衆議院

メインへスキップ



第12号 平成25年5月17日(金曜日)

会議録本文へ
平成二十五年五月十七日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 松本  純君

   理事 上川 陽子君 理事 高鳥 修一君

   理事 棚橋 泰文君 理事 冨岡  勉君

   理事 西川 京子君 理事 山井 和則君

   理事 上野ひろし君 理事 古屋 範子君

      赤枝 恒雄君    今枝宗一郎君

      大久保三代君    大串 正樹君

      金子 恵美君    神山 佐市君

      小松  裕君    古賀  篤君

      白須賀貴樹君    新谷 正義君

      田中 英之君    田畑 裕明君

      高橋ひなこ君    津島  淳君

      とかしきなおみ君    豊田真由子君

      中川 俊直君    永山 文雄君

      丹羽 雄哉君    船橋 利実君

      堀内 詔子君    三ッ林裕巳君

      宮澤 博行君    村井 英樹君

      山下 貴司君    渡辺 孝一君

      大西 健介君    中根 康浩君

      柚木 道義君    横路 孝弘君

      足立 康史君    伊東 信久君

      新原 秀人君    伊佐 進一君

      輿水 恵一君    柏倉 祐司君

      中島 克仁君    高橋千鶴子君

      阿部 知子君

    …………………………………

   厚生労働大臣       田村 憲久君

   厚生労働副大臣      桝屋 敬悟君

   厚生労働大臣政務官  とかしきなおみ君

   厚生労働大臣政務官    丸川 珠代君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 豊田 欣吾君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房年金管理審議官)       高倉 信行君

   政府参考人

   (厚生労働省年金局長)  香取 照幸君

   厚生労働委員会専門員   中尾 淳子君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月十七日

 辞任         補欠選任

  白須賀貴樹君     宮澤 博行君

  田中 英之君     神山 佐市君

  豊田真由子君     津島  淳君

  船橋 利実君     渡辺 孝一君

同日

 辞任         補欠選任

  神山 佐市君     田中 英之君

  津島  淳君     豊田真由子君

  宮澤 博行君     白須賀貴樹君

  渡辺 孝一君     船橋 利実君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 公的年金制度の健全性及び信頼性の確保のための厚生年金保険法等の一部を改正する法律案(内閣提出第五三号)


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

松本委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、公的年金制度の健全性及び信頼性の確保のための厚生年金保険法等の一部を改正する法律案及びこれに対する柚木道義君外三名提出の修正案を一括して議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 原案及び修正案審査のため、本日、政府参考人として内閣府大臣官房審議官豊田欣吾君、厚生労働省大臣官房年金管理審議官高倉信行君、年金局長香取照幸君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

松本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

松本委員長 これより原案及び修正案を一括して質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山下貴司君。

山下委員 おはようございます。

 きょうは大臣は朝四時起きで備えておられるということで、世界じゅう見渡してみても、これほど大変な厚生労働大臣はおられないということでございます。私自身も初めての質問であり、そんな大臣初め皆様の胸をかりるつもりでやらせていただきたいと思います。

 私の質問は、厚生年金基金制度の改革について伺いたいと思います。

 今回の改革の中身は、大きく分けて二つあるのではないかというふうに考えております。一つは、運用状況の悪化により解散を望む厚生年金基金がより容易に退場できるために、特例的な解散制度を設けるもの、そしてもう一つは、解散を望んでいない基金であっても、やはり運用状況に懸念がある場合には、強制的に基金を解散させ、あるいはほかの企業年金制度への移行をさせるものと私自身は受けとめております。

 この厚生年金基金は、昭和四十年の厚生年金の大幅な給付改善、いわゆる一万円年金に際して、これに伴って保険料引き上げをやろうとしたところ、対応できないという事業主に配慮して、事業主が国に納める保険料の一部に退職金原資を加えて自主的に運用する仕組みとして実施されたものでございます。

 厚生年金基金は、国への納付が免除された免除保険料と退職金原資に相当する上乗せ保険料を原資として運用することによって、運用基金のスケールを大きくして、そして、まず分散投資を可能にしたり、あるいは手数料や事務コストの削減などスケールメリットを生かした効率的な運用を図って、基金給付の厚みを増したというプラスの面があったと承知しております。

 他方で、運用環境の悪化やAIJ投資顧問のような投資詐欺的な事例による代行割れのリスクも負っていたというふうに理解しておりますが、このような厚生年金基金制度への評価及び今回の改革について、大臣の一般的な、総括的なお考えを伺いたいと思います。

田村国務大臣 山下先生には、お気遣いをいただきましてありがとうございます。

 厚生年金基金でございますけれども、今おっしゃられましたとおりでございまして、昭和四十年、当時、年金の給付を大幅に引き上げようということで制度をいろいろと見直したわけであります。

 当然保険料が引き上がるということでございまして、事業主側からしてみれば、保険料だけ引き上がるというのは負担だけ引き上がる話でありますから、これはたまったものじゃないという中において、退職金とあわせてこれを運用する中において、スケールメリットで、三階部分といいますか退職金見合いの部分がしっかりと運用益を出していければ、これは社員、従業員の方々のためにもなるのではないかということで導入をされたわけであります。

 一年ほど審議会で御議論いただいて、昭和四十一年にスタートをした制度でございます。

 当時の時代背景は、やはりまだ経済成長が非常に華やかなりしころといいますか、日本の国がどんどん経済成長していった時代でございまして、当然賃金も上がりますけれども、ある意味、運用利回りも非常にいいという時代でございまして、スケールメリットが非常に出やすい、そんな時代背景であったわけであります。

 でありますから、これは一定のメリットがあったわけでありますけれども、それがやはり、バブルが崩壊した後、長期的なデフレ経済に入って、なかなか運用利回りが稼げないという中において、固定的な五・五%というような利回りを一律に決めておったものでありますから、その中で大変お苦しみになられた。その後、数度にわたる改正はしてきたわけでありますが、やはり、スケールメリットが逆に働く、デメリットに働くという時代でもございました。いろいろな金融不安等々がある中において、運用利回りが稼げない、逆にマイナスになるというふうな時代でもあったわけであります。

 そんな中において、財政状況が悪くなって、厚生年金の代行部分がそもそも責任準備金を割ってしまうというような状況に至ってきたわけでありまして、何度か、例えば指定基金等々の導入でありますとか、特例解散等々も導入してきたわけでありますけれども、なかなか、解散等々、それからまた財政の立て直し等々、こういうものがうまくいっていない基金が多うございます。

 いいところは、また一方で、退出をされたということでございまして、現在残っておられるそういう基金が、非常に財政状況の悪いところが多いわけでございます。これに対して、今般の改正で解散を促していこう、そのためのいろいろな施策を盛り込ませていただいたのがこの法律案であるということでございます。

山下委員 大臣、非常にわかりやすい御説明をありがとうございました。

 今般、民主党の柚木委員ほかから、十年以内に厚生年金基金全廃というふうな修正案も提出されております。この理由として、一部基金の存続を認めることについて、将来、これらの基金が代行割れに陥り、厚生年金本体の財政へ影響を与えるリスクが残されてしまうということでございます。

 しかし、他方で、これまで、厚生年金基金が退職金原資を効率的に運用することによって、中小企業の従業員の福祉を充実させてきたというところ、これはあるため、現在、代行割れをしておらず、また、存続を願う基金に加入している企業や従業員にとっては、やはり期待された年金受給権を強制的に奪いかねないという側面も持っております。

 そこで、機械的に廃止ということではなくて、客観的なリスク評価をした上で、バランスのとれた対応をする必要があるのではないかと考えております。

 このリスクについて、客観的な評価、判断をするために、基本的なことを伺いたいと思っております。これは技術的な部分もございますので、当局の御答弁で、これから指名しない限りは結構でございます。

 まず、端的に、代行割れと言われておりますけれども、代行割れというのは一体どういう状態か。これは、国から預かっている免除保険料の総額を割り込んだ状態ではなくて、免除保険料に一定の利回りをつけた最低責任準備金を下回る状態と承知しております。

 その最低責任準備金の算定について、これは資料を用意しました。資料三枚目に、「返済額に関する特例」という欄に、「通常ルールで計算した額」と、2で、「厚年本体の実績利回りで計算した額」というふうに分けて書いてありますけれども、これに触れながら、代行割れというのはどういう状態なのかということについて、当局から端的に御説明いただければと思います。

香取政府参考人 御答弁申し上げます。

 今大臣からも御説明ありましたように、厚生年金基金は、厚生年金本体からお預かりしている免除保険料分の原資と上乗せの年金の原資を足して全体を運用するということになります。それで、厚生年金の肩がわりの給付、代行給付と上乗せの給付を行うということですが、運用は一体として行うわけですけれども、厚生年金からお預かりした部分で代行部分の給付は確実に行わなければいけないということになります。これは、将来にわたってその部分の原資をきちんと積み立てて持っていないといけないということになります。

 その将来的に代行部分を賄うための必要な積立金、これを最低責任準備金と申しますけれども、その額が、本来であれば上乗せ部分も含めて持っているはずの積立金と比較して、代行部分すら賄えないような状態になっている。上乗せの部分の積立金はもうなくて、いわば本来の二階部分の給付をも確保できないぐらいに割り込んでいる状態、これを、私ども、いわゆる代行割れの状態というふうに呼んでおります。

山下委員 私の聞きたかったことは、要するに、元本である免除保険料の総額に利回りをつけた部分、その利回りの算定について、通常、年金本体の運用部分の利息をつける場合と、平成十一年より前は五・五%利回りをつけた、その中に差額があった場合、年金本体を運用した場合の利回りの方が低い場合には、特例でそれをつけた金額を返すという理解としております。もし間違っていたら、後で訂正していただきたいと思います。

 代行割れというふうに言われています。代行割れ四割とか五割とか言われているんですね。ところが、これは今回の参考資料に載っている資料、一枚目でございますけれども、代行割れは約四割。これは実は、一年以上前の平成二十四年三末の数値ですよね。足元の、直近の数値では、一体、代行割れと言われるものはどうなっているのかということについて、当局から。

香取政府参考人 御答弁申し上げます。

 その前に、先ほどのお話ですが、最低責任準備金の計算の仕方ですが、平成十一年までは基本的には積立方式ということなので五・五%、それ以降はお話のように厚生年金との丈比べということになってございます。

 それから、代行割れ基金でございますが、二十三年度末、二百八十七基金、五割と申し上げましたが、二十四年度末につきましては、これは最終的な実績は六月末にとるので、そこで確定いたしますが、今の段階ではおおむね四分の一、百五十基金ほどが代行割れになっているというふうに推計をいたしております。

山下委員 その二十三年度末の数値というのは、株価が一万円であったり、円が八十二円であったり、ある意味とんでもない経済状態のときであったかと思いますけれども、今、こういう効果の中で、代行割れが四分の一に減ってきているということでございます。

 また、六月に報告があった場合には、精緻化した統計は出していただけるという理解でよろしいですね。今、うなずかれましたけれども。

 それでは、そういったリスクの中で、一方で、どれだけの資産があれば代行割れを生じない積立水準と言えるかについて、最後の資料があるんですけれども、ここにあるのが、「一・五倍を超える程度の積立が必要。」というふうに書いてあります。これは、「一〜二年後に代行割れが〇%となるためには、代行の一・五倍以上の積立水準が必要。」こういうふうに書いてあります。ただ、これは、一年で代行割れするのを見ると、一・三を超えるとそれはゼロなんですね。一・二を超えると若干出ているんですけれども。

 こういったケースを、やはり、なぜ代行割れしたのかということを、当局におかれては、その原因を一つ一つ分析して、その原因に応じた対応をとる必要があると思います。というのは、これらが、例えばサブプライムショックやリーマン・ショックというものが重なったから落ちたものであるのか、あるいはAIJのような犯罪性の高いもので落ちたものなのか。それに対して行政はどういう指導を行ったのか、行うべきなのか。そういったことをやはりしっかりと取り組んでいかなければならないと思っております。

 そういった適切な行政指導、運用指針や情報開示をさせれば防げるのではないかというふうに考えておるんですが、その点について、政務官にお考えを聞かせていただければと思います。大臣もしくは政務官で。

丸川大臣政務官 ありがとうございます。

 今回の法案では、代行割れ問題を早期に解決するという観点から、代行割れ基金の事業所が分割納付を行う際には連帯債務を外すという特例の措置を講じることにしております。

 今まで解散した中で一度も返ってきていないお金がないという主張がおありになるのは、お伺いをしているところでございますが、これは、つまり、連帯債務があったので穴があくということが生じてこなかった。ところが、今回それを外すということになりますので、これは厚生年金の本体にもリスクを負わせる可能性があることから、二度と代行割れを生じさせないということを基本に考えた、未然の措置を講じるということにしておるわけでございます。

 一・五倍以上の資産を有している、あるいは、一・五倍の基準だけじゃなくて、もう一つ基準があるんですね、代行部分とその三階部分、上乗せ部分、このどちらもの資産を有している。どちらかクリアをしていただければ、ひとまず基金は続行していただけるという基準にしておりまして、そのどちらもがだめな場合については、施行日の五年後以降は解散命令を出せることにしているということにしております。

山下委員 ありがとうございました。

 私は、厚生年金基金の解散、確かに、リスクというのは本当に極限的に少なくしなきゃいけないと思うんですが、年金受給権を強制的に奪う部分もありますので、やはり行政において精緻な検討をしていただきたい。

 ですから、解散命令というかそういうものを出すに当たっては、要するに、過去、統計上、一年後に代行割れしたのが一・五であればということではなくて、ざっくりした基準ではなくて、それぞれの原因についてしっかり精査していただきたい、きめ細かく指導していただきたい。そしてまた、ほかの企業年金に移行するについても、円滑な移行をするための受け皿をぜひ検討していただきたいと思っております。

 以上で私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

松本委員長 次に、輿水恵一君。

輿水委員 おはようございます。公明党の輿水恵一でございます。

 本日は、質問の機会を与えていただきまして、心より感謝を申し上げます。

 時間も限られておりますので、早速質問に入らせていただきます。

 厚生年金基金は、厚生年金の一部を国にかわって支給するいわゆる代行部分とともに、企業の実情に合わせて上乗せをするプラスアルファ部分から成り、この代行部分の給付に必要な保険料を国に納めることを免除され、その分をプラスアルファ部分とあわせて基金の掛金として運用し、従業員に、より手厚い老後所得を保障しよう、そういったものでございました。

 基金の制度の発足以降、資金運用に代行部分を生かしたスケールメリットの恩恵により順調な運営がなされてきた時期もあったと思いますが、昨今の経済、金融の情勢の悪化、資金運用での損失も含め、予定利率を上回る収益を確保することができずに、代行部分の支給に必要な積立金も消失してしまった、いわゆる代行割れ基金が全体の五割を占めている、このような状況になっていると思います。

 この法案では、既に代行割れが生じている基金の解散、また、代行割れはしていないものの積み立て状況が一定の基準に達していない基金、いわゆる代行割れ予備軍である基金を他の企業年金へ移行させます、もしくは解散させるとしております。

 その一方で、それ以外の健全な基金については、存続が可能なものとなっているところでございますが、我が党の古屋議員の本会議における、「健全な基金であっても、将来的な代行割れリスクは常につきまとうもの」とした上で、存続を可能とした理由についての質問に対して、田村大臣より、十分な積立金を持って適切に運用している基金まで強制的に廃止することは、問題が大きいものと考えているとの答弁がございました。

 しかし、経済のこの状況、まだまだ厳しい状況が予想される、また、将来何が起こるかわからない、このような中で、代行割れリスク、どこにもつきまとうものだと思いますが、この存続という選択肢を残したものについて、どういった形でのリスクが回避できるのか、また存続が可能と考えているのか、その辺の考え方についてもう一度お聞かせ願えますでしょうか。

桝屋副大臣 お答えを申し上げます。

 今委員からいろいろお話もございまして、先ほどから議論が行われておりますが、厚生年金基金、これは国がつくった制度でございます。十分な積立金を持って適切に運用してきている基金まで強制的に廃止することは、それはそれで大きな問題があるというふうに本会議でも大臣が答弁をしたところでございます。

 このため、これらの基金については、自主的な移行を促しつつ、存続という選択肢を残した、こういうことでございます。

 ただし、先ほどから議論がありますように、存続の基準としては、代行資産の保全という観点から、市場の短期変動による代行資産の毀損リスクを回避できること、それから、上乗せ部分の積み立て不足による代行資産の毀損リスクを回避できること、この二つが極めて重要だと考えております。

 ということで、具体的には、代行資産の一・五倍以上の資産を保有していること、それから、代行部分のみならず、上乗せ部分を含めて積み立て不足が生じていないこと、これを条件といたしまして、いずれかの条件を満たしているということで存続を認める、こういうことにしたものでございます。

輿水委員 ありがとうございます。

 今の基準を満たしているということは、ある程度適切な運用がなされていて、また、その利率も適正に設定をされている、だからこそ、基金もしっかりと積み上がっている。そういったことからすると、昨今のこの経済が厳しい中で、それを乗り越えてきちっとした運営がなされているものは、今後もその存続が可能である、そのような視点で認めているというふうに考えていいのか、お答え願えますでしょうか。

桝屋副大臣 先ほど申し上げましたように、まさに先ほどの存続条件、それは今委員が御指摘になったとおりの条件だと考えているところでございます。

輿水委員 どうもありがとうございます。

 そこで、実は、私たち、多くの国民の皆様は、今回の厚生年金基金解散という形で、非常に不安を抱いている。これは一般の年金についても同じような視点を抱かれている場合があると思いますので、ここで確認をさせていただきたいと思います。

 今政府が優先的にやるべきことは、経済の再建、また社会保障の再構築、その中で、この年金につきましては、高齢者だけではなく、子供から、働き盛りの全ての国民にとって重要な課題であると思います。

 そこで、これを掛けておかなかったために将来非常に大変な思いをする、そのような状況の中で、しっかりとこの年金が、百年安心、そして、これをしっかり維持していく、そういったことを明確にしておくことも大事だと思っております。

 公明党の前の坂口厚生労働大臣の時代に、この年金を安定させようということで、給付の水準をある一定まで下げて、また、負担もある一定まで上げさせていただきながら、約百五十兆と呼ばれるその積立金を取り崩しながらも、しっかり安定をさせていこう、マクロ経済スライドも含め、さらに、国庫負担も三分の一から二分の一に上げる、あらゆる手を使って安定させていこうと。

 そのような状況の中で、当初の計算によると、当然、団塊の世代の皆様が高齢者になって、年金給付の段階では非常にバランスが悪いということで、先ほどの積立金を取り崩すということで何とかそれを回避して、その後も、二一〇〇年時点で約二十五兆円が残る、そんな試算で進められているというふうに考えております。

 そして、そこでやはり気になるのが、先ほどの年金の積立金の運用等であると思います。この運用、先ほどの厚生年金基金の、解散しないで済む、ある程度積み上げられている、そういったものと同じように、こちらの方の積立金も、しっかりとした運用の中で、その辺が担保されているのか、また、この制度によって、将来、私たちが、国民が安心して年金が受けられる、そういった方向で今動いているのかどうなのか、この点について確認をさせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

香取政府参考人 御答弁申し上げます。

 公的年金の積立金でございますが、この管理運用につきましては、厚生年金保険法等で、専ら被保険者のためにということと、長期的な観点から安全かつ効率的に運用するということになっておりまして、現在、こうした考え方のもとで、運用に特化をしております専門の法人として、年金積立金管理運用独立行政法人、GPIFというものを置きまして、ここで、専門的な知見に基づきまして、安全かつ効率的な運用をするということで、基本的なポートフォリオを定めて、運用してございます。

 厚生年金の運用のポートフォリオと基金とを比べますと、やはり厚生年金の方が、債券等、安全、確実な資産を多く持って運用するという形になってございます。

 なお、基本的なポートフォリオは、五年に一度、財政検証しますときに運用目標を設定しますので、そのときに見直しをするわけでございますが、急激な市場変動等がありまして、ポートフォリオの見直しが必要な場合には、適時適切な見直しを行うということになってございます。

輿水委員 どうもありがとうございました。

 そして、今、税と社会保障の一体改革でいろいろ年金の方も検討されているのかと思いますけれども、まさに年金の安定性、安心感、そういったものをしっかりと国民に伝えていくこと、これは本当に政府にとって大事なことであると思います。

 それを政党間の政争の具にするのではなく、決めたことについてはみんなでそれを守っていく、またその制度を強靱化していく、そういった取り組みが非常に必要かと思うんですけれども、そういった考えについて大臣の見解をお聞かせ願えますでしょうか。

田村国務大臣 今委員おっしゃられましたとおり、昨年、三党でいろいろな議論をさせていただく中で、現行の制度をまずもとに、幾つか改正法律案を出させていただいた。まあ、出させていただいたというよりかは、時の政権がお出しになられて、我々は三党で議論をさせていただいて、成立をさせていただいたわけであります。

 一つは、先ほど来おっしゃっておられます基礎年金の二分の一部分、この国庫負担をしっかりと安定的なものにしよう、恒久化していこうという部分。それから、特例水準というもの、今までデフレ下に、本来年金の支給額を引き下げなきゃならなかったんですが、それをしてこなかった部分がたまりがございまして、これを三年かけて二・五%、年金の給付額を適正化しよう、こういうような法律も成立をいたしました。さらには、非正規の方々の年金がなかなか安定しないということで、これを厚生年金に適用拡大をしていこう、これも法律を成立させていただいた。

 まさにいろいろなことをやったんですね。低所得者をどうするんだということで、低所得者、低年金者の方々に対する福祉的給付、こういうものも実はこの中に盛り込ませていただいた。さらには、共済年金との一元化、こういう部分もございました。

 こういうようないろいろな課題を、一応、一定の解決を見るために法律改正をしてきておるわけでございまして、そのような意味からしますと、現行制度でも長期的に、安定的に年金は運営できるであろうというような一つの共通認識は持たせていただいたんだというふうに思います。

 ただ、何が起こるかわかりませんから、そういう意味からいたしますと、出生率でありますとか積立金の運用利回り、こういうことを勘案して、五年に一度、財政を検証して、その中でもう一度いろいろな見直しをしようということでございます。そのような意味からいたしますと、まさに、私は当時政務官を務めさせていただいておりましたけれども、坂口大臣のもとで非常に安定的な年金制度をつくり上げたということは確かでございます。

 それをもとに、現在、三党の中において、この年金問題もどうしていくかという共通の合意を見出そうということで御議論をいただいておるわけでございまして、我々厚生労働省といたしましても、三党協議の中身を注視させていただいておるというような次第でございます。

輿水委員 ありがとうございます。

 まさに私たちの将来の生活の基盤となる年金でございます。これをともどもにしっかりと安定させていく、そんな取り組みを全力で進めていきたい、このように思っておりますので、よろしくお願いいたします。

 そこで、社会保障全体という点と年金をちょっと絡めて、最後、一つ見解を伺いたいんです。

 今、やはり高齢化されている中で、高齢者のそういった労働力というのは非常に大事になっております。しかし、高齢者の方も、年金受給者の方はある一定以上の収入を得ると年金が減らされるということで、もう俺はこれ以上働かないとか、能力があって元気だけれども働かないみたいな、そんな機運があるんです。

 やはりこれは、高齢者の方もしっかり、元気である限り稼いでいただいて、そして税金をしっかり納めていただいて国を支えていただく。ただ、年金は年金でしっかりとお支払いする、だから安心してとことん働いて、そして、ぜひ税金を納めてください。そういった世の中にしていくことも、これからの構造が変わる中で大事な視点なのかなと思うんですけれども、最後、見解を聞かせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

桝屋副大臣 極めて大事な御指摘をいただきました。

 年金のみならず、社会保障全体の議論だと理解をいたします。これから、少子高齢化それから労働力人口の減少、これが進むわけでありますから、社会保障全体の持続可能性ということをどう求めていくかということが極めて大事だろうと思っております。

 そういう意味では、今委員から指摘がありましたように、高齢者の活力を生かす、社会保障の支え手として頑張っていただく、こういうことが非常に大事だろうと。委員からもお話ございましたように、高齢者は、全体で見ますと、やはりお元気な方が多いということでございまして、ある内閣府の調査では、七六%ぐらいの方がお元気であります。

 したがって、そうした状況をよくよく勘案して、支援を必要とする高齢者の方々には適切なサービスを提供するということは言うまでもありませんが、元気な高齢者には生きがいを持って働いていただいて、社会保障の支え手となっていただけるような、こんな社会を目指していきたい。年金制度についても、委員からお話がございました在職老齢年金、そういう制度に組み立てているわけでありますから。

 それから、働くということを委員からお話がございましたが、本年四月、高齢者の継続雇用を推進する制度改正を実施したわけであります。円滑な施行と定着に努めていきたいと思っておりますが、高齢者の多様な就業機会の確保等にしっかりと努めてまいりたい。意欲と能力に応じて働くことができる、いわゆる生涯現役社会、この実現に向けてしっかり取り組んでまいりたいと思っております。

輿水委員 ありがとうございました。

 私も、きのう訪問させていただいた介護の施設では、六十八歳の入居者さんを七十五歳のおじいちゃんがしっかりと支えて働いて、元気にやっていた。現場ではそうやって、支えられる方、支える方が、年齢ではなくて、健康体年齢というか、そういった状況で動いているかな、そんなことを感じております。

 これから、新しい日本の活力づくりのためにも、高齢者の皆様がまた元気に働ける、そんな社会の構築に向けても御尽力をいただければと思います。

 以上で、私の質問を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。

松本委員長 次に、柚木道義君。

柚木委員 民主党の柚木道義でございます。

 質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 きょうは、年金に関係してお伺いするわけですが、きのう、きょうの報道で、GDPの年率三・五%増、二期連続プラスという、そういう意味では、非常にアベノミクスに対して実態が伴ってきたのではないのか、こういった閣僚のコメントもあるように、そういう方向感が出てきているところでございます。

 同時に、国債の長期金利が〇・九パーに増。そういう意味では、一パー上がれば六・六兆の利払いの負担がふえるということも含めて、財政再建への道筋、あるいは本当の意味での三本の矢がどれだけ出てくるか、こういったことに今後かかっている。その先の消費増税の反動、賃金にどういう形で影響してくるのかも含めたトータルでの視点が重要だ、こういう状況の中で、年金の議論でございます。

 それで、きょう、資料を皆様におつけしております。

 実は、この間、予算委員会等で、安倍総理あるいはもちろん田村大臣、そして我が党の海江田代表、あるいはこの間も櫻井政調会長などとの議論の中で、要は、アベノミクスで景気がよくなっていくとした場合に、他方でこれは物価上昇にもつながる中で、年金はふえるのか減るのかといったようなやりとりがなされてきております。

 こういった認識、まずこれを確認しておかないと、幾らこの年金基金の議論をしても、これから行っていくためのさまざまな施策によって我々の年金はどうなるのか、ここの認識が食い違ったまま幾らこれを議論しても国民の皆さんはわからない中で、少し確認をさせていただきたいんですね。

 この一枚目の資料というのは、厚生労働省が本当に正直にお出しをいただいた資料で、大変議論の参考になると思っておつけをしているんです。

 これは実は、現状、物価上昇率よりも賃金上昇率が低いということで賃スラで年金改定がされるという状況の中で、ことしの十月にまず特例水準が一パー解消される、来年四月にさらに一パー解消、再来年の四月で〇・五%解消。それで、この二・五%分が解消され、かつ、物価が上がれば、史上初めて、二〇〇四年に法定化された年金マクロ経済スライドが発動される。現状では〇・九%の調整値で発令される。

 そういう流れの中で、わかりやすく、来年の四月、再来年の四月、そしてそれ以降というような流れを、これはぜひ皆さん共有をさせていただきながら、しっかりと法案の議論もさせていただきたいと思っているんです。

 それで、大臣、これをごらんいただきますと、一枚目ですが、平成二十六年四月段階、この場合は特例水準が一%さらに解消されるわけです。

 今この三つを見ると、箱としては上二つは同じなわけですが、物価上昇も賃金上昇も何も起こらないという一番下の場合に比べて、現状、二%物価上昇に向けて過渡期であって、仮に物価上昇一パー、賃金上昇は後からついてくるという流れの中で半分の〇・五パーという形にしていますが、これで、基礎年金それから標準的な厚生年金の受給額、月額でこういった形でお出しをしているわけです。

 この真ん中の箱と下側の箱を比べたときに、平成二十六年四月段階で年金の受給額、これは、受け取る側にとっては、二番目と三番目、一番下の三番目と比べたとき、二番目というのは受給額はふえるんでしょうか、減るんでしょうか。

田村国務大臣 二番目と三番目ですか。(柚木委員「はい」と呼ぶ)

 見ていただいたら、これは二番目と三番目を単純比較すると、この括弧の中に書いてある月額の、二番目が二十二万七千四百円ですよね、三番目が二十二万六千三百円ですから、当然、二番目の方が多いということでございます。

柚木委員 おっしゃるとおりだと私も思うんです。

 つまり、まさにこの間、安倍総理が、一昨日の櫻井政調会長の議論、あるいは海江田代表、もっと言うと、細かく議論をされていたのは大久保勉参議院議員との議論の中でも、物価が上がっていく、アベノミクスが成功していく中で、物スラで年金はむしろ上がっていくんです、こういう認識の御答弁をされているんですね。その認識のとおりの表が、実はこれなんです。

 つまり、これは額、今まさに入れていただいたのはそういう意味で重要で、ただし、よく見ていただくと、今の大臣がおっしゃっていただいたのはどこを見ているかというと、パーセンテージ。

 これは、二番目の箱は、特例水準が解消された場合に、物価上昇率一パー、賃金上昇率〇・五パーの場合に、特例水準が一%解消されますから、トータルでマイナス〇・五ということになるんですね、年金改定率が。そして、一番下の箱は、賃金上昇率ゼロで、そして特例水準が一パー解消ですから、当然マイナス一%になるんですね。つまり、マイナスの度合いが〇・五%低い。そして、それを金額ベースで見ていただくと、まさに名目上はふえている。

 ただし、重要なのは、括弧の中に小さく書いてあるんですね。二番目の箱の括弧でマイナス一・五%、そして下の括弧の中にマイナス一・〇%、米印三と書いているところでございます。

 この括弧の中こそが、まさに実質の年金の受給額を示している数値でありまして、これを見ていただくと、どういうことが起きるかというと、当然明らかなんですが、実質は、後で金額もやりますが、〇・五%分ですね。上の物価上昇率一%、賃金上昇率〇・五%の場合の方が、実は実質の年金は目減りするんですね。

 これがまさに、大久保参議院議員も、今の、その先、マクロ経済スライドが発動した場合に、調整率が平均して十年間〇・九マイナスです、〇・九マイナスがずっと十年間続いた場合に九%のマイナスになる。まさにその実質のパーセンテージを予算委員会で大久保議員が指摘したということでございます。

 これを、数字をそこも入れて出してくれないかということを指摘したんですが、そこはちょっと、パーセンテージまででということでおっしゃったものですから、私の方で資料の方に、この厚労省の出していただいた数字と全く同じケースで、金額ベースで想定を出したものが四ページ目、五ページ目でございまして、ごらんください。

 今のケースの比較が、ちょうど、四ページ目よろしいですか、ケース一と二。これは箱の二番目と三番目が逆転していますが、箱の三番目、一番下が、賃金、物価上昇率ともに〇パー、そして箱の二番目が、物価一パー上昇、賃金〇・五%上昇ということで、ひっくり返っていますが、同じことです。

 これで見ていただきますと、金額ベースで出しているものが、まず、先ほど申し上げた平成二十六年四月からの年金水準。これは、マイナスの金額をそれぞれ、基礎年金ベース、厚生年金ベースで出しています。上側が基礎年金六百七十五円、厚生年金二千三百七十五円。下側が基礎年金千十三円、厚生年金三千五百六十三円。

 つまり、まさに下側、私が先ほど実質と指摘した部分の金額を見ていただくと、この月額ベースでは確かに、それぞれ四百円あるいは千二百円ほどですが、実質マイナスで、金額ベースで計算した場合にこういうふうになるということでございます。

 これを、大臣、その先、もう既に決まっていることとして、さらに再来年二〇一五年四月に残りの〇・五%、特例水準は物価変動と関係ありませんから必ず解消されますから、これは〇・五パーで、二・五%のたまりが全部解消されます。解消されて、なおかつ物価が上がれば、つまりアベノミクスがうまくいっていれば、ちょうど物価二パーと賃金一%という形で、賃金は後からおくれて上がるということですからそういう試算をしておりますが、マクロスライドが発動されるわけです。しかも、二〇一五年は調整係数が一・二に上がるわけです。

 そういう中で、この特例水準が解消される二〇一五年、かつ、アベノミクスがうまく進んでいくわけですから、マクロスライドが当然発動されるときの実質的な差額が、右側の箱の上から三番目。月額ベースで、基礎年金で千三百四十円、厚生年金で四千七百十六円。これを、年額、そして特例水準が解消された一五年、その前の一四年との累計で、基礎年金分で約一万六千円、厚生年金分で五万六千五百九十円。

 こういうような、もちろん、これは推計値ですよ、確定値ではなくて。しかし、なるべく現実に即した形で厚労省にもお願いをして、金額は無理でしたけれども、パーセンテージを出していただいて、それを金額ベースで機械的に計算したものが、こういう数字になっていくということでございます。

 これを考えますと、ここでやはり、私、マクロ経済スライドは不要だとは言いません、これからの年金財政を考えていったときに、何らかのそういう仕組みがなければ、では、賃金がどんどん上がれば年金もどんどんもらえて、年金財政どうなるんだとなるわけですから、重要だと思うんですが、問題なのは、アベノミクスが進むと、年金の実質の受給額が、まさにマクロ経済スライドという仕組みがある中で、目減りしてしまうというこのパラドックスをどう考えるか。

 それを考えていく中でこの年金の議論を進めていかないと、物価が上がれば年金も上がっていくんですというような大ざっぱな議論だけで議論が進むというのは、非常に私は国民に対して誠実な姿ではないと言わざるを得ない。そこで、こういうデータを出していただいたわけなんですね。

 ですから、大臣、伺いますが、安倍総理がおっしゃるように、名目上の年金額というのは上がっていくけれども、しかし、こういう、もうリアルにこの十月以降決まっている特例水準の解消、そして、解消された暁にアベノミクスが進んでいく中で必ず発動されるマクロ経済スライド、これをリアルにしっかりと数値に落とし込んでいくと、実は、どのような場合であっても、新規裁定、既裁定あるわけです、しかし、どのような場合であっても、残念ながら、実質的な年金受給額は目減りしてしまう。

 こういう状況について、どうお考えになられますか。

田村国務大臣 まず、民主党の中でつくられた資料の数字、金額、これが正しいかどうか、ちょっと我々、検証しておりませんので、確認できていないということが前提でお答えをさせていただきたいと思います。

 この真ん中の三・五という実質的なマイナス、立っていますよね。では、このうちの二・七は何かというと、特例水準の見直しと、それからマクロ経済スライドがかかっている部分でありまして、残りが、何か、物価上昇率と賃金上昇率が、賃金上昇率が追いついていないという、その結果です。

 そもそも我々は、賃金上昇率が追いついていないというようなことは前提に考えておりません。アベノミクスというのは、なぜ物価を上げるか、デフレをとめるか。これは、もう何度も申し上げておりますが、雇用と所得をふやすということが前提で物価を上げるということを考えているわけですよね。

 つまり、デフレの中においては、企業は利益を上積みできない、売上高を伸ばせないという話ですから、どうしても物価も下がるけれども賃金も下がっていくというような状況の中で、個々の生活はそれによって質は落ちないのかもわかりませんが、国の中の税収、それから社会保険制度、こういうものは、やはり規模が上がっていかない、縮んでいく中では成り立っていかないということでございますから、国家としての全体の利益を考えた場合に、まず物価を上げることによって賃金が上げられる環境をつくって、それで豊かな国にしようということでございますから、その点は御理解をいただきたいというふうに思います。

 その上で、今の特例水準は皆様方が出された法案でございますから、この二・五%、この表でいくと一・五%、年金が下がるのは、これは皆様方も合意の上でやられておられるということでございますから、そこはもうわかっておられるんだというふうに思います。

 あわせて、マクロ経済スライドでございますが、これは、そもそも十六年の年金制度改正で、当然のごとく、年金は所得代替率が下がる、今よりも所得代替率が下がると我々は申し上げておるわけであります。

 実質で比べれば下がっていくということが前提の中において、当時、長期にわたって年金を均衡させようということでつくられた制度でございます。保険料は一八・三%という上限を決めて、その中において給付の方を実質的に減らしていく中で年金をもたせようということが目的でございましたので。ただし、所得代替率五〇%、これは所得でいきますと世帯当たり三十五万八千円というモデルでありますけれども、この世帯で所得代替率五〇%を約束しておる制度が、この制度でございます。

 ちなみに、民主党の年金案もございました。これも、みなし運用利回りという、言うなればマクロ経済スライドと同じ仕組みがかかりまして、どんどん実質的に年金が目減りしていくという中において均衡をつくっておられますので、考え方は同じだというふうに思っておりますから、その点は御理解をいただけるというふうに思います。

柚木委員 大臣、非常に国民の皆さんを混乱させるような答弁はおやめいただきたいんですね。

 まず、そのためにこのデータをつけているんですよ。一番上の箱を見てください。

 大臣が言われるように、では、賃金上昇率が物価上昇率を上回る、これは一応、一番上の箱の平成二十七年四月段階。物価上昇率二パー、賃金上昇率二パーとしているのは、これ以上賃金が上がっても物スラになるだけですから、この数字で出しているわけです。この場合でもですよ、大臣、この場合でも、実質はマイナス一・七%なんですよ。

 では、大臣が言われるように、アベノミクスで賃金がどんどん上昇していく、これは二パーでも三パーでもいいですよ、どういうケースになったら実質年金が上がるんですか、答えてください。

田村国務大臣 アベノミクスは関係ないんです。

 そもそも、年金制度は、物価が上がっていくということを前提でつくってあります。その中で、マクロ経済スライドというのは、物価が上がる中で物価スライドはかかるんですけれども、実質上、長期均衡させるために実質目減りをするようにつくってあるんです、もとからの制度が。

 だから、今おっしゃられますとおり、年金は実質では下がるんですよ。ただし、名目では上がるんです。(発言する者あり)それは以前から我々は申し上げておりまして、まさに民主党の年金制度も同じ制度設計でなっておりますので、山井議員、もう一度、中身を見ていただければ、名目は上がっても実質は下がっていく。それはなぜか。みなし運用利回りという形で目減りをさせていくんです。それは中を見ていただければいいと思う。

 ただし、インフレ誘導ではなくて、事実上、民主党案も、物価は上がっていくという中において前提をつくっております。年金制度というのは、物価が上がることを前提につくりませんと、今言われたような部分が、目減りをする部分、実は名目額でも下がっていく話になりますから。

 名目額においては上がりますけれども、実質は下がって長期均衡するというのが民主党案及びこの自公案の年金制度の中身でございますから、そこは本質的な部分でございますので、実質的には言われるとおり下がっていくという、もとからの制度であるということでございます。

柚木委員 もちろん、そういう制度で設計されているからこそ、このマクロ経済スライドというのはよくできた制度なんですが、我々も、別にデフレのままでいいと思っていたわけではなくて、この間やってきたわけですよ。

 ただ、アベノミクスのような形で、まさに次元を超えた金融緩和によって、今まさにその反動で長期金利がこうなっていて、ちょっとどうしていくべきなのかということがかなり懸念の声も高まってきている中で、人為的に、物価が自然に上昇していく、ある程度の誘導の中で上昇していくのはいいですよ、今のような次元を超えた人為的なインフレターゲットがこの先どうなるかというのは、本当にこの中にいる方、誰が自信を持って言えるのかという状況がある中で、このペースで上がっていく中で、まさに所得代替率も含めて影響のウエートが変わってくるからこそ、この議論をしているわけで、別に私は緩やかなインフレを否定しているわけじゃないんです。

 ただ、このペースで、アベノミクスが今まさにやっていくペースの中で、この特例水準の解消と……(発言する者あり)ちょっと静かにしてもらえますか。それぞれ言っているんです、済みません。いいですか。

 特例水準が解消されて、その先にマクロ経済スライドが発動されていくというこのタイミングの中で、こういうタイミング、めぐり合わせの中で、今まさにアベノミクスによる二%への物価上昇に向けた施策がなされている、こういう複合的な要因の中だからこそ、この議論に意味がある、重要性があるんですよ。

 ですから、私は別にアベノミクスが全て悪いというのじゃなくて、この組み合わせの中で今のトレンドがあるということを踏まえて議論をしないと、いや、物価が上がるから年金もたくさんもらえるんですというような議論が、安倍総理の口から、答弁の中で出ていたわけですよ。

 だからこそ、私は、ここで数字に基づいてちゃんと確認をしたい。少なくとも、見てください、この数字で、では、私が今説明したような形で、実質三・五のところを言われましたが、賃金上昇が伴った場合でも、実質では三・二パー、マイナスになるんですね。

 つまり、では、大臣に伺いますが、アベノミクスで、物価の二・〇はそれでいいとしましょう、賃金上昇が二パー以上に上がったときに、実質的な年金の受給額というのはふえるんですか、減るんですか。

田村国務大臣 新規裁定者は賃スラがかかっておりますので、当然、賃金が上がっていきますと、新規裁定のときには、それは賃スラがかかった分だけはしっかりと年金の支給額はふえるということであります。

 なお、既裁定者は、そもそも物価スライドしかございません。物価スライドの上限のもとにおいて、賃金上昇率との丈比べでスライドがかかるということになっておりますから、物価に対しての影響度しかないということでございます。

 なお、先ほど来言っておられますが、例えば一・二%のマクロ経済スライドが発動されようと考えますと、物価と賃金が一・二%以上上がらないと、マクロ経済スライドが発動されないんですよ。

 ですから、そもそも、一・二%以上の物価上昇、賃金上昇の社会を、世界をつくらないと、マクロ経済スライドがちゃんときかない。すると、将来、年金が、それこそ財政状況がどんどん悪くなってくるわけでありまして、早くマクロ経済スライドがかかるような経済状況に持っていく必要があるということを考えれば、今二%を目途にインフレターゲットを置いているというのは、非常に合理的な説明がつくのではないかと私は考えております。

柚木委員 今、大事なことを言われたんですよね。新規裁定で、確かに賃金上昇率によって今後の年金受給額が上がるケースがあると。

 ただ、既裁定者、つまり、今まさに年金生活をされている方々は、実はこれは本当に厳しい現実なんですけれども、例外なく実質の受給額は減るわけですよ。その実質減るという部分に対して、安倍総理が、この間の予算委員会の御答弁で、物価が上がれば年金も上がるんです、そういう御答弁をされていることは、私は国民に間違ったアナウンスを行っていると思いますよ。

 既裁定年金者は実質年金が減ると、今、大臣は答弁されました。そのことを安倍総理は認識されていると思いますか。

田村国務大臣 当然、それはもう理解をいただいておると思います。

 名目の話をしているわけでありまして、民主党政権が与党のときに、実は民主党政権内からも、マクロ経済スライドが発動されないから年金制度が非常に危ないということで、デフレのときでもマクロ経済スライドを発動したらどうだというような、そういう御質問が与党から政府に対してもございました。そういう御心配もいただいていたわけであります。

 このままでいけば、デフレ下においてもマクロ経済スライドを発動するというような御意見もあるわけでありますから、そうなった場合のことを考えれば、少なくとも、物価が上がった方が、それは当然見た目ではふえていくわけでありますから、そういう意味からしますと、年金がふえるということは、総理がおっしゃられたということは、それは決して誤った方向ではないというふうに思います。

柚木委員 もう一遍確認しますよ。

 田村大臣は、既裁定年金者、既に年金生活を送られている方々の実質の年金受給額は、アベノミクスの前提の中でいうと今後減っていくということを答弁されたんですが、安倍総理もそのことを認識されていると、今、答弁されたんですね。

 アベノミクスで物価上昇が進んでいく中で、既裁定者は賃金上昇率にはかかわらないわけです、年金生活を送られている方は実質的な年金の手取り額は減るということを安倍総理も認識をしていると、今、答弁をされたんですか。もう一遍確認します。

田村国務大臣 ちゃんとマクロ経済スライドのことも予算委員会で答弁をされておられますから、御理解いただいておると思います。

 そもそも、この制度は平成十六年なんですよ。そのときから、今お話しいただいたことはわかっていたことでございます。

 今、いろいろな御議論の中で、七十歳から七十四歳の方々の医療保険の自己負担部分がありますよね、これを一割から二割に戻せという御意見を皆様方おっしゃられる。これは、やはり、世代間の公平ということを考えれば、若い方々のこれからのことを考えれば、一定の負担をお年寄りにもとっていただくべきだ、これは皆様方もおっしゃっておられるわけでありますよね。

 年金も、当時、同じような議論があったんです。ですから、なぜ賃スラを、それまでは入っていたんですけれども、既裁定者に入れなくなったかというと、当時、やはりこれからふえていくお年寄りの皆様方の数、それからそれを支える若人の数、これを考えたときに、生活の質という意味では物スラは必要であります、物価が上がったときに質を落とさないためには必要でありますから、物スラは残す必要はあるけれども、賃スラはさすがに、これからの世代間の公平を考えたときに、やはり入れるのはちょっときついかなという御議論の中でそのような制度設計になったわけでございまして、その点は御理解をいただけるのではないのかなと私は思っております。

柚木委員 今大臣は、安倍総理はマクロスライドのことも言っている、その上で、実質的な年金受給額が年金生活の方は減るということを認識されているんじゃないかというような御答弁だったんですが、マクロスライドの発動とアベノミクスは違うわけですから。

 もう一遍確認しますよ。

 アベノミクスによって物価上昇していく、そして実質賃金も上がっていく、それが上回る場合も含めてですよ、アベノミクスが進んでいくことで、マクロスライドは関係ありません、実際の年金の受給額が減るんだと。

 私はちゃんと議事録を読みましたよ、大久保さんとのやりとりも。あるいは櫻井さんとのやりとりは直接聞きました。そして、もちろん海江田さんとのやりとり。一言も実質的な年金が減るとは言っていないんですよ。

 名目上という言葉は使われませんでしたが、まさに物価スライドで年金は上がっていくというような趣旨の、細かいコメントじゃないんですよ、物価が上がれば年金も上がるというような趣旨の答弁を繰り返されているんですよ。それはあくまで名目の話なんです、きょうここで議論させていただきました。実質の受給額が、少なくとも年金生活者については、賃金がどうであれ、物スラなわけですから、減るということは、一言も安倍総理は言っていないわけです。

 しかし、今、田村大臣は、そのことを認識しているということを答弁されたわけですから、安倍総理御本人が、これは本当に逆説なんです、パラドックスなんです、アベノミクスが進めば年金生活者の実質の手取りの年金が目減りするということは理解されているということを、少なくとも答弁は一言も安倍総理はしていませんが、田村大臣は、それを安倍総理はわかっているということでいいんですね。

田村国務大臣 ちょっと訂正をさせていただきます。

 賃スラのところですけれども、平成十二年に、その制度で、賃スラの方は既裁定者に関してはかけていかないということを決定したということでございます。

 それから、今のお話でございますが、まず、アベノミクスとは全く関係ございません。マクロ経済スライドは、アベノミクスとは何の関係もない。物価が上がることが前提でつくった制度で、アベノミクスは、正常時の経済に戻すために物価を上げるということをやっているわけでありますから、アベノミクスとは全く関係ないということを前提として、お答えをいたします。

 その上で、安倍総理は、特例水準のお話も出されました。それから、マクロ経済スライドの発動のお話も出されました。その上で言われたお話でございますので、御本人は名目のお話をされておられるという認識だというふうに私は理解をいたしております。

柚木委員 まさに社保審の年金部会で、「マクロ経済スライドについて」ということでしっかり説明されているわけですよね、物価の動向に応じた形のスライドの仕組みを。まさに、アベノミクスのこのペースでの物価上昇を前提に〇四年の制度はつくられていないんですよ。つくられていないのに、何で今、アベノミクスで物価上昇していくことがこれからの年金の受給額に関係ないと言えるんですか。ちゃんと答えてください。

田村国務大臣 アベノミクスの勢いでいこうが、前提でいこうが、結果的には同じでございますので、おっしゃられている意味がちょっと私わからないんですが、実質的な目減りという意味では同じことになってくるわけでございます。

 つまり、それはなぜかというと、物価スライドの部分で計画的にマクロ経済調整がかかった部分だけは、その物価上昇とともに上がらない部分があるわけですよね。しかし、それを乗り越えた部分は当然名目で上がっていくわけでありますが、実質的に目減りをするのは、マクロ経済調整、もちろんその前に特例水準の見直しがありますけれども、そういう部分のところが抜かれた部分が実質的に結果的には目減りするわけでありますけれども、それを超えた部分というのは物価と連動するわけでありますから、二%の経済成長率であろうが、それとも、ちょうどマクロ経済スライドがかかる部分だけの物価上昇率であろうが、出てくる実質的な比率というものは同じ結果になってくるわけでございます。

 決して、賃金上昇率が物価上昇率に追いつかない場合にはそれは問題がありますけれども、物価上昇率に賃金上昇率が追いついている場合に関しましては、これを我々は前提に今の経済政策を組んでいるわけでありますけれども、何ら、今の二%を目指したこの計画の中において、それをやれば実質目減りがもっとふえるというような、そういう話ではありません。

柚木委員 まず、二年間で二%の物価上昇というものを目指しているアベノミクス。では、このマクロ経済スライドというのは、そういう物価の変動を前提につくっているんですか。大臣、ちょっと答えてください。(田村国務大臣「もう一回お願いします」と呼ぶ)

 二年間で二%の物価上昇をするというのがアベノミクスの今のターゲットですよね。この年金マクロ経済スライドというのは、そういった物価の変動を、二年間で二%上がるというような前提でつくっているんですか。

田村国務大臣 何にも関係なくて、マクロ経済スライドがかかるのは、毎年数字がある程度決まってくるわけですよね、今委員おっしゃった、最終的には平均で〇・九%というようなお話でございましたけれども、二十六年度は一・二かな、一・二がかかる。

 ですから、二%物価が上昇したとしても、マクロ経済スライドの部分は一・二%しかききません。ただし、特例水準の部分がございますから、それ以上へこむということはありますけれども、マクロ経済スライドの調整率というのは毎年一定限度額が決まっているわけでありまして、高く物価が上がったときに高くかかるわけではございませんから、そういう意味では、物価が二%前提であろうが、それとも、マクロ経済調整で調整される率が物価上昇率とイコールであろうが、そこは変わりません。

 ただ、マクロ経済調整がかかる率よりも物価上昇率が低いと、これは年金財政としてはマイナスが立ってくるわけでございまして、将来的に危なくなる可能性があるということでございます。

    〔委員長退席、西川(京)委員長代理着席〕

柚木委員 まさに、今言っていただいたことが重要なんですね。アベノミクスの二%、これはマクロスライドの発動と物価の面では当然全然関係していない。

 ならば、先ほど、二十七年四月の一番上の箱、物価が二パー上がって賃金上昇も二パーだとしたときに、実質一・七%のマイナスということを言いましたが、物価上昇率が何%であっても関係ないんだということを言われるのでしたら、この二%が、例えば一・五%としましょう、一・五%だったら、実質のこの一・七%はどうなるんですか。

田村国務大臣 ちょっと、物価上昇率が一・五、賃金上昇率が一・五……(柚木委員「賃金は二・〇のままです」と呼ぶ)

 それは、賃金上昇率の分はカウントされないという話でございますから、物価上昇率の分だけカウントされる話。ちょっと計算を今しますけれども。

柚木委員 まさに、実質の年金の受給額の増減はマイナス一・二になるんです。

 ということは、目減り分が、物価上昇率がアベノミクスの二パーではなくて、例えば一・五パーであれば、実質の目減り分はマイナス一・七であるところが一・二、つまり〇・五%分改善されるんですよ。まさに、物価の変動のペースです、ペース。ペースによって年金生活者の手取りの年金は増減するんですよ。どう思いますか。

田村国務大臣 そのとおりですけれども、それはなぜそういうことが起こるかというと、マクロ経済調整が本来かからなきゃいけないものが全部かからないんです。ということは、それだけ年金財政が悪化するので、年金の引き下げが長期間にわたるだけの話でありまして、長期で見れば均衡するという話でございますので、本来はかからなきゃいけないものがかかっていないということで、年金財政自体はそれによって悪くなるという前提があった上でのお話であるというふうに理解しています。

柚木委員 まさに、今、すごい答弁をされたんですよ、大臣。私もその認識なんですよ。

 つまり、マクロ経済スライドが発動されていく中でアベノミクスが同時に進行していくと、今のようなことが起こるんです。いや、大臣の答弁、言われるように私は認識しているんですよ、まさに年金財政は健全化されるんですよ。それのためにマクロ経済スライドが発動されるんですよ。

 ただ、今の二%、まさにアベノミクスのペースで物価上昇が実現していく。いや、私は物価上昇が悪いと言っているんじゃないんです、この組み合わせの、このタイミングでアベノミクスが進んでいく中で、今言ったように実質〇・五%分目減りするというのは、年金財政上はプラスなんです、年金財政上は。それは総理もそういう趣旨のことはおっしゃっているんですね。運用益で五兆円改善されれば、確かに年金財政は改善されますよ。

 しかし、まさに消費税の二分の一を充当しなきゃいけないように、それは原資にしかならないんですよ。個人の受給額がそれでふえるわけじゃないんですよ。個人の受給額はむしろ今言ったように、大臣、年金財政を悪化させないための好転にはなっても、年金生活者の個人の受給額は減るんです。今の二%と一・五%の〇・五パー分だけでも、実質減少するんですよ。

 大臣、この減少することに対して、減少することに対してですよ、今〇・五%分、二パーが一・五%に目減りすること、これは正しいんですか、違うんですか。

田村国務大臣 こういうお答えの仕方をいたします。

 特例水準二・五%というものを、これを適正化するということは皆様方も御理解をいただいたと思います。なぜこれがあるか。そして、マクロ経済スライドがかかってこなかったことが問題だということも御理解をいただいております。これは、だって、皆様方が野党のときにそういう御質問をいただいていますから。

 すると、そもそも今の水準が、本来の年金のあるべき水準よりまだ高いんです、実質水準が。以前計画を立てた実質水準はもうちょっと下がっていることによって、年金全体を均衡化させるという計画でございました。ところが、物価が下がったときに、実は年金を下げてこなかった。これは我々が悪いんです。我々自民党政権のときに、実は物価が下がったときに年金を下げなかった、本来下げなきゃいけなかったのに。

 この結果、本来の水準よりも、今、年金の受給者の方々の水準が高いんです。これを早く適正化してもとの計画どおりに戻さないと、やはり均衡、世代間との公平性が損なわれるのではないか。

 そういう意味で、アベノミクスによって物価が一定程度上がることによって本来の水準に戻るというように御説明をさせていただいたらば、御理解をいただけるのかもわかりません。

柚木委員 マクロ経済スライドで、これから二十年、三十年かけてやっていこうとしていることを、アベノミクスの人為的なインフレターゲットによって私たちの目減りするペースまで速まることは、誰も望んでいないんですよ。

 大臣、もう一遍確認しますよ。

 さっき私が、物価上昇率二%が一・五だった場合には、再来年、二十七年四月、実質の年金の目減りが一・七マイナスのところが、どうなるんですか。もう一遍答えてください。

田村国務大臣 委員おっしゃられた形になりますが、本来、制度設計上はさらに低い水準の年金支給額であったはずでございます。それが、先ほども言いましたとおり、我々自民党政権の責任でございました、本来下げなきゃいけないときに下げてこなかった、そのツケが今あるわけでございまして、今回、今言われたような数字になりますが、それでもまだ本来の制度設計の年金水準よりかは高い水準であるということでございます。

 これを早期に是正していかなきゃいけないというのが御党が出された年金の特例水準の適正化の法律の趣旨でございますから、それにのっとって、我々も、早く年金財政が安定するようにという形で、本来の水準に戻すべく、経済状況を何とか立て直していこうというような形になっておるわけでございます。

柚木委員 つまり、マイナス一・七がマイナス一・二ということで、目減り分が〇・五ポイント減るということは認められるんですね。数字だけ答えてください、数字だけ。

田村国務大臣 名目はゼロでございます。実質という話になればそうかもしれない。実額はゼロでございます。上下はありません。

柚木委員 いえ、実額ですよ、実額。大臣、矛盾した答弁されないでくださいよ。実額のパーセンテージが〇・五パー改善されるのに、何で実額はゼロという答弁になるんですか。実額だからこそ、括弧づけでそのパーセンテージを出しているわけで、その金額についても資料の四ページ、五ページ目につけているわけですよ、実質の金額を。

 何で、実質の目減り率が〇・五%改善されるのに、名目が変わらないというのはわかりますよ、実額が〇・五%分改善されないんですか。そんな矛盾した答弁、おかしいでしょう。

 大臣、もう一遍確認しますよ。

 実質的な目減り分一・七%が〇・五%分改善されてマイナス一・二になるというのはお認めになられるのでしたらば、実額の受給額、年金生活者ですよ、この年金生活者の目減り額も〇・五%分実額ベースで改善されるということになるんですよ、これは。それをお認めになられますね。

田村国務大臣 ちょっと待ってください。

西川(京)委員長代理 お待ちください。(発言する者あり)

    〔西川(京)委員長代理退席、委員長着席〕

田村国務大臣 済みません。

 自分ら勝手に数字をこじくり回しておいて、簡単な話って、こちらも頭の整理をさせていただかないと、示された数字と違うわけですから。

 物価上昇率が一・五ですか、それで賃金上昇率が一・五……(柚木委員「いや、二・〇のまま」と呼ぶ)二・〇のまま。

 ちょっと待ってください、ごめんなさい。(発言する者あり)

松本委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

松本委員長 速記を起こしてください。

 田村厚生労働大臣。

田村国務大臣 実額は、だから、ゼロです。実額というのは名目額のことですよ、実態の金額ですからね。だから、名目額、実額はゼロであります、プラマイ。

柚木委員 ちょっと整理しておかないと、わかりづらいので。

 実額というのは名目上の年金ということになると、トータルに受け取れる額ということで、物価が上がって、当然、同じ年金でもその分目減りするわけだから、だから私は実質の年金額ということでパーセンテージの一・七を入れているので、これがマイナス一・二になったときに、物価が上がったことも加味した形での実質的な年金受給額、実額で実際もらえる分じゃないですよ、トータルで、生活収支の中での実質的な年金受給額マイナス一・七が一・二%になるということを認められますね。

田村国務大臣 一・五じゃないですか、マイナスの。(柚木委員「違う違う、一・二ですよ」と呼ぶ)

 一・五だと思うんですが、ちょっともう一回計算してみます。

柚木委員 二十七年四月の一番上の、物価上昇率二・〇、賃金上昇率二・〇の場合には、まず、特例水準が〇・五%解消されます。さらに、解消されるわけですから、マクロ経済スライドが発動されます。

 ですから、賃スラなんですが、二引く〇・五引く一・二でプラス〇・三というのが、名目上の、さっき大臣が実額と言われた部分は、これは名目上なんですね。しかし、物価上昇率二・〇の部分を加味すると、〇・三引く二・〇で、実は、実質は、実質の年金の価値です、それはマイナス一・七%で、下がるんです。

 しかし、二%ではなくて一・五%であれば、〇・三引く一・五ですから、マイナス一・二%が実質の目減り分ですから、〇・五%改善されているわけですが、その、実質的な年金の価値が物価上昇率が〇・五%下がることによって逆に当然〇・五%改善されるという認識は、よろしいですか。額でなくていいですよ、認識はよろしいですか。

田村国務大臣 いやいや、だから、まず一%かかりますよね、それと〇・五%だから、一・五、言うなれば特例水準の解消が図られるわけですけれども、そのときに、賃金上昇率が一・五ですよね。(柚木委員「賃金が二・〇」と呼ぶ)賃金上昇率は二・〇、ごめんなさい、物価が一・五ですよね。だから一・五しか物価が上がらないから、これでプラマイ・ゼロですね。だから、そういう意味では名目がプラマイ・ゼロだと。

 しかし、実質はどうかというと、一・五が特例水準解消でありますから、実質マイナス一・五ということじゃないんですか。

柚木委員 マイナス一・五で、マイナス一・七の、マイナス分が一・五と一・七で〇・二ポイント改善される、そうですね、済みません。整理します。〇・二ポイント改善される。

 改善される度合いが、済みません、私の計算ミスですが、これは重要なことなんです、〇・二か〇・五かの問題ではなくて、〇・二ポイント、目減り分が実は解消されるんですよ、物価上昇率が二ポイントのところを一・五で計算すれば。ということは、これは年金生活者にとっては、要は、実質的には目減りが少しよくなるわけですから、年金生活者にとっては、これはいいことですよね。

田村国務大臣 それはそうなんですが、そもそも今の水準が本来の水準よりも高いんです。

 だから、それを本来の水準に、どのような、計画的に下げていくか、戻していくかということをしなきゃいけないということで、例えば、特例水準というもので二・五%、本来よりもその部分だけが高い。ほかにマクロ経済スライドがかかっていない部分もあるんですが、特例水準、つまり、過去の物価が下がったときに本来下げなきゃいけなかったけれども下げなかった部分で二・五%高い部分に関しては、計画的に三年かけて、皆様が出した法律で、一%、一%、〇・五%と下げようという御決断をされたわけじゃないですか。

 あわせて、マクロ経済スライドも今まで本来かけなきゃいけなかったものがたまっているわけでありますから、それも徐々にかけていかなきゃいけないということでございまして、皆様方が特例水準解消で出された法律の趣旨と同じ趣旨なわけでございますので、そこは御理解をいただいた方が私はいいのではないのかなというふうに思います。

柚木委員 大臣、この間、繰り返しの答弁の中で、何度も、特例水準の解消を民主党政権の中でとおっしゃいます。私たちの政権の中で、もちろん皆さんも含めてこれを賛同いただいて、特例水準の解消がこの十月から始まるわけです。

 しかし、そのペースまで我々は人為的な物価上昇によって速めるとは一言も言っていないんですよ。大臣の御答弁は、まさに、アベノミクスで物価二パーのインフレターゲットが進めば、年金の目減りのペースまで速めることになるということを、同じことを今おっしゃっているんですよ。

 特例水準の解消に加えて本来水準に戻していくペースを速めるんだと何度も言われますが、まさに、アベノミクスが進めば、それは実質的な年金の目減りのペースが速くなるということを認められているということになりますよ、大臣。答弁してください。

田村国務大臣 マクロスライドのスライド率を改定しているわけじゃないですよね。マクロ経済スライドの率は一緒なわけでございますので、それが発動されるか発動されないかだけの話でございます。

 二年間を目途に物価上昇二%ということでございますから、二十六年、二十七年度には二%ということでございますので、そういう御理解の上で、次の年度に二%の物価上昇率に合わせて年金が改定をされていくのであろうというふうに思います。

柚木委員 つまり、確かに、アベノミクスでデフレから脱却して、そして円高を円安にしてという今の流れは今後も進んでいくとしたときに、それが進んでいくことで、当然、年金生活者も含めて、私たちの生活は何かよくなっていくんだろうと。ましてや総理が、物スラで年金生活の方も上がるんです、よくなるんですというような、受けとめられるような答弁をされている中で、では大臣、年金生活者が、今大臣が御答弁されているように、結果的にですよ、アベノミクスがそれを意図しているかどうかじゃないんですよ、結果的に、何度も大臣が答弁されているように、年金の目減りペース、まさに、特例水準の解消ペースを速めることになるということは結果的に実質の年金の目減りにつながるということを、年金生活者の方は理解されていますか、されていませんか。

田村国務大臣 もう一回、ちょっと話を整理させてください。

 二年を目途にということでございますが、二十七年四月に物価上昇率二%、これは、二十七年度に物価上昇率が二%になりますと二十八年度の改定になりますから、そのときには特例水準の見直しは済んでおるわけでございます。つまり、二%がいつになるかによって、今委員がおっしゃられた特例水準とマクロ経済スライドが一緒にかかるということは時期が変わってくるわけでございますので、そこのところはしっかりと精査した上で、我々もこの二%というものを、どこを目途にしていくのかということは考えていかなきゃならぬと思います。

 いずれにしましても、二年先ということでございますから、少なくとも今年度は、二%というお約束をさせていただいているわけではございません。来年度ということになりますと、これは二十六年度でございますから、二十六年度に二%を平均して実現するという話かどうかということは、これはなかなか難しい話でございまして、年度平均の二%なのか、それとも二%という終着点なのかというところはちょっと我々も整理しなきゃいけないと思います。

 いずれにしましても、もし二%が早く実現されれば、言われるとおり、マクロ経済スライドが特例水準の解消と合わせてスタートをし出すということは事実でございます。

柚木委員 私、大臣に確認をしたのは、アベノミクスによって物価が二%、それが来年、再来年、どの地点で二%に到達するのかというのは本質じゃないんです。

 そのペースが、普通の物価の変動の状況よりも少なくとも物価の上昇率が速まったときに、つまりアベノミクスが成功していたときに年金生活者の実質の年金額が目減りするということを、高齢者の方、特に年金生活者の方がわかっていますか、いませんか。答弁してください。

田村国務大臣 まあ、そうですね、年金制度自体はそういう制度でございますから、よくよく年金制度を御理解されておられるのであるならばおわかりかもわかりませんが、年金制度全てを理解しているというのは、それは国民の皆様方、特に受給者の方々が細かいところまでは御理解をいただけていないのかもわかりませんので、そういう意味では、きょうのこの国会議論の中で、そういう話があるという、仕組みの中のことは御理解をいただけるようになるのかなというふうに思います。

柚木委員 いや、まさに、本当に、厚生労働大臣から今のような御答弁をいただくというのは大変重い言葉で、国民の皆様が年金制度の全てを理解できているかどうかはわからないというような制度であっていいのかどうなのかという問題がまず一つあるわけですね。

 そして、もっと、さらに問題なのは……(発言する者あり)ちょっと静かに、委員長、してもらえませんか。真面目にやっているんですから。

 年金生活者の方が、まさに制度も全てが理解できないかもしれない制度のもとで、そしてその中で、アベノミクスによって、私はアベノミクスそのものを否定しているんじゃないんですよ、アベノミクスが進んでいく中でマクロスライドが発動されていくという、このタイミングが合致してしまうことで年金財政の健全化へのペースが速くなるということは、緩やかに二十年、三十年かけてやっていこうとしていることが速まるということは、まさに実質の目減り額も速まってしまうということを認識できていないということが大問題で、よくなるとみんな思っているんですから、年金生活者の方も。それが、実質の年金は実はアベノミクスが進めば目減りのペースが速まるということをわかっていないということは、これは本当に大きな問題です。

 さらに言えば、これから消費税も上がる、そして医療費の窓口負担、それこそ三年ごとに一割上がるとかいう議論、風邪は七割とかいう議論、高額療養費の負担も上がるかもしれない、介護保険も、軽度は保険外になって負担増になるかもしれない。そのようないろいろな負担増が、消費税が上がるんだったら社会保障はよくなるだろう、年金もよくなるだろうと思っていたら、むしろ、年金の実質の手取り額も減る、窓口負担もふえる、そして軽度者切りにもなる。

 そういうような状況を国民の皆さんが本当に理解されて、今のアベノミクスの議論が進んでいると大臣はお考えになられますか。

田村国務大臣 政権与党のときに、我々は、ある程度意識を共有する中において、世代間の公平というものを、これも進めていかなきゃいけないねと。

 ですから、高齢者の方々の御生活は大切でございますけれども、一方で、若い方々のこれからの、将来の人生設計ということを考えたときに、そこはバランスというものも考えなきゃいけないなという中において、民主党政権におかれましても、例えば特例水準の解消、これも御理解をいただいて、当時、自民党がやってこなかったから我々が将来に対して責任を負うんだとおっしゃってこの法案を出されたことは、我々は本当に立派な御活動だなというふうに理解をさせていただいたわけでございます。

 あわせて、マクロ経済スライドに対しても、当時、これを理解いただいて、これを早く発動しなければ、これは年金がもたないねというような、そういう御意見をいただいたことも記憶にあるわけでございます。

 そういう民主党であるからこそ、今回我々が提出をしたこの制度自体、御理解もいただけるのであろうと、我々が提出したわけじゃないんですけれども、言うなれば、今回のこの特例水準の解消、これも御理解をいただけるのであろう。これは実はそもそも皆さんが出した制度でございまして、皆様方が出された制度の中において今回のようなことが起こるわけでございます。

 一方で、経済をよくしていかなきゃならないということは、これはもう誰もかもがわかっていることでございますから、それに対してこのような形で、何か我々が悪いことをしたような、そういうような御発言というのは、ちょっと私もなかなか理解できないことでございまして、どうか、三党でいろいろと話し合ったあのときの思いというものを共有させていただきながら、よりよい日本の国をつくるために、御協力をいただければありがたいなというふうに思う次第であります。

柚木委員 これだけ、今大臣が、本当に複雑な制度で、国民の皆さんが全てを理解されているかどうかわからない、そして、まさに安倍総理の御答弁についても、本当に大臣が、本当にやじの中でも、総理に聞いてみなきゃわからないというようなぐらいのメッセージが国民に発信されている中で、私は、委員長、これはお願いします、ぜひ、このアベノミクス、別に悪いと決めつけていないですよ、アベノミクスが進んでいく、結果的に、マクロスライド発動下の中で、年金生活者の実質の受給額が目減りしてしまうというような、そういう影響が起こる。

 アベノミクスと年金受給額との関係、これは集中審議をぜひ検討してもらえませんか。

松本委員長 後刻、理事会で協議いたします。

柚木委員 これは、本当に、来週、安倍総理もここに御出席なされて、そしてこの年金の問題を議論するというようなお話も今聞いていますよ。

 ですから、まさにその場をしっかりと、この国会の中で、このアベノミクスが進んでいくこと、確かに、景気をよくしなきゃいけない、賃金も上げなきゃいけない、それはそうですよ。しかし、その影響の中で、年金生活者の実質の受給額が目減りをしてしまうようなことまで国民の皆さんは理解されていないということも、きょう、明らかになったわけですから。

 ぜひ、しっかりとこの厚生労働委員会、まさに年金の問題をここで、アベノミクスが、いいこと、もちろんやりましょう、しかし、想定していなかったような年金生活者の受給額の目減りなども含めて、そのペースが速まるということは今共有できたわけですから、そういうことも含めて、どういう影響が出てくるのかを共有した上で、私は、最後に、これは、ぜひこういうこともその場で議論をいただきたい、提案をしたいと思うんですね。

 例えば、まさに今、もう共有できたように、年金生活者の実質の受給額が目減りをしていくときに、例えば消費税が上がるときにはどういうことが講じられるのか。五千六百億円かけて、一人当たり五千円の、まさに低年金者対策もセットでなされるわけですね。

 ということは、消費税というのは物価が当然上がっていくわけですから、まさにアベノミクスで物価が上がっていくのと、物価が上がるという面では現象的には同じことに対して、消費税の場合は対策を講ずるんですから、アベノミクスによって特例水準の解消も含めたその先のペースが速まるということは、マクロスライド発動のときの議論の中で、まさに年金受給権、財産権の侵害じゃないかというぐらいの議論まであった中で、そういうことに対して、人為的に目減りのペースが速まるとしたときに、何も対策を講じないのか。

 例えば、新規裁定者の基礎年金部分、あるいは既裁定者の基礎年金部分をマクロ経済スライドから外す、外さない。あるいは、賃金上昇の話は大事ですよ。ですから、本当の意味で実質上がっていくような形で、特に新規裁定者に対して、その将来のことを考えたときに、例えばドイツ、オランダなどで政労使合意などでいろいろな仕組みの中で取り組んできた、そういうことも含めて、現役世代への配慮、それから今の年金生活者への配慮。人為的に目減りのペースを速めるんですから、そういうことをぜひ検討いただきたいと思いますが、いかがですか。

松本委員長 田村厚生労働大臣、簡潔に。

田村国務大臣 御理解ください、皆様方が提案された消費税増税法案、これも実は物価上昇に絡むんです。二十六年の四月から引き上がりますよね、すると、その分だけ物価が上がるんですよ。物価が上がったら、その分、マクロ経済スライドがきくんですよ。

 つまり、あなた方も人為的にそれをきかせているんです。つまり、それでも消費税が必要だということも御理解をいただいて、あのとき、とにかく日本の国を立て直そうということで思いが一緒になって、三党で合意をしたわけではないですか。それを、今になって、人為的にどうだと。

 消費税の部分も、当然、上がった分が物価に反映されればマクロ経済スライドにかかわってくる部分でございますから、これも人為的と言われれば、そうなのかもわかりません。

柚木委員 終わりますが、消費税とアベノミクスとは関係ありません。

 以上です。

松本委員長 次に、中根康浩君。

中根(康)委員 民主党の中根康浩でございます。

 わかりやすいという話がありましたけれども、途中でわからなくなってきました。

 きょうの毎日新聞にこう書いてあるんですね。余り新聞記事を委員会で取り上げるのは望ましくないのかもしれませんけれども、一応、こう書いてある。与党は、アベノミクスで物価が上昇すれば年金は実質目減りするなど耳の痛い議論は封印したまま、参議院選挙に向かう腹を固めている。

 こういうふうに、多くの国民の皆様は、この国会の今の柚木先生と大臣との議論は聞いていない。むしろ、けさこの新聞を読んで、え、何なんだこれは、安倍さんはいいことばかりやっているけれども、いや、実は、自分たちの暮らしにとっては影の部分も、マイナスの部分もあるのかということで、びっくりされた方もあるかもしれません。

 報道ですから、必ずしも全部が正確とは言えないかもしれませんので、大臣、この報道を見て、国民が不安やいろいろな思いをされるケースがあると思うんですね。だとしたら、厚生労働省としても、別にこの報道に答えるというわけではなくて、この報道をもとにした議論、今の柚木議員の議論、先ほど、アベノミクスが関係あるかないか、やはり関係ないとは言えないと思うんです。

 アベノミクスで二%のインフレを目指していくわけですので、その結果として、実質、年金の支給額が一・七%、むしろインフレが進まない方が実質目減りは減る、こういう試算も今の議論の中で明らかになったわけで、こういうことを、やはり国会の議論というのは大切で、そういうことが初めて今、私自身知ることができたわけでありまして、この報道とあわせて、これからのインフレがどの程度進むと、どの程度年金に影響があるかということを、大臣、厚生労働省としていろいろなケースを想定しながら、この委員会に資料を提出、明らかにしてもらうことはできませんでしょうか。

 それができないと、やはり今の議論が延々と続いて、我々はそこから前に進めないということになってしまいますので、お願いできませんか。

田村国務大臣 まず冒頭、我々が隠してきているとおっしゃられましたけれども……(中根(康)委員「いや、隠しているとは言っておりません」と呼ぶ)いや、そうじゃなくて、年金が目減りするという話を。

 これは、特例水準で年金が引き下がるということも、我々はもう既に申し上げてきておりますし、マクロ経済スライドがかかるということも、以前から各国会の議論の中で申し上げておるということでございますから、そういう意味では、我々は隠しているわけではないということは御理解をいただきたいと思います。

 その上で、物価がどれぐらい上がればと、アベノミクスとすぐに関連づけられるんですけれども、二十七年が多分一番焦点だと思うんですよね、二十七年度。このときに〇・五%の特例水準を解消した後に、さらに物価が上がった分がマクロ経済スライドがかかるじゃないか、そのときにアベノミクスだと、要は、さらに物価が上がっているから、その分マクロ経済スライドがかかるから、余計目減りするだろうなというお話ですが、そもそも、二十六年度四月から消費税を三%上げるんです。すると、物価が大体、まあどうでしょう、三%消費税を上げると、普通は二%ぐらいは物価が上がる、二%弱ぐらいですかね。それはもう、消費税を上げるということが決まった瞬間に、普通に実質プラマイ・ゼロならば、二%は消費税部分として物価が上がるであろうなと。

 その部分はマクロ経済スライドがかかりますから、すると、アベノミクスで物価が上がったからマクロ経済スライドがかかるのではなくて、そもそも、消費税を上げることによって物価が上がってマクロ経済スライドがかかるわけでありますので、そこはアベノミクスとは何ら関係しない部分であろうというふうに私は思います。

 ただ、思い切りデフレで、消費税を上げても物価が上がらないということが起これば別かもわかりませんけれども、平時そういうことになれば日本の国の経済は大変でございますので、アベノミクスというよりかは、消費税の影響の方が大きいのではないのかなと私は思っております。

中根(康)委員 アベノミクスが関係するかしないか、これはさっきからの繰り返しのことになってしまいますのでもう言いませんけれども、でも、やはり、一つはアベノミクスの二%のインフレターゲットが大きな柱として厳然として存在するわけですので、関係しないとは、そこまでは我々は譲れないんですが。

 それはおいておいたとしても、消費税の影響、そして、アベノミクスとは言いません、二%、あるいはいろいろなケースがありますよ、さっきから言っているように。インフレが一%、二%、三%、四%、どうなったら、年金受給者、年金受給額、これがどのように変化をするかというさまざまなシミュレーションというのは、これはできるわけですよね。

 事実、柚木議員が、厚生労働省からいただいた資料をもとに自分で計算して、先ほどからいろいろな数字をお示ししているわけでありますので、厚生労働省として、さまざまなケースを想定した数字を出してもらうということは、これは不可能ではないのではないでしょうか。

田村国務大臣 アベノミクスの影響でどういうパターンが出てくるかというのは、我々は出しようがないのではないかなというふうに思います。

 アベノミクスでというよりか、先ほど来言っていますとおり、御党が政権与党のときにお出しになられた消費税の引き上げ法案、これによっての影響がどれぐらい出るかというのは、まあ計算すれば出てくるのかもわかりませんが、ちょっと検討させていただきますけれども、しかし、精緻なものが出るかというと、いろいろな変数がございますから、ちょっとそれを出して、確かなものか、国民の皆様方にそれがどういうふうに御理解されるのかということを考えた上で、ちょっと検討させてください。

中根(康)委員 先ほどの報道に戻りますけれども、これを否定するなら、否定するようなデータを出してもらえればいいわけですよ。アベノミクスで物価が上昇すれば年金は実質目減りする、これはおかしいとおっしゃるんだったら、そのおかしさをあらわすような、否定できるようなデータを出していただければいいわけです。多くの国民は、この国会の議論よりも新聞の方をたくさん目を通しておられるわけでありますので、実質、年金額がどうなるか、これを出すということは、別にアベノミクスはもういいです、大臣。

 ですから、これからの年金の議論をしていく上で、委員長、これはお取り計らいいただけないでしょうか、資料を出すということを。

松本委員長 後刻、理事会で協議いたします。

田村国務大臣 ちょっと私も頭を整理したんですけれども、今ある年金額が、実は高いんですよね、本来よりも。本来の金額は今よりも低くなければおかしいんです。そういう制度設計だったのを、それは自民党の責任ですよ、我々自民党が引き下げなかったという歴史があるんです、本来下げなきゃいけないときに。

 その水準を出せと言われれば、それは出せます、本来の今の年金額は幾らかと。ただ、そもそも、今の年金額が、我々がやってきた政策で高どまりしている金額でありますから、それに対してどうだというのは、なかなか出しづらい話でございます。

中根(康)委員 特例水準は特例水準でいいです。その特例水準が終わって、マクロ経済スライドが〇・九なのか、一・二なのか、その数字がどうなのかも含めて、そこから先のさまざまなシミュレーションをしてほしいということを申し上げているんです。

田村国務大臣 特例水準をなくした後、マクロ経済スライドが発動されたときに、どういう金額というか、要するに、本来の金額とどれぐらいの差があるのかというのは出せますから、本来の金額とどれぐらい差があって、余計に払っているのかという結果は出てくると思います。

中根(康)委員 今、大臣がマクロ経済スライドが発動されて以降のさまざまな想定ケースは資料として出せるということでおっしゃっていただいたので、先ほど、理事会で諮るということを委員長からお取り計らいいただきましたけれども、もうそういう必要もなく出していただくということでございますが、この年金の審議が終わってしまっては意味がありませんので、安倍総理もかなり年金制度については勘違いをしておられるのではないかという疑惑、疑惑というか疑問もありますので、これは安倍総理が御登場いただく来週の水曜日以前に出してもらわないといけないということになりますので……(田村国務大臣「来週水曜日」と呼ぶ)以前に。

 もし出していただかないのであれば、来週の水曜日の審議はできない。(発言する者あり)拒否じゃなくて、できないということになって、もう少し時間をかけていきましょうという話になっていくということにもなりかねませんので、ぜひ、火曜日ぐらいまでに出してもらえればありがたいと思いますが。

田村国務大臣 これはちょっと、時間的にどれぐらいかかるか。間違ったものを出すわけにいきませんからね。ですから、その後どうなっていくかというのは、どこまで出すのかという問題もありますし、納得いくものを出さなかったら、そのときには我々は審議に応じないというのは、それはちょっと御勘弁いただきたい。

 私も、野党筆頭理事のときに、かなり民主党政権には御協力をしてきて、野党からかなり怒られました。そこは国対委員長をされておられた山井委員もよく御理解いただいていると思います。そこは常識の範囲内の中において、この法律案は必要だということは、もう十分に御理解をいただいておると私は思うんです。ですから、それとこれとは引き離していただいて、国民の皆様方の生活等々をお考えいただいて御議論いただければありがたいというふうに思います。

中根(康)委員 いずれにしても、出してもらうということはお約束をしていただきましたので、そのことだけは履行していただきますようにお願い申し上げます。できれば水曜日以前が望ましいということだけは申し上げておきたいと思います。

 それで、僕も田村先生とは筆頭同士で一緒にいろいろな国会対応をさせてもらいましたので、そのことについては感謝を申し上げておりますが、余りそのことに感謝申し上げてばかりだと議論になりませんので、そこはちょっと棚に上げさせていただいて、ちょっと隣に置かせていただきながら、きょうはやらせていただきたいと思っておるんです。

 大臣の柚木議員との議論の中でも、やはりここは少し聞き捨てならないと言うと言葉が悪いんですけれども、聞き流すわけにはいかないというのは、平成十六年、二〇〇四年の制度改正というのは、つまりは、厚生年金保険料でいえば一八・三%を上限にする、国民年金でいえば一万六千九百円でしたか、これを上限とする、所得代替率は五〇%にする、マクロ経済スライドをかけて給付を引き下げる、こういうさまざまな仕掛けで百年安心のものをつくったということですが、僕もきょうの議論を聞いていて、ああ、うかつだったなと思うのは、百年安心というのは、年金財政が百年安心であって、国民の暮らしは全然百年安心じゃないということを、まさに大臣御自身も柚木議員との答弁の中でお話をされていた。

 実質、年金の支給額は減るということは先ほどからお認めになっておられるわけでありますので、百年安心ということは、財政のつじつまということでいえば確かにそうかもしれません。百年先に一年分の積立金が残って、完全に賦課方式的なものになって、制度は存続をする。しかし、その間、年金額はどんどん下がっていって、国民の暮らしは困窮をする、国民の、年金受給者の暮らしは全然安心じゃないということですよね。そういうことなんですよ。

 だから、私たちは、やはり二〇〇四年の改正にとどまらずに、さらに先を行った制度改正、抜本改革が必要だと。消費税を国民の皆様に御負担をお願いする、それは、安心社会をつくる、年金制度を安心なものとして確立させるというお願いのもとに消費税をお願いしているということでありますので、ここにとどまっていてはいけないということだと思うんですね。

 にもかかわらず、大臣も、それから総理も、必ずしも年金制度の抜本改革は必要ないとこの数日間おっしゃっておられるわけであります。本当に年金制度の抜本改革が必要ないのかどうかということで、実はきょう通告をしておるわけでございますので、このあたりの議論を進めていきたいと思っております。

 厚生労働省からいただいた資料を先ほど配付していただきました。繰り返しになるようなことでありますけれども、一番上の資料、何とないものです、一番上にホチキスどめしてあるものなんですけれども、年金の財政収支はこの表のようになっている。

 それで、積立金は、二十二年度に七・八兆円、二十三年度に一・九兆円取り崩されている。今後も年々減少していくということになりますね。これでは百年もたないというふうに、単純に、私は素人ですので思ったら、厚生労働省からの説明では、二〇一七年には、先ほどこれは申し上げましたが、保険料が一八・三%と上限に達する、あるいは、国民年金保険料は一万六千九百円という目標の上限に到達をする。あるいは、二〇二五年までに男性が、そして二〇三〇年までには女性が、六十五歳まで支給開始が引き上げられる。こういったことによって、おおむね百年間、積立金は保持できる。

 そして、最終的に、二一〇五年度に、給付費の一年分の積立額となって完全な賦課方式が完成をする、こういうことでございます。また、マクロ経済スライドによっても給付水準が自動調整されるから百年はもつ、所得代替率を五〇%に抑えているから百年はもつということでございます。

 先ほどから申し上げておりますように、こういうことからわかるのは、百年安心というのは、これは年金財政だけが安心ということであって、国民の安心にはつながっていないということでございます。

 保険料の引き上げや支給開始年齢の引き上げ、所得代替率を五〇%へとどめること、マクロ経済スライドや積立金の取り崩しといった国民の負担増や、年金の本来の目的である所得喪失リスクの保障からは大きくかけ離れた、低水準の年金や国民資産の食い潰しでやっとつじつまが合うといったものでしかないわけでありまして、つじつまが合っているから百年安心で、これ以上の抜本改革は不必要だということをおっしゃるのかもしれませんけれども、国民の信頼に足るものではないということを重ねて申し上げておきたい。

 制度は残っても、老後の保障としては役に立たないものになるし、また、先ほどから年金受給者をターゲットにした議論がされておりますが、これは若い世代にとっても大きな負担ということになります。やはりこれではだめで、抜本改革を検討すべきだと私は思っております。

 もし大臣が、このまま、今の制度のままでいいんだというのであるならば、逆に、もうこれ以上不安を広げないために、私たちは、最低限の歯どめとして、保険料は一八・三%以上には上げない、支給開始年齢は六十五歳以上には引き上げない、所得代替率は五〇%以下にはしない、運用の失敗は決してしない、積立金は必ず百年もたせる、こういうことを逆に約束をしていただければ、そこから、そこをスタートにして新たな制度改正への議論を進めていくということができますけれども、ここでさえも約束できない、百年後の国民に対して約束できないということであれば、これは議論のスタートにすらならないということになってしまいます。

 もちろん抜本改革を求めておりますが、今の制度のままで、大臣、これまでも、いいというふうにおっしゃっておられるわけですから、でしたら、百年後の国民に対して、今のように、もう今の制度以下にはしないということは、最低、約束をしてもらうことはできますね。

田村国務大臣 まず、運用は絶対失敗しないだとか、それから、一番大きな影響は合計特殊出生率ですから、それは今の計画、もともと立てた計画より今高いですよ、それよりも高い合計特殊出生率になっておりますので、そういう意味では、出生率という意味からしますと年金財政にとってはプラスになっております。

 しかし、それを絶対下げさせないだとか、それは、何が起こるかわからないという意味では、天災も、いろいろなことがありますから、それはわからないという意味では、それは絶対なんということは言えません。しかし、一八・三%、保険料の上限という約束、それから所得代替率、これは所得層で三十五万八千円という世帯所得でありますけれども、ここで五〇%というお約束は法律でしておりますから、それが前提の制度であるということはそのまま御理解いただいていいと思います。

 それと、委員、もうわかっていておっしゃっておられるんだと思いますけれども、そもそも、年金の金額が実質的にどんどん下がっていく、そんな制度でいいんですかとおっしゃられましたが、民主党の年金案も同じなんですよ。民主党の年金制度は、もうどんどんどんどん、今の水準より実質水準は下がっていくんです。

 だから、私が野党のときに、当時、岡田克也副総理にこういう質問をした。あなた方、最低保障年金七万円と言っているけれども、まず、七万円もらえるのはいつですかと。制度が完全に動くのは四十年後ですというお言葉でございました。四十年間、まず待たないと安定的に動かないような年金制度を国民の皆様方が安心だと言えるかどうか、ここは問題ありますね、こういう議論をした。

 しかも、そのときに、七万円と言っているこの最低保障年金は今の賃金水準と比べれば幾らになるんですかと言ったら、二〇六五年でしたか、そのときに何と五万八千円になるという話だったんですよ。これなんというのは、七万円と言っていて、実際、七万円満額もらえるころには六万円になっちゃうというような、そういう制度だということで、我々は、あなた方、おかしいんじゃないですかという議論を、国会の予算委員会の中継をインターネットでひもといていただければ流れていると思いますが、皆様方の制度も同じなんです。賦課方式で、だんだんだんだん目減りしていくような制度になっているんですよ。

 あえて言えば、皆様方の方は、低所得者に対しては厚いんです。ところが、中所得者から上に対しては、我々の案よりも所得代替率が低くなっていくんです。そういう意味からすると、そういうものを総合的にどう判断するかということ。何よりも、四十年間かからないと、二つの制度が一緒に走るんですよね。こんなわかりにくい年金案というものを国民の方々が御理解いただけるのかということを考えれば、今の制度をどう是正するかということを考えた方がいい。

 おっしゃるとおり、下がるんです。特に国民年金の部分は、目減りが厚生年金よりも高いんですね。それは民主党案も同じだったんです。そこで、あの例の福祉的給付というものを皆様方が御提案をされる中において、では、低所得者、低年金者の方々に対してどういうような対応をするかということで、自公も、それは確かにそのとおりだねと。国民年金、最低保障年金と皆さんは言っておられますが、国民年金のレベルというのも、やはりこれから目減りしていくから、これに対しては一定の加算をしようじゃないかということで、お互いに理解をし合いながら、あれを入れたわけであります。

 それともう一つ、よく言われましたのが、非正規の方々、今まで国民年金は自営業だったけれども、しかし、非正規の方々が国民年金に来ているじゃないか、率が多いじゃないか、これは大変だということでございましたから、初めは、スタートは人数が少なかったですけれども、非正規労働者の方々、雇用労働者の方々に対しての厚生年金の適用拡大ということをこれから段階的に進めていこうということで、まず第一弾をやらせていただいたわけですよね。ですから、そういう意味では、かなり歩み寄りはしてきているのであろうと私は思うんです。

 ですから、そういうところを含めて、三党協議の中で、実質的に、今の現行制度を含めて、どうやれば国民の不安が解消できるかという御議論をしていただいておるのであろうというふうに私は理解をさせていただいております。

中根(康)委員 そういういろいろな話があるわけですから、にもかかわらず、三党協議が一カ月開かれていない。しかも、与党の皆様方の御都合で開かれていないということで。

 我々は抜本改革という言い方をします、与党の先生方は、抜本とは限らない、今の制度の手直しでいいというふうにおっしゃるかもしれません。いずれにしても、そういったことを、手直し、あるいは改善、改革というのは必要なことは共有されておるわけでありますので、三党協議というものが休眠しているということは大変な国民に対する背信行為ですので、大臣からも、ぜひこれは、年金の議論は政局にかかわらず粛々と進めるべきだという指導力を発揮してもらわなきゃいけないということだと思います。

 柚木議員も取り上げておられましたマクロ経済スライド、これを今まで僕も本当に知らなかったんです。最近知ったんです。これは〇・九%マイナスだということで思い込んでおりましたけれども、実は一・二%。特例水準が解消された後、初めて発動されるときには一・二%になる。

 こういうことも含めて、多くの国民の皆様は、年金の議論が今どうなっているかわからない、あるいは、確定された制度が今どうなっているかわからない、実質というか、実際に自分の年金額にどのようにそれが反映されてくるかわからないというのが、多くの国民の皆様の正直なところだと思います。

 したがって、先ほど、いろいろなケースのシミュレーションをした資料をつくってみてくださいということを言ったり、あるいは、この議論をきっかけに、マクロ経済スライドのスライド調整率は〇・九だと多くの皆さんが、国会議員でもそう思っていたよ、中根というのがとぼけたことを思っていたようだということをおっしゃっていただいて結構です、それでもいいですから、実は一・二%減額されるんですということを、記者会見でも何でもいいから、多くの国民の皆さんに、きょう、あすぐらいにお示しをいただくということで、きょう、あすというのは極端な話なんですけれども、そういったことを含めて、国民の皆様が本当にわかりにくいなと思っているところを解消していくということも厚生労働行政の重要な役割だということを、きょうは指摘させていただきたいというふうに思います。

 同じ金額で、同じ千円を払っても、やはり将来的には買えるものが買えなくなってしまうということは、柚木議員の議論を待つまでもなく、明らかな話であるわけでありますので、これが国民生活に直結しないはずはない。極めて重要な影響がもたらされるということでございますので、これはぜひ、いろいろな数字とか、いろいろな細かな、細かなというか、重要なところを折々に大臣から発信をしていただいて、今、自民党政権が発することは多くの国民の皆さんは聞く耳を持っておられますので、素直に受けとめていただける、納得が早いということだろうと思いますので、これはぜひ大臣の重要な職責の一環に位置づけていただきたいと思います。

 それで、年金の話を、もう少し今の制度の話を続けますと、年金制度、当初は積立方式だった。それが、先ほどから大臣も御説明をされておられますように、徐々に賦課方式に変わってきた。

 積立方式の場合ですと、年金というものが自分の将来への備えということになるわけでありますが、残念ながら、これは、グリーンピアとかサンピアとか、そういったものをつくることによって多くの金額も食い潰されてきてしまったということで、そういった経緯をたどりながら、世代間の支え合いというような賦課方式に変わってきたわけであります。

 しかし、年金というのは暮らしそのものであって、決して道徳教育ではないわけでありまして、世代間の支え合いで、子が親を、子の世代が親の世代を助けてあげるんだ、幾らそういうことを言っても、若い世代の人たちは、それは気持ちの上では納得、理解しようと努力するかもしれませんけれども、暮らしの意味では納得できないということは拭い切れないというわけであります。

 ある意味、政府が世代間の支え合いということを強調すればするほど、もともとの、元来の年金の目的である自分の老後への備えという多くの国民の皆様の気持ちとのミスマッチ、ギャップというものが広がっていってしまうということになりかねません。

 ある意味、ここが年金不信の、特に若い人たちにとっての年金不信の大きな要因の一つではないかというふうに私は感じておるわけであります。つまり、支え合い型の賦課方式型になって、将来への備えというものが失われてきてしまっている、将来への安心というものがむしろ失われつつあるのではないかということだと思います。

 若い世代は、政府の宣伝によって、これは繰り返しになりますけれども、年金は世代間の支え合いだよということを繰り返し繰り返し、年金教育ということも最近行われておりますので、一生懸命理解しようとしますけれども、頭ではわかっても、納得して、今の制度に対して決して、もろ手を挙げて賛成だ、賛同だということにはなっていない。

 賦課方式は世代間の支え合いだからこそ、むしろ、自分が高齢者になったとき、人口が減少して若者が少なくなれば、支え手が少なくなれば、年金額は少なくなってしまうということ、それを仕方のないことだということで大臣は先ほどからおっしゃっておられるのかもしれませんけれども、これは仕方のないことだけでは済まない。若い人たちにとっては、暮らしそのもの、生活そのもの、人生そのもの、人生そのものというのは大げさかもしれませんが、人生に大きくかかわってくるということであります。

 そういう不信感が、例えば、先ほど資料でもお示しした中でも見てとれるんですけれども、保険料収入が毎年見込みを下回っている。これは未納が多いということでもあろうかと思いますので、そういう不信のあらわれがそういうところにもつながっているんだろうということは指摘をしておきたいと思います。

 賦課方式というものが、少子高齢化で、後の世代、若者にどんどんしわ寄せが行く制度である。ましてや、また今、産業競争力会議や規制改革会議で解雇の規制緩和などということがしきりに議論をされて、そういったものが報道されるということであると、さらに一層、雇用とか、将来の生活とかというものに対して不安が募ってくるということでありますので、低成長あるいは人口減少社会では、世代間の支え合いも、自分の将来への備えも、両方ともに困難になってくるということでありますので、今の制度であるとそういうことが解消されないということになるわけであります。

 やはり、ゴールはどこにたどり着くか。これは、三党協議あるいは国会での議論を積み重ねていった結果になりますけれども、しかし、抜本改革というものを頭から否定をするということではなくて、抜本改革を含めた制度改革に対しての前向きな取り組みを、厚生労働省を先頭に政府としてお見せいただかないと、実際にそういう取り組みをしていただかないといけないということだろうと思います。

 改めて、大臣が、あるいは総理が抜本改革を最近かたくなに否定をされておられますので、今の制度のままで本当にいいのか。今の制度でも、今まで申し上げてきましたように、さまざまな不安あるいは問題点があるということは共有をしながら、新しい、よりよい制度に向けての議論をしていかなきゃいけないということは、これは大臣、御理解をいただき、御賛同いただけるんじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。

田村国務大臣 まず、保険料が目減りしているというのは、それは未納の問題もありますが、やはり所得がふえていないということ、所得が減っている、標準報酬月額が上がっていないというところが大きなところでございまして、アベノミクス、アベノミクスという話がございましたが、景気がよくなって所得がふえていけば、保険料収入はふえてまいります。

 しかし一方で、保険料収入が仮に目減りしたとしても、給付の方も目減りしますので、そういう意味では、保険財政的にはほぼ中立であるということでございますから、それによって年金保険が危なくなるというような類いのものではないということであります。

 それから、民主党の年金案、自民党と余り変わらないんですよ。賦課方式なんですね。ですから、我々と同じように、やはり給付がどんどんどんどん下がっていくということは同じですし、子供の世代から親の世代への仕送りという意味では、やはり同じなんです。

 ただ、違うのは、最低保障年金というところに税をばんと入れて、低所得者の方々に非常に手厚い。その財源は消費税で、当時は五%強というようなお話でございました。一〇%に上げる以外に、まださらに五%上げて対応するというような、あれはD案か何かでしたけれども、そういう案が出ておりました。そこまで消費税を上げますが、低所得者の方には厚くなるかもわかりませんが、一方で、それでも中所得者以上は今の年金制度よりも目減りしてしまうという問題点をどうするんですかというようなお話を議論させていただいて、当時、熱い激論を交わさせていただいた覚えがございます。

 そういうことを考えますと、何よりも私が一番、抜本改革の怖いのは、何十年もかかって新しい制度に移るということ自体、本当に国民の皆様方に安心をいただける年金制度として信頼いただけるのかなというのが怖いんです。ですから、そういう意味では、今の制度の中ででも、いろいろな問題点は解消できる部分はあるんですね。

 ちなみに、民主党年金案で全て解消できるかというと、そうでもなくて、未納者それから無年金者、これが解消できるのかとお聞きしたら、解消できませんと。保険料を納めない人には最低保障年金を払いませんというのが、当時、岡田副総理のお答えでございましたし、それでいいんですかと聞いたら、これが民主党案ですというお話でございましたから、やはり同じ問題が起こってくるんです。

 保険料を納めない、納めるというのは、厚生年金等々、被用者保険ならばこれはある程度差っ引けますが、自営業者を中心とするこういう方々からは取れませんから、そうなったときにどうするんですかという問題点もあった。特に、自営業者の場合は、保険料は二倍ですからね。だって、事業主がいないわけでありますから、事業主分がないわけでありまして、すると、御本人が二倍保険料を払わなきゃいけない。しかし、もらう給付は一緒だという話になると、これは不公平だという御議論もあったと思います。でありますから、そういうようないろいろな問題点も含めて、かなりあのとき議論はされたと思うんですよ。

 その中において、今先生がおっしゃられたような、かといって今の年金制度でも絶対安心だと言えない部分もありますから、そこは含めて、三党間で御協議をいただく中で、抜本的に四十年もかけて制度を変えるというよりかは、今の制度の中で、かなり安心をいただけるような知恵を出して、それで制度改正をしていただけるような方向で御議論をいただければ、今の制度を運用しております厚生労働省としてはありがたいなとは思っております。

 いずれにしても、三党で御協議をされてお決めになられることでございますので、これ以上我々が口出しするわけにはいきませんので、三党の御協議の内容を我々は見守らせていただいておるということでございます。

中根(康)委員 もちろん、一〇〇%完全な制度というものは、誰にとっても損をしないというか、誰から見てもいい制度というのは、なかなかこれは難しい。

 ただ、今の制度だと、先ほど柚木議員が指摘をしたように、特にマクロ経済スライドというものが発動されていくと、実質の手取り年金は減少する。減少するからこそ百年もつということになるわけでありまして、ここは、繰り返しになっちゃいますけれども、制度はもっても暮らしが損なわれたら、これは国民にとっては望ましいものではない。

 こういうことを一つ一つ解消する努力を国会あるいは政治はしなきゃいけないわけでありますので、ですから、繰り返しになりますけれども、そういうさまざまな想定をした、どこに問題があるか、どこを直していったらいいかということがわかる一つの手がかりとしての、先ほど要求をさせていただいた資料を早急につくっていただくということが、この数十分間の間にもより一層その重要性が高まってきたということでありますので、これはやはり火曜日までに出してもらうということをお願いできたらなと思います。

 やはり、総理がここにお出ましになる前にそういった議論をしっかりやっておかないと、恐らく総理が困ると思いますよ。ですから、そういうことを、改めて迅速な作業をお願いしておきたいと思います。

 それと、制度を変えれば、数年の間は古い制度と新しい制度が並行していくということはあるかもしれません。四十年が適切かどうかはともかくとして、しかし、抜本改革をやって、将来の年金はまさに百年の大計ということであれば、四十年ということだって許容される場合だってあるかもしれません、いい制度をつくるのであれば。

 ですから、そういったことをタブー視しないで、やはりこれは三党でということをやろうと思っても、今、三党協議が開かれない。(田村国務大臣「きのうやっているんです」と呼ぶ)一カ月休んだということでございますので。

 とにかく、加速度的に協議を進めていただきたいということで、八月二十一日がもう迫ってまいりますので、消費税の引き上げが迫ってまいります。解雇の金銭解決制度というようなものを参議院選挙前にはやらないというのと同じように、もしかして、ダブルということなら別ですけれども、次の選挙の前になったら、やはり消費税上げませんよということを言おうというもくろみがあるのならばいいんですけれども、そうじゃないでしょう。やはり消費税は予定どおり上げていくということが、今の政権においても当然のことになっているわけでありましょうから。

 ですから、そういう意味でも、もう期限が迫っているわけでありますので、そういう協議なり、あるいはいろいろな厚生労働省内の調査研究、資料作成、シミュレーション、こういったものはスピードアップしてやっていただきたいということを改めて要望しておきたいと思います。

 法案に移りたいと思います。

 厚生年金基金でありますけれども、これは高度経済成長期のある意味幻想ということで、もはや時代に合わない。一年でも早く制度を終息させるべきだというふうに思います。そのあかしとして、リスクに敏感で、意思決定が迅速な単独型の基金は代行返上して、さっさとこの制度から退却をしているわけであります。

 国民全体の資産である厚生年金保険料と、そして企業の資産である企業年金分が、こういう性格の異なるものが混同してスケールメリットを享受するというやり方、改めて今考えてみると、これはもともとおかしなものであった、なかなか例外的なものであったということであろうと思います。そもそも、なぜ代行という考え方が採用されたのか、改めて振り返ってみるとよくわからないということであります。

 よく指摘されるように、厚生年金がここに含まれることによって天下りがしやすくなるのではないか、天下り先確保のためだということもうわさをされております。

 これは資料にお配りをいたしましたように、事実、資料一にありますように、多くの基金に対して天下りが行われている。この代行制度というものを導入した、あるいは、この法案によって四十八基金、約一割を残そうという意図といいますか考え方の中に、天下り先を失いたくない、これを確保しようという思惑がまさかあるとは答弁されませんでしょうけれども、いかがでしょうか。

桝屋副大臣 先ほどから議論が続いておりますが、法律の中身に入っていただいてありがとうございます。感謝申し上げながら、お答えをしたいと思います。

 決して天下りを温存したいという思いがあるわけではありません。委員も御案内のとおり、今回の改正によりまして、基金の新設は制度的に停止をするというふうにしておりますし、法形式上も、厚生年金保険法の本則から基金関係の条文を全て削りまして、改正法の附則で経過的に存続をさせるというふうにしているわけでございます。事実上の廃止に近い形になっているわけであります。

 また、施行日から五年以降は、代行保全の観点から設けました存続基準、委員は意図的にとおっしゃったけれども、決してそうではないこの存続基準というものがあるわけでありまして、これを下回る基金には、厚生労働大臣が社会保障審議会の意見を聞いて解散命令を発動できる、こういう制度になってございまして、基金の財政状況に応じた適切な対応を行うとしてございます。

 委員からも資料の提供がございましたが、今日までOBの職員の能力活用ということで来ておりますが、こうした人たちを守るという思惑は全くございません。

中根(康)委員 改めてお伺いいたしますけれども、なぜ、約一割、四十八基金を残すのか。代行割れを防ぐには運用収入をふやす、これが不可欠なんですけれども、これは簡単なことではないということであります。

 ハイリスク・ハイリターンに手を出して失敗したり、詐欺的なものに巻き込まれたり、短期はできてもこれを長期にわたって継続をしていく、高利回りを確保するというのは、ある意味ほとんど不可能に近いことで、サブプライムローン問題もリーマン・ショックも、それを予想した人はいないわけで、数年前、随分前から予想した人はいないわけでありますので、こういったことが繰り返されないということは、幾ら田村大臣でも明言することは、お約束をすることは恐らくできないんだろうというふうに思います。

 しかも、少子化で成熟度というものがどんどん高まっていく、基金の財務は一旦下り坂になると雪だるま式に悪化をする、現在勢いのある産業もいずれピークを迎えて斜陽になるということ。残す基金、これは間違いなく健全性を保ち続けていく、代行割れは一〇〇%しない、厚生年金は決して損なわない、企業年金部分も絶対に安心だと約束できるかといえば、もうこれは余り時間がありませんので答弁を求めませんけれども、できない、そこまでは言えませんよということだろうと思います。

 厚生労働省がつくった資料二を見ていただいても、これは、右肩上がり経済のときは安定的に高利回りといいますか一定の利回りが確保されておりますが、少子高齢社会が顕著になってきたこの数年においては乱高下をしているわけであります。

 こういったことを見ても、安定的な高利回りを確保していくということはほとんど神わざに近い、不可能だということになると思います。

 資料三、細かい数字がたくさん出て、本当に見づらいわけなんですが、もっと大きくしてくればよかったのかもしれませんが、厚労省につくってもらった資料でございます。

 残す四十八基金の中には、例えば番号でいうと四十三から四十八のように、積立比率が一・五倍ないものもある。あるいは、例えば四十四から四十八番のように、総資産に対する代行部分の割合が七〇%、七〇%が確かな基準ではありませんが、例えば七〇%でラインを引いたとき、七〇%以上あるもの。代行部分の割合が多いと、やはり危険性が高いというふうに今までの経験からして思わざるを得ませんので、代行部分プラス三階の積立率が一〇〇%であって初めて安全だと言えるというふうにも思いますし、そうでないものが数多くある。運用利回りのところをごらんいただいても、大変、これはいずれの基金も不安定にある。

 やはり注目したいのはこの成熟度というところでございますけれども、いずれもどんどん成熟度は高くなっていく。これはある意味、当然といえば当然なのかもしれませんが、特に二十七番、二十九番、三十七番というものは、既に一〇〇%を大きく上回っております。こういうように、四十八の残す基金の中にも、不安材料は幾らでも内包されているわけであります。

 したがって、今までのさまざまな苦い教訓からしてみても、厚生年金基金というものは、この際、全廃をするという方向で考えるべきだということでございます。

 時間がないので質問を続けますけれども、主婦年金問題。

 これも、三号から一号への切りかえはしない、つまりは、忘れちゃったという人もいるかもしれませんけれども、一号にはなりたくないというような思いの方もあったのかもしれない。つまり、一号は定額負担が重い、満額でも給付が少ない。

 一号はもともと、一定の収入が、ベースのものがある自営業者、農業者などを前提としていて、主婦やフリーターやニートというものは想定をしていないという制度であったと思います。この所得のない人、所得が少ない人の年金をどう考えていくか、この主婦年金問題を通じて、これは真剣に議論をしていかなきゃいけない。この法案が通っただけで、それで事足れりということではないと思っています。

 そういう意味でも、この年金制度の抜本改革の、抜本改革という言葉にこだわらせていただきますけれども、やはり今の制度のままで満足していてはいけないということだろうと思います。主婦年金、第三号問題、こういったものも含めて、改善をしていく余地は幾らでもあるということを指摘申し上げまして、私の質問を終わらせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

松本委員長 次に、伊東信久君。

伊東(信)委員 三党協議というお話が出るたびに複雑な気持ちになる、日本維新の会の伊東信久です。

 まず、今回の法案の中で、第三号被保険者記録不整合問題について、対象者はサラリーマンの被扶養配偶者、つまり専業主婦でありまして、もちろんのこと、女性の方であります。

 昨今といいましょうか、この制度ができて以来、女性の方の社会的な立場と申しましょうか、もちろん、生活のために共働きをする、もしくは御自身のために、生きがいのために、もしくは理念などがありまして、働かれる方もふえてきました。また、専業主婦、もしくは母親として子育てということで、多様なる価値観と多様なる立場があるのが現代の状況ではないかとは思います。

 極めて特殊な事例となりますけれども、この法案に関する質問をさせていただく前に、二日前の報道でございました、アメリカの女優でありますところのアンジェリーナ・ジョリーさん、アンジーという通称がございますけれども、アンジェリーナ・ジョリーさんが、悪性腫瘍、いわゆる乳がんがなくても、乳腺切除を行いました。

 詳しく申し上げますと、アンジェリーナ・ジョリーさんは三十八歳なんですけれども、がん抑制遺伝子BRCA1、これの働きが弱いということで、がんのリスクが八七%あると医師に告げられたことから、予防措置として、両方の乳腺の摘出を受けた。加えて、再建手術も行われたそうです。

 がんの抑制遺伝子というのは、がんになりますよ、がんができますよという遺伝子ではなくて、人間の体というのは、常々いろいろな細胞ができて、その中で間違ってがん細胞もできることもあります。それを抑える遺伝子というのがこのBRCA1というんですけれども、遺伝子診断によってこれの働きが悪いと。八七%ということで、手術をされたということです。

 大阪大学大学院の美容寄附講座の協力を得まして、この手術を日本でした場合、幾らぐらいになるか推定しましたところ、大体、この診断だけで三十万、取り去る手術で七十万ぐらい、再建手術で七十五万ぐらい、全身麻酔で二十五万ぐらい、その他もろもろ合わせると二百万ということです。

 ただし、彼女は、手術が終わって、この手術によって、子供たちのためにお母さんはずっと安心して暮らしていける、女性も強くなれるし家族も強くなれると。これは、一個人の方の主張でありますし、特殊なケースではございますけれども、いろいろな意味があると思います。

 予防医学の少し進んだ形、アメリカと日本のこういった予防に対する意識の違い、働く女性のいろいろな多様性、そして、この検査に対しての信頼性、医師と患者の信頼関係、さまざまな問題がありまして、なかなか、このことに関しての御意見、御感想というのは難しいことも前提とした上で、田村大臣ならば大丈夫だということで、田村厚生労働大臣、ちょっと御感想をお願いいたします。御意見、御感想を。

田村国務大臣 いつも答弁しづらい御質問をいただくわけでありますけれども、アンジェリーナ・ジョリーは私も大好きな女優さんでございまして、本当に、「トゥームレイダー」の彼女はきらきら輝いていたというような、そんな覚えがございます。

 この治療ですけれども、もちろん、お医者様と御本人といろいろな話し合いがされて、その上で御本人の御判断でございますから、そういう意味では、御本人が選択をされたことでございますので、私が、それがどうなのかということを申し上げることもないわけでありますけれども。

 今委員おっしゃられましたとおり、このBRCA1という遺伝子ですか、本来はがんを抑制する遺伝子の一つであるらしいんですけれども、これが、突然変異等々を起こして、逆にがんをつくってしまうというような、そういう可能性があるということで、普通の方は、七十歳まで乳がんに罹患する確率が一般的に五から一〇%程度なものが、この遺伝子変異を持つ方は五六から八七%と報告もあるようでございます。そういう意味からして、このような御判断をされたんだというふうに思います。

 いずれにいたしましても、我が国でも、がんに対する予防でありますとか治療法、こういうものに予算をつけながら、いろいろな研究をしておるわけでございますが、こういう予防法、特に切除をしたりだとかということは、結構、国民的にもいろいろな議論が必要であろうと思います。

 厚生労働省としても、いろいろな研究、いろいろな治療法が生まれてくるわけでありますけれども、安全性でありますとか有効性というものをしっかりと判断した上で、承認をしていくということでございますので、これから国民の皆様方に、安全性という意味ではしっかりと確認をした上で、いろいろなものに対してのアプローチをしてまいりたい、このように思っております。

伊東(信)委員 ありがとうございます。

 きのう、いろいろ迷いながら通告させていただいて、きちっとお調べいただきましてありがとうございます。

 このお話の中というか、こういったことを提言させていただいた中に、がん検診との兼ね合いがありまして、以前、子宮頸がんワクチンのお話もさせていただいたわけですけれども、予防的措置となると、好発年齢ということで、三十代、四十代。その方々というのはまさに保険料を支払っている方々。六十代を超えたあたりからリスクがまたさらに、発生するという意味で増してきまして、その方々もやはり検査を受けられる。ところが、女性であってもという言い方はおかしいですね、女性の方も三十代、四十代というのは働き盛りで、六十代、七十代、働かれている女性の方もその御年齢になると引退はされるわけです。

 先ほど、二百万余りというお話をしましたけれども、一号に含まれたり、もしくは二号に相当する女性の方、その方々は、アンジェリーナ・ジョリーを含めてかなりの収入があられる方もありまして、世代間での格差も含めて、年金制度の受給年齢になって、いわゆる法律のカテゴリーの中で十分裕福であって、実際、年金というのは果たして欲しいのかなと思われる方も含まれているわけです。

 そんな中で、第三号の被保険者記録不整合問題がございましたけれども、この方々の、これから、不整合対象者、今回の法律の対象者になられる、過去のデータもいただいているんですけれども、現在の推計の人数というのはわかっておられるのでしょうか。教えてください。

高倉政府参考人 お答え申し上げます。

 お尋ねの第三号被保険者の不整合記録をお持ちの方の状況につきましては、これは、社会保険オンラインシステムにおけるデータ、またそのデータを活用したサンプル調査などから推計をさせていただいております。

 具体的には、不整合記録を有し、年金額に影響があると考えられる方は、受給者の方が約五・三万人、被保険者の方が約四十二・二万人と見込んでおるところでございます。

伊東(信)委員 四十二万人の方がかなり問題になっていると思うんですね。

 民主党の先生方も、質問の中に、いわゆる制度自体の見直しということで、抜本的な見直しよりも、部分的な見直しの方が現在にそぐうのではないかというような御答弁をいただいたので、では、現行の制度に対してのいわゆるマイナーチェンジのところを考えますと、不整合期間を有し、未訂正になっている方が四十二・二万人もおられる、この根本的な理由というのは、政府としては把握されておられるのでしょうか。

桝屋副大臣 お答え申し上げます。

 今委員から、第三号被保険者、この記録の不整合問題が生じたそもそもの原因は何なのか、こういうお尋ねかと思います。

 この制度が導入されましたのは昭和六十一年でございまして、それ以降、順次取り組みを行ってきたわけでありますが、一つ、第一号被保険者となった方に対する届け出勧奨を行う範囲が限定的であったというようなこと、あるいは、御本人から届け出がなくても職権によって第一号被保険者に変更する仕組みの導入、これが遅かったということもあろうかと思います。職権適用のための統一的な手順も定めていなかった、こういうこともあったでありましょう。など、御本人から必要な届け出がなかった場合における行政の対応が十分ではなかったことに起因するというふうに認識をしてございます。

伊東(信)委員 申しわけないです、私の質問が悪かったのでしょうか、御質問の趣旨として若干違う部分がございまして、そもそも行われた理由というよりも、今回、この不整合問題というのはそもそもわかっていた問題で、現時点でも四十二万人余り残ってしまっているという、この理由に関してもう少し御説明をいただければありがたいんですけれども。

桝屋副大臣 済みません、繰り返しになって。

 なかなか委員のお尋ねの趣旨が私もまだ理解できていないんですが、不整合記録問題が今日なお、委員が御指摘のように、四十二万もある、その理由は一体どうなんだというと、先ほど私が申し上げたように、いわゆる年金制度に対する行政側の姿勢が十分でなかった、対応が十分でなかったということに尽きるんだろうと思います。

 したがって、今後こういう問題が生じることがないように、しっかりした防止策を講じたいというふうに今考えている次第でございます。

伊東(信)委員 さらに質問の仕方が悪かったと反省しているきょうこのごろなんですけれども。そうなんですね、その対応が悪かったという、どういう対応が悪かったのかということをお聞きしたかったのです。具体的にどう対応が悪かったのか。

 第三号被保険者でなくなった場合は届け出を行う。では、届け出を行えないというか、それは単なるサボっていただけなのか、忙しくてできなかったのか、それとも経済的な理由があったのか、それとも通知の仕方が悪かったのか、窓口に行って、言葉尻を捉えるわけじゃないですけれども、そのときの対応が悪かったのか、こういったことを把握されていない限り、この問題はまず、すごく細かいことですけれども、私は常々、開業医、臨床医をしながらこういったきめ細かいことを気にしているものですから、対応というお言葉に対して具体的にお聞きしたい、そういう趣旨です。

桝屋副大臣 先ほど私がお答えを申し上げたことに尽きるんですが、具体的に今委員から、なぜ、これだけ四十二万の方が不整合な記録として残っているのかということであります。

 まさに制度の変遷の中で、御主人が仕事をおやめになった、そのときに奥様がきちっと届け出をしなきゃいかぬというようなことが、被保険者に十分理解されていなかった。それは言葉をかえれば、制度の趣旨というものがどれだけ国民の皆さんに周知されていたかということでございまして、そういう意味では、制度の趣旨徹底ということが、年金関係者、これはそれぞれの企業もそうかもしれませんが、そうした方々に制度を徹底するということが十分ではなかったということ。

 そうしたものをカバーするために、できれば、しっかり客観的に把握して、職権でもって対応すればいいわけでありますが、こうした仕組みも、制度を仕込むのに少し時間がかかった、こうしたことがあったのだろう、このように考えております。

香取政府参考人 幾つかの問題がございまして、一つは、今、副大臣が御答弁申し上げましたように、二号の御本人は職場の方で手続をとるんですが、配偶者の方、三号の方は御自分でやらなければならない。そこが制度上徹底していなかったということで、届け出が行われなかった。

 もう一つは、基礎年金番号の導入がかなり後になりましたので、この不整合記録を発見するためには、御自身の記録とその配偶者の記録の突き合わせをして、二号、三号の組み合わせが、一号、三号というあり得ない組み合わせになっているということが把握できないといけませんので、その意味で、そういう事案がある、あるいは、どこに具体的にそういう記録があるかというのを発見するというのがなかなかおくれた。

 さらに言えば、届け出の勧奨でありますとか、見つけた後の職権で処理をするといった手続が、完全に十分には行われていなかったということで、既にもう幾つか職権で処理しているものもありますが、処理し切れないまま残っている。既にもう受給者になってしまった方がいらっしゃるということで、この問題が出たということでございます。

伊東(信)委員 現役層に対するこの不整合問題への対応で、不整合記録の再発防止措置というのが今回の法案の中に盛り込まれているんですけれども、第三号被保険者でなくなった旨の情報を事業主経由で入手するということなんです。

 先ほどの御答弁の中で、二号の御主人が職を失った場合、もちろん事業所からそういった旨の説明は受けられるかもしれないですし、自分で手続をするかもしれないんですけれども、事業主経由で入手したとしても、やはり御本人さんの届け出その他の現行の措置だと、この四十二万人という多くの問題、問題という表現というのは、私自身、今回の制度自体の改正で違和感を感じているのは、さもこういった方々が何か悪いことをしたような、そういった印象も受けまして、ちょっと心が痛くて、問題という言い方も言いづらいんですけれども、これは政府として、もう少し突っ込んだというか、詳しい、確実な調査と通知というのが必要だと考えるんですけれども、その点に関して、何か今議論されているとかというのはないでしょうか。

桝屋副大臣 こうした今回の問題を解決する具体的な取り組みでありますが、先ほどからお答えしておりますように、第三号被保険者の不整合記録が今後生じることがないように、これを防止するために、今回の法案では、委員からもお尋ねがございましたが、第三号被保険者でなくなった旨の情報を、配偶者の事業主を経由して届け出ることを義務づける。これで相当の改善にはなるだろうと思っております。

 また、不整合記録を持つ方、四十二万という数字もございましたが、こうした方々を特定するためのシステム開発を行いまして、今後、特定をしたそうした不整合記録に対して、届け出勧奨あるいは職権適用をさらに進めていきたいというふうに考えてございます。

 なお具体的なことでございましたら、また事務方から答弁をさせたいと思います。一応、今の答弁で、さらに委員からお尋ねがございましたら、答弁をさせたいと思います。

伊東(信)委員 申しわけございません、どうしても悪性腫瘍は最後まで徹底的にたたかなければいけない性分なので。残っていると転移しますのでね。

 システム開発とおっしゃったんですけれども、そのシステム開発に関して、今、具体的なことがわかればお教えいただきたいのと、かなりの数が解消できるということですけれども、かなりの数というのは何%か、もしくは、何万人いけるのかという目算というのはされているのでしょうか。

高倉政府参考人 今、それでは、どのようなシステム開発でこういった不整合記録を持つ方を特定していくのかという部分のお尋ねでございます。お答えさせていただきます。

 典型的な事例を申し上げさせていただきますと、配偶者の方がサラリーマンで、年金上二号であって、その間三号という状況、これは正しいわけでございますが、御指摘のように、そのサラリーマンの方が退職をされた、一号になってしまった、そして、配偶者の方が三号のままで、変更の届けを本来出すべきを出していない。

 御本人に届け出を促す前提といたしまして、そういう状況になったということを把握できるように、システムの側で、そういう制度的にはあり得ないマッチングになってしまった、二号、三号ということでよかったのが、片方の二号から一号はちゃんと把握できた、しかし、そうしますと、その反対側の配偶者の方がおかしいぞというところが、今、自動的にぱっとわかるシステムにはなっておらないという現実がございます。そのような不合理な、不整合となるようなマッチングをシステム的に行えるような改修を行う、それが一つのメーンでございます。

 また、さらには、被扶養配偶者として三号でいい状況の中から、いろいろ就労なさって、収入が多くなったといったような事情などから、被扶養を外れるということがあるわけでございます。

 その被扶養から外れた場合も、これは三号ではなくて、基本的にはその場合は一号になるとか、そういうことになろうかと思いますけれども、そこも、被扶養配偶者の情報が、外れたよというのは、パートナーの方の例えば健康保険組合、健保の方のデータでは外れた届けが出てくるというわけですが、それが出たよということがわかって、きちっと働きかけていけるようにするためには、これもやはりシステム的な手当てが必要。

 具体的に、生活状況が変わっていく中で不整合になるという状況をシステム的に把握できるようにしていこう、そういった改修を行って、進めてまいりたいと考えております。

伊東(信)委員 どうしても、マイナンバーを含めて、システムとおっしゃられた場合、そういった意味でのテクニカルなことというか、デジタル的なことをやはり私は想像してしまいまして、そのことに期待しての質問でございました。

 今回の事業者番号に関して、そういったチェックはできるのか。このことはやはり、こういったITシステムを強化すれば強化するほど、個人情報の管理との兼ね合いというのがあるとは思うので、多分、これ以上の質問になると、単なる私の興味の問題になってしまいますので。

 ただ、次のこれに対する対応の質問をする前に、もし、見込みとしていかなる数字が解消できるのか、わかっていれば、お教えください。わかっていなければ、そういった質問に切りかえます。

高倉政府参考人 もし取り違えておりましたら恐縮でございますけれども、先ほど申し上げましたシステム改修を行いました上で、それを実際運用していく、そこで把握した方々に関しては、全てこれは勧奨を行って、漏れがないようにしてまいりたい、このように考えております。

伊東(信)委員 一〇〇%外しているわけではないです、お答えとしては。

 ただ、つまり、強制力はないわけで、残った、いわゆる空雇用期間とされている過去に第三号だった方々に対してなんですけれども、では、今の現行システムでは、保険料を払わなければ年金は支給しないよ、こういったことに、やはり最終的になってしまうのでしょうか。

香取政府参考人 今のお話で、記録の訂正をする。今ちょっと管理審議官から御説明しましたが、年金機構の中で記録をぶつけるということとあわせて、例えば二号の方が共済であった場合というのは、今はデータはお願いしてもらっている状態になりますので、これは今回、制度的に把握できる。それから、健保組合からもとれるということで、基本的には、全部ぶつけて見つける。

 見つけますと、勧奨いたします。勧奨して届け出が来ないと、今度の制度改正で、四カ月を過ぎると職権で処理をするということができるようにします。処理をしますと、そこは不整合の記録が解消されますので、その部分は未納ということになって、その状態で裁定されますと、その分、年金額が下がるという構造になります。

 今回、その部分については、十年間さかのぼって追納をしていただくという形で、事後的に年金の保険料を納めていただいて給付に資する、あるいは、その期間穴があいたことで二十五年に満たない、あるいは十年に満たないという方については、いわゆる空期間扱いということで、資格期間としては認めて年金をお出しするという形で対応したいというのが法案の内容でございます。

伊東(信)委員 今の一連の質問の趣旨の中に、やはり、専業主婦に徹する、子育てに徹するという女性の方の立場を考慮した上での御質問であります。

 しかるに、一方、多様なる価値観、多様なる立場の方がおられますから、ちょっと話をかえて、この第三号という立場に対して、やはり共働き世帯を含めての不公平感ということがございます。

 女性の就労も政府としては促したい。だけれども、子供が安心して、いろいろな考え方がございますので、私の考え方が正しいというわけじゃありません、そのためにおうちにはお母さんがいるべきだという考え方もありまして、子育てという面で、そういったことも考えなければいけない。

 いずれにしても、不公平感というのはなかなか是正はできないと思いますけれども、八月二十一日にまたこういった議論も出るかもしれないですけれども、こういった制度自体の見直しに対して、現時点で何か議論とかは出ているでしょうか。

田村国務大臣 三号被保険者制度ですけれども、今委員がおっしゃられましたとおり、いろいろな審議会で年金等々を議論いただく中で、これに関しては働く女性の方々との不公平感があるんじゃないかというような御議論をいただいて、何度かいろいろな御提案もいただいておるわけです。

 一方で、この制度は非常によくできていまして、世帯という考え方になっているんですが、例えばその世帯で八十万円の収入があった。例えば、男性が一人で働いて、女性が三号被保険者。そうすると、八十万円の保険料があって、八十万円に対しての旦那さんというか御主人、男性の厚生年金と、それから、三号被保険者ですから奥さんの国民年金と、合わせた金額がありますよ、世帯の。保険料は旦那さんだけですけれども、保険料とそれから世帯の合わせた年金の受給額。これと、例えば同じ八十万で、四十万ずつの収入であった、共働きの御家庭の二人合わせた保険料と二人の厚生年金の合算額、これが同じになるように制度設計されております。

 でありますから、これを十六年の改正のときに共同負担規定という形で盛り込みまして、もともとそうなっていたんですけれども、結果的に、世帯で見れば、二人の収入もしくは一人の収入、収入に対して同じ保険料であって、また、二人がもらえる年金の給付額が一緒である、二分二乗に近い考え方でございますので、例えば離婚をした場合に、これは適当な例かどうかわかりませんけれども、二人でともに生活していた相手の年金は、これを折半するというような方向になるわけでございます。そういうふうな見方からすれば、男女とも非常に公平な制度でもあるというふうな中身になっておるわけでございます。

 そういうことも踏まえて、いろいろな議論の中においてはこの第三号被保険者の話は出てくるわけでございまして、これからもそういうような中身を踏まえた上で議論をさせていただきたい、このように思っております。

伊東(信)委員 ありがとうございます。

 アングルによって、見方によって、やはり、これは公平、これは不公平というのは必ず出てきますし、そもそも、社会保障、全ての皆さんに公平というのは制度上なかなか難しいかもしれないんですけれども、そのことに向けて御議論いただくというように受けとめていますので。

 大臣のよくできた制度でという言葉に、基本的には異論はないんですよ。積み重ね積み重ね、この歴史を見てきましたので。もちろん、問題というのはやはり、課長通達によってという、そういったことになりますから、もう時間もあれなので、そのことに対しては余り意味のある質疑にならないので、このことはしませんけれども。

 では、余りよくできていない制度だと私が感じるのが、残念ながら厚生年金基金なんですね。

 この厚生年金基金に関して、今回の法案措置がございましたけれども、一割の代行割れしていない部分を残すというところに関しての、先ほど答弁の中でも聞いていたんですけれども、残す企業の数、もしくは基金の数、もしくは、わかっていればその職種というのをお教えいただければ幸いです。

香取政府参考人 御答弁申し上げます。

 二十三年度決算で健全性の基準、私どもが今度お示しした基準を満たして、かつ、代行返上等を行っていないという基金は、四十八ございます。そのうち三十七は、いわゆる単独型あるいはグループ企業で構成されているという、いわゆる総合型とは違うタイプのものでございます。

 この四十八の業種を見ますと、機械・金属製造業が十一基金、サービス業が五基金、それから三番目が金融業ということで、これが四基金、大体そういう構成になってございます。

伊東(信)委員 私、開業医ですけれども、いわゆる企業経営もしていまして、具体的な名前は言いませんけれども、経済の会にも入っておりまして、この一割の方々と、簡単に言うと友人なんですね。

 その方々とお話しして常々思うのは、こういった方々も、今の時代はわからないからということと、新たなるイノベーションとか企業努力によって残っているわけなんですけれども、確かに、代行割れという基準でいえば、この基金制度に対しての評価なのかもしれないですけれども、少し趣旨は違うかもしれないですけれども、その企業の将来性、もしくは安定性、もしくは企業経営に対する評価とはまた違うものだと思うんですね。

 そういった観点で、現時点で代行割れしないけれども、例えば、サービス業というのもかなり幅が広いでしょうし、金融業というのは、金融業の方には失礼かもしれないですけれども、アベノミクスの政策が成功したとしても、それが実質的に効果としてあらわれるにはやはり期間があります。

 ですので、やはり、この一割が果たして本当に健全かどうかということも、さらに検証する必要がある。できればこの基金制度、時間的にもあれなので、登壇したときの天下りとかそういったことはお聞きしません。ただ、そういったことをのけて、この代行割れを一割残すということに関して、私が申し上げた、本当に安定しているかどうかをもう一度検証するという考え方に基づき、この基金制度を廃止するという考え方に対してどう思われているか、どういう考え方があるか、御答弁いただければ幸いです。

田村国務大臣 まず、もう新しいものはつくらないということが前提の上で、そもそも、存続する基金、これはもう本則ではなくて、本則以外に書き込むわけであります。では、なぜ存続するものを認めるかというと、ルールにのっとってしっかり国がつくった制度でやってこられたところを、ここを強制的にやめろということが本当に言えるかどうか、ここは我々も悩みました。

 といいますのは、スケールメリットで、運用を約束した利回りを乗せて支給するわけですから、もし代行部分がなくなれば、スケールメリットが出なければ、約束した金額を受給者に保障できなくなる可能性がある。国がつくった制度で、今もちゃんとルールを守っているのにそれをやめろと言うのは、やはりこれはなかなか厳しいかなという判断のもとで、残る道もこれはつくったわけであります。

 一方で、三階部分が十分にまだないけれども、一・五倍ある基準で何で残すんだというのは、これは実のところ、運用ですからいろいろな動きはあると思いますが、今までの経験則上、大体一・五倍持っていれば、サブプライムローンの問題が起こってもリーマン・ショックが起こっても、そこまでは割り込まなかった、そういう経験則があるわけでございますから、そこで、一・五という基準を設けました。

 それから、一・五はなくても、そもそも三階部分を十分に持っているところ、こういうところは大丈夫なのかと言われますが、そもそも十分に持っていますからギャンブルはしないですよね、真っ当に運用利回りすればこの三階部分を確保できるわけですから。それが割れていれば、ちょっと利回りを稼がなきゃいけないなというので、運用利回りのいいものに手を出すわけでありますけれども。ですから、そこは堅実であろうということで、三階部分、ルールどおりやっておられるわけでありますから、ここも残る道をつくったわけであります。

 ただ、そうはそうでありながら、毎年検証します。そして、このルールを逸脱といいますか下回った場合には、その場合には当然、第三者委員会といろいろと話をしながら解散命令という話になってくるわけでありますから、もう代行割れは許さないということが我々の前提であります。

 もし仮に代行割れが起こったとしても、それは今度は企業から、もうすぐに処置しますから、その分もいただくというわけでございまして、厚生年金には穴をあけないということが前提で、今回の法案を出させていただいておるわけでございます。委員がおっしゃられましたとおり、もう厚生年金に穴があくということは絶対に起こさせないというつもりでの法案だということで、御理解をいただければありがたいというふうに思います。

伊東(信)委員 ありがとうございます。

 いろいろ御質問させていただきました。現行制度を守る、守らない、修正する、修正しないというのは、各党間、いろいろ御意見、議論があると思いますし、与党の中での議論も重ねていると思いますけれども、例えば、国民目線で、これはやはり現行がそぐわないというときは、思い切った改革も必要ではないか。アベノミクスの三本の矢の中に、金融改革の上に、大胆な金融改革という、大胆なという言葉もついているので、それがもし拡大的に伸びていって、それが国民の利益を守るものであればということを結びとしまして、私の質問を終わらせていただきたいと思います。

松本委員長 この際、休憩いたします。

    午後零時五分休憩

     ――――◇―――――

    午後二時五十三分開議

松本委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。新原秀人君。

新原委員 ありがとうございます。

 それでは、引き続き、日本維新の会、新原秀人、質問させていただきます。

 まずは、今回の改正について、民主党案ということも出ておりますので、その辺の確認をさせていただきたいと思います。

 厚生年金基金代行割れ問題、そして第三号被保険者の記録不整合問題、それ自体について、政府の方向性で私としては何ら問題ないような気がいたします。まだ、党としては今話し合っている途中ですけれども、私としては、そういった方向でどうかなと思っております。

 しかし、民主党案では、厚生年金基金代行割れの問題、即刻全て強制廃止するということになっております。

 そういった案と政府・与党案と、どういった点の利点と、言ってみたら違いがあるのか、政府側の意見としてお聞きしたいと思います。

田村国務大臣 午前中、伊東委員の御質問にもお答えした部分でありますけれども、そもそも、国が制度として厚生年金基金制度というのをつくりました。

 その中において、ルールどおりにやってこられ、一定の財政の安定性がある基金、こういう基金が、仮に制度を突然やめたといって全部廃止ということになった場合に、そもそも、今受給をされておられる方々は、一定の約束において受給する金額が決まっておるわけであります。一方で、代行部分とそれから上乗せ部分、この二つで運用している、言うなればスケールメリットで運用利回りを出されておられる、そういう基金もあられるわけでございまして、仮に代行部分を全て強制的に返上ということになって、結果、三階部分だけで運用ということになれば、スケールメリットがきかない分だけ運用利回りが上がってこない、そういう可能性もあるわけでございます。

 そういうことを考えた場合に、ルールどおりにやっておられて財政的に健全だと思われる、そんな基金までも強制的に廃止をさせる、解散をさせるということは、やはりこれは行政として無責任な行動になるのではないかということで、一定のルールのもとにおいて、財政的にこれならば大丈夫だというような基金に関しましては存続の道を残した。

 ただ、一方で、もう新しい基金はつくらせないわけでありますし、基本的には解散に向かって、特例解散等々をお願いしながら解散を奨励していくわけでございますから、この基金制度というものはだんだんなくなっていくであろうというふうに思っております。

 なお、この五年後以降、全体的にどれぐらいの資産を持っていれば存続が可能かということに関しましては、代行部分の一・五倍を持っておるという一つの基準、これをこの中に盛り込ませていただいております。

 これはなぜかというと、仮にこれだけ持っておれば、今まで、リーマン・ショック、それからその前のサブプライムローンの問題、こういうときにも、一、二年は代行割れまで行かずに十分にもっておれたということでございますから、一・五倍、この代行部分に関して持っておれば、そのときにはまあまあ一年で急に代行割れすることはないでありましょうから。

 もし仮に一・五を割った場合には、今度は、第三者委員会等々に諮りながら、解散自体も含めて、これは強制的な解散でありますけれども、命令も含めてこれは対応していくわけでございますから、そういう意味では、財政的な問題というもの、代行割れが将来に向かって起こるのではないかというような、そういう危惧というものはこの部分で担保をさせていただいておる、このようなことでございます。

    〔委員長退席、西川(京)委員長代理着席〕

新原委員 ありがとうございます。私も、そのように、自立するところは自立していけばいいというふうに思っています。

 解散するときに、株価によって全然解散金額が違うということなので、たまたま今株価がいいので、それこそ、やめるんだったら今ですよと、言い方はちょっと悪いですけれども、今やめた方が言ってみればリスクは少ないわけなので、そういったことも政府側からやはりちょっと勧めて、組合の方にも、実際向こうが選ぶことですけれども、今の時期でしたらこの金額でというふうな、勧めるというか勧奨するみたいなことはされないんですか。

田村国務大臣 この法律の前身は民主党政権のときに骨格をおつくりいただいてきたわけで、若干、中において、存続の部分に関しては違っておるわけでありますけれども、決して、今のような株高の状況を予想しておったかどうかというのは別であるわけでありますが、しかし、現行、非常に株が上がり、また円が安くなっております、結果的に。

 すると、海外での通貨建てでの資産もこれは上がっておるわけでございますから、そういう意味では外債等も含めて非常に好調な状況であるわけでございますから、そういう意味からいたしますと、今解散をするには、非常に財政状況的には傷が浅くて済むという状況になっております。

 実は、各基金、お話をお聞かせいただきますと、非常に今解散をするのにいい環境になりつつあるということでございまして、この法律が成立をすればなるべく早く解散に向かった手続に入りたいとおっしゃっておられる、そういう基金もたくさんございます。

 いずれにいたしましても、我々も、解散をしていただくことが基本的な考え方のもとにございますので、そのような形で我々もいろいろと御助言をさせていただきたい、このように思っております。

新原委員 ありがとうございます。

 本当に、政府のリスクといいますか、企業の年金受給者の将来的なリスクも含めて、そういった時期をちょうど見計らって、積極的にやるところはやっていただいて、自立するところは自立するような形でやっていただければいいのかなと思っております。

 次に、第三号被保険者の記録不整合問題ということで、このような論点といいますか、今回もこのように出てきましたけれども、そのような問題が、何かこう、ぱらぱらぱらぱらと、一気に出てくるのではなくて、何か調べていたらこういうのが出てきたというふうなことなんです。今回、改正で、こういったことは当然なことなので何ら反対する気はありませんけれども、このような、何か別の制度の矛盾なり、見過ごされていたりとか、そういう可能性は今のところはもうないんですかね。まあ、ないから出ていないんだと思うんですけれども。

 そういった形で、こういったことは非常に国民の方々なりに対してやはり不信とかを生みますので、今後も、できるだけ記録問題も調べていただいて、そういったことが見つかったら、できるだけ早急に対応していただきたい。今後こういったことがないようにということを述べまして、これは要望という形にしておきます。

 根本的にきょう私が聞きたいのは、年金ということで、資料三にありますように、年金自身がもともと、結局、五十五、六十、六十五と上がってきたわけなんです。年金の歴史というのは、まず五十五歳で始まりまして、一九五〇年から一九七三年にかけて六十歳まで引き上げられたということで、二十三年間かかっていますね。そして、一九八五年からずっと、六十から六十五に上げられてきたということですけれども、過去の、この制度がつくられたとき、五十五歳から六十歳に上げるというふうに決められるころの平均余命というのが大体六十五歳ぐらいなんですよね。つまり、引退、いわゆる年金をもらえるのが大体平均で十年ぐらいというふうに制度をもともと設計されているということなんです。

 そして今、どんどん医療が進んで、平均余命というか寿命がどんどん延びてきて、今のところでは、八十歳、八十五歳、大体そのような形になってきております。つまり、これから十歳を引くと、もともと年金を払うのが十年という制度と考えた場合、年金の受給年齢というのは、今後、やはり引き上げていくべきではないかなと。もちろん、短期では無理なので、中長期的にですね。

 だから、ちょうど八十から十を引くと七十歳ということになりますので、今度、今、六十から六十五になって、この年金制度が変わったと同時に検討して、周知期間というものがありますから、六十五から七十ということをやはりもっと積極的に考えていかなければならないと私は思います。

 先日、健康診断をしているあるお医者さんとお話ししましたら、昔の六十五歳と今の七十五歳は、体力的にも、体の病気、いわゆる罹患率についても、ほとんど一緒だということですね。つまり、それだけ皆さん元気になってきている。

 だから、僕は元来言っていますけれども、六十代はもう高齢者ではないから、言葉なので、六十歳で高齢者という時代はもう終わった。今、六十五まで働けるような制度にもなって、時代にもなってきているので、やはり少なくとも高齢者というのは、人口の割合でいうと、まさに七十五歳の後期高齢者ぐらいが、本来の、昔のいわゆる高齢者という定義ができたころの高齢者ぐらいの人口比率であり、しかも、国民の方々の、病気なり、元気さ、体力なりがそうなっているということなので、つまり、高齢者というくくりを変えれば高齢化という言葉も変わってくるわけですよね。

 だから、そういったお考えなり、そういったことを厚労省としてはどのようにお考えになっているのか、ちょっとお聞きしたいと思います。

    〔西川(京)委員長代理退席、委員長着席〕

桝屋副大臣 午前中にもあった議論でありますが、今委員から幾つかのお話をいただきましたが、一つ、最初に年金の支給開始年齢のお話があったかと思います。

 年金の支給開始年齢、これも多くの国民が実は大変な関心をお持ちなわけであります。労働力人口の減少が見込まれる中で、社会経済全体の活力をいかに維持するか。あるいは、個々人にとっても、先生お話がありましたように平均寿命が伸長をしている、老後の期間が長くなる中で、働く期間とのバランス、これをどのようにとっていくのかという観点から考えていかなきゃいかぬと思っております。この点、諸外国でも同様の議論がなされているわけであります。

 一方、我が国では、先生からもお話がございましたが、ただいま、支給開始年齢については、二〇二五年までかけて厚生年金の支給開始年齢を六十五歳に引き上げている途上でございます。多くのお年寄りの皆さんが、あるいは受給開始年齢になった方々が、やっと年金受給にたどり着いたという中で、委員おっしゃるように、さらに先へというのは、多くの国民が大変な関心をお持ちのことでもございますので。

 それにもう一点、高齢者という言葉、この意味も変わってくるのではないか、このようにいみじくもおっしゃっていただきましたが、他制度の動向等も十分考慮しながら、委員おっしゃったように、中長期的な課題として支給開始年齢は検討していかなきゃいかぬ問題だと思っております。

 それからもう一点、そういう意味では、高齢という年齢で区切るのではなくて、もう少し別の考え方もあっていいんじゃないか、あるいは後期高齢者というお話もございました。

 この点についても、人生経験が豊富な高齢者の方々は、我が国、そして地域社会の宝でもあります。年齢にかかわらず、いつまでも生きがいを持って暮らせることが非常に重要だと思っているわけであります。

 御指摘のとおり、高齢者の人口に占める割合は年々増加しておりまして、午前中も議論がありましたが、元気な高齢者も大変多くなっております。今後、社会保障制度の持続可能性を確保する、こういう観点から、あるいは経済の活力を維持していくためにも、元気な高齢者に社会保障の支え手になっていただくという考え方が非常に重要だろうと思っております。

 先生、大事なことは、高齢者の定義ということの議論も大事でございますが、やはり厚労省としては、本当に支援を必要とされる高齢者の方々には適切なサービスを提供する、そして、元気な高齢者には生きがいを持って働いていただく、社会保障の支え手となっていただく、こうしたことができるような社会をしっかり考えていきたい。年金についてもいろいろお話がございましたが、中には、年金を繰り上げて、早くもらいたいという方もあるのも事実でありますので。

 ともかく、生涯現役社会の実現に向けて、厚労省としてはしっかり取り組みを進めていきたいと考えている次第でございます。

新原委員 ありがとうございます。

 そうですね、やはり六十歳といっても、それぞれ、働いてきたり生きてきた人生によって、言ってみたら体力なりは違うと思うんですね。

 だから、一律に、まあ六十五スタートというのはいいと思うんですよね、ただ、元気な六十歳が働き出したときに、今、厚生年金は掛けられるようになっていますけれども、国民年金はもうストップなんですよね、六十代は掛けられない。だから、これは、どちらかというと働いている日本人というのは真面目な方が多いので、働いている間は年金でも掛けておきたいという方々が多いと思うんですね。

 私なりに試算をしてみましたら、例えば、国民年金を満額、全部掛けるということになって、現行ならば、大体、月が六万五千五百四十一円ぐらいになります。

 これを六十五歳まで掛けるというふうになると、七万三千七百三十四円ですね。だから、これが今で言うと生活保護並みになる。ちょっと今、いわゆる逆転現象が起きていますので。

 これを今度、例えば六十歳まで掛けて、支払い開始を七十歳までおくらす、だから、六十歳まで掛けて七十からもらうとなると、今度は九万三千円になります。

 そして、僕はこれが一番いいと思うんですけれども、六十五歳まで掛けて七十歳からもらうと、十万四千円もらえるんです。

 だから、僕は、いろいろな地域を回っていて、高齢者の方とお話しするときに、国民年金は安い、年金で生活はできない、だから、どうせだったら、それだったら、もうちょっと掛けさせてもらって、長い間、六十五でも掛けて、もらうのを七十にして、それの方が私としては将来、年金生活としては計画を立てやすいという意見もあります。

 昔のように、手で計算して一人一人の年金をという時代は終わりましたので、コンピューターで何らかの形でそういうシステムをつくれば、一年ごとというのは難しいと思いますけれども、六十五まで掛けられるような国民年金、支給年齢は六十五からでもいいんですけれども、六十五まで掛けられるようにすれば、政府としても、年金の基金としても、財源としてもありがたいので、まずそれを考えていただければ、かなりの国民の方がそれに協力していただけるんじゃないかと思います。

 そういった点について、今後、支給年齢の前に、今度、掛ける加入年齢を国民年金に対して上げていくという選択肢はどのように考えられていますか。

田村国務大臣 先ほどの委員のお話をお聞かせいただいておりまして、どこかで読んだ論文だと思いますけれども、一九九二年の六十五歳と現在の七十五歳と歩行速度が一緒である、そういう論文か何かを読んだ覚えがあります。それぐらい今の高齢者の方々はお元気であるわけでありまして、生涯現役社会を我々も、厚生労働省も目指して、いろいろな施策を今進めておるわけであります。

 委員がおっしゃられました支給開始年齢の引き下げといいますか、繰り下げといいますか、これは今でもできるんですよね。ですから、七十歳までならできるので、実は、自由民主党として政権公約の中にもたしか、そういうのは今でもできますけれども、選択できるんですよということをもっとPRして、場合によっては七十から七十五までさらに引き下げるということもあると思います。

 全体の中で、これは年金財政自体はそれによって毀損するわけではございません。御本人がそれまで働いて現役でおられれば、後、手厚い基礎年金、国民年金がもらえるわけでありますから、そういうものは一つの方法論であるなというふうに私も個人的に思っております。

 そして、さらに、掛金を、今四十年と決まっておりますけれども、これを四十五年、六十五歳まで国民年金の掛金をふやせば、さらに年金が手厚くなるじゃないかというような御提案をいただきました。

 これからいろいろな検討をしていくわけでありますけれども、非常に傾聴に値する御意見だというふうに思います。検討の中の参考にさせていただきたいというふうに思います。

新原委員 諸外国の状況を見てみますと、今、アメリカは六十六歳なんですね、支給開始年齢が。そして二〇二七年までに六十七歳まで引き上げる。イギリスも、今、男性六十五歳、女性六十なんですけれども、女性は二〇二〇年までに六十五歳に引き上げ、さらに、二〇二四年から四六年にかけて男女ともに六十五から六十八歳まで引き上げということで、絶対そんな五年や十年では無理なんですよね、どこの国も。それはもう当然のことなんです、そうでないと、それぞれ人生設計が変わってくるので。

 そうなんですけれども、ただ、気になるのが、それを決めた決定時期なんですよね。アメリカでは、そのことを一九八三年にもう既に決めているんです。イギリスは二〇〇七年にこのことを既に決めているんですね。

 世界で一番高齢化率が高い日本が、そういったこともやはり積極的に、将来、二十年後、三十年後のことを話し合って決めていかなければ、諸外国は日本の平均寿命よりも五歳も十歳も、十歳は若くないですけれども、五歳以上若い中、このようなことを積極的に決めてきている。

 だから、日本も、やはりそういったことを先送りにせずに、二十年後、三十年後の話をしていかなければ、一度そういった話が出て野党の反発があって消えたとお聞きしますけれども、やはり野党も与党も一緒になって、この財源をどうしていくかということを考えていくべきだと思います。これは要望ということで。

 その中で、日本維新の会としては、結局、長期的には積立方式の方がいいんじゃないかということです。大体七百五十兆円ぐらいが今、いわゆる本来あるべき年金全体としては枯渇しているということで、結局それを積立方式にしたらどうするんだという問題はありますけれども、我々としては、JR、国鉄と一緒ですね。

 その七百五十はまた別の清算方式において、これは離して、積立方式でやっていくことでないと、この七百五十兆円の借金がずっと繰り返し繰り返し来ている限り、我々より若い孫や子供の世代はそれをずっと背負っていくということになりますので。だから、それは、何らか別の清算方式を考えながらやっていかなければならない方法もあるのではないかなとは思っています。

 そういった意味で、積立方式ということに対して、その辺は政府としてはどのように考えられていますか。

丸川大臣政務官 賦課方式から積立方式への移行については、ちょうどその移行する期間、みずからの年金を積み立てつつ、先輩方、つまり現在の受給者に対しての給付に係る費用も支払うという世代が出てくる。つまり、二重の負担が生じる世代が出てくるわけでございまして、これをどうするのかという点。それからまた、積み立てるということは、まさに数百兆規模の巨額な積立金になるわけでございますけれども、これを保有して、しかも財政運営を行うことで、より市場の変動のリスクにさらされるという点。さらに、移行することによって事務的にも時間的にも非常にコストがかかるという点など、さまざまな課題があるということを考えております。

 そして、現行の年金制度については、賦課方式を基本とした財政運営の仕組みを定期的に検証していく、財政検証でございますが、これをやることによって、長期的には、給付と負担の均衡を図りながら持続的に運営していくという仕組みをとっておりますので、そのような考えでおります。

 よろしくお願いいたします。

新原委員 ありがとうございます。

 積立方式については、もう時間がありませんので、きょうは提案といいますか、要望にしておきますけれども、もともと積立方式だったんですよね、年金というのは。昭和二十三年から賦課方式に変わっているわけですね。

 それは、積立方式がいわゆるだめになった、もたないということで賦課方式になっている。つまり、積立方式の方法もあったわけなので、積立方式にする場合には、よほど制度を考えていかなければ、また同じように破綻してしまうとだめなので。

 だから、私ども、今後、積立方式という形で日本維新の会は提案していきたいと思いますので、それなりの制度設計をちゃんとさせていただいて、また質問、提案させていただきたいと思います。

 本日は、これで終わらせていただきます。ありがとうございます。

松本委員長 次に、足立康史君。

足立委員 日本維新の会の足立康史でございます。

 午前中から、各党、さまざまな観点から議論されておりますので、もう細かいところというか、今回の法案の細かいところについての質疑を繰り返すつもりはございませんが、私、そもそも、代行割れが生じて厚生年金が毀損している、この責任は、やはり長らく政権の座にあった自民党にある、こう思っています。

 この一連の制度に係る歴史を見ますと、ずっともう十数年来、議論があって、ただ、やはり景況というか株価というか、そういったものに翻弄されながら、またあるいは、制度設計についても判断ミスが幾つかあって、つくった制度が活用されない、そういったことを繰り返してきて今に至ったわけでございます。

 こういう代行割れの責任という観点で、私は今、自民党と申し上げましたが、今、自民党が政権にあるわけでございますので、田村大臣に、この責任について御答弁をお願いします。

田村国務大臣 午前中の質疑でも、どういう経緯で基金ができ上がってきて、そして、なぜこのような、財政状況が非常に厳しい中で、積立金の運用がうまくいかなかったかというようなお話はさせていただいたわけでありますけれども、だんだんだんだん悪くなってくる中で手をこまねいていたわけでもないわけであります。

 二〇〇〇年代初頭から財政悪化をする基金がふえてきたということがございまして、例えば、指定基金制度を導入いたしまして、財政の再建を図るようないろいろな指導をしてまいったりでありますとか、解散に向かって特例解散制度というものを導入いたしまして、これは途中で中身は若干変えましたけれども、解散を自主的にされるところに関しましては、解散しやすい、そういう環境も整えてきたわけであります。

 その一連の流れの中において、今回、さらに大胆に解散を促していくような、そういうような法律を提出させていただいたわけでございますから、全く手をこまねいていたわけではないんです。

 ただ、一方で、やはり年金の受給者からしてみれば、年金権というものは大変重いものがございます。そういう意味からいたしますと、将来の期待権もそうなんですけれども、一定の、特に退職金見合いの部分もございます、そういうものをしっかりと確保していくという意味からしますと、制度を変える場合に一定の制約があった。

 でありますから、途中で制度を変える中において、なかなかそれぞれの基金の中において意識の統一、意思の統一というものができない中において、いろいろなツールは用意をしてきたわけでありますけれども、それを利用していただけなかったということはあるわけでございまして、今回は、そういうことも含めて、この制度の中におきまして改正をさせていただいておるということでございます。

足立委員 今、田村大臣がおっしゃった、手をこまねいていたのではないというのはまさにそのとおりだと思うんですけれども、逆に、まさにいろいろなことをやってきたんです。

 いろいろなこと、例えば特例解散制度、これについても、ずっと努力してきたけれども、私は、例えばそれを再開した後も四基金しか利用しなかった、これは、当時その特例制度に不備があったからだと思うんですね。その点、どうですか。

田村国務大臣 解散するにも、やはり基金の中で御議論をいただかなければならないわけでありますし、その中において、解散を決定する、意思の決定プロセス、そこに一定程度の制約があるといいますか、厳しい条件があるわけでありまして、それがなかなかこの特例解散制度の導入という状況にはなってこなかった。

 では、今回どうなんだということはあるんですが、若干制度改正したところもあるんですけれども、もう今、限界にいよいよ来ておられるということで、それぞれの基金も今解散をしないともう解散する時期がないではないかというような御認識をお持ちいただく中におきましてこの法案を待っておられる、そういう基金が今多いことも確かでございますから、この法律案を早急にお通しいただく中において、そのような声にお応えいただけるような環境をおつくりいただきたいということで、お願いをさせていただいておる次第であります。

足立委員 大臣、この点ちょっとこだわりますが、政権与党にあった自民党、あるいは当時の政権、私はやはり責任があると思うんですね。既に厚生年金については毀損しているわけです。やはり、過去のそういった取り組みについて総括せずにこの法案を制定していくというのは私は課題が残る、そう思っています。

 そうした意味で、もう少し言えば、この十数年の歴史において、私は、今回出ているような法案が、あるいは、後ほどちょっと質問しますが、今回民主党が提案をされているもうちょっと過激なというか、十年で全廃をする、こういうことも含めて、この制度のあり方については、それこそ一九八〇年代後半とは言わないが、九〇年代には本来検討をして合意形成し、実施をしてもおかしくない、そういう構造変化が日本の経済と社会にはあった、こう思っているんです。

 この構造変化に対応し切れなかった当時の政権与党に責任があると改めて問いたいと思いますが、いかがでしょうか。

田村国務大臣 先ほど申し上げましたとおり、いろいろなものを導入いたしました。例えば、運用にキャッシュバランスプランという新しい手法を入れまして、今までのように高い利回りを入れなくても対応できるような、そういうものも入れたりなんかもしました。

 しかし一方で、そういうものを決定するのに、代議員会での数というものが非常に制約が高かった、それで決まっていかなかった。特例解散もそうであります。四分の三の代議員の方々が賛成をしないと制度改正ができない、規約が変えられないという中において、それぞれ危機感を持っておられた方々はおられましたけれども、それが総意になっていかなかった。

 今回はそれを三分の二。これも高いんです、四分の三を三分の二でありますから、本来は二分の一以下でもできるというような話の方がいいのかもわかりませんけれども、そこはやはり、それぞれの方々の年金、言うなれば退職金見合いの部分にかかわってくる問題でありますから、そこはそこまでは下げられなかったんです。しかし、さすがに三分の二でも、これはもうそれぞれ考えを統一して解散をしていこうというような基金がふえてきたということは、基金全体としての意識も変わってきておられるということもあるんだと思います。

 ただ、そうはいいながらも、言われますとおり、もっと早くいろいろなことができたのではないのかという意味からすれば、政治は結果責任でございますので、結果責任という意味からしますと、このような代行割れの可能性の多い基金をたくさん今現在つくっておるという意味では、途中、我々自民党政権も大きく関与をしてきておりますから、一定の責任はあるというふうに思っております。

足立委員 まさに、今、大臣の口から言っていただいたその結果責任、私もまさに今申し上げようと思っていたところであります。

 この代行割れの責任は、一定程度とおっしゃいましたけれども、当時の政権与党に私はあると思う。今回の制度、今回の法案がもし適当なのであれば、同じような措置を当時講じることもできたはずだし、大臣は環境が整ってきたということかと思いますが、また、逆に言えば、今回の措置が十分かどうかという課題も、私は、依然として、少なくともこの委員会で議論をしておく必要があると思っています。

 そうした観点からお聞きしたいのは、今、あわせて民主党案が審議に付されているわけでございますが、民主党案は十年で全廃、この案についての御評価をお聞かせください。

田村国務大臣 そういうような意味で、この最低責任準備金、言うなれば代行部分、これが毀損をすれば厚生年金本体に影響が出てくるわけでありますから、民主党さんのお考えは、そういうものを全く遮断してしまおうと。今でもあるんですけれども、既に穴をあけている部分がありますから、全く影響がないというわけではないんですが、もうこれ以上影響を出させないでおこうというのは、全てを廃止すれば現行の中においてこれ以上穴は絶対に広がらないというお考えであったんだというふうに思います。

 これはこれで一つの考え方だというふうには思いますが、一方で、国がつくった制度の中で、その制度に合わせてしっかりと運営をしていただいて、十分に積立金もお持ちのところ、こういうところに関しては、先ほど来お話ししておりますけれども、一定の退職金見合いの三階部分の年金をもらわれておる方々がおられる。こういう方々は、スケールメリットで基金が運用をして、そして利回りを出してお支払いをしておられるわけでありますから、その大きな部分を担っておる代行部分を取り上げて、上の薄い三階部分だけで運用すれば、十分に約束しただけの利回りが出せるかどうかわからない。それはスケールメリットの部分があるんだと思います。

 そうなったときに、制度をちゃんと守ってきたところを強制的に退出させるということが、果たして政治の場において許されるのかどうか、また、行政として許されるのかどうか、そういうことを判断した上で、我々は、やはりちゃんとやっているところ、もしくは、破綻、そもそも代行割れをする可能性が一年では少ないところ、そういうところに関しては、存続の道をつくろうではないか。

 ただし、一方で、我々がつくったルールを逸脱したところに関しては、これはもう解散命令をかけて、毀損をしない中で解散をしていただくというようなルールをこの中に盛り込ませていただいたということでございますので、我々は、残念ながら民主党さんの案は、一つの考え方かもわかりませんけれども、強制的に退出をするというところはいかがなものかということでございまして、存続の道を若干なりとも残したということでございます。

足立委員 民主党の案は、私、横で拝見していて、やはり、ある種の引き続きのリスク、毀損リスクをとにかく断じて避けるんだ、そういう観点からつくられているように思います。

 今のこの政府・与党の案ですと、そういう代行割れが引き続き、この法律によって存続した基金が、将来、代行部分を毀損する可能性はないとお考えでしょうか。私はリスクはあると思いますが、いかがでしょうか。

田村国務大臣 代行部分の一・五、これを一つの基準といたしております。

 それはなぜかというと、今までの過去の例を見て、代行部分の最低準備積立金といいますか、これを一・五持っておれば、あのリーマン・ショックのときでも、それからサブプライムローンの問題が起こったときでも、二年ぐらいで代行割れまで行ってしまうという例はないということから、この高い基準と言ったらいいのかどうかわかりませんけれども、基準をつくらせていただきました。

 そういう意味では、毎年毎年これは検証しますから、仮に運用を失敗しましてこの一・五を割り込んだ場合には、解散命令も含めて我々は厳しい対応をとっていくわけでございますから、それならば、代行部分に食い込むことというのはほぼないのであろう、このように思っております。

 それからもう一点、一・五持っていなくても、一・二だとか三であったとしても、そもそも必要な三階部分を全部持っているところも、実は今回、ちゃんと存続できるようになっているわけであります。

 これは、これこそまさにちゃんと運用しているんだから、なぜそんなものを国が勝手につくった制度の中で潰すんだという御批判をいただくであろうという部分でありますが、これに関しては、本来必要なものを持っているわけでありますから、運用に関しましても、それほどリスクの高いものには多分手をお出しにならないであろう。

 ということから考えますと、やはりここも、一年で急に代行割れまで行くほどの穴をあけることはないであろうということで、もし三階部分が少しでも毀損をすれば、その年に、解散命令も含めて厳しい対応をとっていくわけでございますから、そのような形の中におきまして、リスクというものはかなり削減されておるであろうという認識のもとで、このような制度を提案させていただいたわけでございます。

足立委員 端的に、私個人が委員として感じている印象は、それだけのためにこれだけ複雑な制度をつくるかなというところは、率直なところ、あります。

 今、一・五とかいう数字が出てきて、当面毀損するリスクが限りなく小さいということでしたが、存続をしていけば、将来的にはまたいろいろなリスクが高まっていく、経済状態によっては高まっていく可能性があると思っていまして、民主党案のように、どこかで、例えば十年なら十年と決めて解散を求めるということについては、私は一定の理があると思っています。

 だから、これからよくこの委員会で御審議をいただいて、今の政府・与党案と民主党案というのはやはり何らかの形で折り合わせていく必要がある、これがこの委員会の一つの仕事かな、こういうふうに思っているところでございます。

 今申し上げたような観点で、事前に厚生労働省の事務方の方々とお話をしたときに、今大臣が強制とおっしゃったようなところについて、財産権という観点だと思いますが、訴訟リスクがあるという指摘がある、こういう御議論がございましたが、この点、ちょっと確認をさせてください。

香取政府参考人 この点も繰り返し大臣からも御答弁申し上げておりますが、いわゆる健全基金と言われているものは、まずリーマン・ショッククラスの市場変動があっても代行割れを起こさないような、正直言ってかなり厳しい一・五という基準を設けております。かつ、一・五を下回った場合でも、今の二階、三階部分の積立金は完全に保持をしている。その意味でいうと、年金基金の運営について何ら瑕疵のない基金ということになります。

 そういった基金について、制度全体を今回、基本的には本則から落としますので、制度としてはなくなって、経過的に残す基金になるわけですけれども、その時点において運営上全く問題がないという基金について、いわば強制的に廃止をするということになりますと、二階部分を返上して解散をするか、他の基金に移行するということになりますが、そういったことを強制するという形になります。そうしますと、何がしか不利益な、特に受給者との関係で不利益が生じる可能性があるということになりますと、そこはやはり一定、訴訟のリスクがあるということは否めないのではないか。この点は、専門委員会の議論の中でもそういった御指摘はございました。

 なので、今回は、基本的には制度としては畳んでいくわけですけれども、そういった基金については、ある程度御自身の判断で存続をさせるという道を残す。ただし、大臣からもお話がありましたように、今後二度と、代行割れといいますか、本体に影響を与えるようなリスクは生じさせないということで基準をつくった上で、かつ、実際に今後、運用で問題があれば、もうその時点で基本的には解散命令をかける、そういう条件で存続を認めるという取り扱いにしたということでございます。

足立委員 今、財産権について、ある一面の御指摘をいただいたわけです。

 私は、もう一つ、省内あるいはいろいろな審議会とか会議での議論を全部フォローしていませんが、一般的に考えれば、政策でつくった制度を政策の観点から廃止するということは、一定の事由があれば私は可能だと思うし、いわゆる財産権に対して公共の福祉の観点もあるわけでございます。

 そういう公共の福祉の観点というところから説明すれば、いわゆる財産権の侵害、財産権ということをもって非常に訴訟リスクが大きいということはないという指摘もあったはずなんですが、いかがでしょうか。(発言する者あり)

田村国務大臣 山井議員、御自席に戻られてお話しいただければ。どこで誰がおっしゃっておられるのか、よくわからないので。

 今のお話ですが、確かに公共の福祉との兼ね合いはありますが、そもそも、ここは何ら迷惑をかけない基金ですよね。つまり、代行割れをしているわけでもない、十分な積立金を持っているわけでございますので。

 迷惑をかける場合は、公共の福祉という意味からすれば、それは確かに、それぞれ受給者にしてみれば財産権はあるかもわかりませんが、そもそも制度自体にほころびが生じていて、一方の厚生年金に対して影響を与えるということであれば、これは制度をやめて受給権自体が失われるというのはいたし方ないわけでありますが、そもそも、残す選択ができた上で、残っても悪影響を与えない状況に今ある中において、強制的にそれを解散させるということに関しましては、やはり財産権の問題等々で訴訟リスクがあるというふうに判断をさせていただきました。

足立委員 やはり私は、今、田村大臣の御答弁ですが、若干理解が及びません。

 今でも、まさにこれまでの厚生労働省、厚生省のさまざまな御努力で、代行返上の枠組みはもう完全にできているわけですね。その行き先も、確定拠出、確定給付含めてあるわけでございますので、私は、代行返上を求めること自体が今おっしゃったようなリスクにつながると全く理解できないんです。もう一度お願いします。

田村国務大臣 維新の中でもいろいろな御議論があられる。先ほどは、この方がいいと言われる維新の委員の方もおられたわけでありまして、それぐらい、さまざまな御議論のある点だというふうに思います。

 要は、確かに、今、スケールメリットがなくても運用利回りは十分に確保できるじゃないかという御意見が全くないわけではないんだというふうに思います。かなりの、金融的ないろいろな商品が出てきておりますから、以前から比べれば、スケールメリットだけで運用利回りというものを十分に確保できるというような話ではないのかもわかりませんが、そもそもたてつけがそういう状況になっておられていて、しかも、そういう中において運用利回りを今まで出してきておられるわけですね。

 ですから、もし、それぞれの判断において、もう自分のところで、これは代行返上した方が、三階建てで今と同じだけの運用利回りを十分に確保できるよという基金であるならば、自主的にこれは解散をされていくわけでございます。

 ただ、そうではないということは、やはり、それぞれの御判断の中で、スケールメリットというものに一定の魅力を感じられて基金を運営されておられるわけでございますから、その選択までを奪うということ自体問題があるのではないかということで、存続ということを選択として残したわけでございます。

足立委員 ありがとうございます。

 私がこの点にちょっとこだわっている理由が、おわかりいただけているかと思いますが、まさに今、景気、株価はいいわけでございます。先ほどどなたかおっしゃっていましたように、この経済状況を背景に、傷を浅くしながら解散を促していくというふうに厚生省、厚労省はお考えだと思いますが、一方で、基金あるいは個別の企業の立場からいえば、それは、状況がまた、苦しいところを脱していくわけですから、やはりこれはいけるんじゃないかということで緩む可能性が、それは厚生省の立場と、要は公的な厚生年金を守るという立場と、代行を含めてスケールメリットで運用して従業員の福利に資するようにやっていく、こういう立場とは基本的には相入れない、相入れないというか、基本的には別の方向を向いているんだ、こう思うんですね。

 だから、私は、アベノミクス云々ということで、今こういう株価が高い状態に至っていますが、厚生省、厚労省の思惑どおりにいくのかなと。もちろん、さまざまな仕組みを導入されておられるということですが、やはり、これまで政権与党、自民党がつくってきた政権において繰り返してきた失敗について反省がおありであれば、そういう制度の存続についてはより慎重な御判断があっていいと思うし、そういった意味では、改めて、民主党が提案しているような十年後の全廃も含めた法案の一本化を目指していただいて、ぜひ各党、維新も含めた、社会保障制度ですから、全会派の一致した法案の形に持っていくよう、私もこの委員会で努力をしていきますので、政府・与党の御努力をお願いいたしたいと思います。

 あと三、四分ございますが、きょう、ちょっと法案から離れますが、午前中の討議で、主に民主党の委員の方々から基本的な年金制度についての議論がございました。マクロ経済スライドがわかりにくいとか、私も若干名前にわかりにくさがあるというふうには思いますが、この制度はこの制度でよくできた制度で、改めて何かそこをほじくり返して、そのこと自体を争点にする必要は私はないと思っています。

 むしろ、問題は、そういう高齢者の方々とかの生活を安定させる観点で民主党が政権にあったときに議論された最低保障の議論が、やはり余りに拙い。余りに拙い議論をやっちゃったばっかりに、いわゆる最低保障というと、とんでもない議論かのような誤解を国民に私は与えていると思うんですね。

 民主党が最低保障を言い出した背景には、無年金、低年金という大きな大きな問題があって、そこに手をつけずにびほう策を繰り返す自民党政権へのアンチテーゼがあった。私は、この問題提起自体は正しかったと思うんです。ソリューションを示せなかったのが民主党の問題だ。でも、問題提起は正しいと思う。

 我々維新の会は、また参院選に向けて公約という形で打ち出してまいりますが、世代間の賦課方式にはやはり限界がある。世代内の移転も含めて、端的に言えば、お金のある、資産のある高齢者の方には年金の受け取りはもう諦めていただいて、その分の財源を無年金、低年金の、いわゆる生活保護に行かざるを得ないような方々に回していく、そういう抜本的な制度改革は必要だという立場ですが、こういう世代内移転について、どうお考えでしょうか。

田村国務大臣 世代内移転というか、高齢者の世代内移転、ちょっとよくわからないんですけれども、本来、年金で配って、取るものは税で取るという話で、その上で公的扶助でお配りするというのが、今の委員のお考え方なんだろうなと。

 年金の中でやろうと思うと、非常にこれは難しい問題になってくると思います。約束されたものがもらえない、一方で、約束されていなかったものがもらえるという話でございまして、実は、これは我々も、昨年、三党でいろいろ議論したときに、民主党からこれに近い提案をいただきました。

 ただ、やはり、所得のある人の年金を差っ引くというのは、税の世界だろう、所得があるんだから税で取ればいいじゃないかと。それよりかは、そこはそのままにしておいて、低年金の方々に対して何かやらなきゃいけないから、消費税というものを一つ財源に考えながら、ここは福祉的給付という形で低年金、低所得者の方々に一定の上積みをしていくというような、そんな選択をとらせていただいたわけでございます。

足立委員 今御紹介があった福祉的給付、これがやはり私たちから見るとびほう策だなと。非常に小さい金額で、まあ、評価はいろいろ分かれるかもしれませんが、私は、もっと抜本的な底上げ、無年金、低年金の方にはもっと、まあ、大臣がおっしゃった年金という保険制度の中で措置するのは限界があるかもしれない。一方で、その保険から外に出ると一気に、端的にわかりやすく言うと身ぐるみ剥がされるような、いわゆる生活保護の世界に入っていくわけですね。

 やはり私は、年金という保険制度と、無年金の方がもしお年を召されて生活保護みたいな形になってしまうようなことが実際あるということを考えると、その非常に厳しい条件の生活保護という制度と年金という制度の間に、無年金、低年金の方が、もう少し基礎的な生活力みたいな、あるいは今まで築いてこられたいろいろなものを保持しながら一定の福祉を受けられるような、第二生活保護のようなものを老齢年金と生活保護の間につくるべきだと思っています。

 もう時間が来ましたので終わりますが、最後に大臣、こういう議論についてまたぜひ御指導いただきたいということでお願いいたしたいと思いますので、一言お願いして、質問を終わります。

田村国務大臣 委員のおっしゃられておる視点というのは大変重要なところだと思います。

 今まで、若い労働者の方々に関しては、雇用保険でない方々に対して、求職者支援制度というセーフティーネットを一つつくりました。それから、これも今、議論をこれからさせていただくわけでありますけれども、生活困窮者の方々に対してのいろいろな施策が必要だというふうに思っています。

 一方で、高齢者の方々に対してどうするのか、生活保護の一歩手前の方々で、自立するぎりぎりのところの方々をどうするのか、なかなか難しい問題でありますけれども、社会的な大きな課題であるという認識は持っておりますので、またいい御議論をさせていただければありがたいなというふうに思います。

足立委員 ありがとうございました。

松本委員長 次に、柏倉祐司君。

柏倉委員 よろしくお願いいたします。

 我がみんなの党も本法には賛成をしたいというふうに考えておるんですけれども、民主党さんの修正案も、これはわからないでもないという思いでございます。党内でも意見が分かれているという事実がございまして、もうさんざん午前中から今までに議論はし尽くされてきたかと思いますが、私と、今ちょっと席を外していますが中島委員、我々みんなの党の議員にいま一度その理解を深めさせていただきたいという観点で、繰り返しになりますが、同じ議論が出てもおつき合いをいただきたいと思います。

 本題に入りますけれども、厚生年金基金の九割が解散をするということでございます。四百万から六百万人の受給者に影響があるということですけれども、そもそも、企業年金、これは三階建ての部分ですから、最低生活を保障するものではないという観点から、これはもう廃止ということになっても仕方がないのかなという思いもございます。

 ただ、問題は、一割の厚生年金基金、財政が健全なものだけを残すということと同時に、厚生年金基金の存在意義というのが、いま一つ、我々理解に苦しむというものがございます。

 それはなぜかと申しますと、厚生年金基金というのは、運用益、これは払った人、基金加入者が恩恵をこうむるわけですね。ところが、マイナス部分、つまり代行割れになった部分、これは厚生年金本体が不利益をこうむるというふうに伺っております。

 つまり、リスクが受益者負担になっていないというところ。これは、三階建てという性質上、ある程度リスクをきっちり受益者にとってもらうという発想があってもいいのかなという考えもございます。

 代行部分は何年かかっても、三十年かかって返してもらう、毀損はないんだという前提に立てばこの議論は成り立たないんですが、ただ、三十年かかってということ、この時間的な問題、三十年も果たして苦しい中小企業はもつのかという問題がございます。

 我が党は、厚生年金本体のリスクをどういうふうにゼロに近づけるかというところを今回のこの改革の大きな中核にしなければいけないんじゃないかという認識がございます。

 そこで、まず確認から入らせていただきたいんですが、冒頭でも申しましたが、これは、解散する事業主は、十五年から三十年、長い期間をかけて代行部分を返済する義務を負うということですが、当然、その中で倒産をする、清算をする会社というのは出てくると思います。そこのところの毀損する厚生年金の部分は、これはその基金加入者のみなのか、そうじゃなくてやはり全体の厚生年金加入者に及ぶのか。要は、その厚生年金基金の加入者の厚生年金部分だけに及ぶのか、そうじゃなくて基金に加入していない一般的な厚生年金加入者にもやはり及ぶのか、そこのところをまず確認させていただきたいと思います。

田村国務大臣 解散をした後に最低責任準備金の部分をそれぞれの加入企業の負担割合に応じて、今まで十五年でしたけれども、最大三十年かけてお返しをいただくということになってくるわけであります。

 今委員がおっしゃられたのは、その途中で、例えばその企業が事業を継続できなくなって、債務を抱えたまま仮に倒産等々した場合にどうなるんだというお話であったと思いますが、この場合には、返さなければならないものが返せなかったわけでありますし、一方で、連帯債務を今回外しております、特例解散になった場合でありますけれども。この場合は連帯債務を外しておりますので、他の仲間の企業に対してその債務が残るわけではございません。ですから、それはそのまま、おっしゃられましたとおり、厚生年金のリスク、全体のリスクとなるわけでございます。

柏倉委員 ありがとうございます。

 厚生年金が将来的に毀損しないように思い切った改革をしなきゃいけないということも、我々としてはわかるわけでございます。

 一割の残る基金なんですけれども、これは一つの議論として、厚生年金の代行部分は残るにしても、まずできるだけこれを返済する。要は、スケールメリットを放棄して、まず代行部分をきっちり埋め合わせして、利幅は狭いかもしれないけれども、余った分と言うと語弊がありますけれども、そこのところで小さな運用益でも追求していく、そういう運用のあり方、残る厚生年金基金のあり方があってもいいんじゃないかという意見もありますが、それに関してどのようにお考えでしょうか。

田村国務大臣 今回、残られるところに関しましても、残られるというか、一応残る基準がありますよね、その基準を超えておられるところにいたしましても、みずから絶対残らなきゃいけないというわけではございません。

 選択の中で、代行部分を返しちゃった方が、将来、迷惑かける必要もないし、下手すれば企業に振りかぶってくる可能性もないから、そこはお返しをして、三階部分だけで他の確定拠出やまた確定給付等々の企業年金等々に移ろうという場合に関しましては、これは御選択ができる制度になっておりますから、そのようにお考えになられるところは、そのような道をお選びいただけるものだというふうに思っております。

柏倉委員 ありがとうございます。

 我々としては、厚生年金本体が毀損しない、リスクを避けるという意味で、そこの部分、代行部分をきっちり返してもらう。選択というよりも、やってもらう、強制するというやり方もあるのかなという思いはいたします。

 次の質問に移らせていただきますけれども、次は、清算型基金の制度に関してお伺いしたいんですが、総合型基金というのは、数々の事業主、事業所が意思統一をしながら、今まで基金を一緒に運営してきたわけですね。今度は解散だということになった場合、その返済プランもやはり意思統一をして決めていかなきゃいけない。なかなかその意思統一というのは難しいかなと思うんですね。各人各人いろいろな考え、経営状態がありますので。

 そういう中で、そのプランがつくれなければ、これはもう、また存続してしまうわけです、不本意ながら。そうなると、いろいろなリスクも生まれてくる。それを、政府が間に入って、速やかにプランニングできる、速やかに解散できるような調整、あっせんといいますとちょっと語弊がありますけれども、そういった、政府が一歩入ってこの清算に役割を果たすという考えはおありでしょうか。

丸川大臣政務官 まさにこの清算型基金というものが、ある意味、解散に向かって支援をするという一つの政府の姿勢というか方策というか、そういうことになります。

 この清算型基金になりますと特例解散制度が活用できまして、今御答弁がいろいろありましたように、例えば、連帯債務を外すということであったり、分割納付の期限が十五年から三十年になるといった、こういう特例が受けられるわけでありますが、出口のところを大変厳しくしておりまして、施行日の五年後まではその特例解散の申請ができるわけでございますけれども、それ以降というのは、代行割れしますと、あるいは十分な積立金を持たない場合には、大臣が第三者の意見を聞いて解散命令を出すわけですね。このときは、特例解散ではなくて普通の解散になるわけです。

 ですから、代行割れの部分のその返還というのも一括でございますし、連帯の債務もかかるということになってございまして、大変出口が厳しいので、ある意味、清算型基金という形で政府が計画のお手伝いをしながら、厳しい出口に向かって皆さんで協力をしてください、こういう仕組みを考えております。

柏倉委員 ぜひ、清算、解散を主導するのは政府でございますので、事業主側に立った協力、協調関係を築いていただきたいと思います。

 あともう一つ、基金加入事業者がDBとかDCに移行する場合、これはなかなかスキームが難しいと思うんですね。大体、従業員が四十名というのが基金の平均、一つの事業体、事業主でございますので。そこで、政府があらかじめ小規模事業所用のペンションスキームもきっちり用意しておく、考えておくということも、先ほど丸川政務官がおっしゃった中には入っていらっしゃいますでしょうか。

丸川大臣政務官 検討の中には、例えば、簡易な制度設計で、数理計算が簡易にできるようなことで設立できるようなDB、確定給付型の年金の対象の拡大等を検討しております。

柏倉委員 ありがとうございます。

 ぜひ、解散をさせるわけですので、しやすいような下地を政府にはおつくりいただきたいというふうに思います。

 次は、指定基金制度についてお伺いしたいんですが、これはもう、今回、これそのものが廃止になるわけでございますね。そこで、今までこれで、悪い言い方をすれば尻をたたいて頑張れとやってきた、それが去年の年末の時点で百弱、九十七基金あるというふうに聞いております。

 そういったところを、頑張ってきた基金さんに、今度は、おまえ、基準が足らぬから解散だというふうに、それが政治だと言われれば仕方ないんですが、ただ、そういうところにもしっかり説明を尽くすという作業が必要かと思うんですが、その辺の説明義務はどのように果たされていかれるのか、教えてください。

丸川大臣政務官 国がつくってきた制度でございますので、丁寧な説明ということはまず基本として心がけたいというふうに思っております。

 指定基金になるということは、ある意味、非常に財政状況が悪いという中で御努力をいただいておるわけでございまして、非常に厳しいのは理解をした上で、一応五年の期間というものを設けております。この五年のうちにもし、御努力をいただいて財政状況が好転して代行割れを返上し、その上で、また最低責任準備金の一・五倍、あるいは非継続基準を積んでいただけるようであれば、それはそのまま継続をしていただけるわけであります。

 ただ、こうした指定基金の多くは、掛金の引き上げが、特に総合基金型ですと話し合いの中で非常に難しかったということで、代行割れ状態が解消せず、また一方では、解散を希望していても、現行の特例解散制度というものの中では連帯債務があることなどによって、なかなかそこも難しいということで、どちらの方向にも進めないというような状況になっているということがあったものですから、今回は、この特例解散制度をより使いやすいものにすることによって御理解をいただきながら、解散した方がいいところについては解散の方へ向かっていただけるようにという後押しをさせていただくということになろうかと思います。

柏倉委員 地元、私は栃木県なんですけれども、そういうところからも問い合わせがございます。ちゃんとそういう説明会を開かれたか、開かれる予定だとは思うんですけれども、どのようにしたらいいかと一人で悩んでいらっしゃる事業主さんもかなり多いのは事実でございまして、そういったところにもしっかり情報を与えてやっていただきたいという思いでございます。

 最後に、厚生年金基金が廃止になると無年金になってしまう人がいるというようなこともあるというふうに聞きました。基礎年金は二十五年でもらえる、それには至っていない、この厚生年金基金は数カ月で受給資格ができるということで、これしかないという方は、廃止されれば、当然、無年金になるわけでございます。そういった方がどれぐらいいると見積もられているのか、そしてまた、そういった方に対する救済策、対応策というのを政府は考えておられるのか、お聞かせいただきたいと思います。

丸川大臣政務官 御指摘いただきましたケースは、代行給付と上乗せ給付をあわせて支給されるというのが一般的な基金の加入者なんですが、そういう方と異なりまして、公的年金の部分、これは二十五年加入をしていただかないと受けられないものですから、この部分に関しては二十五年に満たない、ただ、三階部分、基金からの上乗せ給付は、委員が今おっしゃったように、加入の期間が短くても給付がされるというわけでございまして、極めて例外的なケースというふうに認識をしておりますが、その数については把握をしておりません。

 こうした公的年金の無年金の状況に対応するという意味においては、年金確保支援法によりまして、国民年金保険料の納付可能な期間を十年に延長いたしました。これは平成二十七年の九月まで、三年間の時限の措置でございますけれども、十年間さかのぼって十年間納めていただける。

 それから、年金機能強化法、こちらでは、平成二十七年の十月から、老齢年金の受給資格期間、今申し上げました二十五年入らなければいけないというのを十年に短縮する、こういう方策を講じております。

 こうした取り組みによって、無年金の方というのがなくなるように努めてまいりたいというふうに思っております。

柏倉委員 説明、ありがとうございます。

 ぜひ、その辺も周知徹底させていただきたいと思います。特に、若い世代は自分が年金がなくなるというのを気づかないという方もいらっしゃいますので、その辺も政府が責任を持って啓蒙普及をしていただきたいと思います。

 続いて、GPIFのあり方について、年金積立金管理運用独立行政法人について質問させていただきたいと思います。

 言うまでもなく、これは我々の一階建て、二階建ての部分、お金を運用している独立行政法人でございまして、現在もそうですが、将来に関しても根本的なセーフティーネットと言ってもよいわけです。

 そこで、資料で一枚目につけました。これは、ことしの三月二十五日に日経の一面に載ったんですが、このGPIFが今までの運用を毎年しっかり見直していく、海外インフラにも投資をしていくという記事でございました。会計検査院から基本的ポートフォリオの機動的な見直しを毎年しなさいよと言われたというふうに載っておりますけれども、これは、一般の国民から見ると、我々のお金を全部預けているところが不備を指摘されたというふうにもとられかねないわけでございます。

 その実態はどうなっているのかというところはこれから調査をされるんだと思いますけれども、このGPIFというのは、外部の専門家で構成される委員の検討を参考に、理事長の責任で毎年運用状況をチェックしているというふうに聞いておりますけれども、これはしっかりと本当にやっているんでしょうか。とすれば、なぜ会計検査院のこのような指摘が出てくるのか。

 そしてまた、投資の専門家というのは、この独立行政法人ですけれども、登用しているんでしょうか。そこの点についてお教えください。

丸川大臣政務官 まさにその運用については、運用委員会で検討を行っていただいたものについて、GPIF自身がそれを受けた上で投資の対象について判断をするという構造になっておりますけれども、この運用委員会というところにまず運用経験者が入っています。

 それから、GPIFの職員、七十一名おりますけれども、そのおよそ三分の一は民間金融機関で運用の経験がある、三十代からいろいろな年齢の方がいらっしゃいますけれども、経験のある方が入っておられます。

 そういう構造になっているわけですけれども、その運用委員会で検討する前の段階でも、GPIF自身が、一体どういう運用をすべきなのかということを、調査研究を自身で行っておりまして、こうした調査研究があるということは事実ですが、それが即座にポートフォリオに直結するかというと、そういうわけではございませんで、今まさにこれから検討するというようなことの前の段階ではないか。GPIFの判断については、少なくとも投資の対象の拡大をするという判断をしたというふうには理解はしておりません。

柏倉委員 公的年金を百兆円以上任せているわけでございます。

 そこで、これはもう漠然とした問題提起というか質問で恐縮なんですが、運用する場合は、運用哲学といいますか運用方針というものが必ずあると思うんですね。

 それで、二枚目の資料を見ていただくと、これは各国の年金基金の詳細をテーブルにしたものなんですけれども、アメリカですと米国債一〇〇%、これはもう運用というか管理に近いものだと思うんですね。それ以外、ノルウェーなんかが有名だと思いますけれども、これは全て海外資産で運用している。

 安全性をとるか、リスクをとるか、これは極端な議論になってはいけないのは重々承知しているんですが、政府が、どちら側の運用哲学といいますか、運用方針を今までとってきたのか、そして、今後とっていくのか。知り得るのであれば、今の安倍政権は、この運用方針、運用哲学についてお考えになっていらっしゃるのか。いらっしゃれば、ぜひ教えていただきたいと思います。

香取政府参考人 御答弁申し上げます。

 年金の積立金の管理運用につきましては、これは保険料が財源ということで、厚生年金保険法に規定がございまして、専ら被保険者の利益のために、長期的な観点から、安全かつ効率的に運用する、こういうことが定まっております。これに基づきまして、今政務官から御答弁申し上げましたように、GPIFという専門特化した法人を置きまして、そこで基本的なポートフォリオを定めて運用しております。

 ポートフォリオを定めるに当たりましては、財政計算、財政検証等で一定の運用目標が定められておりまして、それに沿って最も安全かつ確実、リスクの低い、リスクが低くて目的の収益がとれるようなポートフォリオをつくるということになっております。

 具体的には、基本的には国内債券、国債等リスクの低い国内債券をまず中心に置きまして、ポートフォリオ全体としてのリスクを抑制して、内外株式、債券等々、いわゆる分散投資という形で、全体のリスクを抑えながら収益を出す。かつ、株式等についても、基本的にはインデックス運用という形で、市場連動型の商品で運用を行うということで、基本的には、長期、安全、確実、効率的にというのが基本的な考え方でございます。

柏倉委員 我々国民から見ても、やはり安全性というのを常に担保して運用していただきたい。AIJの悲劇を二度と起こしてほしくないという思いがございます。そこはそれで、きっちりと、我々にもわかりやすい説明と同時に、しっかりと運用していただきたいと思います。

 もう一つ、このGPIFというのが余りに規模的に大き過ぎるんじゃないか。百兆円というお金を運用する、これは安全性の高いものを中心に運用するからいいんだという説明がある一方、やはり運用する以上、とにかく三十兆円か四十兆円ぐらいがちょうどいいというような意見もあるわけですね。

 アメリカの運用の仕方は、これはもう運用ではなくて、全て米国債ですから管理に近い、運用ではないと思うんですけれども、今後、運用していく中で、この百兆円という大きさ、もっともっとこれは今度一元化していけばふえていくわけです。そうなったときに、余りに大き過ぎると、大きければそれはいろいろなメリット、デメリットとあると思います。デメリットを危ぶむ声も最近大きくなってきている。やはりリスクは分散すべきだ、経営失敗のリスクは分散すべきだという声もあります。

 このGPIFの百兆円以上に及ぶ規模に関して、現安倍政権はどのように認識をされているのか、お考えになっているのか、今後の方針も含めて教えていただきたいと思います。

丸川大臣政務官 機動的な運用ができているかというような問題意識の御質問かというふうに理解を申し上げますけれども、大きいからこそのメリットというものもございまして、運用資産額が非常に規模が大きいということで、世界最低水準のコストで運用を行わせていただいております。

 なおかつ、GPIFの、相対的な中でどの程度の資産をアクティブに回して、あるいはパッシブに回して、どのようなリスクをとっていくのかというようなことについてポートフォリオを考えるのがGPIFであります。

 実際に、では運用を回していくのはどこなのかというと、これは、現実的に今、平成二十三年度末現在で二十八社、七十六のファンドに委託をして運用しておりますので、柔軟な運用が必要であれば柔軟に委託先を考えていく、変えていくということができますので、GPIFとしては、今の資産規模であるから硬直的だというふうな理解はしておりません。

 民間人の登用ということについても、積極的に、今職員の三分の一が民間職員でございますので、こうした柔軟な対応も可能な構造になっているというふうに理解しております。

柏倉委員 ありがとうございます。

 スケールメリットを追求していくという理解でよろしいですね。はい、わかりました。そういったメッセージは市場に与える影響も大変大きいと思いますので、きょう直接お聞きすることができて大変よかったと思います。

 次は、高所得者の月収月額上限、これはもうさんざん論じられている問題かと思うんですが、二〇一一年に、社会保障審議会で、六十二万円から百二十一万円に月収上限を引き上げるという議論があったかと思うんですが、これは実は、我々、我が党のことで恐縮ですが、いわゆるアジェンダというものに記載をしております。

 お年寄りとはいえ、持っている方から多少なりとも御負担を願う、これはリーズナブルなことだろうというふうに考えているんですけれども、この上限引き上げに関する現在の政権のお考えといいますか、今後の予定も含めてお教えいただければと思います。

田村国務大臣 厚生年金の上限、これでございますけれども、標準報酬に上限を今は設けておりまして、これを引き上げればどうだと。

 これは、引き上げた場合に、一つは、給付がそのままついてくれば、これは当然、保険料を払って、その分給付がふえるので、お金持ちにそんなにさらに給付をふやすというのはどういうことかという議論になってくるわけでありますし、一方で、給付はしない、保険料は今のまま、さらに標準報酬の月額を上限を上げて、しかし給付の方は伸ばさないという話になれば、これは保険料だけ所得のある方々が払うという話になるわけでありまして、所得代替率は大幅に下がる。

 実は、今の厚生年金制度も、よく、世帯所得で三十五万八千円の方々の所得代替率が約五〇%、これを約束しておる、こういうルールで今の厚生年金は制度が成り立っておるわけであります。所得代替率というのは、現役時代の平均給与に対してどれぐらい年金で給付が受けられるかという率の話でありますけれども、これが、今言った三十五万八千円という軸よりも所得が低い方々は所得代替率が上がってくるんですね、どんどん。そこより高い方々が、所得代替率、つまり、自分の現役時代、保険料を払ったことに対して本来もらえると思っている、自分の現役時代に対する、平均所得に対するもらう年金の比率、これはどんどん下がっていくんです。

 だから、初めから所得の多い方々には率でいえば余りお得じゃない、こういう制度、これは保険ということでございまして、低所得者の方々に対して有利な制度になっておるわけでありまして、もとからそういう仕組みが内在されておるという中において、さらに、給付なしで保険料だけ取るとすれば、これはまた大変な負担になってくるというわけではございますが、ただ、この議論はやはり残された大きな課題であることは確かでございまして、国民会議等々でも御議論をこれからいただいてくることになろうというふうに思います。

柏倉委員 ありがとうございます。

 一万円余計に払うと、戻ってくるのがその三分の二くらいになるというふうに聞いたことがあるんですが、多く払っても、その分戻ってくるわけじゃないと。要は、おっしゃったように、ただでさえ今高所得者の方に御負担を強いている状況だというのは十分わかっております。

 そこで、ただ、さはさりながらという問題がございまして、少子高齢化を迎えるこの日本の中で、先ほど維新の先生からも、世代間格差ということが出ました。お金を持っている方には御高齢の方でも御負担を願っていくというのが、私は、社会保障というものの意義なのではないかなというふうにも考えます。

 ぜひ、その点、積極的な御議論を今後も期待して、本日の質問とさせていただきます。

松本委員長 次に、高橋千鶴子さん。

高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 大臣、きょうは長い一日、大変御苦労さまでございました。最後、よろしくお願いいたします。

 午前中に柚木委員から年金給付水準について大変細かい資料が出されまして、私は、もっと単純な、誰でもぱっと数字が出てくるような議論をしたいかなと。自分がわからないと意味がわからないということなので、整理をさせていただきたいと思います。順々に聞きますので、一遍にお答えにならないでいただきたい、わからなくなっちゃうので。

 まず、昨年の法改正で、年金の特例水準の解消が決まりました。これは何度も見た当時の資料なわけですね。資料の一枚目につけておきました。三年間で段階的に引き下げられる、ことし十月に一%だ、三年間で二・五%ということになっております。

 ただ、アベノミクスによって消費者物価二%上げを目指しているわけですから、これが仮に本当に単純に二%上がった場合、当然物価スライドということが働くわけであります。

 そこで、仮にことし物価指数が二%増となった場合、年金にこの二%がいつ反映されるか。同時に、その場合、特例水準が一気に解消されるということでありましょうか。

田村国務大臣 よく頭を整理してお答えさせていただきたいと思います。

 まず、ことしの十月から一%引き下げられるわけでありますから、二・五%の特例水準の残りが一・五%。

 そして、ことし、消費者物価が二%上がる、足元は実はまだ上がっていないんですが、マイナスでございますけれども、上がるというふうなことが仮に起こったとするならば、来年の四月にこれが反映をされるということでございまして、物価スライドで二%上がるわけでありますけれども、一・五%残っている特例水準が解消をされるわけでございます。

 でありますから、そうなれば、来年度、特例水準が、二・五%分、これが全てことしと合わせて解消をされるということでございます。

高橋(千)委員 そういうことなんですよね。要するに、三年間、三年間と思っていたんだけれども、物価が仮に二%一気に上がってしまった場合は、来年度はこの残りを三年間を待たずに解消されるのだということがわかりました。

 それで、二%マイナス一・五%で〇・五%というところまでなるわけですが、その先があるわけですよね。マクロ経済スライドが発動されることになるわけですけれども、これも、ですから、物価が上がり、かつ、特例水準が一気に解消されたことによって、マクロ経済スライドもすぐ発動される、こういうことになるわけですよね。

 では、ことしの十月と比較してどのようになるのでしょうか。

田村国務大臣 ことしの十月と比較して。(高橋(千)委員「はい」と呼ぶ)

 先ほど言いましたけれども、まず特例水準が解消されます。残り〇・五%あるわけですよね。二%物価が上がって、本来年金がスライドするはずですけれども、残りの一・五%の特例水準が解消されますから、残り〇・五。この〇・五に対してマクロ経済スライドがかかってまいります。

 ちなみに、平成二十六年四月からのマクロ経済スライドがどれぐらいかかるかということを見込みます。これはあくまでも見込みでございますから、確定値ではございませんが、見込みで一・三%ぐらいかなということでございますが、〇・五しかありませんから、かかるのは〇・五の部分だけでございまして、金額的には変わらないということになります。

高橋(千)委員 そういうことなんですね。

 資料の二枚目に、厚労省から数字をいただいて整理をしました。これは本当に単純な計算でありますけれども、仮に来年も二%、二%と物価が上がった場合、どうなるのかということなんですが、二〇一四年のマクロ経済スライドの数値は一・三%であろう。そして、二〇一五年は一・二%。ただし、ここの「備考」に書いているんだけれども、「特例水準はすべて解消しマクロ経済スライドが発動」するんだけれども、「切り下げは〇で止まる」。さっき大臣がおっしゃったことですよね。ゼロでとまってマイナスにはならないということなので、二〇一三年の十月と二〇一四年の四月は、基礎年金の標準で比較をすると六万四千八百七十五円で同額である、厚生年金も同額である、そういう意味ですよね。

 その翌年になりますと、たとえ二%上がったとしても、今のように、今度は大っぴらにマクロ経済スライドが働くので、〇・八%しか上がらない、そういうことになるのではないかなと思っております。

 ですから、まず、一気に解消されるということが意外に知られていないだろうということ、それから、マクロ経済スライドというのが、ずっと騒いでいたけれども、実際に発動されるのは今回が初めてである。

 そういう中で、物価はもし仮に二、二と上がっていったとしても、年金はほとんど上がらない、〇・八%しか上がらないというのが実態なんだ。そこに増税がやってくるということなので、やはり、ここは、まずよく実態を知っていかなければならないということと、年金額がふえないのに痛みだけは来るという増税は改めて反対をしたい。

 それから、さっきの議論を聞いていますと、大臣、昨年の民主党の大臣がおっしゃったことを、同じことをおっしゃっていました。つまり、物価が下がったときに年金を下げなかったんだ、上げ過ぎたんだからそれを取り戻しただけですよとおっしゃったんですが、でも、物価が下がったときに下げないできた年金というのは、十二年分あるわけですよね。それを一気に解消するということの痛みというのは、それは半端じゃない。それで、段階的に三年ですよと言ったわけですよ。その段階的に三年も、一気に今回来る。そういう痛みなんだということをやはりちゃんと踏まえて、今後議論をしなければならないなと。

 もう一言、もしあったらお願いします。

田村国務大臣 そういう見方もありますが、もらい始めの方は別にして、ずっともらわれている方々は高い水準でずっともらわれてきておるわけでありますから、その累積というものがそのまま年金の財政の穴になってきておるということも、一面から見れば言えるわけですね。

 ですから、そこまで返してくださいと言っているわけではないわけでございまして、今までもらわれた部分はそのままの中において、適正な水準に三年かけてお戻しをさせてくださいということを、もちろん、今言われたとおり、その間に物価が上がれば三年が二年になるということもあるわけでございますけれども、そのような形で昨年政府が法案を提出されて、これは我々も賛成をしたということでございます。

高橋(千)委員 きょうはこれ以上はこの話はしませんけれども、結局、ずっともらっていたわけではないし、それから、ずっと物価が下がっていたという認識もない中で、一応、数字的には二・五%ということが言われた。それにしても、十何年のトータルであったものが今回一気に解消されるんだという点での重みというのは、やはりかなりの痛みであろうということを議論して、そういう低年金の高齢者の実態ということをやはりよく今後も議論していく必要があるのではないかなと思います。

 そこで、きょうは、厚生年金基金について質問をいたします。

 きょう、随分議論をされてきたところでありますけれども、改めて質問します。

 まず、簡単な認識を確認いたします。企業年金は賃金の後払いであり、賃金の一部である、だからこそ受給権が保護されるのは大前提である、これはよろしいですよね。

田村国務大臣 今そのような形で、労働契約といいますか、就業規則等々に書かれておったりですとか契約されている場合には、そういうふうになるわけでございます。賃金の後払いの部分という意味、この上乗せ部分に関してそういう意味合いというものは、仮にそうであったとするならば、当然、これは企業とそれから働く方との契約の中で成り立っているというような、そんなものであろうというふうに思っております。

高橋(千)委員 何かすきっと言ってくださらないんですけれども、契約であればというお話だったけれども、基本的には、退職一時金の後払いとか、そういう中で進んできた制度であろうと思います。

 平成十二年から適用されているILOの国際会計基準、これによって改めて会計の実態が明らかになってきたということがあるわけですけれども、この中で企業年金は退職給付会計ということにくくられているわけで、まさにこれは賃金の後払いという位置づけをされている。それに、やはり日本がグローバル社会に踏み出す中で、この基準をとってきたという歴史があるわけじゃないですか。なのにここだけ、いやいや、すきっとは言えないんだというわけにはいかないということで、一言言っておきたいと思います。

 そこで、積立資金の不足から企業が厚生年金と企業年金との調整を主張したということがあって、それで、きょう議論されてきた代行制度というのができたわけでありますけれども、その当時、労働者側は、企業年金を厚生年金に肩がわりさせるものである、社会保障を私企業の都合のよい仕組みに変えようとしている、こういう主張をされていたと思います。今日も非常に共通する部分があるのではないかと思っています。

 そうした中、代行部分を担保するための最低責任準備金が不足する厚生年金基金、いわゆる代行割れ基金は、二十三年度末で、五百六十二あるうち百六十基金、約五千二百億円の代行割れと言われています。

 この流れの中で、さっき以来お話しされているスケールメリット、代行部分を利用して、スケールメリットで景気のいいときに稼いだところはもうとっくに返上しておりまして、あとは上乗せ部分だけの確定給付あるいは確定拠出の方で運用されている。

 残されたのが、中小零細の企業が、解散したくてもできない、あるいは倒産して先に抜けられちゃう。幾つかの企業でグループを組んでいるのに、倒産して先に抜けられちゃうと、その分の負担が全部自分に来る。そういう中で抜けるに抜けられない。そういう事情が今日まで起きてきたのがこの法案を出した背景だと思うんですが、もっと早く出してほしかったと思うわけですね。

 それで、具体例で話したいと思います。

 青森県の蓬田紳装という株式会社、これは、資本金一億円のうち九千万円を村が出資して、七七年に設立した、五十五名の従業員がいる会社であります。東日本ニット厚生年金基金に加入をしましたけれども、この基金が、二〇一一年の四月から、指定基金となりまして、健全化計画を求められたわけで、保険料の掛金を引き上げなければならなくなったわけですね。

 それで、掛金が、たった五十五名の会社で、毎月二百七十万円、年間三千二百四十万円。いやいや、とてもじゃないが無理だというので、脱退させてほしいと言ったら、一括返還が必要ですというので、二億二千六百万円。そうすると、もう給料も何も払えなくなっちゃう、吹っ飛んじゃうよということで、何とか分納できないか、長く返すということで頑張りたいということを言っているんです。

 ところが、それで今分納しているんですけれども、半年ごとに掛金が上がっちゃう。それで、さっき二百七十万と言ったんですが、ことし三月は三百二十二万円ということで、はね上がっているんですね。

 実は、ニットの業界というのは、大概海外に出ちゃったので、不況業種に指定されています。でも、ここは大変企業努力をやって黒字だったんです。東京のデパートにある大概の紳士服はここが縫っておりまして、そういう大変な実績があります。だけれども、個人の事業所の努力ではどうにもならない。だって連帯責任なんですよ。連帯責任で、どんなに頑張って黒字にしても、結局、その負担を背負わされる。そういうのが長く放置をされてきた。

 こういう実態をどう認識されているかということと、今回の改正でこのような事業所がどのように救済されるか、御説明いただきます。

香取政府参考人 御答弁申し上げます。

 今先生お話ありましたように、実は、一度代行割れの状態になりますと、先生、先ほど、運用がよくて積立金があることで給付ができたというお話がありましたが、代行割れしますとレバレッジが逆にききますので、実はどんどんどんどん状態が悪くなっていくという状態になります。

 そのこともありまして、もう代行割れしている基金については、早期に解散をしませんとどんどん傷が深くなるということで、今回、できるだけ早期に解散ができるようにということで、さまざまな手だてを講じるという考え方で臨んでいるわけでございます。

 お話ありましたように、実は、事業所間の連帯債務というのが、いわば途中で、足抜けといいますか、抜けたときでも事後的に債務が追っかけてくるということが起こるということで、今回、この事業所間の連帯債務というものは外すということにいたしました。

 それから、分割納付を今回三十年まで延長して、少ない金額で返せるようにする。

 さらに、分割納付の利息が変動金利だったものですから、事後的にその額が変わってしまう、これについても、固定金利ということで、初めの段階で将来的な債務が確定できるようにするといったような措置を講じまして、できるだけ早期に、少ない負担で解散ができるようにということで、今回手だてをさせていただいたということでございます。

    〔委員長退席、高鳥委員長代理着席〕

高橋(千)委員 この連帯債務を外すということをもっと早くできなかったものかということを重ねて指摘したいと思うんですね。

 資料の三枚目に、二〇一一年二月の朝日新聞の記事をつけておきました。これはAIJ問題が発覚する直前なわけですけれども、中小企業の年金が深刻であるということで、私が紹介した基金がこの中に実は入っているんです。高リスク運用でもう悪循環になっているということを、背景を書いています。まさに、こういう、受給権の保護ということをさっきお話をしてきたつもりですけれども、実際には、ファンドに投資して運用する基金、その中で損金が出てどうにもならなくなっているという実態が紹介をされたわけです。

 それで、国は何もしてこなかったわけじゃないんだとさっき大臣はおっしゃいましたけれども、まず、指定基金が今どのくらいあり、健全化計画によりどのくらいの企業が改善をされているのか。また、この制度について、二〇一一年の十一月十六日の通知によって、基金の基準とか健全化計画の承認についての見直しを行っています。その理由と変化についてお願いします。

香取政府参考人 御答弁申し上げます。

 指定基金でございますが、現在、九十五ございます。指定基金につきましては、健全化計画を策定していただいて御指導申し上げているわけですが、掛金の引き上げあるいは給付の適正化等健全化計画を策定いたしまして、計画どおりに動いているという基金は、このうち三十二ということになってございます。

 御指摘の一昨年に出しました通知は、従来、指定基金を指定する場合には、過去三年連続して代行部分の積立水準が九割を下回っている、代行割れ〇・九という状態になりますと指定をするということをしていたわけですが、できるだけ早期に私どもとしてはコミットしていきたいということで、単年度で積立水準が八割を下回った場合には指定をする、三年九割、単年度八割ということで指定をするということで、早い段階から財政健全化に取り組んでいただけるようにそれを促するということで、こういった通知で手当てをさせていただいた、改正をさせていただいたということでございます。

高橋(千)委員 今説明があったように、三年間で責任準備金の〇・九、九割というのが要件だったものを、単年度で八割であればもう指定するんだよと。それで当然指定基金がふえたわけですけれども、そうやって早期に図るというお話だったと思うんですね。

 でも、何でそうなっちゃっていたのかということの中に予定利率の問題があるわけですけれども、五・五%が一律ではなくなった平成八年以降も、五・五%に張りついている企業が大変多かった。超低金利でありながら、五・五%以上で設定しなければ、もともとこの計画は破綻しちゃう。つまり、実態はそうではないんだけれども、そういうことがあるわけですね。

 さっき紹介したニットの健全化計画を見ましても、五・五三%に予定利率を設定しているんですね。それが、今の実態に合わせなさいということで、国の厚生年金がやっている利回りに合わせなさいと言ったら、一気に半分の利率になったんです。実態がそうなんです。実態がそうなのに、五・五%で計算上整えないと準備金を最初から割っちゃう。ここは、五・五三%でも〇・七を割っていたんですね、実は。

 そういう実態があったから、AIJの問題が起こったんでしょう。利率が、低いにもかかわらず、高くて運用できていますよということを取り繕わなければ、最初からこれはもう破綻していたということがあったわけですね。

 だから、現実を見れば、もう既に超低金利なんだから、そんな予定金利で回れるはずがないんだということはわかっていたんです。そのことについて、なぜ手をこまねいていたんでしょうか。

田村国務大臣 二十三年度末時点において現存する五百七十七基金において、今、五・五という予定利率、こういうものをもう既に変えていいですよという話であったわけでありますけれども、四百八十五基金がこの予定利率を五・五で設定しているということで残ってきたわけであります。

 本来、決算報告書を見ればどういう状況かわかるわけでございまして、予定利率が五・五では運用実績とは乖離が生じてきてこれはまずいなというような場合に関しては、当然のごとくこの乖離部分は積み立て不足になっているわけでありますから、ここは掛金を引き上げるということをやっていただかなきゃならぬわけでありまして、指導をしてまいったわけでありますけれども、なかなかそれを実行いただけない。いろいろな、こちらもメニューも用意したりなんかしたんですけれども、正直言いまして、代議員会等々で、これがなかなか、変えていくために一定の決議をいただかなきゃいけないわけでございまして、そういうものの制約もあったのでありましょう。

 ただ、そうは言っておられませんので、さらに、この積み立て不足を掛金引き上げで埋める期間というものを二十年から三十年に引き上げる等々の努力はしてきたわけでございます。その中においてなかなかこれが実現できないということでございますから、いよいよ、今回のような特例解散等々でこの積み立て不足に対しての一定の解決をそろそろしていこうということで、この法案を提出させていただいたということでございます。

高橋(千)委員 乖離があるのがわかっていた、まずいな、だけれどもなかなか総員の、議決要件があるから厳しかったんだよと言うけれども、そうはいったって、それで結局掛金がすごく上がっちゃったら、やっていけないですよね。

 そういう実態があるんですから、やはり、矛盾を掛金とかで解決するのも限界があるじゃないですか。だから、現行制度のもとでも本当は大臣は解散命令ができるんですよね。今、法改正で、五年後には解散命令ということにしているんですけれども、解散命令すればできる。しかし、一度もやってこなかった。なぜですか。

香取政府参考人 御指摘のように、現行制度でも大臣には解散命令が出せるということになってございますが、過去、解散命令を出した例はございません。

 この問題はなかなか難しい問題でございまして、現行制度で解散命令を出しますと、例えば積み立て不足の分については即座に即金で返さなきゃいけないとか、いわばトタで解散をするという形になる。なかなか、そうなりますと、そういった基金側の対応等々のことも考えますと、先ほどからありますように、給付の抑制なり追加的な掛金の引き上げということで基本的には対応していただくということで、御指導申し上げるということでやってきた。いよいよ、私どもとしても、考え方を、腹を決めて、特例的な措置を講じた上で、解散の御指導を申し上げるということで今回踏み切った、そういうことでございます。

    〔高鳥委員長代理退席、委員長着席〕

高橋(千)委員 腹を決めるのが遅過ぎるんですよね。だって、出すと即座に返さなきゃいけないから大変だと言っているけれども、もう倒産して逃げちゃったところをどこまで追っかけるんですかという話なんですよ。それを全部ひっかぶって、残った企業が一生懸命経営努力しても大変な思いをしている。だったら、それを解散する方法をきちっと整えておけばよかったんですよ。それを整えておかなかったんでしょう、そもそも。そこは何も答えなかったけれども、基準をつくっておかなかったから命令が出せなかった、そういう実態じゃないですか。

 だけれども、本当は、そうはいっても、労働者の受給権はちゃんと守られる仕組みがあるわけですよね。これはちょっと通告していなかったかもしれないんですけれども、企業年金連合会によって支払い保証制度というものもあります。この活用をもっと強化して、守っていくということもありと思いますが、いかがですか。

香取政府参考人 支払い保証制度については、御指摘のような用意がございますので、もちろんそれを活用するということもございますが、先ほどの解散命令との関係でいきますと、解散命令自体がかなり強力な権限ということになりますので、やはりそこは現実的な問題の解決の手法として、最後の伝家の宝刀としては持っていたわけですけれども、そこまで発動をするということは過去やってこなかった、そういうことでございます。

高橋(千)委員 私的企業の年金を、厚生年金という公的年金の一部を肩がわりという形で、全体の、要するに、上乗せなんてもともとないわという労働者まで結局連帯債務になるわけですね、広い意味でいえば、代行割れというのは。そういう仕組みをつくってきたという中での国の責任というのは、やはりきちっと果たすべきではなかったかなと思います。

 それで、さっき言ったように、AIJの投資顧問の事件を生んだきっかけだったという話をしたんですけれども、この事件を通していろいろなことを精査したわけですよね。

 一九九〇年代の日米金融協議を契機とする金融自由化の流れの中で、投資顧問の参入とか運用規制の緩和などが行われて、本来なら国債などの安全性の高い資産を五割以上として、株式、外貨建て資産、不動産、それぞれ五対三対三対二の割合で配分割合の上限を定めた、こういうものも平成九年に撤廃をされてきた。いわゆる自由化の流れですよね、早い話が。

 そういうことがどうだったのかということが問われていたと思うんですけれども、いかがでしょうか。これは大臣に伺いたいと思います。

田村国務大臣 当時は当時のいろいろな要請がある中で、そのような形でいろいろなものに運用ができるようにという流れであったんであろうというふうに認識いたしております。

 ただ、一方で、これは我々も反省をしなければいけないところでありますけれども、やはり、経済状況、こういう状況をずっとバブル崩壊後つくってきてしまった。つまり、運用利回りを上げようにもなかなか上げられないというような環境をつくる。そんな中において、世界的な金融不安が定期的に、定期的にとは言いませんけれども、一定程度の時期に起こるというふうなことがある中で、それぞれの基金の財政が毀損をされていくということでございます。

 とにかく、長期間にわたるデフレ、こういうものを続けてきた一つの影響というものが、この基金の財政状況にも出てきておるんであろうなということでございますので、デフレを解消して、アベノミクスということで、とにかく経済を立て直すということをやっていきませんと、この基金の問題一つではございませんけれども、いろいろなところに支障は来すわけでございまして、全力で取り組んでまいりたいというふうに思っております。

高橋(千)委員 そこで、今株価が上がった、アベノミクスが今は成功したかに見えるこの瞬間に、だから自由度が高いものに舞い戻るのではなくて、早く解散をしっかり整えていって、安定的な制度にやはりやっていくべきだと私は思います。

 経団連は、ことし一月の提言の中で、中小企業も含めて雇用の流動化、多様化が進んでいる、だからもっと運用型の拠出年金を緩和するべきだということを盛んに言っているわけですよね。中途引き出し要件の緩和とか拠出限度額の大幅な引き上げ、あるいは加入対象者を主婦や公務員まで拡大するなど、つまり、一番最初に受給権の保護という話をしましたけれども、リスクの高い拠出型にぐんと重点化をしろ、簡単に言えば、老後の保障は自己責任よということを強調しているわけであって、しかし、そこは、丸々そうと言っては、厚生労働省としてはそれはうまくないですよねということで、最後に一言伺って、終わります。

田村国務大臣 個人的な感想では、この確定拠出型がもう完全なる積立型だと私は思っています。それは個人勘定で動くわけでありますから、これは全く賦課になり得ようのない制度でありますが、いろいろな制度があると思うんです。

 ただ、私どもは、厚生年金という意味で、国民の皆様方の一定生活の質というものを担保する年金制度というものを準備させていただいております。

 あと、確定拠出、確定給付、いろいろな制度がありますけれども、それぞれの選択の中においてお選びをいただくメニューであるというふうに認識をいたしております。

高橋(千)委員 終わります。

松本委員長 次回は、来る二十二日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時五十四分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.