衆議院

メインへスキップ



第20号 平成25年6月12日(水曜日)

会議録本文へ
平成二十五年六月十二日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 松本  純君

   理事 上川 陽子君 理事 高鳥 修一君

   理事 棚橋 泰文君 理事 冨岡  勉君

   理事 西川 京子君 理事 山井 和則君

   理事 上野ひろし君 理事 古屋 範子君

      赤枝 恒雄君    今枝宗一郎君

      大久保三代君    大串 正樹君

      勝沼 栄明君    金子 恵美君

      神山 佐市君    菅野さちこ君

      小松  裕君    古賀  篤君

      桜井  宏君    白須賀貴樹君

      新谷 正義君    田中 英之君

      田畑 裕明君    高橋ひなこ君

      武井 俊輔君  とかしきなおみ君

      豊田真由子君    中川 俊直君

      永山 文雄君    丹羽 雄哉君

      藤原  崇君    船橋 利実君

      堀内 詔子君    三ッ林裕巳君

      村井 英樹君    山下 貴司君

      大西 健介君    中根 康浩君

      柚木 道義君    横路 孝弘君

      伊東 信久君    河野 正美君

      新原 秀人君    杉田 水脈君

      宮沢 隆仁君    伊佐 進一君

      輿水 恵一君    浜地 雅一君

      柏倉 祐司君    中島 克仁君

      高橋千鶴子君    阿部 知子君

    …………………………………

   厚生労働大臣       田村 憲久君

   厚生労働副大臣      桝屋 敬悟君

   厚生労働大臣政務官  とかしきなおみ君

   厚生労働大臣政務官    丸川 珠代君

   政府参考人

   (内閣法制局第四部長)  北川 哲也君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 萩本  修君

   政府参考人

   (厚生労働省医政局長)  原  徳壽君

   政府参考人

   (厚生労働省労働基準局安全衛生部長)       宮野 甚一君

   政府参考人

   (厚生労働省職業安定局高齢・障害者雇用対策部長) 小川  誠君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局長)           村木 厚子君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長)    岡田 太造君

   政府参考人

   (厚生労働省老健局長)  原  勝則君

   厚生労働委員会専門員   中尾 淳子君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月十二日

 辞任         補欠選任

  赤枝 恒雄君     神山 佐市君

  今枝宗一郎君     藤原  崇君

  高橋ひなこ君     菅野さちこ君

  豊田真由子君     勝沼 栄明君

  山下 貴司君     武井 俊輔君

  足立 康史君     杉田 水脈君

  新原 秀人君     河野 正美君

  輿水 恵一君     浜地 雅一君

同日

 辞任         補欠選任

  勝沼 栄明君     豊田真由子君

  神山 佐市君     桜井  宏君

  菅野さちこ君     高橋ひなこ君

  武井 俊輔君     山下 貴司君

  藤原  崇君     今枝宗一郎君

  河野 正美君     新原 秀人君

  杉田 水脈君     足立 康史君

  浜地 雅一君     輿水 恵一君

同日

 辞任         補欠選任

  桜井  宏君     赤枝 恒雄君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 障害者の雇用の促進等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第六四号)(参議院送付)

 精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第六五号)(参議院送付)


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

松本委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、参議院送付、障害者の雇用の促進等に関する法律の一部を改正する法律案及び精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、政府参考人として法務省大臣官房審議官萩本修君、厚生労働省医政局長原徳壽君、労働基準局安全衛生部長宮野甚一君、職業安定局高齢・障害者雇用対策部長小川誠君、社会・援護局長村木厚子君、社会・援護局障害保健福祉部長岡田太造君、老健局長原勝則君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

松本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

松本委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。横路孝弘君。

横路委員 初めに、現在の精神病患者の置かれている状態ということで資料をお配りしましたので、もちろん大臣御存じのことですが、ちょっと見ていただきたいと思います。

 まず、一ページを見まして、病床数は三十四万を超えています。保護室で隔離されている患者というのは九千百三十二人。身体拘束されている患者、これが八千九百三十人。精神科病院での死亡者、一カ月で千六百三十五人。そして長期入院、十年以上が六万五千人、十年以上二十年未満が三万五千九百五十四人、二十年以上が三万六千五百八十四人です。平均在院日数は、日本は三百日です。日本を除いた各国が大体平均十八日ということです。

 もう一ページ開いて二ページを見ていただきまして、二ページの五、六。閉鎖病棟への任意の入院患者、これは本当はいけないんですが、二万八千九百六十七人。任意入院者、終日閉鎖病棟、四〇・七%。医療保護入院者、終日閉鎖、七一%。電気ショック件数、さすがにロボトミーはなくなったようでございますが、麻酔をかけて七百六十一件、かけないで三百八十三件ということになっています。

 そして、資料の五を見ていただきたいんですが、これは各国の非任意入院と日本の比較ということで、日本が圧倒的に多いですね。百万人対で日本は千人を超えています。ほかの国は、多いところで二百人、百人、あとはほとんど二桁ということでございます。

 こういう状況にありまして、したがって、国際社会からいつもいろいろな意見が出てくる。割と新しいところでは、一ページの一番上をちょっと見ていただきたいんですけれども、国連の拷問等禁止条約委員会の日本に対する勧告というのがありまして、その中でこういうことを言われています。

 精神保健ケアについて、委員会は、非常に多数の精神障害者と知的障害者が非常に長期間、精神保健ケア施設に非自発的にとどめられていることに懸念を持たざるを得ない。非人道的で品位を汚す程度に及び得る行為である。独居拘禁、身体拘束、そして強制医療が頻繁に行われることを委員会はさらに懸念すると。

 特に、拘束的な方法が過剰に使用されていることについて、公平な調査、審査というものがしばしば欠けているということで、資料一の一番上にありますような項目、地域サービスを充実して入院患者を減らせ、身体拘束や保護室での隔離を減らしなさいというようなことが指摘をされているわけでございます。

 これが現実でございます。そして、国際社会からやはりそれに対する批判がある、これを変えようということですね。本来はそのための法改正であるべきだったんですが、その中身は後でお話ししますが、今の現状と、こういう勧告を受けているということについて、大臣、どのようにお考えでしょうか。

田村国務大臣 いろいろと勧告をいただいておるわけでありまして、正すところは正していかなければならぬというふうに思っております。

 国際的にいろいろな環境が違うということもあるわけでありますけれども、少なくとも、入院しておられる方の権利の擁護ということはしていかなきゃいけないわけでありまして、あわせて、今委員おっしゃられましたとおり、やはり地域に移行を進めていかなきゃならない、そのために環境を整えていかなきゃならぬということがあります。

 そういう意味からいたしますと、今回の法改正の中において、一つは、医療機関に関しましても、退院を促して地域の方に移行していく、そういう意味でのいろいろな体制、義務づけをしてきておるわけでありますし、一方で、これは医療の方ではございませんが、福祉の方、総合支援法の中において、地域移行をするための受け皿、相談支援等々も含めてしっかりと整備していく中において、入院、長期間というのではなくて、仮に入院したとしても短期間で地域に戻れる、もしくは、入院せずとも地域でしっかりと生活をしながら治療ができる、このような環境を整えていかなければならない、このように思っております。

横路委員 一九九一年に国連で決議された精神病者の保護及び精神保健ケア改善のための原則というのがあります。もう二十年も前のことなんですけれども、やはりこの原則が国際的には処遇の方向性を明確に示しているというように思うんですね。ぜひこの方向を原則として御努力いただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

田村国務大臣 九一年、国連原則ということで、国連総会で決議があるわけでありますけれども、例えば原則の十六というところに、自傷他害のおそれがない場合の本人の意思によらない非自発的入院を認めた上で、可能な場合には精神保健従事者二名の診察を行うことを求めている。

 今回、これは一名であるわけでありまして、そういう意味からしますと、二名ではないではないかというような御指摘もあるわけでありますけれども、一つは、なかなか指定医というものがそうたくさんいないわけでございまして、十四万人からおられる医療保護入院者の中において、十分に対応ができていけないということでございまして、これは検討チームの中でもいろいろと御議論をいただいたわけでありますけれども、結果的に、一名の指定医、そして、あわせて家族の同意ということにさせていただいたわけであります。

 この点は、そもそも、この原則というものは法的拘束力がなくて、実情に応じてその趣旨を実現していくということでございますから、今、日本の国においてはそのようなことに対応できるような状況ではないという中において、最善の策をどうすべきかということで御議論をいただく中において、結果的にこのような形にさせていただいたわけであります。

 それからもう一つ、原則十八で、法的能力を欠く者の代理される権利に関する規定がございますけれども、これは検討チームの議論の中で代弁者の話も出てまいりました。

 しかし、ここで言われている原則十八条の内容は、代理される権利に関する規定でございまして、要は、不服申し立て等々を本人ができない場合に誰がするかということでございまして、代弁者自体は、そこまでの議論、共通認識があったわけではございませんでして、例えば、院長に対していろいろな不満がある場合に、その意思をかわって申し立てるといいますか伝える、そういう方々も含めて代弁者と。代弁者の定義自体がはっきりとまだ検討チームの中においても固まっていなかったというのが実情であります。

 ちなみに、この不服申し立てに関しましては、現在、日本では弁護士を基本としてやられておるわけでありまして、そのような意味からいたしますと、弁護士がかわって不服申し立て等々の権利に関する代理をされておられるわけでございますから、これに関しても、決して違反しておるというわけではないということでございます。

 いずれにいたしましても、この国連での原則というもの、我々もでき得る限りこういうものに対して重視をしていく必要があろうというふうに思っておりますので、これからも、できる限りの部分に関しましては心がけてまいりたいというふうに思っております。

横路委員 これからその点は議論をさせていただきます。

 今回の法改正の問題点は、やはり、家族の同意、代理人の選任の問題、それから認知症と精神医療との関係、審査会の独立性といったような点が問題だと私は思っています。

 まず、家族の同意でございますが、大臣に対して、新たな地域精神保健医療体制の構築に向けた検討チーム作業チームの町野教授ほか十一名の、全然我々はこういうことを議論したわけでもないのにどうして入ったんだ、その入った経過ということの理解に苦しむというような意見書が出ています。

 岡田部長で結構ですが、一体、この作業チームや検討チームの中で入っていた保護者制度をやめて、家族の同意なんという話がないのに何でこれは入ってきたんですか。どういう経過で入ってきたのか、お答えいただきたいと思います。

岡田政府参考人 お答えします。

 経緯的に申しますと、検討チームでは、まず、保護者制度について、やはりこれは廃止すべきだというようなことを踏まえまして、そのために保護者という制度がなくなることによりまして、今、医療保護入院で保護者の同意というのが必要になっているわけですが、それにかわるものをどういうふうにするかということで御議論がされたという経緯でございます。

 現状では、精神保健指定医一名の診断と保護者の同意という形になっているわけですが、保護者がなくなることによりまして、保護者の同意をどういうふうに取り扱うのかということでさまざまな御議論がございました。

 その中で、例えば、先ほど大臣から御説明しましたように、指定医を二人にしたらどうかとか、そういうような御議論をいろいろとされた結果、最終的には、なかなか現実的にはそういう取り扱いは難しいということで、精神保健指定医一名のみを要件として入院させることができるようにというような御提言をいただいたわけでございます。

 その後、厚生労働省の中で法制化に向けた検討を行う中で、一般医療におきましてもインフォームド・コンセントがますます重要とされる中で、患者本人に病識がない精神障害者を本人の同意なく入院させるに当たっては、患者の身近に寄り添う家族などに十分な説明が行われた上で、家族などが同意手続を行われた上で行うべきであって、家族などが同意する手続を法律上明記する必要があるんじゃないかというようなこと、それから、本人の意思によらず身体の自由を奪うことになります入院を指定医一名の診断で行うことは、患者の権利擁護という観点から適当なのかどうかというようなことを総合的に検討した結果、家族などのいずれかの者の同意を必要とするという形にさせていただいたところでございます。

横路委員 検討チーム作業チームの中ではそんな議論はなかったから、役所の中から出るはずもないんですね。これは政治マターで最後に入ったんでしょう、家族の同意というのは。

岡田政府参考人 検討チームでの検討の状況を踏まえまして、中での事務的な検討として、先ほど言いましたようなインフォームド・コンセント、それから権利擁護というような観点から、やはり家族などの同意を求めた方がいいんじゃないかという判断をしてやったものでございまして、政治的というよりも、事務的に整理した上でそういう判断をさせていただいたということでございます。

横路委員 ちょっと三十三条に関連して質問します。

 まず、欠格事由があるんですが、この欠格事由は誰が判断するんですか。結論だけで結構ですから、お答えください。

岡田政府参考人 欠格事由は、例えば訴訟をしているような方については家族などの同意の対象にならないという御指摘だと思いますが……(横路委員「いやいや、誰が判断するんですか、欠格事由は」と呼ぶ)これについては、入院に当たって、精神科病院の指定医がその実際の家族の同意を得て入院させるということでございますので、その段階で可能な限りそういう御判断をしていただくことになると思いますが、その後いろいろな事情がわかって、欠格事由があるということであれば、その同意がなくなりますので、退院に向けた手続などをまた別の家族と御相談いただくということになると思います。

横路委員 同意した人に欠格事由があれば入院は無効ですよ。だから、それで半年でも一年間でも入ったら、その責任を負わなきゃだめなんですよ。

 保護者制度のときは、裁判所がちゃんと判断しているから公的機関の判断ができたんですよ、こういう問題。ところが、この欠格事由でいうと、医療関係者が判断するんでしょう。判断権者。

岡田政府参考人 失礼しました。

 精神科病院の管理者がそういう欠格条件があるかどうかということを判断していただくということになります。

横路委員 これは、私人が判断する、調査するのはなかなか大変だと思いますよ。そして、もし同意者がうそを言っていれば同意は無効になりますから、入院が無効になるんです。だから、そのときは医療関係者の責任になりますからね。

 もう一つ、例えば、親権者がいる、親が離婚して、母親が親権者で子供の面倒を見ているというので、その子供の問題について、親権者でない父親が同意した場合、親権者である母親は反対しているという場合はどうなるんですか。

岡田政府参考人 先ほどの訴訟の件と一緒で、病院の管理者がそういう点を確認していただいた上で入院をさせていただくというような扱いになると思います。その後わかった場合には、先生御指摘のようなことになっていくということだというふうに思っています。

横路委員 いや、わかるわからないは別にして、親権者である親が反対しているときに、離婚した夫、つまり、子供にとっては父親が同意をした。同意権者が一人でもいれば入院になるんでしょう。しかし、親権者というのは、子供に対して監護したり、どこに住むかということを指定したりする民法上の権利をちゃんと持っているんですよ。しかも、裁判所で認められた人間です。これが反対しているのに、どうしてそれ以外の人間が同意して入院できるんですか。

 この制度はやはりおかしいです、この家族の同意というのは。これはどう説明しますか。

岡田政府参考人 病院の管理者は、入院に当たって親権者の意見を尊重しなきゃいけないということだというふうに考えていますが、実際上のいろいろな手続でいろいろな問題が生じると思いますので、それについては、運用上の留意事項などをまとめる通知などで、具体的なやり方を、留意事項などをお示ししていくということにしていきたいと思っています。

横路委員 いやいや、これは法的な問題なんですよ。

 では、成年後見人について聞いてみます。

 認知症の母親がいて、子供が何人かいる。子供の一人は弁護士で、成年後見人として裁判所で認められた。彼は、グループホームか何かにこういう状況だから入れようかとみんなと相談している。しかし、いろいろと兄弟間の争いがあって誰か一人が同意をしたというときに、これはどうなるんですか。今までの御答弁だと入院は認められるんでしょう。違いますか。

岡田政府参考人 家族などのいずれかの者の一人ですから、法律上は認められるということでございます。

横路委員 しかし、成年後見人というのは、一番、認知症の患者のいわば権利を保護するためですよ。親権者だってそうですよ。さっきあなたは権利擁護のために家族の同意と言ったけれども、本当に一番考えなきゃいけない、しかも、裁判所で認定した成年後見人や親権者が反対しているにもかかわらず、家族の誰かが同意すればそれで認められるというのは、おかしいじゃないですか。

岡田政府参考人 今回、同意を行う家族等の「等」の中には、成年後見人も含めて対応するようにしているところでございます。

横路委員 いやいや、成年後見人が反対しているときに、家族の誰か一人の同意があればそれでいいんですかと聞いているんですよ。

岡田政府参考人 医療保護入院の同意に向けては、退院後の治療継続とか環境整備に向けて家族の方々の御協力は不可欠である、それから、そういう意味では、成年後見人の方も、非常に重要なことでございますので、そういう方の協力が必要であるということでありますので、入院治療の必要性、緊急性を考慮しつつ、可能な範囲で、幅広い範囲で、成年後見の方、それから家族の方の御了解を得た上での入院が望ましいというふうに考えているところでございます。

 御指摘のように、家族間だとか成年後見の方で意見が異なる場合につきましても、まず、精神科のお医者さんから、医療保護入院に反対する方に対して、その必要性を十分説明していただいて、可能な限り理解をしていただくことが必要だというふうに考えております。

 精神科の医師の説明を受けても、なお医療保護入院に反対する家族がいる場合には、退院請求などの請求を行うことができるということになっておりますので、精神医療審査会の方でその必要性について御判断をいただくということでございまして、医療現場におきまして混乱が生じることのないように、改正法の施行に当たって、今述べた運用上の考え方を通知などを通じて御説明していきたいというふうに思っているところでございます。

横路委員 答えになっていないんですよ。それは家族全員が反対した場合の話でしょう、そちらの方で審査していただくというのは。

 そうじゃなくて、家族の中に同意者がいるんですよ、しかし、親権者や成年後見人は反対しているんですよ。もっと、病院ではなくてグループホームに入れようとかいうようなことを考えているわけですよ。そのときに、その家族の同意がどうして優先するんですか。これは法律的な欠点ですから、私は削除してほしいと思います、家族の同意を。どうですか。

 だって、おかしいじゃないですか。裁判所が認めた、しかも、その本人の権利擁護のために認めたのが成年後見人であり、親権者でしょう。それを無視して、誰か関係のない家族が、同居もしていない、場合によっては海外に住んでいるような家族が同意したって、それはいいわけでしょう。これはおかしいじゃないですか。

岡田政府参考人 入院の手続が実際どういう形で行われるかということについてちょっと申し上げたいと思うんですが、御本人に病識がないということでございますので、本人がみずから病院に行くということは余り想定できないので、家族などの方がどなたか一緒について病院に行くということでございます。その際に一緒に同行されたような方が実際上は同意をされるということではないかというふうに考えております。

 そうした中で、先ほど言いましたように、退院に向けたいろいろな、さまざまな環境整備であるとか受け入れ体制を整備するという意味では、家族の方は非常に重要な役割をするということでございますので、家族間でできるだけいろいろな方々の同意を得ていく必要があるというようなことで実際上の運用を図っていきたいというふうに思っていますが、やはり、家族、さまざまな事情がございますので、医療へのアクセスを確保するという観点から、法律上は、家族などのうちいずれかの者の同意によって入院ができるという形にさせていただいたところでございます。

横路委員 今までの保護者制度では優先順位が決まっていて、最初は後見人でしょう、それから配偶者で、次に親権者、そして最後に扶養義務者になっているんですよ。だから、どうして、そういう権限を持っている人が反対しているにもかかわらず誰か同意すればいいという、制度、仕組みに問題があるんですよ。

 問題は、例えば、逆に言いますと、親権を持っている母親が子供かわいさに、本当は病院に入れた方がいいという場合もあるんですよ。だから、本当は医者だけの判断にするのが正解なんです、医者二人でもって判断するのが。だから、家族の同意というのは、そういうところで、適切な医療を受けるということの障害になることもあり得るんですよ。しかし、権利を守るために法律上できているのが親権者であり、成年後見人でしょう。

 だから、この問題をどうやって、つまり、本人の意思や権利を守り、適切な医療、治療を受けられるようにする、では、それがぶつかったときにどこで調整できるのかといえば、やはり家族というのは外して、だってこれは、医療は治療と保護が必要な場合にやるわけでしょう。だから医療の判断、これが優先するわけですよ。

 だから、私は、この家族の同意というのは外して、もう時間もなくなっているときにこういう問題提起をして恐縮でございますが、読んでみて、やはりおかしい。

 そして、保護者のときに入っていた順番が、今回の改正案では、三十三条で、小手先で、次の者というのは、まず最初に配偶者、親権を行う者、扶養義務者で、後見人が最後になっているんですね。そこを変えたのも、何となく小手先で隠すためのように私には思えて仕方がないです。

 家族の同意を削って、そして医者二名にする。医者二名は可能なんです。さっき十四万人と言いましたが、一カ月大体一万人ぐらいですから。お医者さんも一万人ぐらいおられるので、一人三件、四件ぐらい持てばできる話なので、不可能ではないです。どうですか、家族の同意。

岡田政府参考人 順位の問題につきましては、やはり家族間でさまざまな問題があるということで、従来は、医療保護入院で、順位が決まっていたことによって、必要があるんだけれども逆に入院できなかったケースもあるというようなこともございまして、今回は、医療へのアクセスを配慮するという意味で、順位を定めないという形にさせていただいたところでございます。

 指定医二名ということでやったらどうかという御指摘でございますが、これについては検討チームでもさまざまな御議論がございましたけれども、先生先ほど御指摘になりましたように、数字的に見るとそういうことかもしれませんが、実際には、精神保健指定医は、病院でいろいろな業務に携わっているような方でございます。それから、精神医療審査会でもいろいろと御活躍をしていただきまして、いろいろなところでいろいろな役割をやっておられる方が精神保健指定医ということでやっておりますので、そういう方々に集まってもらうのが、精神医療審査会を運営するに当たっても非常に苦労しているという現状でございますので、指定医の二名というのは、現実問題としては難しいというようなことでございます。

 家族の同意を必要としたことにつきましては、インフォームド・コンセントであるとか権利擁護、それから、退院後に家族の方にしっかりと支えていただくという観点も必要だということから、家族の方の同意を必要とすることが必要であるというふうに考えているところでございます。

    〔委員長退席、西川(京)委員長代理着席〕

横路委員 しかし、そうはいっても、例えば、では、同意した人が退院まで責任を持つんですかといったら、そういう責任は何もないわけですよ。

 大臣、親権者それから成年後見人というのは、裁判所が認めた人たちです。どういう役割を果たすかということも法律でちゃんと決めているんですね。先ほど言いましたように、子供四、五人の中の一人が弁護士で、成年後見人になる、しかし、その兄弟の中で病院に入れるべきだという主張をする人がいて同意しちゃった、それで入院というのはやはりおかしい話なので、この家族の同意というのは、今回の法改正の非常に大きなネックです。

 きのうも参考人が、いろいろな関係者が来て意見を言っていましたが、ほとんどみんな、保護者制度がなくなったのはいいけれども、家族の同意というのは非常に問題があるという指摘をされているんですね。

 これから修正するというのはちょっと時間的に難しいのかもしれませんが、ぜひこれはお考えいただきたい、今の成年後見人や親権者を含めて。可能性があるならば、修正をして通した方がみんなに喜ばれます。これが非常に大きな問題なんです。どうですか。

田村国務大臣 本当は、今言われたみたいに、指定医二人という、これは検討チームの中でもいろいろな御議論があったんですけれども、それがいいのかもわかりません。

 ただ、一方で、委員は、二人、大丈夫だとおっしゃられますけれども、現場は決して、二人ということ自体が実際ワークするかというと、それほど人員的に余裕がない。これは、検討チームの中でもそういう御議論をいただいた上で、結論として、一人という話で結論をいただいたわけであります。

 しかし、今委員、政治マターだとおっしゃられましたが、政治マターというよりかは、指定医一人というのは、措置入院でも二人でありますから、措置入院よりかは、当然のごとく、保護入院の方が自傷他害の可能性がないわけでありまして、そのような方を指定医一人というわけにはなかなかいかないのであろうということで、これは、事務方がいろいろと判断する中において、家族と。

 本当を言うと、保護者制度というものがあったわけでありますけれども、保護者の方々が、これは負担が重過ぎるということで、何とか保護者制度というものを変えていただきたいという切実な御要望があったことも、委員も御承知のことだというふうに思います。

 そんな中で、家族というものを我々は選んだということでございまして、将来的に、例えば、指定医二人ということができるのであれば、それは、そのときにまた御議論をさせていただきながらということでございますし、一方で、多分、いろいろな想定の中では、家族のうちの誰かがということはあるんだと思います。

 しかし一方で、入院を受け入れる側の指定医も、当然のごとく、その部分に関しましては、退院をさせる、つまり、早期に退院をさせるという意味で、またその体制を考えるわけでありまして、その後、家族が協力をいただけないということになれば、それはそう簡単に、やすやすと入院を受け入れるというわけにもいかないわけでございます。

 例えば、全然関係ないというか、ふだんいない家族がやってきて、連れてまいりまして、家族でございます、それで、入院をお願いします、同意いたしますと言ったところで、本当に御面倒を見ていただける方がノーと言っている場合は、よほど家族間で調整をしていただかない限りは、そう簡単には、入院を受け入れられる、そういう体制が整わないわけでありますし、それは審査会の中でも、その後、御議論をいただく話になると思います。

 当然、不服があって入院をやめたいということであれば、これは審査会の方にお申し出をいただくということになりますから、そちらの議論にもなるわけでありますが、ただ、この入院の問題に関しましては、三年後をめどに検討させていただくということでもございますし、一方で、今委員がおっしゃられたいろいろな不安な点、こういう部分に関しましては、ガイドライン等々をこれからつくっていくわけでございまして、この中においても、そういう御不安というものを払拭できるような、そういう内容のガイドラインというものもお示しをさせていただきたいというふうに思います。

横路委員 問題は、それまでは保護者だったでしょう。今度は、家族というから、範囲は広くなるわけですよ。家族は誰でもいいわけです。今までの御答弁を聞いて、誰でも誰か一人ということで……(田村国務大臣「誰でもいいというわけではないでしょう」と呼ぶ)いやいや、そういう答弁になっていますから、誰でもいい、誰か一人でもと。

 しかし、法律上、成年後見人とか親権者とか、裁判所が認定して、その人間に対して、その人の意思を尊重し、権利を守るという立場で親権者が決められ、成年後見人が決められているんですよ。その意向を無視するという、こんなことができますか、この法律で。どうなるんですか、親権者の権利や成年後見人の権利というのは。どうですか。

岡田政府参考人 今回の法改正案で、家族などのうちいずれかの方が同意するということでございますが、これにつきましては、家族間でさまざまな事情があるということで、医療へのアクセスを確保するという観点から、いずれかの者の一人という形で法律上の要件とさせていただいたところでございます。

 先生御指摘のような点につきましては、運用上のいろいろな取り扱い、先ほど大臣言いましたように、ガイドラインなどについて、そこら辺についての留意事項などを明確にして、適正な運用が進むように図っていきたいと考えているところでございます。

横路委員 いや、それは法律的に無理だと思いますよ。

 ともかく、民法上の親権者の権利を侵すことになります、成年後見人の権利を侵す、そういう要素を持っている法律の規定です、これは。そこをしっかりちょっと。

 もう時間もありませんので、委員長、そのことを本当はちょっと理事会で協議してほしいんですよ。これは明確に法律に反しているんですから。民法上の親権者の権利が侵害されていますよ、成年後見人の権利が侵害されていますよ、この法律で。

西川(京)委員長代理 私、今代理ですので、委員長に御報告しておきます。

横路委員 あともう一つ。この家族への変更について、今までの答弁、岡田部長の答弁。

 例えば、精神保健指定医二名の判断ですべきではないかという提案もありましたが、この提案につきましては、入院を厳しくするより、入院をさせた上で適切な医療を提供し、早期に退院させることを目指すべきという答弁をされています。

 また、副大臣も、今までは、一人の保護者が、保護義務者がどうしても入院させないということであれば、なかなか医療にアクセスできなかったというケースもあります、そこはしっかりこれから、どなたか一人が同意すればアクセスできるということになるのであります。

 この答弁は、要するに、入院を容易にするということですね、岡田部長。

岡田政府参考人 先生御指摘の私の答弁は、それは、去年の六月に出ました検討チームの報告書にそういうことが書いてありまして、現に、そういうようなことが御議論された上で検討チームの報告が取りまとめられたということでございまして、入院が必要な方に対して必要な医療へのアクセスが確保されるべきだというようなことが検討チームの中でも御議論されたということでございます。

横路委員 検討チームで議論されたんじゃなくて、あなた、自分の名前で答弁しているんですよ。検討チームの意見でこうでしたなんということは、あの答弁の中で一言も言っていません。

 つまり、今度の家族の同意というのは、多分、これは病院側の要請に応じて、入院しやすくしているんですよ。これは、岡田部長、今までのあなた方厚生労働省の方針と違うじゃないですか。できるだけ入院者は減らす方針なんでしょう。それで目標を決めてやってきたじゃないですか。しかし、この答弁になると、二人になったら入院が難しくなる。副大臣の御答弁も、保護者一人のときはなかなか難しかったこともあるけれども、同意権者がたくさんふえたから入院が容易になるんだ、こういうお話でしょう。

 やはりこの家族の同意というのを入れた本質はここにありますよ。これは、病院側の要望に基づいてこれを入れたんじゃないですか。違いますか。厚生労働省の従来の方針と違いますよ。

桝屋副大臣 従来の厚生労働省の方針がどうであったか、今ここで私が明確に申し上げる立場ではありませんが、先日も答弁しましたけれども、決して入院を容易にするという法改正ではないと思っております。

 先ほど委員からもお話がございました。例えば精神病院に入院をさせるか、あるいはグループホームで処遇をするか、家族で意見が違う。そうした意見の違いというのは確かに出てくる可能性はありますけれども、しかし、そういう状況の中で、真に適切な医療が必要であれば、それは私は、何も入院を勧めるという立場ではなくて、適切な医療にアクセスをしていただくということはやはり必要でありまして、そのための今回の改正だというふうに思っております。

 決して、入院を容易にし、入院をふやす、厚生労働省の方針を変えるというものではない、決して政治的な問題で変わったわけでもないということを申し上げたいと思います。

 委員、私も経験がございますが、現行でも、精神科病院の管理者は、医療保護入院については、入院後十日以内にその患者の症状を都道府県知事へ報告をする、そして、入院開始からずっと定期の病状報告というのは行うわけでありますから、精神医療審査会がその入院の是非というのはやはり検討する、見守っていく体制はあるというふうに思っておりまして、適切な医療を提供して、そして、一日も早く地域生活に移行していただくということが今回の制度改正の目的だというふうに思っております。

横路委員 三十三条の三項のところで、家族が意思表示できないときには、市町村長に言って、市町村長の同意があるときは入院させることができるということですね。同意がなかったら、これは入院させることはできませんよね。

    〔西川(京)委員長代理退席、委員長着席〕

岡田政府参考人 先生御指摘のように、同意すべき家族などがいらっしゃらない場合には市町村長が同意するというような取り扱いの規定でございますので、家族の皆さんが御反対している場合には入院することはできないということでございます。

横路委員 そうすると、今副大臣が言った、適切な医療の治療は受けることができないわけですよね、市町村長も反対したときには。難しいことにかかわりたくないという市町村長だっているかもしれない。

 ですから、ともかく、この制度全体がやはり非常に問題が多いということを申し上げておきたいと思うんです。

 それで、なぜ同意が大事かというと、医療保護入院というのは、個人を拘束することなんですよ。大変なことなんですよ。だから、憲法十八条で、何人も、いかなる奴隷的拘束を受けない、三十一条のデュー・プロセス・オブ・ロー、何人も、法律の定めによらなければ、その自由を奪われない、憲法三十四条、何人も、理由を直ちに告げられ、直ちに弁護人に依頼する権利を与えられなければ、抑留または拘束はできないと。

 だから、国際機関は、私人、医療者にしても、家族にしても、私人の手によって、私人の拘束指示によって拘束されるということに物すごく心配を覚えているんですよ。ヨーロッパでは、過去に、政治的な反対者を精神病だということで病院に入れるなんということをロシアなんかでやったことがあるんですね、ソ連時代に。

 そういうこともありますから、この医療保護入院、強制的な入院については、やはりその人権を守るという立場からいろいろな提言があって、冒頭にお話しした拷問に関する委員会の提言もそういうことなんですよ。

 そうすると、これをなくすためにはどうしたらいいかというと、入院の前から、手続の前から本人を守るための代理人をしっかりつけること。それから、審査会というのができたのも、これは国際機関のいろいろな指摘もあって審査会ができているわけですよ。審査会は今行政に所属していますが、司法的機能をもっと持たすように、やはり独立性を強めるというのがこれからの方向性なんです。

 参議院の附帯決議にもついていますけれども、入院のときからの代理人の選任、そして、審査会の機能を強化するというのが、国際的な、今みんなが心配しているというのを解消する非常に大事なポイントなんですね。

 ですから、この代理人を選任するということ、これは福岡の弁護士会などでもう既にやっています。弁護士会も五カ所ほどやっていますし、日弁連もそれを推進しようとしています。その実施主体の問題や何かが議論されていますが、日弁連とか、あと精神保健福祉士などの人たちで実施主体をつくればいいわけで、ぜひこれは進めていっていただきたいというように思いますが、大臣、いかがですか。

田村国務大臣 代理人という今の定義が、先ほども私申し上げましたけれども、現行でも、例えば、不服があった場合に弁護士の方にお願いして代理をしていただくわけであります。

 今委員がおっしゃられた代理人というのは、代弁者という議論が検討チームでもなされました。この中の代弁者というのは、いろいろな意見が出ておりまして、そもそも入院の前という話になった代弁者という話になると、若干また議論の中とは違っている部分もあるわけでありまして、入院した後の御本人の意思というもの、そういうものをかわって代弁する。先ほども申し上げましたが、それは、御本人の法的な権利のみならず、院長に対してのいろいろな不服、こういうものも含めて言っているのか、それとも権利の部分は入っていないのか入っているのかということも含めて、まだ幅広い議論が、固まっていない状況の中での検討チームの御議論でございました。

 でありますから、そこのところも含めて、代弁者と言われる方々がどのような役割を担うのか、また、どういう方々がその対応をされる、つまり主体ですね。今委員は、弁護士というお話がありましたけれども、検討チームの中では、弁護士だけではなくて、いろいろな設置主体の話が出ておりましたので、ここもまだ議論が固まっていなかったところでございます。

 福岡の御事例がありましたけれども、それは、法的な権利というものもしっかりと擁護する中において、弁護士会の方々が自主的にそういうことをやられておるということは、我々も非常に先進的な取り組みだというふうには認識をさせていただいておりますし、これをどのように全体的に取り入れていくかという議論もしなきゃならぬと思っております。

 ただ、一方で、そのような形になれば、全国的に弁護士の方々に御協力をいただかなきゃならない。そうすると、当然それには財政的な裏づけが必要になってくるわけでありまして、ボランティアでやっていただける、これは、モデル的にやっているところはボランティアということもあるのかもわかりませんが、制度の中に入れるとなってくると、これはなかなかそう簡単ではない話でございます。

 それも含めて、これから、検討条項が入っておりますので、その中で御議論をさせていただきながら、この代弁者はどのようなあり方がいいのか、どのようなあり方が精神科病院等々に入院されておられる患者の方々にとっていいのかということも含めて、議論をいただきながら、これから、このあり方というものの推移を我々も見守ってまいりたいというふうに思っております。

横路委員 推移を見守るのではなくて、検討してくださいよ。

 本当は、私は、家族の同意のかわりに、ちゃんとした代理人をつけるということで、医者はその場合は一人でも構わないだろうと思うんですね。審査会がちゃんと独立した機能をして常駐機関になってやれば、今の枠組みの中でも、直すところを直して、お金もそのかわり導入しなきゃだめですよ、それをやはりやっていくべきだ。そうしないと、会議のたびにいつまでも国際的に批判されるということをもう何年繰り返しているんですか。

 精神医療の病院も非常に前進的なことをやっている病院は幾つもあります。知っています。しかし、旧態依然たるところもあるわけですね。さっき言ったように、電気ショックや何かだとか、保護室だとか隔離されているとかいうようなことはやはりあるわけですよ。

 例えば、認知症なんかの場合は、特に、周辺の症状がいろいろ出てくるからそこに対応しようということなんですが、本当は、落ちつけば、バックアップがあれば地域の中でふだんに生活できる人たちがほとんどなんですよ、認知症といっても。

 だから、きょうはそこを議論する時間がなくなってしまいまして非常に残念です。

 委員長、先ほど言いましたように、成年後見人とか親権者とか、法律でちゃんと認められた本人に対する保護者がいるわけですよ。この保護者を無視して、誰かが同意して入院できると。しかも、これは憲法上のいろいろな問題を、違法性を脱却するための措置ですよ。非常に大きいんですよ、この同意というのは。単なるものじゃないわけですよ。権利を擁護するという点からいってもおかしいと思いますので、これはちょっと理事会で検討していただきたいと思います。

 何か時間が差し迫った中でこういう問題提起をして恐縮なんですが、検討すればするほど、やはりこの家族の同意には問題があるというように思いますので、ぜひ委員長、御議論いただきたいと思います。

松本委員長 後刻、理事会で協議いたします。

横路委員 では、終わります。

松本委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前九時四十六分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

松本委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 この際、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、政府参考人として内閣法制局第四部長北川哲也君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

松本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

松本委員長 質疑を続行いたします。大西健介君。

大西(健)委員 民主党の大西健介でございます。

 午前中に引き続き、午後一番の質問時間をいただきました。よろしくお願いいたします。

 時間が限られておりますので、早速、法案について質問していきたいというふうに思うんですけれども、午前中に精神保健及び精神障害者福祉法の改正案について、横路委員から大変深い議論がありました。それも引き継いで質問をしていきたいというふうに思うんですが、まずは障害者雇用促進法から質問をしていきたいというふうに思います。

 まず、本法案の提案理由の中で、このたび、精神障害者を障害者雇用率の算定基礎に加えることになった背景について、「精神障害者の雇用の状況を見ると、企業で雇用されている精神障害者の数が増加し、その職域も広がりを見せているため、」というふうに述べられています。

 しかしながら、一方では、障害者雇用全体を見たときに、一・八%の雇用率を達成している企業というのも、全体のまだ半分にしか満たないというのが実態であります。今度、またそれが二・〇%に上がってきたときに、雇用率を達成できている企業というのはさらに下がる可能性もあるというところの中で、企業側からは、この達成率を上げていくことにまず注力をすべきじゃないかという声もあるのも事実であります。

 そういう中で、半分しかこの雇用率の達成ができていないという現状について厚労省はどのように考えておられるかについて、まずお聞きしたいと思います。

小川政府参考人 お答えを申し上げます。

 最近の障害者雇用の状況でございますけれども、年々、障害者の雇用者数が増加して、九年連続で雇用者数が過去最高を更新しているというふうに、着実に進展しておりますが、委員御指摘のとおり、平成二十四年六月一日現在における障害者の実雇用率は一・六九%、法定雇用率達成企業割合が四六・八%にとどまっているというのが現状でございます。

 この背景といたしましては、障害者の雇用につきましては、大企業が牽引している一方で、中小企業の取り組みがおくれていることも影響しているものというふうに認識しております。

 このため、ハローワークにおきまして、地域障害者職業センターと連携して、知的障害者や精神障害者の雇い入れも視野に入れた職域開発でございますとかジョブコーチ支援などの提案を行うほか、障害者の雇い入れに係る助成金を大企業と比べて中小企業に対して手厚く支給するとともに、中小企業向けの就職面接会を開催するなど、中小企業に力点を置いた支援を実施しております。

 なお、今回の改正案では、施行日は五年後の平成三十年四月でございますけれども、法施行時の法定雇用率の設定に限りましては、企業の障害者の雇用状況や行政の支援状況を勘案して、激変緩和措置を講ずることを可能としておりまして、改正法が施行までの間、企業が精神障害者の雇用に着実に取り組むことができるように、企業等への支援策の強化に努めてまいりたいと考えております。

大西(健)委員 今お答えいただいたように、やはり、中小企業をしっかり支援していくのは私も大切だというふうに思いますし、達成する企業がふえていかないと、また大企業ばかりだと、結局は、分担金を払えばそれでいいんでしょうみたいな話になってしまいかねないというふうに思いますので、そこのところは、ぜひよろしくお願いしたいと思います。

 そういう中で、精神障害者の雇用なんですけれども、この委員会でも繰り返し述べられているように、精神障害の方については、症状に波がある、そういう中で、定着率というのもなかなか上がらなくて、一年以内の離職率が五〇%以上というデータもあります。就職した人が短期で離職して、また就職してとやれば、就職の実績は上がるのかもしれませんけれども、そんなことをしても意味がないのは言うまでもなく、やはり、定着率をいかに上げていくか、これが課題だというふうに思っています。

 私は、この法案の審議に当たって、地元で、就業支援をやっているNPOの皆さん、それから障害者雇用をやっている企業の皆さん、両方からお話を聞きました。そういう中で、その両方から共通して出された意見として、障害者就業・生活支援センター、関係者の皆さんの中ではナカポツセンターと呼んでおられるみたいですけれども、この体制強化を求める声というのが一番多かったです。

 就業支援を行っているNPOからの御意見を聞いていてなるほどなというふうに思ったのは、苦情とか紛争とかが起きてからじゃ遅いんだ、苦情とか紛争になる前の芽の段階でそれをしっかりと摘んでいく、そのためには、障害当事者の聞き取りとか職場環境のチェックを定期的に行って、問題を早期に発見して、そして、今言ったナカポツセンター、中立性と専門性を有しているこのセンターがそこに入っていって問題解決を図っていく、これが非常に重要だというふうに言われておりました。

 ただ、そのナカポツセンターなんですけれども、多くのところは大体三名ぐらいの体制で保健域ごとに置いているということですけれども、事務所に行っても人が出払っていて常時人がいないとか、専門的な人材が不足しているとか、また、センターによって非常に質的なばらつきが大きいという声が多く上がっています。

 障害者の雇用が進めば進むほどトラブルというのもふえると思います。そういう中で、この障害者就業・生活支援センターの体制強化というのが不可欠だというふうに思いますけれども、具体的に体制強化をどう図っていくつもりかということについてお聞きをしたいと思います。

小川政府参考人 就職を希望される障害者の方が増加する中で、障害者就業・生活支援センターの人員体制の強化とか質の向上を図ることは非常に重要であるというふうに認識しております。

 厚生労働省としては、これまで、こうしたニーズに対応するために、障害者就業・生活支援センターにおいて就業支援担当者を増員したり、職場定着支援担当者を新たに配置するなどの体制強化に取り組むとともに、各センターの担当者の情報交換を図るための交流会議というのを開催したり、担当者研修を実施するなどの人材育成に取り組んでおります。

 今後とも、障害者就業・生活支援センターの就業支援者の質のさらなる向上も含めて、センターの今後のあり方、目指すべき方向性について検討してまいりたいと考えております。

大西(健)委員 量と質という問題があって、まず量からというところもあるのかもしれませんが、やはり質を高めていただかないと、精神障害者の雇用もと言われても、企業の方も、それを支援してくれるそういうセンターの機能が脆弱じゃないかという御意見がありますので、ぜひ、今お話しいただいたことも含めて、しっかりやっていただきたいというふうに思っています。

 私が意見を伺ったNPOでは、例えば、企業に雇用が決まったときに、その決まった方の職場での配慮すべきことを書き記したサポートシートというのを企業に渡したり、あるいは、今お話もあったような職場適応援助者、ジョブコーチというのを派遣して企業側に適切なアドバイスやサポートを伝えるという支援を行っておられるそうです。私は、こういうきめ細やかな支援が定着化の鍵を握っているんだというふうに思っております。

 もう一つ、定着化のために有効だと思われるのは、私は、トライアル雇用という仕組みだというふうに思っています。特に精神障害の場合は症状の特性とか個人差が大きい。ですから、まず職場や仕事内容がその人に合っているのかどうなのか、実際に職場で働いてみないとわからないという部分もありますし、企業側としても受け入れに関していろいろな不安等がある中で、実際にトライアルで雇用してみるということでその不安を除去するというのに役立つというふうに思っているんです。

 このトライアル雇用について、三度にわたって、対象者要件等に係る留意事項についてという課長名の通知が発出をされています。この三回の通知のうちの直近二回、二十四年六月と二十五年二月の通達というのを、お手元の資料の二枚目ですけれども、お配りをさせていただいているんですが、これはどういうことかというと、総務省から勧告があって、このトライアルについては、過去に障害者の雇い入れ経験があったりノウハウが十分にあるところには限定的にしか使わせないようにというような通達がまず出たんですね。

 お手元に配っている、二十四年の六月ですけれども、再び通知が出て、その中では、予算の制約があるので対象は雇い入れ経験がないところとかノウハウが乏しいところに限ってくださいねというふうに書いてあるんです。ただ、同時に、その中には、雇い入れ経験やノウハウがあっても、就職が困難であるとハローワークが判断する者または同一職種での雇い入れ経験がない障害種別や障害部位別の障害者については、奨励金は出ないけれどもこのトライアルを使っていいですよという通達なんですね。

 さらに、三回目の通達、二月に出ているものですけれども、これでは、疾患ごとに特徴が大きく違うことや、同じ疾患でも個人差が大きいという精神障害者の特性に鑑みて、精神障害の場合は、同一職種での受け入れ経験があったとしても、なお雇い入れや雇用管理に不安を持つケースというのは多いんじゃないか、だから、そういう場合はこのトライアルを使ってもいいですよということをわざわざまた出しているんです。

 こうやって、三回、通達、通知が出ている、そういう背景、理由と、改めて、今私が申し上げましたけれども、恐らく、助成金が出る出ないにかかわらず、このトライアル雇用というのが使えるというのは、精神障害者を雇用するに当たっては、雇用される側、する側双方にとって有効だというふうに思いますが、その点についての厚労省の御見解をお聞きしたいと思います。

小川政府参考人 障害者トライアル雇用につきましては、障害者の雇用の経験が乏しく、障害者の雇い入れをちゅうちょしている事業主に対して、その不安感等を除去し、以後の障害者雇用に取り組むきっかけづくりを進めることを目的としており、先生御指摘のとおり、精神障害者の雇用の促進に当たっては、トライアル雇用を活用するということは、障害者本人のみならず、企業にとっても有効なものであるというふうに考えております。

 このトライアル雇用につきましては、先ほども御紹介がございましたように、対象事業所の限定等を行ったところでございますけれども、精神障害者の雇用を促進するため、精神障害者については、個々人によって障害の様相の差異が大きいこと、また、障害の状態が変動するという障害特性があることから、就職が困難である精神障害者については、事業主等の意向も踏まえ、広く障害者トライアル雇用制度の対象とすることとしたところでございます。

 今後とも、こうしたトライアル雇用制度等を活用しつつ、精神障害者の雇用促進を図ってまいりたいと考えております。

大西(健)委員 これは、何度も通知が出ていることからわかるように、現場もなかなか徹底されていないというか、使っていいものやら悪いものやらというような混乱もあるみたいですので、私は、精神障害者の雇用を進めていく上でトライアル雇用というのは非常に有効だというふうに思いますので、またぜひこの点についても、丁寧に、ハローワーク等、あるいはナカポツセンター等、いろいろなところを通じて企業側にも周知をしていただきたいというふうに思っております。

 それから、もう一点お聞きをしたいのは、先日、この委員会の質疑の中で、共産党の高橋委員から、障害者手帳の取得を強要されることがないようにという質問がありました。私もその趣旨は十分に理解をします。そのとおりだなというふうに思うんです。

 一方で、実際に企業の中には、企業の中で発病、発症をしてしまった人というのがいるわけですね。ただ、その中には、やはり、あえていろいろな事情もあって障害者手帳の取得を望まれない、だから、障害者手帳を持っていないんだけれどもメンタル不全だという方がいらっしゃって、その方を企業も継続して雇用しておられるんです。例えば、部署をよりストレスの少ないところに異動させたりして、継続して雇用されている。

 そういう場合に、現状、それを雇用率に換算するということはなかなか難しいんでしょうけれども、そこに私は何か配慮をしてあげなきゃいけないんじゃないかと。それを配慮しなければ、逆に言えば、企業からすれば、言葉はよくないかもしれませんけれども、そのための企業の負担というかコストがかかっているわけですから、ならば、障害者手帳を取ってもらって雇用率にカウントできた方がいいから、障害者手帳を取ってくださいよという話に逆になってしまって、これは、高橋委員が言われるように、本人が望まないのに障害者手帳の取得を強要することにつながっていくんじゃないか。

 つまり、企業内で発症、発病して、手帳は持っていないけれどもメンタル不全になっておられる方を企業として継続して雇用している、このことについて何らかの配慮というのができないのかなというふうに思うんですけれども、この点、いかがでしょうか。

桝屋副大臣 委員から、今、障害者手帳を持たない在職中の精神障害者に対して何らかの配慮が必要ではないか、支援が必要ではないか、こういう御指摘をいただきました。

 委員が言われるように、企業の中で心を病み、メンタルに疾病が出てくる、こういうケースは多々あるわけであります。

 こうした方々に対しては、ハローワーク、地域障害者職業センター、あるいは先ほどから出ております障害者就業・生活支援センターによります雇用管理に関する個別の相談援助も行っておりますし、うつ病等で休職中の者の円滑な職場復帰を目指して、本人と事業主双方に対して支援をする地域障害者職業センターのリワーク支援、職場復帰支援、こうした取り組みでありますとか、あるいは、職場に出向いて、障害者の職場適応について本人と事業主双方に支援を行うジョブコーチ支援などを実施して、その雇用継続を支援しているところであります。

 また、手帳の有無にかかわらず、障害者の雇用促進、職場定着を推進するため、企業が雇用管理や職場環境などを整備改善し、働きやすい職場にするためにさまざまな創意工夫を行っている企業もあるわけでありまして、こうした企業の優秀事例を職場改善好事例として、厚生労働大臣賞を初め、そうした表彰を行って企業の取り組みを促進する。

 また一方では、労働安全衛生法に基づいて、最近やはり心の病が多いわけでありますから、メンタル対策等も、産業医の先生方とも連携をしながら支援の体制を強化していきたいと考えてございます。

大西(健)委員 副大臣から御答弁をいただいたような例えば職場復帰支援、これは重要だと思います。

 また、好事例の共有や表彰という話をしていただきましたけれども、私がお伺いした企業からも言われたのは、先ほど、最初に、達成率が半分しかない、我々は真面目に頑張って頑張って達成しているんだ、でも、一方では分担金を払えばいいでしょうというところもある中で、頑張っているところを表彰してくれるとかというのは非常に励みになるというお声もありましたので、ぜひそういうこともまた御検討いただきたいと思います。

 また、先ほど、専門家との連携という話を少しだけしましたけれども、直接この法案に関係する話ではないかもしれませんが、現在でも、医療、福祉、それから産業、司法、さまざまな分野で心理職の皆さんが専門職として働かれていて、それぞれの団体がばらばらにいろいろな資格というのを設けておられます。

 ただ、現状は、国家資格によって裏づけられた一定の資質を有する統一的な資格制度というのがないために、やはり、いろいろな資格はあるんですけれども、結局は、医者と一緒じゃないと何もできない、権限や責任も曖昧なままになってしまっているというところがある。そういう中で、臨床心理士の国家資格をというような運動も実際にありますけれども、これは議員立法という動きもあります。

 そういう中で、政府として、こういうような動きに対してどのように考えておられるのかについて、大臣から御答弁いただければと思います。

田村国務大臣 心理職の皆様方は本当に各分野で御活躍をいただいておるわけでありますが、我々も、この精神保健福祉法の改正において、チーム医療等々を進める中において、やはり心理士の方々のお力をしっかりとおかしいただきたい、このように思っております。

 平成十七年でしたか、実は私も、自民党の中で、これを何とか国家資格ということで活動をした覚えがございますが、その後、どうしても各団体の意見が合わずに話が流れていったわけであります。また、平成二十四年三月ですか、心理職関係団体が超党派の院内集会を開催されるということで、今活発にいろいろな動きをしていただいておるようでございます。

 それぞれの団体のいろいろな思いの中での新しい方向性でありますから、なかなか生むのが難しいという部分もあるわけでありますけれども、しかし、やはり心理職の皆様方に対する我々の期待というものは大変大きなものがあるわけでございますので、そういう議員立法の流れというものを我々厚生労働省も注視させていただきたいな、このように思っております。

大西(健)委員 平成十七年、みずからもその議員の動きにかかわっておられたという田村大臣が大臣でおられるわけですから、ぜひ政府としても積極的にお取り組みをいただきたいなというふうに思っております。期待を申し上げたいと思います。

 それでは、精神保健及び精神障害者福祉法改正案の質問に移っていきたいというふうに思うんです。

 今回の法改正による保護者制度の廃止、これは、この委員会で繰り返し言われているように、家族の皆さんの長年の悲願であった。そういう意味では、これは一歩前進と言っていいと私は思うんですけれども、ただし、医療保護入院には家族等いずれかの同意が必要ということが残ってしまった。

 しかし、この家族等の同意について、優先順位が定められていないために、家族等の意見が食い違った場合には現場に混乱が生じるんじゃないかということ、これは委員からも、それから参考人の中からもそういう御意見がありました。そして、この点については、午前中の質疑の中で、横路先生から大変深い議論があったというふうに思います。その中で非常に重要な問題提起があったというふうに私は思っています。

 それは、本人の権利擁護のために法律上設けられている制度である成年後見であったりとか、あるいは民法上の親権者、こうした法律上の特別な本人の権利擁護のために立っている人の意思に反した、例えば、場合によっては、海外に住んでいて、ほとんど、御本人とは全く関係がないような家族が同意して入院が認められてしまうようなケースがあり得るんじゃないか、そういうことになった場合に、では、成年後見人とか親権者の権利を侵害することになるんじゃないか、あるいは法律上の整合性に問題がないのかという疑念が午前中の審議の中で生じたわけであります。

 したがって、無理を言って、時間がなかったんですけれども、委員長、理事の御協力をいただきまして、急遽、内閣法制局に御出席をいただいておりますので、今の点について、法律上の整合性、問題がないのかどうかについてお答えをいただきたいと思います。

北川政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の精神保健法の改正案におきましては、先生御指摘のとおり、第三十三条におきまして家族等の範囲を定めております。これは、現在の保護者となることのできる者と同一の規定でございますけれども、そのいずれかの者の同意があれば医療保護入院を行えるということになってございます。

 このような仕組みとすることにつきましては、精神障害者と御家族との関係、あるいは家族内の関係につきましてもさまざまな状況があります中で、一律に医療保護入院の同意ができる者について順位を設けることというのはどうかということで厚生労働省からは伺っておりまして、今回のような仕組みにすることにつきましては、これは政策判断に属する事項であるというふうに考えてございます。

 なお、精神保健福祉法案につきましては、三十八条の三におきまして、精神医療審査会が医療保護入院中の者につきまして入院の必要性を審査することでございますとか、あるいは、第三十八条の四におきまして、入院中の者あるいはその家族等が退院等の請求を行うことができるといった仕組みがそれぞれ規定されてございますので、このような仕組みの中で適切な運用を行っていきたいというふうに厚生労働省からは聞いているところでございます。

大西(健)委員 再度確認したいんですけれども、成年後見というのは、これはその人の権利擁護のためにわざわざ設けられているわけですから、優先順位がないというのは私はやはり何かおかしいと思うんです。全然、御本人と関係が薄い人が一人でも同意すれば、成年後見という、本来、本人の権利擁護のためにいる人の意思が無視されてしまうというのは、成年後見制度そのものを否定するところがあるんじゃないかと思うんですけれども、その部分は大丈夫なんでしょうか。もう一度お願いしたいと思います。

北川政府参考人 お答えいたします。

 先生御指摘の後見人の制度でございますけれども、これは民法上の制度としてその権利義務等が規定されているところでございます。

 今回、精神保健福祉法で、医療保護入院について同意をどうするかということを法案で定めるものでございまして、これは精神保健法の制度の中でどのような制度が適当かということを政策的に御判断いただき、今回はこのような判断をされて法案になっているというふうに承知しております。(発言する者あり)

大西(健)委員 私もいまいち納得できないんですが。

 ただ、それは政策判断だということがお答えなのかなと思うんですけれども、政策判断ならば、横路先生も午前中の質疑でおっしゃっていましたけれども、まさに、先ほどの御答弁の中にも、家族の中はいろいろな関係がある、だけれども、法がそこの家族の中に入っていくよりかは、客観的に医師が本当に入院が必要かどうかを判断すればいいので。先ほど、横路先生、例えば、お母さんが子供かわいいで囲い込んでしまっているような場合がある、本来入院が必要かどうかという判断とは違う家族の判断が入るよりかは、そこにさらに優先順位がないわけですから、どう考えても混乱をするわけです。

 そして、私は、成年後見とか親権が、本人と関係が薄い家族の同意と同列というのはいまだに納得はできないんですけれども、政策判断というならば、むしろそういう家族の同意なしに医師二人のということの方がすっきりするんじゃないかということが横路委員の御主張だったというふうに思いますので、ここはぜひ、政策判断ですから、政策判断をしていただきたいということをお願いしておきたいというふうに思います。

 さて、昨年十一月のNHKの「クローズアップ現代」という番組で、「“帰れない”認知症高齢者 急増する精神科入院」という特集がありました。認知症の高齢者の中には、BPSDと呼ばれる、暴力や暴言、妄想、徘回、こういった症状が重くなって在宅や施設で見切れなくなって、やむを得ず精神科病院に入院をしているというケースがふえてきているというふうに聞いております。

 そういう中で、一方で、お手元に新聞記事を配付させていただきましたけれども、先日、厚生労働省の研究班から非常に衝撃的な数字が出てまいりました。認知症高齢者の数がこれまでの推計をはるかに上回って四百六十二万人に達するのではないか、また、予備群の軽度の人が四百万人いるという数字なんです。

 そこで、まず確認したいんですけれども、現在、精神科病院に入院をしている認知症高齢者がどれぐらいおられるのか、そしてまた、こうやって四百六十二万人となっていくときに、その中でどれぐらいの方が、今度、では精神科病院に入院しなければならないような状況になると予測をしているのかについて、厚労省の方からお答えいただきたいと思います。

岡田政府参考人 現在、精神病床に入院しています患者は、平成二十三年度の患者調査で約三十万人でございますが、そのうち約一八%の約五万三千人が認知症でございます。

 また、精神科病院に入院せず、できるだけ地域で生活できる人を増加させる観点から、本年三月、精神科医療及び介護関係者で構成されました研究会を設置いたしまして、精神科病院に入院が必要な認知症の人の病態像の明確化であるとか、認知症の人の地域、在宅生活継続を可能とするための支援条件などについて現在検討を行っているところでございます。

 将来推計ということでございますが、認知症によります精神科病院への入院患者数につきましては、認知症の方の人数であるとか治療の進捗状況などで大きく変動するために、見通すことは困難だと考えているところでございます。

大西(健)委員 そういう状況の中で、お手元にもう一枚新聞の記事、毎日新聞の記事を配付させていただいたんですが、これは、国際医療福祉大学大学院の大熊由紀子教授の論説なんですけれども、「危うい認知症「強制入院」」という表題になっています。そこには、認知症になった場合に、おいやめいまでを含む親族の誰か一人でも同意すれば精神科の病院に入院させられてしまう可能性があるんじゃないかという懸念が示されております。

 その中で、この論説の最後の方を見ていただきたいんですけれども、五月二十八日の参議院厚生労働委員会、みんなの党の川田委員から、この改正案は精神科病院の経営安定のためのものではないか、そしてそこには日本精神科病院協会と与党との癒着の構造があるのではないかという指摘がありました。私も会議録を読ませていただきましたけれども、大臣も御答弁されています。

 実は、この川田委員が指摘をされている、ことし二月の日精協の協会誌の「巻頭言」に書かれた山崎会長の文章というのを私も読ませていただきました。皆さんのお手元に参考までに配らせていただきました。「正念場」という勇ましいタイトルの文章なんですけれども、一部を読み上げさせていただきたいと思います。

 「民主党政権下において、日本精神科病院協会は野党になった自由民主党の先生方と、「精神医療保健福祉を考える議員懇談会」を通して地道に精神科医療提供体制に関する議論を重ねてきた。今回、精神科医療について理解と見識を兼ね備えた先生方が、安倍内閣で重要な役職を務めることになった。」。

 そこから名前がいっぱい並んでいますからはしょりますけれども、田村大臣の名前、あるいは加藤官房副長官、鴨下国対委員長、福岡厚生労働部会長の名前が挙がっていて、そして、「これまでの日本精神科病院協会の歴史にないような豪華な顔ぶれが政府・自由民主党の要職に就任している。」「頼もしい限りである。」というふうに言われています。

 これをしっかり見ていただいて、もう一枚めくっていただきたいんです。

 次に、日本精神科病院政治連盟の平成二十一年度の収支報告書を抜粋として添付させていただいていますけれども、田村大臣の地元、自民党三重県第四区総支部、陣中見舞いで三百万、寄附で三十万、資金管理団体の憲政会にも三十万の寄附が行われています。これはほかにも、ここにもずっと、三百万、三百万、二百万、二百万と陣中見舞いで自民党の総支部に寄附が行われているんです。

 では、日精協はどのような主張をされてきているのかということについて、もう一枚めくっていただきますと、そこに、新幹線等のグリーン車に配布されている「WEDGE」という雑誌ですけれども、「「認知症の人を地域で」 厚労省が本腰 精神科病院の抵抗」という記事をお配りさせていただいています。

 ここで記事に印をつけておきましたけれども、左側の部分ですけれども、山崎会長は、「我々が主に診ているのは重度認知症患者。その実感からすると、できるだけ入院させないという方向性は、現場を知らない役人の絵空事に思える。」とおっしゃっています。

 そして、もう一つのところですけれども、「日精協は、長期高齢の在院者の「受け皿」として、精神科病床を介護老人保健施設に転換できるようにすべきと提案している。「老健への転換は看板の架け替えに過ぎない」と反対論が相次いだが、担当の精神・障害保健課が作成したとりまとめには反映されなかった。」というふうに書いてあります。

 さらに、この「WEDGE」は、地域で認知症高齢者を見ていこうという当時の藤田政務官らがまとめた報告書、これは画期的だと評価しているんですけれども、もう一枚めくっていただくと、これは日精協の渕野常務理事の書かれた文章なんです。後でじっくり読んでいただきたいんですけれども、線を一部引いておきました。「認知症の精神科病院はずし」と厳しく藤田政務官の報告書を批判しているんです。その次のところですけれども、「わが国の超高齢社会において最も重要な課題は認知症対策であり、大きな予算が介護系に動くことになる。」医療系の予算は減っていくんだ、医療系は圧縮されるけれども、「介護系の伸びは著しく、いまや九兆円に届く大産業である。」と書いている。

 これは、ちょっと言い方は悪いですけれども、介護はこれからもうかるんだ、そこにちゃんと精神科病院もかませろというような論調であって、私はこれを見たときにちょっと驚きました。

 そのきわめつけは、この論説の最後です。引いておきましたけれども、「報告書の施策を阻止するには、政権を変える以外に手段はなさそうである。」という一文で締めくくられている。

 厚生労働省のこれまでの立場というのは、私の理解では、認知症の人については、あくまで住みなれた地域で暮らし続けることを基本に置いて、社会的入院は減らしていくんだ、地域の支援、介護体制の強化に取り組んでいくんだという認知症施策推進五か年計画、オレンジプラン、これが厚労省の基本だと私は思っているんです。

 ですから、精神科病床を介護老人保健施設に転換するだけでは単なる看板のかけかえにすぎない、これは厚労省が目指している方向と私は違うと思います。

 そこで、ちょっと長々お話ししましたけれども、今までお話ししましたような与党と日精協の関係、あるいは日精協の主張を皆さんこれで御理解いただいたと思うんですけれども、これを踏まえた上で、政府は一体この三十五万床という今の精神科病床の現状をどうするつもりなのか、そのことを私はお聞きしたいと思います。

 資料の最後にグラフをつけておきましたけれども、人口千人当たりの精神科病床の諸外国との比較のグラフ、これを見れば、我が国がいかに異常な状況にあるのか、これはこれまでも繰り返し指摘をされているわけですけれども、一目瞭然なんです。

 そういう中で、私は、大臣にぜひ明確にお答えをいただきたいんです。先日の中根議員の質問に対しても、岡田部長は、一体この精神病床を厚労省として減らすのか減らさないのか、正面から答えないんですよ。ですから、大臣にぜひそこははっきり答えていただきたいんですけれども、そのときの御答弁でも大臣は、この法案というのは地域移行を進めるための法案なんだというふうに断言をされました。地域移行を進めれば、これは精神科病床が減らないとおかしいんです。

 ですから、私は、ぜひ大臣に、政治献金とか関係ない、日精協が何を言おうが、ちゃんと地域移行を進めて、認知症の人を精神科病院にばんばん入れるみたいなことはないんだ、精神科病床も減らすんだということをはっきりと言っていただきたいんですけれども、いかがでしょうか。

田村国務大臣 いろいろとおっしゃっていただきましたけれども、確かに勉強会をやっておりました。そこでは我々は、御承知のとおり、障害者自立支援法、名前は途中で変わりましたけれども、総合支援法をつくるときに、地域移行だという流れをつくった上での受け皿をつくろうという一つの流れ、これはもう委員も十分に御承知だと思います。日精協の先生方ともかなり激論をいたしました。

 しかし、地域移行ということは、これは今、もう紛れもない、動かざる方向性でありますから、それが変わるということはないわけであります。でありますから、今回のこの法律も、急性期に対して手厚い精神科医の配置、一方で、慢性期に関しましては、要するに、精神科病棟等で長く入院される方々に関しましては、これは精神科医の配置を薄くしながら、一方で精神保健福祉士の方々を手厚くして、退院に向けてのいろいろな準備でありますとか生活のいろいろな支援、こういうものを手厚くしていこう、つまり、急性期の方にもう完全にシフトしてきているわけであります。

 それは、言うなれば、今までの長期入院というような流れを、短期で、とにかく早く治療をして早く地域にお帰りをいただいて、そこで受け皿をつくって、その上において地域の中で精神疾患を治していただきながら生活をいただこうという流れであることは間違いないわけであります。

 では、一方で、精神科病床をそもそも減らす計画を出せというふうなお話でございましたけれども、私にいろいろなことを言われていますけれども、もともと民主党の中でこれはずっと議論をされてきた、そういう法律でございます。

 検討チームも……(発言する者あり)変わったのは、山井先生、いや、聞かれるから長くなっちゃうんですけれども、あえて申し上げれば、これは指定医一人という話だったんですよ。つまり、入院を決めるのは指定医一人でいい、そういう検討チームの答えだったんです。

 ところが、そうなれば、例えば、その精神科病院等々で非常によこしまな病院があれば、どんどん入れられてしまうわけですよ。これは、入った方々の権利擁護ということを考えればそれはやはり幾ら何でも問題があるのではないのかということで家族というものを入れたということなんです。(発言する者あり)

 代理人に関しては、おっしゃるとおりなんですが、報告書を読んでください。あの中で、代理人の設置主体は、いろいろあったでしょう、弁護士と言う方々もおられれば、ピアサポーターでいいじゃないか、家族だ、そして、その業務自体はどうなんだというのもばらばらで、なかなかこれだと固まらないということで、だからこそ、三年間の検討の中においていろいろな議論をしたいということでございました。

 でありますから、いろいろと議論を進めてくる中において、病床数というのは、実は民主党政権の中においても減らす目標というのは、数字を出されていないんです。それをそのまま我々は引き継いでこのような形で法案を出しました。

 ただ、一方で、御承知のとおりでありますけれども、例えば、一年未満入院者の平均退院率を七%相当分増加させる、これは全国平均で七一・二%から七六%ですよ。それから、入院期間が五年以上かつ六十五歳以上の退院者の数を二〇%増加させる、こういう目標は持っているんです。

 ということは、結果的には、これが進んでくれば当然のごとく入院患者は減ってくるわけでございまして、事実上、病床数は減るわけでございますから、先に病床数を減らしてもし地域の受け皿ができなかったら、これはもう路頭に迷わざるを得ないという問題が起こる。これは、アメリカでもいろいろな問題があったのは御承知だと思います。ですからこそ、このような形で、我々は、目標をこちらで持って、当然病床数がそれに合わせて減っていくというようなことを進めてまいるということでございます。

大西(健)委員 私は、一つ重要な答弁は、病床数は結果としては減る、これは重要な御答弁だと思います。さっきの「WEDGE」の記事の中にも、精神障害者の人権問題に詳しい弁護士さんは、受け皿がないから減らせないのだ、そういう現状を追認した現実論から入れば改革はできないと。世界じゅうでも、病床数を減らすということを先に出口として目標を立てて実際に減らしてきた国というのはあるわけですから、これはやはり、まあ、目標を立てろとは言いません、だけれども、結果として減らすんだ、結果として地域化が進めば減るんだということをお答えいただいたのは大きいと思います。

 横路委員は、午前中の質疑で、検討会の中で議論されていなかった家族の同意が突如として法案の中に入ってきたのは、これは政治マターじゃないかという話をされましたけれども、先ほど言いましたように、自民党の精神医療保健福祉を考える議員懇談会ですか、そこで大臣も勉強をしてきましたということをおっしゃっていましたけれども、そういう懇談会を通して精神科病院協会の意見が反映をされて、そこに名前を連ねている人たちにこういうお金がたくさん渡っていると。私が見た中では、一番大きいのだと、陣中見舞いで二千万ですよ、一人の議員さんに。

 二千万寄附をもらっている人がいますけれども、こういうことがあると、本当に公正な政治になっているのかということを皆さんが疑問に持たれるということを指摘させていただいて、質問を終わらせていただきます。

松本委員長 次に、山井和則君。

山井委員 二十分間、質問をさせていただきます。

 冒頭、五月二十四日の本委員会での私の不適切な発言に対して理事会で削除要求があり、私の発言についておわび申し上げ、議事録を削除させていただきます。

 私は、杉並区や南伊豆町を批判する意図はありませんでしたが、結果として不適切な発言になったことをおわび申し上げます。

 それでは、質問に移らせていただきますが、法案の前に、一つ、最近の重大な問題、年金のことを質問させていただきたいんです。

 GPIF、年金積立金管理運用独立行政法人で、株の運用を拡大されたと。それで、国内債券、国債を六七%から六〇%に下げて、国内の株式を一一%から一二%にふやされた、外国の債券と株式を一七%から二三%にふやしたと。この結果、例えば国内の株式への投資が一・一兆円ふえるということになったんですが、ちょっとこのことを冒頭に一つお聞きしたいんです。

 田村大臣、やはり年金というのは安定な運用が一番重要だと思うんですが、より安定な国債を減らして株をふやすということは、リスクが高くなると思うんです。今回のこの運用比率の変更によって、リスクは高まったんじゃないですか、いかがですか。

田村国務大臣 冒頭、先ほどの、ちょっと言いっ放しで終わられましたので、申しわけないんですけれども、今回のこの法律は、逆に精神科医療機関を、義務化で、外に、要するに、退院をさせて、患者の方々をしっかりと退院の中において、地域の中において生活をいただくということに対してのいろいろな義務づけをしているわけでありまして、全く言われていることが我々は理解しませんし、そういう要望を受けてこの法案の中身に反映したことは何らございません。それは、おつくりになられる過程をじっくりと、皆様方がつくってこられた中においてできてきた法律でございますから、そのことも十二分に御理解をいただいて御発言はしていただきたいというふうに思います。

 その上で、今のお話なんですが、国債自体は確かに比率が減りました。これは、しからばリスクは高まったのではないかというような今お話であったというふうに思うんですが、実のところ、国内債券並みのリスクと同じ水準のリスクで最も効果的な基本的なポートフォリオということで、今回このような形で出させていただきました。

 それはどういうことかといいますと、国債の比率が高い、当然、国債の値段が下がる可能性もあるわけです。そのときにはリスクが顕在化します。そのときに比較的反対に動くのがやはり株式でございまして、国債が下がったときには株式が上がる、株式が下がったときには国債が上がる、こういうようなリスクヘッジの構図がございます。

 でありますから、長期化した国債、長期物の国債が最近出ておる量が多いものでありますから、そういう中において、国債が長期化すればその分だけ国債のリスクが上がりますから、今回は、そのような意味からして、そのリスクヘッジという部分も含めて株式をふやした。

 結果的に、国内債券並みのリスクと同等程度のリスクという形にポートフォリオ上はなっておりますから、そういう意味では、決して、委員がおっしゃった意味ではないわけでございまして、リスクが上がったわけではございません。(発言する者あり)

山井委員 法案質疑に入りますのでこれ以上質問はしませんが、私は、今の田村大臣の答弁というのは極めて不誠実だと思います。債券と株とを比べたら株の方がリスクが高いのは、これは常識なんですね。同程度とおっしゃいますけれども、やはりリスクは高まっているんです。

 国民の大切な年金の保険料を、より株に投資して株価対策で使うということは、私も厚生労働大臣政務官をやっていましたから、その当時から議論はありました。そういう要望はたくさん来ていました。百兆円以上ある年金の運用資金を株に投資してもらったら株価が上がるんじゃないかという話はありました。ありましたけれども、やはり年金をそういうものにこれ以上使ってはならないということで、そこは抑えてきたんですね。

 私は、今回その禁じ手を使ってしまわれたのではないかと非常に心配しておりますが、これはまた改めて議論をしたいと思っております。

 それでは、配付資料一ページ目にもありますように、きょうの横路委員そして大西委員の中でもありますように、まず、精神病院、社会的入院というのが二七・六%。かつ、今認知症の方が非常にふえてきているんですね。合計八万人入院されておられて、一年未満が三・四万人、一年から五年未満が三・三万人、そして五年から十年未満が九千人。

 先ほどの大西委員の質問にもありましたように、私、実は、議員になる前までは高齢者福祉、特に認知症のケアの研究をしておりましたので、あえて申し上げたいんですが、認知症の高齢者にとってどの居場所が一番適切なのか。そういうことを考えたときに、もちろん、症状に応じてさまざまな議論はあると思います。もちろん、入院が必要な方もおられるでしょう。ただ、今も議論しましたように、ある程度治療が一段落をしているにもかかわらず、帰る場所がない、受け皿がない、そのことによって病院に長居をするということは、やはり問題だというふうに思います。

 そこで、田村大臣に認識をお聞きしたいんですが、今のような認識でよろしいですか。基本的に、治療が必要なときは病院だけれども、その認知症の治療が一段落すれば施設なり在宅に戻っていくのが基本だという認識でよろしいですか。

田村国務大臣 先ほど来お話がありますとおり、認知症患者で精神科病院に入院されておられる方々、約五万三千人ということで、全体の一八・二%ということであります。

 やはり早期診断、早期治療ということが大変重要でございますから、どうしても症状が重くなられて精神科病院等々に入らざるを得ないという方々がおられるのは事実でございます。しかし、それも、早期の治療をしてできる限りそれぞれ地域に戻っていただくというのがやはり前提であろうというふうに思います。

 ただ、一方で、迷惑行為等々を起こす可能性が高かったり、あと、どうしても退院が困難という方もおられるわけでございまして、そういう方々に対してしっかりとした治療というものをどう進めていくかというのは、やはり大きな課題であろうというふうに思っております。

山井委員 認知症高齢者については、例えばグループホーム、特別養護老人ホーム、老人保健施設等、さまざまな居場所があると思います。

 配付資料四ページを見ていただければと思います。

 それぞれの場合、利用者の自己負担がどれだけか、そして、医療や介護にかかっている費用はどれだけか、そのことについて、田村大臣から御答弁をお願いしたいと思います。

田村国務大臣 グループホームと老健施設、あと特養、精神科病院の認知症高齢者一人当たりの平均的な月当たりの自己負担額と入院総額ですね。

 自己負担額から申し上げると、グループホームが約十二万円、老人保健施設が、ユニット型個室の場合が約十三・二万円、多床室の場合が約八・二万円、特別養護老人ホームが、ユニット型個室の場合が約十三万円、多床室の場合が約七・九万円、精神科病院が約四・四万円でございます。

 それから、利用者負担も含めた介護もしくは入院費用額の平均的な月当たりの合計額でありますけれども、グループホームが約三十六・五万円、老人保健施設が、ユニット型個室の場合が約四十・四万円、多床室の場合が約三十五・三万円、特別養護老人ホームが、ユニット型個室の場合が約三十八・四万円、多床室の場合が約三十二・四万円、精神科病院が約四十三・八万円であります。

山井委員 さまざまな居場所がある中で、これだけかかっている費用が違うし、また自己負担が違うわけです。

 それで、配付資料にはつけておりませんが、例えば人員配置基準はどうなのかということですが、認知症対応のグループホームに関しては、日中は、介護職員、三対一以上、特別養護老人ホームは看護師さん、介護職員さんが三対一以上、老人保健施設は看護、介護職員さんが三対一以上、それに対して、認知症治療病棟入院の主な要件として、看護師さん二十対一、看護補助者二十五対一というふうになっていて、もちろん精神科病院の場合にはお医者さんがおられますから、お医者さんは病院常勤一名、医師四十八対一となっているわけです。

 これは当たり前の話ですけれども、医療は手厚い、しかし介護等ケアは薄いという特徴の違いがやはりあるわけですね。それと自己負担が違う。

 こういう中で、高齢者にとって一番適切な居場所はどこなのかということが、これからふえ行く認知症高齢者ケアにとって一番重要だと思いますし、一番適切な場所はどこなのかということと、もう一つは、横路委員、大西委員からも話があったように、本人の自己決定ですよね。本人は認知症でなかなか自己決定ができないわけですけれども、いかにそれをそんたくして、本人が望む、ついの住みかなのか、居場所を選ぶのかということになってくると思います。

 ここで、今回の法案、御本人の意思がなかなかはっきり示せないときにどうなっていくのかということなんですよね、入院のときだけでなくて退院のときにも。

 だから、田村大臣、今回の法案では、精神科病院に入院したとしましょう、それで、やはりずっといるわけにはいきませんから、ある程度の時期で退院をする、そのときに、誰がどういう形で判断をすることになりますか。

田村国務大臣 まず、認知症の方々が精神科病院に入院をされた場合に、そもそも、都道府県で医療計画というのを定めておりまして、その中で、例えば、認知症の方々がどれぐらいの期間入院するか、そういう目標値を定めております。

 一方で、委員、認知症、そもそもどういう状況で入院になるか。もちろん、医療行為が必要だからということで入院になるわけでありますが、そうはいっても、またこれは、認知症というのは加齢に伴う疾患でございますから、そういう意味からいたしますと、病態というもの、こういう病態ならば精神科病院に入院をする必要がある、そういうこともやはりある程度明らかにしていかなきゃいけないわけでありまして、そういう意味での研究会等々も今開催をいたしております。

 さらに、五カ年計画などで、退院後の受け入れ体制、これをやることによって、退院をしていただこうという環境整備をまずした上で、それならばどのような形で退院というものが決まっていくかということでありますけれども、一番は、やはり、その指定医の方々が症状を見て、これはもう退院をしてもいいというような形に診断をいただくという、この医学的な判断というものが、当然一義的に、退院をしていくための一つの大きな判断になってくるというふうに思います。

 それから、先ほど来の議論の中にもございますように、あとは退院請求ですね。本人や家族から退院請求が出てまいりますと、精神医療審査会の方から、請求者や病院の管理者等と、話をいろいろとお聞かせいただく。場合によっては指定医等々によりまして診察が行われた上で、その必要性というものを判断されるということでございます。

 いずれにいたしましても、退院ということになれば、それは生活環境相談員等々、そういうような形での退院のための準備を医療機関の方はしていかなければならないわけでありますし、一方で、地域援助事業者等々ともいろいろとアクセスをする中において、退院に向けての準備というものを進めていかなければならない。そして、その上で、退院後のことも含めて、チーム医療、いろいろな、多職種、協力をしながら、もちろん外来での医療というものも提供していただかなきゃならぬわけでありますし、それから、地域に出ていってアウトリーチということでございまして、訪問支援ということも含めて対応していくということになろうというふうに思います。

山井委員 どうしても、入院し続ける、あるいは、退院がなかなか困難だということになりかねないんじゃないかという危惧を私たちは持っているわけです。だからこそ、本人の代弁者、代理人をやはりつける必要があるということで、参議院で修正もさせていただきました。

 また、その前提となるのが受け皿だと思うんですね。きょうの配付資料にも入れましたけれども、一つは、やはり認知症高齢者のグループホーム、これがなかなかふえないわけですね。私も何冊かグループホームについての本を書きましたけれども。

 特にお聞きしたいのが、例えば、東京では特別養護老人ホームが足りない、だから、グループホームだったらまだ土地がそれほど要らないから建てやすいんじゃないかというけれども、都市部でもなかなかグループホームがふえないという問題点があるんですね。やはりここを、何とか特に都市部でグループホームがふえるような、そういう方策というのを考えていくべきじゃないかと思いますが、いかがですか。

田村国務大臣 認知症施策推進五か年計画の中において、この認知症のグループホームというものを整備していこうという計画を立てているのは、委員も御承知のとおりでございます。

 二十四年ですか、今現在、大体十七万人のグループホーム、枠があるわけでありますけれども、これを平成二十九年、二十五万人までふやしていこうということで、都道府県に基金をつくっていただきまして、ここに国からお金を入れながら、グループホームをつくっていただくに当たりまして、一事業所当たり三千万円ということで上限をつくって、今いろいろな助成をしておるわけであります。

 各自治体ではそれぞれいろいろな御努力をいただいておるわけでありまして、例えば、未利用の公有地の低額での貸し付けでありますとか、それから、先ほどの助成に対して上乗せをさらにしていただいている。東京都の場合は上乗せをさらに三千万だとか二千万していただいておるというような自治体もございます。そして、合築等々で、一階は例えばグループホームで、二階に他の施設を合築する、そういうような努力もしていただいておるところでございます。

 国は国として、グループホームの推進に向けていろいろな施策を進めてまいりますが、各自治体でもそれぞれ御努力をいただきながら、このグループホームというものをつくる中において、認知症の皆様方の受け皿になるべく、今いろいろと計画を進めていただいておるところでございます。

山井委員 精神病院の長期入院はよくないという問題で、何よりも受け皿がないと退院ができないわけで、逆に、受け皿があれば、もしかしたら入院する必要がない方も出てくるかもしれないわけですね。一つはグループホーム、もう一つは、この配付資料にも入れましたが、二十四時間体制のホームヘルプ。一日に何回かホームヘルパーさんが来てくださって、例えばデイサービス、毎日昼間預かってもらったら、ひとり暮らしで軽度の認知症の高齢者が在宅でやっていける可能性が出てくるんですね。実際、そういう事業もされているわけです。

 ここの資料を一つ一つ言いませんけれども、要介護二の認知症の高齢者、要介護三の認知症の高齢者、この方々は、在宅でホームヘルパーさんを一日三回、四回、五回受けながらデイサービスも利用して、こういうふうにして暮らしておられるわけです。

 ところが、この二十四時間のホームヘルプサービスがなかなかふえないんですね。ここにもありますように、本来だったら、平成二十四年度は百八十九の保険者で行われているはずなのが、まだ百二十しかふえていない。今年度、平成二十五年度は二百八十三保険者で一・二万人が利用する、そういう見通しになっていますけれども、このとおりきっちりふえるのか。

 この精神病院の問題というのは、単体の問題じゃなくて、受け皿をどう整備するかという選択肢をふやしていかないと、根本的に対応がなかなかできない。そういう意味では、二十四時間体制のホームヘルプというのはもしかしたら認知症に対しては余り効果はないんじゃないかと思っている人がおられるかもしれませんが、非常にやはり効果はあるんですね。入院をおくらせる、あるいは退院の受け皿となる。

 そういう意味で、この二十五年度、二百八十三の保険者、一・二万人、ちゃんとふやせるのか。今、予定よりもふえていないんですけれども、それに対する方策を田村大臣にお聞きしたいと思います。

田村国務大臣 認知症の皆様方は、早期発見していただいて早期治療を始めていただくということがまず大事だというふうに思います。その上で、重症化をしない。

 これはどうしても、認知症も、委員おっしゃられますけれども、グループホームというのは平均すると大体三前後、ちょっと手前ぐらいですかね、それぐらいの方々が入られていることが多いわけであります。重くなると、どうしても施設入所せざるを得ないという方々も出てくる。さらに重くなると、それこそ精神科病院に入らざるを得ないという方々も出てくるわけであります。

 そう考えたときに、認知症をお持ちの方々が地域で介護を受けながら生活するという意味では、この二十四時間の定期巡回・随時対応型のホームヘルプサービスというものは、今言われたとおり、定期的に巡回してきますから、その中において、生活のリズムという意味では、例えば排せつの介助であったりでありますとか、それからあと服薬の確認なんかは、きちっきちっと決まった時間にそういうような確認をすることによって生活のリズムがうまく生まれてくるわけでありまして、認知症を悪化させないという意味では、やはりそれなりの効果というものは認められているというふうに思います。

 その上で、現状、進んでおりません。今、進んできてはおるんですけれども、計画どおりにはいっていないんです。

 それは一つには、やはりしょっちゅうコールを呼ばれるんじゃないかだとか、夜中に呼ばれるんじゃないかだとか、そういうことを心配してなかなか事業者の方々も参入しづらいということがあるんですが、実態はそうではございませんでして、比較的、夜でありますとか、コールを呼ぶということはそれほど多いわけではございません。ですから、その部分をしっかりと事業者の方々にもお伝えさせていただきながら、この二十四時間サービスに参入をいただくということが一つ。

 それからもう一つは、やはりケアコール端末ですか、こういうものはお金がかかりますから、こういうものに対しての補助というものもやっておりますので、こういうことを引き続き御理解いただきながら、しっかりと事業者それからケアマネジャーの方々にも御理解をいただきながら、この事業を進めていくという中において、事業者の方々に対して我々もさらなるPRをしながら、この二十四時間型のサービスの普及に努めてまいりたいというふうに思っております。

山井委員 時間が来ましたので、残念ながらこれ以上質問はしませんが、今、田村大臣は大事なことをおっしゃった。グループホームは要介護三ぐらい、認知症で。もうちょっと重くなると施設に入って、もうちょっと重度になると精神科病院に入院しているのではないかと。

 問題はそこなんですよ。そうであればいいんです。でも、実際は、残念ながらそうじゃないんですよね。軽い人でも、面倒を見る人がいなかったら入院しているケースがあったり、重くても、いい介護のケアがあれば在宅で暮らせたりとか、さまざまなケースがあるんですが、問題なのはやはり、本人の状態というよりも、家族の経済状態とか家族の介護力とか、その地域にどれだけのサービスが受け皿としてあるとか、そういう外部的要因によって認知症の高齢者の居場所やターミナルというものが今決められてしまっているのではないかということが非常に深刻な問題であります。

 そういう意味では、今回のこの法案の中でも、もちろん、家族の都合、家族の言い分、医療的なニーズ、いろいろなものがありますけれども、やはり一番重要なのは本人の意思でありますから、代理人、代弁者というものをしっかりと認知症の高齢者につけていく、そういうことが必要だと思います。

 以上で終わります。

松本委員長 次に、河野正美君。

河野(正)委員 日本維新の会の河野正美でございます。

 今回、厚生労働委員会におきまして、一時間という長い質問時間をいただきました。関係の先生方に心より感謝申し上げます。

 と申しますのも、私、二十年来、福岡県で精神科の医師として、精神医療の充実に向け、地域で精神医療に取り組んでまいりました。

 よく三障害などということを言いまして、知的、身体と並んで精神障害が考えられてくるわけなんですが、昨日も参考人質疑であったと思いますけれども、精神障害はかなりおくれているというふうに感じております。そして、ほかの障害と比べて、精神障害の場合は病状が極めて動きやすいということで、現在進行形の部分もありますので、医療と福祉、両方の側面からしっかりと考えていかなければならない問題だというふうに認識いたしております。

 そういった立場から、今回議題となっております精神保健福祉法の一部改正案について、本法案につきましては、既に参議院におきましてもかなり多くの議論がなされていると思いますし、本日も数名の先生が出られておりますので、私は、まず、今日の我が国の精神科医療の課題と展望という面からお尋ねしていきたいと思っております。

 まず初めに、我が国の精神科医療の国際的な位置づけについて伺います。

 日本の精神病床の数や平均在院日数が諸外国に比べて高水準になっているのではないかという指摘がございます。つまり、簡単に言うと、ベッド数が多過ぎるんじゃないのか、あるいは、入院期間が諸外国に比べて長過ぎるんじゃないのかということでございます。精神病床へのいわゆる社会的入院の解消は非常に重要でありますけれども、精神病床や平均在院日数の定義が国によって異なるため、一概には比較できない面もあるんじゃないかと思っております。

 まずもって、国際比較における日本の精神病床の状況について、厚生労働省としてはどのように認識しているかを教えていただけますでしょうか。

岡田政府参考人 お答えします。

 二〇一二年のOECD報告によりますと、人口千人当たりの精神病床数は、日本を除くOECD平均で約〇・六床のところ、日本では二・七床、精神病床の平均在院日数は、日本を除くOECD平均で約三十七日のところ、日本では、病院報告によりますと二百九十八日でございます。

 ただし、先生御指摘のように、OECD報告では、国によって精神病床の定義が異なっており、また、精神科医療を取り巻く環境や提供体制が国ごとに大きく異なることから、統計結果のみをもって単純に比較することはできないのではないかと思いますが、日本の人口当たりの精神病床や平均在院日数は先進諸国に比べて高い水準であるというふうに考えているところでございます。

 しかし、精神科の救急の病棟に限ってみますと、平均在院日数は現在で約六十日という形になっておりまして、かなり短くなっているのではないかと考えております。

 今後とも、こうした急性期の治療をさらに充実させて、在院日数の一層の短縮化を図っていくことが重要だというふうに考えております。

 また、我が国において長期に精神病床に入院されている方の多くが、諸外国ではアウトリーチなどの入院外の医療や福祉サービスの対象になっていると考えられるために、日本においても、こうしたサービスをさらに充実させるとともに、退院促進を図っていくことが重要だというふうに考えているところでございます。

 今回の法改正によりまして、精神病床の機能分化や精神障害者のより早期の退院を促すことで、国際的な観点からも精神科医療体制の一層の充実を図っていきたいと考えているところでございます。

河野(正)委員 では、よろしくお願いいたします。

 一概には比較できないけれども、やはりだんだん下がってきてはいるけれども、まだまだということだと思います。

 これまでの審議では、保護者制度の廃止や医療保護入院の見直しといった論点が注目され、今回の法案に盛り込まれている精神障害者の医療の提供を確保するための指針について、余り議論されていないのではないかなと思っております。この指針が今後の精神科医療の改革のために非常に重要であると考えております。

 そこで、この指針の基本的な内容について確認をさせていただきたいと思います。

 今回の改正で、新たに精神障害者の医療の提供を確保するための指針を定めるということでございますが、この指針ではどのような内容を定め、また、どのように実行に移していくことを考えられているのでしょうか。多少詳しくお教えいただけますでしょうか。

岡田政府参考人 今回の改正では、厚生労働大臣は、精神障害者の障害の特性その他の心身の状態に応じた良質かつ適切な精神障害者の医療の提供体制を確保するための指針を定めなければならないということにしているところでございます。

 指針の中では、急性期に手厚い医療を提供するため医師、看護師などの配置の見直しを促すなど、精神病床の機能分化に関する事項、患者の地域生活を支援するためのアウトリーチ、訪問支援や訪問医療など、精神障害者の居宅などにおける保健医療サービスや福祉サービスの提供に関する事項、それから、患者の地域生活を支え、多様化するニーズに応えるため、精神障害者に医療を提供するに当たっての、医師、看護師、精神保健福祉士などの多職種の連携によるチーム医療に関する事項などを定めることを法律上予定しているところでございます。

 指針の具体的な内容につきましては、今後、関係者による議論の場を設けまして検討していくこととさせていただいているところでございます。指針で示された内容につきましては、実行可能なものから順次、財政面を含め具体的な措置を講じていきたいというふうに考えております。

河野(正)委員 今回この指針で定めることとしている精神病床の機能分化は極めて重要な問題でありますし、さらには、病院と診療所の役割の整理と、それを踏まえた連携の強化を進めていくことが精神科医療の改革、ひいては精神障害者が地域で暮らせるような社会につながっていくと考えております。

 さらに具体的な内容について、質問をしていきたいと思います。

 まず、全国の精神科医の数はどれぐらいでしょうか。そして、病院で働く精神科医と診療所で働く精神科医のそれぞれの数について教えていただきたいと思います。また、あわせて、そのうち精神保健指定医の数についてもお聞かせ願います。

岡田政府参考人 主たる診療科が精神科である医師数は、平成二十二年度で、全国で一万四千二百一人となっております。このうち、病院に勤務する精神科医は一万九百六十三人、診療所に勤務する精神科医は三千二百三十八人でございます。

 精神保健指定医の数でございますが、全体で一万三千三百七十四人でございますが、精神科病院の常勤の精神保健指定医は六千七百二十九人、精神科診療所などの常勤精神保健指定医は二千七百六十三人となっているところでございます。

河野(正)委員 ありがとうございます。

 実は、大学などの研究機関におられて臨床を離れておられるという指定医の先生方も少なくないと思っておりますので、かなり厳しい数なのではないかなと思っております。

 また、これはずっと後で触れていきますけれども、ちょっと話が脇道に入ってしまうんですけれども、精神保健指定医について、どのような資格なのか、私自身も指定医でございますので私はわかっているんですけれども、論点整理という意味も含めまして、改めて、どうした方が指定されるのか、それから、指定医の役割、職務、また、現在の指定医の指定率、合格率について、教えていただけますでしょうか。

岡田政府参考人 精神保健指定医は、精神保健福祉法によりますいろいろな、強制入院とかそういう手続を行う権限を持つ医師として厚生労働大臣が定めるものでございまして、精神保健指定医でございます。

 その主な内容は、措置入院や医療保護入院時の診察であるとか、精神科病院の入院患者に対する行動制限などの診察、それから、これは行政に御協力いただくということですが、精神科病院への立入検査での診察などを行っているところでございます。

 一定の経験を有しました方について指定を行っておりますが、精神保健指定医の申請に対する合格率は、最近では毎年約六割程度となっているところでございます。

河野(正)委員 今、触れられませんでしたけれども、指定医になるためには、一応、五年以上の臨床経験、そのうち三年以上の精神科臨床経験が要る。そういったことをクリアした医師がある程度専門教育を受けながら、今おっしゃったように六割程度しか合格しないということでございますので、非常にその点は、私自身も指定医の一人として、人権に配慮できる、しっかりと考慮された資格だと自負しております。

 ところで、診療所を開業される精神科医が増加傾向にあると思っております。

 私自身の経験からいたしましても、病院の勤務医というのは、精神科に限らないと思いますけれども、非常に多忙であると思っております。精神疾患の性質から、入院患者さんの診察や外来診察にほかの疾患以上に時間がかかりますし、極端な場合、患者さんの状態が悪いと、丸一日、一人の患者さんに要するという場合も決して珍しいことではございません。

 加えて、処遇のチェック等も必要ですし、精神保健指定医の資格を持っていれば、措置入院する患者さんの診察を行うために外に出かけていったり、あるいは警察の保護房のところで診察したりとか、そういうこともございますし、また、この法案で議論になっていますけれども、第三者機関である精神医療審査会の構成員として、退院請求があったりした場合に、精神障害者の意見聴取、診察を行っていくということで、よその病院に赴くということもやっております。

 私は、実は、十数年福岡県の方で精神医療審査会の委員もやっておりましたけれども、福岡県の場合、県に加えて政令指定都市がございますので、福岡県と福岡市と北九州市という三つの合議体があるということで、なかなかなり手もいないし、かなり大変な仕事でした。

 毎月五十枚以上の医療保護入院に関する書類審査、これは自分の部屋ででもできる、あるいは、なくすといけないので非常に緊張するんですけれども、家に持って帰ってやるということもでき得るわけなんですけれども、やはり退院請求になると、県下の各病院、かなり遠方まで、特に、近くの病院だと知っている患者さんがいたりいろいろなことがあるからということで、逆に相互乗り入れで遠いところの病院に行かなければならない。こういったぐあいに、みなし公務員的な業務がたくさんあり、さらに、自分のところの病院に戻ってくると自分の患者さんを診なければいけないというようなことがあります。

 今回の法改正で、さらに指定医の負うところというのが大きくなるかと思いますが、この点、後ほどもお尋ねしますが、こういったことから、忙しく動き回る病院での仕事ではなくて、診療所を開業することをやはり多くの精神科の先生方が考える傾向になってきてしまっているのかなと思っております。

 それと、九時―五時などという言い方をする方もいらっしゃるんですけれども、午前九時から午後五時まで診療を行い、それが終わった後は電話も留守番電話に切りかえてしまう。そうなると、精神科の患者さんというのは、不眠とか不安ということで、大体、夜に不調を訴える方がいらっしゃいますので、クリニック、診療所に電話をかけても出ないということであると、電話帳を見たりホームページを見たりして、また病院の方に相談をかけてくるということで、病院は二十四時間医師がおりますから、結局、また病院の方が激しい仕事になってくるということで、勤務医がどんどん疲れ果てて、では自分で開業しようかということになってきております。

 地域医療計画等でベッドというのは制限されているのに対し、診療所というのは自由に開業できるという状態にあります。弁護士さんであれば弁護士会に入らなければいけない、あるいは社会保険労務士とか司法書士とか、そういう方もそうだと聞いておりますけれども、医師は医師会に入るということは義務づけられておりませんので、必ずしも入っていないということから、全く自由に開業できる状況にあると思います。

 病院医療に疲弊して開業していく、この流れもきちんと考えていかなければならないのではないでしょうか。病院の勤務医の働きを正当に評価して、このような流れを早急に食いとめることが必要だと考えております。

 この点、病院医療が危ないという課題につきまして、自由開業制とあわせて非常に難しい問題かと思いますけれども、国としての考えをお聞かせ願えますでしょうか。

岡田政府参考人 精神科の診療所がふえるということにつきましては、一方で、これまで受診しづらかった精神科医療へのアクセスが高まるという側面があると思います。そういう意味では、早期治療が進むというメリットがある一方、やはり先生御指摘のように、病院での急性期に携わる人材が不足しているということが非常に大きな問題だというふうに考えているところでございます。

 しかし、診療所の開業規制につきましては、診療所は、医療法に基づきまして、都道府県などへの届け出で開業ができるということになっておりまして、開業の制限は、憲法が保障する職業選択の自由などの問題があることから、非常に難しい問題だというふうに思っているところでございます。

 このため、精神科診療所の精神保健指定医にも精神科救急などに御参画いただくなどして、精神科病院と診療所が連携して精神障害者の地域生活を支えていく必要があるというふうに考えています。

 例えば、精神保健福祉法は二十四年四月に一部改正を行いましたけれども、その段階で、精神保健指定医に対しまして措置入院の診察などの職務を義務づけるとともに、救急医療体制の整備のために、都道府県知事は精神保健指定医に対して必要な協力を求めることができるような規定を設けたところでございます。

 また、診療報酬におきましても、平成二十四年度の改定におきまして、精神科診療所などの精神保健指定医が救急医療機関での外来や当直を行った場合などの評価の引き上げ、精神科診療所などに勤務する精神保健指定医が精神科救急医療へかかわるように促しているところでございまして、引き続き、精神科診療所の精神保健指定医の方々にも御協力いただきながら、良質な精神科医療の確保に努めてまいりたいというふうに考えているところでございます。

河野(正)委員 診療所の先生方は一国一城のあるじでございますので、なかなか、昼間に城をあけて外に出ていくというのは極めて難しいかなと。精神医療審査会等はどうしても昼間行われておりますので、かなり厳しい状況かなと思います。

 ほかにも、措置診察など、院外でやらなければならない指定医の業務も多いわけですから、いわゆるみなし公務員的な業務に診療所の先生方も何らかの協力をしていただけるように、今おっしゃったように、これは国が音頭をとっていただかないとなかなかできないと思いますので、そういったことで、さらに進めて検討していただきたいと思います。

 また、かつての、長期療養を前提とした精神科医療というのは変わりつつありまして、かなり治療も進んでいると思います。私は父親も精神科医だったんですけれども、昔は精神科病院で人生を終えてしまうという方も多くおられまして、いかに病院で楽しく過ごしていただくかというような配慮をして、そういったことを主眼に病院運営をしていたのかなと思います。極めて残念な言葉ですけれども、ついの住みかということも考えられていたのではないかなと思います。

 ただ、しかし、ここ十数年、多分二〇〇〇年ごろのように記憶しているんですけれども、新しい薬がたくさん出てまいりました。そして、多職種による退院前指導、退院前から指導していくとか、あるいは訪問看護などという考えも浸透してきまして、早期に治療を開始すれば、劇的と思えるぐらい早く退院できるようになりました。事実、現在では、三カ月以内に六割の方、一年以内に九割の方が退院されています。ただ、今もって、残念ながら一割程度の方が一年以上の入院になっているというわけですから、実は、現在の精神科病院の長期入院については、ニューロングステイとオールドロングステイという言葉で分けて検討していかなければならない問題だと思っております。

 話を戻しますが、入院期間が長引けば長引くほど、家族と離れ、社会生活から離れる期間が長くなるということで、生活能力がどんどん低下していって、さらに退院が難しくなってしまうという状況がございます。ほかにも、例えば生活保護を受けておられる単身の患者さんであれば、入院が長期化すれば、家賃を払った上で入院費も払っているということで、アパートを解約してくださいということを言われますので、そうなると、ようやく病気が治っても、退院前に家探しから始めていかなければならないという、非常に大きな問題がございます。

 我々医師の立場からすると、こういった状況にならないためにも、患者さんには一日でも早く退院していただきたい、そういうふうに思って治療をしているというふうに思っております。そういった意味で、医師の数が不足している中ではありますが、先ほどからお話がありますように、病院での急性期の医療に手厚い医療資源を投入して誘導していっていただくことが重要なんだろうと考えております。

 一方で、精神科病院の長期入院患者の中には、症状はある程度落ちついているものの、生活のほぼ全てを介助されなければ生活することができないことから、地域生活への移行に関する支援を多く必要とする患者さんがたくさんいらっしゃいます。最近の国の考え方としては、どうも、急性期は重視するけれども、慢性期を、まあ、軽視するとまで言っていいかどうかわかりませんけれども、余り慢性期を大切に考えられているとは考えにくい風潮に、ちょっとややこしいですけれども、思っております。

 精神科医師の数に限りがある中で、医療資源を効率的に生かしつつ、新たな入院患者の早期退院を促進し、さらにこうした長期入院患者さんの退院を進めていくということが必要でありますので、そのためには、精神科医等を集中させるべき部分と、地域復帰への支援を充実させる部分とに、めり張りをつけていくべきではないかなというふうに考えております。このような精神病床の機能分化を進めていくためには、かけ声ではなく、経済的なインセンティブをつけることにより、政策的な誘導を図っていくことが必要と考えています。

 具体的には、急性期病棟に医師を手厚く配置した場合や、長期入院者につきましては医師の配置を現在より少なくする一方、地域復帰を支援する職員を手厚く配置する、そういった場合には、きちんとその面も診療報酬で評価していただくということが必要だろうと思います。例えば十六対一という、一般病院であれば十六対一なんですが、三十二対一であるとか四十八対一、六十対一、あるいは九十六対一など、多様な選択肢があってもいいんじゃないかなというふうに言われる意見があると思いますけれども、現時点で、大臣の考え方はいかがでしょうか。

田村国務大臣 今委員おっしゃられましたとおり、新規に入院される方々は、一年未満の方々が九割ぐらいということでありまして、そういう意味からいたしますと、新規の方々は本当に早く最近は地域にお戻りになられておられるというところがあるわけでありますが、一方で、二十万人が長期的な入院でございますから、そこのところにどうやって医療人材の配分をするかということが大変大きな課題であります。

 おっしゃったとおり、急性期のところはしっかりと医師を多目に配置して、しっかり治療をしていただく。一方で、長期になられておられる方々に関しては、医師は薄くしながら、一方で、生活の支援でありますとか退院に向かっての支援、こういうものをやっていかなきゃならぬわけでありまして、PSWの方々等々を厚く配置するということを考えるというのは、これは私も一番適切ではないのかなというふうに思います。

 とはいいながら、そうなるかどうかというのは、やはりこれは診療報酬との絡みが出てくるわけでございまして、この法律がまず成立することが前提でありますけれども、成立をさせていただいた暁には、中医協の皆様方とともに、そこら辺の議論をしっかりとしていかなければならないというふうに思っております。

 いずれにいたしましても、本当に限られた人材といいますか人的な資源の中において、いかに効率よく、早く退院する方は退院していただく、そして長期の方々もなるべく地域に戻っていただけるような、そういう体制を組むかということが大変重要でございますので、委員の今いろいろといただきました御意見を参考にさせていただきながら、これから医療施策を進めてまいりたいというふうに思っております。

河野(正)委員 ありがとうございました。

 かつてから、この委員会でも話は出たと思います、精神科特例というものがありまして、医師も看護師も少なくていいんだ、そのかわりに診療報酬も低いですよという考え方があったと思います。今後、医師も十六対一など一般診療科並みにするのであれば、やはり経済的に十分評価しないと、当然人件費でパンクしてしまって、病院医療崩壊ということになってしまうと思います。その分、やはり先ほど大臣もおっしゃったように、人的資源、医療費にも限りがあると思いますので、この点は、九十六対一なども検討していかなければならないのかな、そういう時期に来ているのかなと思っております。

 ただ、医療従事者を少なくすると、これは医療保険じゃなくて介護保険になるべきじゃないのかなと。介護保険であれば介護保険で、ちょっとまたお財布が違うことになるので、非常に厳しい問題かなということで、いろいろこれは本当に難しい問題を含んでいると思いますけれども、その点、いかがでしょうか。もしよろしければ。

田村国務大臣 医療を提供いただいている限りは医療保険であろうなというふうに思います。

 これが介護か医療かというのは、なかなか難しいところでありますけれども、やはり疾患という中において治療を行っているということでございまして、治療が済めば、一定程度まで症状が改善されればこれは退院ということになろうと思いますので、やはりこれは医療保険の中で見ていく方が適当ではないのかなと、私が勝手にここで決めるわけにはいかないわけでありますけれども、私の認識といたしましては、そういう認識を持たせていただいております。

河野(正)委員 ありがとうございます。

 我々も医師ですので、医療をやっているというつもりなんですけれども、だんだんそういうふうに、資源の配分の問題で、手厚くする部分は医療だけれども、薄くなっていくと、介護と余り変わらないんじゃないのかと言われる面もあるかなと思いましたので、非常に貴重な御意見をいただきました。

 外来に移行させよう、地域で見ていこうというのが今までの体制でございますが、一方で、一人でアパート暮らしをするより、二十四時間、看護師さんやお医者さんがいる病院の方が安心だという御家族や患者さんの声があるというのも、ある意味、残念ながら事実でございます。いずれにせよ、入院医療を希望される方も、地域社会の中で通院医療を選ばれる方も、その患者さんにとって最善の医療が受けられるように選択肢を豊かにしていくことが重要であるというふうに考えております。

 長期入院患者を中心とした精神障害者が一日も早く地域に移行し、社会の中で生活していくためには、医師、看護師はもちろんのこと、退院に向けた相談支援を行う精神保健福祉士や生活能力を向上させる作業療法士といった多職種も、これからは重要な役割を果たしていっていただかなければならないと思っております。

 精神保健福祉士や作業療法士など多職種のチーム医療や退院支援等の取り組みについても診療報酬上適切に評価していくべきではないかと考えますけれども、この点も大臣のお考えをお聞かせいただきたいと思います。

田村国務大臣 医療機関内でのチーム医療という形で、病院の中での退院に向かっての支援、こういうこと、それから、当然のごとく、チーム医療ということで、病院内でのいろいろな支援ということも含めて、大変重要なことであろうというふうに考えております。

 その中で、平成二十四年度の改定で、これは退所、退院された後でありますけれども、訪問看護ステーションからナースが補助者という形でついていきましたときに、これに関しての評価というものをつけたわけでございますし、一方で、退院したときのサービス計画等々をつくっていかなきゃならないわけでございまして、こういうものに対して、それぞれの専門職種の方々がチームでいろいろな計画をおつくりいただくという中において、これもまた診療報酬の中で一定の評価をさせていただいた次第であります。

 いずれにいたしましても、これからこのチーム医療というものは、今回、指針の中にも書き込ませていただいておるわけでございまして、診療報酬上、これはある程度の誘導をしていかなきゃならぬ話でございますから、しっかり評価をいただけるような、そんなことも含めて、中医協等々で御議論をいただきたいというふうに思っております。

河野(正)委員 今おっしゃいましたように、近年、どの診療科においてもチーム医療という言葉はいろいろ議論されていくところでありますけれども、特に精神科におきましてはチーム医療という考え方が極めて重要であるというふうに思っております。また、多職種による退院支援を十分に評価していかなければいけないと思っております。

 反面、残念ながら、地域によっては、医療従事者が極めて少ない地方というのがあります。地域偏在性、その辺も十分考慮して、○○職というか、精神保健福祉士とか心理士あるいは作業療法士を何人以上などと最低基準を決めて考えるのではなくて、加算的に、いればその分は評価しますよというような形で、しっかりやっているところを評価するということが、やはり地域の偏在を考えると大切なのではないかなと思っております。

 この点、いかがでしょうか、厚生労働省として。

岡田政府参考人 今回の法律で、厚生労働大臣が定める指針の中で、そういったチーム医療をどうしていくかということについても御議論いただきたいというふうに思っております。

 診療報酬上の評価につきましては、これは中央社会保険医療協議会で御議論いただくことが必要ですので、そういうことも踏まえて、よく検討していきたいというふうに思っております。

河野(正)委員 ありがとうございました。

 一応そういう考え方が、地域偏在ということを考えると大切なのかなと思っております。

 ところで、本法案でもそうでございますけれども、精神保健福祉士というのが極めて重要な任務を担ってくることになります。海外では、極めて大きな職責を担っている国もあると思います。我が国の精神保健福祉士は、養成校に一年間通えば国家試験を受けることが可能であり、それで合格すれば精神保健福祉士ということで活動ができるわけなんです。若干これは短いかなという印象も受けるんですけれども、海外と比べまして、養成システムや職責でどのように違いがあるのか。単純に精神保健福祉士を海外とイコールで比べるのは難しいかと思うんですけれども、そのカリキュラムとか、日本、欧米諸国でどのような差があるのか、もし把握されていましたら、わかる範囲でお教えいただけますでしょうか。

岡田政府参考人 米国、英国のソーシャルワーカーは、保健医療福祉全般を対象にしたものだというふうに承知しています。精神保健福祉に特化したものではなく、資格取得後にみずから専門性を高めていく仕組みになっているというふうに承知しております。

 その養成課程におきましても、精神保健福祉分野は一般のソーシャルワーカーの養成課程に包括され、実習の分野として精神保健福祉を選択する形態となっているというふうに聞いているところでございます。

 一方、我が国は、精神保健福祉士は、精神保健福祉に特化した資格を当初から取得するというようなものでありまして、そういうところの違いがあろうかと思います。

 それから、米国や英国のソーシャルワーカーの養成課程のカリキュラムの詳細につきまして承知しているわけではございませんが、一般論として言えば、米国や英国のカリキュラムは広く一般的な保健医療を対象としており、我が国のカリキュラムは、より精神保健福祉に特化したものとなっているというふうに言えるのではないかというふうに考えております。

 なお、我が国の精神保健福祉士の養成につきましては、平成二十四年度から、精神障害者の地域移行と地域定着を支援する役割に関する知識及び技術を重点的に修得ができるように、教育内容の充実を図っているところでございます。さらに、実践力の高い精神保健福祉士の養成を目指す観点から、実習・演習時間の時間数を拡充するなど、カリキュラムの見直しを行ったところでございまして、引き続き、精神保健福祉士の質の向上に努めてまいりたいというふうに考えているところでございます。

河野(正)委員 ありがとうございました。

 先ほど来、認知症の患者さんの症状がよくなったら、どこで精神科から外に出ていただくんだという話もありましたけれども、アメリカとかに行きますと、かなりそういうのに精神保健福祉士が関与していて、医師とかなりディスカッションしたりとかしている場面もあると思いますので、そういった意味で、やはり、精神保健福祉士の専門性をもっと高めていって、活用して、というか頑張っていただくというのも一つの、今後、認知症などにおいてもいい考えなのかなと思っております。

 ここまで、主に入院医療について質問してまいりましたけれども、精神障害者が地域で安心して生活していくためには、地域の精神科医療体制の充実が必要であると考えております。

 そもそも、我が国は精神科入院費が非常に低額だったということもありまして、実は、外に出て、アパートに住んでいただいて、通院していただいて、いろいろなことをやってお薬を投与したりしていくと、かなりの高額になってしまうわけです。ですから、そういった意味もあって、病院医療が低額であったから、そういう地域の仕組みが貧弱なまま来てしまっているのかなということも、残念ながら思っているところなんです。

 そういった意味で、これからは、なるべく患者さんも地域に出ていっていただく、そして、治療中断によって再入院するといったことや、長期入院後退院した患者さんが地域に戻った後、不安定となってすぐ再入院するということを防いでいかなければならないというふうに考えております。

 精神症状というのは、再燃するたびごとに生活能力が、生活技能がどんどん低下していきますから、一回再発して入院すれば、前にできていたことができなくなる、さらに入院してしまうとまたできなくなるということで、例えば、今まではバスにちゃんと切符を買って乗れていたのが乗れなくなってしまうとか、そういう技能低下を来してしまうと思いますので、そういった観点から、やはり再発させないようにしっかり見ていかなければいけないというふうに思っております。

 その点、医療側から患者さんに働きかけていくことというのが効果的だと思っております。そのために、現在、厚生労働省で、モデル事業として、アウトリーチ推進事業を補助事業として実施すると聞いております。

 このアウトリーチ推進事業ですけれども、これを全国展開する必要があるのではないかなと考えます。アウトリーチで行っている多職種チームによるかかわりや、患者さんとの関係づくりのために、入院中からアウトリーチチームの介入といった点を診療報酬等で評価していくべきと考えておりますが、この点、大臣のお考えはいかがでしょうか。

田村国務大臣 今委員がおっしゃられましたとおり、地域にお帰りになられて、その後、医療とアクセスができないということになった結果、より症状が悪化して、その後また入院、そのときにはさらに症状が悪くなっているというようなことが起こっては、何のために退院いただいたかわからないわけでありまして、先ほど来お話をさせていただいておりますけれども、入院中からいろいろなサービスの計画を立てながら、一方で、外来でという意味では、ちゃんとした外来の対応もしていかなきゃならぬわけでありますけれども、訪問支援という形、まさにアウトリーチという形で、しっかり多職種の方々が、専門職の方々が協力しながら対応をしていく、つまり、こちらから出張っていってしっかり対応していくような、そういうツールもちゃんと整備していかなきゃいけないわけでございます。

 そのような意味で、平成二十三年度から、医師や看護師や精神保健福祉士等々で精神障害者アウトリーチ推進事業を進めてまいっております。二十五年度は六・八億円でございまして、二十四自治体、三十七機関で実施ということを予定いたしておるわけであります。

 全国展開といいますか、これはモデル事業でございますから、これをもとに、どのような部分にこれから気をつけていかなきゃいけないか、どのような部分はどのような形で対応をふやしていかなきゃいけないかとか、いろいろなことを検証させていただきながら、この法律が通りましたら、次の診療報酬改定に向かって、アウトリーチに対しての一定の評価等々も含めて、御議論をいただきながら、このアウトリーチというものが全国展開できるような形で進めてまいりたいというふうに思っております。

河野(正)委員 ありがとうございます。

 モデル事業、補助金は出すけれども、かなりハードルが高かったような気がして、なかなかなり手がなかったんじゃないのかなと思っております。

 また、ちょっと話はかわりますけれども、近年では、地域での精神科医療に対して、特に依存症や摂食障害、高齢化に伴う身体合併症への対応など、精神科に対して多様なニーズへの対応に期待が寄せられております。しかし、適切な医療を提供できる体制整備がなされておらず、また、対応できる専門医療機関が限られているのが現状です。

 きのう、実は法務委員会の方に伺って質問させていただいて、薬物事犯の方を刑の一部執行猶予等で外に出しますという話だったんです。その際に、きちんと薬物依存症の教育などを受けられるように命令等をすることができるということだったんですけれども、では、実際、そのプログラムを受けろと言うなら、そういうプログラムをやっている病院がどれだけあるんですかという話をしましたら、僕もびっくりしちゃったんですけれども、病院、医療機関は二十三、そして公的な精神保健福祉センターでそういうプログラムをやっているところは七つしかない。全国で合わせて三十しかないということで、国がそういうふうに、外に出た後しっかり命令しますよと言っていながら、受け入れ体制は全くないと言うに等しい状況だったので、その辺、きちんと考えていただかなければならないのかなと思います。

 地域での精神科医療への多様化するニーズに対応できるべく、特に依存症や摂食障害、身体合併症への対策を進めていくべきと考えておりますが、厚生労働省としてのお考えをお聞かせください。

丸川大臣政務官 大変重要な御指摘をいただきまして、まさに地域で精神科医療を進めておられる中で、そうした多様なニーズへのサポートが少ないということを実感されての御質問であろうかと思います。

 厚生労働省としても、専門的な医療機関をどうやって確保していくのかということ、そしてまたその関係機関同士の連携をどのように強化していくのかということは非常に重要な問題だという認識を持っております。

 今御指摘いただいた依存症についての対策ですけれども、ことしの三月に、医療関係者や当事者などから成る検討会を開催して、報告書が出ました。この報告書の中では、まず、必要な医療を受けられる体制の整備として、依存症治療拠点機関というものを設置するということであるとか、あるいは医療機関と行政とそして自助団体、NPO等でございますけれども、こうしたものの連携体制の整備ということについての御提言をいただきました。今後、この提言を踏まえて、この対策を具体的にさらに進めてまいりたいと考えております。

 また、摂食障害の方につきましては、これまでも、精神科のお医者様等を対象にした、摂食障害の正しい知識や治療についての研修等を行っておりますけれども、今後、摂食障害に関する治療内容の標準化、また、治療拠点となる専門的な医療機関の整備の必要性について検討していくことが課題であるというふうに考えております。

 さらに、身体合併症への対応でございますけれども、精神科医療機関と身体疾患に対応できる医療機関の連携などによって、全圏域で、身体疾患を合併する精神疾患の患者さんを二十四時間三百六十五日対応できるような受け入れ体制の確保を目指して、財政面を含めた支援を行っておりまして、平成二十五年度には精神科救急医療体制整備事業という、全体で二十億円の予算をつけさせていただいております。

 そして、今回の法改正で新たに精神障害者の医療に関する指針を策定するわけでございますが、この具体化に当たっては、こうした多様なニーズに対応することも非常に重要だというふうに考えておりますので、この議論を踏まえながら必要な対応についてきちっと検討してまいりたいと思っております。

河野(正)委員 ありがとうございます。

 法律に書くのは簡単なんですけれども、しっかりそういった整備ができなければいけないと思っておりますので、ぜひよろしくお願いいたします。

 現在の精神科医療の問題は、患者さん側のニーズと供給側の体制が合致していないことが一番問題ではないかと思っております。今回新たに設ける指針を通して、限りある医療資源の中でその需給を合致させて、めり張りのある精神科医療体制を構築し、精神障害者が地域で安心して暮らしていける社会がつくられていくことを望んでおります。

 これまで、精神科医療の日本の全体像について大体お聞きしてきたんですけれども、ここから、少し踏み込んで、今回の法案についてお話をさせていただきたいと思います。

 まず、これは議論されたかもしれませんけれども、そもそも保護者制度の廃止ということで検討されてきましたが、歴史的背景として、なぜ保護者制度廃止に向かったのか、教えていただけますでしょうか。

岡田政府参考人 保護者制度は、明治三十三年に制定されました精神病者監護法におきます監護義務者に端を発する制度でございます。精神障害者に必要な医療を受けさせ、財産上の保護を行うなどの義務を家族の一人が担うように、精神保健福祉法に特別に設けられたものでございます。

 しかし、保護者制度につきましては、保護者である一人の家族のみが、法律上保護者に課されたさまざまの義務を負うことは負担が大きいのではないか、それから、本人と家族との関係がさまざまである中で、保護者である家族が必ずしも本人の利益保護を行えるとは限らないのではないか、保護者制度が創設された当時と比較して、精神医療体制であるとか、障害者総合支援法によります福祉サービス、成年後見制度などが整備され、また、高齢化の進展などにより家族の状況も大きく変化していることから、このような社会経済の変化に対応した制度とすべきではないかなどの問題点が指摘されまして、特に精神障害当事者や家族などから長く見直しが求められたことを踏まえまして、今回、制度を廃止することとさせていただいたところでございます。

河野(正)委員 保護者制度が廃止になりますと、医療保護入院に際しまして、今までの保護者というのが、家族のいずれの同意でもよくなってくるんだろうと思います。

 これは、実は、夜間など緊急で訪れた場合に、結婚されている方であれば配偶者の同意が必要ということで、遠方に出張されていたりすることもありますから、なかなかそれが、帰ってきていただいて同意書をいただくということで、それまで入院手続ができないということで、外来で待っていただいていたりという、非常に、患者さんに対しても申しわけないような対応をせざるを得ないところがあったわけなんですけれども、その点で、どなたか御家族の方が責任を持って同意してくださればいいということであれば、非常にその辺、患者さんも外来でずっと待っておくのはきついですので、その点はいいのかなと思っております。

 ただ、今まで、入院時の診察の見立てとかについては、連れてきた方に御説明すればいいわけなんですけれども、その後、病状が入院してしばらくしてよくなったときに、どういうふうなアプローチをしていったらいいのか。

 あるいは、これはちょっと下世話な話になってきます、治療費の請求先とかいうのが、そもそも患者さんは病気じゃないと思っているわけですから、治療を受けたくないということですので、では、どこに請求したらいいのか。今までは、保護者の方に請求する、スムーズに、大体、書いていただいた方になっていたわけですが、これは、精神科病院の現場で、特に医者というより、医事課、事務の方とか混乱しかねないと思うんですけれども、その辺の見解というのはいかがでしょうか。

岡田政府参考人 現行の保護者制度のもとにおきましても、医療保護入院におきます経費は、一般の入院と同様に本人が負担し、本人が負担できない場合などには扶養義務者が負担するということになっており、この点は改正後も変わらない取り扱いでございます。

河野(正)委員 実際、でも、本人が病気じゃないと言っている非自発的入院なので、その方に支払いを求めるというのは非常に厳しい状況なのかなと思っております。

 それで、誰でも同意ができるということになれば、では、どこに。実は、そもそも保護者になったからその方に払ってくださいという義務はないんですけれども、実際は大体そういうふうに常態化していましたので、その辺、やはり医事課の事務の方は大変な思いをされるんじゃないかなと思います。

 そういった意味から、実は、諸外国ではそもそも、強制入院、いわゆる非自発的な入院をする場合は公費負担をされているのではないかなと思っております。

 この法案が検討された当初ですけれども、保護者制度廃止あるいは障害者権利条約批准のためにそういう非自発的入院をなくそうというような勢いで、民主党政権下でいろいろ考えられていたのかなと思っておりますけれども、そういう場合は、やはり非自発的入院は全て公費で面倒を見ていく、きちんと国が責任を持って支払いまでやるんだというような考え方というのは、やはり我が国としては厳しいのでしょうか。御見解、もしよろしければお願いします。

岡田政府参考人 本人の意思によらない入院の一つの形態であります措置入院につきましては、先生御承知のとおり、自傷他害のおそれがある方について、精神保健指定医二名の判断によって、都道府県が行政処分として入院の措置を行うものでありまして、その費用につきましては、基本的に都道府県と国が負担する仕組みになっているところでございます。

 一方、自傷他害のおそれがあるまでに至らない医療保護入院は行政処分ではございませんので、精神障害者の医療及び保護の必要のある場合に、精神保健指定医の判断と、家族などのうちいずれかの者の同意を要件として、契約に基づいて入院を行うものであります。このため、その費用につきましては、一般の医療と同様に、医療保険及び本人の負担によってお支払いいただくこととしているところでございます。

河野(正)委員 多分そういう厳しい状況じゃないのかなとは思っておりました。

 ところで、きのうも、大阪府立精神医療センターの籠本院長に参考人としてお越しいただきまして、非常に貴重なお話もいただいたんですけれども、まず、入院に連れてきた御家族の方と、あるいは別の御家族の方が来て退院させろということで混乱した場合、やはり病院の現場が非常に混乱してしまう。それは、多い例ではなくて非常に極めてレアケースであるとは思うんですけれども、財産などが絡んできて、どうしてもそういう、家族間で、同意者あるいは同意者でない家族の方で紛争が起き、病院が巻き込まれるというようなことが考えられると思います。

 今回の法案では、そういった場合は精神医療審査会に委ねていきましょうということだと思うんですけれども、先ほどもお話ししましたように、精神医療審査会というのはかなりオーバーワークな状態なんですけれども、この点はどのように認識されていますでしょうか。

岡田政府参考人 精神医療審査会は、都道府県または指定都市に設置されております。全国で六十七カ所ございまして、各審査会にはそれぞれ一から八つの合議体が設けられて審査に当たっていただいているところでございます。各合議体の開催回数は平均で年二十三回であり、それぞれの自治体により回数は異なりますが、一合議体当たり月一、二回程度開催され、各都道府県などにおいて、限られたマンパワーの中で御努力をいただいているというふうに承知しているところでございます。

 今回の改正では、精神医療審査会に対しまして、退院などの請求ができる者として、入院患者本人とともに家族などを規定するということにしているところでございます。これに伴いまして精神医療審査会の業務が増加することも予想されますので、審査業務の重点化それから効率化を図る観点から、審査方法や体制を定めた精神医療審査会運営マニュアルの見直しなどについて検討していきたいというふうに考えているところでございます。

河野(正)委員 きのう籠本参考人は、大阪はHまであると言われていましたから、今、一から八ということで、大阪が八あるのかなと思って聞いていたわけなんですけれども。

 実は、厚生労働省はデータを持っておられると思うんですけれども、患者さんからSOSが出て、精神保健福祉センターにそういった連絡が来て、実際出向いて、そして現地意見聴取をして、大体、医療委員と法律家委員のスケジュールを調整してその現地に出向いていって、そこの意見聴取をしたレポートを書いて、合議体で審査するということになって、あなた退院していいですよとか、あるいはこのまま入院継続してくださいということをお伝えするんですが、それをするのに大体三十日を超えちゃっていて、二カ月ぐらいかかっている例もあると思うんですよ。これは厚生労働省がデータをお持ちだと思いますけれども。

 そういう状況ですので、患者さんは、精神保健福祉センターに電話をかけても、審査会でそうやって二カ月ぐらいたたないと結論が出ない、その間はずっと入院が続いてしまうという状態になりますので、やはりこういった精神医療審査会はもう国で常設しておくとか、きちんといつでも飛んでいけるような状態に、少なくとも二カ月というのはちょっと長いと思うので、多分、三十何日とか、地域によって違うと思うんですが、そういった意味で、きちんとやっておかないといけないんじゃないかなと思いますけれども、この点、いかがでしょうか。

岡田政府参考人 現在は、都道府県それから指定都市に審査会という形でお願いしているところでございます。今回の改正によります業務量の増加を踏まえまして、先ほど言いましたように、運営マニュアルの見直しなども進めていきたいというふうに思っておりますので、そういうものでとりあえず取り進めさせていただきたいと思っております。

河野(正)委員 非常に、かなり厳しい状況に精神医療審査会があるということだけ、皆さんも御認識いただきたいなと思います。

 そして、これも籠本参考人がおっしゃっていたことでございますけれども、やはり人間が人間を診るわけでございますので、一〇〇%の一致というのは残念ながら難しいと思いますけれども、やはり全国でどの精神保健指定医でも判断がなるべく同じものになるように、しっかりとしたガイドラインや判断基準をつくっていかなければならないと思いますし、この辺やはり、国がきちんと方向性を示していただければ、学会なりでも検討するでしょうし、民間のそれぞれの病院でも検討すると思いますので、そういった指針は示していただきたいなというふうに考えております。

 次に、時間もありませんので、福岡県弁護士会の精神保健当番弁護士制度についてお尋ねしたいと思います。

 実は、参議院の方で本法案を審議される中で、東京アドヴォカシー法律事務所所長の池原毅和弁護士がお見えになって、意見を述べられております。その中に、福岡県弁護士会が二十年来行っている代理人システムということをお話しされています。地域では非常に高い評価も受けて、現実的に動いているというふうにお話しになっておりますけれども、これは、病棟の中に弁護士会の電話が書いてあって、患者さんがかければ、弁護士さんが電話相談あるいは実際に病院に出向いてきてお話を聞いてくださるというシステムで、非常にこれは、弁護士さんに聞いていただくということで患者さんも安心するし、いいシステムなのかなと思っております。セカンドオピニオンみたいな意味もありますし、これをやっていっていただくことを非常にありがたいという側面もあるんですけれども、池原参考人は、愛知、大阪、岡山などでも似たシステムがある、日本弁護士連合会としては全国展開も考えていると言われております。

 これは実は、私どもの病院にも何度かこういった方が来られたのでお話を聞いていたら、手弁当でやっているんだということをおっしゃっていたんですが、こういったことに、国として補助金などを支給、支援していくおつもりはございますでしょうか。

岡田政府参考人 御指摘のとおり、福岡県弁護士会では、精神保健当番弁護士制度を設けて、入院患者に対する事情聴取、出張法律相談、関係者との面談、患者の代理人となって行います精神医療審査会に対する処遇改善、退院請求などの審査請求手続などの取り組みを行っていると聞いております。

 このような取り組みを全国的に制度化するためには、医療保護入院が約十三万人、全体で約三十万人の入院患者さんがいるという現状を踏まえまして、弁護士さんの人材確保、それから財政的な裏づけをどう考えているかということで、十分な検討が必要だというふうに考えているところでございます。

 なお、参議院の修正におきまして、今回の改正法附則第八条で、精神科病院に入院する入院中の処遇、退院等に関する精神障害者の意思決定及び意思の表明についての支援のあり方についても、施行後三年を目途として検討を行うこととされているところでございます。

 この規定にのっとりまして、いわゆる代弁者制度を含めた精神障害者の意思決定のあり方について検討を行ってまいりたいというふうに考えております。

河野(正)委員 ありがとうございました。

 やはり外部の目を入れていくということは非常に大切ですし、籠本参考人もおっしゃっていたように、ボランティアというわけにはいかないわけですので、その辺、きちんと検討していただきたいと思います。

 もう時間もありませんので、障害者の雇用の促進に関する法律の一部改正案についてお尋ねしたいと思います。

 今回、精神障害者が雇用率に加わることとなりまして、これ自体はいいことだと評価しておるんですけれども、しっかりと精神障害者がハローワークを使って就労していけるのか、そういった意味から、ハローワークにおける状況をお教えいただきたいと思います。実は、昨日、これを通告したときに非常にいい資料が出ていましたので、資料をお配りしておりますので、それに沿って教えていただけたらと思います。

小川政府参考人 委員がお配りいただきました資料にもありますように、平成二十四年度のハローワークにおける障害者の就職件数は六万八千三百二十一件と、三年連続で過去最高を更新するなど、障害者雇用は着実に進展しております。

 特に、精神障害者の就職件数は二万三千八百六十一件、対前年比二六・六%となっており、特に伸びが大きくなっております。

河野(正)委員 ありがとうございました。

 非常に、精神障害者、ここ数年、十年近くの間にたくさんの方が就労されるようになったということですので、きちんとやはりこの方々のことをフォローしていただきたいと思います。

 実は、精神障害者に関しましては、非常に人がいいといいますか、プレッシャーに弱い方がたくさんいらっしゃると思います。

 私もNPOでパン屋をやっているんですけれども、イートインコーナーもつくりまして、近隣住民の方がお茶を飲んだりパンを食べたりということで、非常に患者さんと集う場所になっているわけなんです。ここで非常に熱心に働いているスタッフの方がおられて、毎日一生懸命来てくれているので、時給を、わずか十円とか五十円の単位なんですけれども上げようと、スタッフ間で相談して上げると、実は翌日から出てこなくなってしまう。たった十円上げただけで、もうプレッシャーに押し潰されて、こんなに上げられてどうしようということで来なくなってしまうということです。

 そういった意味で、本当にささいなことで崩れてしまう場合がありますし、またそれで入院になってしまう場合もありますので、障害者をきちんとサポートしていく体制づくりというのが極めて重要じゃないかなと思います。この点、ジョブコーチなどを拡充していくということについてはいかがでしょうか。

小川政府参考人 精神障害者につきましては、先生も御指摘のとおりで、コミュニケーションに課題を抱える者が多い一方、事業主側はそうした精神障害者にどうやって対応していいかよくわからない。結果として、職場で定着が図られない場合がある。

 ジョブコーチは、直接そういった職場に出向きまして、職場の状況でありますとか障害特性に応じて、障害者の円滑な就職及び職場への適応を支援するというものでございまして、精神障害者の採用、定着の促進に有効であるものと考えております。

 また、就業面と生活面の支援を一体的に行う障害者就業・生活支援センターでは、地域の関連機関とも連携した職場定着支援などを実施しておりまして、平成二十五年度におきましては、就業支援担当者を増員したり職場定着支援担当者を新たに配置する等、精神障害者の職場定着の体制を強化したところでございます。

 いずれの施策につきましても、精神障害者の雇用と職場定着の促進に有効な支援策であるということでございますので、これを実施する人材の確保が重要でございますから、その育成、確保について努めてまいりたいと考えております。

 また、今後も、こうした人材の育成、確保等も含めて検討してまいりたいと考えております。

河野(正)委員 時間もほとんどありませんので、最後にちょっと問題提起ということも含めてお話をしたいんですけれども。

 先ほど、大西委員の質問であったかと思いますけれども、BPSDといいまして、認知症に伴う行動及び精神心理学的症状、つまり、著しい徘回や暴言、暴行など、あるいは幻覚、妄想などの精神症状を来した認知症患者さんということで、通常の一般の内科病棟等では診れない患者さんというのを精神科で診ていくというようなことになっております。

 こういったお年寄りの抗精神病薬等の薬物療法というのは非常に、お年寄りということもありまして、極めて繊細にやっていかなければいけない問題ですし、認知症ですからどうしても御本人の同意が確認しづらいということで、医療保護入院ということを選択せざるを得ないのかなと思っております。

 この治療中に、短期で御家庭に戻れるように、あるいは前におられた施設に戻すことができればいいんですけれども、場合によって、治療の最中に内科疾患が悪化してしまったりとか、あるいは夜間転倒骨折等で寝たきりになってしまったりということで、お年寄りの入院というのは非常に厳しい問題が含まれているのかなと思っております。そういったことで、医療保護入院のまま入院が長期化してしまっているという例も想定されます。

 こういった意味で、やはり統合失調症の方の任意入院などと同列ではなくて、今後、認知症の方の精神科病院へ入院するそういった同意システムとか、そういったものはやはり改めて考えていかなければならないのかなと思っております。

 もしよろしかったら、一言コメントをどなたか。

岡田政府参考人 御指摘の認知症の問題につきましては、本年三月に精神科医療及び介護関係者で構成されました研究会を設置いたしまして、そこで、精神科病院に入院が必要な認知症の人の病態像の明確化であるとか、認知症の人の地域、在宅生活の継続を可能にするための支援条件などについて検討を進めているところでございますので、そこでの検討の結果を踏まえて、また検討していきたいというふうに考えております。

河野(正)委員 時間が来ましたので、これで終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

松本委員長 次に、宮沢隆仁君。

宮沢(隆)委員 日本維新の会、宮沢隆仁であります。

 精神科のプロフェッショナルの濃厚な質疑の後で、もう委員会が終わったんじゃないかと思うぐらいのムードかもしれませんが、引き続きよろしくお願いいたします。

 私も医者なんですけれども、脳外科という仕事をやっていまして、同じ脳を扱う医者ではあるんですが、そのキャラクターとかビヘービアというのは、精神科の医者やほかの医者とも大分違います。だから、イントロダクションとして、脳外科医が精神疾患とかかわる状況というのをちょっとお話しいたしますと、例えば、私が若いころ、大学病院にいたころの話ですけれども、脳腫瘍とかあるいは慢性硬膜下血腫とか、我々はいわゆる器質的疾患と言うんですけれども、要するに手術すれば治るような病気、そういうのがあるのに精神科に入院させられている患者さんが結構、まあ、結構はいないんですけれども、たまにいるんですね。昔の話ですけれども、なぜかCTとかMRIとかという検査もやっていないということがありまして、精神科の病棟へ呼ばれてそこで診断して、脳外科病棟へ連れてきて手術して治って帰るというのがしばしばありました。

 だから、それはまた別の問題なんですけれども、それは精神科の業界でちょっと改善していただければなというのも一つの感想です。

 それから、脳に作用する薬は脳外科医ももちろん使います。使うんですが、基本的に、トランキライザーという、いわゆる向精神薬というのは脳外科医は嫌いです。なぜかといいますと、そういう薬が入っていると、本来の精神状態というのはどういう状態かというのがわからなくなっちゃうんですね。ですから、もし、例えば脳腫瘍があって脳外科病棟に入院してきて、もともと、うつとかいろいろな病気でそういうトランキライザー系統の薬を飲んでいる人は、もう片っ端から切ります。その中でおもしろい現象があるんですけれども、切っていくと何かよくなっていく患者さんがいるんですね。よくなって、ありがとうございますと変なお礼を言われたりすることがあるわけです。

 実は外来でも同じ現象がありまして、脳外科というのはやはり脳とつくだけに、何か頭の問題、精神状態が不安定とかいろいろあると、皆さんなぜか来るんですね。そうすると、僕らも精神科の患者さんをしばしば診ざるを得ない状況になるんです。その中でも、やはり、どこかの何とかクリニックとか、あるいはちゃんとした精神科病院でもあるんですけれども、何か山ほど薬を出されている患者さんがいるんですね。トランキライザーは我々嫌いですので、本当にこれが必要なのかなという、まず疑いの目から入るんです。

 それで、いきなり切ると危険というのはわかっていますので、外来へ通いながら、精神科の患者さんはもちろん精神科に戻しますけれども、脳外科で診る必要があって診ている患者さんは少しずつ薬を切っていったりするんですね。そうすると、やはりよくなって、頭がすっきりしたとかという患者さんが結構います。

 後でメンタルクリニックの問題点についてはちょっと触れますけれども、日常、脳外科医というのはそんな経験をしているわけです。

 それで、きょうは、私は、障害者の雇用促進に関する法律、こちらの方を主に扱わせていただきます。

 私ごとですけれども、いい年して、ちょっと経営大学院に行っていたことがありまして、そこでメンタルヘルスという講義があったんです。それは、精神科の先生ではなくて、いわゆるPhDで、そういうメンタルヘルスの研究をしてストレス障害とかそういうのをやっているどこかの教授が来て、講義するわけですね。

 その中で、私、医者をやっていて、目からうろこが出た図がこの一なんですよ。世の中にある、いわゆる精神的な問題点のある人たちを全体像で見るとどうなるかという絵なんですけれども、これは、特に企業なんかでうつ病が発症したりする患者さんがいますね、そういう人たちをどう見るかということです。

 一番左に、ちょっと心の不健康な状態かなという方は、どこの組織でも、もちろん官僚の中でも政治家の中でも医者の中でもどこらでもあるわけですよ、そういう人たちをどう扱っていくかという、その一つのプロセスをここに書いてあるんです。真ん中で、点々で上と下に分かれていますね。それで、上の段が本当の病気、いわゆるメンタル障害です。ここが主に、精神科の医者、あるいは脳外科の医者、神経内科の医者が扱う分野なんですね。実は、医者というのは、基本的にこの上のところの発想しか余りしていない。

 ところが、一般の企業の中で働いていて、ちょっと過労になって、ノイローゼっぽくなったとか会社に出てこなくなったとかという人たちは、ほとんどがこの下の段なんです。それを適応モデルというそうです。僕はこの言葉は余り知らなかったんですけれども、要するに、適応がちょっとしにくくなった、できなくなったという方々のことですね。

 その中を、適応モデルを右の方へ行くと、心因性、その他、健康に問題がある、あるいはノイローゼと称して、真ん中辺で点々で上とつながっているところがありますけれども、抑うつ状態という言葉が書いてありますね。それで、それが二週間以上継続していると、上のいわゆる病的な状態に入っちゃうかもしれないということなんですね。

 上の疾病モデルの真ん中辺、上から、統合失調症、気分障害、抑うつ状態、さらに、真ん中から下の、抑うつ、神経衰弱、不安神経症、こうやって分かれていますけれども。結局、ここで非常に重要な問題は、誰がどこでその病気を精神障害と認定するかということなんですね。

 それで、ここから少しずつ本題へ入っていくんですけれども、メンタルクリニックというのが世の中にはいっぱいありますね。今、特に急増しています。もちろん、先ほど河野先生がおっしゃったような精神科のちゃんとした病院もあるんですけれども。ただ、患者さんは必ずしも最初からそういうちゃんとした精神病院等に行かないですね。

 それで、その実態を、資料二でちょっと見ていただきたいんですが、左下、「うつ病患者の初診受診科」。基本的にうつ病にフォーカスして、これから話を進めていきます。

 ここに、円グラフの中で色のついた、心療内科、精神科というのがあります。これを両方合わせると、約一割ですね。これはあくまで初診です。つまり、一番最初は、精神科、心療内科以外を受診しているということなんですね。だから、本当はもうここからボタンのかけ違いが起こり始めている、これを、精神疾患を扱っている医者も、もちろん患者さんも、我々行政にかかわる人間も認識していないといけないと思います。

 ここにある心療内科という科が、私は全部が悪いとは思っていないんですが、ただ、実際、ちょっと怪しいなというメンタルクリニックは私自身も経験しています。正直申しますと、脳外科医、要するに、手術をリタイアした脳外科医がやたらにトランキライザー、向精神薬を出しているケースがあるんですね。私の仲間にも実はいるんです。けんかしたこともありますし、注意したこともあるんですが。

 そこで、ここでちょっと、一人でしゃべっていてもしようがないので、厚生労働省にお聞きしたいんですけれども、そういうメンタルクリニックのいわゆる質とか、あるいは、そこのクリニックにいるお医者さんがどういうタイプの医者でどういう経験をしてきたかとかというのを把握できるようなデータというのはありますでしょうか。どなたかよろしくお願いします。

    〔委員長退席、上川委員長代理着席〕

原(徳)政府参考人 お答えいたします。

 メンタルクリニックというその言い方自体がどの範囲を指すのかというのが非常に難しいと思います。そういう意味では、標榜しておられる診療科として、精神科であるとか心療内科、あるいは神経内科というような言葉もあると思いますが、そういうような標榜しておられる医療機関の数は数えることはできるかと思います。今現在、手持ちでは数字はございませんけれども。

宮沢(隆)委員 結局、そこにいるドクターの質がいいとか悪いとかというのは把握できないと理解していいですか。いや、それでよければいいです。実際、難しいと思います。

 それで、実はこの週末、結構猛勉強しまして、こういう、NHKスペシャルで「うつ病治療 常識が変わる」、これはテレビで放映もされたらしいんですけれども、これを一冊丸ごと読みました。これはひどいなというのが私の感想で、もし興味がある方がいたら読んでいただきたいんですが、これをサマライズしたのが資料二ですね。左上に書いてあります。

 まず、一番、メンタルクリニックが乱立し過ぎている。それから、これはさっきの初診の話ですね、九割が精神科以外を最初に受診している。それから、やはりうつ病とかそういう精神疾患というのは診断が難しいのか、誤診が結構ある。それから、いきなり初診で多剤大量処方をされてしまうケースがある。何%ぐらいあるかとかそういう記載はもちろんないんですけれども。それから、数分間診療。二、三分しか診ていなくて、毎回行くたびに、変わりないですかと言って、なければ薬、そういうパターンが多い。それから、SSRI、パキシル等による自殺誘発が疑われるケース、それと異常行動も誘発される、こういうのをアクティベーションシンドロームというらしいんですけれども。それが、因果関係は証明されていないようなんですが、非常に怪しいのがあるということです。それから、DSM―4による安易なうつ病診断。

 このDSM―4というのは、同じ紙の右下に書いてあります。これはアメリカで開発された、いわゆるうつ病の簡易診断法らしいんですけれども、患者さんが訴える症状が一から九までの中にあれば、例えば五つ以上当てはまって二週間続いていたら、もううつ病という診断ができちゃうんですね。これは、要するに医者であれば誰でもできるし、場合によっては高校生でもできるかもしれない。だから、これを錦の御旗のようにして、一般の内科医でも、これに当てはまったら、ああ、ではパキシルでも出しておこうかといって、ずっと外来で出しておくことは可能なんですね。

 これも、ある精神科の先生に聞いたら、DSM―5というのがもうアメリカででき始めているようで、日本にもこれからどんどん入ってくる。ただ、アメリカでも日本でもこのやり方そのものに抵抗している、その先生は、どっちかというとそっちの方がまともじゃないかと言っていましたけれども。こういうDSM―4みたいなのに頼る方がむしろ危険だと言っていましたね。

 それから八番目、先ほどもちょっとお話が出ていましたが、臨床心理士等の、そういう精神科にかかわる資格、これの国家資格がしっかりしていなくて、身分も不安定なので、結局それが、地域で精神科の患者さんを支えるというのに直接つながっていかないということも書いてありました。だから、国家資格にして、ちゃんとそういう働く人の身分を安定化したら、地域医療はしっかりするんじゃないかということでしたね。

 あと、もう一つついでに、二番の紙の右上、「抗うつ薬多剤併用の実態調査」。これもこの本からとったんですが、日本は多剤併用率三四・九%。圧倒的にほかの国に比べて高いですね。これもやはり念頭に置くべきだろうと思います。

 別にメンタルクリニックの先生方をいじめるつもりはないんですけれども、さらに、資料三を見てください。いかにメンタルクリニックが急増しているかというのを示すグラフです。これもこの本からとりました。

 一九九六年から二〇〇五年まで。一般診療所の八・九%にすぎなかったのが、現在一三・九%。これは二〇〇五年ですからね。今一三年ですので、今やったらもっと高くなっているんじゃないか。ここ五年ぐらいが物すごく急増しているらしいですね。こういうデータ、とにかく、右肩上がりで心療内科、メンタルクリニック等は町中にどんどんふえているということです。

 それで、先ほど原局長の方から、いわゆるそこでメンタルクリニックを開業している先生方のクオリティーの担保はなかなかやりにくいというお話でしたけれども、先ほども標榜の話はちょこっと出ていましたが、資料四を見ていただきたいんです。

 私も前から、標榜のシステムというのはどうなっているのかなと思って興味があったもので、これも厚労省の方に聞いてみたら、本当に自由なんですね、これ。やりたい放題。

 一番の「単独で標榜可能な診療科名」。これはオーソドックスな診療科が載っています。二番に、組み合わせて用いることができるものというのが四角に囲っていっぱい書いてあるんです。一番下の表は、これは不合理だから使っちゃいけないよという表ですね。

 私がもし何らかのクリニックを開業しようと思ったら、例えば小児精神科なんという組み合わせも可能ということですね。あるいは、老人精神科、児童精神科云々。

 あとは、医者一人につき原則二つまでということなんですよね。

 改めて僕はこの表を見て、これはちょっと医者に甘過ぎないかなと。先ほど、憲法の職業の権利に抵触する云々という答弁がありましたけれども、それどころじゃないんじゃないか。これはもう、いわゆるそういう医者の、オートノミーという言葉、要するに自浄作用ですね、それに期待して云々という議論がよくありますけれども、それを超えている話ではないかと、僕は本当にこれを見て思ったんです。

 ちょっとその辺をお答えいただけますでしょうか。標榜について。

原(徳)政府参考人 標榜につきましては、医療法上、広告できる診療科名ということで、先生お示しの資料の形で診療科名を広告していい、看板に書いていいということになっています。

 その際、医師または歯科医師一人につき、主たる診療科は二科目までということになっておりますし、それから、広告をする以上は見る方がわからなければ意味がありませんので、そういう意味では、とっぴな組み合わせは困るということで、普通、不合理な組み合わせが下に書いてある。それから、今申し上げましたように、メーンになりますのは、内科、外科などの、単独で標榜可能な診療科名を核にして、それに附帯的につけるという形で、これは、その当時決めましたときのいろいろな御要望がたくさんあった中から選ばれたものというふうに承知しております。

宮沢(隆)委員 私がお聞きしたいのは、このままでいいと思っていらっしゃるかどうかということなんですけれども、いかがでしょうか。

原(徳)政府参考人 お答えいたします。

 一見複雑な形で決まってきた、その前は、単純に何々科、何々科という、ここで言うと表の一で書いてある、単独の診療科名を一つずつふやすかどうかを関係の審議会で議論して決めていただいていたわけです。医学の進歩とともに、さまざまな新しい診療科名の御要望がたくさん出てきた。その中で、組み合わせということを含めて、その当時の審議会で決めていただいたというふうに承知しております。

 また、先生の御指摘なども踏まえまして、それが患者さん側から見てわかりやすいかどうか、そういう視点も含めて、必要がありましたら、関係の審議会で議論をしていただきたいと考えております。

宮沢(隆)委員 ちょっと珍しく、しつこく追及させていただきますが、では、例えば、私が消化器内科の医者だとします。消化器系しか診たことがありません、でも、ちょっともう消化器系も飽きたし違う診療科もやってみたい、メンタルクリニックは机と椅子と事務員がいればできる、投資も少なくて済む、では、ちょっとメンタルクリニックでも駅前でやってみようかなといって、例えばここにある老人精神科、あるいは心療内科でもメンタルクリニックでもいいんですけれども、そういう意図で開業しようとする医者がいるとしますね。それをコントロールできますか。クオリティーコントロールですね。いかがでしょうか。

原(徳)政府参考人 お答え申し上げますが、もちろん制限をすることはできないというのが端的なお答えになろうかと思います。

 それは、医師免許、免許証は医師としての免許証ということで、医師である以上はさまざまな診療科が担当できる。ただ、その中で、実際問題として、自分が主としてどういうような経験とかあるいは勉強とか、そういう中からみずからの診療科を決めてきているというのが従来の、今までの日本での医師の育て方であったと思います。

 そういう意味で、先生御指摘のように質の問題といきますと、例えば、いわゆる専門医というものをどうしていくかという問題があろうかと思いますが、専門医につきましても、これも議論があった中で、現在、広告できる専門医というものが決められておりまして、これについては一定の条件がかかっている、いわゆる学会等が認める専門医につきましては広告できるような形になっておりまして、それなどを参考にして、患者さんの方で医療機関を選択していただく材料にしていただけたらと思っております。

宮沢(隆)委員 そうなんですね。専門医制度と全くリンクしていないんですよね、この標榜システム。だから、専門医の立場から言わせると、専門医を取っても取らなくても同じじゃないということになっちゃうんですよね。

 済みません、ちょっと本題から少し外れちゃっていますけれども、すぐ戻りますから。

 これは、ちょっと田村大臣に、今の件を今後どうされていくおつもりか。この標榜と専門医制度、それから、開業しているメンタルクリニックの医者のクオリティーコントロール等を含めて、これは、僕、すごく大事なことだと思うんですね。

 下手すると、うつ病がどんどん量産されていっちゃう可能性があるんですよ。実際、今、うつ病という診断はどんどんふえています。それの原因の一部はこのメンタルクリニックだろうと思っているんですけれども。この辺、いかがでしょうか。

田村国務大臣 自由標榜制度の中で、一定のルールはありますけれども、自由に標榜科を名乗れるわけでありまして、それが、本来、医師という仕事は、そういう、自分が得手じゃないものはやらない、やはり、一定程度しっかりとした、みずからの知識を持ったものをやられる。ですから、仮に途中で診療科を変えようという場合には、それなりに学んでやっていただくというのが、本来、医師の道徳性というものに起因してこの自由な標榜というものを認めているんだというふうに、私は私なりに認識いたしておるわけであります。

 専門医という制度自体も、もう委員御承知のとおり、それぞれの学会でばらつきがあって、今般、専門医の仕組みの検討会というものを進めてまいって報告書が出てきたわけでありまして、その中で、自由標榜、標榜科というものと専門医というものがどうあるべきか、将来は関連づけるべきであろうというような、そういう結論をいただいております。

 現行は、やはり実際問題、いろいろな中において、病院を運営していただいておる、診療科を運営していただいておるということでございますから、開業医の先生方を中心に、いきなり制度を変えるというわけにはいかないのであろうということで、今、専門医というものをうまく、これから育てていきますといいますか、信頼性をしっかりと保てる中において、質をしっかり担保いただくという中において、例えば、それぞれの専門医学会の中においてホームページで専門医の名前を載せていただいておるわけでありますから、そういうもので確認をいただいたりでありますとか、それから、今も局長から話がございましたけれども、一定の要件を満たした学会に関しては、その中で所属されておる専門医に関しては、医療機関で名前等々しっかりと、広告していただいてもいいというふうになっておりますので、そういうところで信頼性というものを確認していただく。

 ただ、将来的には、やはり、委員おっしゃられますとおり、これからさらに複雑になってまいりますから、何が何だかわからないというような話にもなってこようと思いますので、検討していく余地はあるというふうに私は思っております。

宮沢(隆)委員 ぜひ、期待していますので、よろしくお願いいたします。

 私、一つだけアイデアがあるんですけれども、自信のある医者はホームページ等に自分の経歴を嫌というほど出すんですね。ところが、問題は、出さない方なんです。ですので、可能かどうか知りませんけれども、政令なり省令なりで、自分の医者としての過去の経歴を全部オープンにしなさいという通達でも出したら、嫌でも出さざるを得ない。それだけでクオリティーコントロールがぐっと上がるんじゃないかなと思います。医師会が何と言うか知りませんけれども、一つのアイデアです。

 では、この話はちょっと終わります。

 本題に戻ります。

 先ほども民主党の先生から、障害者の雇用率、企業の中で五割に満たないということで、これもデータが出ています。資料の五の右側のグラフです。「企業規模別達成企業割合」。平均が四六・八%ということで、確かに五割を満たしていないですね。

 これは厚労省からいただいたので、ちょっと厚労省の方から説明をしていただけますか。お願いします。

    〔上川委員長代理退席、委員長着席〕

小川政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおりでして、現在、全体としては、障害者の雇用率が増加して過去最高を更新しているというふうに、着実に進展はしておりますけれども、法定雇用率の達成企業割合は四六・八%にとどまっているというのが実態ではございます。

 この背景としては、大企業がそれを牽引している一方、このグラフにありますように、中小企業の取り組みがおくれているということがあろうかと考えております。このため、中小企業に対して、ハローワークにおいて、地域障害者職業センターと連携した職業紹介などを行うほか、障害者の雇い入れに関する助成金を中小企業に対しては大企業と比べて手厚く支給する、また、中小企業向けの就職面接会を実施するなど、中小企業に力点を置いた支援を実施しているところでございます。

宮沢(隆)委員 私は、決してこの法案を否定するために質問に立っているわけじゃないんですけれども、いわゆる中小企業側の立場に立つと、ちょっとつらいんじゃないかなというのが僕の正直な印象なんですね、この法律を読んだときの。それで、先ほどもお話が出ていましたけれども、どの程度各企業が準備できているのかなというところが、ちょっと私には見えないんです。

 そこで、昨日かな、大学病院の精神科の教授に、職業との絡みで、直接行ってヒアリングをしてきたんですね。それで、その方のコメントをサマライズしましたので、ちょっと読み上げますね。

 精神障害者の中で、いわゆる優秀というのですか、仕事ができそうな人と、それから、そうでない、重症な患者さんというのに大きく分けられると。実は、そういう、いわゆる優秀と思われる、企業に行けそうな人というのはそんなにたくさんいない。それで、多くは、病院、デイケア、作業所を結構行ったり来たりしていて、次の、企業へ入るというステップは物すごく敷居が高いらしいんですよ。それが現実としてあると。

 それから、企業が果たしてどれだけ受け入れる体制をつくっているのかは、我々医者側にもなかなかそれは見えないと言っていました。

 それから、連携、連携と言うけれども、病院にはそれぞれの職場でどのように働くかを助言できる人間はいない。一方、職場には患者の病状を詳細に把握している人間はいない。両方をある程度把握して、できたら、事業所と病院を行ったり来たりできるような人材がいると一番ベストだと。そこで、さっきもお話に出ていた、いわゆる精神保健福祉士というのを、今のその立場の方をもっとふやして、いわゆるモバイルというのですかね、動けるような人材として使えるようにしたらどうかと言っていましたね。

 それから、病院にリワークプログラムがあることはあるけれども、あるいは、ないところはないですね。これは、やはり、診療報酬がつくとつかないでファンクションは全然違ってくると。

 あと、精神障害者と、この法案なんかでも一くくりにはしていますが、疾患が多彩ですね。統合失調症、うつ病、双極性障害云々、たくさんあります。疾患が多彩であって、しかも各疾患の中で病状も多彩である。そうすると、物すごい組み合わせで、いろいろな状態が出てくるわけです。企業側がそれにまともに対応できるとはちょっと今思えないということをおっしゃっていましたね。それで、さっき言ったような、動けるような保健福祉士のような方がいたらいいんじゃないかという話になったんですけれどもね。医者側もちょっと懐疑的というところがありましたね、精神科のプロの先生でも。

 あと、さっきのDSM―4の話も出て、これもさっき言ったとおりで、ちょっと安易に使われ過ぎて、診断がかえって混乱しているんじゃないかというようなこともおっしゃっていました。

 それから、さっき認知症のお話が出ましたけれども、認知症というのは、ケアマネジャーというのがつくからまだましだと。でも、そういう人材は統合失調症やうつ病ではいない、だからこれも疾患によって行政の対応の仕方が異なっている、これもどう今後調整していくのでしょうかと。

 列挙すると、こういう内容です。

 そこで、さっきからちょっと繰り返しになっちゃうんですが、この中で重要なキーワードは、連携だと思うんですね。医者と、その間に作業所みたいなのがあって、それで次の、最後のステップとして企業というのがあるんですけれども、その間の連携を具体的に現場でどのようにしようとしているのかというのを、ちょっと簡潔に説明していただけますか。

小川政府参考人 先生御指摘のとおり、精神障害者につきましては、その病状とか態様がいろいろ違っているということもございますけれども、個別の精神障害者の就職、定着支援に関しまして連携ということについて申し上げれば、ハローワークと福祉、医療等の関係機関との連携によるチーム支援でございますとか、それから、職場において企業、障害者双方に対して支援を行うジョブコーチ支援などによって、それぞれの状況に応じた支援を行っております。また、支援実施に際しては、必要に応じて主治医とも連携、情報共有を行い、実施しているところでございます。

 さらに、就労支援機関と医療機関との連携においては、医療機関の職員がその就労支援について理解を深めることが重要でありますことから、医療機関の職員等を対象として、雇用状況とか就労支援策に関するセミナーを実施しているところでございます。

 もちろん、そこからの連携でございますけれども、個別に、企業側に対しても、企業が精神障害者雇用に取り組んでいけるように、雇用管理ガイドブックや職場改善好事例の提供でございますとか、モデル事業の成果普及のためのセミナーの開催などにより広くノウハウの提供を行うほか、企業からの個別相談につきましては、ハローワークに精神保健福祉士の資格を持っている精神障害者雇用トータルサポーターというのがございますので、そういった人間が援助をするとか、それから、地域障害者職業センターに配置されました障害者職業カウンセラーなどが具体的な相談、アドバイスを実施しているというところでございます。

 今後とも、このような取り組みを通じて、企業、就労支援機関と医療機関との連携の強化に努めてまいりたいと考えております。

宮沢(隆)委員 どうもありがとうございます。

 では、質問の仕方を変えましょうか。

 今後、先ほど言った、病院と企業の間を動けるような人材というのを国家資格なりでつくる、あるいはふやす必要があるかどうかという観点で、いかがですかね。あるいは、そういう予定があるかどうかですね。

小川政府参考人 お答え申し上げます。

 国家資格というわけではございませんけれども、先ほども何回か御紹介していますが、ジョブコーチというのがございまして、そのジョブコーチというのが、地域の障害者職業センターでございますとか、いわゆるナカポツセンターに配置されておりまして、それが要するに障害者に対する支援を行っているというところでございます。

 こういったジョブコーチにつきましては、今後、精神障害者の雇用を進めるために、量的、質的な拡大を図っていくということが重要だと考えておりますので、そういった方向で検討を進めていきたいと考えております。

宮沢(隆)委員 多分、そのジョブコーチ云々を含めた、ハローワーク、その辺の全体像の連携が、私の中でちょっとまだ理解し切れていないのかもしれません。いずれにしても、トライアルですのでこれからですよね、ぜひよろしくお願いします。

 もう一つ、その連携にも絡んでくるんですが、産業医というのがいますね。

 産業医というのは、中小企業と提携して、メンタルな障害が出た人を見つけ出して、場合によっては精神科に紹介する、あるいはその職場の環境をよくするというようなこともやっている仕事で、私も産業医なんですけれども。ただ、今後、こういう法律が出て、より企業が精神障害者と深くかかわるようになると、産業医のあり方そのものも変わらないといけないんじゃないかと思うんですが。

 これも、産業医は厚労省の管轄ですね、ちょっとその辺をお答えいただけますか。

宮野政府参考人 お答えをいたします。

 産業医そのものは、先生御存じのとおり、これは、それぞれの職場において、職場の安全衛生水準の維持向上を図るという目的でございますので、障害者の雇用の促進というものとはやや外れますけれども、いずれにいたしましても、今、職場において、メンタルヘルスの問題というのは非常に大きな問題になっております。したがいまして、メンタルヘルスに関しましても、厚生労働省において指針をつくりまして、事業場において、心の健康づくり計画というものを策定しろという指導をしております。

 産業医は、そうした計画の策定の指導助言ですとか、あるいは専門的立場からのセルフケアの支援、職場での教育研修の企画等を行っております。さらに、就業上の配慮が必要な場合については、事業者に必要な意見を述べるという権限も持っております。こうした点で、事業場におけるメンタルヘルスの問題について、産業医は非常に重要な役割を担っているというふうに認識をしております。

 ただ、一方で、産業医の先生方が全てメンタルヘルスが専門で非常にお詳しいというわけではありませんので、私どもにおいても、産業保健推進センターにおいて産業医を対象にしたメンタルヘルス対策に関する研修を実施するというようなことで、メンタルヘルスについても、産業医の資質の向上に努めているところでございます。

宮沢(隆)委員 そうですね。私自身も含めて、本当に、これは産業医を仕切り直ししないといけないなと思いました、今回ここ数日勉強してみて。多分、産業医の講習会等も厚労省も絡んでいるんでしょうから、ちょっと仕切り直ししていただいて、より深くかかわれるようにするべきじゃないかなと。

 産業医も、やはり今までの産業医は、多分、個々人、いろいろなスタンスがあったと思うんですよね。メンタルに得意な人もいる、そうでない人もいるといって。ここは一律、メンタルのことはある程度扱える、精神科医ほどじゃなくても、ある程度のことはわかっているというレベルまで引き上げる必要があるんじゃないかなと思いました。

 では、最後の質問をします。

 この法案の三十六条のあたりに、二とか三とか四とかいろいろあるんですが、最後の文章で、「ただし、事業主に対して過重な負担を及ぼすこととなるときは、この限りでない。」というのが盛んに出てくるんですが、この文章の中で、過重な負担の基準というんですか、定義というんですか、それはどのように認識されているんでしょうか。お答えください。

小川政府参考人 過重な負担につきましては。企業規模でありますとか、企業の置かれている財政状況が考慮要素となると考えておりますけれども、過度な負担、過重な負担の考え方につきましては、今後、公労使、それから障害者団体の四者構成である労働政策審議会において議論した上で策定する合理的配慮の指針においてお示ししていくというものだと思います。

 いずれにしても、合理的配慮の内容につきましては、個々の障害者の障害状況や職場の状況に応じて事業主と労働者が相談して決めるものという考えのもと、職場において合理的配慮が適切にされるような指針を策定してまいりたいというふうに考えております。

宮沢(隆)委員 ということは、今後の協議は結構なんですけれども、企業の種類、その仕事の種類とか、あるいは人数、規模等に応じて、多種多様な基準、定義ができるという、そういう解釈でよろしいんですかね。

小川政府参考人 お答えします。

 具体的にどのような指針をつくるかということにつきましては、今後、関係する公益委員、それから労働者側、それから使用者側、障害者団体側の皆さんが集まってお決めいただくということでございまして、そこがどれだけ細かくなっていくのかということにつきましては、今後の議論の中で明らかになっていくというふうに考えております。

宮沢(隆)委員 ちょっと私自身釈然としないんですが、結局、この法案には訴訟まで想定されて条文がありますので、恐らく、その辺の定義の解釈云々というのが、多分、もし裁判になれば問題になってくるかなと思いますので、ちょっと、再検討していただいてもいいかなと思いました。

 私は、きょうは以上で終わります。どうもありがとうございました。

松本委員長 次に、柏倉祐司君。

柏倉委員 みんなの党の柏倉でございます。きょうは、質問する機会をいただきまして、まことにありがとうございます。

 私も医者なんですけれども、河野先生、宮沢先生も医者で、一時間四十五分、微に入り細にわたった指摘、討議がありまして、非常に私も質問だけで完全燃焼したところがあるんですが、私も質問を考えてきたものですから、かぶったら申しわけないんですが、ぜひおつき合いいただければと思います。

 まずは、精神科疾患のアウトリーチ戦略についてお伺いします。

 二十三年からアウトリーチを補助金として予算化して、二十四自治体、三十七カ所の病院に委託しているということで、短い期間ですけれども、それなりに実績が出てきているということです。三百人ぐらいの症例ですけれども、アウトリーチを行って、そこで診た方というのは、治療を中断している方五三%、今まで精神科診療を受けていない方一六%、引きこもり一〇%、こういう形になっている。そして、その結果は、支援を継続できたケースが六四%、精神科へ新たに初めて入院したというのが一五%ということで、この取り組み自体は成功しているのではないかなという印象があります。

 そこで、当然のことながら、政府、関係各位にはどんどん取り組んでいただきたいという観点から質問をさせていただきます。

 このアウトリーチという言葉は、皆様御案内のとおり、イギリスのブレア政権で自殺対策というものが行われたわけですね。そこから出てきているというふうに認識しております。初期投資額で、そのときは日本円で二千八百億円投じている。それで自殺数減少に効果を上げたということです。

 もともと、自殺者対策と精神科疾患、こういった目的の違いはあるにしても、やはりこのアウトリーチというものを重要視すれば、それなりの予算を組んで対応していかなきゃいけないということだと思います。

 現状、当然試験的に補助金でやっているということでございますが、きっちりとした結果も出ているということで、今後、予算化、診療報酬という形で反映される方向だとは思いますけれども、どれぐらいの将来的な予算規模を考えていらっしゃるのか、政府の見解をお願いいたします。

岡田政府参考人 御指摘のアウトリーチは、医療機関の医師、看護師、それから精神保健福祉士など専門職がチームを組んで、必要に応じて、居宅などで生活する精神障害者を訪問して支援するものでございます。アウトリーチは、退院患者の再入院を防いだり、受療中断によります病気の悪化を防いだりして、精神障害者の地域生活を支援するために有効な手法だというふうに考えているところでございます。

 御指摘のアウトリーチの推進事業は、平成二十三年度から、精神障害者の地域移行、地域定着に理解のある医療機関の協力を得て、モデル事業として実施させていただいているところでございまして、この事業の予算につきましては、モデル事業に参画いただきました医療機関の経費のほか、アウトリーチを一般化して全国展開していくために、その有用性を評価する科学的なデータを収集、分析するための経費も含めまして、トータルで約七億円を確保したところでございます。

 今後、この事業の実施の効果の検証を行いまして、その結果を含めて、一般制度化を含めて、必要な対応を検討していきたいというふうに思っているところでございまして、現段階ではどういう形でやっていくのかということが定まっておりませんので、将来的な費用についてお示しすることは、ちょっと現段階ではできないということでございます。

柏倉委員 約七億円弱を四十七都道府県でもし均等配分するとすれば、一県当たり千四百万円にしかならないわけですね。とてもこの額では人的リソースを抱えることはまず無理です。ということで、既に大きな病院でしかできないような要件に今なっているわけです。

 そこで、次の質問として、病床削減とこのアウトリーチの要件についての質問をさせていただきたいと思います。

 このアウトリーチの実施施設というのは、自院の精神科病院で病床の削減計画を出さなきゃいけないということになっております。それができない診療所や訪問看護ステーション、これも実施主体にはなれるんですが、やはりその地域の精神科病床の削減とセットになっているわけですね。これでは、せっかくアウトリーチといういい戦略を地域に広めることは難しいなという印象があります。そういう声もあるのは確かです。

 病床削減をするというものとセットでは、地域の小さな診療所ないしクリニックの先生たちはその地域の病院と連携がない方もいらっしゃるわけです、そういった方がまず参加できない、こういった限界があります。

 政府も、精神科疾患を四大疾病に加えて五大疾病という形で、これは大々的にキャンペーンを張って、なくしていこうというふうな流れをとっているわけですから、もっと精神科疾患をなくす努力、アウトリーチをやるのはいいけれども、もっとストレートフォワードにわかりやすく、病床削減とは切り離して推進すべきじゃないかなというふうに感じます。具体的にそういった意見もかなり地方では多いということです。

 もう一つの問題提起としては、この要件として、多職種連携そして二十四時間対応ということになっていますね。これは、大きな病院ではできますし、それなりに総合病院としてある病院もできる。しかし、さっきも申し上げたとおり、小さな病院、個人でやっている病院、これはなかなか関係が良好でなければできない。そういう、やりたくてもやれないような状況に、これでたががはまっているわけですね。

 アウトリーチの流れからいうと、これは逆行するものかもしれませんけれども、より地域に浸透させる、これはネットワークをつくるという意味からも、実施主体をふやすという観点から、もう少しこの要件を緩和して、やりたいところは積極的に参加できるような仕組みをつくったらいいんじゃないかなというふうに思います。

 まとめますと、病床削減というところとアウトリーチというのを切り離すことができないかどうか、アウトリーチはアウトリーチで、地域の実情に見合った一番合理的な体制をつくってもらうように地域の裁量に任せる、そういったことができないかどうか、それをまずお考えいただきたいというところと、ベストミックスですね、多職種連携、二十四時間、この要件も少し緩和できないかというところ、その二つについて政府のお考えをお聞かせいただきたいと思います。

岡田政府参考人 御指摘のとおり、精神障害者アウトリーチ推進事業、現在モデル事業として実施させていただいていますが、この事業には、一定数の精神病床を削減することを補助要件の一つとしているところでございます。これは、限りある地域の人的な医療資源を効率的かつ効果的に配分する観点から、医療機関の人員体制などをアウトリーチに転換することを目的としたものでございます。

 今後、本事業の事業効果を検証した上で一般制度化を目指すということにしておりますので、この中で、病床削減の要件の取り扱い、それから先ほど御指摘いただいたような事項につきましても、どういう形で取り扱うのかということを検討してまいりたいというふうに考えているところでございます。

柏倉委員 ありがとうございます。

 モデル事業で、ある程度結果も出ているということですから、問題点というのもそれなりに把握していると思います。やはり、そこを今から解決していく、そういう姿勢を常に政府は持っていただきたいと思います。

 次は、アウトリーチと関連しまして、学童思春期の統合失調症、その早期発見、早期治療についてお伺いします。

 当然、このアウトリーチの一つの主眼として、引きこもりですとか不登校、そういった人たちにも、どんどん、早期に発見をして、適切な治療を受けてもらうという主眼があると思います。

 問題になっているのは、早く統合失調症を発見して早く治療するということ、これは医学的にはある程度コンセンサスが得られているところだと思いますけれども、ただ、まだ早期介入の部分、重要性がしっかりと国民の皆様に伝わっていないんじゃないかなという感じがいたします。というか、一部では拒絶されている部分もある。特に、これは学童思春期、子供さんの統合失調症の誤診と薬剤の過剰投与、先ほど宮沢先生の方からもさわりがありましたけれども、これがネックになって、なかなか早期発見、早期治療、早期介入、その国民的な合意、コンセンサスがまだ得られていないというふうに感じます。

 そこで、政府は音頭をとって、イニシアチブをとってどんどん、関係学会ともきっちり協調することが前提ですけれども、学童思春期における統合失調症、その診断治療ガイドラインというのを、学会任せにしないで、きっちりと政府が責任を持って策定していく、その努力を早期に始めるべきではないかと私は考えております。

 ただ、難しいのは、統合失調症というのは、非常に学童思春期の場合は診断が難しいというのが、現状、医学的にもあるということなんですね。特に統合失調症と発達障害、その中でもアスペルガー症候群というもの、この診断が非常に難しい。

 卑近な例で申しわけないんですが、うちのおやじは精神科医なんですが、もう五十年以上精神科医をやっておる人間なんですが、先ほども出ました診断基準、DSM―4ですか、これを用いても、実際に非常に鑑別診断は難しいことがある。結局は、やはりある程度の経過を見て、そしてある程度の経験を持った医師が診断をしないと、この鑑別は容易でないということでございました。恐らく、これはほかの精神科医のドクターも同じように考えていらっしゃることだと思います。

 そういった限界も踏まえた上であえて申し上げているわけでございまして、医師に、医学の問題、診断学の問題だから、あなたたちの学会でちゃんと策定してくださいよということではなくて、やはりこれを国民的な問題としてテーブルにのせる、そしてそのテーブルに精神科医の先生についてもらって、ディスカッションしてもらって、一日でも早く、運用可能な統合失調症、小児学童期の診断治療ガイドラインを策定することが必要だと思います。

 それに対して、政府のお考え、今後の取り組みについてお伺いします。

岡田政府参考人 児童青年期の精神科医療は、患者が発達段階にあるということで、病状の把握が難しく、また、薬物療法につきましても、薬剤の選択と処方量の決定に特に注意を要するというふうな形で認識しているところでございます。

 こうした児童青年期の精神疾患につきましては、厚生科学研究費の補助によりまして、統合失調症や気分障害などの診断、治療の標準化について平成二十二年から二十四年まで研究を行ってきたところでございまして、この研究結果がまとまったところでございます。現在、この研究結果に基づきまして、今年度、関係学会において、精神療法や薬物療法を含めた児童青年期の全体的な診断、治療法の確立を目指したガイドラインの策定作業が行われているというふうに承知しているところでございます。

 関係学会でガイドラインが策定されれば、厚生労働省が精神科医などを対象にして児童青年期の精神疾患に関する研修を実施していますので、その中でもこれを活用していくことを予定しているところでございます。こうした取り組みにつきまして、児童青年期の精神科医療の質の向上に向けて取り組んでいきたいというふうに考えているところでございます。

柏倉委員 それでは、早晩といいますか、そう遠くない時期にガイドラインが出されるという認識でよろしいですね。それができましたなら、ぜひ政府と関係学会が一体となって、国民にも、こういったものができたというところを宣伝、啓蒙に努めていただきたいと思います。

 それでは、次ですが、精神障害者雇用の問題なんですが、これに関しては、先ほど質問がかなり出ております。申しわけないんですが、適宜、取捨選択して質問させていただきたいと思います。

 法定雇用率を二%に引き上げるということで、欧米並みの三%にはまだ遠いですが、過渡的目標ということで、我が党も非常に評価はしております。

 そこで、現在、知的障害、身体障害者、そして、これから精神障害者の雇用もこの雇用の中に組み込まれるということですけれども、そういう中で、難病指定者の方、難病患者さんの方も、我々にもやはりそういったちゃんとした雇用政策を考えてほしいという声が上がっているのは事実でございます。

 この難病患者さんの法定雇用についての政府の考えを聞かせてください。

小川政府参考人 お答え申し上げます。

 雇用義務制度は、雇用の場を確保することが極めて困難な者に対して、社会連帯の理念のもとで、全ての企業に雇用義務を課すというものでございます。したがって、企業が社会的な責任を果たすための前提といたしまして、まず、企業がその対象者を雇用できる一定の環境が整っていること、また、その対象の範囲が明確であって、公正、一律性が担保されていることが必要だと考えております。

 難病の方でありましても、例えば、難病であって障害者手帳をお持ちの方につきましては既に雇用義務の対象になっているというところでございますけれども、障害者手帳を所持されていないような難病患者の障害者の方を雇用義務制度の対象とすることにつきましては、先ほど申し上げました雇用義務制度の趣旨、目的を踏まえると、現時点では雇用義務の対象とすることは困難であるというふうに考えております。

 ただ、当然、対策があるわけでございまして、難病患者の就労支援につきましては、ハローワークに難病に関する専門的な知識を持つ難病患者就職サポーターを新たに配置するとともに、難病のある方を雇用し、適切な雇用管理等を行った事業主に対する助成、発達障害者・難治性疾患患者雇用開発助成金を行うこと等により、今後とも支援の充実強化に努めてまいりたいと考えております。

柏倉委員 今おっしゃった、難病患者さんの方でも、障害者認定を受ければこれに含まれるということですけれども、なかなかその認定までいかない方も結構いらっしゃるのが現実なんですね。医学的に、残念ながら、簡単に障害者手帳登録ができる疾患となかなかできない疾患、これは現実的にあるわけです。

 その辺もバランスをしっかりとっていただく意味で、この難病患者さんの法定雇用というものを障害者雇用とまた別枠で少し考えてもらうということも、ぜひ考慮に入れていただきたいと思います。

 それでは、少し本法案からずれるんですが、触法障害者さんの問題について、資料の一枚目に添付しておりますけれども。触法障害者さん、すなわち軽微な犯罪を繰り返す知的障害者の方、この方を福祉と司法がどうやって一体となって支援、見守りをしていくかという問題、これはやはりしっかりと議論しなければいけないと思います。

 この資料にありますとおり、平成十八年の資料、数字になってしまいますけれども、十五カ所の施設の受刑者二万七千人、そのうち四百十人が知的障害者、疑いを含むということだったんですが、療育手帳を持っていたのはわずか二十六人、六%しかいなかったということです。七割の方が再犯で、その半数が出所後帰るところがない状況。つまり、これは触法のマリグナントサイクル、悪いサイクルにもう必然的に入ってしまう方々がいらっしゃる。各人が悪いというわけじゃなくて、これは知的障害がゆえに、そういった形でそういう生活を送らざるを得ない人たちがたくさんいるということなんですね。これは、やはり政府が、どのように安住の地を提供するのか、それをしっかりと議論し、担保すべきだと思います。

 ちなみに、矯正施設を退所した知的障害者の受け入れに関する平成二十二年のアンケートというのがありますけれども、ケースによっては受け入れてもいいという知的障害者施設は五六%だったんですね。受け入れられない、考えていないというところが三一%もあった。ケースによってはというところですから、当然、軽微な初犯の触法ということになるかと思います。つまり、触法を繰り返す知的障害者の方々の、やはり現状、行き場がない、そういう状況が浮き彫りにされた数字だと思うんですね。

 そこで、やはり政府は、帰るところのない、例えば、そこがあっても自分の居場所が見出せない、人間関係がつくれない、そういった触法障害者と言われる方々にどうやって安住の地を提供していくのか、そして人間らしい生活を保障するのか、このいわば生涯支援をどのようにしていくのか、今の政府の見解を聞かせてください。

村木政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の問題、非常に大事な問題だというふうに考えております。

 特に、刑務所に入所をした知的障害の方につきましては、刑務所を出た後、まず手帳を取得する、福祉に結びつけるという意味で手帳を取得していただく、それから、社会福祉施設への入所のあっせんをするといったような、福祉サービスとをつなぐことをきちんとやりたいというふうに思っております。

 このために、入所中からそういったことを行う地域生活定着支援センターの整備を進めております。二十一年から整備を進め、二十三年度には全ての都道府県でセンターの設置が完了いたしました。翌年、二十四年度からはセンターに対する国庫補助を増額いたしまして、職員体制を充実して、出所後に入所した施設における生活の安定のためのフォローアップを積極的に行っております。御本人をサポートするということと、それから、受け入れに自信のない施設があるというのは先生のおっしゃるとおりでございますので、この施設側のサポートをするというようなことを昨年度から始めているところでございます。こういった施策をしっかりやっていきたい。

 それから、さらに、平成二十四年の六月に成立をしました障害者総合支援法でございますが、この法律の中に、施設に入所している障害者等を対象として、住む場所の確保でございますとか、さまざまな地域生活への移行を支援する地域移行支援というサービスがございます。このサービスの給付対象者を見直して、平成二十六年度からでございますが、矯正施設等を退所した障害者もこのサービスの対象に加えたいと考えております。

 また、最終的にはサービスを受けながら住む場所が必要なわけでございますので、この総合支援法で各自治体に障害福祉計画を定めていただいて、地域の実情やニーズを踏まえてグループホーム等の整備を進めていただいております。受け入れていただいたグループホーム等々については加算をつけるというようなことをして、受け入れを促進していっているところでございますので、こうした基盤整備をさらに進めたいというふうに思っております。

 自治体の協力も得て、また法務省などと連携をしながら、しっかりと、刑務所等を出所した方々に対する福祉的な支援を充実させていきたいと考えているところでございます。

柏倉委員 ありがとうございます。

 司法と福祉を結びつける、そこが一番難しいところであると思いますので、ぜひ触法障害者さんたちの立場に立ったきめ細やかなサービスを提供していただきたいと思います。

 それでは、時間の関係上、最後の質問とさせていただきます。

 保護者制度の廃止に関してなんですけれども、平成十一年に保護者の自傷他傷防止監督義務というのが廃止されました。それまでは、他傷、いわゆる他人を傷つけた場合、その義務というのは法定監督義務者たる保護者が負うという取り決めだったかと思うんですが、それがなくなったのが平成十一年だったわけですね。

 しかし、平成十八年は、実は、統合失調症に罹患していた二十の男性が二十九歳の女性を殺害した事件があったんですね。もうこの保護者の自傷他傷防止監督義務が廃止されていたにもかかわらず、ここでは、父親が監督義務違反ということを認定されて、七千万以上の賠償を払うことを命じられている判決が出ております。

 そこで、保護者制度がなくなった後、他傷行為、いわゆる責任無能力者の他傷行為における民事上の損害賠償先が非常に曖昧になる可能性がないかどうか、これが非常に心配になってきます。

 民法の七百十四条に、責任無能力者の監督規定というのが置いてありまして、監督する法定の義務を負う者、監督義務者は、責任無能力者が第三者に加えた損害を賠償する責任を負うというふうに定められております。法定の監督義務者というのは、未成年の場合は親権者、未成年後見人、成年被後見人の場合は、当然、成年後見人ですね。精神障害者については精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の定める保護者もあり得るというふうにあります。

 精神障害者の方がこういった他傷行為を行った場合、後見人の方がいれば後見人の方がまず最初に法定の監督義務責任を問われるかと思うんですが、実際には、法定後見人の方、精神障害者の方には余りついていない。となると、やはり保護者の方がまず真っ先に問われる可能性があるかと思うんですね。

 保護者制度がなくなると、民法上の七百十四条の法定監督義務責任者が存在しない、そういうケース、つまり、精神障害者の他害行為の被害者が損害賠償を誰にも請求できないというような、すき間のケースが生じる可能性はないか、そこのところに関する政府の見解を聞かせてください。

    〔委員長退席、上川委員長代理着席〕

萩本政府参考人 まず、現行の精神保健福祉法上の保護者が民法七百十四条のいわゆる法定の監督義務者に該当するかどうかを確認しておきたいと思いますけれども、この点についての最高裁判所の判例はどうやら見当たらないようですので、解釈に委ねられていることになります。

 その解釈ですけれども、学説上は、今御指摘のありました平成十一年の法改正の経緯、すなわち、保護者の義務から自傷他害防止監督義務が削除され、保護者の義務ではなくなったという経緯を踏まえて、保護者は民法七百十四条の法定の監督義務者には当たらないと解する見解が有力のようでございます。

 そうしますと、損害賠償責任を負う者は誰もいないのではないか、被害者は損害賠償請求ができないのかという疑問が生ずるわけですけれども、今御紹介のありましたとおり、平成十八年のその下級審の裁判例は、精神保健福祉法上の保護者として選任されてはいなかったものの、成人した精神障害者の扶養義務者であった者について、民法七百十四条の法定の監督義務者等に準ずる者として損害賠償請求権を負うと判断しております。

 また、委員御提出のこの資料の二枚目にある裁判例も同様だと思いますけれども、これらの裁判例は、民事上の損害賠償責任を負うかどうかについて、保護者かどうか、そういう形式的な基準だけで判断しているのではなく、個別の事例に即して民法七百十四条の法定の監督義務者と言えるかどうかを実質的に判断していると見ることができるのではないかと考えております。

 また、個別具体的な事情によりますが、精神障害者と同居していた親族などについては、民法七百十四条ではなく民法七百九条、これは不法行為に基づく損害賠償責任についての原則的なルールを定めた規定ですが、この民法七百九条に基づいて不法行為責任を負うことも考えられるところでございます。

 したがいまして、保護者制度が廃止されたとしましても、被害者が損害賠償責任を追及することができなくなるとか追及できる場面が直ちに少なくなる、そういうことにはならないのではないかと考えているところでございます。

柏倉委員 ちょっと釈然としない部分はございますが、時間が来ましたので、これで質問を終わります。

上川委員長代理 次に、高橋千鶴子さん。

高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 きょうは、精神保健福祉法改正案に絞って質問をいたします。

 一九〇〇年、明治の時代につくられた精神病者監護法以来、法律の名前や一部改正はあったものの、変わらずに根幹とされてきた保護者制度の廃止を決めるものとして、関係者の期待は大きかったはずであります。

 昨日の参考人質疑でも、全国精神保健福祉会連合会の川崎洋子さんは、他の障害や疾病と違い、精神障害者のみに設けられた保護者制度は一人の人間として扱われない差別法と指摘をしており、非常に重いものだと思います。

 改めて、保護者制度廃止の意味について、国連障害者の権利条約に照らしても、保護者制度の廃止は待ったなしと思いますけれども、大臣の認識を伺います。

田村国務大臣 この保護者制度でありますけれども、精神障害者に対する偏見が非常に色濃くあった時代、また医療や福祉サービスが脆弱であった昭和二十五年に、精神障害者に適切な医療、これを医療機関とつなげるという意味で創設をされたわけでございまして、そのような意味からいたしますと、他の疾患でありますとか、また障害等々にはない、そのような特有の制度であったというわけであります。

 今般は、例えば、精神科のデイケアでありますとか、また障害者総合支援法等々によりまして、福祉サービスというものがかなり充実をしてきておるわけでございまして、そのような意味からいたしますと、時代は変わってきておるわけでございまして、今委員がおっしゃられましたとおり、他の障害者の制度もしくは疾患等々にはないこの保護者制度というものに関して、今般の改正でこれを廃止するというふうに決めさせていただいておるという次第であります。

高橋(千)委員 他の障害や疾患にはないのだということが差別そのものなんだという認識に立っていらっしゃるのかどうかということが伺いたかったわけでありますけれども、いかがですか。

田村国務大臣 差別といいますか、今まで、そのような形で、保護者制度という、保護者の方々にしてみれば、これは過重な負担でありますし、精神障害者の方からしてみても、他の制度と違う中においてこのようなことが運用されてきておったわけでございまして、そういうものを今般廃止をして、他の制度と横並びにさせていただくということであります。

高橋(千)委員 まずスタートラインに立つということだったと思うんですね、今回は。ほかとは違うものを取り払うんだということが関係者の期待であって、だから、その一点において、いろいろあるけれども渋々賛成をした、そういう御意見も昨日ありました。しかし、私は、本当にそういう気持ちをよく酌みながら、同時に、これから指摘をする、家族等の同意などが結局それに取ってかわることによって、その趣旨がそがれてしまうのではないかということをやはりあえて言わなければならないなと思っております。

 現在、精神科病床の入院患者数は三十二万三千人、そのうち医療保護入院は十三万千九十六人と言われており、その一割が二十年以上の在院期間、まさに七万人とも言われる社会的入院を解消し、障害、病気があっても地域で暮らせる環境づくりが急がれております。

 こうした中、厚労省の新たな地域精神保健医療体制の構築に向けた検討チームが、第三ラウンドとして、二〇一〇年の十月から、保護者制度、入院制度について議論をして、昨年六月二十九日に取りまとめが公表されました。

 ところがであります。午前の質問で横路委員からも指摘があったように、このメンバーのうち十一名、ほとんどなんですけれども、資料の二枚目にあるように、ことしの五月十七日に、田村大臣宛てに意見書が出されております。まさに抗議とも言えるものであります。

 まず、最初の二段落目のところで、「「検討チーム」では、精神保健福祉法から保護者の義務規定をすべて削除すべきだとし、さらに強制入院としての医療保護入院を維持すべきだが、それを保護者の同意を要件としない入院制度に改めるべきだという結論を出しています。」、まず結論をきちんと確認をしております。

 そこで、真ん中の段落ですけれども、「現在の保護者の同意による入院の制度は、保護者と精神障害者との軋轢を生じさせ保護者の大きな負担となっている上、退院を事実上保護者の意思に依存させる結果となり、入院から地域精神医療への円滑な移行を妨げていると考えたのであります。」、それが趣旨だったということです。

 しかし、その下の段ですが、「「家族等」のうちの誰でも医療保護入院に同意しうるとされることによって、その負担を負う者は拡張される結果となっております。これは完全な逆コースであり、現在の精神医療福祉の矛盾をさらに拡大するもの」である。こういう大変厳しい指摘をしているわけですね。

 「どのような経緯でこのような改正案が作られてしまったのか、理解に苦しむ」と述べ、原点に立ち戻り再検討を求めているわけであります。

 副大臣にお願いしていますが、厚労省として、この意見書に対してきちんとお答えをいただけるでしょうか。

桝屋副大臣 これは、ずっと議論をしてきたことであります。

 今委員から、保護者制度の廃止、せっかく多くの皆さんの声を受けて廃止したにもかかわらず、家族等のどなたか一名の同意、この要件があるばかりに、それが帳消しになったんではないか、こういう話でありますが、先ほど大臣が御答弁申し上げましたように、保護者制度、これはやはり多くの皆さんの声を受けて実現したというふうに私は思っております。

 その上で、では、なぜ検討チームの報告を変えて、精神保健指定医一名の診断と、それから家族等のどなたか一人の同意というふうにしたかということでありますが、もう繰り返しになって恐縮ではありますが、これは、やはり一般の医療でもインフォームド・コンセントがますます重要視されているという中で、家族等に十分な説明が行われた上で、家族等が同意する手続を法律上明記すべきではないか、それから、本人の意思によらない入院を精神保健指定医一名の診断のみで行う仕組みは、患者の権利擁護の観点から見て適切かといった観点を踏まえて、新たに、家族等のうちいずれかの者の同意というものを要件とさせていただいた。こういうことでございます。御理解をいただきたいと思います。

    〔上川委員長代理退席、委員長着席〕

高橋(千)委員 資料の一枚目に戻っていただきたいんですが、今読み上げた意見書を出されたチームの代表の方である町野朔氏が、昨年の九月十日に、福祉新聞にこうした形で論壇を寄せているわけです。真ん中のところを読ませていただきますと、「保護者がこれからも精神障害者を支える存在であることに変わりはないが、実質的には一般の医療における家族と同じものになった。一世紀以上にわたって日本の精神医療法制の基盤の一つだった保護者制度は、実質的に終わったのである。」、こういうふうに、一世紀以上にわたるものが終わったのだと。そして、その上で、保護者制度改革は第一歩なのだと。これから地域に踏み出してさまざまなことをしなきゃいけないということを書いているんですね。

 ですから、これを書いたときに、まさか、ひっくり返るというか、想定していなかったと思うんですよ、九月に書いているんですもの。だから、今、五月にこうした抗議をしているわけでしょう。そういう何の説明もしていないわけですよ。ですから、今副大臣がおっしゃったようなことはもう十分議論をした上でこの結論を出したこと、それに対して、全く答弁にはなっていないということを言わなければならないと思います。

 今おっしゃった、指定医一名だけでは患者の権利擁護が図られないとか、十分な説明が足りないんではないかとか、そういうことは、それはもちろん議論されましたよ。その上で、検討チームとして、代弁者制度をあわせて提案をしていたはずであります。それが、参議院修正によって検討規定ということではなったわけですけれども、なぜそれがそもそも政府案に盛り込まれなかったんでしょうか。

岡田政府参考人 今回の改正法案の内容につきましては、昨年六月の検討チームの報告を受けまして、厚生労働省内で、保護者制度を廃止するに伴いまして、医療保護入院の手続をどうするのか、それから、医療保護入院者の退院を促進するための措置について、法案化のための必要な検討を行った上で、そういう形での提案をさせていただいたところでございます。

 代弁者制度につきましては、検討会のチームの検討におきましても、家族であるとか、ピアの方になっていただくとか、さまざまな御議論がありますし、それから、どういう役割をしていただくかについてもさまざまな御議論があったということで、仮に法律上に位置づけますと、どういう方が何をやるのかというのを明確に位置づける必要があるというようなことでございますが、現段階では、そうしたものが関係者の中で合意が得られていないということで、今回見送らせていただいたということでございます。

高橋(千)委員 いろいろ議論があったということを検討会が終わってから、だったらもう一度ちゃんと議論すればいいんですよ。それを、終わってから自分たちが直しておいて、全く違う結論が出てきて、それで、議論があったから仕方ないんだという理屈にはならないんです。

 イエスかノーかできちっと答えていただきたいんですけれども、本人の権利擁護のための仕組みとして、入院した人は、自分の気持ちを代弁し、病院などに伝える役割をする代弁者を選ぶことができる仕組みを導入するべきであることについては意見は一致した、この点では間違いありませんね。

岡田政府参考人 昨年六月の検討会のチームの報告では、そういう形でございます。

高橋(千)委員 そのことなんですよ。要するに、まず一致しているんです。そこから先、誰がとか、どうかという、いろいろなことを今理由にしているけれども、一致したものについて触れていないということをまず問題にしている。そこが、まず一点、指摘をしたことであります。

 そこで、代弁者については、参議院で池原参考人が、先ほども議論が出ていますけれども、福岡県弁護士会で二十年近い経験が蓄積されていると。それで、精神保健当番弁護士制度というシステムを紹介しています。これについては、たった今聞いてびっくりではなくて、当然厚労省も知っていることであって、平成十年から十一年度の厚生科学研究である精神障害者の人権擁護に関する研究、こういうまとめがきちっとございます。詳細に報告をされています。

 簡潔に紹介しますと、当時、福岡県弁護士会会員の約三割が参加をして、七年間で延べ七百人の精神入院患者が退院とか処遇改善を求めて相談をしています。

 これは、七百人が多いか少ないかといいますと、人権擁護委員会への人権侵犯救済申し立て件数が年間約二十件前後と比べると、年間百件前後の入院患者だけの申し込みということでは、非常に多いと言えると思うんですね。それから、審査手続中に、もう解決しちゃった、取り下げちゃったというのも含めますと、退院あるいは退院予定だ、処遇改善、そういう形で審査会請求をした案件のうち、実に過半数が相談者の希望に沿う結果で終わっております。

 重要なことは、医師から見て、弁護士がかかわったことによるよい影響があったと答えているのが七割なんですね。また、保護者にとっても、社会に、この病気に対する偏見、差別、社会から置いてきぼりにされているこの病気への対処の仕方に新しいよりどころを得たような気がする、そういう前向きな評価がされているわけです。

 こうした実績が既にあること、しかも十年以上前にまとまっている。その上に、障がい者制度改革推進会議や今の検討チームの重ねてきた議論があることを踏まえれば、政府として、踏み込めない、一字も書けない、そういう理由はないはずですよね。大臣、どうでしょうか。

田村国務大臣 今もお話があったわけでありますけれども、代弁者というものに関しては、議論の中で、こういうものが必要であるという一致は見たわけでありますが、ただ、問題は、その中身が全く詰まっていなかったということが、実は法律になかなか書きづらいということ。

 それから、今のお話の中で、福岡の弁護士の方々が協力されて、ボランティア、ほとんどボランティアだったというふうにお聞きいたしておりますけれども、そういう形で参画されて、代弁者になったといいますか、代弁者というような形で入院者の方々の対応をいただいた。これはこれですばらしい取り組みだというふうに私は思いますが、ただ、これを全国展開できるかどうか。

 それは、全ての地域で弁護士の皆様方がボランティアでやっていただければそういうものもできるのかもわかりませんけれども、当然、今ほど来の御質疑の中でも、これは有償化にすべきだというような御質疑もあったわけでありまして、そうなってくれば、これは大変な費用がかかる。さらには、十三万人とも言われております医療保護入院の方々に対して対応ということになれば、本当にかなりの弁護士の方々がここに参画をいただかなきゃならぬという話になってまいります。物理的にどうなんだという問題もあるのかもわかりません。

 そういうことを考えますと、まだまだやはり議論をしていただかないことには、そもそも、弁護士でいいと言う方もおられれば、ピアサポーターの方がいい、家族の方がいい、議論の中にもさまざまあったというわけでございまして、そのような中、なかなか法案の中にそのものを書くというわけにはいかなかったと。

 本当は、思いとしては、そちらの方に進めたいということで、これからも検討を進めていかなければならぬとは思っておりますけれども、しかし、今般の法律の中にはこれがなかなか盛り込むことができなかったというふうに御理解をいただければありがたいと思います。

高橋(千)委員 別に弁護士と書けとは言っていないわけですね。代弁する人を本人が選べる、それが結論ですから。

 ボランティアでいいなんて言っていません。報告書の中できちんと、今はボランティアだけれども、有償にすべきだというふうに言っているんであって、全国展開をすべきです。

 これは、社会的入院を解消することによる経済効果から見たら安いものじゃないか、そういうふうに見るべきですよ。それが、十年前に出された報告書に対して、今さら、何も中身が詰まっていなかったというのは、やはり怠慢のそしりを免れないというふうに指摘をしたいと思います。検討規定が入ったわけですから、急いでお願いしたいと思います。

 そこで、入院するときは、家族等の同意が一人でもあれば入院させることが可能となる。しかし、退院については、保護者の引き受け責任もないかわりに、同意した者がその後について責任をとるわけではないわけです。そうすると、入院が必要ではなくなった患者の退院の決定について、また、退院後の生活についてはどのように決めていくのでしょうか。

岡田政府参考人 精神科病院に入院しています精神障害者につきまして、退院できる状態にあるかどうかの判断は、基本的には精神科病院の担当医師が医学的判断に基づいて行うものだというふうに考えております。

 退院後の生活につきましては、保護者制度はなくなりましたが、家族が、他の疾病や他の障害の方と同じように、家族として精神障害にかかわっていただき、今回の改正で位置づけました、退院後生活環境相談員であるとか地域援助事業者などが、入院中から精神障害者の地域移行への取り組みを行い、退院後にアウトリーチであるとか障害福祉サービスが活用されて、そういうことの活用を通じて、精神障害者の地域移行を進めていきたいということで考えているところでございます。

高橋(千)委員 家族がかかわっていただくという答弁があって、結局、ここに担保しておくのかなと。いろいろなトラブルがあったとき、また、最後の引き受けがないとき、そうしたときに、同意ということが最初にあったから、やはりここに最後に担保しておくというのがどうしても残るのではないかという懸念があるということをあえて指摘しておきたいと思います。

 そこで、先ほど大臣、大西委員とのやりとりの中で、病院管理者も、地域移行を促進するための義務を書いたんだとおっしゃいました。経営のために入院させておくものではないんだとちゃんと弁解をされたわけであります。

 確かに、三十三条の六に、病院管理者が地域生活への移行を促進するための必要な体制の整備とか支援の措置を講じなければならないと明記しているわけで、それが今の答弁とやはり関係してきて、ちゃんと病院の管理者がやらなきゃいけないわけですよね。

 では、そのためにどういうことが本当にできるのかということなんですけれども、やはり、この間ずっと公費負担で、措置入院があるからということで病床もふやしてきた、そういう負の遺産、長い一世紀の歴史という根深いものがあるわけですから、なかなか一遍にはいかないということが当然あるわけですよね。そこをまず見なければいけない。

 それで、簡単に聞きますけれども、指定病院在院患者の状況で、終日閉鎖病棟、これがどのくらいいるのか、それがふえているのかどうか、簡単にお願いします。

岡田政府参考人 指定病院在院患者のうち、終日閉鎖をしている病棟にいる患者数は、平成十八年度が約十三・七万人であったものが、平成二十二年度には約十四万人となっておりまして、微増の状況にございます。

高橋(千)委員 病棟は全体として減っているわけですよね。その中で、今おっしゃったように、閉鎖病棟と閉鎖病棟の入院患者はふえている、こういう実態があるわけです。やはりここに政治の問題というのがあると思うんですね。

 この間、ずっと、家族ですとか病院の側の意見があったんですけれども、働く側の、従事者の方の意見というのを聞かせていただいたんですけれども、本当に、病院の中に半世紀以上住んでいる人もいます。ですから、引き取り手は当然おりません。そういう中で何ができるかということが問われるわけですよね。

 昔歩いていた人が車椅子にもうなっている。当然、手が足りないです。高齢化で何らかの合併症があります。通院に付き添うことも必要ですが、それは看護ではないと言われるわけです。外泊訓練、院内散歩など、社会に出て生活できるために効果的なリハビリですけれども、その体制もありません。治療で改善が見られるよと告げると、家族からは一生面倒を見てくれる約束じゃなかったのかと言われて、本当に負担が大きいのに報われない、そういう思いを抱えています。

 これはもう歴史的に、精神科特例で、医師も看護師も一般病床より少なくてよい、要するに、何もしないで監視、拘束さえしておけばいいんだという思想が根底にあって、それが入院の長期化をつくってきたと言えないでしょうか。このことを認めるのかどうか。

 その上で、医療法における精神科特例をやめて、急性期のみに重点配分ではなくて、せめて一般病床並みの人員配置を行うべきだと思いますが、いかがでしょうか。

岡田政府参考人 医療法施行規則では病院に配置します人員の標準を定めておりますが、その中で、精神科病院につきましては、医師、看護職員の配置につきまして、長期に入院される方が多いということもありまして、一般病床よりも低い療養病床と同等の配置基準とされているところでございます。

 一方で、精神病床といいましても、その有する機能にはさまざまなものがあることから、例えば、手厚い人員配置で急性期医療を提供する病床を診療報酬上評価するなど、精神科医など限りのある医療資源を有効に配置しつつ、早期の退院に向けた取り組みを行ってきたところでございます。

 今回の法案では、精神障害者の医療に関する指針を定める旨の規定を設けておりまして、この指針の中で、精神病床の一層の機能分化を進める上での急性期医療のあり方などについて、その方向性を示すことを考えているところでございます。

 指針の具体的な内容については、法律の改正後、速やかに関係者による議論の場を設けて検討していきたいと考えているところでございます。

高橋(千)委員 長期だから人手が少なくてもいい、逆に言うと、人手が少なくてもいいということで長期化をつくってきた、そういうことを指摘しているんです。

 今後、地域移行を支援しなくちゃいけないわけでしょう、さっきから議論しているわけですが。それを、医師、看護師だけではなく、いろいろな職種で支えていくと言っている。だけれども、それも丸めで、要するに、今までの体制の中にそういう人が入ればいいというだけではなくて、上乗せしなければ、結局、望むような効果は得られないと思いますが、いかがですか。

岡田政府参考人 今回の法律では、先ほども御説明しましたように、精神障害者の医療に関する指針を定めることにしていますが、その中で、精神病床の機能分化に関する事項などを定めるという形にしているところでございます。

 この精神病床の機能分化につきましても、昨年六月に検討会、先ほどの保護者制度の問題とは別の検討会でございますが、その検討会の報告書がまとめられておりまして、その報告書の中で、新規入院患者の入院期間が短縮傾向である一方、二十万人を超える長期入院者が存在しているという現状から、急性期では、一般病床と同等に精神科医を多く配置し、早期退院を前提とした濃密な精神科医療を提供し、他方で、長期入院の方については、精神科医は少ない配置にするけれども、精神保健福祉士などを十分に配置し、退院支援や生活支援に重点を置いた医療を提供することが提言されているところでございます。

 指針の具体的内容につきましては、先ほども御説明しましたように、関係者による議論の場を設けるなどで検討していきたいというふうに思っております。

 また、精神科病床の機能分化だけでなくて、アウトリーチであるとか多職種連携のあり方や入院の長期化を防ぐための方策などについても検討していくことにしているところでございます。

高橋(千)委員 多職種で支えるということ、福祉をふやすということを悪いと言っているのではないですからね。それが結局、プラマイ・ゼロで体制は同じよというのでは意味がないんだということを重ねて指摘したい。これから具体的に指針をつくっていくということですので、具体的にぜひ大臣にも要望したいと思います。

 そこで、家族の支援についてなんですけれども、やはり家族への効果的な支援こそが、重症化を防ぐし、長期入院を解消する鍵だと私は思っています。

 それで、〇九年に家族と専門職の共働による早期支援・家族支援のニーズ調査というのがやられているんですけれども、やはり、家族の誰かが発症することで退職や停職を余儀なくされる方が四割、本当に家族の生活が一変してしまうわけですよね。家族関係が悪くなった、四六・〇%、自責の念に責められている、四八・七%、本人と一緒に死んでしまいたい、三七・八%など、本当に家族が追い詰められている実態が示されています。

 また、昨日の参考人質疑でも、家族の立場として、川崎洋子さんから、医療機関に連絡すると、まず連れてきてと言われる、それができないから本人も家族も引きこもるんだ、三百六十五日、二十四時間、気軽に相談でき、適切な情報が得られる専門的な支援が必要だということを訴えられていました。これについて、いかがでしょうか。

桝屋副大臣 高橋委員からは、患者、それから特に家族への支援ということを言われました。もう個人的には、全く私もそのとおりだと思っております。強く申し上げたい。

 やはり、精神障害者とその家族の地域での生活を支援するためには、必要なときに、今委員おっしゃった、地域で迅速かつ十分な時間をかけて、医療と生活の両面にわたる支援を提供することが重要というふうに思っております。

 ただ、それが今日まで長き精神科医療の中でなかなかできなかった、そこを、昔からの精神病院の体質も変わり、援護寮をつくり、徐々にやってきて、やっとこの体制になったわけであります。

 平成二十三年度から、医療機関の医師、看護師、精神保健福祉士等の専門職がチームを組んで、必要に応じて居宅に出向いて訪問支援を行う精神障害者アウトリーチ推進事業、これをモデル事業として実施しております。

 これは、例えば私の地元の岡山なんかでも、既にそういう体制、モデルができ上がっているわけでありまして、そうした事例を参考に組んだものでございますが、受療中断者等の在宅の精神障害者やその家族に対して、二十四時間三百六十五日の体制により支援を行い、精神障害者の在宅生活の継続、病状の安定を図るものであるということでございます。ぜひとも、このモデル事業をさらに具体的に進めてまいりたい。

 さらには、障害者総合支援法、これで地域定着支援を法定給付化したということも御案内のとおりでございまして、今後、やはり地域に、一般相談支援事業あるいは特定相談支援事業などを行います基幹相談支援センターの設置もしっかり進めていきたいというふうに思っているわけであります。

 いよいよ、家族の高齢化や核家族化の進展などの社会環境の変化にも対応するため、こうした体制づくりにしっかりと取り組んでまいりたいというふうに決意してございます。

高橋(千)委員 さすが、副大臣の地元の岡山は飛び抜けて地域移行の支援が多いわけですが、まだ地域格差が非常に大きくて、ゼロのところもございますということで、桁も違うということで、それは本当に急がれることだと思います。

 最後に、やはり経済的な支援というのも非常に大きい。さっきのように仕事をかえるような事態も起こっているのに、家族が障害基礎年金だけで暮らしている当事者を支えているというような状況になっております。

 自立支援法改正のときから課題とされてきた自立支援医療、この負担を見直すべきだと思いますが、いかがでしょうか。

田村国務大臣 自立支援医療に係る低所得者の利用者負担については、平成二十二年一月の障害者自立支援法違憲訴訟原告団・弁護団と国との基本合意文書、これは民主党政権時代でございましたけれども、この中において、当面重要な課題というふうにされたわけでありますが、その後も、予算の編成等々におきまして、やはりなかなか財源というものを捻出することができないということで、今に至っておるような次第であります。

 福祉サービスの方は本当に無料という形になったわけでありますが、しかし、低所得者に対して、自立支援医療の方はそうなっていないというような形でございますが、なかなかやはり財源のところは厳しいわけでございまして、この合意等々に関して、まだまだこれにそぐったような形になっていないということでございます。

 とにかく、財源というもの、我々は大変厳しい状況でやるわけでございまして、それは政権はかわったわけでありますけれども、このときの合意は合意であるわけでありますが、そう思いながらも、予算というものの中においてなかなか実現はできていないということでございまして、御理解をいただければというふうに思います。

高橋(千)委員 やはり経済的負担という縛りがとれることで地域移行が進むんだという立場で提言をさせていただきました。

 家族のみに負わせていた負担を社会で担って、障害当事者が地域で暮らせるようにという目標を持っていたはずなんですよね。だけれども、社会保障制度改革推進法に社会保障は本人と家族の責任という趣旨が書かれていますので、やはりこの分野が押しつけられることになるのかな。そうすると、国連の権利条約の批准どころか、明治の時代に逆戻りになってしまいますので、やはり、この検討チームの原点に立ち返ってやり直すべきだということを指摘して、終わりたいと思います。

松本委員長 以上で両案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

松本委員長 これより討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、これを許します。高橋千鶴子さん。

高橋(千)委員 私は、日本共産党を代表して、ただいま議題となりました精神保健及び精神障害者の福祉に関する法律の一部を改正する法律案に反対の討論を行います。

 精神保健福祉法改正案は、保護者制度という一九〇〇年制定の精神病者監護法の残滓を廃止するとともに、障害当事者の権利制限にかかわる重大な問題を含むものです。一方、障害者雇用促進法案は、障害者権利条約の批准を見据えた改正であり、それぞれに異なる課題を抱えた法案です。それを一括で、しかも短時間の審議で採決を行うことに強く抗議をするものです。

 以下、法案に反対する主な理由を述べます。

 本法案は、医療保護入院の同意者を家族等に広げ、要件を緩和する一方で、権利擁護措置の導入は見送りました。これは、安易な保護入院をふやし、入院の長期化など、現行制度の弊害を温存するものです。

 保護者制度は、障害当事者の尊厳を軽んじ、精神障害者の監督、医療保障、生活支援など、専門家でさえ困難な課題を家族に課してきたもので、廃止は当然です。しかし、家族同意の規定により、家族に負わされた問題の解消はまたも遠のいたと言わざるを得ません。

 厚労省が設置した入院制度に関する検討会のメンバー十一名が、検討会の提言が本法案に反映されていないと抗議の声を上げています。「家族の負担とその非合理性はまったく変わっておらず、」「その負担を負う者は拡張される」、「完全な逆コースであり、現在の精神医療福祉の矛盾をさらに拡大する」とする批判を厳しく受けとめるべきです。

 また、精神病床の再編により、長期在院者に対する人員配置が精神科特例よりも後退する可能性があることも指摘しなければなりません。現在の長期在院者は、国策により生み出されたとも言えるものです。高齢化し、合併症を抱え、要介護者もふえており、看護の人手不足は深刻です。精神科特例として一般病院より低く抑えられてきた人員配置や診療報酬の抜本見直しこそ必要であります。

 参考人質疑でも指摘されたように、地域での支援があれば、病気を抱えつつも自分の人生を歩むことが可能であるはずです。そのためにも、障害当事者とともに引きこもるなど、家族が抱える困難に対して、いつでも気軽に相談できる体制や支援が切実に求められています。

 今こそ、障害者権利条約の理念に沿って、家族に依存した医療、福祉のあり方を根本的に変え、障害当事者を権利主体として、地域、社会で支える仕組みが必要です。そのために、地域精神保健、医療、福祉、住まい、働く場の確保など、関連施策の抜本的拡充を求め、討論を終わります。(拍手)

松本委員長 以上で討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

松本委員長 これより採決に入ります。

 まず、内閣提出、参議院送付、障害者の雇用の促進等に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

松本委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 次に、内閣提出、参議院送付、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

松本委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

松本委員長 この際、ただいま議決いたしました内閣提出、参議院送付、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の一部を改正する法律案に対し、高鳥修一君外二名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ及び公明党の三派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者より趣旨の説明を聴取いたします。中根康浩君。

中根(康)委員 民主党の中根康浩です。

 私は、自由民主党、民主党・無所属クラブ及び公明党を代表いたしまして、本動議について御説明申し上げます。

 案文を朗読して説明にかえさせていただきます。

    精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  政府は、本法の施行に当たり、次の事項について適切な措置を講ずるべきである。

 一 精神障害のある人の保健・医療・福祉施策は、他の者との平等を基礎とする障害者の権利に関する条約の理念に基づき、これを具現化する方向で講ぜられること。

 二 精神科医療機関の施設基準や、精神病床における人員配置基準等については、精神障害者に対する医療の提供を確保するための指針の内容を踏まえ、一般医療との整合性を図り、精神障害者が適切な医療を受けられるよう、各規定の見直しを検討すること。なお、指針の策定に当たっては、患者、家族等の意見を反映すること。

 三 「家族等いずれかの同意」による医療保護入院については、親権を行う者、成年後見人の権利が侵害されることのないよう、同意を得る優先順位等をガイドラインに明示し、厳正な運用を促すこと。

 四 精神障害者の意思決定への支援を強化する観点からも、自発的・非自発的入院を問わず、精神保健福祉士等専門的な多職種連携による支援を推進する施策を講ずること。また、代弁者制度の導入など実効性のある支援策について早急に検討を行い、精神障害者の権利擁護の推進を図ること。

 五 非自発的入院の減少を図るため、「家族等いずれかの同意」要件も含め、国及び地方自治体の責任、精神保健指定医の判断等、幅広い観点から、速やかに検討を加えること。

 六 精神疾患の患者の権利擁護を図る観点から、精神医療審査会の専門性及び独立性を高めることや精神医療審査会の決定に不服のある患者からの再度の請求への対応など機能強化及び体制の整備の在り方を検討し、必要な措置を講ずること。

 七 非自発的入院の特性に鑑み、経済面も含め、家族等の負担が過大にならぬよう検討すること。

 八 精神科病院の管理者に対し、医療保護入院について、可能な限り、患者の人権に十分配慮した入院、入院後の治療行為の患者本人への説明に加えて、速やかな退院の促進に努めることを指導徹底するとともに、医療保護入院等の患者の退院後における地域生活への移行を促進するため、相談対応や必要な情報の提供、アウトリーチ支援など、その受け皿や体制整備の充実を図ること。

 九 認知症の人については、あくまでも住み慣れた地域で暮らし続けることを基本に置き、精神科病院への「社会的入院」の解消を目指すとともに、地域の支援・介護体制の強化に取り組むため、「認知症施策推進5か年計画(オレンジプラン)」の推進など医療福祉全般にわたる総合的な対策を講ずること。

 十 認知症の人の本人意思を尊重する観点から、成年後見制度の改善・普及のほか、本人の意思や希望をできる限り早期に確認し、それを尊重したケアの提供を確保する取組を進めること。

以上であります。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

松本委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

松本委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。

 この際、田村厚生労働大臣から発言を求められておりますので、これを許します。田村厚生労働大臣。

田村国務大臣 ただいま決議になられました附帯決議につきましては、その趣旨を十分尊重いたしまして努力いたす所存でございます。

    ―――――――――――――

松本委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました両法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

松本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

松本委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時三分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.