衆議院

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第2号 平成24年11月7日(水曜日)

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平成二十四年十一月七日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 長妻  昭君

   理事 岡本 充功君 理事 中川  治君

   理事 中野  譲君 理事 福田衣里子君

   理事 加藤 勝信君 理事 松本  純君

   理事 岡本 英子君 理事 古屋 範子君

      石森 久嗣君    糸川 正晃君

      稲富 修二君    大西 健介君

      工藤 仁美君    斉藤  進君

      白石 洋一君    田中美絵子君

      竹田 光明君    橘  秀徳君

      玉木 朝子君    富岡 芳忠君

      長尾  敬君    長島 一由君

      西村智奈美君    初鹿 明博君

      花咲 宏基君    宮崎 岳志君

      向山 好一君    山口 和之君

      山崎 摩耶君    あべ 俊子君

      石田 真敏君    鴨下 一郎君

      菅原 一秀君    田村 憲久君

      橘 慶一郎君    棚橋 泰文君

      徳田  毅君    青木  愛君

      石井  章君    小林 正枝君

      玉城デニー君    三宅 雪子君

      渡辺 義彦君    坂口  力君

      高橋千鶴子君    照屋 寛徳君

      柿澤 未途君    谷畑  孝君

    …………………………………

   厚生労働大臣       三井 辨雄君

   厚生労働副大臣      西村智奈美君

   厚生労働副大臣      櫻井  充君

   厚生労働大臣政務官    糸川 正晃君

   厚生労働大臣政務官    梅村  聡君

   防衛大臣政務官      宮島 大典君

   政府参考人

   (財務省主計局次長)   福田 淳一君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           関  靖直君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           常盤  豊君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           森本 浩一君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房技術総括審議官)       三浦 公嗣君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房年金管理審議官)       高倉 信行君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           泉   真君

   政府参考人

   (厚生労働省医政局長)  原  徳壽君

   政府参考人

   (厚生労働省健康局長)  矢島 鉄也君

   政府参考人

   (厚生労働省医薬食品局長)            榮畑  潤君

   政府参考人

   (厚生労働省労働基準局長)            中野 雅之君

   政府参考人

   (厚生労働省労働基準局安全衛生部長)       宮野 甚一君

   政府参考人

   (厚生労働省労働基準局労災補償部長)       中沖  剛君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局長)           村木 厚子君

   政府参考人

   (厚生労働省老健局長)  原  勝則君

   政府参考人

   (厚生労働省保険局長)  木倉 敬之君

   政府参考人

   (防衛省地方協力局長)  山内 正和君

   厚生労働委員会専門員   中尾 淳子君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月七日

 辞任         補欠選任

  田中美絵子君     花咲 宏基君

  長尾  敬君     向山 好一君

  初鹿 明博君     橘  秀徳君

  水野 智彦君     富岡 芳忠君

  永岡 桂子君     橘 慶一郎君

  玉城デニー君     渡辺 義彦君

  阿部 知子君     照屋 寛徳君

  江田 憲司君     柿澤 未途君

同日

 辞任         補欠選任

  橘  秀徳君     初鹿 明博君

  富岡 芳忠君     水野 智彦君

  花咲 宏基君     田中美絵子君

  向山 好一君     長尾  敬君

  橘 慶一郎君     徳田  毅君

  渡辺 義彦君     玉城デニー君

  照屋 寛徳君     阿部 知子君

  柿澤 未途君     江田 憲司君

同日

 辞任         補欠選任

  徳田  毅君     永岡 桂子君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 厚生労働関係の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――

長妻委員長 これより会議を開きます。

 厚生労働関係の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として財務省主計局次長福田淳一君、文部科学省大臣官房審議官関靖直君、大臣官房審議官常盤豊君、大臣官房審議官森本浩一君、厚生労働省大臣官房技術総括審議官三浦公嗣君、大臣官房年金管理審議官高倉信行君、大臣官房審議官泉真君、医政局長原徳壽君、健康局長矢島鉄也君、医薬食品局長榮畑潤君、労働基準局長中野雅之君、労働基準局安全衛生部長宮野甚一君、労働基準局労災補償部長中沖剛君、社会・援護局長村木厚子君、老健局長原勝則君、保険局長木倉敬之君、防衛省地方協力局長山内正和君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

長妻委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

長妻委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。斉藤進君。

斉藤(進)委員 皆さん、おはようございます。民主党の斉藤進です。

 本日は、質問の機会をいただきまして、まことにありがとうございます。

 また、大臣が新しく三井厚生労働大臣となりまして、一番初めに質疑をさせていただくことになりました。大臣、どうぞよろしくお願い申し上げます。

 さて、本日取り上げさせていただくのは、私の地元浜松に限らず、全国的にも多くの方々がお悩みになっている、がんを初めとして長期にわたる治療が必要な患者の方に対する就労継続支援についてです。

 がんの五年生存率が五割を超えるレベルまで向上する中、私の地元でも、また、厚労省のがん臨床研究事業の数回にわたるシンポジウムでも、当事者である患者の方々から、がんと就労に関する切実な御要望をいただいてまいりました。共通しているのは、持病を抱えながらも、生き生きと就労を継続し、そして職業生活を送りたいということであります。

 しかし、厚生労働省がことし六月に提出した、「長期にわたる治療等が必要な疾病を抱えた患者に対する保健医療分野の支援と就労支援の連携」の資料にあるように、がんに罹患した勤務者の三四%が、依願退職、そして解雇されています。自営業者では一三%が廃業しております。

 そして、労働基準局の治療と職業生活の両立等の支援に関する検討会の資料では、がんの罹患前後を比べ収入が減った方は三三%もおります。そのうち、罹患前と比較して収入が七割以下に減ってしまった方は約六〇%にも上り、五割以下に減ってしまった方は三三%に及びます。この収入の減少とともに治療費の支出がふえる事実は、がんの患者さんにとって重要な問題となっております。

 このような状況のもと、私の地元の病院でがん治療に携わっている医師、主治医の方は、目の前にいる当事者である患者さん方の切実な状況を何とか改善したいという思いで活動をされておられます。

 医療者の方の思いの一端を御紹介します。

 日本国憲法二十七条において、「すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負ふ。」と定められています。しかし、がんに罹患した勤労者の三〇%が依願退職し、四%が解雇される現状は異常です。がん患者(サバイバー)の基本的人権、社会権が、行政の怠慢により侵害されたまま放置されています。単年度もしくは数年で終了する補助金、単に、事業主、就労者、医療者の意識を向上させようとする取り組みを欲しているわけではありません。人権である社会権が侵害されている現状に対して、基本的人権を擁護する、行政による強制力のある取り組みを求めています。労働安全衛生法第六十六条の四及び五に基づいた健康診断という切り口で、行政の強制力でもってがんサバイバーの就労を守っていただきたい。

 目指すところは、多様性のある社会です。がんサバイバーの就労を保護する取り組みがあれば、障害を抱える方、疾病を抱える方、高齢な方でも働き続けることができるようになります。そうすることで、過労死が問題になる異様な労働環境から、多様性があり、お互いが支え合う労働環境がある社会へ進化することになると信じています。

 以上の内容であります。毎日、がんの患者さんと接しているからこその言葉であります。

 さて、このたびのがん対策推進基本計画には、新たに、がん患者の就労を含めた社会的な問題が取り上げられました。二十五年度予算の概算要求には、疾病を抱える労働者に対する就労継続支援として、企業や医療機関向けのガイドラインの作成や、がん診療連携拠点病院のうち、ハローワークと連携した五カ所程度で先行実施される相談窓口での各種相談事業、情報提供も盛り込まれました。私は、大きな一歩と期待もしていますが、既に難病相談・支援センター等、がん患者の方々の就労に関する相談体制があったと言われるにもかかわらず、根治可能で労働が可能であるが、がんと診断された多くの方が職を失っている現状を鑑みると、果たしてどこまで実効性が担保されるのか疑問です。

 以上の考えられている新たな施策は、ガイドラインと企業からの相談体制の整備を除けば、一度退職、解雇されることを前提として捉えられています。それも当然必要な施策ですが、諸外国で進められているように、これまで働いていた同じ職場に復職できる支援も、単なる組織の連携ではない実効性のある制度として考えていく時期に来ております。

 その観点から質疑を行いたいと思います。

 質問の一点目。

 守らねばならない労働者に産業医、保健師、主治医等が手を差し伸べ、事業者の理解を求めていくには、産業医が事業者に意見を明確に伝える法的な枠組みが必要となります。

 一年以内にがんと診断された労働者は、労働安全衛生規則第四十四条における定期健康診断の既往歴及び業務歴の調査項目において有所見とし、報告を受ける所轄労働基準監督署は、単にこの有所見を定期健康診断の統計の数値として確認するだけではなく、労働安全衛生法六十六条の四及び五に基づき、事業者ががんと診断された労働者を離職や解雇に追い込む前に、就業場所の変更や作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少等、柔軟な雇用管理の取り組みについての産業医の意見を聞かせる通達をするべきですが、見解を伺います。

 また、事業所が産業医を選任することは労働安全衛生法に基づいておりますが、産業医の業務の一つとして、復職支援も制度として明文化すべきと考えます。見解を伺います。

三井国務大臣 おはようございます。

 きょうは、早速、斉藤委員から質問を頂戴いたしました。

 今の、まさに産業医の業務の一つとして制度化すべきではないかというお話でございます。

 先生がおっしゃいますように、事業者によります柔軟な雇用管理、また産業医によります復職支援を制度化することは、将来的に検討に値する課題であると認識しております。今まさに先生のおっしゃるとおりでございます。

 しかし、まずは病気を抱える労働者が継続して就労できるようにすることが重要だと思っております。しかしながら、事業者や産業医の意識の向上を図ることもさらに重要だと思っております。

 そのため、来年度予算で、事業者や産業医向けの就労継続支援のための手引を作成する事業を要求するなどいたしまして、事業者や産業医の意識の向上に向けて積極的に取り組んでいるところでございます。(斉藤(進)委員「復職支援とかも」と呼ぶ)

長妻委員長 もう一つの質問、よろしいですか。

三井国務大臣 今ほど申し上げましたように、事業者や産業医向けの就労支援の手引を作成する事業を要求することなど、事業者や産業医の意識の向上に向けて積極的に取り組んでいるということでございます。

斉藤(進)委員 わかりました。今ので、まとまっていた答弁と受け取らせていただきました。

 では、質問の二点目ですが、事業所が患者さんの症状等を理解するために、主治医やメディカルソーシャルワーカー等のいる医療機関から、事業所の産業保健スタッフに対して患者情報の提供を行うことについてインセンティブが働くように、報酬上の評価についても考慮に入れるべきと考えますが、いかがでしょうか。

櫻井副大臣 おはようございます。

 斉藤委員にお答えしたいと思いますが、今の御指摘は本当に大事な点なんだと思っております。

 ただ、問題点が幾つかありまして、一つは個人情報保護の観点からです。個人情報の保護の観点から、事業者が医療機関に情報提供を求める場合には、必ず労働者の承諾を得なければいけないという問題点がまずございます。

 それからもう一つは守秘義務の関係でして、医者には守秘義務がかかっておりますけれども、必ずしも産業保健スタッフ全員に守秘義務が課せられていない、そういうふうに認識しております。

 それから、病院間では診療の情報提供料というのが診療報酬上定められておりますが、ここは、医療機関同士で、今申し上げたとおり守秘義務がかかっている人たち同士、それから情報を提供した方がメリットがあるという観点からつけられておりますが、これは医療費のことで大変申しわけないんですけれども、今の医療財政から考えてくると、全てのことについて何でも診療報酬に乗せられるかというと必ずしもそうではないという、この点についても御理解をいただきたいと思います。

 改めてその点から考えてきた際に、どうしていくのが一番いいのかというと、やはり患者さん個人がそういった意識を持って、患者さんが、労働者の方が、事業所とそれから病院のところに対しての情報のやりとりは可能になっておりますから、そういったところに対しての意識改革というものをこれから進めていかなければいけないのではないか、そう考えているところでございます。

斉藤(進)委員 三点目の質問に移らせていただきます。

 障害者の定義が、海外と日本では社会モデル、医療モデルのところで違うところがありますが、ほかの国々では、今回のような事案について、合理的配慮の考えのもと、障害者と同様な形で復職支援や就労支援を行っています。

 我が国でも、がんを内部障害として捉えた場合、法定雇用率への換算やトライアル雇用、雇用開発助成金の制度や各種取り組みと親和性があると考えております。

 日本も、障害者施策だけでなく、長期にわたる治療が必要な患者に対して、合理的配慮の考え方で制度をつくり、また、事業所に対する啓発も行っていくべきですが、多くの患者さんが離職せざるを得ず、それに対応できる資源が整備されていない現在、復職、就労支援を考える上で、合理的配慮についてどのように考えておられますか。

西村副大臣 お答えいたします。

 委員が、合理的配慮という観点から、長期治療を必要とする労働者の方が仕事と治療を両立できるようにということを問題提起されたことは、非常に重要なことだというふうに考えております。

 当然、厚生労働省としても、そのための環境整備は、治療と仕事を、離職することなく続けていくというための環境整備は大変重要なことだというふうに考えております。

 委員の御関心は、単に病気になったことをもって解雇されるというようなことがないようにということではないかと思いますけれども、個別の事案で、そういった場合に解雇されたということで、それが有効か否かということにつきましては、最終的には裁判所で判断されることになりますが、一般的には、仕事への適性が損なわれていなければ、病気に罹患したこと自体のみでは解雇の理由とはならないというふうに考えております。

 実は、厚生労働省の中でも提言型政策仕分けというのを行っておりまして、先般、長期にわたる治療等が必要な疾病を抱えた患者に対する保健医療分野の支援と就労支援の連携というテーマで議論させていただきました。

 この中で、治療のための休暇の企業への普及を推進すべきであるというふうに提言を受けましたので、これを踏まえまして、休暇制度の導入事例を紹介したパンフレットを作成し、また、企業と労働者を対象としたセミナーを開催いたすなどいたしまして、事業所に対する病気休暇制度の周知を図っていくということをしっかりと進めてまいりたいと考えております。

斉藤(進)委員 質問の四点目になりますが、海外では、各国がどのように治療と職業の両立支援に対応しているか、お伺いします。

櫻井副大臣 済みません、十分に把握しているわけではございませんが、例えば、がん患者の支援団体等が作成する教材による普及啓蒙活動であるとか、それから、政府等が運営する事業者向けの無料相談サービスなどの取り組みがあるというふうにはお伺いしております。

 ただ、今申し上げたとおり十分把握しておりませんので、今回、二十五年度のがん対策の大きな対策の一つがこの就労支援ですので、世界の取り組みについてもう少し勉強させていただいて、こういったことも含めてきちんとした対応をとらせていただきたい、そう思っているところでございます。

斉藤(進)委員 質疑の五点目に入らせていただきます。

 大きな企業であれば、私傷病休暇制度などが有給休暇以外にありますが、中小ではそこまでの余裕がなく、内部の配置転換もままならないので、退職や解雇の割合も多くなってしまいます。企業規模が千人以上だと、公的な休職制度以外に自社内の制度を活用したという方が五一%いますが、中小企業となると、七割は制度自体がもともとなく、三〇%しか自社内の制度を利用したという人はおりません。

 そこで、私傷病休暇制度が欲しいという声が非常に強くあり、治療と職業生活の両立のために、中小企業においても、通院にも使いやすい時間単位で柔軟に取得できる傷病休暇制度を創設するべきです。その助成のための財源として、育児休業給付や介護休業給付同様、雇用を安定させる意味からも、労働保険特別会計の雇用勘定の活用や、現状では厳しさを増す保険財政ですが、傷病手当金のさらなる拡充など、健康保険等の活用もあわせて考えるべきではないでしょうか。見解を伺います。

 また、週一回の抗がん剤治療で、残りの四日で働かせてほしいと言っても解雇されてしまう事例があります。がんになったからといって、必ず働けないわけではありません。週一日休むと給料が五分の四になるが、五分の四だとしても働き続けたい、このような思いがある中、短時間勤務制度を含めた企業内での取り組みについても導入、啓発していただきたいが、いかがでしょうか。

 これが質問五点目です。

西村副大臣 先ほど私、厚生労働省の中で提言型政策仕分けを行って、この点について議論もさせていただいたと申し上げました。なかなか、厚生労働省の中で、局でそれぞれ取り組みをしていても、それが局横断になっていないので成果が上がっていないのではないか、こういった視点から行ったものなんですけれども、今回の仕分けの中では、雇用保険会計というようなところまでは言及がございませんでした。それは委員の問題提起として受けとめさせていただきたいと思っております。

 しかし、いずれにいたしましても、委員おっしゃるように、やはり啓発といいましょうか、労働者の側にとっても、また事業者の側においても、そういった啓発は非常に大事なことだというふうに思っておりまして、通院しやすい時間単位での取得が可能となっている病気休暇ですとか、あるいは短時間勤務制度を含めた企業内での取り組みなどを促進する上で、事業主の取り組みが求められている事項を労働時間等見直しガイドラインとして定めております。

 厚生労働省としては、都道府県の労働局に配置いたしました働き方・休み方改善コンサルタントという方がいらっしゃるんですけれども、このコンサルタントを通じまして、先ほどのガイドラインの内容を周知啓発するとともに、事業主に対してきめ細かい助言と指導を行ってきているところでございます。

 また、通院のためなどに仕事を短時間休むという方も大勢いらっしゃるのではないかと思います。そういった方のニーズに応えるために、先般、労基法の改正によりまして、平成二十二年の四月に創設された時間単位で年次有給休暇を取得できる制度がありますが、この周知を一生懸命やっておりまして、少しずつではありますけれども、利用がふえているところであります。

 これらの取り組みを通じて、長期にわたる治療が必要な患者等の仕事と職業生活の両立の促進にさらに努めてまいりたい、きょうの委員の提起を含めて、さらに進めてまいりたいと考えております。

斉藤(進)委員 これで終わりとさせていただきますが、各局各部課、縦割りでこの問題に取り組もうとしてはやはりだめだと思っております。本当の意味で前に進んでいけません。せっかく厚生省と労働省が統合されたわけでありますから、医療関係部局、労働関係部局、はざまのないように、力を合わせて、今このように大変な思いをしている人々のために、私たちと一緒に力を尽くしてほしいと思います。

 新大臣にもそのような取り組みをお願いしまして、私の質疑を終わらせていただきます。ありがとうございました。

長妻委員長 次に、山崎摩耶さん。

山崎(摩)委員 おはようございます。民主党の山崎摩耶でございます。

 きょうは、質問の機会を与えてくださいまして、大変ありがとうございます。

 まずは、三井大臣、大臣御就任、大変おめでとうございます。ともに北海道選出の同僚、先輩として、大変うれしく思っております。また、櫻井副大臣、西村副大臣、糸川政務官、梅村政務官におかれましても、御就任、大変おめでとうございます。最強のチームだというふうに思っておりますので、団結してぜひこの難局を乗り切っていただきたいというふうに思っております。

 きょうは、質問をよろしくお願いいたします。

 まずは、平成二十四年度厚生労働白書についてでございます。

 三井大臣は、もう医療、介護、厚生行政には大変精通しておられる政治家のお一人として、尊敬して、いつも御指導いただいておりますが、大臣はこの厚生労働白書は既にお読みになられたかというふうに思いますが、今般のこの白書は大変特徴がありまして、特に第一部の「社会保障を考える」、これは大変社会保障のすぐれた教科書になっているんじゃないかと、巷間大変評価も高い白書になっていると私も思います。

 しかも、全体としてこの白書の中では、国民皆保険の堅持ですとか社会保障拡充の必要性、重要性ですとか連帯、それから、いわば社会のあり方を論じているということで、これはもう高校、大学の教科書にも使えるし、一般の方にもお読みいただいて社会保障をぜひ考えていただきたい、そんな白書になっているかなというふうに私も思っております。一つ二つ私から見ると異論がないわけでもありませんが、おおむね大変評価できるチャプターになっているかと。

 大臣はどのような感想をお持ちになられましたでしょうか。お伺いしたいと思います。

三井国務大臣 御質問ありがとうございます。

 私も一通り目を通させていただきました。

 毎年一万部ほど発行しておりますし、大変歴史のあるものでございますけれども、今委員からお話がございましたように、この白書は、政府を挙げてまさに社会保障・税一体改革に取り組んでおります、そういう中でも、「社会保障を考える」、まさにテーマとしては、今お話がございましたように、社会保障の目的また機能、あるいは現在の課題について、また歴史や理念も紹介しながら、若い人にも大変わかりやすく、受け入れやすくなっているんじゃないかなと思っております。

 また、最近、社会問題への関心が大変形成される時期にあるまさに学生など、あるいは若い人も含め、国民が今後の社会保障のあり方を議論する際には大変参考になると思いますし、社会保障の教材としてこの白書を大いに役立てていただけるものと大変私どもも期待しているところでございます。

山崎(摩)委員 ありがとうございます。ぜひよろしくお願いしたいと思います。

 それでは、医療提供体制について三点ばかり御質問をさせていただきたいというふうに思います。

 まず一点目は、特に医師、看護師不足についてでございます。大臣は現場にも大変お詳しいわけですけれども、昨今の医療現場の医師や看護師不足、まだまだ大変であるというところをどのように認識しておられるかということです。

 政権交代後、二度にわたる診療報酬の引き上げなどで、高機能病院ですとか救急医療の現場はかなり改善してきているように思いますが、地方を歩きますと、やはり北海道などでは、首長さんが私の顔を見ると、医師、看護師おりませんかと必ずお声をかけていただけるような、そんな状況になっておりまして、まだまだ医師、看護師不足の解消というのは大変だなという感じがしているところでございます。

 特に、医師と看護師の地方における人材の確保について、どのようなお取り組みを、特に次年度は事業化していらっしゃるか、そのあたりをちょっと集中的にお伺いしたいと思います。

三井国務大臣 委員も同じ北海道でございますから、まさにそういう意味では、私も大変これまで苦労した経験がございます。まさに、お医者さんが大変不足している中、また看護師さんも不足している中、私も今まで経営していた中では、全国を飛び回りながら、そういう意味では大変苦労した経験がございます。

 まさに今お話ございましたように、北海道だけでなくて、東日本の震災以降、被災地からも、大変、医師不足の問題、看護婦不足の問題、深刻に今要望が来ているところでございます。

 いずれにしましても、全国的な課題でありますから、今後、医学部の入学定員につきましても、特定の地域での勤務を条件づけることができる、いわゆる地域枠を大いに活用すべきだ、こういうふうに思っております。また、地域医療再生基金、総額五千百七十億円、こういう制度もございますし、また、地域医療支援センター、これは今二十カ所、道府県に設置をしております。都道府県によります医師の偏在対策を支援しているところでありますので、引き続きしっかり対応していきたいと思います。

 今、平成二十年度から文部科学省と連携いたしまして、入学定員を千三百六十六人増員したところでございますし、また、平成二十四年度は過去最大の八千九百九十一名となっております。また、二十五年度も引き続き定員枠をふやしていきたい、こういうぐあいにしっかり文部科学省と連携を深めていきたいと思っております。

 また、看護職員についても今御質問がございました。第七次看護職員需要見通しにおいて、平成二十七年度まで五年間で約十万人、現在約百四十万人ですが、百五十万人までの新たな需要を見込んでおります。これに基づきまして着実に供給を確保できるよう、看護職員の離職防止、それからまた再就業支援などの政策に取り組んでいきたい、こういうぐあいに考えております。

 いずれにしましても、今委員からお話ございましたように、深刻な課題でございますので、やはり慢性的な医師不足、看護婦不足にはしっかり厚生労働省としても対処していきたい、対応していきたい、こういうぐあいに考えておりますので、委員のお力もぜひおかりしたいと思います。よろしくお願いいたします。

山崎(摩)委員 大変力強い御答弁、ありがとうございました。

 離職防止というのが大変重要だというふうに私どもは認識しておりまして、その意味では、例の看護職員の雇用の質の向上のお取り組みについては大変私も評価しておりまして、再三この委員会でも質問させていただき、細川元厚労大臣のときに即、五局横断で省内で御検討いただき、通知を出していただいたり、二十四年度から都道府県においても、労働部局、衛生部局一体となって、特に看護職員の雇用の質の向上についてはお取り組みいただいたことは感謝申し上げております。

 しかし、引き続きまだまだここも強化していくことが大事かというふうに思っておりまして、次年度、来年度の事業等について、医療分野の雇用の質の向上もお取り組みになられるということですが、このあたりについて少しお教えいただきたいと思います。

西村副大臣 山崎委員には、この課題、常に御関心を持っていただいて、御質問もいただき、ありがとうございます。

 御指摘のとおり、医療従事者の雇用の質の向上が非常に重要であるということは、これはやはり、夜勤を含む交代制勤務など厳しい勤務状況が指摘されている中では、本当に必要なことだと思っております。

 細川大臣当時につくられたプロジェクトチームの報告書を踏まえまして、魅力ある職業としての職場づくり、そして人づくり、またそうした仕組みを支えるネットワークづくり、こういった取り組みを行ってまいりましたけれども、さらにもう一段、雇用の質の向上というものを目指して、省内各局の施策を総動員して、より現場のニーズにマッチした効果的なものとしていく必要があるというふうに考えております。

 先月、医療分野の「雇用の質」向上プロジェクトチームというのを立ち上げることができまして、医療関係者とも連携しながら、医療現場の具体的なニーズに応える実効性ある方策を検討して、積極的に情報発信していくこととしております。

 そして、平成二十五年度の概算要求でございますが、一つには医療機関の勤務環境の改善をアドバイスする専門相談員の拡充と、ナースセンターとハローワークの連携モデル事業など、幅広く関係施策を盛り込んでおります。

 概算要求に盛り込んだだけじゃなくて、頑張れというのが委員の御趣旨でもあろうかと思いますので、そこはまた御支援もいただいて、頑張ってまいりたいと思います。

山崎(摩)委員 ありがとうございます。引き続きよろしくお願いしたいと思います。

 次に、訪問看護師の人材の確保についてお尋ねをしたいというふうに思います。

 今般のダブル改定でも、特に、在宅医療・介護あんしん二〇一二ということでスタートさせておられますし、介護保険の二十四時間定期巡回の看護、介護でも、この訪問看護サービスが大変主戦力になっていくんだろう。また、小児から高齢者まで、訪問看護の在宅でのニーズも今後高まる一方ですので、人材の確保、三万人から推移して一向にふえておらない、これは大変喫緊の課題ではないかというふうに認識をしております。

 この点につきまして、老健局、医政局が御担当ですが、さまざまな研修ですとか推進事業はおやりになっているんですけれども、この人材確保というところに焦点を当てた政策がちょっと中長期の展望も含めて弱いように感じておりますが、私は、省の中に訪問看護人材確保検討委員会みたいなものをぜひ立ち上げていただいて、お取り組みをいただきたいと要望申し上げたいわけですが、大臣、一言いかがでございましょうか。

櫻井副大臣 山崎先生にお答えさせていただきたいと思います。訪問看護のプロの先生に私の方から答弁するのはいかがなものかと思いますが。

 今お尋ねがありましたとおり、まず、平成二十二年の十二月に策定した訪問看護師の職員の需給見通しは、平成二十七年で三万三千人を見込んでおります。ただし、これは地域包括支援、それから医療、介護の連携、それから在宅へという流れを見てくると、果たしてこの人数でいいのかどうかということについて、これから改めて検討しなければいけない。それで、県の方に、事業者としてどのぐらい必要なのか、それから働く従業員の数がどのぐらい必要なのかということを改めて策定してもらおうと思っています。

 確保のことに関してですが、やはり何といっても魅力のある職業になっていくのかどうかということが私は一番大事なことではないのかと思っています。そういう意味では、訪問看護というのが一体どれだけの仕事を担えて、それからどういうような処遇になってくるのか、この辺のことをまずきちんと議論していくということが非常に大切なことなんだと思っております。

 今、省の中に、在宅医療とそれから介護のプロジェクトチームがございますので、今先生から問題提起されましたが、ここの中できちんとした形で議論をさせていただきたい、そう思っているところでございます。

山崎(摩)委員 省内で御議論いただくのも大事かと思いますが、私は、実践者、研究者をお集めになられて、全国的な委員会等もぜひお開きになって、少しヒアリングをしていただければなというふうに思いますので、これは御要望として申し上げておきたいと思います。

 また、加えて、平成二十一年から、例の看護師の特定能力認証制度について、厚労省もチーム医療推進会議等で議論していただいておりますが、これもそろそろ早期に結論をお出しいただいて、次の国会に法案提出できるようなお取り組みを進めていただきたいな。これは要望だけ一言申し上げておきたいというふうに思います。

 介護の人材についても、同様に、今般の介護報酬改定では、例の介護職員処遇改善交付金二%分を報酬に盛り込みまして、基金でやっていたものを恒久化したということですが、介護人材の処遇改善にどのぐらいつながっているか、現場の状況等は厚労省はおつかみでいらっしゃいますか。その辺いかがですか。

櫻井副大臣 今回、委員から指摘がありましたとおり、介護報酬の方に上乗せさせていただいているんですが、私のところに介護事業者の方から、かなり厳しくなったんじゃないか、そういう声が随分寄せられております。

 そこで、十月に緊急の調査を行わせていただいているところでございまして、この結果を踏まえて、早急にまず回収させていただいて、必要であればきちんとした適切な措置をやらせていただきたい、そう思っているところでございます。

山崎(摩)委員 ありがとうございます。

 せっかく、これは、巷間、今般の介護報酬は事実上はマイナス改定じゃないかと言われるようなこともあって、私は、決してそうではない、この二%分はしっかり組み込んであるんだというふうに現場にはいろいろ御説明申し上げておりますが、ぜひその実態調査から、本当に処遇改善につながっているかどうか、これはきちんと把握をして、また推進していただきたいと思います。

 時間がなくなってまいりましたので、最後の質問になろうかと思いますが、母子家庭の高等技能訓練促進費についてお尋ねをしたいというふうに思います。

 この高等技能訓練促進費は、政令では、給付金の支給期間は養成機関において修学する期間の二分の一に相当する期間とされるということになっているんですが、特例で、平成二十一年六月五日から平成二十四年三月三十一日まで、これは、看護師とか保育士とか介護福祉士とか、母子家庭のお母さんが職業訓練を受ける高等技能の訓練の促進費なんですが、この二分の一の期間というのを修業する期間に相当する期間というふうになっていたものなんです。これを平成二十五年の三月まで、実は先般一年延長したんですが、このとき月額の金額を十四万一千円から十万円と減額して一年延長した、こういう経緯がございます。

 つまり、来年三月で政令に戻るということになってきておりまして、これは、御地元で母子家庭のお母様たちがこういう基金で職業訓練を受けて、保育士さんなんかで就職率が大変高い、当事者の皆様からは大変期待をされております促進費、手当でございますので、これを二十五年度もぜひ、二分の一ではなく、修業する期間に相当する期間というような、現行で継続をしていただきたいなということをひとつ御要望申し上げたいと思います。

 平成二十三年度の全国母子世帯等の調査結果というのがありますが、これを見ましても、母子家庭の抱える経済問題は、解決するどころかむしろ悪化しておりまして、この促進費も継続が必要ではないかなというふうに考えるところでございます。

 ちょっと申し上げますと、母子家庭の母の平均収入は二百二十三万、依然として低い水準でありますし、就業率の低下、これは八四・五%から八〇・六%、低下をしていますね。そしてまた、非正規が四三・六%から四七・四%に逆に増加をしている。雇用保険の未加入者が四割、預貯金も五十万円以下が五〇%。これでは、すぐ生活保護に転落をする、こういう水準にあるということです。実際また、生活保護の受給率も九・六%から一四・四%にふえている。こんな調査結果も出ております。

 ですので、母子家庭の母の方たちが就職に役立つ資格としてこの促進費を利用した訓練が大変有効かつ重要になっている、このデータからも考えられるのではないか。ぜひ二十五年以降も現行での継続という方向で御検討いただきたいということでございます。御回答をよろしくお願いいたします。

西村副大臣 委員御指摘のとおり、全国母子世帯等調査結果、これは平成二十三年度分を見ましても、なかなか、状況が改善するというよりは厳しくなっているという現況だというふうに思います。

 そういった中で、高等技能訓練促進費でありますけれども、御指摘のとおり、平成二十四年度までの入学者を対象といたしまして、安心こども基金も活用することによって、修学中の全期間、上限三年ということになりますけれども、全期間にわたって支給をしてまいりました。

 この高等技能訓練促進費は、委員御指摘のとおり、かなりの成果を上げているというふうに私も思っておりますし、継続してほしいという御要望も母子家庭の団体などからもいただいておりますが、平成二十五年度以降の取り扱いについては、予算編成過程で検討することになります。

 しかし、この事業が効果を上げているということも念頭に置きまして、平成二十五年度以降の入学者の取り扱いも含めて検討してまいりたいと思いますけれども、ここは子供の貧困の連鎖防止という観点からも非常に重要な施策だと思っておりますので、頑張ってまいります。

山崎(摩)委員 どうもありがとうございます。

 副大臣の御認識も伺いましたし、また省内でも頑張っていただきたいと思います。私どもも与党として、また予算獲得には頑張ってまいりたいというふうに思います。

 本日は、これで終了させていただきます。どうもありがとうございました。

長妻委員長 次に、長島一由君。

長島(一)委員 皆様、おはようございます。民主党の長島一由です。

 限られた時間ですので、早速質問させていただきますけれども、七月二十七日の衆議院内閣委員会で、構造改革特区延長法案に関連して、年金改革について質問させていただきました。

 私が逗子市長時代に構造改革特区を活用して提案した年金改革については、まず、年金時効の二年から十年への延長が、政権交代後、逗子市の提案が復活採用され、三年の期間限定ということでありますが、先月から、実に提案から七年越しで実施されました。また、年金の受給資格の二十五年間から十年間への短縮も、社会保障と税の一体改革法案の中に盛り込まれ、消費税が上がれば平成二十七年十月から実施される見通しとなりました。

 この年金の時効延長と受給資格の短縮は、一見地味な話のように思えるかもしれませんが、この二つがセットになると、実は、今まで国民年金を一円も払ってこなかった方でも年金の受給資格を得られるようになるとともに、五十七万人以上の無年金者が少なくとも救済される可能性をはらんでおります。

 三井大臣、厚生労働省は余りこのことをPRしていただけないんですけれども、大臣はこの事実を知っていたでしょうか。質問通告していないので、これは質問しませんけれども、ぜひ三井大臣、PRして、国民に周知をしていただきたいと思います。

 さらに、私が逗子市長時代に特区提案した市民税と国民年金の一元徴収については、まだ実施されておりませんけれども、七月二十七日の衆議院内閣委員会で、厚生労働省の審議官が法制度上は可能であると答弁をしております。

 余り知られておりませんが、実は、平成十三年度の末まで国民年金の徴収事務は市町村が行っており、社会保険庁が徴収するようになって、徴収率が悪化しました。ですから、私は、逗子市長時代から、年金の徴収事務は、市町村に戻すだけでなく、一〇〇%近い徴収率を誇る市民税とセットで徴収すれば、六〇%を切っている国民年金の徴収率も確実に改善するということで、この間、構造改革特区提案で提案するとともに、折に触れ話をしてきたところであります。

 特に、消費税を上げる前にやるべきことがある。持続可能な年金制度の構築のためにも、消費税を上げるならば、その前に国民年金を払っていない方にきちんと納めていただく。そのために、私は、即効性かつ実効性がある市民税と国民年金の一元徴収の社会実験を行って、国民にその成果を示す必要があると今でも思っております。

 厚生労働省の実務担当者も、とある自治体に実施をしてもらえないかと打診をしています。しかし、自治体側の回答は、現行の体制では難しいというもので、現状、社会実験の事務負担を自治体が請け負っても事務負担分を国が十分支給できないということで、なかなか進まないという現実の壁があります。

 そこで、三井大臣にお尋ねいたしますが、より多くの自治体が社会実験に応じるように、大臣の強いリーダーシップで、事務負担分を国がもう少し面倒を見ることができる環境を整えるべきだと思いますが、大臣の見解をお尋ねします。

三井国務大臣 御質問ありがとうございます。

 長島議員は、まさに逗子市長で、これまですばらしい透明度を発揮されたということも私も承知しております。

 今の御質問でございますけれども、まさに御指摘のとおりでございまして、現行制度では、厚生労働大臣は、国民健康保険の保険証の有効期間を短くした方の国民年金の滞納保険料につきましては、徴収事務を行う旨の申し出をした市町村に事務を委任できるということになっているわけでございます。また、その事務に必要な費用は、市町村への交付金で対応するということになっているわけでございます。

 いずれにしましても、今後とも制度の周知徹底に努めまして、御協力いただける市町村と十分に連携し、納付率の向上に向けた取り組みを進めていきたいと思います。まさに委員がおっしゃるとおりでございますので、さらに私どもとしても取り組んでまいりたい、こういうぐあいに思っております。

長島(一)委員 三井大臣、前向きな御答弁をありがとうございます。もう本当にあと一歩のところですので、ぜひ、消費税を上げる前に、国民の皆さんに成果を示すようにお願いをしたいと思います。

 次に、労働教育政策についてお尋ねします。

 皆様のお手元の配付資料一についても、斜め読みで構いませんので、ごらんいただければと思います。

 日本は長年、GDP、国内総生産で世界二位を維持し、世界的にも、国力をはかる指標としてGDPがもてはやされてきましたが、GDPにかわり得る指標の構築に欧米諸国も取り組み始めております。

 こうした中、ブータンのGNH、グロス・ナショナル・ハピネス、国民総幸福度が日本でも注目を集めましたが、人の幸せをはかるのは難しいと思いきや、世界幸福度ランキングという調査を国連やギャラップなどさまざまな機関が独自に行い、集計をしております。この世界幸福度ランキングで一位を獲得しているのがデンマークであり、軒並み上位にランクインしているのが北欧の国々です。

 どの分野でも、一番の世界を見れば大体その世界の全てがわかると私は思います。私は、日本が国家戦略として重要視すべき、GDPにかわるべき指標はないのか、そう考えていたときに、なぜデンマークが幸福度ランキング一位なのかをひもとくことで見えてきたことがありました。

 実際に、先月、デンマーク、スウェーデン、フィンランドで現地調査をしてまいりましたが、デンマークが幸福度ランキングで世界一になったポイントは三つあると思います。一つは、国民の一時間当たりの労働生産性が高いこと、そして二つ目は、職のミスマッチを防ぎ、国民各自が適材適所であること、そして三つ目は、国民一人一人が天職を探すためのスキルを磨く教育を行っていること。

 まず、一つ目の国民の一時間当たりの労働生産性が高いことについては、お手元に配付しました資料二に、日本とデンマークのOECDの数値比較を皆様に紹介しております。

 国民一人一人の生産性については、みんなが天職についていること、適材適所についている方が高いに決まっています。例えば、私が甲子園のマウンドに立ってリリーフピッチャーをやるよりも、阪神の藤川球児選手が投げた方がホームランバッターを空振りにできるでしょうし、藤川選手がプロデュースをするよりも、秋元康さんがAKBのマネジメントをした方がきっとうまいんだと思います。

 餅は餅屋というように、みんながそれぞれに合った職業につけばつくほど生産性が上がりますし、ミスマッチが多いとそれだけ生産性が下がるのは当然だと思います。

 デンマークでは、なるべく多くの方が適材適所につくから一時間当たりの生産性が高く、生産性が高いからこそ、余計な残業をしなくて済むわけです。デンマークでは、四時半か五時にはみんな家に帰ってしまうそうです。残業がないとどうなるのか。女性が子育てをしやすいだけでなく、男性も早く家に帰って子育てや家事を手伝うことができる。デンマークでは、保育施設などが充実しているだけでなく、残業がなく、男性が家事、育児に参加できることが、実は女性の社会参加を後押ししているということです。

 それでは、みんなが適材適所につくためにはどうしたらいいのか。

 「十三歳のハローワーク」という村上龍さんの本が売れ、日本でも最近はキャリア教育を積極的に行うようになっておりますが、しかし、日本では、キャリア教育を行うのは学校の先生が中心です。デンマークでは、キャリアガイダンスセンターという施設があり、学校の先生とは別に、キャリアガイドという専門職がおります。

 また、これはフィンランドですが、首都ヘルシンキ市を中心に、小学校六年生から事実上のビジネスゲームを行うなど、特に三つのスキル、一つは問題解決能力、二つ目はみずから学ぶ意欲、そして三つ目はクリエーティブ能力、これら三つを培うために、内的起業家教育を全国展開しようとしております。

 そこで、文部科学省にお尋ねしますけれども、日本では、大学教育も含め、教育と就業のマッチングがなかなかうまく機能していない現状を踏まえ、学校現場へのキャリア教育の専門職の配置や、義務教育レベルでのビジネスゲームの導入などが必要だと思いますが、見解をお尋ねいたします。

関政府参考人 今、委員御指摘のように、子供たちが社会的、職業的に自立していくために必要な力を身につけていくこと、このことは大変重要でございます。初等中等教育段階からの体系的、系統的なキャリア教育を推進しているところでございます。

 各学校におきまして、児童生徒が主体的に進路選択をできるようにするために、教員が責任を持って、その発達段階に応じて組織的、計画的な指導を行っておりますが、必要に応じて、キャリアカウンセリングについての専門人材と連携することも有益と考えております。例えば、キャリアコンサルタントが中学生や高校生に職業についての情報を提供するなど、キャリア教育の実践を支援する取り組みも行われているところでございます。

 また、教育活動の全体を通じまして、社会的、職業的自立に必要な力を身につけていくというために、その取り組みの一環といたしまして、御指摘のようなビジネスゲームを取り入れることも有効と考えておりまして、総合的な学習の時間や社会科におきまして、児童生徒が企業活動を疑似体験するなど、そういった学習活動の実践例も見られるところでございます。

 御指摘の取り組みも参考にしながら、今後、さらに各学校における創意工夫を生かしたキャリア教育を推進してまいりたいと考えております。

長島(一)委員 私の娘が通っている学校も文部科学省の実験校になって、キャリア教育についてはいろいろ取り組んでいるんですが、ぜひ一歩踏み込んで取り組んでいただきたいですし、先ほどお話ししました、小学校六年生にビジネスゲームを実施しているフィンランドのユリトゥスキュラという施設を訪問しましたけれども、私が訪問した後、実は、NHKが取材に入って、報道特集を制作すると聞いております。ぜひ、このNHKの報道特集については担当官も見ていただきたいと思いますし、できれば、またそれを見て、これはいいなと思ったら、ぜひ現地に派遣していただくか、そのユリトゥスキュラの現場責任者がプログラムを開発しているので、ぜひ日本に招聘するなどして、研究を深めて、実施に結びつけていただきたいと思います。

 また、デンマークについては、生涯にわたって、五、六回もポジティブに転職をしながら、国民が天職を見つけることができるように、失業保険は、給与の高い人で約八割、安い人は約九割、四年間。そして、来年の一月からは二年間。これは議論があって、ちょっと二年間にするのは短過ぎるんじゃないかということで、今、二年半にしようという議論もあるようです。

 いずれにしても、この失業保険を給付されながら、職業訓練も企業の中で研修を受けることができます。そして、国が失業中の研修者の給与を失業保険で肩がわりします。そのかわり、研修者は職業紹介所からあっせんされた企業での研修の申し出を受けるかどうかの判断をする責任が生じまして、研修者が第一オファーを断ると、二週間の失業保険停止、第二オファーを断ったら、四、五週間失業保険停止、そして三回目のオファーを断ると、無制限に失業保険が停止になるという仕組みになっております。

 このように、研修者はオファーを断り続けると失業保険が減額されていく仕組みになっているため、大半の人は失業してから大体半年で転職するのが一般的だということであります。

 お手元に配付した資料三のように、日本でも、厚生労働省が失業保険を受給しながらの企業実習つき訓練、また、トライアル雇用事業を展開し、若い人たちを中心に、企業実習つき訓練では、二十二年度実績で約三万人が企業での実習を受け、その修了者のうち約七割の方が就業、トライアル雇用事業では、二十三年度実績で約九万七千人が企業で働きながら研修し、その終了者のうち約八割の方が就業しておりますが、最新の数字であることし九月の完全失業者数、約二百七十五万人という数字と照らせば、日本では全失業者の五%もカバーしていないという現状があります。

 こうした状況が存在するのは、失業保険を受給しながらの企業実習つき訓練でいえば、失業保険を受給しながら企業の中で訓練できる期間が四カ月にとどまっていること、また、企業内訓練の対象がITや介護など特定の分野にとどまっているとともに、ハローワークを活用しない企業や労働者には制度の存在自体が認知されていないということが想定されます。

 そこで、三井厚生労働大臣にお尋ねします。

 まず、大枠の考え方として、政府の雇用労働政策が、これまで雇用を守ること、そして雇用をつくること、ここにとどまっており、今働いている労働者が天職を探す環境を整え、なるべく国民の多くが天職につくことで労働生産性を上げようという視点に欠けていたのではないか。三井大臣が、国民と天職とのマッチングを推奨し、一時間当たりの労働生産性を上げていくという新たな視点を雇用労働政策に盛り込むべきと思いますが、大臣の決意をお尋ねいたします。

三井国務大臣 今、先生のこのデンマークの資料をずっと見せていただきまして、まさに餅は餅屋ということは本当に大事なことでありますし、そこまでいくプロセスというんでしょうか、今、デンマークの例で申し上げれば五、六回転職していると。

 今、日本の四十代の方の補助が、まさに失業されている方が多い、生活保護を受けている方が多い。そういう中で、今先生からお話がありましたように、まさに自分の天職を求めるためには、やはり職業能力を高めて、それから適性、能力に合った就職が実現されるよう、支援施策を一体に推進することだと思っております。個々の生産性も高め、日本経済全体の生産性を高めるためにも極めて重要だと考えております。

 厚生労働省といたしましても、求職者やあるいは求人者双方のニーズを踏まえたきめ細かな職業相談あるいは紹介に加えまして、職業訓練を活用した離職者、転職者の再就職の支援や、あるいは労働者の訓練を行う企業への助成を行っているところでございます。今後とも、まさにマッチングした対策の強化を重視していきたいと思っております。

 まさに、雇用する側も雇用される側も、ミスマッチというのはお互いに不幸だと私自身も考えておりますので、そのための、今先生がおっしゃっています企業実習つき訓練というのは本当に不可欠だと思っておりますので、ぜひまた先生とも、御要望をお聞きしながら取り組んでいきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

長島(一)委員 三井大臣には政治家なり大臣がまさに天職だと思うんですが、釈迦に説法ですけれども、行政というのは、やはり行政計画の最上位の計画にきちんと役所の方針を盛り込まないと、なかなか動かないんじゃないかと思います。先ほども言いましたけれども、雇用を守る、つくるということだけじゃなくて、マッチングという視点をぜひどこかの行政計画に盛り込んでいただきたいと思います。これは指摘しておきます。

 そして、先ほどもお話ししましたけれども、国民と天職とのマッチングを推進するための具体的な方策の一つとして、失業保険を受給しながらの企業実習つき訓練を発展、拡大させるために、ハローワークの守備範囲だけでなく、ハローワークを活用していない労働者、企業も視野に入れ、失業保険の対象期間の拡大や対象分野の拡充を提言いたしますが、三井大臣の見解をお尋ねいたします。

三井国務大臣 お答えさせていただきます。

 先ほども企業実習つき訓練の拡大を図るべきだという先生の御指摘でございますので、まさに、求職者の方が失業給付を受給しながら企業においての実習つき公共職業訓練を受けていただくことは、その人に適した就職につながる、重要だと考えております。

 また、これにつきましては、訓練を実施しております都道府県との意見交換を行いながら、積極的に実施に向けた取り組みを検討していきたい、こういうぐあいに思っております。

長島(一)委員 前向きな御答弁、ありがとうございます。

 三井大臣そして政務三役の皆様、そして、これはもう厚生労働省だけでなくて、縦割りの行政を廃して厚生労働省と文部科学省ときっちり連携して、そして長妻委員長にも、GDPにかわり得る指標の構築ということ、やはり成熟した社会ということでは、お金や物よりも、プライスレスな価値を国民が享受できる日本をつくるために、GDPにかわり得る新たな成果指標を定め、政府として取り組んでいただくことを切にお願いしまして、私の質問を終えさせていただきます。

 ありがとうございました。

長妻委員長 次に、工藤仁美さん。

工藤委員 民主党の工藤仁美でございます。

 本日は、質問の機会をいただきまして、まことにありがとうございます。

 私は、今、社会保障審議会で議論をしております、生活支援戦略の大きなテーマであります生活保護制度の見直しについて質問をさせていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 七月に出されました生活支援戦略の中間まとめは、基本的な目標として、生活保護制度の見直しを生活困窮者への対策と一体的、総合的に行い、国民に信頼され、納得される制度にしようとするものです。

 私たち民主党政権が、生活困窮者の問題に真正面から光を当て、また、実績のあるNPOなど市民組織にも議論に参画をしていただいて戦略をつくり上げていることは、私は大いに誇れるのではないかというふうに考えております。

 この戦略の結果として、現在の保護費三兆円、受給者数二百十一万人超という膨大な数字が減ることになれば、それは大きな成果と言えるのでありますけれども、しかし、安易な給付制限などで削減ありきとするものではないと私は理解をしております。

 そこで、質問いたします。

 必要な人全てが給付を受けることができていないのではないか、生活保護を受けてもいいほど貧しいのに受給をしていない人が相当数いるのではないかという指摘もございます。行政サービスを受けていれば死なずに済んだのではないかと思われるような孤独死が、この間、たびたび報道をされております。

 保護を要する人が申請していない、または、できていない状況が少なからずあるのではないかという指摘について、社会保障審議会の中でどのような議論があるのか、お答えいただきたいと思います。

梅村大臣政務官 生活保護制度自体が、これは最後のセーフティーネットですから、支援が必要な方には確実に手当てをしていかなければいけないという思い、これは委員の工藤先生と思いを一にしております。

 その中で、今回の社会保障審議会、この中の生活困窮者の生活支援の在り方に関する特別部会、こちらで今特に中心となって議論を行っているのは、生活困窮者の方を早期にきちんと把握して、初期段階から適切に支援を行っていくこと、これが一点でございます。それからもう一点は、本人にできるだけ寄り添いながら支援を行っていくこと、このことを中心に現在検討を進めているところであります。

 この審議会の議論というものを通じまして、生活保護制度の見直しでありますとか、あるいは困窮者の方への対策、こういったことをきちっと総合的に取り組んでいって、やはり国民の方の信頼に足る持続可能な制度をつくっていくということをこれからも目指してまいりたいと思っております。

工藤委員 生活保護を受給している人またはその家族に対するバッシングがある一方で、本来生活保護を受けた方がいいのではないかというような生活状況の人たちにまで行き渡っていないのではないかということについて、もし政務官の方から何かコメントがあればいただきたいというふうに思います。

梅村大臣政務官 確かに、今の制度に対するさまざまな御意見というのは、これは当然あるかと思います。

 これは、二つにきちっと分けて議論をしないといけないのは、今言われている例えば不正受給の問題であるとかモラルの問題であるとか、こういうものに対してはきちっと対応していくということと同時に、今先生おっしゃられたように、本来は受けるべき方がそういうことにアクセスができない、あるいは我慢をしてしまう、こういうことについてもきちっと本来は手当てをしていかなければいけないということでありますから、その二つがまぜこぜになって言われるということについては、これはきちっと考えていかなければならない。

 ですから、何度も申し上げますが、必要な方には必要なきちっとした手を差し伸べる、こういったことが必要であるという認識であります。

工藤委員 政務官、ありがとうございました。

 本当の不正というものをなくしていかなければいけないのはもちろんですけれども、その一方で、そういった孤立死、孤独死をするような人たちがいないように、この制度の改善に向けた議論の中に私も参画をしていきたいというふうに思っております。

 次に、この制度を利用して自立支援をしていこうとする人たちをサポートする、そのかなめという役割を担っております福祉事務所のケースワーカーの皆さんについて質問いたします。

 生活困窮者の総合的な支援の拠点である福祉事務所のケースワーカーは、現在一人当たり九十人を超える人を担当、受け持っている現状にあると聞いております。これでは、ケースワーカーの皆さんがその役割を十分に果たせるわけがありません。

 自立支援というのは、一人一人の状況に応じたものでなければできるものではなく、画一的にできるものではないということは明らかです。しかし、それには大変な時間を要するものだというふうに思います。

 生活支援戦略の議論の中では、NPOなどの民間組織とも協働した支援体制の構築が必要という御意見もあるように思いますけれども、しかし、自立支援のかなめとなる専門職としてのケースワーカーが余りにも少な過ぎるのではないかというふうに考えております。

 大幅に人員をふやす必要があり、しかもそれは正規職員のケースワーカーの人たちをもっとふやしていく必要があるというふうに私は考えておりますが、これについてお答えをいただきたいと思います。

梅村大臣政務官 私も実は地元が大阪でして、ケースワーカーの皆さんの声というのは、生活保護の受給者の方が今非常にふえている中で、いろいろなお声を聞かせていただいています。やはり、自立支援をしっかりサポートしていく、そういったケースワーカーの方々をしっかり厚生労働省としても充実をさせていただくということについては、大切な課題だと思っております。

 ですから、そういった意味でいえば、今先生から、一人当たりの受け持ちをされている方の人数のことがあったかと思いますが、こういった人的な形の拡充ということは必要だと思っております。

 平成二十一年以降も、実は毎年、地方交付税算定上の人数というのはふやしておりまして、今回、二十五年度もこの部分については増員要求をさせていただいております。ですから、そういった形を通じて、何とかこのケースワーカーの方々をしっかり支えていく、確保していくということを目指してまいりたいと思っております。

 さらに、今回の生活支援戦略の中では、先ほども先生から御指摘がありましたけれども、NPO等の民間機関の方とも協力をさせていただいて就労支援等を行っていくということが検討課題として挙がっております。人数に加えまして、こういったケースワーカーの方々の負担をどう軽減していくのかということについてもあわせて取り組みをさせていただきたい、このように思っております。

工藤委員 政務官、ありがとうございました。ぜひよろしくお願いをいたします。

 私は、非正規労働者の課題に長く取り組んできたこともありまして、この生活保護制度のあり方については強く関心を持っておりました。毎週地元に帰るたびに、その支援活動をしているNPOなどの市民組織の方々や、また社会福祉法人の担当の方など、実際に現場で支援活動に携わっておられる方からできる限りお話を伺ってまいりました。また、その人たちから御紹介をいただいて、生活保護を受給している人や、また路上で生活しているいわゆるホームレスの人たちなどからも直接お話を伺うというような機会も持っております。

 そこで、この生活保護制度の見直しが新聞などで報道をされるようになりましてから、その方たちからいろいろな御意見を伺っているんですけれども、少なからず、多くとは申しませんけれども、大変御懸念の声というものがあるのが医療の関係なんですね。医療扶助の適正化ということで、受給者の側に対する、例えば自己負担の導入ですとかジェネリックの義務化というものが報道されるのを目にして、非常に心配をする声を私は多く聞いてまいりました。

 例えば、支援をしているNPOの方からは、自分が支援をしている生活保護を受給している方が、病院に行ってMRI検査を受けたんだけれども、うまくできなかったからといってまた続けて二回も受けさせられたですとか、また別なNPOの方からは、その方が支援している生活保護を受給している人が、病院から長期にわたって薬を大量にもらってきている、自分が接している限りでは精神的な病気というものもよくなっているように思うんだけれども、相変わらず大量にお薬を処方されてもらってきている、これは医療知識がない者であってもおかしいのではないかというふうに思われるというような、このような御意見も聞いております。

 患者さんというのは弱い立場ですし、ましてや生活保護を受給している人の中には、日常の生活は何とか送れても、自分の考えていることをうまく表現できない、言いあらわせないというような人も多数いるように、その支援をしている方たちから聞いております。

 医療扶助というものが保護費の半分近くを占める現状ですので、この適正化というものは本当に重要な課題だと思いますけれども、私は、この医療扶助を削減するということからいえば、保護を受給している人以上に、医療機関への対応にまず取り組むべきではないかというふうに考えております。これについて、ぜひお答えをいただきたいと思います。

梅村大臣政務官 今委員からお話がございましたように、一部の医療機関ではやはりそういった不適切な医療が行われているというお話もございます。そういった不適切な医療を行っている医療機関に対しては、これはきちんと適切に指導していく、あるいは適正化を行っていくということは、これは必要なことだと認識をしております。

 ですから、いろいろな論点の中の一つに、御懸念のいろいろな報道等もあるかと思いますが、そういった適正化ということについては、これはきちんと取り組んでいかなければならないと思っております。

 具体的な取り組みなんですが、ことしの十月から、まず電子レセプトの機能強化を行っていまして、これは過剰な薬の多剤投与、こういったケースをきちんと抽出できるようにしていこうとしております。それから、本年度中に、特定の診療行為ですとか検査、こういったものが多く行われているような特徴が見られる医療機関というものは、これはきちんと抽出ができるようにしていくという仕組みもつくる計画であります。

 ただ、少しつけ加えますと、抽出をされた方全てが不正を疑われるということではありませんので、まず抽出を行った上で、そういったことを通じて、いろいろ医療機関に対する指導等を行っていくということをこれから考えていかなければならないと思っております。

 いずれにしましても、今回の生活支援戦略の中でも、この生活保護に関する医療機関の指定のあり方の見直し、こういったことも適正化策の中で検討をさせていただきたい、このように思っております。

工藤委員 政務官、ありがとうございました。どうぞよろしくお願いいたします。

 最後の質問になりますけれども、この生活支援戦略の基本の柱は、三つのセーフティーネット、第一のセーフティーネットが社会保障制度と雇用保険制度、第二のセーフティーネットが求職者支援制度、そして第三のセーフティーネットであります生活保護制度。

 この三つのセーフティーネットのうち、最後のセーフティーネットであります生活保護制度から脱却できる人には脱却をしてもらおうということで、第二のセーフティーネットであります求職者支援制度、また一番目の雇用保険制度などの方に押し上げようという、それがこの生活支援戦略の基本の柱だというふうに理解をしております。

 そこで、私は、ことしの三月にこの厚生労働委員会で質問の機会をいただきましたときに、現在の雇用保険制度について質問をさせていただきました。その際も述べたのですけれども、現在の雇用保険制度、第一のセーフティーネットとなっております雇用保険制度なんですけれども、それが今非常に不十分なのではないかという趣旨で質問をさせていただきました。

 現在働いている人の失業給付の給付額は賃金の五割から八割の間で支給をされております。それは失業時に支払われていた賃金で計算をされるものです。ですので、非正規雇用で働く人たちはもともと賃金自体が低いのですから、当然、雇用保険の失業給付の給付額もさらに低くなっております。その上、こういった非正規雇用で働く人たちは月例賃金以外の一時金などの手当もなく、退職金制度もない人が多いのですから、蓄えをすることもできず、雇用保険だけが生活の糧ということになっております。それが実態であるというふうに私は理解をしております。

 そうしますと、第二、第三のセーフティーネット、求職者支援制度ですとか生活保護制度から一番目のセーフティーネットの状態に押し上げるといいましても、就労する、働く状態に押し上げるといいましても、こういった非正規雇用で働く人たちが非常にふえている現状の中では、職を失った場合に雇用保険制度ではとどまり切れないという現状にあるというふうに思います。第一のセーフティーネットである雇用保険制度の方から第二、第三と落ちていかざるを得ない、そういった現状にあるのではないかというふうに思います。

 私は、生活保護を受給する人たちの中で、働く意思があり、そして働ける状態にある人たちが、生活保護制度から脱却して就労する状態に持っていくときに、結果として生活保護受給者を減らそうというのであれば、そのこと、制度自体の問題ももちろん、今議論をされているように、大変重要なんですけれども、第一と第二のセーフティーネット、特にこの第一の雇用保険制度というものの充実をさせることが、生活保護を受給する人たちを結果的に少なくするということに結びつくのではないかというふうに考えております。

 以上、私の考えを述べたのですけれども、ぜひこの点について三井大臣の御所見をお伺いしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

三井国務大臣 工藤先生は本当に熱心にこれまでも雇用関係に取り組んでおられます。

 お答えさせていただきますと、先生のおっしゃるとおりでございますので、特に今回の社会保障と税の一体改革におきましては、セーフティーネットを重層的に整備するということにいたしております。

 具体的に申し上げますと、第一のネットといたしましては、社会保険につきましては、短時間労働者への厚生年金、健康保険の適用拡大を図るほか、保険料軽減などの低所得者対策を強化してまいりたいと思っております。

 また、第二のネットといたしまして、今先生から御指摘ありましたように、雇用保険を受給できない人に対する求職者支援制度を昨年十月にスタートさせたところでございます。求職者が早期に就職できるよう支援してまいりたいと思っております。さらに、今後は、生活支援戦略を年内に策定いたしまして、生活困窮者の支援に総合的に取り組んでまいりたいと思っております。

 こうした取り組みを通じまして、国民が安心して生活できる社会をつくっていきたいと考えております。

工藤委員 大臣、ありがとうございました。

 私も、この生活支援戦略につきましては、今後とも一生懸命取り組んでまいりたいと思います。その決意を述べまして、質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

長妻委員長 次に、松本純君。

松本(純)委員 おはようございます。自由民主党の松本純です。

 まずもって、三井辨雄厚労大臣の御就任に祝意を表させていただきたいと存じます。

 十一月二日に、厚生労働委員会におきまして、大臣の御挨拶、御発言がありました。それに関連して質問をさせていただきたいと思います。

 与えられた持ち時間は三十分ですので、早速入ります。

 大臣が御挨拶の中で、潤いのある社会保障の実現に全力で取り組むと述べられておりますが、このイメージがなかなか伝わりませんで、率直に申し上げると、具体的にどのような社会保障を実現されたいと考えていらっしゃるのか。潤いのあるということは確かに言葉としては美しい言葉かもしれませんが、厚生労働行政の責任者である大臣に国民が求めているものは、中身のない美辞麗句ではなくて、どのような方向で何をするかといったことを具体的に示していただくことだろうと考えております。そのような観点で御質問をさせていただきたいと思います。

 まず、潤いのある社会保障と民主党マニフェストとの関係をお伺いしたいと思います。

 潤いのある社会保障とは、民主党マニフェストに記載されている子ども手当、最低保障年金、後期高齢者医療制度廃止を含むものなのかどうか、あるいは、これらがなくても成立するものなのか、お考えをお伺いしたいと思います。

三井国務大臣 松本筆頭、よろしくお願い申し上げます。御質問ありがとうございます。

 私は、潤いのある社会保障と申し上げたのは、今まさに社会保障のあるべき姿というのは、やはりもっと、国民の幸せということを考えたときに、ぎすぎすした昨今の世の中を見ていますと、そういう中で国民が、皆様が本当に幸せに喜びを分かち合える、そういう世の中にしていきたいという思いで実は潤いという、決して美辞麗句でなくて、そういう余裕も必要だろうということで申し上げました。

 今御質問の中にありました、そうした社会の基盤として、例えば、子供を産み育てやすい子育て支援制度の充実を図ってまいりたい、こういうぐあいに思っておりますし、また、どこにいても、自分の地域で適切な医療あるいは介護サービスを受けられる仕組みなどをつくり上げていきたい、こういうことを申し上げてまいりました。

 さらに、誰もが喜びを持って働くことができる、安定した生活を営むことができる社会をつくり上げていく、こうした取り組みにより、潤いのある社会保障を実現したい、こういうことでございます。

 よろしくお願いいたします。

松本(純)委員 具体的に、子ども手当、最低保障年金、後期高齢者医療制度の廃止というこの三点については、含まれるか含まれないかということについてはいかがでしょう。

三井国務大臣 御指摘の、最低保障年金、子ども手当、そしてまた後期高齢者医療制度の廃止を含むのかという問いでございますけれども、御指摘の子ども手当につきましては、既に三党合意を得まして、新たな児童手当といたしまして、恒久的、安定的な現金給付制度が実現したところでございます。これも委員が御存じのとおりだと思います。引き続き、子供たちの健やかな成長に資するよう適切に対応していきたいと思っております。

 また、今後の公的年金制度でありますけれども、高齢者医療制度に係る改革につきましては、もう既に御存じのとおり、三党合意、そして、そのもとで成立いたしました社会保障制度改革推進法に沿って議論を深めていく必要があると考えております。

 このような議論を踏まえながら、潤いのある社会保障の実現に取り組んでいきたい、こういうぐあいに考えているところでございます。

松本(純)委員 社会保障の基本的考え方とのかかわりなどでありますが、さきの通常国会で、三党協議を受けて、社会保障制度改革推進法が成立をしておりますが、基本的考え方として、「自助、共助及び公助が最も適切に組み合わされるよう留意しつつ、国民が自立した生活を営むことができるよう、家族相互及び国民相互の助け合いの仕組みを通じてその実現を支援していくこと。」とされております。

 潤いのある社会保障が、子ども手当、最低保障年金という考え方については、議論の上でありますが、含むということで考えると、この自助、共助、公助のうち、公助に重点を置いた社会保障の充実にこれからも臨むべきだと理解されると思うのですが、大臣はいかがお考えでしょう。

三井国務大臣 今、松本委員がおっしゃいますように、社会保障制度の基本的な考え方というのは、やはり自助、共助、公助を最も適切に組み合わせることがもちろん必要であります。

 昨今で申し上げますと、核家族の増加といった中で、やはり家族形態が大きく変化しておりますし、また非正規労働者の増加、また自助を支える社会基盤が大変弱体化しているというのが今現状ではないかと思っております。

 このため、社会保障・税一体改革では、共助そして公助によるセーフティーネット機能を強化する必要があると考えておりますので、自助、そして共助、公助の好循環を目指してまいりたい、こういうぐあいに考えているところでございます。

松本(純)委員 それでは、社会保障の大きさとのかかわりを伺いたいと思いますが、現在、日本の国民負担率は三九・九%で、財政赤字を含めた潜在的国民負担率は五一・二%と、既に五〇%を超えております。そして、今後も、高齢化の進展によりまして、社会保障給付の伸び率は国民所得の伸び率を上回る見込みであり、国民負担率が上昇をし続けることが見込まれております。この上、さらに最低保障年金など社会保障給付を膨らませ、どのように社会保障制度の持続可能性を確保していくお考えなのか、伺いたいと思っております。

 社会保障制度は国民全体で支えているものであり、たとえ給付の拡大によって受益者が潤っても、保険料や税を納め、支払って、制度を支える側の国民が疲弊しては意味がないと思うのです。大臣は、際限なく社会保障給付費を増加させ、日本を高福祉・高負担社会に導いていこうというお考えなのでしょうか。お尋ねします。

三井国務大臣 これまで、松本委員は、従前から中福祉・中負担ということが持論であるということも、私も認識しております。

 そういう中で、北欧のようないわゆる高福祉・高負担の国に対して、我が国は、やはり給付と負担のバランスを前提といたしました中規模そして高機能な社会保障制度を目指すべきだと考えているところでもございます。

 今回の社会保障・税一体改革では、社会保障の充実を図る一方で、重点化とそしてまた効率化も行ってまいりたい。

 このことによりまして、少子高齢化が進む中でも社会保障制度が持続可能なものとなる、こういうぐあいに考えておりますし、また、国民が安心して希望と誇りが持てる社会が実現できる、こういうぐあいに考えているところでございます。

松本(純)委員 それでは、角度を変えて。

 私が内閣官房副長官を務めた麻生政権時代では、日本型の安心社会という考え方を打ち出しました。その考え方の一つは、働くことが報われる公正で活力ある社会であり、社会保障の給付を受けるということで安心を確保するという受け身の安心社会ではなく、活力ある安心社会をつくることでありました。

 潤いのある社会保障において、社会の活力あるいは経済の活性化という視点はどのように位置づけられているか、お答えをいただきたいと思います。

三井国務大臣 松本委員は、麻生政権のときは官房副長官、そしてまた、私と同じく薬剤師でございますけれども、大変薬にもお詳しいし、政治家としても尊敬しているところでございます。

 今お話ございましたように、少子高齢化が進む中で、やはり意欲を持って働くことができる環境をつくることが何よりも重要だ、こういうふうに思っておりますし、また、御指摘のありました活力のある社会を実現するためには、日本の再生戦略に基づきまして、分厚い中間層の復活に向けまして、全員参加型社会の実現を目指していきたい、こういうぐあいに考えているところでございます。

 また、社会保障改革を通じまして、医療・介護サービスなどの充実によりまして雇用が創出される、また、社会保障制度の充実によりまして、老後の安心ということが確保されること、また、消費、経済活動が拡大されること、また、ライフイノベーションを通じまして、健康分野を成長産業に位置づけまして、経済成長に結びつけていきたい、こういうことによりまして、社会保障が社会や経済の活性化に寄与していくものと考えているところでございます。

松本(純)委員 働くことが報われるということに関連して、生活保護の見直しについてお尋ねしたいと思います。

 生活保護は最後のセーフティーネットであり、社会保障制度において極めて重要な制度であります。

 他方、生活保護は全て公費であり、国民の信頼のもとに成っていることも事実であります。例えば、生活扶助基準が普通に働いている低所得者の消費実態よりも高いようでは、働くことが報われる公正な社会と言えるのかと疑問が生じます。

 生活保護基準について、検証結果を踏まえて必要な見直しを検討するとのことですが、それは、このような生活扶助基準と一般低所得者の消費実態の乖離はなくすという方向だと理解をしてよろしゅうございましょうか。

梅村大臣政務官 生活扶助基準についての御質問ですが、生活扶助基準につきましては、現在、生活保護の基準部会の方で検証を行っている最中でございます。

 具体的には、これは五年に一度の全国の調査データを用いまして、現在の基準額と、そして一般低所得者の方の世帯の消費実態との均衡が適切に図られているのかということが、今回検証を実施する、その中の論点としてあるわけです。

 現在、その検証に必要なデータというのは集計中でありまして、この検証結果についてはことしの末をめどに結論として取りまとめる予定であります。

 具体的な対応については、検証結果を踏まえ、予算編成過程で検討していくということでありまして、結果として先生がおっしゃるような方向になるかもしれませんが、それは結果であって、現状では、低所得者の方の支出との均衡ということが適切に図られているかということをしっかり検討していきたい、このように思っております。

松本(純)委員 それは、方向性をどちらへ導いていくかということについては今お考えがないということですか。

梅村大臣政務官 最初から方向性が決まっているわけではなくて、やはりそれは支出のデータと現在の均衡状況というものを検討するということですから、それは結果でありまして、それを目的に検証するということではないということであります。

松本(純)委員 さらに、生活保護の見直しとあわせて、生活保護受給者への就労支援、ハローワークにおける職業訓練、就職支援も活力ある社会、安心社会を実現するためには重要な視点でありますが、ハローワークと市町村の福祉部局とが密接に連携して対応する必要があると考えておりますが、それにはどのように取り組んでいかれますか。

梅村大臣政務官 生活保護受給者の方につきましては、現在も、ハローワークとそれから自治体の福祉部局、その連携というものは、協定に基づいて、きめ細かい就労支援を行っているところでございます。

 具体的には、支援の対象者の方の数、それから就職者数も、平成二十二年度と二十三年度を比較しますと、支援対象者数が、二十二年度が二万一千百三十九人、二十三年度が四万五千十六人。実際の就職件数でありますが、二十二年度には一万二千五百九十七人が、二十三年度には二万四千五百二十二人ということで倍増しております。

 そして、年内に策定します生活支援戦略、この中でも、ハローワークの常設窓口の設置や定期的な巡回相談の実施、さらにはハローワークと地方自治体による一体的な支援の全国展開、こういったものを生活保護の相談段階から就職支援を始めることを徹底する、こういったことを抜本強化を行っていきたい、このように思っております。

松本(純)委員 医療、介護についてもお伺いいたします。

 医療、介護は、高齢化の進展に伴い、今後の費用の大幅な増大が見込まれる分野であり、潤いの名のもとに漫然と増加を許すのではなく、急性期医療や在宅介護など充実すべき分野は充実するとともに、効率化すべき部分については効率化を進めていかなければならないのではないかと思うのでありますが、効率化の一例として、現在、法律上は二割負担となっていますが、予算措置で一割負担とされている七十歳から七十四歳までの高齢者の方々の患者負担を法律どおりに戻すことが考えられるのではないかと思いますが、大臣はどのようにお考えでしょうか。

三井国務大臣 御指摘のとおり、医療、介護の分野につきましては、まさに今後、高齢化に伴って費用の増大が見込まれるということは今先生のおっしゃるとおりでございます。また、医療・介護保険制度のセーフティーネットの機能強化をするとともに、給付の重点化、今おっしゃられましたように、重点化、効率化に取り組むことといたしております。

 また、御指摘の七十歳から七十四歳までの患者負担につきましては、見直しにも慎重な意見もございますし、また、世代間の公平の観点ということから考えますと、高齢者であっても相応の負担をしていただく視点が重要であるという意見もございます。

 いずれにしても、この意見を踏まえまして、平成二十五年度の予算編成の過程の中で検討してまいりたい、こういうぐあいに考えております。

松本(純)委員 判断をするというのは大変難しいことは重々承知をしておりますけれども、自然に増加するものだから、これは受け入れてやむなしということから、小泉総理のときに、二千二百億円の社会保障費の圧縮を求められて、毎年一兆円伸びる社会保障費をいかに抑えるかということで、知恵を出せというようなことが繰り返されたことも一つの事例として過去あるわけであります。

 今後も、特に、足りなくなったら消費税を上げて補填すればいいではないかというだけでは解決するものではありませんで、そこには何が問題が生ずるかといえば、保険料を納めているのは誰かといえば、例えば健保連のように、企業が折半で保険者と一緒にそれを負担し、そしてそれを後期高齢者に支援するというような形もとられているところであって、企業がこけたら、では穴があいてしまう、税金を上げればいいじゃないか、保険料を上げればいいじゃないかでは済まない状況が出てきてしまいます。それは企業そのものの、これからの日本の元気をそぐということにつながりかねない、そんな状況にもつながるところでありますから、大事な保険財源というものをいかに有効に使っていくかということには、ぜひ、三井大臣には積極的に、しかし慎重にお取り組みをいただくよう期待をしたいと思います。

 また、医療の高度化によりまして、多くの先端医療技術が登場しております。これらの多くは費用も高額で、保険財政の圧迫をする要因ともなっていることは否めない状況であります。

 政府は、ライフイノベーションということで、革新的医薬品、医療機器の創出を進めておられますが、創出された医薬品、医療技術の保険適用ということが将来問題になってくるんだろうと思いますが、これについては三井大臣はどのようにお考えでしょうか。

櫻井副大臣 医療費が増加しているというのは、高齢社会だけではなくて、今御指摘のありましたとおり、医療の高度化によって随分ふえてきているということを指摘されているのは現実でございます。

 一方で、ここは、例えば医療が高度化されました。しかし、例えば、今までであれば開腹手術をしなければいけないものを内視鏡下でやれるようになりました。そうなると、入院期間を今度は逆に言うと短縮することができるようになる、それから患者さんに対しての負担も軽減することができるようになってくる、こういったことをどうバランスしていくのかだと思っています。

 もう一点申し上げさせていただきたいのは、例えばPETという検査がございましたが、これは保険収載されるのがおくれて、しかも保険収載されましたが逆ざやだったこともあって、結局は日本では余り普及しなかった。ところが、これが海外でどんどんどんどん進められていって、せっかく日本で開発されてきた技術であるにもかかわらず、その技術が生かされなかったという点もこれまたございます。

 今後、日本がどういった物づくりで食べていくのかというと、やはり医療の分野というのは非常に大事な分野だと思っておりまして、こういったところ全体を踏まえた上でバランスをとっていく必要性があるんだろう。もちろん、ですから野方図に点数を高くするということを申し上げているわけではございませんで、そういったこと全体を踏まえた上で、バランスをとった上での診療報酬を決めさせていただきたいということでございます。

松本(純)委員 今のお話のように、選択というのは非常に難しいことなんだろうと思いますが、やはりこれは自由経済ではありませんで、一定の、言葉は悪いかもしれませんが、一つは、国が決める法定価格の中で動いている経済という位置づけにもあることでありましょう。

 限られた保険財源をいかに有効に使うかということについては、必ず、突き抜けるものがあれば、どこかをマイナスをしなきゃならないという、そのバランス感覚を適正に持ち続けていただきたいというふうに思います。

 また、難病対策についてお伺いをしたいと思いますが、法制化について検討されていると承っておりますが、法制化に当たっては何を基本理念にしようとされているのかを伺いたいと思っております。

 特に子供の難病につきましては小児慢性特定疾患として児童福祉法に規定されておりまして、児童福祉という理念のもとで施策が行われていると承知をしております。

 そこで、法制化するに当たって核となるのは、患者の福祉と疾病の研究、あるいは治療法の開発なのでしょうか。それによっては難病の定義も変わってくるのではないかと思うのですが、御見解を伺いたいと思います。

櫻井副大臣 本当に大事な視点だと思います。

 済みませんが、基本理念をそのまま読ませていただきますけれども、「難病の治療研究を進め、疾病の克服を目指すとともに、難病患者の社会参加を支援し、難病にかかっても地域で尊厳を持って生きられる共生社会の実現を目指す。」というふうに基本理念を定めているところでございます。

 これまでの難病の中で、疾病ごとに、ある患者さんたちは非常に手厚く、そして一方では、指定されないがゆえに、本当に苦しい思いをされている方々もいらっしゃったこともこれは事実でして、こういった不公平なことも今後は変えていきたい。

 そういう意味で、社会全体の中で難病の患者さんたちを支えていけるようなことを今後検討させていただきたい、そう思っているところでございます。

松本(純)委員 今お答えのとおり、指定されるかされないかで大きな差が出てきてしまうというところで苦しんでいらっしゃる方がたくさんいらっしゃいますので、それに向けてもこの定義をどう生かしていくか、つくっていくかということについて検討をさらに進めていただけるようお願いをしたいと思っております。

 さらに、障害者自立支援法を改正した障害者総合支援法の施行準備が進められておりますが、中でも、新たに障害福祉サービスの対象となるいわゆる難病の範囲がどのようになってくるのか、当事者、関係者は注目しているところでありまして、難病対策委員会での議論を踏まえ決定すると伺っておりますけれども、現在の検討状況についてお尋ねをしたいと思います。

西村副大臣 委員御指摘のとおり、障害者総合支援法で来年の四月から新たに難病等の方が障害福祉サービス等の対象になります。

 その具体的な範囲につきましては、研究班の調査結果等のほか、新たな難病対策での医療費助成の対象疾患の範囲も参考にいたしまして、厚生科学審議会の難病対策委員会で検討中でございます。

 四月から新たに対象になるということでございますので、それまでの自治体における作業のスケジュール等々を考えますと、一月中には政令を公布しなければいけないだろうというふうに考えておりまして、難病対策委員会での議論を踏まえて、一月中ということを目途に対象者の範囲を決定することを予定いたしております。

松本(純)委員 ありがとうございました。

 いろいろお尋ねをしてまいりましたが、私自身は、外交、防衛、経済なくして社会保障の安定なしという伝え方を地元でさせていただいております。

 これは何を言わんとするかというのは先ほどお話ししたとおりでありまして、景気、経済がしっかり立ち直って、健康保険組合などについてもしっかり運営がされて、そして、そこで若い世代の皆さんが協力をしてくれて生み出されてくる保険財源というものが有効に使われてくるということでなければ社会保障の維持などできるわけがないわけでありまして、何よりも外交、防衛、経済、特に日本の置かれている位置、立場というものが昨今大変心配をされている状況にあります。こういった問題を解決していく、そして、経済の新たな産業を興すなどの手だてをしていくこと、こういったことによって将来に希望の持てる日本を築くことが、まさにこの社会保障制度を維持できるということにつながってくるのでありましょう。

 特に、その財源が限られている中で、社会保障制度を今後長期にわたって持続させていくということに三井大臣は腐心していただかねばならないわけでありますが、それに向けては、ぜひとも、いかに無駄をなくしていくか、合理性を追求していくか、そして新しいものにも果敢に挑戦をするという中でのバランスなのだということをお忘れなきようお取り組みをいただきたいと思っておりますし、足りないから保険料を上げればいい、消費税を上げればいいということだけではない、国民の皆さんに理解をしていただけるような医療サービスなどの提供ができるような体制をつくり、子育てもありますが、基本は、医療、年金、介護という保険制度で維持されている仕組みがきちんと将来にわたって続いていくことが大変重要なのだろうと思います。

 厚生労働委員会、大変重要な案件をこれからも取り組んでいかなければなりませんが、ただただ祈るばかりでありまして、我が国の将来を決めていくというのはまさに政権の大きな責任であって、その中にあって、全力でのお取り組みをお願いしたい。

 さらに言えば、後が心配なのであれば、我々自民党にお任せをいただきたいという思いも強くあり、結果は衆議院の解散・総選挙でなければ得られないという状況になりませぬよう、御活躍をお祈り申し上げ、お祝いの言葉とします。

 ありがとうございました。

長妻委員長 次に、加藤勝信君。

加藤(勝)委員 自由民主党の加藤勝信でございます。

 三井大臣初め、副大臣、また政務官の皆さん、よろしくお願いをしたいと思います。

 今の松本委員の締めくくり、我々も、近いうちという話をしながらという中でありますから、いささか複雑な思いを持ちながら、大臣初め皆さん方に御質問させていただきたいと思います。

 そういう中で、まず、大臣の御挨拶の中で、最初に東日本大震災の復興を挙げていただいた。まさに、私どもも、これが最大の取り組むべき課題だ、こういうふうに認識をしておるところでございます。

 私自身も、今、復興予算の流用等々いろいろありますけれども、復興基本法を初め、復興庁等にかかわってきた者として、また現地に何回も行かせていただく中で、まだまだ進んでいない。あるいは地域間でかなり格差が出てきている、あるいは福島においては原発の影響がまだある。そこからまだ、収束宣言という話は出ておりますけれども、住んでいる方からすれば、全くそれとは異なる状況である等々承り、また見させていただくわけであります。

 そういう中で、大臣、大きな課題という形で、それ以上具体的に、分量の関係もあるからお話しいただいていないと思いますが、まず、所管であります医療、介護について、医療施設、介護施設の復興、あるいは、医院、診療所のお医者さんが減ってしまっている、介護施設で働く方の確保ができにくいあるいはできない、こういう状況が指摘をされていると思いますけれども、今の状況をどう見ておられるのか。そして、これまで、一年半以上たちますけれども、厚生労働省としての取り組みに対してどういうふうに評価をしておられるのか、お聞きをしたいと思います。

三井国務大臣 加藤先生とは、厚生労働委員会でも御一緒させていただきました。

 私も被災地にこれまで何度か入ってまいりました。特に厚生労働分野で私もこれまで取り組んできたこともございますし、実際に各地域にもいろいろな差が出てきているということは、今御指摘のとおりだと思っております。

 まず、医療施設の復旧復興につきましては、これまでも、災害復旧補助金、被災三県で約三十八億五千万円によりまして復旧に向けた支援を行っているところでございます。また、被災三県に対しまして、被災地域の医療の復興支援を目的に、地域医療再生基金を積み増したところでもございます。被災三県で合計一千八十億円。

 この結果、被災地の医療機関の診療機能はおおむね回復しておると考えております。現在、医療従事者の確保や、あるいは原発周辺病院等の診療機能の回復が、今御指摘のとおり、大きな課題であると考えております。

 また、介護施設等につきましては、これまでも災害復旧補助金、被災三県では約四十三億円、復旧復興に向けました支援を行っております。この結果、施設の一部の損壊についてはおおむね復旧する一方、沿岸部の全半壊施設や、あるいは原発警戒区域内の施設の移転先用地の確保にも大変苦労しているところでありますけれども、介護従事者の確保などに課題があると考えております。

 いずれにしましても、今後、被災県、関係団体と連携をとりながら必要な支援を行ってまいりたい、このように考えております。

加藤(勝)委員 おおむねという表現がどこまでが適切なのかなという感じがいたしております。実際、被災地全体で見るとおっしゃるような数字に近いものがあるのかもしれませんが、市町村別で見るとそこまで進んでいない、全く医療として十分提供できていないというところもあるわけであります。

 それから、介護施設については、実際、全半壊した施設のうち、既に動いているのは多分二割から三割。見通しがつかないのも一割五分か二割弱ぐらいあると思いますから、やはりその辺、もともと施設に住んでおられて、一部亡くなられた方も残念ながらいらっしゃるかもしれませんけれども、そういうニーズが高いわけでありますから、そこをどうしていくのかというのを一つ一つ丁寧にやっていただかなきゃいけない。

 そういう意味で、もっと私どもは、地方もいろいろ御努力をいただく、しかし、国がもう少し前に出ていっていただいて、吸い上げるものは吸い上げる、場合によっては決めるものは決めていくということが必要ではないか。この問題だけではありませんけれども、こういうふうに認識をしております。

 そういう中で、医療、介護に加えて、もう一つ、やはり生活をしていくために、場所と同様に、雇用というのが非常に大事であります。広域延長給付を九十日さらに延長されている等々ありましたけれども、それが今切れてきているわけであります。求職活動中のまま切れた方が、多分三分の二ぐらいおられたというふうに認識をしております。

 それから、一方で、事業復興型雇用創出事業等いろいろな施策をしておりますけれども、これも、最近になって少し支給決定ないし支給申請数がふえてきているという傾向はありますけれども、まだまだ十分ではない、こういうふうに私は認識をしております。

 今、被災地の雇用状況、そしてそれに対してどういう取り組みをしていかなきゃいけないと考えておられるのか、簡単にお示しいただきたいと思います。

三井国務大臣 これまでも、被災地の産業と、また雇用の復興に取り組んでまいりました。しかしながら、被災地の雇用情勢は、特に沿岸部中心にでございますけれども、依然として厳しい状況にあるというのが実情でございます。

 今後とも、農林水産業など被災地の強みを生かしまして雇用を創出してまいりたい、また、ハローワークできめ細かな就職支援を行うなど、「日本はひとつ」しごとプロジェクトの取り組みを政府一体となって進めてまいりたい、このように考えております。

加藤(勝)委員 いずれにしても、今の施策、そして、今、二十五年度要求もされているわけでありますけれども、実態をよく踏まえながら対応していただきたいということを申し上げておきたいと思います。

 次に、社会保障・税の一体改革大綱に関連いたしまして、まず高齢者医療制度について。

 先ほど松本委員からの御質問でも、七十歳以上七十五歳未満の方の患者負担の議論が若干ありましたけれども、当初、大臣の発言が変わったという形でマスコミにとられました。最初には、現状の一割負担を簡単に言えば継続するというようなニュアンスが、先ほどのお話のように、慎重な議論と世代間の公平という、ニュートラルなと言うべきかもしれませんが、そういう話に変わっているんですが、それは変わられたんですか。

三井国務大臣 私もその後またいろいろ検証して、中身を見ますと、世代間の公平ということでありますと、慎重な意見もある一方で、先ほども御答弁申し上げましたけれども、相応の負担をしていただくという御意見もございます。こういうことを判断しますと、やはり、二十五年度予算の過程の中で検討してまいりたいと思っております。

 また、先ほど先生から御質問ございました、七十歳から七十四歳までの患者負担は、法律上二割とされておりますけれども、平成二十年度の後期高齢者医療制度の創設以降、高齢者に混乱や不安を生じないように、毎年度約二千億の予算措置により、一割に凍結しているところでもございます。

 いずれにしましても、二十五年度の予算編成を踏まえて検討してまいりたいと思っております。

加藤(勝)委員 ちょっと確認をしたいんですが、二十五年度をどうするかということを検討されるのか。場合によっては、そこで引き上げればそのまま上げたということになるのかもしれませんが、制度として一応確定するようなことを今御検討されているのか、二十五年度をどうするかということを検討されているのか、どちらですか。

三井国務大臣 いずれにしましても、財源の問題等もございますので、二十五年度の予算を踏まえながら検討していきたいというぐあいに思っております。

加藤(勝)委員 その踏まえる二十五年度予算はまだ決まっていないので、まずは二十五年度について議論していく、こういうふうに受けとめさせていただきたいと思います。

 その上で、高齢者医療制度の見直しについても社会保障制度改革国民会議との議論ということにもなりますが、大臣として、高齢者医療制度、特に後期高齢者医療制度部分について、どういうふうに考えておられるのか。もうそこへ全くお任せということなのか、大臣として一つの考えがあれば、それをお示しいただきたいと思います。

三井国務大臣 これまでも、後期高齢者医療制度につきましては、平成二十年四月の制度施行以来、七十五歳以上に着目いたしました診療報酬の廃止、また運用面での改善できる部分につきましては、可能な限り対応してきたと思っております。

 私は、やはり、これまでの確認書を含めて三党合意という中で、そのもとで、社会保障制度改革推進法に沿った中で、国民会議で十分検討していただきたい、こういうぐあいに考えております。

 いずれにしましても、さまざまな問題がございますけれども、あるべき姿については議論していく必要があると考えておりますので、できるだけ早く国民会議を立ち上げていただければ、こういうぐあいに思うのでございます。

加藤(勝)委員 いや、なぜそう伺ったかというと、社会保障制度改革推進法の書き方が、医療保険制度について第六条で書いてあるんですけれども、第六条の第四項に「今後の高齢者医療制度については、状況等を踏まえ、必要に応じて、」と書いてあるんですね。

 そうすると、これは必要を誰がどこで判断するかというのは、三党協議なのかもしれませんが、大臣としては、議論することが必要だ、こういうふうにお考えのように今の答弁から聞いて思ったんですが、そうすると、それは何でそう判断されているんですか。何で検討することが必要だというふうに判断されているんですか。

櫻井副大臣 ちょっと実務的なことなので、私の方から御答弁させていただきたいと思います。

 後期高齢者の医療制度と一口に言っても、よかった改革もあったし悪かった改革もあったんだというふうに我々は認識しております。特に一番問題であったのは、七十五歳以上の方々について医療の質で差別をしたことであって、この点については長妻大臣のときに改革をさせていただきました。

 一方で、保険財政上のことで申し上げれば、基礎自治体の財政状況を考えると、地方間のばらつきというのは非常に大きくて、これを県単位にまとめていくという方向性については、これは私はよかったことなんだろうと思っております。

 こういったこと全体がまだ混在しておって、十分な議論がなされていないというふうに認識していて、そういう意味で、今後のあり方についてさらなる議論を進めていく必要性があるのではないかというふうに認識しております。

加藤(勝)委員 技術的なではなくて、政策判断の問題だと思います。

 要するに、かなり定着している。今の、質、高齢者を差別するということで入れたわけではありませんけれども、そういうふうに受けとめられた部分は確かにあったというのは私も思いますけれども、いずれにしてもかなり定着をしている。定着をしているものを改めて大きく見直すということで社会保障制度改革会議にかけようということに、本当にそういう状況にあるのかないのかというのは一つの判断だと思うんですね。

 そこをお伺いしたいと思ったんですが、大臣、いかがですか。

三井国務大臣 これまでも、いろいろな方の御意見を賜っております。

 いずれにしましても、御意見がいろいろある中で、さまざまなことをお聞きしながらこれからの検討をしてまいりたい、こういうぐあいに考えているところでございます。

加藤(勝)委員 そこはひとつ整理をしていただきたいというふうに思います。

 生活保護についてお伺いしたいと思います。

 この辺についても、医療に関する自己負担について、大臣の御発言が、これは何か会見の最中に変わったという話でありますから、どこまでがあれかわかりませんが、それはちょっと今聞くつもりはございません。

 むしろ、生活保護の見直しについて、先ほどの説明の中で、今、御省の中で、有識者会議ですかの中で議論しながら、まさに検証している、実態を把握している、こういう説明だったと思いますけれども、そういう認識でよろしいですか。

梅村大臣政務官 先ほどの御質問は、生活扶助の基準についての質問でありましたので、データを集めた上で検証している最中だということであります。

加藤(勝)委員 一方で、最近の新聞、十一月六日ですか、行政刷新会議で新仕分けをやるという中に生活保護が入っている、こういう話が入っています。

 しかし、これは当然、今の生活扶助も含めた議論だと思うんですが、検証されていないものを何で仕分けで議論できるのかなというのを私は思ったんです。これに対して、大臣、これは岡田副総理がそんなお話をされたということですが、大臣は副総理にこれに関して何かお話をされていますか。

三井国務大臣 仕分けの詳細につきましては、私もまだ聞いておりませんので、いずれにしましても、これからの必要な就労自立支援や、あるいは不正受給対策等に必要な見直しを行ってまいりたいと思っておりますので、仕分けの詳細につきましては私も聞いておりませんということだけ申し上げておきたいと思っております。

加藤(勝)委員 聞いていない。

 新聞には、政府は対象とする方針を決めた、こういう書き方をしておりますが、聞いている聞いていないという前段階として、政府として決めていないということなんですか、それとも、決めているかもしれないけれども大臣は聞いていないということなんですか。

三井国務大臣 仕分けの対象につきましては、行政刷新会議の事務局からもまだ公表されていないということでございますので、私ども、そこでは、まさに今御答弁申し上げましたように、詳細については聞いていないということであります。

加藤(勝)委員 ただ、通常、こういう話があれば何らかの動きがある。それは大臣が副総理におっしゃるレベルなのか、副大臣、政務官がいらっしゃいますから、そういうレベルなのか、わかりませんけれども。

 どう考えても、まだ検証している最中のものを仕分けするというのは、なかなかやれるものではないと思いますけれども、私は、そういう話を当然刷新会議の事務局に対して、事務局を介してか、政務官レベルか、副大臣か、わかりませんが、すべきだと思いますけれども、いかがですか。

三井国務大臣 まさに御指摘のとおりだと思いますので、私も、これからまたしっかりと、政府内でまたこのことをしっかり確認しながら取り組んでいきたい、こういうぐあいに思っております。

加藤(勝)委員 またぜひその状況を教えていただきたいと思います。

 それでは、あと、新しい年金制度の創設というのが従前からあったわけでありますけれども、最低保障年金、所得比例年金。大臣の御挨拶、所信の中には一切そういう話がありませんでしたけれども、これはやはりもうやめておこう、こういうことでありますか。

三井国務大臣 いずれにしましても、所信のときに申し上げませんでしたけれども、この制度については、またいろいろ意見もございますので、それを踏まえながら、これからまた検討してまいりたいと思っております。

加藤(勝)委員 これから検討というのは、意味がちょっとよくわからないんですけれども。

 それなりに民主党の中で議論されているし、たしか新しく何か計算し直したものもあったように聞いておるんですけれども、そうではなくて、また別途何か検討されていく、そういう意味なんですか、今のお話は。

三井国務大臣 所得比例年金、また最低保障年金も含めた新しい制度につきましては、社会保障制度改革推進法、社会保障制度国民会議で検討することとされております。また、ことしの六月でございますけれども、民主、自民、公明党によります三党合意で、あらかじめその内容につきましては三党間で協議するということになっておりますので、厚生労働省としても、その方針に沿って対応していきたいと思っております。

加藤(勝)委員 何となく、厚生労働省の主体性がだんだんなくなって、三党協議とか社会保障国民会議という話になっているような感じがいたしますけれども。

 年金という関係で申し上げますと、今、厚生年金基金の議論がいろいろ出てきております。

 私の記憶では、この基金を十年後に廃止する、こういうお話でありますけれども、有識者会議の報告ではたしか両論併記で書いてあった。いろいろな状況を考慮すればやはりここで廃止をする必要がある、一方で、しっかり運用しているところもあるし、あるいは、特に中小企業を中心とした企業年金というものから考えると継続ということも必要ではないか、たしかこういう両論併記だったと思います。

 これが、あるとき突然として十年後廃止という話になって、今その流れになっているんですけれども、これはなぜ両論併記ある中で廃止ということをお決めに、あるいは前体制かもしれませんが、それを今継承して、先般、有識者会議に、試案ではそう出されているわけですから、大臣も追認されていると思いますけれども、それはどういう御判断でそういうことになったんですか。

糸川大臣政務官 委員にお答えいたします。

 七月の有識者会議の報告以降、代行制度の今後のあり方について、基金の財政状況に関するデータ、こういう分析を行いながら、その結果を踏まえて、代行制度の将来的な持続可能性は低いと判断したところでございます。

 厚生年金基金というのは、かつて企業年金の中核でございましたけれども、現在、約半数がいわゆる代行割れという状況になっておりまして、財政悪化が深刻化しております。それで、制度廃止までに十年間という移行期間を設けるとともに、中小企業の企業年金というものを維持するために、今後、他の企業年金制度への移行支援、こういうものも行っていこうというところでございます。

加藤(勝)委員 制度そのものが、時代、これまでの、当初設定した以降、低成長に入ったり低金利に入ったり、あるいはリーマン・ショックとかいろいろなことがあったりというのは確かにあると思います。しかし、その中できちんと運用しているところもあるんですね。

 問題なのは、やはり、基準があって、ここからこっちへ来たらだめだよ、ここへ来たら、イエローカード、レッドカードじゃありませんけれども、というところがしっかりできていなかったというところに私はむしろ問題があって、そこをきちっとする中で、それでも今おっしゃるように全ての基金が持続可能性はないとおっしゃるのなら、そうだと思います。

 しかし、きちんと運用してきているところに関しては、それなりなパフォーマンスを出している、あるいは、年金本体よりもいいパフォーマンスを出しているところもあるはずなので、にもかかわらず、何でばさっと切ってしまうのか。運用をしっかり、あるいは厚労省、あるいは金融庁なのかもしれませんけれども、しっかりとしたそういう指導等をしていれば、私はそれで対応できたんじゃないか、そういう道もあるのではないか。にもかかわらず、ばさっと切るというのは、ちょっと尚早なのではないのかな。

 むしろ、今問題があるところをどうしていくのかということをそれ以前にきちっとやるべきだということを私は申し上げておきたいと思います。

 それからあと、医療イノベーションについて、一つお話をさせていただきたいと思います。

 医療イノベーション、この間の新聞には、経産省、文科省、厚労省の足並み乱れる、こういう書き方でありましたけれども、内閣府の中で、それは調整をしながら進んでいただいていると思います。

 ただ、私は、大臣の挨拶の中で、ちょっと私のイメージと違うなと思っているのを申し上げておきたいと思います。

 「再生医療の実用化に向けて、安全面、倫理面に配慮しつつ、重点的に取り組む」、これはぜひそうしていただきたい。しかし、それが、医療イノベーションを推進し、その目的の中に、健康長寿社会の実現、これはもちろんそのとおりなんですが、経済成長への貢献というのが、パラで、同列で厚生労働大臣のお話の中に入っているというのは、私はいかがなものなのかなと。

 経済産業省的な視点から見れば、そういうものが強くにじみ出てくる、それはあるのかもしれませんけれども、私はやはり、大臣の視点から見れば、経済成長に資するか資さないかというのは結果の話であって、余り目的に厚生労働大臣として入れるべきではない。

 むしろ、患者さんの利益というものをどう最大限化していくのか。あるいは、医療機器も含めてより日本人に合ったものをどう提供し、そして少ない負担、肉体的な負担も含めてやっていけるのか。あるいは、再生医療等について言えば、一日でも早く、望んでいる方、あるいは創薬という形を通じて、そうした治療を望んでいる方に、そういうサービスというんでしょうか、それが早くいくのか、迅速にいくのか。そういう視点で私はお話をしていただかないと、余り厚労大臣が医療の分野について経済成長云々と言われると、私は要らぬ誤解を招くんじゃないかと思いますけれども、その点どう思われますか。

櫻井副大臣 その点についてはおっしゃるとおりだと思っておりますが、一方で、これまで余りに規制が強過ぎることによって、そういったイノベーションが進んでこなかったのではないのかという指摘も受けております。

 ですから、規制官庁として一つのことをやっていくことはそのとおりです。だけれども、一方で、ではそれは、経済的に進めていくところについては経産省がやり、それから基礎研究は文部科学省がやっていくという縦割りのままでいいのかどうかというところもまたこれはあるんだと思っていて、三つの省庁が、関連する省庁が同じ方向を向いてやっていくという点については、これは必要なことであって、そういう意味合いで、私もこの経済成長に資するんだという点については発言させていただける。

 つまりそれは、繰り返しになりますけれども、政府全体としてそういう方向を向いてやっていこうということになっているわけですから、厚生省は厚生省としての役割があるかもしれませんが、これは政府全体の意向を踏んだ上での発言だというふうに御理解いただければと思います。

加藤(勝)委員 申しわけないけれども、これはといっても、大臣の挨拶についてお聞きしているので、副大臣のお話は聞いていないんです。

 私が申し上げているのは、それぞれ大臣が所管、所管があって視点が違う、それがトータルとして政府として一つの姿が出てくるのは、私はそれはそれだと思います。ですから、総理大臣がこう発言する、あるいは全体をまとめる立場の、まあ、副総理かわかりませんが、おっしゃる。しかし、厚生労働大臣としてのこれは御挨拶でありますから、やはり余り経済成長云々ということではなくて、むしろ、国民あるいは患者さんに一日も早く、ここに後でも書いてありますけれども、こういうことをきちんと御主張されていくべきだと私は思いますが、御挨拶をされた大臣の御所見を伺いたいと思います。

三井国務大臣 まさに御指摘のとおりでございまして、このiPSについては、もう先生も御存じのとおり、再生医療、そして難病の解決あるいは創薬という大変画期的なものだと思っておりますし、確かに今御指摘のとおり、私も所管とすれば今の三点にしっかりと取り組んでいきたい、こういうぐあいに思っております。

加藤(勝)委員 いや、そうじゃなくて、どういうところに重きを持っていかれるんですか、特に経済成長云々というところは、私は副次的に位置するべきじゃないですかと申し上げているのですが、そこはどうなんですか。

三井国務大臣 私も、所信で申し上げましたように、安全面また倫理面の課題について留意しながら、一刻も早く実用化を進めるということが必要と考えております。また、内閣の医療イノベーション推進室を中心に適切に分担して実施することとしていきたい、こういうぐあいに思っております。

 厚生労働省としては、あくまでも安全面、倫理面に留意しながら取り組んでいきたい、こういうぐあいに考えております。

加藤(勝)委員 私も、再生医療あるいは医薬あるいは医療機器、これは今申し上げた観点から進めるべきだと思いますし、そういう意味において、今の法律あるいは審査の対応というのは十分かどうかというのは疑問は持っているわけでありますけれども、ただ、それを進めるときに、国民の方々に理解をいただくという意味からも、やはり国民の安全をつかさどる厚生労働大臣としてはそこに重きを置いた発言をぜひしていただきたい、こういう趣旨でございます。

 以上で終わります。ありがとうございました。

長妻委員長 次に、あべ俊子さん。

あべ委員 自由民主党、あべ俊子でございます。

 三井大臣にお伺いいたします。

 今、同じ時間に文部科学委員会が行われておりますが、田中眞紀子大臣の御発言に関しまして、特に大学の設置認可に関して議論が進められているところでございます。

 三井大臣にお伺いいたします。大臣のお地元に札幌保健医療大学というのがございましたが、今回の田中眞紀子文部科学大臣の大学の設置認可に関して、個人的にで結構でございますから、どういう御感想をお持ちか、聞かせてください。

三井国務大臣 私の地元ではありますが、ただ、申し上げたいことは、やはり所管外でございますので、文部科学大臣の所管として、私からは答弁を控えさせていただきたいと思います。

 ただ、保健医療を所管する厚生大臣といたしましては、看護職員の確保のためのさまざまな対策にしっかりと取り組んでいきたい、こういうぐあいに考えております。

あべ委員 文部科学大臣の発言に関して厚生労働大臣が発言できないということは理解をしております。

 お地元の事情で、特に医療者確保が本当に北海道民の安全、安心の確保に関して必須であるということ、さらには、厚生労働大臣としては、厚生労働省としてどれだけの人材が不足しているということは把握をしているところだと思っています。それが、大学の設置の認可に関して所管が違うから発言が全くできないという、立場上のことは理解するにいたしましても、国民にとってはそのような省庁の縦割りは関係ないわけでございます。

 きょうは政府参考人として文部科学省から来ていただいておりますから、私からの質問でございますが、今回、田中眞紀子文部科学大臣のこの大学の設置認可に関しての、いわゆる審議会答弁を翻して不認可とすることは、大臣の裁量を逸脱しているかどうかということをお答えください。

常盤政府参考人 今回、札幌保健医療大学を含む三大学につきまして設置認可の見送りということでございますが、このことにつきましては、特定の分野あるいは大学ということを問題としたものではございませんで、現在の設置認可のあり方を抜本的に見直す必要がある、そういうことから、今の設置認可の仕組みのもとで大学の新設を認めることはできないという考えを示したものでございます。

 今後、早急に大学設置認可のあり方について見直しを行いまして、見直し後の新たな基準に照らして、当該大学の認可の可否について判断することとなるということでございます。

あべ委員 このことに関しては、認可の見直し、あり方の検討ということで、これもずっと行われていたことでございますが、大臣の考え一つで行政の継続性がこのように大きく変わるということはいかがなものかと私は思っております。大臣が認可するにしても、その行政の継続性の部分が、このように政権がかわったから、また大臣がころころかわったからといって、その対応を政府が強いられるということに関しては、私はもう少し見直しが必要なのではないかと思っているところでございます。

 いずれにいたしましても、今、文部科学委員会の方で、大臣の発言に関してどういう形で行っていくのかということは議論されていくことでございますので、これはここまでにしたいというふうに思います。

 さて、三井大臣にまた改めてお伺いいたしますが、なかなか発言撤回が多いようでございます。特に、大臣、医療法人の理事長をしていらしたそうでございまして、医療に関してお詳し過ぎるがゆえに変な発言が多いのかもしれないと思っているところでございますが、やはり、私は、大臣になられたばかりのときにぶら下がりの発言をするのは控えた方がいいのではないかと思いますが、大臣、このことに関していかがでしょうか。

三井国務大臣 私は、確かに医療法人の理事長をしておりました。このことについては、ぶら下がりで話した覚えはございません。

 ただ、私も、所管の大臣という拝命を受けましたので、当然、医療法人の理事長という立場、役職というのは十分私も理解しておりますので、十月一日に拝命して以来、すぐ、直ちに辞表を出させていただいたところでございます。

 ただ、軽率な発言があったとすれば、本当に御迷惑をおかけしたなということはおわび申し上げたいと思っております。

あべ委員 この医療法人の理事長の辞任に関しても、速やかに理事長を辞任していると説明した後で、無報酬で理事長は続けていたのではないかということに対して、勘違いをしていたというハプニングもございましたが、これは東京新聞に出ておりましたが、このことは、大臣、いかがなんでしょうか。

三井国務大臣 理事長の役職につきましては都道府県の知事が決めることでもありますので、私は、ただ、国土交通副大臣をしていたときには、いろいろ都道府県にもお聞きしました。そのときには、無報酬であれば理事長という役職はそのままでいいということも聞いておりましたので、そこが私は勘違いしていたということを実は申し上げたのであります。

あべ委員 私ども自民党が与党であったときには、少なくとも、医療法人の理事長をされていた方がその利益の相反するところの、また、いろいろ利害関係が絡むところの大臣になるということはかなり自粛をしていたのではないかと思うのですが、私は、ここのところはちょっと現与党のあり方がなかなか理解できないなというふうに思うところでもあります。

 そうした中、もう一つ、発言が二転三転している、また、多分、今お聞きしてもはっきりしたお答えがいただけるかどうかわかりませんが、七十歳から七十四歳の医療費の自己負担でございます。これは二割負担ということで制度上なっているわけでございますが、予算措置で一割負担にされるかどうかということの発言に関して、大臣、お答えください。

三井国務大臣 先ほど加藤委員の御質問にもお答えさせていただきました。

 まさに、この制度につきましては、いろいろな御意見がございます。特に、反対側の意見もございますし、また、世代間の公平という観点からいえば、見直しに慎重な意見もございます、また、高齢者であっても相応の負担をすべきでないかという視点も重要であると考えておりましたので、私は、これはいずれにしても二十五年度の予算編成の過程で検討してまいりたい、そういうふうに思っております。

あべ委員 予算編成の中でということでございますが、平成二十五年度以降、七十歳代の前半の患者負担に関しては検討が決まっているところでございますが、大臣がおっしゃった潤いのある社会保障というのは、高齢者にとっても若い世代にとっても潤いがないといけないと思うわけでございます。

 二割負担にした場合と、一割負担を予算措置でした場合、これは若い世代にとって潤いがあると思いますか、いかがですか。

三井国務大臣 私は、潤いということで申し上げれば、やはり、若い世代も、今先生がおっしゃったように高齢者でも障害者でも、皆さんが本当に、冒頭にも私申し上げましたけれども、ぎすぎすした今の社会構成の中で、社会保障というのはもっとそういう意味で、ゆとりのあるといいましょうか、そういうことで申し上げましたので、今まさに世代間の公平の観点ということ、一割負担、二割負担のお話がございましたけれども、いずれにしましても、両方の意見がありますので、これはしっかりまたお聞きしながら、そして予算過程の中で検討してまいりたいというぐあいに思っております。

あべ委員 両論あるので検討したいということで、大臣になられてから一カ月近くなるわけでございますが、どれだけあと検討期間が必要なのかわかりませんが、結論はいつ出ますか、大臣。

三井国務大臣 十二月の、年末までに出させていただきたいと思っております。

あべ委員 そうすると、七十歳から七十四歳の医療費の自己負担を、二割にするか一割にするか、一割は予算措置でするかということの二択だけではないはずだと思っております。

 第三の選択ということを大臣はお考えか。その第三の選択というのはどういうものになるか。大臣、何かお考えがありましたらお聞かせください。

三井国務大臣 いずれにしましても、予算過程の中で検討してまいりたいと思っておりますし、新しい選択というよりも、今の一割、二割の中で、予算編成の中で検討してまいりたい。

 いずれにしても、十二月に結論を出させていただきたいと思っております。

あべ委員 そうしますと、一割か二割という選択以外に、私は、一割と二割を同時に行いながら、新たに七十歳になる方からの段階的引き上げ案というのがあると思うんですが、その選択は、大臣、あると思われますか。

三井国務大臣 委員のおっしゃるとおりでございまして、そういうことも含めまして総合的に判断していきたい、こういうぐあいに思っております。

あべ委員 大臣、平成二十年の後期高齢者医療制度の実施に当たって激変緩和として、制度上は自公で残していたもの、二割と残していたんですが、それを予算措置で一割でやったということでございますが、これは、一割にするために年間予算はどれぐらいかかっているか、御存じですか。

三井国務大臣 これまで、法律上では七十歳から七十四歳までの患者負担は二割とされてまいりましたが、平成二十年度の後期高齢者医療制度創設以降、高齢者に混乱や不安を生じないように、毎年二千億円の予算措置によって一割を凍結してまいりました。

あべ委員 そうしますと、この二千億、予算措置をするかしないか、また段階的に引き上げをしていくということも考え方に入れていくことによって、次の、来年度の予算が幾ら組まれるかによって、すなわち一割負担のまま全員おいておくのか、それとも二割負担と一割負担と段階的に行っていくのか、幾つかの選択があるわけだと思います。

 特に後期高齢者医療制度のときに、やはり失敗、ちょっと足りなかったなという、政府の考え方が未熟であった部分の一つに、二割負担にしたときと一割負担にしたときの家庭の負担の影響ということの詳細なシミュレーションが私は必要なのではないかと思っているわけでありますが、これは、現段階で、大臣、あと一カ月少ししかない中の予算措置をするに当たって、既にシミュレーションを始めているかどうか、教えてください。

三井国務大臣 予算措置については今行っているところでございますので、詳細につきましては保険局長より御答弁させていただきたいと思います。

木倉政府参考人 御説明申し上げます。

 今の、法律上二割負担であるところを、毎年の予算におきまして一割に抑制をしておるということにつきまして、これを戻した場合におきます各制度の影響、あるいは高齢者の方々がどういうふうな影響をこうむるか、これは、今、きょうもちょうどやっていますが、社会保障審議会の中の医療保険部会でも、高齢者の代表の方々、各保険者の代表の方々も入って、この御議論もお願いをしたいということでやっております。

 これを、年末までの間、それぞれの御意見を聞きながら把握をしてまいりたいというふうに思っております。

あべ委員 この影響に関して、今やっている、木倉保険局長がおっしゃったことの結論はいつ出ますか。

木倉政府参考人 これも、予算編成過程での検討のために、関係者の方々の御意見を伺って政策を決定していくということでございますので、十一月の、予算編成の時期に間に合うようなことで御意見をいただきたいというふうに思っております。

あべ委員 その間に合う時期というのは、もう少し具体的にはっきりおっしゃっていただけますか、局長。

木倉政府参考人 これまでの予算編成の手順でございますと、十二月の上、中旬までには考え方をやはりいただいておかないと、それを踏まえての予算の具体的な金額の設定に至らないというふうに思っております。

あべ委員 今回の議論をするに当たって、七十代前半の方々の医療費を二割にするか一割にするかという議論の中で、高齢者の、実際に一割になるか二割になるかという対象者の方も入っているんだと理解しておりますが、逆に、このことによって若い世代がどういう影響を受けるかという観点から、若い世代はその話し合いの中に入っているかどうかを教えてください。

木倉政府参考人 これは、高齢者の代表の方は、老人クラブの代表の方も入っていらっしゃいます。それから、若い世代の方としては、これは各保険制度、若人の方から前期高齢者も後期高齢者も支援をいただいておりますで、そういう保険者の組織の方々に入っていただいておりますので、その方々が組合の方々の意見を述べていただけるというふうに認識しております。

あべ委員 そうしますと、この高齢者の、予算措置で二割という制度から一割にしていくということに対して、次世代に関してどのように影響があるかということのシミュレーションは既に出されていますか、いませんか。

木倉政府参考人 これ自体は、自己負担をいただく部分、七十代前半の二割負担の部分を一割負担、公費で埋めるということでございますので、直接的にそれが直ちに数字にはね返るものではないというふうに思っておりますけれども、それに対しますやはり公平感、三割を負担されている若い世代から支援をいただいて医療費を賄っております、そういう世代との公平感、そういうものの中での御議論をいただきたいというふうに思っております。

あべ委員 議論をするのに、数字がなければ議論はできません。社会保障は、保険料と自己負担と、さらには税金で払われているわけであります。今、補正でもって二割負担を一割にするということは、税を入れることになるわけでありますから、保険料と、自己負担、これを一割にしたということによって保険料に大きな影響が出る、さらには税制上大きな影響が出るという数字を出さずに議論するというのは難しいんじゃないでしょうか、局長。

 大臣、いかがですか。

木倉政府参考人 恐れ入ります、言葉足らずだったかもしれませんが、その部分だけは自己負担を税で埋めていただくのは確かでございますけれども、それが直接的に若人の各保険組合等からの支援の方にはね返るものではないということで申し上げたわけでございまして、その部分は二千億という税で埋めていただくのは確かでありますから、この税の財源をどう負担をいただけるのかということはしっかり御議論いただきたいというふうに思っております。

あべ委員 直接的に影響がないからといって数字を出さないということは、私はあってはならない。間接であっても、やはり次世代がその負担を保険料もしくは税として出していかないといけないのであれば、それは数字を出さなければ、潤いのある社会保障になるに非常に足らぬ審議になるわけでないですか。

 三井大臣、お聞きします。

 潤いのある社会保障をするには、この二割という制度を残したにもかかわらず一割自己負担ということを補正で行っていることに関して、継続するのであれば、若い世代にしっかりと説明ができなければいけないと私は思いますが、いかがでしょうか。

三井国務大臣 いずれにしましても、さまざまな意見をお聞きしながら、それで私どもしっかり検討してまいりたいと思っております。

 今先生の御指摘のとおり、潤いのあるという中には、まさに先生のおっしゃることも十分理解できますので、私は、いずれにしましても、これから厚生労働省といたしましては、再度申し上げますけれども、さまざまな意見を含めまして検討してまいりたい、こういうふうに思っております。

あべ委員 いろいろ失言が多くて前言撤回が多かったので、非常に慎重な答弁を大臣がされているのはわかりますが、余り慎重過ぎて何も進まないというのでは非常に困りますし、ぜひともそこは御尽力いただき、若い世代が特に無視されてきたと私は思っておりますので、潤いのある社会保障というには、そこのところをもっと前面に出していただきたい。

 また、最後になりますが、iPS細胞の再生医療に関してでございます。

 ここのところは、薬事法、大臣よく御存じだと思いますが、ここの部分が大きく問題になっておりまして、薬事法改正でいくか、別法案でいくかということで、党内でも議論しております。

 先週金曜日にも、山中教授が自民党の方にいらっしゃいまして、このままではいけないとさまざまなところから意見を出していただいたところでございますが、やはりこの薬事法というのが、日本人の、国民のための安全、安心を確保するという観点と、経済成長戦略における医療のあり方ということと、さらには保険対象で支払うということを考える、さらには、事故があったときにそれが国賠となってはね返ってくるなどと、さまざまな事情が相まって出てきたところでございますので、私、一点だけお聞きしたいと思いますが、薬事法の改正なのか、それとも別法案で対応されるのか、ここだけお聞かせください。

三井国務大臣 現在、市販されている二つの再生医療製品がございます。これはどちらも薬事法上の医療機器として承認を受けているものでございますけれども、先生も御存じだと思いますけれども、ジェイス、自家培養表皮、ジャック、自家培養軟骨、この二品目が承認を受けているところでございます。

 いずれにしましても、再生医療製品は患者由来の生きた細胞を加工して製造されておりますので、患者の個人差、あるいは、同じ製品の製造のプロセスであってもでき上がりは異なるということもございます。品質の不均一性やあるいは感染リスクといった、品質管理等の上で配慮すべき特性を有しております。

 こうした特性を踏まえまして規制のあり方を見直すことが必要と考えておりますので、安全性の確保、早期に承認できる制度や市販後の安全対策につきましては検討を進めてまいりたいと思っております。

 いずれにしましても、薬事法を含めて検討してまいりたい、こういうぐあいに思っております。

あべ委員 ありがとうございました。

 時間になりましたので、終わります。

長妻委員長 次に、石井章君。

石井(章)委員 国民の生活が第一、石井章でございます。

 まず冒頭に、三井大臣、御就任おめでとうございます。今、野党第一党の自民党さんの御質問がありまして、私も民主党時代から、三井先生には物流その他全般にわたりまして、トラック協会の自民党時代になし得なかった交付金の法制化、あるいは中型免許制度の改正等々の目鼻をつけていただきまして、心からまず敬意を表する次第でございます。

 また、副大臣の櫻井先生にも、宮城県の震災の後のトラック協会等々に関しましても一緒に復興に当たったことに対しまして、心から敬意を表して、私の質問を始めたいと思います。

 まず、きょうの質問の内容につきましては、実は、先ほどトラックの話をしましたが、トラックの法制化に際しましても、全国のトラック協会、二巡、三巡回りまして、実態として何が必要か、どういったドライバーの皆さんが必要と感じているかを法制化に持っていったということでありますが、実はその後また、私のライフワークでもあります、地元の介護施設や、全国の介護の経営者あるいは介護の従事者等々とお会いするのが今の私のライフワークになっております。きょうはそういった方々の代弁ということでお聞きいただいて、まず礼節を持った質問の内容に終始させていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

 まず、民主党の中で、高齢者福祉・介護施設を考える議員連盟というのを私が民主党在籍時代に提案しまして、それを設立しました。そして、事務局長としていろいろな方々からお話を聞く機会があったんですが、その中で、まず介護職員の処遇改善についての分野で御質問したいと思います。

 社会保障・税一体改革に関連して、介護従事者の確保について、まずお伺いをしたいと思います。

 社会保障に係る給付費等の将来推計では、二〇一一年度で百四十万人の介護職員が、二〇二五年度には二百四十四万人が必要とされております。つまり、あと十年余りで新たに百万人の介護職をふやさなければならないということであります。

 しかしながら、現在の介護に関する労働力の確保は大変厳しく、介護職養成学校は定員割れによる休校がふえ、介護福祉士という国家資格を取得したにもかかわらず、介護の仕事にはつかない若者がたくさんいるというような状況でございます。

 このような大きな要因は、申し上げるまでもなく、介護の現場の給与の低さであります。厚生労働省の平成二十三年の賃金構造基本統計調査によりますと、三十歳から三十五歳の男性の福祉施設介護職員の年収が三百二十六万円。これは、産業全体の同年齢の階級からしますと、高卒の男子で約四百二十三万円、大卒の男子で約四百九十三万円ということでありますから、それらに比べると極めて低い水準であります。これでは将来に希望が持てるわけがありません。

 このような状況下で、介護従事者のいわゆる増強、職員をふやす策は、先ほどから何人かの先生方からも御質問がありましたけれども、この現状についての認識と、今後どのようにこの増強を図っていくか、まず大臣からお伺いしたいと思います。

櫻井副大臣 石井先生には、本当にさまざまな点で御指導、それからいろいろお世話になりましたことは、こちらからも改めて御礼申し上げたい、そう思います。

 今先生から御指摘がありましたが、ここは本当に大きな問題だと思っておりまして、この点について変えていかないと離職者をとめるということはなかなか難しいか、そう思っております。

 それからもう一つ、田舎の場合で大変恐縮ですが、今までは、農業に従事する、そして、それから公共事業に移ってきた。しかし、公共事業も削減されてくる中で超高齢社会を迎えるとすると、介護はやはり一番大事な職業になってくるんだろうと思っています。そうすると、一生の職としてどのぐらいの所得を得なきゃいけないのかという、その基本的な計画がなければ、なかなかその職にずっとついてくださいということをお願いできる環境にはないんだろうと思っております。

 ただ一方で、この処遇を改善するために保険料を上げられるのか、それから税を投入できるのかというと、ここもなかなか難しい問題がありまして、今何点か私の方から指示を出していることがありますが、一つは、社会福祉法人に対しての寄附の優遇税制がありますから、例えばこういったもので、何らかの形で民間マネーを集めることができないだろうか。それから、今、社会福祉法人の中では物販ができないことになっておりますが、例えばそういうことを行って利益を出すようなことは果たしてできないのかどうか。

 これは、済みませんが、例えばの例で申し上げておりますけれども、さまざまなことを考えて、その収入をふやして、そして所得の改善を図っていかなければいけない、そう思っておりまして、問題意識は先生と共有させていただいているところでございます。

石井(章)委員 ありがとうございました。

 細かい内容についてはまた御質問しますが、次に移ります。

 厚生労働省は、二〇〇九年度の補正予算で、介護職員の処遇向上を図る介護事業者に対しまして交付金を支給する、いわゆる介護職員の処遇改善交付金を創設いたしました。これは、当時から深刻な課題であった低賃金や過重労働などを理由にした人材不足に歯どめをかけるために、当時の政府は、介護職員の給与を月額二万円ふやすとしていましたが、なかなか給与の増額につながっていかないというために、それまでの施策とは別に、別建てで約四千億円を全て国庫負担として実施してきたわけでございます。

 そして、予算計上は二・五年分であったために、二〇一一年度末には交付金の支給が終わり、二〇一二年度の介護報酬改定で待遇が下がることのないように待遇を考えていく、当時の多分細川大臣のときにそういったことの方針が出まして、そのとおりになったわけでございますけれども、これには、当時の老健局長も対策の必要性を認める旨の発言をされております。

 そして、これが大事なんですね、そのさなかに民主党は、マニフェストにて、介護労働者の賃金を月額四万円引き上げるという、介護の従事者からすれば、あるいは介護の事業者からすれば、これは前政権時代と違う、江戸時代から明治にかわるぐらいのすばらしい政策であって、そういった方々のほとんどが民主党に一票を投じたやに聞いております。これは長妻委員長も関連していたマニフェストだと思うんですけれども。

 しかし、現実的に見ますと、今回の介護報酬の改定は、いわゆる処遇改善交付金は確かに必要だということでありましたけれども、介護報酬の中に組み込まれてしまいまして、加算として取れるようになっております。したがいまして、介護報酬改定の際には、当時の厚労省、厚労大臣等々の意見は、一・二%増になったと声高におっしゃっておりましたけれども、実質的にはマイナスでありまして、例えば、グループホーム等の生命線であります介護度の低い要介護一、二などは、四十から五十ポイントぐらい下げられている。特にツーユニットの方はかなり下げられているのが実態でございます。

 そのような中で、最低でもあと一万六千円ほどアップできなければ、これは、いろいろな政策で民主党もいいことをたくさんやっているんですが、やはり介護の分野でのマニフェストの一丁目一番地がこの処遇改善の内容でありまして、来年の任期満了までの間にぜひともこれを実現していただきたいという思いなんですが、その辺、大臣、どのようにお考えか、お伺いします。

三井国務大臣 石井先生には大変私もお世話になりました。

 介護職員の処遇改善についてでございますけれども、今先生の御指摘のとおり、これまでも、二十一年度の介護報酬改定と、また二十一年の十月から平成二十三年までの介護職員処遇改善交付金で対応してまいりました。今お話しのとおりでございます。

 こうした取り組みによりまして、介護職員の給与は月額二万四千円引き上げたわけでございますけれども、さらに、平成二十四年度の介護報酬改定では、交付金と同様の効果を見込む介護職員処遇改善加算、今もお話しいただいたとおりでございまして、これを創設いたしました。

 今後も、一体改革の中で必要な財源を確保してまいりたい、さらに処遇改善に取り組みたい、こういうぐあいに考えております。

石井(章)委員 ありがとうございます。

 お気持ちはよくわかるんですが、要するに、最終的には財務省の判断もあるものですから、その辺、大臣には頑張っていただきたい。

 特に、この処遇改善交付金の、前政権時代にもこれはすばらしい交付金だったとは思うんですけれども、たてつけが非常にまずい点がありまして、本来であれば、交付金を受ける側の事業者が、全ての事業者がこれを受ける権利があるわけですね、きちんと計画を出して、こういう事業をしますと。しかしながら、全事業者が決してそれを受けているわけじゃない。

 これはなぜかといいますと、同じ机を隣同士で並べているにもかかわらず、事務職の方は対象にならない、看護師さんはだめだ、いわゆるヘルパーさんだけが対象になった場合に、事業者によって、毎月加算を一万五千円とか六千円つけるところもあれば、ボーナスに上乗せするところもある。しかし、職員間同士で給料明細を見せ合うというのはなかなかないんですけれども、やはり事業所の中で格差が生じているために非常に事業者とすれば出しにくいという面もあります。

 その辺も、恐らくこの交付金等は今後も、引き続き行われておりますけれども、そのたてつけの悪さについて今後どのように対処していく考えがあるか、まずお伺いしたいと思います。

三井国務大臣 私も、実際に自分でこれまでも取り組んでまいりまして、この点は本当に矛盾を感じておりました。全職員に対して広げるべきでないかというのは、私も同じ考えでございました。

 しかしながら、今の現状を踏まえますと、介護職員につきましては、大変離職率が高い、そしてまた、なかなか募集しても人材が集まらないというのが現状でありまして、平成二十二年の介護従事者処遇状況の調査を見ますと、介護職員の賃金は約二十五万七千円となっている一方で、介護支援専門員の賃金は三十四万八千円と、大変差があるわけでございます。介護職員の賃金は、その他の介護関係職員と比較しても、申し上げたとおり相対的に低い状況であります。

 このことを踏まえて、まずは介護職員の処遇改善を図ることが最重要と考えておりますので、介護職員処遇改善加算の対象についても、介護職員に限定していきたいというぐあいに今は考えております。

石井(章)委員 ありがとうございます。

 それから、認知症の施策推進五カ年計画、いわゆるオレンジプランというものが、前政務官であります藤田厚生労働政務官の方から発表されました。これにおいては、グループホームは、平成二十九年度には二十五万人。社会保障と税の一体改革においては、平成三十七年には三十七万人の整備促進を図ることとされております。

 実際には、市町村の介護保険事業の収支の状況や市町村の諸事情により新設が認められなくなるなど、地域によって格差が散見されている状況でもあります。特に、集落とか、あるいは市と市の境のところにあるところとか、そういったところにおいては実際の生活圏にかなりの乖離があると見受けられます。

 あわせて、先ほど来議論されておりますとおり、介護従事者の雇用が非常に厳しくなっておる。特にグループホームに関しましても例外ではなく、さまざまな介護保険サービスにおいて、人員不足のために事業運営の縮小、撤退が余儀なくされているところもあります。

 重ねまして、これらについての対処策を大臣としてどのようにお考えになっているか、あるいは副大臣でも結構ですから、御答弁願います。

櫻井副大臣 これも本当に大事な問題だと思っております。

 今、施設から地域へと、在宅を目指してきておりまして、その拠点になってくるものがグループホームだというふうに認識しております。

 このグループホームの支援のために、二十一年度の補正予算で、介護基盤緊急整備等臨時特例基金によって今支援をさせていただいております。これは二十四年度まで一年延長いたしましたが、これをさらに延長できるかどうか、今検討させていただいているところでございます。

石井(章)委員 ありがとうございました。

 次の質問でその答弁をもらおうかと思ったんですが、これは当然、本来であれば二十一、二十二、二十三年度で終わるべきだったんですが、県によって使い切っていない基金があるということで一年延長になって、来年の三月いっぱいまで延ばしたということで、例えば、グループホームを整備するのに上限二千万円、小規模多機能型の地域密着型に対しても二千万円等々のいろいろな条件がありますが、そういったものがあって初めて整備が促進されている。

 いわゆる民間の事業者がやるのが多いものですから、そういった利点がなければ、社会福祉法人だけが補助金等々がついておるのが現状でありますので、今、櫻井副大臣がおっしゃったようなものも、来年度当初予算、あるいは補正でも何でも結構ですから、それらはぜひやっていただきたい、継続していただきたいという声が非常に全国でも多いということを申し添えておきたいと思います。

 次に、時間がないので最後にしたいと思いますが、イコールフッティング、いわゆる社会福祉法人と民間企業の格差の問題なんでございます。

 申し上げるまでもなく、社会福祉法人は、不動産貸付業や医療保健業、収益事業等の課税の範囲から除外されております、先ほど副大臣がおっしゃったとおりのことでありますけれども。また、保育事業などについても同様であります。社会福祉法人のうち、法人税が課税されている法人は非常に少ない状況であります。

 もちろん、社会福祉法人の、低所得者等のサービスの利用が困難な方への配慮、あるいは制度化されていない福祉ニーズへの対応など、地域福祉を推進するためには、公的事業など民間企業がなかなか参入できないところは社会福祉法人等でカバーしておりますけれども、現実的に見ますと、例えば保育所等も含めて、民間の企業が今参入され、そしてグループホームや小規模多機能等、デイサービスも含めて、社会福祉法人と切磋琢磨しながら、課税等の優遇も受けないで民間等が一生懸命頑張っておるということであります。

 先ほど副大臣がいみじくも、収益事業も考えるべきだということもおっしゃっておりましたけれども、仮にそういったことが可能だった場合に、社会福祉法人等に民間と同等の、あるいは軽減はしますけれども、税金をかけるおつもりがあるかどうか、まずもって、ちょっと一点目、お伺いします。

西村副大臣 お答えいたします。

 委員御指摘でありますけれども、社会福祉法人は、そもそも、社会福祉事業という公益性の高い事業を安定的、継続的に実施することを目的として設立された法人でございます。その高い公共性、公益性に着目いたしまして、強い公的規制、法的規制も含めて受けておりますし、また同時に、法人税が原則非課税になるなどの税制上の優遇措置が行われているものでございます。

 私も、社会福祉法人においては透明性を高めていただくということは必要なことだと思っておりますけれども、引き続き、こういった非常に重要な公益性の高い事業を行っていただいているという役割を十分に社会福祉法人から認識していただいて、福祉増進のための取り組みを積極的にまずは進めていただきたいというふうに考えております。

石井(章)委員 時間がないので、最後の質問にいたします。

 今の、社会福祉法人も当然優遇しなきゃならないという御答弁もそうなんですが、やはり民間企業に対しましても、社会福祉法人に無理やり税金をかけないまでも、では、民間の方にもある程度インセンティブをつけるような施策を今後考えていただきたい。

 最後なんですが、実は、厚生労働省の所管の中に、社会保障審議会を初めとするさまざまな委員会があります。いわゆる諮問機関でございますが、具体的な施策の検討がなされておるのはその委員会でございまして、当該審議会の分科会等に関しまして、厚生労働大臣が任命または指名するとあります。

 特に地域包括ケアシステムの普及促進に関しては、認知症対策という面で大変重要な面を持っておりまして、現状の問題点を解決していくためには、現在のメンバーよりも幅広く人材を登用する。というのは、結構、ドクターの方が多かったり、やはり介護を専門でやっている方々等の意見もなるだけ取り入れていただきたい、そういった問題も上がっておったわけです。

 そういったところに関しての、メンバーの層の厚さ、幅を広げるということで、最後に大臣から御答弁をいただきたいと思います。

三井国務大臣 委員の定員についてでございますけれども、今お話しのとおり、社会保障審議会介護給付費分科会は、介護報酬や介護サービスの基準について議論する場でもあります。

 現在の委員は、申し上げますと、サービス提供者が九名、それから保険者、保険料納付者が九名、利用者、有識者が七名の、ある程度バランスを勘案した二十五名という人数になっております。

 仮に、新たなほかの団体等から委員を加える場合にも、人数がふえますと、それだけ議論の円滑な進行に支障を来すのではないか、こういうこともございますので、委員間のバランスが崩れてしまわないかについて、いずれにしましても慎重に検討させていただきたい、こういうぐあいに思っております。

石井(章)委員 ありがとうございました。

 これで終わりにします。

長妻委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時八分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

長妻委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。青木愛さん。

青木委員 生活の青木愛です。

 きょうは、恐縮ですが、地元からいただいた声を中心に質問をさせていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。

 東京都の二次医療圏は二十三区を七つの医療圏に区分けしておりまして、私の地元足立区は区東北部に属しております。人口百二十九万人に対して三百床以上の一般病院は六つと、七つの医療圏の中では最も少なく、人口十万人当たりの医師数も、七つの医療圏の平均三百三十二・一人に対し百五十一・九人と、大きく下回っている現実がございます。また、足立区では、公的な病院、周産期医療センター、特定機能病院等がなく、高度な医療については区外の医療機関との連携で補っております。

 このたびの東日本大震災を契機といたしまして、今後首都圏の災害発生も懸念される中、交通機関が麻痺した場合など、継続して確実に医療が受けられるのかどうか、多くの住民が不安を抱いております。区内で完結する医療提供体制の構築を求める声が今高まっております。

 各医療圏における医療機関の機能分化と連携強化、長年の課題であることは承知をしておりますが、その中核となる医療機関は、継続的に住民から信頼される公的な病院が本来望ましいと考えております。

 東京都区部のような人口密集地における公的医療機関の整備について、また民間医療機関との役割分担についてどのようなお考えをお持ちか、三井大臣の御見解をお伺いさせていただきたいと存じます。

三井国務大臣 お答えさせていただきます。

 公立であるか民間であるかということは、今、開設主体は問わず、医療に真摯に取り組むさまざまな医療機関が協力して地域の医療提供体制を確保していくことが重要である、こういうぐあいに思っております。また、公的病院に限った配置基準は定められておりません。

 地域における医療提供体制に関しましては、個々の市区町村単位ではなくて、都道府県が、地域全体を見た上で、地理的条件やあるいは交通事情等の社会的条件などを考慮して設定した二次医療圏単位で計画的に整備を進めております。

 東京都の医療計画では、今御質問がありましたように、足立区、葛飾区と荒川区も含めた地区で必要な医療提供体制を整備することとなっておりまして、この二次医療圏全体で、民間医療機関も含めて必要な医療提供体制が確保されるものと考えております。

青木委員 今大臣からお話がありました二次医療圏、その病床数の総量規制が引かれているということも承知をしておるのではありますが、地元のことで大変恐縮なんですけれども、特に足立区の西側の地域は、川で囲まれておりまして、隣の区とも二本、三本の橋でつながれているという状況で、いざというときにその橋が果たして使えるかどうかという懸念もあります。

 公的病院が本来望ましいとは思いますけれども、さまざまな方法があろうかと思いますので、ぜひ、こうした緊急時に備えても、また日常においてもそうでありますけれども、区内で完結できるような、そうした医療体制に向けての御尽力、御指導をお願い申し上げたいというふうに思いますけれども、もう一言いただけませんでしょうか。

三井国務大臣 今も御答弁申し上げましたが、いずれにしましても、東京都の医療計画でございますので、今先生のお住まいのところの足立区、葛飾区、荒川区も含めた地区で必要な医療提供体制を整備することになっておりますので、二次医療圏全体で、民間医療機関も含めて必要な医療提供体制が確保されるものと考えております。

青木委員 もちろん、都の計画、また都のお力添えもいただかなければならないんですが、人の命にかかわることでもありますし、災害の防災対策のかなめはやはり医療機関の整備にあると思いますので、ぜひ、国としても、人任せではなく、積極的な取り組みを私自身もしていかなければならないというふうに考えておりますので、今後ともの御指導をまずお願いさせていただきたいと思います。

 次の質問に移らせていただきますが、今の質問とも関連をいたしますけれども、団地への高齢者医療、介護施設の併設についてお伺いをさせていただきます。

 ますます高齢化が進んでいく中で、保健、医療、介護を含む福祉サービスを、関係者が連携協力して、地域住民のニーズに応じて、一体的、体系的に提供する地域包括ケアシステムの導入が急がれています。現在、千葉県柏市で、柏市、東京大学、都市再生機構の三者が共同で、地域包括ケアシステムの実現に向けたプロジェクトを進めております。総理も視察をされたと伺っておりますが、このプロジェクトは、団地内に高齢者の医療、介護を担う拠点の併設、あるいはそうしたサービスが受けられる高齢者向け住宅の整備など、高齢社会の町づくりのモデルとして大変評価できるものと考えております。

 この柏に限らず、老朽化した大都市近郊の団地の建てかえが今進んでおりますけれども、これを機に、診療所や訪問看護ステーションなど高齢者の医療拠点の併設をぜひ同時に進めていくべきだというふうに考えておりますが、今後、医療機関や介護事業者が参入しやすくなるよう、厚生労働省としても何らかの積極的な支援が必要と考えておりますけれども、いかがでしょうか。

櫻井副大臣 御指摘の柏市は、高齢化が進む豊四季台団地で、今、青木委員からございましたが、そういう取り組みがなされているというふうに承知しております。これは、午前中も答弁申し上げましたが、施設から地域にという形で我々は取り組みをさせていただいていて、その中でも本当に先駆的な取り組みで、すばらしいものだというふうに認識しております。

 ですから、この取り組みが今後成功していくのかどうかということも全部踏まえた上で、こういった取り組みを支援できるような体制をきちんとした形で整備させていただきたい、そう思っているところでございます。

 あと一方で、中心市街地の空洞化の問題もございまして、これは田舎の方に行くとですけれども、ここはコンパクトシティーができないかどうかということについて、現在、国交省の都市局と、それから経産省の商務流通部と、それからもう一つは厚生労働省の老健局と一緒になって、まだ今のところ計画の段階ですが、そういったこともできないかどうかということを今検討させていただいているところでございます。

青木委員 大変前向きな御答弁をいただきまして心強く思います。

 この団地の建てかえについては、必ずしも賛成ではないという高齢者の方が多くいらっしゃいます。むしろ、住みなれた場所のままでいてほしい、そのままにしてほしいという声もありますけれども、こうした団地であれば、団地に住みながら、二十四時間、診療所あるいは介護施設と同じ建物の中に住んでいるという安心感は、高齢者にとってはかり知れないものがあると思いますので、特に今、東京あるいはその近郊で建てかえがどんどん進んでおりますので、積極的なお取り組み、支援を、この機を捉まえて、ぜひよろしくお願い申し上げたいというふうに思います。ありがとうございます。

 次に、三点目でございます。医療用のかつらの保険適用についてお伺いをさせていただきます。

 医療用かつらは、抗がん剤治療の副作用による脱毛などで毛髪を失った方々、特に女性にとって、日常生活を送る上で必要不可欠でございます。実際の患者さんへのアンケートでは、八割以上の方が、脱毛の対処方法としてかつらをつけると答えています。

 医療用かつらは、製品としてさまざまですが、二十万から四十万と高額のものもございます。病気の治療に直接は関係しないとして薬事法の医療機器に指定されていないために、医療保険の適用対象外となっておりまして、全て自費での購入となっているのが現実でございます。抗がん剤治療などの多額の医療負担を負っている上に、さらなる経済的負担となっているのが現状でございます。

 以前も国会で取り上げられておりましたが、美容目的のかつらと異なり、病気療養中の方々の精神的負担を和らげ、経済的負担を軽減させるために、ぜひ医療保険の適用対象とするべきと私も考えますが、三井大臣の御見解をお伺いさせていただきたいと存じます。

櫻井副大臣 女性としてお気持ちは重々理解できますが、一方で、医療保険制度というのは、あくまで治療の対象となるものについて給付させていただいているというまず大原則がございます。

 それからもう一点は、もう委員も御案内のとおり、医療保険財政が非常に厳しい状況にもございますので、その点を勘案してくると、これは済みません、後ろ向きで大変恐縮ではございますが、なかなか厳しい状況にあるということは御理解をいただきたいと思っています。

 一方で、がんの治療に対しての負担が相当重くなっているというお話がございましたが、今後、外来の高額療養費の問題についても、これは今検討している最中でして、むしろ、そういった部分についての軽減措置などを図っていくようなことは、これから進めていきたい、そう考えているところでございます。

青木委員 ありがとうございます。

 課題山積の事情もわからないわけではありませんで、これを必要と思うか思わないかというところであろうかと思います。必要ということであれば、さまざまな方法を考えながら、それを乗り越えていくということも大事かとは思いますけれども、今の櫻井副大臣の御答弁の中で、むしろ、がんの治療の方に経済的負担の軽減を取り計らっていくということでありますので、確かに優先順位でいえばそれが大事だというふうに思います。また、今後、そうした余裕があれば検討課題として加えていただければというふうに思います。

 次の質問でありますが、予防接種の国費負担ができないかという質問をさせていただきます。

 大臣も所信の中で触れられていますが、現在、予防接種法に基づいて、主に子供たちにワクチンの予防接種が行われています。

 その費用負担について厚労省が行った平成二十二年の調査では、九九・四%に当たる千七百四十四市区町村から回答を得、努力義務が課せられている一類定期接種では、九九・六%、千七百三十七市区町村で全額公費負担、七市区町村ではいまだ一部自己負担という形になっています。努力義務のない二類定期接種では、六十八市区町村が全額公費負担、千六百六十七市区町村が一部公費負担ということになっています。

 一類についてはほぼ自己負担のかからない状況になっているとはいえ、一部地域によってはいまだ自己負担をしているところもあるという現状もございます。

 また、自己負担だけの問題ではなく、実施費用の負担割合の問題もございまして、実施主体が市区町村になっている定期接種については、実費徴収が可能となってはいるものの、実際はほとんどの市区町村が徴収しておらず、その実施費用は市区町村の負担となっています。地方交付税を交付されている市区町村はその費用を一部手当てできますが、不交付の市区町村は全額を負担しなければなりません。本来、どこに住んでいても、この負担は公平であるべきではないかというふうに考えます。

 さらに、今後、子宮頸がん、Hib、肺炎球菌といった三つのワクチン、これらも定期接種への移行も検討されていると伺っておりますけれども、こうなりますと、さらなる市区町村の負担がふえることが予想されます。制度の見直しに向けた検討を進めると大臣所信で述べられていますが、今後、この定期接種の費用を国で負担する、そうしたお考えはありませんでしょうか。

櫻井副大臣 これもまた非常に大事な問題だと思っております。

 これは、平成十一年に地方分権一括法の中で、予防接種は地方で行う自治事務であるというふうに取り決めがまずなされています。

 今委員からございましたが、これまでのワクチンと比較して、子宮頸がんワクチン、肺炎球菌それからHibワクチンの価格が非常に高くて、これを負担していくというのは非常に大変なことだということについては認識しております。

 そこで、年少扶養控除の廃止に伴う平成二十五年度以降の地方の増収分がございますので、これの取り扱いについて検討させていただいている。つまり、こういったものを充てられないかどうかについて、これは市町村の意見もお伺いしながら、今検討を進めさせていただいているところでございます。

青木委員 ありがとうございます。

 その年少扶養控除からの財源ということについても、私自身で考えながら、またいろいろと御質問もさせていただきたいというふうに思います。国も大変ですが、市区町村の方も大変財政難でありますので、ぜひお力添えをいただければということでございます。

 最後にもう一点だけ質問をさせていただきます。

 待機児童の問題についてでございますが、九月に厚労省が発表したデータによりますと、ことし四月の時点で、待機児童数は二万四千八百二十五人と二年連続で減少したというものの、定員が三・六万人ふえたにもかかわらず、待機児童は七百三十一人しか減少していません。保育所等に預けるのを諦めていた潜在的な需要を掘り起こしている状況とも考えられていますけれども、長引く不況で働かざるを得ないお母さん方がふえていることも一因でありまして、早急の解決策が望まれているところであります。

 地元を歩いておりましても、大分、保育ママの看板が目立つようになりました。今後も、こうした保育ママ、また、点在する待機児童の解消には、大きな施設よりも小規模保育所また家庭的保育が有効であると考えますし、今後、認可外保育施設への助成も必要だというふうに思います。

 また、現在、保育士の確保がなかなか難しいという指摘もいただいていますが、特に待機児童の八割を占めるゼロから二歳の乳幼児の場合、今民間が行っているベビーシッターという認定がございます。あるいはチャイルドマインダーといった認定資格というふうなものもございます。こうした資格を、保育士と同列とは言いませんけれども、準資格といいますか、ある意味、有資格者として柔軟な対応で制度の緩和ができれば、受け皿がふえて待機児童解消の一助になるのではないかと考えます。

 それについての御見解をいただきたいのと、この待機児童の解消に向けて、施設の増設ということでこの先限界があるとすれば、やはり育児休暇がとりやすい環境整備ももっと同時に進めていく必要も感じておりますけれども、この辺の待機児童の解消について、最後にお伺いをさせていただきたいというふうに思います。

西村副大臣 お答えいたします。

 待機児童ですけれども、委員御指摘のとおり、保育所の定員は三・六万人増加しているんですけれども、潜在的な待機児童が増加しているということ、これはやはり、経済状況、また女性の就業環境の変化、非正規労働者の増加等々、いろいろあるかと思いますけれども、保育の需要が増加し続けているというのは、これは疑いのない事実だと思います。

 国と地方自治体で協力しながら保育所の整備を進めてまいりまして、保育所の定員そのものはふえているんですけれども、今後とも、待機児童解消「先取り」プロジェクトによる小規模グループ型保育事業の活用など、地域の保育ニーズにきめ細かく対応し、待機児童の解消を図っていきたいというふうに考えております。

 御指摘の、さまざまな施設や形態もあるではないかということなんですけれども、質の確保された認可外保育施設に対しては、先ほどの待機児童解消「先取り」プロジェクトとして運営費の一部を補助しておりますし、また、三歳未満児を主な対象としている家庭的保育においては、保育士資格を有していなくても、市町村による一定の研修を受講することで保育を行うことができる仕組みとしております。

 こういった取り組みを通じまして、引き続き待機児童の減少に、これはあらゆることを考えて取り組んでまいりたいと考えております。

青木委員 ありがとうございました。

 本日質問させていただきましたそれぞれの課題について、積極的なお取り組みを重ねてお願いを申し上げて、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

長妻委員長 次に、古屋範子さん。

古屋(範)委員 公明党の古屋範子でございます。

 まず、三井大臣、御就任、大変におめでとうございます。

 大臣は、薬剤師でいらっしゃり、また三井薬品の設立者、代表取締役、また医療法人理事長なども御経験をされたと伺っております。厚生労働行政のエキスパートとして活躍してこられたということでもございます。

 特に、新薬の開発につきましては、日本は大変おくれているという現状でもございます。創薬、輸入するだけではなく輸出するということも、やはり積極的に取り組んでいく必要があると考えております。そのために、各省縦割りの壁を越えて支援をしていく体制を、薬剤師としての経験を大いに生かされて、リーダーシップを発揮していかれるよう期待を申し上げております。

 きょうは、再生医療の推進についてお伺いをしてまいります。

 ことしのノーベル医学・生理学賞が、再生医療の進展につながるiPS細胞を初めて作成した京都大学の山中伸弥教授に受賞が決まりました。多くの皆様とともに、この栄誉を心から祝福したいと思っております。

 公明党は、自公政権下でも、こうした科学技術の振興に関しましては、予算大幅増額を実現いたしまして、このiPS細胞研究なども後押ししてまいりました。この極めて重要な分野である再生医療にふさわしい制度が実現をするために、私もかねて、二〇〇八年でしたか、初めて、東京女子医大と早稲田の医工連携で行われております先端生命医科学研究施設、TWInsを訪問いたしまして、そのときの感激をもとにこの分野は着目をしてまいりましたけれども、改めて、さらに推進をしようということで、この九月に党内に再生医療推進プロジェクトチームを設置いたしました。事務局長を務めております。視察、有識者などを招いて積極的に活動を展開しております。

 先日は名古屋大学に参りまして、こちらは、上田実教授を中心に、特定の細胞に変化する前段階の幹細胞を培養した際の、細胞そのものではなくて、上澄み液をフリーズドライして、一見するとインスタントのだしのもとのような形をしているんですが、これを、例えば手術跡に塗ると傷が非常にきれいに治る、あるいは、糖尿病で、足に非常に重篤な潰瘍ができて、ここに塗るとそれが治るとか、あるいは、急性の脳梗塞の患者に対しまして、六十日にわたって鼻から再生因子を投与した結果、社会復帰ができるまでに回復をした、このような再生医療の現場にも行ってまいりました。

 この再生因子というのは、薬剤でもなく、もちろん医療機器でもない、新たな法的枠組みが必要だ、こういう要請を教授からも受けてまいりました。今回、いろいろ、視察等々を通しまして、再生医療が現場で実際に行われていることを拝見しますと、一刻も早く法律をつくっていくことが必要だと痛感をいたしました。

 今、公明党の坂口副代表が私案としてまとめました再生医療推進基本法、仮称でございますけれども、国、医師、研究者らの責務を明らかにして、国民が再生医療を迅速、安全に受けられることを目的として掲げております。タイトル、長いんですが、再生医療を国民が迅速かつ安全に受けるための総合的な施策の推進に関する法律案ということで、これは国民目線で、一日も早く、難病で苦しむ患者が再生医療、それをもとにした創薬などを受けることができるように、このような法律でございます。

 今、民主党、自民党にも呼びかけさせていただき、協議を進めているところでございます。ぜひ、今国会、このような状況ではございますけれども、これに関しては早期成立を目指していきたい、私はこのように考えております。

 大臣も、先日、所信の中で、再生医療に関しては触れられていました。経産省によりますと、再生医療の世界的市場規模、二〇一一年、約六百五十億円でありますけれども、十年後の二〇二〇年には約八千七百億円に急拡大すると見込まれております。iPS細胞という日本発の画期的技術が、日本再建の大きな原動力になることは間違いないと思います。再生医療は新たな成長分野であり、日本も産官学が一体となって推進に取り組むべきと考えます。

 世界に先駆けて、iPS細胞による再生医療の実用化、また新産業の創成、夢の医療の前進に、国家挙げた支援体制を構築すべきと思います。大臣の御所見をお伺いしたいと思います。

三井国務大臣 御質問ありがとうございます。

 これまで古屋先生には私も厚生労働委員会では大変御指導いただきまして、ありがとうございます。

 まさに画期的な、山中教授によりまして、山中教授の今回のノーベル賞受賞、本当に心から祝意と敬意を表したいと思っております。

 今御質問ありましたように、iPS細胞というのはやはり再生医療であり、先生が今お話ございましたように、難病、そしてまた創薬、本当にこの分野で大いにiPS細胞が生かされるものと思っております。特に再生医療につきましては、先ほども御答弁申し上げたんですが、倫理面、安全面の課題はもちろん留意しながら、一刻も早くやはり実用化できるように、こういうぐあいに進めることが必要だと考えております。

 また、厚生労働省としては、現在、再生医療の安全性につきましては、薬事法の改正案の次期通常国会での提出を目指しております。また、医療として提供されます再生医療に関する枠組みの検討を進めているところでございます。

 予算面では、平成二十五年度の特別重点要求で、再生医療の推進に三十六・八億円を、うち十億円は平成二十四年度予備費を活用して前倒しを要求しているところでございます。

 また、今ほどお話ございましたように、現在、民主党とそして自民党と公明党の三党、坂口先生も熱心に取り組まれていただいております。再生医療の総合的な推進を図るための議員立法制定に向けて、検討が精力的に進められていると聞いておるところでございます。

 この議員立法の状況を注視しながら、今後ともしっかりと再生医療の推進に取り組んでまいりたい、このように考えております。

古屋(範)委員 厚労省としても、法整備また予算措置等を進めようとお考えになっているようでございます。

 日本の再生医療は、iPS細胞の分野では本当に世界トップレベルということでありますけれども、バイオ皮膚など再生医療製品の実用化は、欧米あるいはお隣の韓国に比べても非常におくれております。iPS細胞の実用化を進めるために、今おっしゃいました薬事法等の改正を含めまして、安全面また倫理面での規制等についても早急に検討を進めていただきたい、このことを要望しておきたいと思います。

 次に、こうした研究現場で働いていらっしゃる方々の雇用環境の改善についてお伺いをしてまいります。

 山中先生、以前から公明党のプロジェクトチームにおいでいただけないかとお願いをしていたんですが、その後受賞が決まり大変お忙しくなったんですけれども、その中、先月十八日に公明党の再生医療PTにお越しをいただきました。

 その中で、重要な御発言の一つに、iPS細胞研究所で、先生のプロジェクトで働いている研究者が短期の雇用契約のもとにあるということを改善してほしい、このように述べられました。このiPS細胞研究所の九割が有期雇用でありまして、非常に不安定な雇用状況にある。プロジェクトが終わってしまえば次の職をまた探さなきゃいけない。皆さん非常に優秀な方々でありまして、こうした研究支援者のおかげでノーベル賞にもつながったわけでありますので、こうした研究者、研究支援者の方々について、できるだけ多くの方を正規雇用として雇用してほしいという御発言をなさいました。

 この御要請を受けまして、今週の月曜日ですけれども、iPS研究所の方を訪問いたしまして、働いていらっしゃる方々から直接御意見を伺ってまいりました。研究所は、今、正規の職員が一割、九割は有期雇用、大変これは衝撃的な実態だと思うんですが、今、研究所で働いている方々、教職員が全体で百九十名いるんですが、正規雇用が二十一人、非正規が百六十九人ということで、八九%が有期雇用であります。

 その中で、例えば、知財契約管理室に在職されているお一人、知財の専門家であります。この方は、企業からこのプロジェクトに入ってこられた。しかし、単年度契約。プロジェクトが四年になっておりますので、マックス四年ということになります。今年度で終了、来年三月までということであります。

 継続は可能なのかと聞きましたら、大学ルールで五年条項がある、現在、無期、いわゆる教授、准教授等のポストはもう全て埋まっている、ですから、正規職員以外の研究に取り組むこうした特定研究員というのは、五年を経過しても現在は雇用が可能なんですが、知的財産などの管理者、特定職員は、五年後更新ができないということでございました。

 研究者というのは、研究に没頭していくというのが本分でありまして、時間外労働は当然だというような雰囲気など、若手研究者が問題を一人で抱え込んでしまうというようなこともあるかもしれません。

 そこで重要なのが、研究スタッフ等、チームとして研究に集中できるような、そういう雇用環境をつくっていくことだと思います。

 前国会で改正労働契約法が成立をいたしました。これは、五年を超えて同じ職場にいた有期雇用の社員が無期雇用に移行することができる、こういう道を開いた法改正であります。しかし、現状では、大学では、先ほど言ったように無期雇用はもう満杯でありまして、ここはふやすことができない。ですので、五年を超える手前で雇いどめになるおそれがあるわけです。先回りをして、五年以内に契約更新をしない、こういう動きが出るのではないかとの不安が広がっている。

 改正労働契約法は、有期労働契約の反復更新のもとで生じる雇いどめに対する不安を解消していく、働く方が安心して働けるようにするために改正を行ったわけです。平成二十五年四月一日から施行になっているわけなんですが、このような研究スタッフ、グループについて、継続的な雇用ができる、特色ある雇い方ができるよう、これは柔軟な運用ができないか。この点についてお伺いしたいと思います。

 そうでなければ、こうした若い研究者あるいは知財の専門家などは、五年で首を切られる、そう予想される研究職にはもともと入ってこない。条件のいいところに転職してしまう、優秀な人材が逃げていってしまう。科学技術の発展が欠かせない時代に、人材の面からも若手研究者の不安定な雇用問題を解決していく、これが先決だと考えます。

 そこで、欧米のように、研究者を支援する技術者、あるいはこの知財専門家、こうしたチームで研究に集中できるような体制整備を行うべきだと思うんですが、大臣の具体的な指示のもとに、これは積極的に緊急に取り組んでいただきたいと思うんですが、大臣、いかがでしょうか。

中野政府参考人 研究を支えるさまざまなスタッフの方々が安心して働くことができるようにすることは、重要な課題であると認識しております。

 これらスタッフの方々の継続的な雇用が困難になっております原因の一つには、研究資金の問題があろうかと思いますが、この点につきましては、関係省庁に対しまして、雇用の安定の観点から、継続的な支援の重要性につきまして申し上げてきているところでございます。

 また、御指摘のございました改正労働契約法でございますが、有期契約労働者の雇用の安定を図るためのものでございまして、契約期間が通算五年を超える場合でありまして、労働者が申し込みをしたときには、別段の定めがない限り従前と同一の条件で無期労働契約に転換するルールを定めたものでございまして、必ずしも賃金等の労働条件の引き上げまでは義務づけてはいないものでございます。

 このような改正法の内容につきまして、周知し、きちんと御理解いただき、過度な心配から五年手前での雇いどめがふえないよう、現在、大学関係団体と協力しまして、各大学への説明会の開催に取り組んでいるところでございます。また、文部科学省と連携しながら、マニュアルの作成に取り組むなど、大学において改正法の趣旨を踏まえた雇用管理の改善がなされるよう支援していくこととしております。

 引き続き、文部科学省と連携を密にいたしまして、研究をされるスタッフの雇用の安定に向けて取り組んでまいりたいと考えております。

古屋(範)委員 今、労働契約法はそうしたことを起こさせるものではない、それを周知していきたいというような局長の御答弁だったかと思います。

 しかし、先ほども言いましたように、無期雇用である教授、准教授のポスト、人数枠はもう全て埋まっていて、これ以上無期はふやすことはできないという現場の御意見もございました。ですので、現在の大学の中の人員配置とか、また大学のそうした人事の考え方等々も、当面、もう少し変えていく努力も必要なのかなというふうにも思います。

 先日も、「クローズアップ現代」に山中教授が御出演になりまして、やはりこのところを大変強調されていました。研究だけでは決してこれは進まない、特許の問題、さまざま考えれば、こういった研究を補助する、こうした多くの優秀な方々がいて初めて、これが研究から臨床、実用化、そして世界の本当に難病で苦しむ方々を救う、そこまでやはり到達していかなければいけないわけですので、この点、喫緊の課題として取り組んでいただきたいと思っております。

 大臣、何かつけ加えること、御所見があればお伺いをしたいと思います。

三井国務大臣 私も、先日、山中教授が厚生労働省においでいただきまして、今先生がおっしゃったように、まさに、研究者のこの雇用の問題について、本当に一番、当然、研究費も必要でありますけれども、研究者がいなくては私もこういう研究はできなかったということも、強く私どもにおっしゃっておりました。

 いずれにしましても、これからの若い研究者のためにも、やはり、ポストドクターの方々が研究に専念できますように、まず雇用の安定を図ることが重要と考えております。その上で、研究業績を上げた方がきちっと評価され、そしてまた希望に応じてキャリアアップできるためにも、みずからその働く場所を主体的に選べる環境の整備も同様に大事だと思っております。

 この両方の要請をバランスさせた形の中で、大学等の雇用管理が適正に運用されますように、文部科学省とも協力しながら取り組んでまいりたいと思っております。

古屋(範)委員 山中先生も、確かに、財政支援、これも量的なものは絶対に必要である、そうおっしゃったんですけれども、量とともに質が非常に重要だとおっしゃっていました。この資金の流れ方、そういうものを、ある程度やはり、こうした最先端の重要な研究では自由裁量がきくような、そしてまた、人件費にもしっかりと充当できるような、そういう支援というのが必要なのではないかというふうに思っております。

 文部科学省に続いてお伺いをしたいと思います。

 こうしたiPS細胞研究のような生命科学の先端技術など、研究費を集中投下して成果を出すプロジェクト型の研究というのは多くの人手が必要なんですけれども、国立大学また研究機関では、人件費に充てる国の交付金が毎年削減をされまして、正規雇用できる人数が限られているため、有期雇用が一般的ということであります。

 そこで、予算の拡充とともに、人件費等に係る研究資金の使途を柔軟に使えるような改善をすべきと考えます。文科省のお考えをお伺いいたします。

森本政府参考人 お答え申し上げます。

 文部科学省といたしましては、平成二十五年度の予算の概算要求におきまして、山中教授の在籍される京都大学のiPS細胞研究所を中心として、オール・ジャパンの体制を構築しようということで、iPS細胞の安全性、標準化に関する研究や、再生医療用のiPS細胞ストックの構築等を実施するための経費として、今年度四十五億円でございますが、これを大幅に増額いたしまして、八十七億円を今概算要求に盛り込んでいるところでございます。

 今後、京都大学iPS細胞研究所に対しまして、来年度から十年程度の長期にわたる支援を継続していきたいというふうに考えておりまして、これによって研究に専念できるような環境を整備し、研究支援者、ただいま御指摘ございましたように、その長期的な雇用が可能になるようにしていきたいというように考えております。

 さらに、研究システムの改革の一環といたしまして、ただいま御指摘の研究予算の使途の問題も含めまして、より柔軟かつ効率的に研究を実施していただいて、専念できるように、持てる能力を最大限発揮していただけるような仕組みづくりを現在、文部科学省において検討しているところでございます。

 今後とも、iPS細胞研究を引き続き強力に推進してまいりますとともに、できるだけ早くこれが再生医療として患者さんのもとに届けられますよう、我々としては関係省庁一体となって取り組んでいきたいというように考えております。

古屋(範)委員 いずれにいたしましても、この一割、九割という非常にいびつな正規、非正規比率、研究の長期的促進のためにはならないというふうに思います。

 任期があって限定されたポスト、また終身在職権のあるポストを与えられた場合、研究者のほとんどは後者を選ぶというのが容易にわかります。したがって、任期制が主流な研究所では、人材の質の低下とか研究者を育成する意欲の低下、業績の悪化にもつながりかねません。そのため、山中先生は、慎重に、短期の雇用契約で仕事をする若い研究者らが自由に落ちついて研究に集中できるような環境を望まれているものと思います。

 一方では、研究者の雇用については、一定の流動性というものの確保も必要であると考えております。若手研究者が異なる研究現場を経験していくことも重要でしょうし、研究者の世界において必要とされる一定の流動性を適切な形で確保していくためにどのようなことが必要なのか、これは、雇用の安定と同時に流動化ということも、両方あわせて考えていかなければいけないというふうに思います。大臣は先ほどこれに関しては御答弁を頂戴いたしましたので、これは指摘にとどめたいというふうに思います。

 次に、iPS細胞の研究に臍帯血を利用する際の課題についてお伺いをしてまいります。

 党の再生医療推進PTの会合で、山中先生は、臍帯血という宝の山をぜひiPS細胞に使わせてほしいということを訴えられました。臍帯血は赤ちゃんのへその緒に含まれる血液であります。ここからiPS細胞をつくり、備蓄をして再生医療に生かしたいということを力説されました。臍帯血からはiPS細胞が効率よくつくれるとおっしゃっています。今後の研究促進が期待されるものであります。

 臍帯血につきましては、白血病の患者を救おうということで、当時、十五年前なんですけれども、さい帯血バンク支援ボランティアの会の有田美智世さんらとともに、私はまだ議員ではありませんでしたけれども、署名運動を行いまして、あっという間に二百万人の署名が集まりまして、臍帯血移植への保険適用、公的臍帯血バンクの設立、これに取り組みました。

 一九九七年、当時の浜四津敏子参議院議員と署名活動を行ったんですけれども、最終的には二百万人に署名が上りまして、翌年、九八年四月に臍帯血移植への保険適用が異例の速さで実現をいたしました。そして、さらに翌年、公的な臍帯血バンクが設立をされました。これまで八千五百件以上の移植が行われているということでございます。

 その後、やはりバンクの財政基盤が弱いということ、また法的根拠がないというような問題が生じまして、有田さん初め関係者から、臍帯血に関する法整備の必要性の要請を私たちも受けました。そこで、公明党が二〇一一年五月に、さい帯血法整備推進プロジェクトチームを設置して、十二月には、骨髄、末梢血幹細胞も含めた造血幹細胞移植法整備検討プロジェクトチームに改組いたしまして、自民党など各党にも強く働きかけ、ことし九月に造血幹細胞移植法が成立をいたしました。

 そして、本年九月、臍帯血を研究に用いることができる、この規定が盛り込まれた造血幹細胞移植法の成立によりまして、iPS細胞の研究に移植に適さない臍帯血を法的に利用することが可能となったわけであります。

 十年たつと廃棄をされる、あるいは細胞の数が少ないものは移植には適さないということでありまして、ここのところをiPS細胞の方に使いたいということでございました。移植可能なレベルのiPS細胞第一号をつくり出すために、治療を待ち望んでいる患者の皆様のために、一刻も早く臍帯血をiPS細胞の研究に利用できるようにすべきであります。

 そして、臍帯血利用の最大の課題が、当時このようなことを想定しておりませんでしたので、提供者からの同意をとり直す再同意の問題がございます。厚労省の審議会では、iPS細胞の作成に利用できるとの見解を示されています。各臍帯血バンクは協力したいと考えられると思いますが、しっかりと方針を決めなければ動きにくいのが現状かと思います。

 この造血幹細胞移植法の施行は、公布の日から一年六カ月を超えない範囲内、すなわち施行期限は平成二十六年三月ということでありますけれども、早期施行を目指したいと考えております。

 治療を待ち望んでいる患者のために、また、世界の激しい競争に勝つためにも、この臍帯血を利用する際の判断基準となるルールづくりを一刻も早く行っていただきたいと思います。この辺についての御見解をお伺いいたします。

三井国務大臣 臍帯血につきましては、まさに山中教授からも、私も必要性を先日訴えられました。

 臍帯血につきましては、いずれにしましても、iPS細胞の作成には有用だということでございます。ただし、研究のために利用する際には、今先生からもお話ございましたように、臍帯血の品質の確保と、それから提供者の同意を得ることが重要だと。

 このために、京都大学iPS細胞研究所や、あるいは臍帯血バンクなどの関係機関との調整を進めて、できる限り早期に適切な臍帯血の提供が行われますよう、厚生労働省としても努力してまいりたいと思っております。

古屋(範)委員 このルールづくり、早期につくり上げていただけますよう、重ねて要望しておきたいと思います。

 次に、東北メディカル・メガバンクについて質問したいと思います。

 先日、東北大学の東北メディカル・メガバンク機構の山本雅之機構長においでいただきまして、この構想についてお伺いをいたしました。

 この構想は、東日本大震災からの復興を目指す上で、被災地の住民を対象に健康調査を実施して、その生体情報、診療・健康情報、医療サンプルの保管を一元的に管理する新しいタイプの大規模な複合バイオバンクを構築し、医療イノベーションの基盤として全世界に発信するというものであります。そして、地域医療の再生、あるいは最先端研究拠点の形成、医療産業の育成を図るものでもございます。

 医療のIT化、個別化医療、個別化予防の推進、循環型の医師支援システム、これは、四カ月僻地に行って治療を行い、八カ月はまたこちらに、機構に帰ってきて研究をする。四カ月、八カ月だったら若手の医師も何とか循環していける、このような新しいシステムをお考えです。

 住民全体の健康に資するこの構想も、しっかりと支援をしていきたいというふうに考えております。

 山本機構長は、この東北メディカル・メガバンクの構築によって、創薬、あるいは医療情報産業の拠点形成による東北の再生、復興に貢献できるということを強調されております。

 国の支援が十年間で五百億円であるということであります。こうした長い調査期間が必要な事業については、十年で終わらせるわけにはいかないと思います。海外では五十年という国もあると聞いております。ぜひ長期的な支援を行っていただきたいと思います。

 まず、文科省に御見解を伺います。

森本政府参考人 お答え申し上げます。

 東北メディカル・メガバンク計画につきましては、東日本大震災からの復興、再生への支援の一環といたしまして、日本再生戦略、それから医療イノベーション五カ年戦略などに基づいて、関係省庁と連携しながら進めているところでございます。

 宮城県及び岩手県の被災地域を対象として地域の住民の皆様の健康調査を行うとともに、ゲノム解析研究等を実施することで、被災地における地域医療の復興と、それから次世代医療の実現、この二つを同時に実現しようとするものでございます。

 具体的には、御指摘ございましたように、世界でも類を見ない十五万人規模のバイオバンクを形成するとともに、ゲノム解析などに精通した人材を育成して、それで、長期にわたって継続的に地域の住民の皆様の御協力を得て生体試料あるいは健康情報を蓄積して、その研究成果を社会に還元していく、こういうことを目指しております。

 我々といたしましては、このような長期的な視点に立ちまして、個別化医療の実現を目指して支援をしてまいりたいと考えております。

古屋(範)委員 時間が残り少ないもので、最後の一問に参ります。最後、不妊治療についてお伺いをいたします。

 近年、不妊がふえている背景に、女性の社会進出、晩婚化による高齢出産の増加などがよく指摘をされております。原因は複雑でありますし、不妊原因の約半分が男性側の問題にあるとも言われております。

 私たちは、健康保険が適用されない体外受精などの負担軽減をするために、国の特定不妊治療費助成事業の創設を推進してきました。二〇〇四年からスタートをいたしまして、たび重なる公明党の主張で事業は拡充を図られてまいりました。

 この特定不妊治療費助成事業というのは、体外受精と顕微授精を対象に、一回当たり十五万円を給付する。現在、一年目は年三回まで、二年以降は年二回まで、通算五年間、十回を超えない範囲で給付をされております。

 この不妊治療の支援について、来年度の概算要求で、不妊特定治療支援事業のうち凍結胚移植について、一回の治療助成上限額が十五万円から半額の七万五千円に引き下げられております。不妊治療への支援は、産みたい人にはできるだけの支援をしていこう、そういうメッセージでこの支援はされているはずであります。それを入り口から減らしていいのかということであります。

 子供を安心して産み育てられる社会の構築を目指していく上には、不妊治療への助成、これは縮小どころか拡大をしなければいけない事業だと考えております。これについてぜひ見直していただきたいと思います。副大臣、いかがでございましょうか。

西村副大臣 来年度の概算要求において、不妊治療のうち採卵を伴わない凍結胚移植などについて、実はほかの治療と比べて費用がかかっていないという実態がございましたので、これを勘案いたしまして助成単価の適正化を図っております。ただし、概算要求の総額といたしましては、近年の助成件数の増加を見込んだ上で必要な経費を盛り込んでおります。

 今回の概算要求は、助成対象を縮小したということではなくて、実態を踏まえて、実質的な助成の公平化を図るという観点からの見直しであるということ、これはぜひ御理解いただければというふうに思っております。

 こうした治療費の助成に加えて、全国の不妊専門相談センターで不妊に関する相談、指導等は行っておりますし、また、不妊治療に悩む方への支援は重要であると考えておりますので、引き続き、こうした取り組みを通じて支援は継続してまいります。

古屋(範)委員 時間が参りましたので、以上で質問を終わります。ありがとうございました。

長妻委員長 次に、高橋千鶴子さん。

高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 三井大臣に初めて質問をいたします。最初に、通告をしておりませんが、所信的挨拶のことで一言だけ伺いたいと思います。

 きょうも朝から何度か質問が出ておりました。大変強調された、潤いのある社会保障、これがやはり、ぴんとこないわけなんですね。潤いのある社会保障を訴えるということは、まず現状認識、今社会保障がどういう状態だと思っていらっしゃるのか、そしてどのような状態に向かいたいと思っていらっしゃるのか、大臣のイメージをまず伺いたいと思います。

三井国務大臣 けさも冒頭で御答弁申し上げましたが、今、現状の認識ということも私はしておるところでございます。

 ですから、そういう中におきまして、特にやはり、あえてぎすぎすしたという言葉で申し上げているんですけれども、そういう中で、社会保障というのは、もっと幸せであるというか国民の生活というのはやはり大事だと思っておりますから、そういう中で、やはりゆとりというんでしょうか、そういうことを考えながら私は潤いということを申し上げたのでございます。

 いずれにしましても、これからの、子供を産む、そして育てやすい支援制度の充実を図ってまいりたいということもございますし、また、どこにいても、自分の地域で適切な医療や介護サービスが受けられる仕組みをつくり上げていきたい。また、さらに、今ほど申し上げました、誰もが喜びを持って働くことができ、安定した生活を営むことができる社会をつくり上げたい。

 こういう取り組みについて、潤いのある社会保障制度ということで申し上げたのでございます。ぜひそういうことを実現したいと考えております。

高橋(千)委員 ぎすぎすしては困るよというのは、それは人間関係はやはりそうであって、当然だと思うんですよ。いろいろ立場が違ったとしても、やはりそれはお互いを尊重し合いながら、潤いを持って人間関係をつくりましょうというのは、それはいいかと思いますけれども、社会保障というのはやはり現実の施策についてくる問題ですから、子育てしやすいですとか今おっしゃったようなことは基本的なあるべき姿であって、ですから、それを目標としたいということが一体何を言っているのかというのは、やはりよくわからないわけなんですね。

 それで、社会保障と税の一体改革、さきの通常国会で、政治生命をかけると総理がおっしゃったわけですけれども、結局、決まったのは消費税増税だけでありました。そして、社会保障については、今後、社会保障国民会議で方向性を協議することになったわけです。

 しかし、今聞こえてくるのは、専ら、潤いどころか、財政的な視点、つまりお金がかかり過ぎるんだ、その視点からの切り込みばかりではないかと思うんです。つまり、潤いどころか、憲法二十五条で保障されているはずの健康で文化的な最低限度の生活、このひとしく国民が持っている権利に大穴があいていると言えないか、これが私自身が持っている問題意識でございます。

 そこで、きょうは、その問題で象徴的だと思っている事案を通して、大臣の決断を迫りたい、このように思っております。

 脳脊髄液減少症、これは本委員会でも繰り返し取り上げられました。古屋委員も何度も取り上げていらっしゃったと思いますし、患者団体の粘り強い要請行動もあって、各党の議員さんが質問あるいは質問主意書で取り上げる、そういう運動が広がって、やはり一日も早い保険適用を目指してきたと思います。そして、七月からは、硬膜外自家血注入療法、いわゆるブラッドパッチ療法が先進医療に位置づけられました。

 医療保険との併用が認められ、患者負担が大幅に軽減されることや、データの積み上げによって保険診療の導入が期待されると思います。この点について具体的に伺いたいと思います。

木倉政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘のように、脳脊髄液が漏れる、脳脊髄液の漏、こういう症例で申しておりますが、これが確実に認められます症例に対して行われますブラッドパッチ療法、これにつきまして、医療保険の先進医療として保険との併用が可能になっています。

 これは、六月からこういう基準をつくっておりますが、実際に届け出ている医療機関で始まりましたのは七月から、先生御指摘のように、幾つかの医療機関で始まっております。そうなりますと、これまで全額自己負担というところが、保険で入院のところから、共通の部分というのは保険が使えるようになりますので、患者負担が軽減されているような状況にございます。

 具体的に、この基準に合うものとして届け出を出して先進医療でやっていらっしゃるところは、今まで二十医療機関ございますけれども、そこでの保険併用が可能になったということで、まず、併用できるということはどういうことかといいますと、病院ごとに少し費用の幅はありますけれども、大学病院なんかの例で申しますと、これまで、全体で、入院費とか先進医療技術の部分で十七万七千円余りかかったような例がございました。そのうち、入院費とかは保険で使えるようになって、その三割負担を自己負担すればいい。それから、先進医療技術分の負担があって、十七万七千円余りのうちの十一万一千円ぐらいが保険の方から出るようになる。そうしますと、自己負担は六万六千円余りというふうに軽減されるというふうなことでございます。

 こういうことで、きちんとした基準に沿って実施をしていただき、それを評価して、診療報酬改定のときに、それを施設基準に合う医療機関で広く保険としてやれるかどうか、先進医療技術分の費用も保険に取り込めるかどうかというような議論は、そういうデータに基づいて、今後、先進医療会議あるいは中医協の場で議論をしていただきたいというふうに思っております。

 以上でございます。

高橋(千)委員 そこで、資料の一枚目に、個々の医療技術が保険適用されるまでの基本的な流れということで、厚労省の資料をつけさせていただきました。

 それで、最終的には中医協が保険診療の是非を決めるわけでありますけれども、今説明をしていただいたのは右側の流れ、先進医療会議において議論をした上で、報告をして、中医協が決めるということでありました。

 それで、先進医療は、ことし十月一日現在、六十五種類六百二十七件に上ると聞いております。多くの患者さんが期待され、また待たれていると思うんですね。最短ではどのくらいで保険適用が可能になるでしょうか。

木倉政府参考人 お答え申し上げます。

 これは、ここの表にも書いてございますように、中医協のところの四角でございますが、こういう先進医療会議での評価を受けまして、その矢印の方、診療報酬改定、これは原則二年に一回でございますが、そのときにきちんとそれまでのデータに基づいて議論をいただいて、保険に導入できるかどうかと。

 まだまだそのエビデンスが足りないということがありますと、さらにデータを続けてとっていただくということもありますが、短くて二年ということは可能性はあるということであろうかというふうに思っております。

高橋(千)委員 ありがとうございます。

 短くて二年というお話でありました。ですから、一番早くて平成二十六年ということになるのかなと思っております。非常に多くの方が待たれている。またその一歩であるというふうに思っているわけです。

 そこで、きょうお話をしたいのは、ある生活保護の受給者の方がブラッドパッチ治療を受けようとしたら、先進医療は生活保護受給者は受けられないと言われました。本人は、保護費、限られていますけれども、それを少しずつ蓄えて、今説明がありましたいわゆる先進医療の部分、自己負担の部分を支払えば、あと、保険の部分は医療扶助が受けられる、このように思っていたわけです、今説明があったように、併用ということなので。だけれども、現場ではこのように言われている。

 なぜ生保の受給者は先進医療が受けられないのでしょうか。

村木政府参考人 お答え申し上げます。

 先生も御承知のとおり、生活保護の考え方でございますが、これは、利用できる資産、能力、その他あらゆるものを活用して、それでもなお生活に困窮する場合に最低限度の生活を保障するという考え方でございます。

 先進医療は、先ほどお話がありましたように、保険診療としての併用は認められるものでございますけれども、治療全体としては保険の適用がなされるものではなく、まだ評価が必要な段階のものであるということのため、医療扶助の給付対象とはしていないということでございます。

高橋(千)委員 ですから、患者の皆さんは、全部扶助の対象にしてくれと言っているのではないんです。もちろんそれがいいに決まっているし、それを目指しているわけですけれども。しかし、保険の部分は併用なんだから、なぜ認められないのかと言っているわけなんですね。

 それで、次の質問にもう一度答えていただきたいんですけれども、私、これは二〇一〇年の十一月の本委員会で脳脊髄液減少症の問題を取り上げました。その中で、ブラッドパッチ治療が全額自費であるために生保受給者は受けられない、このことを問題にしたわけです。このときは、まだ先進医療にさえ入っていないときでありますけれども。

 資料の二を見ていただきたいと思います。これは「生活保護法による医療扶助の特別基準の取扱いについて」、平成二十二年三月三十日の課長通知であります。

 この中の文章を読むとおわかりのように、昭和三十八年から、「「要保護者に特別の事由があって、前項の規定によりがたいときは、厚生労働大臣が特別の基準を定める」とされ、例外的に給付を行うことが可能」だとされてまいりました。しかし、今般の通知によってその基準を明確にしたわけですね。平成二十二年三月の通知によって、大臣が決めるものを明確にした。

 それがここにあるんですけれども、対象となり得る治療等の範囲(1)、(2)。(1)の保険の診療における取り扱いによりがたい場合ということで、その中身を2の(1)、ア、イ、ウと三つ書いておりますが、これを「いずれの要件にも該当すること。」いずれかではなく、いずれもなんですね。

 それを読みますけれども、生命の維持に直接関係があると認められること、イ、他に代替できる治療法等がないこと、ウ、研究的に用いられるものではないこと。

 ですから、私はこのことを二年前の質問で取り上げて、要するに死ななきゃいいという考え方で、生活保護の方たちにはこれを例外の対象にしないのかということを言ったわけでありますね。

 この考え方でなぜ、今のをもう一度聞きますけれども、保険と自由診療のミックスなわけですから、なぜ認められないのかということをもう一度伺います。

村木政府参考人 生活保護の医療扶助の考え方、これは基本的には国民健康保険の例によるということで、それの例外として、さっき先生がおっしゃったもの、三つの要件を全て満たすものというふうにしております。

 生活保護の趣旨、先ほど申し上げた趣旨によれば、医療扶助も、それからその他の、先生が節約をしてと言われたのは、恐らく生活扶助の中から節約をしてということだろうと思いますが、これらも全て健康で文化的な最低限度の生活を維持ができるようにするという趣旨に沿ってお支払いをしている公費でございますので、この生保の考え方に沿って、一定の医療、受けられる医療について一定の範囲を決めるということで、今は、こういう先進医療については、特別の事情がない限りはこの範囲として認めないという考え方をとっているわけでございます。

高橋(千)委員 考え方、趣旨に沿ってとさっきからおっしゃっていますけれども、憲法二十五条の理念に基づいて、健康で文化的な最低限度の生活を保障するものなんだ、しかも、それは全ての国民に保障されているということを生活保護法にはしっかりと書いているんですよね。だけれども、結局、死ななければ、これをやらなければ死なないという程度であれば、受けなくていいと国は決めていることになるわけなんですよ。それが健康で文化的な最低限度の生活になるかということを私は聞いているのであります。

 これが、患者さんは、それは違うんだ、そもそもこれは死なない病気じゃないんだということを訴えています。

 例えば、こんな訴えがありました。生活保護受給者が先進医療を受けたとき医療扶助の対象にならない、知りませんでした。生活保護受給者の医療費負担に踏み切るというニュースもあったばかりです。どんどん私たちの生きる道も絞られてきますね。考えたくなくても、死ななきゃいけないのかな、生きていちゃいけないのかなと考えてしまいます。こういう声です。

 そして、先月、親しい脳脊患者さんが自殺を図り、翌週にもう一人自殺を図りました。幸いにもどちらも命に別状はありませんでしたが、一人は内臓と左足に後遺症が残ってしまいました。

 どちらも結婚されていて、生保は受けていません。でも、治療のために家族に仕事を休んでもらったり、いつまで、どれだけ続くかわからない治療費に頭を抱え、家計を切り詰めながらも悩んでいました。家事もまともにできない引け目もあり、障害の程度が軽いとみなされ、ヘルパーさんに来ていただくこともできず、御主人が仕事から帰って家事をして、一人で入浴できないので介助をして、育児もして、これが二、三年続いて、御家族もうつになってしまい、先も見えず絶望して、私さえいなければと思ってしまったということでした。

 ですから、精神的にも金銭的にも追い詰められ、常に死と向き合いながら悩み、生きている患者さんがたくさんいるんだ、だから、決して死なない病気ではないんだ。実際に、たくさんの方たちが既にもう命を失っている、そういう現状もあるわけなんですね。

 だから、本当にこの考え方でいいのかということをきょうは大臣に伺いたいと思います。要件を緩和するべきではないかと通告しています。

長妻委員長 まず、梅村政務官。(高橋(千)委員「大臣に通告しています、最初から」と呼ぶ)

梅村大臣政務官 済みません、少し局長の答えの追加になるかもしれませんが、原則としてはさっきの三つの要件ということであります。

 この要件を緩和してほしいということだと思いますが、現時点でも、これは例外規定として、個々のケースに基づいて例外要件というのは認めているわけでして、逆に言えば、一つの疾患に着目をして、そして、そこで要件を緩和してほしいということについては、これは原則としては認めることができないということだと思います。

 今御説明した形で、健康保険法の中での例に従った医療扶助ということで申し上げたいと思います。

高橋(千)委員 これだけとは一言も言っていません。先進医療というのは併用だとさっきから言っています。だったら、その保険に至る一歩なんですよ、その保険の部分を医療扶助で認めればいいじゃないかと言っているだけです。大臣。

三井国務大臣 今ほど梅村政務官からも御答弁させていただきましたように、最低限度の生活を保障するという生活保護制度の基本的な考え方からいたしますと、医療扶助の適用範囲を拡大することは難しいと考えております。

 また、お尋ねのブラッドパッチ療法につきましては、先進医療に位置づけられまして、保険給付の対象の適否について評価を行っているところでございますので、その状況を見守りながら考えてまいりたい、こういうぐあいに思っております。

高橋(千)委員 きょうはこの問題に絞って質問しています。実際は、脳脊髄液減少症をめぐっては、先進医療となったけれども、診断基準そのものが大変厳しくて、起立性頭痛という要件がありますので、そもそも満たさないんだとか、子供さんのデータが全くないですとか、ですから、子供さんが本当はその疾患になっているのにそういう評価がされていないとか、さまざまな問題があるんです。

 だけれども、今回は、先進医療にたどり着けない患者さんもいる中で、ようやっとここまで運動によって来たんだ。たったその一歩さえも使える人がいない、ほとんどいないではどうするのかということを言っています。

 いいですか、次の質問は、せめてこれだけ、せめてこれだけはというのは変ですけれども、生保の受給者が、本当に生活費を切り詰めて貯金したり、知人から一時的に借入をするなどして費用を用立てて、全額自己負担で治療を行ったときに、それで生活保護を停止される、こういう事態があったわけですね。せめて、そんなことはしない、収入認定はしないとお答えいただけますか。

梅村大臣政務官 まず原則論の話になりますけれども、生活保護というのは、利用できる資産、能力、その他あらゆるものを活用することを前提としていますから、ですから、最低限の生活を保障するということ、これはもう大原則であります。

 そうしますと、今回お尋ねの収入認定除外ということは、原則として、出したお金が、結局、最終的には公費支出、除外認定した部分というのは公費支出と同じということになりますから、先進医療としてまだ評価を行っている現段階においてはそれを認めることは難しい、そのように思っております。

高橋(千)委員 今までのお話をまとめますと、どういうことかといいますと、生活保護を受けている以上はこのブラッドパッチ治療が受けられない、自費でしか受けられないから、自費で受けたら保護もとめられちゃうんですよ。こんなばかな話がありますか。生かさず殺さずじゃないですか。何のためにここまで来て先進医療になったんですか。

 しかし、圧倒的多くの方が、病気が治らないから働けなくなって保護に至っているんですよ。好きで保護になったわけじゃないんです。でも、その方たちが治療を受けられなかったら、データが集まらないじゃないですか。データが集まらなかったら、どうやって先進医療を評価していくんですか。全く矛盾していませんか。

 大臣、こういうことは決断してください。

三井国務大臣 先ほども一部御答弁申し上げましたが、最低限度の生活を保障するという生活保護制度の基本的な考え方からいたしますと、先進医療の保険適用に関するデータを収集することを目的といたしまして医療扶助の適用範囲を拡大することは難しいということでございます。

 先ほども御答弁申し上げましたが、ブラッドパッチ療法につきましては、先進医療に位置づけられまして、保険給付の対象の適否について評価を今現在行っているところでございますので、その状況を見守りたいと考えております。

高橋(千)委員 ですから、言っていることがおかしいと思いませんか。要するに、治療するなと言っているのと同じなんですよ。だけれども、それだったら自立ができないでしょう。生活保護の自立を図るというのが今の政府の生活支援戦略なんじゃないですか。それができないと言っているんです。しかも、先進医療のデータも積み上がらない、治療ができないんですもの。

 そんな矛盾したことはないでしょう。ずっと保護に縛りつけておく、それが政府の戦略なんですか。そして、寝ていることが最低限度の生活なんですか。それだったら、これまでの憲法で保障された生活保護の考え方を後退させたことに私はなると思いますよ。

 もう一人の方の声を聞いていただきたいと思います。三十四歳の男性です。発病して十六年ぐらいになり、原因は中学校のクラブのラグビーでなりました。見つかるまで十四年かかっているんですね、この方は。車椅子でなくては移動できないので、働くことすらできない。生活保護だと治療も受けることすらできませんし、ケースワーカーもこの病気を理解していないのが現状です。病気が見つかるまで、三十カ所の病院に行き、検査をしましたが、わからなく、最終的に、精神的なものだと言われて精神科に行かされ、入院もして、薬も一日三十錠以上飲まされ、薬漬けにされました。

 今、生活保護で、若い方たちの医療費が一般の人よりも非常にかかっているというデータがあるでしょう。こういうことをやっているからなんですよ。実態をきちんと追求しないで薬漬けにしている、こういう実態があるからなんです。今は点滴治療しながら毎日病院通いをして、病院通いが仕事になっているのが現状です。やはり、生活保護を受ける人は一番後回しにされて、治療すら受けられないのが今の日本の現状だと思います。

 こういう方たちが本当に治って自立をしたいと思っているのに、何の道も示せないんですか。検討すると言っていただきたい。

櫻井副大臣 今のやりとりをお伺いしていて、私なりにもう少し整理をさせていただきたいところがあります。

 今、ここの要件の中、三つありました。その中に、「代替できる治療法等がないこと」というふうに示されております。

 ちょっと一例を申し上げますが、例えば肺がんの治療のときに、今、重粒子線の治療法がございます。これは先進医療です。これは保険がききません。一方で、では治療法が全くないのかというと、肺がんは手術で治療することが可能でございます。

 こういったものについてどう判断していくのかということであって、私もずっと、実はこのブラッドパッチに関して、仙台ですから、かかわってきておりまして、これがほかに代替できる治療法がないことに当たるのかどうかについて、もう一度、ここのところは今、専門家からここについてはほかの治療法があるというお話だったので、ここの適用にならないことになっていますが、こういった解釈のことについてどうしていくのかという議論はひとつしていかなければいけないんじゃないのかと、今の話を聞きながら、そう感じました。

 ですから、繰り返しになりますが、高度先進医療の中で、従来で治療できていたものをさらに進めたものであったとしても、保険診療で治療が十分認められていて、ほとんどの方々がそういう治療をされているというものに当たるのかどうかということを、またこれから、改めて、今のところそういう専門家の意見ではございますが、今の委員のお話をお伺いして、ちょっと検討させていただきたい、そう思います。

高橋(千)委員 ぜひお願いしたいと思うんです。

 実は、二年前に質問したときに、代替できる療法が、では何があるのかということを事前に厚労省に聞いたんですよ。それは、安静にしていること、ボルタレンを飲んでいること、これだけなんです。さっき紹介した方も点滴でしょう。これで代替療法というんですかということなんです。そこを本当に検討していただいて、どこからでもいいですから、穴をあけていただきたい、そのことを指摘したいと思います。

 これを言っている間に時間がなくなってしまいまして、本当は、きょうは生活保護の医療費扶助の問題を、今、財政制度審議会の中で、一部負担あるいは償還払いということが検討されているということをぜひ質問したかったんですね。

 それで、結局、今大臣、お気づきになったかどうかわからないんですけれども、非常に言っていることが矛盾しているんです。つまり、最低生活費の保護費をもらって、それをちょっと蓄えて自費診療したら、それは、もう生保はだめですよと言われている。つまり、最低限度の生活費というのを物すごくがちがちと厚労省は捉えているんです。

 ところが、医療費の自己負担あるいは償還払いということは、その最低生活費を自己負担することによって割り込むことになるんです。わかりますか。医療費を月々五千円でも一万円でも払うということで、生活費を下げることになるんです。それをやろうと言っているんですか。もし皆さんが、本当に最低生活費というのはぎりぎりとやるんだというのであれば、そんな議論は絶対出てこないと思う。

 大臣、最後に一言。

三井国務大臣 生活保護につきましてはさまざまな御意見があることは承知いたしております。

 しかしながら、この医療扶助への一部自己負担の導入につきましては、金銭的な理由によりまして必要な受診を抑制してしまうおそれがあるということも認識しております。一旦自己負担した費用を払い戻すことにしても、生活保護受給者が医療費を立てかえる資力を確保することは難しいのではないかという理由から、慎重に検討する必要があると思っています。

高橋(千)委員 大臣がしょっぱなの十月二日の記者会見で、いきなり一部負担に言及されて、すぐに訂正をされたわけでありますけれども、これは、きょうは財務省に来ていただいて、質問できなくて申しわけなかったんですが、やはりその後に財政制度審議会の中で具体的な要素として検討事項が出されてきた。多分、それを大臣は念頭にあって、先取りをされてお話をされたんだと思うんです。

 だけれども、最初から言っているように、そういう財政的な切り込み、どこから削れるかなという話が盛んにされるわけですけれども、しかし、厚労省は、やはり生活保護法の本来あるべき姿は何なのか、そこに本当に立ち至って、生活費を割るようなことがあってはならないのだという立場に立って頑張っていただきたい。

 引き続いて、また質問させていただきたいと思います。

 終わります。

長妻委員長 次に、照屋寛徳君。

照屋委員 社会民主党の照屋寛徳です。

 新聞報道によりますと、先月、肺炎のためにお亡くなりになった直木賞作家の藤本義一さんは中皮腫を患っていたようであります。中皮腫は主にアスベストが原因の腫瘍で、藤本さんもどこかでアスベストを吸い込んだ被害に遭った可能性が高いと言われております。藤本さんに中皮腫が見つかったのは昨年四月。新聞各紙によりますと、人間ドックで肺に水がたまっているのが見つかり、検査したところ、中皮腫とわかったようであります。中皮腫は胸腔などを覆う膜にできる腫瘍で、八割はアスベストが原因だとされております。

 さて、沖縄における最大のアスベスト問題は、駐留軍退職労働者の問題であります。

 そこで、厚労省に尋ねます。

 労働安全衛生法に基づく石綿業務にかかわる駐留軍退職労働者の健康管理手帳の申請件数及び交付数、労災補償申請並びに認定数について、復帰前、復帰後の退職労働者別に示した上で、労災却下件数とその主な理由についてもお教えください。

中沖政府参考人 お答えを申し上げます。

 まず、健康管理手帳でございますが、平成二十三年十二月末で、沖縄労働局管内におきます労働安全衛生法六十七条に基づく石綿業務従事者に対する健康管理手帳の累計の申請件数につきましては百五十三件、交付件数は百四十九件でございます。このうち、駐留軍労働者等に係る申請件数は百十一件、交付件数は百九件でございます。

 次に、労災等の関係についてお答え申し上げます。

 駐留軍労働者等について、労災保険法に基づく石綿関係の保険給付の請求件数でございますが、二十三年度末現在で、請求件数が二十二件、これに対する認定件数が十六件でございます。

 また、駐留軍の労働者等に係ります石綿健康被害救済法に基づきます特別遺族給付金の請求件数につきましては、二十三年度末で二十三件、認定件数は六件でございます。

 なお、労災の認定を受けられなかったものにつきまして、その主な理由を申し上げますと、一つには、やはり、石綿の暴露を示します胸膜プラーク等の所見、あるいは石綿肺等の疾病、こういった医学的所見が全く確認できなかった、あるいは、認定には当然、石綿暴露作業従事歴といったものが必要になってまいるわけでございますが、全く従事歴がなかった、こういう方が大半でございました。

照屋委員 防衛省に尋ねます。

 アスベスト作業に従事する労働者には、一九七二年から健康診断の記録が義務づけられております。ところが、沖縄では、空軍関係の基地労働者については一九八二年度から、その他の軍関係の基地労働者については一九八七年度からしか保存されていないようであります。

 復帰後、国内法が適用されているにもかかわらず、健康診断の記録について十年間あるいは十五年間の空白期間があるのはなぜでしょうか。三十年間の保存期間が義務づけられているにもかかわらず、なぜ記録がないのか、その責任の所在を含めてお答えください。

山内政府参考人 お答え申し上げます。

 健康診断記録の保存についての御質問でございますが、アスベスト作業に従事する駐留軍等労働者に対する健康診断につきましては、雇用主である国が実施することになっております。

 沖縄県におきましては、昭和四十七年の沖縄復帰以降、この健康診断の事務を沖縄県が機関委任事務として行い、健康診断記録の管理も沖縄県において実施されていたところでございます。

 その後、この健康診断事務は平成十四年から国が直接実施することとなり、それに伴いまして、健康診断記録につきましても、当時の那覇防衛施設局、現在の沖縄防衛局が沖縄県から引き継ぎを受け、管理しているところでございます。

 御指摘のとおり、現在、沖縄防衛局が保存している健康診断記録は、空軍関係については昭和五十七年から、その他については昭和六十二年からのものであり、それ以前の健康診断記録の所在については確認できておりません。この健康診断記録が存在しておらない理由につきましては、過去、調査も行いましたが、明らかとなっておりません。

 いずれにいたしましても、健康診断を実施しております防衛省としては、この健康診断記録の管理は極めて重要な事務であると認識しており、今後、文書管理について適切に対処してまいりたいというふうに考えておるところでございます。

照屋委員 そうすると、駐留軍労働者の法的雇用主は国なんです、国が県に機関委任事務をしたから、これは県の責任だ、こういうことですか。

山内政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、健康診断の実施あるいはその記録の管理というものは、まさに委員おっしゃいますように、国の責務でございます。その上で、私、先ほど、いわゆる機関委任事務として経緯を申し上げたところでございます。

 そういった意味で、そもそもこの健康診断記録が現在存在しない理由については、過去、調査も行いましたが、明らかになっておりません。そういった意味も含めまして、決して、沖縄県の責任であるとか、そういったことを申し上げるつもりはございません。

照屋委員 宮島政務官にお伺いをいたします。

 石綿救済法は昨年八月二十六日に改正され、十年間の延長が決まりました。したがって、私は、二〇一二年をもって保存期間が経過する健康診断記録についても、期間経過を理由に直ちに廃棄すべきではないと考えますが、防衛省の見解を伺います。

宮島大臣政務官 照屋先生の御質問にお答えいたします。

 お尋ねの健康診断記録の保存についてでございますが、石綿を取り扱う業務に従事する労働者の健康診断記録は、厚生労働省令において保存期間が定められているものと承知をいたしております。

 先生御指摘のとおり、石綿救済法が改正をされまして、同法に基づく特別遺族給付金の請求期限が平成三十四年三月二十七日まで十年間延長をされることとなりました。したがって、防衛省といたしましては、特別遺族給付金の請求を行われる御遺族のために、健康診断記録につきましては、保存期間経過後も適切に保存をしてまいる所存でございます。

 以上であります。

照屋委員 今の宮島政務官の答弁で安心をしました。沖縄に対して防衛省は余りいいことをやりませんが、これはすばらしいことなので、ぜひそうしてください。

 沖縄県の統計資料によりますと、復帰前の駐留軍退職労働者は約七千人おり、アスベスト作業への従事と被害発症、労災との関連についての周知徹底は極めて重要であります。

 この周知徹底業務は政府のどの機関が担当しているんでしょうか。現段階における作業の進捗状況と成果を含めてお伺いをいたします。

中沖政府参考人 お答えを申し上げます。

 先生御指摘のとおり、今回のこのアスベストの救済法の関係の周知、大変重要な課題でございます。特に、復帰前の沖縄米軍基地労働者についても、石綿による健康被害の救済に関する法律、これが適用されまして、請求権が時効にかかれば、そういった方についても救済の道があることを周知していくことは大変重要でございます。

 そこで、先生方からいろいろ御指摘も賜ったこともございまして、沖縄の公文書館におきまして軍雇用員カードがあります。これは一九四六年から六六年までの米軍基地での労務に従事した勤務記録、大変貴重な記録でございますので、こうしたカードを利用することも一つの方策かなということで検討を進めてまいりました。

 私どもの方で、沖縄県の公文書館に対しまして、具体的に、例えば、軍の雇用員カードについて閲覧を求めた方、その連絡先がわかっていれば教えていただけないかというようなことをお願いする、あるいは、その閲覧を求めた方について仮に教えていただけないとしても、公文書館なりの方から、この制度の周知あるいは労災申請を勧めていただくようなことはできないだろうかということもお尋ねをいたしましたが、個人のプライバシーの問題等もあってなかなか難しいというお答えをいただいたところでございます。

 ただ、私どもとしても、先生御指摘のとおり、大変重要な課題であると思っておりますので、沖縄県とも、今後こういったカードの活用の可能性についてさらに話を進めてまいりたいと考えております。

 また、なお、こうした状況の中でございますが、速やかに広く周知を行うこと、これは必要だと考えておりますので、防衛省とも協力をしながら、厚生労働省として、例えば、自治体の広報誌を通じて、復帰前の沖縄米軍基地労働者の方について、先ほど申したように、石綿の健康被害救済法の適用があるといったことを周知していく、こういったことを検討してまいりたいと考えております。

照屋委員 私が信頼する三井大臣にお尋ねをいたします。

 二〇一一年八月二十六日付の通知、基労発〇八二六第一号では、存命で加療中のアスベスト被害者が除外をされております。アメリカの直接統治時代の沖縄における高等弁務官布令第四十二号を絶対的な理由とせず、石綿救済法の趣旨にのっとってすき間なく救済すべきだと考えますが、大臣の見解をお聞かせください。

三井国務大臣 照屋先生、本当に御質問ありがとうございます。これまで本当に御指導を賜りまして、今後ともよろしくお願い申し上げたいと思います。

 今の御質問でございますけれども、復帰前の米軍基地労働者であった方につきましては、昨年八月の通達によりまして、石綿による健康被害で死亡した場合には、石綿救済法によります特別遺族給付金の対象となるほか、存命であって加療中である場合には、同法の救済給付によりまして医療費等が支給され得るものと承知しております。

 また、引き続き、石綿によります健康被害を受けた方の、今先生おっしゃいましたように、すき間のない救済を図ってまいりたいと思っております。

照屋委員 私は昭和二十年にサイパン島のアメリカ軍の捕虜収容所で生まれました。捕虜が産んだ捕虜であります。私は戦争責任に時効はないと考えております。六十七年前の悲惨な沖縄戦における不発弾処理と戦没者の遺骨収集は、今なお沖縄の戦後処理問題における大きな課題であります。

 沖縄では、遺骨収集ボランティア、ガマフヤーの皆さんが、重機を一切用いることなく、手作業のみで戦没兵士や民間人の遺骨収集作業を行っております。戦没者の遺骨を一日も早く御遺族のもとに返してあげるのは、戦争を引き起こした国の最大の責務であります。

 私は、この間、戦没者遺骨のDNA鑑定のため、ガマフヤーの皆さんから預かった遺骨の一部を厚労省に届けてまいりました。昨年三月二十二日に提出をした、西原町字幸地で見つかった日本兵と思われる五柱、同年五月三十一日に提出をした、那覇市真嘉比で発見された一柱、そして、本年七月十二日にガマフヤーの皆さんと一緒に鑑定を要請した、八重瀬町安里で発見された母子と見られる遺骨三柱、以上三件のDNA鑑定の進捗状況について厚労省に伺います。

泉政府参考人 お答え申し上げます。

 お尋ねのございました沖縄県西原町幸地で発見されました御遺骨五柱につきましては、関係御遺族と見込まれます御家族からお預かりした検体キットを本年九月に鑑定機関の方に持ち込みまして、御遺骨との照合作業をお願いしているところでございます。

 次に、那覇市真嘉比で発見されました一柱につきましては、本年三月に御遺骨からのDNAの抽出が終了しております。一方で、御遺骨の収容時に発見されました遺留品を手がかりといたしまして、厚生労働省で保管しております資料を調査いたしました結果、可能性がある方が二名に絞られております。このため、現在、その二名の方の本籍地の地方公共団体を通じて、御家族の調査をお願いしているところでございます。

 それから最後に、八重瀬町安里で発見されました三柱についてですが、これは現在、御遺骨からのDNAの抽出作業を鑑定機関にお願いしているところでございます。

照屋委員 厚労省、私の女房の父親なんか、沖縄戦で戦死をして、遺骨すら戻ってこない。しかし、遺骨が発見された御遺族に、DNA鑑定を速やかに実施をして遺族のもとにお返しをするというのは、私は総力を挙げて取り組んでもらいたいと思います。

 ハンセン病違憲国家賠償訴訟における国との和解合意に基づき、非入所者が裁判所に提訴し、国と和解を受けることのできる請求権が二〇一六年と迫っております。

 沖縄県内の非入所者数を明らかにしてください。

矢島政府参考人 国との基本合意に基づきます和解をするためには、裁判所に提訴し、裁判上の和解をする必要がありますが、このためには、非入所者がみずから裁判所に提訴していただく必要がございます。みずから申し出ていただかないと、厚生労働省として対象者数を把握することは困難な状況でございます。

 厚生労働省としては、裁判上の和解についてよく理解をしていただくため、沖縄県の協力もいただきながら、その周知に努めてまいりたいと考えております。

照屋委員 非入所者が名乗り上げづらいという状況があるのは、社会全体として、いまだハンセン病に対する偏見があるからではないでしょうか。

 ハンセン病への啓発活動をもっと充実、加速させるべきだと考えますが、三井大臣の所見をお聞かせください。

三井国務大臣 厚生労働省といたしましては、シンポジウムを毎年開催しているところでございまして、また、全国の全ての中学一年生にパンフレットを配付いたしております。国立ハンセン病資料館の活動を通しまして、ハンセン病に対する偏見をなくすための普及そして啓発に努めているところでございます。

 さらに、平成二十四年度からは、新たに全国十カ所の自治体で啓発活動に取り組むことにいたしておるところでございます。

照屋委員 大臣、沖縄愛楽園、宮古南静園を初め、全国のハンセン病療養所から、国家公務員の定数削減により、退職後の職員補充ができなくなっているとの悲痛な訴えが寄せられております。

 一方で、平成二十一年七月九日、本院において全会一致で採択された国立ハンセン病療養所における療養体制の充実に関する決議では、「入所者の実情に応じた定員の在り方及び療養体制の充実に万全を期すべき」としております。

 入所者にあっては、かなり高齢化しております。療養の質を維持向上させるためには人手が必要で、むしろ増員すべきだと考えますが、大臣の見解を伺います。

三井国務大臣 十月二十四日に、私も国立療養所であります多磨全生園を訪問させていただきました。今先生がおっしゃるとおりでございまして、職員の定員問題、入所者の皆様にとっても切実な思いを私もお聞きしてまいりました。

 そういう中で、国立ハンセン病療養所の定員問題につきましては、入所者の皆さんが、今御質問ありましたように、かなり御高齢になっておりますので、安心して療養生活を営むことができますよう、関係省庁と真摯に検討いたしまして、最大限努力していきたいと考えております。

照屋委員 三井大臣、沖縄には、沖縄愛楽園と宮古南静園という二つのハンセン病施設がございます。わけても、沖縄本島にある沖縄愛楽園は、あの悲惨な沖縄戦で二重、三重に爆撃を受けたり、苦しめられたり、特にアメリカの軍事支配のもとで、入所者は物すごい苦労をしておるんですね。私も、選挙区じゃありませんが、よく行くんです、入所者に会いに。私のお知り合いに、沖縄愛楽園に全盲の方もいらっしゃいます。九十歳を超えております。

 私がお願いをしたいのは、民主党政権になって、厚労大臣が一度も沖縄愛楽園、宮古南静園を訪ねていらっしゃらないんです。非常に残念に思います。私は何度か、忙しいのは承知をしているが、ぜひ愛楽園に足を運んで実情を視察していただきたい、こういうお願いをずっと申し上げてまいりました。

 沖縄愛楽園は、今、地域の皆さんとの交流も非常に活発になってまいりました。名護市を中心に、沖縄愛楽園の施設の入所者の環境整備充実を支えていこうという動きもございます。

 三井大臣、私は、やはり大臣が直接足を運んで、短い時間でもよろしゅうございますので、入所者を激励していただく、こういうことも大事だと思いますので、私から強く要望をいたしたいと思いますが、何か御意見があれば、どうぞ。

三井国務大臣 愛楽園と南静園もぜひ視察をさせていただきたいと思います。

 全生園を視察させていただきまして、資料館も見せていただきました。地元の皆さんと大変交流も深まっておりますし、また、私がえらく感動したことは、そこに保育園ができたということなんですね、その東村山の。ですから、そういうことの、子供さんとの触れ合いというのもえらく私は感動して帰ってまいりましたので、ぜひ愛楽園、南静園を訪問させていただきたい、このように思っております。

照屋委員 終わります。

長妻委員長 次に、柿澤未途君。

柿澤委員 みんなの党の柿澤未途でございます。

 三井大臣、御就任おめでとうございます。

 覚えていらっしゃると思いますけれども、私、数年前、都議会議員のころに、三井大臣に一つの案件を持ち込んだことがあります。精神科、心療内科における向精神薬の処方に関する問題です。

 当時、抗うつ剤として処方されていたリタリンについて、塩酸メチルフェニデートを成分として中枢神経興奮作用を持つ、要するに覚醒剤と同じものだということで、精神科や心療内科に通ってリタリンの処方を受けて、大量に服用して薬物依存に陥り、自殺や他害に及ぶ事例が相次いでいる、精神科受診でかえって薬物依存者を生み出している、こういう現状を何とかすべきだ、こういうふうに訴えました。

 欲しがる患者に大量のリタリンをばらまく、インターネットではリタリン販売所と呼ばれていた特に悪質な新宿区のクリニックの存在、これを都議会で指摘させていただいて、それを受けて東京都の立入調査が入るなどした結果、この問題に対する批判が高まって、リタリンの適用からうつが外されて、容易に入手できない、こういう薬になりました。あのとき、たしか民主党の部会にお邪魔したんだと思いますけれども、櫻井副大臣も御同席されていたかというふうに思います。

 これをきっかけに、私は、日本の精神医療に内在する問題について大変強い問題意識を持つようになりました。

 精神科、心療内科等において単剤処方が主流となる中で、日本では世界的に見て特異なまでの多剤大量処方が行われてきた、このように言われています。私が見た中では、一どきに十二種類もの向精神薬を二週間分ずつ、つまり、十二種類、一日三十四錠ずつ長期にわたって処方し続けている。これは調剤明細書がインターネット上で公開されているんですけれども、こういうものもありました。これは本当に異常な量だというふうに思います。

 日本の精神医療における薬物処方の多さは数字でも裏づけられつつありまして、例えば、抗不安薬や睡眠薬として使われるベンゾジアゼピン系の薬剤、これは長期に服用すると適量でも依存症状を来すと言われているものですけれども、国連の国際麻薬統制委員会の二〇一〇年の報告では、日本ではこのベンゾジアゼピン系の薬剤使用量がアメリカの六倍も多いということが報告、指摘されています。

 一昨年、二〇一〇年八月三日の厚生労働委員会において、自殺・うつ病等対策プロジェクトチームを省内に立ち上げて取り組んでおられる長妻厚労大臣に対して、この問題について質問をさせていただきました。そして、添付文書や適正量を踏み外したこのような多剤大量処方は、支払い審査機関におけるレセプトチェックを強化することで排除できるはずではないかということを申し上げました。

 その結果もあり、「過量服薬への取組」というのがまとめられて、向精神薬の処方に関する実態調査というものが行われて、一回の処方で抗不安薬または睡眠薬が三種類以上処方されている場合には、その必要性について十分な考慮が求められる、こういう趣旨の注意喚起が支払い審査機関に対してもなされることとなりました。これまで問題そのものの存在がほとんど認められてこなかったということと比べると、大変大きな前進だというふうに思っています。

 しかし、一方で、注意喚起は注意喚起にすぎないわけでありまして、実効が上がらなければ、これは意味がありません。しかも、同時に、向精神薬の処方に関する実態調査の報告では、レセプトを調べたところ、三種類以上のいわゆる多剤処方は、抗不安薬で一・九%、睡眠薬で六・一%にすぎなかったとも言っている。それほど問題はなかったと言っているようにもこれは聞こえるわけであります。

 三井厚労大臣にまずお聞きしたいと思うんですけれども、向精神薬の日本における処方のあり方について、現状はいかがだというふうに考えているか。おおむね適正に処方が行われているというふうに考えているのか、お伺いをしたい。また、この問題について厚労省がどのような取り組みを行ってきたのか、あわせてお伺いをしたいというふうに思います。

三井国務大臣 柿澤先生が都議会議員のときにいらしたことは、鮮明に記憶しております。

 今まさにお話がございましたように、向精神薬の大量処方については、これは私も大変問題ありと思っております。処方の状況を調べた調査結果によりますと、一部の患者で、多種類の薬剤が処方されているケースもたくさんございました。

 しかし、九割以上のケースで二種類以下の処方でありましたし、また、多種類の薬剤を処方されていても、患者の病状等により必要な場合もあると思いますし、一概に不適切とは言えないとも考えております。

 そこで、厚生労働省といたしましては、引き続き、医師や薬剤師に対して向精神薬に関する研修を行ったり、あるいは治療ガイドラインを作成するなどいたしまして、向精神薬の適切な処方を推進するための取り組みを現在行っているところでございます。

柿澤委員 九割は適正であったし、また、多剤処方といっても、患者の状況によってはこれは不適切とも言えない場合がある、こういうお話で、それはそうだろうなというふうにも思うわけですけれども、こうした取り組みが進められて、はて、実態が本当に変わってきているのかどうかということについて、いささか疑問を抱かせるような事例を最近お聞きしましたので、お話をさせていただきたいと思います。

 これはことしの話です。幻聴が聞こえるということで精神科を受診したというんですね。女性です。統合失調症ということで診断をされて、なかなか効かないということで薬を変えたりして治療を続けていた結果、一時は四種類の効果の異なる向精神薬を一日当たり十六錠処方され、しかも、精神を鎮静化する薬を二種類と、その副作用をおさめるためとして、精神の働きを不活発にするアセチルコリンを抑える薬、いわば、落ちつかせる薬と、どちらかといえば精神を上げる薬、同時に処方されるということになっていました。

 その結果どうなったか。呼吸が荒くなって行動が抑えられなくなり、奇声を発し、ばたっと倒れる、最終的には、救急で運ばれた病院でこれは薬が多過ぎますよということを言われて、今は自宅で減薬、断薬に取り組んでいる、こういうことだそうであります。

 これは、最も多いときは、CP換算、クロルプロマジン換算ですね、向精神薬の量をはかる一般的な指標ですけれども、このCP換算で七百五十ミリグラムの向精神薬を処方されていたというんです。錐体外路症状という筋緊張低下の症状があらわれるのが六百ミリグラム、どんなに多くても八百ミリグラムが限界と言われている中で、七百五十ミリグラムです。

 このような処方がやはり行われているんです。これは適正なものだというふうに思われるでしょうか。御答弁お願いします。

櫻井副大臣 現場で治療している人間の立場でちょっとお話をさせていただきたいと思います。

 私も、これは兼業禁止ですので誤解のないように申し上げますが、患者さんの御了解をいただいて今月で私は診療をやめますけれども、その中で、やはり、向精神薬を相当複数飲まれて私のところに来られた方もいらっしゃいます。千鳥足状態で、びっくりしたのは車を運転してきたということでして、もう二度と車を運転しないようにということをお願いいたしました。

 私がやったのは、減量を少しずつ行っていって、普通に歩けるようになり、ただし、必要だったのは何かというと、カウンセリングをきちんとやらなければいけないということなんです。残念ながら、しかし、カウンセリングを行うとなると、診療報酬点数上、とてもじゃないけれども病院経営が成り立たないという状況も、これまたしかりなんです。

 済みませんが、若干長くなって恐縮ですが、今、認知行動療法を行って幾らかというと、三十分以上カウンセリングをやって、やっと我々心療内科医は四千二百円の病院の収入になります。これは患者負担ではありません。これにプラス再診料です。ですから、一時間診療して約一万円程度の収入しかない。ですから、勢い薬物療法に頼らざるを得ないような状況になってきていることも、これは紛れもない事実でございます。

 ですから、治療者側からしてみると、今度は、薬を投じてみたけれども症状が改善しないので、そうするとまた今ある症状を抑え込まなければいけないということがあって、これで薬で治療してくるというような形で診療されている先生方も随分いっぱいいらっしゃいます。ですから、これを不適切な診療と言ってくるのかどうかというのは、個々の症例で見てみない限りはなかなか難しいところがあるのではないかと思っているんです。

 逆の例を御紹介したいと思いますが、私は基本的に余り薬を使うのは好みではありませんで、この人は、診療が終わって、過食症の治療も終わって、現在働いております。今は別な地域で働いていて、ぐあいが悪くなって向精神薬を結局は処方されて、本人はこう言っていましたが、私の考えは何も変わっていないんだけれども薬を飲んで非常によくなった、こういう例もございます。

 ですから、全てのものが、現場でやっていて全てが悪ではないし、それから効果のあるものもある、ただし、ここのところについてはさまざまな複合的な要因がある。

 それからもう一つは、日本の精神医療というんでしょうか、診療内科も含めてですが、もう少し本質的なところから考えてこないと、今の先生が御指摘、これは本当に大事な問題だと思いますが、根本的に解決できない点があるのではないかというふうに思っております。

梅村大臣政務官 今、クロルプロマジン換算で七百五十ミリが適正かどうかという御質問ですが、このクロルプロマジンの精神科領域における承認用法、用量は、一日五十ミリから四百五十ミリグラムです。年齢、症状により適宜増減ということにされていますから、この数字と単純に比べて多いか少ないかという判断でいえば、多いというカテゴリーに入ります。

 ただ、今副大臣からもお話ありましたように、これは個別のさまざまな関係がありますから、場合によってはこれを上回る処方をすることもあり得るということですから、この数字との大小を比べれば多いんですけれども、適正かどうかということについては、これは一概には判断できないものと思っております。個別の事案だと思います。

柿澤委員 櫻井副大臣には、数年前にお伺いをした際に非常に似たお話をいただいて、また、きょうの議論の、何となく結論というかコンクルージョンをいただいてしまったような感じもするんですけれども、しかし、本当に根深い問題だという認識を共有できたことは大きい。しかも、その方が厚生労働省で今副大臣をやっているということは大変大きなことだというふうに思います。

 さて、精神科受診者は三百万超というふうに推計されていまして、うつ病患者は、一九九九年の二十四万人から、二〇〇八年には七十万人台、それに伴い、同じ期間に、精神科や心療内科は二・四倍、開業数がふえています。そして、年間の自殺者数は、皆さん御存じのとおり、十四年間続けて三万人台ということになっているわけです。そんな中で、二〇一三年、来年には、精神保健福祉法の改正が予定をされている。

 心の健康の問題は、間違いなく重要な政策課題であり、また、精神医療も含めて適切に対処されなければいけないというふうに思いますが、早期介入、早期発見、早期治療、こう言われるように、早い段階での精神科受診を促していくことでこの問題を解決できるのか、精神科、心療内科等で行われている治療の実態も見ながら、私は、慎重に見ていかなければならない、こういう側面もあるのではないかというふうに思っております。

 繰り返し申し上げますが、先ほど櫻井副大臣もおっしゃったように、私は、適切な治療を受けることの重要性そのものを否定しているものではありません。このタイミングでこういう質問を投げかけようと思ったのは、もちろん、三井大臣、櫻井福大臣が御就任されたということもあるんですけれども、もう一つ、子供に対する向精神薬の処方のあり方が問題になりつつあるからです。

 ことし六月、ごらんになった方もいらっしゃると思いますが、NHKの「クローズアップ現代」で、「薬漬けになりたくない 向精神薬をのむ子ども」というのが放送されました。そこで放送されたのは、これは衝撃的とも言える実態でありました。

 発達障害という症状のある子供への向精神薬の処方が行われている。中枢神経の興奮を抑える抗精神病薬を三歳、四歳から処方していたという医師。睡眠障害を抑える向精神薬を一歳から二歳で投与した医師。小二で、学校で落ちつかないということで精神科の受診を勧められて向精神薬を投与され、だんだんだんだん能面のように表情をなくしていって、そして重い副作用に陥っていった、こういうケースもこの番組で放送されていました。

 精神及び行動の障害ということで精神科を受診している未成年の患者数は、平成二十年の調査で約十五万人、十年前に比べて倍増しています。不登校のような学校に通えない子供の実に七割が精神科を受診し、さらに、その七割が向精神薬を服用している、こういう数字もあります。

 国立精神・神経医療研究センターの中川栄二医師がこの番組でおっしゃられていましたが、向精神薬が子供の脳に与える影響は、長期的には全く解明されていない、慎重な投薬が必要なのではないか、こういうふうにおっしゃっていました。

 つい最近、十月も、岐阜県で日本脳炎ワクチンの予防接種を受けた十歳の男の子が急死した、こういう事例が起きました。この男の子が、発達障害と診断をされて、児童精神科から、自閉症の薬ピモジドと、抗うつ剤の塩酸セルトラリン、併用が禁忌されている薬を同時に処方されていたということがわかりました。これら二つを同時服用すると不整脈等により死に至る危険性がある、もちろん因果関係はわかりませんけれども、こういうことが添付文書に書いてあるということであります。それに加えて、抗精神病薬のアリピプラゾール、同時に三種類処方されていました。

 この塩酸セルトラリンとアリピプラゾールというのは、小児への使用が承認されていない向精神薬でもあります。これについて、処方した児童精神科医は、報道に対して、少量なら安全だと思った、こういうふうに語っているというわけであります。こうした現状が、今回、日本脳炎の接種を受けた直後の男児の死亡例ということに付随して明らかになりました。

 問題は、子供への向精神薬の処方の実態そのものもそもそも明らかではない、また、その処方がいかにあるべきかということについてのガイドラインも存在していない、こういう現状にあるのではないかと思います。そういった点で、私は、こうした子供への向精神薬の投与が進んでいる、そして、今回のような、これは因果関係は本当にわかりませんけれども、ちょっと私から見れば、はっきり言えば、この投薬が行き過ぎだったかは、因果関係を抜きにしても疑問だと思います、こうした事例も報じられている。

 こうした中で、やはり子供への向精神薬の処方実態について調査を行ってみる必要があるのではないかというふうに思います。御見解をお尋ね申し上げたいと思います。

梅村大臣政務官 今、調査とガイドラインというお話をいただきましたが、現時点では、児童青年期の精神疾患について、その診断、治療の標準化を図るためのガイドラインの作成に関する調査研究というのを行ってきております。

 この調査研究というのは、統合失調症あるいは気分障害などの診断、治療の標準化等についての研究を行っています。精神療法や薬物療法を含めた全体的な診断、治療法の確立というものを目指しているわけであります。

 一方、先生が今おっしゃいましたような薬物療法に特化した調査というのは、現時点で行っておりません。したがいまして、これは専門家の方の御意見もしっかり聞きながら、全体としてどのように対応が可能なのか、そのことについては検討していきたい、このように思っております。

柿澤委員 突っ込むようですけれども、全体としてどのようなことが可能なのか考えていきたいというのは、どういう意味ですか。(発言する者あり)

梅村大臣政務官 今、薬物に特化した御質問をいただきましたので、処方の実態の、そういうことも含めた、要は精神科領域の治療法でありますとか、これは薬物だけではありません、精神療法も入ってまいりますから、そういったもの全体を含めた対応について検討していきたい、そういう話でございます。

柿澤委員 委員の方からも、これは調べるべきだよという声が飛んでいる中でありますので、そこにはやはり処方実態の調査も含まれるというふうに理解をしていいでしょうか、しつこいですけれども。

櫻井副大臣 まず必要なことは一体何かというと、患者さんの分析なんだと思っているんです。要するに、必ずしも私は正しく診断されていない場合があるのではないのかと。

 つまり、基礎疾患があって、例えば、今出ていました統合失調症のような病気があって学校に行けなくなっているような人たちがどの程度いるのかどうかから始まって、それから、家族関係の悪化によって悩みを抱えていて学校に来られなくなるとか、それから、物の考え方が、前向き、後ろ向きという表現がいいかどうかわかりませんが、そういうことでなかなか学校に行けなくなっているような子とか。

 実際のことを言いますと、不登校といっても随分原因が違ってきております。その原因がまずきちんとはっきりした上で、次のステップとしてどういう治療を行ってくるのかということをやっていかないと、これはなかなか解決しない問題だと思っているんです。そのことを、現場でずっと治療をさせていただいていて、こういうプログラムをきちんとつくっていかないと、つまり、箱だけつくっても、ソフトがきちんとなっていかないと、今先生が御懸念されているような問題は解決していかないものだと思っているんです。

 ですから、そういう意味で、今は治療の方のお話がございましたが、治療の前に、まず今のようなことについてきちんと精査し、そして、今後、治療の全体的なあり方、薬だけではなくてカウンセリングも含め、しかもそのカウンセリングというのは、患者さん本人だけではなくて家族全体を含めてどういうふうな形でやっていくのかとか、そういうことをこれから調査もしなければいけないと思っていますし、それから、こういったことについての手当て、措置をどうするのかという研究もしていかなければいけないのではないか。

 済みませんが、これは現場で携わっている人間としての個人的な感想もございますが、私はそう感じているところでございます。

柿澤委員 お二人の御答弁をぜひ信頼して、これからの取り組みを期待したいというふうに思います。

 昨年の二月に、私、実は、今までは報道されていた、こんなことが報じられていたという話だったんですけれども、直接御家族からお話を聞く機会がありました。

 十五歳の娘さんを持っているお母さんですけれども、娘がADHDということで診断をされて、病院に行ったら即入院してくださいと言われた。九カ月後退院をしたんですけれども、その時点で、さっきのCP換算でいうと二千三百ミリグラムという異常な量の向精神薬を処方されていたというんですね。

 同じ会に集まられていた親御さんで、やはり子供がCP換算二千ミリグラム、こういう多剤大量処方を受けて副作用と離脱症状に悩まされた、こういう方々が実は何人も集まっていました。

 子供の状況を説明していただきましたが、ちょっと皆さんが聞いても胸が痛むような表現になりますけれども、目はうつろ、よだれを流して、廃人同然だった。それをお医者さんは、この子は薬の効かないタイプの子ですといって電気ショックを与える、こういうことをやっていた。これはおかしいといって家に連れて帰って、減薬、断薬に取り組んだけれども、治りかけても離脱症状で、真冬に水風呂に飛び込んで、裸で外に飛び出して、女の子ですよ、壁に頭を打ちつけて、血だらけで近所に飛び込んで、警察を呼んでください、こういうふうに叫ぶ、こういうことが完全に抜けるまで七年かかったということでした。

 実は、こうした事例に共通をしているのは、学校の担任の先生や養護教諭の勧めで精神科を受診している。つまり、学校が窓口になっていることなんです。しかも、向精神薬の服用で一旦問題行動が落ちついたりもしますので、意欲の低下や身体の硬直、認知機能の低下等、重い副作用があらわれても、学校の側は、落ちついていますから、これは副作用じゃないかと思うと家族が訴えても、できたらこのままの状態を維持してほしい、こういうふうに学校から頼まれるケースもあるんだそうです。

 不登校の子供が、例えば学校の養護教諭や保健室経由で精神科を受診し、処方された向精神薬等の副作用等で心身に重大な変調を来していく、こういう事例について今まで調べたケース、把握したケースがあれば教えてください。

梅村大臣政務官 御指摘のような形の調査というのは、これは事例としては行っておりません。

 今お話をお聞かせいただくと、本来、建前上は、これは副作用という扱いで情報が上がってくるという形なんでしょうが、さっきの答弁ともつながりますけれども、どういう形でこれに取り組んでいかなければいけないのかということについては、考えさせていただきたいと思います。

柿澤委員 一方で、児童養護施設においても、早期投薬によって症状を落ちつかせるかわりに向精神薬の重い副作用に陥る、こういう事例が見られるということであります。

 これは読売新聞の連載記事の精神医療ルネサンスで紹介されているケースですけれども、四国地方の児童養護施設に入所した兄弟が、入所後たった二週間で、行ってみたら、中学二年の兄がよだれを垂らし、また、小学六年の弟が失禁でズボンをぬらしていた。明らかに向精神薬の副作用で、面会に行った精神科医が、余りの変わりように愕然としたというのが報告をされています。

 この精神科医の方と私もちょっと直接話す機会がありましたが、児童養護施設において、こういう問題行動を抑えるために精神科の方の処方に従って向精神薬を投与する、こういうケースは結構あるんだそうです。

 こうしたことを行うことによって、かえって深刻な心の傷跡を子供に残して、子供の人生を台なしにしてしまう、こうしたことが児童養護施設でも起こっているんではないかというふうに思えますけれども、児童養護施設における処方の実態については、何か皆さん調べたことはあるでしょうか。

梅村大臣政務官 児童養護施設に特化した実態調査というのは行っておりません。

 これは御参考までというか、児童思春期の患者さん一般についてのデータを少し御紹介したいと思うんですが、これは発達障害を専門に診療する医師に対する使用薬剤に関するアンケートなんですけれども、この中で、薬物療法を行っている医師が七割です。その医師が使っている薬剤としては、向精神薬のリスペリドン、あるいはピモジド、それからADHD治療薬のメチルフェニデート、抗てんかん薬、睡眠薬であった、こういう報告はございます。

柿澤委員 長々いろいろと具体的な事例を紹介してきましたが、何が言いたいかというと、早期発見、早期治療というこれまでの目指してきた方向性が、本当に、心の病気の傾向を発症している、こうした子供も含めた人々を救うことになるのかどうか、そうならなければいけないけれども、現状の精神医療は本当にその方向性に合致しているのかどうかということを感じてしまうからであります。

 日本は自殺者三万人の、世界最悪の自殺大国だ、こういうふうに言われる一方で、自殺の原因の一つとされるうつ病等の精神疾患は早期受診、早期治療で治せる、うつ病は薬で治る等々、喧伝されてきました。しかし、一方で、精神科や心療内科で処方される向精神薬の多剤大量の服用が自殺を引き起こす原因にもなっているのではないか、こういう研究結果も出てきています。

 きょうは資料でお配りさせていただきましたが、これは一昨年の八月に長妻大臣に御質問させていただいたときのデータで、三百十七例の薬物関連の自殺のうち、二百八十九例までが、やはり処方薬の成分が検出をされているというケースであります。

 いずれにしても、こうしたことを踏まえて、裏面を見ていただくと、厚生労働省も、向精神薬の過量服薬によって自殺が引き起こされている可能性があるということを注意喚起しています。本当にこういう中で早期発見、早期治療というのが、心の病を、ある意味では日本全体で取り組んでいく上での有用なアプローチと言えるのかどうか、最後にぜひ厚生労働大臣の御見解を伺って、終わりたいと思います。

櫻井副大臣 大臣の前に一言だけ。

 例えば、不登校の子供さんでいうと、不登校ぎみのところで来ていただければ本当に早く治ります。ですから、私は、早期発見して、そしてもう一つ、先生の言葉どおり申し上げれば、適切な治療を行っていくのであれば、これは間違いなく有効だ、そう思っております。

 今の対応の仕方が果たして適切だったのかどうかという検証は、これから、今政務官もお答えしておりましたが、検討していく必要性があるのではないのか、そう思います。

 それから、例えば今度、がん対策で、がんの心のケア対策を行いますが、がんと診断された後に、これは外国の文献ですが、自殺の割合が十二・六倍にふえるというふうにも言われております。直後一週間です。ですから、そういう点でいうと、何かのことがあった際に早期に介入していくということは、私は有効ではないのかというふうに感じます。

三井国務大臣 うつ病に起因する自殺予防対策といたしましては、早期介入、それから今先生がおっしゃいました早期発見、早期治療のアプローチは大変有用と考えておりますし、そのためには、やはり適正な精神医療が行われることが必要だと思っております。

 また、早期治療を適切に行うためには、やはり医師の診断それから治療能力の向上に向けた研修等を充実させていきたい、このように考えております。

柿澤委員 時間も来ましたので終わりますが、大変バランスのとれた、よい御答弁をいただいたというふうに思います。このラインナップであれば、この野田内閣がちょっと長く続いてほしいなというような感じも持ちましたけれども、そうばかりも言ってはいられませんが、質問は終わらせていただきます。

 ありがとうございます。

長妻委員長 次に、谷畑孝君。

谷畑委員 日本維新の会の谷畑でございます。

 まず、三井大臣、御就任本当におめでとうございます。三井大臣とは、思い出せば、安倍総理のときに私が厚生労働の筆頭理事で、三井先生と毎日のように打ち合わせをして、いつ委員会を開くか、こういうことでありました。

 当時、民主党は、衆議院解散を前にして、政権を一回かえたらという、エネルギッシュで盛り上がっておったときでありました。今、長妻委員長、あの年金記録の問題から、失った記録、こういうことでこの厚生労働はもう沸きに沸いて、私どもは徹底的に攻められたわけであります。

 そういう状況の中で、安倍総理が終わり、そして二人の総理大臣を経て、麻生総理大臣によって解散をしたわけですけれども、大変な期待の中で解散をされて今日を迎えた、こういうふうに思います。

 私は、そういう意味では、そのころの三井さんと一緒に、やはり議会というのは野党のためにある、こういうことで先輩に教えていただき、私も、もう本当に足を運んでは、二人で協議をして、そして審議をして、一緒にやってきた、こういうように、今、大臣の顔を見て、そのころのことを思い出すわけであります。

 それで、大臣、この内閣がいつまで続くか、これは野田総理の腹一つだと思いますけれども、いずれにしても、歴史に残る大臣として思い切った仕事をしていただきたい。いいスタッフもたくさんおられます。

 政務官も、池田に住まれて、私は池田出身で、箕面の病院というのも、これも私の庭でございましたけれども、こうして頑張っておられて、皆本当に懐かしい方ばかりがおられます。

 それでは、次に、これまた大臣にひとつ聞きながら、感想があれば、また政務官含めて、副大臣含めて聞いていただきたいなと思うんです。

 私も、国会議員二十年を超えていく中で振り返ってみますと、私が参議院のころに、長い間の政権であった自由民主党が下野をして、そして細川内閣ができるという、そのときに私、予算委員会におりまして、この内閣をずっと見ておりました。

 そのころの世界は、ドイツではベルリンの壁がとれまして、東西が統合していくという時代でもありましたし、ソ連が崩壊する時代でもありました。非常に大きな時代の流れの、そういう状況の中で細川政権が誕生して、その状況を見てまいりました。しかし、そのときの政権も短命に終わったわけですけれども。

 今回の民主党の政権の、一回政権をかえたらというのは、そういう意味では、本格的な政権移行であったのではないか。

 私は、自由民主党でありましたけれども、選挙を戦いながら、敵ながら、やはり一回政権をかえるということも非常に大事じゃないか。そうして、多くの皆さんの意気込みを感じました。私どもも政治家として、非常に反省点というか、問題点というのを持ちながらの選挙でございました。だから、いわゆる戦略会議であったり、仕分けであったり、非常に斬新なことを感じました。しかも、マニフェストということであって。

 しかし、わずか三年で、もう今や選挙すれば百議席を切るんじゃないかというようなことが報じられて、わずか三年ですよ、あれだけ期待されたのが。私、本当にこれは大変なことだな。

 そこで、私が申し上げたいのは、次、来年の夏に解散があるのか、ことしにあるのか、それはわかりません、しかし、いずれにしたって、来年夏には我々の任期が来るわけです。

 その中で、次の選挙の中で、また今、自由民主党が政権につくのではないか、こう言われています。しかし、私は、民主党のこの三年間の政権を、いろいろな意味で、議員が党派を超えて、やはり何であったのかということをお互いがきちっと総括をしていかないと、日本の社会というのは本当にだめになってしまうんじゃないか。一番悪いのが政治だ、こう言われておるわけですから。だから、私は、この三年間の総括は非常に大事じゃないか、次の政権が誰になったとしてもと思うんですね。

 そこで、私も約十五年間、五回にわたって自由民主党の衆議院議員として活躍の場をいただきました。本当に私も、自由民主党を含めて、私を支えていただいた皆さんにも非常に心から感謝をしています。そして、今回、維新の会ということで参画することになりました。それは、私自身は、戦後六十七年の中で、やはり日本の政治システム、結局は民主党が、政権が潰れていくというのか、今これだけの支持率が低いというのも、大きな根本的な問題がやはりあるのではないか、それは六十七年間のシステムの大きな変革を我々がやらなきゃならぬのじゃないか、そういうことで、維新の会に参画をさせてもらったわけであります。

 そういうことを申し上げて、質問に入るんですけれども、しゃべりにくいかもわかりませんけれども、三年間における感想なり、もしもそれがあれば語っていただきたいと思います。なければ、また次に入りたい、こう思います。

三井国務大臣 当時が大変懐かしく思い出されます。谷畑先生は当時は与党の筆頭で、私は野党の筆頭でございました。あれはたしか社会保険庁改革のときでございましたけれども、本当に大変御無礼があったかと思いますけれども、お許しをいただきたいと思います。

 今の感想につきましては、私からあえて申し上げることはできませんが、とにかく、冒頭に先生から御発言がありましたように、厚生労働大臣を拝命いたしましたので、しっかりと厚生労働行政に取り組んでまいりたい、このように思っております。

 またいずれかの機会に先生といろいろなお話ができることを楽しみにしております。ありがとうございます。

谷畑委員 どうもありがとうございました。ぜひ体に留意されて、しっかりとまた頑張っていただきたいということを申し上げます。

 さて、iPS細胞の問題について質問いたします。

 山中伸弥教授、神戸大学の御卒業であり、京都大学の先生であり、ちょうど私の選挙区の八尾の隣町が東大阪というんですけれども、この東大阪のミシンの部品をつくっているもう本当にいわゆる中小企業の息子さんとしてこの山中先生が育てられて、そして今日のように生理学・医学賞のノーベル賞を受賞した。そういう意味では、中小企業の息子でしたということで、非常に私ども親しみを実は感じます。

 そして、この山中教授がこんなうれしいことを言っていますね、国の支援がなければ受賞できなかった、日本という国が受賞したんだと。うれしいことを言ってくれます。

 これはやはり日本国家としても、このiPSという細胞ができるということは、いかにして医学、もちろん難病等に対しても治っていく道筋ができていくだろうし、しかも臓器移植、臓器移植というのはこれは基本的には人の死を待つということにもつながりかねない、そういう意味では、自分の細胞から再生医療によって臓器を再生させていくという、これは本当にすばらしい状況のことだと思うんですね。

 それについて、まず大臣に、今回の受賞は、こういう医療とか機器とかあるいは薬だとか、そういうところに大きな展望が開けるような、そういう受賞であったと思いますので、大臣のそれに対する決意というのか感想を一言いただきましょう。

三井国務大臣 先生のお隣ということで、山中教授は御実家がたしかミシン会社の下請の会社でございましたか、そこから大変優秀な、画期的なiPSをつくられた先生がお出になったということ、本当に私たちも、山中先生に対しては、心から祝意とまた敬意を表したいと思っております。

 山中先生の言葉で、たくさん今お話がございましたけれども、私も、印象的な言葉は、希望を捨てずにという言葉が大変印象的に残っておりまして、再生医療、そしてまた難病の解決、それからまた創薬と、まさに画期的なことだと思いますので、そういう中で、私も本当に、この日本の、誇れる、まさに研究水準の高さを世界に示したものであると考えておりますし、同じ日本人といたしまして、本当に、大変誇りに思うとともに、多くの若者たちに大変夢と希望を与えた、こういうぐあいに思っております。

 いずれにしましても、これからが、再生医療の実用化に向けて、先ほども御答弁させていただいておりますけれども、倫理面、安全面の課題に留意しながら、より一層の取り組みを進めて、前へと進めていただきたいと思っておりますし、また、iPS細胞を用いた創薬についても重点的な支援をしてまいりたい、こういうぐあいに考えているところでございます。

 いずれにしましても、一刻も早く実現されることを、私たちとしても支援してまいりたい、こういうふうに思っております。

谷畑委員 三井大臣の方から、iPS細胞の持っている可能性に対して、それをいかにして実用化していくか、そういう決意が語られました。

 それで、少し本論に入っていきますと、医政局長にちょっとお聞きをいたします。

 政府は、この十月二十六日に、予備費四千億円、そのうち事業費が七千五百億円あるわけですが、それを活用して緊急経済対策を発表したわけでございます。その中で、iPS細胞による再生医療をはじめ世界トップレベルの研究開発の推進、そういうことで、iPS細胞を活用した再生医療の臨床研究の加速に二十億円、iPS細胞等の臨床研究の安全基盤緊急整備に十億円、そして、創薬支援ネットワーク等の緊急整備に八億円、合わせて三十八億円を計上した。

 今回の、この緊急経済対策の中でこれだけの額を投入した。これもノーベル賞効果だと思うんですけれども、これについて、まず、初めからそういう形で、初陣ということでこれを使われるんですけれども、このことに対する効果と、それから、どういうような状況がまた経済に対しても、緊急経済対策ですから、少しどういう効果が出てくるのか、そこらがもしもありましたら、医政局の方で、予算を計上したところの背景と、そういうことをちょっと教えていただきたい。

原(徳)政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘の点でございますけれども、今回の予備費につきましては、iPS細胞等の臨床研究の安全性基盤緊急整備としての十億円を予備費としては計上させていただいているところでございます。

 具体的には、この十億円の中で、移植に用いたヒトの幹細胞、これを長期間保管をしておく。再生医療というのはどういうことが起こるかわからない分野もありますので、長期間保存した後、移植から相当時間が経過した後に何かが起こったりとか、あるいは何かが起こらなくても構わないわけですけれども、そのときに、その保存しておいた移植に用いた幹細胞について、いろいろさかのぼって安全性の確認等ができるような、アーカイブ事業と言っておりますが、前倒しでそういう整備をしていこうとしているものでございます。

 これにつきましては、具体的には、例えば保存用の冷凍機器でありますとか、あるいは検査用のシークエンサーでありますとか、そのような機器についての整備を考えておりまして、関連する検査機器等の産業の振興に少しは役に立つというふうに考えているところでございます。

谷畑委員 これと関連をするんですけれども、技術総括審議官にお聞きします。

 これもこの間の本会議で、野田総理の所信表明の中でも出ておりましたけれども、医療イノベーションということで五カ年戦略ということで立てられて、これから医療における経済の成長戦略を推し進めていく、そういうように言われているわけでありますけれども、この五カ年戦略ということについて、解説なり、持っている意味を少しお聞きをしたい、こう思います。技術総括審議官、お願いいたします。

櫻井副大臣 先生御案内のとおり、今までですと、例えば基礎研究がありまして、その後、これは大体、主に大学とかそれからナショナルセンターでやっておりました。今度その技術を製品化していく中で、まず、官民の連携があって、そして次に民間企業が独自で開発し、そして臨床の治験になって、最終的にはPMDAの認可、大体、こういった一連の流れをとっているわけでございます。

 その中で、また、これまでは、日本の場合には研究者というのは、基礎研究には力を入れておりますが、これを商品化していこうという意識が非常に低かったと言っても過言ではないんだと思っています。そういう意味で、死の谷と言われているんですが、官と民とが連携していく、それからそれを民が持っていく、こういったところについて強化をしていきたいということです。

 その中で一番必要なことは何かというと、目ききでして、目ききが必要なんですね。今までも実は物質は見つけられているんですけれども、こういった見つけられた物質を海外の企業が持っていって、抗がん剤にして発売している、こういう実例もございます。

 そこで、何とかこの死の谷の部分を埋めたいということで、ネットワークを図っていきたいという、こういった取り組みを今させていただいているところでございます。

 さらに、最終的にはPMDAの認可になっていくわけですが、ここのPMDAのところも、これまでは、創薬の部分についてはある程度プロトコールも確立し、認可体制もでき上がってまいりましたが、医療機械の部分がまだまだ不十分である。それから再生医療については、どういう形で認可していくのかということがまだでき上がってきておりませんので、こういったプログラムのことについてもきちんと手当てをしていきたいというふうに思っております。

 例えば、ちょっと具体的な例を申し上げますと、京都大学でAKプロジェクトというのが今行われているんですが、これはアステラス製薬と京都大学が一緒になって創薬をやってきておりますが、これは今までと違って、研究をするということではなくて、最終ゴールは新しい薬をつくっていくという意識を持ってやっていって、かなり進んできていて、この成功例を見て、実は、ほかの武田薬品を初めとする三社が京都大学と連携してやることを進めてきております。

 それからCKプロジェクトというのもございまして、これはキヤノンと京都大学が組んで、やはり同じようなことをやっているんです。

 ですから、こういった先進的な取り組みで非常にうまくいっているものがあるものですから、そういったことを今度はナショナルセンターでも行っていきたい、そういったことに対して、四百十一億円、今予算要求をさせていただいていて、これを何とか日本の再生の切り札の一つにさせていただきたいということで取り組ませていただいているところでございます。

谷畑委員 櫻井副大臣の、非常に専門的で、しかも説得力のあるお話をいただいて、安心をするわけであります。

 私どももいつも思うんですけれども、私も年に一回胃カメラをのみに行くわけですけれども、それでいつも安心をしたりするわけですけれども、もともと、胃カメラも日本人がつくり上げた。それと、日本の今日のこういう、レンズであるとかこういう機械というのか、精密機械をつくるのも非常に得意なジャンルだし、にもかかわらず、なぜ医療機器がもっと日本製品として世界に輸出、圧倒的に日本が勝っていく、そういう話は余り聞かない。逆に、まだ輸入を日本がしているというような話を聞く。だから、それは一体どこに問題があるのかなと、いつもそう思うんです。

 それともう一つ、なぜそう思うかというと、もともと大阪というのは、パナソニック、松下含めて家電で大きく景気を引っ張っていったというか豊かにしたと思うんですね。それから次は、自動車含めて日本の得意ジャンルであった。残念ながら、家電も、今やパナソニックもシャープもがたがたになって、大量の失業者というか解雇をしなきゃならぬという状況になっている。

 そういう意味では、私どもはやはり、これから日本は、そういう付加価値のつくもの、医療機械であったり薬であったり、そういうものを非常に大きく飛躍的に発展させなきゃならぬ。そのための、ノーベル賞をもらった山中先生、これを引き金にしながら、追い風にしていく必要があるんじゃないか、こう思うんですね。

 そこで、こういうような記事、この間の産経新聞ですか、経済産業省がiPSの企業参加を促進させていくという記事が出ておりました。もちろん、日本の国家だけで、いわゆる研究費だけで賄っていくわけじゃありませんから、やはり民間の企業もいろいろ入れたりして、これがあらゆるジャンルから発展していくということが非常に大事だと思うんですね。

 その中で、この記事の中で、現在、世界で再生医療機器関連技術の実用化が進むが、日本は法規制などがネックとなって出おくれておる、産業省によると、人工皮膚など再生医療関連の製品はことし五月末の時点で、韓国が十三製品、アメリカが九製品実用化している、日本はたった一つだと、例でこう言っておるんですね。

 だから、これは結局は、研究はこれから進むかもわからないけれども、実態に即した、それが実用化していくということ、機械だったり薬だったり、それが法規制という、薬事法とかいろいろと含めて、そういうことがここに書かれてあるんですけれども、ここを、我々もよくわからない世界なんだけれども、一体、厚生労働省で、もちろん命を守るために治験だとかいろいろなことが大事なんだけれども、どういうことを、我々はここを乗り越えて、イノベーションが発展をしていく、そういう道筋をどうつけていくのか。

 ここは、三井大臣なりあるいは副大臣なり、ひとつ力強い決意なり方向性を教えていただきたい。

櫻井副大臣 まず、前段の医療機械のことについて少し説明させていただきたいと思います。

 日本の場合には、リスクをとらずに、診断用の機械だけは発達してまいりました。例えばCTとかMRIがその典型でございます。治療用の医療機械、例えばペースメーカーなどは、残念ながら日本で開発されてこなかった。これはなぜかというと、相当リスクが高くて、例えば、ペースメーカーがとまって人が亡くなった場合には企業としてのブランドイメージが落ちてしまうものですから、なかなか手を出しにくい面もございました。

 アメリカはどうしているかというと、ジョンソン・エンド・ジョンソンなど大きな会社がありますが、基本的には、ベンチャー企業が開発して、そのベンチャー企業が何年か市場で売った上で安全だと確認した場合に、大きな会社が買い取って自社のノウハウを足して新しく売り出してくる、こういうようなシステムになってきていて、まだ日本はベンチャー企業を育成するようなファンドがない。

 それから、ファンドだけではなくて、ファンドがあったとしても、こういったところに対して投資をすれば実用可能になっていくであろうという目ききがいない、まずこの点が一番大きな問題なのかと思っています。

 その次に、治験を行っていく上においてなんですが、アメリカの場合には、無保険者が四千六百万人もおります。そうすると、何でもいいのでとにかく医療にアクセスするためには治験者になりますという方が随分いらっしゃいますが、日本は公的皆保険制度が整備されているので、結果的には、治験者になるよりは、安全になってから参加していきたいと。それから、医者の数も全然違っておりまして、治験を行ってくる医者の数がまた少ない、こういったことがございます。

 それから、最後にPMDAのところでは、結局、薬事法でしたから医療機械の認可をする人たちが本当に少なくて、今一生懸命ふやしている最中ですが、それでも少ない。こういったことがあってなかなか進んでいかなかったという実態がございます。

 それから、再生医療に関しては、実際のことを申し上げると、なかなかルールがまだ十分にでき上がっていなかった。

 例えば、先ほどTWInsの話がございましたけれども、岡野先生が開発された細胞シートで、本当は、角膜上皮の移植などをやらずに、彼の技術を使ってくると失明しないで済むような方々もいらっしゃるんですが、残念ながら、これもフランスに行って今治験を行っている、そういう状況です。ここは、先生が御指摘あったように、規制の問題でして、規制の問題というよりも、あの当時はルールがなかった。

 それから、もう一つ再生医療に関して言うと、その細胞シートは岡野先生たちのグループが中心になってやっていて、ほかの先生方が評価できるかというと、必ずしもそうなってきていない。そうすると、自分でつくって自分で審査するということになると、本当にこれでいいのかということになるわけです。現在、それを問題解決するために、PMDAの職員が岡野先生のところに行って勉強するなどして、認可体制を整備させていただいています。

 あとは、最終的には、この法律、これは議員立法の動きもございますけれども、薬事法で全体的に見ていくことにしていくのか、それとも新たなる法律をつくって進めていくようにするのか、これは国会で御議論をいただくことだと思っておりまして、でき得れば、こういった問題は党派を超えて多くの皆さんと議論をさせていただいて、なるべく早くに推進できるようにしていきたい、そう考えているところでございます。

谷畑委員 もう少し質問をしたいところでありますけれども、もう時間ですので終わりにしていきたいと思います。

 最後に、再生医療にしたって医療機械にしたって、これは厚生労働省だけではいかぬ問題があるので、文部科学省なり、そういう意味では、現政権の戦略会議というんですか、いろいろ含めて、省庁の壁を越えて、そういう中でやはり進んでほしいし、その中で、規制をどこまで取っ払っていくのかということも、ここもやはり、相当いろいろと綿密にお互いの専門家同士が協議しながら進めていかなきゃいかぬと思って、これには相当な力が要ると思います。今副大臣おっしゃったように、これは超党派議員も含めて、大きな力でそれを進めていく必要があるんじゃないか。

 聞きますと、坂口先生だとか鴨下先生だとか、そういう再生医療の議連というものを立ち上げたということでもありますし、ぜひそこらは、最後に、大臣なり副大臣なり、垣根を越えた全体的な状況でどう推し進められるか、規制をどう突破していくか、そこらの点も含めて最後にお聞きをして終わりにします。ありがとうございました。

三井国務大臣 大変貴重な御意見、ありがとうございました。

 私どもとしましては、今櫻井副大臣からもお話がございましたけれども、医療イノベーションは、まさに政府が一体になって取り組む問題だと思っておりますし、また、我々医療を担当する厚生労働省といたしましても、最先端の医療の実現に向けて、目指しまして、しっかりと積極的に取り組んでまいりたい、こういうぐあいに思っております。

 ありがとうございました。

谷畑委員 終わります。ありがとうございました。

長妻委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時五十八分散会


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