衆議院

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第19号 平成25年6月11日(火曜日)

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平成二十五年六月十一日(火曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 松本  純君

   理事 上川 陽子君 理事 高鳥 修一君

   理事 棚橋 泰文君 理事 冨岡  勉君

   理事 西川 京子君 理事 山井 和則君

   理事 上野ひろし君 理事 古屋 範子君

      青山 周平君    赤枝 恒雄君

      今枝宗一郎君    大串 正樹君

      鬼木  誠君    金子 恵美君

      川田  隆君    小林 史明君

      小松  裕君    古賀  篤君

      國場幸之助君    白須賀貴樹君

      新谷 正義君    田中 英之君

      高橋ひなこ君    武井 俊輔君

      とかしきなおみ君    豊田真由子君

      永山 文雄君    丹羽 雄哉君

      船橋 利実君    堀内 詔子君

      三ッ林裕巳君    村井 英樹君

      山下 貴司君    大西 健介君

      中根 康浩君    柚木 道義君

      横路 孝弘君    足立 康史君

      伊東 信久君    河野 正美君

      宮沢 隆仁君    伊佐 進一君

      輿水 恵一君    柏倉 祐司君

      中島 克仁君    高橋千鶴子君

    …………………………………

   厚生労働大臣政務官  とかしきなおみ君

   参考人

   (株式会社大協製作所代表取締役社長)

   (社団法人全国重度障害者雇用事業所協会会長)   栗原 敏郎君

   参考人

   (特定非営利活動法人四ツ葉の会統括事業所長)   中澤  恵君

   参考人

   (地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪府立精神医療センター院長)     籠本 孝雄君

   参考人

   (全国精神保健福祉会連合会(みんなねっと)理事長)            川崎 洋子君

   参考人

   (社会福祉法人八ヶ岳名水会障がい者就業・生活支援センター陽だまり主任就業支援担当)        坂本  誠君

   参考人

   (公益社団法人やどかりの里常務理事)       増田 一世君

   厚生労働委員会専門員   中尾 淳子君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月十一日

 辞任         補欠選任

  大久保三代君     川田  隆君

  田畑 裕明君     青山 周平君

  中川 俊直君     鬼木  誠君

  新原 秀人君     河野 正美君

同日

 辞任         補欠選任

  青山 周平君     武井 俊輔君

  鬼木  誠君     小林 史明君

  川田  隆君     大久保三代君

  河野 正美君     新原 秀人君

同日

 辞任         補欠選任

  小林 史明君     國場幸之助君

  武井 俊輔君     田畑 裕明君

同日

 辞任         補欠選任

  國場幸之助君     中川 俊直君

    ―――――――――――――

六月十一日

 国民の申請権を侵害し、餓死や孤立死を生み出す生活保護法改正案の廃案を求めることに関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第九四九号)

 同(笠井亮君紹介)(第九五〇号)

 同(穀田恵二君紹介)(第九五一号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第九五二号)

 同(志位和夫君紹介)(第九五三号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第九五四号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第九五五号)

 同(宮本岳志君紹介)(第九五六号)

 障害者福祉についての新たな法制に関する請願(井坂信彦君紹介)(第九五七号)

 同(今津寛君紹介)(第九五八号)

 同(岩永裕貴君紹介)(第九五九号)

 同(岸本周平君紹介)(第九六〇号)

 同(関芳弘君紹介)(第九六一号)

 同(田中英之君紹介)(第九六二号)

 同(辻元清美君紹介)(第九六三号)

 同(西村眞悟君紹介)(第九六四号)

 同(馬場伸幸君紹介)(第九六五号)

 同(原田義昭君紹介)(第九六六号)

 同(ふくだ峰之君紹介)(第九六七号)

 同(松浪健太君紹介)(第九六八号)

 同(阿部寿一君紹介)(第一〇八三号)

 同(赤嶺政賢君紹介)(第一〇八四号)

 同(安藤裕君紹介)(第一〇八五号)

 同(岩屋毅君紹介)(第一〇八六号)

 同(うえの賢一郎君紹介)(第一〇八七号)

 同(小倉將信君紹介)(第一〇八八号)

 同(大西健介君紹介)(第一〇八九号)

 同(奥野信亮君紹介)(第一〇九〇号)

 同(笠井亮君紹介)(第一〇九一号)

 同(黄川田徹君紹介)(第一〇九二号)

 同(穀田恵二君紹介)(第一〇九三号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第一〇九四号)

 同(志位和夫君紹介)(第一〇九五号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第一〇九六号)

 同(重徳和彦君紹介)(第一〇九七号)

 同(杉本かずみ君紹介)(第一〇九八号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第一〇九九号)

 同(武井俊輔君紹介)(第一一〇〇号)

 同(長坂康正君紹介)(第一一〇一号)

 同(宮本岳志君紹介)(第一一〇二号)

 同(渡辺周君紹介)(第一一〇三号)

 難病、小児慢性疾患、長期慢性疾患の総合対策を求めることに関する請願(井野俊郎君紹介)(第九六九号)

 同(今津寛君紹介)(第九七〇号)

 同(岩田和親君紹介)(第九七一号)

 同(うえの賢一郎君紹介)(第九七二号)

 同(岡田克也君紹介)(第九七三号)

 同(新原秀人君紹介)(第九七四号)

 同(武田良太君紹介)(第九七五号)

 同(中山泰秀君紹介)(第九七六号)

 同(永山文雄君紹介)(第九七七号)

 同(葉梨康弘君紹介)(第九七八号)

 同(松浪健太君紹介)(第九七九号)

 同(横路孝弘君紹介)(第九八〇号)

 同(安藤裕君紹介)(第一一〇四号)

 同(黄川田徹君紹介)(第一一〇五号)

 同(高市早苗君紹介)(第一一〇六号)

 同(船橋利実君紹介)(第一一〇七号)

 同(堀井学君紹介)(第一一〇八号)

 同(宮本岳志君紹介)(第一一〇九号)

 不妊患者の経済的負担軽減に関する請願(上野ひろし君紹介)(第九八一号)

 同(高木美智代君紹介)(第九八二号)

 同(葉梨康弘君紹介)(第九八三号)

 同(小倉將信君紹介)(第一一一〇号)

 同(湯川一行君紹介)(第一一一一号)

 安全・安心の医療・介護実現のための夜勤改善・大幅増員に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第一〇七一号)

 同(小川淳也君紹介)(第一〇七二号)

 同(笠井亮君紹介)(第一〇七三号)

 同(穀田恵二君紹介)(第一〇七四号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第一〇七五号)

 同(志位和夫君紹介)(第一〇七六号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第一〇七七号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第一〇七八号)

 同(宮本岳志君紹介)(第一〇七九号)

 腎疾患総合対策の早期確立に関する請願(高市早苗君紹介)(第一〇八〇号)

 パート労働法の実効ある改正に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第一〇八一号)

 社会保障拡充に関する請願(笠井亮君紹介)(第一〇八二号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 障害者の雇用の促進等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第六四号)(参議院送付)

 精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第六五号)(参議院送付)


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     ――――◇―――――

松本委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、参議院送付、障害者の雇用の促進等に関する法律の一部を改正する法律案及び精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。

 両案審査のため、本日御出席いただく参考人は、株式会社大協製作所代表取締役社長・社団法人全国重度障害者雇用事業所協会会長栗原敏郎君、特定非営利活動法人四ツ葉の会統括事業所長中澤恵君、地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪府立精神医療センター院長籠本孝雄君、全国精神保健福祉会連合会(みんなねっと)理事長川崎洋子さん、社会福祉法人八ヶ岳名水会障がい者就業・生活支援センター陽だまり主任就業支援担当坂本誠君、公益社団法人やどかりの里常務理事増田一世さん、以上六名の方々であります。

 この際、参考人の方々に一言御挨拶を申し上げます。

 本日は、御多用の中、まことにありがとうございます。それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただき、審査の参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願い申し上げます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 最初に、参考人の方々から御意見をそれぞれ十五分以内でお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。

 なお、発言する際はその都度委員長の許可を受けることになっております。また、参考人は委員に対して質疑することができないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。

 それでは、まず栗原参考人にお願いいたします。

栗原参考人 ただいま御指名をいただきました株式会社大協製作所代表取締役社長栗原敏郎でございます。私は、社団法人全国重度障害者雇用事業所協会の会長もあわせてやらせていただいております。そういう立場で本日は御発言をさせていただきたいというふうに思います。

 また、本日はこのような場に私をお呼びいただきまして、まことにありがとうございます。

 それでは、まず、私どもの会社の概要並びに今まで雇用をしてきた経過を少しお話しさせていただきたいというふうに思います。

 私どもの会社、株式会社大協製作所は、横浜と福島に工場がございます。横浜の方が本社、工場、福島の方が工場、創業が昭和二十九年十一月三日ということで、五十八年目に入っております。資本金が四千百万。主に自動車部品の表面処理、表面処理といいましても、主に防錆、さびに強い処理ということで、メッキだとか塗装をなりわいにしております。横浜と福島、同じような形態で、主に自動機を中心に作業を行っております。

 従業員につきましては、双方で七十二名。横浜が四十五名で福島が二十七名、正規の社員がそういうようにおります。その中で、横浜四十五名のうち障害を持たれた方が二十七名、うち重度が十一名。その二十七名のうちの一名が精神障害者で、それ以外は全部知的障害でございます。福島の方は、障害を持たれた方が十二名で、十二名のうち一名が身体障害ということで、ほとんどが知的障害の人たちでございます。

 それで、主に障害者の年齢構成が十代から六十代、特に四十代が中心になりまして、約三〇%強が四十代ということで、六十歳以上も、現在、六十三の女性が一人働いております。この間まで、五月の二十八日に誕生日が来たのでそこでやめましたが、その子は満六十六歳まで働いていた。

 これはもうほとんど、そこまで来る人はなかなか普通ではいませんが、そういう人もいらっしゃるということで、我々のところでは元気で働けるうちは働いてもらう。もちろん定年は、六十五までは今、全て健常者と同じで扱っておりますが、なかなかそこまで来られないのが現状で、そこまで来られる人は、やはり自分でかなり日ごろから自分の体調管理をよくやられている方だなというふうに思います。

 そこで、私どもの会社の障害者の雇用なんですが、一九五九年ですから昭和三十四年に、地元の中学校、あのころは特殊学級といいまして、そこの先生がたまたま私の先代、父と高校時代の友達でして、おまえのところで何とか一人使ってくれないかということで、女のお子さんを一人お預かりしました。十五歳の子ですから、まだ子供みたいなものですね。零細企業ですから、地域から来られている主婦たちが中心になっている会社でございましたので、自分の子供たちと同じような扱いをしていただいて、その子が一年たち、二年たち、それで三年ぐらいすると、ある程度周りの人と同じような作業ができるようになった、そういうことで、ああ、こういう子でも指導の仕方次第では一緒にやっていけるんだなというのがそのときの感じだったんじゃないかなというふうに思います。

 それで、昭和四十五年に、現在の保土ケ谷に場所を移しまして新規に工場を立ち上げたときに、近くの施設から十四名の知的障害の子を雇用しました。一気に十四名というのは、そのときに自動化をしたということですね。自動化をして、大勢の子が働けるような工場をつくった。

 どういうことかといいますと、やはり複雑なことは障害を持たれた方には難しいです。なれるまでに日数がかかる。それを作業を単純化してあげれば、やはりなれる時間も短い、戦力になる期間も短いだろうということで、売り上げが三億あるかないかぐらいのときにアメリカから大枚一億数千万で機械を入れたというお話を伺っています。それで、現在まで五十数年来ているわけでございます。

 私も、この会社に入ったのが昭和の四十九年ですか、一月、ちょうどオイルショックのときに入りまして、まず感じたのが、余りに障害者が現場に多いんですね。知的障害が多くて、本当にこの会社は大丈夫かな、本当にクリエーティブな仕事ができるのかな、どこまでこの会社はもつかななんというようなことがやはり最初でした。

 ところが、働いている子が一生懸命働いているんですよ、障害を持たれた子が。それで、多少早い遅いの差はあっても、一生懸命働いている、その姿に多分うちの父も打たれたんだろう、それでこういうような障害を持たれた子を多く雇用したんだろうということで、それから考え方を変えまして、少しでも彼らがやりやすいような方法にして生産性が上がる方法ということを考えてやってまいりました。

 それが、やはり自動機を入れながら、または治具の工夫だとかということで、かけやすいやり方をする治具をつくるとか、作業をかけたり外したりする反復単純作業にしたんですね。そうしますと、比較的彼らでも短期間のうちに戦力になるということで、現在、現業部門では約七割の人が障害を持たれた方です。そういう人たちが今戦力で働いているわけですから、その人たちがいないと我々の工場は成り立たないというのが現状で、そこまで来ております。

 それと、今度は全重協、全国重度障害者の話をさせていただきますと、そちらの団体は、ことしで法人化されて二十五年で、一応、今、特増法人の認可をいただいております。

 そこで私も今六年目ということで、やっている内容は、調査研究、相談、援助を中心にしまして、セミナーだとか、要は雇用を啓発するようなことです。全国に北海道から九州・沖縄まで七ブロックございまして、年に二回、そのブロックで、いろいろな研修会を含めて、一般の方も入れて、いろいろな啓発事業をやっております。それが我々の団体でございます。

 そこで、本題に入りますが、近年の障害者の雇用の中で、中小企業の雇用率が下がってきているということを言われます。しかしながら、我々の団体を見ますと、中小企業でも努力をしている企業というのはいっぱいあるわけですね。

 それで、私も、今お話ししましたように、ブロック会議に行きますと、そこで毎回毎回、自分たちは雇用を進めるのかどうかという、いろいろなアンケートがあるんですが、そこで、減らしたいというよりはふやしたいという企業がやはり多いんです。それで、実績として出ている。

 ということで、確かに今、製造業は非常に大変です。海外へ皆、仕事が流れてしまう。そうすると、今まで三カ所あった工場が二カ所になり、二カ所が一カ所になり、そこで働いている人は、障害者のみならず健常者も同じですけれども、仕事をやめなきゃいけないということがありまして、そういうのが下請、我々中小企業に来ると、やはりその辺が顕著に来ちゃう。そういう面で、今非常に苦しい状況にあるというふうに私は思っております。本当にみんな雇用をしたいんだけれども、苦渋の決断で、やめていただかなきゃいけないという部分もあるんです。

 ただ、健常者と違いまして、障害者は、一旦やめますと、次の職場へ行ってもなれるまでに時間がかかるわけです。そうすると、本当に単純化してあげればいいんですが、そうでないと、今までここでは戦力になって健常者と変わらない仕事をやっていたのが、新しい職場へ行くとまたそれを一からやらなきゃいけない、それがやはり大変だ。

 そういう面では、本当に今、障害を持たれた方も大変だなというふうに思います。もうちょっと何か雇用を維持できるような、雇用というか仕事なんですね、仕事を何とか集められるような方策がないのかというのが私の偽らざる考えでございます。

 それともう一つ、やはり高齢化がありまして、我々のところでも四十代以上が三十数パーというお話をしました。そういうことからいきますと、全国で前から雇用している企業さんというのは、みんな高齢化、加齢化を迎えているわけです。それがスムーズに福祉の方に移行をできるようなシステムが早く確立されないと、次に新しく雇用をするという意欲も、なかなか企業としては難しいのではないかなというふうに思います。

 それで、このような中で、精神の義務化というようなことで、私も審議会の委員をさせていただいております。義務化ということは、法定雇用率が上がることですね。法定雇用率、わずかコンマ一とかなんとかといいますけれども、これは大変な数字なんですよ。非常に重い数字ですね。仕事のあるときには関係ないんですが、仕事のないときでは非常に重い数字なんです。

 これが五年、今猶予期間で延びたというお話ですから、そういう面ではいいんですが、どちらにしても、こういう軽減策として、我々が障害者を雇用していくということにおいて何らかの施策が欲しい。

 その一つは、精神の場合ですと、知的、身体と違いまして、非常に難しい面がいっぱいあるわけです。今トライアル雇用がありますが、そのトライアル雇用をもっと長期にやらせていただいて、様子を見させていただいて、それでお互いに判断をしてもらう、そういう場がやはりどうしても必要ではないかなというふうに思います。

 ハローワークとか地域障害者職業センター、ナカポツセンター、あと医療機関等における精神障害の就労支援、バックアップ、これは本当に欠かせないものだというふうに思っております。

 ちょっと時間もなくなって言い尽くせない部分もありますので、後でもし御質問でお答えできればというふうに思います。

 きょうはどうもありがとうございました。(拍手)

松本委員長 ありがとうございました。

 次に、中澤参考人にお願いいたします。

中澤参考人 愛知県岡崎市から来ましたNPO法人四ツ葉の会中澤恵と申します。今回、意見を話す貴重な席にお呼びいただきまして、ありがとうございます。

 きょうは、まず、きょうの会議の二つの案件であります障害者雇用促進法の改正についてと精神保健福祉法の改正について意見を少しお話しさせていただきまして、そして、その後に、私が十五年間福祉の現場で働いてきました経験や思いについて、少しお話をさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いします。

 まず一点目。

 障害者雇用促進法の関係ですが、おおむね賛成をしています。ことし四月から法定雇用率の方も引き上げられまして、特に精神障害の方が過去すごい伸び率でふえてきているということですので、身体や知的障害と一緒に法定雇用率に含めるということは、現状に即していて妥当かなと思っています。

 ただ、やはり就職するまでも大変だとは思うんですが、就職してからも継続して働けるように、車椅子の身体障害の方には段差の解消ですとか、知的障害を持つ方には単純で写真や平仮名を表示した指示書とか、精神障害の方には、人とのかかわりがすごく苦手な方も多いので、余り人とかかわらない場所で、例えばフレックスタイムで働けるような、そういう配慮がされているといいなと思いますので、障害者雇用の継続しての雇用の質について企業の方に求めていっていただきたいなと思っています。

 二点目の精神保健福祉法の改正案についてですが、保護者制度の廃止という観点から見ると、私は賛成しています。保護者による治療を受けさせる義務、医師の指示に従う義務、患者の引き取り義務などは、本当に保護者の中には高齢化している方もいますので、過度な負担となってきていました。

 ただ、医療保護入院における同意の対象者を家族から三親等の扶養義務者に拡大したということは、実際に生活をともにしていない、いとこなど、そういう方も対象になってくるということで、医療保護入院の要件の緩和ですとか、新たに家族以外の扶養義務者への負担を強いるということになってくるのかなと思っていますので、慎重にしていただきたいなと思います。

 また、同時に、入院時からも退院に向けた専門家の支援ですとか、退院後も地域で暮らしやすい環境整備が必要だと考えています。

 あと三点目として、私が障害者福祉の現場で働いている中で感じていることについて少し述べたいと思います。

 私は、愛知県にあります日本福祉大学を卒業しまして、岡崎地域の精神障害の方の家族会の協力を受けまして、当時、小規模作業所と呼ばれる、本当に五名から九名ぐらいの小さな事業所を立ち上げてしばらく働いていました。

 精神障害を持つ方の支援というのは、中には大変だなと言われる方とかがみえるんですが、皆さんとても優しくて、スピードだとか量とかを求められている、そういう生産主義の現代社会のストレスを受けて本当になってしまう方が大勢いるなと思っています。

 精神疾患を患う方というのは、発病の原因となった修羅場の体験談を聞かせていただいたり、本当に疲れるくらい気を使ってしまう彼らと接する中で、自分の気の配り方だとか、すごく人間性について学ばせてもらうことができまして、あと、結果として本当に精神障害の方の優しい部分に癒やされたりすることも多々ありました。

 僕が勤務している中で、強迫神経症と言われて、気になって、汚いと思って、何回も手を洗うような方がみえるんですが、本当にそれをやめようということで、一生懸命水道のない部屋で耐えていたりするのを、隣で寄り添う中で、本当に三カ月ぐらいして手を洗わなくなる、気にならなくなるような姿を見てきて、とてもうれしくなったことを覚えています。

 しかし、決していいことばかりではなく、本当に悲しいエピソードもありました。母親と二人暮らしの御家庭の利用者で、お母さんが末期のがんになってしまって余命宣告をされて、作業所で相談に乗った御利用者さんがいたんですが、すっきりして御帰宅いただいたと思っていた帰りの電車に飛び込んでみずから命を絶つような方もみえました。入院しているお母さんが行けないということで御遺体の本人確認をしに警察に行った経験もありまして、本当に足が震えて言葉にならなかったことを思い出します。

 そういう相談を二十四時間できる体制を築くということで、当時働いていた職場でも相談支援事業所というのを立ち上げまして、夜間も、携帯電話を持っての相談も開始しました。

 夜、不穏になって眠れなくて体調を崩されるという方は精神障害の方で多いですので、電話をかけていただくことですっきりして寝ていただく方は多かったです。また、夜、薬をたくさん飲んだといって、本当に声にならないような電話をくれる方もみえまして、御自宅を訪問して救急車で夜間病院へ連れていったことも思い出します。朝帰ってきたんですけれども、携帯電話がなかったら、僕が起きていなかったら、本当に信頼関係を築けて電話をくれていなかったらと思うと、今、普通に話していますけれども、紙一重のエピソードだったなと思っています。

 私の方は、社会福祉士、精神保健福祉士、介護福祉士、全て資格は持ってはいるんですが、そういう専門的な学習というよりも、やはり地域で暮らしている障害者と同じ市民の立場として、今、何ができるかという視点に立って仕事をしていきたいなと常々思っています。

 話はかわりますけれども、平成十八年に、一般的に三障害と呼ばれる知的、身体、精神の障害、現在では発達障害や高次脳機能障害なども含まれてきますが、そういうあらゆる障害の当事者や御家族、事業所の方の連携が非常に大事だという思いで、岡崎福祉ネットワークというNPO法人を立ち上げて、理事長を務めさせていただいたことがあります。

 当時、障害者自立支援法が施行されて間もない時期で、当時の小規模作業所という十名以下の規模ですとか、任意グループですと、なかなか事業がやれないという状況だったので、岡崎福祉ネットワークという、以前より事業を実施しているベテランの事業所の職員だとか関係者がサポートしたり、十名以下のところを二、三カ所、一体型ということでカウントして事業化できるということで、とても当時のNPO法人としては画期的な取り組みを実践させていただいたと思っております。

 現在では就労系の事業所だけで学習会をしておりまして、その代表として会を組織させていただきました。合同でロットの多い内職を行ったりですとか、ある事業所のクッキーとある事業所のコーヒーを詰め合わせてギフトパックにしたりとか、そういう事業所の連携した製品づくりなども行っています。

 やはりどうしても同業種が集まると利用者のとり合いですとか抱え込み、利用者さんに来てもらうということで事業所の方は収入を得ていますので、そのように自分の事業所だけがいいという意識が生まれてくることもあるかと思うんですが、やはり、事業所同士連携して、例えば新規参入したいという事業所の方へアドバイスをしたりですとか、事業所マップの作成だとか、ある事業所では受け入れられない利用者、利用者さん同士の相性が悪いとかそういう理由であるんですが、そういう方もほかの事業所では受け入れられるということもあるので、地域、また事業所の雰囲気、作業内容、工賃など、障害者が選択できるようになってきたという、たくさん事業所ができてきたという意味ではいいのかなと思っています。

 経営主体も、僕が就職した十五年前よりもふえていまして、当時は社会福祉法人が主流だったんですけれども、現在はNPO法人や株式会社など非常にさまざまな母体が運営しています。私が勤めているNPO法人でも就労継続支援B型というのをやっているんですが、B型として、精神疾患の特性だとか家族等の調整、医療機関との連携、年金や手帳、福祉サービスの手続など、本当にさまざまなことに対応できることを事業所の特色としています。

 株式会社が設立したA型の事業所は、雇用関係があったりですとか、有給や失業手当の対象になったり、工賃も最低賃金が保障されている等で、障害年金プラスそのお給料で生活をしていくということは、満足感も得られて、とてもよいことだなと思っています。

 うちは、B型として、A型に行くための能力を身につけてもらって、積極的にA型に送り出しています。やはりA型の事業所は最低賃金をクリアするということに専念していただいて、そこに向けてB型として生活面だとか医療面だとかでフォローを行っていけるといいなと思っています。

 あと、就労移行支援というのもあるんですが、これは二年で就職をしてもらうような、専門学校のような機関だと認識をしています。今、特別支援学校の方を対象に、一旦就労移行支援をアセスメントのために利用しなければ、B型とかに行けないというふうになってきているんですが、それが形だけの、岡崎の場合だと三日間だけのアセスメントになったりとか、その三日で何が本当にわかるかといった部分。あと、そのアセスメントをとることに一生懸命になりまして、本来の目的であります一般就労に向けての支援がなかなかできなくなってきている現状もありますので、その辺も考えていただきたいなと思っています。

 私の勤務するNPO法人では、重度の障害の方の福祉サービス、生活介護事業もやっているんですが、平均障害程度区分で五以上、最重度の六の方が三八%いる事業所なんです。最近では医療が進歩しまして、昔だと幼いころに亡くなっていた方も大人になれる方がいて、本当にいいなと思っているんですが、障害の方は進行していき、昔やれていたことができなくなって、例えば栄養も、経管や胃瘻での栄養摂取になったりだとか、たんが自力で出せなくなってきている方がみえます。

 最近、介護福祉士法で、養成校のカリキュラムが改正されて、一部、医療ケアができるようになってきたりだとか、現場の方も一定の研修を受けるとやれるようになってきているんですが、本当に費用の方がかかったりします。看護師も、病院の看護師不足も深刻だと思いますが、福祉の方も不足していますので、そのような研修を受けられる方をふやしていきたいなと思っています。

 生活介護の職員配置というのは、利用者さん一・七人に対して職員が一なんですが、うちは、本当に最重度の方が多くて、一・二人に対して一人という手厚い職員を配置しなければ、安全だとか介護サービスに支障が出ます。人権費がかかってきて本当に大変なんですが、障害が重いという理由で当日に欠席する方がかなりみえます。

 うちは一日に十七名ぐらいみえているんですが、三、四名の欠席者がいます。やはり、当然欠席されないという予定で職員配置を組んでいるんですが、当日休む方が多いために、パートの方に出勤時間の一、二時間前に休んでほしいと言うと、やはり家計がありますので、今度はパートがやめるような現状が出てきてしまうので、欠席時対応加算というのが一カ月当たり一人四回算定できるようになっているんですが、これをいろいろな事業で一律ではなくて、職員配置だとか障害程度に合わせて加算の額や回数について検討していただけるとありがたいなと思っています。

 最後になりましたけれども、私自身、このような福祉の現場で働かせていただいていまして、個人的に地元エフエム岡崎の福祉の番組のパーソナリティーもしていまして、きょう七時からあるんですけれども、そういう仕事や個人的なことを通じて、障害当事者の方、御家族の方、事業所の方に、本当に一般市民に活動を知ってもらえるような、そういう普及啓発にも努めていきたいなと思っています。

 以上で、私の話を終わらせていただきます。ありがとうございました。(拍手)

松本委員長 ありがとうございました。

 次に、籠本参考人にお願いいたします。

籠本参考人 私は、大阪府立精神医療センターの籠本と申します。立場としては、全国自治体病院協議会の精神科部会の部会長でございます。

 本日は、意見を述べさせていただくこういう場をいただきまして、本当にありがとうございます。感謝しております。

 私はことしで六十になるんですけれども、三十年以上、大阪の地で、ほんまにべたに精神障害者の方の治療に当たってきました。病院の医師として、単科病院、精神科の総合病院、精神保健福祉センター、それから大阪府の行政にもしばらくおったことがございます。

 この三十年間を振り返ってみますと、三十年前、私が精神科の医者になったころというのは、患者さんを診る、治療をするわけですが、治療をする場というのは、外来で診るか、入院してもらうか。入院してもらったら、家へ帰ってもらうか。その間が全然ないんですね。今は、意見をお述べいただいた作業所とか、たくさんございますけれども、記憶をたどれば、私が医者になってしばらくしてから、ここに作業所とかいうのができたな、そこで福祉就労ができる、あるいは集う場ができる、こういうことになったな、そういう時代でした。

 当事者の方が、入院していて、退院して家におる。ぶらぶらしていると、何をしているんやと近所の人に言われます。行くところがないんですね。就職するといったって、そんな簡単に一般企業に就職できるわけじゃない。そういうサポート体制。

 それから、家族ともめた場合に、今はいろいろな福祉の制度、地域で支える制度が、まだ十分とは言えませんができておりますので、アパートでひとり暮らしをする、あるいは、ひとり暮らしが無理でも家族から離れてグループホームで住む、そういう選択肢がいろいろ広がってきました。

 当初、精神障害者の方に対しては、福祉サービスは全くなかったんですね。ホームヘルプサービスも適用じゃなかった。本当に大変な時代、当事者の方々、家族の方々は苦労されてこられました。

 そして、我々も一生懸命やってきましたが、医療ではなかなか手の届かない部分、やはり生活を支えるというのが非常に大事ですので、病気の治療に関しては。ここが、この三十年間、国の努力も含めまして、当事者の方々、家族の方々の努力も含めまして、こういう形になってきた。私は、率直に言って非常にうれしい思いをしております。

 ただ、十分ではありません。十分ではありませんので、今回の精神保健福祉法の改正について、期待するところは大きなものがございます。この件に関しまして、私どもの意見を述べさせていただきたいと思います。

 まず、家族の同意条件というのは残りましたけれども、長年の課題であった保護者制度の廃止がなされたこと、精神障害者の地域移行を推進するための具体的な体制整備が進められること、そして、良質かつ適切な精神障害者に対する医療の提供の確保に関する指針を定めることがこの法で明記されたこと、この三点は非常に大事なことであると思います。この改正に関して、我々は大いに賛成をしております。

 ただ、懸念される課題も幾つかございますので、これについて述べさせていただきたいと思います。

 まず、医療保護入院の際ですが、複数の家族間で入院に関する意見が分かれた場合、現場での混乱、家族間の混乱、もちろん一番困るのは当事者の方ですが、ある家族は入院した方がいい、ある家族は反対や、そういうふうな混乱の中に巻き込まれる可能性が、これは多いとは言えませんけれども、起こった場合、非常に懸念される問題です。これに関しては、取り扱いのガイドラインを明確に定めていただきたいというふうに思います。

 それから、入院に同意した家族がAさんとしますと、別の家族の方、Bさんが、入院に反対やということで退院の請求をされる。これもまた引き裂かれて混乱しますので、この取り扱いも最終的には精神医療審査会という公的機関が判断をされるわけですが、混乱がなるべく少ないように、治療に専念できるように、明確なガイドラインを定めていただきたいと思います。

 それから、御本人の意思によらない非自発的入院である医療保護入院をより厳格に行っていく。これは、本人の意思に反して治療上必要だからということで強制入院されるわけですから、これをより厳格に運用することが大事である。入院のとき、それから入院の継続がまだ必要である、そういう判断をする際の判断基準を明確に定めていただきたい。

 また、もちろん、非自発的入院でございますので、その方々の権利擁護のための代弁者制度について検討をしていただいて、創設をしていただきたいというふうに考えております。

 次に、地域生活支援を進めるということについては、入院の途中、入院して一カ月、二カ月たってなかなか退院できへんなというときに始めたのでは遅い。もう入院した時点から、その当初から、地域生活支援を医者、看護、それから精神保健福祉士、いろいろな職種の方、地域の方が一緒になって、家族も一緒になって進めていく、それを見据えて入院生活を送る。あるいは、退院した際に起こる、想定されるいろいろなリスクファクター、それから、病気に関する理解が不十分なために起こってくるさまざまな問題、これについても、入院中にきちんと教育を受けていただいて勉強していただく、そういうサポートも絶対に必要です。

 今回の法律改正の中で、入院当初から、退院後生活環境相談員を含めた病院内の多職種で、サポートする体制をつくりなさいということが書かれておりまして、これは非常に大事なことです。それと、病院外の地域援助事業者が、これは病院外なんですけれども、病院の中へもっと自由に積極的に外から入っていただいて、病院のスタッフと連携して常に活動していただく。外からの目が入る、外からの知恵が入る、人が入る、これは非常に大事なことです。

 退院支援のための病院内の委員会というのが、入院期間が例えば半年なら半年と想定されていて、それで退院できないときに院内委員会で検討するということになっておりますが、この検討の場に、病院の中のスタッフだけではなくて、必ず外の地域援助事業者の方をメンバーに参加させていただいて、外部の目も入れた、外部の知恵も入れた退院支援の検討会を義務づけていただきたいというふうに考えております。

 それから、精神科医療の機能分化と質の向上等に関する検討会で平成二十四年の六月に出されました「今後の方向性に関する意見の整理」というところに、「精神科医療へのニーズの高まりに対応できるよう、精神科入院医療の質の向上のため、精神疾患患者の状態像や特性に応じた精神病床の機能分化を進める。」機能分化を着実に進めていくことにより、今後、急性期精神科医療では一般病床と同等の人員配置とし、早期退院を前提とした身近で利用しやすい精神科医療とするということと、それから、「機能分化にあたっては、退院後の地域生活支援を強化するため、アウトリーチ(訪問支援)や外来医療などの入院外医療の充実も推進する。」とあります。

 これは非常に重要なことでございます。ぜひとも、早急に具体化をしていただきたいというふうに切に願います。

 最後になりますが、良質かつ適切な精神障害者に対する医療の提供の確保に関する指針の策定ということが法律の中に明記されております。法で指針の策定を定める以上、都道府県の医療計画、診療報酬の改定と連動するものでありまして、この検討の場は常設の審議会で行い、定期的、継続的に進行管理をしていっていただくことが不可欠だというふうに考えています。どうぞよろしくお願いいたします。

 以上でございます。(拍手)

松本委員長 ありがとうございました。

 次に、川崎参考人にお願いいたします。

川崎参考人 ただいま御紹介いただきました川崎でございます。

 私どもの団体は、精神障害者を家族に持つ家族会の全国組織でございます。実は、私どもの前の団体、全家連という団体がありましたが、全家連が残念ながら解散いたしました。その後、全国から、やはり全国組織が必要ということで、NPO法人から立ち上げまして、今、公益社団法人になっております団体でございます。

 今回審議されます二つの法案は、全家連時代からずっと私ども家族会が要望してきたものでございまして、今回、このように国会の場で審議されるようになり、また、参考人として私ども家族の意見をこのような場で述べることができるようになったということは、大変に感謝しております。どうぞ私どもの意見をお聞き届けいただけますようにお願いいたします。

 まず最初に、障害者雇用促進法について意見を申し上げます。

 実は、この法案の改正に関しましては、平成二十二年に閣議決定されました「障害者制度改革の推進のための基本的な方向について」を踏まえまして、障害者雇用促進法の検討、また、障害者権利条約に関しまして、労働・雇用分野において条約締結に向けた検討が行われてきました。身体、知的の障害者団体や関係団体、また関係研究者により、いろいろな議論の中で審議されましたが、全員の合意を得ることができましたことを大変にありがたく思っております。特に、精神障害者が雇用義務の対象と位置づけられましたことは、精神障害者の社会参加を促進するものでありまして、当会は、この法案の成立を強く望むところであります。

 その中から三点ほど、少し説明させていただきます。

 実は、法定雇用率の義務化が決まりましたけれども、激変緩和措置というのが今回とられました。先ほど事業所の方からのお話がありましたように、今年度から法定雇用率が一・八%から二・〇%に上がり、二十五年四月から実施されております。そういうこととか、実は、私はこの研究会、審議会に出ておりましたが、やはり、精神障害者への理解というのが事業所の方にはなかなか困難である。福祉の対象になったのが極めて新しいということもありまして、精神障害者は一体どのような仕事ができるのかとか、確かに精神の人は病状に波がある、そういうところの対応をどうしたらいいかとか、かなり事業所側からの不安要因が出ました。

 しかし、現在、私どもが考えますところは、昔のように、精神障害者が何をするかわからないとか、いわゆる薬漬けとか、そういうことではなく、現在は精神障害者の回復ということも医療の場面で大きくうたわれているところであります。一番大きいのは、治療方法、新しい薬ができてきて、従来ならば、一日に三十錠、四十錠、これは副作用どめの薬も含めて飲むことによりまして、本当に体が動かない、何もできないような状態でありましたが、今は、一日一錠とか、一カ月に一回の注射とかで、かなり日常生活ができるように回復されている。

 そういうことも踏まえまして、今回のハローワークでの精神障害者の雇用率が上がったと思っておりますが、実際、全体の面から見ますと、まだまだ事例は少なく、どのように事業所側で運営したらいいかとか、不安、御心配が多々あることを私は感じました。

 そこで、今回のこの緩和措置につきましては、緩和措置を五年ごとに段階的にしていくということに合意いたしましたけれども、その五年が長いなというような意見もありました。

 しかし、事例が少ない中でいろいろ調査研究をして、実は就労側、事業者側に対する就労支援は一体何が必要か、そのようなことをしっかりと踏まえた施策がここででき上がることによりまして、さらに一層、精神障害者のいわゆる一般就労、先ほど来、福祉的な就労のお話がありましたが、実は、現場では、この福祉的就労にも、定員の問題とかでなかなかつながらない精神障害者が多くおります。彼らが言っていることは、一般就労したい、僕たちはやはりちゃんと税金を払って納税者になって仕事をしたいんだ、そういう声がこのところ多く聞かれるようになりまして、この法定雇用率に義務化されることによりまして精神の人が社会参加する場がどんどん開けて、また、雇用の経験をすることによりまして病状の回復も望まれることだと思っておりますので、ここのところにつきましては、ぜひとも皆様の御理解をいただきたいと思っております。

 それと、私ども、合理的配慮の提供義務ということをいろいろ審議しまして、障害者に対して、職場における合理的配慮の提供が事業主に義務づけられることになりました。

 合理的配慮は、障害者の個々の事情と事業所側との相互理解の中で提供されるものと思いまして、障害特性に基づくことが必要であります。精神障害者には人的支援、相談支援が必要でありますが、今後は、本人の立場に立ちました、本人の気持ちに寄り添うような支援者の養成が望まれると思っております。

 特に、精神障害者の雇用に関しましては、後のところでも申し上げると思いますが、仕事の場だけでなく、先ほどお話がありましたように、生活全般を見なくてはいけない。そういうようなところでの、一人の人に対して総合的な支援が必要であります。

 また、事業者側からお話がありましたように、やはり医療につながっている、服薬をしなくてはいけない、そういうところの支援体制、それもしっかりとしなくてはいけない。言ってみれば、医療と保健と福祉、そういう、支援者たちがしっかりと一人の障害者を支えていく必要がありまして、このようなシステムづくりが必要であると思っております。

 それと、就労支援ということが今いろいろと言われているところでありますけれども、現在、精神障害者の就労支援というのがなかなか地域で根づいていないというのが、私が感じているところであります。やはり、就労といいますと、どうしても、従来、今までの福祉の対象でありました身体と知的の人の就労支援が地域ではなされております。

 特に身体障害者の方は、しっかりと本人が、バリアフリー化できていることによって車椅子などで仕事場に通えますけれども、知的障害者に関しましては、やはりいろいろと今まで、この雇用義務化に至りましては御苦労があったと思います。知的の人のための、先ほどの就労側のお話のように、仕事を簡単にして知的の人ができるようにするとか、そのような配慮が必要であります。

 精神障害者にとりましても、先ほど申し上げましたように、日常生活、例えば仕事には頑張って行くんですね。すごく真面目人間でありまして、仕事は毎日行くけれども、例えば、帰ってきてからどんな状態かといいますと、もう疲れ果てて帰ってきて、ただいまと帰れば、お母さんが、夕御飯の支度ができているし、お風呂も沸いているし、さあ御飯を食べてお風呂に入りなさい、次の朝も、お母さんが起こして、御飯の支度をしてちゃんと出させるという。そのような生活の支援があって成り立っているという面もあると思っております。

 ぜひとも、このような仕事の場だけでなく生活の場でも支援、それも、仕事の場、生活の場というように個々の場ではなく、これが連携したサービスが必要であると思っておりますので、そのような支援体制づくり。それをこれから、五年間は長いということでありましたけれども、その間にしっかりと丁寧な支援策をつくっていきたいと思っておりますし、国側もそれをしっかりと踏まえてこれから検討していくということでありますので、何とぞ、この改正法案が成立することを強く望みたいと思っております。

 それと、実は、精神保健福祉法。

 これは本当にまだまだ課題が多いところでありますけれども、平成二十二年六月に、障がい者制度改革推進会議の第一次意見が閣議決定されました。その中に、保護者制度の見直し等も含めまして、そのあり方を検討し、平成二十四年内です、平成二十四年内をめどに結論を得ることとされました。

 当会としても、高い関心を持って各種会議において議論に参加してまいりました。このたび、保護者制度など重要な問題が焦点となって改正されます。私たち家族会は、高い関心と希望を持ってこの法案の成立を強く望んでいるところであります。

 まず最初に、保護者制度の廃止。これは、先ほど申し上げましたように、全家連時代から長きにわたって私どもが要望していることでございます。

 保護者制度につきましては、明治時代の精神病者監護法以来百年にわたって家族に介護や保護を義務づけてきました。この保護者制度は、精神障害者については保護が必要な人であるとされまして、一人の人間として扱わないという、言ってみれば差別法ではなかったかと思っております。

 保護者には、治療を受けさせる義務、全く私ども素人の家族に医療的なことはわからないわけですけれども、治療を受けさせる、そのような義務を家族に押しつけておりました。

 また、保護者は、治療を拒否する当事者を説得し切れず、なかなか医療につながらない方が多いわけで、当事者が何らか他人を害するような行為があったときに賠償責任を負うなど、家族には背負い切れない重責を担わされておりまして、そのことが、時には家族が退院を拒むという事態を引き起こしまして、入院の長期化の原因にも結びついていました。

 例えば、どうしても夜中に状態が悪くなる。そして、幻聴とか妄想で、本人が幻聴が聞こえるためにレコードの音響を、ボリュームいっぱいに真夜中にかけるわけです。御近所にとどろき渡るような音響で、家族は冷や冷やして何とかそれをとどめようとするんですけれども、やはり、本人はそういう幻聴という症状の悪い状態にありまして、なかなか家族の言うことも聞かない。そして、私が知っているその御家族は、もしかしたら、あした、うちのことが新聞記事になっちゃうんじゃないか、そういう不安を抱えてずっと今まで当事者を支えてきておりましたのが家族であります。

 ですから、今回、この改正案によりまして保護者の義務がなくなることは、私ども家族が本当に普通の家族として地域で生活できる、保護者制度の法律の中で義務づけられることなく、普通の家族として生活できていくのかなという感じを持っております。

 それと、実は、医療保護入院の問題点です。

 残念ながら、先ほどお医者様の方からもありましたように、家族の同意ということが今回掲げられてきましたことは、実は私どもにとりましては大変に遺憾なことであります。保護者制度とどこが変わるのというような家族会からのいろいろな意見がありました。

 しかし、先ほどのお話のように、家族ではない、新しい、医療保護入院というのは非自発的入院ということで、本人の意思がないところで入院されるということで、やはり家族と本人の関係が悪くなって、いわゆる退院してもまた再入院、医療保護入院のベッド数が減らないという一つの社会的な問題ではないかと私は思っております。

 先ほどお医者様がおっしゃいましたように、今回の改正案ではいい面もあるんです、厚生労働大臣が指針を出すとか。あと、私どもとしましては、これは後から申し上げるところですけれども、医療審査会の中に精神保健福祉士という福祉の目が入るということで、このことにおきましては、少し、実は半歩前進という考えでおります。

 厚生労働省から出されました家族の同意に関しては、再三、認められないという意見表明を私どもはしてきましたけれども、それをしてしまうとこの改正案が廃案になってしまう、廃案になってしまったら、今申し上げましたように、いい面もあるのに、全くもとのままになってしまうんじゃないかということで、今回はこの法案に、本当に渋々ながら、いたし方ないという状態で家族会は合意いたしたところであります。

 医療保護入院につきましては、三年後に、家族の同意等を含めまして医療保護入院のあり方を検討するということでありますけれども、実は、私の地域のある病院では、入院は全て任意入院にする、医療保護入院はしないという院長の考えで、現在入院している患者は全員任意入院です。

 一体どうしてそういうことができていくのかなと聞きましたところ、やはり、院長、看護師が訪問しているんです。訪問して、本当に医療の必要な人が、医療が必要だねと本人がしっかりと納得した上で入院につなげています。

 しかし、それが医療につながらなくても、訪問支援で精神の人が回復していくということもあるわけですので、私どもは、この三年後の見直し、医療保護入院の家族の同意をなくすことでなく、やはりアウトリーチ、訪問支援が地域でしっかりと根づくことによって精神障害者の病状の悪化を防いだり、あと、どうしても精神障害者の精神科の入院のベッド数が減らないというところですけれども、これは地域医療によって、入院しない精神科医療ということも可能ではないかということで、家族会といたしましてはそれを強く望むところであります。

 アウトリーチ、それはいろいろと精神のことで言われるところでありますが、精神は医療と保健と福祉、そういう、支援者が連携して助けていかなくてはいけない。アウトリーチに関しましても、そのような多職種チームの地域での構築ということを強く望むところであります。

 以上であります。どうぞよろしくお願いいたします。ありがとうございます。(拍手)

松本委員長 ありがとうございました。

 次に、坂本参考人にお願いいたします。

坂本参考人 ただいま御紹介いただきました、私、社会福祉法人八ヶ岳名水会障がい者就業・生活支援センター陽だまりで主任就業支援担当をしております坂本誠と申します。よろしくお願いいたします。

 本日、このような貴重な機会をいただくことができまして、ありがとうございます。お礼申し上げます。

 最初にこのお話をいただいたときには、私、一現場支援員という形で、私で務まるかななんという、ちょっとちゅうちょもあったんですけれども、現場にいるからこそ感じること、お話しできることもあるのではないかと思い、今回こちらの方に立たせていただくことにさせていただきました。なれない分、拙い点も多々あるかとは思いますが、何とぞ御容赦いただければと思います。

 それでは、まず、本題に入る前になんですけれども、私どもの法人と、私が今業務として担当しております障害者就業・生活支援センターについて、少しお話をさせていただければと思います。お手元にカラー刷りで、ちょっと宣伝にはなってしまうんですけれども、法人の資料がありますので、イメージしやすいように、もしそちらの方をごらんになってお話を聞いていただければと思います。

 私どもの法人は、平成四年の七月に、「たとえ障がいがあっても、地域という大きな家族の中で支え合って安心して暮らせる社会の実現」を理念に掲げて、社会福祉法人八ヶ岳名水会として設立をされました。翌平成五年には、山梨県の北部に当たります、広大な自然の広がる八ケ岳の南麓になります本当に自然の豊かなところなんですけれども、そちらの方に知的障害者の入所更生施設、星の里を開設したのを皮切りに、過去二十年間、もうことし二十周年になるんですけれども、その中で法改正なども四回ほどありましたが、その法改正があるごとに、地域の実情に照らし合わせながら、常に当事者のニーズに基づいた事業展開を行ってまいりました。

 二十四年度末現在では、重度の障害を持つ方のための生活を支える生活介護事業やグループホーム事業、就職を目指す障害者の方のための就労系の通所事業、また、在宅障害者や触法障害者の方が地域定着や就労を行うために、支援を必要とする方のための相談系の事業所など、あらゆる障害者ニーズにお応えするべく、現在で二十一の事業を実施しておりまして、三百人を超えるサービス利用者と、年間三千五百件を超える相談を約二百名の職員で支えている、複合支援型の社会福祉法人へと変革してまいりました。

 その変革の中で、平成十五年に認可を受けまして、山梨県で初めて障害者就業・生活支援センターとして事業開始となりましたのが、私どもの就労、生活支援事業所、陽だまりになります。

 障害者就業・生活支援センターは、現在、全国都道府県の保健福祉圏域に三百十七カ所設置されていると報告を聞いております。山梨県でも、陽だまりを含めて、現在四カ所の就業・生活支援センターが設置されています。

 センターごとに、事業の取り組みや事業内容、特色などはバックボーンによって異なってはいるんですけれども、基本的な就業・生活支援センターの事業の目的としては、就職や職場適応などの就業面の支援ばかりではなく、生活習慣の形成や日常生活の管理などの生活支援が必要な障害者に対して、就労支援担当者、私たちは就労支援ワーカーと呼んでいますけれども、それと生活支援担当者、生活支援ワーカーが一体的になりそれぞれの業務を実施して、身近な地域で、障害当事者の方がお住まいの地域で就業面及び生活面で総合的な支援を提供し、職業生活における自立を図ることを目的としております。

 私たち陽だまりのもう少し詳しい業務のお話をさせていただきますと、私たち陽だまりは、山梨県北部を中心に三市五町を二名の就労支援ワーカーと一名の生活支援ワーカーで担当しております。

 担当圏域は実はとても広くて、山梨県の面積の約四七%を担当していて、県内四カ所の中で一番大きな面積を担当しているんですね。そのおかげで、担当圏域は、北は長野県に隣接する圏域から、南は静岡県に隣接する圏域までを担当しているので、長野県の事業所や静岡県の事業所とやりとりすることも非常に多くあります。

 ただ、それだけ広い圏域を担当しているにもかかわらず、山梨というところはそんなに人の多い地域ではなく、そしてまた、言い方はあれなんですけれども、田舎、自然豊かなところなので、その広い地域に人口は三十万にも届かないというところで、広い中で少ない人口で対応させていただいています。

 平成二十四年度、昨年度の状況なんですけれども、当センターでは二百五十名弱の登録者がありまして、年間で三千件を超える就労相談及び就労支援を実施しております。全国的な就業・生活支援センターの平均値に照らし合わせますと若干低目の数値が出ていますので、この辺は私ども事業所の今後の課題になっているかなというふうにも思っております。

 平成二十四年度の登録者内訳になってくるんですけれども、こちらの方は、身体障害者の方の登録が一七%、知的障害者の方が四八%、精神障害者の方が二五%、発達障害等が主になるんですけれども、その他の障害の方が一〇%という形になっておりまして、もともと知的障害の支援施設が母体であったということもありまして、約半数が知的障害者の方の登録となっております。

 知的障害者の方の支援が非常に高いという特徴を持ったセンターですけれども、ここで就労という観点からちょっとデータを見直しますと、在職率で見ますと、今登録されている方の在職率は、身体障害者の方が四五%、知的障害者の方が五一%と、登録されている方のうちの約半数の方が就職をされているのに対して、精神障害者の方の在職率は二二%、その他、発達障害者等の在職率が二六%と、精神障害者や、その他、発達障害者等の仕事につけている率というのは、身体障害者、知的障害者の約半分しかありません。このことからも、精神障害者の方や、その他、発達障害者の方に対して、私どもの圏域、地域には隠れた就労支援のニーズがあることがわかります。

 ここで、ちょっと法案の内容の方にも触れながらお話をさせていただくんですけれども、法案の中で、精神障害者の雇用が義務化されること、また、雇用の分野における、障害を理由とする差別的な取り扱いの禁止などは、精神障害者や、その他、発達障害者等の雇用促進の一歩となることは非常に喜ばしく感じておりまして、そのこと自体は決して否定するものではないのです。ただ、それだけでは決して解決ができない、障害者の雇用を困難にしている課題がほかにあると考えています。

 法定雇用率制度についてなんですけれども、そのシステム上、障害者を雇用する際に企業側として、リスクを低く、雇用率算定のポイントを高くと考える企業が、現場の方、いろいろな会社の方等を私が訪問させていただいて、実感として、そういったふうに考える企業は少なくはないなというふうに感じます。

 制度上、必然的に、環境面などのハードを整えることで雇用が容易になってくる身体障害者の方や、職業上の重度判定を受けることのできる中軽度の知的障害者を積極的に採用する企業は、私どもの地域ではかなり存在はします。中には、最初からダブルカウントをとりたいということで指定してくださる企業もあります。

 そのこと自体は決して悪いことではないとは思うんですけれども、その一方で、やはり、現段階では義務化はされていないものの雇用率の算定に含めることができる精神障害者の方たちの雇用の実績が、私どもの地域ではまだ余り反映されていないということがあります。

 このことについては、私どもが企業様とお話をさせていただく中で、まだまだ企業にとって精神障害者の方や発達障害者の方の雇用に対するリスクが高いと考えられている企業様が少なからずあるなという感想です。ただしかし、企業に精神障害者の方や発達障害者の方が敬遠されてしまうのは、雇用する企業側だけの問題では決してなくて、私ども、支援する福祉側の問題も非常に多くあると思っております。

 そのことについてですけれども、精神障害者の方に関しては、退院促進、地域移行・地域定着支援事業等が実施されて、いっとき、病院から退院して地域から一般就労を目指す精神障害の方が非常に多くふえた時期がありました。しかし、その当時も、そして今現在もなんですけれども、精神障害者や発達障害者を受け入れる地域資源は決して十分であるとは思っておりません。

 就労支援に関して言えば、特に、就労移行支援事業所等が地域資源として考えられているんですけれども、どうしても、もともと知的障害者の授産施設等から事業移行したところが多くあるために、精神障害者の方や発達障害者の方への支援スキルをお持ちであるとか、そういったところに特化しているという事業所がなかなか地域に少なく、そういうところがまれであるということです。

 また、自立支援法によって新法移行が何年かかけて行われましたけれども、やはりそういった経緯があってまだそんなにたっていないこともありまして、就労支援のためのスキル自体、これは障害に関係なく、就労、雇用定着させるためのスキル自体が、事業所自体にまだまだ不足している部分があると思います。

 このように、変わり行く制度に現場が追いついていないという現状もあると思います。たとえ法律の方で、制度の理念や方策として非常にすばらしいものを御提示いただいたとしても、実際に地域でそれを十分に活用できるための基礎力が導入時にまだないのではないかと思います。できれば、制度等、新しい法案等を導入する場合には、もっと公的なサポートを投入して、制度そのものを動かす、そして地域でその役回りを果たす人材の育成に力を入れてほしいなというふうに考えております。

 制度というものは、制度が変わるたびに現場の方は常に翻弄されるという現状があります。翻弄されること自体は決して悪いことではないと思うんですね、そこから変わっていくということなので。ただ、制度をつくるだけではなく、今言ったように、社会の中に根づいて、当たり前のようにそれが活用できるようにならなければ、その制度自体は当然廃れていってしまうものではないかと思います。

 そのためにも、雇用する側、企業側や、雇用を支える側、私たちや行政であったりする支援側ですが、どちらに対しても十分な啓発と教育を行っていくことが必要だと思います。せっかく生まれてきたこういった社会の仕組みを最大限効果的に使えるよう取り組んでいくこと、そこまでやって責任が果たせるのではないかなというふうに思います。

 最後、少しまとめになりますけれども、企業にとって雇用の質、福祉事業所にとって支援の質、どちらかというと数字を追い求めがちになってしまう、数であったりとかを追い求めがちになってしまうんですけれども、実質的な雇用の質であったりとか支援の質をサポートして評価できる、そういった下地がなければ、精神障害者や今後ふえていくであろう発達障害者の方の雇用への根本的な問題解決、課題解決には至らないのではないかなというふうに思います。評価の方法は非常に難しい、客観的な評価にするにはちょっと難しいかなとは思うんですけれども、ぜひ今後、取り組んで検討していただきたい課題の一つだと考えております。

 なかなかうまくまとめられず、お聞き苦しい点もあったと思いますが、障害者雇用について、日々現場の中で感じていることをお話しさせていただきました。

 どうもありがとうございました。(拍手)

松本委員長 ありがとうございました。

 次に、増田参考人にお願いいたします。

増田参考人 公益社団法人やどかりの里の増田と申します。

 やどかりの里というのは、一九七〇年から、さいたま市で精神障害のある人たちの地域支援を行っている団体です。私自身は、その中のやどかり情報館という、かつては精神障害者福祉工場だったんですけれども、現在は雇用する事業とそれから就労移行を進める事業所、多機能型というんでしょうか、そういう事業所の責任者でもございます。

 このたびは、発言のチャンスをいただきまして、本当にありがとうございます。限られた時間ですので、私自身は、精神保健福祉法の改正案についての意見を述べさせていただきたいと思っています。

 やどかりの里については、資料を作成してお配りいただきました。A4横版の資料の最後から二枚目が私どもやどかりの簡単な経過と、それから最後の一枚は、利用者の現状ですとか活動の組織図などを掲載させていただいております。時間がないので、詳細については省略をさせていただきたいと思います。

 それで、資料をお配りいただいたわけですけれども、一枚めくっていただくと、須藤守夫さんという方の御紹介がございます。この写真の右側が須藤守夫さんで、残念ながらがんで亡くなられてしまったんですけれども、亡くなる前に「退院してよかった」という御本を出されて、その中からこの一節を御紹介しています。

 桜の花を見ながら苦しくて泣いたというのは、長期入院中の須藤さんの、そのときは言葉にならなかった声です。退院してしばらくたってから、本当にその一番つらかったときのことを語ってくれました。そして、桜の花の咲くたびに涙を流したことと、隣には老人病棟があって、その病棟のお線香の香りが彼のいる病棟に流れてきて、その香りの中に自分の将来を重ねていたというふうに語ってくれました。

 そして、二枚目を見ていただくと、これは、彼がアパートで、グループホームなんですけれども、とてもきれいに整頓された、いつもきれいなアパートの一室に住んでいらして、仲間の、この方も長期入院をされた方が遊びに来て、そんなシーンを写真で写していますけれども、入院が何で長くなったのかということを語ってくれています。

 何回も入院を繰り返して、そのたびに家族に迷惑をかけちゃったんだよねと。そして、頼りにしていたお父さん、彼は父親をとても尊敬していまして、そのお父さんが高齢化されて、彼が長く入院している間に亡くなられてしまった。そのうち、病棟がいつしか暮らしの場になり、退院を諦めていた。そんなころに、病院のワーカーからたまたまやどかりの里を紹介されて、最初はそんなところに行くのは嫌だなと思っていたと話してくれましたけれども、退院をしてきてくれました。

 最初は、長い入院だったので、例えば、電車に乗ることとかバスに乗ることとか、とても戸惑いがありましたけれども、地域の中の仲間や職員の支えで生き生きと生活をされるようになって、とても面倒見のいい方だったので、退院後数年たってからは、仲間の兄貴分として、新しく退院してきた仲間を支えるような、そんな存在になっていきました。

 私がこの須藤さんのお話を皆さんにお伝えしたいのは、やはり、入院を繰り返しているそのさなかに、多くの方が何にも支援を受けられていないんですね。病院に通うだけ、あるいは仕事場に行くだけ。本当に困ったときに支援の先がないということが一つ。それから、家族に多くの負担をかけていたこと。そして、退院後の須藤さんの様子を詳細はお話しできませんけれども、地域で支援があれば、彼は病気を抱えつつも自分の人生を歩むことが可能だったんですね。やどかりに来てからは再入院をされませんでした。入院したのは、がんでの治療による入院でした。

 そんなことを冒頭にお話しして、最初の私の問題意識は、私自身はずっと、三十年ちょっと、やどかりの里という地域支援の福祉の現場におりますので、そこから見えてきた精神障害者の問題ということを指摘しておきたいと思っています。

 今回、本当にたくさんのことをお伝えしたいんですけれども、まず、やはり社会的入院の問題をこの場では一つ問題提起させていただこうと思っています。

 何でこの社会的入院が日本だけ解消しないのか、このことを大変私自身は重く受けとめています。

 四枚目の資料になるんですけれども、そこに三点ほど掲げさせていただいています。

 一つ目の課題は、地域の支援体制の脆弱さです。

 日本の中で、本当は支援が必要なのに、その支援に結びついていない精神障害のある人たちが多数いるのです。私たちは、その方たちを無支援状態の人というふうに呼んでいます。その実態は全く把握されておらず、その多くが家族に委ねられているんです。そして、家族が高齢化などで支援力が弱まってきたときに長期入院になっていく、そんな状況が日本の中では常態化しているということを指摘したいと思います。

 私たちは、家族の方への聞き取り調査を何回かさせていただきました。多くの人たちから異口同音に、本当に大変なときには誰も助けてくれなかったというふうに言われました。本人や家族が社会の中で孤立していく、この問題は大変に深刻です。

 そして、やどかりの里は、さいたま市というところで活動していますが、最後の方の資料に組織図があるんですけれども、グループホームやショートステイ、相談支援、働く場、精神障害の人たちにとってほとんどの資源を私たちの法人は用意してきました。四人の患者さんから始まった支援だったんです、現在、三百人を超える人たちの支援拠点となっていますけれども、それでも、まだまだ地域のニーズには応えられないんです。グループホームに入りたいと言われても、ごめんなさい、今いっぱいなんです、そんなことがたくさん起こってきています。

 でも、やどかりのような支援の仕組みがあるところが日本の中ではまだ限られた地域だということも、もう一つの事実なんです。そういうことがまず一点目。だから、家族に支援が依存されてきているということです。

 もう一つは、待ち受けの支援の限界を指摘したいと思います。

 御家族が体調を崩して、医療機関に連れていきたい、それが困難な場合にも、困っている現場にその支援を届ける仕組みはとても脆弱です。ほとんどないと言ってもいいくらいです。ですから、問題が深刻になってからの介入となって、本人と家族や支援者が関係性をこじらせてしまう、そんなことがよくあります。これは医療だけではなくて、保健や福祉の専門職もチームの一員として、必要な支援を届ける仕組みが必要なんです。それが不足しています。

 そして、三つ目の課題は、医療と福祉の連携の課題です。

 地域の支援現場では、入院中の患者さんへ、退院してほしいな、支援を届けたいなと思っても、なかなか支援が届けられにくいということがあります。須藤さんが病棟の中で慟哭していても、その泣き声は私たちの地域には届いてこなかったわけです。精神科病院の敷居は、地域の支援者にとってはまだまだ高いのです。本当に悔しい思いをすることがたくさんあります。

 あわせて、障害者制度と医療制度の縦割りの問題もあります。退院のために準備する事業が私たちのところでもあるんですけれども、入院中は事業を利用されても報酬が入らないんですね。そういう状況がありますので、事業所としても、人の配置が必要なので、入院中の人の受け入れを、やはり限界を持って受けていくしかないというところがあります。

 医療と福祉の連携の必要性というのは、ずっと叫ばれてきています。誰もが必要だというふうに考えていますけれども、その風通しをどうしていくのか、今回の改正案がどこまでその実効性を持つのか、とても大事な点だというふうに思っています。

 次のペーパーに移ります。

 こういう場でこういう率直な発言をするのはとても勇気が要るんですけれども、この精神保健法改正案について、率直な感想を述べさせていただきます。

 閣議決定をされた法律案を見たときに、やはり残念でした、とてもがっかりしました。もちろん、保護者制度の廃止は、長年の懸案でしたから、一歩前進だというふうには思いました。しかし、参議院の審議の中でも多くの皆さんが指摘されましたけれども、結局、家族の同意による入院制度は残りました。安易な医療保護入院が行われていく危険性をもしかしたら広げてしまったのではないか、もしかしたらこれは後退になってしまうのではないか、そんな危惧を抱いています。

 精神分野に長年おりますと、ああ、またか、まただめだったかという、本当に残念な思いを抱きました。日本の精神科医療の持つ課題は、誰もが知っています。誰もがわかっています。でも、変わらない。長年この業界にかかわる一人として、本当に残念な、じくじたる思い、自分自身の力のなさも含めて感じています。こうした問題を解決していただくのが、やはり政治の責任なのではないかというふうに、皆さんに大いなる期待をしているところです。

 資料にも書きましたけれども、ここ数年、障がい者制度改革推進会議の第一次意見、それから障がい者制度改革推進会議総合福祉部会の骨格提言の中でも、保護者制度の問題点を解消するための、扶養義務者にかわる人権擁護の確立というような提言がまとめられたり、厚労省のもとに開かれた、新たな地域精神保健医療体制の構築に向けた検討チームの中でもやはり、保護者の同意を要件としない入院制度を提案しています。

 これらは内閣府や厚労省のもとに開かれた会議であり、それぞれの構成員は審議を重ね、異なる意見がある中で一致点を見出す努力を重ねながらの提言だったと思います。なぜこうした検討会の意見が法改正にもっと反映されないのだろうか、何のための検討だったんだろうか。こうした議論が軽視されていくことに、大変大きな危惧を感じています。国民の声は行政府や立法府に何で届かないんだろうかというふうに率直に思っています。

 さて、今回の改正案について、主に医療保護の問題について意見を述べたいと思います。次のペーパーをめくってください。

 まず最初に指摘しなければいけないのは、この法案には、障害のある人の権利擁護の視点が欠如していることです。

 医療保護入院制度、これは本人の同意に基づかないわけですから、強制入院です。しかし、そこに権利擁護の仕組みがないことは大きな欠陥と言わざるを得ません。この権利擁護の仕組みをつくり出すことが今回の改正の大きな意義だったのではないでしょうか。時間がなくてという理由では納得できないんです。一人の人の人生や命にかかわる重たい問題なんだということを指摘しておきたいと思います。

 改正案の問題の二点目です。

 日本においては医療保護入院がとても多いことが指摘されていますが、この問題を解決していくためには、家族だけではなく、医療機関だけではなく、日常的に信頼できる支援者がいることが大事なのです。

 病識がないということを言及されることが多いのですけれども、多くの人が、自分自身のいつもとちょっと違う感じ、体調悪化のサインに気づいているんです。しかし、そのことを相談できるかどうか。医師に言うと薬がふえちゃうなという心配をする人もいて、医療機関以外に相談できるところがあることがとても大事です。

 もう一つの問題は、社会制度としての地域精神保健活動の不足を指摘したいと思います。

 多くの人たちが、最初に精神疾患にかかるときに疾患についての正しい理解を持ち得ていないことがとても多いのです。御家族も、まさか我が子が精神疾患に罹患するということを予測している人はほとんどいません。正しい理解のないところでは、発症したことを受けとめることは、当事者や家族にとっては大きなハードルなのです。これは、当事者、家族の問題ではなく、社会のあり方、社会の仕組みの問題なんです。国が本腰を入れてこのことに取り組まない限り、問題解決の糸口は見えてこないというふうに思っています。

 精神疾患を重篤化させないための予防的な観点での地域精神保健の取り組みが欠如していること、精神疾患への正しい理解が広がっていないことも、医療保護入院の背景にはあります。

 医療制度の問題として、次のような指摘を聞くことがあって、私自身はそこは素人なんですけれども、精神科救急、スーパー救急などと言われている制度があります。ここは、精神科救急の病棟の新規患者のうち、六割以上が措置入院、緊急措置入院、医療保護入院等々でなければいけない。そうすると、六割を切ってしまうと精神科救急としての指定がとれなくなる、これは大きな問題。診療報酬との関係で医療保護入院が多くなっているということもあるのではないかという指摘をする声も、病院関係者からは聞くことがあります。

 さて、最後になりますが、今回の精神保健福祉法改正に向けて、緊急的な課題として三点、指摘しておきたいと思います。次のペーパーになります。

 医療保護入院の際の手続、入院中、退院後にわたる権利擁護のシステムの早急な検討です。

 そのうちの一つは、公的な責任制が担保された第三者機関の設置です。現状の精神医療審査会を実効性あるものに改革していくことも一つの方法かと思います。当事者や家族を必置とすること、医療機関に所属するのではない精神科ソーシャルワーカーなどを必ず構成員とすること、書類上の審査だけではなく実地での審査を行うことなど、権利が守られていることを第三者がかかわって確認していくことが必要です。あわせて、当事者の意思決定を支援するための代弁者、オンブズパーソンやアドボケーターというふうに言われていますけれども、こうした制度の創設です。

 この制度は総合福祉部会でもその提言が行われており、国内外の先駆的な取り組みなどを研究し、実施するための検討会の設置を急ぐ必要があります。こうした制度化が実現されるまでは、少なくとも病院外の精神保健指定医の診察による入院決定にするべきだと考えています。

 二点目は、医療保護入院は強制入院なのですから、医療費の公費負担制度を設けることも申し上げたいと思います。最終的には医療費の削減に結びつくのではないかと考えられます。

 最後に、いずれにしても強制入院や社会的入院を減らしていかなければならないわけです。そのためには、いつでも誰でも相談ができて、必要な支援が受けられるような地域精神保健活動の仕組みを構築していくことを重ねて申し上げたいと思います。そして、総合福祉部会の提言にもありましたが、地域基盤整備十カ年戦略策定の法定化などが求められます。そして、家族が支える仕組みから社会が支える仕組みに大きくかじを切ることが急務だと思っています。

 以上、御清聴ありがとうございました。(拍手)

松本委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の方々の御意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

松本委員長 これより参考人に対する質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。高鳥修一君。

高鳥委員 おはようございます。自由民主党の高鳥修一でございます。

 参考人の皆様、本日は貴重な御意見をお聞かせいただきまして、まことにありがとうございます。

 私自身、手をつなぐ育成会の会員でございまして、障害者の福祉の問題には強い関心を持っております。

 就労支援、これを充実させていくことはこれからの福祉にとって大変重要な課題であると考えております。障害者がかわいそうな人だから人里離れた施設に保護してそこで一生を終えるということではなくて、一度きりの人生ですから、できる限り伸びやかに生きてほしいなと私は思っております。社会に出たら働いて世の中の役に立ちたい、そう希望する障害者は多いのでございます。誰かに喜んでもらってそれを自分の喜びとする、幸福感や達成感を味わう、この気持ちは障害があってもなくても同じであると思います。町中で町内会の行事にも参加をして、そして普通に暮らせる、差別のない社会をつくっていくことが肝要であると考えております。

 そういった観点から、きょうは主に障害者の就労支援についてお聞きをしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 最初に、栗原参考人に、恐縮ですが何問かお答えいただきたいと存じます。

 まず、お父上の時代から五十年以上にわたって障害者の雇用に取り組まれてきたというお話を伺いました。入社される前にお父上が障害者雇用を始められたわけでございますが、お父上に何かそのきっかけといいますか、特別な思いがあったのかどうか。そして、始められた当時は、軌道に乗るまでは困難なことがあったかと思いますが、その辺の事情をお聞かせいただきたいと思います。

栗原参考人 ただいま高島先生からのお問い合わせにつきまして、私の思っていることを回答させていただきたいと思います。

 先ほども私がお話をしましたとおり、私がこの会社に昭和四十九年に入ったときに、もう障害者が現場に、三十人まではいなかったと思うんですが、二十人近くいたという記憶がございます。それで中心になって働いてもいたということで、本当に私もそのときびっくりしたというお話を先ほどしました。

 しかしながら、やはり一緒にいて、本当に素直でかわいい、私はそういう感じを受けたんですよ。素直で、言ったことを素直に受けてくれる、そういう子が現場にいると明るくなるんですね。ですから、そういうことで、この子たちを何とかうまく戦力として使ってあげなきゃいけないというようなことで、私はもう四十年やってまいりました。

 そういうことでよろしゅうございましょうか。

高鳥委員 済みません、念のため申し上げますが、よく間違われるんですが、私、高島ではございません、高鳥でございますので、恐縮でございます。(栗原参考人「済みません」と呼ぶ)

 ありがとうございます。重度障害者も含めて、正社員の半数以上が障害者ということでございますが、特に、作業環境や、また仕事以外の時間ですね、余暇等について、配慮されていることはございますでしょうか。

栗原参考人 私どもの会社はそれほど大きな会社ではございませんので、特別にどうのこうのということはございません。ただし、半数以上の障害者がいて、やはり、その子たちが仕事を覚えたら、何とか長く会社でもって勤めてもらいたい。戦力ですから簡単にやめてもらっては困る。そこまで仕事を覚えてもらって、これからというときにやめてもらってはやはり困りますので、少しでも長く働いていただきたいということで、私は、コミュニケーションをやはり一番重要視しています。

 朝は常に、会社へ行きますと現場を回ります。それで、障害者の子たちと話をしながら、顔色を見ながら、ああ、きょうは大丈夫だなとか、やはり体調が悪いときというのは顔に出ますので、その辺のことを見ながらということと、朝、障害者が中心になって朝礼をやっているんですよ。一週間ごとにローテーションで朝礼をやっていまして、そこにもなるべく出るようにしています。そこで毎度同じようなパターンで言う子もいますし、いろいろなことを紙に書いて、それを読んでいる子もいます。やはりいろいろな子がいます。でも、そういう子がその場でもって生き生きとそういうことをやって頑張ってもらえるということは、我々としても望むことです。

 そのほかに父母会でいろいろな情報の収集をさせていただいています。やはり、お母さん方、お父さん方、家に帰っていろいろなお話もされていると思います。そういうことで我々がわからないことの話をしているということを、コミュニケーション不足で通じないとまずいので、それをこちらの方にフィードバックしてもらうということも今考えて、いろいろやっております。

 以上でございます。

高鳥委員 ありがとうございます。職場を離れてもコミュニケーションをしっかりとっておられるということで、非常に感銘を受けました。

 障害者の雇用を考えていても、実際には不安があるとか、あるいは余裕がないとしてちゅうちょしている中小企業が多いと考えます。このような企業にアドバイスがあれば、聞かせていただきたいと思います。栗原参考人、お願いします。

栗原参考人 先ほど来お話も出ておりますが、やはり、最初に雇用をするのにちゅうちょするというのは、障害を持った子に本当に仕事ができるのかということ、本当にさせて大丈夫なのか、どういう仕事をさせればいいのか、こういうことだと思うんですね。また、それを指導するための人を入れなきゃいけないんじゃないかとか、そういう危惧というのは皆さんお持ちだと思います。

 そういう中で、私どもは、例えば仕事をやる場合、障害者が障害者を教えるようにしているんですよ。先輩が後輩を教えるというようなことをやっています。障害者は、健常者に言われるよりも身構えないでスムーズに受け入れてくれる。ですから、実習で来たときでも、この子を君に任せるから実習の面倒を見てねと言うと、本当に一生懸命になって面倒を見てくれますよ。

 そういうこともありまして、我々がもし企業にこうやったらばということを言うとすれば、まず実習を受けていただきたい。実習を受けていただいて、ああ、障害者でも普通に働けるんだ、または、多少手が遅いけれども、まあ言ったことはやれるんだ、こういうようなことを、一歩入ってもらう。一歩入ってもらって、それでその後トライアルでも続けてもらえば、そうすれば何とか理解が得られるんじゃないかなというふうに思っています。

高鳥委員 ありがとうございます。

 すばらしいノウハウの蓄積をお持ちだと思いますけれども、その経験やノウハウを受けて、新たに障害者雇用に取り組んだ企業が栗原さんの周りであるのかどうか、企業間の情報交換の機会について取り組んでいることがあればお聞かせいただきたいと思うんです。

 というのは、これはクリーニング業でございますが、私の地元にも先進的に障害者を多数雇用した企業があります。地元の新聞にも取り上げられて非常に注目を浴びたんですけれども、後に続く企業がなかなか出てこないので、その辺の状況を御説明いただきたいと思います。

栗原参考人 私は神奈川県でもメッキ工業組合の理事長をやっておりまして、昔は、中小企業というのは、三ちゃんもさることながら、三Kというような職場もありまして、人がなかなか集まらない。そういうところで外国人を使っているということがよくありまして、その中で、私どもの会社は、それから見れば特異な会社だったと思います。

 そこで、皆さんに、希望者はもちろんですけれども、会社に来ていただいて、勉強会を開いて、障害者を使うとこれだけやれるんだ、これだけみんな頑張って仕事ができるから、いついなくなるかわからないような外国人を使うんだったら、こういうような障害を持った子でも戦力として使えるんだから、使ったらどうだというようなことを皆さんにお話しして、結構その後、一人、二人お使いになっている企業さんもございます。ほかにもどんどん、それを見てまた使われている企業がいる。

 と同時に、養護学校さん、高等養護学校さん、その学校の実習も積極的に受けてもらうようなお話もしております。それが非常に効果があると私は思っております。

高鳥委員 ありがとうございます。

 まだまだお聞きしたいことがあるんですが、もうあと質疑時間が五分しかございませんので、坂本参考人にお伺いをしたいんです。二問あるんですが、まとめて質問しますので、できれば簡潔にお答えいただきたいと思うんです。

 特別支援学校との連携について、陽だまりの資料にあったので、お聞きしたいんです。

 私は、就職担当の先生は非常によく頑張っていると思うんです。就職できなければ施設に入ってもらうという方向から大きく前進をしていると思います。ところが一方、一般の学校は生徒がどんどん減少して統廃合が進んでいるんですが、特別支援学校、ちょっときょう、皆さんに見ていただくには非常に小さい資料で申しわけないんですが、文科省にちょっと調べてもらったんですが、この十年間で特別支援学校の生徒というのは約三五%もふえている。ですから、それだけ就職を探さなければいけないということで、大変な状況にございます。この特別支援学校の連携について、留意していることがあれば教えていただきたいのが一点。

 もう一つは、障害者を支援する人を支援するというのは非常に私は重要だと思うんですね。ですから、坂本さんがやっておられるような障害者就業・生活支援センターに対する支援が十分であるのか、マンパワーが足りているのか、その辺をお話しください。

坂本参考人 では、今御質問いただきました二点について、一つずつ簡潔にお答えさせていただきたいと思います。

 まず、特別支援学校との連携についてですけれども、私どものところでは、圏域内に、身体を中心とした特別支援学校と、知的障害及び生活環境の改善が必要な方、児童のための支援学校があり、就職に向けての相談も毎年多く受けております。

 就職については、今おっしゃられたように、就職に対する課題が非常に多くて、学校の先生方も非常に苦慮しておられるということもあり、何年か前から頻繁に相談を受けるようになりまして、やはり、卒業する時点で必ずしも就職ができるわけではない、卒業した後の継続した支援も必要であるということもあり、今、私どもは、支援学校様と、高等部の二年生ぐらいから相談に入らせていただきまして、在学中の実習課程も一緒に同行し、付き添わせていただきましたり、卒業のときも、卒業で就職が決まっていれば、そのまま会社様に私どもが訪問するような約束をさせていただいたり、もし就職が決まっていないのであれば、その後どうするかを、卒業する時点で、御家族も御本人も不安にならないような形でアドバイス、御支援するようにしてはおります。

 もう一点の、支援する人間の育成ということだと思いますけれども、私ども、やはりまだまだ、支援の担い手、そしてその技術を持った人間はこれから育成する必要があると考えています。まだまだ就労に対する支援の手探り状態であるというところが現実にあると思います。

 特に、就労移行支援事業所は、就労を目的にした事業所でありながら、なかなか、そこにいらっしゃるスタッフの方が、就労させるための技術をお持ちでないという場合も多くあるので、ジョブコーチなどの資格等を十分に勉強しながら、そういった人材を育成することも必要ではないかというふうに考えております。

 よろしいでしょうか。

高鳥委員 済みません、最後に一点だけ川崎さんにお答えいただきたいんですが、障害特性に配慮をした、障害者側からの就労支援の御要望がありましたら、簡潔に、一言お願いいたします。

川崎参考人 川崎です。

 特に今回私どもが申し上げているところは、精神障害者の特性というのがどうしても医療とかかわっているというところで、やはり、そういうところでの医療側の支援、それと福祉との連携による支援が必要であり、そういう人材の養成が必要であると思っております。

 以上でよろしいでしょうか。

高鳥委員 どうもありがとうございました。

 時間が参りましたので、全ての方にお聞きできなくて申しわけないですが、質問を終わります。

 ありがとうございました。

松本委員長 次に、中根康浩君。

中根(康)委員 民主党の中根康浩と申します。

 本日は、それぞれの参考人の先生方におかれましては御多忙の中、国会にお越しをいただき、現場からの貴重な御意見を承ることができました。大変これからの国会審議にとって参考になったものと感じさせていただいております。

 それで、六名の参考人の方からの意見陳述を拝聴いたしておりまして、これは精神保健福祉法のことでございますけれども、改めてきょう明確になったのではないかと思うのは、精神疾患あるいは障害の方にとっては、入院よりもやはり地域生活の方が大切であるということ、入院はあくまでも急性期の治療のための例外的な措置であるのではないか、医療から保健あるいは福祉への転換がこれからの国の精神保健福祉行政にとっては極めて喫緊の課題であるということが、きょうの参考人の皆様方からの意見陳述で改めて明確にされたということだろうと思います。

 まずは、家族と患者、あるいは当事者と言った方がいいのかもしれませんが、これをつなぐ立場にある、中澤参考人また坂本参考人、増田参考人の御意見を承りたいと思います。

 きょう、六名の参考人の皆様方からは、医療保護入院における家族同意ということについて、明確に賛意を、賛成を示された方は一人もいなかったような気がいたします。

 にもかかわらず、今回この法案の中で家族同意要件が課せられるということについては、一体誰の利益を反映したものになっているのか。あるいは患者本人の権利擁護にこれは反するのではないかという意見陳述も数多くなされたような気がいたしておりますが、この家族同意というものが誰にとって利益になるのかということを、一言ずつ、時間の関係で簡単にということでお願いして恐縮でございますけれども、御意見を承れればと思います。

中澤参考人 家族同意とはということなんですけれども、やはり、精神障害を持っている方の人生ですし、その方の入院だと思っていますので、本人の同意がなかなかとれないときというのは、本当に、それを保護したり代弁したりするような方が、必ずその方の立場に立って、入院が必要と。

 やはり医療というのは、本当に切っても切れない部分が精神障害の方にあると思いますので、そういった中で、医療を受ける必要があるとき必要最小限を受けて、家族との関係というのも地域に出てきたときに必ずあると思います。入院中は、病識のない方もいますので、薬の調整などをしていただいて、地域に来たら、地域で家族との調整だとか、家族は家族でやはり入院してほしいという思い、たくさん福祉施設がかかわったりだとか、医療の方でかかわって、家族の負担も減らしていけるような、そういう体制をとっていけるようにしていきたいと思っています。

坂本参考人 家族同意ということについてですけれども、私の中で、対象となる障害の方の御相談をお受けしている中で、やはり、一様の家族関係が築けているわけではない、中にはそれぞれの諸事情を抱えている家族や御本人の課題もあるので、一概に一つの答えでまとめてしまうということは少し難しいのではないかなというふうに考えております。私としましては、個々の障害の特性に合わせたり、家族また環境などの様子に合わせた上での柔軟な対応ができることが求められるのではないかと考えています。

 簡単ですが、よろしいでしょうか。

増田参考人 医療保護入院を、家族の同意を省きたくないのはなぜかということですよね。

 本人や家族にとってこの制度は、私の立場からはいいものではないというふうに思うので、本人や家族の要望が前面にあるというふうには思えないです。入院のプロセスを省略化させる仕組みになっているので、病院の関係者や、あるいは地域でさまざまな問題が起こってくるときの解決策の一つとして便宜上つくられてしまっているというふうに思います。ですから、本来的には、精神科医療のあり方、あるいは地域での支援のシステムそのものを抜本的に変えなくてはいけないというふうに私自身は思っています。

中根(康)委員 やはり、きょうの参考人の皆様方の御意見を伺うと、御本人と家族との関係は必ずしも円満、円滑な関係が保たれているとは限らないという実情があると思います。したがって、家族同意ということについては慎重な対応が必要だ、もしくは、権利擁護に反するから今後の検討課題として残して、場合によっては近い将来にこれは廃止をするという方向でのさらなる見直しというものも必要ではないかという御意見が多かったような気がいたしております。

 二十四時間三百六十五日対応ができる地域ケア体制を構築するということによって入院を回避できるという御意見も多く見受けられた気がいたしますが、例えば中澤参考人の御意見、お話の中には、相談を受けたけれども、その帰り道にみずから命を絶ってしまって、力不足を感じざるを得なかったというような大変悲しい思い出があるというお話もありました。これから入院を極力回避するために地域ケアの体制を整えていくことが必要だということを前提とした場合に、いろいろと、地域だけでは、あるいはNPOであるとか社会福祉法人の皆様方のお力だけではこれを整えていくことができないということもあろうかと思いますが、国あるいは自治体の行政に二十四時間三百六十五日体制を整えるために望むことがあるとすればどんなことがあるか、中澤参考人に伺いたいと思います。

中澤参考人 二十四時間三百六十五日、やはり精神障害の方にとっては、いつ悩まれて、いつ最悪の場合命を落とされてということがあると思いますので、本当にそういうサポート体制が必要だなと思っています。

 私自身は、携帯電話ですとか、電話が来て、必要があったらそのまま訪問に行ったり、そういうのも夜間もしていたんですが、やはりそれをやるには、携帯電話代とか、家にいても必ず起きなきゃいけないとか、気の張った状態でやったりするという方が、ずっと一人の職員がやるというふうにはできないと思います。

 相談支援事業所でやると、最近だと計画相談ということで、利用者さんの、ほかの事業種別の方も含めた計画相談とかで忙しくて、なかなか本来の相談ができないという現状も聞いていたりするので、やはり二十四時間三百六十五日のサポート体制を築くためには、例えばもう一人それ用の職員を配置してもらえるような、そういう仕組みだとか制度、予算などもつけていただけると実現できるのかなと思っています。

 以上です。

中根(康)委員 もう一つ、家族と本人あるいは地域とを結ぶ立場にある中澤参考人に伺いたいと思います。

 今までの御経験からお話をいただければ結構なんですが、そもそもの話なんですけれども、入院をして、しかも長く入院をすればするほど、患者さんというのは状態が改善されるものなのかどうなのか、この辺を経験上お伺いできればと思います。

中澤参考人 きょう、参考人の方で医療関係者の方がいるので、なかなか言いにくい部分もあると思いますが、私の十五年という経験上でお話をさせていただきたいと思います。

 やはり病院は、服薬の管理ですとかそういうことに対しては、精神障害というのは医療と切って切り離せない状況にありますので、必要だと思っています。

 ただ、地域に出てきたときに、薬とかは飲んでいただくというのは前提の上で、僕は、精神障害を持っている方というのは、やはり家族という一番小さい社会のコミュニティーの中で、例えば、学校でいじめがあった、職場で何か嫌なことがあっても、家族でうまくストレス発散ができていたらそんなに大きなことにならないというか発病しなかったというケースもあるのかなと思います。

 いろいろなケースを見ていると、必ずしも家族関係がうまくいっておらず、DVですとか、本当にわあっと感情的にいろいろなことを表現されちゃう親御さんもいる中で、なかなか子供さんも、言葉は悪いですけれども、なるべくしてなった、そういう精神障害をお持ちの方もいるのかなと思います。そういった家族機能とかも、やはり地域に出てこないと改善もできません。

 もちろん、うちは障害者や家族も含めて一つの治療単位だと思ってやっていますので、精神障害の方が暮らしやすい、再発しにくい社会になるためには、家族の教育ですとか、家族も家族で大変だと思いますので、そういうサポートが必要だと思っています。

 また、あと、本当に幻聴だとか妄想というつらい精神症状をお持ちの方がいるんですが、僕の考えとしては、やはり風邪も、熱が出るとしんどいんですけれども、熱でばい菌を殺すみたいに、幻聴、妄想というのは、現実の社会からストレスが入ってこなくなるように非現実的な思考で現実社会を遮断するような、そういうふうに思えていますので、本当につらいときは薬に頼って幻聴、妄想をなくしていくことも大事だと思うんですが、それと同時に、幻聴、妄想が起きないように日々ストレスに耐える力をふやしていくという意味では、やはり地域で暮らしていくべきだと思います。

 本当に、家族関係がうまくいかなかったら、最近だとグループホームとかもありますので、グループホームで共同で過ごしたり、ヘルパーなどを使ってひとり暮らしをしてもいいのかなと思いますので、そういった意味で、ACTと呼ばれる、いろいろ訪問して、病識のない未治療者の方とかにもアプローチをしていく、リーチアウトしていく手法もあります。岡崎でもやっていきたいと家族会の方が話していましたので、そのようなことで僕も何かできたら御協力させていただきたいなと思っています。

 以上です。

中根(康)委員 雇用の方について、恐らく最後になるかもしれませんが、一点伺いたいと思います。

 中澤参考人にお尋ねをいたしますが、障害者差別解消法も今参議院で審議が行われて、この国会で成立の見込みでございます。あわせて、雇用分野の差別禁止については、今この厚労委員会にかかっているこの法案が成立を目指しているということでございます。

 この雇用の分野における合理的配慮の提供義務ということでございますけれども、四ツ葉の会では、知的、身体、精神、それぞれの障害特性に合わせた支援を行っておられるということであろうかと思いますが、利用者の方々を社会に送り出していく立場として、この合理的配慮ということ、特に精神あるいは知的の障害をお持ちの方々に対してどのような合理的配慮が望まれるか、支援者の立場として事業者に望まれることをお聞かせいただければと思います。

中澤参考人 特に知的、精神の方の雇用の場における合理的配慮ということですが、知的障害の方は、先ほども栗原参考人が言われていましたけれども、覚えるのは時間がかかるけれども、簡単なことなら集中して行うことができるのかなと思っています。やはり真面目な方も多くて、周りの社員のモチベーションも上がりますので、本当に短い指示で、的確に、端的に話したりだとか、わかりやすいように写真や平仮名を表記した指示書などを使って、見える化というんですか、そういうふうに取り組んで、私たちはやっています。

 精神障害に関しては、本当に一般的に人とかかわることが苦手で、こちらがよかれと思ってもなかなか、相手は精神症状とかが出たりすると悪く捉えちゃったりする方もあるので、一般的に余り人とかかわらないような仕事の方が、一概には言えませんけれども向いているのかなと思っています。

 また、前の日に寝られなかったりするということもあるので、僕のかかわっている、就職していただいている精神障害のケースの方は、最初は一日八時間という長時間で、高齢者のデイサービスの補助業務で就職されていたんですが、なかなか人づき合いが難しいとか長時間は難しいということで、今、一日四時間の短時間で週五日の、業務内容も全て変えて事務系で、発病する前にパソコンの資格を取っていたということもあって、そういうことをしています。

 お母さんに伺ったんですけれども、会社のしてほしい業務内容のために就職させるのではなく、そういう会社も多いとは思うんですが、あと法定雇用率の関係もあると思いますが、やはり障害当事者ができることを会社としては探して調整してくれる人がいると就職が長く続けていけるということを話していましたので、精神と知的のその辺の雇用における合理的配慮はそういうものかなと思っています。

 以上です。

中根(康)委員 与えられた時間が参りました。全ての参考人の皆様方にお尋ねすることができないことをおわび申し上げつつ、また、それぞれのお立場から貴重な御意見を承ることができたことに感謝を申し上げつつ、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

松本委員長 次に、河野正美君。

河野(正)委員 日本維新の会の河野正美でございます。

 本日は、大変お忙しい中、六名の参考人の方、貴重な意見を賜りまして、まことにありがとうございます。

 本当に貴重な意見で、今改めまして、私自身も精神科の医師として二十年以上やってきたわけなんですけれども、本当に、呉秀三先生という方が、もう百年になりますか、精神障害者は、精神病という病気になったとともに、重ねて、日本という我が国に生まれたことが不幸だということをおっしゃっていた有名な言葉があるんですが、その言葉を思い出しました。まだまだ日本の精神医療、障害者医療、しっかりやっていかなければならないのかなと改めて認識した次第です。

 籠本参考人にまずお聞きしたいんですけれども、今回、同意者の要件がある程度緩和されたということで、早期入院治療が若干スムーズに行えるようになったのかなということで、早期入院治療を行えば、早期に退院して社会復帰もスムーズになっていくと思いますので、この点はある程度評価しておりますけれども、私は、幾つかの問題点があると思います。

 先ほど参考人の方もおっしゃいましたように、家族の意見が一部対立して、ある方はオーケーだけれども、ある方は退院を請求したいというときに、精神医療審査会というのを利用してくださいということになるわけなんですけれども、精神医療審査会はかなりの業務量を持っておりまして、これが実際に機能するのかと思っております。籠本参考人も公的な病院で院長をされているわけですから、かなり公的な病院の方が審査会長等をされているかなと思いますけれども、その点から、実際に機能されるとお考えでしょうか。

    〔委員長退席、上川委員長代理着席〕

籠本参考人 各都道府県で事情は違いますが、精神医療審査会は現在、入院中の方、医療保護入院の方から退院請求があった場合に、それを受理して実際に審査に行けるのが、大阪でいいますとやはり一カ月かかるんですね。それもかなりの数の合議体、A、B、Cから始まってHの合議体まであるんですが、それがフル回転してもなかなか、申請があってすぐに行けないというような状況でございます。

 行政の方も、できるだけ早く当事者のもとへ行って判断をしたいということで、調査に行くよう努力されているんですが、まず委員の確保が難しい。医者もおりますし、それから弁護士の方もおられますし、委員の構成のメンバーの方々は、有識者の人を、できるだけ適正な人材を選べば選ぶほど、その方々はほかのお仕事もされておられますので、調整するのがなかなか難しいというのが現状です。

 先ほど先生がおっしゃいましたように、ある家族が入院に同意した、ところが別の家族が退院請求を出したという場合に、これは速やかに審査に行かなければならないんですが、現状の体制ではかなり時間、タイムラグがかかるもので、非現実的なところもあろうかと思います。そこは何とか工夫をしていくような方策が必要だというふうに思います。

河野(正)委員 今参考人がおっしゃいましたように、実際、審査会は大体、精神科の専門医である精神保健指定医と法律家委員、あるいは、今回、精神保健福祉士等とペアでいくことになるかと思うんですけれども、これの日程を調整するのがかなり厳しい状況で、私も十年以上そういった審査会にいたんですけれども、かなり厳しい日程調整が必要だったと思います。

 常日ごろ地方自治体の方では、私は福岡県ですが、福岡県は政令市もありますので、福岡県と福岡市と北九州市と三つの精神医療審査会があって、それぞれに幾つも分科会があるわけなんですけれども、そこに非常に多くの委員を出して、それでもなかなか難しい。どれぐらいで、患者さんから訴えがあって早期に結果を出すかということで、もう本当に、国の指導もあって大変な思いをしていたということがあります。

 次に、時間もありませんので、実は、今までは保護者はこの方ということで決まっていたわけなんですが、家族のどなたでもいいということになってくると、やはりその中で、病院の医師の立場からすると誰に責任を持ってお話をしたらいいのかとか、あるいは現実的な問題であればどなたに治療費を払っていただくのかとか、そういった問題も発生してくるのではないかなと考えております。

 公的病院とか救急をやっておられる先生、特に未収金問題というのもあって、病院へ支払いが滞ったままになっているという例もあるかもしれませんけれども、その点はいかが思われていますでしょうか。籠本参考人にお聞きしたいと思います。

籠本参考人 病院の未収金の問題は精神科医療だけの問題ではないです。特に身体救急をやられているところは本当に大変な思いをされています。そのことの対策のためにかなり頭を痛めておられるというのが現状です。ですから、今回の、家族のうちどなたでも同意されてというようなところと未収金の問題は直接は関係をしないのかなと思うんです。

 実際問題、この法案が通って、家族のうちのどなたでも同意権者になれるということであれば、実際我々が診療していて、救急等で来られたときに現実的にどういうふうにやるかといいますと、まず、お一人で来られる方については、これは医療保護入院というのにもともとなる可能性は、御本人が医療を求めて来られますので、適正な任意入院でできるだけ対応する。

 それから、御本人は入院したくないんだけれども、どうしても家族がせっぱ詰まってついてこられる場合は、その御家族の方の同意、これをまず最優先で考える。ですから、その人以外の別の家族がおられるかもしれませんけれども、その人の同意をとるよりも、むしろ、やはり現実的には、連れてこられたりいろいろその方のことを気遣って世話をしていただいている、そういう方の同意をとる。

 ただ、悪意で考えますと、いろいろなパターンが想定されるわけです。裏にいろいろ何か作為みたいなのがあって、無理やり御本人を入院させてしまいたいからということで連れてこられる場合もあるかもしれません。ただ、それに関しては、先ほど意見でも述べさせていただきましたが、医療保護入院の要件をきちんと厳格化する。つまり、どういう方には医療保護入院をしていただくが、こういう方については医療保護入院の要件はないということを判断する精神保健指定医がそれにのっとってきちんと判断できる基準、これがやはり大切かと思います。

河野(正)委員 ありがとうございました。

 確かに先生おっしゃるとおり、ガイドラインなり、強制入院の適否を判断すること、あるいはそれを一時的に入院と決めても、治療をすればどんどんよくなっていくわけですから、その後もさらに強制的入院を継続しなければいけないのかどうか。

 そういったところの判断基準というのが精神保健指定医によってまちまちであるということでは困ってしまいますので、やはり十分、国としてガイドラインをつくっていくべきだ、どこの病院に行っても同じような判断で治療が受けられるというふうに人権上配慮していかなければならないと思います。

 そういった意味で、チェック機構として、精神医療審査会というのが重要な役目を果たすと思うんですけれども、先ほどから議論させていただいておりますように非常に厳しい現状がありますので、こういった点をしっかりやっていただきたいなと思っております。

 それから、籠本参考人は先ほど、外部の目を入れた委員会が必要であるということで、外部委員の登用ということをおっしゃいましたけれども、やはり、民間病院であれ公的病院であれ、そういったところに外部の方に来ていただくというと、ボランティアで来ていただくぐらいしかなくなってしまって、費用弁償というのがないかと思うんですけれども、その点について何か、国がしっかりやるべきだとか、御意見があれば頂戴したいと思います。

籠本参考人 当然でございます。ただ働きをし続けていただくという、もちろんボランティアで来ていただいているのはありがたいことなんですが、それを継続してきちんとした制度としてやっていかないと、ボランティア頼りでは絶対だめです。

 先ほど、ほかの参考人の意見でもありましたが、やはり外部の人に積極的に病院の中に入ってきていただいて、いろいろ意見交換しながら、知恵の交換をしながら、当事者の人と接触しながら退院を支援していくという制度をきっちりつくらないと、これは病院の先生方とかスタッフの人は怒りはるかもしれませんけれども、どうしても内部の目から見ると、ここのところはもう少し医療が必要だよねという形で、やはり医療提供の側だけから見てしまう傾向はあるんですね。それをきちんと外部の目を入れて検討していただく、これは非常に重要なことやと思いますので、ぜひとも財政的措置をお願いしたいと思います。

河野(正)委員 籠本参考人の声が一段と大きくなったことで委員の皆様もおわかりかと思いますけれども、やはり外部の目を入れるというのは非常にいいことだと思いますし、先ほどどなたか参考人の方の中で精神病院の敷居という問題を言われましたけれども、敷居を低くして開かれた状態にしていくためには、そういった外部委員の登用であるとかは必要だと思います。本当に今、我が国のそういった精神障害者初め障害者の関係というのはかなりボランティアに負ってしまっている部分もあるかと思いますので、しっかりとこれは予算をつけるように私どもとしても主張していきたいと思いますし、検討いただきたいなと思っております。

 時間もほとんどありませんので、次に、川崎参考人にちょっとだけお聞きしたいんですが、本当に全家連の時代から大変な思いをされて、NPO法人ということで非常に苦労されたとお聞きしております。非常に頭が下がる思いでございます。

 実は、私も家族会の方等々といろいろお話しする機会があるんですが、我々も何とか早く外に出てほしいという観点で治療しているんですけれども、御家族の中には、実は、病院にいると二十四時間お医者さんや看護師さんが診てくれる、自分たちの子供が単身でアパートにいるよりは病院にいてくれた方が安心なんだと言われる家族の方もいらっしゃって、なかなか御家族の方に外に出ていただくことに理解をいただくというのも、若干難しい問題もあるんですが、精神科病院に対するイメージということも含めて、一言お聞かせいただけたらと思います。

    〔上川委員長代理退席、委員長着席〕

川崎参考人 川崎です。

 精神科病院のイメージというのは、実際、お医者さんがいらっしゃいますけれども、私の長男は今から二十五年以上前に入院いたしましたけれども、そのときと比べまして、私はかなり改革されてきていると思っております。

 当時は、病室まで行かれずに、どんな病棟の中で本人が生活しているかわからず、面会に行きますと、面会室の方に案内されまして、そこで本人から話を聞くということで、実際に本人が病院でどんな生活をしているか、日常生活がちょっと見えなかった部分もありましたが、今は病棟のところまで行って周りの同じ仲間の人たちの話が聞けるようになっていると聞いております。

 それと、私の時代は、面会は家族だけ、今もやはり家族だけに限っているところがあると思いますけれども、先ほどの大阪で取り組んでいらっしゃるように、外部からの人が入って面会できるようになってきているということなども含めまして、私はかなりよくなってきていると思いますが、まだまだ、本人がいろいろな意見を言えないということがあると思いますし、家族としても、何かあの看護師からちょっと暴力を受けたということも家族は耳にしますけれども、なかなか今の現状ではその看護師にちょっと言えない、はっきり言って、家族にとって人質をとられているようなもので、またそんなことを言ってしまうとというような、そういう危惧もなきにしもあらずというのが現状であります。

 以上です。

河野(正)委員 ありがとうございました。

 だんだん精神科医療も変わってきているということで、一生懸命努力されていると考えております。

 精神障害者、先ほどステレオをがんがん鳴らしてということがありましたけれども、実際、このしいんとした委員会室の中でステレオが鳴っていたり携帯の着信音がずっと鳴っていたら、多分、委員長がすぐとめなさいと言われると思うんですが、それが頭の中でとめられないような状態にあるのが精神障害者の幻聴だと思っております。

 非常に厳しい、音がずっと鳴り続けたり、あるいは、場合によっては殺せということだって。私の知っている患者さんはバスに乗ることができない。なぜかというと、バスに乗って座ると、目の前の方の頭をたたけ、たたけという幻聴があって、自分はたたいてしまいそうなのでバスに乗れない、だから自転車を利用していますという方もいらっしゃいましたし、非常に大変な思いを精神障害の方はされております。しっかりとした体制をとって、サポートしていかなければいけないと思っております。

 時間が来ましたので、私の質問は終わらせていただきます。ありがとうございました。

松本委員長 次に、古屋範子さん。

古屋(範)委員 おはようございます。公明党の古屋範子でございます。

 きょうは、参考人の皆様、国会においでいただき、それぞれの立場から貴重な御意見をいただきましたこと、心から感謝を申し上げます。

 私は五年前から、特に精神保健の中でもうつ対策に取り組んでまいりまして、総合的な治療から、また、職場、学校への復帰のための総合的なうつ対策の政策提言をつくりまして、今日まで取り組んでまいりました。予算の面ですとか、さまざまな面で一歩ずつ進んできているという実感はございます。その中で、川崎理事長ともお会いをし、さまざまな御意見も伺ってまいりました。初めに川崎参考人にお伺いをいたします。

 今回、法律の改正で、保護者制度の廃止ということが盛り込まれました。今回の改正の一番の柱となると思っております。この保護者制度の廃止は、先ほども意見陳述にございました、家族会の方々にとっても悲願であったと思います。改めて、今回この法改正が行われることに関して、御所感がありましたらお伺いしたいと思います。

川崎参考人 川崎です。

 この保護者制度というのが一体どういうものであるのか、私ども、議員の先生方のところに伺ってもなかなか御理解されていなかったというのが、実は大変大きな私どもの課題でありまして、精神障害者の家族には、いわゆる扶養義務者にあわせまして、プラスアルファで保護者制度というのがありまして、保護者になった者に課せられる責務というのがあります。

 その中でも大きかったのは、医療につなげるということで、この医療につなげることが大変に難しい精神障害者が多くいまして、特に、病識がないといいますか、自分は病気ではないという人をいかに医療につなげるか。それで、家族は本当に一人で孤軍奮闘しておりまして、先ほどの、音量を大きくする人も、そんなにボリュームを上げているのにというわけですけれども、やはり本人が自分は病気ではないということで、なかなか医療につながらなかったんですね。それで、最終的にどうしたかといいますと、通報入院です。強制入院で入院してしまったということで、やはり家族との関係性が悪くなるということです。

 強制入院と言いましたのは医療保護入院になりますけれども、精神科の入院に関しては、いわゆる措置入院と任意がありますけれども、措置は、これは自傷他害がありますのでいたし方ないと思いますが、本当に、訪問型のアウトリーチによって本人がしっかりと医療の必要性を感じるような、そういう入院体制をつくっていただきたいなというのが思いであります。

 以上です。

古屋(範)委員 ありがとうございました。

 私たちも、会期末まで残りわずかになりましたけれども、本法案の一日も早い成立を期してまいりたいと思っております。

 そこで、この保護者制度が法改正をされて廃止された後なんですが、精神障害者の家族の方々、また精神障害者御本人の治療、地域の生活において、これからどのような役割を果たしていかれようとしていらっしゃるのか。また、必要なサポート体制についてもあわせてお伺いしたいと思います。

川崎参考人 川崎です。

 保護者制度がなくなって、家族が、一体何が変わるか。はっきり言いまして、いわゆる法律の保護者制度の中で決められていたことから解放されるということで、家族自身の精神的なものはかなり軽くなりますけれども、家族がやること、やはり治療の必要性とか、本人のいろいろな世話をすることとか、保護者制度がなくなったからといって、家族自身の本人へのかかわりが変わるということはありません。

 家族は、私も母親ですけれども、本人が本当に幸せに生きてほしいという思いで、やはりいろいろな必要なことは世話をするわけですけれども、そういう責務から外されたということが、他の障害にない制度です、身体にも知的にもない。身体、知的の障害を持った御家族と一緒に精神障害の家族も地域で暮らせる、そういう思いでおります。

古屋(範)委員 これによってかなりの精神的な負担が軽減されるということですけれども、やはり現実には、精神障害者を持った御家族にとっては、さまざまなその他の負担というものは続いていくわけですので、そこへのしっかりとしたサポート体制というのは行っていかなければいけない、強化をしていかなければいけないんだろうというふうに思います。

 また、重ねて川崎参考人にお伺いしたいと思います。

 検討チームの提言に代弁者ということがございましたけれども、今回の法案には盛り込まれなかったということであります。担い手の役割、いろいろ意見が分かれて具現化できなかったということなんですけれども、参議院においては、三年後の検討規定の対象に、代弁者も含めた精神障害者の意思決定等への支援のあり方を追加する法案修正が行われたわけでございます。

 この代弁者制度についてどう思われるか、お伺いをしたいと思います。

川崎参考人 実は、この代弁者につきましては、なかなか最終的な議論が詰められなかったということで今回の法案には載らなかったんですけれども、今回附則で載りましたように、今後、三年間の見直しの中で、どのような人を代弁者にするかとか、代弁者の制度化、それをどうするかということは、一応、私ども家族会といたしましては大変に関心のあるところで、やはり、本人の人権擁護も含めまして、しっかりとしたそういう体制づくりは必要であるかと思っております。体制づくりを期待いたします。

古屋(範)委員 ありがとうございました。

 次に、籠本参考人にお伺いをいたします。

 医療保護入院における家族等の同意ということで、先ほど、明確なガイドラインが必要であるという意見陳述をいただきました。

 改正後の保護入院につきましては、精神保健指定医一名の診断に加えて、家族等のうちのいずれかの者の同意が必要とされているわけでありますが、家族の同意が医療現場の混乱を招くのではないかとの指摘がございます。

 厚労省の説明では、医療保護入院に当たっては、同居する家族等が、病識のない精神障害者に付き添って診察を受ける場合が実際上ほとんどであり、入院時に家族とのトラブルが発生することは少ないのではないかというようなことを言っているんですが、やはり、十分このような問題は予測し得る、だからガイドラインが必要だという御意見でよろしいんでしょうか。

籠本参考人 先ほども申し上げましたが、現場の感覚としては、そんなに大きな混乱はないのではないか。やはり、御本人のことをお世話されて、心配されて連れてこられる家族の方の同意ということであれば間違いないのではないかと思います。

 ただ、やはり、こういう御時世でございますので、財産の問題だとか、家族間の利害関係等も含めまして、いろいろそういう場合が想定できないわけではないので、そういうことが起こった場合にきちんと毅然と判断する基準が必要だというふうに私は考えております。

古屋(範)委員 よくわかりました。実際上はそれほど多くはないとは思うけれども、やはり、万が一そういう問題が生じたときのためにガイドラインをつくっておくべきだという御意見でございますね。ありがとうございました。

 次に、続けて籠本参考人にお伺いをいたします。

 精神病院管理者による退院促進措置ということがこのたび盛り込まれました。先ほどの意見陳述の中でも、この件に関しましては、入院時点から必要だという御意見でございました。多職種、家族、地域の支援を含めて対応を見据えて、そのときからスタートをすべきだという御意見でございました。

 やはり、病院に頑張れ、やれと言っても、これは非常に難しいと思います。人的な配置、あるいは予算面、この辺について、御要望をお伺いしたいと思います。

籠本参考人 これも、適正な精神科医療を提供するための人員配置について、自治体病院としても要望しているところなんですが、やはり、今の現状では、もう先生方御存じだと思うんですけれども、一般医療は入院患者に対してたくさんのお医者さんが配置されている、精神科の場合は、精神科特例という形で、三分の一でいい、看護師さんも四分の三でいいというようなことがあります。

 その辺、私は意見でも言わせてもらいましたが、全ての入院患者さんについて、どの病棟でもそれを一気にそういうふうにせよということはなかなか難しいとは思うんですけれども、少なくとも一般医療と同等なことを、どうしても初期にやらなければならない、医療導入時にやはりきちんとした提供をせないかぬというその思いは、我々、病院のスタッフは皆持っております。

 そのためには、やはり、少なくとも急性期の病棟に関しては、一般医療と同等の人員配置ができるような配慮をお願いしたいというふうに思っております。

古屋(範)委員 ありがとうございました。

 続きまして、栗原参考人にお伺いしたいと思います。

 障害者を雇用するに当たって、中小企業で経営が大変な中、一億以上の投資をして、障害を持った方々が働けるような体制をつくったということでございました。大変すばらしい取り組み、また経営をしてこられたと思います。

 しかしながら、やはり中小企業においては経営が大変、ましてや障害者を雇用するために何か改めて踏み出すということは非常に難しいのではないかと思います。

 ここを乗り越えて障害者雇用をふやしていく、ここに対するさらなるアドバイスがございましたら、お伺いをしたいと思います。

栗原参考人 特別なあれはないんですが、私の場合は、働きやすい職場環境を常に心がけているというのが一番だと思います。

 それで、私どもの会社も、やはり高齢の障害者も結構いるわけです。その人たちがみんな定年までいけるかどうかというと、それは、いける人はいいですけれども、四十代、五十代でリタイアする方も結構いるわけです。

 ですから、私どもの会社では、今やっているのは、福祉に行く間のワンステップに、時間を少し短くする。ですから、八時間を六時間ぐらいにするとか、時間を短くして、それで働いていただくというようなやり方も今しております。今現在、そのやり方で三名おります。

古屋(範)委員 きめ細やかに取り組んでいくということだと思います。ありがとうございました。

 もう時間がなくなってまいりました。坂本参考人にお伺いをいたします。

 やはり、福祉から就労への、ここの支援スキルが少ないという御意見を先ほどいただきました。私もここのところ、医療と就労を結びつけていくために、今、障害者職業センターというものがありますね。都道府県に一つですので、非常に混んでいて待機者も多いというふうなことでもございました。ここのところに力を入れて、予算などもつけてきたんですけれども、やはり、専門的な就労に向けての相談、指導ができる、こういう人材育成をしていくために、そうした専門家のスキル、知識の普及ということが必要だと思うんですが、この点、いかがお考えでしょうか。

坂本参考人 まさにおっしゃるとおりだと思います。やはり、福祉の現場において、現場で寄り添って支援をする方たちというのは非常に多くいらっしゃると思うんですけれども、今おっしゃっていただいたように、障害の特性であったりとか実情に合った支援の技術を身につけている人というのは、まだまだ多くないと思っています。

 今おっしゃっていただいた各都道府県にあります障害者職業センターなども、やはり、一カ所というところと、あと、人材がなかなかいないというところ、山梨などになりますと、山梨の中心の方は利用できるんですけれども、私どもの圏域は山際にありまして、山際の方は利用できなかったりとかという不公平さもあったりするので、誰もが同じようにそういった支援サービスを使えるように、もしくは、そういったところにそういった人材が派遣できるようになればいいなというふうに考えております。

古屋(範)委員 ありがとうございました。

 時間の関係で全員の参考人の方に質問できず、申しわけございませんでした。

 皆様の御意見を参考にし、さらに議論を深めてまいります。ありがとうございました。

松本委員長 次に、中島克仁君。

中島委員 みんなの党の中島克仁です。

 本日は、参考人の皆さんには、お忙しいところ国会まで足を運んでいただきまして、本当にありがとうございます。

 また、日ごろの活動、きょうはエピソードも含めたわかりやすい御説明をいただきましたこと、日ごろの活動に対して敬意を表するとともに、改めまして感謝申し上げたいと思います。

 私も、かなり過疎な地域で地域医療、そして高齢者、障害者福祉にもかかわっておる立場といたしまして、障害を抱えた方々が当たり前のように地域生活、地域社会の中になじんでいける、そんな社会が、本当に、まさに健康な社会、健康な日本と言えると考えております。

 そんな中で、本日は、障害者雇用。職場においても、障害を抱えた方々が当たり前のように皆さんとともに働く意識の中で喜びを感じる、そして、日本のために、地域のために働く姿、そういったことも含めまして、障害者雇用について質問をさせていただきたいと思います。

 まず、坂本参考人にお聞きしたいと思います。

 坂本参考人の施設は、かなり広域な、長野県と静岡にまたがるような広い地域をカバーされているということでございます。その県内、圏域では精神障害者の方や発達障害者の方の雇用が思うように進んでいない、そういった現状があるとのことですが、同じ山梨県の中、もしくは全国それぞれ過疎な地域もあると思います、同じような状況というふうに考えておられますでしょうか。さらに、他の同じような地域との連携なども含めて、何かお考え、もしくは取り組まれていることがあれば教えていただきたいと思います。

坂本参考人 今の御質問ですけれども、確かに、私どもの陽だまりの圏域は非常に広くあります。その中で精神障害の方や発達障害の方の雇用が思うように進んでいないというのは、先ほどお話しさせていただいたとおりなんですけれども、これを県内や全国的に見てみますと、県内でもやはり中心部、山梨の中心部は甲府になるんですけれども、甲府の方では、精神病院の就業・生活支援センター等が活躍されていますので、若干のそういった施設による違いはあります。

 ただ、全国的に見ますと、やはり、三百一人以上雇用されている大企業と、それ以下の中小企業で差があるというふうな報告はいただいております。大企業の多い都市部、都市圏では、障害者雇用をされる企業はふえているということで、精神障害者の雇用も伸びているようです。ただ、やはり、私どものような地方の、中小企業がたくさんあるような、大企業がなかなかない、少ない地方では、依然として障害者雇用に対する現状の厳しさがあります。

 以前、精神障害者を中心に雇用支援を行っている東京の事業所に、障害者を雇用していただけるような職場の開拓はどういうふうにやっているのかということで、ちょっと質問させていただいたことがあるんですけれども、企業側が働ける障害者を求めてその施設に来るので、特に職場開拓はしたことがないなんというふうにお答えをいただいて、都市圏と地域との差に非常にショックを受けたことがありました。

 就労課題というのは、やはりその地域の実情に合わせて、全く共通する課題と、全く共通しない課題があると思います。施策においても、絶対的な一本という施策よりも、やはり地域の実情に合わせた柔軟な施策、配慮がされることを私は希望したいと思っております。

中島委員 ありがとうございます。

 田舎というか過疎の地域へ行けば行くほど、やはり大企業というのは少なくなる。きょう、栗原参考人の方からもありました、中小企業は、地域に行けば行くほどやはりその経営自体も非常に厳しいと。そんな中でなかなかそちらまで手が回らない、そんな実情もあるのかな。

 今、坂本参考人の言葉からもありました、その地域の実情に合った仕組みのつくり方というのは、まさに国と地域が一つになって、それぞれの新しい取り組みをつくり上げていくということにも非常に重要なところがあるのかなというふうにも思います。

 さらに、障害者雇用に関しては、企業によってさまざまな捉え方があると思います。実際の現場では、今回、法定雇用率の中に精神障害者を加えたり、引き上げもなされております。この法定雇用率制度自体を企業はどのように捉えていると感じているか、まず、現場では坂本参考人に、そして、雇用側といたしまして栗原参考人の方ではどのように捉えているのか、お尋ねしたいと思います。

坂本参考人 障害者雇用の雇用率という制度があります。そちらについて、日々会社の方を回らせていただいて、企業様とお話をさせていただく中で感じることなんですけれども、多くの企業様は、その企業様が社会的責務として障害者雇用をするということを真摯に捉えて、積極的に行っていると思います。ただ、一方で、雇用率に関して、障害者を労働者ではなくて点数として見てしまうような企業が全くないわけではなく、時に非常に残念に感じることもあります。

 雇用率算定により、障害者雇用に対して企業が非常に積極的に取り組みを行っていくということはとてもありがたいなということではあるんですけれども、時に本来の意味を失って、ノルマをクリアするためだけの点取りに終始してしまうようなことだけは避けていただきたい。そのためにも、雇用数だけを追い求めるのではなくて、企業様の雇用の質なども評価していただけるような仕組みがあればいいなというふうに感じております。

栗原参考人 ちょっと二つほど私はお話ししたいんです。

 最初、先生がおっしゃった地方の件なんですが、地方で障害者の雇用というのは、ハンデがあると思うんですよ、私は。

 何にハンデがあるかというと、大都市周辺であれば交通機関が完備されています。ですから、働きに行く、実習に行く、そういうことが可能です。ところが、地方ではそれができない。働きたくても、作業に入るまでの実習ができないというのは、これはハンデだと思うんですね。

 ですから、その辺で、通えるような施設か何かを置いて、そこから通えるようなことをしないと、なかなかこれから雇用率が伸びていくのは大変なのかなと思います。

 それと、精神の方なんですが、これにつきましては、やはりノウハウがないわけですよ、各企業に。今までとちょっと違って、精神がぽんと出てきまして、さあ、雇用しろと言われても。ここ二、三年で確かに雇用率はふえています、雇用されている方はふえています。ですから、我々も最初にお話ししたのは、ここでもって縛らないで、もう少し様子を見てほしいということをお話しさせていただいたわけですね。

 とにかく、精神で働く方も、薬がよくなってきましたから、働ける状況にはなってきていると思うんですが、まだ、長時間というんですかフルタイムというのはなかなか難しい方もいらっしゃる。または、ある日突然ぽんと休んでみたりとか、そういうこともまだありますので、企業としても、安心して戦力として使えるというところにはまだないなという方も多い。ですから、それ以外に、職場で精神の方を雇用する環境づくりもやはり必要だと思います。

 そういうことを、大企業はいいですけれども、中小企業の場合はなかなかしづらいので、それは、やはり行政と病院等もサポートをしていただくような体制をとっていただかないと、なかなかこの辺も難しいのかなというふうに思います。

 以上でございます。

中島委員 坂本参考人のお答えからしますと、やはり、法定雇用率の引き上げは行われているわけですが、それを、ある意味ノルマのような感覚で、仕事が、先ほど言ったように、同じ職場の中で差別があったり、そういったことになってしまったら、本質が失われてしまうかな。

 そういった中で、栗原参考人のお話にありましたように、まず地方においては、先ほど坂本参考人のところではかなり広い範囲、そういったところで、働く環境を整えた企業にまず行くまでがなかなか大変であったりとか、そういった問題もこれから整備をしていかなければいけないのかな、そんなことも考えました。

 精神の部分においても、栗原参考人のところは非常に、もちろん栗原参考人が積極的に取り組まれているということの結果ではありますが、これから教育も必要だということもあります。要するに、支援体制、支援される側も支援している側にもこれから積極的な支援が望まれるのかなというふうにも思います。

 済みません、時間も迫ってまいりますが、さらに、精神障害者や発達障害者の雇用に関して、企業側のリスクが高いと。先ほど栗原参考人の方からもございましたように、余り焦らないで、じっくりと時間をかけて教育体制、支援体制を整えていくということも重要かなといったことも、非常に説得力があることだと思います。

 坂本参考人の方は、企業側のリスクに対して、先ほど支援学校の話も出ましたけれども、支援する側として、企業側にどういうふうな働きかけ等、取り組まれていることがあれば、教えていただきたいと思います。

坂本参考人 リスクというか、企業側にとって障害者を雇用するということは、責務であるとともに、やはりそこにはメリットというか、労働力としての雇用価値が生まれてくると思います。ただ、それを感じられない、なかなか感じていただけないという企業に対して、私たち福祉側がやはりしっかりと支援をしていかなければいけない部分もあると思います。

 そういった点で、それが実際に行えている事業所であったりとか制度を活用できたりというところではまだまだな部分はあると思いますが、今後、支援の中でやっていかなければいけないのは、先ほどほかの参考人の方の意見でもありましたけれども、やはり、障害を持っていても働くことができる、条件や本人の環境を整えることで十分に働くことができるのであるということを、まずは証明することですね。証明するというか、できるというところを企業の方にアピールするという方法があると思います。

 そういった条件等を調整し、効果的な指示法、教示法なんかも確立した上で企業様に提示、プレゼンテーションすることによって、企業様の不安や偏見なども大分払拭できるのではないかと思います。

 また、今、職業センターさんなんかでも取り組んでいるんですけれども、障害をお持ちの方本人のナビゲーションブックというものも活用して、障害を理解するのではなくて、障害を持った個人の特性であったりとか困り事を理解するというような活動が今進んでおります。

 そういったものを駆使しながら、働きたいと思っている障害者の方たちがいかに働ける状態にあるのかというものを伝えていくのが、私たち福祉側の今後の役割ではないかというふうに思っております。

中島委員 ありがとうございます。

 くしくも、くしくもではないですが、坂本参考人と栗原参考人、それぞれの考えていることをこうやってゆっくりまぜ合わせていけば、しっかり理解し合えるんじゃないかと思います。実務者同士で顔を突き合わせながら、そこにやはり私たち政治も行政もしっかりと加わって、実効性のある取り組みがこれから本当に必要になるのかなと、今お話を聞いていて非常に感じました。

 もう時間も迫ってまいりました。

 最後に、坂本さん、自分のふるさとということですよね。そういうところで取り組まれている。これは、やはり自分のふるさとで、高齢者も障害者福祉も、そういったものに取り組むということは、さらに思い入れも深いんじゃないかなというふうに感じるんですが、今、障害者福祉にかかわり、非常にやりがいに感じていること、そして、最後に、国に対してこれだけは言っておきたい、そんなことがございましたら言っていただきたいと思います。

坂本参考人 今回、このような機会をいただきまして、いろいろなお話、私の思っていることを伝えさせていただきましたが、最終的に考えていること、私が思っていることは、やりがいの部分にも通ずるんですけれども、やはり、障害を持った方が、できるという自信を持っていただくというところを新たに発見していただくときに、私はこの仕事のやりがいを非常に感じております。

 よくあるのが、もう自分はできないんだとか、さんざんつらい目に遭ってきて、本当に自己否定をされている方が非常に多くいる中で、少しずつ、こちらが提示することに対して、御本人の自信をつけていってもらう。そして、その自信をまた第三者にこちらから提示して、その第三者にもその方の自信を認めてもらう。そういうことでまた社会の中に旅立っていけるということが、何度か経験でありました。そういうことが今後もできるように、やはり皆様のお力もぜひ必要となります。

 制度をつくるだけではなく、それを地域で動かすということが必要になってきます。地域で動かすためには、やはり地域にいるマンパワーをどれだけ活用していくか、どれだけ使っていけるかということが課題になってくると思いますので、その辺、また御協力を今後ともお願いしたいと思います。

 ありがとうございます。

中島委員 ありがとうございます。

 時間の都合で全ての参考人の方々に御質問できないことをおわび申し上げながら、きょうの貴重な御意見、お話を私自身も胸にとめて、これから精いっぱい取り組んでまいりたいと思います。今後ともよろしくお願いいたします。

 質問を終わります。ありがとうございました。

松本委員長 次に、高橋千鶴子さん。

高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 本日は、六人の参考人の皆さん、本当にお忙しいところ出席をいただいて貴重な御意見をいただきました。ありがとうございました。障害者の雇用主であり、家族であり、医療、福祉、それぞれの分野で御苦労され、また切り開いてきた皆さんの取り組みに心から敬意を表したいと思います。御意見を生かしたいと思います。ありがとうございました。

 早速ですが、川崎参考人に伺いたいと思います。

 保護者制度について、一番最初に、一人の人間として扱わない差別法である、こういう表現をされました。この表現は実は、先般の参議院の参考人質疑でも、代弁者制度に取り組んでこられた弁護士の方が同じ表現を使っていらっしゃいまして、私はまさにそういうことではないのかなと思っております。

 川崎さんの所属をしている全国精神保健福祉会連合会が平成二十一年に精神障害者の自立生活と家族支援を目指す実態調査に取り組まれており、また、先ほどその一端を御紹介されてきたと思うんですが、その家族の実情に照らして、繰り返し繰り返し保護者制度の廃止を求めてきた。そして、国会でも、検討、検討ということが附帯決議に盛り込まれましたり、そうされてきたんだけれども、ここまでずっと措置されずに来てしまった。そういうことに対しての率直な思いをぜひお聞かせいただきたいと思います。

川崎参考人 川崎です。

 まさに、本当に大変な月日、年月を私どもは費やしてきました。

 今までなかなか理解されなかった私たち精神障害者の問題がここで一気に大きく飛躍しようとしているのは、まさに私どもは、例の障害者権利条約の批准に向けての障害者制度改革のところにおきまして、やはり、障害者を差別してはならないとか、どんな障害を持っていても地域で生活する権利があるとか、それらの背景があって、ここに私ども家族会として意見を述べる機会ができたのではないかなと思っております。

 今まで本当に同じようなことを、五十年近くこの運動をしてきましたけれども、なかなかこういう機会も得られずに、現状になっておりましたけれども、ぜひとも、ほかの団体の方からも言われております、今ここで精神障害者のいろいろな問題を底上げしよう。

 やはり福祉の対象でなかったということが、かなり私どもにとっては、病者であるということからどうしても医療の対象でありましたけれども、ここに来て、福祉の対象ということで、就労に向けていろいろな対策もできてきましたし、また地域生活の支援策もできてきているということは、これは大変に、まだまだ不十分であるとは思いますけれども、これからの、精神障害者が地域で生活していく大きな足がかりになると思っております。

 いろいろと御支援をいただいた方々にお礼を申し上げます。ありがとうございます。

高橋(千)委員 ありがとうございます。

 障害者の権利条約の批准に向けてということで、いろいろな問題が大きくクローズアップされてきた。その背景には、やはり当事者の皆さんの、国に対する働きかけもあったし、また国連に対する働きかけですとか、そういうことの中で前進がつくられてきたのではないかなと思っております。

 そういう点で、増田参考人も、川崎参考人と同じように、障がい者制度改革推進会議総合福祉部会で発言をされてまいりました。その中で、医療保護入院にかかわる同意を含む保護者制度の問題点の解消に向けて、障害者権利条約の求める人権擁護の観点から、新しい仕組みの検討を求めていたと思います。やはりそれは、単なる手続論の問題ではなくて、医療も福祉も家族の責任、負担が前提だったという制度が大きく変わらなければならないと思うんですね。

 そういう中で、今回、その保護者制度は廃止なんだけれども、家族等の同意という形で要件が残ってしまった。その理由に、権利擁護ですとかインフォームド・コンセントがやはり必要なんだということを言っているんですが、それは、今、権利条約に照らしてずっと議論を積み重ねてきた権利ですとかあるいは障害者の自己決定とか、そういうことから見るとちょっと意味が違うんじゃないかと思うんですけれども、御意見を伺いたいと思います。

増田参考人 ありがとうございます。

 医療保護入院が残ってしまったことというのは、多分背景に、重篤化させてしまう今の地域のありようというのが基本的にはあるんだろうというふうに思っています。

 私たちのところで支援を始めて、自分の病気のことだとか自分のペースをつかめていくと、そんなに入院される患者さんというか当事者は多くいらっしゃらなくて、少ないんですね。なので、地域の生活を確立していき、自分の病気と生活のバランスを考えられるようになると、本当に、入院していく期間というのは少なくなるし、入院しないで暮らせる人がとても多くなるんだろうというふうに思います。

 ただ、現状では、やはり支援につながる人が少ないというのが精神障害の問題であって、本当に家族がおうちの中で頑張って抱えていらっしゃる方たちが多く、家族の力が尽きるとどうしても入院になってしまう、下手をすると長期的な入院になってしまう。でも、今は割と三カ月ぐらいで退院される方が多いので、なかなか病状が落ちつかない患者さんを御家族が必死で抱えているというような現状がやはりまだまだ変わっていないなというふうに思うところです。

高橋(千)委員 ちょっと質問は、権利擁護とかインフォームド・コンセントということを言っているんだけれども、当事者や家族に十分な説明がされるということと今の同意要件というのは別ではないかと私は率直に思うし、先生もそういう立場でお話しされているのかなと思って伺ったんですけれども、もう一度、済みません。

増田参考人 済みません、何かキャッチできていなくて。

 インフォームド・コンセントと同意入院の問題。(高橋(千)委員「はい。権利擁護と言っているけれども」と呼ぶ)

 私の最後の方に入れたと思うんですけれども、多分、病状が悪化してからどうするかというと、なかなか御自分の意思を明確に言えない患者さんがいるので、そこに対する権利擁護の仕組みが必要だというふうに思います。

 それは、病院の中に委ねられるのではなく、病院や家族とはまた違う存在の人たちがいて、そこでやはりその人の権利を守りながらきちんとした医療を受けられる権利を行使する、そういう仕組みにならないと、当事者や家族の人たちの本当の権利は守れないのではないかというふうに思っているところです。

高橋(千)委員 済みません、ありがとうございました。

 そういうことで、検討チームの方で代弁者の創設ということが提案されたにもかかわらず、今回それがなくなっちゃったという思いがあって、何か話をごっちゃにしているじゃないかという思いがあって、ちょっと質問させていただきました。失礼しました。

 それで、籠本参考人にぜひ伺いたいと思うんですが、先ほど少し、精神科特例のことで、質問に対してお答えがあったと思います。

 先生が一番最初におっしゃったこと、外来と入院と退院と、医療しかなくて、間には何もなかったと。まさにその間をどうしていくかということが今問われていると思うんです。

 ただ、そのためにも、今、例えば早期退院につなげていくためにどんな支援が必要かとか、そういうことがまた医療の現場でも求められることが多いわけですよね。そのことを多職種という形で、スタッフを、医師と看護師だけではなくてというふうなことは大変よいことだと思うんですが、それをどう評価するかという点で、単に、今まで三対一であったものが、いろいろ入れて三対一であれば、負担は変わらないわけですよね。

 私は、上乗せしなければだめなんじゃないかなというふうに思うんですけれども、そういう点で、診療報酬をどういうふうに評価していくかということが、これから議論が始まりますので、先生の御意見を伺いたいと思います。

籠本参考人 先生おっしゃるとおり、もちろん、地域での受け皿づくり、これはもう絶対必要です。生活と密着していますので、病状と。ここをしっかりしないと、医療が幾ら汗をかいて一生懸命やってもなかなかうまくいかない、再発、入院ということにつながってしまう。ですから、ここのところがまず重要です。

 ただ、片や、御病気になられて、どうしても治療が必要やというときに入院されるわけですが、その方の医療をきちんと提供する。適正な医療という形で厚労省の方は表現されておりますが、まさに御本人にとって非常に有益な、適正な医療。

 それと、過去にいろいろあったんです。要するに、強制入院させられた印象だけがあって、何となくよくなって退院してしまって、もう二度と入院はしたくないわというようなこともよく聞いています。

 そうではなくて、内科や外科の病気と一緒で、内科や外科の病気で入院して、いろいろ治療して、うまくいって、元気になって、入院せんかったらよかったなんということは普通はないですわね。それが、何で精神科の病院に入院したんだ。まあ、それは強制入院ということもありますけれども、やはりきちんとした、御本人が納得できる、家族が納得できる、そして何よりも医療従事者が納得できる医療サービスがまだ十分提供できる体制にないというのが一番大きな問題だというふうに思います。

 この体制を十分充実させるための人員の確保のためには、病院経営をやっていく者にとりましては、いいことをやりたいんですけれども、やはり先立つものがないと人が雇えない、研修ももちろんしかりです。ですから、その辺のところをやはり診療報酬でしっかり見ていただくようなバックアップがぜひとも必要ですので、よろしくお願いします。

高橋(千)委員 ありがとうございました。

 では最後に、川崎参考人と増田参考人に同じ質問をしたいと思います。

 当事者の立場からと、それから実際に地域で支援をされている立場から、当事者、精神障害者の尊厳を守りながら地域で支えていくための必要な支援とはどうあるべきかについて、一言ずつお願いいたします。

川崎参考人 川崎です。

 まさに地域生活をするための支援というのが今求められておりまして、私どもは家族会として家族支援ということを言っておりますけれども、全国の家族から言われておりますことは、やはり三百六十五日二十四時間体制のいわゆる訪問型の支援なんですね。

 今の制度は、出向くという言葉を増田さんはおっしゃっていましたけれども、行かなくてはいろいろ支援が受けられない。でも、当事者を抱えていて、当事者の状態が悪くて、当事者は、お母さん、外に行かないでと言っているので、お母さんも子供も引きこもってしまって、そこに適切な支援が届いていないということがありますので、やはり、訪問して、そして必要な支援ができるようなアウトリーチ。アウトリーチが、いろいろとモデル事業が終わりまして少しずつ進んでいきますけれども、私たち、家族、当事者が本当に必要とするアウトリーチ、それがしっかりと制度化される、それを強く望んでいるところであります。

増田参考人 この間、精神障害者の支援に、やはり家族に重たい負担を課してきた。それをやはり一日も早く変えていくことがまず一つ挙げられると思います。

 もう一つは、精神障害の人たちを重篤化させない支援ということが求められているし、それには、もっと精神科にかかりやすい、あるいは精神疾患についての正しい知識を多くの人が共有する、学校教育等でも正しい知識を伝えていく、そんなことが求められます。

 そして三つ目は、精神障害の人たちのいろいろな特徴があります。すごくすぐれているところもあるし、苦手な部分もある。そういうことを丸ごと引き受けて生きられるような、そういう地域を地域ごとにつくっていくことだというふうに思っているところです。

高橋(千)委員 ありがとうございました。

 時間の関係で全員にお聞きできなかったことをおわび申し上げます。

 参考になりました。どうもありがとうございました。

松本委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人の方々に一言御挨拶を申し上げます。

 参考人の方々には、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。(拍手)

 次回は、明十二日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時六分散会


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