衆議院

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第18号 平成25年6月7日(金曜日)

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平成二十五年六月七日(金曜日)

    午前九時三十分開議

 出席委員

   委員長 松本  純君

   理事 上川 陽子君 理事 高鳥 修一君

   理事 棚橋 泰文君 理事 冨岡  勉君

   理事 西川 京子君 理事 山井 和則君

   理事 上野ひろし君 理事 古屋 範子君

      赤枝 恒雄君    今枝宗一郎君

      大久保三代君    大串 正樹君

      勝沼 栄明君    金子 恵美君

      小松  裕君    古賀  篤君

      笹川 博義君    白須賀貴樹君

      新谷 正義君    田中 英之君

      田畑 裕明君    高橋ひなこ君

      とかしきなおみ君    豊田真由子君

      中川 俊直君    永山 文雄君

      丹羽 雄哉君    船橋 利実君

      堀内 詔子君    牧島かれん君

      宮崎 謙介君    務台 俊介君

      村井 英樹君    山下 貴司君

      大西 健介君    中根 康浩君

      柚木 道義君    横路 孝弘君

      足立 康史君    伊東 信久君

      新原 秀人君    宮沢 隆仁君

      伊佐 進一君    輿水 恵一君

      佐藤 正夫君    中島 克仁君

      高橋千鶴子君    阿部 知子君

    …………………………………

   厚生労働大臣       田村 憲久君

   厚生労働副大臣      桝屋 敬悟君

   厚生労働大臣政務官  とかしきなおみ君

   厚生労働大臣政務官    丸川 珠代君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 萩本  修君

   政府参考人

   (厚生労働省職業安定局高齢・障害者雇用対策部長) 小川  誠君

   政府参考人

   (厚生労働省職業能力開発局長)          山田  亮君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長)    岡田 太造君

   厚生労働委員会専門員   中尾 淳子君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月七日

 辞任         補欠選任

  大串 正樹君     笹川 博義君

  金子 恵美君     勝沼 栄明君

  三ッ林裕巳君     牧島かれん君

  柏倉 祐司君     佐藤 正夫君

同日

 辞任         補欠選任

  勝沼 栄明君     金子 恵美君

  笹川 博義君     大串 正樹君

  牧島かれん君     宮崎 謙介君

  佐藤 正夫君     柏倉 祐司君

同日

 辞任         補欠選任

  宮崎 謙介君     務台 俊介君

同日

 辞任         補欠選任

  務台 俊介君     三ッ林裕巳君

    ―――――――――――――

六月七日

 腎疾患総合対策の早期確立に関する請願(井野俊郎君紹介)(第七九一号)

 同(秋元司君紹介)(第八一四号)

 同(石破茂君紹介)(第八一七号)

 同(藤井比早之君紹介)(第八五〇号)

 同(今村雅弘君紹介)(第九一六号)

 同(小里泰弘君紹介)(第九一七号)

 同(福田達夫君紹介)(第九一八号)

 障害者福祉についての新たな法制に関する請願(馬淵澄夫君紹介)(第七九二号)

 同(青柳陽一郎君紹介)(第八一一号)

 同(ふくだ峰之君紹介)(第八一二号)

 同(大西健介君紹介)(第八一五号)

 同(阿部知子君紹介)(第八二六号)

 同(木原誠二君紹介)(第八四四号)

 同(阿部寿一君紹介)(第八八四号)

 同(原田義昭君紹介)(第八八五号)

 同(小宮山泰子君紹介)(第九一九号)

 同(鈴木義弘君紹介)(第九二〇号)

 社会保障の切り捨て中止に関する請願(笠井亮君紹介)(第八二七号)

 同(笠井亮君紹介)(第八四七号)

 保育・子育て支援制度の実現に関する請願(小川淳也君紹介)(第八四三号)

 全てのB型・C型肝炎患者の救済に関する請願(今村雅弘君紹介)(第八五一号)

 難病、小児慢性疾患、長期慢性疾患の総合対策を求めることに関する請願(秋元司君紹介)(第八五四号)

 同(井林辰憲君紹介)(第八五五号)

 同(石田祝稔君紹介)(第八五六号)

 同(岩屋毅君紹介)(第八五七号)

 同(上野ひろし君紹介)(第八五八号)

 同(大口善徳君紹介)(第八五九号)

 同(大西健介君紹介)(第八六〇号)

 同(岸本周平君紹介)(第八六一号)

 同(塩崎恭久君紹介)(第八六二号)

 同(階猛君紹介)(第八六三号)

 同(園田博之君紹介)(第八六四号)

 同(薗浦健太郎君紹介)(第八六五号)

 同(高橋みほ君紹介)(第八六六号)

 同(武部新君紹介)(第八六七号)

 同(冨樫博之君紹介)(第八六八号)

 同(中川正春君紹介)(第八六九号)

 同(原田義昭君紹介)(第八七〇号)

 同(福山守君紹介)(第八七一号)

 同(船田元君紹介)(第八七二号)

 同(前原誠司君紹介)(第八七三号)

 同(宮澤博行君紹介)(第八七四号)

 同(阿部知子君紹介)(第八八六号)

 同(上野ひろし君紹介)(第八八七号)

 同(大畠章宏君紹介)(第八八八号)

 同(門博文君紹介)(第八八九号)

 同(菅家一郎君紹介)(第八九〇号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第八九一号)

 同(斉藤鉄夫君紹介)(第八九二号)

 同(篠原孝君紹介)(第八九三号)

 同(田中英之君紹介)(第八九四号)

 同(高木宏壽君紹介)(第八九五号)

 同(高橋ひなこ君紹介)(第八九六号)

 同(武井俊輔君紹介)(第八九七号)

 同(武村展英君紹介)(第八九八号)

 同(額賀福志郎君紹介)(第八九九号)

 同(古川禎久君紹介)(第九〇〇号)

 同(堀内詔子君紹介)(第九〇一号)

 同(三ッ林裕巳君紹介)(第九〇二号)

 同(武藤貴也君紹介)(第九〇三号)

 同(山井和則君紹介)(第九〇四号)

 同(赤嶺政賢君紹介)(第九二一号)

 同(泉健太君紹介)(第九二二号)

 同(今村雅弘君紹介)(第九二三号)

 同(江田康幸君紹介)(第九二四号)

 同(鬼木誠君紹介)(第九二五号)

 同(木原稔君紹介)(第九二六号)

 同(穀田恵二君紹介)(第九二七号)

 同(棚橋泰文君紹介)(第九二八号)

 同(津島淳君紹介)(第九二九号)

 同(中谷元君紹介)(第九三〇号)

 同(中野洋昌君紹介)(第九三一号)

 同(長島昭久君紹介)(第九三二号)

 同(福田昭夫君紹介)(第九三三号)

 同(古川元久君紹介)(第九三四号)

 同(武藤容治君紹介)(第九三五号)

 同(望月義夫君紹介)(第九三六号)

 同(吉川赳君紹介)(第九三七号)

 不妊患者の経済的負担軽減に関する請願(漆原良夫君紹介)(第八七八号)

 同(小林史明君紹介)(第八七九号)

 同(津島淳君紹介)(第八八〇号)

 同(赤嶺政賢君紹介)(第九三八号)

 同(大西健介君紹介)(第九三九号)

 同(穀田恵二君紹介)(第九四〇号)

 同(古川元久君紹介)(第九四一号)

 安全・安心の医療・介護実現のための夜勤改善・大幅増員に関する請願(岸本周平君紹介)(第八八一号)

 同(小林史明君紹介)(第八八二号)

 同(篠原孝君紹介)(第八八三号)

 同(赤嶺政賢君紹介)(第九一三号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第九一四号)

 パーキンソン病患者・家族の視点に立った療養生活と質的向上に関する請願(福田達夫君紹介)(第九一五号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 障害者の雇用の促進等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第六四号)(参議院送付)

 精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第六五号)(参議院送付)


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     ――――◇―――――

松本委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、参議院送付、障害者の雇用の促進等に関する法律の一部を改正する法律案及び精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、政府参考人として法務省大臣官房審議官萩本修君、厚生労働省職業安定局高齢・障害者雇用対策部長小川誠君、職業能力開発局長山田亮君、社会・援護局障害保健福祉部長岡田太造君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

松本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

松本委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。高鳥修一君。

高鳥委員 おはようございます。自由民主党の高鳥修一でございます。

 三年四カ月ぶりにこの第十六委員室に帰ってくることができまして、きょう質問をさせていただけることを大変ありがたく思います。

 ちょうど五年前、平成二十年六月四日に、私は、障害者雇用促進法改正について、この場で質疑に立っております。そのときに同時に話題にいたしました障害者虐待防止法そして優先調達法、これら二法は既に成立をいたしました。そしてまた、今国会で、差別解消法が成立を目指して動いているところでございます。

 また、先般、成年被後見人に選挙権を回復する制度改正がなされました。この件も、私、四年前に、委員会の質疑で取り上げさせていただきまして、絶対に諦めない、こう申し上げたところでございますけれども、今国会で制度改正がなされたことを非常にうれしく感じております。

 障害者の権利条約、これの批准に向けて、与野党の枠を超えて政治が大きく動いていると感じているところでございます。

 ところで、当時委員長席に座っておられました田村先生が一つ奥の席に移動されまして、ただいま厚生労働大臣として、御自分の言葉で丁寧な御答弁に努めておられることを、心から敬意を表します。きょうは御本人がおられませんので、これ以上褒めても褒めがいがございません。松本委員長もぜひ頑張っていただきたい、そのように思います。

 早速でありますが、質疑に入らせていただきます。

 本改正で、精神障害者を障害者雇用率の算定基礎に加える理由は何か、ハローワークにおける障害者の求職状況はどのように変化しているのか、御説明願います。

丸川大臣政務官 お答え申し上げます。

 高鳥修一委員におかれましては、障害をお持ちの方、また、その御家族の気持ちを代弁され、優先調達法を初めとする障害者施策に熱心にお取り組みいただいていることを、まずもって心から敬意を表したいと存じます。

 障害者の雇用者数は増加をしておりまして、九年連続で過去最高を更新し、九年間で一・五倍に伸びております。その種別、いずれも雇用者数は伸びておりますけれども、特に、精神障害者の方の雇用者数の伸びは、対前年比で二七・五%ということ、平成二十四年でございますが、このようになっております。

 また、ハローワークにおける障害者の就職件数につきましても、過去最高を三年連続で更新しております。精神障害者の方の就職件数は、そのうち全体の三四・九%を占めております。これは、平成十八年度に実雇用率に精神障害者の方を追加したことや、また、就労が進むにつれて職場や社会の理解が進んだことなどの相互作用によるものと考えております。

 こうしたことを踏まえまして、精神障害者の方のさらなる雇用の促進を図る観点から、精神障害者を法定雇用率の算定基礎に加えることとしたものでございます。

高鳥委員 丸川政務官、御丁寧な御答弁まことにありがとうございました。

 次に、事業主側からは、法定雇用率がこの四月一日から一・八から二・〇に上がったが、実雇用率はまだ一・六九にとどまっている、特にリーマン・ショック以降、厳しい経営環境の中で、中小企業の実雇用率は実は低下をしているということが指摘をされています。

 今回の改正については準備期間が必要と考えますが、いかがでしょうか。

小川政府参考人 法定雇用率につきましては、基本的には五年に一度見直すこととしております。この二十五年四月に法定雇用率の引き上げを行ったことを踏まえて、施行時期は、次回の見直し時期である平成三十年四月としております。

 さらに、法定雇用率の算定基礎に精神障害者を追加することによりまして、ことしの四月、平成二十五年四月の一・八%から二・〇%の見直しに続く引き上げとなるということが想定されることから、平成三十年四月の法施行時の法定雇用率の設定のみ、企業の障害者雇用の状況でございますとか行政の支援状況等を勘案して、激変緩和措置を講ずることを可能としておりまして、精神障害者を法定雇用率の算定基礎に加えることに係る引き上げ幅を本来の計算式よりも低くすることを可能としております。

 厚生労働省としても、準備期間の間に、企業が精神障害者の雇用に着実に取り組むことができるように、支援策の強化に努めてまいりたいと考えております。

高鳥委員 障害者差別解消法とともに、本改正でも、障害者への不当な差別禁止を規定しております。この内容がわからなければ、無意識に差別的な取り扱いをしてしまう可能性があると私は思うんですね。

 不当な差別的取り扱いというのはどのようなものか、また、それをどのように事業主に周知するのか、お聞かせ願います。

小川政府参考人 障害を理由とする不当な差別的取り扱いを禁止しておりまして、それは、職業能力等を適正に評価した結果によるものといった合理的な理由による異なる取り扱いを禁止するものではございません。

 不当な差別的取り扱いの具体的な考え方につきましては、これから、公労使、あと障害者団体を加えた四者構成である労働政策審議会で議論した上で、指針を作成いたします。その指針の内容につきましては、事業主への説明会を開催するなど、十分に周知してまいりたいと考えております。

高鳥委員 今の不当な差別禁止とあわせて、十分に説明をして周知をしていただきたいと思うんです。

 もう一つ、合理的配慮の提供義務、この言葉は一般的に余りなじみがない言葉だと思うのですが、事業主に合理的配慮の提供を義務づける以上、さまざまな具体例を示して、わかりやすく説明する必要があると考えます。

 合理的配慮について、ガイドラインの作成、あるいは、具体的な事例を集積し、誰でも閲覧できるデータベースのようなものをつくる考えについて、いかがでしょうか。

丸川大臣政務官 御指摘のとおり、事業主の方々に合理的配慮を行っていただくために、合理的配慮がどういうものかということをまずきちんと御理解いただくということが非常に重要であろうかと思っております。

 例えば、車椅子の高さに合わせて机の高さを変えることであったり、あるいは、知的障害者の方に、口頭のみならず、文書や図で作業の流れ等を御説明申し上げること、こうしたことについて御理解をいただくということでございますが、この法律においては、公労使、そして障害者の皆様の四者構成である労働政策審議会において、ガイドライン、合理的配慮についての指針を作成することとなっております。ここにおいて具体例をお示しし、また、事業主の方への説明会を開催するなど、その周知に努めたいと考えております。

 また、障害者雇用についてさまざまな取り組みを行っている事業主を実際に取材いたしましてその事例を収集しているデータベースというものを、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構が現在も運営しておりますけれども、このデータベースにおきまして、今回の制度改正を踏まえて、合理的配慮に関する好事例についても収集、提供する方向で検討してまいります。

 よろしくお願い申し上げます。

高鳥委員 ありがとうございます。今の、データベース化したものを皆さんが活用していくために、検索をしやすいような工夫をぜひ盛り込んでいただきたいと思います。

 次に、過重な負担ということについてお伺いをいたします。

 合理的配慮の提供が過重な負担となる場合には、提供義務を負わないとされております。この「過重な負担」という言葉は、やや抽象的な表現のような気がするのですね。過重な負担かどうかを判断する基準をどのようにお示しになる考えか、お聞かせ願います。

小川政府参考人 過重な負担につきましては、企業規模でありますとか、企業が置かれている財政状況等が考慮要素になると考えております。

 具体的な過重な負担の考え方につきましては、これから、公労使、それから障害者団体の四者構成である労働政策審議会で議論した上で策定する指針において、お示ししたいというふうに考えております。

高鳥委員 この改正を実効あるものにするために、私は、障害者と事業者双方に適切な支援が必要と考えております。

 特に、障害者には障害特性に配慮した支援が必要であり、それには、ジョブコーチなどの人的な支援と、それから、短時間労働や休憩所の整備など作業環境の支援があると思います。

 一方、事業主側には、段差をなくし、手すりをつけるなどバリアフリー化やトイレの改修など、ハード面の対応に出費が伴うと思うんです。これに対する助成が必要であると思いますが、どう考えておられるでしょうか。

 また、何かあったときに、その場にいなくても電話ですぐに相談できる支援体制が必要と考えますが、どういう体制になっているのか、教えていただきたいと思います。

 障害者に対する支援と、それから事業主に対する支援を、それぞれお答えいただきたいと思います。

小川政府参考人 先生御指摘のとおり、障害者雇用を推進する上では、障害者、それから事業主双方に対する支援を行っていくことが非常に大事だというふうに考えております。

 そこで、まず障害者に対しましては、ハローワークにおいて障害特性を踏まえたきめ細かい職業相談、職業紹介を実施する。また、関係機関が連携して、就職から職場定着まで一貫して支援を行うチーム支援を行っていく。また、地域障害者職業センターにおける職業評価、職業指導、職業準備訓練等の専門的支援を実施していく。また、障害者就業・生活支援センターにおける就業面と生活面の一体的な相談支援などを行っております。

 また、事業主に対しましては、障害者の雇い入れ及び障害者の雇用のための施設設備の設置、整備、また、適切な雇用管理を行うための特別な措置を行うことに対する助成を行っております。また、障害者の雇用に関する知識、ノウハウ等を提供するマニュアル等の作成、配布、また、ハローワーク、地域障害者職業センター及び障害者就業・生活支援センターにおける相談援助などを行っております。

 また、さらに、障害者、事業主双方に対する支援としては、雇い入れや就職に不安を抱える障害者、事業主双方の不安を解消するためのトライアル雇用でございますとか、先生も御指摘がありました、障害者の働く職場におけるジョブコーチによる人的支援などを行っております。

 今後とも、こういった支援策を活用しながら、障害者の雇用の促進に努めてまいりたいと考えております。

高鳥委員 今のお答えで、出費が伴うものに対する助成があるということだと思いますが、具体的にどういう助成があるのかということを教えていただきたいというのが一点。

 それから、私が今お聞きしたのは、何かあったとき電話ですぐに確認ができる、まずどこに電話したらいいんだろうかと。今回の改正については、もちろん、障害者団体、障害者の側からは非常に期待が大きい。一方で、中小企業の事業主側からは、よくまだわからないので不安が大きいという声を聞いております。支援体制について、まずここに電話したらいいのだということを、そういうことはまだはっきりと決まっていないのでしょうか。もしあるならば、その制度を教えていただければと思います。

小川政府参考人 お答え申し上げます。

 電話とか何かについてでございますけれども、企業向けの相談窓口を企業関係の団体に委託して運営をしているというのがございますので、そういうところにお電話いただければ、いろいろと情報の提供ができるというふうになっております。

 あと、具体的な助成措置でございますけれども、いろいろとございますが、例えば、障害者が作業を容易に行えるような施設の設置、整備を行った場合などにつきましては、例えば、障害者が作業を容易にできるような作業施設等の改造費用につきましては、そういった施設等の設置、整備を行う事業主に対して、障害者一人につき上限が四百五十万でございますけれども、そういうのを事業主に支給するというようなことをやっております。

高鳥委員 ありがとうございます。

 いずれにしましても、そういう支援があるのだということを、今後、周知期間があると思いますので、十分に事業主側に丁寧に説明をしていただきたいと思います。

 次に、キャリア形成促進助成金というのについてお伺いをいたします。

 事業主に対する助成金制度がことしの五月から新しく制定をされましたが、この中に、障害者に対するメニューが入っておりません。この制度、次の見直しはいつかということ、そして、障害者のキャリア形成、能力開発を支援する意味で、今後、メニューに障害者就労支援コースを追加するべきだと私は思いますけれども、そういうお考えがないのかどうか、お答え願います。

山田政府参考人 キャリア形成促進助成金の関係でございます。

 この助成金は、従業員へのキャリア形成の取り組みを行う事業主に対しまして助成をするものでございまして、必要に応じまして、概算要求時に見直しを行っているところでございます。

 障害者につきましては、先ほどもございましたように、トライアル雇用、ジョブコーチ、それから職場適応訓練等々、手厚い支援がありますほか、このキャリア形成促進助成金の対象にもなっております。

 それに加えまして、障害者であって若年者の場合、あるいは障害者みずからが望んで行う訓練の場合等におきましては、高率助成の支援を行っているところでございます。

 今後とも、障害者も含めまして、キャリア形成促進助成金の利用が促進されるように周知を図ってまいりたいと考えています。

高鳥委員 確認なのですが、今の御答弁で、障害者もこの助成金の対象になっているという理解でよろしいんでしょうか。

山田政府参考人 キャリア形成促進助成金については、全ての労働者の方々が対象になっておりまして、私が申し上げましたのは、一般型訓練、この支援対象には障害者の方々もなっている。加えまして、障害者の中で若年の方、あるいは障害者みずからが訓練を希望されるというような場合には、政策課題対応型訓練ということで高率の助成をしているということでございます。

高鳥委員 ありがとうございます。

 私が申し上げているのは、この政策課題対応型訓練のコースに障害者就労支援コースというのを追加していただきたい。これを拝見しますと、一時間に八百円という賃金の助成、非常に大きいので、ぜひ実現をしていただきたいと思います。

 次に、事業主側の不安を解消するために、研修や相談支援体制を充実することが必要と考えます。一方、受け入れをちゅうちょしている事業主とまず接点を持つことは大変意義あることだと思います。

 その意味で、障害者トライアル雇用は有効な制度だと思いますけれども、特に精神障害者に配慮したトライアル雇用制度があれば御説明願います。

小川政府参考人 お答え申し上げます。

 精神障害者につきましては、その障害特性から、心身が疲れやすいとか緊張しやすい、また、判断、責任等のプレッシャーに弱いことがある、コミュニケーション能力に問題がある、困難があるといったことから、直ちに障害者雇用制度の適用となる週二十時間以上働くことが困難な方もおられます。

 このような精神障害者の方に対して、当初は週十時間以上二十時間未満の労働時間から開始するとともに、時間をかけて職場に適応できるように、通常のトライアルは三カ月なんですけれども、最長十二カ月と、通常のトライアル雇用よりも長い期間を設定することができる短時間トライアル雇用制度を、こういう精神障害者の方に設けております。

 このような制度を活用しながら、引き続き、直ちに二十時間以上働くことが難しい方への支援に努めてまいりたいと考えております。

高鳥委員 精神障害者に配慮したトライアル雇用制度がある、短時間から、最長一年までこれは使えるということでございますね。こういう制度があるということを、ぜひ、事業主側に十分周知をしていただきたいと思います。

 それから、もう一点、障害者と事業主のマッチングというのは非常に大事だと思うんです。この精度を高めるために、例えば、津軽障害者就業・生活支援センターでは、障害者の得意な作業や配慮する点などを記入して、企業に正しく理解してもらうための個人調書を独自に作成しているとお聞きしております。

 このような紹介シートの制度を他に普及するお考えがないか、お聞かせ願います。

小川政府参考人 障害者の円滑な就職や定着を図る観点から、個人情報の保護に留意しながら、障害者就業・生活支援センターが、障害の状況とか、職場でどういった配慮が必要かといった情報を的確に把握して、それを企業に対して提供して、企業の理解の促進を図るということは非常に有意義なことと考えておりまして、御指摘いただきました津軽障害者就業・生活支援センターの取り組みは非常に有効なものである、有効な取り組みの一つというふうに考えております。

 このような障害者就業・生活支援センターにおける就業支援ノウハウというものはいろいろとございますので、そういったノウハウの向上を図るために、従来から各センターの担当者が情報交換を図るための交流会議を開催しております。こういった会議の場などを通じて、今回の事例を含めました好事例とかノウハウの普及、周知に努めてまいりたいと考えております。

高鳥委員 ありがとうございます。

 このような好事例とかノウハウを共有できるような体制をぜひとっていっていただきたいと思います。

 次に、一つ具体的な例というか、お話をしたいと思うんですけれども、川崎市にございます日本理化学工業の大山会長のお話に、共感脳という言葉がございます。このお話、要約して申し上げたいと思います。

 障害者を雇用するようになったきっかけは、何度も就職の打診に来られた先生が、大山さんに何度も断られて、ついに諦めて、せめてこの子たちに卒業前に働く経験をさせてやってくれないか、このままでは一生施設で暮らすだけになってしまうのでと頼まれたのであります。そこで、短期間の実習を受け入れたら、熱心な働きぶりに心を動かされた。人には本能的に共感脳がある。人の役に立ち、期待され、喜ばれるときに、自分もまた大きな喜びを感じる。それは障害のある人も何ら変わらない。障害のある人を隔離して保護するよりも、健常者にまじって、ともに働く喜びを実感することが本当の福祉ではないかということでございます。

 私も、特別支援学校の学習発表会で、職場体験をしてきた生徒が、僕も卒業したら仕事をして世の中の役に立ちたい、無理かな、でも頑張ろう、言葉はたどたどしかったんですけれども、はっきりと自分の意思を表現するのを聞いて、大変感動した経験がございます。彼らの夢をかなえる、これこそ私たち政治家がなすべき仕事であると思います。

 最後に、障害者を支援している人たちへの支援について申し上げます。

 障害者就業・生活支援センターや地域障害者職業センター等に、十分なマンパワーが用意されているのでしょうか。障害者を応援している人たちをまたしっかりと支援していくということも、この改正が有効になるということの大事なポイントであると私は思います。

 制度は改正をされました、しかし助成金が少なくて、枠がいっぱいで使えないということでは、障害者雇用はなかなか改善をしないと思うのです。最後は予算の確保というのがこの改正を実効あらしめるために最も重要と考えますが、その点も含めて、きょうは副大臣から強い決意を聞かせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

桝屋副大臣 おはようございます。

 先ほど委員が御紹介された共感脳の話も、改めて、私も強く感じた次第でございます。

 今委員から、決意をというお話でございました。

 就職を希望する障害者が、先ほどからの議論のように、増加しております。そんな中で、障害者就業・生活支援センターを初め、地域の就労支援機関の体制の強化ということが何よりも重要だろう。やはり、人のお世話、人へのサービスは、人で決まるわけでありまして、こうした体制は、委員も御指摘になりましたように、予算の確保も含めて、しっかりと取り組んでまいりたいと思っております。

 厚生労働省では、これまでも、こうしたニーズに対応するため、障害者就業・生活支援センターにおいて就業支援担当者を増員したり、あるいは、これは二十五年度からの事業でありますが、職場定着支援担当者を新たに配置する、あるいは、地域の就労支援機能の体制強化に努めてきたところであります。

 人ということについて言いますと、最近、障害者就労支援という観点からいきますと、やはり対象者が、精神障害者あるいは発達障害者、さらには、それこそ難病の皆さん方も障害者の範囲としてというような方向でございますから、それぞれ、そうした分野に専門性を持った職員を就労支援の場に用意しなきゃいかぬということで、逐次、予算も確保しながら取り組んできたところでありますが、さらにこの取り組みをしっかり進めてまいりたい。

 企業が障害者の雇用に円滑に取り組むことができるよう、今後とも、障害者の就労支援策の一層の充実に取り組んでまいりたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いします。

高鳥委員 桝屋副大臣、ありがとうございました。副大臣の力強いお言葉をいただきました。

 私は、障害者は気の毒だ、そして、かわいそうな人だから保護しなければいけない、人里離れた施設へ保護して、そこで一生を終えてしまう、そういうことではなくて、障害があろうがなかろうが、人としての命の重さ、あるいは、人生は一度きりだということは変わりがありませんから。

 余り言いたいわけではありませんが、うちの長男も障害を伴って生まれてまいりましたので、一度きりの人生をできる限り伸びやかに、やれることはやらせてやりたい、そういう思いを持っております。

 そういう意味で、障害者が普通に社会に参加をして、そして、地域に溶け込んで暮らしていける、差別のない社会をつくっていくということは非常に重要でありますし、そのために、かわいそうな人だからお金を上げるということではなくて、働きたいという意思がある人には、できる限りその夢を、希望を実現させてあげたいなと思っております。

 今後とも、御指導、御鞭撻を賜りますように、省を挙げて、あるいは与野党の枠を超えて、この問題にみんなで取り組んでいくべきだと思っております。ありがとうございました。

 終わります。

松本委員長 次に、輿水恵一君。

輿水委員 おはようございます。公明党の輿水恵一でございます。

 本日、質問の機会を与えていただきまして、心より感謝を申し上げます。

 私の方からは、初めに、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の一部を改正する法律案について、質問をさせていただきます。

 この精神保健及び精神障害者福祉において、やはり家族が精神障害者の保護をしっかりやっていく、面倒を見ていく、そういったことは当然、言うまでもございませんが、最近やはりどこの地域もそうだと思うんですけれども、高齢化してしまって、なかなかそこの負担が大き過ぎて、保護し切れないというか、対応し切れない、そういったケースもふえております。

 そのような状況の中、今回の改正によって、保護者制度が廃止されることになり、治療を受けさせるとか、医師に協力する、あるいは医師の指示に従う、また措置入院者等を引き取るなどの保護者に関する義務が削除され、これにより、家族等の保護者の負担が大きく軽減されるものとなっております。

 一方、保護者が障害者の人権を擁護する役割も担っていることから、その辺が後退するのではないか、そういった懸念も危惧されているところではございます。

 ここで、保護入院においては、扶養義務者、後見人も含めた家族等のうちいずれかの者の同意があるとき、本人の同意がなくても、精神病院の管理者が、医療及び保護のため入院の必要があると認めた場合、入院させることができるとされています。さらに、家族等の全員がその意思を示すことができない場合において、市町村長の同意があるときも、医師の判断によって入院させることができる。

 特に、このような状況の中で、精神障害者の人権擁護について、医師の適切な判断と同意をする者の冷静な対応も重要になってくる。そのような視点の中で、現実の、現場の問題をイメージしながら、何点か質問をさせていただきたいと思います。

 まず、例えば、両親がいました。でも、高齢化してしまって、息子さんが、ついこの間までは会社でばりばり働いていたけれども、あるとき、精神的な疾患に侵されてしまって、家の中で突然暴れたり、そういうふうな状況になってしまった。家族ではもうどうしようもできない、お父さん、お母さんも、押さえることができない。何とか一度病院に入院していただいて、そういった状況がおさまるまではお願いをしたい、そういったケースがあったとします。

 今までは、例えば、お父さんとお母さん、お父さんは、何とか息子を一回入院させたい、お母さんは、いや、うちの大事な子供をやはり家で見なきゃいけない、ばらばらで、うまく家族が一致しなかった場合、そういったときには入院ができなかったのかもしれません。

 今回、法改正によって、医療保護入院の今までの現状と、今後どのようにそれが変わるのかについて、障害保健福祉部長の方からお願いできますでしょうか。

岡田政府参考人 お答えいたします。

 現行の精神保健福祉法におきましては、精神保健指定医一名の入院が必要だという判断と、それから保護者の同意があれば、精神障害者本人の同意がなくても、その者を入院させ、必要な医療を提供できるというような医療保護入院の仕組みを設けているところでございます。

 先生御指摘のように、今回の改正では保護者制度を廃止いたしますので、保護者の同意要件をなくすことにしているわけですが、一方で、精神障害者の家族の方々に対するインフォームド・コンセントが重要であるということ、それから、精神障害者御本人の権利擁護をどう図っていくかという観点から、保護者の同意にかわりまして、新たに、家族などのうちいずれかの者の同意を必要とするという要件を加えることにしております。

 したがいまして、精神保健指定医に入院が必要だという判断をいただいた上で、家族などのいずれかの者の同意を得ていただいて、御本人の同意がなくても入院ができるというような形になるということでございます。

 これまで、精神保健指定医が入院が必要だというふうに判断をした場合でも、保護者という特別の地位に立つ家族の方がどうしても入院に反対だというような場合には、医療保護入院を行うことができなかったわけですが、今回の改正により、家族などのうちいずれかの者の同意があれば、医療保護入院を行うことができるようになるため、治療へのアクセスも広がることになるんじゃないかというふうに考えているところでございます。

輿水委員 ありがとうございます。

 ということは、家族、両親が意見が分かれていたとしても、何とか家族等のうちのいずれかの者ということで入院が可能になる。ある意味、入院で早期の治療を可能にする、そういった環境が整ったというふうな見方と、あるいは、安易に入院がなされる可能性もある、そういった両面を含んでいるかなと。

 本来受けるべき人がちゃんと治療が受けられる、そういった方向に進む、また進めていく、そういったことを意識しながら取り組むことが私も重要であるというふうに考えております。

 そこで、次に、先ほどの議論にもありましたけれども、やはり精神障害者の方の人権、地域の中で生活をして、そして少しでも就労をしていく、そこに生きがいもあるし、喜びもある。そういった意味で、保護入院の後、退院に向けての取り組みということもしっかり組まれてこそ安心して入院もさせられる、そういった環境になるんだと思います。

 そこで、保護入院をされた患者さんに対して、退院に向けてどのような取り組みが行われるようになるのか。地域援助事業者はどのような資格者が担うことになるのか、また、地域の受け皿の整備についてどのように考えているのか、お聞かせ願えますでしょうか。

岡田政府参考人 医療保護入院で入院される多くの方々、例えば統合失調症などの疾患であったと思うんですが、近年、統合失調症に対する治療薬が非常に改善されてきたことなどもありまして、大変入院期間が短くなって、早期に退院できるような形になってきているというのが現状だというふうに考えております。

 そうした動きも踏まえまして、さらに医療保護入院した患者が早期に退院できるように、いろいろな努力をしていく必要があるというふうに考えておりまして、精神科病院の入院患者に対します地域移行に向けた支援の充実、それから地域における支援体制の整備が重要だというふうに考えているところでございます。

 このため、今回の法改正におきましては、医療保護入院により入院した精神障害者の早期退院を促すため、精神科病院の管理者に対しまして、医療保護入院している精神障害者の退院後の生活環境に関する相談支援を行う退院後生活環境相談員を選任していただくであるとか、医療保護入院をしています精神障害者の退院を促進するために必要な院内の体制の整備を行っていただく、また、必要に応じまして、地域で精神障害者を支援する一般相談支援事業者などの地域援助事業者との連携などを義務づけることとしているところでございます。

 また、障害者の施策であります障害者総合支援法におきまして、地域における支援体制の整備を進めるという観点から、平成二十四年度から、第三期障害福祉計画で、都道府県におきます精神科病院からの退院に関する明確な目標値を設定いたしますとともに、その退院患者を受け入れる受け皿をつくるという観点で、アウトリーチ、訪問支援の充実であるとか、障害者の住まいの場でありますグループホーム、ケアホームの整備の促進、それから、入院患者の地域生活に向けた支援を行います地域移行支援、在宅の障害者の緊急時の支援を行います地域定着支援の提供体制の充実などの取り組みを行ってきているところでございます。

 こういった取り組みをさらに進め、精神障害者の地域生活への移行を一層推進してまいりたいと考えているところでございます。

輿水委員 ありがとうございます。

 ここで、一点だけ確認をさせていただきたいんですけれども、参議院の修正におきまして、「精神科病院に係る入院中の処遇、退院等に関する精神障害者の意思決定及び意思の表明についての支援の在り方について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする。」そういった修正がなされましたが、具体的に、もし必要があると認めたときにどのような措置が考えられるのかについて、できる範囲で結構でございますが、お聞かせ願えますでしょうか。

岡田政府参考人 御指摘のように、参議院では、今回の改正法の附則第八条に、精神科病院に係る入院中の処遇、退院などに関する精神障害者の意思決定や意思表明についての支援のあり方について、施行後三年を目途にして検討を行うということにされたところでございます。

 これは、今回の法改正の検討は、有識者の方、また当事者の方にお集まりいただいて、検討チームでずっと御議論をしていただいたわけですが、その検討チームの検討の中で、精神障害者の意思を代弁できるような方、代弁者という方を創設するようなことを検討してみたらどうかという御議論がございました。

 今回の法改正では、現状では代弁者の制度化はなかなか難しいということで見送っていることでございますが、そういった御議論もありまして、参議院でもそういうことが大分御議論になりまして、いわゆるこういった代弁者のあり方を含めました精神障害者の意思決定の支援のあり方について検討をしていくという趣旨で、こういった改正が行われたものだというふうに承知をしております。

輿水委員 ありがとうございます。そういったことも、必要な場合は適切な対応をお願いできればと思います。

 ここで、退院後の地域で暮らすための体制の整備ということで、先ほど、訪問のそういったケア等も考えていらっしゃるということでございましたが、本当に、今、精神障害者の皆さんが退院した後、またそういった地域で暮らす中で、保健所の相談員さんも毎日忙しく現場に、一回で解決する問題ではなく、何回も何回も足を運んでいくような、そういった取り組みも必要というふうに伺っております。

 地域の中での精神科病院や精神保健福祉センター、また保健所などの関係機関がしっかりと連携をとりながら、その地域での自立生活のための取り組み、きちっとした体系化をしていくことも必要なのかなと思うんですけれども、その辺についての見解をお聞かせ願えますでしょうか。

岡田政府参考人 精神障害者の方の退院後の地域生活を支えるためには、精神科病院そのもの、それから、障害福祉サービス事業所、それから、先生御指摘のように、地域精神保健業務を担います保健所であるとか精神保健福祉センターなど、行政機関との連携が非常に重要だというふうに考えております。

 保健所は、精神科病院や精神保健福祉センターなどの関連機関と連携して、地域で生活する精神障害者をより身近な地域で支援する役割を担い、精神障害者に対する相談、訪問指導のほか、保健所デイケアなどの社会復帰への支援を実施しているところでございます。

 精神保健福祉センターは、保健所や市町村が行います業務が効果的に展開されるよう、技術指導であるとか技術支援を実施しているというようなことでございます。

 今回の法改正で、新たに、精神障害者の医療に関する指針というのを策定させていただくことにしているところでございますが、その中で、精神障害者の居宅などにおける保健医療サービス及び福祉サービスの提供についても記載をするということにしております。

 法律成立後、関係者におきます指針の具体化を作業していく中で、保健所、精神保健福祉センターなどの役割、それから、精神科病院との連携などについて御議論を進めていきたいというふうに考えているところでございます。

輿水委員 どうもありがとうございます。

 そして、精神障害者の方が地域で生活ができるようになってきた、病院から退院し、地域で生活する、そういった皆様が、今度は地域で生きがいを持って暮らす上では、障害者雇用は大変重要な課題であると思います。

 そういう視点を持ちながら、続きまして、障害者の雇用の促進等に関する法律の一部を改正する法律案について質問をさせていただきたいと思います。

 今回の改正において、雇用の分野における障害を理由とする差別的取り扱いを禁止することや、事業主に、障害者が職場で働くに当たっての支障を改善するための措置を講ずることを義務づけとしております。さらに、法定雇用率の算定基礎に精神障害者を加えることとしております。

 このような流れの中で、地域の精神障害者の方も新しい道を大きく開かれてくる、そういったことを期待しているわけでございまして、その中で、まず初めに、障害種別の雇用の状況、就職者数、雇用者数、その辺の状況、実態についてどのように掌握されているのか、高齢・障害者雇用対策部長の方に伺いたいと思います。よろしくお願いいたします。

小川政府参考人 平成二十四年度のハローワークにおける障害者の就職件数は六万八千三百二十一件と、三年連続で過去最高を更新しているというところでございます。

 それを障害種別に見ますと、身体障害者は二万六千五百七十三件、知的障害者は一万六千三十件、精神障害者は二万三千八百六十一件となっておりますが、特に精神障害者の就職件数は前年比二六・六%増とその伸びが大きくなっております。

 また、民間企業で雇用される障害者は年々増加し、平成二十四年六月現在で三十八万二千三百六十三・五人と、九年連続で過去最高を更新しております。

 これを障害種別に見ますと、身体障害者は二十九万千十三・五人、知的障害者は七万四千七百四十三人、精神障害者が一万六千六百七人となっておりまして、特に精神障害者は前年比二七・五%増とその伸びが大きくなっております。

輿水委員 どうもありがとうございます。

 精神障害者の雇用が非常に伸びている、そういった御報告でございます。

 今度、現場の企業等、職場等の実態を見てみますと、一時的には、本当によく働いてくれて、すばらしい。ところが、やはり何かの機会に、急に体調を壊されて、会社に来られなくなってしまう、本人もその職場になかなか行きにくいというか、そしてなかなか復帰がしづらくなってしまう。そういったケースが精神的な障害者の皆さんにとってはよくあるケースで、なかなか企業としても、定着率という部分ではもう一つ難しい問題があるのではないか、そういった疑問も寄せられているところでございます。

 この定着率、こういった問題に対して、どのような視点で実態を掌握されているのかについてもお聞かせ願えますでしょうか。

小川政府参考人 委員御指摘のとおり、精神障害者につきましては、症状に波があるということから、職場定着に課題を抱えている方が少なくないということでございます。

 このため、ハローワークにおきまして、精神保健福祉士等を精神障害者雇用トータルサポーターとして配置いたしまして、就職後の定着支援を含む幅広い支援を実施するということをしております。

 また、カウンセリング体制の整備等、精神障害者が働きやすい職場づくりを行った事業主に対して助成金を支給するといった取り組みも行っております。

 さらに、地域障害者職業センターにおきまして、職場に専門のジョブコーチが出向いて、障害者及び事業主双方に対して職場定着のための支援を実施するほか、障害者就業・生活支援センターによる地域の関係機関と連携した職場定着支援などを実施して、就職後の精神障害者の職場定着を図っております。

 今後とも、精神障害の方の職場定着が図られるように全力を挙げてまいりたいと思っております。

輿水委員 どうもありがとうございます。

 だんだんこうやって雇用がふえてくることによって、ジョブコーチ等の、また会社の方の受け入れ体制、そういったものもなれてきて、定着率もさらに進んでくるのかな、そういったところにまた期待をさせていただきたいと思っております。

 さて、障害者の皆様の雇用を大きく支えていただいている社会の一つの制度として、特例子会社制度というのがあると思います。

 この特例子会社、特に精神障害者の定着率を高めるという意味でも、その状況、個人にきめ細やかな配慮ができる特例子会社制度は、非常に有効なのかなというふうに考えますけれども、こういった仕組みをさらに推進することについての当局のお考えをお聞かせ願えますでしょうか。

小川政府参考人 特例子会社につきましては、二十五年三月末現在において三百六十六社が適用されておりまして、年々増加しております。

 特例子会社では、御指摘のとおり、重度の知的障害者とか精神障害者等、一般的には雇用が難しいとされるような障害者を積極的に雇われておりまして、精神障害者雇用について先進的な取り組みを行っている特例子会社もございます。

 厚生労働省といたしましては、こうした特例子会社の取り組みにつきまして、セミナーの開催や事例集の作成、配布等により周知を図っているところでございまして、今後とも、特例子会社の活用を含めて、精神障害者の雇用の促進に取り組んでまいりたいと考えております。

輿水委員 ありがとうございます。

 そして、特例子会社、非常にすばらしい制度であるんですけれども、特例子会社は大企業というのがやはり中心になっていますので、地域に住んでいる障害者の方も、そこに通勤するということを考えた場合に、その通勤というのが足かせになってしまって、なかなか雇用に結びつかない、そういったケースもあります。

 そういった意味では、地元の地域にある小規模事業者、中小企業、そういったところにもきちっと、就労できるというか、受け入れ体制を整えていただく、そういったことも必要なのかなと。

 ただ、今度、中小企業、小規模事業者の皆さんにとっても、なかなかそこの皆さんを受け入れるための負担というものも、非常に重くのしかかる可能性もある。しかし、その負担をしても、雇用したことによってまた新しい道が開けるような、そういった雇用システムの環境を整えて、小さな企業でも、そういった障害者の皆さんに働いていただきながら、そしてその事業がさらに伸びるような、そういった道筋をつけるような取り組みも必要なのかなと思うんですけれども、見解をお聞かせ願えますでしょうか。

小川政府参考人 御指摘のとおり、中小企業は、特に地域における雇用の大きな受け皿であるということから、障害者雇用につきましても、身近な地域で自立した生活を求める障害者に対して、雇用の場を提供できる重要な役割を果たしているというふうに考えております。

 今般の障害者雇用分科会の意見書におきましても、「中小企業への支援の強化を図ることが必要」とされたところでございます。

 現行でも、障害者を新たに雇用した際に支給する特定求職者雇用助成金につきましては、大企業と比べて、中小企業には手厚く支給している、また、中小企業に特化した初めての障害者雇用に対する助成を実施している、また、中小企業向けの就職面接会を開催するなど、中小企業に力点を置いた支援を実施して、障害者と中小企業のマッチングを図っております。

 今後とも、中小企業における障害者雇用の促進に努めてまいりたいと考えております。

輿水委員 どうもありがとうございました。

 これはちょっと提案というか、例えば小規模の事業者で、障害者を雇用されている中小企業から、部品とかそういったものを調達した場合の大企業、その調達するということに対しての何らかのインセンティブとかがあれば、大企業の方もそういったところを使わせてもらって、そうしたらまたいいものを、また、そこに中小企業の方も、では、何とかうちでも雇用できるような環境をつくろうじゃないか、そんなことも考えられるような環境の整備もいいのかなと。

 これは、今後、またその現場の中で、いろいろな課題として取り組んでいただければと思いますので、よろしくお願いを申し上げます。

 そして、最後に、障害者の雇用において、地元の中小企業と同時に、やはり在宅就労、こういったものも、最近、いろいろなIT化が進んでいる中で、在宅での就労、こういったものも積極的に進めながら、多くの皆様がより付加価値の高い、そういった仕事ができるような環境の整備も必要だと考えますが、その在宅就労の推進についての見解もお聞かせ願えますでしょうか。

小川政府参考人 在宅就労で働く障害者に対する支援につきましても、障害者の多様な就労機会を確保するという観点から、重要であるというふうに考えております。

 このため、厚生労働省では、在宅就労する障害者の方の就労機会の確保に向けて、在宅就業障害者に仕事を発注する企業に対して、障害者雇用納付金制度において特例調整金とか特例報奨金を支給しております。また、在宅就労する障害者に対して、就業機会の確保、提供のほか、職業講習、就職支援等の援助を実施する在宅就業支援団体を厚生労働大臣が登録し、当該団体を介して企業が仕事を発注した場合も、特例調整金等を支給するといった制度を設けて、支援を行っております。

 今後とも、これらの制度の活用促進については図っていきたいと考えております。

輿水委員 ありがとうございます。

 もうあらゆる取り組み、できる限りのことをしていただきながら、あとは、地域で暮らす障害者の皆さんが新しい生きがいを持って生活できる、そんな社会を目指していただきたいと思います。

 そこで、最後に、全体的なことを大臣に伺いたいと思います。

 この精神障害者の医療、福祉や雇用をさらにしっかりとしたものにしていくためには、行き着くところ、人材の育成と確保、ここがやはり勝負になるのかなと。ジョブコーチといっても、そのジョブコーチの中身とか、特例子会社といっても中身、あるいは、先ほどの精神科のお医者さんの地域への復帰への取り組みとしても、そういった意識をどうやって持ちながら、当事者の方に寄り添って治療を進めていくか。やはり人材の育成と確保というものが勝負になるのかなというふうに感じております。

 厚生労働省の精神保健医療福祉の改革ビジョンにおいても、まさに、入院医療中心から地域生活中心へとの指針が示されております。

 今後、精神障害者の皆様の地域での生活を推進していくためには、医師の生活重視の治療あるいは推進、また精神保健福祉センターや地域援助事業者の体制整備、さらには生活訓練施設、グループホームの施設整備、また、さまざまな分野での就労においてのジョブコーチ、授産施設、福祉工場などを適切に運営するための人材の育成と確保が必要であると考えております。

 さまざまあるんですけれども、そういった視点での、精神障害者の皆様が地域で生き生きと生活できる、そういったものを目指しての人材育成、また確保に向けての大臣の意気込みとお考えをお聞かせ願えますでしょうか。よろしくお願いいたします。

田村国務大臣 心強い応援のお言葉だったというふうに思います。

 精神障害者の方々が、しっかりした医療を受け、また福祉を受けながら、雇用という分野でも御活躍をいただく、こういうような社会というものをつくるためには、やはり人材というものが大変重要であり、人材がなければ支援ができないわけでございますから、その育成というのは大変重要であるというふうに考えております。

 総合支援法でありますとか、また今般の法律等々、いろいろなものが相まって、障害者の方々が本当に住みよい、また暮らしよい、生活しよい、そういう社会をつくっていかなきゃならぬわけであります。そんな中において、例えば、地域援助事業者、これを担っております一般相談支援事業者がしっかり活躍をいただくためには、相談支援専門員をしっかり育成していかなきゃならないわけでございまして、都道府県等々、育成をいただく、また確保をいただいていかなきゃいけないわけであります。

 ここがまず動かないと、そもそもサービスの利用計画自体もできませんし、定着、また地域への移行支援というものも動いていかないわけでありますから、まず、ここの人材育成というものをしっかり進めていっていただかなきゃいけない。厚生労働省もしっかり御支援をさせていただきたいというふうに思います。

 そして、一方で、今おっしゃられました地域障害者職業センター等々で、ジョブコーチという方々がそれぞれ出張っていっていただきまして、それぞれの企業等々で、もちろん精神障害者も含めて障害者の方々、それと企業側と両方ともに、しっかりと定着支援というものを進めていただくような、いろいろな、ある意味、環境整備の助言というものをしていただかなきゃいけないわけであります。

 先般、私もある企業へお邪魔いたしまして、障害者の方々がどのような形で現場で御活躍をいただいておるかというのを、また悩み事もお聞かせいただいたわけであります。

 やはり全体として、企業で働く方々、それは障害者の方々だけじゃありません、一般の方々、健常者の方々、こういう方々もしっかりと意識を持って、極端に気を使う必要はないんですけれども、ちょっとこの部分を少し手伝えば十二分にその能力を発揮いただける方々ばかりでございますので、ちょっとした気遣いというものが、また障害者の方々にとってみれば、働きよい、そういう職場になるわけでございます。

 そんなことを助言いただくのがジョブコーチであるわけでございますから、ジョブコーチの方々に関しましても育成をしていかなきゃならぬわけでありまして、これは、厚生労働省が指定をした民間の機関でありますとか、高齢・障害・求職者雇用支援機構、こういうところでしっかりと育成をしていくわけでございまして、そのような部分でも、我々、何とか人材育成という部分に力を入れてまいりたいというふうに思っております。

 いずれにいたしましても、今後ともいろいろな御指導をいただければありがたいと思いますので、よろしくお願いを申し上げたいというふうに思います。

輿水委員 ありがとうございます。

 まさに人材育成は、未来への投資、また、障害を持たれている方の未来への希望だと思っています。どうか、田村大臣のお力で何とかまたこういった障害者福祉が大きく前進しますように心より期待を申し上げまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

松本委員長 次に、中根康浩君。

中根(康)委員 民主党の中根康浩でございます。

 きのう、おとといあたりの報道を見ますと、今ごろ安倍内閣がプライマリーバランスだとか財政規律だとか言い出して、補正予算の十兆円のばらまきは一体何だったのかというような気がいたしております。

 社会保障費も聖域なく削減をされていくということになると、今審議しているさまざまなこの厚労分野の予算も不安になってくるということで、山井先生がいたら、ここで、そうだという話になるわけなんですが、今いらっしゃらないものですから、自分で気持ちを鼓舞しながら質問してまいりたいと思います。

 今も、大臣も、人材が大切だという話であったんですが、どうも安倍総理のやり方というか言動を見ていると、失礼な言い方かもしれませんが、お金持ちの促成栽培で、本当は産業も人づくりもじっくり腰を据えて丁寧に丁寧に育てていくべきものであって、そう一朝一夕には育たないということを踏まえながら取り組んでいきたいということだと思います。

 まず、雇用のことからお尋ねをさせていただきたいと思います。

 今回の法改正は、障害を理由とする差別の禁止や合理的配慮の提供を全ての事業主に義務づけているということです。

 障害者雇用促進法には、一定の要件を満たす場合に、複数の事業主で実雇用率を通算することができる制度として、例えば、今もお話があった特例子会社制度、あるいは企業グループ適用、関係会社特例、あるいは事業協同組合等算定特例、特例事業主特例というようなものがあるわけでありますが、こうした制度の適用を受けている場合、今回の法改正の、つまりは合理的配慮の提供義務ということでございますが、この主体である事業主というのは誰を指すのかということになります。

 例えば、具体的には、特例子会社等の親会社事業主にこの法的義務が課されるのかどうかということについては、いかがなっているでしょうか。お尋ねいたします。

小川政府参考人 お答えを申し上げます。

 本改正による障害者に対する差別の禁止や合理的配慮の提供義務につきましては、その労働者を雇用する事業主自身に対して義務づけるものでございまして、特例子会社制度の対象となっている場合であっても同様でございます。

中根(康)委員 特例子会社の場合であっても、その親会社に義務がかかるということですね。

小川政府参考人 お答えを申し上げます。

 ですから、基本的には、親も子も両方、要するに事業主であれば全てかかるわけですけれども、直接雇っているところが一義的にはその義務を負うということになります。

中根(康)委員 確認ですが、そうすると、特例子会社は当然かかる。その特例子会社の母体である親会社は、どうなんですか。もう一度お願いします。

小川政府参考人 お答え申し上げます。

 ですから、親会社の方にも当然適用がございます。

中根(康)委員 合理的配慮の提供義務は、親会社にも特例子会社にも、両方ともかかるということを確認させていただきました。

 続きまして、精神保健福祉法の方でございますけれども、医療保護入院に際しては、新たな地域精神保健医療体制の構築に向けた検討チームが平成二十四年の六月にまとめた議論の中でも、保護者の同意を要しない制度にするとしたのに、今回の改正案では家族同意は残ったということでありますが、これはなぜかということをまずお尋ねしたいと思います。

    〔委員長退席、高鳥委員長代理着席〕

桝屋副大臣 お答えを申し上げます。

 今回の法改正の一つの論点かと思いますけれども、今委員から御指摘のありましたように、昨年六月の検討チームでは、非自発的入院のケースでありますが、医療保護入院は、この制度は維持する、ただし、その要件については、保護者の同意の要件を外して、精神保健指定医一名の診断で入院させることができるようにするというのが結論であったかと思っております。

 一方、今回の改正では、医療保護入院の要件につきましては、精神保健指定医一名の診断に加えまして、家族等のうちいずれかの者の同意を必要とするというふうにしているわけでございます。

 この理由でございますが、厚生労働省において法制化に向けた検討を行う中で、先ほども議論がございましたが、一般の医療でもインフォームド・コンセントがますます重要とされている、そうした中にありまして、家族等に十分な説明が行われた上で、家族等が同意する手続を法律上明記するべきではないかというような考え。それから、何よりも、本人の意思によらない入院を精神保健指定医一名の診断のみで行う仕組みは、患者の権利擁護の観点から見てどうなのかという問題点。それから、自傷他害のおそれのある措置入院の場合には、御案内のとおり、精神保健指定医二名の診断が必要とされるわけでありますが、自傷他害のおそれがなく、それよりも軽い症状の医療保護入院の場合には、では精神保健指定医一名の診断で入院させるというふうにしていいのかどうか。

 そうした議論から総合的に考慮し、精神保健指定医一名の診断に加えて、家族等のうちいずれかの者の同意をやはり求めた方がいい、こういう判断に至った次第でございます。

中根(康)委員 この医療保護入院に際しては、本人に病識がないという一つの特殊な事情があるということではあります。しかし、やはり、インフォームド・コンセントとか、あるいは権利擁護というものは、本人主体に考えられるべきであるし、今も、副大臣の御答弁でも、さまざま、もろもろあるけれども総合的にと。総合的にという言葉が使われたときというのは、とかく、余り具体的なはっきりした理由がないけれども、何となく全体的にというようなときに使われることが多いわけであります。

 そういう意味でも、今回の法改正では家族同意というのは残ったわけなんですけれども、本法案の三年後の見直しということもあるわけなんですが、この見直しにおいては、家族同意はやはり解消の方向で検討していく、見直していくべきだと。三年後にこれは検討を始める。三年後に検討を始めるのではなくて、三年後には解消されるように今から取り組みを始めていくべきだと考えている、それが本来のインフォームド・コンセントであり、本人の権利擁護だということだと思いますけれども、いかがでしょうか。

岡田政府参考人 今回の改正法附則第八条におきまして、医療保護入院における移送及び入院の手続のあり方について、施行後三年を目途として検討を行うこととさせていただいているところでございます。この中で、家族同意、家族などの同意の要件のあり方についても、検討を行っていきたいというふうに考えております。

 医療保護入院の同意につきましては、施行後の家族などによる同意の状況であるとか、精神障害者やその家族の方々を取り巻く環境の変化などを踏まえて検討を進めていくべきものと考えておりまして、現時点でその方向性についてお示しするのはなかなか難しいのかなと思っております。

 それから、検討の時期でございますが、附則で掲げられている事項につきましては、家族などの同意の状況であるとか、医療保護入院者の退院促進の措置の実施状況などを把握した上で検討すること、今回の改正で行われましたその状況を把握した上で検討することが必要だというふうに考えております。

 附則八条では施行後三年を目途として検討をすることとしていることを踏まえまして、二十六年の四月に施行になりますので、施行後、施行の状況がある程度把握できた段階で、できるだけ速やかに検討の場を立ち上げて、検討していきたいというふうに考えているところでございます。

中根(康)委員 既にこれまでの議論の中で問題点は浮き彫りになっているというか、指摘をされているわけであります。したがって、検討を、今回の法改正後の施行状況を見ながらというのは、これはよくある答弁のあり方でありますけれども、しかし、これまで疑問視されていたことが、今この法改正でも解消されているわけではありませんので、立ち上げてというよりも、継続的にこの見直しを検討していくということでなくてはならないと思っております。

 参議院における附帯決議もあるわけなんですが、代弁者制度、非自発的入院の場合、権利擁護には不可欠だと考えています。今も出ておりましたが、インフォームド・コンセントを尊重し、患者本人の権利を擁護するということであるならば、患者と対立関係となるおそれのある方々ではなくて、代弁者制度を権利として、自分自身の権利を保障されるという意味合いからも、患者自身が選任をする代弁者を保障するという制度は、やはり考えられてしかるべきだと思いますが、今回なぜ見送られたのか、理由をお聞かせいただきたいと思います。

桝屋副大臣 お答え申し上げます。

 この点も、参議院でも随分中心の議論になった点でございます。

 委員もおっしゃいましたように、昨年六月の検討チームの報告では、本人の権利擁護のための仕組みとして、入院した人は、自分の気持ちを代弁し、病院などに伝える役割をする代弁者、いわゆるアドボケーターを選ぶことができる仕組みを導入するべきである、こういう提言がなされたわけであります。

 この検討チームでのさまざまな議論、中身を見ておりますと、代弁者の議論については、それでは、家族のほか、どういう方がやるのかということで、例えば、成年後見人、あるいは地域の相談支援専門員、あるいは精神保健福祉士、PSW、それからピアサポーター等、さまざまなものが実施主体の候補として挙げられていた。それから、その活動内容、役割につきましても、入院の際に本人が伝えられないことを代弁するというような役割、あるいは本人とともに治療にかかわる、あるいは支援内容を一緒に選ぶということ、さらには本人の権利を擁護する、さまざまな御意見があったと承知をしているところでございます。

 このように、法律上代弁者を位置づけるためには、その実施主体や活動内容、役割等について明確に規定をする必要があるということが一つ。

 一方で、代弁者の実施主体、活動内容については、今申し上げたように、関係者の間にさまざまな意見があるという状況でありまして、今回の法改正には盛り込まずに、まずはこれらについて調査研究を行って、その趣旨の具体化に向けて十分な検討を進めていこう、こういう姿勢でございます。

中根(康)委員 今回は間に合わなかったけれども、今後、十分検討を進めていくという副大臣の答弁をいただいたところでございます。

 次に、医療保護入院に際しての同意のことに関して、幾つかのケースを承ってまいりたいと思います。

 例えば、同居する家族が、自分たちで面倒を見るので入院は不要だと言っているというのに対して、別居する扶養義務者が、同居する親族の意見は当てになりませんよ、信用できないから入院させてほしいと言った場合は、医療保護入院は成立をするんでしょうか、いかがでしょうか。

岡田政府参考人 医療保護入院の入院に当たりましては、同居する家族が、病識がない精神障害者に付き添って診察を受けるというのが、実際上はほとんどであるというふうに考えています。御指摘のように、別居する親族が、入院に反対する同居の家族の了解を得て診察に付き添うのは、例外的な場合ではないかというふうに考えているところでございます。

 なお、今回の法改正におきまして、医療保護入院の同意は、保護者ではなく、家族などのうちいずれかの者が行う仕組みにしておりますので、制度上は、同居の有無にかかわらず、家族などであれば医療保護入院の同意の判断を行うことは可能であるということでございます。(発言する者あり)

中根(康)委員 またよく議事録を見て今のところは精査をして、後ほどの質問者が取り上げていくということになるかもしれません。

 次のケース。離婚調停中あるいは遺産分割などで利益相反関係にある者の同意に対しては、精神科病院の管理者はこれを断ることができるのかということですが、いかがでしょうか。

岡田政府参考人 現行の医療保護入院につきまして、法律上の規定でございますが、精神科病院の管理者は、精神障害者について、指定医の診察の結果、入院の必要が認められ、かつ、保護者の同意があるときは、本人の同意がなくても入院させることができると規定されております。

 精神科病院の管理者は、患者の不利益が予想される場合などにおいては、入院を断ることも可能であるというふうに考えています。この点については、改正後の家族などの同意においても変更はございません。

 また、現行の保護者制度におきまして、精神障害者に対して訴訟をしている者などにつきましては、法律上、保護者になることができないというふうな取り扱いとなっておりまして、改正後の医療保護入院の同意ができる家族などについても、同様の規定を設けているところでございます。

中根(康)委員 利益相反関係にある人の医療保護入院の同意というのは、病院の管理者は否定することができるということですね。うなずいていらっしゃいますので、そういうことでございます。

 次のケース。家族等の全てが患者にかかわりたくないという場合、これは、入院について是でもない、非でもない、とにかくかかわりたくないと言った場合、治療に協力しないと意思表示した場合なんですけれども、入院治療や保護が必要な患者であっても医療保護入院はできないということになりますか。

岡田政府参考人 家族などの全員が医療保護入院の同意を行わない場合は、医療保護入院を行うことができないということでございます。

 なお、現行の保護者制度におきましては、一人の保護者の同意が得られなければ、医療保護入院を行うことはできないという仕組みになっています。

 精神障害者に医療または保護の必要があることが明らかな場合で、家族などの全員が医療保護入院の同意を行わない場合は、保健所が医療につながるよう本人や家族に働きかけを行うことになるというふうに考えているところでございます。

中根(康)委員 次は、退院の請求に関してですが、改正案では、入院に同意していない家族も退院請求できるということになっております。そのとき、入院に同意した家族の意見を聞くことになるのか、いかがでしょうか。

岡田政府参考人 現行におきましては、保護者から退院請求があった場合の審査の具体的な手続につきまして、精神医療審査会運営マニュアルをお示ししているところでございまして、今回の法改正で、家族などが退院請求を行った場合の手続や、患者が退院請求した場合の意見聴取などについても、マニュアルを改正してお示しする予定にしているところでございます。

 マニュアル改正の具体的な内容につきましては、今後、関係者の御意見を伺いつつ検討を行っていく予定でございますが、同意した家族は一般に入院患者を身近に支える家族であると考えられることから、その意見を聴取することが適当ではないかというふうに考えているところでございます。

 なお、審査会での退院の適否につきまして、基本的には、医学的な観点で行われるものであるというふうに考えております。

中根(康)委員 御答弁をいただきましたが、まださまざまなケースにおいて、いろいろと取り扱いといいますか、固まっていないというようなことも感じ取ることができたわけであります。本来は、いろいろなケースに際してどう対処するかということがしっかりと固まった上で、法案が提出されるべきだとは思いますけれども、今後、十分検討していくというか詰めていくということで、それは受けとめざるを得ないのかなという感じなんですけれども。

 今回の改正で、要件が緩和をされて入院がしやすくなったということは、これは確かといいますか、否定できないところだろうと思います。実際に、医療保護入院は今回の改正以前からふえているわけでありまして、ということは、認知症の人を含めて、厚労省は入院を減らそうと考えているわけではないということであろうと思います。

 厚労省は、二〇一二年十一月十二日開催の障害者政策委員会、第二回の第四小委員会というところで、病床削減の数値目標は立てないし、病床削減という方針はないと明言をしておられるということでございます。つまりは、そういったことをまとめますと、入院期間は短縮をするということは考える、だけれども入院自体は減らすということは考えない、必要な入院は必要だ、こういう姿勢は持ち続けていくということになるのかもしれません。

 これが、今回の法改正の目的である地域移行の促進に、今申し上げました厚労省の、入院は減らさない、病床は削減をしないというような姿勢を保ち続けるということが、この地域移行の促進という改正目的に矛盾することになるのではないかとも思いますが、このあたりはいかがでしょうか。

岡田政府参考人 今回の改正で保護者制度を廃止することに伴いまして、医療保護入院につきましては、精神保健指定医の診断に加え、保護者ではなく、家族などのうちいずれかの者の同意により、入院を開始できることとさせていただいているところでございます。

 これにより、保護者一人ではなく、家族などであれば医療保護入院の同意を行うことができることとなりますが、精神保健指定医の診断が必要なことは改正前後で変わっておりません。したがいまして、真に入院治療が必要な患者が医療保護入院により入院することになるというふうに考えております。

 また、患者御本人以外からの退院などの請求につきまして、家族などであれば退院などの請求を行うことができるということにしております。こういうことを通じまして、医療保護入院の適正性の確保を図ってまいりたいというふうに考えております。

 また、今回の法改正では、精神障害者を医療保護入院させています精神科病院の管理者が、精神障害者の地域移行を促進するための措置を講ずる義務をあわせて規定しておりまして、医療保護入院で入院しています精神障害者の早期退院を目指すということとさせていただいているところでございます。(発言する者あり)

    〔高鳥委員長代理退席、委員長着席〕

中根(康)委員 早期に入院をしていただいて、早期に治療を施して、そして早期に地域に帰ってもらうということなのかもしれません。ここがどうしても納得できないというか腑に落ちないところなんですけれども、早期に入院をするという入り口、ここが本当に正しいことなのかどうなのかということ。入院をしてしまえば、そこから先は早期に治療をして早期に退院、これはわかるんですが、早期に入院というところが、ここがどうしても納得しにくい、理解しにくいところなんですね。

 つまりは、精神疾患とか精神障害とかというものの原因は、本当に病院で取り除くことができるのか、病院で治療をすることができるのかということを考えたとき、必ずしもそうではないのじゃないかということを思わざるを得ない。

 そういう意味では、厚労省として、今、大西議員からの指摘もあったんですけれども、病床は削減の方向で考えるのか、入院というものは減らしていく方向で考えるのか、もう一度、ちょっと確認させてください。

岡田政府参考人 医療保護入院の入院に当たりまして、精神保健指定医、この方は精神科医療につきまして経験を積んだ方を厚生労働大臣が指定するという形で指定医ということになっておりますが、その方の入院が必要だという判断がまずあって、その上で、従来の保護者の同意ということにかえて、今回は家族などのうちいずれかの方の同意ということですが、入院が必要かどうかということは精神保健指定医に御判断いただくということでございますので、医学的な観点から入院が必要な方が入院されるということで、そこは今回の改正では変わっていないということでございます。

 近年、特に統合失調症の疾病薬が改善したことによって、入院期間が大変短くなっているということでございますので、そういったことも踏まえまして、現状では、新たに入院される方の九割の方は一年以内に退院されているというような現状でございますので、そういうような早期退院をさらに進めていくように取り組んでいきたいと考えているところでございます。

中根(康)委員 一年以内が早期退院なのかと。一年入院していたら、相当世間から遊離してしまう、隔絶されてしまう。人間、一週間もベッドで寝ていたら筋肉が落ちちゃって、リハビリしないと走ったり歩いたりできなくなってしまうというようなこともあるわけで、一年というものが早期か早期でないかということの目安になること自体が、ちょっと間違っているんじゃないかなという感じもしないでもないんですよね。

 任意入院が本来であって、強制入院は当然例外であるということは、これは確認をしていただけると思いますけれども、それよりもやはり、地域生活を続けながら通院をする、通院しながら治療をするということが私は望ましいと思っています。

 参議院において修正されたことにかかわることでもありますけれども、入院してどんな治療や処遇が施されるか。大部屋で、薬を投与して、時には拘束して、電気ショックが与えられて、それで本当にその人の病気が治るのか、社会復帰できるのかということなんです。

 もともと精神疾患の原因というのは、家庭とか職場など人間関係であるとか、あるいはDVであるとか、そういうところに起因するものであって、入院して社会から隔絶されても根本的な解決にはならないんじゃないかなというふうにも考えます。地域で継続的に支援する仕組みが大切で、多くの病院が、重い統合失調症の患者を入院させ、完治しないといっては長期にわたって入院をさせる。しかし、私は、地域生活において、病気の完治というのは必ずしも必要ではないと思っています。病気とうまくつき合いながら地域生活を続けるということができるはずだと思っています。

 日本は、入院患者が多過ぎて、入院期間が長過ぎると言われております。精神医療に関する予算は約二兆円、これに対して、障害福祉サービスには約九千億円。配付をいたしました、これは厚生労働省に、今回の法案における地域サービスのイメージ図をお願いしてつくってもらったものでございますけれども、こういったものをしっかりと地域で確立させていく、つまりは、医療から福祉へと、やはり徐々にではあっても転換をしていくということが、この精神保健福祉の分野でも当然必要だということになると思います。

 地域のこれを実現していくために、もっともっとこの障害保健福祉の福祉の方の予算の確保というものが必要不可欠になってくるということだと思いますけれども、平成二十六年度に向けての予算編成作業が間もなく始まっていくと思います。大臣、このあたりを、最後に、ぜひ、今回の改正が行われるということであるならば、なおさら、地域におけるケア体制の確立というもの、それに必要な予算の確保というものに対する御決意をお聞かせいただいて、質問を終わりたいと思いますが、いかがでしょうか。

田村国務大臣 委員と全く思いは一緒で、今回の法改正、病院にずっといてください、そういう問題ではありませんでして、いかに地域移行、地域定着というものをしていくかという流れの中での法改正であることは、委員も、この法律、そもそも民主党のときに検討チームをおつくりいただいて、御議論をいただいてきた内容を反映させていただきながら法律になっておりますから、その点は御理解をいただいておるんだというふうに思います。

 ですからこそ、医療機関に対して、地域に移行するためのいろいろな義務づけをさせていただいておるわけでありまして、そもそも多職種の方々に協力をいただく中で、アウトリーチというような形で、要するに訪問支援をしていくような形、それから、もちろん外来の方もしっかりと充実をしていくということでございますから、あくまでも、地域にどう移行するか、地域にどう定着していただくか、こういうことが前提の法律であるということは御理解をいただいているというふうに思います。

 あわせて、一方で、自立支援法は総合支援法という名前になりましたけれども、これも、何が変わったかというと、それまでの制度から比べれば、義務的経費になったということで毎年一〇%ずつ伸びてきているわけですよね。ですから、スタートは四千億だったのがもう八千六百億、これは国費の部分ですからね。二分の一を国費、国庫負担ということは、合わせれば一・七兆円まで規模がだんだん広がってきておるわけであります。

 医療と比べられるとなかなか難しいわけでありますけれども、そうやって今福祉の分野も大きく広がってきている。精神障害者の方々だけじゃなくて、障害者の方々が本当に住みよい、そんな環境を整備するために、これからもしっかりと我々は頑張ってまいりたいというふうに思っておりますので、また御支援、御協力のほど、よろしくお願いをいたします。

中根(康)委員 予算の確保に向けてのというところが、少し答弁として聞き取りづらかったんですけれども、間違いなくやっていただけるという理解をさせていただきます。

 ぜひ、まさに絵に描いた餅にならないように、少なくとも三年後の見直しのときには、これが実現できているね、その上でこれからどうしようかなというような、そういう次元になるように、厚生労働省の皆さんの御健闘を期待申し上げまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

松本委員長 次に、伊東信久君。

伊東(信)委員 日本維新の会の伊東です。本日もよろしくお願いいたします。

 私自身は精神医療の指定医ではございませんけれども、神経内科学で医学博士を取っていることと、今回の資料にもお出ししているんですけれども、医療専門学校で神経医学、精神医学の講師をしていましたので、その立場からお話しさせていただきたいと思います。

 重ねて申し上げますけれども、学会の場でなく、ここは国会ですので、余り細かくならないように気をつけます。それでも、最低限わかっていただきたいという内容は盛り込んでいるつもりなので、その点、御容赦いただきながら、よろしくお願いいたします。

 あえて今回、精神保健福祉士の国家試験の問題を資料の中に入れているのは、やはり、今回の法改正においてといいますか、精神医療に関する最大の問題点というのは、なかなか社会の認知度というかリテラシーといいましょうか、その辺の理解、社会的認知の問題もあるんですね。精神的な障害者に対する表立った差別ではないですけれども、どうしても回避するというのが、社会の場でも残念ながらまだまだあるのではないかなというところなんです。

 そんな中、これは、映画でありお芝居でもあるんですけれども、最近、「くちづけ」という映画が公開されておりまして、以前、お芝居でありました。東京セレソンデラックスという、宅間孝行さんという方がやられているお芝居でして、私はそれを見に行ったことがあるんです。

 簡単に申しますと、知的障害を持った娘さんとお父さんとの二人暮らしで、民間のボランティア施設に入院されているんですね。それで、残念ながらというか不幸なことに、そのお話の中でこの親子は最終的に心中をされるんです。金田明夫さんという方がお父さんの役をやられて、映画の方は竹中直人さんという方がお父さんの役をやられています。お父さんの方ががんになりまして余命幾ばくもない、自分が亡くなったときの娘のこれからの人生を悲観する余り心中を図る、こういった悲しいお話なんです。

 あえてこのお話をさせていただいたのは、このお芝居のオープニングで、ばあっとスクリーンが出てきて、ビデオが流れるんですね、VTRが。VTRはニュース報道です。宮根誠司さんがニュースの報道をします、こういった悲しい事件がありましたと。

 今回の被害者の方というか、心中された方はこの方ですという写真が十枚ほど、適切な写真がなかったので、十枚ぱんぱんぱんと流れるんですけれども、どれもこれもお父さんの顔に落書きがしてあるんですね。娘さんが顔に落書きをするわけですよ。その落書きの仕方が巧妙なので、観客は笑うんですね。私もそのお芝居を見ていて笑いました。最後は、やはり悲しいお話なので、不覚にも涙したんですけれども。

 何が申し上げたいかといいますと、宅間さん、セレソンデラックスのメッセージというのは、こういった障害に対して、ともに考え、ともに暮らしていく社会であるから、顔に落書きをして笑うのは当たり前なんですね、おもしろい顔というのは。こういうのはともに笑っていいわけなんですね。だから、障害があることに対して、我々、人間というのは個性がありますから、ともに同じなんだという考えに基づいて、きょうの議論というのをさせていただきたいと思います。

 とはいうものの、以前、作家の乙武さんのお話をしましたように、ハンディキャップを持つところは社会全体でカバーしていかなければいけない。このあたりを混同した社会保障というのは、やはり国として、社会として間違いではないかなと思うんです。

 今回、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の一部を改正する法律案の概要の中で、医療保護入院の見直しというのがございまして、最大のポイントは、保護者の同意要件を外し、家族等のうちのいずれかの者の同意を要件とするということです。

 午前中からの、私の質問以前からの議論にもありましたけれども、もう一度確認させてください。この医療保護入院の見直しというのは、果たして、医療保護入院をしやすくしているんですか、それとも、しにくくしているんですか。容易にする方向なのか、困難にする方向なのか、その方針というのを聞かせてください。

岡田政府参考人 経緯的にちょっと申し上げますと、今回の改正で我々が一番大きな課題だとして取り組みました、保護者制度をどうするかということでございまして、保護者制度を廃止するという形でさせていただきました。

 この保護者制度につきましては、明治三十三年に制定されました精神病者監護法におきます監護義務者に端を発する制度でありまして、ほかの疾病であるとか、ほかの障害にはない、精神障害者独自の制度として、精神保健福祉法に特別に設けられた制度でございます。

 この制度につきましては、保護者である一人の家族のみが法律上さまざまな義務を負うことが負担が大きいのじゃないかというようなことであるとか、本人と家族の関係はさまざまで、保護者である家族が必ずしも本人の利益保護を行うとは限らない場合がある、それから、保護者制度が創設された当時と現在では、やはり医療とか福祉のサービスとか、そういうような状況が大分変わっていること、それから、高齢化の進行によって家族の状況も変わっているといった、社会経済の状況も大きく変わっているということから、精神障害者当事者、それから家族から長らく見直しを求められたことでございまして、そうしたものを踏まえまして、今回、この法律で保護者制度を廃止するという形にさせていただいたところでございます。

 それに伴いまして、医療保護入院は、精神保健指定医の医師の診察に加えまして保護者の同意を必要とするという形で記載されていますので、保護者制度がなくなりますと、その保護者の同意というのをどういうふうに扱うのかということで、さまざまな議論をいたしました結果、先ほどから答弁いたしますように、家族に対するインフォームド・コンセントであるとか、それから本人の権利擁護というような形のことを考えまして、保護者の同意にかえまして、新しく、家族などのうちいずれかの者の同意を必要とするという形で今回の改正案を作成したところでございます。

 これに加えまして、従来から、精神障害者の地域移行をさらに促すということから、地域移行を進めるための各般の施策についても、あわせて規定をさせていただいているところでございます。

伊東(信)委員 おっしゃることはごもっともなんです。

 それで、病院の中で治療することが果たして患者さんにとっていいことなのか、悪いことなのかということは、治すということをまず医者は考えるわけなんですけれども、それが治せるかどうかということも問題になっていくわけなんです。

 厚労省の方の資料なんですけれども、「精神保健医療福祉の現状及び課題について」で、精神病院入院患者の疾病別の内訳で、統合失調症がかなり多いわけなんですけれども、その中に、てんかんであるだとか、アルツハイマー、薬物の話、うつ、そして知的障害であるとか、かなり多岐にわたっているわけなんですね。

 次のページの、精神保健福祉士の国家試験の問題九に、問題の解説とかそういうのはしませんので、問題九のうち、うつ病の患者さんが、「「職場が原因なのですぐに退職したい」と相談に来たときに、精神保健福祉士がまず行うべき対応として、正しいものを一つ」ということで、正しくないものが四つあるわけなんですね。

 一 職場の配置換えの交渉を促す。

 二 気晴らしに一人旅をするように勧める。

 三 気持ちをしっかりと持つように励ます。

 四 退職の意志を確認した上で退職を勧める。

 五 症状が改善するまでは決めないように勧める。

ということなんです。

 答えは五番なんですけれども、解説していますね、これは、なぜこの問題を出したかというと、インフォームド・コンセントに関係してくるからなんですね。

 つまりは、三番の、気持ちをしっかり、励ますというのは、うつ病の患者さんを元気になっているときに励ますと、かえって自殺企図をするからいけない、そういう意味なんです。

 四番、「退職の意志を確認した上で」ということは、退職を勧めるというのが社会的にどうなのかということもあるんですけれども、退職の意志を確認するのはやはり困難だという判断に基づいてのこの問題なんです。

 五番目、「症状が改善するまでは決めないように勧める。」これが答えなんですね。つまりは、どうしても判断のできない患者さん、これが精神障害の根本であるわけです。

 次のページの一番の問題を見ていただいたら、患者の訴えと症状に関する組み合わせのうち正しいものと書いていますけれども、これは実際に患者さんが普通に口に出す言葉なんですね。

 一番、「私の脳が腐って動いている」。そして三番、「暗い所で白衣が幽霊に見える」。これは私が幽霊に見えるのかどうかわかりませんが、そういったこともおっしゃるわけですね。四番、「周りが生き生きと感じられない」。これはうつ病の患者さんとかの話なんですけれども、統合失調症の患者さんにも、こういった、うつ病と区別のつかないことが出ています。

 だけれども、一般的に、私の脳が腐っている、そしてそれが浮かんで見えると言われると、これはもう完全に病識が客観的にはわかりますよね。しかし、さっきの、私が気分が晴れないのは職場のせいだというと、悩んでいるからだということで済むわけですよね。このあたりの区別というのが、診断というのが非常に難しいわけです。

 そんな中で、今回、法律の改正、保護者の同意要件を外し、家族等のうちのいずれかの者の同意を要件とする。配偶者、親権者と並んでいって、最後、市町村長が同意の判断を行うということなんですけれども、保護者制度というのを廃止したにもかかわらず、家族の同意を残すということは、いわゆる強制入院、例えばうつ病の患者さんで、気分がすぐれないという方に強制入院をするというのは、やはり社会的にどうかなというのはわかるんですけれども、脳が腐って浮かんでいるという患者さんに対して、これはまずカウンセリングの範囲で済むのだろうかというのは、なかなか専門性を要すると思うんですね。この場合、強制力というのは、残念ながら必要である場合があるんです。

 この場合、患者さんの人権との照らし合わせになると思うんですけれども、ここで一番私が強調したいのは、強制入院における国の責任を明確にしていることを、今回の法改正で回避しているように感じるのですけれども、そのあたりの御見解はいかがでしょうか。

岡田政府参考人 精神疾患というのは、先生御指摘のように、統合失調症のほか、うつだとか、さまざまな病気がございまして、特に、どちらかというと昔は統合失調症が中心だったと思うんですが、最近は、うつであるとか、依存症であるとか、そういうものが大分注目されてきているというふうに感じているところでございます。

 医療保護入院との関係で申しますと、精神疾患の方全てが入院ではなくて、いろいろな治療の仕方があると思いますので、入院が必要かどうかという御判断は、精神保健指定医の方がその患者さんを診て、これはやはり入院させた方がいい、それから、症状によっては通院していただくとか、カウンセリングを受けていただくような、いろいろなやり方がある中で、やはりどうしても入院が必要だというような御判断をされる方が医療保護入院の対象になるということではないかというふうに考えております。

 それから、入院の形態も、御本人が同意して行われます任意入院、それから、自傷他害があって、自分を傷つけたり他人を傷つけたりということで、都道府県知事の行政措置で行われる入院制度、これは措置入院というふうに行われていますが、そういう問題、それから医療保護入院という、三つの入院の形態を精神保健福祉法では規定させていただいています。

 その中で、措置入院でもなく、なかなか御本人が納得していただけないということで任意入院もできないというような方について、御本人の同意が得られないということで、医療保護入院という形で行われているケースがあるということで、そのケースにつきましては、先ほども言いましたように、保護者の制度がなくなることに伴いまして、精神保健指定医の診察に加えまして、家族などのいずれかの者が御判断いただくという形で、今回の見直しを行ったところでございます。

伊東(信)委員 最終的に該当者がいない場合は、市町村長が同意の判断を行うということなんですけれども、ということは、最悪の場合は、家族等の同意がなく各自治体で決めるという、このことは、私が質問した範囲の、いわゆる国及び行政及び自治体の責任において行使できるということなんですけれども、これを最終的に行うのであれば、最初から市町村長の同意、判断を行うというものでもいいかなと思うんですね。

 もちろん、保護者という同意要件を外したので家族等というところを入れたのだと思うんですけれども、結局、ここで問題となるのは、医療現場が、家族に聞いて、そして、その後の親権者及び後見人と順番に聞いていく作業が必要なんですね。

 それで、私、この後の質問の中にもあるんですけれども、医療現場の混乱、つまり、医療側への負担がかなりふえてくると思うんですね。精神科の先生方に頼まれたわけじゃないんですけれども、我々外科医も、いわゆる精神疾患の患者さんを扱う場合、やはりカウンセリングなりコンサルを精神科の先生に委ねなければいけなくて、精神科の先生の負担というのは、ますます、この法改正上、ふえていくと思うんです。

 重ねて申し上げます。配偶者、親権者、扶養義務者、後見者、順番に医者がこれをマネジメントして、聞いていかなければいけないのでしょうか。

岡田政府参考人 医療保護入院の要件につきましては、先ほどから御説明させていただいておるように、精神保健指定医の診断に加えまして、家族などのうちいずれかの者が同意をするということで、順番に聞いていくということではなくて、どなたかお一人が同意していただくということでございます。

 実際上は、病識が、自分が病気だという意識がない方ですので、御本人が自発的に病院を受診されるというよりも、心配された家族の方が病院に連れていって受診させるということだと思いますので、それに同行していただいた家族の方が同意すれば、そこで入院ができるというようなことになるというふうに考えているところでございます。

伊東(信)委員 しかしながら、家族内の、つまり、やはり精神疾患を抱えている患者さんの負担というのは大きいわけで、その家族の方々が、病気じゃなくても、悩み事があれば、やはりうつ症状になるのは人間の精神状態としてあり得ることなんですね。

 ということは、疾患を持った患者さんもかなり精神的なプレッシャーがございまして、早く入院させたいという患者さんの家族もおられれば、先ほど議論になっているように、いやいや、家族で面倒を見ようというような家族の方もおられて、それが家族内であった場合、家族間の問題が医療に持ち込まれるのではないか、そういった危惧を精神科の先生もされている、現場の先生もされているわけなんです。

 このあたりに関しては、いかが政府としては対処しようと思われていますか。

岡田政府参考人 御指摘のように、医療保護入院についてどう考えるかということについて、家族間でいろいろな意見の対立があるということは、生じるものだと思っています。

 医療保護入院の同意に当たりまして、患者さんが、一旦入った後、退院された場合に、何らかの形で治療を継続するというような形が必要だと思いますので、御家族の方が支えられるということが必要だと思いますので、入院に当たって家族間で考え方が異なるような場合にありましても、精神科の医師から、医療保護入院に反対する方に対しても、その必要性を十分説明していただきまして、可能な限り理解していただくことが適切ではないかというふうに考えているところでございます。

 ただし、必要な医療へのアクセスを確保するという観点から、法律上の制度といたしましては、家族などのいずれかの方の同意が必要だという形で整理させていただいているところでございます。

伊東(信)委員 時間も大分なくなってきましたので、次に移りたいと思うんです。

 精神科の現場での負担が大きいこと、今、退院された患者さん、アウトリーチの問題もありましたけれども、なかなか、今回の法の改正にもかかわらず、まだ、社会におけるいろいろな法整備がなされていないのではないかなというところが危惧されています。本来ならば、実際、長期入院されている患者さんの中には、難治性の方もおられますけれども、高齢者であり、本来は介護施設に行かなければならない患者さんもいるのに、精神疾患があるために介護施設には入れない、そういった問題もあります。

 しかしながら、精神保健福祉士の質問もしたいので、そちらの話を先にさせていただきますけれども、実際、現時点で、精神保健福祉士というのは、精神科病院の全体ではどれぐらいの割合で設置されているかというのは、現在把握されていますか。把握されていなかったら、それはそれで構いません。そのことに関して言うつもりはないですから。

岡田政府参考人 精神保健福祉士を配置しています病院は、精神科病院が五千五百九十三人で、一施設当たり平均しますと、五・二人でございます。このほか、一般病院に二千百三十人、一施設当たりで〇・三人配置されているというふうに承知しています。

伊東(信)委員 ありがとうございます。

 そこで、精神保健福祉士等を今回の法律の中で義務づける。精神科病院の管理者に、医療保護入院者の退院後の生活環境に関する相談及び指導を行う者として精神保健福祉士等ということなんですけれども、この「等」をつけた理由というのを教えていただければと思います。

岡田政府参考人 御指摘のとおり、今回の法改正では、精神科病院の管理者に、退院後の生活環境に関する相談支援を行う退院後生活環境相談員を選任することをお願いしているところでございますが、この相談員につきましては、御指摘の精神保健福祉士のほかに、厚生労働省令で定める資格を有する者ができるという仕組みとさせていただいています。

 具体的には、精神障害者の保健また福祉に関します実務経験を有します看護師なども定めることを検討しているところでございます。

伊東(信)委員 検討ということなんですけれども、例えば臨床心理士とかは国家資格ではなくて、この精神保健福祉士が国家資格であるわけですね。二枚目、三枚目の国家試験の問題にありましたように、かなりの医療知識を必要としています。これ以外にも、てんかんであるとか、認知症であるとか、いわゆる発達障害、アスペルガー症候群とか、多岐にわたる知識を必要としています。

 しかしながら、こういった専門の方を雇うのには、やはり人件費というのが必要になってくるわけなんですね。現在の精神科の病院を設置するに当たり、この精神保健福祉士などを雇わなければいけないという規定なり法律はないんです。にもかかわらず、ここで、退院後に、精神保健福祉士などを設置することを義務づける法的な整合性というのは、どうなっておりますでしょうか。

岡田政府参考人 今回の法改正におきましては、医療保護入院した精神障害者の早期退院を促すという観点から、精神科病院の管理者にさまざまな取り組みを行っていただくというようなことで、先ほど申しましたように、退院後生活環境相談員の選任というのを新しく義務づけて、早期退院に向けた取り組みを行っていただきたいということで考えているところでございます。

 その相談員の例示といたしまして精神保健福祉士を例示いたしましたのは、精神保健福祉士の業務が、そういった地域移行を行うというのが、臨床心理士さんなどとは違いまして、精神保健福祉士はまさにそういったことを行うことを主たる業務としているところでございますので、例示としてそういう形で書かせていただいているということでございます。

伊東(信)委員 お待たせいたしました、あと二分ぐらいになるんですけれども、田村大臣、腰がお悪いということで、ちょっと気を使ったわけなんですけれども、ただ、座りっ放しも三十分ぐらいが限界ですので、やはりちょっと動かなければいけないので。

 今答弁していただいたお話全てを総合すると、方向性としては、やはり正しい方向に向かっているとは思っているんですね。ただ、そのためには、地域のいわゆる精神障害に関する啓発システム、そしてまた、一番大事なのは、そのための財源を確保することなんです。

 私自身の方針としては、医療費が高騰する、公費の医療費に関する割合を何とかしたいという思いで、例えば併用療法の話をしたりとかしていますけれども、ただ、どうしても治らない、どうしても社会的に手助けの必要な方には手厚くという考えのもとに、きょうの質疑をさせていただきました。

 例えば、認知症患者の方はどういう方なのか、精神疾患の患者さんはどういう方なのかということは、教育の場になるので文科省の範囲になります。だけれども、社会的な認知、そして、先ほど申し上げましたように、財源を厚労省がここの精神疾患に関することに確保するに当たり、やはり厚労省及び田村大臣の責務はかなり重いと思いますけれども、その辺の御決意を聞かせていただいて、私の質疑を終わらせていただきたいと思います。

田村国務大臣 まず、入院ありきという考え方はないわけでありまして、別に入院いただかなくても十分に自宅等々で療養できる方は、通院していただいて、精神疾患の方を克服いただければいい話でございます。

 一方で、今回の場合は、本来入院をいただく、そういうような症状があられるにも、なかなか御本人がそれに気づいておられないという形の中で、一つは、保護者制度というのが非常に重荷になっておられるのは事実であります。誰が保護者かということはわかるわけでありますから、退院された後の生活にも影響が出てくるということで、今般、このような形で、家族という概念を入れた。

 本当は、指定医だけでいいじゃないかということも検討チームで御議論いただいたんですが、そこはなかなか、権利擁護の問題もある中において難しい部分があるなということで、このような形にさせていただきました。

 首長さんというお話もあるのかもわかりませんが、やはり十三万人おられますと、なかなかこれは首長さん、ぽんぽん判こを押すだけの話じゃございませんので、やはりそれなりにそれぞれの御事情を勘案した中で御判断ということになりますから、これは事実上難しいんだろうなというふうに思います。

 最後の段でございますが、やはり、地域で御生活をいただくために、今回、医療機関にもアウトリーチの大きな役割というものを担っていただこうということで、その部分に関しましてはしっかりと対応を国としてもしていかなきゃならぬと思いますし、今言われましたPSWのお話も、今もやっていただいていますから、今もやっていただいておる中においては、人員的にそれほど影響はないのかもわかりませんが、どのような状況が出てくるのかということも我々勘案しながら、もし問題があるのであるならば、対応策を考えていかなきゃならぬというふうに思っております。

 いずれにいたしましても、お金がかかる、かからないというよりかは、やはり、精神障害をお持ちの方々が生き生きと地域で疾患を治しながら生活をしていただくということが一番重要であろうというふうに思っておりますので、そのような形にそぐう制度にしていかなきゃならぬということで、万全の対応をしてまいりたいというふうに思っております。

伊東(信)委員 よろしくお願いいたします。

 ありがとうございました。

松本委員長 次に、中島克仁君。

中島委員 みんなの党の中島克仁です。

 本日は、障害者の雇用の促進等に関する法律の一部を改正する法律、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の一部を改正する法律案ということですが、質疑時間が十五分しかございませんので、障害者雇用については、来週も参考人の部分でもまた議論もあると思いますし、質疑時間もたっぷりあるということですので、本日は、精神保健福祉法、その辺について御質問をさせていただければと思います。

 なお、ちょっときょうは質疑者が急にかわってしまいまして、通告したものと順番が多少ずれておるかもしれませんが、その辺、御容赦いただきたいと思います。

 まず、精神科医療の入院短縮にかかわる政策について、これは、大臣が、良質かつ適切な精神障害者に対する医療の提供の確保に関する指針で、本年度中にまとめる事項だとは思います。入院から地域社会へ、慢性期対策から急性期対策へという精神科医療の流れが加速している中で、長期入院の解消、つまり退院促進についてお伺いをしたいと思います。

 我が国では、精神医療が入院中心型から脱却できない状況が続いておると思います。平均の在院日数が三百日と、諸外国に比べて桁違いに長い。精神障害を持つ入院患者さんは、できるだけ早期に地域生活へ戻れるようにすることが重要なことだと思っております。入院が長くなればなるほど、主体性を失って、退院が難しくなる悪循環に陥ってしまう。諸外国では一九六〇年代に精神医療を地域中心型へと切りかえたことに対して、我が国では逆に入院、収容型というような政策をとったことが、長期入院の原因に至っているというふうな認識もできると思います。

 精神科入院が長期に及ぶ理由は、大きく分けると三点挙げられるかなと。一つは、患者さんサイドの理由、そしてもう一つは、病院サイドの理由、もう一つは、社会資源の理由ということが挙げられると思います。

 その中で、まず一点目の患者さんサイドの理由としますと、先ほど言った悪循環、入院が長期化、それにつれて患者さん自身が地域で生活する自信を失ってしまう、そしていろいろな背景の中で受け入れ先が見つからない。これはそのまま社会資源の理由ということになるわけですが。

 もう一つ、患者さんサイドの原因としますと、高齢化に対する認知症の増加というのも挙げられるのではないかと思います。統合失調症の方々の入院が減ってきている一方で、認知症の方々の入院がふえております。

 いろいろな、アルツハイマーや脳血管性の認知症、症状もさまざま、そんな現状の中で、まずお伺いしたいことが、本当に精神科病棟に入院せざるを得ない認知症の方々はどのような症状で入院しなければならないのか、全体としてどのぐらいの割合がいるのか、お尋ねしたいと思います。

岡田政府参考人 精神科病院に入院されています認知症の方の状態像について、詳細なデータは持ち合わせておりませんが、平成二十二年に、精神病床における認知症入院患者に関する調査というのを行っております。

 調査対象になったのが四百五十三人でございますが、その入院の理由は、精神症状が著明となり、在宅療養や介護施設などでの対応が困難となった方が七二%ということで、大宗を占めているという状況でございます。そのほか、精神科以外の医療機関で身体合併症の治療を行っていたが、精神症状が著明となり、治療を継続できなくなった方が一二%、身体疾患の急性期状態が安定し、精神症状の加療が必要になったためという方が九%というような結果になっております。

 また、調査の中で、退院の可能性がない方が二百八十三人という形で出ているわけですが、その退院ができない理由につきましては、迷惑行為を起こす可能性が高い方が四一%、それから、精神症状を伴うため、入院による身体合併症のケアが必要という方が三七%ということでございます。

 一方で、精神科病院に入院せず、できる限り地域で生活できる人を増加させる観点から、本年三月に、精神科医療及び介護関係者で構成されました研究会を設置させていただいておりまして、その中で、精神科病院に入院が必要な認知症の方の病態像の明確化、それから認知症の人の地域、在宅生活継続を可能とするための支援条件などについて、現在検討を進めているところでございます。

中島委員 これもやはり、かなり割合的には、精神症状が不安定になるということ。

 私も実感しているのが、徐々に進行してくる場合は御相談の中でいろいろな対応がしやすいんですが、かなりひどい状況、認知症が進行してから相談を受ける、そうしますと、例えば男性の方の認知症、ひどい場合は自傷行為もございますし、暴れてしまう。これ自体は認知症の進行ですから、その方自体は責められないんですが、実際の対応といたしますと、やはり現状では精神科の病院にということが流れになってしまっているんですね。

 そうなりますと、いい薬も出てはいるんですが、完治というところにない。それがやはり長期入院の原因になってしまったり、今も御答弁の中にもありました、今、介護保険の方では認知症対応のグループホームとかデイサービス、そのような拡充も図っておるわけですが、これから高齢化のピークを控えております、そして認知症の方の対応、それを、どこまでが精神科の病院で見なければいけないのか。一方では、先ほども中根委員の方からもございました、福祉、介護の方の拡充。

 その辺、具体的にどのように考えておられるのか、何か具体策があればお教えいただきたいと思います。

岡田政府参考人 精神科病院での入院が必要な認知症の方の病態像の明確化につきましては、先ほどの専門家の方で構成されました研究会で現在検討しているところでございます。

 そのほか、認知症患者に対します医療のあり方につきましては、平成二十五年から始めます次期の医療計画の記載事項に、認知症を含みます精神疾患を加えまして、各都道府県におきまして認知症に関する医療提供体制の充実を図っていただくということにしているところでございます。

 その中で、精神科病院に入院する認知症患者の早期退院を促すという趣旨から、平成三十二年度までに、新たな認知症入院患者のうち五〇%は、退院できるまでの期間を現在の六カ月から二カ月まで引き下げることなどを指標として具体的な施策を推進していくという、大きな目標を持っているところでございます。

 具体的には、精神科病院からの早期の退院を可能にし、退院後の認知症患者ができるだけ住みなれた地域のよい環境で暮らし続けることができますように、認知症の状態に応じた適切なサービス提供の流れを構築したケアパスを全市町村で策定していただくというようなことであるとか、退院見込み者に必要になります介護サービスの整備を平成二十七年度以降の介護保険事業計画に反映するなどの方法を検討したりとか、介護保険施設などで認知症対応力の向上を図っていくというようなことなど、認知症施策推進五カ年計画というのを策定しておりますので、それを着実に推進していきたいというふうに考えているところでございます。

中島委員 正直、何かよくわからなかったんですが。

 要は、先ほども言ったように、認知症に対して、これは介護の方、福祉の方が、拡充を図ってそちらで見ようという方向性なのか、それとも、あくまでも、そういう対応しづらい状況の方は、一旦はやはり精神領域で見ていくのか。

 その診断という意味では、入り口は精神領域でもいいのかもしれませんが、それがアルツハイマー、脳血管にしても、認知症とされた場合、それは、これから介護の部分でしっかり補っていく方向性なのか、それとも、早期退院とさっきおっしゃっていましたが、そこは従来どおり考えていらっしゃるのか。方向性として、認知症はこれから福祉の拡充を図ってしっかりと見ていく、そういう、どちらなんですか。

岡田政府参考人 認知症施策推進五カ年計画という形でさせていただいていますが、その中で、やはり早期診断で早期に対応していくというようなこと、これは、医療も含め、福祉の分野も含めて、全体として取り組むべき課題だというふうに考えています。それから、精神科病院なり、また施設なりで認知症の方がちゃんと受けられるような、そういった体制を、基盤整備を図っていくということも非常に重要だというふうに考えているところでございます。

 一方で、それで全部、精神科への入院がなくなるかというと、それは、やはり精神症状が出ているというようなことで、そういう方がどうしても出るというのは考えられるところでございますので、そういった精神科病院に入られる方については、できるだけ早く退院していただくような取り組みを進めていくというようなことを全体としてやっていきたいというふうに考えているところでございます。

中島委員 大変難しいことだというのは十分理解しています。

 地域において、私もたくさんそういうグループホームとかショートステイとか特別養護老人ホーム、いろいろ往診もしておりますけれども、やはり介護施設というのは、夜になりますと介護士さんが一人で夜勤をしたり、そういうときに、比較的体の大きい、御高齢な方なんですがやはり認知症がひどいという方に対して、大変恐怖感を覚えたりとか。

 そういう体制自体も、やはり介護の拡充、認知症に対する、先ほども言ったように、認知症対応型のいろいろな施設もあるようなんですが、認知症自体が、もし認識されて、そこで精神領域で入院してしまうと、その先の受け入れ施設、これも地域差がかなりあると思いますが、やはりこれは絶対長期になってしまうんですよね。できるだけ早期にといっても、要するに、受け入れ体制の問題が整わないと、結果的に長期になってしまうということは現実だと思います。

 入院中心医療から地域中心医療へ移行するということの中で、財政的な裏づけ、そういった取り組みについて、地域支援事業所とされる一般相談支援事業所、特定相談支援事業所は全国でそれぞれ三千カ所以下で、非常に少ない。平成二十七年からは全ての障害者を対象とすることになっており、事業所数、従業員数ともに大幅な増加が必要となる。

 国はどのように事業所、人を確保するつもりなのか、また、きめ細かいサービスを提供するに当たり、人材育成も必要になると思いますが、具体策を教えていただきたいと思います。

岡田政府参考人 精神障害者の地域移行を進めるに当たりまして、地域移行に向けた支援を行う相談事業者の方が非常に大きな役割を果たすというふうに考えております。

 障害者の総合支援法で障害福祉計画を各自治体につくっていただいておりますが、その中で、各自治体が、精神科病院に入院している障害者や障害福祉サービスの利用者などをもとにして、相談事業者の利用者の見込みに基づきまして、これに必要な相談支援員の育成、養成であるとか、事業者の確保に一生懸命取り組んでいただいているところでございます。

 支援事業者に対する研修の実施であるとか、そういう形で取り組んでいるところでございますので、今後とも、そういった自治体、それから支援事業者に対しての整備の促進を支援していきたいというふうに考えているところでございます。

中島委員 ちょっと時間がないので、保護者制度廃止についてもちょっとお聞きしたいことがあったんですが。

 やはり今回の法改正で、出入りの部分ですね。ただ、地域においても、なかなか受け入れ先が整備できない。これから取り組まれるということなんですが、やはりこれから高齢化、そして認知症の部分。精神領域の分野においても、この後もう一個聞きたかったのは、精神領域の救急体制ですね。

 これも地域においては非常に問題でして、他疾患を抱えながら、急性期の病気、急に急性腹症のようになった場合、背景に精神領域がある、これは障害領域もそうなんですが、なかなか受け入れ体制が整っていない。縦列モデル、並列モデルというのを掲げておられますけれども、やはり並列モデル、つまり、総合病院の中にしっかりと精神領域の科を設けて、他疾患に対応できる。

 ただ、これは非常に少なくなっておりまして、それに対して国といたしまして、ちょっと話が飛んで、もう時間がないのでそこだけちょっと一点聞いておきたいんですが、国として、今後、精神領域を合併していらっしゃる、全身疾患を持っておられる方、精神科領域の救急医療体制として、縦列モデルを目指されているのか、並列モデルを拡充したいのか、国としての方針をお聞きしたいと思います。

岡田政府参考人 御指摘の並列モデルは、一つの医療機関で精神科と身体疾患に関する診療科を有する場合への対応、それから、縦列の方は、精神科の専門の医療機関と身体に対応する医療機関の連携により対応するというようなモデルでございます。

 御指摘のとおり、並列モデルの方がより速やかに適切な治療が提供できるということが考えられるということだと思いますが、現状では、並列モデルを可能にするための精神科を有する病院の数が必ずしも十分でないということから、縦列モデルを含めまして、地域の医療資源を最大限に活用して体制整備を図っていくことが必要だというふうに考えているところでございます。

中島委員 時間、十五分は本当に短くて、十分質問し切れないんですが。

 現実の問題、先ほど認知症の問題も言いました、要は、今の社会資源の中で見切れない方が精神科に入られるパターンが非常に多いということです。地域の資源で見られない、介護保険にしても福祉の関係にしても、そこに合わない方が精神科に入ってしまうという背景があると思うんですね。

 結果的に長期になっちゃうということなので、後手後手にならずに、地域の整備をして、どういう色分けで配備していくか。先ほど言ったように、地域に出た方が当然違う病気にもなるわけですから、そういう体制が整わないと、やはり介護施設でもそういう認知症のひどい方を見切れないという現状だと思いますので、ぜひ進めていただきたいと思います。

 きょうは、大臣、腰が痛いということなので、一回も答弁はしないということで、思いやりを持ったと御理解いただきたいと思います。

 ありがとうございました。

松本委員長 次に、高橋千鶴子さん。

高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 きょうは、障害者雇用促進法案について質問をします。大臣、思いやりがなくて済みません。よろしく御答弁お願いいたします。

 本法案は、国連障害者権利条約の批准に向けた対応として位置づけられており、その親法ともいうべき障害者差別解消法案が五月二十九日の内閣委員会で審議をされました。その際、障害者権利条約の締結に向けた必要な国内法の整備として、障害者基本法、障害者総合支援法、そして障害者差別解消法によって必要な措置を講じたことになる、つまり、早期批准の条件はそろったという答弁が内閣委員会でされております。

 そこで、厚労省の立場としては、今審議をしているこの雇用促進法の成立がされれば、権利条約批准の要件は整ったと認識をしているのか、伺います。

田村国務大臣 腰の方、皆さんにお気遣いをいただきましたが、よくなっておりますので、ありがとうございます。御心配いただいたことを心から御礼申し上げます。

 今委員おっしゃられた話でありますけれども、障害者差別解消という意味では、障害者差別解消法の特別法たるものでありますので、今回のこの法改正、障害者雇用促進法の一部を改正する法律案の中において、障害者ということを理由に差別をする、そしてまた、一方で、合理的配慮というものの提供を義務づける、こういうようなものが今法律案の中に内容として盛り込まれております。

 その意味からいたしますと、今委員がおっしゃられたとおり、差別解消法とそれからこの法案、これが残っておった課題でございますので、この法案が成立をいたしますれば、障害者権利条約の批准に向かっての条件が整ってまいるというふうに認識をいたしております。

高橋(千)委員 そうおっしゃいましたか。

 もちろん、私たちも、この法案には賛成をいたします。また、差別解消法についても、一歩前進だという立場で賛成をいたしました。

 しかし、国内法の整備が整ったかという視点でいいますと、二〇〇九年に政府は条約批准をもう既にやろうとしていた、それに対して、障害者団体は、国内法の整備がまだできていないと反対をしたわけであります。

 その後、民主党政権下で、障がい者制度改革推進会議を当事者参加で取り組んできた。そして、その結晶とも言える骨格提言が骨抜きにされるなど、到底、現状が国連権利条約の求める水準に届いているとは、やはり言えないのではないか。

 まして、今の精神障害者の雇用義務化については、二〇〇四年の労政審の意見書によって、雇用義務制度の対象にすることが考えられると答申が出されてからことしで九年、施行まで五年、また、激変緩和措置を入れれば十年、足かけ十九年になります。遅過ぎないでしょうか。

田村国務大臣 法定雇用率の問題を今おっしゃられたんだというふうに思います。

 これは、見直しは五年に一回ということで今までやってきておるわけでありまして、そういう意味からいたしますと、この四月に見直されたわけでありまして、引き上げを行いました。一・八から二・〇ということでございますので、そういう意味からいたしますと、五年後、見直しの期限が来るわけであります。

 そういう意味からいたしまして、そこで、さらに激変緩和措置という話は何なんだということが、多分、言外に委員おっしゃりたいことなんだろうというふうに思いますが、二回連続引き上げるということは今までなかったわけでございまして、そのような意味からしますと、今般、大変大きな法改正になるのであろう、このように思います。

 でありますから、障害者の雇用の状況でありますとか行政支援の状況、こういうものを鑑みながら激変緩和ができるというふうな形にさせていただいておるわけでございまして、これは諸々の状況を見ながら激変緩和ということもあり得るというような法整備にさせていただいたわけでございまして、一歩前進ということで御理解をいただければありがたいというふうに思います。

高橋(千)委員 やはり今の答弁が、法定雇用率の引き上げ、二回連続なんだからという角度でのお答えがありました。結局、そこが争点になっているからということをおっしゃっているんだと思うんですね。

 五年前の改正のときも、私は、なぜ義務化しないのかという質問をいたしました。そのときに、実態が追いついていないから、精神障害者の雇用の環境がまだ整っていないと。しかし、それを理由に義務化ができないと言ってしまうと、いつまでも引き上がらないじゃないかという指摘をしたわけです。

 ただ、実際には、雇用率の実績には入っておりますので、二〇〇六年は千九百十七人、わずか〇・七%だったものが、二〇一一年には一万三千二十四人、三・六%と、六・八倍にもなったわけです。ですから、障害者全体の雇用率を〇・一三ポイント引き上げることに貢献したと言えると思うんですね。

 ただ、それが逆に、だから、精神障害者を雇用率の算定基礎に入れれば、二%よりさらに引き上がるということが非常に懸念されているというのがおっしゃりたいことなんだと思うんですね。

 二月二十五日の労政審の障害者雇用分科会において、使用者委員が三十分間も反対声明を読み上げるという異例の展開がございました。精神障害者の定着率が悪いなどの例を挙げて、精神障害者は体調の波が大きいからほかとは違うんだと強調されて、法定雇用率がさらに引き上げられるならば、法が目指している障害者雇用の促進につながらず、納付金の徴収額がふえるだけだ、こう言い切っているんですね。

 しかし、それでは、さっき批准に向けてと言ったんだけれども、条約の精神もあったものじゃないですよね。そういう議論をしちゃだめなんですよね。

 そもそも、雇用義務制度が最初に始まったのは一九七六年でありまして、当時は、雇用の場を確保することが極めて困難な者に対して社会連帯の理念のもとで義務を課す、そういう位置づけだった。でも、権利条約とのかかわりでは、もう既に雇用義務制度は積極的是正措置、ポジティブアクションであるということに位置づけられて、障害の範囲を広くとって、難病ももちろん入るんだ、そういう中で、そもそも身体、知的、精神という三障害を区別するということ自体がなくなっているわけですよね。

 そういう環境の中で、環境が整わないから期限を延ばしてくれ、あるいは期限を延ばせば環境は整うということではなくて、当然のことながら、やらなきゃいけないんだという立場で政府がイニシアを発揮していく、そういう立場に立たなきゃならないと思うんですが、いかがでしょうか。

田村国務大臣 各般いろいろな御議論があったというふうに私も認識いたしておりますが、少なくとも、やはり、精神障害者の方々も含めて、障害者の方々の雇用というものがふえていくということは我々が目指しているところでございまして、これは、当然のごとく、社会の要請でもあると我々は思っております。

 そのような意味からいたしまして、いろいろな御議論を踏まえた中で、この法律を整備しようとするときに、いろいろな議論を踏まえれば、この激変緩和の措置を講ずることは可能であるというような形で法整備をさせていただいたわけであります。

 答弁が繰り返しになって恐縮でございますけれども、障害者の方々の雇用の状況でありますとか、また行政の支援等々、いろいろなところを勘案しながら、それは、五年後、決定をさせていただきたいということでございます。

高橋(千)委員 今、激変緩和も可能であるという表現をしたんだという答弁でありましたから、逆に言うと、無理にしなくてもよいと。なるべく早く環境を整えて実施に移すべきだという立場で、指摘をしたいと思います。

 それで、同じ二月二十五日の審議会の中で、精神は他とは違うんだという使用者側の意見について、家族会などから、知的障害を義務化するときも同じ議論はあったんだ、全く同じだという指摘がされているんですね。だから、それをまた繰り返して、また時間をかけるということは、やはりちょっと許されないんじゃないかということを指摘したいと思います。

 そこで、このとき、使用者側委員が、条件が整わない説明としてさまざまアンケートを紹介しました。ところが、この同じアンケートをよくよく見ますと、この十年間で精神障害者の雇用に対して理解が進んだかという問いに対して、「大変進んだ」と「進んだ」を合わせると九二%です。そして、精神障害者を雇用して「大変良かった」と「良かった」を足すと七三%なんです。

 つまり、雇用した企業の評価は大概よいんですよ。それで、いやいや問題ありと答えているのは、まだ雇用した経験がない企業であるということがこのアンケートから読み取れるんですね。食わず嫌いじゃないですけれども、そういう実態なんだということをよく踏まえていただきたいと思います。

 そこで、問いをちょっと進めたいと思うんですが、権利条約の肝とも言える合理的配慮の中身、精神障害については具体的にどのようなイメージを考えているのか、伺います。簡潔にお願いします。

小川政府参考人 例えばでございますけれども、精神障害者の障害特性に応じた合理的配慮としては、勤務時間に配慮するということが考えられます。

 具体的には、今後、労働政策審議会の場で議論した上で、指針が定められるというふうに考えております。

高橋(千)委員 とても簡潔でありがとうございます。

 いろいろ、カウンセラーとかジョブコーチなど、やはり相談できる体制ということも非常に大事であるということと、勤務時間の調整、あるいは症状悪化のときの有休を認めるですとか、そういうことが差別禁止部会の中でも議論をされておりましたし、そういうことをしっかりとやっていただきたい。過重な負担という、言い逃れというんですかね、これは基本的には認めるわけですから、ただ、この程度のことは当然やれるはずの話だということで確認をしていきたいなと思います。

 そこで、最後に、労政審の意見書の中でも、精神障害者を雇用義務の対象とする場合の、「精神障害者保健福祉手帳で判断することが適当である。」その文脈の中で、「その際、本人の意に反し、手帳の取得が強要されないようにすべきである。」とあえて明記したのはなぜでしょうか。雇用率を引き上げるために、抑うつ傾向などの社員に対して手帳の所持を迫るということが、まさかあってはならないと思いますが、どうでしょうか。

小川政府参考人 精神障害者の方のプライバシーの確保の観点から、精神障害者の雇用率算定に当たり、手帳の取得が強要されないようにするということが重要であることから、労働政策審議会の意見書においてもそういうふうに明記されたと考えております。

 厚生労働省では、平成十八年四月から精神障害者の実雇用率の算定を認めるに当たりまして、特に在職している精神障害者の把握、確認の際に、障害者本人の意に反した制度の適用が行われないよう、プライバシーなどに配慮した障害者の把握・確認ガイドラインを定め、事業主への指導に取り組んでいるところでありますが、引き続き、制度の適切な周知に努めてまいりたいと考えております。

高橋(千)委員 この間、法定雇用率が達成しないまでも前進した背景として、特例子会社が十年間で百二十三から三百六十六と三倍にもなって、その八六・七%が大企業であります。

 人事キーマンの情報ポータルなるサイトがございました。その中に、特例子会社について、「うつ病治療などが長期化しているメンタルヘルス不調者についても、日常生活や社会生活への影響が深刻な人のための「精神障がい者保健福祉手帳」を取得していれば、特例子会社で、障がい者として雇用することができるのです。そのため、メンタルヘルスの不調で離職を余儀なくされたり、復帰と休業をくり返したりしている人々の就職支援策としても期待されています。」こんなことが書き込まれている。

 これは、下手をすれば、首を切りたい労働者を特例子会社に飛ばして雇用率もクリアという、一石二鳥という話になるわけです。まさかそれはないとおっしゃると思いますけれども、確認させてください。

小川政府参考人 基本的には、障害者の方のプライバシーが重要であるということでございまして、先ほども申し上げましたように、そういった手帳の取得の強要などが行われないように、適切に指導してまいりたいと考えております。

高橋(千)委員 基本的にはなどという言葉をつけないで、強要は行わないと明確に言ってくださいよ。そんな話じゃないでしょう。

 本当であれば、私たちは、特例子会社はやはり大企業の責任逃れだということで、反対です。だけれども、その経験を生かして、本当であれば、大企業でも雇用をふやそうということを言ってきたじゃないですか。そう表では言っておきながら、ていのいいリストラの代替策だということになっては困るわけですよ。この間、三者、四者の協議といいながら、使用者側の言い分を次々と受け入れてきた、労働行政の後退だと指摘をせざるを得ないんです。そういう背景があるんだということを指摘せざるを得ません。

 我が国が障害者権利条約を批准できるのは、下手すれば十年先になってしまうよ、批准しても、矢のように勧告が飛んでくるのは避けられない事態でありますから、そういうことがないように、しっかりとお願いをしたいと思います。

 終わります。

松本委員長 次回は、来る十一日火曜日午前八時四十五分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時七分散会


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