衆議院

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第16号 平成26年5月7日(水曜日)

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平成二十六年五月七日(水曜日)

    午前九時三分開議

 出席委員

   委員長 後藤 茂之君

   理事 あべ 俊子君 理事 金子 恭之君

   理事 北村 茂男君 理事 とかしきなおみ君

   理事 丹羽 雄哉君 理事 山井 和則君

   理事 上野ひろし君 理事 古屋 範子君

      青山 周平君    赤枝 恒雄君

      今枝宗一郎君    小田原 潔君

      大久保三代君    大串 正樹君

      金子 恵美君    小松  裕君

      古賀  篤君    白須賀貴樹君

      新谷 正義君    田中 英之君

      田畑 裕明君    高鳥 修一君

      高橋ひなこ君    武井 俊輔君

      豊田真由子君    中川 俊直君

      永山 文雄君    船橋 利実君

      堀内 詔子君    松本  純君

      三ッ林裕巳君    村井 英樹君

      山下 貴司君    大西 健介君

      中根 康浩君    長妻  昭君

      柚木 道義君    足立 康史君

      浦野 靖人君    清水鴻一郎君

      重徳 和彦君    輿水 恵一君

      桝屋 敬悟君    中島 克仁君

      井坂 信彦君    高橋千鶴子君

      阿部 知子君

    …………………………………

   議員           中根 康浩君

   議員           大西 健介君

   議員           山井 和則君

   議員           中島 克仁君

   議員           井坂 信彦君

   議員           高橋千鶴子君

   厚生労働大臣       田村 憲久君

   厚生労働副大臣      佐藤 茂樹君

   厚生労働副大臣      土屋 品子君

   厚生労働大臣政務官    高鳥 修一君

   厚生労働大臣政務官    赤石 清美君

   政府参考人

   (総務省大臣官房審議官) 青木 信之君

   政府参考人

   (厚生労働省医政局長)  原  徳壽君

   政府参考人

   (厚生労働省医薬食品局長)            今別府敏雄君

   政府参考人

   (厚生労働省医薬食品局食品安全部長)       新村 和哉君

   政府参考人

   (厚生労働省雇用均等・児童家庭局長)       石井 淳子君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局長)           岡田 太造君

   政府参考人

   (厚生労働省老健局長)  原  勝則君

   政府参考人

   (厚生労働省保険局長)  木倉 敬之君

   参考人

   (公益社団法人日本医師会副会長)         中川 俊男君

   参考人

   (介護保険(要支援)利用者)           指宿八洲夫君

   参考人

   (山梨大学医学部附属病院臨床教育センター長)

   (山梨県地域医療支援センター副センター長)    板倉  淳君

   参考人

   (東京医科歯科大学大学院医療経済学分野教授)   川渕 孝一君

   参考人

   (埼玉県済生会栗橋病院院長補佐)

   (NPO法人医療制度研究会副理事長)       本田  宏君

   厚生労働委員会専門員   中尾 淳子君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月七日

 辞任         補欠選任

  堀内 詔子君     武井 俊輔君

  三ッ林裕巳君     青山 周平君

  村井 英樹君     小田原 潔君

同日

 辞任         補欠選任

  青山 周平君     三ッ林裕巳君

  小田原 潔君     村井 英樹君

  武井 俊輔君     堀内 詔子君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律案(内閣提出第二三号)

 介護・障害福祉従事者の人材確保に関する特別措置法案(中根康浩君外七名提出、衆法第一〇号)


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     ――――◇―――――

後藤委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律案及び中根康浩君外七名提出、介護・障害福祉従事者の人材確保に関する特別措置法案の両案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、政府参考人として総務省大臣官房審議官青木信之君、厚生労働省医政局長原徳壽君、医薬食品局長今別府敏雄君、医薬食品局食品安全部長新村和哉君、雇用均等・児童家庭局長石井淳子君、社会・援護局長岡田太造君、老健局長原勝則君、保険局長木倉敬之君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

後藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

後藤委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。新谷正義君。

新谷委員 おはようございます。自由民主党の新谷正義です。

 本日は、質問の機会をいただきまして、本当にありがとうございます。

 社会保障費が毎年増大していく中で、やむを得ないことではありましたが、先般、消費税増税が行われました。財源を確保するのと同時に、今国会においても社会保障制度改革は必ず迅速に進めていかなければなりません。さまざま課題が多い中で、田村厚生労働大臣を初め厚生労働省、政府の皆様も、取りまとめに連日大変御苦労されていることと存じております。

 この日本のすぐれた社会保障制度を何よりも持続可能なものにしていく、医療、介護、年金が子の世代、孫の世代にまでしっかり受け継がれるものにしていく、これは政治の責務でありまして、その中での消費税増税でありました。田村大臣初め政府の皆様は、その重責を担い、日々全力で改革に取り組まれているものと承知いたしております。

 昨今、人口高齢化は社会問題として頻繁に取り上げられておりますが、高齢化自体は決して悪いことではないと考えております。長生きできることは本来すばらしいことです。

 問題となるのは、平均寿命と健康寿命のずれだと考えています。健康寿命を延ばし、それが延びた分、積極的に高齢者の方も社会に参加をしていただき、後輩のために一度場所を変え、また改めて生産活動にも従事してもらう、それにより本人の人生も社会も豊かになっていく、それが本来の高齢化社会のあるべき姿であると私は考えております。

 昨年の健康・医療戦略推進本部の立ち上げに続き、今国会におきましては、健康長寿社会の実現に向けて法整備が進んできております。この医療介護推進法により、さらに議論が深まり、改革が加速していくものと考えております。

 それでは、質疑に入らせていただければと思います。

 自分自身が万一重度の要介護状態になった場合、やはり住みなれた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けていくことができれば幸せなことだなと思います。急速に高齢化が進展している中で、そのような身近な地域において医療、介護、住まい、生活支援サービス等が包括的に確保される地域包括ケアシステム、これを構築することが喫緊の課題となっています。本法案は、医療と介護の制度改革を総合的に行うことで、そのような地域包括ケアシステムの構築を推進していくものと理解しております。

 他方で、患者や家族の立場からすれば、万が一に備えて、より高度な医療を提供できる病院が本当にごく身近にあれば安心するとの意見をよく頂戴いたします。しかし、市町村ごとに完全な医療を提供していくのは無理があります。高度な医療の提供を維持していくには、最新の施設、設備をそろえるだけではなく、ある程度の規模が必要となります。手術などは、数人の執刀医、麻酔科医、手術室の看護師など数人のチームが必要ですし、それぞれの診療科ごとの連携も必要となります。

 医療の質を保ち、医師の経験や技術、モチベーションを維持していくためには、どうしても最低限これだけはという規模が不可欠となります。医療の質を保っていくためには、病院の機能を明確にしつつ、より広域的な観点から医療資源を集中させる必要があります。

 よく、最近は診療科が細分化し過ぎているというお話を聞くことがあります。現代医療は高度に専門化されてきており、質を維持向上していくためには、急性期あるいは専門的医療において細分化はやむを得ないものと私は考えております。

 しかし、そうなってくると、細分化された分、どうしてもやはり広域的に医療需要をカバーしていく必要があります。二次医療圏、あるいはさらに広い地域を対象として整備していかなければ効率的、効果的な医療を提供することができなくなっている中で、また同時に、地域で完結する医療が望まれている状況にございます。

 このように、日常的な地域で整備していくものと、より広域な地域で整備していくもの、今回の法案ではこれらを同時に進めようとしております。この点は、国民から見て若干わかりにくいかもしれません。身近な地域で高度医療から生活支援サービスまで、何でもそろえるための制度改正と誤解されないようにする必要があります。

 そこで、医療と介護の総合的な確保を掲げる本法案が目指す将来像について、急性期医療、専門的医療の体制整備を含めて、改めてわかりやすく御説明いただければと思います。田村大臣、どうかよろしくお願いします。

田村国務大臣 おはようございます。きょうは連休明け早々御質問ということで、お疲れさまでございます。

 実は私、きのうまでドイツとそれからジュネーブへ行ってまいってきておりまして、ドイツではドイツの保健大臣とお会いさせていただいて、また、ジュネーブではWHOのマーガレット・チャン事務局長とお会いして、いろいろと議論させてきていただきました。やはり日本に対しては、高齢化社会の中においてどのような形で問題を解決していくか、大変期待をされておられました。

 ドイツも高齢化が進んでおりまして、介護保険は日本より五年早くスタートしたわけでありますけれども、日本ほどフルスペックではありませんでして、ある程度民間の保険等々を使いながら国の保険みたいなものを活用して生活をされていかれる、こういうものでありました。

 それから、WHOの方では、やはり日本の今般の法律、この法律に大変注目をされておられまして、これに対してもいろいろと説明をさせてきていただきました。いよいよWHOも総会があるわけであります。ちょっと私は出席できないと思いますけれども、かわりに土屋副大臣に行っていただければありがたいな、このように思っております。

 今現状、委員がおっしゃられた部分でいきますと、確かに、身近で住みなれたところで生活をされる、それは、年をとられて、いろいろな慢性期を抱えられながらも、安心して住みなれたところで住んでいく、こういうニーズが高いわけでありますから、そういうことを整備していくためには、当然のごとく、急性期から在宅医療そして介護まで、一連のサービスをしっかりと提供できるような、そのような基盤の整備でありますとか、また体制の整備をしていかなきゃならぬわけであります。

 一方で、今委員がおっしゃられたとおり、そうはいっても、身近なところで全部、全てが終わらぬわけでありまして、急性期等々になった場合、特に専門的な医療を受けなきゃならぬという場合もあるわけであります。

 そういう意味からいたしますと、一つは、今般のこの法律にも書かせていただいております、二次医療圏の中において、病床機能の連携そして強化というものをしっかり図っていく、分化も図っていく、こういうようなことでございまして、その中においてしっかりと必要な医療が受けられるような整備、これは二次医療圏という考え方の中において、地域医療計画等々も含めて、そんな中において介護と連携しながらというような形があるわけであります。

 一方で、地域包括ケアシステム、委員がおっしゃられましたとおり、これはこれで、やはり今言われたような、医療や介護、それから予防も含めて、生活支援でありますとか住まい、こういうものを一つ念頭に置いて完結できるような形で整備をしていこうということでございまして、まさに今委員がおっしゃられたとおり、必要な医療は必要な医療で整備をしていかなきゃ、これは一つ、二次医療圏ぐらいのエリアを考えておるわけでありますし、また一方で、生活という意味からすれば、これは地域包括ケア、中学校区ぐらいの中でありますけれども、これを考えておるわけであります。

 それぞれ、両方とも大変重要な部分でありますから、そういうものを整備していきながら、冒頭申し上げたような、地域で安心して暮らせるような、そんな社会というものをつくっていく、この法律の中においてもそういうような考え方を一つ念頭に置きながら、今般、お願いをさせていただいておるわけでございまして、まだまだ審議が続くかもわかりませんけれども、どうかひとつ御理解をいただいて、この法律、ぜひとも御協力をいただければありがたい、このように思っております。

新谷委員 大臣、ありがとうございます。

 まさに世界に類を見ないほどの高齢化が進展している中で、世界も注目しているところであると思います。医療、介護の質を保ちながら、日本の医療はやはり世界一とも評価されたこともございます。そのような質を保って、さらに地域で望まれるものを、安心、安全を確保していく、そういったことが今望まれている。非常に難しい局面であると思いますけれども、大臣の決意をいただきましたので、ぜひ、どうか一緒に頑張っていければと考えております。

 次に、病床機能報告制度に関して質問をさせていただきます。

 現状、急性期病院と評価されるために、急性期医療機関が必要とされる以上に看護師確保に奔走しているという実態があると認識しております。本来の望ましい医療機能に修正していくために政府も大変御苦労なさっていると存じております。その中で、今回、病床機能報告制度を新たに設けることになったと理解しております。

 この病床機能報告制度により、各病院は、病棟単位でその担っている医療機能の情報、すなわち、高度急性期、急性期、回復期、慢性期という区分から一つを選択して都道府県に報告することになります。

 また、都道府県は、報告を受けた医療機能の情報を活用して、二次医療圏ごとに、各医療機能が将来どれだけ必要とされるか、医療提供体制の将来像、すなわち地域医療構想を策定することになります。この地域医療構想に関しては、各医療機能の将来の必要量の算定方法などを今後ガイドラインで示すと説明されております。

 そこで、昨今、特に民間の医療現場では、医療機能別の必要量の総数や基準値が示されて、基準値を超える病床はいずれ急に医療機能の変更を迫られるのではないか、そういったような不安が出てきております。民間か公立かによって大きな違いもございますが、既存の病床に対して何か基準値のようなものが一方的に設定されて、これを超える病床を急に変更する、そういったようなことはないということ、それを改めてわかりやすく御説明いただけますでしょうか。

原(徳)政府参考人 お答え申し上げます。

 地域医療構想においては、将来人口の推計や年齢階級別の入院・外来受療率等を用いて、二〇二五年時点の入院・外来別・疾患別患者数等の医療需要をまず推計いたします。さらに、病床機能報告制度等により医療機関から報告された情報等を活用しながら、おのおのの医療機能が担うべき役割を鑑みて必要な病床数を算出することを考えております。

 すなわち、どういう患者さんがいるかということがまず出てきて、それにふさわしい機能がどうかというのは後で出てくる。それに対して、現実にそれぞれ担っている機能が違いますので、それをうまくマッチングさせていかなければいけない。そこの問題だと考えております。

 我が国においては、当然ながら、民間医療機関が多くを占めておられるわけでありまして、この機能分化や連携を進めるに当たっても、強制的な手法ではなくて、今言ったような客観的なデータなどを活用しながら、地域の中で、関係者で十分、どういう取り組みが必要かということを、問題意識を共有してもらう、それが一番重要だと考えておりまして、そのために協議の場をまず設置するということにしております。

 地域医療構想において、まずこの協議の場や、それから新たな財政支援もございますので、それらを活用しながら、どのような形でそれぞれの医療機関が進んでいくのか、みずから考えていただく、あるいは話し合いながら考えていただくということで、いわゆる医療機関同士の自主的な取り組みというものを基本として考えていきたいと考えております。

新谷委員 ありがとうございます。

 まさに、急に変更を迫る、そういったことではなくて、地域でよく話し合っていただいて、現実的な将来の必要量を考えていく、そういったことであると理解しております。

 まさに、効率的で質の高い医療提供体制を実現していくためには、地域医療構想をしっかりと定め、その実現に向けて関係者がお互いに協力していく、このことが重要であります。中でも、地域医療構想を担っております民間医療機関、これの協力が不可欠であると考えております。

 現在、看護師を確保することによって急性期病床の算定をする施設が多くなり過ぎているという現状認識は、恐らく各民間の医療機関でも共有されていると思いますし、また、この現状を地域において、より実態に合った機能分担に変えていかなければならないというのも、各民間医療機関において同じく共有されていると思います。

 地域医療構想の実現に向けて、この協議の場を設けること以外に、民間医療機関の協力を得るためにどのような取り組みをされるか、お伺いしたいと思います。

原(徳)政府参考人 お答え申し上げます。

 今申し上げましたように、協議の場で十分に話をしながら、みずからの役割を考えていただくということが大事だろうと思います。

 ただ、機能を変えていくに際しましては、当然ながら、施設の整備やあるいは設備が必要になる場合もございますので、その際には、今回の消費税の増収分を活用した新たな財政支援制度を活用していただきまして、この実現に向けて、民間医療機関についてもこの財政支援制度を活用いただけるものと考えております。

 そのためにも、都道府県計画の策定が必要になりますので、それに当たって、民間の医療機関も含めた幅広い関係者の意見を反映させた計画をつくっていただくということを法律上求めているわけでございまして、この財政支援制度が地域の実情を踏まえながら柔軟かつ効果的に活用されるように、都道府県に対してきめ細やかな助言をしていきたいと考えております。

新谷委員 ありがとうございます。

 次に、医師確保対策に関してお伺いさせていただきます。

 本法案では、医師確保対策の一環としまして、地域医療支援センターの機能を法的に位置づけることとしております。

 地域医療支援センターは、既に平成二十三年度から実施をされ、平成二十五年七月末までに千六十九名の医師を各都道府県内の医療機関へあっせん、派遣するなどの実績を上げていると承知いたしております。

 医師不足地域で医師の定着を目指し、医師のキャリア形成を支援していく取り組みも重要ですが、医師が絶対的に不足している道府県では、県内の医師をほかの医療機関にあっせんするだけではもはや立ち行かなくなっている状況があると認識しております。

 そのため、地域医療支援センターは、人口に比べて医師数の多い県から少ない県に対して医師を送ってもらう、そういったような取り組みも同時に進めてもらう必要があると考えております。

 地域医療支援センターが県外から医師に来てもらう取り組みを進めることについて、これまで議論された課題の有無も含めて、政府の見解をお伺いしたいと思います。

原(徳)政府参考人 地域における医師の確保や偏在の是正は非常に重要な課題と考えております。

 そのために、都道府県が責任を持ってその解消に取り組むためのコントロールタワーとして、今御紹介がありました地域医療支援センターの設置を進めてきたところでございます。

 この地域医療支援センターで、いわゆる県外の医師の活用についてでございますが、これは一部で行われておりまして、例えば、インターネット上での呼びかけなどによりまして、出身の医師の方の募集でありますとか、あるいは地方勤務を希望する医師のあっせん、こういうことを行う取り組みも実施しております。具体的には、今まで、例えば北海道で十二名、あるいは岩手県では二十六名の実績を積んでいるところでございます。

 ただ、一方で、人口に比べて医師数の多い県であっても、逆に、県内での医師の地域偏在、これが非常に大きいところもございます。現状のままでは、県同士での協力体制をとるのはなかなか難しいというふうな認識も持っております。

 ただ、今後、この地域医療支援センターを中心として、県内の地域偏在をまず解消していく、さらに、地域医療構想に必要な医師の確保、養成の施策を進めていく、こういうことを進めていく必要がまずあるんだろうと思っております。

 そのためには、こういう各都道府県のセンターを集めた情報交換会、あるいは、隣県の医師不足の状況や、先ほども申し上げたような、こうした先進的な医師確保対策の取り組みなどの共有化も図って、都道府県同士の連携を図っていきたいと考えています。

新谷委員 ありがとうございます。

 医師不足対策への対応として、医学部の入学定員の増員が行われてきております。平成二十二年度から、都道府県が設定する奨学金の受給を要件としまして、地域医療等に従事する明確な意思を持った学生の選抜枠である地域枠を設けてきていると承知いたしております。まさに、県外から医師を簡単に連れてこられない中で、こういった取り組みは非常に有効であると私は考えております。

 地域枠入学定員の数は、平成二十二年度の三百十三人から平成二十六年度には五百人と増加してきております。地域の医師を確保していくためには、地域枠の割合をさらにふやしていく必要があると考えておりますが、政府の見解をお伺いしたいと思います。

 また、あわせて、平成二十二年度に地域枠で入学した学生の卒業が平成二十八年と近づいてきております。これらの人たちが臨床研修を経てそのまま地域に定着するのかが今後大きな課題となってきております。地域枠で入学した者を確実に地域に定着させるためには、奨学金の返還免除以外の取り組みも考えていく必要があると思いますが、先ほどの地域枠の今後とあわせて、お考えをお伺いしたいと思います。

原(徳)政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほどの地域医療支援センターが都道府県内で医師を派遣できるようにするためには、派遣できる医師を確保する必要がある。そのためにこの地域枠というのは非常に重要な課題だと思っております。

 御紹介がありましたように、今、定員増も過去最大で、五百人の枠が設けられてきております。ただ、この地域枠をいつまで続けるかという問題は、一方で、将来の、例えば四十年、五十年後の医師の数を考えたときにどうするのかという課題もございます。

 それらを見据えながら、二十七年度以降、文部科学省とも連携しながら、どういう形にしていくのか検討していきたいというふうに考えております。

 さらに、地域枠で入学された方が卒業後ちゃんと地域で定着してもらわないといけない。これは非常に重要な課題であります。

 そのために、具体的には、例えば、卒業後の勤務先を、医師が不足しているような地域だけではなくして、例えば県内の中核病院とローテーションをしながらやるキャリアパスをしっかりと示してあげることとか、あるいは、例えば学生時代からもいろいろと夏休みなどを活用して医師不足地域なんかの実習をさせるとか、いろいろな取り組みが都道府県でもやられていると聞いております。

 また、先ほど申し上げましたけれども、各都道府県でつくっている地域医療支援センターそのものの情報交換会、このような形でもいろいろな工夫ができるのではないかと考えております。

新谷委員 ありがとうございます。

 次に、医療法人制度に関してお伺いしたいと思います。

 本法律案では、社団医療法人と財団医療法人の合併を可能とし、また、持ち分あり医療法人から持ち分なし医療法人への移行を円滑にする規定が入っております。

 改めて、持ち分とは、一般の民間会社においては株式に相当するものですけれども、これを相続する場合は相続税がかかってくるので、この相続税の問題で地域の医療提供体制が不安定になるということがございました。

 今国会の所得税法改正におきましても、持ち分ありの法人から持ち分なしに移行する認定を受けた場合、出資持ち分を放棄することで相続税を免除することとされております。地域医療の持続可能性を高める上で非常にすばらしいことと考えております。

 医療法人制度に関しましては、本委員会の質疑で、委員の足立先生もかなり熱意を持って取り組んでおられました。

 私は、医療法人制度が非営利であり、配当を禁じているのは、長期的、安定的に医療を提供するために一定の合理性があると考えております。実際、株式会社では、短期的に利益を分配してしまおうとする株主と長期的な視点に立っている株主との間でどのように調整をしていくかが常に課題となっておりますし、議決権を制限する株式を認めるなどさまざまな補完的な取り組みがなされてきました。非営利の持ち分あり医療法人はこれまで有効に機能してきましたが、昨今指摘されてきた問題点に関して、今回の法律による措置はさらにこの法人制度を補完していくものと理解しております。

 一方で、現在の持ち分あり医療法人がある意味不安定な立場に置かれているという認識も持っております。民間がリスクを負い、地域医療を担ってきた、国民皆保険制度を支えてきた、それが持ち分あり医療法人であり、これまで有効に機能してきました。

 この持ち分あり医療法人は、平成十八年医療法改正で経過措置型医療法人と呼ばれるようになり、新たに設立することはできなくなりました。そのような持ち分ありの医療法人におきましては、民間の運営者がみずからの財産を出資し、かつ大きな借金をし、地域医療の支え手として日々努力しているところでもあります。

 一方で、医療法人の運営者は、この経過措置型という名前のとおり、いつの日か出資財産をいきなり否定されて莫大な借金だけ残るのではないか、そういう不安を持っている方が多いのも事実であります。この不安は、長期的に地域医療を提供するに当たってはマイナスになると考えております。

 また、地域医療の確保とは異なる議論から、これは憲法上の財産権の観点になってしまいますけれども、持ち分ありの医療法人を否定することはできないと考えております。

 今後も持ち分ありの医療法人が存続することについて改めて確認をして、持ち分ありの医療法人に関する今後の方針をお伺いしたいと思います。

原(徳)政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のように、平成十八年の医療法改正で、非営利性を徹底するという観点から、新たな医療法人につきましては、財団または持ち分なし社団に限定するという措置がとられました。この議論の中で、やはり、御指摘のありました財産権の問題がございますので、この持ち分あり医療法人を一方的に廃止するということは極めて困難であるという結論が出ております。このために、いわゆる経過措置として認められているということになっているわけであります。

 ただ、根本的な問題としての非営利性を担保するために、やはり、持ち分がありというのは余り合理的な形ではないということは御理解いただけると思いますので、できるだけ持ち分なしへ移行していただきたい。そのために、今回も、持ち分なし医療法人への移行を進めるための移行計画、さらには、それにのっとって持ち分なしに移行した場合に相続税等の猶予の措置をとるというようなことを考えているところでございます。

 その他、医療法人に関しましてはさまざまな議論がございますし、ホールディング型のものとかいろいろございますので、それにつきましては、現在、医療法人についての検討会を省内につくっておりますので、そこで十分に検討をしていきたいと思っています。

新谷委員 ありがとうございます。

 持ち分あり医療法人に関しても、これまで機能してきた部分もございますし、なかなか急に廃止するというのもできない部分もあると思います。今回の制度改正、ある意味、落としどころといいますか、持続可能性をより高めていくものとして私は理解させていただいております。

 大分時間が参ってきております。介護に関して二、三質問させていただこうかと思っていたんですけれども、質問はこれまでとしまして、最後に、今回、特別養護老人ホームの入所に関しまして、要介護度三以上の高齢者に限定する措置が講じられることになっていると伺っております。軽度の要介護者であっても、認知症の高齢者の方々、在宅で生活が困難な方々もいるのも事実でございますし、また、地域によってさまざまな実情があるのも事実であると考えております。

 その中で、要介護度一、二の方でも特例的にいろいろ認めるという条項を設けていただいていると考えております。ただ、具体的なことは今後というところでありまして、ぜひ、地域の実情、そういったものを合わせた取り組みを今後お願いできればと考えている次第でございます。

 今回の法案に関しまして、まさに、財源が限られる中で持続可能性を高めていかなければならない。その中で、この法案は、まさにその可能性を高めていくものと強く認識いたしております。

 大臣に強くエールを送りまして、私からの質問を終わらせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。

後藤委員長 次に、小松裕君。

小松委員 おはようございます。自由民主党の小松裕でございます。

 本日は、今回の地域医療の医療改革、新制度改革に関しまして、専門医制度のことを中心にちょっと質問をさせていただきたいと思います。

 今回のこの法案で、大きな柱として、地域医療構想、地域医療ビジョンの作成があるわけでありますけれども、そこには、二〇二五年の医療需要でありますとか目指すべき医療提供体制、そしてそれを実現するための施策、こういったことをビジョンに盛り込んで作戦を立てるということであると思います。そこには、病床であるとか医師の数とか、そういったことはもちろん入っているわけでありますが、私が思いますに、一番大事なのは、医師の質であるとか専門家の偏在を解消すること、これが地域の医療をしっかりするために大変大事であるというふうに考えております。

 そういった意味で、昨年までに、専門医制度のあり方の検討が進められて、その報告書が出されて、そして今月、日本専門医機構という第三者機関、そこを中心にこれから専門医制度の仕組みができていく、このように認識しておりますけれども、このことと、これから進めていく医療改革をしっかりとリンクしていかなければ、しっかりとした地域医療、そして日本の医療が成り立たない、こういうことを考えております。

 そこで、すぐ思い浮かぶのが、平成十六年から始まった新研修医制度であります。

 自分自身もちょうどそのころ大学病院におりましたけれども、いきなりそういう制度が始まって、何だこれはという感じだったんです。つまり、研修医の質を高める、研修医が総合的にいろいろな患者さんを診れるようになる、質を高めるために始まった制度であるにもかかわらず、例えば、違う科に行きたい研修医が自分の科に回ってきたとき、私は違う科に行きますからもうここで勉強する必要はないんですなんということを平気で言ったりとか、それから、午後五時になると、もう時間ですからと言って研修医が帰っていく。

 我々のころは、研修医はもう修業ですから、いい医者になるために病院に寝泊まりして、そして研修を積んでいた。しかも、こう考えますと、医師免許があるということで責任を持たされるわけですね。それで、目の前の患者さんが、自分がしっかりやるかどうかで命がかかっている、そういった責任を感じると、いやが応でも、研修医であっても一生懸命やる。ところが、新しい研修医制度ができて、責任の所在があやふやになって、何か学生のような医者がふえて、二年間、学生医者を続ける、そういった雰囲気も感じることがありました。

 こういったことが自分が政治を志す原点にもなったわけでありますけれども、この研修医制度に関しましては、五年ごとに改正、来年度からまた改正するというふうに聞いておりますけれども、先々週、連休前に、日本消化器病学会の第百回総会というのがありまして、そこで医療シンポジウムというのに出てまいりました。そこで、消化器病専門医の地域の医師偏在をどう解消するか、こういった議論がされたわけですけれども、そこでもやはり研修医制度の話が出まして、現場の医師たちの多くは、新研修医制度というか、研修医制度そのものを廃止すべきだというような、十年たっても、廃止すべきだというような意見もたくさんありました。

 こういった制度というのは、一度始めてしまうとなかなかやめられないということもあるでしょうし、同時に、この研修医制度を振り返ってみると、医療体制そのものを変えてしまう、そういった危険もはらんでいるんだと思います。

 ということで、そういったことを我々は新研修医制度から学んだわけでありますけれども、この専門医制度に関しましても、二度と同じ轍を踏んではならないという観点から、まず、新研修医制度、もう十年たつわけでありますが、設立時、最初つくったときの体制であるとか、検討部会やワーキンググループなど、その制度の決め方、本当に現場の意見をしっかり取り入れたものであったのか、そして、それに関してどのように総括されているのか、そういうことについて、まず最初にお聞きしたいと思います。

原(徳)政府参考人 お答え申し上げます。

 医師の養成につきましては、各国で、さまざまな形でなされてきております。

 我が国におきましては、明治維新後、漢方医学から西洋医学へと切りかえた、それが一大画期であったと思います。その後、戦後、いわゆるインターン制度というものができて、それがいわゆる今現在の医師制度の基本になっております。

 ただ、インターン制度につきましては、その身分の問題とか、さまざまな問題がありましたので、臨床研修制度、インターンの場合は、インターン後に国家試験を受けて医師になる、それではなかなか身分が不安定だということもありまして、国家試験で医師免許を与えた後に臨床研修を始めようという改正が昭和四十三年に行われました。このときはいわゆる努力義務として臨床研修制度が取り入れられたところでございます。

 ただ、その後も、いわゆる努力義務の臨床研修制度でありましても、やはり専門志向のストレート研修が中心であったということから、いわゆるプライマリーケアの基本的な診療能力の習得が不十分ではないかとか、そのほかいろいろと、指導体制の問題もございました。

 先生も私もそういう時代の研修を受けたわけでありますけれども、その中で、新たな、今回、義務化をしようと、昭和十六年に義務化になるわけでありますけれども、その受け皿として、やはりプライマリーケアをしっかりと、まずは基本的な診療能力をつけるということを基本にやりましょうということで、十六年度に改正された。

 ただ、御指摘のように、改正後もさまざまな御不満や不適当な部分がございます。例えば、先ほどもありましたように、将来のキャリアパス、専門への移行が十分でないとか、あるいは、受け入れ病院はたくさんふえましたけれども、その指導体制に非常に格差があるとか、それから、今、大学病院での研修医が非常に減りましたので、逆に、それが地域医療への影響がある。そこから医師のいわゆる引き揚げを行って地域の医師不足が出ただとか、さらに、募集定員に対して研修希望者が少ないですので、募集定員が非常に幅広いですので、あちこちに行きやすくなっているということで、さまざまな御指摘があったところであります。

 それを踏まえて前回の見直しあるいは今回の見直しというのを行いまして、できるだけしっかりとした基幹病院のところをまず中心に据えて、いろいろな科を回るようにできるようにするでありますとか、それから、定員枠を余りたくさん置いておきますと地域偏在が加速されるということで、募集枠をある程度研修医の数に近づけていくことによって地域配分を考えるでありますとか、そういう形でいろいろな工夫をしながら、今回も次のステップへ踏み出そうということで改正をしたところでございます。

小松委員 ありがとうございます。

 悪いところをしっかり把握して改正する、それは全然問題ないと思うんです。しかし、一番最初が肝心だと思うんですね。十年前始めて、始まったら大変なことが起きたわけです。ですから、問題点を最初から考えられなかった、もっといいものを、いい研修医制度を最初からつくれなかったのかということを私は問題にしているわけです。

 その点に関して、一番最初の時点、研修医制度をつくる時点でどれだけの議論が行われて現場の声が入ってきたのか、それに関しては私は問題があったんだろうと思います。そのことをぜひ今度のこの専門医制度に生かさなければいけないんじゃないかなというふうに考えているわけであります。

 資料を配付させていただきましたけれども、新たな専門医の仕組み、これに関しましては、一ページ目、理論としては非常によくわかるんですが、一番最後に、一番下に「期待される効果」「専門医の質の一層の向上」そして「医療提供体制の改善」と、概念は本当にこのとおりだと思います。つまり、今ばらばらである専門医を統一して、きちんとした専門性のある専門医としてつくっていこうと。これはそのとおりだと思います。それによって、医療提供体制の改善、これが失われるようなことがあってはいけないというのが私のきょうの質問の趣旨であります。

 つまり、第三者機関で進められている議論、中身をどういうふうにするか、どのような専門医制度にするか、これによって医療提供体制に大きな影響が出てくる、そのような観点が少し見えてこないなというふうに感じるわけであります。

 例えば、この中に、左の下の方に、総合診療専門医、こういう新たな専門医制度をつくるというのが今回の目玉であるんですが、報道では、総合診療専門医に関する委員会の委員長の吉村委員長が、いろいろ述べている後に、まずは制度を開始することが重要である、運用しながら問題点を改善できればよいのではないか、こういうふうに述べています。これがやはり、とても不安を感じるわけですね。研修医制度のことを考えると、まず始めて、問題点を途中で改善する、それで医療ががたがたになる可能性がある、このことをしっかり認識しなければいけない。

 それで、大変恐縮なんですけれども、原医政局長も、昨年の六月の日本医事新報のインタビューで、この専門医制度に関しまして、「我が国が近代医学を導入して以来の大きな改革になる」と。このとおりだと思います。これはやり方によると思うんです。ここで、厚労省はどのように対応するのかという質問に、局長が、「専門医制度について、行政が前面に出るわけではない。中立的な第三者機関をつくっていただき、私たちとしてサポートできるところはサポートしていきたい。」「焦らずに、制度が定着するよう見守っていく必要があると考えている。」こういうふうにお答えになっています。本当にこれで大丈夫だろうかという気がするわけです。

 最近よくある、第三者機関で決めて、物事がどんどんどんどん進んでいく。これが本当に正しい道なのかな、将来起きることを見越して責任逃れをしているだけなんじゃないかな、こんな感じもするわけですし、私たちは、新しい医療制度に関しては、政治家としてしっかりと責任を持って臨んでいかなければいけないと思うんです。

 そういった意味で、第三者機関任せということ、それから地域医療体制への影響を考えれば、専門医制度に関しても、検討の段階、検討というか、これからもう、第三者機関が出たわけでありますけれども、行政がしっかりと地域医療構想とリンクするような形でグリップしていかなければいけないというふうに考えるんですけれども、その点はいかがお考えでしょうか。

原(徳)政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のとおり、新たな専門医をつくっていこうという、これは昔からいろいろな動きがございます。それはさまざまな、学会だけではなくして、例えば研究会でも、専門医あるいは認定医というような形で、仕組みがさまざま出てまいります。これは、ある意味では、患者側から見れば、専門家あるいは認定されたしっかりした医者というふうに見えて、ところが、実は、必ずしもそうでもないような専門医制度も中にはございました。そういう意味で、専門医というものをどうやって、一定のレベルの者を専門医にしていこうというものをどうしていくかということが大きな課題になったわけであります。

 その中で、今回、まずは、学会でつくっていただいた専門医制評価・認定機構というものが、今現在多くの学会が合わさってつくっておられます。そこを母体としながら、やはりどういうような者を専門医とするかというのは、やはり医師のアカデミズムの中で決めていただくということが非常に重要なことだというふうに思っておりまして、その意味では、この第三者機関、まさしく、きょうこれから、まだ設立はされていないと思いますけれども、一般社団法人日本専門医機構というものが立ち上げられます。

 この中には、メンバーとして、社団としては日本医学会連合でありますとか日本医師会、それから全国医学部長病院長会議などが発足時のメンバーとなって、さらに、病院団体やあるいは研修に関する財団などが将来の社団のメンバーになっていくというふうに聞いております。そういう中で、総意をもって決めていっていただくということが大事だと思っております。

 私どもとしては、行政としてはどうしていくのかということでありますが、今回、とりあえず、新しい専門医制度が発足する準備の立ち上げに当たって、いろいろと議論をする場を提供したということも一つございますし、それから、先ほどのいわゆる総合診療専門医、総合診療について、やはりこれからの必要な医師像としてしっかりつくっていただこうということで、この新たな機構の中でもそれぞれの専門医と同列に総合診療専門医というものをつくっていただく、そのためのボードには、いろいろな学会の方々も入りながらプログラムを決めていっていただくようなことをお願いしている。

 そういう意味では、行政がどこまで出ていくのがいいのか、なかなか難しいところがあろうかと思います。ただ、今までも、例えば、今の総合診療専門医でいきますと、地域に必要な小児科や救急などの養成プログラムも含めてください、そういうようなものについて行政としては支援するようなお金を出すとか、あるいは、こういうデータベース、専門医がどこにどれだけいるのか、どこにどういう専門医がいるのかというのがはっきりしておりませんので、そういうものをしっかりつくっていただくためのデータベース化の費用のサポートとか、そういう形でいろいろと支援はしていきたいと思います。

 制度全体につきましても、専門医機構がしっかり取り組んでいただけるように、いろいろ議論があるでしょうけれども、必要に応じて相談をしていきたいというふうに考えております。

小松委員 ありがとうございました。

 確かに、学会という言葉が今局長の口からいっぱい出てきましたが、私自身、学会に所属していて、学会の先生方が本当に地域医療に関してしっかり考えているかといったら、そうとは言えないところもあると思うんですね。ですから、このプロフェッショナルオートノミー、これは大事でありますけれども、ぜひ、かかわるのは難しいとはいうものの、第三者機関の先生方に地域医療を崩壊させないという観点を強く頭の中に入れていただく、このことが必要なんだろうと思います。

 専門医の研修体制に関しましても、例えば、資料の二ページ目にありますが、現時点では、新たな専門医に関して、丸の二つ目、専門医の認定は経験症例数などの活動実績を要件とすると。

 どういった形で専門医を認定するか、これは地域医療に大きくかかわると思うんです。例えば、現時点での専門医に関しても、田舎の先生は、専門医を取るために学会に出なければいけない、学会に東京や大阪まで行っている時間はないよといった先生がたくさんいます。つまり、本当に地域で実力のある先生が専門医を取れる仕組みになるかどうか、これが大きな問題であると思いますし、研修をするために、専門医を取るために医者が都会に移動してしまうといったことも、状況によっては考えられると思うんです。

 ですから、そのようなことがないように、一言で言うと、二次医療圏の中で専門医制度が研修も含めて完結できる、こういった視点をぜひ入れていただきたい。関係ないというんじゃなくて、可能な限り厚労省もかかわっていただきたいなというふうに思うわけであります。

 この専門医制度に関して、もう一つ言えば、例えば、一言で専門医といっても、本当に緊急性を要する専門医とそうじゃない専門医があると思うんですね。緊急性を要する専門医であれば、それが各二次医療圏にいなければいけないということになりますし、そうでない専門医であれば、東京とか大都会だけにいてもいいんだろうと思います。そういった区分けも必要であろうと思います。

 この二ページ目には、例えば、基本専門領域、下の段、内科、小児科、その他ありまして、上にサブスペシャリティー専門医、若い人はサブスペシャリティー専門医を取りたがるだろうなというふうに予測するんですが、先日、地元で小児科の先生と話をしたら、小児科の先生なんかは、小児科にサブスペシャリティーは要らない、何でも診ることができる小児科医が地域にたくさんいる、これが大事なんだということをおっしゃっていました。

 ですから、これがもし小児科の中でサブスペシャリティーを有するような仕組みになれば、また地域から小児科医がいなくなる、いても役に立たないということが起きるわけでありますから、そういったことをしっかり考慮していただきたいと思います。

 もう一つ、専門医に関しましては、制度がしっかりしてくれば、専門医制度を活用して各二次医療圏の専門医を把握できると思います。

 ですけれども、制度も、実は専門医制度開始が二十九年、三年間の研修、これを考えると、平成三十二年にならないと専門医制度ができてこないということになりますね。そうすると、現時点でこの新しい新医療政策が始まって、六年間は専門医制度ができないといったことになります。そうすると、地域偏在をなくすために、この二次医療圏にはどれだけの、どの専門家が足りないのかといったことに関してしっかりと把握するということが、これは専門医制度を抜きにして、必要であるというふうに考えております。

 例えば、私、一九九九年に、大学病院にいて、教授室に呼ばれたんです、小松君、来月からある病院に行ってほしいと。教授は絶対ですから、私はその場ではいと答えて、その次の年からその病院に行ったわけでありますけれども、要するに、ある病院で、私は消化器の中の膵臓とか胆管の内視鏡を専門にしていました、そういった専門家がいない、ERCPの件数が二十件しかない、ここを何とか立ち上げたいから専門家を送ってくれと言われて、そこの院長が教授のところにやってきたんですね。それで、院長が、わかった、じゃ、小松君を出すと言って、決めた後、私が呼ばれて、行きなさいと命令されて行った。

 いわゆる医局制度なんですが、こういったことが、専門性に関しても医局制度が陰で機能していたわけですね。つまり、どこの病院にどういった専門家がいない、そのときに、では、この人を送ろうというのが医局で完結していた。医局がだんだん存在感が薄くなっていくという状況で、こういったことを、つまり、この病院にどの専門家がいないということをしっかりと把握して、配置するのはなかなか難しいところもあるとは思うんですけれども、まず把握することが大事なんだろうと思います。

 そこで、現時点で、各二次医療圏についても、専門性の把握ができていなければいい医療体制が提供できないわけでありますが、この資料の三枚目、日本一長寿の長野県の取り組みをちょっと御紹介させていただきますけれども、長野県は、十の二次医療圏、この二次医療圏の中で医療が完結するように目指して、いろいろな取り組みをしているわけであります。

 このときに、この絵にありますように、長野県は広いですから、十の医療圏があるわけでありますけれども、次の、一番最後のページ、医療に関して、DPCによって専門性を分析しているわけであります。DPCというのは、御存じのとおり、DPC病院に関して包括的に診療報酬を決めるといった制度でありますが、医療の質も同時に調べることができるわけです。

 例えば、一番最後の資料の左側、あえてカラーにしましたが、上から二番目に長野市民病院と長野中央病院とありますが、これを見ると、赤いところ、これは循環器ですけれども、循環器に関しては長野中央病院がたくさん診ている。この専門家が多分いるということであります。隣の、右側の緑に関しては、これは消化器なんですが、消化器は長野市民病院がしっかり診ている。一番左、青いのは脳、神経なんですが、これは長野中央病院は少ないけれども、長野市民病院は多い。

 DPCを分析することによって、各病院の専門性、そして各二次医療圏で患者さんがどのように移動しているか、こういったことも調べることができるわけで、これを長野県では行っているわけです。

 この専門家の配置ということに関しまして、今回の地域医療構想においても、二次医療圏ごとに専門医の偏在に関して分析をする、それを役立てる、DPCをそういったことに使おうという考え方が僕はあるんじゃないかなと思ってこれを見させていただいたんですが、場合によってはDPCをさらに専門家の偏在のために進化させる、そういった考えもあると思います。

 そういった将来構想、専門医の把握をどうするか、分析をどうするか、このことに関して、DPCも含めて御意見をいただけたらと思います。

原(徳)政府参考人 お答え申し上げます。

 その前に、先ほどちょっと、臨床研修制度の義務化の開始、昭和十六年と言ったみたいですが、もちろん平成十六年の間違いですので、訂正をさせていただきます。

 その上で、専門医制度をつくっていく上で、地域医療との関係、これも検討会でいろいろ議論がございました。

 結論は何かといいますと、専門医を育てていく中で、一つの病院だけではなくして、三年間、大体、ほぼ三年程度と考えておりますけれども、三年間のその修練の期間のうちにいろいろな病院を回ってもらおうということでプログラムをつくっていただきます。そのプログラムの中に、例えば大きい病院から地域の中小病院も含めて、中には科によっては診療所という場合もあると思いますけれども、そういうような形でのプログラムをつくった上で、それをこの専門医機構が認定していくという仕組みを考えております。

 そういう意味では、患者さんは地域に当然おられるわけですから、もちろん疾患の程度によって、難しいのはやはり大きい病院しか無理かもわかりませんけれども、ある程度の病院なら、ある程度対応ができるなら、そういうところでも研修はできますので、そういうプログラムをしっかりとつくっていただく。こういうことを中心に、地域医療へできるだけ影響の出ないような配慮をしていきたいと思います。

 それから、医療計画あるいは地域医療構想の中で、専門医などの専門的な方々の配置をどうしていくか。

 今までお答えしていたのは、病院、病床機能、機能の分化を言っておりましたけれども、当然ながら、疾患別に見たときに、必要な専門医の数というのは考えなければいけない課題だと思います。現在でも医療計画の中で、例えば糖尿病の専門医、専門の医者、医療従事者の確保であるとか、そういうことも書くようにはなっておりまして、一定程度の考え方は普及していると思います。

 その上で、さらにこの専門医制度そのもので認められた専門医をどう配置していくかというのは、これは先ほど御指摘のあったように、出てくるのはもう少し先になりますので、それを踏まえながら、定着度合いを見ながら考えていく必要があると思いますけれども、疾患の種類ごとにある程度の患者数がわかりますので、それに応じて必要な医師の確保、これは、例えば専門医という形なのか、専門とする診療科というのか難しいんですけれども、そういう形での配慮というものは当然必要になると思いますので、そのあたりの検討は含めていただきたい。

 それから、DPCデータにつきましてですけれども、DPCデータも含めましていろいろな情報をいただくことになっておりますので、それらを踏まえながら、しっかりとした形で、二次医療圏で必要な医療というものの把握に努めていきたいというふうに考えております。

小松委員 ありがとうございます。

 紙に書いたプログラムでうまくいっても、本当に実際現場でうまくいかないと、特に指導に関してうまくいかないということをいっぱい目の当たりにしていますので、ぜひしっかりと現場の意見を取り入れるような形の専門医制度の研修制度をつくっていかなければいけないというふうに思っています。

 そして、もう時間ですので、最後に言いたいことだけちょっと言って終わりにさせていただきますけれども、今回の医療構想に関しましても、当然のことながら、専門医制度や研修医制度、今回はお話はしませんでしたけれども、かかわってくると思うんです。

 これに関しても、先ほど総合診療専門医の話をいたしましたが、もし専門医制度にこれを取り入れるのであれば、研修医制度自体も考えなきゃいけない。つまり、専門医と研修医をリンクさせるということも僕は大事だと思っています。

 例えば、総合診療専門医、これは定義がこうなっているんですね。日常的に頻度が高く、幅広い領域の疾病と傷害などについて、適切な初期対応と必要に応じた継続医療を全人的に提供することが求められる。これが総合診療専門医です。

 医師法に書かれた研修医の概念。医師が、医師としての人格を涵養し、将来専門とする分野にかかわらず、医学及び医療の果たすべき役割を認識しつつ、一般的診療において頻繁にかかわる負傷または疾病に適切に対応できるよう基本的な診療能力を身につけること。

 これはどこが違うんだろうという感じがしますし、本来、こういったものは医師免許を持った医師自体が身につけていなければいけないものじゃないのかなというふうに考えるわけであります。

 そうしますと、医療制度というのは、大学での医学教育、そして研修医制度、専門医制度、これらが深くかかわっているわけですし、それらがばらばらであってはいけないというふうに思います。医師の教育ということと連携して医療構想をつくっていく、このことが極めて大事だと思いますし、第三者任せというのではなくて、しっかりそこに我々がかかわる。かかわり方はいろいろ難しいとは思いますけれども、うまくいかないと大変なことになる、では、責任は誰がとるんだということに必ずなりますので、しっかり目をみはるということが大事だと思います。

 また、先ほどの新谷先生の質問でも、地域枠に関して、文部科学省と連携をとってといった御答弁がありましたけれども、医学教育というのは、六年間の医学教育は文部科学省、そして卒業してからの卒後教育は厚生労働省、この壁が、いろいろな弊害があるなというのを実際に感じています。

 そこら辺もしっかりこれから、地域、日本でいい医療をするためには、いい医者を育てるんだといったことがうんと大事なんだという意識でやっていかなければいけない。つまり、大学教育、研修医制度、専門医制度、それと地域医療、これをしっかりと連携していかなければいけないということを強調させていただいて、私の質問を終わりにさせていただきます。

 ありがとうございました。

後藤委員長 次に、輿水恵一君。

輿水委員 公明党の輿水恵一でございます。

 本日、質問の機会を与えていただきましたことに、心より感謝を申し上げます。本当にありがとうございます。

 現在上がっております、地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律案。いろいろなことがまざっているんですけれども、私の中で私なりに整理をさせていただきますと、まず医療機関。今、高度医療に集中している、しかも急性期に集中している医療機関を、回復期から慢性期、満遍なく地域の方に行き渡るような形で、まず再編成をしていきましょう。その上で、治り切らない方は慢性期病院に入る方もいらっしゃる、また、やはり施設での介護が必要な方、重度の方はそういった形でお願いをしながら、在宅でいける方についてはできるだけ在宅でという流れの中にあって、在宅における医療と介護が安心して地域で受けられる、そういった仕組みをどのようにつくっていくのか。

 全体としてそういうつながりの中にある中で、さらに、在宅といっても、やはりできるだけ、支えられる方よりも支える側の方をふやしていくためのしっかりとした介護予防も、地域の事業として進めていきたい。

 こういった、総合的に将来の医療と介護の需要に対して、どう全体としてそれを受けていくか、そしてしっかりと対応していくか。まさに、今までも二〇二五年問題が言われていましたけれども、本当に大きな山である。そこを、今のうちに総合力をもってどうしっかり支えられる、受けとめられるようにしていくのか。この法律案、総合的に進めていくという意味で、私は非常にいい法律だというふうに理解をさせていただきながら、一つ一つ質問をさせていただきたいと思います。

 まず初めに、効率的かつ質の高い医療提供体制の構築についてということで、先ほどの、高度急性期、急性期に集中している医療を、回復期、慢性期という形で分散していく、機能の分化を進めていくということで、まさにこれは大事だと思うんです。今、現時点でやはり急性期に集中している、こういったものをどういう形で、どういった誘導策をもって回復期、慢性期に持っていくのかが非常に大事だと思うんです。

 その前段階として、まず、この考え方、いわゆるワイングラス形を、ヤクルト形と言われていましたけれども、そういった形に持っていくことに対して、医療的な見地で、また医療関係者の皆様がそのことをよく理解して、これがやはり大事だ、進めていこう、このような合意がとれているのかどうなのかについて、お聞かせ願えますでしょうか。

原(徳)政府参考人 お答えを申し上げたいと思います。

 ワイングラス形の図が出てくるのは、いわゆる診療報酬の世界で言う七対一入院基本料のベッド、その数が非常に大きいということでありまして、そこに、では、本当の意味の急性期の患者がどれだけいるのかというのは当然あるわけであります。もし患者さんが本当にそれだけいるなら、それを無理やりしぼむというのは、それは難しい話です。

 ところが、実際的には、多くの地方の病院なんかにおきますと、あるいは都会でもそうですけれども、入院患者さんは非常に高齢化してきているというのを実感として先生方は言っておられます。それにふさわしい医療が必要だということも考えておられるわけであります。

 そういう意味では、そういう患者像にふさわしい医療の提供の仕方というのを考えていきますと、今回私どもで考えているような、高度急性期から急性期、回復期、慢性期みたいな、こういうような形でそれぞれ機能分担をしていこうというのがおのずから出てくる結論だというふうに考えております。

 実際問題、今回の法案を出すに当たりましても、日本医師会や病院団体の医療者、あるいは都道府県や市町村等の自治体の代表の方、あるいは医療保険者や医療を受ける患者の代表などを委員とする社会保障審議会医療部会においても議論を行ってきております。

 また、先ほど言いましたが、今回の診療報酬改定においても、この機能分化、連携を推進していくこととしておりますけれども、当然ながら、診療報酬を決めます中医協には、医師会を初めとする病院団体の診療側、あるいは医療保険者や患者等の支払い側、それから中立の委員がおられまして、その中でしっかりと議論をしていく中でまとめられてきたというふうに考えております。

 そういう意味では、この病床の機能分化、連携が必要だということは、医療関係者のみならず、一般的にも広く十分に理解が得られているものと考えております。

輿水委員 ありがとうございます。

 まさにそういった形で、七対一のところ、本当にそういった患者さんがそこにいるのかどうなのかも含めて全体的な見直しが進められるという中で、今、七対一でやっている病院機能を、回復期あるいは慢性期の方に誘導しなければいけないということで、当然、その誘導策、診療報酬あるいは今回の基金を活用しての取り組み等もあるのかと思いますが、その辺の誘導策について、具体的な内容についてお聞かせ願えますでしょうか。

土屋副大臣 平成二十六年度診療報酬改定において、七対一の入院基本料について、急性期の複雑な病態を持つ患者に対応する評価となるよう、患者の重症度や医療、看護の必要性を十分に踏まえた要件に厳格化するとともに、急性期後の受け皿となる病床の充実等を図るため、新たに地域包括ケア病棟入院料を創設したところでございます。

 今回の法案では、そのほかに消費税増収分による新たな基金を都道府県に創設することによりまして、急性期から回復期、慢性期への転換など、病床の機能分化、連携のために必要な事業をこの基金の対象とすることとしております。

 診療報酬と医療法の取り組みを車の両輪として、急性期から回復期、慢性期、在宅医療まで、患者が状態に応じた適切な医療を受けられるよう、病床の機能分化、連携を進めてまいりたいと考えております。

輿水委員 ありがとうございます。

 まさに、患者さんの状態に合わせて適切な医療が受けられる、そういった機関として、医療の機能分化を進めていく、そういったことがよくわかりまして、まさに診療報酬の改定、あるいは基金の活用をしっかりと進めていただければと思います。

 その上で、やはり在宅といっても、急性期から、病気、またいろいろなけがをされた方、やはり必ず、どうしてもいろいろなケースで多くの後遺症が残られる。例えば、言語障害、高次脳機能障害、あるいは精神障害、あるいは嚥下障害、いろいろな、当然、手足の麻痺等の障害もあると思います。そういった障害に対しまして、しっかりとリハビリを早期の段階から進めながら、そして、きちっと在宅に向けて適切にそういった取り組みができる、またそういったことをしていくことが将来の地域包括ケアシステムの構築にとっても大変重要な取り組みであると考えますけれども、そこで、このリハビリテーションの強化についてどのようにお考えなのか、お聞かせ願えますでしょうか。

木倉政府参考人 お答えいたします。

 先生御指摘のように、患者さんが入院治療が必要になりましても、早期に在宅に復帰をしていただき、あるいは社会復帰をしていただく、それで住みなれた地域で暮らしていけるようにするということは大変重要なこと、そのために適切なリハビリテーションを早くから構築していくことは大変重要なものと思っております。

 医療保険の診療報酬の方におきましても、今回、春からの改定におきましても、急性期の病棟におきましては、入院早期からリハビリテーションで、日常生活動作、ADLでございますが、その低下の防止を図れるようにということで、リハビリテーションの専門職を配置しながら、定期的にADLの評価を行ってもらって、患者さん、家族の方にきちんと説明をしながら、結果的に退院のときにADL低下を一定以下に抑えられたというふうな結果を出せた場合の評価ということを、新たに診療報酬に取り込みました。

 それから、回復期のリハビリテーション病棟におきましても、集中的にリハビリを行って退院支援も行えるということで、きちんと専門知識を持たれたお医者さん、専従の医師と、それから退院支援を行える社会福祉士さん、これを配置して支援をされている場合の評価も新たに設けました。

 それから、退院後の生活、御家庭、地域に戻られた上での生活環境が大変影響してきますので、入院の早い時期に、リハビリテーションの専門職の方々が御自宅なりを訪問いたしまして生活環境をよく見させていただいた上でリハビリに取り組むということが大事だということで、入院中に住環境をよく把握した上でのリハビリ計画をつくっていただく場合の評価も新設をしたところでもございます。

 このような新たな施策も組み込みまして、患者さんが早期にリハビリを受けて、できる限り地域で継続して自立していけるように支援をしてまいりたいというふうに思っております。

輿水委員 ありがとうございます。

 まさに今回、法律の中に、効率的で質の高い医療、そういう言葉が使われているんですけれども、確かに、病気の症状を治した後、この後遺症に対してもしっかりとした、できる限りの回復を目指してのリハビリテーションをしっかりとつなげていく、さらに、病気が治って病院から退院された後、せっかく施した医療に対して、その機能が継続できるように、あるいは回復に向けて、地域での連携というのが非常に大事になってくる。

 ここまであって初めて、病院で高度な医療をいろいろな形で、患者さんの回復のためにいろいろな取り組みをした、そしてそれが地域の中でも継続、持続していけるようなそのつながり、地域での看護とか介護、そこにつなげていくことによって初めて、効率的で質の高い医療というものがこのようにあるのだろうというふうに私は確信するんですけれども、この点につきましての見解をいただけますでしょうか。

田村国務大臣 まさに今先生がおっしゃられたところ、大変重要なところでありまして、今般、冒頭からおっしゃられたとおり、地域完結型というような形になる中において、当然、それは医療もそうなんですが、介護というものもあわせて提供される体制にしていかなきゃならない。

 でありますから、急性期からいよいよ退院という中において、退院支援というものをしっかりしながら、また日常の療養支援というものも必要であります。状況によってはまた急変する場合もあるわけでありまして、そのような急変したものに対しての対応というものもあるわけであります。そして、いよいよ人生が最終局面をお迎えになられるという部分では、みとりという部分も必要になってくるわけであります。

 そういう意味では、医療、病院から退院した後の医療、それは当然リハビリも含めてでありますけれども、それから介護、こういうものを連携して提供できる、こういう体制が整備されてくることが重要であります。

 そういう意味で、今般の診療報酬改定、今局長の方から話がありましたけれども、これとあわせて、新しい財政支援制度という中において、例えば在宅医療、これの協議会等々をつくるその設置の費用でありますとか、またチーム医療をするための研修、こういうものも含めて対応していく中において、今委員がおっしゃられたような体制がしっかりと組めるようにしていく。これができなかったら、結局は絵に描いた餅で、退院した後、十分な生活ができない、十分な医療が受けられないということになってまいろうというふうに考えておりますので、この部分が大変、今般の法律の中においても肝になってくるわけでございますので、しっかりとそれの体制整備が進められるよう、財政的な支援も含めて対応してまいりたい、このように考えております。

輿水委員 どうもありがとうございました。

 まさに、医療、また地域での看護、介護、それが総合的に働いてこそ、本当の質の高い医療の姿があるように私も思いまして、ぜひこれはしっかりと進めてまいりたいと思います。

 その中で、今現在の問題なんですけれども、急に症状が悪くなって入院されて、急性期を通り越してやっと退院できる段階になったんだけれども、やはり家族としては心配で、何とかもうちょっと病院にいていただいた方がいい、あるいは、施設の方でしっかりと見てもらった方が安心だというような形で、退院する際に、どこに行ったらいいのかとか、また、在宅での不安を非常に抱えている、そういった御家族もたくさんいると思うんですね。

 そういった中で、私は非常に大事だというふうに思っているのが、病院で、医師や医療ソーシャルワーカーあるいは家族の方、ケアマネジャーさん等が集まった、そういったケアカンファレンスを、退院の前に丁寧にやっていく。

 ある患者さんも言いました。お医者さんとカンファレンスがあって、大丈夫だよ、家に戻ってきて、もしものときがあったらちゃんと私が見てあげるから、安心して在宅で、そして、こうやって看護婦さんもちゃんと定期的に回るから、安心して大丈夫だよと言っていただいた、その一言で、在宅で、また、安心して御家族を迎え入れることができたんだと。

 このケアカンファレンスというものがあることによって、その後の家族の負担とか、あるいはその先のことが丁寧に適切に進められると思うんです。何とかこのケアカンファレンスを具体的に、また積極的に進めていく取り組みがこれから必要なのかなと思うんですけれども、この点についての見解をお聞かせ願えますでしょうか。

原(徳)政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の点は非常に重要なことだと思っております。特に、病院から退院する前に、退院後の医療や生活、介護がどういうふうになるかということを十分に御理解いただくということが大事だと思います。

 その意味では、地域によって違いますが、さまざまな職種の方が集まられて、退院後の生活あるいは医療をどうしていくかということを話し合っていただくケアカンファレンスというのは、非常に重要だというふうに考えております。

 そのため、診療報酬におきましては、そのような、医師や訪問看護師あるいはケアマネジャーなども含めた、共同して、かたい言葉で言いますと、退院時の共同指導と言っておりますが、そういうような項目も設けて、そのような評価をしているところでございます。

 それから、新たな基金におきましても、そのためにはいろいろとそういうノウハウも必要になりますので、多職種で連携するための、在宅チーム医療を担うそのための研修などについても、地域の実情に応じて、基金などを使いながら実施できるようにしていただきたいというふうに考えております。

輿水委員 どうもありがとうございます。

 まさに、在宅時の共同支援事業、こういったものを適切に進めていただきながら、地域へのそういった流れが安心してできれば、そのように思います。

 それでは、いよいよ地域包括ケアシステムの構築ということで、今度は地域に光を当てて質問をさせていただきたいと思います。

 今確認させていただいたとおり、病院から機能分化をして、リハビリも進めながら、ケアカンファレンスをして、そして地域、あるいは施設に入られる方、地域に来る方、そういった形で、さまざまな形の退院後の生活があるという中で、やはり施設で全ての方を受け入れることができない、そういったこれからの状況を鑑みたときに、地域の中でやはりしっかりとした医療と介護が受けられる、そういった体制づくり、これが大事であり、これがまさに地域包括ケアシステムという形になるのだと思います。

 ここで、地域のこの包括ケアシステムというものは、システムをつくればできるんじゃなくて、私の思いからすると、その方が地域で安心して医療も介護も受けられるように、みんながどうしたらいいかという形で集まって考えることによって自然に包括的なケアシステムができてくるのであって、ケアシステムをつくるとかあるとかではなくて、自然にできるものだと思っているんですね。

 ということは、そのケアシステムの一番の原点とか肝になる部分、かなめとは、やはり一人一人が地域に帰ってきたときにどういうふうにしたらいいのかということを真剣に寄り添って考える、その姿勢が大事だ。ここから自然とケアシステムにならざるを得ないのかなというふうに考えるのですけれども、その辺の考え方についての見解をお聞かせ願えますでしょうか。

田村国務大臣 地域包括ケアシステムというのは、ハードをつくるというようなイメージではないわけでありまして、やはりそういうような仕組みをつくるためには、人というものが必要であり、人が連携していくということが大変重要なんだろうというふうに思います。

 今委員がおっしゃられたような意味では、例えば保健でありますとか、また医療、介護でありますとか、そのような中においての専門職の方々が連携する、そしてまた一方で、それだけではなくて、地域の中において、自治会でありますとか老人会でありますとかボランティア団体、こういう方々も含めていろいろと情報交換しながら必要なものを提供いただくということになってくるのであろうというふうに思います。

 そのような意味では、もちろん在宅医療と介護の連携というものは重要でありますが、あわせて、地域ケア会議というもの、この中に医療、介護も含めた多職種の専門職の方々が入られる、場合によっては、今言った、地域でいろいろな活動をされておられる団体の方々も入られて、どのような形で整備をしていくかというようなことも含めて御議論をいただいていくわけでありまして、ある意味、地域力というものともかかわってくるのであろうと思います。

 委員がおっしゃられますとおり、何かこちらからばんと与えてつくられるというものではなくて、それぞれの地域の中においてそれぞれのニーズも違ってこようと思いますから、地域の中において、自然発生的にとは言いませんけれども、必要に応じて、その地域の中においてそれぞれの方々がかかわって、その地域の地域包括ケアというものをつくっていく。それが地域包括ケアシステムであろう、私もこのように認識いたしております。その中において重要な役割を果たすのは地域包括支援センターであるわけでございまして、そのような意味での強化というのは、我々もしっかりと対応していかなきゃならぬわけであります。

 いずれにいたしましても、国は、勝手にやってくださいと言うわけではないわけでありますので、そこには国や自治体がしっかり関与しながら、地域のケア力というものをしっかりと整備してまいりたい、このように考えております。

輿水委員 ありがとうございます。

 まさに、一人に光を当てていくときに、自然に、医療あるいは看護、介護、またその他の生活支援が必要になって、それがケアシステムとして機能していく、そういうイメージであると思います。ありがとうございます。

 その上で、一人に寄り添うというその一つの形として、やはり今大臣おっしゃられたように、ケア会議というものが一つの形としてあるのかなと。そして、ある方に対して、この方の状況がこういう状況なんだけれども、皆さん、どういうふうにしたらこの問題が解決できるのか、この方が地域で安心して暮らしていけるのか、会議をしながら、そしてそれぞれの役割を持った方が、ここは私が、ここは誰々さんが、そういった形で総合的に支援をしていくことになるのかと思います。

 そこで、私も先日、石川県の津幡町というところで、本当に一人一人に寄り添ってケア会議をされているところの現場を見させていただきました。

 あるひとり暮らしの高齢者の方がいらっしゃいました。その高齢者の方に対して、どういう支援が必要なのかということを含めて、親戚の方とかまた地域の知人の方、そういった方も含めて、総合的に何ができるのか。そこに介護、また看護師さんも含めて、どういうふうにしたらいいか。そして、この方の財産の管理ということで、あるいは後見人もあった方がいいんじゃないか。そういう、総合的に一人に、家族のあり方とか親戚の方の支援とか地域の方の目も含めて、総合的にどういった形でこの方が一番安心して医療と介護が受けられるのか、そんな取り組みを話し合いをしながら、そして一つ一つのケースを解決して、そこの皆さんが安心して暮らせる、そういった地域をつくっていらっしゃいました。まさにこういうふうな形で、専門職だけではなくて、家族の方も、大事な取り組みの一員だと思うんですね。

 今回の地域包括ケアシステムは、先ほど大臣おっしゃられましたように、当然公共の力も必要だと思いますけれども、自助と互助と共助と公助がバランスよく組み合わさっていく、それをどう組み合わせるかは地域のケア会議の中できちっと議論をされて、丁寧な取り組みが必要だと考えているわけでございます。

 まさにこのケア会議、地域で積極的に、ここから一人一人に光を当てていくことのスタートがあるのではないかなと思うんですけれども、この点についての見解をお聞かせ願えますでしょうか。

土屋副大臣 委員は、石川県の津幡町まで行っていただいて、本当に現場を見ていただいて、そしてこういうことが必要だということを実感として思われているということをすごく強く感じますけれども、やはり自助、互助、共助、公助、これをいかに本当に地域にバランスよく、そして皆が共有するかということは最も大事なことだと考えています。

 そのためには、ケアマネさんとかそういう専門の方がいっときの時間にチェックするのではなくて、やはりいつも寄り添って、その方をよく知っている方の意見というのは非常に大事だと思います。そのためには、地域ケア会議も積極的に活用して、地域の課題について共通の認識を持ち、みずからの地域の将来のビジョンを共有した上で、一人一人の個に立って考えていく体制整備をしていければと思います。

 介護保険法第四条にもあるとおり、高齢者本人も自立に向けた意識を持つこともまた大事だと思います。

 これからも、地域ケア会議を大いに活用しながら、地域で本当に温かく寄り添えるような仕組みをつくっていきたいと考えております。

輿水委員 ありがとうございます。

 津幡町だけではないんですけれども、いろいろな現場で、そこでお話しいただくことが、地域のケア会議、本当にもう食事をとる暇もないくらいお忙しいケアマネさん、あるいは介護士さん、看護師さん、また地域の方が集まって会議を開いていくんですけれども、その会議、幾ら時間をかけても、また、大切なので、やらないわけにはいかないのでしっかりと進めさせていただきますが、何分、無報酬という形の中での取り組みが今現場で行われて、それは一人のためなので、私たちは大丈夫なんだけれども、今後そういったケア会議がふえていったときに、自分の本当にやらなければならない訪問の看護だとかそういったところの手もなかなか回らなくなってくるという意味では、やはりそこに何らかの適切な評価もしていただけるとありがたい、こんな現場のお声をいただいてきたんですけれども、この点についての見解をお聞かせ願えますでしょうか。

原(勝)政府参考人 お答えを申し上げます。

 地域ケア会議でございますけれども、個別のケースにつきまして、多職種協働で支援策を検討する場でございます。

 御質問ございました報酬の問題でございますけれども、会議の実施に当たりましては、ケアプランを担当しているケアマネジャーや、今お話ございました御家族、こういう方以外に、第三者である専門職、例えば医師とか歯科医師でございますとか、そういった専門職の参加もいただきながら検討を行うというのが一般的でございます。

 したがいまして、当事者である御家族とかに謝金みたいなものを払うのかという問題はございますけれども、そういう地域の専門職の方々に、予算をいただいた場合には適切な報酬を支払うことは可能であるということでございます。実際、包括的支援事業として地域支援事業交付金というものを出しておりますけれども、この対象経費としてそういうものを見ております。

 いずれにしましても、開催する主体、参加するメンバー、頻度、会議の時間等が地域によって異なっておりますので、市町村等が地域の実情に応じて取り組んでいただきたいと考えているところでございます。

輿水委員 ありがとうございます。

 地域の実情に応じてということで、なかなか、実情に応じると難しい地域もあるのかもしれませんけれども、いずれにしても、地域ケア会議は本当に大事であって、その中身、状況に応じて適切な評価を、また、そういった取り組みをしている地域に対しましてはしっかりとした支援等も検討をしていただければと思いますので、よろしくお願いをいたします。

 ここで一つだけ、ちょっと毛色の違う話で、先ほど、地域の病院から在宅に向けてのいわゆるケアカンファレンスあるいはケア会議、突然、いろいろな状況が変わってから、慌てていろいろな状況に対応していくということも大事だと思うんですけれども、ふだん地域の中で生活している状況の中で、もし自分がこういった介護状態になったら、あるいはこの地域で一回病院に入院した後、退院したときに、どういった医療だとか看護、介護が受けられるのか、そういったことについて、事前に家族とか、要支援の方等を対象にするのかと思うんですけれども、事前によく相談をしながら、いざというときにも安心して落ちついて対応ができるような環境の整備も大事なのかなと。

 二〇二五年に向けて急にふえてきたときに、そこに慌てて端からケア会議をするよりも、事前に、ある程度そういった知識とか状況を自分で捉えながら自分で判断ができる、そういった方も育てておくことも必要なのかなと思うんです。

 そういった中で、先ほど大臣からありました地域包括支援センター、これが多く機能するんだと思います。その地域包括支援センターで、そういった将来のことに対しても、こういうふうな形で将来ビジョンを描きながら、自分が、先ほど言われたように、みとりというか、最後の最後までこの地域で安心して暮らしていける、そういったビジョンを描いていただくことも大事かなと。

 そういった意味で、地域包括支援センターの機能強化とか、さまざまな支援もあってもいいのかなというふうに考えるんですけれども、その点についての見解をお聞かせ願えますでしょうか。

原(勝)政府参考人 お答えを申し上げます。

 高齢者を中心に国民一人一人が、介護が必要となった場合に備えて事前に知識等を得て、その生活に備えていくことは大変重要であろうと考えております。そのために、市町村や、お話ございました地域包括支援センターの役割は大変大きいと思っております。

 特に、地域包括支援センターの役割の中には、総合相談支援事業ということで、住民の各種相談を幅広く受け付け、制度横断的な支援を実施するというような役割がございます。そういう意味では、地域包括支援センターの役割には大変期待をしているところでございます。

 また、包括支援センターの機能強化ということで、今回の制度改正におきましても、地域ケア会議の制度化に加えまして、地域支援事業の充実によって、高齢者がふだんから社会参加をしてそういった意識を高めていただくというような取り組み、あるいは、認知症サポーターの研修受講など、そういった各種研修、意識啓発を進めていくこと、あるいは、認知症初期集中支援チームというものの事業を始めていきますけれども、早い段階から本人や家族に対してアプローチし、今後の見通しを理解いただきながら適切な支援につなげるといったようなことも有効であろうかと考えております。

 国としては、このような取り組みが進むように、生活支援の充実、認知症施策の強化、地域包括支援センターの機能強化等に努力してまいりたいと考えております。

輿水委員 ありがとうございます。ぜひ、そういった強化をしていただきたい。

 ただ、現実問題として、地域包括支援センターも、非常に予算が厳しい中で、人員を減らされている地域もあると伺っている中で、いろいろなことが地域支援事業の中に入ってくるとなると、今までの予算と同じというよりも、今までの予算よりもしっかりと拡充をしていく、必要性に応じて、そういった実態を調査していただきながら、地域がより積極的に、本当に地域で安心して暮らしていける、そういった環境をつくるための取り組みとしてぜひ御検討いただければと思いますので、よろしくお願いいたします。

 続きまして、地域の介護といっても、やはり、家族の皆様のお力というのは非常に大きいし、家族がいらっしゃる方につきましては家族の皆様の御理解も必要だ。そういう中で、今、介護離職という問題も出ているわけでございます。

 介護等を理由に離職した人が、二〇〇七年十月から二〇一二年九月の間で四十四万人、うち四十代から五十代が過半数を占めている、こういった実態の中で、やはり、勤務時間の短縮や在宅勤務制度の導入、転勤の免除等の、企業としっかり連携をしながら、安心して家族の方が介護ができるような取り組みもしっかりと進めていくことが、これから地域包括ケアを支える大事な自助の世界の中で大きな役割を担ってくるのかなと思いますので、その辺の取り組みについて、お聞かせ願えますでしょうか。

石井政府参考人 お答え申し上げます。

 高齢化の進展とともに、介護に直面する労働者の増加が見込まれております。労働者が離職をせずに仕事と介護が両立できる職場環境を整えていくこと、これは今後ますます重要になってくると考えております。

 このため、もちろん、育児・介護休業法の中でいろいろ規定がございまして、介護休業、介護休暇、介護のための短時間勤務の制度、あるいはフレックスタイムだとか、あるいは時差出勤制度等の措置があるわけでございますが、まずそうしたことの周知徹底を図っていくこととあわせまして、その制度が生きてくるためには、企業においてしっかりこうした問題についての理解が促進をされていって、なおかつノウハウを持っているということが重要かと考えております。

 このため、介護離職を防ぐための仕事と介護の両立支援に関するシンポジウムを開催したり、あるいは、仕事と家庭の両立のために多様かつ柔軟な働き方を労働者が選択できるように取り組みを行う企業のすぐれた取り組み、ファミリー・フレンドリー企業として厚生労働大臣が表彰したりとか、あるいは、仕事と介護の両立に係る企業向けの好事例集を作成し提供する。さらには、平成二十五年度、昨年度でございますが、介護離職を予防するための職場環境モデルというのを作成いたしまして、これを整理して普及をしていくということで、今年度は、それを用いまして、よりこれを広めていくという観点で、企業に仕事と介護の両立を推進する取り組みの実証実験、こうしたものも行うことといたしております。

 これらの取り組みによりまして、家族の介護等を行う労働者の仕事と介護の両立を推進してまいりたいというふうに考えております。

輿水委員 ありがとうございます。

 まさに超高齢化社会に向けて、総合力で、あらゆる皆さんと連携をとりながら、ここをどう乗り越えていくのか、受けとめていくのか、企業の皆さんにも理解をしていただいて、進めていただければと思います。

 さて、この地域包括ケアシステム、そういった中で、やはり、先ほど来ありましたけれども、医療と介護の人材、これをどうやって地域に育てていくのか、このことがまた大きな大きな課題であると考えているわけでございます。

 ここで、私の方からは、総合的な知識を持った総合医について確認をさせていただきたいと思います。

 今、高齢の方は、一つの病気だけではなくて複数のいろいろな病気を抱えていらっしゃる。あるいは、認知症と糖尿病というふうな形で、違う専門的な知識を要する、そういった病気を抱えながら地域で暮らすことになる。そういった方に対しましては、それぞれの専門的な知識を持った総合的な医師が現場ではやはり必要になってくるのかな、このように思うわけでございますけれども、その辺の地域における総合診療医の育成についての考えをお聞かせ願えますでしょうか。

原(徳)政府参考人 お答えを申し上げます。

 御指摘のように、複数の疾患を有する高齢者などがたくさんふえてくる、そういう中においては、特定の臓器や特定の疾患に限定することなく幅広い視野で患者を診る、いわゆる総合診療医が必要であるというふうに考えております。

 このため、先ほどの小松委員にもお答えいたしましたけれども、総合診療専門医というのを、内科や外科やいわゆる基本診療領域の専門医と同等の位置づけとして、新たにこの専門医制度の中に位置づけるということになっておりまして、この制度が、きょう発足します機構が中心になって進めていっていただけるというふうに考えております。

 具体的にはどうしていくかということでありますけれども、スケジュール的にいきますと、実際にこの総合診療専門医の新たな制度の修練が始まりますのが平成二十九年度からの予定になっておりまして、さらにその後三年程度の修練期間がございますので、新たな制度の専門医というのはその後にしか出てこないというのは御指摘のとおりであります。

 ただ、同等の目的として、今までもいわゆるかかりつけ医さんというような形で、いろいろな養成もさまざまなところでされてきております。これは、身近なところでの日常的な診療の中で遭遇するさまざまな健康に関する課題について対応ができるような医師というふうに聞いておりますけれども、このような方々に対する取り組みなども進めながら、また一方で、新たな制度の前に既に専門医をとっておられる方がおられますので、そこからの移行の措置というものをその中で検討されていきますので、必ずしも六年後ではなくて、もう少し手前の中から新たな形も出てくるかと思っております。

 いずれにしても、この総合診療専門医をしっかりと広めていただけるように、私どもとしても支援をしていきたいというふうに考えております。

輿水委員 ありがとうございます。

 まさに総合診療専門医さん、なかなか期間がかかるんだろうと思います。そして、一人、二人出たときにはもう二〇二五年を迎えているということにもなりかねないので、そういった意味では、今、かかりつけ医さん、その皆さんが、どうやって新しい幅広い視点を持って、また知識を持ちながら、連携がとれる体制で地域の医療を担っていくのか、こういったことが大事かなというふうに考えます。

 そういった意味では、それぞれ、地域に医師会、そういった団体があると思うんですけれども、医師会の先生方がそういった取り組みを進めていただけるような、また、そして、地域の医療をさらに大きな視点で担っていただけるような、そんなことも期待をしていきたいな、このように考えているところでございます。

 そういった意味で、地方自治体と医師会とのしっかりとした連携、そして総合的な医療ができるような、医師の連携と医師の育成というものもしっかりと進めていただければと思いますが、よろしくお願いします。

 医師と同時に、今度は、看護師さんの育成についての取り組みについて、潜在看護師さんの復帰の支援も含めて、その具体的な今後の進め方をお聞かせ願えますでしょうか。

原(徳)政府参考人 お答えいたします。

 看護職員につきましては、二〇二五年に向けて、新たに、さらに五十万人程度ふやさないといけないというような試算がございます。

 今回の法案の中におきましては、まずは、就職して、やめてもらわないようにするにはどうするか、定着をしていくために、医療機関の主体的な取り組みを通じて、労務管理面のみならず、ワーク・ライフ・バランスなどの幅広い観点を視野に入れた勤務環境改善の推進、これによる定着をしていただく、離職防止ということ。

 それから、掘り起こすという意味では復職支援でございますけれども、これにつきましては、都道府県にございますナースセンターが看護師等の資格保持者の情報を把握して、適切な支援が実施できるよう、まずは、離職時、職場を離れるときにこのセンターへ届け出をしていただくようにする仕組み、さらに、復職の支援のためのさまざまな研修の制度なども含めまして、盛り込んでいるところでございます。

 今後とも、このような看護職員の確保がなされるように、新たな養成も含めまして、定着促進、復職支援の全般にわたる職員の確保対策をしてまいりたいと考えております。

輿水委員 ありがとうございます。

 先日、看護の現場で働いている方から直接いろいろお話を伺ったんですけれども、たまたま、ハワイの看護の現場で研修を受けてきた方から、あちらの方は、何と、就業の環境が、一日一回は家族と接しられる。朝の段階なのか夕方の段階なのかということで、家庭を持って働く、そういう視点で、その時間帯を家族ときちっと接触できて、交流が持てるような環境に配慮しての働き方の体制だとか、あと、当然、近年は医療の高度化、常に研修とか新しいことを学ばなければならない、そのときに、勤務時間の中に研修時間がしっかりと組み込まれていたと。

 今の日本の状況は、休んで自分で研修を受けていくということになっているんだけれども、なかなか、休んで研修を受ける、また、せっかくの休みを研修に使ってしまったときに、後の体の回復等も非常に厳しい状況にあるという中で、勤務時間の柔軟性、あるいは研修も仕事の中に入れていただけることによって、きちっと定期的な休みもとれる、そんな環境づくりがあればもうちょっと働きやすいのかな、そんな御意見もあったんですけれども、見解を伺えますでしょうか。

原(徳)政府参考人 お答え申し上げます。

 研修を勤務時間の中に入れるかどうか、これは多分、いろいろな医療機関によってさまざまではあろうかと思います。私が知っております国立のとある病院なんかでは、当然ながら職務に必要なものだから勤務時間として勤務させるというようなことも、当然、公の形で研修をさせているようなところもございます。そこはそれぞれではあろうかと思います。

 ただ、御指摘のように、勤務時間、夜勤も当然入るわけでありまして、なかなか難しいということで、ワーク・ライフ・バランスをどう考えるかというのが大きな課題だというふうに思っております。

 そのために、今回、先ほど触れましたが、医療機関における勤務環境改善に向けた取り組み、これが非常に重要だと思っておりまして、それぞれの医療機関が勤務環境改善計画を策定していただくこと、あるいは、そのための勤務環境改善マネジメントシステムを創設すること、それから、都道府県ごとに、医療機関に対するサポートをする医療勤務環境改善支援センターというもの、そういう機能をつくっていただくこと、これらを含めまして、いろいろと勤務環境の改善を図っていきたい。

 その中で、看護職員のニーズに応じた変則シフト制度とか、さまざまな働き方、あるいは、先ほどの課題の研修の問題、働きがいの向上のための制度、そのようなことも含めながら、ニーズに合った支援を行う体制の整備に努めていきたいと考えております。

輿水委員 ありがとうございます。

 まさに現場の皆さんのお声も大切にしていただきながら、その状況に合わせた対応もしっかりとしていただきたいと思います。

 続きまして、介護の人材の育成についてお尋ね申し上げます。

 介護の人材を育成するためには、やはり、若者、主婦層あるいは高齢者の方など幅広い層を念頭に置いて、戦略的にイメージアップを図りながら、皆がそこで働きがいのある職場、そういったことが大事じゃないかなというふうに考えているわけです。

 先日、私、鹿児島の施設にも、現場に行かせていただきまして、そこでは、高齢者の方が本当に生き生きと、私は年金をもらいながら介護ももらいながら本当に豊かに暮らしていますよみたいな、そんなことで、元気いっぱい、この仕事があるから私は元気でいられるんだ、そんなお話もありました。

 若い世代から高齢者の世代まで、皆が働ける環境、またそういったイメージアップの戦略、これについて、具体的な取り組みをお聞かせ願えますでしょうか。

岡田政府参考人 介護ニーズの高まりに伴って、介護人材が必要とされている一方で、労働力人口の減少であるとか、経済状況の好転によりまして他業種への人材の流出といった懸念が高まっているというようなこともありまして、議員御指摘のとおり、やはり若者、主婦、それから高齢者といった多様な人材の方に入っていただいて、介護の職場を支えていただくことが必要だというふうに思っております。そのために、介護のイメージアップ対策というのはとても重要な課題だというふうに考えているところでございます。

 現状では、世論調査を見ますと、介護職に対しましては、非常に肯定的なイメージがある一方で、きついであるとか、給与水準が低い、それから将来に不安があるなどのマイナスのイメージも根強くて、人材の参入阻害要因になっていると考えているところでございます。こうしたマイナスイメージが必ずしも実態を反映しておらず、必要以上に強調されている面もあるというふうに考えておりまして、これを払拭していくことは極めて重要だと考えているところでございます。

 このため、福祉・介護人材確保緊急支援事業というのを各都道府県で行っていただいておりまして、その中で、小中高生を対象といたしました福祉・介護体験の実施であるとか、それから、介護を必要としない高齢者、それから子育てを終えた主婦など一般の方を対象にしたボランティア体験を実施するであるとか、それから、一般的な福祉・介護サービスの理解を目的とするようなセミナーの開催などの取り組みを支援しているところでございます。

 今後とも、介護のイメージアップのため、事業主、関係団体、自治体などとの連携を図りまして、幅広い年齢層に対する取り組みを戦略的に進めていきたいと考えているところでございます。

輿水委員 ありがとうございます。

 まさに、介護の人材の育成に対するイメージアップ、例えば、大臣にも御提案なんですけれども、テレビのドラマで、地域包括ケアで、一人の最期まで携わって、本当に感謝されてやりがいがあるという、そんなふうなテレビのドラマを活用しての介護のイメージアップもあってもいいのかななんて、そういうふうに考えているところでございます。これは、思いだけでございますので。

 あと、介護の現場の方から伺いますと、やはりキャリアアップというのは非常に大事、キャリアパスが大事なんですけれども、いろいろ自分自身が新たな資格を取ってさらなるステップで働いていく、そういったことは考えたいんだけれども、現実の仕事に追われて、そういった勉強をしていくとかいう時間が全くない状況もあります。

 また、一人一人が、自分が休んでしまうとこの方はどうなるのかということで、休みもなく働いている若者も、この前お話を聞いてきました。

 秩父で大雪が降ったときも、雪をかき分けて、女性の方なんですけれども、施設に行って、そしてその方の介護を頑張ってやってきた。休む時間もなく、休日、事務処理のためにまた施設に行くんですけれども、でも、やはり、事務処理だけではなくていろいろな形で、見て見ぬふりはできないということで、結局休みもなく働いていらっしゃる、そういった方もいるんです。

 そういった思いのある方がしっかりとキャリアアップできるような、実績等を踏まえた中での、ケアマネさんの推薦だとか施設の推薦とか、そういった中での何らかの、そういう人材が介護の世界でさらにステップアップができるような、そんな取り組みもぜひお願いをしたいというふうに思います。

 時間もそろそろ迫ってまいりましたので、続きまして、先ほどの医療の機能分化、そして、地域包括ケアと同時に、地域にどれだけ、支えられる側の方から支える側に回っていただくのか、そういった介護予防が大事だと思っております。

 その中で認知症について伺いたいと思います。

 認知症は、重症化していきますと、本当に、徘回だとかあるいは暴力的な行為等が起きてくる。それも、家族では手に負えない、あるいは、治療をしようとしてもなかなかその治療がうまくいかない、看護師さんや介護士さんが疲弊してくるような、そういった状況もあると伺っております。

 そういった意味では、早期発見で早期対応をしていく、この取り組みが非常に重要と考えますけれども、これについての今後の考え、取り組み、また具体的な内容についてお聞かせ願えますでしょうか。

原(勝)政府参考人 昨年から始めております認知症施策推進五カ年計画、この中で、議員御指摘の認知症については、早期診断、早期対応というのが大変大事だということで、認知症初期集中支援チームというものを二十六年度からスタートさせたいと思っております。

 また、認知症地域支援推進員というものは、地域の実情に応じた医療機関、介護サービスの事業所や地域の支援機関との連携を図りながら、認知症の人やその家族を支援する相談業務、これを行う人でございますけれども、こういった方々についても普及をさせていきたい。

 このたび、地域支援事業の中にこれらの事業を移行させまして、財源の確保も図りながら、かつ法律上も、市町村にこの事業の主体となっていただくように明記いたしまして、これから積極的に取り組んでいきたいと考えているところでございます。

輿水委員 どうもありがとうございます。

 本当に、認知症は、早期に対応していくことによって地域での安定した生活も可能になるということで、しっかりとした取り組みをしていただきたい。

 そして、今お話にありましたように、早期の支援対策チーム等、あるいは支援員等の方が対応するためにも、やはり現場の皆さんが認知症ということをまずしっかりと感じ取りながら、そういった支援につなげていくことが必要と思います。

 そういった中で、国として、認知症サポーター、これを育成して研修をしながら今日まで進めてきていると思うんですけれども、そのサポーターの事業をさらにバージョンアップして、やはり全ての人が、我々も認知症になる可能性もあると、全ての人が認知症に対しての正しい知識を持って、また、認知症予防の知識を持ちながら、日本全員、全国民がそういった取り組みをしていくくらいの積極的な運動もあってもいいのかなと思うんですけれども、この点についての見解をお聞かせ願えましょうか。

土屋副大臣 私、昨年十二月に、大臣にかわりまして、ロンドンで開かれました認知症サミットに参加いたしました。

 世界の先進国でも相当深刻で、日本が一番進んでいるということで、イギリスにおいても、今先生がおっしゃった認知症サポーターをまねて、認知症フレンドバッジというのをつくって、地域で認知症についての理解を深める活動を始めたわけでございまして、日本にとりましても、先進事例でやっておりますから、今現在約五百万人の方が認知症サポーターの資格を取られたわけですけれども、さらに六百万人にすべく活動していきたいと思っています。

 私も、春日部市に住んでおりまして、先生も埼玉なのでよくわかられると思いますけれども、地域包括ケアセンターでサポーターの資格を取りました。非常に基礎的なことですけれども、わかりやすい勉強をさせていただきました。

 今後は、今もやっていますけれども、小学生とか中学生とか高校生などを含めた地域住民とか、警察、銀行、自治会とか、いろいろなところに今お願いしているわけですけれども、それをもっともっと広げていきたいと思います。

 それから、認知症カフェも非常に重要だと思います。多分、川越なんかが先進事例だと思いますけれども、認知症カフェは、ちょっとおかしいかなと家族が思ったときに、こういうところに参加することによって、専門家の方がいらっしゃっていますので、ああ大丈夫だとか、少しどうかなというようなこともわかりますので、やはりこういう活動をしっかりと続けていきたいと考えております。

輿水委員 どうもありがとうございます。

 そして、認知症と同時に、予防という意味では、近年、糖尿病の方も急激にふえていらっしゃるということで、糖尿病の重症化対策の推進も非常に大切だと考えております。

 そういった中で、先日伺った話なんですけれども、中国では、薬の医師よりも食の医師、薬医よりも食医の方が上、食で人を健康にしていく、これが最も大事だというふうにされております。

 今、厚生労働省でも、いろいろな、毎日食べることにより健康になるというか、健康を守れる食事のあり方の検討も進められているということで、薬ではなく食による健康増進、まさに私も当委員会で質問させていただき、その内容についてはしっかりと見守らせていただきながら、さらなる推進をお願いしたいと思っております。

 また一方、今、私も地元の方からたくさん伺っているんですけれども、化学物質によるそういった健康被害、これはなかなか因果関係が証明しにくいということで、具体的な取り組みが進んでいないというふうに言われております。

 例えば、ミツバチの大量死で有名になったネオニコチノイドという農薬というか物質があるんですけれども、これが使われるようになってからアルツハイマーの方も急激にふえたとか、それが因果関係があるかどうかわからないんですけれども、しかし、人間にも虫にも同じ神経に影響を与える、そういった薬物であることは間違いない。

 こういったものに対して、しっかりと取り組んでいくというか、よく注意をしながら、この問題が、あのとき手を打っておけばよかったということにならないような対策も私は必要かなというふうに考えますけれども、ミツバチの大量死で注目されているネオニコチノイドに対して、具体的に進めている対策の状況についてお聞かせ願えますでしょうか。

新村政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のネオニコチノイド系農薬を含めまして、食品中の残留農薬につきましては、まず、食品安全委員会が一日当たりの摂取許容量、ADIを示すことになっております。これに基づきまして、厚生労働省の方では、国民の健康に影響が出ないよう残留基準を設定しておりまして、子供や妊婦を含めて設定しております。

 また、実際に流通する食品からの農薬の摂取量も調査して、適切なリスク管理を行っているところでございます。

 ネオニコチノイド系農薬の摂取量はADIを大幅に下回ることが確認されておりまして、平成二十年度から二十二年度の調査でも、最大でもADIの一%未満であるということがわかっております。

 また、ADIは慢性毒性の指標でございますが、これだけではなく、特定の食品を一日以内に大量に摂取した場合の急性毒性の指標であります急性参照用量、ARfDと申しますが、この導入についても必要なデータを準備してきたところでございます。

 そこで、ネオニコチノイド系農薬の一種でありますクロチアニジンにつきましてパブリックコメントで多くの御意見を寄せられておりますし、また、欧州食品安全機関の見解も踏まえまして、優先的に、先ほど申し上げました急性参照用量を考慮した残留基準の設定を行うこととしております。本年四月七日に、食品安全委員会に対して食品健康影響評価を依頼したところでございます。

 このように、新たな科学的知見を反映して食品の安全の確保に取り組んでいるところですけれども、引き続き、国際的動向や国民の意見にも配慮し、科学的な知見に基づいて、国民の健康に悪影響が及ぶことのないよう対応してまいりたいと考えております。

輿水委員 どうもありがとうございました。

 ネオニコチノイド系の残留農薬の基準は欧州やアメリカに比べると日本が高くなっている、そういった事実も伺っておりまして、その辺も含めて適切な対応をお願いしたいと思います。

 本当にきょうは、全体として、医療の機能分化、そして、地域の介護と医療、それをどうやってしっかりとしたものにしていくのか、そして、そういった皆さんが、でも、できるだけ地域で元気に暮らせるような介護予防のあり方を、総体的に聞かせていただきました。

 今回の法律案については、これを全体として、こうやってまとめながら出されたものでありますが、この全体としてしっかりと進めていくことが、将来、二〇二五年の超高齢化の社会に向けて、しっかりとした対応がとれる、そういったものになるものと私ども確信をしながら、この法案をしっかり進めさせていただきたい、このように思っておりますので、よろしくお願いいたします。

 ありがとうございました。

後藤委員長 次に、桝屋敬悟君。

桝屋委員 公明党の桝屋敬悟でございます。

 同僚の輿水議員に続きまして、医療介護総合確保法案の審議をさせていただきたいと思います。

 先ほどの同僚議員の質問を聞いておりまして、この委員会、この医療介護総合確保法案、中身が随分詳細になってきたなというふうに思っている次第であります。きょうは午後また参考人質疑等もございまして、しっかりと中身について議論してまいりたいと思っております。

 先ほど輿水議員は、全般的に今回の法律の内容について一つ一つ確認をさせていただいたわけであります。

 私の質問に入ります前に、答弁を聞いておりまして、おやっと思ったことが一点だけございます。原老健局長、そこへ座っておられますが、通告はしておりませんが、先ほどの御答弁の中で、地域ケア会議は地域包括ケアシステムを構築する上で非常に、今回初めて制度化されるということでありました。

 輿水議員からは、そうした活動について、現場の皆さん方の経費、活動費等について助成してもらいたいという声もあると。それは報酬等の支払いも可能ですよというような御答弁があったんですが、事業名も何か先ほど御説明があったような気がしますが、今回、法律の中で新たに地域ケア会議なるものを規定した、制度化したということに伴って、財源措置も新たに行われるという理解でいいんですか。それとも、今までもあったんだということなのか。もしお答えがあれば、御答弁を願いたいと思います。

原(勝)政府参考人 地域ケア会議につきましては、平成二十四年に私ども通知を出して、全国の市町村でできるだけ取り組んでいただきたいということで、その促進を図っております。これは、いわゆる地域支援事業の中の包括的支援事業という枠組みの中で取り組んでいただいておりますので、これまでも、地域支援事業の交付金も活用していただいて、その費用が賄えるということでございます。

 今回、新たに、先ほど御答弁申し上げましたけれども、認知症施策でございますとか、あるいは、地域における生活支援サービスの基盤を整備する、こういったようなものについても、予防給付から一部サービスを移行させるというようなこともあわせまして、地域支援事業の財源として確保したということでございます。

桝屋委員 わかりました。

 既にある制度、それに認知症対策であるとかさまざまな事業が追加されて、財源も確保されている、あとは現場でうまく使ってもらいたい、こういうことですね。先ほどの質問は、その現場がなかなか簡単にいかぬのですよという質問であったことも付言しておきたいと思います。

 さて、本題に入りたいと思います。

 最初に大臣と議論したいわけでありますが、今回の法律は、地域における公的介護施設等の計画的な整備等の促進に関する法律、これを改めて、新たに、地域における医療及び介護の総合的な確保の促進に関する法律とまとめられたわけであります。

 そもそも、改正される法律は、最初は平成元年、法律第六十四号、私、非常に思いのある法律でありまして、そのときの法律名は、民間事業者による老後の保健及び福祉のための総合的施設の整備の促進に関する法律、いわゆるWAC法と言われた法案であります。余りイメージが私の中でよくないのでありますけれども。

 今回、医療と介護を一体的に改革を進める、その舞台としてこの法律を選ばれた理由といいましょうか、今日までの平成元年以降の時代の流れも付言しながら、大臣の御所見を伺いたいと思います。

田村国務大臣 大変鋭い御質問でございます。

 今おっしゃられましたとおり、平成元年、ゴールドプランのときに、言われたとおり、民間事業者が施設をつくって整備していくというような意図で、WAC法、ウエルエージングコミュニティー構想なるものをもとにしてこういう法律ができ上がったわけでありますが、実際問題は、思ったほど整備が進んでいかなかったという苦い思いもあるわけであります。

 その後、平成十七年に、今言われたような、今度は公的な施設というような意味も含めて、改正WAC法という形で、ここにお金、交付金というような形で、これは国から交付金が出て、それを各都道府県で地域空間整備というような形で介護施設等々をつくっていくということになったわけでありますが、十八年に、またこれは例の三位一体の議論の中において、大規模施設というものはこれから外されて小規模が対象になったということになりまして、至っておるわけであります。

 昨今、また制度はいろいろ変わっておりますが、これをなぜ今回改正に使ったか。

 一つは、その目的という意味からしますと、これはまさに、国民の皆様方の健康の保持それから福祉の増進、これを図りつつ、国民の皆さんが生きがいを持って、健康、さらにはそれぞれ安らかに地域社会で生活が営めるような、そんな地域社会を形成することに資するという目的があるわけでありまして、これはまさに、今般、今までは介護だけであったわけでありますが、医療も含めてこの趣旨というものにそぐうであろうということ。

 それから、形態自体が、交付金というものを各地域にお渡しして、それによっていろいろな整備をしていただくということでございますので、形態的にもこれは使えるのではないかということでございます。

 今般、そのような観点から、この法律を改正させていただいて、新たな、財源措置等々を含めて、これの受け皿というような形にさせていただいたわけであります。

桝屋委員 私も、この法律を選ばれたのは極めて適切であったというふうに、苦い経験の中から思っているわけであります。

 大臣、きょうは、皆さんにもお配りしたかったんだけれども、私の手元に、平成元年のときの、いわゆる消費税導入のときのゴールドプランというもの、これは厚労省の職員が提供してくれました。懐かしい資料であります。もう黄ばんでおります。

 このときに、消費税を財源として高齢者福祉の基盤整備を思い切ってやっていこうということで緊急整備を行った在宅福祉推進十か年事業、これを見ますと、平成元年のときにどういう計画をつくったか。デイサービスは、当時一千カ所、全国で千八十カ所、これを一万カ所にするぞという大変な目標だったんです、当時は。今や、デイサービスは全国に四万カ所。通りに面した新たな建物は何かと思うと、デイサービスですよ。それぐらい、デイサービスが今ふえてきた。隔世の感がするわけであります。

 ホームヘルパーに至っては、平成元年当時、三万一千四百五人。これを十万人にするぞ、これで、全国当時三千二百の市町村は、大変に、目が点になって、必死になって拡充を進めた。それもこれも消費税という財源があったらばこそできた作業だろう、こういうふうに思っているわけであります。

 しかし、こうした流れを経て、平成元年から十二年、二〇〇〇年の介護保険の導入、そしてさらに、大臣が今おっしゃった平成十七年、WAC法を改正して、さらに総合的な保健、福祉、医療の、医療は今回ですけれども、体制整備を図ろうということで福祉空間交付金なんかの財源措置をした、こういう経緯があるわけでありまして、大臣のお話を聞きながら当時を思い出しておりました。

 平成元年の時代に議員であった方は何人いらっしゃるか。きょうはこの話を山井さんがいる前でしたかったのでありますが、いつもこういうときにいないのでありますが、聞いてほしかったのであります。

 そこで、一点だけ時代をさかのぼって考えると、あの当時、私も現場で働いておりましたが、例えば、介護保険の前史ですから、在宅三本柱と言われたショートステイとかヘルパーとかデイサービスはふえなかったんです、利用者が少なかった。制度をつくっても、ヘルパーさんを用意しても利用する方がいなかったという、今から考えると本当に不思議な時代であります。そこを懸命になってやってきて今の体制ができ上がった、こういうことであります。

 途中、やはり介護保険制度が導入されたということは極めて大きいエポックだと私は思いますが、高齢者のサービス、介護サービスの利用状況というのは随分変わってきたのではないか。いわゆる権利意識も芽生えてきた、保険料を払っているんだ、こういうこともあるのではないかと思っておりますが、その辺のデータがもし時系列的にあれば、御報告をいただきたいと思います。

原(勝)政府参考人 お答えを申し上げます。

 介護保険制度は来年で制度創設から十五年を迎えようとしておるわけでございますけれども、この間、介護サービスの利用者は確実にふえてきております。平成二十四年度は四百五十八万人となっており、約二・五倍となっております。

 また、これは、六十五歳以上人口が、この間、二千二百四万人から三千七十九万人と約一・四倍にふえておりますので、介護サービス利用者数が六十五歳以上人口の伸びを大幅に上回っているということで、制度が浸透してきているということだろうと思います。

 一方、介護保険法は、第二条第四項で、保険給付に際して居宅介護重視という考え方をとっており、実際、高齢者の多くの方が、住みなれた自宅や地域において介護を受けたいというニーズが高うございます。

 このため、制度当初よりデイサービス等の在宅サービスの充実が図られてきたところでございますけれども、平成十七年度の制度改正では、先ほど来から議論になっています、地域包括支援センター、地域支援事業、地域密着型サービス等が創設をされ、平成二十三年の制度改正では、定期巡回・随時対応サービスや介護予防・日常生活総合事業等が創設されるなど、地域包括ケアシステムの構築に向けまして必要な見直しが行われてきたところでございます。

 この結果、平成二十四年度の平均受給者数、先ほど言いました四百五十八万人のうち、施設サービスの利用者が全体の約一九%に当たる八十七万人であるのに対し、居宅サービスの利用者は、これは地域密着型サービスも含めておりますけれども、三百七十一万人と、全体の利用者の八一%を占めております。平成十二年度における全体に占める割合が約六七%でございましたので、そういう意味でも、居宅サービスというものが大きく増加してきているということでございます。

 このように、高齢者の介護を社会全体で支え合う仕組みとしての介護保険制度は、国民のニーズに対応した改正を経つつ、国民の間で広く定着をしてきているというふうに考えております。

桝屋委員 原局長と話をすると、いつもかみ合わないのでありますが、大体イメージはつかめました。サービス利用者も着実にふえている、こういうことだろうと思います。

 ことしが、団塊の世代が全部六十五歳におなりになるという年でありますから、さらにこれから高齢者そのものがふえていく、その中で利用者割合もふえていくという大変な時代が二〇二五年に向かって進んでいく。したがって、今回、医療と介護の総合的な確保を図らなきゃならぬ、こういう法律の組み立てになっている、こういうふうに理解しております。

 大臣、私がここで議論したかったのは、さっきの話に戻ります、いわゆるWAC法でありますが、これは、介護保険の前史、介護保険前の歴史の中で、ゴールドプランと同時に制定をされたわけでありまして、いわゆる民間活力を大いに使っていこう、もっと言うと、市場主義、市場メカニズムで介護サービスというのは広げていくことができるんじゃないかというふうに、大胆に当時の誰かが狙ったということではないかな。私は、必ずしもそれは間違っていなかったと思うのであります。

 ところが、私も記憶がありますが、何年かやって、一斉にマスコミから、民間中心の高齢者施設計画は暗礁に乗り上げた、あるいは大半は断念か見直しをした、こういう批判もいただいたわけであります。先ほど大臣がおっしゃったウエルエージングコミュニティー、いわゆる特定施設として都道府県が認定をして、頑張ってくださいとやったんだけれども、ほとんどが断念をしてしまった、こういう難しい時代があったわけであります。

 背景には、融資制度であるとか、あるいはその税制優遇措置について、当時の大蔵、財務省を突破できなかった、こういうこともあるのかもしれませんが、私は、それ以上に、大臣にぜひ考えてもらいたいのは、その理由の中で、いわゆるWAC法が定着、なかなか大きな成果を上げ得なかった理由の中に、一つは、市場メカニズムを目指したんだけれども、圧倒的に市場としては成熟していなかった。全くサービスの提供体制はなかったという時代であります、供給不足の時代でありますから、市場として成熟をしていなかったということが一つ。

 それから、二つ目は、これは極めて大事だと思いますが、供給主体の経営原理が未熟ではなかったかということであります。これだったらもうかるかもしれないという、こんな不純な動機ではなくて、やはり介護サービスというのは、福祉サービス、一人の人権保障を実現するというサービスを実施する提供主体なんだという、この経営原理といいましょうか、こうしたものがまだまだ未熟であったのではないか。

 三点目が、もう一つ大事なのでありますが、サービスを利用する本人が選択できる余地があったか。当時は、さっき御紹介したように、介護保険の前なんというのはほとんどサービスがなかったわけでありますから、選択どころか、介護保険が始まっても同じでありまして、これしかない、こういう時代であったわけであります。

 その後、大臣も御説明がありましたが、介護保険が導入され、消費税財源を活用する中でサービス提供体制が格段に整備をされてきた。このWAC法後も、五年後に、さっきおっしゃった地域介護・福祉空間整備交付金という財源措置とともに大きく力を発揮することになるわけであります。

 今回は、さらにそこに、地域における医療・介護サービスの総合的な確保という観点からもバージョンアップするわけであります。基金ということが今回の大きな武器であります。

 こうした分野も、私は、こうした基金も活用して民間に大いに頑張ってもらいたい、何とか、今こそ健全な市場メカニズムを働かせて役割を果たしていただきたいと実は念願しているわけであります。そういう意味では、平成元年のWAC法はいよいよこれから始まるというふうに私は理解をさせていただきます。

 そこで、ここからが本題であります。

 私が感じている思いでありますが、WAC法が十分機能しなかった背景、理由の中で、特に、供給体制の経営原理が貧弱であってはならないということであります。医療も今回入るわけでありまして、一人の人権を保障するという医療・介護サービスなんだという経営理念を大事にするサービスでなきゃならぬ、そういう経営者が求められている、そういう経営事業者が求められていると私は思っております。

 それからもう一点は、WAC法が余り成功できなかった背景の中で、選ばれるサービス。私は、今の医療・介護サービスはもうこれしかないよ、おばあちゃん、あなたはここへ行くしかないというようなサービスではなくて、場合によっては自分の生活空間の中で選ぶことができるサービス、これが極めて大事だ。

 この二点をこれからもこの医療介護総合確保法案の中で、経営の原理、それから選ぶことができるというサービスであるかどうかということを非常に重要視していただいて制度設計に当たっていただきたい、我々も与党としてその努力をしたいと思っているわけであります。

 いっぱいしゃべりました。大臣、何か御所見があれば伺いたいと思います。

田村国務大臣 委員の長い政治経歴の中で、いろいろと思われるところがあられたんだというふうに思います。

 介護保険が導入されたころのことも思い出しながら、これで地域で、社会で介護というものを支えていくというような流れの中で、当時、保険料を取るという話でありますから、保険あってサービスなしみたいなことがよく言われました。そこで、特に、施設系はそうでもないですが、在宅系は民間を入れるという中において、在宅系のサービスというものをしっかり整備していこうと。これは、今委員がおっしゃられたような、いろいろなサービスが出てきたというのは、そういうところもあったんだと思います。

 一方、施設系も、介護保険という制度があり、財源的なものがしっかり確保できるということがあって、多様な主体の方々、まあ、主体といいながら、社会福祉法人が主なわけでありますけれども、社会福祉法人をつくられる、もしくはいろいろなところで学ばれる、そういう中において施設系の整備もしてきておるわけであります。

 それが、今、あわせて、特定施設のような、WAC法の流れもあるのでありましょう、有料老人ホームのみならず、今は特にサービスつき高齢者向け住宅というような流れの中で、その前は例の高専賃なんというような話でずっと整備をしてきたわけでありまして、これに特定施設系が重なる中において、多様なサービス、特養ではないんだけれども特養に近いサービスも提供いただいておる、こういう施設もあるわけでありまして、そこは、いろいろな制度の中で、我々も柔軟性を持って制度を運用していく中において、多様なサービスというものもそれぞれ提供いただけるようになるのであろうというふうに思います。

 しかし、そこは、言われたとおり、金もうけ主義ではだめなわけでありまして、やはりこれは福祉であるわけでありますので、そこをしっかり念頭に置いていただくという意味も含めて、社会福祉法人じゃなければ特養はだめだという話なんですが、一方で、サ高住というような形の部分に関しましては、これは株式会社も入ってきておるわけであります。

 もちろん、特養とサービスつき高齢者住宅、有料老人ホームは、そうはいいながらも当然違うわけでありまして、低所得の方々に対していろいろな対応をするということからすれば、やはり福祉というのはより色合いが強いわけでありますから、そのような意味も含めて社会福祉法人という形であるわけでありますが、それはそれとして、一方で、株式会社も含めて、いろいろな方々が、やはりそうはいっても福祉だというような思いをしっかり持っていただいて、質のいい、それぞれの、個人個人、高齢者の尊厳というものをしっかり守っていただきながらサービスを提供いただく、ここは大変重要なところであろうというふうに思っております。

 いずれにいたしましても、公的な保険ではありますけれども、いろいろな方々にお力添えをいただかなければ、高齢者の方々が安心して老後を生活いただけるというわけにはいかないわけでございますので、これからもそのような形の整備が進むよう、我々もいろいろと制度等々を運用してまいりたい、このように考えております。

桝屋委員 さっきから偉そうにしゃべっておりますが、今から思い返せば、公明党は、介護保険制度導入のとき、法律には賛成できなかった立場でありました。

 世間的には自民党と公明党でやってきたみたいに言われておりますが、あのときは野党から与党になる途中、ユ党の時代でありまして、新たな制度は大事であるけれども、今日を想定して、負担増に耐え得るのかという、介護保険の本当の精神の根幹が壊れる時代が来るんじゃないのという懸念があったわけであります。まさに今、そういう時代に私も直面しておりまして、大きな責任を感じながら制度の設計に取り組んでいきたいと思っている次第であります。

 さて、そういう意味では、今回の法律では、WAC法じゃありませんが、医療、介護の総合的なサービス提供体制の確保のための財源措置が明記された。これがいわゆる基金であります。これは、消費税引き上げ財源で確保される基金であります。民主党の皆さんが、当時、野田総理の時代に、消費税引き上げを決断していただいたということを私は今もって高く評価している一人でありますけれども、そのおかげで今回の法律の枠組みができた、こういうことであります。

 そこで、総合確保法案の第六条の基金について伺いたいと思います。

 都道府県が基金を設ける場合は、国が三分の二、消費税財源をもって充てる、こうされているわけでありますが、では、残りの三分の一はどうなるのかということであります。残りの三分の一の財源は、どのように措置をされているのか。

 これは、今後、経済動向によりますが、一〇%も視野に入っているわけでありまして、そうした時代も展望して、地方の三分の一の負担について、総務省がきょう来ていると思いますが、お答えをいただきたいと思います。

青木政府参考人 お答え申し上げます。

 地域医療介護総合確保推進法案に基づいて設置される基金の財源でございますが、国が三分の二、都道府県が三分の一を負担することとされておるわけでございまして、法案が成立をしますと、都道府県は、今年度、基金を設置することになるわけでございますが、この基金の設置が円滑に進められますよう、これらの都道府県の負担分について、地方財政計画にその全額を計上したところでありまして、適切に、さらに地方交付税措置を講じてまいりたいというふうに考えております。

桝屋委員 えらいさっぱりとした答弁でありますが、今の御答弁は、二十六年度、この法律が成立すれば、ことしはとりあえず芽出しとして九百四億、来年以降は、介護の分野についてもこの基金が造成をされるわけであります。

 そうなりますと、それぞれの年度の地方財政計画の中で、歳入歳出の計画の中に、事業費については地方財政計画の歳出、いわゆる一般行政経費の中にきちっと位置づけられる、それから、国費については地方財政計画の歳入、国庫支出金にそれぞれ計上される。こうしたことで地方負担分の地方一般財源は確保される、これは一〇%時においてもそういう方針でいく、こういう理解でよろしいですか。重ねて御答弁をお願いします。

青木政府参考人 お答え申し上げます。

 今、桝屋先生御指摘のとおり、地方財政計画について歳出歳入に計上した上で、かつ、地方団体にも地方消費税財源もございますが、歳出について、各都道府県が負担することについて問題が生じることがないよう、地方交付税の基準財政需要額の算定において適切に対処してまいりたいというふうに考えているところでございます。

桝屋委員 総務省、御苦労さまでございます。

 ただ、また総務委員会でもやりますが、地方財政計画で計上されて一般財源は確保されているといいつつも、地方自治体によっては、なかなか、臨財債の借金部分もまともに返せないというような地方財政がある中で、ここは本当に確保されるかどうか。今、御説明の中に、地方消費税も着実に、交付税分を含めて措置されるということがありますから、そこはしっかり期待をしていきたいというふうに思っている次第であります。

 総務省、どうぞ退室されて結構です。ありがとうございました。

 それから、もう一つ、大臣と議論したいことがあります。総合確保法案の目玉であります、先ほどから話が出ております地域包括ケアシステムの定義について伺いたいと思います。

 第二条ではこう書いてあります。今回の法律の第二条でありますが、「高齢者が、可能な限り、住み慣れた地域でその有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、」というフレーズが出てくるわけであります。

 この「可能な限り、住み慣れた地域で」というフレーズ、これは、私は、もう既に、国民あるいは高齢者自身に誤解を与えるのではないか。また厚労省の高齢者へのリップサービスじゃないの、いささかリアリティーに欠ける文言ではないかと。気持ちはわかるんですよ、気持ちはこうでなきゃならぬのでありますが、全国の高齢単身で民間借家世帯の方がもう既に百万人という時代であります。可能な限りは結構でありますが、可能でない人もいっぱいいるわけであります。可能でない人が悲しい思いをするんじゃないかと私は思うわけです。

 私は、地域包括ケアシステムの中に住まいの支援も含まれておりますから、そういう意味では、住まい方、住みかえも、適切なときに住みかえるというような高齢者のスマートな生き方ということもイメージとして出していく時代ではないのかなと。いつまでも住みなれた地域では、なかなかスマートな生き方に通じませんよというようなこともあるのではないか。現に私は、七十になったら住みかえようと夫婦で決意をしているわけであります。

 あるいは、地域包括ケアの地域というのは、私は、住みなれた地域というよりも、新たな地域を創造する、新しい地域をつくり上げる、そういう発想も必要ではないかなと思ったりするわけであります。

 したがって、ここは、与党ですから法案に反対はできませんから賛成するわけでありますが、「高齢者が、可能な限り、住み慣れた地域で」というこの形容詞を取っ払って、単に、地域でその有する能力に応じてというような書き方が本当はよかったんではないかなと思うんですが、大臣の御所見を伺いたいと思います。

田村国務大臣 可能な限りでございますので、可能でない方はそうはいかないわけであります。高齢者の方々が、その人らしい生活、それに支障を生じない限りは、やはり、それはもちろん住みたくなければ別でありますけれども、その地域でお住みになられたいということであればそれを支援する、そのような思いが入っておるわけであります。

 当然、どうしても住めない状況になれば、それは施設に入っていただく。今言われた特養だけではなくて、それこそサ高住でありますとかいろいろな形もあるでありましょうし、それから、当然、病院ということもあるかもわかりません、療養施設という形もあるかもわかりません。

 さらに申し上げれば、住みかえといいますか、空き家等々をこれから利用するという方向性も打ち出しております。

 これは都会もそうでありますし、場合によっては地方も、地域包括ケアシステムをやる中において、例えば、住み続けようと思えば、二十四時間型ということを念頭に置かざるを得ない。これはまだ十分広がっておりませんが、定期巡回・随時対応型介護看護というようなものに対応しようということになれば、地方でも、地方といいますか山間部であったとしても、距離の遠い、車で移動して二十分ぐらいかかる山の奥の方に住まれている方々というものになかなか対応できないということであれば、その地域の中心的な、地方ではありますけれども中心的な町、昔、学校に通っていたときの何々ちゃんの家みたいな、そういうようなところ、見なれたところに移り住んでこられてということもあるのかもわかりません。

 そういうことを総合的に考えながら、その方の望まれるような形で生活できる、そういうような体制をどうやってつくっていくかということが思いの中にあるわけであります。

 全ての方ではないというのは、そこは、可能な限りという言葉の中でどうか御理解をいただければということで、どうかこの法案に賛成をいただければありがたいなというふうに思っております。

桝屋委員 大臣の可能な限りという御説明、すとんと胸に落ちましたので、大賛成でありますが、実は、大臣の話を聞いて思ったのであります。

 我々、公明党地域包括ケアシステム推進本部をつくりまして、今、全国を回っております。既に地域包括ががっちりでき上がっている地域もございます。中核病院を中心として開業医の皆さん方としっかり連携をし、在宅介護の事業者、見事に地域ができ上がっている。残念なのは、お年寄りの数も減っていくと。どうぞふるさとへ帰ってきてもらいたい、我が地域は安心して死ねるすばらしい地域ですよ、これを売りにしていこうというような計画も聞かせていただきました。

 そういう意味でも、そういうイメージを少し出す工夫をこれから進める必要があるのではないか、こう思っている次第であります。

 さて、次のテーマであります。医療法の改正について伺いたいと思います。

 今回、第六条の二に追加されました医療法の改正の第三項であります。えらい難しい文言が並んでおります。

 国民の責務として、こんなことが書いてあるんです。「国民は、良質かつ適切な医療の効率的な提供に資するよう、医療提供施設相互間の機能の分担及び業務の連携の重要性についての理解を深め、医療提供施設の機能に応じ、医療に関する選択を適切に行い、医療を適切に受けるよう努めなければならない。」まことに難しい表現であります。

 日本国民は、超高齢社会を今突き抜けようとしておりますから、大変な責務があるわけであります。これはいかに何といってもちょっと難しい文章でありますが、国民は良質かつ適切な医療の効率的な提供に資するよう努力をしなきゃいかぬ、よりよい医療をつくり上げるために国民も努力をしなきゃいかぬ、大変な努力義務をお願いしているわけであります。

 そうでなくても、健康増進法では、国民の責務として、「国民は、」「生涯にわたって、自らの健康状態を自覚するとともに、健康の増進に努めなければならない。」私は失格であります、たばこなんか、すぐやめなきゃならぬのでありますが、こういう国民の責務と同時に、今度は、この医療介護総合確保法案の中では、国民は良質かつ適切な医療の効率的な提供ということを念頭に置け、こういうことであります。

 それで、もっと難しいのは、「医療提供施設相互間の機能の分担及び業務の連携の重要性についての理解を深め、」これはなかなか理解なんか深まりませんよ。あの病院はどういう機能を持っているのかとか、えらいことでありまして、見やすく言うと、国民は、病院にはいろいろある、どこへでも行っていいというわけじゃないよ、こういうことを多分言っているんだろうと思います。

 それから、「医療に関する選択を適切に行い、医療を適切に受けるよう努めなければならない。」

 日本国民の責務は極めて大きいわけでありますが、ここは、大臣、見やすく国民にどうアピールするか。この規定は私は極めて大事だろうと思います。この超高齢社会を突き抜けるために、今を生きる我々の世代が、国民一人一人の責務として感じながらやっていかなきゃいかぬのでありますが、これを理解してもらうのは大変なことでありまして、そのために、国や地方は一体何をすればいいのか、大臣の御所見があれば伺いたいと思います。

田村国務大臣 質のいい医療を効率的にという話であって、それは、一方で医療資源というのは限られているわけでありますから、そこのところを御理解いただきながら国民の皆様方に努力をいただくということ、これは国民会議の中においてもそういう御意見がございました。

 流れの中において、いろいろな意見はあるんですけれども、例えば、プライマリーケアのところをいきなり大きな病院にというものに関しては、なかなか、本来、そういう病院で医療を受けられる方々のアクセスに対して一定の負荷をかけているという部分があるから、なるべくそれは近くのかかりつけ医の先生のところに行っていただいて受けていただきながら、紹介状を持って大きな病院に行っていただく、こういうこともお願いをしてきたわけでありますし、これからも、それに向かっていろいろな制度改正も考えてきておるわけであります。

 そういうことも含めて、なかなか理解できないという話がございましたけれども、それぞれの医療の提供体制というものがどうであるか、そして、それぞれの提供されるその医療というものがどういうものであるか、それをどう選択して、実際、自分の必要な医療を適切に受けていただくというようなことに努めていただくということは、今の時点ではなかなかわかりづらい。その前提である、どこにどういうような医療を提供されている主体があるかというのが、まだわかりづらいわけであります。

 今般、病床機能の報告、これをお願いするわけでございますから、そういうものを通じて、どういう病院にはどのような医療機能があるのか、病床機能を持っているのか、そして、さらにこれから構想をつくっていくわけでありますから、その中において、将来、我が地域ではどのようなビジョンを持っているのか、そういうものも御理解をいただきながら、みずからお努めをいただく。そのためには、当然のごとく、我々としても、いろいろとそれに関しての例えば説明等々もしていかなきゃなりませんし、また、いろいろと御意見もいただいていかなきゃならぬというふうに思います。

 正直申し上げて、今の時点で書いてあるのは、タウンミーティングの開催であるとか、それから、アンケートやパブリックコメントと書いてあるんですが、それだけではなかなか十分に御理解をいただけないわけであります。

 これは、国だけではないと思います。各都道府県、自治体、そういうところにも御協力をいただきながら、まずは、情報をしっかり提供いただく、情報を御理解いただく、そして、その上において、いろいろな選択というのも、こういうような選択があるんですよ、ああいうような選択があるんですよということも含めて、我々もいろいろなPRをしていかなきゃならぬというふうに思っております。

 今言われたところが、その危惧が大きな問題にならないように、我々としても努力をしてまいりたいな、このように考えております。

桝屋委員 大臣のおっしゃるとおりだろうと思います、これからでありますから。今回の法律の中に国民の責務ということをうたったということは、この条文は極めて大事だろうと思います。

 ともしますと、社会保障改革国民会議でも議論がありましたように、それでは緩やかなゲートキーパーを置こう、紹介状なく窓口に来た人は一万円いただきますよ、そういう手法ではなくて、まずは、お年寄りにスマートな生き方をしていただく、しっかり勉強していただく。

 それから、やはり、わかりやすい医療提供体制、あるいは、わかりやすい介護のサービスというものをどう国民に理解してもらうのか。

 さらに言うと、それでも無理でありますから、サポーターが必要。お年寄りを抱える家族は、家族がかわって悩まなきゃならぬという状況があるわけでありまして、そうしたサポーターをしっかりつくり上げていく、こういう努力を、そちらに力を入れていただきたい。我々もその努力をしたいと思っております。

 次のテーマに移りたいと思いますが、介護人材の確保について、先ほど同僚議員からも議論がありました。介護人材の確保について議論したいと思います。

 この委員会でも議論してまいりました。それから、予算委員会でも、私は、総理、大臣に対して、介護人材の確保について、大いなる危機感を持って国家戦略として取り組むことを求めてまいりました。この委員会でも、野党の皆さんからも改めて法律なども提出をされ、大きなテーマになっている。

 確かに、我々、地域包括ケア推進本部で現場を回りましても、異口同音に聞かれるのは、今でも介護の人材不足ということが現場でありまして、現場の労務管理を担当されている皆さん方の御苦労というのは大変なものがあるわけであります。

 改めて、大臣に、この介護人材、医療は何とか見えるような気がしているんですが、介護の人材の確保について、差し迫った課題であります、大臣の御所見を改めて伺いたいと思います。

田村国務大臣 二〇二五年に向かって、看護で五十万人、介護で百万人、人材を何としても養成していかなきゃならぬ。看護も心配なんですけれども、介護は特に、一つは処遇の問題というのがあります。これは、ここ数回にわたって処遇改善をしてきたわけでありますが、それでもまだまだ他の職種と比べて状況は厳しい。

 あと百万人、この話をうちの老健局なんかでしますと、いや、今までも何とかそれでもやってきていますから、今までのように養成していけば何とかいけるのではないかという意見もあるんです。

 ただ、これは、景気がよくなってきて、やはり賃金を上げるということを我々はやってきておりますので、そうなってくると、どうしても介護から離れてしまう、もしくは、今介護で働いている方々も抜けてしまう可能性がないとも言えない。今までどおりいくのかというのは非常に頭が痛い話であります。

 そのためには、さらなる処遇の改善というものも含めて進めていかなきゃならないということでございまして、今、検討の場を厚生労働省の中にもつくりながらやっていきたいというふうに思っています。今般、基金の中でも、この介護人材の確保に関する事業というものを一項目立てておりますので、こういうものを使っていただけるわけであります。

 もちろん、先ほど来話が出ておりますようなキャリアパスの確立でありますとか、イメージの問題もありますから、それは、学生さんたちにもいろいろな説明をしながら、マッチングの方もやっていかなきゃならぬというふうに思っておりますし、勤務環境の改善も、これも医療、介護ともやっていかなきゃならぬというふうに思っておりますが、やはり、最大といいますか、一番大きなポイントというのは処遇の改善というところでございますので、これは、次期介護報酬改定に向かっても、給付費分科会の中でも御議論をいただいて、しっかりと対応できるような形を検討していかなきゃならぬなと。

 もちろん、財源という問題がありますから、そうは簡単ではないわけであります。よくお叱りを野党の先生方からも今いただいております、消費税が上がって人件費が上がっているのに介護をどうするんだというような御議論もあるわけでありまして、こういう問題にしっかりと対応していく必要があろうという認識のもとで、御議論をこれから始めていただいて、我々厚生労働省の中でも検討の場をつくって、しっかりと、今委員がおっしゃられた問題が顕在化しないように、我々としては最大限の努力をしてまいりたいというふうに考えております。

桝屋委員 老健局長いらっしゃいますが、今大臣からお答えがありました介護人材の不足、さまざまな要素があるわけでありますが、やはり処遇の改善ということは、まずイの一番に挙がるわけであります。

 そういう意味では、先般、介護現場の賃金の状況等も報告をされておりました。そうした悩みを見ておりますが、果たして、介護人材の不足ということが、賃金が低いことが最大の原因なのか。厚労省はこれをどう分析しているのか。大臣からも、逐次にわたって努力してきた、こういう御説明も今いただいたわけでありますが、いま少し、この介護人材の不足と賃金との関係についてお答えいただきたいと思います。

原(勝)政府参考人 お答え申し上げます。

 介護人材不足の要因の中で、やはり、相対的に介護職の賃金水準が低い、これは間違いのないことだろうと思います。このため、これまでも三回ほど、交付金ですとか介護報酬加算という形で取り組んでまいりまして、約三万円程度の政策効果があったと認識しています。

 さらに、平成二十五年度でございます、このときは特段何も政策改定しておりませんけれども、一年間で、月給、常勤の介護職員の平均給与額が約七千円増加をしております。これは、平成二十四年度報酬改定における処遇改善交付金の介護報酬への恒久化による効果が定着をしてきているのではないか。また、事業者の経営努力による処遇改善の取り組みが引き続き進められてきた結果ではないかということで、安定的かつ継続的な処遇改善につながっているのではないかと思っております。

 また、単純な比較はできませんが、賃金構造基本統計調査を用いて見ますと、デフレ下での収益低迷などにより、近年、産業計の賃金が伸び悩んできた中で、介護分野は、低水準であるといいながらも、着実に賃金は上がってきているということが見てとれます。

 ただ、年々改善はしてきたといっても、賃金構造基本統計調査の、例えば、決まって支給する現金給与額で平成二十四年度の男女計の全産業との比較をしてみますと、やはりまだ十一万円ほど施設介護員の場合で低くなっている。

 この要因としては、基本給の水準の差もありますが、勤続年数が、全産業で見ますと十一・八年であるのに対して、福祉施設介護員は五・五年と短いことや、平均年齢も、全産業の四十一・七歳に対して、三十八・三歳ということで非常に若い職場である、こういったことも影響しているのではないか。

 したがいまして、私どもとしては、給与比較を行う場合は、就業の形態、これはサービスが施設か在宅か、あるいは常勤か非常勤かや、事業者の種別、規模などの観点からの検討が必要ではないかと思います。

 また、あわせて、勤続年数が短いということは、言いかえれば離職率が高いということでございますので、そういう意味では、大臣の方から答弁がございましたように、処遇改善のみならず、いろいろな施策を総動員して対応していくということが大事ではないかと考えております。

桝屋委員 着実に今までの取り組みが結果にはつながっているんだけれども、まだ全産業と比較して乖離がある、こういうことであります。

 先ほどの局長の説明を聞きながら、昔の措置の時代が、特養なんかの措置の単価というのは、大体勤続八年ぐらいをベースに設計をしていたということを考えますと、今五年ということは、介護保険が始まってどうだったのかな、こういうことも思うわけであります。

 いずれにしても、これから、明年の二十七年度改定に向けて処遇改善に取り組む、こういうことであります。大臣からも、今具体的に御答弁がありました。これは、具体的には、基本報酬あるいは加算による評価というようなやり方、いろいろあると思うのでありますが、どういう方法でこれに取り組むのか、重ねて大臣に伺いたいのであります。

 大臣、私は移動推進本部をやってみてつくづく感じるのでありますが、こういう声が現場にあります。

 基本報酬やそれから加算を考える場合に、今の加算というのは、当然ながら、介護従事者に行かなければ加算がつかないという仕組みになってはいるわけでありますが、ただ、例えば特養を見ても、人件費割合が、平均的に五〇パーを少し超える、六〇パー近い数字になっていると思いますが、平均の人件費割合、はるかに全国平均より高い施設もあれば、かなり低いところもある。

 要するに、どれだけ働いている人を評価しているかということ。こうした人件費割合ということも多少考えなきゃいかぬときが来ているのではないか。もっと言いますと、在宅サービスと特養を比べると、やはり人件費割合というのは、在宅サービス、特に訪問介護事業者あたりの人件費割合というのは極めて高いわけであります。そうした部分もそろそろ考えなきゃならぬのではないかなと。

 明年の報酬改定というのは、いわゆる処遇改善という観点から極めて大事なときを迎えていると私は思っておりまして、来年の報酬改定に向けての大臣の改めての御決意を伺いたいと思います。

田村国務大臣 それも含めて、省内の検討の場でいろいろな議論をしながら、その議論の中身も踏まえながら、介護給付費分科会の中で御議論をいただきたいというふうに思っております。

 人件費割合が高い、では、在宅系の方が施設系より人件費が高いかというと、そうではないわけでありまして、施設系の方が高いわけでありまして、それはなかなか、どう判断するのか難しい。当然、その施設において勤続年数の長い方々が多ければ、人件費割合は高くなっていくのでありましょうし、介護報酬改定は確かに三年に一回なんですけれども、では、その三年の間、人件費が上がっていないかというと、そうでもないわけでありまして、そこは、各事業所の中で効率化を進めていただきながら、いろいろな方法で給料というのは上げていただいておる、人件費というのを上げていただいておるところもあるわけであります。

 ただ、今も申し上げましたとおり、総じて低いものでありますから、ここをどうしていくかというのが大きな課題であると思います。どういうつけ方がいいか。例の処遇改善交付金みたいなつけ方をしたときは、これはもうピンポイントなんですけれども、では、看護職はつかないじゃないかだとか、中で一緒に働いているけれども調理している人はつかないなど、いろいろな御議論がございました。

 だから、そこはある程度使い勝手のいいものにしなきゃいけないというふうには思うわけでありますが、ただ、やはり福祉職の方々が総じて給料が低いという部分もあるわけでございますので、そのような部分も勘案しながら、今般の介護報酬改定というものをしっかりと対応してまいりたいというふうに思います。

 ただ、それでも百万人というのが本当に可能かどうか。そこは、例えば元気な高齢者の方々に、いろいろな役割というものがあるのであろうという中において、今般の、これはお叱りをよくいただくんですが、予防給付というものを地域支援事業の方に移していく。その中において、そういう方々のお力もおかしをいただきながら、総動員して、この介護、ニーズがふえる中において、高齢化社会を支えていかなきゃならぬ。

 大変頭の痛い問題でありますが、これを解決していかないことには日本の将来はないわけでありまして、しっかりと我々力を果たしてまいりたい、このように思っております。

桝屋委員 恐らく、大臣、検討は時間がそんなにないわけであります。我々も与党の一員として、八月までに、できれば七月ぐらいまでに、我々もしっかり党として見解をまとめていきたいと思っておりますから、どうぞ御検討をよろしくお願い申し上げます。

 それから、佐藤副大臣、せっかくきょうおいでいただいて、呼んでおいて聞かないというのも失礼でありまして、たどり着きそうもないので、そこへたどり着きます。全部飛ばしまして、ぜひ一点だけ、大事な問題でありまして、六十五歳問題、これは大臣にも聞いていただきたいわけでありますが、介護保険制度における六十五歳問題について最後に伺いたいと思います。

 障害者総合支援法との関係で、説明のつかない状況が生まれているのではないかと私は懸念をしております。

 一つは、やはり自己負担問題。ここは、きょう議論できなかったんですが、今回、介護保険も所得の多い方は二割負担という話、ぞっとする話なんですが、これもやむを得ないわけであります。

 ただ、総合支援法との関係でいきますと、障害者の皆さん方からは定率負担に対する物すごいアレルギーがあった。しかしながら、今、六十五歳になれば、どうしても介護保険に行ってくださいよ、こう言われて、現場では、それまでは総合支援法で受けていたのが、六十五歳になると一律的に介護保険だ、障害者の施策の手が切れるわけでありまして、ここは訴訟も起きそうな状況もあるわけであります。

 改めてこれは将来にわたって議論しなきゃいかぬときが来ているのではないかと私は思っているんですが、佐藤副大臣の御見解を伺いたいと思います。

佐藤副大臣 桝屋委員の御質問にお答えいたします。予定されていた質問を十問ほど飛ばしていただいて、わざわざ答弁の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 この問題は、実は、田村大臣も同僚議員の方々の質問にこの国会でも何回か御答弁されているわけですが、我々厚生労働省としても、本当に一つの大きな課題であるというように考えております。

 二つ、やはり問題があろうかと思っているんですね。一つは、今言われましたサービスの質の内容の問題、もう一つが自己負担の問題という、この二つの問題があろうかと思います。

 もう釈迦に説法なので詳しい話は言いませんけれども、要するに、保険の方を優先、そういう形に今なっているわけです。しかし、原則として決められているのは、まず介護保険のサービスを優先するのですけれども、そこで不十分な場合であるとか、あるいは障害者特有のサービスについては上乗せで障害者総合支援法による障害サービスを受けていただくことができる、そういう形になっているんですが、なかなか自治体によってばらつきがある、そういう問題があるということでございます。

 このことについても、障害者自立支援法成立直後の平成十九年の三月にも通知を出して、市町村において、サービスの利用に関する具体的な内容や意向を聞き取り等によってしっかりと把握した上で、個々の障害者の状況に応じたサービスが提供されることが厚生労働省としても必要と考えておりまして、そのことを、その通知だけではなくて、毎年の課長会議でも各自治体の皆さんには周知徹底をしてきておりますし、これからも努めていきたいと思っております。

 もう一つは、自己負担の問題というのは、もう御存じの上で聞かれているのであえて言いませんけれども、障害サービスの方の利用者負担というのは応能サービスなんだけれども、低所得者に対しては非常に配慮措置があって、九〇%以上の方が無料で受けられていたのが、介護保険になると六十五歳以上の方というのはサービス費の一律一割負担という、ここでどうしても費用負担が出てくる、この問題があります。

 ですから、この問題についても、具体的に今、厚生労働省としても本当に難しい問題だと思っておりますけれども、基本的な考え方としては、年齢にかかわらず必要なサービスの確実な提供が受けられるような、そういう制度と制度のはざまというものをどう滑らかにしていくか、このことをしっかりと厚生労働省としても、非常に難しい問題ではあるんですけれども、今後の検討課題として慎重に議論を進めさせていただきたい、このように考えております。

桝屋委員 私どもは、与党の一員として、慎重ではなくて積極的にこの問題は、とりわけ地域において必要なサービス、介護保険の基盤を使わない手はないというのが私の思いでありまして、引き続き議論してまいりたいと思います。

 十問飛ばしましたけれども、大臣の顔を見ておりますと、十問、大体納得できました。ぜひ議論を、この委員会でもこの法案の審議を進めていただきたい。

 最後になりますけれども、現場の声を大臣にお届けして終わりたいと思います。

 先般、同僚の議員からも報告がありましたが、鹿児島に行って移動推進本部をやってまいりました。鹿児島県で、県本庁の職員が私の前でこう言いました。来年の第六期の介護保険事業計画、認知症の五カ年計画、オレンジプランの中身も入れなきゃいかぬ、まさに正念場だと思っていますという決意を伺いました。大変な決意で取り組んでおられるな、こういうふうに感じました。

 もう一点は、私どもの地方議員とも議論しましたが、現場の声の中で、例えば、要支援と認定された方々の中に、デイサービスで要介護の方々と一緒にサービスを受けるよりも、月に一度、地域のいきいきサロンに通う方が自分には合っているという、僕がつくった言葉じゃありません、そのように言われて、そこも一回ぜひ見たいなと思ったのでありますが、そうした多様なサービスを現場ではお求めになっているという実態を見てまいりました。

 したがいまして、今回の個別給付から市町村事業ということがありますが、大いに全国の自治体の創意工夫というものが求められているなということを感じたということをお伝え申し上げて、質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

後藤委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時二分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時一分開議

後藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 午前に引き続き、内閣提出、地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律案及び中根康浩君外七名提出、介護・障害福祉従事者の人材確保に関する特別措置法案の両案を議題といたします。

 本日は、両案審査のため、参考人として、公益社団法人日本医師会副会長中川俊男君、介護保険(要支援)利用者指宿八洲夫君、山梨大学医学部附属病院臨床教育センター長・山梨県地域医療支援センター副センター長板倉淳君、東京医科歯科大学大学院医療経済学分野教授川渕孝一君、埼玉県済生会栗橋病院院長補佐・NPO法人医療制度研究会副理事長本田宏君、以上五名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人の方々に一言御挨拶を申し上げます。

 本日は、御多用中のところ本委員会に御出席いただきまして、まことにありがとうございます。それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただき、審査の参考にいたしたいと存じますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 最初に、参考人の方々から御意見をそれぞれ十五分以内でお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。

 なお、発言する際はその都度委員長の許可を受けることになっております。また、参考人は委員に対して質疑することができないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。

 それでは、まず中川参考人にお願いいたします。

中川参考人 中川俊男です。公益社団法人日本医師会副会長を務めさせていただいております。

 総合確保推進法案について、基本的にこれを推進すべきと考えています。その立場から意見を述べます。

 資料の右下番号一をお願いします。

 日本医師会の政策判断の基準です。

 日本医師会は、国の医療政策について、国民の安全な医療に資する政策か、公的医療保険による国民皆保険を堅持できる政策かという二つの基準で判断します。

 本日も、この視点から意見を述べさせていただきます。

 一枚おめくりいただいて、スライド二番をお願いします。

 「医療提供体制構築にむけての基本方針」です。これは、昨年八月に日本医師会と四病院団体協議会とが合同提言として発表したものです。

 その内容は、新たな時代にふさわしい体制構築に向けて国民とともに取り組むこと、あらゆる病期の患者の病態に合わせて最善の医療を切れ目なく提供すること、患者の命を守る質の高い医療を目指し、生活の質を重視する医療を実践するため、地域の医療、介護、福祉との連携のもと、地域包括ケアシステムの実現に向けて、在宅医療を含めた柔軟な医療提供体制を構築することの三点であります。

 今回の法案の内容も、日本医師会、四病院団体協議会の提言におおむね沿った内容になっていると考えています。

 スライド三番をお願いします。

 病床機能の区分についてです。

 病床機能報告制度で報告する機能区分については、当初、急性期、亜急性期といった提案がありました。しかし、亜急性期を軽症急性期として捉えた考え方があり、これでは高齢者の急性期医療を低コストに抑制することにつながりかねない懸念がありました。そこで、日本医師会と四病院団体協議会は、高度急性期、急性期、回復期、慢性期の四病床区分とすることを提案しました。そして、二〇一三年に、私たちの提案が反映された四つの区分として決着しました。このことは評価できると考えています。

 スライド四番をお願いします。

 病床機能報告制度についてです。

 当初、厚生労働省から、急性期病床群を認定、登録する制度の提案がありました。しかし、認定や登録では、要件を満たせない病院が急性期医療から退場させられるおそれがあります。特に地方では、急性期医療の確保が困難になることを指摘しました。そして、検討の後、各医療機関が、その有する病床において担っている医療機能を自主的に選択し、都道府県に報告する仕組みとすることで決着しました。

 こうした経緯も踏まえ、この報告制度を活用して地域の現状分析を十分に行い、その上で、都道府県医師会等の関係者も参画し、地域医療ビジョンをじっくりと策定すべきと考えています。

 スライド五番をお願いします。

 地域医療構想、ビジョンを実現する仕組みについて申し上げます。

 第一に、地域医療ビジョンの策定に向けて、全国に協議の場が設置されます。協議の場には、診療に関する学識経験者の団体その他の医療関係者ほかが参画するとされています。したがって、都道府県は、地域医療を担う全国の医師会と真摯な協議を行っていただきたい。そのためには、国から都道府県行政へ、医師会と連携するよう明確に働きかけを行っていただきたいと思います。

 第二に、都道府県知事は、医療機関が過剰な病床機能へ転換しようとしたとき、その中止等を、公的機関に対しては命令、指示、民間に対しては要請することができます。それに従わなかったときには、ここにある三点の措置が挙げられていますが、しかし、このような措置は、ルールを無視するような悪質な場合に限定されるべきです。協議の場の協議を踏まえること、都道府県医療審議会の意見を尊重することは絶対であり、決して強権的なペナルティーを発動することがないよう要請します。

 スライド六番をお願いします。

 地域医療ビジョン策定のスケジュールについて意見を申し上げます。

 地域医療ビジョンは、当初、二〇一八年度の第七次医療計画に合わせて策定されることになっていましたが、今回、三年前倒しで策定されることになりました。地域医療の現場感覚としては、時間的余裕が全くありません。期限ありきで拙速なビジョン策定が行われないように、国は都道府県行政に強く働きかけていただきたいと思います。

 また、国が策定するビジョン策定のためのガイドラインは、強制力を持つものであってはなりません。ガイドラインは、あくまでも目安であり、参考として位置づけられるべきで、各地域の実情がしっかり反映されることが優先されるべきです。そのことも都道府県行政に周知いただきたい。

 スライド七番をお願いします。

 新たな財政支援制度、基金についてです。

 新たな基金の交付条件案では、官民公平に配分することを都道府県に求め、都道府県計画においては、公的、民間の割合と額を明示し、見解を付すとされています。しかし、これまでの地域医療再生基金は、公的・公立医療機関に偏って投入されてきました。新たな基金は、官民公平を実現していただくよう要請します。

 具体的には、都道府県医師会をまとめ役として地域の実情を踏まえて活用すること、地域包括ケアを推進する観点から、かかりつけ医、かかりつけ医と連携する医療機関などを積極的に評価し、基金を投入していただきたいと思います。

 スライド八番は、今お話しした、これまでの地域医療再生基金の投入状況です。

 二〇〇九年度、二〇一〇年度分の地域医療再生基金のうち、公的・公立に投入された割合は、七三・九%でした。

 九番をお願いします。

 今般、長年の議論を経て、医療事故調査制度創設に関する法案が国会に提出されたことの意義は大きいと思います。

 この件に関して、日本医師会では、会内に検討委員会を設け、可能な限り会員の声を集約しました。その要点は、そこに示す1から5です。1から4はおおむね法案に盛り込まれていますが、5の「第三者機関から警察への通知はおこなわない」ということについては、厚生労働省の検討部会報告書の記述どおり、何らかの形で明確化されることを強く望みます。

 法案成立後に、具体的な制度運用方法などが政省令やガイドラインなどで定められるとのことですが、日本医師会として、次の点を強調したいと思います。

 まず第一に、第三者機関である医療事故調査・支援センターの調査が開始される場合については、院内調査の結果に遺族が納得しない場合や院内調査が遅々として進まない場合など、一定の事由を条文上に明記すべきです。

 第二に、院内調査は中小医療機関にとって大きな負担となります。このような医療機関を支える体制を整備するための制度面、財政面での措置など、十分な支援をお願いします。

 第三に、法案では、第三者機関として医療事故調査・支援センターを設けるとされておりますが、医療事故調査自体はあくまでも医療界の自律的な機能として行われるべきものです。公の支配が過剰に及ぶことがないような仕組みにしていただきたい。

 スライド十番をお願いします。

 地域医療支援センターです。

 今回の法案で、地域医療支援センターが医療法上に位置づけられました。このことについて評価いたしますが、さらにもう一歩踏み込んでいただきたい。

 医師不足対策として、二〇〇八年度以降、医学部定員は累計で千四百四十四人増員され、医師数自体の手当ては一段落したと思いますが、医師の地域間及び診療科間偏在の解消対策は全く不十分です。地域医療支援センターについては、各都道府県に一任するのではなく、国の、財政的にも人材面でも、強力な支援の継続が必要です。さらに、大学病院も巻き込んでいくために、文部科学省と厚生労働省との連携強化も必要です。

 スライド十一番をお願いします。

 日本医師会の偏在解消に向けての提案です。

 現在の仕組みを発展的に再編し、都道府県地域医療対策センター(仮称)を設置して医師養成と偏在解消に当たるべきという提案をしています。ポイントは、医師会、行政、大学、地域住民等が一体となって地域で医師を育て、確保するという点です。

 スライド十二番をお願いします。

 医師偏在問題と関連して、国家戦略特区における医学部新設についてです。

 今申し上げたように、医師不足対策として、医学部の定員増加が図られてきました。国の適切な対策を評価します。今後は、地域包括ケアを推進し、急務である医師の地域、診療科間の偏在を解消していくべきです。

 そのような中で、国家戦略特区で医学部新設が提案されています。しかし、地域の医師不足をより深刻化させることが危惧されるため、日本医師会は明確に反対します。

 十三番です。

 医療法人に関しては、今回の改正法案では、社団と財団の合併、持ち分なし医療法人への移行促進策の二点の見直しが提案されておりますが、前者については、医療法人財団には大規模なものが多いのですが、一般論として、ここに示す三点の理由から、法人の広域化、大規模化、医療機関の過度な集約等につながらないような運営が必要と考えます。

 後者については、持ち分のある医療法人が持ち分のない医療法人への移行を円滑にできるような税制要望をしてきたところであります。

 さて、最後に申し上げたい点があります。

 スライド十四番をお願いします。

 国民皆保険の堅持についてです。

 日本医師会は、国民皆保険を堅持することは、公的な医療給付範囲を将来にわたって維持すること、混合診療を全面解禁しないこと、営利企業、株式会社を医療機関経営に参入させないことであると考えます。

 二〇〇四年のいわゆる基本的合意にも、国民皆保険の理念は、「必要かつ適切な医療は基本的に保険診療により確保する」ことだとあります。

 ところが、最近、規制改革会議から、保険外併用療養の拡大を求める提案がなされています。

 そこで、スライド十五番、ドラッグラグの短縮に向けてをお願いします。

 今の日本の医療において解消が急がれる課題の一つは、ドラッグラグです。ここに示すように、ドラッグラグは、開発・申請ラグと審査ラグから成ります。既に、審査ラグはほぼ解消されています。

 現在の問題点は、製薬メーカーの開発・申請ラグです。例として、米国承認済みで日本で未承認の医薬品は九十六品目あります。国としても、製薬メーカーに対して、早期に申請し、薬事承認及び保険収載を目指すことを強力に指導していただきたい。

 そのまとめをスライド十六番に示しました。

 保険外併用療養費制度についてです。

 保険外併用療養費制度も、二〇〇四年に合意した国民皆保険の理念を基本に据えなければなりません。規制改革会議が提案する選択療養については、現行の評価療養の機動性を高めることで十分に対応できます。新たな医療が保険収載されないということになれば、資産や所得の多寡で医療に格差が生じることになります。

 現行の制度について、知恵を絞って、ぜひ国民を守っていただきたい。そのために、私たちもともに力を尽くしてまいりたいと思っています。

 以上でございます。(拍手)

後藤委員長 ありがとうございました。

 次に、指宿参考人にお願いいたします。

指宿参考人 私は、東京都渋谷区在住の指宿八洲夫と申します。

 きょうは、医療介護推進法案の要支援サービスの市町村への移行について、要支援を継続してもらいたい考えから意見を述べさせていただきたいと思います。

 まず最初に、私個人の一日の生活の説明をいたします。

 太陽とともに一日を始めるという私のモットーから、朝は五時に起き、私のところは神道でございますので、祖先である神様の榊の水を取りかえて、新しいお水を供えて、三年前に亡くなった妻と祖先に対して朝の挨拶をして一日が始まります。

 次に、血圧をはかり、朝四時ごろに来ている日経新聞の全体をよく見て、特に、中に書いてある主として経済に関する数字をノートに書き取り、内容を精読いたします。その間、朝食をとります。食事の後は、ノートの数字をグラフにして経済の情勢を検討いたします。

 十時ごろになると、用事で外出するか、または、温水プールに行き、二十分の水中ウオーキングを行い、特に足の運動を念入りに行い、プールから出ると大体、最高血圧が百二十、最低血圧が六十ぐらいで、プールに入るときからしますと二十ぐらいは低くなり、大変望ましい血圧になり、うれしくなります。

 これが午前の部でございます。

 午後の部は、昼食として、熱い御飯に生卵をかけ、上に塩昆布を乗せて、前日のおかずの残りとともに食事を済ませ、その後、昼寝を一時間ぐらい、ぐっすり、十分にとり、目を覚ましますとまた朝が来たと思うほど寝るので爽快になり、何だか得をしたように思われます。

 四時ごろには夕刊が来ますので、今度は夕刊の精読です。夕刊にある、主として外国、特にアメリカの経済の数字をノートに書き取り、これをまたグラフにして大勢を検討いたします。

 これが終わりますと、そろそろ夕食の支度に取りかかり、六時ごろにはまた夕食となります。テレビの七時のニュースを聞きながら夕食を終わり、食後の食器を片づけて、八時ごろ、きょうの家計簿をつけ、手元の現金を確認いたします。九時ごろには血圧を測定して、十時ごろ就寝というのが、私の大体の一日の過ごし方でございます。

 次に、ヘルパーさんの方は、月曜日、水曜日、金曜日に来てくれますが、月曜日は朝、午前十時から一時間半、金曜日は午後二時から一時間半、水曜日は介護保険外の渋谷区のホームヘルパーに一時間半やっていただいて、合計週三回ヘルプしてもらっております。

 月曜日、金曜日は主として部屋の掃除、便所の掃除。私も手伝っています。自分の運動のため、ヘルパーさんの仕事の能率のよいようにと協力をしております。

 掃除の後で料理を一品つくってもらって、数日間食べるヒジキの煮物とかサラダをつくって、毎日の食事に利用して、大変助かっております。

 水曜日の料理の日は、NHKから出ているテキストを利用して、最初の一ページから順序よく、テキストに記載の材料を購入して二日分つくってもらいます。ヘルパーさんは私の好みの味を知っているので、味については不平を言わないことにしております。

 このようにして、私の本来の生活リズムとヘルパーさんのリズムがうまくかみ合って、効率よく回転しているように思われます。

 私は、十年前に頸椎を六時間かけて手術しましたので、その後の後遺症のために、体が疲れますと肩や首の周りが痛くなり、足が重くなり、歩行が困難になります。それで、遠出をいたしません。プールの中の運動では、足の運動を入念にやるように心がけております。

 また、昨年は、肺炎、足の膝の半月板を骨折して、大変ヘルパーさんにお世話になり、退院後の在宅復帰に向けて、ケアマネジャーさんとホームヘルパーさんと入院先の理学療法士さんがおのおの連携していただき、支援をしてもらいました。専門のホームヘルパーさんの支援がなければ早期に在宅復帰はできなかったのではないかと思っております。

 私は、要支援というのは、要介護にならないための防波堤のようなものであると思っております。私は、妻が要介護三で、六年間介護をやりましたが、介護と支援では病状の程度が大変違います。要介護でも特に四とか五となりますと、看護する人も大変心身が疲れまして、私どもには想像を絶するものがあるのではないかと思っております。要支援のときからよいホームヘルパーさんについてもらうようにすることが大切であります。

 また、ボランティアの人にヘルプを受けてはどうかとよく耳にいたしますが、プロのヘルパーさんとボランティアの人とを比較するのでは、ヘルパーさんに大変失礼なことであると私は思っております。知識の点、訓練の点、責任の持ち方の点、あらゆる点で全然違います。能力としては三倍は違うのではないかと私は思います。私は、ボランティアの人ではなくホームヘルパーさんに来てもらいたいと思っております。

 今、介護業界では人手不足に困っていると聞いております。重労働で低賃金では、賃金を上げなくてはよい人材を得られないのではないかと感じておりましたが、図らずも、四月二十九日の日本経済新聞に介護報酬の引き上げが報じられました。人間の最期にかかわる介護産業の仕事にプライドを持つことができるような報酬に改善することを、ぜひお願いいたしたいと思います。

 以上をもちまして、私の申し上げたいことを終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)

後藤委員長 ありがとうございました。

 次に、板倉参考人にお願いいたします。

板倉参考人 山梨大学臨床教育センターの板倉と申します。

 本日、私からは、この法案の中に盛り込まれております地域医療支援センターに関してお話をさせていただきたいと思います。本県の取り組み、それから課題ということでお話をさせていただきたいと思います。

 まず、この地域医療支援センターでありますけれども、地方で深刻化しております医師不足対策として、平成二十三年に厚労省によって設立されたものであります。当初、全国の十五道府県に設置をされまして、昨年、二十五年にはさらに十五県追加されまして、三十県に設置されております。本県では、昨年の平成二十五年四月に設置をされております。

 本県の地域医療支援センターの特徴、一枚目のポンチ絵の真ん中に出ておりますけれども、山梨県の臨床研修病院等連携協議会、これがその組織の基盤になっているというところが一つの特徴であります。

 この設置に当たりまして、その主体をどこに置くのか、あるいはどういった組織で運営していくのかということに関しまして二年ほど協議を続けてまいりましたけれども、本県の場合、医師不足とともに、もう一つ大きな問題として、研修医の減少という問題があります。

 下に、ちょっと小さいですけれども参考資料を提示しております。平成十九年以降、研修医が減少してまいりまして、平成二十二年には、本学の研修医のマッチング率、これは二七%、全国の四十二国立大学の中で下から四番目。また、県全体では四一%で、四十七都道府県の中では、宮崎県を除いて、下から二番目という極めて深刻な状況にまで落ち込みました。

 これに対して、本学といたしましては、現在私がセンター長を務めさせていただいております臨床教育センターという部署を新設いたしました。さらに、山梨県の臨床研修病院等連携協議会、ここには大学を含む五つの施設が登録しておりますけれども、この五つの施設で、県全体で研修医確保という取り組みを行っていくということを推進してまいりました。

 その結果、平成二十三年から回復傾向に向かいまして、昨年は、本学でマッチング率七〇%、県全体といたしましても七四%という回復に至りました。これは、平成十六年に本研修制度が始まって過去最高、本県としては最高の数字に至りました。

 こういった実績を踏まえまして、この地域医療支援センターの目的が、医師不足対策という、やはり全県を挙げて取り組まなければいけない問題であるということ、それから、この後お話をいたしますけれども、医師の教育、育成という段階から取り組まなければいけない問題ということを勘案いたしまして、この山梨県臨床研修病院等連携協議会をこの組織の基盤といたしました。さらに、医師会それから官民病院協会、そして、長らく地域の医療を支えてくださっております自治医大の先生方の代表者にも加わっていただいて、県全体を挙げて、オール山梨という形で、この問題に対して取り組んでいくということを行ってまいりました。

 一枚めくっていただいて、ここで、山梨県の医療の現状について簡単にお話をさせていただきます。

 二枚目の左の上にありますが、現在の山梨県の医師数でありますけれども、対十万人当たり全国平均が二百三十・四人に対して、本県では二百十八・六人。やはり深刻な医師不足がございます。

 また、山梨県には四つの二次医療圏がございますけれども、県庁所在地であります甲府市を含む中北医療圏を除きまして、残りの三つの医療圏では、百九・一、百四十・〇、百七十四・〇と、全国平均に比べて極めて深刻な医師不足があります。いわゆる地域偏在の著しい県でございます。

 その一方で、医師数であります。左の下の図をごらんいただきたいと思いますけれども、全国の推移と同様に、本県でも医師数自体はふえております。この数年は、年平均約三十人から三十五人、医師数がふえております。本県には大きな地域枠がございますので、今後、そこからの供給も見込めますし、また、県民の人口減少ということ、こういったことを考慮いたしますと、平成三十年にはある程度全国レベルの医師数に到達するのではないかというふうに推測をしております。

 ところが、右側の図をごらんいただきたいと思いますけれども、診療科別の従事医師数、これを見てみますと、精神科、麻酔科、これが著しく増加しているのに対して、産婦人科、外科という診療科におきましては減少傾向にあります。また、これから超高齢化社会を迎える中で重要な位置づけとなります内科医に関しましても、ごらんのように低調な増加にとどまっているというのが本県の現状であります。すなわち、医師の地域偏在とともに診療科偏在、これも深刻な懸念の一つであるというふうに考えております。

 このような医療提供状況の中で、県民が望んでおります医療サービスについて、そのアンケート調査を右の上の方に提示させていただいておりますけれども、一番県民が望んでいる医療サービスといいますのは、夜間や休日に緊急対応できる医療機関の確保、また、身近な診療所と総合的な病院の協力体制の推進、あるいは在宅医療を行う体制の充実といった二次医療圏における医療サービスの充実、これが県民が強く望んでいる医療サービスであるというふうに認識しております。

 三枚目をめくっていただきたいと思います。

 こういった本県の現状を総合的に考えまして、まず、本県の地域医療支援センターとして行うべき目的として、この医師不足が顕著である二次医療圏に対して、その中核病院に、県民の望む、一次医療、二次医療、救急が提供できる医師、さらには地域のかかりつけ医、あるいは包括ケアチーム、こういったものを支援できるような医師を養成し、配置していくということが当面の我々の目的ではないかというふうに考えております。

 これを具体的に申し上げますと、いわゆる病院総合診療医の養成ということになりまして、これを推進するために、本県では、山梨県総合診療専門医養成プログラムというのを策定いたしました。

 御存じのように、二〇一七年から新しい専門医制度が始まります。この中では、内科、外科といった基幹病院と並んで、十九番目の基幹専門領域といたしまして総合診療専門医というのが位置づけられております。

 この認定要件、現在、プライマリ・ケア連合学会がその母体となっておりますけれども、そこが提示しております研修プログラム、これを参考といたしまして、本県でも養成プログラムを策定しております。

 図の一番下のところになりますけれども、一年間の基幹研修施設、これは本大学にあります。それから、診療所、小病院といった一次研修施設、ここでの一年間の研修、それから、二次医療圏の病院総合診療部門での研修、これを一年間。トータル三年間の研修期間というのを義務づけております。

 さらに、地域医療支援センターといたしましては、この一次研修、二次研修施設を、先ほどお示ししました、医師不足の著しい二次医療圏の中核病院をこの研修施設として指定することによって、重点的に医療資源、特に人材を含む医療資源を投入して、短期的な医師不足対策の一助にしたいというふうに考えております。

 四枚目をめくっていただきたいと思います。

 この山梨県総合診療専門医養成プログラム、これは基本的には後期研修医のプログラムでありますけれども、このプログラムに若い医師を導入するため、あるいは誘導するためには、早期からの教育が必要だろうというふうに考えております。

 また、このプログラムで専門医を取得した医師が最終的に地域に定着するためには、地域に必要な総合診療医、あるいは地域医療のプロとしてのプロフェッショナリズムを涵養することも重要であろうというふうに考えております。そういった意味では、医学部での卒前の教育の段階から、地域医療あるいは総合診療、こういったものの重要性を教育し、経験させることが必要であろうというふうに考えております。

 また、このプログラムを経て最終的に地域に医師を派遣するまでにはタイムラグがございます。それまでの間、また、そのプログラムを運営する間に、運用の中で、指導医の養成というものも必要になっております。

 これに関しましては、専門医からのキャリアシフトというのを考えております。特に、新臨床研修制度を経た医師、先生方の中に、既に専門医を取得した先生方もおられます。こういった先生方にキャリアシフトを支援していって、指導をお願いするとともに、地域の短期的な医師不足対策の人員として働いていただきたいということを考えております。

 また、長年地域の医療を守ってこられました自治医大系の先生方、これらの先生方は、そもそも、総合診療医としての能力の高い先生方であります。これらの先生方に指導医としての資格、あるいは教育者としてのスキルを学んでいただいて、指導医として一緒に働いていただくということを進めております。

 このように、一年間の活動でありますけれども、まず短期的な目標として、総合診療医の養成というプログラムを策定いたしました。これを推進していくためには、やはり教育という段階から含めた長いスパンでの取り組みが必要ですし、あるいは、医師会あるいは地域の病院協会、そういったところと連携した、広いフィールドでの事業ということが必要になってきます。

 最後に、我々の課題として、提案させていただきます。

 現在言われている医師不足というのは、単に数の不均衡ではなく、地域で必要とされている医療サービスが十分提供できていない、あるいは必要とされている医療サービスの変化に十分適応できていないということが本質的な問題だろうと考えています。これに対しましては、やはり教育、医師の育成という段階から長いスパンで取り組んでいかなければいけないというふうに考えております。

 この点に関しまして、現在、地域医療支援センターのアウトカムとして提示されておりますのは、短期的な派遣実績、こういった数字だけがアウトカムとして提示されている部分があります。また、施設によりましては、あるいは県によりましては、従来の、大学の診療科に医師派遣機能を戻すことによって簡単に解決できるのではないかというふうな意見も出されております。

 こういった点に関して、今法案の中で地域医療支援センターがどのような位置づけになるか、しっかりした位置づけで、長いスパン、広いフィールドで事業展開ができるかということに関しては、注意をして見ていきたいというふうに考えております。

 また、本県のように、自治体ごとのバックグラウンドあるいは経緯というのがございます。そういった点を踏まえて、ある程度の自由度を持った地域医療支援センターの運用、展開ができるような形での法整備をしていただきたいというふうに考えております。

 最後に、本法案によりまして、地域医療支援センターが、ある程度強い機能を持った、また長いスパンで機能できる、そういった立場に位置づけられる可能性があるということを伺っております。私としては、ぜひそういった形で地域医療支援センターが位置づけられることを期待いたしまして、お話を終わらせていただきたいと思います。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

後藤委員長 ありがとうございました。

 次に、川渕参考人にお願いいたします。

川渕参考人 ただいま御紹介いただきました川渕であります。

 私は、東京医科歯科大学というところで、医療経済学の教員であります。医科歯科でありますから医学部、歯学部の学部しかないのでありますけれども、私は医師免許も歯科医師免許も持っていない無資格者でありまして、きょうは無資格者の立場で今回の法案についての懸念と提案を申し上げたいと思います。

 懸念と申し上げますのは、今回の法案、なめるように読みましたけれども、なかなかぴんと入ってこない。と申しますのは、やはり本法が非常に概念的に書いてありますので、細かいいろいろな規定とか数値は恐らく政省令で決まっていくんじゃないかということで、そういう懸念も踏まえて、国民視点から申し上げたいと思います。

 きょう申し上げる内容は専ら懸念の方が多いわけでありますけれども、提案は、お手元の資料の左側にあります、これは、二十一世紀政策研究所というところが書きました百五十ページから成る報告書がありまして、ダウンロードできますし、三ページぐらい読んでいただきますと不眠症の方は快眠できるという内容であります。

 そういう話でありますが、二枚目ですね。きょうは野党からの参考人招致でございますが、自民党の政権公約、これに書いてあることは、私は至極もっともではないかなと。特に、その最初にありますように、今も話がありましたように、医師不足を解消したいとか適正な人材を配置したいというところは誰も否定するところではありませんが、問題は、その方法論であります。

 と申しますのは、そこに書いてございます、一番下にあります、社会保障の推計値ですね。これも、厚労省の推計でありますけれども、年金、医療、介護でありますが、金額ベースで見ますと、確かに二〇二五年は年金が一番多うございますけれども、医療、介護の伸び率がすこぶる高いということが二ページ目の下の図表からわかると思います。したがって、これからこの国が、どの国も経験したことのない未曽有の少子高齢社会をどう乗り切っていくか、その知恵が我が国は問われているのではないかなと思います。

 その次の三ページ目を見ていただきたいと思います。そこに、うちの教室でつくった図表があります。GDPと医療費があります。うちの大学は歯学部もありますので、歯科の医療費もプロットしました。

 一九八三年と申し上げますと、土光敏夫さん、土光臨調という形で、医療費の伸び率を国民所得の伸び率の範囲に抑えろというような答申が出た話でありまして、ある意味では、一九九〇年代くらいまでは、ある程度コントロールしておりました。

 ところが、どうでしょうか。我が国は、GDPは伸び悩んでおります。まだ五百兆円ということでありますけれども、最近景気は少しよくなりましたが、伸び悩んでいる。

 一方、歯学部もありますので、歯科のお話をしますと、やはり歯科の医療費は伸びていない。これは、私は、技術革新がインプラント以降余りないのではないかなということで、そう思っておりますが、医科に関しては、確かに、聖域なき構造改革ということで、鈍化しておりますけれども、ある程度伸びてきているのかなと。ただ、二〇〇〇年に介護保険が始まりましたので、今までは医療保険で払っておったものを介護保険にシフトしているのかなということもありますので、ここは非常に厳密に考えなくちゃいけないわけであります。

 きょうの一番大きなテーマでありますところの四番目であります。

 四番目がきょうのメーンテーマでありますが、私自身、きょうは八不思議というふうになって、普通は七不思議でありますけれども、ゼロ番が好きでありまして、ゼロ番、ちょっと読み上げますと、そもそもこれまで都合五回の医療法改正が行われてきましたが、果たしてその目的というのは達成されたのかどうかであります。

 第一次医療法改正は、地域医療計画を策定し、第二次医療法改正では、特定機能病院、療養型病床群等々をつくりました。第三次医療法は、地域医療支援病院、第四次医療法は、一般病床、療養病床の区分、第五次医療法改正は、社会医療法人の制度ですね。

 私自身も九年間厚生省の研究所におりましたので、きょうは天に唾を吐くつもりでおりますけれども、ある意味では、ずっとこういう病院の機能の分析をやってきまして、なかなか病院の機能分担というのは難しいなというのが、私が今までやってきた徒労の歴史であります。そういう点では、下手をしますと、今回は、政府の失敗をまた繰り返すのではないかということを、非常に一市民として懸念を覚えるわけであります。

 その次、一つ目でありますが、未曽有の超高齢社会を迎える我が国にあって、今回も地域包括ケアシステムという言葉が出てきます。私自身は、地域包括ケアシステムについては、非常に理想的なアジアモデルといいますか、日本モデルになり得るんじゃないかと思いますが、無理やりこれを押し通しますと、ややもすると入退院を繰り返すことになりやしないか、あるいは、行ってみたら亡くなっていましたという頓死がふえるんじゃないかということは懸念されます。

 事実、日本福祉大学の二木学長のデータによりますと、東京都の自宅死亡割合というのが、二〇〇一年三十五位、四十七都道府県中三十五位だったのが、二〇一〇年には二位になっている。こんなに東京都で地域包括ケアシステムが進んでいると、先生方は思われますでしょうか。

 私自身は、やはりお一人様がふえる中で、行ってみたら亡くなっていたというケースが結構多いのではないか。ここをどう考えるか。孤独死というのか、尊厳死というのかであります。

 特に、私は、今回非常に懸念を覚えるのは、病床機能報告制度であります。

 パワーポイントの七ページにありますが、言うまでもなく、我が国の一般病床、療養病床を、高度急性期と急性期と回復期と慢性期に分ける、こうなっているわけです。

 どうでしょうか。私の父も今、誤嚥性肺炎ということで入退院を繰り返しています、もともとは脳卒中だったんですけれども。誤嚥性肺炎が死因の三番目になってきました、脳卒中を上回ってきました。これはもう言うまでもありません。高齢化社会なので、脳卒中は助かったあげく、結局、誤嚥性で入退院を繰り返す、こういうのは、急性期なんでしょうか、慢性期なんでしょうか。

 私自身は文系なのでよくわかりませんけれども、刻々と変化する患者の状態像を誰がどうやって区分するのか。ややもすると、今回は、各病院からレセプトデータをもらうんだ、あるいは医療施設の情報を手に入れるんだと。私もいろいろな研究をやってきましたけれども、どうやってこれを分析するのかな、そして最適な解というのをどうやって求めるのかなと、よくわかりません。

 私自身は、むしろ診療報酬上、患者の重症度を反映したケースミックスの開発というのが望まれるのではないかと思います。

 具体例は、私のきょうの資料の二十一枚目にございます。

 これは、先日アメリカに行ってきましたので、アメリカで発表してきた結果なので英語になっておりますが、ジョンズ・ホプキンス大学がつくったACGというソフトがありまして、これは生涯医療費というのがわかるんですね。メタボの健診の結果とかあるいは私の服薬の歴史なんかを調べますと、全部そのデータをぶち込みますと生涯医療費がわかってきますが、ここにございますように、やはり、平均を一にしますと、糖尿病とか高血圧、高脂血症になりますと、三倍とか二倍、医療費がかかる。さらに重篤になりますと、十倍ぐらいかかるだろう。

 私は、医療費がかかることを問題にしているわけではなくて、こんなふうに刻々と変わる患者の状態像をやはりある程度把握していかないと非常にいけないのではないかなと思います。

 実際、最近よく思うのでありますが、慢性心不全とか、あるいは即死のないがん、こういうのは慢性期になるんでしょうか。

 私は、今後、各自治体あるいは医療機関に、報告制度でありますから報告していただくようになりますと、実際の多くの病院はやはり急性期に手を挙げられるのではないかな、ドクターはやはり完治させるところに努力するのではないかなと。そうすると、七対一ということが二〇〇六年度の診療報酬改定でも問題になりましたけれども、こういうことをまた繰り返すのではないかなと思います。

 いずれにしても、今回のこの病床機能報告制度に関しては、私は、診療報酬制度とある程度きちんとマッチングさせる必要があるんじゃないかと。

 例えば、今七対一という話をしましたけれども、千六百病院ぐらいではもうDPCという疾病別の包括払い制度を導入しております。これも、いろいろ調べますと、非常に矛盾を抱えているわけです。

 例えば、私の資料のパワーポイントの十一枚目を見ていただきますと、今回は医政局のテーマがメーンかと思いますが、医政局と保険局の横串がうまく入っていない。例えばDPCというのは、実は1群、2群、3群とあるんですね。1群は大学病院の本院、2群というのは三次医療を担う医療機関、3群というのは二次医療圏を担う。

 ところが、この四月に大きく変わりまして、これまで3群だったのが2群になった病院が三十四病院あります。さらに、2群だったのが3群になったのが二十六ぐらいあります。ということは、これまでは二次医療圏でやればいいと思ったのが、今度は三次医療圏でやりなさい、都道府県単位の医療ですね。今度は逆でありまして、都道府県単位の医療だと思ったら、今度は二次医療圏でいい。こんなふうに、診療報酬で医療機関の経営が非常に変わってきます。

 したがって、そこをうまく合わせておかないと、こういう計画経済というのは、ソビエトの崩壊を見ても、うまくいかないのではないか。

 事実、介護療養病床の廃止というのもございました。しかし、まだ七万床ぐらいは残っております。これは、借金をして、六・四平米にして、談話室、食堂もつくって、そしてはしごを外されたらたまったものではありませんというのが現場の声でありまして、こういう大混乱が起きなければいいというのが私の懸念であります。

 それから、五ページ目。

 五ページ目は、今度は三つ目でありますが、そのほかに、特定機能病院とか地域医療支援病院というのを、今度また施設基準を見直したんですね。紹介率や逆紹介率というのを見直すのはいいんですが、これに向かって頑張ろうという病院が結構あったんですね。またこれが、屋上屋を重ねるんじゃないか。科学的根拠というのは何なのか、それから一定の検証を行ったのかどうか、この辺は、あえて先生方に問いたいところであります。

 四番目は、臨床研究中核病院であります。

 これも、非常にネーミングはいいわけでありますし、ぜひアベノミクスの成長戦略に資してほしいのでありますが、経営的にペイするのかどうか。それから、文部科学省は、今、二十数病院をリサーチ大学と呼んで、本学も仲間に入れてもらいましたけれども、このリサーチ大学と臨床研究中核病院というのが呼応しているのかどうかであります。

 五番目は、社会保障制度改革国民会議が提唱した非営利型のホールディングカンパニー、先ほど中川先生もおっしゃいましたけれども、それと、持ち分なしの医療法人との関係はいかに。

 というのは、これは資料の十三ページを見ていただきたいんですが、私も医療法人の分析をしますと、たくさんの医療法人がありますが、圧倒的に多いのは、医療法人持ち分ありが九八%。これをなしにしたいというのはわかるのでありますけれども、やはり経営者の中には、できることなら持ち分ありでとどめておきたい。

 ホールディングカンパニーというネーミングは、これは私がやったのではなくて社会保障制度改革国民会議が掲げた文言でありますが、ホールディングカンパニーというのは普通は持ち分ありではないでしょうか。それと、持ち分なしの医療法人をこれから進めたいというこの法案と、やはりそごがあるんじゃないかなと。そして、病院の経営は二十六種類ありまして、二十六種類の経営母体は、実際、持ち分なしかどうか。

 六番目、介護サービスの一部を市町村事業に移管する。先ほども参考人から話がありましたが、私自身は、これは、市町村に移しますと、ワクチンもそうであったように、ワクチンデバイドといったものが、今度は介護デバイドになっていくんじゃないかということと、もう一つ大きなことを言いたいのは、介護報酬の級地区分がどうも実態を反映していないんじゃないか。

 やはり都道府県の最低賃金や有効求人倍率をベースに策定してはどうかということで、これは特に神奈川県の方から、パワーポイントの十五ページ目に見せる予定だったんですけれども、聞くところによりますと、最低賃金というのは東京都と神奈川県では一円しか違わない。今の介護報酬はこういうふうにきめ細かになっておりません。したがって、どうしても、都会の介護のスタッフの給料を上げようと思っても、なかなかこれができないという問題もあるやに聞いております。そういうきめ細かな介護報酬の策定も必要じゃないか。

 また資料の五ページに戻りますが、最後であります。特定行為を認められた看護師というのはどんな看護師なんでしょうか。法案の中にも書いてありますが、私はよくわかりません。

 医師不足を解消すべく、日本版ナースプラクティショナーをつくるのかなと思ったんですが、そうではないようであります。そうであれば、既に日本看護協会が進めている認定・専門看護師と何がどう違うのか、また研修を受けなくちゃいけないのか、研修は続けて受けるのかどうか、この辺もぜひ検討いただきたいと思います。

 以上であります。(拍手)

後藤委員長 ありがとうございました。

 次に、本田参考人にお願いいたします。

本田参考人 先進国一医師不足と言われている日本ですけれども、その日本でもまた一番医師が少ない埼玉から参りました。ことし還暦を迎えて、もう外科医を引退したいと思っても、外科医が二人減ってしまいまして、引退できずに、今後、何かあって医療事故にでも巻き込まれたらどうしようかなということを本当に真剣に考えている本田でございます。

 きょうは、千載一遇のチャンス、しかも恐らく二度とないであろうということで、たっぷり資料をつくって持ってまいりました。インターネットをごらんになっている方は、フェイスブックで配信しておりますので、ダウンロードしてほしいんですけれども、これと新聞記事、あと、「輝け!いのち」というものに関する、四種類を持ってまいりましたので、まずこのパワーポイント版をごらんいただきたいと思います。

 十二、三分ぐらいまでだと思いますので、ちょっと早口になりますけれども、御容赦をいただきたいと思います。

 まず、日本で十年間以上、私は医師不足に関して訴えてきたんですけれども、正しい情報が伝わっていない、しかもグローバルスタンダードと比較していない、これが決定的に問題だと思います。

 二ページ目をごらんください。

 四月二十四日、オバマ大統領が来日したときに、我々は、全国から約五千五百人が集まって国会を包囲する活動を行いました。事前に議員会館で記者会見もいたしました。

 ほとんど大手メディアは報じてくれませんでした。ここにいらっしゃる皆さんはこの活動を御記憶でしょうか。これが日本なんです。頼まれなくても医療事故とかたらい回しは何回でも報道してくれるんですけれども、本当に重要なことが報道されない。

 これが次のページでございます。三番。我々から見ると、日本国憲法二十五条は日本では守られていないですね。法律があるだけでございます。

 それで、まず五番をごらんください。パワーポイントです。

 これは、テキサス大学のがんセンターのマンパワーと日本の愛知県がんセンターのマンパワーを比較したものでございます。右側の黄色いところは、アメリカが何倍いるか。全然比べ物にならないんですね。人手が圧倒的に少ない。

 次のページをごらんください。六番でございます。

 その基本が、土光臨調のときにも出た、医療費亡国論という考え方があって、医療費にお金をかけると経済発展の邪魔になるということが基盤になってきているというのが日本の医療の現状です。

 その下の七番をごらんいただけると、日本の医師数、一九六〇年から二〇一〇年まで、ずっと医療費亡国論で、医師を減らせば医療費も低下できるだろうということで、削減に次ぐ削減をされてまいりました。ほかの国は医療の進歩とともに医師をふやしています。当たり前です。専門家がいなければ質が高い医療は提供できないから。ところが、日本はそれを怠ってきたんですね。

 この少ないところで、御記憶の方もいらっしゃると思いますけれども、医学部定員の削減の閣議決定が一九九七年にされて、その後、新卒の臨床研修制度が導入されましたから、研修医が大学から外に出なくなったということで地域医療が崩壊したわけでございます。

 その次の八ページをごらんください。

 これは、全国の地域別人口当たり医師数です。赤は日本の平均。確かに、赤の日本の平均から見ると東京、京都は多い。しかし、OECD平均と比べてください。OECD平均にさえ東京、京都も追いついていない。これを偏在というんですか。これは普通は絶対数不足と考えるんですね。

 その中で一番少ないところが、私が住んでいる埼玉県。ですから、埼玉県には住まないようにと全国で講演しているときにお願いしているわけでございます。相対的にまた医師不足になってしまう。

 その下の九番をごらんください。

 これは、全国の各地域別の医師数。一番多い東京、京都、これは先ほど申しましたが、東京、京都もOECD平均より少ないんですよ、そこをゼロとしたときに、各地域が何人医師数が少ないか。これは私が必死で計算いたしました。先ほどの医師不足が問題になっているという山梨県は、ちょうど真ん中ぐらいのランクでございます。

 一番下の埼玉、ごらんください。ザ・ミゼラブル。今、埼玉に一万人医師数がいるんですけれども、人口当たりの医師数は東京、京都の半分、五〇%です。これに単純計算いたしますと、五〇%少ないということは、埼玉だけで一万人不足しているんですよ。大丈夫ですか、これで。一万人ですよ。

 ですから、昨年、御記憶の方いらっしゃるでしょう。三十六回たらい回し、二十五病院。あれは、残念ながら、うちの地域の患者さんでした。私が十年以上活動して頑張ってまいりましたけれども、結局、結果的にこういうふうになってしまうんですね。

 ところが、救急の場合、問題なのは、一人一人だから。例えば高速道路の事故とか海難事故のように、みんなが注目してくれないんですよ。一人一人、全国で起きているんです、これは。これを直さないでいつ直すのと私は言いたいわけでございます。

 そして、その次のページをごらんください。十ページ。

 日本の場合、そしてまた非常に深刻なのが、医師の絶対数不足に加えて、これがキーワードです、絶対数不足に加えて偏在があるんですね。

 ここでごらんください。日本の救急医は、アメリカの人口当たりに比べると、たったの一四%です。

 ですから、日本の救急医は、ほとんどの病院は救急じゃない医師が救急をしているんです。しかも、朝から働いて、真夜中だけ救急医になって、そして次の日、夕方まで働くんですね。専門じゃない人が重症な救急の人を、皆さん、診られると思いますか。無理ですよ。

 だから、いたし方なくたらい回しになる。ベッドがいっぱいの場合は、いたし方なくたらい回し。だけれども、これは受け入れ不能です。たらい回しているんじゃありません。ここもぜひ誤解を解いていただきたい、こう思うわけでございます。

 そして、救急だけじゃなくて、ちなみに、がんの診療に必要な病理は二割、放射線科は三割、麻酔科は三八%。

 今でも日本の地域の中核病院では、救急の場合、夜間とか日曜日に麻酔医じゃない人が麻酔をかけているんですよ。麻酔医じゃない人が。こんな先進国はありませんよ、皆さん。それでも医師がすぐ偏在が解消するという方がおかしいんですね、私に言わせると。

 これだけ必要な専門医がいない、一人何役をやっている。例えば外科医ですと、外科の手術以外に、内視鏡をやったり、麻酔をしたり、あと、抗がん剤治療をする、これは難しいんです、今すごく複雑になっていますから。しかも緩和ケアもしなくちゃいけない。一人何役、五役ですよ。そして救急で、ずっと三十六時間働けと言われているんですよ、ずっと。これでいいんですか。

 それで医療事故だけ個人責任を問うのが導入されたらどうなると思いますか。私がそろそろ引退したいと思っているのは、そこにも理由が一つあります。ここまで真面目にやっていて、医療事故で個人責任を問われるんだったら、早目にやめないと危なくてしようがないですよね。というわけでございます。

 そして、その下の医師不足をごらんください。日本の医師数のカウントの問題。十一番のスライドでございます。

 先進国の中でびりから三、四番目なんですけれども、右側をごらんください。日本だけ医師の労働時間が非常に長い。

 しかも、日本の医師の場合は、医師のカウントに九十歳以上の医師まで入っています。ほかの国は六十代で引退しているみたいです。当たり前ですよね。九十の人で手が震えているのに手術してもらいたくないでしょう。これが当たり前なんです。ところが、日本は高齢医師までカウントして、そして偏在が問題だと言っているんですね。

 次の十二番をごらんください。

 日本の勤務医の労働時間。非常に長い。ここでも七十歳以上のデータがあるので、私が言っていることがうそじゃないということが左側のグラフで御理解いただけると思います。

 あと、右側のグラフをごらんください。男も女も断トツ一位、日本の医師の勤務時間。

 これからの若い人は、私たちみたいに月月火水木金金で働くと思いますか、皆さん。無理ですよ。家庭も大事にしたいんですよ。だって、医師が家庭生活が危ないままにいい医療を提供できるわけないでしょう。医師だって人間だものということなんですね。しかも、女性医師がふえている。こういうことを考えないと、まずい。

 そして、十三番は、日本の医師数には高齢医師が含まれているという証明でございます。

 そして、次のグラフをごらんください。十四番です。あと六分ちょっとですね。

 これは、ずっと医師を抑制してきたところを赤枠で囲んであります。本来、抑制しなければ、これだけの医師数が輩出されていたんですね。ところが、抑制してしまった。そして、今、ちょっとだけこの青い三角をふやしました。これですぐ医師が充足すると思いますか。私にはその考えが理解できないんですね。これで充足するとどうして考えるんだろう。

 ちなみに、十五番をごらんください。

 日本の医学生数は今でも先進国最低レベル。日本が推測するときには、今の世界の医師数に十年ぐらいで追いつくというんですけれども、世界はもっとふえているんですよ。だって、医療が進歩すればどんどん専門医が必要になるわけですから、進歩すればするほどふえるわけです。例えば外科でもいろいろな分野が分かれていきますから、本当に医学部定員を抜本的にふやさないと大変なことになりますね。

 十六番。きょうは看護師さんの代表がいらっしゃらないので、私、ちょっと看護師さんのこともお話ししておきたいと思いますけれども、看護師さんも大変ですよ、夜間も働いていて。だから、看護師さんのこともきちんと考えてあげないといけないと思います。

 十七番です。医療事故に関して。これは自治医科大学の安全学の専門家の先生がつくられたスライドをお借りしました。

 医療現場というのは、十八番をごらんいただければわかるように、一番危ない。ちょっとしたことでミスが起きやすいんですね。一番安全なのが原発ですから。一番安全なものでも事故が起きることがあるんですから、医療で事故が起きるのは本当に日常茶飯と考えなくちゃいけないわけです。

 そして、十九番。医療現場の三N。お金がない、人が足りない、時間がない。これが本当に実感なんですよ。私も、この連休中も何回か病院に足を運びました、気になる患者さんがいらして。そして、プラス、管理が不十分。

 私に言わせれば、何でこんな大事なことを地方の一勤務医が十年以上やっていなくちゃいけないんだと非常に疑問なんですね。もっと、本来、医療界にもちゃんとリーダーの方たちがいるんだから、グローバルスタンダードと比べて医療費をきちっと上げるべき、医療者をふやすべきと何で言わないんだろうなというのが私が本当に残念なところでございます。

 二十番をごらんください。

 医療事故に関して、もうアメリカでは、多くの医療事故を分析して、人は誰でも間違えるという結論に達しました。ですから、医師にもちゃんと休ませよう、専門性を持たせよう。アメリカでは、例えば処方箋、忙しい医者には書かせない。忙しい医者が処方箋を書くと必ず間違えるから。

 ところが、日本の場合、処方箋を書くのは、腫瘍内科の専門医じゃない人が、当直明けで勉強する時間もないのに書いているんですね。これは事故が起きるのは普通なんですよ。

 それで、その下をごらんください。二十一番。

 WHOが推奨する医療事故のグローバルスタンダードでございます。この七つの条件のトップスリー、報告の結果処罰を受けるおそれがないようにする、個別情報は決して明らかにされないようにする、処罰権限を持つ当局から独立する。

 このトップスリーを外れた事故調を今立ち上げようとしているんですね。だめでしょう。一番事故が起きやすいような状況を放置して、事故調までグローバルスタンダードからどうせだったら全部外れちゃおうというのは、ちょっと余りにも、私は本当に乱暴なやり方だと思っているわけです。

 その次をごらんください。

 何が問題かというと、個人責任を問わないのであれば、事故の結果を患者さんとか患者さん側の弁護士さんに渡したら、そこからもう情報も公開になってしまうし、幾らでも個人責任を問われるわけでしょう。これだけはやめてもらわないと、我々の年代でもう疲れているのがこれでどんどんやめたら、本当に医療崩壊がもっと加速すると私は思うわけでございます。

 二十三番。あと、医療費に関して。これも、日本の医療費は高い高いと言われます。

 二十四番のグラフをごらんください。

 日本の医療費は先進国最高にうまくコントロールされています。一番安いんです。しかも、その日本が一番国民自己負担が高い。これはまずくないですか。経済大国というのは、何を豊かにするために経済大国になったんでしょう。私は、これはおかしいと思うんですね。

 二十五番は、その証拠です。中医協できちっと抑制された医療費。先進国最高に医療費を抑制したのがうまい日本というのが我々の見方でございます。

 あと二分ぐらいですね。

 二十六番。これは、日本の医療費がいかに安く抑えられているか。

 例えば、急性虫垂炎、盲腸炎で手術すると、病院がいただけるお金が三十万ぐらい。ほかの国は全部高い。先進国で一番日本は安く抑えられているわけですね。だから、病院では、我々を補助する医療秘書さんを雇う金もない、赤字が多い、こういうわけでございます。

 二十八番。もう一つ問題は、これは、左側、経済財政諮問会議で、日本のベッド数がすごく多いというグラフが出ました。

 しかし、そのときに、アメリカで本来は含まれている右側のナーシングホームを外したところ、超急性期病院のベッド数だけ出されて、日本の病院は多い、無駄が多い、こういうふうな話が進んでいます。

 今、ナーシングホームとかを充実していますけれども、これを充実させないでベッド数を減らしたらどうなるかは、もう説明の必要はないと思います。

 三十、三十一は、時間の関係でちょっと割愛させていただきます。

 ただ、三十一はちょっと大事です。七対一が少なくなると、せっかくちょっと労働環境がよくなった看護師さんの待遇がまた悪化する危険性があります。

 それが三十二番です。それでなくとも少ない看護師さんの数をもっと減らすような政策はだめです。

 三十三番。では、どうしたらいいのか。

 三十四番のページに書いてありますように、まず、医師の実働数をカウントすること。九十歳以上でほとんど仕事をしていない人は、医師としてカウントしてはいけません。何時間労働しているか、カウントするべき。

 三十五番。医師も少ない、医学生数も少ないということを考えるべき。

 三十六番。ちゃんとナーシングホームなどを充実させるべき。

 三十七番は、緩和ケア病棟も全国で差があるということです。

 そして、そろそろ最後ですけれども、ですから、解決するためには、医学部の定員をふやさなくちゃいけない。しかし、そのときに、既存の医学部はやめた方がいいです。建てるのも大変、スタッフも必要。二、三十人のメディカルスクールを、大学卒業の学士を対象にしてつくるべきです。

 それと、三十九番。これがすごく大事になるんですけれども、日本より医師が多いアメリカでは、医師を補助する、先ほどナースプラクティショナーの話も出ましたけれども、フィジシャンアシスタントという職種があります。

 日本でも、MEさん、臨床工学技士が昔創設されました。世界一医師不足で看護師不足の日本こそ、フィジシャンアシスタントの導入を急ぐべきです。

 四十番は、アメリカで実際に働いているそういう人たちのスライドです。

 四十一番。最後です。私は、昨年、キューバを見に行ってまいりました。キューバは、皆さん御存じのように、アメリカの厳しい経済制裁の中でも、医療も教育も無償。そのキューバは、やはり高齢化に対応するために、こういうふうに具体的数値目標を挙げています。

 日本の場合は、診療報酬点数で馬にニンジンみたいにするんですけれども、数値目標を挙げて、地域でどれだけの急性期病院、どれだけの救急医、どれだけの腫瘍内科医、どれだけが必要だという目標を設定すれば、おのずと医師の必要な養成数もわかるわけでございます。

 きちんとしたデータのもとに考えてほしいということで、最後にヒューマンチェーンの活動のこれを出して(資料を示す)、私のプレゼンを終わります。

 御清聴どうもありがとうございました。(拍手)

後藤委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の方々の御意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

後藤委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。大串正樹君。

大串(正)委員 自由民主党の大串正樹でございます。

 本日は、皆様、貴重な御意見をありがとうございました。

 我々は、与党といたしまして、法案を提出した側として、少し幾つかお伺いをしたいんですけれども、時間の都合上、皆様の御意見を伺うことはちょっと難しいんですけれども、そこは御了承いただきたいと思います。

 また、時間の都合上、ポイントを絞ってお伺いしたいと思います。ポイントといいますのは、地域医療構想、ビジョンに基づいてどういう形で機能分化が進んでいくかというところが、やはり本法案の一番重要なポイントであるし、一番大きな変化が起こるところではないかなというところで、重要なポイントではないかなというふうに思っております。

 まず初めに、この点についていろいろ言及いただきました中川参考人にお伺いしたいんです。

 最初に、国の方がガイドラインを示すというお話がありまして、これは強制力を持つものであってはならないという御指摘だったんですけれども、往々にして、国が出すガイドラインというのは、強制力を持たないとしても、ある程度の強制力的なものが存在してくるのではないかなという側面もありますし、逆に、強制力が全くない中で本当にそのビジョンどおりに、思い描くように地域構想がきちんと進むのかどうか、その点について御意見をお聞かせいただきたいと思います。

中川参考人 大串先生、御質問ありがとうございます。

 地域医療ビジョンをつくるという作業は、医療現場にとって大変な負担になります。しかし、我々日本医師会は、厚生労働省の審議会、検討会で、国が決めるということの方向性を、しっかりと医療界が自主的に決めるんだ、医療現場の問題を肌に感じている我々が決めていくんだという認識で一致しました。

 そこで、急性期病床群を許可、認定、登録という提案に対して、まずは、全国の地域医療の現状はどうなっているのか、報告制度をもとにして精緻に分析しましょう、その上で、うちの県のこの二次医療圏はどういう医療が足りなくてどういう医療が多すぎるのか、そして、二〇二五年を目指して、各疾患別に外来の患者数、入院の患者数の推計をするというのが実はビジョンの第一です。

 それに対してどういう医療提供体制が必要なのかを、二次医療圏を中心に、都道府県医師会を中心に、病院団体の先生方も一緒に、それから行政はもちろんです、大学の医学部もそうです、地域住民の方もそうです、そしてしっかりと自主的につくっていこうというふうに思うんです。

 とはいっても、ガイドラインも何もなくてビジョンをつくれといっても無理ですから、大まかな枠組みといいますか、あくまでも参考として国がガイドラインをつくるということを我々も了解してきたわけです。

 ただ、県庁によっては、これは悪口になったら恐縮ですが、強権的なところもあります。特に、言い方としては、国が、厚生労働省がこんなガイドラインをつくったんだからこのようにしなさいよというところがあるんです。それに、ぜひ、国としてくぎを刺していただきたいなと思います。

 逆のところもあります。国のガイドラインは非常にいい、これは医療界も含めてこの線に沿ってやっていきましょうというのもありますので、そういうことは、今後の法案成立後の政省令それからガイドラインの策定の過程でしっかりと主張していきたいと思います。

 以上でございます。

大串(正)委員 ありがとうございます。

 ちょっと今のに関連して、もう一つ続けてお伺いしたいんです。

 そういった中で、もちろん医師会の皆さんの活躍というか期待される部分も大きいんですけれども、ただ、全ての医療関係者が全てにかかわって、全ての医療関係者が納得をするという形ではなかなか難しい中で、また同時に、機能分化を進めていく上で、それぞれの医療の、例えば重症度であるとか、医療、看護の必要度であるとか、患者個人の必要量と、それから地域全体で求めている必要量とのバランスなんかというのも難しい中で、先ほどお話のありましたかかりつけ医をきちんと評価していこうという、これもまた難しい。できるだけ根拠を示して、その具体的な根拠の中で機能分化を進めていかないと、なかなか皆さんが納得するような形にはならないと思うんです。

 ただ、逆に、医療というのはそういう評価をするのが非常に難しい分野でもあるんだろうなと。先ほど川渕参考人がおっしゃっていたみたいに、本当にこれは急性期なのかとか本当に慢性期なのかとか、曖昧な部分も多分にある中で、具体的にその評価をつくっていく、あるいはガイドラインを策定していく中で、どういうかかわり方ができるのか、現場の声としてぜひお聞かせいただきたいと思います。

中川参考人 四病床機能区分としてみずからの医療機関の病棟を報告するんだということで、誤解があります。例えば、ある病院のA病棟が急性期というふうに報告しますね。そうすると、その病棟は全て急性期の患者さんとは限らないんです。それは皆、先生方が思っているとおりです。

 現実に、重症度、医療、看護必要度ということ、例えば七対一要件の中で一五%というのがありましたが、七対一にしても、その要件をクリアするのが一五%なんです。八五%は違うんですよ。おおむね、その病棟が高度急性期なのか、急性期なのか、回復期なのか、慢性期なのかということを報告するということです。急性期だから急性期以外の患者は絶対入っちゃいけないんだ、そういうビジョンをつくるというふうにするつもりはありません。

 その上で、今回は、レセプトからデータを自動的に抽出して、診療報酬上の加算、例えば加算の算定がその病棟ではどのぐらいなのかということがわかりますので、そういう意味で、おおむねこの病棟は急性期、ああ、なるほどな、あるいは回復期、なるほどなということがわかっていく。そういうことを土台にして、協議の場というところで、この二次医療圏では高度急性期がどのぐらいの病床が必要なのか、急性期がどのぐらい必要なのか、回復期、慢性期はどのぐらい必要なのかということを必要量として協議していくわけです。

 ただし、その協議の場で決まった必要量に対して、それが上回っているから直ちに転換しなさいとか、そういうことではないんです。二〇二五年を目指して、徐々に徐々に、データを示しながら少しずつそこに収れんしていくというのが地域医療ビジョンの目的です。よろしいでしょうか。

大串(正)委員 ありがとうございます。

 非常に難しい課題ではありながら、ぜひとも皆様の御協力をいただきながら進めていきたいなというふうに考えているところでございます。

 また、あわせまして、板倉参考人に少しお伺いしたいと思います。

 このような形で機能分化を進めていく中で、先ほど御指摘がありましたみたいに、医師不足というのは単なる不足ではなくて、地域の中での偏在もあるし、あるいはまた診療科によっても偏在があるという、非常にアンバランスな状態が二重、三重に重なっているというお話を伺いました。

 それに対していろいろな形で、例えば参考人がやられているような教育や研修という形で少しずつ変えていこうというやり方もあるんでしょうけれども、ただ、これから進んでいく機能分化の中で、恐らく、それだけ診療科に偏在があったりとか地域に偏在があったりすると、それこそ地域医療支援センターの役割がすごく重要になっていく、そこでうまく調整機能が果たされなければうまくいかないんだろうなと思います。

 その点を踏まえて、一番、機能分化のネックになるとか、あるいは、地域医療支援センターとして活動するに当たってこんな支援がもっと必要である、そういう現場の声、先ほどのお話の中で足らない部分があったら、ぜひ補足していただきたいと思います。

板倉参考人 御質問ありがとうございます。

 機能分化を行っていく上で、実態ですね、どこにどういう専門医の先生がどれだけいるのか、その実態に関して、もちろん、厚労省から算出調査であるとかあるいはいろいろなデータは出ていますけれども、なかなか、現場で見ていますと、それが実態を反映していないという部分があります。

 きょう、私の方でお話はしませんでしたけれども、地域医療支援センターの一つの取り組みとして、ドクターマップというのと健康ハザードマップというのをつくっています。

 これは、ドクターマップといいますのは、厚労省の算出調査に近い部分があるんですけれども、実際にどこの地域にどういう専門医を持っている先生がどのぐらいいるかということを、二次医療圏、場合によっては、二次医療圏をさらに区分した、山梨県の場合だともともと二次医療圏が八つあるんですけれども、四つの医療圏から八つの医療圏のレベルまで下げて細かく実態調査をしていくということを行っています。

 それによって、実際必要な専門医がどの程度いるのか、そして、五年ごとに出されます保健医療計画、これに基づいて、将来的に、どういう地域ではどういう疾患の発生率が上がっていくのか、あるいはどういうふうな疾病構造になっていくのか、そういったことを健康ハザードマップという形で作成し、ドクターマップと健康ハザードマップを照らし合わせながら、客観的に医師の適正配置仕様というものをつくっていくということを行っています。

 それによって、現実的な機能分化、そういったものを進めていくというふうに考えております。

大串(正)委員 ありがとうございます。

 ぜひともそれを成功させて、ほかの地域にも普及できるような一つの先進事例として提供していただければありがたいなというふうに思っております。

 それでは、最後になりましたけれども、川渕参考人に一つお伺いしたいと思います。

 多分、時間の関係で余り触れられなかったと思うんですけれども、提案の八策の一つに、増収モデルから増益モデルということを御提案されているんです。

 既に診療報酬の方ではかなりインセンティブが与えられるような形で動いていますけれども、実際に医療経営という立場におられて、経営的なインセンティブと、それから、これから進もうとしている機能分化のインセンティブが本当にマッチしているのかなというのが、私も今回の診療報酬改定の中身を見ながら少し気になるところもあったんです。

 幸い、この医療という分野は診療報酬ということで大きくインセンティブが与えられる業界ではあると思うんですけれども、あえて、増収モデルから増益モデルへという体質の変換をどういう形で診療報酬で与えられるのかというのも、先ほど触れられなかったと思いますので、ぜひともその辺の御意見をお聞かせいただきたいと思います。

川渕参考人 ありがとうございます。

 時間の関係で、十九ページをちょっと見ていただきたいと思います。

 私の資料の中の十九ページでありまして、横軸はリスク調整後の死亡率ということで、指数ですから、平均が一です。これは、心臓の悪い方が受けるときに、PCIといって鼠径部からカテーテルを入れて冠動脈を膨らますような、そういう手術があるんですが、これを受けた院内死亡率を指数化しました。縦軸が、ALOSというのは平均在院日数の訳であります、平均在院日数掛ける診療単価。

 ですから、これは患者さんから見れば、入院の医療費ですから、安い方がいいんですね。ところが、病院の経営者は、入院の収入ですから、高い方がいいんです。これが医療経済と医療経営のパラドックスと私は呼んでおります。

 ただ、当時は、私のこの可視化ネットワークということで、十一病院が参加をいただきました。百六病院しかまだデータがないんですが、厚労省には千六百病院のデータがあるんですね。これを使って分析するのかなと思うんですけれども、これが今先生が御指摘の、結局、医療経営者は医療費が高い方がいい、医療収入ですから。ところが、患者さんは医療費が安い方がいいですよね。ただ、ややもすると、これは反比例のグラフのように見えませんか。つまり、余り医療費をけちると、やはり医療の質は低下する。

 ただ、私がちょっとここで気にするのは、何回も言いますけれども、リスク調整後の死亡率といって、年齢補正もしてありますし、キリップ分類といって、どれぐらい冠動脈が詰まっているかもわかります。こんなふうにして補正しても、このR病院というのは平均の四・五倍亡くなっているわけです。こういう病院に皆さん行きたいですか。協議会をやって、この病院は急性期病院と手を挙げたときに、協議会はどうなりますかね。

 そういうことを考えたとき、やはりデータが非常に大事だ、と同時に、やはりリスク調整をきちんとしないといけないのではないかということを言いたかったわけです。

 以上であります。

大串(正)委員 大変貴重な御意見、ありがとうございました。

 これで質問を終わらせていただきます。ありがとうございます。

後藤委員長 次に、山井和則君。

山井委員 よろしくお願いいたします。

 本日は、大変貴重なお時間を割いていただきまして、参考人の方々、国会にお越しいただきまして、まことにありがとうございます。お一人お一人の方々から、非常に重要な御指摘、御指導をいただきましたことに心より御礼を申し上げます。

 本当でしたら全員の方々に御質問をさせていただきたいんですが、私からは、介護保険の改正、要支援の、介護保険から外して市町村に移行するということについて、指宿参考人を中心に御質問させていただきたいというふうに思っております。

 まず、何よりも、九十一歳の指宿参考人、わざわざ渋谷区の御自宅から国会までお越しをいただきまして、まことにありがとうございます。

 今回、この医療介護推進法案、合計十九本の法案が束ねられておりまして、論点は多々あります。よい改正もありますし、問題だなと思う改正もあります。その中で私たちが一番問題だと思っているのが、要支援の百六十万人の全国の高齢者の方々のサービスを市町村に移行していく、それも財源を抑制しながら、今まで五、六%の伸びであったものを、キャップをはめて三、四%に抑えていく、こういうことで移行するということにおいては、サービスの低下が起こるのではないかと心配をしております。

 昨夜、NHKで八時から、EテレでハートネットTVというのがございましたが、その中でも、武蔵野市がこの改正を先取りして、早速、要支援のサービスを時給二千五百四十円から二千二百円に、一五%委託料単価を下げるという実験をやってみられた。そうすると、時給が、今ホームヘルパーさん千二百円であるものが、八百七十円、東京都の最賃にまで下がってしまうということで、今ホームヘルプをやっている事業者が、これではもう要支援サービスの委託は受けられませんと返事をされたと。

 つまり、そういう意味では、今回、要支援サービスを市町村移行することによって、一歩間違うと、単価が下がるわけですから、ホームヘルパーさんの賃金が下がったり、ホームヘルプの回数が減ったり、あるいは、プロの職員だと今言ったように単価がもたないわけですから、ボランティアに頼るということになりかねないわけであります。

 そこで、指宿参考人にお伺いしたいと思いますが、先ほどのお話の中で、要支援のときからよいホームヘルパーさんにお世話になることが大事ということをおっしゃっておられました。そして、要支援というのは要介護にならないための防波堤であるということもおっしゃいました。

 最近、指宿参考人は、骨折をされたり肺炎になって入院をされたりして、そのとき、後ろに座っておられますケアマネの佐藤さんや、またホームヘルパーの城下さんのお支えにより在宅復帰をスムーズにされたとお聞きしましたが、やはりそういうプロのケアマネさん、プロのホームヘルパーさんの手助けがあって助かるなとお感じになっている点があられたら、改めてお伺いしたいと思います。

指宿参考人 私の体験からしますと、いろいろ私が気がつかないこともどんどんやっていただいて、訓練から私は非常に短くて出してもらいました。それは、やはりホームヘルパーさんなりケアマネジャーさんなり療養士さんの努力でありまして、その方たちが適正な報酬を受けてやっていないとうまくいかないんじゃないかというふうに痛切に感じました。

 この間も新聞には出ておりましたけれども、非常に少ない給料でやっておられるように感じましたので、私は、特に給料の点で皆様にお伝え願いたいと思います。

山井委員 今も指宿参考人からありましたように、要支援のサービスというのは非常に重要でありまして、九十一歳の指宿参考人がおひとり暮らしで、今、週三回のホームヘルプ、二回は介護保険、一回は渋谷区独自の上乗せサービスで、こういうサービスがあるから在宅生活が可能になっていると。こういうサービスがカットされたりすると、逆に施設や病院に入らざるを得なくなったりしたら結果的には高くなってしまう、そんな心配もございます。

 そこで、今も指宿参考人から、やはりホームヘルパーさんの仕事が非常に重要だ、もっと賃金が高くあるべきじゃないかというお話がありましたが、そのあたりについて、なぜもっと賃金を上げるべきなのかということについて、指宿参考人にお伺いしたいと思っております。

指宿参考人 私は、新聞とかそういうものしか情報がありません。それ以外はヘルパーさんから時々話もありますけれども、聞くところによりますと、約三割安いように思うんです。また、そういったような感じもいたしますので、やはり仕事というのは、ある程度賃金がもらえないと安心して立派にできないと思うんです。三割というのは非常にまずいと思いますね。

 ですから、私は、ぜひこの機会に、賃金を少し上げ過ぎてもいいから上げた方がいいんじゃないか。それから、上げ過ぎたら、またその次にはストップすればいいのであって、安倍さんも賃金を上げるように一生懸命やられていますから、ぜひ、介護の問題についても細かく注意していただきたい、そう思います。

山井委員 ありがとうございます。

 本当に、全国百六十万人の要支援高齢者の代表として指宿参考人に国会にお越しをいただいて、その中で、ホームヘルパーさん、またデイサービスの職員さん、そういう介護職員さんの賃金引き上げの重要性を当事者の口から語っていただいた、私はこれは非常に重要なことであると思っております。

 今までからも指宿参考人とやりとりをさせていただいておりますが、指宿参考人からは、ホームヘルプの仕事、デイサービスの仕事、介護職員さんの仕事というのは、人生の一番最後を支える最もとうとい仕事だというお話がありました。

 先ほども、医療の参考人の方々からも、医療にもっと予算を、そして医師不足、そして医師の待遇が不十分、余りにも、労働基準法違反とも言われかねないような過労状態、そういう御指摘がございました。介護、そして医療現場の方々の賃金引き上げに衆議院の厚生労働委員会挙げて取り組んでいきたいと思いますし、そのために今、介護・障害福祉人材確保法という議員立法も国会で審議をしておりますので、与野党の思い、賃上げへの思いは一緒でありますから、ぜひとも成立をさせていきたいと思っております。

 もう一点、指宿参考人にお伺いをしたいと思っておりますが、先ほどのお話の中で、やはりプロの資格を持ったホームヘルパーさんがいい、ボランティアさんでは不安であるというお話がございました。

 なぜ、プロのヘルパーさんがいいのか、ボランティアさんのホームヘルプでは不安なのか、そのことについて少しお話をいただければと思います。

指宿参考人 お答えします。

 ホームヘルパーさんは、一般的には、困った人を助けるということがあると思うんです。ボランティアさんというのは、これは義勇軍のように、勇気を持って、自分から進んで人を助けて、しかも奉仕をするということだと思うんです。

 私は、今までの経験から思いますのは、ヘルパーさんは、資格を持って、所属の会社に採用され、契約を交わしながら仕事をしておりますが、ボランティアさんはそういうことがないんじゃないかと思っております。

 以上でございます。

山井委員 ありがとうございます。

 一方では、介護の専門性を上げていこうということを厚生労働省も言っておられます。その一方では、ボランティアでできるんだということになると、矛盾するばかりか、ボランティアでできるんだったら賃金をもっと安くしていいじゃないかということになってくるわけでありますので、やはりそこは、指宿参考人もおっしゃるように、プロのホームヘルパーさん、しっかり専門職がやるということが重要だと思います。

 先ほど指宿参考人は、プロのやっているホームヘルプの仕事がボランティアでできるということは、一緒にするとプロのホームヘルパーさんに対してかわいそうなんじゃないかということもおっしゃいましたが、改めて指宿参考人にそのあたり、プロのホームヘルパーさんのよさ、やはりプロのホームヘルパーさんがおられるから在宅生活が非常に助かっている、一つでも二つでもそういう事例があったらお教えいただければと思います。

指宿参考人 お答えします。

 ホームヘルパーさんは、非常になれておりまして、私たちが見ておっても、よく、たくさん、早くやるものだということが、例えば、料理にしても、掃除にしても、物を買ってくるにしても、素早いんですね。ですから、私は、やはり三倍ぐらい違うんじゃないかというふうに思いますし、とにかく熟練されているということは間違いないんです。

 ボランティアの方は、誰が来るかはわからないわけですね。極端に言えば、毎日違った人が来たら、なかなか私たちと一緒に心を合わせてやるということは不可能でありますので、なるだけ継続的に、なるだけなれた方が来ることを私は望んでおります。ですから、ボランティアさんに来ていただきたいと思います。

 以上です。

山井委員 どうもありがとうございます。

 本当に、人生、最後、夫婦二人か、あるいはおひとり暮らしになったときに、支えてくださるケアマネさん、ホームヘルパーさん、デイサービスの職員さん、そして看護師さん、お医者さん、やはりそういう方々が非常に重要だというふうに思っております。そういう方々をしっかり支えていくような政治をしていきたいと思います。

 今、少しありましたが、もしかしたら、指宿参考人、最後は、言い間違えられて、ボランティアに来てもらいたいとおっしゃったけれども、プロのホームヘルパーさんに来てもらいたいということだと思いますけれども、ちょっと言い直していただければと思います。

指宿参考人 申しわけありません。間違ったようですから、訂正いたします。

山井委員 どうもありがとうございます。

 そういう意味では、きょう、こういう場に九十一歳の指宿参考人にわざわざお越しをいただくのは本当に私も申しわけないとは思ったんですが、やはり、私たちが制度、法改正を考える上での一番の主人公は、高齢者の御本人の方、患者さんが政治の主人公ということでございます。そういう意味では、きょうのこの委員会、参考人質疑におきまして、プロの専門職の介護職員さんの重要性、そしてまたプロの介護職員さんや医療関係者の賃金引き上げを当事者である指宿さんの口からこの場で語っていただいたことは、非常に重要だというふうに思っております。

 そのことに心から感謝申し上げたいと思いますし、もう時間が来ましたので、ほかの参考人の方々にも質問させていただきたかったんですが、質問ができなかったことをおわび申し上げたいと思います。

 まことにありがとうございました。

後藤委員長 次に、足立康史君。

足立委員 日本維新の会の足立康史と申します。

 本日は、本当にお忙しい中、参考人の皆様方、お時間を頂戴して、ありがとうございます。

 私は、きょうは、事前には川渕参考人を中心にお伺いをしたいと思っておりましたが、御指摘の点はいずれもごもっともでありまして、質疑というよりは、そうだなと思うところが多かったところでございます。

 逆に、一つ、川渕参考人にこの場をかりて御報告をさせていただきたいんですが、非営利ホールディングについては、私も、この参考人質疑に先立つ法案審議で、何度かこの委員会でも取り上げさせていただいて、いわゆるホールディングとしての非営利性を担保する中で、その内部関係についてはできるだけ規制緩和をしていく、こういうことを一つ、産業競争力会議で御議論いただいた当事者でいらっしゃいますが、それを受けた厚生労働省も今そういう方向で議論されておられるようであるし、また、この場に内閣府の小泉政務官にもおいでいただいて、そういう議論をいたしたということをむしろ御報告させていただきたいと存じます。

 それから、きょう、中川副会長においでをいただいていますので、野党の関係ではありませんが、ぜひちょっと中川副会長に幾つか御質問させていただきたいと思います。

 その前に、本田副理事長、プレゼンテーションというか、データ等、事実に基づくデータ、大変感銘をいたしました。気づきの点も大変多うございましたし、まさに参考人として情報提供いただいた、大変参考になるところです。

 ただ、一点だけ、ぜひちょっと質問させていただきたいのは、まさに書いていただいていること自体はそういうことなんですが、例えばナーシングホームとか、あるいはいろいろな医師数とか、アメリカとの比較が多用されています。ただ、釈迦に説法ですが、日本とアメリカは医療制度が全く違います。また、お話の中では、欧州を念頭に置かれた、医療費と自己負担はいかがなものかという話もありましたので、若干、伺っていると、ヨーロッパ、大陸欧州のいいところ、あるいはアメリカの一見よく見えるところ、そういったところをざあっと集めてこられておっしゃっているようにも、言葉は悪いですが、お見受けいたしました。

 ただ、本田先生がおっしゃっているのはそういうことではないと思いますが、逆に、ここで御指摘をされた点を日本で実現しようとすると、私は、皆保険で自己負担を余りふやさずに実現しようとすると大変な財源が必要になる、こう思いますが、その点についてどうお考えか、お願いいたします。

本田参考人 おっしゃるとおりで、私も一勤務医としてデータを収集している関係で、やはりアメリカのデータが一番手に入りやすいという現実がございます。ですから、本当は、きょう出した救急医その他もヨーロッパも全部調べたいんですけれども、ちょっと調査能力という点で問題があるということで、御勘弁いただきたいと思います。(パネルを示す)

 ただ、ここに出ておりますように、これが日本のGDP当たり医療費ですが、最低。アメリカ、最高。これがおっしゃったところで、アメリカ型というのはもう市場原理医療ですから、私は基本的に大反対でございます。ただ、医師数とか、メディカルスクールという学士を対象とした医学教育は世界的にも定評がありますから、医学教育はまねしてもいいんじゃないかなと思っています。

 あと、ヨーロッパは既にちゃんと、GDP当たり医療費をきちんと上げておりまして、しかも公的な部分が多い。

 だから、俗によく無駄と言いますけれども、ここでこういうことを言うのもなんですけれども、例えば、未曽有の超高齢化社会を目前にして、二〇二〇年の五輪なのかな、二〇二五年問題が大丈夫なのかなと。つまり、そういういろいろなところのお金の使い道をちゃんと見直していかないと、当然ヨーロッパ型も無理でございますから。

 私はヨーロッパ型がいいんじゃないかなと思っています。

 御質問、どうもありがとうございました。

足立委員 本田参考人のお考え、よくわかりました。総合的にはおっしゃっていることはよくわかりますし、ただ、やはり日本は、これも釈迦に説法ですが、民間の医療機関が中心で今やっていますし、皆保険をどう維持しながら一定の財源の中で質のいい医療サービスを提供していくか、大変難しい、難問だと思っています。

 ただ、私たち委員、皆そうですが、これは、医療、介護のサービス提供体制の改革のラストチャンスだと私は思っています。これからの五年、十年、十五年と見据えたときに、この国会、今週、来週、できれば再来週もやりたいんですが、そういう中で、本当に意味のある議論をこの場で、国会でやって、しかるべき制度を組み上げていかないと、本当に間に合わない、そういう真剣勝負を今我々野党もさせていただいている、そういうふうにお伝えをしておきたいと思います。

 きょうは、医師会から中川副会長、おいででございます。この今回の法案について賛成の立場からおっしゃられたわけですが、私の印象は、この法案は、たくさん、十九本の法律ですから、さまざまな改革が組み込まれてあるわけですが、その根本のところ、川渕参考人が医療法人制度の話をちょっと御紹介いただきましたが、例えば持ち分ありの問題、持ち分なしの問題、あるいは会社の参入の問題、こういう問題について本当に整理ができて、その上にこの改革案があるならまあ大丈夫かなと思う面もあるわけですが、実はその基礎になっているところが若干心配をしております。

 例えば、持ち分なし医療法人の移行促進策について税制要望してきた、こう紹介がありましたが、この平成十八年の原則持ち分なしという現在の医療法、これは、中川副会長のお立場から、今の制度ですから、それは基礎としてこれを築いていけばいいというお立場だと思いますが、それはそうでよければそうだということでお教えいただいたらありがたいし、そうであれば、いつごろ原則論が実現すると見ていらっしゃるか。原則論というのは、持ち分なしにみんながなることですね。経過措置型医療法人は、経過措置ですからいずれなくなる。これはいつごろだと見ていらっしゃるか。この二点、お願いします。

中川参考人 足立先生、御質問ありがとうございます。

 持ち分なし医療法人に移行するということは、日本医師会としても了解をしています。ただし、持ち分あり医療法人が、当分の間、これを経過措置として維持するんだということも同時に認識しているわけです。

 それは、持ち分ありといっても、そのことが地域医療の提供に対して問題があるかといえば、私は、決してそんなことはないんだと。その持ち分ありの医療法人が持ち分なしに仮に移行するときに、過去に、厚生労働省と財政当局、税務当局の議論がやはり足りなかったんだと思うんですよ。

 そこで、あるべき形で移行ができないという状況にあるので、現在の当分の間の移行措置は、やはり、当分の間というのは、表現としては、行政用語では、これは期限がないわけでございますから、収れんしていくその適切な時期が来ればそうなっていくんだろう。ただし、原則持ち分なしに移行するということは、我々は了解しているというふうに申し上げます。よろしいでしょうか。

足立委員 ありがとうございます。

 今まさにおっしゃられたように、期限がないわけですね。

 私は与党ではありませんので、比較的自由に発言できますので、これを田村大臣には、フィクションじゃないか、こういう言い方でこの委員会室で詰め寄ったり、僣越ながらさせていただいているわけでありますが、今の点についてもう一段踏み込ませていただくと、今回の法案にかかわる税法は既に通過をしておりますが、いわゆる事業承継税制、これについては、持ち分なしに移行する前提の措置は充実をされます。

 しかし、まさに今参考人がおっしゃられた、全然悪くないんだよと。私もそう思います。全く悪くないはずの持ち分ありの医療法人は、相続が起こったら、事業承継が起こったら、税制が用意されていない。普通の会社であれば当然に用意されている事業承継税制が、私は厚生労働省の意図的不作為と言っていますが、あえてそこを用意しないことによって、相続が発生した医療法人はやむなく持ち分を放棄させられるおかしな仕組みに私はなっていると思うんです。

 私は、持ち分なしに移行する税制も整備した上で、持ち分ありのままでも事業承継が円滑にいくような会社並みの、会社になる必要はないんですよ、持ち分ありの医療法人が胸を張って持ち分ありのまま事業承継ができるような税制を整備することは論理的に可能だと思っていますが、そういう税制が端的に言うとあればいいとお感じになるか、それは要らないよということか、いかがでしょう。

中川参考人 非常に難しい問題でして、足立先生の御質問、非常に高度な問題でございますので、この場で、日本医師会を代表して、明確なお答えは申し上げられません。ただし、先生のおっしゃることに一々なるほどというふうに思う部分もございます。

 以上でございます。

足立委員 ありがとうございます。

 大きな団体でありますので、それはごもっともでありますし、まさに御指摘のように、この問題は、私は、大変重要な問題であると思っていまして、少なくとも今国会、遅くても次の国会にはこの点はきっちり整理をしておくべきだと思っています。

 特に、川渕参考人が競争力会議でかかわって御提案をしていただいたいわゆる非営利ホールディングカンパニーなるものは、既存の医療法人あるいは既存の社会福祉法人等を維持しながらも連携をしていく第一歩として非常に大きな意義があると私は思っています。

 これは、野党ですから、推測ですが、恐らく、この非営利ホールディングについては、この夏の成長戦略に入り、そして詰めた上で、来年の通常国会には遅くとも出てくるだろう。そのときに、組織法制をしっかりと整備をして、持ち分ありの医療法人、私はハイブリッドと言っています、配当なしの分配あり、このハイブリッド、伝統的な医療法人の形は、別に負い目を感じる必要はなく、胸を張って維持すべきだし、その方々が継続的に医療サービスを提供していけるような当たり前の税制はつくるべきだ、私は、こう思っている点を申し述べておきたいと思います。

 それからさらに、申しわけありませんが、中川参考人、この十四ページに、営利企業の参入をさせない、こう書いてあります。これはいつも伺っている話ですから新しいことではありませんが、医師会として営利企業の参入に反対している理由を、私、素人なりに思うに、素人が思うと、三つオプションがあると思います。一つは、よく言われている、配当するからだめだ。二つ目は、会社が参入するとたくさんのプレーヤーができるので、いろいろなところが参入してきて非常に競争が激しくなり過ぎる。三つ目は、いわゆる理事長要件ですね。

 これぐらいが考えられると思いますが、ごめんなさい、これも、こんなテクニカルな話をここで副会長にお伺いして恐縮ですが、営利企業参入がだめな理由の一番の根本は何か、お教えをいただければと思います。

中川参考人 いろいろな理由がありますが、この場は国民の皆さんがごらんになっていると思いますので、基本的なことを足立先生にお話しします。

 我々医療機関は、公的医療保険制度のもとで、営利を目的にしないというのを提供者側の矜持としています。診療報酬上で得られた利益は医療の再生産に使います。

 対して、営利法人は、利益を上げて、最終的には株主の配当を目指すんだと思っています。配当を目指さないまでも、間接的に、企業のイメージアップ戦略で、本当のバックの本社の利益になるというふうに目指すんだと思いますが、もし、地域で、これは到底採算が合わない、利益が上がらないということになれば、簡単に撤退するのではないか、そして、そのときに、かかっていた地域の患者さん、住民の方々、気がついてみたら、あっ、あの病院なくなっちゃったんだと、大混乱を起こすと思うんです。その病院ができたことで、撤退する地道にやっていた医療機関もあるかもしれません。そのことで我々は反対をしているのです。

 そして、先生、非営利ホールディングカンパニーのことにお触れになったので、いい機会なので申し上げたいと思いますが、今、全国で医療機関が株式会社並みに事業展開をして、どんどん病院を吸収合併しています。これが非営利なのかと疑うようなところもあります。今示されている、厚労省の検討会で議論されている非営利ホールディングカンパニー型の提案は、まさにこれに拍車をかける、全国の医療現場に大混乱をもたらすことにお墨つきを与えるのではないかという心配をしています。うちから今村定臣常任理事が参加して検討会に加わっていますが、慎重に議論をすべきだというふうに思います。

 幸い、今回の推進法案にはこのことは入っておりませんので、しっかりと日本医師会の主張をしていきたいと思っています。

 以上でございます。

足立委員 ありがとうございます。

 時間が参りましたのでもう質疑はできませんが、一言だけ。

 今おっしゃられた点、私も、これから次期通常国会に向けて、この国会に限らずこれは議論をしていきたいと思いますが、であれば、例えば医療グループの中のMS法人はなぜ認めていいかとか、それから、例えば会社でも、行為規制をする配当制限つき会社ならどうかとか、さまざまな議論ができますので、これは、必ず非営利ホールディングの議論に合わせてやってまいりたい、このように考えております。

 いずれにせよ、きょう御質問できなかった参考人の方々におかれましても、本当に恐縮でございますが、本日は大変にありがとうございました。

 以上です。

後藤委員長 次に、古屋範子君。

古屋(範)委員 公明党の古屋範子でございます。

 本日は、参考人の皆様、国会においでいただき、貴重な御意見を述べていただきましたこと、心から感謝を申し上げます。

 まず初めに、中川参考人にお伺いをしてまいります。

 私たち公明党では、全国約三千人の議員で、今、地域包括ケアシステムの推進本部をつくりまして、地方にも参りまして、現場の実情を把握し、あるいは先進事例などを学びながら、全国の議員で、それぞれの地域に即した医療、介護の体制をつくっていこうという活動を推し進めている最中でございます。

 本法案の中で大きな柱となっておりますのが、地域の実情に即した体制整備、病床の機能分化、地域医療構想という点だと考えます。

 この地域医療構想に関しましては、先ほども意見陳述の中にもございましたように、病床機能の報告をいただく、そしてそれを活用して将来の病床数、必要量を査定して、それに基づいて病床の機能分化を進めていくということが本法律案の中で定められているわけでございます。

 この地域医療構想に関しましては、やはり医療機関の自主的な取り組み、また医療機関相互の協議によってその実現を図ることが前提とされております。これに関して、評価する意見がある一方で、やはり病床の医療機能の転換等は、診療報酬の査定とも相まって、医療機関の経営とか雇用にも非常に大きな影響を及ぼす、また、経営状態がなかなか厳しい医療機関などをめぐっては、実際の協議が難航するということも予想されるかと思います。

 先ほど中川参考人も、これに対するペナルティーは科さないでほしいという意見でございました。また、強権的な、都道府県に関して、しゃくし定規にこれを行っていくということは、医療機関にとってもなかなか難しいのではないか、こういう御意見でございました。

 都道府県の責任、また存在というものは非常に重要だと思われます。調査結果の分析、把握にいたしましても、またその後の協議にいたしましても、丁寧に医療機関の皆様の御意見をいただきながらこれは進めていかなければならないというふうに思っております。

 その際、やはり住民の声も非常に重要かと思われます。地方議員、特に、住民の声を日々聞きながら、また医療や介護の現場とも接している地方議会の役割というものも大きいかと思います。この協議の場を円滑に、また丁寧に進めていく上でさらに重要なこと、議会の存在も含めまして御意見があれば、お伺いをさせていただきたいと思います。

中川参考人 古屋先生、御質問ありがとうございます。

 今回の地域医療構想、ビジョンを策定するために協議の場を設定するということは、これを法案の中に、法律の中に明確に位置づけるということは非常に重要なことだと評価しております。

 そこで、協議の場をどこに設けるのか。都道府県の医療審議会の中に設けるのか、下に設けるのか、それとも同列な地位に設けるのか。そこでどういうふうに、行政と、医療提供者側、医師会を中心とした医療提供者側と、患者さんと住民と、そしてもちろん地方議会の先生方と、どのようにかかわるのかというのは、四十七通りあっていいんだと思います。そのことも含めて、ビジョンというのはあくまで参考なんだ、仮にこうだよということだと申し上げているんです。

 ただ、私、心配しているのは、例えばうちの都道府県医師会で見れば、都道府県医師会と県行政との関係は非常に温度差があります。うまくいっているところもあるし、そうでないところもある。その辺のところは、今から意思の疎通がしやすいような環境づくりをしてほしいというふうに、各方面にお願いしているということでございます。

古屋(範)委員 ありがとうございました。

 やはり、地域ごとのそれぞれの実情に即した協議の場というものがあっていいし、そうでなければならないということであろうかと思います。ここの行政とそして医療機関との関係性を円滑に進めるためにも、さまざまな知恵を駆使して、今後、この協議の場を実効性あるものにしていかなければならないと考えます。

 先日、私たちの地域包括ケア推進本部で、この地域包括ケアに対する日本医師会の御意見を伺う場を設定いたしました。今村副会長においでいただきまして、さまざま講演を行っていただきました。その中で、やはりかかりつけ医の存在というものが非常に重要だという御指摘がございました。かかりつけ医を中心とした切れ目のない医療、介護の提供、このことを強調されていらっしゃいました。

 かかりつけ医というのは、何でも相談できる、最新の医療情報を熟知していて、必要なときには専門医、専門医療機関を紹介でき、身近で頼りになる地域医療、保健、福祉を担う総合的な能力を有する医師。これは、日本医師会また四病院団体協議会が定義をされています。

 先ほど板倉参考人からは、特に医学部の時代あるいは研修医の折のこうしたかかりつけ医、総合診療医の育成について言及されました。では、現実にかかりつけ医のような役割を担い、地域の中で常々相談に応じながら診療を行ってくださっている、現在既に地域で活躍をされている医師、こういう方々の育成に関しても、これから日本医師会、四病院団体協議会は、かかりつけ医の養成、かかりつけ医機能の充実に努めるという御決意を発表されているんですが、これに関して、やはり国の担うべき役割というものは非常に大きいのではないかと思いますが、かかりつけ医の養成に関して御意見があればお伺いをしたいと思います。

中川参考人 地域包括ケアシステムを全国で構築するということは、私は国民的合意はもう既に得られているんだと思います。その中心となるのがやはりかかりつけ医なんだろうと思います。

 先ほどの冒頭の私の説明でもありましたが、これは、医学部の学生のときからプライマリーケア能力をしっかりと身につけて、臨床研修二年間とあわせて、五年生、六年生、臨床研修二年間でしっかりとプライマリーケアを身につけて、そしてその後、専門的な医療を身につけて、最終的には、専門性の高い医療技術を持ったかかりつけ医が地域に出ていって、地域包括ケアの中心となるんだろうというふうに思っています。

 そのために、日本医師会は、生涯教育制度というのがありますが、それをさらに充実させて、地域住民の信頼に応えようというふうにしています。そのような中で、やはり、どのように地域包括ケアをつくっていくのかは、国の役割は非常に大きいと思います。

 今回、診療報酬改定の中で、かかりつけ医機能の評価を具体的に評価する、点数をつけるという二項目がありました。地域包括診療料と地域包括診療加算。これは非常に限られた財源の中での改定でしたので、要件は非常に厳しくて、算定できる医療機関は少ないんですが、今後、このような評価をもっと要件を緩和して、かかりつけ医の自覚を持って患者さんをしっかりと守っていく、見守っていくんだ、信頼されていくんだという、かかりつけ医の成長を、我々として全面的に支援していきたいというふうに思っております。

古屋(範)委員 ありがとうございました。

 確かに、かかりつけ医に対して総合的な政策誘導、インセンティブがつくような、そうした政策が必要なのだということだというふうに思います。

 次に、板倉参考人にお伺いをいたします。

 私も、二〇〇七年、特に奈良で、妊婦が搬送先がなかなか見つからず死産をする、その前年には死亡するというような事件があり、医師不足、医師の偏在性に関して、かなり地方の現場も歩いてまいりました。

 その中で、山梨県においては、地域医療支援センター、既に立ち上げて取り組んでいらっしゃるということでございます。その中で、地域医療支援センター、これを今回の法律でも位置づけていくということでありますけれども、これが実際に、そうした医師の不足あるいは医師の偏在性等に大きく寄与していく、そのためにはやはり、ここの機能を強化していかなければいけない、また、法律成立後、実効性あるものに、我々もともにしていかなければならないと考えております。

 そこで、今後さらに、この地域医療支援センターの機能強化に必要なことがあれば、お伺いをしたいというふうに思います。

板倉参考人 御質問ありがとうございます。

 先ほども申し上げましたように、この地域医療支援センターを強化するためには、やはり国が全面的にバックアップをしていただくということが必要であります。

 現在は、試験的に三十道府県に設置されておりますけれども、ややもすると、行政と地域医療支援センターの間で単純な医師派遣業務というところで話が進んでいる部分があります。それは、先ほどもお話ししたように、根本的な医師不足の解決にならないわけです。長いスパンで、医師の教育、育成というところ、そういったところから見ていかなければならないわけですから、この法案の中で、この地域医療支援センターというのがこれから永続的に機能する機関として位置づけをしていただくことが必要だろうと思います。

 それから、やはり、中立的な立場でこの機関が運営されなければ、本当の意味での医療サービス提供、医師不足解消にはつながらないというふうに考えています。

 先ほど来お話がありますように、本県の場合は、臨床研修病院等連携協議会が中心になっておりますけれども、それにさらに医師会が加わって、先ほど中川先生のお話にもありましたけれども、生涯教育、医師会が持っております生涯教育のスキルというのは総合診療医を養う上では非常に重要なものであります。こういったものも取り入れて、さらに、実際の県民の方々、市民の方々の意見も取り入れられるような、そういった中立的な立場でこの地域医療支援センターが運営される必要があるだろうというふうに考えています。

 ですから、法制化されることによって、全国均一な何らかの規制が入り、この運営に制限がかかるというようなことがあっては、本質的な医師不足対策にはつながらないと考えています。そういった意味では、この組織の機能の中立性が保たれるような形、これが保障されることが必要ではないかというふうに考えております。

古屋(範)委員 永続性そして中立性が何よりも重要だという御意見でございました。

 学生も研究をする、そしてまた地方での地域医療も行う、そしてまた大学に戻れる、あるいは病院での仕事もできる、このような体制ができていくといいのではないかなと私自身は考えております。

 次に、川渕参考人にお伺いをいたします。

 率直な御意見をありがとうございました。地域包括ケアシステムに対する御意見がございました。

 地域包括ケアシステムを進めていく上で、やはり在宅医療は非常に重要かと思います。月刊公明の二月号で、ICTの利活用、その論文の中でお述べになっていらっしゃいます。私もこれを読み、世田谷のプラタナスに実際行ってまいりました。ICTを使えば、医師のさまざまな事務の時間を省き、実際、診療時間が非常に長く、そして、ここでは、チーム医療を行って、在宅のナースまで活用しながらICTを利活用して、これは地域の在宅医療に非常に大きな成果を上げています。

 この地域包括ケアシステム、これに関して、あるいは今回の医療改革につきましても、ICTの利活用、御意見があればお伺いをいたします。

川渕参考人 どうもありがとうございます。

 実は、私が在宅が非常に大事だと思う一方で、なかなかその在宅が進まない理由に、お医者さんがやはり大変なんですね。ですから、ICTを利活用して、今スマホとかいろいろなものが、モバイルがありますので、そういうものを使って、見守りサービスとかそういうのをできないか。私の八策の第一丁目の一番地にも書きました。御案内のとおり、そういう世田谷で広くやっている方もいるんです。

 ただ、私の資料の、ちょっと誤植がありまして、四ページ目の下から四行目ですか、今回の診療報酬で「大幅に引き上げられた」じゃなくて、大幅に引き下げられた医学総合管理料というのがあります。これもマスコミ等で報道がありまして、ややもするとこういった在宅医療のあっせん業というのがあるような報道がありまして、今回四分の一ぐらい下げられましたが、今御案内があった世田谷で頑張っておられる、総合診療をやっている先生も、やはり今回は本当に頭が痛いと。

 私は結構、総合診療といいますか在宅医療をやっている現場にいろいろ見に行きますと、本当に頑張っておられるんですね。ソロの診療所でやっておられても大変なんだと思いますけれども、五人、六人抱えて、相当、規模の経済は働くやに思いますけれども、その一方で、やはりICTを活用してやっている。

 そういう点では、私は、いよいよこれから、先ほどレセプトの話も出ましたが、そういうバッチ処理でデータを分析する時代は終わって、むしろスマホとかあるいはそういうモダリティーを使って、楽して先生方にインプットいただくというか、インプットいただく苦労もなく進めていくべきじゃないかと。

 そういう点では、今回の診療報酬改定で私は一点だけ、この総合管理料というのは地域包括ケアシステムに逆行するんだなと。皆さん、療養型病床群もそうでありましたが、国に先んじて行動した人とか、あるいは国によかれと思ってやった方が、みんなはしごを外されている。そうすると、厚労省の方に申しわけないけれども、厚労省のシンパが敵に回るわけですね。

 これは本当に残念でありまして、先ほども足立委員がおっしゃったように、私はもうこれが最後のチャンスだと思います。未曽有の少子高齢化の中で、厚労省が出してきたこの解決がいいかどうかわかりませんが、私は、地域包括ケアシステムを本当にやろうと思えば、やはりICTを活用して見守りサービスをやっていくしかないんじゃないかと思うわけであります。

 以上であります。

古屋(範)委員 時間でございます。

 大変にありがとうございました。以上で質問を終わります。

後藤委員長 次に、中島克仁君。

中島委員 みんなの党の中島克仁です。

 本日は、連休明けのお忙しい中、五人の参考人の方々には、国会に足をお運びいただきまして、本当にありがとうございます。

 特に指宿参考人には、御高齢であるにもかかわらず長時間にわたっておつき合いをいただきまして、本当にありがとうございます。感謝しております。

 きょう、さまざまな参考人の方々からの御意見、本田参考人も、まだまだ言い足りないことがたくさんあるような、そんな雰囲気もございました。川渕参考人も恐らくそうだと思います。

 今回の法案、医療分野、介護分野、そして医療事故調の創設、また看護師研修制度も含めて、さまざまな法案が一つになっていく中で、きょうの参考人質疑を聞いていても、やはり皆さん、一つのことでも大変論点がたくさんあるなというふうなことを改めて感じました。

 私からは、国が目指している地域包括ケアシステム、地域において、それの確立のためには、他職種との連携、その先頭に立つための地域医療、介護の連携、その真ん中に入る地域医療を担う医師の育成ということを、大変重要な部分ではないかなと。

 その一方で、私もまさに経験をしたんですが、平成十六年に開業をして、その直後に地域の医師が大学に戻っていった。そして、私の地元も、内科医がいない自治体病院が六年も七年もそのまま放置されてしまった、また一方では産婦人科が延々として確保できない、そのような問題。

 先ほど、本田参考人の方からは、絶対的な医師不足だ、そのようなこともございましたが、やはり平成十六年に導入をされました新臨床研修医制度、いろいろな御意見があるとは思うんですが、現実的にはやはり医師偏在、さらに医師不足、どっちがどうだということよりも、実際に住んでいる方々にとっては、医師がいない状態は医師不足と言えると思います。

 そこで、まず、板倉参考人にお尋ねをしたいわけですが、結果的に医師偏在に拍車をかけてしまった平成十六年に導入された新医師臨床研修制度、まずその評価と、今後五年に一回見直しがあると思います、来年となると思うんですが、どのような改正というか見直しが必要なのか、御見解をいただきたいと思います。

板倉参考人 御質問ありがとうございます。

 まず、一般的に言われていますように、新臨床研修制度が現在の医師不足のきっかけになったということは確かだというふうに考えております。

 ただ、私が思うには、それは一つのきっかけであって、その前の段階で既に構造的に、医師不足を起こすリスクあるいは脆弱性というのは存在したのではないかというふうに考えております。

 その一つは、従来の医師の派遣のシステムであります。

 御存じのように、従来は、大学の診療科あるいは医局と、病院との個別の派遣契約に基づいて、医師が派遣されていたわけです。これは、大学と病院との連携というふうに捉える方もいらっしゃるんですが、私は大学の中にいて、実際はそれは診療科と病院との単一の雇用関係である。実は、大学の中でも診療科同士でそこは不可侵の部分があって、大学としてそれをうまくコントロールできているわけではなかったわけですね。したがって、その個別の雇用関係というのは一見タイトのようであって実は非常に弱いものであって、そこへ新臨床研修制度が始まったがために、一気に医師不足という方向に進んでいったのではないかと思います。

 もう一つ、先ほど本田先生の方からお話がありましたけれども、医師の高齢化というのもあります。

 私は、県内の病院、いろいろヒアリングをして、現在、医師不足の原因ということをいろいろディスカッションしてまいりましたけれども、一つは、診療所、開業医の先生方の高齢化というのがあります。

 これによりまして、従来は休日であったり夜間の診療を担っていた先生方が、やはり、高齢とともに、体力の限界からそういった時間外の診療をできなくなってきているということであります。その分が地域、二次医療圏の中核病院に集まってきている。ところが、そういった二次医療圏の病院も高齢化が進んでいる。

 データでは、確かに二次医療圏の医師数はふえてはいるんですけれども、平均年齢は上がっております。たしか、昭和六十一年で病院従事医師の平均年齢は四十歳、現在は多分四十四歳ぐらいだったと記憶しております。

 ふえてはいるんですが、その大半が五十歳以上の医師である。本来、救急であるとか時間外診療の担い手であった三十代、四十代の医師というのはここ数年間横ばいの状態にあります。そこへ来て、先ほどもお話ししたように、かかりつけ医の先生方からの一次、二次の患者さんの要請というのが集まってくるということで、そこで相対的な医師不足を起こしているのではないかと思います。それは決して新臨床研修制度そのものが原因ではなかった。

 何度も申し上げますように、幾つかの複合的な医師不足を起こす状態が存在したところで新臨床研修制度が始まって、一気に加速されたというふうに考えています。

 一方で、その新臨床研修制度、いろいろな評価がありますけれども、最近私がよく耳にしますのは、この新臨床研修制度を経た先生方は非常に総合診療能力が高いというふうな声を聞いており、私自身もそれを実感しております。やはり、たかだか二年間の間ではありますけれども、いろいろな診療科を回って経験をする、そういう経験を持っていますと、たとえ専門科に進んだとしても、その専門領域の勉強をしながら、それ以外の領域の疾患であるとか病態に関しても何らかの意識を持って情報収集している部分があるように思います。

 そういった意味で、新臨床研修制度の本来の目的である、どのような専門に進んだとしても、基本的な総合診療能力を涵養した医師を育てるということでは、それなりの結果を出しているのではないかと思います。

 そして、今から必要になる地域の包括ケアチームの構成あるいは二次医療圏の医療サービスの充実ということにおいては、先ほどもお話ししたような病院総合診療医の養成、それから総合診療医としてのかかりつけ医の先生方の育成ということを考えると、この制度は、一つ結果を残して、有効なものであったのではないかと思います。

 私自身は、今年度、五年ごとの新臨床研修制度の見直し案が出されましたけれども、その中で、弾力プログラムといいまして、必修科目三科目というのが継続されましたけれども、私どもの山梨大学では、二十七年度のプログラムでは、あえて従来型の八診療科必修型にいたしました。それは、今お話ししたように、この新臨床研修制度をうまく利用すること、できるだけ多くの診療経験をさせることによって、将来必要とされる、特にこれからの超高齢化社会に必要とされる総合診療医の育成という意味では大きな役割を果たすのではないか、そういう方向に持っていくべき制度であろうというふうに考えております。

 以上です。

中島委員 ありがとうございます。

 恐らく、もともとの医師派遣機能を果たす、従来は大学の医局ということが根本にあったと思います。その脆弱性も一つ。そんな中で、臨床研修医制度、十六年にできたものが、何となく見た目には、医師偏在に拍車をかけてしまったというイメージでとられるんですが、参考人の今のお話ですと、確かに新臨床研修医制度を経てきた若い医師は、総合診療医としてのポテンシャルが非常に高い、これは一定の評価ができるのではないかというふうに思われます。

 ただ、やはり、国の政策としてこういう結果を招いたことに対して、恐らく、多くの日本全国の医師不足と呼ばれる地域では、板倉参考人の山梨県もそうだと思うんですが、従来から連携協議会をつくり、医師の偏在を何とか是正しようと。そういう中で、独自に地域枠というものをつくって、その学生にしっかりとその後地域に残ってもらえるようにという取り組みをされていると思います。山梨県においては、恐らく、その地域枠の学生さんたちが初めてことし卒業した。今後、その後しっかりとその地域を担ってもらう医師となるためには、先ほども御質問があったので繰り返して質問はいたしませんが、やはりインセンティブというか、メリットというものが必要になるのではないかな。

 恐らく自治医大の先生方も、多くが、六年間の僻地診療の義務化があった後、その後は自由に選べるということで、やはり、総合診療医、このポンチ絵の中で御説明いただいた中で、そういう地域に根差した、将来的には地域包括ケアシステムの中心となって働ける医師の育成、そのためには卒前教育、これは大学教育ですが、そして初期研修、後期研修、これが厚生労働省ということになって、その後、先ほど中川参考人からもございました、医師会がずっと取り組まれておる生涯学習、この辺がシームレスに、横串を刺すように一連の流れで沿っていかないといけない、そのように思います。

 そういう観点から中川参考人にちょっとお尋ねをしたいのですが、今回、総合診療医、恐らく、地域医療支援センターが法制化されることで、現在三十県ですが、多くの地域で同じような地域医療支援センターが出てくると思います。そのときに、独自の取り組みをされると思うんですが、山梨県の場合、最終的に、地域を担っていくための総合診療医、今回数年後に専門医として成り立つことも予想されておりますが、その総合診療医が専門分野として確立されることについて、かかりつけ医等の話もございますが、医師会としての御見解をお尋ねしたいと思います。

中川参考人 先生、ありがとうございます。

 私の最初の資料の十一番をごらんいただきたいんですが、医師不足の解消、何度も申し上げてきましたが、医師数自体は、人口当たり二〇二五年に一・四倍になります。そして、我々がこれから取り組まなければならない、もっと踏み込んで言うと、政治が早急に取り組まなければならない問題は、地域間、診療科間の偏在だと思うんです。

 といっても、現状をどうするんだということに関しては、十一番にありますように、地域医療支援センターだけに全てを委ねるのではなくて、現行の医療法に基づく都道府県地域医療対策協議会、これも温度差がありますけれども、これを活性化させて、地域医療支援センターとともに、臨床研修を、卒業医学部のある県にまず軸足を置く、そして全国のいろいろな臨床研修の病院に行くということを目指す、大学臨床研修センターというのを設置してはどうか。そして、各都道府県には医師研修機構というのを置いて、全国のどの医学部の卒業生が自分の県の臨床研修病院に来ているのかという把握で、情報を一元化して、そして、最終的には、各県でこの四者を発展的に再編して都道府県地域医療対策センターというのを設置して、医師養成と医師の偏在解消を含めた確保対策を推進していこうという提案をしているんです。

 これは、厚労省の医療部会でも検討会でも繰り返し主張しまして、御理解をいただいているというふうに思っています。

 単一の手段だけではもう無理だと思います。医師の偏在解消は急務だと思いますので、ぜひ、先生方、政治の力で具体的な政策を出していただきたいなと思います。

 それから、地域包括ケアの中心になるのは、総合診療医というよりも、充実した、進化した、専門性を持ったかかりつけ医。日本はすばらしい国だと思っています、専門性の高いかかりつけ医がどんどん出てくるわけですから。さらにその教育水準といいますか生涯教育を充実させて、それを育てていきたいなと思っております。

中島委員 ありがとうございます。

 もっとたくさん聞きたいことがあって、実は医療事故調の件ももっとお聞きしたい部分があったんですが、時間になってしまいましたので、これで終わらせていただきます。

 本日は貴重な御意見をいただきました。これからまだ審議が長く続くと思いますので、きょうの御意見を参考にして、審議に臨みたいと思います。

 本日は本当にありがとうございました。

後藤委員長 次に、井坂信彦君。

井坂委員 結いの党の井坂信彦です。

 本日は、長時間の審議、本当にありがとうございます。時間もありませんので、早速質問に移らせていただきたいと思います。

 まず、川渕参考人に、一点目、お伺いをしたいと思います。

 八不思議ということで、そもそも論としてゼロ番目に書いていただきました、第一次から第五次までの医療法改正においてきちんと検証したのか、政府の失敗と呼べることもあるのではないか、こういう御指摘でありました。

 時間がありませんので端的にお伺いをいたしますが、いろいろ失敗として御指摘いただける部分はある中で、特に今回のこの今審議をしております医療介護総合法案、この法案改正について参考にすべき失敗、あるいは反省すべき失敗というものがありましたら、その点に絞って御指摘をいただきたいというふうに思います。

川渕参考人 ありがとうございます。

 私の人生も失敗だらけでございますので、そういう点では、失敗に学ぶことは大事だと思います。

 私自身も、先ほど御案内ありました厚生省の病院管理研究所に九年おりまして、いろいろな研究をやってきましたけれども、結局、第一次医療法改正、この趣旨が何であったのか。言うまでもなく、病床規制というのをやったわけであります。

 私は、基本的には、自由放任が全ていいとは思いませんけれども、神の見えざる手というものに対して介入を加えるときは、やはり市場の失敗というものを補うべくやるのかなと。

 そのときに一番よく言われるのが、今も三百八十幾つありますかね、第二次医療圏、どうやって決めたのか。私にもわかりません。ただ、これが都道府県単位をさらに分けているわけですね。昔の、明治政府以前の、廃藩置県前の、ああいう形の設計をすればよかったんですけれども、人為的に第二次医療圏を決めました。

 ですから、生活圏を反映していないというところが非常に私は問題だったのかなと思います。

 二つ目は、特定機能病院、それから地域医療支援病院、これは何のためにやったのか。

 恐らくこれは、オープンシステムといいますか、例えば医師会立病院というのは、専ら開業医さんが外来を診て、重い患者さんは入院してもらう、こういうシステムを目指したんじゃないかと思うんですね。そういうときに、紹介率、逆紹介率というのが結構大きいんですが、ここも検証が若干やはり甘かったのかなと。

 ただ、もう既に制度が動き出しておりますので、皆さん、それに向かって頑張ろうと。紹介率四〇%、逆紹介率六〇%、あるいは、紹介率六〇%、逆紹介率三〇%。原則は八〇%でありますけれども、こういう人為的に決めるときに、本当に実態を反映していないといけないのかなと。

 ただ、私は、一番やはり大きいのは、第四次医療法改正。このときに、医療機関を一般病床か療養病床かに分けようと。これも報告制度をやりました。しかし、これは、厚生省の方お見えでありますけれども、本当に締め切り前までもまだ手が挙がらないんです。終わるよと言っているのに挙がらないんですね。

 その場合、我が国は、当分の間という便法があるんですね。当分の間というのがついているのが、最後に出てくる持ち分ありの医療法人制度。九八ポイントが医療法人制度、持ち分ありにもかかわらず、当分の間と。一体、当分の間というのはいつまで続くんでしょうか。

 こういうのが私が考える失敗の歴史かと思います。

 以上であります。

井坂委員 ありがとうございます。

 また今回の法改正の議論に生かしてまいりたいと思います。

 二点目に、板倉参考人にお伺いをしたいというふうに思います。

 総合診療専門医ということについての御提案がございました。先ほど中川参考人の方からも、また、かかりつけ医のお話も少しあったわけでありますけれども、板倉先生がお考えの総合診療専門医ということと現状の日本のかかりつけ医との関係について、どのようにお考えかということ。

 また、私は、イギリスのゼネラルプラクティショナー、これはもちろん、日本と全然違う制度で、大変問題のある部分もあるとは認識をしているんですが、しかし一方で、地域にそういう、まず全てを診られる先生がいらっしゃる。それが余りゲートキーパーというふうに、排除の論理になるとこれはいけないわけでありますが、ただ、こうしたゼネラルプラクティショナーのような方向性というものもお考えなのかどうか、こういったことについて板倉先生にお伺いをしたいと思います。

板倉参考人 御質問ありがとうございます。

 先ほど中川先生がおっしゃられたように、現実的に今地域医療を支えておりますのは、専門医からコンバートして総合診療的な能力を身につけられた、非常に高度のかかりつけ医の先生方が今の地域の医療を担っているということ、私はそれも認識しております。

 ただ、若い先生を今後そういったかかりつけ医として誘導していく、地域に定着させていくためには、何らかのインセンティブのようなものが必要であろう。その一つが総合診療専門医というステータスだと思います。そういった意味で、私自身は、今度の専門医制度によって、その総合診療専門医というのがほかの基幹診療科の専門医と同等の扱いを受けるということ、そういった評価を受けるということに関しては非常に期待を持っております。

 ですから、中川先生がおっしゃられるような現在のかかりつけ医と我々が考えている総合診療医というのは、決して別のものではなくて、同一のものであって、さらにそれをスキルアップされたものにしていきたい。

 現在のかかりつけ医の先生方、私の友人もそういった先生方が何人もいらっしゃいますけれども、ある程度の年齢になって専門医からかかりつけ医としてコンバートしているわけですけれども、そのときのスキルアップは、自助努力、あるいは医師会が主導しております生涯教育、そういったものを利用してスキルアップをされているわけです。それをやはりもう一歩踏み込んで、医育機関である大学であるとか、あるいは、さらには国、そういったものがバックアップしながら、そのスキルアップといったものを支えていく必要もあるのではないかというふうに考えています。

 もともと、欧米、アメリカそれからイギリスなんかには、いわゆるホームドクター、あるいはプラクティショナーというものがあります。確かにそれに近いものを私自身は考えておりますけれども、ただ、日本の場合は、これまでの歴史の中で、専門医、高度の専門医を持って、そこからコンバートして非常にレベルの高い総合診療を、サービスを提供している、そういった歴史もありますので、必ずしも、欧米で言われているようなホームドクター、それと同一のレベルのものを目指しているわけではございません。

 以上です。

井坂委員 ありがとうございます。

 続きまして、本田参考人にお伺いをしたいのは、医療事故調査制度についてであります。

 ちょうど私、今回の法案審議で、まだ野党質問二日、本日を入れて三日目なんですけれども、最初の一日目は、これはもう法案の出し方がむちゃくちゃだ、十九本まとめて採決は論外だ、あと、基金というお金の出し方の問題点について、二日目は丸々この医療事故調査制度について質問をいたしまして、実は、今度金曜日に予定されている三日目も、医療事故調査制度のことばかりやろうというふうに思っております。

 その中で、先生がまたいい資料を、御指摘いただいた、このWHOの医療安全グローバルスタンダードということでお示しをいただきました。

 今回の本法案は、以前に比べて、報告書がそのまま処罰に使われたりとか、あるいは刑事や民事にそのまま流れたりということは、比較的、以前のものに比べたらないようにはなっているのかなと思う反面、そうはいっても、先生が御懸念のとおり、最終的に御遺族がそれをどう使うかまでは、これはもうコントロールしようがないというたてつけになっております。まさに、事故の現状を解明して次に生かすという機能と、それからあと、御遺族をどう救済するか、納得していただくかという二つの機能が、やはりまだ混在をしてしまっているのかなというところが最大の問題と感じております。

 先生にお伺いをしたいのが、先生の本日御指摘いただいたのは、そういう報告内容が民事や刑事に使われるのではだめだということでありますけれども、では、それは、報告制度はそういうたてつけにするとして、一方の、御遺族あるいは患者さんの納得、救済ということについてどう考えていくのか、別制度が要るのではないか。私自身もフランスの無過失補償制度などいろいろ調べておりますが、その辺、アイデアがあればいただきたいと思います。

本田参考人 ありがとうございます、もう話せないんじゃないかなと思っていましたけれども。

 このグローバルスタンダードの一、二、三、これに外れているという問題が一つ。

 あと、私がすごく残念なのは、先ほども申しましたが、本来は医療安全または患者安全推進センターを国として検討すべきなんですね。

 というのは、本来は、医療事故というのは、今後同じことが起きないようにするために事故の調査をきちんとして、再発防止をすることが目的ですよね。何で患者安全推進ができないかというと、(パネルを示す)これが全部かかってくるからです。

 それをきちんとするためには、先進国最低の医療費と医療スタッフを充実させることがまずは基本です。患者安全推進センターをつくるとすればですよ。そこはとっておくと、事故だけどうにかすればいいというふうに我々には見えます。

 ですので、おっしゃるとおり、私も、自賠責という保険があるから車のある程度の普及が実際あるわけで、当然ですけれども、無過失補償制度を、産科はちょっといろいろまだ問題がありますけれども、無過失補償制度で、みんなで共有する医療に対しては補償をある程度していこう、これもヨーロッパ型を私はぜひ推奨したいと思います。

 ですから、キーワードは、医療事故を相談するのじゃなくて、患者安全推進を相談していただきたい。そうすれば自然と日本の医療がよくなると私は考えています。

 御質問どうもありがとうございました。

井坂委員 ありがとうございます。

 四点目に、ちょっと再度、川渕参考人にお伺いをしたいと思います。

 配付資料の十九ページ目に書いていただきましたこのグラフ、安くて、早くて、しかもこのグラフでいえば死亡率の低い、こういうところに本来、いいお医者さんということで、インセンティブ、露骨に言えばもうかるという仕組みがなければいけない、こういう御指摘だったかというふうに思います。

 さらに、八策の中の七番目に書いていただいておりますように、こういうDPCに加えて、さらに、その前の予防であるとか、あるいは在宅ケア、あるいは病後のこと、そういったことまで含めてのエピソード払いというようなものも御提案いただいております。

 時間の都合でここら辺を余り御説明いただけなかったと思いますので、このエピソード払いということ、私はいい考えだと思っている側でありますが、実際日本でやろうとするとどこが難しく、どこがポイントとなってくるのか、お答えをいただきたいと思います。

川渕参考人 ありがとうございます。

 先週までジョンズ・ホプキンスの会議に行ってまいりまして、実は、十九枚目もそうなんですけれども、二十一枚目も関連して、私どもがやっております病院の可視化ネットワークでデータをいただきました。

 実は、二十一枚目は、これは有名な健保組合であります。日本を代表する健保組合とまでしか申し上げませんが、実は、特定健診、保健指導で医療費が減ったのかどうかという分析にもこのレセプトは使えるんですが、きちんとデータをクリーニングしないと、とてもじゃありませんが、今のデータをそのまま利活用することは不可能ではないかなと思います。そういう点では、私は、この健保組合は、調剤薬局のデータも全部リンクされていますから、非常にすばらしいのかなと。

 ただ、やはり最後は未病なんですね。なるべく病気にしないという社会をつくらなくちゃいけない。予防ですよね。そういう点では、私は、特定健診、保健指導という制度は別に悪くないと思います。

 ただ、これが、わかっているけれどもやめられないという方が多いんですね。これをどうやってそのインセンティブにつなげていくかというときに、私は、ジョンズ・ホプキンスがつくったこのACGというのはうまくできていると思います。

 世の中はTPPで騒いでおりますが、実は、アジアの国はみんなこれを使っています。ヨーロッパの国もこれを使っています。なぜこのソフトがいいかというと、リスク調整ができるんですね。難しい人は助からないんです。重篤化するんです。そこを個人別に特定化する、そういうデータベースです。

 私は、やはり、先ほどから御案内しましたように、十九ページのように、そこそこの医療費でそこそこの質を上げるようなM病院というところにベンチマークすればいいのかなと。ただ、やはり心臓をお悪くされますと、なかなか、医療費がかかりますよね、生涯医療費は。それを我が国はこれから考えなくちゃいけないんです。

 ですから、そこのときに一番出てくるネックは、個人情報保護法です。これが研究者にとっては本当にもう悪法も限りない。つまり、連結可能の匿名データと言っておりますけれども、なかなか審査委員会が通らなかったりしますし、実際、やはり国民からまだまだこのデータを利活用することに対するオーケーが出ていないのかなと。

 私は、ここをICT化を含めて我が国がやらないと、データを使っての医療の見える化というのはできないのかなと思います。

 以上であります。

井坂委員 ありがとうございました。

 時間が参りました。本当に大変大きな法案ですから、またじっくり時間をかけて審議をしていきたいと思います。

 どうもありがとうございます。

後藤委員長 次に、高橋千鶴子君。

高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 きょうは、五人の参考人の皆さん、お忙しい中、出席をいただいて、また、貴重な御意見をいただきました。ありがとうございました。

 早速質問に入りたいと思います。

 まず、病床機能報告制度と地域医療ビジョンについて、最初に中川参考人に伺いたいと思います。

 先ほどの報告の中で、病床機能の区分について医師会の意見が通ったんだということと、また、報告制度においても、自主的に選択をして都道府県に報告する仕組みということで、よかったんだというような趣旨の発言があったと思うんです。

 確かに、これは形は手挙げ方式ではあるんですけれども、補助金が出ないとか融資が受けられないとか、要するに、あるべき姿に従わなかった病院に対してのかなりのペナルティーがあったりとか、七対一病床の削減に対しての診療報酬のかなりの動機づけがあったりですとか、そういうことがあるわけです。ですから、手を挙げたからといってそうなるわけではない。また、医師が不足していて病棟をやむなく閉鎖している、そういう実態もあるわけですよね。

 そうしたところに対して、見た目の数ですとかそうしたことで病床削減とか、そういうことにつながっていかないのかという危惧を持っておりますが、いかがでしょうか。

中川参考人 高橋先生、ありがとうございます。

 措置を、例えば、私の資料の五ページのところで、「従わなかったときには次の措置が挙げられている。」三項目ございますが、これは、協議の場の結果、それから都道府県医療審議会の意見、これを無視した形で病床を転換するんだ、申請するんだというときに、特に悪質な場合に限ってこれが措置されるという意味です。

 ですから、地域で長年地道に患者さんの医療を展開していた医療機関が、地域医療ビジョンの必要量に合わない病床を持っていたからといって、その病床の転換を強制されるわけではないんです。既得病床機能は担保されるというふうな仕組みだというふうに私は理解しています。そういう意味では、協議の場をつくったことは、私は高く評価したいなと思っています。

 しかし、幾ら自分の病院がずっと急性期でやっていくんだと思っても、地域医療ビジョンは将来の疾患別患者数の推計も行いますから、患者さんがいないところで幾ら急性期医療を展開しようといっても、だんだんこれは必要がなくなってきますよね。そういうことを踏まえながら、年々、自分の病院はどういうふうに進むべきかを考えながら進んでいくというのが地域医療ビジョンの策定、地域医療提供体制の構築だというふうに理解しております。

高橋(千)委員 医政局長は、私の質問に対して、懐に武器を隠しているという表現をされたわけで、ペナルティーを使うわけではないのだと言ったわけですけれども、本当にそうだろうかと、実態を見れば非常に危惧を持っているわけです。

 そこで、本田参考人に伺いたいと思うんですが、地域医療の現場を、先生、さまざま全国を歩いていらっしゃいます。そうした中で、やはり、患者さんがいないとかではなくて医師が不足しているがために病棟を閉鎖している、あるべき姿と残念ながら今の姿が違うんだという実態がある中で、こうした数をやっていくことが、実際に、例えば医療過疎に拍車をかけるとかそうしたことにならないのかという心配をしておりますが、いかがでしょうか。

本田参考人 御質問ありがとうございます。

 埼玉にいると、それを非常に強く感じます。というのは、先ほど御紹介した三十六回たらい回し、二十五病院ということがあった埼玉ですけれども、お一人、開業で救急をやっていらっしゃる先生がいらっしゃいます。川越の救急クリニックというところですが、その先生は、九州で働いていたときに、救急車を断るなんて考えられなかった。ところが、埼玉は三十六回たらい回し、二十五病院なんですね。

 つまり、全国でこれだけ、先ほど埼玉県は一万人少ないと申しましたが、医療の本当に絶対数不足を基盤にした偏在があるんですよ。そうすると、我々の地域だとよく見えるのは、完全に、勝ち組地域と負け組地域、勝ち組病院と負け組病院。例えば、同じ済生会でも、人が多いところは研修もできるし休ませられる、少ないと研修も教育もできないし休ませられない。皆さん、もし自分とか自分の子供が医者だったら、いい環境で働いて研修させたいと思いませんか。ですよね、人間だもの。

 ですから、本当に、その地域偏在を医師不足、看護師不足という絶対数不足がどんどんどんどん加速させているという現状が、勝ち組の地域の人はわからないんですよ。だから、私は何回も言われたことがあります、おまえ、何でそんなに医師不足と騒いでいるんだ、俺はわからないんだよとか。

 例えば、東京の大きな病院の先生に医師不足ですかと聞いてください。不足じゃないよ、研修医が断るぐらい来ているからと答えるはずです。そういう方が団体の偉い方になるんですね。負け組病院の院長は、余り病院会でも偉くなれないんですよ。

 ですから、皆さんも、きょう私が出した現場の実情を正しく知らないと、正しく認識しないと、正しい判断は絶対できません。そのために、きょう、恐らく二度と呼ばれることがない私が出てきたわけでございます。

 よろしくお願いします。どうもありがとうございました。

高橋(千)委員 医師不足について、年齢の問題や偏在の問題など、具体的な資料で、本田参考人、先ほど紹介をしていただきました。

 そこで、解決策のところで時間切れになったと思いますので、もう一言お願いいたします。

本田参考人 先ほど言いましたように、アメリカだけじゃなくてヨーロッパとも比べて、ただ、一つだけ言えることは、ヨーロッパの勤務医の勤務時間は少ないですから、絶対日本より医師が多いことは間違いないんですよね。ですので、ちゃんとグローバルスタンダードを見ながら、医師不足を解消する。

 そのときに、先ほど申しましたように、メディカルスクール型、大きな建物をつくらなくても、Eラーニングを活用してきちっと、なぜアメリカでメディカルスクールをしたかというと、高校卒業の時点で自分に医師の適性があるかどうかを判断させるのは酷だというのが基本にあるんです。私もそう思います。大学を卒業した学士がコンパクトに四年できちんとよき臨床医になる学びをするメディカルスクール型。アメリカでは、一旦できた医学部が潰れたりもしています。日本でも小学校が潰れたりしていますよね。一回つくったら潰れちゃいけないからつくらなくちゃいけないという理屈は、日本の医療崩壊を加速させるだけです。

 あと、もう一つ申しました。アメリカとかヨーロッパでも既に、フィジシャンアシスタント、ナースプラクティショナー、医療秘書などの医師補助職が入っております。先進国で一番医師不足の日本こそ、医師補助職を大至急で入れることは喫緊の課題です。

 アメリカでフィジシャンアシスタントが入ったところは、医師不足の地域から、一九七〇年代から入っています。だけれども、これも、困っていない人が集まって厚生省で相談すると、そういう人を入れてもしようがないんじゃないかとか危険じゃないかということで、いつまでも話が進まないんですね。

 医師不足の地域に、せめてフィジシャンアシスタント導入を認めてください。そうじゃないと、埼玉の医療は救われません。今埼玉県が考えていることは、医師不足だから、全国から引退した人を集めてこようと言っているんですよ。引退した人が救急医療を担えますか。現場では、何だ、これと思うようなことが真面目に討論されているというのが今の日本の医療界で、残念でございます。

 メディカルスクールと医師補助職を、導入をぜひ心からお願いいたします。

高橋(千)委員 済みません、ちょっと補足的にもう一問だけ本田参考人に伺いたいと思うんですが、メディカルスクールやフィジシャンアシスタントの導入について、医師の勤務環境の改善のために提案をいただきました。

 一方では、今の法案の中では、医行為を特定行為として医師の手順書によって看護師に移すというふうなことが提案をされています。

 私は、これは、医師をふやさない中で、看護師もふやさない中でただ移すだけでは全く趣旨が違うと思って、当初言われていた特定看護師とか、そういう世界とは全く趣旨の違うものであって、慎重であるべきだと思っておりますが、一言だけ伺いたいと思います。

本田参考人 どちらかというと、今現在の特定看護師さんは、恐らくアメリカ型のナースプラクティショナーということをイメージしているんだと思いますけれども、実際、特定看護師さんで、私たちのところでも、感染症関係、ストマ関係、栄養関係で、そういうなれた方がいると本当に助かっています。ちょっと恥ずかしい話ですけれども、若手の医者、私も含めて、感染症をちゃんと半年間勉強してきた看護師さんに相談してやっている、まさにチーム医療が行われているわけですね。

 ですから、専門性を高めてチーム医療をするという意味では重要ですけれども、ただ、看護師さんたちの意見を聞くと、今おっしゃったように、さらに忙しくなるのではないかという危惧がある。ただし、中には、ある意味キャリアアップして、そういうふうな上をやりたいという人もいますから、その両方をきちんと考えていただく。

 ただ、そういう意味では、日本の場合には、ナースプラクティショナーに余りこだわるのではなくて、フィジシャンアシスタント、MEさんという職種が前に出たようですから、フィジシャンアシスタントを導入した方が結果的には早く進むのではないかというのが私の見解で、循環器外科その他のところでもそういうことは非常に推しておりますので、ぜひフィジシャンアシスタントの導入は進めていただいた方が話が早いのではないかと思っております。

 ありがとうございました。

高橋(千)委員 ありがとうございます。

 板倉参考人に伺いたいんですけれども、そういう意味で、地域医療支援センターの山梨の取り組みを紹介いただきました。

 これは法的に位置づけられるということで期待をされていると思うんですが、一方で、都道府県の枠での限界というものがあるんじゃないかと思いますが、もしあったら伺いたいと思います。

板倉参考人 御質問ありがとうございます。

 先ほども申し上げましたように、私が今一番懸念しておりますのは、地域医療支援センターが単なる医師の派遣業務を担う組織というふうな位置づけで考えられる部分があります。特に、自治体の行政レベルではそういうふうな位置づけをしている部分があります。

 それでは本質的な医師不足の対策、解決にはならないというふうに考えておりますので、そういった意味で、先ほど中川先生がおっしゃられたように、国として全面的なバックアップをして、永続的な機関として存続させていただくということが必要だろうというふうに考えております。

高橋(千)委員 ありがとうございます。

 最後に、中川参考人にもう一度伺いたいんですが、五月二日付の産経新聞の紙上討論において、混合診療について規制改革会議の岡氏と討論しているのを大変興味深く読みました。

 きょうも最後のまとめの中で発言がされたと思いますけれども、やはり、規制改革会議が提案する選択療養というのは、混合診療を定着させて保険診療を目指すというものとは全く違うものではないかというふうに思っております。

 そこで、中川参考人は、その紙上の中で、保険診療を目指す評価療養でいいんじゃないか、また、その評価療養のあり方についても、患者側からも申請できるようにするとか、改善のことはあるんだというふうな提案をされているのは非常に重要かなと思っていますけれども、一言御意見をいただければと思います。

中川参考人 御質問ありがとうございます。

 私の資料の十五番をごらんいただきたいのですが、選択療養という提案をされた理由に、患者さんからのニーズがあるんだとおっしゃるんですね。それは、外国で承認されているが国内で承認されていない薬が使えなくて困っている人がいるんだとおっしゃるんですよ。

 ところが、厚生労働省の先進医療会議で専門家三人に私はお聞きしました、がん研究センターとがん研有明病院と聖路加病院の先生に、がんの患者さんで日本国内で承認されていない薬が使えなくて困っているんでしょうかと。現在はほとんどない、むしろ、アメリカで使えない薬が日本で使える場合もあるんだと。ある先生は、十年前の診療ガイドラインでは、海外承認、国内未承認薬をガイドラインに書いたけれども、最近はほとんど書く必要がない。それだけ改善されているんです。

 ですから、保険外併用療養の中の評価療養の中の先進医療A、B、それから新薬の治験その他を機動性を高めれば、十分に患者さんの不安は解消できるし、対応できると私は思っているんです。我々が何よりも大事にしなければならないのは、安全性と有効性、これに尽きるというふうに思います。

 以上でございます。

高橋(千)委員 ありがとうございました。

 お金のある人だけが結びつける、そういう医療であってはならないという思いがありますので、今の貴重な御意見、本当にありがとうございました。

 また、五人の皆さん、改めてお礼を申し上げます。

 終わります。

後藤委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人の方々に一言御挨拶を申し上げます。

 参考人の方々には、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時三分散会


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