府の本音だということが改めてよくわかりました。国民の社会保障に対して、余りそういう認識はないんだなということを改めて感じたわけであります。

 これは出さないなら出さない、後期高齢者医療制度を廃止しないなら廃止しないと言っていただいた方が、我々は議論はしやすいんですよ。これがネックになって消費税の議論ができないというのは私は不幸だと思います。ですから、早く方針を決めてください。いいですか。自治体が、都道府県が、知事さんらがうんと言わないから、だからなかなか法案を出せないんですなんて、そんな逃げ腰の話をするんじゃなくて、それなら、やめるならやめると言っていただいた方が次の議論のステップに進むんですよ。本当に消費税の議論をしたいのなら、それぐらいの御覚悟をしっかりと決めていただいてから特別委員会というものをつくって、その上でこの議論をさせていただきたいと思います。

 私、いろいろと今回の一連の社会保障制度改革の中身を見させていただいて、消費税を上げるから、例えば八%に上げたときに、簡易な給付金みたいな形で今、一人当たり一万円ぐらい、低所得者、住民税非課税世帯になるんでしょうか、こういう方々には一万円を支給をすべきだ、いや、一万円では足らない、総計で四千億だ、いや、もっと必要だなんという議論を民主党の中でやっておられるということを新聞等々で拝見をさせていただいておりますが、あわせて、この低所得者対策として年金の加算の法律が出てまいりました。

 中身を見まして、不思議だなと思ったのが、これ、基本的には住民税非課税世帯が対象になって、しかも老齢基礎年金、これは、実際問題、物価スライドでこれから下がっていきますから、六万四千円という計算でしておりますけれども、この老齢基礎年金以下の方々には六千円をつける、加算する、こういう法律ですよね。大臣、そうですよね。

 これを見ていて不思議だと思うのは、多分、低所得者だから消費税も上がるから気の毒だという話だと思うんですけれども、そもそも、六万四千円以下の人たちは六千円をつけてもらって七万円になるんですよ。極端なことを言えば、四十年間基礎年金を満額払っておられた方々は満額年金をもらえます、基礎年金を、六万四千円。それでも、それだけだったらば住民税非課税世帯になる。その場合は六千円足して七万円にしよう。何かあたかも最低保障年金をこの場で実現しようかなという透けた下心が見えるんですけれども。

 不思議なことに、六万五千円、厚生年金をあわせてもらっている方は六千円もらえないんですよね。逆転現象が起こるんですよ、これ。不思議ですよね。六万四千円ならば住民税非課税世帯で七万円になるんです。ところが、年金を月々六万五千円もらっている人は、六万五千円のままで、七万円にならない。

 この逆転現象は制度設計の不備だと思うんですけれども、大臣、どういうような趣旨でこういうような制度設計をされたんですか。

小宮山国務大臣 低所得者の範囲としては、今委員もおっしゃったように、市町村民税が家族全員が非課税で、かつ、年金そのほかの収入が老齢基礎年金の満額以下の人といたしました。そこに一律六千円というと、おっしゃるように、六万四千円からちょっとでも上に行くともらえない。

 ただ、このような逆転というか、そういうことが起こるというのは、今までの制度の中でもそういうことは起こってきたことで、例えば配偶者の加算があることで受け取る年金額が納付実績に比べて逆転するというようなケースもございまして、受給したときの生活の状況に着目をした政策的な加算によって、例えば納付意欲が変わるとか、そうしたことにはならないと思っていまして、完全に逆転が生じないようにするためには、低所得者の範囲を超える所得の人を日本年金機構が細かく把握をして、細かな加算を行っていく、これは実務上もかなり複雑になりますので、そういう意味では、最低保障機能の強化が必要だということで今回いたしましたので、多少逆転現象などが起こることはやむを得ないことだと考えています。

田村(憲)委員 消費税を上げるからという流れの中で、こうやって低所得年金生活者に対して何らかの加算をしなきゃいけない、我々は反対ですよ、はっきり言って、ばらまきですから。ばらまきですから反対ですよ。最低保障年金七万円の下準備に入ったような、そんな下心が透けて見えるような法案ですから賛成できませんが、だけれども、少なくとも、逆転現象が起こって、六万四千円がちょうど縁の切れ目で、それよりちょっとでもあったら七万円には達さない、しかし六万四千円ならば七万円に達するなんて、何かおかしくないですか。

 こんな逆転現象が生まれること自体が、私は年金の公平性を、全く信頼を失う話になると思いますし、あわせて、今までもそんな制度がありましたから、不備は不備ですけれども見過ごしますなんということで、真面目に社会保障制度を考えておられるのかなと心配で仕方がないんですね。

 これは制度の大きな穴ですから、指摘いたしますし、これからもこの問題は追及をしていきたいと思いますが、そもそも、もう一つ大きな穴がありまして、岡田副総理、お聞きいただきたいんですが、これは住民税非課税世帯ならばもらえるんですよ。住民税課税世帯だともらえないんです。

 ところが、世帯分離というのがいっときはやりまして、これは、ちょうど介護保険でユニットケアの特養、これが負担がふえたときに、補足給付というのを低所得者に対してやったんです。そのときに、いきなり負担の上がる方々が世帯分離をすれば、これは低所得者になって、補足給付がもらえてというか施設の方に入りまして、それで料金が下がる、こういうような制度だったものでありますから、各自治体でこれを勧めたか勧めなかったか私は正確にはわかりませんけれども、非常にこの世帯分離がふえたというのがあるんですよ。

 きょうは総務省をお招きしていませんけれども、世帯分離の要件をお聞きしますと、これは、一つは、一緒に住んでいるかどうか、それからもう一つは、やはり生計を一にしているかどうか、こういう話だと。生計を一にしていなければ、同居していても世帯分離はできるというんです。

 具体的に、自治体なんかに聞いて、もし、一緒に住んでいても実は生計は分かれているんですという訴えがあって、世帯分離してくださいと言えば断れますかと言ったら、そこまで細かく全ては確かめられませんねという声が多かったです。

 ということは、これは五百万人で四千数百億という試算をしていますよね、この年金の加算を。もっと世帯分離して、だって、みんな同じように保険料を納めているんですからね、たまたま息子さんと住んでいるから住民税非課税世帯じゃないという方々が、では世帯分離すれば、月々六千円、二人だったら一万二千円、これに十二掛ければ十四万四千円ですか、それだけもらえるということになれば、どんどんふえてくるんじゃないですか。こういう問題をどうやって皆様方は防ぐ予定なんでしょうか。

小宮山国務大臣 このように低所得者加算を住民税の非課税世帯でやるというようなやり方は、現に介護保険ですとか国民健康保険などの保険料低減、自己負担低減など、今の社会保障制度の中でもやってきていることですね。

 ですから、そういう中で、今回のようなやり方をしたときに世帯分離が進むかどうかというのは、それはやはり家族のあり方、それぞれお考えになるので一概に言えるものではないと思っていますので、こういうような形でそういう形の試算はしていないということです。

田村(憲)委員 もう本当に性善説に立たれるすばらしい大臣でございますが、負担がふえていなければ、そんなにお年寄りの皆様方は困りませんから、年金が月々六千円ふえる、これに対して、そこまでは意識はないのかもわかりませんが、消費税が上がります、しかも、介護保険はどれだけ上がりましたか、大臣、今回の改正で。無理やり、全国平均五千円以内には一号被保険者は抑えましたけれども、事実上もう五千円ですよ。八百円以上上がったという結果ですね。地域によっては、六千円ぐらいまでいっている自治体もありますよ。さらに、後期高齢者医療保険制度の保険料も上がっていますね。

 実は、デフレだデフレだといいながら、高齢者の生活物価は多分上がっているんだと思います。デフレの主な原因、物価を見てきますと、指標なんかに入れているものを見ますと、比較的若い方々が結構使うようなものが多いものでありますから、お年寄りの消費者物価みたいなものを特別に抜き出してみれば、多分、実はお年寄りの消費者物価というのは私は上がっているんだと思うんですね。

 そんな状況の中で、夫婦二人で年間十四万四千円もらえる、ふえると思えば、それはなかなか、そう性善説に立つかどうか。もしくは、今も実は生計は分離しているんだけれども、住民税は同じだから世帯分離しなかったというお年寄りもいると思いますよ。

 だから、どんどん世帯分離しますから、果たしてそういうような方々がどれぐらいおるというふうに把握されているんですか。今は世帯分離せずに、つまりこの対象じゃないですけれども、これから世帯分離をすればこの年金加算の対象になるというふうに思われる方々がどれぐらいおられるというふうに把握されておられるんですか。

小宮山国務大臣 今申し上げましたように、そうした試算はしておりません。

 それで、全体に社会保障制度を個人単位か世帯単位かということは、これはこれから考えていかなければいけない問題だと思っていますが、現在は、こういう形で行ってきている介護保険などと同じ仕組みにしたということです。

田村(憲)委員 実際に年金として現金が配られる話ですから、今までの話とはかなり違うという認識をお持ちいただき、我々は、こんな世帯分離を誘発するような、勧めるような、勧めるわけじゃないんですけれども、結果的に勧めてしまうようなこんな制度には反対であるというふうに、あえてこの場で申し上げたいなというふうに思います。

 さて、この年金加算によって、こうやって十四万四千円ふえるんですね、これは一例でありますけれども。六千円、夫婦二人で一万二千円ですから、十二カ月掛けると年間十四万四千円。さらに、介護保険の方も、今回のこの低所得者対策で、平均するとこれは二万六千円ぐらい負担が減るであろうと言われています。これを合わせると既に十七万円、もらう分と減る分で、これは一つのモデルでありますけれども、高齢者の方々は得をするというか、消費税を上げる低所得高齢者世帯対策で十七万円、今よりもよくなるんですね。

 さらにこれに、簡易な給付制度で、一万円か一万五千円なのかわかりません、あれは今、民主党の議論は、最低一万円で、それよりももっとふやそうという方々と、いや、一万円で抑えようという方々との闘いが民主党の中で今やられているんだというふうに私は理解しておりまして、あれが五千円や三千円になるとは思っていないんですけれども。

 すると、これで十八万円ですよ。さらに、夫婦そろえば十九万円という話になるわけですね、これ、そういうことですね。

 さあ、これに、年金の場合、五%仮に物価が上がると、物価スライドというものがかかるんですよ、物価スライドというのが。もちろん、マクロ経済スライドがそのときにはスタートしますから、〇・九なのか一なのか、その年によって違うと思いますけれども、それぐらいはその中から引かれます。しかし、四%ぐらいは上がる可能性があるわけですね、年金は。年金の支給額も上がるんですよ。

 すると、十八万、九万、世帯でふえた上に、さらに、夫婦二人で年金は物価スライドでふえるんですよ。本来、物価が上がったときのことを考えて物価スライドがあるんですね、年金生活者には。消費税が上がるということは物価が上がるということですから。実は、消費税が上がることに対して、年金というのは本来強い制度なはずなんです。なのにこれだけやりますと、何か一世帯二十万以上、もっと、二十数万円、今よりもよくなるんじゃないのかな。

 これはばらまきじゃないですか。一方で消費税を上げておいて、お年寄りの方々は何かよくなっちゃったみたいな話になっちゃうんじゃないですか、これ。

 私、岡田さんの本来のお考え方からすれば、こんなことはよろしくないと思われておられるんだと思うんです。そもそもは、消費税を上げよう上げようと前から言われておられた方でありますし、前回の選挙のときに消費税を封印したことに対して快く思われていなかったんだと思うんですけれども、消費税を上げるに当たって、これだけ高齢者の方々が若い方々よりも優遇されるということに対して、果たして、今こういう制度設計を導入すること自体、岡田副総理・担当大臣はよろしいと思っておられるのか、いや、よろしくないと思っておられるのか、いかがでございますか。

岡田国務大臣 今、田村委員言われた中で、ちょっと見解が違うところが幾つかあるんですね。

 まず、消費税が五%上がったときに年金は五%上がるわけではありません。物価スライドということですから、消費税が五%上がったときに物価がどれだけ上がるかと。丸々上がることはないわけですから、いずれにしても、それは五%ということではないというふうに思います。

 委員御指摘の中で、簡素な給付措置、これも党の中で今検討中で、具体的な水準は何か出ているわけではないんですが、この簡素な給付措置と、それから年金の最低保障機能の強化とか介護保険料の軽減というのは、政策としては次元の違う問題であります。

 簡素な給付措置というのは、これは確かに消費税が上がるときのショックを和らげる、所得の少ない方に対して逆進的に出る消費税、そのショックを和らげるための措置であります。しかし、所得の少ない方の年金の加算とか介護保険料の軽減というのは、これは消費税を導入することに伴う措置ではなくて、むしろ、高齢者の中にも所得の二極分化が進んでいて、年金を受け取りながら生活するに十分でない、そういう方々が非常にふえていることに対して、やはり最低保障機能をしっかり強化しようということであり、介護保険料の軽減についても同様の趣旨であります。

 したがって、これは消費税導入に伴う措置というよりは、より根本的な、現在ある所得の二極分化ということに国がきちんと対応しなければいけないという考え方の中で出てきている、そういう政策であるというふうに御理解いただきたいと思います。

田村(憲)委員 もう時間がなくなりましたので終わりますが、使い分けをされないでください。場所によっては、消費税対策だというふうにおっしゃっておられる方々もおられます。

 それから、消費税が五%上がるから物価が五%上がるというふうなわけではない、そのとおりでしょう。ただ、四%や三%であれば、零細業者がその部分を泣くんですよ、消費税の。そこは五%物価が上がるということにならなければだめなんです、本来は。最後は消費に転嫁されるわけですから。そういう認識だと困りますので、そこの点を指摘して、終わります。

池田委員長 次に、棚橋泰文君。

棚橋委員 自由民主党の棚橋泰文でございます。

 きょうは、大変お忙しい中、内閣を副総理する岡田副総理にまでおいでいただきまして、改めてまず敬意を表させていただきます。

 そこで、副総理、大変お忙しい中おいでをいただいておりますので、私は、根本的な消費増税とそれから国民生活、経済に関することを副総理に御質問をさせていただきますので、どうか副総理、政治家としてきちんとした言葉でお答えをいただければ。また、委員長におかれましても、副総理に伺いたいと思いますので、どうかその点留意をしていただき、小宮山大臣を初め政務三役の皆様方は、国会、委員会審議の充実のため、次の質問者の質問に備えていただければと思います。よろしいでしょうか。

 冒頭、私、当初の質問の予定になかったんですが、今、民主党、自民党、それぞれ同僚議員が質問する中で、ああ、なるほどな、あれ、これはどうなんだろうと思うことが幾つかありまして、まず、民主党の和田隆志委員が、ある地方公共団体にいる職員が五十五万円の月給をもらっていたのに、その部門が民間委託、簡単に言うと、誤解を恐れずに言うと民営化、民間になってしまったら二十二万まで下がってしまった、これは問題じゃないかとおっしゃったんですが、私も和田委員とは全く別の視点で問題じゃないかと思ったんです。

 まず、岡田副総理の政治家としての、あるいは一国民としての感覚を伺いたいんですが。ぱっと計算しますと、五十五万円の給料が二十二万まで下がった、これは確かにひどいなと一瞬思ったんですが、公務員ですから、四カ月ないし五カ月、わかりやすく、ボーナスが出るとすると、前は年収八百八十万円から九百三十五万円の方が、民営化、民間企業になったら、同じ仕事をして三百五十二万から三百七十四万円しかもらえなくなった、これを、岡田副総理、どう思われますか。

岡田国務大臣 先ほどの和田委員のお話、いろいろ考えさせられるところはございます。

 これが、もし働き盛りというか、例えば三十代、四十代であればかなり大変なことだなというふうに一方で思います。ただ、和田委員のお話ではたしか五十一歳というお話だったので、民間企業でも五十を超えれば給与はかなり下がるというケースはございますので、そこは、三十代、四十代のまさしく子育て世代と五十歳を超えた場合で若干違いがあるというのは、それは民間でもあることなのかなというふうに思います。

 あとは、公務員の給与が年功序列というか、時間がたてばたつほど右肩上がりで上がっていくということの、仕事の中身は一緒でも給与が機械的に上がっていくという部分があるとすれば、それはやはり今の民間の給与体系とは違うということだと思います。

棚橋委員 私、もっと国民にわかりやすく岡田副総理の口から説明していただきたいんです。

 副総理は、四十代、五十代でも、まず国家公務員は辞職をするように勧めていくという御政策ですね。よろしいですね。間違っておりましたら訂正しますが。

岡田国務大臣 これは、全体として公務員の定数が変わらないとしても、六十歳以降六十五歳まで、定年延長はいたしませんが、しかし、一方で雇用を基本的に行うということになりますと、全体としてスリム化しないと数が合わなくなるということもございます。

 四十代、五十代で早目に第二の人生をという方に対して、希望退職制度を導入して、そういった選択肢をつくるということを今検討しているところでございます。

棚橋委員 そう単純には決められないと多分お逃げになる答弁をなさるんでしょうが、要は、四十代、五十代、国家公務員であろうと地方公務員であろうと、とりあえずは、副総理の立場からすると、国家公務員、四十代、五十代、退職を勧奨する、民間に行って働いてください、こういうことですよね。

 そうなりますと、今のまさに和田委員の例えだと、要は、公務員で八百八十万円とか九百三十五万円もらっている五十一歳の方はできるだけやめていただいて、民間で三百五十二万とか三百七十四万円の年収で頑張ってください、基本的にはそういう理解でよろしいんでしょうか。

 もちろん、そんな単純なものじゃないと逃げの答弁をされるのは想定しておりますけれども、民間に行くということは、ほとんどの公務員が給料が下がることじゃないですか。でもそこは、当然のことながら、国家財政がこれだけ厳しいんだから、公務員の皆様、国家公務員も地方公務員もそこは我慢してくださいよ、みずから身を切ってくださいよ、我々も身を切りますから、そういうことでよろしいんですね。

岡田国務大臣 希望退職というのは強制ではございません。それは、選択肢としてそういうものをつくるということであります。

 公務員と民間でどのぐらいの賃金格差があるのか、退職金については先般調査が行われたところですが、そこは職種によってもかなり差があるというふうに思います。

 私が希望退職と申し上げているのは、あくまでも本人の希望、意思によって退職をするということであって、強制的に退職をするということではございません。

棚橋委員 大変残念です。岡田副総理というのは、まさに御自身のポスターにもあるように、直球、真っすぐというイメージだったんですが、こういう二枚舌だとは思いませんでした。

 国民に向かっては、四十代、五十代の国家公務員も、簡単に言うと、整理しますよ、やめていただきますよ、そうやって人件費の圧縮に努めます、国はここまでやるんですと言っておきながら、国家公務員に向かっては、これは希望退職だから希望する方だけ退職すればいいと。これはまさにダブルスタンダードですね。わかりました。これ以上この話を岡田さんに聞いても、逃げの答弁だけですから。

 もう一点伺います。

 これも同じく同僚議員の田村議員が、最後に、消費税が五%上がったときに年金も物価スライドで上がるのかと聞いたときに、これまた岡田副総理らしくない、非常に逃げの答弁で、五%消費税が上がったからといって物価が五%上がるとは限らないので、そういうことは考えていないようなことを言いましたが、では仮に、まず、消費税が五%上がっても物価は全く上がらないと考えているのか。まさにそれはさすがにないということであれば、例えば消費税が五%上がって、あえて岡田さんの理屈に乗ります、三%物価が上がったら、これは年金の物価スライドは三%で、当然、物価に合わせて年金も三%上がるんですね。そこはどうですか、副総理の立場は。

岡田国務大臣 先ほどの田村委員の最後の御意見に私が答えるチャンスがなかったので、ここで申し上げたいと思いますが、消費税のカバー率の問題というのがございます、全体のGDPの中で。ですから、それは全部カバーしているわけではありませんので、例えば七割しかカバーしていなければ、五%上げても三・五%しか上がらない、こういうことになるわけであります。

 しかし、例えば年金であれば、マクロ経済スライドを別とすれば、物価の上がった分は年金は上げるというのが従来のルールだと思います。

棚橋委員 では、経済の自然な仕組みとして、特に経済政策にお強い岡田副総理は、物価が例えば今の話で三%でも三・五%でも上がれば、賃金もそれ相応の分、三%、三・五%、自然と上がる、そうお考えでしょうか。

岡田国務大臣 物価が上がったときに賃金がそれと同じく上がるということは、必ずしも言えないと思います。

棚橋委員 しかし、消費税に関して、特に民主党政権の御説明の中で、社会保障にかかる費用、これは若い世代ばかりに負担させてはいけない、上の世代から若い世代まで全員同じように荷物を持とう、こういうお話だったと思うんですが、今のお話を聞く限り、年金生活者の方の財産、ストックは別にして、入ってくる年金と入ってくる給与という面でいうと、年金生活者の方は、物価が上がった分だけ年金も上がるから生活レベルは切り下がらない。しかし、給与所得者の方は、物価が上がってもその分だけ給与が上がるわけではないから生活レベルは下がる。

 ということは、この民主党の消費増税の設計だと、結局、入ってくる毎月の収入でいうと、上の世代は生活レベルは下がらないが、働いている、給料をもらっている世代は生活レベルが下がるということになるのかということを、岡田さんの政治家としての見解をお聞きしたいと思いますが、いかがでしょうか。

岡田国務大臣 そこは一つ議論のあり得るところかと思います。

 我々は、今回、消費税を上げて、それに伴って物価が上がった分は、従来のルールどおり、年金はその分スライドして上げるということを申し上げております。従来もそういう形で、自民党の時代にもやってこられたはずでございます。ただ、そこはそうはしない、丸々は反映させないという考え方も、それはないわけではないということです。

 ただ、先ほど田村委員は、高齢者の物価は決して下がっていないんじゃないかというお話もありました。もしそういうことがあるとすると、やはり高齢者については物価スライドしなければいけない。それでも足らないという議論も逆にあるかもしれません。

 全体を判断していく中で、今回は従来と同じルールを適用させていただいたということでございます。

棚橋委員 私が怒っているのは、その中身以前の問題なんですよ。あなた方は本当に二枚舌なんです。若い世代に向かって、消費増税は、上の世代を支えるために、今のままではやれないから、上の世代にも応分の負担をしていただいて、若い世代の負担を軽減するようなことを言いながら、少なくとも今の話であれば、入ってくる収入に関しては、上の世代は生活レベルは下がらずに、給与所得者だけは生活レベルが下がりますよ、これをきちんと話すべきだと思うんですよ。

 それなのに、消費増税によって、上の世代も負担するんです、若い世代も負担するんです、みんな平等に負担するんです、こういうことを言っておきながら、これが今のやり方だったら、給与所得者は怒りますよ、最初からそう言ってくれと。消費税は上げるけれども、年金を受け取る方は物価スライドでその分上がるんだから、給与所得者の方はそれだけ上がらないけれども頑張ってくれ、こう言うなら政治家として正直だとわかりますよ、そこをどう思われますか。

岡田国務大臣 まず、今回、支出の方では我々、社会保障三事業から四事業ということで、子ども・子育てに対して消費税のうちの一部を充てるということを行っております。これは従来とは違うところであります。

 それから、もう一つ、委員の御指摘を聞いておりまして、多分私の考え方と違うと思うのは、全ての高齢者が年金だけの収入で成り立っていれば委員のような議論は成り立つと思います。

 しかし、高齢者も二極分化で、年金以外の収入も、それが資産に基づく利子収入とか株式の配当とか、あるいは御自身が働いておられるとかいろいろあると思いますが、そういう形で収入がたくさんある方は、恐らく消費もたくさんされて、消費税もたくさん払われるわけで、そういう意味で、高齢者が全て年金収入だけという前提に立たないとすれば、委員の議論というのは必ずしも普遍的に成り立たないというふうに思います。

棚橋委員 岡田さん、済みませんが、人の言うことを聞いてくださいよ。理解力はあるんですか。

 私は最初に言っておきましたよ。年金として入ってくる分とは別に、もちろんストック等で持っている分に関しては別にあるけれどもと。だから、全ての高齢者が年金で生活していて、だから全て生活レベルが切り下がらないなんということは言っていません。

 まず、そういうところをごまかすというか、人の質問はきちんと聞いた上で、答弁は理解力を持ってお願いいたします。

 それでは、今、子供たちの世代に対する今度は消費増税の財源をという話がございましたので、わかりやすく言うと、消費増税五%のうち、何%を何に使い、何%を何に、どういった大きな目的に使うんでしょうか。こういう根本的なことを岡田副総理は国会で何度かお話をいただいておりますので、もう一度その点をお願いいたします。

岡田国務大臣 委員が先ほど言われたことは、確かにそういうふうに言われたかもしれませんが、そうであれば、やはり結論は、消費税を上げたら、それは若い世代にだけ負担が行く、高齢者は負担が行かないという議論にはならないだろうということを私は申し上げているわけであります。

棚橋委員 私、済みません、岡田さんに反論の場を差し上げたのではなくて、それはもう結構ですから、あなたとこの議論をしてもしようがないですからと。むしろ、新しい質問をしたんです。そちらの方に答えてください。

池田委員長 いや、今、先ほどの質問に対して答えましたので。

棚橋委員 いや、だから、私は今質問したんですよ。答えてください。

池田委員長 今の質問に対して、岡田国務大臣、答えてください。

棚橋委員 覚えていないんですか。聞いていないんですか。

池田委員長 いや、わかっていますよ。

棚橋委員 委員長、時計をとめてください。いや、いいですから、相談するのは結構ですから、時計をとめてくれませんか。

池田委員長 岡田国務大臣。

岡田国務大臣 まず、委員に申し上げたいと思いますが、私もぜひ議論のチャンスを与えていただかないと、一方的に言われるだけでは、きちんと答弁をするチャンスを与えていただきたい。そうでないと、これは生産的な議論にならないと思います。そういう意味で、私、先ほど申し上げたところであります。

 それから、五%引き上げたとき、我々は、一%は新しいことに、四%は既存の制度の維持、持続のために行うというふうに説明を申し上げているところであります。

 四%のうちの一%強部分は、それは基礎年金の国庫負担分二分の一引き上げの安定財源でございます。

 それから、一%弱になりますが、これは、先ほど来の年金物価スライドとかあるいは診療報酬引き上げとか、そういうところに充てなければならない。つまり、消費税が上がることによって物価が上がることに伴う措置のために使われるということでございます。

 残りの部分につきましては、これはまさしく、毎年毎年、社会保障費、一兆円以上、税投入ベースでふえてまいりますから、それを賄うこと、あるいは今赤字国債でやっていることを振りかえること、そういうことのために使うということでございます。

棚橋委員 まず、岡田副総理、ちょっと失礼ですが、質問をきちんとしているのに、質問に対して議論の機会を与えていないというような、ちょっとキレぎみな答弁はやめていただきたいんです。

 私としては、きちんと説明して、例えばストックの方の話のことは別にしてと言っているわけですよ。もし、そういう議論、これは時間がないからやりませんが、それであるならば、高齢者の負担の、消費税を五%上げたときに、高齢者の方でも財産を持っていらっしゃる、年金、株等の配当がある、そういうことも含めると、消費税収でどれだけ負担がふえ、一方で、給与所得者に関しては給与がどれだけ上がらない、だから消費税収でどれだけ負担がふえ、そうすると、例えば二十代と七十代では消費税が五%上がったときの負担率はどれだけである、こういう数字を本来出してくるのが政府じゃないですか。出せますか、今、そういう数字。出せないでしょう。だから議論にならないんですよ。いいです、いいです。

池田委員長 岡田国務大臣。

棚橋委員 いや、委員長、まだ私、質問を続けていますので。

池田委員長 いや、いいんじゃないですか。

棚橋委員 いや、質問を続けています。

池田委員長 質問されたじゃないですか、今。

棚橋委員 いやいや、でしょうと言ったんです。でしょうと言って、質問していない。でしょうと言ったんで、いいです、いいですと言ったんです。だから、どうぞお座りください。

池田委員長 今質問されましたよ。

棚橋委員 いやいや、お座りください。お座りください。いいです。時間がないですから、お座りください。

池田委員長 では、一旦あれしてください。

棚橋委員 そこで、再確認しますが、どうも岡田副総理の御答弁というのは、いろいろ理解力の問題で変わるものですから。

 端的に確認いたします。

 要は、消費増税五%のうち、一%が社会保障の充実に、それから四%が社会保障制度の安定化のためにということでよろしいでしょうか。

岡田国務大臣 基本的にそういうふうに考えております。

棚橋委員 消費税収、増税五%というのは、これは全部国に入ってきて、国の思いのままになるんですか。

岡田国務大臣 今、国、地方あわせて、一%、四%の使い道ということで申し上げました。もちろん、そのうちの一部は地方に行くということでございます。

棚橋委員 それは、地方に行く分も含めて、全てこの消費税収五%は社会保障に使いなさいというふうに法律でなっているんですね。

岡田国務大臣 これは、きのうも国と地方の協議の場がありまして、知事、市長、そして町長、それから三つの議会の代表者の皆さんと議論いたしました。

 地方自治の本旨ということもありますから、国の法律でそれを強制することはできませんが、事実上それが裏づけられるようにしているということでございます。

棚橋委員 だから、言っていることが違うじゃないですか。国、地方を合わせて消費税収五%は社会保障にしか充てません、一%は社会保障制度の充実のために、四%は安定化のためにといいながら、でも地方は自由に使えるわけでしょう。

 では、聞きますが、地方交付税分に関して、地域によっては、今回の東日本大震災を含め、いろいろな形での防災意識の高い、あるいは危機感が強いところがある。

 一番わかりやすく聞きましょう。例えば、岡田さんの地元の市役所が、築何年かわかりませんが、耐震強度が満たされていない、市民も来るのにこれでは危険だ、この分でいただいた地方交付税に関しては、市民の総意として市長さん、議会が、これは耐震強化工事、あるいは市役所を建てかえる、こういったのに使うと言ったら、これは違法行為なんですね。この部分に関しては、消費税収なんだから、市役所に使っちゃいけません、あくまで社会保障に使いなさい、こういうふうになっていて、そういう支出行為をしたら、岡田さんの地元の市町は違法な使い方になるんですね。イエス、ノーでお答えください。

岡田国務大臣 これは詳しいことはぜひ総務省に聞いていただきたいと思いますが、各自治体との話し合いの中で、基本的に社会保障に使う、そういう約束のもとで合意をしているところでございます。

棚橋委員 だんだん変わってきましたよね。最初は、一%、四%、社会保障の安定に四%、充実に一%。ところが、そのうちに、それは国と地方を合わせてだと、そういう仕組みになっていると。

 今、基本的にはとお話しになりましたよね。でも、地方交付税法上縛っていないわけでしょう。だから、あなた方が本当に約束したように、この増税は、この社会保障の定義も実は相当いろいろとごまかしもあるんですが、社会保障にしか使わないというなら、この分での地方交付税は各地方において社会保障以外に使ってはいけないという条文は当然この消費増税法案の中に入っているわけですね。ちょっと私、読み込みが足りないので条文の条数がわからないんですが、何条何項か教えてください。

池田委員長 質問者に聞きますけれども、これは副総理、国務大臣に聞きますか。

棚橋委員 今回政府がお出しになった、野田総理が政治生命をかける、重たい決意とおっしゃった消費税法の基本の中で、岡田さんが常に、五%は社会保障に充てると、今もおっしゃいました、ちょっと後退しましたがね。当然、そうすると、地方に行った地方交付税分も社会保障に充てなきゃいけないわけですよ。勝手にそれ以外のものに使われたら、言っていることと違うわけです。

 そうすると、私どもとしては、まず常識的に、政府が出してきた法案ですから、私、政令や省令までなんて言っているわけじゃなくて、法律の中に、この財源に関しては地方においても全て社会保障に充てなければならないという条文が当然あると思って、私も一応何度か読み込んだんです。でも、私が理解能力が低いのかもしれませんが、そこに条文はないんですよ。

 そこで、お出しになった、閣議でお決めになった、花押を押された岡田副総理に、何条何項にこのお金は地方においても社会保障にしか充てませんという条文があるかというのを教えていただきたい、まさにこれが質問でございます。

岡田国務大臣 交付税に関しては、これは交付税の性格上、それを法律上縛るということはできません。ですから、そういうものはございません。

 しかし、その分について、これは社会保障のために使うということについては、これは地方との間で合意をしているところでございます。

棚橋委員 ごめんなさい、私も理解能力不足で知りませんでしたが、全ての都道府県、全ての各市町村と、これはもう政府で、この法案が通ったときには、このお金は社会保障以外に使いませんという公的な締結書か何かをお約束している、そういうことですね、地方とも約束しているということですから。

 いつ、そういう会議あるいは締結をなさったんですか。

岡田国務大臣 これは法的に縛ることはできない、それは地方自治の本旨というところからきているわけであります。

棚橋委員 だから、うそをついていると言っているんですよ。私は、中身の問題以前に、岡田さんがさっきから何度もこれは社会保障にしか使わないと言いながら、地方は使えるわけじゃないですか。使えるからおかしいと言ったら、今度は地方ともお約束していると言ったんじゃないですか。では、お約束しているんだったら、当然のことながら、きちんとしたお約束の文書があるか、あるいは全ての地方自治体の責任者と、議会も本来あるはずですけれども、これは市庁舎の建てかえとかそういうのには一切使ってはいけません、お願いいたします、わかりましたという話が出ていたのならわかりますよ、全然そういう話になっていないんでしょう。地方交付税法に、本当に、使い道を制限しちゃいけないとあるわけでしょう。私は全くそうだと思いますよ。

 だから、そこまで社会保障に使うと約束しているのならば、最低限でも、この消費増税分に係る地方交付税に関しては、これは社会保障にしか使えないという条文が要るんじゃないですか。にもかかわらず、そういう条文がなくて自由に地方が使えるにもかかわらず、全部社会保障に使う、こういううそがおかしいと言っているんです。

 もう一度お答えください。

岡田国務大臣 まず、うそという表現は取り消していただきたいと思います。国会にふさわしくないと思います。

 そして、法律では縛っておりませんが、これは総務大臣と各地方六団体との間の議論の中でそういった方針が確認されているということを申し上げているわけであります。

棚橋委員 うそをつかれたときにうそという言葉を使ってはいけないと言われても困るんです。このうそという言葉が不適切用語であればわかりますが、少なくとも、うそという言葉はこれは不適切用語ではありません。うそをつかれたときにうそをついたと言われたのが嫌ならば、私は、うそをついていない、ここはきちんと正確に話していると御答弁ください。

 ですから、私が今、岡田副総理はうそをついたということに関して、うそという言葉を取り消せということであれば、私が言ったとおりである、五%の消費税は社会保障に充てられ、それは地方においても同じであり、こういう形で地方が使えないように縛ってある、だから、あなたはうそを言ったと言ったけれども訂正してください、こういう御答弁をお願いいたします。

岡田国務大臣 私は、国会の権威を守るために、これ以上申し上げません。大変残念に思います。本当に残念だと思っております、こういうやりとりは。

 そして、何度も繰り返しますが、これは総務大臣と地方六団体の間で一定の確認ということになっているわけであります。しかし、法的に縛るということは、これは地方自治の本旨ということで、六団体からは、そういったことはなじまない、そういうお話もあり、最終的に、一定の、そういった約束事ということになっているということでございます。

棚橋委員 大変残念です。国会の権威を守るためには、まず正直な答弁だと思います。過ちは誰でもあるんですから、間違っていました、結果として私の答弁がうそとなっていましたけれども、これは心がけますと言った方が、私は、国民の国会に対する信頼は増すと思います。

 時間が参りましたので、最後にもう一つ伺いますが、消費税を五%上げて、それで、四%分を社会保障の安定化に、一%分を社会保障の充実にということは、逆に言うと、最低保障年金の議論はまた別途いたしますので、その議論を除いても、もう、要は四%で社会保障は安定するんですね。だから、安定するがゆえに、充実の方に一%回せる、そういうことでございますね。

岡田国務大臣 残念ながら、そういうことではないと思います。四%は維持のために充てますが、それで安定するということではございません。

 これは、今までのさまざまなことの積み重ねとしてそうなっているわけで、それを何とか、これは与野党を超えて、こういう状況を早く抜け出していくというのは我々政治家に課された使命だと私は思っています。

棚橋委員 だったら、全額をまず社会保障の安定化に充てるべきじゃないですか。全額充てないで、充実という形で一回、目くらましをしておいて、しかし足りないということになれば、次の増税がもう露骨に見えているわけじゃないですか。

 いろいろな立場の議論はありますが、納税者はできるだけ低いコストで社会保障を安定してくれと言っているんです。それを充実という名目でばらまいておいて、しかも、足りませんからこれから増税させていただく、このような議論では私どもはとても納得できない。ここが自民党とあなた方の大きな違いなんですよ。

 これからこの議論を深めてまいりますので、ぜひ副総理におかれましては誠意ある答弁を、そしてまた、人間ですから、間違ったときにはごめんなさいと言えば、私もそれ以上、うそをついたからけしからぬと言いませんから、ぜひその点をお願い申し上げまして、質問にかえさせていただきます。

 御答弁、ありがとうございました。

池田委員長 次に、加藤勝信君。

加藤(勝)委員 自由民主党の加藤勝信でございます。

 きょうは、厚生労働委員会に岡田副総理の御出席をいただきまして、ありがとうございます。

 また、二月の予算委員会で、私の方から、保険料率に落とし込んで将来の推計を出していただきたいということに対して、衆議院の予算のたしか審議が終わった後ではありましたけれども、お出しをいただき、きょうの新聞等々にもそれを引用しておりました。ある意味で議論を深める一つということで、その点も感謝を申し上げたいと思います。

 今、棚橋委員からも御質問があった関係で、私の資料、「社会保障改革のポイント」ということで、これは、一体改革・広報に関する基本方針、関係する五大臣でお決めになられたやつをここに提出させていただいておりまして、それに対して、先ほど、一%、四%というお話もあったんですが。

 まず、この(2)のところの「社会保障の安定化」、いわゆる四%を使うというところの、真ん中の丸の「後代への負担のつけ回しの軽減」というところについてちょっと教えていただきたいと思います。

 まず、その下に「高齢化等に伴う増(自然増)や安定財源が確保できていない既存の社会保障費」、こういうふうに書いておられます。

 この場合の社会保障費というのは、いわゆる社会保障関係費広く一般ではなくて、消費税法第二条に規定しております「制度として確立された年金、医療及び介護の社会保障給付並びに少子化に対処するための施策に要する経費」、このことを多分指しておられると思うんです。

 「制度として確立された」と考えた場合に、社会保険制度になっている年金、医療、介護、これは何となくイメージがつかめるわけでありますが、「少子化に対処するための施策に要する経費」における「制度として確立された」ものというのは、具体的にどういうものを想定しておられるんですか。

小宮山国務大臣 今回子ども・子育てのところで出していますような、就学前の子供の居場所とか、そうしたことが入っていると考えています。

加藤(勝)委員 ということは、要するに、全てが入っているんですか。わざわざ「制度として確立された」と書いてあるのは、いわゆる広い意味での少子化対策経費ではない、こういう意味だと思いますけれども、例えば保育所の制度等々、一応法律にのっとったもの、こういうことでよろしいんですか。

小宮山国務大臣 今回、消費税法の改正の中でも、医療及び介護の社会保障並びに少子化に対処するための施策に要する経費に充てるとされておりますので、少子化に対する施策でつくってきたもの、これからつくろうとしているもの、この後世へのツケ回しということは、今までにたまった分ですから、それは、今までに制度として確立されたものを指すと思います。

加藤(勝)委員 いや、そうじゃなくて、申しわけないんですけれども、消費税法の改正案の第二条に「制度として確立された」云々という条文があるわけであります。当然それには、年金、医療、介護、さらに少子化対策全体をこの「制度として確立された」という言葉が修飾している、こう私は読んでいるんですが、それは違うんですか。それとも、もし読んでいるとするならば、一体どこの部分が少子化対策の中で対象になるかならないか。

 ちょっと、済みません、これは基本的な話なので、すぐ答えてください。

小宮山国務大臣 これは、「制度として確立された」というのは、少子化まで入っていますので、今回新システムに挙げているようなものが全て含まれると考えます。

加藤(勝)委員 そうすると、いわゆる広く少子化政策全般が入る、こういうことでございますか。

 その次に、今の「社会保障改革のポイント」、この紙の方に戻っていただきたいと思うんですが、「安定財源が確保できていない既存の社会保障費」と書いているんですが、これは二十四年度予算で見ると幾らですか。

小宮山国務大臣 二〇一一年度時点で、国、地方を合わせた社会保障四経費の金額は、年金二分の一の差額分を差し引いて二十九・五兆円。一方で、現行の地方消費税を差し引いた国、地方の消費税収は十・二兆円となっています。

 したがいまして、既におよそ十九兆円以上の差額が生じていますが、その相当部分が後世への負担としてツケ回されている。さらに、これに毎年一兆円規模の高齢化等に伴う自然増が加わってツケ回しが拡大をしているということだと考えます。

加藤(勝)委員 今のその四経費は社会保障関係が全部入っているような気がしますが、余り数字を今議論しようとは思っていないんです。

 要するに、今のお話では、ここで消費税収の対象としてお出しになられた経費、制度として確立された年金、医療、介護、少子化対策の経費は、基本的に消費税で充てるということですか、全額を、将来的に。

岡田国務大臣 今小宮山大臣答弁されましたように、全部充てるということでは必ずしもありません。消費税額よりも多いわけですから、それだけでは賄えない、賄うことができないというのが現状であります。

加藤(勝)委員 いや、そうじゃなくて、安定財源が確保できていないと書いているわけですから。

 確かに、消費税はいわゆる高齢者三経費に充てましょうということで附則に書いてありますね、地方税を除く。それは当然対象になります。しかし、それ以外の既存の所得税だって、法人税だって、いろいろな財源だって、これは安定財源になってやってきているわけですから。

 しかし、この間、残念ながら、リーマン・ショック以降というのでしょうか、税収は約七兆、八兆下がっていますよね。その分だけ赤字が確かにふえているのは事実だと思います。ですから、そういうのを全体入れて、この安定財源が確保できていない既存の社会保障費というのは一体幾らなのかというのをきちんと把握されないと、七・〇兆円がそれに対して多いのか少ないのかは判断できないんじゃないんでしょうか。

 いや、もっと言えば、私どもは、少なくとも高齢者三経費についても七兆円は足りませんから、そういうのも念頭に置いてということで参議院選挙の公約には書かせていただいておりますが、今の大臣の説明だと、それを超えて相当な金額が不足しているという話になってしまうので、そこはきちんと整理していただかないと。

 多分、これだけでは財政健全化というのはとまらない、終わるものではありませんけれども、一体どこまで、どういう形でやっていくのか、社会保障部分とそれ以外の部分とをどういうふうに切り分けていくのかというのをはっきり整理していかないと、借金は社会保障関係のところに今言った消費税以外は全部あるんだということになると、話が非常に難しくなるんじゃないかなというふうに思うんですけれども、もう一回、そこのところ、数字はいいですけれども、頭の整理をしていただけますか。

小宮山国務大臣 今回、社会保障の一体改革としては、二〇二五年を前提に置いて、どういう形で改革をしていくかを立てています。

 それに対して、今申し上げたように、当然、今までのツケ回しが今回上げる分だけでは足りませんが、とにかく一歩を踏み出す、ツケ回し解消の一歩を踏み出すと同時に、やはり、先ほどから御議論ありますけれども、全世代対応というか子供の方にも回して持続可能な形をつくることとあわせてやっていきたいと考えているので、それに合わせる形で、今回は、一%分が充実で、四%分が安定化ですけれども、そういう方向に改革をしていく一歩を踏み出すために五%ということだと考えています。

加藤(勝)委員 いや、ちょっと、申しわけないんですけれども、聞いていて全然よくわからないんですね。

 要するに、大事なことは、どこが不足しているから今何をすべきかという、やはり、まず現状の認識をきちんとしないと先に進めないのではないかと私は思うんですね。だから、そういう意味では、きょうはもうこれ以上お聞きしませんけれども、ぜひ、「安定財源が確保できていない既存の社会保障費」というのはどういうものなのだということを、きちんと定義していただけませんか。

 一番ありがたいのは、二十四年度予算で見ればこうなっていますよということでありますけれども、そこまでが難しければ、考え方をひとつ整理していただきたいというふうに思います。

 それから、あわせて、先ほど田村委員との質問のやりとりでもありましたけれども、次の丸で、「消費税引上げに伴う社会保障支出の増」の下に、年金などの物価上昇に伴う増と書いてあるわけですから、そうすると、例えば年金について、一回、物価上昇に伴ってどうふえるのかとか、個別の数字がこの中にあるんだと思いますので、これをぜひ近々にお示しいただきたい。

 これは、二つ、お願いですけれども、やっていただけますか。

小宮山国務大臣 可能な形で、検討をしてお出しをしたいと思います。

加藤(勝)委員 それでは、特別委員会等でも議論があるということでございますから、それまでにはお出しをいただきたいと思います。

 それから、続きまして、先ほど棚橋委員との間で、社会保障の、消費税の増収分を社会保障に充てるか充てないかという議論がございました。

 国と地方という問題もありますけれども、今申し上げた「消費税引上げに伴う社会保障支出の増」は〇・八兆円でありました。たしか、成案のときには違う書き方をしておりました。「消費税引上げに伴う社会保障支出等の増」で一%、こういうふうになっておりました。一%ですから、二・五兆円とか二・七兆円。ざっといくと、差額が二兆円ぐらいありますね。二兆円弱でありましょうか。

 これは、一体どうやって担保されるように考えておられますか。岡田副総理にお伺いしたいと思います。

岡田国務大臣 具体的には、それはどういうものかといいますと、物価が上がることによって政府歳出が膨れ上がる、そういったものであります。それをどう担保するかというのは、これは、消費税の今回の増税以外のところで賄うということになります。

加藤(勝)委員 いや、今申し上げた、百億、二百億の話じゃなくて、二兆円というオーダーですよ。それを一体どうやって賄うんですか。また節約で二兆円出すとおっしゃるんですか。それとも、赤字国債といったら、これは、どっちで何をやっているかわからなくなりますね。

 そうすると、赤字国債以外で二兆円、しかも社会保障以外の経費から賄う、こういう御趣旨ですか。あるいは、別途、違う増税でもする、そういう御趣旨なんですか。

岡田国務大臣 そのことは、現時点では決めておりません。

 歳出削減もあれば、あるいは、そもそも社会保障費そのものがこの枠からはみ出しておりますので、まあ、それは玉突きのような議論かもしれませんが、そういう形になる部分もあるかもしれません。そういうことは予算編成のときに議論していくことだというふうに考えております。

加藤(勝)委員 いや、私は、大臣、消費税を上げるときに伴うこういうものは、ある意味で必要経費だから、ここでチャラにというか相殺してネットアウトしたところで議論していかないと、この二兆円は、また別途の形で歳出増、これは確実になりますね。そのことについて、また手当てがない。

 そうじゃなくて、やはりこれは、いっそ完結して、きちんと手当てをしていく、そういうふうに私は積み上げていかなきゃいけないんじゃないかな。そういう意味で、最初に出された成案のときの方が私は非常に納得的に思ったわけですけれども。

 何か、非常に社会保障にこだわる。しかし、さっきの地方交付税の話もあったけれども、もう穴があいているんですよ。そうじゃなくて、もう少しわかりやすく整理をされた方が私は議論がより建設的になるんじゃないかなと。

 そして、もう一つ。次に、先ほど田村委員からありましたけれども、消費税引き上げに伴ういわゆる所得の低い方々に対する暫定的、臨時的措置を今考えておられる、こうおっしゃいましたけれども、これは消費税収を充てるんですか、充てないんですか。

岡田国務大臣 まず、最初のお話ですが、どちらがわかりやすいかという問題だと思います。

 今回の五%引き上げ分は社会保障に全額充てるというふうにいうのであれば、それ以外の歳出の増というものが入ってくるというのは、これは正確ではなくなりますので、そういったものは除いたということであります。

 それから、二番目は何でしたか。済みません。

加藤(勝)委員 消費税引き上げに伴う低所得者に対する臨時的な措置はどうするんですか。

岡田国務大臣 臨時的な措置に関しては、これは消費税収五%引き上げの外のことであるというふうに整理をしております。

加藤(勝)委員 というと、それも外でやるんですか。四千億とか五千億とか言われているお金も消費税以外から捻出されるということですか。いや、とてもそんなことはできないと私は思うんですよ。もう一回、きちんとやはり整理を。

 消費税を導入するに当たって必要な部分、多分これから住宅ローンに対する減税等々もありますね、こういったものは導入に伴う経費としてきちんとそこに計上して、それ以外の分をどう使いますかという議論をした方が、はるかに建設的であり、財政健全という意味においてもはるかにそういう手法の方がいいと私は思うんですが、何でそこまで社会保障にこだわられるのか。

 国民の皆さんは、そこは説得すればわかりますよ。だって、消費税導入に伴う措置として、例えば四千億、五千億、そういう低所得者対策、それがいいかどうか別として、そういったものをやりますよと言われれば、それはそうですよねと、むしろ、それは別で、いや、それは財源はありませんと言われたら、えっと言うのが私は一般の国民の受けとめ方ではないのかな、こういう思いがいたしますので。

 しかし、大臣は、あくまでも社会保障にこだわられるということでございます。こだわればこだわるほど話がおかしくなるということを私は申し上げておきたいと思います。

 その中で、先ほど、田村委員の御質問に対して、いわゆる年金等における低所得者対策と今申し上げた消費税引き上げに伴う臨時暫定的な措置というんでしょうかは別次元だ、こうおっしゃったんですが、社会保障・税一体改革の大綱の二十二ページに「社会保障制度における低所得者対策の強化」という条がありまして、そこには、「消費税収は全て国民に還元するという観点に立ち、消費税引上げに伴う低所得者への影響に対する措置として、」という中に、最低保障機能の加算措置と入っているんですよね。

 さっき大臣は別の次元だとおっしゃったけれども、大臣がまさに御署名された大綱では、低所得者に対する措置としてもそういうものを考えますよ、こうおっしゃっているんですけれども、さっきの答弁と矛盾していると私は思いますが、いかがですか。

岡田国務大臣 大変残念に思いますが、今の御質問にお答えするとすると、基本的に、こういった一時的な給付と恒久的な措置ということで、その趣旨は違います。

 消費税を導入することに伴う一時的なショックを和らげるための措置というのがこの臨時の給付措置でありまして、最低保障機能の充実などは、それは基本的に、恒久的な措置としてやるということでございます。

加藤(勝)委員 済みません、ちょっと今聞き取れなかったので、もう一回御答弁していただいてよろしいですか。

岡田国務大臣 この一時的な給付措置というのは、これは、我々が考えております給付つき税額控除というものができるまでの一時的なものでありまして、恒久的なものではございません。したがって、それは、ショックを和らげるために導入する、導入時に入れるということでございます。

 それから、ほかの、最低保障機能の充実やあるいは介護保険料の軽減というのは、これは恒久的な措置でございます。

加藤(勝)委員 いやいや、恒久か臨時的かということをさっきはおっしゃっていないんですね。次元が違いますよと、消費税の引き上げに伴うそういう影響と本来の年金の充実ですと次元が違いますよと副総理はおっしゃったんです。

 今の話は、そうじゃなくて、暫定的か恒久的か、そういう意味での区分けのされ方をしているので、もしそうなら、そういうふうにきちんと説明していただけますか、さっきとは違うということで。

岡田国務大臣 時限か恒久かということの背景にある考え方が、そこにそれぞれあるわけであります。時限というのは、そういった導入のショックを和らげるということで申し上げましたが、他方で、高齢者の所得の格差というのが広がっている、所得の非常に少ない高齢者に対してやはりしっかり手当てをしなきゃいけない、そういう中で最低保障機能の充実とかあるいは保険料の軽減措置というのが出てきているということであります。

 つまり、背景にある考え方が違うという意味で私は次元が違うというふうに申し上げたわけであります。

加藤(勝)委員 いや、今のお話は、確かに、最低保障機能の強化全部が消費税引き上げに伴う低所得者への影響を緩和する措置だということではないと思います。しかし、同時に、全部ではないけれども、ここに書いてあるように、そういうことをも含めておやりになっている、こういうふうにしかこれは読めないんですよ、大臣。

 今お手元に持っておられないのか、お読みになっているかわかりませんが、ちょっとよく読んでいただいて。

 これは、どう考えたって、「低所得者への影響に対する措置として、」と書いてありますよね。

岡田国務大臣 ですから、結果的にそういう機能は果たすかもしれませんが、主たる目的は、そういった所得の二分化ということに対して対応していく、そういう趣旨でございます。

加藤(勝)委員 いや、ですからそこを、私は何が言いたいかというと、これから消費税を引き上げるときに、やはり低所得者対策を考えるときには、既にこういう社会保障の面で手当てをされていることも含めて全体で考えられるべきじゃないんですか、だから両方意味があるんじゃないんですか、こういうふうに申し上げたんです。それを、副総理のように、別々だというと、年金の強化策は強化策でやります、消費税の引き上げに伴う影響策は別でやりますといったら、これは余りにもばらまきが大き過ぎてしまうんじゃないんですか。

 そこは、きちんと合理的に考えるためにも、両方、まさにここに、大綱に書いてあるように、最低保障機能の強化にも低所得者への影響ということも考えて入っていますよというところを勘案すべきだというのが私は筋のあるやり方だと思うんですが、そうじゃないんですか。

岡田国務大臣 ですから、一つの制度が両方の機能を持っているということだと私は思っております。

加藤(勝)委員 いや、だから、そこは、さっき違うと副総理がおっしゃるからこんな時間がかかるわけであって、両方の側面を持っておりますと最初からおっしゃっていただければ、それで終わる話なんですよ。それでよろしいんですね。そういうことでよろしいですね。

 要するに、では、さっきの田村委員に対する答弁は、今の両方を持ち得るということで、お変えになりますね。

岡田国務大臣 田村委員の御質問は、そういった恒久的な措置も消費税導入のショックを和らげるためだけの意味合いで御質問になりましたから、私はそこは違うというふうに申し上げました。

加藤(勝)委員 副総理、最初の言葉に余りこだわって、むしろ、実質的な答弁をしていただいた方が話が建設的になるのではないかというふうに思います。

 それでは次に、消費税改正法案。

 先ほどの西村副大臣の話とも絡むのかもしれませんけれども、附則の第十八条に、平成二十三年度から平成三十二年度までの平均において名目の経済成長率で三パーセントかつ実質の経済成長率で二パーセントを目指したと書いてあるんですね。これは平成二十三年度から三十二年度までという十年間の平均ということになりますから、そうすると、消費税引き上げを今予定している時点、平成二十六年の四月とか二十七年の十月というのはまだその前半の五年間でありますから、これからの五年間、どうなるかわからない。したがって、そういう時期においては、今申し上げた名目の経済成長率が三%かつ実質の経済成長が二%であったとしても、それから先ぐっと上がっていくであろうという推測が立てば、別に、低くても平均で超えていけばいい、こういうふうに考えられると思うんです。

 言い方をかえると、三%や二%を下回ったとしても、別に、消費税の引き上げについて、あえて引き上げをとめなきゃいけないということにはならない、こういうような理解でよろしいんですか。

岡田国務大臣 これは十八条の一項と二項の関係ということにも関連するわけでありますが、一項を達成するということは二項の条件にはなっておりません。

 したがって、最終的に、ここに書いてありますように、二項に書いてありますように、名目、実質の成長率や物価動向など種々の経済指標を勘案し、そして前項の措置を踏まえつつ総合的に勘案して所要の措置を講ずる、こういうことでございます。

加藤(勝)委員 そうすると、これも予算委員会のときにたしか財務大臣と御議論させていただいたような記憶があるんですけれども、今おっしゃったところは、別に、あってもなくてもいいと思うんです、今のお話からいうと。時の政権というのは、そういうことを判断するのは当たり前だと思うんですね。

 ですから、今の状況が、これから半年後なら半年後に、消費税が上がるか上がらないか、いや、消費税だけじゃなくてもいいです、いろいろなものを上げる、下げる、それが国民や経済に影響するというふうなことがあったときに、その一定前に常に判断しながらその執行ということをやっている。これはもう、この問題だけじゃなくて、常にそうだと思うんですね。

 そういう意味からいうと、別に、この規定があるから、これは引き上げるか引き上げないかわからない、あるいは引き上げることができないということではなくて、基本的に、引き上げない場合には別途法律が必要になりますよね、延期するなら延期する、廃止するなら廃止すると。したがって、この二項というのは、まあ、とりあえず書いておこうかという程度の、あるいは、基本的に、いろいろな施策を進めるに当たって、政府としての当然の心構えではあるけれども、あえて書いておきましたと、この程度のものじゃないかと私には思えるんですけれども、違いますか。

岡田国務大臣 私は、この二項の意味はあるというふうに思います。もちろん、委員がおっしゃるように、最終的に判断するのはそのときの政治判断、総合的な判断で、まさしく政権が命運をかけて停止するかどうかということを決めるということだと思います。

 しかし、その停止ということを含めた所要の措置を講ずるに当たっての考え方、その基本的な考え方についてこの二項に具体的な要件を列挙して書いてあるわけで、私は、法律としてこう書く以上、そういった方向で政権が判断するということですから、意味があるというふうに思っております。

加藤(勝)委員 先ほど申し上げた、経済や国民生活に責任を持つ政権であれば、こういうことが書いてあろうとなかろうと、こういうことを勘案して判断していく、そして、必要があれば実施するし、あるいはやめる。当然のことだと思うわけでありまして、書いてあるから何だということを申し上げるつもりはありませんけれども、ほとんど、書いてあるからというほどのものではないのではないかというふうに私は思います。

 年金のことについてちょっとお聞かせいただきたいんですが、先ほど、与党の委員の方に対する質問で、小宮山大臣は、国民年金はもたない、こうおっしゃったんですが、これはもう、これまでずっと議論してきて、財政検証もしました、これは持続可能性がありますと、大臣、答弁されてきたじゃないですか。これはどういうことですか。

小宮山国務大臣 先ほど、答弁の中で、言葉が足りなければおわびしますが、若い人の中にはそう考える人がいるということを申し上げたので、皆様方が与党のときにつくってこられたマクロ経済スライドも含めて、安心につくってあるというのは、そのとおりでございます。

加藤(勝)委員 いや、だから、若い人の中でそういうことがあるならば、それが事実なら変えなきゃならないでしょう。それが誤解に基づくものなら、違いますよと説明するのが大臣の仕事ではないんですか。そういう意味で、大臣はどう思っておられるんですか。

小宮山国務大臣 それは、百年安心ということでつくられた制度はそういう制度であるということは理解をした上で、それでも今、特に皆さんも意識していらっしゃると思いますが、国民年金の構成者の仕組みが変わったりしている中で、私どもは新しい年金制度が必要だと考えていますし、皆様方は今の制度を改善すればいいとお考えのことも知っていますので、両方の考え方をテーブルにのせて、先ほどスウェーデンの例もありましたけれども、政権交代しても持続可能な形に超党派でつくり上げればいいというふうに考えています。

加藤(勝)委員 いや、申しわけないけれども、そんなことは聞いていないんです。大臣がおっしゃった、国民年金はもたないということに対して、大臣は、もたないと考えているのか、もつと考えているのか、その白黒だけはっきりしてくださいよ。

小宮山国務大臣 それは、もつように仕組まれた、仕組みをつくられたものではあると思いますが、これから入る若い人たちがそれで本当に安心だと納得するかということはまた別の次元の問題だと思いますので、私どもは、よりよい改革の方法として新しい年金制度を提案しています。

 でも、皆様方は違うというお考えなので、これは、テーブルにそれぞれの案をのせて議論をし、若い人たちにも安心して信頼してもらえる制度をつくっていく必要があると考えています。

加藤(勝)委員 大臣、法案の審議のときの答弁と、またこういうとき変えられたら、我々はどっちの答弁で議論をしていいかわからないじゃないですか。これまで国民年金の議論をするときに、現行を改正するから、ではどう思いますかと言ったら、もちますと大臣はおっしゃったじゃないですか。

 新しい年金を考えちゃいけないということを申し上げているんじゃないですよ。もし、よりよいというものを出されれば、出してもそれは構わないと思います。しかし、現状に対する認識をきちんと合わせていかなかったら、むしろ、これから先の議論というのも建設的に私はならないんじゃないかなと。そこははっきりさせておいていただきたいと思います。

 それで、もう時間がなくなったのでありますけれども、前も、副総理、申し上げたように、今回の改革、税と社会保障の一体改革、私は、公費、公的負担の面に非常に重点が置かれ過ぎていて、それで保険料もお出しいただきたいということを申し上げた。要するに、御承知のように、保険料と税金、そして給付費以外の利用者負担、こういったもので全体が、社会保障が成り立っているわけであります。しかし、これは、全て国民が。お財布は一つであります。

 そして、これから二〇二五年まで見ると、保険料だけ見ても、中小企業のサラリーマンでいくと一五%ぐらい保険料負担がふえるわけであります。そうすると、今の所得が一〇〇あるとして、八五になります。片や、消費税が五%、一〇%と仮に上がっていけば、きちきちで生活している人から見れば、現状から見ると、四分の一、いわゆる二五%は実質的な消費力がなくなってしまうんですね。

 そういう将来を見据えた中で、本当に今のような社会保障制度でいいのかどうか。今回のは、私は非常に不十分であると思います。あるいは、ある意味では、非常においしいところだけをPRし過ぎている。やはり、もっと根底に入って、全体を、必要なところは残しながら、しかし社会保障、公的な形でどこまでやるのか、そして、それをどう税金と保険料と利用者負担で賄っていくのか、そこをきちんと議論していかないと、とても、二〇二五年あるいはそれ以上に対して、これは、まさに大丈夫、社会保障全体は大丈夫ですよということに私はならない。そういう意味で、甚だ不十分な今回の社会保障と一体改革ではないかというふうに思っております。

 その点について、最後、副総理の御所見を聞いて、質問を終わります。

岡田国務大臣 急速に高齢化が進みますので、そういう中で社会保障制度はどうあるべきか、より大きな議論も将来的には必要かと思います。

 今回のものは、五%引き上げのうちの四%を持続可能のために使うということからしても、新たな展開ということでは必ずしもない。それは一%でとどまっているわけであります。委員御指摘のような、そういった社会保障制度をこれからどうしていくかという議論はあわせやっていかなきゃいけないというふうに思います。

 ただ、今回は、我々、当然、ねじれということも念頭に置きながら、従来の与党であった自民党、公明党が議論されてきたことを踏まえて、その延長線上で今回のものはかなり出しております。新しいものも加えておりますが、相当部分は共通しているというふうに思います。

 それは、なるべく合意が得やすいということも念頭に置いてそうさせていただいたところで、その上で、これを早くなし遂げた上で、また、より前向きな議論について超党派で議論できれば幸いだというふうに考えております。

加藤(勝)委員 終わります。

池田委員長 この際、休憩いたします。

    午後零時五分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時十八分開議

池田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。坂口力君。

坂口(力)委員 約半時間質問させていただきたいというふうに思いますが、岡田副総理には、お時間をとっていただきまして、ありがとうございました。

 岡田副総理が副総理として入閣されましてから、今までどちらかというといささか不安定で、何となく頼りない感じのしていた内閣に、ぴしっと一線を与えられた、内閣が落ちつきを取り戻した、そういう意味で、大変敬意を表しております。ひとつ、きょうの質問もよろしくお願いを申し上げたいと思います。

 余り褒めてばかりおりましては質問になりませんので、あとは少しワサビのきいた話を二、三申し上げて、お答えをいただきたいというふうに思っております。きょうも朝からの質問を聞かせてもらっていまして、幾つかの疑問点と申しますか、はっきりしない点がありましたので、それらの点を中心にしながらお聞きをしていきたいというふうに思います。

 まず最初は、今回の社会保障と税の一体改革におきましては、消費税の方は、一応、一五年までに一〇%というのが決まっております。その先については、まだ議論は何もされていないわけであります。

 社会保障を一体どうするか。

 社会保障の方は、これは中長期的な体系の中での話でありますので、一五年までの話ということにするわけにはいきにくいというふうに思いますけれども、今回のこの社会保障の中で、税と社会保障、これは一五年という区切りの中での議論を進めていくのか、それとも、税は税としながらも、社会保障の方はもう少し中長期的な展望も踏まえて議論をしていくのか、その辺のところ、副総理のお考えを聞かせていただきたいと思います。

岡田国務大臣 まず、坂口先輩には、同じ三重県の先輩議員として、この間、御指導いただいておりまして、本当にありがとうございます。きょうも、ぜひお手やわらかにお願いしたいと思います。

 御質問は、税の方は二〇一五年までだけれども、社会保障の方はもう少し長い期間をとって考えるべきではないかという御趣旨かと思います。

 それはまさしくおっしゃるとおりで、税の方は、二〇一五年一〇%ということを現在の一つの区切りとしておりまして、その後また、その先のことを考えるということにしておりますが、社会保障の方については、もう少し長い改革の期間、そして全体像が必要であるというふうに考えております。

 例えば、医療・介護サービスにつきましては、どこに住んでいても、その人にとって適切な医療・介護サービスが受けられる社会を実現するという二〇二五年のあるべき姿を示した上で、そのための具体的な改革案、工程を示しているところでございます。

 今回の診療報酬、介護報酬の改定も、二〇二五年のイメージを見据えつつ、あるべき医療の実現に向けた第一歩の改定というふうに位置づけているところでございます。

 それから、子ども・子育てにつきましては、保育を初めとする子ども・子育て支援の充実強化を図るため、二〇一七年度に必要となるサービス量を確保するために必要な制度改革と財源を示しているところでございます。

 年金については、これは意見が分かれるところかと思いますが、新しい年金制度につきましては、所得比例年金、最低保障年金の組み合わせから成る一つの公的年金制度の創設という基本的な考え方を示しつつ、ただし、現在の年金制度から新しい年金制度への切りかえには相当長期の期間を要するということで、二〇一五年の段階で、現在の制度による場合と比較して、消費税の引き上げ幅に影響を及ぼすほどの追加財源が必要になるものではないと認識しているところでございます。

 その上で、当面、現行制度を前提にして、改善すべき点について御提示させていただいているということでございます。

坂口(力)委員 そうしますと、この一体改革につきまして、これから各党間で議論をしてほしいという御提案がございます。それは、国会の方で各党が議論をするんだというふうに思いますが、一方、政府においては、例えば年金なら年金制度、あるいは高齢者医療といったような法律はだんだんと決めていかれるということなんでしょうか、それとも、国会の中で各党間でそういう議論をしている以上、そこはその推移を見てから提出をするということなんでしょうか。そこをお聞きしたいと思います。

岡田国務大臣 基本的にはこれは別のものだというふうに考えておりますが、そうはいいましても、国会の方で将来のあるべき社会保障制度について御議論いただくということであれば、そのことは当然反映させて議論していかなければいけないことだというふうに思っております。

 午前中も出ましたが、高齢者医療制度について、我々は我々の考え方がございますが、まだそれは地方の理解を得るには至っていない段階でございます。我々の考え方は一定の方向をお示ししておりますが、こういう問題についても、これは各党間で胸襟を開いて議論するということであれば、それは大変いいことではないかというふうに私は思います。

 年金制度も、今、入り口は確かに違います。抜本改革を必要とするという我々の主張と、現行制度を改善することで目的が達せられるという公明党や自民党の御意見。入り口は違いますが、将来にわたってきちんと最低限の年金が保障され、安心して老後を送ることができるという目標は同じでありますので、そういう観点で、これまたさまざまな議論がなされれば、年金制度のようなこういった息の長い問題について、いつまでも対立が続いているということではなくて、お互い歩み寄って一つの合意ができることが国民の立場から見れば非常に重要なことではないかというふうに私は思っております。

坂口(力)委員 わかりました。

 しかし、今お話しになりました中で、年金につきましては、政府の方で来年度、案を提出するということを今言っておみえになるわけであります。それで、今後の各党間の話し合いが進んだといたしましたら、それはどうなりますか。その進みぐあいを見てから提案をされるんですか、それとも、国会内の審議というものは別にして、政府の方として出されるんでしょうか。これは小宮山大臣にお聞きした方がよろしいんですか。

岡田国務大臣 年金制度については、我々、大綱の中で、来年度、来年出すということを申し上げているところでございます。

 ただ、私、記者会見でも申し上げたことがあるんですが、法案を国会に出すことは可能かというふうに思います。しかし、これが成立するということになれば、現在のねじれの中では、野党の皆さんの賛同がなければ成立することはあり得ないわけでありますから、そういう意味では、やはり前広に今から各党間で話し合いをしていただき、そしてよりよいものをつくり上げるということがより望ましい道だというふうに私は考えております。

 そういうことで、大きな方向性が合意できれば、我々、来年度法律を出すということに必ずしも固執をする必要はない、むしろその方が、新しい年金制度、それが既存のものの手直しであれ、あるいは全く新しいものであれ、これも話し合いの結果ですから、その合意に至る、より早い道ではないかというふうにも思います。

坂口(力)委員 確かに衆参でねじれがあることも事実でございますが、ねじれは一つだけではなくて、民主党の中のねじれもあるわけでありまして、ねじれもいろいろでございます。

 それは、民主党さんの中のねじれは岡田副総理にお任せするといたしまして、今御指摘になりましたように、一応、議論をして、その結果を見てから、政府の方もそれを参考にしてと申しますか、そのことを根底にして新しい法案を出すというふうに今聞き取れましたけれども、それでよろしいですか。

岡田国務大臣 私は従来から、年金制度について、超党派で議論の場を設定していただきたいということを申し上げているわけでございます。

 そういう場ができて、議論が進んでいくということになれば、我々、何が何でも来年法律を出す、これが目的ではございません、新しい、よりよい年金制度をつくり上げるということが我々の目指すところでありますので、各党間で議論が順調に進んでいるということであれば、必ずしも私はこだわる必要はないというふうに判断をしております。

坂口(力)委員 それでは、少し年金の中身についてお聞きをしたいと思います。

 いろいろの計算をされまして、民主党さんの案というものもだんだんと明確になってまいりました。それで、明確になってまいりましたが、まだ私たちが十分に納得するところもないわけでありまして、一つは、きょうも午前中に出ましたが、七万円の低所得者に対する保険の上乗せ、これは行われる。これを行う場合に、保険料を納めていない人にも七万円出すのか。

 私は、消費税を出しておるから、もう何にも出さないで、それでいったらいいんだというわけにはいかない。民主党さんの場合にも、いわゆる二階建て年金の二階部分は残っているわけでありますから、何らかの形でそこで保険料は出してもらわなきゃならない。保険料は出しておるけれども、しかし、収入が非常に少ないために、年金をもらう時期になってその額が少ない、年金の額が少ない、そういう人には上乗せをするということなのか。

 一度も保険料を払わなかった人、こういう人もいるわけですね。その人たちに対して、この七万円というのは出るんでしょうか、出ないんでしょうか。

岡田国務大臣 この点はまだ決めたわけではございません。

 ただ、やはり年金制度に加入していただくということは、私は当然前提になるべきだというふうに考えております。年金制度に加入いただいても、例えば所得が少ないために減免措置があったり、あるいは、その所得に応じた保険料ということで、額が少ない、そういう場合にこの七万円の最低保障年金が支払われるということであって、全く年金制度と無縁の存在であった、そういう方々にまで最低保障年金を払うということではないんだろうというふうに私は思っております。

坂口(力)委員 そうしますと、今の制度と余り変わりませんね。保険料を払った人には、年金額の低い人には上乗せをする。しかし、最初から保険料を払わなかった人にはしないということであれば、現在の制度もそんなには違わない。

 ただ、保険料を民主党案の場合には決定をしてもらわなきゃいけませんから、そこには何がしかの把握の仕方というものが必要になってくることは事実だというふうに思いますけれども、それにしても、払わない人には出さないということになりますと、現在も払わない人には出していないわけでありまして、払わない人に出さないということになれば、将来、無年金者というのもこれは出る可能性はあるわけですね。

 そうすると、その人たちに対しては、今度また生活保護をどうするのかといったような問題が同じようにつきまとってくるというふうに理解してよろしいか。

岡田国務大臣 ここは、きちんと加入して所得に応じた保険料を支払っていれば、最低限、今我々七万円という額を想定しておりますが、これは確実にもらえるということが明確であれば、私は、多くの方が保険料をより払われるだろうと。

 今、将来に対する不安感とか、あるいは、中途半端に払っても中途半端な年金しかもらえない、こういう不信感の中で、国民年金の保険料を若い人がなかなか払わないという現象が起きているのであって、最低限これだけは、加入していれば受け取れますよということが明確であれば、私はそういう受けとめ方も変わってくるのではないかというふうに思っております。

坂口(力)委員 そこが大事なところでありまして、何にも払わないという人には出さないということでありますが、わずかながらでも払っていた人には七万円上乗せをする、こういうことになりますと、わずかは払ったけれども、しかし、それから先は、まあ、七万円もらえるんだからもう払わなくてもいいではないかというふうに思う人も出てくる可能性もある。そこは今の制度も余り変わらないという気がいたします。

 この民主党案、いいところも悪いところも、私もあると思っています。岡田副総理がいつも御指摘になりますように、今の年金制度のように保険料の徴収をしなくてもやっていけるようになる。やっていけるようになるというのは、それは消費税で払ってもらうということですから、別に保険料として取り立てをしなくてもいい。上乗せをする部分の話ですよ。下の部分は払ってもらわなきゃならぬですけれども、上乗せの部分は払ってもらわなくてもいい、こういうお話でありまして、そこは確かに保険料に匹敵する額を出してもらいやすいということはあると思うんですね。

 しかし、一番大きな欠点は何かといいますと、高額所得者の人は高額の保険料を出してもらうということになりますね、民主党の場合には。上限、どこまでも、高い人は高い保険料を出してもらう。そうすると、高い保険料を出しておるんだから当然だといえばそうですけれども、若いときから高額の所得のあります人は高額の年金をもらうことができ得る。

 しかし、中間層のところ、最低保障年金の上乗せの仕方の問題ではありますけれども、前回民主党さんがお示しになりました四つの案の中で一番高い案を示しましても、大体四百三十万か五百万か、その辺のところから現在の年金制度よりも下がってくる。いわゆる中堅サラリーマンの年金額が下がるというところが私は最大の問題だというふうに思っております。だから、ここをこのままにするのは、私は少しぐあい悪いんじゃないかと思います。

 ここでこんな話を申し上げるのはいかがかと思いますけれども、ある連合の幹部の方が、我々は民主党を支援しておるけれども、年金制度だけは自公路線の制度の方がいいと。それなら少しこちらにも応援してくださいよと私は言ったところですけれども。

 連合の方がおっしゃるのは、連合の中に入っておみえになる方は中堅サラリーマンが多いですから、そこが下がるということがやはり一番大きな問題ではないかと。そこはまた一番人数も多いですから。下がるところが一番多いんですね。だから、今までと同じぐらいか、あるいは下がる、そこのところが非常に、人数も一番多いということでありまして、そこに一番大きな問題がある。

 これから消費税の問題が議論されて、そして今回は一〇%になる。この前の予算委員会でも申し上げたんですが、別枠で、この年金制度を実現されましたときに、七・一%の消費税が二〇六五年か二〇七五年ぐらいになってくるとかかってくる。かなり先ではありますけれども、七・一%になるのは先かもしれませんけれども、徐々に徐々にこれは移ってくるわけですから、もう少し早目から消費税を上げていかなきゃならないということになります。

 これも午前中に議論がありましたけれども、地方にも消費税の中で出さなきゃならない。現在、今回の場合に三〇%というふうにお聞きをしておりますが、これからふえることはあっても減ることはないと思います。そうすると、その分を出して、そして七・一%のこの消費税を残すということになりますと、一〇%の消費税にして、そしてこの七・一%を残すということになるんではないか。

 そうすると、今回の税の制度で今度一〇%にします、将来、年金の保険料でまた一〇%必要になります、そうすると、私たちの子供、孫の時代にはそれだけで二〇%の消費税が必要になる。そこには医療、介護は入っておりませんので、医療、介護の分がどうなるのか。額にして一番これから伸びの大きいのは医療だと思います。率にしますと、介護の方が今伸び率は高いですけれども、医療もそれなりの伸び率を示しています。額にいたしますと、医療の伸びが非常に大きい。

 そうすると、それを一体どうするのか、それも含めて一体どうするのかということを考えておかなきゃならない。それをトータルで考えると、二〇%では済まないということになってきますから、国民の合意が得られるかどうかということも考えておかなければならない。

 先ほど申しましたように、議論をいたしますときに、少なくとも年金、医療、介護、子育ては、消費税の問題とあわせて、社会保障の今後のあり方、そしてどれだけの財源が必要かということは議論をしなければならないということになりますが、そうなりますと、私は、社会保障といえども余り必要な額をふやしていくということは、これはなかなか大変なことである。民主党の年金制度が百歩譲って立派な案だったといたしましても、これは将来一〇%の消費税が別枠で要るということでありましたら大変なことでありまして、本当にそれでやっていけるのかどうかという問題が残る。

 だから、年金であれ、医療であれ、介護であれ、これはこれから要ることは間違いないわけでありますけれども、その伸び方というものについては、いろいろの方法を考えなけりゃならないということになるんではないかというふうに思っています。

 ちょっと手を挙げていただいていますから、どうぞ。

岡田国務大臣 坂口先生に非常にいい御議論をいただいておりますので、その御指摘を大事にしながら、少しお答えをさせていただきたいと思います。

 五点ほどちょっと簡単に申し上げたいと思いますが、まず、我々の制度でも、所得の高い人への年金を、ずっと所得に比例して保険料を取って、それに応じた年金を出すということにするのか、どこかで保険料の上限も設けて、年金の額も、そういう意味で天井をつけるというか、これは制度設計次第だというふうに思います。

 それから、むしろ、今回我々は、最低保障機能を高めるために、税の範囲ですけれども、高所得の方の年金を削減するということも法案の中で提案させていただいております。

 そういう発想というのは、これから、より重要になってくるんじゃないか。高齢者の中で所得の二極分化のようなことがありますから、余裕のある方にはより御負担いただく、少なくとも税の範囲ではそれは出していただく。場合によっては、それ以上ということもあるかもしれません。そういう議論は、これから大いに国会の場でも議論なされるべきことだというふうに思っております。

 それから二番目に、今先生、四百万とおっしゃいましたが、民主党の試算の結果を見て言われたと思いますが、これは一人当たりですので、もしダブルインカム、夫婦で働いておられれば八百万ということで、必ずしも少ない額ではございません。

 そして、人の数からいいますと、やはり多いのは、より所得の少ないところに人が多いわけですから、絵だけ見ていると、横軸に所得がとってあって、直線状になっておりますが、人の数という観点から見ると、それよりも少ない所得層のところにたくさん人はおられるわけで、そこにやはり光を当てるのが我々の制度であるというふうに考えているところでございます。もちろん、それで果たしてどのぐらい経済的に成り立つかという検証はきちんとなされなければならないと思います。

 地方に行くお金というのは、これは今の割合がそのまま維持されるというよりは、消費税率が上がっていく中で、地方とまた協議しながら決めていくことで、今の国と地方の割合がそのまま固定していくというふうに必ずしも考える必要はないのではないかと思います。

 医療と介護の財源が重要ではないかという御指摘は、私も同じ思いでございます。年金に余りとられてしまうと、医療、介護に必要な財源がなくなってしまうという御懸念は、それは当然、私も共有しているところでございます。そういう前提の中でいろいろなものを組み立てていかなくてはならないというふうに考えております。

 いずれにしましても、我々の試算の結果によりますと、一番甘いケースというか、最低保障年金を多くとるケースでは確かに七%ぐらい、プラスアルファで消費税を上げなければいけないような試算結果が去年行った試算では出ておりますが、そのとき、既存の制度でも、やはり三ポイントぐらいは上げなきゃ成り立たないと……(坂口(力)委員「二ポイント」と呼ぶ)二ポイントですか、失礼しました。というところで、今のままではそこも済まない。

 それから、例えば、午前中も出ておりましたが、基礎年金の部分も、マクロ経済スライドを入れますと、果たして生活費を賄えるだけの水準が維持できるのかどうか、それを維持できるようにするためには、なお追加的な対応というのが必要になってくるかもしれません。

 いろいろなことで追加的な財源が必要になるわけですが、同時に、先生御指摘のように、医療、介護のことは忘れてはならないというのは御指摘のとおりだと思います。

坂口(力)委員 もう時間も来ておりますので、これで終わりにいたしますが、四百三十万というふうに申し上げましたが、あれは世帯単位でありまして、個人単位ではありません。世帯です。だから、世帯で四百三十万ということだというふうに思います。

 それから、いずれにいたしましても、中堅サラリーマンのところの額が現在の年金制度よりも下がるということは、これはやはり避けなければならない。そうしたことをいろいろと議論をした上で、皆さん方が年金制度を出されるのならば、その上でいろいろ議論をしてもらいたい、政府の方で考えてもらいたい。それまでにひとつ、我々の方で議論をするのならば、議論に参加することはやぶさかでございません。

 以上をもちまして終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

池田委員長 次に、古屋範子さん。

古屋(範)委員 公明党の古屋範子でございます。

 岡田副総理、初めて質問いたしますので、よろしくお願いをいたします。

 私は、この一体改革の六分野の中で、介護の問題を質問してまいります。

 介護に入ります前に、午前中、また今坂口委員の議論も聞いておりまして、増税議論の前に、まず、年金、介護、医療、この社会保障の全体像を国民に示すことが先ではないか、このように考えます。

 私たち公明党は、社会保障のあるべき姿につきまして議論を重ね、一昨年「新しい福祉社会ビジョン 中間取りまとめ」を発表いたしました。現行制度の改善、機能強化とともに、うつですとか虐待、引きこもりなど新しい課題に対応するための新しい福祉、こうした考えを明らかにいたしました。

 この二月に発表された大綱の中身ですが、やはり、民主党マニフェストとの整合性が不明確になっております。社会保障の全体像がまず示されていない。今もありましたように、まず、その最大の問題である年金制度、これが曖昧な内容ばかりで、法案提出も一年先ということであります。本来、医療、介護を含めた給付、保険料そして税、これを総合的に検討して、将来のサービス像を示すべきであります。増税論だけが先行する、これではなかなか国民も納得はできないだろう、このように考えます。

 まず、民主党は、マニフェスト二〇〇九の見直し、これを早急に行うべきだと思います。また、年金、医療、介護、制度をこう変えるから、それにはこれだけの財源が必要です、ですのでこれだけの消費税増税になる、特に、大綱に記載してあります給付抑制項目のうち、何を実施して何を実施しないのか、これを明確にしなければいけないと思います。増税されて、そして抑制もされる、これでは、赤字財政を穴埋めするための増税と言われてしまいます。

 政府は、社会保障制度の明確な全体ビジョン、また将来像をきちんと説明をしなければならない、このように思います。まず初めに、この点について副総理にお伺いをしたいと思います。

岡田国務大臣 将来のビジョンをということですけれども、我々、社会保障改革の工程表を示しております。そして、そこのかなりの部分は、公明党の御主張と私は重なり合っているのではないかというふうに思っております。といいますか、自民党、公明党が政権与党の時代におつくりになった原型をかなり、そのまま踏襲している部分がございます。これはやはり、特にねじれということを意識しますと、なるべく我々の主張も抑えるべきは抑えて、合意が得やすいもの、そういう観点でまとめてきたという経緯もございます。

 そういう中で、やはり決定的に違うのは二つ。高齢者医療、先ほど来議論になっておりますが、それと年金の抜本改革をやるかどうか、この二点だと思います。

 先ほど坂口先生との議論でもございましたが、私は、年金制度などは、当面やるべきことと、それから、抜本改革の議論というのは少し時間がかかります、数カ月で決着するものではございませんので。それはそれとしてしっかりと各党間で御議論いただけないか、そういうふうに思っているところでございます。

 それから、何をやり何をやらないかということについては、今回も、三・八兆円程度の充実をする、一%分は充実に充てるというふうに申し上げたわけですが、その内実は、三・八兆円充実をして一・二兆円効率化する、差し引き二・六兆円の、消費税一%分の充実である、こういうことになっているところでございます。

 例えば、年金の物価スライドの特例分につきまして、三年間で解消するということにしております。それから、年金の最低保障機能を強化するために、これは金額としてはわずかですが、高所得者の年金給付の見直しを行うことにしております。この二つは、既に国会に法案を提出しているところでございます。

 そのほかの検討課題として、七十歳から七十五歳の医療保険の患者負担の見直しをどうするか、それから、後発医薬品のさらなる使用の促進、一定の所得がある方の介護保険の利用者負担のあり方などについて、なお検討を行うこととしているところでございます。

古屋(範)委員 自公案を勘案しということでございました。あの総選挙でマニフェストを掲げられ、そして見事、政権交代を果たされた。そして、この二年間かけて、めぐりめぐって自公案に戻ってきている、その現行制度への修正である。一体この二年間は何だったのかというふうに思わざるを得ません。

 消費税の引き上げ法案、五%引き上げということで提出をされております。各論に入りますけれども、介護保険料はこの四月から既にアップしております。今回の介護報酬改定のいわば柱といいますか目玉であります二十四時間定期巡回・随時対応サービス、これがこれからスタートしていくわけですけれども、ぜひ普及させ、円滑に実施をしていかなければならない柱だと私も思っております。

 先日も、モデル事業として既にこうした事業を行っている世田谷に行ってまいりました。区内、約五百人が利用している。密集地でもありますので、職員の平均到着時間は十二分ということで、車を使ったり自転車を使ったりということで、定期巡回をしながら随時対応も行っている。その内容は、排せつとか下膳、配膳、服薬といった利用件数が非常に多かったということであります。

 大事なのは、ITを使っていまして、オペレーターがいて、定期的に見守りの連絡を入れる。また、何かあったらボタンを押してオペレーターを呼び出す。それによって職員の訪問も効率化ができる。また、部屋の様子も見られますので、何かが起きた、ベッドから落ちているというようなことも、オペレーターの方にはそれが端末を通して掌握できるということであります。

 このサービスを開設するに当たり、随時、ひっきりなしに呼び出してしまうのではないかとか、さまざまな懸念があったんですが、そこのところは、こうした端末、ITを利用してモデル事業が進められたということでもございます。

 しかし、人材の確保に非常に苦労しているということでありました。三交代勤務ということになりますと、当然深夜もあるわけですので、こうした介護従事者、看護師の人材確保に非常に苦労しているということであります。

 この中で要望しておきたいんですが、こうした定期巡回・随時対応のサービスが始まって、訪問介護で、これまで六十分が基本だった生活援助の基準時間が四十五分に変更されているということで、介護サービスの時間区分が変わったことで、サービスの利用が不便になったり、あるいは介護事業者の負担が増したりすることがあるのではないか、そのような不安の声が寄せられております。

 この時間短縮によって介護職員がより多くの家庭を回れると効率化を強調されていますけれども、時間に追われて、結果的にサービスが低下するのではないかというような懸念もございます。この点についてお伺いをしたいと思います。

 そしてもう一つ、慢性的な介護職員の不足ということはこれまでも大きな課題でした。さらにこの二十四時間のサービスが始まって、職員の人材不足が非常に懸念をされております。介護職員、看護師が確保できなくては、このサービスは成り立ちません。

 この二点について、大臣のお考えをお伺いいたします。

小宮山国務大臣 時間のことについては何回か答弁もさせていただいていますが、平均すると割と短い方が多いということで、それは御負担もそれだけ軽くなるというので四十五分を基本にしましたが、これはケアマネジメントによって、必要だということであれば、六十分も、組み合わせで九十分もできますので、そうしたことをしっかりと徹底していきたいというふうに思います。

 それから、おっしゃいましたように、介護職員ですとか看護師などの人材確保が非常にこれからの課題だということで、今、訪問看護事業所との連携による看護職員の確保ですとか、サービスの内容の透明化を図るための介護・医療連携推進会議の事務所への設置、こうした取り組みなどをしているところですので、人材をしっかり確保して、また、訪問看護との連携などの適切なマネジメントができるようにしていきたいというふうに考えています。

古屋(範)委員 さらに、介護保険における低所得者対策についてお伺いしてまいります。

 今回の報酬改定で、第一号保険料は平均四千九百七十二円となっております。最も高いところでは六千六百八十円、このような額になっております。低所得者にとってはこの負担が非常に重くのしかかっているわけです。そこで、前回の改定では保険料の上昇を抑えるために公費が投じられたわけなんですが、今回は見送られている。五千円が負担の限界と言われてきたと思います。自治体によってはこのような高額になってしまっているということであります。

 そこで、この大綱の中で、今後の高齢化の進行に伴う保険料水準の上昇や消費税引き上げに伴う低所得者対策強化の観点を踏まえ、公費を投入することにより、六十五歳以上の加入者の保険料の低所得者軽減を強化する、具体的内容について検討するということが出ているんですけれども、社会保障審議会の資料によると、費用は二〇一五年時点で最大一千三百億円とされています。この財源は一体どうされるおつもりなのか。

 そして、ここにありますように、法案提出に向けて関係者の意見を聞きながら検討するとされていますけれども、いまだにこの法案自体は提出をされておりません。いつ提出をされるんでしょうか。

    〔委員長退席、和田委員長代理着席〕

小宮山国務大臣 社会保障と税の一体改革の介護保険料の低所得者の軽減につきましては、二〇一五年度に最大で千三百億円の公費の増ということを見込んでいます。この財源は、消費税率の引き上げのうち社会保障の充実に充当される一%分と、制度の重点化、効率化によって、一体改革全体の中で確保することにしています。

 必要な法案につきましては、税制抜本改革と同時実施に向けまして、これは施行時期は未定ですけれども、八%引き上げ時、または一〇%引き上げ時が基本でございますが、それに向けて検討を進めているところでございます。

古屋(範)委員 まだ提出時期ははっきりしていないということですね。

 時間ですので、最後の質問になります。

 今回、介護について、地域包括ケアシステム、これが大きな柱になっているようでありますけれども、高齢化が一段と進む二〇二五年、どこに住んでいても、その人にとって適切な医療・介護サービスが受けられる社会を実現するとおっしゃっています。また、この実施時期についても、平成二十四年通常国会以降速やかな法案提出に向けて関係者の意見を聞きながら検討する、これは医療についてでありますけれども、介護については、改正介護保険法の施行、介護報酬、診療報酬改定、補助金等の予算措置により包括システムの構築を推進するとあるだけで、法案提出時期はこの通常国会には限定していない。また、実施時期についても明記をされておりません。

 この地域包括ケアシステム、これが柱だというふうにおっしゃるわけですけれども、この構築をぜひとも着実に進めていただきたい。住みなれた地域、在宅でのケアシステム、これについて、副総理の御決意を最後にお伺いいたします。

岡田国務大臣 委員御指摘のように、できるだけ住みなれた地域で在宅を基本とした生活の継続を目指すために、医療、介護、予防、住まい、生活支援サービスが連携した地域包括ケアシステムの構築は極めて重要であるというふうに考えております。

 ことし四月から施行された介護保険制度改正や介護報酬改定においても、例えば、訪問介護や訪問看護が連携した二十四時間対応の定期巡回・随時対応サービスの創設など、これは委員が先ほど世田谷の例を挙げられたわけですが、さまざまな政策を実施しているところであります。

 今後、よりよい制度をつくるために、これもぜひ、現場に強い公明党の皆さんのお力もいただきながら、実態に即したよりよい制度をつくり上げていきたいと思っておりますので、また国会の場などで、あるいはいろいろな場で御示唆をいただき、共同してつくり上げていければというふうに考えております。

古屋(範)委員 時間ですので、以上、質問を終わります。ありがとうございました。

和田委員長代理 次に、高橋千鶴子さん。

高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 私、きょうは、ちょっと手元に、ふだん自分は読まない雑誌を持ってまいりました。本当は何冊も、何種類もあるんですけれども、きょうここに持ってきたのは三冊でありまして、いずれも全くタイプの違う週刊誌あるいは雑誌であります。附箋がつけてあるところに載っているのは、これは政府広報なんです。

 イラストあり、写真あり、そして、今最後にお見せするアンアンは、皆さんの手元にございます、イラストあり。これの場合は、ちょっとよくよく見ないと広報だと気がつかない。イラストなどが大変工夫してありまして、「日本には女性がもっと安心して未来をデザインできる社会が必要だ。」と、イラストから、それからいわゆるコピーから、大変金がかかっているなという印象を受けるわけですが、雑誌の一つの記事なのかなと一瞬間違うわけであります。

 ただ、全て、これは何種類も本当はあるんですけれども、書きぶりとかイラストとか若干違います。でも、構成は、要するに安心の支え合いが必要なんだということと、一番最後に、めくっていただくとわかるように、最後の結論は、「社会保障制度を守り、進化させ、受け継いでいくためにも財源の確保が求められています。」というのが結論であり、全ての特集に古川元久国家戦略担当大臣のコメントが載っておりまして、「しっかりと国会で議論していきたい」、こういうことが載っているわけであります。

 それで、これらはまだ法案ができていない十二月に集中して雑誌に載ったものであります。新聞、雑誌、テレビなどさまざまな媒体があると思いますが、これらに要した費用は幾らでしょうか。また、この時期にどういう目的でつくったのか伺います。

別府政府参考人 御説明いたします。

 ただいま委員御指摘のございました社会保障・税一体改革につきましては、これは非常に国民一人一人の生活に、特に未来の生活に直結するような大変重要なテーマであるということで、国民の中でもいろいろな御議論もございますので、そういう御議論をしていただくというためにも、政策に取り組む背景あるいは必要性、そういったものをお示しするということで、十二月から開始したということでございます。

 その中で、今御指摘のあった新聞あるいは雑誌とか行いましたが、さらに、あと、その後、二月になりまして、「明日の安心」対話集会等を行っておりますので、その募集の告知ということで、あくまでも国民的な議論をお願いするということを目的に行っているものでございます。

 全体といたしまして、約八億円がかかっております。

高橋(千)委員 今の答弁を聞いていただいて、岡田副総理と小宮山大臣に同じ質問をしたいと思います。

 八億円かかっています。八億円というのはどういう額かといいますと、障害者自立支援法で障害者の皆さんが現在、いろいろ負担が軽減される中で、自己負担しているお金が一カ月四億円です。つまり、二カ月の負担金をチャラにするくらいのお金をかけて、背景を説明するとは言っておりますが、法案がまだ出ておらない、何をやろうとしているのかまだわからない、ただ金がかかるということだけを書いている、そういう広報にこれだけのお金をかけるやり方に対して、まずは知っていたのかということと、このような使い方をどう思うか伺います。

岡田国務大臣 委員と同様の御質問は、たしか予算委員会の分科会でも、自民党の議員だったと思いますが、いただきまして、そのときからは承知をしております。

 私は、政策の内容、特に増税ということを伴う政策、国民生活に極めて重要な政策でありますので、それについて幅広く議論をしていただくための材料として、あるいは政府の考え方を示すものとして、こういったことは必要であるというふうに考えております。

小宮山国務大臣 これは、社会保障の大体の案をまとめた後に、私もテレビなどに出ていろいろ話せることは話しましたし、その時期に、社会保障としてはこういう改革を考えているということをやはり広く知っていただくために、いろいろな方が読んでいただけるような雑誌などにも出したと承知をしていますので、それだけの金額が適切かどうかというのはいろいろな御判断があるかと思いますけれども、私はやはり必要なことだというふうに考えています。

高橋(千)委員 政府の一員ですからそういうお答えになるのかなと思いますが、非常に残念に思いますね。

 これには何ら方向性がないわけです。お金がかかるということしか、消費税という言葉も出てこないわけで、もちろん、これから議論するのに、決めつけた言い方がどうなのかなということがあるわけですけれども、私が言いたいのは、党首討論の中で野田総理は堂々と、土俵に我々は上がったのになぜ待ったをかけるのかと訴えたわけであります。本当にそういうことを言うのであれば、一つ一つこれから議論をしなければならない一体改革の中の法案、重要広範議案、私はそういう扱いをしなければならないと思うんです。

 年金なんかは一回の国会で終わるような議論なんだろうか、そういうことが言いたいのに、多額の税金をかけて国民に金がないというメッセージだけを広報する、このような姿勢はやはり絶対に認められません。

 副総理と小宮山大臣も全国に飛ばれて対話集会をやられています。それぞれ個性のあるやり方をしているのを私も拝見しました。厳密に言うと、他の大臣がやった対話集会の中には明らかにやらせを疑うようなものもありました。でも、一々きょうはそれを言いません、そんな暇がないですので。

 ですから、そういうことにお金をかけたり国民に言う前に、きちんとした国会の審議をして、その姿を国民に見ていただくこと。そして、きちんと記録の残る地方公聴会、記録の残るというのは、インターネットでは残っていますけれども、そういうのではなく、正式な記録の残る地方公聴会を重ねていって大事な議論をしていくべきなんだ、こうしたやり方は認められないということを指摘しておきたいと思います。

 それで、質問に入りますけれども、増税する消費税五%のうち一%が新しい充実策に使うと説明されております。そのうち七千億円が子ども・子育て新システムに使うと言われています。

 子ども・子育て法案の施行日は、附則の第一条において、「社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法等の一部を改正する等の法律」の「附則第一条第三号に掲げる規定の施行の日の属する年の翌年の四月一日までの間において政令で定める日から施行する。」つまり、消費税法案の施行日が、予定は平成二十七年十月となっているので、そこから、その後から翌年の四月までの間ということで、増税が通った後という条件つきの大変まれな法案であります。増税できなければ法案そのものが成り立たない、この意味においては一体だと言えるのかもしれません。

 岡田副総理は、沖縄などで開催した対話集会の説明を読んでいましても、その第一のポイントは子ども・子育てですと強調されています。

 そこで、新システム法案を社会保障の充実策に位置づけているその趣旨と、何をもってこれが充実策だと言っているのか、二つ伺います。

岡田国務大臣 まず、委員御指摘のように、消費税を五%引き上げた場合の四%は既存制度の維持、持続のためにということで、一%が充実のためということでございます。

 その充実、年金、医療、介護とかいろいろありますが、大きく言うと、子ども・子育てと、そしてもう一つは、所得の少ない方のための対策、具体的には最低保障年金やあるいは介護の保険料減免などということになります。

 子ども・子育てというのは、今までどうしても、社会保障制度というと、三事業、年金、医療、介護というところに重点が行きがちであったのを、やはり若い子育て世代に対してもよりしっかりとした対策をということで、約七千億のお金を消費税引き上げの中からいただいて、そして施設の整備などに使っていきたいというふうに考えているところでございます。

高橋(千)委員 子育て世帯を社会保障に位置づけたことの意義を聞きました。それから、新システムがなぜ充実策なのか聞きました。

小宮山国務大臣 新システムがなぜ充実策かということですけれども、新システムでは、就学前の全ての子供たちに質のよい学校教育、保育をするということ、それからまた、待機児さんの対策とか、地方で、単独では、幼稚園、保育所、それぞれでは成り立たないところを統合してできるというようなことも含めて、これは考え方がいろいろありますけれども、例えば株式会社とかNPOも基準を満たせば入って参画してもらうようにしているとか、必ず多様な子供たちを受け入れるところが充実をしていくということですので、これは子ども・子育てを支援する充実策になるというふうに考えています。

高橋(千)委員 なぜ充実策かという質問に対して、いきなりまた株式会社が出てくるというのもちょっと、この後の議論で確かにありますけれども、やはりそうじゃないんじゃないかと。

 これまでも待機児童の問題は随分出てきましたけれども、やはり将来世代にツケを回さないということを皆さんはさんざんおっしゃっているわけですよね。そういうときに、若い世代が子供を産んで育てるという希望を失うような今の事態に対して、やはりそれに真剣に取り組んでいこうという姿勢が出てくるのかなと思いましたけれども、なかなかちょっとそうではないなというふうに言わなければならないと思います。

 具体のことを聞きます。

 新システムで待機児童対策を強力に推進するということで、三歳未満児の保育利用率を四四%まで高めることを二〇一七年度までの目標としました。現在も二万六千人を超す待機児がいるわけですが、その八二%が三歳未満児ですので、そこにターゲットを当てるということになると思います。そうすると、五年間で三十六万人増と大変な目標でありますが、それに見合う保育所の建設をするのでしょうか。

伊奈川政府参考人 先生御指摘のように、平成二十九年度には三歳未満児の保育サービス利用割合を四四%にするということが、平成二十二年の子ども・子育てビジョンにおいて見込まれているところでございます。

 これをどう実現するかということで、今回の子ども・子育ての新システムにおきましては、潜在的なニーズも含みます保育の需要を満たすために、質を確保するとともに、保育の量的拡充を図っていくというふうにしているところでございます。

 具体的に申しますと、一つは、市町村におきまして子ども・子育ての支援事業計画を策定していただくということで、地域のニーズに応じて、そしてまた地域の実情に合った提供体制を計画的に整備していっていただくことが一点。そしてまた、指定制度ということで、多様な主体の参入が図られるようにしていくという点が二点目でございます。そしてまた、幼稚園、保育所を一体的に提供します総合こども園というものを設けるということで、質の高い学校教育そして保育を一体的に提供するということがございます。

 そしてさらに、こういった総合こども園以外の多様な保育事業ということで、例えば、小規模保育でありますとかあるいは家庭的保育といったような地域型保育給付も創設するといったようなことを通じまして、こうした潜在的なニーズを含む需要を確実に満たしていきたいというふうに考えているところでございます。

高橋(千)委員 量的拡充ということをおっしゃいましたけれども、結局、質問は、建設をするのですかと。もちろん、三十六万人分、丸々でなくてもいいかもしれません。ただ、保育所の建設をするのですかという質問をしています。それに対しては一切、そうではない、いわゆる多様な主体云々ということで、株式会社やそれこそNPOなどに期待をするということになりますよね、結論は。

伊奈川政府参考人 どのような形でこういった需要を満たしていくかということについて言いますと、総合こども園といったような主体、そして、あと、先ほど申しましたような多様な保育事業ということでの地域型保育給付というような形で対応していくということでございます。

高橋(千)委員 ここがやはり最大の問題なんですよ。幾らニーズをつかんでも、そこに責任を持つ人がいないわけで、結局、多様なということで、もちろん、いろいろないい形が出てくるかもしれないけれども、しかし、そこは期待するだけの話であって、やはり必要なところをつくっていくというお答えがなぜないのかということを言わなければならないんですね。

 質問の中で、小宮山大臣、もしあれば答えていただければと思うんですが、岡田大臣が先ほどの対話集会の中で、例えば幼稚園では常にあきがある、定員に満たない幼稚園もたくさんあります、そこに一歳児から三歳児くらいの子供たちを預かっていただくと述べています。よく言われるお話ですよね、幼稚園はあいているんだからと。

 しかし、今回の法案では、幼稚園には三歳未満児の受け入れを義務づけていません。従来どおりの幼稚園は残るわけです。そうすると、待機児童解消にはならない、保障にはならないわけです。だけれども、保育所だけは全部総合こども園に移行するわけですよね。なぜですか。

小宮山国務大臣 それは、総合こども園でもなるべく、義務づけてはいませんけれども、受け入れていただくために、例えば、消費税によってインセンティブを総合こども園にかける、職員の配置基準を上げるとか、そうしたことを考えています。

 それから、あと、幼稚園が自分のところで受け入れなくても、先ほど申し上げたような小規模の二十人以下の保育所と連携をしても、それは総合こども園と認めるとか、あるいは、家庭的保育、保育ママさんがどこかの施設で集合でやっているところと連携をしても、それは総合こども園と認めるとか、多様なあり方を検討していますので、そういう意味では、受け入れる施設というのがふえるように取り組んでいきたいというふうに思います。

高橋(千)委員 だから、なぜ保育所だけは全部移行するんですかということも聞きましたけれども。

小宮山国務大臣 それは、一年半余りにわたって、幼稚園関係者、保育所関係者を含めて、内閣府で三つのワーキングチームで、本当に子供たちのためにどうしたらいいかということをかんかんがくがく議論いたしました。

 ただ、その中で、学校教育というのはやはり三歳以上にするということが強くございましたので、そこはそういう形を生かす。ただ、そこのところは義務づけないまでも、なるべく多くのところで受け入れていただけるように、先ほど申し上げたような形でいろいろなフォローを、後押しをしていきたいというふうに考えています。

高橋(千)委員 ですから、最初に幼保一体化ということを打ち出したけれども、完全にその途中でずっこけているわけですよね。それで、保育所だけはこども園に移行するんだということでぐっと進んでいることに大きな矛盾が出てきているということなんです。

 ここはちょっと質問を逆にしてもう少しやりますけれども、総合こども園については、今、学校教育に位置づけるということをおっしゃいました。三歳以上の児童の場合は、幼稚園と同様に、小学校就学前の学校教育を行う学校であることを明確にすることになっています。

 幼稚園の一日の教育時間は四時間を標準としているわけですね、四時間以上ということで。そうすると、当初の議論は、新システムが始まるころの議論は、介護保険と同じような仕組みで一時間ごとの利用料というのが決められて、保育が細切れになるんじゃないかということが随分議論されました。今回は二つのタイプ、つまり短時間と長時間だけだということが言われているわけなんですよね。だけれども、その短と長の間をどこで分けるのか。これは非常に重大な問題、つまり負担にはね返ってくる問題ですので、一般的にはパートのお母さんたちも預けられるからいいんだよということが言われているけれども、そうなるのかということなんです。

 そこで、まず短時間の目安が、今言った幼稚園の四時間、これが目安になるんでしょうかということ。学校教育を義務づけるということで、四時間というのが、例えば九時から一時とか、まとまった時間、その時間だけは子供が全員そろっている、そういうイメージでしょうか。

小宮山国務大臣 これもこども指針のワーキングチームの中でずっと検討してもらったんですが、今、幼稚園は幼稚園の教育要領でやっています、それから保育所は保育指針の内容でやっていますが、既にもう多くのところがオーバーラップしているんですね。そこの内容の整合性を確保した総合こども園保育要領、これを策定することにしています。

 その中で、総合こども園での具体的な学校教育、保育の提供のあり方、これはその時間数も含めまして、今後、子ども・子育て新システムの施行までの間に、総合こども園保育要領などを策定する中で具体的な検討をしていきたいと考えています。

高橋(千)委員 ですから、短時間の目安、四時間との関係。それから、その時間は、学校と言う限りは、いろいろな働き方があってもみんなそろっているという意味ですね。

小宮山国務大臣 みんなそろっているという意味では、今回、保護者の働き方にかかわらず、全ての子供にということなので、みんなそろっているということはそういうことです。

 ただ、それが四時間になるのかどうかということは、今申し上げたように、総合こども園の保育要領を定める中で具体的なものは決めていきたいと考えています。

高橋(千)委員 それで、今おっしゃったように、とにかく四時間かどうかはわからないけれども、ただ、四時間以上だということははっきりしているわけですよね。

 それで、三歳以上は学校教育を行わなければならない。その昼間の時間が学校をやっているわけです。要するに幼稚園になっちゃうというようなイメージなわけですよね。

 そうすると、幼稚園と保育所では職員の配置基準が違います。幼稚園は、一クラス三十五人以下、教諭が一人、保育所の場合は、四、五歳児は三十人に一人、三歳児は二十人に一人であります。そうすると、昼間は三十五人でもよいよとか、職員を少なくしてもよいよ、そうすると人件費を抑えられるよとなってはどうかということですが、いかがですか。

小宮山国務大臣 それは、今回あわせて質の高いということを言っていますので、質を下げるということはありません。

 そういう意味で、総合こども園では、幼稚園の方の学級担任制とか面積基準などの学校としての基準と、それから保育所の児童福祉施設としての人員配置基準とか給食の実施などの基準、これをあわせて適用することで、質を下げることなく、質の高い学校教育、保育を保障したいと思っています。

 そういう意味では、現在の幼稚園制度それから保育所制度の双方に求められる質の水準、これを基本としてやっていきたいと思っておりますので、質を下げるということはありません。

    〔和田委員長代理退席、委員長着席〕

高橋(千)委員 では、それぞれの施設の厳しい方といいますか、それに合わせるということでよろしいですか。

小宮山国務大臣 具体的に今ある基準をどういうふうに組み合わせるか、その整合性をとってという言い方をさせていただいていますが、質を下げることはないということを申し上げました。

高橋(千)委員 そこで、保護者はいよいよ直接契約ということになるわけですけれども、その前に、市町村から保育の必要度を認定される、これは全く新しい制度になります。その認定証に書き込む内容はどのようなものになるでしょうか。

小宮山国務大臣 その認定証には、対象となる子供の氏名、生年月日などのほかに、保護者の就労や疾病、障害、求職活動など、保育の必要性に関する事由が一つあります。二つ目に、長時間利用か短時間利用かの区分。そして三つ目に、一人親家庭や虐待のおそれのあるケースの子供など、優先利用に関する事項。そして四つ目に、所得に応じた利用者負担の区分を記載する予定になっています。

 今後、この認定証に記載する事項の詳細につきましては、制度の施行までに詳しく検討していきたいと考えています。

高橋(千)委員 認定証がどのような形になるのかとか、そういう詳細なことはこれからだと思いますが、今お話しされた内容そのこと自体が非常に重要な中身だと思うんです。

 それは、市町村との関係であれば、その人のさまざまな事情を配慮して保育所の入所を決定するというのが今までの仕組みでありました。しかし、これからは認定証を持って親が保育所を直接回らなければならないわけです。その認定証に、優先入所の必要な家庭であるということが書き込まれている。そして所得がわかる。どういう書き方になっているかわかりませんけれども、例えば保育料が、どこどこ市の場合であると一万円くらいだよというと、よほど所得が低い人だなというのはおのずとわかるわけですよね。

 そういうカードを持って直接保育所に行くとなると、それはもう、残念ながら、選ばれる、保育所の側から選ばれる側になってしまう。それが直接契約というものではありませんか。

小宮山国務大臣 これは予算委員会の中でも御党の議員とも大分議論をさせていただいたところですが、これまでの、保育に欠ける子を認定して、それを措置して、義務を市町村にかけていくという仕組みではなくて、今回は、必要とする全ての子供を対象に、直接契約をして、それで市町村に責務をかける、これは考え方というかその基本が違うということなんですね。

 そうした中で、認定証を持って歩き回らなければいけないというお話がありましたけれども、市町村でも、当然、相談に応じたりあっせんに応じたりということをいたしますし、一人親家庭ですとか虐待のおそれがあるケースとか、優先度の高いケースはきちんとそれは市町村の方で入るところを探してちゃんとそこへ入れるということもしますので、そういう意味では、全く行政の方がかかわりなく、親だけが苦労するとかいう形にはならないというふうに考えています。

高橋(千)委員 かかわりなくではなくて、大臣の予算委員会の答弁も私ちゃんと見ています。今だってそうじゃないかとおっしゃいました。そのとおりなんですよ。今でも一人で五カ所とかあるいは十五カ所とか、何カ所も転々としている親御さんがいらっしゃいます。わざわざ入所のポイントを上げるために、育休になった途端に申し込みをしなければならない、さまざまなことをやっているわけですよね。だけれども、十数カ所も自分の事情を持って歩く、これは大変なことでしょう。

 それで、市町村はあっせんできるとかいろいろ言うけれども、随時これを受け付けますから、いわゆる育休が明けるときというのは随時なわけですよね、みんなが四月にちょうどよくなるわけじゃないんです。そうすると、園が、わざと断ったと言わなくても、うちの園は満杯ですと言えばそれで済む話なんですよ。だから、市町村が確実に入れるところをきちっと確保しておくということがなければだめだということを言っているんです。

 それで、さっき用意していた質問に戻りますけれども、結局、私は、保育所をつくるということを全くやらなくなるということではだめなんだということなんです。

 それで、資料の四枚目にありますけれども、こども園給付、これは介護のような仕組みになって、減価償却費というところがありますよね。こういう形で、施設整備費というのが、減価償却費の中でそれぞれの施設が頑張れよという話になっちゃうわけで、そうではなくて、やはり国や行政が責任を持って保育所をつくるんだという立場に立っていただきたいんです。

 私たちは、国が計画を持って、年間十万人くらいの保育所の受け入れの整備をするべきだということを主張してきました。それにかかる予算は千四百億円。そして、処遇改善だとか、地方の負担を減らしても四千億円ということを提起しているんです。

 そうすると、四千億円という数字は、今回の新システムの充実分でも四千億円だし、安心こども基金が既に約四千億円のお金を基金として積んできましたよね。ですから、そこを本気でやろうとしてくれば、公立の保育所とか認可保育所を、無認可のところでもできれば認可になりたいと言っているところは四割あるわけですよね、厚労省の調査でも。そこに向き合ってくれば、こうした問題が解決していくのではないかと思うんですが、いかがですか。

小宮山国務大臣 無認可のところで認可になりたいと言っているところでも、今回、客観的な基準を満たしたら、それは指定基準を満たしたということで財政支援の対象になりますので、それぞれの市町村の事情でそれを認定しないということはなくなると考えています。

 それから、施設のつくり方の問題ですけれども、今回、新システムの中では、減価償却費の一定割合相当額を給付に組み込む形で設定して、長期にわたって平準化した形で施設整備を支援するということ、それから、初期投資に必要な資金調達については政策的な融資によって支援をすることにしています。

 当面は、待機児童対策として、施設の新築とか増改築、それから幼稚園の調理室の設置など、増大する保育需要への対応なども重要なので、こども園給付とは別途の支援という形で、児童福祉法で新たに交付金を創設いたしまして、国から市町村にそれは補助をしていきたいと思っていますので、いろいろな施策を適切に組み合わせをして対応していきたいと考えています。

高橋(千)委員 せっかく認可外の保育所が認可になりたいと言っているときに、基準をそっちに合わせて、客観的基準だから今の基準と違うものでもいいんだよ、そういうやり方ではなくしてほしいということを言っているんです。

 今、交付金のことも最後におっしゃいましたけれども、今回の七千億とは別の予算ですので、桁が幾らになるかすら教えていただけませんでした。見通しがあるのかどうかさえ全くわからないという事情であります。ですから、本当にニーズに応えるんだ、子育て世帯を応援するんだというのであれば、そこがきちんと答えられるようにならなければならないと思います。

 私は、本当は最後に岡田副総理に、社会保障と利益優先の営利企業の参入は矛盾するのではないかということを質問するつもりでしたが、時間がなくなりましたので、これで終わって、次の機会にしたいと思います。

 ありがとうございました。

池田委員長 次に、小林正枝さん。

小林(正)委員 新党きづなの小林正枝でございます。

 本日は、委員長並びに与野党の理事の先生方に質問の時間をいただき、まことにありがとうございます。

 貴重な機会ですので、きょうは、社会保障と税の一体改革につきまして、岡田副総理に質問させていただきたいと思います。

 政府は、増税による増収分は社会保障以外の目的には使わないと言っておられます。まず確認させていただきたいのですが、絶対に社会保障以外に使わないのですか。

 そもそも、初めて三%の消費税を導入した一九八九年の四月、その当時も時の政府は消費税は福祉目的に使うと言っておりました。消費税に対する国民の不信感が強いのは、言っていたことと実際に行われていたことが異なっていたという歴史があるからだと思います。ですから、なし崩し的に今度は信じろと言われても非常に無理な部分があると思うのです。

 私ども新党きづなは、今日の経済状況のもとで、あくまでも現時点での増税は承服しかねるという立場です。

 したがいまして、景気回復できた後の仮定の話として伺いますが、もし本当に増収分を社会保障にしか使わないと考えていらっしゃるのならば、社会保障目的税という新税にすべきではないでしょうか。そうしないで消費税の税率をアップしようとする理由を教えてください。

岡田国務大臣 今回、五%引き上げ分については、全額を社会保障財源とするということは何度も申し上げているとおりでございます。

 法律の条文上もそのことを明確にするということにしておりまして、先般閣議決定した法案におきましては、消費税法第一条第二項に、消費税の収入については、地方交付税法に定めるところによるほか、毎年度、制度として確立された年金、医療、介護の社会保障給付並びに少子化に対処するための施策に要する経費に充てるものとするという規定を置いているところでございます。

 地方税法におきましても、その引き上げ分の地方消費税につきましては、社会保障施策に要する経費に充てることを規定することとしております。

 これらの規定によって、消費税を社会保障財源化することについては法律上もしっかりと担保されているものと考えております。

小林(正)委員 第一生命研究所の試算によりますと、消費税が一〇%に上がると、年収二百五十万円未満の夫婦二人に子供二人といった四人家族では、今よりも年間十二万円の負担がふえます。一方、年収八百万から九百万の世帯の負担増は年間十九万円で、年収の開きは、さほどの負担の差がございません。

 このように、消費税は所得の低い人ほど負担感が大きい税制ですので、一体改革では、所得税の最高税率の引き上げや所得課税をふやすことを念頭に、総理は税率構造の見直しを考えておられるのだと思います。

 そこで、岡田副総理にお伺いいたします。

 二〇一二年に見込まれる税収約四十二兆円の内訳は、所得税が十三・五兆円、消費税が十・四兆円、法人税が八・八兆円ですが、この基幹三税の歳入バランスをどのように評価されておりますか。バランスがいいと思われているのか悪いと思っておられるのか、お答えください。

岡田国務大臣 これは見方はいろいろあるというふうに思います。所得税などは、やはり所得がふえておりませんので、結果として税収がふえていないということもあるかと思います。そして、間接税の割合が高まってきていることも事実であります。

 ただ、社会保障ということでいえば、やはり私は消費税というものが一番望ましい。所得税や法人税ということになりますと、これは景気の影響を非常に受けるわけで、大幅に増収になったり、あるいは逆に減ったりということがございます。安定的な税収が見込めるという意味でも、消費税というのは社会保障に最もふさわしいものであるというふうに考えております。

小林(正)委員 それでは、なぜヨーロッパ各国で高い税率の付加価値税が導入されているのか、御承知のこととも思います。EU域内では人口やサービスの流動性が非常に高く、直接税を徴収しにくいという事情があるからです。しかし、日本はヨーロッパとは全く事情が違います。EUのように、それぞれの国の人はいろいろな地域で仕事を持って、また、短い年月で多くの人々が住居や職場を移動するといったことは、幾ら日本で外国人の労働者がふえているからといっても、間接税に大きく頼らなければならないとまでは言えないと思うのです。

 それでも岡田副総理は消費税に依拠するべきだとお考えなのでしょうか。

岡田国務大臣 これだけグローバル化した世界ですから、経済がグローバル化しておりますので、日本といえどもそれは例外ではないと思います。

 特に法人税につきましては、やはり法人税収が周りの国々と比べて高いということは、日本に対する投資も期待できないし、あるいは逆に、日本から海外に事業所、工場が移転をして雇用が失われるということは現に起こっていることだと思います。

 所得税については、そこまでということはないかもしれませんが、しかし、高額所得者の方の中には、日本から居住する場所をほかの国に移して、日本の高い所得税を何とか回避しよう、そういう動きがあることも事実でございます。

 私は個人的に、所得税の最高税率は、今回も五ポイント上げるということで御提案させていただいておりますが、もう少し所得税についても将来的には議論の余地があるのではないかというふうには思っておりますが、ある程度まとまった税収ということになりますと、所得税を上げるにも限度がありますから、やはり消費税ということが一義的に来るのではないかというふうに思います。

小林(正)委員 ここで歴史を振り返っていただきたいと思うのですが、平成十年八月十九日、衆議院の予算委員会で、当時新進党におられた岡田副総理は、当時の宮沢大蔵大臣に対して次のように追及されておりました。

 景気の現状を見たときに、それを、それというのは消費税の引き上げですが、そのままスケジュールであるからといってやるのか、あるいは、景気の見通しがはっきりするまで待つとか、所得税の減税を打ち切るのを少し延ばすとか、そういう選択肢は十分あったはずです、それをやらなかったことが今日の景気の後退を招いた最大の原因になっている、そこのところをしっかり踏まえることがこれからの景気対策を考えていく上で非常に重要であるとおっしゃっております。

 当時のお考えと今やられようとしていることがかなり違っているように感じられますが、矛盾してはいませんでしょうか。

岡田国務大臣 当時の私の質問は、新進党の、消費税の引き上げに対して非常に批判的な、そういう党の考え方に沿って質問をしております。

 そのことに加えて、私はこのとき九兆円の負担増ということを申し上げているんですが、消費税の引き上げだけではなくて、減税をやめたり、一挙に九兆円負担をかけたということが景気の後退の一つの大きな原因になったということについて申し上げているわけで、この平成十年と現在を比べると、やはり財政の状況が根本的に違うということは踏まえた上での議論でなければならないというふうに思います。

 この当時であれば、まだやりようによってはプライマリーバランスの黒字化ということは難しくなかったかもしれません。しかし、今やそれはよほど努力をしない限りそこまで行き着けないわけで、そういう日本の財政構造、財政収支の状況の変化ということは当然踏まえて議論しなければならないというふうに考えております。

小林(正)委員 案の定といいましょうか、想定内の御答弁で、少々残念であります。私には言いわけとしか聞こえませんでした。お話を聞く限り、到底納得できるものではありません。

 その当時の質問で、岡田副総理は、消費税の税率アップが景気の後退に及ぼした影響をどう考えておられるのかと、そこまで追及されているわけです。

 今、このデフレかつ不況のときに、平成十年当時よりもさらに経済状態が悪い中で、本気で消費税率のアップをお考えなのでしょうか。再度お尋ねいたします。

岡田国務大臣 このときの経済状況と今とどちらが悪いかといえば、私は、このときの、平成十年の方がより深刻であったというふうに思います。山一証券初め金融機関が次々と破綻をしていく、不良債権の問題が足を引っ張って、ある意味でクレジットクランチといいますか、お金が回らなくなっている、そういう状況の中での話であります。日本経済としては非常に危機的状況、あるいはその直前ということで、そういう中での議論でございます。

 もちろん、今も経済状況が厳しいことはわかりますが、かといって、それでは先送りしていって、社会保障の現在の水準はそのまま維持をしながらやっていこうとすれば、これは当然、赤字国債をさらに発行し続けることになるわけで、私は、そういうことは長くもたないと思いますし、少なくとも次の世代に対して、それは余りにも不公正であるというふうに考えております。

 そこのところをどういうふうにお考えなのか。やはり、ここで社会保障制度を持続可能なものにするためにも、消費税を一〇%にさせていただくことは、これはやむを得ない選択、そして国民の皆さんも、多くの方はそのことはわかっていただいているというふうに私は思っております。

小林(正)委員 今の御答弁の中にありました国民の消費税に対する考え方、つまり消費税の逆進性について今度はお伺いしたいと思います。

 政府は、低所得者ほどダメージが大きい逆進性を緩和する措置として、簡素な給付措置、つまり現金給付と、将来には給付つき税額控除を考えておられるようです。しかし、問題なのは、それらについての議論が政府・与党内においても具体的にはされておらず、まず増税ありきといった前のめりの姿勢が目立ったことです。

 そのようなことを考えますと、私は、逆進性を緩和するためには、ばらまきだと批判される現金給付よりも、生活必需品や医療品などに軽減税率を適用する方が、よほど早いし、公平感が持てるのではないかと思うのです。なぜそうした発想になられないのでしょうか。

 あわせてお伺いいたしますが、現金給付というやり方は、世代間の公平性という観点から高齢者にも間接税で負担をお願いするという今回の消費増税の趣旨と反するのではありませんか。御答弁をお願いいたします。

岡田国務大臣 まず、消費税を引き上げるということについて、確かに所得の少ない方に逆進的に負担がかかるということは事実であります。それを和らげるために、基本的には三つのことがあると思います。

 一つは、そもそも論ですが、これは消費税を引き上げて何に使うか、社会保障に使うということであります。

 社会保障、例えば医療にしても介護にしても、サービスは、所得の多い人にはいいサービスをとか、そういうことは別にございません。サービスの質は基本的に同じであります。つまり、消費税、消費に比例して税金をいただく、納税していただく、そういうお金を集めて、そして所得の多寡にかかわらず同じサービスをという、そこ自身が所得の再配分になっているということでございます。

 そして二番目は、今回、特に所得の二極分化ということを踏まえて、所得の少ない方に対するさまざまな措置ということを考えているということでございます。

 先ほど来議論になっておりますが、年金について最低保障機能を高め、基礎年金の少ない方に対して追加的に給付をすることとか、あるいは介護保険の保険料について所得の少ない方に対して補填をするとか、そういう措置を考えているわけであります。

 三番目にあるのが、これも先ほど来議論になっておりますが、給付つき税額控除、あるいはそれができるまでの間の臨時的な給付措置ということでございます。

 複数税率の方がいいじゃないかという議論は党の中でもあったと思います。ただ、複数税率にするためには、例えばインボイス制度の導入が前提になります。しかし、インボイス制度の導入については、中小零細企業の方々を中心に、関係団体から強い反対の声もございます。そういうことも踏まえなければならないということであります。

 臨時的な給付措置につきましては、党の中であるいは政府の中で議論を重ねておりまして、近々、基本的な考え方について取りまとめをしたい。議論していないということはございません。ここ十日間ほど、かなり詰めた議論をしているところでございます。

小林(正)委員 次に、もう少し国民生活に密着した部分についてお伺いしたいと思います。

 私は、全ての食料品に軽減税率を適用すべきだとか細かく何段階もの税率を設けろと言っているわけではございません。例えば、将来的に消費税率を上げるときには、第三者機関に任せて軽減すべき品目を決めてもらうといったことも可能でしょう。なぜそれができないのでしょうか。消費税を導入する以前は物品税というものがございました。いわゆるぜいたく品に高い税金をかける、あのような形の税のあり方がなぜできないのでしょうか。その理由をお聞かせください。

岡田国務大臣 基本的には、先ほど申し上げたインボイス方式の導入ということが前提になるときに、それに対してなかなか合意が得られないということは一つあると思います。

 もう一つは、客観的に決めるとはいえ、何に軽減税率を適用し、何に適用しないかということ自身が、非常に大きな権限といいますか、政府が、あるいは第三者が決めるにしろ、そういうことになって、昔、こういうことがよく言われました。紅茶とコーヒーで、たしかコーヒーは物品税がかかっているが紅茶はかかっていないとか、そういう話は数限りなく出てくるわけで、私は、余り政府がそういうことに介入して、これはぜいたく品である、これは必需品であるということを分けていくというのは余り望ましくないんじゃないかと。

 それはまさしく個人の好みといいますか、多様な考え方、全体、所得が非常に少ない方であっても、一点豪華主義で、例えば車だけはすごくいい車を買いたいとか、いろいろな生活、ライフスタイルがありますので、何かそれを、軽減税率が適用されるものとされないものでどこかが決めるというのは、私の考え方にはなじまないというふうに思っているところでございます。

小林(正)委員 また、関連しまして、現在でも賃貸物件の家賃や学費、保険適用の医療費、介護サービスというものは非課税になっていますが、生きていく上で必要な物やサービスについて非課税対象の拡大を考えておられるのか、これについてもお答えください。

岡田国務大臣 今、党の中でもそうですが、住宅とかそういう非常に金額の張るものについて何らかの対策が必要ではないかと、これは別に軽減税率ということではないんですが、そういう議論はなされているところでございます。

 非常に難しいのは、例外を設ければ設けるほど税収がその分減ってしまいますから、税率を、逆に言うと、上げなければいけないということになるので、本当に必要最小限、どうしても必要だという場合に何らかの措置を考えていくということではないかと思います。

 非課税の範囲も、余り広げると同じようなことがございます。私は、そういう意味では、余り広げることは好ましくない。結局、税率がその分上がってしまうというふうに考えれば、なるべく公平に、同じように税がかかっていく、そして所得の少ない方への対策としては別の方法で、先ほど申し上げたようなことで対応していくということがいいのではないかと思っております。

小林(正)委員 時間も限られてきましたので、私の最後の質問をさせていただきたいと思います。

 社会保障と税の一体改革の大綱を拝見いたしました。この中の第三章、医療、介護のところで、難病対策というところがありました。そこには、医療費助成の対象拡大、安定的な支援の仕組みの構築を目指し、引き続き検討するという短い文章しかありませんでした。

 私は、このような書き方を見るときに、本当に将来の社会保障を見据えて税の問題を議論したいと思っておられるのか、本当に疑問に思ってしまいました。

 難病に苦しむ人は、数は少ないといえども、本当に深刻な毎日を暮らしていらっしゃいます。そういう人に寄り添う改革ではない、ただ単に消費税アップだけを狙う今の政府の姿勢にはくみすることはできません。

 多くの国民は、きちんと使ってくれて、必要なサービスが受けられるのであれば、増税もやむを得ないと考えているのだと思います。でも、現状はそこまでいっていません。そういう国民の切なる気持ちに岡田副総理はどのように応えられるのでしょうか。最後にお聞かせください。

岡田国務大臣 難病を初め、弱い立場にある方々に十分な配慮が必要だという小林委員の御指摘は、そのとおりだというふうに思います。

 我々も、この消費税、五%上げて、四%は実は今の制度を維持していくために必要なもので、一%しか新しいことには使えない。逆に言うと、それだけ財政は逼迫していて、今の社会保障制度を維持していくだけでも大変な状況にあるということです。

 そういうことをやはり多くの国民の皆さんにわかっていただき、そして、今回の五%分は社会保障にしか使わないということをきちっと法律でも担保しておりますので、そういうことをきちんと説明する中で、ぜひ御理解をいただきたいというふうに思っております。

 委員も、最近まで一緒に同じ党の中で議論させていただいたわけですから、ぜひ今後も議論を重ねて、最終的に、消費税引き上げを含む社会保障・税一体改革に御賛同いただきますことを期待しているところでございます。

小林(正)委員 これで私の質問は終わりますけれども、いずれ、いつか消費税が上がったときに、その税率が本当に社会福祉目的のために使われることを切に願いまして、私の質問を終わります。

 本日は、ありがとうございました。

池田委員長 次に、阿部知子さん。

阿部委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。

 岡田副総理にあっては、ようこそ厚生労働委員会にお越しいただきました。そして、きょうは三十分お時間をいただきましたので、少し応答の形式になれるかと思いますが、これまでの各委員と岡田副総理とのやりとりを聞いておりまして、まず、疑問に思った点からお尋ね申し上げます。

 先ほど岡田副総理は、御自身、新進党におられて、当時、消費税が三から五%に引き上げられた後、山一証券の問題を初めとして、経済を揺るがすような状況があり、結局、税収も下がっていったわけですね。消費税を上げても税収が上がらない構造をとってしまったわけです。そのときにいろいろ御質問をされたという御経験を踏まえて、しかし、その当時の経済よりはまだ今の方がいいんじゃないかというふうに思っておられるんだなということを改めて実感したんですね。

 私は、そういう経済、マクロの指標で見る経済と、実際、生活者が感じる経済、体温の経済と、両面あるように思うんです。

 ここで岡田副総理に、冒頭、一問目です。

 現在の我が国は、一九八五年、データのある限りにおいて、最も相対的貧困率が高くなりました。経済のパイというか大きさと、その中で生きる人間が、格差が拡大して、いわゆる普通の半分以下の収入で生きる方が多くなったということも、今の政治が最も考えなければいけない構造変化なんだと思います。

 経済の体温ももちろん温まってはおりませんけれども、岡田さんは、この実態、御自身の実感の中での先ほどの御答弁ですけれども、私は、逆に、社会としてはより深刻になったんだと思うんですね。逆に、経済成長率、名目成長率、実質、名目、もしゼロであっても、その中での分配とかあるいは経済の循環がよくいっていれば、それが持続可能な経済なのかもしれません。

 この最大の相対的貧困率ということ、データを取り出して以来最大ということは、どうごらんになりますか。

岡田国務大臣 委員御指摘のように、貧困率がOECD諸国の中でもかなり高い状況、特に、親が一人、そして子供がいる、そういう家庭の貧困率はOECD諸国の中で一番高いということで、そこは非常に深刻な状況であることは私もよく認識をしております。そういったことを早く方向を変えなければいけないというふうに、当然、政治家として考えております。

 ただ、先ほど申し上げたのは、当時の山一証券が破綻したあのときは、いわば、今ももちろん平時ではないんですが、あのときはまさしく戦時だったと思うんですね、経済が一体どうなるのかと。各金融機関、長銀の破綻とかいろいろありましたが、主要行が全部倒れても不思議ではないという状況もあったと思います。そのぐらい不良債権の問題は深刻であった。あそこをうまく切り抜けなければもっと悲惨なことになっていたことは間違いないので、そういう意味で私は先ほど申し上げたわけであります。

阿部委員 もちろん金融危機が加わったわけですから、経済も社会も不安定になったと思います。でも、同時に、今だと、そのもともとの社会のベースが、先ほど申しましたように、貧困層というものを膨大に抱えておられるわけです。

 副総理は今、例えば単身の女性、シングルマザーの問題等をお取り上げになりましたが、実は、単身の女性の貧困率、相対的貧困率、今や三四%、三人に一人であります。男性のシングルも貧困。あるいは、これから御紹介いたしますあらゆるところに貧困、相対的貧困ということが顔を出す時代の中で、果たして、消費増税の手順を間違えば、私は、いわば金融危機は外から来たショックだったかもしれないが、今度は我が国の中から崩壊していくような危機になるだろうということを思うわけです。

 もう一つ副総理にお伺いいたしますが、あれは三年前というよりは、もう少し、まだ二年と八カ月か九カ月ですが、副総理が、当時、民主党の幹事長でいらして、私が社民党の政策審議会長で、今は忘れられてしまった三党連立合意というものをつくりました。

 ここの一文、文書を読ませていただきますので、この認識は今も続いているかをお伺いいたします。

 「連立政権は、家計に対する支援を最重点と位置づけ、国民の可処分所得を増やし、消費の拡大につなげる。また中小企業、農業など地域を支える経済基盤を強化し、年金・医療・介護など社会保障や雇用制度を信頼できる、持続可能な制度へと組み替えていく。さらに地球温暖化対策として、低炭素社会構築のための社会制度の改革、新産業の育成等を進め、雇用の確保を図る。こうした施策を展開することによって、日本経済を内需主導の経済へと転換を図り、安定した経済成長を実現し、国民生活の立て直しを図っていく。」ここの肝は、「国民の可処分所得を増やし、消費の拡大につなげる」と。

 消費税というのは、ある意味では可処分所得を減らしていくわけであります。可処分所得というのかどうか、所得から負担をかけていくわけですが、副総理にあっては、この部分、変わっていないのでしょうか、それとも、三・一一があったから変わったのか、教えてください。

岡田国務大臣 基本的には変わっておりません。そして、その中にあります、やはり消費中心の内需、そこで経済成長していくという基本的考え方、非常に重要だと思っております。

 ただ、そのためには、やはり将来に対する安心感というものがなければならない。今、もちろん、委員御指摘のように、貧困率が非常に高くなっているとはいえ、それでも高齢者を中心に資産を持っておられる方は結構いらっしゃる。しかし、なかなかそれが使われない。やはり、将来に対する安心感がないためにそういった形になっているというふうに思います。

 社会保障制度をしっかりと安定感のあるものにするためには、そのためには財源の手当てが私は必須だと思いますが、そういうことによって将来の安心感をしっかりとつくっていくということが一つの重要な柱であるというふうに思っております。

阿部委員 今回の、政府が打ち出される税と社会保障の一体改革、副総理のお言葉をかりれば、社会保障、安心してもらえて財布のひもが緩むように、非ケインズ効果とかいいますが、そういうものが十分、本当に国民に受けとめられるほどに今政府のお出しになった案が社会保障の充実をメッセージしているかというと、そうでもないんだと私は思います。

 この点は、また別途、特別委員会等々ができるやに聞いておりますから、岡田さんとも私は論議を交わしたいと思います。

 先ほど、どなたかの委員の御質疑にありました。加藤委員だったかと思います。まず社会保障の充実が実感できる形で打ち出したならばもう少し違う結果もあろうかと思いますが、残念ながらそうなっていない。

 そして、きょう手元に配らせていただきました資料、一枚目、岡田大臣にもごらんいただきたいんですが、これは私が予算委員会でも取り上げましたので趣旨はおわかりと思いますが、二〇一〇年現在、消費税が五%で、そのうち四%が国税に入るといたしまして、国税収入の中で消費税の占めるパーセンテージは二四・三%。約四分の一に、我が国においては、わずか五%の消費税でも既に四分の一になんなんとしている。税収構造はいびつである。これは、先ほどの小林委員の御質疑で、ありました。

 先ほど岡田大臣の御答弁にもありましたように、所得税と法人税が下がり続けておりますので、それは景気もございましょう、あるいは累進度を低めたこともありましょう、法人税も減税をされたこともあるし、日本はアメリカ以上に課税ベースが狭いとも言われています。そういう中で、基幹三税の中で、法人税も所得税も少なくなる、結果、消費税が目立ってくる。

 これを、今政府のお考えのように、二〇一五年八%、そして二〇一六年一〇%といたしますと、何と、単純試算ですからいろいろな要素を含んでおりませんが、消費税の占める割合は、二〇一五年で三四%、二〇一六年、一〇%になさったら三九・二%、四割近くなるよと私が予算委員会で指摘しました。そのとき、安住財務担当大臣が、いやいや、所得税の上を四五%に上げるので、もう少し、三七%くらいですとお答えになりましたが、いずれにしろ、今の景気がこの一、二年格段に上がらず、所得税も上がらないとして、法人税も同じだとすると、何と、消費税が税収構造の四割を占めることになります。

 これは、岡田大臣は、さっき、いや、社会保障がかかるんだから、この安定財源の消費税がしっかりする、しっかりいただくということがいいことなんだとおっしゃいましたが、一国の税収構造から見て、もろもろやらなきゃいけないことがあるわけです。今、地震、津波、おまけに原発事故、幾らかかるかわからない。その全体を国は賄っていかなきゃいけないときに、消費税ばかりで、それが社会保障で、他の国の施策はどうなるのか。

 私は、まず手をつけなきゃいけないのは、当然ながら、所得税がもっと上がってくる、ないしは担税力を、おのおのが、働く一人一人が持てる政策だと思いますが、いかがでしょう。

岡田国務大臣 もちろん、個人の所得が上がるような政策、成長戦略というふうに一言で言えるかもしれませんが、これが並行してなされなければ、単に増税だけで物事が賄われるわけではないというのは御指摘のとおりだと思います。

 ただ、一方で、今委員は、二〇一〇年度と一六年度を比べて、消費税が二四・三%から三九・二%に高まって四割になってしまう、こういう御指摘でございました。しかし、もしこれを所得税で丸々、消費税を増税せずに、この差額である一五ポイントを賄うとすれば、逆に所得税が五割近くなってしまうわけで、それは私は余り現実的とは言えないんじゃないかというふうに思います。今の所得税を七割ぐらいふやすということになるわけですから、それは多分、今所得税がかかっていない方々に対しても課税するというようなことも含めてやらないと、税率を上げるだけでは難しいことだと。

 そういう意味で考えても、もちろん、所得がふえていくことで所得税がふえることは非常にいいことだと思いますが、やはり消費税というところにかなりの部分依存せざるを得ないというのが現状ではないかと思います。

阿部委員 まさに鶏が先か卵が先かのそういう論になってしまいますので、逆に、政権交代してからずっと、何とか雇用をふやし、経済をよくしようとしてきたわけです。そのことの立ちおくれの方を深刻に受けとめていただきたいし、私とて、これを全部所得税でやれとは当然思っておりません。ただ、今の現状だと、おのおの、本当に貧困層が多い中で、貧困層というと少ない人たちのように思いますが、そうではなく、拡大している中で、所得増税が先なのかどうかという物の順番のお話であります。

 大臣には、次のページを見ていただけますか。ここには、若い人たちの不安定就労者というくくりの定義を設けて、非正規労働者のうちで十五歳から三十四歳で、中にはアルバイト、パートをしている学生もカウントしておりますが、そうでない、非在学中の、そして不安定な就労をしておられる若者が四百二十一万人おられます。これは、十五から三十四の年齢層の若者をとると約三〇%、すなわち三人に一人。よく言われますよね。下には、その推移を描いたグラフがございます。

 私が今回の提案の税と社会保障の一体改革をじいっと見ても、この大事な未来、担い手である未来に対しての施策が余りにも弱いメッセージで。当然、この方たちは担税力を持てません。税を払ったり、保険料を払ったりするだけの自分のキャパシティーがないという方であります。

 岡田副総理は、この現実はどうごらんになりますか。

岡田国務大臣 特に、若い方々が働く意欲を持ちながら働く場が持ち得ないということは、これは極めて残念なことですし、政治として何とかしなければいけないことだというふうに思います。

 例えば、介護とかあるいは医療も含めて、いろいろな福祉の現場では人が足らないという部分もございます。結局、うまく条件がマッチしないということだと思いますが、そういった一方で、これだけ職につけない方々がいる一方で、人が足らないそういう場面もありますので、もう少し、そういったところの条件を改善する中で、多くの方に働いていただけるようにしていく必要があるというふうに考えております。

阿部委員 今度の税と社会保障の一体改革をいろいろ拝見しても、やはりこの側面が非常に弱い。そして、政府にあっては六月に若年雇用戦略を雇用戦略対話の中でつくられるということですが、今の若者たちに本当に訴え得るメッセージ、あるいは御高齢者に対しても、私は、社会保障の安定の実感が、メッセージが薄いと思います。そういう中で増税だけが突出する。

 そして、次に、女性の問題で、次のページの資料を見ていただきたいのですが、これは、この五年間で子育て世代で暮らしが、ゆとりがどうか、ゆとり実感はどうかというと、母子世帯、父子世帯、二人親、そして全体、並べて見ても、いずれも、例えば全体、平均をとっても、五年前に比べて、五〇%の家庭が暮らしのゆとりはなくなったと言っている状況があります。

 下には、もっと問題なことがございます。

 実は、この下のグラフ、世で言う専業主婦の皆さん、昔であれば夫の収入のもとに妻がある程度安定した生活が送れたはずの専業主婦の皆さんの御家庭、これを見ると、この専業主婦と呼ばれる方たちの、無職、奥様がお仕事を持っていない家庭では一二・四%が相対的貧困にある。夫一人の稼ぎの家庭で一二・四%が相対的貧困に入ってしまう。

 共稼ぎであれば、これは、奥様が正社員、まあ夫がでもいいです、両方正社員かな、というと四・四%に減る。

 では、専業主婦の貧困は何が原因なのかというのを、この横に。今、あなたのこの状態、どうすればいいと思いますかと伺うと、子供の保育の場がないと、五〇%以上がそうお答えになります。

 私は、若者も貧困、単身の女性も貧困、専業主婦の七人に一人も貧困、こんなになってしまったら、社会は、どういう改革を、税と社会保障といっても、とてももたないと思います。

 小宮山大臣にお伺いいたします。

 大臣は、特に子育て、保育には熱心にお取り組みであります。先ほどの子ども・子育てビジョンの内容も、私は、全般にわたってはいろいろ申し上げたいことがあります。ただ、家庭的保育ということで今まで保育ママさんがやられていたようなことを、特に都市部で足りない保育、専業主婦で、働きたいと思い、でも貧困から抜け出せないお母さんたちにも、例えば今の家庭的保育を拡充して、自分の家でなくても、どこかのマンションを借りる、あるいはグループでこういう保育に取り組むなども本当はもっと広がっていいと思うのですけれども、私が昨日厚生労働省に聞きましても、厚労省はこれで比較的やっているんだというお答えでしたが、平成二十六年に一万九千人計画のところ、まだ、全体的に言えば、今までの保育ママも含めて、五千人余りの子供しかそこには行っていません。

 特に、新しく打ち出した、そうしたアパートを借りたりマンションを借りたりしての保育は立ちおくれていると思いますが、これらについて早急に、何が、いわゆる制限というか、これらを爆発的にしていないのか、調べていただきたいが、いかがでしょうか。

小宮山国務大臣 先ほどからの委員の問題意識は共有する部分が大変多いのですが、家庭的保育については今五千百人で、これも少ないです、確かに。でも、この二年間でこれが二倍にふえてこの数なんですね。ですから、何とか応援を、しっかりバックアップをしてその一万九千人を目指したいと思っています。

 問題としては、保育者の方が一人でお子さんを預かることに対する責任の重さですとか、今度、自宅以外でやろうとすると賃借料が負担になるというようなことが言われております。

 そのため、平成二十三年の四月から、待機児解消の先取りプロジェクトの中で、先ほどもおっしゃっていただいた、複数の家庭的保育者が一つの場所で実施するグループ型の小規模保育、これを実施しています。また、平成二十三年度の第四次補正予算によって、安心こども基金の期限の延長と積み増しを行いまして、この家庭的保育事業を自宅以外で実施する場合の賃貸料の補助も行っているところです。

 この家庭的保育は、先ほどからお話ししたように、今度の新システムの中でも非常に重要な役割を期待していますので、そういう意味では、その課題を克服できるように支援を強力に行っていきたいと考えています。

阿部委員 本当に、今、都市部においては、保育所はつくってもつくっても足りないし、一方、地方においては、過疎化が進んで子供たちがいない。実は、一九九〇年代から、我が国の人口構造は、特に東京を中心として非常に都市に集中をしてしまって、これもまた、いびつな形をとっておる。その結果、若い人たちも流入してきて、そして、そこで働こうにも働けないという状態が専業主婦を選択させている。もちろん、自分が本当に選択したくてすればそれもいいですが、半分は働きたいと思っているという中ですから、ぜひ大臣には、この点、しっかり頑張っていただきたい。

 それから、五千百人とおっしゃいましたが、うち、国の補助分は半分でありますから。地方の独自事業というのもあるわけです。でも、地方だけではなかなか財源も足りない。

 そして、私が漏れ伺います例えば小宮山大臣の地元である世田谷などでは、そうやってマンションやアパートを借りてやりたいと思っても、消防庁との、その安全管理上の、やはり、お子さんを預かりますから、火事のときに抱えて逃げられるかとか、防災がどうかとか、いろいろな安全基準があると思いますがそういうもので、現場では大変に、もっと借りてグループでやりたいという方がいても、これが普及していないというお声も聞いております。

 大臣にお願いです。

 ぜひ、現場でどんな声が上がってきているか。これは、子供にとって、家庭的保育は安全性を伴えばとてもいい保育の形態だと私は思います。それが、荷物みたいに、あるいは危険を無視して置かれるのはいいことではありませんから、大臣には、現場に聞いて、何がネックになっているか、もっと本当に普及させる手はないか、調べていただきたいが、いかがでしょう。

小宮山国務大臣 ちょうど待機児解消プロジェクトのときに、これは横浜市とか世田谷区も含めて、非常に待機児さんが多くて先進的に取り組んでいるところから多くのことを伺いました。それで、規制の中でも改革できるところはしたんですが、今おっしゃった、子供の安全というところにつきましては、非常に大事なところなので、その現場の声をしっかり聞いて、消防庁を初め関係機関と調整もして、安全を確保した上で、可能な限りいろいろな形でできるように努力をしていきたいと思います。

阿部委員 まだ十分工夫の余地があると思いますから、よろしくお願い申し上げたいと思います。

 そして、きょう、せっかく岡田副総理に来ていただいていますので、最後の質問に移らせていただこうと思います。

 おめくりいただきまして、四枚目の資料をごらんいただきたいと思います。

 私がきょうの質疑の中で取り上げましたのは、拡大する貧困の問題と、そして、今回の税と社会保障の一体改革という中では雇用の打ち出しが極めて弱く、働き方が逆に雇用を、雇用こそが貧困の最大の防止策であり、また、家庭がきちんと収入を上げることが、子供の、いわゆる貧困の次世代送りの最大の防止策であると。

 とにかく、雇用、雇用、雇用。あっ、でも、これを言うと、誰かが言っていたなと。そうです。すなわち、菅総理の時代には、何かそうやって連呼しておられました。強い経済、強い財政、強い、もう一つありましたね、社会保障と言っておいられました。でも、いつの間にかそのトーンはだんだん弱まりまして、思ってはいらっしゃるんだと思うけれども、メッセージが弱まり、今回の税と社会保障の一体改革では極めてかすれていると思います。

 そこで、ここには、EU二〇二〇、欧州の二〇二〇。EUとて決して安穏とした状態ではありません。経済危機もありますし、金融危機もあります。そういう中でも、これは二〇一〇年に、二〇二〇年にはEUはどんな姿になりたいかという共同目標を立てるわけです。

 EU二〇二〇があって、ドイツがそれに基づいて我が国はこうやりますよという計画を立てたものが、EUの目標とドイツの目標というふうに書いて比較してございます。

 一に、雇用の促進であります。これは、EUは特に若い人の失業率が高いですから、次世代が貧困では困るということで。

 雇用の促進でも、我が国でも、先ほど来お示ししたように、同じ状態があります。それは岡田副総理も既に気がついておられると思います。ずっと雇用が安定して続いていた私たち以上の年齢と比べて、今の若い人たちの抱える不安定な雇用。

 そして、次が、イノベーションとか研究開発。これも重要なことです。

 そして、三番目が、排出量削減とか再生可能エネルギーの大胆な促進。

 もう、今、世界の経済競争の中で、新しいビジネスチャンスや、新しい雇用や、本当に力強い社会の地域の分権化が起こってくるにはこれしかないということだと私も思っておりますが、EUではこれを目標に挙げ、四番目が、教育レベルの改善であり、五番目が、社会包摂の促進、貧困対策であると思います。

 これは、我が国にとっても重要なメルクマール。もちろん、数値は現状によって違います。でも、この項立てをよく見ていただきますと、例えば女性の就業率、七三。日本でも、M字カーブをどうにかしようとか、貧困率はこう改善しようとか。それで、ここに目標値を設定して、それに向けてあらゆる政策を動員していく方式をとるわけです。

 岡田副総理には、ぜひ、こういう国民にわかりやすいメッセージと、政権が何をせんとしているのか、この点を私はつくり出していただきたいと思いますが、いかがでしょう。

岡田国務大臣 この欧州二〇二〇、そしてドイツの改革計画二〇一一の目標は、私もかなり共感を持って今見ておりました。目指す方向は同じだなという感じはいたします。

 ただ、いろいろな数字といいますと、何となくマニフェストを思い出して、余り数字ばかり先行するのもどうかというふうには思いますし、今の野田政権もかなりこういう方向に沿ったことはやっているというふうに思いますので、それをよりわかりやすく伝えていく努力は非常に重要ではないかというふうに考えております。

 委員にも、いつも御質問をいただくと大変勉強になりますので、きょうも随分勉強させていただきましたが、とにかく、我々は今、社会保障制度を持続させるために消費税の引き上げをお願いしているわけですが、物事はそれだけで済むわけではもちろんなくて、他方で、経済成長、そして、きょう委員御指摘になった雇用とか教育とか、そういったところにしっかり力を入れていくということが政権の目指すところでなければならないというふうに考えております。

阿部委員 前向きな御答弁、ありがとうございます。手順を間違わずに、本当に国民に安心をメッセージしていただけることをお願いします。

 終わります。

池田委員長 次に、柿澤未途君。

柿澤委員 みんなの党の柿澤未途でございます。

 税と社会保障一体改革担当の岡田副総理に御出席をいただいております。

 まず、基本認識をお伺いしたいというふうに思います。

 社会保障制度の本質は、市場経済における経済活動の結果として生じた所得分配の不平等を是正する所得再分配、これにあるというふうに思います。これに岡田副総理も御異議はないというふうに思いますけれども、いかがでしょうか。

岡田国務大臣 恐らく、考えているところは余り変わらないと思うんですが、やはり社会保障制度というと、生活の安定ということがまずあるのではないかと思います。

 所得再配分というのは、社会保障制度の一つの重要な中身ではありますが、もう少し大きく捉えると、生活を安定させるためということがまず来るのではないかというふうに思っております。

柿澤委員 これは、目的と手段という話かもしれません。社会保障制度の本質的な部分の一つとして所得再分配という機能がある、こういう認識を共有できたというふうに思います。

 所得再分配、富の再分配、こういうことについて辞書を引くと、大企業や富裕層の所得や資産に累進的に課税して得た富を社会保障や福祉などを通じて経済的弱者にもたらすもの、こういうふうにあります。つまりは、低所得者に対する所得移転、これが所得再分配、これが辞書的な意味だということになります。

 だとすると、所得再分配の制度の財源というのを、低所得者への逆進性の強いと言われている消費税で調達をするのは、やはりこれは非常に矛盾しているんじゃないかという気がしてなりません。

 現に、世界各国においては、消費税のような税目を社会保障目的税とする国はどこにもないというふうに言われている。なのに、なぜ日本の場合は消費税のような税目を所得再分配の財源とするのが最適であるということを考えているのか、ぜひ理由を聞かせていただきたいというふうに思うんです。

岡田国務大臣 特に欧州諸国では、消費税率は、あるいはそれにかわる付加価値税率は非常に高い、そして、そのことによって社会保障の財源を賄ってきているというふうに私は基本的に考えております。

 消費税は、確かに、所得の少ない方にとって逆進的な部分があります。しかし、先ほど来申し上げておりますように、消費税と、その消費税が何に使われるのかということは、これはやはりセットで考えるべきことだと思います。

 そういうふうに考えたときに、例えば医療にしても介護にしても、これは、所得の少ない多いにかかわらず同じサービスが提供される。基本的には、社会保障というのはそういうものだと思うんですね。

 消費に比例してたくさん御負担いただく、消費の多い人がたくさん御負担いただく、あるいは、もう少しざくっと言えば、所得に比例してと言ってもいいかもしれません、そういうふうにして納税していただき、そして、同じようなサービスを所得の多寡にかかわらずするということになれば、それ自身が所得の再配分機能を持っているということが言えると思います。

 それに加えて、今回、所得の二極分化ということに対する対応として、年金の最低保障機能の強化とか、あるいは介護保険、国民健康保険の保険料を低減するとか、そういった新たな措置も盛り込んでおります。そして、最終的には、給付つき税額控除ということを将来的には考えている。

 そういう三つの大きな柱をもって、消費税の逆進性というものに対して、それを超えるだけの再配分機能が果たされているというふうに考えております。

柿澤委員 大変不明瞭な御答弁だったように思うんです。今の御答弁で一体私の質問のどこの部分に答えがあったのか、こういうふうに思います。

 もう一度お伺いをしたいんですが、社会保障目的税として消費税を充てる、つまりは、消費税は社会保障の財源として最適だ、こういうことを皆さんは基本的には考えておられるわけですよね。

 でも、先ほど申し上げた、社会保障制度の本質的な機能である所得再分配、この所得再分配、要するに、高所得者から低所得者への所得移転、この目的を行うための手段として低所得者に対する逆進性の強い消費税を財源として充てるというのは、矛盾しているんじゃないですか。なぜそれが最適だと思うんですか。ここをお答えいただきたいというふうに思っているんです。

岡田国務大臣 かなり明確にお答えしたつもりですが。

 ですから、税だけ見ているのではなくて、その税が社会保障に使われるということで、歳入歳出、セットでお考えいただきたいというふうに思います。

 社会保障というのはそういう再配分機能がありますので、消費税を増税してその税収を社会保障に充てるということは、全体として再配分機能を果たしているということになると思います。

柿澤委員 それなら、何の税金でもいいじゃないですか。目的税化をすれば、所得税であろうが法人税であろうが何でもいいということになるんじゃないですか、社会保障のために使われるということが決まっているのであれば。

 なぜそれが消費税であったのかということをお伺いしているのであります。

岡田国務大臣 例えばこれを所得税で賄うということになりますと、今の所得税収から見ると、かなりの増税が必要になります。つまり、それは、税率を上げるというだけではなくて、今所得税のかかっていない方々に対しても所得税を課税するということでもしない限り、これだけの、五%分の税収というのは恐らく確保できないだろうと思います。そちらの方がある意味ではむしろ逆進的ではないか、こういう見方もできると思います。

柿澤委員 だんだんおっしゃっていることがよくわからなくなってきたんですけれども、まさに、所得再分配を行うための税目としては、私は、所得税というのはやはり最適な方法だと思いますよ。

 今の税率の議論は確かにあるかもしれません。あるかもしれませんが、しかし、あえて言えば、消費税というのは、基本的に一律の税率で、なおかつ、今回軽減税率等をやらないとすれば、低所得者から、所得の中での比率でいえば、より税負担が重くなる、こういう税目であることは私はやはり間違いないと思うんですよ。

 しかも、使途、目的とリンクをしているということが大事だということであれば、これは、保険制度なわけですから、社会保険、まさに保険料というのがそれに当たるものだということになってしまうと思うんですよ。

 今、何度聞いても、この財源として消費税を充てるということが最適だと政府が考えている理由が理解できません。御答弁をお願いします。

岡田国務大臣 例えば、委員の御指摘のように、所得税でこれを賄うということになりますと、消費税五%相当分というのは大体十四兆弱ということになりますが、現在の所得税収というのは大体その程度であります。ですから、同じだけの税額を取ろうとすれば、所得税を倍増しなければいけない。倍増するということになれば、最高税率を倍にするということになれば一〇〇を超えてしまいますから、結局、今所得税が課税対象になっていない方も含めて課税することにならざるを得ない。そのことは結局逆進的になるのではないかということを先ほど来申し上げているわけです。

柿澤委員 ここについては、認識の違いがやはりあるかなというふうに思います。

 もう一つ。どこかで、私、御答弁の中で出てくるんだと思っていたんですけれども、安定的な財源であるから消費税だ、こういう議論があります。

 安定的というのは、景気に左右されずに一定の税収が入ってくる、こういう意味であります。つまり、裏を返せば、幾ら景気がよくなって経済成長しても税収は大してふえない、こういう意味合いもあるというふうに思うんです。

 景気に対する税収弾性値の低い消費税で社会保障費の伸びをカバーしようとすると、これは、高齢化に伴う社会保障費の伸びに税収の伸びが追いつかない、たちまち再増税が必要になってしまう、こういうことになってしまうのではないかというふうに思います。その点からも、私は、消費税で社会保障の財源を賄っていくというのはやはり不適な考え方だと思うんですけれども、この点、いかがでしょうか。

岡田国務大臣 今の財政の現状は、今回五%上げたからといって、それで全て賄えるわけではないという厳しい状況にあります。ですから、将来的に一〇%に消費税がなった上で、それでも足らざる社会保障の経費あるいはプライマリー赤字の部分をどういう形で賄うかというのは、次の議論だと思います。

 それは、いろいろなことが考えられる。経済成長というものがある程度確保できれば、確かに税収がふえるということも期待できると思います。それから、歳出をさらに思い切って削減していくという道もある。税収、増税をするということであっても、消費税以外の、委員御指摘のような所得税やその他の税をふやす、そういう選択もあると思います。

 そういう議論は私はあり得るというふうに思いますが、しかし、それはやはり、現在の財政の状況、借金をして、赤字国債で多額の社会保障を賄っているという状況を、まず一〇%にすることで、それで物事が解決するわけじゃないんですが、ある程度プライマリー赤字を半減するというところまで行った上で次のステップの議論がなされるということだと私は思っております。

柿澤委員 先ほどの、所得税をこの財源にするとこうなるというようなお話が岡田副総理からありました。私は、日本の社会保障制度が抱えている最大の問題点は何かというところから考えたいと思うんです。

 内閣府経済社会総合研究所の太田清さんの二〇〇六年の研究、前にもこの委員会で紹介したことがありますけれども、日本は、所得再分配前の市場所得の格差の度合いでは、調査対象のOECD諸国十四カ国のうち十一位。平等な方なんです、格差の度合いが十一位ですから。でも、再分配後の可処分所得でいうと、十四カ国中五番目に実は格差の度合いが上がっているんですね。つまり、所得再分配後に、国際比較で見た場合、格差の度合いが上がっている、こういう国なんですよ。

 これは、社会保障制度の大半が高齢者への給付に充てられているため、現役世代から高齢者への所得移転、いわば、持たざる者から持てる者への所得移転が行われていて、再分配機能をほとんど果たしていない、こういうことに起因するものだというふうに思うんです。ここに日本の社会保障制度の問題の核心があると私は思います。

 そう考えると、所得再分配や、あるいは今申し上げた、いわば世代間格差の是正、この部分を考えるならば、持てる者から持たざる者への所得移転、つまりは、例えば資産課税、こういったものを考えなければならないと思うんです。

 例えば、相続税について、学習院大学の鈴木亘先生がこうおっしゃっています。

 現在、我が国では毎年八十兆円もの相続資産が発生しているけれども、税収はわずか一兆円程度である。これは、相続税の非課税枠が広くとられていて、よほどの資産家でなければ課税対象にならない。相続を受けた百人中四人しか相続税を支払っていない。

 課税ベースを広げて、例えば、相続を受けた人の、八十兆円のうち十兆円でも徴税できるとするならば、これは消費税五%分と同じ財源が確保されることになる。しかも、高齢化によって相続資産というのはふえていくわけですので、税収の増減のない消費税と比べると、高齢化が進展するに伴う税収増も期待できる。こういうことになるわけです。

 それに加えて、相続税は消費税よりもずっとすぐれた面がある。

 第一に、景気を悪化させる効果がずっと少ない。消費税引き上げは、これは日本人全員が全国各地で、津々浦々で増税を負担し、増税を実感することによって、消費を冷え込ませる効果が非常に大きい。一方で、相続税を支払う人は、仮に課税ベースを広げても、やはり少数なので、それ以外の人々の消費行動に影響しにくい、こういう点があります。

 もう一つ。相続税を上げると、資産をたくさん持っている高齢者の方々は、やはり、課税をされまいと、例えば子供や孫への生前贈与を行ったり、あるいは自身の消費をふやしたりすることになるでしょう。これ自体が経済を、景気をよくする効果を持つことになります。こういった副次的な利点もある。

 非常にこれは説得的な議論ではないかというふうに思うんです。

 その点、所得再分配やあるいは世代間格差の是正を考えるのであれば、相続等の資産課税の課税ベースを広げることにより財源確保すべきではないかと考えますが、御見解はいかがでしょうか。

岡田国務大臣 まず、委員最初に御指摘の世代間格差という視点は非常に重要だと思いますが、高齢世代というのは基本的に所得が二極分化している、ある程度資産をお持ちで年金以外にも収入のある方と、それから、国民年金だけ、あるいはそれも、満額ない、そういう二つに分化しているということでありますので、やはり、高齢世代でも、所得の少ない方に対して社会保障というのはしっかりなされなければならないというふうに思います。

 それは、今回、我々、所得の多い方の年金の税金部分を削って最低保障機能の財源に使おうということを考えているわけですが、やはり、そういう所得あるいは資産の多い高齢者の方からも御負担をいただくということは一つの方向だ、世代内の再配分ということも大事だというふうに思っております。

 そして、相続税について、委員の御指摘は、私はおおむね賛成であります。

 今回も、我々、相続税については負担を重くするということを考えておりまして、現在、百人のうち四人ぐらいしか相続税の対象にならないわけでありますが、今回、基礎控除の引き下げを提案させていただいているところでございます。最高税率も、限られた範囲ですが、五ポイント上げるということも提案させていただいております。

 それとは逆に、贈与税については、贈与しやすくするということで、高齢者の方が相続するときには相続を受ける方も六十代だったりするというのが普通の姿ですから、もっと若いときに贈与して、そして有効に使っていただく、そのことでお金が回る、経済成長にも資するというようなことも考えているところでございます。

柿澤委員 何か質問と答弁の平仄が合っているようにも聞こえるんですけれども、しかし、これから御提案をされようというのは、社会保障の目的税として消費税を充てるという提案なわけですよね。ここの根本的な部分はやはり違っている。

 この点、私は、何か後半の相続税の部分についてなどは御賛同をいただいたわけですので大変結構なことだと思うんですけれども、根幹部分においてやはり違うのかなというふうに思います。

 さっき、御答弁の冒頭で、高齢者の方にも所得の少ない方がいると。これは当然のことであります。だからこそ私は資産課税ということを申し上げているわけであって、フローから取るというやり方をすれば、さらに低所得の高齢者を苦しめてしまう。まさに、消費税を社会保障財源にしていく、そのために税率を上げていく、皆さんの御提案そのものをこのお話は否定をしてしまうような話になってしまうのではないかと思います。

 このやり方で、実は一番得をするのはどういう人たちか。資産は持っているが、しかし消費はしない、こういう層である。それはどういう人たちかといえば、やはりこれは、おおむね、家計貯蓄の七割近くが集中して、個人金融資産の六割が集中している高齢者層になってしまうと思うんですよ。

 結局、野田総理も岡田副総理も、世代間格差の問題を取り上げられて、私はそれは大変結構なことだと思っていますけれども、世代間格差を言いながら、しかし、その格差が結局はより広がりかねないような手法を解決策として提示をしている。問題の指摘と処方箋がずれてしまっているように私は思えてなりません。

 御答弁いただけますか。ありがとうございます。

岡田国務大臣 もう一つ言い忘れていたんですが、さっき委員は、所得税ということを言われました、消費税ではなくてですね。しかし、所得ということになると、高齢者の方は、資産は持っていても、所得ということでは余りないかもしれない、そういう方も多いわけであります。しかし、資産はありますから、使うのはお使いになる。したがって、そこには消費税はかかるということになるわけで、やはり、所得税というのは現役世代に主としてかかる税、消費税というのは世代を超えて消費をするということにかかる税、そういう意味で、私は、世代間格差といいますか、そういうものの是正に一役買う税であるというふうに考えております。

柿澤委員 冒頭に、社会保障制度の本質は何か、所得再分配の機能にそれがあるのではないか、こういうお尋ねをさせていただいたのは、やはり、ここの部分をきちんと踏まえた上で、それに最適な手法というのは何なのかということを考えないといけないというふうに思うからであります。そうした観点からの整合的な議論に今の政府の議論がなっているのかどうか。私は、まだまだ検証の必要があるのではないかという印象を持っております。

 社会保険制度があります。この社会保険制度というものは、本質的にはどういう機能を持つものでありますでしょうか。

岡田国務大臣 一言で言えば、社会保険制度というのは共助を体現するものだというふうに思います。みずからやる自助、それから、税金などでやる生活保護などの公助、その中間に属するものというふうに考えております。

柿澤委員 それでは、社会保険料と税というものの違いというのは、岡田副総理は何と考えられていますか。

岡田国務大臣 基本的には、社会保険料というのは対象が限られている、税は一定の同じルールの中で課される。社会保険というのは、一定の保険者というのがありますから、そこで完結している、そういうふうに一般的には言えると思います。

 しかし、現実には、この制度の境はかなり曖昧で、自分たちのために払ったはずの保険料が、違う目的のために、拠出金というような形で使われたり、これは税的に使われているわけですね。

 そういう意味では、当初の考え方から見ると、かなり曖昧といいますか、その境目はかなりはっきりしなくなってきている部分があるというふうに思っています。

柿澤委員 私は、社会保険制度の本質は、受益に伴った保険料で負担を賄うということにあり、受益と負担のリンクの強さの違いが税との間ではあると思います。そして、保険制度は、おっしゃったように、加入者のための一種の特定財源といいましょうか、そういう性質を有しているものだというふうに思います。

 それで、今御答弁にありましたとおり、今の社会保険制度は、その本質にかなったものになっているのかということであります。

 基礎年金は、その二分の一を税金投入で賄っていて、負担と給付の関係が甚だ不明瞭なものになっている。介護保険も同様であります。それが負担を見えにくくして、給付水準の抑制の議論を難しくしている面があると思います。

 また、健康保険でも、健保組合の赤字拡大が大きく報道されていますけれども、健保組合は、加入者への医療給付を後期高齢者医療制度への支援金が上回る状態になりつつある。加入者への給付よりも非加入者への支援の額の方が大きくなってしまっているわけです。

 これで社会保険制度として成り立っていると言えるんでしょうか。御認識をお伺いしたいと思います。

岡田国務大臣 これは大きな議論ですので、私は、こういった問題は国会の場でしっかりと議論がなされるべきだというふうに思います。

 やはり、社会保険というのは、社会保険をある程度貫いていく中で、いろいろな効率化とか、そういうことも期待できる、自己努力ということも期待できるわけであります。

 税と社会保険というのをもう少し峻別していった方がいいのじゃないかという気は一方でしております。ただし、そのときには、社会保険の果たす分野というのはある程度限定されて、さらに税の分野がふえるということになるかもしれないという気がいたしますが、もう少し議論した方がいいと思います。

 そういう意味では、ちょっと余分なことかもしれませんが、御党で、年金や医療についての保険料を払っていない、そういう事業所がたくさんあって、そこが払えば、保険料収入は上がって、消費税を上げなくていいという議論を展開されているのは、私は、保険というものと税というものを一緒に論じているという意味で、今の委員の問題意識等を見ても、少し違うんじゃないのかなというふうに常々思っているところでございます。

柿澤委員 時間もない中で、全く蛇足の御答弁をいただいてしまいましたが。

 払ったものが自分に返ってくるというのが社会保険制度に関する信頼感の本質であろうと思います。そういう意味で、公平な負担をしているという点を担保しなければいけない。だからこそ、歳入庁の法案の提出にかかわって、やはり未加入事業所の捕捉をして、そして保険料を適切に払ってもらおう、こういうことを私たちは申し上げているのであって、全く論理的には整合しているというふうに思いますよ。どういうことでおっしゃられているのか、ちょっと理解ができませんけれども。

 いずれにしても、日本の国民年金制度というのは、積立制度でもともとはスタートしています。積み上がった保険料、それが給付に充てられる、そういう制度だったはずなんです、当初は。

 しかし、積み上がった保険料を給付水準の切り上げや財政投融資の給付と関係ない無駄なばらまきに使ってしまって、大盤振る舞いのツケで、本来だったら九百兆円ぐらいは積み上がっているはずの積立金が今や百兆円余りになって、膨大な積み立て不足に陥ってしまった。その結果、現役世代の保険料を受給者の給付に回す賦課方式に転換せざるを得なくなってしまったんだというふうに私たちは思っております。

 これは、入ってきたものを支払いに充てる、こういうやり方でありますので、口の悪い人に言わせれば、壮大なネズミ講だとか、こういうふうに言われて、高齢化の進展で騎馬戦型から肩車型の高齢社会になれば、本当に持続可能性が永続的にあるのかという議論にもなっているわけであります。こうした点については、私は、これまでのやはり、いわばこの社会保障制度全般に対する政策のツケが今回ってきている、こういうことだというふうに思います。

 この点について、実は一つのアナロジーを申し上げようと思ったんですが、時間もなくなってしまったので、ちょっと残された時間で御答弁をいただいておきたいと思います。岡田副総理に対する通告をさせていただいていますが、ちょっと飛ばさせていただいて、小宮山大臣にお伺いをさせていただきたいと思います。

 AIJの問題で何度かここで御質問させていただいていますけれども、今回、厚生年金基金の七割に旧社保庁、厚労省のOBが七百人天下りをしていて、そしてAIJに運用委託をしていた基金の四十七基金にも天下りの役員がいたことが厚労省の調査で判明をいたしました。

 しかし、この実態、大変私は問題だと思いますけれども、そもそもこの調査というのは何を目的に行われたものなのかということをお尋ねしたいと思います。

小宮山国務大臣 御指摘の調査は、国会等からの要請がありましたことなども受けて、ことしの三月一日現在の厚生年金基金への国家公務員等退職者の再就職の状況を把握するために行いました。

柿澤委員 この調査をあえてしたということは、そして公表したということは、私は、厚生年金基金に厚労省、旧社保庁のOBが多数天下っている、そして厚生年金基金の中でAIJに運用委託をしたというところがまさにこうした天下りを多数受け入れている、やはり、こうしたことに関するある種の責任の明確化、こうしたことを狙ってのことなのではないかというふうに思っていたんです。

 そうした観点に立って御質問も何度かさせていただいているんですけれども、しかし、返ってくる答弁は、やはり厚生年金基金のある種自己責任でやってもらうしかない、こういうことを繰り返し御答弁いただいているわけです。

 今もなお、そうした認識は変わらないんでしょうか。お尋ねを申し上げたいと思います。

小宮山国務大臣 これは、委員も御承知のように、法的な規制がなくなった後、基金の運営につきましては基金の自主的な判断に任されています。

 ただ、先ほどの役員などの件については、これは公募をするようにと言っていたのに進んでいない実態がございますので、これについては、改めて私からの書簡を送り、いろいろな通知なども出して、ここは徹底をしていきたいと思っています。

 ただ、この基金につきましては、厚生年金保険の被保険者との公平性の観点ですとか、それから、厚生年金の報酬比例部分には国費が投入されていないということなどから、税金で穴埋めをしたりすることは適切でないと思っておりますので、今、掛金の引き上げなどの指導をする一方で、その引き上げ開始時期の猶予措置ですとか、代行割れのところの不足分を分割納付して基金を解散できる特例解散制度などを設けて助言をしてきているところです。

 それで、十三日に有識者会議を設置いたしまして、厚生年金基金の財政運営ですとか資産運用の今後のあり方については、あらゆる選択肢を排除せずに幅広く議論をしていただき、遅くとも六月をめどに一定の方向を出したいというふうに思っています。

柿澤委員 時間も来ましたので終わりますけれども、年金財政に穴をあけて、結果として、そこに官僚の責任もある、政府の責任もある、こういう状況の中で、しかし、あとは知りませんよ、自己責任でやってください、そして、あとは、国民負担もお願いをします、こういうことになっている。

 私は、前段の話と今のAIJの話が何となく重なってしまうんです。こういう点を所感として申し上げさせていただいて、質問は終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

     ――――◇―――――

池田委員長 次に、本日付託になりました内閣提出、地域社会における共生の実現に向けて新たな障害保健福祉施策を講ずるための関係法律の整備に関する法律案を議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。小宮山厚生労働大臣。

    ―――――――――――――

 地域社会における共生の実現に向けて新たな障害保健福祉施策を講ずるための関係法律の整備に関する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

小宮山国務大臣 ただいま議題となりました地域社会における共生の実現に向けて新たな障害保健福祉施策を講ずるための関係法律の整備に関する法律案について、その提案の理由と内容の概要を説明いたします。

 これまで障害保健福祉施策については、障害者や障害児が自立した日常生活または社会生活を営むことができるよう、障害者自立支援法等に基づき、必要な障害福祉サービスに係る給付等の支援を行ってきました。

 平成二十一年十二月に、障害者に関する制度の集中的な改革を図るため、内閣に障がい者制度改革推進本部が設置されました。

 その検討を踏まえて、平成二十三年七月に成立した改正障害者基本法では、障害の有無にかかわらず全ての国民が共生する社会を実現するため、個々の障害者に対する支援に加えて、地域社会での共生や社会的障壁の除去を初めとした基本原則が定められ、この実現に向けた国や地方公共団体等の責務が明確にされました。

 また、平成二十三年八月には、障がい者制度改革推進会議のもとに設置された総合福祉部会で、新たな障害保健福祉施策に関する骨格提言が取りまとめられました。

 このような障害者基本法の改正や総合福祉部会の骨格提言等を踏まえ、地域社会での共生の実現に向けた新たな障害保健福祉施策を講じるため、この法律案を提出しました。

 以下、この法律案の主な内容について説明いたします。

 第一に、障害者自立支援法の題名を、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律とすることにしています。

 第二に、新たに基本理念として、法に基づく支援が、社会参加の機会の確保や地域社会での共生、社会的障壁の除去に資するものとなるよう総合的かつ計画的に行われなければならないことを掲げています。また、目的規定に、法に基づく支援が総合的に行われることを規定しています。

 第三に、障害者の範囲に、難病等により障害がある人を加えることにしています。

 第四に、障害者に対する支援の充実として、重度訪問介護の対象拡大や、共同生活介護の共同生活援助への一元化を行うことにしています。

 第五に、市町村が行う地域生活支援事業として、新たに、障害者等に関する理解を深めるための研修や啓発を行う事業、コミュニケーション支援を行う手話通訳者等を養成する事業等の追加を行うことにしています。

 このほか、法に基づく基本指針や障害福祉計画を充実するための改正を行うほか、関係法律について所要の改正を行うことにしています。

 最後に、この法律は、一部を除き平成二十五年四月一日から施行することにしています。

 また、障害者等の支援に関する施策を段階的に講じるため、施行後三年を目途として、障害福祉サービスのあり方や障害程度区分の認定を含めた支給決定のあり方、意思疎通を図ることに支障がある障害者等に対する支援のあり方等について検討することにし、その検討に当たっては、障害者やその家族、その他の関係者の意見を反映させるために必要な措置を講じることにしています。

 以上が、この法律案の提案理由とその内容の概要です。

 御審議の上、速やかに可決していただくことをお願い申し上げます。

池田委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。

 次回は、明十八日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時十分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.