衆議院

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第6号 平成25年4月3日(水曜日)

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平成二十五年四月三日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 松本  純君

   理事 上川 陽子君 理事 高鳥 修一君

   理事 棚橋 泰文君 理事 冨岡  勉君

   理事 西川 京子君 理事 山井 和則君

   理事 上野ひろし君 理事 古屋 範子君

      赤枝 恒雄君    今枝宗一郎君

      大串 正樹君    金子 恵美君

      小松  裕君    古賀  篤君

      白須賀貴樹君    新谷 正義君

      田中 英之君    田畑 裕明君

      高橋ひなこ君  とかしきなおみ君

      豊田真由子君    中川 俊直君

      永山 文雄君    丹羽 雄哉君

      野中  厚君    船橋 利実君

      堀内 詔子君    三ッ林裕巳君

      村井 英樹君    山下 貴司君

      大西 健介君    古川 元久君

      柚木 道義君    横路 孝弘君

      足立 康史君    伊東 信久君

      新原 秀人君    宮沢 隆仁君

      伊佐 進一君    輿水 恵一君

      柏倉 祐司君    中島 克仁君

      高橋千鶴子君    阿部 知子君

    …………………………………

   厚生労働大臣       田村 憲久君

   内閣府副大臣       西村 康稔君

   厚生労働副大臣      桝屋 敬悟君

   厚生労働副大臣      秋葉 賢也君

   総務大臣政務官

   兼内閣府大臣政務官    北村 茂男君

   厚生労働大臣政務官  とかしきなおみ君

   厚生労働大臣政務官    丸川 珠代君

   政府参考人

   (総務省大臣官房審議官) 平嶋 彰英君

   政府参考人

   (厚生労働省医政局長)  原  徳壽君

   政府参考人

   (厚生労働省健康局長)  矢島 鉄也君

   政府参考人

   (厚生労働省職業安定局高齢・障害者雇用対策部長) 小川  誠君

   政府参考人

   (厚生労働省保険局長)  木倉 敬之君

   政府参考人

   (厚生労働省年金局長)  香取 照幸君

   厚生労働委員会専門員   中尾 淳子君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月三日

 辞任         補欠選任

  新谷 正義君     野中  厚君

同日

 辞任         補欠選任

  野中  厚君     新谷 正義君

    ―――――――――――――

四月二日

 健康保険法等の一部を改正する法律案(内閣提出第一八号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 健康保険法等の一部を改正する法律案(内閣提出第一八号)

 厚生労働関係の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――

松本委員長 これより会議を開きます。

 厚生労働関係の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として総務省大臣官房審議官平嶋彰英君、厚生労働省医政局長原徳壽君、健康局長矢島鉄也君、職業安定局高齢・障害者雇用対策部長小川誠君、保険局長木倉敬之君、年金局長香取照幸君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

松本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

松本委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。柚木道義君。

柚木委員 おはようございます。民主党の柚木道義でございます。

 きょうは、厚生労働大臣初め厚労省の皆様に加えまして、内閣府から西村副大臣にもお越しいただきまして、ありがとうございます。よろしくお願いいたします。

 実は、田村大臣、西村副大臣、それぞれ超党派で、医療産業懇話会、その後の健康政策研究会、そして、けさ読売新聞の一面にも大きく出ていましたが、日本版NIHの創設、まさに我々の政権時代から、そういう意味では、政権がかわろうがどうであろうが、しっかりとこの分野を進めていく、こういう流れについては、私も歓迎しておりますし、応援させていただけるところはしっかりと応援をしてまいりたいと思っております。

 ただ、きょうのテーマである、これは、きのうの衆議院予算委員会でも安倍総理と長妻委員のやりとりもありましたが、労働者を、働く皆さんを解雇する際の金銭解決制度。私は、確かに、金融緩和によるアベノミクス、いろいろな意味で、その後の二本目、三本目の矢がしっかりと放たれることを前提に、あるいは財政再建のスキームがしっかりとされることを前提に、私自身は一定の支持をしているつもりなんですが、しかし、この労働規制緩和、しかも、この間の総理答弁が二転三転しているとの印象を正直持っています。

 私は、これはまさにアベノルールだと。安倍さん独自が御自分の中でイメージされているルールであって、この後、質問の中で明確にさせていただきますが、この間の労政審での議論、あるいは労働法制上の議論、率直に申し上げまして、田村大臣の御認識も含めて、私は非常に問題があると思っているんですね。ぜひ、こういった点について私は強く再考を求めていきたいと思っていますし、そういった観点から質問をさせていただきたいと思っているんですね。

 ちなみに、今、こういう議論が、アベノミクスで暖かい春を迎えると思いきや、突然のように、産業競争力会議、日本経済再生本部、そういった中で次々と議論が始まってきているということで、認識としては、そもそも今、新年度になって、値上げの春とまで言われているわけですよね。円安による原材料価格の高騰、そして新年度からの電気料金、ガス料金アップ、あるいは小麦や食用油、ティッシュペーパー、トイレットペーパーなどの生活費の負担増、生活者や事業者を直撃し、さらに言えば、中小企業円滑化法の期限切れで資金繰りに苦しむ中小零細企業の、ともすれば倒産や失業者の増大などが懸念されている。

 こういう中で、まさに首切り法案とか、あるいは、きょうも議論しますが、残業代ゼロ法案、過労死促進法案などといって、二〇〇六年、第一次安倍政権の発足時に、これはお蔵入りとなってしまったホワイトカラーエグゼンプション、こういったことなどが次から次へと今議論が始まって、これが現実化してしまえば、私は、文字どおり、アベノミクスが、アベノリスクが顕在化になってしまう、こういう強い懸念を持っておるわけでございます。

 そこで、昨日の衆議院の予算委員会で、長妻委員への答弁、安倍総理が、三月二十八日の、山井委員はどこかへ行っちゃいましたね、山井委員とのやりとりで、これは皆さん、私も、本当にこの答弁の二転三転ぶりには非常に驚いているんですね。

 つまり、きのうの安倍総理の予算委員会での答弁、これまでは、山井委員から事後型の金銭解決制度を三度も四度も聞かれて、絶対にやりません、そういうような御答弁から、昨日の総理答弁は、解雇無効となった場合に、事後的に金銭の支払いにより労働契約の解除を申し立てる制度については、否定をしていないという答弁に変わっているわけですね。長妻委員は、この総理の答弁を、ちょっと変えた御答弁だと言われましたが、私に言わせれば、これはもう大転換の答弁なんですね。

 なおかつ、これだけ勤労者の人生を左右する大問題について、山井委員から何度も何度も確認をされて否定された事後の金銭解雇の導入検討を、私は、この間の議論、きのうの答弁も、注意深く総理の御答弁を拝聴しておりました。原稿を見ながら、非常に丁寧にきのうは答弁されたんですね。率直に申し上げまして、私は、最初の三月二十八日の時点で、安倍総理御自身も、事前型、事後型なども含める、この後、私はこの金銭解雇制度の定義について申し上げたいんですが、十分に御理解をされないままに御答弁をされていたのではないか。

 私は、本当に、働く方やその御家族の人生を台なしにしかねないような、こういった制度への余りに浅はかな総理の御認識について、強い憤りを覚えると同時に、悲しみすら覚えるわけでございます。

 さて、田村大臣、大臣は、実はこういう認識でいらっしゃるんですね。事後の金銭解雇というのは契約の解除、解消であって、解雇とは違うんだと。これは、四月一日の予算委員会で、中根委員に答弁されているんですね。

 確かに、解雇には、懲戒解雇、普通解雇、整理解雇とあるわけでございますが、これに、事前金銭支払い型の解雇、あるいは事後の金銭支払い型の解雇、それぞれ事前か事後か、あえて言えばこういうような説明ができるのかもしれません。

 実は、私もいろいろ確認をさせていただきました。労働法制上の専門家のお話も聞きました。あるいは、ここの部分については、幾つかの労働法制、労働契約法制の本も何冊か取り寄せて、この該当する箇所を読んでみました。そして、専門家の御意見も伺う中で、実は、事前は解雇だけれども事後は解雇でないなどという話は、労働法学上も全くあり得ない議論で、これまでの労政審での審議でも、まさに田村大臣が言われる事後型のことを、解雇の金銭制度解決あるいは金銭的解決制度と言っているのでありまして、これが解雇法制の問題であることは常識だ、こういうことでございます。

 田村大臣が、一日の予算委員会の中根委員への御答弁で、この事後型の金銭解決制度をなぜ首切り法案だと言われるのか、私には理解できませんと答弁されているんですけれども、私には、むしろ田村大臣の認識の方がよほど理解できないわけでございます。

 そこで、伺いますが、このまさに解雇の金銭解決、事後のことを言っているという認識の中で、大臣の認識がどうであるか、私はそこを聞きたいのではなくて、この事後型の金銭解決制度の導入を検討するという認識でよろしいんですか。

田村国務大臣 まず、足元の物価でありますが、二月は、消費者物価はマイナスでございました。いろいろなものが上がっておるという話はありますけれども、二月の消費者物価はまだマイナスだということを申し上げます。

 それから、総理が認識しておられたかどうかというのは、私は認識されておられたというふうに思っておりますが、そもそも、山井委員が、事後に関する解雇における金銭解決であるということは一切言われておりません。事後などということは一切言われておりません。事前、事後は、山井委員もどちらとは言われていないんです。

 そして、その上で、解雇の金銭解決。解雇とは、これは、使用者が一方的に、言うなれば労働契約を将来に向かって解除すること、こういうふうな定義になっております。

 その上で、解雇の金銭解決では……(発言する者あり)お聞きください。これは、解雇紛争における金銭解決という、本来そういう意味を通称解雇の金銭解決ということでおっしゃっておられる。これは、書かれた先生にお聞きをいただければ結構だと思います。解雇紛争における金銭解決であります。

 なぜならば、解雇というものが無効になっているわけでありまして、無効になったものに対して、世界じゅう見ても、これは、要するに、基本的に、労働者の側から金銭解決を申し入れた場合に対してそれが適用される、これが世界の趨勢であります。一部、ドイツ、イタリアではありますが、それも限定的に、企業側、使用者側が金銭解決を申し出る場合には、これは非常に制約的にしか言えないというふうになっておりますので、労働者側から言うとすれば、金銭解決したくないと言えば、それは金銭解決にならないわけでありますから、何ら首切りでもないわけであります。

 でありますから、私は、これがなぜ首切り法なのかよくわからないというふうなことを申し上げておるわけでございまして、そこは御理解をいただきたいと思いますし、重ねて申し上げますけれども、もともと、山井委員も事後なんて一言も言っていないんです。言っていない中において総理に聞かれれば、総理は、解雇における金銭解決というのは、要するに、解雇であれば、それは事前だという意味でしょうから、そんなことは、私が申し上げた初めの説明を聞いていなかったんですよ、山井委員が。私が初めに御説明をしたときに、長妻筆頭理事がわあっと私に対して、田村さん、そんなことは言っていない、あなたには聞いていないんだなんということを言われて、委員も聞いていなかったんです、私の初めの説明を。だから、わからなかったんだと思いますよ。

 それで、総理は、田村さんの言われたとおり、そういうことじゃないんだということは、私は、事前に関してはそんなものは世界ではありませんということを説明しておったわけですから、田村さんの言うとおりということは、総理は事前における金銭解決のことを言っておられるわけでございまして、何ら、私と総理の間には、発言に対するそごはないというふうに私は認識いたしております。

 最後に、事後の金銭解決に対しての私の認識でありますが、いろいろな議論が、それは官邸の会議の中においてはされます。それは、民間の有識者の方々がいろいろな議論をされる、そういう意味での会議をつくったわけでありますから。しかし一方で、私は労働者の権利を守る立場でありますから、その立場から、その会議でもいろいろな私の考えを申し上げている、厚生労働省としての考えを申し上げております。

 その上で、どういう結果になるかはわかりませんが、いずれにしても、勝手にあそこの政府の会議では物事は決まらないんですよ。そこでいただいた意見も含めて、これは労働政策審議会でしっかりと答申なり建議をいただいた上で、最終的に、それをもとに私が判断する話でございますから、一方的な意見だけが通るような話じゃありません。労働者側の御意見もしっかりとお伺いした上で最終決断をする話でございますので、その点は御理解をいただきたいというふうに思います。

柚木委員 私は冒頭にも、こういう、まさに今のような御理解がタムラルールあるいはアベノルールだと。本当に、前提に立っているところが違うと議論はかみ合わないわけで、私は、そういう認識でこの金銭解決の制度についての議論を進められるということは、非常に危惧します。私は認識は全く違いますし、認めるわけにはいきません。

 その前提で、私はさらに申し上げますけれども、今ドイツの例とかも言われましたが、実はドイツでは、この金銭解決制度というのはほとんど機能していない。なぜならば、そもそもドイツでは、解雇事件というのは、労働裁判所で、実質審理に入る前に和解の弁論法廷が開かれていて、一定の金銭による即決の和解が行われることが通常化しているため、最後まで解雇の有効性を争うこと自体が少ない。

 こういうような背景もある中で、百歩、千歩譲って、そういう理解でおられるとして、私はそういう理解に立てませんが、仮にこういうような制度が導入されたとして、今わからないと言われたけれども、わからないでは困るんですね。仮に導入されたら、私は、結局は、たとえ不当解雇とされる場合であっても、では、お金さえ払えば結果的には解雇できることになってしまうという問題が起こる、このことを懸念するんですよ。

 だから、たとえ契約解消という用語で、私はこれは詭弁だと思いますが、問題の発生が、解雇という使用者の行為、そこに起点がある以上、私はこのことが解雇問題であることは明々白々であると思いますが、こういう制度が導入されたときに、では、大臣、お金さえ払えば簡単に首切りできることになってしまうような風潮が広がることを私は本当に恐れていますが、そういう問題は起こらないと断言できますか。

田村国務大臣 今も、和解という話でございましたでしょう、ドイツ。和解なんですよ。ですから、お金を払って、はい、さようならという話ではないわけでございまして、そこは和解をしなきゃならない。

 それは、その労働者側が和解しなかったら、解決しませんよね。和解というのはそういうルールですよ。そんなことは当たり前の話でございまして、和解という意味でございますから、そこで労働者側がのまなければ、その後、裁判になるわけでございまして、そんなことは明々白々の話だと思います。

 さらに申し上げれば、私の立場は、先ほど来申し上げておりますとおり、労働者を守る立場で私は物を申し上げておるわけでございまして、その点は御理解をいただきたいというふうに思います。

柚木委員 労働者を守るとおっしゃるのであれば、では、きょう西村副大臣にもお越しいただいていますが、この日本経済再生本部の産業競争力会議で、本当に、働く方の代表というような方が入っていない、そういうようなことも含めて、この会議で金銭解雇ルールを仮に法定化すべきという答申が出てきても、大臣が所管する労政審が、この解雇ルールについては、これは導入しない、そういうように答申を押し返すことが可能なんですか、大臣。

田村国務大臣 労働政策全般、労働政策審議会でしっかりと御議論いただくという一応ルールになっておりますでしょう。ですから、そこで、やっちゃいけないというような答申をいただいて、それを振り切って私がやるというのは、かなり難しい話であろうというふうに思いますね。

柚木委員 では、大臣が言っているように、働く皆さんの立場に立ってというのは、どこで担保されるんですか。私は、この産業競争力会議、そもそも、さっき言ったように、働く立場の方の代表の方が入ってとか、あるいは、もっと言うと、厚生労働行政の代表である田村大臣も入って、そこの中で議論されて出てくるものならまだしも、そこに入っていなくて、なおかつ、そこで出た答申を、では、労政審でしっかり受けとめてやって、打ち返すことができないというのであれば、どうやって働く皆さんの立場を担保するんですか。

 私は、こういう認識のままこの首切り法案導入への議論が進むようなことであっては、せっかく、アベノミクスで株価が上がる、円安、デフレからの脱却、そういう中で、この労働規制緩和という、恐縮ですが、独善的、恣意的なアベノルールが導入されることで、本当に、今、新年度から、中小企業の倒産、それに伴う失業者の増大が懸念されている中で、こういう制度が導入されて、どうやって景気回復、あるいはその先の財政再建、社会保障の安定化が実現できるのか、本当にそういう認識ですよ。

 それで、もう一つ、ホワイトカラーエグゼンプション、これも、残業代ゼロ法案とか過労死促進法案とか、まさに二〇〇六年の第一次安倍政権でお蔵入りになったこの法案が、今回、産業競争力会議で、楽天の三木谷さんとかローソンの新浪さんとかいった方が民間議員に入られて、こういう議論が提案されるということですけれども、西村副大臣、そういう提案があったというのは事実ですか。

西村副大臣 お答え申し上げます。

 今御指摘のいわゆるホワイトカラーエグゼンプションですけれども、産業競争力会議に民間議員から資料が提出されるわけですけれども、その資料の中には記載がございます。

 ただ、三月十五日に、雇用制度改革について第四回の産業競争力会議が開かれましたけれども、その中では、失業なき労働移動とか、民間人材ビジネスの活用によるマッチング機能強化などの重点項目について議論が行われまして、特段、ホワイトカラーエグゼンプション、いわゆるこうした制度についての議論が行われたわけではございません。

柚木委員 ペーパーには出ているということで、私も財務政務官時代に、財政審でまさに資料提出があって、これは確認しましたよ。資料提出があったこと、それから審議会で発言したこと、この重みは同じだと。きのうの問取りでも確認していますよ。資料提出があったということは、まさに発言したと同等の提案をしたことになる、そういう理解ですよ。

 今後、本当にようやく景気回復に向けて一歩を踏み出そうとしている、そういう中で、まさに過労死促進法案とまで言われる、平均年収、それ以上の方がほとんど対象になり得るんじゃないかと言われるような、それによって本当にかなりの可処分所得が減少する、三割ぐらいが。これがいいか悪いかは別として、本当に、時間外労働も含めて現場で頑張っている方々、こういうような方々の汗を踏みにじることになるような、こういう法案を導入するという議論自体が、しかも、先ほどの首切り法案を含めて、十分な受け皿整備、成熟産業から成長産業へと言われる、その背景は何かと、きのう私もいろいろ調べましたよ。いろいろな制度が考えられている。

 しかし、まだまだこれからの議論ですよ。受け皿整備もこれから。そして、まさに、職業訓練を含む働く方々へのサポート、移動支援、こういうものも本当に、予算はついているけれども、まだまだこれから。こういうような状況の中で、金銭解決とか、あるいはこの残業代ゼロ法案とか、こういうものの議論がどんどん先行してくるということが、私はあってはならないと思うんですね。

 田村大臣、このホワイトカラーエグゼンプション、産業競争力会議が答申を出してきても、きのう厚労省の方とも問取りでやりとりしましたよ。労政審で、労使双方がいる場所で、労使双方が納得する形でないと、このホワイトカラーエグゼンプションは導入しない、そういうふうに厚労省は認識していると言われましたが、大臣、そういう認識でよろしいですか。

田村国務大臣 柚木委員、先ほども申し上げましたけれども、事後の金銭解決に関しましても……(発言する者あり)何をおっしゃっているのかよくわかりませんが、今のホワイトカラーエグゼンプションにしても、産業競争力会議でいろいろな御議論をいただくというのは、民間の委員の方々にそこで自由闊達な議論をいただくわけでありますから、いろいろな発想のもとにおいていただくんだと思います。

 そのもとにおいて、労働政策に関しては、所管は厚生労働省でございますから、当然、労働政策審議会にかけるわけであります。そこで、建議になるか、かけた場合には、多分答申という話になるのでありましょうけれども、いただく中において、そこで明確に、これは労使とも結論としてだめだという話を、私、大臣がそれをひっくり返すということはなかなか難しいということは御理解をいただいていると思います。

 ですから、先ほど来、何か、産業競争力会議で決まったらもう即決まりだみたいな、そんな御発言でありますけれども、最終的には、労政審を通して厚生労働省が結論を出すわけでございますから、そこは御理解をいただきたいというふうに申し上げておるわけであります。(柚木委員「労政審で……」と呼ぶ)

松本委員長 ちょっと待ってください。指名を待ってください。(柚木委員「はい、早目にお願いします」と呼ぶ)着席するのを待ちますので、お待ちいただきます。

 柚木君。

柚木委員 労使双方が労政審で、では、ちゃんと納得する形に、まあ、私はならないと思っているんですね。ならないと、これは労政審での議論がまとまったということになりませんから。それはそういう理解でよろしいですか。

田村国務大臣 今までいただいております答申、建議等々の書きぶり等々はございますけれども、基本的な認識としては、そういうような方向性に対して、いたし方がないというか、そういうようなお考えでまとまればですよ。

 それは、いろいろと双方考えはありますよ。考えはありますけれども、まあまあ、ここら辺でいたし方がないな、ただし、それに対してはこういうような意見は述べますというようなことのもとで法律化してきた事項はありますから、そのような常識的な線の中でおまとめをいただければ、それは法律になるかもわかりませんし、まとまらなければ、ならないということになるんだというふうに思います。

柚木委員 まとまらなければ法律にならないということですね。

 では、西村副大臣、そういうような、厚生労働省の労政審でまとまらなかった場合に、そういう労政審の結論を、これは内閣府としても労政審の判断を尊重するということでよろしいですか。

西村副大臣 産業競争力会議は民間のメンバーもおられて、さまざまな議論、さまざまな意見がなされますけれども、その場には、雇用の問題を議論するときには田村大臣にも来ていただいて、何も一方的な議論で結論を出すということではありませんので、そこでしっかり議論をして、それも踏まえつつ、田村大臣初め厚生労働省初め関係省庁としっかり議論をして方向性を出すということであります。

 いずれにしましても、やはり国民に幅広く理解していただける、納得いただける制度を目指して議論をしていきたいというふうに思っております。

柚木委員 納得いただける議論ということは、私は、この制度は導入されることにはならないという理解でおりますので、そこはしっかりと、今後、働く皆さんの立場、これは総理も答弁されていますから、頼みます、本当にお願いします。

 もう一つ、安倍総理はきのうも日本経済再生本部の会合の中で、成熟産業から成長産業への失業なき労働移動と言われているんですね。では、その最大の成長分野は何ですかときのうもお尋ねしたら、例えばそれは医療・介護分野だと。

 ただ、この間何度も議論させていただいてきたように、例えば、先進医療の方はちょっとおいておいて、介護の分野、これは私も本当に、処遇改善、この間も所信のときに申し上げました。ほかの産業より上がってきたといっても、現在でも二万円程度低くて、そしてキャリアアップ制度も未整備な事業所もたくさんあるということは、この間の給付費分科会でも示されていますよね。平均離職年数は三年、そんな状況もある。

 つまりは、成長産業と言いながら、働く方からしてみれば、場合によっては労働条件が悪化につながっていくようなそういう労働移動であっては、幾ら失業なき労働移動と言ってみても、本当の意味での成長につながらないと私は思うんですね。

 そのいろいろな制度についても、きのう伺いました。ちょっと時間がないので、本当は副大臣にコメントもいただきたいんですけれども、さっき申し上げましたように、労働移動支援助成金、これも年間千人から二千人程度ですよ。これはいつからどれぐらい拡大する予定なのか、まだ全くわかりません。二十六年度以降になるんでしょう。しかし、まだ全く見えない。あるいは、産業雇用安定センターの出向・移籍支援の強化、これも、さっき言ったように、労働条件のアップにつながるんならいいんですよ。

 日本の場合は、大体こうやって転職していくと悪化する傾向が多いわけで、そういうことをどう考えるのか。その中で、雇調金については大幅縮小。失業なき労働移動と言いながら、その受け皿はまだ全く未整備。

 一方で、残業代ゼロ法案とか、首切り法案などの議論がどんどん前に出てくると、これは私、本当に言いたくないですけれども、安倍首切り内閣になってしまいますよ、大臣、本当に。本当に私は懸念しますよ、新年度以降のこの流れ。

 それで、さっき介護のことを伺ったのは、またお聞きしますよとこの間質疑で申し上げました。給付費分科会で調査結果が、またもう一遍やり直すということですが、示されたわけですね。これは、十分な処遇改善につながっているという認識には、とても私はなれない。今の二十四年改定の影響ですね。

 そうしたときに、次回改定、二〇一五年度までそのまま何もせずにいるのか。それとも、まさに消費税の引き上げを前倒しで、保育士さんの処遇改善については補正でやったわけですね。少子高齢化同時進行ですよ。待機児童がいらっしゃれば、待機高齢者もいらっしゃるわけですよ。介護士の処遇改善、これは本当にセットで検討していただけませんか、成長分野であるならば。どうですか、大臣。

田村国務大臣 財源があれば本当にやりたいんですよね。それはあなた方もそうだったと思う、政権を握っておられるときに。それはできないというのは、やはり財源がないというところでどうするんだという話ですよね。

 今、保育のお話が出ました。それは、なぜ今回、保育の方の処遇改善をしたかというと、介護の方は数度やったんですよね。当時、保育はやっていないんですよ。ですから、保育も、介護に追いつくために今回やったということでございます。

 そのような意味からすれば、それは、全ての福祉分野はやはり低いというのは、我々も認識を持っております。何とか処遇を改善していきたいという思いはありますけれども、それに対しての財源というものをしっかり確保しない限りはなかなか難しいわけでございまして、それも含めてこれから前向きには検討していきたいと思いますけれども、まず財源の確保というものをしっかりとやってまいりたいというふうに思います。

柚木委員 まさに財源の確保、私も言ったように、国土強靱化でなくて国民強靱化という視点を持って、本当に、我々、予算の組み替えも含めて、今年度予算の中でも考えていきたいと思っていますので、ぜひ、保育、介護、両方考えていただきたい。これまでのだけでは不十分なんですし、成長産業と言うからには追いつかせてくださいよ。

 時間がないので、最後、ちょっと別の質問をさせてください。

 薬価の関係について、有用性加算のあり方の検討と配合剤に対する政府の考え方についてお聞きしたいんです。

 これは本当に、今、医療費全体の適正化、ジェネリックの推進、いろいろな取り組みがあるわけですが、先ごろ中医協で承認された、これは鼻が閉じると書いてビヘイと読むんですかね、それを伴うアレルギー症状に用いる配合剤の件で、薬物乱用と配合剤の算定ルールにつきまして、薬剤費の適正化という観点から政府の見解をお聞きしたいんです。

 具体的には、これは片仮名でちょっと舌をかみそうになるんですけれども、フェキソフェナジンと塩酸プソイドエフェドリンが配合された製品です。これは、抗アレルギー剤として使用されてきたフェキソフェナジンに、強い中枢神経系作用を持ち、交感神経を刺激し、末梢血管を収縮させて鼻詰まりを改善させる塩酸プソイドエフェドリンを配合したことが評価をされて、有用性加算がついたとお聞きしています。

 ただ、この当該成分ですけれども、それぞれ、両方ともOTC医薬品として販売されている成分なわけですよね。現在薬価表にないからとして、新規の扱いになっていて、そして有用性加算までつける。これは、薬価も含めて医療費適正化、ジェネリックの推進、スイッチOTC、いろいろな方向にある中で、こういうことにまで有用性加算をつけるというのは、私はちょっと行き過ぎではないかと思うわけです。

 アイデアや混合させるための開発力といいますか、そういうメーカー側の努力は、それはあるんでしょうけれども、何もまぜなくても単品の単剤で出せるのではないんでしょうか。この場合には、漫然と配合させただけなのに有用性加算などというものをつけるというのは、これは率直に申し上げて本末転倒ではないか。こういう事例を抑制できるルールのあり方、こういったものを検討するべきではないかと思いますが、きょうは、木倉局長、おいでですか。

木倉政府参考人 お答えを申し上げます。

 御指摘の配合剤、これは、もともとの抗アレルギー薬、フェキソフェナジン塩酸塩を主成分としたもの、これに鼻詰まりを改善する成分の塩酸プソイドエフェドリンを追加したということでございまして、薬事法に基づきまして、まず新薬としての承認がありました。

 この塩酸プソイドエフェドリンを追加することによりまして、既存の単剤に比べまして、鼻詰まりについて治験データできちんと優越性が認められているものでございます。

 このことから、薬価算定の基準に基づきまして、もともとのフェキソフェナジン塩酸塩単剤の薬価、これは一錠五十九円でございましたが、これをもとに、有用性加算、これは薬価算定上のルールでございます、こういうものの中の、有用性加算の一番小さいものでございますが、五%の加算で一錠六十二円、三円のアップということで薬価算定したものでございまして、これを中医協でも御審議いただき、適切という承認を得られています。

 ただし、そのときの中医協の審議におきましても、本配合剤のような、今先生が御指摘のような、もともとのものに市販のものの成分を増量して加えたものでございますが、こういうものにつきましての今後の算定のあり方、検討が必要ではないかという御指摘もありました。これにつきましては、次期薬価制度改定に向けました検討の中で御議論いただきたいというふうに思っております。

柚木委員 局長、ありがとうございます。ぜひ、そういった形でルールのあり方を検討していただきたいと思うんですね。

 大臣、この当該成分なんですけれども、市販名ではアレグラという商品だそうです。医療用の医薬品としては特許期間が切れ、後発医薬品が既に上市されておりまして、価格競争にさいなまれているというのが実情だと思うんですね。

 さっきのように、一見すると、新たな成分を配合して、その製品を少しでも長く指名して処方してもらおうというふうに見えなくもないんですけれども、確かに、私も鼻詰まりで本当につらいです。こういったものがあると助かるんですけれども、しかし、こういうところに有用性加算というようなものをつけるというのはちょっと違うというような認識で、先ほど局長からも答弁いただいたと思うんですね。ですから、こういったことはぜひ抜本改正していただきたいと思うんですね。

 このアレグラというのも、某有名タレントさんがCMで出られていて、これは一般用医薬品としても販売されているわけですね。この塩酸プソイドエフェドリンも、量が少ないものは一般用の医薬品成分とされているというふうに認識しておりますので、これは薬剤師さんがきちんと管理できるかどうかという問題はあるんですけれども、何も医療用の医薬品として評価して販売しなくてもいいのではないかという認識に私は立つわけでございます。

 こういう事例は、例えば価格をもう少し厳しく評価するとか、あるいは一般用の医薬品で上市するように政策誘導できるようなシステムづくり、スイッチOTCへの誘導の観点から、大臣の御意見をお聞かせください。

田村国務大臣 今局長が言いましたとおり、有効性というのはやはりあるようでございます。

 ただ、今委員がおっしゃられたような問題意識、これも確かに、よくよくお聞きをしますと、ううんと思うところもございますので、その点も含めて検討をさせていただきたいというふうに思います。

柚木委員 ありがとうございます。ぜひそういった方向で対応いただきたいと思うんですね。

 最後に、この塩酸プソイドエフェドリンというのは、私もお聞きするところ、非常に古くから使われてきた製剤だそうですけれども、近年は、覚醒剤原料となり得ることから、世界各国では、一般用医薬品でありながらも非常に厳しい監視下での販売となっている。例えばオーストラリアなんかでは、購入者のID確認あるいは購入記録の保存、医薬品としての効果は評価しつつも、薬物乱用の防止という観点からは、これは管理を強める傾向にあるということだそうです。

 そうすると、これは世界各国では薬物乱用防止の観点から管理を強めている薬剤ですから、この配合剤が保険適用されたとしても、きちんと管理していただきたいと思うんですね。添付文書にも、使用は最小限の期間にとどめるようにと書かれているわけですが、私なんかも、大臣、皆さんもそうかもしれません、忙しいから、病院へ行ったら、なるべくたくさん必要な薬を出してくれ、そうついついなるものなんですが、こういったものについては、そこはきっちりと、使用日数を守られるような環境づくり、これを政府は薬物乱用防止の観点からも適正な処方を求める必要があると思いますけれども、これは政府としてどうお考えか。副大臣ですか、コメントをいただけますか。

秋葉副大臣 今、柚木委員御指摘の点、大変重要なことだと思っております。

 医師が行う処方の内容につきましては、医師の有する専門的な知識や技能に委ねられておりまして、医師は、患者の病態や適切な服薬方法、量や回数などをしっかりと判断して、医薬品の添付文書の記載事項を踏まえた上で、適正に処方していかなければならないものと考えております。

 また、薬剤師による医師への疑義の照会あるいは患者への服薬指導によりまして、医薬品の適正使用の推進を図っていくということは非常に重要。化学式が非常に似ているという御指摘をいただいております。今後とも、こうした役割を果たす薬剤師の資質向上も、あわせて一緒にしっかり取り組んでまいりたいと考えております。

柚木委員 以上で終わります。ありがとうございました。

松本委員長 次に、山井和則君。

山井委員 四年ぶりに厚生労働委員会で質問をさせていただき、ありがとうございます。きょうは、多くの資料とパネルも持ってこさせていただきました。

 私は、アベノリスクということを非常に感じるんですね。アベノミクスの副作用、陰の部分と。

 田村大臣もこうやって大臣になられまして、私も、厚生労働委員会に所属、これで十四年目になります。十四年間、こういう議論をさせていただいておりますが、私、つくづく思うんですけれども、その内閣はどういう仕事を厚生労働部門において後世に残したか、私たちは、歴史の審判をここに座っている全員が受けることになると思います。

 今、このまま安倍内閣のこの厚生労働行政が進むと、私は、歴史上二つ、大きな転機であったということが歴史に残るのではないかと思うんです。

 一つは、今も柚木議員から質問がありました解雇の金銭解決、解雇規制の緩和、つまり、終身雇用という中においては、基本的には解雇は非常に難しくて、基本的には真面目に働いていれば安心して働き続けられるというのが、私は、日本のよさであって、日本の文化だったというふうに思います。

 しかし、今議論がされている解雇の金銭解決というのは、簡単に言えば、お金を払えば解雇することができるというふうに、大きく日本の雇用の風景を変えていくものであります。

 歴史の中で、もちろん、これについては賛否両論あるのかもしれませんが、私は大反対でありますが、安心して働き続けられる日本の社会が、お金を払えば解雇ができるというふうにかじを切った、非常に残念な政権であったというふうに歴史は評価するのではないでしょうか。これが一点です。

 それともう一点、これはきょうの質問の後段で触れますが、今回、史上最大の生活保護基準の引き下げ、六・五%。過去の最大は〇・九%ですからね、史上最大です。六・五%下げることを決めております。

 御存じだと思いますが、これは生活保護基準の引き下げだけの話ではありません。生活保護基準の引き下げは、ある自治体によれば、七十の低所得者対策に連動をしております。住民税非課税限度額が連動して下がります。過去最高〇・九%生活保護の水準が下がったときには、一%以上非課税限度額が下がりました。つまり、今回の安倍政権の判断というのは、生活保護基準のみならず、日本の低所得者対策を史上最大引き下げるという判断になるわけです。

 首を切りやすくする、そして、史上最大、生活保護のみならず、憲法二十五条が保障するナショナルミニマムを下げるというのがこの政権の姿であります。おまけに、インフレターゲット、アベノミクスで物価は上がっていく。物価が上がっていくのに対して、生活保護基準が下げられて低所得者対策が下がっていくということは、言うまでもなくダブルパンチであります。

 私は、党派を超えて、この厚生労働委員会室におられる議員の皆さん方に申し上げたいのは、いろいろ党派はあるかもしれませんが、日本という国において、この厚生労働委員会というのはどういう役割を担っているか。

 それは、最も弱い立場の方々をやはり守っていく、そういう使命とともに、もう一つは、真面目に働いている人間はやはり安心して働き続けられる、老後の人生、家族の人生設計を立てることができる、そういう日本の国は分厚い中間層が支えている国なんだ、そういうことを、私は、いい日本の部分は、社会保障の部分はしっかり守っていく、もちろん改革すべき部分は改革せねばなりませんが、そういう危機感を私は非常に持っております。

 その上で、田村大臣にお聞きしたいと思います。

 柚木さんの質問にも続きますが、昨日、安倍総理は何か答弁を変えられたようでありますが、先週二十八日にはこうおっしゃっているんですね。この一ページ目は、解雇の金銭解決についての資料であります。無効判決が出てから金銭で解決する。これは厚生労働省の資料であります。

 それに対して、二ページ目、安倍総理は二十八日、予算委員会で私にどう答弁されたか。一番目に線を引いてあります。安倍政権においては、解雇の金銭解決という規制緩和は行わないということでいいですね、それに対して安倍総理は、金銭によって解決していく、解雇していくという考え方はないということをはっきり申し上げておきたいと。

 ところが、下の段は、きのうの予算委員会の答弁なんです。急に安倍総理がこう言い出されたんですね。金銭を払えば解雇ができるという、いわば事前型の制度は一切考えていないと。

 事前型という言葉が出てきたのは、私は、日本の歴史上初めてだと思います。なぜならば、解雇の金銭解決というのは、今までの認識は、無効判決が出た後の金銭解決を言っていたわけですから、国会の議事録で事前型という答弁が出たのは、田村さんと安倍さんが初めてだと思います。

 それで、安倍内閣総理大臣は、事後的に金銭の支払いにより労働契約の解消を申し立てるという制度について今質問されているんだと思いますが、この前の審議においては、私はそのことを含めていないというふうに答弁されておられます。

 田村大臣、ということは、無効判決が出た後、金銭解決をするという制度については、今、政府では検討されているということですか。

田村国務大臣 まず前段の御説明ですが、私が、先ほども柚木委員の質問にお答えしたとおり、予算委員会のときにまず御説明をさせていただきました、事前に金銭で解決するという国は世界じゅうにございませんと。(山井委員「ないでしょう」と呼ぶ)ないと。そうやって御説明をしたんです、委員会で。そのときに、多分、お聞こえになられなかったと思います、議場が騒がしくて。

 ですから、多分、私の話は後から議事録でお読みになられたんだというふうに思いますが、それに対して、安倍総理は、私の話をしっかりと聞いておられまして、田村さんが言ったようなというようなことを言われているんです。

 つまり、事前で金銭解決するような国は世界じゅうにないんだから、私の知る限りですよ、先進国ではないということでありますから、そんなことはないですよということをここで安倍さんは言われておるということでございますから、先ほど来申し上げておりますとおり、全く事後のことに関して安倍さんがあの委員会で申し上げたということはないわけでございます。

 それを前提といたしまして、今、政府でそういう検討がなされておるかという話でございますけれども、何をもって政府というかということはあろうかと思いますが……(山井委員「会議も含めて」と呼ぶ)少なくとも、産業競争力会議等々、今、官邸でやっておられる会議の中において、民間委員の方々がそのような提案を一部されておられるということはあろうというふうに認識をいたしております。

山井委員 ここに配付資料がございますが、四ページ目を見てください。確かに、今、田村大臣おっしゃったように、民間議員のペーパー、「最終的な金銭解決」ということを書いてありますね。

 それと、次の五ページ、これも右上に線が引いてあります。規制改革会議の雇用ワーキンググループの座長の方の配付資料にも、右上にありますように「「解雇補償金制度」の創設」と書いてあります。

 次のページ、新聞記事。この座長の方の主張、「解雇に金銭解決の導入を」と。皆さん、これ、おもしろいですよね。ここで使われている解雇の金銭解決の導入をというのは、全部、言うまでもなく、事後のことが書いてあるんです。事前のことの議論ではないんです。当たり前のように、解雇の金銭解決という言葉は、無効判決が出てから金で解決するということが通例なんですよね。

 それで、今、田村大臣、民間議員からの議論が出ているということは、これは政府としても、今後、そのような制度を検討していく、導入される可能性はあるということですか。

田村国務大臣 私も、実は、この金銭解決と言われておるようなものに対して、詳しい御説明を民間委員から聞いたことはございません。

 ですから、何をもっておっしゃられているのかよくわかりませんが、多分、今委員がおっしゃられた意味からすると、裁判で無効、解雇無効、不当となった場合に、事業者側から一方的に、もうお金を払うからこれで解雇だ、解雇といいますか解決だというふうになった場合には、これはかなり事前型に近い話になってくるであろうなというふうには思いますが、そこまでのことをおっしゃっておられるのか、おられていないのかということも含めて、私はまだ十分な御説明をいただいておりませんので、認識はいたしておりません。

山井委員 田村大臣、無責任ですね。これほど重大なことが、産業競争力会議、規制改革会議。解雇にかかわることの日本の責任者は田村大臣じゃないですか。こういう議論がされているということで、働く者もみんな心配しているんですよ。それに対して、田村大臣、何か、認識しておりませんと。私は、そういうことではだめだと思いますよ。国民の雇用を守るのが厚生労働大臣じゃないですか。

 二ページ目に戻ります。

 安倍総理は、事後的に金銭の支払いにより労働契約の解除を申し立てる制度について今議論されているんだろうと思いますが、この前の審議において、私はこのことを含めていないということを答弁されています。

 ということは、安倍総理は、解雇の金銭解決をしないと言っておきながら、このことは含めていないということは、無効判決の後、このような金銭解決をする制度づくりということに関しては、しないということは言っていないということは、今後検討していく可能性があるということですか。

    〔委員長退席、上川委員長代理着席〕

田村国務大臣 何度も申し上げますけれども、まず前段の部分は、事前の金銭解雇はないという私の発言に対して、田村さんの言うとおりということで予算委員会でお答えになっておられますから、事後的な金銭解決に対しては何もおっしゃっておられないということであります。

 その上で、今申し上げましたのは、政府のいろいろな検討会議で、民間委員の方々がいろいろな御意見をおっしゃっておられます。私は、まだそこには参加をさせていただいておりません。場合によっては、これから、必要なときに私も参加をさせていただくかもわかりません。そのときには詳しく、どういうようなお話なのかということをお聞かせいただく話になろうと思います。

 その上で、最終、どのような結論がその会議で出たといたしましても、それは労働政策審議会で、これは使用者側と労働者側の御意見をしっかりといただいた上で、そこで一定方向がまとまって、私のところに答申なり建議が来るんだろうと思います。それにおいて私が最終判断をさせていただく。

 全くまとまらないものを、私が大臣という職権でそれを法律化するということはなかなか難しいのではないかということを先ほど来申し上げておるわけでございますから、手順を踏んでいくと、必ず、何らかのことが決まれば私のところには来ますので、来た上で、労使入っていただいた会議で御議論をいただくということでございます。

山井委員 私たちが一番心配していますのは、TPPもそうでしたが、選挙前はそういう答弁をしておいて、選挙が終わったら、結局、解雇の金銭解決制度の導入、そういうことになるのを私たちは一番心配しております。

 これは、この資料にもありますように、田村さんは事前型、事後型ということをおっしゃいますが、例えば、この配付資料の七ページを見てください。

 七ページにありますように、労働法制の大家の書かれている教科書においても、二つ本を持ってきましたが、そこでも、解雇の金銭解決というのは無効判決になった後のことということになっておりますが、何よりも、八ページにもありますように、過去の厚生労働省の審議会の資料、この中でも、解雇の金銭解決という項目がありまして、そこでは無効判決が出た後のことが書かれているんですね。

 つまり、何が言いたいのかというと、事前型、事後型ということを言い出されたのは安倍総理と田村大臣が初めてでありまして、今までから、解雇の金銭解決という言葉は、厚生省の審議でも教科書においても、事後のことだというのは自明の理なわけであります。

 そこでお聞きしますが、今回議論になっております制度、この中の、再就職支援金とセットで解雇をしてもらうという議論が出ておりますね。この再就職支援金とセットで解雇をする、これについては、事前にお金を払うということなんですか、無効判決の後ですか、どっちですか。

田村国務大臣 何度も申し上げますが、事前型、事後型というのではなくて、それは言葉の便宜上使っておるのであって、事前の金銭で解雇をするような解決手段というものは、そんなものはそもそも、私の知る限り、世界じゅうでやっている国はないということをあのときに申し上げたわけでありまして、そこは、解雇という言葉は、御承知のとおり、定義が、一方的に使用者側が労働者に対して将来にわたって労働契約を解約するというようなことの意義でございます。ですから、そう考えると、一方的でありますから、解雇といえば、当然そういうような意味にとられる。

 ここで書いてある解雇の金銭解決制度というのは、多分、解雇紛争における金銭解決手段という言葉を縮めておっしゃられているんだと思います。(山井委員「そうですよ」と呼ぶ)でしょう。

 ですから、その意味を、誤解を招かないように、当時テレビが入っておったと思いますから、テレビの前の皆様方に御理解をいただくために、私は詳しく御説明をさせていただいたわけでございますから、初めて田村さんが言い出したと言われても、御説明をしたということで御理解をいただければありがたいと思います。

 その上で、今のお話でございますけれども、先ほど来申し上げておりますとおり、ペーパーでは書かれておりますが、具体的なお話を我々はまだお聞かせいただいていないんです。

 ですから、そういうようなお考えなのですかということを言われましても、これから具体的なお話が出てきて、そして、私にそういうような御提案なりお話が来たときに、それに対して我々としての考えを述べるということでございますので、現時点では、意図されているお考えがどういうお考えかということは認識をさせていただいていないということであります。

山井委員 今回、結局、安倍総理と田村大臣が、解雇の金銭解決という、教科書にも出ている言葉の定義を勝手に変えてしまった。私は、そのことは、大変ゆゆしき問題だというふうに思っております。

 田村大臣もおっしゃったように、世界じゅうで事前にお金を渡して解決している国はないわけでしょう。ないんでしょう。だから、私が、解雇の金銭解決するんですかと質問したら、世界じゅうにないことを質問するはずないじゃないですか。だから、事後のことを聞いているに決まっているじゃないですか。それを、まさに事前だと間違えていること自体、私は非常におかしいと思っております。

 田村大臣、それで、通告もしていますからお聞きしたいんですが、諸外国ではどのような国が解雇の金銭解決の制度を持っていて、幾らぐらいその補償金を払っているんですか。

田村国務大臣 まず、ドイツでは、年齢や勤続年数によって異なるわけでありますけれども、原則として、上限が十二カ月分の賃金相当額ということでございまして、例えば、五十歳以上で労働関係が最低十五年間存続している場合の上限は十五カ月分の賃金相当分、五十五歳以上で労働関係が最低二十年間存続している場合は十八カ月分の賃金相当額となっております。

 フランスは、実体的要件に違反する解雇の場合の下限が六カ月分の賃金相当額、そして、手続的要件に違反する解雇の場合、これは上限が一カ月分の賃金相当額となっております。手続的というのは、解雇に相当する理由があったにもかかわらず、手続上不当であるという場合の話だというふうに認識いたしております。

 イギリスに関しましては、補償金の額でありますけれども、職の喪失に対する補償であります基礎裁定と、それから、個別事情に即した補償である補償裁定というのがあるわけであります。まず、基礎裁定に関しましては八千四百ポンド、それから補償裁定の上限は五万六千八百ポンド、これはちょっと二〇〇五年の当時の為替レートで申しわけないんですが、大体、基礎裁定の場合は百万円、それから補償裁定の上限額が七百万円というふうになっておるようであります。

山井委員 のらりくらりといろいろ今までおっしゃっていますが、ということは、田村大臣、安倍政権として、このような金銭解決制度を導入する可能性はないと否定できますか。可能性はあるんですか、ないんですか。

    〔上川委員長代理退席、委員長着席〕

田村国務大臣 いずれにいたしましても、これは労働政策審議会というところで労使ともにお話しいただくわけですよね。そこでどういう結論を得ていただくかということが非常に大きな点だというふうに思います。

 そもそも、政府という言い方をおっしゃられましたけれども、まず、政府の中に置いておるいろいろな検討会の中で、どういうような御判断、御結論が出されるのかということが前提でございます。そこで消えてしまえば、そもそも労働政策審議会にもかからないのでありましょうし、そういうようなプロセスを踏んで最終的には結論を出すということになろうと思います。

山井委員 今、大臣もおっしゃいましたが、ということは、今、その審議会というか規制改革会議や産業競争力会議でこういう制度のことが検討中ということですね。

田村国務大臣 検討といいますか、民間委員の方々がペーパー等々でそういうものを出されたりですとか、御意見としておっしゃられておるという状況です。

山井委員 それは、そういうことをしているということは、安倍内閣はそういうことをやろうとしているということなんですよ。全くやる気がないのに、そういうペーパーを配って議論するということにはなりません。

 例えば、九ページ。実はこれは、「二〇〇六年 日米投資イニシアティブ報告書」というのがあります。アメリカからもこれについては要求が来ております。線が引いてありますように、「第二に、米国政府は、解雇紛争に関し、復職による解決の代替策として、金銭による解決の導入を要請した。」アメリカからも言われているわけでありますね。

 過去、ホワイトカラーエグゼンプション、そして、派遣のより緩和とか、そういうことを言ってきて、そのとおりに日本でも議論がされているということを考えますと、私はこの危険性は非常に大だと思っております。

 このことは、いずれ結果が出る話でありますので、何としてもこのような、お金で首切りをする、そういうことがないように、しっかりと私たちはしていきたいと思っております。

 それでは、後半の話題に移りますが、最初に申し上げましたように、生活保護基準の引き下げに連動して、住民税非課税限度額が下がっていきますよね。

 今までの例でいいますと、きょうの配付資料にもございますが、例えば十二ページにありますように、二〇〇三年に〇・九%生活保護基準が下がったときには、この表にありますように、一%以上非課税限度額は下がっています。

 その前の十一ページを見てもらいますと、例えば、介護保険の保険料、本人負担、住民税非課税で減免を受けている方が、何と千七百二十七万人もいるわけですね。限度額が下がれば、このうち何人の方が保険料がアップするのか。おまけに、これは特養の入所の自己負担もふえます。介護保険の自己負担の、一割負担の上限もふえます。問題は、どれだけの人が自己負担が増になっていくのか。

 もうちょっと説明します。十三ページ。つまり、どういう制度になっているかというと、非課税と課税とで、こういうふうに階段状に介護保険料が変わっているんですね。

 それで、次のページをお願いします。そこで、十四ページにありますように、単身世帯、夫婦世帯を、どういう所得分布があるかということを調べてみまして、それによって、この線が引いてあるところは、単身世帯は百五十五万円の非課税限度額、そして夫婦世帯は二百万円超の非課税限度額、これが今回、生活保護の基準を下げると下がっていくわけですね。だから、二つ線が入ってありますが、この面積の部分の人たちが課税になって、介護保険料の引き上げや特養入所の費用の引き上げになっていくわけであります。

 これを私なりに試算してみました。〇%、一%、三%、六%、六・五%。つまり、六・五%下がるわけですけれども、まだ何%非課税限度額が下がるかわからないわけですから、これぐらい下がったら幾らぐらいになるかということ。

 例えば、六・五%そのまま下がったら、単身世帯においては三十五万二千人ぐらいの方が保険料アップになるのではないか、あるいは、夫婦世帯においては百四十三万人の方々が介護保険料の負担アップになるのではないか。合計すると、百七十八万人の方々が介護保険料のアップになるのではないか。

 恐らく、国民の方や高齢者からすると、生活保護の基準が下がるとは聞いていたけれども、まさか自分の介護保険料や一割負担や特養の入所費の自己負担が上がるなんて、聞いていないよと。

 さらに、これは保育にも当然連動します。七十の制度に連動します。十六ページを見てください。

 例えば保育所の入所に関しても、自己負担が一万円アップします。二百五万円の非課税限度額が下がると、ここの線にありますように、この面積の方々は、住民税が今まで無料だったのが課税になるのに加えて、保育料も負担増になります。

 六・五%下がると、粗い単純な数字的な試算では、三万二千人の子育て世帯が、おまけに、これは低所得者ですからね、今まで非課税になっているということは、低所得者の中で何万人かの人が保育料が上がって、おまけに増税になるかもしれない。これ以外にも、障害者福祉サービス、障害者の自立支援医療、さまざまな自己負担が連動して上がっていく可能性があります。

 もちろん、今こう言いましたが、六・五%下がったからといって、もしかしたら三%しか下がらないかもしれないとかいろいろありますけれども、原則としては、前回もこの委員会で長妻さんが質問したように、非課税限度額は生活保護水準に連動をしているわけであります。

 そこで、田村大臣、お聞きしたいんですが、今回、生活保護基準を三年間で六・五%下げられるということで、非課税限度額が下がりますよね。下がったときに、介護保険料がアップして、非課税から課税になる人は、大体何万人ぐらい、何十万人ぐらい、あるいは何百万人ぐらいだということを推定されているんですか、厚生労働大臣として。

田村国務大臣 まず、住民税の非課税限度額がどうなるかという話でありますけれども、以前からずっと申し上げておるんですけれども、そもそも、今回の生活保護費、生活扶助費でありますけれども、これの適正化に関しては、同じような一般の低所得者の方々と比べてどうなんだという議論の中から出てきたということは、見直しのときにかかわっておられた民主党でございますから、御理解をいただいておるというふうに思います。

 その中において、我々も、税を決めるのは、我々の政権では与党が非常に発言力を持っておりますので、与党の税制調査会の幹部の方々に、そういう現状を考えた上でこれからの税制に関していろいろと意思決定をしていただきたいですというお願いをさせていただきました。その結果、よくそこを勘案して考えるというような御返答もいただいております。

 そういうことを前提に、まず、影響の出ないような形で、この住民税非課税限度額に関して、影響が出ないような形で税制の方で手当てをしていただくといいますか、御理解いただく中で処置をしていただくということを我々は今期待いたしておるわけであります。

 そして、その上で、では、どれぐらい影響が出るのか。変わらなければ影響は出ません。あと、変わるのであるならば、どれぐらい変わるかによって全て変わってくるわけでありますから、まだ決まっていないわけですよね、これは。二十五年度、今年度は変わりません。二十六年度以降どうなるかというのはまだ決まっていないわけでありますから、どれぐらいの影響が出るかというふうにお聞きになられるとすれば、答えるならば、変わらなければ変わりません、ゼロですというお答えをするということでございます。

 なお、今までも生活保護、生活扶助費等々の基準が変わったときに必ず住民税非課税限度額が変わっていたかというと、そうではない。全く機械的に連動はしていないということだけは申し添えさせていただきたいというふうに思います。

山井委員 やはり政策をやるときには、それがどれぐらいの低所得者の負担増になるのかということを考えた上で政策をするのが私は筋だと思いますよ。六・五%下げると言っておきながら、何十万人か何百万人に影響が及ぶのか及ばないのかわかりませんというのは、私は極めて無責任だというふうに思います。

 それで、何でこんなことを言うかというと、後期高齢者医療制度の議論のときもそうだったんですよ。委員会で審議するときは、負担はそんなに上がらないんじゃないですかとか、割と問題ないようなことだったんですよ。ところが、実際、後期高齢者医療制度を導入したら、皆さんも御存じのように、負担が上がった、保険料の天引きになったといって大混乱になったわけですね。だから、私は、今回もこのことに関して大問題になる。

 それで、今、田村大臣、連動しないかもしれないとおっしゃったけれども、私、ここが本当に安倍政権で心配なんですよ。さっきの解雇の金銭解決という言葉の定義も根本的に変えちゃう、さらに、今まで生活保護基準というのは住民税の非課税限度額の基準だったわけですよ、三十数年間。そういうルールがあるんですよ、税には。それを、いや、連動しないようにお願いしていますと言って。でも、これは主にデフレが原因なんですよ、生活保護を下げるのは。生活保護はデフレ原因で下げるけれども、低所得者の施策は同じデフレの日本にいながら下げないというのも、それは一歩間違うと差別になりかねませんよ。

 そこで、平嶋審議官、閣僚懇談会でこの議論をされたと思うんですが、田村大臣からは税制改正に関してどのような要望があって、新藤大臣はどう答えられて、どういう合意になっているんですか。補助基準の引き下げは、税制改正において限度額を下げないというふうなことになっているんですか。お答えください。

平嶋政府参考人 お答えをいたします。

 閣僚懇での御議論でございますけれども、田村厚生労働大臣からは、生活扶助基準の適正化に伴う他制度への影響につきまして、個人住民税の非課税限度額等については平成二十六年度以降の税制改正の議論を踏まえて対応することを政府として確認したい、また、あわせて、今回の生活扶助基準の見直しに伴い、ほかの制度に影響ができる限り及ばないよう引き続き各省の御協力をお願いする旨、御発言があったところでございます。

 これに対しまして、新藤総務大臣からは、個人住民税の非課税限度額については、これまで、生活保護基準額の改正を踏まえ、翌年度の税制改正において所要の見直しを検討することとしていること、今回の生活保護基準の見直しに係る非課税限度額のあり方についても、厚生労働省の考え方も十分に伺いながら、平成二十六年度以降の税制改正において、与党の税制調査会における議論も踏まえて検討することとしていることとの御発言があったと承知をいたしております。

 以上でございます。

山井委員 生活保護基準は、デフレを理由に下げるわけですよね。低所得者の住民税非課税限度額は、デフレなのに、それほど影響を及ぼさないようにという理由は何ですか。

田村国務大臣 デフレを理由だけではございません。(山井委員「メーンはデフレですよね」と呼ぶ)いや、メーンはデフレというわけではございません。(山井委員「メーンはデフレです、四・七%、デフレです」と呼ぶ)割合からいえば、そのデフレ部分というのはありますけれども、しかし、それだけではございません。それはもう委員も十分に与党のときに御理解をいただいているものだというふうに思います。

 その上で、今回は、全体として、先ほど来言っておりますとおり、一般世帯の低所得者の方々とそれから生活保護世帯とのいろいろな公平性等々も含めて見直しが入ったわけでございますので、そのような意味からすれば、趣旨的には、やはり一般の低所得世帯の方々に対して影響をなるべく出さないようにするというのが一つ前提の考え方であるということはあるわけでありますから、そこも踏まえた上で、それぞれの各省に対応をお願いした。

 そして、総務大臣からは、今、厚生労働省の考え方もしっかりと念頭に置きながらというような御発言でございました。あわせて、与党税制調査会というお言葉もございましたので、私の方から与党の税制調査会の幹部の先生方にもお願いをさせていただいたということであります。

山井委員 先ほどの資料にもありますように、六・五%満額影響しなかったとしても、何十万人かにも影響が及ぶ可能性がこれはあるわけであります。こういう大改正をしながらも、どれだけの人たちに影響が及ぶかがわからないということは、私は非常に問題だと思いますし、来年の四月といえば、消費税増税もありますし、物価高もありますから、高齢者の負担増の本当にこれは連続パンチになるわけですね。

 そういう意味では、私は、今物価が上がっているにもかかわらず、デフレという理由……(田村国務大臣「物価は上がっていない、物価はマイナス」と呼ぶ)いえいえ、上がっているものも多いんです、生活必需品は。そういうときに、デフレを理由に生活保護基準や非課税限度額を下げるというこのアベノミクスのやり方は大変問題だということを最後に申し上げまして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

松本委員長 次に、宮沢隆仁君。

宮沢(隆)委員 よろしくお願いします。

 本日は、医師不足に続いて、看護師不足問題について質問をさせていただきます。

 私も、三十年医者をやっていまして、恐らく二十以上の病院を転々として生きてきたわけですが、ほぼ、どこの病院に行っても、医者と同様、看護師が足りない足りないと、もうずっと言われ続けてきました。昨日、厚労省のレクもちょっと受けたんですが、どうも認識に乖離があるような気がいたしまして、改めてここで質問をさせていただきたいと思います。

 まず、看護師の就業状況、それについては、資料一と二にあるんですが、この点については、これは厚労省の資料ですので、厚労省の方から説明をいただいた方が早いかなと思いますが、医政局長、いかがでしょうか。今の看護師の就業状況の概説をしていただけますでしょうか。よろしいですか。

原政府参考人 お答え申し上げます。

 先生の資料を使わせていただいてよろしいでしょうか。

 一枚目にございますように、これは、今回の需給見通しのスタート時点になりますけれども、平成二十三年における状況ということで、就業者が約百五十万人。これにつきましては、いわゆる短時間の方、非常勤の方も含めた実人員として百五十万人が働いておられる。

 この看護師のプールの中に、新規の資格取得者が約四万九千人。これは、一番左下にあります新卒入学者が約五万六千人の中、実際に資格を取って就業される方が約五万人弱、四・九万人。それに対して、離職をされる方が十五・七万人、それから、潜在看護師から再就業をされる方が約十三万人とありまして、トータルとしては年間約二万五千人がふえていくというペースで進んでいる。現在は、就業者数というのは約百五十万人ほどおられる、そういう状況であるということです。

宮沢(隆)委員 それでは、厚労省としては、看護師は、現在足りているという認識なのでしょうか、それとも、かなり足りていないという認識なのでしょうか。そこをちょっと答弁いただきたいと思います。

原政府参考人 お答え申し上げます。

 今ほど少し触れましたけれども、看護職員の確保については、現在、第七次の需給見通しということで進めております。この需給見通しの考え方ですけれども、需要につきましては、各病院などの協力を得て、それぞれの医療機関からの回答をもとに、今後五年間程度、どの程度必要になるかという数を集めて需要数としております。

 また、供給の方につきましては、実際に卒業される方であるとかあるいは今後の確保対策などによる政策効果を見込んで、各都道府県で供給数を出していただいている。その比較をした上で算定して、需給見通しをつくっております。

 現在、平成二十七年末に向けて推計を出しておりますけれども、そのときの最終結果としては、需要見通しとしては、平成二十七年末に約百五十万人、これは常勤換算になります。それから、供給の方は、百四十八万六千人と、若干不足をするという程度に伸びていくだろう。今現在では、約九七%ぐらいの需給のバランスであるというふうに捉えております。

 なお、看護職員の確保につきましては、この需給をしっかりするためにも、特に、先ほど先生の資料にもございましたように、潜在看護師の活用ということも非常に重要な、大きなファクターになりますので、ナースセンター機能などでの再就業支援でありますとか、あるいは、働きやすい環境のための院内保育所の設置などに取り組んでおりますし、今般、働く場所の、雇用の質の向上プロジェクトというものを省内でつくりまして、その中でさまざまな雇用環境の改善に取り組む。そのような対策の中で、この需給バランスを、さらに供給の方を伸ばしていくような対策を考えているところでございます。

宮沢(隆)委員 やはり、どうも違和感を感じるんです。結局、数の面では足りているだろう、九六%でしたか、そういうことなんですが、昨日、私の同僚の、今、ある自治体病院で副院長をやっている医者にちょっと聞いてみたんですね。

 それで、彼の話では、大きな病院、力のある病院では、看護師をどんどん吸収して、いわゆる一般病棟入院基本料七対一というのを取れる病院はどんどん集める。ところが、それに至らない病院、特に地方の病院は、結局、足りなくて困っている。そういう、いわゆる偏在ですよね、乖離が非常にあるのではないかと申しておりました。

 特に、大きな病院は、看護師さんをある程度余裕を持って抱えると、看護師さんにとっては、ある意味少し楽なわけですよね、ローテーションも楽になります。ところが、集まらない病院は、仕事そのものがきつくなるので、きついからどんどんやめる。そうすると、要するに、足りている病院と足りていない病院の差が著しく激しいという現象が今、現実起こっているわけです。

 ですから、その辺の、数ではほぼいいだろうとか、九六%いっているとかという認識だけでは、恐らくこの看護師不足の問題は解決できないだろうと思うんですよね。だから、そこをちょっと、認識を変えていただかないといけないかなと私は思います。

 不足に関してはそういうことなんですが、医師の数にしても看護師の数にしても、僕が厚労省の話をずっと聞いていて思ったのは、何をもって適正な数とするのかという基準なり定義がいまだによくわからないんですよね。その辺をちょっと、一回答弁いただけますでしょうか。

原政府参考人 確かに、医師の場合は、医療技術の進歩等々によって、医師の必要数が非常に変わってきますので、それをどう推計するかというのは、医師の推計のときに、専門家の方々に議論をしていただいて、ある前提をつくりながら考えていくという方向で今現在考えている。

 看護師につきましては、先ほど申し上げましたように、各医療機関ごとにどれぐらい必要かという数、現在数じゃなくて、将来的にどれぐらい必要になるかという数を出していただいて、それの合計数を、一応、需要数として考えているということでございます。

宮沢(隆)委員 申しわけないんですが、ちょっと、今の私の質問の趣旨は、基準ですよね、何をもって適正数とするのかというお答えにはなっていないように思うんですけれども、いかがですか。

原政府参考人 適正な数という御質問なんですけれども、それぞれの病院で今必要としている看護師、今の状況、あるいは、将来、患者さんが少し高齢になっていったときに必要となる看護師の数がどれぐらいかということを出していただいて、合計をしていっている。それが、需要数と言っておりますけれども、ある意味では適正、必要な数だというふうに考えているところでございます。

宮沢(隆)委員 それぞれの病院でというお話でしたが、きのうレクを受けた限りでは、余り現場の状況は把握していないように私は感じたんですね。結局、都道府県、市町村で適正にやってもらっていますというような回答だった。今も多分似たような回答だと思うんですけれども、結局、そこの認識でとまっているから、現場の看護師不足の乖離状況、病院による差というのがやはり見えてこないんじゃないかと思うんですよね。そこは改めて厚労省の方で、もうちょっと細かい精査なり考察をしていただきたいと思います。

 では、ちょっと話が少し違う方向に行きますが、私が現役の医者のころから、そんなに詳しくは私も調べていなかったんですが、外国人の看護師を採用するという動きが時々新聞に出ていて、これは恐らく、高齢化時代を迎えて、看護師あるいは介護士が足りなくなるから、近隣の外国、フィリピン、インドネシア等から看護師を、どんどん入ってもらって供給をふやそうという趣旨で私はやっていたんだろうと思っていたんですよね。

 ところが、これもきのうレクで聞いてみますと、必ずしもそうでないようなニュアンスだったんですが、では、最初に、外国人看護師を採用するに至った経緯あるいはその理由、そこら辺をちょっと簡単に答えていただけますでしょうか。

原政府参考人 お答え申し上げます。

 一般の、先ほど言われましたフィリピンやインドネシアの看護師につきましては、これはEPA協定に基づいて受け入れているということでございます。これは、そもそもは労働力不足への対応ではなくて、相手国からの、人材の活用といいますか、その要望に基づいて、その観点から受け入れを行ってきたということでございます。

宮沢(隆)委員 そうですね。EPA協定で、ある論文、外国人看護師の採用状況に関する論文をちょっと見てみたら、結構鋭い指摘があったんですが、まずは、現場に少々任せ過ぎではないかというような指摘もありましたね。要するに、現場は、外国人看護師、勉強中の人たちを置いて、かなり混乱しているようなことが書いてありました。

 それから、もう一つは、対外的に、例えば資料三を見ていただければわかるんですが、これは、いわゆる外国人看護師が日本の看護師国家試験を受験して、合格率がどうかというのを書いた表で、この星印のところを見ていただければいいんですけれども、百二回国家試験、「EPA」と書いてあるところがありますが、そこでの合格率は九・六%。アンダーラインが引いてありますね。「その他」というのは、これもきのう初めて聞いたんですが、いわゆる外国で看護師になって、それなりのレベルの能力があって、日本語が話せる人たちをどんどん取り入れるということで、受験資格認定ということらしいんですけれども、これの合格率は非常に高い。

 それで、「その他」という、こちらの方は私もいいかなと思うんですが、このEPAで、せっかく勉強しようと思って来てくれた方々の合格率が九・六%。これの、なぜこれだけ合格率が低いのかということに関する考察をちょっと簡単にしていただけますでしょうか。

原政府参考人 お答え申し上げます。

 今回、このEPAのスキームで国内で勉強していただいている方々ですけれども、現在はフィリピンとインドネシアの二カ国でございます。この方々については、それぞれの国で看護師資格を持った方が対象になっております。ですから、看護の中身としては一定程度の能力を当然ながら持った方が入ってきている。ネックになるのは何かといいますと、やはり日本語の問題であろうかと考えております。

 看護ですので、国内で働く場合、やはり患者はほとんどが日本人なわけで、日本語しか解さない。あるいは、医療現場での仲間も、恐らく日本語での会話があってやっていく。そういう中で、専門用語も含めて、日本語の能力というのがかなり求められているということを感じているところでございます。

 先生の資料のところで、また先生の資料でございますけれども、一番下に、EPAの方、入国の早い方の合格率は比較的高くなっている。二三%。これはなぜかというと、やはり現場で働きながら日本語も習得して、そういう中で向上してきていると思っております。

 したがいまして、当初は訪日後に日本語の研修をさせておりましたけれども、現在は、訪日前に半年間、日本語の研修をした上で入国していただく。さらに、それに加えて、こちらでも半年間、日本語の研修をさせる。そういうふうな形で工夫をしておりますし、また、国家試験においても、漢字にルビを振るなど、そういう工夫をしながら対応をしているところでございます。

宮沢(隆)委員 今、資料三の一番下の表を私も改めて見て、二〇〇九年から二〇一二年まで、受験者数もどんどん減っていますよね。合格率もどんどん減って、結局、最後、二〇一二年は〇%。これは、合格している方が誰もいなかったということですかね。

 そうすると、EPAでこういう形で外国人看護師を、看護師になりたいという人を受け入れている意味というのが問われるんじゃないかと思うんです。これは外務省との関係もあるんでしょうけれども、今後、特にTPPの時代に入って、どういう展開あるいは展望をお持ちなんでしょうか。ちょっとお聞きします。

原政府参考人 お答えいたします。

 まず、先生の資料の年は、その年に入国された方、ですから、一番上の二〇〇九年入国の方というのは、三年間日本に滞在しておられる方の合格率、一番下が二〇一二年に入ってきたばかりの人ですので、受けたのは、全部合計の数が今回受験をしているということでございます。

 だから、毎年減っているというわけではなくて、受かれば外へ出ます。外へ出るというか、対象外になって、働いていただいているわけですけれども、そういう意味で、やはり日本語を何年間か現場で習得していただいた上で、そうすると合格率が上がってくるというようなことをあらわした表でございます。

 したがいまして、EPAでまだこれからもほかの国からも要請が来ておりますので、そういう点では、やはり日本語の教育等も重視しながら対応していきたいと考えております。

宮沢(隆)委員 私の解釈がちょっと間違っていたようですね。失礼しました。

 それで、これもある論文で、ある元看護師さんの方が提言していたことなんですが、いわゆる受け入れるだけではなくて、今、優秀な看護師さんが、看護師さんも高齢化して、定年になった方がたくさん出てくるわけですよね。今も出ています。EPAですから、こちらからも看護師さんが例えばフィリピンなりインドネシアなりに出ていって、向こうで日本語教育と看護師としての教育をやって、もっとレベルの上がった方をどんどん取り入れてというようなことをやっていったら、もっと合格率も上がるだろうし、外国人の看護師も日本でふえていくのではないかというような提言をしていました。

 これはまさにいい提言だなと私も思いますので、ちょっと検討していただければなと思います。

 今、ちょっとお答えいただけなかったんですが、今、TPPがゴーサインが出まして、人材の流動化も今後かなり起こってくるだろうと予想されるんですけれども、そうなったときの、EPAとの関係を含めて、今後の展望、その辺は、医政局長あるいは大臣でも結構なんですけれども、もしよろしければちょっと、予測になると思うんですけれども、お答えいただけますでしょうか。TPP時代の看護師の人材流動ですね。質問の趣旨はよろしいですか。

田村国務大臣 今委員おっしゃられましたとおり、日本語能力という問題が一番の大きな問題で、特に看護師の場合は、非常にここがネックになってまいります、命を預かっている部分でございますから。もし取り違いが起こって何か起こった場合には大変だということで、そういう意味では、かなり厳格な言葉というものの中での、試験内容の中において、いろいろな難しい問題が起こってきておるんだと思います。

 現地の方で日本語教育をしっかりとまずやってから、こちらに来ていただくということを今進めておりますが、今言われたような、看護師さんを向こうに送り込んで、それで、もちろん、その看護師さんも向こうの言葉がわからないとなかなか教えられないのかもわかりませんが、非常に効率よく医療での用語というものをお伝えさせて、こちらに来ていただくというのが一つの方法かなというふうに思います。いい御提案だというふうに思いますので、検討してみたいというふうに思います。

 TPP時代、どうなんだろうというのは、まだちょっとそこまでTPPの内容で御議論があるわけでもないので、これから医療人材をどうするんだということに関して、もし提案があればですけれども、慎重にこれは検討していかなきゃいけない問題だというふうに思います。

宮沢(隆)委員 今、日本語という言葉が何回も出てきましたが、実は私は、ドイツに三カ月ぐらい滞在して、ある病院にずっといたことがあるんですね。そこで感じたのは、ヨーロッパだから当たり前なんでしょうけれども、言語が飛び交っているわけですね。ロシア語、アラビア語、ドイツですからフランス語も英語も全部外国語になるんですけれども、医者も看護師も、それぞれ自分の得意な外国語というのをある程度持っていまして、それで、その結果、外国人の患者がどんどん来るわけです。

 この後述べていきますが、日本の医療の産業化、要するに国際的にどんどん日本の医療を輸出していこうとかいうことをこれから考えるのであれば、日本の医療従事者、医者も看護師も、もうちょっと言語の勉強をしてもいいんじゃないか。最低限、英語ぐらいはできるようにするとか、あるいはそういう特化した病院をつくるとか、そういう発想がこれからのグローバル時代にはあってもいいんじゃないかなとはずっと思っています。

 ですので、外国から来る人たちに日本語の勉強を強いるばかりじゃなくて、あえて言えば、日本の医療従事者も外国語を勉強しようよということをちょっとここで訴えたいと思います。

 では、今お話しした医療の産業化についてちょっと質問いたします。

 産業競争力会議等で、医療をどんどん産業にしていこうよというお話をいろいろな会議でされているようなんですが、資料四に、厚労省が考える医療の国際展開というペーパーをきのうもらいましたが、これも、とかしき政務官に、この辺、ちょっと概説していただけますか。よろしくお願いします。

とかしき大臣政務官 資料をごらんになっていただければということで、委員の方から参考資料ということで配付なさっていらっしゃる内容でございますが、説明させていただきます。

 これは、第五回の産業競争力会議で厚労省の方が配付させていただきました資料でございます。医療の国際展開についての考え方をまとめたものでございます。

 課題といたしましては、アジアや新興国などの医療や介護のニーズがすごく今高まってきているので、日本の医薬品やそして医療機器、医療技術、あとサービス、これらが全て一体となった国際展開が今とても求められております。

 このほかには、具体的には、結核とかマラリアとか、こういった治療薬、こういった薬の開発も進んでいないのが現状でございます。

 そこで、具体的な取り組みといたしましては、医療国際展開戦略室、これは仮称でございますが、これからこれを設置いたしまして、施設、病院の建設のノウハウとか、あと設備、物資、医療・介護機器、医薬品等、そして制度、技術、実際にそれをどう使っていくか、医療や介護技術、保険制度等、こういったソフトの情報も全部付加いたしまして人材交流を進めていこう、こういうふうに考えております。

 海外とは、医療、介護、そして介護サービス等、一体となった海外との連携を今後考えていこう、このように思っております。

宮沢(隆)委員 どうもありがとうございました。

 医療の産業化、国際展開というのは、恐らく十年ぐらい前から、政府の方から、やるぞやるぞと言われていたように思うんですが、どうも見ていると、例えば、医療ツーリズムという言葉が一時飛び交っていましたよね。それも、きのうも、どの程度進んでいるのかなと思ってお聞きしたら、三つぐらいの病院がそういう意思を示して、ある組織の中で始まりつつあるということなんですが、質問としては、なぜそのレベルでとまっちゃっているのかというのが率直な印象なんですけれども、その理由についてはいかがでしょうか。よろしくお願いします。

とかしき大臣政務官 お答えいたします。

 確かに、委員がおっしゃいましたように、昨年の七月から、外国人患者受入れ医療機関認証制度、これがスタートいたしまして、三つの医療機関が認証を受けた、こういった状況になっております。

 委員おっしゃいますように、医療ツーリズム、実際に動き出しているところがまだ少のうございまして、まだまだ実績が上がるような状況ではございません。

 なぜなかなか進まないのかといいますと、今、国内の方でも、やはり医師不足、地域によってはそういった課題をたくさん抱えておりまして、外国人患者さんを多く受け入れて、そして日本の医療制度がさらに崩壊してしまうようなことがないためにということで、日本の国内の医療制度を担保しつつ、海外からの患者さんを受け入れる、そういう制度のバランスをどうとっていくかということで、今、慎重に検討しながら進めさせていただくというのが現状でございます。

 以上です。

宮沢(隆)委員 私も、あるクリニックで中国人の方々を受け入れたことがあるんですが、それはもう現場は大変ですね。その人たちにかかりっ切りになって、言葉も、ある程度通訳は入れても、医療のことはやはりちょっと難しいので、結局、コミュニケーションがうまくいかないという現状ですね。

 これは日本人の民族性なのかもしれないんですけれども、やはり、ちょっと外国人に対してプロテクティブという面があるんじゃないかと思うんですね。ですので、先ほどの言語の話もそうなんですけれども、医療従事者だけじゃなくて、日本人全体がもうちょっとグローバリゼーションに本気で取り組むような姿勢を示さないと、この医療ツーリズムはそのうちポシャっちゃうんじゃないかと僕は思っていますね。だから、厚労省の方でもちょっと頑張っていただきたいと思います。

 あとは、先ほどもちらっと言いましたけれども、そういう外国人の患者を積極的に取り入れることができるような病院、特殊な病院を数カ所つくって、どんどん外国人の方々を呼び込んでもいいのではないかなとも思います。

 医療の産業化については、このくらいで終わります。

 きょうは盛りだくさんなので、では、次に、マイナンバー制度の医療システムへの応用について質問いたします。

 私は、現役の医者のころから、ニュージーランドの医療システムのことをちょっと聞きかじっておりまして、ニュージーランドというのは全国統一のIT医療システムを持っていまして、それによって患者さんにID番号をつけて、医者もID番号を持っている。患者さんがどこでどういう病気になっても、どこの医療機関へ行っても、すぐにこの患者のデータはクラウドのようなところからデータを取り出して、すぐに治療に入れる、患者さんの過去のデータもすぐに全部さかのぼって見られるというような話を聞きまして、非常にうらやましいと思いました。

 もう一つの効用は、医療費が節約できるらしいんですね。無駄な検査がなくなる。全部デジタル情報で保存してありますので、例えば、胸のレントゲン写真をA病院でやって、次にB病院へ移ったら同じ検査をやるというようなことがなくなる、被曝もなくなる。いいことばかりのように見えるんですね。

 今度、マイナンバー制度というのは今審議中ということなんですが、これを私は医療システムに取り込んで応用していったらいいと思ってはいるんですが、この進捗状況について、これも政務官ですか、よろしくお願いします。

とかしき大臣政務官 お答えさせていただきます。

 今審議いただいておりますマイナンバー、番号法案、こちらの方は、社会保障と税の番号ということで、税金と現金給付、ここが対象になっております。今委員御指摘いただきました現物給付であります医療等の番号、こちらの方は、残念ながら、今回は対象となっておりません。

 ですから、今後、このマイナンバー制度をどんどん発展させていって、医療との連携を検討していくことは十分考えられますし、それは、先ほどおっしゃいましたように、社会保障の費用の削減に大きく貢献すると考えられますので、今後、次の課題ということで取り組んでいこうと今考えております。

宮沢(隆)委員 取り組む用意があるというのは、私はすばらしいと思います。どんどん進めていただきたいと思います。

 それで、きのう読んだ論文なもので、資料として添付はできなかったんですが、外国の状況をちょっとお知らせしたいと思うんですけれども、デンマーク、フランス、イギリス、オランダ、カナダ、米国、オーストラリア、韓国、日本、ドイツ、以上十カ国の中で、国民IDを持っていないのは日本とドイツだけだそうです。もちろん医療IDも持っていない。

 これがおくれていると称していいのかどうか、よくわからないんですが、実は、この件に関して、先日、世界医師会の事務局長をやっているのが昔の僕の同僚で、この間、日本へ来たときにこの件を話したんですが、彼自身は相当プロテクティブで、いわゆる情報漏れでかなりトラブっている国が結構あるというようなことを言っていましたね。デンマークとかは多分そうなんだろうと思うんですが、だから、そんな国に住んだら君の情報は全部誰かにとられちゃうんだぞみたいなことを言っていました。

 僕は、その話を聞いてちょっとびっくりしたんですけれども、やはりこれは、今、サイバー攻撃とかやられているときですので、相当慎重に進めないといけないなと。私自身もちょっと自分にブレーキをかけたんですね、その話を聞いてから。そういう状況らしいので、世界の状況も考えながら進めていただきたいと思います。

 それからもう一つは、ヨーロッパは、一方で、ヨーロッパの各国を結ぶような連絡網をつくっちゃおうという話も進みつつあるらしくて、これは、ヨーロピアン・ペーシェンツ・スマート・オープン・サービスというらしいんですけれども、epSOSと略している。こんなこともヨーロッパは考えているんですよね。これが日本に必要かどうかというのはまた別問題なんですが、少なくとも、そういうグローバル展開をしようとしている国があるということは知っていてもいいんじゃないかなと思います。

 もう時間が迫りますので、最後の質問です。

 これは田村大臣にお願いしたいんですが、再生医療の話です。ちょっと話が飛んじゃいますけれども。

 これは、私も、ずっと前から頭の中で悶々としていた哲学的な問いかけなんですけれども、今、再生医療としてiPS細胞の研究が行け行けで進んでいるのは非常に結構なことだと思うんですね。医療技術が進歩することは、人類にとって非常に喜ばしいということは間違いない。救えなかった命を救えるようになることはすばらしい。

 一方で、平均寿命は恐らく確実に延びていくだろうと思うんですね、こういう技術を使うことで。高齢者がさらにふえることも予想されます。その結果、さらに超高齢化社会が促進されて、医療費が膨張することも予想されますね。

 そのような中で、再生医療を促進することの意義について、いわゆる財政面と倫理面でどのようにお考えか、数十年単位の中長期的展望で、お答えいただければなと思うんです。ちょっと難しいかもしれないですけれども、お願いします。

田村国務大臣 医療の技術の進歩というものはすごいわけでありまして、もちろん倫理面の問題はありますよね。倫理面をどうするか。今回の再生医療新法の中におきましても、第三者的な委員会を置いて、そこで倫理面をしっかりやっていただこうという話になっております。

 だけれども、究極は、病気にならないという医療技術が生まれれば医療費はかからないななんということを思うわけでありますけれども、そこまでいくかどうかは別にして、今想定をしていないような形でのさらなる医療の技術の進歩の中において、今まで治らなかった病気、もしくは、例えば年をとらないとか、いろいろなものが出てきた場合にどうするんだ。再生医療もそのうちの一つを担うかもわかりません。

 保険収載を目指すという話になれば、非常に高額なものをどのように保険でのみ込んでいくかというのは大変大きな問題であります。

 一つ考えられるのは、今も、先進医療という枠を設ける中において、評価療養の中において、そのカテゴリーで費用対効果を見ながら、ある程度価格が下がるまでそこに置いておく、もしくは、それ以上に本当に効果が出るならば、あえてそれものみ込んじゃおうという話になるのかもわかりませんが、そういうところで一応ウエーティングしながら併用療養をやっておるわけでありますが、そもそも一般化しないようなものだと、やはり保険とともに併用することは難しいのかな、大金持ちだけしか使えないというようなものは難しいのかなというふうに思うわけであります。

 あらゆるパターンがありますので想定は今できないわけでありますけれども、これからいろいろなものが起こってきたときに、制度自体をどうしていくかということは将来的には考えなきゃいけない課題になるのかもわかりません。

宮沢(隆)委員 非常に結構な答弁だったと思います。

 私は、今までの医療技術の進歩を見ていると、やはり医療技術の進歩がどんどん先に行っちゃって、倫理と財政面が後で必死になってくっついていくというような、そういうように見えていたんですね。これからは、三つともパラレルに進むような医療行政をやっていっていただければなと思います。

 以上です。どうもありがとうございました。

松本委員長 次に、新原秀人君。

新原委員 ありがとうございます。

 厚生労働委員会では初めての質問ということで、先日、予算で大臣から御答弁いただきまして、ありがとうございました。

 そのときのお話ですけれども、インフレターゲット二%、物価目標二%という中で、雇用者もたくさんいるこの医療業界ということで、もちろん状況を見ながらですけれども、やはり診療報酬も上げていかなければならないというふうに御答弁していただき、麻生大臣の方は、財務省としてはそれは引きとめたいんだというもちろんの答弁で、これはもう綱引きということなので、そういった意味で、頑張って実態に合う診療報酬を目指していただきたい、そのように思っております。

 そういった中で、この診療報酬という概念なんですけれども、調べたところによると、内閣が改定率を、もちろん中医協で話されるということなんですけれども、一応、決定権は内閣にあるんですか。大臣にお答えいただければと思います。

田村国務大臣 それはそうであります。

新原委員 ということは、最後は内閣が決めるということですから、その辺を責任を持って頑張って進めていただきたい。

 といいながら、だからといって、どんどんどんどん社会保障が膨らむのでは、これは、今のこの日本、この政府の状況から見て、そういうことではだめだというふうに我々は思っています。つまり、その中でいかに単価を上げながら医療費全体の総支出を抑えていくかという、そういった観点も非常に、どんどん出すだけではだめだと思うんですね。

 資料一を見ていただきますと、平成二十五年度一般会計予算で公金が、三十兆円近い社会保障費が出ております。次の二ページを見ますと、医療についても十兆円近く出ております。

 そういった中で、社会保障費といいますか、特に医療費、診療報酬の単価を上げていかなければならないけれども、逆に医療費の総額を、公金としての支出を抑えていくということにはどういった、これは両方一緒にやっていくということは非常に難しいことなので、それでなくても、高齢者がふえ、いわゆる医療費全体の売り上げはふえていくのはもう間違いない。つまり、GDPには非常に貢献はしていきますけれども、単価を上げなければみんなの給料は上がらない。そういった中、総額は締めていかなければならない。

 だから、非常に難しい政策というものが求められるわけですけれども、そういった医療費を抑制するといいますか、策というのは何か特に考えられているんですか。

田村国務大臣 医療保険は、もう委員御承知のとおり、税と保険料と自己負担で成り立っておるわけでありまして、どうしても制約があるわけであります。

 そういう意味からいたしますと、診療報酬等々を設定するにおいても、二年に一度の改定のときに、まず、全体の伸びをどうするんだという議論があった上で、それぞれの医療行為に対して点数がついていくという形になるわけでありますから、そこが非常にもどかしいところでもあるわけであります。

 自然増の部分が一方であります。これは、高齢化の進展とそれから医療の高度化、この部分で一定程度やはり毎年伸びていく。そう考えますと、それを調和させるためには何らかの制約もかけなきゃいけないというわけでありますが、一律に医療費をどれだけ、シーリングのように引き下げるというか枠をつくるというやり方は我々はとらないというふうに、今までも答弁をさせていただいてきているわけなんですね。

 そんな中において、では、どうするんだと。一つは、景気をよくすること。それによって、税収もふえますけれども、一方で所得もふえますから、所得がふえれば当然のごとく標準報酬月額が上がってまいりますので、医療の保険料の総額がふえてまいるということで、一つの解決。

 ただ、一方で、そうなりますと、医療のいろいろな物価も上がりますから、そこはいろいろなところでバランスがどうなのかというところはあるんですが、一方で、やはり適正化もやらなきゃいけない、効率化も図らなきゃならないということであります。

 一つ今取り組もうとしておりますのは、病院、病床等の機能の分化、連携、これは強化も含めてであります、さらには在宅医療等々との連携、こういうことをしっかりやることによって、病床数等々に関しての適正化と同時に、数もありますけれども、一つは、入院期間、在院日数、これをある程度適正なものにしていこうということで、医療費が適正化できるのではないかという期待があります。

 それは、そのままサービスが落ちるのではなくて、実は患者の方々に関しましても、適正なサービスを受けられるという意味では、これは必要であるのではないのかなということでありまして、ウイン・ウインのような状況の中で医療費自体も適正化ができるのではないか、こういう考え方。

 それからもう一つは、予防ですね。

 一つは、一般的な健康策、保健策と同時に、重症化をどう防ぐのか。そういうことを考えますと、健康日本21というものもございますけれども、食べ物をどうするのか、それから、適度な運動をどのように国民の皆様方に普及していくのか、啓発していくのか。

 さらには、たばこ等々に対しての害、こういうものも十分に情報を伝えていかなきゃならぬと思います。同時に、慢性疾患に対してどのような重症化を防いでいくのか、こういうようなこともやらなきゃいけない。生活習慣病をどう防ぐのか。

 こういうことを一つ一つ、これから予防医療という形でアプローチしていって、それで、こういうものに対してのアプローチの側面から医療費削減を図っていく。

 そういう意味では、先生、歯科医でございますけれども、歯科口腔保健法というものを、これは私もかかわって成立をさせたわけでありまして、やはり口腔ケアという意味も大変重要でございます。誤嚥性の肺炎と非常に関連性がある。また、そのほかにも生活習慣病とも因果関係があるというようなエビデンスも徐々に集まってきておるようでございますから、そのようなことも含めて全般的に検討する中において、予防策というもの、保健策というもの、こういうものをしっかりと進めてまいる必要があろうというふうに思います。(発言する者あり)

新原委員 ありがとうございます、すばらしい答弁で。

 ただ、一点、抜けているというか、僕の意見としてお伝えしたいことは、亡くなる一カ月前ぐらいの医療費ですね、これを気をつけないと、先日、大阪の診療報酬の関係で来たら、亡くなる一カ月前で一億の、一人ですよ、そういったレセプトがあった。次には亡くなっていた。

 本当にこういった医療が必要かということが非常に、もちろん、いわゆる抗がん剤等の薬代が主なものだと思うんですけれども、そういった医療が本当に必要なのかということももっともっと考えていかなければ、そこの部分の医療費というのは非常に多いんですよね。だから、そういったことももっともっと考えてやっていくことも、やはりそれプラス必要だと僕は思っています。

 今、大臣の答弁にありましたように、歯科のことになりますけれども、医療費を抑制するということで、予防医療ということは本当に大切だと思います。

 そういった観点で、予防医療という意味で歯科をどのようにして活用していくのかというような施策なりお考えを、ちょっと厚労省の方からよろしく。

矢島政府参考人 国民の健康寿命の延伸ですとか、社会保障制度の持続可能性を高めるため、予防医療に取り組むことは大変重要であると認識をしております。

 今年度から開始をいたしました健康日本21の第二次におきましても、六十歳代におけるそしゃく良好者の割合を平成三十四年度までに八〇%にするなど、歯と口腔の健康に関するものを含む五十三項目の目標を設定するなど、国民の健康づくりのための生活習慣の改善等を進めていくということにしております。

 厚生労働省といたしましては、歯科の分野も含め、地方自治体や民間団体、企業等とも連携を図りながら、予防医療に取り組んでいきたいと考えております。

新原委員 ありがとうございます。

 そういった中で、歯科ということをいろいろ歯科の分野でも研究されていて、この委員会でも過去に何度か御発言があったと思いますけれども、八〇二〇を達成した方は医療費が二〇%安いというふうな結果も出ています。八〇二〇というのは、八十歳で二十本歯を持っている人については、医療費まで安いんですね、二〇%。これは別に、鶏と卵と一緒で、どっちが先かわからない、健康だから歯がもつのかわからないですけれども、因果関係があるということです。

 それプラス、やはり、もう一つ最近よく言われているのが、糖尿病ですね。糖尿病について、歯科の治療をすれば糖尿病の病状が非常によくなるということで、今、内科の糖尿病学会、そういったところと連携して、認定医という形で、歯科もやりながら、つまり、糖尿病の医療費も安くする、そういった面もあります。

 そういった面で、医療費全体を抑制するという意味でも、歯科を活用するのも非常に手かなと思っています。

 そういった中で、特に医療費がどんどんどんどん伸びているというふうに統計上は、総額ではそうですけれども、歯科医療費は全然伸びていない。プラス、特に七十歳以上の高齢者の歯科医療費というのは非常に、例えば総入れ歯になってしまうと、ほとんど医療費はかからなくなるんですよね、これがいいのかは別にして。

 だから、本当に歯科ということを医療費抑制の活用に使っていただくようにお願いしたいと思います。

 そういった中で、平成二十三年八月十日に、歯科口腔保健の推進に関する法律ということで決められました。それからもう一年半ですかね、つまり、歯科口腔保健についてもっと推進していこう、そういった法律ができましたけれども、法律が制定されてから、今どのような進捗状況になっているか、お聞きしたいと思います。

原政府参考人 お答えいたします。

 一昨年の八月に、歯科口腔保健の推進に関する法律が成立いたしました。この中で規定されております、歯科口腔保健に関する知識の普及啓発等の施策の総合的な実施のための方針、目標、計画を示した歯科口腔保健の推進に関する基本的事項、これを平成二十四年七月に策定したところでございます。

 この基本的事項に基づく施策を推進していくために、平成二十五年度の予算案において、新たに、このかなめとなります口腔保健支援センターの設置でありますとか、あるいは、その口腔保健支援センターが実施いたします、例えば、障害者等への歯科保健サービスへのサポート、あるいは障害者歯科に対応できるような歯科医師や歯科衛生士の育成事業等々を、新しく口腔保健推進事業として予算案に計上させていただいているところでございます。

新原委員 そういった感じで、やはり、医療科において歯科は非常に日陰扱いになっていましたけれども、今後は、医療費抑制という意味、皆さんの健康、国民の健康を維持するという意味でも、少しは日の当たる場所に上げていただきたいという中で、一つだけ、これはちょっと気になることなんですけれども。

 資料五なんですけれども、これは、平成十八年度に小坂文部大臣と川崎厚労大臣の中で交わされた確認書ということで、歯学部定員の定員減、歯科医師国家試験の合格基準を引き上げるというふうに、七年前の確認書ですけれども、こういったことは今もずっと続けられているんですか。これはどういうふうになっていますか。

原政府参考人 お答えいたします。

 歯科医師数につきましては、歯科大学の新設等がどんどんできてきた時代がありまして、歯科医師数が急速にふえてくる、それを抑制するために、実は、昭和六十一年以来、歯学部入学定員の削減に取り組んでおります。当時の昭和六十年の入学定員は三千三百八十人、それに対しまして、現在、平成二十四年は、約三割減の二千四百四十人まで減らしていただいております。

 この経過の中で、先ほどの、平成十八年に文部科学大臣と厚生労働大臣との間で、歯科医師の養成数を削減する旨の確認書を取り交わしたところでございます。

 実際に、この中でありますように、歯科医師の国家試験につきまして、平成二十年度の国家試験から、より厳正な合格基準を適用して、歯科医師数の抑制と、さらにはその資質の確保を図っているところでございます。

新原委員 それは正しいんですけれども、それだったら入学前に切っておかないと、歯科大学で六年間も何千万も使って、それで、出たわ、国家試験に合格できないわとなったら、潰しがきかないですよね、これ。

 基準を上げるということはいいですよ、だから、その辺は、ちょっと行き過ぎたことになると、そういったことで困っている方が非常におられるんですよね。通らぬのが悪いんですけれども。いや、本当にそう。だけれども、それだったら、大学に入る前に、あなたは違う道を行きなさいよというふうに言ってあげなければ、私立の歯科大なんていえば、本当に六年間で五、六千万使うわけですよ。

 だから、そういったこともちょっと考慮に入れていただいて、今後は考えていただきたいと思います。

 歯科については、もうこれぐらいで終わらせていただきます。

 それでは、年金開始年齢が上がるということで、そちらの方に話を移させていただきたいと思います。

 この四月から、六十歳から六十一歳に、年金支給年齢が上がりました。そういった中で、まず私自身の考え方を申しますと、高齢者が何で六十歳かという定義がないですよね。六十歳が高齢者という定義は勝手に僕らがつくっただけであって、一応それは、いわゆる定年になるから、それを契機に高齢者みたいな。

 実は、これは私見ですけれども、僕自身が思うんですけれども、高齢者というのは、やはり、その国のうちの上から何%とか、現役世代が面倒を見る、その世代を高齢者と僕は認識しているんですよ。だから、今の社会保障制度は、六十や六十五という年齢で決めているから、結局、財源がどんどんどんどん、支えられる人の数がどんどん割合が多くなってくる。

 だから、その点を考えるという意味でも、六十から六十一にどんどん上げていくということは、非常に僕は重要なことだと思っております。働きたい方は、どんどん六十でも六十五までも働いていただいたらいいと思うんですね。

 地元の老人会とか回ると、奥さん方というか、おばあちゃんと言ったら怒られますけれども、高齢者の女の方が言うのは、定年になって主人が家で庭いじりをずっとしているのは困る、働けるんやったら外で働いてくれと。いや、ほんまにそう言われるんです、今までずっと別々に生活してきて、急に元気なまま家におられたら困るんですよと。

 だから、そういった意味でも、高齢者の働く場所というものを、働く場所というか働けるような制度というのも始まりましたし、そういったことは非常にいい方向に向かっている。

 だからといって、若年層の雇用が減るとかいうのは、これはまた違う話だから。それをみんな一緒にして、高齢者に働く場所をとられたら若年層の働く場所がなくなるというのはまた違う話であって、これはまた、働く場所をふやせばいいし、彼らがもっともっと頑張ればいいわけなので、これを同じように考えることは、僕はちょっと違うと思うんですよね。

 だから、そういった意味で、六十歳から六十五歳に引き上げていくということで、何かそういう障害なり、社会的に、会社の方も急に制度が変わると大変なことになるので、そういったことの何か政策なり対応は、今どういうふうにされているんですか。

小川政府参考人 お答えを申し上げます。

 委員御指摘のとおり、これまでも、年金の支給開始年齢が引き上げられてきたとか、少子高齢化が進んでいく中で、雇用の側面としては、例えば、高年齢者雇用安定法を改正して、定年延長でありますとか継続雇用制度などの高年齢者雇用確保措置の導入の義務化などを行ってまいりました。

 また、この四月に、厚生年金の報酬比例部分の引き上げに対しましても法改正を行いまして、六十五歳までの希望者全員の雇用確保を図るために、継続雇用に係る対象者基準を廃止し、雇用と年金を確実に接続させたところでございます。

新原委員 ありがとうございます。

 そういったことを対策としてされるんですけれども、僕、ごっつい気になっているんですけれども、公務員の人は上がっていないですよね、定年。だから、外郭団体でみんな逃げていくわけです、六十五まで。だからといって、共済も今、六十五までもらえない。

 だから、いわゆる公務員の方ばかりいじめる、別に維新やから公務員をいじめるんじゃなくて、普通に考えたら、やはりそれだけの権利なり、彼らを守っていかなければ、天下りは禁止だ、外郭団体に行くのはおかしいと言いながら、それなら、彼らは六十過ぎてから六十五までもらえないのにどうするんですか、僕自身はそう思っているんです。その点、やはり彼らにもそれなりの人生があるので、普通の一般と同じレベルで彼らのことも考えていかなければいけないと思うんです。

 そういった意味で、公務員の定年も上げていかなければならないのかなと。これについては、もちろん、給料の設定なり制度設計なりは全部考えていかなければならないですけれども、そういったことも真面目に考えていかなければ、やはり、もちろん給料の、五十五から上がらないとかいうふうな制度は今してきていますし、そういうことは全然やってもらってもいいんです、ただ、六十五まで堂々と職を全うできるようになる。六十歳で絶対定年になっていますから。つまり、いきなり局長や課長が次に平で働くわけにいかぬのですよ。だから、外郭団体という感じで皆さんが仕事をしている。

 それは、数を余り広げていくのはあれですけれども、制度としては、彼らが自分たちの生活と人生を擁護する意味では、僕は、広げていくのはおかしいと思いますけれども、そういった仕事をつくるということでも、もちろん外郭団体のよしあしはある、そやけど、必要な外郭団体でそういった仕事をするのは僕は必要かなと思っています。

 そういった中で、六十から六十一になったということは、今度、働きますよね。そういったところで一つ懸念があるのは、雇用保険はどうなるんですかね。今、六十で切られていますよね。ずっと六十一まで上がっていくと、雇用保険も制度上上げていかなければ、社会の労働保険ということを、つまり、その辺は今後どういった設計で考えておられるんですか。

小川政府参考人 お答えを申し上げます。

 雇用保険につきましては、現在でも、基本的に六十五歳まで対象というか被保険者としてカバーしておりますので、そういう意味では、委員御懸念のようなことはないと思います。

 それに加えまして、高年齢者の就業意欲を維持、喚起して六十五歳までの雇用継続を援助、促進するために、六十歳と比べて金額が低下した状態で働くような六十代前半の雇用者に対しましては、雇用保険から高年齢者継続給付を給付しているところでございます。

新原委員 ありがとうございます。僕、その辺がちょっと知識になくて、済みませんでした。

 だから、それを、今後、六十五まで上がっていくんだったら、雇用保険も今度は七十ぐらいまで上げていく、掛けられるような方向でやはり考えていくべきだ。結局、定年が上がってくると、また定年が終わってから働きたいと思う人は絶対ふえるので、そういった意味で今後は考えていただきたい。

 そういった中、今までは、在職老齢年金ですか、つまり、年金をもらいながら働くと、年金を減らされておったんですよ。それが、六十からずっと上がっていくごとに六十五まで働けるようになったら、年金はもらわないのだから、結局、在職老齢年金のように下げられることはないんですよね。

 だから、そういったら、保険は掛けてもらいますけれども、どうせだったら、年金も六十一、六十二まで掛けられるような。掛けたい人は、何で六十で切られなあかんのかと。つまり、支える人が少ない少ないと困っているのに、働けて、しかも六十五まで年金が上がっていくんだったら、六十五まで年金掛けてもろうたらよろしいやん。そのかわり、六十五や七十からもらう年金、ちょっと、ようけもらえますよというふうにアピールしたら、掛けてくれる日本人というのはたくさんいると思いますよ。

 だから、そういう日本人の真面目な気質というものをもっともっと活用するといいますか、協力してもらって、六十五まで年金を掛けられるようなシステムを考えていくべきだと思うんですけれども、大臣、どのように思いますか。

田村国務大臣 済みません、私もちょっと制度のことをよく、六十を超えてどうなるのか、よくわかっておりませんでして、今ちょっと事務方に聞きましたら、六十を超えても、四十年超えても入れる、七十までですかね、入れるという話でございますので、それまでは報酬比例がつくというような話のようであります。

新原委員 それは厚生年金ですよね。国民年金もということですよ。国民年金は六十で切られてしまいますよね。

香取政府参考人 御答弁申し上げます。

 国民年金につきましては、二十から六十までの四十年加入で、六十五歳から支給という形になっております。六十歳以降は、例外的に、過去の期間で年金の受給期間に満たないような状態が、外国にいたとかいろいろあった場合に加入できますが、通常はその形になります。

 というのは、四十年間加入で、今、六万六千円弱というフルペンションの額がセットされておりますので、それ以上長く加入しても、それが年金額へ反映しない形になっておりますので、現在ではその形になっておるということでございます。

新原委員 そうなんですよね。

 掛けられるんだったら、積極的に掛けたい人も、六十五まで国民年金を掛けてもらったらよろしいやん。いや、本当に。僕、そう思っているんですよ。だから、それぞれがもっと選べる、いや、もう六十でしんどいわという人も、それはよろしいやん。だけれども、六十五まで掛ける、七十まで掛ける、そのかわり国民年金をもらう額は月々は多くなる。

 昔だったら、鉛筆とか紙で計算しておったから、計算が大変だったかもしれないけれども、今はコンピューターのシステムや何か、それぞれの掛けた人の、金額がどれだけ掛けたか、六十五、つまり、人それぞれの年金を計算するというシステムなんかはつくるのは簡単でしょう。昔だったら、それは全部こうしていた。簡単と言ったらちょっと怒られるけれども、昔に比べたらできると思います。

 だから、それぞれの方が、六十以降は七十歳までぐらいは掛けられるような世の中にすれば、掛けてくれる日本人というのは本当に多いと思うんですよね。そういった、今まである、いや、これが当たり前だと思っているシステムをちょっと変えるだけで、賢く、うまいこと財政が、特に社会保障は回せるんちゃうかな。医療もそうなんですけれども。

 だから、そういった感覚で、やはり、どんどんどんどん財源もないのにふやすわけにはいかないわけなので、どこからお金を持ってくるか。

 そういった意味で、これはちょっと先ほどの医療にも戻るんですけれども、これは要望に終わりますけれども、例えば、先ほどの、医療費が増大するんだったら、医療費はふえるけれども、負担をどうするか。それなら選定療養なり、それから評価療養制度等みたいなのをちょっとふやして、その人らにお金を払ってもろうたらよろしいという。

 結局、政府の払える財源はほとんど変わらないわけなので、医療費全体としてふえていくところを、やはりもっと負担してもらうところは負担していただいて。だから、例えば、七十から七十五歳までの一割のいわゆる医療費を存続する、やはりこれは、我々としては、維新としては、早く解消すべきかなと思っています。

 そういった意味で、できる限り、みんなの力を使って、このすばらしい日本の国民皆保険、この年金制度を賢く持続させていただきたいと思います。

 以上で終わらせていただきます。ありがとうございました。

松本委員長 次に、柏倉祐司君。

柏倉委員 よろしくお願いいたします。みんなの党の柏倉でございます。

 きょうは、医療費適正化政策の中の病床再編について、それに関連して、看護師不足にも折に触れて質問させていただきたいと思います。

 とはいえ、今まで維新の会の宮沢先生が、やはりお医者さんで、同じような質問も、予定していたものがございましたので、適宜削除して進めさせていただければと思います。

 医療費適正化というのは非常に大事な概念というか、ぜひ進めていただきたい事業であるというふうに考えております。病床再編は、財政を考えながらも医療ニーズをどのように満たしていくかというふうな問題が核心だというふうには考えておりますが、現在進行しております療養病床再編、並びに、今、一般病床の方も大きく政策を転換されている途中だとは思いますけれども、ニーズ、財政、そしてその誘導政策、この整合性というものがやはり常に問われているんじゃないかなとは思っております。

 そこで、まず、介護療養病床の転換、療養病床の転換政策についてお伺いしたいんですが、これは、二〇〇八年からスタートして、一二年で完了するという内容のものだったはずでございます。

 医療及び介護療養病床の削減並びにその削減した病床を介護施設へ転換していく、こういった非常に時代のニーズに合った、私はすばらしい政策だというふうには思っております。医療療養病床を二十五万から、当初十五万で、最終的には目標を二十二万にされたわけですね。ただ、介護療養病床の方は、十二万、十三万あるのを全廃するというような流れであった。

 それで、昨年、まだ道半ばということで、六年間の延長期間を設けたというふうに記憶しておりますけれども、この政策を延長したのは民主党政権でございます。ここで、改めて大臣に、現政権下でのこの医療・介護療養病床転換事業に関する御展望といいますかお考えを、まず端的にお伺いできればと思います。

田村国務大臣 平成十七、八年ぐらいだったか、私がちょうど自民党の厚生労働部会長をやっていたころでございまして、今おっしゃられましたとおり、医療療養病床と介護療養病床で全部で三十八万床あったわけであります。

 当時、医療の方も、たしか二十六万床から十五万床ぐらいまで減らす、介護療養病床はもう全廃を目指すということでございましたが、途中、いや、回復期リハは必要じゃないかというような話の中で、これは三万床ぐらいはいいんじゃないかということで、それに転換をする中で、全体として十八万床ぐらいは回復期リハも含めて残そう、そういう議論をしてきた記憶が今よみがえっております。

 結果、当時、転換型老健という言い方をしたんですけれども、それにどう移すかということで、医師の数、それから看護師の数、こういうものがなかなか折り合いがつきませんでして、それでは移せない、移せるという議論を大分やりました。

 介護報酬もどれぐらい必要である、こんな議論もやってきたんですけれども、結果、やはり移っていただけないというような状況が続いてまいりまして、二十二年のときに、まだ八万七千床が介護療養病床として残っておるという実態を見まして、これはもう期限で全て全廃というわけにはいかないなという中において、多分、民主党政権の中において六年間延長ということに相なったんだというふうに認識いたしております。

 そういう意味では、全体的な政策の中身自体も、もう少しいろいろなことを考えれば、もうちょっとうまく転換をしていただけたのかなという反省も、実は我々自民党政権のときに決めたことでございますので、あるわけでありますが、今、足元二十四年四月で、介護療養病床がまだ七万六千六百床残っているんですね。

 それを考えますと、やはりこれは実態がどう移るのかということも含めてみながらでないと、なかなか、二十九年度以降どうするか。二十九年度までこれは延長しておりますから、これは転換の方も進めていかなきゃいけないわけでありますけれども、なかなか、今のままですとまだまだ移っていただけないということがございますので、そういうことも含めて、これからどうするかということを真剣に考えていかなければならぬというふうに思っております。

柏倉委員 それでは、もう重々御承知の内容だとは思いますけれども、現在までの療養病床の転換事業の流れを説明させていただきますと、この一枚目の配付資料で、もう大臣御説明していただきました、まだまだ七万五千、六千の介護療養病床が転換されずに残っているということでございます。

 問題なのは、次の資料にありますとおり、結局、七万残っているけれども、五万、六万は転換されたわけですね。ただ、その介護療養病床から転換した先が、老健施設ではなくて、医療療養病床になってしまった、ないし一般病床になってしまった。

 これが、アンケートによれば、患者さんの症状が、入院状態が療養病床に適している、一般病床に適しているというような内容なんですが、本当にそうなのか。それをここで突き詰めるつもりはありませんが、やはり採算というところ、医療経営者は常に頭を悩ませていますので、こういったところにかなり大きく影響されてこういうことになってしまったのかなというふうに思います。

 これの是非を論ずるつもりはありませんが、それで、今後、大臣のもとでまたこの根本、大方針まで見直されるのか。検討していくという御答弁がありましたけれども、これも民主党政権下での発言ですから、それに関してもお考えをお聞きしたいんです。

 去年は、民主党政権下では、どんどんやはり進めるべきである、そのための老健への転換への追加支援をこれは検討していくんだというふうに発表しておるわけですね。現状、この具体的な追加支援は話が出ていますでしょうか。煮詰まっている部分があれば、教えていただきたいのですが。

秋葉副大臣 今委員御指摘のとおり、どんどん転換を積極的に進めようということで取り組んでいるわけでございますけれども、これまでも、御案内のとおり、入所者の医療ニーズへの対応を、介護報酬上、特別に評価いたしました。

 介護療養型老人保健施設の創設でありますとか、療養病床が老人保健施設に転換する場合の床面積等の施設の基準緩和、あるいは、転換に伴います施設の増改築等に係る費用負担の軽減のための交付金の交付など、これまでも取り組んでまいりましたし、これからも、こうした財源の確保を十分図りながら充実をさせてまいりたいと考えております。

 今委員お尋ねの追加策につきましても、転換に係る実態把握を十分進めながら、今後、前向きに検討してまいりたいと考えているところでございます。

柏倉委員 よくわかりました。

 現在、転換方針が未定のところが六割あるということでございます。

 私、ライフワークとしまして、特養の待機者を一人でも減らしたいというところがございまして、まだ四万からのベッドが転換先を待っているわけでございますね。六万七千人の特養の待機者を一人でも減らせるような施策を、この四万の転換待ちのベッドを使ってやるわけにはいかないでしょうか。

 財政という面は大事だと、私、冒頭申し上げました。確かに、その面に関しては、特養に移るというのは相反することかもしれません。しかし、特に地方に行きますと、一人で暮らしている貧しいお年寄りも多いわけです。そういった方がついの住みかとして求めるのは、どうしても特養になってしまう。これはもう、医療政策というよりは社会政策なのかもしれません。

 そういったところも十分お含みおきいただいて、この転換ベッドを特養へ移すということ、これは、社福とか医療法人とかいろいろな縛りがあるのは重々承知しておりますが、どうでしょうか、これを前向きに、ないし、もう一たび考えていただくというわけにはいかないでしょうか。ぜひお願いいたします。

秋葉副大臣 今、介護療養病床から特養ホームへの転換については、老健施設への転換と同様の支援策を講じさせていただいているところでございます。

 今委員お尋ねの、特別養護老人ホームにおける転換の積極的な推進ということでございますけれども、やはり特養の場合には、必ずしも医師の配置が義務づけられていないというような面もございます。

 現実に、現場の状態をいろいろ見てみますと、例えば、たんの吸引が、介護型の療養病床ですと一八・五%の利用があるのに対して、特養では四・四%でありましたり、あるいは、経鼻経管あるいは胃ろうといった問題につきましても、介護療養病床ですと約三七%の利用がございますけれども、特養では一〇・九%ということで、やはり医療的なケアという観点から、なかなか、そうした、それぞれの施設の利用者の特性を踏まえて対応していかなければならないという現実的な面もあるんだろうと思っております。

 いずれにいたしましても、今後、介護療養病床の転換に係る実態把握をしっかり行いながら、これらの施設の特性を踏まえまして、しっかりと検討してまいりたいと考えております。

柏倉委員 ぜひ前向きに御検討いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

 次に、一般病床再編、特に七対一看護配置基準の病床に関する質問をさせていただきたいと思います。

 三枚目の資料にあります、これは、二〇二五年、平成三十七年、今から十三年後のイメージということで、先ほど大臣もお話をしていただきましたとおり、病気別に、急性期別にきっちりと色分けをしていって、合理的な看護、医療を提供していくという流れで、これは理にかなっているというふうに思います。

 そこで、まず質問させていただきたいのが、今の七対一看護というのは、高度急性期の方には非常に大切な、インテンシブな看護を提供できる体制であるとは思うんですが、こことこことの相関性ですね、やはりこの高度急性期のベッドには、この七対一看護を義務づけていく方向なのか。これはもう、デジタル式ではなくて、アナログ的に、ここには七対一がより多く見込まれるのか。まず、これを一つお聞かせ願いたいということ。

 今後、七対一とここの相関性を今議論しているわけなんですが、どちらにしても、ここの高度急性期の病床十八万、この十八万という数字は非常に大きな意味を持つものですね。

 この十八万、本当に十八万なのかというところ。これは本当にそれだけいるのか。ちょっと私、医師の経験からして、大体一般病棟の方は二割が高度急性期の位置づけになっているんですね。果たして二割もいるのかな。本当に特定機能病院に特化して考えればそうかもしれませんが。

 この十八万を、どのように今後本当にリアルな数字にしていくのか。私は、大臣が、キャリアブレインですか、雑誌のインタビューに答えていらっしゃるのを読ませていただきました。この十八万という数字に関して、これは前政権下での数であるし、また見直しが必要だというようなことをおっしゃっておりました。

 そこのところのお考えをぜひきょうは伺いたいと思いまして、先ほどの、ここと、七対一ベッドとこの高度急性期の相関性と、この十八万という数、これに関する大臣の御所見をぜひ伺いたいと思います。

田村国務大臣 七対一看護に関しては、いろいろな御意見を制度導入以来いただいておるということは理解をいたしているつもりでございますが、基本的には、在院日数でありますとか、それから看護の必要度みたいなものではかった上で、七対一というような基準をつくって、それで適用して、基本的な入院基本料に反映させていただいておるということであります。

 でありますから、これがどれぐらいおられるのかというのは、なかなか推計するのは、今のところ、その尺度でやっておるわけでございますから、それがそのまま高度急性期なのかと言われますと、この十八万という数字も、地域一般病床というもの、そういうものを考えた上でどうなんだということを考えますと、地域一般病院があればこれですけれども、なければもうちょっと、二十二、三万という数字だったというふうに思いますけれども、それぐらいが見込まれる。当時の推計なんですよね、二十三年の。

 ですから、我々の政権運営時じゃないという言いわけはするつもりはありません、その前からいろいろな審議会で積み重ねられた議論の中でそういう数字が出てきておるので、言い逃れするつもりはないんですけれども、あくまでも一つの推計の中で出してきている数字でございますので。

 果たして、この書いてあります十八万という数字が正しいのかどうなのかというのは、一応こういう仮定を置きながら、最終的には、やはりそれぞれ地域の医療計画というものがあるわけでございまして、この中でのいろいろなお声を反映させていただいた結果、どういう数字になってくるかというようなことを、たしか、当時インタビューで答えたような記憶がございます。

柏倉委員 当初、この七対一が導入されたときに、十対一より手厚い看護を提供しているベッドというのが大体一〇%から一二%ぐらいあったというふうに私は調べております。それだと、当時のベッド数でいうと、大体七、八万なんですね。それが三十年後、三倍になるのか二倍になるのかわかりませんけれども、その辺の現状把握、そして正確な試算、ぜひお願いしたいと思います。

 ちょっと時間がないので、段々で飛ばさせていただきます。

 そこで、この七対一、今はベッドが三十二万あるわけですね。これは、正直言って、本当にこれだけ必要なのかというところも、皆さん、疑問は共有していただいているんだと思います。

 その上で、今度、在院日数と看護必要度で、本当に、本当にと言うと語弊がありますが、さらに本当に必要な方に七対一看護を提供していこうというような政策にかじが切られていると思いますけれども、それは、誘導という点では非常に合理的かなと思います。

 ただ、私が心配しますのは、やはり看護師不足、これは、当初七対一をやるときに、まさかこうなるとは予測がつかなかったわけですね。ただ、医者も人間ですから、経営合理性というものに基づいた判断をして行動していく。

 この是非を問うつもりはありませんが、結局はそういったところ、また同じことになって、在院日数をより短く、一日でも短くするためには、スタッフを多く囲う、より手厚い看護をするためにスタッフを多く囲っていく、こういうような囲い込みが起こることがないか、これを私は非常に憂えておりますが、その辺の見込みといいますか、お考えをお聞かせいただければと思います。

田村国務大臣 そういうことも含めて、二十四年度の診療報酬改定で、看護の必要度でありますとか重症性というものを指数化する中で、厳し目にしたわけですね。ですから、今までから比べると、この七対一という看護の対応というものは減ってくるのであろう。

 それでもという話はあるのかもわかりませんけれども、基本的にそれだけ必要のある方々という指標が一つあるわけでありますから、そのパーセンテージを一〇%から一五%の患者の割合に変えたわけでございますので、そこの部分はかなり期待をこちらの方もいたしております。

柏倉委員 そのように予測どおりになってもらうことを私も祈っております。

 ただ、常にやはり検証していただいて、同じことにならないように取り組んでいただきたいということを切にお願い申し上げまして、本日は質問を終了とさせていただきます。ありがとうございました。

松本委員長 次に、高橋千鶴子さん。

高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 杉並で認可保育園に入れなかった保護者六十名が、行政不服審査法に基づく異議申し立てを行い、街頭でのアピールなどを初め、こうしたことがきっかけとなって、目黒区、足立区、大田区など都内各区、あるいは埼玉、東大阪などでも声が上がり、待機児童問題が大きくクローズアップをされております。

 資料の一枚目に、東京新聞の二月二十六日付をつけました。「一万九千人入れず」と見出しがついていますが、これは二十三区内のトータルでありまして、東京新聞の独自の調査であるとなっております。

 それで、二枚目は、同じ日の新聞なんですけれども、二十三区外の都内の状況を、これは共産党の都議団が調査したものであります。それを東京新聞が取り上げていただいて、多摩、島嶼部は五千人を超えている、こういうことが紹介をされています。

 新聞各紙あるいはテレビなどでも紹介をされているので、皆さんもごらんになっていると思うんですけれども、妊娠中から申し込んだ五カ所の認可外も全て断られ、余りに長い不安の期間を過ごした上に全滅でショックが大きいという母親、この数日間眠れない、お母さんの精神状態が悪いと子供の笑顔もなくなる、そういう母親など、小雨の中、あるいは雪の降る中、赤ちゃんをおぶって訴えをしてきました。

 お母さんたちのそういう必死の訴えに、自治体も定員をふやすなどのつなぎ策は動き出しているわけですが、まだまだ求められる水準には遠過ぎます。

 まず大臣に伺いたいのは、こうした保護者たちの願いをどう受けとめていらっしゃるのか。実情把握や解決策をめぐって、こうした、今取り上げられている自治体との協議とか、何かやっていることがあるのか、伺いたいと思います。

田村国務大臣 本当に切実なる思いであられるというふうに思います。

 これまでも、毎年毎年、定員枠をふやしてきたわけでありまして、二十三年度は四万三千人ですね、それから二十四年度が五万四千人、今年度が七万人、定員枠をふやそうということで、一応予算立てをして頑張る。

 四千六百十一億円、これに関して保育関連費を予算立ていたしておりますし、施設整備ということでありますが、安心こども基金で一千百十八億円、これは二十四年度の予備費で予算立てをした。

 そしてまた、補正予算で四百三十八億円、これは処遇改善ということで、保育士の方々の処遇改善で、保育士の方々自体が疲弊されていて、なかなか対応できないという部分もありますし、潜在的に、資格は持っているんですけれども、なかなか職場復帰されるお気持ちになれないという方々がおられますので、そういう方々にもぜひとも職場復帰していただきたいなということで、そういう予算立てをさせていただいております。

 去年の三党合意にのっとって子ども・子育て新制度が動き出すのに対して、今、子ども・子育て会議等々でいろいろな議論をする中において、この問題をどう解決していくんだ、そもそも、なぜ、これだけふやしているのに待機児童が毎年毎年ほぼ変わらない数字が出てくるんだということも含めて、いろいろな御議論をいただく中で解決策を考えてまいりたい、このように思っております。

高橋(千)委員 今、大臣の答弁は、二問目のことも少し含んでいたのかなと。対策について、ちょっと分けて考えたかったんですね。

 つまり、今、切実な実態だということをおっしゃいました。ただ、なぜそうなっているのか。確かに子ども・子育て会議でやりますよというお話はあったんですけれども、では、直接自治体からヒアリングをしたり、お母さんたちの声を聞いたりとか、そういう実情をつかむということをされましたかということをまず聞きました。

田村国務大臣 自治体からは、いつも、待機児童がどれぐらいおられるかという数字が上がってくるわけであります。我々の認識といたしまして、これから、子ども・子育て会議も含めて、いろいろな、自治体がなぜふやせないのかということも聞いていかなきゃならぬなというふうに思っております。

 また、親御さんのお気持ちは、これはもう十二分にわかっておりますので、とにかく認可保育園をふやす中において待機児童の解消を果たしていかなきゃならぬという思いは十二分に理解いたしておりますので、何とか認可保育園をふやしていくという方向で進めてまいりたいというふうに思っております。

高橋(千)委員 十二分にわかっているとおっしゃったんですけれども、少し、何でそうなのかということを議論する必要があると思うんです。

 というのは、これだけ話題になっているので厚労省もつかんでいるでしょう、たとえ新聞ベースであっても、枠がこうだったのに、一体どのくらいの人がはみ出して、現状どうなのかということを持ってきなさいということを言いましたら、三枚目の資料を持ってきたんですね。これは、杉並区等における認可保育所数や待機児童者数の状況ということで、これは昨年の四月一日の時点なんですね。

 そうすると、待機児童とは何かという議論があるわけですけれども、杉並区でいいますと、定員が五千四百十三人に対して五千四百四十人の児童だ、そうすると、待機児童は五十二人しかいないという話になっちゃうんですよ。そうすると、認可保育所は、何だ、一つの保育所、一人受け入れればいいじゃないか、そういう議論になっちゃうわけ。

 そうすると、実際に、このきっかけは、ことし一月に申し込んだ人の三分の二に当たる千八百名が、杉並区だけでですよ、はみ出して、これはもう立ち上がらざるを得ないという状況になったのを、全然反映していないじゃないですか。そこはどうですか。

田村国務大臣 そういう数字を出されるんですね、出されるんです。我々も、もっといるだろうなということは大体わかっているんですが、そこはカウントの仕方というものがそれぞれ自治体であるわけでございまして、そういう数字になってきておる。一方で、認証保育園は、これは待機児童にカウントされないわけでございますから、潜在的にあるわけでございます。

 そう考えると、どうやって本当の待機児童の数をちゃんと把握するか、ここが一番大きな問題だということは我々も認識いたしておりますし、昨年の三党協議の中での国会での議論の中でも、そういうことを何度も私は申し上げたわけでございまして、それがちゃんとわかるような、カウントできるような方策を考えていかなきゃならぬなというふうに思っております。

高橋(千)委員 まず、それをどうやって把握するかという問題で、この表には、実は、最初持ってきたのには右端がなかったんです。右端を入れてもらいました。そうすると、東京都の認証保育所などの数が出てまいります。五十二人が待機児童なんだけれども、実際は千百十八人がほかに入っている。こういうことはちゃんとつかんでいるわけです、厚労省はそもそも。

 それで、昨年十月一日の待機児童数、いわゆる公的に発表している待機児童数は四万六千百二十七人です、秋になりましたので。それで、ベビーホテルや認可外施設に入っている児童は十八万四千九百五十九人です。しかし、今声を上げているお母さん方は、その認可外の保育所さえも、あなたは三十番目ですよ、五十番目ですよという実態になっているわけです。

 ですから、先ほど来、認可保育所をふやすとおっしゃってくださいました。七万人、ことしは目標だとおっしゃってくださいました。しかし、では七万人に見合う保育所を幾つつくるのですかということを答えていただきたいと思います。

田村国務大臣 ですから、子ども・子育て新制度において、多様な運営主体に力をかりながら、もちろん質は絶対的に落とせませんから、質をしっかりと担保して、そういうところのお力をおかりし、保育所の整備をしていかなきゃならない。

 これは、何といいましても、国がつくるというわけにはいかないわけでございますので、やはり民間のお力をおかりしなきゃならぬわけであります。社会福祉法人等々、いろいろな方々のお力をおかりしながら、そのかわり、こちらもいろいろな施策は考えてまいりますので、保育所の方々の養成もしていかなきゃいけない、いろいろな問題があります。

 そういうことを総合的に進めながら、保育所の整備をしていくということでございます。

高橋(千)委員 しかし、そこにやはり、七万人とかいう数字は出るけれども、保育所そのものがどのくらいという目標がないのが問題ではないかと私は指摘をしています。

 共産党は、前から、例えば、標準は九十人定員でいいますと、十万人分一年間ふやすとすれば大体千七百億円程度という試算をして、やはり毎年そのくらいふやす必要があるのではないかと言っています。だって、八十五万人の潜在ニーズと言っているじゃないですか。それを全部とは言いませんよ、もちろん、いろいろな多様なものも大事かもしれません。しかし、それも、保育所をふやすということと一体でやらなければだめなんです。

 政府は、子ども・子育て新システム移行後五年間で待機児童をなくすと言っていますが、これでは保育所年齢を過ぎてしまいます。期限を区切って、認可保育所を思い切ってふやす計画をつくるべきと思いますが、いかがですか。

田村国務大臣 おっしゃられるとおりでございまして、でありますから、実は、総理からも指示をいただきまして、これは子ども・子育て新制度スタートまでの間、期間がございますから、前倒しという意味も含めて、しっかりと認可保育所をつくることによってこの待機児童というものに対して対応をするようにということを言われておるわけでございます。

高橋(千)委員 しっかりつくるというのは、まずしっかり受けとめました。ただ、幾つだとか、計画的にとはなかなかおっしゃっていただけないなと思って聞いていたんですけれども。

 ちょっと、その保障の問題で、それを前に進める上で確認をしたいんですけれども、新システムに入る前の先取りとしての緊急確保事業、これは子ども・子育て支援法の附則十条にありますよね。それと、新制度移行後も、児童福祉法五十六条、交付金という形で、保育所整備費というのは必要に応じて持つことができるということになっているはずなんです。

 それで、これまでは整備費というのは安心こども基金でやってきたわけですが、継ぎ足しと延長という形だったわけですね。当然、その水準は上回るのだということでよろしいでしょうか。安心こども基金の水準は上回る、これは国会決議でもありますので。整備費の保障。

田村国務大臣 それは四分の三の話でございますか。

 附帯決議等々でしっかりとそういうような院の御決議をいただいておりますので、それを重く受けとめさせていただきたいと思います。

高橋(千)委員 そこで、もう一つ問題提起をしたいと思うんですが、認可保育所をつくるんだというお答えがありました。そして、これまで継ぎ足ししてきた安心こども基金が、緊急確保事業や交付金という形で、同じ水準が保たれて施設整備費を担保するんだということを一つ確認できたかなと思うんですが、問題は、公立保育所の予算は、もう既に一般財源化されておりまして、施設整備費がございません。

 私、全部公立にしろなんて今は言っていません。だけれども、少なくとも八十万人を超える潜在ニーズに応えるためには、やはり自前で、お願いベースだけではなくて自前でもつくれるということがなければならないと思うんですが、これについて、公立保育所の整備について、やはり予算を持つ必要があると思いますが、いかがでしょうか。

田村国務大臣 公立保育園が一定の役割を果たしておられるということは十分に認識をいたしております。

 その上ででありますけれども、しかしながら、これは一般財源化したわけでございまして、それをまた国の運営費等々で対応するということはなかなか難しいわけでございまして、残念でございますけれども、そういうわけにはいかないということであります。

高橋(千)委員 ですから、結局、自治体に計画をつくれ、頑張れと言っても、どこかにやはり国が責任を持てる部分が残っていないと難しいんだということを私が言っているんです。

 二〇一〇年八月二十三日に、東京都の特別区議会議長会、これは大臣宛てに、まだ田村大臣になる前ですけれども、要望書を出しています。その中で、やはり今言ったことを指摘しているんです。

 「平成十六年、国が公立保育所運営費補助を一般財源化したことにより、自治体財政が厳しいもとで多くの自治体で保育予算を減らさざるを得ない状況となっている。待機児童解消のために公立保育所を整備したくても、土地取得費、建設費、運営費をすべて自治体の持ち出しでは、着実な整備は困難である。」と指摘しています。

 やはり特別な手当てをとらなければならないということを指摘しておきたいと思います。

 そこで、きょうは一つ提案がございます。

 平成二十四年度の補正で、内閣府が地域の元気臨時交付金一兆三千九百八十億円をつくっておりますけれども、これは地方単独事業にも充当できる、使えるとなっておるので、例えば公立保育所を建設する場合にも使えると思います。確認させてください。

北村大臣政務官 今回の地域の元気臨時交付金は、今回の経済対策における追加公共投資の地方負担が大変大きくなることに鑑みまして、地方の資金調達に配慮をしたものでございます。配慮をして、しかも迅速かつ円滑な実施を図るために交付するものであります。

 各自治体への交付限度額は、平成二十四年度補正予算に計上された公共事業等に伴う地方負担をもとに算定されているものでございます。

 本交付金の使途についてでありますが、一つには、建設公債を財源とする国庫補助事業で、法令で国の負担割合が定められていないものの地方負担に充てること、いま一つは、建設地方債の対象となる地方単独事業等に幅広く充当することができるものとされているところでございます。

 御指摘の公立保育所を建設する地方単独事業についても、その事業を実施する自治体において、本交付金の交付限度額の範囲内で充当することが可能であると考えております。

 いずれにいたしましても、地域において、本交付金を工夫して活用することにより、地域の活性化につながることを期待しているものでございます。

高橋(千)委員 結論は、可能であるということだと思います。

 本当にこれは次善の策ではあるんですけれども、しかも公共事業を推進という交付金ではあるんですが、しかし、可能だということは非常に大事であるということを一つ確認いたしました。自治体にぜひ使っていただきたいと思う。

 ただ、同時に、公立保育所をつくるというためには、この間、国の定員管理の中で、非正規化、あるいは保育所の民間委託化が進んできた背景がございます。当然、そこの手当ても一緒になって頑張らなければならない。

 今度は総務省の立場で、同じ政務官にお答えいただきます。簡潔にお願いします。

松本委員長 簡潔にお願いいたします。

北村大臣政務官 御案内のとおりでありますが、地方公共団体の職員数については、平成十七年から平成二十二年の五年間で、行政改革法などに基づいて、地方公共団体として具体的な削減目標などを掲げた、いわゆる集中改革プランを策定するよう要請し、定員の削減を図ってきたところであります。

 その結果、十七年から二十二年までの間で、総職員数については約二十三万人減少しております。さらには、保育所等については、保育所を含む福祉部門についても、民間委託等によって約四万人減少しているところでございます。

 ただ、集中改革プランの期間終了後は、総務省として、各地方団体の定員管理については、地域の実情を踏まえつつ、自主的に適正な定員管理の推進に取り組むよう助言をいたしているところでありまして、各地方団体においては、それぞれの地域における行政需要を勘案して、めり張りのきいた人員配置を行っているものと理解しているところでございます。

高橋(千)委員 定員管理が人材確保の障害にならないように、セットでお願いしたいと思います。

 そこで、最後にどうしても大臣にもう一問聞かなければならなかったので。

 今回の運動は、単に子供の預け先をふやしてほしいというだけではなく、先ほど来述べているように、認可保育所をふやしてほしいということだったわけですよね。お母さんたちは、これまで保活をずっとやっていますので、認可外の保育所もいっぱい見ているんです。だから、狭いとか、職員が少ないとか、もちろん保育料は高いです、そういうのを見ているからこそ、安心して預けられるものをふやしてほしいということを実感して述べているということです。

 それで、実は、ことしの一月に厚労省が発表した昨年一年間の保育施設における死亡事故は十八件で、前年より四件ふえています。いずれも、一歳未満の子供たちで、お昼寝中ですね。特筆すべきは、一時預かりで、預けた日の初日に亡くなったのが三件もあるんです。夜間の死亡事故が三件です。

 保育従事者が無資格者のみとか、本当に深刻な状態で、やむにやまれず預けた結果が、子供の命が奪われる。どんな思いで親たちがいるのかということを本当に受けとめていただかなければ、だから、とりあえず預け先があればなんということは絶対に言えないんです。

 この認識と、この中で、今、規制改革会議が基準をもっと緩和せよと言っていたり、どこぞの知事が国の基準が厳し過ぎるんだなどということを言っていますが、そうではないのだということで、大臣、一言お願いします。

田村国務大臣 先ほどのお話は本当に重要なところでありまして、要は、ただ単に、子供を預けるところがないんじゃなくて、ちゃんとしたところに預かってほしいというのが切実なる親の思いだというふうに思います。

 規制改革会議だとか、いろいろなところで保育の議論があるのは私も承知しておりますけれども、私は私の立場で、子供を守るという立場でございますから、安易な規制緩和は絶対に許さない、認可保育所の基準というものをしっかりと守って、認可保育所をふやしていくということが一番重要であるというふうに思っております。

高橋(千)委員 よろしくお願いします。

 きょうは終わります。

松本委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時七分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

松本委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。堀内詔子さん。

堀内委員 自由民主党の堀内詔子です。

 昨年末、衆議院選において初当選させていただき、本日、初質問をさせていただきます。何とぞよろしくお願いいたします。

 本日は、子育て期の女性の就労支援についてお伺いします。

 私ごとではございますが、私自身、二児の母として子育てをしております。また、私の母、そして大正生まれの私の祖母も、それぞれ教師という仕事を続けながら四人の子供を産み育てました。祖母の生きた時代、そして母の生きてきた時代には、一家の主婦が仕事を続けていくというときには、乗り越えなければならない壁は大きく、そして多くのものがあったと、子供の立場ながら私は感じておりました。

 今回、機会を与えてくださいましたので、子供を持つ女性が仕事を続けやすい社会、子育てのために一度仕事をやめた女性が、子育てが一段落したときには再び職を得て社会参加しやすい社会になることを願いながら、質問をさせていただきます。よろしくお願いします。

 働く女性の数は近年増加し続け、社会の担い手としてますますの活躍が期待されるところです。総理の施政方針演説においても、女性の力の活用や社会参画の促進が日本の強い経済を取り戻すために必要不可欠とのお考えに基づき、仕事と家庭の両立支援と、そして仕事への復帰を応援するとの御発言がありました。

 働く女性の育児休業取得率は八七・八%と育児休業の利用は進んできてはいるものの、それでもなお、妊娠、出産に伴い退職する女性が約六割もいると言われています。もちろん、御家庭において子育てなどに専念したいという方もおられ、そうした御希望もとうといものだとも思います。けれども、一方で、子育てをしながら仕事を続けたいという希望をお持ちの方や、妊娠、出産に伴い一旦離職した女性の中にも、仕事への復帰を希望する方がいらっしゃいます。

 子育て期の女性は、子供を通じた地域とのつながりを通して多様な価値観を培っていたり、職業生活以外の経験により多様なスキルを身につける機会があるという話を聞いたことがあります。そうした能力を持った女性の方々が職場でより一層活躍できれば、御本人の希望が実現するとともに、職場にもよい効果をもたらすのではないでしょうか。

 女性が、出産後も仕事を続けたい方は続け、また、出産などで一旦離職しても、仕事への復帰を希望する方は再就職を果たし、活躍できるような社会をつくっていくことは、子育て期の方々の希望を実現するためにも、ひいては日本経済の活力を維持するためにも重要と考えますが、こうした女性の就業をめぐる現状と課題について、政府の認識をお聞かせください。

とかしき大臣政務官 堀内委員の初質問にお答えさせていただきます。よろしくお願いいたします。

 委員御指摘のように、女性の力を生かしていくことは、やはり日本経済の活力の維持に大きく貢献されます。

 ところが、残念ながら、女性は、出産のときに六割の女性が退職してしまっております。子育てに専念なさりたいという方がいらっしゃる一方、仕事と子育ての両立がなかなか難しいという場合も多く、特に課題が多いのが、中小企業においての継続就業、これが非常に難しいというふうになっております。

 また、一回離職なさって、今度は再就職をしたいという方々もいらっしゃいますけれども、非正規雇用でしか就職ができない場合も多く、仕事と家庭の両立がなかなか難しいというのが今の状況であります。

 御本人自身、ブランクの後にブラッシュアップしていただく、そういった制度も設けたり、あと、ステップアップしながら働ける環境づくりや、そして、やはり仕事と家庭の両立をしやすい職場の環境をどれだけつくっていくのか、この辺が課題と思っております。

 以上です。

堀内委員 子育て期の女性について、仕事と家庭の両立を希望する女性も、そして、出産などに伴い一旦離職した後、再就職を希望する女性も多いこと、そして、その希望を実現するためには、克服すべきさまざまな課題があるとのお話をいただきました。ありがとうございました。

 両立が難しかった具体的な理由としては、勤務時間が合わなかった、職場に両立を支援する雰囲気がなかったなどが多いと聞きます。また、再就職についても、いざ活動を始めようとしても、どうしたらいいかわからないといった御意見も伺います。

 政府もさまざまな課題を認識しているとのお話でしたが、こうした課題について、現在政府はどのような対応を行っているのか、お聞かせください。

とかしき大臣政務官 お答えいたします。

 まず、政府といたしましては、子育て期の女性の継続就業につきましては、まず一つ目に、短い時間でも働けるように、その制度の義務化を盛り込んだ育児・介護休業法の周知の徹底を行っております。

 そして二つ目に、次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画の策定、認定の一層の促進を進めております。

 そして三つ目に、女性を上手に活用している企業の普及、そこを頑張っている企業を表彰したりとか、そして助成制度を設けたりとか、企業の取り組みを、前向きに取り組んでいる企業の背中を押すような、そういった政策もさせていただいております。

 また、再就職の支援につきましては、全国百七十三カ所の拠点におきまして、マザーズハローワーク事業を今積極的に進めさせていただいております。効果が徐々に出始めてきております。

 以上でございます。

堀内委員 現在の政府の対応状況についての御説明をありがとうございました。

 このような対策を講じてもなお、仕事の継続を望みつつも退職される女性や、再就職を希望しながらもなかなか実現できない女性もおられます。

 さらなる対策が必要と考えますが、大臣の御決意をぜひお聞かせください。

田村国務大臣 子育て期の女性の方々が、やはり社会で活躍できる環境をつくることは大変重要でございます。ただでさえ少子高齢化の中で働く方々の数が減っていくわけでありますから、やはり、女性の方々は非常に優秀な方々が多いわけでありますので、そのお力をおかしいただかないとなかなか国が動いていかない。こういう状況の中で、今、とかしき政務官が言いましたとおり、さまざまなことをやってきております。

 もちろん、企業も含めて社会全体が理解をいただかなければいけない話でありまして、例えば、職場復帰するために、企業が、育児休業をしているときにいろいろな情報をその女性にしっかりと周知していくということも必要であろうと思います。

 また一方で、私、イクメン議員連盟というのをやっておりまして、育児はちゃんと男性もやろうよということでございますが、イクメンプロジェクトを進めているんですけれども、まだ取得率が低いんですね。二・六三%ぐらいでありまして、何とかこれを一三%ぐらいまで持っていきたいということで、努力をいたしております。

 そういうあらゆることを進めながら、一方で、若者・女性活躍推進フォーラムというものを官邸でもつくっていただいておりますので、こういうところでしっかりと御議論をさせていただいて、いろいろな意味での方策をこれからも講じてまいりたいというふうに思っております。

堀内委員 ありがとうございました。

 一人でも多くの女性が笑顔で働き続けられるような社会の実現をお願いして、質問を終わらせていただきたいと思います。ありがとうございました。

松本委員長 次に、輿水恵一君。

輿水委員 公明党の輿水恵一でございます。

 私も、昨年、初当選をさせていただいて以来、初めてこの厚生労働委員会の質問となります。きょうの最後の質問となりまして、大変お疲れのところかと思いますが、最後まで元気いっぱいに質問をさせていただきますので、よろしくお願いを申し上げます。

 さて、この委員会、一人一人が健康で安心して働ける社会環境を創造するという、日本の将来の繁栄と発展を大きく左右する課題を抱えている大事な委員会である、このような思いでいっぱいでございます。

 そして、このような中で、政府の支出において大きなウエートを占めている、午前中の議論でもございましたが、社会保障関係費は増加の一途をたどっております。中でも、医療にかかわる支出は、高齢化の一層の進展や医療技術の高度化などによって、さらなる増加が予想されているところでございます。

 そして、今、国民が安心して暮らせる日本の未来を開くために、この医療費を初めとする社会保障関係費をいかに抑制していくのか、また、減少する労働人口を確保するためにどのような取り組みをするのか、積極的かつ具体的な対策が求められているところでございます。まさに、攻めの厚生労働行政の推進が必要であります。

 そこで、初めに、一人でも多くの方が生涯元気に働ける社会環境の整備について、大臣の所見をお伺いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

田村国務大臣 先ほどは、少子高齢化の中で働く方々が減っていきますから、女性の力が大変重要だというお話をさせていただきましたが、やはり高齢者の皆様方のお力も大変重要な部分になってこようと思います。平均寿命がずっと延びてきておりますけれども、日本はあわせて健康寿命の方も延びてきておるわけでありまして、やはり健康寿命の延伸をする、これは安倍内閣においても一つ大きな目標でございます。

 その中において、生涯現役ということで、高齢者の方々が、仕事についていただいたりでありますとか社会活動の中で御活躍をいただく、これは大変重要な話であるわけでございます。そのためにも、健康日本21等々、我が省の方は推奨しておりますが、健康づくりをしっかりやっていただく、高齢者の方々がやはり元気で社会の中で御貢献をいただくということが大変重要だというふうに思っておりますので、これからも健康づくり施策を進めてまいりたい、このように思っております。

輿水委員 ありがとうございます。

 まさに世界有数の長寿国となった我が国が目指すべき方向は、単なる長寿ではなく健康寿命、つまり、日常的に介護を必要としないで自立した生活ができる生存期間を延ばすことであると思います。

 厚生労働省では、国民の健康寿命を延ばすために、今言われたような取り組みの中で、適度な運動、あるいは適切な食生活、禁煙などを推進してきたと思います。ここで大切なことは、事業計画を策定するだけではなく、国民一人一人が実際にあらゆる場面で健康づくりに積極的に取り組むような、そして、取り組みながら生涯健康な日々を送れるかどうか、ここが大事であると思います。

 そこで、一人でも多くの国民が健康増進に積極的に取り組むための環境整備、具体的には、今、地方自治体では、いわゆる特定健康診査、あるいは特定保健指導等も含めながら、メタボリックシンドローム防止のためのそんな取り組みもしているところでございますが、なかなかその受診率も上がってこない。また、受診して非常に厳し目な結果が出たとしても、実際、生活習慣を改善して、また、そのデータを改善していく取り組みがなかなか進められない。これは日常生活を突然変えることもできない。そういった状況の中で、ここをいかに具体的に、一人一人が真剣にそういった取り組みができるような方向にしていくかが大事ではないかなと感じているところでございます。

 特に、そのような中で、今、国では、健診を受けましょう、あるいは、改善しましょう、指導もしていますだけではなく、もうちょっと国民一人一人の健康増進への具体的な取り組みを適切に評価し、何らかのインセンティブとなるような制度の開設なども必要なのかな、国民がより積極的に予防や健診に取り組む環境を整えること、こんなことにも挑戦をしていくべきか、このように考えますが、見解をお聞かせ願えますでしょうか。

田村国務大臣 今おっしゃられましたとおり、食生活でありますとか運動、たばこと言いますと吸っておられる方々には大変恐縮でありますけれども、たばこの問題、お酒もそうでありましょうし、いろいろ重要なものはありますけれども、やはり健康診断ということをしっかり進めませんと、今の自分の体の現状がどういうことかというのがわからないわけですね。それによって、ある程度重症化を防いでいったりだとか、いろいろなことができるわけでありまして、その主な役割を果たすのが特定健診、そして保健指導という形であります。

 これは、産業競争力会議の中でも、実は、ここに関して何らかのインセンティブをまず個人に与えられないかということで、今いろいろな議論をいただいております。そしてまた、保険者に対しても、健診の率が上がれば、例えば後期高齢者支援金なんかの加算、減算みたいな形で何かメリットがないかということで、実際問題、そういう制度も動き出してくるわけでありますけれども、そういうようないろいろなメリットというものを考えるのは、一つのきっかけになるんだというふうに私は思いますので、いろいろな知恵を出して、先生がおっしゃられますとおり、健診が進んでいくように頑張ってまいりたいというふうに思っております。

輿水委員 ありがとうございます。ぜひ大胆な取り組みを期待したいと思います。

 次に、一人一人の可能性を追求する福祉行政について伺いたいと思います。

 まず初めに、発達障害のある方々が活躍できる社会の構築について。

 昨日、四月二日は、国連総会で定められた世界自閉症啓発デーであり、日本においても、この四月二日から八日を発達障害啓発週間として、自閉症を初めとする発達障害について多くの人々に知っていただくことを目的に、さまざまな事業が展開されています。ここで、自閉症を初めとする発達障害について一人でも多くの方に知っていただき、理解をしていただき、適切に対応していただくことは、一人一人の可能性を大きく開いて、社会での活躍の場をつくる大事な取り組みであると思います。

 平成十七年四月に施行された発達障害者支援法により、これまでの障害者福祉制度の谷間に置かれ、その気づきや対応がおくれた自閉症、アスペルガー症候群、LD、ADHDなどを発達障害と総称して、それぞれの障害の特性やライフステージに応じた支援を国、自治体、国民の責務として定められました。

 しかし、発達障害のある方にとって、まだまだこの現実の社会は厳しい状況にあります。脳の発達の仕方の違いから、他人の気持ちや感情を理解することができない、あるいは、言葉を適切に使うこと、新しいことを学習することなどが苦手であり、一般的な常識と思われることを身につけることもなかなか進まない方もいらっしゃいます。そして、周りの無理解から精神的な苦痛を受け、二次的な障害としてさまざまな精神的な病を引き起こしてしまい、社会から孤立してしまうケースもふえております。

 この発達障害に対して適切に対応し、社会から孤立する人々を社会で活躍する人材へと育てることは、日本の将来にとって大変に重要なことであると考えます。

 そこで、乳幼児から社会人になるまで、発達障害のある一人一人の個性を大切に、一人の可能性を伸ばす社会環境を厚生労働省が先頭に立って開いていくことが必要と考えますが、見解を伺います。

桝屋副大臣 今委員からお話がありました、自閉症でありますとか、アスペルガーでありますとか、発達障害については、実は障害者福祉の世界でも、長い間、谷間ということもあったわけでありまして、今委員からもお話をいただきましたきのうの啓発デー、お話を出していただいてありがとうございます。

 そして、委員も所属しておられる公明党の福島豊先生あたりが、御自分の子供さんのこともあり、平成十六年、各党の先生方にもお話をして、そして、議員立法で発達障害者支援法ができ上がったわけであります。やっとその体制ができた、定義も含めてですね。そして、障害者施策の中でもきちっと対象として捉えるというようなことが始まったわけであります。

 先生おっしゃったように、乳幼児期から成人期まで、生涯にわたるライフステージに対応した支援の充実に取り組んでいきたい、一人の人の可能性を求めていきたい、我々厚労省としてもそう考えているわけであります。

 具体的には、各都道府県ごとに教育とも連携いたしました発達障害者への支援体制の整備、あるいは、発達障害者支援センターによります専門的見地からの市町村や福祉サービス事業所への支援、そして、早期発見、早期支援のための専門家による学校や保育所の巡回支援事業の実施などを行っているところでございます。

 ただ、これは始まったばかりでありまして、やっと全国の体制が整い、今から進められるということでございます。

 これらによって、発達障害のある方が早期から一人一人の特性に沿った支援が受けられ、その持っている力を最大限に発揮できるものとなるように進めてまいりたいと考えている次第でございます。

輿水委員 ありがとうございます。

 まさに、発達障害の各地域で取り組まれているこの中で、やはり人材。どういった人材がその一人一人を理解して、適切に対応していくのか。組織とか制度と同時に、人材の育成が非常に重要になってくると思います。その辺もしっかりとフォローしていただきながら、一人一人がしっかりと社会で活躍できるような環境をつくっていただきたいと思いますので、よろしくお願いをいたします。

 次に、攻めの介護事業の推進について伺いたいと思います。

 二〇〇〇年にスタートした介護保険制度は、二〇〇五年に介護サービス利用から介護予防へと大きく政策の転換をいたしました。そして、昨年度の改定で、診療と介護報酬が同時に改定され、施設介護から在宅介護への移行を進めながら、団塊の世代が七十五歳以上となる二〇二五年に向け、住みなれた地域で医療や介護などを受けられる地域包括ケアシステムの構築を目指すとしています。

 今後重要なことは、医療と介護の連携を強化し、介護の人材の確保とサービスの質の向上を進めながら、高齢者一人一人がより健康的で、より活動的な生活を続けられるような介護や生活支援の提供であると思います。

 そのために、さまざまな介護サービスを推進する中で、今の制度の中では、いろいろなサービスの計画を立てて、具体的に取り組んでいる、そういったことに対していろいろな加算をしたりしている、そういったことはあるんですけれども、それ以上に、実際、いろいろなサービスの目的は、その介護の状態を維持したりあるいは改善をしていく、そういった目的があると思うんですけれども、その成果が出たかどうか。

 その成果に対してのそういった適切な評価と判断をしながら、本気というか、どこも一生懸命やっていると思うんですけれども、いろいろな形で丁寧に一人一人に対応しながら、そういう具体的な取り組み、計画だけではなく、成果まできっちり出している事業者を評価し、そういったところに新たな加算なども進めることによって、当然、その介護施設にいる方の健康状態が改善されると同時に、優良な施設が地域に育てられる、このように思います。

 そのような、計画とか取り組みだけではなく、成果というところも十分見ながら、何らかの施策等は検討できないのかどうなのか、お伺いしたいと思います。

とかしき大臣政務官 お答えさせていただきます。

 委員御指摘のとおり、介護の質、そしてその評価、それをどう今後生かしていくかという非常に重要な点だと思われます。

 ということで、厚労省といたしましても、サービスの質の評価をしっかりしていこうということになりまして、平成二十五年度からデータ収集を行っております。要介護認定のデータとレセプトのデータを一元的に収集して、分析して、介護保険にかかわる状況がどうなっているのか、それをまずデータベースを構築して、そしてそれから評価を行っていこう、今そのように考えております。

 今後も、これらの取り組みをどんどん進めてまいりまして、介護サービスの質の向上、そして国民の皆様に安心して利用していただけるような制度になるように頑張っていきたいと思っております。

 ありがとうございました。

輿水委員 ありがとうございます。

 まさに、地域の介護、私も地元でそういった施設の方と触れ合う中で、本気で成果を出そうとすると、今のルールの中ではなかなかやり切れない。

 例えば訪問介護にしても、新人の方が入ってきました。当然、一人で行くという前提でなっているんですけれども、新人の方のときには二人以上でついて、しっかりとしたその方の指導をして、受けられる方も満足がいくサービスが受けられるように見届けて、そして進めていく。その分が全部、施設管理者というか、その負担になっている。でも、そういったところは成果を出している。そういったところをしっかりと評価できるような、そんな環境をつくっていただければと思いますので、よろしくお願いをいたします。

 最後に、再生医療の安全かつ迅速な実用化の取り組みについて伺います。

 さきのこの委員会でも、再生医療を進めるための法案も全会一致で成立をし、また、田村大臣の所信表明においても、我が国で最先端の研究が進められているiPS細胞は、日本発のイノベーション創出の可能性に富んだ技術であり、一刻も早い再生医療の実用化を進めるために、安全面、倫理面に配慮しつつ、予算面での支援と制度面での対応を進めていくと述べられております。

 いよいよ、ここからが勝負であると思います。日本の最先端の研究開発の成果をどのように実用化に結びつけていくか。細胞の摘出、保管、培養、投与、経過措置など、個々の工程の技術革新とあわせて、再生医療の実用化を担保する世界標準となるような再生医療の安全基準を日本が生み出していく。また、それに沿った形であらゆる工程をしっかり整備していくことによって、その実用化がなされるものと思います。

 いよいよ、この再生医療の分野で新たなる成長を狙う日本として、まさに世界標準となる再生医療の安全基準、こういったものを生み出すための積極的な取り組みが必要と考えますが、この点についての大臣の見解を伺います。

田村国務大臣 再生医療は、本当に国民の皆様方から期待されております。今まで治ることのなかった疾病等々が、治療ができる可能性があるわけでございまして、ただ、一方で、倫理面と安全面というものをしっかりと確保していかなきゃいけないわけであります。

 今国会に法律を何とか出させていただきたいなということで、一つは、薬事法の改正という形の中におきまして、今まで、再生医療製品といいますと、どうしてもその特性等々を考えて、他の薬だとか医療機器とは違うわけでございまして、承認しづらいんじゃないかというような心配もあられたわけでありますから、そこに関しましては、条件つきで、期限を設けて早期承認をしよう、ただし、安全面はしっかりと担保していこう、こういうような法案を出させていただく予定でございます。

 さらには、再生医療の医療行為自体、これに関しても今、いろいろな危惧があります。リスクに応じちゃんと安全性を確保するということ、さらには、細胞培養加工する場合、今病院でやっておったわけでありますけれども、それを外部委託できるようにしよう、こういうことを含めた再生医療新法等々も出させていただこうということで、準備をさせていただいております。

 いずれにいたしましても、そのような法律にのっとってこれからいろいろな行為をしていくわけでありますが、医療行為でありますとか、また臨床研究でありますとか、それぞれそういうものを行うときの基準というものもあるわけでございまして、この基準というものをしっかりと設定しながら、一方で、再生医療製品に関しましては、今までもその安全性にかかわるガイドラインをつくってきておりますので、そういうものを、これから、先生おっしゃられるとおり、国際基準のような形でつくっていけるようにしっかりと努力してまいりたい、このように思っております。

輿水委員 どうもありがとうございました。

 再生医療のトータルコーディネートを厚生労働省にしっかりやっていただきまして、成長につなげていただければと思います。

 本日は、まことにありがとうございました。以上で終わります。

     ――――◇―――――

松本委員長 次に、内閣提出、健康保険法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。田村厚生労働大臣。

    ―――――――――――――

 健康保険法等の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

田村国務大臣 ただいま議題となりました健康保険法等の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由及び内容の概要を御説明申し上げます。

 協会けんぽは、中小企業の労働者とその家族が多く加入しており、被用者保険のセーフティーネットとして国民皆保険を堅持していく上で、重要な役割を果たしております。しかしながら、近年の経済状況の悪化による保険料収入の減少や医療費の増加等により、その財政状況は厳しくなっており、協会けんぽの全国平均の保険料率も毎年引き上げられております。

 今回の改正は、こうした状況を踏まえ、平成二十五年度及び平成二十六年度におけるさらなる保険料率の上昇を抑制するために、平成二十二年度から平成二十四年度までと同様に、協会けんぽに対する財政支援措置等を講ずるものであります。

 以下、この法律案の内容について、その概要を御説明いたします。

 第一に、平成二十五年度及び平成二十六年度において、協会けんぽに対する国庫補助率を千分の百六十四とするとともに、協会けんぽの準備金について、積み立てることを要しないこととしております。

 なお、協会けんぽに対する国庫補助率については、その財政状況等を勘案し、平成二十六年度までの間に検討を行い、必要があると認めたときには、所要の措置を講ずることとしております。

 第二に、平成二十五年度及び平成二十六年度において、被用者保険等の保険者が負担する後期高齢者支援金について、その額の三分の一を被用者保険等の保険者の標準報酬総額に応じたものとすることとしております。

 第三に、健康保険の被保険者または被扶養者の業務上の負傷等について、労働者災害補償保険の給付対象とならない場合は、法人の役員としての業務を除き、健康保険の給付対象とすることとしております。

 最後に、この法律案の施行期日については、平成二十五年四月一日としておりますが、健康保険の被保険者または被扶養者の業務上の負傷等に関する規定につきましては、平成二十五年十月一日から施行することとしております。

 以上が、この法律案の提案理由及びその内容の概要です。

 御審議の上、速やかに可決していただくことをお願いいたします。

松本委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後一時三十三分散会


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