衆議院

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第3号 平成26年10月17日(金曜日)

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平成二十六年十月十七日(金曜日)

    午前九時三十一分開議

 出席委員

   委員長 上川 陽子君

   理事 赤枝 恒雄君 理事 高鳥 修一君

   理事 とかしきなおみ君 理事 松野 博一君

   理事 松本 文明君 理事 山井 和則君

   理事 清水鴻一郎君 理事 古屋 範子君

      秋葉 賢也君    安藤  裕君

      今枝宗一郎君    大久保三代君

      大串 正樹君    加藤 寛治君

      門  博文君    菅野さちこ君

      小松  裕君    古賀  篤君

      佐々木 紀君    斎藤 洋明君

      白須賀貴樹君    新谷 正義君

      田中 英之君    田畑 裕明君

      豊田真由子君    中川 俊直君

      永山 文雄君    丹羽 雄哉君

      野中  厚君    橋本  岳君

      船橋 利実君    堀内 詔子君

      松本  純君    三ッ林裕巳君

      村井 英樹君    山下 貴司君

      山田 美樹君    吉川  赳君

      大串 博志君    中根 康浩君

      長妻  昭君    柚木 道義君

      井坂 信彦君    浦野 靖人君

      伊佐 進一君    輿水 恵一君

      今村 洋史君    宮沢 隆仁君

      中島 克仁君    高橋千鶴子君

      阿部 知子君

    …………………………………

   厚生労働大臣       塩崎 恭久君

   厚生労働副大臣      永岡 桂子君

   厚生労働大臣政務官    橋本  岳君

   厚生労働大臣政務官    高階恵美子君

   政府参考人

   (警察庁刑事局組織犯罪対策部長)         樹下  尚君

   政府参考人

   (財務省大臣官房審議官) 松村 武人君

   政府参考人

   (厚生労働省医薬食品局長)            神田 裕二君

   政府参考人

   (厚生労働省医薬食品局食品安全部長)       三宅  智君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長)    藤井 康弘君

   参考人

   (NPO法人東京ダルクダルクセカンドチャンスサービス管理責任者)

   (精神保健福祉士)

   (都立精神保健福祉センター薬物相談員)      秋元恵一郎君

   参考人

   (関西広域連合広域医療担当委員)

   (徳島県知事)      飯泉 嘉門君

   参考人         

   (独立行政法人国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所薬物依存研究部長)           和田  清君

   厚生労働委員会専門員   中尾 淳子君

    ―――――――――――――

委員の異動

十月十七日

 辞任         補欠選任

  金子 恵美君     菅野さちこ君

  豊田真由子君     吉川  赳君

  三ッ林裕巳君     加藤 寛治君

  山下 貴司君     山田 美樹君

同日

 辞任         補欠選任

  加藤 寛治君     野中  厚君

  菅野さちこ君     門  博文君

  山田 美樹君     山下 貴司君

  吉川  赳君     安藤  裕君

同日

 辞任         補欠選任

  安藤  裕君     佐々木 紀君

  門  博文君     斎藤 洋明君

  野中  厚君     三ッ林裕巳君

同日

 辞任         補欠選任

  佐々木 紀君     豊田真由子君

  斎藤 洋明君     金子 恵美君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 厚生労働関係の基本施策に関する件(危険ドラッグ対策)

 厚生労働関係の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――

上川委員長 これより会議を開きます。

 厚生労働関係の基本施策に関する件、特に危険ドラッグ対策について調査を進めます。

 本日は、本件調査のため、参考人として、NPO法人東京ダルクダルクセカンドチャンスサービス管理責任者・精神保健福祉士・都立精神保健福祉センター薬物相談員秋元恵一郎君、関西広域連合広域医療担当委員・徳島県知事飯泉嘉門君、独立行政法人国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所薬物依存研究部長和田清君、以上三名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人の方々に一言御挨拶を申し上げます。

 本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じますので、よろしくお願い申し上げます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 最初に、参考人の方々から御意見をそれぞれ十五分以内でお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。

 なお、発言する際はその都度委員長の許可を受けることになっております。また、参考人は委員に対して質疑することができないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。

 それでは、まず秋元参考人にお願いいたします。

秋元参考人 おはようございます。

 御紹介いただきましたNPO法人東京ダルクの精神保健福祉士、秋元と申します。

 本日は、私どものような当事者団体をこのような場にお招きいただき、ありがとうございます。

 ダルクというところは、また説明いたしますが、薬物依存の当事者が当事者を支援していくという団体でありまして、僕の話は、そういった、いわば民間の小さな団体の小さな数字になっていまして、非常に限定的なお話になってくるかなというふうには思います。この後続きますお二人に何とかこの危険ドラッグの問題に関してうまい形でつなげられるように、頑張りたいと思います。よろしくお願いします。

 では、ダルクにおける危険ドラッグの問題と現状という資料をごらんいただき、危険ドラッグの話に行く前に、まず、ダルクというところがどんなところかというところを御紹介させていただきます。

 ダルクというのは、資料の下にあるように、ドラッグ・アディクション・リハビリテーション・センターという英語の頭文字をとってダルクというふうに呼んでいます。開設が一九八五年になりますので、来年三十周年になります。東京の荒川区、現在僕が勤めております東京ダルクで活動が始まりました。

 ここの特徴は、当事者同士という仲間との共同生活をしながら薬物依存の自助グループに通う、これが生活の基本になっております。そして、一人の依存症者は他の依存症者の助けになる、そういう治療の価値といいますか、同じ経験を持つ仲間が次に来る人たちを支援していく、そういう団体であります。

 この団体がなぜできたかといいますと、この写真にあるとおり、ロイ神父さん、このロイさんという神父さんは宣教師だったんですが、日本に宣教に来てからアルコール中毒、アルコール依存症になり、薬物依存症になり、一旦本国に帰って治療プログラムを受けて、日本にまた宣教に戻ってきました。

 そのときに、この左に写っている人物なんですが、近藤恒夫という人間に出会って、もしよかったら私と一緒にやめることをやっていきませんかと言って、プログラム、回復が始まりました。近藤恒夫は、この当時覚醒剤をもう十年ぐらい使用しておりまして、やめられない状態が続いていて、裁判などでも執行猶予判決をいただいた。

 そのようなこの二人が出会って、何とか回復の道が始まったことで、薬物依存症者の回復のために必要な場とか仲間とかそういう治療のためのプログラムがあれば何とか回復できるのではないかということで、一九八五年当時というのは薬物を使う人に対しては余り理解のないような時代でしたが、そこを何とかあえて踏み込んで、ダルクの活動が始まったという次第です。

 資料の次のページに行きます。

 全国に、この活動が始まって、二十六年の六月一日現在、四十都道府県に七十四施設という施設ができております。東京だけでもおよそ四カ所ぐらいのダルクがございます。これは大々的な看板なんですが、来年三十周年を迎えるというダルクの看板です。これはことし新調いたしました。

 次のページ、ダルクホーム、荒川区の東日暮里にございます。こちらでは九名の依存症当事者が共同生活をしております。定員が九名で、ほとんどいつも九名で満杯という状態になっています。荒川区のこの地で三十年ほど活動をさせていただいておりました。

 後ろにちょっと写っているんですが、実は後ろが小学校でして、小学校のすぐ隣にダルクがあるということで、開設当初は非常にいろいろな怪情報とかが飛び交って問題になったこともあったんですが、現在では、荒川区の行政の方や荒川区のそういった学校関係者の方々にも何とか御理解をいただけるようになりました。

 ちょうどきょうなんか、本当にすごく偶然なんですけれども、きょうの午後は、この小学校において六年生を対象に薬物乱用防止教育というのをやっております。ここ五年ぐらい、薬物を使った体験談といいますか、何で一番最初に薬物をやってしまったのか、何で断れなかったのか、薬物を使って自分にはどういうことが起こったのかということを小学校六年生に聞いていただいて、今後、今の日本もかなり高い確率で薬物に誘われるという世の中になっておりますので、そのときに何とか断ってもらう、断る勇気というものを持ってもらうということで活動をいたしております。

 中はこのようなベッドが大体九個あって、共同生活しております。

 次のページに移りまして、ダルクセカンドチャンス、こちらは台東区根岸にありまして、障害者総合支援法の生活訓練事業所となっております。台東区ということでございますが、先ほどのダルクホームから歩いて三分ぐらいの場所にあって、九名の寝泊まりしている方たちは、こちらに通ってきて、こちらで日中活動をしております。現在、こちらには三十名在籍しておりまして、その九名の共同生活をしている者と、病院や御自宅から通ってこられる方が大体二十一名ぐらいいらっしゃいます。このローソンの二階のこの部分で、日中、三十名ぐらいが大体活動をしております。中はこんなになっていますね。

 次のページに移りますと、これはちょうど午前中のプログラムの前の時間なんですが、ちょっとぼかしが入ってわかりづらいですが、プログラムが始まる前にこんなような感じで。プログラムが一つ終わると、この下の写真にあるように、皆で手を握り合って、これは何をやっているかというと、きょうも一日平安で過ごせますように、きょうも一日薬物を使わず平安に過ごせますようにということを皆でここで確認するような作業をしております。

 次のページに移りまして、ダルクの基本的なプログラムと特徴です。

 こちらは、先ほど見ていただいたダルクホームにおける共同生活と、セカンドチャンスにおける生活訓練、こちらが通所になります、こちらで規則正しい生活習慣を身につけることに主眼を置いたプログラムを行っております。

 十二ステップをもとにしたグループミーティング。そのプログラムの主な主体となるのは、十二ステップというアメリカの方で依存症関係に最も効果があるというふうに言われていたプログラムが日本に輸入されたといいますか、日本に来た形で、その十二ステップというプログラムを中心に、日々、大体グループミーティング中心ですね、グループミーティングなどをしながら、薬物を使ってしまうような自分の問題であったり、自分の人間関係の問題であったり、あるいは自分がどういうときに、どういうことが引き金になって薬物を使ってしまうのかということであったり、そんなようなことをこのミーティングで、徹底的に実践していくというところです。

 夜は自助グループに参加しています。昼間はダルクで生活をして、夜は都内各地で行われている薬物依存の自助グループに皆で参加する。

 だから、大体十時ぐらいからプログラムが始まって、終わりが八時半ぐらいになります。ほとんど一日動いておりますので割と体力も使いますし、薬物が使いたいような時間にプログラムが組まれていて、余り薬のことを考えるような暇もないというようなプログラム構成になっております。

 スポーツ、レクリエーションなんかも取り入れています。うちの活動で一番盛り上がるのは、運動会であったり、あるいは年に一回警察官とのソフトボールの試合なんかも行っていて、そんなこともすごく効果的ではないかなと。

 一番の特徴は、ここにあるように、回復者によって運営されているというところです。私自身も、二十一年前にこのダルクというところにたどり着いて、ダルクのプログラムで何とか回復できて、今もアルコールも薬物もやめている、そういう本人であります。僕らのような本人が次に来る人たちを支援していくというところですね。

 ゴールは社会復帰をすること。薬物を使っている人は、もともと社会で働いた経験がないという方も多いので、社会参加といいますか、その人に合ったゴール、社会に向けてのゴールというものが一つあります。

 そして、薬物依存は生活習慣病のようなものなので治らないというふうに言われています。気を抜いていると、自分のケアを怠ると、いつ薬物をまた使い出すかわかりません。それは、一年たっていても十年たっていても、僕のように二十年ぐらい薬物をやめている生活をしていても、薬物を断ち切っていく、吹っ切っていくというのはなかなか難しいことでもあったりします。だから、自分のケアというのを自助グループの活動を通してずっとやっていくということが大事になっていきます。

 前置きが少し長くなってしまいましたが、ここからは危険ドラッグについての相談件数です。

 初めてうちに危険ドラッグの相談があったのが、去年の六月ぐらいですね、二十五年の六月ぐらいです。危険ドラッグの問題が出始めたのが三年ぐらい前の話なので、そういう問題が出始めてちょっとたってから、このような相談件数になっております。

 二十五年度の電話相談は、全部で百三十八件ありまして、そのうちの六十三件が危険ドラッグに関しての相談です。このような相談の電話をいただいた方が実際にうちに来所して相談をして、これからどのように指導していこうかということまで行かれた人が三十四人、この二十五年度来所という数字ですね。

 隣に、二十六年度の電話相談、そして二十六年度に来所された方。このグラフだと二十六年度が減っているというふうに感じるかもしれませんが、二十六年度はまだ半分しかたっておりませんので、四月から九月までの数字で、現在六十九件、半年間で去年の六十三件という数字を上回っているということです。特に四月、五月、六月ぐらいまでは相談件数が多かったです。この六月にいろいろな事件が起こって七月に法規制されてからは若干減っているかなという印象があります。

 次に行きまして、危険ドラッグ使用者の利用状況になります。こちらは平成二十六年十月一日現在になります。

 二十五年の四月からの十八カ月間で、電話相談が百三十二件、来所された方が五十件、この五十件のうち、プログラムを開始された方は十五件です。三十五件は治療にはつながらなかったということです。この十五人のうち、現在でも断薬を続けていらっしゃる方が十二名いるということになります。

 東京ダルクの利用者十五名の年齢層は十代から五十代まで幅広くて、平均年齢は三十三歳なんです。ちなみに、覚醒剤の平均年齢はもうちょっと高くて、三十八歳になります。

 十五名中十名は、つながる前に、半年間のうちに仕事をしていた。ここは危険ドラッグの方の大きな特徴になります。覚醒剤なんかとは異なって、割と早い段階で症状が出てしまって、相談につながるというようなことになっております。十五名中四名が生活保護を受給している。

 十五名全員が、危険ドラッグを使い始めてから一年以内にダルクに来所している。普通、覚醒剤とかですと、覚醒剤を初めて使ったときから十年から十二年ぐらいたってからダルクに来られる方が圧倒的に多いんですけれども、危険ドラッグの場合は、一年もたたないうちに、うちに相談に来られるということになっております。非常に早いですね。

 次に行きまして、ダルクにおける危険ドラッグ使用者の特徴になります。

 三つ挙げましたが、乱用期に中毒症状を来す。一年以内という話を申し上げましたが、早い段階で幻覚、妄想、意識消失というのがあらわれる。ここには載っていないんですが、この十五名中十一名は精神科の入院経験があります。その精神科の入院経験がある方のうち九名は、措置入院や医療保護入院という形で、強制的な入院という形態になっております。

 そして、三十五名が治療につながらなかったというお話もしましたが、依存の認識が薄い。薬物をやめる、やめられない、やめる、やめられないという葛藤を抱えながら生活していくというわけではなくて、割と早い段階に問題が起きてしまうので、依存という認識が皆さん薄いかなというふうに思います。

 ほぼ全員が何らかの薬物使用歴があります。一番多いのは、やはり大麻が多いですかね。違法なものから違法でないものへということで。でも、うちのメンバーたちに聞いてみますと、捕まる、捕まらないというのはもちろんすごく大きいんだけれども、危険ドラッグを使ってしまうのは、手に入りやすい、安いという、この手っ取り早さが、危険ドラッグを使用する引き金になる理由としては一番大きいというふうに言っています。

 家族の支援が見込めるというのは、この十五名中十一名は家族の負担で生活や入所費を払っていまして、ついこの間まで仕事をしていたり、ついこの間まで家族と一緒に生活をしていたりという方が多いので、ダルクのプログラムが始まった後でも、家族のプログラムや家族の支援を得やすいという特徴がございます。

 最後に、課題となります。

 いかに再乱用を防止するかということですが、ダルクの役割というのは、そういった小学校における予防教育なんかもお手伝いさせていただくこともございますが、ダルクの本来の役割というのは、乱用者や依存者を回復に導くことであって、彼らが健康的な生活を取り戻すこと、これが第一になります。私たちの最大の強みは何かといえば、先ほどから申し上げているとおり、経験者同士であるという治療の価値といいますか、これをどんどん高めていくということがこれからダルクとしては必要になっていくことじゃないかなと思います。

 そして、いかに動機づけするか。これは、急性アルコール中毒の若者にどのようにして断酒を勧めるかというのは、いわゆる例えなんですけれども、余り依存の認識がなくて、早い段階でばっと症状が出てしまって、自分でも思いも寄らない、予期もしないような症状が出てしまって病院に運ばれたりということが起こっていて、彼らは、薬物をそれほど使っていないのに急性の症状が起こってしまう。そういう彼らの底つきというところを待つのではなく、依存という認識とか、そのようなものが薄い彼らに対して、どのように断薬といいますか薬物を使わないということを動機づけするか。これはダルクの方でも課題となっております。

 それで、いかに連携するかです。ダルクにはなじまない人たちを他の相談機関や医療機関につなげて連携していくことも必要であります。

 ダルクはそういった薬物依存の方を本当に専門に扱っておりますが、しかし、ダルクが万能かといえば、どんな方でもダルクのプログラムが合うかといえば、そのようなことはございません。現に、五十名中三十五名はやはりダルクのプログラムがなじまなくて、十五名だけがつながったという数字になっております。

 そのようなダルクになじまないような方たちも、今後どのように、ダルクはだめだから、では今度は保健センターであったり医療機関であったり、そういったところにつなげていく、そういった機関と密に連携を図っていくということもこれから必要になってくることであるかなというふうに思います。

 ちょっと長くなってしまいましたが、私の話は以上です。

 ありがとうございました。(拍手)

上川委員長 ありがとうございました。

 次に、飯泉参考人にお願いいたします。

飯泉参考人 おはようございます。

 ただいま御紹介をいただきました、徳島を初めとする二府五県四政令市から成ります関西広域連合におきまして、広域医療を担当しております徳島県知事の飯泉嘉門でございます。

 きょうは、危険ドラッグ対策についての法案審議に当たりまして、我々地方の取り組みを申し述べさせていただく機会を設けていただきましたことを心から感謝申し上げたいと思います。

 それでは、提出をさせていただいております参考人資料をごらんいただきながら、以下、三点について申し述べたいと思います。

 まず、一ページをごらんいただきたいと存じます。関西広域連合での取り組みについてであります。

 この危険ドラッグにつきましては、御存じのように、インターネットを介してこれを入手することができる、広範に出回るということがありまして、府県域を超えた体制を組む必要があります。

 関西広域連合では、昨年四月の段階で、全国では独自の条例をつくっていたのが六都府県であったにもかかわらず、そのうち四府県が関西広域連合の構成メンバーということでありました。こうした形で、この四府県が、危険ドラッグ対策、条例をつくるいわば先進地域として、広域的な取り組みをする基礎ができているということ、また、この圏域内におきましては実際に危害が及んだことということで、昨年度から連携をした取り組みを進めているところであります。

 そこで、具体的に申し上げてまいりますと、まず、検査体制の充実に向けまして、検査機器や標準品の保有状況、さらには検体情報や検査の結果、危険ドラッグの検査に係る各種の情報共有に取り組んだところであります。

 また、構成府県の検査レベルの向上を目指しまして、昨年の十月と本年の八月におきまして合同の研修会を実施いたしております。特に、ことし八月の研修会では、検査や行政担当のみならず、取り締まり側であります警察や麻薬取締事務所など、こうした関係者にも参加をいただきまして、危険ドラッグ対策に携わる関係者の意識や情報の共有にも大いに役立ったところであります。

 次に、五ページをごらんいただきます。

 また、危険ドラッグ対策につきましては、大きく二つ、規制によります、使わせない環境づくりばかりではなく、啓発によります、使わない人づくり、それも重要でありまして、関西広域連合におきましては、連合議会の議論などを背景といたしまして、本年の九月の二十三日に、関西二千万府民・県民の皆様に対しまして「「危険ドラッグ」撲滅に向けた緊急アピール」を発し、危険ドラッグ問題に対する正しい理解と協力を求めたところであります。

 次に、二番目として、構成団体の取り組みについて御紹介を申し上げたいと思います。

 まず、条例の制定状況につきましては、先ほども申し上げましたとおり、関西広域連合の構成府県におきましては、平成二十四年の十一月にまず大阪府が、そして十二月に徳島県と和歌山県が、年が明けまして平成二十五年の三月に鳥取県が、独自の条例を制定いたしたところであります。そして、つい先日は、兵庫県におきましても条例が可決、成立をいたしたところであります。

 他の構成府県におきましても、独自の規制強化が進められようとしているところでありまして、関西広域連合全てのエリア内で、危険ドラッグを締め出す体制が整いつつあるところであります。

 また、危険ドラッグにつきましては、禁止をされていないから安全といった誤った認識から安易に乱用がされまして、近年、特に若い人たちを中心といたしまして急速な広がりを見せているところであります。

 そこで、構成府県におきましては、危険ドラッグの本当の恐ろしさを個々に広く訴えていくために、独自の取り組みも進めております。例えば、テレビやラジオを利用した啓発活動であるとか、特に若者を対象とした危険ドラッグに関する演劇の上演であったり、こうした効果的また効率的な啓発活動に積極的に取り組んでいるところであります。

 また、危険ドラッグの販売者などの取り締まりに対しまして、まず、店舗販売への対応といたしましては、行政、警察、麻薬取締部三者による合同の立ち入りの実施、また店舗での危険ドラッグの収去や試買による検査、さらには検査で指定薬物が検出をされた場合には全て捜査案件とするなど、また、インターネット販売への対応といたしましては、業務委託によるインターネット監視の実施、またインターネットによります危険ドラッグの試買調査など、こうしたそれぞれの地域の独自性を出した対策を進めているところであります。

 そこで、せっかくの機会でありますので、徳島県の状況についても少しお話を申し上げたいと思います。

 今も申し上げましたとおり、平成二十四年の十二月、徳島県におきましては、条例を制定し、独自の規制を進めているところであります。

 まず、施行前に確認をされておりました危険ドラッグ販売店が全て県内から姿を消しております。そして、その後も新たな店舗は確認をされておらず、条例による抑止力であるとか、あるいは独自規制の実効性が目に見える形であらわれているところであります。

 さらに、本年の八月には、県条例違反の疑いで初めての検挙が行われますとともに、危険ドラッグの日常的な使用を理由といたしまして全国初の運転免許停止処分を科しまして、危険ドラッグを許さないんだという本県の強い姿勢をお示ししているところであります。

 現在、徳島県におきましては、より実効性の高い規制手法を含め、さらに一歩踏み込んだ対策について検討を進めているところでもあります。

 次に、大きく三番目といたしまして、国への提言についてであります。

 資料の二ページから四ページをごらんいただきたいと思います。

 このように、関西広域連合におきましては、危険ドラッグ対策、いわば先進地域として各種取り組みを強力に推進しているところではありますが、しかしながら、本来的には、全国統一の規制あるいは取り組みが最も望ましいもの、このように考えているところであります。

 また、地方の取り組み、あるいは地方の力だけではどうにもならない事項がありまして、去る十月の七日におきましては、関西広域連合を代表いたしまして、国、厚生労働省あるいは内閣府に対して、危険ドラッグ対策の充実強化に対しての緊急提言を行わせていただいたところであります。

 以下、具体的にその内容を申し上げてまいります。

 まず、一番目には、いわゆるイタチごっこと言われるこの状況に何とか対抗していこうということで、法整備を含めました新たな規制手法の確立をお願いしたいというものであります。

 次に、二番目といたしまして、非常事態宣言、関西広域連合内では行わせていただいたところではありますが、この非常事態宣言を発するなど、社会意識の醸成に向けた強力な啓発の推進をお願いいたしたいと思います。

 三番目といたしましては、危険ドラッグの原料物質、これがほとんど海外から流入をしているところでありまして、これを何とか水際で阻止していただきたいというものであります。

 四番目といたしましては、検査に対しましては、高額な検査機器が必要となりますことから、これらを購入する際に、都道府県への財政支援をぜひよろしくお願い申し上げたいと存じます。

 そして、五番目、薬事法が実効ある抑止力となりますように、違反者に対する厳格な処分の実施、これをぜひお願い申し上げたいと思います。せっかく検挙いたしましても起訴がままならないということでは、これは抑止力にならないというところであります。

 以上、五項目につきまして、これは、我々関西広域連合がこれまで取り組んできたその中での悩みでもありますので、ぜひ委員の先生方には、これらにつきましての実現、よろしくお願いを申し上げたいと存じます。

 最後となりますが、これまで、関西広域連合構成府県はもとよりでありますが、全国の多くの自治体が、危険ドラッグに起因をする危害から、住民の皆様方の健康、生命、あるいは安心して暮らせる社会の実現、このために知恵を絞り、また汗をかいてきたところでありますし、また、さまざまな取り組みも行っているところではあります。

 しかしながら、皆様方も御存じのように、危険ドラッグに起因をいたします危害の発生はいまだおさまるところが見えません。交通事故などの二次被害によりまして、まさに無関係な人々の命が無差別に失われる、いわばこれはテロ行為と言っても過言ではないと我々は思うところであります。

 しかも、そうした薬物と言われるものが、インターネットなどを通じ安易に入手することができる異常な流通状態、まさに異常な状態が放置をされているところであります。

 どうか、国におかれましては、こうした異常な状態、状況、そして地方の取り組み、そしてそれではなかなか難しい点につきまして、ぜひ御理解と、そして一歩先駆けた対策をよろしくお願い申し上げまして、私からの御報告とさせていただきます。

 どうぞよろしくお願いを申し上げます。(拍手)

上川委員長 ありがとうございました。

 次に、和田参考人にお願いいたします。

和田参考人 国立精神・神経医療研究センターの和田と申します。

 私は、本来医者ではありますが、長年研究職として、薬物依存について、特に、日本の薬物はどういうものが誰によって使われているのか、あるいは世界的にはどうなのかというようなことを中心に調べてきました。

 その経験をもとにして、本日、二点について少し提案させていただきたいと思います。提出させていただいた資料が皆様のお手元におありかと思います。それをごらんになりながら、聞いていただければと思います。

 まず、二番目のスライド、紙でいいますと一枚目の下ですが、そこには、各国の違法薬物の生涯経験率というものが載っております。

 なぜこれを載せたかといいますと、これは非常に重要です。実は、今問題になっております危険ドラッグというものは、これは世界的な問題です。日本の状況だけで物事を考えると大変なことが起きるというのが私の考えです。

 生涯経験率と申しますのは、違法な薬物をこれまでに一回でも使ったことがある国民の割合です。皆さん、どうでしょうか。これをごらんになって、びっくりされると思うんですね。例えば、少々古いんですが、アメリカでは何とそれが四七%です。日本だけです、二・九%。最近の値では、アメリカは四八%です。日本は二・五%です。これが世界状況なんです。

 しかも、そのパーセントのほとんどが実は大麻の経験率であるということを見てください。

 現在、日本では、危険ドラッグ、いろいろな種類がありますが、かなりのものが合成カンナビノイドと言われている種類のものです。これは、基本的には大麻に近い成分だと言われています。

 これを見ますと、生涯経験率が高い国というのは、基本的には、見方を変えますと、そういう薬物の入手性が安易、高いということなんです。比較的簡単に薬物が手に入る状況だということも言えます。となってきますと、この大麻の経験率が高いところでは、合成カンナビノイドを買わなくても、大麻が比較的容易に手に入るんです。これは、現実、そうです。

 アメリカでもこの問題は非常に問題になっておりますが、州によりましては、いわゆる大麻を全て解禁した州もございます。しかし、そういうところでは、いわゆる日本で言う危険ドラッグが一部問題になっています。救急搬送される例がふえているんです。

 これはどういうことかといいますと、そういうところでも、大麻を買えるのは成人だけなんですね。ですから、その救急搬送される方は、ほとんど十代です。要するに、手に入らないからいわゆる危険ドラッグ。要するに、脱法の問題なんです。ですから、危険ドラッグに間違いないんですが、本質は脱法性にあると思います。そういう現象が世界的にも起きているということです。

 ここで日本のことを考えていただきたいんですが、日本は、これを見ると、世界に誇れる薬物の非汚染国、筆頭です、ナンバーワンです。これは自慢していいことなんです。しかし、今ここで大変なことが起きている。その裏には、ある意味で日本のアキレス腱と私は言っていますが、二つの大きな問題があると思います。これは後ほど説明します。

 日本では、これまで大麻には関心があったけれども、捕まりたくないということで、手を出せなかった若者がいっぱいいます。その一方で、これまで大麻を使ってきたけれども、捕まりたくないから脱法に切りかえたという方々もいっぱいいます。その両方が、実は今この脱法ドラッグに殺到しているというのが現状だと思います。

 ということで、日本では薬物の入手が非常に難しいということがありますから、世界の中でこういう薬物を合成しているところは、日本を最大の市場と狙っているといううわさもあります。これが現状です。この大前提のもとで、これから話をさせていただきたいと思います。

 二ページです。スライドの三番をごらんになってください。

 私自身、いろいろなところから、どうして早く法規制しないのかという質問を受けます。ここで、法規制するための手順を確認したいと思います。

 その三番目のスライドですが、真ん中のブルーのところを見てください。薬物の検出、要するに同定。それから順番に行きますけれども、出発点は一番上です。どうも怪しいものがあったときには、どういう薬物が入っているのかということをはっきりさせる必要があるんです。実は、これは大変な作業でして、高額の機器を用いて、どういう化学構造式かということを推定するんです。推定した上で、その下に行きます。

 実際に、その薬物の標品、標準品と言っても構いませんが、それを合成するんです。合成した上で、もう一度もとに戻って、確かにその薬物だったのかという照らし合わせをします。その結果、終わった後に、その標準品を用いて、薬理作用の評価試験です。動物実験、細胞を使った実験。そういうことで、データをとって初めて左の方の法規制の審議ができるわけです。

 ところが、この一連の操作、非常に大変です。特に、日本の場合には、弱いのは標準品の提供です。これは合成し直してつくらなきゃならない、新しい薬物をつくらなきゃならない、これが大変なんです。なかなか法規制の審議ができない現状ですね。

 さらに、その標準品を検査機関に提供してこそ初めて検査機関でもその薬物を検出できる。だから、高額な機器を買えばうまくいくのかといえば、そうじゃありません。その高額な機器を動かすためには、標準品の提供ということが不可欠です。

 日本の場合には、この真ん中の一連の流れが非常に弱いと私は考えております。国、あるいは地方自治体、あるいは我々の独立行政法人、ぱらぱらとやっているところはありますけれども、それを全体としてうまく統合してやっているかというと、非常に私は疑問を持ちます。

 実は、世界じゅう、この問題で困っております。アメリカには、NIDAと申しまして、国立の薬物乱用研究所というものが昔からあります。私も二十五年前はお世話になりましたが、その当時でも、博士号を持っている研究者が百二十人を超えておりました。そういうところでこういう一連のことを全てやって対応しているんですが、日本には全くこれがうまく整っていない。この検査体制をまずきちんと考える必要があると思っています。

 そこで、一つの方法として、次の四番目、合成カンナビノイド簡易検出システム、これは我々のところで開発したんですが、合成カンナビノイドというものを一網打尽で検出できないかという方法です。

 これは、カンナビノイドというのは、頭の中のCB1受容体という、そういう作用を起こす場所が決まっております、そこの細胞をつくりまして、何らかの危険ドラッグが発見されたときに、その細胞に添加する。添加することによって、カンナビノイドであるならばそれが発光する、それによって作用しないものは光を出さない。そういう細胞をつくりました。そうしますと、化学構造式がわからなくても、合成カンナビノイドであることがわかるわけです。まずこれで網をかけてみてはどうかというのが一つの提案です。

 三ページ目に行かせていただきます。三ページ目の上です。

 まず、全ての検査の流れの前に、合成カンナビノイド簡易システムを導入して、まず合成カンナビノイドかどうかをチェックしちゃおう、そこでひっかかったものは、少し時間がかかってでも、どういう化学構造式のものかということをきちんと調べていこう、こういうシステムをやはり考えていく必要があると思います。これは、特に私は思うんですけれども、水際にとって極めて重要なことではなかろうかと具体的に考えております。

 続きまして、治療の話に移らせていただきます。

 治療と申しますと、なぜ治療が必要か。これは、薬物依存症というものは、精神保健福祉法に定義されている精神障害の一つです。簡単に言うと、これは治療を優先させる必要があります。

 それともう一つ、薬物問題というのは、これは、末端の使用者にとりましては、少々言葉が妥当かどうかわかりませんが、社会的な伝染病だと私は考えています。

 かつて日本は、日本じゅうシンナー遊びで大変だった時代があるわけです。今では考えられません。どこに行ってもシンナーでした。その当時は、なぜシンナーに手を出すかという話になりますと、七五%の方が、友人、知人、仲間に誘われて始めたということです。要するに、伝染病なんです、人間による伝染病です。

 そういう意味では、薬物に手を染めている方々、この方々を減らす、回復させる、要するに、再乱用防止対策です。これをきちんとやっていくことが絶対に必要です。車の両輪だと思います。乱用防止、再乱用防止、この二つがきちんといかないことには、薬物問題はなかなかいい方向にはいかないと思います。

 六番目のスライドです。

 そこで、日本の医療状況を見た場合に、毎日といいましょうか、一日当たり、全国の精神科の病院には三十一万人の方が入院しております。ところが、その中で、仮に覚醒剤に絞った場合、何と、覚醒剤で入院している方は全体の〇・二%にすぎないということです。七百人いないんですよ。

 しかも、精神科の病院自体、千六百以上あります。驚くことに、そのうちのわずか四施設、病院全体でいいますと〇・二%、そこの病院に全覚醒剤患者の一二%が集中しているんですね。これはすごい偏在です。要するに、薬物関連患者を見てくれる病院がほとんどないという現状です。

 次に行かせてください。四ページです。

 それでは、その薬物依存症者はどこにいるのか。これは、簡単に言いますと、刑務所です。

 毎年、刑務所には三万人弱の新入所者が入ります。そこに示してありますが、罪名で一番多いのは窃盗です。ところが、二番目に多いのは覚せい剤取締法違反なんですね。

 実は、その覚せい剤取締法違反と申しますのは、これは少々ほかのものと違いまして、その方がいわゆる売人ないしは組織暴力団員じゃない限りは、基本的には、初犯の場合には執行猶予です。刑務所に入りません。となってくると、ここにお示ししました入所受刑者の割合、これは現実的には初犯の方じゃないんです。要するに、覚醒剤をやめ切れずにまた捕まった人なんですよ。

 また捕まった人というのは、これは薬物依存症の方なんです。日本の場合には、薬物依存症者は病院に行っているのではありません。刑務所に行っているんです。

 そこで、それ自体問題ではあるんですけれども、その下の図です。実は、その一方で、刑の一部執行猶予という法案が既に通っております。これは二年以内に実施されることになるわけですが、これまで、懲役三年という判決を受けた方がいたとしましょう。今度、新しいシステムですと、懲役三年、うち一年を三年間の保護観察つき執行猶予とする、そういう判例が出ると言われています。そのイメージ図がそこに書いたとおりなんですが、要するに、懲役は三年なんですが、最後の一年はもう社会に出る、出す、社会に出して、保護観察つきの執行猶予とする、そういうことなんですね。

 これの対象者は恐らく年間数千人はいるだろうと推定されているようです。こうなってきますと、この方々を誰が見るんだ、受け皿がどこにあるんだという話です。

 当然、最初は保護観察所でやるわけですが、保護観察とかあるいは執行猶予というものは法的な期限が必ずついています。どこかで期限が終わります。終わったときに、それで全て終わりなのかというと、それはまずいわけでして、きちんと地域の医療、精神医療に軟着陸させていく必要があるわけです。となってくると、その医療の重要性というものは、ここでも問われるわけです。大変な問題だと思います。

 ということで、五ページ目です。

 私なりに、どうやって対応するか、我が国にとって何が必要かということを少し、前から考えております。

 一つは、正しい知識。これは今さら言うこともありません。「ご家族の薬物問題でお困りの方へ」という小冊子が厚労省から出ております。これは、私自身も携わっておりますが、非常にうまくできていると思いますので、御家族にそういう方がいる、いないにかかわらず、あらゆる方にやはり読んでいただきたい。

 二番目は、基本的には、地域医療、社会復帰対策、これをきちんとやるべきであろう。

 三番目は、これはなかなか変な言葉なんですが、ハビリテーション的入寮施設という、聞いたことがないと思うんですが、これについて少し触れたいと思います。

 その前に、その下にあります、俗にこれはSMARPPと言われるものです。

 薬物依存症には治療薬がありません、特効薬がありません。かといって、医療というものは何もしなくていいかということではありません。私たちは、苦労しながら、そこで考え出したのが薬物依存症者に対する認知行動療法という、まあ、心理療法です。その例が十番目のスライドです。

 一回から十六回、毎週一回これを受けようとして、同じく薬物依存から回復しようとする方々、五、六人から十数人に集まっていただいて、毎回そのテキスト、ワークブックと言いますが、読み合わせながら、自分の場合にはどういうときに薬物を使ったのか、どういう気分のときに使ったのか、誰がいるときに使ったのか、そういうことを話し合いながら、自分にとって薬物を使うきっかけとなっているのは何であるか、そういうことをみんなで個々に考えて話し合う。実際にそれが特定できたら、今度は、それを避けるように実行してみる。その繰り返しです。そういうことを実際にやっていきましょうという、認知行動療法的な治療法を開発しました。

 次のページに移ってください。

 例えば、人間の薬物の記憶です。暑い夏の夕方、暑いな、疲れたな、そこで大概の方は生ビールを飲んで、ああよかった、こういう経験を持ちます。そういう経験は消せません。記憶は消せません。しかし、考えと行動というものは、人間は変えることができます。こういう考えに基づいてつくられたものです。

 とにかく、これは導入が少々難しいんですけれども、これまでこういうものを使う前は、薬物依存だけで病院に通いましても、特効薬がありません、薬が出るわけじゃありません。ですから、三カ月もたつと、基本的には六割―七割の方が治療を脱落です、来なくなります。ところが、新たにこのSMARPPを導入しますと、逆転しました。四カ月たっても六割―八割の方々が継続して病院に通い続けている、やめようとしている。これだけで相当の影響力があると見ています。

 ということで、同じようなことは、御家族の方に対しても我々はつくっております。六ページの下がそうです。

 また、七ページに移ります。

 地域でこれを何とかやる、回復体制をつくろうということで考えるわけですが、まず医療機関、外来医療、入院医療。ここでもワークブックを使った認知行動療法、SMARPPといいますけれども、それをやはりどんどんやるべきであろう、そうしないと病院はふえない。と同時に、病院の場合には、診療報酬を何とかしないことには病院の数はふえません。対応する病院をふやす必要があります。

 それともう一つ、地域といいますと、全国には精神保健福祉センターがあります。これは、各都道府県ないしは政令指定都市には必ずあります。今六十九あると思います。そういうところでも、このワークブックを使った認知行動療法を実際にやってしまう。

 これまでも精神保健福祉センターは、地域のかなめとして、薬物問題の相談の窓口になりなさいということになっていました。ところが、実際に相談を受けても、あなたの場合にはこの病院へ行った方がいいですよと紹介する先がなかったわけです。それならばそれで、その精神保健福祉センター自体がそこでSMARPPを展開する、認知行動療法を展開する、そういうことが一番手っ取り早い方法だと思います。

 ということで、病院をふやす、精神保健福祉センターの強化をする、さらに、民間リハビリテーションセンター、自助グループと連携をとる、そのあたりをきちんとやっていただきたいと思います。

 それから、最後になりますが、ハビリテーション的入寮施設ということです。これは、治療共同体と申します。

 八ページの上をごらんになってください。

 入寮者は、全員このピラミッド構造の人間関係の中に入れられます。一番下は治療導入期です。全員が仕事を持ちます。イメージ的にわかりやすいように、厨房の写真を載っけました。厨房の仕事をした人は、十人くらいが一つのグループになりまして、みんなで皿洗いをやります。そうしますと、その上のレベルの人が指導者になって、きちんと仕事をできるようにする。それをどんどん繰り返して、いろいろな条件をクリアすると、上のレベルに上がります。上のレベルに上がりますと、これは責任性がふえます。下の人間の面倒を見る責任性がふえます。と同時に、実は自由もふえます。一番下では、外に出ることができません。しかし、上に行くと外にも出られる。外泊もできる、外出もできる。

 そういうことをやりながら、七ページに戻りますけれども、簡単に言いますと、自由が欲しければ義務と責務の重要性を学べということなんです。要するに、社会の生き方、過ごし方をここでもう一度訓練し直すということです。

 実は、この治療共同体が、世界の薬物依存からの回復の標準なんです。アメリカには二千以上これがあります。実は、アメリカには薬物裁判所という薬物事犯専用の裁判所があります。そういうところでは、刑務所に行かせるのではなくて、その人に合ったこういう治療共同体に法的命令で行かせる、単なる刑務所ではなくて、治療のためにここに行きなさいという、ドラッグコートといいますけれども、そういうものがメーンになっております。そういうものが可能になったのも、この治療共同体が二千以上あるからです。

 ところが、残念ながら、日本には何もありません。先ほどの病院の数にしても、そうです。徹底的に社会資源が欠けております。このあたりを何とかしないことには、車の両輪として、再乱用はうまくいきません。

 ということで、私は、せっかく機会をいただきましたので、常々考えてきたことを述べさせていただきました。

 最後に、九ページになりますけれども、この薬物問題というのは、乱用、依存、中毒という三つの側面があります。本日はここまで説明する時間はありませんが、医療だけで解決するわけではありません。教育だけでもだめです。取り締まりだけでもだめです。ただし、日本は本当に世界に誇るべき薬物の非汚染国です。これを変えるポテンシャルを持っているのが、現在の危険ドラッグだと思います。

 ということで、本日、私が提案しました検査体制強化、医療体制の強化、この二点をぜひ何とか御検討いただければと思います。

 どうもありがとうございました。(拍手)

上川委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の方々の御意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

上川委員長 これより参考人に対する質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山下貴司君。

山下委員 自由民主党の山下貴司でございます。

 本日は、これまで薬物依存対策のために全力で尽くしてこられた先生方に質問の機会をいただきまして、本当に光栄に思っております。

 私自身、議員になる前は検事をしておりまして、薬物犯罪なども多く手がけました。その際、薬物依存の悲惨さ、危険性については相当程度承知をしておるつもりでございます。

 本日は、そのような経験を踏まえ、危険ドラッグ対策の緊急性について、政治家として、そして、ドラッグの誘惑にさらされやすい年代である十代の子供の親として、参考人の皆様に質問させていただきたいと思います。

 昨今問題となっている危険ドラッグでは、その使用が原因で亡くなった方が、ことしに入って九月末までに、もう既に七十四人にも上るというふうに聞いております。このような悲惨な危険ドラッグが蔓延しているのは、次々と新しい危険ドラッグが世の中に流通している、それに対して規制と摘発が追いついていない、このことが大きな原因であろうかと思います。

 薬事法上、指定薬物については、輸入、製造、販売、所持、使用、広告などが禁止されております。しかし、危険ドラッグについては指定が追いついていない。そして、体内に入れることを目的とする場合には無承認医薬品ということで対策がとれるわけですけれども、危険ドラッグについては、観賞用であるとかビデオクリーナーであるとか、あるいは植物活性剤などとして、人体に使用しないでくださいとわざわざ能書きをうたっているということもあって、なかなか限界があるというふうに承知しております。また、輸入規制についても、なかなか税関でとめられないという問題もあると聞いております。

 本日は、そういった困難さのある中で、徳島県知事の飯泉知事は、関西広域連合の御経験、本当に積極的なお取り組みについて御説明していただきました。また、飯泉知事は、知事としても、徳島県薬物の濫用の防止に関する条例というのを設けて、積極的に取り組んでおられるというふうに聞いております。

 その点について若干伺いたいわけでございますが、今申し上げた条例の中で、薬事法等で規制されていない有害薬物、それについても知事が指定するんだというふうな手続、県内において現に乱用され、または乱用されるおそれがあると認めるものを知事指定薬物として指定し、製造、販売を禁止するということで取り組んでおられると聞いております。

 この指定について、これは本当に初歩的な質問かもしれませんが、条例においても、規制対象とするにはやはりまず指定が必要なんでしょうか。その点について飯泉知事に伺いたいと思います。

飯泉参考人 おっしゃるとおりです。徳島の例はまさにそういうことで、知事指定薬物という形での指定が必要となります。

 先ほど関西広域連合の取り組みで申し上げてまいりました、最初の大阪府、そして徳島県、和歌山県、そして、つい先般、鳥取県はこの条例を改定したわけでありますが、最初の、いわゆるプロトタイプの鳥取県の条例、これらについては指定薬物を指定するという形をとっております。

山下委員 指定なくして取り締まりを行うというふうにしなかったのは、なぜなんでしょうか。

飯泉参考人 これは先ほどの御説明でも申し上げましたように、そこのところ、罪刑法定主義といった点、憲法三十一条があるわけでありますので、やはりしっかりとこれを起訴に結びつけていく、この点についてはもう山下委員さんには申し上げるまでもない話でありますが、その点が大変危惧をしたというところであります。

山下委員 ただ、知事として指定される場合にもさまざまな困難があったと思いますが、御自身の御経験から、指定に伴う困難、あるいは、こういう体制があったらいいなという思い、先ほどいろいろ御指摘いただきましたけれども、さらにつけ加えて、あれば御紹介いただきたいと思います。

飯泉参考人 この点については、先ほど御説明が専門的な観点からもあったわけでありますが、やはり標準品をしっかり持たなければいけない。しかし、それをあえてつくらなければいけない、つくってもらわなければいけない。また、それに対して、では合うのか合わないかという検査をきっちりする、そのためには高額な検査機器も必要になる。こうした点が大変困難を伴うといった点になりまして、ここが国への提言五項目のうちの一つとなるところであります。

山下委員 この指定あるいは検査体制を組むのは、一つの県、あるいは広域連合であっても、なかなか費用もかかるし手間もかかるということでございますので、やはり国がしっかりとそういうサポートをしなければならない、そういうふうに思いますが、現実にもし困ったことが具体的にあれば、きょうは厚労省、厚労委員会のメンバーも聞いておりますので、ぜひ御紹介いただければ。

飯泉参考人 そこにつきましては、我々、検査機器は全ての府県にあるわけではありませんので、例えば徳島でもって検体を持ったといった場合にはそれをお互い共有し合う、大阪であれば大阪でやる、それをみんなで共有し合う、こうした工面をしているところでありますし、検査機器も全部はありませんので、それをお互いに使い合う、こうした点があります。

 しかし、この危険ドラッグにつきましては、やはり、あるところが規制強化をしますと、そこから逃げて周辺へ行ってしまうんですね。先ほどの、徳島にかつては三店舗あったところがなくなったというのが、いい例であります。そこで、関西広域連合という広域の中で締め出さなければいけない。それぞれがきっちりと検査機器を持ち、検体を持つ、こうしたことが必要になる。ここが大変なところでありまして、ぜひここは厚生労働省の皆様方の御支援をよろしくお願いいたしたいと思います。

山下委員 ありがとうございました。

 やはり関西広域連合のお取り組みは非常に積極的であります。ただ、関西広域連合で効果的であればあるほど周辺に広がってしまうということもあると思います。これは本当に国が一体となって、検体の情報をとにかくデータベース化して、そして各自治体にも迅速に提供できる、そういった体制が一刻も早く必要だということがわかりました。

 もし、ほかに国がとるべき措置について、御経験から特にあれば、飯泉知事に伺いたいと思いますが。

飯泉参考人 やはり最終的には、関西広域連合を初めとする地方独自の対応ということではまさに限界があります。

 その証拠として、先ほどの合同研修会、この数が二年の間で非常にふえたんですね。これは何かというと、当初は関西広域連合を中核として、しかし、その後に周辺であります。オブザーバー参加をしている福井県であるとか、三重県であるとか、あるいは奈良県も加わってきているということでもおわかりのように、その周辺対策をいかにやっていくのか。

 また、条例についても、実は、最初の四団体、その後の兵庫、そして今回の鳥取と、規制の仕方が変わってきております。こうした形で、規制の仕方がそれぞれでばらばらになるということはよくありませんので、やはり国全体としてしっかりと法律でこれを規制していただきたい、このように考えております。

山下委員 豊富な御経験に基づく御提言、大変ありがとうございました。

 それでは、続きまして、国立精神・神経医療研究センターの和田先生に伺いたいんですが、先ほど飯泉知事からもお話がありました。やはり全国的なライブラリーが非常に必要だ、標準品のデータを集める、これが大事だということでございます。そしてまた、検査体制の確立ですね。これはもう国じゅうでやっていかなければならないということでございます。

 先ほど御提言のありました合成カンナビノイド簡易検出システム、これはもし実現できたら非常にすばらしいと思うわけですが、実現についてはかなり容易なものなんでしょうか。何か障害があれば教えていただきたいと思います。

和田参考人 実は、これは私たちの研究部で一応開発したものでございます。開発者とも話をしておりますが、これをいろいろなところに導入するに当たって、特に障害になるものはないであろうと思います。

 しかも、このすぐれたところは、その薬物が合成カンナビノイドかどうか瞬時にわかるんです。数秒といいましょうか、瞬時にわかります。顕微鏡をのぞいて、そこで蛍光を発するかどうかを見て、その瞬間でわかります。

 ということで、これはぜひ現実的に考えていただければと思います。

山下委員 ありがとうございました。

 大変効果的な検査方法であるということであれば、国でもぜひ検討してもらいたいと思います。

 ただ、この検出については、やはり同定をしなきゃいけないということであります。同定をして、それで瞬時に検査をするという、これは迅速な検査で多分必要だと思うんですが、諸外国でも同じなんでしょうか、まず同定をしてから検査をするというのは。いかがでしょうか。

和田参考人 基本的には、どこの国でも、この私のスライドのとおりの、踏むべき手順はやはり同じだと思います。

 ただし、ほかの国には合成カンナビノイド簡易システムはありませんので、基本的には、これをうまく導入すれば、日本は圧倒的に、これは世界に先駆けたすばらしい制度になるのではなかろうかと考えています。

山下委員 今伺ったお話ですと、やはり同定という形で規制対象をある程度明確にして、そのサンプル、同定すべきサンプルがなければなかなか迅速な検査手続ができないのではないかというふうに思うわけでございますが、例えば、規制対象を事前に指定せずに、規制薬物と同じような薬理効果あるいは毒性を持つものといったようなもので包括的に規制する場合に、検査手続としては、何か障害というか、期間の問題とか、そういったものはあるんでしょうか。

和田参考人 基本的には、薬物を同定して、それの薬理作用をある程度調べることによってのみ、やはり法的には規制ということになるんだと思います。

 ただし、それとは違った形を日本は既に導入しております。包括規制というものですね。化学構造式、基本骨格を決めて、その骨格を持っていれば、そこをどう変えてもだめですよという、そういうことも日本は導入していますが、基本的には、これは世界じゅうどこを見ても、やはり薬物を同定する、それが基本だと思います。

山下委員 ありがとうございました。

 そういった基本骨格をしっかりとやっていくということ、それと、あと、和田先生がテレビでおっしゃっておられたのを拝見したんですけれども、薬事法上は、指定薬物である疑いがある物品に関しては販売停止命令というのがかけられる、そういったものもやはり積極的に活用すべきではないかというふうに、私自身、考えさせていただきました。

 そして最後に、東京ダルクの秋元参考人から、私も、検事の時代、薬物依存症から抜け出すための壮絶な闘いについて、ダルクの方からお話を伺ったことを覚えております。危険ドラッグの依存症の悲惨さについて、常用性であるとか後遺症であるとか治療の困難さ、御自身の経験あるいは見聞きしたことから、ぜひこの場で御紹介いただければと思います。

秋元参考人 危険ドラッグに関しては、先ほども申し上げたとおり、使い始めてから一年以内に、いわゆる底をつくというような状況になって来られます。

 それで、例えば例を挙げると、薬物依存症は特に人を選ばないと言われておりまして、職業がどうであるとか、これまでの家庭環境がどうであるとかということは、余り依存症になる上で重要なことではないかなというのもあります。

 というところで、ダルクに今在籍している十五名のうち、ほとんどの人たちは、ついこの間までは、例えば大きな企業に勤めていて、大学を卒業して企業に勤めて、営業マンとして成績を伸ばしていって、そして、たまたま会社の慰安旅行といいますかでハワイに行ったときに、ハワイで同僚から、危険ドラッグですか、当時はハーブと言っていましたが、そういうものをやってみたところ、それが帰国後もやめられなくなってしまった。

 彼は本当に、三カ月もたたないうちに会社を首になってしまいました。仕事としてはすごく営業成績もよかったので、現場の上司としては、おまえのことは俺が助けてあげる、何とか薬物はやめて、今後も会社のために頑張ってくれというようなこともあったんですが、要は、やはり本社の方がそれを認めなかった。そして解雇をされてしまった。

 解雇されるとどういうことになるかというと、やはり、またもとの世界に戻って、また薬物の世界に戻ってというところになって、事件を起こしましたよ。そしてダルクにたどり着くという。

 だから、僕が僣越ながら申し上げたいのは、そういう集団から、会社にしても学校を退学するにしても、ただやめてもらう、ただ退学させるということではなくて、ある程度の、何といいますか、どうしてもやめられないのだったら、では、和田先生のような治療機関があるからこういうところに行ってみたらどうだとか、ちょっと言葉は言い過ぎかもしれませんが、会社にいるうちから治療プログラムを始めてもらって、それからやめていただいてもいいかなというようなことも、彼らを見ていると、ついこの間までは本当に普通の社会人をやっておられたという方が圧倒的に危険ドラッグの場合は多いので、彼らの治療ということに関しては、そのようなことが必要になってくるかなというふうに思います。

山下委員 まさに誰の身にも起こり得る、非常に悲惨な結果を生む危険ドラッグ、もう国ぐるみで体制をつくって、やらなければならないと痛感いたしました。

 以上で質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

上川委員長 次に、山井和則君。

山井委員 お三人の参考人の方々、まことに重要な御指摘ありがとうございました。

 これは、野党共同して、危険ドラッグ禁止法案を十月十日に提出させていただきました。また、与党も議員立法を今作成中と聞いておりますので、今国会中に危険ドラッグ禁止法を成立させたい、そういう思いで、党派を超えて、この衆議院厚生労働委員会は頑張っております。そういう中で、三人の方々から非常に重要な御指導をいただいたことにまず感謝申し上げたいと思っております。

 それで、本日は、この危険ドラッグ運転の暴走によって大切なお子様を亡くされました御遺族の方々も傍聴にお越しをされております。心よりお子さんたちの御冥福をお祈り申し上げたいと思います。

 まず飯泉知事にお伺いしたいんですが、この緊急アピール、私もこれを拝見したときに、本当にしびれました。

 といいますのは、これは結局どう書いてあるかというと、もちろん使用した者への健康被害に加え、交通事故などの二次被害により無関係な人々のとうとい命まで奪われている現状は、まさにテロ行為にも匹敵する異常な状態だと。本当にこれは、私は、危険ドラッグ業者と私たちとの、国民の命を守るための戦争だというふうに思っております。

 そこで、もう一つ、私、この文を読んでしびれましたのが、一番目のところに、「「危険ドラッグになり得る物質」の範囲を明確にした上で、流通に先駆けてその全てを規制するなど、薬事法改正等の法整備も含め、」と、やはり今の現行法では限界があるのではないか、それで、イタチごっこを終わらせないとだめだと。本当にこのキーワードは、「流通に先駆けてその全てを規制する」。まさに、自由にインターネットや店舗で買えることがおかしいわけですよね、これは。

 週刊誌に出ておりました危険ドラッグを吸引している方のインタビュー記事でも、危険ドラッグがだめだというのだったら売らせなかったらいいじゃないか、売らせなかったら買えないし買わないよというふうに、危険ドラッグを吸っている若者が答えているわけですよね。

 そこで、私たちも今議員立法を考えているわけなんですが、飯泉知事、例えば、イメージでも結構ですが、ここに書いておられる「流通に先駆けてその全てを規制するなど、薬事法改正」「「イタチごっこ」の状況に対抗しうる」、どういうイメージを持っておられますでしょうか。

飯泉参考人 先ほど先発例の四条例を申し上げたところなんですが、その後の兵庫県、そして鳥取県、こちらにおきましては、特定物質を指定せずに、例えば幻覚症状を起こすとかあるいは奇行を起こす、こうした蓋然性をもって包括的にこれを抑えてしまう、こうすることによって、流通が起こる、あるいは起こった段階でぱちっととめてしまう、こうした形をとりました。

山井委員 今、飯泉知事がおっしゃってくださった、成分や薬物を指定しなくても毒性という段階で中止命令を出せる、これは実は、今回の井坂筆頭提出者を中心につくりました野党法案と同じ趣旨なんですね。もちろん、これでもう完全だとは私も言えませんが、そういう方向の規制が必要だと私も思っております。

 ところが、先ほど飯泉知事がおっしゃったように、一つの大きな壁は、罪刑法定主義という厚い高い壁が立ちはだかっております。

 田村厚生労働大臣は、八月四日の衆議院の厚生労働委員会の集中審議で、この場で、今出回っている危険ドラッグは、ほとんど全てが麻薬、覚醒剤と同等以上の毒なんだということを厚生労働大臣も認めていられるんですよね。であれば、そもそもインターネットや店舗で自由に買えること自体がおかしいんです、はっきり言いまして。ところが、では、それは証拠はあるのか、証拠がないのに捕まえたら罪刑法定主義に反するじゃないか、こういう厚い壁があるんですね。

 このあたりについて、飯泉知事はいかが思われますでしょうか。

飯泉参考人 これにつきましては、つい先般成立いたしました鳥取県の条例の改正、このときに平井鳥取県知事さんの方から答弁をしたものが一つの参考になるかと思いますので、御紹介をさせていただきます。

 大きな問題としては、憲法三十一条、罪刑法定主義、この中では明確性の原則というものがあります。しかし、これにつきましては最高裁の既に判決が出ているところでありまして、通常一般の理解能力において認識する内容であれば足りるんだということがまず書かれております。

 これをベースといたしまして、今回の条例、これは鳥取県の改正条例でありますが、薬物、危険薬物の定義につきまして、今回の法案とよく似た形で、興奮、幻覚などの作用を起こすおそれがあること、また、人の健康に害を及ぼすおそれがあること。またさらには、対象となる行為につきましても規定をしておりまして、製造、販売、使用など四つの構成要件を掲げ、これらに該当した場合に条例違反となる。こうしたことが、いわゆる予見可能性、これを県民の皆さんに十分に与え得るものであると。

 しかも、これだけではまだ弱いんじゃないかという意見もありますので、これに加えまして、麻薬あるいは覚醒剤と同等の効果を及ぼすものといった例示を具体的に示すということによりまして、明確性をさらに増すことによって、憲法三十一条に抵触しないのではないか、このように答弁をさせていただいております。

山井委員 私は、その鳥取県の平井知事のインタビューのコメントも直接テレビで拝見したんですが、本来は国がすべきことではないかという非常に重い発言をされているんですね。薬事法は、まさにこの厚生労働委員会で審議する法律なわけでありますから、そういう意味では、平井知事のお言葉、飯泉知事のお言葉というのは、私たちがしっかり受けとめねばならないと思っております。

 それに関連しまして、和田先生。和田先生はまさに第一人者でありまして、私も今回、参考人に何が何でも和田先生にはお越しをいただきたいと思っていたので、大変うれしく思っております。

 まず最初に、この合成カンナビノイド簡易検出システム、私はこれはすばらしいと思います。といいますのが、覚醒剤を所持していたら、その場で検査して色が変わるわけですよね。それで現行犯逮捕。大麻も、所持していたり販売していたら、その場で検査で液に入れたら色が変わって、その場で現行犯逮捕。

 ところが、危険ドラッグは、その場で持っていても、これは危険ドラッグじゃないの、これから検査するから、きょうのところは気をつけて帰ってと言って、それで終わっちゃうわけですよね。それで、二カ月後にそれが指定薬物で見つかっても、いや、その時点ではわかっていなかったから、あなたは無罪ですとなりかねないわけですよね。

 そういう意味では、こういう制度ができれば、麻薬や覚醒剤のように、所持、現行犯逮捕、販売店、現行犯逮捕というふうにできる可能性も出てくるんでしょうか。和田先生、いかがですか。

和田参考人 お答えします。

 残念ながら、それは難しいと思います。

 と申しますのは、これは五番目のスライドがそうですけれども、このシステムを導入することによって、例えば、具体的には、怪しいと思われたパッケージ物があります。その中には、合成カンナビノイドが入っているということはわかるわけです。しかし、何がどういう化学物質かはわかりません。やはり、現在の法律では、きちんと薬物の同定をしないことには基本的には法の網をかけることができない、そういう制度だと思います。

 ですから、まさにこれは、とりあえず水際とかそういうところで送られてきたものを調べてみて、この中には合成カンナビノイドがあるんだということを特定するわけです。そこで差しとめができます。差しとめて、少し、その後はきちんと正規の薬物の同定、検出、そこに持っていく余裕ができる、そういうふうに考えていただいた方が現実的だと思います。

山井委員 現時点では、これは指定薬物で、成分が特定できないと違法にならないわけですから、ということは、もし法改正をして、指定薬物でなくても、合成カンナビノイド、つまり毒性ですよね、それだけ判断されたら、例えば指定薬物じゃなくて危険薬物にするというように法改正をすれば、現行犯で逮捕、あるいはそこで中止命令を出せるということになりますでしょうか、この簡易なシステムで。和田先生、いかが思われますか。

和田参考人 参考人は質問できないので非常に答えづらいんですけれども、先ほどの議論を聞いておりますと、物質を特定せずに指定するというのは私のイメージとして理解できないんですが、どうなんでしょうか。パッケージ物があったら、パッケージを指定するんでしょうか。質問になっちゃいますね。困りました。お答えしようがないんです。

 要するに、どう考えても私は、物質を特定しないことには、どういう害があるものだというのは物質との関係性ですから、現在出回っている例えば脱法ハーブ、危険ハーブと言われるものは、一つのパッケージに、植物に、さらに数種類の脱法ドラッグが入っています。そうすると、そのパッケージ物が例えばAという名前であるならば、Aという商品をだめだとするのか。しかし、Aというものをだめにしても、今度Bという名前で同じものが出てくる可能性もありますし、ちょっと私としては、皆さんの議論されている内容のイメージが具体的にわからないのでお答えしようがないです。

山井委員 確かにこれは、私もお店に調査に行ったことがありますが、製品名じゃなくて、透明のビニール袋に入れて売ったりもしているんですよね。そういう意味では、本当に巧妙ないろいろな手口があるわけです。

 ダルクのお話も聞かせていただきまして、ありがとうございました。

 ダルクは、一番、薬物依存で全国的にも重要な取り組みをされていると思っておりますが、やはり、国から、あるいは地方自治体からの支援がまだまだ不十分じゃないかと思っているんです。今後、残念ながら、危険ドラッグの対応でもっともっと役割が大きくなっていくと思うんですが、そういう中で、秋元さんから、国や地方自治体にもっともっとこういう支援をしてほしいということがあればお聞かせいただきたいと思います。

秋元参考人 ありがとうございます。

 ダルクに対する支援に関してですが、先ほど和田先生のお話にもあったように、薬物の生涯使用率というのが日本の場合は非常に低くて、二・五%とか二・九%とかという数字になっておりまして、薬物という問題だけとってみれば、非常に限定的でマニアックな問題になってしまうのかなというふうに思うんです。したがって、私たちが国に対してこうしてほしい、ああしてほしいということは、なかなか現時点では伝えづらいというところもあったりします。

 現に、東京ダルクの場合は、障害者総合支援法において、年間の予算の半分ぐらいの予算を支援していただいているという現状ではあるのですが、私たちが何か提言できるというより、国が私たちに何か対策をしてくれる、私たちにということよりも、今の現実としては、余り世の中に理解されにくいという薬物の問題に関して、理解はされにくいけれども、回復はできるんです、再乱用は防止できるんですということを、まだ草の根レベルといいますか、そのようなレベルの話なんですが、私たちがそうやって活動していくこと、私たちが何ができるのかということの方が現時点では大切なことなのかなというふうに僕たちは日々感じております。

山井委員 時間が来ましたので終わらせていただきますが、三人の参考人の方々の御指導をしっかり受けとめて、今国会中に危険ドラッグの禁止の法整備、薬事法の改正をしっかりできるように頑張ってまいりたいと思います。

 ありがとうございました。

上川委員長 次に、清水鴻一郎君。

清水(鴻)委員 本日は、秋元参考人、また飯泉参考人、和田参考人の皆様方には、大変お忙しい中、大変示唆に富んだ、本当によかったなというお話を聞かせていただいて、本当にありがとうございました。

 私、維新の党の清水鴻一郎といいますけれども、私も地方議員を長く京都府でやっていまして、京都府の府会議員を四期やらせていただいた。それから、和田先生と同じ、まあ、脳神経外科で、ただ切って取るという野蛮な科なので余り賢い科ではないんですけれども、一応医師という立場も踏まえて、きょうはお話を聞かせていただいて、まず最初、やらさないというか、そこが一番大事なんだろうと。

 それは、まさに飯泉参考人がおっしゃったような形で、まず手に入らないようにしていくということが大事だろうし、大変関心を深く聞かせていただいたのは、店舗をなくされたということ。まず、お店がなければ買いには行けない。もちろん、インターネットとかいろいろ規制すべき点はあるし、もしかしたら徳島県の方がまたよその県に行けば買えるということがあるので、まさにこれが国全体で取り組まねばいけない問題だろうとは思います。

 徳島というのは、実はうちの娘が徳島大学に行っていまして、三、四年前に卒業したんですけれども、僕も何回も行きまして、阿波踊りとかも踊らせていただいて、なかなか薬物とかをやりやすい環境もあるのかなというふうに思うぐらい、本当に楽しい県であります。

 それで、今、店舗をなくすということについて、条例の中で非常に工夫されたんだろうと思います。京都府なんかも、京都府に聞きますと、今度、今パブコメにかけているということでありますけれども、いわゆる店舗規制、不動産業者さんに、店舗を貸さないというような、そういうところから取り組んでおられるということがあります。

 ちょっと具体的なところから入って申しわけないかもしれませんけれども、そこが一番大事なところだと思うので、飯泉参考人から、まずそこのところの工夫はどんな形でされたのか、お聞かせいただきたいと思います。

飯泉参考人 徳島の点でいろいろPRいただきまして、ありがとうございました。

 徳島におきましては、まず、知事指定薬物という観点で条例で指定した、これも大きかったとは思うわけでありますが、ほかにない点が一つございます。それが今の、店舗といいますか、場所の提供の関係です。徳島の条例では、指定の禁止薬物につきまして、使用場所の提供、あっせんを禁止させていただいております。

 やはり、若い皆さん方が、先ほどダルクの秋元さんからもお話がありましたように、軽い気持ちでやってしまうということがありますので、そうした面々が集まってそうした危険ドラッグをみんなでやってしまう、こうしたことを禁止することによってなかなかそれが広まりづらい環境をつくる、こうした点に工夫をさせていただきました。

清水(鴻)委員 ありがとうございます。

 やはり、先ほど飯泉参考人もおっしゃいましたけれども、我々も、今回の野党全員で出している法案の中で一番苦労した点というのは、要するに、もう指定した段階では次の方に行っちゃうということで、あるいは、同定するのに時間がかかっている間に次々新しいものが出て、まさに、緊急提言にも書かれているイタチごっこになる。

 それで、ある意味では大変難しい点もあったのですけれども、今度の野党案では、いわゆるアナログ規制という方向でやらせていただいたわけですね、先ほども山井委員からもありましたように。そういうことについて、先ほどの平井知事の答弁の引用もありましたので、これに関しては、今後、関西広域連合としても、そういうアナログ規制というものの方向性についてはどうお考えでしょうか。

飯泉参考人 実は、今御紹介のありました京都府、パブコメにかかっているところでありますが、京都府におきましても、兵庫、鳥取と同様の規制、そしてさらに、今、清水委員からもお話がありました京都府の案におきましては、店舗自体を、知事監視店舗という新しい概念を用いまして、この点につきましても規制をしていこうと。

 先ほど、徳島県におきましても今後対応を検討していきたいと申し上げたところでありますが、徳島におきましても、関西広域連合メンバーの中で、今アナログ規制の話がございましたが、我々としても、そうした形で規制をしていかなければこのイタチごっこをとめることができない、このように考えておりまして、我々としても、できる限り早い段階で条例を改正したい、このように考えています。

清水(鴻)委員 ありがとうございます。

 そこで、ちょっと和田参考人にお聞きしたいんですけれども、先ほどから、ある意味で、化学的といいますか医学的といいますか、そういうことでいえば、本来的には成分が同定されてというのが筋だということになるかと思うんですけれども、和田参考人から考えられて、アナログ規制の持つ意味、あるいは、もしかしたら若干危惧があるかもしれませんけれども、その辺について和田参考人の御意見をお願いしたいと思います。

和田参考人 アナログ規制をやっている国もほかにもあるわけですけれども、ただ、アナログ規制といいましても、やはり、薬物、その化学構造式を特定せざるを得ないと思います。

 要するに、先ほども言いました、今出回っている脱法ハーブを中心に、そういうものは、単一の危険ドラッグだけである、そういう商品はほとんどないに等しいくらいです。複数入っております。複数入ってきますと、どの薬物がある意味で害を持っているのか、アナログといっても、三種類入っていれば三種類ひっくるめてアナログというわけにいきませんから、結果的には、薬物の特定抜きにはこの議論はちょっとできないのではなかろうかと私は考えています。

清水(鴻)委員 その場合、危険性があるというか、そういう可能性が高いということ、あるいは、麻薬、それと同等、それ以上の作用がある、幻覚、興奮とか、抑制も含めて。そういう意味で、まずは症状といいますか、そういうものを限定して、もちろん最終的には成分を追求していくわけでありますけれども、それでも、そういう、まずはそうしなければならない、なかなかおさまらないということについて、和田参考人としてはどうお考えでしょうか。

和田参考人 私自身、個人的には、あらゆる手を使って、本当に、皆さんが提案されているそういうことをどんどん出していただいて議論する中で、やはり何としてもその流通をとめたいと思っています。ということで、今おっしゃられたとおりだと思います。

 ただ、どうしても、法という話になってきますと、やはりその手順というものを抜きには語れないものであると思いますし、それから、現状の脱法ハーブというものは、一つの危険ドラッグが入っている、そういう単純じゃないということは絶対押さえていただきたいです。そこに三、四種類入っているのが当然なんです。さらにそこに、カチノン系といいまして、覚醒剤に近い成分も入っています。ですから、アナログというのは、その薬理作用の、あるいはその害作用の類似性を見るんでしょうけれども、今出ている、あるいは使われている危険ドラッグは、いろいろな薬物の複合体と見るべきです。

 そうなってくると、何を取り締まるんだという、結局は、私は、やはり物質の特定なしにはちょっと現実味が感じられないという感じは持っています。

清水(鴻)委員 ありがとうございます。

 あと、先生、本当にすばらしい、この間、新聞報道等でも私も見させていただきましたけれども、いわゆる合成カンナビノイドの簡易検出ですけれども、これで大体、例えば今出回っている、もちろん、これからどんなものが出回るかというのは、いっぱいあるので可能性としてはわかりませんけれども、現在の状況の中で、いわゆる危険ドラッグの中で、カンナビノイド系で検出されるのはどの程度というふうに考えたらいいでしょうか。

和田参考人 現在流通しております危険ドラッグは、二つの大きな系列がございます。一つが合成カンナビノイドというものです。もう一つがカチノン系といいまして、覚醒剤に近いものです。残念ながら、最近また新たなものが出てきました。ほかの系列もどんどん出ております。ですから、単純にはいきません。

 しかし、非常に漠然とした言い方ですが、いろいろなものが出てきましたが、また現在も出ておりますが、その五〇%は大体合成カンナビノイドです。ということは、このシステムを使えば、基本的に、新たなものが出てきても合成カンナビノイドということでストップという、まずストップをかけられるというのが強みだろうと思います。それによって、あとは、今度はカチノン系についてそういう同じような手法はできないか、やはりどんどんどんどん研究を進めていくことが重要かと思います。

 以上です。

清水(鴻)委員 確かに、私もちょっと文献等を調べさせていただいたら、今は約六割、先生は五割と今おっしゃって、ちょっと謙虚に言っていただきましたけれども、約六割ぐらいは、今現在の危険ドラッグではそれでひっかかるのではないかというふうな文献もありました。

 だから、やはりこれはもう大きな力でありますので、ぜひとも。まあ、いろいろな機械や何かというのは、これ自身が、つくること自体もまたお金もかかるとか、いろいろな予算の措置もあると思いますけれども。

 先生、今、いろいろな意味で今後の、社会的伝染病だという言葉も使われましたし、それから、いわば治療する場所が現在ないということ。今度、予防して、手に入らないようにして、やらないようにするのが一番、だけれども、やってしまった人に対しては、乱用あるいは再乱用を防ぐのが第一でありますけれども、今、病院がほとんど、先ほどの例でも、〇・二%の病院に一二%が集中しているということもありました。

 実際、例えば各県にある精神保健センターとか、仮にそこに指定しても、現実的に、人的に、専門家というのは、現在、各都道府県に実際いらっしゃって、そのことが可能かどうかということをちょっと教えてください。

和田参考人 実は、精神保健福祉センターは、先ほど言いました、全国六十九カ所あると思いますが、人員等その陣容というものは本当に千差万別と言うしかありません。少ないところでは、数人職員がいるだけのところもあります。一方では、五十人を超える職員がいるところもあります。

 そういう違いがありますが、実は私たちが提唱したいのは、認知行動療法をやるに当たって、現状では無理だと思います。やはり、そういうことをやれる体制づくり、人員の配置及び予算的措置というものを抜きにはできないと思います。

 ただ、新聞を見ましたところ、厚生労働省の担当課の方では、そういう体制づくりに向けて来年度の概算要求をしているという記事も出ておりました。ぜひその方向に向かって進めていただきたいと願っております。

 以上です。

清水(鴻)委員 今回の野党案の提出の筆頭になっております井坂委員からも、ぜひ聞いてくれということがありましたので、ちょっと聞かせていただきます。

 いわゆる危険ドラッグのインターネット販売のサイトを見ると、大変厳しい条件のある都道府県には宅配しないけれども、例えば厳しい条例があるところ以外のところなら販売するとか、そういうことについて、都道府県によってかなり違うわけですね。だから、法律で全国に一律に規制をかけるべきだと考える、これは正しい、このことはやはり方向性として正しいだろうかということを飯泉参考人にちょっとお聞きしたいと思います。

飯泉参考人 関西広域連合の方から国の方へ提言をさせていただいた中にもありますように、これは全国一律に一網打尽にしていく必要があるわけでありますので、やはり法でもって全国一律に規制をしていただきたい、このように考えております。

清水(鴻)委員 ありがとうございます。

 それから、和田参考人に、ドーパミンの上昇や脳の受容体に対する親和性など、化学式の同定ではなくて、精神毒性の有無のみを測定する、そういうことに関しては実務的にできるのか、あるいは、できるとしたらどれぐらいの、何日ぐらいの期間でできるのかという質問をしてくれということですので、よろしくお願いします。

和田参考人 なかなか難しい問題でございます。

 例えば、ドーパミン系、要するに脳のカテコールアミンという神経伝達物質の話が出ましたが、これは実際に培養細胞ないしは動物を使ってしかできません。当然のことです。生きている人間の頭の中はのぞくことができませんので、どうなっているかわかりませんが、これは、ある意味ではそういう実験系を使えばできる話です。

 ところが、精神毒性というのは定義がなかなか厄介でして、そこもはっきりさせないと難しいと思うんですけれども、簡単に言うと、言動がおかしいということを指して言うならば、これは精神科医、しかるべき精神科医による診察しかありません。しかも、その症状にも幅が相当ありまして、瞬時にわかるものもあれば、やはり一日あるいは一週間本人の様子を見ないと、この方は少し言動がおかしいな、そういうことがわからない場合もあります。

 ですから、簡単に、何日あれば可能だと言うことはできませんけれども、普通に考えれば、精神科医であれば、一週間、二週間見させていただければ、その言動のおかしさ、あるいは精神障害かどうかということはわかってくるかと思います。

清水(鴻)委員 ありがとうございます。

 時間が来ましたので、最後、秋元参考人に。五十名来られましたですよね。だけれども、結局は十五件。そういうことで、ドロップアウト、三十五名は実際にはなかった。そのことに関して、その辺の問題はどこにあるのかだけ最後にちょっとお聞きして終わりたいと思います。

秋元参考人 やはり、治療のプログラムに乗らなかった三十五名というのは、依存という認識が薄いというのはあります。

 通常ですと、アルコール依存にしても薬物依存にしても、最初に使用してからある程度の時間がたっている。例えば覚醒剤とかですと、大体十九歳とか二十ぐらいで覚醒剤を使い始めて、症状が出て病院に入ったり、捕まって刑務所に入ったりということをある程度繰り返す中で、やはり薬物はやめなきゃいけない、そういう葛藤を抱えながら、しかし、また再使用してしまってきた。そういうジェットコースターのようなことが続いていく中で、やはり今も薬物が断ち切れないという状態にあるんですね。

 ところが、危険ドラッグの場合は、本当に早い段階で、急性アルコール中毒という表現を申し上げましたが、非常に早い段階でそのような精神症状を来してしまいますので、皆さんには依存という認識がやはり欠けてしまっています、特に若い人には。

 なので、うちを訪れた方々にうちの依存症のプログラムというのを、依存症に特化してあるプログラムではあるので、依存症からプログラムということを本人にお話しして導いても、やはりなかなかわかってもらえないというところがあります。そして、彼らは、やめればすぐに学校に戻れる、やめたらすぐに仕事に戻れる、そのことは皆さん、最初の初期の段階から強くおっしゃいますね。

 以上です。

清水(鴻)委員 ありがとうございました。

上川委員長 次に、輿水恵一君。

輿水委員 公明党の輿水恵一でございます。

 本日は、質問の機会を与えていただきまして、まことにありがとうございます。

 また、参考人の先生方からは、先ほど来、貴重な御意見を賜り、お忙しい中を本当にありがとうございます。

 それでは、早速ですが、質問をさせていただきます。

 まず、飯泉参考人、先ほど、使わせない環境づくり、使わない人づくり、まさにこれが一番大事かなと私も思います。その中で、やはり国としてやるべきことも当然ありますが、知事が本当にこの危険ドラッグに対して深い認識と、また、それと徹底して戦っていこう、こんな姿勢の中で、先ほどの広域連合の提言にも、「その「真の危険性」を強く訴える「効果的な啓発」」というふうにありますけれども、現場サイドではどのようなことをなされているのか、その点についてまずお聞かせ願えますでしょうか。

飯泉参考人 やはり、今回、これを興味本位に使うという傾向は若い世代の皆さん方に多いということで、若い世代の皆様方にその危険性をどう伝えるか。一時期は脱法ハーブとか、ハーブみたいな名前になるものですから、何かおしゃれみたいな感じで興味本位で使ってしまう。そうした意味で、テレビ、ラジオ、こうしたものはもとより、先ほど御紹介をしたのは和歌山県の例であるわけでありますが、若い人たちがあえて演劇の登場人物となって、若い人たちを対象にして、わかりやすく、そして本当に危険であるといったことを示していくということが肝要かと思います。

 また、我々として今後考えていかなければならないのは、若い皆さん方ということ、またインターネットでの販売ということを考えますと、今は、フェイスブックを初めとして、ツイッターなどのいわゆるSNS、こうしたものの中に、動画で、もしこの危険ドラッグを使った場合どういうことになるのか、まずは本人に対しての危険性をしっかりと周知するとともに、先ほどテロと申し上げた点でありますが、自分は意識はないんだと必ず言うんですね。しかし、そうではない、それをやったことによって、無意識で車を運転して、そして罪のない多くの命を失わせてしまうんだ、これをどう償うんだ、こうした点についてもしっかりと訴えかけていく必要がある、このように考えております。

輿水委員 どうもありがとうございました。

 まさに、これは全ての、あらゆる機関が協力をしてやるべきことかな、このように感じております。

 そこで、飯泉参考人の徳島県なんですけれども、先ほど来ありましたが、乱用の防止に関する条例を制定されております。その中で、知事指定薬物、これを指定されているんですけれども、先ほど和田参考人からもるるお話がありましたが、世界的にも、薬物の同定、いわゆる化学物質、化学構造式の特定をしっかりやっていくことが必要だということで先ほど来繰り返されているんですけれども、この知事指定薬物の点については、その点が行われているのかどうなのかについてお聞かせ願えますでしょうか。

飯泉参考人 おっしゃるとおりです。徳島の場合、あるいは大阪、和歌山、これも同様でありますが、特定の薬物を指定して、そしてそれを知事指定薬物とさせていただいております。

 ただ、必ずその後に、そうしたものから、今度は薬事法に基づいて国の方で指定をするという形になりますので、まずは県で指定をして、そしてその後、国の方がさらに指定をして、そうなりますと、今度は知事指定薬物というものがなくなるという形になります。

輿水委員 どうもありがとうございます。

 ということは、まず知事指定薬物が初めにあって、どちらかというと国が後追い、そういったケースもあるのかなということで、先ほど来、検査機器が非常に高価でなかなかそろえられない、また、各地域で持つのもなかなか難しいのではないか。そんな中で、どうやってその辺の工夫をされて、その指定をスピーディーに進められているのかについてお聞かせ願えますでしょうか。

飯泉参考人 この点につきましては、もう一点、検査機器の前に、先ほど和田参考人の方からもお話のありました標準品、これをしっかりと持つ必要があります。ただ、これが大変なんですね。

 ということで、こうしたものについて、関西広域連合におきましては、お互いでその情報を持ち合う、そして検査機器についても、現段階では全てが持っているわけではありませんので、これについてしっかりと、特に大阪が最初に条例をつくったということで、大阪府の公衆衛生研究所の方、ここにまずは頼っていくという形をとり、その後、当然のことながら、条例をつくったところが順次導入をしていく。

 しかし、先ほども申し上げましたように、なかなか高価なものでありますので、ここにつきましては、これから条例をつくっていこうという動きがたくさん今全国で出ております、そうしたところも条例を二の足を踏まないように、そうした検査機器あるいは標準体についての導入を、これは国の財政支援をぜひいただきたいと思います。

輿水委員 どうもありがとうございます。

 まさに、国に任せるのではなくて、各地域で持っているものを最大限に活用し、かつ連携をとりながら、その情報を共有してスピーディーな特定を図っていこう、こんな取り組みがなされているということで、よくわかりました。ありがとうございます。

 そのような中で、一点確認をさせていただきたいんですけれども、和田参考人に伺います。

 先ほど来、合成カンナビノイド検出用の細胞の生成等、そういったやり方で、簡易的な取り組みをやることによって水際でしっかり防げると。どちらかというと、この危険ドラッグにしても、まだ海外から流入するという危険性が非常にあるわけでございます。

 そういったことも踏まえて、今後、これはただ単に日本だけの問題ではなくて、国際社会の中できちっと、例えば合成カンナビノイド検出用の細胞等も、協力をして開発して全体的に防いでいく、そんな取り組みも必要なのではないかと思うんですけれども、この辺についてのお考えをお聞かせ願えますでしょうか。

和田参考人 私は、各国の生涯経験率も紹介しましたが、この薬物問題は、ただ単に一国だけでは絶対に終わらない問題です。ということで、まさに御質問いただきましたが、これは全ての国で共有していく、日本からそれこそ発信していく、そういうことにできれば、日本としてもこれは誇れるのではなかろうか。

 と同時に、この問題は、薬物問題は、基本的には国連できちんと全体で話をするシステムが一応できております。ですから、これは担当課の方で、恐らく厚生労働省の方できちんと対応していくべき話かなと思っております。

輿水委員 どうもありがとうございます。

 まさに日本は、一番薬物に汚染されていない国としてそのリーダーシップをとっていただく、そんな方向で全力を尽くしていけると私も思います。

 ここで一点、皆様に確認をさせていただきたいんですけれども、この危険ドラッグ、もう早急に対策を打たなきゃいけない、そんな中で、厚生労働省が先般、疑いのある薬物に対する検査命令、さらに、検査の結果が出るまでの間の販売停止命令を活用して、一つ一つその問題に具体的に動いたことは御存じだと思いますけれども、この内容につきましての皆様方の評価というか見解を、お一人お一人お聞かせ願えますでしょうか。

和田参考人 私は、その取り組みは非常に重要だと思います。さらにまた、各自治体が考えられているいろいろな対策も本当に重要だと思っています。

 ただし、私が思うには、あらゆる手を使って、あらゆる知恵を出し合って、とりあえずは差しとめる、あるいは、何とか、本鑑定といいましょうか、私が言っている薬物の検出、同定、この流れに持ち込むためにいかにその時間的ゆとりをつくるか、結局そういう気がします。最終的には、法となってくると、本質的な、正当の検出過程を経ずして法で云々ということは非常にやはり難しいんじゃないかと思います。

 それをうまくやるために、制度を、そこをきちんと整える。先ほど私が言わせていただいたのは、そういう国家機関をつくる、これが一番目標ですけれども、だめならば、全国の自治体あるいは国、大学、そういうものの専門家の連合体を組織するとか、何としてでも検出体制の強化ということをやっていただきたい。それに時間的余裕を与えるために、あらゆる知恵を出して、差しとめを含めてやっていく、そういう考え方かと思います。

飯泉参考人 まず、国のこのたびの動きについてでありますが、まず緊急指定、これによって審議会にかけない、これによって三、四カ月短くすることができる。またさらには、今度はパブリックコメントも外して、そして対応していこう、こうした速やかな対応については大変評価をしているところであります。

 しかし、今、和田参考人からもお話がありましたように、それであったとしても、イタチごっこには変わりがないところであります。恐らく、これからどんどん各道府県がこうした条例で独自に規制をしていく、これはもうやむにやまれぬ対応なんだということをぜひ御理解いただきたいと思います。

 やはり、我々都道府県あるいは市町村というのは、住民の皆さんに直接対応をする立場にありますので、例えば運転免許、こうした点について、車を運転してしまって、そして多くの命が失われる、そうした声は直接我々のところに届くところであります。

 ぜひ、このイタチごっこ、これを断ち切るためにも、国としてやはり一律の法律をしっかりと整えていただきたい、このように考えております。

秋元参考人 ダルクのメンバーに関しましては、危険ドラッグを使うに当たって、やはり法律に触れないということが大きな理由であるということを申し上げましたが、それ以上に、彼らにお話を聞くと、手軽に手に入れられて、そして値段もそれほど、ほかの違法薬物ほど高くないという現状、それがやはり自分たちが使用に走ってしまう一番大きな原因だというふうによく皆さん申しております。

 ですので、そういう意味では、早急な規制であったり店舗のせん滅であったりということは非常に効果を示しているのかな、手軽に入らないという意味で効果を示しているのではないかなというふうに思います。

 あとは、やはりインターネットのそういう市場ですよね。いろいろ手をかえ品をかえネットの現場では売っておられると思うので、今はもう、例えばハーブ屋さんとか危険ドラッグということを銘打って売っているサイトなんかは余りないと思うんですね。普通に雑貨屋というような店舗があって、その雑貨屋で何か靴を買うとかコップを買うとか、それが、買うと実はハーブだったりするというような現状があって。

 ネットというのは本当にお金さえ振り込めば宅配されてくるというところですから、その辺も、そういうような規制の対象というか、そういう店舗がなくなっていくということも非常に重要であるかなというふうに思います。

輿水委員 どうもありがとうございました。

 では、最後になると思いますけれども、和田先生、地域の体制の強化、復帰の体制の強化が必要だということでお話がございました。その中で、ワークブックを使用した認知行動療法の実施のお話がありましたが、実際、適切にこのワークブックを利用した認知行動療法を進められる人材というのは日本にどれぐらいいるのか、また、今後どのような形で配置される可能性があるのかについてお聞かせ願えますでしょうか。

和田参考人 これは、ワークブックを使った認知行動療法を開発しながら、私たちは同時に、我々主催の、全国の、これは医師でも結構です、あるいは精神保健福祉士でも結構です、心理職の方でも結構です、あるいは看護師の方でも結構です、何らかの意味で医療にかかわっている方々、国家資格あるなしにかかわらず、かかわっている方々に対して研修会をやってきました。

 これで数年間やっておりますから、毎回五、六十人は最低でも来ますから、掛ける七、八年、まだそこまでいきませんか、五年くらいですね、そのくらいの人数は既に一応これを少し理屈の上ではわかっている方々。あとは、実際にやっている現場で参加して、時々自分がそれを進める係になりながら実践を積んでいけばできると思います。ですから、二、三百は現在いるという計算です。今後も我々はこれを続けていきます。ということで、どんどんそういう方々をふやすことは可能です。

 しかも、これは、ついつい、こういうものは何か医師とか心理職だけという先入観があるかもわかりませんが、そんな必要は全くありません。どなたでも、実は、このワークブックを実際に読むことによって、医療職、医療に絡んでいる方であれば誰でもできるようになります。そういう意味での便利さがあります。

 ですから、人的には全然心配しておりません。

輿水委員 大変にありがとうございました。

 以上で質問を終わらせていただきます。

上川委員長 次に、宮沢隆仁君。

宮沢(隆)委員 次世代の党、宮沢隆仁と申します。

 私は実は、清水議員と同様、脳神経外科医でありまして、恐らく、和田参考人とほぼ同世代の医師であると思います。

 率直にこの薬物依存、薬物等に対する私の感想を申し上げますと、やはり外科医であるせいもあるんですが、現場でそういう薬物依存らしき患者さんが来ますと、避ける傾向がありました。それはもう私も反省しております。この人は同じ頭の病気でも精神科へと言って、追いやるようにして避けていたように思います。

 もう一つは、医者全般がそうかもしれないんですが、いわゆる精神安定剤のようなものを意外と気軽に出す傾向があります。特に、脳外科として脳を扱った医者は、例えば、脳外科医をリタイアすると精神神経科みたいな役割もするようになるんですが、以前、この委員会でも言ったことがあるんですが、やはりメンタルクリニックみたいなのが急増してきまして、それによる薬物依存というような問題も出てきているように思います。

 主に和田参考人にお聞きするようになると思うんですが、まず、今ちらっと述べておられましたが、この問題において、やはり医者の役割というのは物すごく大きいと思うんです。ただ、正直、医者全般がこの危険ドラッグについての認識というのは物すごく薄い、あるいは興味を示していないように思うんですが、その点はいかがでしょうか。和田参考人にお聞きします。

和田参考人 本当に、私がかねがね考えております大変重要な点を質問していただけたと思っております。

 と申しますのは、例えば、医療的に薬を出せるのは、日本じゅうで医師しかおりません。ところが、その医師がこの薬物問題に関心をなかなか示さないということを、私は非常に前から怒りを持って見ております。

 その最大の原因は、医学教育にあると思います。

 実は、医学教育の中に、この薬物依存ということはどういうことなんだという授業は、ほとんどのところでなされていないと思います。

 実は、依存と中毒、この区別が全然ついておりません。依存というのは、わかっていてもやめられない、見た目にはどこもおかしくない、言動もおかしくない、ただし、薬物が欲しくなったら、いても立ってもいられなくてやってしまう、これだけです。まさに喫煙者そのものです。

 ところが、中毒、昔は中毒と依存の区別がなかった時代もありますが、現在は違います。中毒というのは、例えば、簡単に言えば、誰が見ても、この人は病院で治した方がいいよ、治療を受けた方がいいよと見えちゃう人、あるいは、検査でそういうことがわかる人が中毒です。依存というのはそういう問題じゃありません。

 そういうことを含めてきちんと医学教育で全然やっておりませんので、医者の方が、自分たちの日々出している処方薬、そういうものに依存性があるんだということを全然自覚していない。

 ということで、私は、徹底的に医学教育でその辺のことを改善していく、それが絶対に望まれると考えています。

宮沢(隆)委員 私が次に質問をさせていただこうと思っていた医学教育のことも述べていただいて、まさにそのとおりだと思います。少なくとも、これから生まれてくる医者に対しては、この薬物のことは別途講座を設けてでも教育してもいいだろうと思っております。

 ただ、もう一つ重要なのは、今の現役の医師ですね。先ほどちらっと講習会、研修会をやられているとかおっしゃっていたんですが、精力的にやられているとは思うんですが、恐らく、全然足りていないだろうと思うんです。

 今の現役の医師、特に、脳を扱っている医者を含め、精神科の医師に対する教育とかという点に関してはいかがでしょうか。

和田参考人 実は、これは診療報酬に絡んだ話ですが、少々専門的になりますけれども、ベンゾジアゼピン系、そういう薬物を中心に、抗不安薬、睡眠薬、そういうところから、ベンゾジアゼピンとは違いますけれども、うつ病に対する薬あるいは幻覚、妄想に対する向精神薬、そういうものは何種類以上処方してはだめですよ、そういう診療報酬の制度に実は現在なっております。

 それに従って、中には長年いろいろな種類の治療薬を飲まれてきている方もいますから、急にその錠剤を減らすことができないので、それを徐々に減らすために、移行措置というんでしょうかね、診療報酬で決められた錠剤以上使ってもいいという医者の資格というんでしょうか、そういうものに対する講習会を今年度から日本精神神経学会が学会主催で開いております。と同時に、Eラーニング、そういうシステムを導入して受講できるようになっています。

 ということで、一応、学会の方でその辺は対応を始めて、実施したということで、今後、それはどんどん現役の医者に対してもやはり進めていくべきだろうと思います。

宮沢(隆)委員 では、医師、医学系の質問はこのぐらいにさせていただいて、今度は薬理系です。

 これは、もちろん、成分分析云々の話が入ってくるので、薬理学会、まあ薬理系もたくさんの学会があると思うんですけれども、いわゆる薬理学者自身もこれは積極的に絡んできていただかないといけないと思うんですが、そのあたりのコメントはいかがでしょうか。

和田参考人 そのあたりのことは、正直言いまして私の専門からちょっと外れてしまうので、何ともコメントできません。

 ただし、私は一つ思うことがあります。

 私は、実は、薬剤師の方々からいろいろ声をかけていただいて、全国、いろいろなその関係のところで講演をすることが多いです。そのときに声をかけていただく方々は、学校薬剤師の方々がほとんどです。薬剤師にもいろいろな資格といいましょうか、内部的にあるようでして、学校の衛生、健康、そういうことをつかさどる学校薬剤師の方々が非常にこの薬物問題に熱心だという印象を持っております。

 逆に、先ほどの話に戻りますが、医者から呼ばれて話しに行くということはほとんどないのが現状です。

 以上です。

宮沢(隆)委員 私の現場の経験も含めて、ちょっと医師と薬剤師というのはコミュニケーションがなさ過ぎるかなと思いますので、この点に関しても、そこは厚生労働省等が中心になって進めていってもいいと思います。

 それから、ちょっと細かい話になると思うんですが、文献等を読みますと、和田参考人の感想の中に、国会議員との認識の差がどうも気になるというようなことを書かれていますが、私が想像するに、例えば、さっきお話がちらっと出ていましたけれども、薬理作用云々の話に入っていくと、いわゆる受容体の話があって、それで受容体を持っている細胞の話になって、あとは脳のことですから、脳の各部位の反応の話になりますよね。

 それから、もう一つ別の方向でいくと、いわゆる薬の成分の話、これはケミカルな話ですね。それから、それを含むいわゆる薬草というんですか、そういうものの話。さらに、それを今度混合して、しかも、さっきA、B、Cとおっしゃっていましたけれども、名前をつけて売り出す。しかも、混合の仕方というのは、各薬草を、例えば四種類を六種類にしたり、その中身を変えたりということで、天文学的に幾らでもふえていきますよね。

 多分、その辺の認識のギャップがあるのかなという気がするんですが、ちょっとその辺の感想を述べていただければと思います。

和田参考人 なかなか、その辺のことをどこまで御説明すべきか。

 いわゆる脱法ハーブという名前が、呼称が物すごく広まりました。そうすると、何か危険ドラッグは脱法ハーブだけなのかという話になりますが、実はそうじゃなくて、いわゆる法の網をかいくぐる薬物は、形態的に三種類あります。一つはハーブ系と申します。これを脱法ハーブと呼んでいます。もう一つは液体です。もう一つは粉末です。そういうことで、ハーブ系、リキッド系、パウダー系という三形態があるんです。

 そのうちパウダー系とリキッド系というのは、もともとカチノン系という覚醒剤に類似した中枢神経作用薬が、昔も今も大体そういう形で売られています。

 一方、ハーブ系と申しますのは、もともと大麻の成分に近いものが入っていたとされているんですが、現在売られているハーブ系というものには、いわゆる脱法ハーブと言われるものには、合成カンナビノイドが数種類、さらにそこにパウダー系、リキッド系に入っているカチノン系という中枢神経興奮系もまた複数種類まぜ込まれている。もうごちゃごちゃなんです。

 それが現状なものですから、そこをまずきちんと御理解いただいた上で対策等を考えていただきたいと思っています。

宮沢(隆)委員 私も、今回この会に出席して、その辺がやっと少し整理できてきたかなという気がしておりますので、法律をつくる上で、その辺の認識と、あと、何がわかっていて、どこまでわかっていないのかというようなことも認識しながら法律をつくっていくのは重要だろうと思います。

 この後は飯泉参考人にお聞きしたいんですが、今の和田参考人のお話等を聞いた上で、現場では、ちょっと認識不足の医師の団体とか、あと、警察、行政、その辺と連携しないとこの問題は恐らくなかなか解決しないだろうと思うんですが、先ほどちらっとおっしゃっていましたけれども、現場での連携について、改めてコメントをしていただければと思います。

飯泉参考人 関西広域連合で、まず条例を大阪府が二十四年の十一月、そして徳島、和歌山が十二月に、そして年が明けて鳥取がという形になりまして、そうしたこの危険ドラッグに対しての対応ができる素地ができた。

 となってくると、今度は外周部にこれが広がってしまってはいけないということがありまして、いわゆる合同研修会、こちらを大阪府を中核としてさせていただきました。昨年が十月、そしてことしが八月。当初におきましては、どちらかというと行政、あるいは、今お話のあった医療関係者、こちらを中核に行いました。しかし、今回はやはり取り締まり、こちらを重点的に行う必要があるということで、取り締まり機関である警察、それから麻薬取締部、こうしたところにも入っていただいたという形で、今それを広げつつあるところでもあります。

宮沢(隆)委員 非常にダイナミックな体制をつくっていただいて、私は国の方が学ぶべきことが結構あるんじゃないかなと思いました。

 では、最後に秋元参考人にお聞きしたいんですが、先ほど資料を見ていて、日本地図が出ている、全国に幾つ、どこにあるかというのを見させていただいたんですが、必ずしも県庁所在地にはないですよね。

 恐らく、これは手を挙げた人がつくるというような形になっているだろうと思うんですが、今後、このダルクを全国に広めていく上での哲学というんですか、どういう趣旨で、どこにつくるのがベストかというような、その辺のお考えがあったらちょっと述べていただきたいんです。

秋元参考人 先ほどの御説明では、六月一日現在で七十四カ所ございますという説明があって、この日本地図は、実はこの黒い点を足すと、七十四個ございません。実は、この地図自体は今から七年ぐらい前のデータでして、現在、六月一日あたりのときに北は北海道から南は沖縄まで数えたら七十四カ所あったということでございます。例えば、北海道であれば、札幌に一カ所あって、あとは帯広にも実は一カ所ございます。

 どのような拠点にダルクがあればよいかというのは、私たち自身は、例えば再乱用防止をするにはこのような場所に置くのが効果的であるとか、そういう哲学を持ってやっているわけではございません。

 大体、東京の場合なんかは、薬物の施設が例えば地域にできると考えるだけで、今まで厳しい反対運動なんかもあったりしまして、そういう意味では、なるべく私たちは活動しやすいような、何とか地域に受け入れてもらいやすいような場所でダルクができてきているというような現状があるかなというふうに思います。

宮沢(隆)委員 ありがとうございました。

 やはりこれは国なり厚生労働省が少しバックアップしてあげて、設置しやすいようにしてあげるというのは大事だろうと思います。

 どうもありがとうございました。

上川委員長 次に、中島克仁君。

中島委員 みんなの党の中島克仁です。

 本日は、三人の参考人の方に御出席をいただきまして、大変お忙しいところ、本当にありがとうございます。

 きょうは医師がまた多いですけれども、私も医師の一人でございまして、この危険ドラッグの問題、六月二十四日の池袋の死傷事件を発端に大きく報道されたわけでありますが、その以前より、この危険ドラッグは、年々年々事例というか事故がふえていった。そういう中で、本日は、朝、危険ドラッグによって大事な御家族が犠牲になられた方々からお話もいただいて、改めて身に差し迫る思いであります。

 そのような中できょうは御質問させていただくわけですが、まず秋元参考人に、ダルクの活動については、この危険ドラッグの以前からそういう薬物依存に対して積極的に取り組まれていることに大変敬意を表したい、そのように思います。

 そして、きょう、さまざまな議員からいろいろな論点でもう質問されておりますので、できるだけ重複しないようにということで、きょう御説明いただきました資料の中で、危険ドラッグについての相談件数というところで、平成二十五年度、危険ドラッグに関しては六十三件、そのうち来所された方が三十四人。二十六年度、全体数では減ってはおりますけれども、危険ドラッグに関しては若干ふえ、ただ、来所された方は三分の一以下に減ってしまっている。

 これを見ますと、依存性を持たれた方がどうにかしたいんだと言って相談をしているけれども、実際には来所されていない。ダルクの利用者の方々の内訳も先ほど御説明いただきましたが、七二%で補導歴、逮捕歴があって、逆に言うと、そういう経験がある方は、相談に行って、そして来所しやすい。

 ただ、この危険薬物の特徴の一つが、非社会的勢力とはつながらなくても安価な値段で手に入りやすいということで、本当に、一般と言ったら変ですが、そういう逮捕歴等々のない方がこの危険ドラッグに染まってしまっている。そういった背景が、困ってはいるんだけれども、なかなかどうしていいかわからないという方がかなり多いのではないかな。

 そういう心の叫びというか、そういった方々をどう今後拾い上げていくべきなのか、相談窓口のあり方そのものも今後また検討しなければいけないのではないかなというふうに思うわけですが、その辺について御見解をいただければと思います。

秋元参考人 ことしに入って六十九件の相談がございまして、この中から十六名来所しているということです。

 では、ほかの来られなかった方々はどのようにしているかといいますと、例えば和田先生の病院を御紹介したりとか、電話の段階である程度その人の属性は把握して、聞いたりします。この場合だったら、うちに来るよりもやはり今は医療が必要だろうという場合は、医療機関を紹介させていただいて、医療につなげるということもやっています。この場合だったら、こういう自助グループ的な、大人数でグループで何かをやっていくというよりも、例えば一対一の専門家のカウンセリングの方がこの方はいいんじゃないかということであれば、それはまた、しかるべき相談機関というのが東京の場合は地方に比べれば充実しておりますので、そのようなところにその方たちを振り分けているということもございまして、そういう意味では、ただ電話で、こうこうこうですよ、頑張ってやめましょうと言うだけで終わったという方はないようには努力しております。

 何がこの方たちに効果的かというのは、僕は精神保健福祉士でもありますので、ある程度やはり、専門性といいますか、本人のことをわかってあげる、本人の属性もそうですが、家族歴や学歴や職歴や、あるいは、例えば、すごくこの人の自己中心的な部分が問題であるとか、その人に関してのいろいろな情報は最初の段階で割ととったりすることができるので、その人の情報を得て。

 アメリカなんかの施設に行くと、施設に保護観察官の方が来られたりしていて、そういう連携をしたりしていて、保護観察官が、この人の食事の好みまで僕は知っているみたいなことを言っていたというのが、僕が以前アメリカに行ったときに割と感動した次第ですが、そのように、その人に関して、私たちの役割というのは、やはり社会からはじかれてきた方ばかりなので私たちは詳しく理解して、そして、ある程度の専門性というのもそこでは必要になってくるので、その人に見合った治療へ導く、回復に導いていくということが大切であるかなというふうに思います。

中島委員 ありがとうございます。

 先ほど言ったように、今回の危険ドラッグの問題でございますけれども、今までの薬物依存、麻薬、覚醒剤等に比較して本当に一般の方が手を出しやすい状況にあった中で、気がついたらそういう問題を持っているんだ、誰に相談したらいいかわからないというケースも非常に多いのではないか。

 あるインターネット会社のプロバイダーさんに、地域ごとに危険ドラッグの検索件数を一旦出してもらったことがあって、それは購入目的ではなくて、やはり危険ドラッグに対して何とかしたいという思いの方が、誰にも相談できず、ネット上でアクセス数が集中したりということが一つのデータとしても出ております。

 そういう意味でも、ダルクさんの活動を今後も我々も御支援していきたいなというふうにも思います。

 もう一点、入所に当たっては、入所料等々、御家族の御支援も得られる方が多いということなんですが、回復して実際に今度社会復帰するに当たって、例えば御自宅へ戻られたりとか、それに当たっては、御家族の御支援、協力というのはまた不可欠になってくると思います。それに当たって、御家族への支援という意味ではどのような取り組みをされておりますでしょうか。

秋元参考人 家族の支援に関しては、実は東京ダルクは余り力を入れておりません。

 そもそも、東京ダルクに来るメンバーの、危険ドラッグの方は家族の支援が見込める方が非常に多いんですが、ほかの覚醒剤やアルコールなんかの方は、もうほとんど家族もいない、いてももう関係が全くないという方が多くて、ダルク全体を見渡してみても、大体七〇%弱の方は生活保護を受給しながら生活をしているという現状があります。

 ということで、全体として見たら、東京ダルクの場合は、家族の支援というのは、それこそ、うちだけで全部家族の支援までやるというよりも、家族は家族で、行政機関がやっておられる家族会があったり、あるいは、今度予算をつけていただけるみたいですが、最近はCRAFTなんという家族支援の専門的な治療プログラムもありますから、私たちは、家族に関しては、僕たちのところで何か全部完結するというよりも、ほかの別の機関で、家族は家族でやっていただくということの方が多いかなと思います。

 やはり初期の段階では、家族からは離した方がよいかなと。特に危険ドラッグの方に関しては、問題を起こして、すぐに家に戻っても、家族の監視のもと、何か針のむしろ状態のような形で皆さん生活なさっていて、要は、家族が被害者であれば、薬物を使用している息子は加害者みたいな形になってしまって、そのような状況の中でうまくいかないということは、ダルクの方たちの場合は間々あります。

 ですから、そのような方たちの場合は、一旦やはり家族から引き離して共同生活をずっとしてということをやりつつ、社会復帰に向けていく段階ですね、そのとき、社会復帰に向けるより前から、御家族は精神保健センターの家族プログラムにつながってください、こういうカウンセリング、こういう教育機関につながってくださいということは強く勧めるようにはいたしております。

中島委員 ありがとうございます。

 続いて、飯泉参考人にお尋ねをさせていただきたいと思います。

 関西広域連合の連携性というのは大変すばらしいなという中で、薬物乱用防止、危険ドラッグを含めてですが、制定しているのは、準備も含めてまだ数十県と、関西に集中しておるということなんですが、防止条例を制定していない多くの都道府県の担当者、なぜ条例で制定しないのかという問いに対して、県内に店がないとか予算が足りないとか、あと、条例をつくっても実際に実施体制がとれないというふうにお答えになっている自治体もある。そして、一方で、条例がある都道府県では、もうそういうことは関係ない、インターネットでどんどん入ってくるんだから、我々で守らなきゃいけないと。

 ここに大変温度差があるなというのは、実は私は山梨県なんですが、これは飯泉参考人もおっしゃったように、国が法制上の一律の整備をする、そこの大前提が必要だということは一致した意見なんですが、そうはいっても、今の現状の中で、やはり、各自治体、それぞれの特徴ある地域特性の中で、それぞれ条例をつくって足並みをそろえていくというのは大変重要なことではないかなということも言えると思います。

 この温度差に関して、一言御意見があればお尋ねしたいと思います。

飯泉参考人 実は、最初に六都府県でスタートしたこの条例ではあるわけですが、これはちょうど平成二十五年の四月段階。しかし、その後、関西広域連合におきましても、兵庫県がつい先般、そして京都府がもうパブリックコメントに条例案をかけておりまして、二府五県の中で、あと残るは滋賀県だけということになります。その滋賀県も、もう有識者会議を既に十月の十四日に開催しておりまして、条例制定に向けて前向きに進めているところであります。

 また、その周辺といいますか、サブメンバーといいますかで加わっていただいております福井県であるとか、あるいは三重県、そして奈良県、こうしたところも、先ほどの合同研修会にはもう加わっていただいている。とにかく、これはどんどん条例制定をしなければその外周に広がっていく、こうしたことがありまして、今、全国的に見ますと、九都府県におきまして条例が制定をされたことになっております。

 では、それ以外はどうなのかということでありますが、それ以外のところでも、既に十の団体が、この条例の制定につきまして前向きに行っていこう、今こうした状況になっております。

 確かに、国が一律に法律で規制をする、これが一番望ましい状況ではあるわけでありますが、今は、各都道府県におきまして、それぞれの地域の実情に応じて、それぞれを規制していく条例をしっかり定めていく、こうした方向にようやく動きつつあるのではないか、このように考えております。

中島委員 ありがとうございます。

 ちょっと時間も迫っておりますので、最後、和田参考人にお尋ねをしたいと思います。

 和田参考人のおっしゃった、日本は今まで薬物依存に関しては世界に誇る非汚染国であった、それが、この危険ドラッグが変えてしまうおそれがあるという言葉は大変印象的であります。

 そういう中で、指定薬物そのものに関しては、日本は恐らく、諸外国に比べれば、かなり数が多いんだと思います。結果、今まで、きょうお示しいただいたデータだとは思うんですが、今後、その危険薬物、これは日本だけではなく全世界の問題でもあるわけですけれども、諸外国の中で、この日本の薬物依存の問題、そして今回の危険ドラッグが崩してしまうポテンシャルを持っているということの中で、薬事法で対応できるものなのか、それとも、やはりもっと新たなものを確立していくべきなのか、御意見をいただければと思います。

和田参考人 大変重要な問題だと思います。

 やはり日本にとって一番重要なのは、きょう私が準備させていただいた資料の最初のスライドがそうです。副題をつけました。要するに、危険ドラッグ、これが端緒ですね。これが日本の問題を全部あぶり出していると私は見ています。

 その中で一番大きな問題が、だめ、絶対という、一次予防といいます。手を出したことのない人はこれからも出してはだめですよという、だめ、絶対です。これは世界一です。誇れることです。それが非常にうまく来たんですが、しかしその一方で、法だけで対応していくと、今回のような脱法という大変な問題にぶつかったということなんですね。

 そこで重要なのは、やはりそれをきちんと検出、同定する国家体制をつくるということなんです。それが一つです。それをやらないと、いろいろなことを考えて、結局のところ、しばらくは供給サイドは鳴りを潜める気がします、しかし、同じことがまた起きると思います。最終的には、法できちんと、この薬物はだめですよということをがちっがちっとつくっていかないことには、この問題はやはり無理だと思います。

 ということで、一点目として、きょうは、アメリカにはNIDAという薬物乱用研究所があるけれども日本は全くない、そんな大きなものは要らないけれども、やはり日本なりにきちんとその体制をつくることが必要だ、安全はただでは買えないというのが私の言い方です。やはりそういうことは考えるべきだというのが一つです。

 それからもう一つ、薬物に手を出した方、残念ながら、本当に回復するチャンスも与えられていないほど、ひどい状況です。はっきり申しまして、いろいろなところで、おまえ言い過ぎだと言われることもあるんですけれども、薬物に手を出した方が回復する、早期発見、早期治療、これは二次予防です。社会復帰、第三次予防です。二次予防、三次予防は、先進国の中で日本は最も貧困な国です。最貧国と私は呼んでいます。この現状を変えないと、再乱用防止をきちんとやらなきゃだめです。要するに、依存症対策です。

 ということで、検出の体制づくり、これを早急にやること。と同時に、二次予防、三次予防、早期発見、早期治療、社会復帰、これをきちんとやること。これをやらないと、どんどんどんどん世界の流れから日本が取り残されていく、その一方で、どんどん今回のような世界的な波が押し寄せてくる、それに対する対抗ができない、そういう事態に今陥っているんだと私は見ております。

 ということで、この二点、きちんと何とか審議していただければと思います。

中島委員 時間ですので、終わります。

 本日は、本当にありがとうございました。

上川委員長 次に、高橋千鶴子君。

高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 きょうは、三人の参考人の皆さん、貴重な御意見をいただき、大変ありがとうございました。時間が大変限られておりますので、早速質問に入らせていただきます。

 まず初めに、秋元参考人に伺います。

 私、実は、十年以上前に、秋元さんが週刊文春で江川紹子さんと対談をされた、御自身の経験を語られたものを読ませていただきました。ちょうどそのときに精神保健福祉士の資格を取られたということであったと思います。御自身の経験を通して同じ苦しみを抱えている方を援助される、本当にそこに強い説得力が出てきますし、当事者にとって、受ける人たちにとって非常に大きな力になると思いますので、本当に貴重な活動に取り組まれていることに敬意を表したい、このように思います。

 私、八月四日に委員会があって、国の対策を伺ったときに、依存症回復施設をもっと強めるんだと国が言っているわけですね。質を高める、そのために研修もするというふうなことを言ったのに対して、そうはいったって、現実の実態は民間団体であるダルクにかなり頼っているのに、どうも上から目線じゃないかということを指摘したことがあるんです。

 実際、埼玉県立精神医療センターの成瀬先生などは、雑誌の中で、ダルクができることには限界があります、そのことを理解した上で、ダルクを核とした回復支援のネットワークを築いていくことが必要です、いまだに一民間リハビリ施設であるダルクの孤軍奮闘が続いています、このように指摘をされておりました。

 ですから、秋元さんがそうなんだと言うのはなかなか難しい立場だと思いますけれども、でも、東京ダルクは東京精神保健福祉センターと連携して取り組んでいるわけですよね。そういうこともぜひ御紹介いただければと思うんですが、どうでしょうか。

秋元参考人 ありがとうございます。

 私はここ十五年ほど東京都の精神保健センターなので、主に家族が多いのですが、精神保健センターに薬物の相談の電話があって、その相談の電話があった御家族が実際に来所をされて、面接していろいろ聞き取りをして、いろいろな専門家の方々をそこにお呼びして、僕が聞いたその方に関して、その本人のことに関して、これをどういうふうに効果的に支援したらよいのかというのを、午後の時間帯、大体二時間とか三時間かけて話し合って、その話し合った結果を御家族に伝えて、御家族としてしかるべき治療につながれるように、本人は本人として、ダルクなり医療機関なりにつながれるようなことというのを精神保健センターの中でやらせていただいております。

 そしてもう一つは、先ほどから和田先生の資料にもございましたが、東京都の精神保健福祉センターでもSMARPPという認知行動療法をやっております。

 薬物依存症、危険ドラッグの方が非常に多いんですが、危険ドラッグの使用者があのような行政機関に来て、そこで認知行動療法のプログラムに参加できるというのは、非常に僕としては画期的なことといいますか、やはり、薬物を使った方というのは、端っこに追いやられて、居場所といえば病院の保護室や刑務所だというのがあったんですが、彼らのような本人がそのような行政機関の中に入って、そこで自分の回復治療に取り組めるというのは、これは非常に大きな取り組みではないかなと思います。

 そこにも去年から参加させていただいて、ダルクはダルクの活動として、やはりダルクなりの回復への導き方があります。行政機関で行うSMARPPなんかはSMARPPとして、やはりその人に応じた回復支援のあり方というのがあります。そこら辺は、自分の中で何か一つの主義とか一つの思いとかというのに余り凝り固まって支援することなく、やはり、当事者、その人主体で支援をしていくということを常々考えております。

高橋(千)委員 ありがとうございました。

 先ほど、最初のプレゼンのときに、ダルクのやり方になじまない方もいるという表現をされていましたけれども、そういうさまざまな、行政であり民間施設であり、ネットワークがあるし個性があるという中で、全体として支えていくことができたら、依存症対策を強めることができたらいいなと思って今聞かせていただきました。ありがとうございます。

 次に、飯泉参考人に伺いたいと思うんですけれども、まさに危険ドラッグは、販売であれ製造であれあるいは使用であれ、広域に動くわけですから、関西広域連合、まさにその名のとおり広域の対応をされているということはとても貴重だと思いますし、きょうお話しされました、国が一律でやらなければならないことと、地方の努力だけでは限界があると述べられたことは、非常にわかりやすいし、重要な御提言だったかなと思っております。

 その上で伺いたいなと思うんですけれども、今まで出てきたこととも関連をするんですけれども、徳島県でも条例をつくって、そして販売店はなくなったんだというお話をされました。本当に、これが各県に広がっていくことと、国の体制、両方必要だと思うんですが、いずれにしても、一律にやったとしても、やはり都道府県に期待される分野というのはありますよね。

 例えば、今回の一斉取り締まりにおいても、都道府県の薬事監視員が活躍した部分が大変ございます。また、ずっとお話しされている精神保健福祉センターの体制ですとか、いろいろな意味で県に期待される部分というのは大きいと思うんですよね。

 そういう点で、それが十分担保されているのか、まあ、行革の流れもあるんですけれども、その点、どのようにお考えでしょうか。

飯泉参考人 やはり我々地方公共団体の役割というのは、使わせない環境づくり、そして使わない人づくりという、つまり、この未然防止といった点がまず重要ではないかと思います。

 例えば、啓発といった観点が後者になるわけでありますが、では、免許を持った人が、二次的な、テロ行為と先ほどは申し上げたところでありますが、例えば多くのこうした事故を起こしてしまう。であれば、免許センターであるとか、あるいは免許の更新のときに、しっかりとその危険性を打ち込んでいくという形もとらせていただいているところでありますし、やはり、事前に察知をする。そして、県民の皆さんからの通報というのも重要なこととなりますので、本人自身あるいはその周囲の御家族の皆さん方が、何かそうしたものをやっておかしいといった気づき、あるいは、そうしたものをやっているんじゃないか、こういった気づき、これを通報していただく、いわゆる危険ドラッグ一一〇番、これも徳島県としてはフリーダイヤルで設けさせていただいております。

 あと、我々地方公共団体として重要なのは、ダルクの皆様方、民間団体の皆さん方はよくやっていただいておりますが、いわゆる回復対策ですね、復帰対策、こうした点について、やはり我々行政とそして医療機関と民間団体が三位一体になって親身に対応していく、こうした点が重要になるかと思いますので、やはり国の、国一律での規制といったものと、そして事前防止の点と、そして不幸にしてそうしたものに手を出してしまった人たちの回復、復帰対策、こうしたものをしっかりとかみ合わせる必要がある、このように考えております。

高橋(千)委員 ありがとうございました。

 おくればせながらかもしれませんが、国も、今回そうした点で予算を拡充するということで今概算要求をしておりますので、ぜひ後押しをして、都道府県の取り組みも支えていけるようにできればいいなと思っております。

 次に、和田参考人に伺いたいと思います。

 きょう非常に強調されましたこと、よくわかります。検査の体制、やはり同定なしに規制をするということの難しさの問題、受け皿がなくやっていくということで、やはり、今起こっていることに何とか対応したいという気持ちで国会も議論をしてきましたけれども、しかし、本当に受け皿がないということをちゃんと捉えて対応していかなければ大変なことになるということではないかなと思って、非常に貴重な機会をいただいたかと思っております。ありがとうございます。

 そこで、まず一つは、先ほど和田先生自身が紹介されましたけれども、例えばSMARPPなどの依存症回復プログラムに今正当な診療報酬がついていないという問題。やはりそれが、治療の現場で、一千六百以上も精神病院があるにもかかわらず、本当に四つしか受け入れているところがない、そこに偏在しているというところにある。もちろん、そこの受け手の教育というのが必要だということも非常に大事だと思うんですが、プログラムなどに対して、例えばマルメではなくとか加算が必要ではないかとか、そうした要望も現実に出されているわけですよね。そういう意味で、正当な診療報酬が必要だと思っておりますが、どのようにお考えでしょうか。

和田参考人 診療報酬の話になりますと、実は随分前からアルコール依存症と薬物依存症に対して重度加算というものをつけてもらいたいという要望がずっと出されていたと思います。ところが、残念ながら、薬物とアルコールをパッケージとして要求してきたわけですが、ことごとく毎回認めてもらえなかったようです。

 ところが、前回になりますか、前々回になりますか、初めて薬物とアルコールを分離して、それぞれ分けて重度加算をお願いしますという申請をしたら、アルコールが通りました。薬物は落とされました。ということで、そういう現状で今薬物は何の加算もありません。

 しかし、これは病院から見ますと、正直言いまして、本当に言葉は悪いんですが、手間暇かかるのは薬物の患者さんなんです。また、なかなかルールも守ってもらえない方がいたり、そういうことがあって非常にやりにくいのも事実です。だけれども、私たちから見ると、そういう意味で、やはり大変な患者さんを診ることに対してこそ重度加算をつけてもらいたい。

 そういう意味では、本当に、薬物関連精神障害者を診ていく、それに対する重度加算というものはやはり絶対必要だと思います。それがないと、そういう患者さんを診ていこうという病院がふえないという現実があります。

 また、SMARPPについても、これは精神保健福祉センターは基本的には相談業務の場所ですから、いわゆる診療報酬に関係ないところが多いわけです。だけれども、これを病院でやるとなると、やはり診療報酬がないと、そこに人を割こうということができません。

 ということで、ぜひこれは、SMARPPにしても、あるいは薬物関連患者を診る、それ自体に対しても、やはり診療報酬の問題が一番大きいかなと思っています。

高橋(千)委員 ありがとうございました。

 アルコールがよくて、なぜ薬物がだめなのかということで、ちょっと聞いてみたら、やはり薬物依存の患者というのは結局自分が悪いみたいな、そういうすみ分けがあったように聞いております。

 でも、先生自身がおっしゃっておりますけれども、薬物依存というのは精神障害のあれで、たまたまそれが薬物だったんだというふうなことをやはりきちっと整理をしていって、これは何としてもかち取る必要があるのかなというふうに思っております。

 もしその点でもう一言あれば伺いたいのと、最後に、家族の支援とか、いわゆる出所後の支援ということは絶対必要だと思っております。御意見ありましたら一言お願いいたします。

和田参考人 アルコールとそれ以外の薬物はどう違うんだという話、全くこれはいつも出てくる話です。やはり、薬物をやってはだめだというのにやったおまえが悪いだろう、この論理は非常にわかりやすいです。私もそう思います。ただし、なんです。医者から見ますと、あるいは医療従事者から見ますと、原因を問わず、やはり病気になった方々を診るのが医療従事者の仕事だと私は思っています。簡単に言うと、あなたは殺人犯だから診ませんよなんという、そんなばかな論理はないわけです。薬物も全く同じです。原因は、それはいろいろあるでしょう、だけれども、そこでいわゆる精神障害というものになれば、それを診るのが精神医療です。私たちは、原因で患者を診ているわけではありません。ところが、診療報酬の話になると、全然話がひっくり返ってしまいます。

 ただ、そこでももう一つ私は考えていただきたいのは、どうもこれまで日本は、薬物問題というと覚醒剤ばかり考えてきたわけですよ。だけれども、今まさに法の網を抜けた脱法という問題が出てきています。これは法に触れないわけですね、そこに本質があると思いますけれども。それ以外に、抗不安薬、睡眠薬の依存がどんどんふえているんです。これは違法でも何でもありません、犯罪でもありません。病院にかかることによってそういうものを処方されて、逆にそれに依存するという、とんでもない事態が起きているわけですよ。そういう患者にも保険を適用しないのかとむしろ言いたいくらいです。

 ですから、やはりその辺のことは、もう一度、診療報酬というところは犯罪性ということだけで考えるのではなくて、今何が起きているか、そういうことを含めて考えていただきたいと思います。

 それから、最後になりますが、家族です。本当にこれは、正直言いまして、薬物に依存している最中の御本人は、なかなか自分以外のことを考える余裕もなくて、場合によっては、ひたすら薬物を使ってハッピーなのかもわかりません。しかしその一方で、一番困っているのはやはり御家族です。もう本当に、その方々の心労、あるいは経済的負担は並のものではありません。

 そういうことで、そういう方々に対して、まず御家族の態度を、あるいは気持ちを和らげる。それによって、薬物を使っている本人自身の対応も変わってきます。そういうことで、やはり家族を救うということが非常に重要だと考えております。

 以上です。

高橋(千)委員 終わります。ありがとうございました。

上川委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人の方々に一言御挨拶を申し上げます。

 参考人の方々には、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。ありがとうございました。(拍手)

 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時二十一分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

上川委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 厚生労働関係の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として警察庁刑事局組織犯罪対策部長樹下尚君、財務省大臣官房審議官松村武人君、厚生労働省医薬食品局長神田裕二君、医薬食品局食品安全部長三宅智君及び社会・援護局障害保健福祉部長藤井康弘君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

上川委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

上川委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。高鳥修一君。

高鳥委員 自由民主党の高鳥修一でございます。

 ついこの間までそちら側の答弁席におりましたが、こちら側に移ってまいりまして、早速きょう質問に立たせていただきます。大変ありがとうございます。

 きょうは、危険ドラッグを中心とした一般質疑ということでございます。政務官をやっておりますと、なかなか言いたいことも言えないし、聞きたいことも聞けない、そういうわけでありますが、一議員になりましたので、あのとき聞いておきたかった、そんな話も出るかもしれませんが、どうか御容赦をいただきたいと思います。

 なお、答弁は、慎重かつ丁寧かつ冷静にお願いしたいと思います。

 では、早速でございますが、大臣に一問お聞きをしたいと思います。

 厚生労働行政に取り組む基本姿勢について、所信の中で、社会的弱者への支援にこれまで以上に力を入れると真っ先に表明されましたことを、私は高く評価したいと思っております。

 一方、私も政務官時代に何度か出席をいたしましたが、産業競争力会議の中で、強い企業がより強くなることが日本経済を強くするという趣旨の発言がございました。

 経済政策としては確かにそれは正しいのかもしれませんが、厚生労働行政におきましては、このような市場原理主義的な発想ではなく、最も弱い者を一人も漏れなく守るという気持ち、これは、ことし六月九日に天皇皇后両陛下も御臨席になられました、全国重症心身障害児(者)を守る会創立五十周年の大会スローガンでございます。

 このような福祉の心、これが厚生労働行政の根底になくてはならないと私は考えますが、大臣の所感をお聞かせ願いたいと思います。

塩崎国務大臣 今、高鳥先生から、最も弱い者を一人も漏れなく守るということが厚生労働行政の基本でなければならないというお話がありました。そのとおりだと思います。私も、今お話をいただいたように、最初に、この弱い立場の方々のために汗をかかなきゃいけないということを申し上げたわけです。

 これまで私も、いろいろ誤ったイメージで、誤解をされている部分がたくさんあるなということで、当惑をしているわけでありまして、私、初当選で最初に所属した委員会は、大蔵委員会とそれから文教委員会でありました、今で言う文科委員会ですが。しかし、一年ぐらいたったところで、たしか厚生委員会に変わりまして、その後参議院に移りましたけれども、その後も、参議院は一つしか常任委員会は所属できませんでした、そういうことで、私は厚生委員会を選んだわけであります。

 それはやはり、地元で、障害者の皆さん方とかいろいろな弱い立場の方々、あるいは高齢者、そういった方々とのミニ集会やいろいろな勉強会をしながら、今の重症心身障害児のお話もありましたが、まさにそういう方々と一緒に私は仕事をしてきたつもりでありまして、決して市場原理主義のようなものを信奉しているわけではございません。

 やはり経済が強い方がそれは社会保障制度が、あるいは障害者施策も含めて基盤がしっかりするということで、経済成長があって、それはもう前提として、その上で、弱い方々のために何をするのかということが大事だというふうに思っておりますので、厚生労働行政の基本を忘れることなく、しっかりやっていきたいというふうに思っております。

高鳥委員 心強い御答弁、大変ありがとうございます。ぜひ、福祉の心を持って厚生労働行政に取り組んでいただきたいと思います。大臣の御活躍を心から祈念いたしております。

 次に、危険ドラッグについてお伺いをしたいと思います。

 きょう、理事会前に、危険ドラッグとの関連が疑われる事故の被害者の御遺族からお話を伺いました。亡くなる前の、闘病中の傷だらけのお嬢ちゃんの写真を拝見して、言葉もありません。

 危険ドラッグが罪のない多くの子供や若者を含む人たちの夢や未来を奪ったという事実を重く受けとめて、この撲滅に全力で取り組まなければならないと思います。

 まず、七月の総理御指示を踏まえて、厚生労働省としてどのような対策を行ってきたかをお聞きいたします。

 店舗では、薬事法七十六条の六に基づいた検査命令と販売停止命令が出されておりますが、どのような効果が上がっているか、答弁願います。

神田政府参考人 危険ドラッグ対策についてでございますけれども、本年七月に総理から、できることは全て行うという指示を受けまして、緊急対策に沿いまして関係省庁一丸となって取り組みを進めているところでございます。

 厚生労働省におきましても、その後、約二カ月の間に、指定薬物である疑いのある物品について、薬事法に基づく検査命令及び販売停止命令を初めて発動いたしまして、現在までのところ、九月二十九日現在で、十八都道府県において立入検査を実施した結果、昨年度末に二百十五店舗ございましたけれども、約三分の二の百三十七店舗を廃業、休業に追い込むなど、かなりの成果が上がってきているというふうに考えております。

 また、インターネット対策につきましては、本年八月以降、指定薬物の指定から施行までの間、プロバイダー等に対しまして販売サイトの削除を要請いたしまして、国内サイト八十三のうち六十二を、国外サイト四十五のうち三十六を、閉鎖または危険ドラッグが売られない販売停止の状態に追い込んでおります。

 今後、こうした対策に加えまして、関係省庁と連携して、無承認医薬品としての取り締まりなどに積極的に取り組んでまいりたいと考えております。

高鳥委員 店舗に対しては一定の成果が上がっていると思われますけれども、次に、インターネット販売、これが大変深刻な問題であろうと私も思っております。

 試しに私も検索をしてみましたら、販売サイトが出てまいりました。御丁寧にインフォメーションとして、九月十九日に新たに十四物質を指定薬物とする規制が公布されました、現在販売中の商品は全て対象外となりますと書いてあるんですね。つまり、合法だから大丈夫と受け取れる内容がインターネット上では示されているということでございます。

 どうすれば有効な対策が可能と考えておられるのか、厚労省はプロバイダーに対して危険ドラッグ販売サイトの削除を要請していると思いますけれども、その要請は法的な根拠に基づくものなのか、お答え願いたいと思います。

神田政府参考人 インターネット販売サイトに関する課題といたしましては、サイトに表示されている住所等が架空であることが多いなどのために、薬事法に基づく、先ほど申しました検査命令とか販売停止命令といった対応が実務上非常に困難であるという課題がございます。

 このため、現在は、厚生労働省や警察からのインターネットプロバイダー等に対する要請という形で対応しているところでございます。これにより一定の成果は上げているものの、あくまでも要請ベースというものでございますので、厚生労働省としても、警察庁の委託を受けてネット上の違法有害情報を収集しておりますインターネット・ホットラインセンター、また日本インターネットプロバイダー協会など民間通信四団体など、さまざまな機関と連携いたしまして、効果的にサイトの削除を進められるよう努力してまいりたいというふうに考えております。

 それから、プロバイダーの削除要請は法的根拠に基づくものではございませんけれども、指定薬物に指定したものについては人体に影響を及ぼすことは明らかになりますことから、その施行前には、これらの広告を行っている販売サイトにつきましては、薬事法六十八条に違反する未承認医薬品の広告としてプロバイダー等に削除要請を行っているところでございます。

高鳥委員 ありがとうございます。プロバイダーによる削除というのは、あくまで基本的には要請ベースということがわかりました。

 であるならば、プロバイダー責任制限法のように、危険ドラッグ販売サイトの削除を行ったプロバイダーが、削除された側に対して損害賠償責任を負わないとする規定もあわせて整備するべきではないでしょうか。より削除しやすい環境を整備するために、意見として申し上げておきます。

 次に、指定薬物への指定について。

 これは、もちろん迅速に行われるべきでありますけれども、総理御指示を受けてどのように取り組んできたのか、動物実験などの簡易な検査でもっと迅速に指定ができないのか、お答え願います。

神田政府参考人 六月二十四日の池袋の事故で発見されました危険ドラッグ二成分につきましては、審議会手続を省略いたしまして、事故から三週間で指定をいたしております。

 その後も、八月十五日、九月十九日の二度にわたって指定を行っておりますけれども、その指定に当たりましては、成分の精神毒性が判明した後、これまで四カ月弱かかっていたプロセスを、パブリックコメントの省略と、公布から施行までの期間を十日に短縮するということで、約三週間に短縮するなど、迅速な指定に努めているところでございます。

 それから、これらの指定に当たりましては、まず、危険ドラッグに含まれる成分の精神毒性を検査する必要がございますけれども、その検査だけでも一カ月程度は要しているところでございます。指定薬物の定義といたしまして、中枢神経系の興奮もしくは抑制、または幻覚の作用を有する蓋然性が高いというふうにされていることから、この精神毒性の検査がどうしても必要になるというふうに考えております。

 本日、和田参考人の方から、簡易な検査が開発されたというふうにございましたけれども、これは厚生科学研究の中で行っているものでございまして、カンナビノイド受容体を持つ細胞を培養いたしまして、その細胞にカンナビノイド系物質が反応いたしまして、蛍光たんぱく質が光るというような形で反応するという手法が開発されております。

 私どももこれは大変期待をして待ち望んでおるわけでございますけれども、現状で申しますと、実験室の中ではそのようなことができるようになっておりますけれども、これは生きた細胞を用いるということでございますので、生きた細胞を生きた状態で取り締まりの現場に持ち込んで同じようなことができるかどうかという点については、現状ではまだそのようなことが難しいということから、まだ実用化に至っていないところでございます。

 カンナビノイド系物質以外のものでは、そのような簡易な検査法というのは、私ども、現在のところ承知いたしておりません。

高鳥委員 ありがとうございました。よくわかりました。引き続き、指定の迅速化に努めてもらいたいと思います。

 次に、税関での水際対策についてお聞きをいたします。

 これは、もし入り口で全部とめるということができましたら、国内に一旦入ってそして散らばってしまったものを後から追いかけて対応するよりも、最も効果が上がるのではないかと私は思います。

 麻薬ならば、輸入禁制品としてその場で没収並びに摘発に踏み切れるわけでありますが、危険ドラッグにつきましては、輸入禁制品となっていないために、没収並びに捜査機関への通報ができないと聞いております。

 ならば、まず第一に、指定薬物に関しては、麻薬と同じように輸入禁制品に追加するということを検討していただきたい。そうすると、その場で全て没収できるということになります。

 そして、第二に、未規制物質につきましては、税関で何らかの形でとめ置くというような措置を講じられるように取り組むべきではないかと思いますが、御答弁いただきたいと思います。

松村政府参考人 お答えいたします。

 指定薬物を輸入禁制品に追加するよう検討するべきではないかという御指摘でございます。

 関税法上の輸入してはならない貨物、いわゆる輸入禁制品は、一般に、国民の安全等の観点から、輸入禁止により効果的な取り締まりが期待できる物品につきまして、当該物品の規制を所管する当局の法令、ここでは薬事法でございますが、それによります輸入規制がどのように定められているのか等を踏まえながら対象を規定しているものでございます。

 御指摘の指定薬物の輸入禁制品への追加につきましては、先生の御指摘を踏まえ、今後、関係省庁と協議の上、前向きに検討してまいりたいと考えております。

 それから、未規制物質の差しとめということでございますけれども、財務省・税関におきましては、七月の薬物乱用対策推進会議の緊急対策を踏まえまして、厚生労働省との連携を強化しており、税関の分析において規制薬物または指定薬物に該当するという疑義が払拭できない場合は、通関手続を保留した上で、積極的に厚労省に分析を依頼することとしております。

 また、指定薬物に該当するおそれがある貨物に関する情報につきましては、必要な範囲内で関係機関と共有して、関係機関による国内の取り締まり強化に資するよう取り組んでいるところでございます。

 こうした取り組みによりまして、税関におきまして、規制薬物、指定薬物はもとより、広く規制薬物または指定薬物に該当するという疑義が払拭できない物質等の国内流入を抑えるとともに、厚労省におきましては、これらの物質の分析結果等も活用して、新たな指定薬物の迅速かつ効果的な指定を行って、こうした薬物の国内流入阻止を徹底することになるものと考えております。

高鳥委員 前向きな御答弁をいただきまして、ありがとうございます。ぜひ全力で水際対策に当たっていただきたいと思います。

 加えて、きょうは文科省はお呼びしていないんですけれども、青少年に対する教育、啓発にも努めるべきであると思います。

 ちょっと話題をかえさせていただきます。

 高階政務官にお聞きをいたします。

 外国人技能実習制度の対象職種の拡大、期間の延長が検討されております。

 私は、日本人労働者の処遇改善を進めるのが本来あるべき姿ではないかと思っておりますが、労働力不足を安易に外国人に求めることは、日本人労働者の賃下げにつながりかねません。また、文化の違いからくるトラブルや治安の問題など、国民的なコンセンサスは得られているのでしょうか。

 ぜひ慎重に進めるべきだと思うのですが、いかがでしょうか。

高階大臣政務官 高鳥前政務官の後を引き継がせていただいております。

 御指摘の、技能実習制度の見直しについて幅広い観点から検討すべきであるということでございます。

 御承知のとおり、高度の専門知識または技術を有する外国人の我が国における受け入れ及び定着につきましては、積極的に推進するというのが政府の方針でございます。

 しかしながら、その一方で、外国人労働者の受け入れ範囲を拡大することについては、日本人労働者の処遇改善や治安等の国民生活への影響に鑑み、国民的コンセンサスを踏まえつつ検討、議論する必要があると認識しております。

 外国人技能実習制度の見直しに当たりましては、議員御指摘の点をしっかりと踏まえつつ、管理監督体制を抜本的に強化することのほか、対象職種の拡大や期間の延長等につきましては、法務省等関係省庁と連携をして検討を進めてまいりたいと思います。

 今後ともよろしくお願いいたします。

高鳥委員 ありがとうございます。

 基本的な話ですけれども、働く人、これは日本人労働者ですが、働く人が安心して働き続けられる環境を守るのが厚労省の基本的な立場だと思いますので、高階政務官には、ぜひ頑張っていただきたいと思います。

 それから次に、橋本政務官にお聞きをいたします。

 社会福祉法人改革に関連しまして、介護報酬をマイナス六%改定することが財政審によって提言をされております。介護の現場で働く人たちの処遇改善を進めることこそ、喫緊の課題だと私は考えております。

 一方で、障害福祉関係の報酬改定は、私も政務官時代に主査を務めました障害福祉サービス等報酬改定検討チームが立ち上がり、検討が進んでいるはずでありますが、現在どこまで進んだか、状況と見通しを教えていただきたいと思います。

橋本大臣政務官 障害福祉サービス等の報酬改定につきまして御質問をいただきました。

 この障害福祉サービス等報酬改定につきましては、大臣政務官を主査といたします報酬改定検討チームにおきまして検討を進めておりまして、先日まで高鳥政務官が主査をしておられまして、その後、私が担当させていただいております。このチームにおきましては、有識者の参画を得ながら、そして、これまで四回にわたる関係団体からのヒアリングを含め、八回の会合を開催して、議論を進めているところでございます。

 今回の報酬改定につきましては、特にさきの通常国会で、介護・障害福祉従事者の人材確保のための介護・障害福祉従事者の処遇改善に関する法律というものを国会でお定めいただいております。このことも含めまして、特に障害福祉従事者の処遇改善はまことに重要な課題と認識をしておりまして、このチームにおきましてしっかり議論してまいる必要があるというふうに考えております。

 具体的な対応につきましては、経営実態調査の結果等も踏まえながら、年内に基本的な方針を取りまとめるべくチームの議論を進めてまいりたいと思っておりますが、高鳥議員の御指摘も十分重く受けとめまして、対応させていただきたいと思っております。

高鳥委員 私も福祉の関係の現場に何らかのかかわりを持ってずっと来ましたので、介護、福祉の現場で働く人たちの処遇改善を進めるということは非常に重要な課題だと思っておりますし、また、この人たちの報酬が上がるということ、所得がふえるということ、これは大変大きな景気対策にもなると思いますので、ぜひ全力で取り組んでいただきたいと思います。

 最後に、これはちょっとお聞きしようと思ったんですが、時間の関係といいますか、時間はないわけでもないんですけれども、きょうはこれは提起だけにしたいと思いますけれども、クロチアニジンの残留濃度について。

 国民の健康を守る、より安全な方向に導くというのが厚生労働省がとるべき基本的な立場、考え方だと私は思います。この問題につきましては、慎重の上にも慎重に進めていただきたいということを要望だけいたしまして、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

上川委員長 次に、輿水恵一君。

輿水委員 公明党の輿水恵一でございます。

 午前中に引き続きまして質問の機会を与えていただきまして、心より感謝を申し上げます。

 きょうの午前の参考人質疑の中で、危険ドラッグの蔓延防止等に対してのさまざまな貴重な御意見をいただきました。私は、本日、この危険ドラッグの実態の再確認と蔓延防止の対策、この点について質問をさせていただきたいと思います。

 まず、そもそもこの危険ドラッグ、既に規制されている麻薬や覚醒剤などの指定薬物の化学構造を一部変えた物質を含んでいる。さらに、体への影響は、麻薬や覚醒剤と変わらないどころか、さまざまな不純物を含んで、そして、その危険性というのは非常に高いと言われております。

 この危険ドラッグの体への影響について、まず、具体的にどのような事態に陥るのか、また、危険な状態に陥った場合どのような対処がなされるのか、さらに、副作用としてどのような症状が身体にあらわれるのか、その点について改めて確認をさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いします。

    〔委員長退席、とかしき委員長代理着席〕

神田政府参考人 危険ドラッグは、脳内での神経伝達を阻害し、その結果、急性症状として、例えば合成カンナビノイド系とされる物質では、色の異常や物がゆがんで見えるといった知覚変化や、突然動悸や発汗が起こるパニック発作などがございます。また、カチノン系とされる物質では、幻覚や妄想などが、そのほかに呼吸困難などが起きることもあり、場合によっては死に至るおそれもございます。

 さらに、脳内での作用のほかに、全身作用として、横紋筋融解症と言われる筋肉細胞の破壊ですとか、破壊された筋肉から流出した成分によります急性腎不全などが起きることもございます。

 薬物乱用を続けますと、知覚変化が生じたり、幻覚などで得られた多幸感を求めまして、薬物を摂取したいという依存が形成されます。さらに乱用が続きますと、幻覚、妄想等が持続するなど慢性中毒に至ることがございます。

 さらに、危険ドラッグにつきましては、先ほど御指摘のように、何が含まれているかわかりませんので、現在知られていない新たな有害作用が発現するおそれもございます。

輿水委員 どうもありがとうございます。

 今聞くだけでぞっとするような、そういった危険なものであるということが確認されたわけでございますが、このように人体に多大な障害をもたらすこの危険ドラッグは、現在、インターネットや店頭販売等で意外と簡単に国民の手に入ってしまう、そういった状況にございます。

 最近、この危険ドラッグに起因する事件や事故が多発している。ここで疑問に思うことは、こんなに危険なものなのに、なぜ安易に購入し使用してしまうのか。ここに大きな問題があると思います。

 この点について、厚生労働省におきましてはどのような分析がなされているのか。また、最近中学生にも広まりつつあると言われているこの危険ドラッグの蔓延の実態等も、あわせてお聞かせ願えますでしょうか。

神田政府参考人 蔓延の実態についてでございますけれども、危険ドラッグの使用実態につきましては、二〇一三年十月現在で、五千人を対象に調査をいたしましたところ、三千名弱の有効回答を得た調査の結果では、危険ドラッグを使用したことのある方の割合というのが〇・四%、推計いたしますと約四十万人ということになってございます。また、危険ドラッグを使用したことのある者の平均年齢は三十三・八歳と、ほかの薬物と比較して若いという結果が出てございます。

 また、中学生の使用実態について、二〇一二年の十月から十二月現在、危険ドラッグを使用したことがあると回答した中学生の割合は〇・二%という調査結果がございます。

 なぜ蔓延するんだろうかということでございますけれども、いろいろなところで売っているということで、一般の店舗でも売っております。それから、カフェですとかネット等の形態でも売られているということもございますし、三千円から六千円程度ということで比較的安価ということもあって、比較的入手しやすいということから、そのような広がりを見せているものというふうに考えております。

輿水委員 どうもありがとうございました。

 ただいまございましたように、危険ドラッグ、非常に危険な、そういったものであると同時に、意外と手に入りやすい状況にある。まずは、こういったことをいかにより多くの世間の皆様に、また学生も含めて知らせていくのか、その情報を共有していくのか。このことにつきましては、厚生労働省だけではなく文部科学省も含めて徹底的に進めていただきたい、このように思っている次第でございます。

 そこで、この危険ドラッグ、ただいま御説明していただいたとおり、大変に危険だ、このまま放置しておくわけにはいかない。午前中の参考人からもありましたけれども、使わない人をつくる、また使わせない環境をつくる、そういったことも非常に重要かと思います。

 この危険ドラッグが簡単に手に入らないように、至急対策が必要である。そのために、国はどのようなことをまず進めたのか、また今後どのようにしようとしているのか、その点についてまずお聞かせ願えますでしょうか。

橋本大臣政務官 お答えいたします。

 危険ドラッグにつきましては、深刻な社会問題であるとの認識から、政府は本年七月に緊急対策を策定いたしまして、関係省庁一丸となって取り組みを進めてきておるところでございます。

 厚生労働省といたしましては、その後、約二カ月の間に、指定薬物の迅速な指定、これは毎月、七月には二物質、八月に二十一物質、九月には十四物質、こう矢継ぎ早に指定をしているということ。それから、指定薬物の疑いのある物品に対する取り締まりの徹底、これは薬事法第七十六条の六という項目がございまして、それに基づき検査命令及び販売停止命令をかけるということ。それから、指定直前の薬物のインターネットサイトの削除要請等に積極的に取り組んでまいっております。

 特に、検査命令、販売停止命令につきましては、その発動によりまして、昨年度末で二百十五あった店舗の約三分の二、百三十七店舗を廃業、休業に追い込むなど、相当の成果を上げているものと考えております。

 ただ、まだ残っているといえば残っておりますので、危険ドラッグを容易に入手することができないような状況を一日も早く実現するように、取り締まりあるいは販売サイトの削除要請等に全力で取り組んでまいりまして、安全な社会を取り戻していきたい、このように思っております。

輿水委員 どうもありがとうございます。

 さて、ここで、危険ドラッグの乱用者や販売機関の取り締まり状況について、この四月より、薬事法の改正により、指定薬物の販売者に対する規制に加え、個人の単純所持や使用等への規制が追加をされました。この改正を受けてのここ最近の摘発の状況についてお聞かせ願えますでしょうか。当局。

樹下政府参考人 危険ドラッグに係る検挙状況についてでありますけれども、平成二十六年上半期におきまして、百二十八事件、百四十五人を検挙しております。

 その後、検挙事件数、人員ともに大幅に増加いたしまして、本年九月末現在で、三百五十九事件、四百六人に上っているところでございます。そのうち、ことしの四月の改正薬事法の施行によりまして新たに規制の対象となりました指定薬物の単純所持、使用等で検挙した乱用者は、百三十五人でございます。

 今後とも、危険ドラッグの乱用の根絶を図るため、関係機関とも連携をし、各種法令を駆使した取り締まりの強化や、危険ドラッグの危険性について啓発を強化するなど、政府の緊急対策に掲げられた施策を的確に推進してまいりたいと考えております。

輿水委員 大分大きな成果というか、この摘発が多いことがいいのか悪いのかわからないんですけれども、しっかりと進めていただいて、そういった蔓延する環境を何としても食いとめるような、そんな取り組みをぜひお願いいたします。

 インターネット販売についての対応についても確認をさせていただきたいと思います。

 インターネット販売の摘発におきましては、インターネット・ホットラインセンターにて、一般のインターネット利用者等から違法情報や有害情報に関する通報を受理し、警察への通報やサイト管理者等への削除依頼を行っていると伺っております。

 ここで、危険ドラッグはその対象になっていない、こんな現実があるわけでございますが、政府の緊急対策において、通報等の対象情報の範囲を見直し、危険ドラッグに関する情報についてもインターネット・ホットラインセンターで取り扱う検討を進められていると伺いましたが、その状況についてお聞かせ願えますでしょうか。

    〔とかしき委員長代理退席、高鳥委員長代理着席〕

橋本大臣政務官 お尋ねのございましたインターネットの対策につきましては、本年八月以降、指定薬物の指定から施行までの間、プロバイダー等に対して販売サイトの削除を要請しております。これは先ほど申し上げたとおりです。

 これは、要は、指定をして施行されるまで、十日間ぐらいの周知期間がございます。その期間中、あと数日で売れなくなるのでといってバーゲンセールを始めるという、これはある意味では悪質なサイト、そうしたものについて特にしておりますが、国内サイト八十三のうち六十二、そして国外サイト四十五のうち三十六を閉鎖または危険ドラッグの販売停止に追い込んでいるということをしております。

 そして、御指摘がございましたように、インターネット・ホットラインセンターのガイドラインに、違法情報または有害情報というところに指定薬物あるいは無承認医薬品を位置づけ、警察の捜査に結びつけるようにすること。そして、民間通信四団体が策定するガイドライン、契約約款モデル条項におきまして、プロバイダーが予告なく危険ドラッグの販売サイトを削除等できることを明確化すること。今月中にはそのようなことを実施いたしまして、販売サイトの閉鎖あるいは摘発等を積極的に進めていく、あるいは、その進めるためのモデル約款を、要するに、そのようにしていただければ民民のことで話ができるということになるわけですから、そうした対策を進めていくということでございます。

 先ほど来申し上げておりますが、ネットでも容易に買うことができないように、政府としても厚生労働省といたしましても、引き続き全力で取り組んでまいる所存でございます。

輿水委員 どうもありがとうございます。

 この危険ドラッグについては、今御説明ありました、さまざま、先ほどの質問の中にもありましたが、検査命令や販売停止命令を効果的また効率的に活用しての取り組み、あるいは取り締まりの強化、今後もぜひしっかりと進めていただきたいと思いますし、できる限り効果的に働くように、また効率的に動くような、そんな検討もぜひお願いをしたい、このようにお願いいたします。

 そのような中で、先ほど、和田参考人、国際社会の中において日本のドラッグの汚染というのは非常に低い状況にある。逆に、低いということはドラッグ等に対しての免疫力が弱い、そういった状況にあるのかもしれません。そういった中で、国際的な協力をもとに、日本だけの対策ではなく、全体と、いろいろな国々と連携をしながら、この危険ドラッグというものに対して認識を共有し、これをどう抑え込んでいくのか、そういったことも必要かと考えるわけでございます。

 日本が、ドラッグ、今低い状態に抑えられている。そういった国が率先して、国連にも機関があると先ほどの参考人からもございましたが、そういったところと連携をとりながら、リーダーシップをとって、国際機関、世界全体でこの危険ドラッグの撲滅に、日本が先頭に立って進めていくべきではないか、このように感じるわけでございますけれども、当局の見解また思い等をお聞かせ願えますでしょうか。

橋本大臣政務官 先ほど来申し上げておりますように、政府そして厚生労働省といたしまして、この危険ドラッグの対策をまずは一生懸命進めるということに取り組んでいるところでございます。

 より効果的、効率的にということもございますけれども、私たちとしても、そうしたことは常に頭に置いておりますし、現在、野党から法案を提出していただいておりますから、これは国会においてあるいは与野党間での協議等があろうと思いますけれども、その協議もきちんと注視をさせていただいていきたい、このように思っておりますし、実際、それが調いましたらば、それを施行する責任を負うということにもなりますので、求められれば必要な対応を行っていきたいと思っております。

 そして、今、国際的な問題というお話をいただいております。

 各国でも問題となっておりますので、国際的な取り組みが有効かつ必要であろうというふうにも思っております。

 我が国といたしましては、国連麻薬委員会、CND、あるいは国連が主催する国際会議、国連薬物犯罪事務所、UNODCが行っております各国の取り締まり情報等の集約、分析、発信の取り組みに参加をし、国際社会と連携して危険ドラッグの問題にはしっかりと取り組んでまいりたい、このように考えております。

輿水委員 ぜひよろしくお願いいたします。

 それでは、最後の質問で、やはり最終的には、この危険ドラッグ、一人一人が自覚と責任の中でしっかりとこれを使用しないような、そういった社会を築いていくことが大事ではないかというふうに思うわけでございますが、危険ドラッグに対する情報の提供、またその情報の共有等について、今までどのようなことが進められ、今後どのように進めていくのか、確認をさせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

    〔高鳥委員長代理退席、委員長着席〕

神田政府参考人 危険ドラッグの危険性等についてでございますけれども、まず、名称につきましては、従前、脱法ドラッグという呼び方で、危険性が伝わらなく、乱用を誘発する可能性があるということから、警察庁と協力いたしまして新しい呼称を募集いたしまして、七月二十二日に、規制の有無を問わず使用することが危ない物質であるということを明確に示す危険ドラッグという呼称を選定したところでございます。

 また、厚生労働省としては、若い世代を中心にその危険性を国民に認識していただくために、青少年向けのリーフレット、ポスターの配布でありますとか、あるいは小中高校などに、あるいは地域のイベントに専門家が訪問いたしまして啓発活動を行うこと、ツイッター、フェイスブックを活用した情報発信などの啓発活動に取り組んできているところでございます。

 今後とも、平成二十六年四月から指定薬物の単純所持、使用だけでも罰せられることになりました、また新しい名称に変更したことを踏まえまして、何が含まれているかわからないという危険性、それから、積極的に指定薬物に指定しておりますので、持っているだけで犯罪になる可能性が高いんだということを国民の方々に御理解いただき、危険ドラッグに絶対手を出さないということをしっかりとアピールできるように、より訴求性の高い広報に努めてまいりたいというふうに考えております。

輿水委員 どうもありがとうございました。

 以上で質問を終わります。

上川委員長 次に、山井和則君。

山井委員 質問を三十分間させていただきます。

 午前中も参考人の方々からお話をお聞きしましたが、非常にこれは切実な状況であります。

 まず一つは、先ほどもお話がありましたように、野党全党共同提出ということで、維新の井坂議員を筆頭提出者として、危険ドラッグ禁止法案というものを国会に提出させていただきました。その中身に関しては、私の資料の十四ページ、十五ページに出ております。

 この危険ドラッグ禁止法案、国会に提出をさせていただいております。先ほどの理事会でも協議をいたしまして、松野筆頭理事からも、今国会中に与党の議員立法もつくって、その上で審議なり修正協議を経て、この国会中に超党派で成立させたいというお話がございました。何としても十一月三十日までのこの国会中に、危険ドラッグを根絶する法律を、私たち厚生労働委員会の力で、もちろん、厚生労働省そして警察庁の皆さんの力をおかりして、成立させたいと思っております。

 それで、一つは、きょうも御遺族の方が傍聴席にお越しをいただいております。香川県からは、ことしの一月に、小学校五年生の実久ちゃんが、危険ドラッグを吸引したと見られる運転手の暴走車に突っ込まれて、残念ながらお亡くなりになってしまいました。私も善通寺までお伺いして、御遺族の方のお話をお聞きして、また、実久ちゃんのお墓参りもさせていただきました。

 久しく実り多い人生をということで実久と名づけられた一人娘さんであられました。将来、管理栄養士になりたいと実久ちゃんは思っておられまして、お母さんが夜勤から帰ってきたら、お疲れさまといって、お母さんが寝ておられている間に手紙を置いたり、また、御両親に対して、育ててくれてありがとうといって手紙を置かれるという、本当に、こんなすばらしい親孝行なお子さんが世の中にいるんだろうかというぐらい、もう天使のようにすばらしい実久ちゃんでありました。しかし、何の罪もない実久ちゃんが、危険ドラッグによる暴走車によって命を奪われてしまいました。

 また、こちらの記事にもございますが、もうお一方、長野県で五月に、救急救命士の育也さんという方、二十五歳、残念ながら、危険ドラッグ吸引とされる車によって死亡されてしまいました。危険ドラッグを吸引したとされる少年の車が、対向車線から百キロを超える猛スピードで突っ込んできて、対向車線からですよ、それで正面衝突ということでありました。

 二十五歳、本当に、この記事にもお写真が少し出ておりますが、救急救命士、消防士、人の命を救うために人生を使いたい、こういうすばらしい育也さん、その命が危険ドラッグ運転により奪われたわけであります。

 その意味では、四十万人が吸引を経験しているという危険ドラッグですが、もちろんその吸っている人も問題がありますが、何の罪もない方が危険ドラッグ運転によって殺される、このことは何としても私たちの力で新たな被害者が出ないように阻止をせねばなりません。

 実際、けさの参考人質疑でも、飯泉知事は、関西広域連合の申し出として、こういうことをおっしゃいました。きょう配付資料に入れさせていただいております。

 関西広域連合は国にどう申し入れしたか。配付資料の九ページ。「近年、危険ドラッグに起因する危害が全国各地で多発しており、「使用した者への健康被害」に加え、「交通事故などの二次的被害」により無関係な人々の尊い命まで奪われている現状は、まさに「テロ行為」にも匹敵する「異常な事態」となっている。」

 私は思うんですが、危険ドラッグ業者と国会、そして政府との、これは戦争です。向こうは人を殺すんです。殺しているんです。残念ながら、何の罪もない実久ちゃんや育也さんを殺しているわけですから。

 そして、申しわけないけれども、私の配付資料にもありますが、現時点においても、皆さん今、スマートフォン、携帯、何を見てもすぐに三十秒でアクセスできますよ、危険ドラッグ。残念ながら、簡単に買えます。あしたの三時までに届けてくれます。この状況は変わっていないんです、残念ながら。ということは、今後新たな被害者が出かねないということであります。

 そこで、塩崎大臣にお伺いしたいんですが、過去一年間、二〇一三年の七月から二〇一四年の八月まで、国立医薬品食品研究所において危険ドラッグ製品の検査をして、検査結果が出たものは何製品ですか。そして、その中で、その時点で指定薬物だったものは何製品か、後に指定薬物となった物質が含まれていたものは何製品か、全くその時点でもその後でも指定薬物が含まれていなかった製品は何製品で、それぞれ何%か。お答えください。

塩崎国務大臣 山井議員からお尋ねがございましたが、過去一年で国立医薬品食品衛生研究所で危険ドラッグを検査いたしましたが、特に疑わしいものを中心に集めたわけでありまして、それについて三百五十一製品検査をいたしました。このうち九製品については含有物質分析がまだ終わっておらず、三百四十二製品の分析結果が得られております。

 分析結果が得られた三百四十二製品のうち、指定薬物が含まれていた製品は五十二製品、全体の一五%でございます。後に指定薬物となった物質が含まれていた製品は二百九十製品、全体の八五%でございます。全く指定薬物が含まれていなかった製品はゼロでございまして、当然ゼロ%となっております。

 なお、先ほど申し上げたように、これらの製品は、指定薬物に指定するためにこの研究所が買い上げたものでございまして、このように高い割合で、指定薬物となった物質が含まれているということでございます。

山井委員 ということは、検査結果が出た三百四十二製品は、一〇〇%、指定薬物あるいは後ほど指定薬物に指定されたという。これは一〇〇%なわけですね、一〇〇%。

 塩崎大臣、この結果をどう思われますか。三百四十二、一年間で危険ドラッグの検査結果が出た。三百四十二全部、その時点かその後かで指定薬物だった。これは一〇〇%じゃないですか、塩崎大臣。

塩崎国務大臣 今、製品単位で先生からのお話もございましたし、今説明したのは製品単位で御説明申し上げました。

 これを、一つ一つの分析の結果を物質単位で見てみますと、六十三物質を検出いたしまして、そのうち十物質は検出時に指定薬物であったもの、それから、四十二物質は検出後に指定薬物に指定したもの、そして、九物質は毒性情報を分析中、先ほど申し上げた、まだ結論が出ていないというものでございますが、分析中のものがある。それから、二物質は直接的な中枢神経作用のないもの。

 こういうことで、製品というのにはいろいろなものがまじっているわけであります。そのまじっている中の成分をきっちりと物質ごとに分析をしなければいけないということで、製品を集めてやったわけであります。

 確かに、山井議員がおっしゃるように、三百四十二製品という単位でいけば、これは一〇〇%そうだということであるわけでありますけれども、物質単位で見ると必ずしもそうなっていないということで、やはり分析をきっちりと、何が入っているのかということを危険ドラッグごとに分析した上で、その一つ一つの物質が何であるかということを、指定薬物なのか、あるいは、今申し上げたように後で指定薬物に指定したものなのか、あるいは、まだこれがよくわからないといって、まだ答えが出ていないものもあるわけでありまして、そういう分析中のものがあるということでありますし、全く直接的な中枢神経作用のないものというものも、この製品単位で見るとまじっているということなので、必ずしも、製品が白黒ということだけで、何が入っているかがわかるわけではないということでございます。

山井委員 今、大臣、その答弁で大丈夫なんですか。三百四十二の製品は全て、そのときかその後、指定薬物が入っていて、一〇〇%とおっしゃったじゃないですか。製品の中に中枢神経に作用がないものが、全部指定薬物と言っておきながら、中枢神経に作用がないということですか。どういう意味ですか、それは。

塩崎国務大臣 多分、山井先生もわかっておっしゃっておるんだろうと思うんですけれども、一製品の中にいろいろな物質が入っているわけであります。その物質を一つ一つ分析しているのがこの国立医薬品食品衛生研究所でございまして、今この物質が、では何が検出されたかと……(山井委員「製品のことを聞いているんですよ」と呼ぶ)いやいや、製品は、先ほど申し上げたように、三百四十二製品は全て指定薬物が入っていたということになりますが、この一つ一つの製品の中に何の物質が入っているかということを分析しなければ一つ一つが特定できないわけですから、それでいくと、今申し上げたように、直接的な中枢神経作用のない二物質も含まれているということであって、それはよくわかっておられて言っておられるんだろうと思いますけれども、そういうことです。六十三物質が検出されているわけであります。

 いいですか、山井先生、この物質単位で見なければ何が入っているかはわからぬのでありまして、それを今申し上げたわけであります。

山井委員 物質ではないんです。私は製品と言ったんですけれども、塩崎大臣は先ほど、製品の中に中枢神経に悪影響をもたらさないものがあるとおっしゃったけれども、答弁を訂正してください、そうしたら。

塩崎国務大臣 私はこう申し上げたと思います。分析の結果を物質単位で見ると、六十三物質を検出して、そのうちの十物質と四十二物質と九物質、そして、二物質は直接的な中枢神経作用のないものが入っておりましたということを申し上げたので、それは製品がどういう組み合わせなのかによってでございまして、だから、製品は今回三百四十二、もともと、この研究所も疑わしいものを集めてきて指定するためにやっているわけでありますから、指定薬物が含まれている製品であることは、先生おっしゃるように、一〇〇%、三百四十二の場合はそういうことだということであります。

山井委員 私は塩崎大臣が淡々と答弁されるのが意外です。これはすごいことですよ。つまり、インターネットや店舗で売っているものが、三百四十二押収したら、一〇〇%、全部、その時点か後かで指定薬物だった。一〇〇%ですよ。何でそんなに淡々としているんですか。

 ということは、そのパターンでいけば、今売られているものも全部、今はセーフかもしれないけれども、事実上の指定薬物ということになりませんか。塩崎大臣、そこはどう思われますか。過去一年間は、三百四十二結果が出て、全て指定薬物にそのときかその後なった。ということは、今インターネットや店頭で売られているものに関しては、大臣の認識はどうですか。

塩崎国務大臣 それは、一つ一つ分析してみないと最終的にはわからないということでございます。

山井委員 それはそうですが、人の命がかかって質問しているんですから、真剣に答弁してくださいよ。過去一年間、三百四十二は全部アウトだったと今答弁したじゃないですか。それから考えたら、大臣としてはどう認識されていますか、今のこの状況を。

塩崎国務大臣 もともと、この研究所が疑わしいものを集めて、それで後に指定になったというものがあるように、指定していないものが入っているものが売られていることもあるわけですから、それを早く指定しようということで集めてきているわけであります。

 しかし、問題は、後ほど多分お話が出ると思いますけれども、精神毒性があるかどうかというのは、やはり一つ一つの物質がどうなのかということをきちっと分析しなければいけないことであって、それを物質単位で見てみれば、先ほど申し上げたように、直接的な中枢神経作用のないものも入っている。

 ただ、もともと、これは言ってみれば摘発しようと思って集めて研究所で分析をしているわけでありますから、当然のことながら、今回は一〇〇%でありますけれども、たまたま直接的な中枢神経作用のないものしか入っていないものもとってくるかもわかりませんから、それはきっちりと分析をして、だめなものはだめだということをやるために今これをやっているわけで、今回は、持ってきたもの、検査をしたものは全て指定薬物が含まれていたということであります。

山井委員 私は、薬事法の日本の最高責任者がそういう認識かと思うと、本当にショックを受けました。私は、この三百四十二結果がわかって、そのときか後で全て指定薬物だったとわかったと聞いて、驚愕しましたよ。ということは大変なことじゃないですか、これは。

 私、実は三カ月前から厚生労働省にこの結果を出してほしいと言って、やっときのう出てきたわけですけれども、大臣、ちょっと思い違いがあるんじゃないかと思うんですけれども、検査は物質かもしれませんが、吸引する人にとっては製品なんですよ。製品なんです。売っているのは製品が売っているんですよ。

 非常に私はショックを受けました。普通、一〇〇%遅かれ早かれ指定薬物だということがわかったら、これは大変だといって、ではどうするんだ、放置していたら次の被害者が出るとなりますよ、これは。その危機感、大臣はないんですか。びっくりしました。

塩崎国務大臣 何度も申し上げますけれども、もう一回言いますけれども、検査をしたときに指定薬物が含まれていた製品は五十二製品ですから。(山井委員「いや、もうそれはわかっています。それは知っていますから」と呼ぶ)山井先生、それは、わかっていてそういうことを言っちゃいけない。後に指定薬物となった物質が含まれていた製品は二百九十製品ですから。検査した時点では指定されていないんですから。だから直ちに指定をして、後に指定薬物となった物質が二百九十製品で、八五%ですよ。だから、きちっと検査をしなきゃいけないんですよ。それを申し上げているので、一〇〇%、初めから指定薬物が含まれているのが全部、三百四十二じゃないんですよ、先生。

 いいですか。検査の時点で指定薬物のものは五十二製品で、一五%しかないんですから。それを申し上げているんです。だから、一つ一つ物質をきちっと検査して、だめなものはだめだということがわかるように早く検査をしようと言っているわけであります。

山井委員 塩崎大臣、そうやっている間に、その商品を買って、買った人が車を暴走させて、人が亡くなっているんですよ。何でそんな悠長なことを言っているんですか。イタチごっこで人が死んでいて大変だという話を私たちは今しているわけですから。

 塩崎大臣、こういう現状認識のもとで塩崎大臣は、今の薬事法を改正せずに、今の薬事法のままで、次のこういう交通死亡事故、被害者を出さないと約束できますか。法改正は必要ないと考えていられるんですか。今の法律でいけると考えているのか、法改正が必要だと考えているのか、大臣の認識をお聞かせください。

塩崎国務大臣 これまで申し上げてきたように、今できることはきちっとやっていく。これは、今の、先生がおっしゃったように、過去一年間の検査についてもやって、即座に指定をして、そして、指定薬物としての扱いをするようになって禁止ができるようになるわけでありまして、それをまずやることは当然であります。

 しかし、山井先生がおっしゃるように、これを根絶しなきゃいかぬということは先生と私どもは全く同じ認識であって、本当にこれ以上の悲劇を繰り返すわけにはいかない。ですから、総理も含めて、根絶をしようじゃないかということであります。

 そして、今、先生方が御努力いただいて、議員立法をつくっていただいているわけであります。今、与党の同僚の議員の皆さんも、これを見ながら、自分たちの案としてどうなんだろうかということで、みずからの案をつくるべく努力をしているというふうに、今先生がおっしゃったとおりでありますので、これを、与党も野党もなく、政府も国会もなく、やはり悪は根絶をしていくということのために力を合わせていくべきだろうと私も思っております。

山井委員 この薬事法は、もちろん政府の法律であるわけですから。これは、私がすごくひっかかるのは、何か人ごとみたいにおっしゃっているような気がするんですよ。本当は、閣法、厚生労働省が薬事法改正を、このままでは第二、第三の被害者が出てしまうから変えないとだめなんじゃないかと、厚生労働省、厚生労働大臣、塩崎大臣、あなたが判断しないとだめなことなんですよ。その判断をされないから、しびれを切らして今与党さんも野党も動いているんだけれども、一番情報を持って一番権限を持っているのは本来厚生労働省なんですから、そういう人ごとみたいなことは言わないでいただきたいんです。

 それで、私、今回もう一つショックを受けたことがございまして、言いづらいんですが、きょうは御遺族の方がおっしゃっていたので、言わせていただきます。

 この配付資料。店舗は減ったかもしれませんが、インターネットの売り上げはふえているんですよ、逆に。それで、一旦閉鎖されたサイトもまた復活したり、十月二日から新商品が出ているんですよ、たくさん。この十一ページですけれども、どういう商品が新製品で出ているか、塩崎大臣、これを見ていただきたいんです。十一ページ、右上から三番目ですか。商品名、これはミクという商品名なんですよ、新商品。善通寺でお亡くなりになったお子さんの名前じゃないですか。ひどいと思いませんか。本当に、これは人間のすることじゃないですよ。許せないでしょう、こんなことは。

 アリサやベニコなどの大ヒット商品をリリースし続けるマスターマックス社から、待望の新作ミクが登場です、今世代、最後のアロマの香りを御堪能くださいませ、二〇一四年九月二十九日施行の薬事法対象外商品です、一個六千円、三パック御購入ごとに一パックサービス中、まとめ買いが熱い、すぐ欲しい、十五時までの御注文は翌日お届け可能と。

 塩崎大臣、私たち、もうはっきり言って、なめられてしまっているわけですよ。これはひど過ぎますよ、何ぼ何でも。よりによって、危険ドラッグで殺された、そういう名前を新商品で売る、これはもう異常事態ですよ。こんなことを許していいんですか、日本の国は、法治国家として。いいはずないんですよ。あり得ない話なんです、こういうことは。厚生労働省も国会議員も十分に対策をとっていないから、こういうことをやられてしまうんですよ。

 こういう商品まで出ているというこの状況に関して、塩崎大臣、どう思われますか。

塩崎国務大臣 山井先生と全く思いは同じであって、本当に、犠牲になられたお子さんの名前をとったネーミングでサイトを開設するなんていうのは、とても許せるものではないということは私も全く同感でございます。

 だからこそ、この根絶を図るために、まず、この緊急性に鑑みて、やれることは現行法制の中で徹底的にやっていくということでもあり、先ほど申し上げたように、後になって指定をするというのも、かなりここのところ、いろいろな、普通だったらとるべきステップを飛ばして指定をして、先ほどのようなことで、圧倒的に多数が後から指定をしているわけでありますから、こういう努力をしていることも認めていただければというふうに思うわけです。これは現場の研究所やあるいは担当の者たちも必死になって今やっているところでございますので、先生にはそれも御理解をいただきたい。

 ただ、先生おっしゃるように、法律で何ができるのか、さらにできるのは何かということは、立法府にいれば当然、議員立法として考え、我々も、行政府にいれば行政府として何ができるかということを考えていかなきゃいけませんが、立法はすぐにできるわけでもないし、特に我々政府の場合には、いろいろなステップを踏まなきゃいけないとか、いろいろなことがあって。

 したがって、先生方が御努力をいただいて議員立法をおつくりいただいたわけでありますから、その中から本当に私たちとして学ぶべきものを学び、そして、与党としてさらに何ができるのかということも考えながら、今よりもいい形のものができるようにしていければ、我々としても協力も惜しみませんし、情報も提供をいたす覚悟でもございますし、それから、一日も早くそういうものがもしできるならば、協力をしてまいりたいというふうに思っております。

山井委員 私は、本当にこれはあり得ない話だと思うんです。

 育也さんも、人の命を救いたいという思いで消防士になって、救急救命士になって、でも、きょうも来られていますが、お父さんが何とおっしゃっているか。もしかしたら、人を救う救急救命士になって、自分が危険ドラッグの犠牲になることによって二度とこういう死者を出さない、そういう形で命を救おうと育也はしたのかもしれないということをおっしゃっていました。

 また、実久ちゃんも、将来、管理栄養士になってお母さんと一緒に人様を喜ばせるために生きたいと言っていた、本当にすばらしい親孝行なお子さんです。

 私は、本当に、実久ちゃんや育也さんの思いに応えることは、この国会で危険ドラッグ禁止法を成立させて、そしてもう二度と、二度と危険ドラッグ運転による死者を出さない、こうすることしかないと思っていまして、そういう思いで御遺族の方も来られていますし、この厚生労働委員会で、十一月三十日までにこの場で危険ドラッグ禁止法を成立させる、このことが必要だと思っておりますし、そのことが、御遺族の方々も、育也さんや実久ちゃんが生きたあかしだというふうに言っております。

 大臣、このサイト、そして、このミクという商品、すぐにでもこれは撲滅してください。私たちもやりますから。こんなことが許されるはずがないんですから。

 最後に大臣の決意をお聞きして、質問を終わります。

塩崎国務大臣 これまで、この危険ドラッグについては、平成十九年の指定薬物制度の導入や、それから、二十五年の議員立法による麻薬取締官等に対する指定薬物の取り締まり権限の付与とか、あるいは、ことし四月に単純所持、使用を禁止するというようなことは、皆、政府と与野党、みんな一致してやってきた、一丸となって知恵を出し合ってやってきたことだと私は思っています。

 今、山井先生がおっしゃったような、本当に人を食ったようなサイト、こういうものを根絶し、なおかつ、一番根絶しなきゃいけないのは危険ドラッグそのものでありますから、それを根絶するために、先生方のおつくりになられた議員立法をきっと与党の皆さん方が今一生懸命読みながら、自分たちの知恵も加えて、一緒にやれることはないかということで今鋭意努力をしているはずでございますし、我々もそれなりに協力をしておるところでございますので、一日も早く今よりもさらに強力な規制体制ができるようにできれば私どもとしても大変ありがたいと思いますので、我々は我々として、厚生労働省として、精いっぱいの努力をしてまいりたいというふうに思っております。

山井委員 一言発言して終わらせていただきます。

 とにかく、きょうの時点で初めて、三百四十二の過去一年間の検査結果が出たもの、三百四十二全てが遅かれ早かれ指定薬物であったということがわかったわけですから、そういう意味では、未然に防ぐためにかなり大胆な事前の規制が必要だということを申し上げて、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

上川委員長 次に、井坂信彦君。

井坂委員 維新の党の井坂信彦です。

 私も、けさ、御遺族のお子さんの名前のドラッグの話を直接伺って、ふだんは大変クールな方でありますけれども、そのときは本当に涙をこらえることができませんでした。御自身の子供がある日突然危険ドラッグの車にひかれて、そして、その子供の名前が、自分の子供の名前がドラッグの名前として後日つけられたらどうだろうかと、ぜひ御自身のこととして本当に考えていただきたいというふうに思います。

 加えて、本日のニュースでは、先月の十五日から今月一日まで、わずか十七日間の間に、ハートショットという銘柄の危険ドラッグを、これは吸った側が九名亡くなった、二日に一遍のペースで、ある銘柄を吸った、吸った側が亡くなっている。こういう死者も続出をしているわけであります。

 その中で、ちょっと通告の質問の前になりますが、先ほどの山井議員の質問に対しての大臣の答弁、私は、大変物足りない、あんな答弁でよいのかというふうに思っております。

 三百四十二の物質を調べた結果、その時点で指定薬物であるものは、それは少なくて当たり前です。指定薬物を売っていたらもう即座に違法なんですから、業者は普通、その時点で指定薬物に指定されているものは売りません。よっぽど何かの間違いか、そういう場合しか売りません。大体、その後に必ず指定薬物になっているわけです、三百四十二全て。

 指定薬物になっているということは、麻薬同等の精神毒性があるから指定薬物に全てなったわけであります。ということは、三百四十二集めたその全てが精神毒性があったということであります。その事実を真面目に捉えていただければ、今ネット上それからお店で売られている、控え目に言ってもほぼ全ての銘柄が、指定薬物と同等あるいはそれ以上の精神毒性を持っていると、もう蓋然性どころか必ずそうだというふうなところに気づいていただきたくて山井議員はああいう質問をしたのではないかなと思うわけでありますが、それが、三百四十二の製品はそうだけれども、中の物質は六十三あって、その中にはいろいろあってと、どうしてそういう答弁になるのか。

 今の私の質問に対して、もう一度、今売っているものも、ほぼ全て精神毒性があって、後ほど必ず指定薬物に指定するものになるんじゃないですか。お答えください。

塩崎国務大臣 山井先生にしても井坂先生にしても、お気持ちは大変私もよくわかりますし、人間としては同じ思いであります。しかしながら、法律というのはやはり厳格なものでありますから、法律を、議員立法もそうですが、あれも薬事法の改正ということのようでありますから、やはり法律は厳密にやらなければいけないということであります。

 後々、また先生方のおつくりになられた法律についての議論が行われると思いますけれども、どうやって本当に悪を退治していくのか。そのときに、一つの間違いもなく退治していくということが大事なんです。そのためには法律はきちっとつくっておかなければ、一つでも例外があって、罰すべきじゃない人を罰したら、これはやはり法律としてはふできなものだということになります。

 したがって、先ほど私が申し上げたのは、製品というけれども、精神毒性があるのは製品にあるんじゃなくて、毒性を持った物質にあるわけでありますから。その物質が製品に乗っかっているわけであります。それをきちっと峻別することが、法律で人を罰しようというならばそういう厳格な扱いというものが必要だということで私は申し上げたのであって、決して私が冷たいとかいうことではなく、きちっと厳格に、だめなものはだめだということで、根絶をするために一つ一つ潰していく。

 このためにはしっかりとした法制を立てていかなければいけないという意味で、私は、先ほど申し上げた、製品という漠とした話ではなくて物質ということでやっていかないと、精神毒性についても、先生も今、大体、ほぼ全てのみたいな感じのことをおっしゃいましたけれども、ちょっと言葉は忘れましたが、それでは法律では罰せられないんですね。

 ですからこそ、厳密なものをつくっていくために、みんなで、与党も野党も政府も国会もなく知恵を出そうじゃないかということを申し上げているので、私どもも一生懸命汗をかいてまいりますので、先生にもどうぞひとつ御指導をよろしくお願いいたしたいと思います。

井坂委員 誤解があってはあれなんですけれども、今売っているものがほぼ全て精神毒性があるだろう、だから全てもう直接罰せよとは、それはさすがに申しておりません。まず認識を問うたのは、今売っているもののもうほぼ全て、私は全てだと思いますが、精神毒性がなければ商品として成り立たないですから、売っているものがほぼ全て精神毒性があるものだという認識はおありですか。

塩崎国務大臣 先ほど申し上げたように、我々は何しろ摘発をしていかなきゃいけないわけでありますから、研究所はそのために怪しげなものをみんな集めてきてやっているわけで、今、製品が一〇〇%、山井先生がおっしゃるように、あるいは井坂先生がおっしゃるように、精神毒性のあるものだったという、結果としてはそうなったということでありますから、ほとんどそういうものが多いということは先生おっしゃるとおりだと思います。

井坂委員 であればこそ、それを直ちに、では今売っているものも全て違法で即処罰だ、こういう立法はなかなか確かに難しいわけでありますが、しかし、指定前の売っているもの、今合法として売られているものにも精神毒性があるという認識に立てば、やはりここを直接どうするかというのが真剣に考えなければいけないことだというふうに思うわけであります。

 我々も、夏からいろいろなパターンの立法を本当にやってまいりました。最終的に非常にシンプルなところに立ち返りましたのは、実は、午前中も参考人で来ておられましたけれども、地方自治体の方がもう既に、いわゆるアナログ規制、要は、指定薬物になる前であっても、物質名が特定できない、化学式が同定できない場合であっても、精神毒性があるおそれがある、蓋然性がある、その段階で危険薬物として製造、販売、その他を禁止する、こういう条例を今どんどんつくっております。

 そういう立法が非常に雑だ、あるいは憲法違反だ、法律違反だ、そういうふうにおっしゃるのかどうか。地方が今どんどんつくっている、これはまた広がってまいります。大臣の認識を伺いたいと思います。

    〔委員長退席、松本(文)委員長代理着席〕

塩崎国務大臣 地方自治体で条例を、その地域の実情を踏まえて、危険ドラッグ対策を積極的に進めるために制定されているケースが出てきているということは、今先生がおっしゃったとおりで、私も認識をしておるわけであります。

 私どもとしては、危険ドラッグの広がりに対しまして、その緊急性に鑑みて、先ほどちょっと議論になりましたけれども、まずは現行法の中で最大限の取り組みを進めるということが最優先だということを言っているので、確かに、その間に地方から条例という形でいろいろな問題提起が行われていることはよくわかっているわけでありまして、それがだめだというようなことを私どもは言っているわけではございません、これは地方自治がやっていらっしゃることでありますので。

 ですから、それをも参考にしながら、私ども国として何ができるのかということも考えていかなきゃいけないなというふうに思っております。

井坂委員 さすがに否定はされないだろうというふうに思います。

 ただ、一方で、午前中の参考人の発言にもありましたけれども、幾ら自治体がいろいろ工夫をして、そして、現行の法体系をさらにいわば半歩踏み出すようなことまでやって条例をつくっても、結局、県境を越えて、お店も、それから場合によっては購入者も移動していってしまう。だから、全国一律でこういう、もうほぼはっきり、アナログ規制をやってくれと言っているに近い参考人の発言があったわけでありますけれども、その点に関して大臣の見解を伺いたいと思います。

塩崎国務大臣 恐らく、先生、鳥取県とかこういうところでやっていらっしゃる条例、これは、知事指定薬物とか知事指定候補薬物というようなものを設定して危険ドラッグに対処していこう、こういうことであろうかと思います。

 条例を見る限りは、例えば知事指定薬物というのを見ますと、指定薬物と同等の精神毒性を有することが確認された物質であると。これとは別に、名称、形状等の外形から知事指定薬物としての指定を検討中の知事指定候補薬物があり、これについて、御指摘の、言っているようないろいろな仕組みをつくられているということだろうと思うんです。

 問題は、先ほども議論になりました精神毒性があるのかどうかということが問題でございまして、知事指定候補薬物については、精神毒性が確認される前の段階で、販売者、購入者に対する届け出義務とか、あるいは違反者への立入調査等の対象となるということで規制をつくっているようでございます。

 問題は、今の条例の場合なんかは、精神毒性が確認されるのにどれだけの時間がかかるのかという問題がございまして、今の我々がやっている薬事法で、名称、形状等の外形から指定薬物であると疑われるものについては、御存じのように、店舗の現場の状況等も踏まえて、客観的、合理的な判断のもとに検査命令の対象として、そして検査の結果が出るまでの間は製造、輸入、販売等をそもそも禁止するということで、健康被害の未然防止、あるいは事故の再発を防ぐということで、今の法制の中でやっているわけです。

 問題は、同等の精神毒性を有することが確認された物質といったときに、さっき申し上げたように、製品ではなくて物質を、毒性が同等あるいは同等以上とか、そういうようなことで確認をするのにどれだけ時間がかかるのかということが問題であって、この条例でも、確認をされない限りはこれは発効しないと思うんですね。

 ですから、我々は、それが、検査の結果が終わるまで製造も輸入も販売もできなくなるということで禁止することができるので、今の法制のもとで、とりあえず今は緊急的にやっていることの方が実効性があるということで、やっているわけでございます。

 ですから、先生方の法律にしても、あるいは知事さんたちがいろいろお知恵を出してやっていただいているアナログ規制と言われているものについても、やはりどっちがスピーディーに摘発ができるのかということも考え合わせて、それぞれ、恐らく気持ちは同じですから、その思いをどうアウフヘーベンしていくかということが大事なんじゃないかなというふうに思っております。

井坂委員 割とはっきりおっしゃったかなと思うんですが、そうすると、大臣は、今地方自治体がつくっている、また、今後宮城県でも今度同じようなものをつくられるというような話もありますけれども、こういう今地方の自治体がつくっているアナログ規制の条例は実効性がないというふうに考えておられる、今の答弁はそういうことですか。

塩崎国務大臣 いや、実効性がないと言っているわけではなくて、精神毒性があるかどうかを確認するための時間をどう考えるかということを申し上げているだけでございます。

 今の薬事法のもとで、指定薬物への指定前であっても、その疑いのある物品については、積極的に検査命令や販売停止命令が発動できるということになっていますね。また、物質の特定後に精神毒性が確認されれば、これは速やかに指定をして、指定薬物として扱うということになるわけであります。

 他方、今のアナログ規制と言われている、今の先生が言っていることは、物質を特定せずに、指定薬物と同等に精神毒性がある物質を対象に広く製造や販売を禁止するというのが、今、鳥取や、宮城は私もちょっとよくわかりませんが、多分そういうことなのかなというふうに思うんですね。

 したがって、しかしながら、これらの規制の対象となる物質については、精神毒性の検査をしなければ、やはり指定薬物と同等の毒性があるかどうかはわからないということなので、実際に機動的な取り締まりができるのかなという懸念を私たちは持っている、こういう意味でございます。

 鳥取県は先陣を切ってこういう問題提起をしていただいたというふうに私たちは前向きに捉えながら、しかし、では時間がかかるという問題をどうクリアしていくのかということをやらないと、さっき申し上げたように、一つでも例外のもとで罰したりしたら、それは法律が不十分だということになってしまうので、そういうところを、やはり穴のない法律を与野党でひとつお知恵を出していただくとありがたいな、協力は幾らでも惜しまないということであります。

井坂委員 確かに、平時であれば非常にかっちりと、もちろん法律をつくって、その手続も一切の漏れがない、おっしゃるように、そういったことが基本だと思います。

 ただ、一方で、私は、今厚生労働省がやってくださっていることを責めるつもりはありません。むしろ、緊急事態だということで、法の運用をかなり思い切ってやっている、私は好意的に評価をしております。これは厚労省の方にも直接申し上げてまいりました。

 何かといえば、薬事法七十六条の六による検査命令そして販売停止命令、これだって、真面目に法文を読めば、指定薬物であるおそれのある物品にしかかけられないんですよ。真面目に読めばですよ。今店頭で売っているものなんて、指定薬物であるおそれは著しく低いですよ。指定薬物だったらもう即アウトですから、業者はそんなものは売りません。今売っているものは、ネットにもはっきり書いてあるように、これまでの指定薬物に指定されていないものですよ、だから安心して買ってください、業者はそう言って売っているものばかりです。そういうものを、しかし法の運用を半歩踏み出して、指定薬物であるおそれがあるんだといって、今、検査命令、販売停止命令をかけているのだと、私は、それはしかし好意的に理解をしておりますよ。

 今、地方自治体がアナログ規制をやって、アナログ規制で別に直罰をかけているような自治体はなくて、全体的にこういうものはそもそも違法なんです、販売や製造は禁止なんですとまず定める、そして、そこから次の手、また次の次の手として細かいいろいろな規制の条例の条文を置いている、こういうつくりでありますから、大臣が今おっしゃったような、確かに平時であれば厳格な議論が要ると思います、多少無理もあるんだと思います。一方で、七十六条の六はそうやって非常に自由な運用をしておられることについて、大臣、整合性をどう思われますか。

    〔松本(文)委員長代理退席、赤枝委員長代理着席〕

塩崎国務大臣 指定前であっても、その疑いのある物品について積極的に検査命令や販売停止命令を発動できるということでありますが、これは、疑いを持たれながら検査命令そして停止命令をかけて、その間に実際検査もするわけですね。それで出てきて、たまたまそれが白だったりすると、それはやはりもとに戻ることであって、法律はそんなに解釈で自由に裁量的にやっているわけでは決してないわけであって、ですから、最初に検査命令や販売停止命令をかけられるということが今の薬事法のメリットでございまして、今の条例では、やはり確認ができないとスタートしないということになることは変わりがないと思うんです。

 ですから、そこのところをどう乗り越えて新しい規制の枠組みをつくれるかどうかということを、ぜひお知恵を与野党で出していただくとありがたいなというふうに思っているわけであります。

井坂委員 アナログ規制において、精神毒性のある蓋然性あるいはおそれというのは、何も物質そのものを、あるいは化学薬品そのものを調べるだけが手法ではないというふうに考えております。

 一方で、七十六条の六、ちょっともう一度御答弁をいただきたいんですけれども、指定薬物であるおそれのあるものにしか、本来、検査命令、販売停止命令はかけられません。ところが、今売っているものは、大方が指定薬物であるおそれがはっきり言えばないものです。ただ、緊急時なので、そういった法運用を、社会的要請もあって、私はやるべきだとずっと主張してきた側の人間ですから、どんどんやっていただきたいと思いますが、しかし一方で、いつまでもこういったことは続けられないのではないかというふうにも考えております。

 七十六条の六の、指定薬物であるおそれのある物品という書き方では、今後、この八月末から九月にかけて収去した、持ってきたものが、大体、後で調べたら指定薬物じゃなかった、その時点では指定薬物じゃなかったというものが大半ではないかというふうに思うわけです。現時点ではその結果は出ていないというふうに伺っておりますけれども、これまで七十六条の六の検査命令や販売停止命令を出した商品のうち、後で検査したらもうその時点から指定薬物だったというものは実際何件あるんでしょうか。

神田政府参考人 先生御指摘のように、指定薬物である疑いがある物品に現場で検査命令をかけるわけでございます。

 これについて、先ほどから御議論がありますように、過去に指定薬物が検出されたような物品の形状、包装、名称、それから販売方法ですとか商品種別、それから、我々は、包装とか名称を全て打ち出しまして都道府県に全部提供して、そういう類似性があるかどうかということを総合的に判断して、指定薬物の疑いがあるかどうかというのを総合判断してやるようにということで、この運用については、そういうしっかりとした基準を示してやっているところでございます。

 先ほど、現時点で、最初から指定薬物であったことが判明した件数ということでございますけれども、今、一千品目を超える検査命令をかけております。今、まず物質同定を順番にしておりますので、物質同定が済んだものから順次、精神毒性の検査に入っていくという状況でございます。

井坂委員 今の御答弁で、多少すりかえがあるのではないかと思います。

 例えばですよ、ラッシュ12というものが指定薬物でありました、だからラッシュ13を売っていたらこれも怪しい、もちろん怪しいです。ただ、ラッシュ12は指定薬物でも、ラッシュ13はそのときはむしろ指定薬物ではありません、ほとんどの場合。これを、法律は、精神毒性があるものを検査命令、中止命令を出せるのだったらこれは出していいと思いますけれども、しかし、指定薬物であるおそれと言えるのか。

 むしろ、そこはちょっと今すりかえの答弁をされたと思いますので。

    〔赤枝委員長代理退席、委員長着席〕

神田政府参考人 先ほど大臣から、鳥取県の知事指定薬物の候補物質という形の、鳥取県もそういう段階で届け出をしてもらうとか、そういう条例上の取り組みをしているというお話がございましたけれども、それも外形的に、名称、形状、包装等によって判断せざるを得ない。毒性検査までしているわけではございませんので、外形的に、疑いがあるかどうかというのをどうやって判断するのかということかというふうに思っております。

 したがって、精神毒性の検査をしていないその段階においては、先ほど申し上げたような、商品の種別だとか名称、包装、それから、同じ名前で、同じ植物片で、同じような包装に入れて売っているということであれば、それは疑いがあるというふうに判断されるのではないかということで現在運用しているということでございます。

井坂委員 七十六条の六の非常に踏み込んだ適用、私は大変よかったというふうに思っています。そして、効果も出ていると思っています。

 一方で、法改正の必要をやはりこの一点だけとっても非常に強く感じますが、今の議論を聞いておられて、最後に大臣、この七十六条の六を、相変わらず今後も指定薬物の疑いのある物品というくくりで出し続け、全ての店舗を撲滅できる、あるいはネット上も含めて撲滅できるとお考えなのか。この点だけとっても法改正が必要ではないかと思いますが、いかがでしょうか。

塩崎国務大臣 繰り返し申し上げますけれども、今できることとして大変機動的にできる法律でございますので、これで挙げられるものはみんな挙げていくということを今はやるということであります。

 これ以上のことをやれることは何なのかということは、先ほどお話し申し上げたように、議員立法でも御提起をいただき、そして、地方の方々も、今知事さんたちがこうやって条例、あるいは議会の皆さん方がお出しをいただいて提起していただいているわけで、与党も今一生懸命考えていただいていると思っていますので、我々も一緒に考えながら、よりよい法体系をつくっていきたいというふうに思います。

井坂委員 ありがとうございます。

 緊急事態だという認識のもとに、ぜひ協力をし合って今国会中に法の改正ができるように私も頑張ってまいります。

 以上です。

上川委員長 次に、今村洋史君。

今村(洋)委員 次世代の党の今村でございます。

 ちょっと質問を一問飛ばしまして、ことしの四月一日から改正薬事法が施行されまして、指定薬物の所持、使用などが新たに禁止されております。

 警視庁では、所持容疑の案件を二千件以上、ただ、立件に至ったのは数件というふうな報道もなされておりますけれども、立件に至らない理由として、いずれも、所持している本人が違法だとは思わなかったとそういう容疑を否認して、不起訴処分となっているというふうに報道されております。

 利用者が所持や使用の禁止を知っていたという立証を求められているやに聞いておりますが、違法な薬物とは知らなかったと言ってしまえば、それで起訴できないんでしょうか。その辺をまず教えてください。

樹下政府参考人 薬物事件では、被疑者が、当該物品について違法薬物であるとの認識が通常必要でございますが、被疑者がこれについて認識を否認した事件の中には、不起訴とされる事例も見られるところでございます。

 警察といたしましては、危険ドラッグの法的規制の周知に努める一方で、被疑者に係る違法性の認識を裏づける客観的事実の収集を図りまして、事案に応じた適正な処分及び科刑を得られるように努めていきたいと考えております。

今村(洋)委員 済みません、もう少し端的にお答えいただきたい。というのは、容疑者が違法なものだとは知らなかったと言ってしまえば、こちらが知っていたはずだろうという立証をできなければ、起訴できないということですか。

樹下政府参考人 被疑者が認識がないというふうに主張している場合でありましても、他の客観的な事実あるいは関係者の供述等々からその認識ということを仮に立証することができれば、起訴されることもあるのではないかというふうに考えております。

今村(洋)委員 では、報道されているような起訴率というか、不起訴になっているケースが多いというのは、そういう客観的事実とかそういったものが立証できなかったケースが多いということですか。

樹下政府参考人 不起訴になった事例もそれなりにございます。それぞれ、個別の事案に即した捜査を尽くした結果ということで理解をしていただければというふうに考えております。

今村(洋)委員 それでは、お配りしている資料の「薬事法違反事件の最適弁護プラン」という紙をごらんください。

 これは、不起訴処分になるために、または処罰を免れるために活動しますという弁護士さんの、これはネット上このままです、このままプリントアウトしたものの広告文なんですね。この中には、ここ、ちょっと色が薄くなっているところは、これは赤字で書いてあるところで、「薬事法違反事件においては、犯行当時に違法な薬物であることの認識(故意)があったのかどうかが重要なポイントになります。 薬事法上の指定薬物の存在自体に気づいていなかった、違法薬物とは思わなかったことなどを客観的な証拠に基づいて具体的に主張します。」というふうに書かれているんですね。

 ですから、こういう広告文が出るというのは、これはどういうことかといいますと、内容にもあきれますけれども、このような広告が堂々とネット上で公開され、薬事法違反、その罪を免れるための指南をする弁護士のニーズがあるということだと思うんですよ。ですから、今議論している危険ドラッグというようなユーザーが、いかに自覚的に使用しているか。

 つまり、ハーブだと思ったとか、たまたま買っちゃったとか、ゲートウエードラッグで入門みたいにたまたま使ってしまったとかという状況では今なくなってきているんじゃなかろうかと思いますが、実際、そういった容疑者を扱われている上において、一年前ともうかなり変わってきていると私は思っているんですけれども、その辺はどうですか。

樹下政府参考人 特に所持、使用を罰することになりましたのはことしの四月からということでありますので、それぞれ所持、使用で検挙された者がどういう認識であったかということについてはちょっと、昨年とどういうふうに変わってきたかということについては、直ちにお答えすることは困難かというふうに考えておりますけれども、先ほど御指摘がありましたような、どういうふうな事情を知っているかということについて、被疑者の周辺部分からさまざまな事実というものを証拠として収集をし、立件していくということはこれからも可能だろうというふうに考えておりますし、そういった点についてもきちんと立件できるよう、捜査を尽くしてまいりたいと考えております。

今村(洋)委員 要は、既に、危険ドラッグを販売する者、これは自覚的にやっていますね。買って使用する側も、もうとっくに、法の不備、これをどうやったら免れるかということをわかっていて、それで使っているわけですよ。

 その上で、検挙されようとしている、起訴されようとしているという段階において、今お配りしているようなこういう弁護士、こういうものを引き受けますと言っているような弁護士を呼んでくるようなケースというのは、割合的に多いんですか少ないんですか、そこを教えてください。

樹下政府参考人 突然の御質問でございますので、そういう弁護士、こういうことを掲げておられるような弁護士の方が現に弁護に当たっているケース等々については把握してございません。

今村(洋)委員 販売もネットで行われているわけですけれども、こういった弁護しますという広告もネット上にいっぱい載っています。いろいろあります。中でも具体的に本当に言い切っているのが、今お配りしている一例なんですね。

 ここには、もうどうしてもだめなときは量刑を軽減しますとか、その後は、早く保釈されるようにしますとか、いろいろ手とり足とり、私に連絡してくれればどうにかしますというような感じで書かれているわけですよ。

 先ほどからのお話、質疑をずっと聞いていますと、もうどうにも、脱法ならぬ法を無視して、つまり、絶対捕まらないというようなところまで、我々が法を遵守して、法の支配に基づいてやろうとしている限り、彼らは、売る側ですね、どこまでも逃げ続ける、使う側もそれを承知しているといったような状態が生じているというふうに私は感じます。

 また話は続きますが、その前に、お配りしている次の資料をごらんください。

 「乱用される薬物の特徴」というところです。ここに来まして、上の表、ここの「抑制」という、中枢作用が抑制作用であるといったところの段の「大麻」。今言われている危険ドラッグの中の主成分である合成カンナビノイドというものが大麻と類似作用があるということで、この表でいくと、「精神依存」がワンプラスで、「身体依存」がプラスマイナス、「耐性」はワンプラス、「精神毒性」、これは精神病性障害を来すような作用ということですけれども、それがワンプラス、「その他」、催幻覚というふうにあります。

 最近の精神医療の現場、救急医療の現場では、こういう危険ドラッグを摂取して、幻覚妄想状態とか、精神運動興奮、これは興奮しているということです、あとは、もうろう状態、そういったことになって担ぎ込まれてくる人が急増しているという報告があります。

 もう一つは、午前中に参考人で来られた和田先生が所属されている精神・神経センターの統計でも、実は、アンフェタミン、いわゆる覚醒剤ですね、覚醒剤を用いたような人は、当然、幻覚妄想状態、いわゆる統合失調症様の症状を呈する人がいるわけですけれども、そういう人がアンフェタミンで出る確率よりも、実は危険ドラッグでそういう幻覚妄想状態や精神病性障害が発生する率が高かった、これは現場の精神科医にとっても衝撃だったという報告が上がっています。

 こういう報告については厚労省側は把握はしておられますか。どなたか、お答えになっていただければ。

神田政府参考人 先ほども輿水先生の御質問のときにお答えさせていただきましたけれども、危険ドラッグと言われているものについては、先ほどの製品と物質の分析ではございませんけれども、一つの製品にいろいろなものが含まれている、なおかつ、売っている段階では、製造過程も非常に粗雑な形態で製造されているものがございますので、いろいろな物質がまざっている。逆に言うと、どういうものが入っているのか、売っている側もよく認識をしていないということがございますので、非常に危険性が高いというふうに認識いたしております。

今村(洋)委員 そうですね。横紋筋融解症といったような、筋肉が解けるような状態になって、あとは心エコーを当ててみたら心筋梗塞様のタコつぼ心筋症みたいなものが起きていたとか、通常我々が接してきた薬物患者、そういった者には想像できないようないろいろな症状を呈して担ぎ込まれてくる人が危険ドラッグでは多いということは、特にこの一年間で我々は身にしみて感じておるところなんです。

 なぜそういうことが起きるかというと、この表の今度は下の段、「興奮」というところを見ていただくと、「アンフェタミン類」、これは覚醒剤です。覚醒剤は、「精神依存」がスリープラス、「身体依存」はマイナスと書いてある、実は僕はこれはプラスマイナスだと思いますけれども。あと、「耐性」はプラスで、「精神毒性」はスリープラス、これは幻覚、妄想を起こすからスリープラスなんですね。

 先ほどの話ですと、大麻様の危険ドラッグのはずが、精神毒性ワンプラスが実はアンフェタミンのスリープラスより強い作用を最近は持っている。これはどういうことかというと、今おっしゃられたように、もう闇鍋状態なんですよ。その中にいろいろなものが入っている。ここに挙げてある薬物、アヘンとかバルビツール、バルビツールはどうかわからないですけれども、僕が想像するに、アヘンやベンゾジアゼピンや大麻、あとアンフェタミン類、この辺はごった煮で入っている。だから、想像がつかないようなめちゃくちゃな症状が起きて、摂取した途端に意識を失って担ぎ込まれてくるような状態が起きるほど、売っている側も、どうでもいいというような感じでつくっていると思うんですね。おっしゃったように、粗雑な、何を入れているかわからないというようなことが起きている。

 ここに書いてあるそういったもの、米国でも同じような状況が起きているものですから、米国では、コカインやアンフェタミン、メタンフェタミンよりも危険であるという報告書すら出ているほどです。

 ですから、この危険ドラッグというのは、本当に文字どおり危険で、人体に対しては有害、有害どころか命にかかわるような状況に今なってきていると思うんですね。

 下のグラフを見ていただきたいんですけれども、「長期使用に伴う反応の変化(耐性)用量反応曲線」と書いてありますが、要は、使っていると、だんだん多い量やだんだん強い作用を持たないと、つまり、本人が求めるような精神作用が起きてこないというグラフです。

 私が想像するに、一年前とか二年前の脱法ドラッグとかなんとかと言っていた時代よりも、どんどん作用が強くなって、使用者も、恐らくこういった依存症的な人間、つまり、ゲートウエーはもうとっくに通り越して、危険ドラッグを常用している人間が相当数いるだろう。事件になっている方々の中にも、一年ぐらい前から使っていたとかという報道もあります。

 もう一つ、一年前の報告書では、危険ドラッグを使っている人間は、実は、かつての覚醒剤の依存症であるとかアルコール依存症であるとか、そういったいわゆる社会生活を営めていない人ではなくて、社会生活を営めていて、ある程度社会適応していて、たまたまそういう薬を使ってこうなったんだというようなパーセンテージが報告されておったんですけれども、私は、もう今は恐らく違うだろう、恐らく各階層にかなり強く危険ドラッグが浸透してきていて、それこそ喫緊の課題であるので、我々がこうやって今ここで討論しているということになるのだろうと思います。

 そこで、大臣か政務三役の方々にお聞きしたいんです。

 薬事法とかそういったところで厳密にやると、今議論にあったように、いわゆる物質がちゃんと特定できないと、つまり、蓋然性が高いというだけで挙げることはなかなか難しいよと。

 午前中も、精神・神経センターの和田先生が、たしかあれはハムスターの細胞の遺伝子操作をしたもので、カンナビノイド系受容体と結合すると緑色に光るといったような細胞を開発されて、それでもって簡易的な検査をやろうかというようなお話だったと思いますけれども、それをやってひっかけたからといって、その後きちんとまたそれを突き詰めて調査してどういう物質か判明させないと、罰することが、なかなか私の考えではできませんね、そこですぐ、はい、逮捕というようなことにはいきませんよとおっしゃっていましたが、それは当然、厳密に考えれば考えるほど、そういうことなんだと思います。

 今もるる申し上げた、この日本の社会に浸透しつつあるというか、もう既に浸透してきている。私が今般のこういう危険ドラッグの話をお聞きして思うのは、かつての清国、中国が、アヘンに侵されて国力を落としていったというようなことも、ちらっと頭をかすめたりもします。

 ですから、こういったことを解決するには、やはり政治的決断が必要。政治家しかできない、政治的決断でしかできないというふうに私は思います。ですから、この解決方法を我々がこの短い期間で何とか見つけないと、国難に発展したらもう大変ですけれども、今、水際で火消しをしなきゃいけないという状況まで来ているだろうと思います。その点について、お考えをお聞かせください。

塩崎国務大臣 今村先生、医師としての知見から、いろいろとお話を聞き、また、弁護士のネットでのこういう活動、日弁連も少し考えてもらわないかぬなという思いであります。

 先ほどの参考人のときの合成カンナビノイド簡易検出システムのことを今先生はおっしゃっていたんだろうと思いますが、今のようなことで、かなりこの社会の奥深くまで浸透してしまっているかもわからないこの危険ドラッグをどう撲滅していくかというのに当たって、おっしゃるように、気持ちとして、今のままだけでは足りないというお気持ちを持っていらっしゃるのはよくわかるところであります。

 しかし、それでも、この合成カンナビノイドでも、やはり、精神毒性のあるかないかのことは、時間がかかっても特定をしないといけないということでもありますから、そこの、法律として罰することの根拠になるためには、やはりある程度のきちっとしたものがなければいけない。

 それを、今おっしゃっているように、我々の今、薬事法で行政がやっているのは、疑わしきものを、まず検査命令、そして販売停止命令をかけた上で、そこで検査をしていくということですが、それを先にやらないと、結局、販売が続いたままで検査をしているようなことでは本末転倒になってしまいますから、そこのところを素早くというお気持ちと、しかし、間違いなくやるということを、どう両方実現していくかということを達成しないと今よりもいいことにはならないと思うので、今とりあえず我々がやれることは最大限のこととしてやっていくつもりで、続いてやっていきますけれども、先ほど申し上げたように、与野党でぜひ御一緒に考えていただいて、我々も協力して、皆で一緒にこれを撲滅するために頑張っていきたいというふうに思います。

今村(洋)委員 もう時間が過ぎておりますので簡潔に申し上げますけれども、一般に我々が病気のときに使っている薬、実はあの原材料費というのは、本当に数円、もしかしたら一円にも欠けるような金額です。先生方はドクターですからよく御存じでしょうけれども。あれが何で何百円もするのか。開発するまでにいろいろな治験を行って、安全性を確かめてやっているからなんですね。

 この危険ドラッグと言われているものは文字どおり危険なんですけれども、確信的にこういう闇鍋状態なものをつくっているわけですから、こういった連中に網をかけるには、もう届け出制にして、許可制にして、ちゃんと治験をやった上で販売する以外認めないというような知恵も僕は必要なんじゃないかというふうに考えています。

 ですから、こういったことは、私は法の素人ですから専門家にきちんと検証してもらわなきゃいけないですけれども、そういった方法をとらなきゃいけない、それも政治決断でやらなきゃいけないというところまで来ていると思います。ですから、何とぞその辺も御高配いただければと思います。

 どうもありがとうございました。

上川委員長 次に、中島克仁君。

中島委員 みんなの党の中島克仁です。

 本日は、午前中の参考人質疑に続きましての一般質疑ということではございますが、私からも危険ドラッグ関係について御質問させていただきたいと思います。

 午前中の参考人の質疑では、精神保健研究所の和田先生が、今まで我が国は、薬物依存に関しては非汚染国、世界に誇る非汚染国だ、ただ、この危険ドラッグの問題をしっかりやらないと、これは本当に崩されてしまうと。今後、諸外国、ヨーロッパ、欧米諸国を中心に、薬物先進国と言ったらいいかどうかわかりませんが、いよいよ日本もそういう時代に入ってしまうのか、そこの本当に瀬戸際の部分ではないかな、そのようにも認識しております。

 先ほど山井議員や井坂議員、特に山井議員は大変熱い思いを語られておったわけですが、私はその理由もよくわかるような気がいたします。

 六月二十四日、通常国会閉会直後、池袋で、当時脱法ドラッグと呼ばれておりましたが、吸引直後に死傷事件があった。それをきっかけに、報道等でも大きく報道されるようになって、世間の関心も高まったわけではございますが、その以前から危険ドラッグの問題は危惧をされておりました。けさ方は、一月、そして昨年、大事な御家族を危険ドラッグによって失われた御家族、そのお話も聞かせていただいたということでございます。

 もしかしたら、また先ほどから繰り返しになるかもしれませんが、私、閉会直後、その池袋の事件を受けまして、閉会はしておりましたが、大変これは問題があるということで、当時、自民党の金子筆頭、そして山井筆頭に電話で連絡をいたしまして、これは厚生労働委員会として何とか対応しなきゃいけないんじゃないですかと。そのことを与野党問わず真摯に受けとめていただきまして、そして、八月四日には、閉会中にもかかわらず厚生労働委員会を開いた。

 そのときの田村大臣の御発言は、私ももう一度大臣から直接お話を聞きたいところなんですが、当時の田村前厚労大臣の認識は、今、店頭もしくはインターネットで販売されているものは全てアウトなんだ、もう確実に黒なんだ、その確信犯をどう取り締まるかが我々に課せられた使命なんだと大変強い決意で述べられておりました。

 先ほどから大臣の御発言、決して私は認識が甘いとかそういうことを言うつもりはございませんが、本当にあえて申しますが、その七月には、山井議員、井坂議員と、池袋や秋葉原、そして上野あたりも、その当時脱法ドラッグ店、何軒も歩いてまいりました。そして、その現状に愕然としたわけです。

 そして、私の地元に帰っても、店舗はないですが、店舗がない以上に潜在化をしていて、私の地元は山梨ですが、甲府の夜の町に行って、客引きの方々にそういう問い合わせをすればいつでも手に入る、その状況は今も余り変わっていないんです。

 大臣のお立場ではなかなか法の枠を超えてというのは難しいとは思いますが、先ほども言ったように、これは確信犯なんです。我々が正論を言っていても、なかなか、その上を行くというのは変ですが、真面目にやっているわけではないので、そこをどう我々が乗り越えていくか。そして、きょうの午前中の参考人質疑の中でも、関西広域連合の飯泉徳島県知事からも、これはテロ行為にも近い状態だという認識の中で、改めてもう一度、そのような待ったなしの状況だということの認識を、そして決意を、塩崎大臣にお聞きしたいと思います。

塩崎国務大臣 私も、実久さんの御両親や川上さんのお父様にお目にかかって、本当に無念の思いをされておられたなということがよくわかりました。

 私自身も、もちろん、この立場になる前は少し新聞で見ていたぐらいでありましたけれども、こういう立場になって改めて、この問題は本当に社会の奥深くまで入り込んでしまっている、日本の社会の病のようなところになってしまっている、これを何としてもやはり撲滅せないかぬということで、田村前大臣は御熱心だったということでございますけれども、田村前大臣にも増して強い決意で臨んでいきたいというふうに思います。

中島委員 我々も、先ほどから他の議員もおっしゃっているように、決してこれは戦うとかということではなくて、知恵を出し合って、要するに、国民の生命が脅かされているという現状でございます。この国民の生命を守っていくのは、当然ながら国家の使命でありますし、政治家の使命でもあるというふうに認識しておりますので、ぜひ今後も与野党問わず連携をとっていければというふうにも思います。

 私、持ち時間が十五分しかないので、細かいことをなかなかお聞きできないんですが、我々も七月に、閉会中でありながら毎週のように集まって、どうあるべきかということをそのときから始めていたからこそ、先ほど言った蓋然性の部分とか七十六条の六とか、ひっかかるところはやはり一緒なんです、その結果、今回、我々が議員立法として出したものということになっております。

 ただ、それだけで今の状況が解決できるとはなかなか思えないんです。その中には、やはり実施体制との整合性とか、うまくかみ合って、要するに、きょうの午前中の和田先生の発言にもございましたが、これは国家体制でやらないと、先ほど言った薬物先進国である欧米諸国のように、日本もいよいよ突入するのかというような状況になるのではないか。

 そういう意味で、そもそも、薬事法というくくりでテロ行為にも当たるような攻撃物質をどう規制するのかということ自体に、もしかしたら無理があるのではないか。薬事法、簡単に言うと、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器の品質、有効性、安全性の確保を目的とする法律というくくり、大枠ではそういうことになりますので。そもそも、それを超えた危険ドラッグは、これも繰り返しになりますが、大臣の立場としてはなかなか発言しづらいかもしれませんが、薬事法以外、やはり法改正は最低限。

 新しい危険ドラッグ、今の現状、危険ドラッグの特徴というのは、イタチごっこを繰り返した結果、売っている方もやっている方も何者だか全くわからない、ある意味モンスタードラッグみたいになってしまっている、そして、非社会的勢力とかかわらなくても簡単に手に入ってしまう、このような状況が今までかつて日本にあったのかどうか。そうなってくると、今まである法律で、しかもその目的が、薬事法、有効性、安全性を担保する法律で、そもそも解決できるのか。その辺に対して御認識、御見解をいただきたいと思います。

塩崎国務大臣 先生御指摘のように、一日も早く、こういう危険ドラッグが手に入らないような、そういう国にもう一回変えていかなきゃいけないというふうに思っています。

 そのために今やれることは、現法制下のもとでできることをやっているということで、薬事法で、その疑わしいものについて販売規制を、それから検査命令も出しているわけであって、その間に、きちっとした根拠を得るための検査をして、そして精神毒性を明らかにしていくということで、一つ一つ潰していっているわけであります。

 しかし、いずれにしても、スピードの問われている問題でもありますから、今お話のある、議員立法で御提起をいただきましたが、やはり、今よりもいい体制がつくれて、今の体制のままよりも早く、危険ドラッグが手に入らない社会にするのにどちらが有効かというか、何が有効かということを考えてやっていかなきゃいけないというふうに思っておりますので、今やれることはやりながら、同時に、私ども厚生労働省としても、議員立法、あるいは与党の先生方とも協力をしながら、よりよいものを目指してやっていかなきゃいけないというふうに思います。

中島委員 何度も繰り返しませんけれども、決して私、何もやっていないとかというふうに今まで認識しておるわけではなくて、今までも、厚生労働省さん初めあらゆる機関が、要するに現行法で徹底的にやっておることは存じております。御努力されている。

 ただ、今の現状が、先ほども言ったように、店舗は減ったもののインターネットでの売り上げは逆に伸びてしまっている。そして、恐らくですが、販売者に対して罰則規定がございませんので、一時的には影に潜むかもしれませんが、また違うところで始めてしまう可能性は十分ある。そうなってきますと、やはり今のような、新たなくくりというものが必要かということはぜひ今後検討していただきたい。

 そして、危険ドラッグ関連の交通事件、池袋の事件が代表的ではございますが、その後も福岡等でまた起こっております。

 これまで、運転者に危険ドラッグを提供した同乗者が幇助罪として起訴された例はあるようですが、やはり販売者の責任が問われた前例はない。幇助罪容疑で家宅捜索に入ることはあっても、実際、逮捕、起訴されることはほとんどない。池袋の事件でいけば、事件を起こす直前に店舗で吸っていた、家宅捜査には入って、店は閉じたけれども、やはりその販売業者が罰せられることはない。

 この幇助罪、アルコール運転であれば、一緒に同乗していた人、もしくは酒を提供したお店、やはりそのような幇助罪の適用、先ほどは薬事法での法のくくりではございますが、今度、実施体制として。そうでないと、池袋の事件でいけば、お店はなくなりましたが、その業者をやっていた人間はどこかに行ってしまっております。違うところでまた始めてしまうということになりますので、やはり、その実施体制として幇助罪の適用の範囲の拡大、その御検討というか、今の状況、今後の見通し等についてお聞かせ願いたいと思います。

樹下政府参考人 一般論として申し上げれば、刑法六十二条一項の幇助とは、実行行為以外の行為で、正犯の実行行為を容易にさせることであるというふうに承知をしております。

 危険ドラッグに関係する事件、事故につきまして幇助罪を適用することにつきましては、個別の事案において、収集された証拠に基づいて判断されるものと認識をしております。

 警察といたしましては、あらゆる法令を適用し、厳正に対応してまいりたいと考えております。

中島委員 先ほども言ったように、薬事法なのか、それとも新しいくくりなのか、実質上は、その実施体制ですね。関西の広域連合の各自治体、地域の実情に合った条例とうまくマッチングして、かみ合っていって、それに国家ができることは、例えば米国のように麻薬研究所の設立、そこまで行くかはわかりませんが、やはりここでしっかりと歯どめをかける、その強い決意がないと。

 私も地元で医師もやっておりますけれども、これは本当に、うちの地元では高校生も危険薬物で逮捕された例があります。

 これは大きな声ではあれですが、実際に高校生たちに聞いていきます。そうすると、これは大丈夫だよと友達から誘われるわけですよね。勉強がなかなか思うように手につかない、そういう悩みを抱えている高校生や大学生が、これは、さっき言った非社会的勢力とかかわるんだったら、あっとなりますが、いつも仲のいい友達から、これをやると勉強が進むんだ、いや、こんなのまずいでしょうと言っても、いや、大丈夫、これは違法じゃないし、私もやっている、そんな中からどんどん広がって、しかも潜在化していってしまう、このような現状だというふうに思います。

 細かい点は、恐らく、我々も議員立法を出しておりますし、今後、与党の皆さんといろいろな整合性をしながら、また、危険ドラッグのその法整備については議論する場もあると思いますので、またそのときに議論をさせていただければと思います。

 きょうはこれで質問を終わります。ありがとうございました。

上川委員長 次に、高橋千鶴子君。

高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 本日は、午前中に危険ドラッグ問題での参考人質疑がございました。当事者による依存症回復施設、医療の現場、そして自治体の努力、それぞれの努力を伺うことができました。また、発言ではなく、傍聴席で見守っていられる二組の御遺族、私も朝、お話を伺いましたけれども、もし自分の子供が突然命を奪われる、そういうことになったら、本当にどういう気持ちになるか、私たちはやはりそういう立場で取り組んでいかなければならない。それぞれの意見を本当に生かしていきたいということを改めて思っております。

 そこで、最初に大臣に決意を伺いたいと思うんです。

 先ほど来、少しずつお話をされているところですけれども、厚労省は、来年度の概算要求で、麻薬取締部の今年度定員二百六十七名から三十三名純増、検査費を十倍など、体制強化を要求しております。やはり、この間の事故や議論を踏まえて、厚労省としても強化に向けていくんだと。もちろん、十分だとは言えません。でも、私たちは、やはりそれも、今度の議員立法を通して、本当に国会の決意として後押しをしたいんだ、そういう気持ちでいるわけです。

 絶対、危険ドラッグの横行を許さない、犠牲者は出さない、そういう大臣の決意を伺いたいと思います。

塩崎国務大臣 高橋先生から今御指摘いただいたように、概算要求で、危険ドラッグの取り締まりに係る麻薬取締部の体制について、指定薬物事犯の捜査体制の強化、それから、押収した薬物の鑑定体制の強化をするために、増員、先ほどお話があったとおり三十三名行っているわけであります。

 また、危険ドラッグの分析についても、今年度、民間検査機関への委託の活用を積極的に進めておりまして、今後、危険ドラッグの成分特定や指定薬物への迅速な指定を推進するために、分析機器の整備等の体制強化を図ってまいりたいということでございます。

 先ほど来、この指定に当たって、特定するのにまず検査をしないといけないということがあって、できる限りスピーディーなことができるようにということでやっているわけでございます。

 それから、危険ドラッグを容易に買うことができない状況を一日も早く実現しなければいけないという、先ほど来先生方からいろいろ御指摘をいただいているとおりであって、私としても、私のリーダーシップのもとで、厚生労働省を挙げて、危険ドラッグの根絶に向けた体制確保のあり方について、しっかりと実現に向けて全力を挙げていきたいというふうに思います。

高橋(千)委員 ぜひ、年末に向けての財政当局の査定にも絶対屈しないで頑張っていただきたい、このように思います。

 そこで、八月二十七から三十日に、東京、愛知、大阪、福岡の四地域の危険ドラッグ販売店に対し、地方厚生局、都府県、警察が合同で立入検査を実施、指定薬物である疑いのある物品に対し、薬事法第七十六条の六に基づく検査命令及び販売停止命令を初めて発動しました。なぜ初めてだったのかと思うわけですが。

 もう一つは、無承認医薬品としての取り締まりについても、八月二十九日、都道府県に対して通知が出されています。

 もともと、薬事法における無承認、無許可医薬品という考え方はあって、もちろんドラッグだけではなくて健康食品などが非常に多かったわけですけれども、ただ、脱法ドラッグもこの仕組みの中で取り締まることは本来できたわけですが、これまでできなかった理由は何でしょうか。簡潔に。

神田政府参考人 御指摘の無承認医薬品の販売につきます罰則につきましては、これは直接罰というふうになってございます。それから、医薬品の該当性につきましては、薬事監視員がその成分、形状、名称等から総合的に判断するということになってございますので、直接罰がかかるということを現場の薬事監視員が自分で判断しなければならないということで、この適用に慎重であった点があったのではないかというふうに思っております。

 そういったことから、先ほど申し上げたような検査命令とか販売停止命令を実施してきたわけでございますけれども、さらにその取り締まりを強化するという観点から、ことしの八月に、総合的な判断の基準でありますとか、取り締まりの手順を明確化することによって、無承認医薬品としての取り締まりを現場で的確に行うことができるように、その明確化を図ったというところでございます。

高橋(千)委員 これは、私自身も勉強不足を反省しなければならないなと思うんですが、前回の質問のときに、やはり無承認医薬品として取り締まることも検討していくんだとおっしゃって通知を出したわけです。

 ただ、この通知は初めてではないわけですよね。それも、平成十七年、もう九年前に同様の趣旨の通知が出されています。「「人又は動物の身体の構造又は機能に影響を及ぼす」目的があると判断可能である脱法ドラッグの事例について」というものが出されています。「使用目的の標榜ぶり如何に関わらず、事実上、経口、吸入、塗布等、人体への摂取を目的として販売されていれば、薬事法第二条第一項第三号の医薬品に該当する」と。医薬品なんだと。結局、実際に吸う形になっているでしょう、塗る形になっているでしょう、それはもう医薬品なんだよと言えば、それは無承認ですよというふうに取り締まれるという趣旨だったと思うんですね。

 これは、平成十九年十月十一日の東京高裁判決でも、これは医薬品であると明確に判決が下されているわけです。そのことを思えば、余りにも遅かったなと言わなければならないと思います。

 当時のあり方検討会の資料を見ますと、脱法ドラッグの一部が麻薬として規制される直前の駆け込み販売を防ごうと、横浜市と厚労省が立入検査を行った、そのときに、制服姿の高校生もたくさんいた、そういう記事があるんですね。神奈川新聞、平成十七年ですよ。そして、四月十七日まで休業します、十八日から通常どおり営業いたしますと張り紙がされていた。

 こういうことを、結局、前回の委員会で議論になった、駆け込みセールをやっているじゃないかということが、当時も同じように議論された。だとすれば、もっと早く手だてが打てたのではないか。国として、やはり閣法で法改正を出すとか、その他、必要な体制が足りないのであればもっとふやすとかできたのではないか。率直に伺います。

神田政府参考人 御指摘のような解釈というのは、前も出ているわけでございます。

 ただ、危険ドラッグを無承認医薬品で取り締まることが非常に難しかったことの一つは、先ほどから御指摘ございますように、絶対に摂取しないでくださいと、要は人体摂取を目的にしていないんだということをあえて明示してうたっておりますので、医薬品の定義というのは、人の身体またはその構造、機能に影響を与えることを目的とするということですので、摂取することを前提にしているということでございます。

 今回、御指摘のようなことを踏まえて、仮にそういったことをうたっていたとしても、形状等から見て、これは明らかに摂取しやすい形態で売っているではないかということを捉えて、我々としては積極的に取り締まりをしていくという方針を今回示したところでございます。

高橋(千)委員 あえて明示をしている、しかし、吸ってはいけないと明示をしているんだけれども、効能をうたっているから明らかにおかしいよねということを、やはり思い切って今回踏み切ったんだというお話だったと思うんです。

 ですから、私たちは、危険ドラッグの法案、野党でみんなで提案しました。これを本当に実効性あるものに、与党の知恵もかりながら、成立させたいと思っています。でも、成立させる前に、できることをやっていくんだと答弁をしているわけですから、それを本当にやっていただきたいと思っているんです。

 そのためにも、さっきの検査命令の、どうやってやったんですかと。総理が予算委員会で山井委員に質問されて、ドラッグの販売店は縮小しました、インターネットでも削除しましたとおっしゃいました。

 でも、その準備をするに当たって、全国の都道府県の薬事監視員がやはり日常的に見ていて、何でこんな看板がこの店にあるんだと、そういうところから体制を整えていった。ただし、薬事監視員が一人で踏み込むわけにはいかないわけですね、身の危険があるわけです。だから、当日はちゃんと警察や麻薬取締部との協働の体制をつくってやったというふうに聞いております。そういう意味で、十分な体制が都道府県に対しても必要だと思いますが、いかがでしょうか。

神田政府参考人 御指摘のとおり、危険ドラッグの取り締まりについては、都道府県の薬事監視員だけではなかなか難しいということがございます。麻薬取締部と都道府県の警察とが協力をして、立入検査ですとか取り締まりを行っているところでございます。

 御指摘のように、都道府県において危険ドラッグに専従する職員というのは、今非常に少ない。東京都で三名いるということでありますけれども、ほかの都道府県では他の業務と兼務しているというのが実態でございますので、私どもとしては、現在、地方交付税交付金の積算基礎に、都道府県ごとに専任の職員を置いていただくよう増員要求をしているところでございます。

高橋(千)委員 ありがとうございます。ぜひ、ここはお願いをしたいと思います。

 そこで、八月四日の委員会の中でも、薬物依存症対策として、医療機関の体制や回復施設について質問いたしました。きょうは、医療機関の和田参考人と回復施設の秋元参考人から直接お話を聞くことができて本当によかったなと思っているわけです。

 問題は、厚労省は、その後、認知行動療法に基づく再乱用防止プログラムを全国全ての精神保健福祉センターに一斉導入するということで、概算要求に専門職員の人件費や研修費約一億四千万円を盛り込みました。ただ、実際には、人材が圧倒的に足りませんし、民間団体に依拠せざるを得ないというのが明らかだと思うんですね。そういう点では、医療の現場でのバックアップが絶対必要だ。

 そのときに、きょうも和田先生に改めて確認をしたんですけれども、やはり入院治療の際の診療報酬で加算措置をするなど、適正な評価をするべきだと思いますが、これはぜひ大臣に伺います。

塩崎国務大臣 危険ドラッグを含みます薬物依存症については、今先生からお話ございました専門医療機関の不足などの問題から、地域の精神保健業務の中心的役割を果たします精神保健福祉センターで認知行動療法を用いた治療回復プログラムを実施するための予算を、平成二十七年度の概算要求で新たに盛り込んでいるところでございます。

 また、専門医療機関の拡充のために、認知行動療法を用いた治療回復プログラムの医療機関への普及、それとともに、全国五カ所の依存症治療拠点機関による専門的な相談、そして、治療及び回復支援に取り組みを進めているところでございます。

 こうした取り組みを通じまして、ダルク等の民間団体だけではなくて、医療機関それから行政機関等と適切に連携をしながら、重層的な医療提供体制の確保に努めてまいりたいというふうに思っております。

 なお、御指摘の診療報酬でありますけれども、これについては、いろいろな御議論があろうかと思いますので、中央社会保険医療協議会の方での議論を踏まえて適切な評価に努めてまいりたいというふうに思っております。

高橋(千)委員 午前の議論で、アルコール中毒は診療報酬の対象になるんだけれども、薬物はならないということなんですね。それに対して、和田参考人は、自分たちにとっては一緒なんだ、患者は一緒なんだということ、どうしてここで差をつけるのかと言っています。本当に全国で今体制をそろえようとしたら、絶対にここを突破しなければなりません。

 昨年二月十三日付で、全国薬物依存症者家族連合会、いわゆる薬家連が検討会宛てに要望書を出しています。「医療機関に於いて薬物依存症者を入院治療で受ける際の診療報酬について加算をつけるよう求めます。また、医療機関でスマープ等のプログラムが積極的に行われるよう、国の指導を求めます。」

 本当にようやっとここに光が当たって、全国でやろうと始まったところです。それを担保するのがこの診療報酬の問題であると思いますので、ぜひ大臣として強い決意で臨んでいただきたいということを重ねて指摘して、ちょうど時間になりましたので、終わりたいと思います。よろしくお願いいたします。

上川委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時三十一分散会


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